1. 会議録本文
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000・会議録情報
平成九年三月十八日(火曜日)
午後五時十三分開議
出席委員
委員長 町村 信孝君
理事 佐藤 剛男君 理事 住 博司君
理事 津島 雄二君 理事 長勢 甚遠君
理事 岡田 克也君 理事 山本 孝史君
理事 五島 正規君 理事 児玉 健次君
荒井 広幸君 伊吹 文明君
大村 秀章君 奥山 茂彦君
嘉数 知賢君 桜井 郁三君
鈴木 俊一君 砂田 圭佑君
田村 憲久君 根本 匠君
能勢 和子君 桧田 仁君
松本 純君 青山 二三君
井上 喜一君 大口 善徳君
鴨下 一郎君 坂口 力君
福島 豊君 桝屋 敬悟君
矢上 雅義君 吉田 幸弘君
米津 等史君 家西 悟君
石毛 鍈子君 枝野 幸男君
瀬古由起子君 中川 智子君
土屋 品子君
出席国務大臣
厚 生 大 臣 小泉純一郎君
出席政府委員
厚生政務次官 鈴木 俊一君
厚生大臣官房長 近藤純五郎君
厚生省社会・援
護局長 亀田 克彦君
委員外の出席者
議 員 五島 正規君
議 員 自見庄三郎君
議 員 能勢 和子君
議 員 桧田 仁君
議 員 山口 俊一君
議 員 井上 喜一君
議 員 福島 豊君
議 員 矢上 雅義君
議 員 土屋 品子君
厚生委員会調査
室長 市川 喬君
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委員の異動
三月六日
辞任 補欠選任
家西 悟君 中桐 伸五君
同月十三日
辞任 補欠選任
中桐 伸五君 家西 悟君
同月十八日
辞任 補欠選任
安倍 晋三君 荒井 広幸君
江渡 聡徳君 砂田 圭佑君
同日
辞任 補欠選任
荒井 広幸君 安倍 晋三君
砂田 圭佑君 江渡 聡徳君
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三月六日
医療保険制度の改悪反対、医療の充実に関する
請願(木島日出夫君紹介)(第四八八号)
同(中島武敏君紹介)(第四八九号)
同(木島日出夫君紹介)(第六一一号)
介護保障の確立に関する請願(佐々木憲昭君紹
介)(第四九〇号)
同(瀬古由起子君紹介)(第四九一号)
公的介護保障制度の早期確立に関する請願(平
賀高成君紹介)(第四九二号)
同(木島日出夫君紹介)(第六一三号)
厚生省汚職の糾明、医療保険改悪反対に関する
請願(辻第一君紹介)(第四九三号)
同(中路雅弘君紹介)(第四九四号)
同(藤木洋子君紹介)(第四九五号)
同(藤田スミ君紹介)(第四九六号)
同(木島日出夫君紹介)(第六一四号)
同(瀬古由起子君紹介)(第六一五号)
介護保障制度の確立と医療・福祉・年金の改善
に関する請願(東中光雄君紹介)(第四九七号
)
国民健康保険制度の抜本改革に関する請願(飯
島忠義君紹介)(第四九八号)
同(江口一雄君紹介)(第四九九号)
同(河村建夫君紹介)(第五〇〇号)
同(原田昇左右君紹介)(第五〇一号)
同(福田康夫君紹介)(第五〇二号)
同(綿貫民輔君紹介)(第五〇三号)
同(飯島忠義君紹介)(第五五四号)
同(桜井新君紹介)(第五五五号)
同(宮下創平君紹介)(第五五六号)
同(飯島忠義君紹介)(第六一七号)
同(石田勝之君紹介)(第六一八号)
同(河井克行君紹介)(第六一九号)
同(林義郎君紹介)(第六二〇号)
同(藤本孝雄君紹介)(第六二一号)
同(武藤嘉文君紹介)(第六二二号)
若中年層を含めた介護保険創設、医療保険改革
の見直しに関する請願(中桐伸五君紹介)(第
五〇四号)
同(村山富市君紹介)(第五〇五号)
援護関係諸法の国籍条項、戸籍条項撤廃、特別
立法制定に関する請願(秋葉忠利君紹介)(第
五三九号)
同(上原康助君紹介)(第五四〇号)
同(岡田克也君紹介)(第五四一号)
同(木島日出夫君紹介)(第五四二号)
同(五島正規君紹介)(第五四三号)
同(佐々木秀典君紹介)(第五四四号)
同(瀬古由起子君紹介)(第五四五号)
同(仙谷由人君紹介)(第五四六号)
同(辻元清美君紹介)(第五四七号)
同(土井たか子君紹介)(第五四八号)
同(中川智子君紹介)(第五四九号)
同(山本孝史君紹介)(第五五〇号)
同(吉田幸弘君紹介)(第五五一号)
国民医療及び建設国保組合の改善に関する請願
(中川智子君紹介)(第五五二号)
同(畠山健治郎君紹介)(第五五三号)
同(濱田健一君紹介)(第六一六号)
健保本人二割自己負担・老人医療一部負担大幅
引き上げ反対、介護保障確立等に関する請願(
瀬古由起子君紹介)(第六〇九号)
同(吉田幸弘君紹介)(第六一〇号)
医療保障の充実、介護保障制度の確立に関する
請願(瀬古由起子君紹介)(第六一二号)
医療等の改善に関する請願(熊谷市雄君紹介)
(第六二三号)
同(竹下登君紹介)(第六二四号)
同月十二日
医療保険制度改悪反対、公的介護保障の確立に
関する請願(木島日出夫君紹介)(第六五〇号
)
国民医療及び建設国保組合の改善に関する請願
(赤松広隆君紹介)(第六五一号)
同(秋葉忠利君紹介)(第六五二号)
同(井上一成君紹介)(第六五三号)
同(伊藤茂君紹介)(第六五四号)
同(伊藤忠治君紹介)(第六五五号)
同(池端清一君紹介)(第六五六号)
同(石井郁子君紹介)(第六五七号)
同(石橋大吉君紹介)(第六五八号)
同(岩田順介君紹介)(第六五九号)
同(上原康助君紹介)(第六六〇号)
同(大畠章宏君紹介)(第六六一号)
同(大森猛君紹介)(第六六二号)
同(金子満広君紹介)(第六六三号)
同(木島日出夫君紹介)(第六六四号)
同(北沢清功君紹介)(第六六五号)
同(小林守君紹介)(第六六六号)
同(児玉健次君紹介)(第六六七号)
同(五島正規君紹介)(第六六八号)
同(穀田恵二君紹介)(第六六九号)
同(佐々木憲昭君紹介)(第六七〇号)
同(佐々木陸海君紹介)(第六七一号)
同(志位和夫君紹介)(第六七二号)
同(瀬古由起子君紹介)(第六七三号)
同(仙谷由人君紹介)(第六七四号)
同(辻第一君紹介)(第六七五号)
同(辻元清美君紹介)(第六七六号)
同(寺前巖君紹介)(第六七七号)
同(中沢健次君紹介)(第六七八号)
同(中路雅弘君紹介)(第六七九号)
同(中島武敏君紹介)(第六八〇号)
同(中西績介君紹介)(第六八一号)
同(鉢呂吉雄君紹介)(第六八二号)
同(春名直章君紹介)(第六八三号)
同(東中光雄君紹介)(第六八四号)
同(平賀高成君紹介)(第六八五号)
同(不破哲三君紹介)(第六八六号)
同(深田肇君紹介)(第六八七号)
同(藤木洋子君紹介)(第六八八号)
同(藤田スミ君紹介)(第六八九号)
同(古堅実吉君紹介)(第六九〇号)
同(保坂展人君紹介)(第六九一号)
同(細川律夫君紹介)(第六九二号)
同(前島秀行君紹介)(第六九三号)
同(正森成二君紹介)(第六九四号)
同(松本善明君紹介)(第六九五号)
同(村山富市君紹介)(第六九六号)
同(矢島恒夫君紹介)(第六九七号)
同(山原健二郎君紹介)(第六九八号)
同(横光克彦君紹介)(第六九九号)
同(吉井英勝君紹介)(第七〇〇号)
同(赤松広隆君紹介)(第七四三号)
同(井上一成君紹介)(第七四四号)
同(池端清一君紹介)(第七四五号)
同(五島正規君紹介)(第七四六号)
同(土井たか子君紹介)(第七四七号)
同(葉山峻君紹介)(第八一二号)
国民健康保険制度の抜本改革に関する請願(玄
葉光一郎君紹介)(第七〇一号)
同(河野太郎君紹介)(第七〇二号)
同(藤本孝雄君紹介)(第七〇三号)
同(稲葉大和君紹介)(第七四八号)
同(田中和徳君紹介)(第七四九号)
同(野田聖子君紹介)(第七五〇号)
同(稲葉大和君紹介)(第八一三号)
同(田中和徳君紹介)(第八一四号)
同(細川律夫君紹介)(第八一五号)
医療等の改善に関する請願(細田博之君紹介)
(第七〇四号)
同(亀井久興君紹介)(第七五一号)
同(櫻内義雄君紹介)(第七五二号)
同(増田敏男君紹介)(第八一六号)
同(山口泰明君紹介)(第八一七号)
同(山本有二君紹介)(第八一八号)
若中年層を含めた介護保険創設、医療保険改革
の見直しに関する請願(井上一成君紹介)(第
七〇五号)
同(桑原豊君紹介)(第七〇六号)
同(中沢健次君紹介)(第七〇七号)
同(土井たか子君紹介)(第七五三号)
医療保険制度の改悪反対、医療の充実に関する
請願(正森成二君紹介)(第七四一号)
同(鳩山邦夫君紹介)(第八一一号)
公的介護保障制度の早期確立に関する請願(正
森成二君紹介)(第七四二号)
安心して受けられる医療保険制度の拡充に関す
る請願(堀込征雄君紹介)(第七八三号)
公的介護保険法におけるあん摩マッサージ指圧
師、はり師、きゅう師の地位確立に関する請願
(坂上富男君紹介)(第七八四号)
児童福祉法の理念に基づく保育の公的保障の
拡充に関する請願(石井郁子君紹介)(第七八
五号)
同(大森猛君紹介)(第七八六号)
同(金子満広君紹介)(第七八七号)
同(木島日出夫君紹介)(第七八八号)
同(児玉健次君紹介)(第七八九号)
同(穀田恵二君紹介)(第七九〇号)
同(佐々木憲昭君紹介)(第七九一号)
同(佐々木陸海君紹介)(第七九二号)
同(志位和夫君紹介)(第七九三号)
同(瀬古由起子君紹介)(第七九四号)
同(辻第一君紹介)(第七九五号)
同(寺前巖君紹介)(第七九六号)
同(中路雅弘君紹介)(第七九七号)
同(中島武敏君紹介)(第七九八号)
同(春名直章君紹介)(第七九九号)
同(東中光雄君紹介)(第八〇〇号)
同(平賀高成君紹介)(第八〇一号)
同(不破哲三君紹介)(第八〇二号)
同(藤木洋子君紹介)(第八〇三号)
同(藤田スミ君紹介)(第八〇四号)
同(古堅実吉君紹介)(第八〇五号)
同(正森成二君紹介)(第八〇六号)
同(松本善明君紹介)(第八〇七号)
同(矢島恒夫君紹介)(第八〇八号)
同(山原健二郎君紹介)(第八〇九号)
同(吉井英勝君紹介)(第八一〇号)
同月十四日
医療保険制度改悪反対、公的介護保障制度の確
立に関する請願(木島日出夫君紹介)(第八七
七号)
同(桑原豊君紹介)(第九四五号)
同(坂上富男君紹介)(第九四六号)
同(坂上富男君紹介)(第九七八号)
薬害エイズの真相究明、恒久対策の充実、薬
害根絶に関する請願(中川智子君紹介)(第八
七八号)
同(中川智子君紹介)(第九四七号)
同(児玉健次君紹介)(第九七九号)
児童福祉法の理念に基づく保育の公的保障の拡
充に関する請願(安住淳君紹介)(第八七九号
)
同(藤田スミ君紹介)(第八八〇号)
厚生省汚職の糾明、医療保険改悪反対に関する
請願(木島日出夫君紹介)(第八八一号)
同(瀬古由起子君紹介)(第八八二号)
同(志位和夫君紹介)(第九八〇号)
国民医療及び建設国保組合の改善に関する請願
(中西績介君紹介)(第八八三号)
国民健康保険制度の抜本改革に関する請願(桜
田義孝君紹介)(第八八四号)
同(新藤義孝君紹介)(第八八五号)
同(田中和徳君紹介)(第八八六号)
同(津島雄二君紹介)(第八八七号)
同(武藤嘉文君紹介)(第八八八号)
同(横光克彦君紹介)(第八八九号)
同(坂本剛二君紹介)(第九四八号)
同(津島雄二君紹介)(第九四九号)
同(武藤嘉文君紹介)(第九五〇号)
同(遠藤武彦君紹介)(第九八一号)
同(佐田玄一郎君紹介)(第九八二号)
同(津島雄二君紹介)(第九八三号)
同(谷津義男君紹介)(第九八四号)
同(柳沢伯夫君紹介)(第九八五号)
医療等の改善に関する請願(愛知和男君紹介)
(第八九〇号)
同(中谷元君紹介)(第八九一号)
同(堀之内久男君紹介)(第八九二号)
同(砂田圭佑君紹介)(第九五一号)
同(中野正志君紹介)(第九五二号)
同(大野松茂君紹介)(第九八六号)
同(加藤卓二君紹介)(第九八七号)
同(河本三郎君紹介)(第九八八号)
同(中野正志君紹介)(第九八九号)
同(松本純君紹介)(第九九〇号)
若中年層を含めた介護保険創設、医療保険改革
の見直しに関する請願(土井たか子君紹介)(
第八九三号)
同(中沢健次君紹介)(第九五三号)
医療保険制度改悪反対、公的介護保障の確立に
関する請願(桑原豊君紹介)(第八九四号)
長時間夜勤・二交代制導入反対、よい看護に関
する請願(古川元久君紹介)(第九九一号)
高齢者医療費値上げ中止に関する請願(吉井英
勝君紹介)(第九九二号)
は本委員会に付託された。
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三月十二日
医療費の患者負担増額阻止に関する陳情書
(第一〇五号)
医療保険制度の改革等に関する陳情書
(第一〇六号)
産業廃棄物対策の充実強化に関する陳情書
(第一〇七号)
放課後児童クラブの法制化に関する陳情書
(第一〇八号)
食品等の安全確保に関する陳情書
(第
一〇九号)
は本委員会に参考送付された。
―――――――――――――
本日の会議に付した案件
臓器の移植に関する法律案(中山太郎君外十三
名提出、第百三十九回国会衆法第一二号)
戦傷病者戦没者遺族等援護法の一部を改正する
法律案(内閣提出第三七号)
――――◇―――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00519970318/0
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001・町村信孝
○町村委員長 これより会議を開きます。
第百三十九回国会、中山太郎君外十三名提出、臓器の移植に関する法律案を議題といたします。
提出者より趣旨の説明を聴取いたします。五島正規君。
—————————————
臓器の移植に関する法律案
〔本号末尾に掲載〕
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00519970318/1
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002・五島正規
○五島議員 ただいま議題となりました臓器の移植に関する法律案について、提出者を代表いたしまして、その提案の理由及び内容の概要を御説明申し上げます。
欧米諸国では、既に脳死をもって人の死とすることが認められ、脳死体からの臓器移植は日常的な医療として完全に定着しており、年間九千件を超える心臓や肝臓の移植が行われております。その移植成績も、新しい免疫抑制剤の開発などにより年々向上しており、多くの患者がこの医療の恩恵を受けております。
アジア地域でも、一九八九年から一九九五年までの間に、心臓移植については韓国四十八例、シンガポール十四例、タイ七十七例、台湾九十四例が行われたところであります。
一方、我が国においては、脳死は人の死か、脳死体からの臓器移植は認められるのかについて議論があり、臓器移植以外では助からない多くの患者は、迫り来る死の影におびえつつ、移植を受けることができる日を一日千秋の思いで待ちわびながら、無念の涙をのんで死を待っておられるのが現状であります。ごく一部の方は移植を受けるためにやむを得ず海外に渡航しておられますが、海外においても多くの患者が移植を待っており、外国人である我が国の患者に対する門戸も徐々に狭まってきていると聞いております。こうしたことから、患者やその家族からは、我が圏においても脳死体からの心臓や肝臓などの臓器の移植の道を開いていくことが強く求められております。
この問題につきましては、日本医師会生命倫理懇談会が、昭和六十三年一月、死の定義について、従来の心臓死のほかに脳の不可逆的機能喪失をもって人間の個体死と認めてよいとの報告をいたしております。この報告書においては、
脳の死については、厚生省研究班の判定基準を必要最小限の基準として大学病院等の倫理委員会において基本的事項を定め、これによって、疑義を残さないように慎重かつ確実に判定を行うべきであること、
脳の死による死の判定は、患者本人またはその家族の意思を尊重し、その同意を得て行うのが現状では適当であること、
脳の死による死の判定は、それが日本医師会等で一般的に認められるとともに、患者側の同意を得て、適切な方法で、医師によって確実になされるのであれば、それを社会的及び法的に正当なものと認めてよいと考えられること、
脳死判定による死亡時刻としては、初めの脳死判定時と、その後六時間ないしはそれ以上たってからの脳死確認時とが考えられ、死亡診断書の死亡時刻はそのいずれによってもよいが、死後の相続の問題に備えて、もう一方の時刻も診療録に記録するものとすること、
臓器移植は、臓器提供者及び受容者本人、またはそれらの家族が十分な説明を受け、自由な意思で承認した場合に、日本移植学会の定める指針に従って行うものとすること、
以上の内容が盛り込まれているところであります。
その後、平成四年一月に、臨時脳死及び臓器移植調査会が、脳死を人の死とすることについてはおおむね社会的に受容され合意されているといってよいとした上で、一定の要件のもとに脳死体からの臓器移植を認めることを内容とする答申を提出しましたことは、皆様御承知のとおりでございます。
これを受けて、超党派の生命倫理研究議員連盟や各党・各会派の代表者から成る脳死及び臓器移植に関する各党協議会の場で検討、協議が重ねられ、平成六年四月には、臓器の移植に関する法律案が本院に提出されました。その後、厚生委員会における参考人の意見聴取や、いわゆる地方公聴会の開催が名古屋市、仙台市、福岡市の三カ所で行われたものの、必ずしも十分な審議が行われたとは言えない状況でございました。このため、昨年六月には、審議を促進し一日も早い法制化の実現を図るとともに、移植医療が広く国民に受け入れられ、浸透することを期待し、提出者から修正案が提出されましたが、昨年秋の衆議院解散に伴い、残念ながら、この法律案は廃案となるに至りました。
しかしながら、人工臓器の開発がいまだ十分でない今日、我が国においても、心臓、肝臓等の移植医療を国民の理解を得つつ適正な形で定着させ、人種国籍を問わず、人道的見地に立って、移植を待つ患者を一人でも多く救済できるようにしていくことは、一刻の猶予も許されない緊急の課題であります。
我が国においても、角膜及び腎臓については既に移植が行われており、医療としても定着していることは、皆様も御承知のとおりであります。
重度の腎臓障害により人工透析を受けている患者は、毎年約一万人ずつ増加してきており、現在では十五万人を超えるに至っております。これらの患者の方々は、人生を終えるまで人工透析を毎週受け続けるという大変な不自由な生活を強いられておりますが、腎臓の移植を受けた方々は生活の質が格段に改善され、多くの方が社会復帰を果たされているのであります。
このように、腎臓障害の患者の方の生活を大きく改善させる腎臓移植でありますが、残念なことに、近年、その件数は減少傾向をたどっております。この背景には脳死・臓器移植問題の影響があるのではないかと指摘する声もあり、腎臓移植を含めた我が国の移植医療全体をさらに推進していくためにも、早期に脳死・臓器移植問題の解決を図っていかなければならないものと考えます。
このため、脳死体から臓器を摘出できることを明確にするとともに、臓器提供の承諾を初めとする臓器の移植に関する手続や臓器売買の禁止などを盛り込んだ包括的な臓器移植立法の一日も早い成立がぜひとも必要と考えております。
このような見地に立って、平成六年四月に提出された法律案の内容に、昨年六月に提出された修正案の内容を加え、臓器の移植に関する法律案を再度提出した次第であります。
以下、この法律案の主な内容につきまして御説明申し上げます。
まず第一に、この法律は、移植医療の適正な実施に資することを目的とすることとしております。
第二に、臓器の提供に関する本人の意思は尊重されるべきことや、臓器の提供は任意にされたものでなければならないことなどの臓器移植の基本的理念を定めております。
第三に、医師は、臓器提供についての承諾がある場合には、移植術に使用するため、脳死体を含む死体から臓器を摘出することができることとしております。ここで、脳死体とは、脳幹を含む全脳の機能が不可逆的に停止するに至ったと判定された死体をいい、その判定は、一般に認められた医学的知見に基づき厚生省令で定めるところにより行うこととしております。
第四に、臓器提供の承諾についてでありますが、平成六年四月に提出された法律案では、本人の意思が不明等の場合においても、遺族が書面により承諾しているときには臓器の摘出ができることとされておりましたが、この法律案では、この部分を削除し、本人が生前に臓器提供の意思を書面により表示しており、かつ遺族が拒まない場合または遺族がないときにのみ臓器の摘出ができることとしております。ただし、当分の間の経過措置として、角膜及び腎臓については、本人の意思が不明等の場合で、遺族が書面により承諾したときは、脳死体以外の死体からの摘出も行うことができることとしております。
第五に、臓器の移植に関する記録の作成及び保存義務並びにその閲覧について定めております。
第六に、臓器売買及び臓器の有償あっせんについては、これを禁止することとしております。
第七に、業として臓器のあっせんをしようとする者は、厚生大臣の許可を受けなければならないこととしております。
第八に、平成六年四月に提出された法律案においては、法律の施行後五年を目途として検討が加えられ、その結果に基づいて必要な措置が講ぜられるべき旨が規定されておりましたが、本法律案では、この法律の施行後、三年を目途として検討が加えられることとしております。
このほか、必要な罰則規定等を定めるとともに、この法律の制定に伴い、現行の角膜及び腎臓の移植に関する法律は廃止することとしております。
なお、この法律の施行期日は、公布の日から起算して三月を経過した日としております。
以上が、この法律案の提案理由及びその内容の概要でございます。
何とぞ、慎重かつ十分御審議の上、速やかに御可決くださいますようお願い申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00519970318/2
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003・町村信孝
○町村委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00519970318/3
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004・町村信孝
○町村委員長 次に、内閣提出、戦傷病者戦没者遺族等援護法の一部を改正する法律案を議題といたします。
趣旨の説明を聴取いたします。小泉厚生大臣。
—————————————
戦傷病者戦没者遺族等援護法の一部を改正する法律案
〔本号末尾に掲載〕
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00519970318/4
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005・小泉純一郎
○小泉国務大臣 ただいま議題となりました戦傷病者戦没者遺族等援護法の一部を改正する法律案について、その提案理由及び内容の概要を御説明申し上げます。
戦跡病者、戦没者遺族等に対しましては、その置かれた状況にかんがみ、年金の支給を初め各種の援護措置を講じ、福祉の増進に努めてきたところでありますが、平成九年度においても、年金等の支給額を引き上げることにより戦傷病者、戦没者遺族等に対する援護の一層の充実を図ろうとするものであります。
改正の内容は、戦傷病者戦没者遺族等援護法の一部を改正し、障害年金、遺族年金等の額を恩給の額の引き上げに準じて引き上げるものであります。
以上が、この法律案の提案理由及びその内容の概要であります。
何とぞ、慎重に御審議の上、速やかに御可決あらんことをお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00519970318/5
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006・町村信孝
○町村委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。
次回は、明十九日水曜日午前九時五十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
午後五時二十八分散会
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00519970318/6
4. 会議録のPDFを表示
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