1. 会議録本文
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000・会議録情報
平成九年三月十九日(水曜日)
午前十時一分開議
出席委員
委員長 町村 信孝君
理事 佐藤 剛男君 理事 住 博司君
理事 津島 雄二君 理事 長勢 甚遠君
理事 岡田 克也君 理事 山本 孝史君
理事 五島 正規君 理事 児玉 健次君
伊吹 文明君 江渡 聡徳君
大石 秀政君 大野 松茂君
大村 秀章君 奥山 茂彦君
嘉数 知賢君 桜井 郁三君
鈴木 俊一君 田村 憲久君
根本 匠君 能勢 和子君
桧田 仁君 松本 純君
山下 徳夫君 青山 二三君
井上 喜一君 上田 勇君
漆原 良夫君 大口 善徳君
鴨下 一郎君 旭道山和泰君
坂口 力君 福島 豊君
桝屋 敬悟君 丸谷 佳織君
矢上 雅義君 吉田 幸弘君
米津 等史君 石毛 鍈子君
枝野 幸男君 中桐 伸五君
瀬古由起子君 秋葉 忠利君
中川 智子君 土屋 品子君
土肥 隆一君
出席国務大臣
厚 生 大 臣 小泉純一郎君
出席政府委員
厚生政務次官 鈴木 俊一君
厚生大臣官房長 近藤純五郎君
厚生大臣官房総
務審議官 中西 明典君
厚生省保健医療
局長 小林 秀資君
厚生省社会・援
護局長 亀田 克彦君
厚生省老人保健
福祉局長 羽毛田信吾君
厚生省児童家庭
局長 横田 吉男君
厚生省保険局長 高木 俊明君
厚生省年金局長 矢野 朝水君
委員外の出席者
議 員 中山 太郎君
議 員 自見庄三郎君
議 員 能勢 和子君
議 員 桧田 仁君
議 員 山口 俊一君
議 員 福島 豊君
議 員 矢上 雅義君
議 員 五島 正規君
内閣総理大臣官
房参事官 山崎日出男君
法務省刑事局刑
事法制課長 渡邉 一弘君
外務省アジア局
北東アジア課長 別所 浩郎君
厚生委員会調査
室長 市川 喬君
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委員の異動
三月十九日
辞任 補欠選任
安倍 晋三君 大野 松茂君
伊吹 文明君 大石 秀政君
福島 豊君 上田 勇君
桝屋 敬悟君 漆原 良夫君
米津 等史君 旭道山和泰君
家西 悟君 中桐 伸五君
中川 智子君 秋葉 忠利君
同日
辞任 補欠選任
大石 秀政君 伊吹 文明君
大野 松茂君 安倍 晋三君
上田 勇君 福島 豊君
漆原 良夫君 桝屋 敬悟君
旭道山和泰君 丸谷 佳織君
中桐 伸五君 家西 悟君
秋葉 忠利君 中川 智子君
同日
辞任 補欠選任
丸谷 佳織君 米津 等史君
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三月十九日
医療保険制度改悪反対、公的介護保障制度の確立に関する請願(坂上富男君紹介)(第一〇一九号)
同(坂上富男君紹介)(第一〇八八号)
同(坂上富男君紹介)(第一一一一号)
同(坂上富男君紹介)(第一一五一号)
国民医療及び建設国保組合の改善に関する請願(横光克彦君紹介)(第一〇二〇号)
同(赤松広隆君紹介)(第一一六四号)
国民健康保険制度の抜本改革に関する請願(遠藤武彦君紹介)(第一〇二一号)
同(佐藤孝行君紹介)(第一〇二二号)
同(津島雄二君紹介)(第一〇二三号)
同(村岡兼造君紹介)(第一〇二四号)
同(柳沢伯夫君紹介)(第一〇二五号)
同(山中貞則君紹介)(第一〇二六号)
同(木村義雄君紹介)(第一〇六八号)
同(近岡理一郎君紹介)(第一〇六九号)
同(津島雄二君紹介)(第一〇七〇号)
同(松永光君紹介)(第一〇七一号)
同(柳沢伯夫君紹介)(第一〇七二号)
同(近岡理一郎君紹介)(第一〇九一号)
同(津島雄二君紹介)(第一〇九二号)
同(西田司君紹介)(第一〇九三号)
同(鳩山由紀夫君紹介)(第一〇九四号)
同(柳沢伯夫君紹介)(第一〇九五号)
同(金田英行君紹介)(第一一二四号)
同(栗原裕康君紹介)(第一一二五号)
同(津島雄二君紹介)(第一一二六号)
同(柳沢伯夫君紹介)(第一一二七号)
同(池端清一君紹介)(第一一六五号)
同(木幡弘道君紹介)(第一一六六号)
同(津島雄二君紹介)(第一一六七号)
同(中島洋次郎君紹介)(第一一六八号)
医療等の改善に関する請願(奥野誠亮君紹介)(第一〇二七号)
同(小坂憲次君紹介)(第一〇七三号)
同(野田実君紹介)(第一〇七四号)
同(松永光君紹介)(第一〇七五号)
同(虎島和夫君紹介)(第一〇九六号)
同(堀込征雄君紹介)(第一〇九七号)
同(甘利明君紹介)(第一一二八号)
同(岸本光造君紹介)(第一一二九号)
同(阪上善秀君紹介)(第一一三〇号)
同(根本匠君紹介)(第一一三一号)
同(玄葉光一郎君紹介)(第一一五二号)
同(田中和徳君紹介)(第一一五三号)
同(松本純君紹介)(第一一五四号)
医療保険制度改悪反対、公的介護保障の確立に関する請願(坂上富男君紹介)(第一〇七六号)
厚生省汚職の糾明、医療保険改悪阻止に関する請願(東中光雄君紹介)(第一〇八七号)
医療保険制度の改悪反対、医療の充実に関する請願(東中光雄君紹介)(第一〇八九号)
同(金子満広君紹介)(第一一一二号)
同(古堅実吉君紹介)(第一一一三号)
公的介護保障制度の早期確立に関する請願(東中光雄君紹介)(第一〇九〇号)
同(吉井英勝君紹介)(第一一二〇号)
同(児玉健次君紹介)(第一一五六号)
同(佐々木陸海君紹介)(第一一五七号)
同(瀬古由起子君紹介)(第一一五八号)
同(不破哲三君紹介)(第一一五九号)
同(古堅実吉君紹介)(第一一六〇号)
同(正森成二君紹介)(第一一六一号)
介護保障の確立に関する請願(大森猛君紹介)(第一一一四号)
同(木島日出夫君紹介)(第一一一五号)
同(志位和夫君紹介)(第一一一六号)
同(中路雅弘君紹介)(第一一一七号)
同(中島武敏君紹介)(第一一一八号)
同(不破哲三君紹介)(第一一一九号)
同(児玉健次君紹介)(第一一五五号)
厚生省汚職の糾明、医療保険改悪反対に関する請願(志位和夫君紹介)(第一一二一号)
同(古堅実吉君紹介)(第一一二二号)
同(山原健二郎君紹介)(第一一二三号)
同(藤木洋子君紹介)(第一一六二号)
同(松本善明君紹介)(第一一六三号)
安心して受けられる医療保険制度の拡充に関する請願(北沢清功君紹介)(第一一六九号)
は本委員会に付託された。
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本日の会議に付した案件
介護保険法案(内閣提出、第百三十九回国会閣法第七号)
介護保険法施行法案(内閣提出、第百三十九回国会閣法第八号)
医療法の一部を改正する法律案(内閣提出、第百三十九回国会閣法第九号)
臓器の移植に関する法律案(中山太郎君外十三名提出、第百三十九回国会衆法第一二号)
戦傷病者戦没者遺族等援護法の一部を改正する法律案(内閣提出第三七号)
派遣委員からの報告聴取
――――◇―――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/0
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001・町村信孝
○町村委員長 これより会議を開きます。
第百三十九回国会、内閣提出、介護保険法案、介護保険法施行法案及び医療法の一部を改正する法律案の各案を一括して議題といたします。
この際、各案審査のため岡山県、福島県、北海道及び新潟県に委員を派遣いたしましたので、派遣委員からの報告を聴取いたします。
まず、第一班の岡山県及び第三班の北海道の派遣委員を代表いたしまして、便宜私からその概要の御報告を申し上げます。
まず、第一班の概要から申し上げます。
派遣委員としては、団長として私、町村信孝と、理事住博司君、理事山本孝史君、理事児玉健次君、委員桜井郁三君、委員能勢和子君、委員福島豊君、委員桝屋敬悟君、委員中桐伸五君、委員中川智子君の十名であります。
なお、現地において、熊代昭彦議員が参加されました。
現地における会議は、三月十二日午後一時三分より午後三時五十三分まで、岡山東急ホテル会議室において開催し、まず私から、派遣委員及び意見陳述者の紹介並びに議事運営の順序などを含めてあいさつを行った後、岡山県備前市長栗山志朗君、広島県沼隈町福祉保健課長・保健婦森下浩子君、岡山市医師会会長福島功君、山陽町福祉ボランティア虹の会チーフリーダー佐野康君、岡山県老人福祉施設協議会会長福原信行君、社会福祉法人敬友会ケアハウスパラジェネシス2施設長原まさ子君、株式会社ベネッセコーポレーション社長・岡山商工会議所副会頭福武總一郎君、老健あかね&健寿協同病院事務長常久勢子君の八名から参考意見を聴取いたしました。
その意見内容について、簡単に申し上げます。
栗山君からは、市町村の首長としての立場から、介護保険制度の成立は長年の悲願であること、なお、具体的な指摘事項として、介護保険への国民の理解の確保、基盤整備の促進、事務費の全額国庫負担、家族介護への現金給付の支給の必要性などの意見が述べられました。
森下君からは、市町村の看護職員としての立場から、本案に基づく介護認定制度の改善と、制度運営における保健婦の地位の確立などを図るとともに、都道府県による介護認定の受託には反対との意見が述べられました。
福島君からは、医師としての立場から、ホームヘルパーなどのマンパワーの確保、要介護者への介護保険と医療保険との連携、介護保険の対象に身体障害者を加えること、介護認定制度の改善、介護におけるかかりつけ医の重要性などの意見が述べられました。
佐野君からは、ボランティアの立場から、行政を補う観点からの介護におけるボランティア活動の重要性、介護認定審査会の委員の選定のあり方、家族介護への支援の充実などの意見が述べられました。
福原君からは、老人福祉施設の運営者としての立場から、特別養護老人ホームの在宅サービス事業への支援、施設の努力と介護の質が評価される制度の創設、介護保険の対象外となる老人福祉施策の充実、介護認定における医療、保健、福祉の関係者が一体となった審査システムの構築などの意見が述べられました。
原君からは、老人福祉施設の施設長としての立場から、介護保険制度の早期成立を願うものの、市民グループによる介護保険の運営、社会的入院の解消のための小規模介護施設の増設などの意見が述べられました。
福武君からは、社会保険方式による制度の創設は妥当であるが、介護サービスにおける選択の自由の確保、自助努力の促進を図る観点から、介護保険に、介護認定に応じた一定の点数を現物給付の利用券として被保険者に交付するバウチャー方式を導入すべきであることなどの意見が述べられました。
常久君からは、老人保健施設及び病院の事務長としての立場から、介護認定の基準及び在宅介護サービスのモデルを実情に即したものに改める必要性、弾力的なケアプランの作成、現施設入所者への保護施策の確保などの意見が述べられました。
以上のような意見が述べられた後、各委員から、介護認定審査会の審査及び委員の選定、経過措置期間中のサービス基準の問題、保険料滞納者の問題、介護保険導入と広域行政のあり方、介護保険に関する苦情処理と市民参加のあり方、介護サービスへの規制緩和と民間活力の導入、家族介護への現金給付の可否、被保険者の年齢要件、療養型病床群における介護の質、介護サービスにおける自己決定のあり方、要介護者への介護保険と医療保険との連携などについてそれぞれ熱心に質疑が行われた次第であります。
次に、第三班の概要を申し上げます。
派遣委員は、団長として私、町村信孝と、理事五島正規君、理事児玉健次君、委員奥山茂彦君、委員嘉数知賢君、委員能勢和子君、委員大口善徳君、委員坂口力君、委員米津等史君、委員中川智子君、委員土屋品子君の十一名であります。
なお、現地において、北村直人議員が参加されました。
現地における会議は、三月十七日午後一時より午後四時二分まで、札幌グランドホテル会議室において開催し、まず私から、派遣委員及び意見陳述者の紹介並びに議事運営の順序などを含めてあいさつを行った後、石狩郡新篠津村村長加賀谷強君、特別養護老人ホーム「旭ケ岡の家」副園長祐川眞一君、札幌市医師会理事赤倉昌巳君、株式会社ジャパンケアサービス代表取締役対馬徳昭君、北海道看護協会研修運営係長市村栄子君、北星学園大学社会福祉学部教授横山純一君、特別養護老人ホームかりぷ・あつべつ副施設長川島亮平君、特別養護老人ホーム静苑ホーム施設長中田清君の八名の方から参考意見を聴取いたしました。
その意見内容について、簡単に申し上げます。
加賀谷君からは、市町村の首長としての立場から、介護保険制度の必要性を強調するとともに、身近な市町村での認定、介護認定事務費等の不足が生じた場合の適切な財政措置、制度導入に向けた準備の具体的手順の明確化、将来の保険料の見直し段階における市町村の意見の反映、地域の特殊性を考慮した基盤整備と介護サービスの充実などの意見が述べられました。
祐川君からは、老人福祉施設の副園長としての立場から、社会保険方式を支持するとともに、被保険者の範囲を二十歳からとすべきこと、北海道のような広い地域における単一の介護保険審査会設置のあり方、重度障害者や痴呆老人の介護給付に関する自己決定、財産権の保護の問題などの意見が述べられました。
赤倉君からは、医師としての立場から、社会保険方式による介護保険の早期実現を望むとともに、有床診療所の療養型病床群への転換の必要性、高齢者の健康状態の急変に対する医療保険との相互連携、介護認定審査会に精神科医を配置すべき必要性などの意見が述べられました。
対馬君からは、介護サービスを提供している民間事業者としての立場から、利用者の介護保険についてアンケート調査の結果、大半が賛成であり、一方、在宅介護について、看護婦とソーシャルワーカーによるアセスメント、ケアプラン作成に基づくチーム方式によるホームヘルプサービス、日中に重点を置いた二十四時間在宅巡回型ホームヘルプサービスの必要性などの意見が述べられました。
市村君からは、看護職としての立場から、保険方式による負担増はやむを得ないが、モデル事業としての介護認定審査会の調査項目の見直し、調査とケアプラン作成のためのアセスメントの同一性、看護婦のケアマネジャーとしての役割の重要性、看護に要する量と質を適切に反映した介護報酬の設定などの意見が述べられました。
横山君からは、社会福祉学者の立場から、当面、公的介護保険の導入はやむを得ないが、将来における租税方式への移行、新ゴールドプラン終了後のスーパーゴールドプランの作成、経過措置の時期の明確化、統一的サービス基準の設定などについて意見が述べられました。
川島君からは、特別養護老人ホームの福祉施設長兼医師としての立場から、介護認定の基準の緩和、保険料未納者等への罰則の廃止、低所得者の保険料免除、利用料は原則として徴収しないこと、現行の措置制度を拡充し、保険制度と組み合わせる必要があるなどの意見が述べられました。
中田君からは、老人福祉施設などの運営者としての立場から、社会福祉法人に関する規制の緩和と資金運用の弾力化、施設職員の配置基準の改善、養護老人ホーム及び軽費老人ホームに対する機能の充実、要支援には至らない高齢者に対するサービスのあり方などの意見が述べられました。
以上のような意見が述べられた後、各委員から、介護認定及びケアプラン作成のあり方、介護認定の情報の電子化による共有、民間介護サービスの状況、痴呆等の判定の問題、経過措置の期限の明確化とサービスが滞っている自治体への対応、措置制度と介護保険の契約の関係、訪問看護の利用状況、市町村間の地域格差が生じる理由、福祉関係の住民運動の現状、介護保険の広域的運営、社会保険方式による給付の権利性、家族介護への現金給付の問題などに関して、それぞれ熱心に質疑が行われた次第であります。
なお、各班の会議の内容を速記により記録いたしましたので、詳細は会議録によって御承知願いたいと思います。
以上をもって第一班及び第三班の報告を終わりますが、今回の会議の開催につきましては、関係者多数の御協力により、極めて円滑に行うことができた次第であります。
以上、御報告申し上げます。
次に、福島県及び新潟県について、津島雄二君、お願いをいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/1
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002・津島雄二
○津島委員 第二班の福島県及び第四班の新潟県の派遣委員を代表いたしまして、私からその概要を御報告申し上げます。
まず、第二班の概要から申し上げます。
派遣委員は、団長を務めました私、津島雄二のほか、理事佐藤剛男君、理事岡田克也君、委員江渡聡徳君、委員大村秀章君、委員根本匠君、委員青山二三君、委員矢上雅義君、委員枝野幸男君、委員瀬古由起子君、委員土肥隆一君の十一名であります。
現地における会議は、三月十二日午後一時から午後四時六分まで、サンパレス福島会議室において開催し、まず私から、派遣委員及び意見陳述者の紹介並びに議事運営の順序等を含めてあいさつを行った後、福島市健康福祉部次長鈴木信也君、栃木県大田原市長千保一夫君、社団法人福島県医師会常任理事原寿夫君、連合福島事務局長和合正義君、社会福祉法人福島県社会福祉協議会副会長渡辺康夫君、日本ソーシャルワーカー協会福島県支部理事小松智世美君、社団法人福島県看護協会会長遠藤セツ君、生協いいの診療所所長松本純君の八名の方から参考意見を聴取いたしました。
その意見内容について、簡単に申し上げます。
鈴木君からは、財源は税に求めるべきであるとし、本案の問題点として、保険料未納者の発生、保険料滞納者に対する給付制限、高齢者に対する保険料負担、給付水準の格差、また、市町村による介護認定の必要性、基盤整備に対する懸念等の意見が述べられました。
千保君からは、財源を目的税としての消費課税に求めるべきであるとし、本案の問題点として、保険料未納者の発生、保険料滞納者に対する給付制限、基盤整備に対する懸念、市町村の事務量等の増大、また、現金給付を認めるべきであるとの意見が述べられました。
原君からは、本案の内容がより実効性のあるものとなるために、介護認定審査会の運営のあり方の検討と特例介護サービス費の柔軟な運用の制度化、介護保険事業計画における地域特性の反映とマンパワーの安定的確保を図るとともに、療養型病床群の有床診療所への拡大に関しては、地域医療計画の必要病床数の算定基準の見直し等の意見が述べられました。
和合君からは、利用者本位の立場から、新ゴールドプランの達成とスーパーゴールドプランの策定、特別養護老人ホーム等の許認可と国庫補助の見直し、公平さが確保される介護認定基準、現金給付、ボランティア活動の位置づけの明確化等を求める意見が述べられました。
渡辺君からは、介護認定の公平な実施、施設とマンパワーの十分な確保、市町村等の財政基盤及び組織体制の整備と積極的な取り組みによる介護サービスの地域格差の解消等を図るとともに、介護保険制度の早期実現に期待する旨の意見が述べられました。
小松君からは、ソーシャルワーカーの立場から、介護給付と予防給付の明確化は評価するが、保健、医療、福祉の専門家を含めた介護認定審査会の委員構成、介護利用者の代弁機能の明文化を図り、介護保険制度の成立を望む旨の意見が述べられました。
遠藤君からは、看護婦の立場から、介護保険制度の早期成立を望むが、介護認定の妥当性、客観性等の確保、要介護者のケアマネジャーとしての看護職者の登用、訪問看護ステーションの事業主体としての看護職者グループへの法人格の付与等の意見が述べられました。
松本君からは、要介護者、要支援者の区別を解消し、保険料未納者等に対する給付制限を撤廃するとともに、早急に基盤整備を先行させるべき等の意見が述べられました。
以上のような意見が述べられた後、各委員から、費用負担のあり方、新ゴールドプランの見直しと要介護者の増加の見通し、保険料未納者等に対する給付の制限、介護認定のあり方、施設整備費のあり方、ホームヘルパー等の社会的評価の確立と処遇のあり方、介護分野への民間事業者の参入、在宅介護に対する現金給付の是非などに関して、それぞれ熱心に質疑が行われた次第であります。
次に、第四班の概要を申し上げます。
派遣委員は、団長を務めました私、津島雄二のほか、理事長勢甚遠君、委員田村憲久君、委員桧田仁君、委員松本純君、委員井上喜一君、委員鴨下一郎君、委員吉田幸弘君、委員石毛鍈子君、委員瀬古由起子君の十名であります。
なお、現地において、稲葉大和議員、坂上富男議員が参加されました。
現地における会議は、三月十七日午後一時から午後四時三分まで、オークラホテル新潟会議室において開催し、まず私から、派遣委員及び意見陳述者の紹介並びに議事運営の順序等を含めてあいさつを行った後、新潟県豊栄市長小川竹二君、浦佐萌気園診療所所長・在宅ケアを支える診療所全国ネットワーク代表黒岩卓夫君、日本介護福祉士会副会長・新潟市特別養護老人ホーム大山台ホーム所属岡田史君、新潟県老人福祉施設協議会副会長石田勇三君、社団法人ぼけ老人をかかえる家族の会新潟県支部世話人田中美紀君、前社会保障制度審議会委員・介護の社会化を進める一万人市民委員会宮城県民の会代表大川昭雄君、老人保健施設やすらぎ園施設長荒川修二君、医療ソーシャルワーカー小網由美君の八名の方から、参考意見を聴取いたしました。
その意見内容について簡単に申し上げます。
小川君からは、市町村の首長としての立場から、基盤整備の必要性、医療保険及び介護保険の保険料の調整の必要性、第一号被保険者に対する保険料への配慮、市町村の費用負担に対する財源の付与、家族介護への現金給付等の意見が述べられました。
黒岩君からは、地域医療を担う医師としての立場から、介護保険制度におけるかかりつけ医の役割の明確化、市民参加の制度化、加齢による疾病とする条項の削除、障害者への適用の拡大等の意見が述べられました。
岡田君からは、介護の専門職としての立場から、介護保険制度の導入に賛同するとした上で、住みなれた家での生活を可能とする在宅サービスの確立、病院と地域の介護専門職との連携やきめ細かな介護の必要性、人間としての尊厳の保持と自己決定を可能とする制度の確立等の意見が述べられました。
石田君からは、施設長としての立場から、介護保険制度を支えるに当たり公費と保険料のバランスのとれた組み合わせが必要とした上で、施設整備に対する公費補助の継続、施設に対する費用負担水準の維持、利用料決定における低所得者に対する配慮、施設職員の処遇改善、在宅サービスと施設サービスの一体的、効率的な提供を心がける必要性等の意見が述べられました。
田中君からは、実際の介護に当たった経験から、介護をする家族の心のケアにも十分な配慮をする必要があるとした上で、利用者のニーズに応じた介護施設の改善、介護の専門家や経験者の行政への登用等の意見が述べられました。
大川君からは、我が国の高齢者福祉のおくれを解消するため、本法案の成立を強く望むものとし、必要な修正点として、オンブズマン機能を備えた介護保険運営委員会の設置、経過措置期間の明示、利用者の選択権の保障、加齢による疾病とする条項の削除及び介護保険適用年齢の見直し等の意見が述べられました。
荒川君からは、老人福祉施設の施設長としての立場から、介護保険制度の導入が基盤整備を促し、また、給付と負担の関係を明確にするという点で本法案は評価できるものとし、その運用に当たっての利用者とサービス提供側の信頼関係の重要性等の意見が述べられました。
小網君からは、医療ソーシャルワーカーの立場から、本法案の問題点として、介護認定の基準と実態の乖離、保険料及び利用料の過大な負担、基盤整備の充実の必要性等の意見が述べられました。
以上のような意見が述べられた後、各委員から、介護保険法案に関する国民の認識、基盤整備の進捗状況、家族介護への現金給付、対象者の年齢要件、市民参加の意義、市町村の事務量、保険料滞納者等に対する給付制限、介護認定及び給付サービスの基準、マンパワーの確保、介護の事業主体の多様化、ケアプラン作成の専門性等について、熱心に質疑が行われた次第であります。
なお、各班の会議の内容を速記により記録いたしましたので、詳細は会議録によって御承知願いたいと思いますので、会議の記録ができましたならば、本委員会議録に参考として掲載されますようお取り計らいをお願いいたします。
以上をもって、第二班及び第四班の報告を終わりたいと思いますが、今回の会議の開催につきましては、関係者多数の御協力により、極めて円滑に行うことができた次第であります。
以上、御報告申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/2
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003・町村信孝
○町村委員長 御苦労さまでした。
以上で派遣委員からの報告は終わりました。
お諮りいたします。
ただいま報告のありました第一班、第二班、第三班及び第四班の現地における会議の記録が後ほどでき次第、本日の会議録に参照掲載することに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/3
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004・町村信孝
○町村委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
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〔会議の記録は本号(その二)に掲載〕
――――◇―――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/4
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005・町村信孝
○町村委員長 次に、第百三十九回国会、中山太郎君外十三名提出、臓器の移植に関する法律案を議題といたします。
これより質疑に入ります。
質疑の申し出がありますので、順次これを許します。佐藤剛男君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/5
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006・佐藤剛男
○佐藤(剛)委員 自由民主党の理事の佐藤剛男でございます。
まず最初に、臓器移植法案につきまして、提案者の各位に対しまして深甚なる敬意を表する次第でございます。
また、聞くところによりますと、また別途法案を用意されておられる方々に、重ねまして敬意を表したいと思います。
そして委員長、この厚生委員会、今国会非常に多忙でございます。ただいま御報告がありましたような地方公聴会での介護保険法、あるいは今後出てきますでしょう国民健康保険法等の一部改正、こういう多忙な中におきまして、非常に重要な、そして、この方向を間違えますと立法機関としての国会の信義が問われるような重大な法律だと私は思っているわけでございますが、そういう問題にかんがみまして、委員長が、各厚生委員の方々にそれぞれの意見陳述の機会をつくっていただく方式を導入していただいた。私は、これは国会史上にも残るようなものであろうと思っておりますし、その意味におきまして、町村委員長に対しまして深甚なる敬意を表する次第でございます。その意味におきまして、私ども厚生委員、立法機関としてのエネルギーの燃焼を尽くすつもりでございます。
私事にわたって恐縮なんでございますが、私は、通産省時代、七つの課長をやり、参事官をやり、部長をやって国会議員になったわけであります。その中で、厚生管理官というのをやらせていただきました。そして職員の共済を含め、今日の国鉄との共済合併などというのが将来出てきそうだななんという話をしている時期でございました。そういうときにちょうど、今の虎の門病院が、国家公務員の共済病院でございますが、専売公社が移るときに、そこに千ベッドの増設を図る一翼を担わせていただいたわけであります。厚生管理官というのが各省庁の評議員をやっておりまして、その根回し役をやらせていただきました。
そんな経緯で、近々院長さんになられる秋山先生初め、大平先生の主治医でございました心臓外科の山口部長さんとか、紫芝部長さんとか、そういう先生と一緒に、当時から、インターナショナル・メディカルセンター構想、つまり、国際的に通用する、日本において、外国の名医も手術者も来まして、あるいは発展途上諸国の人たちが学びに来る、そういうような施設形成というのを議論し、そういうようなことをしようと思ってこの増設千ベッドをしたのでありますが、そのようにはなりませんでしたけれども、今なおその実現に志を持っているものでございます。これは後ほど関係いたしますので、私、本件についての問題提起とさせていただきます。
といいますのは、私の臓器移植についての考え方は、日本にただ一つの国家的な施設を設立し、あるいはどこかの附属病院でも構いません、私立の女子医大でも構いませんが、そういうようなものの組織の拡充、増設を図り、そして、学閥を超えて日本全体の名医が集まり、チームを組んでいろいろな、特に心臓の問題につきましては、心臓医だけがやる気があってもだめなわけでございますから、これは、トレーニングされた看護婦チームであるとか、それから心臓内科医、その他に、手術後の拒絶反応あるいは感染の問題をいち早く手当てできる免疫学とか感染症の専門家を含む一種のチームワーク、総合的チームだと私は思っておりますが、さらには、心理学者、宗教学者、そういうようなそれぞれの職種の専門家で総合チームをつくってやらなければ、特にこの心臓の分野において、心臓というのは他の臓器移植と異なりまして、生体間の移植というのができない。鼓動している状態から摘出する必要があるわけでありまして、そこがこの脳死とは切り離せないものなわけでございます。
そういう一つの問題がございますので、私は、インターナショナル・メディカルセンター、こういうような施設ができるということ、そして、できるまでは、仮にこの法律が通ったといたしても施行を、附則の問題になりますが、この案では公布の日から起算して三カ月を経過したら施行するという規定になっておりますが、私の考え方に沿えば、この法律が通ってもそのような基本的な整備ができるまでは施行してはならないという、公布の日から施行するというような言葉で言えば、施行の日は別に法律で定める、あるいは政令で定める、こういうような考え方を導入すべきであるという一つの知見を私は持っているわけであります。
そのためには、今、発展途上諸国に日本が出かけていって腎臓だの何だのもらっているという形ではなくて、あの日本に行けば、そこに行けば治るということで、むしろ、先進国、発展途上諸国の病んでいる人たちが来る、こういうふうな施設をつくるべきである。そして、そういうものは何も、ODA、政府援助というのは発展途上諸国において病院等々に随分使用されておりますけれども、発展途上諸国分については日本においてそういうものに活用するというようなことも可能であるということを、とりあえず私は申し添えておきます。
ただ、私、福島で、新聞にも出ておりまして御記憶の方もあると思いますが、尚志学園という日本で初めての女子の工業高等学校、私がその特別顧問をし、私のいとこが校長でありますけれども、そこに肝臓のぐあいの悪い女生徒、広川さんという方でございましたが、オーストラリアに肝臓の移植に参りました。非常に経費がかかりました。しかし、その友人たちまた卒業生が相当の拠出をいたしまして、そして手術をいたし、成功して、今日、福祉の道で勉強をいたしておるという事実も私は経験いたしているわけでございます。
そういうところの問題で、医学分野の経験と同時に、私自身、津島雄二先生と同じでございますが、私は検事をやるつもりで司法試験も通ったわけでありますが、刑事との問題について、きょうも法務省の検事をお呼びいたしておりますけれども、その問題にこの問題はぶつかる話であるわけでございまして、そこに、本件の問題について、仮にもし廃案になってしまうと今後は日の目を見ないという可能性もあるわけでありますし、また、中途半端な形で実行されていきますと医療不信に陥ってしまう。この国民が医療不信に陥ってしまうという問題は、私は、我々立法機関にいる者が非常に強く考えなければならない問題であろうと思っているわけであります。
提案者の説明の中に、もうこれ以上余計な議論を重ねないで、一日千秋の思いで待っている患者さんを早く助けてやってくださいというお話がございました。しかし、こういうふうなことを言っている人たちもいるわけであります。一日千秋の思いで待っている患者さんを手術したために一日か長くても数週間で殺さないでください、こういう考え方もあるわけであります。
ですから、そういうふうなことの問題をどこでやるかという問題に私どもは直面いたしているのじゃないか。それにはやはり、簡単には、条件整備の問題であります。基盤整備の問題であります。
今日の日本の病院の状況を見ますと、これは、私が先ほど申し上げました虎の門病院の状況を先生方との話を通じて私なりに勉強させていただく、あるいは、私はスイスに三年おりまして、スイスは医学的な面が非常に発展している分野でございますが、そういうようなところの部門を見まして、果たしてこの必要条件というものが今日一流だと言われている病院の中においてもあるのかどうなのか、私は疑義を持っているものでございます。
整備不十分な飛行機が、成功するということは将来の一つの大きな夢であります。臓器ではないけれども、輸血というのは、一種の、他人のものをとって移植するようなものでございます。しかし、それでエイズという問題が起きた。ですから、臓器の中でも、今法律がある腎臓、角膜、これと心臓、肝臓とは違う。少なくとも、先ほど申し上げました心臓というのは、鼓動のある間に摘出する必要があって、それが脳死という問題と切り離せないというふうなところにこの問題があるわけでございます。
安全が保証されないのに飛行機が飛行許可を出せ、飛んだはいいが途中で落ちてしまったら、これはどうしようもないわけであります。整備だの何だのぐずぐず言わずに飛ぶことが先だという考え方もあるかもしれないわけでありますが、あるいは百の議論よりも一つの実行だという考え方もあるかもしれませんが、私は、整備そして安全が保証されていない飛行機に乗って夢見る外国へ飛んでいこうということは無分別な行動になるのではないか、やはりきちんとした整備をしてスタートしようではないか、こういう考えに立っているわけでございます。
そういう努力を行って、まだ日本の場合には、北海道の件もありますけれども、英語で言いますとラーニングカーブといいますか、つまり、経験数に比例して成績が向上する、こういうラーニングカーブの効果というのが、手術例はないわけでありますから、そういう効果がはかれないわけでありますから、多数の病院で行っていきますとますますラーニングカーブが落ちてしまう。
そういう意味において、私は、先ほど申しました、本来ならば国がそれだけのそういう施設を一つつくる、できなければどこかの病院を指定する、インターナショナル・メディカルセンターのようなものをつくる、そこに金も投資する、組織も入れ込む、総合的チームを入れる、そういうふうな形でやってスタートすべきではないか、かように考えるわけでございます。
といいますのは、提案者の説明にアメリカの例がございました。私は心臓の移植を一つの典型としてとりますが、アメリカでいいますと百六十近くの病院がやっているのです。やっているのですが、今どういう状況にあるかというと、反省期になっている。なぜ反省しているかというと、ドナーが減っているのです。ドナー、提供者が減少しているのです。なぜ減少したのか。これは、成功率が少ないからなんです。年間十以下しか移植していないところというのは手術成績が大変悪いというふうに私は聞いております。そして、年間六十例、月で言いますと五例、このぐらいのものを行わないとなれが出てこないということを、私はミシガン大学の先生からもそういう話を聞いているものでございます。それで、現在、アメリカにおきましては、ドナーの提供を待っている人が四万とか五万とかあるというふうに聞いているのです。しかし、ドナー、提供者は二千人を割ってしまった。なぜ割ってしまったかというと、これは一つの医療不信の問題がありまして、ERというビデオがございますが、その中の何巻かにこの問題が非常に出ております、脳死があったときにどういうふうな行動を行うか。
そういうふうな問題を提起いたしまして、私の結論は、日本において一カ所、心臓というのは角膜とは違う、腎臓とは違うということを前提にいたしまして進めるべきではないかということでございます。本日は、質問というよりもそれぞれの意見という考え方が委員長の方針だと私は理解いたしておりますので。
私が質問を申し上げるのは、法務省、検事に、巷間聞くところによりますと、もしこの法案が国会において連休前に通らないと移植を行ってしまう。言うならば、言葉は悪いけれども、見切り発車といいますか、そういうようなことも聞いているわけでございます。そういう場合が生じたときに、これは法務省に言っても難しい話で、今の検察官便宜主義の場合では、個別の案件が出てこなければ具体的捜査云々ということで見解が出にくいと思いますけれども、もし仮にそういうような形が不幸にして出てくる、告発が出る、そういう場合、仮定の事実で恐縮でございますし、また、答えにくい部分があればそれは答えにくいということを前提で構いませんから、まず法務省の御見解、私が今申し上げたことについて御理解を賜っておると思いますが、説明員で結構でございますから、本件について、この法律が通らなくて、そして、一つの倫理、移植学会の中でガイドラインを出してそれに沿った形でやる、いわばみんなで渡れば怖くないという思想でございますが、そういうふうなことが起きたときに一体どういうふうな見解をおとりになるのかを質問いたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/6
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007・渡邉一弘
○渡邉説明員 お答えいたします。
今御指摘になりましたとおり、犯罪の成否につきましては、個々の具体的事件を離れて一概に述べることはできませんけれども、あえて一般論として申し上げますれば、臓器移植のために脳死体からの臓器の摘出を想定した場合、脳死が人の死であるとされるのであれば、殺人罪の成否ではなく死体損壊罪が問題となります。そして、その違法性阻却の可否が問題になると思われます。他方、脳死が人の死でないとすれば、脳死体からの臓器摘出は、殺人罪ないし承諾殺人罪の問題となり、やはりその違法性阻却の可否が問題になると思われます。
さらに、告発された場合、どのようにするのかということでございますけれども、これも委員からもう既に御指摘ありましたように、事件を想定した上で、その処理に関して答弁をすることは差し控えさせていただきたいと思いますけれども、一般論としてあえて述べますと、検察当局におきましては、告発を受理した場合には、所要の捜査を遂げた上、法と証拠に基づき適正な処理を行うものと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/7
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008・佐藤剛男
○佐藤(剛)委員 この問題を提起しますのは――恐らくそういう回答が出てくると思っていたのです。法律の解釈というのは社会通念上国民のというふうに始まるわけですが、その社会通念上が、今、日本で死というのは何なのかといえば、心臓がとまる、呼吸がとまる、目が開く、こういう一つのものを死という、そういう形が中心的にあると思うのですが、例えばわいせつという言葉、かつて、チャタレー裁判ではわいせつになっていた、しかし、ある日あるとき、いつの間にかそれが解放されて、今や、キオスクに行っても、雑誌の中で、ここに女性の代議士の方々がおられて申しわけないけれども、全裸の姿が出ておる、こういう形が当然のことになってしまう。社会通念上わいせつというのは、つい数年前までは取り調べをやりなにをやって、いつの間にか、あるときに通念が変わってしまう。そういう面で、今私は問題の提起をいたしたわけでございます。
そこで、最後に、提案者の方々に質問をさせていただきます。
私が今申し上げました考え方、これに対してどのように思われるか。
それからもう一つ、私が申し上げました、事実間違いないと思いますが、アメリカにおいてドナーが減少しておる、そして反省期に入っておる。それは何なのかというと、数が多過ぎた。百六十近い、百五十七ぐらいの病院がやっておる。そして、年間六十例をやっているというのはほんのわずか、二十病院以下だと聞いております。ですから、簡単に言いますと、ラーニングカーブが非常に少ないところなんです。そこで、そういうカーブが少ないところは、余りにも成績が悪いのでむしろストップしよう、こういう問題があるわけでございます。その点、どのような形で把握されておるかということについて御見解を伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/8
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009・自見庄三郎
○自見議員 佐藤委員にお答えをさせていただきます。
若いころに、虎の門病院を千床の病院にしようと大変情熱を持ってやられたという話を感銘を持って聞かせていただいたわけでございます。
今先生の御質問でございますが、心臓移植の実施施設は全国に一カ所特化したらどうかというお話だった、こう思うわけでございます。
先般の脳死臨調の答申におきましても、移植実施施設の特定が「国民の移植医療に対する信頼確保の上で重要な意義をもつ」というふうに指摘してあるところでございます。先生、大変よくお勉強をしておられます。
まさに移植というのは、大変な高度医療でございまして、また、チーム医療でございますから、移植医のみならず、今さっきも先生の御指摘ございました、脳死の判定に対する神経内科的な専門医、内科医としての専門医、感染症に対する専門医あるいは麻酔に対する専門医、そういったことを言われたわけでございますが、そういったレベルの非常に高いと申しますか、チーム医療がやれる施設でやっていただくことが私は望ましいというふうに思っております。
実は今、移植関係学会合同委員会というのが、どういった医療施設でやったらいいかと基準をつくっておりまして、その中で、心臓移植については全国八カ所を公表いたしておるわけでございます。そういった中で、私は、移植の場合、先生御存じのように、もしこの法律が成立いたしますと、脳死の状態で臓器を摘出させていただいて、それを移植手術させていただくわけでございますが、取り出した臓器を、我々が聞いておるところによりますと、心臓は大体四時間以内、ですから二時間ぐらい輸送にたえる範囲、あるいは肝臓はそれより若干長くなるようでございますので、法律ができれば、そういった臓器移植の特性もございますので、やはり全国一カ所でなくて各地域地域、ブロックで、こういった移植手術の恩恵にあずかれる人が国民に多ければ多いほどいいというふうに思うわけでございます。
今の、移植学会が心臓移植を予定する八病院、それから肝臓移植を予定する十病院、これは東北大学、あるいは東京では東京女子医大、これは心臓移植でございますが、また肝臓移植に関しましては、東北大学だとか大阪大学、京都大学、九州大学等々でございますが、私は、今の医療のレベルを考えて、やはりここら辺が、全国に一カ所で特化するのではなくて、全国をブロックで、それぞれ歴史と伝統を持った医療センターがあるわけでございまして、今申し上げましたような移植に十分たえ得る医学的レベルを持っているというふうに思いますから、確かに特化をするということは大事なことでございますが、全国一つでなくて、そういった数カ所に特化をするのはどうか、こういうふうに思っております。
それから、今もう一点、先生のお話の中に、日本では移植手術をやっていないからなかなか難しいのではないかというふうなお話があったと思います。
実は我々、私も、先般、衆議院の当委員会から、臓器移植に対する視察に行かせていただきました。アメリカ、ヨーロッパの国にも行かせていただいたわけでございます。ピッツバーグ大学の医学部はスターツルさんという大変有名な臓器移植の教授がおられますが、そのもとでやっている藤堂さんという、これは日本人の教授でございますけれども、彼自身、肝臓の移植を一千例やったということを我々も聞かせていただいておるわけでございますから、また、アメリカに行って移植手術をしておられる日本人の医師というのはかなりの数に上りますから、そういった法律がもし成立し整備されれば、私は、医学のレベルでは、今の日本の医学を考えて、移植手術というのは十分にやっていけるというふうに思うわけでございます。ただし、先生の言われるとおり、失敗は許されませんから、できるだけ高い成功率でやっていただくということが必要だというふうに思っております。
アメリカでは、年間、心臓二千二百例、肝臓が約三千五百例を行っておりまして、心臓で一年生存率が八〇%、肝臓は五年生存率が六〇%だというふうに承知をいたしております。御存じのように、臓器移植の適応というのは、臓器移植をしていただかなければ本当に命が危ないというふうな疾患が対象でございますから、私は、この一年生存率八〇%、五年生存率六〇%というアメリカの成績でございますが、かなりのものではないかなというふうに思っております。
それから、今、アメリカでは臓器提供者が少なくなってきたのじゃないかという話が佐藤先生の方からあったわけでございますが、私は、そういった話はお聞きをいたしておりません。
そういったことでございますので、ひとつぜひ、脳死は人の死というように認めていただいて、この法律案を皆さん方に御理解をいただいて法律としていただいて、より移植医療が日本で円滑に行われるように御指導いただければというふうに思っております。
以上でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/9
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010・佐藤剛男
○佐藤(剛)委員 時間でございますので、ありがとうございました。
私の考え方を申し上げれば、法律的にいいますと、附則のところに、この法律の施行の日は別に法律で定めると規定する、そして、その間に国はみずからあるいは民間の病院を一つ指定して組織的、財政的に総合のチームをつくるものとする、こういうような努力規定を置いて行うべしというのが私の見解でございます。施設が整ってから施行日を決める法律構造です。
委員長、ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/10
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011・町村信孝
○町村委員長 根本匠君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/11
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012・根本匠
○根本委員 自由民主党の根本匠です。
臓器移植法案について質問をさせていただきます。
私は、この問題が難しいのは、個人の死を前提にして、人の死を待って生きる、こういう問題、ここが非常に難しいだろうと思います。しかも、生き生きとした臓器というのは脳死が前提ですから、どうしても移植医療先にありきではないのかと思われるところに難しさがあると思います。そして、特に人の生死と向き合う厳しさもあるし、個人の価値観、死生観、心の問題、幸せとは何か、倫理の問題、頭ではわかっていても、脳死を人の死とするところに割り切れなさが残る、これが非常に重い問題であります。
ただ、考えなければならない要因、状況としては、余命幾ばくもない、移植をすれば助かる患者がたくさんおられる。そして、外国に行って移植する方もいる。欧米諸国では、脳死をもって人の死とすることが認められ、免疫抑制の進歩あるいは医療スタッフの充実等によって移植医療も定着してきております。人間愛に基づいて臓器を提供しようとする人々もおられますし、特に、脳死に対する議論がここ十年活発になされて社会的な認識も醸成されつつある。この辺を踏まえた議論が必要だと思います。
ただ、今回の臓器移植法案は、通常の立法と異なって、政策の合理性や論理性で決められない悩みがあるわけでありますが、特に臓器移植の問題はサイエンスと倫理の問題であり、医療に対する信頼が大前提になると思います。
私は、この法案を考えるに当たって、基本は、人間愛を前提として、倫理をどう確立して臓器移植の問題に対応するのか、社会的なルールをつくるのか、慎重には慎重を期して、議論を尽くして社会的な合意形成を図ることが何よりも大事だと思います。
具体的な法案の中身に入りたいと思います。
最も大きな論点、意見の分かれるところは、これは当然のことでありますが、脳死は人の死か、こういう点であります。これは医学的な見地と社会的な認知、合意、この二点がございます。
まず最初に、脳死は人の死かということについて、医学的な考え方、これを幾つかお伺いしたいと思います。
まず第一に、脳死の概念と判定基準、これについてお伺いいたします。
脳死とは、人工呼吸器の登場に伴って、呼吸が人工的に維持され、心臓が動き続けていながら、脳幹を含む全脳の機能が不可逆的に停止している状態と言われておりますが、脳死の概念と脳死の判定基準、これをどう考えているのか。特に、判定基準は竹内基準とされておりますが、竹内基準の妥当性、評価、これが私は大事だろうと思います。例えば、特に諸外国と比較してどうか、あるいは医学界の合意の点についてどうか。この竹内基準、脳死の判定基準としての竹内基準の評価、これをお伺いしたいと思います。もう一点は、竹内基準によった場合に、その後生き返った例はないのか、この点についてまず御質問いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/12
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013・桧田仁
○桧田議員 根本委員の御質問にお答えします。
根本先生は、以前からこの問題には非常に御造詣が深く、また大変いろいろと御理解いただき、また御討論もいただいているということで、大変ありがたく、感謝申し上げたいと思います。
先生お話がございましたように、この問題はあくまで人間愛を基本としておりますし、十分な国民的な議論が要る、これは当然のことと思います。したがって、一番基本的な、人の死をどう見るかというのは、今後、多くの議論を呼ぶ中で、まず私たちが本当に人間の死を見詰めるということを、医師あるいは医療関係者、社会すべてが、法実務を含めて見なければいけないと思います。
そういう意味で、まず、先生の御質問にありました竹内基準でございますが、これは、昭和六十年に厚生省が研究班をつくりまして以来、あらゆる議論を重ねてきたものでございまして、国際的にも十分評価にたえ、また、医学界やその他にも十分たえる基準と判断しております。
また、その竹内基準によって生き返った例はあるのかということでございますが、このように非常に長い間に検討された竹内基準によって判定された脳死の例で、生き返った例はないと聞いております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/13
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014・根本匠
○根本委員 次の問題に移りますが、次の問題は脳死の判定体制、これについてお伺いいたします。
基準はそういうことだろうと私は思いますが、脳死を客観的に、確実に判定できる体制をどう担保、確立するか、これが次に大事だと思うのですね。特に脳死の確実な判定、これは絶対条件であります。この点で臓器移植に行き過ぎがあってはならないし、特にここは医療への信頼が何よりも大事なので、この点が非常に重要だと思います。その脳死の判定体制をどう考えているのか、この点をお伺いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/14
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015・桧田仁
○桧田議員 非常に重要なことでございまして、この客観性と妥当性、確実性というものは、脳死判定がいかに社会の評価を受けるかという一番基本と思います。
その意味で、先ほどお話し申し上げましたように、医学界で長い間に一般的に既に実施されておりますし、脳死臨調におきましても、竹内基準は現在の医学水準におきまして一般的かつ全く妥当なものであるという評価を受けているように考えております。
また、この確実性ということに関しましては、当然、長い間にこの専門医が育ってきているわけでございますから、この専門医が真剣に検討し、また、学会等でもこれをあらゆる角度から検討して本日までまいったように聞いております。その意味におきましても、このたびの法案におきましては、まさに脳死判定に十分な経験を持つ、専門医あるいは学会認定医が少なくとも二人以上、しかも移植と無関係な医師という立場で判定するという非常な客観性を持っていなければならないと思います。
さらには、あくまでこの客観性を妥当化するために記録の詳細なものが要る。しかも、二人の医師が十分きちっとした形で書き、これのあらゆる面の記録を残す、こういうことが客観性の最たるものではないかと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/15
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016・根本匠
○根本委員 私も、ここで大事なのは、移植医療と全く分離された客観的な、しかも専門的な第三者、これが判定するということが一番大事だと思いますし、それからもう一つ、事後のフォロー、チェックという意味では、この記録をきちんと残してだれでもがチェックできるような体制、ここが私は一番肝心なところだと思いますから、この点は十分に検討してやっていくべきだと思います。
三点目、救命救急医療との関係についてお伺いします。
救命救急医療は移植医療とはある意味で対極にあるのかな、こう思います。心臓が動いていれば最後まで努力して助ける、これが救急医療ですね。ですから、救命救急活動と臓器提供の関係をどう整理して両立させるか、これが課題なんだと思うのです。この点から、特に、低体温療法で脳死から生還したという意見がありますね。これを含めて、救急活動と臓器提供の関係をどう整理してどう両立させるか、この点の考え方についてお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/16
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017・桧田仁
○桧田議員 根本先生おっしゃいますように、この法案の最大の問題点は、救急医療で助ける側の医師あるいは医療チーム、それから移植をするという側のチームとの多くの問題点をきちっと整とんし、明確化しておかなければならないということでございます。
その意味におきまして、先ほど言いましたように、脳死の判定は、移植に全く関係のない、利害関係のない医師がやるということは当然でございますし、それから、あくまで救急、つまり助ける側の医師は医の倫理に基づいて最後まで最善の努力をする、しかしながら、現在の医学でどうしても助けることができないという最終的な決断を置かれた者にのみ、この移植のチームの判断を下すということは当然のことでございます。
その意味におきましても、根本先生が今おっしゃいました脳低温療法のことに関しましては、いろいろの御意見があることは承知いたしておりますが、私どもは、あくまでこの竹内基準というのは、竹内先生が御判断されておりまして、医学界でもう既に固定化された観念でございますので、もう一度明確に申し上げたいと思いますが、ポイント・オブ・ノーリターン、すなわち、もう二度と生き返ることはないという確実なポイントを越えたものを脳死と申すわけでございますから、その判断基準をきちっと行ってやる限り、少なくともどんな治療を行いましてももとに戻らないということでございますから、脳低温療法に関しましても同様と考えております。
この脳低温療法をやっております、非常に成果を上げておられます日本大学の林教授、この先生のお言葉をかりましても、あくまで脳死に至らない患者に対する治療であるということでございます。その意味におきましても、脳死として判定された後に治療されたケースはないということでございますし、もちろん、脳死と判定されたケースがこの脳低温療法で蘇生した、回復したというケースは聞いておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/17
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018・根本匠
○根本委員 確認的に質問いたしますが、要は、低体温療法、これは蘇生限界点のあくまで前の話だ、脳死状態になった状態ではない、こういうことですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/18
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019・桧田仁
○桧田議員 あくまで脳低温療法というのは、脳死になる前の患者を何らか最善の方法で蘇生したいという医師たちのチームの動きでございますから、脳死に至った者は既に回復しないということは医学界の常識でございますから、これに対する治療を行われているケースはないということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/19
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020・根本匠
○根本委員 医学的に脳死が人間の死である、これは大筋大体合意が得られているということだと思いますが、もう一つは、脳死は人の死かということを考えた場合に、社会的に認知、合意される必要があると思います。その点でいえば、この社会的な合意を図る上でこれまでどのような検討を行ってきたのか、それから、臨調答申をどう評価するのか、この点をお伺いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/20
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021・桧田仁
○桧田議員 今までの話は、あくまで医学界あるいは医師たちあるいは医療のチームの一つの考え方でございます。しかしながら、これだけの問題は、社会あるいは多くの患者さんやその家族たちに了解いただくという重要な問題がございます。
その意味におきましても、平成二年二月から政府で設けられました臨時脳死及び臓器移植調査会、いわゆる脳死臨調におきましては、詳細な検討、慎重かつ徹底的な検討が行われたと聞いております。平成四年一月に答申がまとめられるまでには、あらゆる各界各層の大変幅広い議論があったと聞いておりますし、社会的な合意に向けては、臨調委員の方に非常な御努力をいただきました。具体的には、合計三十三回の定例会合をいただき、三回の国内視察、三回の海外調査、二回の意識調査、六回の公聴会の実施などにより可能な限り慎重に審議が行われ、このような検討の結果として、脳死をもって人の死とすることは社会的に容認され合意されているといってよいという結論に達したわけでございます。私は、この結論は現段階で妥当なものと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/21
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022・根本匠
○根本委員 これまで、臨調答申あるいはその後の各党の議論、公聴会、さまざまな形で議論をなされてきて、この問題は随分と議論されてまいりました。
もう一つ、別な角度から、諸外国での立法例をお伺いいたします。
諸外国では、脳死を人の死と法律上きちんと規定する、あるいは、法律上の規定はなくとも医学的に脳死を人の死と認定する例が多いと言われておりますが、この諸外国の実態をどのように認識されているのか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/22
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023・桧田仁
○桧田議員 お時間の関係もありますので、全部御説明してもどうかと思いますが、この機会ですから多少詳しく御説明させていただきたいと思います。
あくまで法律に死の定義があるかどうかということから考えていかなければなりませんが、あくまで法律によって死の定義をしているという国で、かつ脳死を人の死としている国は、台湾、フィリピン、シンガポール、イスラエル、スウェーデン、デンマーク、イタリア、スペイン、アメリカ合衆国、メキシコなどでございます。
法律よりも下位の法令に死の定義があり、脳死を人の死としておるのは、サウジアラビア、ノルウェー、フィンランド、フランス、ブラジルなどでございます。
また、法令上の定義がなくて医学的に、いわば医師がということでございましょうが、医学的に脳死を人の死と認定しておりますのは、タイ、インド、ニュージーランド、アイルランド、ドイツ、オーストリア、ベルギー、アメリカ合衆国でも一部の州などでございます。
また、こういう法的な立法例という問題だけでありませんで、本人の承諾があれば臓器移植ができるとともに、本人の意思が不明であっても遺族の承諾があれば臓器移植ができるとしておりますのは、アメリカ合衆国とスウェーデン、デンマークなどでございます。
本人の拒否の意思がなければ遺族の意思にかかわらず臓器移植ができるのは、フランス、スペインなどでございます。
また、本人の拒否の意思表示がなく、かつ遺族の拒否の意思表示がなければ臓器移植ができるのは、ベルギー、イタリアなどでございます。
以上でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/23
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024・根本匠
○根本委員 今の外国の立法例に見られるように、やはりこの臓器移植法案のポイントというのは、脳死を人の死とするのかどうかということと、それから、本人の承諾あるいは家族の、遺族の同意、そこまで含めるのかどうか、どうもこの辺が大きな二つのポイントになると思うのですね。外国でも、脳死は人の死と認めて、しかも、本人の承諾もなくやるというところもあるわけですね。さまざまな立法例があるわけですが、要は、諸外国の事例としては、脳死を人の死として認める、あるいは医学的に脳死を人の死と認定する例が多いということですね。
そこで、臨調答申にも少数意見としてありましたけれども、私はこの点に絡めてもう一つお伺いしたいと思いますが、臨調答申の少数意見あるいはこの法案に対する対案でも出てきておりますが、脳死を人の死とせずにと言っているのか、脳死を人の死と言うことは、要はそこは避けて、脳死状態になった場合に、本人が生前に臓器を提供する意思を表明する、そうした場合にやったらどうか、こういう意見もありますね。これが、脳死を人の死ということで客観的にしないで、そこは利用して、脳死状態に自分がなったら臓器を提供してもいいですよという本人の意思、これを重んじてやる、こういう法律の構成が果たして可能なのか。仮にこういう法律を構成した場合に、先ほども出ていましたけれども、具体的な法律上の問題点、課題はどういう点が出てくるのか、そこをお伺いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/24
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025・桧田仁
○桧田議員 法律的には大変重要な問題かつ議論を呼ぶところと思います。
すなわち、脳死が人の死でないということで、脳死状態でいる者は生きているという形で臓器を移植するということになりますと、殺人罪あるいは承諾殺人罪になるというような解釈ではないかと思います。したがって、こういうものは担当する医師といたしましては非常に重大な問題でございますので、こういう形での移植ということはまず行われにくいということだと考えております。
また一方、これは私は専門家ではございませんから多少議論があることかと思いますけれども、脳死状態にある者というものが死体であるということを前提として検視を行うということはできませんので、必要な捜査を行うことができない。あるいは、その臓器を万一移植された、摘出された場合に、それをどのような形で法的に処理するか、証拠はどうなるのか。あるいは、極端なケースと思いますけれども、非常に悪質な凶悪犯が出る場合にどのような捜査をするのかということは、刑事訴訟法上、非常に重大な問題点があると思います。
以上の二点、その他いろいろなこともございますけれども、以上の二点からも、脳死は人の死ではないが、脳死状態からの臓器の移植、臓器の摘出は許されるという考えには、どうしても私は賛成することはできないという立場でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/25
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026・根本匠
○根本委員 私も、脳死が人の死かというところで、なかなかそこが社会的合意が得られなくて進まないという状況のもとで、脳死状態というのを自分が生前に認めたらそれを進めるということがベターではないかと実は一時思ったことがあるのですが、ただ、それが本当に果たして立法論として可能なのか。やはり法律というのは一方で社会的安定性というのが大事ですし、これは死を相対化する。やはり死というのは絶対的なものだと私は思いますから、死を相対化するという問題や、あるいは今答弁にありましたような法律上さまざまな問題点が出てくる、その意味でも法的な安定性を欠くということが非常にこのテーマの問題だと思うのですね。ですから、私は、ここは脳死状態でということを前提にした立法論が可能なのかどうか、ここは立法論として厳しい点検が必要なんだと思うのです。
私は、私の結論で言えば、脳死は人の死と客観的に判断することがやはりこの臓器移植法案の前提であらねばならない、こう思います。
次に、当初案との修正点で、これを私は高く評価しておりますが、承諾要件というのは本人に限定します、これが一つの大きなポイントだと思うのですね。この臓器移植法案を前に進めるという点でいえばこれは大きなポイントだと思いますから、修正した考え方、これをお答えいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/26
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027・桧田仁
○桧田議員 平成六年に提出された旧法案におきましては、御存じのように、本人の意思が不明の場合でも遺族の承諾があれば臓器を摘出するということで、これはその後も多くの議論を呼んだところでございます。また、重要な論点でもあると考えております。
これはいろいろ多数の御意見があり、また、いろいろな考え方があったわけではございますけれども、しかし、ここで私どもとしましては、一日も早い臓器移植の開始を望む患者さんの切なる願いという重大な命題も構えておりますので、修正案ということをあらゆる角度から検討させていただきました。そこでまず、本人の意思が不明ということはやはり適切でないという考えに立ちまして、本人自身の臓器提供の意思が書面によって表示されているという限定した条件をもってこの臓器移植を認めるという考え方に立ち至った次第でございます。そういう修正に関しましては、私は社会の批判にも十分たえられる修正になっている、このように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/27
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028・根本匠
○根本委員 私も、修正案の前の法案でこれは非常に問題が多いと思っていたのは、故人の意思を家族がそんたくする、ここがやはり一番大きな問題だったと思っていたのですね。だから、この法案には私もなかなか賛意を表せない、こう思っておりましたが、本人の意思に限定するということで、これは私は大きく評価しております。本人の意思に限定すると提供例が少なくなるということも言われておりますが、しかし、この臓器移植法案というのはまさに倫理の問題が大きくかかわってくる重い法案ですから、私は、一番最初のスタートは厳し過ぎるくらい厳しくあっていいのではないか、こう思っております。そのぐらい慎重には慎重を期すべきテーマだと思います。それで、具体的な社会的な熟成はその過程で待っていった方がいい、こう思っております。
最後に、臓器移植法については、これは慎重にも慎重を期すべきテーマだ、こう思っておりますから、この法案をつくるに当たっては、考えられるべき最大限の規定、今さまざまな角度から十分点検、チェックして最大限の規定を盛り込むべきだ、こう思います。
その観点から、現行の角膜及び腎臓の移植に関する法律と比較して、今回新たに、例えば臓器売買の禁止などを盛り込んでおりますけれども、新たに盛り込んだ規定、なぜその規定を盛り込んだのか、その辺を説明していただきたい。
もう一つ、臓器売買等の禁止等に違反した場合、つまり、禁止されていることに違反した場合の罰則規定、これを強化しましたね、角膜とか腎臓の移植に関する法律と比較して。その点を少し詳細にお答えいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/28
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029・桧田仁
○桧田議員 先生御承知のように、現行の角腎法というのは、そういう問題に関しては余り明確な規定もございませんし、罰則規定等も緩い状況でございます。あくまで一般的な刑法に準じたもののみになっておった。したがいまして、私どもは、社会のいろいろな御意見を勘案いたしまして、大きく三つの考え方をこの法案に盛り込んでおります。
まず第一は、国とか地方公共団体の責務、これをきちっと明確にしたという点でございます。そのことに関しましては、医師はもちろんでございますけれども、記録の作成、保存、閲覧に対する規定も、今までは省令で規定しておりましたものを法律によって規定したという点でございます。
先ほど先生がおっしゃいましたように、倫理観で一番問題でございます臓器売買等の禁止に関する規定、あるいは臓器あっせん機関の秘密保持義務に関する規定は、当然のこととはいえ、新しく明確にこの法律に盛り込んでいる次第でございます。
もちろん、先生がおっしゃいましたように、この臓器売買のことに関しましては、昨今のマスコミをにぎわしていることもございます。諸外国ではそういう例がないとも言えない状況と聞いております。その面におきましても、日本では明確な規定をし、また罰則規定も行わなければならないという基本理念に立ってこの法律はつくられております。
まず、この一番問題点は、経済取引の対象となる、これは、移植の患者さん方あるいは脳死になられた御家族、患者さんのお気持ちを思いますと、絶対あってはならないという基本理念でございますので、あくまで人々の感情に公平に行われるという一つの論点、それから、移植機会の公平性を損なうということが決してあってはならないという点、それからもう一点は、善意や任意の臓器提供という臓器移植の基本的な考え方を明確に盛り込んでいく、こういうことであると思います。
したがって、本案の第二条二項及び四項の基本理念にのっとりまして、生体臓器を含め、臓器一般の売買を禁止する必要が強く求められていると思います。さらに、この趣旨を徹底するために、臓器の有償あっせんを禁止するとともに、臓器売買に係る臓器であることを知りながら、当該臓器を摘出し、または移植術に使用した行為をも禁止することといたしております。
このほか、先生がおっしゃいましたように、本法違反については所定の罰則規定も設けておりまして、その法定刑につきましても、本法上の禁止規定や義務規定の実効性を確実なものとさせていただき、さらにこの移植医療の適切な実施に資したいという考え方を持っております。したがって、他の法令の罰則規定とのバランスも十分考慮して、比較的厳しい内容になっていると考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/29
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030・根本匠
○根本委員 時間が参りましたので終わりますが、私もまだ幾つか質問したいわけでありますけれども、いずれにしても、この臓器移植の問題はサイエンスと倫理の問題ですから、この国会の場で十分に議論されることを要望いたしまして、終わります。
ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/30
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031・町村信孝
○町村委員長 大村秀章君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/31
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032・大村秀章
○大村委員 自由民主党の大村秀章でございます。
本日は、臓器移植法案につきまして御質問をさせていただきたいと思っております。
本法案は、もう既に先輩諸先生方から御質問、御議論があったわけでございますが、問題点は、この何年かの御議論によりまして、そして、昨日の衆議院の本会議におきましての趣旨説明、質疑、そしてまた本日のこの厚生委員会での審議でほぼ出尽くしてきたのではないかというふうに思っておるわけでございます。
この法案は、もう既に提案者の方からお話がありましたように、臓器の移植によってしか助かることができない、そういった道のない患者さんに、この日本におきまして臓器移植の道を、ある意味では新たに、新たにと私はあえて申し上げたいと思うわけでありますが、開くものであるということではないかというふうに思っております。そういう意味では、何物にもかえがたい生命にかかわる大変重要な法案であるというふうに認識しております。そして、こうした人の命にかかわる内容であるからこそ、多くの方々がこれまで御議論を積み重ねられ、その生命観、倫理観とも絡みまして、大変貴重な議論が積み重ねられてきたというふうに認識をしております。
特に、平成に入りましてから、脳死臨調におきます議論はまさしくそうした議論の集大成であるということでございます。多くの方々の英知を結集いたしまして、もう今から何と五年前になるわけでありますが、脳死を人の死として認めるという方向づけがなされたわけでございます。
その後、この国会の場に舞台が移されまして、多くの先輩諸先生方の御努力によりまして法案がまとめられ、この厚生委員会でもたびたび議論がされ、そして、地方公聴会という形で多くの国民の皆さんの御意見もお伺いをしてきたということでございます。
そして、きょうが平成九年の三月十九日ということでございます。ほぼ足かけ十年という月日が流れております。昨日の衆議院の本会議でも御議論があったわけでございますが、いよいよこの法案に一定の結論を出す、そういうときではないかというふうに認識をしております。
確かに、この法案の大きなテーマでございます、脳死を人の死として認めるかどうかという点につきましては、人の死をどういうふうにとらえるか、先ほどからも諸先生方の御議論、そしてまた提案者の方々の御答弁にもありましたように、大変根源的な問題を抱えておりまして、難しい問題であるというふうに思っております。
しかしながら、これまで積み重ねられてまいりました議論を踏まえれば、人間の生命観については、確かに人それぞれにそれぞれの立場があって、それぞれお感じといいますか御意見はあろうかと思います。私は、それはそれで、それぞれの方々の御議論、御意見は尊重されなければならないというふうに思うわけでございますが、そういういろいろな御意見があったとしても、今回付されました条件、本人の書面による生前の同意ということと御遺族の御理解のもとという、そういった前提条件ということがあれば、これまでのいろいろな御意見、御議論は乗り越えられるのではないかというふうに思っております。
そういう意味で、その条件のもとにおきまして脳死体からの臓器の移植を認めて、我が国におきましても、臓器移植を待って懸命にきょうあすを生きておられる多くの方々、多くの患者さんにその道を、その可能性を開くべきではないかというふうに思うわけでございます。
昨日も衆議院の本会議におきまして、どなたかが、人間の情に照らしていかがなものかという御質問があったわけでございます。確かに、人間の情ということに対しましても、その先生のおっしゃることは私もそのとおりだと思います。しかし、その一方で、それに対する御答弁といたしまして、やはり一日一日を生きておられる方々に、移植を一日一日ということで待っておられる方々に移植の道を開くということも、これも人間愛からして、人の情として認められるのではないか、認めて、その可能性を開いてしかるべきではないかというふうに思うわけでございます、そういうふうな御答弁がありまして、私もそれもそのとおりだというふうに思うわけでございます。
そういった観点から、きょうは、私は基本的な点につきまして御質問をさせていただきたいというふうに思っております。
まず、大変基本的な御質問で恐縮でございますが、この法案につきましては、改めて提出をされて、この厚生委員会で御議論、御審議をされるのはきょうが初めてだろうと思うわけでありますが、いよいよきょうから始まるということでございます。改めて、この法案を提出するに至った経緯とその必要性につきまして御説明をいただければというふうに思っております。よろしくお願いします。
〔委員長退席、住委員長代理着席〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/32
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033・中山太郎
○中山(太)議員 先生にお答えを申し上げます。
この法律が今回提案されるまでの経過をあらかじめ簡単に申し上げますと、実は、参議院におられまして、亡くなられた名古屋大学医学部長の高木健太郎先生、これは公明党の方でございましたが、この先生が、献体法という法律をおつくりになった後で私のところへ来られて、日本の胆道閉鎖症とか心筋症の患者たちが、現在、海外に皆、移植の道を求めざるを得なくなってきた、これは昔の札幌医大の和田心臓移植の大きな疑惑が日本の移植医療の障害になってきたというお話をちょうだいしました。そして、これを何とか日本で、法律で脳死を人の死と認めるような法制度あるいは臓器移植法というものをつくらなければ、日本の患者たちは永久に日本では移植医療を受けることはできない、こういうお話がございました。
そこで、超党派の生命倫理議員懇談会というものが成立しました。そして、いろいろと議論の結果、まず、この移植の法律をつくる前にやはり政府側の意見をただすべきではないかということで、脳死及び臓器移植に関する調査会を議員立法で提案をさせていただいて、そして、専門家の御意見をいただいた政府の答申が出てきたわけであります。
一方、日本医師会においては、昭和六十三年、日本医師会生命倫理懇談会、この会長は東大の総長をしておられました加藤一郎先生でございますが、ここで、脳死を人の死とする判断を報告書として出されたわけでございます。
こういうことから、議員立法で法律案を出そうということになりましたが、法案が提出されましても、なかなか実際の審議に至らなかったというのが現状でございます。つまり、政府提案でないものでございますから、どうしても委員会は政府提案の法案を優先的に審議する。こういう経過の中で、議員立法というものの扱いが非常に阻害されてきたというのが現実の姿であったろうと思います。
もう一つは、人間の死というものについて、やはり非常に大きな、国民的な、何といいますか、死に対する考え方の違いというものがございます。個人個人の生命観、人生観、いろいろ違います。
もう一つ、受益者である臓器移植を待っておられる方々、この方々の数が国民総数から比べると非常に少ないということで、民主主義の議会制度の中では、これを代弁する国会議員の数が非常に少なかったと思います。
もう一つは、人が亡くなられるというその御家族にとっては不幸な出来事を、移植を受ける方々はある意味ではお待ちになっている、こういう状況の中で、強い発言あるいは運動を起こすことはどうもやりにくいということで御遠慮をされておった。
こういうのが今日までの経過でございまして、ここで、私どももいろいろ調査をいたしましたが、ヨーロッパあるいはアメリカ、いろいろな実施している国では、この倫理規定が極めて厳しい。つまり、基本的に臓器の売買は一切認めていないということでございます。それから、提供者の氏名は一切公表されない。それから、臓器を受けられた方の名前も公表しない。こういったようなことで、社会に一つのシステムができてきている。
こういう状況の中で、日本で、何とか生き延びたい、この子を助けたいという親の一念が、かかっている大学の先生方のところへ伝わると、大学の先生方が、何とかする方法はひとつ考えてみましょうと、かつて自分で海外の移植をやっている研究機関に留学をされた先生方の母校に、いわゆる患者の症状をファクスで送られて、この患者を受け入れていただけるかどうかというようなことを確認をされた上で、患者を外国に送り出されてきた、そこで移植が行われている、これが現状でございまして、こういう状況の中でこの法案を提出をいたしましたが、前回の国会では三回の公聴会を開いたにとどまった、こういうことでございます。
ざっと今日までの経過を申し上げますとそのような状況でございますけれども、患者の御家族の声を率直に聞きますと、できないならできないで、国会としてはっきりできないということを言ってほしい、もうこれ以上我々は国会に期待しないということを家族の方々は先般おっしゃったことを、私は非常に強烈に受けとめたということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/33
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034・大村秀章
○大村委員 今、中山先生がおっしゃられたとおりではないかというふうに思っております。そういう意味で、この法案、大変重要な法案でありますし、できればこの委員会で十分な議論を積み重ねていっていただきたいというふうに思うわけでございます。
時間も余りありませんので、また次にお伺いさせていただきますが、この法案によりまして臓器移植に道が開かれるというふうにした場合、現在、我が国におきまして、多くの患者さんが移植を待たれておられるということは先ほど中山先生が言われたとおりでございます。そういう状況からいたしまして、この法案の第二条の「基本的理念」のところにも、この四項に、機会は公平に与えられなければならないというふうに記されているわけでございます。これが一番基本、本当の基本中の基本というふうに思うわけでございます。
こうした観点から、基本理念を踏まえて、実際この法案が成立するということ、もちろん成立をさせたいわけでありますが、その前提といたしまして、その移植の体制といったことについてはどういうふうにお考えなのかということにつきましても、あわせてお伺いをできればというふうに思っています。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/34
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035・中山太郎
○中山(太)議員 今先生御指摘の、臓器を提供された場合の配分の問題でございます。
これはあくまでも、海外でもそうでございますが、人間の判断というものを、できるだけそこに人間関係を入れるべきでない、これが原則でございまして、あらかじめ、移植を待っておられる患者の方々の生物的な状況、医学的な状況というものはコンピューターに入力をされておって、そして、脳死患者が出た場合にはそこにコンタクトが行われる、こういうことで、最も症状の重たい人、そして移植を急ぐ人を優先度を高めていく、しかし、配分に関しては一切の金銭の関与は認めない、あくまでも公平公正に行われるということでございます。
なお、一つつけ加えさせていただきますと、精神的な弱者の方もいらっしゃいます。こういう方々がむしろ移植医療によって影響を受けられるのじゃないかという御不安が社会にはございます。こういう方々の御不安を除くためにも、今回の法案は、御本人の生存中の意思が明確に文書によって記録されている場合と御遺族が反対をされない場合、この場合に限るということでこの法律案を出させていただいたということを申し上げておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/35
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036・大村秀章
○大村委員 大変短い時間でありまして、もう時間がやってまいりました。
最後に、これまでこの法案につきまして、先ほど言いましたように十年の月日の積み重ねの中で、本当に多くの関係者の方々が御努力をされ、そして汗をかいてこられたわけでございます。そういう意味で、これまでの積み重ねられた御議論を踏まえまして、改めて、これまでの多くの関係者の方々の御努力に敬意を表しますとともに、本法案の早期の成立をお願いいたしまして、私の質問を終わらせていただきます。
どうもありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/36
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037・住博司
○住委員長代理 次に、奥山茂彦君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/37
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038・奥山茂彦
○奥山委員 自由民主党の奥山茂彦でございます。
この法案が長い経過の中でようやく本格的に国会で論戦をされるということは、大変喜ばしいことではないかと思います。
話に具体的に入る前に、身近な、私たちが体験した、それを踏まえまして質問をしてまいりたいと思います。
実は、私、京都でありますけれども、京都の前の市長さんが二年前におやめになりました。ちょうど村山総理がやめられた、その直後に京都の市長も辞任をしたわけでありますけれども、実は、その一年ほど前から、腎臓が悪いということでずっと透析をされて、その透析がどんどんと重くなってきて、そして、具体的に市長としての業務にとてもたえられない、こういうことで辞任を申し出られたわけであります。この市長は二期目で、ちょうど脂が乗り切ったというそのような中で、突然、体調がもうこれ以上たえられないということで辞任を申し出られたわけでありますので、市長としても本当に残念な思いを持ちながら辞任されたように聞いております。
ところで、腎臓障害者、毎年一万人ずつふえていくということを聞いておりますし、肝臓においてもまた心臓においても、患者あるいはまた家族の皆さんがこの臓器移植をまさに一日千秋の思いで待っておられるということを思いますと、私たちにとっても胸が痛むような思いがいたします。
この間、実はある法事がありまして、そこでお坊さんがこんな話をされたわけであります。
人の肉体は死んでなくなるけれども、霊魂はなくなることはない。その霊はこの世をさまよい、なかなか次の世に旅立つことができない。自分の肉体や、ゆかりのある家あるいは人にいつまでも未練を持ってさまよっている。それをうまくあの世に送り出してあげるのが私たちの務めでないでしょうか。不慮の死を遂げた人ほどその念が強いようです。
このように、亡くなったとはいえ霊魂が残るということを信じるか信じないかは、人それぞれの思いがあろうかと思います。人の生死を決めるのは神の領域だと言う人もいます。このような霊魂の復活を信じる宗教的な観点から見ると、死後も肉体が傷つけられるというのは好ましくないと私は思っています。
こういう話があったわけであります。そこで、私はそのお坊さんにこう申し上げました。
私は腎バンクに登録をいたしています。アイバンクにも登録したいと思っているわけであります。そして、この間は骨髄バンクに申し込みをいたしましたら、これは四十五歳までということで、それ以上は無理だということで、実は断り状が参ったわけであります。しかしながら、自分の臓器が死後に人の命を救うために役立つことが仏さんの教えに反しますか。
こういうふうに聞きましたら、お坊さんは、自分の意思でされることは多分お許しになるでありましょう、こういう話であったわけであります。
ちょっとこれは私のことでありまして大変恐縮でしたけれども、このような宗教観に基づくいわゆる倫理観というものがありますが、このような課題に関してどのようにこれからも説得をされていかれますか。その点について、どなたか先生方でお答えをいただければと思います。
〔住委員長代理退席、委員長着席〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/38
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039・能勢和子
○能勢議員 ただいまの奥山先生の質問に対して、適当なお答えになるかどうかわかりませんけれども、考えを述べさせていただきたいと思います。
脳死とか臓器移植の問題につきましては、今おっしゃられましたように、個々人の死生観とか宗教を含む倫理観等に密接に関係するものでありまして、脳死臨調の答申におきましても、「必ずしも全委員の意見の一致を見なかった点もあるが、これは事柄の性格上、むしろ当然と受けとめている。」とされております。
この法律案の趣旨は、こうした個々人の考え方が多様なものであることを認識しつつ、臓器移植以外には助かる道のない患者の方々の命を救おうということを、それを求めるものであります。
脳死を人の死と受け入れることをちゅうちょする方々への配慮につきましても、立法化を検討する過程において議論を重ねてきたところでございます。
なお、脳死判定に当たりましては、判定の終了までの間に家族に対しましての脳死についての説明を行い、理解を得ることとなっており、また、この法律案においても、脳死体の処置について健康保険等の特例措置を規定するなど、脳死を人の死と認めることにちゅうちょされる方々につきましても配慮した規定を設けているところでございます。
ただ、先生今おっしゃいますように、積極的にこれをどう推し進めているかということにつきましては、今後また検討させていただきたいと思っております。
以上でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/39
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040・奥山茂彦
○奥山委員 いろいろな考え方があるわけでありますので、やはり我々は一つ一つそれに答えていかなければならないかと思います。
そこで、人の生死はいろいろなとらえ方があるわけでありますが、今日、我が国のようにまだこの課題に対して非常に混乱した状態が続いている中では、やはり法律的な面である程度の決着をつけなければならないかと思います。
ただ、ここで、死亡、脳死と決定するに当たっても、死亡の瞬間というもの、瞬間のそのときというもの、これがあいまいであってはいろいろ問題を残すわけであります。それをどのような形で決められるのか、さらにまた、死亡ということが認定されたときに臓器を体内から取り出すわけでありますけれども、その時間的な猶予、先ほど心臓はたしか四時間という話があったわけでありますが、例えば腎臓あるいは肝臓とか、こういったものはどのくらいの時間的な猶予が見られるのか、その辺もお尋ねをしたいのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/40
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041・能勢和子
○能勢議員 今先生からの御質問が二、三と重なって参りましたけれども、脳死臨調が脳死を人の死と認めてよいとする答申を出してから既に五年経過しておりますが、現実には脳死体からの臓器移植は行われておりません。脳死臨調の答申では、脳死体からの臓器移植に法律は要らないではないか、不可欠の条件ではないのではないかと述べられておりましたこともありますが、医学界、医療機関の側では、法律なしでは脳死体からの臓器移植にはやはり消極的な雰囲気もございます。
私たちは、こうした膠着状態を打開し、移植でなければ助からない患者の方を救い、日本での移植医療の定着の第一歩となることを目指しまして、脳死を人の死とする立場に立つ本法案を国会に提出したものでございます。そして、今先生もおっしゃってくださいましたように、本法案に対しまして国民の皆様の理解が寄せられ、早期に成立することを期待するものでございます。
そして、今先生の御質問の中にありました、脳死の場合の、どのくらい有効期間があるかという御質問でございましたけれども、今出ております中では、先ほど御説明もありましたとおり、心臓移植では四時間、肝臓では十二時間、そして腎臓では二十四時間という、そこで血流再開ですね、という時間が言われております。だから、その間における可能な範囲ということになるわけでしょうけれども、そういう形でございます。よろしいでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/41
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042・奥山茂彦
○奥山委員 ありがとうございます。
そこで、今回の法律が、また改正がやや加えられて今回再び上程されたわけでありますが、その一つのポイントとして、臓器提供者、いわゆるドナーですね、ドナーカードというものが、ふだん私たちも持っているわけでありますが、これが事前の書面でもって本人が承諾しておる、当然それに伴って家族の承諾もあるというこういう条件が今回ついたわけであります。
その書面の形式というものが、いろいろなことが考えられると思いますけれども、一つは遺言状であるとか、あるいは、検討されておるということを聞きますが、免許証にこれを掲示するとか、あるいは健康保険証にこういったものが書き込まれるとか、いわゆるドナーカードというのはいつも我々持って歩いているわけではありませんので、もし事故に遭ったときに名前もわからないということになりますと間に合わないということにも当然なりますので、そういった形式をとる必要があるかとも思うわけであります。
ただそこで、一方において家族の同意ということが、いろいろな面が考えられるのですが、家族のない者とか、本人の意思と反して家族は反対している状態とか、そういったことも考えられるわけであります。現在のところはまだそういった面は具体的には盛り込まれておらないわけでありますけれども、そういったものをどのように整理されるのか、書面というものはどういうものであるのかということをお尋ねしたいのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/42
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043・能勢和子
○能勢議員 お答えになるかどうか、本人がそうしたドナーカードを持っていても、きょうも何回も私ども提案者の中で話し合いをしたわけですけれども、本人が幾ら登録しておっても、あえて家族が反対するのを押し切って移植ということはあり得ないと考えております。ただ、今先生の御質問の中の書面というのは、法律的には本人または遺族の意思が確認できるものでなければいけませんけれども、先生御指摘のドナーカード等が代表的なものでありますけれども、幾らドナーカードを提示されていたとしても、その身内の方が反対するのを押し切ってはできないというふうに思っていますし、また、これに係る手続の書類等は今検討、係る手続については指針の骨子の案が示されているところでありますので、またお示しさせていただきたいと思います。
以上です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/43
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044・奥山茂彦
○奥山委員 これを最後にさせていただきますけれども、ただ、書面の提示とか家族の同意、こういうことを厳密にやると実際に臓器提供者が余り出ないのではないかという逆に今度は私たちも心配をしなければならないわけであります。その辺が今回の提案の中ででもやはり懸念材料として残るように私は思います。その辺はこれからもまた逐次検討を加えていかなければならない。今ここでそういうことが具体的にできるかどうかは非常に難しい課題であると思いますが、現実にはそういう問題があるということでありますので、その辺もまた十分考慮しながら、ひとつ成立を期して頑張っていただきたいというふうに私たちは思います。
ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/44
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045・中山太郎
○中山(太)議員 ドナーカードの問題でございますけれども、本人の生存中の意思というものと家族の御意見というのは一致しないとできないということでございますので、ドナーの提供というのは当初余り多くないというふうに私は思います。
しかし、次第に日本でも脳死の場合の自分の臓器提供をしようという方々の数が相当ふえてまいってきております。そういう意味で、一応この法律案では、三年経過した後に、そこのところでもう一度国会でこの法律について見直しを行っていただくというふうに私どもは考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/45
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046・奥山茂彦
○奥山委員 ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/46
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047・町村信孝
○町村委員長 午後二時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。
午前十一時五十四分休憩
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午後二時二分開議発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/47
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048・町村信孝
○町村委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
質疑を続行いたします。田村憲久君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/48
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049・田村憲久
○田村委員 自由民主党の田村憲久でございます。
本日は、臓器の移植に関する法律案に関しまして幾つか御質問をさせていただきたいと思います。
御承知のとおり、この臓器移植に関する法律に関しましては、もう長年いろいろな議論がされておるわけでありまして、ほとんどの議論は出尽くしてもおるわけであります。ただ、やはり人の死にかかわる問題であります以上、慎重な議論というものが再度重ねられなければならないわけでありまして、そんな中で本日もこの厚生委員会で審議というわけであります。
私は、この法案の背景には実は二つの大きな問題意識が存在するのであろう、そのように思っております。一つは、死に対する意識といいますか認識といいますか判断、この問題が一つであります。そしてもう一つは、臓器移植をいかに国民の皆様に理解をいただきながら、そしてまた一方では、移植によって命が助かる、そういう患者の方々の御希望に円滑にこたえるためにそのような制度をどのように築いていくか。こういう問題が認識としてあると思うわけでありますけれども、まずは一つ目の人の死について幾つか御質問をさせていただきます。
この人の死の問題、実はこの問題というのは臓器移植法案に関しましては切っても切れない問題であるわけでありますけれども、同時に、独立した大変重要な問題でもあるわけであります。いろいろな方々の考え方の違い、死生観でありますとか人生観、さらには宗教観でありますとか倫理観、いろいろな観念の中で死というものに対する考え方が違うわけでもありますし、極論を言えば、髪の毛一本でも残っておればそこにその人は存在するのだ、そのように考えられる方もおられます。また、肉体的にはすべてなくなってしまってもその場所にその人はまだ生きているのだ、そんなことを言われる方もおられるわけであります。ただ、そのような観点から死というものを考えますと、社会運営上やはりいろいろと支障を来してしまう。でありますから、肉体の死というものを一応は社会通念上、死というふうに認識せざるを得ない。
それでは、この肉体の死というものは一体どういうものであるのか。これも御承知のとおり、今、三つの徴候といたしまして、心臓の停止でありますとか、呼吸の停止でありますとか、瞳孔の散大、このようなことが言われておるわけであります。
しかし、この三つの時点で死というふうに認識する、判断する、このような考えというのも、実のところは論理的に十分議論されておったのかな、そのような疑問も感じるわけであります。どうも慣習的に死というふうにこれを受けとめてきた、そういう流れもあるわけでありまして、そのような意味からいたしますと、現在もどんどん医療技術、また医療に関連するいろいろな機器の発展、さらには、人工臓器というものになりますと臓器移植とは背反する位置になるわけでありますけれども、これからにおいてはそのような部分の発展というものも考えられるわけでありまして、死というものに対する判断の基準というものも当然変わってくるのであるかな、そんなことを感じておるわけであります。
例えば、人工心臓によって心臓だけが動いている、あとはすべて死んでしまっているのに心臓だけが動いている、これを果たして生きているというふうに言えるのであるか。こう考えますと、やはり人間の思考でありますとか意識でありますとか、また体の臓器やそれぞれの器官というものをコントロールしておる脳というものが死んだ時点において死亡という認識を下す、これは一つの論理的な考え方であるのかな。これは私見でありますけれども、私はそのように思う次第であります。
ただし、当然、脳が死ぬということは、脳死というのは二度と蘇生しないという条件がここに入らなければならないわけでありまして、その点、今回、厚生省省令で基準を定めるということになっておりますけれども、第六条二項において、「「脳死体」とは、脳幹を含む全脳の機能が不可逆的に停止するに至ったと判定された死体をいう。」、この「不可逆的に停止する」というような判定が、果たして現在の、言われております竹内基準ですか、厚生省の基準でそのとおり全く当てはまることなのか、その点をお聞かせいただきたいわけであります。
それと同時に、もう一点は、医療技術の進歩というのはこれからもどんどん進んでいくわけでありまして、現在脳死と言われておる判定基準が、将来において脳が蘇生する可能性というものがあるのかないのか、この点に関してもあわせてお答えをいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/49
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050・山口俊一
○山口(俊)議員 田村委員の御質問にお答えをさせていただきます。
委員御指摘のとおり、確かに死の基準といいますか判断というのは、その時々の医学の発展によって若干の変化を見ております。今回、このように脳死というふうなことが問題になりますのも、結局、人工呼吸器等ああいうふうな医学の発展によりまして、脳が完全に死んでおるにもかかわらず人工呼吸器によって心臓が動いておる、その結果、循環する部分はまさに生前と同じようだというふうな状況等が出てくるわけであります。
結局、脳死による人の死の判定というのは、医療の現場におきまして、医師が個々の患者について医療上の必要があると判断をした場合において、死亡という客観的事実を確認するために行われるものでございまして、これは、先ほどお話がございましたいわゆる三徴候説といいますか、心臓停止を初め三つの基準で判断する場合も同じでございます。
したがいまして、あらかじめ患者や家族の了解を得ないと行うことができないというふうな性格のものではございませんけれども、今回私どもが提案をさせていただいております法律につきましては、脳死の判定というのは家族の御理解を得て行われることが望ましいというふうなことで、実際の脳死判定に当たりましては、運用上、脳死判定を終えるまでに家族に対し脳死について御理解が得られるように必要な説明を行うというふうにさせていただいております。
さらに、いわゆる脳死状態の死体が蘇生をする可能性はあるのかどうかというふうなお話でございました。
先ほど申し上げましたように、医療水準の進歩によりまして、確かにいわゆる脳死に至るまでの期間というか、これの長短というのはあろうかと思います。
ただ、そもそも脳死というのは脳幹を含む全脳の不可逆的機能喪失の状態というふうなところでございまして、実際の脳死判定基準、これも、お話がございましたいわゆる竹内基準におきましても、「脳死判定の対象となるのは、」「現在行いうるすべての適切な治療手段をもってしても、回復の可能性が全くないと判断される症例。」とされておりまして、また、観察期間を置いて二度検査を行い、判定結果に変化がないことを確かめた上で、確実に回復する可能性がないことを判定した上で脳死と判定するわけでございます。
もちろん、医学というのは日々進歩しております。午前中の御議論にもございましたけれども、ただ、脳死判定基準を完全に満たした症例につきましては、蘇生をするということはあり得ないと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/50
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051・田村憲久
○田村委員 ありがとうございます。
実は、このような質問をしようときょう思っておりましたら、これは朝日新聞の記事であるのですけれども、「論壇」というところでこの脳死の問題が載っておりました。要するに、脳死判定の厚生省基準を満たしたような症状、所見を一時期示した人が脳低温療法によって回復したというようなことがこの中に書いてあるのです。この記事の正確さがどうのこうのというのは私はよくわからないわけでありますけれども、このようなことも出てくるということは、当然、まだまだ認識というものがそれほどしっかりとされていないのじゃないのかな、そのように思うわけでありまして、脳死を死と認めるとなりますと、法律だけじゃなくて、やはり国民的な理解というものをどうしてもこれから得ていかなければならないわけであります。
その点、間違っているのかどうか私はわからないですけれども、このような記事が出てくるというところからもかんがみまして、国民の御理解をいただくためのどのような措置をこれから講じられるつもりであられるのか、お聞かせをいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/51
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052・山口俊一
○山口(俊)議員 委員の先ほどのお話でございますが、午前中にも議論がございました脳低温治療につきましても御答弁させていただきましたように、あくまで脳死に至るまでの間の治療の一つであって、脳死というのはもう完全に不可逆的に脳全体が死んでしまうというふうな状況でございますので、御理解を賜りたいと思います。
また、脳死を人の死とすることについて国民の理解を得るためにはどのような対策をというふうなお話でございます。
脳死臨調の答申におきましても、その実施をした世論調査等に基づきまして、「脳死をもって「人の死」とすることについては概ね社会的に受容され合意をされているといってもよいものと思われる。」としておりまして、私ども提案者といたしましても、このような考え方に基づいてこの法律案を提出させていただいたものでございますが、国民の皆様方の中には脳死を人の死とすることにちゅうちょをする方々もおいでになりまして、こうした方々にも十分配慮していくことが大変重要であろうと考えております。
このような観点から、先ほど申し上げましたように、実際の脳死判定に当たりましては、運用上、脳死判定を終えるまでに家族に対し、脳死について理解が得られるように必要な説明を行うことといたしております。また、移植医療に対する国民の信頼を確保するためにも、本法律案におきましては、脳死の判定に関する記録の作成についていろいろ規定を設けております。将来、問題が起きた場合に、事後的に確認がきちっとできるような措置を講じておるところでございます。
いずれにしましても、脳死・移植問題につきましては、倫理観に裏打ちをされた医療関係者の真摯な努力というのが強く求められるものと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/52
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053・田村憲久
○田村委員 どうか、このような意味からいたしましても、国民に十分に理解を得られるような措置をこれからも講じていただきたい、そのようにも思うわけであります。
いずれにしましても、脳というものが死んだ、脳死というそのような事実が起こった時点で、二度と脳が蘇生しないというのであるならば、私はやはり人間の死と認めてもいいのじゃないのかな、そのようにこれは私見として感じたわけであります。
さて、同時に、移植医療の方でありますけれども、これもたくさんの方々が、移植によって命が助かる状況の中で、早くこの法律が成立することを待ち焦がれておられるわけであります。ただ、だからといいまして、法律が通っても、実際問題、運営においてしっかりとした制度ができていかなければ、これは絵にかいたもちに終わってしまうわけであります。
一点は、そのような意味からも、第三条において、「国及び地方公共団体は、移植医療について国民の理解を深めるために必要な措置を講ずるよう努めなければならない。」と書いてあるわけでありますけれども、国や地方自治体にどのような措置を講じさせる今おつもりなのか。
さらには、ドナーと患者を結ぶネットワークがやはり必要になってこようかと思います。これの現状及びこれからの将来にどのような方向性をお考えになられておるか。
もう時間になりましたけれども、この二点、お聞かせいただきますようお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/53
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054・山口俊一
○山口(俊)議員 委員御指摘のとおりでございまして、移植医療というのは国民の善意の臓器提供があって初めて成り立つ医療でございまして、移植医療の必要性など、移植医療全般について広く国民の皆様の御理解を得て進めていく必要がございます。そのために、国及び地方公共団体に対し必要な措置を講ずるよう、義務を設けさせていただいております。
具体的な措置といたしましては、ドナーカードの普及を初めとした地域レベルでの普及啓発活動にまず最も力を注いでいくべきではないかと考えております。
さらに、御指摘のネットワークのお話でございますが、これも、国民の皆様方の信頼の確保のためには、移植機会の公平性の確保、それと、最も効果的な移植の実施という両面からの要請にこたえた臓器の配分が行われることが必要でございまして、こうした要請におこたえをしていくためにも臓器移植ネットワークの整備が不可欠であると考えております。
臓器移植ネットワークの具体的なあり方につきましては、臓器移植ネットワークのあり方等に関する検討会中間報告で、公平性の確保のため、全国をカバーするネットワークを整備し、ドナー情報の経路の一本化、レシピエント基準の全国統一化を図り、公正性の保障のため臓器移植の評価・審査体制の必要性等を提言しております。
臓器移植ネットワークの体制整備の方向としては、当面、既存の腎移植ネットワークの活用を検討しながら、心臓、肝臓等につきましても対応できる体制の整備を図ると同時に、将来の多臓器対応のネットワークの構築に向けまして検討を重ねていかなくてはならないと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/54
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055・田村憲久
○田村委員 それじゃ、質問を終わります。ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/55
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056・町村信孝
○町村委員長 松本純君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/56
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057・松本純
○松本(純)委員 昭和四十三年八月八日、札幌医大で日本初の心臓移植が行われてから三十年にもなろうとしております。このたび提案されました臓器の移植に関する法律案は、平成六年四月、議員立法として国会に提出されて以来、ようやく修正を含めさまざまな角度から慎重な審議がスタートされましたことは、大変意義深いことと存じております。
今や脳死移植は世界各国で普及し、移植実施数を見ると、平成七年の年間移植件数で、欧米豪で約三千六百件、長期生存率で六八%という結果を残しております。それぞれの国の事情に合わせ、海外の臓器移植は、法律制度に違いはありながらも実績を積み重ねてきております。
このような中で、我が日本では、臓器移植待機者が一日に四人も亡くなっているというのが現状であります。法律制度が整わないためにやむを得ず生体間移植が行われているのが現実なのであります。胆道閉鎖症などで症状が悪化した子供を助けたい一心から、親たちの多くはこの方法をとらざるを得ないとのことでありますが、法案の成立を一日も早くしてほしいと願っているのはこれらの家族や患者さんの皆さんだと思います。この法案の成立がおくれれば、患者の生命ばかりか肉親にも大きな重い負担を負わせることにもなるのではないでしょうか。世界各国の動きや時の流れを受けとめたとき、脳死を人の死と認める臓器移植について、多くの国民の皆様に御理解をいただく中で、適正にかつ速やかに法制度を整備すべきだと思っております。
このような考えの中から、提案者の皆様に何点か質問をさせていただきたいと思っております。
脳死・臓器移植につきましては、過去において何度かの世論調査が行われております。昭和六十二年の総理府によるものでは、脳死を人の死と認めるとも認めないともこのいずれでもない、どちらでもないという者が五二・二%おります。また、最近の、平成三年九月の脳死臨調によれば、脳死を人の死として認めるあるいは認めないのどちらでもないという方が、やはり同じように三〇・九%いらっしゃいます。こういった状況から、脳死体からの臓器移植の認否についても、どちらでもないとおっしゃる方が三一・〇%。おおむね理解されていると考えるこの臨調の答申ではありますけれども、この報告にも満足をせず、さらに国民の理解を得ることが大変重要だと思っておりますが、本法案の成立後、国民の皆様に真の理解を得てもらうためには、ただいまも田村委員にお答えになった、直接にかかわる家族へのインフォームド・コンセントや、記録を残すということ以外に、一般国民全体に啓蒙していくという点ではどのような方策をお考えになっていらっしゃるのか、お答えをいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/57
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058・自見庄三郎
○自見議員 松本委員にお答えをいたします。
この法律の成立につきまして、臓器移植を待っておられる方々、特にその御家族の方々に対する思いやりの気持ちで大変真摯な御質問をいただいたわけでございます。
今の御質問の要旨は、今の状態ではまだまだ脳死ということに関して国民の方々の十分な御理解を得ていないのじゃないか、あるいは、得るためにどういう努力をするのか、こういう御質問だったと思うわけでございます。
今さっき山口議員からもお答えをいたしましたけれども、まさに脳死臨調においても、「脳死をもって「人の死」とすることについては概ね社会的に受容され合意されているといってよいものと思われる。」こういった考えに立って提案者といたしましてもこの法律を提出したものでございますが、今の松本委員の御指摘のように、まだまだ国民の中には脳死を人の死とすることについてちゅうちょする方々もおられます。こういった方々にも十分配慮していくことが私は重要であるというふうに思っております。
先生もいろいろ総理府の統計等を御発表になられましたが、これは平成八年の朝日新聞の調査でございますが、五三%の方が脳死は人の死であるというふうに述べて、統計上のそういった調査結果が出ております。ちなみに、これは四年前、一九九二年に調査を行ったときは四七%でございますから、この四年間で、脳死の問題がいろいろ社会的に大変話題になったわけでございますけれども、脳死は人の死という方が六%ほどアップしたという、これは朝日新聞の調査結果でございます。また、読売新聞も、これは平成八年でございますけれども、身内の臓器提供、承諾が五五%ということでございまして、これも近年じわじわと上がりつつある、そういった読売新聞のデータが出ております。
そういったことも踏まえて、今さっきお話しいたしました、実際の脳死の判定に当たっては、運用上、脳死判定を終えるまでに家族の方々に脳死のことについての十分な理解を得られる必要がございますし、これをきちんと実践されていくことが私は不可欠であるというふうに思っております。
また、特に移植医療に関しては、今、一般国民にどういうふうに広めるのかというお話でございますが、ドナーカードの普及、その他啓発事業を推進していく必要があるということで、こういった中で脳死に対する理解、あるいはあわせて深めていただくことが必要ではないかというふうに思っております。
これは私見でございますが、今、自動車の免許更新の場合、実は角膜と腎臓の移植の案内書が窓口に置いてあります。今度、自動車の免許証の切りかえのときにも、これは警察庁を初めいろいろなところの御協力をいただかねばなりませんが、必ず肝臓あるいは心臓等々の臓器移植に対する啓蒙を深めていく、こういったことが必要ではないか、こういうふうに思うわけでございます。
今、ボランティアグループで臓器の提供を承諾してくれという運動をしておられる方もおられまして、大変私ごとでございますが、先般、私自身、臓器提供者になるということを承諾させていただいたわけでございます。
そういったことで、法律が成立いたしましたら、政府も督励いたします。また、いろいろな知恵を出していただいて、まさにこれは善意の行為でございますし、そういった意味で、しっかり知恵を絞ってできるだけ国民の方々に理解をしていただくということで最大限の努力をする必要があるというふうに思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/58
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059・松本純
○松本(純)委員 ありがとうございました。
次にお答えをいただこうと思っておりましたドナーの登録の拡大などについて、今あわせてお答えをいただいたような形に受けとめさせていただいておりますが、このドナーカードが普及されてくるということが国民の理解をさらに深めていくことにもつながってくるということでの理解をさせていただきたいと思っております。
次の質問に移らせていただきます。
臓器移植についての技術的な向上というようなことにつきましては、もちろん医療に携わる者の倫理的な問題等々を含め、この教育も当然必要なことだと思いますが、現在医療に従事する者ばかりではなく、患者も家族も、さらには今の子供たちに、将来にわたっての臓器移植あるいは脳死というものをどうとらえてもらうかということを教育的にも教えていく、理解をしてもらうということも大変重要だと思います。
この観点から、日本の国民性と諸外国との比較などの中で、日本の中で人道的見地に立つということを子供たちにどのような形で伝えていったらいいのか、この教育の中での取り組み方などについてお尋ねをさせていただければと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/59
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060・自見庄三郎
○自見議員 お答えをいたします。
まさに今の松本委員の言われたように、移植医療というのは人類愛の上に立った善意の提供がなければ成り立たない医療であるというふうに言われたわけでございますけれども、私もそのとおりに思うわけでございます。
国民の信頼が不可欠でありまして、その前提として、国民一人一人が移植医療について正しい知識を持っていただくということが必要であると思います。特に今学校教育の場でどうだという御意見があったわけでございますが、これは法律が成立してからだ、こう思いますけれども、あらゆる機会を、学校教育の場を通じてでも、こういった移植医療についての普及啓蒙を図っていくことは大変重要なことだというふうに思っております。また同時に移植関係者、そして広く善意の国民の方々にも、こういった理解と協力をしていただくようにいろいろな立場立場でお願いをさせていただきたい、こういうふうに思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/60
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061・松本純
○松本(純)委員 次の質問であります。
臓器移植における脳死の判定には脳死判定基準概要にのっとり速やかに対応されると思われます。これらの判定者は「脳死判定に十分な経験を持つ、専門医あるいは学会認定医少なくとも二人以上」というようなことになっております。スピーディーな初期救命救急対応の後、その判定に入られることになると思うわけでありますが、判定の客観性を確保する意味でも、医師とともに看護婦あるいは薬剤師などが医療チームを組むことによりまして対応することができるオープンなシステムを考えることができないかと考えるところでありますが、御所見をお伺いをしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/61
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062・自見庄三郎
○自見議員 お答えをいたします。
先生御指摘のとおり、移植医療は、移植医あるいは麻酔医、内科医、あるいは看護婦さんなどのスタッフ、まさにチーム医療でなければやれない医療だというふうに思っております。そういった中で、脳死の判定は医学的判断そのものでございますから、これは医師が診断すべきものだというふうに考えております。ただ、今先生御指摘のように、チーム医療を進めていくという観点から、医師以外の者が本当に何らかの形で参加しなければこれはやっていけませんし、また、参加する形が必要だというふうに思います。
先生は薬剤師さんでもございますが、御存じのように、竹内基準でも、除外項目として、薬物中毒による一見脳死状態に見えるような昏睡状態は除外するという項目があるわけでございますから、高度の薬学の知識も必要でございますから、やはりそういったチームの中に医師と協力していろいろな専門、専門の力を生かしていくというチーム医療が特にこの場合は必要だ、こう私は思うわけでございます。
また、より透明性を確保するという御指摘もあったわけでございますので、そういった意味でも、多くの専門家の方々が御協力してやっていくということは非常に大事だというふうに思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/62
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063・松本純
○松本(純)委員 今は移植をされる側になるわけですが、今度は逆に受ける側であります。
臓器移植にはシクロスポリンあるいはタクロリムス等の免疫抑制剤の使用などが必要となってくることと思いますが、移植を受ける患者や家族に対して、副作用や長期使用などについて十分な情報提供、説明が欠かせないところであります。
医療法の一部改正案第一条第二項においても、「医療の担い手は、医療を提供するに当たり、適切な説明を行い、医療を受ける者の理解を得るよう努め」るものとすることとされております。本法案の第四条に記載の「医師の責務」につきましては、医療チーム各員による十分な説明、インフォームド・コンセントが必要と思うところでありますが、移植を受ける側の患者、家族などにとってどういう説明を受けるべきか、また逆にどういう説明をしてあげるべきか、その点の留意すべき点についてお尋ねをさせていただきたいと思います。
〔委員長退席、佐藤(剛)委員長代理着席〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/63
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064・自見庄三郎
○自見議員 今、臓器移植を受ける側のインフォームド・コンセント、説明と同意でございますが、そういったことは非常に重要なことだと私は思っております。
先生も御指摘のとおり、移植関係学会合同委員会の検討結果を取りまとめておりますが、移植を受ける側は、担当者としてかかわる内科系の専門学会の認定医あるいは指導医と移植の外科医が中心となって行うこと、臓器移植を受ける方も、内科の専門医そして移植外科医、二つ、内科と外科が中心になって行うことというようなことを今まとめつつございます。
また、チーム医療の全体の立場からいえば、全身麻酔については当然麻酔医の協力、それから、今さっきから先生も御指摘ございました、いろいろなスタッフが協力のもとにやはり説明と同意ということが、一般の医療でも大事でございますが、特にこういった移植医療の場合は非常に大事だ、それが患者さんあるいは家族の方への安心感を高め、そしてそれが、広く国民の方に正しくこの移植医療というものがどういうものかということを御理解していただける大変重要な角度だというふうに思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/64
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065・松本純
○松本(純)委員 以上で質問を終わります。ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/65
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066・佐藤剛男
○佐藤(剛)委員長代理 山本孝史君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/66
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067・山本孝史
○山本(孝)委員 冒頭でございますけれども、委員が二十人を少し超えたところしかおりません。党議拘束が外れて一人一人が意見を表明する、判定をしなければいけないという法案を審議する中で、私は非常に不安感を持っております。一言申し上げたいと思います。
あわせて、本委員会でこの法案の賛否を問うのかどうかということも、今、理事会の中で協議をさせていただいておりますけれども、もう一度、委員お一人お一人がお考えをいただきたいというふうに思います。
移植を待つ患者さんの立場に立って臓器移植問題にずっと取り組んでこられました中山先生、あるいは今回法案を提出されました皆さんに、まずもって敬意を表したいというふうに思います。
私も、脳死という状態あるいは移植というものを否定しているわけではありません。しかしながら、移植のためとはいえ、「(脳死体を含む。)」という書き方で、脳死を死とする社会的な合意がないままに、しかも、法律で初めて死を定義する、そういう姿勢に私は賛成することができません。
臓器移植は、移植を受ける人と提供する人と両方が存在して初めて成り立つ医療であります。私は、臓器を提供する側、あるいは提供することになり得る側に立って何点か御質問をさせていただきたいと思います。
平成六年四月に出されました旧法案は、提出から解散に至って廃案になるまでの二年半の間、ほとんど審議がされなかった。たなざらしにされていたというふうに批判がされておられます。先ほど中山先生、幾つか理由を述べられましたけれども、提案者の皆さんとしては、その理由あるいは背景をどのようにとらえておいででしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/67
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068・中山太郎
○中山(太)議員 委員のお尋ねの件につきましては、法案の審議等はすべて、委員長を含む理事会の御意見に従って法案の審議の日程がつくられるわけでございまして、提案者はそれにお願いをする以外に一切関与するわけにはまいりません。
以上でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/68
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069・山本孝史
○山本(孝)委員 提案者側からするとそういう姿勢だと思います。
私が申し上げているのは、こういう法律を国会の中で審議するに当たって、かなり回り道をしているというふうに皆さんがおっしゃっておられると思ったので、そこのところ、法案の中に何らかの問題があって進まなかったのか、あるいは法案を審議する状況に委員会がなかったのか、ひいてみれば日本社会がなかったのか、そこのところの認識をお伺いしているのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/69
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070・中山太郎
○中山(太)議員 最初提案いたしました法案は、御案内のように、御本人の生存中の意思が明確に記録されていない場合、遺族のそんたくによってこれを行うことができるというのが二項にございましたが、これが、国会内部の方々また一般の社会でも、いろいろと批判をされる方もいらっしゃいました。しかし、それが直接に国会の付託された委員会で審議を妨害しているということは、私には理解できません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/70
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071・山本孝史
○山本(孝)委員 地方公聴会に行きまして、名古屋の会場等で聞いておりまして、家族のそんたくというところを外せばこの法案もういいじゃないかという流れが一気にできて、修正案の流れになっていったというふうに理解をしておりますけれども。
私が申し上げているのは、国民の多くが医療に不信を持っているという状況が、恐らく国会議員の一人一人のこの法案に対する審議の姿勢をかなり重要にさせたというか慎重にさせたのだというふうに私は思っているのです。なぜこの医療不信というのが日本社会においてここまでに根深いのか、なぜその医療不信というものが解消されないのでしょうか、提案者の皆さんの認識をお伺いしたいと思います。
〔佐藤(剛)委員長代理退席、委員長着席〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/71
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072・中山太郎
○中山(太)議員 医療に対する不信が浸透してきている。私は、戦前、医療に対して患者側がその担当した医師を告発するとかといったようなことは極めてまれだったと思います。しかし、戦後、情報化が進み、また、いろいろと医療に関する常識的な情報が国民に伝えられる、あるいは学校教育において行われるといったような中で、医療の中における問題点について、つい最近のことではございますが、当委員会でも問題になりました血液製剤の問題、こういった問題も含めて、やはり国民から見ておかしいといったような問題もございますし、また、医師が院内において医師として十分努力を払ったにもかかわらず、いわゆる医療ミスがあったといったようなことについても告発が行われております。しかし、私は、それは全部の医師が行っているわけでは決してないと医師の一人として信じております。
もし医の倫理に反するような医師がおりました場合には、医道審議会においてこの審議をされ、そこで医師免許証の剥奪が行われるという組織がきちっとこの国にはあるということを御理解いただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/72
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073・山本孝史
○山本(孝)委員 今のお話ですと、何か、医療についての知識が深まった、国民が賢くなったから医療不信が深まったのだというふうにも私は聞いてしまったのですが、先生御承知のとおりに、医道審議会で医師免許の剥奪になるのは、ほとんどの場合が脱税であるとか病院経営の中の問題であって、この日本社会において、医療裁判、医療過誤の問題というのは極めて扱いが難しくなっています。裁判の中でもほとんど結審まで至りません。そういう状況の中で、医道審議会があるからと。弁護士さんのように仕掛けを持っているのと違って、医師の場合はそういうふうにはなっていないのです。私は全員のお医者さんがそうだとは言っていない。ただ、何人かのお医者さんがそのような姿勢をとられるがゆえに、医療全体への不信感が深まっている。それは安部英先生に見られるがごとく、先生、今おっしゃったとおりだというふうに思います。
ただ、私が申し上げたいのは、この医療不信というものがなくならない限りにおいて、この日本という社会においては、いかに移植のための法律をつくってみても、移植というものは前に進まないのではないか。臓器を提供する人がいるということを前提にしている移植医療ですから、国民が移植医療というものに対して理解を持たない限りにおいては、この日本社会においては、移植というのは法律一つをつくったからできるということではないのです。そこのところをぜひ御理解をいただきたいのですね。
申し上げるまでもなく、午前中の質疑にもありました、和田移植の疑惑と先生おっしゃいましたけれども、和田移植のまさに疑惑以来、タイプこそ違いますけれども、この法律が各党協の中で協議されている間、あるいは法案が提出されて以降も、例えば平成五年、大阪の千里救命救急センターの太田宗夫先生によるところの肝臓、腎臓の摘出事件、あえて事件と申し上げさせていただきますけれども、あるいは東京女子医大の太田和夫先生のUS腎の輸入事件、横浜総合病院の、私、近くですけれども、この病院からの脳死の臓器摘出事件、今大阪で裁判になっておりますけれども、関西医大の、やはり同じように腎臓とそのそばにあります血管の摘出事件、たくさんの事件が、片一方で臓器移植法をつくろうという動きがありながら、片一方で臓器移植法の審議がある中で、何人かのお医者さんたちは、自分たちのルールを踏みにじっていくような形で移植医療というものに対して不信感を醸し出してこられたわけですね。ここのところが結局何ら解決していない。
これは聞いている話ですけれども、その和田移植と言われている和田先生、今も東京の方に来られているようですけれども、患者団体さんのシンポジウム等に出席されて、フロアから御発言になるときは、あの私が手術をした時点では世界で二番目に長生きした事例でしたというふうに、いわばいいことをやったのだという形のお話しかされない。あの移植がどれだけのものだったのだ、どういう問題なんだ、なぜ疑惑だと言われているのかということについて、御自身の反省は一言も聞かれていないというふうに私は思います。
こういう医療不信がなくならないままで、法をつくったからといって適正な移植医療がこの日本社会に定着するとは、私は到底思えません。国民は臓器移植を受け入れないと思います。もう一度、中山先生の御認識をお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/73
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074・中山太郎
○中山(太)議員 和田心臓移植におきます疑惑は、私も持っております。今先生が御指摘のように、和田先生は、自分の移植は間違っていなかったという発言をされておられます。しかし、刑事事件になるかどうかといったところで不起訴になっているわけであります。こういう状況の中で、私は、和田心臓移植が日本の移植医療を大きく阻害しているということをはっきり申し上げておきたいと思います。
このことをもって、すべて、これからも移植医療が日本ではできないというふうに断定することにつきましては、私は、先生の御意見と少し違います。その後、この医の倫理の問題、また、この移植というようなもの、臓器の摘出というようなもの、これはすべてチーム医療でございますから、一人がやるというような手術ではございません。相当多数の人間がかかって周到な準備の上でしか行えないことでございますから、今後、そういうことは起こってはならないし、起こるべき体制をつくってはならない。そのために、法律でまず厳しく規制をして、そしてその他のものは省令できちっと決めまして、その上で、この倫理委員会等の設置も義務づけられておりますから、この指定された医療機関で完璧な監視のもとに医療が行われる、こういうことでなければならない、私もそういうふうに存じております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/74
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075・山本孝史
○山本(孝)委員 恐らく中山先生と私とここが全く認識が、多分ずっと議論していっても合わないのだろうというふうに思うのです。
それじゃ、今まで起こってきた太田宗夫先生、太田和夫先生、あるいは今名前は申し上げませんけれども、関西医大でやっているこの事件、一体こういう問題はこの法律をつくったらなくなるのですか。なぜそう言い切れるのですか。
〔委員長退席、津島委員長代理着席〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/75
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076・中山太郎
○中山(太)議員 この法律をつくったらそれがなくなるかというお尋ねでございますけれども、私は、それじゃ法律なしでこのまま放置していいということにはならないと思います。この国はやはり法治国家でございますから、あらゆる医療行為については法律をもって規制することが必要だと思っております。
ただ、皮膚の移植とか輸血とかあるいは骨の移植等に関しては、現在、法律はございません。こういうことを考えますと、法律が必要なもの、あるいは法律をつくるまでにも至らないもの、いろいろとあると思いますが、あくまでもその担当する医師のいわゆる倫理観、また医師としての使命感、こういったものが医の基本でなければならないと私は信じております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/76
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077・山本孝史
○山本(孝)委員 先生、その点、私も一緒なんです。医者の倫理が一番大切なんです。でも、医者の倫理が、結局みずから否定してきたわけでしょう、事例が積み重なってきているのは。それで、今おっしゃったように、医道審議会とおっしゃるけれども、医道審議会はほとんど機能しません。倫理委員会は今大学の中にもちゃんとあります。でも、実際のところは機能しておりません。なぜなんですか。もちろん機能しているところもありますよ。でも、ほとんど形だけにしかなっていない。
福島さんにお聞きをしたらというか、福島さんの御答弁予定としては、医療不信がなぜ根深いかというところの原因として、今の医療界においては医者と患者の間の関係が必ずしも対等と言えないのです、患者が医師から十分な情報を得ていないと感じているから医療不信が起こるのです、医者と患者の意思の疎通が十分でないから医療というものに対しての不信が起こるのです、全くそのとおりだと思う。ここのところを手をつけずして、移植法律案をつくったから移植ができるのだと先生おっしゃるけれども、この法律で、何ですか、結局は、「死体(脳死体)」から臓器を摘出してもそれは殺人罪に問われませんよと言っていることだけでしょう。だけと言ってはそれは語弊があるかもしれないけれども、結局そこを中心にしてやっている。そうじゃなくて、医の倫理というものをしっかりと確立してください。
今、介護保険法と一緒になって医療法をやっています。医療法の中で、介護保険法ばかりで医療法の審議を一遍もまだここでしていませんけれども、あの中に、インフォームド・コンセントというものはどうするのだという話になっています。ここのところをしっかりとしないことにおいては、何ぼやってみてもだめなんだ。だから、こんな法律をつくって、言っちゃ悪いけれども、語弊があるけれども、遊び盛りの子供におもちゃを上げて、はい、あと好きなようにしなさいじゃだめなんですよ。私はそれを言っているのです。そう思いませんか、先生。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/77
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078・中山太郎
○中山(太)議員 先生、奥さんもお子さんもいらっしゃると思います。先生御自身も生身の体でございます。病気になられた場合に、だれに診察を受けられますか。一番信頼できる医師を選択されるはずです。そこに患者と医師との信頼関係が確立されるわけです。医師を信頼しなくて治療を受けるわけにはまいりません。こういったことを私どもは原則的に医師と患者の信頼関係というふうに認識しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/78
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079・山本孝史
○山本(孝)委員 先生はドクターの立場である、私は確かに患者の立場であります。そういう意味でいって、残念ながら、自分が、あるいは自分の肉親が治療を受けているときにおいてすら、このお医者さん、何でこうなのかしら、何でこんなこと言うのかしらという苦々しい思いをしたことは一度ならずあります。そういう意味で、どうしてもやっぱり治していただきたい、お医者さんにすがらざるを得ないという立場において、先生、素直にお認めいただきたいと思うけれども、医者と患者の関係は対等ではありません。はなから対等ではありません。しかし、対等でなければ移植医療などというのは到底進みません。自分がどういう治療を受けるかということがちゃんとわからない限りにおいては話は進みません。
繰り返しますけれども、なぜこれほどの臓器移植にかかわる暗いニュース、事件が続いているのか、そこのところをしっかりとした形をつくっていただかないと、私は、日本においては移植というものは絶対に定着しないし、かえって悪い話になってしまう、そのように思っています。
この移植法に関係して、先ほど先生が御答弁に立たれた中でも、欧米は倫理規定が厳しいのだ、社会に一つのシステムがそれでできていますというふうにおっしゃいました。各国において、脳死というものの扱い方あるいは移植というものの扱い方を法で決めているところもあれば、法で決めていないところもある。それぞれの文化の中で移植というものがその社会の中に定着をしてきた。先生、いみじくも御自身おっしゃったように、欧米は倫理規定が厳しい、医師というものについてのいわば尊敬の念も集まっている、医者と国民の間に一種の信頼関係も日本よりは強いだろうと思います。
そういう状況の中で、今本当に日本の移植学会がこの移植医療というのを開こうとしておられるのであれば、フェアでベストでオープンだといつも野本先生おっしゃっていますけれども、今、フェアでオープンでベストな日本移植学会みずからつくろうとしておられるガイドライン、今月いっぱいでできるというふうにも聞いています。「臓器提供マニュアル」という形でこの原案を私もいただいておりますけれども、ぜひこのマニュアルというかガイドラインができ上がって、その内容をこの委員会で検討させていただいてから、すなわち、法律をつくるというだけではなくて、法律をつくった後の移植現場がどういう状況になるのかということをぜひ委員会としても聞かせていただいてから法案に対する賛否を表明したいと思っておられる議員の方はたくさんおられると思うのです。それが私は国会としての普通の姿だと思うのです。提案者としてはどのようにお受けとめでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/79
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080・中山太郎
○中山(太)議員 私は、この移植の問題が日本で国民の間に不信と混乱を巻き起こした一つの問題として、移植を行う医師の側が前に出過ぎたと思います。そして、移植を受ける患者のサイドはむしろ後ろに下がっていたと思います。そのために、移植医の方々が移植をするためには脳死判定が必要だというような認識を持たれた。ここにこの日本の和田移植以来の問題が潜在してきているわけです。
だから、ここのところで、今、移植学会がガイドラインをつくる、それを見てから賛否を考えたいという先生のお話でございますけれども、これは議員お一人お一人の考え方でございますが、ガイドラインはあくまでガイドラインでございまして、私は、国権の最高機関のこの衆議院の厚生委員会がガイドラインを研究されるなら研究される場をつくられた場合に、これから法律がもし成立をいたしましても、施行までの日数がございますから、そのガイドラインをつくられた移植学会の責任者をここへ呼ばれてガイドラインの解説を受けられる、そして、厚生省の省令などでそれを決めていくということがもし必要であれば、それは委員長と委員会の理事会の御判断で十分でき得るものと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/80
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081・山本孝史
○山本(孝)委員 今回の法律案は党議拘束が外れております。議員一人一人がみずからの意思を表明するということになっております。したがって、賛否を問われるのは本会議場であります。そういう意味合いにおいても、我々がいわば本会議の構成メンバーでありますけれども、この中で十分な審議をするのだということが極めて大切なことであって、法律をつくるということは、その法律が持つ意味合いも、その法律が及ぼす効果も、あるいは結果も我々が責任を負うわけであります。
したがって、法律を運用していく立場である移植医が、あるいは移植学会が、あるいはそれに類する救急医学会が、麻酔医の皆さんが、内科医の皆さんが、今後、法律ができたことでどういうふうに対応していきますと、むしろこの場でもって国民に向かって、皆さん、今までいろいろ移植というものに対して暗いイメージをお持ちだったかもしれないけれども、実はこういういい治療なんですよ、ぜひ御理解くださいという意味合いにおいても、ぜひ私は国会という場において、この移植医の学会の皆さん、作業部会の皆さんとは言いません、理事長の野本先生でも結構です。ここの中で、皆さんが心配されておられることは大丈夫ですよ、ここまで担保されていますよということをお話しになるのが、皆さんの立場に立っても私はその方が一番いいと思う。それは法律ができてからの話ではない。それは法律ができる前の話だと思います。もう一度お願いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/81
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082・中山太郎
○中山(太)議員 御判断は委員長初め理事会の御決定に従うことが最も正しいと考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/82
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083・山本孝史
○山本(孝)委員 移植学会の「臓器提供マニュアル」の一ページ目のところは「第一章 はじめに」となっておりまして、「理事長声明(一九九六年九月二十八日「今後の活動方針について」)」という表題になっております。ここに作業部会の目的と方針というものが書いてございます。四項目あります。お読みいたします。
1.国民に「全公開」のかたちで脳死移植実施の道をつくる。
2.準備期間を3~6ケ月とし、この間に現在のすべての準備状況を国民に提示し、万一不足の指摘があればこれを補う。
3.最も多くの国民の支持が得られた方式を見定め、脳死移植を実施する。
このように作業部会の目的、方針は書いてあるのですね。
すなわち、国民の皆さんに全部公開する中でこの道のいわゆるガイドラインをつくっていきます。そのガイドラインを皆さんに提示する中で、もし過不足があるのであればどうぞ御指摘をください、見直していきます。三つ目、皆さんが選ばれる一番いい方法でもって私たちは脳死移植を実施します。
脳死移植にかかわるお医者さんたちがつくられておられる学会の、移植法律が今でき上がればその後やっていこうとしている臓器提供のシステムについて、この作業部会は三つの条項を立てて、いずれも、国民に、国民に、国民にとおっしゃっておられるのですね。
国民の代表である我々が当然その話を聞いてから今後の日本の移植医療がどうなるのか、この委員会で今やっているのは、単に法律にマル・バツをつける話じゃなくて日本の移植医療あるいは医療全体をよくしていこうという話をしている委員会なんだから、ぜひともにこのマニュアルの中に盛り込まれている精神なり理念なりあるいはこれからの取り組みの姿勢というものは、私は当然この委員会の中で議論されるべきだというふうに思います。もう一度提案者の皆さんのお答えをお願いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/83
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084・福島豊
○福島議員 山本委員の御質問にお答えいたします。
ガイドラインを臨床の現場でさまざまに検討を進めているということは事実でございますし、その御意見また方向性というものも当然尊重されるべきであるというふうに私どもは思っております。しかし、この法案は、そういった医療現場での努力というものを全体としてしっかりと支えていく、その枠をつくるというところに大きな目的があるのでございまして、私どもは、この法案の審議を精力的に進めていかなければいけない、それがまた医療現場でガイドラインをつくるために努力しておられる臨床医の皆様の御期待にこたえる道である、そのように考えておるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/84
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085・山本孝史
○山本(孝)委員 この法律の枠の中にこれから日本で行われる移植医療がおさまるのか、はみ出すのか、あるいは沿わないのか、うまくいくのか、そういう意味合いにおいても、どうも皆さん、早く上げることばかりが頭にあるので、余り慎重な審議をしたいと思っておられないのかもしれないけれども、参考人という形で、やはりこれだけの法案をつくっておられる中において、そこに盛り込まれている精神は何なのかということを謙虚に私は聞いてみるべきだというふうに思います。そうでないと、私は基盤整備が進んでいかないと思っているのです。
それで、先ほど中山先生もおっしゃいました。これは臓器に関する移植の法律であって、組織の問題については触れられておりません。私たちも今、対案といいますか、一生懸命法律案をつくろうと思っておりますけれども、やはり組織の問題は触れておくべきではないだろうかと思っているのですね。
というのは、先ほども例に挙げました平成五年の千里救命救急センターの太田宗夫先生の摘出事件でございますけれども、いわゆるドナーの方は皮膚をとられる、それで遺体が帰ってきた。そのドナーとなった方のお母さんは、こんなに皮膚までとられて因幡の白ウサギのようになってといってお嘆きになった。そんなことは聞いていませんでしたということで、ずっと後々まで、今、後悔しておられる。先生も多分このお話は御存じだろうと思います。
先般、今月、私は質問主意書を出させていただきました。関西医大で摘出をされたこの血管が、今、国立循環器病センターで冷凍保存されている。本人は、この腎臓の摘出というものには確かに承諾をしたけれども、同じ承諾書の中にある血管という部分には丸はつけていない、なぜ血管まで取られたのか。しかも、組織の分類に当たる血管が三年間にもわたって国立循環器病センターで冷凍保存されていた、一体それは何のためなんだ、そんな話は聞いていない。家族の方からすれば、自分の最愛の娘の体の一部が、冷たい病院の中で知らないうちにずっと冷凍保存されていたというこの心情は、私は家族の立場に立てば大変な痛々しい思いだろうというふうに思うのです。
したがって、臓器と組織という形で区別されているわけですから、組織というものもこの法律の中に盛り込んで、組織もどうするのですと、皮膚も骨も関節も治療という中においては大切な部位だとすれば、その部分も臓器と同じように、摘出のあるいは提供のプロセスも、承諾過程も、その後使わなかったときの後の話も全部きっちりとしたものをつくるべきじゃないだろうか。
これは今、ホルマリンで漬けているのか、アルコールで漬けているのか知りませんけれども、病理標本がずっと残っているわけですね。ここの部分も提供者の同意が要るのじゃないだろうか。そういう部分が随分不足してきたと思うのです。お医者さんの側のお気持ちとしては、そんなものは要らないということだったかもしれない。ですから、そういう意味においては、ぜひ組織もこのプロセスに乗るようにこの法律の中に盛り込んだ方がいいと思っているのです。
今回盛り込まれておりませんけれども、盛り込まれる御意思はないのか、あるいはそこはなぜ盛り込まれなかったのか、そのお考えなりをお聞かせいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/85
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086・福島豊
○福島議員 この法律において組織の取り扱いというものが書き込まれていないじゃないか、それについてどうするのかという御質問だというふうに思います。
先ほども、血液また骨等につきましては、法律は定められてはいないけれども、移植というものが行われているという御発言がございましたが、刑法第三十五条に規定するところの正当の業務によりなしたる行為ということで評価されるものであれば、刑法上これは罪に問われることはなく、また、医療として現実に行われているのが実態であるというふうに私どもは思っております。
しかし、今回、臓器の移植に当たって、臓器売買を禁止しなければいけないとか、移植機会の公平性が保たれなければならないとか、家族の承諾をきちっと得なければいけない、また、記録の作成及び保存、供覧などの事柄が十分に行われなければいけないということがこの法律には盛り込まれておりますけれども、同じような扱いをやはり組織に対してしていく必要があるという御指摘は、私はそのとおりではないかというふうに思います。
しかし、現行の法律の中でそれを取り扱うのかどうかということにつきましては、現場の医療におきまして既に行われているということをかんがみれば、今回の法律では臓器というものを取り上げたということで御理解いただければというふうに思います。
また、付言して申し上げるならば、各地域ごとに研究者や医療関係者の個人的なつながりで構成されております組織移植のネットワークがございますけれども、臓器移植ネットワークにおける検討を踏まえて、自主的また自律的な取り組みによって国民から本当に信頼が得られる組織として構築をしていっていただきたいというのが私どもの思いでございます。
〔津島委員長代理退席、委員長着席〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/86
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087・山本孝史
○山本(孝)委員 ぜひ、なかなか法律の書きぶりが難しいということも理解はしておりますけれども、今後ともにこの部分にも網をかけていくという方向で検討していかなければいけない、こういうふうに思っております。
中山先生、小児科の先生でいらっしゃるとお伺いしましたけれども、先生は過去に脳死判定をしたことがございますでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/87
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088・中山太郎
○中山(太)議員 私は、救命救急センターに勤めたことはございません。そのために、脳死状態の患者を診察あるいは治療したことはございません。
ただ、この臓器移植法を提案する者の立場として、脳死の状況にある方々の状況を診察をするというか、視察をするというか、十分それを勉強しに参ったことは何遍かございます。そこで、脳死という状況を自分でも十分勉強させていただいてきた、こういうことを申し上げたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/88
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089・山本孝史
○山本(孝)委員 したがって、仮定の話になってしまって恐縮なんですけれども、竹内基準にのっとり、あるいは今の脳死判定基準にのっとって、一回目の判定をします、二回目の判定をします、その時点で、皆さん方が脳死という判定をされる、決定だという形になるわけですけれども、二回目の判定があって、横に家族がおられる、そのとき、先生、その家族の皆さんに脳死ですというふうにおっしゃる。これは、お亡くなりです、お亡くなりになりましたと多分おっしゃらないだろう。一生懸命手を尽くしましたけれども、これ以上もうやることはないのです、申しわけありませんという状況で、そこに患者さんがおられる、多分そういうことになるのじゃないですか。先生、そのとき何というふうにおっしゃるのでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/89
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090・中山太郎
○中山(太)議員 ごく最近、私ももう一度、先生の御指摘のような問題を勉強に参りました。そこで、ごく最近の話でございますが、どういう状態であったかというと、三年ぐらい前までは、脳死ですという診断を下しても、お亡くなりになりましたという診断を下しても、まだ体が温かい、人工呼吸器をつけておられて呼吸も続いているという中で、なかなか死というものについて御家族が納得されるという状態ではなかったと聞きました。
ただ、聴性脳幹反応という新しい検査方法というものを脳死の判定基準に付加した場合、この脳波が平たんになってくる。脳死状態前は平たんでない。そして、脳死が判定されて、さらに六時間後にまた判定をもう一回するわけでありますが、十二時間たっても、そこで聴性脳幹反応をやった場合には脳波は完全に平たんになっているということで、それを御遺族に見せた場合には、御遺族は、この両三年においては、非常によくわかりましたというお話をされているというふうに私自身が伺ってまいりました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/90
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091・山本孝史
○山本(孝)委員 今、原案で盛り込みをされようとしている、別途厚生省令で定める基準によりという脳死判定基準ですね、今、原案の中に聴性脳幹反応は入っておるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/91
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092・福島豊
○福島議員 脳死判定に当たっての補助検査として聴性脳幹反応は定められております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/92
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093・山本孝史
○山本(孝)委員 済みません。質問にないので恐縮ですけれども、補助検査とおっしゃったわけですけれども、今、中山先生は、聴性脳幹反応の検査をすれば、フラットだから皆さん納得しやすいのだとおっしゃったわけであります。そうすれば、脳死判定のときに、すべての患者さんに聴性脳幹反応の検査をした方がいいのだというふうに理解をしてよろしいのでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/93
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094・福島豊
○福島議員 この聴性脳幹反応の検査につきましては、広く普及いたしておりまして、現状におきましても九三%を超える普及率だと伺っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/94
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095・山本孝史
○山本(孝)委員 九三%であるならば、補助的ではなくて、正基準の中に入れられるべきであるというふうに思います。
先月、「NHKスペシャル」の低体温療法、本会議でも大分話題になって出てまいりました。柳田邦男さんがみずから出演もされておられましたけれども、この番組をぜひごらんいただきたい、もしごらんいただいていないのであればごらんいただきたいというふうに思います。
何回か皆さんの方からの御答弁の中にありますように、低体温療法は脳死患者さんへの治療法ではありません。私もその点は理解をしております。しかし、移植を待っている方々が奇跡を願っておられるのと同じように、生死をさまよっておられる救急現場におられる患者さんも、あるいはその家族も奇跡を願っておられる。それは、両方ともに奇跡を願っておられる度合いは同じであろうというふうに私は思っています。
したがって、低体温療法はすばらしい治療法だというふうに五島先生は本会議でも評価をされましたが、このすばらしい治療法をぜひもっと広がるように、移植でなければ助からない患者がいるのだというところを強調するだけではなくて、こういう新しい治療法、進んだ治療法で救われる患者さんがいっぱいいるのだというところもぜひあわせて強調していただきたいというふうに思うのですけれども、皆さん方はどんなふうにお考えなんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/95
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096・福島豊
○福島議員 救命救急医療につきましては、移植医療を推進するのと同様に、やはり力を入れていかなければならない分野であるというふうに私どもは考えております。
低体温療法につきましては、重篤な脳の障害を負った場合に脳死に至ることを阻止する可能性がある治療である、そのように私も考えております。ただ、全身の管理等々、非常に複雑な問題もございますので、さらに一層、広範にこの治療法が利用されるような体制をつくっていくということも重要である。ただしかし、誤解を避けなければならないのは、低体温療法によって、脳死状態から、脳死状態が変わるのだということでは決してないということでございます。
移植医療の推進をと言いますと、救急医療の方は手を抜いていいのかという御指摘を伺うこともございますけれども、決してそうではありません。救急医療を充実させるということと、移植医療を推進することによって今までの医療で救えなかった患者さんを救うことができるということは、決して矛盾することではない、私どもはそのように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/96
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097・山本孝史
○山本(孝)委員 矛盾することではないというふうにも思います。ただし、救急と、移植のための臓器の摘出とは、ほとんど問題の裏表でございます。
救急救命のために一生懸命頑張ろうとする、昇圧剤を入れる、あるいは低体温療法をやる、いろいろな免疫療法をやるという中において、当然、体の中の臓器はだんだん傷んでまいります。移植を受ける側の患者さんからすれば、あるいは移植医の側からすれば、できるだけ新鮮な臓器がいただきたい、結局そうなるのですね。だから、ここのところは、どこで見きわめをつけるのかというところは、まさにお医者さんの手の中にある。我々はそこに命を預けているわけです。
運び込まれた病院がどの病院であるかによって助かるか助からないかがはるかに違うという今の日本の医療の中において、願わくば助かる病院にやっぱり運ばれたい。それは、たとえ自分が生前に臓器提供の意思を持っていたとしても、臓器を提供するために運ばれる病院であってはならない。それは、救急救命の十分な措置をしていただける病院でなければならないのです。もちろん、救急医はそのために最善を尽くすはずです。そう信じています。しかしながら、そこで脳死判定というものもしなければいけない。そういう現実も出てまいります。ここのところは、国民の側はやっぱり最後までこの不安感はぬぐえないのだろうと思うのですね。
その意味においても、今までの移植の実態というものをはっきりさせて、この移植法案が持っている問題点も、いいところも悪いところもみんな示して、そして、これからのこの問題を考えていくべきだというふうに私は思うのです。いいところばかり言ってはいけません。
質問時間がなくなってきましたので、またの機会があるとは思っているのですけれども、一点だけ、附則に書いてあります健康保険法の適用の問題です。
死亡後、いわゆる脳死と判定すれば、皆さん方の立場でいけば亡くなっているわけです。亡くなっている方にそのまま治療をするという形になる。治療ではない、これは処置だという形で厚生省は読みかえをすると言っていました。当分の間、健康保険は適用するのだと言っています。
実は、そういう条文をつけた方がいいのじゃないかと提案したのは私でございまして、この「当分の間、」というのは一体いつまでなんだということで申し上げたら、あの当時の各党協の中の御回答は、永遠に続くのです、続いても構わないのです、実はそういうふうに書いてある法律もほかにもあるのですということで、この附則条項は通りましたというか、つきました。
その後、五島先生に怒られました。こういう附則がついたのでは、早くそこで死ということにして治療の現場から離してしまわないと、皆さんの立場でいけば死体が実験に使われてしまうおそれがあるよ、これはおかしいのだ、脳死判定をしたら死なんだから、そこで早くチューブを外しなさい、人工呼吸器から外しなさいと。今、うなずいておられます。今もそのお考えだと思います。
そういう意味でいけば、皆さんの立場に立てば、この健康保険法の適用云々の附則のところは外された方がいいのではないか。あるいは、このまま残しておられるおつもりなのか、残しておいた方がいいというふうにお考えになるのか、そこのところをお聞かせいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/97
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098・福島豊
○福島議員 脳死の判定後に治療を続けることに対して保険が適用されるではないかと。しかし、私は、これは決して治療ではないということがまず第一番目に確認をしなければならないことだと思います。
ただ、現行の医療の現場ではどうなっているかといいますと、脳死判定をした後にもさまざまな処置というものは続いております。今回、この法律を定めて移植医療が行われるようになったとしましても、同じことは続くと思います。同じ事態が続く中にあって、脳死判定の後に、今まで行われていたのにどうして行えなくなるのか。それは、御家族の思いというものを考えた場合に、私は当然何らかの対応をすべき事柄なんだと思います。
ただ、そこで再度確認しておかなければならないことは、決してこれは治療ではない。治療ではなくて、脳死判定後の処置を今までと同じように継続している。ただ、その点について、このコストをだれが払うのかということを考えた場合に、それは現行の保険の中で対応しましょう、そういう経過的な話であると私は認識をいたしております。
そしてまた、先ほど人体実験の材料になるのではないかという御指摘もございましたけれども、脳死判定がなされた後の脳死体について外国におきましては人体実験を行うケースがあるようにも伺っておりますけれども、しかし、私どもは、脳死判定後の脳死体について人体実験を行うようなことが決してあってはならない、そのように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/98
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099・山本孝史
○山本(孝)委員 そうであってほしいというふうに思いますけれども、そうでなかったときに困るなと正直なところ思っています。
先ほど低体温療法のところで申し上げた柳田邦男先生、御自身、やはりお子さんが亡くなられて、運び込まれて同じような脳死、あの方ですらと私は思いましたけれども、あれだけ科学的な知識もあり、現場もよく踏んでおられる方が、やはりみずからの御家族の問題になると大変だなと思われる、そして迷われる。
そういう状況の中で、私はぜひ、柳田先生ですとか、あるいは移植の野本先生ですとか、この委員会で、参考人という形で来ていただきたいというふうに思っているのです。提案者の皆さんもその点については御異論がないというふうに思いますけれども、いかがでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/99
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100・福島豊
○福島議員 ただいまの委員の御意見につきましては全く異論のないところでございまして、この国会においてさまざまな御意見をお聞かせいただき、また、私どもの法案の審議に加わっていただきたいと思うところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/100
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101・山本孝史
○山本(孝)委員 委員長にぜひお願いでございますが、今、御提案者からもこういうふうな御答弁がございました。先ほど私お願い申し上げまして、日本移植学会が今、作業部会としてこういうマニュアルをつくっておられる、今後はこれによって日本で移植をやりますよとおっしゃっておられる、その内容についてぜひ委員会で御説明をいただけるような機会をつくっていただきたいということのお願いもさせていただきます。どうぞよろしくお願いします。よろしいでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/101
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102・町村信孝
○町村委員長 理事会においてよく協議をいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/102
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103・山本孝史
○山本(孝)委員 済みません。お願いします。
時間ですので、最後に、何点か申し上げます。
提案者の皆さんも御認識どおりに、移植医療はある面では経過的な医療である、治療だろうというふうに思います。やはり数は絶対的に足りません。内科治療法の向上であるとか、あるいは交通事故の減少であるとか、アメリカは全くそのとおりでした。あるいは銃規制が進む中において、臓器提供者の数はどんどん減ってまいります。
そういう意味において、この法律ができたら移植を待っている患者さん全員が助かるというわけではありません。そこのところは、バラ色の夢をばらまかないようにしていただきたい。必ずそこでチョイスが起こります。どの患者さんを助けるかという問題は、どうせやらなければいけない。ですから、そこのところは十分な御認識をいただきたいということと、施設の限定、心臓八施設、肝臓十カ所、これは余りにも多過ぎます。一年に一例あるいは二年に一例しか心臓移植をしないような病院の腕は上がるはずはありません。それは全く実験でしかありません。そんな状況は絶対にやめさせていただきたいというふうに思います。
それで、きょう一日、意見を聞いておりまして、私は全くの少数派であるというふうに思っておりますけれども、脳死を死としても、あるいは私たちが考えているように脳死を死としなくても、要は、法律の、刑法上の対象になって違法性が阻却できるかできないかという問題に両方ともに結局は行き着くわけですね。そのときに、死体損壊罪だったらどうなんだ、あるいは嘱託殺人罪だったらどうなんだという話であって、そこが刑事上問題と言っている。しかし、要は違法性阻却なんですね。こういう正当行為としてきっちりとした基準を設けるのであれば、「(脳死体を含む。)」という形にしなくてもいいのじゃないだろうかというふうに私はやはり思います。
チーム医療という中において日本のチーム医療がこれからどう進んでいくのか、移植医がどんどん引っ張っていくということじゃなくて、ちゃんとそこを逆に引っ張り戻せるようなチーム医療ができるのか、看護婦さんの立場はいつもそうじゃないと思いますけれども、パラメディカルの皆さんがどういうふうにチーム医療に取り組んでいけるのか、これも大きい問題だと思っております。そんな問題も含めて、ぜひ慎重な審議を委員長にもお願いを申し上げて、私の質問を終わりにしたいと思います。
ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/103
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104・町村信孝
○町村委員長 桝屋敬悟君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/104
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105・桝屋敬悟
○桝屋委員 山本孝史先生に続きまして、新進党の国会議員として質問をさせていただきます。
実は私は、前国会廃案になりました法案の提案議員でありました。残念ながら今回は外れたわけでありまして、そういう意味では、提案された議員の方々は本当に御苦労さまであると申し上げたいと思います。
きょうは中山太郎先生もいらっしゃいますが、私は、今回この場に臨んで、一つは、この法案をつくりますときに、今は残念ながら野におられますが、野呂昭彦先生でありますとか、本当にかんかんがくがくとしてこの法案をつくり上げてきたことを思い出しながらこの場に立たせていただいております。野呂先生なんかの思いもきょうは一端を述べさせていただこう、こんな思いで立たせていただきました。
私が今回提案議員にならなかった理由の一つは、実は、前国会でせっかく法案を提出しながら、どうも自分自身、納得のいくこの厚生委員会の場での審議ができなかった。中山先生も本会議で、残念ながら十分な審議はできなかった、こうおっしゃいましたけれども、そのとおりでありまして、そこを深く携わった者として一つは反省をした次第であります。
それからもう一点は、私はやはり、前回の国会の様子を見ておりまして、この委員会の平場で臓器移植法案を議論するのは本当に難しい。と申しますのは、ほかの予算関連の法案がたくさんあるわけでありますし、なかなか時間がとれないというのが物理的な状況だろう。したがって、私は、できることならば特別委員会でも設けて、本当に見識のある先生方が入ってしっかり議論した方がいい、こういう思いもあったわけでありまして、実はそのようにも申し上げようかと思いながら、あの選挙のさなか、終わった後のごたごたの中で、思い余って提案できなかったわけでありまして、最初に申し開きをさせていただこう、こんなふうに思っております。
そういうことで、やはりそういう意味ではしっかり審議をしたいという思いでございますが、最初に中山先生に、これは半分お願いなんでありますが、先ほど同僚の山本孝史先生からも対案を検討されているやにお話を伺いました。私は、もし用意できるのであれば対案も出していただいて、せっかくの機会でありますから、あわせて議論をするということは国民にとって非常にわかりやすい議論にもなりますし、さらには、法案の重要性等を考えますと、ぜひ一緒に議論をするというぐらいのお気持ちで、引っ張ってこられた中山先生のお立場でありますから、そんなお気持ちでいていただきたいな、私はそんな思いでいるわけでありますが、最初にお願いでありますが、いかがでありましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/105
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106・中山太郎
○中山(太)議員 国会も、会期の日数もございますから、また、委員会の開催日数予定もあろうと思います。そういう中で対案をお出しになるならば、対案が堂々と御議論をいただけるような、時間的なことも十分御配慮の上で対案をお出しいただいて御議論をされることは、当然、国会の責任だろうと思っております。
ただ、移植を一日千秋の思いで待って死と対決しておられる方々もいらっしゃることも片方では考えながら、ぜひひとつ、対案というものが既にできておりますれば、それをお示しいただくことが必要ではないかと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/106
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107・桝屋敬悟
○桝屋委員 ありがとうございます。私も、もし用意できるのであれば、対案を一日も早く出していただきたいな、こう思っている一人でございます。
もう一つは、私も、一日も早くこの法案は成立を期すべきである、このように思っているわけでありますが、たとえ法案ができたとしても、先ほどから議論が出ております政省令にゆだねられる部分というのは極めて大事な部分もありますし、これから移植医療が我が国で始められるその過程というのは極めて大事だろう。したがって、この国会においても、私は、そうした過程をしっかりと見きわめていく、そういうシステムを何らかの形で考えていくべきではないか、そんな思いを持ちながら、また、中山先生なんかにもお願いを申し上げ、御相談もさせていただきたい、こんなふうに思っている次第であります。
具体的な話に入ります前に、もう一点、先ほど山本孝史議員からは、医療に対する大変厳しい御意見もありました。角度を変えて、私も医療の体質ということについて何点か議論させていただきたいのです。
私も諸外国をずっと視察に行かせていただいて大変に勉強になったわけでありますが、諸外国では、移植医療は医療サイド、特にドクターを中心とした大変な営々の積み重ねといいますか、そうした経緯といいますか歴史がある。本も随分読ませていただきました。アメリカにおける移植の経緯というものは大変な苦労があった、そして、その従事されたドクターはそれこそ牢獄への切符を片手に取り組んでこられたような、そんな経緯も聞かせていただいているわけでありますが、なぜ我が国ではこうした医療の取り組みが蓄積として、歴史としてできなかったのかということが素朴な疑問としてあるわけであります。
私は、医療の世界、別に医学部を出たわけでもありませんし、実態のところはよくわからないのでありますが、よく話を聞きますと、そうした先進的な取り組みというものを我が国の医療の体質の中で阻んでいる何かがあるのじゃないか。例えば大学病院を中心とした閉鎖的な、そういう学問の世界みたいな話もよく聞くわけでありまして、なぜ我が国でそういう作業ができなかったのか、素朴な疑問であります。そんなものにもしお答えできるものがあれば、何か私の担当は矢上先生のようでありますが、むしろドクターの資格をお持ちの自見先生あたりに、ぜひその辺の我が国の医療の状況を、なぜできなかったのかということをちょっと御所見をお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/107
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108・自見庄三郎
○自見議員 桝屋委員から、なぜ日本の医療界において移植が――三十年前に一遍御存じのようにあったわけでございますけれども、それは、今さっきから話になっておりますように、大変大きなエピソード、不幸なエピソードということで、日本の移植医療が大変おくれたというのは私は事実だと思います。
先生御存じのように、先生とも一緒にこの委員会の視察でアメリカ、ヨーロッパに脳死の視察に行かせていただいたわけでございますが、日本の脳死臨調の結論でも、「臓器移植は、法律がなければ実施できない性質のものではない」とする一方で、「心臓、肝臓等の移植を行っていくためには、」「臓器移植関係の法制の整備を図ることが望ましい。」こういうふうになっているわけでございます。前の総選挙によりまして、前回、中山先生、私も提案者でございましたが、臓器移植法案が廃案になったということで、特に移植学会が自分たち独自でやろうということを、私は新聞記事で読んだわけでございます。それはそういった流れの中にあるというふうに思っております。
今、先生の質問の核心は、一体何で――先生も私も、アメリカの移植医療における最も先駆者の一人でございますピッツバーグ大学のスターツル教授に会わせていただいたとき、たしか、当時アメリカは、まさに移植医療の先端の人が、監獄行きでしたか、片手に切符を持って新しい分野を切り開いてきたのだという大変感動的な言葉を聞いたことは先生も私も印象に残っていると思うわけでございます。
これは私の私見でございますが、本当に日本の社会というのは、私自身、個人的な意見として、まさにこれは正しいと思ったことはきちっと社会的にも合意が得られるというふうに確信を持てば、これは医療人が移植をしても、今さっき言ったように、それですぐ「実施できない性質のものではない」というふうに書いてあるわけですから、しかし、当然、大変大きな社会的な問題、場合によれば訴訟にもなるわけでございますが、そういったことを何回も実は西洋の学者はくぐり抜けてそういった新しい移植医療のパイオニアとして働いてきたわけでございますが、日本の医療界、私も医療界にしばらくいた人間でございますが、何か、お上が許していただければできる、お上が許していただけねば、なかなか社会的な反発と申しますか、圧力が強いということ、そういった側面があるのではないか。これは私の全く私見でございますが、そういうふうに思っております。
先般もスターツルさんが東京に来られまして、実は私もシンポジウムの末席に出させていただいたのですが、フロアから、日本の移植学会の方からいろいろ意見が出ました。そのときもスターツルさんが、君たちがそういうふうに信じるなら、まさに君たちは信じるところをやったらどうかというふうな発言をしておられました。
そこら辺が本当に最先端の、まさに最初の、パイオニアというバーナード博士、あるいは私はスターツルさんの本も読ませていただきましたが、まさにそういったところが、日本以外の学者と申しますか、切り開いていくというところが、やはり文化、歴史、伝統の違いもあるのかもしれませんけれども、そういった面が日本の医学界にもあるのかなというふうな気がするわけでございますから、先生今お話しのとおり、「心臓、肝臓等の移植を行っていくためには、」「臓器移植関係の法制の整備を図ることが望ましい。」こうあるわけでございますから、やはり一日も早くこの法律を成立させることによって、きちっと法律ができればいろいろなチェックと申しますか、オープンになるところもできるわけでございますから、そういったことを含めて、日本の医療界においては移植法案の成立を図ることが必要じゃないかというふうに私は個人的に思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/108
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109・桝屋敬悟
○桝屋委員 ありがとうございます。
今、私見と申されて若干の本音を、実はもっと本音がおありじゃないのかという気もするわけでありますが、しかし、いずれにしても我が国にはそういう歴史といいますか、経緯が残念ながらないという認識でございます。
したがって、今最後の方におっしゃったように、一つのルールをつくって始めていこう、こういうことであるわけでありますが、私もこの法案を前に進めるという立場で今質問をさせていただいておりますが、もう一点、私はずっと世界を回ったときにどうしても気になる言葉があったのです。
最先端の移植医療の現場にいらっしゃるのが日本人だ。その日本人の方が、最初に僕はドイツに行ったものですから、そこで一番ショックを受けたわけでありますが、初めて外国に行ったということもあるのですが、びっくらこいたわけでありますが、なぜ日本でおやりにならないのですかという話もたしかしたと思うのです。いや、もう日本ではできません、日本の医療、日本の医学界ではこういう活動はできません、移植はできないのだという本音を吐露されたわけでありまして、実はその部分も大変に心に残っております。
これは質問ではありませんが、この移植医療を厳格な法律のもとに、システムのもとにやったとしても、私は、実はその言葉の中に、日本の医療界が心して考えなければいけない幾つかの要素があるのではないかということを感じているわけであります。恐らくそれは、医療に携わっておられる方々が一番よくおわかりなんじゃないかな、こんなふうに思っているわけであります。
そこで、ちょっと話を変えたいと思うのですが、今、自見先生からも話がありました。私は、さきの国会でこの法律案が廃案になったときに、これは一つの選択だろう、一つの結果であるので、さっき話が出ましたように、もう法律がなくても医学界で移植の取り組みをしよう、こういうような記事も読んだ気がいたします。その動きというのはどういうふうになっているのか。説明員の方でも結構でございますが。それじゃ矢上先生。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/109
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110・矢上雅義
○矢上議員 ただいまの御質問でございますが、旧法案が廃案となった際、医学界において法律なしでも移植をやろうという動きですが、御指摘のとおり、移植学会では、昨年の九月二十八日の理事会におきまして、脳死体からの臓器移植を実施するための検討を始める旨の声明を発表しております。その後、具体的に、脳死臓器移植を実施するため、移植ネットワークのあり方、移植患者の管理、移植実施施設の評価について検討を行う作業部会を発足させ、これら作業部会の結論は今春にも取りまとめられ、その後、移植学会としては、これらの検討結果をもとに移植実施に向けた体制の整備がなされるのではないかと考えられております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/110
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111・桝屋敬悟
○桝屋委員 私は、ここまである意味では世界で取り残されている、おくれている我が国の移植医療でありまして、さらには、諸外国では脳死を規定する法律がないまま移植が行われている、こういう実態もあるわけでありますから、法律なしで移植医療が行われていくということも我が国の一つの選択肢じゃないか、こうも思ったわけでありますが、もう一度提案者に、やはり移植立法がぜひ必要である、立法なくして我が国においては移植医療はできない、こういう御見解であるのかどうか、お尋ねしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/111
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112・中山太郎
○中山(太)議員 法治国家でございますから、法律が整備された上でそれが実施されることが最も法治国家としては好ましいと思います。もし法律なしに実施した場合に、必ず第三者告発というものが発生してまいります。今までもございました。こういった問題をどうして排除していくのか、それはやはり法律の整備である、制定である、私はそのように理解をいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/112
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113・桝屋敬悟
○桝屋委員 いわゆる法治国家、それから、実際やると今のように第三者からの告発がある、こういう観点も一つは理解ができます。その議論ものけて、今の我が国の医療界、移植学会等も含めて、現実に法律がなくてもやろうと思えば実際に私はやれるのではないかという気がするのですが、しかし逆に、やろうと思ってもやれない、そこまで今の医療界は来ているのではないか。
例えば、先ほど山本先生から議論がありました、移植学会と救急医療の立場の違いというものは相当根の深いものがあるわけでありますから、私は、そういう観点からも、やはり法律をここまで来ればつくらざるを得ないというふうにも思うわけでありますが、もう一度お伺いしたいのですが、いかがでありましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/113
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114・中山太郎
○中山(太)議員 私は、この問題を勉強させていただく中でまず第一に考えましたことは、人間の死生観が一番その根底にあると思います。
この臓器移植が行われるようになりましたのは、御案内のように、キリスト教文明の世界から発生をしております。だから、アメリカ、カナダ、ヨーロッパ、ソ連も含めて、ソ連のロシア正教会はキリスト教の分かれでございますから、そういったところでこの臓器移植が行われている。それは、自分がもし死んで、埋葬される前に、自分の臓器を提供することによって臓器の移植でだけしか生きられない人たちが救えるならばその私の臓器を差し上げたい、これがいわゆるキリスト教の信者の気持ちであります。そういう中で、キリスト教の文明を受けた社会というのはこの臓器移植が非常に早く発達した。
日本のように、それぞれの死生観が違う、信仰も違う、こういったような多神教の国家、特に医学との関係で、今までの、患者が医者を絶対信頼しているといった体制が現在崩れつつあって、医師と患者の信頼関係が非常に混乱をする事態も発生しておる中で、私どもはやはりそこらのところはきちっと考え方を整理しながらこの国で移植が行われるように考えていくべきであろうというのが私の考え方でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/114
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115・桝屋敬悟
○桝屋委員 わかります。先ほども申し上げたように、私は、廃案になったときに、これはまさに一つの結果だろうという認識をしまして、これから法律がなくても取り組みが進められるのではないか、また、それぐらい医療界でもそういう取り組みがあっていいのではないか、こうも思ったわけであります。しかし、今の中山先生の御見解、あるいは私自身も、こういう状況であればやはり一つのルールをつくる以外にないというふうに思っているわけであります。実際のところ、我が国においては、この立法作業を避けては移植は実現しないのではないかというふうに私は感じております。
それで、もう一つの必要性という観点では、これもよく言われる話でありますが、この前、本会議でも申し上げましたが、外国へ行って移植を受けるという実態、これは何といいましても、五島先生も今うなずかれていますが、たまたま我々も外国に視察に行ったときに、同じく日本の少女がドイツへ行って無事に移植を受けて帰ってこられた、こういう事実を目の当たりにしまして大変に苦しい思いをしたわけであります。
今、外国に行って実際に臓器移植を受けて帰られる方、患者さんがどのぐらいいらっしゃるのか、それに対して提案者としてどういう認識を持っておられるのか、お伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/115
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116・矢上雅義
○矢上議員 ただいまの委員のお尋ねでございますが、海外に渡航して移植を受けた患者さんの数でございますが、心臓移植に関しては、平成七年度厚生省研究班報告によりますと二十六人でございます。次に、肝臓移植に関しては、肝移植研究会調べで平成七年七月二十日現在で百二十五人と報告されております。
ちなみに、なぜこういうことが起きますかと申しますと、心臓移植におきましては、一九九五年の移植件数が欧米豪の合計で一年間に約三千六百件、そして肝臓移植におきましては、欧米豪の合計で六千二百件行われております。これだけ一般に医療として移植医療が定着しているということと、先ほど出ましたが、移植学会におきましては何とか移植を早く進めたいと思っておられますが、現実の救急の現場では、少しでも患者さんを何とか救命したいという気持ちと同時に、法律がないままで取り組めば告発を受ける可能性があるということで、非常に立場が異なっております。やはりきちんとした法律で枠組みをつくらなければ、救急の場、また移植学会の関係上、なかなか踏み切れないのではないかと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/116
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117・桝屋敬悟
○桝屋委員 世界的な動向を見ても、我が国はもうこれ以上今のような状況を続けていくことは好ましくないだろうというふうに私は思っているわけであります。
そこで、先ほど山本孝史先生の議論もずっと横で聞いておりましてつくづく感じていることでありますが、脳死を人の死として今回の法律はできているわけでありまして、私もそれに賛成をしている立場でありますが、脳死を人の死としない臓器移植法案、これを今検討されているということはマスコミ等で伺っております。
昨日の本会議でも、この考え方に対しまして海江田先生がかなり、あの海江田先生の話を聞いているとまた国民は変に誤解をされるのじゃないかという危惧を私は持ったのでありますが、臓器移植の体というのは温かいし普通の人間と全く同じだ、こういう言い方をされると非常に印象づけられるものですから、ちょっと危惧を持ったわけであります。
いずれにしても、脳死を人の死とするかどうかという議論については、もし脳死を人の死としない法案をつくるとするならば、提案者の皆さん方のきのうの反論は、一つは殺人罪を強要するような立法は困難であるという点、あるいは生命の平等性に反するというような点であるとか、あるいは検視の問題等もありました。さらには、他の生命を助けるためには心臓、腎臓を摘出してもいいというような話になるわけで大変に危惧をする、そういう立法はできない、こういう御見解でございました。
私は、脳死を人の死としない法案、これは社会的合意ということを考えればよく理解できるのです。それができれば一番いいなとも思うわけであります。
しかし、私自身が今まで勉強してきたことを整理いたしますと、もし脳死を人の死としない法案をつくるということでありましたら、これは、端的に言えば、もう本人に任せてしまう、本人かあるいは家族に脳死を人の死とするかどうかというのはゆだねるということでありまして、もっと言えば、恐らく、この問題を全部医療の側に押しつけて、そして問題解決してちょうだいと、先ほどから出ているように、医療の世界の責任が大きいのだということでそちらへ全部責任を転嫁してしまう、こういうことではないのかなという気もするわけであります。
ここまで来ているこの移植法案でありますから、やはり立法過程でこの問題はきちっと決着をつけなくちゃいかぬ、私はこのように思っているわけでありますが、提案者の御意見をお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/117
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118・矢上雅義
○矢上議員 桝屋委員の御質問でございますが、法律をつくるにしても、脳死を人の死としてつくるか、また脳死を人の死と認めずにつくるか、法律についても二つの選択肢がございます。
ただ、先ほどから申しておりますように、脳死を人の死としない場合のメリット・デメリットを考えますと、私ども提案者としてはそれをとることはできない。それで、私たちも苦渋の選択と申しますか、一生懸命議論した上で、脳死を人の死として法律をつくることになったわけでございます。
私が思いますに、今委員の指摘のございました医療への責任転嫁というものは、むしろ私たちが努力不足で法律をつくることがおくれた結果、移植関係の皆様方が法律なしで心臓移植を行う、そういう事態が起きたときこそ大変な問題だと思っております。やはりきちんとした法律をつくる、その上で、その法律の中で脳死を人の死と定義づけてきちんと解決することが私たちに求められているものだと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/118
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119・桝屋敬悟
○桝屋委員 今、矢上先生がおっしゃった中で、私は、最初に申し上げましたけれども、医療の世界にいた人間ではありませんから、正直に申し上げて、我が国の移植医療がこれほどおくれてきている、世界の中で日本みたいな国は日本だけであります。この状況の責任の多くは、やはり第一義的には医療界にある、医学界にあるというふうに、大変厳しい言い方でありますが、私は思っております。したがって、そのツケをこの国会でやらなければいかぬということもちょっと疑問があるわけであります。しかし、そうは言いながら、先ほど言いましたように、現実の姿からすると我が国の医学界の中には営々と積み重ねられてきた経緯というものはないわけでありますから、そういう意味では、私は、この状況の中では法律で決着をつける以外にない、このように思っているわけであります。
もう一点、脳死を人の死としない法案を想定した場合、まだ法案を全部見させていただいておりません、恐らく検討中だろうと思いますが、一つうれしいのは、脳死・臓器移植はやりましょう、その必要性はお認めになっているという点では相当共通の立場に立っているのだろう、私はこう思うのでありますが、そういう脳死を人の死としない立場でありますと、脳死状態というのは、私たちがいつも使います全脳の機能の不可逆的な喪失、停止ということで、そういう確実な死への過程に入ったということが確かに判定されているということを前提に、あとは本人の意思に任せよう、こういう法律になるわけでありますから、今ここで、それこそほかの委員の方々と話をしながら審議を聞いておりまして、やはり脳死はどこまで行っても人の死なんだからという立場でありまして、恐らく、脳死を人の死としない法案をつくるにしても、脳死は人の死だというこの事実に限りなく近づいている、ほぼイコール、同義という立場ではないのかなという気が私はいたします。
そういう意味では、私はやはり、ここまで来て脳死のあいまいな整理ということは避けるべきではないかというふうに感じておりますが、この点はいかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/119
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120・矢上雅義
○矢上議員 今、桝屋委員が御指摘になりましたように、人の死をどのように定義づけるかですけれども、二つ条件があると思います。医学的な条件、それとまた、その医学的に認められた死というものが、社会的に見て、国民の合意、受容されるか、国民に受け入れられるか、その点から考えました場合、脳死を人の死と認める立場でも、また脳死を人の死と認めない立場の法律におきましても、脳死状態の定義は同一になると思います。二つの法律は違うように見えて、実は脳死状態の定義が人の死であるということで同じ定義になるとすれば、かえって混乱を招くのではないか。しかし、もし、その混乱を招くことを覚悟で国会の場に出てくるのであれば、両方をきちんと精査して、条文をきちんと見詰め直して、立法できちんとけりをつけるという姿勢が必要ではないかと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/120
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121・桝屋敬悟
○桝屋委員 きのうの本会議で、ずっと議員席でやりとりを聞いておりまして、いろいろなやじが飛んでおりましたけれども、いみじくも脳死を人の死とするかしないかというようなことで、やじの中には大変おもしろいやじもありまして、脳死を人の死としないというのであれば、もちろん、生きている人から臓器をとるのかと、逆の立場では、死んだ、脳死状態の方に何で医療費をつぎ込むのか、やめればいいじゃないか、こういう議論が出たり、まさに、後ほど若干申し上げますけれども、我が国の終末医療といいますか、末期医療を象徴するようないろいろな議論が出ておりまして、私も大変興味深く聞いておりました。
さて、今まで私が申し上げたかったのは、我が国の医学界の中で、残念ながら、移植医療に対する営々とした積み上げという作業が、日本の風土といいますか国民性の中でできてこなかった、そしてどんどん外国へ出かけている、こういうこれ以上放置できない状況が続いている、しかも、それじゃ法律がなくてもやろうと思えばできるのだけれども、その状況も期待できないということでありますと、もうこれはぜひこの立法を何とかやり上げなければいかぬ、こう思っているわけであります。
ただ、法律をつくるに当たって非常に大事なことは、先ほども議論が出ておりました国民の合意ということでありまして、脳死の判定基準でありますが、先ほどの竹内基準、これは確かに国際的に見てもかなり厳格な基準であるということは言われておりますけれども、私も、随分御批判を受ける中で、全国的にいろいろなところへ行っていろいろなことを言われました。
その中で、先ほど補助検査と言われました聴性脳幹反応あるいは脳血流の停止というような検査項目については、私は、今回せっかく間口を絞って実施するわけでありますから、判定基準についても、これは政省令の段階かもしれませんが、補助検査というようなことではなくして、当分の間は国民の合意ということでこれを極力厳格にやっていくという姿勢も大事なのではないかと思っているわけでありますが、提案者におかれましてはいかがでありましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/121
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122・中山太郎
○中山(太)議員 今先生の御指摘は、非常に重要な点を御指摘だと思います。
従来の死というものは、社会的な認知ができる診断の方法でございました。つまり、呼吸がとまっている、心臓がとまっている、瞳孔反射が対光反応がなくなっているという三つの所見は、家族がみんな目の前でその亡くなった人の姿を見ることができて、死を確認するわけです。しかも、お通夜をやって、蘇生しない。
ところが、脳死というものはいわゆる救命救急センターあたりで起こってくる特殊な死の状況でございまして、一般のドクター、開業医もこの脳死に直面するケースは極めて少ないわけであります。そういったことで、わかりにくいといったところに問題があるし、密室性があるから不信が起こってくる。
そういうところをどうして解明すればいいのかというところを先生御指摘だと思いますが、私は、聴性脳幹反応というものを補助につけて脳死の判定を正式に決定すれば、これはみんなも納得できる問題であろう。これはカルテにちゃんと脳波で残りますから、記録として保存ができますし、どなたが尋ねられても明快に示すことができるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/122
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123・桝屋敬悟
○桝屋委員 竹内基準の中で補助検査と言われているような、特に今の聴性脳幹反応、国民に合意を与えるためのコンセンサスづくりのために極めて有益な方法だ、こういうお話もありまして、ぜひそういう意味では、これは政省令の部分になると思いますから、法律さえ通せばいいということではなくして、最初に申し上げましたように、私は、この国会の場において、これを検証できる、過程を検証できるシステムをお考えいただくべきではないか、私もそのように主張していかなければいけない、このように感じております。
時間もなくなりましたので、最後の質問をはしょってもう一点、質問通告をしておりませんが、どなたでもお答えできることでありますので、思いを述べさせていただきたいと思うのです。
先ほど柳田邦男さんの話がありました。私も本も読ませていただいたわけでありますが、この国会においてこの法案を審議する私たち国会議員の姿勢として、何といいましても、今回のこの問題というのは、人の死、先ほど国民性の話もありましたけれども、一人称、二人称で死を考える立場と、三人称で人の死を考える立場と随分違うわけでありまして、私はやはり、この臓器移植法案の審議においてすべての国会議員が、先ほど党議拘束を外すという話もありましたけれども、であるならばなおさらのこと、一人称の死あるいは二人称の死としてこの臓器移植法案を考えないと、なかなか国民感情に近づくことはできないのだろう、このように思っております。ここは、一人称、二人称の死か、あるいは三人称の死かということは、大変難しい問題でありまして、ここをいかに結びつけていくのかというこの作業が実は臓器移植法案の作業だろう、こういうふうに思っております。
そういう意味では、変な話、党議拘束を外すということで、各党で――ほかの党はよくわかりません。我が新進党の中では、残念ながら、私自身の責任もありますけれども、この臓器移植の法案を本気になって考えているという状況がないわけでありまして、むしろ私は、党でもっとしっかりもまなきゃいかぬ、こう思っているわけでありますが、党議拘束を外すという言葉の中でだれも真剣に議論しないという現象も逆にあるわけでありまして、そういう意味では、提案議員におかれても、大変な努力でありましょうが、私も努力をいたしますが、ぜひ多くの国会議員に訴えていただきたいし、あるいはそういう意味では、私は、対案もぜひ出して、時間の関係もありますけれども、しっかり議論を活性化させる必要があるのではないか、こんなふうに思っております。
最後に、そんな思いを述べて、中山先生の御決意をお聞かせいただきたいのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/123
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124・中山太郎
○中山(太)議員 新進党で党内議論が行われないといったことは、まことに政党政治の中で残念に思います。(桝屋委員「いや、やっているのですよ」と呼ぶ)やっていますか。ぜひ各党においても御議論をいただいて、そして、それぞれ死生観が違いますし、物の考え方も違うわけでございますから、法律に対する認識もまた違うところもあろうかと思いますが、我々提案者一同、できれば一日も早く、移植以外に生きていけない人たちのために我が国で実施できるように御協力をお願い申し上げたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/124
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125・桝屋敬悟
○桝屋委員 どれだけ時間がこれからあるかもわかりませんが、時間の許す限りしっかりと審議をしたい、そんな決意を申し上げて、終わりたいと思います。
ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/125
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126・町村信孝
○町村委員長 石毛鍈子君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/126
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127・石毛えい子
○石毛委員 民主党の石毛でございます。
臓器移植に関する法案が提案されまして、人の死をどう判断するか、そして、脳死は人の死かということが厳しく問われている法律案が提案されたわけでございますけれども、私は、脳死を人の死とすることに関しまして、その社会的合意といいますか、国民的コンセンサスにはまだ至っていないのではないかという立場から、数点にわたり質問をさせていただきたいと思います。
私自身は、脳死という現場に立ち会ったことはございませんけれども、両親の死あるいは身近な方の死に出会う中で、死はすぐれて医学的あるいは生物学的な事柄でありますと同時に、社会的、文化的な事柄であるというふうに受けとめております。
とりわけ、私の経験を通して思いましたのは、亡くなる者と残される者との間に死を受容していく関係といいますか、関係があったときに死を自分の中に肯定できるといいますか、ですから、あえてもう一つ、関係性における死をどういうふうに私たち市民それぞれが受容していくかという、これが形成されていくことが文化的、社会的合意としての死というふうに考えてよろしいのかと、狭い経験ですけれども、私はそうした考えを持つに至っております。
そういう意味でいえば、脳死も心臓死と同じように、心停止ないしは呼吸停止等々と同じように、いずれかの時代に市民の間でよりよく了解されて、死という社会的合意として受けとめるときがあるいは来るのかもしれませんけれども、今そういうふうに結論づけるにはまだまだ論議が必要なのではないか、そういう思いでおります。
なぜそういう思いでおりますかということを、これから質問として申し上げさせていただきます。
一つは、脳死の判定に関することでございます。
昨日の本会議でも、そして本日の委員諸氏の御質問の中でも、厚生省の研究班あるいはそれを通して確定したと伺っております竹内基準は、国際的に見ても大変精度の高いといいますか、厳しい水準をクリアした判定基準だというふうにこれまでの議論で伺っております。
しかしながらでございます、脳死の判定基準に関しまして、日本のさまざまな医療機関、大学病院もございますでしょう、医療機関は、竹内基準よりもさらに厳密なと申してよろしいのでしょうか、あるいは自主的な判定基準をつくっておられるのではないだろうか。
私が手元に持っております資料では、例えば脳死判定の除外例として、二次性脳障害を除外する、あるいは妊婦を除外する、あるいは麻酔薬等々の使用者を除外する、そういう除外規定にかなり独自の基準をそれぞれの医療施設が設けておられる。あるいは必須検査につきましては、先ほど来の桝屋委員の御質問にもございましたけれども、例えば聴性脳幹反応ですとか脳循環検査、脳血流検査等々を独自に設けているというような、そうした基準を設けているという事実がある。あるいは経過観察時間も、竹内基準では、一次性脳障害の場合六時間ないしは二次性脳障害の場合は六時間以上というふうに規定しているようでございますけれども、医療施設によりましては二十四時間ないしは子供の場合には四十八時間というように規定している施設もございます。
若干、私が知り得た範囲で述べさせていただきましたけれども、こうしてそれぞれの医療機関が独自の基準を設けているということは、脳死の判定基準を確定していくにはまだまだ議論を重ねていく必要があるのではないか、その議論を公に広く論議に付していくことによって国民的な合意といいますか、その形成に至るのではないか、こういう考えが私の中にございますので、脳死判定についての合意形成ということに関しまして、まず質問をさせていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/127
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128・五島正規
○五島議員 まず、脳死判定に関しての御意見でございますが、委員も御指摘のように、竹内基準としての脳死の判定というのは、現在の医学の水準において極めて精度の高い情報の収集方法であると考えております。したがいまして、この竹内基準に基づいての判定の中で、今委員も御指摘になりましたように、一部の障害あるいは薬物の投与あるいは乳幼児等に対してはこの判定をそのとおりやることにはならないということも、除外規定として定めているところでございます。
さて、御指摘の、先ほどからも御意見ございましたが、例えば脳血流検査あるいは聴性脳幹反応といったような補助検査の取り扱いでございますが、必要な情報をより精度を加えて与える検査であるならば取り入れるべきだろう、あるいは情報の精度の水準を落とさない検査であるならば取り入れていいのではないかというふうに思います。そういう意味において、聴性脳幹反応などにつきましては、既に、先ほどお答えがございましたが、九三%ぐらいの各医科大学や救命救急センターにおいて取り入れられています。
ただし、この検査方法も、例えば聴力障害がある人の場合には、この検査方法をやってネガティブデータが出たという場合に判定を非常に混乱させますので、そういう場合においては必ずしもやられるべき検査とは申せません。
まして脳血流検査の場合につきましては、この検査をすることの侵襲性、すなわち、その患者さんが脳死が疑われる状態において行うべき検査としての危険性と申し上げてもいいと思いますが、その点、あるいはそこから得られる情報、圧を加えて血管の中に造影剤を入れていく、あるいはキセノンを吸わせて調査していく、そうしたものの精度、あるいはそのことによって出てくるアーチファクト、誤った情報の提供というものを考えた場合に、いろいろと実験的にはやられておりますが、今現在、いわゆる竹内基準で見られております脳幹反応の総合的な判断以上の情報が提供されるものとは思えないという意味において、あくまで補助的な検査にとどまるべき内容ではないかというふうに考えています。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/128
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129・石毛えい子
○石毛委員 大変高度な御専門の内容にかかわる、私には医学的な知識がないという意味でわかりかねるところも率直に言ってあるわけですけれども、という私のような立場の人間が非常に多いということ、圧倒的多数はそういう立場でこういう事態に遭遇するということになるわけですから、そうした今先生がおっしゃいましたようなことを判断していくというためにも、ここから次の質問にさせていただきますけれども、私は、脳死の判定をどうするか、どのように進めるかという手続の問題、それが非常に大きな意味を持つ大切なことになるのではないかというふうに思っております。
そこで、脳死の判定プロセスが法律に明確に規定されていないということを指摘させていただきたいと思います。
昨日来のお話でも、移植にかかわらない専門の医師が二人というふうにおっしゃったように記憶をしておりますけれども、これに関しましても、私が入手しております資料では、多くの医療施設で三名とか四名、あるいは場合によっては家族の立ち会いが必要というようなことを決めている医療施設もございます。
二人でいいのか、三人でいいのか、四人でいいのかという、そうした問題もあると思いますけれども、どういうふうに脳死を判定していくのかというそのプロセスを手続的な仕組みとしてきちっと法律に明記していただくことが、こうした一般には大変わかりにくいことに関しては重要なのではないかというふうに私は判断をしております。
ぜひ判定の手続を、それは、細かいことは省令にゆだねざるを得ないかと思いますけれども、判定の回数ですとか、あるいは医師の参加の問題ですとか、あるいはインフォームド・コンセントですとか、そうした判定プロセスについて法律に明確に規定していく、その方向を求めたいというふうに申し述べさせていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/129
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130・五島正規
○五島議員 脳死の判定に対して複数の医師ないしは家族その他の立ち会いが法律で明記される必要があるのではないかという御質問でございます。
脳死の判定につきましては、竹内基準そのものにおきまして、「脳死判定に十分な経験をもつ、専門医あるいは学会認定医が少なくとも二人以上で判定を行う。」ということになっております。したがいまして、先生御指摘の点につきましては、そのような内容になっているというふうに考えております。
また、それに伴うインフォームド・コンセント、あるいは、二回行うわけですが、その段階における御遺族に対する説明の問題等々については、これが十分に実施されなければならないということについては当然であるというふうに考えています。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/130
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131・石毛えい子
○石毛委員 これも多くの委員の皆様がお話、質問をされたことでございますけれども、柳田氏の息子さんのお話でございますけれども、私がこのことに知見を得ましたところでは、柳田氏の息子さんは、治療が終わって脳死を待つだけの状態であった、そのときのCT画像と、日大の救急医療センターにおきます低体温療法における奇跡の回復と申しましょうか復活と申しましょうか、その復活に至る前の状態が同じであったというふうに私は知見を得ております。
これは、片方、日大板橋の場合には奇跡の復活に至ったわけでございますし、柳田氏の息子さんの場合には反対の方向にという、同じ状態にある方が全く別方向に行く。ここのところが、蘇生限界点といいましょうか、脳死に関する判断の非常に難しいところではないか。つまり、脳死自体は竹内基準で判定されるとしましても、脳死に至るプロセスをどういうふうに受けとめるかというところで明暗が分かれてくるということをこの現実は示しているのだと思います。
そういう意味でも、手続的な権利、あるいは脳死ということに関する理解、認知が広く国民の間に理解され得るように広がっていきませんと、先ほど来、諸委員の御指摘になられました医療不信と申しましょうか、医師不信と申しましょうか、そうしたことが起こりかねないというような危惧を私も抱いておりますので、ぜひ手続的権利に関しましては、できるだけ詳細に法文の中に明記していくべきではないかということを申し述べさせていただきたいと思います。
もう時間が来てしまいましたけれども、一言だけ御所見を伺えればと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/131
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132・五島正規
○五島議員 委員も御指摘になりましたように、まさに脳死を待つしかないという状況の重症な患者さんが、日本の救急救命医学の画期的な発展によって蘇生限界点を大変大きく広げたということについては救命医療の成果である、きのうも私、本会議場で申させていただきました。一九五〇年代の終わりから世界でこの研究がされておりまして、そして日本において、この脳低温療法というものが大きな成功をおさめたということについては評価したいと思います。
と同時に、委員も御指摘になっておられますように、また、今年三月一日付の新聞で林教授自身が御指摘になっておりますように、脳低温療法では厚生省研究班の脳死判定基準の脳死の患者を救うことはできるものではないのだ。すなわち、脳死の判定をされた人に対しての治療をするということではない。まさに、ある種非常に重体な中において脳幹反応の一部が、例えば瞳孔の散大が見られるというふうな非常に重篤な状態においても、それが蘇生される可能性を広げたという意味において、私は救命医療の成果であるというふうに考えています。
したがって、そういう事実から私自身得られる事実というのは、これから、こういう脳死の判定を受け、そして御本人、御家族の御了解のもとに、あるいはその御希望のもとに臓器の提供者すなわちドナーとおなりになる方、その方々が一体どのような救急救命医療を受けて脳死に至られたのかということが問題になるのだろう。
そういう意味では、やはり救命救急センターが高度の医療が行われた後にその敗北として脳死に到達するという状況を前提として臓器の提供というものを受けるべきで、それが不十分なまま、まさに蘇生し得る可能性がありながら、医療の未熟さによって脳死の状態になったと判断されるようなケースから臓器が提供されるということは避けるべきではないかというふうに私個人は考えているということを申させていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/132
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133・石毛えい子
○石毛委員 質問を終わります。ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/133
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134・町村信孝
○町村委員長 中桐伸五君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/134
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135・中桐伸五
○中桐委員 民主党の中桐でございます。
私は、基本的に、この法案に賛同者としての立場から、しかしながら、この法案をより充実したものにするという意味で質問をさせていただきたいというふうに思います。
まず、臓器移植に関する立場といたしましておよそ三つあると思いますが、脳死を人の死とするかしないかというところでまず分かれまして、そして、脳死を人の死とするということを認める立場から見ますと、これを法律でもって規定するか、あるいは医学・医療界及びサービスを受ける消費者の立場からこれを自主的なコントロールで行っていくかという二つの分岐点があろうかと思います。
私は、その点で、基本的には、現在の段階では医療・医学界の閉鎖性という問題点が、きょうも多々指摘されておりますように、そういった問題がございますので、社会的に法的にコントロールすることによって、この医学・医療界が持っている問題、閉鎖性を解決していく必要があるのではないかというふうに考えるわけでございます。
しかし、その場合に、もう少し明確な判断を再確認しておきたいということで、まず第一に、本来、死亡の診断というものについては医師が行ってきたわけであります。その医師の判断に信頼を置くという形で来たわけでございますが、今回、この脳死という、脳死体という概念を法律に導入されたことに関する意義について、まずお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/135
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136・五島正規
○五島議員 御質問の点につきましては、二つの点から議論しなければいけないと思います。
一つは、患者さんが脳死に至っているかどうかというこの判断につきましては、まさに医師の診断そのものであり、医師の判断であるだろうというふうに思います。問題は、この医師の判断をいたすために必要なさまざまな検査等々、そういうものがもし極めて重体な患者さんに対して場合によってはより大きな障害を与える危険性がある場合には、御家族その他の了解を得る必要があるということは当然だろうと思います。そういう意味において、医者が勝手にということにはならない話であると思っています。
第二の問題として、臓器移植を前提として脳死の判定をされる場合、その段階においては、先ほど山本委員からも御指摘がございましたが、遺体から臓器を取り出すという、通常の診断行為を超えた、そういう処置のための基本と前提となる判断を行うわけでございますから、それに対しては通常の判断どおりであっていいのではないのではないか、そういう意味において、より厳しく、より専門家を含めた複数の医師の判定という義務づけが必要なのではないかというふうに考えているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/136
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137・中桐伸五
○中桐委員 私が考えている、社会的にそれを客観性、公正性を高めるという意味で、複数の医師にさらに判断を、その複数の医師も含めて判断をするということについては私も賛成するわけでありますが、そのように考えるといたしましても、先ほど来るる問題が指摘されておりました、国民の医療に対する信頼性における問題、これはやはり大きな問題があるだろうと思います。
介護保険法案に伴って、今予定されております医療法の一部改正で、インフォームド・コンセントの規定が導入されるという状況でございまして、インフォームド・コンセントにおきましても、まだまだ多くの問題が、解決しなければいけない点があろうかと思います。
その点につきまして、次にこの法案の中で不十分だというふうに思う点は、家族がいらっしゃった場合に、その脳死の判定時に行う検査、その検査が患者に大きな負担をかける、そのような検査が、例えば自発呼吸のテスト、そういったものについてあるというふうに思いますが、その点について、説明と同意という文言がございません。その点については明記すべきではないかと思いますが、いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/137
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138・五島正規
○五島議員 この脳死の判断に対しましての基本的な一連の診断所見並びに検査についてでございますが、この点につきましては、私も、先生御指摘のように、竹内基準の中には人工呼吸器を外して自発性呼吸の消滅というものをチェックする項目がございます。これは、もしそういう極めて危篤な状態にある患者さんに対してそれを行おうとすれば、ある種の非常に大きな危険性を伴う検査でございます。その可能性のある検査でございます。
したがいまして、この検査を実施するに当たっては、やはり必然的に何らかの御家族の同意がないと、これは現実問題、実施し得ない検査ではなかろうか、そのように考えています。竹内基準に基づかない、ごく簡単な、一分間程度の、レスピレーターを外して自発性呼吸の有無を日常性の一環としてチェックするということはあるとしても、この検査にのっとってやっていくということになりますと、やはりそこには、私は、医療全体の一つの心構えとして御家族に対する説明は必要なのではないかというふうに考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/138
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139・中桐伸五
○中桐委員 時間がありませんので、次に進みたいと思いますが、次に、臓器提供における公平性をどのように担保するかという問題でございます。
これまでの議論では、余り多くの移植実施機関をつくるべきでない、設定するべきでないという議論もございましたが、しかし一方では、心臓は四時間以内に処置しなければ効果が期待できないということになりますと、これは臓器の輸送にかかる時間を考えますと一定の地理的な配慮をしなければならないというふうに考えるものでございます。
そこで、この法案を制定する前提条件としては、臓器提供の公平性の担保のためには移植実施機関というものを、質的なレベルを十分担保しながら、しかもかつ公平に全国的なニーズにこたえるということが重要になろうかと思うのですが、その点についていかがお考えでしょうか、御意見をお聞きしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/139
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140・五島正規
○五島議員 御指摘のように、心臓で四時間、肝臓で十二時間以内に血流を、血行の回復をしないとだめだと一言われております。したがいまして、輸送に要する時間というのは、心臓では大体二時間ぐらいで輸送できる、そういう範囲の中でこの処置ができる必要があるのだろうというように思います。
そうなりますと、やはりどうしても、先ほどの御指摘もございましたが、全国一カ所といった場合に、そうした医療の地理的な問題というものが残ってくるのではないかというふうに考えます。同時に、余り多く集中いたしましても、それは、先ほどの御質問にもございましたが、非常に技術の水準も上がらないという問題になってくるかと思います。そういう意味では、ブロック単位におけるネットワーク化というものができない限り、この問題についてはその輸送面からの条件を満足できないのではないかというふうに考えています。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/140
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141・中桐伸五
○中桐委員 その実施機関との関係でございますが、これを地理的な分布で考えますと、心臓移植施設、八施設が挙がっておりますが、そのうちの三つは関西地方にございます。これでは少し地理的な問題もございますし、また、御存じだと思いますが、医学界には大学閥とかあるいは医局閥というのがございまして、大変そこでいたずらな技術競争といいますか、そういうものが起こる可能性もございますので、その点についていかがお考えでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/141
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142・五島正規
○五島議員 関西地域に三つ重なっているという御指摘でございますが、まさに移植学会としても、一定の症例数を上げていくということと、それから、ブロック単位でネットワークしていくという方向については検討しているわけでございます。
したがいまして、この問題については、専門学会の中において、ブロック単位の中においてそれが種々できていくということについてやっていただく、その中で医局講座制の弊害というものをなくしていただく必要があるだろう。そのことは、例えばドナーの問題につきましても、ドナーと臓器移植の実施機関とは必ずしも同じではない、そして、臓器については公平なコーディネートのシステムに乗せていくようにしていただくということの中で――医局講座制というものがこれまでの日本の医学を非常に害してきた。そういうものがこの臓器移植の中に関連して入ってきますと、国民から大変非難を浴びるのは言うまでもございません。したがって、そのことを排除できるような形で学会にも検討していただきますし、仕組みとしてもそのようなことを配慮しながらつくっていくということで努力しているところであるということを御了解いただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/142
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143・中桐伸五
○中桐委員 ぜひそのように医学界・医療界の閉鎖性をコントロールし、打破できるように、この実施体制の中でつくっていただきたいというふうに思います。
最後になりますが、先ほどの移植実施機関との関係、あるいは臓器提供における公平性の担保との関係で極めて重要だというふうに思いますのは、この臓器移植のネットワークというものの、特にどのようなマンパワーでもってこれをコントロールしていくのか。公平性の問題もありますし、実施医療機関との関係のいわば質的なチェックというふうなものもございますし、また別の観点から見れば、苦情処理というふうな組織、機関というものをどのように位置づけるのかということもございますし、また、移植後の効果判定をどのようにするのかということとも関連してくるものと思います。
私は、一番最初に、法律でなぜ脳死体という規定を導入するのかということで少し疑問を残しているところでございますが、本来ならば、医学・医療界がみずからの医療サービスを自主的に改善し、また、消費者の立場である市民や患者の立場からは、積極的に医療サービスのチェックを行い、そしてその相互の間で医療サービスの質的向上を図っていく、そのようなシステムが望ましいのではないかというふうに思います。
しかし、今日の段階では、法的な整備であるとか、あるいはこのような苦情処理機関の設置であるとか、効果判定のシステムをどのようにつくるかということが重要になろうかと思いますので、これはやはり社会的システムとして当面の間はやっていかなければいけないというふうに思うのですが、その点についての御見解、そしてその中で、特に臓器提供の公平性を担保するためにはコーディネーターをどのように養成していくのかということが大変重要になろうかと思いますが、その点についてはいかがお考えでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/143
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144・五島正規
○五島議員 コーディネーターの養成並びにその配置については、極めて重要であるというふうに思っています。
そしてまた、圧倒的に恐らく足りないであろう臓器をどのような形で患者さんに提供するのか、そこは公正公平に実施されなければ、この臓器移植というのは国民から容認されないわけでございます。そういう意味では、日本臓器移植ネットワークの準備委員会の中におきまして、このレシピエントの選択基準というものについて、現在、大変検討されているところでございます。
これによりますと、対象疾患、レシピエントの血液型や抗体のあり方、そして待機時間といったようなものを配慮して、だれにその出てきたドナーを提供できるのかということについては、医療機関あるいは移植医や学会の偉い人の意思が反映するのではなくて、客観的公平にそれが配分できるシステムとして現在検討されているということでございます。したがいまして、そういう形でもってレシピエントに臓器が提供できるというシステムを何としても待ち望みたいというふうに考えています。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/144
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145・中桐伸五
○中桐委員 時間が参りましたので、最後に要望をして終わりたいと思います。
例えば、先ほどの公平性を担保するということからいいますと、コーディネーターという役割が重要であるということはわかるのですが、権限をコーディネーターが持つのか、あるいは苦情処理機関という形でパブリックに何かの権限を持ったシステム、これをやはりひとつ考えていただきたい。
それから、将来的なことを考えますと、やはり医療機関、医療サービスの提供者は、自主的にみずからの医療サービスを改善する計画、こういったものをつくってもらいたい。
そのために、この臓器移植という重要な問題を通して、インフォームド・コンセントの問題や、あるいは医療サービスの提供者が自主的に、みずからが乗り出してみずからのサービスを改善する、ガイドラインをつくる、そういうふうな動きが起こっていることは、ある意味ではこれを、おくれたマイナス点でもあるけれども、しかし、その点をむしろ逆に考えれば、新しいシステム、医療全般にこのようなシステムを導入する絶好のチャンスでもあるというふうに考えて、今後は、医療サービス全体のインフォームド・コンセントや、お互いの立場の自主的な改善計画を立てるような、そのようなシステムに変えていくべきだということを要望しまして、私の発言を終わります。
どうもありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/145
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146・町村信孝
○町村委員長 児玉健次君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/146
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147・児玉健次
○児玉委員 日本共産党の児玉健次です。
ぜひこの重要な問題について慎重な論議を進めていきたい、こう思います。
論議がすれ違わないために、若干私は確認をしておきたいと思うのですが、脳死をもって人の死とすること、これがこの問題をめぐる意見の不一致の中心点であることは、きょうの論議の中でも改めて明らかにされています。
そこで、昨日の本会議で私は出したのですが、「厚生省 厚生科学研究費 特別研究事業 脳死に関する研究班 昭和六十年度研究報告書」、竹内一夫氏が中心になっていらっしゃいますが、その中で、「脳死はあくまでも臨床的概念である。」というふうに明言された上で、「わが国において、脳死をもって死とするという新しい「死」の概念を提唱しているのではない。」これは竹内一夫氏の述べているとおりだと私は思うのですが、確認できますね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/147
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148・山口俊一
○山口(俊)議員 児玉委員の御質問にお答えをいたしたいと思います。
お話しのとおり、昭和六十年の資料というふうなことでございますが、実は昨日、本会議でも私の方から御答弁をさせていただきましたように、平成四年の脳死臨調の答申にあっては、この脳死という概念が、「脳死をもって「人の死」とすることについては概ね社会的に受容」されておるというふうなことでございまして、同時に、先ほどこれも提案者の方からお答えをさせていただいておりましたが、朝日新聞の平成八年の世論調査あるいは読売新聞の世論調査等々、やはり時代とともに医学も発展をしてきておりますし、そうした中で私ども今回の法律を考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/148
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149・児玉健次
○児玉委員 その後、この基準をめぐって脳死臨調その他がさまざまな議論をなさったということを私は否定しているのではないのです。あくまでこの研究報告書の中で竹内氏自身が述べていることはその言葉のとおり。竹内氏は、その後、脳死臨調の議論をまとめた、何といいましたか、おおむねの議事録の中でも同様のことを述べていらっしゃる。そこのところは、竹内氏自身の言葉とその後の別の論議の発展は区別しないと、この後、混乱してきますよ。どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/149
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150・山口俊一
○山口(俊)議員 その点は委員のおっしゃるとおりかと思いますが、ただ、これは何といっても社会的に広く国民に認められるというふうなことも大事でありますし、同時に、医学的知見といいますか、医療としてこれがまさに現在そういうふうに判断をされるというふうにきちんと通用するものであるかどうか、これも大事な点でございますので、御理解を賜りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/150
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151・児玉健次
○児玉委員 そこで、そういった竹内氏自身の提起からこの問題がどういうふうに妙な歩き方をするかという一つの例を私は取り上げたいのです。
一九九四年十二月一日、衆議院本会議でのこの問題をめぐる論議でございます。きのう行って、そのときも、このときの本会議の議論が若干思い出されました。金田誠一議員に対する提案者の答弁、森井忠良さんで、今ここにいらっしゃらないのが残念ですが、森井さんは、「移植のために人の死の概念を広げるのは問題ではないかというお尋ねでございます。」と自分で金田さんの御質問をそのように整理された上で、「本法の考え方が当然に他の法令の解釈等他の分野に波及することにはならないと考えますが、」と述べられた上で、こう述べているのですね。
人の死は、事柄の性質上、客観的に把握されるべき事実であることを考えれば、特段の事情がない限り、脳死は人の死であることを前提として本法と同様の解釈、運用がなされていくのではないかと考えております。
最初に言っていることとその後言っていることは、結局、まだ法律ではなくて法案ですけれども、この法案と同様の解釈、運用が他の法律についても及ぼされていくとしか読めない答えをしていますね。
これは提案者全体のお考えですか、どうですか、伺います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/151
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152・山口俊一
○山口(俊)議員 森井、当時提案者がそういうふうにお答えしたかとは思いますが、実は、これも先ほど来私ども提案者の方で答弁をさせていただいておりますとおり、いわゆる救命救急と臓器移植、つまり脳死判定と臓器移植というのはリンクをしておらない。当然、救命救急行為というのはとことんまで実行されるべきでありますし、あらゆる手段を尽くして人の命を救う、これはこれで十二分にやっていただきたいわけであります。
ただ、結果としていわゆる脳死ということがあって、結果として移植に道が開けるというふうな部分はあろうかと思いますが、決してそういった意味で他の法律に影響を与えるというふうなものではない、こう理解をいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/152
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153・児玉健次
○児玉委員 それじゃ、もう一遍確認しますが、森井さんのこのときの答弁については皆さんはその立場に立たないということですね。はっきり申してください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/153
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154・山口俊一
○山口(俊)議員 先ほど来申し上げておりますように、結果としていわゆる脳死というものが認められませんと、当然、心臓、肝臓等につきましての臓器移植というのはあり得ないわけでありまして、結果として脳死ということがあって結果として臓器移植があるというふうなことがありますが、決して救命救急に対する医療行為と臓器移植とがはっきりした因果関係を持つものではないというふうなことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/154
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155・児玉健次
○児玉委員 その点はまだ不明確ですから、ちょっとこの後の議論にゆだねたいと思います。
それで、山口議員が今おっしゃった救命救急の問題です。論理必然でそこにつながっていくのですよ。
きのう、私は本会議の質問の中でお尋ねをしたら、私の前の質問者が自問自答したことを取り上げて提案者はお答えになったので、私としてはあれはもう全然かみ合っていないと思ったのです。というのは、私の質問は、思い出していただければはっきりしますけれども、脳死の状態にあった人がよみがえるなんというようなことを私は全然言っていないのです。
私は何と述べたかというと、林教授の「脳低温療法」というあの御著作の中からそれを拝見して述べたわけですけれども、蘇生限界はさらに治療法の進歩によって変わる、そういうことなんです。そしてこれは、先ほどから議論があります、柳田邦男氏流に言えば、低体温療法を受けていなかったらとうに山の稜線の向こうに転がり落ちていたに違いない、この療法を受けた結果、稜線の手前で社会的に復帰したのだという意味なんですね。その点について私は正確な御答弁を求めます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/155
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156・山口俊一
○山口(俊)議員 おっしゃるとおりであろうと思います。この療法によりまして蘇生限界点がやはりあちらの方へ伸びていくというふうなことであって、今の委員のお話のとおり、いわゆる稜線の向こう側に落ちるということは脳死に至るというふうなことでありまして、それをこの新しい療法によって相当引き延ばすことができるといいますか、むしろ、こちらの方向に引っ張ってくる可能性もあるというふうなことであろうかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/156
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157・児玉健次
○児玉委員 そのことは明確になりました。蘇生限界は治療法の進歩によって変わるということです。
そこから、救急救命医療の現場で今生まれつつあり、そして確立しつつある新しい可能性を私たちは直視する必要があると思うのです。まさに直視する必要がある。
そうであればあるだけ、前回この厚生委員会の参考人の意見聴取で救命救急の現場で本当に御苦心なさっている濱邊祐一先生が述べられていらっしゃること、「脳死イコール人の死ということを法権力によって決定することは何の意味も持たないどころか、むしろ多大な困惑と混乱を救急医療現場に持ち込むだけなのだ」ここの指摘に私たちの審議はこたえる必要があると思うのです。いかがでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/157
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158・山口俊一
○山口(俊)議員 委員御存じと思いますが、今回の法律は、いわゆる死というものを規定するための法律ではございません。いわゆる臓器移植に関する法律でございまして、ですから、もう既に御承知のとおり、これまでのいわゆる三徴候における死亡の判断と同じように、今回の場合も別にこの法律によって死を規定する、法的に規定をするというものではございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/158
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159・児玉健次
○児玉委員 私たちの審議というのは、そういった蘇生限界が大きく変化する可能性が生み出されている、そういう中での救急救命医療について文字どおり最善を尽くすとはどういうことなのかということがあらゆる意味でその内容において突き詰められる必要があるのですね。私は、現状はまだそこまで行っていないと思います。そこのところをやはりはっきりさせた上で私たちはこの問題についての慎重な審議を進めていく必要がある、こう思うのですが、いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/159
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160・山口俊一
○山口(俊)議員 お話のとおりでございます。そこら辺の問題をきちっとやはり考えておく、あるいは煮詰めておく、問題点をなくしておくということは大変大事なことであろうと思っております。
ただ、私ども提案者といたしましては、ずっと申し上げておりますとおり、脳死というのは大方国民の御理解を得られる段階になってきておる、同時に、脳死臨調等々からも出てきておりますように、この竹内基準なるもので、相当厳しい基準でございますので、まず間違いないというか、間違いない判断を下すもの、かつまた、聞きますと、いわゆる救急救命にかかわっておらない一般のお医者さんでも大体脳死かどうかというのは経験則上わかるというふうなお話も聞くわけでございます。
ちなみに、実は私の義理の父親も、先般、脳梗塞から脳溢血で脳死に至りました。これも後で、私も若干興味があったものですからいろいろそのお医者さんに聞いてみましたが、やはり結果として脳死だったというふうなこともあったわけでございまして、そうした立場に立って今回法案を提出をさせていただいております。
また、委員のお立場からは種々御疑問もあろうかと思いますので、あらゆる機会を通じて十分な御質疑を賜りたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/160
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161・児玉健次
○児玉委員 ぜひ、本当に十分な審議をしましょう。
中山太郎先生にこの機会にお伺いしたいのですが、きのうの本会議の議事録があれば正確な議論ができるのですけれども、ちょっと手元にございませんが、昨日、中山先生は、ヨーロッパにおける、またはオーストラリア、ニュージーランドなどの広域な地域における移植ネットワークが既に発足をしているし、そして、そのことの重要性についてお触れになりました。私たち真剣にお聞きをしておったのですが、その際、アジアのネットワークについても強調なさったわけですが、私は、アジアの現状について、これはヨーロッパやオーストラリア、ニュージーランドと同一に議論できる状況にはちょっと今違うのじゃないかという感じがするのです。
この議論の中で再三出てきております、そういうことはあってはならないと私は思うのだけれども、いわゆる臓器移植ツアーなるものの組織が報道されることもありますし、そして、非常に痛ましいことですけれども、臓器に関しての売買がされているという報道もございます。そういう中で、今、殊さらにアジアにおけるネットワークの必要性を強調されるというのはどういう御意思なのか、それをお聞きしておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/161
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162・中山太郎
○中山(太)議員 昨日、アジアにおけるネットワークの問題に触れさせていただきましたけれども、問題は、外国人の日本の国籍を持たない人、この人たちが日本で例えば臓器の移植を受けたい、また、医師の診断によって移植以外に生きる道はないといった場合にどう扱うのかといったことをまず議論しなければならない。その場合の必要な医療費をどのように算出するのか、これもまた議論をいただかなければならない大きな問題であろうと思います。
また同時に、心臓の場合には、そのような不幸な脳死状態から摘出されて移植に移るまでの時間制限というものがございます。先生も御存じのとおりであります。正直なところ、輸送時間も含めて四時間、肝臓であれば大体十時間前後でございましょう、腎臓であったら二十四時間、こういったことが言われているわけでございますが、この日本という島国の中で、この臓器移植法というものが仮に成立をした後に起こってくる問題は、今まで海外へ移植を求めて出ていった日本人が相当数に上っているわけであります。私が逆の立場で言えば、法律があって、医療技術が十分整備をされている機関がある、そしてドクターもいる、ナースもいる、コーディネーターもいるといったところに、今度は逆に移植を受ける外国人、こういった問題についてどうするのか。これはやはり、国籍を超えて私どもは考えていかなければならない大きな、何といいますか、人間としての問題であろうと思います。
こういう意味で、きのう触れさせていただいたわけでありますが、これは直ちにどうこうするというような問題ではないかもわかりませんけれども、起こり得るあらゆる事態に備えて考えるべきではないかと実は思っております。
先生も御存じの、ブリスベーンに参りますと、あそこに王立病院がございまして、日本から、日本では移植のできない子供たちが大学の紹介でたくさん、病院のそばのアパートに暮らしている、そして、そこで移植を受ける日を待っている。しかし、私が参りました当時のそれのコストは、日本円に換算して大体千八百万円と言われておりました。オーストラリア人はどうかというと千二百万円、ニュージーランド人も千二百万円、それはお互いに臓器を提供し合うという二つの国の間の国民の合意が成立しているからでありまして、そういったことを踏まえまして、私は、この問題もこの議論の中で、国会議員として当然御論議をいただくことが必要な日がやってくるということをきのうは触れさせていただいたわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/162
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163・児玉健次
○児玉委員 終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/163
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164・町村信孝
○町村委員長 秋葉忠利君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/164
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165・秋葉忠利
○秋葉委員 昨日の本会議での質問に続いて、何点かフォローアップの質問をさせていただきたいと思います。
まず、インフォームド・コンセントに関してですけれども、きのうの本会議の提案者のお答えは、日本社会では必ずしも浸透し切っているとは言えない、ある程度これから改善の余地があるというようなお考えだったと思います。しかし、心臓移植あるいは臓器移植といった場では、そのインフォームド・コンセントはそれなりに確保できる、あるいは完璧に確保できるというふうにおっしゃったのかもしれませんけれども、この点について、やはり非常に重要な点ですし、多くの皆さんが心配をしている点ですし、マスコミの報道を見てみますと、やはり心配をしなくてはならないようなケースがたくさんあらわれているというところで、この点について伺いたいのです。
三月の初めに報道された例といたしまして、一九九三年の十一月に死体腎移植のドナーとなった女性、これは関西医大ですけれども、その腎臓を摘出した際に、腎臓とは直接結びついていない血管、新聞の報道には大動脈と大静脈の一部というふうに書いてありましたけれども、それが無断で摘出された、そのことを後に、家族がその事実を裁判の過程で知ったという事例が報道されております。
これについて、血管を凍結保存している国立循環器病センターに返還を要求したけれども、まだそれが返還されていない、そこまで報道されているわけですけれども、この点について、提案者はインフォームド・コンセントという観点からどうお考えになるか、まず伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/165
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166・五島正規
○五島議員 一九九三年に関西医大で行われました、死体腎移植のドナーから家族の了承なしに大動脈、大静脈の一部が摘出されたという事件が報道されています。
移植医療というのは、基本的に、摘出を行う医師が必要な説明を行うとともに、本人や遺族の了承のもとで実施されることが特に必要でございます。現在、角膜及び腎臓の移植に関する法律においては、本人または遺族の書面による承諾を臓器摘出の要件としているところであります。本法案の第六条第一項におきましても、本人の書面による意思表示があり、かつ遺族が拒まない場合または遺族がないときに限って臓器の摘出ができることとされており、本人や遺族の了承なしに摘出されることはあってはならないことでございます。
関西医大の事件につきましても、腎臓摘出については家族の了承を得ていると聞いておりますが、しかしながら、大動脈その他が近接した部分から取り出されたということについては、そのような了解なしに行われたものではないかと疑われているところでございます。医療関係者の中にこうした重要な事柄が十分に認識が浸透していないというふうな状況からこの事件が起こったものだというふうに理解しています。
今後、医療全般においてインフォームド・コンセントは特に重視されることは当然でございますが、こうした事件が起こらないためにも、この法案の中におきまして、特に厳しく限定し、そして摘出される臓器につきましても、本人の了承のない、そういう部分については速やかに、例えば心臓については余分に血管を取り出さないといけない場合があるわけですが、使用に供されなかった部分については、それについては焼却されるというふうに厳しく定めているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/166
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167・秋葉忠利
○秋葉委員 まだなかなかよくわからないところがありますが、承諾のない臓器を無断で摘出してはいけない、そうあってはならないというお考えは大変よくわかりました。私もそのとおりだと思います。
しかし、現実が示しているのは、そのあるべき姿がなかなか医師の側からも守られていないということだと思います。その際に、私たちは最終的には自分の身やあるいは自分の所有しているものについては自分で守る、そういう状況が必要になってくる場合がございますけれども、例えば、承諾を与えた臓器だけが本当に摘出されたものかどうか、残された家族がこれをどういうふうに判断すればいいのでしょうか。そもそも事実の確認すら残された家族にはできない。事実、今回の関西医大の場合でも、裁判の過程に至って初めてそのことがわかりました。
専門家ではない私たち普通の市井に住む人間が、その時点では恐らく遺体になっている家族の体の中に手を突っ込んで臓器の確認をするなどということはできませんけれども、一体、家族としてはどういう形で許可を与えていない臓器が摘出されなかったか、それを確認することができるのでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/167
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168・五島正規
○五島議員 この法案におきましては、特にその点につきまして、ドナー並びにレシピエントにつきましては、その家族がその情報を公開を受けることができるというふうにしているところでございまして、したがいまして、ドナーの家族が、そのドナーのいわゆる手術所見あるいは臓器摘出所見の経過については、その開示を求めることができるというふうに考えています。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/168
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169・秋葉忠利
○秋葉委員 その所見を書くのは摘出を行う医師だと思います。その医師がそもそも、例えば許可を得ていない臓器を摘出した際に、それを正直に家族に伝えることができるのかどうか、そういった点で私は非常に大きな疑問を持っております。第三者の介在がどうしても必要だというふうに考えられるゆえんですけれども、この点についてはまたさらに議論をしていきたいと思いますけれども、一歩先に進んで、その時点では情報の開示を求めるといったことも、その現場で恐らくそれを行い、確認をすることは時間的に無理だと思います。
そうすると、きのうもお答えの中でおっしゃいましたけれども、事後的にこういったことが確認されるわけですが、その事後的な段階において、許可を与えていない臓器が既に移植され、そしてその臓器を、当然の所有者と言うとおかしいのですけれども、権利者である家族が取り戻すためには、例えば何らかの手術が必要である、あるいは移植を受けた人の身に何らかの損傷を加えなくてはいけない、そういう状況に立ち至っていることが可能性として考えられます。
そういった状況において、家族が、仮に不法に摘出された臓器があった、それが移植された、されてしまったというような状況に気がついたときに、一体その権利を救済する手段というのはどういうものがあるのでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/169
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170・五島正規
○五島議員 まず最初に、医師がそういう手術を行った場合に欺瞞の記録がされるのではないかというお話でございますが、私は、そういうことはあり得ないというふうに強く申しておきたいと思います。医療の中において記録が改ざんされるということは、もうその医師は医師として生命を失っているというふうに考えています。
また、この法案の場合に、ドナーが提供されるのは救命救急センターでございます。救急救命外科でございます。そして臓器を取り出すのは、基本的には、移植をする側の医療機関がその臓器を取り出すわけでございます。したがいまして、この両者は基本的には医療の目的において対立関係にございます。しかも、従来問題がございましたように、ある一つの医療機関の中で臓器の摘出と移植が行われるという仕組みにはなっておりません。先ほども申しましたように、公平に臓器は分配されるという原則になっております。
そういうもとにおいて、そのような前提をおつけになるということは、医師全体は非常に信頼できない人間なんだ、そいつらの記録は一切信用できないのだということなんだろうと思いますが、私はそのように全然思わないということをまず申し上げておきたいと思います。
そういう前提のもとで、今御指摘の、もしそういうふうな家族の了承がないままにその臓器が他のレシピエントに提供された場合に、その遺族にはどのような救済方法があるのかということですが、その場合は、刑法第三十五条に規定する「正当な業務による行為」に当たるかどうかが問題になり、そして、具体的なケースによりますが、刑法上、死体損壊罪の罪に問われることもあり得るというふうに考えております。また、それに対する賠償につきましては、民事上の責任も問われる場合が当然あるものというふうに考えています。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/170
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171・秋葉忠利
○秋葉委員 私は、医師すべてが信用できない人間であるなどという極端なことを申し上げているのではございません。
具体的に、関西医大で摘出してはいけない摘出をした医師がいた。これは新聞報道を信ずればの話ですけれども。あるいは、これは誤りだったかもしれない。誤りであれ意図的であれ、ともかく人間ですから、何らかの過誤が生じる可能性がある。その際に、それとは全く別人格である、例えば家族が当然持っている権利を、これを主張するのはこれまた当然のことだと思います。その権利をどういうふうに確認して請求すればいいのか、あるいはその救済をどう求めたらいいのかということを伺っているのであって、それを、医師は信頼できない、医師はだれも信用できないなどというような方向に引っ張り込んで議論をしていただきたくありません。そんなことは一言も申し上げておりませんし、そういったレベルでお答えいただくのでしたら、別の方にぜひお答えいただきたいと思います。
そこで、次の質問、たくさんあるのですけれども、次の質問に移りたいと思います。
先ほど、アジアのネットワークの話が出ましたけれども、これも何人かのジャーナリスト、そして専門家の調査によりますと、例えば中国では、死刑囚から臓器の摘出が、提供が行われている、それも年間に数千人という単位で行われているという報道もございます。
ドナーのいろいろな立場というのはあると思いますけれども、しかし、死刑囚から臟器の提供を受けるということに、提案者の皆さんはどうお考えになっているか、伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/171
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172・五島正規
○五島議員 この法案では、臓器移植に対する基本理念として、本人が生前に有していた臓器提供の意思は尊重されなければならないこと、そして、その提供は任意になされるものでなければならないことを決めております。したがいまして、死刑囚の方であったとしても、本人の臓器提供の意思が真摯なものであり、任意になされたものであるならば、その臓器提供の意思は十分に尊重されるべきものと考えます。
ただし、現実問題として、御質問のようなケース、私としてはこの臓器提供意思の任意性に疑問なしとはしないのではないかというふうに思います。したがいまして、その申し出を受け入れるかどうかについては、提供意思の任意性について慎重に検討した上で結論を出すべきではないか、そのように考えています。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/172
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173・秋葉忠利
○秋葉委員 報道によりますと、中国の場合には、その意思の確認が必ずしも十分行われているとは言えない状況だと理解しております。となると、例えばアジアのこういったドナーのネットワークの中で、中国とのネットワークをつくるということは非常に慎重にならざるを得ないというふうに考えますが、その点についてはどうお考えでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/173
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174・五島正規
○五島議員 中国との間にネットワークをつくるといった場合に、そのネットワークが、単に臓器が一方的に日本にとって利用できるからという観点だけで組まれるというものであってはならないことは御指摘のとおりでございます。
そういう意味におきまして、当然、ネットワークを組まれる場合には、ドナーの選定あるいはそのレシピエントの選定等々を含めました広範な合意があって、アメリカの場合もヨーロッパの場合も実施されているというふうに理解しております。アジアにおいてもそういうものが実施されるというのは、そういう前提ができなければ非常に困難ではないかと私自身は思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/174
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175・秋葉忠利
○秋葉委員 まだ何点か伺いたいことがありますが、時間が参りましたので、また継続して議論を続けさせていただきたいと思います。
ありがとうございました。
――――◇―――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/175
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176・町村信孝
○町村委員長 次に、内閣提出、戦傷病者戦没者遺族等援護法の一部を改正する法律案を議題といたします。
これより質疑に入ります。
質疑の申し出がありますので、順次これを許します。岡田克也君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/176
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177・岡田克也
○岡田委員 新進党の岡田克也でございます。
戦傷病者戦没者遺族等援護法の一部改正法案につきまして、厚生大臣初め関係の皆様に質問をしたいと思います。
まず私がここでお聞きをしたいことは、在日韓国人の皆さんのこの法律との関係の問題であります。
この問題は、もう既に本委員会を初め衆議院、参議院各委員会におきまして何度か取り上げられておりまして、私も大体議事録は拝見をさせていただいたわけでございますが、まず確認のために、外務省も含めて事実関係といいますか考え方について御質問をしたいと思います。
この援護法には、御案内のように、国籍条項あるいは戸籍条項というものが置かれておりますが、これがそもそも置かれたその立法の経緯でございます。私の理解では、朝鮮半島などの旧植民地出身者の軍人軍属に対する補償問題が将来外交交渉によって、二国間交渉によって解決されることが予定されていたので、この国籍条項、戸籍条項を置くことでこういった在日韓国人の皆さんを初め旧植民地の皆さんについては援護法の適用を外した、こういうふうに理解をしておりますが、その私の理解でよろしいでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/177
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178・亀田克彦
○亀田政府委員 先生御指摘のように、援護法には国籍要件があるわけでございますけれども、この国籍要件が設けられましたのには二つ理由があるというふうに考えてございます。
一つは、この援護法自体でございますけれども、これは恩給法に準じまして制定されたわけでございますが、その恩給法に従来から国籍要件があったことということが一つであろうと考えております。
それから二つ目でございますが、ただいま先生からお話がございましたように、昭和二十七年のサンフランシスコ平和条約におきまして、朝鮮半島あるいは台湾など、いわゆる分離独立地域に属する人々の財産・請求権の問題、これにつきましては、我が国とその相手国との外交交渉、特別取り決め、こうなっておりますが、こういう形で解決をする、こういうふうに平和条約で予定をされておった、これが二つ目の理由でございます。
この二つから援護法でも国籍要件を設けたというふうに理解をいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/178
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179・岡田克也
○岡田委員 今の最初の理由、恩給法にはもともと国籍条項があった、こういうことでありますが、そのとき、つまり植民地時代には朝鮮半島、旧植民地の皆さんにも恩給法の適用があったというふうに考えてよろしいのでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/179
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180・亀田克彦
○亀田政府委員 戦前と申しますか植民地時代におきましては、韓国の方あるいは台湾の方も日本国籍を有しておったわけでございますので恩給法が適用になっておった、こういうふうに聞いております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/180
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181・岡田克也
○岡田委員 それでは、次に外務省に聞きたいと思います。
日韓請求権・経済協力協定、この中で、在日韓国人の皆さんの扱いでありますけれども、基本的には、在日韓国人の皆さんの「財産、権利及び利益」を除いてすべての請求権についてはいかなる請求もすることができない、こういうことになっておって、それではこの在日韓国人の皆さんの「財産、権利及び利益」とは何かというところで、合意議事録によれば、具体的には「法律上の根拠に基づき財産的価値を認められるすべての種類の実体的権利をいう」ということになっているので、したがって、法律に基づく実体的権利と言えない援護法等に基づく権利というものは結局どこからも見られなくなってしまった、こういうふうに考えてよろしいでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/181
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182・別所浩郎
○別所説明員 お答えいたします。
今先生がおっしゃったとおりでございまして、日韓請求権・経済協力協定の二条で、日韓両国及びその国民の「財産、権利及び利益」並びに両国及びその国民の間の請求権に関する問題が、完全かつ最終的に解決されたということが書かれているわけでございますが、同じく二条の2の(a)では、いわゆる在日韓国人の方々につきましては、その方々の「財産、権利及び利益」には影響を及ぼすものではないと規定している一方、御指摘のとおり、ここで言いますところの「財産、権利及び利益」とは、合意議事録の2の(a)で明らかなとおり、「法律上の根拠に基づき財産的価値を認められるすべての種類の実体的権利」のみに限定されているわけでございまして、国籍条項があるということの関係で、在日韓国人からの支給請求は法律上の根拠に基づくものとは言えない、したがいまして、ここで言いますところの「財産、権利及び利益」に該当するものではない、そういう解釈でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/182
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183・岡田克也
○岡田委員 今の解釈は日本の外務省の解釈というか考え方でございますが、韓国の方は同じように考えているのでしょうか。別の言い方をしますと、在日韓国人の皆さんというのは韓国政府によって何らかの補償を受けているのでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/183
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184・別所浩郎
○別所説明員 この協定の解釈自体につきましては、日本と韓国の間で解釈の相違はないというふうに理解しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/184
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185・岡田克也
○岡田委員 後の方の質問はどうですか。在日韓国人の皆さんが韓国政府によって何らかの補償を受けているのか、在日韓国人以外の、今韓国に在住の皆さんとの間に何らかの扱いの違いがあるのかどうかという点についてはどうでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/185
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186・別所浩郎
○別所説明員 失礼いたしました。
在日韓国人の方々につきましては、韓国政府からは補償を受けておられません。そういう意味では、韓国に在住の方々との間に差異があるというのはそのとおりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/186
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187・岡田克也
○岡田委員 外務省の考え方によれば、そのことは、つまり韓国に在住の方と日本に在住の在日韓国人の皆さんの間に違いが出るのは、それはいわば韓国の国内問題である、こういうことになるのかもしれません。しかし、現実に、いわば法の谷間のような状態で在日韓国人の皆さんが、かつてはともに日本人として相手側と戦いながら、一方で日本人はこの援護法によって補償を受けている、あるいは、韓国におられる韓国人の皆さんは政府によって、日本の援護法のような手厚いものではないにしても何らかの補償を得た、その中で在日韓国人の皆さんだけが何らの補償もないまま取り残されているという事実があるわけであります。
このことはもう既に訴訟になっておりますが、例えば大阪地裁の判決では、一般の日本人と在日韓国人の皆さんを比べたときに、在日韓国人の皆さんに対して何らの補償給付を行わず、重大な差別を生じさせる取り扱いは憲法十四条に違反する疑いがあると言わざるを得ない、こういうふうに言っているわけでありますが、この判決についてどういうふうにお考えでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/187
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188・亀田克彦
○亀田政府委員 御指摘の大阪地裁の判決でございますが、平成七年の十月に出てございます。この判決におきましては、憲法十四条を理由といたしまして厚生大臣が行いました援護年金の請求却下処分の取り消しを求めることはできない、こういう意味で国側の主張が認められたわけでございますが、先生今御紹介いただきましたように、この判決理由の中で、ちょっと読み上げさせていただきますと、「日韓請求権・経済協力協定の締結後においては、日韓両国のいずれからも在日韓国人に対する補償の途が閉ざされたにもかかわらず、これらの者を援護法の適用対象外としていることは、憲法十四条に違反する疑いがある」というふうに判決理由の中で述べられております。
それで、私ども厚生省の考え方でございますけれども、一つには、これまで出てまいりましたように、この日韓協定の締結によりまして、韓国人の補償の問題は在日韓国人を含めまして法的には解決済み、こういうふうに理解をいたしておるわけでございまして、したがいまして、この協定の締結によりまして我が国の方が国籍要件を見直さなければいけない、こういうような状況がこの締結によって生じたというふうには私ども考えられないわけでございます。
また、この援護法の国籍要件の合理性につきましては、平成四年の四月でございますが、台湾住民の方の請求の関係で最高裁判決が出ておりまして、援護法の国籍要件は合理的である、こういう判決になっておるところでございます。
そういうようなことから、厚生省といたしましては、大阪地裁判決の、憲法違反の疑いがある、この理由は受け入れがたい、こういうふうに考えておるところでございます。
本件につきましては、現在、大阪地裁から大阪高裁の方に係属中でございますが、私ども、法務省、外務省とも相談しながら、今申し上げましたような主張を述べておる、こういう状況でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/188
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189・岡田克也
○岡田委員 今、裁判中の問題ですから、ここで断定的なことは言えないだろうと思います。
憲法十四条との関係で違反しているかどうかというのは、そういう問題がもちろん今あるので裁判で争われているわけですが、それはちょっと横に置いたとして、それでは現実問題として、先ほど言いましたように在日韓国人の皆さんが、日本側はそれは協力協定が結ばれたことによって韓国側に球が渡った、こういうふうに理解をしたのだと思いますが、しかし、韓国政府からは何らの補償もされていないということをもって、現実に何の補償も得られていないというそういう現実になっているわけでありますが、そのことについてどういうふうにお考えでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/189
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190・亀田克彦
○亀田政府委員 若干繰り返しになりますけれども、朝鮮等のいわゆる分離独立地域に属する方々の財産・請求権の問題につきましては、昭和二十七年のサンフランシスコ平和条約におきまして、二国間の外交交渉により解決する、こういうふうにされたわけでございまして、その後、韓国との間では、昭和四十年の日韓協定によりましてこの補償問題は在日韓国人を含めまして法的には解決済み、こういうふうになっておると承知をいたしております。
したがいまして、在日韓国人の方々につきまして、今先生からお話ございましたけれども、補償を行うというようなことは、申し上げましたようなこれまでの我が国の戦後処理の基本的な枠組みを崩すことにもなりますので、大変難しいことだというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/190
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191・岡田克也
○岡田委員 恐らく、サンフランシスコ平和条約を結んだときに、今のような形で在日韓国人の皆さん、日本にとどまられるということがどこまで予想されたかという問題も一つあると思います。もちろん国籍は韓国であるかもしれませんけれども、現実には日本でそのまま生活しておられるわけで、若干、法律的には国籍韓国ということですが、それだけでは割り切れない問題があることは間違いないことだというふうに私は思うわけであります。
それからもう一つは、技術的な問題かもしれませんが、在日韓国人あるいは在日朝鮮人、こういうことなんですが、それじゃ、そういうことはきちっと分けられるのか。韓国政府に、在日韓国人の皆さんに補償しなさい、こう言ったところで、日本におられる朝鮮人の皆さんあるいは韓国人の皆さん、これをきちっと分けることができるのかという問題もあるのではないかと思いますが、その点についてはいかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/191
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192・亀田克彦
○亀田政府委員 現実に何らかの措置をするということになりますれば、先生御指摘のような技術的な問題も出てこようかと思いますけれども、現実に私ども、国籍要件を撤廃するとか何らかの措置をするのは困難だ、こういう立場でございますので、その辺の技術的な事柄につきましては現時点では検討いたしておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/192
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193・岡田克也
○岡田委員 外務省に聞きたいと思います。
こういう形で、かつて日本人であった皆さんが在日韓国人ということで日本人と違う扱いを受けている、このことはやはり、自分たちは差別されているのだ、こういう気持ちにつながる、そういうことは容易に想像できるわけでありますが、そして、そのことが日本と韓国の関係というものに対してどういう影響を及ぼすだろうか。この問題にきちんと対処しておかないと、後々まで日韓両国の間に大きな傷跡を残すことになるのではないかということを私は懸念しているわけでありますが、その点について外務省としてのお考えを聞かせていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/193
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194・別所浩郎
○別所説明員 今先生おっしゃったような意味で、日韓関係にこの問題がどういう影響を及ぼしているか、あるいは及ぼし得るかというのはなかなか難しい問題でございますが、この問題の背景あるいは援護法が立法された当初の事情等につきましては、先ほど厚生省の方から御答弁があったとおりでございまして、私どもといたしましては、こういういろいろな事情をもとに立法された援護法ということでございますので、やはり援護法の主管官庁たる厚生省さんの御検討を、まあ御検討というか、厚生省さんがお考えになられる話ということで、私どもとしても関心は有しておりますけれども、援護法自体については私ども主管外でございますので、今のような対応でまいりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/194
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195・岡田克也
○岡田委員 今のお話を聞くと、何となく消極的権限争いという感じを受けるわけであります。
実はこの問題、今までも議論をした中で、私も議事録を読み返してみましたが、たしか井出厚生大臣だったと思いますが、当時の厚生大臣だったと思いますが、何とかしたいと思っている、しかし法的にはなかなか難しい問題だというようなことも言われていたように記憶をしております。まさしくそういう問題ではないかというふうに思います。法律的に詰めていけば、あるいは今政府がお考えのようなことになるのかもしれません。
そこで、憲法十四条との関係その他で国籍条項や戸籍条項を憲法違反だからこれを取り消せ、こういうことになると、もちろんそういうことはできないというお答えになると思うのですが、そういった問題から一歩離れて、現実に今ある事態を何とかするために、戸籍法、援護法から少し離れるかもしれませんが、何らかの特別立法その他でこういった法律のはざまにある皆さんに対して政府としての気持ちを伝える、こういうことは十分可能なことではないか、こういうふうに私は思っているわけですが、この問題について最後に、厚生大臣、政治家としての厚生大臣の御見解を聞かせていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/195
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196・小泉純一郎
○小泉国務大臣 戦争の傷跡が深いとつくづく思いますが、在日韓国人の方、お気の毒だと思う気持ちは同じだと思うのですが、いろいろ調べて見、国籍条項あるいは日韓の条約等を考えると、これはやむを得ないのかな、私の手に負えない、そう思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/196
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197・岡田克也
○岡田委員 私が申し上げましたのは、日韓協定とかあるいは援護法の世界ではなくて、今裁判でやっていることもありますからそれはそれとして、それとは別の観点で何らかの日本政府としての誠意を伝えることができないか、こういうことを申し上げたわけであります。
台湾については、若干ケースは違いますけれども、ある意味では同じようなことについて特別立法をしたわけでありますが、そういうお考えは政府にはありませんでしょうか。厚生大臣。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/197
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198・亀田克彦
○亀田政府委員 台湾につきましては、厚生省でとった措置ではございませんけれども、日中共同声明によりまして日華条約が失効した、そういうことで平和条約に基づくところの二国間の外交交渉というものが不可能になっておる状態、そういうことに着目して、二百万円だったと思いますが、弔慰金あるいは見舞金を支給した、こういうふうに聞いておりますけれども、韓国につきましては、先ほどから申し上げておりますように、日韓協定というものがございまして、それによってこの問題については完全かつ最終的に解決をした、こういうふうに私ども理解をしておるところでございますので、そういう状況において、別途の何らかの措置をするということも、これは大変難しい問題ではなかろうかというふうに率直に感じておるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/198
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199・岡田克也
○岡田委員 恐らく局長に聞けばそういうお答えしか返ってこないのはやむを得ないと思います。
ただ、先ほど申し上げましたように、そういう従来の法律の考え方ではなくて、現実にしかし両国の谷間に入ってしまっていることについて、何らかの、援護法の体系とは少し離れたところの考え方で対処するという道があってもいいのではないか、そういうふうに考えて御質問申し上げたわけでございます。
この点につきまして、ぜひ厚生大臣にも御検討いただければありがたいと思います。いつも歯切れのいい大臣ですから、少し前進が見られるかなと思って質問させていただきましたが、先ほどのお答えで大変残念でありました。しかし、なお検討を続けていただきたい、御要望申し上げておきたいと思います。
さて、話題をちょっとかえたいと思いますが、昨日の財政構造改革会議において、これからの財政再建に向けての非常に重要な取り決めといいますか、決定がなされたというふうに理解をしております。
財政構造改革五原則というものが決められた、こういうことでありますが、その中で、今世紀中の三年間を集中改革期間として制度改革を断行する、こういうことが書かれているわけであります。もちろんその中にはいろいろな項目があるわけでありますが、社会保障分野についてもこの五原則というものは当然該当するというふうに考えますが、今の時点で、厚生大臣、この財政構造改革で示された五原則について、特に今申し上げました三年間で集中して制度改革を断行するという考え方について、どのような感想をお持ちでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/199
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200・小泉純一郎
○小泉国務大臣 昨日の財政構造改革、総理が示された五つの原則、これはみんな閣僚懇談会でも賛成しましたけれども、容易ならぬ改革だなと。むしろ平時において革命的な改革と言ってもいい厳しい改革姿勢、原則を打ち出している。特に社会保障関係、これは総合的な見直しが必要だし、総論としては皆賛成するのですけれども、いざ各論でこの原則を推し進めていくと、これは理解を得るのによほどのエネルギーが要るなという率直な印象を受けました。こういう厳しい原則を打ち出して財政構造改革をやらなければならない、いよいよ本格的に火だるまになるような気持ちでやらざるを得ないなという印象を持ちました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/200
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201・岡田克也
○岡田委員 やや余分なことですが、この五原則の中で、「あらゆる長期計画について、その大幅な縮減を行う。」こう書いてありますが、これは例えば厚生省のゴールドプランも含まれるのでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/201
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202・羽毛田信吾
○羽毛田政府委員 今お話のございました「あらゆる長期計画」というものの中にゴールドプラン、新ゴールドプランも含まれるかという点でございますが、まだ具体的にそのことにつきましての御論議というのはございませんけれども、公共事業を初めとするあらゆる長期計画ということでございますから、ゴールドプラン、新ゴールドプランにつきましても、そのような観点からの見直しというものを私ども検討課題としてちょうだいをしているというふうに考えざるを得ないと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/202
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203・岡田克也
○岡田委員 ここには「縮減」と書いてありますが、一方で介護法案も今審議中でありますが、ゴールドプランについてもし適用があるということになりますと、これは介護法案の検討の前提が変わってくるということを申し上げておかなければいけないと思います。この点はまた介護法案の質疑のときに触れたいと思います。
さて、社会保障について触れたところで、いろいろなことが書いてございます。その中で、「一定の収入以上の高齢者への公的年金、医療等の給付の見直し」を行うというくだりがございます。これは私、方向としては当然のことだというふうに考えておりますが、技術的にはかなり難しい問題を含むのではないかというふうに懸念をしているところでございます。
例えば、公的年金の中にも任意のものがあります。国民年金基金などでありますが、そういう場合に、国民年金基金に基づいて年金の給付を受けている高所得者に対しても適用されるということになるのでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/203
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204・矢野朝水
○矢野政府委員 この国民年金基金というのは強制適用ではございません、これは任意で加入していただく、こういう制度でございまして、したがいまして、高額所得者だから加入してはいけませんとか、あるいは給付を制限するということについては、これは非常に問題があるのではないか。したがいまして、あくまで一定の収入以上の者に対する年金給付の見直しというのは、これはやはり強制適用の公的年金の受給者に限る問題だ、そういう認識をしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/204
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205・岡田克也
○岡田委員 私もそういうことだろうと思うのですが、そうしますと、例えば厚生年金の報酬比例部分について、高額所得者であれば給付制限が行われることはあるということになりますね。例えば同じだけの高額所得を得ていながら、自営業者の場合にはそういう部分がありませんから、それはみずから国民年金基金に加入されるか、あるいは他の貯蓄に回っているのだと思いますが、そういう場合には給付制限がなくて、そして、厚生年金に入っておられる方には報酬比例部分も含めて給付制限があるということになりますと、ここに不公平という問題が出てくると思うのですが、この点についてはどういうふうにお考えなんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/205
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206・矢野朝水
○矢野政府委員 国民年金基金は、これは自助努力の一種、つまり、自分で自分の年金をもらうために毎月掛ける、事前積み立てで、自分が積み立てたものに対して直接年金をいただく、こういう仕組みでございまして、これに対しまして厚生年金本体は、これは世代間扶養の仕組みというのが非常に仕組みとしては強うございまして、つまり若い現役の人たちの保険料で年金が賄われる、こういうことに基本的な仕組みとしてなったわけですね。
したがいまして、年金がなければ生活できない、そういうことでない、ちゃんと収入もある、こういう方に対して若い人の保険料を充てるということについては、そこまで必要ないのじゃないかというのが、この一定の収入以上のある方については年金給付を制限をする、こういう考え方の背後にある考え方だと思うのですね。したがって、そこは、自助努力の一種で自分のための年金を積み立てている、そういう国民年金基金と、そういう世代間扶養の仕組みをとっている厚生年金というのはおのずから違うということで、分けて考えるべきではないか、こう思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/206
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207・岡田克也
○岡田委員 厚生年金の保険料も安くはありません。将来自分は高所得であるがゆえに年金を受けられない、にもかかわらず保険料をたくさん取られる、それぐらいなら厚生年金に入るの嫌だ、こういう声もある意味では上がってくるかもしれない。いずれにしても、かなりいろいろな意味で難しさを含んだ問題かなというふうに私は思っておりまして、ぜひそういった点も含めてしっかりした御検討をいただきたいというふうに考えております。
それから、年金と医療の調整の問題がございます。
一部報道では、そういうものも今回含まれているという報道も事前にはなされていたように記憶しておりますが、今回のこの昨日決まったペーパーの中では、そういった文言は出てこないように思いますが、例えば入院患者さんに対する年金の給付を制限する、そういったことについては検討の対象にはなっていないのでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/207
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208・矢野朝水
○矢野政府委員 これは、厚生省として社会保障の構造改革を進めるということで、以前からいろいろ検討、研究をしておりまして、そういう中の一項目としまして、医療、福祉、年金、こういったそれぞれの制度を縦割りで見るのじゃなくて横で相互の調整をする、そういうこともこれからの非常に重要な課題だという認識をしておりまして、そういう重複給付にならないような何らかの調整を図っていく必要がある、こういう認識で今後検討を進めていきたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/208
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209・岡田克也
○岡田委員 ぜひ御検討いただきたいと思います。
それから、この中で、「企業年金、個人年金等についての自助努力を促すための方策」を検討する、こういうことであります。
私も国民年金基金に入っておりまして、何となく官がやっているから効率が悪いかもしれないなと思いながらも、しかし入っているのは、税金がかからないからなんですね。そういう意味で、個人年金と比べて非常に大きな、競争条件が一緒でないという問題があります。もしこれからこういった個人年金等についてさらに活用していこうということであれば、競争条件を同じにしておかなければ当然そういったことの導入は進まないわけでありまして、そういった税制を含め、官がやっているものと民間がやっているものについての競争条件をそろえていくということについて、基本的な厚生省のお考えはいかがでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/209
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210・矢野朝水
○矢野政府委員 老後の所得保障といった場合に、公的年金がその中核になるというのは言うまでもないわけですけれども、これにあわせまして企業年金それから個人の自助努力、こういった組み合わせでもって老後生活を乗り切る、この三本柱でいくのだというのはおおむねあちこちで指摘されていることじゃなかろうかと思います。
それで、特に公的年金が、将来的には、出生率の低下とか財政経済構造が変わってきたというようなことで非常に厳しくなってくる、そういうことになりますと、企業年金とか個人の自助努力に期待される部分がより多くなってくる、こういう方向にならざるを得ないと思います。
私どもとしては、そういった企業年金の役割が非常に重要になってくるということで、厚生省で直接担当していますのは厚生年金基金でございますけれども、厚生年金基金の普及ですとか、その体質の強化ということでいろいろ努めているところでございます。
それから、企業年金によってもカバーされない人たちというのがどうしても出てくるわけですね。例えば中小零細企業ですとか、あるいは転職を頻繁にされますと企業年金の網からこぼれてしまうということでございまして、最終的には受け皿としては個人年金にならざるを得ない、こういうことでございまして、この個人年金につきましては、御指摘のとおり、制度としてもまだまだ問題が多い、課題が多いと思っております。
そういう意味で、公的年金、企業年金、自助努力、自助努力の一つとしての個人年金、これがバランスよく整備されて発展する、こういうことを私ども期待して努力しておるわけでございます。そういう意味で、競争条件を同じにするというのはちょっといかがなものか、むしろ、その三つがしっかりタイアップすることによって高齢化社会を乗り切る、こういうふうに進めたい、こう思っておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/210
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211・岡田克也
○岡田委員 私は、そこは基本的に考え方が違います。民ができることは民にやらせる、民がどうしてもできない、採算ベースに乗らないようなもの、あるいは非常にリスクの大きいようなものは官がやるというのが基本的な考え方であるべきで、そういう意味では、私は、国民年金基金などもう要らない、同じ競争条件にして民間にやらせるべきだというふうに思いますし、場合によっては厚生年金の報酬比例部分だって、そこまで何で官がやるのか、そういう気がいたします。高い保険料を取られて、将来のためにたくさんもらえますから今我慢しなさいという生活スタイルを官が押しつけているというふうにも言えるわけでありまして、そういう意味で、私は、ぜひ厚生大臣に、年金制度そのものについて、継ぎはぎじゃなくて、もう少し抜本的にメスを入れていただきたい。
考え方の最初のところの入り方が、今の御説明ではなくて、民でできることは基本的に民にやらせるのだ、それに、できないところについて官が補うのだという考え方で年金の世界についても御検討いただきたい、こういうふうに思うのですが、いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/211
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212・小泉純一郎
○小泉国務大臣 今の岡田委員の指摘、これは当然、抜本的改革の中で、そのような案を検討せざるを得ないと思います。どうなるにせよ、そういう考え方、今出てきていますし、今後、年金積立金の自主運用も今要求していますし、これが実現すればまた別の方法も考えなければいかぬ。
同時に、財政構造改革の中で五つの原則を出しましたけれども、この橋本内閣の方針を突き進めていきますと、年金にしても医療にしてもかなり大改革をしないとこれは実現不可能という面もありますから、今までの方式の延長線ではもう済まないな、いろいろな考え方を組み入れながら本格的な改革案を提示しないとこのような大構造改革はできないのではないかな、そう考えています。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/212
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213・岡田克也
○岡田委員 それから、この昨日のペーパーの中で、老人の医療保険制度についての記述がございません。これは基本的には従来の制度を維持していく、こういうふうにお考えなんでしょうか。老人の医療保険だけ従来とは切り離して別の制度として組み立てていくという選択肢も従来の審議会の議論の中では選択肢としてあったというふうに私は理解しておりますが、そういうものを排除するお考えなんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/213
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214・羽毛田信吾
○羽毛田政府委員 お答えを申し上げます。
その前に、先ほど長期計画の中に新ゴールドプランは入るかというお尋ねで、末端的にそこの部分だけお答えを申し上げましたが、そういう意味では、今回の五原則の中に新ゴールドプランも入ってはおると思いますけれども、今回の五原則を踏まえまして、一方において、新ゴールドプランにつきましては、御案内のように、介護保険制度の導入というものを踏まえて着実に基盤整備を進めなければいかぬという大命題がございますので、そういった五原則の考え方の検討をも踏まえまして、一方においてそういう介護保険制度導入ということを踏まえた、基盤整備の必要性ということを踏まえた幅広い検討を行っていくという意味で申し上げたつもりでございます。
それから、今の、老人保健制度の見直し、抜本的な改正ということが欠落をしておるのではないかという点でございます。
これにつきましても、既に関係審議会等の御議論も、介護保険制度の施行時までには老人保健制度を抜本的に見直すべきであるという御議論もいただいておりますし、また、与党における医療保険制度の改革協議会におきましても、一つの大きなテーマとして、老人保健制度の抜本的な見直しはやるということで御議論をいただいているところでございます。したがいまして、そういった検討の結果を踏まえまして、私どもとしても、その老人保健制度の抜本的な改革ということについては取り組んでまいるというのが基本的な姿勢でございます。
今回の財政構造改革会議でお示しをいただきました「歳出の改革と縮減の具体的方策を議論するに当たっての基本的考え方」という中におきましても、高齢化の進展に伴い大幅に増大していくことが見込まれる社会保障給付の改革という形で大きくとらえられておられますので、その一環として、この老人保健制度の抜本改革につきまして私どもも鋭意取り組んでまいらなければならない、こんなふうに考えておるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/214
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215・岡田克也
○岡田委員 それから、この中で、医療保険改革の中で「患者負担の見直し」というのが書かれております。患者負担の見直しにつきましては、今、国会に提出中の医療保険制度改革法案の中でもそういったものが書かれているわけでありますが、ここで新たにさらに患者負担の見直しということが出てきたということは、今提案中のその患者負担の見直しにさらに上乗せをしてといいますか、さらなる患者負担について検討していく、そういうふうなお考えだというふうに受け取れるわけですが、それじゃ、どういう方向でその患者負担について見直しをされるお考えであるのでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/215
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216・小泉純一郎
○小泉国務大臣 昨日の総理の提示した財政構造改革五原則の中でも、今の医療保険制度法案と介護保険制度の法案は成立するという前提なんです。その前提のもとに、当然、この国会中でも構造改革案が出てくると思います。成立した後そのままでいいとは思っていない、そういう中でまた見直し問題が当然私は出てくると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/216
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217・岡田克也
○岡田委員 そのままでいいとは思っていないということであれば、今国会提出の法案の中にそういうものも含めて、盛り込んで提出すべきではないか、こういうふうに思いますが、いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/217
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218・小泉純一郎
○小泉国務大臣 いろいろな案というのはもう前から言われたことがほとんどです。それができなかった。今回、この医療保険法案が出たからこそ、私は、いろいろな構造改革案が出てきてもう猶予はできないなという状況になってきたと思うのです。いわば今回の患者負担の見直しの案、これが構造改革の促進案になっていると私は思います。そういう意味において、この法案は成立してこれでよしとする法案ではありません。段階的に総合的に改革をしなければいかぬという、その一環として今医療保険改革を出している。その中で必ず構造改革案は出てくるし、もうせざるを得ない状況です。当然、今のような案でよしとは、いいという声だけでは終わらないと私は思っています。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/218
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219・岡田克也
○岡田委員 大臣みずから今の案では十分とは言えない、こういうことであれば、本来であれば十分な案を御提示されるのが政府としての責任ではないか、こういうふうに私は思っております。
さて、全体のこの改革のスケジュールでありますけれども、この文書によれば、「政治主導で、一切の聖域を設けずに検討を進めていくこととし、五月中旬までに検討結果をとりまとめ、財政構造改革会議に報告するものとする。」こういうふうに書いてございます。ということは、この社会保障の分野あるいは医療の分野についても五月中旬までに検討結果を取りまとめるというスケジュールで作業が進む、こういうふうに理解してよろしいでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/219
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220・小泉純一郎
○小泉国務大臣 今、その財政構造改革会議、そして企画委員会とかいうものを設けて、これから検討していくということであります。いずれ、私も含めて厚生省担当者が呼ばれると思います。その中で私は考えを聞いてみたいと思っております。今のところ、こういう方向でやるということでありますので、これから各論に入っていくと思います。その中でかんかんがくがくの議論が行われると思います。それを私どもいろいろ意見を聞きながら、または自分たちの考えを言いながら、五月中旬にどういうものが出てくるのか、また、どういうものを出さなければならないのかということをこれからの議論の中で決めていかなければならぬと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/220
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221・岡田克也
○岡田委員 五月中旬に何らかの結論がこの財政構造改革会議として得られるのであれば、今回の医療保険制度改革についてもそれを盛り込んで国会に提出されても十分審議には間に合うのではないか、こういうふうに私は考えております。せっかく法律が出てきて審議して、それが何らかの形で成立したとしても、その直後に政府みずからが、いや違うのだ、本当はこれがいいのだということでまた出し直しをされるということになりますと、一体国会の審議は何だったのか、こういうことになりますので、私としては、五月中旬というふうに総理初め閣僚の皆さんも集まって御決意をされたわけでありますから、それを踏まえて、負担増も含めて医療制度改革についての成案というものが出てくるべきだ、こういうふうに思っているところでございます。
最後に、このところにつきまして大臣の御感想をお聞きしまして、私の質問を終わりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/221
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222・高木俊明
○高木(俊)政府委員 今お話がございましたように、この具体策につきましては財政構造改革会議の中の企画委員会の中で検討がなされていくというふうに聞いております。これは、この中に「患者負担の見直し」という項目があるわけでありますが、これは大きくは、「医療については、「国民医療費の伸びを国民所得の伸びの範囲内とする。」との目標を引き続き堅持し、このため与党医療保険改革協議会の検討も踏まえた」、イロハニと項目がありまして、このニに「患者負担の見直し」こういうふうに書いてございます。これは先ほど大臣から御答弁ありましたように、現在提出されている改正法案の成立を期した上でこういうものを検討していく、こういう順序になっておりまして今のようなことであります。
そういう中での患者負担の見直しの中身でありますけれども、これは今申し上げたようなことで、「国民医療費の伸びを国民所得の伸びの範囲内とする。」という目標、これとの関連で考えますと、一つには、いわゆる公的な保険給付の中で賄うべき分野、それとまた保険給付外で賄うべき分野、こういったようないわゆる公的医療保険の守備範囲をどういうふうにしていくべきなのか、あるいはまたその際の負担の仕組みはどうあるべきか、こういった患者負担の見直しと申しましても、そういった制度全体の枠組みのあり方の問題としてこういうような問題を幅広く検討していくというふうな問題として盛り込まれているというふうに私どもは理解をしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/222
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223・岡田克也
○岡田委員 終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/223
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224・町村信孝
○町村委員長 枝野幸男君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/224
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225・枝野幸男
○枝野委員 民主党の枝野でございます。
戦傷病者戦没者遺族等援護法の今回の改正については基本的には賛成の立場でございますが、先ほど岡田先生からも御質問がありました、在日韓国・朝鮮人の年金受給権の問題についてお尋ねをさせていただきたいと思います。
まず、確認的にお尋ねをさせていただきますが、在日韓国・朝鮮人の皆さんの年金請求権の問題に絡む協定として、一九六五年の日韓請求権協定がございます。この二条の二項(a)では、「一方の締約国の国民で千九百四十七年八月十五日からこの協定の署名の日までの間に他方の締約国に居住したことがあるものの財産、権利及び利益」というものについては日韓請求権協定が「影響を及ぼすものではない。」というふうになっております。この「財産、権利及び利益」というのはいわゆる実体的権利であるという言い方をしていますが、この実体的権利であるのかどうかという判断は国内において一義的にはだれが行うのでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/225
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226・別所浩郎
○別所説明員 個別の法の、例えばこの援護法でございますが、個別の法の適用の問題につきましては、それぞれの法の所管官庁が行うということになります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/226
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227・枝野幸男
○枝野委員 それでは厚生省にお尋ねをしなければならないと思いますが、そもそも、戦傷病者戦没者遺族等援護法で支給をされる年金というものは法的にはどういうものなんでしょうか。逆に言えば、その年金の請求権というものは法的にはどういう権利なんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/227
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228・亀田克彦
○亀田政府委員 御質問の御趣旨に正確にお答えすることになるかどうかわかりませんが、援護法に定めるところの援護年金、障害年金と遺族年金がございますけれども、この援護年金につきましては、援護法によりましてこの請求が可能になる、こういう性格のものでございますので、そういう意味では、援護法の制定によりまして新たに該当対象者に権利を付与することになったもの、そういうものではないかというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/228
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229・枝野幸男
○枝野委員 いや、ですから、なぜこの人たちに、今の対象の皆さんに払うという行為が出てきたのかという根拠をお尋ねしているわけです。
つまり、例えば阪神・淡路大震災の被災者の皆さんに対する個人補償をすべきだという声を強く上げていますが、そういったことはできないのだということが政府の一貫した姿勢であります。なぜこの戦傷病者や戦没者の遺族の方に対する年金の支給というものはできるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/229
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230・亀田克彦
○亀田政府委員 先生御案内のとおりでございますが、援護法には、その対象者を日本国籍を有する者に限定する、こういう国籍要件が設けられておるわけでございます。そういうことから、在日韓国人の方々を含めまして韓国人の方についてはこの援護法が適用されない、こういうことになっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/230
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231・枝野幸男
○枝野委員 いや、そういうことを聞いているのじゃなくて、何の理由もなく、この人にはいわゆる補償、お金を上げますよということを国が税金を使ってできるわけではないでしょう。できませんよね。だから、阪神大震災の被災者というくくりであったとしても個人補償はできないのですよね。ところが、この対象の人たちに対しては税金からお金を出してもいいということになっているわけですよ。なぜいいのですか。根拠は何なんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/231
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232・亀田克彦
○亀田政府委員 難しい質問でございますが、根拠は、援護法が国会で制定をされた、そういうところにあろうかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/232
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233・枝野幸男
○枝野委員 それはすごくいい。そうすると、逆に言えば、阪神大震災の被災者の人たちに対する個人補償も国会で通れば構わないわけですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/233
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234・亀田克彦
○亀田政府委員 阪神大震災の個人補償の問題につきましてはコメントする立場にございませんけれども、国会が国権の最高機関でございますので、国会で御決定になればその可能性はあるのではないかというふうに感じております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/234
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235・枝野幸男
○枝野委員 ちょっと通告のところからずれていってしまっているのですが、大事な話ですから。
だとしたら、何で政府は出さないのですか。こんなに、阪神大震災の被害者の人たちは大変なんだ、個人補償すべきじゃないかという声が、世論が盛り上がっているのに、政府が法的にそんなことできないと言っているから話が進んでいないのですよ。これは、担当は社会・援護局はちょうどいいのじゃないのかな。多分、所管なんじゃないですか、やるとすれば。違うのかな。どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/235
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236・亀田克彦
○亀田政府委員 厚生省社会・援護局では災害救助法という法律を所管いたしておりまして、大きな災害が起きた当初の応急的な、応急的ということでございますので、急場の、その場しのぎと申しますか、とりあえずと申しますか、そういう対策を行う、こういうことになっております。したがいまして、個人補償、こういう問題につきましてはコメントする立場にはないと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/236
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237・枝野幸男
○枝野委員 わかりました。それでは、国務大臣たる小泉大臣にお尋ねをします。
今の議論を聞いていただいたとおり、局長さんは、法律さえつくれば、どういった対象にどういうお金を出す出し方をしても構わないのですよとおっしゃっておるわけです。ということは、阪神大震災の被災者というくくりで個人補償をすることも、国会が最終的に議決をすれば構わないのだということをおっしゃっているわけです。だとすれば、これは政府として、阪神大震災の被災者に対する個人補償を進めない理由というのが、今までは、法的に私有財産制とかなんとかいろいろなことを言って、政府が後ろ向きのことをやってきたからこの話はなかなか進んでいないのですね。どうもちょっと整合性がとれなくなってしまうのじゃないかなと思うのですが、いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/237
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238・小泉純一郎
○小泉国務大臣 それは財源の問題もあると思います。どこまでやっていいのか。現行法でいろいろ支援、援助している。そこまでやるのが妥当かどうかという問題があると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/238
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239・枝野幸男
○枝野委員 逆に言えば、財源の問題とかということがむしろメーンなんだということであれば、そちらの話は進みやすくなるので、大変ありがたい御答弁をいただいたと思っています。
今度は局長に、本題に戻りますが、それにしても、何らの理由もなくこの話というのはお金を出しているのですか。単に国会が決めたからということだけで、この年金はお金を出しているのですか。国民の中の一定の人たちに絞ってお金を出しているということは、何らかの理由が、政策的な理由なり法的な理由がなければ一般的にはお金を出しませんね。ほかの人たちとは区別をしてこの人たちにお金を払っているということについては、何らかの政策的な目的か、あるいは法的な根拠か、どちらかが存在をしているからお金を出しているのじゃないですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/239
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240・亀田克彦
○亀田政府委員 援護法が制定された当時の議事録あるいは援護法の現在の第一条の「目的」、この辺を眺めてみますと、当時、軍人恩給が停止されておる。二十七年当時でございます。こういう状況が一方にございました。そういう状況下で、戦傷病者あるいは戦没者の遺族、こういう方々の状況、こういうものを背景にいたしまして、国家補償の精神に基づきましてそういう方々に言ってみれば手厚い援護をする、こういうような政策判断と申しましょうか、立法の背景、理由と申しますか、そういうことでこの法律が制定されたのではないかというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/240
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241・枝野幸男
○枝野委員 その言葉を出していただきたかったのですが、二つしか考えられないと思うのですよ。この対象の人たちにお金を出すということの裏づけとなることは、政策目的としての福祉目的なのか、それとも、法的にいわゆる損失補償を行っているのか、どちらかしかちょっと考えにくいのですよ。どちらなんですかね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/241
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242・亀田克彦
○亀田政府委員 これも大変難しい御質問でございまして、当時の資料あるいは議事録等を見ても、明確にその辺の説明はないわけでございますけれども、法律第一条に「国家補償の精神に基き」「援護する」こういうことになっております。「国家補償の精神」というのは、申し上げるまでもなく、国と軍人あるいは軍属の雇用契約、こういうものを背景にした補いと申しますか補償的なもの、そういうことを言っておるのであろうというふうに考えられますし、また、「援護」と言っております。「援護」というのは援助に近い言葉ではなかろうかと思います。
そういう意味で、先生おっしゃいます社会福祉と申しますか、社会保障と申しますか、そういう色彩もあるのではなかろうか、両方の色彩があるのではなかろうかというふうに私は考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/242
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243・枝野幸男
○枝野委員 本当に後段の目的を言ってよろしいのですか。社会保障的な目的だとしたら、この法律に基づく年金とかの支給に、例えば所得要件とかそういったものがありますか。ありませんよね。それで、社会保障的な、社会福祉的な目的ということをおっしゃって整合性がとれますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/243
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244・亀田克彦
○亀田政府委員 正確な意味で、社会保障あるいは社会福祉というような言葉を使うと正確ではないのかもしれませんが、当時の資料などを見ますと、例えば恩給、遺族の恩給の場合ですが、階級によって結果的にこの額が変わってくる、ところが、援護年金の遺族年金の方は階級とかなんか関係ありませんで、一律になっておるわけでございます。そういうことに、社会保障と申しますか福祉と申しますか、そういう色彩が出ておる、こんなことを書いておる資料もあるわけでございます。そういうような意味で申し上げました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/244
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245・枝野幸男
○枝野委員 要するに、基本的に、なぜこの法律で年金を支給するのかといえば、公法上の損失補償なんですよね。要するに、軍属として雇用契約があって、そこでけがをしたり命を失ったりとかしたということがあったのだけれども、そうやって特殊な、国民なりなんなりの全体の中から特定の一部の人だけにそういった犠牲を強いたことに対する穴埋めをするということの意味だ。そして、一般的に、公法上の損失補償というのは公平の見地から行われる。つまり、損害賠償と違って、補償というのは、国の不当行為、違法行為に基づいたものではなくて、適法行為であったけれども、それによって生じた穴というものは、特定の一部の人だけがかぶった穴なんだから、それは国民全体で埋めましょうという公平の見地からだと思います。
だとすると、そもそもこの法律をつくったところで、その同じような条件で、つまり軍属としてその当時の日本軍と雇用契約にあって、同じようにけがをした人がいたとしたら、公平の見地から考えたら、国籍があるのかないのかにかかわらず、穴があいている以上、そこは埋めなければならないという政策目的、この法律の目的からすれば、国籍の有無は基本的には関係ないのじゃないですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/245
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246・亀田克彦
○亀田政府委員 分離独立地域の方々の話を別にいたしますと、この援護法で国籍要件を設けましたのは、恩給法、恩給法というのも先生もう御案内のように国との雇用関係に基づいておるわけでございます。この恩給法に準拠してこの援護法の国籍要件を設けた、こういうことでございます。恩給法につきましては、大正時代でございますけれども、法律ができたときから国籍要件がある、こういうことでございまして、先生御指摘の、法のもとの平等に反するというようなことはないのではなかろうかというふうに認識をいたしております。
また、分離独立地域の方々につきましては、先ほど来出ておりますように、平和条約で別途の解決をする、こういうことになっておりましたからこの国籍要件をそのままにしておいた、こういうことでございますので、それもこの法のもとの平等に反する、こういうことにはならないのではないかというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/246
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247・枝野幸男
○枝野委員 後段の方は余り関係ないのですよ。前段の方が問題なんですよ。
要するに、この法律をつくったときにどうだったか。そのときの段階で平等違反が存在をしていたとすれば、その段階で具体的な権利にはなっていなくても、実体的権利としては発生しているわけですから、その実体的な権利がこの日韓協定に基づいて生き残るという話になるわけですよ、在日の人に限っていえば。それは、韓国本土にいらっしゃる方は請求権協定で請求権は全部処理済みという話になりますが、日本にいる人に限っていえば、この援護法ができたところで、そこで不公平があるということで、憲法に基づいて抽象的請求権が発生していれば、具体的な請求権になっていなくても、実体的権利ということでは抽象的権利でも権利ですから、それはこの協定の二条二項(a)に該当するということになるというふうに判断するのが筋ではないか。
そして、この法律ができたときの問題点としては、確かに、恩給との横並びというのは、それは立法者の意思とか歴史的な背景というものはあるでしょうけれども、それは、恩給が国籍要件だからこちらも国籍要件を入れたからといって平等違反にならないという理屈にはならないわけで、恩給法とは目的が違うわけですから、恩給とは全く一致はしないわけですから。恩給は階級ごとに違うわけで、まさに一種の契約的なものに基づく給与の後払い的な側面というのが非常に強いわけですから、全く同じものではないわけですから、恩給があるのだからこっちも国籍要項があってもおかしくないという理屈にはならないわけで、それ以上の説明をなさっているとは到底思えないというふうに思っています。
時間も切れますので、この問題については、そういった法的な側面をしっかりと見直していくと、これについて、少なくとも在日韓国・朝鮮人の皆さんについては立法措置をとるということは決しておかしくない、むしろ法的にはその方が素直なんだという結論になると私は思っているということを指摘させていただきます。
最後に一点だけ、ちょっと本件と外れますが、せっかくの機会ですので、厚生省にお尋ねをさせていただきたいのです。
三月十二日の読売新聞の関西地方で発行されているものに、奈良県立医科大学の小児科学教室が血友病出生前診断、しかも倫理委員会に諮らず、こういう記事が載っております。
どういうことかといいますと、この病院で、血友病の遺伝的な要素を持っている可能性のある妊婦の方に、出生前に、へその緒あたりからとるらしいのですが、DNAを採取して、その胎児が血友病にかかっているのか、かかっていないのかということを診断する。そして、その結果として、血友病にかかっているということがわかったがために中絶をした人も少なからずあるようだ。そのあたりの記録もしっかり残っていない。しかも、こういった生命倫理にかかわるような話について、学内の倫理委員会にも諮らずに、研究室といいますか教室といいますか、その教授が独断でやっていた。
言うまでもなく、こういった先天性の病気を持っている、遺伝性の病気を持っているということについて、だからということで中絶が行われるとしたら、まさに優生思想に基づく話ということになりかねない話で、非常に微妙な問題であります。少なくとも、これを学内の倫理委員会にも諮らずに勝手にやっていたというようなことは明らかに大きな問題だと思います。県立医科大学の中の問題だから自治省やあるいは文部省の問題だというような言い方もあるのかもしれませんが、基本的には医の倫理の問題として厚生省がしっかりと調査をして、そして対応していただかなければならないというふうに思っています。
この問題について、どういった認識を持っているのか、どういった対応をしようとしているのか、厚生省のお考えをお示しください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/247
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248・横田吉男
○横田政府委員 奈良県立医大における血友病の出生前診断につきましては、三月十二日の新聞報道で初めて承知したわけでございますが、私どもといたしまして、現在、奈良県立医大あるいは日本産科婦人科学会などの関係機関から情報を収集しているところでございます。
血友病のように治療方法が確立されております病気について遺伝子診断を行うことがいいのか悪いのか、どのような場合に出生前遺伝子診断が認められるかといった問題につきましては、医学面だけでなくて、法制面、倫理面にわたりまして、広く国民的に開かれた議論が必要ではないかと考えております。
私ども、来年度には、科学技術について倫理の問題も含めた検討を行う厚生科学審議会が設置されることになっておりますので、こうした問題につきましても検討をお願いしたいと考えているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/248
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249・枝野幸男
○枝野委員 血友病ということで、厚生省にとってはいろいろと複雑な関係のある、患者さんにとって非常に微妙な問題でありますので、しっかりとした対応をお願いいたします。
終わります。ありがとうございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/249
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250・町村信孝
○町村委員長 児玉健次君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/250
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251・児玉健次
○児玉委員 日本共産党の児玉健次です。
戦傷病者戦没者遺族等の障害年金、遺族年金等、これが一九八九年から九七年の間、支給額の伸びは何%になりますか、その数字を厚生省からお答えいただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/251
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252・亀田克彦
○亀田政府委員 まず、遺族年金でございますが、幾種類かございますけれども、公務傷病による死亡に係る遺族年金、この額を例にとりまして申し上げたいと思います。
平成元年度は百五十九万六千三百円でございました。現在御審議をお願いしておりますこの法律改正による平成九年度の改定後の額は百九十万八千八百円でございます。この間の伸び率を計算いたしますと一九・六%になろうかというふうに思います。(児玉委員「わかりました」と呼ぶ)
障害年金はよろしゅうございますか……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/252
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253・児玉健次
○児玉委員 公務傷病の遺族年金について一九・六%伸びている。
総理府からおいでいただいていると思うのですが、従軍看護婦への慰労給付金について、これは一九七八年、昭和五十三年に各党の合意が成立しまして、翌年からこの給付金が発足をした。そのときの確認ですが、「恩給制度を準用し、戦地加算を考慮して、兵に準ずる処遇とする。」こうなっていたと思いますが、そのとおりですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/253
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254・山崎日出男
○山崎説明員 お答えいたします。
先生御指摘のとおりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/254
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255・児玉健次
○児玉委員 先日、私のところに、東北にお住まいの日赤従軍看護婦の方からお手紙がありまして、赤紙で召集され、戦後、軍人傷病兵とともに捕虜となり、長期抑留、戦後十三年も中国に残された友がいます、会員の約三分の一は独身者、平均年齢七十八歳、こう述べていらっしゃいますね。
今、この給付金の対象は九七年度で千八百九十六人、ここまで減っています。そこで、この方々に対するこの給付金の引き上げですが、一九九二年、平成四年に八・五%、そして九六年、平成八年に三・七%、先ほどの公務傷病遺族年金の一九・六%に比較して、同じ期間で一二・三%にとどまっています。先ほどの「恩給制度を準用し、」そのようになっていない。この点の改善が必要だと思うのです。
それで、私は具体的に申しますけれども、一九九六年以降、毎年改定するように改められました。これは私は一歩前進だと思います。そこで、それをさらに進めて、前々年の物価指数を指標とするのでなく、年金と同じく前年の物価指数を指標として使う、このように改めていただきたいと思うのですが、いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/255
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256・山崎日出男
○山崎説明員 お答えいたします。
先生御指摘の旧日本赤十字社救護看護婦等に対します慰労給付金につきましては、女性の身でありながら戦地、事変地において旧陸海軍の戦時衛生勤務に従事した、そういう特殊事情を勘案しまして、その御労苦に報いるために支給しているものでございます。したがいまして、年金とかそういう所得の保障を目的とするものとは性格が異なっております。
政府といたしましては、この旧日本赤十字社救護看護婦等の慰労給付金につきましては、その実質価値を維持する必要があるという考えのもとで、昭和六十年度、平成元年度、平成四年度、そして平成八年度とこれまで四回にわたりまして増額措置を講じてきたところでございます。厚生年金等の一般公的年金の改定方式につきましては法律で改定方式が定められていると聞いておりますけれども、一方、この慰労給付金につきましては予算措置で行われているものでございまして、毎年予算要求を行っているところでございます。
そういうような事情もございまして、この慰労給付金の増額改定につきましては、概算要求時における直近年の年平均の消費者物価指数、これを勘案して要求しているところでございまして、その要求時の前年の消費者物価指数がその時点におきます最新の数値であるために、これを使用しているものでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/256
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257・児玉健次
○児玉委員 その点は、一般の年金については今おっしゃった問題は既にクリアしていますね。なぜこれでそのようにできないのか。先ほどの確認、「恩給制度を準用し、」「兵に準ずる処遇とする。」こういうふうに明白にもなっているのですし、私はこの点を総理府は真剣に検討していただきたい、いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/257
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258・山崎日出男
○山崎説明員 お答えいたします。
この旧日本赤十字社救護看護婦等に関します慰労給付金につきましては、先ほども申し上げましたとおり、所得の保障を図るという性格のものではなくて、長年の御労苦に報いるために支給しているものでございます。そういうことでございますので、例えば年金等のCPIのほか、公務員のベースアップとか、いわゆる総合勘案方式をとっておりますものとは結果的に差が生じているものでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/258
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259・児玉健次
○児玉委員 同じことを繰り返されまして、あなたのその論理からいえば、去年から毎年改定するということが出てきませんね。毎年改定するようになったというのは、これは私は評価しています。それで竿頭一歩進めて、一般の年金では既に技術的に可能になっている前年の指標によったらどうかと言っているのですから、しかも、発足時の確認もあるわけなので、私は再度検討を求めます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/259
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260・山崎日出男
○山崎説明員 お答えいたします。
この旧日赤救護看護婦等の慰労給付金につきましては、これは何回も申し上げているのでございますけれども、所得の保障を図る年金とは基本的な性格が異なってございまして、そういう観点から、政府といたしましては、今後とも、戦後五十年問題プロジェクトの趣旨にのっとりまして、実質的価値の維持に努めてまいりたいというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/260
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261・児玉健次
○児玉委員 この点は引き続き努力していただくことを求めて、次の問題に入ります。
戦争被害への援護という点で共通する原爆被爆者援護法に関してです。その中に盛り込まれている特別葬祭給付金について、被爆者約三十三万四千人、この中で給付金の対象見込み件数を二十五万人と厚生省は見ていらっしゃる。これまでの請求件数は現在何件まで来ているでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/261
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262・小林秀資
○小林(秀)政府委員 まず、特別葬祭給付金の制度の話を若干させていただきます。
この給付金は、被爆者援護法に基づきまして……(児玉委員「制度についてはもうよくわかっておりますので今の質問にお答えください」と呼ぶ)被爆後五十年のときを迎えるに当たりまして、原爆死没者の方々とともに苦労を経験された遺族でございます方で、御自身も被爆者である方々の二重の意味での特別の犠牲に着目して、支給対象者お一人につき一律に金十万円の国債を支給するものでございます。
この制度を御利用されまして国債を受け取られました方々は、現在、十一万三千百六十六件でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/262
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263・児玉健次
○児玉委員 私は数字を聞いているので、数字を答えていただきたいのです。
援護法の三十三条四項、そこには平成九年六月三十日までにこの請求を行わなければと期限が示されておりますね。皆さんがこの法律を発足させるときにお見込みになった二十五万人に対して、今局長のお答え、十一万幾ら、まだ二分の一に満たない状況ですね。月別には、最近、一カ月について請求件数は何件ぐらいでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/263
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264・小林秀資
○小林(秀)政府委員 最近は月々二千件程度でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/264
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265・児玉健次
○児玉委員 そこで、四月、五月、六月、そのペースでいけば、せいぜい六千件ないしはもう少し。せっかくの法律ですから、しかも、あの法ができるときの経過というのは、私は繰り返しませんけれども、被爆者手帳の所持者に限定するということが一つ大きな議論になりました。そして、厚生省としては手帳の所持者に限定されました。ここを周知させる必要があると思うのです。
都道府県は約三十三万四千人の手帳所持者についてははっきり掌握されておりますから、まず私は厚生省に求めたいのは、被爆者手帳を持っている方々に対して、該当する死亡者の有無、昭和二十年の八月六日ないしは八月九日から昭和四十九年の九月三十日までの縁者の死亡者があるかないか、これをひとつ確かめられて、そして請求されたかどうかということを重ねれば、どの方が未請求かということがすぐ出てくると思うのです。その点の御努力をまずお願いしたいと思うのですが、いかがでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/265
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266・小林秀資
○小林(秀)政府委員 これまで国並びに広島、長崎においては、関係者の方に周知徹底を図っております。特に広島、長崎については、被爆者手帳所持者全員にパンフレットだとか請求用紙を配っておるということでございます。
これは、片方、御主人または奥さんが亡くなられた御遺族の方で、なおかつ御自身も被爆者ということですから、当然、広島とか長崎に住んでいらっしゃる方が多いわけでして、他の地域から行ってたまたまそこで被爆をされた方とは違うわけですから、当然地元が多くなるわけですけれども、そういう意味では都道府県によって濃淡はあるわけですけれども、その広島、長崎において精いっぱいのことをやられてこれだけの数字が出たものと考えておりますが、今先生の御提案のことは、事務当局にちょっと聞きましたところ難しくてそれはできないということですけれども、今後とも我々としては、まだ期間がありますことですからPRには努めてまいりたい、このように思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/266
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267・児玉健次
○児玉委員 時間ですから、私は二つのことを求めておきたい。
この点は特別なことを言っているわけではないので、手帳をだれが持っているかというのは市町村長が知っていますし、都道府県は知っているのです。その人たちの中でどなたが既に請求されたかというのはわかっているのです。残っている方々の中で該当する死亡者をお持ちの方がいるかどうかということを尋ねることは、そんな煩瑣なことを求めているのじゃありません。この点について至急努力をしていただきたいというのが一つ。
それから、これは大臣に最後に私は要請したいのですが、現状では、六月三十日になったとしても見込まれていた対象者を大幅に残すことになりますね。この際、六月三十日という請求の期限を延長する措置をとっていただきたい。
以上、二つの点についてお答えを求めます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/267
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268・小泉純一郎
○小泉国務大臣 対象者の正確な数というのはなかなか難しいと思うのです。見込みが二十五万人程度だった。実際は十一万三千件ぐらいだ。見込みというのはやや多目に見たという点もあると思います。しかしながら、まだ六月まで時間がありますから、まず周知徹底を図るのが先決ではないかと私は考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/268
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269・児玉健次
○児玉委員 終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/269
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270・町村信孝
○町村委員長 秋葉忠利君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/270
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271・秋葉忠利
○秋葉委員 短い時間ですので二つ三つ伺いたいのですが、その前に、今の被爆者援護法に関連いたしまして、給付を受けた被爆者が少ない理由の一つに、海外における被爆者に対する給付が行われていないという事実がございます。数は少ないのですけれども、十万円をもらうために、例えば十万円、二十万円をかけて日本まで取りに来ないと渡さないという制限があります。こういったことについても厚生省にずっと要望を出しておりますけれども、私どもといたしましても、やはり六月三十日の期限というものをぜひ延長していただきたい、それと同時に、海外に在住する被爆者に対する考慮をしていただきたいことを、最初にただいまの質問に関連してお願いしたいと思います。
戦没者遺族の援護施策の一環として、現在、九段に戦没者追悼平和祈念館というのが建設されておりますけれども、これは例えば千代田区あるいは周辺の住民の反対にもかかわらず建設が始まっておりますけれども、最初に、平和祈念館と一応呼ばれておりますけれども、この建物の目的を簡単にお答えいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/271
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272・亀田克彦
○亀田政府委員 戦没者追悼平和祈念館、仮称でございますけれども、この施設につきましては、戦没者遺族の援護施策の一環として、戦中戦後の国民生活上の労苦を伝える、このために実物資料の陳列あるいは関連情報・図書の閲覧等の事業をここで行うということを目的、性格にいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/272
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273・秋葉忠利
○秋葉委員 そうすると、これは、戦中ということで考えますと、その戦中には、現在日本国籍を持ってはいないけれども戦争中には日本国民であった、そのことのよしあしは別として、事実として日本国民であった多くの人たちが当然含まれるわけですけれども、その戦中の国民生活の中に、現在、韓国あるいは北朝鮮の国籍を持つ、あるいは台湾の国籍を持つような人々の国民生活上の労苦にかかわる資料も当然展示されるということになると思いますが、その点を確認したいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/273
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274・亀田克彦
○亀田政府委員 この施設におきまして、具体的にどういう実物資料を集め、あるいはどういう情報を集めるかということにつきましては、現在細部検討中でございますけれども、主として、現在の日本における戦中戦後、その当時の資料の収集が中心になるのではなかろうか、こういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/274
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275・秋葉忠利
○秋葉委員 時間がありませんから、最後に小泉厚生大臣に伺いたいのですが、この歴史的事実ということが強調されている平和祈念館ですが、当然、その歴史的な事実の重みということを考えて、戦争中に日本国民であった、しかしながら現在は日本国籍を持っていない皆さんの労苦にかかわる資料もきちんと集める方針である、歴史的事実とはそういうものであるといった決意をぜひ伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/275
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276・小泉純一郎
○小泉国務大臣 戦没者追悼といいますか平和祈念館の趣旨は、二度と戦争を起こしてはならない、さきの大戦を深く反省しつつ歴史を直視しようということだと思うのであります。そういう点から考えて、我々の国の歩んできた道、そして、あの戦争という災禍を二度と起こさないようにどういう形がいいのか、いろいろな方面の意見を聞きながら、そういう資料というものを展示なり国民に知ってもらうことが大切ではないかなと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/276
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277・秋葉忠利
○秋葉委員 何人かの閣僚の方の発言に比較をすると、大変公平な公正な立場での御答弁だと思います。その姿勢をぜひ保っていただいて、事実にのっとった立場からこの平和祈念館の資料の収集、そして展示ということを行うことを再度要望いたしまして、私の質問を終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/277
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278・町村信孝
○町村委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。
―――――――――――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/278
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279・町村信孝
○町村委員長 これより討論に入るのでありますが、その申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。
戦傷病者戦没者遺族等援護法の一部を改正する法律案について採決いたします。
本案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/279
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280・町村信孝
○町村委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。
お諮りいたします。
ただいま議決いたしました本案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/280
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281・町村信孝
○町村委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
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〔報告書は附録に掲載〕
―――――――――――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/281
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282・町村信孝
○町村委員長 次回は、来る二十一日金曜日午前九時五十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
午後六時四十四分散会
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〔本号(その一)参照〕
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派遣委員の岡山県における意見聴取に
関する記録
一、期日
平成九年三月十二日(水)
二、場所
岡山東急ホテル
三、意見を聴取した問題
介護保険法案(第百三十九回国会、内閣提
出)、介護保険法施行法案(第百三十九回
国会、内閣提出)及び医療法の一部を改正
する法律案(第百三十九回国会、内閣提出
)について
四、出席者
(1) 派遣委員
座長 町村 信孝君
桜井 郁三君 住 博司君
能勢 和子君 福島 豊君
桝屋 敬悟君 山本 孝史君
中桐 伸五君 児玉 健次君
中川 智子君
(2) 現地参加議員
熊代 昭彦君
(3) 政府側出席者
厚生省高齢者介
護対策本部事務
局長 江利川 毅君
厚生省健康政策
局総務課長 小島比登志君
(4) 意見陳述者
岡山県備前市長 栗山 志朗君
広島県沼隈町福
祉保健課長・保
健婦 森下 浩子君
岡山市医師会会
長 福島 功君
山陽町福祉ボラ
ンティア虹の会
チーフリーダー 佐野 康君
岡山県老人福祉
施設協議会会長 福原 信行君
社会福祉法人敬
友会ケアハウス
パラジェネシス
2施設長 原 まさ子君
株式会社ベネッ
セコーポレー
ション社長
岡山商工会議所
副会頭 福武總一郎君
老健あかね&健
寿協同病院事務
長 常久 勢子君
(5) その他の出席者
厚生委員会調査
室長 市川 喬君
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午後一時三分開議発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/282
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283・町村信孝
○町村座長 これより会議を開きます。
私は、衆議院の厚生常任委員長を務めております町村でございます。どうぞよろしくお願いをいたします。
私がこの会議の座長を務めさせていただきますので、どうぞよろしくお願いをいたします。
この際、派遣委員団を代表いたしまして一言ごあいさつを申し上げます。
当委員会におきましては、現在、百三十九回国会、内閣提出の介護保険法案、介護保険法施行法案、医療法の一部を改正する法律案の各案の審査を行っているところでありますが、本日は、国民各界各層の皆様方から御意見を承るため、当岡山市におきましてこのような会議を催させていただいたところでございます。
御意見をお述べいただきます皆様方には、大変御多用中にもかかわらず御出席をいただきましたことを心から御礼申し上げます。どうぞ、きょうはフランクにまたリラックスして、忌憚のない御意見をお述べいただきますようお願い申し上げます。
それでは、まず、この会議の運営につきまして御説明申し上げます。
かたいことを申すようでありますが、会議の議事は、すべて衆議院における委員会議事規則及び手続に準拠して行い、議事の整理、秩序の保持等は、座長であります私がとり行います。発言される方は、座長の許可を得て、着席のままで結構でございますが、挙手をして許可を得てから発言をしていただくようお願いいたします。
なお、御意見をお述べいただく方々は、委員に対しての質疑はできないことになっておりますので、あらかじめ御承知おき願いたいと存じます。
次に、議事の順序について申し上げます。
最初に、意見陳述者の皆様方から御意見をそれぞれ十分程度お述べいただきたいと存じます。その後、委員の皆さん方より質疑を行うということでございますので、どうぞ御協力のほどよろしくお願い申し上げます。
それでは、派遣委員を御紹介いたします。
政党順に申し上げます。
自由民主党の住博司君、桜井郁三君、能勢和子さん、続きまして、新進党の山本孝史君、福島豊君、桝屋敬悟君であります。次に、民主党の中桐伸五君、日本共産党の児玉健次君、社会民主党・市民連合の中川智子さん、以上でございます。
また、現地参加議員として、自由民主党の熊代昭彦君が出席をされております。
次に、本日御意見をお述べいただく方々を御紹介いたします。
岡山県備前市長の栗山志朗君、広島県沼隈町福祉保健課長・保健婦の森下浩子さん、岡山市医師会会長の福島功君、山陽町福祉ボランティア虹の会チーフリーダーの佐野康君、岡山県老人福祉施設協議会会長の福原信行君、社会福祉法人敬友会ケアハウスパラジェネシス2施設長の原まさ子さん、株式会社ベネッセコーポレーション社長・岡山商工会議所副会頭の福武總一郎君、老健あかね&健寿協同病院事務長の常久勢子さん、以上の方々でございます。
それでは、まず最初に栗山志朗君から御意見をお述べいただきたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/283
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284・栗山志朗
○栗山志朗君 備前市長の栗山です。
平素から、先生方には、都市行政の伸展につきまして特段の御指導と御尽力を賜っております。この席をおかりしまして厚くお礼を申し上げます。
また、国会会期中で、公私ともに御多忙中にもかかわりませず、昨年に引き続きこのような地方公聴会を開催され、介護保険関連三法案につきまして、幅広く地方の意見をお聞きになるというその真摯な取り組みに対しまして、深く敬意を表する次第でございます。
さて、私といたしましては、介護保険法案において事業の実施主体となる市町村の立場から御意見を申し上げたいと存じますが、最初に申し上げたいことは、包括的で新しい高齢者介護システムの創設は、私どもにとりまして長年の悲願、宿願であったということでございます。
介護者の精神的、肉体的あるいは経済的な負担は余りにも大きく、そのため要介護者に対して憎しみを抱き、虐待等が発生することさえある現状に、地域の基礎的自治体である市町村は直に接してきたわけであります。本来最も愛されまた愛すべき家族がこのような状態に陥ることは、社会全体における最大の不幸であり、高齢化が急激に進行する中、高齢者介護対策は、人間の尊厳にもかかわる最も重要な課題であると認識をしておるところでございます。
このため、国に対し、再三新しい高齢者介護システムの創設を要望してまいったわけでありますが、それを受けられた介護保険制度に対しまして、大きな期待を抱いておるところでございます。しかしながら、その運営方法等につきまして、改善、検討、あるいは今後の課題とするべき事項がないわけではございません。
その具体的な項目について申し上げたいと存じます。
第一に、この制度は国民に新たな負担を求めるものであり、制度の創設の趣旨、具体的な内容等はもちろんでありますが、検討状況等についてもより積極的に公開し、国民的議論を喚起し、その議論に国として誠実に対応する等、介護保険制度に対する国民の理解と協力を得るために最大限の御努力をお願いしたいということでございます。
次に、介護保険制度実施までに、新ゴールドプランの推進、補助枠の拡大、民間活力の導入等により、マンパワーの確保、養成及び施設整備を推進し、制度に対応できる介護サービス基盤の構築を図ることが不可欠であるということであります。
現状では、行政区域における要介護者数、大都市と過疎地域等の地域特性により、市町村における整備状況には格差がございまして、保険はあっても介護サービスが受けられない、あるいはその水準が低過ぎるといった事態が生ずれば、利用者の不満は高まり、制度自体の存続が危惧されると思うのであります。
また、在宅サービスについては、国の定める給付水準の確保が困難である市町村は、五年間の経過措置が講じられ、段階的な引き上げが可能とされておりますが、最低給付ラインはまだ提示されておらず、早急に提示されるようお願いをする次第であります。
さらに、具体的には、話し相手になるなどの要介護者の心のケアに重点を置いた介護サービスも介護保険制度において実施、確立することが必要であります。
次に、介護保険財政の健全性の維持につきましては、調整交付金の確保、あるいは都道府県に設置される財政安定化基金の機能の充実等、予算上万全の措置を講ずることが必要であります。市町村においては、国保を抱え、その財政運営に苦慮いたしておるところでございまして、介護保険が第二の国保にならないよう特段の御配慮をお願い申し上げる次第であります。
また、介護保険導入に伴い新規に発生する市町村の事務費の二分の一を国庫負担とされておりますが、その全額を国庫負担とされるとともに、対象事務の細目の早急な提示と、特に補助単価につきましては実施単価との格差が生じないよう措置していただきたいと思うのであります。
これは、現在本県において岡山、玉野の二市が、高齢者ケアサービス体制整備支援事業のモデル地域に指定され、要介護認定に係る事務を行っているところでありますが、当該事務に要したマンパワーは多大なものとなり、実際に介護保険制度を運営していくに当たって、市町村の事務的負担増は相当厳しいものになることが予想されることからであります。
次に、家族介護については、現金給付を行う方向で御検討いただきたいと思うのであります。
県下では、約七割の市町村におきまして、介護者等に対し在宅介護奨励金または介護手当等の名目で独自の事業として実施いたしておりますが、制度内容に格差があるのが現状でございます。また、地域によりましては、すべて家庭での介護が当然であるとの風潮が根強い地域もあり、さらには地理的な要因から介護サービスを受けにくい地域もございまして、そういう地域における介護者の労苦に報いる措置が、統一された国の制度として必要であると思うのであります。
次に、経済的弱者への救済措置といたしまして、保険料滞納者への給付制限につきましては、実際の現場において給付制限の実施は困難であり、特に、家族状況、経済状態を考慮した措置が必要であります。
また、現行の介護サービスの利用者のうち、特別養護老人ホームの入所者については、所得に応じた五年間の減免措置が予定されておりますが、現制度では、経済的弱者が在宅福祉サービスを受けた場合、無料ないし低額負担でありますが、介護保険が導入されれば、毎月の保険料に加え、一割の利用者負担が必要となり、生活保護受給者を除く低所得者はますます生活が困窮することが予想され、特養のみならず、介護サービス全般にわたった経過措置が必要であると思うのであります。
次に、介護認定についてでありますが、その運営を明確な基準を持って透明性が高いものにするとともに、不服審査請求を含め早急な裁決がなされるよう、体制の整備が必要であります。一昨年四月に介護保険がスタートしたドイツでは、約八万件もの異議申し立てが発生したと聞いておりますが、制度発足当初では同様の事態が懸念されるところであり、万全の体制をもって臨んでいただきたいと思うのであります。
次に、保険料の収納についてでありますが、高齢者の所得格差が進む中、滞納者を減少し、無保険者の発生を食いとめるため、保険料の累進性を引き上げる、最低保険料の公費負担を高める、あるいは第二号被保険者についても第一号被保険者と同様の条件で介護サービスが受給できるなどを検討する必要があります。
サラリーマン、高齢者等は天引きでありますが、自営業者等は国民健康保険料と合計して納付するとされており、介護負担分の上乗せにより国保保険料まで納付せず、医療の受給資格まで喪失する人々が発生するおそれがあります。また、民間の保険等では、年齢に関係なく要介護状態になったときには保険金が支払われるものもあり、民業の圧迫にならぬよう留意しつつも、その整合性を図らなければならないと思うのであります。これは、第二号被保険者に係る国保保険料の収納率低下が生じた場合、国費により財政支援するとのことでございますが、その総額の確保とともに、徴収率の向上のための特段の措置をお願いするものであります。
最後に、介護保険制度は、社会保障制度改革と極めて密接に連動するものであり、将来の我が国の福祉行政のあり方を示すものの一つでございます。つきましては、高齢者福祉としての視点のみならず、医療、障害者福祉等の観点からも広範な御検討をいただき、その実現に向け一層の御尽力を心からお願い申し上げますとともに、先生方の今後ますますの御活躍をお祈り申し上げまして、私の意見陳述といたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/284
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285・町村信孝
○町村座長 どうもありがとうございました。
次に、森下浩子さんにお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/285
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286・森下浩子
○森下浩子君 森下です。
栗山先生から、考えていることをほとんど言っていただきましたので、私は言うことがなくなってしまいました。それで、一応、看護職として自治体の中で働く者として、現場でヘルパーとか栄養士とかケースワーカーと働く者として感じたこと、そしてお願いしたいことを述べさせていただきたいと思います。
そもそも公的介護保険ができる前、昭和五十七年から八年にかけて、老人保健法のヘルス事業というのをおつくりになりました。それができたとき、厚生省にしろ各県にしろ、どんな努力をして今の時代が来るのに用意をなさったのでしょう。働く保健婦に対しても、または設備投資にしても、正しく指導されたでしょうか。ゲートボールに行くような老人が通所訓練に来てもいいというようなことを聞いて予算を使っていった市町村の現状を御存じでございましょうか。
そんな中で、看護職は、やがて来る問題に備えて、最重度の人からリハビリを始めました。全国で、リハビリを始めようとする人たちに呼ばれて行きますと、元気な人をやればいい、お金が取れるというふうなことを再々耳にしたものでございます。しかし、私たちは、首長の姿勢もあり、地域の福祉力または保健力を高めようという合い言葉のもとに仕事をしてまいりました。
現在沼隈町は、人口一万三千五百、高齢化率は一九%で、まだ恵まれております。この十五年間、私が保健所から市町村に参りまして仕事をしていく中で、悉皆調査をして、痴呆性老人のこと、または寝たきりで全く医療も離れた人たちを一人一人、一件一件掘り起こす中で、昨年八月一日現在で、身体的な全介助が三十七名、痴呆症で全介助が常時要る人が二十七名、六十五歳以上の人口で二・六%の人が全介助という状態でございました。ただ、この全介助ということは、健康なときからずっと見ていく、私たちであれば老人クラブのところから関与し、その人たちにアプローチをしながら、そして最初に申し上げました老人保健法のヘルス事業、これをきっちりやっていく。
資料を差し上げましたが、老人保健法のヘルス事業には、健康相談、家庭訪問、健康教育、そしてリハビリ等ございます。これは五十八年にできて、こつこつとやった市町村はいろいろあったと思いますけれども、それに加えて、現在の福祉八法、そして公的介護保険ができたときに、いきなり降ってわいたということではなかったのではないかと私たちは現場で考えております。
ここにスタッフ図を示しておりますが、私が県から参りましたときは、最初保健婦一人、ヘルパー三人でございました。このようなヘルス事業を進める中で、地域の中の寝たきりの人たちの入り口が少しずつ少しずつ広まっていきまして、私たちを中へ入れてくれるようになったわけです。そうした中で、その三十七名と二十七名の人たちが、私たちとお互いに考えを出し合いながら在宅での生活をやっていくようになってきたわけです。現在、首長の方針でこのようなスタッフ図になっております。
在宅介護支援センター、これはかつてヘルス事業をやる中でつくってまいりました。一万三千五百の住民の皆さんの詰所として福祉会館を位置づけたわけです。だから、揺りかごから寝たきりまでの人たちのいろいろな問題、痴呆にしろ精神障害者にしろ、福祉会館へ行けばどうにかなるというふうな体制をつくってまいりました。私は、それが今国や厚生省がおっしゃっている介護支援センターの位置づけじゃないかと思うのです。
そして、老人保健法で言いました家庭訪問、保健婦は口先とおっしゃいますが、やはり看護職でございますから、口と同時に手も足も出る。そういうふうな活動をやる中で、訪問看護をやってまいりました。厚生省は訪問看護と保健指導をよく区別なさいますけれども、同時にできなければ、それは市町村の看護職ではないと考えております。ただ、いつまでもそれを保健婦がするわけじゃないですから、訪問看護ステーションの看護婦へつないでいく、または医療機関と連携をとっていく、そういうところへ行くのだと思うのです。
そういう中から、我々がやっております仕事を社会福祉協議会に委託をすることができました。一つ一つ、急につくるのではなく、やはり基本は老人保健法のヘルス事業であったと。法をおつくりになるときは、多分こういうことを目指しておつくりになったと思うのです。幾ら法ができても、その法に沿ったことをきちっとやるように指導できる県の体制がなければいけないのじゃないだろうかと私は強く思っております。
そういうことから、要介護認定を県に委託してもいいということは絶対反対です。どんなことがあっても、たとえ拙劣であっても、市町村が自分の足で立つために市町村の中にそれをつくっていく、自分たちで自分たちの町を守るために、どんなに攻撃をされてもやはりそこにつくっていくということが要るのじゃないかと思うわけです。そこには、医療機関もあるでしょうし、いろいろな方がおいでのはずです。そういうふうにつくっていかないと、今度の公的介護保険、先ほど市長さんがおっしゃいましたように、いろいろな問題が出てくるのは目に見えていると考えております。
それと、要介護認定に対する不安を幾つか私たちは現場で考えました。マネジメントをするときにアセスメントをいろいろ出しておられます。せんだって葉山で勉強してまいりましたが、あの中に生活の現場感覚がないように思えました。もう一つ言えば、医療の立場というか臨床の看護婦の立場が大きく出ていて、保健とか福祉とか生活のにおいがそこにはないという感じがしたわけです。これは、施設においても同じことではないだろうかという気がするわけです。生活の点と線をきちっと見る、そういうことができる職種をきちっと市町村に位置づけるべきではないだろうか。
私は、女性として、市町村に参りまして、女性べっ視の中で余りにも低い待遇に置かれていることに驚いております。専門職として認めてくれません。国もまたその保障をしてくれません。だんだんと保健婦の補助金を取ってまいりまして、今では全くない状態です。
そんな中で、保健婦が一生懸命勉強してきちっとアセスメントをし、マネジャーとしてできたとしても、位置づけは難しいだろうという気がしております。マネジャーは、ケースワーカーであれOTであれPTであれ、私はだれでもいいと思います。しかし、地域がわかっている人、現場を知っている人、現場の経験がある人、現場の経験だけじゃなく、やはり国家資格を持った上に現場の経験のある人にやっていただきたいというふうに考えます。
先ほど市長さんがおっしゃいました、心の問題があの中には欠けていると。身体的にはたとえ同じレベルであっても、心の方を評価しないと公的介護保険は大変な問題を起こすのではないかという気がしております。
時間が参りましたので、以上で終わらせていただきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/286
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287・町村信孝
○町村座長 どうも貴重なお話ありがとうございました。
次に、福島功君にお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/287
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288・福島功
○福島功君 平素は大変お世話になっております。また、こういう席にお呼びをいただきまして大変ありがとうございます。
私は、医師会、医療という立場から、この公的介護保険法案につきましていろいろ問題点が存在するのではないかと思っておりますので、そういう点を少し述べてみたいと思います。
まず第一は、先ほどからいろいろお話がございますけれども、介護サービスの基盤整備についてでございます。介護施設とマンパワーの確保については、平成十二年度の介護サービス開始までに十分に可能かどうか、現在の整備進捗状況から大変危惧をいたしておるところでございます。
一つは、介護施設、これには介護老人福祉施設、これが特別養護老人ホーム、あるいは介護老人保健施設、介護療養型の医療施設、これが療養型病床群ということになりますが、特に都市部における施設整備が不十分であります。療養型病床群は、十九万床の目標のうち、現在までに四万床余りしか整備されていないのが現状であります。小規模入院医療施設、すなわち中小病院や有床診療所でございますが、これの療養型病床群の設置が都市では対象になっておりますが、いろいろな規制や条件がありまして整備が困難であるわけであります。
次に、マンパワーの問題でございますが、特に町村部においては充足率が低いようであります。私どもの住んでいるこの岡山市におきましても、現在でも不足しておるわけでありまして、私どもがやっております訪問看護ステーション、これは大変訪問看護のニーズが多いわけでありますが、その訪問看護婦の確保に現在でも苦慮しているのが現状であります。ましてや、OT、PT等につきましては推して知るべしというような状況でございます。今後、地域格差や質の問題を検証しながら整備を進める必要があるのではないかと思っております。
次に、介護保険法案と関連する法との整合性でございます。
医療法につきましては、今回介護保険法案に関連して医療法の一部改正が提出されております。その中に、地域に密着した有床診療所において療養型病床群の設置が認められておりまして、医療計画におきまして療養型病床群の整備目標を必要的記載事項としております。しかしながら、地域医療計画において既に病床数が超過している地域が全国に多く見られまして、病床数にカウントされるようになれば、実際には有床診療所の療養型病床群の設置は困難であろうと考えるのであります。こうした地域医療計画における病床数のカウントから、これは外さなければ進まないのではないかと思っております。
それから、地域医療支援病院制度の創設でございますが、これは地域医療の充実、それから医療のシステム化、そういうことにつきましては賛成であります。また、地域ケアシステムの構築には大いに貢献することが期待できると考えております。
次に、療養型病床群の取り扱いについてでございますが、介護保険適用の療養型病床群と医療保険適用の療養型病床群について、施設基準や人員配置の基準に差異はございませんけれども、ケアマネジャーが介護保険適用の療養型病床群だけに必要ということになっております。両病床群はともに医療提供施設として位置づけられておりまして、両者間に差異があってはならないと思います。また、両者の病室や病棟単位での区別は必要ないのではないかと思います。介護保険給付は、あくまでも要介護者を対象として支払われるべきものでありまして、施設に対して支払うべきものではございません。
次に、要介護者への介護保険法と医療保険法の適用についてでございます。
介護保険法の該当者は、主に加齢による疾病が原因で障害を受けた高齢者となっており、介護を主体に最低限必要な医療を加味した内容となっております。要介護者は老齢であり、身体的には抵抗力が低下しているため、加齢による変化とともに急性疾病にかかりやすいわけであります。したがって、十分な医療があってこそ介護が存在すると考えるのであります。
急性疾患にかかると、老人の特性から、早期発見・治療が困難なことがあるわけであります。現に、特別養護老人ホームでありますとか老人保健施設での対応がおくれて死亡した例が新聞紙上に報道されているのであります。そのようなことがないように、主治医あるいはかかりつけ医の判断で、医療が医療保険でスムーズに行えるよう、介護保険法と医療保険法の併給調整の適用限界を明確にすべきではないかと思っております。
次に、身体障害者福祉法との関連でございます。
介護に対するニーズは、年齢や障害の原因を問わず、すべての国民が望むものであります。今回の介護保険法案では若年障害者において対象外になっておりますが、医療の現場からすると同じ障害者でありまして、身体障害者福祉法による措置制度の介護より自由に選べる介護保険法による介護が望ましいのではないかと思っております。
それから、要介護度認定機構につきまして先ほどからいろいろお話がございますが、私どもの医師会は、平成七年度の厚生省の高齢者ケア支援体制に関する基礎調査モデル事業に参加いたしまして、介護度判定基準作成のために資料を提供してまいりました。また、平成八年度の高齢者ケアサービス体制整備事業にも現在参加いたしておりまして、先日九十一症例について、介護度の二次判定とさまざまな意見をつけて岡山県の検討委員会に送付したところであります。
これらの事業の中から、問題となった点を若干述べてみたいと思います。
まず、訪問調査票でございます。
認定審査にとって最も重要な訪問調査に、モデル事業ではいろいろな専門職を充ててきておりますが、医師以外の調査員は医学的な判断が十分でなく、麻痺でありますとか関節の拘縮による運動障害あるいは痴呆の状態等、判断基準が大変難しいわけであります。特に、痴呆の判断基準におきましては、精神科専門医以外の調査員が行うには大変難しいのではないかというように思いますし、また、そのためには精神科の専門医との連携を考慮する必要があるのではないかと思います。
また、大変プライバシーの問題はあるかもしれませんが、その調査の客観性を持たせるためには、ビデオの撮影などを行いまして、認定審査会に利用するのも一つの方法ではないかというように考えております。
また、設問項目につきましてもいろいろと考慮する点があります。先ほどの森下さんのお話にありましたように、生活を主体にした、例えば買い物とか料理が一人でできるかどうかという項目もつけ加えるべきではないかというように実感したわけであります。
次に、かかりつけ医の意見書、これはもう少し詳しくした方がいいのではないかと思っておりますし、書きやすい項目をもう少し必要項目としてふやしたらいいと思っております。実際に審査をやりまして、調査員の調査票の内容とかかりつけ医の意見書の内容に不一致のものがかなり見られました。
それから、認定審査会についてでございますが、調査票をもとにした一次審査結果、これは厚生省の方でコンピューター処理したものでございますが、その結果と、審査会でかかりつけ医意見書を含めた二次審査の結果は、岡山市の場合は約三分の一が異なっておりました。また、審査会での判定所要時間は、初めてのことではございましたが、かなりの時間を要したのであります。したがいまして、この点もかなり改善する必要があるのではないかと思っております。
要介護者は状態が変化してくることが多いと考えられますので、どのような期間でどのような状態に変わったときに再認定審査を行うか、これも考慮する必要があると思います。
次に、苦情処理機関でありますが、先ほどからお話がありますように、ドイツでもかなりの苦情が出ていると聞いております。同じように日本でも苦情が恐らくたくさん出るのではないかと思いますが、各県でその苦情処理をどういうようにするか、これも十分考えておかなければならないと思います。
それから次に、介護サービスの選択でございます。
在宅介護か施設介護か、だれが決めるか。もちろん、要介護者あるいは家族が決定権を持つということになりましょうが、事情によってはかかりつけ医の意見を参考に認定審査会で決定してもよいのではないかという気がいたしております。
また、在宅介護サービスを選択した場合は、介護サービスが不足している現在の状況では、あるいは家族による介護ということも含めまして、現金給付の道もしばらくの間はつけておく必要があるのではないかと思います。
次に、ケアマネジメント機構についてでありますが、要介護者の介護メニューの提示、介護指導というのは現場においては大変重要なことであります。在宅介護支援センターや訪問看護ステーション等がケアマネジメント機関になるためには、開かれたアクセスのよい施設になることが必要でありまして、今後の機構改革が望まれるところであります。
要介護状態の予防及び改善、死のみとりというのは医師の大きな使命でございます。この二つの課題を全うするための長期ケアには、各職種から構成されたケアチームが重要な機能を果たすことになりますが、そこでは医師の調整する能力が必要になってくるわけであります。すなわち、ケアのコーディネーターとしては、それを固有の業務としております保健婦あるいは看護婦、ケースワーカー等が適しておると思いますが、チームリーダーとしては、リーダーシップが発揮できるかかりつけ医の存在というものが大きいのではないかというように考えております。
次に、先ほどもお話ございましたが、介護保険法施行法案では、基盤整備の達成状況について施行日から五年を経過した日以後の日まで法定基準を下回ってもよいとされておりますが、地域格差が出ないように関係団体の努力を期待するところであります。
介護保険支援事業計画というのがございますが、これは老人保健福祉計画、地域保健医療計画が既に設定されていますが、両計画の整合性を図りつつ新たに介護保険支援事業を策定することが必要ではないかと思っております。
以上、現場でいろいろ感じたことを述べさせていただきました。よろしくお願いいたします。
以上でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/288
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289・町村信孝
○町村座長 大変ありがとうございました。
続きまして、佐野康君にお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/289
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290・佐野康
○佐野康君 佐野でございます。
今まで、市長さんとかお医者さんの立場からいろいろ具体的な細かな御意見が出ておりますので、私の方からは、本当にささやかな活動をしております山陽町のボランティアグループの一員として、そういう過去の体験の中からちょっと感じていることを話させていただこうと思います。
山陽町は、岡山市内から北東に約二十キロほど参りましたところにございまして、従来は人口八千名ほどの農村地域でございました。昭和四十五年から県の県営団地あるいは民間の大和ハウスによる桜ケ丘団地等ができまして、現在では、団地に住んでいる方が約一万七千名ほどになりまして、在来の方の倍を超す団地の方がふえております。したがって、三月一日現在の人口は二万四千九百三十六名ということで、県下の市町村では最も人口がふえた町になります。
高齢化率は一三・七%。これは、昨年の四月一日現在の数字でございますけれども、全国平均を若干下回るような数値でおさまっております。内容を見てみますと、団地にお住まいの方の年齢が比較的若い方が多いということもございましてこういう結果になっておりますが、町内の四十四の行政区を見ますと、二五%を超えている地区が既に七地区もございます。最も多い地区ですと、三〇・八%という高齢化になっています。
そのような中で、平成四年度から、我々が町民のボランティアとして活動に入りました。お配りいたしました資料の一番上に書いてございますけれども、活字が小さくてごらんになりにくいかもしれませんが、当初は、ふれあいショッピングサービス、これはお一人で買い物に行けない方を対象にしまして、買い物の介助ということでやらせていただいておるわけでございます。ここで一番喜ばれるのは、やはり御自分の目で見てお買い物ができるということでございます。それと、自宅とショッピングセンターとの往復の車の中におきますおしゃべりといいますかお話、大多数がひとり暮らしの御老人でございますので、このおしゃべりも大変楽しみの一つのように感じております。
そのほかに、給食サービスでございます。これは、非常に多くの地域で実施されておると思うのですが、私どもの方では、対象者を寝たきり老人に絞りまして、年に五回、これは夏の時期を避けるために大体二月に一遍ぐらいの回数になっておるわけでございますけれども、寝たきり老人の方及び御希望の向きにはその介護者を加えまして、材料費につきましては行政の補助をいただきまして、原材料の買い出し、調理、包装、配食等をさせていただいておるわけです。
それから、平成七年から、住民参加型の在宅福祉サービスを始めさせていただきました。これに関する活動報告は二枚目の方に載っておると思いますが、ここで「高齢者」というのは、六十五歳以上の方で障害者手帳をお持ちの方も含んでおります。それから、いわゆる「障害者」欄の方は障害者手帳の保持者でございます。「その他」の欄の方は、六十五歳未満の方で、障害者手帳の認定待ちの方とか、退院間もない若年の虚弱者であるとか、あるいは障害者を介護しているいわゆる介護者自身の介護、そういった方たちが入っております。
そういう中で、見にくいかもしれませんが、「合計」欄に丸印をつけておりますのは、いわゆる月の平均値でございまして、そのほかの欄は一応昨年の四月からことしの一月までの十カ月間の合計数字を記載しております。
ざっと見てみますと、この在宅サービスにおきまして、平成七年度に比べまして約三倍強になっております。一方、その在宅サービスにかかわっております私どもボランティアの協力会員につきましては、十二名で現在行っておりますけれども、一人当たりの月平均活動回数が七・二回となっております。十二名のうち、ほとんど皆さんが家庭の主婦でございますので、多い方は週に四回ないし三回の活動になっております。
こういう活動を通じて私自身が感じておりますことをこれからちょっと申し上げてみたいと思うのですが、社会福祉協議会が町の委託によって行っております活動の一つにホームヘルパー派遣活動があるわけですけれども、やはりヘルパーの人数が少ないことによって十分な対応ができていないのが実態でございます。例えば、一週間に二日以内、一回の派遣時間は二時間以内といったような条件があるために、月曜日から金曜日まで来てほしいのだけれども、そのうちの二日間しか要支援の依頼があった家庭にヘルパーを派遣できないというような状態がございます。そういう御家庭の方が困って、結局私どものボランティアの方に応援を求めてくる、そういうケースが非常に多くなってきているわけです。
例えば、寝たきり老人にしましても、行政の方が寝たきり老人と判定するのは、寝たきりの状態が六カ月間続いた方ということになっておるようでございます。したがって、そういう状態が六カ月間経過してから行政の方に支援要請の依頼が上がってくる。その場合に、福祉課の方とか保健婦さんが同行してその御家庭を訪問し、実態を調査して審査会にかけて、いろいろ関係セクションの了解を取りまとめて派遣に入るまで、早くても一カ月くらいの審査期間を要してしまう。ということは、要するに寝たきりになってから七カ月以上たたないと実際の支援にはあずかれない、こういうのが実態になっております。
そういうことで、私どものボランティアの在宅活動におきましては、行政でなかなか十分に賄えない部分を補完しているような立場になっておりまして、今後この介護保険が導入された場合におきましても、こういった傾向がぬぐい去れるとは私自身全く感じられません。
と申しますのは、こういった高齢化時代が来るよということでお話に上ってもうかなり久しいわけでございますが、町民として実際に行政の活動、いろいろ施策を見ておりましても、ああ町がこういう努力をしておるのだなというようなことがなかなか見えてこないわけでございますね。一方、町が発行する広報紙であるとかあるいはいろいろな機会をつかんで、関係の皆様方は福祉の町をつくるんだ、つくるんだと言っているわけですけれども、では具体的にどういうふうにしていくのか。例えば、ヘルパーの人員一つを見ても、現在わずか三、四人しかいないような状態で、三年先、五年先に何人にするのだ、そういった具体策が全く町民には感じられない。
そういったことから、この介護保険が導入されて、五年間の経過措置があるようでございますけれども、仮にそれらの期間を経たとしても、住民へのそういう支援に対して十分フォローしていけるような体制が整うとはなかなか思えないわけでございます。
そういうことで、まず一つは、審査会、これは自治体の長が決定するようでございますけれども、この審査委員の選任につきましても、とかく在来の地区でございますと、肩書をお持ちのいわゆる名士の方が就任されるケースが多いようでございますけれども、少なくとも、こういった介護保険の認定審査会に入られる方につきましては、福祉の面でより高い関心をお持ちの方、経験のある方、できるだけそういう方を多く入れていただきたいと私は思っております。
それから、実際その認定の場合に、今申しましたように非常に期間がかかってしまうということでは、その間の介護をだれがするのかということで、一番困られるのは、その寝たきりの方あるいは介護を必要としている要支援者の方でございます。したがって、そういう方に極力生活の上での不安がないように、なるべく早く対応してあげられるような体制にしていただきたいと思うわけでございます。
そういうことで、まことに泥臭いお話であったかもしれませんけれども、わずかな期間ですが、在宅サービス等にかかわらせていただいている立場として若干感じておりますことを述べさせていただきました。
以上で終わらせていただきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/290
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291・町村信孝
○町村座長 どうもありがとうございました。
次に、福原信行君にお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/291
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292・福原信行
○福原信行君 平素大変お世話になっていることを厚くお礼申し上げたいと思います。
私は、岡山県の老人福祉施設協議会の会長ということでしゃべらせていただきたいと思っております。
戦後の社会保障制度といいますか、生活保護から始まって児童福祉法、次々に六法、八法ができたわけでございますけれども、今日のような高齢化社会というのがこんなスピードで来たということは大変なことだと私たちも思っております。特に、老人ホームを私自身で運営させてもらい、やってきたわけでございますけれども、本当に対応し切れておったかということが今問われておると思います。新ゴールドプラン等でもどんどんつくられておるわけでございますけれども、つくればつくるほど利用者がふえておるというのが現状かなという感じがいたすわけでございます。
一方、やはり在宅も新ゴールドプランの中でつくられていっているわけでございますけれども、まだまだこの部分が非常におくれておるということが先ほどからのお話にもございました。そして、まだ本当に地域住民がなじんでおらない、そういう背景が私はあるような気がするわけでございます。
たまたま私の施設は、デイセンターも支援センターも持っておりますし、二十四時間体制の中でやっております。そういう意味では、ある程度対応し切れておるかなという感じがいたしますけれども、ほとんどの市町村というのはまだまだそこまでいっておらない、いわゆる基盤整備ができておらないというのが現状だと思います。
先般も、土曜日の夜でございましたけれども、電話がかかってまいりました。鼻血が出て困っておるのだ、こういうことでございまして、うちの職員もすぐ対応して、病院の先生にもお願いしたのですけれども、鼻の方の係でないが連れておいでになったら診よう、こんなことでございました。鼻血くらいでどうなのだろうということで、夜中の一時くらいでございましたけれども、うちの職員が看護婦と一緒に行って一応の対応をして帰ってきました。次の日は日曜でございましたが、十時になってもやはりとまらないのだ、こういうことでございましたから、急遽そのおばあさんを入院させました。
実は、その鼻血が出たというのはどういうことかといいますと、その御主人が痴呆性なのですね。徘回老人で、おばあさんは一生懸命そのおじいさんについて歩き回っておられる、それが高じて鼻血が出た、こういうことでございます。そして、うちも痴呆性の施設を持っていますから、短期に入っていただきました。二、三日お休みになったら鼻血もとまりまして、すぐまたお年寄りを連れて帰られて家庭で面倒を見ておられる。最後まで在宅で頑張られた。
こういうことで、私たちもデイセンターを使っていただきながら、また、ショートを使っていただきながらやってきたわけですが、そういう一つの体制づくりといいますか、二十四時間体制の中でどうつくっていくのか、また給食の問題も含めてどうしていくのかというものが、実はまだまだ欠けておると思うわけです。基本的には、やはり介護保険ができようとも、そこらあたりの基盤整備ができないと、先ほど言った絵にかいたもちになってしまうのではないかという感じがしてならないわけでございます。
ともあれ、老人ホーム関係者は、今までお年寄りというものを患者として見るのではなく、一人の人間としてとらえながら、そこでどう自立へ向けての支援ができるか、そして最後まで送っていけるか、そういうところで福祉の分野で頑張ってきたわけでございます。当然、お年寄りでございますから、医療も必要でございますし、いろいろな意味で必要なわけでございます。そういう意味で今日まで頑張ってきたわけですが、今度介護保険が入ってまいりますと、今までのような措置制度ではないということで、非常に大きな変革が来ておるということで、どうしたらいいのか、私たちもこういう心配でいっぱいでございます。
というのは、実は、要介護認定というのが、ある程度重度でないと、軽度の人は到底もう老人ホームに入れないということになってきます。今でも特養は重度で非常に困っておる状況でございますから、今の老人ホームの職員配置では到底賄い切れないということなのです。
それからもう一つは、一生懸命頑張ってよくやった施設といいますか、ある程度自立に向けて家庭にも帰すことができる、そういうことになりますと、いわゆる要介護認定が外れてくるわけでございますから、単価が下がってくる、こういう問題も実は非常に危惧しておるわけでございます。
やはり一生懸命頑張ったということに対して評価をするというような考え方ができないか。頑張る施設がやはり報いられるのだということでないと、寝たきりにして置いておきさえすればお金がたくさん入ってくるというシステムでは、何が施設なのかということが問われるのではないかなという感じがしてならないわけです。ぜひそういうあたりを十分御審議いただきたい。ただ形の上だけで、要介護認定が外れたらもうだめだとか、これはこうだとかということだけではないと思うわけでございます。
それから、先ほどもちょっと在宅の話をさせていただきましたけれども、老人ホームというのは、介護という面については今までしにせといいますか、今日いろいろな形の中で介護というものをつくってきたわけでございます。やはり在宅へ向けてきちっと対応できるということが、先ほど申し上げたような例でございますけれども、当然保健婦さんやいろいろな方々、先生方にもお入りいただかなくてはいけない問題がいっぱいあるわけです。市町村もきちっとそういう方向に向けて対応してもらえるようなシステムをつくっていただかないと、先ほど言ったようないろいろな問題が出てくると思うので、そういうことをお願いしておきたいと思うわけでございます。
それから、要支援であるとか要介護、これは当然でございますけれども、それに外れた人、どうしても精神的な分野の問題とかいろいろの問題がございまして、家事的な支援であるとかいろいろな精神的な援助、そういうものをどこが、だれが見ていくのか。やはり市町村にバックアップしていただかないとそれが見えない、ただ判定の議論だけではできないものが私はあるような気がするわけです。やはりそこらあたりも十分考えていただきたいと思うわけでございます。
それから、私たちの老人ホームで今抱えておる問題の中では、養護老人ホームというのが一つございまして、軽費もそうでございますが、今度の介護保険から外れるわけでございます。これは、審議会の中でもげた預けのような状況になっておるわけでございますけれども、養護老人ホームが特養に転換できるようなシステムをつくっていただけるのか、また養護としてこれからやっていくとすればどういう形をとっていくのか、こういうこともお考えいただければありがたいという感じがいたすわけでございます。
それから、特に低所得者のことでございますけれども、これは先ほどからいろいろお話が出ておりますけれども、うちの施設でも、実は現在施設が三つあるわけですが、寝たきりの百十名の特養でございますが、今年金五十万円以下が約六〇%入っております。
ですから、今考えますと、全部がそれを支払えないという感じになるわけでございまして、漸次年金も上がっていきましょうし、いろいろと変わっていくだろうと思いますけれども、現実としてもうまさに今六〇%の者が実は老人ホームを使っておるということでございますので、そこらあたりもやはりきちっとしてあげないと、落ちこぼれがあって、いわゆるまた生保というような形になっていくと大変なことが起きると思うわけでございますから、ぜひその辺の配慮といいますか、お願いをしておきたいと思うわけでございます。
もう一つは、要介護認定でございます。
先ほどからいろいろとお話がございますけれども、やはりお医者さんや保健婦さんや施設関係といいますか、ヘルパーさんや社会福祉士ですか、行政の方もお入りになると思いますけれども、みんなできちっとできるようなシステムというのが非常に重要だと思うわけでございます。
まだ、しゃべりたいのですけれども、ちょうど十分くらいになりましたので、この辺で終わらせていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/292
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293・町村信孝
○町村座長 どうもありがとうございました。
次に、原まさ子さんにお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/293
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294・原まさ子
○原まさ子君 原です。よろしくお願いします。
現在私は、ケアハウスの施設長の任務に携わっておりますが、この任務に至るまで病院、老人保健施設、特別養護老人ホームの看護職の仕事を歴任してまいりました。この数年なのですけれども、高齢者のケアに携わってきた関係上、この超高齢社会の現状は目を見張るものがありました。そこで、きょうこの地方公聴会に出席して意見陳述ということで、意義と修正案などを少し述べさせていただきたいと思います。
介護保険制度の早期制度への意義としまして、社会的入院によるコストの削減ということなのですけれども、第一点としまして、超少子社会を反映して、今病院とか老人保健施設では社会的入院がかなりふえております。また、市町村での在宅サービスの利用状況の差がかなり激しく、多くの問題を抱えておると思います。
現在日本では、六十五歳以上の高齢者千九百万人のうち、要介護老人二百三十万人、これが二〇二五年には五百二十万人とも予測されております。現在、国、市町村を合わせると年間の介護費用は二兆円を超えているようなのですけれども、これが二〇〇〇年には四兆円とも予測されております。こういう財政状況から考えても、私たちの年代が介護を受けるようになったときに、介護費用、財政状況などを考えますと、将来この介護保険システムはやはり確立していただかなければならないと考えております。
第二点として、生活の質の向上のことなのですが、施設ケアというのはやはり生活の質的な向上は望めないと思います。これから介護保険を払うことによって、今まで一方的なお上より与えられた制度より、自分が選択権を持ってメニューの選択ができ、自分の生活の質を上げるということでは、介護保険というのはかなり大切なことではないかと思います。
次に、介護保険法案の修正案につきまして提案させていただきたいと思います。
修正案の一つとして、介護保険の運営なのですけれども、これはやはり被保険者を代表とした市民で運営をしていただけたらというのが私の願いです。これは、どういうことかといいますと、介護サービスの量とか質とか運営のあり方を市町村に報告するというシステムをとってもらえたらというのが私の考えていることです。これによって、市民が自己決定できたり、自己選択できるということを介護保険の基本理念として取り上げていただければ幸いに思います。
修正案の二として、介護保険の適用の年齢ということなのですけれども、介護保険の適用の見直しも少しやっていただけたらと思います。これは、障害による要介護者のだれもが原因を問わずに介護保険の給付を受けられるように改めることが大切だと思います。
次に、介護保険制度への提案を少し申し上げておきます。
まず第一に、社会的入所の解消ということです。これは、施設介護から在宅介護への転換ということなのですが、介護施設を自宅化してほしいということです。今痴呆の方のグループホームというのがあちこちで制度的にできる予定なのですけれども、痴呆高齢者だけでなくてすべての高齢者が、地域の小さい家を改造でもして安く入れたらということを願っております。そういうところに、ヘルパーとか訪問看護婦さんが訪問して支えていけたらというのが私の願いです。
第二に、地域ケアシステムのサービスのネットワーク化を進めることです。これは、やはり情報の公開とか、サービスがないところもありますので、そういうサービスのネットワーク化を進めて、いいケアをだれでも受けられるようなシステムにしていきたいということです。
それから、良質な民間の企業を誘致しサービスの質を上げるということなのですが、これは公共の施設のサービスだけでなく、民間がたくさんこういうケアに参加して質を高めていくということを望んでおります。それから、過疎のことなのですけれども、過疎の高齢化がかなりあります。そういうところのサービスがおくれているようなので、民間サービスを入れたり、また第三セクターで援助していけたらというのが願いです。
以上、つたないことなのですけれども、簡単ではありますが、私の意見陳述とさせていただきます。終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/294
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295・町村信孝
○町村座長 どうもありがとうございました。
続きまして、福武總一郎君にお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/295
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296・福武總一郎
○福武總一郎君 福武であります。
このような貴重な席にお呼びいただきまして、本当にありがとうございました。私の意見を申し上げたいと思います。
御案内のように、我が国は、現在他国に例を見ないスピードで高齢化が進展しております。要介護高齢者がふえ続けております。しかしながら、一方で、国及び地方財政の悪化はその一途をたどっておりまして、右肩上がりの時代のように、国民の福祉充実をとの声に合わせて給付をふやせばよいというような発想はとれなくなっております。したがいまして、限られた財源の中でいかに豊かな介護サービスを生み出していくかという、この大変難しい課題への挑戦を抜きにしては、我が国に豊かな長寿社会の到来は私は期待できないと思います。そのためには、発想の転換こそが今必要なのだろうと思います。
すなわち、限られた財源の中で豊かな介護サービスの供給を生み出していくためには、まず第一に、サービスの配給、あるいは与え施すという考え方ではなくて、利用者に原資を渡し切り、利用者の選択の自由と自己決定権を最大限尊重した制度にすること。第二には、公助、互助に加えて、自助努力を支援し、より促していくような制度にすることが不可欠であろうと思っております。すなわち、利用者の選択を通じて市場メカニズムを十分に働かせ、民間企業を初めとする新たな資本の参入を図っていくことこそがかぎになってくると思います。
今回の介護保険制度では、介護福祉分野の規制が緩和され、一定の要件さえ満たせば民間企業にも官民同一の基準で参入が認められることになるとされておりますけれども、そのことは我々民間企業としても、参入の道が開かれ、従来の公的サービスとの公正な競争が認められることを大いに歓迎しております。また、権利性が保たれれば税ということも考えられますけれども、財政状況等を考えれば社会保険方式は妥当な提案だと考えております。
しかしながら、現在の政府案がこのままの形で施行された場合、私は次のような点を懸念しております。そして、法案の修正を強く求めるものであります。
現在の政府案では、ケアプランに対して現物給付の支給限度額を担保するという重要な位置づけを与えることによって、ケアプラン作成機関が事実上サービスの内容をコントロールする仕組みになっておりまして、このままでは利用者の選択の自由と自己決定権が侵される危険性が多分にあると思います。
もちろん、マネージドケアによりまして、残存機能を最大限引き出し、自立支援を促進していくことは極めて重要だと思っておりますし、ケアプランそのものには十分な評価が与えられてしかるべきだと思います。しかしながら、原則としてケアプランの作成を経なければ現物給付が受けにくくなるような仕組みには疑問を覚えるところであります。
ケアプラン作成機関は、少なくとも当初、従前の措置及び保健システムのもとで経験を積んできたサービス供給機関の系列としてスタートするでしょうから、どうしても経験や発想に偏りを生じかねませんし、その後も母体であるサービス供給機関との経済的、人事的つながりが切れない限り、こうした系列化が続いていくことは想像にかたくありません。こうした状況下で、現在の政府案のように、前提ともなる位置づけを与えてしまうと、利用者にとってではなく系列サービス供給機関にとってよいケアプランを作成するようになる危険性があるように私は思います。
医療と介護を比較いたしますと、医療サービスは、その専門性が極めて高いために、サービスの具体的内容の選択は医師が行うことになります。一方、介護サービスは、接遇がその大半を占め、要介護者本人やその家族といった利用者側がその内容を評価し、受けるべきサービスを自由意思で選択することは十分に可能であると思います。専門家の手によるケアプランは、こうした選択を行う上での一助、まさにコンサルティング機能として、利用したい者が利用すればよいという仕組みにしておくべきではないかと思います。
こうした観点から、利用者本位をより一層徹底する方式として、私は、バウチャー方式の導入を提唱するものであります。
このバウチャー方式は、現物給付の利用券という形で利用者本人に先に原資を渡し切るということを前提としているため、利用日時、種類、回数といったすべての面で利用者のサービス選択の自由度を飛躍的に高めることができます。すなわち、利用者の選択に基づく競争を通じた良質なサービスの確保という高齢社会対策大綱や与党三党合意にはっきりと書かれている介護保険の理念を最も的確に具現化することができる方式であると言っても過言ではないと私は思います。
具体的なメリットを少し挙げてみますと、例えば百五十点相当の高点数サービスを受けたいと思ったときに、百点をバウチャーで、残り五十点を民間保険などを加えた自己負担という形で利用できるということで、上乗せサービスの購入が大変スムーズに行えます。
ある業者は、コスト効率化を進めた単価の安いサービスを提供する、ある業者は、単価は多少高くても利用者にとっては付加価値のあるサービスを提供する。こうしてコストを削減しようとする意欲や、新しいサービスの開発またはヘルパー教育の充実によりサービスの質を向上させようとする意欲が生まれ、公的セクターに加え、民間企業やボランティアなど多様なセクターによる良質な介護サービスが私は生まれてくると思います。また、働く者にとっても、職場選択の幅が拡大されることになり、雇用が拡大すれば、我が国の今後の経済活力向上に大いに私は貢献できるものと思います。
また、バウチャー方式であれば、例えば今週は風邪ぎみなのでデイサービスをやめてホームヘルプの回数をふやすとか、一時的に孫の家で世話を受けるといった場合、サービスの変更は容易であります。また、サービス内容が悪ければ、他の機関のサービス利用への切りかえも容易であります。政府案では、ケアプラン作成時に本人の了承は得るとしても、ケアプラン作成機関の強いコントロールのもと運営され、途中変更の手続も大変面倒だと思います。利用者本位とはかけ離れたものになるおそれがあるのではないかと思います。
さらに、財源膨張の歯どめという点からも、バウチャー方式は大変有効であると思います。バウチャー方式は原資の渡し切りでありますから、公的給付部分の規模が明確となります。事務処理の面でも、レセプトチェック的な事務を大幅に簡素化することができます。
また、バウチャー方式を活用すれば、国民から要望の強い家族介護の適切な評価も可能となります。現在、私の会社ではホームヘルパーの通信教育等を実施しておりますけれども、受講生を見ますと、家族のために介護技術を身につけたいという方も大勢いらっしゃいます。こうしたホームヘルパーの資格を持った家族の方の介護も、介護保険制度上正当に評価することが介護保険制度に対する国民の支持を高めることになるのではないかと思います。すなわち、ホームヘルパーの資格を持って家族介護に当たっている人には、例えば一定期間ごとの介護内容のチェックを条件にしてバウチャーの支給対象とするのも一考でありましょう。
なお、現在の政府案では、家族介護の評価がほとんどなされておりませんが、こうした内容では、現物給付を受けなければ損というモラルハザードが生じたり、また、受けるべき外部サービスが不足していることに対する不満が高まり、市町村保険者に対する不信感を招くおそれが多分にあると私には思えます。バウチャー方式なら、保険料減免など家族介護を評価するツールとして使いやすいと思いますし、過疎地においては国または県が補助金をつけたプレミアムつきのバウチャーを発行するなど、地域の特性を生かした給付の仕組みもとれると思います。将来家族に現金給付をするというような場合でも、一定の割引率のもとバウチャーの換金を可能にすることで、ダイレクトな現金給付より弊害が少なくて済むのではないかと思います。
このようなメリットがある一方、バウチャー方式の問題点として、バウチャーの不正流通の問題が常に指摘されます。これに対しては、バウチャーに有効期間等を明示するとともに、介護手帳を発行し、さらに、バウチャーを渡すときは、押印またはトラベラーズチェックのようにサインすることで本人を確認すれば不正流通は防げます。また、自由競争は放任ではありません。業者の指定は県知事が行うものであり、サービスの最低基準も明確にされるでしょうから、監視を強化し、ルールを破る者は厳しく罰する仕組みをつくるべきだと思います。また、介護保険制度の施行までにバウチャー方式のモデル事業を実施し、手続面の整備を進めていくことも大切だと思います。
以上、公的介護保険にバウチャー方式を採用していただきたいとの願いを述べさせていただきました。介護保険制度は、私は、ポストバブルで初めて創成される大きな社会保障制度であり、この設計においてボタンのかけ違いは決して許されないと思います。低成長かつ高齢化の進む成熟社会では、まさに国民一人一人の自立と自助努力こそが大切になってくるのであり、原資を渡し切り利用者の自己決定権を尊重する仕組みをつくることで、これまで公の保護や規制に頼り、結果的にパターナリズムが過剰だった我が国の介護システムを大きく変えていくことになるのではないかと思います。
バウチャー方式、バウチャーとサービスの利用の流れ、また、多少出過ぎているかもしれませんが、法案修正の私案等もお手元にお配りしてありますので、御参考にしていただければと思います。
どうもありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/296
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297・町村信孝
○町村座長 どうもありがとうございました。
お待たせをいたしました。最後になりましたが、常久勢子さんにお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/297
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298・常久勢子
○常久勢子君 最後で、もう言うことが残っていないのですが、レジュメを用意しましたので、お話しします。
私は、老人病院と老健施設の兼務の事務長をしておりますが、どちらも介護保険が実施されるようになると介護保険施設となるような施設です。
私たちの施設を利用されている高齢者は、年々その介護度が重度化しておりますけれども、私ども職員の日々のケアと在宅支援活動、家族の方の御努力により、病院では五〇%、老健では七〇%の方が自宅に帰られています。できる限り在宅支援をしても、やはり介護される家族の方の御苦労、御負担は大変です。今はまだそれほどではないけれども、これから先どうなることか心配だ、介護地獄が待ち受けているのではないかとどなたも不安を持っておられます。だからこそ、この介護保険への期待というのは大変大きいものがあるのですけれども、本当にこの切実な期待にこたえてくれるのかどうか、大変不安を抱いています。
いろいろありますが、私は、この介護保険法案のうち、特に要介護判定と在宅サービスモデルについて、身近な高齢者と家族の方々の生活実態に即して検証してみました。その結果、これから述べるとおり多くの問題点が含まれており、本当にだれもが、どれだけ重介護になっても、ひとり暮らしでも安心して生活できる真の介護保障とはほど遠い内容ではないかと思いましたので、抜本的な修正が必要であると思います。
下にあるのは委員会等で用いられている状態像ですけれども、保険給付の対象を判定するのに、この表だけでは非常に不十分ではないかというふうに思います。
この分類によりますと、日常生活動作の重要な要素である移動について、寝返りができるかどうかだけが問題になっていて、それ以外の項目がありません。寝たきり、寝かせきりをなくし、車いすへの乗り移りとか補助具を用いての歩行など、高齢者ケアに欠かすことのできない移動の問題がなぜ要介護度評価にないのか、不思議に思います。
私たちの経験からも、ベッド上での寝返りはできるけれども、移動、排せつ、着脱、入浴が全面介助の方々が寝返りもできない方よりたくさんおられます。こういう方がこの表のVIには含まれないことになります。そうしますと、Vは重度痴呆の方ですので、VIという扱いになってしまいます。
あるいは、この文章の中にある「概ね自分でできる」と「なんとか自分でできる」というのはどう違うのか、介助と一部介助の意味合いはどうなのか、大変不明確です。
例えば排せつについて言いますと、大便の場合はどうか、小便はどうかとか、おむつを使うのかポータブルトイレなのか、お便所まで行けるのか、便器への乗り移りはどうか、下着の上げおろしはどうか、じっと座っておられるのか介助が要るのか、用便後の始末はどこまで介助が必要なのか、どの時点から全面介助とするのかというのはわかりません。
細かいことのようですけれども、この要介護度判定がサービス供給量の総額にかかわってくるのですから、主観のまじらないようきちんと決めておくべきではないかと思います。そうしないと、だれかもおっしゃっていましたけれども、おむつを当てて寝かせきりにしておけば最重度ということであれば、寝たきりをつくる介護保険になりかねないと思います。
痴呆ではないけれども精神症状がいろいろあって、個々の動作はできるけれども自立とは言えない方、あるいは絶えず見守りの必要な方もこの分類から抜け落ちているので、もう少し包括的な考え方でつくり直していただきたいと思います。
第二に、次のページからありますけれども、在宅サービスモデルについて申し上げたいと思います。
私たちは、個別の患者さんのお名前を当てはめて検討してみました。最初に表を見たときには、今はたくさんの福祉制度がありませんので、よくなるなと見ていたのですけれども、各ケースの介護度に合わせて当てはめてみると、やはり現状よりは後退する場合も少なくありませんでした。せっかく介護保険ができても、家族介護を前提に組んでいるということもはっきりしてきました。全体として、標準のサービスモデルではやはり到底在宅は困難で、介護地獄は解消できないだろうと思わざるを得ません。基盤整備の問題は、やはり私たちも不安に思っています。
I―1のグループというのは、寝返りもできない完全寝たきりの方が複数の世代で同居されている場合です。一時間のホームヘルプが週七回と毎日二十分の夜間巡回ヘルプがあります。デイケアは週三回で訪問看護が週二回というふうに、濃密なサービスのように思えます。
しかし、これでいくと、デイケアのない水曜日と日曜日は家族が完全にやりますし、やはり夜間二、三回はおむつをかえますので、一回は巡回ヘルプを頼んでも、残りは家族がするしかありません。デイケアは週三回組まれているのですけれども、寝返りもできずにベッド上に限定されるような高齢者が六時間のデイケアに耐えられるでしょうか。
また、それほどの重介護の方を受け入れてくださるデイケア施設がどれだけあるでしょうか。結局ほとんど家族の介護にゆだねることになるのではないかと思うのですけれども、介護負担の軽減のために不可欠なショートステイは、現状では二週間あるのに、月一週間に短縮されています。訪問看護も週二回しかありません。こういう点では、後退する部分が大きいと思います。
右側のI―2は、同じような介護度で虚弱な高齢者と夫婦の場合ですけれども、本当に寝返りもできない高齢者を高齢で病弱な妻または夫が介護するには、このモデルどおりのサービスではなくて、日中は滞在、夜間は必要の都度オンコールにこたえてもらえるくらいのホームヘルプが必要ではないか。そうでなければ、必要な介護もできず、要介護者の生命すら守り切れなくなるのではないかと思われます。
こういうケースは、介護者が高齢などの場合には自宅介護ができないということで、現状では特養に入所されることが多いのですけれども、介護保険ができたら、こういう場合でもひとり暮らしの方以外は入所が認められないのでしょうか。
先ほども言いましたけれども、寝返りだけはできるけれどもその他全面介助という方のサービスモデルが示されていないというのも気になります。
たくさんあるので省略しますけれども、三ページのIIのグループは、寝返りはできるけれどもほかのものがほぼ半介助の方々です。その中の独居の場合ですけれども、ホームヘルプは週十五回組まれています。けれども、ホームヘルプの一回の時間はすべて一時間で、現状の二時間の半分になっています。排せつの介助、着がえの介助、その上調理や掃除もその一時間の範囲でやることになっています。
例えば排せつの半介助の場合、確かに毎日三回ヘルパーが来ますけれども、四回目以降の排せつはどうなるのか。おむつを当ててかえてもらうまで待つのでしょうか。食事については、目の前の御飯をおはしとかスプーンとか手づかみで口に運んで、そしゃくして飲み込むことはできても、配ぜんとかお茶の準備とか服薬とか下ぜんにはやはり援助が必要です。二十分の巡回ヘルプの間で食事介助と排せつ介助を済ますということはやはり難しいです。
デイケアに行く日の朝は巡回ヘルプがありませんので、食事もせず、出かける準備もできません。月曜夜の巡回ヘルプ以後のポータブルトイレにたまった排せつ物は、火曜日の夜、巡回ヘルプが来るまで捨てることができない。
こういうふうに具体的に当てはめてみると、このサービスモデルでは不十分で、やはり家族のいる方の家族介護を基本にしたものであり、独居の場合には難しいのではないかと思います。
四ページはもう省略します。
五ページの痴呆の方の場合ですけれども、下の表にあります左上は、中等度といいますか混迷の時期にある場合で、週三回のデイサービスE型を基本にしたプランが立てられていますが、痴呆の進行を食いとめるためにも、家族の介護負担を軽減するためにも、この時期でも毎日利用が必要ではないかと思います。そして、問題行動が噴き出してくる重度の場合は毎日デイサービスを組まれていますが、家族は夜から朝まで緊張の連続でろくろく眠れない日が続きます。家庭崩壊も案じられます。それなのに、ショートステイは二カ月に七日という非常に少ないプランであります。痴呆のケースこそ、せめて月二週間のショートステイというのはどうしても必要じゃないかなと思います。
いずれの場合にも、このモデルをサービスの上限ということにせずに、ケアマネジメント機関が個別ケースに即してケアプランをつくるような弾力性のある制度にしていただきたいと思います。
最後のページなのですけれども、第三に、入院、入所サービスについて述べたいと思います。
施設入所については、要介護と判定されて、本人とか家族が希望し選択されたら給付対象とされるのでしょうか。さっきの在宅サービスモデル区分の中に住居の問題が含まれていないのですけれども、住宅改造以前の問題として、住居の有無、状態、広さ、部屋数等が在宅にとっては重要な要素になります。入所サービスの要否の判定にもやはり住宅問題というのは考慮されるべきだと思うのです。要介護で入りたいと言えば入らせてもらえるならいいのですけれども、その辺のところがはっきりしません。入院、入所後のプランを立てるということは書かれているのですけれども。
経過措置の表の中に、特養に既に入所中の方は介護保険後も五年間入所を継続することができるようになっているようですが、五年後に、もう寝返りができるから在宅可能ということで、入所継続が認められなかった方はどこに帰るのでしょうか。
私たちの施設では、年度により違いますが、病院から退院の五から一〇%、老健から退所の五%の方が特養に入所しておられます。ひとり暮らしの方や介護者の高齢化、大変複雑な家族関係の方、家が狭い方、エレベーターのないアパート暮らしなど、寝返りができないほどではなくても入所を望まれています。介護保険ができて、もしこういう場合の入所が給付対象にならないというのなら大変な問題ではないかと思います。
高齢者自身の選択というのを最大の売りにしている介護保険なのですから、従来の特養入所判定基準に準じて、日常生活に常時介護を要し、家庭で介護が受けられない方々が希望されれば入所を認めるということ、入所を給付対象にするということを明確にしてほしいなと思います。
最後に、経済的なことですけれども、先ほどからも出ていますが、保険の一割負担、低い年金の方には大変ですし、入所された場合の食費、日用品費の負担はやはり低所得者には大変です。せっかくのサービスを我慢するしかないということで、きめ細かい減免規定を設けていただきたいと思います。
保険料の未納などによって給付制限されることも許されないと思います。
生活保護に介護扶助を設けられるようですけれども、生活保護の適用が大変難しくなっているというのを感じている昨今です。介護扶助も受けられず谷間に取り残されることが危惧されます。
サービスに上限を設けて、必要だけれども、これを超えては払えないというようなことがあって、それがすべて全額自己負担というふうになると、どれだけの人が支払い可能か不安です。特に施設入所が、さっき言いましたように、保険給付になる対象者がわからないのですけれども、いろいろな場合に入所せざるを得ない方々がもし自費でということになると三十数万の自己負担になりますし、そういうことのないよう規定をきちっとしていただきたいと思います。
最後ですけれども、今回の四月からの診療報酬の改定で、医療機関には平均在院日数がこれまでの三十日の上に二十日というランクが設けられました。急性期を中心とする一般病院では、ますます入院期間の短縮の努力をされると思います。長期療養ができるはずの療養型や老人病院に対しても、この前厚生省の方の講演では、ターミナルか植物状態以外の長期入院はすべて社会的入院だとまでおっしゃいました。そういうふうに、療養病棟でさえ長期療養ができなくなります。
だから、だんだん病院から在宅へ、医療的にも重症で非常に重介護の悲惨なケースが押し出される。それから、先ほどのように、もし特養からも五年後に出なければいけないということになると、本当に重介護の方々がちまたに放置されるのではないか。そういうことのないように、さっき言った不十分なところを抜本的に改善し、公的介護保障と呼べるようないい介護保険にしていただきたいというふうに思います。
以上で私の陳述を終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/298
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299・町村信孝
○町村座長 どうもありがとうございました。
以上で意見陳述者の皆さん方からの御意見の開陳は終わりました。
―――――――――――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/299
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300・町村信孝
○町村座長 これより委員からの質疑を始めさせていただきます。
質疑につきましては、理事会の協議によりまして、一回の発言時間が三分以内ということになっておりますので、委員各位の御協力をお願いいたします。
なお、質疑のある委員は、挙手の上、私の許可を得てから御発言をされるようお願いいたします。また、発言の際は、所属会派、氏名をあらかじめお告げいただき、どなたにお答えをいただきたいかということを明確にされて御指名をいただくようお願いいたします。
それでは、質疑のある委員は、どなたからでも結構でございますけれども、挙手をお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/300
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301・中川智子
○中川(智)委員 中川智子でございます。
きょうは本当に来てよかった。皆さんのとてもすばらしいお話を聞けてよかったと心から感謝いたします。八名の皆様の一つ一つの言葉をしっかりと受けとめて、これから頑張らなければと思っています。
私は、私自身、夫が一人っ子で両親の介護をした経験を持っていまして、先日代表質問で、愛する人の親だから一生懸命介護したいと思ったけれども、自分の心が鬼になることに対して、その鬼になる自分と闘うことがとてもつらかったということを言いまして、本会議場で愛する人のなどというせりふが出たのは、国会が始まって以来非常に珍しいことだと言われました。
それで、介護保険法に関しては、中身の修正案を含めまして、今皆様から伺ったことは、私たち委員も本当にそこのところをどうにかしなければと思っておりまして、ともかく利用者がその決定の場に主役として参加できるように、その委員会を各自治体にきっちりと置いてもらいたい、市民が参加して、受ける人の声がきっちりと反映できるようなものにしたい、それがこの制度を充実させていくために一番大切なことではないかと思っております。小泉大臣は、ともかくいいものにするためにやってみることが大事だと。あの方は、人柄はとてもすてきなのですが、楽観的な方だなと思います。ともに始めてみましょうなんという感じですが、やはり基盤整備のあたりが私どもも不安ではございます。
最後の陳述の常久さん、私もこういうふうに並びまして、社民党はいつも質問が一番最後でして、いっぱい用意していっても皆さんに質問されてつらいのです。よく気持ちがわかりますが、すばらしい中身の陳述でした。敬服いたします。
私自身、介護の経験を持つ女たちがもっと地域でそのような事業に参入していくことを進めていく、地域の委員会をつくるのに、女性がもっと入ってもらいたいという思いを持っているのですが、この岡山地方の女性たちのそういう動きとか、また具体的に、利用者が不服などすべてをそこの場で発言し、それがこの法の中に生きていくようにするために、委員会の中身に対して何か御希望がございましたら伺わせていただきたいのですが。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/301
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302・常久勢子
○常久勢子君 ありがとうございます。本当に、今女性が介護をやっているのです。
例えば、倉敷市にも保健福祉計画推進懇話会というのがあります。多分二人か三人女性の方がおられると思うのですけれども、やはり余り直接介護をなさらない男性の委員が大勢です。人口の半分は女性ですので、あらゆるところに女性を活用していただきたいと思います。今回もしましたけれども、言われたら参加します。言ってもらえないときには参加できません、残念ですけれども。
以上です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/302
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303・山本孝史
○山本(孝)委員 福原さんに施設長の立場でお伺いをさせていただきたいと思うのです。御案内のとおりに、施設は今いろいろ問題が、厚生省汚職という形で出ております。それを一応前提の上で二点。
一つは、今出ております応能負担の問題ですね。一割でも大きいのじゃないかというお話。逆に今、満額を負担して特養に入っておられる方も多分おられるのではないかと思います。その方について見れば、今度は楽になるわけですね。適正な応能負担の方が本当はいいのじゃないかという声も一部にあるというふうにも思いますが、この負担というものをどういうふうにお考えになるのかという点が一点。
もう一つ、済みません、同じお答えをいただかないといけないので。
今度選択制になって、サービス水準が極めて低い状態でスタートしますので、ほとんど私は選択性はないと思っておりますけれども、ベネッセの福武社長のおっしゃったように、本当は、選択制の中で生き残れる施設と生き残れない施設、すなわち施設がきちっと淘汰されていかなければいけないはずなのです、どのサービスにおいても。現実問題としては、そういうふうなことになるとお考えですか。いろいろな施設があります、全体的なことを含めてお答えをいただければと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/303
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304・福原信行
○福原信行君 お答えさせていただきます。
やはり平等というのが私は基本だろうと思うわけでございます。ただ、今までの習慣がございます。老健施設なんかは大体平等といいますか、格差はございますけれども基本的には決まっている。それから、老人ホームだけがいわゆる所得に合わせて負担をする。全額近い、二十万以上の人もうちには入っていますけれども、そういう形をとっておられます。本当は平等が一番いいのだろうという感じは持ちますけれども、実質的にそれならあすからどうするということになりますと、安くなった人は非常に気持ちがいいわけでございますけれども、ない人は大変だなと思うわけです。その辺の調整というのをきちっとしてもらいながら、将来的には私は平等がいいのではないかなという基本的な考え方を持っておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/304
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305・山本孝史
○山本(孝)委員 施設は淘汰されていくとお思いですか。すなわち、我々からすれば、悪い施設は滅びていただきたいわけだけれども、そういうふうになりますかということです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/305
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306・福原信行
○福原信行君 現実的には、恐らく今すぐそんなことにはならないと思うわけですね。在宅がきちっと仕上がって、相当の人が在宅で住める、いわゆるノーマライゼーションといいますか、基本的にそういうお年寄り自身のお気持ちはいっぱいあるわけですけれども、介護する側の人は非常に厳しいわけでございます。
こういうことでございますから、すぐに淘汰ということはございませんけれども、一一〇番とかオンブズマンというようないろいろな問題もございますが、そういうものになると、ある程度自分の選択というのが出てくるかなという感じはいたします。将来的には、やはりそれは出てくるであろう、それまでは頑張っておらないとつぶれていくのかなという感じは今持っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/306
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307・町村信孝
○町村座長 速記の都合があるので、私が名前を申し上げてから御発言をいただきますようお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/307
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308・能勢和子
○能勢委員 私、自由民主党の能勢和子でございます。
先ほど、中川委員も申しましたように、きょうお選びいただきました代表の皆様が、それぞれの立場で大変感動を呼ぶ御意見を発表されまして、その陳述あるいは請願等々の話を聞きながら、本当に心を打たれた思いがいたしました。
その中で、日本経済のすべてをこの高齢社会に持っていけば、一人一人に行き届いた看護ができ、介護ができるということだろうと思いますけれども、そんなわけにはいかない。本当に、きょうの皆様の訴えを全部受けましたときには、日本経済の大半をそちらに持っていかなければできないのじゃないかということになるわけです。今、介護の老人の問題が出ておりますけれども、まだまだ大きな少子の問題もあります。その中でバランスが要るだろうと思います。先ほど、福武社長がおっしゃったような、競争社会、市場メカニズムをうまく活用していいサービスをするというようなことも全くそのとおりだろうと思いました。
その中で、一つ、岡山県の備前市長さんにお尋ねいたします。
これは、実は、私も厚生委員会の中で質問したのでございますけれども、高齢社会を迎えることはわかっていても、現在市町村によりまして大変その基盤整備に格差があると言われております。格差が生まれるもとは経済なのか、あるいはその取り組みなのか。どのあたりによって、格差が生まれるのか。だから、介護保険ができるまでに基盤整備がきちっと一定率できるかということを私たちも思うわけです。介護保険ありサービスなしとなってはいけないという思いがいたすわけですけれども、市町村による格差がなぜ起きているのか、そのあたりを教えていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/308
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309・栗山志朗
○栗山志朗君 市町村の格差についてお尋ねでございます。非常に難しい御質問で十分お答えすることができないと思いますが、備前市として、市長として考えます場合に、今回の介護保険の施行に伴いまして、やはり保険者である市といたしましては、住民に対しましての基盤整備というもの、体制づくりというものはやっていかなければならないというものを持たなければならないと考えておるわけです。これができなければ、一種の責務の放棄にもなりますし、やはり地域住民の信託を受けられないのではなかろうかと考えて、そういった基盤整備、体制づくりには努力をしていきたいと思っておるわけです。
その中で、やはり財政というものが今非常に厳しいという一語に尽きるわけですが、備前市の状況を申し上げますと、昨年の九月一日に老人保健施設をオープンいたしました。これは、約十二億をかけまして八十人の定員ということでして、既に現在六十四名の方に入所していただいておる。一般公開をいたしました折に千人近くの方が見に来られたということで、非常に老後の関心を持っておられるということを実感として受けとめております。
そして、平成九年度と十年度で養護老人ホームの建てかえを十三億円でやるということで、これは定員が五十名ですが、これも何としてもやらなければならぬということで、ようやく取り組みを決めさせていただいて、九年度、十年度で実施させていただくということでございます。
それから、特別養護老人ホームも、五十人の定員で、既に昭和五十年代にオープンいたしまして、これも入所の待機が常に七、八名いらっしゃいまして、施設が老朽化して狭くなっておる。これをさらに充実をしていかなければならないという問題があるのですが、なかなか予算的な問題で十分な対応ができないということでございまして、何としても財政措置を国として十分考えていただかなければ、これからの基盤整備は難しいのではなかろうかと考えております。そういうようなものの財政措置をしていただければ、首長の考えによって基盤整備は進んでいくのではなかろうかと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/309
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310・桝屋敬悟
○桝屋委員 今、備前の市長さんお答えになりましたので、重ねて三点ほど。
具体的になろうかと思いますが、先ほど話もありましたように、介護保険がもし導入されればということでお答えいただきたいのですが、例の見舞金等の単独事業、どのようにされるのかお伺いしたい、今は決まっていないかもしれませんが。
それから、今基盤整備の話がありましたが、ホームヘルパーについて、備前市さん大変お悩みになっているのじゃないかと私は推測をいたしております。先ほどちらっと声がありましたけれども、五年間の経過措置の中で、フルサービスは場合によっては、例えばホームヘルパーあたりはフルサービスにはまだいかない、ちょっと基準を下げておやりになるようなことをお考えになっているのか、まずお聞きしたいと思います。
それから、あと一点、国保。二号被保険者の話でありますが、国保の方、それに上乗せでということになるわけでありますので、当然ながら、低所得者対策もありますが、ペナルティーがある。それは大変苦しいというお話がありました。恐らく備前市あたりでも六%から七%の滞納者がいらっしゃるだろうと思いますので、それは百、二百の数になるわけでありますから、このペナルティー対策は大変苦しいだろう。現行の福祉に比べると後退をするわけでありますから、排除の論理で。そんなところはどういう対策をお考えなのか。
それからもう一点だけ。これはもしお話があればお聞かせいただきたいのですが、備前市として広域行政を今回の介護保険でお考えになるかどうか。認定審査会、それから例の総合財政安定資金なんという特別の対策もあるようでありますが、そんなことをお考えになっているかどうか。
以上三点、簡単で結構でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/310
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311・栗山志朗
○栗山志朗君 十分お答えできるかどうかですが、見舞金につきまして、現在備前市では、介護手当の支給を月額四千円ということで実施をいたしております。そういうことで、これは検討していかなければならないというように考えております。
それから、先ほどお話のございました第二号被保険者の問題でございますが、これは現場におきましては、非常に制裁問題は実行が難しいのではなかろうか。国保問題でも、非常に景気の低迷で収納率が低下して滞納者もふえてきておる。その中での議論もあるわけですが、そういうようなことをやることはなかなかできないということで、難しいのではなかろうかと思っております。
それから、広域行政については、備前病院が急性期医療ということにこれから取り組んでいかなければならない。その中で、広域的に組合立も今後研究課題であるということで、これから関係する各町との話し合いをする必要があるというように考えております。備前病院は百床でございます。そういうような百床の病床の病院経営はこれからは難しくなるだろう。そういうことで、これは地方分権に伴いまして、やはりいろいろな形で広域行政というものが必要になってくるのではなかろうか。そういうような意味で、この介護保険の運営に当たりましても、広域というものも一つ考えていく必要が出てくるのではなかろうかというように思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/311
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312・児玉健次
○児玉委員 日本共産党の児玉健次です。
最初に、沼隈町の森下さんからいただいた資料を拝見しておりまして、ホームヘルパーの派遣状況がこの七年間で延べ八百五十九件から一万二千八百九件、約十五倍近くに、そして、一万二千八百というと一日四十件ぐらいと急速に伸びていらっしゃる。さっき森下さんのお話の、福祉会館に行けばどうにかなる、そういう雰囲気が町の中でも広がっているのだと思うのですが、ここに至る御努力と、それから、沼隈町でのこのような前進をさらに助長するとすれば、どのような点で今私たちが審議している介護保険制度は改められるべきか、そのあたりについて伺いたいというのが一つです。
次は、常久さんにお伺いしたいのですが、要介護度分類の問題点が非常によくわかりました。常久さんからは、移動の項目がないことと、家族介護が前提にされているという問題の御指摘がありましたが、この要介護度分類を実態に合わせるために、どのようにさらに改めるべきかということについて御意見をいただきたい。
もう一つは、特別養護老人ホーム、岡山はたしか去年の四月で千百七十一人の待機者ですが、利用料、入所の負担が、この介護保険制度が実施された場合、現状とどう変わりそうか。常久さんがお近くにいらっしゃる患者さんを見て、その辺についてのお考えを聞きたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/312
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313・森下浩子
○森下浩子君 お答えします。
資料をお見せしましたヘルパーの派遣状況ですが、まず五十七年に私が参りましたときは、ヘルパーは三名でございました。現在は十名になっております。この急激に伸びたところは、厚生省も言ってくれておりますように、保健婦とヘルパーが同じ部屋で仕事をするようになったときです。ということは、情報が共有化されるようになりますと、アセスメントは当然のことでございますが、みんなで相互にマネジメントができる。
これは、もう一つ言えば、大きなところであれば、小さい単位でヘルパーとか栄養士とか保健婦、看護婦が一つになって動けば物すごく効率的にできるだろうということだと思うのです。そこまでに持っていくのは、縦割りを横に持っていくわけですから、行政というのはとても大変ですけれども、そのことが今度はコーディネーターという役割を置いてできるのではないかと考えております。小さな田舎はとても封建的ですから、横に持っていくには管理職が大変ですけれども、コーディネーターという役割を前の町長が私につくりました。課長を超えて、よその課とか社協とか医療機関と連携をとりながら、人に対するサービスができるような体制をつくってくれたということかと思っております。
やはり、仕事をする中から人はふえていった、最初に人ありきではなかったということが、先ほど苦労があっただろうと言ってくださったところなのですが、やはり公務員であっても、民間と同じような、それ以上の努力をしなければ住民へのサービスは生まれてこないだろうと考えてやってまいりました。
現在、一名支援センターに行きましたからヘルパーは十名なのですけれども、訪問看護ステーションと行政の保健婦とそしてヘルパーが交互に動いていきます。だから、きめ細かな、ヘルパーが十五分、二十分、十五分というような間隔で行って済むような仕事にしていく、またはその間を縫って訪問看護婦が行く、役場の保健婦が行くというふうな形。先ほどモデルのことをおっしゃいましたけれども、あれはあくまで机上論で、厚生省かどこかがおつくりになったものであります。
現場の者は、その人の生活に合わせて、または家庭に合わせて、その地域に合わせてやっていくということ、そのことが自治体の一番のだいご味ではないか。だからそこまでは干渉してほしくない。やはりそういう自治体の職員をつくっていかなければならない。また、いろいろ御参加の方がおっしゃいましたように、その地域にあるサービスがお互いに知恵を出し合うということがこの公的介護保険を有効なものにしていくのではないかと考えております。
以上で私の答えになるでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/313
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314・常久勢子
○常久勢子君 十分お答えできないかもしれませんが、移動の問題ですけれども、サービスモデルのところは、私はコピーするとき外したのですけれども、移動が入っております。移動と言っても、本当にいろいろなやり方というか援助が要るのです。やはり移動の項目をつけ加えるだけじゃなくて、実際その人の日常生活の介護にどのくらいの時間を要するかというのが一つの判定の基準になってもいいのじゃないかと思います。
それから、特養にお入りになった方の負担の問題なのですけれども、どのくらいの負担階層の方が何%かというのは、私自身は特養をやっておりませんのでわかりませんが、例えば私の老健では、月額六万円の自己負担、一日二千円いただいておりますが、それよりふえる方は入所できないというふうに最初から特養の入所を断念されます。むしろ下がる方が行かれるわけです。特養に入られると二、三万です。最低の年金の人でも、手元にわずかにお小遣いが残るというふうな方が今だったら特養に行かれる。あとは逆に、たくさんの負担があるけれども、どうしても共稼ぎを続けないといけない、奥さんが仕事をやめるわけにいかない、そういう方は相当の負担をされるのでむしろ安くなると思いますけれども、倍から三倍くらいになられる方が低所得者では大部分だと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/314
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315・中桐伸五
○中桐委員 民主党の中桐です。
二点御質問したいと思います。きょうは、いろいろ非常に貴重なお話をありがとうございました。
一つは、栗山さんと原さんにお伺いしたいのですが、きょう公述されました方々から、基盤整備がおくれていて、保険はできるけれどもサービスが不足しているのではないかという御指摘がほぼ異口同音になされたのではないかと思うのです。しかし、医療保険制度をつくったときもそうでしたが、今急速に高齢化が進む中で、とにかく介護制度を早急に創設するという形でスタートすべきだと私は思っておるわけであります。しかし、先ほど言いましたように、サービスが不足するという状況がございます。そこで、栗山さんも御指摘されましたし、原さんも市民参加という形で、栗山さんは苦情処理の問題をどうするかという話がございました。
そこで御質問ですが、苦情処理機関というものをどのようにつくるお考えがあるのか、あるいは市民参加という原さんの御指摘ですが、どのようなことをお考えになっているのかが第一点でございます。
それから第二点目は、これは福武さんと佐野さんにお伺いしたいのですが、民間活力を活用するということは大変重要であります。効率よく、しかも質のいいサービスを確保したいということであります。しかし、この民間活力、市場競争に完全に任せてしまいますと、適正な介護の報酬が確保できるかどうかという疑問が生じてまいります。
そこで、適正な介護の報酬、公正な介護の報酬、そういった点につきまして佐野さんと福武さんに御意見を伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/315
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316・町村信孝
○町村座長 それでは、栗山さん、原さん、佐野さん、福武さん、この順序でお答えをいただければと思います。
栗山市長さん、大変登板回数が多くて恐縮でございますが。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/316
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317・栗山志朗
○栗山志朗君 それでは、中桐先生の御質問に対してお答えします。
苦情処理というお話で、市としてどのように対応していくかという御質問でございますが、これにつきましては、先ほど申し上げましたような形で十分なる介護保険の整備を図っていただいて、そういうような苦情が持ち込まれないようなことを国に対して望むわけでございますし、苦情が出てきた場合には、やはり保険者である市としての対応を考えていかなければならないと思っておるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/317
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318・原まさ子
○原まさ子君 市民参加ということなのですけれども、これは、介護保険の被保険者を中心とした委員会でやっていけたらというのが願いなのです。
在宅支援センターのことをちょっと取り上げてみますと、在宅支援センターは市の方から委託されて事業が行われているのですが、やはりそれもかなり格差があります。チェック機関というかそういうものがなされていなくて、同じ補助金をいただきながら差がかなりあるということが見られます。ですから、やはりこれは市民が参加して、介護サービスの量とか質、また運営のあり方も明らかにして、それを市の方へ報告するような形をとれたらと思っております。
その市民参加なのですけれども、これも有識者というか、経験の豊かな国家資格のある人が参加しながら運営していけたらというのが基本となっております。
それでお答えになっていますでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/318
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319・佐野康
○佐野康君 私には適正な介護の報酬についてというような御質問だと思います。
私どもの行っております在宅サービスにつきましても、家事サービスが時間当たり七百円、介護サービスが九百円ということでさせていただいておるわけですけれども、この金額を設定するときにも大分悩みました、本当に適正な料金なのかどうかという点で。日本の全国的な平均レベルの金額であるとか、あるいは岡山県下の状況であるとか、一応いろいろ参考にさせていただいたわけでございますけれども、例えば山陽町、同じ町内でシルバーの方のセンターがございまして、こういう方たちが実際にやっておる一つの金額がございます。その辺と余り差をつけるわけにもいかないだろうということから、実態としてはそれに倣ったような金額で決めさせていただいた経緯がございます。
したがって、今の御質問は、例えば今度の法律が制定された場合のことを含めての御質問だと思うのですが、確かにそれぞれのケアの内容が違ってまいります。本当に適正な報酬というのはいかにあるべきかということは非常に難しい問題だろうと思います。したがって、私自身も、この介護保険ができたときに、先ほど来お話が出ておりますように、自治体によって福祉資源の格差があるという場合に、保険料は同一に取られてサービスの内容が違ってくるのではないか。逆に言えば、その辺を一番質問したいくらいで、どのようにそれを決めていかれるお考えなのだろうか、私自身は本当にそう思っているところでございます。
お答えにならなかったかもしれませんが、失礼させていただきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/319
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320・福武總一郎
○福武總一郎君 先ほどと同じで、結論から言いますと、民活にしないと適正な介護報酬は得られないというのが私の考えであります。
先生もごらんになったと思いますが、先般も高齢者福祉サービスの公民のコスト比較がありました。公がやると民間の倍かかるということでありました。それが一点。
それからもう一点は、先ほども私御案内しましたが、ケアプランに基づく現物給付ということになるとなかなか難しい。しかし、バウチャーという制度を導入しますと、公的介護保険部分はバウチャー、そしてプラスアルファ、上乗せ部分に関しては私費、現在の自動車の損害保険のようなものでしょうか、自賠責と任意保険という。その原資が雇用の吸収になるのだろうと思います。
さらに言いますと、御案内のように、現在我が国において一世帯当たりの保険の掛金というのは年間六十五万円にもなっています。その金額というのはほとんどが生命保険でありますから、死亡給付。そういったものを生前給付に誘導するということになりますと、その公的介護保険に私費を上乗せするという構造にしておかないといいサービスもできない、逆にいいペイも払えない。
もっと言えば、現在私が懸念しておりますのは、公的介護保険でバラ色なんだ、そういうイメージを国民が持ち過ぎているところに大きな問題があって、公的介護保険部分は、最低とは言いません、しかしそれはあくまでベースの部分を補うものであって、それ以外の部分は自己責任でやりなさい、これは病気のように突発的に起こるものではありませんから、若いときからできるだけ自分の蓄え、あるいは計画的にやったらどうですかということだと私は考えておるのです。
ということで、私は、結論から言いますと、冒頭申し述べましたように、民活をすることによって、そしてバウチャーを導入することによって、介護の労働者の方々も、あるいは福祉の労働者の方々も適正な介護報酬を受けることができるのだ、このように思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/320
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321・福島豊
○福島委員 新進党の福島豊でございます。
本日は、八人の方には、大変貴重な御意見をお聞かせいただきまして、本当にありがとうございます。
私が一点お聞きしたいことは、家族介護をどのように評価するのかということでございます。先ほど、栗山市長さんは、地域によっては家族介護というのが当然の地域もあって、そういう地域のことを考えるとこの現金給付ということが必要ではないかという御趣旨の御発言だったのではないかと思います。また、常久さんは、介護保険そのものが家族介護というものを前提にした制度であるという御発言もございました。
そこで、八名の方に、もう一度お一人お一人に、家族介護というものを評価して現金給付をした方がいいか、それともそれはやらない方がいいのかということにつきまして、端的なコメントをちょうだいいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/321
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322・町村信孝
○町村座長 では、お一人お一人ということですから、端的に、手短に、恐縮ですがお願いいたします。
では、まず栗山さんからどうぞ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/322
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323・栗山志朗
○栗山志朗君 先ほど陳述をいたしましたように、家族介護については現金給付を実施するということで御検討いただきたいと思う次第です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/323
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324・森下浩子
○森下浩子君 私は、しない方がいいと思っております。なぜかというと、家族はすごく大切だし、いろいろな方がおっしゃるように、私は家族がなくていいとは思わない、家族は介護に関与してほしい。
ただし、その介護というのはしんどい介護じゃない。しんどい介護は、皆公的または民活でやっていく。家族には、温かさとか余裕とかゆとり、介護をされる人に一番大切なもの、そこでしか与えられないもの、私たちがどんなに努力してもだめなものがある。それを評価することが介護保険の中でどうにかならないかと思うのですけれども、私はお金は出さない方がいいと考えております。そのかわり、それだけのものを今出ていないケアプランにどう考えていくかということの方を検討していただきたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/324
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325・福島功
○福島功君 発表の中でも申しましたけれども、今の基盤整備がちゃんとできておればそれは必要はないと思いますが、過渡期におきましては、一時的にはそういうこともしなければ、これは言うなれば不平等になるのではないかというように思っております。
以上です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/325
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326・佐野康
○佐野康君 私も、結論的には、家族への現金支給、そういったものは現状ではやはり必要だろうと思います。ただ、最終的に、今のこの介護保険等が十分軌道に乗っていった段階では見直すべき条件の一つである、そのように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/326
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327・福原信行
○福原信行君 私も、出すべきでない、そのように思っております。ただし、先ほどから言われているように、基盤整備ができないところには一時的に出すべきかな、そんな感じでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/327
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328・原まさ子
○原まさ子君 私も、現金給付は余り賛成ではありません。先ほど言いましたけれども、できれば、地域の小グループホーム、そういうものをつくりながら、やはりホームヘルパーとか訪問看護婦で支えていけたらと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/328
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329・福武總一郎
○福武總一郎君 私は、家族介護の評価はすべきだと思います。しかし、それは現金ですべきではないと思います。
それはバウチャーですべきであって、事情に応じて割引率を変えることによってそれは現金化できる。そして、バウチャーを渡しておけば、家族の方がサービスができなくなった場合に外部サービスでも自由に使える。そして、市町村の都合によって割引率を変更することができる。そのような弾力性のある運用として、現物でもない現金でもないバウチャーを導入することによって、今公的介護保険で大きな争点になっている家族介護評価の問題は、私は大変クリアになるのだと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/329
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330・常久勢子
○常久勢子君 大変複雑な心境です。実際、苦労されている方には出してあげてほしいと思います。ただ、それで公的なサービスの整備がおくれてもいけないし、大変複雑なのですけれども、先ほど来あるように、基盤整備ができず、実際に介護をされている方にはきちっとお金でもいいから評価してほしいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/330
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331・町村信孝
○町村座長 大変難しい質問でございましたが、それぞれありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/331
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332・住博司
○住委員 今現金給付については福島さんから御質問いただきましたので、私は、根本にあります被保険者のことについて聞きたいのです。四十歳以上というふうになっておるわけですけれども、端的で結構ですから、財源問題も含めてそれぞれのお考え方をお聞きしたいのが一つ。全員に、一言で結構ですから。
それから、福武さんにお聞きしたいのだけれども、先ほどから、マンパワーの問題あるいは施設の整備の問題、いろいろとお話が出てまいりまして、その不足感、充足感のなさというのが大変な不安要素になっているということが出ておりました。これは、バウチャーを導入しようと基本的には変わらない、こういうふうに思うのです。例えば、地域間格差があるものをバウチャー制度を導入したからといって埋めきれるものでは私はないと思うのですが、その点についてどうお考えになっているのかということをお聞かせいただければありがたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/332
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333・町村信孝
○町村座長 それでは、一応全員ということですから、また栗山さんの方から、四十歳以上給付という点についてのお考えをお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/333
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334・栗山志朗
○栗山志朗君 四十歳以上ということで今回の介護保険の年齢が設けられておりますが、やはり一つの人生の節目としての年齢設定ではないかと理解しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/334
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335・森下浩子
○森下浩子君 私も、これ以上上げたらいけないと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/335
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336・福島功
○福島功君 いわゆる、加齢による疾患をこの介護保険というのは前提にしておりますね。私は発表のときにも申し上げましたけれども、ほかの障害を持っている人もやはり一緒なのですね。介護が必要な人はたくさんいるわけなのです。今できないとしても、将来的には年齢を問わずそういうものは一くくりで介護保険制度の中に導入したらどうかなと私は基本的には思っております。
ただ、現在、お金の問題でありますとかマンパワーの問題でありますとかいろいろありますので、四十歳以上二号被保険者、そういうことで案は出ておりますけれども、過渡期的なことでありましていたし方ないとは思いますけれども、基本的にはそういうふうに思っております。
以上です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/336
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337・佐野康
○佐野康君 私も、多分四十歳以上ということで考えておられる背景としては、やはり財源の問題が一番大きいのかなと思っております。
先生もおっしゃいましたように、人間がいわゆる老化というか、そういう症状を示してくる、そういう方たちをある程度被保険者として対象にするのだということであれば、四十歳以上というのはそこそこ妥当なのかなという程度に私は考えております。
以上です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/337
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338・福原信行
○福原信行君 保険という基本的な仕組みから考えますと、やはり四十歳が妥当なのかな。みんなで支え合うということになれば年齢をぐっと下げるわけですけれども、保険という仕組みを基本的なベースにするならば、やはり四十歳が妥当かな、そのように思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/338
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339・原まさ子
○原まさ子君 先ほど福島先生が言われたのですけれども、障害を持つというのは若い人もかなり多いのです。若い人のそういうサービスが限られているということで、施設で対応している人がかなり相談に応じているとは思うのですけれども、基本的にはやはり年金みたいな形の保険制度にして、若いときからみんなが使えたらと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/339
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340・福武總一郎
○福武總一郎君 私も若いときからでいいと思うのですね。
ただ、今の状況だと若い人たちには、国の構造改革も進んでいない中で、なかなか理解が得られないと思います。ですから、現在のいろいろな行財政改革が進む中で提言をすべきであり、本当に国民の理解が進んでいるとすれば多分理解を示してくると私は思います。
それから、もう一つの御質問はマンパワーと施設整備の問題。
私は、バウチャーになればマンパワーは、どんどん魅力的な職場として雇用吸収力があると思います。先ほども申し上げましたように、バウチャーにすることによって上乗せが非常にしやすい。その上乗せの部分でさらにいいペイが、あるいは報酬が払えるという構造によって魅力のある職場にする。要するに、奉仕であるとか精神的な気持ちだけで成立するということは限界でありまして、やはりこれからの二十一世紀に、成熟社会に最もふさわしい産業に位置づけないと私はだめだと思うのですね。ですから、それは公もそうだし、互助もそうだし、民も支え合う、そういう構造にすべきだと思います。ですから、バウチャーにすることによってマンパワーは確保しやすいというのが私の持論であります。
それから、施設整備の問題について私はきょう発表しなかったのですが、御質問なのでお答えしますと、予算の、財源の多くを施設整備費でとられているということは私も理解しているのです。今の施設整備費は、例えば公的なもの、あるいは社会福祉法人にしても相当部分施設整備費にかかる。言ってみれば、現在の福祉の受け皿は社会福祉法人を含めて公設公営ですね。一方、入居料が三千万円で月額六十万払うという有料老人ホーム。
現在の施設整備の構造的な問題は、公設公営と民設民営しかないのだというところが問題だと私は思っているわけです。そこに公設民営というやり方をぜひ導入してもらいたい。グループホーム、グループリビング等、そういった問題に関しては公設民営。これは地方自治法の問題もあるでしょうけれども、公が建物を建てて民間に箱物を貸すという考えです。委託では、民間は価格決定権がありませんから、できません。だから、委託ということはすべきではない。
例えば、都会にある民間の持っている塩漬けの土地を公が、地方行政が定期借地権で五十年間グループホームとして使う。その箱物を、建てたものを、例えば財団化して民間に、まあ議会において承認を得れば普通財産を民間に貸すことはできると思います。そういう新しい方式をどんどんつくるべきであります。そのことによって、私は相当財源が楽になると思っているのです。ただ、今現在、御案内のようにいろいろの縛りがありまして、公有財産、行政財産、普通財産を民間に無償で貸すとかあるいは貸与するということが非常にややこしい。
それからもう一つは、今申し上げましたように、福祉ということでとらえたらゴールドプランの範疇に入って、その建物が常に委託でしか貸せないという構造になってしまう、その辺の問題が私はあるように思います。ですから、福祉の問題は、公設民営のあり方を徹底的にもっと研究すべきである、そのことによってこの問題は大きく解決すると思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/340
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341・常久勢子
○常久勢子君 年齢についてですが、大幅な減免規定を設けた上で、四十歳以上でもいいかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/341
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342・山本孝史
○山本(孝)委員 森下さんに一つお伺いしたいのですけれども、今回のこの介護保険というのは、寝たきりというかかなり重度にならないと対象にならないというイメージがどうもするのです。虚弱の要介護者への支援というものをどういうふうにこの中に盛り込んでいくのか。
特に、食事の配食サービスは今法定にはしていないのですけれども、回っておられますと、やはり食事というものが健康づくりの中で大変大きいのじゃないか、その辺をどういうふうに受けとめておられるのかというところをお聞きしたい。
もう一つ、最後に質問します。
福島さんと常久さん、ともに病院にお勤めということで、病院のことでお伺いしたいのです。
今度、療養型病床群あるいは介護力強化病院も経過措置を置いてこの介護保険の対象になっている。それで、療養型病床群が本当にいいのでしょうか。この介護水準というか、本当の特養並みの施設整備をすべきじゃないかと思うのです。長期療養にふさわしい病院だと厚生省は位置づけておりますけれども、現場としてどうなのか。常久さんのところの病院は一般病院なのかどういう病院なのか知りませんけれども、高齢者を介護するに当たってのその病院の今のレベル、このレベルが一体どうなのかというところをぜひお聞かせいただきたい。
それで、先ほどおっしゃった介護保険と医療保険は一応両方ともに使えるという形にしておりますけれども、福島先生がおっしゃった、急な対応ができずに療養型病床群の中でお年寄りがついのときを迎えられるという状況が本当にあるのであれば、ここは大いに問題にしなければいけない点だと思いますので、そこのところももう一度教えていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/342
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343・森下浩子
○森下浩子君 福島先生に怒られるかもわからないのですが、本当に必要な医療であれば、地域へこのような重度の人が帰らなくていいと思うのです。そして、要らないものがいっぱいついていることはないかという医療の整理を医師会の方できちっとする、今いろいろおっしゃる先生がいっぱいいらっしゃいますので、今後それをやってもらえるのではないだろうか。
もう一つ言えば、長期で高齢者でそのような重度の介護の場合は、介護法さえレベルが上がれば、きのうの朝日新聞にも載っておりましたが、質を上げればとても介護は楽にできるようになります。絶対になります。それは、やはりヘルパーも保健婦も看護婦も訪問看護ステーションも質を上げる、粗製乱造でやってはいけない。これは准看なり看護婦の教育問題にまで来ると思いますけれども、地域、地域と言うのであれば、専門職が粗製乱造じゃないことをきちっとやっていただきたい。そうすると、随分と重度の人も軽く見られて、家族は安心できるであろうというふうなことを考えます。
それともう一つ。医療では、軽くなってもドクターはお薬を出し続けると思うのです。それと同じように、介護、看護はやり続けることによって重度化を防ぐことがいっぱいできます。軽くなったからもう訪問看護を今までの五分の一にするとかデイサービスを三分の一にするとかすると、同じ問題が特に痴呆症の場合出てまいります。これは何も精神科の先生でなくても、現場の中で痴呆をやっている介護福祉士なり保健婦、看護婦は知っていると思います。
だから、そのときに下げてしまわない。改善したものを、先ほど評価するとおっしゃいましたが、評価した上で、継続するときに本当に深く見て判定をしていただきたいと思うわけです。そうすれば、随分違った形で、虚弱の状態だけれども本当は重度である、その判定をどうするかということが出てくると思います。これは全国でいろいろ例を出してやっていらっしゃると思いますので、それを集めていただければすぐわかることではないかと考えております。
食事のことですけれども、現在週四日以上、一日三十食、百二十食いけば公的な援助がございます。それを私は残していただきたい。もちろん、本人は三百円から四百五十円出していくわけですけれども、現在うちに二十食近くを社協が配達してくれていますが、それは全額負担で、業者が随分と負担をしながら四百五十円でやってくれています。
そういうベースに将来持っていくことが、ひとり暮らしの人が重度になって援護しております場合にとても必要なことだと考えております。ひとり暮らしでも介護さえきちっとしていれば、相当在宅は可能だということも立証されております。それには、今おっしゃった食事がとても大切だろうと思います。公的介護保険の中に食費を、そういう形であれば今ある制度を残していただいて、うまく運用できるようにしていただきたい、そのように考えております。
以上です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/343
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344・福島功
○福島功君 療養型病床群についてのお尋ねでございます。
介護施設の一つの介護療養型ということになるわけでありますが、その整備というのは、十二年度の介護サービスまでに十九万床つくるという厚生省の目標があるそうでございますが、現在四万床しか整備されていないという現実があるわけであります。しかも、地域によってかなり差があるということがございます。
そこで、こうした対象者、要介護者というのは基本的には病弱なものですから、医療はもちろん必要であります。過剰な医療はもちろんだめですが、現在社会的入院と言われる方がたくさんいらっしゃるわけですね。そうした人たちというのは、家庭に帰るところもない。あるいは岡山でも、特養に申し込んだら、今三百か五百人ぐらい待っているのですね。そういうところが非常に問題になっているわけです。
したがいまして、医療についてのシステム化、地域医療支援病院の構想も医療法の中に出ておりますが、そうしたシステム化の問題が一つあると思いますし、効率的に供給するためにはそれがまず第一だろうと思います。
この介護の問題の医療部分についての療養型の病床群というのは、まだ足らないのではないかというように思っております。したがいまして、この施設整備の基準につきましては、現在の医療法の中に決められておる病床というのはかなり広くなっておりますので、これはこれでいいのではないかと思っております。病弱な、医療との関係の収容施設というのはまだまだ足らないと私は思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/344
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345・常久勢子
○常久勢子君 私の病院は、先ほどちょっと省略したのですけれども、百十三ベッドのうち六十床が療養型、五十三床が老人の慢性期専門のいわゆる老人病院です。
本当にいいのですかというのはどういう意味なのかわかりませんが、私の体験では、急性期の病院で、例えば脳卒中とかそんなので、鼻腔栄養とか尿管が入った状態でかわってこられます。そういう方に口から食べていただけるような手間暇かけるケアを行っています。あるいは、管を外しておむつから次第にポータブルトイレに移るような訓練をする。そういうことですので、いきなり急性期の病院から家庭に帰ったのではとても介護はできませんので、そういう中間的ということで私は必要ではないかと思います。
特養並みの施設整備と言われましたので、ハードの面では、特養は十平米ですか、療養型はまだ六・四平米です。昔の六人部屋とか八人部屋を四人ぐらいで使っているという状態ですので、特養に比べるとよくはありませんが、体の麻痺に合わせてベッドを窓際、壁際に寄せて、真ん中を広くあけて、そこで車いすが自由に使えたり、ポータブルトイレを置いてカーテンで仕切るというふうなことができるという点では、普通の病院よりはずっと介護ケアを行うにはふさわしいと思っております。
それから、重症化の問題なのですけれども、御存じのように、ことしの正月前後にはインフルエンザが大変流行しました。うちでもたくさんの方が次々かかられたのですけれども、やはり定額制の医療費ですので、そういう月にはやはり薬剤費が相当施設側の負担になります。
もう一つは、本当に急性期医療に対応していただかないとし切れない段階というのは来ますので、そのときにきちっと転院先を確保するということがなければ、みすみす死なせてしまったということも起きるのではないかと思いますので、機能別分化ときちっとした連携、受け皿を持っておくということがなければ、うば捨て山になってしまうのではないかなと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/345
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346・中桐伸五
○中桐委員 民主党の中桐です。
時間が余りありませんので、簡単にイエス・オア・ノーでお答えいただければ結構です。自己決定とかサービス選択の自由ということを何人かの方が強調されました。
そこで、お伺いいたしたいのですが、現在の介護保険法の中に、認定審査会がサービスを指定することができるという条項がございます。私は、これは施行規則に時限規定としておく。要するに、サービスがまだ十分整っていない段階の場合はやむを得ない場合もあるが、将来はこの規定を削除すべきではないかと思っているのですが、イエス・オア・ノーで全員の方にお答えいただきたい。
それからもう一つ。これもイエス・オア・ノーで結構ですが、自由競争の中でサービスがよくわからないという問題がやはりどうしても残るわけでありまして、いいサービスと悪いサービスをどうやって区別するかということを考えましたときに、やはり情報公開、いわゆるサービス提供事業者みずからがどういうサービスをやっているかということを情報提供する。今の場合は広告制限で、名称、電話、住所、医師、看護婦の氏名等は老人保健施設に出してもいい、あとは制限だ。介護保険法には何もございません。
そこで、サービスの質を利用者が評価できる情報公開をするためには、この広告制限を外すべきだと私は思っておるわけです。また、介護保険法にそういう情報提供を義務づける、そして逆に、誇大広告等をした場合には罰則を設けるという考え方を持っておるわけでございますが、公述人の方々の御意見をイエス・オア・ノーでお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/346
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347・町村信孝
○町村座長 中桐委員、これはどうしても全員からお聞きしたいのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/347
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348・中桐伸五
○中桐委員 時間がなければ座長に任せます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/348
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349・町村信孝
○町村座長 では、二点お話がありましたから、特にこの二点について御発言のある方から求めたいと思います。
御関心のある方、御意見のある方で結構です。あえて全員とは申し上げません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/349
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350・福原信行
○福原信行君 やはり利用者が自己決定していくのが基本だろうと思っております。
それから、サービスの公開ということは、私たちの施設ですと、相当いろいろなところでパンフレットをつくりながら皆さん方に御理解をいただくような方向で進めておりますので、将来的にはこれはいいのではないかなという感じはいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/350
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351・町村信孝
○町村座長 ほかにございますか。
森下さん、どうぞ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/351
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352・森下浩子
○森下浩子君 お答えします。
自己決定のところですけれども、もちろん当事者だと思います。特に本人、家族じゃない、本人だということをお願いしたいと思います。本人が納得する方法は幾らでもありますから、痴呆であってもそうであってほしいと考えております。
以上です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/352
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353・福武總一郎
○福武總一郎君 私も自己決定者は当事者本人であると思いますし、それから、サービスの告知という問題に関しては、要介護認定を受けた段階で、例えば冊子であるとかVTRであるとか、そういったものをきちんとお届けをする。そして、今先生もおっしゃられたように、広告制限というのは撤廃をすべきである、情報開示を積極的にすべきであろうと私は思います。
以上です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/353
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354・常久勢子
○常久勢子君 サービスの指定のことだけですけれども、例えば、ホームヘルパーが何回とあったら、ホームヘルパーを派遣してくれるところはどこどこにありますという情報をすべて与える、そして、そこを利用されていたけれども、やはり合わなかったとかいうことがあれば、ちゃんと次のところへかわるという自由を利用者に認めてほしいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/354
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355・能勢和子
○能勢委員 お尋ねしたいのは、今、施設よりも大変待っている人が多いということの中で、実は私も、そうした介護力強化病棟を含めた精神科の病院に十五年ほど勤めておりました。そうした精神の問題とか介護の問題を実践の中でやってきたわけですけれども、そういうぐあいにずっと患者さんは待っているわけですね。極端に言えば、退院か亡くなるかしたら次の人が待っているわけです。何分違いかで申し込んでくるわけですね。そこで、どう認定してどう入っていただくかという認定の問題、順序の問題等々、この透明性、公平性というのが非常に難しい問題だろうと思います。
今、市町村に任せられても、市町村も自分の町村で、例えば、市長さん、入れてくれよと知った方が隣から言ってくる、けれどもこれは難しい、会議の中で決めていくわけでしょうけれども。いかに透明であって納得のいく入所、認定の選定、どうすれば一番公平にいくかというふうにお考えなのか、どうすれば国民の皆さんの納得のいく選定ができるのかということを、お考えを持っている方がおられましたら教えていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/355
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356・町村信孝
○町村座長 御意見のある方、どうぞ。
常久さん。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/356
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357・常久勢子
○常久勢子君 何回も済みません。
行政が行う判定機関に、例えば、ぼけ老人を抱える家族の会とか患者当事者の会とか、そういう方の代表をぜひ入れていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/357
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358・福武總一郎
○福武總一郎君 私、ちょっと今思いつきなので正しい答えになるかどうかわかりませんが、大学入試とか高校入試も似たようなことがあるのですね。入試でも最近は抽せんということが論議になっています。ですから、原資は一定なわけですから、バウチャーになればそれが非常に限られる。
ということは、やはりそこではみ出る人、はみ出ない人というので、ボーダーが必ずあるわけですね。問題なのは、ボーダーの人だと思います。例えば、要介護度がVIで、Vになるかあるいはならないのか、そのボーダーの人をどうするかという問題ですから、どうしてもなければ抽せんという形も、これは不遜に聞こえるかもしれませんけれども、逆にその方がいい。認定ではっきりできる人はいい、きっちりする。しかし、どうかわからないところはそういう制度でも入れた方がいいと私は思っているのです。何回も続くようであれば、何年下位になると優先的に次の状況になるとか、これは入試でも全く同じことが言えるので申し上げました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/358
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359・福原信行
○福原信行君 今、老人ホームに入所されるのは、入所判定委員会というのがございます。岡山県の場合は、八ブロックといいますか、振興局単位で、皆さんがお寄せになったのをまたもう一回その判定委員会のところで、一番重度はだれかというのを判定されておるという形ですから、恐らく当分はそういう形をとらざるを得ない、本当に皆さん方のいろいろなのが出ておる中で、どういうものを優先するかという問題がまだ続くのではないかなと思います。
逆に言うと、今の基盤整備ではございませんけれども、在宅がきちっとできて、いわゆる施設が、リハビリと言っては語弊がございますが、生活面ではちゃんとして家庭に復帰ができるようなシステム、そうなっていけば非常にたくさんの皆さんがお使いになっていける、そういう方向で全体を詰めていかないと、いつまでたってもその問題は解消できない。そして、常にどこかの施設がちゃんとあいておって、そして入りたいと思ったらいつでも利用できる、そういうシステムをつくっていくことが非常に重要なことじゃないでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/359
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360・福島功
○福島功君 認定の透明性ということは、大変重要なことであろうと思います。
私も審査会の委員長をしておりまして、きょうもいろいろお話が出ましたが、今決めてありますけれども、あの介護度の判定というのはかなり難しいのですね。ですから、透明性という前にそっちをぴしっとやっておく、その次に透明性ということは来るのであろう、私は実際にタッチしてみてそう思っております。したがいまして、これは検討委員会、厚生省に恐らく我々の意見は上がっていくと思いますが、そこら辺をきちっとやらなければいけないというように私は思っております。
それから、中桐先生のおっしゃられたことなのですが、決定権の問題です。
基本的には本人であろうと思いますし、次は家族、それから、審査会というのはやはり全然ノータッチというわけにはいかないと思います。自分でできる人はそれはそれでいいですけれども、やはり審査会、そういう方々というのは専門家でありますので、この状況だったらどこがいいかというアドバイスはすべきだろうと思っております。したがって、なくすということはいけないのではないか、将来的にもなくすということはいけないと私は思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/360
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361・町村信孝
○町村座長 ありがとうございました。だんだん時間も迫ってきておりますから、あと一人二人。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/361
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362・中川智子
○中川(智)委員 山陽町の佐野さんにちょっとお伺いしたいのですけれども、六カ月寝たきり状態のことを先ほどおっしゃっていました。
私も、この六カ月というのは、一人で介護した場合はその人を殺すような期間だと思っております。これが余り今まで問題にならなかったのですけれども、この六カ月というものの困難さ、そして、現場でこのことにかかわっていらして何カ月ぐらいが基本的には適当と思われるか、その期間をもしもおっしゃっていただければ伺いたいということが一つ。
それから、審査会に地域で活動している人を入れてもらいたいということで、肩書をつけている人は余り要らないとおっしゃったのですけれども、どのような方に参加してもらいたいかということを御参考に伺いたいと思います。
そして、沼隈町の森下さんにお伺いしたいのですけれども、県に任せることはだめだということを最初きっぱりおっしゃいましたが、もう少し具体的なことをお伺いしたいと思います。
このお二方によろしくお願いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/362
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363・佐野康
○佐野康君 寝たきりの判定期間ということでちょっとお話をさせていただきました。これがどこの自治体も同じなのか、私はわかりません。たまたま山陽町では行政が一つのそういう審査基準といいますか、条件で運営をしておるという実態があります。
それで、御質問の向きでございますけれども、私も実際にかかわってみまして、極端に言えば一日でも早くしかるべき介助支援というものに取り組んでほしい、してあげてほしい、これが私の気持ちでございます。ただ、現実にはそういうことで、その要件を満たさないと行政の方もその審査を認めてくれないということですので、できればその期間を短縮してほしいなと思います。その場合に、例えば、かかりつけのお医者さんの判断といいますか診断書を参考にされて、その辺を基準にされて期間をできるだけ短縮してあげるという配慮があってしかるべきではないかなと思っております。
それから、審査会のメンバーの件でございますけれども、これも私の主観的な部分があったのかもしれませんが、例えば、社会福祉協議会の評議員さんであるとか理事さんであるとか、そういう方を選ばれる場合に、従来ともすると、さっき申し上げたような、大変表現が悪いのですけれども、そういった肩書とか名士であるとか、そういう方を入れておくと余り周りから苦情が出ないだろう、逆に、そういう人を外すとその人からまた苦情が来るだろうとか、いろいろな配慮がございまして、どうしてもそういう傾向になっておるというのが実態のように私は感じておるわけです。
したがって、この審査会のメンバーになる方はそういう方では困るだろう。というのは、要するに、一番困るのは要援護者の方でございますから、そういう意味では適正に審査をしていただく、そのためにはそれなりの人に入っていただいていないと困るのじゃないか。ですから、そういう中には、もちろんお医者さんですとか保健婦さん、あるいは理学療法士とか専門のヘルパーさん、そういう方たちにより多く入っていただきたいな、このように考えております。
以上です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/363
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364・森下浩子
○森下浩子君 私自身、県の職員でおりましたけれども、市町村の実態は県の保健所にいたらわからないと思っております。現在も、月に一回も保健所の保健婦も参りませんし、現在、沼隈の何をゃっているかも知らないはずです。所長も見に来たことはございません。
そんな中で、今度の介護保険は市町村が実施主体のはずなのですね。そうしたら、そこで自立するには、そのことができなければ逃げることになると私は思っております。やはりそこで踏ん張って市町村がやるべきだ、力をつけていくべきだ、そのことが住民にとって一番いいことではないか、一番声がわかっている、地域がわかっているのだ、私はそう思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/364
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365・町村信孝
○町村座長 だんだん時間ですが、児玉さんどうぞ。手短にお願いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/365
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366・児玉健次
○児玉委員 お一人に一点。
先ほど福島先生が、今度介護保険に移行する医療機関の医療保険と介護保険の併給についてお触れになったと思うのですけれども、そこのところをもう少し御説明いただければと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/366
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367・福島功
○福島功君 基本的には、介護保険、医療が一部含まれておるわけでありますけれども、急性の病気でありますとか容体が急変したときには医療ということになると思います。その辺の綱引きが非常にグレーゾーンになっておりまして、はっきりわからないですね。
一つは、介護保険あるいは施設に入っておれば、これはいわゆるマルメで一定の料金でありますので、医療は積極的には実際問題できないわけですね。それが原因で手おくれになるという情報も今まであるわけですね。
したがいまして、常日ごろから介護と同時に医療的サポートをしておかないと、お年をとっている人たちというのは、例えば肺炎になっても余り熱が出ないわけですね、余りせきも出ない。我々もそういうことを実際によく見るわけであります。そうしたことで、医療保険をきちっと使えるようなシステムを確立していただきたいということであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/367
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368・町村信孝
○町村座長 ありがとうございました。
それでは、きっとまだまだ皆さん方からの御質問、御意見もあろうかと思いますが、一応、予定の時間が参りましたので、これで質疑を終了させていただきます。
この際、一言ごあいさつを申し上げます。
意見陳述者の皆様方には、御多忙の中、長時間にわたりましてとても貴重な、また現場感覚にあふれた本当に大切な御発言、御意見をいただきまして、まことにありがとうございました。心から感謝を申し上げます。
きょう拝聴いたしました御意見は、法律案の審査にこれから大いに役立ててまいりたいと思っております。改めて御礼を申し上げる次第でございます。
また、この地方公聴会開催に当たりまして、岡山県あるいは岡山市を初め関係の皆様方にいろいろ御協力をいただきました。心から感謝を申し上げます。
委員の皆様方も、どうも御苦労さまでございました。
これにて散会いたします。
午後三時五十三分散会
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派遣委員の福島県における意見聴取に
関する記録
一、期日
平成九年三月十二日(水)
二、場所
サンパレス福島
三、意見を聴取した問題
介護保険法案(第百三十九回国会、内閣提
出)、介護保険法施行法案(第百三十九回
国会、内閣提出)及び医療法の一部を改正
する法律案(第百三十九回国会、内閣提出
)について
四、出席者
(1) 派遣委員
座長 津島 雄二君
江渡 聡徳君 大村 秀章君
佐藤 剛男君 根本 匠君
青山 二三君 岡田 克也君
矢上 雅義君 枝野 幸男君
瀬古由起子君 土肥 隆一君
(2) 政府側出席者
厚生省高齢者介
護対策本部副事
務局長 江口 隆裕君
厚生省健康政策
局計画課長 田中喜代史君
(3) 意見陳述者
福島市健康福祉
部次長 鈴木 信也君
栃木県大田原市
長 千保 一夫君
社団法人福島県
医師会常任理事 原 寿夫君
連合福島事務局
長 和合 正義君
社会福祉法人福
島県社会福祉協
議会副会長 渡辺 康夫君
日本ソーシャル
ワーカー協会福
島県支部理事 小松智世美君
社団法人福島県
看護協会会長 遠藤 セツ君
生協いいの診療
所所長 松本 純君
――――◇―――――
午後一時開議発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/368
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369・津島雄二
○津島座長 これより会議を開きます。
私は、衆議院厚生委員会派遣委員団団長の津島雄二でございます。
私がこの会議の座長を務めますので、よろしくお願いをいたします。
この際、派遣委員団を代表いたしまして一言ごあいさつを申し上げます。
当委員会におきましては、現在、第百三十九回国会、内閣提出の介護保険法案、介護保険法施行法案、医療法の一部を改正する法律案の各案の審査を進めておるところでありますが、本日は、国民各界各層の皆様方からの御意見を承るため、御当地におきましてこのような会議を催させていただきました。
御意見をお述べいただく方々におきましては、御多用中にもかかわらず御出席をいただきまして、まことにありがとうございました。また、本席を準備していただいた関係者の皆様方にも厚く御礼を申し上げます。どうか忌憚のない御意見をお述べいただくようお願いを申し上げます。
それでは、まず、この会議の運営につきまして御説明申し上げます。
会議の議事は、すべて衆議院における委員会議事規則及び手続に準拠して行い、議事の整理、秩序の保持等は、座長であります私がとり行います。発言される方は、座長の許可を得て発言をしていただくようお願いいたします。
なお、御意見をお述べいただく方々は、委員に対しての質疑はできないことになっておりますので、あらかじめ御承知おき願いたいと存じます。
次に、議事の順序について申し上げます。
最初に、意見陳述者の方々から御意見をそれぞれ十分程度お述べいただきました後、委員より質疑を行うことになっておりますので、どうかよろしくお願い申し上げます。
なお、御発言は着席のままで結構でございます。
それでは、派遣委員を御紹介申し上げます。
自由民主党の佐藤剛男君、江渡聡徳君、大村秀章君、根本匠君、新進党の岡田克也君、青山二三君、矢上雅義君、民主党の枝野幸男君、日本共産党の瀬古由起子君、無所属の土肥隆一君、以上でございます。
次に、本日御意見をお述べいただく方々を御紹介申し上げます。
福島市健康福祉部次長鈴木信也さん、栃木県大田原市長千保一夫さん、社団法人福島県医師会常任理事原寿夫さん、連合福島事務局長和合正義さん、社会福祉法人福島県社会福祉協議会副会長渡辺康夫さん、日本ソーシャルワーカー協会福島県支部理事小松智世美さん、社団法人福島県看護協会会長遠藤セツさん、生協いいの診療所所長松本純さん、以上の方々でございます。
それでは、最初に鈴木信也さんから御意見をお述べいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/369
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370・鈴木信也
○鈴木信也君 私、福島市役所健康福祉部次長の鈴木信也でございます。
現在、高齢福祉を初めとする福祉の現場で、在宅や施設福祉サービスにかかわる者といたしまして意見を述べさせていただきます。
御承知のとおり、我が国は今、世界一の長寿国となり超高齢社会を迎えようとしておりますが、一方では少子化が進み、世代構造も大きく変化してきております。当福島市におきましても、このような傾向に変わりなく、平成八年十月実施の高齢者実態調査によりますと、高齢化率は一五・八%、対前年比で〇・六ポイント上昇しており、寝たきり、痴呆等要介護者が一千四百四十名に達し、年間二千五百件を超える介護サービスを行っております。
私たちは必ず高齢者となります。そして、介護する立場、介護される立場がいつ訪れるかわかりません。介護し、また介護されるいつの場合でも、介護という福祉の原点に支援の手を差し伸べ、安心して日常生活を送ることができるような介護制度の確立は、これからの日本社会において絶対に必要であると考えております。
このような折、政府ではこのたび介護保険制度を発足させるべく介護法案を国会に提出されておりますが、その制度運営の財源を保険料に求めており、しかも四十歳以上の中高齢者からのみ徴収することとしておりますが、高齢者介護を社会全体で支えるという基本目標から考えると、社会全体での支援ではなく、特定会員による互助会になってしまいます。より高度で将来を展望した介護制度を考えるとき、この財源は税に求めるべきであると思います。
この法案には、高齢者自身による選択、総合的、一体的、効率的なサービスの提供、市民の幅広い参加と民間活力の活用など介護制度の基本目標を設定し、要介護者家族、地域社会、民活の導入などに配慮されておりますが、問題が幾つかございます。
その第一は、六十五歳以上の第一号被保険者の保険料を、比較的高額年金受給者からは天引きをし、比較的低額年金受給者からは直接市町村が徴収することとなり、これでは未納者が発生することが予測されます。
その第二は、四十歳以上六十五歳未満の第二号被保険者の保険料はその二分の一を事業主が負担するため、本人は二分の一で済むのに対し、年金だけで一般的には所得が低いとされる六十五歳以上の第一号被保険者が全額負担しなければならないという問題が生じます。
また、第二号被保険者のうち、国民健康保険加入者分につきましては、国民健康保険料に上乗せして徴収することになりますが、現在でもその滞納が問題となっているのに、これをさらに増大させることになると考えられます。さらに、新しくすばらしい制度であるはずの介護保険制度は、国民健康保険料の滞納実績が妨げとなり、制度発足当初から多くの未納者を生ずることとなります。
その第三は、年金受給者にとって、三年ごとに見込まれている介護保険料の改定は大きな負担となってまいります。
その第四は、保険料滞納者に対し給付の制限、すなわちペナルティーが科せられますが、現在私どもが行っている介護サービス制度の上では全く考えられないことであり、この制度が福祉の後退になるものと考えられます。これを防ぐためには、市町村における新たな介護制度が必要となります。
これらの諸問題は、保険料として四十歳以上の中高齢者に財源を負担させる仕組みによるものでありますので、本当に望ましい介護制度を支える財源は税に求めるべきであるとする市町村や市民の方々からの声が大きくなってきております。
次に、この制度の市民の認識についてでございますが、厚生省高齢者介護対策本部発行のパンフレット「介護制度のあらまし」に「国民の八割が介護保険の創設に賛成しています。」と記載されておりますが、国民は制度を正しく理解しているのでしょうか。
当初の案では、保険料は月額わずか五百円と示され、高齢者でもさほど大きな負担ではないと受けとめられておりました。また、公的介護サービスは現在も行われており、この制度が国民の保険料負担によるものであるということがよく理解されておりません。さらに、この介護保険という制度は、保険ということから、医療保険と同様、自分で介護を受けたいときに自由に介護してもらえると思っており、本人と保険者とに意識の差が生ずるものと考えられます。
最近、本市におきましても多くの勉強会が行われておりますが、ある女性団体の勉強会で、二百五十人中この制度に賛意を表したのは三人のみでした。また保険料についても、法律によって負担を義務づけられる強制保険であり、直接税にも等しいこの負担に対し国民の八割が賛成しているのは疑問です。
しかし、少子・高齢社会にあって介護問題を考えるとき、その責任を家族や中高齢者のみに求めるには無理や限界が生じ、この介護制度を日本社会全体で支えていくことが基本原則であると考えております。
次に、介護保険の保険者は市町村となっており、市町村の人口、面積、財政、福祉サービス基盤等の規模は大小さまざまです。在宅サービスの水準などは市町村が地域の実情を踏まえて裁量でき、基盤整備が進んでいる市町村は、厚生省が定める基準より高い給付水準の上限を設定できます。一方、サービス基盤が整っていない市町村は、低いレベルからスタートさせ、段階的に水準を引き上げる仕組みであるとのことですが、措置制度ならともかく、保険制度としてこのような格差は国民の期待を裏切ることになるものと存じます。
以上のような問題から、保険あって介護なしというような事態になることだけはどうしても避けなければならないと存じております。
次に、介護認定審査についてでございますが、保険者である市町村の附属機関として介護認定審査会を設けることになっておりますが、この機能を都道府県や国保連合会に委託できるということです。このことは、要介護認定審査が事務的に大変だからといって都道府県に委託するというのでは、みずから地方自治を放棄することにつながってしまいますし、都道府県に集中したらその事務処理に膨大な時間がかかり、迅速な認定ができなくなり、要介護の状況によっては生死にかかわる大きな問題であります。こうした観点から、介護認定につきましては、市町村が責任を持って認定できる仕組みが必要であると考えております。
次に、老人保健福祉計画、すなわち新ゴールドプランの見直しについてでございます。
現計画は、初めてということもあって、計画策定の過程や財源確保などさまざまな問題が指摘され、平成八年度に見直すとのことでございました。私どもも県を通じ、早期見直しを求めておりましたが、具体的なその方針が示されません。介護保険制度をスタートされるに当たって、介護サービスのレベルを引き上げることが国民への公約となっており、そのためには当然サービスの基盤整備とマンパワーの養成確保が急務でありますが、この点についても明確にされておりません。
今般制定されようとしている介護保険法案について懸念される問題を述べさせていただきましたが、少子・高齢化社会を迎え、今介護されている方、また家族の方などを介護している方、皆さんそれぞれ戦前、戦中、戦後を通して大変御苦労をなされ、今のすばらしい日本を築き上げてきた方々でございます。また、今後被保険者となられる方々も、それぞれに地域社会を、そして市を県を国を支えてこられた方々でございます。人間だれしも年を重ね、高齢者となります。そして、だれしも好んで介護が必要な状態になるものでもありません。不幸にして介護が必要になったとき、国民全体で支え合える制度こそ人情味ある日本の真の福祉の姿であると考えております。
どうぞ、ただいま申し上げました点を十分ごしんしゃくいただき、慎重な審議をなされますようお願いを申し上げ、私の意見とさせていただきます。ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/370
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371・津島雄二
○津島座長 ありがとうございました。
次に、千保一夫さんにお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/371
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372・千保一夫
○千保一夫君 栃木県大田原市長の千保一夫と申します。
大田原市は、人口五万四千三百人ほどの田園工業都市とでも言える普通の小都市です。本日は、市長としての立場と一国民としての立場を交えての意見となりますが、お許しいただきたいと存じます。
高齢化社会に少子化と核家族化が追い打ちをかけ、要介護者の問題を深刻にしています。日夜福祉の先端にあって介護サービスのさらなる充実に努めている私たちにとって、その責任を家族に求めることの限界と社会全体で支えなければならなくなっていることは十分認識しているつもりでありまして、今般の介護保険法制定によって公的介護サービスの充実あるいは完璧な介護制度の確立を図ろうとしている国の姿勢には敬意を表すべきものがあります。
しかしながら、私は、保険料に財源の一部を求めていることに対し反対の意思を表明するとともに、ぜひとも、平成十二年度から予定されている保険料徴収にかえて、国民に広く薄く消費課税の強化をし、その加算分の税収を介護目的のみの財源とすることによって、国家と国民が真に信頼関係を維持できる福祉社会を構築していっていただきたいと思っております。
それでは、介護保険法案について具体的に何点かの意見を申し上げます。
まず第一点は、介護保険の目指すものは、介護を社会全体で支えることとしながら、実際は四十歳以上の中高齢者からの保険料負担による相互扶助的要素が色濃くあらわれていること。
第二点は、四十歳以上六十五歳未満のどちらかといえば所得が多い第二号被保険者の保険料は、その二分の一を医療保険者が負担するため、本人は基準額の二分の一を負担するだけで済むのに対し、六十五歳以上の第一号被保険者となると、一般的に所得が低いにもかかわらず、要介護リスクが高いということで基準額全額を本人が負担しなければならなくなり、高齢者にとって重い負担意識を招くこと。
しかも、第一号被保険者の保険料は、所得段階別保険料を採用して低所得者への負担を軽減するとは言っておりますが、基準額を納める所得階層は本人の住民税が非課税の者であり、ちょっとでも住民税を払うようになれば基準額の二割五分増し、もっと住民税を払えば五割増しというもので、第一号被保険者のうち六割と言われる住民税非課税者をベースにしていることから、保険料の重圧感は免れません。
第三点は、年金受給者にとっては年金支給額の物価スライドをはるかに上回る介護保険料の改定が三年ごとに見込まれ、将来ますます重圧感が高齢者を直撃すること。特に、介護施設整備とマンパワーの養成が進む上、介護を受ける権利意識が高まれば、国の将来予測を超えた保険給付が必要となり、即保険料の大幅改定につながっていくであろうことは明白であります。
第四点は、施設入所により多額の介護経費を要することにかんがみれば、在宅介護者に対する現金給付は、たとえ働く女性たちを中心に異論があったとしても、公平維持の観点からこれを認めるべきであること。
このことは、保険料徴収制度の当然の帰結であることと、これを認めないことは、今般の介護保険制度の方向性について大きな疑念を抱かせる原因でもあります。すなわち、これからの介護は在宅介護を第一に考えて取り組まねばならないことは既に国民的合意に達しているはずなのに、現金給付を認めないことは施設介護を奨励しているかのようで時代逆行であります。ドイツでは八〇%が現金給付を求めており、現物給付または現物と現金給付の組み合わせを選択する者は二〇%以下だと聞いています。
第五点は、高齢者介護に関する現行制度の問題として特に何点か指摘され、これらの問題点を解消するんだとしておりますけれども、これらの指摘は必ずしも当たっていないと思っています。すなわち、まず、利用者がサービスの選択をすることができないとありますが、現在でも市町村で要介護者のニーズに柔軟に対応しておりますし、あるいは新制度になったら要介護者の認定がなされないと思われるひとり暮らしや虚弱ぎみのお年寄りに対してもサービスが行き届いている部分さえ相当あると思っております。
また、所得調査の抵抗感とか、本人と扶養義務者の所得に応じた利用者負担となるため、中高所得者層にとって利用料金が重い負担となるとの指摘がありますが、現実に問題となっているのは特別養護老人ホームの入所措置費負担くらいであり、だからといって一律に一割負担にすることは、今度は中高所得者層の負担が大幅に軽減される一方で、これまでほとんど負担のなかった低所得階層にとっては能力を超える重い負担になってしまいます。したがって、特養入所等についてはやはり所得階層別の負担を据え置くこととし、限度額の引き下げを含めた利用料軽減を図ることが最も適切な処置であると思っております。
ちなみに、私ども大田原市におきましては、現在、デイサービスの本人負担は食事代実費四百円と入浴サービス料百円、計五百円のみ。ホームヘルパー派遣については、ことし一月の一カ月分を調べてみたのでありますが、利用者七十九人中本人負担ゼロの者が六十四人、一時間当たり二百五十円ないし九百二十円徴収される者が十五人で、この徴収金総額が五万一千九百二十円でありました。
利用料一律一割という制度は、中高所得階層の負担は比較的軽くなる上、さらに超過分を本人が負担すれば介護給付額を超えた介護サービスを利用できるような柔軟な仕組みになるようでありますから、中高所得者層にとりましては非常に恵まれた利用しやすい制度となる一方、一割の利用料負担さえままならない低所得者層にとっては利用を控えてしまう傾向も出てくると思っております。
第六点は、保険料未納者の取り扱い方についてであります。
第一号被保険者に対して市町村が普通徴収する低額年金受給者について滞納者が出ることは明らかでありますが、保険料完納者の手前、公平の見地からも保険給付率の引き下げや給付の差しとめをしなければならなくなりますが、現実問題としては、事業主体となる市町村の現場ではこれは困難だと思っております。
また、第二号被保険者のうち、国保加入者については国保税に上乗せして徴収することになりますが、現在でも多額の国保税滞納が問題であるのに、その国保料に上乗せとなればさらに滞納に拍車がかかってしまいます。この第二号被保険者が将来、要介護認定される年齢になったとき、未納者ゆえのペナルティー問題はより深刻な状況になると思います。
第七点は、全く逆の立場に立たされ、いわゆる保険あって介護なしのとき、市町村は大混乱になってしまうのではないかとのおそれを抱いています。
保険料を納めた権利者が要介護認定されたにもかかわらず、施設の収容力不足、マンパワーの確保困難等により保険給付ができなかったときには、当然債務不履行による損害賠償請求権行使となるでしょう。たとえ計画的に施設整備を進めたつもりでも不足することはあるでしょうし、二十四時間ホームヘルプサービスとなると、本当に深夜のヘルパー従事者を完全に確保してニーズにこたえるということを約束できるのか不安があります。
また、それ以前の問題として、要介護認定等に不服の者が行政訴訟を提訴する例は、ドイツにおける先例がありますが、施行後半年間で四十万件とも聞いております。現在、全国でモデル調査を行っているようでありますが、介護のランク判定に戸惑いが生じているとの報道もあります。
第八点は、事業主体となる市町村にとって、被保険者の資格得喪事務を初め、保険料の賦課徴収、さらには滞納整理事務など膨大な事務量となることに加え、事務経費も多額になります。
以上申し上げましたが、これらの諸問題はすべて保険料を財源に求めることから生じています。私たちの大田原市議会では、消費課税に財源を求めるべきとの意見書を、昨年十二月、政府並びに国会に送付いたしましたが、ことしになってから市内の消費者団体であります「くらしの会」が五千余名の署名を集め、また、市内の老人クラブ連合会も三千余名の署名を集め、それぞれ同趣旨の請願を国会に提出しております。平成十二年度に一%の消費税を上乗せすれば、それだけで保険料総額をはるかに上回る財源となりますが、高齢者の負担はその方がどれだけ軽く済むことかと考えると、だれもが消費課税に理解を示してくれます。
最後に、今さらの感もいたしますが、一言申し上げさせていただきたいと思います。
今後の介護が在宅で、しかも、できれば家族介護が介護される者にとっては最も幸せだとすれば、少子化に歯どめをかけなければ抜本策となりません。そのためには、所得税申告のときに、子供の扶養控除額を大幅に引き上げて、子育てを社会的責任と位置づけることによって、子供を育てた者は家族介護をより受けやすくなり、一方、子育てをしない者は若いうちから民間の介護保険加入により老後に備えることも公平維持になるのではないでしょうか。
また、その場合、公的に準備する介護サービスの水準を完璧なまでにしておくことが本当に求められるのか。すなわち、公的介護サービスは必要なある水準までで済ませ、それを超える水準は民間保険に加入するなど自助努力ではいけないのだろうかと素朴な疑問も持っている一人であります。
以上であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/372
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373・津島雄二
○津島座長 ありがとうございました。
次に、原寿夫さんにお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/373
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374・原寿夫
○原寿夫君 福島県医師会常任理事の原と申します。
福島県医師会では、高齢化率において全国平均を五年先行している福島県の現状にかんがみ、以前より高齢社会への対応策を考えるべく医療福祉委員会を設け、検討してきました。本日は、その委員会等で検討してきましたことから意見を述べさせていただきたいと思います。
初めに、介護保険法案関連についてでありますが、介護保険法案の第一章、「目的」の項で「その有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるよう、」とあり、次に、「国民の共同連帯の理念に基づき介護保険制度を設け、」云々と、間もなく迎える高齢社会に求められる考え方、その対応方法等、まさにそのとおりであると思われます。そこで、ぜひ同法案の内容がより実効性のあるものとなるために、次の二点を検討していただければと思います。
第一点は、在宅療養あるいは施設療養をしている方々に対して、その時々の病状等に合わせ、よりよいサービスを速やかに提供し得る制度であってほしいということであります。そのためには、介護認定審査会の運営方法及び再評価や定期的な認定の更新についてのさらなる具体的方法の検討と、特例居宅介護サービス費の支給及び特例施設介護サービス費の支給の現実に即した柔軟な運用のできる制度にしていただきたいと思うのであります。
初めに、介護認定審査会は、市町村に設置され、訪問調査の結果と主治医の意見等を踏まえて、要介護状態の区分等に関し審査及び判定を行うこととなっておりますが、福島県内九十市町村のうち、幾つの市町村が独自にこの審査会のための委員を確保し、会を運営できるでしょうか。恐らく県等へ委託する市町村が相当あるかと思います。
さらに、実際に運用が始まった場合、再評価の作業もかなりの事務量であると想像されます。というよりも、この再評価が適宜速やかに行い得るようでなければ本来よくないのではないかと思われるわけですが、そうはいいましても、被保険者が保険給付の申請をしてから実際にサービスが提供されるまでの時間は、できる限り短くなければなりません。
よって、書類の流れがより単純であってほしいわけですが、そればかりでなく、介護認定審査会の認定が決まるまでの間の特例居宅介護サービス費の支給や特例施設介護サービス費の支給という項目が設けられているようですが、ぜひこの項目の運用を活用しやすいものにしていただき、被保険者の病状等に合わせて適時適切なサービスの提供を行い得るように御検討いただければと思います。
第二点は、居宅サービス、施設サービスを実施し得るサービス提供体制の整備についてであります。
福島県は、御存じのとおり岩手県に次いで面積の広い県であり、人口三十万人前後の市が三つあります。また同時に、南会津や阿武隈山系といった地域もあります。こうした地域差を勘案して、平成四年から五年にかけて、福島県保健医療計画と県内七医療圏ごとの地域保健医療計画を策定しました。
現在でも、都市部と郡部の保健、医療、福祉に関する環境の違いはあります。それは、都市部では、訪問看護婦もホームヘルパーも訪問入浴サービスも各専門職員の人員の確保も含めて比較的順調に整備されてきておりまして、現在では、在宅療養者は、ギャジベッドとエアマットを使い、週一回の訪問入浴サービスと週に数回の訪問看護やホームヘルパーの派遣を受けることはごく普通のこととなっております。しかし、郡部においては、ごく一部の町村を除いて月に一回の訪問入浴サービスが精いっぱいであります。在宅療養は困難なのが現状と言えます。
このことは、ちょっとお隣が数キロメートルあり、しかも冬になると雪で道が通れなくなったりする、そういった地域におきまして、もともと在宅療養ということ自体がどこまで可能であるのか、あるいはどこまですべきなのか、一考を要するように思います。ただし、そのような地域におきましても、ここ数年特別養護老人ホームや老人保健施設等施設療養の受け皿はかなり整備されてきております。
以上のことを考えますと、居宅サービスと施設サービスの提供体制の整備について、その地域の状況に合わせた介護保険事業計画を策定していくことが大切であると思われます。住宅が密集し、保健、医療、福祉の各専門職が多くいて、ただし地価が高く施設はつくりにくいという大都市と、看護や介護を行うサービス提供者は少ないが、地価が安く施設のつくりやすい地方とは、おのずと異なった計画が策定されてくるのではないかと思われます。
そして、そうしたことを踏まえた上で、さらにその上で療養者の意思を可能な限り尊重するという観点において、各種サービス提供体制の整備が望まれるわけでありますが、このとき、地方におきましてはマンパワーの確保が大きな課題となります。訪問看護婦、ホームヘルパー、介護福祉士、作業療法士、理学療法士、社会福祉士等多くの専門職種の連携が居宅サービスにおいても施設サービスにおいても必要でありますが、どの職種を見ても充足することはほとんど困難であります。
よって、地域の特性を考えに入れ、かつ、長期的なマンパワーの安定的確保の可能な介護保険事業計画をつくれる制度にしていただきたいと思うのであります。そのためには、ぜひこのことを法案に明記していただきたいと思います。そして、各地区の計画策定の過程では、保健医療計画と同様に関係各専門職の意見をぜひ取り入れていただければと思います。
次に、医療法の一部を改正する法律案に関して述べさせていただきたいと思います。
一つは、療養型病床群の有床診療所への拡大についてでありますが、ぜひそのようにお願いできればと思います。先ほども述べましたように、福島県の七医療圏を考えても、要介護老人が日常生活圏において療養し得るための方法として最も現実的であり、かつ短期間に可能な方法であると言えます。
ただし、現行の保健医療計画における二次医療圏の必要病床数の算定方法からしますと、県内七医療圏中一医療圏を除いて一般病床は既に過剰ということになっております。つまり、有床診療所の病床を療養型病床群として新たに加えることができるものなのかどうか、疑問になってしまいます。よって、療養型病床群を一般病床とは別にその必要病床数の基準を考えるなど、二次医療圏の必要病床数の分類とその算定基準についてもあわせて見直しを行っていただきたいと思います。本来の目的が具現化され得るような方策をぜひお願いできればと思います。
終わりに、福島県県中医療圏におきます病診連携モデル事業での一つの例を御紹介させていただきまして、このことから、公的病院の少ない地域における地域的広がりを持った在宅療養支援体制を考えるときの民間病院の積極的な活用を検討していただければと思うのであります。
県中医療圏は、人口五十四万人、高齢化率一二・三%、医療機関数二百九十五であります。以前よりさまざまな在宅医療に関するモデル事業をさせていただいたことがありまして、在宅医療を含めた医療提供体制の整備が進められてきました。その一つとして、在宅医療に対する後方支援医療機関の病診連携室への登録があります。登録した医療機関は、その承諾のもと、登録医療機関の名称を在宅介護支援センターや訪問看護ステーション、あるいは市、保健所の保健婦等へ案内しております。
この登録医療機関を見ますと、資料でお配りしました一ページ目の下にございますが、二十四時間いつでも緊急入院可というところから予定の検査入院のみ可というところまで四グループに分けて希望をとりましたところ、合わせて、病院二十七、有床診療所十七の計四十四医療機関となっております。このうち公的医療機関は、資料の括弧に入れた数字でございますが、病院三、有床診療所二の計五医療機関のみで、一割程度となっております。逆に民間病院で開放型病棟のあるところが一医療機関あります。このような有床診療所を含めた四十四医療機関によって、県中医療圏におきます在宅療養者とその家族にとって極めて安心感のある医療環境が提供されております。
よって、かかりつけ医に始まり、療養型病床群、一般病床、そして地域医療支援病院、特定機能病院という新しい医療提供体制の構築に当たり、地域の状況に応じたより柔軟な対応の可能な方策を御検討いただければと思います。
以上、介護保険法案関連と医療法の一部改正案に関しまして意見を述べさせていただきました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/374
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375・津島雄二
○津島座長 ありがとうございました。
次に、和合正義さんにお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/375
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376・和合正義
○和合正義君 連合福島事務局長の和合正義でございます。
本日は、介護保険制度創設に向けまして意見表明の機会を与えていただきましたことに感謝するものであります。
さて、日本は今世界に例を見ないスピードで超高齢社会を迎えようとしており、国民の多くが老後の生活、特に病気がちや寝たきりになったときのことに不安を感じておるわけであります。高齢社会問題への対応は緊急の国民的課題であり、老後生活の安心感が得られ、家族の介護負担の軽減につながる公的介護システムの構築は、社会の安定を確保し、高度福祉社会づくりを進める上で不可欠の要件と言えます。
新しい介護システムの基本理念は、生涯にわたり人間としての尊厳が確保される福祉社会の実現を図り、社会連帯による自立生活への支援と自己選択権の確保を重視していくことだと思います。その意味におきまして、公的介護システムは、供給サイド本位ではなくて、あくまでも利用者本位で構築されるべきだと考えるものであります。
以上述べましたような立場に立ちまして、介護保険制度創設に向けた課題について、総論的に以下七点について意見を述べさせていただきます。
その第一は、新たな介護システムの制度化に当たりましては、新ゴールドプランの達成が不可欠ということであります。
新たな介護システムをつくるには、公的資金での人材や施設の量的、質的な整備が欠かせないわけであります。しかし、多くの市町村で、財政上の理由等から、新ゴールドプランの目標年次でございます平成十一年度までの基盤整備計画達成が困難な見通しと言われてございます。
保険あって介護なしとしないためにも、新ゴールドプランの確実な達成のみならず、私たちの求めるスーパーゴールドプランの策定、実施なども含めまして、現状の分析と計画達成に向けた対応策、これは財政措置も含めてでございますけれども、これを早急に講じていただきまして、国民にわかるような形で明示すべきであると考えるところでございます。
第二に、福祉に対する信頼回復の問題でございます。
特別養護老人ホームをめぐる厚生省最高幹部の贈収賄事件など、社会福祉法人の許認可と高齢者福祉施設への国庫補助制度のあり方の見直しが強く求められているところでございます。
介護保険制度実施までの基盤整備が、現行の国庫補助制度により行われていくことからも、政府に対しまして、行政監察を含む実態調査を早急に実施をして、問題点の把握と解決策の提示を行って、福祉に対する国民の信頼を回復されるように強く求めていくべきと考えるところでございます。
第三に、市町村に対する財政等の支援措置についてであります。
住民にとって最も身近な存在であり、介護を必要とする人の状態を一番よくわかっている市町村が保険者となるべきでありますが、小規模町村など介護保険者として明らかに適正規模に満たない町村については、広域的な運営を行うこと、場合によっては県と市町村による共同組織の設立など、地方分権推進との絡みを含めまして、その基盤強化が必要と考えているところであります。
その意味におきまして、市町村に対する財政支援の強化並びに市町村の事務負担の軽減と都道府県の役割拡大など、介護保険事業の運営が健全かつ円滑に行われますように必要な各種の措置が講じられることになったことは、大変適切だったと考えるものであります。
第四に、介護サービスの認定のあり方についてでございます。
介護サービスの認定に当たりましては、判定基準が厳し過ぎて介護サービスが受けられなかったり、住んでいる地域によって介護サービスに大きな格差が出たりしないように、公平さの確保される認定基準づくりに向けて十分な議論を行っていただきたいと思うわけでございます。
第五点目に、在宅介護サービスの充実と現金給付について述べたいと思います。
公的介護サービスは、当面は介護施設の整備に力点を置く必要がありますが、中長期的には、住みなれたうちで家族に囲まれて生活することが可能になる二十四時間対応の在宅介護サービスの充実に重点を置くべきと考えるところであります。さらに、新しい介護システムの一環といたしまして、介護休業制度の充実を図ることも重要になってまいりますし、サービスとしては十二項目挙がっているわけでございますけれども、外出介助サービスあるいは配食サービスといったものも提供すべきと考えるわけであります。
また、介護サービスは現金給付を基本としながらも、地方にあっては在宅介護を多く求める慣行や家族制度もございますので、その場合の家族に対する思いやりについてまで法的に締め出すとか、がんじがらめの法案にすることのないように御配慮をいただければ幸いと存じます。
ただ、現金給付を行うことによりまして、家族介護の固定化あるいは基盤整備のおくれ、現物サービスの提供が行われない要因となったり、あるいはまた公的介護保険が保険料の形で国民に負担を求めて現金ばらまき中心の制度になることを避けるのは、当然のことと考えます。
第六に、公的介護システムとボランティアの連携について述べさせていただきます。
公的介護サービスの提供は、専門知識を持った医療、保健、福祉の公的な介護従事者が緊密な連携のもとに当たるべきでありますが、要介護者の自立を促し、社会参加を手助けをするために、地域における市民互助の活動としてのボランティアの果たす役割は重要でございます。地域の介護システムの中におけるボランティア活動の位置づけを明確にし、公的介護システムとボランティア団体との連携を密接に図ることが重要であります。
ボランティア活動を非営利活動として認知をいたしまして、その公益性を重視する観点から、法制度の整備、活動を支える財政その他の公的な援助・支援措置、専門的な知識と組織能力を持ったコーディネーターの育成等を図るべきと考えます。
また、ボランティア活動を積極的に展開するためには、ボランティア休暇制度の拡充、活動参加者の企業における不利益取り扱いの禁止と職場復帰の保障、ボランティア保険やボランティア共済制度の拡充などの支援策を講じるとともに、ボランティアバンク制度の全国規模での構築や、行政区ごとのボランティアセンターの設置が望まれるところでございます。
最後に、給付と費用負担のあり方に関する国民の合意形成についてであります。
医療保険の財政危機が深刻化する中にございまして、介護保険制度の導入は医療保険の根本的改革への第一歩とも言われますが、国民にとりましては、介護保険の保険料負担から医療保険の負担減少額を差し引いた新たな負担増は、二〇〇〇年度で約六千七百億円、二〇〇五年度には約一兆円と推計され、その後も年々増加していくものと予測をされるところであります。
本格的な高齢社会に対する新しい介護システムづくりを国民総参加でなし遂げるためにも、地域介護の実際が具体的にわかるようなPR活動に十分力を注いでほしいと考えますし、制度導入当初から将来の費用の増大と保険料の負担増の見通しをきちんと示していただきまして国民に判断を求めていく、そのことがスムーズに国民的合意を得る近道になるのではないでしょうか。
以上申し述べましたことなどをお酌み取りいただきまして、国民の期待にこたえ得るすばらしい介護保険制度が確立されることを心から期待をいたしまして、発言を終わらせていただきます。
ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/376
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377・津島雄二
○津島座長 ありがとうございました。
次に、渡辺康夫さんにお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/377
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378・渡辺康夫
○渡辺康夫君 県の社会福祉協議会の副会長の渡辺康夫でございます。
大変恐縮でございますが、お手元に私がこれから申し上げます意見の要旨を配らせていただいておりますので、この内容に従いまして意見を述べさせていただきます。
私ども県の社会福祉協議会は、県内に市町村社会福祉協議会が九十ございまして、それから特別養護老人ホームが五十六ございますが、こういった関係機関を会員としております民間の社会福祉法人でございます。したがいまして、本日は、保険サービスを提供する立場と、市町村社協の会員は一般市民でございますからサービスを受ける側、すなわち利用者、双方の立場から一言意見や要望を述べさせていただきます。
今日、本県におきましてもお年寄りの介護問題は老後生活の最大の不安要因となっておりまして、特に高齢化の著しい進行、福島県は昨年十月で一八・〇%、国平均が一五・一%でございますから、福島県は五年ほど先行しておりますことを考慮すれば、今後深刻な問題となることが十分予測されます。
ところで、この公的介護保険制度が本当に利用しやすく公平で効率的な社会支援システムとなるのか、また利用者が自由にサービスを選択して利用できる仕組みとなるのか、これらがこの制度の趣旨、ねらいでございますが、その重要なポイントを本日は三つの問題点に絞って述べさせていただきます。
まず第一は、要介護、要援護の認定が、客観的な基準に従い公平かつ素早く適切に行われるのかどうかということでございます。
現在福島市においてモデル的に要介護の認定等が試行されておりますが、訪問調査、聞き取り調査の項目は六十を超える多数に及び、一人に数時間を要した例もあります。また調査員、例えば保健婦さん、ヘルパーさん、これらの方々の専門外の事項も一部にあり、さらに本人よりも家族が本人の動作等について詳しく説明をする例もあると伺っております。法施行後の具体的な認定は、これらの訪問調査の結果や、かかりつけ医の意見等に基づきまして、介護認定審査会が審査をして厳正な判定を下しランクづけをすることになります。
したがいまして、認定の前提として極めて重要な訪問調査が本人の現在の状況について正確に行われるのか、また、申請から認定までの手続や時間が現在と比べまして数倍も面倒になり日数もかかることになりはしないかなどなど、こういった懸念される点があるということでございます。
第二は、必要なサービスを提供できる十分な施設と人手が確保されるのかどうかということでございます。
県の高齢者保健福祉計画、これは平成十一年度目標でございますが、この計画のこの三月末までの進捗状況は、地域間にアンバランスはあるものの、特養は八一・六%、老健は七〇・一%と比較的高くなっております。一方、在宅福祉や在宅医療の重要な柱であるデイサービスセンターは四六・四%、また、介護全般の総合的な相談調整機関として、さらには公的介護保険のケアプラン作成機関としても大きな期待が寄せられている在宅介護支援センターは三五・四%、老人訪問看護ステーションは二一・七%でございまして、これらの達成率の低いのが気がかりでございます。
次に、介護専門職員の養成確保について、まず特養の介護職員につきましては、今、重度の入所者が増加している、さらに保険導入に伴ないより質の高い介護への要求が高まってくることなどを考えますと、四・一対一の基準を早い時期に三対一へと改善充実が図られますことが現場の要望でございます。
さらに、サービスの充実には、量的な増員も重要でございますけれども、人間性が豊かで技能、技術にすぐれた専門職員を現場では必要としております。とりわけ、在宅福祉サービスの重要な戦力であるホームヘルパーさんは、みずから常に研さんに励み、熱心に業務に取り組んでいただいておりますが、社会的評価、身分の保障、処遇、待遇等の勤務条件は必ずしも十分ではなく、その充実強化が強く望まれます。
また、今後設定される介護報酬の額、単価についてでございますけれども、恐らくこれが今後の最重要課題であろうかと存じます。これがどの程度に設定されるかは、優秀な人材の確保やサービスの充実に直接つながりますし、また一方では一割の利用者負担もございます。私どもといたしましては、介護保険制度というものは自立に向けた介護を目指すということでございますので、身体介護や家事援助の額をできれば高目に設定してほしいこと、こういったことなどを総合的に考慮していただきまして、適正な社会的基準に基づき設定されることを要望いたします。
最後の三番目でございますが、自治体、特に市町村、あるいは社会福祉協議会、これも特に市町村社協でございますが、それらの取り組む意欲や組織体制、財政基盤の差が具体的なサービスの格差につながらないかということでございます。
在宅福祉サービスの利用率は、年々上昇しているものの、福島県においても市町村間に差がございます。その要因は、依然として残っている介護は家族でという考え方や、他人に家庭をのぞかれたくない、福祉の世話になりたくないなどの住民意識も関係しております。また、潜在的な需要の掘り起こしなどに欠ける面もあることも考えられます。しかし、質的にも量的にもサービスが不足しており、新しい介護ニーズに十分こたえられないことも事実でございます。
ところで、今後は、規制緩和の推進や民間活力の活用により、多様な事業主体の参入が見込まれ、福祉の領域にもある種の競争原理が働くことも予想されます。
ホームヘルプ、これはやっておる町村のほとんど、それから訪問入浴は六割、デイサービスは福島市一カ所でございますが、こういった事業の委託を受けているのが市町村社会福祉協議会でございます。したがいまして、今市町村社協に早急に求められているのは、保険対象外の事業、すなわちお年寄りへの給食配食サービス、あるいは小地域のネットワーク活動等々でございますけれども、これらを含めて在宅福祉サービス全体の質と内容をいかに高めていくかということでございます。このことは介護保険制度を実は効果的、効率的に運用することにもつながるわけでございます。
そのためにも、何といっても行政の社協に対するてこ入れ、積極的な支援並びに行政と社協との協働、さらには県社協と市町村社協との連携を深め、県下すべての地域でのレベルアップを図り、地域全体の福祉の向上を目指し、住民の信頼にこたえていくことだと考えております。
最後に、まとめをさせていただきます。
公的介護保険制度の具体的な内容につきましては、私ども関係者のみならず、四千四百人の県下の民生児童委員さん、あるいは日夜御苦労されております在宅介護者などを初めといたしまして、たくさんの県民が関心を寄せております。したがいまして、この制度の要点をわかりやすく具体的に解説したパンフレットなどが既にできておるわけでございますが、こういったものあるいは地方自治体の広報紙等を通じまして積極的な情報提供に心がけ、県民の不安や疑問の解消に努めてほしいのでございます。
次に、施行法案に関連してでございますが、特定の市町村につきましては、在宅部分について、サービスの必要量の見込みやサービス供給体制の確保の状況等を考慮し、限定的なサービス給付でよいとする経過措置がございます。これは、全国三千三百すべての市町村が法施行後直ちに国が定める給付水準を確保することは困難でございます。段階的にその水準を引き上げていくということはやむを得ない措置であると考えております。その期間は法施行から五年を経過した以後の日までの間、こうされておりますが、二〇〇五年度までには多くの市町村において完全実施されることを利用者は望んでいるのでございます。
終わりに、介護保険の導入は、介護を社会全体で支える大変有意義な制度でございまして、その一日も早い実現を多くの県民が期待を持っていることを申し上げまして、私の意見、要望の陳述を終わらせていただきます。
ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/378
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379・津島雄二
○津島座長 ありがとうございました。
次に、小松智世美さんにお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/379
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380・小松智世美
○小松智世美君 小松でございます。
私は、総合病院に働くソーシャルワーカーでございます。医療ソーシャルワーカーと呼ばれる社会福祉の専門職者でございます。私の病院は創立百年を超えた大規模な総合病院で、現在、高度救急医療からリハビリテーション、在宅ケア部門を持ち、老人保健施設、在宅介護支援センター、訪問看護ステーション、老人性痴呆疾患センター等々があります。
私は、昭和三十四年に就職しましたが、以来どんどんと医学、医療の発展充実に伴って、その医療サービスは多くの地域住民にとって身近なところにいつも存在するものとなり、長生きできる社会へとつながっていく実態の中におりました。そういう病院に身を置き、疾病や治療に携わるのではなく、病人の家庭生活、職業・学業生活、社会生活を支え、人生を全うできるよう支援する仕事、すなわち社会福祉援助サービスに携わってまいったわけです。当時、医学、医療の進歩発展のための基盤整備が国を挙げて行われ、特に私は国民皆医療保険制度を挙げたいと思いますが、医療職人材の育成も積極的に行われました。
その裏表の関係ですけれども、高度な医療が広く提供できればできるほど、社会復帰できにくい心身の障害の問題や、そういう状態の人を受け入れにくい家庭の問題や、地域社会の仕組みの課題が、治療中心の病院には重くのしかかっていること、人間の社会生活者としての暮らしへの支援、人生への支援を行うべき社会福祉制度、社会福祉諸サービスの不足や立ちおくれが、いわゆる社会的入院を生み出す要因でもあることを目の当たりにしてまいりました。
人間に向き合い、並び合う最先端の職場である病院にとっては、生活を支える支援サービスは不可欠のものでございます。ソーシャルワーカーは必要不可欠な職員でしたし、今もこれからも必要です。現在、私の病院には十二名おりまして、全国には六千名ほどおります。
本日私は、ただいま述べました経験を踏まえまして、このたびの介護保険法案が、真に人間の暮らし、人生、そして何よりも人間としての尊厳と人権が保障される法律となるよう願っておりまして、二つのことに絞って申し上げたいと思います。
一つ目ですが、法案の中に一貫して用意されている給付は、保健医療サービスと社会福祉サービスに係る給付です。それらは利用者、いわゆる被保険者に必要なサービスであり、介護そのもののサービス給付と予防としての支援サービス給付とし、介護を要する状態にならないためのサービスを明確にしていることを私は高く評価したいと思います。
従来の福祉サービスと言われるものは、貧困に陥ってしまってからとか寝たきりになってしまってからとか、家族や地域社会から見捨てられ、見放されてからでなければ対象とされないものがほとんどで、人間としての尊厳を守る上からも、人権上からも、財源上からも不備、不足であり、また非効率的でもあります。予防的福祉サービスの給付というのは、人間を大事にする法律であると思うからです。
その意味で、要介護、要支援の認定やその要なしの認定は、この法律の根幹、命、理念を示すと言うべきもので、実施に当たっては何よりも大事なものと認識されなければならないと思います。
そこで、ごらんいただきたいのですが、法案第三章第十五条二項には、その認定に当たる介護認定審査会の委員をだれにするかが記されております。読んでみます。「委員は、要介護者等の保健、医療又は福祉に関する学識経験を有する者のうちから、市町村長(特別区にあっては、区長)が任命する。」とあります。
私は、この「又は」は「及び」にすべきというのが意見であり要望です。「又は」と「及び」の違いには大きな意味のあることはおわかりいただけると思います。つまり、保健、医療、福祉のそれぞれの専門家は同格で配置され、必ず配置されなければならないと思うからです。
法案中、何カ所か、この制度を実施するに当たっては医療との連携を大事にするということが記されておりますが、これはこの法律が社会福祉の法律であることを示し、しかし医療サービスとの連携がしっかりとできなければ利用者にとっては不十分な給付になるものだということを示している法律だと思うからです。このことからしても、「又は」はこの法律の目的、理念には矛盾するのではないかと思います。
同じく、第三十八条の都道府県介護認定審査会委員及び第百八十八条の専門調査員の条文も、「又は」ではなく「及び」にするべきと思います。たった二文字ですが、持っている意味の大きさを受けとめ、この法律の社会的意義と画期的な独自性を大事にしてほしいと強く強く申し上げる次第です。
次に、二つ目を申し上げます。
被保険者、つまり利用者がこのサービスを利用しようとするときは、現実問題として人生の寂しさや悲しみや、生きること、暮らすことのつらさやあきらめ等々の思いの渦巻く決して幸せな状態ではないときであり、混乱やせっぱ詰まった状況の中で決断や選択が行われると言ってよいと思います。
それに加えて、社会福祉サービス利用や活用に対する意識や価値観は、権利としてのそれではなく、古くから続いてきた慈善的、恩恵的な、ともすると人間の尊厳と平等が無視されかねない権威的、お仕着せ的給付であった歴史的体験が、福祉は世間体の悪いもの、恥ずかしいもの、国のお世話になることは人間として困った人という価値観を育ててしまっており、今でもあり、そういう中での利用や選択であります。そして、何よりも利用者は、心身の機能が衰え、現状の認識のできにくい状態になっている場合が多く、家族もまた疲労こんぱいの中で冷静な温かな思いやりでの対応が続かず、それまでの良好な関係が崩れてきている場合の多いのが現実です。
このような中で、訪問調査やケアプラン策定が行われることに心し、利用者みずからの意見や希望がきちんと冷静に整理され、偏見や押しつけから解放されての意思表示であるかどうか、そして人権が守られ、権利行使としての利用、選択であるかどうかを見届ける利用者側の代弁機能を備えることがこの法律には重要かつ必要ではないかと思うものであります。そして、その責任のある法律であってほしいと私は思います。
不服のあるときへの対応として、百八十三条の規定がありますが、この不服のある者との関連で、代弁機能とその責任の明文化を強く望みたいと思います。
以上、二つのことを述べさせていただきましたが、最後に私は、この法律をスタートさせるに当たっては、現時点では給付サービス等々の普遍性、公平性、妥当性、専門性のどれをとっても完全な状況にはないことを承知の上で、しかし、かつて医療保険が、医師も看護婦も建物さえも思うようにはそろわない中で、国民皆保険の持つ意義を目指し、国も地方自治団体も民間も、そして国民自身もあらゆる努力、協力をし合って無医地区を克服し、人生半ば、志半ばで無念な病死を迎える不幸に立ち向かった歴史を知っている者の一人として、このたびの介護保険制度が、人間が人間に与え示した人間の課題である介護への取り組みを社会的使命として法律化されることに心から賛同し、感謝し、法の成立、制定されることを心から望んでいることを申し上げたいと思います。
医療職に比べて数段、いや数十段立ちおくれている私たち福祉専門職の人材育成にもどうぞ積極的に取り組まれることをあわせて望み、つたない意見ではありましたが、述べる機会をいただきましたことに深くお礼を申し上げて、終わらせていただきます。
ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/380
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381・津島雄二
○津島座長 ありがとうございました。
次に、遠藤セツさんにお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/381
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382・遠藤セツ
○遠藤セツ君 福島県看護協会の遠藤と申します。意見陳述の機会をお与えいただきまして、ありがとうございました。
医療の現場で、また地域の中で働いております私ども看護職は、まず、介護保険法案の早期に成立することを望んでおります。
法案審議に当たりまして、理念というか、四つの観点から御審議いただければ大変ありがたいと思っております。
第一点は、今まで家族に依存してきた介護を社会サービス化するという点。第二点は、高齢者自身の選択が保障されて、利用者本位の統合されたサービスが提供される新介護システムをつくる。第三点といたしまして、その人の状態に応じて、残っている力を最大限に活用し、より質の高い生活が維持できるように、予防とリハビリテーションを重視する。それから第四点といたしまして、できる限り住みなれた家庭や地域で暮らし続けられるように在宅ケアを充実するということであります。
次に、私どもは、そうした理念を生かした新介護システムにするには、具体的なことになりますが、要介護者の認定とケアマネジメントが重要であるという考え方に立っております。
したがいまして、要介護認定に当たりましては、妥当性、客観性、公平性、透明性が担保されるよう、訪問調査及び介護認定審査会で運営されるのがよいかというふうに考えております。
また、要介護者に必要なもろもろのサービスにつきましては、その人に合った形で効率的に提供するためには、保健、医療、福祉のチームでアプローチすることが必要であります。その際に、ケアマネジャーの役割は非常に大きいものがあります。看護職は、訪問看護ステーションや在宅介護支援センターなどで在宅ケア、サービス調整の経験をしております。そうした経験から、新介護システムにおきましても、ケアマネジャーとしての力を発揮したいと考えております。
さらに、日本看護協会では、既にケアマネジャー養成研修会を十二月と三月に行っております。四百三十名の看護職者が既に受講いたしております。福島県からも十七名が参加いたしております。県看護協会におきましても、講習会や実務研修について、国、県からの委託などがあれば引き受けていく用意はございます。
なお、訪問看護婦養成講習会も平成四年から実施いたしておりまして、県内でも看護職の中で二百七十名ほどが受講をしております。訪問看護といいますと、従来ですと保健婦が軸になってやっておりますけれども、臨床的な側面を持ったケアということになりますと、当然看護婦ということになります。そうしますと、地域の中で訪問して指導するというのは、臨床の中で経験するものにプラス必要なものがございます。それを訪問看護婦養成講習会で補っている。これも福島県は二百七十名ほど終わっております。今後もさらに続けていきたいと思っております。
最後になりますけれども、制度の実施に当たりましては、サービス提供体制の基盤整備が不可欠であると考えます。
ケアマネジメント機関ともなる訪問看護ステーションにつきましては、新ゴールドプランでは五千カ所設置ということになっておりますけれども、この数では不十分だと考えております。最低中学校区に一つという考え方になりますと、約倍の一万カ所ということになるわけですが、そのくらいのものがあって、初めて中身の濃い行為が行われるのかなというふうに考えております。
看護職者の中には、訪問看護ステーションを設置して貢献したいと考えている者が多くございます。ただ、訪問看護ステーションを開設する場合には、法人格がないとできないことになっております。現在看護職者が設置しております訪問看護ステーションというのは、県の看護協会が設置しているのが大半でございます。
そういう点で、やりたいという意思があっても、なかなか法人格というところまで持っていけないということで実現ができないというふうな現状がございますので、前にNPO、非営利機関に法人格を与えるというふうなことで審議されたことがあると聞いているわけですけれども、訪問看護ステーションを設置したいという看護職グループにもそういう面でもう少し枠を広げていただければ、また在宅ケア、在宅看護というものが充実していくのではないかと思っております。
以上、看護協会の立場で意見を申し述べさせていただきました。ありがとうございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/382
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383・津島雄二
○津島座長 ありがとうございました。
それでは、最後になりましたが、松本純さんにお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/383
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384・松本純
○松本純君 生協いいの診療所で所長をしています松本です。
私の勤務しています診療所は伊達郡飯野町にあります。ここでは兼業農家が多く、人口は約七千人で、高齢化率は二四%と高くなっています。多くの若い人は共働きで勤めに出るために、昼間はお年寄りが家に残されていますので、それぞれに介護の問題は町民の生活上、大変大きな問題となっています。私たちの診療所では、老人デイケアや往診をやっています。昨年十月には訪問看護ステーションを開設して、在宅医療には全面的に取り組んできました。
私は、日常的な経験から、介護の問題を公的に保障する何らかの社会的な仕組みをつくることは早急に必要であると切実に感じているところです。確かに、社会的に在宅介護や施設介護を十分に行うには大きな財源を必要とします。そのために社会保険方式を取り入れることはあり得ると思っています。しかし、この介護保険法案では、だれもが人間としての尊厳が保てる介護を受けることができるようになるのであろうか、社会的に本当に公平と言えるのか、私としましては大いに危惧を感じているところであります。
そこで、以下三つの点につきまして、私の感じているところを述べさせていただきます。
まず第一は、要介護認定の問題についてです。
先日、私のところに福島市の市長さんから要介護認定意見書のアンケートが来ました。私は、飯野町に隣接している福島市の一部にも往診をしていますので、介護保険のモデル事業ということでした。かなり事細かな意見書を書くことになるのだなと思いましたが、今度の介護保険法案では、この意見書が審査機関にかけられて、要介護者として認定されるまで待たされることになります。そして、結果によっては予防給付しか受けられない要支援者に区別されるかもしれませんし、そのときは施設介護が受けられなくなります。審査結果に対して不服があれば変更の申し立てができるとされていますが、一々手続が必要ですし、調査もされるとのことです。市町村による審査機関ということですが、保険の財政状態によってはどうなるのか、必要とする介護を速やかに受けられるのか、非常に危惧されるところです。
要介護認定が、対象と範囲が限定されてしまうような制度であってはならないと思います。ですから、介護保険法案にある「要介護者」と「要支援者」との区別についてはこれを取りやめて、「介護の必要な者」として法案を修正していただきたいのですが、いかがでしょうか。
第二の問題として、社会保険方式での保険料を徴収する仕組みについてです。
一号被保険者の介護を利用することができる六十五歳以上の人の多くは年金生活者ですが、一定額以上の年金の人からは天引きで保険料が徴収される、そして低額の年金で天引きしにくいところを地方自治体に徴収させるというようになっています。また、二号被保険者とされる医療保険対象の四十歳から六十四歳までの多くの人は、例えば飯野町では国民健康保険が多いのですが、国保税に上乗せして納入することになります。しかし、今でも国保税を払えないでいる人がかなりいます。金額換算で五%ということのようですので、市町村によっては滞納者を合わせると一割を占めるところもあると思われます。これに介護保険料を上乗せするとなると、さらに未納者、滞納者が上乗せしてふえることが予想されます。
しかも、介護保険法案では、このことを予想してか、滞納者や未納者に対する保険給付差しとめなどの制裁が既に細かく規定されています。福島県のいわき市では、数年前国保税が払えなくて医療を受けることができないまま死亡した事件が起こりました。このような人たちは、国保税を払わないで何か得をしようとしているのではないのです。生活に困っていて払うことができないでいるのです。介護保険法案は、なぜこのような人たちからこのような保険料の徴収の仕方をするのでしょうか。その上、なぜこのような人たちを介護サービスから排除したり制裁したりするのでしょうか。
第三に、介護の供給体制の整備がおくれているということです。
これでは、多くの介護を必要とする人がサービスを受けることができずに、保険制度だけができてしまうということになりはしないかという心配があります。中でも、人手を必要とする方面は、圧倒的に準備がおくれています。ホームヘルパーの人数もそうですし、訪問看護ステーションや在宅介護支援センターは西暦二〇〇〇年を目指した計画に対しても二、三〇%の進捗率です。例えば訪問看護ステーションは、この福島市と飯野町のある伊達郡の九つの町でそれぞれ十カ所ずつつくる予定ですが、今のところ四カ所ずつです。しかも、福島市でも山間部は広いのですが中心市街地に偏在していますし、伊達郡では、訪問看護ステーションも在宅介護支援センターもない町がまだあるのが実際です。
福島市の周辺では、施設づくり関係だけは一定進んでいるように見えますが、それは老人保健施設ぐらいのものです。特別養護老人ホームやデイサービス、ショートステイの建設計画もおくれていますので、介護保険ができても利用することができないことが起こりはしないか、非常に危惧されるところです。そして、公的に介護サービスが整わない部分をやむを得ず自由料金の民間事業に頼らなければならなくなる、そういう事態になってしまってよいのか、根本的に考え直してみていただきたいと思います。
以上、介護保険法案に対して、私が問題に感じていることを述べさせていただきました。このような危惧を持たざるを得ないような介護保険の法律が、とりあえずできてしまってよいのでしょうか。今、切実に国民の求めている公的に介護を保障する制度を築くためには、早急に介護サービス供給基盤を先行させて、全国に格差なく介護サービスを受けることが可能となるようにすることだと思います。
介護保険法案には抜本的な修正を加えた上で、国民の求める公的な介護保障の制度ができることを願いまして、私の発言を終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/384
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385・津島雄二
○津島座長 ありがとうございました。
以上で意見陳述者からの御意見の開陳は終わりました。本当に時間どおり、皆様方、大変簡にして要を得た陳述をしていただきまして、ありがとうございました。
―――――――――――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/385
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386・津島雄二
○津島座長 それでは、これから委員の皆様からの御質疑をいただきたいと思います。
質疑につきましては、理事会の協議によりまして、一回の発言時間が三分以内となっておりますので、委員の皆様方の御協力をお願い申し上げたいと思います。
なお、質疑のある委員の方は、挙手の上、座長の許可を得て発言されるようお願いいたします。また、発言の際は、所属会派及び氏名をあらかじめお告げいただき、答弁を求める意見陳述人の御指名もお願いをしたいと思います。
それでは、質疑のある委員の方、挙手をお願い申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/386
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387・佐藤剛男
○佐藤(剛)委員 座長、ありがとうございます。
自由民主党の佐藤剛男でございます。
ただいまは陳述者の方々から有益なる御指摘を賜りました。また、非常に貴重な資料を賜りました。最初に御礼申し上げさせていただきます。
そして、皆様方のお話を伺っておりまして、非常に共通的なものがございます。だれしもがおっしゃられておりますのが、保険という制度をとったときの、保険あって給付なしと。基盤整備が大丈夫なのかどうなのか、あるいは和合さんのおっしゃられるようにスーパーゴールドプランというようなものが必要なのじゃないか。簡単に言いますと、私は見直しの話なんだろうと思うのでございますが、居宅サービスあるいは介護施設等についての見直しをした場合に、皆さん方のお話を聞いていますと、今の松本さんのお話もそうですが、減るのじゃなくてふえるのだろうという話がございました。その点、後ほどお聞きしたいのですが、まず指摘しておきたいと思います。
それから、非常に重要な御発言が小松さんからございました。国民皆保険を目指していったときの日本の昭和三十年代までの歴史、その公平性、専門性という問題を努力をしながらもやってきたということ、そして医療と介護とは峻別して行っていくことが必要であって、そういう中でもはや血族を超えた問題、社会的な問題として取り組むべきだ。とにかく、こういう言葉がいいのかどうかあれですが、試行錯誤といいますか、そしてやってみてベター、ベターへ持っていくという努力が必要なのじゃないかというふうに私は理解いたしたわけでございます。
それから、遠藤さんから、特に居宅サービス事業へ、NPOのような非営利組織というようなものを含んで多様な事業主体を考えるべきではないか、そういうお話があったことは、私、銘記いたしたいと思うのであります。
ただ、こういう点が明らかになったと思うのですね。大田原市長さん、福島市の方からのお話で、つまり保険という形でスタートするということについて、税でいくべきだという根本的な議論がありました。そして、それについての徴収の仕方であるとか、あるいはその他人員、マンパワーの問題であるとか、さらには地域間の格差の問題があるとか、そういう点が指摘されたものだと思うのであります。ただ、介護の問題について何かやらなければならないということは共通いたしているわけでございまして、その取り組み方についての問題ではなかったか。たくさんの指摘を賜りまして感謝申し上げる次第でございます。
それで、私ちょっとわからなかったのは、最後の松本さんの御意見の抜本的な改革ということなんですが、松本さんが頭に置いておられますものは基盤先行型で、保険というのは時期尚早で、保険制度、介護保険は要らないというようなお話なのかどうなのか。何かそちらの方からまず質問するようで恐縮でございますが、ほかの方々とちょっとニュアンスが違うなという感じを私はお受けいたしましたので、もし間違えていましたら、どうぞ答弁の折にあれしていただきたいと思います。
そして、全般的に共通してお聞きしたいことが、和合さんの言われましたスーパーゴールドプラン、あるいはゴールドプランの見直しという問題をやったときに、特に栃木それから福島の場合、これはやってみないとわからないわけですが、見直しを行った場合、要介護者の問題とかそういうものの増大、そんなことについての見通しをお聞かせいただければと思います。
幾つかについての問題指摘やら質問やらがありましたが、御理解賜る中で御回答賜れば幸いでございます。
座長、ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/387
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388・津島雄二
○津島座長 何人かのお名前を挙げられましたけれども、御答弁者としては松本さんと鈴木さん、千保さんですか。それではこの御三人にお願い申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/388
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389・松本純
○松本純君 私の意見は、介護保険法という法律をもっての制度は必要だというふうに思っております。そして、財源としましては社会保険方式を取り入れた財源というのもあっていいというふうに思っております。ただ、租税方式との組み合わせということでなければならないのではないか。なぜならば、低所得者から徴収ということはどうしても無理があるということで、租税方式を取り入れて組み合わせた形が本当の社会的な公平と言えるのではないかというふうに考えております。
そういう意味で、この法案ではかなり修正すべき点があるということを先ほど述べさせていただいたわけですけれども、修正の上、介護保険法の法律のもとでの介護制度ということができることを望んでおります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/389
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390・津島雄二
○津島座長 ありがとうございました。
それでは、続いて鈴木さん、千保さん、こういう順番に。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/390
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391・千保一夫
○千保一夫君 ゴールドプランの見直しをしたときの要介護者増大の見通しについてということだったのですが、実は私どもの方でも、現在の制度上でもどんどん対象者が年々ふえてきているのはもちろんでありますが、ゴールドプランの目標年度であります平成十一年度までにはさらに高まっていくということです。ただ、私どもの方では、特別養護老人ホーム等の施設整備は既に十一年度の目標を達成していることになっているのです。しかしながら、入所措置対象という判定を受けていながら待機している人がもう既に昨年度あたりからできております。
私どもの地域は広域で、郡単位で七市町村で計画を立てているわけでありますけれども、施設整備はもう目標を達成しているのです。平成七年にすぐに達成して、一番進んでいる地域なんであります。しかし、それでももう既に満杯で、待機者がどんどん年々ふえてきているという状況でありまして、これが保険ということになりましたら、権利ということになりましたら、もっともっとふえてくるのではないか、こういう気がいたします。
それと、先ほど昭和三十年代の国民皆保険の話がありましたが、医療保険の方につきましては、今国民的な大問題になっているわけでありますが、それでも命に関係する問題でありますから、国民はやはりこれは絶対に後退させるわけにはいかない、こういう制度であります。
国民年金の方につきましては、昭和三十六年にできて、当時月額百二十円の掛金が今一万二千数百円になりました。百倍を超えましたけれども、年金の給付の方は、当時の年額四万二千円が今まだ八十万前後でありますから、十八・七倍ぐらいだったと思いますが、掛金は百倍、年金給付は十八倍ぐらいの状況になっているのですね。しかし、これらもある程度我慢できるものでありますから、やむを得ないということでおります。
今度、介護保険ということになりますと、この介護保険は、いずれのところまでいきましたら、やはり国民年金と同じように切り捨てられる。国民年金も随分何回も給付をカットしてきております。これからこの介護保険につきまして制度導入をいたしましても、余りにも利用量の増大とそれに伴う経費増大によって、二分の一は保険料で賄うことになりますから、月額の保険料が天井知らずにと言うと語弊があるかもしれませんが、どんどん高まっていくということになりますと、どこかの時点でもうこれ以上は負担ができないということになりますと、やはり福祉も介護についてもどこかの時点で水準を切り捨てなければならない、切り下げなければならないという時代が来るのじゃないか。
しかも、国民年金と介護保険については水準を切り捨てることができるものであります。医療については切り捨てられない。切り捨ては非常に問題があるわけでありますが、年金と介護は水準を切り下げることができる。どこでどうしなければいけないということはありませんで、どこかの時点で妥協することが自由にといっていいくらいできる問題でもあります。
私は、そういう意味で、保険あって介護なしというもの、これは市町村として権利請求にこたえられないということでありますから大混乱しますが、将来介護経費の保険料負担ができなくて水準を切り下げることがあるだろうと心配しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/391
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392・鈴木信也
○鈴木信也君 新ゴールドプランの見直しについてでございますけれども、私ども福島市では、先ほど意見陳述の中で申し上げましたとおり、八年十月の実態調査によりますと、一五・八%、人数にしまして四万五千三百三十二名の高齢者がおられます。それが目標年次には一七・五%、人数にいたしますと五万四百人程度の高齢者ができるであろうということを想定してこのプランを作成したわけでございますが、今はもっともっと進んでおりまして、目標年次には一七・八%、対象人員は五万二千人程度になるのではないか。こうなりますと、これまでの施設計画あるいはマンパワーの計画そのものが現在のものでは間に合わないということで、それに応じた施設の整備、マンパワーの確保が必要になってくるのではないかというふうに思われます。
以上でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/392
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393・岡田克也
○岡田委員 今鈴木さんと千保さんから共通して、保険では難しい、むしろ税だという御指摘をいただきまして、大変興味深く聞かせていただきました。特に、六十五歳以上の方については未納者が発生せざるを得ない、あるいは四十歳から六十五歳未満の人には国保の上乗せということだけれども、徴収できないばかりか国保の未納がふえることも予想されるというふうに御指摘された点は、非常に重要な点だと思っております。行政の側からそういう御意見が出たということは、非常に重大な御指摘だというふうに受けとめております。
そこで、お二人共通して言われたことのもう一つに、ペナルティーの問題がございました。つまり、未納者に対してサービスを削減するということは考えられないというお話でございました。しかし、保険という前提に立つのであれば、保険料を払わなかった人に対して保険料を払った人と同じだけのサービスをするということはあり得ないことであります。もしそういうことであれば、だれも保険料を払わないわけでありまして、保険そのものが成り立たないわけであります。しかし、現実にはそういったサービスを削減するということは非常に難しいことも事実であります。
そこで、お二人以外の、むしろ福祉の現場に立たれる皆さんの中で御意見があればお聞かせいただきたいと思うのですが、保険という前提に立てば、今申し上げたように、保険料を払っていない方についてはサービスなしかあるいはサービスを何らかの形で区別するということをせざるを得ないわけでありますが、そういうことが福祉の現場で本当にできるのかどうか、その点についてのコメントがあればお聞かせをいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/393
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394・津島雄二
○津島座長 御指定は恐らく渡辺さんとか小松さん、福祉に直接関係がおありということで、いかがでございますか。では、小松さん、お願い申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/394
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395・小松智世美
○小松智世美君 保険料の未納者に対しては保険給付、いわゆるサービスを行わないということは考えられません。実態が介護の必要な人に対しては提供するという趣旨の法律だというふうに思えば、そこの矛盾なりあるいは限界なりということは、やはりきちんと法律をつくる側で手当てをしなければならないと思います。保険料が払えない人にサービスの給付をどうするのかということは、ちょっと論議する問題ではないような気がいたします。保険料を払えない人にサービスをどうするかということになりますと、しなくていいのかというふうな意見が片方にはあるということですよね。ですから、ちょっと考えられません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/395
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396・岡田克也
○岡田委員 保険という前提に立てばそういうことにならざるを得ないわけですから、やはり保険ということで介護を組み立てることにかなり無理があるのかな、むしろ税でやっていくということが適切なのではないか、そういう問題意識で申し上げました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/396
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397・津島雄二
○津島座長 小松さんの方から何かさらに御説明がございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/397
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398・小松智世美
○小松智世美君 よくわかりました。
ただ、例えばさまざまな状況にある人たち、介護といってもさまざまですから、そういう方へのサービスとして一つの法律で完璧になるというふうなことは、やはり現場におりますと考えられません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/398
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399・根本匠
○根本委員 私も、税でいくのか、保険でいくのか、西ドイツは保険方式ですし、北欧型は税の方式、それぞれ歴史背景が違うわけでありまして、その点についてはいろいろこれから議論があると思います。いずれにしても、保険方式を基本に置いても、利用者負担以外は保険料と税で折半しているわけですから、負担という意味では税の投入も行っているわけで、その場合に、保険方式にしたときに具体的な問題点、課題をどう現実的に解決していくのか、これが必要だと思います。
今回法案があるわけでありますが、一番大事なのは、法制度をつくる場合に、具体的に現実に適用したときにどのような問題が出てくるのか、これを少し細かく個別に具体的に詰めていく必要があると私は思います。
その意味で、幾つかあるわけでありますが、一つは、先ほどゴールドプランの問題が出ました。今のゴールドプランで十分なのか、むしろスーパーゴールドプランが必要なのか。この点では、今のレベルでは不十分だというお話がありましたけれども、これは計画論の話として、今のゴールドプランにかえて、それもより施設内容を充実したゴールドプランをつくるべきかどうかという点を一つお伺いしたい。それから、そうした場合に、現行制度で具体的にそれを促進するための提言があればお伺いしたいと思うのです。
私見を申し上げますと、例えば今の特別養護老人ホームは、四分の一の自己負担、それから用地もつくる方が提供してくださいよ、こういう善意の篤志家を前提にした制度になっています。これは、皆介護時代になったときに今のようなシステムで果たして十分な整備ができるような形になるのか、ここが個人的にはどうかなと思っておるのです。
先ほど遠藤セツさんのお話にもありましたように、具体的な提言、例えば訪問看護ステーションで法人格の問題が出ました。これは非常に具体的な提言で、私は有益だと思います。そういう観点から、今の制度の中で、ゴールドプランを上回るプランを進める場合に、制度的に具体的に促進する方策のアイデアがあればお伺いしたいと思います。これは市町村の方にお伺いしたいと思います。それから、渡辺さんも経験者でしょうから、もし意見があればお伺いしたいと思います。
それからもう一つは、保険制度をめぐっての本質的な問題でもありますが、介護認定の問題、ここが非常に議論として出てまいりました。この面については、介護認定の分野でのいろいろな課題、問題、今お話がありましたが、せっかくですから、私もこの部分は非常に重要なポイントだと思いますので、補足的に介護認定の分野で御意見があればお伺いしたい。
それから三点目は、医療との連携ということであります。原先生、先ほど療養型病床群と有床診療所の問題、それから民間病院の活用の問題の御提言がありました。この点について、もう少し詳しく提言をお話しいただければと思います。
それから、小松さんからありました代弁機能、これは私も、介護認定の問題とも絡みますが、やはり利用者の立場に立った、それをプッシュしてあげるような仕組みも必要だろう、その意味では小松さんの提言は大変有益だったと思います。
以上です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/399
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400・津島雄二
○津島座長 それでは、ゴールドプランの関係で、まず鈴木さん、千保さん、御発言がございましたらお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/400
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401・千保一夫
○千保一夫君 現在のゴールドプランの問題点と、これからこれを上回るような制度をつくった場合ということでありますが、もう既に一番問題なのはマンパワーの確保ということとその経費なんです。数日前に新聞等でも、福祉サービスのコストということで、自治体が直接やっている場合と民間団体がやっている福祉サービスのコストが二倍とか数倍違うという話がありました。
特に、常勤と非常勤のホームヘルパー、私どもの五万四千の市であってもゴールドプランで五十人近いホームヘルパーの確保ということになっておるのですけれども、実際にそれらのほとんどは非常勤でなければやっていけないというふうに思っておりまして、いわゆる登録ホームヘルパーということでやっております。常勤のホームヘルパーにしますと、特に市町村が常勤のホームヘルパーを持ちますと、その待遇、特に退職金の積み立てなども含めますと大変莫大な人件費を要することになりまして、福祉は人件費で倒れてしまう、破綻してしまう、こんなふうに思っております。
これから市町村としては、福祉のそういうマンパワーとしてはもう常勤の職員は使えない、民間の社会福祉団体等に委託をして、そしてそういう団体に非常勤の職員をたくさん抱えてやってもらうことしかできない。しかも、二十代、三十代でそういうホームヘルパーになった方々が、五十を過ぎて六十とか定年間際まで、体力は落ちてきて、お年寄りを抱えることもできなくなった人がだんだん給料が高くなっていって、二千万とか二千数百万円の多額の退職金を用意しなければならないということになりますので、自治体直営のマンパワーの確保はもうできない、こんなように思っております。
今、私どもの栃木県四十九市町村の中で、在宅福祉の三本柱と言われるデイサービス、ショートステイ、ホームヘルプサービスは、村が一位なんですが、その次が大田原市でありまして、十二市ある中では大田原市が一番利用が高いということで、四十九市町村の中で第二位になっております。今でも人件費の将来のアップについては大変憂慮している状況であって、今のままでもマンパワー、人件費の負担増にはもう将来に大変暗い見通しを立てております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/401
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402・鈴木信也
○鈴木信也君 現在のゴールドプラン、先ほど見直す必要があろうということを申し上げましたが、これまでのプランそのものは介護保険制度を見据えたプランではなかったわけでございます。介護保険を今後前提にするとすれば、それを前提にした再整備といいますか、施設についてもそういうような意味で再整備しなくてはいけないのではないか、そんなふうに思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/402
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403・渡辺康夫
○渡辺康夫君 ただいま根本委員から御質問があった点でございますけれども、まず現在のゴールドプランでおくれている施設ですね。先ほど申し上げましたようにデイサービス、それから在介センターと訪問看護ステーション、これらは在宅福祉の重要な柱でございます。これがなぜおくれているのか。
これは、一つには整備単価、整備面積が実際の国庫補助基準と非常に乖離しているわけでございます。それで、福島県は財政は非常に厳しいのでございますが、新しい年度からその辺を助成していこう、こういう積極的な姿勢をとったわけでございます。まだデイサービスセンターがゼロのところもございますので、ゴールドプランの十一年度までにそういうところを中心に、特に町村でございますけれども、積極的な行政のてこ入れをしていこう。
だから、そういうおくれているところはなぜおくれているのか、そのおくれているのが今のような問題であるならば、財政力の指数の低い市町村にやはりそういった援助、積極的な行政の応援をする、これが大事なのではないでしょうか。そこでまたそれではスーパーゴールドプランを考えていこう、こういうことで福島県はデイサービスセンターについて取り組むというふうにしているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/403
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404・津島雄二
○津島座長 ありがとうございました。
それから、遠藤さんの方から具体的な御提案があって、根本さんがそれに言及されたのですが、何か御発言はございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/404
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405・遠藤セツ
○遠藤セツ君 その問題については特にはございませんけれども、先ほどの御発言の中にマンパワーの確保という問題が出まして、中でもホームヘルパーの確保ですが、そういう点で常勤のホームヘルパーはなかなか財政的、経済的に成り立たないからということで、非常勤のヘルパーに依存せざるを得ないということなんです。
しかし、本当の意味からいきますと、非常勤のヘルパーに依存した在宅福祉というのは余り期待できないのではないかなというような気がしますので、やはりマンパワーの確保はそれなりにして、それに対する処遇というものもしっかりとしなければ、単にプランだけであって、現実的な面では実現性は乏しいのではないかというように感じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/405
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406・津島雄二
○津島座長 ありがとうございました。
それから、原先生、介護認定の関係でたしか根本さんから御指摘がありましたが。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/406
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407・原寿夫
○原寿夫君 先ほどの根本委員からの質問にお答えさせていただきます。一点は介護認定の問題と、もう一点が療養型病床群、あと民間病院の件、そこについてお話しさせていただきます。
まず、介護認定につきましては、現在行われております各種福祉関係のさまざまな、いわゆる入所その他についての判定委員会というのがございます。その判定委員会の中におきまして、現場の医療の面から考えた在宅医療とはかなりタイミングのずれを生じます。今の医療保険というのは割と柔軟性がありますので、とりあえずその医療保険の方で対応していく中で福祉関係のさまざまな認定を待つということが実際あるわけなんです。
そのことは、この介護保険ができた場合に医療の一部も介護保険に入ってくる部分がかなりあると思いますので、そのときにどの程度お互いに融通がきかせられるものなのかというところにおきまして、先ほど提案させていただきました特例何とかという認定の前の制度の活用をもう少し、特例というよりは認定前サービス給付とかきちんとした一つの制度の中の位置づけをしていただければ、その問題はかなり回避されるのではないかと思うのです。
それを特例として、あくまでこれは臨時のものであって、本来は余りよくないけれどもたまたま臨時にどうぞというようなスタイルの、特例という言葉ではちょっと現場で混乱を招くのではないかと思いますので、もし可能であれば、それを特例ではなくて認定前の給付制度として位置づけていただければ、かなり問題が回避されるのではないかと思います。
それからもう一つは、医療法改正の件につきまして、療養型病床群とそれから民間病院の活用についてであります。
基本的に在宅療養を考えた場合に、在宅で療養されている方とその家族の方のQOLが問題だと思うのです。その点を考えますと、現在進められているような大規模施設を町外れにつくる、あるいはつくらざるを得ないという現状そのものが、医療の上から見るとちょっと疑問を感じます。そういう中で、先ほど提案させていただきました、有床診療所あるいは無床も含めてですが、現在ある医療施設というものの活用をもう少し考えていただければ、在宅療養者が住みなれた近くにおいて継続した生活を営める、そういう中での対応、つまり大規模施設ではなくて小規模な療養施設を町中にできるだけ多く設けられるような制度が必要ではないかと思うのです。
ただし、先ほどちょっとお話しさせていただきましたように、現在の療養型病床群というものの算定の仕方がもしこれまでの地域医療計画におきます一般病床に組み入れられるものとするならば、結果的には絵にかいたもちになってしまいまして、療養型病床群に有床診療所は入れないことになってしまいますので、できればその点、地域医療計画におきます一般病床の、いわゆる医療そのものを行って急性期の病気をより安定にしたものと、それからその後の一般の療養に移ってからのものとは別枠で算定する、そういう分類と基準の見直しをしていただければと思います。
そういう中で、もう一点がいわゆる地域支援病院ですね。地域における支援病院の発想の中で、どうしても公的なといいますか、地域の公的な医療機関を中心に考えるといったことがどうもあるように承っているのですけれども、先ほどお示しした資料のように、郡山あるいは郡山を中心とする県中医療圏で行っております在宅医療の支援体制の中でいいますと、全体の支援してくれている病院あるいは診療所も含めた医療機関の一割くらいが公的なところであって、九割が民間医療機関が頑張っております。
この辺も、先ほどの住みなれたところで療養していく町中の小規模の療養施設と、支援医療機関も含めまして、医療提供それから介護の問題、そういったことも含めた全体の医療機関の新しい制度をつくっていく上での見直しをしていただければと思いまして、お話しさせていただきました。
以上でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/407
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408・和合正義
○和合正義君 和合でございます。
スーパーゴールドプランという形でさらなる充実を期待しているわけでありますけれども、実は今度の介護法案については物すごく期待が高いのです。私のうちでも介護の経験を持っておりますけれども、今度の法律ができるということは、家族介護から解放されるのだ、あるいはその負担が大幅に軽減される、今度は介護者がいるからうちから一歩も出られないという状態はなくなるんだ、そういう期待、可能性を持っているわけなんです。これは内容的にもまだ十分周知されていないということもあるのかもしれません。ともかく期待が大きいということは受けとめていただきたい。
先ほど鈴木さんの方からお話がございましたように、今のゴールドプランあるいは見直しとしての新ゴールドプランというのは、今度の法律ができるということを前提にしてずっとつくられてきたということではないのです。したがって、このままいきますと、厚生省の試算によりますと、六十五歳以上の一三%程度の方々がサービスを受ける対象になっていく、こういうことのようでありますけれども、逆に言いますと、想定以上の需要が出た場合にではどうするのだという問題が出てくるわけです。そうしますと、我々が期待しているような、あるいは予定しておりますようなサービス水準よりも低いものになってしまったり、あるいはもっと極論すればサービスが受けられない、こういうことになる危険性もあるわけであります。
一般的に保険という場合には、医療保険と同じように保険証を持っていればいつでもサービスを受けられるのだ、こういうイメージが普通の考え方ですから、そういう意味では、せっかく保険料を払ってさあ今度はよくなると思ったら残念ながらそうはいかないよ、こういうふうになると大変混乱が生じるということを心配しておりますので、その点、恐らく期待度が高いだけに想定以上に需要が発生するだろうという点で述べているところでございます。
それから座長、一つ、私が前段の発言でちょっとミスがあったようでございまして、よろしゅうございますか。
私の発言の五点目に、在宅介護サービスの充実と現金給付の関係で、介護サービスは現金給付を基本というふうに私が発言したようでありますけれども、正しくは介護サービスは現物給付を基本、こういうことでございますので、訂正させていただきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/408
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409・津島雄二
○津島座長 小松さんのお名前も言及されましたが、何かおっしゃっていただくことがあれば。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/409
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410・小松智世美
○小松智世美君 ゴールドプランの見直しということになりますかどうかですが、現在日本は医療の専門職者、福祉の専門職者の数のバランスが非常に悪いというところから、福祉のサービスを医療機関にゆだねざるを得ないという問題がいろいろ出てきていると思います。バランスよくこの三者の専門職者が人数の上からも質の上からも同じレベルを持って連携し合うということが今はできない、このことをやはり基本に置いて、施設の数だとか手当てのできる対象者の数だとかというときに、これは大事なところだと思います。保健、医療関係の専門職者と福祉関係の専門職者の人数のバランスということも含めたゴールドプランの見直しということをぜひ考えていただければと思います。
それから、要介護度の認定についてですが、人間がだれかの手助けが必要になるというときにどういう手助けをすればいいかということを考えたときに、その根拠になる学問的な視点というものは四つあると思うのです。
一つは、医学的な根拠です。それからもう一つは、何ができないのか。その人が日常生活をする上で、重い物が持てないとか足が悪いとか、どういう不足があるのかということが二つ目です。三つ目は、その人がどういう価値観を持ってどういう人生観を持っている人なのかということがとても大事かと思います。それから四つ目には、その人に手助けをするといいますか、その人が利用できる支援者、第一に家族になると思いますけれども、家族ばかりではなくて、地域のボランティアもありますでしょうし、お弁当を配達してくれるほかほか弁当もあると思うのです。そういうインフォーマルな支援者も含めて、その人の身近な、その人の生活を支援する人たちの条件はどうか。この四つは、介護認定の際にとても大事なことだと思います。
本人の人生観とか価値観とか意思、そういうふうなものが先ほど言った代弁機能につながっていくわけですので、これをきちんと専門的に把握できて判断できるという社会福祉の専門職者が認定の中できちんと同格に扱われるということを私は申し上げたいと思ったわけです。
それから、社会的介護に意義があるということは、家族ができなくなってしまったから社会的にその家族の身がわりをするということももちろん大きなものですけれども、介護を必要とする人たちに専門家による質のいいサービスが届けられることによってQOLが確保される、そういうこともあるかと思います。思いがあっても、愛情があっても寝かせられきりになるという場合が大変多うございます。ですから、社会的介護の意義というのは、家族の身がわりをするというだけにとどまらずに、専門家による質のいいサービスが届くというところに社会的な意義があるのではないか、そんなふうに思っております。
以上です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/410
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411・津島雄二
○津島座長 それでは質疑を、どういう順番にしますか。矢上委員、その次に瀬古委員ということで、では矢上委員、お願いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/411
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412・矢上雅義
○矢上委員 新進党の矢上雅義でございます。
先ほどから出ております施設等の基盤整備の問題、またホームヘルパー等のマンパワーの確保の問題の二点について、まず施設の整備について、これは特に千保さん、原さん、渡辺さんにお聞きしたいのです。
厚生省の岡光・小山事件におきまして、例えば百ベッドで三十五億円の施設をつくる、そのときに丸投げで三割ぐらい抜いておったという話があるわけです。確かに私は、広さとか使いやすさとか機能面を考えれば立派なものが必要だと思いますが、日本国じゅうにあるあちこちの福祉施設を見ますと、まるでホテルかと思うような物すごい立派な施設があるわけです。
今入所を待機している方も相当おられますが、それと同時に、市町村、県、国に上げて、予算がつかずに福祉施設をつくりたくてもつくれない事業者の方々がいっぱいおられます。百ベッドで三十五億円ですから、一人当たり三千五百万円です。それだけのお金が果たして施設に必要なのか。もしかすると、今二つつくれる予算できちんと節約してやれば三つか四つぐらい福祉施設ができるのではないか、そのような考えは私だけではなくてみんなが持っているのです。特に若い世代は、子供を抱えていて三千五百万円のマイホームを買うのでさえ難しいのに、本当に苦しい思いをして、寝たきりになったときだけそういう立派な施設に入れる。非常に社会的にもアンバランスでございます。
現場におられる皆様方のその辺の価値判断と、もう一つ、社会的入院が悪いように言われますけれども、実はうちの母も父も社会的入院をして、父は亡くなりましたけれども、社会的入院のメリットは、やはり自分の目の届く、手の届く範囲に置いておけるということです。そして、先ほど小松さんもおっしゃったように、福祉だけではなくて医療との連携とか、それも社会的入院の中にはあります。そういう社会的入院のメリット等も含めて、施設のあり方というものをどう皆さん方が考えておられるかが一点。
次に、渡辺さん、小松さん、また遠藤さんにお聞きしたいのが、マンパワー、つまりホームヘルパーさん、介護さん、労働条件も含めて待遇を、社会的評価を高めることによっていい人材が集まると言われます。しかし、人材というものは絶えずチェックしていきませんと、国家資格を取って現場におられるからといって、果たしてニーズに合った介護内容を維持できるのか。絶えずその介護の内容を客観的に維持するというものがあって初めて、それに伴って労働がきちんと評価されるとかそういうものが出てくると思うのです。渡辺さんのこの提案には確かにいろいろ書いてありますが、社会的評価等を高めるに対応した労働、介護の内容の質を客観的にどう評価するかが欠けておるかと思っております。
また、この問題は、介護の質をどう考えるかは、今院内感染が問題になっております。C型肝炎にうつった方が何人かおられて、かつては輸血したことによってうつるというのが一般的だったが今は輸血もしていないのにC型肝炎になるとか、いろいろな院内感染が問題になってきておりますが、介護の内容の質の問題と院内感染、それはどういう連携をしていくか。非常に影響していきますので、その介護の質をどのように客観的に評価していくか、その辺が現場で確立されておるか、検討課題として挙がっておるか。この二点についてお聞きしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/412
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413・津島雄二
○津島座長 とりあえずお名前が挙がった渡辺さん、小松さん、遠藤さん、順次御発言をお願いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/413
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414・渡辺康夫
○渡辺康夫君 今の御質問の中身は二つあると思いますが、第一番目に施設の整備、特に特別養護老人ホームでございます。
御案内のとおり、特別養護老人ホームというのは、いわゆる五点セット、単にお年寄りが入所する、そのほかに一時預かるショートステイ、それからデイサービス、それに在宅介護支援センターあるいはケアハウス、こういったものを総合福祉施設という形でつくっていただきたい、こうなっているわけでございます。したがいまして、今の整備費の規模が非常に膨れ上がっているというのは、そういう事情があるということをまず申し上げます。
それから、私ども現場に参りまして、施設長さんそれから入所者の方にもいろいろお伺いしますけれども、今のお話は非常に豪華に立派になり過ぎているのではないかということですが、現場の方々からは、それは昔と比べれば確かによくなったけれどもまだまだ個室化に取り組んでいきたい、そういう要望が強いわけでございます。
それ以上に問題なのが、人の問題でございます。人の場合に、先ほど申し上げました基準がございます。ただ、あの基準があっても、今施設では基準を自分たちのところで少しでも緩和しようということで、お年寄り一人に対して、皆さんそういう形でとにかく手厚い看護をしようということで、やりくりしながら人をふやしているのが現状でございます。
それから二番目に、マンパワーの問題でございます。
私が先ほど申し上げましたように、ヘルパーさんの数をふやせばいいわけではございません。そのヘルパーさん自身が自己研さんに励まなければならない。したがいまして、私ども今お願いしているのは、介護福祉士の資格でございます。御案内のとおり介護福祉士は国家資格で、ヘルパーさんあるいは寮母さんが働きながらそれを取得する。このために県の社会福祉協議会は、県から委託事業を受けまして介護福祉士養成のための研修講座もやっています。毎年合格者がふえ、そういう資格を持った方を各施設なり社協で雇用していただく、こういうことをやっております。
さらにお願いしているのは、資格を取ったときに何らかの処遇、待遇を与えてください。御案内のとおり、資格手当をつくる、あるいは昇給短縮をする、一号アップする、こういうものがございませんと、働きながら勉強するのは大変でございますからなかなか取れない。だから、そういうバックアップをしながら資格を取る。それから研修ですね。今衛星を使って全国一斉にそういう研修もやっております。
したがいまして、私どもは、研修あるいは資格を取ることによって絶えず技能、技術を磨いていただく、こういうことに心がけてございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/414
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415・津島雄二
○津島座長 ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/415
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416・小松智世美
○小松智世美君 一人三千五百万が高いか安いか、ちょっと私は今申し上げられませんけれども、従来の特別養護老人ホームは収容というふうなイメージでといいますか、そういうことを前提に、できるだけ大勢の人が暮らせるということで大部屋とか、非常に効率的といいますか節約的といいますか。しかし、これから考えるそういう施設というのは、その人が長年積み重ねてきた生活の延長として、その人の持っているものがどれだけ大事にされる施設かということだと思います。
ですから、病院などにおりましても、お一人の方がよろしいかと思って個室を用意しましても、寂しくてふらふら出ていってしまうというお年寄りもいらっしゃいますし、三人とか四人いるお部屋の方がかえって落ちつくという方もいらっしゃいますし、あるいは一人でないと眠れないとか。ですから、人間は一人一人こういうふうに暮らしたいと思うことが違うということなんです。それを前提に、渡辺さんもおっしゃいましたように、一人一人の生活がどう大事にされるかという建物ということを考えますと、三千五百万が安いか高いか、ちょっとそういうことを考えたいと思います。
それから、社会的入院をされて大変お幸せだった、何よりでございまして、いい病院だったと思います。実は、今法律上福祉施設と言われるところ、特に特別養護老人ホームは、お医者さんや看護婦さんがいるということが認可の条件になっておりますが、翻って病院には福祉職者がいることというふうには全くなっておりません。
ですから、今までは今までとして、これから我々が住みやすい建物を考えましたときに、今までのイメージでどちらがいいかとかというふうに考えるのは、多分、必死になって我慢して、あきらめの部分もあって、いられるだけでもありがたい、そういう満足だったのではないかと思います。ですから、福祉施設の中に医者がいるように、医療施設の中にもきちんと福祉サービスが見届けられるような、そういうふうな施設になることが福祉であれ医療であれ大事ではないか、そんなふうに思います。
それからもう一つ、介護の質ということで院内感染ということがありました。これは病院にいると、特に子供さんの場合おもしろいのですが、何かよそからうつる病気をもらってきますときに、最近は保育所とか幼稚園とか学校からもらってくるのが多いのですが、ちょっと前のことを考えますと、必ず家族の中で感染しているわけです。お兄ちゃんがおたふく風邪になると弟がなるというふうに。
ですから、人間が大勢で暮らすということはそういうことも含めて大勢で暮らすことなんだというふうに、ある意味ではいかに和気あいあいとみんなで暮らして、孤立していないかということの逆に証明にもなります。ですから、病気になることは何としてでも防がなければならないことですけれども、そのことだけをとってどうこうというふうに余り結論づけてはどうかというような気もいたします。
介護福祉士のお話も出ましたけれども、こんなに大勢の介護福祉士が毎年世の中に資格を持って出てきておりましても、実際ホームヘルパーとか介護員として正規に就職する方は本当に一部です。みんなそういう方はどういうところへ就職しているかというと、例えば、本当に一般の病院を見ましても、看護助手のような形で雇われてしまったりということです。ですから、少なくとも福祉職として、社会福祉士、介護福祉士が国家資格を持ったならば、きちんとした発揮できるような場所ということを考えていくことはとても大事な、質の向上につながるのではないかと思います。
以上です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/416
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417・遠藤セツ
○遠藤セツ君 それでは、マンパワーの確保面に中心を置いて申し上げたいと思うのです。
やはり在宅ケアとかそういうものが充実してくればくるほど、マンパワーの確保というのはすごく大事になってくるわけなんです。ただ、必要だから粗製で乱造してはいけないというふうに思うわけですね。そういう点で、本当にそういう老人のお世話をしたいという方がケアワーカーになるなりホームヘルパーになるのならいいのですけれども、たまたまやる仕事がないからヘルパーにでもなってみるか、あるいはケアワーカーになるかというようなことではやはり先行き困ると思うので、むしろ需要に対する供給というのはそういう面での力を入れていかなければならないかなというふうな気がします。
それからまた、やはり生涯学習ということは大事で、国家資格をもらった、ライセンスがあるからということでそれに安住してはいけないということで、年々の中での知識なり技術なり、もちろん心も大切な問題ですから、そういう面での生涯教育というものには国も都道府県もそうでないところでもかなり力を入れなければならないのではないかというような気がします。そういう意味では、現在働いているそういうマンパワーの生涯学習につながる継続的な計画ですか、そういうようなものを十分にしていくことが必要かなというような気がいたします。
それから、病院におけるところの社会的な入院というのも、私も病院におりましてここ十日くらいの間に二つほど経験しているわけですね。それは、老人が医療機関に入院していて、それでもう積極的な医療はなくなったから退院していいですよというふうに言われたときに、行き場がないのですね。家庭としては、やはり自営業をしているような場合にはもうどうしても見てあげられない。さればといって特老や何かを希望しても、半年、一年、三年もかかるところがある。それでどうしても病院に置いてほしいということで相談に来るのですね。
そうしますと、積極的な医療はもう終わりましたから退院してもいいですよというふうな形の人を、ほかの施設で受けとめるということはできないわけなんですね。それで、面倒を見てくれるような有床診療所なり何かあったら紹介してくださいという切実な問題なんですね。さればといってそれにおこたえすることもできない、家庭でも見られないということになりますと、本当にその中間に入っている看護職、もちろんケースワーカーも当然ですけれども、やはりそういうときにこれでいきましょうというものが持てない社会の現実ですね。
だから、そういう点では確かに社会的入院というのは、ある意味では必要悪というようなものもあるのだろうと思うのですが、そういうふうなことで余り家族も困らないで、それから医療関係者の方も困らないで何とかできるような、それが例えば、それでは老健施設に入れますかというときに、老健施設も三カ月の期間になっていますよね。そうすると、結果的には三カ月のたらい回しだということを住民の方はおっしゃるのですね。だから、入院していたいのにどうして退院させなければならないのですか、そういうふうなことでおっしゃってまいりますと、こちらとしては、それではこうしましょうというふうな代案がないわけなんですね。そういう点では、現実に現場では悩んでいるということです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/417
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418・津島雄二
○津島座長 瀬古委員、先ほどお約束してありました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/418
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419・瀬古由起子
○瀬古委員 日本共産党の瀬古由起子でございます。
貴重な御意見ありがとうございました。少しずつ順次お聞かせいただきたいというふうに思います。
まず、地方行政の場で大変御苦労されている鈴木さんと千保さんにお聞きしたいと思うのですが、一つは、今地域の老人保健福祉計画、これは一たんつくったけれども現実と合わなくなっているというのはどこの市町村でも言われているわけですね。そこで厚生省は、まずこれを、最終案を見直しなさいということを中間年で指示していたのですが、その方針を変更しまして、ともかく保険をまず実施してから後で考える、こういうふうになったわけです。
しかし、現場では大変お困りだということは私どもきょうお聞きしましてよくわかりました。そういう意味では、やはり現場の立場からいっても今の老人保健福祉計画の見直しというものが必要になっているのではないかと思うのですけれども、その点はこのまま介護保険まで見直ししないでいったらどうなっていくのか、どのような御感想を持っているのか、お聞かせいただきたいと思います。
それから、もう一点ですけれども、これは千保さんの方でも言われたのですが、現在の制度、措置制度ではいろいろ選択ができない問題とかがあるということを言われているのだけれども、実際には今の措置制度を生かして、随分御苦労されて行政が幅を持っていろいろ対応していただいているというのもお聞かせいただきました。
私どもは、措置制度そのものは国と地方自治体の責任をきちっと明確にする上ではまだまだ不十分なところがありますから、もっと充実させる形でやれば、今この中で問題になりました低所得者の問題だとか、実際にはお年寄り世帯の負担の問題なども随分軽減されるだろうというふうに思うわけですね。その点でも今の措置制度のあり方について、これを充実させるという方向ではどのようなお考えをお持ちなのかというのをお聞かせいただきたいと思います。
それから、千保さんには、これは鈴木さんも御一緒なんですけれども、介護保険制度の財源を税に求めるべきだというお考えだったと思うのです。もちろん、幾つかのお考えがあると思うのですけれども、例えば千保さんの場合には消費税を一%上乗せされればというお話がありました。それと同時に、この介護の問題は財源がなくなれば幾らでも削られるという問題がありましたね。
そうしますと、財源を税措置でしますと、福祉の水準を上げてほしければ消費税を上げるみたいになって、上げてほしくなければ福祉の水準はこの程度、こういうふうなものになりはしないかということをちょっと心配しておりますが、その点はいかがなものかということでお聞かせいただきたいと思います。
あと、最後ですけれども、松本さんにお聞かせいただきたいのです。
今、在宅にしても、また施設サービスにしても大変おくれているという問題がありましたが、その原因は一体どういうところにあるとお考えいただいているのかということと、それから今このまま介護保険制度を持ってきた場合に、保険料を払えない人たちがどういう事態になるのかというのを具体的に現場のケースで少しお聞かせいただければと思います。
以上です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/419
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420・鈴木信也
○鈴木信也君 ただいま瀬古議員さんから御質問がございましたが、一つ目の、地域での計画が現実と合わないのではないか、これからどんな考えをしていくのかというような感想も含めてというお話でございました。質の高い老人保健福祉を進めていくためには、やはり今のままでいいということではないというふうに私も思っております。先ほども申し上げましたとおり、現実は相当進んできておりますので、それに合った計画が必要になろうというふうに考えております。
二点目でございますけれども、措置制度の充実の中で介護問題を処理できないかというような御質問のようでございましたが、確かに現実は措置制度という中で私ども介護サービスを今展開してございます。先ほども申し上げましたとおり、福島市では二千五百件以上の介護サービスを毎年行っている。これも年々ふえてきておりますから、かなりの必要性が高まってくるだろうというふうに思っています。したがいまして、今後はこの措置制度だけではおさまらないだろう、何らかの介護制度が必要になってくるだろうというのが私の意見でございます。
三点目の、税に財源を求めるべきだというお話でございますけれども、大田原市長さんが消費税というふうなことをおっしゃっておられました。消費税を一%上げると、平成十二年の一人当たり二千五百円の保険料以上の財源ができるというふうにお話をお聞きしましたが、全くそのようなことだと私も思います。消費税が正しいかどうかはわかりませんけれども、福祉税といいますか、介護税といいますか、そういうような法律、名称は別としまして、そういう税であってもよろしいのではないかというふうに考えております。
以上でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/420
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421・千保一夫
○千保一夫君 まず最初に、このままゴールドプランの見直しをしなくても大丈夫かというお話でありますが、ゴールドプランについては、それぞれの市町村、地域の特性があって、施設をもっと充実させなくてはというところと、もう施設はいいからマンパワーの方にとか、在宅の支援の方をもっとやっていけばというところ。ショートステイとかデイサービスセンター、こういったものは施設にも関連してきます。しかし、これもみんな在宅支援のためのものでありますから、そういう在宅支援を中心にもっとやっていきたいというところと、入所措置の方をもっと、特養などの入所措置がまだ十分行われていないというところは、とてもゴールドプラン期間内にもできないというところがまだまだあるようであります。
私どものところは、入所の方は心配ないところまでいっておりますので、これからは在宅介護支援センターの設置をもう少しあと何カ所かやらなくてはならないと思っておりますが、デイサービスセンターも特養で十分今のところは間に合っている。しかし、平成十二年度以降、これが保険ということで権利者が発生してくるということになりますと、若干十二年の当初も、要介護認定される人たちを超えたゆとりを常に施設に持っていなければ緊急の対応ができない、権利者に対して義務履行ができないということでありますから、こうなりますと常にゆとりがなくてはいけないことになってくるだろう、そういう心配をしております。
今のところゴールドプランについては、私どもの方はマンパワーの確保は今できていない状態であります。また、施設の方は十分かということでありますけれども、今のゴールドプランのままでも大丈夫というふうに思っております。
現在の措置制度では選択の余地がないと言われるがそうではないと私は先ほど申し上げましたが、今でもそう思っておりまして、柔軟に対応できておりますので、今の措置制度をさらに充実していくということについて、私はそんなに大問題だと思っておりませんで、保険で権利者をつくらなくてはならないというふうには思っておりません。私は、今の措置制度をもう少し充実させていくということでもある程度賄える、こんなふうに本当は思っております。
それから、保険制度を税方式にということでありますが、このままでいきますと、今はもう社会的な流れというか政治の流れが介護保険創設に向かって大きく流れてしまっておりますから、私どもとしては、要介護リスクの高いお年寄りを中心に保険料を徴収する、保険料負担をさせていくということについては何としても避けていただきたい、こういう思いから、それでは代替の財源をということで消費課税、大衆課税でいかがですかということです。
特に、お年寄りの年金生活者や何かの逆累進性ということがしょっちゅう言われるのであります。消費税の逆累進性と言われますが、私は逆累進性が問題だと全然思っていないのです。総理府で出している数字等を見ましてもおわかりのように、所得の少ない人たちは平均して消費しませんから。総理府の調査ですと、所得が四百万円前後の人で初めて年間三百万円ほどの消費をすることになっております。そうすると、年間三万円の負担をするというのは、年間四百万の所得がある人が年間三百万の消費をして、一%、三万円の消費税を負担するということになるわけです。
そういうことからいきますと、平成十二年度に二千五百円にして四十歳以上の方々から保険料徴収しても、今のところでは一兆八千三百億円の保険料徴収を見込んでいるわけでありますから、〇・七から〇・八%の消費課税を上乗せするだけでそれだけの財源はつくれるわけです。一%というと、二兆五千億も入ってしまうわけでありますから。
そうしますと、月額二千五百円、年間三万円の保険料を納めるお年寄りにとっては、そういう方々が年間三百万円の消費をするかといったらしないのですね。平均しますと、年間四百万円の所得がないのですね。そうしますと、一%の消費税を上乗せしたって、その方がお年寄りにとってははるかに支出は少なくて済みますよということを申し上げているのです。それは、平成十二年度の代替財源をつくらなくてはならないということで、私どもの方では、今消費課税でもやむを得ないのじゃないか、こう申し上げているわけです。
また、介護保険制度が充実していくと経費を必要としますから、消費税はますます高くなっていくのではないかと言いますけれども、消費税は明らかにきちんとした国民の、あるいは失礼ですが、選挙のときの大きな争点になってまいりますから、今回も消費税は避けたいのだと思います。消費税はきっと政治ではタブーなんだと思います。
しかし、保険料の方ですと、介護経費の二分の一を保険料で賄うということになりますから、これから五カ年間あるいは三カ年間の介護経費の積算をしてみれば、保険料改定額、改定率というのが自動的に出てきてしまう。国民の大きな議論もせずに介護経費の計算だけで保険料改定率が決まってしまうわけでありますから、これは失礼ですが、事務的に計算をすれば改定がどんどんいってしまう。
しかし、消費税ですと、やはり消費税をアップしなければならないことの国民の合意形成のために政治に携わっている方々が大きな努力をしながら、国民を説得しながらやっていってくれるようになるだろうと思いますから、消費税の方が保険料改定よりははるかに難しいという点で、あるいは厚生省の立場では改定は易しい方がいいと言われるかもしれませんが、私は、国民合意を形成しなければ改定できないという点で、消費税の方が国民にとっては非常にいい、お年寄りにとってもいい、こう思っております。
保険料が、改定額が決まって、国民が反対すれば、今度は保険給付の切り下げになっていくということですね。水準を切り下げる、こういうふうになっていくと思っていますから、そういう意味では……発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/421
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422・津島雄二
○津島座長 千保さん、たくさん御意見いただけたので、よくわかりましたから。いや、同意という意味で座長が申し上げたわけではありません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/422
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423・松本純
○松本純君 介護サービスの基盤整備がなぜおくれているかというところについては、今までのお話のように、各自治体とも予算がないということがまず出てくるわけです。これは、財源論というところに保険か措置かというところが根源的な話というようなことで皆さんおっしゃられていますけれども、私、一つ日ごろ考えていることで申し述べたいのは、保険か措置かどちらかということが根本的な問題ではなくて、国民の生活重視という政治が行われるのか、それとも、今あちこちで道路工事なんか福島でも盛んに年度末でやっていますけれども、そういう公共事業なんかを優先する政治なのか、こちらの方が大きな問題なんじゃないかということなんです。
最初のディスカッションでお話ししましたように、私は、保険と措置と両方の組み合わせというようなことはあり得るのではないか、それだと弱者も守られるのではないかということで、その条件下で社会保険方式はあるというふうに考えているということで述べさせていただいたわけです。
そういう意味で、特に、福島も伊達郡も、国体が去年ありまして、体育館だとか競技場だとかというのは本当にたくさん立派なものができたのですけれども、それにまた飛行場だとか首都機能移転とかいうことで公共事業がどんどん入ってくるというようなことばかりで、生活、教育、福祉、医療、この辺のところを中心とする政策転換というところに大きな問題があるのではないか、そうすることによっていい社会保険方式を取り入れた介護の制度ができ得るのではないかというふうに私は思っております。
それから、瀬古議員の質問の二番目で、利用料とか払えない人がどうなってしまうかということなんですけれども、これはもう火を見るよりも明らかなように、我慢する、あきらめるというふうにならざるを得ないのだと思います。訪問看護ステーションの看護婦さんとか民生委員さんとか、地域の中ではその人を何とかしなければということで、飯野町でも現場の人は非常に熱心にやってくれると思います。しかし、行政とか政治の向いている方向性というのがそこと違うところを向いていますと何としようもない。
結果的にどうなるかというと、在宅孤老死、過労死じゃなくて孤老死ですね。みとられることがなく、何週間かたってから発見される、町内会の会長さんが心配になって行ってみたら死んでいた、こういうようなことが起こっているということなんです。これは阪神大震災の避難所ばかりではなくて、地域の中でもあり得ることなのではないかということ、それを心配しております。
以上です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/423
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424・津島雄二
○津島座長 あと三十分足らずになりましたので、委員の皆様方も御意見いただく方も、できるだけ簡潔に、中身のある御議論をお願いしたいと思います。
それでは、各党から出ておりますが、大村さん、それから青山さん、こういう順番に、できるだけ簡潔にお願いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/424
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425・大村秀章
○大村委員 それでは、簡潔に御質問させていただければと思います。
既に何人かの委員の先生方から、そしてこれまでのやりとりでも出てきたと思うのでありますが、基本的には、今回意見陳述をしていただいた方々はみんな、公的な介護の制度をできるだけ早く整備をする必要があるという点では一致をしておるのではないか、もちろんそれぞれにいろいろ考えはおありだろうとは思いますけれども。やはり我々、この介護保険制度を一日も早く導入してうまく機能させていきたいというふうに思っておる立場であります。制度は制度でありますけれども、そこで財源を確保しても実際にどう運用していくかというのが大変重要ではないか。そういう意味では、きょうそれぞれ現場で活動されておられる皆様方の御意見をお聞かせいただいたのは大変貴重だと思っておるのであります。
特に、やはり設備や施設はそれぞれの自治体を中心に財源の中で整備をしていくということになるのだろうと思うのですが、問題は、これまでも出ておりますが、マンパワーの確保をどうしていくか。これが重要だというのは、これまでの御議論の中で皆さん既にお触れになっておるわけでございます。これがうまく確保できませんと、やはり自治体ごとに格差ができるといったことも出てくる可能性があるわけであります。ですから、これを何としても全国満遍なくといいますか、確保していく必要がある。
その要点は二つあると思うのですが、社会的な評価を上げるということ、社会的な評価を確立するということがどうしても必要ではないかということと、あわせまして、これまでも出ておりましたけれども、処遇をどうするか。先ほど千保さんの方からも、人件費が大変悩みの種だというようなお話もお伺いいたしました。大変難しい問題だろうと思うのでありますが、この社会的評価をどういうふうに確立していくかということと処遇をどういうふうにしていったらいいか。
これは本当に、実際に財源のかかる話でありますので大変難しい面もあると思うのでありますが、そういった点につきまして具体的にどうしたらいいか、また制度面ではこうした方がいいのではないかといったようなお考えがありましたら、地方自治の立場から鈴木さん、千保さん、そしてまたさらに、この点について和合さんと渡辺さんからも御意見をお伺いできればというふうに思います。
以上でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/425
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426・鈴木信也
○鈴木信也君 ただいまのマンパワーの確保の問題でございますが、私ども、今、介護サービスも含め人件費そのものが大変問題になってございます。まず、ホームヘルパーを例にとってみますと、現在常勤で七名おりますが、そのほかは登録ヘルパーで対応をしているような状況にございます。今後制度が発足されれば、もちろん今もそうでございますけれども、登録ヘルパーなど正規の職員でなくとも十分サービスの対応ができるということになってございます。
御指摘のように、社会的評価を上げていく、あるいは処遇を向上させていく、こういうことについては私どもも全く同じでございまして、評価を上げていただくために、一体私どももどうすればいいのかということを苦慮しているのが現状でございます。処遇につきましても全くそうでございまして、現在は非常勤の嘱託職員というような位置づけでやってございますが、当然、この介護問題を本当に真の社会全体で支えていく制度として進めていく必要があるとすれば、マンパワーを確保する上でそれぞれの方々をそれなりの処遇をしていく必要があろうというふうに考えてございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/426
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427・千保一夫
○千保一夫君 特に、マンパワーの必要な部署はたくさんあるのですが、一番問題になりますのは、人数も多く要るというのがホームヘルパーの問題ですね。
ホームヘルパーは完全に人だけでやるところなものですから、そのホームヘルパー派遣の問題で、民間のホームヘルパーを派遣する団体、福祉団体や何かに委託をしてホームヘルパー派遣事業をやっていただく。そして、その民間団体が常勤の人を採用したのではこれまた大変な委託料がかかってしまいますから、登録ホームヘルパー、非常勤の人をたくさん集めて、そして研修等もどんどんやって質のいい非常勤の方をたくさん集めておいてもらって、民間の団体にホームヘルパー派遣事業をやっていただくということにしますと、自治体が直営でやったり、自治体が社会福祉協議会に、私どもの方で今社会福祉協議会に委託をして、そこで常勤の職員を採用している部分について大変多額の委託料が必要となっておりますが、登録ホームヘルパー部分については非常に少ない金額で済むのです。
しかも、登録ホームヘルパーは、先ほど申し上げたように、年齢が高くなってきますと、今度は家庭に入ります。ホームヘルパーとしての仕事ができないほど体力が衰えてきますとかわりますが、常勤の人は定年まで勤めてしまったりいたしますから、そういう意味では民間に委託をするということが一番いいというふうに思っております。
なお、常勤の人を採用しようと思って募集しても、これまた必要な人数がなかなか集まらないというのが実態だろう。特に小さい町村、過疎の町村ということになってきましたら、もう常勤のホームヘルパーを確保したいといってもなかなか集まらないのではないかと思っておりますから、民間の福祉団体に委託をして、研修をやって、質のいい非常勤の方をたくさん確保していただくということ以外にない、そうでなければ支えられないと私は思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/427
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428・津島雄二
○津島座長 ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/428
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429・和合正義
○和合正義君 マンパワーの確保の問題で、連合という立場での検討でございますけれども、特に中心的な役割を果たすべき公務員のマンパワーの確保につきましては、私どもとしては、短時間公務員制度の導入といったことを含めまして、現行公務員制度についてもう少し弾力的に運用することが必要なのではないか、こういう考え方を一つ持っております。
さらに、先ほど申し上げましたように、いずれにしろ介護の需要というものは減ることはないわけでございますので、そういった専門的な立場の方々だけに頼るのではなくて、ボランティアなどを含めてトータルとしてのマンパワーの確保、あるいは社会的な下支えといったようなミックスした方策を考えていかなければ、いずれにしろマンパワー確保の問題については妙案が出てこないのではないか、こういうふうに思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/429
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430・渡辺康夫
○渡辺康夫君 二点あるかと思います。一つには社会的評価をどうやって上げていくのか、それから処遇、待遇の改善に具体的にどう取り組むのか、この二つだと思います。
先ほど私が申し上げましたように、ヘルパーさんの社会的評価が低いのではないか。これはヘルパーさんの仕事がようやく市民にわかってきましたけれども、まだまだ浸透していない。実際にこういった現場でこういう仕事をやっています、そういうのをいろいろな広報機関等を通じて一般住民へ広くPRする、これが第一ではないかと思ってございます。
それから、もちろんその他の条件もございますが、処遇、待遇の場合、今ヘルパーさんの事業主体というのは非常にまちまちでございます。自治体がやっているところ、自治体と社協がやっているところ、社協だけがやっているところ、社会福祉法人がやっているところ、農協さんがやっているところ、非常に事業主体がまちまちでございます。したがいまして、身分関係、雇用関係が非常にまちまちになっている。これは今さら整理しろといってもできないと思います。利用者はどのヘルパーさんが来ているかというのは全然わかりません。来ていただく事業主さんはどなたでもいいのです。それなりの質の高いサービスを受けていただければいいわけでございます。
そうしますと、今ちょっと市長さんから話がございましたけれども、常勤の中には、いわゆる正規職員と嘱託という人もいるわけです。それから非常勤の中にも、いわゆる非常勤的嘱託と登録ヘルパーさん、あるいは臨時のアルバイトがいる。こちらもまちまちなんです。だから、これを全部常勤にしろというのは確かに無理かもしれませんが、嘱託さんなら嘱託さんなりに、例えば嘱託さんであってもその身分が違うのです。これはお調べいただいたらわかるのですが、同じ嘱託といっても、例えばボーナスについてどうなっているのか、これは皆まちまちでございます。だから、一挙に全部それを正規にということでは無理でございます。しかし、これから二十四時間ヘルパーが導入される、核となっていただく方はそれなりに身分の保障されている方でないとまずいのではないか、それなりのサービスの質が期待できないのではないか。
それから、登録さんをこれからふやしてまいります。登録さんというのは、働く人にとっても、女性にとっても非常にありがたい点があるわけです。自分のあいている時間が使える。それから、非常にヘルパーさんの仕事は生きがいである、やりがいがある。これはヘルパーさんに私どもお伺いすると、登録さんであっても、皆そう言っております。したがって、登録さんの中で条件が合えば、いわゆるパート労働者、パート労働法等の労働法規の適用を受けるような方々にしていただく。これはいろいろ今意見が、解釈が分かれているわけですけれども、条件が合えば登録さんはパート労働法の適用労働者という見方でもって対応していただければ、またここで働きがい、生きがいも違ってくる、それがまた社会的評価につながるのではないか、こういうことを申し上げたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/430
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431・青山二三
○青山(二)委員 新進党の青山二三でございます。
ただいまいろいろ貴重な御意見をお聞かせいただきまして、大変ありがとうございます。私ども新進党といたしましても、高齢者の介護問題につきましてはずっと勉強してまいりました。今回介護保険が導入されるということで、果たして保険でいいものか税でいいものかという、そんな思いがいたしておりましたときに、千保市長さんのやはり税がいいんだというようなお話をお伺いしまして、大変いろいろな面で納得できる点がたくさんございます。ともかく徴収方法が大変複雑であり未納者をつくる可能性があって、全国の市町村長さんたちは第二の国保になるのではないかという心配をしている、こんな声も聞いております。それから、低所得者の皆さんにとりましては、逆進性が強いというようなこともございます。
しかし、こういう問題で過日厚生大臣にも質問いたしましたけれども、税ということではどうしても国民のアレルギーがある、三%から五%に上げるにも大変な苦労をしているということでございます。この国民的アレルギーをどのように解消していくのか。例えば、消費税が導入されますときに、女性の皆さんは本当に高齢社会のために使っていただく福祉税ならいいですよという、そういう声も随分お聞きいたしましたけれども、その消費税が何に使われるかわからない、こういうところにいろいろな不安を抱えて大きなアレルギーが起こっている、このように私は解釈しているわけでございます。
この消費税という税に対するアレルギーを身近な立場でどのように解消を図っておられるのか、そのあたりの御苦労などもお聞きしておきたいと思います。この法案に対しまして、それではどのように修正を加えることができるのかという点もお聞きしたいところでございます。
それから、ホームヘルパーについて先ほどから議論が交わされておりまして、私も今聞けば聞くほど大きな悩みになってまいりました。地位の向上あるいは労働条件の充実強化をすれば財源が大変厳しいというようなことでございますが、やはり女性の地位向上ということではホームヘルパーの地位をもっと高くしていく必要があるのではないかということで、きょうお見えになっておりますお二人の女性の方にその点をお聞きしておきたいと思います。
それから、連合の和合さんが介護休業制度の充実をもっとしなければならないというお話でございましたが、これも私も同感だと思っております。高齢の両親を見るために働くことを断念せざるを得ない人たちが、休業をとっても保障がないというような現実の制度でいいものかどうか。どのようなことをお考えになっているのかについて、お伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/431
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432・津島雄二
○津島座長 それでは、まず女性で御意見をということで、小松さん、遠藤さんのお二人にお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/432
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433・小松智世美
○小松智世美君 私、職場に四十年近くおりまして、常日ごろ職務をしている上で女だからという意識といいますか、そういうのは余りないので、ホームヘルパーの仕事が女性の仕事だという前提で余り考えていないのです。ただ、今おっしゃられましたような女性の地位向上を妨げるといいますか、そういうふうになるかもしれないということにちょっと今気づきました。
ただ、ホームヘルパーの処遇を、社会的評価を高めていくということイコール女性の地位向上というふうに置きかえると、そういうふうに並べますと、むしろ、ヘルパーというのは、介護という任務を担う人は女だというふうにもなりかねない、ちょっとそんなふうにも今感じております。長い間の習慣といいますか、生活慣習でそういうふうなものは女の人が上手で得意でという面はあるかもしれないけれども、これからは違うと思います。ヘルパーさんにも男性がおりますし、看護婦の中にも男性がおりますから、余りこだわらないということで考えたいとは思います。むしろ私は、そういう人のお世話をする、お年寄り、子供の世話をするのは女だというふうな考え方をどうするかということに目を向けるような、そういう観点からこの処遇ということを考えていくべきではないか、そんなふうに思います。
現実問題として、専業主婦の方が主婦として培ったそういう家事のノウハウを人のために役立てたい、そういう方がたくさんいることは事実ですけれども、専門職業人としてのサービスとそういうものとの区分といいますか、それはこういう法律あるいはお金をとる仕事というふうに考えるときには、整理されて考えていかなければならないかな、そんなふうに思います。ちょっとお答えになりますかどうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/433
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434・遠藤セツ
○遠藤セツ君 女性の地位を高めるということについては全く同感なんですけれども、できれば女性、男性というものを意識しない形の中で仕事なりが行われれば一番いいかなと思います。現実的には女性の地位の問題についてはまだまだ認識が足りないというところで、やはり女性の地位を高めるということでいくしかないのかな、本来は男女同列でいきたいというふうに思うのですけれども、それが一つです。
それから、社会の認識を高めるということにつきましても、ヘルパー自身の仕事が本当にいい仕事であれば、それは利用者からも感謝され、それが高い評価につながっていく、それがひいては社会へのつながりになってくるだろうと思います。一般的にホームヘルパーの仕事がどうだとかなんとかという、そういう形の社会の認識を得るためのPR活動というのは最も大切だとは思いますけれども、それにあわせて、やはりやる方の側が本当にやることに対して喜びとか生きがいを感じながらやれるような、それは本人の自覚も大事だと思いますけれども、周りの環境の整備というのも大事だと思います。そういうふうな相乗作用があって初めて社会的な地位も認められるし、処遇にもつながっていくのかなというような感じがいたします。
いずれにしても、今の制度の中で運用していこうとすれば、常勤職員がいいと言いながらも、やはりパートなり登録の職員に頼らざるを得ないというのが現実だというふうに思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/434
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435・小松智世美
○小松智世美君 ちょっとつけ加えてよろしいでしょうか。
介護の問題は介護する女の人の問題だというふうな前提は、私は今度の法律の中に入れてほしくないと思うのです。やはり人間が人間を介護するというのは人間の職業の問題であって、介護は男女の問題ではないというふうに、ちょっとつけ加えたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/435
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436・和合正義
○和合正義君 時間がありませんので、簡単に申し上げます。
休業制度につきましては、公的サービスを受けるまでの準備期間とか、あるいは受けられない、あるいは選択しない、幾つかのケースがあると思うのですけれども、そういった場合に大変重要な役割を果たす制度だ、こういうふうに思っております。福島県の場合は、七年度で各企業において大体二〇%ぐらいの制度導入になっている。それで利用率がゼロというのが当初一〇〇%近かったものが八二・六%でありますから、結構利用が進んできている、こういうふうに思っております。
ただ問題は、休業中の賃金保障の問題でございまして、全額支給がおよそ九%、それから一部支給が一八%ぐらい、無給というのが七二、三%あるわけです。特に、介護休業の場合は世帯責任を負っている人が休みをとるということですから、そういう意味では所得保障がないというのが一番の欠陥になっている。それからもう一つは、休んだ後に職場復帰がスムーズに行われる、あるいは・身分保障がきちっとなされる、こういったことが担保されないと、制度があってもなかなか利用できない、こういうのが今悩みでございますのでぜひひとつ御努力いただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/436
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437・土肥隆一
○土肥委員 民主改革連合の土肥隆一でございます。
今回の介護保険の導入の大きな視点は、一つは国民が、税金でやってきた上から下の、つまり行政サービスから、いわゆる一方的なサービスから、ユーザーとして福祉を利用する、活用するという視点が一番大事なことだと思うのです。小松さんが若干そういうことをおっしゃいましたけれども、今まで行政でやってこられた福祉にずっと縛られた国民が初めて行政から解放される、権利として自分の福祉サービスを要求できるというのは大変いいことなのであります。千保市長は大変これに抵抗していらっしゃるようでありますけれども、ユーザーとして、つまり市長のところの、四万六千人の一人一人の在宅のニーズを受けとめなければならないという時代に入ってくる。つまり、権利としてということが一つです。
それから、既に問題になっていると思いますが、在宅福祉サービスに手をつけなければ、もう日本の施設サービスでは追いつかないということがはっきりしているわけです。つまり、税金や措置費だけでやる世界はもう破綻しているのではないでしょうか。そうなると、これを在宅サービスに展開するということは当然のことでありまして、何も施設サービスをサボるつもりではないですけれども、在宅サービス以外にお年寄りの生きていく方法がないのではないですか。病院から出ていってくれと一言われても出ていけないということになれば、ケアプランナーがちゃんとそのお年寄りのケアプランをつくって、どこか一番いい場所を探すのがケアプランナーの仕事になるのであります。
そういう意味で、一つ千保市長にお聞きしたいのは、今回の法律で民間事業者を入れるということになっています。これはどういうふうに考えておられるのか。その同じ質問を和合さん、それから小松さんの三人にお願いしたい。
もう一点、現金給付について余り明確な話が出ませんでしたけれども、私は現金給付はあり得るべきだと思うのです。それは、ちょうど小松さんもおっしゃいましたけれども、在宅ケアというのはそれぞれの生活の場に哲学や、自分はこう生きたい、自分の人生はこうしたいということがあるわけですから、そういう選択の幅からいえば、家庭の人が介護、看護した場合に現金給付してもちっともおかしくない、そういうふうに思うのであります。現金給付については、遠藤さんと、それから渡辺さんにお答えいただきたいと思います。
以上です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/437
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438・津島雄二
○津島座長 時間が大分迫ってまいりましたので、簡潔に、まず千保さんからお願いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/438
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439・千保一夫
○千保一夫君 在宅福祉サービスに手をつけなければというのはそのとおりだというふうに思っておりまして、現金給付は、先ほど私が申し上げたとおりであります。また、ユーザーとして、権利として要求すること、それを認めなければならない時代になったということでありますが、憲法で最低生活の保障とかそういったものは、プログラム規定ということで国民の権利として一応うたっても、具体的に権利に基づいて請求ということではなかったわけでありますが、今度は保険方式をとりますと、具体的に目の前で、私は権利者です、こちらは履行する義務があるということになりますと、事業主体になる市町村の現場では、権利者と義務者という形で対峙することになりますので、これは非常に深刻な問題であります。
そこで、義務履行できないという事態があったときの大変な混乱を心配しているということでありますので、その点で保険という制度について、どうしても事業主体になる市町村としては抵抗があるということであります。
なお、民間事業者を入れるということにつきましては、私は、必ずしも市町村が直接に手を下さなくてもということでありますが、事業主体が民間になるとは思っておりませんで、事業主体は市町村でありますから、市町村が民間に委託をするという形でサービスを提供させていくという形はあると思っております。したがって、サービスを提供した機関があれば、市町村がそこに給付をすることになります。直接サービスを受けた人に対するほかに、提供者に対して直接支払うことができることになっておりますから、そういう意味で事業主体はあくまでも市町村で、民間の導入というのは、サービス提供を民間が市町村から委託をされてすることだというように私は解釈しているのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/439
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440・和合正義
○和合正義君 財源の問題でありますけれども、先ほど申し述べましたように、要は一般国民はよくわからぬということなんです。税方式にしろ保険方式にしろ、どこにメリットがありデメリットがあるか。ですから、そういったことをもう少しオープンにして、こういうプラスがあるよ、こういうマイナスがあるよ、こういう水準にすればこういうふうに負担が伴いますよということをもっとだれでもわかるように材料提供して、その選択はやはり国民の判断にゆだねるということがもっときちっとなされた方がよろしいのではないか。それから、ちょっと口幅ったいのですが、余り党利党略的な問題を絡ませて議論してほしくないな、こういう考え方を持っております。
それから、現金給付の問題でありますけれども、これは私はぜひこの道筋については残しておいていただきたい、こういうふうに考えております。これはやはり公的なサービスを受けないで家族でやっていくということもございますので、負担と給付の公平という意味では現金給付の道も残しておいていただきたい、こういうふうに考えております。
それから、民間の問題については、競争原理が働くあるいは効率性、こういった問題も含めまして、大いに民間活力は活用していくべきだと思ってございます。
以上でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/440
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441・小松智世美
○小松智世美君 民間業者が入るということについて、基本的には私は非常に期待をいたします。ただ、その期待する内容ですが、サービスがいいとか悪いとかではなくて、そういうことをすることによって今までの官の仕事の仕方が変わるだろう、変わらざるを得ないし、変わってほしい、そういう思いでおります。
私も今病院で県や市からの委託事業ということで二つ三つやっておりますけれども、やっているのは民間なんだけれども、委託しているのが官というところで、せっかくの知恵とか活動の幅とかという民間の持っている力がなかなか生かせない部分も出てまいりました。ですから、民間業者が入るということは、今までのような行政のあり方の中でやるということではなくて、変わるんだということの上での賛成でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/441
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442・遠藤セツ
○遠藤セツ君 仕事に見合った現金支給というか、これはあっていいかなというふうな感じがいたします。
ただ問題は、支払って当たり前のような形の中のサービスを提供しなければならないし、それから受益者の方もやはりこれだけのサービスを受けるのだから払って当然だという。ですから、仕事の中身の問題だというふうに思うわけですね。
郡山市内で、比較的福島県では訪問看護ステーションは早い方なんですが、そこが発足するときに、一部負担というのがございますね。そのときに需要調査をしたのです。そうしましたら、今まではサービスを受けるのは全部ただですね。それをお金を払ってまではいいという方が結構多かったのですね。
しかし、それも訪問看護ステーションが発足しまして、実際に本当の意味のケアというもの、看護というものがこういうものだということが理解されてからは、お金を出してまでという考え方というのは薄らいできているということがございますので、今までは日本の場合には無料でやってくれるということにちょっとなれ過ぎているという問題がございますので、やはりそれなりのサービスを受ければそれにかわるべき代償はしていくという認識も必要なのじゃないかなというふうに思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/442
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443・渡辺康夫
○渡辺康夫君 現金給付についてということでございますが、確かに県内の市町村でも介護手当を支給しているところもございます。
私ども、実は、そういうことではございますが、在宅介護者の集い、いわゆるお年寄りを実際に日夜介護されている方々、そういった方々の集まりがございまして、いろいろお伺いしてみますと、経済的に大変だ、例えば手当の額をもっとふやしてくれ、これは余りないのです。一部にはそういう意見が出ていますよ。しかし、一番切実なのは、それ以上に総合的な支援体制、支援サービスをしてほしい、いわゆる地域挙げてのバックアップ体制、これがぜひ必要だという意見が圧倒的に強いわけでございます。したがいまして、当面現金給付は行わない、現物支給、サービスで今スタートする介護保険制度、これはやむを得ないのではないかと思っております。
なお、この介護保険だけですべて在宅福祉サービスができ上がるかというと、それは決してそうではない。先ほど申し上げましたように、やはりこれは大きな主要な部分を占めるけれども、もっと大事なのは、地域で一人一人のお年寄りをどうやって介護、支援していくのか、そういうネットワーク活動というものをもっともっと小さな単位ごとに確立していかなければならない、これが社会福祉協議会がこれからやるべき仕事だ、こう思っておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/443
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444・津島雄二
○津島座長 ありがとうございました。
議論は尽きないわけでございますが、予定の時間が参りましたので、この辺で質疑を終了させていただきたいと思います。
この際、一言ごあいさつを申し上げます。
意見陳述者の皆様方におかれましては、長時間にわたりまして貴重な御意見をお述べいただき、まことにありがとうございました。
拝聴いたしました御意見は、法律案の審査に資するところ極めて大きいものがあったと存じます。ここに厚く御礼を申し上げます。
また、この会議開催のため格段の御協力をいただきました関係各位に対しまして、重ねまして深甚なる謝意を表する次第でございます。
本日は、まことにありがとうございました。
これにて散会いたします。
午後四時六分散会
――――◇―――――
派遣委員の北海道における意見聴取に
関する記録
一、期日
平成九年三月十七日(月)
二、場所
札幌グランドホテル
三、意見を聴取した問題
介護保険法案(第百三十九回国会、内閣提
出)、介護保険法施行法案(第百三十九回
国会、内閣提出)及び医療法の一部を改正
する法律案(第百三十九回国会、内閣提出
)について
四、出席者
(1) 派遣委員
座長 町村 信孝君
奥山 茂彦君 嘉数 知賢君
能勢 和子君 大口 善徳君
坂口 力君 米津 等史君
五島 正規君 児玉 健次君
中川 智子君 土屋 品子君
(2) 現地参加議員
北村 直人君
(3) 政府側出席者
厚生省高齢者介
護対策本部事務
局長 江利川 毅君
厚生大臣官房総
務課長 石本 宏昭君
厚生省健康政策
局指導課長 上田 茂君
(4) 意見陳述者
石狩郡新篠津村
村長 加賀谷 強君
特別養護老人
ホーム「旭ケ岡
の家」副園長 祐川 眞一君
札幌市医師会理
事 赤倉 昌巳君
株式会社ジャパ
ンケアサービス
代表取締役 対馬 徳昭君
北海道看護協会
研修運営係長 市村 栄子君
北星学園大学社
会福祉学部教授 横山 純一君
特別養護老人
ホームかりぷ・
あつべつ副施設
長 川島 亮平君
特別養護老人
ホーム静苑ホー
ム施設長 中田 清君
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午後一時開議発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/444
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445・町村信孝
○町村座長 それでは、定刻でございますから、ただいまから会議を始めさせていただきます。
私は、衆議院厚生委員長の町村信孝でございます。
私がこの会議の座長を務めさせていただきますので、どうぞよろしくお願いをいたします。
この際、派遣委員団を代表いたしまして一言ごあいさつを申し上げます。
当委員会におきましては、現在、第百三十九回国会、内閣提出の介護保険法案、介護保険法施行法案、医療法の一部を改正する法律案の各案の審査を行っているところでございますが、本日は、国民各界各層の皆様方から御意見を承るために、当札幌におきましてこのような会議を開催させていただきました。
御意見をお述べいただく皆様方には、大変御多忙のところを差し繰り御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。きょうは、平素の国会とは違いまして、一言一句を追及するような場ではございませんので、ひとつフランクに、率直に忌憚のない御意見をお述べいただければとお願いを申し上げる次第でございます。
また、委員の皆様方には、各地から御参集をいただきまして、どうも御苦労さまでございます。
それでは、まず、この会議の運営につきまして簡単に御説明をいたします。
会議の議事は、すべて衆議院における委員会議事規則及び手続に準拠して行いまして、議事の整理、秩序の保持等は、座長であります私がとり行わせていただきます。発言されます方は、御着席のままで結構でございますので、その都度座長の許可を得て発言していただきますようお願いをいたします。
なお、御意見をお述べいただく皆様方は、こちらにいらっしゃる委員の方々に対して質疑等はできないことになっておりますので、あらかじめ御承知おきをいただければと存じます。
次に、議事の順序について申し上げます。
最初に、意見陳述者の皆様方から、制限をするようで恐縮ですが、お一人十分程度それぞれ御意見をお述べいただきました後、委員の皆様方から質疑を行うことになっておりますので、どうぞよろしくお願いを申し上げます。
それでは、派遣委員を御紹介いたします。
自由民主党の奥山茂彦君、嘉数知賢君、能勢和子さん、新進党の大口善徳君、坂口力君、米津等史君、民主党の五島正規君、日本共産党の児玉健次君、社会民主党・市民連合の中川智子さん、21世紀の土屋品子さん、以上でございます。
なお、現地参加議員として、新進党の北村直人君が出席されておりますので、御紹介をいたします。
次に、本日御意見をお述べいただく方々を御紹介いたします。
石狩郡新篠津村村長の加賀谷強君、特別養護老人ホーム「旭ケ岡の家」副園長の祐川眞一君、札幌市医師会理事の赤倉昌巳君、株式会社ジャパンケアサービス代表取締役の対馬徳昭君、北海道看護協会研修運営係長の市村栄子さん、北星学園大学社会福祉学部教授の横山純一君、特別養護老人ホームかりぷ・あつべつ副施設長の川島亮平君、特別養護老人ホーム静苑ホーム施設長の中田清君、以上の方々でございます。
それでは、最初に加賀谷強君から御意見をお述べいただきたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/445
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446・加賀谷強
○加賀谷強君 私は、北海道石狩支庁管内新篠津村長の加賀谷でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
本日、北海道の市町村の立場から介護保険についての意見を陳述する機会を与えられましたことは、まことに光栄に存ずる次第であります。
今日、高齢者の介護問題は、高齢化の進展による要介護者の急増とともに、その程度が重度化、長期化しており、それを支えてきた家族介護力も、少子化、核家族化、女性の社会進出で著しく低下し、公的な高齢者の介護制度の整備は緊急かつ重要な課題であり、社会的な支援をする新しいシステムとして介護保険制度の必要性を強く認識をしております。
また、国民にとって、だれもが利用しやすく、給付と負担の関係がわかりやすく、かつ介護サービスの担い手にとって相互連携、すなわち保健、医療、福祉がスムーズにでき、財源的にも長期的に安定するシステムは何なのかを追求しなければならない。突きとめていくと、公的介護保険の創設以外にはないものと考えます。
さて、北海道は、積雪寒冷という厳しい自然条件のもと、二百十二市町村の七割が過疎地域となっており、北海道全体で見ても高齢化が全国を上回るスピードで進んでいる状態にあります。新篠津村においても、高齢化率は全国平均を上回る一九・八%でありますが、道内には三〇%を超す高齢化が進んだ町村もあり、高齢者が高齢者を介護しなければならない状況にあります。こうした現状を見るとき、高齢者の介護問題はまさに避けて通れない課題であり、高齢者介護を社会的に支える仕組みをつくる意義は非常に高いものと考えます。
しかしながら、介護保険法案の取りまとめに際しては、住民に最も身近な自治体であります市町村としては不安を覚える点があり、幾つかの懸念は表明してきたところであります。最終的には、全国町村会などと国の話し合いによって法案づくりが進められ、問題点はかなり少なくなったと思いますが、今日改めて、市町村長として気になる点について申し述べさせていただきます。
まず、市町村支援対策でありますが、市町村支援対策については、現在の法案の中ではかなり配慮されておりますが、市町村負担について適切な財政措置を講ずることとするとともに、市町村が円滑に保険者としての事務を実施できるような条件整備に配慮してほしいと思います。例えば、要介護認定事務等の新規事務については事務費の二分の一が公費によって賄われることとなっておりますが、事務費等の不足が生じた場合には適切な財政措置が講じられるようお願いするものであります。
次に、基盤整備であります。
国会でも議論されているようですが、人的体制や施設の整備はまだ不十分であり、我が村でも、現在ハードとしては特別養護老人ホームとデイサービスセンターが整備され、特別養護老人ホームについては入所定員も比較的多いわけですが、全体的に見て、施設の種類や機能等としてこれで十分かどうか不安であります。ソフトの面での在宅福祉サービスについても十分とは言えない状況にあり、今後、ハード、ソフト両面でどの程度のサービスを確保すればよいのか、住民が保険料を納めても保険サービスが受けられないということが生じないか不安であります。整備水準を明確にした上で、基盤整備はしっかり行うことが必要であります。
地方自治体で基盤整備に取り組む場合には、マンパワーの確保と財源の確保が大きな問題であり、マンパワーの養成確保については、国において一層の取り組みをお願いするとともに、特に、我が村も過疎地でありますが、過疎地域について適切な財政措置を行っていただきたいと思います。
とりわけ、北海道は広大な土地と積雪寒冷と過疎地域が七割を占める特殊性を考慮するとすれば、広い区域あるいは豪雪など地理的な悪条件での事業を考えた場合、効率が悪く、サービスが要介護者に十分こたえられるか不安であります。このことから、全国一律ではなく、本道の特殊性を十分検討していただきますようお願いするものであります。
特に、北海道の特別養護老人ホームの設置率は厚生省基準より高い状況にあると言われているのでありますが、現在の入所待機者数、今後の要介護者数の増加を見込んだ場合、介護保険制度がスタートしても給付サービスが難しいことも懸念されます。
そこで、繰り返すようですが、整備率の高いと言われるのは全国との比較でありまして、道内市町村における住民要望はまだ高いものがあります。したがって、本道の特殊性を十分お考えいただきながら、本道老人保健福祉計画を全面的に見直していただくよう重ねてお願いするものであります。
また、今回、介護保険では要介護認定という新しい仕組みが考えられておりますが、我が村では、寝たきりや痴呆性老人などの在宅要介護老人が平成五年度で八十九人、平成十二年度には百十四人と予想され、どの程度の人ならどんな内容のサービスが受けられるのか、いまだ明らかではありません。現在、モデル事業として要介護認定が各地で取り組まれているとお聞きいたしますが、こうした取り組みの成果を早期に明らかにするとともに、市町村に適切な支援をお願いいたします。
次に、介護認定事務については、都道府県に委託することができることになり、一方法として評価するところでありますが、私としては、身近な行政機関の長として住民の尊厳を守り、健康で健やかな生活を営めるよう努力することが責務であると考えます。このことから、公正で公平な認定事務を行うことについて、日常生活を一番把握しているのは市町村でありますから、種々の状況を判断し、国が示すように市町村において認定を行うべきであるとの思いがあります。
次に、現金給付についてはいろいろと議論があるようですが、私は現物給付を優先すべきものと考えます。その理由は、家族介護の評価をどう見るかということでありますが、この介護保険制度は、家族の負担をどう軽減していくかが大きな目的であろうと思います。この問題については、介護保険導入後においてまた改めて検討すべきものと考えます。
次に、制度導入に向けての準備と市町村の意見の反映についてであります。
介護保険法の施行は平成十二年度とされ、当初の厚生省案より時間的余裕はできましたが、これだけの大きな制度を実際に動かすには、決して長い準備期間ではありません。実施主体たる市町村としては、なるべく早期に本格的な準備に取りかかりたいので、準備の具体的な手順をなるべく早く明らかにしていただきたいものであります。また、今後制度を運営してみなければ多々わからないことがあると思いますが、保険料を初め制度の見直しの段階においては、市町村の意見をよく聞いて柔軟に対応していただきたいものであります。
最後に、改めて申し上げます。
高齢者介護の問題は地域性が大きく影響する分野であり、北海道は、広大な土地という地理的条件に加え、厳しい冬という自然条件、持ち家率や同居率が低い等の社会条件をもあわせ持っている現状です。市町村としては、こうした条件の中で高齢者福祉の増進に努力してきましたが、公的介護保険制度が導入されるに当たっても、要介護認定を受けた住民が選択するサービスについても、このような地域特性が反映されることは当然であり、基盤整備やサービス給付について、この地域特性を十分考慮されたものとなるようお願いをいたします。
福祉の問題は、住民に最も身近な存在である市町村にとっては非常に大きな課題であり、高齢者介護についても重く受けとめております。介護保険実施に当たって不安がないわけではありませんが、二十一世紀に向けてよい制度をつくることは必要であり、市町村長としても十分責任を果たしていきたいと考えております。そのためにも、国あるいは都道府県の十分な支援を改めてお願いし、意見の陳述といたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/446
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447・町村信孝
○町村座長 どうもありがとうございました。
次に、祐川眞一君にお願いをいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/447
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448・祐川眞一
○祐川眞一君 私は、特別養護老人ホームに働いている者でございますが、介護保険法につきまして意見を申し述べたいと思います。
御存じのとおり、日本の高齢化率というのは急速に高まっておりまして、高齢者人口、特に後期高齢者の絶対数が多くなるにつれまして、心身の障害を持つ要介護、要支援の高齢者がふえて、その介護に対する社会的システムを早急かつ適切に改革すべき時期に来ているということを現場の者として強く感じているところでございます。この介護を社会的な支援として保険方式によることにつきまして、私はこれを強く支持したいと考えております。
私は、二十年間ホームに勤め、措置制度のもとで仕事をしてきたわけですけれども、この仕組みは、利用者の立場からいって、あるいはその家族にとって極めて名誉のない仕組みであったと思っております。それは、当初から救貧的な行政処分であって、介護してやるという立場、あるいは介護を受けさせていただくといったような立場で運営されております。例えば、自分で十万とか二十万お金を払いながら入っている方でも、入るためには自分の所得だとか家族の関係などを申告しなければならないというような、まことに名誉のない仕組みであって、これは早急にやめていただきたいと私は思っておりました。
もう一つ、ではなぜ税金方式ではなくて保険方式なのかということについての意見を申し上げたいと思うのです。
この二十年間仕事をやってきていつも思いますのは、税金のみという今の措置制度の中ではなかなか福祉に金が回ってこないという感じを強く持っているわけでございます。ところが、保険方式によりますと、ある意味では税金方式よりも権利義務関係というのが明確であり、また利用者の選択が可能になり、その方がはるかに時代に適合した方式ではないかと私は思っております。
スウェーデンなどではオール税金方式で、それでも福祉における権利義務関係があるではないかという議論がありますけれども、実際にスウェーデンなどに行ってみますと、幾ら税金で財源が認められているとしても、その国の財政状況とか経済の景況等によって、あるいは国の政策変更によって、福祉の末端においては経費の削減といいますか縮小というのが見られまして、現場では大変困っているという話も聞くことができたわけでございます。したがいまして、安定した財源を確保して、さらに国民の共同の連帯感をもって、介護は社会的な責任である、介護することは施しではなくて権利であるという仕組みにするということを考えますと、私は保険方式にいくべきであると考えております。
それからもう一つ。
福祉サービスの供給体制は、市町村によって現在でもかなり違っております。首長さんの熱心な音頭取りでかなり発達しているところもあるかと思います。そういう面での地域間のアンバランスが生ずるわけですけれども、今後住民が、保険料を納めることになりますと、その福祉のサービスが悪ければ、あるいは少なければ自治体に対して強く意見を言う、そういう民主的な仕組みというものが保険方式の中にあるのではないかと私は考えております。
いずれにせよ、これからの超高齢社会に向けて、介護についての社会的なシステムの方向性が明確にされることが大切ではないか。これだけの大きな改革でありますからいろいろ問題はあるかと思いますけれども、その方向に沿って、今後は細かい点について住民の意見等をよく吸収した上で改善していけばいいのではないかと考えております。
なお、国民全体の共同の連帯感ということでいいますと、今被保険者は四十歳以上ということになっておりますけれども、理論的にいえば、あるいは理想的にいえば、二十歳以上とすべきではないかと私は思います。これからの超高齢化、歴史上経験したことのないような社会を迎えるに当たって、やはり二十歳ぐらいからお金を納めて、こういう社会を我々は支持していくという意識を与えるということも、社会教育として大事なことではないかと私は考えております。
次に、少し細かい問題で懸念をしていることを申し上げたいと思うのですけれども、まず要介護認定の審査でございます。
その申請の代行というようなものは、現在のホームだとかあるいは在宅のサービスをやっている事業者等がやることになっていると思いますけれども、現実問題として、例えば私ども在宅の複合施設を持っておりますが、一つの在宅介護支援センターだけでももう既に七百名以上の、要介護者といいますか、利用者のリストを抱えております。短期間にこういう人の要介護認定をやっていくなどということはなかなか大変なことではないかという意味で、そういった混乱が生じないように、適正な人員配置その他を考慮すべきではないかと思います。
それからもう一つは、介護保険についてのいろいろな苦情の申し立てについてでございますけれども、各県に保険審査会を置くことになっております。しかしながら、ドイツの介護保険でもありましたように、不服申し立てが一遍に生じて非常に混乱をしたというような話を聞くわけでございますが、北海道のような広い地域において一カ所というのはどうなのか。そういう面でいいますと、例えば専門調査員を各地区ごとに配置するとか、あるいは支部を設けるとかという形で、この審査に余り時間がかかるようなことのないように十分配慮する必要があるのではないかと感じているところでございます。
最後に、重い障害を持った人あるいは痴呆性老人の介護申請に当たりまして、利用者本人の希望ではなくて、家族の一方的な処置によって、あるいは財産管理をめぐる問題の転嫁として申請されるといったようなことが多分にあります。そういう面で、私ども現場の者としては、自己決定を支える仕組み、あるいは人権確保の配慮というものがこれからますます必要になってくるのではないかと思います。そういう意味でいえば、議論されておりますが、成年後見法のシステムを早急に検討されるべきではないか。あるいはまた、要介護認定機関、入所を受け入れる施設等において、権利擁護のセンター等を通して相談ができるような仕組みを早急につくっていただく必要があるのではないかと感じているところでございます。
以上でございます。どうもありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/448
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449・町村信孝
○町村座長 どうもありがとうございました。
続きまして、赤倉昌巳君にお願いをいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/449
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450・赤倉昌巳
○赤倉昌巳君 札幌市医師会理事の赤倉でございます。
介護保険制度の創設に関しまして、札幌医師会を代表して一言意見を述べさせていただきます。
我が国における介護対策は非常に立ちおくれておりまして、老後の生活における不安要因ともなっております。そこで、公的介護保険制度は国民の期待も大きく、一日も早い創設が望まれております。しかし、このたび上程されました介護保険法案の細目につきましては、いまだ不明確な点が数多くあります。したがって、法案の成立後の施行、運用に当たりましては、次の点につきまして十分配慮していただきたく発言する次第でございます。
まず、財源の調達方法について若干述べさせていただきます。
租税による方式では、増税をしなければならないので、国民のコンセンサスを得ることは困難な状況にあります。そこで、適切な社会保険方式による介護保険の早期実現が期待されております。
財政基盤の弱い市町村が保険者になることに対して、第二の国保になる可能性もあり、事業主体になる市町村自体が反対しているのもある程度は理解できます。しかし、介護保険は性格上から地域保険であり、住民に最も身近な行政主体である市町村が保険者になることはやむを得ないことでございます。そこで、国や都道府県は市町村に対して積極的に財政的バックアップを行う必要がございます。
介護保険制度は、高齢者のための介護サービスをシステム化し、コストの効率化を図ることはもとより、同時に現役世代の介護負担のリスクヘッジ機能をも兼ね備えることを目的としており、最終的な責任は国が負うべきであることを国は忘れてはなりません。
一方、介護保険制度の受け皿となる介護施設の整備がおくれていることも気がかりなところでございます。特に、新ゴールドプランにおける療養医療施設、つまり療養型病床群の最終目標数が十九万床でございますが、現在四万床余りの整備しかなされておらず、早急な対策が望まれます。特に、都市部における小規模・入院医療施設、つまり中小病院や有床診療所が、さまざまな規制や条件のために療養型病床群への転換が困難なことも予想されております。
介護の必要な高齢者が、家族や友人たちが頻繁に訪れることのできる日常生活圏で療養することが何よりであります。そのためには、地域に密着した有床診療所を療養型病床群に速やかに転換できるように医療法の改正を行う必要がございます。特に、札幌圏のようなベッドの過剰地域における既存病床のカウントはぜひ見直していただきたいと思います。
次に、マンパワーの充足率について触れたいと思います。
平成六年度におけるホームヘルパーの数は、六十五歳以上の人口十万当たりで、東京都では千二十五・八人です。北海道では、東京都の約四分の一の二百七十四・八人にすぎないのが実情でございます。また、保健婦、OT、PTなどについても同じことが言えます。特に町村部では、高齢化率が著しいにもかかわらず、逆にマンパワーの充足率が低くなっております。これも東京都以外では、新ゴールドプランの目標にはほど遠い充足率でございます。
このように、介護施設とマンパワーにおいて地域間格差は著しく、保険あって介護なしという事態にもなりかねず、早急な対応が望まれます。
老人福祉施設や老人保健施設において、医療サービスへのアクセスが十分に確保されているか否かはいささか疑問があります。
一般社会における有病率は一三〇で、パーセンテージでいいますと一三%程度でございますが、それが六十五歳を超えると飛躍的に高まりまして、五〇%を超えると言われております。特にオールド・オールドにおいては、ほぼ一〇〇%に近い健康障害が発生することが明らかになっております。また、高齢者の健康状態は常に急変しやすいのが特徴でございます。介護保険では、包括化された給付を受けている場合でも、急変に際しては、施設、在宅を問わず、即座に医療サービスを受けられることが担保されなければなりません。当然のことながら、要介護者に対して必要な医療が制限を受けることのないような介護保険制度にすべきであります。
また、介護保険法案では、療養医療施設、つまり療養型病床群に介護保険適用のものと医療保険適用のものと二通りがありますが、両施設の施設基準や人員の配置基準において差異は認められません。よって、両施設に入院する患者や要介護者の間に線引きがあってはならないことは当然のことでございます。そして、介護保険における給付は、あくまでも要介護者に対して支払われるべきものであり、決して施設を対象として支払われるべきものではありません。
また現在、療養型病床群、老人保健施設そして特別養護老人施設の入所判定基準の差異は不明確であり、将来的には統合や一本化する必要があると思います。
本年一月より、全国五十九カ所において高齢者ケアサービスのモデル事業がスタートいたしました。私は札幌での要介護認定審査会に構成メンバーの一員として参加いたしました。そこで気づいた問題点について触れてみたいと思います。
このたびモデル事業に用意されましたアセスメント票は、要介護者の状態像のみをとらえる形のものでございました。よって、支援・介護区分を決めるために最も重要なポイントの医療ニーズによる判定、特に痴呆の程度の判定が非常に困難なケースを数多く経験いたしました。痴呆の判定は、運動障害とは異なり、マークシート方式で表現することは困難であります。精神障害に対する意見は専門家にゆだねるべきであり、本事業における審査会の構成メンバーには必ず精神科医を配置すべきであります。
アセスメント票の項目全体に言えることは、要介護者の医療ニーズに対する情報が余りにも少なく、かかりつけ医の意見書のみでは要介護者の健康状態を把握することが困難であり、本事業の際にはその点を大幅に改善すべきであると考えます。
終わりに、従来より介護という言葉は閉鎖的なイメージがなきにしもあらずでしたが、介護保険制度の創設によってそれが払拭され、広く地域社会において連帯感が醸成されていくことも期待されるところでございます。国民の共有である社会保障という大きな財産を次の世代にバトンタッチしていくためには、みんなが公平に負担をする意識、そして効率的な制度を確立する意欲で立派な介護保険制度を創設していただきたいと考えます。
最後に、このたび私に介護保険法案に対する意見を陳述する機会を与えてくださいましたことを心より感謝いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/450
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451・町村信孝
○町村座長 どうも先生ありがとうございました。
次に、対馬徳昭君にお願いをいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/451
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452・対馬徳昭
○対馬徳昭君 ジャパンケアサービスの対馬でございます。
本日は、衆議院厚生委員の公聴会にお呼びをいただき、大変うれしく思っております。私は、民間で在宅の要介護高齢者に介護サービスを提供している現場の立場から陳述をしたいと思います。
さて、当社は平成元年にシルバーマークの取得をし、現在二種類の介護サービスを提供しております。
一種類目は、在宅の要介護高齢者宅にヘルパーが二時間ないし三時間つきっきりでサービスをする滞在型です。これにも二つの方式があり、利用者と当社が直接契約をしサービスを行う方式と、行政から委託を受けてサービスを行う方式に分かれております。いずれの場合も、ヘルパーが単に一人でサービスを行うのではなく、サービスを提供する前に看護婦とソーシャルワーカーがアセスメントを行い、ケアプランを作成し、それに基づいてヘルパーがサービスをするチーム方式でございます。
二種類目は、二十四時間巡回型ホームヘルプサービスで、これは、行政委託を受け北海道と東京で行っています。
本日は、当社が開発をしました二十四時間ケアサービスを中心に御説明をさせていただきます。平成七年に国がモデル的に実施した事業名は二十四時間巡回型ホームヘルプサービスで、当社の開発した事業名は二十四時間在宅ワープケア事業と言います。
事業開発に至った経過でございますが、それは昭和六十三年と平成四年に我々の行った調査結果からでございます。調査内容は、高齢者二百名の方に、もしあなたが介護が必要になったときにどこでの生活を望むかというものでございます。昭和六十三年の調査結果は、圧倒的に病院であり、在宅での生活を望む方は少数でありました。しかし、平成四年に行った調査結果では、何と在宅での生活を望む人がおおむねであり、介護が必要なときは積極的に福祉サービスを活用するというものでございました。当社は、この願いを実現するために、平成四年に社内にプロジェクトをつくり、三年の歳月をかけ、平成六年の二月に二十四時間在宅ワープケア事業の開発実践を行いました。開発した事業は、国のモデル事業の概要とは同じですが、介護に対する考え方、システムは異なります。
ここで、当社が開発しましたシステムを簡単に御説明をいたします。
在宅二十名の要介護高齢者宅を、日中は二名のヘルパーが別々な車に乗り十名の利用者を担当し、巡回しながら介護サービスを行います。夜間は二十名の方をヘルパー二名が同じ車に乗り巡回しながらサービスを行います。一回当たりのサービス時間は約十五分で、利用者宅にヘルパーは一日に三回ないし五回行きます。利用者は一日に四十五分から七十五分のサービスが受けられます。
ここで重要なのは、利用者宅を訪問する時間とサービスの内容でございます。国は、平成八年度に全国三十四カ所を指定し、二十四時間巡回型サービスを実施していますが、方法がさまざまな形になっております。
一つには、利用者と利用者との家の近い順で巡回しサービスをする方式。これはサービス提供者側の効率性を重視するもので、利用者の介護ニードにマッチしていないものであり、例えばヘルパーが訪問した後におむつに排せつをしたなら、そのぬれたおむつを交換するのは早くてもヘルパーが次にその利用者宅を訪れる二時間後になる可能性があり、利用者にとって余りありがたくない方式と言えます。
二つ目は、利用者の排せつについての調査を行い、排せつ順に利用者宅を巡回しサービスする方式であります。在宅でおむつを使っている多くの方は、家族の排せつケアの正しい知識の不足や手が足りないためにおむつを当てられ、寝たきりにさせられている人が多く、現状をただ追認するのでは、寝たきりの人をふやすことになりかねません。
三つ目は、当社が行っている方式でございます。
利用者が決定した後、看護婦とソーシャルワーカーが約三日間、半日ずつ訪問し、一人の利用者に対し約三百項目の聞き取りを行います。利用者二十名から聞き取った六千項目を分析し、利用者がいかに自立して生活するかを検討し、二十人の利用者に対し二十四時間のどの時間にどんな介護サービスを提供するかを決定します。今まではこの作業に膨大な時間を費やしていましたが、ノートパソコンとホストコンピューターの導入により瞬時に行えるようになりました。
利用者の方が自立して生活するためには、いかにしてその利用者が必要なときに必要なサービスを提供することができるかが勝負でございます。必要なときに必要なサービス、まさしくジャストタイムでございます。これにより、在宅で三年間ベッドで寝たきりだった人が約三カ月後に車いすで生活できるようになったり、おむつを使って排せつしていた人が自力で排せつが可能になったり等、自立への方向にシフトしていることが当社が実施をしました調査からも明らかになってございます。
さらに、当社の特徴は、ヘルパーが巡回する時間帯は早朝からお休みになるまでの時間が中心ですが、どちらかというと夜間より日中に重点を置いてサービスをしてございます。その理由としては、人々の普通の日常生活とは、夜は休み、日中が食事をしたり会話をしたり遊んだりと活動のときだからです。そうした当たり前の生活を自立して過ごすよう支援するには日中のケアが重要だと考えるからです。日中小まめに、そして適切に介護すると、夜はとても安らかにお休みになるので、夜間に無理に起こしてまでおむつ交換をする必要はないと考えているからでございます。
お休みになった後介護サービスを必要とするときは、各利用者宅にケアコールを設置をしていますので、それを鳴らすとヘルパーが駆けつけ、必要なサービスを行います。これにより、同居している家族の方が夜間起きて介護しなくてもいいわけでございます。もはや家族が介護しなくてもよいのです。このシステムの導入により北欧並みのサービスの水準にすることができると思います。
そして、介護を家族が補うべきではないと考えてございます。今日、介護は大変難しくなってきており、専門性が要求をされてございます。介護の仕方によって利用者の生活の仕方が大きく変化します。今まで日本の在宅介護は家族に大きくゆだねられてまいりましたが、二十一世紀に向けて、プロによる介護サービスを提供するべきだと考えてございます。それにより家族が介護から解放され、今まで以上に利用者の方に愛情を注ぐことができると確信をしております。
介護を必要とする高齢者が急増する中、介護を受ける高齢者も、またその家族もともに、介護を必要とする状況を悲観したり不幸だと思わない社会システムを今こそつくり上げなければなりません。そのためには、何としてもこうしたサービスシステムを保険方式により普及させたいと思います。この二十四時間在宅巡回型ホームヘルプサービスを公的介護保険の柱とすべき事業と考えてございます。
ある財団の調査によりますと、従来の滞在型サービスは、二時間ないし三時間のうち身体介護は二〇%程度であるという調査結果が出ております。残り八〇%は家事援助サービスです。コスト面からも、身体介護と家事援助では、当然身体介護の方が専門性も必要となり、夜間帯のサービス等からも高くなります。身体介護は、二十四時間巡回介護サービスと、ショットサービスで対応できない食事介助と入浴介助を一時間程度の滞在型サービスの組み合わせによって十分可能であると考えます。残りは家事援助になります。家事援助と身体介護をどこで担当するかを議論するべきであると考えます。二十一世紀に向けて、サービスの供給形態を体系的に分け、その体制づくりに入るべきだと考えます。
最後になりますが、先般、当社の利用者を対象に介護保険についての賛否の調査をしたところでございます。ほぼ全員が介護保険の創設に賛成でございました。さらに、私が会長を務めてございます全国在宅介護事業協議会の会員約百五十社も、介護保険の創設を待ち望んでございます。一日も早く保険が創設され、要介護高齢者が安心して自立して生活が送れることを切に望みます。
本日、このような意見陳述の機会をお与えいただき、心より感謝を申し上げます。
以上で終わらせていただきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/452
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453・町村信孝
○町村座長 どうもありがとうございました。
次に、市村栄子さん。どうぞよろしくお願いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/453
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454・市村栄子
○市村栄子君 北海道看護協会の市村栄子と申します。
本日は、意見を申し述べる機会をいただき、ありがとうございます。
高齢者の最大の悩みは、寝たきりや痴呆症になったときの介護の問題であると多くの高齢者から聞いております。そして、わずかの年金の中から、介護が必要になった日のため、既に老後なのにさらに老後のためにと貯金をしている高齢者の何と多いことでしょう。現在のケアサービスの質、量ともに十分なものとは言えません。ケアの向上、充実を図るために、公的介護保険による国民の負担増はやむを得ないかと考えております。
私は、老人保健施設において多くの高齢者と接してきましたし、訪問看護婦研修会の中で、在宅の高齢者の現状について訪問看護婦より話を聞く機会を多く持ってまいりました。そんな中で、住みなれた家庭や地域で自分の思うように暮らしたいというのが多くの高齢者の本音であり、他人の迷惑になりたくないと必死で生活している高齢者も多いと考えております。在宅で充実したケアサービスを必要としている人は多く、介護保険の制定により、高齢者自身の選択が保障され、利用者本位の統合されたサービスが提供されるシステムを期待するところであります。
私ども看護職は、保健、医療、福祉の各分野においてケアサービスを提供する立場であると同時に、業務内容から、サービスを利用する方々を代弁する立場であると思っております。
要介護認定についてでありますけれども、さきに話をされました札幌市医師会の赤倉先生同様、札幌市のモデル事業であります要介護認定審査会の委員をさせていただき、五十名の施設の方と五十名の在宅の方、計百名の要介護度の判定を七名の審査委員で行いました。
今回の調査では七十一項目でアセスメントされてありました。平成四年から北海道において調査研究が行われました高齢者ケアプラン方式におきましては、アセスメント項目が三百五十項目になっております。かなり簡素化されてつくられた在宅ケアプランマニュアルにおいても、アセスメント項目は二百五十項目になっています。今回の七十一のアセスメント項目では、転倒の予知、健康増進、うつ傾向や不安、高齢者の虐待、社会的機能、脱水、痛み、環境評価などのチェックはなされず、情報が絶対的に少ないと言えます。
調査担当者の記述式項目やかかりつけ医による疾病の情報が要介護度へ影響することが多くありましたけれども、自由記載の項目は記入もまちまちであり、アセスメント項目での統一があった方がより公平であると思われました。
審査委員内での介護度に対する認識の統一はありましたが、高齢者の特性である、個別性の高い一人一人日常生活動作、疾病、家族構成、心理状態など、全く違うケースを六段階のレベルに分けていくことには難しさを感じました。認定をした全員が何らかの疾病を持っている人でありました。
ケアや疾病の観察、管理や予防について、双方を見ることができるのは看護職であると自負いたしております。要介護度認定審査委員には、看護職の関与は欠かせないと考えます。高齢者の場合は特に、積極的治療というよりは、生活援助を含めた看護ケアが高齢者の自立や健康な生活につながると考えます。
だれが見ても納得のいく判定基準の妥当性、客観性、公平性、透明性が必要なのは言うまでもありません。
また、要介護度認定のための調査のアセスメントとケアプラン作成のためのアセスメントが同一である方が、利用者にとっても負担が少ないと考えます。単に判定だけではなく、ケアサービスを考慮に入れ、かつ、精神的な支援や予防的な援助を考え、本人、家族にとってのより幸せにつながるような考え方が審査委員には必要であると感じました。
今回のモデル事業において、在宅で、おふろの構造が悪いために入浴できない人、同居の夫が呼吸器疾患で風邪を引くことを恐れて銭湯に行かないために、一人では外出できなくて入浴できない人、厚生年金の月四万九千円で、障害を持ちながらも自立して生活している高齢者がこの札幌にも現実におります。在宅でやっと暮らしている人の何と多いことでしょう。歩行が自立している人の一番最初に身体的なケアが必要になるのは、多くは身体的清潔の保持、つまり入浴や洗髪やつめ切りなどであると、過去の経験と今回の要介護認定により確信いたしました。
ただし、環境を整えることで自立できる高齢者の多いことも事実です。アセスメント用紙に記入することで自動的にその人の持つ問題点が抽出されるMDS方式は、他職種の共通理解が得られやすく、ケアプラン作成に有効な方法であると考えます。その人の問題を現在のみならず将来の可能性も含めて抽出すること、及びケアプラン作成に考えられるあらゆることが示唆されているのは、この方式がどの職種であっても利用できることを物語っています。
次に、ケアマネジメントについてですが、要介護者に必要な諸サービスをその人に合った形で効果的に提供するためには、保健、医療、福祉のチームでアプローチする必要性があります。その際、ケアマネジャーの役割が非常に大きいと考えます。
看護職は、訪問看護ステーションや在宅介護支援センターなどでの在宅ケアサービス調整の経験から、新介護システムにおいてもケアマネジャーとして力を発揮したいと考えております。北海道看護協会は、ケアマネジャー養成のための講習会や実務研修について北海道から委託などを引き受ける用意がございます。
ケアマネジメント機関ともなる訪問看護ステーションについては、新ゴールドプランで全国五千カ所設置されることになっておりますが、現在、北海道では百十六カ所、全国では二千カ所に満たっていないと聞いております。必要に応じた適切な訪問看護が確保されるように、現在は法人格がないと設置できませんけれども、以前に、NPO、非営利機関に法人格を与える案が検討されておりましたけれども、同様に、訪問看護ステーションを設置したいという看護職のグループにも何らかの法人格を与える仕組みをつくっていただきたいと考えます。
最後に、看護に対する介護報酬については、看護に要する量、質を適切に反映して設定することをお願いいたしまして、私の陳述を終わらせていただきます。
御清聴ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/454
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455・町村信孝
○町村座長 どうもありがとうございました。
次に、横山純一君にお願いをいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/455
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456・横山純一
○横山純一君 北星学園大学社会福祉学部の横山です。
まず、今回の公的介護制度ですけれども、私自身は、公的介護制度をつくることには非常に賛成でありまして、急速に高齢社会が到来している、そして高齢者が高齢者を介護しているという実態がある、あるいは、介護地獄だとか高齢者虐待というのが新しい現代用語になりつつある、こういう状況ですから、公的介護制度をつくる必要性というのは非常に高まっていると思います。
私自身も、この間北海道で、この公的介護制度を考えるということで随分勉強してきたり主張もしてまいりました。私自身は、実はずっと租税方式論者だったのです。しかし、やや最近主張を変えております。今回の選挙の消費税引き上げの国民の抵抗なども含めてありますので、現実的に、当面は公的介護保険でいくのもやむなしというふうに最近は主張を変えてきております。そして、施行年と成立年とを離すことをずっと主張してきました。
なぜかというならば、余りにも現状では施設あるいは在宅サービスの量が少ないということであります。新ゴールドプランが仮に達成されたといたしましても、在宅介護サービスのニーズの三分の一ぐらいしか満たされないと言われておりますし、施設サービスも実質的には不足するのではないか、こういうふうに言われているわけであります。保険あって給付なしの状況が生まれる可能性があるから、成立年と施行年とはかなりずらした方がいいのではないかという主張をしてまいりました。実際、新ゴールドプランを超えてスーパーゴールドプランをつくることが必要ではないかというふうに考えます。
この間、国庫補助金、特に施設関係の設置費国庫補助金を動員して施設をどんどんつくっていく必要があるのではないかという主張をしてきたわけですけれども、最近、例の事件などありまして、ちょっとそういうことも言いづらい雰囲気があるのかなという感じも持っております。
もちろん、スーパーゴールドプランを私主張しているのですけれども、スーパーゴールドプランといっても、すぐにというふうにもいかないと思います。ですから、今回の公的介護保険法案で言っていますような経過措置というのも、ある一定の期間について見るならばやむを得ないかと思います。いわゆる制限給付の話です。経過措置として、サービス不足というのも一定の時期まではやむなしであろうというふうに考えます。
しかし、やはり、サービスがある程度充足し、介護サービス給付の権利がいつの時期までに保障されるのかということが市民に明確に明示されないといけないというふうに思います。今の制限給付のところ、経過措置でいきますと、二〇〇五年以降というふうになっているわけですね。二〇〇五年以降というのはまだ非常にあいまいなわけでありまして、そういう面でいいますと、私はむしろ二〇〇五年までにというふうに法案を変えてほしいと思うわけであります。市民の側に公的介護保険について関心がいま一つ盛り上がらないというのは、やはりしっかりした時期を明確にしていくということが非常に大切なのではないのかなというふうに思っております。
ただし、この経過措置の間については家族介護手当を支給すべきという意見もあるわけですけれども、私はこれには反対をいたします。家族介護給付というやり方で、それがまた固定化されていくならば本来の公的介護制度の理念と相反するというふうに思うわけでありまして、仮に苦しくてもしばらくの間はそれでいくしかないというふうに私は思っております。これが一点でございます。
それから二点目は、要介護認定にかかわる話でございまして、こちらの方は各先生方から詳しくお話があったわけですけれども、私の方からも一点申しますと、やはり要介護認定の方法というものがまだまだ不明確であるという感じを強く持っております。そして、現在の在宅、施設の両サービスの不足の問題、あるいは要介護認定のやり方次第では、場合によっては、本人が希望すればまた別ですけれども、本人の希望に反して例えば老人病院への入院を強制されるとか、そういうようなことも十分あり得るのではないか。やはり、基本的に自己決定、自己選択ということを原則としながら、どのように統一的、客観的な要介護認定ができるのかということが非常に大切なのだと思います。
そして、これは市町村の側からしても非常に大切だと思います。統一的、客観的な要介護認定ができないということになりますと、もう一方で異議申し立ての問題がありますから、どれくらいか予想はつきませんけれども、案外市町村の現場サイドでこの異議申し立てで非常に混乱をするという問題もあり得るのではないかというふうに思います。
それから、要介護認定についてもう少し申しますと、高齢者の状況というのは本当に日々刻々と変わるわけですね。これはお医者さんや看護婦さんの方はよくおわかりなわけですけれども、刻々と変わっていきます。そうすると、やはり要介護認定というのをかなり短いサイクルでやっていただかないとその症状に対応できないということになりますから、迅速かつ短いサイクルで要介護認定ができるのかどうかということも一つ私の方から申したいと思います。
それから、在宅サービスを含めまして基盤整備の問題ですけれども、先ほど新篠津村村長さんもおっしゃっていましたが、どの程度のサービスを確保していくのかという問題が一つあるかと思います。現在の状況ですと、地方自治体によってサービスの格差は余りにも大きいわけです。ゴールドプラン以降、非常にそれが顕著にあらわれていると思います。
私は、公的介護制度の位置づけをこういうふうに解釈しているのです。
地方分権が今ブームですけれども、これは地方分権じゃない。将来的には地方分権につながるかもしれないけれども、むしろ今重要なことは統一的なもの、どこの町に行っても、どこに行っても同じ種類の、そしてある程度同じような量のサービスを受けられるようにすることが公的介護制度の重要な要素ではないかと思うのです。ですから私自身は、福祉、保健の分野では、むしろ統一的な基準、どちらかというと集権的なものがまずあって、これが実を結んで初めて福祉の地方分権が進むのではないかという感じを持っております。その観点からいいましても、在宅サービスあるいは施設の基盤整備は、マンパワーも含めまして一体どの程度の整備水準を確保していくのかということが問われているのではないのかなということが四点目でございます。
五点目は、ペナルティー制度がこの保険制度には内在しているわけです。これは私も勉強不足なのですけれども、実際に保険料を納めていないと給付を打ち切るとか、給付サービスを半減するとかということになってきたときに、市町村の現場ではそう簡単に打ち切るわけにはいかないわけです。そうなったときに市町村に対する財政措置という問題をどう考えていくのかということを、これは私ももう少し勉強しなければいけなかった点なのですけれども、ちょっと懸念をしているということでございます。
それから、最後の一点なのですけれども、保険料問題で、二十歳から四十歳までの方は負担しないというふうになっているわけです。私自身がずっと言ってきたことは何かといいますと、保険方式というのは、負担と給付の関係が明確であって、リスクが非常に大きいという場合に初めて非常に大きな意味を持つ。ですから、医療保険とか火災保険がそういう意味では意味を持つわけですね。
同じような理屈が公的介護保険で成り立つかどうかというと、私自身はそこのところをちょっと疑問に思っておりまして、負担と給付の関係が余り明確でない、リスクも医療保険や火災保険とはちょっと違うのではないか。ですから、二十歳とか三十歳の人たちが延々と三十年も四十年も掛け捨てでずっとやっていく、そして給付を受けられるかどうかもわからない、こういう状況のもとで幾ら観念的に社会的連帯だなどと言ってみても、それはなかなか難しいよ、こういうふうに主張しておりましたら、今度四十歳以上という案が出てきているわけであります。
当面は介護保険というシステムでいったとしても、将来的には、これから公的介護制度が発展していけば当然国民の保険料負担も増大いたします。そうなってきたときに、負担と給付の関係の問題あるいはリスクの問題からいっても、保険方式がいいのかどうかが問われてくるのではないかと私は思います。それから、事業主の方たちにとってもこの負担の問題がやはり出てくるかと思います。ですから、そんなことも含めて、将来的には租税方式への移行ということが必要なのではないか。
私は財政学が専攻なんですけれども、そもそも所得再配分政策というのは租税でやる、そこまで保険がやるべきことではないという主張を私自身は持っております。ただ、今の置かれている状況というのがございますから、当面は公的介護保険ということにならざるを得ないのかな、こんなふうに思っております。
以上でお話を終わりたいと思います。
御清聴ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/456
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457・町村信孝
○町村座長 どうもありがとうございました。
あとお二人いらっしゃいます。川島亮平君にお願いをいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/457
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458・川島亮平
○川島亮平君 私は三年前に開設した特別養護老人ホームの常勤の医師として、また施設の責任者の一人として、特養と在宅介護支援事業のすべてにかかわり、この間介護問題を見てきました。
私たちのデイサービスを利用されている方の孤独死や、この二月にも自宅で倒れ込み、翌日発見され入院しましたが、数日後には急性腎不全で死亡した一人暮らしの方。この方は緊急通報システムをつけていたのですけれども、何の役にも立ちませんでした。また、大事にされてきたはずの夫に虐待されるようになった痴呆の女性の例など、私たちの周りには常に深刻な事態が生まれています。
最近はデイサービスの待機者もふえてきました。待機といえば、私たちの特養八十床に二月末日で九十四人の方が待っています。いつ入れるのか見通しのないまま、毎月送られてくる待機者名簿から、待ち切れずに亡くなった方の名前が消えていっています。ちなみに、北海道の特養待機者は九六年十月現在で四千九百四十五人、札幌市はことし一月で千二百六十人となり、北海道は一年間で千二百人、札幌市は半年間で三百人以上ふえたことになります。
このような介護の現状ですから、介護の保障を求める国民の期待と要求は切実です。三年前から介護保険をめぐって論議があって、この間マスコミが行ったアンケートでも、介護保険に賛成する人が七割から八割という高い数字が示されたのは御承知のとおりです。保険料を払ってもよいから介護を保障してほしい、保険料を払うのだから介護も少しはよくなるはずと国民の多くが考えたわけです。しかし、これまでの論議経過と今回の政府提案の介護保険法案を見て、私は、国民が期待するような介護の保障はなく、新たに保険料は徴収されていながら、現行よりもむしろ後退する制度になることを危惧します。
政府の提案理由説明では「介護保険は、被保険者の要介護状態または要介護状態となるおそれがある状態に関し、必要な保険料給付を行うこととし」と述べていますが、これを素直に解釈すれば、保険料を払えば、介護が必要になったとき必要の程度に応じて介護サービスが保険給付されるという意味になるはずなのですが、実際は保険あって介護なし法案と言わざるを得ないものです。
その第一は、既に多くの方から言われておりますように、在宅でも施設でも介護サービス供給の基盤が整備されていない問題です。特養待機者は、全国では九六年四月現在で七万六千六百五十人となっています。制度が実施される二〇〇〇年までに新ゴールドプランの特養二十九万床が一〇〇%達成されたとして、あと六万床弱しかふえないことになります。これでは、現在の待機者でさえ二万人近くの人が特養に入れないことになります。今後も待機者がふえるわけですが、新ゴールドプランが一〇〇%達成される保証がないとすれば、矛盾はさらに深まることになります。
一方在宅介護でも、その主力となるホームヘルパーの確保計画がパートを含む十七万人ということでは、二〇〇〇年に計画どおり確保されたとしても、予想される二百八十万人の要介護者のうちの五十万人程度しかサービスを受けることができません。
在宅でも施設でも、基盤整備が不十分なまま制度を実施するならば、要介護の認定基準を厳しく狭めざるを得なくなります。事実、在宅サービスモデルを見ても、現行制度におけるサービスよりも制限され、後退した内容になっています。必要な介護が保障されるのではなく、必要な介護さえも切り捨てるための認定基準は本末転倒と言わなければなりません。
第二は利用料金の問題です。
要介護と認定されても、保険料は納めているのに、利用料が払えなければ必要な介護が受けられないことになります。保険給付の一割負担は、在宅介護においては、より重度の介護を必要とする人ほど負担が大きくなります。現行よりも負担がふえ、訪問看護の利用料は三、四倍にもなります。必要な介護サービスであっても辞退したり利用回数を減らさなくてはならなくなる制度には介護の保障はあり得ません。
施設介護はさらに深刻です。特養では、現行の措置制度の事業費に相当する食費や日常生活費は自己負担となり、これに事務費に相当する分が保険給付、その一割が利用料となりますと、合わせると九万円近くが月々の自己負担となります。私たちの特養の入居者に当てはめてみると、家族の負担能力を考慮しても、支払い可能な人は八十人のうちのわずか十一人、一三・七%しかいないことになります。月数万円の低い国民年金しか保障されていない高齢者が大多数を占める我が国の現状では、保険料を払っていて施設介護が必要と認定されても、八割以上の人は施設介護が受けられないのです。ちなみに、老健や療養型の施設の自己負担は特養よりさらに高いものになります。
以上が、保険あって介護なしの内容ですが、今回の法案の問題点として特に指摘したいのは、特養がついの住みかではなくなる問題です。
現行の特養は、障害を抱えた高齢者が命を全うできる住まいとして安心して生活ができる、職員もそれにふさわしい援助に取り組み、時間もかけながら高齢者の生活レベルを改善させてきています。これが、退院を前提とする医療機関の入院機能とは異なる特養固有の性格であるはずです。しかし、保険制度では、制度発足時の入居者については五年間の猶予があるとしても、その後の入居者は、定期的な要介護度の再認定によって介護レベルが改善されれば特養を退去しなくてはならないことになります。既に帰る家もなく、在宅での生活や介護の条件のない人にとっては、下手に改善するよりは寝たきりのままでいた方がよいということになり、特養は生活の場から寝たきりの収容施設に変えられてしまいます。
また、介護を必要とする高齢者の生活に医療の保障が不可欠であることを私自身の体験として実感しています。現状でも医療の制約を受けている特養ですが、今後、老健や療養型に比べ医療が軽視される施設にされ、必要な医療さえ保障されなくなることも危惧します。
以上三点にわたり法案の問題点を述べてきましたが、私は、保険制度そのものを否定するつもりではありません。介護保障とは、介護を必要とする人々の生活保障であって、社会保障としての視点が不可欠であり、保険制度だけでは無理だと思います。不十分ではあっても、社会保障としての役割を担ってきた現行の措置制度をむしろ拡大改善して、保険制度と組み合わせる必要があると考えます。
そのことを前提として、最後に、今回の法案が抜本的に修正されることを期待して、五点にわたる提案をさせていただきたいと思います。
第一は、公費負担による供給基盤の整備を先行させ、一定のサービス供給が可能となるまでは保険料徴収を行わないこと。
第二は、必要な人に必要な介護が保障されるように、認定基準を緩和し、要支援者なる区別や六十五歳未満の疾病制限を外すこと。
第三は、保険料未納者の罰則、ペナルティーを廃止し、支払い可能な保険料にすること。低所得者の保険料は免除すること。
第四は、利用料は原則として徴収しないこと。少なくとも、利用料のために介護が受けられないということがなくなるようにすること。
第五は、ついの住みかとしての特養の性格を変えないこと。必要な医療は保障されること。
以上を述べて、だれもが人間としての尊厳を全うできる介護保障制度が一日でも早く実現することを願い、私の意見陳述を終わりたいと思います。
ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/458
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459・町村信孝
○町村座長 ありがとうございました。
次に、中田清君にお願いをいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/459
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460・中田清
○中田清君 御紹介をいただきました中田でございます。
私は、特別養護老人ホーム静苑ホームに勤務している者でございまして、昭和四十五年から二十六年間にわたりまして老人福祉施設の現場にかかわってきております。現在、札幌市の東側に隣接しております江別市を中心といたしまして、特別養護老人ホームあるいは養護老人ホーム、これは盲人養護でございますけれども、それから老人保健施設、そしてまたケアハウス、それともう一つは介護力強化病院もございまして、約八つの施設の運営といいましょうか、経営にかかわってまいっております。こうした経験を通じまして高齢者介護の現状を見ますと、大変多くの解決しなければならない問題が山積しているなというふうに日ごろから痛感いたしております。
今回は時間がございませんので一例を申し上げますけれども、利用する住民の視点から考えますと、現状の介護サービスがそれぞれの法律に基づいて縦割り行政によって行われているということが大変利用しづらくしているということが挙げられると思います。例えば、同じような要介護高齢者が利用している特別養護老人ホーム、それから老人保健施設、介護力強化病院、療養型病床群でございますけれども、その三つがあるわけですが、利用窓口が違うとかあるいは利用手続が違う、また利用料金がそれぞれ違うという問題がございます。
特に利用料金につきましては、特別養護老人ホームが、御存じだと思いますけれども、応能負担に扶養義務者負担が加わるということでございます。それに比べまして、老健あるいは介護力強化病院につきましてはいわゆる応益負担という原則をとっております。しかも、病院と老健の間にも利用料の差があるということで、現場では大変大きな問題になっているという実情がございます。
こうした費用負担の公平化のほかに、先ほど川島さんが申されておりましたけれども、とにかく激増する特養入所待機者の解消、それから、在宅、施設を通じて本人が、家族も含めてですが、サービスを選択できる利用型システムとか、あるいはサービスが総合的、一体的に提供できるような利用しやすいシステムとするなど、新しい介護システムの構築を急がなければならないなというふうに痛感しております。そういう意味で、今国会で実質審議に入りました介護保険法案の成立には大変期待を持っている一人でございます。
ただ、予想される内容につきまして何点か、御要望といいますか、御意見をここで申し上げたいと思います。
まず第一点でございますけれども、介護保険制度下においても、特別養護老人ホームについては社会福祉法人による経営が基本となるということは、私たち社会福祉法人の特養の長年にわたる介護力が評価されたというふうに思われますけれども、今後、特別養護老人ホームが将来に向かって良質な介護サービスを継続的に提供できるよう、社会福祉法人に関するさまざまな規制を緩和していただきたいということをぜひお願いしたいと思います。特に、施設運営における経営努力の成果が社会福祉法人の財政基盤の強化、確立に反映されるように、その資金運用の弾力化、拡大をお願いしたいということでございます。
介護保険制度になりますと、特別養護老人ホームも、措置費ではなくて新たな介護報酬が主になるわけでございまして、現状の措置費制度の中では資金運用面とかで厳しい制約が課されているわけでございますから、今後、老健だとかあるいは介護力強化病院、療養型病床群と競合するとなりますと、その辺十分御配慮をいただかなければならないのじゃないかなと思います。
それから、二点目は、特別養護老人ホームの施設の職員配置の改善をお願いしたいということでございます。
介護保険制度に向けて、特別養護老人ホームはより介護度の重い入所者を支えていくというふうに私は予想しております。というのは、現在特養待機者が非常に多いわけでございますけれども、かなりの割合で老健入所者がその待機の中に入っているという状況もございます。そういう意味では、特養が非常に介護度の高い入所者を支えていかざるを得ないだろうというふうに考えております。
そのためには、ケアプランの作成機能や退所後の継続的な在宅介護支援など、今まで以上に職員体制を充実していかなければならないわけで、具体的には、現状の特養の例で申し上げますと、入所者四・一人に一人の職員配置基準でございますけれども、少なくとも身障療護施設並みの二・五人に一人ぐらいの職員配置基準の改善をぜひお願いしたいというふうに思っております。
また、現場で真剣に入所者の自立度改善に努力している職員の苦労が報われ、その努力の成果が適切に評価される制度を確保していただきたいということでございます。
これはどういうことかと申し上げますと、重介護度の利用者が特養に入ってまいりまして、職員が一生懸命努力して自立してまいります。そうすると、介護度が軽くなったから介護報酬が減額されるということではやりがいがございませんので、その辺は、十分その苦労が介護報酬の中で適切に評価される仕組みを介護保険制度の中でつくっていただきたいということが二点目でございます。
三点目は、介護保険以外の老人福祉施策のより一層の充実をお願いしたいということでございまして、介護保険制度下においては、要介護あるいは要支援に該当しなくても、日常生活に支援を要する高齢者はたくさんいるわけでございます。また、要介護高齢者にとっても介護給付以外の支援も大変重要だというふうに私は思っております。したがいまして、都道府県、市町村が行う老人保健施策の重要性は全く変わらないわけでございまして、介護保険がつくられたことによって行政責任の施策が後退しないようにお願いしたいというふうに思っております。
具体的には、養護老人ホーム、軽費老人ホームに対する支援、あるいは要支援には至らないけれども支援が必要な高齢者に対するサービス、給食サービスだとかあるいは家事援助サービス、デイサービス等々がございますけれども、それらの充実を図っていただきたいというのが第三点目でございます。
それから第四点目でございますけれども、養護老人ホームの機能充実に御支援をいただきたいということでございます。
私も、養護老人ホーム、これは盲老人でございますけれども、その運営にかかわっております。養護老人ホームは、身寄りのない低所得の高齢者を主に、家族にかわってお世話するところでございまして、今回の介護保険の介護給付施設にはなれませんでしたけれども、現在入所者の高齢化あるいは介護の重度化が非常に進んでおりまして、介護体制の強化、それから特養併設等の機能強化は必至の状況にございます。したがいまして、職員配置の大幅改善や、特養を併設したいというところについては、それが最優先で認められるような格別の御配慮をお願いしたいというところでございます。
それから五点目は、低所得高齢者に対するきめ細かい配慮をお願いしたいということでございます。
私たちの老人ホームの歴史は、生活保護による養老施設から措置による老人ホームへと変わって今日に至っているわけでございます。今回の介護保険の適用によって施設利用者が生活保護適用に逆戻りすることのないように、きめ細かい御配慮をお願いしたいということでございます。
先ほど川島さんの御意見の中にもございましたけれども、ちなみに私どもの静苑ホームで例を挙げてみますと、定員が百五十名ですけれども、そのうち六十五名、四三%が現状では逆戻りするのではないかというふうに予想されます。この辺、低所得の高齢者に対してきめ細かい御配慮をお願いしたいということでございます。
それから六番目は、これはもう既に皆さんからお話がございましたけれども、要介護認定審査会が今回モデルでやられておりますけれども、介護サービスを必要とする人たちに適切かつ公平にサービスが提供できるように、医療と保健と福祉の関係者が一体となって審査できるシステムを構築していただきたいというふうに思っております。
最後に、在宅サービス展開のための御支援をお願いしたいということでございます。
特別養護老人ホームは、従来、入所のみならず、在宅サービスの拠点施設として活動を積極的に展開してまいっております。介護保険制度下においても、在宅サービスと施設サービスが総合的、一体的に提供されることが重要であることはもちろんでございますので、特養といたしましても、入所者ケアにおいて蓄積された介護の専門性といいましょうか、そういったものを在宅サービスに対しても今以上に積極的に進めていかなければならないというふうに思っております。そのためにも、現段階において都道府県、市町村の支援、例えばヘルパーステーションだとかあるいは訪問看護ステーション、そういったものについての委託拡充にぜひ御支援をお願いしたい。
以上、七点のお願いといいましょうか、御要望、意見を申し上げて、私の陳述を終わらせていただきます。
ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/460
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461・町村信孝
○町村座長 どうもありがとうございました。
以上で意見陳述者の皆さん方からの御意見の御開陳を終わらせていただきます。
―――――――――――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/461
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462・町村信孝
○町村座長 これから委員による質疑を行いたいと存じます。
質疑につきましては、理事会の協議によりまして、一回の発言時間が三分ということで、できるだけ大勢の委員の皆さん方からの御発言を得たい、かように考えておりますので、どうぞ御協力のほどをお願いいたします。
なお、発言する際には、挙手の上、座長の許可を得てお願いをいたします。また、その際に、所属会派名、氏名をお告げをいただき、どなたにお答えをいただきたいという御指名をいただいて御発言をしていただきたい、このように考えておりますので、どうぞよろしくお願いをいたします。
それでは、質疑のある委員の方、挙手をお願いをいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/462
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463・大口善徳
○大口委員 新進党の大口善徳でございます。
きょうは、大変貴重な御意見をいただきましてありがとうございます。
私の方からは、要介護認定につきまして、その認定の委員になられております市村様と赤倉様にお伺いをさせていただきたいと思います。
今の法案でございますと、まずその利用者から申請があって、そしてそれによって市町村の方でアセスメント、調査員を派遣して調査をする。そしてその調査の結果、かかりつけのお医者さんの意見というものがその審査会に上げられる。そして審査会でもってその要介護度等について判定をして、そしてケアプランの作成を希望する方は作成をする。そこでまたそのアセスメントが行われる。しかも、今高齢者の方は大変変化が激しいわけで、更新をしなければいけない、こうなっておるわけです。
今、市村様の方からお話がありましたように、七十一項目では少な過ぎる、もっと細かい項目が必要である。これは赤倉先生もそうでございます。では項目を多くしますと、それだけその審査に、アセスメントに時間がかかる、迅速性が保てないということで、そのあたりを、迅速性を保ちつつしかも充実したアセスメントによる適切な介護サービスが受けられるようにするにはどうしたらいいのかという中で、ケアプランを作成するアセスメントと、それからその前の認定の資料として提出するアセスメント、これはやはり一体化をして、そのケアプラン作成チームメンバーが申請があったら早速活動してやっていくという形にした方が効率的ではないか、また迅速性からいっても大事ではないか、こういう意見が一つございます。
それからもう一つは、この更新でございます。
このサービスが提供されますと、絶えずホームヘルパーさんあるいは訪問看護婦さんですとかお医者さんですとかが、入れかわり立ちかわり要介護者あるいは要支援者のところに行くわけでございますけれども、そういう情報が的確にデータベース化されて、情報が共有化されて、そして、そういう日常的な介護サービスの中で得られた情報というもの、それがまた更新の一つの資料になっていく、そういうシステムを考えていかなければならない。そのためにも電子化等をしていかなければいけないのではないか、こう思っております。
この二点につきまして、どうお考えなのか、お伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/463
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464・市村栄子
○市村栄子君 今回要介護認定のモデル事業でやらせていただきました七十一項目では、現状はわかるのですけれども、能力とかいう部分は全然出てこない。調査員が記述式でフリー、自由に記載するところはあるのですけれども、書いていらっしゃる方と書いていらっしゃらない方があって、アセスメントで出てきた、コンピューターで出てきたものの判定と、かかりつけ医の書いたもの、調査員の書いた自由記載のコメントを合わせると、やはりコンピューターで出てきたものとは違うというケースがかなり多かったのですね。
確かに、七十一項目チェックするのに比べ二百何項目チェックするのは時間がかかるとは思うのですけれども、この人はこのレベルというふうに審査委員がただ判定だけすればいいということではなくて、この人にはこんな問題があるのでこんなプランでケアしていくべきじゃないかというものが出て、それを審査委員が判定するという方がよりその人のためにもなるのじゃないかなというふうに思いました。逆方向というのですか、プランを立てて、この人にはこんなプランがあるのでこのレベルの要介護度、お金をという方がより人間的じゃないかなというふうに私は感じました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/464
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465・赤倉昌巳
○赤倉昌巳君 私も同じ要介護認定審査会に市村さんと出席したわけですけれども、私は医学的な見地からいろいろ上がってきた情報を検討しました。
それによりますと、先ほど私の陳述にもありましたとおり、いわゆる精神的な分野における項目が非常に少ないということで、それが状態像をとらえているものですから、どうしてもその状態だけでは、医学的な立場からすると、どういう状態で今後どうあるべきかという、我々医学的な言葉で予後と言いますけれども、今後の方向性がよく見えない。
そうした場合に、今大口先生がおっしゃったように、再認定をする場合にはどうしてもかなり長く予後を、将来的なものを判断できるような項目をやはり入れておかないと、三ケ月ぐらいでまた再調査をして認定をするということになるなら非常に煩雑ですし、技術的にも不可能だと思います。そういう意味から、例えば痴呆の問題が特に問題化されていますけれども、もう少しやはり細かい項目で、できるだけ状態がわかって、将来的にどうなるかということまで予測できるような項目が欲しいと思っています。
そのほかに、麻痺とか拘縮みたいな項目がございましたけれども、残念なことに、ほかの項目は三通りぐらいに、極端に言いますと、軽い、中くらい、重いという形になっていますけれども、その麻痺とか拘縮に関しては、あるかないかということと、四肢麻痺だとか片麻痺だとか対麻痺という種類はあるのですけれども、程度がよくわからないということで、今回認定をするのに非常に苦労しました。
それと、もっと問題になっているのは、それ以外には余り医学的な判断ができるものが少なくて、痛み、しびれ、こういうことがお年寄りの今後の介護に対して非常に必要な項目なのですけれども、それがないということです。
それからもう一つは、かかりつけ医の意見書なのですけれども、これは確かに書いてくださる先生は非常に詳しく書いてくださいます。残念ながら、非常にお忙しいのかもしれませんけれども、非常に少ない方では、病状固定と一言書かれると、正直なところ私も何と判定していいかということで、難しいということです。そういう意味では、ある程度かかりつけ医の意見書も統一性があった方がいいと思います。ある程度の、どなたが見ても判断できるもの。我々医師が見るのじゃなくして、たくさんの関係者がこれを拝見するわけですから、どなたにでもわかるような一つの統一性が欲しいということです。
それから、自由記載の部分ももちろん必要ですけれども、その部分はできるだけ簡略化できるようにして、統一化が必要かなとちょっと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/465
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466・奥山茂彦
○奥山委員 四番目に陳述されました対馬さんですか、私も実は自分の仕事として特養をやって、また自分のところの家にも高齢者を抱えておるのですけれども、なかなか昼間だけの介護というわけには実際にはいかないケースが非常に多いのです。だから、ずっと巡回を重ねてきて、今までの経験から、できるだけ昼間の介護ができるように、それでいけますという話が先ほどあったのですけれども、実際に現場でそうするためにどのくらいの時間がかかったか。
それから、私は非常に難しいケースだと思うのですけれども、二十四時間ケアをするということであります。実際には二十四時間体制をつくられるということは大変なことではないかと思うのですが、実際に民間でそこまでできるのかどうか、それが一つ。
それから、六番目に陳述されました北星学園の横山先生に。
新ゴールドプランが間もなく終わる、ところがそれだけでは施設の基盤整備は不十分だということで、スーパーゴールドプランということを考えてきたということなのですが、それは、今度の介護保険を延期してでもやはりそれを先に急ぐべきだということをおっしゃっておられたのか、その辺が一つ。
それからもう一つ、八番目に陳述されました中田さんに。
私らも自分の仕事として、一方において特養をやっておるのですが、確かにおっしゃるように職員の配置基準が非常に問題であります。年月がたつほど年がいって重度化するような状態になって、まだまだもっと手が欲しいということになるのですが、先ほどの職員の配置基準ですね。ちょっと私聞き落としたのですけれども、もう一度その辺も含めて実態を述べてもらいたいと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/466
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467・対馬徳昭
○対馬徳昭君 今先生から御質問いただいたのは、昼間だけの介護サービスでは大変ではないか、こういうお話だと思います。
私どもは、二十四時間のサービスを前提にした上で、今八十数カ所、国から指定を受けて巡回型のサービスが提供されていますが、昼、夜と分けますと、かなり夜中心型に実はなっているのです。実はそれを危惧してございまして、やはり先ほども述べましたけれども、本来人間の生きる姿というのは、やはり日中生活をして夜お休みになる方がいいだろう、こういうことでございますので、日中できるだけ手をかけて介護サービスを提供して、起きて生活をしていただくということでございます。
そうすると当然、日中起きて生活しますので、夜はお休みになりますので、お休みになるまではかなり巡回型のサービスで細かくお世話をします。寝た後には、各お宅にはケアコールを一応設置をしてございますので、それを鳴らしていただくと速やかにヘルパーが駆けつけて必要なサービスを提供する。二十四時間でいいますと、早い方でお休みになるのが夜の九時ぐらいで、十時、十一時とばらばらでございますけれども、我々の場合は大体午前一時ぐらいまで巡回でサービスをやってございまして、一時から五時までの間はステーションで一応待機ということで、ケアコール対応だけでございます。
果たしてこれを民間ができるのかという御質問でございますけれども、この二十四時間の巡回型をつくったのは、国でもなければ地方自治体でもございません。この仕組みをつくったのは、まさしく私ども民間のシルバーサービスの知恵でございますので、これらを中心にしてこの事業の推進に今努めているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/467
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468・横山純一
○横山純一君 やや私の先ほどの説明が悪かったという面もあるかと思うのですけれども、私自身は別に、スーパーゴールドプランのことでスタートをもう少し後に延ばすとか、そういうようなことではないのですね。ただ、今の新ゴールドプランですと、在宅介護サービスのニーズの三分の一ぐらいしか満たされないだろう、だから、やはりこれでは足りないわけで、スーパーゴールドプランが必要なのではないか、こう言ったわけです。ただ、その場合でも、現実的に考えればやはり経過措置というか、法案の中に出てくる制限給付というか、それもしばらくの間はやむを得ないのではないかということなんです。
ただ、この経過措置の関連でいいますと、法案ですと「五年を経過した日以後」となっているわけですね。五年を経過した後となると、二〇〇五年以降ということになりますね。それではやはり市民に対して明確になっていないと思いますので、二〇〇五年までにというふうに変えたらいいのではないか、こういうことを主張したわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/468
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469・中田清
○中田清君 先ほど職員の配置基準の改善ということでお願いしまして、現状は、どこの特養もそうなんですけれども、配置基準どおりの職員で運営されているところはないということは御存じだと思います。いろいろな各施設の知恵、工夫、そういったことで、何とか介護の質を落とさないで一生懸命努力しているという実態がございます。
それで、現状の措置制度の中の特養の配置基準が四・一対一なんです、入所者四・一人に対して配置基準が一名でございますけれども、今後特養は間違いなく介護度の重い方のみ入ってくるようになると私は思いますので、そうした点を勘案しまして、今後、介護保険制度導入下におきましては、身障療護施設並みに二・五人に一人ぐらいの職員配置を何とかお願いしたいということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/469
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470・五島正規
○五島委員 赤倉先生、市村先生、対馬先生にお伺いしたいと思います。
先ほどから介護力判定の問題について御議論がございますが、実際、現在やられておりますアセスをやった結果の審査を見ますと、アセスメントをやられた方々の回答が、どうも常識的に見てみると矛盾したような回答がいっぱい出てくるわけですね。そういう意味では、赤倉先生、質問項目をふやすことによって何か統一しようというふうな御意見がございましたけれども、現実には、質問項目を何ぼふやしても本当に書類だけで審査できるのかなという疑問が一つあるわけでございまして、そのあたりについてどうお考えかということが一つ。
それからもう一つは、先生御指摘にもなっておられましたが、痴呆の問題につきまして、身体上の障害の問題と痴呆の問題とを同列の質問用紙の中で処理をしていくことについて、特に介護力判定の関係からいえば非常に問題があるのではないか。とりわけ初期、軽症段階における介護といいますか、そういうものが非常に大事な時期において、それを軽い、そして非常に重症化したものを重いという形で介護力の判定をしていくということが本当に現実的かどうかという問題がございます。そういう意味では、その辺を一体としてやられていることについてどうお考えかということが二つ目。
それからもう一つは、これは対馬先生のお話とも関連してくるわけですが、支援という問題がございます。介護の問題全体としてもそうでしょうが、とりわけ虚弱者に対する支援という問題を考えた場合、その方の生活環境によって随分その支援の内容が変わってくるはずでございまして、必ずしも身体的条件ということだけでは判定できないのだろう。その部分が果たして現在の、今各地でモデル的に実行されている中において浮き彫りになって出てきているのかどうかということを、審査委員をやられた経験からどのようにお考えか。
さらに、そうした場合に、対馬さんが御指摘になりました身体上の介護とそれからいわゆる生活支援との区分をどういうふうに組み合わせていくのかというのが、どうも私、あれを見ているだけでは浮き彫りになって出てくると思えないのです。その辺について、実際審査に携われた先生方の御意見としてどうだったのか。
また、対馬さんが実際やっておられる中において、身体的要因であったとしても、状況によっては、社会性を確保したり等々、生活支援を強化することによって身体上の状況は改善するという部分も実は非常に大きいと思うわけですね。その辺について対馬さんのところでどういうふうに区別しておられるのか。
またあわせて、そういう形で民間でおやりになっている場合に、そのコストはどのようになっているのか、お知らせいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/470
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471・赤倉昌巳
○赤倉昌巳君 項目の拡大のことについてお答えします。
確かに、七十一項目というのは私は非常に少ないと思います。なぜかといいますと、世界一般的には、先ほど市村さんもおっしゃっているようにMDS方式というのが一般化されておりまして、大体三百五十項目からなされております。それを今回厚生省の場合は、非常に項目が多過ぎて煩雑化してなかなか調査が難しいということで、独自の七十項目に絞り込んだということになっております。ところが、実際に要介護認定のものを見ますと、項目も余り整理されていないというのがまず第一点あります。
例えば、食事がとれるかとれないかという項目がございますけれども、食事をとれる、とれないという一言で解決のつかないものがたくさんあります。食事が自分でとれても、実際に調理ができるかできないかということでいったら、例えば独居老人の場合は非常に大きな問題点がそこに出てきます。それからさらに、調理ができても、外に買い物に行けるか行けないかということまで考えると、それで一人で食事がとれるかという議論になると非常に難しい問題が出てきます。そういう意味では、やはりできるだけ項目をふやして、そしてその辺を整理していかないと要介護ということに対する判定が難しいのではないかと私は思います。
それから第二点、痴呆が同一のアセスメント票でできるのかどうかということなんですけれども、それは、確かにそういう精神的な障害の場合は非常にまた難しいと思います。身体的な障害と比べて非常に判定が難しくて、医学的にもいろいろな判定方法がございます。例えば長谷川式の判定方法とか、いろいろ利用されているわけです。そこの中で出していくのがやはり一番正しい方法だと思います。
ところが、その方式を加えていくともっと煩雑になってくるという議論もまたございます。それで、できるだけアセスメント票には項目をふやして、そして要介護認定審査会の中に精神科の医師に専門家として入ってもらって判定していくのがベストではないかな、ベストまでいかなくてもベターではないかな、私はそういうふうに感じました。
それから最後に、生活支援、生活の身の回りのことなんですけれども、やはりこれもケース・バイ・ケースで非常に異なってきます。身体的な障害というのは、身体障害のいわゆるグレードを決める方式も今たくさんございますけれども、そういうものもある程度利用していかないと、その辺はやはり決め切れないと思います。これもすべてまた一つのアセスメント票で処理していくということになると、大変なことだと思うのです。
それで、その辺をある程度第一段階でふるいにかけておいて、そして最終的に判断できるような、そういう二段、三段的に処理できるような方式、方策が何かないかなというふうな気がします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/471
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472・市村栄子
○市村栄子君 今、先生の方からもお話がありましたけれども、私は、排せつの問題を一つ取り上げたいと思うのです。
排せつの介助という場合に、例えば、移動から、ズボンを下げる、それで座らせて、後始末をして、またズボンを上げるという一連の動作だと思うのですけれども、尿意があるかどうかということと、排せつの後始末が一人でできる、一部介助である、トイレの紙だとか汚れを援助しなければいけないとか、全介助、たしか五段階だったと思うのですけれども、分けて記入している。
例えば、尿意があるのと時々しかないのと、あっても、ではトイレに行けるのかという問題と、時々しかない人は失禁しているというふうに読み取らなければいけないのですけれども、ではどのぐらいの頻度で失禁なのか、おむつを使っているのかとか、いろいろなことで、やはり現在のモデルで使われたアセスメント項目については不足だなというふうに実際に感じました。
小さな町ですと、そこの審査委員の中にかかりつけ医がいたり、調査員の方が実際に審査会に入られてコメントを話されるという話もちらっと聞いたのですけれども、実際にその人を見たり、ああ、あの町のあのおばあちゃんだねというふうにわかる小さな町ならいいのですけれども、札幌市の場合は絶対不可能だと思うのですね。
そんな中で書類の中でやっていくには、やはりアセスメント項目をふやして、チェックすることによって自動的に何が問題なのかというのが出てくる。MDS方式と言うのですけれども、それだと、例えば痴呆の問題も含めて、認知の問題だとか短期記銘力だとか長期記銘力がチェックされれば、自動的に、この人は痴呆があるとか、軽度だけれどもあるとかというようなことが全部チェックされて、この人はここが問題なんですというふうな形で出てくるのですね。
それで、市町村からケアプランナーの人が調査員としてお願いされるということも中にはあります。調査員とケアプランの人が一人であれば、依頼されてケアプランもできる。ケアプランをつくれるような人であれば、調査員のレベルで、この人についてはこことこことここが問題なんだというような形で表現されて、どの方でも、ああ、ここがチェックされたのでここに問題があるのかということがわかり、審査委員会の中でも意外と容易に問題が明確化されるのではないかなというふうに思います。
今、例えばペースメーカーが入っていて、身体上は大丈夫なんだけれども不安があるためにおふろに入れないとか、自宅におふろがあるのに一度も入ったことがない、そういう精神的な問題が全然チェックされない。調査員のコメントからしか理解できない部分がたくさんあるのですね。そういう部分は、やはりアセスメント項目をふやすことで私は可能なのではないかなというふうに考えました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/472
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473・対馬徳昭
○対馬徳昭君 実は、私どもで使っているアセスメント項目というのは三百項目でございます。先ほど、要介護認定の方は七十一項目ということで、実はかなり多い項目の聞き取りをします。特に滞在型サービス、二十四時間の巡回型でサービスする場合は、約三日間、半日ずつかけて聞き取り調査をやります。
なぜそこまでするかといいますと、結構利用者の方が曜日によって生活の仕方が違ったり、あるいは曜日によって家族が介護している状況が違ったりします。それから、本人の例えば今後の生活の希望だとかを聞き取りをしたり、あるいは、二十四時間でございますので、夜間にあるいは深夜帯にヘルパーが行ってサービスをしますので、例えば家の玄関のかぎ穴がかぎが入りやすいのか、ドアが静かにあくのか、段差がどうなのか、使ったおむつを捨てるところはどこか、新しいおむつはどこにあるか、全部そういう聞き取り調査をしますので、三百項目という項目を聞き取ってございます。
そして、かなり介護中心に聞き取りますし、生活の状態もかなり調査をしてございます。例えばあるケースであれば、もうベッドの上で三年間寝たきり状態にありました。それで、唯一この方の楽しみは、ベッドから見る天井のしみの数の勘定をすることと、朝九時半からやっている「水戸黄門」の再放送が一応楽しみだと。我々はそこに注目をするのですね。この時間を何とか使って、当初は寝たきり状態であったベッドをギャッチアップをして「水戸黄門」を十分見てもらう。そしてやがてそれが二十分、三十分ということで、一時間ベッドをギャッチアップをして「水戸黄門」を見る。それができるようになったら、次のケアプランの立て方というのは、居間のソファーに座って「水戸黄門」を十分見て、当然疲れますので残りの五十分はベッドでと。そういう生活の状態まで調査をしますので、家事援助サービスの仕分け、それから身体介護、これはかなり自由に実はできます。約三百項目あれば振り分けはできると思います。
それで、今までも相当のケースでサービスをしてきていますが、一利用者に身体介護で二時間、三時間続けてサービスしたというケースは我々のケースにございません。せいぜい長いもので、食事介助で一時間かかったとか、入浴サービスで一時間かかった、この程度でございますので、まず一時間を超える介護サービスはないと思います。
私の申し上げたのは、身体介護は仮に三千五百円だと、そのうち実はボディータッチに要する時間というのは約二割程度なんですね。残り八割が、重介護で行っても家事援助サービスなんですね。だから、公的介護保険のコストとかすべての財源を考えるときに、この辺のむだをなくすることによって財源の効率性ができるのではないかという説明をさっきさせていただきました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/473
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474・児玉健次
○児玉委員 日本共産党の児玉健次です。
横山先生と川島先生に御質問いたします。
その一つは、横山先生、御専門の研究者として、今国会で審議しております公的介護保険制度、これが構造的に見て、最低の条件といいますか、ミニマムなものをほぼ備えているとお感じかどうか、それが一つです。
もう一つは、先ほど先生のお話の中で、経過措置に関連して二〇〇五年までにと明示すべきだと。私たちも全く同感です。それで、自治体の準備が滞っているときに、国はどのようなイニシアチブを発揮すべきか。私たち、この点で財政的にも余り禁欲的でなくていいと思っているのですが、そのあたりの先生のお考えをお伺いしたいのです。
それから川島先生には、一つは、基盤整備が不十分で、そしてさっきから議論されている要介護の認定基準がこれまた狭い。そういう中で、利用者の側からの自己決定権といいますか、その選択権というのが保険制度だから広がるとは必ずしも言えないと思うので、そのあたりについての先生のお考えと、もう一つは、先ほどの御陳述の中で、医療の重要性、そして、特別養護老人ホームその他、施設の中での医療が軽視されるおそれがあるというふうにお話がありましたが、そのあたりをもう少し補足していただければと思います。
以上です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/474
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475・横山純一
○横山純一君 最初のミニマムの問題ですけれども、私は、先ほど申しましたように、新ゴールドプランが実現した場合でも在宅介護サービスのニーズの三分の一ぐらいしか満たされない、施設サービスは一応満たされるというふうに言われてはいるのだけれども実質的にどうなのかな、こういう状況ではないかと思います。そして、それを今度は翻って自治体の中で見ていきますと非常に格差があるというわけですから、当然、今の状況ですと、達成されている自治体もあれば達成されていない自治体もある、こういうふうに考えることができます。したがいまして、先ほど私が、分権というよりも、これからむしろ統一的な施策として位置づけていかないといけないという話をしたのも、その点にかかわるということでございます。
それから財政の問題ですけれども、こちらの方は、私も、公的介護保険であれば施行年と成立年とをかなりずらした方がいいという主張を一貫してしてきたわけですね。それは、やはりその間に在宅、施設両サービスの整備をしていくという形で、そのときに施設サービスでいえば施設建設の設置費補助金などを相当動員してやるべきだ、こんな主張もずっとしてきたわけでして、ある面でいえば、私も、財政の方でいいますと、これから先、今、国の行革の問題もありますけれども、福祉についてはやはりかなり財政的にシフトしてふやしていく必要がある領域ではないのかな、こういうふうに思ってきたわけであります。
そういう主張を私も大分していましたら、例の彩福祉グループの問題とかありまして、道内でも少し言いづらくなった面があるのですけれども、実際必要なことは必要なわけですから、財政的にいえば、この施設整備も含めて余り禁欲的にならないでやるのが本来の趣旨ではないかというふうに思っております。
それから、経過措置の問題というのは……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/475
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476・児玉健次
○児玉委員 二〇〇五年、それまでにとする上で、国のイニシアチブというのはどう発揮すべきかということです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/476
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477・横山純一
○横山純一君 私は、そこの部分については法案を変えてほしいなというふうに思うのです。そういうふうに議員さんたちに頑張ってほしいなと思うのです。
私は、やはり明確にした方がいいと思うのですよ。「五年を経過した日以後」こうなっていますね。これは市民の側からすると、はっきりある程度の時期設定をしていかないと、また先送り先送りということになってしまいますから、やはり明確に、二〇〇五年までにとする、そういうことはやはり必要なのではないかな。そういう点でいうと、余り偉そうなことを言えませんけれども、これからの政治というのは割とわかりやすく数字設定などをしてやられた方がいいのではないのかなと私は思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/477
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478・川島亮平
○川島亮平君 今度の介護保険制度を導入するときの大きな理念的な根拠として、利用者の自己決定というようなことが強調されました。裏を返せば、今の措置制度では利用者が選択できない、措置される。そもそも出発点としては救貧制度から出発しているというようなことで、措置制度には利用者の選択権がないのだ。したがって、保険制度にして、保険料を払って、権利意識も持って、自分の選んだサービスを受けるということが建前になっていたと思うのですけれども、果たしてそれでは保険制度になったらそういうことができるのかということが一つと、本当に措置制度の中に利用者の権利がないのかという二つの問題をお話ししたいと思います。
それでは、今の保険制度になったら利用者が選択できるのか。でも、入りたくても入れない人はどこに選択権があるのですか。この権利は、保険料を払っているから権利があるのではない。日本国民として税金を払っていれば、それで必要な保障を受けられるということにおいては、保険制度だから権利が芽生えるのではない。税金を払っていてもその権利は日本国民として持たれなければならないという意味においては、これは理由にならない。
保険料を払って、さあサービスを受けるといったときに、お金がなければ選びようがない。ましてや、これは施設との関係において自由契約になりますね。そうすると、そこでの契約ということは、今のように基盤整備が整っていない段階では、利用者の側に選択権はないのですね。施設の側にむしろ選択権がある。
そうすると、例えば特養でいいますと、今までは措置制度のもとで、非常に経営体は大変です。先ほど中田さんからも言われていましたけれども、いろいろな規制があります。しかし、今度は、ほかの施設と競争して、より利用者にとって喜ばれるような施設になる。だから、いい面が半分あるのですけれども、いいサービスをするためには特養も経営的に見通しを立てなければならないとなると、そこで行われる利用者との自由契約の中身というのは何なのか。
手がかかって、その割に保険給付されないような人は排除するということにもなりかねません。利用者の側は、ただでさえ選択する幅が狭い上に具体的な契約になったときに、お金がなければ受けられない場面も出てくるでしょう。保険給付の割に介護度が強い場合には拒否される可能性もあるということ、自由契約というのは施設の側に拒否する権利もあるのだというあたりのことを考えますと、保険制度になったら自由に利用者が選択できるのだということにならないことははっきりしていると思います。
最後に、措置制度の問題なのですが、先ほども出ましたが、今の矛盾は、措置制度であっても入りたくても入れない人がいるという基盤整備の問題が一つ。これが満たされれば今でもある程度は選ぶことができます。それからもう一つは、それでは特養などに入ったときに十分にその利用者にふさわしいサービスができているかといったら、先ほども強調されていましたように、今の国の措置基準であっては、やってあげたくてもできないというのが実態てすね。
我々のところでも、国の基準どおりの職員でやりますと必要な夜勤さえ組めない。この中で、どうして本当に利用者に喜んで利用してもらえる施設になっていくのか。措置基準を改善すること、それから施設の基盤整備を強めること、これはどんな制度であっても当面急がなければならない内容だというふうに思います。
以上です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/478
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479・能勢和子
○能勢委員 私、自由民主党の能勢和子でございます。また一方におきまして、先ほど出ました精神病棟あるいは介護力強化病棟を持ち、痴呆老人を受け入れたりしております病院の看護部長としても長年勤めてきた者でございます。それだけに、きょうの皆様方のお話を、身をもってといいますか、本当にそうだったなということをかみしめながら聞かせていただいたわけです。
殊に、北海道は老人医療について日本一医療費のかかっている地域でございますので、大変な問題を抱えていらっしゃるということをかみしめながら、一歩突っ込んで聞かせていただきたいと思います。
先ほどどなたか、現在二百八十万人の予備軍がいて、これについて最大限五十万人分ぐらいの措置しかできないだろうということもありましたけれども、今回の介護保険のねらいは、やはり地域の村から村へ手をつなぎ合って支えていこう、家族で支えていこうという気持ちもあるわけですね。
その中で、私どもも経験しておりますのが、痴呆の方であっても、入院するという環境変化で、もともと持っている力よりも落ちるという例もたくさん経験しているわけですね。できることならば、先ほど対馬さんの発表がありましたけれども、可能な限りその地域で、在宅で医療を進めたり介護を進めることが本人にとってみても最も理想です。あるいは、国の財政等々から見てみても、だれが考えてみても、ある一定の原資の中から介護につけていくわけですから、日本国の全財産を介護に持っていくということは不可能でありまして、そんなことからも、在宅医療、在宅看護を進めていかなければならない。
私どもも訪問看護をしてまいりました。その中で、かなりぎりぎりまで訪問看護で支え、本人も喜んだという経験をたくさん持っております。すべてが入院し施設に入ることが幸せとも限っておりませんし、むしろ残存能力が落ちるという経験もしております。
そういう環境の中で、お尋ねしたいことが、赤倉先生のおっしゃった精神科医の選定ということですが、そこまで専門家が必要なのかどうかということが疑問であります。今回の介護保険の問題については、もちろん医療も含まれてはきますけれども、むしろ生活している実態、生活体としての人間をどう看護、援助していくかということです。
医療は病気のときに受けるわけでありますけれども、今回の判定というのはほとんどが生活をどう支えていくかということでありますので、私たち看護者が実態を見ていれば、この方は痴呆があってもむしろこの環境が必要だろうというのはかなりの部分判断する力を十分持っていて、先ほど市村さんから発表がありましたように、看護者がその中のかなりをコーディネートできるということがあると思います。その中で、看護協会が、北海道でもそういうことをやっていらっしゃるし、私ども広島県におきましても、訪問看護でかなり成果を上げているわけなのです。
そこで、市村さんにぜひお尋ねしたいのが、北海道の看護協会でやっている訪問看護ステーションで、非常に成功したといいますか、施設に入るよりもむしろ訪問看護でかなりよくいった例、あるいは訪問看護で、ぎりぎりであるが大変難しい例があれば教えていただきたいというのが一点であります。
そしてもう一点は、村長さんにお尋ねしたいと思うのです。
前回、実は岡山でも公聴会をやりました。そのときに、岡山県のある町が、一万三千ぐらいの人口のところですが、非常に土着性があり、市町村でなければ介護はできない、県段階では見えないけれども、よく見えていくと。在宅医療で、保健婦さんたちがヘルパーとともに手を組んでやっている中で、給食サービスがあればかなりまでできるとか、ほとんど施設に入らなくて成功させた例の発表があったわけでございます。
私はそのような感じをしているわけですけれども、これも地域によって大変格差があるということが発表されています。格差はなぜ生じたのか、財政の面なのだろうか、あるいは取り組みの問題だろうか。市町村の格差について村長さんはどうお考えになっていらっしゃるかを教えていただきたいのと、私たちは本当に訪問看護で支えてきて成功したということで体で感じているけれども、北海道看護協会がその中で大変活躍しているということを聞いておりますので、ぜひ発表していただきたいと思います。
以上二点、お願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/479
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480・市村栄子
○市村栄子君 北海道の方式は総合在宅ケア事業団という形で、道とか医師会とか、当然看護協会も入っておりますけれども、第三セクター方式というのですか、市町村などの協力を得まして、現在全道三十六カ所に訪問看護ステーションがあるのです。
特に北海道の場合には、地域性で、非常に人口が散在しているわけです。札幌市の場合には、四十数カ所現在ございまして、一ステーションで三十分圏内というような形でのステーションの運営はできるのですけれども、本当に小さい町とかですと、そこの一カ所から行くだけで、片道一時間とかかかるというようなケースがございまして、基点を市に持って、小さな町に一人とか二人ぐらいの訪問看護ステーションを中核で持っています。そういうサブステーションを持っていて、そこからは三十分以内に行ける、そういうようなステーションのあり方を考えました。
特にそれが北海道方式として、一カ所に、都市に固まるのではなくて、道内各市町村にステーションを持つという意味では非常に有効な形じゃないかというふうに考えております。一つの市とかではもうやっていけない、幾つかの小さな町がタイアップしてやらなければいけないということで、そういうステーションの持ち方が今後検討されると思いますけれども、全道各域にステーションをつくっているという点では、総合在宅ケア事業団形式というのは一つ特異な点じゃないかなというふうに思います。
それと、例えば大学病院で、どうしても帰りたいといったときに、高度医療の必要のある方についても、そのステーションに実際に指導に行って、地方のステーションの方たちと看護婦同士での連携をとって、実際にターミナルケアで最期までそこで見られたということがあります。在宅で死を迎えたいというお年寄りが結構ふえてきておりますので、そんな形で最期まで自宅で見られるケースがふえてきていると思います。
ただ、現在、例えば人工呼吸器をつけられて自宅にいる方たちが、介護疲れがたまったというときに、ショートステイで老人保健施設に実はなかなか入れない。夜間看護婦が一人という面もありますし、酸素呼吸器、酸素ボンベなどの問題もありまして、いろいろなチューブをつけた方たちが在宅で実際には生活しているのですけれども、在宅支援の老人保健施設ではなかなか見てはいけない。それは在宅酸素の方たちも同じなのです。在宅で訪問看護に行って、家族への在宅酸素の使用方法だとかの援助というのはできるのですけれども、そういう方たちがショートステイとかで老人保健施設に入ってきたときになかなか対応ができないという部分が非常に難しい。
それと、今、介護力強化病院なども、介護保険がもうすぐ施行されるかもしれないというがために、当然医療費がかなりかかりますので、実際にそういう人工呼吸器をつけた方たちを受け入れられなくなっている。そんな方たちが実は救急病院などでもどこにも行き場がなくなっている。ではやはり在宅でやらなければいけないというときに、二十四時間の援助が必要じゃないか。基本的には、もうだれか家族がいなければできない、そういう問題がだんだんと出てきているというふうに伺っておりますけれども、かなり高度医療の必要な方たちも在宅で最期まで見られているというケースがたくさんあると思います。
以上です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/480
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481・加賀谷強
○加賀谷強君 どうして地域格差が出たのかという御質問でありますが、これは私の個人的な見解ということでお聞きいただきたいと思うのです。
御承知のように、北海道は非常に広い地域であります。大きくは、札幌周辺の道央、それから道南、道北、道東と四つに分けることができるのですが、人口が集積しているのが道央地帯であります。特に道北、道東というところについては、過疎がどんどん進んでいくという状態であります。そんな中で、一番町村長が頭を痛めているのは医師の確保であります。お医者さんを見つける、それからお医者さんに来ていただく、これはなかなか大変なことでございまして、これは町村長の選挙の最大のあれになるわけですね。これがうまくいかないと危ないのです。
それはともかくとして、北海道は非常にお医者さんが足りなくて、歯科医を含めて、一時期は外国の方にまで来ていただいたこともあります。ですから、たしかきょうの道新にも大きく出ていましたが、道南のある町では、北海道の大学と縁を切るというわけにはいかないのですけれども、別の、本州からお医者さんを依頼するという状況までいっているのですね。なぜかというと、いわゆる道央以外の地域の医師の給与というものは大変なことなのです。ですから、一人雇っても大変なところへ、こういう介護の問題でいくと少なくとも三人体制ぐらいはとっていかなければならないという中で、医師の給与だけでとても財政はもたないというのが現状なのですね。最近本州の先生方が入ってくる傾向が強いので、我々としては大変助かっているのです。
医師ばかりではなくて、例えば保健婦、看護婦の確保についても大変なことなのですね。ですから、高校を卒業する子供たちに奨学資金を出して看護学校なり保健婦の養成機関なりで学ばせ、そして卒業してきたら何年間か、これはいろいろ問題があるかもしれませんけれども、そうでもしないと人的確保ができないというのが北海道の実情なんですね。ですから、そういう中で自然と地域においては差が出ざるを得ないというのが実情であります。
そしてまた、もう一つは財政的な問題もあると思うのです。広い区域の中に希薄な人口を抱えているわけですから、行政コストは極めていろいろ問題のあるものが多いのですけれども、しかしやらなければならない面もあるという中では、財政的ないろいろな苦労もあるわけであります。どなたかの意見で、町村長の熱意の問題ではないかということがありましたが、私の口からはそういうことは申し上げるわけにはいかないのではないかな、こう思っているわけであります。
答えになるかどうかわかりませんけれども、そのようなことではないかと思っています。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/481
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482・能勢和子
○能勢委員 ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/482
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483・中川智子
○中川(智)委員 社会民主党・市民連合の中川智子と申します。
私は、生まれて初めてきょう北海道の土を踏みまして、やはり地域性ということを、あの一時間の空港からここのホテルまでの間でも実感しました。これだけ広い面積の中で、それに雪が降って、あれだけ積もっている。生まれて初めて見ました。その地域性を考えてこの介護保険法を、本当に中身のしっかりしたものにしなければということで、きょうお邪魔いたしました。
手を挙げるのが出おくれてしまったので、もうこの後は伺えないと思いますので、欲張って質問させていただきます。
まず最初に、村長さんからのお話の中で、準備の具体的なものを示してほしいということと、地域性をしっかり視野に入れるべきという御提案がありました。それに関連いたしまして横山さんにお伺いしたいのですけれども、私ども市民運動で、いわゆる介護の社会化ということでたくさんのグループの人たちとおつき合いしてきて、その中で私自身がそれを国会で伝えるというつなぐ役目をさせていただいているわけなのですけれども、北海道の、この札幌周辺でのそういう住民運動の方たちの現状を、簡単でいいのですが教えていただきたい。
私は、この介護保険法というのは、窓口になる市町村の人たち、そして利用者である市民がこの中に入っていって、施行までの間にきっちりとたくさんの意見を闘わせて、私たち自身も参加してこの法律をきっちりつくっていくということが大事だと思いまして、審議している中ででも、市町村にきっちりと委員会を設置してほしいということを今訴えていますが、そのことに対しての御意見をお伺いしたいと思います。しっかりと声が届くように、そのような委員会をどのようにつくったらいいか御助言をいただきたいということで、横山さんに御質問させていただきます。
市村さんには、今の参加している審査会は女性が何人中何名かということを教えていただきたい。そして、女性の力をこの介護の中にどのように生かしていったらいいかということをお話しをいただきたいと思います。
そして、中田さんには、縦割り行政の弊害、これはもう本当にため息が出るほど感じておりますが、先ほどさらっとお流しになりましたが、もう少し窓口での具体的な弊害をお聞かせいただきたい。
以上でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/483
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484・横山純一
○横山純一君 最初の問題、住民運動の問題なんですけれども、私は福祉関係の住民運動にすごく積極的に参加しているというわけではないのです。ですから、道内の住民運動がどういうふうになっているかとか、そんなに詳しいことはよくわからないのです。
ただ、介護の社会化の必要性だとかあるいは住民運動の必要性ということはもちろんよくわかりますし、そして実際、公的介護保険が一九九五年ごろから話題になりましたけれども、あのあたりから、札幌だけではなく全道を通して、学習会みたいなものが市民の間で随分いろいろな形で起こっておりまして、私なども随分そういう場に参加させていただいたりしました。そういう面で言うと、公的介護保険が一つの話題になって、今まで福祉に関心を余り持っていなかった方もかなり学習会などを通じて参加をするようになったという傾向は見られるのではないかなというふうに思います。
その程度になるのですけれども、よろしいでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/484
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485・中川智子
○中川(智)委員 市民運動とかで接触のある方というのは、八人の方の中には余りいらっしゃらないのですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/485
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486・横山純一
○横山純一君 いや、全くないわけではないのですけれども、そんなに深くないということです。
それからもう一つの、市民参加の市町村の委員会ということですが、各市町村に委員会をつくればいいかどうか、ちょっとどうかなというふうに私は思っております。
というのは、前の老人保健福祉計画の策定のときにも、結構頑張って策定委員会などをつくったりする自治体が多かったわけですけれども、一方では、本当に現場の声を入れて老人保健福祉計画をつくっていく、そのために委員会を設置するというところもありましたけれども、もう一方では、さあ策定委員会をつくったのはいいけれども、どういう人を入れるかとなると、老人ホームの施設長さんを入れるのではなくて理事長を入れるとか、あるいは自治体の中の学識経験者の人に元校長先生を入れたりとかという感じになって、老人保健福祉計画の内実を発展させるような委員会になかなかならないというケースもあるわけですよ。
ですから、市民参加の委員会といっても、全道二百十二市町村それぞれ実情がございますから、そういうことをやれるところがあればやったらいいと思うのですけれども、むしろ問題は、どういう形で市町村民の声を吸い上げるのかということですから、私は、機械的に市民参加の委員会を各市町村に設けるという必要はないのではないかというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/486
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487・市村栄子
○市村栄子君 札幌市の要介護認定審査会は七名でした。普通は五名ということだったのですけれども、札幌市の場合には、内科の赤倉先生と精神科の医師と歯科医師と理学療法士、特養の施設長さんと保健婦としての私、あと学識経験者ということで、横山先生と同じ大学の教授が一名入っておりました。七名中一名が女性でした。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/487
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488・中田清
○中田清君 各法律に基づく縦割り行政というよりも、同じ法律の中でも大変やりにくい面を、私一例を申し上げます。
今、施設整備の場合、例えば特養をつくるときに、デイサービスセンターだとか在宅介護支援センター、そういったものがほとんど必置の状況にありますけれども、その中の基準で、例えばデイサービスセンターをつくった場合は必ず厨房だとか給食施設を別につくらなければならない。そういった面が非常に多いわけです。ですから、介護保険制度導入の一つの基本理念の中に効率化という面が私はあるのではないかと思うのですけれども、同じ法律の中でも、そういった基準がたくさんございます。
もう一つ例を挙げますと、今、合築というのがかなりはやっていますね。例えば保育園とデイサービスセンターだとか、いろいろな合築というものがはやっていますけれども、その中でも、何のために合築するかがわからないような例がたくさんございます。厨房などは、どんな法律のもとであっても合築されたら運用はある程度その地域に任せた方がいいと僕は思うのですけれども、その辺がかなり厳しい基準だとか規制がございまして、本来効率化を図るべきその理念が、そのことによって非常に障害があるということはもう幾らでも例があると思います。その辺、介護保険制度導入の一つの大きな理念でございます効率化を視野に入れて、法的なそういう規制緩和といったものを進めていただきたいというふうに思います。
以上です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/488
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489・土屋品子
○土屋委員 21世紀の土屋品子でございます。
私は、先ほどもちょっとお話が出ました彩福祉グループの問題のあった埼玉県出身でございます。そういうことで、私としても、あの事件が起きまして、福祉政策が少しでもおくれてはいけないということと、福祉の現場で本当に一生懸命働いていらっしゃる人たちが同等にとらえられては大変なことだということを実感として感じております。あの事件以後、埼玉県も、福祉施設の運営等をストップしてはいけないということで、いち早く県側で推進しているところでございます。
私、質問なんですけれども、村長さんに一問と、それからジャパンケアサービス代表取締役の対馬さんに一問、それから看護協会の市村さんに一問お願いしたいと思います。
最初に村長さんですけれども、介護保険を実施するに当たっては市町村の役割が大変大きいと思います。特に、財政が一番の問題だと思うのですけれども、財政の安定化を図るために、事務費等の軽減等を考えますと、広域で財政運用を考えていくという話が大分出ているのですけれども、私は埼玉県ですので、九十二カ町村あるわけなんですね。そうなりますと、かなり広域的なことは考えてやっていかなければならないのですけれども、北海道は本当に広うございますので、広域的に可能かどうかが私はちょっと感覚的にわからないのです。可能な場合、メリット、デメリットあると思いますけれども、そういう点について少し御説明いただければありがたいと思います。
それから、この介護保険制度が実施されましてから、民間活力の導入というのは相当大きいものだと思います。その場合、公的セクターと対等に競争していくに当たって、企業は今のシステムの中で十分可能であろうかということが知りたいわけでございます。それから、都市部では可能なのではないかと私なども思うのですけれども、過疎地において果たして民間活力が参入できるのかということですね。そこら辺の可能性についてお伺いしたいと思います。これは対馬さんです。
それからもう一点ですけれども、私、地元埼玉の施設を何カ所か訪問いたしまして、看護婦さん、それから介護士さんとか栄養士さん、現場に携わっている方々とちょっと討論させていただいたのですけれども、実態は討論にならなかったのです。というのは、施設長の方とか自治体の担当の方というのは大変詳しくこの介護保険法については勉強されていますし、問題点について追及されているのですけれども、本当の現場で毎日直接当たっている人は、毎日のランニングで疲れ果てておりまして、今度できる介護保険法が十二年施行なんだぐらいは知っていても、その中身まで突っ込んでわかっていないようでした。その点、看護婦さんの中でそういう勉強会とかなさっているのか、また、これからそういう計画があるのかということをお伺いしたいのですが、よろしくお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/489
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490・加賀谷強
○加賀谷強君 まず、介護保険の財政安定化のために広域的なことが可能かということなのですが、これは、実は私もいろいろと担当者と議論したことがあるのですが、実際やってみなければわからないという面がたくさんあります。
ただ、事務費で申し上げると、二分の一補助だということなんですが、何が基準なのかということが私はわからないのですね。ですから、実質この事務をやるために人をふやさなければならない、その人的な費用にかかるものに対する二分の一なのか、あるいは、厚生省は何でも基準がありますから、人件費も基準があって、その基準に対しての二分の一なのか、よくわからないのですが、我々としては、実際にかかった経費の二分の一、そのような考え方にしていただきたいなという思いがあるのです。
それで、例えば要介護認定につきましても、非常に面積が広いところが多いものですから、その市町村の保健婦とかそういう人たちが回って歩いて、この人はどうだこうだ、あるいはかかりつけの医者の問題、いろいろなことがあると思うのですけれども、実際状況を把握するのは市町村のそういうマンパワーの人たちではないのかなという思いがあります。そうした場合に、広域的にやれることとそうでないことがあるのではないかというふうに私は思っています。
ですから、実際やってみて、最小の経費で最大の効果を上げるのが我々の仕事ですから、そういう中で、広域的にできるもの、あるいはどうしてもできないもの、そんなことを分類しながら考えていく必要があるのかな、こう思っていますので、メリット、デメリットという話はちょっと今申し上げにくいかな、こう思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/490
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491・対馬徳昭
○対馬徳昭君 今、先生に御心配をいただいて、公的セクターがサービスを供給した場合にシルバーサービスが生き残っていけるのか、こういう御質問だと思うのですが、我々は、公的介護保険が施行されて、それに民間の活力を大いに使っていただけると期待をしてございます。
それで、公的介護保険ができますといろいろとコストの問題が出ますが、これは、例えば六段階目の分類であれば、市町村がやろうと医療法人がサービスしようと社会福祉法人がやろうと、恐らく同じ単価のはずなんですね。したがって、私は、市町村ができて我々民間がそのコストでサービスができないということはないと思いますので、コスト面ではどこがやっても十分成り立つ適正な単価になろう、また適正な単価にしていただきたい、こう思ってございますので、余りそれは心配してございません。
ただ、いずれにしても、保険ができて大事なことは、サービスの供給がいろいろなところで始まりますが、今回の公的介護保険の中でも特に、利用者がサービスの供給先を選べるというのが非常に高く評価できるところでございますので、我々民間事業者は、とにかくサービスの質を上げようということで今一生懸命頑張っているところでございます。
それから、先生御指摘のとおりでございまして、今、我々シルバーサービスは、地方自治体から委託をいただいて滞在型のサービスあるいは二十四時間のサービスを提供してございますが、正直言いますと都市部にかなり集中しています。特に東京二十三区に実は委託が集中してございまして、今現在、過疎地域の委託は極めて少ない状況でございます。
私も、協議会会長として申し上げますと、都市部ではやれるけれども、例えば郡部、過疎地域でできない、こういうことは余り望ましいことではないというふうに考えてございまして、今回、九年度の国の予算の中でも、シルバーサービスが例えば過疎地域等に行った場合に果たして成り立つのかということで、そういった予算の計上もしていただいているようでございますので、ぜひそれらを受けて、民間が過疎地域でも活躍をし、質の高い介護サービスを供給していきたい、このように考えてございますので、研究の成果もまた改めて報告を申し上げたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/491
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492・市村栄子
○市村栄子君 北海道看護協会においても、「看護と介護保険研修会」ということで八年度は二回研修を開きました。七月の時点では大体百名の方がいらっしゃいましたけれども、二月になりますと百五十名の方に参加していただきましたので、介護保険にかなり興味を皆さん持っていらっしゃいます。
それと、要介護認定されたときに自分でケアプランを立てる方と依頼してケアプランを立てる方に分かれますが、そういうケアマネジメントの役割をぜひ看護婦さんがということで、そういう研修も実際に八年度もやっていますし、九年度も企画をいたしております。
以上です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/492
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493・土屋品子
○土屋委員 どうもありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/493
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494・坂口力
○坂口委員 公述人の先生方、お忙しいところをありがとうございます。
多くの皆さんにお聞きをしたいわけでございますが、時間の制約がございますので、お三人にだけお聞きをさせていただきたいというふうに思います。
祐川公述人と赤倉公述人と対馬公述人の三人にお開きをしたいと思います。
祐川さんの方は先ほど保険方式を強調されまして、私たちはどちらかと申しますと税方式を強調しておるものですから、そこは意見を若干異にするわけでございますが、横山先生がそこは明快に御主張いただきましたのでほっといたしております。政府の案も、入り口は保険になっております。しかし全体で見ますと、公的資源というのは約六割に及んでおりまして、ハードの面も入れますと六割以上になるだろうというふうに思っておりますから、入り口は保険ですけれども奧座敷は税になっているというような感じの今回の制度でございます。
祐川さんにお聞きをしたいのは、税であれ保険であれ、先ほど御指摘になりましたように、介護は権利であるということをどのように介護システムの中で生かすかということなのだろうと思うのです。特に、認定をするときにこれは非常に大事なのだろうというふうに思いますが、どんなふうにしていけば介護を受ける人の権利というものを一番生かすような形にすることができるというふうにお考えになっているか、そこをちょっとお聞きをしたいと思います。
それから、赤倉先生には医療保険と介護保険とのかかわりにつきまして一つだけお聞きをしたいわけでございます。
先生、きょうはお触れにはなりませんでしたが、この介護保険の中で一部医療の方も見ることになっております。しかし、申し上げるまでもなく、医療保険と介護保険というのは中身もかなり違いますし、医療の方は患者と医師との間の対話の中から質量ともに決まっていきますが、介護の方は、要介護者と介護者との間の対話だけではなくて、そこに認定者という第三者が入ってまいりますし、若干異にいたします。
将来、医療の方は医療保険できちっとする方が好ましいのではないかと私は思っております一人でございます。そう考えますと、医療保険の将来のあり方というものと介護保険のあり方というものとが非常にかかわってくるというふうに思いますが、その辺のところをどのようにお考えか、お聞かせをいただきたいと存じます。
それから対馬さんには、実は私の手元に地方自治経営学会がまとめられましたデータがございまして、これを見ますと、例えばホームヘルプサービスをいたしますときに、公の機関がいたしますのと民間がいたしますのとを比較をいたしますと、公を一〇〇にいたしまして、それに対して民間では四九%、五割以下でやっているという結果が出ております。市民ヘルパーさんあたりがやっているのを見ますと、これは公のやっているのに対しまして二二%という非常に低い額でおやりになっている。それから、入浴サービスにいたしましても、公の市町村がおやりになっております額に対しまして民間の方は四三%という数字が出ておりまして、かなり差がございます。
今回の法律ができましたときに最終どうなりますのか、ちょっと私もこれはわからないわけです。同じ値段で行うということになるのか、民間の方がそれは安くしようと思えばできるのか、あるいは値段は同じでサービスの中身で勝負をすることになるのか、そこはちょっとよくわかりません。しかし、民間の皆さん方に御活躍をいただきたいというふうに思いますし、いただかなければならないことだけは間違いないというふうに思っております。そうした意味で、どのようにお考えになっておるかをひとつお聞きをさせていただきたいと思います。
以上、三人の方々、どうぞよろしくお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/494
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495・祐川眞一
○祐川眞一君 まず、私は保険方式ということを言いましたけれども、先生御指摘いただきましたように、公的資源として考えますと税金ももちろん入っているわけですし、その中である程度安定した形で運営できるという意味で保険方式を支持したいというような立場で申し上げたわけでございます。
御質問は、権利という立場、例えばその認定上どうそれが生かせるのかというような御質問だったと思うのです。
現在の、例えば特養なら特養、あるいはいろいろな在宅の福祉サービスを受ける場合の基準といいましょうか、それは、きちっとした基準とも言えないあいまいさがある。使いたい方が使うと強く主張すれば、それが何らかの形で基準の中に該当されて使えるといったようなあいまいさもあるわけです。そういう意味で、今、認定の方法等についていろいろな実験をし、その検討がされており、また私どもも、職場の中で、この認定の方法としてMDSのアセスメントとケアプランの方法を講じて、本当に一人一人の個別性が生かせる、そういうケアサービスを提供していこうという努力をしているわけです。
しかしながら、どちらかというと今まではそういう一人一人の権利という立場ではなくて、ある意味では家族がどうしようもなくて、本当にこっそり、新しい病院ができたからと言って特養にだまして連れてくる。こういうような形の中では、どんなに我々がそういう障害のあるお年寄りに笑顔をつくっていただこうと思って努力しても限界がある。そういう意味では、特養というようなものが行政処分として、福祉の世話になってといいますか、市役所の世話になって入ってきたのだというスタンスはどうしても改革していかなければいけないのではないか。
例えば、私どものホームに実は特定有料老人ホームというのがございます。特養と特定有料老人ホームが隣接しておりますけれども、一緒にいろいろな会合をやったり、いろいろなパーティーをやりますときに、有料の人たちが言うのは、多少障害がある人でも自立ができれば有料にいらっしゃるわけですけれども、おれたちはここの園長と契約して入ってきた、こちらの特養の人たちは市役所の世話で入ってきたというような認識の仕方をするわけですね。そこに措置制度の大きな弊害があるのではないか。そういう意味で、保険方式によって、保険料も納め、そして権利意識として入ってくる、その方がはるかにいいのではないかというふうに私は思っております。
そして、認定上どう生かすかということですが、この認定ということは、権利という立場で言えば、あなたはこういうランクですということをきちっと説明をし、その客観的なデータを示した上で初めて本人が納得し、自己決定ができるという状況が出せるのではないかというふうに思っておりますが、そういう面でもそういう改革が今までなされなかった。しかし、今度の公的介護保険の導入に当たって、保険方式をとりつつ、こういう権利を生かせるようなシステムに変える大改革をするチャンスではないか。
そういう意味で、今までの古い皮袋を新しい皮袋にかえて、今までの古い福祉のイメージを破っていかなければ、本当に喜んで福祉サービスを受ける立場は出てこないのではないかというふうに私は考えているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/495
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496・赤倉昌巳
○赤倉昌巳君 坂口先生から非常に難しい質問をいただいたのですけれども、確かに、現在、医療保険がどうあるべきかというのは医療保険制度改革で非常にいろいろと議論のあるところでございます。将来的にどうあるべきかというのは非常に難しいところです。
確かに、歴史的な経緯から申しまして、やはり老人医療の今までのあり方ということが非常にまずかったということで、結果的に現在があるのではないかと思います。これは、老人医療の無料化ということにそもそも端を発して現在までに至っているということをやはりこの辺で整理をつけなければならない、二十一世紀に向けてそういう議論が出てきたのだと思います。
それで、将来的に介護保険の問題というのは老人医療との非常にかかわり合いの大きいところでございます。医療保険自体を考えるのでありましたら、そう余り難しい問題はないような気がするのです。というのは、今までの老人医療の部分が非常に大きいために難しいことになってきているということです。
それで、医療保険と申しますのは、今大きく分けてその方向が二つあると思います。一つは専門医制度でございます。これは、特定機能病院と申しまして、大学病院、それからがんセンターみたいなところが、専門的な医療を行う医療機関として独立してきているわけです。これは診療報酬体系からもそういう方向性が見えているわけです。そうした場合に、もう一つの部門、今まで地域医療を担ってきた開業医がこれからどうあるべきかということの議論になると思うのです。その辺がやはり介護保険との一つの接点だと思います。
それで、今、かかりつけ医制度という言葉が出てきまして、厚生省でもかかりつけ医のモデル事業というのをあちこちでスタートしております。札幌市医師会も平成九年度からかかりつけ医制度のモデル事業を行うことになっております。その中で、地域における開業医がやはりかかりつけ医という形の中で地域医療を担っていく。その地域における医療と介護ということは混然一体としておりまして、どの辺ではっきり明確化するかということは非常に難しい問題だと思います。その辺から、先ほど私も申しましたように、地域の中で有床診療所それから中小病院などがそういう介護と医療というはざまの中でいろいろ包括して行っていかなければならない点はあると思います。
これは私個人の意見になるかもしれませんけれども、介護保険というのは今非常に難しい立場でスタートすることになりそうですけれども、将来は、医療、介護、年金、財源的には一つで物を考えていかないと絶対に破綻すると思います。
当初、私も介護保険は租税による制度が一番正しいのではないかなというふうな考え方を初期にはしていたのです。老人に要するものというのは、保険というリスクヘッジ機能で担っていくのには非常に困難性がある。やはりどこかである程度穴があくのではないかという懸念があります。そういう意味では、やはり租税という方式が正しいのかもしれません。ところが、こういう非常に厳しい経済的な状況の中では、それを申し立てていったらいつまでたってもスタートできない。そういう意味では、とりあえず社会保険方式で、やはりみんなが負担をしてやっていこうという形が正しいのじゃないかなと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/496
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497・対馬徳昭
○対馬徳昭君 先生から、公的サービスを一〇〇とした場合に民間が四五、そしてNPOは二二というお話でございます。我々もいろいろな調査をやったことがございまして、先生から今出た数字等を一応把握しているつもりでございます。
それで、公的介護保険のときにどういう形でコストが決まるかは私もわかりません。値段でいくのかサービスでいくのか、わかりません。ただ、このホームヘルプの事業というのは労働集約産業でございます。そうしますと、コストを下げるということになれば、正職員を非常勤、非常勤をパートにとなりますので、決して労働環境としてはよくない、こう私は思っております。したがって、公的介護保険のコストは一定にしていただきたいというのが業界の要望でございます。そして争うのは、サービスの質を競って、そして利用者にきちんと評価をいただいていくという方法が一番いいのだろうというふうに思ってございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/497
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498・町村信孝
○町村座長 大分時間もたってまいりましたが、あとお一人、お二人ありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/498
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499・中川智子
○中川(智)委員 現金給付のことで、最初に村長さんが必要じゃないかというふうにおっしゃって、横山さんが理念に反するということで反対の立場をとられましたが、それ以外の六人の方に、この現金給付に対してどのようにお考えか、簡単にイエス、ノーでお答えいただきたいのです。祐川さんからお願いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/499
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500・祐川眞一
○祐川眞一君 現金給付に反対です。介護の仕事はプロの仕事、そしてまた、ケアを家庭に押しつけないという意味で、現金給付には反対です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/500
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501・赤倉昌巳
○赤倉昌巳君 私は現金給付に賛成です。ところが、現時点では非常に困難な問題点がありまして、とりあえず現金給付ができないのはやむを得ないのではないかと思っております。
統計的に言いましても、実際に介護で一番苦労されているのは、まず娘さん、それからお嫁さん、それから配偶者、特に奥さんの場合が多いわけですけれども、本当に在宅で介護に苦労されている人たち、それから、自分がパートを今まで行っていて、やめて、それで介護に打ち込んでいる方、そういう真摯な介護を行っている方にはやはり現金給付は必要ではないかというのが私の考え方です。
ところが、やはりモラルハザードということがございますので、ドイツの介護保険みたいな形にならないように、その点は十分注意しながら、現金給付は将来的には必要かなと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/501
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502・対馬徳昭
○対馬徳昭君 私どもは、基本的には現金給付には反対でございます。保険でございますので現物給付でという考え方をしてございます。
なぜ現金給付はだめかといいますと、先ほど言ったように、現金を流すと家族がその高齢者を見ることになります。もはや介護は素人がするべきでないと私どもは思っています。ちゃんと知識と技術を学んだ者が、プロがそういった要介護高齢者のサービスをするべきだろう、こう考えてございます。その分、家族が介護の労力を軽減できますので、今まで以上に愛情をそのお年寄りに傾ける方が望ましいのだろう、こういうふうに考えてございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/502
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503・市村栄子
○市村栄子君 対馬先生からも言われましたけれども、私も、介護、看護の部分はもう社会的なサービスにすべきだと思いますし、家族が担うべきではないと思います。現金給付については、あそこは現金給付をもらっているのにしていないとか、私も去年ちょっとドイツに行かせていただいたのですけれども、そういう批判が非常に多くて、現金給付については反対です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/503
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504・川島亮平
○川島亮平君 やはり現状では、基盤整備が不十分な中で家族が大変な思いをして介護しなければならないという実態を考えたときに、その基準が難しいのですけれども、ここは工夫が要ると思いますけれども、過渡的な措置として現金給付すべきだというふうに思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/504
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505・中田清
○中田清君 私も、現金給付はすべきだというふうに思います。
というのは、個人的な意見でございますけれども、私の母親が今から二年前に亡くなりましたが、八十五歳でございました。五年間家族介護をやってまいりました経験から申し上げまして、いわゆる現金給付をすべきかすべきでないか、だれがそれを決めるかということですね。私の親が一番喜んだのはやはり私の嫁の介護で、最後の最後まで非常に喜んでいたのではないだろうかというふうに思います。
ですから、介護される方の視点からも考えるべきではないか。やはり選択できる、現金も選択できるし社会的支援も選択できる、こういう方法を今後考えていかなければいけないというふうに思います。ただ、現金をもらってどうのこうのといういろいろな問題が当然出てくると思いますけれども、その辺は制度としてどうきちっと確立していくかということは今後の課題でございますけれども、基本的にはやはり現金給付は私は賛成でございます。
以上です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/505
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506・中川智子
○中川(智)委員 ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/506
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507・町村信孝
○町村座長 ほかにもきっとまだまだ御質問、御意見あろうかと思いますが、そろそろ時間が参りましたので、これにて質疑を終了させていただきたいと存じます。
この際、一言お礼のごあいさつを申し上げます。
意見陳述者の皆様方、それぞれお忙しいお立場の中で、きょうは貴重な御意見、御助言をいただきましたことを、心から感謝を申し上げます。
皆様方からいただきました御意見をもとにして、またこれから衆議院厚生委員会の中で大いに議論をし、よりよい案をつくるため努力をしてまいりたい、かように考えておりますので、ここに改めて厚く御礼を申し上げる次第でございます。どうもありがとうございました。
また、会議開催に当たっては、北海道庁初め関係の皆さん方に大変御協力をいただきましたので、委員長の立場で御礼を申し上げます。
委員の皆さん、どうも長時間御苦労さまでございました。
これにて散会いたします。
午後四時二分散会
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派遣委員の新潟県における意見聴取に関する記録
一、期日
平成九年三月十七日(月)
二、場所
オークラホテル新潟
三、意見を聴取した問題
介護保険法案(第百三十九回国会、内閣提
出)、介護保険法施行法案(第百三十九回
国会、内閣提出)及び医療法の一部を改正
する法律案(第百三十九回国会、内閣提出
)について
四、出席者
(1) 派遣委員
座長 津島 雄二君
田村 憲久君 長勢 甚遠君
桧田 仁君 松本 純君
井上 喜一君 鴨下 一郎君
吉田 幸弘君 石毛 鍈子君
瀬古由起子君
(2) 現地参加議員
稲葉 大和君 坂上 富男君
(3) 政府側出席者
厚生省高齢者介
護対策本部副事
務局長 江口 隆裕君
厚生省健康政策
局総務課長 小島比登志君
(4) 意見陳述者
新潟県豊栄市長 小川 竹二君
浦佐萌気園診療
所所長
在宅ケアを支え
る診療所全国
ネットワーク代
表 黒岩 卓夫君
日本介護福祉士
会副会長
新潟市特別養護
老人ホーム大山
台ホーム所属 岡田 史君
新潟県老人福祉
施設協議会副会
長 石田 勇三君
社団法人ぼけ老
人をかかえる家
族の会新潟県支
部世話人 田中 美紀君
前社会保障制度
審議会委員
介護の社会化を
進める1万人市
民委員会宮城県
民の会代表 大川 昭雄君
老人保健施設や
すらぎ園施設長 荒川 修二君
医療ソーシャル
ワーカー 小網 由美君
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午後一時開議発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/507
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508・津島雄二
○津島座長 これより会議を開きます。
私は、衆議院厚生委員会派遣委員団団長の津島雄二でございます。
私がこの会議の座長を務めますので、よろしくお願いを申し上げます。
この際、派遣委員団を代表いたしまして一言ごあいさつを申し上げます。
当委員会におきましては、現在、第百三十九回国会、内閣提出の介護保険法案、介護保険法施行法案、医療法の一部を改正する法律案の各案の審査を行っているところでありますが、本日は、国民各界各層の皆様方から御意見を承るため、御当地におきましてこのような会議を催させていただいたところでございます。
御意見をお述べいただく方々におかれては、御多用中にもかかわりませず御出席をいただきまして、まことにありがとうございました。また、本日御出席の厚生委員会以外の議員の先生方もありがとうございました。また、この会議の準備をしていただいた関係者の皆様方にも心から御礼を申し上げます。どうぞ忌憚のない御意見をお述べいただくようよろしくお願いを申し上げます。
それでは、まず、この会議の運営につきまして御説明申し上げます。
会議の議事は、すべて衆議院における委員会議事規則及び手続に準拠して行い、議事の整理、秩序の保持等は、座長であります私がとり行います。発言される方は、座長の許可を得て発言をしていただくようお願いを申し上げます。
なお、御意見をお述べいただく方々は、委員に対しての質疑はできないことになっておりますので、あらかじめ御承知おき願いたいと存じます。
次に、議事の順序について申し上げます。
最初に、意見陳述者の方々から御意見をそれぞれ十分程度お述べいただきました後、委員より質疑を行うことになっておりますので、よろしくお願いを申し上げます。
なお、御発言は着席のままで結構でございます。
それでは、派遣委員を御紹介いたします。
自由民主党の長勢甚遠君、田村憲久君、桧田仁君、松本純君、新進党の井上喜一君、鴨下一郎君、吉田幸弘君、民主党の石毛鍈子さん、日本共産党の瀬古由起子さん、以上であります。
なお、現地参加議員として自由民主党の稲葉大和君、民主党の坂上富男君が御出席いただいております。
次に、本日御意見をお述べいただく方々を御紹介いたします。
新潟県豊栄市長小川竹二君、浦佐萌気園診療所所長・在宅ケアを支える診療所全国ネットワーク代表黒岩卓夫君、日本介護福祉士会副会長・新潟市特別養護老人ホーム大山台ホーム所属岡田史さん、新潟県老人福祉施設協議会副会長石田勇三君、社団法人ぼけ老人をかかえる家族の会新潟県支部世話人田中美紀さん、前社会保障制度審議会委員・介護の社会化を進める一万人市民委員会宮城県民の会代表大川昭雄君、老人保健施設やすらぎ園施設長荒川修二君、医療ソーシャルワーカー小網由美さん、以上の方々でございます。
それでは、最初に小川竹二君にお願いをいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/508
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509・小川竹二
○小川竹二君 新潟県豊栄市長の小川と申します。このたびは発言をする機会をいただきまして、大変ありがとうございます。心から感謝を申し上げます。
まず、市町村長の立場でお話を申し上げたいと思うのですが、私ども全国市長会では組織を挙げまして、慎重な検討を今までお願いをしてきたところであります。平成八年の六月には、介護保険制度に慎重な論議を求める決議という特別な決議をいたしました。また、平成八年の八月には、介護保険制度に関する要望ということで上げさせていただいたところであります。その後厚生省の案が出てまいりまして、全国市長会では会議を持ちまして、一応了承はするけれども大変不安な問題がたくさんある、こういうことでお受けしたところであります。
そこで、介護保険制度に関する決議ということを平成八年九月十九日に行っておるわけでありますが、ここでは、法案の作成に当たりまして特に地方自治体関係者の意見を十分聞いてほしい、こういうお願いをしておるところでございますし、また、法律の制定以降においてもさらに検討してほしいということを要望しているところであります。また、大事な点だと思いますのは、この制度に先行いたしまして医療保険制度の抜本的な改革が具体的に立てられなければならない、こういうことを申し上げてきたところであります。
私ども市町村長といいますのは、御承知のとおり、保険者であります、主体になります。大変な不安と悩みを今持っておるところであります。社会保険の考え方で行うこと、あるいはサービスの主体が市町村であるということについては、その意義は十分認めておるわけでありますけれども、現実には大変いろいろな問題がございます。
例えば、高齢、過疎化の自治体におきましてはまたそれなりの不安がございまして、これは東頚城郡の浦川原村の村長さんのお話でありますが、ここでは高齢化率が二四・二五%、それから、予算の中の一般財源のうちの四一%が交付税だ、こういうところでありますけれども、そこでは、この保険制度が起きてまいりますとサービスの要求が大きくなってくるだろう、こういうサービスの要求について果たして財政的に賄えるだろうか、あるいは人的に介護が難しいのではないか、こういうことを心配しておられます。特に、自治体の力によってサービスの差が出てしまうのではないかということを非常に御心配のようであります。
また逆に、南魚沼郡の大和町の町長さんでございますが、ここは福祉、医療等の独自の制度をいろいろやっておられるところでありますけれども、逆にこの保険制度ができることによって今より後退をさせるようなことになってはいけないという御心配もあります。そしてまた、従来やっております市町村の独自の制度、こういうものも尊重されてもいいのではないか、こういう御発言もなさっております。
また、私どもと同じ立場でございます長岡市長さん、これは都市のサイドで物を申し上げているわけでありますが、人口が集中しておりますので、これから出てまいりますサービスが考える以上に大きいのではないか、こういうことでございます。基盤整備、施設整備が非常におくれているということで、残された三年間、平成十二年までの間にこの施設整備が急がれる、こういうことを申し上げているところであります。いずれの市町村におきましても、こういう悩みをそれぞれ持っておるわけであります。
そこで、まず第一点でありますけれども、基盤整備あるいは条件整備というものが前もってこの制度の前に必要ではないか、こう私は思っております。介護保険制度ができまして一律の保険料が徴収をされるわけでありますけれども、市町村といいますのは大変地域格差が激しいわけであります。力の差があるわけでありますが、こういうところで一定のサービスを安定的に供給し得るかどうか、非常に悩んでいるところであります。
全国で人口一万人未満の市町村が約六割を占めると言われておるわけでありますが、財政的には非常に弱体であります。今現在、新ゴールドプランの達成についても危ういという考え方を持っておられる市町村長さんが大半であります。新聞等によりますと、七割程度の市町村長がこの基盤になります新ゴールドプランの達成について自信を持っていない、こういうところがあります。施設、あるいは居宅サービスも同様でございますが、平成十二年、残すところ三年でございますが、それまでに基盤整備が追いつかなければならない、こういうことでそれぞれ今一生懸命やっておるわけでございます。
私のところのお話を申し上げますと、昨年、特別養護老人ホーム七十床をつくりました。これで待機が、私にすれば残すところ四床、こういうことでありましたけれども、でき上がってみますと、待機がさらにふえまして、四十床さらに必要になる、こういうことになりました。これは、いわゆる社会的入院、それから在宅等で潜在的にまだ要望がたくさんある、こういうものが施設をつくればつくるほど今現在の私どもの計画を超えて出てくる、こういう状況でございます。これらの計画そしてまた基盤整備につきましては、平成十二年の施行前にぜひ解決をする、そしてまた実現する、こういうことでなければならないのではないかと思っております。
再度申し上げるようでありますが、条件整備、基盤整備につきましては、介護保険制度ができる以前の問題であって、この整備が終わらなければ、介護保険が始まることについては非常に問題がたくさんあり過ぎる、こう思っております。そうでなければ、私は、このままでありますと、市町村のサービスの供給というのは認定の基準を切り下げざるを得ないのではなかろうか、こういうような気がしておりますが、これらはやるべきことではないわけであります。住民の皆さんから信頼をいただけるような介護保険制度をつくるには、ぜひ基盤整備、条件整備をそろえていただきたい、こう思っているところであります。
また、在宅においても同様でございまして、マンパワーの確保がなかなかうまくいきません。ようやく私どものところでも、予定をしております三分の二くらいまでは見当がつくわけでありますが、なかなか今後も間に合いそうもないところであります。農協あるいは民間の団体等に参加していただいて、その力も得てマンパワーを充足をしていく必要があるのではなかろうか、こう思っておるところであります。
しかし、私どもがホームヘルパー等をそろえる現在の段階では、市町村の持ち出しもたくさんあります。これをまた民間の団体等にお願いをするということになりますと、国の措置制度等についてはもっと充実をして財政的な支援を行う必要があるのではなかろうかと思っております。私どもは、この介護保険が始まりますまでに、ぜひこの基盤整備をひとつお願いを申し上げたいと思っているところであります。
次に、保険料の問題について意見を述べさせていただきたいと思います。
御承知のとおり、二号保険料それから一号保険料、それぞれございますが、二号保険料につきましては、これもまた医療保険改革が先行して行われなければ事実上保険料を下げることができないのではないか、こう思っております。老人保健福祉審議会の答申の中でも、医療保険あるいは老人保健改革の方向や社会的入院の解消の道筋を明らかにして改革を進めるべきだ、こういうお話であります。二〇〇〇年、平成十二年までに医療と介護が分離をされる、こういう形で社会的入院も解消しなければならないわけでありますが、医療保険の負担の削減は介護保険と同時に考えなければならない、こう思っております。
今回、医療保険制度の改革がございましたけれども、いわゆる老人負担の窓口の払い方の負担がふえる形でありまして、抜本的な医療保険制度の改革にはならなかったようであります。診療の問題あるいは薬価の問題、医薬分業の問題等にはまだ踏み込めなかったようでありますが、これらの医療保険制度改革を行いまして、医療保険料を下げる改革と一緒になっていかなければ、医療保険のところに介護保険料を重ねるということについては非常に無理があるのではなかろうかと思っております。
これが実行できませんと、完全に上乗せの保険料の期間が相当長く続くだろうと思うわけでありますが、いろいろな制度の中では、それまでの間のタイムラグというべき問題については全然論議されておらないようでございまして、もちろん負担の問題についても触れられておりません。こういう状況でございますから、現在の医療保険、国民健康保険等にさらに介護保険料を上乗せをするということについては、ただでも国民健康保険は赤字で苦しんでいるところでありますので、徴収率の低下は当然起きるだろうと思っております。
それから、その対策として財政安定化基金が出てくるわけでありますけれども、これも市町村が三分の一拠出をするわけでありますが、市町村の拠出といいますと、それぞれの一般会計から繰り出して埋めざるを得ない。考え方を変えますと、滞納分を安易な形でそれぞれの市町村の一般財源で補っていくような形になるのではなかろうか、こういうことを心配をしております。
また、保険証の発行につきましても、二重の発行となりますので、非常に膨大な事務量となるのではないか、これについても心配をしておるところであります。
また、一号保険料につきましては、これは低年金者分については市町村の直接徴収となるわけでございまして、市町村長の中では、これはやりたくないという人もおるところであります。年金の現在の状況、これらについてひとつ御考慮をいただきたいと思っております。
それから、財源の問題でありますけれども、公費五〇%のうち市町村が一二・五%の財源を必要とするわけであります。この二一・五%の財源については私は市町村にとっては全く新しい負担になると思うわけでありまして、それに見合う財源は今のところ見当たらないわけであります。
先般、消費税が五%になりました。地方も一%回ることにはなるわけでありますけれども、市町村段階では、現実には消費税が上がってもことしの場合はむしろ昨年より減るという状況でございまして、これが福祉財源に回ったという実感はさらさらない、こういう状況でございます。この消費税問題につきましても、介護保険あるいはこのような福祉財源として位置づけられるようなはっきりした形で消費税を位置づけてもらいたい、こう思っているところであります。
また、現金給付の問題でありますが、制度的にこのような不安定な状況でありますと、本当に現物給付が正確な認定に基づいて、必要に基づいて給付できるかどうか、非常に心配であります。そうしますと、保険料を払っておきながらなかなか認定に入ることができない、あるいは切り下げられる、こういう状況が起き得るだろうと思っております。家庭介護の評価あるいは独自で介護に対応した者たちを救済するためにはやはり現金給付が必要ではないか、こう思っております。現に、既に多くの市町村がこの現金給付をそれぞれ独自の考え方でやっております。これを自由に市町村が特別給付という形で認められれば収拾がつかなくなるのではなかろうか、やはり最初から制度的に組み入れておくべきではないか、私はこう思っております。
最後に要介護の認定でありますが、これにつきましても、弱小の市町村の中ではみずから認定作業ができない、こういう心配もたくさんあります。都道府県に委託が可能だということでありますが、果たして都道府県という大きな形でこの認定を任せてもいいのかどうか、これもまた大きな疑問を持っておるところであります。県に任せるという形になりますと、時間的にうまく間に合わないのではないか、実情に合わないのではないか、こういう意見もあります。
また、柔軟な対応といいますか、機械的な判定になるおそれもあるのではないかという心配もあります。長岡の市長さんのお話をちょっと紹介いたしましたが、ほどよいエリア、住民が納得できるようなほどよいエリアの中でこの認定の作業がされるべきではないか、こういう意見もあります。この辺についてもひとつ御検討をいただきたいと思っております。
最後になりましたが、国保連合会、これにつきましても、もともと国保が弱体な団体であります。それらの国保連合会のところで事務処理等行うわけでありますが、これらについても財政的な問題について御検討をいただきたい、こう思っているところであります。
大変時間をとりまして恐縮でありますが、最後にぜひ先生方にお願いをしたいわけでありますが、国会での十分な審議をお願いをいたしまして、また、審議の結果がこの法律の施行、実行段階にまで着実に反映、実現されますよう、私ども心から期待をしておるところであります。
よろしくお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/509
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510・津島雄二
○津島座長 ありがとうございました。
それでは、次に黒岩卓夫君にお願いいたしますが、できるだけ多くの御意見を賜りたいので、簡潔に、大体与えられた時間の範囲内でよろしくお願い申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/510
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511・黒岩卓夫
○黒岩卓夫君 新潟県の大和町にあります浦佐萌気園診療所所長並びに在宅ケアを支える診療所全国ネットワークの代表をしております黒岩です。よろしくお願いします。
私は、新潟県の豪雪地で二十七年間にわたって地域医療を担ってきた医師として、その経験をもとに、とりわけ新介護システムの生命線とも言える在宅ケアを中心に現場からの意見を述べさせていただきます。
戦後、我が国の医療、福祉の歩みの中で、今国会に提案された介護保険法案は今後の我が国の福祉、医療をつくっていく過程で画期的なものでなければならないと思います。
私は、町立の診療所並びに病院で二十二年間、現在開業医として五年間働いてきましたが、早くから保健、福祉との連携あるいは一体化した地域医療を展開し、とりわけ在宅ケアに重点を置いてやってきました。現在は、医療法人として無床診療所二つ、訪問看護ステーション一つを運営していますが、在宅療養の患者さんは約百人、デイケア登録患者さんは約百四十人です。したがって、訪問診療は一日二十人くらい、訪問看護は十五人、デイケアは一日四十から五十人の方を見ております。
また、町立病院時代は、病院をベースに同様に在宅ケアをやってきましたが、当時はまだ福祉サービスが未熟で、訪問看護も診療報酬で認められない段階からでした。こうした病院からの在宅ケアに加えて、今は開業医としてあるいはかかりつけ医として思うことは、在宅ケアを地域で支えるにはかかりつけ医が大変重要であり、同時に、パートナーとしての後方病院の存在も不可欠であると思っています。
さて、特に私が力を入れている在宅ケアの実態をお示ししたいと思います。
皆様のお手元に資料を三枚ほどお届けしておりますけれども、まず在宅ケア四年間の成績ですが、かかわったお年寄りが二百十八人、うち亡くなった方が八十一人です。死亡者八十一人中六十五人がそのまま自宅で亡くなっています。約八〇%に当たります。ここでは、亡くなる方が意外に多いということを指摘しておきます。また、平成八年六月の横断面を見てみますと、百三人中九十代が二十一人、八十代を加えますと実に七十四人になります。
ここで一言申し上げますが、九十代のお年寄りは、脳卒中後遺症とかリューマチといった立派な病名があるわけではありません。虚弱で、いわば老衰への最後の段階にあり、風邪を引いただけで生命が危うくなるといった方たちです。逆に、病名をつけるとすれば十個くらいはすぐ並べることができます。
また、同時に受けている福祉サービス等を示しました。福祉サービスなしには在宅ケアは不可能に近いことをあらわしています。そして、こうした数字にあらわれないことを一つ申し上げます。
私が病院をやめて開業医になることによって、病院の中にいては体験できないことがたくさんありました。何といいましても、病院とのすき間医療と言われているすき間が意外に広く、深いということです。また、町医者として等身大の関係で住民や患者さんとおつき合いができたということです。このような、患者や家族とのきめ細かい心の通った関係ができることが血の通った在宅ケアができる必要条件であると確信するようになりました。このことが、後に述べるかかりつけ医の役割の重要性の根拠と言えると思います。
さて、本法案に対して、以下の四点について意見を述べさせていただきます。
その前に、この新介護システムの中では医療の役割がいまだはっきりしておりません。具体的にどのように変わるか、イメージが描けていないのではないでしょうか。したがって、今後どのようにするかが大きな課題と思っております。
一、かかりつけ医の役割を明確にし、病院との役割分担をはっきりさせること。新システムでの要介護者並びに要支援者は原則としてかかりつけ医を持つこと。特養入居の要介護者、要支援者以外は、病院等に入院している方も退院が前提である以上、同様であると思います。現在の医療制度を下敷きにして見るならば、寝たきり老人在宅総合診療料届け出医療機関、診療所ですけれども、その医師がこれに該当するものと考えられます。周知のように、この在総診は、保健、福祉との連携や、さらに二十四時間対応をとるものであって、かかりつけ医の本分に合うものと見ることができます。
一方、現時点ではこうした制度が診療所で十分活用されているとは言えません。その理由は幾つかあるにせよ、医師やコメディカルのスタッフの意識が変革されていないことが大きな要因になっていると思います。従来の開業や往診の考えでは困難であって、在宅ケアを実行するには、看護婦等コメディカルと協力し、お互いに助け合う関係をつくらねばなりません。その中でリーダーシップをとれる医師が必要と言えます。
一方、最近の医療機関の動向を見ますと、無床診療所がふえており、若い医師の参入が目立ってきました。私は、一昨年より在宅ケアを支える診療所全国ネットワークづくりをやっていますが、四十歳前後の若い世代が意欲を持って在宅ケアに参加してくる姿を見て大変心強く思っております。私たちは、在宅ケアをキーワークとして、診療所ルネサンスを合い言葉に、気だてのよい医師を理想像としています。
こうしたかかりつけ医は、プライマリーケアをモットーとし、日々のケアからターミナルまで扱う者であり、時には専門医のコンサルトを求め、時には入院を考え、あるいは延命医療はせず、自然に見守ることがその仕事であります。また、かかりつけ医の機能が生かされれば、在宅ケアへの導入も入院を経由することなく実現することも少なくありません。
以上の認識から、かかりつけ医は要介護認定委員会のメンバーとなること、ケアマネジャーは医師以外でもよいが、その重要なパートナーとなることだと思います。
また、在宅ケアにおける医療保険と介護保険の区分けは、現在厚生省が考えている案、図の二になりますけれども、これが妥当と考えます。在総診対応の患者は病状不安定で問題も多いことから、介護保険システムでは対応できないのがその根拠です。私のところのデータのように、四年間で二百十八人中八十一人が亡くなっていることを見てもうなずけるものと思います。したがって、要介護認定やケアプラン作成等は、患者の病状などから、時間的余裕、迅速なプランの変更等が必要となります。寝たきりだからといって、いつものんびりして寝ているわけではありません。この点を十分考慮してほしいと思います。
第二点としましては、新介護システムを戦後医療・福祉史上画期的なものにするには、その制度の理念、内容が画期的だけでなく、日々よりよいものにするには、このシステム運用に市民参加の制度的保障が必要です。なぜなら、福祉こそ我が国の民主主義の根本が問われるものであり、地方自治のバロメーターでもあるからです。借り物の民主主義や形だけの自治からの脱却の試金石ではないでしょうか。
また、認定審査会も、首長が任命した委員に任せておけば必ず官僚化し、画一化されるものと思います。それを常に予防する体制が不可欠ではないかと思います。
第三としましては、加齢疾病条項の削除と介護保険適用年齢の見直し。この件に関しましては、介護の社会化を進める一万人委員会の提案とほぼ同意見です。要介護の障害の状態、ADLや痴呆の程度が問題であって、その原因を問う必要はないと思います。ただし、疾病がはっきりすれば、それは認識し、かつ、継続的ケアに適切な医療サービスが提供されねばなりません。その点では医師の診断と治療が必要となります。したがって、かかりつけ医の存在が望ましいわけです。
介護保険の適用年齢はゼロ歳からが理想と思います。二十からとの見解もありますが、障害を有する者は年齢を問わず適用されることを主張します。
最後に、新介護システムは保険制度でなく公費負担方式がすぐれているとの見解があります。私も、これからどうするかと問われれば、一長一短はあっても、公費負担でできるならその方がよいと考えます。しかしながら、現実的には既に保険方式で準備が進められており、それを覆すだけの材料はないと思います。そもそも、一般会計から十分な福祉予算がとれない、消費税をアップしても福祉へ回す保証がない、それを実行する政治家や政治勢力がないといった現実から、厚生省がやむを得ず保険制度に財源を求めたものと理解しております。とはいえ、新介護システムが歴史的にも世界的にも誇れる、全国民が喜んで参加できるものにしていただきたいと思います。
以上で私の意見陳述を終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/511
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512・津島雄二
○津島座長 ありがとうございました。
それでは、次に岡田史さん、お願い申します。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/512
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513・岡田史
○岡田史君 日本介護福祉士会副会長の岡田と申します。
新たな介護システムの構築が進められ、大きな意識変革が求められております現在、その大きな根幹をなします公的介護保険につきまして、介護サービス利用者とその御家族の一番近くにおります介護福祉の専門職として、その皆様にかわりまして意見を述べさせていただきます。
日本介護福祉士会では、さまざまな場で介護相談や一般の皆様に向けた介護講座、また、介護ボランティアで共同浴場での入浴介助等を実施いたしまして、職務で利用者の方々と触れ合うことのほかに地域の方々とも触れ合う機会が多く、その中で、現在の要介護者の在宅での御様子、またその生活する困難さ、そして御家族の御苦労と接してまいりました。
いかに介護を要しても在宅での生活が可能となるようにと、介護サービスのシステム化が図られております。これらのサービスが在宅で生活される要介護者の皆様に届けられ、高齢者がみずからの住みなれた場所で暮らし続けることができるための制度の一つとして、介護保険制度に賛意を表したいと思います。
先日、私どもの介護相談でこのような相談を受けました。
九十三歳のお母様が脳血管性の御病気で一年ほど入院され、このたび退院するように言われたのですけれども、とてもあのような状態の母を家に連れてきて介護することはできません、私の妻は母の退院を聞かされてから体調が悪くなり、どうしても家に引き取ることはできないと言います。老人ホームや他の病院、老人保健施設は満床だと言われました、どうすればよいでしょうとおっしゃる七十四歳の息子さん。
また、老夫婦のみの生活の場合、相談者である奥様はおっしゃいます。御主人が長期に入院され、特に治療の必要がなくなった段階で家に帰りたいとおっしゃるので、御主人の希望で一時外泊という形で帰宅させてみた。病院から急に家に帰り、在宅での生活が自分には無理だと感じたらしく、それ以来、病院に帰ってから一度も家に帰りたいとは言わなくなりました。けれども、家に帰るという目的で積極的に参加してきたリハビリへも出なくなり、ほとんどベッドで寝たきりの生活をしています。近ごろ、とても元気がなくなってきました。本人も、もう家に帰っても生活できないとあきらめがついたのでしょうと、悲しそうにおっしゃいました。
入浴のボランティアを実施しておりますが、これは浴場組合の事業に私たちがボランティアとして協力するというものですが、その利用者の中には、いつ入浴したのかわからないような高齢者がおられます。送迎をされる息子さんがまた障害を持っておられ、銭湯に入れてもらえるということを聞いたのでと、今まで福祉サービスを利用してこなかった方ですが、気軽な気持ちで利用されたようです。その方の介助を担当した会員は、下着の汚れぐあいから在宅での生活が見えるようだった、このような方々への支援はどのようにされていけばいいのでしょうと話しておりました。
私は、一年前まで養護老人ホームに勤務しておりました。そちらを利用される皆様の中には、在宅や地域での支援がもう少し整備されていたらこの方は在宅で十分生活ができていたのにと思われるような方々がいらっしゃいます。しかし、地域に身寄りがいない、家族が遠く離れているといった、御本人の持つ問題性ではない理由で施設生活を選択することを余儀なくされている方がいらっしゃいます。
さて、最初に申し上げました相談者の場合、みずからも高齢ゆえに、在宅で支えていく精神的な力、物理的な力が不足し、退院と言われてどうしてよいのかわからない、こうなれば老人ホームしか方法はないと考えてしまうのも無理のない話と思いながら、私はその方のおっしゃるのを聞いておりました。老人ホーム利用をマイナスイメージで申し上げるのではありませんが、一人一人の生き方として選んだ老人ホームの生活であれば、それを否定するものではありません。が、住みなれたおうちに帰りたいと思いながら病床におられるその方のお母様の気持ちを思うと、息子さん夫婦を精神的に支援しながら、物理的なところは介護サービスが受け持っていくような、そのようなサービスの確立を望んでやみません。
また、次の女性の場合は、精神的な受け入れができているにもかかわらず、病院と地域の連携、協働ができていないところに問題があります。退院に向けて住居の改造を介護の専門職がかかわりながら検討したり、また、病院生活においては在宅での生活を視界に置いたリハビリがされていたら、外泊時の不自由さができる限り予防でき、もう少し別の結果が出たのではないかと考えられます。これは、介護保険が始まっても、介護給付の認定が迅速に行われないとこのような問題は解決できないのではないでしょうか。
そして、銭湯の入浴サービス利用者や、今ほど申し上げました養護老人ホーム利用者のような地域での生活能力が低下している人々にとっては、介護保険はどのように機能していくのでしょう。このような方々は、介護保険の要介護認定では、恐らく要介護、要支援とは認定されるかされないかのボーダーラインの方々です。地域の理解と、週に一回程度のホームヘルパーの家事援助の派遣で辛うじて在宅での生活を維持できている人々の存在も忘れてはならないと考えます。生活面でのわずかの支えが在宅生活での大きな力となっていることを忘れないでいただきたいと思います。
介護保険が始まったとき、認定作業において、緊急性がないことから、また認定には該当しないだろうという見込みから後回しにされ、ヘルパー派遣というわずかなサービスすら利用できない人が出るのではないかとの危惧を持っております。
保険が実施され始めましても、従来どおりの家事援助のホームヘルプサービスは、保険制度の中に組み入れられるまで従来どおり進めていただきたいと考えます。これは、単に地域生活の維持ということにとどまらず、予防的な側面を持っております。生活困難となったときにいち早く対応し、重い介護の状態に移行するのを予防していくことができます。特に高齢痴呆の場合、早期の発見とその後の迅速な対応が激しい混乱を予防し、痴呆とはなっても落ちついた生活が可能となることは、介護を仕事としている人間の実感です。
次に、寝たきりの予防について申し上げます。
在宅であっても施設であっても、その寝たきりを予防するものは、生活意欲の高揚が大きな力となります。その方が自分らしい生活をするためにはどのような役割があるのかを、介護する側がしっかりと見きわめることができなくてはなりません。要介護状態となったとき、その方の生活意欲は放置されたままでは生まれてはまいりません。その方の小さなサインを見逃さないで、それを生活意欲に結びつけていくことが必要となります。
施設では長く寝たきりであった方が、放送で流れてくる音楽を聞くときの目の表情から音楽が好きであることがわかり、その方向で働きかけてみると、音楽を聞くために、あれほど嫌がっていた車いすに移り、それがきっかけで表情も大変明るくなってこられた方や、在宅の場面では、若夫婦の仕事に出かけている間の留守番や家事をすることが大きな生きがいで、とても寝てなんかいられないという、七十四歳の大腿部の頚部骨折で二度の人工骨の入れかえ手術をされた女性がおられました。役割を持ち、自分の力で自分の思う生活ができることが大きな生きる力となっていることを物語っております。この方の場合、介護福祉士からアドバイスを受け、トイレ、浴室、寝室の住宅改造をその身体的な状態に合わせるのみならず、以前の生活状況をも配慮しながら行っております。
介護は生活を支える介護、自立を支える介護でなくてはなりません。その方の生きる意欲を引き出すことができる介護が期待されております。国民の期待する介護とは、決して寝たきりの介護ではないということを申し上げたいと思います。
最後になりましたが、新たな介護システムの推進の中で、介護は生活を支えるのですから、さまざまな問題が新たに出てまいると思います。そのような場合、くれぐれも切り捨てることがありませんよう、それらの問題に柔軟に対応できる仕組みも考慮していただきたいと思います。そして、要介護、要支援の認定を受けられた方々の人間としての尊厳、そして自己決定が御本人の可能な限り実現できる制度になることをくれぐれもお願いしたいと思います。
以上、介護のあり方、介護保険制度についての要望を述べさせていただきました。以上をもちまして、私の意見陳述を終わらせていただきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/513
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514・津島雄二
○津島座長 ありがとうございました。
それでは、次に石田勇三君にお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/514
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515・石田勇三
○石田勇三君 新潟県老人福祉施設協議会副会長石田勇三でございます。
初めに、私は、老人福祉施設の中で老人の生活介護を中心的役割を担ってきた特別養護老人ホームの施設長をしております。よって、老人介護に直接かかわる現場の視点から、介護保険法案について意見を述べたいと存じます。
要望意見として五項目を申し上げたい。
一つは、介護保険における財源構成、二は、介護サービス基盤の整備促進、三は、特別養護老人ホームの現状と介護保険法案との比較、四番目は、医療保険との関係、五、福祉サービス一体化の促進、五項目でございます。
一、介護保険における財源構成。
我が国は、急速な高齢社会の出現により、人に優しい長寿社会の構築に向け、各施策が講じられています。高齢者の介護が、家族環境の変化により、家族を中心とした介護から公的介護へと転換が求められ、日本的に意識変革による介護保険創設に着手されたことは、国民の期待することであり、賛意を表します。
さて、介護保険法案の中で最も関心事は、財源構成であります。介護保障の財源調達には、一つは公費負担方式(税方式)と、二つには社会保険方式が考えられます。厚生大臣のもとに設置された高齢者社会福祉ビジョン懇談会が、平成六年三月、二十一世紀福祉ビジョンで、給付と負担のあり方において、安定財源の確保のため、基本的には社会保険料中心の枠組みを維持すべきであると提言しております。よって、私は、介護保障はこの理念に基づいた、公費と保険料負担のバランスあるルールを確立されるよう切望します。また、先輩国ドイツも、長年にわたり調査研究を重ねた結果、介護保険制度を社会保険方式を採用したことを学ぶべきと考えます。
二として、介護サービス基盤の整備促進。
新介護システムの構築が提唱され、高齢者の尊厳をモットーに、主体的に福祉サービスを自由に選択できる老後を、心安らかに生活保障される社会的環境はぜひとも実現を願いたい。
新潟県においても、毎年施設整備に取り組んでまいりましたが、介護需要は年々拡大し、今年一月一日現在、特養ホーム入所待機者は四千二百七十九人と、過去最高の数値と新聞報道されております。このことは、高齢者が自由な福祉サービスを選択可能な社会環境には、若干危惧の念を覚えるのであります。よって、介護保険制度が創設された後も、介護需要に対応する基盤整備の促進と老朽化による大規模修繕等には、現行の公費補助金制度は継続されるよう強く要望したい。
三として、特養ホームの現状と介護保険法案との比較。
私の勤務する特養ホームの福祉圏域は農山村で、昨年四月の高齢化率二〇・四%、過去の推移から、毎年〇・七から〇・八%上昇志向であり、本年四月には確実に超高齢社会が出現します。
私の当みなみ園は、入所定員七十名でありますが、まず一つとして、費用負担の比較を介護保険といたします。現行の措置費、一人月額、加算額を含んで二十九万八千円でございます。介護保険法案は、一人月額、施設は二十九万円でございまして、差し引き八千円の減となります。私どもの施設は、本年創立十周年を迎え、当年度収支は若干の赤字が見込まれるため、現行の措置費金額より低額設定にならないよう、特段の御配慮を願いたいのであります。
それから、利用者の自己負担状況でございますが、一万円以下の方が三十七人、五二・九%、二万から三万円までの方が十五人、二一・四%、三万円以下合わせますと、四十二人で七四・三%となっています。年金受給状況を見ますと、国民年金(基礎年金)では、受給者五十八人、八三%であります。
介護保険法案では、介護報酬は一割ということで、二十九万円の一割、自己負担額二万九千円、それに食費、それから生活日用品費、ほかに介護保険料等を含めますと六万円程度、合わせて月額八万円から九万円程度に見込まれるのであります。このように、現行では大半の方が三万円以下の負担でございますが、介護保険適用により約三倍の負担増が想定され、低所得者に配慮して、安心して施設入所が確保できる条件整備を望みます。
二つ目は、処遇職員の体制強化でございます。
現在、介護職員の配置基準では、利用者四名に対し職員一名でございます。法案では三名に対して職員一名にしたい、このように若干改善の意図を認識しており、ぜひ実現してほしいと思います。
職員の配置基準に生活指導員の配置が規定されています。しかし、介護保険の枠組みの中で、介護認定や介護報酬など新規事業に従事できないようでございます。これは、国家資格がないためであります。今後、ケアマネジャーの研修受講により、救済の道を講じてくださるよう要望したい。
また、介護の担い手である処遇職員の給料は比較的低賃金のため、福祉職員給料表を作成し、社会的に評価を得たいと思います。
四、医療保険との関係。
我が国は、昭和三十六年、一九六一年、国民皆保険の創設により、医療保険制度が世界的にすぐれたシステムと高く評価され、長寿社会の出現にも大きな役割を果たしてきましたが、昨今は、老人医療費の増嵩により保険財政は大変な状態にあると報道されており、介護保険制度の創設にあわせて構造的改革が進展しております。
介護保険制度の適用を受ける場合、要介護認定審査会の要介護者の判定を受ける必要があります。そこで、審査が適正かつ公平にサービスが提供できるよう、医療、保健、福祉の三者が一体となって審査できるシステムを構築してほしいと思います。
五番目としまして、福祉サービス一体化の促進。
従来は、主として入所施設が福祉サービスの中核に位置づけられてきたが、福祉サービスのニーズの多様化により、在宅福祉サービスのメニューの設定と、高齢者の在宅志向が高くなり、在宅福祉サービスが重要視されてきています。しかし、在宅福祉サービスを継続しても、高齢者の加齢による虚弱化は自然の摂理であり、在宅福祉事業と入所施設が一体的、効率的に介護サービスが提供できる介護保険制度が創設されることを希望して、私の意見を終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/515
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516・津島雄二
○津島座長 ありがとうございました。
次に、田中美紀さん、お願い申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/516
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517・田中美紀
○田中美紀君 私は、ぼけ老人をかかえる家族の会新潟県支部の田中と申します。本来ならば代表の今井が出席するところ、所用のため、かわりに世話人の私田中が出席させていただきました。よろしくお願いいたします。
私は現在、主人の両親の介護を始めて五年がたちました。父はパーキンソン症候群、母は重度のアルツハイマー病です。父は体の動きが悪く、目は左が見えず、右は緑内障のため少ししか見えません。ふだんの生活は、食事以外すべて介助が必要です。母は、父とは反対にとても動きがいいのですが、食事以外は父と同様全介助です。朝のトイレから始まり、着がえ、歯磨きと頭の先からつめの先まで全部二倍の介助をしなければいけません。父は動きがとても遅いので時間がかかり、急いでいるときは、うろうろする母を横目で見ながら、いらいらして泣きそうになります。
幸い主人がよく手伝ってくれますので助かっていますが、毎日が戦争です。介護し始めのころ、見た目は普通で体も大きい母の下の世話をしていて、何だか自分が情けなくなり、何で私だけがこんな思いをしなければいけないのかと涙が出て、顔を見るのも嫌になったこともありました。現在も、両親といると二人分のトイレ誘導があり、なかなか落ちつく暇がありません。
母がアルツハイマー病と知ったのは、結婚して二年目だったと思います。そのときは、信じられないという思いと、病気に対しての不安でどうしたらいいのかわかりませんでした。そんなとき、保健所と市の主催のお世話講座に参加してボランティアグループをつくり、その仲間で昨年、ぼけ老人をかかえる家族の会新潟県支部を発会し、活動を始めました。家族の会の活動の中に「つどい」があります。抱えている家族同士が集い、心のケアをする場になっています。この「つどい」で助けられた家族はたくさんいます。お年寄りにはいろいろなサービスがありますが、家族にもカウンセリングを受ける場が欲しいと思います。
以前、母の徘回が激しかったとき、目が離せず、目を離すと縁側からはだしで出ていったり、かぎを二つかけておいてもなぜかあけてしまい、仕方なく家の塀にかぎのかかる門をつけてもらったのですが、門を持ち上げて出ていき、またつけかえてもらったりしました。そんなある日、天気がいいので玄関先で両親と私がひなたぼっこをしていると、近所の人が母に、そんなところにいないで門をあけてもらって遊びにおいでと言われました。ふだんお茶飲みもしたことのない人です。私だって好きでそうしているわけではないのです。私もかぎのかかる門の中にいるのです。その人の目には、かぎをかけられたかわいそうな老人しか見えていなかったようです。
そのころ母は、一日じゅう家の中を歌を歌いながら徘回していて、私は何をするにも集中できず、母と一緒にいると頭がおかしくなりそうで、母が来ないようにと台所にかぎをかけて一人泣いていました。このままでいったら私の方がだめになってしまうと真剣に悩みました。介護してみないとわからない精神的なストレスは大きいのです。介護家族への精神的なフォローも、お年寄りへのサービスと一緒に考えていただきたいと思います。
次に、介護当初から福祉サービスを利用している者として、介護保険が導入されたときのサービスについて四点お願いしたいと思います。
第一に、一週間毎日利用でき、延長養護をしてくれるデイホームが保育園単位であったらいいと思います。デイホームというのは、お年寄りを預かってくれる保育園のようなところのことです。
現在、両親は週二回のデイホームを利用しています。利用時間は九時半から三時半ごろです。毎回送迎時間がこのくらいの時間帯なのですが、用事のあるときはすごく中途半端な時間帯で、私の場合、そういうときには三十分くらいの延長ですが、遅くなりますと言って自分で送迎をしております。介護から解放されるときには自分のペースで動きたいと介護者全員が思っていることだと思います。
実際、私はきょうのために両親をきのうからショートステイにお願いしてきました。一日出るために二日間施設を利用しなければ今のサービスでは時間的に無理だったからです。そして、この時間帯では、共稼ぎの家庭では在宅介護は無理です。徘回のあるお年寄りや病気のお年寄りを置いて仕事には行けません。それで家族が苦しみ悩んで女性が仕事をやめたり、意に沿わない選択をするようになるのはおかしいと思います。保育園に延長保育があるのですから、お年寄りにも延長養護があって当然だと思います。
第二に、デイサービスについてです。現在、痴呆があり徘回がある老人は、デイサービスは利用することができません。なぜなのでしょうか。徘回があるだけで、ほかのお年寄りと変わらないと思うのです。ぜひ利用できるようにしていただきたいと思います。
第三に、ショートステイに関してですが、夫婦で利用できる部屋をつくってほしいと思います。私の両親の場合、父が少々痴呆がありますので、痴呆棟で夫婦一緒の部屋にしてもらっています。というのは、父は母がいないと不安で母のことを捜し始めるからです。しかし、夫婦であっても一人が痴呆、一人が虚弱老人の場合、別々の部屋になるのが普通で、離れ離れの不安からストレスをためてしまう場合もあります。預ける側の家族も心配で預けられないといったこともあります。ぜひ、夫婦部屋の増設も考えていただきたいと思います。
また、現在、ショートステイの受け入れ数が少ないことに困っています。今は二カ月前から利用受け付けをしているのですが、二カ月前から予約をしないといっぱいで利用できません。二カ月も前から予約しなければならないほど利用者が多いのに、なぜ利用数をふやせないのでしょうか。特に、農村地域では田植えや稲刈りの時期は忙しく、お年寄りを預けないと仕事ができないといったところもあります。地域性や季節に合わせて、柔軟に利用数を増減できないのでしょうか。
また、緊急のときに二十四時間対応してくれる施設が欲しいと思います。特に痴呆の場合、急に介護者の都合で見ることができなくなったとき、専門の方または痴呆の介護になれている方に見ていただけたら安心です。緊急のとき、ベットのあいている施設を一つ一つ探すのは大変です。すぐあそこへいけば預かってくれるといった施設があればいいのにと思います。
第四に、施設、病院を利用して感じることは、職員の数が少ないのではないかということです。職員の方にはよくしていただいているのですが、今のままの体制では、介護保険制度が導入されてもサービスの面で不安です。
次に、私たちはボランティアで「となりぐみ」という民間デイホームを行っています。介護保険が導入されることによって満足な福祉サービスが受けられるようになれば、私たちのこのような活動は必要なくなるはずです。このこととは別に、現在全国でいろいろな形の民間デイホームがありますが、生計をともにして頑張っているこのような民間デイホームをどのような位置づけで考えていただけるのでしょうか。介護保険が導入されることによりつぶされることがないように考えていただきたいと思います。
同時に、住民に一番近い市町村の福祉担当課に介護についてよくわかる人を配置してほしいと思います。現在の役所では、縦割り行政で横とのつながりもなく、責任のある方が異動したらそれで終わり、住民の声を聞いて対応してもらえないといった状態です。福祉の立場に立ってきちんと地域のことを把握することによって、地域格差がなくなると思います。このこともぜひお願いしたいと思います。
先日、新聞紙上で、日本の企業が海外で痴呆老人施設をつくっているという記事がありましたが、私たち家族の会では、老人の生活や文化を考慮せず、物扱いする計画に反対しています。人間らしい生活をしたいとだれもが思っているのです。介護は大変ですが、福祉サービスが充実してくれば在宅介護は十分可能です。
これから介護保険が導入されることについて、要介護認定の際の審査員にぜひ介護経験者を加えていただきたいと思います。痴呆のお年寄りは、外から来た人にはぼけの症状は余り出さず、会話はそつなくこなしてしまいます。痴呆症状は、家族に対して強く出してきます。介護の悩みや苦しみは、経験しなければわからないことが多くあります。本人だけを見て判断するのではなく、家族の状況、家族構成などを踏まえて、家族の話をよく理解して判断してほしいのです。そして将来、私たちが老いたときも安心して地域で暮らせる社会になっていることを望みます。
それから最後に、お手元に資料があると思いますが、これは上越の情報誌「ジャックランド」というところで載せていただいた記事ですけれども、私たちの「となりぐみ」のことが紹介されています。「となりぐみ」は、手づくりの、家族とボランティアが集まって支えているところです。私は、この「となりぐみ」にとても助けられております。精神的にも、父も母もとても楽しくやっております。こういう場がいろいろな地域にたくさんあればいいと感じます。
以上です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/517
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518・津島雄二
○津島座長 ありがとうございました。
それでは次に、大川昭雄君、お願い申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/518
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519・大川昭雄
○大川昭雄君 今まで皆様の大変有意義な話を聞かせていただきまして、この公聴会に参加をしてよかったなと思っております。ただ、時間がもう既に私の時間帯を十分過ぎておりまして、かなり大幅におくれておりますので、私は座長さんに協力をしまして、意見陳述要旨をワープロで打ってまいりましたから、これに従って十分以内で申し上げたいと思います。
私の意見は、本法案は一部修正をした上、この国会で必ず成立を図っていただきたいという意見でございます。修正したい点は幾つかありますが、時間の関係もありますから、この公聴会では特に強調したい点を三点に絞って申し述べたいと思います。
第一に、保険者ごとに介護保険運営委員会を設置し、被保険者から選出された男女同数の委員によって構成することとします。この介護保険運営委員会には、事業計画を審議する市民参画機能や苦情処理機能を初め、介護サービスの質を常時監視し、利用者とサービスの提供者に対する調査を行い、その結果を公表し、必要な勧告を行うオンブズマン機能、情報公開機能を持たせることとします。これは、岡光事件のような事件の再発防止装置を法律自体に組み込むことでもあります。これによって、福祉に対する国民の不信、不安にこたえるとともに、信頼を回復する何よりの具体的方策であると私は考えます。
第二に、完全なサービス給付を最低保障する時期の明示と利用者の選択権の保障です。
その一つ、サービス不足のために当面限定的なサービス給付を認めるという経過措置がございますが、これには時限規定を置き、二〇〇五年度以降は例外なくすべての市町村が完全なサービスを提供するものとします。
ここで蛇足をつけ加えておきますが、本則は、実施期日はあくまでも二〇〇〇年度です。二〇〇〇年度完全実施に向けた介護基盤整備のため、新ゴールドプランの前倒し実施、スーパーゴールドプランの策定など、基盤整備を促進する規定がどうしても必要です。これらの営みを積み重ねることがこの経過措置の大前提であることを申し述べておきます。
その二つ目に、利用者の自己決定、自己選択は介護保険制度創設の基本理念であります。認定審査会や保険者がサービスを指定できるという条項は、実質的に現在の措置制度と変わらず立法趣旨に反するので、削除すべきであります。前の項で触れた経過措置との関連だとすれば、施行法案に時限規定として異議申し立て条項、これはこの法案にはございませんけれども、異議申し立て条項づきで置くべき規定だと考えます。
第三に、加齢疾病条項の削除と介護保険適用年齢の見直しです。これはどなたか申し上げましたが、その一つは、加齢に伴って生ずる心身の変化に起因する疾病等による要介護状態に対して介護サービスを給付するという規定を削除し、要介護状態にある者等がその有する能力に応じ、自立した日常生活を営むことができるよう必要な給付を行うに改めることとします。
その二つは、四十歳以上とされている介護保険の被保険者の年齢を見直し、二十歳以上の所得のある者と改めることとします。
なお、これを今すぐやれといってもなんですから、給付及び被保険者の年齢の見直しについては、介護保険法施行後五年程度の準備期間を置くものとします。
最後に、必ず本国会で成立をと冒頭に強調した背景について一言申し述べます。
我が国の高齢者福祉は、先進国に比べて二十年おくれとも三十年おくれとも言われています。このため、現在、二百五十万要介護高齢者の多くの人々とその家族は、俗に言われる介護地獄で苦しんでおり、今の制度のままではさらに加速がかかり、ふえ続ける状況にあります。一九九五年七月に出されました社会保障制度審議会の勧告でも言っているように、介護保障制度の確立は最も緊急かつ重要な施策なのであります。敗戦の廃墟の中から奇跡の戦後復興をなし遂げた世代を一日も早くこの介護地獄から解放するためにも、介護保険法案は必要な修正を加えた上、本国会で必ず成立させていただくようお願いし、私の意見陳述を終わります。
ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/519
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520・津島雄二
○津島座長 ありがとうございました。
それでは、次に荒川修二君、お願い申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/520
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521・荒川修二
○荒川修二君 私は、新潟県長岡市で、一般入所百三十五床、痴呆性老人の専用棟五十床、デイケアが二十三床の老人保健施設の施設長をしております荒川でございます。
この老人保健施設の設立母体は特定財団医療法人でございまして、一般療養病床二百二十、精神の療養百三十三床、それから老人性痴呆の療養型が六十床、そこへ百床の特養を併設しております。さらに、訪問看護ステーションと在宅介護支援センターというのをつくりまして、これら三施設の機能を総合的に活用するよう工夫、実践しておるものでございます。
私は、国全体の保健、医療、福祉について言及するほどの能力もありませんし、その見識も持ち合わせておりません、またその立場でもございませんけれども、私は過去四十年間、現場で地域の皆様、特に患者さんを含めましてその家族の方々と非常に長いこと、また深いおつき合いをしてまいりまして、家族の皆様方が医療、福祉というものに何を望んでおるか、現在何に困っておるか、そういうことに対する理解が次第にできるようになったというふうに考えております。それで今、及ばずながらといいますか、そういう皆様方の御期待に少しでも沿うことができればということを自分の医療人生で決意をしまして、その覚悟のもとで今日まで生きてまいりました。そういう立場で、今回の介護保険の導入についての私見を述べさせていただきたいと思います。
まず、私は、介護保険を導入するに当たりまして、先ほども話が出ましたけれども、手順が逆といいますか、いわゆる施設介護の量と在宅支援機能の基盤整備、そういうものの見通しといいますか、実現の可能性が見えてきた、そういうことでは非常に今回の介護保険の導入について評価するものであります。
もう一つは、従来行われてきました福祉制度並びに保険制度による給付が介護保険法のもとで一元化されまして、そのことにより利用者の負担と給付に対する理解がしやすくなった、これは非常に大きな点でございまして、ほかの社会保障制度のそういうものに対するあり方としましては、今回のこの介護制度の持っていき方というのは非常に大きな意味を持つものであろう、そういうふうに考えております。
それから、その実施を二〇〇〇年に設けて準備期間を置いたということは、こういう制度の中身というものは、先ほど来ほかの皆さんが述べられておりますように非常に微妙に複雑な問題が絡んでおりますので、期間を置いたのは当然だというふうに思います。これからいろいろとそういう細かい討議をすることになると思いますけれども、その討議の過程をなるべくオープンにしてもらいたい、それから皆さんの英知を結集してもらいたい、そういうふうに希望しております。
それからさらに申し上げますと、法の整備というものと実際の運用というところにはどうしても乖離といいますか、これは別問題なんですね。私ども、現場におりまして何が一番必要かといいますと、利用者とサービス側の信頼関係が非常に重要なところでございまして、医療法の改正の骨子の中にも「説明」と「理解」という文言が入っておりますけれども、それにしてはこの法案、実際実施する場合の法案の解釈といいますか、わかりにくいということですね。だから、だれにでもわかるような、そういう努力をしてほしい。もしそれがありませんと、結局政策に対する不信という現象が起きてくるわけでありまして、法案そのものが機能しなくなる、そういうふうに危惧するものであります。
これはなかなか難しい問題であろうかと思いますけれども、私、このたびの資料をいろいろ拝見、拝読いたしまして、私でさえと言ったらおかしいけれども、わかりにくい。ましてや、現場で作業に従事しておる皆さんが利用者に説明申し上げるにしましても、本体がよくわからないのに説明するわけにいきませんので、なるべくそういう努力を今後続けてほしい、それを強く希望します。
それから最後に、やはり信頼関係というのは実績の積み重ねでやるしか方法はないわけでありまして、私どもも、いろいろな不満もございますけれども一生懸命頑張りますので、政治家の皆さん方も国民の信頼を得るようにより一層の努力をしていただきたい、そういうことを希望申し上げまして、私の意見を終わります。
どうもありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/521
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522・津島雄二
○津島座長 ありがとうございました。
お待たせしました。最後に小網由美さん、お願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/522
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523・小網由美
○小網由美君 私は、新潟市の中でも二三・六%と最も高齢化率が高く、そのうち、ひとり暮らしや高齢者のみの世帯が約四割を占める地域にある病院で医療ソーシャルワーカーとして働いています小網と申します。
今病院では、介護問題をめぐって深刻な事態が起こっています。それは、家族をして、一命を取りとめた老親に対して、なぜそのまま死んでしまわなかったかと言わしめることに象徴されています。
在宅で介護したいと思っても、ヘルパーやデイサービスなどの社会資源が少なく、十分な援助が得られない。仕事をやめて介護に専念したいと思っても、経済的にやっていけない。施設に入りたいと思っても、特別養護老人ホームは二年から三年待っていなければならない。老人保健施設も長く入ってはいられない。病院から退院の催促をされても行き場がないのです。老人病院や療養型の病院といっても、自己負担が大きい上に、それさえもすぐに入院もできず、待たなければならないという中で、冒頭のような発言が出てきてしまうのです。そんな中にあって、当の高齢者自身は、人生の最後の場面において自分がどこで生き抜きたいのかを自分の意思で決められず、家族に気兼ねをし、あるいは財布の中身と相談しながら決めざるを得ない状況に置かれているのです。
私は、仕事を通して、自分の意思に反して施設に行かざるを得なかった高齢者の方や家族の姿をたくさん見ました。また、長い間在宅介護を続けている家族の苦労を目の当たりにしてきました。また、介護や苦労を目の当たりに見続け、家族のために早く死にたいと訴える高齢者の声を聞き、胸のつぶれる思いがいたしました。私は、そんな現状が打開され、だれもが十分な介護を受けられ、生きていてよかったと思える最期が迎えられる介護保険であることを心から願っています。
ところが、法案の中身を見ていると気になることがたくさんあります。
一つは、要介護認定についてですが、法案によると、要介護者とは、例えば移動の項目ではすべて車いす使用となっています。これでは、現在週三回のヘルパー派遣を受けてやっと日常生活が確立されているひとり暮らしの九十三歳のAさんは、二百メートルほど離れた病院に手押し車を押してやっと歩いてくる程度ですが、それでも要介護者とはならず、要支援者ランクになり、現在のサービス以下に切り下げられてしまいます。
また、こういう実例がありました。足腰が悪くひとり暮らしのBさんも、介護保険で言うところの要支援者に該当する方ですが、入院給食の保険外しによる自己負担の導入で入院を嫌がるようになりました。そのときも軽い脳梗塞を起こして入院しましたが、動けるようになると治療もそこそこに退院をしていきました。痴呆も出現し始め、物忘れがひどくなったBさんは、モデルケースには該当しなくても、多くの支援を必要とするケースです。もともと近所とのつき合いもなく、閉じこもりがちなBさんの受けていたサービスは、週三回のヘルパー派遣のみでした。しばらくして冷たくなったBさんがヘルパーさんに発見されたのは、死後約二日近くたった日のことでした。
モデルケースによる介護認定の範囲はとても狭くて、AさんやBさんのようなケースがたくさん出てきてしまいます。私は、対象者を限定せず、介護の必要なすべての人に必要なサービスが速やかに給付されることが大切だと思います。
次に、負担の問題です。
保険料を払った上にさらに利用料を払わなければサービスを利用できないというのでは、利用したくても利用できなくなる人を大量につくり出す仕組みになってしまいます。現に、先ほどのBさんのように七百六十円の入院給食費が負担で入院できないケースや、二百五十円の訪問看護料が払えないから訪問を拒否したり回数を制限するケースがたくさんあるのです。
こうした人たちが保険料という新たな負担を払えるわけがありません。ましてや、利用料などもってのほかです。お金のあるなしで介護から外される人がないように、低所得者には十分な配慮が必要です。また、介護保険だけではなく、老人福祉法に基づく措置制度を今後も守り、すべての人に人間らしい介護を保障してほしいと思います。
最後に基盤整備についてですが、現在、私たちの地域ではデイサービスは二週間に一度しか利用できません。せめて週一度の利用を保障するためにと現在施設づくりが進められているところですが、それでも目標のやっと半分、ヘルパー増員も同様です。特別養護老人ホームに至っては、ほぼ目標を達成しているにもかかわらず、ベッド数とほぼ同じくらいの待機者を抱えています。このままでは、せっかく保険料を払っても、サービスを受けられる保障がどこにもありません。まず、サービスの基盤を整備することが最優先の課題です。どこに住んでいても十分な介護が受けられるように、サービスの基盤整備を積極的に援助してほしいと思います。
すべての個人が納得して保険料が払えるように、また、真に国民の介護の要求にこたえるものとして、一人の切り捨ても出さないような中身に変えていただけるように希望しています。
以上です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/523
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524・津島雄二
○津島座長 ありがとうございました。
以上で意見陳述者からの御意見の開陳は終わりました。
―――――――――――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/524
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525・津島雄二
○津島座長 これより派遣委員からの質疑を行います。
質疑につきましては、理事会の協議によりまして、一回の発言時間が三分以内となっておりますので、委員各位の御協力をお願いいたします。
なお、質疑のある委員は、挙手の上、座長の許可を得て発言されるようお願いいたします。
また、発言の際は、所属会派及び氏名をあらかじめお告げいただき、答弁を求める意見陳述人を指名願います。
それでは、質疑のある委員の方、挙手をお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/525
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526・長勢甚遠
○長勢委員 富山県出身の長勢でございます。
きょうは大変貴重な御意見を多々いただきまして、心から感謝を申し上げたいと思います。介護の問題の深刻さ、これはもうおっしゃられたとおりでございまして、各分野で大変御苦労なさっておられることに敬意を表したいと思います。
したがって、この介護保険法案に対する期待も国民ひとしく高いわけでございますが、私が一番心配しておりますのは、介護保険法を早くつくらなきゃならぬということと、それに対する国民の期待にたえられるような財源が確保できるのかどうかということが、私は、今諸先生からいろいろお話があったことを十分充足できるかどうかのかなめじゃないかと思っております。せっかくつくっても当てが外れたとかということであれば、これがかえって政治不信のもとにもなってしまえば、何のための我々の努力であったのかということになるわけであります。
その一番大きなギャップは、国民の皆様方がこの介護保険法ができたときにどういうことになるかというイメージが、我々が考えておるものと合っておるかどうかという一点にかかっておると思います。
つまり、私も選挙区でいろいろな方々とお話をいたしますと、まず保険料の負担水準についてそれほど意識がない、そんなに払わなくていいんだと思っておられる節があります。そして、できれば、だれでも年をとれば必要だ、自分が考えることがほとんどただでやってもらえる、あるいは全部施設に入れてもらえる、また御家族の方々も、年寄りがちょっと都合悪くなったら面倒を見なくて済むようになるんだという、それはもちろん極端な言い方でございますが、それに近いあいまいなイメージでこの介護法案を考えておられるのではないか。きょうの陳述人の中にもそのような節の感じられる御発言もあったように感じます。こういうことでは、本当にこの制度ができたときに、国民の期待にこたえられる、実際に実行できる制度として確立ができるのかと大変心配をしております。
このイメージのギャップをなるべく早く埋めた中で施行していかないと、私は、どれだけ施設整備ですとか人材確保ですとか、いろいろ御意見がございました、市町村の問題もある、すべて我々も非常に心配をしている点でございましたが、それ以上にこの意識のギャップというものがまだまだ大きいのではないかということを心配をしております。だれでもが、みんながということにするには、保険料であれあるいは税であれ、どの方式をとってもそれなりの負担というものをだれかがやらなきゃならない。このことの認識をみんなが持ち合った中で一番いい制度をつくっていくという議論ができればいいなと思っておるのでございますが、皆さん方、現場で大変御苦労しておられて、いろいろな方々と接触しておられると思います。この介護保険法がどういうイメージであるのか、どういうサービスのイメージを皆さんお持ちであるかということについてぜひひとつお聞かせいただければ、私は参考になると思っております。
正直言って全員の方々にお聞きしたいテーマでございますが、それでは、大変御苦労されておられます田中さんと、法案について具体的な提案もなさいました大川さんから、ちょっと一般の方々はどんなイメージで考えておられるか、果たしてそれと保険料負担についてのこの法案の中身が整合性があると思っておられるかどうか、お聞かせいただければありがたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/526
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527・田中美紀
○田中美紀君 私は一般の専業主婦ですので、介護保険について正直言ってよくわからない一人なんですけれども、恐らく、今介護している家族のほとんどが介護保険に関してはわからないと思います。介護保険、介護保険と新聞ではいろいろと取り上げられていますが、それが介護者がどの程度興味があるかというのは疑問です。
現に私たちは、将来の介護保険についてよりも、今現在困っていることを改善していただきたいということが先に立っておりますので、私のイメージとしては、介護保険、ある一定額を支払えばそれなりのサービスが受けられるような社会になる、そういうふうに感じておりました。それが一般の主婦の感覚じゃないかと思うのですけれども。
以上です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/527
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528・大川昭雄
○大川昭雄君 なかなか御質問に正確にお答えするのが、全般的なものですから難しいのですけれども、私の経験からだけお話をしますと、私ども、今介護保険に対してのいろいろな、この点をこう直してもらいたい、それから、介護基盤をきちんと整備してもらって、そのサービスを二〇〇〇年には完全にやってもらいたいという趣旨で運動している市民団体なんですけれども、そうすると当然、介護保険の現在の法案の中身が詳しくわからないとそういうこともできないわけなんで、まず今、各市町村ごとにあるいは区ごとに勉強会、学習会をやっているのですが、その中で感じますことは、やはりまだまだ介護法案の中身がよくわかっていない。極端から極端と言えばいいか、非常によくなる、バラ色に考えている人もいるし、その反対に、この介護保険法案は何だ、何で税金でやらないんだ、不満だ、全部不満だと、極端から極端の意見があることは事実です。
それで、先ほど荒川さんもおっしゃったのですが、なぜこんなふうになっているのかなと考えますと、やはり国の方も厚生省の方も、介護保険法案をわかりやすく全体にPRする努力がまだまだ足りないのではないか、こんなふうに思っています。確かに、介護保険法案のずばりでなくて介護保険の要旨、パンフレットみたいなものは大変わかりやすく色刷りで出ているのですけれども、その数が非常に少ないというのも事実なんで、その辺の努力を、まだまだ法案の審議中ですから、この審議中でもそれをもっともっと増刷をしてあらゆるところに、例えば行政なら行政の方、それからボランティアの団体だとかあるいは社会福祉の団体とか、そういうところにおろすというか皆さんに配布するルートはいっぱいあると思いますから、そのルートを通じてどんどん流すようにしてもらうことから、ぜひギャップを埋めていくというような努力もしてほしい。
それからまた、法案は一部を除いては大変いいと思いますけれども、その法案が成立した後も実施時期までの間には三年あるわけですから、その間にももっとそういう努力というものを続けられたらいかがか、このように思っていることも申し上げておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/528
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529・津島雄二
○津島座長 ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/529
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530・井上喜一
○井上(喜)委員 私は、新進党の井上喜一でございます。選挙区の方は兵庫の四区でありまして、神戸市の一部とあと内陸部ということで、まさに大変若い人たちが多い地域と高齢化が進んでいる農村部を選挙区にしている者でございます。
きょうは、参考意見といいますか陳述ということで、それぞれのお立場から経験を踏まえた陳述をいただきまして、大変参考になりました。ありがとうございました。制度の中にもあるいは制度の運用にも皆さん方の御意見は極力取り入れていくべきもの、そんなふうに考えた次第でございます。
時間の制約がありますので私は端的にお伺いしたいのですが、まず小川市長さんにお伺いをいたします。
基盤整備が前提であるということはもうどなたも言っておられたように思うのでありますけれども、現実にこの基盤整備はどの程度進んでいるのか。今一つの目安になるものとしては市町村に高齢者の福祉計画がありますけれども、あれの達成率がどの程度になっているのか、施設の整備なりあるいはマンパワーの確保、こういうこと。それからまた、御意見を伺っておりますと、そういう整備が進めば進むほど基盤整備がさらに必要になってくるというようなお話がありましたけれども、そういう意味では今の福祉計画を抜本的に改めるべきじゃないか、こういうように考えるのです。確かに計画を立てましてそんなに時間はたたないのでありますが、それにいたしましても再び今そういう時期に来ているのではないかということ。この二点。
それからその次は、私ども新進党は、税方式といいますか、公費負担でもって税を目的税化しまして、それで介護の費用を支弁すべきである、こういう立場なんですが、今の法案の体系の中で市町村が負うべき徴収義務、どの程度負えるのか。これは数字で言っていただいたら一番いいと思うのですが、何%ぐらい徴収が達成できるのか、自信を持ってやれるのか、その辺のところをお聞かせいただきたいと思います。
それともう一つは、家族介護について費用を支弁をしているというふうなお話がありましたが、この中身をもうちょっと詳しく御説明いただけないか。どういう中身でどれぐらいの金額を支給しているのかというようなことをお聞かせいただきたいと思います。
それから最後の点は、これは小川市長、それから岡田さん、石田さん、田中さん、大川さん、荒川さん、お触れにならなかったのでお聞きするのですが、保険給付の開始年齢、法案では六十五歳以上になっておりますが、この点についてのお考えを簡潔でいいですからお聞かせいただきたいということでございます。
以上です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/530
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531・津島雄二
○津島座長 それでは、まず小川市長、お願いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/531
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532・小川竹二
○小川竹二君 新ゴールドプランの達成の問題でありますが、全体のものについてはちょっと私、ここでお話しする資料を持っていないのですが、国の方ではいろいろ毎年度の進みぐあいについてはまとめてあるような気がするのですが……(井上(喜)委員「実績で結構です」と呼ぶ)
ただ、実際やってみますと、私どものところは意外とその目標については何とかやれるのかなと思って詰めてはいるのですが、現在の進行状況とあわせて考えてみますと、新ゴールドプランの目標値というのは本当はもっと高くなるのではないのかという気がするのです。私のところは、昨年新しい特別養護老人ホーム七十床をつくりました。計画では七十床つくりますと待機が四名というつもりだったのですが、一年たちますと待機者が四十名ということでふえてまいりまして、また改めて十一年に五十床の特別養護老人ホームをつくりたいということで申請をしているところです。
やはり、この十二年までに施設整備をするということで準備をしますと、結局、社会的入院あるいは在宅で我慢をしておられる方、こういうものがどんどん浮かび上がってくるわけでありますから、私は、十二年まで待たずに毎年毎年調査をして、到達度がどんなふうに変わっていくのか、しっかりはかる必要があるのではないかなと思っています。恐らくかなりの違いが出てくるのではなかろうか、こう思っております。
それから二番目でありますが、これも正確なことは、徴収についてどれぐらい負担できるのかということはなかなか数値で申し上げることもできないわけですが、現に国民健康保険、これについてはよほど準備をしておりませんと赤字になる、そしてまた一般会計から補てんをしなければならぬ、そういう市町村は大変な数に上っておるわけです。
それとまた、国民健康保険税に対する重税感といいますか、今税金の中で一番大変なのは国保税だ、こういうのがあるわけですが、そこへ乗せるわけですね。少なくとも、医療改革が先行しておって下がる傾向が見えるようであれば私は納得ができると思うのですけれども、なかなか今の状況では、そういうものについてはまだおくれるだろうということがありますので、当然保険料は国民健康保険のところへ上乗せをしていくだろう、こういうことでありますから、いまだもって国保税の徴収について私ども非常に苦労をしております。私自身のところは、そういう苦労の前提の上で徴収率九五、六でございますか、いい方だと思います。県下でも私はいいと思うのですが、決してそれは楽でやっているわけではありません。非常に苦しんでいます。
それから、現金支給の問題でありますが、私の考え方は現金で支給をすることについて決して賛成ではありませんので、県下の中でも現金で支給をしない市町村の中で残り少ない方であります。新潟県で二十市ございますが、現金で支給をしていない市は恐らく数えるほどしかないと思うのです。
ただ、やはり基本的には現物できちんとした形で保障されればいいと思うのですが、これほど現金支給でお渡しする市町村がふえてきているわけですね。法案を見ていきますと、そういうものについては特別な給付については認める、こういうような書き方がされているわけです。そうしますと、現金で支給する市町村、それから法案の基本的な考え方であります現物でやる方法、この辺で私は混乱をするのじゃないかと思うのです。それと、賄い切れないような介護であるのであれば基本的に現金支給というものを考えておかないと、該当しない人たちをどう救えばいいのか、保険料は払ったけれども何もならない、こういうことにもなりますので、場合によれば現金支給の問題も考えざるを得ない、私はこう思っております。
それから……(井上(喜)委員「保険給付の開始年齢について」と呼ぶ)
私は、それについては現行でいいのではないかということで、別に疑問を持っておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/532
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533・津島雄二
○津島座長 最後の御質問がございましたね。あとの方、一言ずつ簡潔に御発言をお願いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/533
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534・岡田史
○岡田史君 支給年齢につきましては、これは障害者介護ということもきちっと焦点の中に入っているのかという御質問だと思います。
私自身はこの中で、障害者介護についてのいろいろな議論というものに触れてまいりました。実際言葉で表現すれば、障害者介護をも視点の中に入れた介護法案であってもらいたいというのが理想です。しかし、現実論といたしまして、やはり高齢者介護ということが非常に大きな問題となっている、その問題をまず一つハードルとして越えるための法案として理解しております。
その中に、六十五歳というふうに区切ることで、今現在もそうですけれども、そこに該当しないことで非常に不利をこうむっている方々がいらっしゃいますので、そういうところもやはり考慮していただきたいなと思っております。
以上です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/534
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535・石田勇三
○石田勇三君 開始年齢については、私は法案そのものは理解してよろしいかと思います。特に、この法案そのものが老人介護でございますので、年金等との整合性からしましてもよろしいかと思います。問題は第二号被保険者だと思いますが、四十歳から六十歳というものについては、将来的には年齢引き下げは考えられると思いますが、現時点では妥当かな、こう思います。
その中でも、加齢以外の出費については給付対象外、これが非常にまた今後問題提起になるのではないかという危惧を持ちます。それは、一つは、第三者行為の場合は損害賠償とかそういうのはございますが、自宅等において自己責任による転倒とか外傷性のもの、そういうものによって、特に股関節などの骨折によりまして寝たきりになる障害があります。それが本当に加齢であるのかどうかも認定人は若干危惧しますが、やはり自己責任による外傷性のもの、これが非常に問題が波及する場合があるということで、これらについてはある意味では柔軟な認定をしていただけるように望みたい、こう思います。
以上です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/535
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536・大川昭雄
○大川昭雄君 ちょっとわかりにくかったかと思いますが、私が先ほど言いましたことは、今の法案の六十五歳以上は無条件で四十歳以上は加齢条項づきというのは、今おっしゃった方の意見とも関係しますが、加齢条項つきというのはやはり削除すべきじゃないだろうか、そういうことが一つ。
それから、さらに年齢を引き下げるということについては、最終的にどのくらいの保険料にするかということを決めたこととの関連もございますから、今直ちに引き下げるというようなことはできないでしょうから、それは五年程度の準備期間を置いて見直しを図ってほしい、こういうふうに申し上げたので、そのように理解してもらいたいと思います。
私は、いずれこの法案を修正の上ぜひ成立してほしいと言ったのは、ゼロか一〇〇かということではまずいのではないか、やはり中間で、何とかみんなが合意できるところでスタートさせないとどんどんおくれてしまうばかり、こういうことを特に心配しましたので申し上げた次第です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/536
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537・荒川修二
○荒川修二君 私は、今の六十五歳でいいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/537
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538・津島雄二
○津島座長 ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/538
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539・石毛えい子
○石毛委員 民主党の石毛でございます。本日はありがとうございました。
黒岩先生、それから大川さんにお尋ねさせていただきたいと思いますが、まず黒岩先生、大和町は今まで保健、医療、福祉の一体的な地域ケアということで全国的にも知られている地域だと思います。そして、町民の方々にもその実態とその意識がおありになるだろうというふうに理解させていただいておりますが、そうした地域で、これから介護保険を制度化し、保険料を負担していくということに対して、地域の方々の認識といいましょうか、あるいは気持ちのようなことでもよろしいかと思いますけれども、肯定的に受けとめて、これから介護を社会的に解決していくためには自分たちもこの制度に加わっていく必要があるというような、そういうお気持ちでおられるのかどうかというようなところ、漠然とした質問ですけれども、肯定感、制度に対する肯定感というふうに言いかえてもよろしいかと思いますが、それを一点お尋ねしたいということ。
それからもう一つは、介護者家族の劇団活動とかさまざまな活動がされている地域だというふうに伺っておりますけれども、そうした地域基盤を踏まえますときに、この介護保険制度に、先ほど先生、市民参加の必要性というふうにおっしゃいましたけれども、その市民参加が、地域でさまざまな活動に取り組んでいる市民が参加することによって介護保険制度がより漸進的に進むといいますか、そうしたお考えをお持ちかと思って伺いましたけれども、そこのあたりをもう少し敷衍化して御説明いただければと存じます。
大川さんに対する質問も同様の質問でございまして、先ほどの御提言で、介護保険運営委員会でしたでしょうか、それを作成してそこに市民の参加という御提言だと一つ目は伺いましたけれども、それを提言されました地域の基盤ですとかあるいは地域の声というようなことをもう少しお聞かせいただけたらというふうに存じます。
以上でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/539
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540・黒岩卓夫
○黒岩卓夫君 大和町を具体的に御指摘されたと思いますけれども、確かに、私の町は一万五千の人口で、いわゆる町立病院サイドからのサービスと、それから私の方は開業ですけれどもやっておりまして、特に在宅を含めて二つのシステムがあるわけですね。ですから、町民からいいますと、町民だけではありませんけれども、地域ですけれども、それを選択できるというような状況になっています。そういう点でも恐らくほかの地域に比べれば進んでいるのではないかなと思っております。
それから、恐らくこれから具体的に問題になるとすれば、自己負担の問題です。そういう点からいいますと、福祉サービスの自己負担というのは現在も当然あるわけで、それが、介護保険ができますと、表面的には同じくらいとなっておりますけれども、実際には今よりも自己負担がふえてくるということがありますので、それについては私の町でも相当抵抗があります。
それから、もう一つは医療です。これは再三指摘されておりますけれども、医療からですと自己負担が少ないということでありまして、特に私のところでやっておりますデイケアというサービスは医療ですので、月に千二十円払いますと、極端に言いますと、毎日デイケアに来てもそれ以上払わなくてよろしいということになります、実際には毎日ということはそうありませんけれども。そうなりますと、これから一割負担になりますと、当然その分だけ自己負担はふえるということで、そういうことが町民から見ると、気分的にブレーキをかけられるということになろうかと思っております。
しかし一方では、今までの実績をどう評価するかですけれども、死に場所を自分で選べる町というようなことを言っておりますが、そういうようなことがそのままキープされるということになれば、ある程度それを認めていくというようなこともあろうかと思いますので、むしろこれからは、私が申し上げましたように、その後半ですか、市民参加のことになりますけれども、自分たちの意向とか選択であるとか、あるいはまた制度の改善とかということについてどこまで町民が参加できるか、あるいは意向を反映させるかというあたりのところに対する不透明というか、その辺のことが非常に問題になるだろうと思います。
ぼけ老人をかかえる家族の会のOBが介護劇などをやっておりまして、ボランティア的活動もかなりやっておりますので、それなりに福祉に対する意識というのは高いのですけれども、残念ながら、そういう方々が、介護保険についての町民レベルの話し合いというか議論が意外に行われていないのですね。個々ではそれぞれある程度わかっておりますけれども、もうちょっと町民レベルでお互いに話し合うというのがまだ機会がないということですので、むしろ私はこれからそういうことが出てくるだろうし、またそのことによって、ある意味ではよりよいものをつくっていく契機になると思っておりますけれども、残念ながら、私の町でもそういう議論がほとんどなされていないということをお伝えしたいと思います。
以上です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/540
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541・大川昭雄
○大川昭雄君 介護保険運営委員会を通じて市民参画を、こういう主張を端的に言えば、ぜひそこの中に利用者代表を、利用者代表で構成してもらいたい、そして男女同数だ、ここがさわりの部分なんですね。
それはどういう意味かというと、例を挙げますと、国民健康保険の運営協議会というのが現在ございますが、その協議会というのは、利用者代表でなくて、各利益団体の代表といいますか、業界団体の代表が集まりまして、そこでお互いに自分の方の団体の利益を主張するものですからなかなか意見の一致を見ないということになりますから、それはもう利用者の声がそっちのけになる可能性もあるという私どもの問題意識がありまして、あくまでもこれは利用者代表で構成をし、しかも、男性だけではとても介護の問題は語れませんので男女同数で、こういうことを言っているわけであります。
では、実際に選ぶ場合にどういうところから選ぶべきかということについては、いろいろな市民団体がございますから、そういう介護に関係をするしないにかかわらず、そういう市民団体の皆さんとか、あるいは一般に公募をするとかも含めまして、介護保険についてきちんと意見を、率直な意見をと言った方がいいでしょうか、率直な意見を言えるような、そういう人たちの構成によってやることによって、いろいろな不透明さとかそういうことがなくなってきて、お互いに信頼し合えるような体制がとれるのじゃないかな、こういうことで提案をしている次第です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/541
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542・津島雄二
○津島座長 それでは、次は田村委員、それから瀬古委員という順番でお願いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/542
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543・田村憲久
○田村委員 自由民主党の田村憲久でございます。
きょうは、本当に先生方からいろいろとすばらしい御意見をお聞かせをいただきました。特に田中さんからいただきました、介護をされる家族の心のケアをどうしていくのか、このような問題点を提示をされたわけでありまして、大変勉強させていただきました。
私の選挙区といいますのは、三重県の第四区というところなんですけれども、大体市町村は大きなところがないのです。弱小の市町村が多い中で、いろいろと地元の市町村長さん方のお話をお聞きしますと、やはり財源の部分と人の部分、これが大変心配です、そういうような御意見をいただきます。
そこで、小川市長さんにお聞きをいたしたいのですけれども、これは導入をするときが一番事務的にも煩雑になってこようかと思います。要するに、要介護認定をするにいたしましても、一度にたくさんの方々を要介護の認定をしていかなければいけない。いろいろな事務の部分でもたくさんの部分で、要するに保険としての認定もしていかなければならないわけでありますから、そのようなたくさんの部分で煩雑さが出てこようかと思うのです。
いろいろと厚生省に話を聞きますと、機関を置きまして要介護認定をするにいたしましても一点に集中しないようにというような、そんな話もあるわけでありますけれども、それにいたしましても、では、この認定をするエキスパートといいますか専門家をどのように集めてくるのか、そういうような問題もあるわけであります。その点、制度が導入されますときの煩雑になる部分、これに対する心配点、またいろいろな政府に対します要望等々をお聞かせいただければありがたいのですけれども、それが一点。
それともう一点。今回いろいろなお話をお聞きする中で、サービスをもう少し充実をしていただいた方がいいのじゃないか、そういうお話もあるわけでありますけれども、導入時点でこの介護に関する費用というのが大体四兆二千億円ぐらいかかるという中から、現在言われております二千五百円ぐらいの保険料、また自己負担部分というものが言われておるわけであります。もちろん、この点に関しましては、現在の、公費と保険料と自己負担部分で賄うのか、それとも公費だけで、税金だけで賄うのか、新進党さんはそういう議論もあるわけでありますけれども、それによっても分かれるわけでありますが、サービスを充実しようとしますと、どうしたってそのような観点から自己負担部分とか保険料を上げざるを得ない。
そう思いますと、この保険料、現在言われております保険料で、まだ十分にサービスの内容が開示されていないわけでありますけれども、サービスの内容は十分であるとお思いであられるのか、この金額ではもっともっとサービスをしてもらわなければ割が合わないというふうにお考えになられるのか、その点を小川市長さん、それから田中さん、小網さんにぜひともお聞かせいただきたいのです。よろしくお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/543
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544・小川竹二
○小川竹二君 認定の作業でありますけれども、私は、この認定審査をでき得る市町村といいますのは、ある程度の市町村でないとなかなかできないのではなかろうか。やはり医療の面から検討できる人、また、福祉について非常に見識のある方、いろいろな意味で必要な人を集めなきやならないと思うのですが、それはどのくらいの規模というのはちょっとあれですけれども、市単位ぐらいであれば可能だと私は思うのですが、やはり町、村の単位になりますと、独自で認定をする場所をつくるということについてはかなり難しくなる。そういう意味では、もう少し大きい県、あるいはもっと大きい広域の立場でという意見もありますけれども、そうなりますと逆に機械的になるのじゃないか。もうちょっと小さなエリアが、広域圏とか県とかという考え方よりもうちょっと身近なエリアが必要ではないかということです。
そういう意味で、その辺は、認定作業をする範囲がどのくらいのものか、幾つかの市町村が一緒にやるにしても、もうちょっと小さな形で考えなければうまくないのじゃないのか。そういう意味では、県が出てきたり、あるいは広域というのはちょっと大き過ぎるという気がするのです。ですから、今後、その辺の認定ができる範囲というものはもっと狭めてもいいのじゃないかということです。
それから、これについてはかなり早い段階で研修会を開いたり、また、それぞれの市町村に差があっても困るわけですから、やはり統一をする必要もありますので、かなり早い段階にそれぞれ組織ができ上がって、お互い基準なり何なり、そういうものについて研究ができるよう時間を十分とってやってもらったらいかがかなと思っております。
それから、私は、介護保険ができ上がりまして動き出したとき、これについては当然受益と負担で相まってできるわけでありますから、現在の額、またそれ以上ということもあり得ると思うのですが、問題は、先ほど申し上げましたが、介護保険が動き出す前に何としても、必要な基盤整備は別なものなんだ、これはやはり始まる前にきちんとしっかりやっておいた上で出発をする。それが今の段階ですと、基盤整備の問題も同時に、一緒になって二〇〇〇年以降のところへ入っていく。こういうことになりますと、本当に混乱もするでしょうし、負担の問題もよくわからない。何としても二〇〇〇年までには介護保険が動き出すような基盤整備をしっかりやる。そうすれば二〇〇〇年以降の負担の問題については、受益と負担が一つの原則になりますから、国民の理解というものも同じベースの中で理解できるのではなかろうかと私は思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/544
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545・津島雄二
○津島座長 田中さん、御意見をひとつ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/545
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546・田中美紀
○田中美紀君 今のサービスの利用料金が妥当かということでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/546
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547・田村憲久
○田村委員 今回の公的介護保険の中で提示されているいろいろなサービスがありますね。それと、今言われております月々の保険料でありますとか自己負担分でありますとか、そういうものの対比というかバランスというものが妥当かどうか、そう思われるかどうかという話です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/547
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548・田中美紀
○田中美紀君 今介護保険の中にあるサービスですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/548
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549・田村憲久
○田村委員 受けられるサービスですね。もちろん介護認定によって変わってきますけれども、それの点がどうかという、要するに、負担に対してサービスがこれで十分かどうかという話なんですけれども。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/549
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550・田中美紀
○田中美紀君 今現在の利用料とサービスについてということですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/550
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551・津島雄二
○津島座長 今法案に関連していろいろ言われている、月にこのくらいの保険料、それに対して大体こういうスタンダードなサービスはいたしますよというのも一応示されている。どこまで田中さんが詳しく聞いておられるかあれですけれども、今まで聞かれた範囲内で、負担とサービスのバランスがどうだろうか、どういうふうに受けとめておられるかということです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/551
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552・田中美紀
○田中美紀君 はい、わかりました。
介護保険の保険料に関しては、私は勉強不足で全然見ておりませんでした。ですから、その保険料に見合ったサービスかどうかというのはよくわかりませんが、ただ、私のうちの場合は、まだ両親が年金とかありますので経済的にはそんなに困らないのですけれども、低所得者の方、私が将来年をとったときに、年金はそんなにないと思いますし、そんなにお金がないと思います。そのときに利用料を別に払うということになりますと、かなり大変だと思います。
ですから、なるべく一律に、みんなが利用料を均一に負担して、そして低額で利用できるような、そんな制度であったらいいなと思います。済みません、ちょっとよく理解していなくて。その程度です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/552
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553・津島雄二
○津島座長 具体的な数字がまだ余り、我々は議論の段階ではいろいろ言っているけれども、皆さん方に細かくPRしているわけじゃないから結構です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/553
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554・小網由美
○小網由美君 社会福祉の分野において負担の問題というのは非常に個別性の高い問題ですので、御質問の趣旨に的確に私も答えられないで、どういうお答えをすればいいのか非常に迷っているのですけれども、私は、その二千五百円という負担さえも払えない人々が今回の保険によって排除されることが一番の問題だというふうにさっきも発言の中で触れさせていただいたかと思うのです。
収入が幾らかとかいろいろな考え方があると思うのですけれども、その家族の構成だとか家屋の構造だとかによって必要としているサービスとかがいろいろ違ってくると思うので、そういうバランスがとれているかどうかという質問には非常に答えにくいのですが、私は、低所得者から見るとそれは非常に高い負担だというふうに思っています。そのためにも、私は、国がもっと負担というか、今の例えば二〇%と五%の調整交付金というような形ではなくて、もっとしっかり責任を持ってお金を出していただくべきじゃないかなというふうに考えています。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/554
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555・津島雄二
○津島座長 ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/555
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556・瀬古由起子
○瀬古委員 日本共産党の瀬古由起子でございます。
きょうは、大変貴重な御意見をありがとうございました。早く介護保険制度をつくってほしいけれども、政府案のままいくと大変大きな問題があるということも、皆さんの御意見を聞きまして痛感いたしました。ぜひ今後の国会の審議の中にその御意見を生かしていきたいと思っております。
そこでお聞きしたいと思うのですけれども、一つは、今それぞれ地方自治体がつくっております老人保健福祉計画の問題なんですが、これは小川さんと大川さんにお聞きしたいと思うのですけれども、実際には、全国的に見ましても、老人保健福祉計画の達成状況が、もう無理だというところが七割にもなってきている。そして、達成したけれども、実際には、どんどん施設をつくれば逆にまたその需要がうんとふえて、毎年でも見直しをしなきゃいかぬのじゃないかということがお話をされました。
ところが、今私たちは論議をしているわけですが、厚生省はこの介護保険制度が発足するまで見直しをしないということをはっきりさせているわけですね。そうしますと、地方自治体は、見直さないと現状に合わないものになってしまうと。ここに食い違いが出てきているのではないかというふうに思うのです。私は、やはり地方の実情に応じて今見直しをした上で、そして本当に十分な基盤整備もやり、国はうんとそれに対しても援助して、そうして発足をしなければ、制度をつくったものの全然サービスの保障がないというものではだめじゃないかと思っているのですが、その点、小川さんと、そして新ゴールドプランの前倒しをすべきだとおっしゃられた大川さんにお聞きしたいと思います。
それから、もう一点は岡田史さんにお聞きしたいというように思うのですけれども、岡田さんは、私聞いておりまして大変感激いたしました。介護する側が本当に出されているサインを見逃さない、そして、生活を支え、自立を引き出す、生きる力を引き出す介護というのが大変大事だという点、私はそうだというように思うのです。そのためにも、やはりそれにふさわしい介護者の専門性といいますか、その身分もきちんとした――専門家の果たす役割というのは大変私重要だなということをこのことを通じて痛感いたしました。ところが、これも厚生省の側は、今後こういう介護の分野はもうパートだとか非常勤でいいじゃないか、こういう論調になっているのですが、その点ぜひお聞かせいただきたい。
最後に小網さんにお伺いしたいのですけれども、小網さんが御発言の中で、お金のあるなしで介護から外される人がないように、現在の措置制度を守って、すべての人が十分介護を受けられるようにという御発言をなさいましたけれども、私たちは、やはり今の措置の制度、国が公的な責任をきちんと果たす措置制度をうんと拡充していく、そして同時に、財源の問題がありますから、企業負担も含めた保険制度の組み合わせというのを日本共産党の場合は提案しているわけですが、これは、今度の介護保険では措置制度そのものをなくしていくという流れになっているわけで、その点、小網さんの方はどのようにお考えでしょうか。
以上、お願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/556
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557・小川竹二
○小川竹二君 一番最初、発言のところで申し上げましたけれども、新ゴールドプランにつきましてはどこかの新聞社で調査したのがございましたけれども、七割くらいの市町村長さんは、やはりこの計画でも達成するのは難しいのではないかということで、基本的には余り自信を持っておられない市町村が多いわけです。
しかし、もう私ども、基盤整備については本当に一生懸命やらなければだめだろうと思っていますから、課題の中で最重要なことだと考えておりますから一生懸命やっているつもりなんですが、我々にすれば、この後残された期間の中で、ここまで来たからまあいいなと、いいといいますか、書いたものに近づいてきたぞという気はするのですが、やってみますと、私どもが目標にした数字と全然違うものが出てくる。それは、一つには、社会的にあるいは在宅の中で我慢している方が非常に多い。そういう人たちの把握がまだ我々十分ではないのじゃないかというような気がします。
しかしまた、それが出れば出たで私ども大変なことでありますから、実現をする手段といいますか、これについては本当にお願いをしなきゃだめだろうと思っているのですが、そういう意味では、本当に残された時間は少ないわけですけれども、この三年の中で、施設を、それから人的なマンパワーの問題、これは何としてでもここから一年一年、一生懸命お互い詰めて、この制度が動き出すまでにやはり準備をしてかからなきゃだめだろう、こう思っています。
いろいろお願いする方が逆でありますが、ひとつよろしくお願いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/557
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558・大川昭雄
○大川昭雄君 保健福祉計画の現状認識については、皆さんほとんど変わりないのじゃないかと思います。そして問題点も、新ゴールドプランベースでいっても現在達成率六〇%ぐらいでしょうかね、そして、もう一〇〇%達成するということについて自信がないというところが七〇%以上、こういうところですからその辺は同じなんですが、さらにもうちょっと、これでは足りないと私ども言っているわけですね。
介護保険が成立した後は、極端に言えば爆発的なニーズが出てくる、潜在的ニーズが。そういうことからすると、新新ゴールドプランといいますかスーパーゴールドプランといいますか、そういうものをぜひつくって、そして今のものは前倒し実施してどんどんふやしていかなきゃとても間に合わないというふうに思っているので、その点はぜひ国会の先生の皆さん頑張ってほしいな、こんなふうに思っているところです。
それで、あと私感想をつけ加えますと、小川さんからお話がありましたように、そういう前向きにとらえて一生懸命やっておられるということについて、私どもも認識を新たにしました。どちらかというと市町村の方は、ちょっと無理だからやめておけ、もう少し介護保険法は先送りしろとか、そういう意見かなということを少し心配しておったのですが、その辺が小川さんの方からかなり積極的に、前向きに我々も進めたい、だから国でももっと頑張ってくれというような意見が出されたことについては、私どもこれから本当に意を強くしていろいろ皆さんにもお話をしていきたいな、こんなふうに思っておるところです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/558
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559・岡田史
○岡田史君 ただいま専門的な介護ということで高い評価をいただきまして、ありがとうございました。
それで御質問ですが、パートですとか臨時ですとかということで、少し私もそういうところに苦慮しています。といいますのも、やはり今多くのヘルパーさんが採用されておりますが、登録ヘルパーさんですとか臨時雇用のヘルパーさんであるとかそういう方が、まあ常勤のヘルパーさんも実際多くはなっておるのですけれども、その中でそういうヘルパーさんたちが非常に多くなっているということを危惧しております。やはり専門性を支えるというのは、それは終身雇用とかはまた別の話ですけれども、安定した雇用関係というのが不可欠ではないかというふうに思っております。
専門性に根差した介護を実際行っていくためには、継続したかかわりというのが不可欠です。断片的にそこに行って介護を行って、そして帰ってくる。相手は人間です。人間と人間との関係をつなぐということも介護でありますので、そこのところに考慮していただければ、やはり介護の専門性はきちっと安定した雇用でというふうなことを申し上げたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/559
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560・小網由美
○小網由美君 先ほどの質問ともちょっと関係があるかと思うのですが、一律二千五百円とか一律サービスの一割負担とかというのは、低所得者にとっては本当に大変な額になってくるかと思います。さっきも申し上げましたが、現在でも給食の保険外しで入院ができないだとか、二百五十円の訪問看護の負担が払えないから訪問看護も受けられないというような状況の中で、負担がどんどんふえていく、医療費がどんどん改悪されていって、医療からも追い出され、介護からも追い出される多くの人たちが出てくることを私は一番危惧しているわけです。
その人たちを守るためには、本当に国の責任で措置制度に基づいた、措置制度をきちんと残していかないとそういう人たちが守られない。今の措置を国の責任でもっと拡大をして柔軟に対応していきながら、そうやって医療の現場からも福祉の現場からもせり出される人をきちんと守る、どんな人もお金のあるなしで介護の差別を受けないという保障をするためにも、ぜひ措置制度は残していただきたいというふうに考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/560
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561・津島雄二
○津島座長 それでは、鴨下委員、それから桧田委員という順番でお願いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/561
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562・鴨下一郎
○鴨下委員 新進党の鴨下一郎でございます。
私は、皆さんの意見をお伺いしておりまして、現場では公的介護という制度をさらに拡充していくというようなことを非常に切望なさっているということをしみじみ今回再認識させていただきました。ただ、果たして保険が導入されるということですべて介護がバラ色になるのか、この辺のところにつきまして私は甚だ疑問に思っている点がございますので、二、三質問させていただきたいと思います。
まずは、保険が入ってきたときに、例えば滞納だとか未加入というようなことがあり得るのだろうと思います。特に小川市長にお伺いしたいのですが、国保でさえも多少その辺のところで徴収のときにいろいろとお困りのこともあるように伺っておりますが、さらに介護保険が上乗せされるというようなことでの滞納、未加入がふえたときにその方々の介護の給付をどうしていくのか、この辺のところのお考えを伺わせていただきたいと思います。
それからもう一つは、石田さんがおっしゃっていましたが、介護保険を導入することによっての方がゴールドプランのままよりも自己負担がふえてしまうケースがあると。こういうようなことで言いますと、果たして保険を導入することが本当の意味での介護を充実していくことに通じるのだろうかというようなことが考えられますが、その辺のところのお考えをお聞かせいただきたいと思います。
それから、例えば、保険が導入されるというのはある意味でお金を払うということになりますから、その結果として、自分はお金を払っているのだからいろいろな介護のサービスを受けたいという、言ってみれば潜在的なニーズがより顕在化してくるということがあらゆるところで出てくるのだろうと思います。そのときにそのサービスを提供し切れるのかというようなことを非常に私は心配しておりまして、いわゆる保険あって介護なしの状況がこれから出てくるのではないかということを懸念しているわけです。
大川さんにお伺いしたいのですが、次善、三善の策として、とにかく介護保険を導入して中を充実させていけばいいじゃないかというようなお考えもあるのだろうと思いますが、むしろ、多少不十分な制度を入れることによってなかなか後がうまくいかないというようなこともあると思います。その辺についてのお考えをお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/562
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563・小川竹二
○小川竹二君 私のところは、国保料の滞納の問題なんかについては一生懸命取り組んでいる方だと思うのですが、県内でも、短期保険証を発行いたしまして、長期滞納者にとりまして短く切って催促を申し上げているという市町村は少ないと思うのですが、私のところは実はそこまでやっております。そういう形で厳しくやった上で、ようやく国保の徴収率を先ほどお話ししたような形で上げているわけですね。国保の会計というのはそこまで本当に厳しい状況でありますから、むしろ私は国保の負担を下げたいくらいな気持ちでありますので、この上というのにはちょっといろいろ問題もあります。ですから、医療保険制度を先行させていただきたいというように申し上げているのです。
滞納者にペナルティー、こういうのをつけたり停止をしたりすることについては、恐らく市町村長さんどなたも困っていると思うのです。実際はなかなかできないことなんですね。ですから、答えもありませんけれども、私はこの辺で一番実は困っています。本当にそんなことがやれるのかな。市町村長もやはりもっとやってやりたいという気持ちはありますが、そこまでやれる市町村長はなかなかいないと思うのです。
ですから、その辺をどうしようかなというのがありまして、答えにならないのですが、悩みそのものであります。そんなことでいいのかどうかということですね。ぜひ、そういうペナルティーや何か働かない、措置制度であればそういうことはないと思うのですけれども、保険制度になりますとどうもそういうのが出てくるのですが、これは市町村長もなかなか解消できない悩みです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/563
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564・石田勇三
○石田勇三君 施設の現場サイドからいたしますと、この未納金というのは確かに危惧しているところでありますが、医療保険にしてもしかりでありまして、一応施設が善良に管理する中で未納金が出た場合は、最終的には保険者に責任をお願いしたい。そうでないと福祉施設は経営が不可能になるのではないか、こう思います。現在はもう機械的に措置制度で来ますので非常にいいのですが、いろいろ研修の場に行きましても、施設長は、今後施設は競争の原理が働くからそのつもりでしっかりやれよという研修を受けています。
それで、問題になるのは、今までは、措置制度のもとでは、入所者は住所を移しまして年金証書を預かります。したがいまして、資金管理ができるわけですので未納金はありませんが、介護保険が導入されますと、今度は住所移転がございません。したがいまして、年金証書を預かる根拠がなくなりますので、一切家族からの徴収になります。その場合に、非常に家族環境が悪いので、本当に施設が善良に自己負担が徴収できるのかという点は非常に心配します。
もう一点は、一応現在措置費の場合は、例えば、病気によって医療機関に入院した場合は三カ月間の余裕期間がございます。ところが、介護保険になりますと、入院即退所であるというふうな御指導をいただいております。そうしますと、例えば肺炎によって十日間入院という場合に、施設はそのベッドが空床になります。その場合に、次の人を入れてしまうと今度は、病院は治ったから帰しますと言っても、ベッドはふさがってしまう。
そういうことから、施設において入所した場合には多少保険と介護の両方立てで、一時正当な理由のある場合は料金が取れるような形でないと施設は減収だけになりますので、その辺もひとつお含みをいただきたいと思います。私どもとしては、あくまでも施設管理は善良に、もうけ主義でなく、お年寄りを立派に介護して余生を送りたい、こう思っておりますので、ひとつ立派な制度にしていただいて、これがいい、これが悪いとは言いませんが、ぜひ、そういう施設は非常に少数の中での介護でございますので、未納金徴収係なんというのをもし設置するようであれば人員増をお願いしなきゃならぬ、こういうことになりますので、よろしくお願いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/564
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565・大川昭雄
○大川昭雄君 鴨下先生がおっしゃったことは、確かに議論はしていくと尽きないと思うのですね。結局やってみなきゃわからない、最後はそういうことになると思います。
私どもの経験で、今市民団体の皆さんとかいろいろな町の人たちと勉強会を通じてお話しになることも、その件については大変当初ございました。そのときはこんな話をして、なるほどなというふうに言ってもらったのですけれども、結局、医療保険が発足するときも同じことを言われたのです。無医村がある、そういういろいろなことがありまして、そういうところをちゃんとしっかり体制をつくってから出発するのが当然じゃないかと言われたのですが、しかし今考えてみると、あのとき出発してよかったと。
今内部にはいろいろな問題を抱えておりますが、いずれ世界では一流の医療体制、どこでも医療を受けることができるという体制になったわけですから、あれを、無医村が解消するまでずっと待とうということになったらいつまで待たなきゃならなかったかということを考えてみて、そういうことでやはり、今よりもとにかくよくなることについて、みんなもっともっと内容を見ればわかるので、その上でよくしていくということは十分可能である。だから、一遍つくった制度はなかなか直らないという議論は当たらないのではないかと私どもは思っているのですけれども、こんなことでお答えになるでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/565
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566・桧田仁
○桧田委員 自由民主党の桧田仁でございます。NHKの毛利元就が活躍しておりました広島県宮島の地域を選挙区といたしております。
お三方に御質問したいと思いますが、まず第一点は小網さんに、現場で御苦労しておられますからいろいろな思いがあろうと思うのですけれども、先ほどからお話が出ております低所得者、やはり所得とあるいは今後の給付の問題、いろいろな課題もございます、財源の問題もありますが、率直に、小網さんは低所得者という問題をどのように具体的にお考えなのか、お聞かせいただければと思います。
それから、第二点は大川さんに御質問したいと思いますが、先ほど小川市長が答えておりますように、行政側から見ますと、どのレベルで介護の認定をしたり給付したりするかというのは、市町村の大きさによって余りばらつきがありますと、隣の町に移動したがるとかいうことも起きるかもしれません。あの町やあの市は非常にいい、もっと言えば、緩い認定をしていい給付が受けられるとなりますとそういうことも起きがちです。市長は難しいというお答えではございましたが、大川さんのお立場ではこの認定給付、あるいはもう一歩聞かせていただければ、先ほどちょっと微妙にお答えが出ました滞納者の場合はどんなふうに考えたらいいのか、行政側とは違ったお立場でどのようなお考えか、この点お聞かせいただければと思います。
それから最後の質問は、小川市長と大川さんの両方にお聞かせいただきたいのですが、岡田さんのような御専門の方もおられますので多少次元が違って申しわけないのですけれども、御専門の方はもちろん大事なのは、私ごとで恐縮でございますけれども、寝たきり老人が約八十名、痴呆老人四十名、余り言いたくないのですが、社会的入院も何十名かも入院させておるような病院長でございますからいろいろな現場の御苦労もわかりながらですが、また、きっとマンパワーは足りなくなる、少々では無理だという気持ちを持っております。岡田さんのような専門家その他大事なことでございますけれども、具体的に私は両名の方にお聞かせいただきたいのは、今後このマンパワーの拡充に関しては、行政側の気持ちと大川さんのようなお立場と少し違うお気持ちがあるのではないかというので、ぜひ突っ込んでお聞かせいただきたい。
それから、私個人の私見ではございますけれども、今後は行政あるいは地域ともに介護実習センター、すなわち、専門家ももちろん大事なんですけれども、国民全員が介護の実習をし、学校教育の中にも社会教育の中にも、もっと言えば社福も、あるいは社会全体が介護を実習するシステム、もっと言えば、半強制とは言いませんけれども、みんな親を持っているわけですし、みんな自分も老齢化するわけですから、全員が介護実習センターの中で研修して、最低限のことは自立して自分たちの家族でやる、これを何とかしませんと恐らくマンパワーは厳しいという気持ちがありますので、両者のお答えを聞きたいと思います。
そして最後に、皆さん御承知のように、農協とか郵便局、その他各種の団体が介護という問題にみずから団体組織の運動の中でも入り込んできております。行政のお立場あるいは大川さんのお立場で、農協、郵便局、その他各種団体、一生懸命全員国民あるいは団体が取り組もうとしておりますので、そのことへのお気持ちやお考えがあればお聞かせいただければと思います。
以上です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/566
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567・津島雄二
○津島座長 それではまず小網さん、低所得者というのはどういうものをイメージしておられますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/567
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568・小網由美
○小網由美君 住民税の非課税世帯の方については大幅に引き下げていただきたいということと、それから、一律二千五百円とかいうのは私はすごく問題があると思っていまして、所得に応じた負担を考えていただきたいというふうに思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/568
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569・大川昭雄
○大川昭雄君 マンパワーの方からお話をしたいと思うのですが、確かに、マンパワーは非常に不足するということはそのとおりだと思うのです。
ただ、最近私感じるのですけれども、福祉専門学校への入学が非常にふえているとか、そういう傾向もどんどん出てきていることもありまして、最近の若者もそう捨てたもんじゃないぞ、こういう気持ちになっておりまして、やや暗い見通しから明るい見通しの方に変わってきたのですけれども、しかし、それでもやはり若い人たちを中心に介護マンパワーをつくっていくということには限界がありまして、当然全体が、高齢者も、元気な高齢者も、全部そういう支える方の立場にならなきゃだめだ、こういう気持ちであることは事実です。だから、そういう意味ではおっしゃるような御意見には賛成です。
それから、農協、郵便局など、特に営利団体でないところが最近どんどんこういうものに参画するケースがふえてきているのですが、それはどんどん進めたい。例えば諸外国でやっているように、労働団体も全部参画してもらう。そして、そういう団体がふえればふえるほどマンパワー不足と基盤整備の不足とを早く挽回できる。だから、公的な機関だけに頼って二〇〇〇年までに一〇〇%完全実施できるような体制をつくるというのがもともと難しいので、それを第一にはしますけれども、そのほかも全部含めてそういう体制をつくっていくということについては大いに促進をしていきたいなという気持ちです。
それから、介護認定の問題は、ドイツで大変苦労したようですけれども、確かにこれは苦労すると思います。それにはやはりドイツの経験に学んで、認定基準をもっとしっかりしたものをきちんとつくることと、それから認定の体制もどなたかの意見で出たように、介護の経験者、ヘルパーの皆さんとか、そういう人たちも含めた体制にしてもらって、医療部門だけで認定するということのないような体制をつくっていくこと、この二つが一番大事だと思いますし、その後苦情処理の体制もきちんとつくることによって、何とかドイツの状況よりももう少しいい状況でこれを迎えたいな、こんな気持ちを持っているところです。
それから滞納者問題ですが、これも私ども頭が痛い問題ですけれども、しかし、これはこれで割り切るしかない。割り切るしかないという意味は、やはり保険制度になった以上は基本的には保険料を納めた人にサービスを提供するのであって、そこでまず一つ割り切る。それから、それに漏れた人、そういう人たちはやはり行政でやるしかないんですね。生活保護を受けている人の例のように行政で低所得者対策はやっていくしかないので、そういうことを政府の側もきちんと覚悟をしてやっていくということも両方考えながらやっていった方がいいかな、こんな気持ちでいるのですけれども。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/569
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570・小川竹二
○小川竹二君 先生のおっしゃるとおりだと私も思います。市町村のような公的な機関が一切面倒を見る、問題があったら公的機関だ、こういう考え方では保険の考え方はでき上がってこない。
負担の問題につきましても、やはり支えるという共通した認識が要るわけでありますし、またマンパワーの上でも参加をする、こういうものがついてきませんと、いつまでも何かしてもらうという一方的な形になりかねない。そういう意味では、マンパワーの確保についてはいろいろな方に参加をしていただく必要があるのではないかと思っております。
私はJA、農協にいろいろな話をしているのですが、専業農家、第一種を含めて二千戸あるのですけれども、農協の職員さんというのが実は二百人くらいいます。そうしますと、職員一人に農家が十人ということですから、農家がうまくいかないのは、農協がうまくいかないのはほとんどわかると思うのですが、この中で私はJA、農協さんの新しい役割としてホームヘルパー等、しっかり自分のエリアを見ていく。それから新潟県では、私のところはそうでありますが、農協さんは厚生連病院という病院を持っています。そこでは在宅看護もいろいろ考えておりますから、それらと結びつけるには非常にいい、こういう面があります。各団体、いろいろなところでホームヘルパーを養成をしたり派遣をしたりする、そういう制度が私は十分考えられるのではないかと思うのです。ですから、それがすべて自治体、市町村の話だととらないでいただきたいと思っております。
それからホームヘルパーについても、私ども市町村が持つ、国の措置以外に持つ部分もありますから、ほかの団体等がそういう意味ではやりやすいような形で国の措置等についても考えていただくとどうかな、こんなふうに思っています。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/570
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571・津島雄二
○津島座長 それでは、時間が大分あれですが、松本委員、お願いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/571
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572・松本純
○松本(純)委員 自民党の松本純でございます。黒岩さんと岡田さんに質問をさせていただきますが、それぞれ御専門の立場からの御意見をいただければと思います。
この介護保険は医療保険から切り離して社会保障構造改革の第一歩となるような制度を創設しようというものであるわけでありますが、この保険と介護という二つの新たな切り口が出てくるわけであります。今までの医療保険については、当然医師がリーダーシップをとる中で、一つの流れを持ってどのような判断で事を進めていくかということが明確になるわけでありますが、今度の介護保険の場合には流れが少し変わり、高齢者から保険給付申請が出された後、要介護認定が行われ、これに該当していれば当然ケアプランの作成等々、この依頼があるとそちらに流れが変わってくるわけであります。
そして、このケアプラン作成の中でアセスメント、ケアコンファレンス、ケアプラン作成という段階を踏みますが、この中で要介護者の状態の把握、そして保健、医療、福祉の専門家による協議、さらに介護サービスの計画、この中身が具体的にプランができ上がるということにつながっていくわけでありますが、今までの医療保険と違ってどこがリーダーシップをとってどう事を決めることを進めていく、このことが、多少さまざまな専門家がそこに入ってくるということの中から、どんな流れ方でこの高齢者、要介護の認定をされた方に対してのケアプランをつくっていく形を整えることが望ましいか、御意見があったらお二人からお答えをいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/572
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573・津島雄二
○津島座長 それでは黒岩さん、まずお願いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/573
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574・黒岩卓夫
○黒岩卓夫君 大変重要な御質問だと思いますけれども、実は私も最初に申し上げましたように、医療の役割がこれまで意外に議論されていないといいますか、不透明になっているということで、医療の現場ではいろいろといら立ちというようなものが出てきているのが現状です。
それで、医療保険そのものをどうするかということも大問題でありますけれども、とりあえず介護保険制度が施行されたということを前提として考えてみますと、やはりこれは福祉の仕事ですので、中心というか責任を持つといいますか、リーダー、それは福祉サイドでやっていいと思います。
現在言われているケアマネジャー、このマネジャーというような方がどのように育成されるかわかりませんけれども、こういう立場にいる方が中心になって基本的なケアプランをつくっていくという中で医師が医療的にアドバイスするということだと思います。したがって、わかりやすく言いますと、医師以外のケアマネジャーがいて、それにいい意味でぴたっとフォローする医師が一人いるといいますか、かかりつけ医がいる、そういう体制の中でいろいろな関係者がケアプランをつくっていくのだと思います。
ですから、医療というのはこの段階ではもちろん裏方に回っていいと私は思っていますので、しかし、裏方ですけれども絶対に必要であると思っています。そういうふうにしてほしいと思います。したがって、そのことは、先ほど申し上げましたように、要介護認定の疾病であるとかいうようなことが余りウエートを置かれなくてもいいじゃないかということとも関連して、医療の役割というものを明確にしていくべきじゃないかと思っております。
また、一言申し上げますけれども、ケアプラン等々、そう簡単にはいかないのではないかと思っております。実際、日本にはそういう伝統はありませんし、現在は制度としてはドイツをまねをして、ケアマネジメント等はイギリスなんかを一応下敷きにしているようですけれども、イギリスの場合ですと、もうずっと前から家庭医という制度があって、がっちりとネットワークがあって、そこで細かい情報まで全部入ってきています。ですから、そういう情報を使って、あるいは福祉の情報を合わせてやりますと、おのずからケアマネジメントあるいはケアプランができるという土台ができています。ところが、日本ではそれができておりません。
それから、ネットワークといっても、これははっきり申し上げて総論賛成、各論反対というか、本当の意味でのネットワークはほとんどできていないというのが日本の現状です。ですから、それがこれからいろいろな情報をキャッチするということも含めて、そこがまた大きいですね、情報が入ってこない、それをどうするかということを含めて最大の課題になるのではないかというふうに思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/574
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575・岡田史
○岡田史君 では、今保険給付の申請について、ケアプラン作成の過程について説明されて御質問をいただきましたが、ケアマネジャーの資質ということで私はお答えさせていただきたいと思います。
いろいろなところでケアマネジメントのトレーニングを保健、医療、福祉に関する専門職員の人たちがされていると思うのです。そうしたテーブルに座ったときに、その人にとって最重要課題に係る専門職がキーといいますか、かぎになってケアマネジャーとしてきちっとマネジメントしていくということが必要、利用者の立場に立った場合それが必要になってくるかと思うのです。
例えば、こういう専門職が一番権威が高いからこの専門職がケアマネジャーになって、その人のマネジメントをされたもので他の専門職が動こうということになった場合、利用者にとって本当のニーズをきちっと見きわめたことにはならないと思います。その方のニーズに沿って、その方のニーズに一番近い専門職がケアマネジャーとなってケアマネジメントされ、ケアプラン作成についても他の専門職と協議しながらつくっていく、そして、そのケアプランに沿ったケアをきちっと利用者が自分の自己決定に基づいて利用していくということが最前提だと思います。
以上でよろしいでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/575
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576・津島雄二
○津島座長 ありがとうございました。
もう残り時間が少なくなってまいりましたが、吉田委員に短い質疑の時間を差し上げたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/576
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577・吉田幸弘
○吉田(幸)委員 新進党の吉田幸弘でございます。選挙区は名古屋市内でありまして、私も以前は医療の仕事、歯科医師をしておりまして、今回の件に関しては非常に興味を持って勉強をさせていただいております。
黒岩先生、荒川先生に簡単にお伺いします。
この介護保険法案が成立をして、明確に医療と介護を分けることによっていい面もあると思うのですが、私が心配するのは、医療と介護を切り離すことによってそこの連携がうまくいかなくなるのじゃないか、本来医療の部分で治療を行えばその方の生命や健康を守れるものを、それを明確に分けることによって何らかの影響が出るのではないかということを多少心配しております。また、そのことに対して、今私は個人的にいろいろな方々に意見を求めておるのですが、きょうは非常にいい機会ですので、両先生にこの件に関してお答えをいただきたい、お考えをお述べいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/577
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578・黒岩卓夫
○黒岩卓夫君 おっしゃるとおりで、私なんかも非常にその辺は悩んでいるのですけれども、今、現状は、そういう法的なといいますか、サービスのルートというか、それほど区分けがありませんので、医療も介護も、一人の患者さんのところへ行きますとお互いにやり合っているわけですね、オーバーラップして。看護婦もヘルパーさんもできることをどんどんやっていくということでやっております。
それが今回、基本的にサービスの一つずつに幾らという値段がつきますね。値段がついたサービスになりますと、これは私のところではない、これはあっちだということになってきますので、日本ではようやく両方がにこにこしながら手を合わせてやってき始めたという段階でこれを金銭を伴って区分するということは、すごく大きな問題だと思いますね。私はうまくいかないと思います。ですから、そういうことを相当シビアに予想してやらないととんでもないことが起きるだろう。命にかかわるようなことも起きるといいますか、そんな気がします。
ですから、この辺を実際にどう運用するか。猛烈優秀なケアマネジャーがいて、常時何かうまく調整するようなことができればいいのですけれども、それすらどうなるかさっぱりわからないというような状況がありますね。そういう点では、医療者から見ますとむしろ今までの方がいいのじゃないかとか、いろいろな思いがあるわけですね。
今のようなものでいいのではないか、あるいは福祉の方は余り専門化しなくていいのではないか、医者の方も余り威張らないでやる方がいいのではないかとか、いろいろな思いがある中でその辺をどうするかということが大変大事だと思っておりますけれども、今のままだと、おっしゃるとおりうまくいかないというように考えた方がいいのではないかという気がします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/578
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579・津島雄二
○津島座長 それでは、最後に荒川さん、お願い申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/579
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580・荒川修二
○荒川修二君 理念的に介護と医療というのを分けますけれども、本来ならば今の医療、福祉の流れの基本は何か、どこへ置くべきかといいますと、やはり人間の幸せということだと思うのですね。だから、医療が特に必要な場合もあるでしょうし、福祉の方に重点を置く場合もあるでしょうし、それはケース・バイ・ケース。しかも、さらに本人の希望もあるかもしれませんけれども、家族の希望ということもあるわけですね。それ以外に家族のおられない方もありますから、いろいろなケースがあるわけなんで、人間から医療と介護を分けるということはそう簡単じゃないですね。
だから、そういう意味で、今までの医療側も福祉の側もあるいはケアにタッチするケアマネジャーも、新しい視点で物事を見ていく、そういうトレーニングというものが絶対必要になるであろう、時間がかかってもこれはやむを得ない、私はそういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/580
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581・津島雄二
○津島座長 ありがとうございました。
それでは、予定の時間が参りましたので、これにて質疑を終了させていただきたいと思います。
この際、一言ごあいさつを申し上げます。
意見陳述者の方々におかれましては、長時間にわたりまして熱心に貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。
拝聴いたしました御意見は、法律案の審査に資するところ極めて大なるものがあると存じます。ここに厚く御礼を申し上げます。
また、この会議開催のため格段の御協力をいただきました関係各位に対しまして、重ねまして深甚なる謝意を表させていただきます。
これにて散会いたします。
午後四時三分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114004237X00619970319/581
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