1. 会議録本文
本文のテキストを表示します。発言の目次から移動することもできます。
-
000・会議録情報
平成九年四月十八日(金曜日)
—————————————
平成九年四月十八日
正午 本会議
—————————————
○本日の会議に付した案件
議員請暇の件
私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法
律の適用除外制度の整理等に関する法律案
(内閣提出)及び私的独占の禁止及び公正取
引の確保に関する法律の一部を改正する法律
案(内閣提出)の趣旨説明及び質疑
午後零時四分開議発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114005254X02819970418/0
-
001・伊藤宗一郎
○議長(伊藤宗一郎君) これより会議を開きます。
————◇—————
議員請暇の件発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114005254X02819970418/1
-
002・伊藤宗一郎
○議長(伊藤宗一郎君) 議員請暇の件につきお諮りいたします。
武村正義君及び村山富市君から、四月二十四日から五月二日まで九日間、請暇の申し出があります。これを許可するに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114005254X02819970418/2
-
003・伊藤宗一郎
○議長(伊藤宗一郎君) 御異議なしと認めます。よって、いずれも許可することに決まりました。
————◇—————
私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の適用除外制度の整理等に関する法律案(内閣提出)及び私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114005254X02819970418/3
-
004・伊藤宗一郎
○議長(伊藤宗一郎君) この際、内閣提出、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の適用除外制度の整理等に関する法律案及び私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の一部を改正する法律案について、趣旨の説明を求めます。国務大臣梶山静六君。
〔国務大臣梶山静六君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114005254X02819970418/4
-
005・梶山静六
○国務大臣(梶山静六君) ただいま議題となりました私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の適用除外制度の整理等に関する法律案及び私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の一部を改正する法律案について、その趣旨を御説明申し上げます。
初めに、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の適用除外制度の整理等に関する法律案につきまして御説明申し上げます。
本法律案は、公正かつ自由な競争を一層促進することにより、我が国市場をより競争的かつ開かれたものとするためには、規制緩和の推進とともに、競争政策の積極的展開を図ることが不可欠であることにかんがみ、個別法による適用除外カルテル等制度について、原則廃止する観点から見直しを行い、平成八年三月二十九日の閣議決定「規制緩和推進計画の改定について」において得られた見直しの結果を実施するため、次のような二十法律、三十五制度にわたる改正を行うものであります。
第一に、個別法による適用除外を継続する必要性が認められない二十九制度については、これを廃止・法整備し、第二に、個別法による適用除外が過度に定められている六制度については、その限定・明確化等を行うこととするものであります。
なお、これらの改正は、公布の日から一月を経過した日から施行することとしております。
続きまして、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の一部を改正する法律案につきまして御説明申し上げます。
私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律、いわゆる独占禁止法は、公正かつ自由な競争を維持促進することにより、一般消費者の利益を確保するとともに、国民経済の民主的で健全な発展を図るものでありますが、持ち株会社の設立等については、現在これを全面的に禁止しているところであります。この規制につきましては、事業者の活動をより活発にする等の観点から、平成八年十二月十七日の経済構造の変革と創造のためのプログラムを初めとする累次の閣議決定において、独占禁止法の目的を踏まえて見直すべきものとされたところであります。
今回は、これらの閣議決定を踏まえ、事業支配力の過度の集中の防止という独占禁止法の目的に留意しつつ、持ち株会社の全面的な禁止を改めること等の改正を行うべく、ここにこの法律案を提出した次第であります。
次に、法律案の内容について、その概要を御説明申し上げます。
第一に、現行法では設立等が全面的に禁止されている持ち株会社について、事業支配力が過度に集中することとなるものの設立等を禁止することに改めることとしております。
第二に、これに伴い、一定規模を超える規模の持ち株会社による事業年度ごとの当該持ち株会社及びその子会社の事業に関する報告制度及び新たに設立された一定規模を超える規模の持ち株会社による設立後の届け出制度を設けることとしております。
第三に、大規模会社の株式保有総額の制限について、この株式保有総額の制限の対象から除外する株式を新たに追加することとしております。
第四に、事業者による一定の国際的協定または国際的契約に係る届け出義務を廃止することとしております。
なお、これらの改正は、一部を除き、公布の日から起算して六月を超えない範囲内において政令で定める日から施行することとしております。
以上、二つの法律案につきまして、その趣旨を御説明申し上げた次第であります。(拍手)
————◇—————
私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の道用除外制産の整理等に関する法律案(内閣提出)及び私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明に対する質疑発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114005254X02819970418/5
-
006・伊藤宗一郎
○議長(伊藤宗一郎君) ただいまの趣旨の説明に対して質疑の通告があります。順次これを許します。甘利明君。
〔甘利明君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114005254X02819970418/6
-
007・甘利明
○甘利明君 私は、自由民主党を代表して、ただいま議題となりました私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の一部を改正する法律案につきまして、総理並びに関係大臣に質問をさせていただきます。
現在、我が国を取り巻く経済社会環境は激しく変化し、企業の活動は国境を越えボーダーレス化し、大競争時代の中で我が国の企業も厳しい競争状況に直面しております。今回、解禁が提案されている持ち株会社形態は、欧米企業にも広く認められている会社形態であり、我が国企業が直面しているリストラの促進、ベンチャービジネスの振興にも役立つものと考えられますし、企業の経営の選択肢を拡大させ、自助勢力による競争力の回復を可能にする意味でも、早急に解禁すべきものと考えております。
最近、米国経済が好調を保っていることは周知のところでありますが、その活性化の要因は、規制緩和や技術革新の進展にあったと考えられます。特に我が国と対比して特筆すべきなのが、ベンチャー企業の活動の活発さであります。ベンチャー企業が活発に活動することとなれば、新しい市場を創造する原動力になるとともに、技術革新の推進力になり、既存市場に新製品または新技術による製品を新規参入させることになります。我が国においてもこのようなベンチャー企業が活躍できるような環境を早急に整備することが、政策上大きな課題であると認識をいたしております。
独占禁止法は、自由経済の基本ルールを定める経済憲法ともいうべき存在であり、我が国経済を自己責任原則と市場原理に基づく自由な経済社会としていく上で極めて重要な法律であります。今般の持ち株会社の解禁は、独占禁止法を名実ともに大競争時代にふさわしい内容のものとする上で不可欠の改正であり、まさに時代の要請に合致したものであると考えます。
しかし、独占禁止法第一条に規定されておりますように、事業支配力の過度の集中を防止する必要があるということは言うまでもありません。今回提出されている法案は、この点について手当てがなされており、内容的にも妥当であると言えます。
また、持ち株会社を解禁することによって中小企業等に対する悪影響も懸念されているところでありますので、第九条のほか、不公正な取引方法、不当な取引制限等の規定により、独占禁止法上問題がある持ち株会社に対しては厳正に対処していく必要があることを指摘しておきたいと思います。
私は、持ち株会社を解禁する以上は、持ち株会社形態が実際に我が国企業によって積極的に活用されるよう、関連する法制度の整備にも取り組むことが重要であり、単に独占禁止法を改正するだけにとどまるものであってはならないとの立場から、質問をさせていただきます。
まず、税制、特に連結納税制度の問題を伺います。
NTT法の改正法案においても、税制について一定の手当てがなされたことからも明らかなように、連結納税制度が採用されない場合には、実際には持ち株会社形態は余り利用されないのではないかとの懸念が産業界には強いように考えられます。もちろん財政再建の必要性もあり、税収に対する影響も十分検討しなければなりませんが、本法の改正を実りあるものにするためにも連結納税制度の採用に向けた検討が不可欠ではないかと考えます。この点についての政府の取り組みについて、大蔵大臣に伺います。
また、同様の観点から、分社化に伴う資産譲渡に対する譲渡益課税についても何らかの配慮が必要であることを指摘しておきます。
また、最近は、金融自由化の観点から、金融会社を子会社とする持ち株会社、いわゆる金融持ち株会社の解禁の必要性が指摘されているところであります。橋本総理は日本版金融ビッグバンを提唱されておりますが、二十一世紀の高齢化社会において我が国経済が活力を保っていくためには、千二百兆円もの我が国個人貯蓄を十二分に活用していくことが不可欠であり、そのためには、金融市場への新しい活力の導入という観点から、銀行、証券、保険分野の規制を緩和することによって自由化を進めることが必要であり、今回解禁が予定をされている金融持ち株会社はこのための有力な手段になると考えております。
しかし、金融機関については預金者保護等の観点から、ファイアウォール規制や他業禁止規定などの規制を整備することが必要になると考えます。そこで、今回の持ち株会社解禁に伴う金融持ち株会社に係る金融政策上の問題についての政府の認識と今後の対応について、総理並びに大蔵大臣に伺います。
また、持ち株会社解禁に伴う労働関係の問題につきましても懸念が指摘されておりますが、先般、この問題に関する労使間の合意が与党独禁法協議会に報告されました。指摘されているような懸念に対して政府はどのように対応していかれるのか、労働大臣に伺います。
最後に、今回の法改正は、戦後五十年間続いてきた持ち株会社の全面禁止規定を改めようとするものであることから、さまざまな懸念の声が聞かれるところであります。持ち株会社が解禁された後の市場における公正かつ自由な競争を維持促進するためにも、公正取引委員会の機能が十分に発揮されることが求められることを指摘し、あわせて改正独禁法の生みの親でもあります山中貞則先生初め先輩各位の御尽力に敬意を表し、私の質問を終わります。(拍手)
〔内閣総理大臣橋本龍太郎君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114005254X02819970418/7
-
008・橋本龍太郎
○内閣総理大臣(橋本龍太郎君) 甘利議員にお答えを申し上げます。
私には、一点、金融持ち株会社についてのお尋ねがございました。
持ち株会社の利用は、金融システム改革の中で極めて重要な意義を持つものと考えております。持ち株会社が解禁されました場合に必要となる金融に関する法制度の整備につきましては、預金者、保険契約者、投資者の保護、金融機関の経営の健全性の確保など金融上の観点からの検討を行い、速やかに準備を進めてまいる所存でございます。
残余の質問につきましては、関係大臣からお答えを申し上げます。(拍手)
〔国務大臣三塚博君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114005254X02819970418/8
-
009・三塚博
○国務大臣(三塚博君) 連結納税制度などについてのお尋ねでございますが、他社の事業活動の支配のみを専ら行う持ち株会社に係る独禁法改正と連結納税制度等の税の議論とは直接関係するものとは考えておりませんが、いずれにいたしましても、連結納税制度の導入の是非については、企業経営の実態や商法等の関連諸制度、さらには租税回避や税収減の問題といった諸点について、慎重な検討が必要とされる研究課題であると認識をいたしております。
また、土地などの資産を現物出資して子会社を設立する場合に生ずる譲渡益の課税のあり方については、課税ベースを含む法人税の見直しの中で、資産に関する課税の公平の観点も踏まえ議論していくものと考えます。
次に、金融持ち株会社についてのお尋ねでありますが、総理も述べられましたとおり、持ち株会社の利用は金融システム改革の中で極めて重要な意義を有するものと考えておりますが、持ち株会社の解禁に伴い必要となる法改正については、金融システム改革に関する関係審議会における議論を踏まえつつ、預金者、保険契約者、投資者の保護等金融上の観点から必要な措置についての検討を行いまして、持ち株会社の解禁時期をにらんで可及的速やかに作業を行ってまいる所存であります。(拍手)
〔国務大臣岡野裕君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114005254X02819970418/9
-
010・岡野裕
○国務大臣(岡野裕君) 持ち株会社の解禁に伴う労働問題については、甘利先生先ほどお話がございましたように、労使間におきまして、ある合意がなされ、これが与党関係協議会に報告をなされた、こういうふうに私も報告をいただいております。本件につきましては、先般、同じく与党の方からこの旨のお話がございました。
これから私は、そのお話を踏まえ、かつは国会における審議を踏まえまして、しかるべく対処をいたしてまいろう、こう存じておるところであります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114005254X02819970418/10
-
011・伊藤宗一郎
○議長(伊藤宗一郎君) 古賀正浩君。
〔古賀正浩君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114005254X02819970418/11
-
012・古賀正浩
○古賀正浩君 私は、新進党を代表して、ただいま議題となりました私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の一部を改正する法律案につきまして、総理並びに関係大臣に質問をいたします。
世界は、冷戦構造の終結によ各市場経済の普遍化、アジア諸国等の急速な台頭などに伴い、企業を取り巻く経済社会の潮流は大きく変化をしており、いわゆるメガコンペディションという新しい国際的な大競争時代を迎えております。
こうした中で、現下の我が国の経済情勢に目を向けると、片や財政赤字の拡大とこれに伴う国民負担の懸念があり、片や民間部門では、過剰な規制による高コスト構造によって産業や雇用の空洞化が危惧されております。
我が党は、今国会冒頭に、小沢一郎党首が本壇上で所信表明をいたしましたように、民間の自律的で活力ある経済活動を総合的に活用、拡大する構造改革、すなわち規制社会からの脱却を最重要課題の一つとして位置づけているところであります。
経済の構造改革の実現のために、さまざまな規制の緩和の実行がかなめであることも疑問のないところでありますが、規制緩和はそれ自体が目的ではありません。規制緩和が図られた後、真に自己責任原則と市場原理に立つ自由な経済社会が構築されるようにするためには、従来の規制にかわって市場のルールが有効に機能することが不可欠であるのであります。この意味で、独占禁止法及び競争政策の果たす役割は今後ますます高まっていくものと認識しており、公正取引委員会に対しては、経済環境の変化を踏まえ、有効かつ適切な競争政策の運営が強く期待されるところであります。
総理は、通産大臣でありましたころから持ち株会社の解禁について強い関心をお持ちであったと聞いておりますが、私は、この競争政策を積極的に展開するという観点に立って、以下、持ち株会社問題について質問をさせていただきます。
現在、独占禁止法では、第九条によって持ち株会社の設立等が全面的に禁止されております。持ち株会社の禁止は、財閥解体とともに始まった戦後の日本経済の基本ルールとして、我が国経済の枠組みを規定する象徴的な役割を担ってまいりました。しかしながら、戦後半世紀を経て、日本経済とこれを支えてきたシステム自体が制度疲労に陥っており、持ち株会社の禁止についても同様の弊を否めないところであります。
私は、我が国企業が海外の企業と互角の競争力を持つため、海外諸国同様、持ち株会社制度の活用を認め、企業の経営の選択肢の多様化を図るということは、極めて時宜に適した政策であると考えます。
持ち株会社禁止制度は、事業支配力の過度の集中を防止する趣旨で設けられたものと言われておりまして、この趣旨を守っていくことは独占禁止政策上も大変重要なことであると考えますが、規制緩和を進めていく観点からは、問題が生ずるような持ち株会社を禁止すれば足りるのではないかと考えます。したがって、事業支配力が過度に集中することにならない持ち株会社を解禁することを内容とするこのたびの改正法案は、我が党の立場からも、その方向性は基本的に評価できると考えております。
しかしながら、我が国経済の現状を考えますと、もっと早期に実現に向けて決断すべきであった課題であり、昨年来の与党内調整のおくれから法案提出が今国会までずれ込んでしまったことは、むしろ遅きに失したとも言えるわけであります。総理、なぜこの法案の提出がこのようにおくれてしまったのですか、その理由をまず第一にお伺いしたいと思います。
第二に、持ち株会社のメリット等について伺います。
企業が持ち株会社という形態を採用することについては、例えば、経営者が各事業の日常的判断から離れた中長期的視点に立った戦略を決定することができるとか、事業部門への権限委譲により経営責任の明確化が可能になる等のメリットがあると思われます。私は、まず、持ち株会社を解禁することによる我が国経済にとっての意義を国民の前に明らかにすることが必要であると考えますが、総理として、持ち株会社解禁のメリットや、経済構造改革を断行していく上でのその位置づけをどのように考えておられるか、お伺いしたいと思います。
また、これに関連して、持ち株会社の解禁の範囲につき、法律の定義規定を明確化するために公正取引委員会のガイドラインが策定されると承知しておりますが、法令で明らかにし切れない要件についてのガイドラインの策定はもちろん必要であるといたしましても、公正取引委員会による行政裁量の余地を少なくし、行政の透明性を高めるということも重要であると考えます。この意味で、かかるガイドラインの内容は、関係各方面の意見を広く聴取して、それらの意見を踏まえて策定されるべきものと考えますが、総理、この点に関する考え方を伺いたいと思います。
第三に、持ち株会社解禁に伴う労働関係への影響について伺います。
例えば、企業が持ち株会社になることにより、子会社に移された労働者の労働条件が不当に切り下げられるのではないか、持ち株会社とその子会社の労働組合との間で団体交渉に関する問題が発生するのではないかという懸念が指摘されるところであります。この問題につきましては、先般、連合と日経連、経団連との間で、労働組合法などの改正の問題も含めて今後検討し必要な措置をとること、検討期間は二年間を目途とすることなどの合意がなされたと聞いておりますが、指摘されたような懸念に対して、政府としてどのように認識し対応しようとしておられるのか、労働大臣にお伺いしたいと思います。
第四に、我が国の経済構造改革の中にあって、金融制度改革は最も重要なテーマの一つであります。特にこの関連で、金融持ち株会社についてお尋ねいたします。
英国で始まったいわゆる金融ビッグバンに促進され、世界的に急速に進展しつつある金融の自由化を受け、銀行、証券等既存の業務分野の垣根は急速に消滅しつつあるのが現在の大きな世界の潮流であります。金融業の国際競争力を高めるため、さらに規制緩和を図り、金融各業態への参入を促進し、一層自由化を進めていくということが重要な政策課題であると思われる一方、金融業が実質的に事業会社を傘下におさめることへの懸念もあるものと考えております。
この際、金融持ち株会社についても、いわゆるファイアウォール規制や金融による産業支配の防止策等の対策を講じた上で、早急にその解禁を図るべきであるという考え方も強く主張されておりますが、この点についての政府の方針を伺いたいと思います。
今回の持ち株会社の解禁に伴い、ただいま述べた労働法制、金融業法の整備の問題以外にも、連結決算制度等の企業会計、連結納税制度や分社化の際の資産の譲渡益課税のあり方などの税制、分社化・企業分割に関するルールや親会社の株主や債権者の権利保護に関する商法上の規定など、さまざまな視点から検討すべき問題があります。これらはいずれも企業法制の基本にかかわる問題でありますが、私としては、早急にこれらの企業法制の見直しのための幅広い議論の必要があることをこの際指摘しておきたいと思います。
最後に、申すまでもなく、独占禁止法は、経済の憲法とも称される経済の基本ルールであります。政府としても、独占禁止法の厳正な運用を確保するため、確固たる不断の努力を行っていただくことを強く期待し、このための総理大臣の取り組みの決意を伺って、私の質問を終わらせていただきます。(拍手)
〔内閣総理大臣橋本龍太郎君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114005254X02819970418/12
-
013・橋本龍太郎
○内閣総理大臣(橋本龍太郎君) 古賀議員にお答えを申し上げます。
まず、独禁法の改正法案の提出のおくれた理由についてのお尋ねがありました。
確かに、前期通常国会に提出をしたいと精力的に準備を進めてまいりましたが、与党内におきまして、労働問題、持ち株会社解禁の範囲などをめぐって意見の一致を見ることができず、前期通常国会における法案の提出を見送る結果となりました。今般、昨年来の議論を踏まえまして、さらに議論を深めた結果、法案提出に至ったものでありまして、どうかよろしく御審議を願いたいと存じます。
次に、持ち株会社解禁のメリット及び経済構造改革における位置づけについてお尋ねがありました。
持ち株会社のメリットにつきましては、経営責任の明確化が可能になる、あるいは新規事業分野での事業展開が行いやすくなる、こうした有用性があると言われております。国際競争に対応して我が国経済の構造改革を行う上で、このような持ち株会社形態の利用が必要とされるため、独占禁止法の目的に反しない範囲で持ち株会社を解禁することが妥当だと判断をいたしました。
次に、ガイドラインの策定でありますが、禁止される持ち株会社の範囲についてガイドラインを策定すること、これは、実態に即した法適用が行われるために必要なものと考えておりますが、同時に、その内容の透明性、明確性が確保されることも重要だと考えており、このガイドラインにつきましては、公正取引委員会におきまして、関係者などの意見を踏まえつつ、可能な範囲で客観的かつ明確なものが策定されるものと承知をしております。
次に、金融持ち株会社のうち、事業支配力が過度に集中するものについては禁止すべきだと考えておりますが、それ以外のものにつきましては、今後、必要となる金融業法上の措置が設けられれば、それと軌を一にして解禁することを考えております。
次に、独占禁止法の厳正な運用を確保するための取り組みについて決意いかんというお尋ねがありました。
独占禁止法は、自由経済の基本ルールを守る、経済における憲法ともいうべき重要な法律だと考えています。政府としても、独占禁止法の厳正かつ積極的な運用が確保されますよう、公正取引委員会の体制の整備強化等に努めてまいりました。今後とも努力してまいります。
残余の質問につきましては、関係大臣から御答弁を申し上げます。(拍手)
〔国務大臣岡野裕君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114005254X02819970418/13
-
014・岡野裕
○国務大臣(岡野裕君) 持ち株会社解禁に伴いますところの労働関係につきまして古賀先生からお話がありましたが、なるほど今日までいろいろな議論があったこと、これは労働大臣としても存じているところであります。しかし、本件につきまして、労使間の話し合いで、ある合意がなされまして、これが与党独禁法協議会に報告をなされた、こう聞いているところであります。これにつきまして、過日、与党からそのお話が私のところへございました。
したがいまして、労働省としては、今後、このお話の筋にのっとり、また国会審議を踏まえましてしかるべく対処をしてまいりたい、かように存じているところであります。(拍手)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114005254X02819970418/14
-
015・伊藤宗一郎
○議長(伊藤宗一郎君) 渡辺周君。
〔議長退席、副議長着席〕
〔渡辺周君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114005254X02819970418/15
-
016・渡辺周
○渡辺周君 私は、民主党を代表して、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の一部を改正する法律案について、総理及び関係大臣に質問をいたします。
日本国憲法と並んで我が国の経済憲法と称されてきた独占禁止法が制定され、本年で五十年を迎えます。この五十年間、独占禁止法は幾度か改正されてまいりましたが、今回の改正法案は、独占禁止法の一つの象徴的規定であった第九条の持ち株会社禁止規定を初めて抜本的に改めるものであり、まさに我が国の独占禁止政策の一時代を画するものと考えます。
そこで、まず、独占禁止法の根本精神とは何かということから質問をいたします。
昭和二十二年の最初の法案作成に当たった事務方の中心は、ほかでもない橋本総理の亡き御尊父である橋本龍伍氏、当時の内閣審議室員であったと聞いております。その橋本龍伍氏の「独占禁止法と我が国民経済」という解説書には、独占禁止法の根本精神についておおよそ次のように述べられています。
すなわち、「法律の目的規定にある国民経済の民主的発達のためには、資本を一部の者の手に偏在させず、なるべく広く一般個人に行き渡るようにすることや、企業結合体等に属しない独立自由な事業者をなるべく多くすることが必要である。また、従来、我が国では、カルテルに参加しない同業者を目のかたきにしたり、事業が少し大きくなると、いろいろな子会社をつくって資本の安定のみに走り、その結果事業が少数の大中小さまざまな財閥に集中されがちであったが、今後は各事業が公正かつ自由な競争を続け、国民の利益を確保しつつ、優秀な事業が大きく伸びていくという経済組織にしようというのがこの法律の趣旨である」と述べられております。
五十年たった今この文章を読んでも、敗戦直後の焦土の中で我が国の独占禁止法作成に携わった人々の理想と情熱が生き生きと伝わってくる思いがいたします。経済の規模は当時とは比較にならぬほど発展したにもかかわらず、相変わらず我が国では、談合、カルテルや系列取引、グループ内の株式持ち合いなど、後ろ向きで閉鎖的な企業活動が幅をきかせております。この意味で、今後の我が国の新たな経済システムの構築においても、この根本精神の有効性は不変であるとの思いを持つのでありますが、総理は、この御尊父橋本龍伍氏が述べられた独占禁止法の根本精神、国民経済の民主的発達の方向につきまして、その今日的意義をどのようにお考えか、お聞かせをいただきたいと存じます。
次に、本改正法案の基本的な考え方について質問いたします。
民主党は、持ち株会社解禁について、それが再び経済力集中の手段として用いられる懸念を生じさせない範囲に限定することが必要と考えてまいりましたが、本改正法案提出に至る与党内の協議や行政改革委員会等では、第九条や第九条の二の一般集中規制はもはや不要であり、持ち株会社等の弊害については他の個別市場集中規制条項で十分対応できるとする全面解禁・規制撤廃論が一部に根強くあったと聞いております。これに対して、法案が部分的な解禁にとどめた理由、第九条と第九条の二を廃止した場合に生じるであろう問題点、また今回の改正により設立を引き続き禁止されることとなる持ち株会社の具体的な範囲とその判断基準の根拠について、総理にお尋ねいたします。
あわせて、通産省の企業法制研究会では、昨年秋の審議再開後、これらの点についてどのような審議を行ってきたのか、また通産省として法案をどのように評価しているのか、通産大臣にお尋ねいたします。
次に、金融持ち株会社関係について大蔵大臣にお尋ねいたします。
今回の法案では、別に法律で定める日までの間は金融持ち株会社は設立を禁止されることとなっておりますが、これを解禁するについては、ビッグバンを視野に入れつつ、他方、米国の銀行持ち株会社規制等も参考に、特に銀行による産業支配の防止、金融機関の健全性確保等の観点から、事業子会社・兼業規制、親子・兄弟金融会社間のファイアウォール等の厳格なルールを定める必要があると考えますが、この点についての具体的な検討状況はどうなっているのでしょうか、お尋ねをいたします。
次に、持ち株会社解禁のもたらす社会経済への影響と対策等について質問をいたします。
本法案作成に先立ち公正取引委員会が行った海外実態調査の報告書では、持ち株会社を利用した株主からの子会社運営状況に対する追及の遮断、安定株主工作などのやや後ろ向きの戦略への利用が目立ったとされ、また、複雑に絡み合った企業集団内部で価格維持工作が行われると、情報が隠ぺいされ立証困難になることから、持ち株会社を頂点とする企業結合に切り込むには、少しでも疑いがあれば直ちに強制捜査ができるような強大な権限が必要になるとの忠告を受けたことも記されております。
この報告書は、調査後一年以上、秘密報告書の扱いとされ、最近になってようやく公表されたものでありますが、ここで指摘されている問題点について、どのように検討し、対策を講じようとしているのでしょうか。株主保護と証券市場、いわゆる連結納税制度の可否も含めた税制問題については大蔵大臣から、競争政策の執行面その他全般について総理から、それぞれ御答弁をいただきたいと存じます。
最後に、後ろ向きの利用という点で同様に懸念されている労使関係の問題について、労働大臣にお尋ねいたします。
雇用や労働条件は労使の協議と合意によって決めるのが基本でありますが、労働団体からは、持ち株会社設立による分社・子会社化が従業員の了解なしに一方的に行われるのではないか、子会社の従業員の権利はちゃんと守られるのかという危惧が表明されております。独占禁止法第一条では、雇用及び国民実所得の水準を高めることがうたわれており、万が一にも、持ち株会社が労働条件切り下げや人員削減のために利用されることがあってはなりません。この点についての労働大臣のお考えを聞かせてください。
現行の事業持ち株会社においても、親会社の意向で解雇されたり労働条件を切り下げられた子会社の従業員は、親会社の使用者責任を認めさせるために、長い年月の裁判を強いられてきた経過があります。経済界には、企業グループに対する連結納税制度が伴わなければ持ち株会社解禁のメリットがないという意見がおりますが、税負担についてはグループの一体性を強調し、雇用問題では子会社の独自性を言うのでは、余りに御都合主義と言わざるを得ません。
持ち株会社解禁による国際競争力の強化が、勤労者の犠牲の上に成り立つものであってはならないと考えます。持ち株会社解禁の前提条件として、労使関係、雇用の安定という観点から、労働法に親会社の使用者責任を規定するなどの法整備が必要と考えますが、いかがでありましょうか。
労働行政の最高責任者である労働大臣の誠実な答弁を求め、私の質問を終わらせていただきます。(拍手)
〔内閣総理大臣橋本龍太郎君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114005254X02819970418/16
-
017・橋本龍太郎
○内閣総理大臣(橋本龍太郎君) 渡辺議員にお答えを申し上げます。
亡父の著書までお目通しをいただきまして、大変光栄でありました。その上で、独占禁止法の根本的な精神、これが今日的にどういう意義を持つかというお尋ねであります。
私は、独占禁止法は自由経済の基本ルールを定めるものでありますし、その根本精神は制定当初から変わっていないものだと考えています。今、規制緩和を進め、我が国経済を自己責任原則と市場原理に立つ自由な経済社会としていくことが求められておりますが、独占禁止法の目的や精神は従来にも増して有効かつ重要なものになっていると考えております。
次に、本法案で、持ち株会社を全面解禁せず、部分解禁にとどめた理由についてのお尋ねがございました。
独占禁止法第九条は、事業支配力の過度の集中の防止という目的を有しておりますことから、今回、この規制の目的に反しない範囲での解禁を行うこととしたものでありまして、我が国における公正かつ自由な競争の確保促進を図るため、事業支配力が過度に集中することとなる持ち株会社は引き続き禁止する必要があると考えています。
第九条と第九条の二を廃止した場合に想定される問題点、これは、この規制を全面的に削除いたしまして、事業の支配力が過度に集中することとなるような持ち株会社などの存在が許されました場合、市場への自由な参入、取引先の選択の自由や取引条件の自主的な設定というものが制約をされることになり、市場メカニズムの機能が妨げられるおそれが生じるものと考えております。
禁止される持ち株会社の具体的な範囲、その判断の根拠につきましては、改正法案で、禁止される持ち株会社として、持ち株会社等の総合的事業規模が相当数の事業分野にわたって著しく大きいことによって国民経済に大きな影響を及ぼし、公正かつ自由な競争の促進の妨げとなる場合等を挙げ、禁止される具体範囲を定めておりますが、公正取引委員会におかれましても、さらに要件を明確化するため、ガイドラインを策定することを予定しておられると承知しております。
次に、公正取引委員会による海外実態調査で指摘をされた問題点についてお尋ねをいただきました。
公正取引委員会は、御指摘のように、本法案の作成に先立ち、海外の実態調査を実施し、海外諸国における持ち株会社の利用状況や問題点などをも十分踏まえて法案を作成したと承知しています。仮に独占禁止法上問題となる行為が行われました場合、公正取引委員会において、同法に基づいて適宜適切に対処することになる、そのように考えます。
残余の質問につきましては、関係大臣から御答弁を申し上げます。(拍手)
〔国務大臣三塚博君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114005254X02819970418/17
-
018・三塚博
○国務大臣(三塚博君) 渡辺議員にお答えを申し上げます。
金融持ち株会社に関する検討状況についてのお尋ねでございますが、持ち株会社が解禁されました場合に必要となる金融に関する法制度の整備については、金融システム改革の検討を進めております関係審議会における議論や国際的な制度の整合性を踏まえながら、持ち株会社グループの事業の範囲や取引のあり方等について検討を行い、持ち株会社の解禁時期をにらんで可及的速やかに準備を進めてまいる所存でございます。
次に、株主保護と証券市場についてのお尋ねであります。
公正で透明な市場の確立が、現在取り組んでいる日本版ビッグバンの重要な課題と認識をいたしており、株主保護のためのディスクロージャーの充実や取引の公正を確保するための方策につき、関係審議会の議論を踏まえ、速やかに準備に取りかかる所存でございます。
また、税制につきましては、いわゆる連結納税制度等の税の議論と今回の持ち株会社解禁に係る独禁法改正とは直接関係するものとは考えておりませんが、いずれにしても、連結納税制度の導入の可否は、企業経営の実態や商法等の関連諸制度、さらに租税回避や税収等の問題といった諸点について慎重な検討が必要とされるところであり、この研究課題をしっかりと認識しながら、今後に対応いたします。(拍手)
〔国務大臣佐藤信二君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114005254X02819970418/18
-
019・佐藤信二
○国務大臣(佐藤信二君) 渡辺議員にお答えいたします。
私に対しては、二点ございました。
一点目は、通産省の研究会における審議状況でございました。
我が国の企業が厳しい国際競争に対応するためには、労働力、資本等の経営資源を最適に配分し得る効率的な経営が可能な企業組織の実現が必要であります。そうした認識のもと、法制、税制、会計等のあり方について多角的な検討を行ってきたところであります。
第二点目は、本法案の評価でございました。
今般の改正により、迅速かつ機動的な新規事業の展開や既存事業の効率化が可能になることから、経済構造改革を進める上でも極めて有意義なものと認識しております。(拍手)
〔国務大臣岡野裕君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114005254X02819970418/19
-
020・岡野裕
○国務大臣(岡野裕君) 持ち株会社解禁に伴いますところの労働問題、これにつきましては、先生がおっしゃいますように、傘下企業の労働条件切り下げにつながるのではないか、そういった懸念その他いろいろの議論がありましたことを私も存じているところであります。しかしながら、先般、本件につきまして労使間で、ある合意に達することがありまして、これが与党独禁法協議会に報告をされたところであります。過日、本件につきまして、私に与党からその内容につきましてのお話向きがありました。
今後、労働省といたしましては、このお話の趣旨にのっとり、かつは国会の御審議を踏まえましてしかるべき対処をしてまいりたい、かように存じているところであります。(拍手)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114005254X02819970418/20
-
021・渡部恒三
○副議長(渡部恒三君) 大森猛君。
〔大森猛君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114005254X02819970418/21
-
022・大森猛
○大森猛君 私は、日本共産党を代表して、橋本総理並びに関係大臣に、独占禁止法改正案等について、とりわけ持ち株会社の解禁問題に絞って質問をいたします。
総理、持ち株会社は、戦前の三井、三菱など大財閥の政治経済支配に対する反省を踏まえ、戦後制定された独占禁止法、独禁法の第九条で禁止されてきたものであります。さらに、二十年前には、大商社などの横暴を防止するために、大企業の株式保有の規制を強める改正が行われてきたことは総理もよく御承知のとおりであります。その持ち株会社を、総理、今なぜ解禁なのでしょうか。
日本経済の現状を見れば、旧財閥系を含む六大企業集団、およそ二百社、日本の全企業に対してわずか一万分の一にも満たない一握りの巨大企業が総資産の四分の一以上を占めるなど、我が国経済において圧倒的な経済支配力を持っています。その弊害が、バブル経済とその破綻、大企業の海外進出による産業の空洞化、大スーパーによる地域経済、商店街の荒廃など、国民各層に鋭くあらわれています。今国民にとって本当に大事なのは、こうした大企業への民主的コントロールで、社会的責任をきちんと果たさせることなのではないでしょうか。
ところが、総理、あなたが今やろうとしている持ち株会社解禁案は、これと真っ向から逆行するもので、むしろ巨大資本グループの経済支配力を一層強め、大企業、大銀行の力をもっともっと巨大なものにしようとするものであります。総理、あなたは、戦前の財閥支配、戦後の大企業支配による弊害についてどのような認識をお持ちなのか、また今なぜ持ち株会社を解禁するのか、国民が納得できる答弁を求めるものであります。
総理、本法案には二つの重大問題があります。
まず第一は、持ち株会社の定義の改変問題であります。
新しい第九条は、持ち株会社について、事業支配力の過度に集中するものについてのみ禁止するとして、抽象的かつ恣意的な基準を設け、禁止する特定のタイプを挙げていますが、逆に言えば、これら特殊なタイプ以外のすべての持ち株会社を解禁してしまっています。その上、持ち株会社の定義を子会社の株式の五〇%超を所有することと著しく狭めたのでは、実際に規制される持ち株会社は極めて限られたものになってしまいます。
例えば、現在の六大企業集団それぞれの株式の集団内相互持ち合い状況は、最高の三菱グループでも三八%ですが、仮にこの全株式を新たに設立する会社に移したとしても、本法案の定義では、それは持ち株会社に該当せず、何ら禁止されないではありませんか。六大企業集団クラスの持ち株会社化を禁止できるかのような主張は根拠がなく、まさに持ち株会社規制の全面的な骨抜きと言わなければなりません。総理の明確な答弁を求めるものであります。
第二は、いわゆる金融持ち株会社の解禁問題であります。
資金力をバックにした大銀行の産業支配力と中小金融機関などに対する影響力は、今なお圧倒的に大きいものがあります。だからこそ独禁法は、通常の事業会社と区別して、大銀行による他の会社の株式保有について特別に厳しい制限を設けてきました。
ところが、総理、本法案は金融持ち株会社もまた解禁というのであります。金融規制のあり方についての国民的な検討は先送りにしたまま、金融ビッグバンのかなめと言われる金融持ち株会社の容認だけを決めるなど断じて許せません。一体、総理は、大銀行の金融支配、産業支配の危険性をどのように認識されているのか。また、金融持ち株会社グループ全体に独禁法の株式保有を規制する網をかけるのか、かけないのか。もし網をかけないとすれば、一昨年の公正取引委員会の中間報告さえ踏みにじるもので、極めて重大な問題であります。総理並びに大蔵大臣の答弁を求めます。
総理、持ち株会社の解禁は、企業経営のあり方や国民生活、そして日本経済に重大な悪影響をもたらすものではありませんか。
以下、三つの角度から伺います。
第一に、持ち株会社は、不健全な企業経営や不公正取引を助長させ、独禁法の目的とする自由かつ公正な競争秩序とは相入れないのではありませんか。
公正取引委員会事務局の欧米における持ち株会社の実態調査報告によれば、ヨーロッパ各国の政府当局者は、持ち株会社は子会社の経営に関する親会社の責任追及を遮断する効果があることを指摘するとともに、持ち株会社のもとで複雑に絡み合った企業集団内部では情報が隠ぺいされ、果ては談合の場となる、そしてそれらの不正の立証は困難になると具体的に報告しているではありませんか。総理はお読みになったのでしょうか。
もともと親子会社関係が複雑かつ閉鎖的な我が国で持ち株会社が解禁されたら、それらはヨーロッパ以上に企業責任の回避、情報の隠ぺいなどに利用されることは火を見るより明らかではないでしょうか。また、持ち株会社とその子会社の経営者に対する株主代表訴訟を困難にするのではありませんか。総理並びに法務大臣の見解を求めます。
第二に、持ち株会社の解禁はまた、企業の切り売りや買収、合併を横行させ、労働者の権利と雇用に重大な影響を与えるものとなることも明らかであります。
今日、既に我が国では、日立製作所初め電機大企業の分社化や持ち株会社の外資系銀行などで、使用者責任と子会社の労働組合の親会社に対する労使交渉権をめぐって紛争が頻発しています。持ち株会社の解禁は、これに拍車をかけることになるのではありませんか。
同時にまた、ドイツの持ち株会社ダイムラー・ベンツの最近の例を挙げるまでもなく、首切りとリストラの強行を容易にし、雇用不安を一層大きくするのではないでしょうか。既に新日本製鉄の幹部も、資本の論理の産物である持ち株会社に雇用責任を求めるのは筋違いとまで言い切っているではありませんか。総理並びに労働大臣の見解を求めます。
第三に、欧米と日本の競争ルールについての認識です。
総理、最近、あなたの党の幹部でさえ、今進めている行政・経済改革は弱肉強食社会になっていく方向などの懸念を表明し、欧米には明確な競争のルールがあるが日本にはないなどと言っています。ルールなき資本主義と言われる我が国で、大企業の経済支配力を格段に強める持ち株会社を解禁すれば、間違いなく大資本、強者の利益になるでしょうが、中小企業、消費者など経済的弱者の利益は一体どうなるのか、総理の答弁を求めるものであります。
最後に、総理、ことしは独禁法とともに憲法施行から五十年であります。独禁法の第九条は、平和原則を定めた憲法九条と並べて、しばしばもう一つの九条とさえ言われてきた、戦後の経済分野の民主主義の大原則ともいうべきものであります。いやしくも、この第九条の根本的な改変を国民的な議論もしないまま短期間に強行するなどということは、断じて許されるものではありません。
総理、初めに解禁ありきの立場ではなく、徹底した国民的論議を尽くすことを強く要求して、私の質問を終わります。(拍手)
〔内閣総理大臣橋本龍太郎君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114005254X02819970418/22
-
023・橋本龍太郎
○内閣総理大臣(橋本龍太郎君) 大森議員にお答えを申し上げます。
まず、持ち株会社の解禁理由をお尋ねでありました。
今回の改正は、経済の国際化など内外の諸情勢の変化を背景として、我が国の企業が国際競争力を強めながら構造改革を行う必要が高まっているその状況にかんがみて、事業支配力の過度の集中の防止という独占禁止法の目的に反しない持ち株会社を解禁しようとするものであります。
次に、戦前の財閥や戦後の大企業支配に対する弊害という御意見がありましたが、戦前の財閥が再来する、あるいは現在のいわゆる六大企業集団が持ち株会社を中心に統括される、そうした事態というのは、私も国民経済上大きな影響を及ぼすものだと思いますし、公正かつ自由な競争の促進の妨げとなるものと認識しておりますし、このような事業支配力が過度に集中することになる持ち株会社は引き続き禁止されなければならないと思っています。
また、今回の規制につきましては、持ち株会社に対して第九条、持ち株会社以外の会社に対しましては第九条の二によって有効な規制が行われると思います。禁止される持ち株会社の範囲につきましては、改正法案の規定に加えて、公正取引委員会によってさらに要件を明確化しますため、ガイドラインが作成をされ、そこでは六大企業集団程度の規模を有するそうした持ち株会社は禁止されることになると思います。
それから、大企業の金融支配、産業支配の危険性についてのお尋ねがございましたが、金融会社につきましては、その融資等の影響力にかんがみて、株式所有について一定の制限を課しております。
金融持ち株会社グループ全体に対する独禁法第十一条の規制及び中間報告との関係について御意見がありました。
この報告書では、金融持ち株会社グループ全体に対して十一条の規制を及ぼすことを提言しておりましたが、今回の法案では、金融持ち株会社グループとしては十一条の規制を適用しないことといたしました。それは、現行の第十一条が法人単位の規制でありますこと、昨年十一月に大蔵大臣に、金融制度全般にわたり大規模な改革を行い一層の自由化を進めていくことを指示したところでありまして、持ち株会社を解禁し企業の組織形態の自由度を高めようとするときに規制強化を図ることは不適切だと考えたからであります。
次に、持ち株会社による不健全な企業経営あるいは不公正取引の助長の可能性について言及されました。
事業支配力が過度に集中することになる持ち株会社を禁止すれば、事業支配力の過度の集中を防止するという独占禁止法の目的は達成できると考えております。仮に持ち株会社が不公正な取引方法を行う場合、公正取引委員会が独占禁止法の規定に基づいて厳正に対処するものと考えています。
また、持ち株会社が解禁された場合、ヨーロッパ各国以上に重大な事態となることは明らかではないかというお尋ねがありました。
しかし、今回の改正法案では、事業支配力が過度に集中することとなる持ち株会社は引き続きこれを禁止することとしておりまして、ヨーロッパ各国以上に重大な事態が生ずるおそれはないと考えております。
次に、株主代表訴訟との関係について御意見がありました。
取締役の違法な行為によって会社に損害を与えた場合、株主が代表訴訟を提起できますことは、持ち株会社が解禁されましても同様であります。持ち株会社の解禁によって株主代表訴訟が困難になる、そういう性格のものではないと思います。
次に、労使関係についてのお尋ねがございました。
御指摘のような懸念を抱かれる方もあるということは承知をしておりますが、政府としては、今後の国会での御議論も踏まえながら適切に対処していきたいと思います。
次に、持ち株会社の解禁が雇用不安を大きくするという御意見でありますが、私は、この点は観点を異にいたします。むしろ、持ち株会社の解禁は、新しい事業の展開、ベンチャー企業の振興などに貢献をするものであり、我が国経済を活性化し、新たな雇用機会の創出に資する施策だと考えています。
最後に、ルールなき資本主義と言われる我が国で持ち株会社を解禁することは大資本の利益にだけしかならないのではないか、そういう御意見がありました。
しかし、持ち株会社の解禁は、経済の国際化など内外の諸情勢の変化を背景としながら、我が国の企業が国際競争力を高めるという趣旨で行うものでありまして、その利益は、私は企業規模の大小を問わず発揮されるものだと考えています。そのためにも、公正取引委員会が独占禁止法を厳正に運用し、市場における公正かつ自由な競争という基本ルールが徹底されることが重要だと考えております。
残余の質問につきましては、関係大臣から御答弁を申し上げます。(拍手)
〔国務大臣三塚博君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114005254X02819970418/23
-
024・三塚博
○国務大臣(三塚博君) 大森議員にお答えを申し上げます。
持ち株会社が解禁される場合に必要となる金融に関する法制度の整備については速やかに準備を進めてまいる所存でございますが、大銀行の金融支配、産業支配の危険についてのお尋ねにつきましては、総理も述べられておりますとおり、独占禁止法上、金融会社には他の会社の株式所有についての一定の制限が課されております。事業支配力の過度の集中につながらないものとされていると認識をいたしておるところであります。(拍手)
〔国務大臣松浦功君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114005254X02819970418/24
-
025・松浦功
○国務大臣(松浦功君) 株主代表訴訟との関係についてのお尋ねでございますが、ただいま総理から答弁されましたとおり、持ち株会社の解禁により株主代表訴訟が困難になるというようなことはないと考えております。(拍手)
〔国務大臣岡野裕君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114005254X02819970418/25
-
026・岡野裕
○国務大臣(岡野裕君) 大森先生からいただきました二つの御質問でありますが、ただいまの総理の答弁で尽きている、こう存じます。
一点だけ、労働関係について加えさせていただきますと、これにつきましては、労使のある合意がありますこと、それが与党独禁法協議会に報告されておりますこと、この中身につきまして与党から私に話向けがありますこと、以上をつけ加えさせていただきます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114005254X02819970418/26
-
027・渡部恒三
○副議長(渡部恒三君) これにて質疑は終了いたしました。
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114005254X02819970418/27
-
028・渡部恒三
○副議長(渡部恒三君) 本日は、これにて散会いたします。
午後一時十七分散会
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114005254X02819970418/28
4. 会議録のPDFを表示
この会議録のPDFを表示します。このリンクからご利用ください。