1. 会議録本文
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000・会議録情報
平成九年二月二十八日(金曜日)
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平成九年二月二十八日
正午 本会議
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○本日の会議に付した案件
全国新幹線鉄道整備法の一部を改正する法律案
(内閣提出)の趣旨説明及び質疑
住宅金融公庫法等の一部を改正する法律案(内
閣提出)の趣旨説明及び質疑
午後零時四分開議発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114005254X01319970228/0
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001・伊藤宗一郎
○議長(伊藤宗一郎君) これより会議を開きます。
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全国新幹線鉄道整備法の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114005254X01319970228/1
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002・伊藤宗一郎
○議長(伊藤宗一郎君) この際、内閣提出、全国新幹線鉄道整備法の一部を改正する法律案について、趣旨の説明を求めます。運輸大臣古賀誠君。
〔国務大臣古賀誠君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114005254X01319970228/2
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003・古賀誠
○国務大臣(古賀誠君) 全国新幹線鉄道整備法の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明申し上げます。
新幹線鉄道につきましては、国土の総合的かつ普遍的開発に重要な役割を果たすものとして、現在、三線五区間においてその整備が着実に進められているところでありますが、残る未着工区間の整備についても、国土の均衡ある発展、地域の振興等に資するものとして、沿線地域から強く望まれているところであります。
これら未着工区間の新幹線鉄道の整備につきましては、国鉄改革及び行財政改革の趣旨にかんがみ、営業を行う旅客鉄道株式会社の経営の健全性を損なわないこと等を前提として、その財源の手当てについて検討を進めてまいりましたが、今般、整備新幹線の建設費は、国、地方公共団体及び旅客鉄道株式会社が負担することとし、このうち国及び地方公共団体の負担については、既設新幹線鉄道の譲渡収入全額を国の負担分とみなし、これに公共事業関係費を加えた額を国の負担分とした上で、その二分の一を地方公共団体の負担分として位置づけるとともに、地方公共団体の負担については所要の地方交付税措置を講ずること等により新幹線鉄道の整備のための財源を確保する旨の結論を得たところであります。
このため、この結論に従い、日本鉄道建設公団が行う新幹線鉄道の建設費についての国及び地方公共団体の負担等所要の規定を定め、もって新幹線鉄道の着実な整備を図ることを目的としてこの法律案を提案することとした次第であります。
次に、この法律案の概要について御説明申し上げます。
第一に、日本鉄道建設公団が行う新幹線鉄道の建設に要する費用のうち、営業主体から支払いを受ける貸付料その他の日本鉄道建設公団の新幹線鉄道に係る業務に係る収入をもって充てる部分を除いたものは、政令で定めるところにより、国及び地方公共団体が負担することとしております、
第二に、運輸大臣は、日本鉄道建設公団が建設する新幹線鉄道に係る工事実施計画を認可しようとするときには、あらかじめ新幹線鉄道の建設に要する費用を負担する地方公共団体の意見を聞かなければならないこととしております。
以上が、全国新幹線鉄道整備法の一部を改正する法律案の趣旨でございます。(拍手)
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全国新幹線鉄道整備法の一部を改正する法律
案(内閣提出)の趣旨説明に対する質疑発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114005254X01319970228/3
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004・伊藤宗一郎
○議長(伊藤宗一郎君) ただいまの趣旨の説明に対して質疑の通告があります。順次これを許します。林幹雄君。
〔林幹雄君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114005254X01319970228/4
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005・林幹雄
○林幹雄君 ただいま趣旨説明のありました全国新幹線鉄道整備法の一部を改正する法律案について、自由民主党を代表して、総理並びに運輸大臣に質問をさせていただきます。
私は、千葉県の出身であり、新幹線の恩恵を直接受けるものではありませんが、国家的見地からその整備を積極的に進めていく必要があると考えるものであります。
そこで、まず初めに、政府の整備新幹線の整備に対する基本的な考え方についてお聞きしたいと思います。
新幹線は、高速大量輸送機関として、今日の日本の経済発展に大きな役割を果たしてきました。新幹線が整備されることにより、人口、産業の集積や生活環境の改善が図られ、その沿線地域ははかり知れない大きな恩恵に浴してきたわけであります。全国新幹線鉄道整備法も、このような新幹線の役割の重要性にかんがみ、昭和四十五年に制定され、この法律に基づき、昭和四十八年に、北海道、東北、北陸、九州の鹿児島ルート及び長崎ルートの五新幹線の整備計画が決定されたわけであります。
このうち、三線五区間については平成元年以降着工しておりますが、その他の区間については、平成六年十二月の連立与党申し合わせ及び関係大臣申し合わせにおいて、平成八年中にその整備のための新しい基本スキームの成案を得ることとされていたところであります。この申し合わせに従い、昨年、政府及び与党において精力的な検討が行われた結果、十二月の政府・与党合意に至ったわけであります。平成三十年度までの新規着工区間の事業規模はおおむね一兆二千億円であり、整備五線全線の整備までにはまだまだ道のりは遠いと言わざるを得ません。
私は、我が国経済社会の今後の発展や地域格差の是正を図る上で必要不可欠な社会資本については、着実に整備を進めていく必要があると考えており、新幹線はその代表的な例であると考えます。しかしながら、昨今のマスコミ等の論調を見ていると、ばらまき予算等々のいわれなき批判が行われているのは、まことに残念なことと思います。つきましては、まず総理に、整備新幹線の整備についての基本的な考え方について御所見を伺いたいと存じます。
次に、全国新幹線鉄道整備法の一部改正法案の具体的な内容についてお尋ねをいたします。
整備新幹線の整備は我が国の均衡ある発展を図る上で必要でありますが、一方、昨今の我が国の厳しい財政事情にかんがみ、行財政改革の推進も極めて重要な課題であります。政府は、平成九年度を財政構造改革元年と位置づけており、整備新幹線についても、未着工区間約一千五十キロをすべて整備するのではなく、ぎりぎりに絞り込んで、おおむね一兆二千億円にまで圧縮されているなど、この点についても十分な配慮がなされているところであります。
他方、今後新規着工を行う際には、収支採算性の見通し等の基本条件の確認を行うなど、その整備の必要性について十分な精査を行うべきだと思いますが、どのような配慮がなされているのか、運輸大臣にお尋ねをいたします。
また、マスコミの論調の中には、国鉄長期債務の処理を先送りして整備新幹線の整備を進めるのはおかしいとの批判があります。しかしながら、私は、国鉄長期債務と整備新幹線の整備は別個の問題であり、それぞれの課題について着実に対応していくべきだと考えております。この点についても大臣の御見解を伺いたいと思います。
次に、整備新幹線の整備を進める上で、国鉄改革の趣旨に照らし、JRの経営の健全性が確保されていることが必要と考えます。旧国鉄においては過大な投資が行われ、これが経営悪化の一因となったという反省に立ち、まず、JRの同意をしっかりと確認することとJRの負担を適切な範囲にとどめることが大事だと考えます。そこで、JRの経営の健全性の確保の観点から適切な配慮がなされているのか、運輸大臣にお伺いいたします。
また、地域の負担が初めて法的に義務づけられることになります。これまでは地域の熱意のあかしとしての地域負担でありましたが、今後は整備新幹線の整備について地域が責務を負うことが明らかになるわけであります。地域の負担の義務化に伴い、工事実施計画の認可の際に、あらかじめ費用を負担する地方公共団体の意見を聞かなければならないこととすることも当然であります。
さらに、地域経済へのインパクトを考えれば、地域の開発計画等と連携をとりつつ新幹線の整備を進めることも重要と考えます。整備新幹線の建設に当たっては、地域の開発計画との連携も十分考慮していただくよう要望いたします。
最後に、今回のスキームは、行財政改革や国鉄改革の趣旨に十分配慮した適切なものであると考えておりますが、ばらまき予算であるとか、第二の国鉄化は必至であるとか、いわれなき批判があるのも事実であります。このような批判に対し、国民に対して十分に説明を行い、その理解を得ながら整備を進めていくことが重要と考えます。その意味で、今後予定されている政府及び与党から成る検討委員会における収支採算性等基本条件の確認などの作業を進める際に、国民に対する情報の公開に十分配慮していくべきだと思いますが、運輸大垣の御見解をお伺いします。
以上、整備新幹線についてのお尋ねをしてまいりましたが、今後の我が国経済社会の均衡ある発展や地域格差の是正のために必要不可欠な社会資本である新幹線について、国民の理解を得ながら着実に整備を進めていただきますようお願いをして、質問を終わらせていただきます。(拍手)
〔内閣総理大臣橋本龍太郎君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114005254X01319970228/5
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006・橋本龍太郎
○内閣総理大臣(橋本龍太郎君) 林議員にお答えを申し上げます。
私については、基本的な考え方について問われました。
整備新幹線の必要性、これは国土の均衡ある発展と地域の活性化に資するものであり、国民の理解を得ながらそれを推進してまいりたいと考えております。その整備に当たりましては、収支採算性の見通し、JRの貸付料などの負担、並行在来線の経営分離についての地方公共団体の同意、JRの同意など基本条件が整えられていることを確認した上で、その取り扱いを厳正に判断してまいりたいと考えております。
残余の御質問に対しましては、関係大臣から御答弁を申し上げます。(拍手)
〔国務大臣古賀誠君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114005254X01319970228/6
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007・古賀誠
○国務大臣(古賀誠君) 林議員にお答え申し上げます。
私に対して、四点お尋ねをいただいております。
まず、整備新幹線の整備に当たってのお尋ねでありますが、今回の整備新幹線の整備スキームにおいては、御指摘のとおり、収支採算性の見通し、JRの貸付料等の負担、並行在来線の経営分離についての地方公共団体の同意、JRの同意等の基本条件が整えられていることを確認した上で、適切に対処することとしております。
次に、整備新幹線の整備と国鉄長期債務処理との関係についてお尋ねがございました。
国鉄長期債務の処理は、国鉄改革総仕上げの観点からも極めて重要な課題であると認識しており、昨年十二月の閣議決定において、平成十年度より本格的処理を実施するため、「その具体的処理方策の検討を進め、平成九年中にその成案を得る。」こととされているところであります。一方、整備新幹線は、国土の均衡ある発展と地域の活性化を図る観点から、その整備を推進する必要があり、そのような中、整備新幹線については、先ほど申し上げた基本条件が整えられていることを確認した上で、適切に対処することとしております。
また、JRの経営の健全性の確保についてお尋ねでありますが、今回のスキームにおいては、整備新幹線の建設費についで、JRについては受益の範囲を限度とした貸付料等によることとされていること、整備区間ごとにJRの同意等の基本条件が整えられていることを確認することとし、JRの意思に反して着工が決定されることのないよう措置されていることから、御指摘の点について十分配慮されたものとなっております。
最後に、政府・与党の検討委員会における国民に対する情報公開についてのお尋ねでございますが、御指摘のとおり、整備新幹線の整備に当たっては国民の理解を得ながら進めることが極めて重要と考えており、このため、政府及び与党から成る検討委員会における収支採算性等の基本条件の確認等の作業を進める際には、国民に対する情報の公開に十分配慮してまいる所存であります。(拍手)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114005254X01319970228/7
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008・伊藤宗一郎
○議長(伊藤宗一郎君) 北橋健治君。
〔北橋健治君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114005254X01319970228/8
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009・北橋健治
○北橋健治君 私は、新進党を代表いたしまして、ただいま議題となりました全国新幹線鉄道整備法の一部を改正する法律案に対し、総理並びに関係大臣に質問を行うものであります。
財政構造改革元年と銘打った平成九年度の予算、その中に整備新幹線未着工区間の建設予算百億円が計上されました。このことから、各界から厳しい批判が噴出したことは周知の事実であります。各紙の見出しには「走る政治 かすむ財政再建」とか「政治新幹線の暴走」あるいは「財政構造改革は看板倒れ」といった辛らつな言葉が飛び交い、今や、凍結を求める国民と整備新幹線を待望してやまなかった国民との間に深い断絶が生じているのであります。
なぜ整備新幹線について国論の分裂を来したのか、私は、まずこの点について、重要な問題点の所在を率直に指摘したいと思います。
一つは、交通政策の最優先課題を政府が回避されたことであります。
今、国民は二十八兆円もの旧国鉄の借金を背負っており、土地、株式を売却してもなお残る二十兆円の債務は国民一人当たり十七万円になり、国民は実に高い授業料を支払い続けているのであります。政府は、旧国鉄債務の処理を急がねば国民負担はさらに増大することを承知されていたにもかかわらず、この緊急の課題を先送りしてしまいました。国民が注視をするその課題を先送りした状況で、果たして整備新幹線に対する国民的な共感を得られるでしょうか。この政治責任は、私は重大だと思います。
整備新幹線に対する円滑な国民合意の形成を図るためには、旧国鉄債務問題の抜本的な解決に道筋をつけることが不可欠であると私は思いますが、橋本総理の率直な御所見を承りたいのであります。
第二に、整備新幹線の財源をめぐり、政府・与党が合意に至る経緯であります。
国、地方の借金が五百兆円を超える厳しい状況の中で、整備新幹線の財源を確保調達するため、関係議員が知恵の限りを尽くし行動されたこと自体、何ら異を唱えるものではありません。しかし、民間企業であるJRから拠出金の名目で固定資産税を吸い上げ、財源に充当しようとした事実は、到底容認できるものではありません。新進党は、国鉄改革と地方自治の本旨から逸脱したこの手法に反対し、交付金制度を当時主張したのであります。
こうした政府・与党の動きに対し、JRは行政訴訟も辞さず新幹線を拒めといった過激な論調が数多く言論界にあらわれたことは当然だと思います。この理不尽な財源対策に政府・与党が一時迷走したために、どれだけ中立的な良識ある識者の支持が失われたかわかりません。この点について、運輸大臣の率直な御見解をお伺いしたいと思います。
また、もし政府が国土の均衡ある発展のため整備新幹線が国家事業として必要であると認識するならば、公共事業を全面的に見直し、JRや地方自治体に負担を分散するのではなく、国が責任を持って財源を確保すべきであったと思うが、いかがでありましょうか。
次に、私は、整備新幹線をめぐる重要な問題点について、以下、順次政府の見解をただしてまいりたいと思います。
第一は、整備新幹線の着工順位の問題であります。
政府・与党の方針によれば、今後、建設検討委員会を設けて、夏ごろまでに着工順位を決めると聞いておりますが、なぜ予算の審議に当たって具体的な対処方針を国民に示されなかったのでしょうか。その計画の不透明さが、いわば不信を招く一因になっているのではないでしょうか。今後、政府・与党でお決めになると聞いておりますが、仮にこの法案が成立した場合、具体的な着工に当たっては、やはりこの国会の場で国民に開かれた論議を徹底的に尽くすよう私は強く求めるものであります。
第二は、整備新幹線の建設事業費の問題であります。
当初の財政計画で達成できなかった公共事業の事例は、過去に枚挙にいとまがありません。政府は、三線五区間の既着工区間で二兆二千億円、未着工区でおおむね一兆二千億円を見込んでいますが、果たしてこれで本当に建設工事は完了できるのでありましょうか。三線五区間の整備予算を見でも、平成六年に当初の見込みよりも二割増に上方修正されておりますし、現在運行中の四新幹線の建設費についても大幅に増額されたのであります。この事実は看過し得ません。
もとより、私は、経済合理性と国民的利益にかなうならば財政の出動をためらうものでは決してありません。しかし、国家財政が瀕死の状態に近づきつつある今日、総事業費の見通しは厳しい財政再建の視点にたえ得るものでなければなりません。運輸大臣、整備新幹線の未着工区間の事業費は一兆二千億円を極力超えない範囲で達成できるとお考えか、大臣のお考えを確認させていただきたいと思います。
また、この機会に、公共事業について政府・与党内で論議されている予算削減の方針についてお伺いいたします。
いよいよ大詰めを迎えた予算の取り扱いをめぐる与野党協議におきまして、公共事業費の削減問題が最大の焦点になっておると聞き及んでおります。もし執行段階で予算を減額できると政府がお約束をされるならば、この予算は欠陥予算であることをみずから認めることにほかなりません。その政治責任は重大であります。また、公共事業費を削減するといっても、コスト縮減にとどまるのか、あるいは公共事業予算そのものを縮減されるのか、縮減するとすれば何割削減を目標とされるのか、また六百三十兆円の公共事業基本計画を具体的にどう見直すかについて、総理から御所見を承りたいと思います。
さらに、運輸大臣は、公共投資基本計画が見直された場合、整備新幹線の対処方針の修正はあり得るとお考えでしょうか、お伺いをいたします。
私は、建設事業コストを今後縮減するためには、新幹線建設を担当している鉄道建設公団に対して、新たに具体的な縮減計画の策定を大臣が指示されるよう強く要求してまいりたいと思います。
第三に、整備新幹線の採算性についてであります。
国民が強い関心を寄せているこの問題について、さきの政府・与党合意では、未着工区間の建設決定に際してその採算性を一つの要件にしているものの、その適否の判断の基準がいまだ明確ではありません。確かに、平成三十年を目途とする事業計画だけにその合理的な予測には困難を伴うとは思いますが、政府は今、採算性について説得力のある根拠を国民の前に明らかにすることが急務であります。
また、私は、採算性を重視する見地から、山形新幹線で成功しているようなミニ新幹線方式や工費を節減できるスーパー特急など、在来線を最大限活用していくことも有力な選択肢であると考えます。その場合、私たち政治家も、役所任せではなく、それぞれ決断を求められることは言うまでもありません。こうした手法の活用について、今後、委員会質疑等において本音の議論を深めてまいりたいと考えます。
第四に、在来線の問題であります。
在来線は日常生活にとって欠くべからざる交通手段であり、従来以上に活性化させることが肝要と思います。しかし、政府の方針によれば、新幹線の整備に伴い、並行在来線はJRから経営分離されるため第三セクターへの移行を迫られ、そこに今、地域住民の切実な不安が生じているのであります。旧国鉄の民営化によって生まれた三十七の第三セクターのうち、黒字はわずかに五路線にとどまっている事実を見ても、在来線の存廃問題は地域住民にとってまことに深刻であります。
政府は、与党・政府合意に先立って、沿線住民に対して在来線の取り扱いについて十分な理解を得られたとお考えでしょうか。また、将来、地域住民の足を確保するためどのような政策手段を講ずる方針か、お尋ねをいたします。
第五に、JR貨物会社の輸送ネットワークが今後維持し得るかどうかという問題であります。
貨物輸送は全国一体の経営で成り立っており、一部分でも在来幹線が途切れたり第三セクターの経営になった場合、経営の悪化を招きかねません。全国一元ネットワークの寸断は、ゆゆしき事態であります。政府がこれまで推進してきたモーダルシフトの推進にも障害が参ります。どのような政策手段をJR貨物会社について用意されているのか、お伺いをいたします。
第六に、総合交通体系の整備という視点から、整備新幹線をどう位置づけるかという問題であります。
現在、国民の交通手段は、鉄道、高速道路、航空機など多岐にわたり、その間の競合も強まってきました。従来は、ともすれば、各省庁とも個々の計画に基づき予算化を図ってきた傾向は否めません。時に、局あって省なし、省あって国なしとか、あるいは公共事業のシェアの硬直化という批判を招いてまいりました。今後は、公共投資の効率化を期するためにも、地域の実情に即して、採算性を重視しつつ、鉄道輸送の積極的評価等も交えながら、整備新幹線を総合交通体系の整備という見地から位置づけることが不可欠だと思います。
私は、今後この種の議論を尽くしていけば、整備新幹線に対する国民の理解は、またおのずから変わってくるのではないかと期待をしております。政府の方針をお伺いいたします。
また、総合交通体系の中で、リニアモーターカーの位置づけも重要になっております。リニアモーターカーは、平成九年春から走行試験に入り、いよいよ実用化の段階を迎えようとしております。中国でも、上海−杭州間百七十キロを二十分間で結ぶ計画が進められているやに聞いております。二十一世紀になって、いよいよ我が国の交通体系に著しい変化と改革をもたらす可能性が出てまいりました。今後、交通体系の整備を論ずるに際し、リニアモーターカーの実用化も念頭に対処すべきだと思いますが、政府の方針をお伺いいたします。
第七に、整備新幹線の着工に当たっては、沿線地域の発展のためのビジョンの確立と経済浮揚効果の予測が不可欠であります。
国としても、地域活性化のビジョンの確立に資するよう、関連自治体に対して積極的な支援を惜しむべきではないと思いますが、政府のお考えを聞かせてください。
また、地域発展のビジョンを、絵にかいたもちに終わらせてはなりません。思い切った地方分権がそのためにも不可欠であります。この見地から、新進党は、ことし一月、全国会議員が集まり決定をいたしました日本再建のための基本政策構想において、地方自治体に対する国の補助金を全廃し、その財源はすべて地方に一括して交付する、全国三千二百三十二の市町村を三百程度に統合して、地方自治体の基盤を強化し、思い切って権限と財源を移譲していくことを中長期的な戦略として、今後、最善の努力を傾注する所存であります。政府にありましては、今後、地方分権をどのように具体的にお進めなのか、方針をお尋ねしたいと思います。
以上、私は、主要な論点について政府の方針を順次お尋ねしてまいりました。けだし、整備新幹線に対する国民の視線には確かに厳しいものがあります。しかし、国土の均衡ある発展を期するために、以上御指摘申し上げた諸問題を一つ一つ解決していくならば、必ずや国民合意の道は開けてくると私は信じております。
政府の明快な答弁をお願い申し上げまして、私の質問を終わります。(拍手)
〔内閣総理大臣橋本龍太郎君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114005254X01319970228/9
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010・橋本龍太郎
○内閣総理大臣(橋本龍太郎君) 北橋議員にお答えを申し上げます。
まず、国鉄の長期債務問題についての御意見がございました。
早期に国鉄長期債務の処理を実施することは必要だという認識を当然持っております。その一方で、その処理方策の検討に当たりましては、国民的な論議を十分に尽くす必要があると思います。そのため、政府といたしましては、昨年十二月二十五日の閣議決定を踏まえ、その具体的な処理方策については、平成九年中に成案を得るべく最大限の努力を行ってまいりたいと考えております。
次に、公共事業を効率化し、コスト削減を図った結果をどうするのか、そうしたお尋ねがございました。
コストの縮減につきましては、現在、具体的な数値目標を設定した各省庁ごとの行動計画を策定する方向で検討を行っております。他方、九年度の公共事業予算につきましては、我が国の財政事情や現下の景気情勢、社会経済情勢、社会資本の整備水準などを総合的に勘案した上で、抑制的なものとなっておりまして、その総額を削減することは適当ではないと思います。したがって、予算の修正は考えておりません。御提出いたしております九年度予算の円滑な審議と一日も早い成立を心から願う次第であります。
最後に、公共投資基本計画についての御意見をいただきました。
この計画は、既に繰り返し申し上げておりますように、本格的な高齢化社会の到来を間近に控えながら、豊かで質の高い生活を支える発展基盤を構築するとの見地から、社会資本整備の基本的な方向を取りまとめたものであります。他方、その具体的な実施に際しては、財政の健全性を確保しながら、それぞれの時点における経済財政情勢を踏まえて、機動的、弾力的に対応していくべきものでありまして、こうした考え方に基づいて進めてまいりたいと考えております。
なお、財政構造改革会議の中では、あらゆる分野について聖域のない議論が行われることになっておりまして、今後ともさまざまな議論が交わされることになると思います。
残余の質問につきましては、関係大臣から御答弁を申し上げます。(拍手)
〔国務大臣古賀誠君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114005254X01319970228/10
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011・古賀誠
○国務大臣(古賀誠君) 北橋議員にお答え申し上げます。
まず、整備新幹線の財源確保についてのお尋ねでございますが、今回の財源スキームの検討過程において、JRの固定資産税の軽減分に着目した財源案が検討されたのは事実でありますが、JRを含め関係者間で調整した結果、今回のスキームについての合意を見たものであります。
次に、国が責任を持って財源を確保すべきとのお尋ねでありますが、整備新幹線は、国土の均衡ある発展と地域の活性化に資するものとしてその整備を推進する必要があることから、その整備方策について長年にわたり検討されてきたところでありますが、特に、平成六年十二月の連立与党申し合わせ及び関係大臣申し合わせにより、未着工区間の整備のための新しい基本スキームを検討し、平成八年中に成案を得ることとされたところであります。これを受けて、政府及び与党においての精力的な検討が進められた結果、今回、ぎりぎりの調整の結果として新しい財源スキーム等についての成案を得て、政府・与党合意がなされたところであります。
また、事業費がさらに膨らむのではないかとのお尋ねでありますが、新規着工区間の事業規模については、御指摘のとおり、昨年十二月二十五日の政府・与党合意で、平成三十年度までの間で、JRの貸付料等を除き、平成七年価格でおおむね一・二兆円程度としており、また、できるだけ建設費の抑制に努め、新たな財源スキームに裏打ちされた事業規模の中で整備してまいりたいと考えております。
公共投資基本計画との関係についてのお尋ねでありますが、整備新幹線については、国土の均衡ある発展と地域の活性化に資するものであることから、平成六年十月に閣議了解された公共投資基本計画において「高速鉄道ネットワークの整備・高度化等により全国的な基幹的ネットワークの整備を推進する。」とされているところであり、この計画に従い、今後とも適切にその整備を推進してまいります。
並行在来線についてのお尋ねでありますが、整備新幹線を建設着工する区間の並行在来線については、JRの経営に過重な負担をかけることを避け、第二の国鉄をつくらないという観点から、従来どおり開業時にJRの経営から分離することとし、具体的には、工事実施計画の認可の前に、沿線地方公共団体及びJRの同意を得て確定することといたしております。その際、地域の足の確保については、これに支障が生ずることのないよう、これにかわる交通機関についで関係者間で十分協議を行い、適切に対処していくことといたしております。
また、貨物輸送の確保についてのお尋ねでありますが、並行在来線の経営分離後の鉄道貨物輸送の取り扱いについては、我が国の物流体系におけるその役割にかんがみ、平成八年十二月の政府与党合意において「並行在来線のJRからの経営分離後も適切な輸送経路及び線路使用料を確保することとし、新幹線鉄道上を走行することを含め、関係者間で調整を図る。」こととされており、これを踏まえ適切に対処していくこととしております。
総合交通体系の整備とその関係についてのお尋ねでありますが、整備新幹線については、国土の均衡ある発展と地域の活性化に資するものであることから、我が国の総合的な交通体系の整備の一環として、その整備を推進することとしておりますが、個々の計画に基づく予算化を見直すことについては、ある施設の利用者の負担で別の施設の整備を図ることが適当か、また国民の理解を得られるかについて、慎重な検討が必要であろうと考えております。
最後に、リニアモーターカーについてのお尋ねでありますが、超電導磁気浮上式リニアモーターカーについては、御指摘のとおり、本年四月から実用化に向けた走行試験を行うこととしており、現時点においては技術開発を進めている段階にあることから、実用化について見通しを述べる段階にはありません。(拍手)
〔国務大臣白川勝彦君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114005254X01319970228/11
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012・白川勝彦
○国務大臣(白川勝彦君) 北橋議員にお答えいたします。
地方公共団体による地域活性化の取り組みを積極的に支援すべきではないかとのお尋ねでございますが、豊かで安心できる、活力ある地域社会を築き上げるためには、地方公共団体の果たす役割は極めて大きなものがあります。自治省といたしましては、従来から、ふるさとづくり事業を初めとして、地方公共団体が行う自主的、主体的な地域振興のための取り組みを支援してきたところでありますが、地方分権の推進や少子・高齢化への対応等、二十一世紀に向けてのさまざまな課題があり、今後ともこれらを踏まえた地域づくりのための施策を積極的に支援してまいりたいと考えております。
次に、財源、権限の自治体移行を大胆に進めるべきではないかとのお尋ねですが、地方分権推進については、国と地方の新しい役割分担に即して、国から地方への権限移譲、補助金等の整理合理化、地方税財源の充実確保などを積極的に進めていくことが必要であると考えております。
以上です。(拍手)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114005254X01319970228/12
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013・伊藤宗一郎
○議長(伊藤宗一郎君) 川内博史君。
〔議長退席、副議長着席〕
〔川内博史君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114005254X01319970228/13
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014・川内博史
○川内博史君 私は、全国新幹線整備法の一部を改正する法律案に関し、民主党を代表して質問をさせていただきます。
交通インフラの建設は、今、二十一世紀の我が国の国民生活、経済活動を展望し、モーダルシフトの進展を先取りした総合的、体系的整備をすべきときを迎えております。空港、鉄道、自動車道、港湾がそれぞれの特性を生かし、また、それぞれの地域の実情に合った整備をされたときに、初めてインフラとしての真価を発揮するものであります。ゆえに、民主党の基本方針は、我が国の総合的な交通網整備の一環としての整備新幹線建設には推進の立場に立つものであります。
日本列島津々浦々、たくさんの人々が新幹線を待ちわびておりますが、現状の計画では二十二年の歳月をかけても、平成三十年になっても全国の新幹線ネットワークは接続しないのであります。
私の地元、九州新幹線西鹿児島−博多ルートがつながるのは一体いつになるのでありましょうか。これでは余りにもせつない。公共投資基本計画は六百三十兆円にも上るというのに、これでは余りにもせつない計画ではないでしょうか。新幹線は、水や空気と同じように、だれしもに必要なソーシャル・オーバーヘッド・キャピタル、社会的共通資本として位置づけをし、もっと短期に集中して取り組むべき課題であります。
整備新幹線の計画決定から既に四半世紀、五%近い成長率を維持していた我が国の高度経済成長時代は遠い過去のものであります。また、さまざまな技術革新、生活様式の変化、多様化、経済活動、消費活動の広域化、グローバル化、モーダルシフトの進捗などにより、我が国の交通、物流が担うべき使命、役割もまた変化を重ねているのであります。それらを見据え、我が国の進むべき進路を見定めた上で効率的な社会資本整備に取り組むべきは、政治が国民から負託をされている最大の課題であると考えます。
しかしながら、まことに残念でありますが、政府・与党においては、交通、物流網について長期的展望に立った体系的な議論は十分には行われておらず、また、その財源に関しても依然として個々縦割りのままであります。ここに整備新幹線問題が厄介者のように扱われる、国民が不信を抱く最大の原因があります。まずは、鉄道、道路、空港、港湾など縦割りになっている財源を統合し、総合高速交通網整備の視点から整備新幹線建設に取り組むべきであると考えております。
そのために、既得権益の温存、公共事業の配分硬直化の原因ともなっている特定財源の見直しが必要不可欠なのであります。その見直しをした上で、新たに総合高速交通体系財源へと再編成をしていくべきであります。行財政の改革再建を高く掲げられている総理がいまだにこの点に取り組まれていないことに関して、民主党は大変に残念である、遺憾の意を表明せずにはいられません。
報道によりますと、ようやく、総理が議長を務める財政構造改革会議におきまして、特定財源制度の検討に着手をされるとのことでありますが、財政再建元年と豪語をされるのであれば、標榜をされるのであれば、本来、来年度予算案はこれらの取り組みの上に編成されてしかるべきなのではないでしょうか。改めて総理のお考えをお伺いいたします。
また、このような民主党の考え方に、運輸大臣は二十四日の運輸委員会において、また大蔵大臣も同じく二十四日の予算委員会において、賛同の意をお示しいただいておりますが、改めて両大臣のお考え、御決意をお伺いさせていただきます。
加えて、民主党は、当面する具体的措置として、およそ三兆四千億円の公共事業費やあるいは特殊法人への補助金、補給金等の削減を提案させていただいております。政府がこれすら実現できないとするならば、国民が整備新幹線問題に納得することは到底考えられないと思います。いかがでしょうか。
次に、昨年十二月のいわゆる政府・与党合意についてお伺いをさせていただきます。
そもそも、このような国家的なプロジェクトは、日の当たる王道を堂々と歩むべきものであります。しかし、今回の政府・与党合意の決着は、まるでこそこそと人目を忍んで駆け込んだとの印象がぬぐえないのであります。本来、我が国の明日を開くはずの、みんながわくわくして待ち望んでいるこの高遠交通綱整備が、あたかも悪者であるがごとき扱いに甘んじているさまは、血税を使われている国民にとっても、また事業を担われる方々にとっても、憤りと不満に満ちた余りに不幸な事態としか言いようがありません。総理、率直な印象をお聞かせください。
収支採算性の見通し、受益の範囲内のJRの負担、並行在来線の経営分離についての沿線自治体の同意、JRの同意等を確認することが着工の条件となることは当然であります。政府・与党は、これを今後検討委員会を設置して行うとしておりますが、本来、これらが確認されてから初めて予算措置等が検討されるべきではないのでしょうか。順序が逆なのでございます。
加えて、政府・自民党首脳間では、政府・与党合意の際、既に北海道及び九州・長崎ルートは着工見送りを確認していたと報道されております。このことは、検討委員会なるものが、設置される前に既に形骸化していることを明白に示すものにほかなりません。このような検討委員会での国民に閉ざされた審議では、国民の一層の不信感を募らせることは明らかなことでございます。国会の場での承認、国民に開かれた議論を保証することが必要と考えますが、総理そしてまた運輸大臣のお考えを伺わせていただきます。
地方の財政負担についてもしかりであります。整備新幹線建設に交付税で手当てをするということは、交付税体系になじまないという批判が聞こえております。自治大臣はこの点に関していかがお考えでございましょう。
加えて、並行在来線を第三セクターで経営するならば自治体の負担が大変に大きくなり、結局、税金として国民にはね返ってくるのではないでしょうか。建設費だけではなく、これら付随するものを合わせ、一体国民の負担がどれほどになるのかを試算し、国民の判断を仰ぐことが一番必要なことであると考えますが、いかがでしょう。
そして、忘れちゃならないのが国鉄清算事業団の莫大な長期債務問題であります。その具体的な償還計画の策定を先送りにしつつ、新幹線と長期債務問題は別個の問題であると理屈をつけ、理屈になりませんが、大プロジェクトに税金をつぎ込むことには、素直に国民の側からの反発があることも御理解をいただかなければならないと思っております。我田引鉄との批判をよそに、やみくもな建設を重ね、あげくにその政策の失敗のツケを国民に回すことになった旧国鉄のてんまつを、国民は決して忘れていないのであります。
政府が、そして政治が、過去の過ちを真摯に反省せずして、このプロジェクトに取り組むことは許されないのであります。今年度中の償還計画策定を果たせなかった政府・与党に反省を促すとともに、政府として国民に謝罪すべきであると考えますが、いかがでしょうか。
整備新幹線建設を切に望まれる声が多く寄せられております。国土の均衡ある発展、地球環境に優しい鉄道に対する世界的な再評価、高齢化社会に適合した交通手段としての役割など、さまざまな論点も示されております。それらの声にこたえるためにも、整備新幹線建設は、交通インフラとして真にその機能を発揮させるために、大胆にかつ着実に取り組んでいかなければならないのであります。
そのために、民主党は、以上述べてまいりましたように、整備新幹線建設着工に当たって、政府が縦割り財源を統合し総合交通網整備の具体的な計画を明示すること、国会において、収支採算性の見通し、投資効果の見きわめ、JRの負担と同意、沿線の住民の皆さん、中でも経営分離をされる並行在来線に頼らざるを得ない地域自治体、住民の同意等を確認し、結論を得ることが前提となるべきと考えております。
さらに、政府は、国鉄清算事業団長期債務償還計画を早急に策定し、その策定をもって全国新幹線鉄道整備法の一部を改正する法律案及び関連する予算を執行することとすべきであります。
最後に、これらの取り組み、また法案の修正を強く求め、改めて総理の御決意を伺わせていただきます。(拍手)
〔内閣総理大臣橋本龍太郎君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114005254X01319970228/14
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015・橋本龍太郎
○内閣総理大臣(橋本龍太郎君) 川内議員にお答えを申し上げます。
まず、道路、空港などの特定財源を見直して総合交通体系財源への再編成を行うべきだという御意見をいただきました。
しかし、現在の利用者の負担というものが、それぞれの施設ごとに受益と負担のバランスを考慮して設定されている事実、また、利用者負担を求めますためにはそれぞれの施設の利用者の理解が前提になっていること、そして交通体系の形成というのはそれぞれの交通機関の競争と利用者の自由な選択が反映されることを原則とすべき、こうしたことを考えましたときに、ある施設の利用者の負担で全く別の施設の整備を図ることが適当か、また国民の御理解を得られるかどうかについては、私は慎重な検討が必要だと思っております。
また、平成九年度予算についで、こうした部分を見直してという御意見がございました。
しかし、平成九年度予算につきましては、医療保険制度改革を初めとする各般の制度改革の実現に努めるとともに、一般歳出の伸び率を一・五%、国債費を除く歳出を租税等で賄える範囲内、そうした努力をいたしますとともに、四兆三千億円の公債減額を実現したものであります。いずれにいたしましても、九年度予算については、限られた財源の中で最善の資金配分を行ったと考えでおりまして、円滑な御審議とともに一日も早い成立を心から願っております。
また、民主党が提案する三兆三千億円の歳出削減について御意見がございました。
歳出削減と整備新幹線の関係ということで申しますならば、私どもは、今申し上げましたように、限られた資金の中で最善の配分をしてきたと考えておりますが、特に整備新幹線につきましては、収支採算性の見通し、JRの貸付料などの負担、並行在来線の経営分離についての地方公共団体の同意、JRの同意などの基本条件が整えられていることを確認をした上で、その取り扱いを厳正に判断していくつもりであります。
また、今回の政府・与党合意の決着について御意見がありました。
整備新幹線は、国土の均衡ある発展と地域の活性化に資するもの、そういう視点からその整備の必要がある、長年の間議論をされてきたものであります。特に、平成六年十二月の連立与党申し合わせ及び関係大臣の申し合わせによって、未着工区間の整備のための新しい基本スキームを検討して平成八年中に成案を得ることとされました。これを受けて、政府・与党においで精力的な検討が進められた結果、ぎりぎりの調整の結果として新しい財源スキームなどについての成案を得、その上で政府・与党の合意がなされたことであります。人目を忍んでと言われましたが、むしろ官邸にもたくさんの方々が乗り込んでこられるぐらい全く人目にさらされたものであったということは、事実として申し上げなければなりません。
次に、検討委員会での論議が国民の理解を得られるようにという御指摘をいただきました。
私は、この御指摘はそのとおり素直に受けたいと思います。そして、今後、政府及び与党から成る検討委員会におきまして作業を進める際には、国民に対する情報の公開に十分配慮してまいりたいと思います。
次に、並行在来線についての御意見がございました。
並行在来線のJRからの経営分離後の代替交通機関につきましては、地域の足の確保に支障が生じることのないように関係者間で十分協議を行いながら、適切な対応が必要だと思っております。
さらに、国鉄長期債務問題について御意見がございましたが、この処理を実施することをできるだけ早く行うことが必要であるということはよく承知をいたしております。同時に、その処理策の検討に当たっては、国民的な議論を十分し尽くす必要があることも事実であります。昨年十二月二十五日の閣議決定を踏まえ、その具体的な処理策については平成九年中に成案を得るべく最大限努力を行ってまいりたいと思います。
最終的にもう一度繰り返して、財源の見直しあるいは交通インフラとしての真の機能を果たすための考え方という点の御指摘がございました。私は、開かれた議論の保証、これは議員の御指摘のとおりであると思いますし、長期債務の処理を急ぐべきであるという御意見もそのとおりに思います。同時に、財源の見直しという点で、ある施設の利用者の負担で全く他の施設の整備を図ることが国民の合意を得られるかどうかについては慎重な検討が必要だと考えておりますし、私どもは、こうした努力の中で将来に向けての総合交通体系としての鉄道の役割を確認してまいりたい、そのように考えております。
残余の質問につきましては、関係大臣から御答弁を申し上げます。(拍手)
〔国務大臣古賀誠君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114005254X01319970228/15
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016・古賀誠
○国務大臣(古賀誠君) 川内議員にお答えを申し上げます。
私にも、新たな総合交通体系財源に再編成していくべきではないかというお尋ねがございました。
二十一世紀に向けて、陸海空、整合性のとれた交通体系の形成と安定的で質の高い運輸サービスの提供を図るため、新幹線鉄道、港湾、空港等運輸関係の社会資本の効率的、効果的な整備を推進する必要がある、当然のことだと思います。
総合交通特別会計を設ける考え方につきましては、利用者の負担がそれぞれの施設ごとに受益と負担のバランスを考慮して設定されていること等に照らせば、ある施設の利用者の負担で別の施設の整備を図ることが適当かどうか、また国民の理解が得られるかについて、慎重な検討が必要と考えております。
運輸省といたしましては、今後とも、国際化の進展、経済構造改革等に対応するために極めて必要性の高い分野、緊急性の高い分野に、効率的な、効果的な予算配分を行いつつ、関係各省と緊密な連携をとりながら、運輸関係社会資本の整備に全力を挙げて取り組んでまいる所存でございます。
また、検討委員会での論議のあり方、国鉄清算事業団の長期債務問題については、総理に御答弁をいただいたとおりでございます。(拍手)
〔国務大臣三塚博君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114005254X01319970228/16
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017・三塚博
○国務大臣(三塚博君) 川内議員にお答えをいたします。
総理大臣が大体すべて懇切丁寧に問題点を浮き彫りにしながら答弁をなさいました。
総合交通体系は極めて重要な政策手段であります。政府においても、長い間、本件についての検討が行われ、提言も行われておるところでございますが、総理からも言われたとおり、また運輸大臣からも、財源のあり方についての基本的な、乗り越えなければならぬ問題点の指摘がございました。
税は政治の根幹でございます。ですから、盛んな議論が国民間に沸き上がることを期待しつつ、その沸き上がることのために国会論議も盛んになりますことが本件の前進につながるものと信じておるところであります。
次に、予算についてお尋ねがありました。
危機的な我が国の財政事情等を踏まえながら、医療保険制度改革を初めとする各般の制度改革がただいま進められておるところであります。今回の予算におきましては、一般歳出の伸び率を一・五%といたしました。九年度物価上昇率の見通し一・六%を下回り、実質的なゼロ査定の予算となりました。この結果、四・三兆円の公債減額、特例公債については四・五兆ということになりますが、本件を予算措置として決定いたし、御提案をいたしております。財政構造改革の第一歩を踏み出したものと考えておるところでございます。
また、厳しい抑制に努める一方、経済構造改革に資する創造的、基礎的研究分野については、重点的配分、科学振興費前年度比一一・九%という思い切った伸び率を達したところでございます。
九年度予算につきましては、全体として抑制を図る中で、重点的、効率的な資金配分を行ったものでございまして、現時点で最善の予算であると考えておるところでございます。どうぞ、九年度予算がスムーズに成立いたしますことが、予算の執行、切れ目のない執行が達成されることによりまして、社会経済に好影響を与えることをよろしく理解をいただき、御協力を賜ります。(拍手)
〔国務大臣白川勝彦君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114005254X01319970228/17
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018・白川勝彦
○国務大臣(白川勝彦君) 川内議員の私に対する御質問は、整備新幹線建設に地方交付税措置を講ずることにしたその理由でございます。
新幹線は国土の高速交通網の骨格をなすものでありますが、一方では、地域住民の利便性を向上し、地域の振興に大きな役割を果たすものであります。このため、関係の地域からは、みずから一定の財政負担を行っても新幹線の整備を推進してもらいたいという強い要望がありました。そのような地方の財政負担に関しましては、未着工区間の関係地方団体の財政力は一般的に脆弱であること、既設の新幹線には地方の負担がなかったこと、新幹線プロジェクトが地域格差の是正にとって重要な意味を有するものであること等を勘案すれば、財源の偏在を是正し、地域格差の解消を目的とする地方交付税による財政措置を講ずることが適当であると判断いたしたものであります。
このような考え方に立って、今般、全国新幹線鉄道整備法を改正し、法律の目的に「地域の振興に資すること」を加えるとともに、JR、国、地方の負担に係る所要の規定を整備し、また、地方の負担がその財政運営に支障を生ずることがないよう、所要の財政措置を講ずることを法定化することとしたものであります。
以上であります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114005254X01319970228/18
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019・渡部恒三
○副議長(渡部恒三君) これにて質疑は終了いたしました。
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住宅金融公庫法等の一部を改正する法律案
(内閣提出)の趣旨説明発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114005254X01319970228/19
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020・渡部恒三
○副議長(渡部恒三君) この際、内閣提出、住宅金融公庫法等の一部を改正する法律案について、趣旨の説明を求めます。建設大臣亀井静香君。
〔国務大臣亀井静香君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114005254X01319970228/20
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021・亀井静香
○国務大臣(亀井静香君) 住宅金融公庫法等の一部を改正する法律案について、その趣旨を御説明申し上げます。
住宅金融公庫は、従来から、国民の住宅建設等に必要な資金を融通することにより、国民の住生活の安定に大きく寄与してきたところでありますが、長寿社会への対応を図る等の政策課題に的確にこたえ、良質な住宅ストックの形成及び活用を促進していくためには、公庫融資制度について諸般の改善措置を講ずることが必要であります。また、近年の金融情勢の変化に対応するため、現下の財政状況を考慮しつつ、公庫が引き続き安定的に資金を融通していくための措置を講ずることが必要であります。
この法律案は、このような観点から、今国会に提出された平成九年度予算案に盛り込まれている良質な住宅ストックの形成及び活用を誘導する金利体系への転換、補給金の平準化を行うための特別損失金による繰り延べ制度の改正等、所要の改正を行うものであります。
次に、その要旨を御説明申し上げます。
第一に、既存住宅融資につきまして、平成九年三月三十一日が適用期限とされている特定の既存住宅に対する優遇措置を恒久化し、高齢者に配慮した住宅等の良質な既存住宅に対して優遇する金利体系とする等の改善をすることとしております。
第二に、住宅改良融資につきまして、高齢者に配慮した住宅等とするための改良工事に対して金利を優遇する金利体系とすることとしております。
第三に、公庫に一時的に発生する余裕金につきまして、その運用対象を拡大することとしております。
第四に、近年の繰り上げ償還の急増により必要となる補給金の平準化を行うため、特別損失金による繰り延べ制度を改正することとしております。
その他、これらに関連いたしまして所要の規定の整備を行うこととしております。
以上が、住宅金融公庫法等の一部を改正する法律案の趣旨でございます。(拍手)
————◇—————
住宅金融公庫法等の一部を改正する法律案
(内閣提出)の趣旨説明に対する質疑発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114005254X01319970228/21
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022・渡部恒三
○副議長(渡部恒三君) ただいまの趣旨の説明に対して質疑の通告があります。これを許します。樽床伸二君。
〔樽床伸二君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114005254X01319970228/22
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023・樽床伸二
○樽床伸二君 私は、新進党を代表して、住宅金融公庫法等の一部を改正する法律案に対し、総理、建設大臣、郵政大臣及び厚生大臣に質問いたします。
まず、昨年末の臨時国会における総理の行政改革そして財政構造改革元年への決意を言葉だけに終わらせるのではなく、その一刻も早い実行を国内外の多くの人たちが望んでいることを申し上げたいと思います。
今、私たちは時代の大きな転換期を生きております。戦後五十年を振り返り、特に五五年体制と言われた時代、それは、高度経済成長期を挟み、常にパイが拡大し続けた時代ではありましたが、その環境の中で行ってきたさまざまな施策を見直すときを迎えております。過去においては有効であったものが、時代の激しい変化の中でその有効性を失ったものが多くあります。それを勇気を持って改めていかなければなりません。これまでの経過がどうのこうのと言って、それにとらわれていては何も変わりません。前進はありません。
私は、この世に絶対ということはないと考えております。ただ一つあるとするならば、それは常に物事は変わっていくということであります。その変化に対応していくことこそが活力の源であると考えます。我が国の活力が低下しているということは、とりもなおさず変化に対応していく力が衰えてきたということを意味しているのであります。ぜひとも、総理におかれましては、勇気を持って変革に取り組んでいただきますように強く要請をいたします。
さて、総理及び建設大臣にお尋ねいたします。
昨年十二月十六日に行政改革委員会から総理に提出された「行政関与の在り方に関する基準」は、同月二十五日の閣議において、それを「最大限に尊重し、その判断基準を活用する。」と決定をされました。その基準によって住宅金融公庫を判断していく意思があるのかどうか、また意思があるとすればいつまでにその判断を行うのか、明確にお考えをいただきたいと思います。
改めて申し上げるまでもありませんが、その基準の基本原則は、一つに、民間でできるものは民間に任す、二つには、国民が必要とする行政を最小の費用で行う、三つには、行政で行うことのメリット、デメリットを総合的、しかも数量的に評価し、それを説明する責任、アカウンタビリティーを果たすということであります。
民間からの住宅金融公庫に対する意見も述べられておりますが、その意見に対しても説明責任を負っていると考えますが、いかがでしょうか。後ほど具体的に質問いたします。
次に、住宅金融公庫は、財政投融資制度、資金運用部のあり方と切っても切れない関係にあります。当然、郵便貯金制度との関係も明確であります。財政投融資五十一兆円のうち、その五分の一に当たる十兆六千億円が住宅金融公庫に貸し付けられております。このことは、財政投融資制度の見直しは住宅金融公庫と密接不可分のものであることを示しております。
そこで、郵便貯金制度を、さきに述べた「行政関与の在り方に関する基準」で判断する意思があるのかないのか、あるとすればいつまでに判断するのか、総理及び郵政大臣にお尋ねいたします。あわせて、財政投融資制度に対する総理の現状認識と評価、さらに、改革をする意思がおありであればその方向性についてもお答えをいただきたく存じます。
さらに、厚生大臣は、郵便貯金制度に対してはすばらしい持論をお持ちであります。私も同じ意見であります。ここで、改めまして、閣僚の一員としての、橋本内閣の主要閣僚としての厚生大臣の郵便貯金制度改革への明確な御意見をお聞かせいただきたいと存じます。(拍手)
また、今月二十六日の予算委員会で、郵政の改革については厚生大臣と郵政大臣の間で意見が異なっております。私は、郵政大臣から暴言と言われた厚生大臣の見解が将来必ず正論になるとの思いは同じであります。この議場におられる真に改革を目指す同志とともに、郵政三事業の改革、あわせて財投の改革の断行を推進していく法案を提起した場合には、たとえ橋本政権のかなめであっても、厚生大臣は賛同していただくことができるかどうか、率直にお聞かせください。(拍手)
また、二〇〇一年までに金融ビッグバンを実行することを政府は内外に広く宣言されておりますが、そのビッグバンについては、銀行、証券の垣根を取り払うといった民間部門同士の話が中心であります。ビッグバンと郵便貯金制度をリンクさせるのか否か、その意思があるのかないのか、あわせて総理及び関係大臣にお尋ねいたします。
次に、住宅金融公庫の設立目的と現状の乖離についてお尋ねいたします。
住宅金融公庫は、昭和二十五年、国民大衆が健康で文化的な生活を営むに足る住宅の建設に必要な資金で、銀行その他一般の金融機関が融通することを困難とするものを融通することを目的として設立されました。しかし、その後の社会情勢の変化、さらには住宅政策の進展、そして民間金融機関の発展によって状況は大きく変わってまいりました。つまり、設立目的である量的補完機能の必要性は、民間金融機関の拡充により低下いたしております。さらに、住宅金融公庫のウエートが住宅対策から景気・経済対策に移り、本来の目的から大きく逸脱して業務範囲、融資制度を拡充し、今や民間金融機関と競合し、圧迫しているとの意見も強く出されております。この見解に対し説明責任を果たしていくことが求められておりますが、納得のいくお答えを求めます。
次に、住宅金融公庫と財政構造改革についてお尋ねいたします。
我が国の財政状況が破綻状態にあることは広く認識されております。国における二百五十兆を超える国債発行残高、さらに、地方分を合わせると国家の借金は総額五百兆円を超えるものであります。平成九年度予算案においては、国債発行十六兆七千億円、そして歳出における国債費が十六兆八千億円、つまり歳入の公債金と歳出の国債費がほぼ同額であります。しかも、その額は全体七十七兆四千億円のうちの二〇%以上であります。
国家財政は、積もり積もった借金の利息だけを払うためにほぼ同じ額の、しかも十七兆円という莫大な借金を繰り返すという財政破綻への坂道を転がり落ちていく状態にあります。この状況を看過することは、もはや許されるものではありません。古今東西の歴史を見るに、その国が衰退するとき、必ずと言っていいほど財政が破綻しているのであります。つまり、国家財政の破綻は国家衰退へのシグナルであります。ゆえに、我々は、子供たちや孫たちの時代にツケを回すことがないように、今我々の責任を果たしていかなければなりません。
そこで、住宅金融公庫に対しては、財投金利と貸付金利の逆ざやを埋めるために、一般会計からの補給金として、平成九年度予算案では四千四百億円が計上され、さらに特別損失金として二千七十七億円が計上されております。さらに、俗に言う国家の隠れ借金として繰り延べされております特別損失金の累計額は六千七百億円に上っております。この状況は、財政構造改革を目指す中で決して見逃すことはできないものであると考えます。この状況に対して、財政構造改革を目指す総理としてどのように考えておられるのか、お聞かせください。
私は、住宅金融公庫が我が国の住宅政策において重要な位置を占め、さらに、国民の住宅取得に多大な貢献をしたことを決して否定するものではありません。いや、そのことを評価さえするものであります。しかし、それはあくまでもこれまでの話であります。また、財政に十分なゆとりがあるときの話であります。高度成長期には、GNPの急激な拡大によって税収は毎年毎年拡大の一途をたどりました。そのときには、拡大した税収、つまり財源を配分するだけですべてがうまくいったのであります。
しかし、今は違います。税収はふえることもなく、ゼロサム的状況にあります。その中では、新たな施策を行うには要らなくなった施策をやめなければなりません。ところが、我が国は、そのやめるということが全くと言っていいほど行われない状況にあります。それでは財政が悪化するのは当然の帰結となるわけであります。
そういった中で、今改めて住宅金融公庫そのものの点検が必要となっております。確かに、住宅金融公庫による融資は、国民にとってはまだまだ人気のあるものであることは事実でありましょう。二十五年を超える超長期の住宅ローンを民間より低い金利で借りることができることは、悪いことではありません。郵貯という入り口から考えると、高い金利で貯金をして低い金利で住宅ローンを借りる、そのことは国民お一人お一人の個人にとったはいいことに決まっております。だれでもそう思うのは当たり前であります。
しかし、その逆ざやを税金によって、つまり国民の負担によって埋めているということを考えるとき、しかも財政が破綻状態にあるということもあわせで考えるとき、立ちどまっていま一度考えなければなりません。しかし、一方で、現状の民間金融機関では供給できない超長期の固定金利ローンの意義があることもまた事実であります。ゆえに、一つの考えとして、住宅金融公庫を保証機関化するという考えもあります。保証業務に特化することにより、民間との関係は、競合から補完関係に変わるのであります。この考えについて総理はどのようにお考えなのか、お答えをいただきたいと存じます。
我が国の政治は、大きくその役割を変えております。かつては、あれもやります、これもやりますといったサービス合戦を行うことを中心として政治が行われてまいりました。しかし、これからは、あれもやめます、これも我慢してください、このように、国民の皆様に甘いことばかりを言うのではなく、将来展望や現状を素直に国民の皆様方にお伝えすることによって、説得をしていかなければなりません。もちろん、政治家がみずから襟を正すことが前提条件であることは言うまでもありません。
そういった中で、住宅金融公庫についても、その根本的見直しをすることなく、運営状態の改善のために財政圧迫要因を強めるごとに強く警笛を鳴らしておきたいと思います。
さらに、住宅金融公庫に限らず、広く特殊法人の問題についてお尋ねいたします。
特殊法人については、現在、さまざまな議論が行われております。我々は、特殊法人を、原則として五年後に全廃し、どうしても必要なものだけを時限立法で存続させる、このように考えております。政府としては行革会議のプログラムの中で幾つかの特殊法人についてはその考えを示しておられますが、全体を貫く方針が不明確であります。私どもの基本方針に対しての総理の御見解と、総理としての基本方針をお伺いいたします。
また、私どもは、このたびの住宅金融公庫法等の改正に対しても、五年という期限を切っての抜本的見直し措置を今回の改正とあわせて行うべきと考えます。建設大臣の御見解をお伺いいたします。
最後に、繰り返し述べてまいりましたが、右肩上がりの時代が終えんし、すべてにおいて根本的見直しが今求められております。このときに、日本国のリーダーとなられた橋本総理の責任はまことに重くかつ大であります。総理におかれましては、戦後五十年の、そして二十世紀後半の半世紀の、これまでのあり方に、手法に、そして発想そのものに幕を引く役割を、そして責任を持っておられることを強く自覚いただきまして、未来への責任を果たしていかれることを改めて強く強く強く要請いたしまして、私の質問を終わります。
ありがとうございました。(拍手)
〔内閣総理大臣橋本龍太郎君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114005254X01319970228/23
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024・橋本龍太郎
○内閣総理大臣(橋本龍太郎君) 樽床議員にお答えを申し上げます。
まず第一点、「行政関与の在り方に関する基準」についてお尋ねがありました。
行政改革プログラムにおきまして、各省庁がそれぞれの行政活動を見直すに当たって、これを「最大限に尊重し、その判断基準を活用する。」ことといたしております。御指摘の住宅金融公庫につきましても、従来から、民間融資との役割分担に配慮しながら融資制度の見直しを図ってまいりましたが、今後とも、御指摘を受けました「行政関与の在り方に関する基準」を活用しながら、見直しを進めでまいります。また、郵便貯金制度につきましても、考え方は同様であります。
次に、財政投融資についての御意見がありました。
財政投融資は、財政政策の中で有償資金の活用が適切な分野に対応する制度であり、従来から果たした役割は議員も御評価をいただいたと思います。そして、その基本的な役割、必要性というものは、私は将来においても残ると思います。しかし、その受け持つ役割は、社会経済情勢の変化などに応じて変わっていくことは当然だと思います。したがって、財政投融資の改革を推進するという基本方針のもとに、対象となる分野や事業について、民業補完また償還確実性といった観点から見直すと同時に、効率的かつ重点的な資金配分に努めでまいりたいと考えておりますし、資金運用審議会の懇談会におきまして、広く専門家の意見を聞きながら、本格的な検討、研究を進めていくことにいたしております。
ちょうど昨年十二月十日、財政投融資の改革を推進するという基本方針のもとで、民業補完の観点も踏まえて、平成九年度財政投融資の編成に当たっては規模のスリム化を図れ、このような指示を出してまいりました経緯もございます。
また、金融ビッグバンと言われる金融システム改革、そして郵便貯金制度についてのお尋ねがありました。
金融システム改革は、二〇〇一年までに我が国の金融市場がニューヨークあるいはロンドンと並ぶ国際金融市場として復権すること、これを目指して広範かつ根本的な改革を行おうとするものであり、強い決意を持ってこれを進めていかなければなりません。
郵便貯金は、高齢化の進展がとりわけ顕著な地域の住民などを含めて、基礎的な金融サービスをあまねく公平に提供するといった意義があり、また金融自由化に対応した金利設定なども行われてきていると思います。ただ、いずれにしても、今後、国がどのような機能を果たすべきなのか、これは聖域なく検討すべきものであると考えておりまして、そのような意味では検討の対象から外すということはありません。
次に、住宅金融公庫に対する補給金などの増大についてお尋ねがございました。
財政構造改革を目指していく中で、着実にその縮減を図っていく必要があることは、私も議員の御意見のとおりだと思います。そのため、十年後に金利を見直す新しい貸し付け方法の導入と、これに対応した資金運用部からの借り入れ方法の弾力化、低金利時の貸付金利水準の引き上げなど総合的な見直しを実施しながら、補給金などの縮減に取り組んでいこうといたしております。
次に、住宅金融公庫の保証機関化についての御意見がございました。
我が国の住宅の現状を考えますとき、住宅金融公庫による長期、固定、低利資金の安定供給、良質なストック形成の誘導施策は引き続き必要だと考えておりますが、民間住宅融資の保証業務のあり方については、今後とも住宅金融を展望する中で研究してまいりたいと思います。
そして、特殊法人について、新進党案に対する見解と政府の考え方という御指摘をいただきました。
私は、特殊法人にはさまざまな形態のものがあること、また、さまざまな政策遂行の継続性、安定性を考えますと、一律に全廃をすることは必ずしも適当ではないと思っております。しかしながら、特殊法人についで不断の見直しを進めていくことは必要であり、自由民主党においても作業を進めていただいていることでありますが、これとあわせて、政府としても、行政改革プログラムに従って整理合理化方針に基づく改革を着実に推進していくとともに、行政監察においても、法人の事業見直し、経営合理化等に重点を置いて取り組んでいくこととしております。
残余の質問につきましては、関係大臣から御答弁を申し上げます。(拍手)
〔国務大臣亀井静香君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114005254X01319970228/24
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025・亀井静香
○国務大臣(亀井静香君) 樽床議員にお答えをいたしますが、議員御指摘のとおり、庶民向けの住宅金融の環境が大きく変わっておることは事実でございます。民間金融機関の役割が極めて増大をしておる、そうした状況の中で、住宅金融公庫の存在価値はどうか、また、その機能についていろいろと御意見があることもまた事実であります。
私は、特に中あるいは低所得者階層の方々、いわば社会的弱者の方々の住宅取得のお気持ちに対して、民間ではなかなか手が届かない点等について、やはり政府がある程度責任を持ってこれを実施していかなければならない、このように考えています。そういう面では、長期的な観点から見ますと、やはり安定的な、できるだけ低い金利でそういう方々に住宅資金を提供していくにはどうしたらいいか、そういう面から見ますと、民間に対する、補完的なことではありますけれども、住宅金融公庫の存在価値というものは今もなおある、私はこのように思います。
しかし、議員も御指摘のように、環境はどんどん変わっていっておるわけでありますから、そういう中で、間を置かずに、議員は五年ということをおっしゃいましたけれども、不断に改革の努力を私はしていかなければならない。今国会にこの改正法案を提出いたしましたのも、その観点からでございますので、御理解をいただきたい、このように思います。(拍手)
〔国務大臣堀之内久男君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114005254X01319970228/25
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026・堀之内久男
○国務大臣(堀之内久男君) 初めに、郵便貯金制度に係る「行政関与の在り方に関する基準」の適用についての御質問でございますが、本基準においては「行政活動を行っている各機関は、まず、自らが行っている活動をここに示した判断基準に基づき早急かつ抜本的に見直す必要がある。」とされております。
郵政省といたしましては、郵便貯金が現在まで果たしてきている役割を踏まえつつ、また二十一世紀を展望したとき、郵便貯金の役割はどうあるべきか等を見きわめながら、この判断基準の適用につきまして十分な検討を加えていく必要があると考えております。かかる考えのもとに、二月六日、郵政審議会に諮問し、二十一世紀を展望した郵便局サービスのあり方等について、幅広い分野の専門家の方々に、この判断基準を踏まえた検討、研究をお願いいたしておるところであります。
なお、郵政審議会で、この審議の状況にもよりますが、夏までにひとまずの御提言をちょうだいできることを期待いたしております。
次に、金融システム改革と郵便貯金の関係についての御質問がございましたが、これまでも予算委員会で総理からたびたび御答弁は申し上げておりますが、今回の金融システム改革の中で一義的なものとして公的金融を取り上げているわけではありませんという御答弁でありますが、すなわちビッグバンと公的金融とは連動いたさない、こういうように私も理解しておるところであります。(拍手)
〔国務大臣小泉純一郎君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114005254X01319970228/26
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027・小泉純一郎
○国務大臣(小泉純一郎君) 樽床議員にお答えいたします。
郵便貯金制度についての意見を述べよということでございますが、私が主張しているのは郵便貯金制度だけではありません。郵便貯金も簡易保険も、郵便事業いわゆる郵政三事業民営化がなぜ必要かといいますと、それは郵政省だけの改革ではありません、この三事業民営化は、行政、財政、金融、さらには財政投融資制度、特殊法人の統廃合等、抜本的な改革につながると思うから主張しているわけであります。(拍手)
私は、郵便局の仕事は重要だと思っております。郵便局の仕事をなくせと言っているのじゃないのです。あの郵便局の仕事は役人でなくでもできると言っているのです。(拍手)
今年度予算においても、十六兆円以上の税金が、何の新規の政策事業に使われないで、ただただ今までの借金の利払い償還に回ってしまいます。九年度予算においても、十年度予算においても、十一年度予算においても、十六兆円、十七兆円、十八兆円という貴重な国民の税金が、ただただ今まで国債を買ってくれた人の懐に行ってしま一で、何の新規の政策事業に使われない状況を我々はどう思うのか。そういう中だからこそ、各党が前回の総選挙で行政改革が必要だと言って戦ってきたと思うのであります。
私はこれを考えますと、まず財政再建、みんな異論がない。増税も反対、これも異論がない。国債を発行して若い世代にツケを回す、これもいかぬ、賛成だ。じゃ、あとどうするのですか。そうしたらば、歳出削減しかない。そうだったらば、今一番使われている政策経費は社会保障と公共事業です。社会保障は十四兆五千億円、公共事業は十兆円弱、これを幾ら削ったって、四兆、五兆という額は、私は削れないと思います。となるならば、すべて聖域なしという橋本内閣の方針のもとで歳出を見直さなきゃならない。
その場合には、全部削っていったら経済が縮小均衡してしまう。経済成長をもたらすような経済政策も考えなきゃいかぬ、経済の活性化も考えなきゃいかぬというのならば、役所がやらなくても民間でできることは全部任した方が、民間企業はもうけを上げなきゃ倒産しちゃうから、利益を上げる。利益を上げて、なおかつ国民にサービスを提供するのです。税収は上がってくる、さまざまなサービスを展開してくれる、なおかつ経済は活性化する。そういう方向でやるならば、私は、将来、郵政三事業民営化は必要であり、また可能ではないかと。
そして、ことしじゅうに旧国鉄清算事業団の債務は二十兆円を超えると言われております。この二十兆円を超える債務を国民負担に寄せるのじゃなくて、郵政三事業初め政府関係機関の民営化できるところは全部民営化して、その株式売却益を旧国鉄債務の返還のために充てるべきではないか。(拍手)
そして、できるだけ国民の負担は避けなきゃいかぬ。増税を避ける、国債の増発を避ける方法を今我々は真剣に考えなきゃいけないと思っております。そういうことから郵政三事業民営化を必要としているわけでありまして、これからも皆さんの御理解、御協力をお願いしたいと思います。
そして、樽床議員は、新進党が郵政三事業民営化法案を出せば賛成するかというお尋ねであります。私は賛成します。(拍手)
閣僚は発言を慎重にせよと言われておりますので、この程度で答弁を終わらせていただきます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114005254X01319970228/27
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028・渡部恒三
○副議長(渡部恒三君) これにて質疑は終了いたしました。
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114005254X01319970228/28
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029・渡部恒三
○副議長(渡部恒三君) 本日は、これにて散会いたします。
午後一時四十四分散会
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114005254X01319970228/29
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