1. 会議録本文
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000・会議録情報
平成九年四月八日(火曜日)
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平成九年四月八日
午後一時 本会議
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○本日の会議に付した案件
健康保険法等の一部を改正する法律案(内閣提
出)の趣旨説明及び質疑
午後一時二分開議発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114005254X02319970408/0
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001・伊藤宗一郎
○議長(伊藤宗一郎君) これより会議を開きます。
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健康保険法等の一部を改正する法律案(内閣
提出)の趣旨説明発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114005254X02319970408/1
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002・伊藤宗一郎
○議長(伊藤宗一郎君) この際、内閣提出、健康保険法等の一部を改正する法律案について、趣旨の説明を求めます。厚生大臣小泉純一郎君。
〔国務大臣小泉純一郎君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114005254X02319970408/2
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003・小泉純一郎
○国務大臣(小泉純一郎君) 健康保険法等の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明申し上げます。
二十一世紀に向けて、社会経済の活力を損なわず、公平公正で効率的な社会保障制度を確立するためには、社会保障の構造改革を進めていくことが必要であります。社会保障制度の中核となる医療保険制度については、将来にわたり制度を安定的に維持していくための総合的な改革が急がれますが、一方、当面の財政危機を回避し、安定的運営を確保することは、今後どのような医療保険制度の構造改革を進めていくとしても、避けては通ることができない喫緊の課題であると考えております。
今回の改正は、引き続き医療保険制度の改革を着実に進めていくことを前提として、制度の安定的運営の確保、世代間の負担の公平等を図るため、給付と負担の見直し等の措置を講じようとするものであります。
以下、この法律案の主な内容について御説明申し上げます。
第一は、健康保険法等の改正であります。
まず、医療保険制度及び老人保健制度の全般にわたる改革を図るため、その基本的事項について審議する場として、既存の審議会を統合し、新たな審議会を設置することとしております。
次に、一部負担の見直しであります。
被保険者本人の一部負担の割合について、経過措置を廃止し、法律本則に規定する二割とすることとしております。また、薬剤使用の適正化等を図るため、新たに外来の際の薬剤について、一種類一日分につき十五円の負担を設けることとしております。
次に、政府管掌健康保険の保険料率の改定であります。
政府管掌健康保険については、財政収支の均衡が図られるよう、一部負担の見直しとあわせて、保険料率を現行の千分の八十二から千分の八十六に改定することとしております。
また、船員保険法等についても、健康保険法の改正と同様に、一部負担の見直しを行うこととしております。
第二は、国民健康保険法の改正であります。
まず、健康保険法の改正と同様に、外来の際の薬剤に関する一部負担を設けることとしております。
次に、低所得者の保険料軽減分を公費で補てんする保険基盤安定制度に係る国庫負担の特例措置を平成十年度までとし、段階的に国庫負担額を増額することとしております。
また、国民健康保険組合の国庫補助については、国民健康保険の本来の被保険者である者に係る保険給付費等についての国庫補助は従来のとおりとし、健康保険の適用除外承認を受けて新たに国民健康保険組合の被保険者となる者等に関しては、健康保険における国庫補助の割合を勘案した補助を行うこととしております。
第三は、老人保健法の改正であります。
まず、老後における健康の保持を図る観点から、訪問指導についで、寝たきり等の者以外の者に対しても行うことができるよう、対象者の拡大を行うこととしております。
次に、老人医療費を支えている現役世代と高齢者世代との公平、給付と負担の合理化等の観点から、一部負担金の額を見直すこととしております。
外来一部負担金の額については、同一の月に同一の保険医療機関等ごとに、一月千二十円から、四回の支払いを限度として一日五百円に改めることとしております。
入院一部負担金の額については、一日七百十円から一日千円に改めることとしております。この場合、低所得者に係る入院一部負担金の額については、現在は二月を限度として一日三百円としておりますが、これを一日五百円に改めることとしております。
さらに、外来及び入院の一部負担金の額については、二年度ごとに、一日当たり医療費の伸びに
応じて改定することとしております。
また、健康保険法の改正と同様に、外来の際の薬剤に関する一部負担を設けることとしております。
最後に、この法律の施行期日は、一部の事項を除き、平成九年五月一日としております。
以上が、健康保険法等の一部を改正する法律案の趣旨でございます。(拍手)
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健康保険法等の一部を改正する法律案(内閣
提出)の趣旨説明に対する質疑発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114005254X02319970408/3
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004・伊藤宗一郎
○議長(伊藤宗一郎君) ただいまの趣旨の説明に対して質疑の通告があります。順次これを許します。根本匠君。
〔根本匠君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114005254X02319970408/4
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005・根本匠
○根本匠君 私は、自由民主党を代表して、健康保険法等の一部を改正する法律案について、総理並びに関係大臣に質問をいたします。
総理は、国民一人一人が将来に夢や目標を抱き、創造性とチャレンジ精神を存分に発揮できる社会、世界の人々と分から合える価値をつくり出すことのできる社会を目指し、行政、財政、社会保障、経済、金融システムに教育を加えた六つの改革を断行する決意を示されました。まさに変革の時代の到来であり、我が国の経済社会は大きな転換点に立っております。
二十一世紀の少子・高齢社会に向けて、社会経済の活力を維持しつつ、将来を担う子供たちやお年寄りが安心して暮らせる社会を実現するためには、私は、高齢者も含めた各人の自立自助を基本としながら、真に必要なサービスについては社会連帯のきずなを強化していくべきであると考えます。このためには、あらゆる困難を乗り越え、社会保障制度の構造改革を早急に進めなくてはなりません。そこで、社会保障の構造改革にどのように取り組んでいかれるのか、総理及び厚生大臣の御所見をお伺いいたします。
次に、社会保障制度の構造改革を進める中で、医療については、この際、制度の基本から見直し、抜本的な改革を行う必要があると考えます。これまで我が国では、国民皆保険体制のもとで、国民だれもがいつでも安心して適切な医療を受けることができました。しかし、高齢化の進行などによる医療費の大幅な増加と近年の経済の低成長により、医療保険各制度は構造的な赤字体質に陥っております。抜本的な改革に今こそ全力で取り組まなければなりません。
具体的には、市場取引の実勢にゆだねるという原則に立った薬価基準制度の根本的見直し、国民に開かれた良質で効率的な医療提供体制の構築、新しい時代にふさわしい、自立した高齢者像を踏まえた老人保健制度の見直し、より合理的な診療報酬体系の整備などであります。今後の医療保険改革の課題とその進め方について、総理と厚生大臣にお尋ねいたします。
なお、現在、介護保険法案が審議中でありますが、医療と介護の連携についての厚生大臣のお考えをお伺いいたします。
しかしながら、医療保険の抜本改革を進めたとしても、高齢化の進行などにより今後なお増加が見込まれる医療費は、保険料、患者負担、公費負担のいずれかにかかわらず、国民のだれかが負担しなければなりません。私は、患者負担の見直しを中心とする制度改正はやむを得ないと考えますが、あくまで臨時応急的な措置であり、抜本的な改革がその大前提であります。今回の改正は当面の財政対策ではないのかとの意見もありますが、今後の医療保険改革の中で今回の法案をどのように位置づけておられるのか、厚生大臣にお伺いいたします。
医療保険の抜本改革により、一層効率的で良質な医療を国民に提供していくことができるようになると考えられますが、改革には同時に痛みを伴います。国民各層の意見に丁寧に耳を傾け、改革の具体的な内容とその必要性について十分に国民に説明し、理解と合意を求めながら進めていく必要があります。
抜本改革は、今や待ったなしであります。医療保険を初めとする医療制度全体の抜本改革に向けて国民的議論を展開し、速やかに具体的な対策を講ずるとともに、当面直面する医療保険財政の安定のため、国会の審議を通じ、国民の幅広い意見を十分に聞きながら、今回の改正を早急に実施する必要があると考えます。総理及び厚生大臣の強いリーダーシップを期待いたします。
医療保険を初めとする我が国の社会保障制度は、我々の先達が営々と築き上げてきた、世界に誇り得る制度であります。このすぐれた社会保障制度を効率的で安定的なものにし、次の世代に引き継いでいくことが、二十一世紀を目前に控えた現在に生きる我々の使命であることを訴え、質問を終わります。(拍手)
〔内閣総理大臣橋本龍太郎君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114005254X02319970408/5
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006・橋本龍太郎
○内閣総理大臣(橋本龍太郎君) 根本議員にお答えを申し上げます。
まず、社会保障構造改革についてのお尋ねであります。
急速な少子・高齢化の進展に伴う国民の需要の変化に対応しながら、適切にそれにこたえ、医療、年金、福祉などを通じて給付と負担の均衡がとれ、かつ経済活動と両立し得る、サービスの選択、民間活力の発揮といった考え方に立ちながら、効率的で安定した社会保障制度を確立していかなければならないと考えております。そうした視点に立って社会保障構造改革を進めていくこととしておりまして、その第一歩として、介護保険制度の創設とともに医療保険制度の改正につき今国会での御審議をお願い申し上げております。
また、医療保険改革につきましては、まさに二十一世紀に向けて社会保障構造改革の一環として取り組んでいかなければなりません。このために
は、議員からも御指摘がありましたが、薬価差問題の解消のための薬価制度あるいは診療報酬体系の見直し、さらに医療提供体制の見直しなどにつきまして、平成九年度からその取り組みを開始し、さらに医療保険制度における高齢者の位置づけを見直すなど、総合的かつ段階的に改革を進めてまいりたいと考えております。
残余の質問につきましては、関係大臣から御答弁を申し上げます。(拍手)
〔国務大臣小泉純一郎君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114005254X02319970408/6
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007・小泉純一郎
○国務大臣(小泉純一郎君) 根本議員にお答えします。
社会保障構造改革についてのお尋ねでありますが、個人の自立自助が基本でありますが、それには限界があります。個人では対処でき得ない事態については社会全体で援助し国民生活の安定等を図る、この仕組みを考えることだと思っております。こうした社会保障の役割を踏まえた上で、国民経済との調和を図りつつ、国民のさまざまな要請に適切にこたえるという基本的な考え方に立ち、効率的で安定した社会保障制度を確立するよう、その構造改革に取り組んでいきたいと思います。
医療保険改革についてですが、老人医療制度のあり方や診療報酬体系の見直し、薬剤使用の適正化、医療提供体制の見直しなど、医療提供体制及び医療保険制度の両面にわたって構造改革に取り組む必要があると思います。これらの改革については、昨日取りまとめられました与党医療保険制度改革協議会の医療制度改革の基本方針を踏まえ、国民の意見の集約を図りながら、二〇〇〇年を目途に実現するよう精力的に取り組んでいきたいと思います。
医療と介護の連携についてですが、介護保険制度の創設は、老人福祉と老人医療とに分立している現在の制度を再編成し、施設、在宅を通じて、保健、医療、福祉にわたる介護サービスを総合的、一体的に提供することをねらいとしたものであります。また、あわせて、介護を医療から切り離し、社会的入院解消の条件整備を図るなど、医療の効率化にも資するものであり、今後の社会保障全体の構造改革を進めていく第一歩となるものと思います。
今回の法案の位置づけですが、医療保険改革については、二十一世紀に向けて、医療提供体制及び医療保険制度の両面にわたる改革を総合的に実施していく必要があると考えますが、こうした改革を進めていくためにも、現行医療保険制度の財政の安定を確保していくことが喫緊の課題であります。医療保険改革の第一段階として、平成九年度に給付と負担の見直し等の制度改正を実施することとしておりますので、御理解をお願いしたいと思います。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114005254X02319970408/7
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008・伊藤宗一郎
○議長(伊藤宗一郎君) 岡田克也君。
〔岡田克也君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114005254X02319970408/8
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009・岡田克也
○岡田克也君 私は、新進党を代表して、ただいま議題となりました健康保険法等の一部を改正する法律案につきまして、橋本総理並びに小泉厚生大臣に質問をいたします。
総理、まず私がお聞きしたいのは、社会保障制度改革についての総理の基本的な考え方であります。
橋本総理は、いわゆる六つの改革の一つとして、社会保障構造改革の必要性を強調されています。しかし、その道筋は明らかではありません。
今、国民は、この国の社会保障制度の将来について大きな不安を持っています。急速な少子・高齢化社会の進展の中で、今後の社会保障費が増大することはだれの目にも明らかであります。しかし、働く世代の負担にも限りがあります。年金は本当にもらえるのだろうか、質の高い医療が今後も受けられるのだろうかといった疑問の声が、私と同世代または若い世代から上がっています。
今政治に求められているのは、これらの不安を解消するために、将来の社会保障制度の明確な改革ビジョンを示すことであります。総理の社会保障制度改革に対する基本的な考え方、方向性を、この場をかりて、国民に対して明らかにすることを求めます。
また、この問題に関連して、より具体的に二点質問いたします。
第一に、先般の財政構造改革会議は「国民負担率が五〇%を超えないよう経済、財政と調和のとれる社会保障制度を構築する」と決定しました。また、二〇〇五年までのできるだけ早い時期に赤字国債の発行をゼロにするとしています。これらの目標を本当に達成するためには、社会保障制度の抜本改革が不可欠となりますが、これは果たして実現できるのでしょうか。また、その際、全体予算に占める社会保障予算の割合、位置づけはどうなるのでしょうか。総理にお伺いをしたいと思います。
第二に、世代間の負担の問題についてお聞きをいたします。
私は、この問題に対し政治が率直に語ることが社会保障制度改革の実現の第一歩であると考えます。世代間の負担について、総理は基本的にどのように変えようとしているのでしょうか。言葉をかえれば、高齢者に対し、どのような考え方で、どの程度の負担増を求めようとしているのか、明快な答弁を求めます。
次に、医療保険制度改革の基本的視点についてお伺いします。
政府は、どのような視点で構造改革を行おうとしているのでしょうか。基本的視点を欠く改革は、結局は利害関係者の妥協の産物になってしまいます。
私は、診療報酬制度により物やサービスの価格が細かく決められている現状は、わかりやすく言
えば、ソビエト型社会主義経済と同じ状態であると考えます。その結果、価格競争の余地はなく、また民間活力を生かすことも難しい状態にあります。私は、たとえ部分的であっても、市場メカニズムが働き競争が行われることが、医療の分野における効率性を上げるために極めて重要と考えます。また、競争がないことが、不正や不公正が発生する余地を大きくします。これを防ぐためには、幅広く情報公開を行っていく必要があると考えます。医療保険制度改革は競争原理の導入と情報公開を中心に行うべきなどの私の考え方に対する厚生大臣の見解を求めます。
同時に、価格メカニズムが十分機能するためには、医療行政に特有な民間企業のカルテル体質を打破しなければなりません。予算委員会でもたびたび取り上げられた医療食や病院寝具をめぐる独禁法違反事件は、診療報酬制度の硬直性や不透明性を悪用したものと言えます。加えて、最近、厚生省所管の全国福祉用具製造事業者協議会の会長会社が独禁法違反容疑でまたも立入検査を受けました。このような医療分野においで根深く存在している一部企業の競争制限行為について、これを全面的に見直し、是正する気持ちがあるのか、厚生大臣にお伺いをいたします。
次に、医療保険制度改革の進め方について、二点伺います。
消費税の引き上げ、特別減税打ち切りの中で、約二兆円の医療保険の負担増が提案されていることに対し、国民各層から強い反対の意思表示がなされています。しかし、国民は単に負担増に反対しているのではありません。負担増を求めるに際しての手順、プロセスに対して怒りを覚えているのであります。本年一月の医療保険審議会は、今回の改革案は「負担増が中心であり、制度の総合的な改革に向けての取り組みが十分でなく誠に遺憾である」と、政府の審議会としては異例の答申を行っています。なぜ構造改革に着手することなく負担増のみを求めようとしているのか、総理の見解を伺います。
次に、改革のスピードの問題があります。
医療制度改革は、既に政府の各種審議会において論点の整理ができており、あとは政治家が大局的な見地から決断をする段階に来ています。私は、国民負担増を求めるのみの法案を撤回し、一年間に期限を切って抜本的な構造改革の徹底的な議論を行い、構造改革と負担増をセットで行うべきではないかと考えます。この点について、総理の見解を伺います。
次に、法案の具体的内容について質問いたします。
第一に、老人の負担増についてであります。
私は、負担増を言う前に、少子・高齢化時代における老人医療のあり方について基本的な考え方を明示することが政治の責任であると思います。単なる負担増には反対であります。
老人保健に対する拠出金制度が健保組合赤字の原因であり、これ以上、現役世代の負担増には限界があります。私は、高齢者は社会全体で支えていくとの理念のもと、高齢者独自の制度をつくるとともに、その財源については基本的に税金で対応すべきと考えます。私の考えも含めて、老人保健制度についてどのような改革をしようとしているのか、お伺いをいたします。
また、老人の負担について、定額か定率かの議論があります。この問題について、小泉厚生大臣は、予算委員会における私の質問に対して、今国会では定額制で推進していきたい、将来についてはしばらく見ないとわからない、こういうふうに答弁をされました。厚生大臣御自身が定額制に対して疑問を持っているようにも聞こえます。政府が現在国会に提出している介護保険法案で、老人に定率一割の自己負担を求めていることも考え合わせれば、医療についても将来一割の定率負担とすることが論理的ではないかと考えますが、この点について厚生大臣の率直な御意見をお伺いしたいと思います。
第二に、薬剤費の新たな負担についてであります。
本案では、薬剤については新たに窓口で一日一種類十五円の負担を課すことになっています。しかし、価格の高い薬も低い薬も負担が同額であるならば、患者側からすれば個々の薬のコストは全くわからないわけであります。これではコスト意識を持ちようがありません。何のために薬剤について定額制にしたのか、またなぜ十五円であるのか、明快な答弁を求めます。私は、日本の国際的に見て明らかに高い薬価の抜本的引き下げが薬剤費負担導入の前提条件であると考えます。また、新薬の価格設定に当たり、一部政治家の不当な介入が行われているのではないかとの報道があります。私は、このような疑念を払うためにも、新薬の価格算定プロセスを完全に公開すべきであり、またそのことは政治家の決断により十分可能であると考えます。厚生大臣の見解を求めます。
最後に一言申し上げます。
私は、さきの予算委員会において、私の質問に対し小泉厚生大臣が次のようにお答えになったことを大変印象深く記憶しております。すなわち、医療保険制度改革についで、構造改革をせよせよと言う人は多いのですけれども、あらゆる聖域をなくして歳出削減をせよと言っているような人でもなかなかまとめ切れない、いかに民主主義というのは合意形成が難しいかということを痛感いたしました、このように述べられたわけであります。私は、率直に申し上げて、郵政三事業の民営化に信念を曲げずに閣内で孤軍奮闘しておられる厚生大臣らしからぬ弱気な答弁であると感じました。
しかし、さまざまな反対論を説得し、最後は政治の決断を行うことがすなわち改革であります。厚生行政に深い経験を持つ橋本総理と小泉厚生大
臣がみずからのしがらみを断ち切って改革を断行することなくして、他の分野における改革実現は到底不可能であります。
与党医療保険制度改革協議会のまとめた基本方針が昨日発表されました。診療報酬や薬価の扱いについて、当初伝えられた案よりも大幅に後退したとマスコミは一斉に報道しています。この間、調整は与党協議会にゆだねられ、自民党総裁でもある橋本総理のリーダーシップは発揮されませんでした。これで本当に六つの改革はできるのでしょうか。
医療保険分野における構造改革に取り組む総理並びに小泉厚生大臣の決意を最後にお伺いして、私の質問を終わります。(拍手)
〔内閣総理大臣橋本龍太郎君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114005254X02319970408/9
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010・橋本龍太郎
○内閣総理大臣(橋本龍太郎君) 岡田議員にお答えを申し上げます。
まず、社会保障構造改革についてのお尋ねがございました。
先ほどもお答えをしたことですけれども、急速な少子・高齢化の進展に伴う国民の需要の変化に確実に対応しながら、医療、年金、福祉等を通じて給付と負担の均衡がとれ、しかも経済活動と両立し得る、サービスの選択、民間活力の発揮といった考え方に立った、効率的で安定した社会保障制度を確立していかなければならないと考えております。そうした視点に立って社会保障構造改革を進めていくこととしており、その第一歩として、介護保険制度の創設と医療保険制度の改正について、今国会で御審議をお願い申し上げております。
財政構造改革につきましては、我が国の財政状況が極めて深刻でありますことから、先般の財政構造改革会議で明らかにいたしました財政構造改革五原則にのっとって、改革の実現を図りたいと考えております。社会保障予算につきましては、歳出全般の見直しの一環として、十三の重点の項目の一つとしてこれをとらえておりますが、今後、医療、年金を中心に必要な見直しを行うなど各分野の合理化を図りながら、必要な給付は確実に保障していくという考え方で取り組んでいきたいと思います。
次に、世代間の負担についてのお尋ねがございました。
高齢化に伴って増加が避けられない社会保障の費用をどのように公平に負担していくか、十分な国民的論議を経た国民の選択によるべきものだと思います。しかし、高齢者の経済的な水準が既に相当なものとなっていること、また今後の高齢者の増加を考えますと、社会の自立した構成員としての高齢者にも応分の御負担をお願いし、現役世代と高齢世代の間の負担の公平を確保していくことが大切だと考えております。
次に、医療保険の負担増の提案に対して、なぜ患者の負担増のみを求めるのか、さらに、医療保険の構造改革と患者負担の見直しをあわせて実施すべきではないか、そうした御質問とともに、構造改革に取り組む決意についてのお尋ねがございました。
二十一世紀に向けて社会保障構造改革を推進していく必要があることは御理解をいただけるものと思いますし、その一環として医療保険制度の改革に取り組んでいく考えであります。そのためにも、老人医療制度のあり方や診療報酬体系の見直し、薬剤使用の適正化、医療提供体制の見直しなどについて早急に着手するなど、抜本的な改革を進めてまいります。こうした改革を進めていくためにも、現行の医療保険制度の財政の安定を確保していくことが緊急の課題でありますことから、医療保険改革の第一段階として、平成九年度に給付と負担の見直しなどの制度改革を実施することといたしたわけであります。
残余の質問につきましては、関係大臣から御答弁を申し上げます。(拍手)
〔国務大臣小泉純一郎君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114005254X02319970408/10
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011・小泉純一郎
○国務大臣(小泉純一郎君) 岡田議員にお答えいたします。
競争原理の導入と情報公開の推進が必要でないかというお尋ねですが、大筋で、基本的に私も同感であります。医療における情報公開についても、私は今後積極的に取り組んでいきたいと思います。
企業の競争制限的な行為はどうかというお尋ねでありますが、平成八年五月に、医療食については医療用食品加算制度を廃止するとともに、本年三月、財団法人医療食協会の解散を認可したところであります。また、病院寝具の代行保証契約については義務づけを廃止するなど、厚生省は関与を行わないことにいたしました。今後とも、公正な競争が阻害されないように適切に指導をしていきたいと思います。
老人保健制度についてのお尋ねですが、現在でも年間八兆円を超える老人医療費を税により賄うこととすれば、これは大幅な公費負担増となるという問題点があります。税だけではなかなか難しい。こういう点も含めて、私は、今後、制度改革について、いろいろな意見を聞きながら抜本的な検討を進めていきたいと思います。
それから、定額の負担はどうなのか、定率負担の方が論理的ではないかというお尋ねであります。
論理的といえば確かに論理的なのです。それができないところに難しいところがある。それも含めて、できるだけ論理的なものにしたいという気持ちは、私にあります。しかし、こういう問題については、将来の一部負担はどういうあり方かというのはこれから議論されるわけですから、その中で世代間の公平や高齢者の経済能力等を考慮しながら今後検討を進めていきたいと思います。
それから、薬剤費負担を十五円の負担とした理由はどうかということですが、薬の使用量に応じた薬の一部負担を新たに設ける。これは、若人の
給付率が各制度で異なっております。若人と老人を通して公平な負担をお願いするということからしたわけですが、今は老人の薬剤費の一種類一日分の額が百五十円程度であります。その一割というとちょうど十五円でしょう。ということで十五円としたわけであります。
それから、薬価基準の算定なんですけれども、これは確かに、現在の薬価基準、価格設定は問題があります。新薬の価格算定プロセスの公開についで、これは、薬価の算定方式等の一般的ルールについては中央社会保険医療協議会の建議等に基づき定められておりますから、その取り扱いについては公表しているところであります。新薬の価格設定については、このルールに基づき算定を行っておりますが、国民に適切な情報を提供する観点から、今後その算定根拠の公表に向けて取り組んでいきたいと思います。
それから、今後の医療保険分野における構造改革に取り組む厚生大臣の決意いかん、郵政三事業に比べて歯切れが悪いんじゃないか。確かにそうなんですが、これは、現実に法案を出している、多数の意見が賛否両論に分かれて各党がみんな法案を出している段階、こういう段階においては、当然現実論というものも考えなきゃいかぬ。そして、しがらみがありますけれども、私は今後できるだけそのしがらみを打破する努力をしなきゃいかぬと思っております。
これから二十一世紀に向けて、医療提供体制あるいは医療保険制度の両面にわたって総合的、段階的に実施をしていく必要がありますので、私はこれからも、今回の法案を提出したことによって、その抜本的な意見がいろいろ出ておりますから、この機運をとらえて今後早急に抜本的な改革に取り組んでいきたいと思いますので、御理解をお願いしたいと思います。(拍手)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114005254X02319970408/11
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012・伊藤宗一郎
○議長(伊藤宗一郎君) 中桐伸五君。
〔中桐伸五君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114005254X02319970408/12
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013・中桐伸五
○中桐伸五君 私は、健康保険法等の一部を改正する法律案に対して、民主党を代表して、質問いたします。
橋本総理、総理は、内閣の成立に当たって、行財政改革に対する強い決意を「火だるまになっても実行する」と表現されました。少子・高齢化が他国に類のない速さで進む我が国において、引き続いて国民が安心して良質な医療を受けられるようにするためには、医療制度及び医療保険制度においても行財政改革の断行は避けて通れない課題となっております。しかるに、今回の政府案は、医療制度及び医療保険制度改革に向けた明確な道筋を示さず、専ら保険料及び患者自己負担増のみを国民に押しつけようとするものであり、まさしく構造改革なき負担増法案となっております。
今回の政府案による法律改正を実施しても、政府管掌健康保険の財政は、政府みずからが試算しているように三年ともたないものであり、このような保険財政の危機を一時的に先延ばししようとするだけの政府案に対しては断じて承認することはできないと考えるものであります。
民主党は、何よりもまず、今回の改正案が引き続く医療制度及び医療保険制度の構造改革の第一歩であることを明確に示し、同時に、その後の改革のプロセスを明らかにすることを強く求めるものであります。
これらの点に関しては、総理の諮問機関である社会保障制度審議会の平成九年一月三十一日付答申においても、このまま放置すれば医療保険制度は早晩破局を迎えること、今回の改正案が当面の緊急避難的な保険財政の安定化策に偏っていること、したがってすべでの医療保険の抜本的な改革を行うべきであること、さらに、その改革スケジュールを政府の方針として早急に示すことを厳しく求めております。この答申に責任を持つ立場にある総理の御見解を伺いたいと思います。
国民が良質で効率的な医療を受けられるためには、何よりも医療を提供する側と利用する者との間に信頼関係が確立されていく必要があり、そのために医療の提供者にはインフォームド・コンセントの実践が不可欠となっております。この意味で、第百三十九回臨時国会に提出された医療法の改正案の中に、医療提供に当たっての説明に関する努力規定が盛り込まれたことは、一歩前進と評価できますが、民主党はさらに一歩進んで、医療提供者に対してカルテやレセプト等の患者への情報開示を推進し、また患者に対しては権利保障や苦情処理のための法制度上の整備を図っていく必要があると思いますが、厚生大臣の御見解を伺います。
また、私たちは、医療サービスの質を評価することの難しさは認めつつも、それだからこそ、医療機関情報やそれに基づく医療機能評価を積極的に公開すること、また、個々の医療機関みずからが機能を評価し、みずから改善計画を策定し、これを公表していく、いわゆるポジティブアクションの仕組みを新たに導入する必要があると考えますが、この点についての厚生大臣の見解を伺います。
我が国における人口当たりの病院及び診療所数や病床数は、先進国に比べても多く、供給過剰状態にある上に、高度医療を担う病院と第一線医療を担う医療機関との機能分担と相互連携は不明確かつ不十分であります。また、慢性疾患の長期療養を中心とするいわゆる老人病院は、社会的入院を相当数引き受けている現実があり、また我が国の平均在院日数は先進国と比較して格段に長くなっております。
そこで、民主党は、医療提供体制の抜本的改革として、二〇〇〇年をめどとした公的介護保険制度の導入と介護力の強化を前提に、一般病床数の削減や医師数の削減を行うとともに、かかりつけ医制度の明確化と機能の強化及び急性期医療に的確に対応する医療機関の制度的な位置づけの明確
化と充実強化を図っていく構造改革のプロセスを早急に明らかにする必要があると思いますが、厚生大臣の見解を伺います。
さらに、病床数の削減や社会的入院の解消、薬剤費の効率化によって生じる財源を、国際的に低い水準にある看護職員等の医療マンパワーの充実に振り向ける必要があると思いますが、厚生大臣の見解をあわせてお伺いします。
医療機関の機能分化の積極的な推進を図る中で、入院医療を中心とする病院とかかりつけ医機能を中心とする診療所を別建ての診療報酬制度とする方向で検討を行い、同時に、次回診療報酬改定時において、入院及び外来における慢性期医療の包括払い制度を導入するなどの抜本的改革を行うべきと考えますが、これらの点に関して厚生大臣の見解をお伺いします。
さらに、我が国の医療費全体における薬剤費の割合は約三割を占め、欧米諸国に比べて高く、その上、薬価そのものが高過ぎるなど現行薬価制度には数多くの問題点が指摘されております。そのため、これまで診療報酬点数改定のたびに薬価基準の引き下げが実施され、過去十二年間で本来であれば薬剤費は五一%に引き下げられているはずでありますが、新薬はいまだに非常に高く価格設定され、これに薬剤の多剤投与も加わって薬剤費の抑制は全く達成されてきませんでした。
今回の政府案による薬剤費抑制対策は、国民にとって理解しにくく、実務的にも煩雑であり、高価格薬品へのシフトがえを全く防ぐことができないという理由から、到底容認できないものであると考えます。そこで、厚生大臣は、抜本的な薬剤費対策、とりわけ高価格薬品へのシフトがえを防ぐためにどのような対策をお考えなのか、見解を伺いたいと思います。
民主党は、現行の各種医療保険制度及び老人保健制度については、本格的な高齢化社会においても、公正にまた安定的かつ効率的に運営できるようにするために、抜本的な改革を断行する必要があると考えております。その際、国民皆保険体制の堅持を基本としつつも、公正な保険料徴収基準及び保険料の設定、給付水準の適正化、保険者事業の見直し等、各保険制度における現行制度の見直しを避けて通ることはできません。以上の点に関して、厚生大臣の意見を求めます。
政府管掌健康保険は、平成九年度には八千三百十億円の赤字が見込まれておりますが、民主党は、国民皆保険体制を堅持していくという立場から、この事態を放置しておくことはできないと考えるものであります。一方、政府は、これまでに政府管掌健康保険に対して国庫負担金の繰り延べ措置をとってきた結果、その残額が八千億円となっております。そこで、民主党としては、政府は、この八千億円の借金を遅くとも三年以内に、その全額を返済すべきであると考えるものでありますが、大蔵大臣の見解を伺います。
最後に、総理並びに厚生大臣に、社会保障制度審議会の答申の趣旨に沿って、今回の健保法等の改正を医療制度及び医療保険制度の抜本的な改革の第一歩として位置づけ、同時に、次の改革に向けた課題とプロセスを早急に示すよう強く要望して、私の質問を終わります。(拍手)
〔内閣総理大臣橋本龍太郎君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114005254X02319970408/13
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014・橋本龍太郎
○内閣総理大臣(橋本龍太郎君) 中桐議員にお答えを申し上げます。
私には、一点、社会保障制度審議会の答申についてのお尋ねがございました。
医療保険制度につきましては、社会保障制度審議会の答申が指摘をされましたとおりに、医療提供体制及び医療保険制度の両面にわたる改革を総合的に進める必要がございます。このため、薬価制度や診療報酬体系の見直し、医療提供体制の見直しなどにつきまして、平成九年度から取り組みを開始する、さらに医療保険制度における高齢者の位置づけを見直すなど、総合的かつ段階的に改革を進めてまいる所存であります。
残余の御質問につきましては、関係大臣から御答弁を申し上げます。(拍手)
〔国務大臣小泉純一郎君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114005254X02319970408/14
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015・小泉純一郎
○国務大臣(小泉純一郎君) 中桐議員にお答えいたします。
患者への情報提供についてですが、医療は、医療の担い手と患者との信頼関係に基づき提供されるべきものであります。患者への適切な情報提供はこうした関係を築くことに資するものであることから、今後とも、患者への情報提供の促進のため、いろいろな施策に取り組んでいきたいと思います。
また、患者の権利保障のための法制度上の整備については、医師と患者の信頼関係の確立に資するか等の問題点も踏まえ、慎重に今後検討していきたいと思います。
医療の質の評価に関するお尋ねですが、これまでも、医療機関みずからが機能を評価する際の指針を作成し公表してきたところであります。また、財団法人日本医療機能評価機構において、第三者機関による評価事業を本年度から本格実施するなど、医療機関の機能の改善を支援していくこととしております。なお、評価結果の情報公開については、機構において現在検討が行われているところであります。
医療提供体制の改革に関する御質問でありますが、医療を取り巻く厳しい社会経済環境を直視すれば、医療制度と医療保険制度の両面から総合的な見直しをすることが必要だと思います。医療機関の体系化、かかりつけ医の機能の向上、急性期医療の充実、病床数の適正化、医師等の需給の見直し等の課題に取り組み、逐次実施していきたいと思います。
看護職員等医療従事者の充実に関することですが、看護婦については、平成四年に制定した看護婦等の人材確保の促進に関する法律等に基づき、離職防止の促進を初め各種の施策を講じてきてお
り、その結果、需給見通しの達成状況は現在のところ順調に推移しております。今後とも、医療従事者等の充実確保に努めていきたいと思います。
診療報酬についてのお尋ねですが、診療報酬体系の見直しに当たっては、病院と診療所等医療機関の機能を明確にする方向で検討していきたいと思います。
出来高払いと包括払いの問題ですが、これは、出来高払いのよさと包括払いのよさ、この組み合わせで何とか最善の組み合わせができないかなという方向で検討していきたいと思います。
薬剤費対策についてですが、医療費に占める薬剤費の割合は、確かに諸外国に比べて高い水準にあると思います。薬剤費の適正化は、今後の医療保険制度における重要な課題の一つだと認識しております。医療保険制度の抜本的な見直しに当たりましては、薬価基準のあり方について抜本的な改革に取り組んでいきたいと思います。
医療保険制度の抜本改革についてのお尋ねですが、今後二十一世紀に向けては、医療提供体制と医療保険制度、この両面にわたる構造改革に取り組む必要がありますので、今後、医療保険の給付の範囲やあるいは保険集団のあり方の見直しなどを含め、制度の抜本的改革に取り組む考えてありますので、御理解、御協力をお願いしたいと思います。(拍手)
〔国務大臣三塚博君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114005254X02319970408/15
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016・三塚博
○国務大臣(三塚博君) ただいま、政府管掌保険に対し、国庫負担金の繰り延べが八千億円になりましたね、早くお返しください、三カ年以内がいいところではありませんか、こういう御趣旨の御質問でございました。
平成八年度補正予算編成に当たりまして、厚生大臣との交渉の中で同様趣旨の申し入れがございました。補正予算、八年度補正予算でございますが、千五百四十三億円は返済をいたし、過去の繰り延べ分の返済に着手をいたしたところであります。今後とも誠意を持って速やかに返済できるよう努めてまいりたいと存じますが、異例に厳しい財政状況でございます。財政構造改革、聖域なき歳出の見直し、制度の見直しを行いながら、我が国の財政を健全化の方向に位置づけなければなりません。こういう観点の中でございますので、将来の計画的返済について具体的に約束することは困難でありますので、深い御理解を賜り、財政構造改革に格段の御鞭撻と御支援をください。(拍手)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114005254X02319970408/16
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017・伊藤宗一郎
○議長(伊藤宗一郎君) 瀬古由起子君。
〔議長退席、副議長着席〕
〔瀬古由起子君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114005254X02319970408/17
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018・瀬古由起子
○瀬古由起子君 私は、日本共産党を代表して、ただいま議題となりました健康保険法等の一部を改正する法律案について、橋本総理並びに小泉厚生大臣に質問をいたします。
この四日、厚生委員会に介護保険法案の参考人として出席した東京の鬼子母神病院の森芙紗子総婦長は「在宅療養中の九十五歳の女性がみずから命を絶たれたのです。私どもの訪問看護婦がその二、三日前に伺ったとき、新聞を読んで、「これから病院にかかると一回五百円かかるのね。これから往診も月一回しかお願いできない」と話されていたといいます。頑張って頑張って自分で通院されていましたが、それも限界で、最近往診を始めたやさきとのことでした。本来なら天寿を全うされるはずなのにと残念でなりません」と述べられました。本当に痛ましいことではありませんか。
お年寄りは、慢性疾患など幾つもの病気をあわせ持っている場合が多いのです。愛知県保険医協会の調査によると、心不全、骨粗鬆症、甲状腺機能障害の疑いなどにより、今回の改定で負担額が、現在一カ月千二十円のお年寄りが四千六百七十五円に、四・六倍になる例が報告されております。改定による外来薬剤一種類につき一日十五円の負担も、薬代の二重取りそのものです。
このような制度は、一九六七年に佐藤内閣のもとで実施されましたが、国民の強い反対に遭い、二年で廃止になったものです。また、健保本人の負担を二割に引き上げる改悪は、戦前、東條内閣が戦費調達のために行って以来のものです。
この改定によって、厚生省自身が、医療費への影響は八千五百億円も抑制されると試算しております。また、全国の保険医団体の連合会が行った患者六千人アンケートでも、医療費負担が二倍以上に引き上げられた場合、六割の人が受診を減らすと回答しているのです。
総理に伺います。この改定は、結局、病気になっても病院へ行くなということですか。これでは、病気の重症化を進め、結果的には医療費の支出の増大を招くということになりませんか。明確な答弁を求めます。
質問の第二は、改定の理由です。
政府は、この改定を進める根拠に、保険財政の赤字を持ち出しております。この赤字は、九七年度で総額一兆五千四百八十億円に達すると厚生省は推計しております。しかし、今回の改定を実行したとしても、三年後にまた赤字になると厚生省自身が認めているのです。そのときにはさらに国民に負担を求めるのですか。この改定が第一段階とあなたたちが言うのは、そういう意味だったのでしょうか。安易に負担を国民に求める前に、やるべきことがあるのじゃないでしょうか。赤字の生まれた大もとにこそ、思い切ったメスを入れるべきです。
まず、薬価の問題です。日本の薬の値段は欧米諸国に比べても異常です。特に新薬は欧米諸国の二倍から四倍、中には十一倍以上の新薬もあります。薬剤費に占める新薬の比率をドイツ並みにするだけで二兆円以上も節約ができます。製薬大企業言いなり、密室の中での新薬承認審査や薬価決定のあり方を抜本的に改めることこそ直ちに着手
すべきではありませんか。
医療機器の価格も異常です。薬価と医療機器の価格にメスを入れるだけで、当面、保険財政の赤字は解消できるのです。総理、小泉厚生大臣、あなた方は、今国会で繰り返し、薬価基準の見直しや医療機器の価格設定の透明化に向けて積極的に取り組んでいきたいと答弁をしてきましたね。そのとおりにしたら、二兆円以上もの財源が生み出されます。そうすれば、今回の国民の負担増は実施しなくて済むじゃありませんか。総理、厚生大臣、お答えいただきましょう。
第三に、国庫負担について伺います。
政府が、八〇年代の臨調路線のもと、国庫負担を削り続けたことも赤字の大きな原因です。国民医療費に占める国庫負担の割合は、八三年度の三〇・六%から九三年度には二三・七%へと、六・九%も減っているのです。国庫負担を八〇年度の水準に戻すだけで、実に一兆六千億円の財源が保証されます。
政府は、九二年の国会で、政管健保の国庫補助率を一六・四%から一三%に大幅に引き下げをした際、引き下げは当分の間、いわば暫定措置と答弁し、政管健保の財政状況が悪化した場合は国庫負担の復元について検討すると明言したではありませんか。そればかりか、本来入れるべき国庫負担金が繰り延べされ、元利合計で八千億円にも上る負担金を保険財政に入れていないのです。
患者や自治体の負担は増大させるけれども、国の負担は削ったままで、負担すべきものも負担しない。これでは、保険財政の赤字は意図的にあなた方がつくっているのではないのですか。国庫負担の割合を計画的にもとに戻すべきです。厚生大臣、答弁を求めます。
第四に、こんな医療保険の浪費構造がなぜ今まで放置されてきたかという問題です。
製薬業界関係者は、薬価が一円違うだけで薬によっては年間数億円も利益に差が出る、影響力を持つ政治家に取り入らざるを得ないとあけすけに語り、毎年多額の献金を行ってきました。製薬業界の売上高の八割は保険財政から支出されております。献金の原資は国民の保険料なのです。
総理、あなた自身も製薬業界から、九二年より九四年の三年間で九千百億円の巨額の献金を受け取っていますね。(発言する者あり)三年間で九千百万円の巨額の献金を受け取っていますね。あなたへの政治献金は、もとをただせば国民の保険料から出ているということです。医療、福祉の分野での政官財の癒着を直ちに断ち切ることこそ、真の行政改革ではありませんか。企業・団体献金の禁止がいよいよ必要になっています。少なくとも厚生・福祉行政や医療にかかわる企業・団体からの献金は直ちに禁止すべきです。総理、厚生大臣、あなた方にその気があるなら、今すぐやめることは可能です。答弁を求めます。
今回の改定による国民の負担増は、二兆円を超えます。さらに、消費税増税、特別減税の廃止を合わせると実に九兆円もの前例のない大負担増が、不況にあえぐ国民に押しつけられることになります。まさに命と健康に対する攻撃です。国民の生存権をうたった憲法の精神を真っ向から踏みにじるものと言わざるを得ません。
改定案に反対する署名も千二百万人を超え、日本医師会を初め広範な国民が反対を表明しているように、反対の声は国民の間に満ち満ちております。国民の声にこたえる解決策は、安心できる医療を提供できるよう、医療保険の浪費的な支出をやめさせる改革に真剣に取り組むことではないでしょうか。
日本共産党は、医療保険財政の民主的再建と国民本位の医療保障制度の拡充を目指して全力を尽くします。
国民に負担を押しつける根拠が崩れた以上、国民の切実な声を受けとめ、医療保険改悪案を直ちに撤回することを強く要求して、質問を終わります。(拍手)
〔内閣総理大臣橋本龍太郎君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114005254X02319970408/18
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019・橋本龍太郎
○内閣総理大臣(橋本龍太郎君) 瀬古議員にお答えを申し上げます。
まず第一点は、今回の改正により受診抑制を招くのではないかというお尋ねでありました。
改正案における一部負担は、高齢者の経済能力、世代間の公平という観点から見まして、無理のない適正なものであると考えており、今回の改正により国民の必要な受診が抑制されるとは考えておりません。
また、二十一世紀に向けて、医療保険制度の構造改革を総合的かつ段階的に実施していく必要があり、そのためには、薬価基準制度の根本的な見直しや医療機器価格の適正化なども含め、抜本的な改革に取り組んでまいります。今回の制度改正は、今後どのような構造改革を進めるためにも必要な改正であり、ぜひとも実現させる必要があると考えております。
また、厚生等の関係団体・企業からの政治献金についての御質問がありました。
政治資金のあり方につきましては、政治資金規正法に規定されており、その中で寄附の質的制限が定められていると承知をしておりますが、議員の御論議のような制限はなく、何々の関係だからといって特に献金を受けるべきではない、そうは考えておりません。なお、団体・企業などからの政治献金のあり方について、三党政策合意に沿って各党各会派間で論議をされるべきものと既に何遍か御答弁を申し上げております。
また、社会保障構造改革の一環として、診療報酬体系の見直しや薬剤使用の適正化、医療提供体制の見直しなどにつき抜本的な改革に取り組んでいかなければなりません。こうした改革を進めていくためにも、現行の医療保険制度の財政の安定を確保することが緊急の課題であることから、給付と負担の見直しなどの制度改正を実施すること
としており、本法律案を撤回する考え方はございません。
残余の質問につきましては、関係大臣から御答弁を申し上げます。(拍手)
〔国務大臣小泉純一郎君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114005254X02319970408/19
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020・小泉純一郎
○国務大臣(小泉純一郎君) 瀬古議員にお答えいたします。
薬価及び医療機器価格の適正化については、議員の御批判、御指摘も踏まえて、抜本的な改革に取り組んでいきたいと思います。しかしながら、どのような構造改革にせよ、私は、今回程度の負担増、これはやむを得ないものと思います。どのような構造改革が行われようとも、ぜひとも今回の改正案を実現させる必要があると考えております。
国庫負担のあり方についてですが、国の財政状況を考えますと、補助率の引き上げは率直に言って困難であると思います。政管健保の国庫補助の繰り延べ分については、厚生省としては、今後とも計画的かつ速やかな返済を財政当局に対して強く求めていきたいと思います。
また、政治献金についてですが、私は必ずしも企業献金とか団体献金が悪とは思っておりません。政治家が政治活動を活発に旺盛にやるためにはぜひとも資金が必要であり、その資金をどこから求めるかというのは、個人であれ企業であれ団体であれ、バランスをとって、そして節度を持って調達する必要があるということから、私は、どのような政治献金がいいかどうかというのは、政治資金規正法にのっとり個々の政治家が判断すべき問題であると思います。私個人としては、大臣在任中は関係団体からの献金は辞退したいと思っております。
以上であります。(拍手)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114005254X02319970408/20
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021・渡部恒三
○副議長(渡部恒三君) 中川智子君。
〔中川智子君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114005254X02319970408/21
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022・中川智子
○中川智子君 私は、ただいま議題となりました健康保険法等の一部を改正する法律案につきまして、社会民主党・市民連合を代表して、総理並びに関係閣僚に質問をいたします。
二年三カ月前の阪神・淡路大震災の後、政府のとられた施策の中で、被災地において大層喜ばれたのが医療費の免除措置でした。あの大震災で、兵庫県内だけでも四万七十一人が負傷しました。その後に続く困難の中で、病気が悪化したり、新たに病に伏した人もいましたが、困窮した経済状況で、何よりお金の心配をせずに医療機関に通えるのは大変ありがたいことでした。でも、たった一年で打ち切られました。あるNGOのグループの調査では、打ち切られた後、そのうちの二〇%の人々が病院通いをやめました。お金がなくて病院に行けなかったのです。
薬は畑に種をまいてできるものではありません。また、医術は公民館で講座を受けで取得できるものでもありません。圧倒的多数の市民は、病気になったら医療機関に行き、言われるままにこの身をさらし、検査が必要だと言われたらお願いしますと頭を下げ、薬を出されたらありがとうございますと言ってまた頭を下げるのです。このような垂直の関係の中で、薬漬け、検査漬けにあらがう何物も患者は持っていない、そのことが我が国の医療の現実だという認識をまず持っていただきたい、このように思っております。
その上に立って、質問をさせていただきます。
この国に暮らす人々が安心して生きていけるように、国民負担率の抑制と国民生活の調和を図りつつ、多様な社会保障ニーズにこたえるための制度づくりは大切です。特に医療保険制度改革は、徹底した構造改革が前提であり、国民の理解と納得のいく上での実施が不可欠だと思いますが、総理並びに厚生大臣のその辺のお考えをお聞かせください。
次に、我が社会民主党は、改革なくして負担増なし、何よりも患者本位の立場から、この関係法案の審議に臨むべきだと考えております。
橋本総理は、改革に火だるまになって取り組むとおっしゃいましたね。それならば、青天井と言われる医療費の増大に対し、それをどのように抑制するかを考えるとき、特に患者や国民のみに負担を押しつけるのではなく、行政そして医療側や製薬企業など関係者みんなで痛みを分かち合ってこそ、抜本的な改革がなされると考えます。
例えば、医療費の高騰の大きな原因と言われる出来高払い方式ですが、これをなぜやめられないのでしょうか。定額払い方式の拡大を図ることがなぜできないのでしょうか。とっても不思議です。抜本的な改革を行うためにも、この率直な疑問に、ぜひ、大蔵大臣そして厚生大臣、お答えください。
続きまして、企業・団体献金について伺います。
「李下に冠を正さず」ということわざがあるように、公的要素の極めて高い医療機関や関係業者の方々の政治献金は、厳にこれを慎むべきだと思うのですが、総理、厚生大臣、いかがでしょうか。
また、厚生省の試算では、今回の制度改正を平成九年度を満年度ベースで見ると、患者の一部負担増は一兆九百億円、保険料増は六千五百億円、合計したら一兆七千四百億円増加します。こんなに膨大な負担を国民に安易に押しつけてしまうことは、断じて避けねばなりません。
薬価基準の見直し、診療報酬における技術の質の適正な評価等、徹底した効率化、医療における情報公開の推進、透明性の確保及び制度改革を行って、行政みずからが改革を果たした上で、国民負担の軽減を図るべきではないでしょうか。そのためには、国民に広く意見を聞き、十分な時間をとって審議し、柔軟に対応を図るべきではないでしょうか。厚生大臣の決意を伺います。
医は仁術、この言葉の精神がまだまだこの国に生きていると信じます。そして、政治もまた仁術
であってほしいと思っております。
この国で、長い間営々と働き続け、生きてきた人々の、その汗と涙をとうといと思うならば、老人保健の負担に対しては、施行期日を改め、改革の目鼻がつくまで先送りすべきであることを声を大にして要望して、私の質問を終わります。
ともに頑張りましょう。ありがとうございました。(拍手)
〔内閣総理大臣橋本龍太郎君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114005254X02319970408/22
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023・橋本龍太郎
○内閣総理大臣(橋本龍太郎君) 中川議員にお答えを申し上げます。
まず、医療保険改革についてのお尋ねであります。
二十一世紀に向けて、社会保障構造改革の一環として医療保険制度改革に取り組んでまいらなければなりません。こうした改革を進めてまいりますためにも、現行の医療保険の財政の安定を確保していくことが緊急の課題でありますことから、平成九年度に給付と負担の見直しなどの制度改正を実施することとしておりまして、今国会において幅の広い観点から御審議をいただきたいと考えております。
次に、政治献金についてのお尋ねがございました。
政治資金のあり方につきましては、政治資金規正法に規定されております。そして、その中で寄附の質的制限が定められていると承知しておりますけれども、御指摘のような制限はございません。医療関係たからといって特に献金を受けるべきではないとは私は考えておりません。なお、団体・企業などからの政治献金のあり方につきまして、三党政策合意に沿って各党各会派間で御論議をされるべきものということは、既に何回か申し上げてきたところでございます。
残余の質問につきましては、関係大臣から御答弁を申し上げます。(拍手)
〔国務大臣三塚博君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114005254X02319970408/23
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024・三塚博
○国務大臣(三塚博君) 中川議員にお答えを申し上げます。
出来高払い制度についてのお尋ねでございますが、去る三月十八日、財政構造改革会議において取りまとめられました「歳出の改革と縮減の具体的方策を議論するに当たっての基本的考え方」の中では、医療について、医療費の出来高払いの見直しが今後の検討課題とされたところでございます。この基本的な考えを踏まえまして、今後、財政構造改革会議の場におきまして、出来高払いの見直しについて検討が進められることとなります。大蔵省といたしましても、財政構造改革の趣旨にのっとって取り組んでまいります。(拍手)
〔国務大臣小泉純一郎君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114005254X02319970408/24
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025・小泉純一郎
○国務大臣(小泉純一郎君) 中川議員にお答えします。
医療保険制度改革についてですが、これは総理の答弁と全く同じでありますので、省略させていただきます。
出来高払い方式との関係で、定額払い方式の拡大がなぜ図られないのかというお尋ねですが、いろいろ理由はあると思います。しかし、その中で大きな理由の一つには、定額払い方式については、医療機関の収入減につながるのではないか、そういう理由がある。また、医師の医療行為について、医師の裁量権が制約されるのではないか等の懸念があると思います。こういう医療関係者の中には、そういう問題から、この問題については大変慎重な態度が見られることも私は一つの要因ではないかと思います。
政治献金についてでありますが、これは、どのような政治献金を受けるかというのは個々の政治家が判断することであります。政治資金規正法にのっとって節度を持って受け取るべきものでありまして、私としては、あらぬ誤解を生まないように注意をしていきたいと思います。
この法律案について十分時間をかけて審議をし、柔軟に対応を図るべきだと考えるがどうかということでありますが、十分に御審議をいただきまして、ぜひとも御理解をいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。(拍手)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114005254X02319970408/25
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026・渡部恒三
○副議長(渡部恒三君) 吉田公一君。
〔吉田公一君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114005254X02319970408/26
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027・吉田公一
○吉田公一君 ただいま議題となりました健康保険法等の一部改正案について、太陽党を代表して、総理及び厚生大臣に質問をいたします。
何しろ最後の六番目でありますから質問がダブるかもしれませんが、誠心誠意の御答弁を賜りますようにお願いを申し上げて、質問に入りたいと思います。
二十一世紀においても活力ある経済社会を実現するため、抜本的な財政制度の改革が必要であります。中でも最も重要かつ緊急の課題が、社会保障制度の改革であります。現在でも我が国の社会保障関係費は約十四兆円であり、一般歳出の三分の一を占めております。急速な高齢化、少子化、今日の財政状況の悪化が進む中では、財政が破綻してしまうのではないかと考えられております。一方、高齢者が心豊かな老後を過ごせるよう、介護など高齢化に伴う社会問題を解決していく必要に迫られております。
従来、我が国の医療は、国民皆保険の医療保険制度により、すべての国民が平等に、だれでも、いつでも、定額で受けられるものとなり、国民の健康を守るために大きな役割を果たしてまいりました。
今回政府から提案されております本改正案は、総理の六つの諸改革の中にも位置づけられております。しかし、今回の改正は、医療保険の抜本改革を三年後に先送りして、患者に負担を強いるのみとなっております。本来は、患者負担増の前提として抜本的な考え方を明確にし、具体的な改革スケジュールを打ち出すことが政治にとって当然の責任であります。
橋本総理が会長の財政構造改革会議で、改革五原則として、急速な少子・高齢化の進展に伴う社会保障費の増大や我が国財政の危機的な状況を背景に、従来以上の思い切った取り組みで施策全般を見直していく方針が打ち出されました。その中で、国民負担率が五〇%を超えないよう経済財政と調和のとれる社会保障制度を構築すると決定されましたが、赤字国債発行ゼロとする財政健全化の目標であります二〇〇五年までの間に実現できるのかどうか。その場合、予算全体の中に占める社会保障費の割合はどうなるのか。総理にお伺いをするものであります。
次に、医療保険制度改革について、以下、お尋ねを申し上げます。
まず、医療保険制度改革の進め方について、消費税の引き上げ、所得税、住民税の特別減税の打ち切りの中、医療費の国民負担増二兆円が提案されております。国民は単に負担増に反対しているのではないと思います。負担増を求めるに当たり、改正に対する姿勢、将来の方向性に不満を感じているのであります。
政府の社会保障制度審議会も、いかにも拙速の嫌いがあり、内容も緊急避難的な保険安定化に偏っておりますと批判をいたしております。なぜ政府は根本的な構造改革に着手することなく負担増のみを求めるのか。医療費のむだに切り込む改革なくして、患者負担の引き上げを先取りする今回の改正案には直ちに賛成するわけにはまいらないと考えますが、総理の見解をお伺いしたいと存じます。
次に、法案の具体的内容について質問いたします。
第一は、我が国では、原則として、かかった費用はそのまま医療保険で支払う出来高払い制度をとっておりますが、薬漬けや検査漬け、社会的入院の温床となっていることは前から指摘されていることであります。また、患者がどの病院で受診するかも自由であり、これが病院を渡り歩くはしご受診を生み、医療費の増大を生み、医療費のむだ遣いの背景になっているという現状について、小泉厚生大臣に見解を伺うものであります。
第二は、薬剤費の負担についてであります。改革案では、薬剤について新たに窓口で一回一種類十五円の負担を課すことになっておりますが、今回の改正では、患者にコスト意識を持たせることを目的にしております。薬の価格に関係なく負担額が同じであれば、何のための改正か、またなぜ十五円なのか、先ほどの質問にもありましたけれども、根拠がわからないのであります。
また、諸外国に比較いたしまして日本の薬価は高く、医療費に占める薬剤費の割合は約三割となっております。一割から二割の欧米諸国に比べて異常とも言える高さであり、薬の過剰投与にストップをかけない限り医療費の抑制はあり得ません。また、薬価の決定に関する情報を公開するべきであると考えますが、厚生大臣の見解をお尋ねしたいと存じます。
第三は、お年寄りに対する負担増の問題に関連してでありますが、少子・高齢化に伴い、老人医療費の増大は今後も避けることができないのであります。一方、これまでのような国民所得の高い伸びが期待できない中で、老人医療費に係る国民負担は上昇し、若い世代の負担は今後さらに増大することが見込まれております。
こうした中、老人保健に対する拠出金制度が健康保険組合の赤字を生み、これ以上の若年層の過重な負担は限界に来ていると思います。高齢者を支える保険制度は国民全体で支えるという認識に立ち、財源については本来は消費税で対応すべきであると考えますが、いかがでございましょうか。
また、このまま世代間の不公平を放置すれば、世代間扶養を基本とする現在の医療保険制度は崩壊しかねない問題をはらんでいると考えますが、どのような改革を進めるのか、お伺いをするものであります。
それに加えて、高齢者の負担について、老人医療費に定率制を導入することにより、かかった医療費に応じて負担をすれば、コスト意識が芽生え、病院のサロン化、薬漬けを是正する切り札になるのではないでしょうか。しかし、連立与党は、窓口負担額が決まっていないと高齢者が不安になるという診療側の言い分を受け入れて、定額維持を決定しました。自己負担を軽減するならば、定率制を導入した上で率を抑えるべきだと考えますが、厚生大臣の御見解を伺いたいと存じます。
最後に、二十一世紀の社会は高齢化と低成長の時代と言われております。医療コストについては国民の意識改革も十分に必要であるとともに、負担増の大前提として、医療費を抑制する制度改革を断行しなければなりません。そのため、政府は、社会保障制度全体の将来ビジョンを国民の前に示し、その中で、個別具体的な制度改革の方向について、議論のためのあらゆる材料を国民の前にはっきりと提供するべきであり、それが政治の責任であり、使命であると考えます。
早急な改革がダイナミックに実行されんことを強く要望し、太陽党を代表しての私の質問を終わります。ありがとうございました。(拍手)
〔内閣総理大臣橋本龍太郎君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114005254X02319970408/27
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028・橋本龍太郎
○内閣総理大臣(橋本龍太郎君) 吉田議員にお返事を申し上げます。
まず、経済財政と社会保障についての御質問がありました。
我が国の財政状況が極めて深刻であることは、今さら申し上げるまでもありません。先般の財政構造改革会議におきまして明らかにいたしました財政構造改革の五原則というものにのっとりながら歳出全般の見直しを行う、そうした観点の中で、大きな項目として十三を挙げました中の社会保障制度の改革が一つであります。そして、社会
保障予算の見直しに当たりましては、今後、医療、年金を中心に必要な見直しを行うなど各分野の合理化を図りながら、必要な給付は確実に保障するという考え方で取り組んでいきたいと考えております。
それならば構造改革にまず着手すべきである、そのような御意見もいただきました。
私どもは、二十一世紀に向けて、社会保障構造改革の一環として医療保険制度改革に取り組んでまいります。しかし、こうした改革を進めていきますためにも、現在の医療保険制度の財政の安定を確保していくことが緊急の課題であります。こうしたことから、医療保険改革の第一段階として、平成九年度に給付と負担の見直しなどの制度改正を実施することといたしました。
どうかぜひ審議に御協力を賜りたいとお願いを申し上げ、残余の質問につきましては、関係大臣から御答弁を申し上げます。(拍手)
〔国務大臣小泉純一郎君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114005254X02319970408/28
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029・小泉純一郎
○国務大臣(小泉純一郎君) 吉田議員にお答えいたします。
診療報酬についてですが、我が国の出来高払い制度については、とかく医薬品の過剰投与あるいは入院日数の長期化等、批判があるのは事実であります。そういうことから、診療報酬体系の見直しに当たっては、出来高払い制度と定額払い制度のよさを両方とも発揮できるような最善の組み合わせがないかということを含めて、今後検討していきたいと思います。
薬剤負担についてですが、薬剤使用の適正化を図るため、薬の使用量に応じた薬の一部負担を新たに設けることにしたものであり、若人の給付率が各制度で異なっていることなどから、若人と老人を通しで公平な負担をお願いすることとしたものであります。また、老人の薬剤費の一種類一日分の額が百五十円程度であるため、その一割ということで今回十五円の負担としたところであります。
薬の過剰投与についてのお尋ねですが、今回の制度改正においては、薬剤に着目した一部負担を導入するとともに、今後、診療報酬体系の見直しに当たって定額払いの積極的な活用等により、薬剤使用の適正化を図ることにしたいと思います。
また、薬価算定方式等の一般的ルールについては、中央社会保険医療協議会で定められ、公表しているところでありますが、個々の新薬の価格設定について、今後その算定根拠の公表に向けて取り組んでまいりたいと考えております。
今後の老人保健制度の改革についてですが、現在でも年間八兆円を超える老人医療費を仮に税で対応するとすれば、その税をどうやって調達するのか。大幅な公費負担増という問題があります。この点を含めて、今後、世代間の公平等を考慮しながら、老人保健制度の改革について検討を進めていきたいと考えております。
高齢者の自己負担についてでありますが、なぜ定率制を導入しないのかということであります。
これは確かに一理あります。しかし、今回定額にしたわけでありますが、将来の一部負担のあり方については定率制も含めて検討していきたい、そう思います。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114005254X02319970408/29
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030・渡部恒三
○副議長(渡部恒三君) これにて質疑は終了いたしました。
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114005254X02319970408/30
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031・渡部恒三
○副議長(渡部恒三君) 本日は、これにて散会いたします。
午後二時三十六分散会
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114005254X02319970408/31
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