1. 会議録本文
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000・会議録情報
平成九年二月十四日(金曜日)
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平成九年二月十四日
午後一時 本会議
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○本日の会議に付した案件
平成九年度における財政運営のための公債の発
行の特例等に関する法律案(内閣提出)の趣旨
説明及び質疑
午後一時三分開議発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114005254X00719970214/0
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001・伊藤宗一郎
○議長(伊藤宗一郎君) これより会議を開きます。
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002・伊藤宗一郎
○議長(伊藤宗一郎君) 御報告することがあります。
永年在職議員として表彰された元議員細谷治嘉君は、去る一月十九日逝去されました。まことに哀悼痛惜の至りにたえません。
細谷治嘉君に対する弔詞は、議長において去る二月八日既に贈呈いたしております。これを朗読いたします。
〔総員起立〕
衆議院は 多年憲政のために尽力し 特に院議をもってその功労を表彰され さきに石炭対策特別委員長の要職にあたられた従三位勲一等細谷治嘉君の長逝を哀悼し つつしんで弔詞をささげます
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平成九年度における財政運営のための公債の発行の特例等に関する法律案(内閣提出)の趣旨説明発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114005254X00719970214/2
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003・伊藤宗一郎
○議長(伊藤宗一郎君) この際、内閣提出、平成九年度における財政運営のための公債の発行の特例等に関する法律案について、趣旨の説明を求めます。大蔵大臣三塚博君。
〔国務大臣三塚博君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114005254X00719970214/3
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004・三塚博
○国務大臣(三塚博君) ただいま議題となりました平成九年度における財政運営のための公債の発行の特例等に関する法律案の趣旨を御説明申し上げます。
平成九年度予算につきましては、我が国財政の危機的な状況にかんがみ、医療保険改革を初めとする各般の制度改革を織り込むことにより、一般歳出の伸び率を一・五%と九年ぶりの低い水準に抑制するとともに、公債減額四兆三千二百二十億円を実現するなど、財政構造改革元年として財政健全化に向けた第一歩を踏み出したところであります。
その中で、特例公債については、前年度当初予算における発行予定額から四兆五千二百八十億円減額したものの、引き続き平成九年度においても発行せざるを得ない状況にあります。
本法律案は、以上申し上げましたように、厳しい財政事情のもと、平成九年度の財政運営を適切に行うため、同年度における公債の発行の特例に関する措置及び厚生保険特別会計年金勘定への繰り入れの特例に関する措置を定めるものであります。
以下、その大要を申し上げます。
第一に、平成九年度の一般会計の歳出の財源に充てるため、財政法第四条第一項ただし書きの規定による公債のほか、予算をもって国会の議決を経た金額の範囲内で公債を発行することができること等としております。
第二に、平成九年度における一般会計からの厚生保険特別会計年金勘定への繰り入れのうち経過的国庫負担については、七千二百億円を控除した金額を繰り入れるものとするとともに、後日、将来にわたる厚生年金保険事業の財政の安定が損なわれることのないよう、七千二百億円及びその運用収入相当額の合算額に達するまでの金額を一般会計から繰り入れることとしております。
以上、平成九年度における財政運営のための公債の発行の特例等に関する法律案につきまして、その趣旨を御説明申し上げた次第であります。(拍手)
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平成九年度における財政運営のための公債の
発行の特例等に関する法律案(内閣提出)の
趣旨説明に対する質疑発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114005254X00719970214/4
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005・伊藤宗一郎
○議長(伊藤宗一郎君) ただいまの趣旨の説明に対して質疑の通告があります。順次これを許します。前田正君。
〔前田正君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114005254X00719970214/5
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006・前田正
○前田正君 新進党の前田正でございます。
私は、新進党を代表して、平成九年度における財政運営のための公債の発行の特例等に関する法律案について、橋本総理並びに三塚大蔵大臣の御所見をお伺いいたします。
この法律案は平成九年度予算の財政的裏づけをする法案ではありますが、その予算案は以下に申し上げるように大きな問題点を抱えたものであります。
まず第一に、景気への配慮を著しく欠いていることであります。
政府は、足元の景気は回復してきているとの前提のもと、平成九年度において一・九%の実質経済成長率を実現できるとしております。しかしながら、消費税五%への引き上げや所得税の特別減税の打ち切り、医療費などの社会保障負担の増を合わせて九兆円にも上る国民負担増を優先させた九年度予算案は、景気の回復どころか大きなマイナス効果を生じさせるものであります。特に、GNP、国民総生産に消費の占めるウエートが約六割にも達するだけに、本年四月以降予想される個人消費の落ち込みが景気に与える影響は大きく、政府の見通しは到底実現できないと考えます。このことは、最近の株安、円安に見られるように、市場関係者の見方からも明らかであります。
先般のG7蔵相会議の際の日米蔵相会談においても、大蔵大臣は内需拡大による景気回復の実現を米国のルービン財務長官から要請されたと報道されておりますが、九年度予算案はそのような国際的要請からもかけ離れたものとなっていると言わざるを得ません。そこで、まず平成九年度予算案が景気に与える影響についてどのように考えているのか、総理に御所見をお伺いいたしたいと思います。
また、二兆円規模の所得税、住民税の特別減税の継続や有価証券取引税、土地税制の見直しにより、個人消費など民間市場経済の活性化を誘発すべきであると考えますが、この点についても総理の御所見をお伺いいたしたいと思います。
第二に、九年度予算案は財政構造改革への取り組みという点でも不十分なものと言わざるを得ません。
国及び地方の債務残高は四百七十兆円を超え、これに国鉄長期債務等のいわゆる隠れ借金を加えた総額は約五百二十兆円となり、国内総生産を超えております。この額は、一万円札で積み上げれば実にエベレスト山の五百四十倍もの高さになり、国民には到底考えられない金額であります。このような現状を踏まえれば、本格的な財政再建に取り組むことは急務の課題でありますが、問題はその手法であります。単なる歳入と歳出のつじつま合わせではなく、既存の制度やシステムを見直す構造改革によって財政再建を果たすことが肝要であることは当然のことであります。
政府は九年度予算を財政構造改革元年予算と称しておりますが、さて、実際にその中身を見れば首をかしげざるを得ないのであります。国債費を除いた一般歳出を租税収入の範囲内におさめたなどと言っておりますが、補正予算をあわせて考えてみると、これがいかに粉飾したものであるかがわかります。また、公共事業の配分比率が固定化しているなど、予算のばらまき構造が温存されたままであります。確かに特例債いわゆる赤字国債は減額をしておりますが、これは九兆円にも上る国民負担増によってクリアされているだけではありませんか。公債減額のみをもって財政構造改革と言っているのではありませんか。
政府は、国民負担増のほかに、九年度予算のどこが構造改革の名に値すると考えているのか、大蔵大臣の見解をお伺いいたしたいと思います。
真の財政再建は、まず減税や規制緩和などにより景気の回復を確実なものとした後、公共事業費などに見られるむだな歳出や社会経済情勢の変化に伴い不要となる歳出を、個別の歳出のレベルで徹底的に削減することにより行うべきであると考えます。また、毎年の単年度予算の財政収支にこだわらず、例えば五年間程度の期間の中で財政再建が実現できるような、中期的な視野を持って財政運営を行うべきであると考えます。
そのために、まず手始めとして公共事業関係費のばらまきをやめるなど、歳出について聖域を設けず思い切った削減を行うことにより減税財源を捻出することは考えられないでしょうか。特に、その例としてウルグアイ・ラウンド対策費を見直すなど、思い切った決断がなければ到底財政再建を真剣に考えているとは言えないのではないでしょうか。中期的な財政再建のビジョンとして、例えば財政再建五カ年計画のようなものを策定し、国民の前に明らかにすべきではないかと考えますが、大蔵大臣の明確な答弁を求めます。
言うまでもなく、赤字国債の発行は、これまでの歳出の経常的な収支で賄うという財政法の基本的原則に著しく反しており、次世代に資産を残さず負担だけを残すことになり、世代間の公平という観点からも問題があると指摘してまいりました。その発行は厳に回避すべきとの方針を繰り返して提言してきたところであります。
政府は、昨年十二月に財政健全化目標に関する閣議決定をされ、この特別公債について、二〇〇五年度までのできるだけ早期に脱却をするという目標を立てておられます。平成八年度の発行額より約四・五兆円減額をして約七・五兆円にしたと政府は言うかもしれません。しかし、繰り返しになりますが、問題はその手法であります。
私は、平成九年度については、減税の実施、規制緩和等の構造改革を通じ、まず第一に景気回復を確実にし、日本経済を再建することと同時に、行政府として、みずからの定員削減をし、民間委託の促進などの行政改革に一層取り組む必要があります。さらに、社会保障、公共事業、地方財政、防衛、農業、文教といったような国民一般に幅広く受益が及ぶ分野においても、財政の果たすべき役割や守備範囲を大胆に見直し、聖域を設けることなく、制度の根本までさかのぼった検討、見直しをも行う必要があります。
高名な経済学者のシュンペーターは、かつて「馬車を何台つなげてみても汽車にはならない」という有名な言葉を残しました。技術革新には原理的な転換が必要ということを極端に言いあらわしております。経済財政構造改革も原理的な発想の転換が必要であると思います。このことは、二十一世紀を目前に控えた我が国のとるべき道であるということを、この際、特に申し上げたいと思います。
最後になりますが、景気浮揚対策についてお伺いをいたします。
経済企画庁の月例経済報告では、景気は緩やかながら上昇傾向にあるとの発表がなされておりますが、国民にはその実感がまるでないとの声があちらこちらから聞こえてまいります。これは、先行きの不透明さもさることながら、政治不信を招く問題ばかりが続き、将来に向け明るい夢を持てるような話題が身近に何らないことに起因しているのではないでしょうか。まず隗より始めよ、小さくても国民が夢と希望が持てるようなことには政府も積極的に取り組んでいくことを望むものであります。
西暦一九六四年に東京で初めて夏のオリンピックが開催をされました。それを契機に日本は高度成長へと突き進んでいきました。冬季オリンピックは札幌、そして来年には長野で開催されますが、夏のオリンピックは東京以来開催されておりません。今まさに、二〇〇八年開催に向けて、私の地元大阪市、そして横浜市が招致活動を続けております。海外では、アメリカが、二〇〇八年開催に向けて六つの都市が立候補を決め、さらに、一九八四年に大成功をおさめ、大きな黒字と経済効果をもたらしたロサンゼルスも立候補を予定していると聞いております。
スポーツを通じ青少年の夢をはぐくむと同時に、大きな経済効果により景気浮揚にも通ずるこの問題について、もっと国民の理解のできるような政府の積極的な対応を求め、総理にその御所見をお伺い申し上げまして、私の質問を終わりたいと思います。(拍手)
〔内閣総理大臣橋本龍太郎君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114005254X00719970214/6
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007・橋本龍太郎
○内閣総理大臣(橋本龍太郎君) 前田議員にお答えを申し上げます。
まず、平成九年度予算の経済に与える影響及び特別減税の継続などについてのお尋ねがございました。
九年度予算を踏まえまして閣議決定をした来年度の政府経済見通しにおきましては、平成九年度について、消費税率の引き上げなどの影響によって、来年度の前半は景気の足取りは緩やかになると考えられますけれども、次第に民間需要を中心とした自律的回復が実現される、そう見込んでおります。
特別減税につきましては、回復の動きを続けている現在の経済状況、また危機的な財政状況のもとでまさに赤字国債に頼らなければならない、そうした状況を考えますと、実施をしないという決断をいたしました。
また、有価証券取引税につきましては、平成八年度の税制改正におきまして、税率を軽減する措置を講じております。このあり方につきましては、金融システム改革の進展状況などを見据えながら、株式等譲渡益課税を含む証券税制全体の中で検討していきたいと考えております。
また、土地税制についても御意見をちょうだいいたしました。平成八年度税制におきまして総合的な見直しを行ったこと、御承知のとおりでありますが、さらに、九年度におきましても、登録免許税などの実質的な負担軽減を行うこととしております。
政府としては、経済構造改革や財政構造改革など六つの改革に果敢に取り組んでいくとともに、議員からも御指摘がありましたように、聖域を設けないという目標を立てて、全力を挙げてこれから努力をしていくわけでありますが、同時に、九年度予算の早期成立に努めながら、八年度補正予算とあわせて、切れ目のない予算の円滑な執行に努めるなど、適切な経済運営を進めてまいりたいと考えております。
次に、二〇〇八年の夏季オリンピックについてのお尋ねがございました。
一般論として申し上げますなら、国際的なスポーツ大会を我が国で開催する、これはスポーツの振興という意味でも国際親善という意味でも大きな意義を有すると思います。
お地元の立候補の決意を含めてお尋ねをいただいたわけでありますが、二〇〇八年の夏季オリンピックの国内立候補都市につきましては、本年の八月末までに、日本オリンピック委員会において決定される予定と承知をしております。政府としては、適切に対応していきたいと考えております。
残余の質問につきましては、関係大臣から御答弁を申し上げます。(拍手)
〔国務大臣三塚博君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114005254X00719970214/7
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008・三塚博
○国務大臣(三塚博君) 九年度予算をめぐる御質問でございますが、平成九年度予算編成に当たりましては、財政構造改革元年予算と位置づけまして、医療保険制度改革を初めとする各般の制度改革を実現するなど、聖域を設けることなく徹底した歳出の洗い直しに取り組み、全体としての歳出規模を厳しく抑制することに努めたところでございます。この結果、九年度一般歳出は対前年度一・五%増となり、さらに、消費税の国庫負担分の増加などの特殊要因増を差し引きますと、〇・六%の増と十年ぶりの低い数字となっておりまして、財政構造改革の第一歩を踏み出したものと考えております。
次の御質問は、歳出削減及び財政再建計画についてのお尋ねでありますが、平成九年度予算編成に当たりましては、ただいま申し上げましたように各般の制度改革を実現するなど、聖域を設けることなく徹底した歳出の洗い直しに取り組んだところであります。また、財政構造改革会議においては、財政再建法の骨格を含めた歳出改革、縮減の具体的方策について、あらゆる経費を対象として検討が行われることになっております。
財政再建計画につきましては、財政政策はその時々の経済社会情勢等を適切に反映して決定されるべきものでございまして、また、具体的な歳出削減手段との組み合わせにもかかわる問題であり、固定的な計画をあらかじめ決定することは困難と考えますが、財政構造改革会議における議論を通じ、財政構造改革について国民にとって目に見える具体的な筋道が示されることを期待いたしておるところでございます。(拍手)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114005254X00719970214/8
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009・伊藤宗一郎
○議長(伊藤宗一郎君) 山本譲司君。
〔山本譲司君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114005254X00719970214/9
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010・山本譲司
○山本譲司君 民主党の山本譲司でございます。
私は、民主党を代表して、日本の財政再建を一日も、一刻も早く達成させたいという立場から、平成九年度における財政運営のための公債の発行の特例等に関する法律案について、総理並びに関係大臣に質問をいたします。
我が国の財政は、昭和五十年度以降十五年間にわたって、財政法では禁止されている多額の赤字国債の発行を余儀なくされてきましたが、平成二年度予算において赤字公債の発行を回避することができました。しかし、それは財政再建の成果ではなく、バブルの景気によって税収が大幅にふえた結果にすぎなかったのではないでしょうか。バブル崩壊以後、収入がどんどん減っているにもかかわらず支出をふやしていく、こうした民間では考えられないことを、政府は国債の発行という借金で賄っているわけであります。平成九年度末には公債発行残高が約二百五十四兆円に達する見込みで、財政危機は極めて深刻な状況に直面をいたしております。
今や、日本の財政赤字は世界の先進国の中でも最悪です。公債依存度は、アメリカが七・七%、ドイツが一二・一%、フランスが一八・三%であるのに対して、日本は二一・六%となっています。
アメリカでは、財政赤字解消のため、レーガン政権時、一九八五年の財政収支均衡法を皮切りに、一九八七年の財政収支均衡修正法と、さまざまな試行錯誤を繰り返し、一九九〇年の包括財政調整法、そして一九九三年には包括財政調整法を修正し、財政赤字削減の手法を規定するといった歳出削減への身を切るような経験をしてきました。
ここに至ったアメリカよりも、現在の日本は、財政赤字が拡大を続け、まるでサラ金地獄に陥っているような状態であります。普通の会社でいえば既に破綻をしておりますし、個人であれば自己破産への道をまっしぐらというところであります。もう待ったなしで財政構造改革を進め、将来の世代に負担を残さない財政構造をつくり上げていかなくてはなりません。
平成九年度予算案について、政府は公債発行を四兆三千二百二十億円減額したとして、財政構造改革元年に当たって財政健全化に向けた第一歩を踏み出したと、その成果を誇られているようであります。しかし、さきの補正予算で一兆三千三百九十億円の公債を増発し、さらに、今回の公債発行の特例法による厚生保険特別会計年金勘定への繰り入れ特例の七千二百億円を含めて、巧妙に組み込まれている隠れ借金が二兆八千億円もふえております。これらを足すと、新たに四兆円以上の将来への借金がふえたことになり、公債発行を四兆三千億円減らしても、結果的にはプラス・マイナス・ゼロであります。
平成九年度は、消費税の税率アップと特別減税の廃止によって、国民の血税による負担は約七兆円ふえることになりますが、にもかかわらず、実質的な財政再建は全く進んでいないと言わざるを得ません。その姿はまさに、「あしたから酒をやめる。禁酒をするから、きょうまでは飲ませてくれ。しかし自分はお金がないから酒を買ってこい」と、奥さんにこう言いながら毎日酒浸りになって過ごしているぐうたら亭主という例えがぴったりであります。これでは財政構造改革元年とは名ばかりの、財政再建なき大増税予算と言われても仕方がないと考えますが、総理の見解を伺います。
現在のシーリング方式の予算編成のやり方では、例えば厚生省関係の義務的経費の伸びを賄うために、資金的に余裕のある特別会計から借金をする構図、つまり奥さんのへそくりから借金を重ねるぐうたら亭主の体質は直らないことは、明白であります。そこで、現在行われている予算編成方式を抜本的に見直すと同時に、特別会計から借金をしなくてもいい財政構造になるように、大胆に歳出削減に取り組むべきではないでしょうか。あわせて総理に見解を伺います。
また、国民に自己負担の増額を求める医療保険制度改革を行うに当たって、総額二十七兆円の医療費をどう抑えていくかということと同時に、隠れ借金になっている政府管掌健康保険特別会計からの借金二兆円余をきちんと返して健康保険財政の健全化を進めるのが筋ではないかと考えますが、大蔵大臣と厚生大臣の見解を伺います。
さらに、透明度が低く、むだの多い公共事業のあり方を根本的に見直していかなくてはなりませんが、借金をして公共事業を行うという旧来の財政運営の体質は全く変わっておりません。未消化予算が平成七年度には一兆七千億円もあったという公共事業を、公共投資基本計画に基づいて何が何でも六百三十兆円をこなさなくてはという発想を捨て、公共投資基本計画を今こそ抜本的に見直していかなくてはなりません。財政構造改革元年と銘打つのであれば、当然のことだと思います。
私ども民主党は、与党の皆さんに対し、財政構造改革元年と言われるにふさわしい予算になるように、平成九年度予算の修正案を提示しているところであります。
その内容は、公共事業のコストの一割削減や、各種の公共事業長期計画を見直し、その事業計画の実施を繰り延べることによって単年度の事業費を圧縮すること、さらに、住宅金融公庫、日本道路公団、住宅・都市整備公団、水資源開発公団など、いわゆる特殊法人のリストラによる補助金などの削減を柱として、三兆円規模の歳出削減を断行するというものであります。こうした私どもの要請にこたえて、予算案を修正または組み替えて歳出削減を行う考えはないか、総理に伺います。
公共事業の中には、全くナンセンスな不要不急の事業が数多くあります。実際に、漁港をつくったら漁師がいなくなったと橋本大二郎知事が言われた高知県の例など、枚挙にいとまがありません。このような歳出を膨張させないように、私ども民主党は、十六本の公共事業長期計画のすべてを国会承認事項とするといった内容の公共事業コントロール法案を提出する準備をいたしております。
そこで、公共事業の歳出を削減するために、まずは、さきの本会議で土井社民党党首も提唱されたように、個別公共事業の数量、単価はもとより、積算の基礎、予定事業の箇所づけを含めた徹底した情報公開を図る必要があると考えます。そうした具体的な資料を直ちに国会に提出する考えはないか、建設大臣に伺います。
さて、大蔵省がまとめた財政の中期展望によれば、政府の財政再建の目標を設定し、その達成に向かって、赤字国債を一兆円減額して、建設国債の伸びはゼロというペースにするには、歳出と歳入の差額の要調整額が四兆円になると推計をされております。
そこで伺いますが、この四兆円は増税で賄うのでしょうか。赤字国債を発行するのか、または隠れ借金でごまかすのでしょうか。それとも、歯を食いしばって歳出削減を行うのでしょうか。「財政構造改革会議で検討する」という繰り返しで、壊れたテープレコーダーのようなことばかりではなくて、具体的な財政再建のビジョンを示すべきだと考えますが、大蔵大臣に見解を伺います。
普通の家庭だったら、収入が減って生活が苦しくなると、まずはむだな支出をやめることから考えます。これまで政府はあの手この手で財政再建に臨んだものの、どれも決定打にならず、打ち出の小づちのように便利な国債をどんどん発行し、歳出の拡大を続けてきたわけであります。
私たち民主党は、未来への責任を果たす政党として登場しました。既得権や省益の擁護などに拘束されて財政改革を先送りにし、結果として巨額の財政赤字をもたらした政治と行政の現状を変えていき、聖域を設けずに赤字財政の実態を解消して、未来にこたえる責任ある財政構造の確立に向けての取り組みを進めてまいります。
しかし、歳出の削減に取り組む一方で、将来に備えて必要とされる福祉や町づくりの政策の充実を怠ることは、未来への責任を果たすとは言えません。私たち民主党は、そういった必要な事業は着実に推進していくと同時に、必要な負担についてははっきりと提案していく覚悟でもあります。私は、今こそ、いかなるタブーもなくし、国全体の改革に取り組むべきだと確信をしております。
総理におかれましては、危機に直面している我が国の状況を十分に認識し、国の進路を見誤らないよう、真剣な改革を行われるよう強く要望して、私の質問を終わります。(拍手)
〔内閣総理大臣橋本龍太郎君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114005254X00719970214/10
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011・橋本龍太郎
○内閣総理大臣(橋本龍太郎君) 山本議員にお答えを申し上げます。
まず、九年度予算についてのお尋ねがございました。
この内容は、既に御承知のように、医療保険制度改革を初めとする各般の制度改革の実現に努め、一般歳出の伸びを一・五%、また四兆三千億円の公債減額を実現し、国債費を除く歳出を租税収入で賄える範囲内にとどめております。九年度予算は財政構造改革の第一歩を踏み出したと考えておりますが、今後ともさらに思い切った財政構造改革を進めていくことが必要である、この点は御意見と同じ考え方を持っております。
次に、概算要求基準について及び大胆な歳出削減についてのお尋ねがありました。
概算要求基準は、機械的、技術的な手法によって算出した各省庁の要求の総枠を示したものであり、各省庁がその枠内で各施策の緊急性等を考えながら優先度の選択を行い、効率的な要求を行うという仕組みであります。十年度予算の編成に当たりましても、概算要求基準をつくる段階から一層厳しい抑制に取り組む必要があると考えておりますが、抑制のための具体的な方策については、今後、政府・与党の財政構造改革会議の議論も踏まえながら検討することになると考えております。
歳出全般にわたった根本的な見直しを図る必要性、これは十分認識しているつもりでありますし、既に国会でも何回かお答えをいたしましたが、財政再建法の骨格を含めた歳出の改革とともに、縮減の具体的方策についての議論を踏まえ、社会保障関係費、文教及び科学振興費、公共事業関係費などを含めて、あらゆる歳出の全般的な見直しを進める必要があると考えております。
次に、予算案の修正などについてのお尋ねがございました。
公共事業の予算につきましては、我が国の財政事情や社会経済情勢などを総合的に勘案し、七年ぶりに前年度と実質的に同水準と抑制的なものにとどめています。九年度予算における特殊法人に対する補助金などにつきましても抑制に努めてまいりました。いずれにせよ、九年度予算につきましては、限られた財源の中で最善の資金配分を行ったものでありまして、円滑な御審議と一日も早い成立を希望する次第であります。
残余の質問につきましては、関係大臣から御答弁を申し上げます。(拍手)
〔国務大臣三塚博君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114005254X00719970214/11
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012・三塚博
○国務大臣(三塚博君) ただいまの山本議員の私に対する質問は、四問であります。
概算要求基準、いわゆるシーリングについてのお尋ねでありますが、総理がお答えをいたしたところを補足いたしますと、概算要求基準は、機械的、技術的手法によって算出いたしました各省庁の要求の総枠を示したものでございまして、各省庁はその枠内で各施策の緊急性等を考慮して優先度の選択を行い、効率的な要求を行っているところであります。
我が国の財政は危機的な状況にあります。早急に財政構造改革に取り組むことが必要であります。したがって、編成に当たっては、限られた資金の重点的、効率的配分に努めるほかなく、概算要求段階と予算査定の二段階で歳出の削減合理化を図る必要があり、概算要求基準は歳出の削減合理化に大きな役割を果たしているものと言えます。
九年度予算において財政構造改革の第一歩を踏み出したところでありますが、我が国財政は引き続き危機的状況にあり、今後も財政構造改革の歩みをさらに進めていく必要があると強く認識をいたしておるところであります。したがいまして、平成十年度予算編成に向けて、早い時期から歳出の全般的見直しを進めますとともに、概算要求段階から一層厳しい抑制に取り組むなど、さらなる歳出削減のための努力をいたし、将来の世代に負担を残さない財政構造をつくり上げることに引き続き努力をしてまいる必要があると考えております。
第二問でありますが、予算案の修正または組み替えについてのお尋ねでございますが、公共事業予算については、我が国の財政事情や社会経済情勢、社会資本の整備水準等を総合的に考慮し、七年ぶりに前年度と実質的に同水準と抑制的なものにとどめ、その中から重点的、効率的配分に努めておりまして、公共事業予算をこの政府案から削減することは適当ではないと考えております。
また、平成七年二月及び三月の閣議決定に基づきまして、すべての特殊法人において事務の縮減を含む事業の合理化、効率化を図ることとされているところであり、九年度予算における特殊法人に対する補助金等についても、こうした事情を踏まえ抑制に努めたところでございます。
いずれにいたしましても、九年度予算については、危機的な財政事情や社会経済情勢の変化を踏まえながら、限られた財源の中で最善の資金配分を行い提出したものでございまして、速やかな御審議と早期の成立をお願いするところでございます。
第三問であります。
政府管掌保険の国庫負担繰り延べについて、現在の政管健保の深刻な財政事情にかんがみ、平成八年度第一次補正予算の中で千五百四十三億円を返済し、過去の繰り延べの返済に着手いたしたところでございます。我が国財政は、厳しい税収動向が続く中で、バブル崩壊後の景気の下支え等のために累次にわたる対策を実施したこともこれあり、種々の財政健全化に努力をしたにもかかわりませず、過去六年間で約八十二兆円も国債残高は累増したのであります。今や、欧米諸国に比して最悪と言えるほどの状況に悪化をいたしております。
このように、財政事情が異例に厳しいことにかんがみまして、政管健保繰り延べ分の将来の返済を具体的にお約束することは困難でありますが、総理からもお答えいたしましたとおり、誠意を持って、できるだけ速やかに返済できるよう努めてまいりたいと考えます。
最後の質問であります。
財政再建についてのお尋ねでありますが、現在の財政構造を放置し、財政赤字がさらなる拡大を招けば、経済・国民生活が破綻することは必至であり、二十一世紀の我が国経済社会の活力を維持するために、財政構造改革に取り組んでいくことが喫緊の課題であります。このため、二〇〇五年度までのできるだけ早期に国及び地方の財政赤字対GDP比を三%といたし、また、国の一般会計において特例公債依存から脱却するとともに、公債依存度の引き下げを図ることなどを財政健全化の目標とするとともに、さらに、これらの目標の達成のため国の一般歳出の伸び率を名目経済成長率よりも相当低く抑え、地方に対しましても同様のことを要請することを先般閣議決定いたしたところであります。
この目標の実現に向け、政府・与党の財政構造改革会議において、財政再建法の骨格を含めた歳出の改革と縮減の具体的方策について検討が開始されたところでありますが、この会議での議論をも踏まえつつ、社会保障関係費、文教及び科学振興費、公共事業関係費などを含め、あらゆる歳出の全般的見直しを進めますとともに、概算要求段階から一層厳しい抑制に取り組むなど、さらなる歳出削減のため努力をしてまいりたいと存じます。国民にとって目に見える具体的な筋道をお示ししたいと存じます。(拍手)
〔国務大臣亀井静香君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114005254X00719970214/12
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013・亀井静香
○国務大臣(亀井静香君) 議員の御質問は、三権分立下における立法権と行政権に関する議論を含んでおる、私はこのように思うわけでありますが、政府は、予算案提出後におきましても、実施計画を策定いたしますために自治体等と現在も種々の調整をやっておる最中でございます。そういう状況下におきまして、すべての箇所づけにつきまして、これを確定的なものとして資料を国会に御提出申し上げるということは、これは極めて困難なことでございます。
以上でございます。(拍手)
〔国務大臣小泉純一郎君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114005254X00719970214/13
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014・小泉純一郎
○国務大臣(小泉純一郎君) 山本議員にお答えいたします。
政管健保の国庫負担繰り延べと医療費の適正化についてでありますが、政管健保の国庫負担繰り延べについては、先ほど三塚大蔵大臣が答弁したとおりでありますが、厚生省としては今後とも残額の計画的な返済について強く財政当局に求めていきたいと思います。
また、医療保険制度の改革については、今後この制度を安定的に運営するために、ぜひとも総合的にかつ段階的に構造改革を進めていく必要があります。しかしながら、今回の改革はその第一段階としてぜひとも必要なことでありますので、御理解、御協力をお願いしたいと思います。
以上です。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114005254X00719970214/14
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015・伊藤宗一郎
○議長(伊藤宗一郎君) これにて質疑は終了いたしました。
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016・伊藤宗一郎
○議長(伊藤宗一郎君) 本日は、これにて散会いたします。
午後一時五十四分散会
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114005254X00719970214/16
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