1. 会議録本文
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000・会議録情報
平成八年四月十一日(木曜日)
午前十時八分開会
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出席者は左のとおり。
委員長 足立 良平君
理 事
南野知惠子君
真島 一男君
武田 節子君
大脇 雅子君
委 員
小山 孝雄君
佐々木 満君
山東 昭子君
坪井 一宇君
前田 勲男君
松谷蒼一郎君
石井 一二君
今泉 昭君
星野 朋市君
青木 薪次君
日下部禧代子君
吉川 春子君
笹野 貞子君
末広真樹子君
国務大臣
労 働 大 臣 永井 孝信君
政府委員
労働大臣官房長 渡邊 信君
労働省労働基準
局長 松原 亘子君
労働省職業安定
局長 征矢 紀臣君
事務局側
常任委員会専門
員 佐野 厚君
説明員
文部省高等教育
局医学教育課長 寺脇 研君
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本日の会議に付した案件
○地方自治法第百五十六条第六項の規定に基づ
き、公共職業安定所の設置に関し承認を求める
の件(内閣提出)
○労働安全衛生法の一部を改正する法律案(内閣
提出)
○労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労
働者の就業条件の整備等に関する法律等の一部
を改正する法律案(内閣提出)
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001・足立良平
○委員長(足立良平君) ただいまから労働委員会を開会いたします。
地方自治法第百五十六条第六項の規定に基づき、公共職業安定所の設置に関し承認を求めるの件を議題といたします。
本件の趣旨説明は既に聴取しておりますので、これより質疑に入ります。
質疑のある方は順次御発言願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615289X00519960411/1
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002・吉川春子
○吉川春子君 本件は、札幌北公共職業安定所の設置について承認を求めています。新たに職安を設置することについて我が党は賛成です。しかし、今回平成八年度安定所等再編成に伴い職安をふやす一方で、降格、廃止の憂き目に遭うところが出てきています。出張所をなくすことについては国会の承認にかかっていないのです。しかし、なくなる地域の住民にとっては大変困難な問題が生じます。
そこで伺いますけれども、今回再編成で職安が廃止されたり降格されたりするところは幾つありますか。都道府県別、自治体別に名前を挙げて報告してください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615289X00519960411/2
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003・征矢紀臣
○政府委員(征矢紀臣君) ただいま御指摘の点でございますが、政府といたしましては行政改革を推進するという観点から、平成七年十二月二十五日の閣議決定におきまして、当面の行政改革の推進方策を決定いたしました。その中におきまして、「行政組織等の合理化等」ということで、「行政組織については、その簡素・効率化を推進するとともに、新たな行政需要への対応を進めることとし、これに当たっては、スクラップ・アンド・ビルドによる組織の再編・合理化によることを原則とする。」という考え方。さらにまた、引き続きまして、国立大学の学科、附置研究所等の転換、再編成、検疫所の再編整理等々とあわせ、公共職業安定所の出張所等の整理統合など、地方支分部局についても改革、合理化を進める、こういう考え方でございます。
この考え方を前提といたしまして、公共職業安定所等につきましては、札幌北安定所の新設とあわせまして、江差安定所につきましては出張所に降格する。あるいは滝川安定所の芦剔出張所、函館安定所北檜山分室、留萌安定所羽幌分室、稚内安定所枝幸分室、以上が廃止。それから茨城県につきましては、常陸鹿嶋安定所鉾田出張所につきましては分室に降格、常陸鹿嶋安定所麻生分室につきましては廃止。東京都につきましては、東京港労働安定所につきましては、芝園橋安定所東京港労働出張所に降格、大森安定所蒲田労働出張所につきましては廃止。山口県下関安定所大和町労働出張所につきましては廃止。以上のような安定所等の再編計画でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615289X00519960411/3
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004・吉川春子
○吉川春子君 一カ所つくると同時に八カ所を廃止し、二カ所を降格する、こういう計画ですね。
職業安定法は、憲法第二十七条を受けて国民の勤労権を保障する具体的な措置を制定していますけれども、その四条で政府の業務はどう定められていますか。時間の関係もありますので、端的に短くおっしゃってください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615289X00519960411/4
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005・征矢紀臣
○政府委員(征矢紀臣君) 職業安定法の四条におきまして、「政府の行う業務」といたしましては、第一条の目的を達成するために、「国民の労働力の需要供給の適正な調整を図ること。」、「失業者に対し、職業に就く機会を与えるために、必要な政策を樹立し、その実施に努めること。」、「求職者に対し、迅速に、その能力に適当な職業に就くことをあっ旋せんするため、及び求人者に対し、その必要とする労働力を充足するために、無料の職業紹介事業を行うこと。」等々が制定されております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615289X00519960411/5
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006・吉川春子
○吉川春子君 そのほかにも、求職者に対する必要な職業指導あるいは雇用保険の給付を受ける云々、そういう業務を行うわけですけれども、そういう業務が廃止されるところではもうサービスが受けられなくなる、こういうことになるわけですね。
今回の例で、北海道の枝幸分室の廃止によって、歌登町の労働者は稚内の職業安定所まで行かなくてはならないんですね。私、北海道はよくわかりませんので地図で調べてみましたら、稚内と枝幸というのはすごく離れているわけです。どれぐらい離れているかというと、百四十六・九キロ離れているというから、ここから静岡近くまで離れているんでしょうか。新幹線ももちろんないから路線バスで四時間五十二分かかる。運賃は三千四百五十円かかる。こんな職安が廃止されてはたまらないわけですね。
今回のその廃止される地域の住民から、労働省はどんな声を聞いていますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615289X00519960411/6
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007・征矢紀臣
○政府委員(征矢紀臣君) 私どもといたしましては、先ほど申し上げましたように、政府の行政改革の方針に基づきまして具体的に対応するということでございますが、平成八年度におきます安定所の整理再編を進めるに当たりまして、その実施に当たりましては、まず基本的にはその安定所等におきます業務量がどんな状況であるか……発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615289X00519960411/7
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008・吉川春子
○吉川春子君 いや、地域の住民の声をお願いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615289X00519960411/8
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009・征矢紀臣
○政府委員(征矢紀臣君) ということ等を踏まえまして決定したわけでございますが、その実施に当たりまして地域住民についてどのような御意見をお聞きしたか、こういう点でございますが、これにつきましては、私ども出先機関でございます関係都道府県等を通じまして地元の実情などを伺いながら決定いたしたところでございます。ただ、これにつきましては平成八年度実施ということでございますが、八年度といいますのは八年度いっぱいということでございまして、したがって、引き続き地元の実情などを伺いながら、その理解を得つつこれを進めてまいりたいというふうに考えているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615289X00519960411/9
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010・吉川春子
○吉川春子君 八年度いっぱいやるといったって、その後は廃止するということに変わりないじゃないですか。
大臣、お伺いいたしますけれども、私は廃止されるところの地元の住民の声を聞いてみました。例えば江差の降格については、存続を目指して闘うが、最悪の場合でも住民サービスの低下につながらない保障をぜひ目指したい、こういう町会議員の方の声です。それから、芦剔出張所の廃止は、一月十九日の議会で全会一致で反対決議を上げています。最悪の事態でも定期の巡回などの保障はとりつけたい、これも市会議員の方の声です。それから、北檜山分室の廃止は一月十九日の議会における町長の行政報告で、平成二年に単費事業一億円をかけて安定所の庁舎を建てかえた矢先の廃止なんですね、納得できないとしています。季節労働者も大変多くの反対の声が上がっております。また、さっきの枝幸分室の廃止の方ですけれども、一月十九日の助役の発言では、町長が不在のために新しい町長が決まった段階で関係四町長との話し合いを持つということですけれども、改めて運動を起こしていきたい、こう言っています。
こういう声は、まことにごもっともなんですけれども、労働省として、労働大臣としてどういうふうに聞き、どういうふうにこたえるつもりですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615289X00519960411/10
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011・征矢紀臣
○政府委員(征矢紀臣君) 個別具体的にただいま先生御指摘のようなお話につきまして、私どももいろんな面でお伺いはいたしておるところでございます。
行政改革につきましては、一般的にこれは進めるべきであるということでございまして、そういう視点から職業安定行政の組織について検討し、一定の行政改革を進めるという判断をして対処しているわけでございますが、先生御指摘のように、国民に対するサービス機関としての職業安定機関について廃止する話につきまして、基本的にこれはもういずれも地元は反対でございます。どこも賛成していただけるところはございません。
ただ、そういう中でやはり全体の配置を考えその改革を進める、こういう観点から、今回も一定の廃止あるいは降格の措置を講じようとしているところでございます。ただ、これにつきましては、ただいま御指摘のようないろんなお話もございます。それから地域によりましての事情も、非常に距離的に遠いという面の事情もありましょうし、あるいは比較的距離的に近い、あるいは労働出張所等につきまして業務量も相当従来に比べますと減っている、そういうものもございます。
そういう点につきましては、個別具体的に各方面の御意見も聞きながら、例えば巡回職業相談の実施、そういうもの等も含めて著しい行政サービスの低下にならないような方策、こういうものを検討しながら対処してまいりたいというように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615289X00519960411/11
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012・吉川春子
○吉川春子君 言いわけはいいんですけれども、具体的にどういう措置をとるのか、ちょっと端的に言ってください。廃止されるところは廃止したままじゃないわけですね、どういうふうにされますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615289X00519960411/12
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013・征矢紀臣
○政府委員(征矢紀臣君) 端的に申し上げますと、廃止した後本所で業務を処理する、こういうことで対処できるものもございますし、ただいま申し上げましたように、通常の交通機関を利用しても公共職業安定所あるいは出張所及び分室への出頭に相当な時間がかかる場合におきまして、安定所の職員を派遣して実施される職業紹企業務あるいは雇用保険業務、こういうものを実施する巡回職業相談、そういうようなことで対処するケース、ケースとしては幾つかあろうかと思いますが、そういうことを検討しながら、具体的には地元と協議をしながら対処してまいりたいというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615289X00519960411/13
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014・吉川春子
○吉川春子君 大臣に一言伺いたいんですけれども、こういう大変致命的なというか決定的な不利益をこうむる地域住民に対して、本当に万全の対策を講じてサービスの低下につながらないようにやっていただきたい。その決意をお伺いしたいんですが。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615289X00519960411/14
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015・永井孝信
○国務大臣(永井孝信君) 先生の御指摘のとおり、大変な利便さに欠けるというところは現実に出てまいると思いますが、今局長からも答弁しましたように、でき得る限りその実情に応じて巡回相談をするなり、あるいは場合によっては本所との連携を、地方の自治体にも御協力をいただきながら連携をとるようなことも考えていきたい、こう思っております。
なお、全体の行政改革の中で厳しい定員削減が続いてきているわけでありますが、労働省といたしましては、職業安定業務の重要さにかんがみまして、他の省庁に見られないような純増員ということも、ささやかではございますけれども、実現をさせてきているところであります。そのことを見ていただきましても、不十分ではあろうかと思いますが、職業安定業務に対する私たちの決意と行動というものを、ぜひとも御理解を願っておきたいと思うわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615289X00519960411/15
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016・吉川春子
○吉川春子君 それからもう一つ、前回の労働委員会で、阪神・淡路大震災の失業の吸収率、職安行政について伺いましたけれども、私設職安の問題について、大臣は取り締まりのための内偵を進めていると答弁されましたが、取り締まりだけでは済まされない問題がありますし、また違法行為の全廃もできないわけです。
仮に、私設職安を全廃できたとしても、その後の対策をどういうふうにすると考えていらっしゃるのか。たくさんの職を求める人がいるわけです。そういう人たちに対してどういうふうな対策を持っておられるのか、その点をお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615289X00519960411/16
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017・永井孝信
○国務大臣(永井孝信君) 被災された失業者等に対する職業紹介についてでありますが、現地の職業安定所は全職員を挙げて相談に応じたり、あるいは職業紹介を実施しているところであります。
御指摘のように、やみ手配師と言われているものについては、今関係当局で対応をしてもらっておりますから、まもなくその中間報告が出るかと思いますが、やみ手配師を撲滅することは当然なことでありまして、もともとこんなものが存在していることがおかしいわけであります。
そこで、雇い入れようとする事業主もあるいは就職をされようとする方たちも、もっともっと公共職業安定所というものの役割を認識してもらって、それを十分に利用、活用してもらえるように私どもは事あるごとにこのPR、監視をしていきたい、このように思っているわけであります。もともと職業安定所の持っている役割の本来の業務でありますから、ここにすべてを集中して職業紹介ができますように私どもは万全の窓口体制もとっていきたい、このように考えているわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615289X00519960411/17
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018・吉川春子
○吉川春子君 公共事業への吸収率の低さについても指摘いたしましたけれども、大臣が今言われた違法な私設職安を通じての就職というのは中間搾取などもあり、劣悪な労働条件で働かされることになるわけです。
これを避けるためにも、大臣が今おっしゃった職安には私は震災後から三回ぐらい行っているんですけれども、あそこまで労働者が足を運ぶということはできないわけです。それで、この地域に臨時的にでも、新開地のあたりでなくてもいいんですけれども、あのあたり仮に臨時的にでも、特別の失業対策の労働出張所を設置すべきじゃないか、期間を仮に限っても。
そういうこともぜひ検討していただいて、実際に職を求める人がいて、そこに手配師がいるわけですから、その手配師に任せないで、労働行政で、職安行政で吸収するというのだったらば労働出張所を設置すべきじゃないかと思うんですけれども、その点について、大臣、ぜひ実現していただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615289X00519960411/18
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019・永井孝信
○国務大臣(永井孝信君) 御案内のように、神戸市では神戸公共職業安定所あるいは西神職業安定所というのがございまして、神戸市内から行きますと、新開地から神戸の職業安定所は距離的にはそう遠くないんです。
ですから、もちろん先生が言われるように、就職を希望する人が集中的にいらっしゃるところに出張所を設けることは一番いいことかもしれませんけれども、今申し上げましたように膨大な業務量を抱えて、一定の職員数でフル回転で頑張っているわけでありますから、就職される方も、神戸市内のことでありますから少し足を伸ばしていただいて、職業安定所の窓口を訪れていただくということで御協力いただけないかな、こう思っています。
細かいところまで全部やればいいのでありますが、なかなかそこまで出張所の窓口をあちこちの街角につくるほどの現実的には余裕を持つことは難しいと思いますので、ぜひひとつ御協力をお願い申し上げたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615289X00519960411/19
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020・吉川春子
○吉川春子君 今おっしゃったように、今ある神戸の職安も手いっぱいです。あそこにあんなにたくさんの、私設職安でやっているような人が押しかけるということで、また業務はパンクします。
だから、本当にこの問題を解決しようとしたら、取り締まりだけではなくて、それにかわる行政の手を差し伸べなきゃならない。だから、大臣は現地の出身であるし労働行政にもお詳しいので、私は要望にとどめますけれども、この出張所の臨時的な開設についても、予算概算要求の時期も迫っていますので、これも含めてぜひ御検討いただきたい。そのことを申し上げて、質問を終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615289X00519960411/20
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021・足立良平
○委員長(足立良平君) 他に御発言もなければ、質疑は終局したものと認めて御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615289X00519960411/21
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022・足立良平
○委員長(足立良平君) 御異議ないと認めます。
それでは、これより討論に入ります。——別に御意見もないようですから、これより直ちに採決に入ります。
地方自治法第百五十六条第六項の規定に基づき、公共職業安定所の設置に関し承認を求めるの件を承認することに賛成の方の挙手を願います。
〔賛成者挙手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615289X00519960411/22
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023・足立良平
○委員長(足立良平君) 全会一致と認めます。よって、本件は全会一致をもって原案どおり承認すべきものと決定いたしました。
なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615289X00519960411/23
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024・足立良平
○委員長(足立良平君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615289X00519960411/24
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025・足立良平
○委員長(足立良平君) 次に、労働安全衛生法の一部を改正する法律案を議題といたします。
本案の趣旨説明は既に聴取しておりますので、これより質疑に入ります。
質疑のある方は順次御発言願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615289X00519960411/25
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026・武田節子
○武田節子君 平成会の武田でございます。
初めに、労働安全衛生法の一部を改正する法律案の中の小規模事業場における労働者の健康確保についてお尋ねいたします。
今回の法改正は、すべての労働者が職業生涯を通じて健康で安心して働くことができるよう健康確保体制の整備や労働者の健康管理の充実を図ることと承知していますが、特に小規模事業場で働く労働者の健康管理について質問いたしたいと思います。
まず、産業医の選任を必要とする事業規模は労働安全衛生法施行令第五条で「常時五十人以上の労働者を使用する事業場」と定められていますが、今回の法改正にある産業医の選任義務のない事業場はその規模を下回る事業場のことでしょうか、お伺いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615289X00519960411/26
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027・松原亘子
○政府委員(松原亘子君) 今回、産業医の選任義務のない事業場におきまして、産業医学に関する一定の知識を有する医師等に労働者の健康管理を行わせる努力義務というものを新設することといたしておりますけれども、この対象となる事業場とは、先生御指摘のとおり、常時五十人以上の労働者を使用する事業場以外の事業場、つまり五十人未満の労働者を使用する事業場の労働者を対象としている、つまり産業医の選任義務のない事業場の労働者に対して、その事業場の事業主の努力義務というものでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615289X00519960411/27
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028・武田節子
○武田節子君 これからの産業保健のあり方に関する検討委員会の報告の中で、検討する必要があるとされた産業医の選任対象規模の三十人以上への拡大、三十人未満の事業場の選任方法の検討結果はどうなりましたのでしょうか。衛生委員会の設置について、三十人以上への対象拡大が検討されていたと思いますが、どうなりましたでしょうか。
また、今回の改正の大きな目的は、産業保健のあり方に関する検討委員会報告にあるように、産業医の選任対象規模三十人以上を目標にして拡大することにあったはずでございましたけれども、報告書を出されて約四年を経過しているにもかかわらず、今回その部分が欠落したのでは画竜点睛を欠いていると私は思います。
労働者の健康管理の充実を考えるのであれば、こうした規模の拡大が必要不可欠なことだと思うのですが、なぜ法改正時点で三十人以上の拡大の決定ができなかったのでしょうか。その理由をお聞かせください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615289X00519960411/28
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029・松原亘子
○政府委員(松原亘子君) 産業医の選任基準につきましては、昨年の四月に、これからの産業保健のあり方に関する検討委員会報告というものが出されましたが、ここにおきまして、労働者数五十人未満の事業場にあっても、すべての労働者に対して産業保健サービスを提供することが必要であるという観点から、五十人未満で三十人以上の事業場にありましては、事業場単位で産業医を選任するということ、また三十人未満の事業場にありましては、事業場単位で産業医を選任するか、複数の事業場が共同して産業医を選任するか、または地域産業保健センターを活用するか、このいずれかの方策を選択する、こういったような方法について十分検討すべきであるというふうにされたところでございます。
この報告を踏まえまして、労働大臣の諮問機関であります中央労働基準審議会、そこにこういった問題を専門的に検討する労働災害防止部会というのがございますけれども、この労働災害防止部会で八回にわたる検討を行いました。この検討を行った項目というのは、産業医の選任基準以外にも多々あるわけでございますけれども、この産業医の選任基準につきまして議論しましたときには、現在、五十人以上の規模の事業場はその選任が義務づけられているわけでございますけれども、実態調査を見ましても、五十人から百人のところはまだ残念ながらすべての事業場に産業医が選任されている状況にはないということが実はあるわけでございますし、また置かれているところでありましても、百人未満のところではまだまだ産業医の活動が十分でないとか、産業医の活動についての労使の理解が十分でないといったようなことが指摘をされたわけでございます。
そういうことから、まずは選任基準を引き下げるということよりは、選任義務がかかっているところにおいて産業医活動をもっと活性化することの方が先ではないか、こういう議論も強くあったわけでございます。そういうことから、選任基準を引き下げるということについては審議会の段階では結論が得られなかったということがございます。
しかしながら、この問題は非常に重要な問題でございます。中小企業の労働者であれ、大企業の労働者であれ、産業保健サービスが十分に供給されるということは極めて重要なことでございますので、中小企業に働く労働者に対する産業保健サービスのあり方としては、例えば地域産業保健センターを整備していくとか、また産業医を事業場が共同して選任をするといったようなことを国としても勧奨する。
そういったことによりまして、小規模事業場における産業保健サービスの提供がこれからなされていくことを大きく期待しているわけでございますが、そういった状況も十分踏まえながら、引き続きこの産業医の選任基準の問題については審議会で検討することが適当であるというふうに審議会でもそういう結論になったわけでございます。そういうことから、今回の法改正案におきましては、産業医の選任基準を引き下げるということはいたしておらないわけでございます。
また、衛生委員会の設置基準につきましても、産業保健のあり方に関する検討委員会の報告では、三十人以上の規模への拡大、これも現在五十人以上ということになっているわけでございますが、これを規模を下げて三十人以上規模へ拡大することはどうかということで、その旨が委員会報告では述べられているわけでございますけれども、これにつきましても中央労働基準審議会で十分審議をお願いいたしました。これも産業医の問題と大分似ているところもあるわけでございますが、五十人から百人という規模においては、まだこの衛生委員会の活動自体がそれほど活発でないという問題も指摘をされました。
政府においては、その活性化のためにどうすればいいかという施策も、あり方も検討すべきでないかというふうにされましたことと、衛生委員会をどの規模に置くかということについては、衛生委員会の設置義務があるけれども、規模がそれほど大きくない五十人から百人という規模の事業場においてどのようにこれから活性化していくかといった、こういう状況も見ながら設置対象事業場の範囲のあり方を引き続き検討することが適当であるというふうにされたわけでございます。
そういうことから、五十人未満の事業場につきましては、産業医の設置、衛生委員会の設置ということを求めるということは見送られたわけでございます。見送られたといいますか、見送ることと私どもいたしたわけでございますが、ただすべての事業場におきまして、事業場の状況において必要な産業保健サービスが提供されるということは極めて重要なことでございます。
そういうことで、今回新たに産業医の選任義務のない事業場におきましても、労働者の健康管理について事業主が十分努力するようにという、そういう努力義務規定を新たに設けましたし、そういう中小企業の努力に対して国も積極的に援助をするという規定も新設をいたしたわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615289X00519960411/29
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030・武田節子
○武田節子君 通常、その産業医の経費負担はどれくらいかかっているのでしょうか。小規模事業場の場合、経費の負担能力の問題がネックであるとするならば、労働安全衛生規則第十五条に言う産業医の月一回の巡視を、事業規模によっては三カ月に一回とか、あるいは小さいところは六カ月に一回、あるいは五人のようなところでは一年に一回などの巡視にすればよろしいし、もし経費の負担に問題がなければ検討委員会の報告どおりの結論が出せたのではないかというふうに思います。
今いろいろ御説明を聞きましたので、今後三十人以上の規模に対する産業医の検討もぜひ進めていただきたいと思いますが、いずれにしましても、憲法の平等の原則を守る上でもこうしたことを考えるべきではなかったんでしょうか。特に、中高年女性の働く職場はほとんどが三十人未満の小規模企業でございますし、その人たちは家庭と仕事の両立や介護をしながら働いている人たちで、大変健康を害している人が非常に多いわけでございまして、そういう人たちのためにも、ぜひとも三十人以上に目標を段階的に拡大すべきであることを私は指摘していきたいと思っております。
次に、有害物を取り扱う事業場などは、規模が小さくても労働者の健康管理体制の充実が必要だと思うのですが、全産業一律ではなく、産業や事業場の業務内容によって差を設けてもいいのではないでしょうか。いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615289X00519960411/30
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031・松原亘子
○政府委員(松原亘子君) 専属の産業医、産業医は五十人以上の事業場に選任することが義務づけられておりますけれども、特に規模の大きい事業場につきましては、専属で産業医を選任するということがまた求められているわけでございます。
その範囲につきましては、現行法上、一般の事業場では常時千人以上使用する事業場が選任義務があるということになっておりますけれども、今先生が指摘されました有害業務に従事する労働者がいるような事業場でございますが、これにつきましては、一定の有害業務に従事する労働者を常時五百人以上使用する事業場についても専属で選任する義務というのがあるわけでございます。そういうことから、一般の事業場と有害物を取り扱う事業場とは扱いを若干異にしているというのが現行法上の扱いでもそうなっているわけでございます。
いずれにしましても、産業医の選任義務のある事業場をどうするかということについては、これから中央労働基準審議会の検討の中で検討されていきますけれども、その場合には、有害物を取り扱う事業場とそれ以外の事業場を同じように扱うのか、それともそういう点に着目して産業医の選任義務の範囲といいますか、規模といいますか、そういったことも配慮するか、そういうことも含めて検討をお願いしたいというふうに思っておるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615289X00519960411/31
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032・武田節子
○武田節子君 それでは、次に産業医の選任資格についてどのような基準をお考えになっているのですか、お伺いしたいと思いますけれども、通常産業医を選任する場合、いかなる方法で企業は選任しているのか。医師会あるいは労働基準監督署はその選任に対して種々アドバイスはされていると思いますけれども、いかがでございましょうか、お伺いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615289X00519960411/32
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033・松原亘子
○政府委員(松原亘子君) 産業医の選任基準といいますか、一つは資格のようなことがあろうかと思いますけれども、現行法では、産業医は、「医師のうちから産業医を選任し、」ということだけが書いてございまして、特段の基準とか資格とかそういったことは規定をされておらないんですけれども、これからの職場の健康確保を図る上での産業医の役割というのは極めて重要だというふうに私ども考えまして、今回の改正におきましては、「産業医は、労働者の健康管理等を行うのに必要な医学に関する知識について労働省令で定める要件を備えた者でなければならない。」ということに、新たな規定をこういうことで置きたいというふうに考えているわけでございます。
具体的には、労働大臣の定める産業医学に関する講習を修了した方、労働衛生コンサルタント試験に合格した方、大学などにおいて産業医学を教えている教授や助教授、常勤講師、こういった方々を要件として規定をしたいというふうに考えているところでございます。また一定期間、三年程度を考えておりますけれども、産業医として活動を行ってこられたお医者様は十分に専門的な知識というのをお持ちでいらっしゃいますので、こういう方につきましては、先ほど申し上げましたような講習を修了しているというようなことがなくても、専門的な知識を備えているということで評価をいたしまして、これについては要件を備えた者として取り扱うということにいたしているところでございます。
ところで、では事業主は産業医を選任する場合どういうような方々でやっているかということについてでございますが、直接お医者様にお願いして委嘱をするという、直接お願いするという場合があろうかと思いますが、それ以外にも医師会ですとか健康診断機関などの紹介を通じて委嘱しているというのが多いというふうに聞いております。
なお、地域産業保健センターにおきましても、産業医となることを希望する医師の名簿を作成しまして、企業から求められれば、それに対して情報提供をするというようなこともやっているわけでございまして、今後とも、産業医についての情報提供につきましては十分的確に行っていきたいというふうに考えておるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615289X00519960411/33
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034・武田節子
○武田節子君 ありがとうございます。
女性の職場進出が非常に増加しておりますし、今後もさらに多くなることは論をまたないところでございますけれども、女性の多い職場においては女性の産業医の選任をするようにしたらいかがでしょうか。その方が女性労働者の苦情も親身になって相談に乗ってあげられるのではないでしょうか。また、女性労働者側も相談しやすいと思うのですが、そのような細かい配慮はなされているのでしょうか。女性の産業医は何人ぐらい今選任されているのでしょうか、お伺いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615289X00519960411/34
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035・松原亘子
○政府委員(松原亘子君) 女性の産業医の実態でございますが、ちょっと調査が古いんですけれども、平成三年に産業医学振興財団が実施しました調査によりますと、全産業医の約四%でございます。この調査によりますと、医師全体に占める女性医師の割合は一一・四%でございますから、産業医全体に占める女性産業医の割合はそれに比べても少ないというような実態でございます。
ただ、専属産業医の養成を目的としまして昭和五十三年度に産業医科大学が設置されておりますけれども、多くの卒業生が専属産業医等の業務に従事しております。最近のこの大学の卒業生に占める女性の割合を見てみますと、ごく最近では約二七%になってきております。昭和五十三年に開学した当時は約三%でございましたから、この二十年弱の間でございますけれども、割合が約十倍になってきているということでございます。こういうことから、私どももこれから女性のお医者様が産業医に進出するということは大いに期待されるのではないかというふうに考えているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615289X00519960411/35
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036・武田節子
○武田節子君 最近、新しい実態調査に取り組まれる御計画はあるんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615289X00519960411/36
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037・松原亘子
○政府委員(松原亘子君) 今直ちに具体的な計画があるという状況ではございませんけれども、先ほども申し上げましたように、産業医の選任基準をどうするかということについては、今後の審議会における検討課題ということになっております。
したがいまして、私ども産業医の方々の実態、その活動の状況も含めて一応調査することは必要だろうというふうに考えております。そういうときには、今先生からも御示唆のございました女性産業医の割合などについても調査をしたいというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615289X00519960411/37
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038・武田節子
○武田節子君 ぜひよろしくお願いいたします。
次に、産業医の勧告についてお尋ねいたしますけれども、産業医の勧告について、事業主にはどのように勧告することを考えておられるのでしょうか。例えば、その勧告に効力を持たせるとすれば、意見を含めた勧告を行う際に、文書で書式をつくり、勧告内容とともに事業主の対応を記入させ、それを数年間は保存させることにしてはどうでしょうか。行政機関が監督する際にそれを確認することにより事実確認をし、勧告が尊重されているかどうかが判断できるものと思いますが、いかがでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615289X00519960411/38
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039・松原亘子
○政府委員(松原亘子君) 今回の法改正におきまして、産業医が必要な勧告ができるという規定を置いたわけでございます。
それで、どのようなことについて勧告をするかということでございますけれども、法律上は「労働者の健康を確保するため必要があると認めるときは、事業者に対し、労働者の健康管理等について必要な勧告をすることができる。」、こういうことになっているわけでございます。
産業医の方々に私どもが期待しておりますのは、産業医学に関する知見に基づきまして労働者の健康状況を十分把握するだけではなく、作業環境等を含めて職場環境も十分把握をしていただき、それら両方を勘案して事業主に対して必要な勧告を医学的な知見をもとにしていただくということを期待しているものでございます。
また、今回の改正法案におきましては、事業者は、産業医からの勧告を受けたときは「これを尊重しなければならない。」、こういう規定を置いておりまして、産業医の勧告を事業主が十分尊重するということ、これについては法改正後、十分事業主に対して周知啓発を図りたいと考えておりますけれども、尊重義務をかけているわけでございます。
いずれにしましても、勧告の内容の実施については、実施をどうするかということは事業主責任ということで行われるわけでございます。事業主が企業経営上の問題、また場合によりましては個々の労働者の実態なども、労働者の意見なども場合によっては聞くこともあろうかと思いますが、さまざま総合的に判断いたしまして最終的にどういうふうにするかということは、事業主責任において対処してもらうことになるわけでございます。なお、勧告の保存の方法、文書でやるかどうかといったようなことについてのお尋ねでございますけれども、この勧告をどういうような形でやるか、またその保存をどうするかということは、基本的には当該事業場にゆだねられるものであり、適切なる方法で行われるというふうに私どもは期待をいたしておりますけれども、特に勧告内容を明確にしておく必要があることですとか、長期的に健康管理上の取り組みを行うような事項について行われる勧告、こういったものについては文書によって行われることは望ましいわけでございますので、こういったことも含めまして、十分事業主に対する必要性についての周知啓発を図っていきたいというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615289X00519960411/39
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040・武田節子
○武田節子君 事業主の責任においてとり行うことになっているんですけれども、悪質な事業主に対して、事業主が第十三条に基づいて勧告を受け入れない場合、産業医は労働基準監督署長に直接申し出て、申し出を受けた労働基準監督署長は適切な処置を講ずるようにしなければならないとの事項を第十三条の第五項に追加をしたらいかがでしょうか。御意見を伺わせていただきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615289X00519960411/40
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041・松原亘子
○政府委員(松原亘子君) 今申し上げましたように、今回の法改正におきましては産業医が必要な勧告をするということと、その勧告については事業主が尊重しなければならないということを法律上明記いたしたわけでございます。
具体的に勧告された事項を、どういうふうに企業の中で実施していくかということについては、事業者責任においてやってもらうということが必要だというふうに考えておりますのと、勧告という性格上、例えば労働基準監督署長がその履行の確保を図るということまではちょっとバランスを欠く手段であるというふうに考えております。あくまでもこの勧告の趣旨、勧告を守らなければいけないということについて事業主の十分なる理解を得るということを私どもやりたいと思っておりますし、また産業医の方々の調査などをやりますと、産業医活動で何が問題かということについては、事業主だけではなく労働者の理解がまだ十分でないといったようなことを指摘する産業医の方々もいらっしゃるわけでございます。
そういうことから、産業医活動に関する事業主、労働者双方の理解を深める必要があるんではないかというふうにも考えておりまして、この改正法の施行を契機に、改めて産業医活動についての労使の理解を得るように私どもとしても努力をいたしたいと考えているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615289X00519960411/41
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042・武田節子
○武田節子君 産業医の勧告が、事業場における健康確保体制の整備や労働者の健康管理の充実に寄与するためには、産業医と事業主の関係が円滑にいくようにしていかなければならないと思います。もちろん、衛生管理者など衛生スタッフと産業医の連携も必要であると思います。それぞれの事業場における産業医や衛生スタッフの役割、事業主との関係もさまざまであろうかと思いますが、産業医活動を活発化させる面からも好事例を紹介したり目覚ましい効果を上げた事業場を表彰するなど、あるべき産業医活動、事業場における健康確保対策のあり方を指し示す努力をしてはいかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615289X00519960411/42
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043・松原亘子
○政府委員(松原亘子君) 御指摘のように、いい取り組みをした事業場の例を他の事業場に紹介するということは極めて重要なことだというふうに思っております。多くの事業場で、どういうふうにやっていけばいいかわからないというふうに考えているところもあるわけでございまして、そういう優良な事業場の活動を紹介することによって事業場全般にわたって産業保健活動が活発になるということは、我が国全体の労働衛生水準の向上に非常に効果的であるというふうに考えております。
関係団体とも連携をしながら、優良事業場の活動内容を紹介するということはこれまでもやってまいりましたし、また労働衛生面で優秀な事業場や顕著な活動をされた個人の方を表彰する制度も設けているところでございます。
今後とも、御指摘の趣旨を踏まえまして、特に産業医活動が活発に行われている事例ですとか、衛生管理活動が活発に行われている事例、そういったものの収集を図りまして、多くの事業場がそれを参考として事業場内の産業保健活動に一層活発に取り組んでいただけるように、私どもとしても情報提供等に努めたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615289X00519960411/43
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044・武田節子
○武田節子君 好事例を指し示すのは賛成なんですけれども、私は表彰なんというのは余り好まないんですけれども、表彰されなきややらないような体制では困るのですが、まず手始めにそういうことから活発化することは大事だろうと思いますので、よろしくお願いいたします。
次に、産業医の権限の付与についてですけれども、過去の工場医制度のとき、また医師の衛生管理者は、設備、作業方法、衛生状態について有害のおそれがあるときは必要な措置を講ずることができるようになっておりました。また、現行衛生管理者にはできるようになっております。しかし、産業医について、設備について外されているのはなぜでしょうか。設備と作業方法は一体の関係であって、当然設備が要因となって健康障害をもたらすこともあり得るのではないでしょうか。設備についても産業医がチェックすべきだと思いますけれども、これが外された理由は何なのでしょうか、お尋ねいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615289X00519960411/44
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045・松原亘子
○政府委員(松原亘子君) 衛生管理者の職務というのが労働安全衛生法の第十二条に規定されておりますけれども、これは、事業者は、衛生管理者に労働者の健康障害を防止するための措置のうち衛生に係る技術的事項を管理させなければならないというふうに規定されているわけでございます。すなわち、衛生管理者は、事業場の衛生管理について設備の改善を初めとする具体的な事項を管理することを職務とするものでございまして、これは企業が事業活動を行うに当たり、作業に従事する労働者の健康に配慮しつつ設備等の設置、運転、保守を継続的に行う必要があることから、衛生管理者にその職務を行わせるということとしたものでございます。
他方、産業医につきましては、労働安全衛生法第十三条におきまして労働者の健康管理等の職務を行う者というふうに規定をされております。産業医は、労働者の健康障害を防止するための措置を産業医学の専門家の立場から包括的に管理することを職務としているものでございます。なお、労働安全衛生規則第十四条第二項でございますが、これによりまして産業医は衛生管理者に対して指導、助言を行うことができるということになっているわけでございます。つまり産業医と衛生管理者をつなぐ規定があるわけでございます。
したがいまして、衛生管理者がその職務を遂行するに当たりましては、医学的観点から適正な対策が講じられるように、産業医は衛生管理者に対して必要な助言、指導を行うという先ほど申し上げたような規定があるわけでございますので、衛生管理者が行う設備の改善を初めとする具体的な事項につきましても産業医の意見が反映されるという、そういう仕組みになっているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615289X00519960411/45
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046・武田節子
○武田節子君 では、次に過労死の防止について質問をさせていただきます。
過労死問題について、その原因を検討しながら質問を進めていきたいと思いますが、過労死の予防については中央労働基準審議会労働災害防止部会報告でも労働者の健康確保対策や長時間労働の排除等の総合的な対策が必要であるとされております。
過労死の問題が発生したのはきのうきようのことではございませんで、労働省としても何らかの予防対策を講じていることと思いますが、具体的な対策について御説明をいただきたいと思います。また、過労死の問題点を見出そうとすれば、長時間労働の実態、労働者が在籍した事業場の健康管理体制の実情など、その原因を追求するための統計資料等のこの二点について現状と対策をまとめたものがおありでしょうか。もしなければぜひ調べていただけないでしょうか、お願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615289X00519960411/46
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047・松原亘子
○政府委員(松原亘子君) 過労死の、まず労災の認定でございますけれども、昨年の二月とことしの一月に認定基準を改正いたしまして、これに基づく適正な運営に努めているところでございますけれども、昨年の二月一日から年末までの間に業務上と認定された過労死事案が、業務上と認定された事案についての事業場で、事業場規模をちょっとケーススタディー的に調べてみたのでございますけれども、事業場規模が明らかなところが六十二件ございましたが、このうち労働者数五十人以上の事業場が二十二、逆に言いましたら労働者数五十人未満の事業場が四十ということでございますが、このうち実際に産業医の選任報告がなされていたのは十三事業場でございます。二十二の事業場が選任しなければいけないことになっているのに報告があったのが十三ということで、選任していたけれども報告していなかったのか、選任がなされていなかったのか、この私どもがケーススタディー的に調べたものだけからはわからないのでございますけれども、過労死の多くは産業医の選任義務のない事業場ですとか、選任義務があっても、報告が出てきていないということは選任されていない可能性が高いとも言えるわけでございまして、そういった事業場で発生しているというような実態もございます。
なお、今後の予防対策でございますが、ついせんだって私も受け取ったところなんでございますけれども、平成六年度から中央労働災害防止協会に委託をいたしまして、職場におけるこれからの健康管理、脳血管疾患、虚血性心疾患等の予防を中心としてという、こういうテーマについて検討をお願いいたしておったのでございますが、その結果報告書ができ上がってまいりました。
非常に大部のものなんですけれども、そこにはいわゆる過労死と言われております脳血管疾患や虚血性心疾患、こういったものを中心といたしまして、その概要がどういうものなのかとか、リスクファクターは何であるのかとか、職場における健康管理というのはどういうふうになければいけないのかといったような総論に加えまして、高血圧、動脈硬化、糖尿病、虚血性心疾患、脳血管疾患、ストレスという六つの作業関連疾患につきまして、その疾患の病態ですとか、その疾患に特徴的な危険因子、予防方法、治療方法等の概要を解説していただいている、こういう内容になっております。
非常に分厚いもので、それを直ちにすべての方に読んでいただくのは難しいものですから、もう少しわかりやすくマニュアル化といいますか、エッセンスを抽出いたしましたマニュアルをつくりまして、本当に個々の労働者、特に中高年の労働者の方々に十分読んでいただけるように、そして過労死の予防というのは、もちろん企業の中での健康管理がいかに行われるか、労働時間管理がいかに行われるかということが極めて重要ではありますけれども、あわせて労働者個々人がみずからの健康状況を知り、どういうような管理が必要かということも知っていただかなければいけないということがあるものですから、予防対策としては、今申し上げたような研究報告をもとにした労使向けの冊子をつくる、そしてそれに基づく労使の健康管理、意識についての啓発をするといったようなこともやっていきたいというふうに考えているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615289X00519960411/47
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048・武田節子
○武田節子君 ありがとうございます。よろしくお願いいたします。
次に、過労死へ至る段階で幾つか歯どめとなるものがあろうかと思います。まず、長時間労働の排除ですが、所定労働時間は制度としても年々短縮されているのはわかりますけれども、問題は時間外労働でありまして、特にサービス残業などといった目に見えない時間外労働であります。このような長時間労働につながる要因を取り除くには、一つには時間外労働の現状の正確な実態把握、二つには時間外労働の上限時間について、目安時間といった行政指導的なものではなく、法律による規制などの方法により、常軌を逸した長時間労働が生じることのないよう、必要に応じて規制を強化する方向で事業場における時間管理及び行政指導の内容を検討するなど考えられますけれども、労働省としてはどのような対策を講じられておりますか。大臣にお答えを願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615289X00519960411/48
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049・永井孝信
○国務大臣(永井孝信君) 今、先生が御指摘になりましたように、過労死をなくしていくためには、問題になっておりますような過重な労働時間というものは何としても排除していかにゃいかぬという認識に立っているわけであります。
本来、この時間外労働というのは、臨時のときあるいは緊急のとき、そういうときに限って行われるべきものだと思うわけでありますが、これを恒常的なものにしがちな傾向がございますから、これについて労働省としては、関係の機関に対し、あるいは関係の業界に対しましても指導なりあるいは協力の要請をしてきているところであります。
他方、この時間外労働というのは景気変動に対する雇用調整機能を有していることもこれまた事実でありまして、雇用の安定に一定の機能を果たしてきているという一面はこれまた認めざるを得ないわけであります。したがって、ある程度の弾力性を付与する必要がありますために、その上限時間を法律で定めるということは極めて困難な面がございますが、労使協定の定めるところによってその過重な労働時間をなくするようにということにゆだねているわけであります。
このため、労働省といたしましては、時間外労働協定に基づく時間外労働の上限について指針を告示して時間外労働協定の適正化を図りますとともに、所定外労働削減要綱というものをつくりまして、これによりまして労使の所定外労働の削減に向けての取り組みを促進してきたところであります。
現在、ちなみに一年間を通しましての時間外労働の上限は、一応指針におきましては三百六十時間と定めているわけであります。この三百六十時間にする過程におきましては、経営者団体、事業主あるいは労働組合などにも大変な御協力をいただきまして、かなりの年数をかけて、当時たしか四百八十時間程度だったと思うんでありますが、それを三百六十時間にまで上限時間を抑えるという努力をしてきたところであります。したがって、これからもその趣旨を踏まえて労使間で積極的に、この上限時間の事実上の短縮ができますようにその努力を期待しておきたいと思うわけであります。
なお、先日も当委員会におきまして御報告を申し上げたところでありますが、日経連に対しまして今週の月曜日でありましたが、適正な労働時間管理を行うこと等について文書でもって要請をしたところであります。これについて日経連の側も、積極的にその趣旨を理解して周知徹底を図っていきたいという御回答をいただいているわけでありますが、それだけでは済みませんので地方の労働基準局などに対しまして、遺憾なきように対処するように特に指示をいたしたところであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615289X00519960411/49
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050・武田節子
○武田節子君 平成八年三月二十八日に東京地方裁判所で、大手広告代理店電通の入社二年目の社員が平成三年八月に自殺した事案について、常軌を逸した長時間労働が自殺の原因、会社側は社員の健康に配慮する義務を尽くしていなかったと会社側の責任を全面的に認め、約一億二千万円の賠償責任を認めたという判決がありました。なお、会社側は目下控訴中でありますけれども、判決では上司は長時間労働や異常な言動を知りながら単に社員に注意したりするだけで、改善のための具体的対策をとらなかった、また労働者の勤務状況報告表が実態を反映しておらず、さまざまな制度は実質的に機能していなかったなどの内容が見られます。
このような判決内容を見ても、過労死が個人の問題としてだけでなく、事業場全体あるいは職場、部、課単位の問題として取り組む必要性が感じられます。それには管理者が社員の労働時間管理を徹底するとともに、産業医や衛生スタッフなどの的確な助言を得ることにより健康管理を行うなど、組織的な対応を図る必要があると思いますけれども、いかがでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615289X00519960411/50
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051・松原亘子
○政府委員(松原亘子君) 御指摘のように、過労死の予防を初めといたしまして労働者の健康確保を図るためには、産業医とか衛生管理者などの産業保健スタッフがまずもって的確に職務を行うということが必要であるわけでございますけれども、それとともに人事、労務管理部門やその個々の労働者を管理する立場にある管理者、そういった人々との有機的な連携を持ちながら、事業場全体として取り組むことが必要であるというふうに考えているところでございます。
今回、高齢化の進展や過労死の予防の必要性が増大する中で産業医の役割が増大することから、その専門性の確保を図るということなどを内容とする法改正をお願いしているわけでございますけれども、産業保健スタッフと人事、労務管理部門ですとか、個々の労働者の管理者との連携をどういうふうに持ってもらうかといったようなことについては、今後十分私ども検討いたしたいというふうに思います。
事業場の中には、産業医の方、衛生管理者の方、それから保健指導に当たる、今回も新たにこの法律の中に保健婦さん、保健士さんたちが保健指導に当たってもらうというような規定も置きましたけれども、そういう方々そして人事部門、労務管理部門、そういった方々とが十分に連携してもらうということによって初めて事業場全体における労働者の健康確保対策が講じられるというふうに考えているところでございますので、法改正が行われましたら、私ども、こういった産業保健スタッフがどう連携をとりながら目的を達成していただくかということについて、専門家の御意見もいただきながら十分検討したいというふうに考えております。
また、労働時間の管理につきましても、労働者の過度の蓄積疲労につながるような長時間労働をなくすことは極めて重要なことでございます。安易な労働時間管理を見直すこと等を盛り込みました所定外労働削減要綱というのを平成三年八月に策定いたしておりますが、この要綱に基づきこれまでも所定外労働時間削減に向けての取り組みを図ってまいりましたが、先ほど大臣からも申されましたけれども、今週の月曜日、過重な長時間労働による過労死はあってはならないものであるという観点から、日経連に対しまして、労働時間が過重なものとならないよう所定外労働の削減を図ること等について傘下企業への周知徹底を改めて要請したところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615289X00519960411/51
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052・武田節子
○武田節子君 電通の過労死事件のような、どちらかといえば労働者のメンタルヘルスに関する問題については事業所の関心も十分なものとは言えず、労働者のプライバシー保護といった面からもその相談体制の整備が急務であると考えられますけれども、メンタルヘルス対策の充実についてはどのような方針で臨むのか、お伺いしたいと思います。
また、過労死を発生させた事業場については、向こう一年間くらい、労働条件、安全衛生管理体制などについて監督の密度を濃くすべきだと考えますが、いかがでしょうか。この二点についてお尋ねいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615289X00519960411/52
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053・松原亘子
○政府委員(松原亘子君) 最近、労働者の健康状況についての調査などを見ますと、仕事に対する不満とかストレスを感じる労働者が非常にふえているというような実態もございまして、私ども、メンタルヘルス対策に取り組むことは極めて重要なことだというふうに考えております。
ただ、この問題は審議会の中でもいろいろ御議論いただいたわけでございますけれども、労働者のプライバシーにかかわるような問題もあって、対応が非常に難しい面があるというような議論もございました。また、その審議会に出ておられたある使用者代表の方の御意見では、その企業では企業の中にメンタルヘルスに対応するための相談員といいますかそういう方を置いておられて、それが非常にうまく機能しているというお話がございましたけれども、また一方では、企業の中でそういうメンタルヘルスの相談をするのは非常にしにくいというような意見もあったりしたところでございます。もちろん、やりやすいところで、企業の中でメンタルヘルスに対応するような相談窓口を設けていただくこと、非常にこれは望ましいことだというふうに考えておりますけれども、すべての企業にそこまで期待することも難しい。また、労働者も企業の中の人には相談しにくいということもあろうかと思います。
そういうことから、地域産業保健センター、これまでずっと整備してきておりますけれども、平成八年度からこの地域産業保健センターの中にメンタルヘルスの相談に対応できるような相談窓口を設置するということにしたいというふうに考えております。そこでは、保健婦さんですとかメンタルヘルスについての専門的な知識をお持ちの方、そういった方にお願いをいたしまして、主として労働者になろうかと思いますけれども、労働者の方々の相談に当たるという体制を整えたいというふうに考えているところでございます。
後段の御質問でございますが、過労死を発生させた事業場についての監督の問題でございます。
労働基準監督機関におきましては、従来から、各事業場における労働基準法など関係法令の遵守状況等を踏まえ、必要な監督指導を計画的に実施してきているところでございます。特に、過重な長時間労働が行われている等の情報がある事業場につきましては重点的に監督指導を実施しているところであり、法違反が認められれば当然のことながら厳正に対処しているところでございます。さらに、今月八日には、昨今のこういった状況を踏まえまして、所定外労働の削減と適正な労働時間管理の実施について日経連に要請を行いますとともに、都道府県労働基準局長に対しましても、これらの点については監督指導を行う際に徹底を図るように指示したところでございます。
今後とも、御指摘の点も踏まえまして、必要に応じ密度の濃い監督指導を実施し、労働条件、安全衛生管理体制の確保に努めるようにしたいというふうに考えているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615289X00519960411/53
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054・武田節子
○武田節子君 このように、健康管理体制の状況、労働時間の実態、労働者の現場の状況等の現実をありのままとらえることなく、労働衛生管理体制の充実や職場における労働者の健康管理の充実を図ったとしても根本的な問題の解決にはならず、机上の空論で終わってしまう危険性もございます。すべての労働者が職業生涯を通じて健康で安心して働くことができるという言葉は理想であってはならないと思います。
大臣、一つ一つの問題を解決し、この言葉どおりに実現されるという御決意をお伺いさせていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615289X00519960411/54
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055・永井孝信
○国務大臣(永井孝信君) 高齢化の著しい進展に伴いまして、成人病を有する労働者が増加していること、あるいは今の産業の実態からいいましてストレスを感じる労働者が著しく増加していること、これはもう覆うべくもない事実だと思うのであります。したがって、これに適切に対応するとともに、この過労死の予防対策を総合的に早急に推進することが必要だという認識を強く持っております。
今回のこの改正は、このような労働者の健康状況をめぐる動向を踏まえながら、産業保健の専門家や労使などの関係者の幅広い意見に基づきまして、労働者の総合的な健康確保対策を推進するという趣旨に立っていると思っているわけであります。したがって、労働省といたしましては今回のこの法律の改正によりまして新しくできましたこの法の円滑な施行を図りますとともに、所要の施策の充実強化を図ることによって、すべての労働者が職業生活の全期間を通じて、健康で安心して働くことができるような最大限の努力をしてまいりたいと思います。
しかし、この関係につきましては、事業主、労働者あるいはいろいろ御指摘いただきました健康管理に携わる産業医の皆さん、すべてが一体となってその認識を一つに絞って、共同の認識として、共通の認識として持ってもらって対応してもらうことによって初めてその目的を果たすことができるわけでありますから、そのための御協力をいただくためのいろんな情報提供、啓蒙活動、これらについても労働省挙げて取り組んでまいりたいと、このように決意をいたしているところであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615289X00519960411/55
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056・武田節子
○武田節子君 最後にもう一点、労働大臣に御所見を伺って終わりたいと思います。
私は、議員に当選させていただく直前まで小規模企業で働く中高年女性の労働問題に取り組んできたわけでございますけれども、こうした運動を通していつも思ってきましたことは、小規模企業で働く労働者はいつも法の網の目にもかからない、頭の上をかすめていくというような状況の中でいつも泣き寝入りというか、置き去りにされてきている状態が余りにも多うございました。
しかし、これから直面する超高齢化社会という厳しい時代を迎えるに当たっては、殊さらに現役時代の健康に関しては、憲法に定められておりますように平等の原則にのっとって、小規模事業所で働く労働者の労働衛生管理体制の充実及び職場における労働者の健康管理の充実強化は大変重要であると思っております。
前回の労働委員会で、他党の先生の質問に御答弁なすった大臣のすばらしい人生観を伺いました。御苦労なさった人生の中から大臣は、常に人の喜びは我が喜びという人生観を話されましたが、私はそれを非常に深い感銘を受けて伺ったわけでございます。もう一つ私の方からお願いしたいのは、人の喜びは我が喜びと同時にもう一つ、人の苦しみは我が苦しみというふうにとらえてくださいまして、ぜひとも御慈愛深い労働大臣の人生観を労働行政に反映される、そしてさきの御決意が一日も早く実現されますようにお願いを申し上げ、このことに対して大臣の御感想、御所見を伺わせていただいて、私の質問を終わりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615289X00519960411/56
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057・永井孝信
○国務大臣(永井孝信君) 先生から非常によい御指摘をいただきました。
労働行政を進める上で、当然のことでありますが、大企業で働く者も中小零細企業で働く者も、すべてこの法のもとにおいて平等でありますから、法に定めるところがあまねく享受できるようにすることが行政の重要な任務だと私は思っています。
とりわけ、御指摘のありましたように、小規模事業所においては例えば労働組合も存在をしない。あるいは今の産業医の問題ではありませんけれども、法律によって産業医の設置が義務づけられるところ、あるいはそうでなくて努力義務になるところ、いろんな状況の違いがありまして、対応が違ってまいります。それだけに、法の定めるところから除外されることがあってはならない、この視点に立って労働省の出先の機関も含めてきめ細かい対応をしてまいりたいと考えているわけであります。
なかなか実態的に人手の不足、労働省自身が人手不足でありますから、かゆいところに手が届くところまで細かくできることが果たして可能かという問題はありますが、なせる、なさねばならぬというつもりで全力を傾注してまいりたいと思っているわけであります。
なお、先日の人生訓について非常にお褒めをいただきまして、ありがとうございます。つけ加えて言いますと、私は小さいときに、年齢の若いときに陸軍に入ったりして苦労もしたのでありますが、私自身が小学校のときに父親を亡くしまして、母の手一つで育てられたわけであります。したがって、今で言うアルバイトというものは小学校五年生、六年生のときから私は経験をしてきたわけであります、家計を支えるために。いえば貧乏のどん底からはい上がってきたと思っています。それだけに、そういう苦労をする人たちの生活を守っていくために、あるいは権利を守っていくために何でもやろうというつもりでやってまいりました。だから、人の喜びは我が喜びと、こう言ったんでありますが、それを裏返せば人の苦しみは我が苦しみだと、こう思っています。
先生の御指摘にありましたように、人の苦しみも常に自分のものとして受けとめて考えてみる、そういう視点に立って労働行政、力不足でありますが、これからも全力を尽くしますので、ぜひひとつ御支援をいただきますようにお願いを申し上げたいと思います。
ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615289X00519960411/57
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058・武田節子
○武田節子君 大変ありがとうございました。
これで終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615289X00519960411/58
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059・吉川春子
○吉川春子君 産業医の制度について、労働省は何段階にも分けて研究会を持ち、検討を重ねてきたわけですが、この研究会の報告を見ましても、最近は過労死の問題とか、あるいは女子労働者の増加、あるいは特にOA化によるホワイトカラーの健康阻害の要因がふえているとか、さまざまな指摘をされているわけですが、まず大臣にこの産業医制度の基本的な問題についてお考えを伺いたいんですけれども、この産業医制度というものが労働者の健康維持にとってどれくらい重要な役割を果たすものと認識されておられるのか、その点についてまず伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615289X00519960411/59
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060・永井孝信
○国務大臣(永井孝信君) 労働者の健康診断の実施、あるいは労働者の健康障害の原因の調査、そしてまた再発防止、そのための対策の充実など、事業場における労働者の健康管理を効果的に行うためには産業医の皆さんの役割は極めて重いものだと思っています。
したがって、医学に関する専門的な知識を有した医師が、その専門的な知識に基づいて事業者や衛生管理者などに対して積極的に労働者の健康管理に関して指導していただく、あるいは助言を行っていただく、そういう産業医活動が不可欠であるというふうに認識をしているわけであります。
また、事業者は、一定規模以上の事業場に、医師のうちから産業医を選任して労働者の健康管理等を行わせることとしているわけでありますが、それは五十人以上という規模になっているわけでありますが、五十人以下のところでも、最前からいろいろ質疑がありましたように、努力義務ということを課しているわけでありまして、できるだけ働く人の命を守る、健康を守る、またそのことがひいては事業の発展にも資するところが大きい、こういう認識に立って積極的な対応を事業主の皆さんにも求めていきたい、こう考えておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615289X00519960411/60
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061・吉川春子
○吉川春子君 一般の健康診断の結果、有所見率がここ四、五年で急上昇しています。中小企業では時短もおくれていますし、とりわけそういうところで働く方々の健康が心配ですけれども、企業別に見た有所見率はどうなっていますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615289X00519960411/61
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062・松原亘子
○政府委員(松原亘子君) 定期健康診断における有所見率の推移でございますけれども、まず全体について御紹介させていただきますと、平成二年には二三・六%の労働者について有所見でございました。これが平成四年には三二・二%、平成六年には三四・六%というふうに上昇をいたしてきております。
ところで、規模別でございますけれども、たまたま五十人未満と五十人以上ということで分けた資料で申し上げさせていただきますと、五十人未満の事業場につきましては、平成四年が三六・八%でございましたけれども、平成六年には四二・一%というふうに五・三ポイント上がっております。一方、五十人以上の規模におきましては、平成四年の三一・九%が平成六年には三四・二%というふうに二・三ポイントの上昇と、こういうような有所見率の状況でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615289X00519960411/62
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063・吉川春子
○吉川春子君 今の数字でも明らかなように、事業規模が小さいほどやはり有所見率が高いということになっております。そして、先ほど論議もありましたけれども、五十人以上の事業所に産業医の選任が義務づけられていますけれども、労働者の六割は五十人未満の事業所で働いておりまして、しかも、その産業医の選任率が八割程度であると、こういうことから産業医のサービスを受ける労働者は全体の三二%、三分の一に満たない数なんですね。
産業医制度を拡大していくためには、選任基準を拡大していくということが求められているわけです。産業保健のあり方検討委員会では、この規模についてどういう方向を出されていますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615289X00519960411/63
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064・松原亘子
○政府委員(松原亘子君) 平成七年に出されましたこれからの産業保健のあり方に関する検討委員会報告によりますと、現在、産業医の選任義務のない労働者数五十人未満の事業場にあっても、すべての労働者に対して産業保健サービスを提供するために、まず第一に、三十人以上の事業場にあっては事業場単位で産業医を選任すること。三十人未満の事業場にあっては幾つかの方法を示しまして、そのうちのいずれかを選択というふうに書いてございまして、その幾つかの方法といいますのは、一つは三十人以上の事業場と同様に事業場単位で産業医を選任するということ、二番目が複数の事業場が共同で産業医を選任するということ、三つ目は地域産業保健センターを活用するということ、この三つのうちいずれかを選択するということ、こういったことについて十分考慮すべきであるというふうに提言をされております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615289X00519960411/64
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065・吉川春子
○吉川春子君 三十人以上の事業場について、事業場単位で産業医を選任するということを十分に考慮すべきだというふうに九五年四月の検討委員会でされているわけですが、日本医師会におきまして、ことしの一月、産業保健委員会の答申を発表いたしました。
そこでは、産業医制度改革の方策として小規模事業場についてどのように述べているか、御存じでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615289X00519960411/65
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066・松原亘子
○政府委員(松原亘子君) 日本医師会の産業保健委員会がことしの一月に出された報告書がございますけれども、そこで、「地域における小規模事業場を対象にした産業保健サービスのあり方」という一項がございまして、そこの中に、小規模事業場における産業医活動のあり方が示されております。
ここでは、「さしあたって産業医の数と事業場側の受け入れ態勢等を考慮すると、従業員数が三十人以上と未満とに分けて方策を考える必要があろう。」というふうに言われております。その上、「三十人以上の事業場の場合には、それぞれの事業場が産業医を選任すべきで、原則として現行の五十人以上の産業医活動に準じた業務が提供される体制を整備すべきである。」というふうに書かれているわけでございます。
その場合、つまり産業医の選任を義務づける事業場がより小さな規模になるわけでございますが、その場合、「高度の、かつ画一的な産業医活動がいずれの事業場でも行われることを期待することは難しいとも考えられるので、事業場の規模に応じた法定の最低業務の内容を再検討する必要がある。たとえば、職場巡視の頻度を画一的に月一回と決めるだけではなく、業種や有害業務の有無等の実態に合わせて、産業医が自ら決められる部分をも含めた、弾力的な制度にすることを検討する必要があろう。」ということ。
さらに、「また、地域産業保健センターに登録することにより、集団として産業保健サービスが受けられる体制づくりを積極的に推進する必要がある。小規模事業場の多様性を考慮して、事業場側が自主的に選択して産業保健サービスの受け方を決めることが望ましい。」、こういうふうに書かれておりまして、加えて、「三十人未満の事業場に対しては、実態に即した産業医選任方式を検討する必要がある。まず、選任の形をとる場合は、地域や業種、資本系列等に応じて、複数の事業場が共同で産業保健サービスを提供する体制を整備することが考えられる。」というようなことが書かれております。
先ほど御説明いたしました産業保健のあり方に関する検討委員会で出された提言とほぼ同じように、五十人というのをさらに下げて三十人以上と三十人未満というふうに分けて整理をされているというふうに承知をしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615289X00519960411/66
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067・吉川春子
○吉川春子君 つまり、医師会はまず現行の産業医選任基準を三十人以上という事業場まで引き下げるべきだというふうにして、そして医師会はこれに対応できるということも述べられているわけなんです。
こういうふうに、三十人以上の事業場にするべきだということが専門家の集団でも医師会でも述べられているんですけれども、今回は五十人以上というところに労働省が固執しているというか、そういう態度をとっているわけなんです。この理由なんですけれども、審議会の中で企業側の強い反対があったのでしょうか。審議会のどういう議論の結果こういうふうになったのか、法律がこのままになっているのか、その点について大臣、私は審議会の議論を国民に公表していただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615289X00519960411/67
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068・松原亘子
○政府委員(松原亘子君) 今回、産業医の選任基準につきましては五十人のままというふうになっているわけでございますけれども、これにつきましては、先生が最初に御指摘されました産業保健のあり方に関する検討委員会報告というものも審議会の場に検討の素材として提供されました。これも十分参考にしながら議論が進められたわけでございます。
ただ、その議論の過程で、特に産業医の選任が義務づけられている事業場の中でも五十人以上百人未満の事業場の実態を見ますと、これは平成二年の調査ではございますが、法律上義務づけられているんですけれども、産業医が選任されているのが実は八割弱というような状況にあるということ、それからまた実際にこういった規模では、形式的には産業医を選任しているけれども実際の活動は十分に行われていないといったようなこともございました。また、産業医の方々についての意見を調べた調査によりましても、まだ産業医活動についての労使の認識が十分でないといったようなことが活動をやることの阻害要因になっているというような指摘もございました。
そういうことから、現時点において直ちに産業医の選任基準を引き下げるということによる施策の充実ということよりはむしろ五十人以上、特に百人未満の事業場ですけれども、こういったところについて産業医活動を活発にさせるということがまず必要なのではないかといったこと。それから、そうは言いましても五十人未満のところは、じゃ現行法どおり何も触れないということでもいけないということから、新たに五十人未満の事業場につきましても、労働者の健康管理を行うのに必要な医学の知識を備えた方について健康管理を行わせるように努めなければならないという努力義務規定を置き、かつそういった企業の努力を側面から支援するための国の援助規定も置くといったようなことをやったわけでございます。
審議会の場では、もちろん一方で三十人に引き下げるべきだという議論がございましたけれども、先ほど申し上げたように、現行でもまだ不活発な実態がある、そこで産業医を置くことが具体的に労働者の健康にとって役に立っているといったような実績も積み上げないと、なかなか小さな規模まで強制することについてのコンセンサスは得られがたいのではないか、こういう意見などもございまして、最終的には審議会の段階では地域産業保健センターの整備ですとか、産業医の共同選任、中小企業は共同して選任する、そういったことを奨励し、それを国が援助するといったような、そういったことをこれからさまざま工夫して、小規模事業場における産業保健サービスの提供の状況を少し見た上で、引き続き選任対象事業場の範囲について検討することは必要だというふうにされたわけでございます。
これにつきましても、審議会で、じゃ検討するのはいつごろから検討するのかということになるわけですけれども、極めて重要な問題でありますことから、今回の改正法案を成立させていたださましたら、施行までの準備はございますが、それが終わりまして施行になりましてから産業医の活動の実態がどうなっているかといったようなことも十分調査した上で、引き続き審議会で審議をしていただくということになっているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615289X00519960411/68
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069・吉川春子
○吉川春子君 三十人未満の小規模事業場についても実態に即した産業医選任方式を検討する必要がある、まず選任の形をとる場合は、地域や業種、資本系列等に応じて複数の事業場が共同で産業保健サービスを提供する体制を整備するということなどが医師会の意見としても指摘されております。この複数の事業場の共同でという問題について、労働省としても早急に対策をとるべきではないかと思いますが、ちょっと時間の関係で、端的にお答えいただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615289X00519960411/69
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070・松原亘子
○政府委員(松原亘子君) 一地域に集まった中小企業がそこで共同して産業医の方を選任する共同選任方式、それから資本系列でも親企業と下請とまとめて共同で選任するということは、ある意味では産業保健サービスの提供のあり方として非常に好ましいあり方だというふうに考えております。
そういうことから、私どもはこういったやり方を特に中小企業に対してはお勧めをしていきたいというふうに思っておりますし、また、もちろんこれには経費がかかるという面がございますので、これをどうやったら経費的にも援助できるかということを来年度の予算措置を検討する中で検討したいというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615289X00519960411/70
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071・吉川春子
○吉川春子君 それから、勧告権とか身分保障の問題について伺いますけれども、産業医の勧告権が今度省令から法律に引き上げられた、これは改善なんですが、事業者は勧告を尊重しなければならないという規定も加わったんだけれども、この勧告の効果を担保するにはどうすればいいか、こういう問題があります。
現行では、勧告をしたとしても、事業者以外の者はどんな形で勧告されたのかが見えないわけですし、勧告に従わないという場合もあり得るわけです。なかなか産業医が勧告を行ったことがない理由の一つに、勧告しても事業者が従わない、こういうことがあるわけですけれども、勧告に従わない事業者についてどういうことをするか、勧告権をどう担保していくか、これはいかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615289X00519960411/71
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072・松原亘子
○政府委員(松原亘子君) 今回、産業医が勧告することができるという規定を新たに法律に置きましたが、あわせまして事業者はこの勧告を受けたときはこれを尊重しなければならないという尊重義務、遵守義務の規定を設けたわけでございます。したがいまして、まずはこういったことについて十分事業場に対する周知を図っていかなければいけないというふうに考えております。
ただ、実際に産業医が勧告をした場合、勧告は非常にいろいろなことが入ってこようかと思いますけれども、それは最終的には事業主の責任において事業場の経営の実態、作業のあり方、またそこに働く労働者の方々の意思というのもあろうかと思います。そういったことを総合的に判断いたしまして、事業主の責任において措置するということになってくるというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615289X00519960411/72
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073・吉川春子
○吉川春子君 勧告に従わなくて、そしていろいろな労災とか職業病などが起きた場合、これは事業者の責任をどうとっていくのか。これもなかなか難しい問題ですけれども、私は、例えば労災認定がしやすくなるとかあるいは損害賠償の認定に加算されるとか、何らかのそういう効果を与えないと勧告権の意味がなくなると思いますけれども、その点はどうでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615289X00519960411/73
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074・松原亘子
○政府委員(松原亘子君) 今おっしゃった点は、安全衛生法の体系の中に規定していくということは非常に難しいことがあろうかと思いますけれども、産業医の勧告に従わなかったことが直接の原因となって何か災害が起きるとか労働者に疾病が発生するといったようなことが、相当因果関係を持ってそういうことが起こるということがあった場合、事業主に対する安全配慮義務違反といいますか、そういったことは十分あり得るかと思いますけれども、それを安全衛生法の体系の中でやるというのはなかなか難しいのではないかと思います。
つまり、産業医の勧告というのはやはり勧告でございますので、それに対してそれを担保する方法、通常、勧告についてそれを担保する方法というのは、やはりそれを受けた側が守るか守らないかということでございますので、やはり産業医として守ってもらわなければ困るんだということであれば、それをいかに熱意を込めて説明し事業主を説得するかということでございましょうし、事業主にとっても、そのようなことが起こるということがわかるものをそのままやらないということは余り考えられないわけです。つまり、労働者というのは事業主にとっても人材なわけですから、明らかに危険があると言われているのに、それを放置するということは通常の人間だと余り考えられないのではないかというふうには思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615289X00519960411/74
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075・吉川春子
○吉川春子君 考えられないようなことがしばしば起こるものですから、そういう勧告権、それからそれに従わない事業主に対してそれなりの効果をあらしめる方法を考えていかなくてはならないと思います。
産業医の地位の独立性ということについてお伺いしたいんですけれども、産業医が熱心に仕事をするということはその事業者にとって耳の痛いことを大変言われる、こういう場合もあるわけで、解雇あるいは不利益扱い、こういうおそれも強いわけですけれども、ドイツやフランスの立法例では、そういうことから産業医を守るためにいろいろな手続が講じられているわけなんです。
今回の我が労働安全衛生法の改正では、産業医の勧告に対して不利益扱いをしてはならないという法律の明文規定、これは建議にあるにもかかわらず法案では欠落しているわけです。これを、産業医の地位の独立性というものをどうやって守っていくとお考えですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615289X00519960411/75
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076・松原亘子
○政府委員(松原亘子君) 産業医が勧告をしたということを理由として、事業主が産業医を解任するといったような不利益な取り扱いがあるなんということはあってはならないというのは当然のことだというふうに思います。ただ、産業医というのは事業主にとってもある意味では利益になることを言ってもらえるというふうに期待をされるものでございますので、一般的にはその合理的な範囲内において産業医が勧告をしたという場合に、それをもって産業医を解任するというようなことは考えられないわけでございます。
現に、私ども、これまで産業医の方が勧告するなり事業場内で活動するということはあったわけでございますけれども、それによって解任された、不利益な取り扱いをされたといったようなことをちょっと把握もしておらない、また裁判でもそういったことが問題になったというふうにも特段聞いておらないところでございます。そういったこともございまして、法律上不利益取り扱いの禁止といったようなことまでは必要ないというふうに判断したものでございます。
もちろん、産業医が勧告を行ったことを理由として不利益に取り扱われるというふうなことが起こってはいけない、また産業医の方がそういったような不安を持たれるということも望ましいことではありませんので、私どもとしては法施行に当たりまして、産業医の勧告を理由として不利益な取り扱いが行われることのないように何らかの形で事業主に対して指導をするというようなことは十分考えたいと思っているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615289X00519960411/76
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077・吉川春子
○吉川春子君 今まで不利益な事例が具体的にないからこれをやらなかったと、これはちょっとおかしいことであって、産業医の活動がもっともっと活発になり労働者の立場に立っていろいろ物を言うことになれば、それは当然事業主にとって耳が痛いわけです。
だから、それを雇用するという形で抱える制度がいいか悪いかという検討は別にあるでしょうけれども、大臣、この不利益扱いの禁止と産業医の地位の独立性ということについては十分配慮していただきたい、そういう検討をしていただきたいと思いますが、いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615289X00519960411/77
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078・永井孝信
○国務大臣(永井孝信君) 今御指摘の問題でありますが、産業医が本来の任務を全うするためには、今先生が御指摘のように極めて独立性の高いものでなければならぬという認識は私ども持っております。したがって、産業医が勧告したことに対して不利益な取り扱いをしないように省令等できちっと整理をいたしてまいりますけれども、その省令に基づいて事業主などに対してその趣旨の徹底を図っていきたい、こう考えているわけであります。
したがって、労働省の基本的なスタンスとして、そういう産業医の活動に対して不利益な扱いをさせないという強い決意で当たってまいることだけはここできっちりと申し上げておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615289X00519960411/78
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079・吉川春子
○吉川春子君 時間が制約されておりまして、何か慌ただしいんでございますが、最後に非常に重要な質問をいたします。
これはプライバシーの保護の問題なんですけれども、現行では企業外の健診機関で健康診断を行う場合には、その結果は通常一括して事業者に送付されて事業者を経て産業医に転送される、こういう仕組みになっておりまして、労働者の健康状態はすべて事業者に筒抜けになっているわけなんです。これは外国では考えられないことでして、ドイツ、フランスではプライバシー保護のための法制をとっておりまして、ドイツでは使用者が労働者の健康情報を入手できるのは労働者本人または第三者の身体、生命の危険防止に必要な場合、労働者本人が情報提供に同意した場合に限定されているわけです。あり方検討委員会でも、必要な事項を必要なものに限って知らせるべきだ、その場合本人の同意も最低限必要だということが提案されています。
これは、今後の検討課題だと思うんですけれども、大臣、労働者のプライバシーを保護するということを、立法措置を早急に研究する必要があるんじゃないかと、これいかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615289X00519960411/79
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080・永井孝信
○国務大臣(永井孝信君) 今御指摘されましたように、労働者の健康情報に関するプライバシーの保護という観点については非常に重要であるということが中央労働基準審議会の建議においても指摘されております。
労働安全衛生法では、健康診断の実施の実務に従事した者については、その実施について知り得た労働者の心身の欠陥その他の秘密を漏らしてはならないということが明確にうたわれているわけでありまして、罰則をもって規制しているわけであります。また、刑法におきましても、医師や助産婦等の医療関係従事者についても同様の規定が設けられております。しかしながら、これ以外の労働者の健康情報にかかわるプライバシーの保護をどのように図っていくかということについては、現段階ではなかなか社会的に十分な合意がなされていないことも片方で事実として存在をしているわけであります。
このため、今先生が御指摘になりましたように、法律学者等も加えた検討の場を設けて、その場で十分に御議論をいただいた上で、その結果に基づいて労働者のプライバシーの保護について一定の方向を示したい、こう考えておりまして、先生の御提言は十分に受けとめて対応してまいります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615289X00519960411/80
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081・足立良平
○委員長(足立良平君) 本案に対する午前の質疑はこの程度にとどめ、午後零時五十五分まで休憩いたします。
午前十一時四十九分休憩
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午後零時五十八分開会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615289X00519960411/81
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082・足立良平
○委員長(足立良平君) ただいまから労働委員会を再開いたします。
休憩前に引き続き、労働安全衛生法の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を行います。
質疑のある方は順次御発言願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615289X00519960411/82
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083・笹野貞子
○笹野貞子君 大臣がお食事する暇もないというのは本当に申しわけないというふうに思いますので、易しい質問からまいりたいと思います。
午前中の質疑を聞いておりまして、私は口が悪いものですから時々皆さんからおしかりを受けるんですけれども、労働省の法案というのはないよりもあった方がましというのが多いなどという悪口を言うんですが、私はこの法案は本当になければ困る法案で、とてもいい法案で、その中身の充実は別といたしまして、大変私はこの法案を見て胸が躍るような感じがいたしました。
そういうことを踏まえまして、私はフランスとドイツの論文をちょっと読んで調べさせていただきました。そこで、私は、フランスとドイツというのは随分進んでいる面もあり、特にフランスはすばらしい制度を持っているなというふうに思っているんですが、大臣、個人的にフランスと日本の法律を比べましてどのような御感想をお持ちになるか、ちょっと総論としてお聞きいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615289X00519960411/83
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084・永井孝信
○国務大臣(永井孝信君) 確かフランスとドイツにこの産業医制度が確立しておりまして、余り他の国には見られないことでございますが、両国とも個別の事業所ごとにまたは共同して産業医を活用した職場における健康管理ということを非常に重視して取り組んでいらっしゃるわけでありまして、その面で専門的な教育も十分行われているというふうに認識をしているわけであります。非常にすばらしいことでございまして、我が国におきましてもそういう他国のすばらしいところはどんどん取り入れていくという立場に立ってこれからも対応してまいりたいと、こう思っているわけであります。
したがって、この産業医の専門的な知識を活用した職場の健康管理、こういうものもフランスやドイツに負けないように進めていきたい。この立場からも今回の産業医制度の改正を手がけたというふうにひとつ御理解をしていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615289X00519960411/84
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085・笹野貞子
○笹野貞子君 大臣の御熱意に大変敬意を表しますけれども、午前中の審議を聞いておりますと、どうも五十人以上とか三十人とか、そういう従業員の規模のことが随分問題になっておりました。
私は、先ほど大臣から大臣の大きくなる過程において大変胸がじんとなるようなお話を聞きまして、こういう五十人以上とか三十人とかいう数によって人間の健康が運がよかったり運が悪かったり、つまり五十人以上の企業に勤めた人は、これは非常にいい条件で、運がいいと言うんでしょうか。じゃ、五十人以下の人は運が悪かったねと言うんでしょうか。
フランスには、産業別、地域別に産業医局というものをつくって、従業員の数とか自分が勤めている職場の規模に関係なしに医局というものをつくって、すべてあまねくそういう健康管理をしているという制度があるんです。
先ほどの質問の内容で、日本は五十人以上は義務として五十人以下は努力義務ということですけれども、これはどうなんでしょう、大臣、やっぱり五十人以下の人はこれは企業にお金もないししょうがないから、お金のある方を先にとか、五十人以上の企業に勤めたんだからあなたは運がいいねというふうにとったらいいんでしょうか。女性はできるだけ有名会社に勤めたいということで、いろいろ今雇用問題になっているんですけれども。
私に言わせると、五十人以下のそういう比較的条件の悪い人の方を先に何らかの対応をする方が、労働行政としては血の通った労働行政じゃないかなと思うんですけれども、どうでしょう。どういうふうに考えたらいいんでしょうか。五十人以下の人は運が悪かったねということにするんでしょうか。やっぱりお金があるところへ行った方がいいよということなんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615289X00519960411/85
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086・永井孝信
○国務大臣(永井孝信君) 先生の御指摘のように、たとえ五人であっても十人であっても労働者を雇い入れている事業所については、労働者の健康管理の面からいきますと、本当はきちっとしたものがあった方が一番いいに決まっているわけです。しかし、それが理想に終わってはならぬと思うんでありますけれども、そのために地域にそういうセンターをつくって規模の小さいところについては活用していただくとか、あるいは目的を果たすように努力をしていくとかいうことをしているわけであります。
五十人以下が運が悪かったとかいう問題ではなくて、できるだけ従業員の少ないところでも、努力義務ではありますけれども、そういう産業医を選定するように今度の法改正の中に盛り込んでいるわけでありまして、経費の関係も、事業主の負担もあるでしょうけれども、しかしそれ以上に、医師会の方が言っておりますように、医師会の方ではそういう産業医の指定にこたえられるような能力は持っていると言われているわけでありますが、指定を求めていく事業主の側に結果的になかなかその指定をすることができないという状況もあることが審議会の経過でもわかっているわけであります。
したがって、できるだけ少ないところでもそういう取り組みをしてもらうように、片方で努力義務を課して、我々も御協力をお願いしてまいりますけれども、どうしてもそこがいかないときは、事業主の方でセンターを利用してもらうなり、あるいはよく知り合っている知識を持った医師の方に協力を求めてもらうなり、そういう面も含めて全体的に得した損したことが起きてこないように努力していきたい、こう思っているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615289X00519960411/86
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087・笹野貞子
○笹野貞子君 私は、勤めている人数によって健康の管理に優遇されたり優遇されてないという差別的な問題が起こってはいけないというふうに思います。そういう意味では、できるだけ五十人以下のそういうところの勤労者に対してどうするかという、視点を変えた行政を大いにしていただきたいというふうに思っております。
先ほど局長が、次の予算のときにはできるだけそういうことをしたいということを、意識的に言ったのかぼろっと言ったのかはわかりませんが、次のときの概算要求にはそういう五十人以下の人にもというふうにお聞きをしたんですけれども、フランスの地域別あるいは産業別、そういう産業医局制度というのを、これから導入なさるつもりがあるかどうかをちょっとお聞きしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615289X00519960411/87
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088・松原亘子
○政府委員(松原亘子君) フランスの産業医局制度というのが、実際にはだれの経費で賄われており、具体的な活動がどうかというところまで私ども十分承知をしておらないので、これから考えておりますことがこれと同じなのか違うことなのかというのは一概に言えないところがあるのでございますけれども、私どもが来年度に向けまして五十人未満の事業場に働く労働者のための産業保健サービスの提供という観点について言えば、一つは地域産業保健センターの充実ということでございます。
地域産業保健センターは、今年度予算が成立いたせば全国で二百四十四カ所設置されるということになります。最終的に私ども労働基準監督署ごとには一つこの地域産業保健センターがあるという形にいたしたいと思っておりまして、そうしますと、残りが百三カ所ということになってまいります。したがって、この百三カ所につきましては、最終的にこれがそのまま認められるかどうかということは別でございますけれども、平成九年度予算においてまず百三カ所の地域産業保健センター未設置地域への設置ということを要求いたしたいということが第一点でございます。
それからもう一つは、地域産業保健センターというのは、ここに産業医の方、産業医になりたいという方の名簿を置いておき、事業主の方が相談に行けば、そこで名簿をもらえて産業医になっていただくかどうかということを個別に相談できるということなんですが、そういうことではなくて、例えば工場団地とか事業協同組合、中小企業の集団が、集団で産業医の方を共同で選任をする。中小企業ですから、そんなに大きくない企業であります。
したがって、一人の方が一事業場である必要はないわけですので、幾つか固まった事業場を一人の産業医の方が診るということでも十分産業保健活動はできるわけでございますので、いわばそういった産業医の共同選任、こういったものもPRをしたいと思いますし、それにはもちろん何がしかの経費がかかるわけでございますので、中小企業のそういう産業保健活動について共同選任をどういうふうに助成できるか、それほど時間はございませんですけれどもこれから検討をいたし、来年度の予算要求には何がしかの助成措置というものを要求いたしたいというふうに考えているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615289X00519960411/88
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089・笹野貞子
○笹野貞子君 私は、先ほど午前中の質問にもありましたように、一番この制度が必要なのはやっぱり五十人以下のところの従業員だというふうに思います。
そういう意味では、フランスの産業医局制度というのは非常によくできているというふうに思いますので、どうぞこれを御検討の上、憲法の二十五条ではまさにあまねく国民は健康で文化的な生活を保障しなければならないわけですから、健康じゃなければ勤労はあり得ないんで、勤労以前の問題として、働くためには健康な労働者ということを念頭に置いて、ひとつ御検討いただきたいというふうに思っております。
続きまして、産業医を選任する方法あるいは産業医という資格はどうなるかという問題なんですが、どうもこれで見ると、私はちょっと不勉強で余りよく理解をしていないんですけれども、どうすれば産業医としての資格がとれるのか。これは、フランスやドイツでは非常に厳格になっておりまして、特にフランスは六年間医学の勉強をやって、そして四年間産業医としての研修を積んで、十年のキャリアを持った人が産業医となっているということですが、それは後ほど労働省の方にお聞きします。
文部省の方に先にちょっとお聞きしたいんですが、先ほど、私は口が悪いんで、ないよりあったほうがましだなんて言ったんですけれども、この法案は実に私はいい法改正だと思っております。そして、労働省はそういう意味で、勤労者の健康を守るためにこの産業医制度というのがあるわけですが、私も長いこと医科大学に教えに行っておりまして、医者の大学というのは実に文部省が口うるさくあれこれと規制をいたしまして、まあ文部省というところは規制をすることによってのみあるところなのかなという気がしますが、やはりカリキュラムの中にこの産業医になるための選択のコースを設けて、どちらにでも行けるという、そういうカリキュラムの乗り入れをするということはいかがなものでしょうか。ちょっとその点をお聞きいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615289X00519960411/89
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090・寺脇研
○説明員(寺脇研君) 従来の我が国の医学教育と申しますのは、産業医というようなものもまだ十分世の中に出ておりませんでしたし、一般的に医者を育てるという考え方で進めておりましたので、医学教育におきましては専門分化という考え方よりも基礎的にゼネラルな医学教育をしていくということが中心でございました。したがいまして、こういったことにつきましても公衆衛生学とか衛生学といったような講義の中でやっていくというにとどまっておったわけでございます。
しかしながら、今後はこういう今回の法律の改正にもございますように、産業医というものの役割が非常に大きくなってまいります。また、それ以外にも医師の仕事というものが専門分化していく傾向というのがさまざまな面で考えられてまいると存じます。そういった時代の要請に応じた医学教育というものを現在考え直すべきときに来ておるというふうに認識をいたしております。
文部省では、平成三年の七月に大学設置基準を改正いたしまして、大学の授業内容についていわゆる規制を緩和いたしまして、各大学の創意工夫によってさまざまなコースをつくったり、また特別な内容を特に重点的に履修をするということもできるように制度を改めてまいっておるところでございますが、今後は労働省とも十分御相談をさせていただきまして、そういった仕事の需要、そういったものを十分勘案いたしまして、御相談のもとに積極的に各大学が創意工夫を凝らしてそういった対応ができますように促してまいりたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615289X00519960411/90
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091・笹野貞子
○笹野貞子君 文部省、大変ありがとうございました。
フランスでは産業医が足りなくて非常に困っている。これは非常にいい制度なので、産業医がもう引っ張りだこで絶対数が足りなくて困るという、多分日本も今にそういう現象が起きてくるというふうに思いますので、文部省もひとつ労働省のこういういい制度を認識した上で、どうぞ柔軟なカリキュラムをつくっていただけるようにお願い申し上げます。
それで大臣、今のお話ですけれども、どうぞ産業医の育成には文部省とタイアップして、どんどん産業医の育成をしていただきたいというふうに思っております。本当はいろいろ大臣にお聞きしたいんですけれども、時間がありませんので次へ行きたいと思います。
次は、やっぱりこれ何といっても産業医と事業主、あるいは主治医と意見が違ってくるということが往々にして起きてくるというふうに思うんです。フランスの制度を見ますと産業医が非常に力を持っておりまして、主治医と産業医の意見が対立した場合にはもちろん産業医の方が優先する。あるいは事業主と意見が対立したときには、そこに正式な仲裁機関が入って産業医の意見をきちっと聞くという制度になっているんですが、日本の場合には先ほどの午前中の質問の中でこの点が非常にあいまいになっていると思いますので、今後こういう問題が起きたときのフランスの制度をどのようにお考えになるのか、ちょっとお聞きしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615289X00519960411/91
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092・松原亘子
○政府委員(松原亘子君) 先生御指摘のように、フランスでは産業医が勧告をした場合には事業主はそれを守らなければいけない、こういうことになっているわけでございまして、産業医の勧告と使用者の意図とが対立するといいますか、そういった場合にはその裁定は労働監督官にゆだねられるということになっているわけでございます。
今回、私どもが提出させていただいておりますのは、産業医の勧告権、これまで省令レベルではございましたけれども、なかなかそれでは弱いということから法律まで引き上げるということ、それから事業主に対して初めてその産業医の勧告を守るべきであるという規定を置くことにいたしたわけでございます。そういうことから、ある意味では産業医の勧告、そして事業主がそれに沿った形での労働者の健康確保のための措置をとるということについては、まだ第一歩を踏み出したところだというふうに言わざるを得ない点もあるわけでございます。
ただ、一方では産業医の勧告というのが、これからいろいろ事例が積み重なってくることにより、産業医の勧告とはこういうものだということを労使ともだんだん認識してくるというのはあろうかと思いますけれども、ある意味では個々の労働者について個別の勧告をする場合もありましょうし、そうではなく企業の作業条件ですとか、そういったことについて勧告する場合もあろうかと思います。それぞれによりまして企業が直ちにやれることと、それから個々の労働者についての産業医の意見でありますと、労働者の意思を無視してやれるのかどうかといったような問題もあろうかと思います。
そういうことから、一気にこの勧告権の担保、強力な担保という御主張もあるわけでございますけれども、先ほど申し上げましたように、こういった制度をきちんとするといいますか、したといいますか、まず第一歩でございますので、これの施行によってどういうふうに産業医が活動できるのか、またもし場合によってはできにくいのか、そういったことを施行状況も踏まえまして十分今後のことは検討したいというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615289X00519960411/92
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093・笹野貞子
○笹野貞子君 私は、フランスの制度を見たときここに一番興味を持ちまして、やっぱり労働者にとってもある種の言われたら困ることもあるし、あるいは事業主にとっても勧告されると非常に都合の悪いこともありますし、また主治医と全然違う意見があったりするという、こういうトラブルというのは必ず起きると思うんですね。こういう非常にその人間の勤労あるいは職場と、そして自分の人生と、そして自分の健康というものの重大な問題をゆだねている人に対しては、そのトラブルが起きたときの処理方法というのはとても重大だというふうに思うんですね。
どうもこの改正されるのを見ると、日本独特の玉虫色でやっちゃうという、何か和をもってとうとしとする、和を期待しているんです。こういうときは日本独特のこういう玉虫色にするよりも、きちっとこの点は規定しておいた方が後々、まあトラブルが起きるかどうか見てみるわという、そういうことで髪をつかみ合ってけんかしてから、
じゃ考えようかということよりも、私はこういう重大なことはきちっとした方がいいというふうに思いますが、大臣のお考えはどうでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615289X00519960411/93
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094・永井孝信
○国務大臣(永井孝信君) 先生御指摘のように、例えばこの勧告権に対する事業者の対応ということについて、今も政府委員から答弁いたしましたけれども、対立するときは労働監督官にその裁定がゆだねられているとか、あるいは身分の関係について言いますと、フランスでは企業委員会の承認が必要であると、その身分を剥奪したりなんかするときは。あるいは、それでも問題が生じたときは地方労働雇用局長の裁定によって決められるということを規定づけられているわけです。ドイツの場合も同じようでございまして、経営協議会との共同決定事項でこれが担保されているわけでありますが、日本ではなかなかそうなっていないという御指摘であります。
言われましたように、法律できちっとそこまで規定することが一番望ましいかもしれませんけれども、とりあえず今までと違ったスタンスで踏み出したという経緯もございますから、とにもかくにも事業主に自発的に協力をしてもらうところは協力をしてもらう、そしてその産業医の重要性というものについては労使双方が認識をきちっと統一して、同じ土俵に立って労働者の健康確保を推進してもらう、こういうことが極めて大事ではないかなと、こう思っているわけであります。
したがって、この勧告権と身分保障という問題については、省令等でそのことを担保するための規定を設けることにしておりますが、その省令を的確に実行できるように全力を尽くして、先生の御心配のような問題が起きないような形でいきたい。それでもなお問題が起きてきたとをにはどうするかということについては、今政府委員が答弁しましたように、その実態に即して対応することも検討してまいりたいと、このように思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615289X00519960411/94
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095・笹野貞子
○笹野貞子君 大臣を早く予算に戻さなきゃいけないと気が焦るものですから、協力してもうやめなきゃいけないんですけれども、最後に一つ、この今の勧告権の問題に私は興味を持ったものですら執拗に聞くんですが、ドイツはもめたときにはできるだけ自主的な解決方法を進めている、フランスはこういう勧告権のときに、トラブルが起きたときは、今言ったように監督官が入って調停するという違った二つの側面を持っているんですが、どちらを日本方はとろうと、もしとるとすると、どちらをおとりになるおつもりでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615289X00519960411/95
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096・永井孝信
○国務大臣(永井孝信君) これは非常に難しい質問でございますけれども、あえて言うなら円満な労使関係、そして円満な行政指導に基づく対応ということを考えました場合に、関西弁で言いますとぎくしゃくさせないということから考えますと、どちらがいいかというと、どちらもいい面それぞれございますので、両方ミックスしたようなことも考えながら対応せざるを得ないんじゃないかと、こう思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615289X00519960411/96
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097・笹野貞子
○笹野貞子君 終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615289X00519960411/97
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098・末広まきこ
○末広真樹子君 今回の労安法は、世間で注目を集めております過労死の問題が大きなテーマとなっております。
私も国会の中では無所属、個人商店でございまして、これはもうどこがきついかと申しますと代替要員のないことなんですね。例えば、今国会で五法案を労働委員会で質疑するとなりますと、すべて代替要員なしで引き受けて、今国会九十三法案の内容検討もすべて一人で勉強しなければならない。地元調査も自分でやります。その上、議員として当然与えられるべき宿舎すら与えられていないんです、いまだに。どうぞ御認識ください。個人商店とか零細事業主というのはおおむねこういう立場だと思うんですよ。私も過労死を人ごととは思えません、宿舎なくやっているんですから。ですから、とりわけ個人商店主や零細事業主のお気持ちを酌んで質疑させていただきたいと思います。
まず、産業医についてですが、今回の法改正の出発点となりましたのは、昨年四月発表のこれからの産業保健のあり方に関する検討委員会報告でした。その報告では、五十人以上の規模の事業場において設置義務のあった産業医や衛生委員会を三十人以上の規模に改めるよう述べられていました。ところが、これを受けた中央労働基準審議会の建議では、三十人以上まで拡大すべきとの意見と現状のままでよいとする意見があって、結論を得るに至らなかった。引き続き産業医の選任対象事業場の範囲については検討することが適当であるとなっております。引き続き検討となった理由は、産業医設置に伴う経済的理由よりは、産業医の機能が十分に活用されていないからというふうに聞いております。
そこで質問ですが、現在の産業医の活動実績をどうとらえているのか、また産業医が十分に活躍できていないのが本当とするとなぜそうなのか、その原因、理由を明らかにしていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615289X00519960411/98
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099・松原亘子
○政府委員(松原亘子君) 日本医師会が平成七年に産業医の活動上の問題点の有無というのを調査しておりますが、それによりますと、産業医の活動上問題があるというふうに答えた方が四九%になっております。どういう点が問題かということをさらに追っかけて聞いているわけでございますけれども、それによりますと事業主の理解の不足というのが四四・六%、従業員の理解の不足というのが四三%ということで、非常に高い割合を示しておりまして、産業医の方が置かれている事業場にあってもまだまだ労使、使用者側のみならず労働者自身の理解もまだ進んでいないというような実態もあらわれたわけでございます。
そういう中にあっても、産業医の方々は法律で定められた職務というのを相当やっていただいているわけでございます。その結果、ストレートに結びつくかどうかということは別といたしましても、産業医の方は事業場で健康診断に基づく保健指導ですとか事後措置、こういったものについて担当していらっしゃるわけですけれども、そういう産業医が置かれており、そういう活動をやっている事業場とそうではない事業場と比べますと、労働者の年間の死亡率が有意に低い。その低さ、高さにちゃんと有意差がある。産業医が活動している企業の労働者の死亡率はそうでないところに比べて低い、相当の数見てもそうだというような結果も出てきております。
そういうことから、産業医の方々は、労使の理解が十分でないという悩みも持ちながらも活動をしておられ、健康確保に大きな効果を上げているというふうに考えているところでございます。
なお、五十人以上の企業について今産業医の選任が義務づけられておりますけれども、私どもが調査した結果によりましても百人以上の企業は既に九割五分以上を超えるところで選任されているということで届けが出ておりますが、五十人から百人未満のところについては残念ながら七七%の事業場でしか選任されていないといったような状況もございますので、まだまだ五十人以上といえども中小企業ではまず設置をされていない、設置をされていても十分活動がされていないといったような実態があるということも否定しがたいのではないかというふうにも考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615289X00519960411/99
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100・末広まきこ
○末広真樹子君 平成六年度の労働福祉事業団の調べでは、産業医の年齢は六十歳以上が四五・四%もありまして、産業保健活動に費やされている時間は、一事業場当たりで四時間までというのが、兼任の嘱託医で実に七七・六%、専属の産業医でありましても三九・八%となっております。このような状況では十分な活躍も期待できないのではないでしょうか。
今回の法改正では、こうした状態の改革への道しるべが見えてまいりません。どのような方策をお考えなのでしょうか。本日、特に質問時間が短くなっておりますので、お答えは要領よくお願いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615289X00519960411/100
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101・松原亘子
○政府委員(松原亘子君) 今、先生御指摘になりました産業医の年齢は、確かに高年齢の方が多いという実態にはございますけれども、産業医科大学、これは専属産業医を育成するという目的でつくられたものでございますけれども、産業医科大学の卒業生で専属産業医になる者の割合というのも高まってきております。そういうことから、産業医学の専門的な知識を持った者が専属産業医になっていく割合というのはこれから高まっていくことを私どもは期待しており、またそうなるものというふうに認識をしております。
なお、産業医の方が産業医活動に費やす時間、これはさまざまであろうかと思います。事業所の規模にもよりますし、労働者の数にもよるし、また何をやるかということにもよるものではないかと思います。ただ、今回の私どもの改正におきましては、健康診断の結果に基づく事後措置の実施というのをきちんとやってもらわなければいけないということで法律に書いてございますが、これまでもあったんですけれども、従前の法律では健康診断の結果に基づく事後措置について医師の意見を聞くというところまでは明確になっていなかったわけでございます。そこを今回は、医師または歯科医師の意見を勘案して事業主は事後措置を実施しなければいけないということにしております。
したがって、先生御指摘の労働福祉事業団調査結果ではございますけれども、それはこれまでのやり方に基づく結果だろうと思いますが、新たに例えば先ほど来問題になっております事業主に対する勧告もございますし、勧告をするためには十分事業場を見てもらわなければいけない。今、月一回巡視すればいいということになっておりますけれども、そういう巡視もどの程度濃密にやるかということによっても必要な時間は違ってまいります。勧告権がきちんと書かれたことによって、月一回求められる事業場の巡視についてもかなり濃密にやられることは期待できます。
それから、ちょっとあちこち行って恐縮ですが、健康診断を実施した後の事後措置についてもお医者様の意見を聞くということになっております。これは「医師又は歯科医師の意見を勘案し、」と、こうなっておりますが、必ずしも産業医とは書いてございませんが、通常、産業医が置かれている事業場では当然産業医の意見を聞くということが期待されるわけでございますから、そういう観点からも産業医の活動というのはさらに活発化するということが期待されるわけでございます。
それからもう一つ、新しく今回規定したものといたしましては、健康診断を実施することは事業主に義務づけられておりますけれども、その健康診断の結果について所見があるというふうに判断された、診断された労働者につきましては、医師または歯科医師の意見を聞かなければいけないというふうに新たな規定も設けております。
そういう意味で、労働者の健康を確保する観点からさまざまな場面で医師の意見を聞くということがふえてまいりますので、産業医の活躍する場というのは非常に大きく広がってくるというふうに考えているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615289X00519960411/101
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102・末広まきこ
○末広真樹子君 今回の改正による産業医の権限の強化はわかるんですが、専門性の確保が今どうして必要なのかという点が不明です。
この法案には、産業医は一定の要件を備えた者とされておりますが、その要件の一つである日本医師会認定産業医の講習を受けた医師というのは、既に二万七千八百二十八人もいらっしゃいます。それでは、現産業医の中で一定の要件を持っていない方がどれだけいらっしゃるのか、その数値をお教えいただきたい。その上で専門性確保がどのような改革の効果を上げるのか、お示しください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615289X00519960411/102
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103・松原亘子
○政府委員(松原亘子君) 現在、私ども把握しておりますところによりますと、産業医は約三万三千人というふうに推定をいたしております。
今回の改正法案に定める一定の要件を備える者といたしましては、労働大臣が定める講習を修了した者、日本医師会の認定産業医、労働衛生コンサルタントの資格を持つ者、三年以上産業医として選任された経験を持つ者などを予定しているわけでございます。このうち、先生御指摘されましたように日本医師会の認定産業医、二万八千五百人でございます。認定産業医を除きまして、三年以上程度産業医として選任された経験を持っている方が九千六百人いるというふうに推定されております。このほか、労働衛生コンサルタントの資格を有する方が千六百人というような状況になっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615289X00519960411/103
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104・末広まきこ
○末広真樹子君 今、産業医の中で一定の要件を持っていない方がどれだけいるのかとお聞きしたんです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615289X00519960411/104
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105・松原亘子
○政府委員(松原亘子君) 現在いらっしゃる三万三千人の産業医の方、認定産業医は別といたしまして、その産業医の方々がどれだけ産業医をやっておられたかという数字がちょっと手元にないものですから申し上げにくいのでございますけれども、一定の要件のうち三年以上産業医として選任された経験を有する者というのが入っておりますので、現在いらっしゃる先生方、現在の産業医の方々は多くの方が一定の要件を既に備えておられる方というふうに考えられるのではないかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615289X00519960411/105
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106・末広まきこ
○末広真樹子君 先が急がれますので、先ほど松原局長の方から、日本医師会の調べでは、産業医が抱えております問題点に事業主と従業員の理解の不足を第一に挙げられて、これは認めていらっしゃいました。前回、質問の締めくくりに、おとつい私申し上げましたように、制度があっても対象になっている方や国民にそれが周知されていないという点が最も大きな問題であると。同じように、この産業医制度についてもそれが一番問題であるような気がしてなりません。
次に、地域産業保健センターについてお伺いしてまいります。労働者数五十人未満の産業医の設置義務のない事業者に対して、今回の法案は、一定の要件を備えた医師に労働者の健康管理等を行わせるなどの措置を講ずるよう努力義務を課しております。産業医が設置されている事業場であっても不十分な現状なのに、この努力義務がいわゆる個人商店規模にどれほどの効果が期待されていくんでしょうか、疑問だと思います。
そこで、国は平成五年度より設置している地域産業保健センターを平成九年度までに全国の労働基準監督署のあるところ三百四十七カ所すべてに一カ所ずつ普及させていって、健康相談窓口や事業所訪問などの活動をさせて、その五十人未満の事業場への健康管理等の援助をさせていくというのが、今回の法案の具体的な内容かと思います。
ところが、どうもこの地域産業保健センターの活動というのがわかりません。それで、これまでの実態についてお伺いします。相談窓口の開設日数、相談件数、その内容、片や訪問指導の日数、事業場数、その内容、そして相談と訪問の担当者数及びその職種別人数や年齢別人数についてお教えください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615289X00519960411/106
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107・松原亘子
○政府委員(松原亘子君) 地域産業保健センターの活動状況でございますが、今先生御質問されたことすべてにお答えできるだけの数字をちょっと持ち合わせておらないので恐縮でございますが、まず平成六年度の地域産業保健センターの活動実績は、一センター当たりの平均でございますが、健康相談窓口の開催は、月平均四・二回でございます。そこでの健康相談件数は月平均十一件でございます。訪問指導事業場数は月平均三・二事業場いうふうになっているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615289X00519960411/107
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108・末広まきこ
○末広真樹子君 三分の一ぐらいしか資料がないということですね。先ほど述べましたように、産業医ですら高齢化や稼働時間数の少なさが気になったところでありまして、その点どこまで実効を上げられるのか、ますます懸念される今の数字であったと思うんです。それと、その地域産業保健センターは現在百四十一カ所あるんですが、労働者五十人未満の事業主にどれほど周知されているんでしょうか。
ちなみに、都道府県に一カ所ずつ、現時点で十六カ所整備されております産業保健推進センターというのの周知度、これを調べました。労働福祉事業団の調べでは、労働者五十人未満の事業場の場合は、初めて聞いたという方が六二・五%もありました。問題ですね、悲しいですよね。
それでは、五十人未満の事業者が地域産業保健センターの存在をどれだけ知っているのか、お答えください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615289X00519960411/108
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109・松原亘子
○政府委員(松原亘子君) まことに申しわけないんですけれども、五十人未満の事業場の事業主のうち地域産業保健センターを知っているのはどれだけかというのは私ども調査したものはございませんので、数字的には申し上げられません。
これは、先生もおっしゃいましたように平成五年度から始まったものでございます。そういう意味ではまだまだ全国的に周知が進んでいるというふうには私どもは思っておりませんで、今後なお一層周知のための努力をしなければいけないというふうに考えているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615289X00519960411/109
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110・末広まきこ
○末広真樹子君 周知の努力もさりながらフォローアップも欠けているんじゃないかと指摘しておきたいと思います。一カ所への委託料助成金が五百万円なんですよ、今調べていないとおっしゃっている件に関して。将来は三百五十カ所とお聞きしておりますので、総額十八億円の歳出なんですね。きちんと活用していただきたいと思います。
そして、仮に周知徹底が進んでいったとしても、小規模事業場の事業主にとって、従業員の健康管理について調べに来る小うるさい役所の下請機関やなことられないように気を配りたいと思うんです。それには、地域産業保健センターと事業主とが協力して労働者の健康を守るために努力しようという理解が生まれて初めてセンターの活用が進むものだと思われます。その点について、大臣はいかがお考えでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615289X00519960411/110
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111・永井孝信
○国務大臣(永井孝信君) 産業医制度があろうとなかろうと、本来は人間を人間として尊重する、人間の尊厳性を尊重する場合に、事業主は常にこの労働者の健康状態に配慮することがあって当然だと思うんですね。
だから、一番日本の悪い面で言いますと、法律があるからやむを得ないとか法律に定められた基準以内で何とかクリアできればいいという、そういう視点を持ちがちなところが日本の悪い面かもしれませんけれども 少なくとも事業主は法律があろうとなかろうと健康管理に配慮するということを前提においてこの問題には取り組みをしてほしい、そのような啓蒙活動を労働省としてもやっていきたい、そのことが結果的に先生の御指摘になったことをクリアできるんではないかなと、こう思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615289X00519960411/111
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112・末広まきこ
○末広真樹子君 何せ非常に、十八億という将来的な予算がつくことですから、啓蒙活動にまず、その一割でもつけてもろたらかなりいけるんやないかなと思うんです。次に、健康診断の実施及び通知について伺ってまいります。今回の法案では、健康診断実施後の措置とその活用について幾つもの充実を図る策がとられていると思います。しかしながら、平成四年の労働省の労働者健康状況調査によりますと、健康診断実施事業所の割合は八五・七%、そのうちの労働者の受診率は八八・一%ですから、労働者の実質受診率は七五・一%、つまり四人に一人はまだ受けていないということになります。しかも、この調査は九人以下の事業所は調査対象に入っておりません。ですから、実際の労働者の受診率はもっともっと低くなります。また、一千人以上の大企業の受診率は一〇〇%ですが、三十人から四十九大規模になりますと九三%、十人から二十九人の小規模企業では八二%と、事業規模が小さくなるほど受診率は落ちていって、九人以下になりますと、もう声も小さくなりますが、限りなく落ち込んでいると推察されます。
地元愛知の労働基準局が、ことし一月に発表しました労働法等の違反の疑いがある申告事件は、一年間で一千五百四十四件ございました。そのうち、安全衛生に関する事件が五十五件、この中には職場で健康診断が実施されていないとの訴えが数件既にあると聞いております。健康診断実施上の問題点として、健康診断を受ける時間がとれない、とりにくいという事業所は、同じ労働省調べで百人未満の事業所では半数になっております。しかも、十人から二十九人の事業所では五五・七%が事業所外で実施しているという状況なんです。
ここで問題があるんです。その場合、小規模の事業所では健診の結果が労働者個人に通知されます。たとえそのあて先が事業所になっていても、気付、個人名で来るんですね。そしたら事業所主は開封できませんよね、これは。ですから、事業主がその内容を知らないというケースもあります、知り得ないということですね。これでは事業主が労働者の健康管理等への責任を果たすことができません。また一方、労働安全衛生法第百四条には、「その実施に関して知り得た労働者の心身の欠陥その他の秘密を漏らしてはならない。」と記されております。この規定は十分に守られているんでしょうか、心配です。
そこでお尋ねいたしますが、健康診断の実施後に対する事業主の責務を事業主はどの程度自覚されているんでしょうか。また、健診結果の秘密保持はどの程度守られているんでしょうか。労働者が不利益を受けるような事態は生じていないんでしょうか。この三点に絞ってお答えください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615289X00519960411/112
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113・松原亘子
○政府委員(松原亘子君) 健康診断につきましての事業主の義務、現行法上の義務というのはそれを実施する機会を提供する、こういうことでございます。これにつきましては、相当の企業が実施をいたしている。
ただ、先生おっしゃいましたように、労働者のサイドから見ますと、じゃ一〇〇%受けているのかというと必ずしもそうじゃないというところがございます。ただ、現行法におきましても、労働者が事業主の実施する健康診断ではなく、別の健康診断を受診するから自分はもう使用者のこれは受けない、ただ受けた結果こうであるというふうに示せばそれで受診したことになるというようなこともあるわけでございます。したがいまして、若干数字がずれているところはございますけれども、労働者がみずからでみずから受診するところを探して自分で受けた、こういったところもあるわけでございます。
この健康診断の実施に関しましては、確かにおっしゃいましたように、三十人未満の事業所で、事業所の方から見て実施をしているところがまだ十分にない、一〇〇%にはなっていないという問題がありますから、受診機会の提供、これをまず徹底的にやっていただかなきゃいけないのは当然ですが、労働者自身も、なぜ受けなかったかといったようなことを聞きますと、多忙だったとか、かかりつけの医者がいる他のところで受診したと。ですから、こういったところはその結果を持ってくればいい。ただ、多忙だったとか面倒くさかったとか、病気が見つかるのが怖かったとか、そういったことで受けていない人たちもいるんですね。ですから、労働者にも受けることの必要性を知らせなきゃいけないというふうに思います。
ところで、おっしゃったように事業主は労働者の健康状態を知り得る立場にあるわけです。しかしながら、労働者が知らないままでいいということが、今の法体系では労働者に知らせる義務までは使用者に課していないわけでございます。そうしますと、労働者は、健康診断は受けたけれども自分がどうだったかを知らないままで済まされちゃっているというケースもあります。そこで、健康というのは、使用者ももちろんやってもらわなきゃいけないこともありますけれども、労働者自身が気をつけなければいけないということがあるわけでございますので、まずもってその健康診断の結果を労働者に知らせる義務を課す必要があるんじゃないかということで、今回新たに措置したわけでございます。
私どもの調査によりますと、かなりの企業が既に通知をしておりまして、残り若干のところがこれから通知の義務がかかってくるということでありますけれども、これは労働者にとっての健康管理の基本であろうと思いますので、それはぜひ私どもはやっていきたいというふうに思うわけでございます。
それ以外に、健康診断に基づく事後措置をどうやるかということについては、今でも事業主に義務づけられておりますけれども、なかなかそのシステムがきちっとしていないといいますか、健康診断があってその後お医者様の意見を聞いてというようなことがあればやりやすい面もありますけれども、現行法ではそこが欠落しておりましたので、事後措置についてもどういう事後措置をやつていいかわからないといったようなこともあって十分やられていない面もございます。そういうことから、今回の法改正におきましては、健康診断の結果、有所見者については十分医師の意見を聞き、そして事後措置を実施する場合にもお医者様の意見を聞くというようなことを取り入れたわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615289X00519960411/113
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114・末広まきこ
○末広真樹子君 今、松原局長もいみじくも指摘されておりましたんですけれども、労働者側には、自分にもし疾患が出て、それによって職場を配置転換させられたり、あるいは首対象になることを恐れて極力隠したいという側面もあるということは、これは見落としてはいけないと思うんですね。
時間ですので最後の質問に移りますが、何よりも事業主が労働者の健康管理等を労働者のために行っていけるようにするためには、これもう本当にデリケートな問題ですので、今後どのような配慮が必要とお思いでしょうか、大臣にお伺いして、私の質問を終わらせていただきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615289X00519960411/114
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115・永井孝信
○国務大臣(永井孝信君) 法律で定められたことを最低のものとして、それ以上のものを実施に移していくといいますか、そういうことを事業主にも求めていきたいし、働く側にとってもみずからの健康管理に十分な認識を持ってもらいたい。
ちなみに、私、国会へ出ましてから十七年たちましたが、この間に国会議員の健康診断、いつも案内をもらうんですが、残念ながらまだ一回も受けたことがないんです。反省をいたしております。
したがって、事業主も働く側も健康を守るという立場でこの法律を最低限のものとして活用していただくことと、もっともっと幅広く視野を広げるという、そういう啓蒙活動を労働省としても懸命の努力をしてまいりたい、こう考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615289X00519960411/115
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116・末広まきこ
○末広真樹子君 ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615289X00519960411/116
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117・足立良平
○委員長(足立良平君) 他に御発言もなければ、質疑は終局したものと認めて御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615289X00519960411/117
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118・足立良平
○委員長(足立良平君) 御異議ないと認めます。
それでは、これより討論に入ります。——別に御意見もないようですから、これより直ちに採決に入ります。
労働安全衛生法の一部を改正する法律案に賛成の方の挙手を願います。
〔賛成者挙手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615289X00519960411/118
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119・足立良平
○委員長(足立良平君) 全会一致と認めます。よって、本案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615289X00519960411/119
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120・足立良平
○委員長(足立良平君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615289X00519960411/120
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121・足立良平
○委員長(足立良平君) 次に、労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律等の一部を改正する法律案を議題といたします。
政府から趣旨説明を聴取いたします。永井労働大臣。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615289X00519960411/121
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122・永井孝信
○国務大臣(永井孝信君) ただいま議題となりました労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律等の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由及び内容の概要を御説明申し上げます。
労働者派遣事業制度は、昭和六十一年の労働者派遣法施行以来十年目を迎え、新たな労働力需給調整システムとして着実に定着してまいりました。しかしながら、この間、経済社会情勢の変化等に伴い、労働者派遣事業に対する新たなニーズが生じる一方、我が国経済が長期不況を経験する中で、派遣労働者の保護等の観点から、種々の問題点も指摘されているところであります。
このような状況を背景に、中央職業安定審議会において、一昨年来、労働者派遣事業制度のあり方について御検討いただいてきたところ、昨年末、同審議会より、同制度の改善についての御建議をいただいたところであります。
政府といたしましては、同建議を踏まえ、派遣労働者の適正な就業条件の確保等を図るための措置及び育児休業等取得者の業務について行われる労働者派遣事業の特例措置を講ずること等を内容とする法律案を作成し、関係審議会の全会一致の答申をいただき、ここに提出した次第であります。
次に、この法律案の内容につきまして、概要を御説明申し上げます。
第一に、派遣労働者の就業条件の確保を図るため、労働者派遣契約の解除及び適切な苦情処理に係る措置の充実等を図るとともに、派遣元事業主及び派遣先が講ずべき措置に関する指針を公表することといたしております。
第二に、派遣先における派遣就業の適正化を図るため、派遣先は、適用対象業務以外の業務に派遣就業させてはならないこと等を明確化するとともに、不適正な派遣就業を是正するための勧告、公表等の措置を設けることといたしております。
第三に、手続の簡素化等を図るため、一般労働者派遣事業の許可の更新を受けた場合における許可の有効期間を延長するとともに、事業対象業務の種類を減ずる場合の手続等を簡素化することといたしております。
第四に、育児休業または介護休業取得者の代替要員の円滑な確保を図るため、育児休業等を取得する労働者の業務について行われる労働者派遣事業は、港湾運送業務、建設業務その他政令で定める業務以外の業務について行うことができるものとする特例措置を講ずることといたしております。
なお、この法律は、公布の日から起算して六月を超えない範囲内において政令で定める日から施行することといたしております。
以上、この法律案の提案理由及び内容の概要につきまして御説明申し上げました。
何とぞ、御審議の上、速やかに御可決あらんことをお願い申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615289X00519960411/122
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123・足立良平
○委員長(足立良平君) 以上で趣旨説明の聴取は終わりました。
本案に対する質疑は後日に譲ることとし、本日はこれにて散会いたします。
午後一時五十四分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615289X00519960411/123
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