1. 会議録本文
本文のテキストを表示します。発言の目次から移動することもできます。
-
000・会議録情報
平成九年五月二十日(火曜日)
午前九時四十分開議
出席委員
委員長 佐藤 敬夫君
理事 小野 晋也君 理事 実川 幸夫君
理事 三ッ林弥太郎君 理事 山口 俊一君
理事 斉藤 鉄夫君 理事 田中 慶秋君
理事 佐々木秀典君
石崎 岳君 江渡 聡徳君
河井 克行君 木村 隆秀君
桜田 義孝君 田中 和徳君
棚橋 泰文君 塚原 俊平君
渡辺 具能君 井上 義久君
近江巳記夫君 中西 啓介君
近藤 昭一君 鳩山由紀夫君
春名 直章君 辻元 清美君
堀込 征雄君
出席国務大臣
国 務 大 臣
(科学技術庁長
官) 近岡理一郎君
出席政府委員
科学技術庁長官
官房長 沖村 憲樹君
科学技術庁長官
官房審議官 興 直孝君
科学技術庁研究
開発局長 落合 俊雄君
科学技術庁原子
力局長 加藤 康宏君
科学技術庁原子
力安全局長 池田 要君
委員外の出席者
原子力安全委員
会委員長 都甲 泰正君
外務省総合外交
政策局軍備管理
軍縮課長 篠塚 保君
外務省総合外交
政策局兵器関連
物資等不拡散室
長 西村 篤子君
資源エネルギー
庁公益事業部原
子力発電安全企
画審査課長 吉田 高明君
科学技術委員会
調査室長 吉村 晴光君
―――――――――――――
委員の異動
五月二十日
辞任 補欠選任
木村 隆秀君 棚橋 泰文君
吉井 英勝君 春名 直章君
羽田 孜君 堀込 征雄君
同日
辞任 補欠選任
棚橋 泰文君 木村 隆秀君
春名 直章君 吉井 英勝君
堀込 征雄君 羽田 孜君
―――――――――――――
本日の会議に付した案件
核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関
する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第
八八号)
――――◇―――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114003911X00819970520/0
-
001・佐藤敬夫
○佐藤委員長 これより会議を開きます。
内閣提出、核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。
質疑の申し出がありますので、順次これを許します。小野晋也君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114003911X00819970520/1
-
002・小野晋也
○小野委員 長年の懸案でございました包括的核実験禁止条約、CTBTは、昨年九月十日、国際連合総会において、賛成百五十八、反対三、棄権五で採択を見ました。そして、同二十四日には、条約は署名のために開放をされまして、我が国は、世界唯一の被爆体験国として、また、この包括的核実験禁止条約の推進国の一国として、五大国に次いでの即日署名を行い、そして今、この条約ないしそれに関連する諸法案が、当国会において批准作業が進められ、また法改正が進められているところでございます。
この条約案につきましては、核を保有する国、また保有しない国、また、世界戦略をめぐってのいろいろな思惑の違い等もある中で、いろいろな考え方が錯綜する中で取りまとめられたものでございまして、ここまで推進してこられました皆さん方にまず心より敬意を表したいと思います。また、この法案がここに至るまで、この条約案がここに至るまで、本当に多くの人の祈りが込められたものがあったと思っております。
ここに、広島市長平岡敬氏の著書「希望のヒロシマ」という本を持ってまいったのでございますけれども、戦後五十年を迎えた平和記念式典における広島市長の平和宣言の中にこういう文章がございます。
原子爆弾による広島壊滅の日から五十年が経過した。あの日をしのび、犠牲者の御霊に心から哀悼の意を表するとともに、高齢化が目立つ被爆者の苦難を思い、改めて核兵器の開発と保有は人類に対する罪であることを強く訴える。
この半世紀の間、私たちは原子爆弾がもたらした人間的悲惨、とりわけ放射線被害という人類史上初めての惨禍を広く世界へ知らせ、核兵器の廃絶を一貫して呼びかけてきた。しかし、国家間の不信は根強く、核兵器はなお地球上に大量に蓄積され、私たちの願いに正面から立ちふさがっている。核兵器の保有を国家の力の象徴と考える人達がいる現実に、私たちは深い悲しみを覚える。
原子爆弾は明らかに国際法に違反する非人道的兵器である。どこの国であれ、また、いつの時代であれ、核兵器がある限り、広島・長崎の悲劇が再び地上に現出する。それは人類の存在を否定する許されない行為である。
人類が未来に希望をつなぐためには、今こそ勇気と決断をもって核兵器のない世界の実現に取り組まなければならない。こういう決意を広島市長は披瀝をされて、また、このCTBTの推進に当たってこられたわけでございます。
幾多の方々のこのような願い、祈りが込められてこの条約がここまでに至ったわけでございますから、今後、政府といたしましても、この条約がぜひ発効をするように世界に向かってさらなる運動を推進いただきますように、心より念願を申し上げる次第でございます。
ところで、その発効をめぐっての問題ということになってまいりますと、このCTBTが現実に効力のある形になるためには、現実に核兵器を開発する能力を持っていると評されているインド、パキスタン、北朝鮮等の批准がぜひとも必要ということになっております。
現段階では、これら三国については署名も行われていない状況というふうにお伺いをしているわけでございますが、一九九九年九月までにその署名と批准がなされなければ発効ができないというような項目が入っているこの条約案でございますけれども、今後、外交的にどのような取り組みを行いながらこれらの国々の署名を、また批准を行わせるように働きかけていかれるお考えなのかをお尋ね申し上げたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114003911X00819970520/2
-
003・篠塚保
○篠塚説明員 我が国といたしましては、核兵器のない世界を目指した現実的かつ着実な核軍縮を実現するためには、この条約の早期批准が重要であると考えております。他方、先生御指摘のように、この条約が発効するためには、インド、パキスタンあるいは北朝鮮を含む特定の国々がこの条約を批准することが必要でございます。
我が国といたしましては、これらの国に対し、より多くの国がこの条約を批准することにより核実験禁止に対する国際社会の総意を示していく、また、多数国間のフォーラム等を通じた各国間の信頼醸成を進めていくとともに、二国間対話を含めまして粘り強く批准を呼びかけていくことが重要だと考えております。我が国としては、これまでもこうした努力を行ってきておりますが、今後とも、先生御指摘のように、あらゆる機会をとらえてこの条約の早期発効に向けて努力していく考えでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114003911X00819970520/3
-
004・小野晋也
○小野委員 外務省におかれましては、今御答弁いただきましたとおり、いろいろな方法を通じてこれらの未署名国、未批准国に対して働きかけを強くお願い申し上げたいと思います。
その件に関しまして科学技術庁にお尋ねを申し上げたいと思うわけでございますけれども、科学技術庁の立場からこれらの国々に対する働きかけと申しましても、なかなか困難な点が多かろうかとは思いますけれども、例えばODAを通して、また技術的なさまざまな交流を通して、このCTBTの発効に向けての働きかけをしていただければと考える次第でございますが、今後この問題に関して、何か働きかけに関して考えている点がありましたら、御報告をいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114003911X00819970520/4
-
005・加藤康宏
○加藤(康)政府委員 科学技術庁といたしましては、毎年IAEAの総会というのがございまして、そこに北朝鮮もインドもパキスタンも出てくるわけでございますが、そういうようなIAEAの総会で国際世論に訴える、あるいは二国間の協議でそういうことを促す、そういうようなさまざまな機会をとらえまして、外務省とも十分な連携をとりながら、より多くの国々の署名、批准を働きかけてまいりたいと考える次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114003911X00819970520/5
-
006・小野晋也
○小野委員 次に、このCTBTでありますけれども、究極の目的というのは、核兵器のない世界の実現ということであろうと思います。この点から考えましたときに、今回のこのCTBTの条約案によりますと、核実験を禁止するということではございますけれども、核弾頭の開発研究ですとか、それから核弾頭の製造、それからそれらを配備するというようなものについての制限をこの条約が含んでいるものではないと思います。
日本政府としては、究極のこの核兵器のない世界実現ということをこれからも希求されながらの活動を展開していかれると思いますけれども、これらの核兵器の研究、製造、配備等の問題に対してどのような対応をしていかれるのかをお尋ね申し上げたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114003911X00819970520/6
-
007・篠塚保
○篠塚説明員 先生御指摘のように、CTBTは、核兵器についての製造、配備等を禁止しておりません。また、核兵器を直ちに廃絶することを内容とするものでもございません。核爆発を禁止することにより、核兵器の新規開発を抑制するものでございまして、核兵器のない世界の実現に資する現実的措置として採択されたものでございます。
今後は、CTBTの早期発効に向けて努力することと、それから、いわゆる兵器級の核分裂性物質の生産禁止、いわゆるカットオフ条約交渉を早期に開始することが政府としては重要と考えておりまして、先生今御指摘になられました点につきましては、カットオフ条約成立後の国際社会の核軍縮の取り組みを検討する、そういった中で取り上げられていくべき課題であるかと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114003911X00819970520/7
-
008・小野晋也
○小野委員 この点に関しましても、先ほども申しましたとおり、唯一の被爆体験国として世界に訴えるべき立場にある我が国でございますから、いろいろな場面において核兵器の根絶を目指しての取り組みをお願い申し上げたいと思います。
なお、技術開発の側面から見ました場合には、今回のこのCTBTによります規制というものが、現実の核爆発を起こしてはならない、それに対するいろいろな法的な取り締まりを行っていこうというような条項になっておりますけれども、核爆発を伴わない核兵器開発研究については、一切歯どめがかかる仕組みが取り入れられておりません。
例えば、今でございますと、コンピューターが大変な進歩を見ております中で、コンピューターのシミュレーションプログラムの中において、核爆発がかなりの精度でシミュレーションが可能であるというようなことも報告をされているわけでございますし、またアメリカ等では、現実に核爆発は起こさないけれども、その直前の、臨界直前までの実験というものをこれからも推進していくというようなことが報道をされているわけでございます。
このような実験が許容されるということになりますと、現実の核爆発は行わなくても核兵器は次々と開発がされてくるというような事態になってくるわけでございまして、今後の取り組みとして、このような核爆発を伴わない核実験と申しますか、このようなことについての規制を行っていく考え方をお持ちであるのかどうか。国際社会における問題、それから国内におけるこの種の実験に対する姿勢、この両面についてお尋ねを申し上げたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114003911X00819970520/8
-
009・池田要
○池田政府委員 お答え申し上げます。
我が国は、核兵器を持たないという一貫した政策のもとに原子力の研究開発及び利用を進めてきておるところでございます。したがいまして、核爆発につきましては、どのような形でございましても、政府としてこれを行う考えはございませんし、また我が国国民もこれをすべきではないと考えているところでございます。
この趣旨からは、ただいま先生御指摘のような、核爆発を伴わないような実験でございますとか、コンピューターのシミュレーションにつきましても行うべきでないと考えているところでございますけれども、非核兵器国でございます我が国のみが禁止すればなくなるというものでもございませんし、具体的な規制自身も困難なものということが現実ではないかと存じます。
我が国としましては、今後とも、国内におきましてこういう動きが生じないようにしっかりと注視していくということが必要と考えますとともに、核兵器の廃絶に向けまして、国際社会におきましてもこういった努力を傾注していくことが必要と考えておるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114003911X00819970520/9
-
010・篠塚保
○篠塚説明員 先生御指摘のコンピューターシミュレーション等、核爆発を伴わない実験につきましては、CTBTの交渉の過程におきまして、その時点で有効な検証手段が存在しない等の事情もございまして、CTBTの禁止の対象にはなっていないわけでございます。したがいまして、核爆発を伴わない実験の禁止につきましては、将来の課題として取り扱ったわけでございまして、現在は現実的かつ着実な核軍縮措置としてのCTBTを早期に成立させるべきという点が国際社会の交渉の過程における大多数の考え方であったわけでございます。
したがいまして、先生御指摘の核爆発を伴わない実験につきましては、先ほど申し上げましたけれども、カットオフ条約成立後の国際社会における核軍縮のあり方について議論が行われる際に取り上げられていくべきものであると考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114003911X00819970520/10
-
011・小野晋也
○小野委員 核爆発を伴わない実験の問題に関連いたしまして、昨年の国連総会における採択の直前にも、中国等がいろいろなシミュレーションに必要な情報を得るために核実験を行うというような報道がなされました。
そのような様子を見ておりましたときに、コンピューター上において核実験が可能になってきている段階に至っているというような認識を私どもは持っているわけでございますが、核実験をコンピューター内で行うシミュレーションソフトというものが世界じゅうに流通するようなことがもし仮にあるとするならば、これはこのCTBTの条約を骨抜きにするような事態も十分に起こり得るのではないだろうかというようなことを私どもは危惧するところがあるわけでございますけれども、このシミュレーションソフト等が国境を越えて他国に供与される、またそのような流通が行われるというようなことに関して、今後この規制に取り組むお考えをお持ちなのかどうか。この点をお尋ねしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114003911X00819970520/11
-
012・西村篤子
○西村説明員 現在のところ、核不拡散の観点から行われております核関連品の国際的な移転に関する規制措置といたしましては、核不拡散条約における関連規定、また原子力専用品及び汎用品に関する原子力供給国グループによる輸出管理がございますが、先生御指摘の核爆発過程に関するシミュレーションソフトは、現在これらの措置の対象となっていないと承知しております。
今後、このようなシミュレーションソフトの国際的移転の規制をどうするかという点につきましては、今後の核不拡散の観点からのこのようなシミュレーションソフトの規制全体に関する議論を踏まえて検討されていくべきものと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114003911X00819970520/12
-
013・小野晋也
○小野委員 なお、このCTBTの問題に関しましては、現実にその条項が遵守されるかどうかという問題が、各国の利害が関係しますだけに、極めて微妙な問題をはらんでいるような気持ちがいたします。
その点からこのCTBTの条約案をチェックしてみましたときに、この条約遵守確保の措置として、第五条のところに、「締約国会議は、この条約の遵守を確保し並びにこの条約に違反する事態を是正し及び改善するため、必要な措置をとる。」こういうふうな記述がなされているわけでございますけれども、この「必要な措置」というのは、果たしてどのような措置を具体的に想定されながらこの条約案の中に入れられたものであるのか。この点についての御説明を願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114003911X00819970520/13
-
014・篠塚保
○篠塚説明員 先生御指摘の、五条に規定します「必要な措置」でございますけれども、具体的には五条の二項、三項に規定されている措置を指しまして、五条の二項に基づく措置としましては、条約が発効した後、締約国がこの条約に基づいて有する権利、特権の行使を締約国会議が決定を行うまでの間制限し、または停止するということが一つでございます。それからもう一点、五条の三項の措置でございますが、「締約国に対して国際法に適合する集団的措置を勧告することができる。」という規定になっております。
以上でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114003911X00819970520/14
-
015・小野晋也
○小野委員 また、この第六条のところでは紛争の解決法ということでの規定が盛り込まれておりまして、「この条約の適用又は解釈に関して紛争が生ずる場合には、関係当事者は、交渉又は当該関係当事者が選択するその他の平和的手段によって紛争を速やかに解決するため、協議する。」こういう項目になっているわけでございますが、「その他の平和的手段」ということの内容について、これはどのようなものを指しておられるのでありましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114003911X00819970520/15
-
016・篠塚保
○篠塚説明員 質問のございました、条約六条二項に規定しております「その他の平和的手段」の具体的内容でございますけれども、例えば執行理事会等、この条約で規定されております内部機関に対して問題を提起することが一つでございます。それから、これも合意によりますけれども、国際司法裁判所の規程に従いまして国際司法裁判所に付託すること等が考えられると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114003911X00819970520/16
-
017・小野晋也
○小野委員 この種の問題というのは、これまでもいろいろな利害対立の中になかなか解決を見にくかったような問題をはらんでいるものだろうと思います。それだけに、このCTBTの条約を制定して、またそれを執行するという段に当たってもさまざまな問題が提起されてくるだろうと思いますけれども、この中にありますとおり、平和的手段によってこの世から戦争をなくし、核兵器をなくすというのがこの条約の基本的な考え方でございましょうから、ぜひその趣旨に沿った解決法を模索していただきますように、この点は要望を申し上げておきたいと思います。
そして、次には国内法に関連する問題になってくるわけでございますが、CTBTに基づきまして、核原料物資、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律の一部を改正する法律案が現在審議を見ているところでございますが、このCTBT条約というのは、基本的には説明と報告の義務を重視する条約だと考えます。その点から考えてまいりましたときに、我が国の原子力機関全般の問題として、特に先般の動燃の東海事業所における問題等に見られるように、この説明と報告のシステムというものが必ずしもうまく機能していないというような点を指摘することができるだろうと思います。
今後、このCTBTを批准してくる中で、日本の国としても国際社会に向けて、この説明と報告についてのきちんとしたシステムの構築ということが求められてくるだろうと思いますけれども、このシステム構築に当たって、原子力機関全般にわたってのきちんとした、真実がうまく伝わる、そしてそこに虚偽報告などが起こらないというようなシステム整備を進めていくべきではないかと私どもは考えているわけでございますが、この点についてのお考えを科学技術庁長官にお尋ねを申し上げたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114003911X00819970520/17
-
018・近岡理一郎
○近岡国務大臣 CTBTへの加盟は、情報の伝達システムの整備という側面を持つことは事実であります。したがいまして、原子力の平和利用を基本政策とする我が国では核兵器への疑惑を持たれることはないと考えますが、仮に報告の必要が生じた場合は即座に対応することが必要だと思います。
他方、今も御指摘あったとおり、最近の動燃における一連の事故対応におきまして、虚偽の報告等不適切な対応が繰り返されまして、原子力開発に対する国民の不安や不信を招いたことはまことに遺憾でございます。
今後、原子力政策の推進に当たりましては、事故等において、またCTBTの報告徴収におきましても、国が迅速かつ正確に状況を把握するための情報連絡体制を整備しなければならぬというふうに思いますので、そういった方向になお一層努めてまいりたい、このように思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114003911X00819970520/18
-
019・小野晋也
○小野委員 科学技術庁長官も、これまで随分御尽力をされて取り組んでこられたテーマでございますけれども、いまだ国民の目から見ると十分にそれが整えられているという印象になっていない部分がございます。今後、科学技術庁挙げて、また科学技術庁傘下の諸組織を挙げて、ぜひこの種の問題に対する積極的な取り組みを御要望を申し上げたいと思います。
ところで、先ほど御紹介申し上げました、平岡敬広島市長の「希望のヒロシマ」という本に戻るわけでございますけれども、この本の中で平岡さんは、広島は大変な、人類的な惨禍としての核被爆ということを経験したところであるけれども、それがまた広島にとっては一つの新しい時代を切り開く責任を持つことであり、またそれが新しい時代の希望にもつながるんだということで、こういう文章を書かれております。
国家が戦争、平和の主体である時代は終わり、平和は市民のものとなった。戦後五十年たって、政治、経済、社会のあらゆる分野で制度疲労現象が起こり、理想を失って漂流しているように見える日本で、「日本人はいかに生きるべきか」といった大上段に構えた問いを発しているのが広島である。
核兵器廃絶への道は限りなく遠いように見えるが、世界はいま核抑止論にたよろうとする人たちと、人類が生き延びるために核兵器廃絶を求める人たちとのせめぎ合いの時である。
平和を願う人々にとって、また地球上で飢餓、貧困、病気、差別、民族紛争などで苦しんでいる人々にとって、広島は生きる勇気と未来への希望をもたらす存在でありたい。核兵器を否定する思想は、人類の直面する困難な問題を解決する突破口である。そのために私たちは被爆の歴史を継承しながら、平和をつくりだす努力を重ねてゆかねばならない。
破壊のための核爆弾をつくるのは人間である。しかし「鶴を折る」のも人間なのだ。私はそこに希望を見いたしている。そして、広島の地道な努力の積み重ねが核兵器反対の国際世論のうねりを起こし、核保有国の間で核兵器廃絶を約束する条約が結ばれたとき、私たちは新たな”希望の時代”へ足をふみいれることができるのである。
このように、高らかに理想を語り、広島の市長としての活動を世界に展開をされているわけでございます。
この広島の市長の思いというのは、まさに日本の国民の思いでもあろうと思います。平和国家を目指してこれまで歩んできた戦後五十数年の歩みの中で、日本の国は世界に訴えるべき幾多のものを持ってきているように私は感じております。ぜひ、このCTBTの条約がこれから批准を見るように、見る歩みを進めているわけでございますけれども、このCTBTの締結が、単に条約が締結されたということだけではなくて、この思いを、平和への願いを世界へ伝えていく、そのような条約になりますことを心より祈念をいたしまして、私の質問を閉じさせていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114003911X00819970520/19
-
020・佐藤敬夫
○佐藤委員長 井上義久君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114003911X00819970520/20
-
021・井上義久
○井上(義)委員 新進党の井上義久でございます。
まず、今回の包括的核実験禁止条約、CTBT、すべての核実験を禁止するということがその一番の趣旨でありますけれども、これによりまして核爆発のない世界を実現する、そういうところまで来たわけでございまして、関係者の御努力に対して心から敬意を表する次第でございます。唯一の被爆国として核兵器のない世界を目指している我が国の悲願達成の第一歩、そういう意味でもこの条約にかける期待は大きいわけでございます。
ただし、先ほども指摘がありましたけれども、この条約発効のためには核開発能力のある四十四カ国の署名、批准が条件になっておるわけでございまして、署名、批准の現状はどうなっているのか。
それからもう一つは、やはりインドの問題があるわけでございまして、昨年九月十日の投票直前の演説でも、インドのゴーシ軍縮大使は、我々は絶対に署名しない、条約は永久に発効しない、こういうふうに述べているわけでございまして、インドの賛成を得るというのは容易ではないんじゃないか、こう思われるわけでございます。インドがなぜこのような態度をとっているのか、それをどのように認識をして、それをどのように変えていくのか、外務省の今後の対応についてまず確認させていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114003911X00819970520/21
-
022・篠塚保
○篠塚説明員 先生の御質問のございました条約の発効の見通し、現状でございますが、CTBTの効力発生につきましては、条約の第十四条によりまして、先生御指摘になりましたインド等を含む特定の四十四カ国のすべてが批准書を寄託した百八十日後に効力を生ずるという規定になっております。
CTBTは、昨年の九月二十四日にその署名開放が行われまして、四月十六日現在、米国、ロシア、イギリス、フランス、中国の五核兵器国を含む百四十四カ国が署名をいたしております。このうち、既に批准をいたしましたのは二カ国ございまして、フィジーとカタールでございます。また同時に、先生御指摘のように、その批准書の寄託が条約の発効の要件となっております四十四カ国のうち、インド、パキスタンそれから北朝鮮は今のところ署名をいたしておりません。特にインドにつきましては、先生御指摘のように反対の立場を公言しております。
このような事情を考えますと、今後は署各国、批准国の数は増大していくと思いますが、他方、発効の条件になっておりますインド、パキスタンの署名、批准が必要でございまして、発効の見通しということになりますと、現時点でそれがいつになるかということを申し上げるのはちょっと難しい状況にございます。
それから、インドに対する働きかけでございますけれども、我が国といたしましては、当然ながら、インドが早期に署名、批准をいたしまして、条約が早期に発効することが重要と考えておりまして、この点から、インドに対する働きかけが当面非常に重要な課題であると考えております。
具体的には、まず、できるだけ多くの国がこの条約を批准いたしまして、核実験禁止に対する国際社会の総意をインドに示していくということが重要かと思います。それから、多国間あるいは二国間の場、多国間の場ですと、例えばASEAN地域フォーラム、これはインドもメンバーになっておりますけれども、こういった場、それから二国間の対話の場を通じまして、インドに対して粘り強く署名、批准の呼びかけを行っていく考えでございます。
以上でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114003911X00819970520/22
-
023・井上義久
○井上(義)委員 インドの署名について、本会議で我が党の斉藤議員に外務大臣が同じような趣旨の答えをされているわけでありますけれども、先ほどもちょっと質問の中で触れましたけれども、インドがなぜこのようなかたくなな態度をとっているのか、その理由をどのように認識されているのかということを改めてお伺いしたいと思います。
多くの国が署名をする、それから多国間、二国間で粘り強く説得をする、国際的な圧力によってインドに署名させよう、こういうふうに受けとめられるわけですけれども、なぜインドがそこまでかたくなに反対しているのか、その反対している状況というものをやはり解消していくということがこの条約発効の大きな条件になっていくんじゃないか。そういう認識をやはり外務省としてきちっと持ってこれに当たってもらいたいと思うのですけれども、それについてはどうでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114003911X00819970520/23
-
024・篠塚保
○篠塚説明員 インドは署名、批准をしないということを公言しているわけでございますが、その理由としましては幾つかございまして、一つは、条約がインドの批准を発効の条件にしているという点でございます。この点につきましては、インドは、自分たちは批准しないと言っているにもかかわらず、条約交渉の過程でインドを発効の条件にしたという点を反対の理由としております。それからもう一つの点は、いわゆる時間的枠組みをつけました核廃絶の主張、これはインドは前から主張しておりますが、その主張が条約の中に盛り込まれてないという点も批准できない理由といたしております。
このようなことで、インドは条約に署名、批准しないという立場を明らかにしておりますが、繰り返しになりますけれども、粘り強く、日本とインドの二国間の場あるいは多国間の場を通じてその立場を再考するように呼びかけ、働きかけていきたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114003911X00819970520/24
-
025・井上義久
○井上(義)委員 今、インドがなぜ反対をしているのかという理由を二つ挙げていただきましたけれども、いわゆる時間的な核廃絶のプロセスが明確になっていないということが一つの大きな理由だと私も思うわけでございます。
我が国にとりましても、この核爆発禁止条約によって新たな核兵器の開発を阻止すると同時に、いわゆる核保有そのものを禁止していく、核兵器を廃絶していくということが我が国の悲願でもあるわけでございまして、私は、一方でそういう努力、少なくとも核保有国が核廃絶ということについて明確な政治的意思を示さない限り、なかなかインドの批准は難しいんじゃないか。
そういう意味で、これからの日本の方向としては、米ロ中の三カ国、これが具体的な核廃絶のシナリオというものを明確に示していくように、非核保有国日本がその中心になって粘り強く国際社会に働きかけて、インドが批准するような条件づくりをしていく、少なくともそういうシナリオが見えてくるという状況を日本が積極的につくり出していかなければいけないんじゃないか、こんなふうに思うわけでございますけれども、この核廃絶について今後日本のとるべき対応についてお尋ねいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114003911X00819970520/25
-
026・篠塚保
○篠塚説明員 先生御指摘のように、我が国としましては核兵器のない世界の実現のために努力していく必要があると考えておりまして、そのためには、今回妥結しましたCTBTのような現実的かつ具体的な核軍縮措置を着実に積み重ねていくということが重要であると考えております。
それから、CTBTの後の核軍縮措置、現実的かつ具体的な核軍縮措置としましては、一昨年のNPTの無期限延長の場で国際社会の総意として合意いたしました、いわゆる核分裂性物質の製造を禁止するカットオフ条約交渉がございますが、当面は、この条約交渉の早期開始に向けて最大限の努力をしていくということが重要であると考えております。現在、ジュネーブの軍縮会議で、カットオフ条約交渉を早期に開始するべく話し合いが行われておりますが、日本政府としましても、このカットオフ条約交渉を早期に開始すべく、現在努力しているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114003911X00819970520/26
-
027・井上義久
○井上(義)委員 それから、これも本会議で同僚の斉藤議員が質問したところでございますけれども、今回の包括的核実験禁止条約の大きな目的の一つは、核保有国による新型核兵器の開発を阻止するということがあるわけですけれども、それに関連して、未臨界の実験を禁止の対象にしなかったというのはしり抜けではないか、こういう指摘がされているわけでございます。これは、昨年六月の軍縮会議でも、非同盟諸国は、この核兵器の開発、実質的改良に終止符を打つという新兵器開発放棄を明確に義務づける文言を条約に盛り込むべきだ、こういうふうに要求しているわけでございます。
特に、アメリカが、この十年間で四百億ドルをかけてスチュワードシップ計画というものを発表しているわけでございまして、もちろん、安全性、信頼性維持がその目的というのが公式的な説明でありますけれども、核実験なしで新兵器を設計する能力の確立が真のねらいではないか、こういう疑念を持たれているわけでございます。もちろん、アメリカの意図が核実験抜きの新兵器開発というふうに断定はできないわけですけれども、やはり将来、アメリカが、この包括的核実験禁止条約とか核拡散防止条約などで他国の核開発を縛りながら新兵器の開発を進めるのではないかという非核保有国、特に非同盟諸国の疑念というのはぬぐえないわけでございます。
本会議で総理は、米国政府は、既存の核弾頭の安全性、信頼性の確保のために行う旨を既に公表しており、我が国としては、この実験がこの条約の禁止の対象になっていないことが、新たな核兵器の開発を封じることにはつながらないとは認識していないということで、アメリカの説明をそのまま是として答弁していらっしゃるのですけれども、日本の政府がアメリカの説明をそのまま是とするだけでは、やはり他の非核保有国、特に開発途上国の信頼というものが得られないのではないか。いわゆる核廃絶を目指すリーダーシップとしての日本のあり方からして、そういう非核保有国の疑念に対して率直にこたえる、それを晴らす努力というものをアメリカ政府に対しても求めていく、やはりこういう基本姿勢が必要なのではないか、このように思うわけでございます。
先ほどの、署名をしないというインドの方針も重ねあわせて、核保有国の核廃絶に向けての政治的なそういう表明というものをどこまでも求めていくということがやはり我が国の姿勢として非常に大事ではないかな、このように思うわけですが、未臨界核実験に対するこの総理答弁について、外務省、どのようにお考えか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114003911X00819970520/27
-
028・篠塚保
○篠塚説明員 先生御指摘の未臨界高性能爆薬実験につきましては、核分裂性物質を高性能爆薬により爆縮させますが、核分裂連鎖反応が持続しない未臨界状態で反応がとまる実験であるとされておりまして、CTBTに言ういわゆる核爆発に該当しないというのが国際社会の共通した理解または認識であると考えております。また、未臨界実験は、新たな兵器の開発ではなく、既存の核弾頭の安全性と信頼性の確保に資するものとして行われるものであると承知しております。
それから、先生から御指摘のございましたストックパイル・スチュワードシップ計画でございますが、この計画は、核爆発を実施せずに、既存の核兵器の安全性と信頼性を確保するために、コンピューターの性能の高度化、核爆発の生じないいわゆる未臨界高性能爆薬実験などを行っていくものであると承知いたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114003911X00819970520/28
-
029・井上義久
○井上(義)委員 どうも質問した趣旨をなかなか理解していただけないようでございます。要するに、核廃絶という政治的な意図というものを明確にするように日本として働きかけていくということが日本にとってやはり一番必要だと私は思いますし、既存の核兵器の安全性それから管理、廃絶していこうという方向が明確になればこれほどお金をかけてやる必要はないわけでございまして、そういう方向にやはり日本としてきちっと働きかけていく。国際社会で疑念が持たれるようなことについて、日本がアメリカの主張をただ是とするだけではなくて、やはり非核保有国の立場に立ってアメリカにも言うべきことはきちんと言っていくということが、日本が非核保有国として核廃絶へのリーダーシップをとる上で必要なのではないか、こんなふうに認識しているわけでございまして、ぜひそういう認識で今後の核廃絶に向けての行動をとっていただきたいということだけ申し述べておきます。
それから、包括的核実験禁止条約を支える核爆発監視システムの整備についてお伺いしますけれども、世界的な監視網の構築が核兵器開発の実質的な抑止力としてやはり非常に重要だと思うわけでございまして、世界に三百カ所以上いわゆる観測点が設けられ、そして国際データセンターが設置をされる、こういうことでございますし、それから、いわゆるこの禁止条約の機関がウィーンに設立をされるというふうに伺っているわけでございます。
一つは、この観測網に対する日本の分担はどのようになっているのか。それともう一つは、先ほどもちょっと申し上げましたけれども、条約が発効した場合に、CTBT機関がウィーンに設立されるわけですけれども、その規模、体制はどういうふうになっているのか。日本として、人的な貢献、資金的な貢献、特に事務局長とかそれに準ずるような人的貢献をすべきじゃないか、こんなふうに私は思うわけですが、これについて今どのようになっているのか、お伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114003911X00819970520/29
-
030・篠塚保
○篠塚説明員 ただいまありました人的な貢献の話でございますが、日本政府といたしましては、CTBTの重要性から、最大限の人的貢献をしたいと考えております。
それで、まだ条約は発効していないわけでございますが、その前段階としまして準備委員会というのが去る三月に発足いたしておりまして、その準備委員会のもとで暫定技術事務局がオーストリーのウィーンに設立されましたが、我が国としましては、事務局次長に当たるポストに日本人職員を一名派遣したところでございます。その他、先生から御指摘のございました国際監視制度の円滑な実施に貢献するという意味から、地震の分野の専門家をウィーンに設立されました暫定技術事務局に派遣するべく、現在努力中でございます。
今後とも、条約が発効する以前は、国際監視制度の構築、それから国際データセンターの構築等の事務をその準備委員会及び暫定技術事務局で行っていくわけでございますが、我が国としては、できる限りの貢献をしてまいりたいと思っております。
それから、我が国が受け入れることになる国際監視制度の施設でございますが、先生御指摘のように、条約では四分野の手段を使いました監視制度の構築を規定しております。具体的には、地震網、それから放射性核種、それから微気圧、それから水中音波、この四分野でございますが、我が国としましては水中音波を除く三分野の面で貢献したいと考えております。国際監視制度の監視施設につきましては、先ほど申し上げました準備委員会を中心に整備のための準備が今進められておりますけれども、我が国としては今後、その準備委員会と調整を行いながら、申し上げました三分野での貢献について整備を進めていきたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114003911X00819970520/30
-
031・井上義久
○井上(義)委員 それから、これは法案に入るのかと思いますけれども、核爆発の実施の懸念が発生した場合、その手続についてちょっと確認しておきたいと思います。
一つは、日本の監視網で例えばデータに異常を発見した、それから、受けた説明によりますと国際データセンターに日本からアクセスできるようになっている、そのアクセスしたデータに異常を発見した、その場合に、懸念発生ということで懸念のある国に対して説明を要請する、あるいは懸念のある国への査察をCTBT機関に要請をする。こういう形でこの条約が実行されていくというふうに思うわけですけれども、このデータの異常を監視する、もし異常が発生した場合に関係国に説明を要請する、これは、日本の国内的にいうと、どういう機関でどういうふうに具体的に行われるのか。そういう体制はできているのかどうか。できているというか、国内にきちっとした体制がつくられるのかどうか。この辺を確認しておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114003911X00819970520/31
-
032・篠塚保
○篠塚説明員 条約が発効しますと監視制度ができまして、先生御指摘のように、その監視制度に基づきまして、核実験を行ったという疑念国に対する各種の措置がとられるわけでございますけれども、具体的に先生御指摘のございました、仮に他国で核爆発されたとの懸念が発生した、その場合の日本国内の体制でございますけれども、我が国日本としましては、国際監視制度によって収集されたデータ、それは先生御指摘のようにウィーンの国際データセンターに集められますので、そういった情報に基づいて総合的に判断することになると思います。
もちろん、その国内的な体制としましては、それぞれの監視技術につきまして専門的な知見を有します関係省庁、放射性核種につきましては科学技術庁、それから地震網、微気圧については気象庁になるかと思いますけれども、そういった関係省庁で客観的な分析をいたしまして、最終的には条約を見ております外交当局が判断することになると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114003911X00819970520/32
-
033・井上義久
○井上(義)委員 まだこれからそういうシステムをつくるというふうに理解してよろしいですね。
それから、この法案で、先ほども御指摘がありましたけれども、いわゆる条約の遵守について検証するための報告徴収規定が整備をされているわけでございまして、六十七条四項には諸外国から説明を求められた場合、五項には査察があった場合、それぞれ総理大臣が関係者に報告させるということがうたわれているわけですけれども、これを所管する官庁はどこがやって、またどういう体制でこの報告徴収義務というのを実際に行っていくのか、これについてちょっとお尋ねします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114003911X00819970520/33
-
034・池田要
○池田政府委員 御説明申し上げます。
原子炉等規制法には、第七十四条の二に「内閣総理大臣の権限は、科学技術庁長官に委任することができる。」という旨が規定されてございまして、この規定に基づきまして、国内の報告徴収につきましては科学技術庁長官が行うことになります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114003911X00819970520/34
-
035・井上義久
○井上(義)委員 それから、同じように、今度は現地査察があった場合の受け入れ規定の整備というところで、内閣総理大臣の指定するその職員及び外務大臣の指定するその職員の立ち会いのもとに査察を受け入れるというふうになっているのですけれども、これは具体的にはどういう人になるのか。それから、外務大臣の指定する職員と総理大臣の指定する職員と、同じ国の職員だと思うのですけれども、なぜこういうふうに分かれているのか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114003911X00819970520/35
-
036・池田要
○池田政府委員 核爆発につきましては、通常、核燃料物質が使用されます。そうした意味で、核燃料物質の使用の規制を行っております内閣総理大臣の指定する職員、この場合はすなわち科学技術庁の職員ということになりますけれども、これが立ち会うことにした次第でございます。この場合、我が国の査察官が保障措置の観点から、査察の実施と、それから国際機関が行います査察への立ち会いの経験を有しております。したがいまして、これらの査察官の活用ということでこれから検討してまいるという考え方を持っております。
それから、外務省がということでございますけれども、こうした包括的核実験禁止条約のもとで行う査察につきましては、査察の対象範囲でございますとか査察の活動、こういったことを決めるに当たりましては、現地におきまして外交交渉が必要になるといった場合が想定されます。こうしたことから、外務大臣の指定する職員を立ち会わせて行うことにした次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114003911X00819970520/36
-
037・井上義久
○井上(義)委員 時間が参りましたので、最後に大臣に、今回のこのCTBTに関連して、いわゆる日本のプルトニウムリサイクルですね。プルトニウムというのは原爆の原料になるということで、日本は核兵器に野心があるのではないか、こういう疑念を晴らすために余剰のプルトニウムは持たない、こういう方針を日本としては決めているわけでございます。
核燃料リサイクル、これについてはまた別な機会に一回きちっと議論したいと思いますけれども、最近の一連の動燃の事故等によってプルトニウムの需給見通しというのが、どうもこれは一回見直さざるを得ないのではないか、今のままでは余剰プルトニウムが生じてしまうのではないかというふうに思うわけでございまして、このプルトニウムリサイクルについて、特に需給見通しについてどのように御認識されているか、確認しておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114003911X00819970520/37
-
038・近岡理一郎
○近岡国務大臣 今回の事故及びそれに対する動燃の対応のまずさが地元を初め国民の方々に原子力に対する不安、不信感を与えたことは、まことに遺憾なことでございます。
他方、我が国の置かれている資源的な制約や地球環境保護の観点から、原子力発電及びそれを支える核燃料サイクルの円滑な展開は今後とも重要だと認識いたしております。これにつきましては、実は先般、五月九日の原子力委員会におきましても再度確認させていただきました。
今後とも、事故原因の徹底的な究明あるいは再発防止対策、動燃の体質及び組織、体制についての抜本的な改革を進めるとともに、原子力関係者一同、初心、原点に返りまして、安全の確保と情報公開の重要性について再認識をしながら、原子力行政に対する信頼の回復に今後とも最大限の努力を払っていかなければならない、このように思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114003911X00819970520/38
-
039・井上義久
○井上(義)委員 済みません。当局で結構ですので、プルトニウム需給について、その見直しの必要があるのではないかということを質問させていただいたわけですけれども、それについて最後に確認だけしておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114003911X00819970520/39
-
040・佐藤敬夫
○佐藤委員長 質問時間が終了しておりますので、明快にお答えください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114003911X00819970520/40
-
041・加藤康宏
○加藤(康)政府委員 プルトニウムの需給の問題につきまして、今回の事故におきまして余剰が出るのではないかという御指摘でございますけれども、プルトニウムは、我が国といたしましては当面プルサーマルに使いたいと考えておりまして、この前の閣議了解に基づきまして、地元の方々の御了解を得るべく一生懸命努力している最中でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114003911X00819970520/41
-
042・井上義久
○井上(義)委員 終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114003911X00819970520/42
-
043・佐藤敬夫
○佐藤委員長 佐々木秀典君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114003911X00819970520/43
-
044・佐々木秀典
○佐々木(秀)委員 民主党の佐々木です。
時間が限られておりますので、端的に質問に入りたいと思いますし、通告してありました順序を多少変更させていただくことをお許しいただきたいと思います。
同僚委員からお尋ねがありましたことの関連ですけれども、このCTBT条約について、現在未署各国が所要の諸国四十四カ国中三カ国、インド、パキスタン、いわゆる北朝鮮、朝鮮民主主義人民共和国。この未署名の事情について、さきにインドについてはお話がございました。インドについては明確に反対の意思を表示されておる。ただ、お聞きをいたしますと、内容そのものというか条約の本旨そのものに反対しているとも受け取れない節がありますので、これは後にまた申し上げますけれども、何とか協力してもらえるような努力を日本としても積極的にすべきだと思いますが、そのほかのパキスタンといわゆる北朝鮮、これはそれぞれまた実情が違うと思うのですね。これについては、北朝鮮の場合には残念ながら国交がない、国交ができておらないということが非常に問題だと思うので、こんなに近い国との間の国交をなぜ今まで締結できなかったかということは、これはまたここの次元の問題ではない、別の次元でも問題にしていきたいと私は思うわけです。
しかし、こうした状況の中でも、我が国としてパキスタン、北朝鮮がこの署名をしないということについてどのように事情を把握しておられるか。先ほどのインドの例とあわせて、インドの方はお聞きしましたから結構ですけれども、お聞かせください。
〔委員長退席、斉藤(鉄)委員長代理着席〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114003911X00819970520/44
-
045・篠塚保
○篠塚説明員 パキスタンでございますが、パキスタンはCTBTは支持しておりまして、昨年九月の国連総会でCTBTの決議案が採択されたわけでございますけれども、その採択の際にはパキスタンは賛成しております。ただ、九月二十四日に署名に開放されたわけでございますけれども、署名、批准につきましては、インドとパキスタン、御承知のような関係にございますので、インドが署名、批准しない限り自分たちは署名、批准しない、そういう立場をとっております。したがいまして、CTBTの条約自体には、先生御指摘のように、パキスタンは賛成していると思います。ただ、インドの関係から署名、批准しない、そういう状況だと思います。これはパキスタンの代表の演説でもはっきり言っております。
それから、北朝鮮でございますが、先生御指摘のように署名、批准していないわけでございますが、昨年九月の国連総会で決議が採択されたとき、北朝鮮は実は欠席しております。したがいまして、今のところまだ署名も批准もしていないわけでございますけれども、他方、北朝鮮としてこのCTBTに対してどういうふうに考えているか、そういったことも国際場裏で明らかにしておりませんで、我々も北朝鮮がCTBTに対してどういう考えを持っているかということについては承知しておりません。
それで、今後は、今先生御指摘のように三カ国に対して働きかけをしていくことが重要になるわけでございますが、インドにつきましては、先ほどより御説明させていただいたように二国間、多国間の場を通じまして、パキスタンについても同様だと思います。それから北朝鮮でございますけれども、先生御指摘のように国交がないということもございますので、例えば北朝鮮が加盟しております国連の場で、北朝鮮が条約に対する考え方を明らかにし、それから早期に署名、批准するように国際社会全体として働きかけを行っていく、そういう形で日本としては努力をしたいと思っております。
〔斉藤(鉄)委員長代理退席、委員長着席〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114003911X00819970520/45
-
046・佐々木秀典
○佐々木(秀)委員 わかりましたけれども、そうすると、非常に大事なのはやはりインドに対する対応だということになるんだろうと思うのですね。いろいろな機会をとらえて働きかけるということですけれども、先ほど小野委員から広島の市長さんの御本の紹介がございましたけれども、非常に訴えるものがある。これまでも国際機関、例えば国際司法裁判所で長崎の市長さんが訴えをされて、それが外国の方々に大変感銘を与えたということもあるわけですね。そういうことを考えますと、私は、何といっても世界で唯一の被爆国、あれだけの悲惨な経験をしたという国はほかにないわけですから、その心情を訴えていくという努力がやはり必要だろうと思う。そのためには、外交的なルートというかオフィシャルな交渉だけではなしに、例えば今の広島の市長さんだとか長崎の市長さんにも御協力をいただいて、場合によったら政府の特別の大使、公使的な立場で働きかけていただくことに御協力をいただくというようなこともぜひお考えをいただきたいということを提案しておきたいと思います。
それから北朝鮮についても、国交がないとはいいながら、これまでも国交回復のためのさまざまな交渉がある、ネックに乗り上げているところもありますけれども。それからまた、現在は北朝鮮の方で食糧危機に瀕していて、この食糧援助、もうしていますけれども、これからも求められているということもある。やはりこういう機会もとらえながら訴えていって、署名に協力をさせる。あるいは、在日朝鮮人の団体で朝鮮総連という団体もあって、これは北朝鮮の政府と非常に密接な関係を持っているわけですし、この方々は長く日本に在住しておられる方々が多くて、日本人の心情ももうわかるわけですから、こういう機関あるいは人なども利用するといったら語弊がありますけれども、働きかけるというようなさまざまな努力をぜひやっていただくことを要望したいと思います。
そこで、我が国の場合には憲法がありますし、非核三原則を堅持するということになっていますから、まず核兵器の開発などということは考えられない。そのための核爆発の実験ということも想定されないわけですけれども、しかし、将来的にCTBT条約による条約機関の調査あるいは査察の対象にもなり得るとすれば、どんな場合が想定されるのか。先ほど井上委員からもお話がありました、プルサーマル計画の中でいわゆる核兵器に直接に結びつくようなプルトニウムを持つことになることとの関連などが考えられるのかどうか。いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114003911X00819970520/46
-
047・篠塚保
○篠塚説明員 先生今御指摘のように、我が国におきましては、NPT、核拡散防止条約に既に加盟しておりまして、核兵器は持たないという国際的な約束をしております。この約束を証明といいますか、そういう手段としてIAEA、国際原子力機関の保障措置を日本の原子力施設は受けております。そういう意味からいきまして、日本の原子力施設は核兵器を持たないという透明性が確保されておるわけでございます。
それから、今回CTBTができまして日本が署名いたしまして、御承認いただけると批准、発効するという段取りになるわけでございますけれども、その国内実施ということで炉規法が改正されまして、核実験を行った者に対しては罰則規定を設けまして、そういう担保の手段もとっているわけでございます。
こういった意味から、二重、三重の網がかかっておりますので、先生御指摘のように、そういった仮定はございますけれども、現実には、我々の理解としましては、日本にそういった疑惑が起きて現地査察なりが行われる、そういう可能性は起こることはないというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114003911X00819970520/47
-
048・池田要
○池田政府委員 先生御承知のとおり、我が国は、原子力基本法及びそれに基づきます原子炉等規制法によりまして、核燃料物質等の利用につきましては厳に平和目的に限るといったことで、原子炉等規制法によります施行、それから国際約束に基づきました保障措置を厳格に適用しておりますから、私ども原子炉等規制法を所管する立場から考えましても、このCTBTに基づきます査察を受けるような事態になることはまず考えられないと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114003911X00819970520/48
-
049・佐々木秀典
○佐々木(秀)委員 そうすると、この条約の承認国として、先ほどお話しのように、この査察の受け入れ体制、あった場合にはということで整備はするけれども、まず実際に対象になるという心配はない、こうお聞きしてよろしいわけですね。
そこで、条約の内容なんですけれども、条約の一条、それから二条に同じ文言があるのです。「締約国は、いかなる場所においても核兵器の実験的爆発及び他の核爆発を禁止し及び防止することを約束する。」これが一条。それから、二条にも同じような記述があるのですけれども、ここで言う「他の核爆発」、「核兵器の実験的爆発及び」となっていますからこれと異なるということになるのでしょうが、「他の核爆発」というのはどんな爆発なのか、これをひとつ御説明いただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114003911X00819970520/49
-
050・篠塚保
○篠塚説明員 先生御指摘の「他の核爆発」でございますけれども、CTBT上では「他の核爆発」について定義はございません。ただ、一般的には、核爆発ということになりますと、核分裂または核融合による爆発ということでございまして、これにはいわゆる平和目的の核爆発も含まれると考えられるわけでございます。
したがいまして、先生が御質問ございました核兵器の実験的爆発以外の核爆発、「他の核爆発」の例といたしましては、この平和目的の核爆発、具体的には、交渉の過程で中国が主張しておりましたけれども、例えば土木工事を行う際に核爆発を使う、これがいわゆる「他の核爆発」、いわゆる平和的目的の核爆発に当たると思います。この条約では、その平和目的の核爆発を含めまして、あらゆる核爆発が禁止ということになっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114003911X00819970520/50
-
051・佐々木秀典
○佐々木(秀)委員 科技庁、それでよろしいですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114003911X00819970520/51
-
052・池田要
○池田政府委員 ただいま外務省から御説明があったのと理解は同じでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114003911X00819970520/52
-
053・佐々木秀典
○佐々木(秀)委員 はい、そう了解いたします。
それから、本法ですけれども、施行日の関係なんですが、改正法の施行日としては、このCTBTが日本国で効力を生ずる日、こういうことになっているのですね。これは具体的にはどういうことになるのか、そしてまた、その見込みはどうなのか、科技庁と外務省それぞれに簡単にお答えいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114003911X00819970520/53
-
054・池田要
○池田政府委員 お答え申し上げます。
この法律案の附則におきまして、「この法律は、包括的核実験禁止条約が日本国について効力を生ずる日から施行する。」としているところでございます。したがいまして、本改正は条約の発効日に施行されることになります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114003911X00819970520/54
-
055・篠塚保
○篠塚説明員 この条約上、効力発生につきましては、先ほど出ましたインド等を含む四十四カ国のすべての国が批准いたしまして、批准書を寄託した後百八十日、つまり六カ月後に効力を生じるというふうになっております。他方、条約の署名開放の後、つまり署名開放されましたのは昨年の九月二十四日でございますので、それから二年間は効力を生じないという規定も同時にございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114003911X00819970520/55
-
056・佐々木秀典
○佐々木(秀)委員 いずれにしても、相当先になるわけですね。きょう、本委員会で大体この改正法案については、我が党も賛成ですけれども、恐らく共産党さんも含めて一致で賛成できるわけですが、しかし、今の条約との絡みでいくと、この実施、施行というのが相当先になるということなんですね。そういうことを考えても、やはり条約の発効ということを、何とか四十四カ国全部そろって早く発効できるようにしたいものだと思いますので、先ほど申し上げましたけれども、また特段の御努力をお願いしておきたいと思います。
最後に、本法とちょっと離れますけれども、先般来、動燃の一連の事故で、本当に私どもは腹立たしい思いをしながら数カ月を過ごしてまいりました。それにつけても、原子力の災害のことを私どもは真剣に考えていく必要があるのではなかろうかと思います。
私は、科学技術委員会の視察と別に、また民主党の方でも視察団をつくって、東海にも行ってまいりましたし、「ふげん」にも行ってまいりました。その際、自治体の関係の方々、茨城県の知事さんを初めとする方々や東海村の村長さん、あるいは福井県の皆さんにもいろいろお話を伺ったのです。原子力災害というのも災害対策基本法の対象の災害にはなっていて、これは関連の政令の一条で、放射性物質の大量の放出があった場合というように限定されて書かれて防災対策が講じられているのですけれども、何といっても、いわゆる原子力災害、特に放射能災害というのは、この被害者である人体では全くわからない、五感ではわからないというようなことで、いわゆる自然災害、洪水だとか火事だとか地震だとかとは全く性格が違うわけですね。こういうものに対する対応というのは、自治体に責任を負わされてもとてもじゃないけれどもかなわない、国がもっと積極的に責任を持ってもらわないとどうしようもないんだ、もちろん防災についてもそうですし、それから災害が発生した後の対応なんというのはもう自治体ではとてもどうにもなるものでない、そういう切実な声を聞いております。
そういう原子力発電施設がある各自治体からも、国の方に対して、この原子力災害の特別措置法をつくってもらいたいという要請も出ていることは私ども知っているわけですけれども、こういう特別措置法、実は私どもの党内でも今検討しているところですが、長官、この必要性あるいは見通し、特に昨年の十二月に原子力防災検討会が科技庁内に置かれておると思うのですが、この作業の内容とあわせて簡単にお答えいただければと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114003911X00819970520/56
-
057・池田要
○池田政府委員 ただいま先生から、科技庁におきます原子力防災の検討ぶりについてお尋ねがございました。
この検討会におきましては、専門家だけではございませんで地方自治体にも参加いただきまして、原子力施設事故時の情報収集でございますとか意思決定の迅速化など、こういった初期対応の強化策、それから防災業務関係者の資質向上のための研修のあり方ですとか、それから緊急時に備えて住民が有すべき知識の内容、あるいは緊急時におきます住民への情報伝達等、こういったことにつきまして、先般の動燃の火災爆発事故の経験も踏まえながら具体的に検討しているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114003911X00819970520/57
-
058・佐々木秀典
○佐々木(秀)委員 長官、いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114003911X00819970520/58
-
059・近岡理一郎
○近岡国務大臣 今局長からも一部答弁があったわけでありますが、最近の状況を見まして、今先生御指摘のとおり、この問題は地方の公共団体を含めて現在検討会で検討しているところでございますので、そういった論議を踏まえながら、やはりこれから積極的に取り組んでいく必要はあるなというふうに私は存じておりますので、もう少し検討させていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114003911X00819970520/59
-
060・佐々木秀典
○佐々木(秀)委員 終わりますけれども、何といっても、先ほど申しましたように特殊な災害ということになるわけですから、それに対応する特別な措置を法的にも行政的にも考える必要があると私は思います。この点、また真剣にお互いに協議をしながらやっていきたいと思います、協力をしながらやっていきたいと思います。そのことを申し上げて、質問を終わります。
ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114003911X00819970520/60
-
061・佐藤敬夫
○佐藤委員長 春名直章君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114003911X00819970520/61
-
062・春名直章
○春名委員 日本共産党の春名直章でございます。
きょうは、吉井先生のかわりに質問させてもらいます。当委員会では初めてですので、どうぞよろしくお願いします。
核エネルギーの軍事利用という人為的脅威を取り除くということとあわせて、自然の脅威から原子力施設の安全性を確保するということが現実に直面する重大な課題になっています。そこで私は、地震、活断層問題と原発の安全性の関連で幾つかお聞きをしていきたいと思います。
まず第一に、鹿児島県の北西部で、三月末に続きまして、五月十三日に大きな地震が発生をいたしました。その調査に私も行って、現地の様子を伺って激励もしてきたわけであります。復興復旧の努力が住民、行政一体となって進められております。政府としてぜひ万全の援助をお願いしたいと思います。
と同時に、住民の中で大きな不安となって広がっているのは、震源域の近くに川内原発があるということであります。炉心や細管などの中心的な施設に損傷がなかったのかどうか、炉をとめて点検するなど、不安を取り除いてもらいたい、こういう声が住民の間で満ちあふれているわけです。その点を厳しく指示していただきたいと思いますし、また、原発内の二十六の地震応答観測装置の全データを直ちに住民に公開させるように指導していただきたいと考えますが、いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114003911X00819970520/62
-
063・吉田高明
○吉田説明員 五月十三日に発生した地震を初めといたしまして、最近連続して発生しております鹿児島県薩摩地方における地震におきましては、業務運転中であった一、二号機とも地震による運転への影響はなく、またその後、九州電力が行った自主点検におきましても異常のないことが確認されているところであります。したがいまして、現時点において、原子炉を停止して総点検をする必要はないと考えております。
なおまた、データにつきましては、三月につきましては既にデータを提供しているかと思います。五月の分につきましては、現在解析中ということを聞いておりますので、恐らくそれがまとまりましたら発表することになるのではないかというふうに認識いたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114003911X00819970520/63
-
064・春名直章
○春名委員 住民の皆さんの感情として、それで納得できるでしょうか。動燃の問題もありますし、原子力行政に対する目が本当に厳しくなっています。説明してきたことと事実が違うじゃないか、そういう不信感が高まっています。ですから、そういうときだから、念には念を入れて、事実に基づいて安全を確かめていくという姿勢を貫くことが一層大事になっているということを私は強く求めておきたいと思います。
それで、次に移りますけれども、私の母校なんですが、高知大学理学部の地質学教室とか東京大学の地震研究所とか、そういう研究者の方々によりまして、愛媛県の伊予灘の北東部の中央構造線の海底活断層に関する調査研究結果が最近まとめられています。その調査研究に携わった高知大学の岡村眞教授という方がいらっしゃいますが、直接説明も受けてまいりました。
それによると、伊方原発のある三崎半島の海岸線に並行する形で伊予灘沖合の海底に二つの断層系が走っている、その長さは、伊予灘東断層系では二十八キロメートル、それから西断層系では二十七キロメートルほど、しかもそれは、約六千二百年前、四千年前、二千年前と、ほぼ二千年周期で活動を繰り返して、それぞれ一回の地震でできた縦ずれが二メートルから三、四メートルだろうという調査結果が出ているわけです。もし三、四メートルのずれとなりますと、阪神・淡路大地震を起こした野島断層のおよそ二倍になるものであります。
原子力安全委員会は、兵庫県南部地震を踏まえた原子力施設耐震安全検討会を設けて、一昨年九月に報告書をまとめていらっしゃいます。それも読ませていただきましたが、その内容については大きな問題を持っていると私は思いますが、「おわりに」の部分の中で、原子力関係者に対して、安住することなく、耐震設計において常に最新の知見を反映するよう、その努力を呼びかけております。
したがって、原子力安全委員会としましても、また商業用発電用の原発を所管する資源エネルギー庁としましても、この岡村教授らの調査研究結果について検討して、最新の知見を謙虚に受けとめて原子力安全行政に生かしていくということが必要だと考えますが、その御用意があるかどうかをぜひ伺っておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114003911X00819970520/64
-
065・都甲泰正
○都甲説明員 ただいま御指摘の岡村高知大学教授の調査につきましては、具体的なデータ等が公表されておりませんので、現時点では、原子力安全委員会として詳細は承知していないのが現状でございます。
ただ、四国電力の伊方発電所三号機の増設に当たりまして、伊予灘海底断層群を設計用地震として選定して設計されておりまして、当委員会としては当該審査内容の妥当性について確認したところでございます。
それから、原子力安全委員会といたしましては、今御指摘いただきましたように、活断層などに関しまして新たな知見が確立されました場合には、これを耐震設計審査指針とか安全審査に適正に生かしていくこととしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114003911X00819970520/65
-
066・春名直章
○春名委員 妥当性という問題については後で御質問させてもらいますが、資源エネルギー庁にお聞きをいたします。
伊方原発三号機の設置申請の問題ですが、周辺活断層について最近一万年間には活動していないという評価を前提としていると思いますけれども、これに端的にお答えください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114003911X00819970520/66
-
067・吉田高明
○吉田説明員 伊方三号原子炉設置許可申請に係る安全審査におきましては、当該断層は洪積世末期以降、いわゆる約一万年前より新しい時代における活動は認められないというように確かに評価をいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114003911X00819970520/67
-
068・春名直章
○春名委員 そういう、一万年間は動いてないということだったのですが、それについて岡村教授らの調査研究結果は、ほぼ二千年の周期で動いている、しかも極めて大きなエネルギーを放出している可能性があるということを明らかにしたものでありました。しかも、二千年前に最新の活動があったということになりますから、二千年周期ですから、近いうちに大きく動くということも考えられる、動いてもおかしくない時期に来ているということが強調されているわけです。
この調査研究結果が妥当とすれば、当然、近隣の活断層で一万年間は動いていないという評価は変えなければならないと思います。これは論文で正式に発表されていないという先ほどのお答えですが、そういう正式な論文があれば、一万年間は動いていないという評価自身を変えていく必要が出てくるわけですが、その点についてはいかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114003911X00819970520/68
-
069・吉田高明
○吉田説明員 今先生おっしゃられましたとおり、岡村論文につきましては、まだ概要だけが発表されているという状況でございます。具体的なデータが発表されますれば、私どもそれを適切に評価いたしまして、考えてまいりたいと思っております。
ただ、伊方発電所前面海域の断層群につきましては、三号機設置時の音波調査におきまして活断層の存在を確認いたしております。設置許可申請書にも記載されておりますが、伊方発電所ではこれらの調査結果に基づいて、これらの活断層が連続して活動するとして地震動を厳しく評価し、設計用限界地震として耐震設計に反映をさせておりまして、万一これが活動しても安全性は損なわれることはないのではないかと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114003911X00819970520/69
-
070・春名直章
○春名委員 それで、今のお話に関連して、ちょっと資料を配らせていただいて、それを見ていただきながら御質問をさせていただきたいと思いますので、御了解いただけますか、委員長。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114003911X00819970520/70
-
071・佐藤敬夫
○佐藤委員長 お配りしてあります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114003911X00819970520/71
-
072・春名直章
○春名委員 そうですが。済みません。
それで、一枚目の資料をちょっと見ていただければと思いますけれども、要するに、限界地震を考慮して、それに耐える設計をしているので安全性の面では大丈夫だろうというお話だったと思います。その点でお聞きをしたいと思います。
限界的な地震による地震動も考慮したS2で対応しているということなんですが、伊方原発三号機のS2を算出する際に最大に考慮されているのは、一枚目のグラフで示されているとおり、敷地前面海域の断層群による地震、グラフの②の部分でありますけれども、そこが一番高いわけでありますね。それを上回る余裕を持ってS2をつくるというふうになっているわけです。
ところが、私がきょう言いたいのは、この敷地前面海域の断層群の評価そのものが、岡村教授らの調査研究結果を踏まえれば、変更すべき可能性が出てきているということを示しているのです。岡村教授によると、伊予灘で起きる地震の規模は、断層の長さやずれの見積もりから、伊予灘東と西の二つの断層系が同時に動くともし仮定すれば、その地震はマグニチュード七・六の規模になるという考えも示されています。つまり、S2を算出するその前提を見直さなければならない可能性が提起されているわけであります。その評価次第ではS2そのものの変更も必要になるかもしれません。そういう性格の重大問題が提起されている、そう受けとめなければならないと私は考えます。この点で認識を伺っておきたいと思いますが、いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114003911X00819970520/72
-
073・吉田高明
○吉田説明員 活動性が一万年前以降ということになりますと、これはむしろS1のあれとして考慮する必要があるのではないかと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114003911X00819970520/73
-
074・春名直章
○春名委員 では、もう一つ見ていただきたいと思いますけれども、この二枚目の資料は、伊方三号機、浜岡三号機で想定された最大地震動、それから神戸大学の例のトンネルで得られた地震動、この三つの場合のS2の応答スペクトルのグラフでございます。
伊方三号機の限界地震動、これは、想定している最大のものがBであります。実際に阪神・淡路大震災で起こって、神戸大学の観測された地震動が、これは岩盤上のデータというふうに思いますけれども、長周期の部分で揺れが上回っているというのがこの表であります。そして、Aの部分は浜岡三号機の限界地震動で、これは、日本で稼働している原発の最大の地震動を想定しているものとお聞きをしております。このAですら一部分で、一をちょっと超えた部分で地震動が上回っているというような、こういう結果が出ているわけであります。
そういう点で考えてみますと、耐震指針類の算定基礎になっている手法そのものが妥当なのかどうか、このことが根本から問われているんじゃないかと私は考えました。この手法の妥当性、この点はどういうふうにお考えですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114003911X00819970520/74
-
075・都甲泰正
○都甲説明員 耐震設計審査指針の考え方に基づきまして阪神・淡路地域において想定される地震動の応答スペクトルは、ただいま御指摘の神戸大学で観測されました地震動の応答スペクトルに対しまして全体的には大き目の値になっておると思います。
他方、これも今御指摘ございましたように、長周期側において神戸大学の記録が部分的に多少上回るところがあるということでございますが、私どもも調査いたしましたが、神戸大学の記録は、地震計が設置されているトンネルのコンクリート床の直下に浅い埋め戻し土あるいは表層土がありまして、またその下に約四十一メートルの厚さで風化された花嵐岩が分布しているということを現地調査でも確認いたしました。それで、耐震設計審査指針で言います岩盤上の記録ではございませんので、表層地盤の増幅などの影響が考えられるというふうに判断しております。
それから、原子炉施設の安全上重要な建物・構築物、機器・配管系は、いずれも原則として剛な構造にすることにしておりまして、これらの固有周期は短周期側に集中しておりますこと等から、地震動の評価方法の妥当性が損なわれるものではないというふうに判断いたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114003911X00819970520/75
-
076・春名直章
○春名委員 今のお答えで、改めての質問になりますけれども、部分的にS2を超えている、長周期の部分ではですね、このことについては否定をされていないわけであります。
しかも、二つの理由をお述べになりましたけれども、地震計の設置地盤の問題で増幅されたんじゃないかということですが、そういう地盤だということを示すデータ、またどの地点をボーリングしたのか、これは十分明らかにされておりませんし、仮にこうした地盤の場合に実際に地震動が増幅することになるのかどうか、これも検証しなければなりません。
さらに、原子炉施設の固有周期は短周期側に集中しているという御説明でございましたが、原発施設全体で見れば、長い配管などの長周期のものも部分的には存在をしております。これまでの原発事故も、思わぬところから重大事故に発展するケースも少なくありませんでした。
現実に得られたデータが限界的地震から想定される応答スペクトルを部分的にも超えたということは、これは無視するわけにいかない。もういい、大丈夫だ、特別なことやったんやということで無視することはできないんじゃないでしょうか。そのことをぜひ真摯に受けとめていただきたいと思います。そのことを指摘をして、次の質問に移りたいと思います。
岡村教授によりますと、伊予灘で起きる地震の規模ですけれども、断層の長さやずれの見積もりから、小さい試算でマグニチュード六・八程度、大きく見積もった場合は同七・二程度が想定されるとしています。しかも、伊予灘東と西の二つの断層系が同時に動くと仮定しますと、地震はマグニチュード七・六の規模になるだろう。その地震規模で震源断層からの距離が七キロメートル以内となれば、震度は七程度を想定するのが当然だというふうに指摘をされています。
複数の断層あるいは断層系・群が同時に動くことは、最近の地震の事例でも事実で証明されていると思います。何よりも、原子力安全委員会の報告書が、複数の断層が群として動くことを前提としているというふうになっているわけです。複数の断層群が同時に動く場合の地震動というのは、個別に動くことを想定した場合に比べて当然相当大きいものになります。
ですから、お聞きをしたいのですが、全国の原発の耐震審査に当たりまして、一連のものではない複数の断層群、断層系が動くことを想定したことがありますか。あればそれはどこでしょうか。伊方の場合はどうでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114003911X00819970520/76
-
077・佐藤敬夫
○佐藤委員長 質問の時間がもう短くなっておりますから、簡単に御答弁ください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114003911X00819970520/77
-
078・吉田高明
○吉田説明員 原子炉施設の安全審査におきましては、複数の活断層につきまして、あらかじめ活断層を分断して個別に評価するということではございませんで、地質及び地盤に関する文献調査、現地調査などに基づきまして慎重に評価をいたしております。
具体的に、複数の活断層の連続性を考慮している例といたしましては、関西電力の大飯発電所の郷村・山田断層、根尾谷断層、それから、まさに今お話にあります伊方発電所の敷地前面海域の断層などがございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114003911X00819970520/78
-
079・春名直章
○春名委員 しかし、私が聞いているのは、これまでの原発設置の審査に当たっては、たとえ断層が近接していても、すべての断層を一つ一つ個別の長さでとらえて地震の最大の規模を推定しているというようにお聞きをしています。こうしたこれまでの審査方法は、兵庫県南部地震等が示した現実だとか、あるいは安全検討会の見地からいっても、それ自身を見直す必要が出てきていると思います。近接している断層帯は一緒に動く可能性を深く考慮して、そういう評価方法にさらに前進をさせていただきたい。
原子力安全委員長の見解を伺いまして、私の質問を終わらせていただきたいと思います。よろしくお願いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114003911X00819970520/79
-
080・都甲泰正
○都甲説明員 現行の指針におきましては、近隣した断層群を含め原子力発電所周辺の断層につきまして、文献調査あるいは空中写真判読、地表地質調査等詳細な調査に基づきまして、考慮すべき活断層であるか否かを評価いたしまして、その活動度と活動年代に応じまして耐震設計に反映することといたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114003911X00819970520/80
-
081・春名直章
○春名委員 では、最新の知見をぜひ反映していただいて検討していただきたいということを要望して、質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114003911X00819970520/81
-
082・佐藤敬夫
○佐藤委員長 辻元清美君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114003911X00819970520/82
-
083・辻元清美
○辻元委員 社会民主党・市民連合の辻元清美と申します。
私は、核実験にまつわる過去を検討し、現代の問題点を改善し、核兵器のない未来を目指すことが必要であるという視点で、今回のCTBT条約の批准と、それに関して原子炉等規制法の一部を改正されるということについて質問させていただきます。
まず最初に、核兵器の使用や核実験にまつわる厳しい状況について、個人的な体験からお話しさせていただきたいと思います。
ちょうど二年前なんですが、一九九五年、戦後五十年の年に、アメリカのスミソニアン博物館で原爆展というのが催されるということがありました。皆さん記憶があると思います。この折に、広島、長崎での直接被害を受けた写真の展示につきましてアメリカ側は拒否したというような、私にとっては非常に残念なそして衝撃的な事件がございました。このように、核兵器の使用やそれから核にまつわることにつきましては、非常に国際情勢が厳しいな、アメリカの態度も厳しいなというふうにそのときは受け取りました。
そこで、私は、当時まだ国会議員ではございませんでしたが、国際交流団体で働いておりまして、客船をチャーターして、若者を連れて世界一周の交流に出かけていくというときに、この年に広島、長崎の被爆者の方から、アメリカで行われないので、船に原爆展を積んでいって、二十カ国を回りましたけれども、それぞれの国に船が入港する折にその原爆展を展示して世界の人に示してほしいという要請を受けました。それで、長崎市それから広島市とも協力をいただきまして、二十カ国で原爆展を開きました。その折には少し希望が持てまして、特に若者がたくさん来場いたしまして、この核の悲惨さについて見ていただいた、そういう経験がございます。
それともう一つ、ことしの一月なんですが、タヒチに行ってまいりました。皆さん、フランスの核実験についてさまざまな対応をされたかと思いますけれども、そこで見たことも私にとっては大きな衝撃でした。
まず一つは、タヒチから労働者が核実験施設に出ていくわけなんです。それで、その労働者に対しては非常に高い賃金を払われる。ということは、タヒチというのは本当に、ゴーギャンも言っておりました、非常に美しい島で、海とともに共生していた島であったわけなんですが、労働者に対しては高い賃金が払われるために物価が物すごく上昇してしまって、普通に魚をとって暮らしていた人たちの生活が破壊されていくというようなことを目撃してみたり、それからもう一つ、援助、援助ということで核実験に対する協力を求めてまいりましたので、地場産業がつぶれていた。そして、実際に私は被爆したと言われる人の証言も聞きました。
このように、核実験というのは、単にどこかで実験をやっているだけではなくて、必ずそこに人が関与しているということで、人権侵害などにもつながってきている現代の大きな問題であるという認識を持ちました。そういう意味で、この核実験にまつわる過去はどうであったか、今日に至るまで。この条約ができまして禁止されたとしても、今までの検証をすることは非常に重要ではないかというふうに思います。特に太平洋で核実験は何回も行われているのですが、被爆者といったら、皆言葉を知っているような現状です。
こういう中で、まず最初の質問に移ります。
現在までに核実験は何回行われたと日本政府は把握し、かつ核実験による被爆者はどれぐらい出ているというふうに把握されているのでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114003911X00819970520/83
-
084・篠塚保
○篠塚説明員 核実験の実施の数でございますけれども、一九四五年以降の数字でございますが、SIPRI、スウェーデンの平和研究所の年鑑等によりますと、五核兵器国及びインドにつきまして、例えばアメリカは千三十二回、それから、旧ソ連の時代も含みますけれどもロシアが七百十五回、それからイギリスが四十五回、それからフランスが二百十回、それから中国が四十五回、それからインドが一回でございます。
それから、被爆者の数でございますが、これは詳しいデータがございませんので、ちょっと今お答えできないわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114003911X00819970520/84
-
085・辻元清美
○辻元委員 この核実験の回数につきましてはさまざま報じられているところですけれども、私は、日本は一番最初に被爆国になったということで、過去の核実験にまつわる現状について、それでどういう弊害があったかというところを、日本がイニシアチブをとってそういう被爆の状態等も含めまして調査していくということも、これからこの条約を批准していく中では非常に重要な役割ではないかというふうに考えますので、ぜひそういう調査もあわせてお願いしたいというふうにここで申し上げたいと思います。
さて、最初に過去をということで、次に現代の問題について移らせていただきたいと思います。
現状の問題点の改善に向けては、まずCTBTが有効でなければならないと思います。ここで、先ほどからもさんざん指摘されております未臨界核実験について幾つか質問させていただきます。
実際の核実験、どこまでが未臨界でそれ以降が爆発であるという判断をするのはだれなのか。それぞれの実験を行っている当事国なのか。それで、これにつきましては、何か国際的にこれから取り組んで、基準や判断する組織を設けていこうという話があるのかどうか、もう一度確認させてください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114003911X00819970520/85
-
086・篠塚保
○篠塚説明員 先生御指摘のように、核爆発の定義でございますが、これは、条約の交渉の過程それから条約にも定義はございません。ただ、一般的に、核爆発とは核分裂または核融合による爆発というふうに考えられます。
なお、核爆発にはさまざまな態様のものがあると考えられまして、一概に言うことはなかなか難しいのですが、典型的な核爆発としましては、核爆発装置によって核燃料物質等が爆発し、熱とか放射線とか衝撃波等を生じるということだと思います。
それから、先生御指摘ございました、だれが核爆発の判断を行うのかという話でございますが、条約にも定義がございませんし、交渉の過程でも議論がございませんでしたが、CTBTのもとでの核爆発に当たるか否かということにつきましては、一般的な国際社会の理解とか認識に照らして個別に判断していくということになると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114003911X00819970520/86
-
087・辻元清美
○辻元委員 アメリカで実際に、アメリカのエネルギー省が出している実験データを独立のシンクタンクのジェイソンというところで分析して報告書を出しているんです。アメリカが行いましたこの実験の三回目以降については、未臨界か爆発か、実はこの判断はとても難しいという非常に厳しい報告書が出たりしております。
かつ、アメリカの科学者のフォン・ヒッペルという方が、CTBTの有効性を保つ最低限の条件として、これから実験が本当に臨界に達していないことを国際的に証明できる透明性を確立していくことが急務であるというふうに提唱されたりしておりますので、ぜひ日本政府としても、そこのところにつきまして今後検討していっていただきたいというふうに私は強く訴えたいと思います。
次にもう一つ、現状の問題点ということで、先ほどから話が出ておりましたインドの説得ということにもまつわるのですが、非同盟諸国との関係についてです。
日本は、被爆国として、非同盟諸国と大国との間の橋渡しをしていくということが非常に重要な役割であると思いますけれども、その御認識でよろしいでしょうか。日本政府もその認識でいいのかどうかだけまずお答え願えますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114003911X00819970520/87
-
088・篠塚保
○篠塚説明員 日本政府は、核のない世界を目指して現実的かつ着実な努力を進めていくという方針でおりますので、CTBTの後の例えばカットオフ条約交渉が課題としてございますけれども、このカットオフ条約交渉の早期開始につきましても、現在、今先生指摘ございましたような関係国の間の調整を含めまして最大限努力しているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114003911X00819970520/88
-
089・辻元清美
○辻元委員 そういう中で、非同盟諸国が幾つかの決議等もやっております。
御承知だと思いますけれども、ジュネーブ軍縮会議で、これは昨年の八月八日に、非同盟二十八カ国提案ということで、核兵器廃絶に向けての行動計画というのを出しております。これも、厳しく、すぐなくせという話じゃなくて、検討機関を設けていくことで合意できないか、期限つきで核軍縮を、これは二〇二〇年でございましたか、それまでに核をなくしていこう、こういう検討機関を設けることはいかがか。それから、昨年の十月二十九日のマレーシア決議も、そういう検討を始めていこうじゃないかというような提案がなされました。
こういう中で、日本は、マレーシア決議は棄権、行動計画は反対という態度を示されたかと思うのです。一方、日本が提唱します究極的核廃絶決議には非同盟諸国も賛成いただいているというふうに聞いているのですけれども、ここで棄権、反対という態度を示すよりも、私は、先ほどその橋渡しをする役割が重要であるという認識であるという御回答をいただいたかと思うのですけれども、このような時限つきの核廃絶に向けてのアクションプランの策定が必要であるとお考えなのかどうか。そして、日本はその中で、このような時限つきのアクションプランについてのアクションを起こすおつもりがあるのかどうか、お伺いしたいと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114003911X00819970520/89
-
090・篠塚保
○篠塚説明員 先生御指摘の非同盟諸国が出しました行動計画でございますが、これは基本的には、時限をあらかじめ設定いたしまして核廃絶を実現しようといった計画でございまして、我々の理解では、CTBT交渉の過程で、インド等が主張いたしましたが、参加国の支持を得られなかったというふうに考えております。
したがいまして、日本政府としましては、この計画は現実的な主張とは考えておりません。といいますのは、このような時限をつけました方法で核廃絶を実現しようということになりますと、核兵器国をテーブルに着けて、核兵器国を含んだ形で交渉していくことが重要だと我々は考えておりますが、核兵器国の核軍縮の態度をいたずらに硬化させまして、結局は核兵器国と非同盟諸国の対立を助長することにつながると考えておりまして、日本政府が目指しております核のない世界の実現からはかえって遠ざかってしまうんじゃないかというふうに認識しております。
したがいまして、我が国としましては、先ほどもちょっと申し上げましたけれども、やはり現実的、着実な措置を積み上げていくことが重要だと考えておりまして、CTBTの後の措置としましては、いわゆるカットオフ条約交渉を早期に開始していくことが重要だと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114003911X00819970520/90
-
091・辻元清美
○辻元委員 わかりました。それでは、非同盟諸国との関係というのが今一番ポイントになっておりますので、十分な踏み込んだ役割をしていただきたいと私は考えております。
もう一点、現状の認識ということで、核兵器のない地球に向けてということは日本政府はずっと訴えてきたところであると思います。そうしますと、世界の核軍縮の原点である広島、長崎の位置づけをどのようにすればいいかという点について質問したいと思います。
昨年ですか、国際司法裁判所のいろいろな判断が出ました。このときの勧告的意見に対する政府のコメントや代表質問における橋本総理の答弁では、核兵器の使用は人道主義の精神に反するというお答えを出していられるかと思うのです。ところが、この司法裁判所で、スリランカのウィラマントリ判事は、核使用は国際法の原則を破壊し、いかなる場合も違法であるというふうに発言されているんですね。
私は、やはり広島、長崎を抱えている日本としては、ここまで踏み込んだ立場にぜひ立ってイニシアチブをとるべきだと考えておるのですが、人道上というところにとどまったその理由はどういうことでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114003911X00819970520/91
-
092・篠塚保
○篠塚説明員 ただいま先生御指摘のございましたICJの勧告的意見でございますが、この中では、核兵器の違法性につきましてさまざまな意見が出されておりまして、主文となりますパラ一〇四においては、私が申し上げましたように、いろいろな意見が出ているものですから、この勧告的意見は全体として読まなければならないというふうに述べております。
基本的に、国際司法裁判所の意見でございますので、日本政府としては厳粛に受けとめておりますが、この核兵器の使用についての政府の考え方は、核兵器は絶大な破壊力それから殺傷力があるわけですから、国際法の思想的な基盤になっております人道主義の精神に合致しないというふうに考えております。同時に、重要なことは、先生御指摘がありましたように、日本国民の核兵器に対する特別な国民感情を踏まえまして、先ほどもちょっと申し上げましたけれども、核兵器のない世界の実現を目指して現実的な措置を着実に推進していくということが重要かと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114003911X00819970520/92
-
093・辻元清美
○辻元委員 それでは、先ほどから広島、長崎の位置づけということを申し上げたのですが、この広島、長崎の原爆投下につきましてははっきりと、どういう場合でもああいうことは犯してはいけないということで、違法であると私は考えております。スミソニアン博物館のあのときも非常に残念だったと申し上げたのですが、日本政府としては、この広島、長崎への原爆投下は違法であると考えているのかどうかについてはいかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114003911X00819970520/93
-
094・篠塚保
○篠塚説明員 広島、長崎に対する原爆の投下の件でございますが、政府としましては、国際法の根底にあります基本思想の一つである人道主義に合致しないという意味において、国際法の精神に反すると考えております。
ただ、一方、純法律的に見た場合、当時の原爆投下が国際法違反の行為であったと言い切れるまで、この問題に関する国際法の通念が固まっていたとは言いがたい状況にあると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114003911X00819970520/94
-
095・辻元清美
○辻元委員 最初に、過去を検証しということで今までの核実験の検証を行っていただく、そして現在の問題点ということで幾つか指摘させていただき、未来を核兵器のない世界に向けて、これは私はもう一歩踏み込まないと日本はイニシアチブをとれないのじゃないかという実感を持って、今質問を終わるわけなんです。
実は、近岡大臣には取っておきの質問をちょっとお願いしたがったのですが、時間が来てしまいましたので、次回にまたお願いするということを確認させていただきまして、きょうは最後の質問を終わりたいと思います。どうもありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114003911X00819970520/95
-
096・佐藤敬夫
○佐藤委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。
―――――――――――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114003911X00819970520/96
-
097・佐藤敬夫
○佐藤委員長 これより討論に入るのでありますが、その申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。
核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律の一部を改正する法律案について採決いたします。
本案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114003911X00819970520/97
-
098・佐藤敬夫
○佐藤委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。
お諮りいたします。
本案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114003911X00819970520/98
-
099・佐藤敬夫
○佐藤委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
―――――――――――――
〔報告書は附録に掲載〕
―――――――――――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114003911X00819970520/99
-
100・佐藤敬夫
○佐藤委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。
午前十一時四十二分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114003911X00819970520/100
4. 会議録のPDFを表示
この会議録のPDFを表示します。このリンクからご利用ください。