1. 会議録本文
本文のテキストを表示します。発言の目次から移動することもできます。
-
000・会議録情報
平成九年二月二十一日(金曜日)
—————————————
平成九年二月二十一日
午後一時 本会議
—————————————
○本日の会議に付した案件
労働時間の短縮の促進に関する臨時措置法の一
部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明及
び質疑
午後一時四分開議発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114005254X01019970221/0
-
001・伊藤宗一郎
○議長(伊藤宗一郎君) これより会議を開きます。
————◇—————
労働時間の短縮の促進に関する臨時措置法の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114005254X01019970221/1
-
002・伊藤宗一郎
○議長(伊藤宗一郎君) この際、内閣提出、労働時間の短縮の促進に関する臨時措置法の一部を改正する法律案について、趣旨の説明を求めます。労働大臣岡野裕君。
〔国務大臣岡野裕君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114005254X01019970221/2
-
003・岡野裕
○国務大臣(岡野裕君) 労働時間の短縮の促進に関する臨時措置法の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明申し上げます。
労働時間の短縮は、ゆとりある勤労者生活の実現の観点から不可欠な国民的課題であるとともに、国際社会との調和のとれた国民経済の発展のためにも重要であります。このため、政府といたしましては、完全週休二日制の普及、年次有給休暇の取得促進、所定外労働の削減を柱として労働時間の短縮に取り組んでまいったところでございます。
特に週四十時間労働制については、昭和六十二年及び平成五年の二度にわたり労働基準法の改正を行うなど、計画的かつ段階的に実施を進めできたところであり、本年四月一日からは、従来適用が猶予されてきた中小企業におきましても実施されることと相なっております。
これらの中小企業において週四十時間労働制が円滑に定着するためには、その実情にかんがみ、確実に定着するまでの間、懇切丁寧な指導や援助を精力的に行うなどの特別の措置を講ずることが必要不可欠であります。
また、これまでの労働時間の短縮に向けての施策の展開や労使による真摯な取り組みにより、労働時間の短縮に大きな進展が見られてきたところでありますが、今後とも、労働時間の短縮のための施策を積極的に講ずることが重要であると考えております。
政府といたしましては、このような課題に適切に対処するため、中央労働基準審議会の報告を踏まえ、検討を加え、労働時間の短縮の促進に関する臨時措置法の一部を改正する法律案、これを作成し、同審議会の全会一致の答申をいただき、ここに提出申し上げた次第であります。
次に、この法律案の内容につきまして、その概要を御説明申し上げます。
第一に、週四十時間労働制の定着及び労働時間の短縮の促進のための指導援助を効果的に実施するため、本年八月末とされている労働時間の短縮の促進に関する臨時措置法の廃止期限を、年間総労働時間千八百時間の達成定着、これを図る旨うたっている構造改革のための経済社会計画の計画期間に合わせ、平成十三年三月三十一日まで延長することといたしております。
第二に、週四十時間労働制の適用が猶予されていた中小企業等に対しましては、本年四月一日から平成十一年三月三十一日までの二年間を指導期間とし、国は、最近における経済的事情の著しい変化にかんがみ、本年四月一日以後、週四十時間労働制が適用されることとなったことを考慮しつつ、きめ細かな指導援助等を行うよう配慮しなければならないことといたしております。
なお、この法律は、公布の日から施行することとしております。
以上が、労働時間の短縮の促進に関する臨時措置法の一部を改正する法律案の趣旨でございます。
ありがとうございました。(拍手)
————◇—————
労働時間の短縮の促進に関する臨時措置法の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明に対する質疑発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114005254X01019970221/3
-
004・伊藤宗一郎
○議長(伊藤宗一郎君) ただいまの趣旨の説明に対して質疑の通告があります。順次これを許します。吉田治君。
〔吉田治君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114005254X01019970221/4
-
005・吉田治
○吉田治君 私は、新進党を代表して、ただいま議題となりました労働時間の短縮の促進に関する臨時措置法の一部を改正する法律案に関して、総理を初め関係各大臣にお伺いいたします。
労働時間の短縮は、国民の生活の質を高めるために最も重要な基本的な条件の一つであります。すなわち、従来の経済成長一辺倒の社会構造を改め、個々の労働者がゆとりある生活を享受し、家族的な責任をよりよく果たすためには、労働時間の短縮が必須であります。このことは、前川レポートを初めとして、つとに指摘されてきたところであります。そして、労働時間の短縮はまた、労働者が自主的な能力開発を行う環境を整備し、ひいては産業構造の転換に対応することのできる職業能力を身につける機会を拡大するものとも言えます。
しかしながら、バブル経済の崩壊以後、厳しい状況にある我が国経済の現状から、景況が低迷している中小企業を中心として、現時点における労働時間の短縮に対してちゅうちょする声が大きいということもまた事実であります。そして、労働時間の短縮の円滑な実施のためにも、企業経営の現場から発せられるこのような声に対する行き届いた対応が要請されていると言えます。
我が党は以上のような認識に立ちつつ、労働時
間の短縮の実施と時短促進法について、以下、問題点に関して質問をしてまいります。
第一は、労働時間の短縮の位置づけについてであります。
政府は、経済計画の中で千八百労働時間の実現をうたっており、その制度化として、本年四月一日よりの週四十時間労働制の完全実施があると言えます。そして、そのこと自体については、我が党も異論はありません。
ところで、政府は週四十時間労働制の実現の意義を、政府としてのあるべき社会の姿と重ね合わせつつ、どのように考えておられるのかが大変不明であります。それを労働者の生活の質の向上のためととらえるならば、労働時間短縮と余暇活用のための環境整備等とを連動させる施策を用意しておられるのか。また、労働者の自己啓発の機会の拡大ととらえるならば、労働時間短縮と労働者の能力開発のための環境整備の施策を用意しておられるのか。さらに、労働時間短縮をこれからの低成長経済に対応するためのワークシェアリングと位置づけるお考えをお持ちなのか。
労働時間短縮の位置づけに関する以上の点について、総理並びに労働大臣に対してお伺いをいたします。
第二は、労働時間短縮の今後の展望についてであります。
本法案の前提になっている週四十時間労働制の実施は、既に改正されている労働基準法の猶予期間が切れることによって実現するものでありますが、政府としては、労働時間短縮はこれをもって一区切りがついたと考え、さらなる労働時間短縮は当分の間想定しないおつもりなのかどうか。この点について、日本が必ずしも時短最先進国ではない実情を踏まえた上で、総理並びに労働大臣に対してお伺いをいたします。
また、本年四月より週四十時間労働制が完全実施されると言われつつも、いわゆる特例措置は残存したままであります。そして、今回の四十時間制の完全実施に当たっても、一部にはこの特例措置を拡大せよとの主張も展開されました。確かに中小零細企業の実情を見ればやむを得ないとの考え方もありましょうが、それを放置すれば中小零細企業とその他の企業との間の労働条件の格差はますます拡大し、ひいては中小企業への有能な人材の供給を阻害することになるとも言われております。労働時間の短縮の問題は、労働政策と産業政策が力を合わせて取り組むべき課題であります。今後、労働時間の特例措置についてどのように対応するかという点について、労働大臣及び通産大臣に対してお伺いをいたします。
また、研修休暇、看護休暇、リフレッシュ休暇等の制度化によって、ゆとりある生活の実現を図り、結果的に労働時間短縮を進めるという方向を模索される考えがあるのかどうかという点についても、労働大臣に対してお伺いをいたします。
第三は、労働時間短縮の実効性の確保についてであります。
労働時間の短縮が第一で触れましたいずれの目的を持つものであるにせよ、時間短縮の実効性が伴わないことには形だけの無意味な制度改正にとどまってしまうことは明らかであります。
現在の労働時間法制においても、時間外労働時間につきましては労働省の定めた目安時間なるものが存在するだけであり、いわゆる三六協定さえ締結すれば法的にも無制限の時間外労働が許容されております。そして、実際には多くの中小企業において三六協定すら締結されず、また、大企業においてもサービス残業という無償労働がまかり通っていることは周知のことであります。
ところで、本法案と時を同じくして、関係審議会の答申に基づいて、タクシー運転手等の変形労働時間制及び若干の職種の裁量労働制についての弾力的運用が省令改正で実施される予定であると承知いたしております。
法外残業は言わずもがなのことといたしまして、三六協定を締結している場合、あるいは今回弾力化されるものを含む変形労働時間制、裁量労働制が採用されている場合について、労働時間短縮の実効性を確保するためにどのような措置を講ずるつもりかについて、労働大臣に対してお伺いをいたします。
また、労働時間短縮の結果として発生する超過勤務手当による負担を軽減するため基本給の削減を行う使用者があらわれることは、労働時間短縮の実効性をそぐものであると考えますが、このようなケースについて何らかの指導を行うのか否かという点について、労働大臣に対してお伺いをいたします。
第四は、本法案における指導期間の設定についてであります。
本法案においては、平成九年四月一日から二年間の指導期間なるものが設定されております。我が党は、この規定は、中小企業を中心として従来週四十時間制の導入が猶予されていた事業所が新制度を導入するに当たって、公的な指導支援を行うという趣旨であり、二年間は新制度の導入が遅延しても労働基準法の罰則を適用せずに指導にとどめるという趣旨ではないと理解しております。また、この点については、中央労働基準審議会における労働基準局長のメモでも明示されていると考えます。
しかしながら、一部には、この規定をもって実質的に週四十時間労働制の導入が延期されたかのような主張が存在しております。本法案に定められた指導期間の規定が、労働基準法の労働時間に関する強行規定を発動しない根拠規定となり得るのかどうか、また、本規定に基づいて強行規定の発動を猶予する運用が予定されているのかどうかという二点について、労働大臣にお伺いをいたします。
第五は、労働時間短縮を行う中小企業への支援措置についてであります。
第四で触れました指導期間を根拠として、週四十時間労働制を導入するに当たり、省力化投資、労働者の雇い入れ、変形労働時間制度の活用を行う中小企業に対して、中小企業労働時間制度改善助成金を支給することとされています。このこと自体は、中小企業の困難な経済的な状況にかんがみましても当然のことと考えます。
しかしながら、既に時間短縮のための投資を完了した中小企業はこの支援措置の恩恵をこうむることができないという不公平な事態が発生する可能性が大であります。一定期間の過去の時短投資に対しても支援措置の対象とする等の制度の組みかえが必要であると考えます。誘導的補助金のあり方の見直しの議論を踏まえつつ、この不公平についてどのように考えるかという点について、労働大臣及び大蔵大臣にお伺いをいたします。
また、この支援措置には労働保険特別会計の労働災害勘定がその原資となっておりますが、保険料に基づく特別会計であるがために、その事業が安易なものになるということのないよう厳正なチェックが必要であります。保険料に基づく特別会計のあり方という点について、労働大臣及び大蔵大臣にお伺いをいたします。
労働時間短縮の着実な進展を願いつつ、以上で私の質問を終わります。(拍手)
〔内閣総理大臣橋本龍太郎君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114005254X01019970221/5
-
006・橋本龍太郎
○内閣総理大臣(橋本龍太郎君) 吉田議員にお答えを申し上げます。
労働時間の短縮について、その意義、三点のお尋ねがございました。
労働時間の短縮は、働く方々が喜びを感じながら働けるようにするためにも大変重要だと認識しております。また、労働者の生活の質の向上や、自己啓発の機会の拡大、高齢者などの働きやすい雇用機会の創出にも資するものと考えており、あわせて自己啓発を行う労働者のための環境整備に対する助成制度の新設などを行うことといたしております。
さらなる労働時間の短縮につきましては、経済計画にある年間総労働時間千八百時間の達成定着を図る、そのために、今後も週四十時間労働制の定着を基盤としながら、有給休暇の取得促進、長時間残業の削減などにより労働時間の短縮に努めてまいりたいと思います。
残余の質問につきましては、関係大臣から御答弁を申し上げます。(拍手)
〔国務大臣岡野裕君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114005254X01019970221/6
-
007・岡野裕
○国務大臣(岡野裕君) 吉田議員の御質問に対しまして、お答えを申し上げます。
まず、労働時間短縮の意義についてでありますが、これは総理の答弁でほとんど尽きている。
ただ、第一点、ワークシェアリングの関係について補足をいたしますとこんなことになろうか、こう思っております。
ワークシェアリングといいますのは、我が国ではまだ関係者の間で議論が尽くされておりません。これはこれからの労使の話し合い、これにゆだねるところが大きいと思いますが、ただ、高齢者でありますとかあるいは家庭の主婦の皆さんでありますとか、そういう皆さんの労働の提供の場という意味合いではワークシェアリングと関連ができてくるなというように心得ております。
その次の、労働時間のさらなる短縮でありますが、これはもう総理の答弁で十二分だ、こう考えます。
第三番目、労働時間の特例措置についてのお尋ねがございました。
実は、労働省といたしましては、このあり方につきまして、中央労働審議会の場でできるだけ早く結論を出していただこうということで目下検討の真っ最中であります。私どもといたしましては、その結果を踏まえて対処してまいりたい、かように存じているところでございます。
次は、研修休暇その他いろいろな休暇制度と時短との関係についてのお尋ねであります。
先生おっしゃいました教育訓練休暇、リフレッシュ休暇、これらも労使の取り組みによりましてこれから普及されていくならば望ましいことだな、こう考えております。看護休暇につきましては、この導入状況につきまして目下実態を調査している真っ最中であります。これらの休暇制度につきましては、制度化するということにつきましては、国民全般のコンセンサスが得られるかどうか、この辺も踏まえました上で今後検討してまいりたい、こう存じております。
次に、労働時間短縮の実効性の確保についてのお尋ねがございました。
時間外労働につきましては、景気の変動、仕事の繁閑というような観点から、目下、雇用調整機能も持っているわけであります。したがいまして、職場における労使の基準法三十六条協定、これにゆだねているところでございます。先生もおっしゃいました労働省限りの適正化基準というものも持っておりますので、これについて今後も指導を十分やってまいりたいと考えているところであります。
なお、変形労働時間制あるいは裁量労働制の採用、これは全面的な構造改革の中でやはり大きな意義を持つところではないか、こう考えているところでありますが、これらにつきましては、関係労働基準監督署長に届け出を要件として課しているところであります。これらの実態を見ながら必要に応じて指導をしてまいらなければならない、かように存じているところであります。
次に、労働時間短縮に伴う基本給が、時間が減ったから減らしてはというような意向の分野もなきにしもあらずであるというお話でございました。
私どもといたしましては、賃金といいますものは、労使の自主交渉にこれは本来的にゆだねるべきものである。したがいまして、その結果が不合理ということでないならば労働基準法上の問題はない。ただしかし、労働時間の短縮の意義といいますのは、その反面、限られたる時間の中で生産性も大いに発揮をしていただこう、よってもって労働者の労働条件全体の向上を図ろうというところに意義があるわけでありますので、その面についてもこれから周知をしてまいる所存であります。
次に、時短促進法の改正と労働基準法の強行規定の関係につきまして御質問がございました。
私どもは、この四月一日から、今まで猶予されてきた中小企業につきましても、はっきり割り切った週四十時間労働制というものを定着させていこうという考え方に基づいているわけでございます。ただし、中小企業の中ではいろいろの形態の労働もあろうというようなことで、指導期間をおっしゃるように二カ年間設けているわけでありますが、重大な悪質な法違反というものがありますなれば、これはしかるべく司法処分についても検討をいたしてまいらなければならない、今の時点においてはかように考えているところであります。
次に、助成金の公平を欠く面があるのではないかという御心配であります。
現在、中小企業労働時間短縮促進特別奨励金が御存じのとおり支給されております。今回新たに設ける中小企業労働時間制度改善助成金は、現行の奨励金とのバランスを考慮しながら、本年四月から二年間の先ほど申し上げました指導期間中、省力化投資を行ったものなどを対象として、公平に配慮をして実施をしてまいりたい、こう思っておりますので、よろしく御理解を賜りますようお願いいたします。
最後に、労働保険特別会計に基づくその特会のあり方についてでありますが、この事業は、本来、事業主の共同連帯によって対処すべき施策を措置しているところであります。したがいまして、四十時間労働制の定着のための助成措置、これまた不適切な支給が行われることがないよう、事業の運営につきまして検査を厳正に行うなど万全を期してまいりたい、こう思っている次第でございます。
以上であります。よろしくお願いを申し上げます。(拍手)
〔国務大臣三塚博君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114005254X01019970221/7
-
008・三塚博
○国務大臣(三塚博君) 吉田議員の私に対する質問、二問でありますが、まず中小企業に対する支援に関するお尋ねであります。
中小企業労働時間制度改善助成金は、限られた資金が真に有効に活用されますよう、労働時間短縮のための省力化投資等、積極的な取り組みを行う中小零細事業主に対象を絞りまして支給するものといたしております。また、これまでに省力化投資等を行ったものとの公平性にも配慮して、現行の中小企業労働時間短縮促進特別奨励金とのバランスを勘案しつつ支給額を定めておるところであります。
次に、保険料と特別会計に関するお尋ねであります。
労働大臣から概要がありましたから簡明に申し上げますと、労働保険特別会計の労災勘定においては、事業主の共同連帯によって労働者の福祉増進を図るため、各種の施策が事業主の労災保険料を財源に行われておるところであります。このような制度本来の趣旨に沿って、使用者の負担する保険料が労働時間短縮のため有効に活用されますよう、労働省において適正な事業運営が行われると考えておるところであります。(拍手)
〔国務大臣佐藤信二君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114005254X01019970221/8
-
009・佐藤信二
○国務大臣(佐藤信二君) 私に対しては、存続される特例措置についてのお尋ねでございました。
労働時間の特例措置の取り扱いにつきましては中央労働基準審議会において検討されることになっておりますが、現下の厳しい経済状況のもとでの中小企業の実情が労働政策に反映されるよう努めてまいりたいと考えております。(拍手)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114005254X01019970221/9
-
010・伊藤宗一郎
○議長(伊藤宗一郎君) 近藤昭一君。
〔近藤昭一君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114005254X01019970221/10
-
011・近藤昭一
○近藤昭一君 私は、民主党を代表いたしまして、ただいま提案説明のありました労働時間の短縮の促進に関する臨時措置法の一部を改正する法律案について質問をさせていただきます。
まず、本法案の前提ともいえる年間総労働時間の短縮についてお伺いをいたします。
一九八六年の前川レポートと八七年の新前川レポートが労働時間短縮を内需拡大の一方策と位置づけて以来十年間、政府は、豊かでゆとりのある労働者生活の実現をキーワードに、相次いで時短に関する閣議決定や法改正を行ってきました。一九八八年の経済運営五カ年計画や九二年の生活大国五カ年計画、さらには九五年の構造改革のための経済社会計画で、繰り返し年間総労働時間千八百時間の実現が語られ、この間に二度の労働基準法改正や今回議題となっております時短促進法も制定されたのであります。
しかしながら、確かに官庁の土曜閉庁などの面で一定の前進がありましたが、年間総労働時間の現状を見ますと、九六年度総実労働時間は目標の千八百時間には遠く及ばない千九百十九時間となっており、前年度よりも逆に増加するという状況であります。
総理、ことしの秋には神戸におきましてG7各国参加によります雇用サミットが開催され、雇用問題の構造的側面に重点を置いた意見交換が行われるとのことですが、今この時期に、ホスト国であります我が国が、十年来の国際公約でもあります年間総労働時間千八百時間の早期実現に向けた断固たる姿勢を表明することは非常に意義のあることだと思います。質問の冒頭に当たり、まず橋本総理大臣より、労働時間の短縮に向けた基本姿勢をお聞かせいただきたいと思います。
次に、週四十時間労働制の実施についてお伺いをいたします。
今回の改正案では、週四十時間労働制の適用が猶予されておりました中小零細企業に対して、今後二年間指導期間を設けるとしています。御承知のとおり、本年四月一日からは、これまでその適用が猶予されてきました中小事業所に対しても週四十時間労働制が適用されるわけでありますが、私たちが最も危惧いたします点は、今回の新たな指導期間が、これら中小事業所に対する労働基準法の厳格な適用に影響を及ぼさないかどうかということであります。
この間、中小零細企業における労働時間の短縮を進めるに当たりましては、段階的な猶予を講ずるなどの配慮、支援が行われてまいりました。当該事業所における労使の大変な御努力により、四十時間労働制を達成した中小企業も少なくはありません。今回の改正案が、週四十時間労働制の適用猶予ではなく、四月一日からの完全移行には何らの変更もないことをこの際明らかにすべきだと思うのであります。労働大臣のお考えをお聞かせください。
もちろん、多くの中小零細企業が、景気の動向や産業構造の転換により経営上の困難に直面している事情は、私も十分に承知いたしております。したがって、中小企業が厳しい経済情勢のもとで労働時間短縮に前向きに取り組んでいくために、その必要な援助措置については、労働省と通産省とが中心となってさらに検討をしていかなければならないと考えます。この点に関しては、ぜひ通産大臣からもお考えをお聞かせいただきたいと思います。
政府の時短推進計画でも述べられておりますように、総実労働時間千八百時間の早期実現のためには、週四十時間労働制の完全実施とともに、所定外労働時間の短縮、年次有給休暇の取得促進、完全週休二日制の普及推進が重要な課題であります。週四十時間労働制に関しましては一定のめどがつきつつあると思いますが、残念ながら、他の課題に関しては極めてテンポが遅いと指摘せざるを得ず、この際、これらの点もあわせてお尋ねをいたしたいと思います。
第一に、所定外労働時間についてであります。
所定外労働時間がなかなか縮小しない要因として、労働基準法で定められている法定過労働時間を超えた場合の賃金割り増し率が欧米諸国と比べて著しく低いことや、残業時間の総量規制が極めて不十分であることが挙げられます。労働時間の短縮をより加速させるために、この際、所定外労
働賃金の割り増し率引き上げと所定外労働時間の法的上限規制の検討に入るべきであると考えますが、労働大臣はどのようにお考えでしょうか。
第二に、年次有給休暇についてであります。
そもそも労働基準法の年次有給休暇に関する規定が他の先進諸国と比べて低い水準に設定されていることも問題があると思いますが、付与されている年休の消化率が極めて低いという実態もさらに問題であります。一九九五年の統計によりますと、年休取得平均は九・五日であります。年休取得率はこの十年間ずっと五割台で推移しており、労働基準法の最低付与日数の十日にも届いていないというのが実態であります。有給休暇の付与日数が少ないほど取得率も低いのが現状であることを考えれば、労働基準法の最低付与日数を、少なくともILO百三十二号条約がうたっております最低三労働週への引き上げを早期に実現する必要があると考えますが、いかがでありましょうか。
また、年次有給休暇を取得しない理由といたしまして、病気などへの備えを挙げる人が多いことも問題であります。年休は休養のためにこそ利用されるべきというのがILO百三十二号条約の趣旨であり、病気休暇などは年休の本来の趣旨には合いません。主要国で整備されております病気休暇制度を我が国でも制度化する必要があると考えますが、いかがでありましょうか。
家族の病気介護のためには休業制度が法制化されているのにもかかわらず、本人の病気の場合は制度がないというのでは、法制上の不備を指摘せざるを得ません。ILO百三十二号条約の早期批准とあわせまして、この件に関する労働大臣の御見解をお伺いいたします。
第三に、完全週休二日制の問題であります。
八九年から金融機関の完全週休二日制が実現し、九二年には官庁でも実現しておりますが、全体ではまだ六割程度にすぎず、学校の週五日制なども実現しておりません。主要国のほとんどの労働者が完全週休二日制を実現していることを見ますならば、我が国でも一日も早い完全実施の確立が求められております。週休二日制の完全実施に向けて政府はいかなる具体案をお持ちなのか、お尋ねをいたします。
総理、今こそ私たちにとって真の幸福とは何かが問われております。日本人は、勤勉を愛し、経済成長こそ豊かな生活へ向けての一番の近道だと信じ、一生懸命に働いてまいりました。ところが、戦後五十年以上がたち、振り返ってみますと、数値的には世界第二位のGDPを誇っているにもかかわらず、必ずしも真の豊かさを感じられていないのが現状ではないでしょうか。
人間の尊厳をさまざまな角度から見るとき、労働という視点も非常に大きな重みを持つのではないかと私は思います。人は、生活の糧のためだけに働くのではなく、労働自体に喜びを感じて働くものであります。日本人の勤勉さは貴重であります。しかしながら、いたずらにこの状況に甘えていては、国際社会から、日本は同じ土俵の上に立って闘っていないと非難を受けるばかりではなく、働く人々の中にも、一体何のために働いているのだろうかといった不信感が生まれてくるのではないでしょうか。
経済状況の決してよくない中で、高齢化社会、少子化社会を私たちは迎えます。そんな不透明な不安な時代の今こそ、一人一人が安心して働ける環境づくりを、行政と経済と政治が一致して推進していく必要があります。
政府の真摯な対応を期待し、私の質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。(拍手)
〔内閣総理大臣橋本龍太郎君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114005254X01019970221/11
-
012・橋本龍太郎
○内閣総理大臣(橋本龍太郎君) 近藤議員にお答えを申し上げます。
まず、労働時間の短縮に向けた基本姿勢についてのお尋ねがございました。
労働時間の短縮は、働く方々が喜びを感じながら働けるようにするために大変重要だと考えています。同時に、労働者の生活の質の向上や自己啓発の機会の拡大、高齢者などの働きやすい雇用機会の創出にも資するものであり、経済計画に掲げられております年間総労働時間千八百時間の達成定着を図るために、引き続き積極的にこの問題に取り組んでまいります。
次に、生活の豊かさという視点からのお尋ねがございました。
確かに、我が国は物質的あるいは経済的な豊かさを達成した一方におきまして、時間的なゆとりの面、精神的な面で十分な水準に達していないという面もあると思います。このために、現行の経済計画におきましても、完全週休二日制の普及推進などの取り組みを進めて、年間総労働時間千八百時間の達成定着を図ることによって、自由時間を生かすことのできる豊かで安心できる社会の構築を目指しております。
日本人の勤勉さに甘えていては働く人々の中に不信感が生ずる、そうした御意見もありました。
しかし、今日の我が国の経済発展、これはまさに国民の勤勉性に支えられてきたものであります。その成果が国民一人一人の生活に反映され、喜びを感じながら安心して働いていただけるように、労働時間の短縮をこれからも進めてまいりたいと考えております。
残余の質問につきましては、関係大臣から御答弁を申し上げます。(拍手)
〔国務大臣岡野裕君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114005254X01019970221/12
-
013・岡野裕
○国務大臣(岡野裕君) 労働大臣から近藤議員のお尋ねにお答えを申し上げます。
まず、週四十時間労働制の完全実施についてのお尋ねがございました。
これは、本年四月一日から、労働基準法所定のとおり、従来適用が猶予されてきた中小企業についても全面的に実施をするという方針であります。ただ、中小企業の現場におきましては、やはりその実態というものにかんがみまして、二年間に限って指導も申し上げる、助言も申し上げるという期間を設け、時短の完全な定着を図ってまいろうということに趣旨があるところを御理解賜りたい、こう存じます。
次に、中小企業に対しますところの時短に伴う援助措置でありますが、時短を進めるに当たりましては、やはり中小企業の実態を踏まえて、この効率化のための援助措置、これを効果的に実施することが極めて緊要ではないか、こう存じまして、省力化投資でありますとか労働時間制度の改善にポジティブに取り組んでいかれるということについての助成措置、これを設けているところであります。先生お話しのとおり、当然通産省と緊密な連絡をとって実施をしてまいりたい、かように存じているところであります。
次に、所定外労働賃金の割り増し率の引き上げについてお尋ねがございました。
先ほどお話をいたしましたが、時間外労働といいますのは、景気の変動あるいは仕事の繁閑、これによって雇用の調整機能を果たそうというところに意義がございます。だから、実質的に三十六条協定というものにゆだねてあるわけでありますが、適正化のための指針といいますものも設けて万遺漏なきを期しているというのが今日の姿であります。
なお、割り増し賃金率でありますが、これは、週四十時間労働制へ全面的に移行するわけであります。当面はかえってこの種の時間外労働というものがふえるというようなことも考えられるということでありますので、この割り増し賃金率については当面は慎重な検討を重ねていかなければ、早急な結論は出ない。なお、中央労働基準審議会において、本件についてもできるだけ速やかな検討結果を出していただくよう求めているところであります。
次は、年次有給休暇の最低付与日数についてのお尋ねであります。
これまた中央労働基準審議会において、できるだけ速やかに結論を出していただくべく検討が進められておりますので、労働省としてはその結論を待ちたい、こう存じているところであります。
次は、病気休暇の取り扱いについてであります。
病気休暇は、先生御存じのとおり、我が国では普及率が低い実態にあります。したがって、法的制度化というのは、これは困難なのではないか。その中で、労使の取り組みを、この面についてもいかがであるかというようなことで促しておるところでありますし、労働省においても調査研究をやっているという次第であります。
なお、ILOの百三十二号条約について言及がございました。
これは、年次有給休暇の法制や実態との乖離が非常にまだ大きいものがあるというようなことから、批准については慎重な姿勢をとっている次第であります。
次は、完全週休二日制のお尋ねであります。
四月から週四十時間労働制が中小企業の皆さんのところにおいても完全に定着するよう、そういう意味合いで、完全週休二日制の一層の普及を図ってまいる、これが労働省の姿勢でございます。何分御理解を賜りますようお願いいたします。(拍手)
〔国務大臣佐藤信二君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114005254X01019970221/13
-
014・佐藤信二
○国務大臣(佐藤信二君) 近藤議員にお答えいたします。
現下の厳しい経済状況のもと、中小企業の労働時間短縮に対する真剣な取り組みに努めているところでございます。
私に対しては、労働時間短縮に必要な援助措置についてのお尋ねでございました。
政府といたしましては、省力化投資等により週四十時間労働制への移行に取り組む中小企業に対しまして助成金を創設する等、支援措置を講ずることにしております。いずれにいたしましても、引き続き労働省と協力して、週四十時間労働制への円滑な移行を支援してまいりたい考えでございます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114005254X01019970221/14
-
015・伊藤宗一郎
○議長(伊藤宗一郎君) これにて質疑は終了いたしました。
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114005254X01019970221/15
-
016・伊藤宗一郎
○議長(伊藤宗一郎君) 本日は、これにて散会いたします。
午後一時五十四分散会
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114005254X01019970221/16
4. 会議録のPDFを表示
この会議録のPDFを表示します。このリンクからご利用ください。