1. 会議録本文
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000・会議録情報
平成九年五月八日(木曜日)
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議事日程 第十八号
平成九年五月八日
午後一時開議
第一 アイヌ文化の振興並びにアイヌの伝統等
に関する知識の普及及び啓発に関する法
律案(内閣提出、参議院送付)
第二 商法の一部を改正する法律案(保岡興治
君外八名提出)
第三 株式の消却の手続に関する商法の特例に
関する法律案(保岡興治君外八名提出)
第四 電気事業法の一部を改正する法律案(内
閣提出)
第五 健康保険法等の一部を改正する法律案
(内閣提出)
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○本日の会議に付した案件
日程第一 アイヌ文化の振興並びにアイヌの伝
統等に関する知識の普及及び啓発に関する法
律案(内閣提出、参議院送付)
日程第二 商法の一部を改正する法律案(保岡
興治君外八名提出)
日程第三 株式の消却の手続に関する商法の特
例に関する法律案(保岡興治君外八名提出)
日程第四 電気事業法の一部を改正する法律案
(内閣提出)
日程第五 健康保険法等の一部を改正する法律
案(内閣提出)
橋本内閣総理大臣の米国、豪州及びニュー・
ジーランド訪問に関する報告及び質疑
電気通信事業法の一部を改正する法律案(内閣
提出)、国際電信電話株式会社法の一部を改
正する法律案(内閣提出)及び日本電信電話
株式会社法の一部を改正する法律案(内閣提
出)の趣旨説明及び質疑
午後一時二分開議発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114005254X03219970508/0
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001・伊藤宗一郎
○議長(伊藤宗一郎君) これより会議を開きます。
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日程第一 アイヌ文化の振興並びにアイヌの
伝統等に関する知識の普及及び啓発に関す
る法律案(内閣提出、参議院送付)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114005254X03219970508/1
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002・伊藤宗一郎
○議長(伊藤宗一郎君) 日程第一、アイヌ文化の振興並びにアイヌの伝統等に関する知識の普及及び啓発に関する法律案を議題といたします。
委員長の報告を求めます。内閣委員長伊藤忠治君。
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アイヌ文化の振興並びにアイヌの伝統等に関する知識の普及及び啓発に関する法律案及び同報告書
〔本号末尾に掲載〕
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〔伊藤忠治君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114005254X03219970508/2
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003・伊藤忠治
○伊藤忠治君 ただいま議題となりましたアイヌ文化の振興並びにアイヌの伝統等に関する知識の普及及び啓発に関する法律案につきまして、内閣委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。
本案は、アイヌの人々の誇りの源泉であるアイヌの伝統及びアイヌ文化が置かれている状況にかんがみ、アイヌ文化の振興を図る施策並びにアイヌの伝統等に関する国民に対する知識の普及及び啓発を図るための施策を推進することにより、アイヌの人々の民族としての誇りが尊重される社会の実現を図り、あわせて我が国の多様な文化の発展に寄与しようとするものであります。
本案は、参議院から送付されたものでありまして、四月二十二日本委員会に付託され、昨七日稲垣北海道開発庁長官から提案理由の説明を聴取し、質疑を行い、採決いたしましたところ、全会一致をもって原案のとおり可決すべきものと決した次第であります。
なお、本案に対し附帯決議が付されました。
以上、御報告申し上げます。(拍手)
―――――――――――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114005254X03219970508/3
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004・伊藤宗一郎
○議長(伊藤宗一郎君) 採決いたします。
本案は委員長報告のとおり決するに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114005254X03219970508/4
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005・伊藤宗一郎
○議長(伊藤宗一郎君) 御異議なしと認めます。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。
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日程第二 商法の一部を改正する法律案(保岡興治君外八名提出)
日程第三 株式の消却の手続に関する商法の特例に関する法律案(保岡興治君外八名提
出)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114005254X03219970508/5
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006・伊藤宗一郎
○議長(伊藤宗一郎君) 日程第二、商法の一部を改正する法律案、日程第三、株式の消却の手続に関する商法の特例に関する法律案、右両案を一括して議題といたします。
委員長の報告を求めます。法務委員長八代英太君。
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商法の一部を改正する法律案及び同報告書
株式の消却の手続に関する商法の特例に関する法律案及び同報告書
〔本号末尾に掲載〕
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〔八代英太君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114005254X03219970508/6
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007・八代英太
○八代英太君 ただいま議題となりました両法律案につきまして、法務委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。
初めに、商法の一部を改正する法律案について申し上げます。
本案は、会社をめぐる最近の社会経済情勢にかんがみ、株式会社について、株式及び新株引受権によるストックオプション制度の整備を図ることにより、取締役及び使用人の意欲や士気を高め、かつ、優秀な人材確保の有効な手段として、企業の業績向上や国際競争力の増大に資するために商法の一部を改正しようとするもので、その主な内容は、
第一に、会社が自己の株式を取得することができる場合として、使用人以外に、取締役に対して株式を譲渡する場合を追加することとし、また、取得することができる株式の数量を、発行済み株式総数の十分の一を超えない範囲内とすること、
第二に、会社は、定款に定めがある場合に限り、正当の理由があるときは、取締役等に新株引受権を与えることができることとし、この場合、新株引受権を与える取締役等の氏名、新株引受権の目的である株式の数及び発行価額等につき、株主総会の特別決議を要すること等であります。
次に、株式の消却の手続に関する商法の特例に関する法律案について申し上げます。
本案は、自己の株式の消却に関する手続を緩和することにより、資本市場の効率化、活性化を図り、もって国民経済の健全な発展に寄与するため、上場会社等について、株式の消却の手続に関する商法の特例に関する法律を新たに制定しようとするもので、その主な内容は、
第一に、上場会社及び店頭登録会社は、定款をもって、経済情勢、当該会社の業務または財産の状況その他の事情を勘案して特に必要があると認めるときは、取締役会の決議により自己の株式を買い受けで消却することができる旨を定めることができること、
第二に、取締役会に授権できる株式の総数は発行済み株式総数の十分の一を超えることができないこと等であります。
委員会におきましては、両案を一括して議題とし、昨七日提出者を代表して保岡興治君から提案理由の説明を聴取した後、質疑を行い、これを終了し、直ちに採決を行った結果、両案はいずれも賛成多数をもって原案のとおり可決すべきものと決しました。
なお、両案に対しまして附帯決議が付されたことを申し添えます。
以上、法務委員会、御報告申し上げました。(拍手)
―――――――――――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114005254X03219970508/7
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008・伊藤宗一郎
○議長(伊藤宗一郎君) 両案を一括して採決いたします。
両案の委員長の報告はいずれも可決であります。両案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114005254X03219970508/8
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009・伊藤宗一郎
○議長(伊藤宗一郎君) 起立多数。よって、両案とも委員長報告のとおり可決いたしました。
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日程第四 電気事業法の一部を改正する法律案(内閣提出)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114005254X03219970508/9
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010・伊藤宗一郎
○議長(伊藤宗一郎君) 日程第四、電気事業法の一部を改正する法律案を議題といたします。
委員長の報告を求めます。商工委員長武部勤君。
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電気事業法の一部を改正する法律案及び同報告書
〔本号末尾に掲載〕
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〔武部勤君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114005254X03219970508/10
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011・武部勤
○武部勤君 ただいま議題となりました法律案につきまして、商工委員会における審査の経過及び結果について御報告申し上げます。
本案は、発電所に係る環境アセスメントにおきまして、一般的手続については、別途、内閣から提案されております環境影響評価法案によることとし、これに加えて、発電所に係る固有の手続についての細目等を規定しようとするものでありまして、その主な内容は、
第一に、法律の目的規定における「公害の防止」を「環境の保全」に改正すること、
第二に、発電所の環境影響評価の手続の各段階において、国が審査を行い、必要な事項についての勧告または変更命令を行う等、所要の特例措置を定めること、
第三に、発電所の工事において環境の保全についての適正な配慮がなされることを確保するため、同工事に係る認可要件として環境影響評価書に従ったものであることを新たに追加することなどであります。
本案は、去る四月十日本委員会に付託され、翌十一日佐藤通商産業大臣から提案理由の説明を聴取いたしました。同月十六日に質疑を行い、昨五月七日討論を行った後、採決を行った結果、賛成多数をもって原案のとおり可決すべきものと議決いたしました。
以上、御報告申し上げます。(拍手)
―――――――――――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114005254X03219970508/11
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012・伊藤宗一郎
○議長(伊藤宗一郎君) 採決いたします。
本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114005254X03219970508/12
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013・伊藤宗一郎
○議長(伊藤宗一郎君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。
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日程第五 健康保険法等の一部を改正する法
律案(内閣提出)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114005254X03219970508/13
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014・伊藤宗一郎
○議長(伊藤宗一郎君) 日程第五、健康保険法等の一部を改正する法律案を議題といたします。
委員長の報告を求めます。厚生委員長町村信孝君。
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健康保険法等の一部を改正する法律案及び同報告書
〔本号末尾に掲載〕
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〔町村信孝君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114005254X03219970508/14
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015・町村信孝
○町村信孝君 ただいま議題となりました健康保険法等の一部を改正する法律案につきまして、厚生委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。
本案は、二十一世紀に向け、我が国の医療保険制度の総合的な改革が急がれる中、その第一歩として、当面の財政危機を回避し、制度の安定的運営の確保、世代間の負担の公平等を図るため、給付と負担の見直し等の措置を講じようとするものであります。
その主な内容は、
第一に、医療保険制度及び老人保健制度の全般にわたる改革を図るため、既存の審議会を統合し、新たな審議会を設置すること、
第二に、健康保険等被用者保険の被保険者本人の一部負担の割合について、法律本則に規定する二割とすること、
第三に、政府管掌健康保険の保険料率を千分の八十二から千分の八十六に改定すること、
第四に、被用者保険及び国民健康保険においては、新たに外来の際の薬剤について、一種類一日分につき十五円の負担を設けること、
第五に、老人保健制度においては、老人医療に係る一部負担金の額を、外来については、一月千二十円から、同一の月に、四回の支払いを限度として一日五百円に改めるとともに、入院については、一日七百十円から一日千円に改めること、なお、低所得者の入院については、二月を限度として一日三百円を一日五百円に改めること、また、健康保険法の改正と同様に、外来の際の薬剤に関する一部負担を設けること、
第六に、本案の施行期日は、一部の事項を除き、平成九年五月一日とすること
等であります。
本案は、去る四月八日の本会議において趣旨説明が行われ、同日付託となり、小泉厚生大臣から提案理由の説明を聴取し、同月九日質疑に入り、二十二日には参考人からの意見聴取を行うなど八日間にわたり慎重な審査を進めてまいりましたが、昨日、津島雄二君外二名から、自由民主党及び社会民主党・市民連合の共同提案による修正案が提出されました。
修正の要旨は、
第一に、外来の際の薬剤に係る一部負担について、薬剤の支給を受けることに、その種類数に応じ、二種類または三種類の場合は四百円、四種類または五種類の場合は七百円、六種類以上の場合は千円とすること、なお、頓服薬及び外用薬については、一種類につきそれぞれ十円及び八十円とすること、
第二に、政府管掌健康保険の保険料率を原案の千分の八十六から千分の八十五に引き下げること、
第三に、老人保健法に係る入院一部負担金の額を、平成九年度は一日につき千円、平成十年度は一日につき千百円、平成十一年度は一日につき千二百円とすること、
第四に、施行期日を、一部の事項を除き、平成九年九月一日とすること、
第五に、政府は、この法律の施行後三年以内に検討を加え、必要があると認めるときは所要の措置を講ずるものとすること等であります。
次いで、原案及び修正案を一括して議題とし、小泉厚生大臣及び修正案提出者に対する質疑を行った後、橋本内閣総理大臣の出席を求め、質疑が続けられました。
これまでの本委員会における主な質疑は、医療保険制度の抜本改革の見通しと本案の位置づけ、政府管掌健康保険に係る国庫補助の繰り戻しの必要性、包括払い制の活用等診療報酬体系のあり方、薬価基準制度の廃止を含めた薬価制度の抜本改革の必要性、医療機関の機能分担と連携等医療提供体制の改革のあり方、薬剤一部負担の導入の考え方、修正案の実施に伴う保険財政への影響等、広範多岐にわたり行われましたが、その詳細については会議録に譲ることといたします。
このような経過を経まして、昨日質疑終局の動議が提出され、これを可決いたしました。次いで、原案及び修正案を一括して討論に付した後、採決いたしました結果、修正案及び修正部分を除く原案はいずれも多数をもって可決され、本案は修正議決すべきものと決した次第であります。
なお、本案に対し医療保険制度の早期抜本改革の実現等九項目の附帯決議を付することに決しました。
以上、御報告申し上げます。(拍手)
―――――――――――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114005254X03219970508/15
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016・伊藤宗一郎
○議長(伊藤宗一郎君) 討論の通告があります。順次これを許します。青山二三君。
〔青山二三君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114005254X03219970508/16
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017・青山二三
○青山二三君 私は、新進党を代表して、健康保険法等の一部を改正する法律案並びに自由民主党、社会民主党共同提出の同法律案に対する修正案につきまして、反対の討論を行います。(拍手)
まず初めに、このたびの同法案並びに修正案の審議に関する自民、社民両党の横暴きわまる厚生委員会の運営について断固抗議いたします。(拍手)
本改正案は、平成九年度予算関連であると同時に、医療保険構造改革の第一歩となる今国会における最重要法案の一つであることは言うまでもありません。また、介護保険法案と並んで、二十一世紀の社会保障制度全般のあり方をも大きく左右する極めて重大な法案であると認識をいたしております。さらに言えば、二兆円もの新たな国民負担増により国民生活に多大な影響を与える法案でもあります。
こうした極めて重要な法案であり、国民的関心の高い中で、国民の負託を受けた我々国会議員には十分かつ慎重な審議が求められているのであります。新進党は今日まで、その期待にこたえるべく真剣かつ真摯な態度で審議を積み重ねてきたのであります。
しかし、与党である自民、社民両党は、四月十五日、政府案の審議がいまだ不十分な状況の中で、参考人招致を強引に採決の上決定いたしました。また、昨日の厚生委員会の冒頭、政府案に対する修正案の趣旨説明が行われ、修正案文もそのとき提示され、直ちに質疑に入りました。そのため、質問の準備時間すら確保できず、しかもたった一日、時間にして七時間余りという極めて短時間の審議を行っただけで、自民、社民両党は強行に審議を打ち切り、採決に踏み切るという暴挙に出たのであります。
そして、審議されました修正案は政府案から大きく変質し、特に、基本的な哲学、考え方に重大な変更があるにもかかわらず、これらについて提案者から十分な説明がなされておらず、審議が全く不十分であることは明白であります。
具体的な例を挙げますと、薬剤費の自己負担のあり方については、厚生省の諮問機関である医療保険審議会が定率負担を建議していたにもかかわらず、法案では、与党内調整で、一日一種類十五円に変更し、さらに、このたびの修正案では投薬ごとに種類数に応じて定額となるなど、半年余りで二転三転しているのであります。これらは国民の自己負担に係る重大な変更であり、それがなぜこのような変更につながったのかも説明されておりません。これはあくまで一例であり、これだけを見ましても、審議が尽くされたとは到底言えないのであります。
さらに、国民に二兆円もの負担増を強いる極めて重要な法案であるにもかかわらず、自民、社民、さらにはさきがけの与党三党が、立法機関である国会を全く軽視し、国民の見えない密室で修正案を取りまとめ、しかも国会審議も不十分なまま強引に採決するということは、全く国民不在の数の力に任せた、民主主義を否定しかねない暴挙であると言わざるを得ません。(拍手)
しかも、昨日の厚生委員会には橋本総理が出席され、総理に対する質疑が終了し、委員会室を退席された直後にこのような強行採決がなされたのであります。まさに、総理自身の国会軽視の姿であると断じざるを得ません。
また、構造改革なき負担増にあれほど反対していたはずの社民党の責任も重大であることを指摘し、以下、反対の理由を順次申し述べます。
反対の第一は、本改正案並びに修正案は、構造改革をすべて先送りし、当面の医療保険財政の赤字回避のため、場当たり的に新たに二兆円もの国民負担増を押しつけるものであるということであります。
私は、二十一世紀の超高齢化社会を間近に控え、医療保険財政が逼迫している状況をかんがみれば、自己負担増を含めた構造改革の必要性については十分に認識しており、一定の自己負担の割合の変更そのものを否定するものではありません。
しかるに、政府・与党は、本来負担増と一緒に行うべき構造改革の具体的な内容、スケジュールは何ら示さないばかりか、その構造改革はいつまでにまとめるのかといえば、当初は三年以内に結論を出すと言っていたのであります。最近では、国民の批判が強いと見ると、一年以内と言い直し、そしてこのたびの与党三党の合意を見れば、法案の施行時期、すなわち本年九月一日までに構造改革の結論を出すとするなど、到底そこには断固たる信念なるものは見えないのであります。
この調子で、果たして九月までに構造改革がなされるのでありましょうか。私は疑問視しております。それは、本修正案の検討条項が、一年以内ではなく三年以内となっており、少なくとも修正案の中では構造改革に対する取り組みの熱意ややる気は何ら示されておりません。
もし与党に本気で九月までに構造改革プログラムを出すという決意があるのであれば、当然、補正予算審議が必要となる秋以降の臨時国会に、構造改革を含めた健康保険法改正案を再度国会に提出することなどを明確な形で担保するべきであります。私は、そもそも九月一日施行であるならば、その間、負担増の法案を凍結し、構造改革とセットで改めて法案を提出するべきであると考えます。
なお、修正案による単なる施行期日の引き延ばしは、その間財政赤字をやみくもに膨らませ、本質的な議論を先送りするだけであり、全く無責任きわまりない、国民の目を欺くものでしかないと考えます。(拍手)
反対の第二は、国民に対する負担増を含め、構造改革に対する理念、哲学が欠如しているということであります。
私は、医療保険構造改革においては、一、高齢社会の本格到来のもとで、いつでも、どこでも、だれでも良質な医療を安心して享受できる体制を構築する。二、統制経済である医療制度についで、医療の特性に配慮しつつ、徹底した効率化が必要である。このため市場原理の導入と情報公開を推進すべきである。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114005254X03219970508/17
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018・伊藤宗一郎
○議長(伊藤宗一郎君) 青山二三君、申し合わせの時間が過ぎましたから、なるべく簡単に願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114005254X03219970508/18
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019・青山二三
○青山二三君(続) 三、働く世代に過重な負担増とならないよう、世代間の負担の公平化を実現する。四、すべての高齢者が安心して老後が送れる老人医療制度を確立する、との四つの視点が重要ではないかと考えます。
ところが、与党三党の密室における議論をつぶさには存じませんが、出てきた結果を見る限り、残念ながら、こうした理念、哲学に基づく協議というよりも、まさに利害のしがらみの中で成案がなされたものと言わざるを得ないのであります。
このような形での議論が今後も続くとしたならば、将来における社会保障制度は大きくゆがみ、国民生活に極めて重大な事態を招くのではないかと強く危惧するものでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114005254X03219970508/19
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020・伊藤宗一郎
○議長(伊藤宗一郎君) 申し合わせの時間が過ぎましたから、なるべく簡単に願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114005254X03219970508/20
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021・青山二三
○青山二三君(続) 私は、こうした国民生活に直結した医療保険制度の構造改革の議論は、まさに国民の負託を受けた国会議員が国会の場でしがらみを断ち切り、理念、哲学に基づいて論議することこそが最も重要であると同時に、正道であると考えるのであります。その意味において、厚生委員会に医療保険構造改革に関する小委員会を設置し、積極的な審議を行うことをこの際提案いたします。
以上、反対理由を申し述べましたが、最後に、自民、社民、さきがけの合意に基づく強行採決に対し、改めて断固反対、抗議をいたしまして、私の討論を終わります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114005254X03219970508/21
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022・伊藤宗一郎
○議長(伊藤宗一郎君) 佐藤剛男君。
〔佐藤剛男君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114005254X03219970508/22
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023・佐藤剛男
○佐藤剛男君 私は、自由民主党、社会民主党・市民連合及び新党さきがけを代表して、ただいま議題となりました健康保険法等の一部を改正する法律案並びにこれに対する修正案につきまして、修正案及び修正案を除く原案に賛成の意を表するものであります。(拍手)
我が国においては、急速な高齢化の進展、産業構造の変化などの医療保険制度を取り巻く環境が大きく変化し続けておりますが、社会経済の活力を維持しつつ、国民が良質な医療を公平にかつ効率的に受けられるように、医療保険制度の構造的な改革を行うことが急務となっております。
他方、医療保険の当面の財政危機を回避し、制度運営の安定を確保しなければ、医療保険制度が早晩立ち行かなくなることは明白であります。したがいまして、医療提供体制と医療保険制度の両面にわたる抜本的な改革に直ちに取り組むとともに、当面の医療保険制度の安定のための措置を講ずることが不可欠であると考えております。
与党といたしましては、先般取りまとめました医療制度改革の基本方針を踏まえ、この改正法律案が施行されるまでの間に、政府と一体となって医療改革プログラムを取りまとめるよう努め、抜本的改革を逐次実施していくこととしております。
政府原案は、このような要請にこたえて、薬剤使用の適正化や世代間の負担の公平等の観点に立ち、制度の安定的な運営を目指すものであります。
その主な内容については、第一に、被用者保険の被保険者本人の一部負担の割合を二割とするとともに、各制度を通じて外来の際の薬剤について新たに負担を設けることであり、給付と負担の公平等を図る上で適切な措置であります。
第二に、政府管掌健康保険の保険料率を引き上げることについでは、財政収支の均衡を図る上で必要な措置であります。
第三に、老人保健制度において外来と入院の一部負担金の額を引き上げることでありますが、老人医療費を支えている現役世代と高齢者世代との公平等を確保する観点から重要な措置であります。
以上のように、政府原案の趣旨については評価するものでありますが、厚生委員会における審議及び国民各層の議論を踏まえ、主として次のような諸点について所要の修正を行うことにより、一層の内容の改善が図られるものと考えております。
第一に、外来の際の薬剤に係る一部負担について、支給を受ける薬剤が一種類の場合は新たな負担を求めず、二種類または三種類の場合は四百円、四種類または五種類の場合は七百円、六種類以上の場合は千円とし、また、頓服薬及び外用薬については、一種類につきそれぞれ十円及び八十円とすることであります。これは、多剤投与や高薬価シフトという現状の是正を図るとともに、医療機関の実務に配慮したものであります。
第二に、政府管掌健康保険の保険料率について、当面の経済情勢にかんがみ、その被保険者の保険料負担の急増を緩和する観点から、千分の八十五とすることであります。
第三に、老人保健の入院一部負担金の額について、平成九年度においては一日につき千円、平成十年度においては一日につき千百円、平成十一年度以降においては一日につき千二百円とすることであります。これは、外来と入院における一部負担の均衡を考慮するとともに、激変緩和の観点から段階的な引き上げを行うこととしたものであります。
以上の修正によって、さらに本法案の目的の達成と円滑な実施に資するものと考えるものであります。
このように、健康保険法等の一部を改正する法律案及びこれに対する修正案は、医療制度の抜本的改革の第一段階となるものであり、私どもといたしましては、この修正案及び修正部分を除く原案に賛意を表するものであります。
これをもちまして私の賛成討論を終わります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114005254X03219970508/23
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024・伊藤宗一郎
○議長(伊藤宗一郎君) 枝野幸男君。
〔枝野幸男君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114005254X03219970508/24
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025・枝野幸男
○枝野幸男君 私は、民主党を代表して、ただいま議題となっております答案について、甚だ残念ではありますが、反対の立場から討論を行います。(拍手)
まず第一に、私は、財政の著しい悪化によって、国民の命と健康を支えるシステムとして世界に冠たる国民皆保険制度が存続の危機を迎えつつあることを、甚だ憂慮するものであることを申し上げます。
それゆえに、私たちは、国民皆保険制度を守るためには、いわゆる患者の窓口負担や保険料率のアップについても、現実を無視して大衆迎合的にこれを全面否定するような立場に立つものではありません。誤解に基づく御批判を覚悟の上で、一定の合理的な負担増をお願いすることもやむを得ないとの立場に立っております。
しかしながら、国民の幅広いこうした負担増をお願いする以上は、医療保険の多額の赤字を生み出した構造にメスを入れ、医療システム全体の改革に着実な第一歩を踏み出すことが、当然のことながら、前提でなければならないはずであります。
特に、医療費増大の大きな原因となっている薬価基準制度と出来高払い中心の診療報酬体系に抜本的にメスを入れ、参照価格制度を基礎とした新しい薬価制度の導入や、包括払い制度や定額払い制度の大胆な導入などを柱とする医療構造改革の明確な方向性が、負担増と同時に示されなければなりません。
また、今回の改正についても、こうした抜本改革への道筋を明確にする見地から、薬剤費負担について、高価格薬品へのシフトがえや多剤投与を抑制する仕組みをビルトインする内容に改めるとともに、家族の一部負担を二割まで引き下げることや、乳幼児の負担を高齢者と同様のレベルまで引き下げることなど、公平な制度に改めることを主張してまいりました。
そして何よりも、赤字を理由に国民の負担増をお願いする以上、約八千億円に上る政府管掌健康保険の国庫負担繰り延べ措置について明確な返済計画を示すことは、政府として最低限の責任であると考えます。
私たちは、小泉厚生大臣を初め、政府・与党の内部にあっても、私たちと同様の見地から苦闘しておられる方がいることに期待と共感を持ちながら、抜本改革の方向性を示し、本改正案の修正を図るべく、与党三党との協議を進めてまいりました。しかしながら、結果的に、与党三党は、抽象論についてはともかくとして、各論、具体論となると意見の一致を見ることができず、まさに問題を先送りした小手先の修正案を取りまとめるにとどまりました。
考えてみれば、一部の方々は別としても、薬害エイズ問題で製薬メーカーとの癒着を取りざたされた元業務局長を現職議員として抱え、福祉を食い物にして利権に走った埼玉の某候補を公認し、そもそも党首みずから某漢方薬メーカーを初めとして製薬業界との密接な関係を取りざたされている政党が、一部の利権団体の利害に左右されることなく国民的視点に立った医療改革を進めることは、初めから困難なことであったのかもしれません。
与党三党は、九月の本改正案施行までに抜本改革案を取りまとめると主張しています。しかし、日ごろは審議会決定を金科玉条のように扱っていながら、昨年の医療保険審議会の答申を一部圧力団体の力で骨抜きにしてきたのは、だれあろう与党の内部のいわゆる族議員諸氏にほかなりません。
また、既に少なくとも半年以上の月日を費やして議論しながら、何らの具体案を提示できなかったにもかかわらず、本改正案が成立してしまった後に、わずか四カ月で真の抜本改革を取りまとめることは、遺憾ながら不可能であると断じざるを得ません。
よって、私たちは、抜本改革への具体的な道筋に政府・与党を引き込むことができなかったことを甚だ残念に思いながら、またその非力を国民の皆様方におわびを申し上げながら、抜本改革を示さない本改正案及びこれに対する修正案については反対せざるを得ないものであります。
かくなる上は、一刻も早く利益団体に左右されない政権を実現し、医療構造改革を断行できる体制をつくるべく努力する決意であります。
願わくは、小泉厚生大臣を初めとする与党内の少数の良識派の皆さんがさらに一層奮起をされ、私たちの見通しをよい意味で裏切っていただいて、いわゆる族議員を抑え込み、九月までに真の抜本改革案が取りまとめられることに期待をしつつ、もしもそれがうまくいかずに、これ以上内側から足を引っ張られ、後ろから弾が飛んでくるような状況が続くのであるならば、勇気を持ってこうした利権、癒着の体制から飛び出し、ともに手を携え真の改革の扉をあけるようお勧めを申し上げて、反対の討論とさせていただきます。
ありがとうございました。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114005254X03219970508/25
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026・伊藤宗一郎
○議長(伊藤宗一郎君) 児玉健次君。
〔児玉健次君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114005254X03219970508/26
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027・児玉健次
○児玉健次君 私は、日本共産党を代表して、健康保険法等の一部を改正する法律案への反対討論を行います。(拍手)
反対理由の第一は、厚生省みずからが八千五百億円と試算した受診抑制がもたらす国民の命と健康に及ぼす重大な影響であります。
国民に二兆円の医療費負担増を強要するこの改悪案は、とりわけ高齢者、経済的弱者を直撃するものです。受診中断、受診抑制は、病気の重症化を進め、結果的に医療費を押し上げることになることは必至です。し
第二に、医療保険財政を民主的に立て直すためには、国際的に異常に高い日本の薬価、とりわけ新薬シフトの是正を行わなければなりません。
一九九六年版医療白書によれば、一九八〇年から九一年までの十二年間、日本の新薬は百九十八点、この間、世界で承認された新薬は四百六十三点、実に世界全体の四三%を占めているのであります。ここにメスを入れ、薬品の製造原価に着目して公正な薬価を設定することで、優に二兆円を超える節減が可能であり、国民の負担増は必要ありません。政府は、この課題に即刻着手すべきであるとの日本共産党の再三の要求にもかかわらず、高薬価を放置したままであります。
第三の理由は、医療保険への国の負担を、改悪案の実施に際し二千九百五十億円減額していることです。
政府管掌健康保険の場合、一九九二年三月、政府は黒字を理由に国の負担を十六・四%から一三%に減じました。このとき、政府は、国会において、万一財政状況が悪化した場合については国庫補助の復元について検討させていただくと明確に答弁いたしました。健康保険法に「所要の措置を講ずるものとする。」附則も加えました。ところが、政管健保の財政状況が悪化したにもかかわらず、政府は国庫負担を逆に八百七十億円減額しました。「こんなに国民負担増ばかり求める法案は長い医療保険の歴史でも珍しい」とある全国紙が指摘しましたが、政府の無責任さは全く言語道断であります。
第四は、医療保険の浪費構造の大もとにある医療、福祉の分野での政官財の癒着にメスを入れようとしないことです。
企業献金の禁止、官僚の天下り禁止は、大手製薬メーカーと政官の癒着を断ち切ることによって薬価を切り下げる確かな道であり、真の行政改革への道です。
昨日、厚生委員会において修正が行われました。いうところの修正は、医療費の浪費構造にメスを入れることなしに、高齢者の入院負担などでは政府案より負担を強めています。
この五月三日、私たちは日本国憲法施行五十年を迎えました。憲法は、第二十五条で「国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。」と定めています。今回の改悪案が憲法の定める国の責務に反するものであることは、余りに明白ではありませんか。
医療保険の改悪に反対する国民の請願署名は千四百万人を超しました。このような国民の声を無視し、公聴会すら開催せず押し切ることは、絶対に許されません。
以上のことを述べて、私の反対討論といたします。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114005254X03219970508/27
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028・伊藤宗一郎
○議長(伊藤宗一郎君) これにて討論は終局いたしました。
―――――――――――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114005254X03219970508/28
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029・伊藤宗一郎
○議長(伊藤宗一郎君) 採決いたします。
この採決は記名投票をもって行います。
本案の委員長の報告は修正であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君は白票、反対の諸君は青票を持参されることを望みます。――議場閉鎖。
氏名点呼を命じます。
〔参事氏名を点呼〕
〔各員投票〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114005254X03219970508/29
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030・伊藤宗一郎
○議長(伊藤宗一郎君) 投票漏れはありませんか。――投票漏れなしと認めます。投票箱閉鎖。開票。――議場開鎖。
投票を計算させます。
〔参事投票を計算〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114005254X03219970508/30
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031・伊藤宗一郎
○議長(伊藤宗一郎君) 投票の結果を事務総長から報告させます。
〔事務総長報告〕
投票総数 四百七十三
可とする者(白票) 二百六十八
否とする者(青票) 二百五発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114005254X03219970508/31
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032・伊藤宗一郎
○議長(伊藤宗一郎君) 右の結果、本案は委員長報告のとおり修正議決いたしました。(拍手)
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健康保険法等の一部を改正する法律案を委員長報告の通り決するを可とする議員の氏名
安倍 晋三君 相沢 英之君
逢沢 一郎君 赤城 徳彦君
浅野 勝人君 麻生 太郎君
甘利 明君 荒井 広幸君
井奥 貞雄君 伊藤 公介君
伊吹 文明君 飯島 忠義君
池田 行彦君 石川 要三君
石崎 岳君 石破 茂君
石橋 一弥君 石原 伸晃君
稲垣 実男君 稲葉 大和君
今村 雅弘君 岩永 峯一君
植竹 繁雄君 臼井日出男君
江口 一雄君 江渡 聡徳君
衛藤征士郎君 衛藤 晟一君
遠藤 利明君 小川 元君
小此木八郎君 小里 貞利君
小澤 潔君 小野 晋也君
尾身 幸次君 越智 伊平君
越智 通雄君 大石 秀政君
大島 理森君 大野 松茂君
大野 功統君 大原 一三君
大村 秀章君 太田 誠一君
奥田 幹生君 奥野 誠亮君
奥山 茂彦君 加藤 紘一君
加藤 卓二君 嘉数 知賢君
梶山 静六君 粕谷 茂君
金子 一義君 金子原二郎君
金田 英行君 亀井 静香君
亀井 久興君 亀井 善之君
川崎 二郎君 河井 克行君
河村 建夫君 瓦 力君
木部 佳昭君 木村 隆秀君
木村 義雄君 菊池福治郎君
岸田 文雄君 岸本 光造君
久間 章生君 久野統一郎君
鯨岡 兵輔君 熊谷 市雄君
熊代 昭彦君 栗原 博久君
栗原 裕康君 栗本慎一郎君
小泉純一郎君 小杉 隆君
小林 興起君 小林 多門君
古賀 誠君 河野 太郎君
河野 洋平君 河本 三郎君
佐田玄一郎君 佐藤 孝行君
佐藤 静雄君 佐藤 信二君
佐藤 剛男君 佐藤 勉君
坂井 隆憲君 坂本三十次君
阪上 善秀君 桜井 郁三君
桜井 新君 櫻内 義雄君
桜田 義孝君 笹川 堯君
自見庄三郎君 実川 幸夫君
島村 宜伸君 下地 幹郎君
下村 博文君 白川 勝彦君
新藤 義孝君 菅 義偉君
杉浦 正健君 杉山 憲夫君
鈴木 俊一君 鈴木 恒夫君
鈴木 宗男君 砂田 圭佑君
住 博司君 関谷 勝嗣君
園田 修光君 田中 和徳君
田中 昭一君 田中眞紀子君
田邉 國男君 田野瀬良太郎君
田村 憲久君 高市 早苗君
高鳥 修君 高橋 一郎君
滝 実君 竹本 直一君
武部 勤君 橘 康太郎君
棚橋 泰文君 谷 洋一君
谷垣 禎一君 谷川 和穗君
谷畑 孝君 玉沢徳一郎君
近岡理一郎君 中馬 弘毅君
津島 雄二君 塚原 俊平君
戸井田 徹君 東家 嘉幸君
虎島 和夫君 中尾 栄一君
中川 昭一君 中川 秀直君
中島洋次郎君 中曽根康弘君
中谷 元君 中野 正志君
中村正三郎君 中山 太郎君
中山 利生君 中山 成彬君
中山 正暉君 長勢 甚遠君
丹羽 雄哉君 西川 公也君
西田 司君 額賀福志郎君
根本 匠君 能勢 和子君
野田 実君 野中 広務君
野呂田芳成君 葉梨 信行君
萩山 教嚴君 橋本龍太郎君
蓮実 進君 浜田 靖一君
林 幹雄君 林 義郎君
原 健三郎君 原田昇左右君
原田 義昭君 桧田 仁君
平沢 勝栄君 平沼 赳夫君
平林 鴻三君 深谷 隆司君
福田 康夫君 福永 信彦君
藤井 孝男君 藤波 孝生君
藤本 孝雄君 二田 孝治君
船田 元君 古屋 圭司君
保利 耕輔君 穂積 良行君
細田 博之君 堀内 光雄君
堀之内久男君 牧野 隆守君
町村 信孝君 松岡 利勝君
松下 忠洋君 松永 光君
松本 和那君 松本 純君
三ツ林弥太郎君 三塚 博君
御法川英文君 宮澤 喜一君
宮路 和明君 宮下 創平君
武藤 嘉文君 村岡 兼造君
村上誠一郎君 村田 吉隆君
村山 達雄君 目片 信君
持永 和見君 茂木 敏充君
森 英介君 森 喜朗君
森田 一君 森山 眞弓君
八代 英太君 谷津 義男君
保岡 興治君 柳沢 伯夫君
柳本 卓治君 山口 俊一君
山口 泰明君 山崎 拓君
山下 徳夫君 山中 貞則君
山本 公一君 山本 有二君
与謝野 馨君 横内 正明君
吉川 貴盛君 吉田六左エ門君
渡辺 具能君 渡辺 博道君
渡辺 喜美君 綿貫 民輔君
北村 直人君 萩野 浩基君
伊藤 茂君 上原 康助君
北沢 清功君 辻元 清美君
土井たか子君 中川 智子君
中西 績介君 畠山健治郎君
濱田 健一君 深田 肇君
保坂 展人君 前島 秀行君
村山 富市君 横光 克彦君
粟屋 敏信君 岩國 哲人君
熊谷 弘君 小坂 憲次君
羽田 孜君 畑 英次郎君
堀込 征雄君 前田 武志君
吉田 公一君 土屋 品子君
望月 義夫君 園田 博之君
武村 正義君 遠藤 武彦君
中村喜四郎君 米田 建三君
否とする議員の氏名
安倍 基雄君 愛知 和男君
愛野興一郎君 青木 宏之君
青山 丘君 青山 二三君
赤羽 一嘉君 赤松 正雄君
東 祥三君 井上 喜一君
井上 義久君 伊藤 英成君
伊藤 達也君 池坊 保子君
石井 啓一君 石井 一君
石垣 一夫君 石田 勝之君
石田幸四郎君 一川 保夫君
市川 雄一君 岩浅 嘉仁君
上田 勇君 上田 清司君
漆原 良夫君 遠藤 和良君
小沢 辰男君 大口 善徳君
大野由利子君 太田 昭宏君
近江巳記夫君 岡島 正之君
岡田 克也君 長内 順一君
加藤 六月君 鹿野 道彦君
海部 俊樹君 鍵田 節哉君
鴨下 一郎君 川端 達夫君
河合 正智君 河上 覃雄君
河村たかし君 神崎 武法君
神田 厚君 木村 太郎君
北側 一雄君 北橋 健治君
北脇 保之君 旭道山和泰君
久保 哲司君 草川 昭三君
倉田 栄喜君 小池百合子君
木幡 弘道君 古賀 一成君
古賀 正浩君 今田 保典君
権藤 恒夫君 左藤 恵君
佐々木洋平君 佐藤 茂樹君
佐藤 敬夫君 斉藤 鉄夫君
坂口 力君 坂本 剛二君
笹木 竜三君 笹山 登生君
塩田 晋君 島 聡君
島津 尚純君 城島 正光君
白保 台一君 鈴木 淑夫君
田中 慶秋君 田端 正広君
高木 義明君 武山百合子君
達増 拓也君 谷口 隆義君
樽床 伸二君 冨沢 篤紘君
富田 茂之君 中井 洽君
中川 正春君 中田 宏君
中西 啓介君 中野 寛成君
中野 清君 中村 鋭一君
仲村 正治君 永井 英慈君
並木 正芳君 二階 俊博君
西 博義君 西岡 武夫君
西川太一郎君 西川 知雄君
西田 猛君 西野 陽君
西村 章三君 西村 眞悟君
野田 毅君 原口 一博君
平田 米男君 福島 豊君
福留 泰蔵君 藤井 裕久君
藤村 修君 二見 伸明君
冬柴 鐵三君 細川 護煕君
増田 敏男君 桝屋 敬悟君
松崎 公昭君 松沢 成文君
松浪健四郎君 丸谷 佳織君
三沢 淳君 宮地 正介君
宮本 一三君 村井 仁君
矢上 雅義君 山本 幸三君
山本 孝史君 吉田 幸弘君
米津 等史君 鰐淵 俊之君
安住 淳君 赤松 広隆君
井上 一成君 伊藤 忠治君
家西 悟君 池田 元久君
池端 清一君 石井 紘基君
石毛 鍈子君 石橋 大吉君
岩田 順介君 生方 幸夫君
枝野 幸男君 小沢 鋭仁君
大畠 章宏君 海江田万里君
金田 誠一君 川内 博史君
菅 直人君 北村 哲男君
桑原 豊君 玄葉光一郎君
小平 忠正君 小林 守君
近藤 昭一君 佐々木秀典君
佐藤謙一郎君 坂上 富男君
末松 義規君 仙谷 由人君
田中 甲君 辻 一彦君
葉山 峻君 鉢呂 吉雄君
鳩山 邦夫君 鳩山由紀夫君
日野 市朗君 肥田美代子君
藤田 幸久君 古川 元久君
細川 律夫君 前原 誠司君
松本 惟子君 松本 龍君
山花 貞夫君 山元 勉君
山本 譲司君 横路 孝弘君
渡辺 周君 石井 郁子君
大森 猛君 金子 満広君
木島日出夫君 児玉 健次君
穀田 恵二君 佐々木憲昭君
佐々木陸海君 志位 和夫君
瀬古由起子君 辻 第一君
寺前 巖君 中路 雅弘君
中島 武敏君 春名 直章君
東中 光雄君 平賀 高成君
不破 哲三君 藤木 洋子君
藤田 スミ君 古堅 実吉君
正森 成二君 松本 善明君
矢島 恒夫君 山原健二郎君
吉井 英勝君 秋葉 忠利君
平野 博文君
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内閣総理大臣の発言(米国、豪州及びニュー・ジーランド訪問に関する報告)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114005254X03219970508/32
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033・伊藤宗一郎
○議長(伊藤宗一郎君) 内閣総理大臣から、米国、豪州及びニュー・ジーランド訪問に関する報告について発言を求められております。これを許します。内閣総理大臣橋本龍太郎君。
〔内閣総理大臣橋本龍太郎君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114005254X03219970508/33
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034・橋本龍太郎
○内閣総理大臣(橋本龍太郎君) 私は、四月二十四日より五月一日まで、米国、豪州及びニュージーランドを訪問いたしました。
私とクリントン大統領との首脳会談は六回目となりますが、四月二十五日に開かれた会談では、多岐の分野にわたり率直かつ踏み込んだ意見交換を行いました。
第一に、安保関係では、日米安保共同宣言に基づき、日米防衛協力のための指針の見直し、沖縄問題、軍事態勢等に関する協議などの協力を充実させていく旨確認いたしました。この関連で大統領より、沖縄問題について引き続き敏感さを持って協力していく旨の発言がありました。
第二に、経済関係では、私より、日本の諸改革につき説明いたしましたところ、大統領よりは、抜本的な規制緩和を含む日本経済の構造改革に対する歓迎の意が示されました。また、日本経済の内需主導型の成長促進と日本の対外黒字の大幅増加の回避が共通の目的である旨確認いたしました。
第三に、中国、朝鮮半島、カンボジア等アジア太平洋地域の諸問題につき日米協調の重要性を確認いたしました。
第四に、デンバー・サミット、テロ対策、コモン・アジェンダ等のグローバルな協力を進めることで一致いたしました。この関連で、在ペルー日本大使公邸占拠事件に対する米国の協力に謝意を表するとともに、両国はテロリズムと闘う決意を新たにいたしました。
このほかに、米議会訪問やナショナルプレスクラブでの演説、ゴア副大統領、ギングリッチ下院議長、コーエン国防長官との意見交換などを行いましたが、これらの会談などは、現在の幅広い日米関係をさらに発展させていく上で有意義であったと思います。
豪州及びニュージーランド訪問においては、それぞれハワード首相及びボルジャー首相と会談し、良好な二国間関係を確認するとともに、アジア太平洋地域情勢及び二国間関係について意見交換を行いました。
豪州においては、私から、アジア太平洋地域の中の日豪関係に関する政策演説を行うとともに、ハワード首相との間で、原則として年一回首脳会談を行うこと、次回日豪閣僚委員会を八月一日に東京で開催すること、及び経済のみならず政治・安全保障分野での対話、協力を強化していくことなどにつき合意しました。
また、ニュージーランドでは、両国の共通の関心事項につき首脳間で率直な意見交換を行うとともに、私よりの招待を受け、ボルジャー首相が来年前半に日本を訪問されることになりました。(拍手)
――――◇―――――
内閣総理大臣の発言(米国、事州及びニュー・ジーランド訪問に関する報告)に対する質疑発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114005254X03219970508/34
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035・伊藤宗一郎
○議長(伊藤宗一郎君) ただいまの発言に対して質疑の通告があります。順次これを許します。浜田靖一君。
〔浜田靖一君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114005254X03219970508/35
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036・浜田靖一
○浜田靖一君 私は、自由民主党を代表して、橋本総理の帰国報告に対して質問させていただきます。
今般、アジア太平洋外交の一環として、総理は米国、オーストラリア及びニュージーランドを訪問されたわけでありますが、まず初めに、米国訪問に関する質問をさせていただきたいと思います。
米国においては、第二期クリントン政権の外交方針が現時点では必ずしも明らかになっておりません。そのような中で、第二期クリントン政権発足後に、オルブライト国務長官やコーエン国防長官などの新閣僚、さらにはゴア副大統領、ルービン財務長官など多くの米国の要人が訪日しました。このように政権発足後に主要閣僚のほとんどが訪日したということは、過去に記憶がございません。私としては、それだけ日米関係が成熟性を増してきたのではないかと受けとめております。それらの要人と橋本総理がみずから会談を行ってこられたことは、日米間の信頼関係を強化する上で有意義なことでありました。
そのような背景のもとで、第二期クリントン政権発足後の早期の機会に行われた今回の総理訪米は、時宜を得たものであると考えています。今般の訪米の成果に関する総理のお考えをお伺いしたいと思います。
私は、日米安保体制は日米関係の基盤であると考えております。その日米安保体制を今後一層強化することは、日米関係の発展のために極めて重要なことであります。その一環として現在行われている日米防衛協力のための指針の見直しは、国民的議論を踏まえた上で、国民の理解を得つつ行われるべきであると考えておりますが、今回の総理訪米の内容も踏まえ、日米防衛協力のための指針の見直しを今後どう進めでいくかについて、総理のお考えをお伺いしたいと思います。
また、在日米軍の基地が集中していることによる沖縄県民の御負担を国民全体で分かち合っていくことも重要であります。沖縄県民の負担軽減のためには、まずSACO最終報告の内容を実現することが重要であります。日米首脳会談においても、最終報告の着実な実施について意見が一致したものと承知しますが、最終報告の実現に向けての総理の御決意をお伺いしたいと思います。
昨年来、日米経済関係は、半導体、保険などの幾つかの個別経済問題が解決されてきており、比較的平穏なのではないかと考えております。今回の首脳会談においては、経済問題についてどのようなやりとりが行われたのかをお伺いしたいと思います。
特に、橋本内閣が取り組んできている規制緩和の推進、財政構造改革等の諸改革につきクリントン大統領よりいかなる反応があったのか。また、対外収支を含む日本経済の現状について橋本総理が説明をされたと伺っておりますが、総理よりいかなる説明をされたのかをお伺いしたいと思います。
日米関係というのは、グローバルな広がりを持つ関係であります。その中でも、日米が協力して地球規模の課題に取り組んでいるコモン・アジェンダは、よりよい世界を構築するための重要な枠組みであり、今後一層強化していくべきであると考えております。ゴア副大統領との会談においてコモン・アジェンダが取り上げられたとのことでありますが、その内容をお伺いしたいと思います。
次に、総理によるオーストラリア及びニュージーランド訪問に関して質問したいと思います。
日本の総理が豪州及びニュージーランドを訪問したのは四年ぶりのことと伺っております。総理御自身、特に豪州との関係は非常に長いと伺っておりますが、今回の総理の訪問により、豪州及びニュージーランドとの関係が一層強化されただけではなく、両国の首脳との間の個人的な信頼関係も強化されたものと考えております。豪州及びニュージーランドと我が国の関係は、これまで貿易・投資を初めとする経済関係が大きな比重を占めていたと思われますが、今回の訪問により、両国との二国間関係が経済のみならず政治・安全保障、文化等を含む幅広いものであることが示されたのではないかと考えます。
また、総理は豪州において、日豪首脳会談を行うほかに、ハワード豪首相の主催する晩さん会においで「アジア太平洋地域の中の日豪」と題する演説を行われ、好評であったとも伺っております。同演説においては、アジア太平洋情勢の現状についての総理御自身の所感を述べるとともに、豪州とアジア太平洋地域との関係及び日豪協力のあり方につき述べられたと聞いております。
また、ニュージーランドにおいては、ボルジャー首相との間で、アジア太平洋情勢等について意見交換を行われたと承知しております。
このように、総理は両国において精力的に活動され、また現地のメディアも総理の訪問を大きく報じていると聞いておりますが、総理御自身として、今回の豪州及びニュージーランド訪問の成果及び意義をどのようにとらえておられるのかをお伺いしたいと思います。
最後に、総理が、我が国の伝統ある食文化を守るために、捕鯨に対する我が国の姿勢をクリントン大統領に明確に主張されたことについて、大いなる評価をしたいと思います。(拍手)
また、さきに国会においてペルーに対する感謝決議がなされましたが、一日も早く総理がペルーを訪問され、フジモリ大統領に対し直接お礼を言われることを期待しつつ、私の質問を終わらせていただきます。
ありがとうございました。(拍手)
〔内閣総理大臣橋本龍太郎君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114005254X03219970508/36
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037・橋本龍太郎
○内閣総理大臣(橋本龍太郎君) 浜田議員にお答えを申し上げます。
まず、今回の訪米の成果についてというお尋ねがありました。
クリントン大統領を初めアメリカ側の要人との間で、安保、経済、アジア太平洋地域でのパートナーシップ、グローバルな日米協力を中心にして、さまざまな分野で率直な議論を行うことができました。日本のさまざまな改革への決意、日米安保体制へのコミットメントを明らかにするとともに、現在の幅広い日米関係というものを一層発展させる上でも有意義であったと考えております。
次に、防衛協力のための指針の見直しについてお尋ねがありました。
これは、新しい時代におけるより効果的な日米間の防衛協力関係を構築することを目的とした重要な作業でありますし、ことしの秋を目途に鋭意作業を進めております。見直しは、国内での論議を十分踏まえながら、国民の御理解を得つつ進める必要があると考えておりまして、今月中旬以降のしかるべき時点で、その時点までの進捗状況及び検討内容を公表し、その上で議論を煮詰めていきたい、そのように考えております。
次に、SACOの最終報告についてのお尋ねがありました。
米軍施設・区域の整理、統合、縮小について、沖縄県から伺った御要望を踏まえながら、日米両国政府が最大限の努力を払った結果として取りまとめてまいったSACOの最終報告であります。この内容をまず着実に実施することが、沖縄県民の御負担を一歩一歩軽減していく上で最も確実な道だと考えております。今後とも、最終報告の措置の実現に向けて、地元の方々の御理解と協力を仰ぎながら最大限の努力をしていきたいと考えております。
次に、日米首脳会談における経済問題についてのやりとりというお尋ねがございました。
大統領からは、我が国の規制緩和を含む構造改革努力に対する歓迎の意が示されましたし、また規制緩和に係る対話の強化に向けて話し合いを行うことといたしました。また、対外収支につきましては、私の方からは、我が国の貿易・サービス収支の黒字が中期的に大幅に拡大するといった状況は考えていない、我が国は各般の構造改革を通じて内需主導型の成長を確かなものとしていくつもりであることを説明いたしました。
また、ゴア副大統領との会談におけるコモン・アジェンダについてのお尋ねでありますが、地球規模の問題の解決に向けて日米協力を強化することで見解が一致いたしました。副大統領は、中南米における日米協力、環境教育に触れ、私の方からは、副大統領が訪日の時点に提案いたしました油流出事故への対応などの実施に言及し、来年初頭にはコモン・アジェンダの推進に向けて世界会議を日本で開催したいということを提案し、副大統領から会議の成功を目指して協力が約束されました。
最後に、豪州及びニュージーランド訪問の成果及び意義に関する御質問がございました。
これは、まさに私自身考えでまいりましたアジア太平洋外交の一環として、我が国のアジア太平洋重視の姿勢、これら二国と我が国の協力関係が政治経済だけではなく文化などを含む幅広く深いものであることを内外に示すことができたと考えております。
殊にアジア太平洋地域とヨーロッパの首脳同士の非公式会合、いわゆるASEM、この会合において、今参加をいたしておらない豪州、ニュージーランドがアジア側の一員としてこれに席を持ってくれることを我々も支持し、またその方向に向けて協力するということを明らかにいたしましたことは、豪州、ニュージーランド自身アジア太平洋地域の一カ国としての主張を強めておりますだけに、それだけに喜んでいただけたのではないか、そのように考えております。(拍手)
―――――――――――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114005254X03219970508/37
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038・伊藤宗一郎
○議長(伊藤宗一郎君) 村井仁君。
〔村井仁君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114005254X03219970508/38
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039・村井仁
○村井仁君 私は、新進党を代表して、ただいまの橋本総理大臣の報告について質問をいたします。
今回の日米首脳会談は、クリントン政権二期目初の会談でありました。クリントン政権との最初の首脳会談が行われたのは、ちょうど四年前の四月でありましたが、そのとき、クリントン大統領は当時の宮澤総理にこう語りかけたと伝えられます。「我々両国の冷戦時代からのパートナーシップは時代おくれである。我々は、もっと長期のビジョン、とりわけ相互の尊重と責任を土台とした新しいパートナーシップを必要としている」と。四年後の今、私は、この新しいパートナーシップを具体的に話し合う段階に入ったと実感するものであります。
新進党は、四月二十八日から五月三日まで訪米団を派遣、米国の要人とさまざまな協議をしてまいりましたが、その経験も踏まえて幾つかお尋ねをしたいと存じます。
まず、経済問題について伺います。
米国は、我が国の経済政策に大きな懸念を持っております。消費税率の引き上げ、特別減税の打ち切りを含む九兆円にも上る国民の負担増は、我が国の景気を後退させ、内需不振による輸出への傾斜が米国内の保護主義を助長し、日米の貿易摩擦を再び激化させるのではないかとの懸念がそれであります。
総理はこのたびの首脳会談で、黒字を拡大させないと公約されましたが、日本の対米黒字は既に六カ月連続で拡大中であります。財政危機宣言をされた以上、公共投資の拡大もできない、金利は史上未曾有の超低金利で景気対策としては使えないという状態の中で、円安にどう歯どめをかけていくのか、難しい経済のかじ取りを迫られることになります。
私たちは、所得税などの大減税を実施することにより内需の拡大を図る以外にないと考えて、そのために提言を重ねできたことは御承知のとおりであります。
日本政府はG7などで内需拡大を国際的に公約していながら、内需抑制、黒字増大の政策を実施しているのが実態であります。このままでは秋ごろには相当厳しい状況になると思われますが、総理はその際どう責任をおとりになられるのでしょうか。
なお、この九兆円の国民負担増について、国際経済研究所所長のフレッド・バーグステン氏は「GDPの二%もの財政緊縮を行って不況に陥らなかったOECDの国は、自分の知る限り、ない」と私たちに述べました。
次いで、安全保障問題について伺います。
今回の首脳会談では、日米同盟の強化が確認され、日米防衛協力のための指針、いわゆるガイドライン見直し作業を促進することが合意されました。
総理は、見直しに当たっては、憲法の枠内で行うこと、透明性のある議論を行うことの二つの点を強調されておりますが、現実にガイドラインを策定するに当たっては、憲法で禁止されているのかいないのかわからないというグレーゾーンが存在しており、透明性のある議論をするためには、政府がそのグレーゾーンに当たる一つ一つの具体的な行動を示して、憲法上それが可能であるかどうかの見解を明確にしていくことが必要であると考えます。
これまでどのような協議を行い、どの点が問題となっているのか、さらに、今後どういう形で国民に示していくつもりか、総理の御見解をお聞かせください。
また、有事法制の整備について、総理は今後どう具体的に進めるお考えか、お聞かせいただきたいと存じます。
次に、我が国の国連安保常任理事国入りについて、大統領が支持を表明し、橋本総理も意欲を表明されたと聞きますが、この問題に対して積極的であった細川内閣、羽田内閣に対して、村山内閣は消極的な印象を与えておりましたが、橋本内閣はそれとは異なる姿勢をおとりになるのか、また米国の支持の強さをどう評価しておられるか、総理の御所見をお聞かせいただきたいと存じます。
今回、沖縄問題についても話し合われ、クリントン大統領から、センシティブ、敏感なという表現で、真剣に対応していく旨の表明があったことは率直に評価いたしますが、特にその七五%が沖縄に集中している米軍基地の本土移転など、沖縄県の負担軽減に総理はいかなる決意表明をされたのか、伺いたいと思います。
我が国周辺の力の均衡に影響を与えないで沖縄の負担を軽減していくことは容易ではありませんが、政府として今後どのように取り組んでいかれるおつもりか、総理の御所見を伺います。
日米共通の課題の中で重要な一つは、北朝鮮問題であります。我が国には、北朝鮮との間に解決しなければならない重要な問題として人道問題があることを総理は再三にわたって強調されました。この姿勢を私は評価するものであります。
総理が明言された以上、北朝鮮に対する米支援の問題については明確な原則を定めた上で対処すべきであり、無原則に米の支援を再開するべきではないと思いますが、総理の御見解を伺います。
また、あわせで、拉致されている少なくとも九名の日本人の無事帰国と日本人妻の里帰りに政府は今後どのように対処するおつもりか、明確なお答えを求めまして、私の質問といたします。(拍手)
〔内閣総理大臣橋本龍太郎君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114005254X03219970508/39
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040・橋本龍太郎
○内閣総理大臣(橋本龍太郎君) 村井議員にお答えを申し上げます。
まず、日米首脳会談において、黒字を拡大させないと公約したという御質問がありました。
そういう公約をいたしてはおりません。対外収支の問題は論議になりました。そして、アメリカ側が主張されたのは経常収支の黒字であり、私から説明をいたしましたのは貿易・サービス収支の黒字、これは経済の構造的な変化によって急速に縮小してきている、今後一時的な変動はあるにしても、中期的に見て大幅に拡大するとは考えていないという説明を私はいたしました。そして、黒字が全く増大しないというような公約はいたしておりません。政府としては、各般の構造改革努力を通じて、内需主導型の成長を確かなものとしてまいりたいと考えております。
次に、ガイドラインの見直しについてのお尋ねがございましたが、この作業では、日本周辺地域においで我が国の平和と安全に重要な影響を与えるような事態が発生した場合における協力を含めて、新しい時代における防衛協力につき、さまざまな角度から検討をいたしております。その見直しは、国内での論議を十分踏まえながら、国民の御理解を得つつ進めていく必要があると考えており、今月中旬以降のしかるべき時点におきまして、そのときまでの進捗状況及び検討内容を公表したいと考えております。
次に、有事法制についてお尋ねがありました。
自衛隊の行動にかかわる有事法制の研究というものは当然必要なことでありますし、政府でも研究をしてきたところでありますが、法制化の問題については高度の政治判断に係るものであり、国会における御審議、国民世論の動向等を踏まえて対応すべきものと考えております。
次に、我が国の安全保障理事会常任理事国入りにつきましては、政府の立場は、私自身国連総会でも表明してまいりましたとおり、憲法が禁ずる武力の行使は行わないという基本的な考え方のもとにおいて、多くの国々の賛同を得て常任理事国としての責任を果たす用意があるということであります。この基本姿勢は一度も変えておりません。こうした立場につきましては、先般のクリントン大統領との会談の機会を含めまして、米国政府から強い支持を得ていることは御承知のとおりであります。
次に、沖縄県の負担軽減につきましては、日米首脳会談におきまして、SACO最終報告の着実な実施が第一歩であること、既に県道一〇四号線越え実弾射撃訓練の本土移転あるいはKC130の岩国基地への移転等、沖縄の負担軽減のための努力を最大限払っていくことを申し述べてまいりました。現在の地域情勢のもとにおきましては、米軍の兵力水準を維持することが重要であると私は考えておりますけれども、同時に、日米安保共同宣言に基づいて、在日米軍の兵力構成を含む軍事態勢や防衛政策について緊密な協議を継続いたします。
次に、北朝鮮への米支援についてのお尋ねがございました。
先般のクリントン大統領との首脳会談におきましては、私から、国内における北朝鮮に対する人道上の問題、こうした点を考えるとき厳しいものがあることを述べてまいりました。対北朝鮮食糧支援につきましては、国連人道問題局の統一アピールも発出されていますけれども、種々の要素を考慮に入れて総合的に検討し判断することとしたいと考えております。
北朝鮮による拉致の疑いが持たれている事件についてお尋ねがございました。
これらの事件につきましては、所要の捜査が進められているものと承知をいたしております。また、関連情報の収集にも努力をいたしております。今後とも、我が国国民の安全にかかわる重要な問題であるとの認識に立ち、真剣に対処していきます。
また、いわゆる日本人妻の方々に対するお尋ねがございました。
政府としては、従来から日本赤十字社を通じた北朝鮮側への安否調査要請などを行ってまいりましたほかに、日朝国交正常化交渉の場におきましても、里帰りが実現するよう強く求めておりまして、今後とも引き続き粘り強く対応していきたいと考えており、ぜひ国会の御協力をもお願いを申し上げたいと存じます。(拍手)
―――――――――――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114005254X03219970508/40
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041・伊藤宗一郎
○議長(伊藤宗一郎君) 古川元久君。
〔古川元久君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114005254X03219970508/41
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042・古川元久
○古川元久君 私は、民主党を代表して、米国、豪州、ニュージーランド訪問に関する橋本総理の報告について質問いたします。
最初に、総理の報告からなかなかうかがい知れないのが今回の三カ国訪問の目的であります。「戦略なき外交」との評判を気にされておられる橋本総理でありますが、果たしてこのたびの訪問はどのような戦略目標で行われたのか、ぜひとも明確な御説明をいただきたいと思います。
あわせて、総理御自身、今回の三カ国訪問の成果は何であると考えておられるのか、またどのように自己採点をされておられるのか、お尋ねいたします。
次に、総理は、クリントン大統領との会談において、ガイドラインの見直し作業に透明性を与えることは周辺地域の誤解を解くことにもなると述べ、米側の同意を得たということであります。しかし、それはただ単に作業の状況を中間報告的に発表することにとどまらず、周辺諸国とりわけ中国に対して我が国の真意を理解してもらう外交的努力を強めることでなければなりません。
残念ながら、これまでの政府の対中外交を見る限り、私には、総理の言う誤解を解くための真摯な努力が払われたと信ずることはできないのであります。安全保障政策とは、有事に備えると同時に、有事を起こさせない努力をすることでもあります。その認識からすれば、私は、日本政府が安全保障政策に関して、中国との二国間対話を進めるだけでなく、米国政府とともに日米中の三カ国対話も追求することが重要であると考えるものでありますが、総理の見解をお伺いいたします。
また、ニュージーランドでは、両国共通の関心事項につき率直な意見交換を行ったとのことです。画期的な行政改革を行った同国での意見交換は、火だるまになっても行革を推進すると断言されておられる総理にとって、とでも有意義であったと推察いたします。運輸省の職員の大幅削減や組織改革など、よく例に挙げられますニュージーランドの行政改革について、どのような点が参考になったと考えでおられるのか、お答えいただきたいと思います。
ところで、総理はワシントンのナショナルプレスセンターで講演し、みずから、アングロサクソン系のマスコミでは、悪く言えば守旧派、よく言っても慎重派と言われてきたことを認めつつ、これからは改革派橋本と言われたいと発言されたと伝えられています。果たして今の総理は改革派と呼べるのでありましょうか。国内では、つい先日、ある有力紙が早くも「指導力見えず、首相に失望」との報道をしており、どう見ても慎重派を卒業しているとは思えないのであります。
海外のメディアイメージを気にかけるならば、この際、官僚と一線を画し、みずからが先頭に立って行財政改革の具体的な姿を早急に国民の前に明らかにすることが何よりも必要だと思うのでありますが、総理の姿勢を改めてお伺いいたします。
今回の訪米中にも、ゴア副大統領との会談の中で、日米が一九九三年に打ち出したコモン・アジェンダが主なテーマとなり、総理は特に環境と教育の分野の協力が重要などの認識を示されたと聞いております。
地球環境問題については、持続可能な開発を目指したブラジル・リオの地球サミット以来、早急に地球規模での対応を迫られている課題であるにもかかわらず、その取り組みは遅々として進んでおりません。我が国が率先して地球環境問題に取り組む姿勢を示さなければならないにもかかわらず、現状は、二酸化炭素の排出量は年々増加し、オゾン層破壊物質であるフロンの回収についても回収率が向上しないなど、政府が本当に地球環境問題に真剣に取り組むつもりがあるのか、甚だ疑問なのであります。具体的にどのような施策を講じるつもりなのか、お尋ねいたします。
最後に、今回の日米首脳会談に関連して、国民の多くが強い関心を抱いていたと思われる沖縄問題についてお尋ねいたします。
総理、私は、クリントン大統領との会談において、総理御自身が、在日米軍の兵力構成についで、現時点で削減や変更を論じることは適切でないとはっきり言っていると明言したことに、大変な失望を覚えるものであります。総理の訪米に先立つで、沖縄の大田知事もアメリカを訪問し、米側の関係者に対して必死で沖縄の窮状を訴え続けてきました。にもかかわらず、本来国民の生命と安全を守るべき立場にあるべき我が国の総理大臣が、在日米軍の削減を口にすることすら適切でないと言い切るとすれば、一体、沖縄県民はだれにみずからの期待と要望を話せばいいのでしょうか。
加えて、我が党と自民党は、沖縄問題の解決に際して、在沖米軍を初め在日米軍の兵力構成・レベルについて日米政府間で緊密に継続的に協議するよう努めさせるとの合意を交わし、総理御自身もこの合意を尊重することを明言されました。我が党は、この合意がまとめられ、今後着実に沖縄の米軍兵力の削減に取り組んでいく手がかりができたと理解したからこそ、駐留軍用地特別措置法の改正もやむなしとの判断を下したのであります。一体、公党間の合意をどのように認識しておられるのか、また現在は兵力見直しを米国との議題にも上げる時期ではないという判断の根拠はどこにあるのか、ぜひお尋ねいたします。
総理は、ウェリントンでの記者懇談の席上で、民主党について、少なくとも私は褒めてもらっていないと、我が党が苦手とのコメントをされております。そんなことはありません。この沖縄問題で官僚答弁を超えた勇気のある発言が示されるなら、我が党はどこよりも先に橋本総理を褒める用意があります。ぜひそのチャンスを民主党に与えていただきたいものです。
総理の明快かつ積極的な答弁を期待いたしまして、私の質問を終わります。ありがとうございました。(拍手)
〔内閣総理大臣橋本龍太郎君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114005254X03219970508/42
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043・橋本龍太郎
○内閣総理大臣(橋本龍太郎君) 古川議員にお答えを申し上げます。
まず第一に、このたびの外遊にどのような戦略目的があったのかというお尋ねがありました。
最大の目的は、オーストラリア及びニュージーランドをアジア太平洋地域の一カ国として位置づけ、それを国際的にも認知させていく、その役割を担いたい、またそれがある程度成功した、私はそう考えております。
また、米国におきましては、安全保障を含む多くの分野にわたって率直かつ踏み込んだ意見交換をすることができましたし、豪州、ニュージーランドにおきましては、それ以外にも経済、政治・安全保障、文化、さまざまな分野の論議を闘わせることができました。
最大のねらいをと言われるなら、先ほどもお答えをいたしましたように、今、豪州、ニュージーランドが入っておらず、その参加を希望しているASEMにおいて、アジア太平洋側の代表として豪州、ニュージーランドを位置づける、それに向けての努力であります。
次に、安全保障に関する日米中三カ国対話というお尋ねがございました。
日米中の三カ国、殊に日中、日米、米中、この三カ国間のそれぞれが安定した協力関係を維持すること、これはアジア太平洋地域の平和と安定にとって極めて重要でありますし、我が国としては、米国及び中国との二国間関係の増進に努めるとともに、ASEAN地域フォーラムのような多国間での協力の場も通じ安全保障面の対話を進めてまいります。
ニュージーランドの行革について、どのような点が参考になったかという御質問がありました。
ボルジャー首相からは、今回に限らず前回も、ニュージーランドの改革の進捗状況についての御説明をいただいております。改革を行うに至った背景、行政の仕組み、経済構造等で異なる面がありますので、そのまま我が国に役立つとは考えにくい面がありますが、ニュージーランドの改革は規制緩和など一つの壮大な実験として参考になる点があると考えております。
次に、官僚と一線を画し、行財政改革の具体的な姿を明らかにすることが何より必要であるという御指摘をいただきました。私自身が先頭に立って行政改革の具体的な姿を示すべきという御指摘であります。
行政改革につきましては、既に行政改革会議におきまして中央省庁の再編などに取り組むほかに、当面取り組むべき課題につきましては、その目標期限を明らかにした行政改革プログラムを昨年末決定し、また、規制緩和推進計画の拡充、再改定など着実に取り組んでいることは御承知のとおりでありますし、財政構造改革につきましても、財政構造改革会議において、私から先般五つの原則及び基本的な考え方を示し、これに基づき精力的に具体案を検討いたしております。
次に、地球環境問題についてのお尋ねがございました。
政府としてはこれまで、地球温暖化防止行動計画や環境基本計画などに基づいて、二酸化炭素の排出抑制対策やフロンの回収などに努めてきております。今後とも、地球環境問題の重要性にかんがみて積極的な取り組みを進めてまいります。
最後に、民主党と自民党が沖縄問題の解決に対して合意を交わした、そしてその合意を尊重する旨を宣言してきた、一体それをどう認識しているのかというお尋ねでありますが、合意につきましては、今後とも御指摘の合意というものは尊重してまいります。
しかし、同時に、沖縄問題の審議の際、私は繰り返し本院におきましても申し上げてまいりましたように、現時点におけるアジア太平洋地域の不確実性、不透明な状況というもの、その安全保障環境の中で、現時点において日本に駐留する米軍の縮小といったものを提起する時期ではないと私は考えるということを繰り返して申し上げてまいりました。にもかかわらず、今回の首脳会談でこれを発言しなかったことが合意にもとるという御認識であるとすれば、私は大変残念であります。
そして、合意の中におきまして、米軍の兵力構成について、現在の地域情勢の中で私どもは現在の兵力水準を維持することが重要だと考えておりますけれども、同時に、日米首脳会談でも確認をされましたように、日米安保共同宣言に基づいて、在日米軍の兵力構成を含む軍事態勢、防衛政策というものについて緊密な協議を進めてまいる用意を持っております。今回もその点を確認いたしております。(拍手)
―――――――――――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114005254X03219970508/43
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044・伊藤宗一郎
○議長(伊藤宗一郎君) 松本善明君。
〔松本善明君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114005254X03219970508/44
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045・松本善明
○松本善明君 私は、日本共産党を代表して、総理の訪米報告について質問をいたします。
今回の日米首脳会談ほど日本外交の対米従属の深さと危険を示したものはありません。総理は、首脳会談の日程に合わせることを至上命題として、沖縄県民の土地を強制的に米軍に提供する米軍用地特措法を大改悪し、沖縄米軍の実弾演習の全国への拡散、普天間にかわる海上基地の調査も強行いたしました。しかも、日米安保共同宣言を国会としても推進するという異例の国会決議を背景に訪米しました。これら一連の事態を我が党は日米首脳会談への手土産だと厳しく批判しましたが、これが正しかったことは、あなたがクリントン大統領に用地の提供義務を履行できたと報告した事実ではっきりと証明をされました。アメリカからも植民地外交の声が出てきたのは当然であります。
総理、対米外交のために憲法も国民の権利も犠牲にするのは、政治のあり方として全く間違っているのではありませんか。まず、総理の対米外交姿勢の根本について質問をいたします。
第二は、総理の側から在日米軍の水準維持を発言した問題であります。
これは一体何ということでしょう。沖縄はもちろん、日本国民の多くが米軍基地の撤去を求めているときに、あなたは、現時点では兵力の削減を論ずることは不適当と言明したのであります。これは、キャンベル国防次官補代理が四月十五日、アメリカ議会で、「我々の同盟関係強化の戦略は、無期限の将来にわたって現在の在日米軍の水準を維持する」と証言した直後だっただけに、とりわけ重大であります。あなたは、アメリカ政府の「無期限に在日米軍の水準を維持する」という公式の戦略を容認してきたのであります。全く異常です。
あなたは、二十一世紀まで米軍の水準を維持し、沖縄の基地の撤去は求めないと言うのですか。あなたの日本人としての良心もあわせて問うものであります。
第三は、ガイドライン見直し作業についてであります。
我が党は、これは、日本周辺有事、換言すれば日本防衛と無関係のアメリカ有事の日米共同作戦の協議だと批判してきましたが、あなたはこの促進について合意いたしました。この見直しには自衛隊による機雷掃海も含まれていると言われていますが、日本の防衛と無関係に機雷掃海その他の武力行使を米軍と共同で行うことは、まさに集団自衛権の行使であります。
総理、日本防衛と関係のない事態に対する日米共同作戦を協議すること自体、憲法違反の集団自衛権行使に道を開くもので、憲法の平和原則に対する重大な挑戦ではありませんか。明確な答弁を求めます。
また、ガイドラインの見直しについて、あなたは、新たな立法措置については予断を避けたいと述べ、有事法制について否定しませんでした。久間防衛庁長官は既に有事立法の必要性について言及しています。有事法制について何と考えているか、総理と防衛庁長官の答弁を求めるものであります。
総理は、ナショナルプレスクラブで佐藤総理の沖縄返還について述べましたが、沖縄返還に核兵器持ち込みの密約があったことは、アメリカの公文書、密約の直接の当事者若泉氏やキッシンジャー氏などによって明らかにされています。いよいよ佐藤首相本人の日記でこれが確認されるということになりました。
総理、佐藤日記を精査し、アメリカ政府に対して、いかなる場合、いかなる態様でも核兵器の持ち込み、通過は認めないことをはっきり通告すべきではありませんか。
経済問題について質問をいたします。
クリントン大統領は、首脳会談後の記者会見で、内需主導の経済成長の促進を要望し、抜本的な規制撤廃への支持を含む、日本経済の構造調整への首相の誓約を歓迎すると述べました。総理はどういう誓約をしたのですか。包括協議で対米公約となっている六百三十兆円の公共事業の実行を再確認したのでありますか。そうだとすれば、国会で総理がこれを聖域にしないと答弁したことをみずからほごにすることになります。はっきりお答えいただきたいと思います。
総理は、会談後の記者会見で、「包括協議のもとで規制緩和に関する対話をいかに強化するか、両国の事務レベルの協議を開始することにした」と述べました。包括協議は対等平等を装っておりますが、事実上、日本に圧力をかける場であります。現に、ゼネコン奉仕型の大型公共事業推進によるむだ遣いの拡大、米輸入自由化、大規模小売店舗法の規制緩和など、国民生活に大きな困難をもたらしただけであります。事務レベル協議はもちろん、包括協議そのものを見直すべきではありませんか。
総理、対米従属を断ち切ることは、日本国民の生活と安全のためにも、世界の平和のためにも、極めて重要な問題であります。私は、あなた方の路線が日本でも世界でも次第に支持が得られなくなり、最後は必ず失敗するだろうことを指摘し、明確な答弁を求めて、質問を終わります。(拍手)
〔内閣総理大臣橋本龍太郎君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114005254X03219970508/45
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046・橋本龍太郎
○内閣総理大臣(橋本龍太郎君) 松本議員にお答えを申し上げます。
まず第一点、我が国の対米外交姿勢についての御質問がありました。
日米安保体制を基盤とする日米間の良好な協力協調関係の維持発展は、アジア太平洋地域だけではなく、国際社会全体の平和と安定の上に極めて重要な役割を果たしており、今後とも米国と緊密に協力しながら国際社会の平和と安定に貢献していく考えであります。なお、先般国会で御審議をいただき成立いたしました駐留軍用地特措法の改正が憲法に反するものではないということは、繰り返し申し上げてきたとおりであります。
次に、在日米軍の兵力構成について御意見がありました。
これも繰り返し申し上げておりますように、現時点においで、私は、米国がこの地域において現在の兵力水準を維持することが重要であると考えております。(発言する者あり)問題と言われましても、私はそれが正しいと思っております。同時に、国際的な安全保障情勢において起こり得る変化というものに対応し、在日米軍の兵力構成を含む軍事態勢や防衛政策について緊密な協議を継続するという日米安保共同宣言のコミットメントを再確認しているところであります。
また、ガイドラインについてのお尋ねがありましたが、この作業では、日本周辺地域において我が国の平和と安全に重要な影響を与えるような事態が発生した場合における協力を含めて、新しい時代における防衛協力のあり方についてさまざまな角度から検討を行っております。見直しは、あくまでも我が国憲法の枠内で行うものでありまして、集団的自衛権の行使のように我が国憲法上許されないとされる事項について、従来の政府見解に何も変更はありません。
次に、有事法制につきましては、自衛隊にかかわる有事法制の研究というものは当然必要なことでありますし、政府も研究をしてきたところでありますが、法制化の問題については高度の政治判断に係るものであり、国会における御審議、国民世論の動向等を踏まえて対処すべきであると考えております。
次に、沖縄返還に際して核兵器持ち込みについての密約があったという御指摘がございました。
沖縄返還交渉に際し、核兵器に係る問題は日米間で極めて明確に確認されており、歴代の総理大臣、外務大臣が密約の存在を否定するとともに、核持ち込みの事前協議に対しては、常にこれを拒否する旨国会などの場で繰り返し明らかにしております。御指摘のような、わざわざ通告のし直しのようなお話がございましたけれども、既に繰り返し明らかになっていること、これで結構と思います。
それから、日米首脳会談で経済構造調整についてどんな誓約をしたのかというお尋ねがありました。
私は、大統領に、現在我が国の進めておりますさまざまな改革、特に財政構造改革、規制緩和と金融システム改革を含む構造改革の進展状況を説明いたしました。同時に、これらの改革が良好な日米経済関係に対しても好影響を及ぼすことを指摘してまいりました。大統領は、抜本的な規制緩和を含む日本経済の構造改革に対するそうした取り組みを歓迎しておられました。
次に、公共投資基本計画の実行を確認したのかというお話でありますが、全く議論の中に入っておりません。なお、この計画は、財政構造改革会議において一切の聖域を設けることなく行われる歳出の改革と縮減の具体的方策の検討結果を踏まえて対処することになると思います。
次に、日米包括経済協議の今後についてお尋ねがありましたが、この協議は日米経済関係の運営においで基本的には有効に機能していることから、これを維持したいと考えています。なお、規制緩和に関する対話の強化、これは、今まで包括経済協議のもとで行ってまいりました規制緩和・競争政策等作業部会での経験を踏まえて、効果的な対話の枠組みを目指すことになると思います。
残余の質問につきましては、関係大臣から御答弁を申し上げます。(拍手)
〔国務大臣久間章生君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114005254X03219970508/46
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047・久間章生
○国務大臣(久間章生君) 有事法制についてのお尋ねですが、先ほど総理からも答弁がありましたように、我が国有事における自衛隊の行動にかかわる有事法制の研究につきましては当然必要なことであり、政府でも従来より研究をしてきたところであります。
我が国の防衛を担当している防衛庁としては、研究にとどまらず、その結果に基づき法制が整備されることが望ましいと考えておりますが、いずれにせよ、単に研究にとどまらず、法制化をするか否かという問題は高度の政治判断に係るものであり、国会における御審議、国民世論の動向等を踏まえて対応すべきものと考えております。(拍手)
―――――――――――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114005254X03219970508/47
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048・伊藤宗一郎
○議長(伊藤宗一郎君) 堀込征雄君。
〔堀込征雄君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114005254X03219970508/48
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049・堀込征雄
○堀込征雄君 先ほど橋本総理から報告がありました米国、オーストラリア、ニュージーランド三カ国訪問に関して、太陽党を代表して、質問をさせていただきます。
まず最初に、今回の外遊の目的、各国首脳との会談においでどのような話がなされ、具体的成果が上がったのか、総理にお伺いをしてまいりたいと思います。
ワシントンにおいて、総理は、首脳会談のみならず、プレスクラブでの講演、議会関係者との懇談等で「同盟」という言葉を多用されました。同盟の定義についてどのような認識をお持ちであるのか、改めてお伺いをしておきたいと思います。
そのような中で、クリントン大統領との間で、ことし秋にまとめる日米防衛協力のためのガイドラインの見直しの促進で合意したとされていますが、ガイドラインの見直しは、日本有事の対応とともに、朝鮮半島など周辺有事の際に、軍事行動中の米軍に対して日本がどこまで後方支援を行えるかを具体的に検討することが主要な課題であります。
その中で最大の問題が、集団的自衛権の行使を禁じているとされる日本の憲法解釈との整合性であります。総理は、首脳会談後の記者会見で、見直しは憲法の枠内で行うと改めて強調されましたが、今回のガイドラインの見直しに当たって、際限なき解釈の拡大で対処するのではなく、憲法議論をきちんとしておくべきと考えます。
実際、湾岸戦争時の政府解釈では、戦闘地近くでの輸送活動、情報活動などは集団的自衛権の行使に抵触するというのが政府見解でありました。その時々で解釈を広げ対応する手法でなく、国民にも周辺諸国にもわかりやすい明確な姿勢と対応が必要と思いますが、総理の見解を伺っておきたいと思います。
また、沖縄県などが強く求めている海兵隊を初めとする在日米軍の兵力削減については、国際情勢の変化に対応しつつ、日米安保共同宣言に基づき緊密に協議するべきであると考えますが、なぜ兵力削減に対して消極的な発言に終始されたのか、お伺いをしておきたいと思います。
また、クリントン大統領は、日本の対米黒字に強い懸念を表明し、規制緩和を推進し、内需主導の経済成長を持続するよう総理に要請されましたが、それに対して総理は、内需主導経済への構造改革努力を説明し、黒字を拡大させないと約束されたと報ぜられています。しかし、日本の対米黒字は既に六カ月連続で拡大中であり、消費税の引き上げで個人消費が減速する懸念もあります。円安定着て輸出の増加傾向が強まる中、政府の期待どおりに内需拡大による黒字減らしが進むという保証がない中、クリントン大統領との約束は守れるのか、どのような政策でこの約束を守ろうとしているのか、伺っておきたいと思います。
オーストラリアのハワード首相との首脳会談において、総理は、オーストラリア米の入札の増加やリンゴの輸入解禁を示されたと報道されていますが、このことによる日本の生産農家への影響をどのように考えているのか、見解をお伺いいたします。
また、ニュージーランドでの首脳会談において、総理は、行政改革など六つの改革はぜひともやり遂げたいと改革実現へ決意を改めて示されましたが、総理は従来、火だるまになっても改革をなし遂げると主張されてきました。そうした総理の言葉にもかかわらず、改革や歳出削減が先送りされ、所得税減税の廃止、消費税の引き上げ、医療保険の値上げなど、国民負担増だけは着実に先行している現実に、果たして行財政を初めとする諸改革は実行できるのか、結局国民負担をふやすことで帳じりを合わせるのではないかというのが国民の心配であります。
総理は、ニュージーランドで試された規制緩和では随分教訓を得るものが多かったと強調されましたが、今後我が国における規制緩和の実行に当たってどのような教訓を得たのか、具体的にお聞かせをいただきたいと思います。
今回の三カ国訪問は、今後の日本の安全保障環境、アジア太平洋の安定維持、アメリカと安全保障条約を結んでいるオーストラリア、ニュージーランドとの関係強化の第一歩につなげることが一番重要であったと考えますが、最後にその点について今回の訪問でどのような成果を上げたと認識しているかお伺いをいたして、私の質問を終わります。(拍手)
〔内閣総理大臣橋本龍太郎君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114005254X03219970508/49
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050・橋本龍太郎
○内閣総理大臣(橋本龍太郎君) 堀込議員にお答えを申し上げます。
まず、「同盟」という言葉の定義をお尋ねいただきました。
日米間の同盟、これは、法制局的な厳密な解釈をしますと、日米安保条約に基づいて日米が一定の権利義務関係にある、このようなお答えをすることになるのかもしれません。しかし、一般的には、日米安保条約を基盤として、日米両国がその基本的な価値、利益をともにする国として、必ずしも安全保障面に限定するものではなく、政治経済の各分野で緊密に協力協調していく、そのような関係を総称する意味に使われていると考えておりますし、私もそのような思いでこれを使いました。
次に、ガイドラインのお尋ねがございましたが、これはあくまでも日本国憲法の枠内で行うものでありますし、集団的自衛権の行使のように我が国憲法上許されないとされる事項について、従来の政府の見解に何ら変更はございません。また、見直しは、国内での論議を十分踏まえながら、国民や周辺諸国の理解を得つつ進めていくことが必要であると考えておりまして、今月中旬以降のしかるべき時点で、それまでの進捗状況及び検討内容を公表したいと考えており、その上で国民的な御議論をいただきたいと考えております。
また、沖縄県などが強く求めている在日米軍兵力の削減について、なぜ消極的な発言に終始したかというお尋ねでありました。
私は、現時点においては、現在の地域情勢のもとで、米国がこの地域において現在の兵力水準を維持することが重要だと考えております。それは、本院でもしばしば明らかに申し上げてまいりました。同時に、国際的な安全保障情勢においで起こり得る変化に対応し、在日米軍の兵力構成を含む軍事態勢や防衛政策について緊密な協議を継続する、これは日米安保共同宣言のコミットメントの中にもありますし、これを再確認している。こういう情勢があればいつでもそうした努力はしていく、そういう状況にあります。
また、黒字を拡大しないと公約したがというお尋ねがございました。
先ほどもお答えを申し上げたところでありますが、私は、経常収支で議論をするべきではない、むしろこれは貿易・サービス収支で議論をすべきだということを申し、その貿易・サービス収支の黒字は経済の構造的な変化によって急速に縮小してきている、一時的な変動は今後あり得る、これはあり得るでしょうけれども、中期的に見て大幅に拡大すると考えていないことを説明したものでありまして、黒字が全く拡大しない、あるいは増大しないといった約束をしているということではございません。政府としては、各般の構造改革努力を通じて、内需主導型の成長というものを確かなものにしてまいりたいと考えております。
また、日豪首脳会談におきましての農産物貿易の問題のお尋ねがありました。
三年目のミニマムアクセス米の輸入の一部として行うSBS輸入は、豪州産米を含めて従来どおりグローバルに行うものでありまして、本年度は四回実施をする予定であります。また、リンゴの輸入解禁につきましては、必要な殺虫技術の開発を受けまして、先般、公聴会を開催いたしました。輸入解禁に当たりましては、病害虫が侵入し悪影響を及ぼさないように、検疫制度の運営に万全を期してまいります。
次に、ニュージーランドの規制緩和についてお尋ねをいただきました。
日本を訪問されましたとき、あるいはその他のAPECの機会等におきまして、従来からボルジャー首相にはこの問題についてたびたび御意見を伺っております。今回もその後の進捗状況についての御説明を聞きました。私は、改革を行うに至った背景あるいは経済構造等異なる面がありますために、そのままこれが日本に導入できるとは考えておりません。しかし、ニュージーランドの改革というものが、特に規制緩和等、一つの実験として、壮大な実験として参考になる点があると思っております。
最後に、この三カ国の訪問の意義、特にオーストラリア、ニュージーランドとの関係強化の第一歩につなげることが重要であったと考えるという御指摘をいただきました。
米国におきまして、安全保障を含む多岐な分野にわたって率直かつ踏み込んだ意見交換を行うことができました以外に、豪州及びニュージーランドにおきましても、経済ばかりではなく、政治・安全保障、文化などを含む幅広い論議を尽くすことができ、関係が確認をされました。
そしてまた、豪州、ニュージーランドそれぞれが希望しておられる、ASEMの機構にアジア太平洋地域の代表としてこの二カ国に加わってもらいたい、日本もそれを支持し、サポートする、こうした日本の姿勢というものを明らかにしていく中で、アジア太平洋地域の安定のために重要な位置を占めているこれら三カ国との協力というものがそれぞれのネットワークとして一層強化される、我が国の安全保障環境の改善にも資する部分があった、そのように受けとめております。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114005254X03219970508/50
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051・伊藤宗一郎
○議長(伊藤宗一郎君) これにて質疑は終了いたしました。
――――◇―――――
電気通信事業法の一部を改正する法律案(内閣提出)、国際電信電話株式会社法の一部を改正する法律案(内閣提出)及び日本電信電話株式会社法の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114005254X03219970508/51
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052・伊藤宗一郎
○議長(伊藤宗一郎君) この際、内閣提出、電気通信事業法の一部を改正する法律案、国際電信電話株式会社法の一部を改正する法律案及び日本電信電話株式会社法の一部を改正する法律案についで、趣旨の説明を求めます。郵政大臣堀之内久男君。
〔議長退席、副議長着席〕
〔国務大臣堀之内久男君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114005254X03219970508/52
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053・堀之内久男
○国務大臣(堀之内久男君) 電気通信事業法の一部を改正する法律案、国際電信電話株式会社法の一部を改正する法律案、日本電信電話株式会社法の一部を改正する法律案、以上三件につきまして、その趣旨を御説明申し上げます。
初めに、電気通信事業法の一部を改正する法律案につきまして御説明申し上げます。
この法律案は、我が国の電気通信事業分野における新規参入の一層の円滑化及び電気通信事業者間の公正な競争の促進に資するため、第一種電気通信事業の許可の基準である過剰設備防止条項等を撤廃するとともに、電気通信事業者間の電気通信設備の接続に関する制度の充実を図る等の改正を行おうとするものであります。
次に、この法律案の概要について御説明申し上げます。
第一に、第一種電気通信事業の許可の基準のうち、過剰設備防止条項等を撤廃することとしております。
第二に、郵政大臣が指定する電気通信設備を設置する第一種電気通信事業者は、当該電気通信設備と他の電気通信事業者の電気通信設備との接続に関し、接続料及び接続の条件に関する接続約款を定め、郵政大臣の認可を受けなければならないこととしております。
第三に、第一種電気通信事業者は、他の電気通信事業者から当該他の電気通信事業者の電気通信設備を接続すべき旨の請求を受けたときは、電気通信役務の円滑な提供に支障が生ずるおそれがあるとき等の場合を除き、これに応じなければならないこととしております。
第四に、電気通信事業者は、電気通信番号を用いて電気通信役務を提供する場合においては、その電気通信番号が郵政省令で定める基準に適合するようにしなければならないこととしております。
その他、所要の規定の整備を行うこととしております。
なお、この法律は、公布の日から起算して六月を超えない範囲内において政令で定める日から施行することとしております。
次に、国際電信電話株式会社法の一部を改正する法律案につきまして御説明申し上げます。
この法律案は、電気通信分野における技術の進展とそれを利用した新たな役務に対する需要に対応し、国際電信電話株式会社が保有する設備及び技術の有効な活用を図る観点から、その業務として、国内における電気通信業務その他の業務を行うことができるようにする等の改正を行おうとするものであります。
次に、この法律案の概要について申し上げます。
国際電信電話株式会社の業務として、国際電気通信業務の円滑な遂行に支障のない範囲内において、同社が保有する設備及び技術を活用した国内電気通信業務等を追加することとしております。
なお、この法律は、公布の日から施行することとしております。
最後に、日本電信電話株式会社法の一部を改正する法律案につきまして御説明申し上げます。
この法律案は、日本電信電話株式会社を日本電信電話株式会社、東日本電信電話株式会社、西日本電信電話株式会社及び長距離会社に再編成し、公正有効競争の促進を図るとともに、日本電信電話株式会社の国際通信業務への進出を実現することにより、国民の電気通信役務に対する多様な需要への対応が可能となるようにする等の改正を行おうとするものであります。
次に、この法律案の概要について御説明申し上げます。
第一に、日本電信電話株式会社(以下「会社」という。)は、東日本電信電話株式会社及び西日本電信電話株式会社がそれぞれ発行する株式の総数を保有し、これらの株式会社による適切かつ安定的な電気通信役務の提供の確保を図ること並びに電気通信の基盤となる電気通信技術に関する研究を行うことを目的とする株式会社とすることとしております。
第二に、東日本電信電話株式会社及び西日本電信電話株式会社(以下「地域会社」という。)は、地域電気通信事業を経営することを目的とする株式会社とすることとしております。
第三に、会社は、その目的を達成するため、地域会社が発行する株式の引き受け及び保有並びに当該株式の株主としての権利の行使をする等の業務を営むほか、郵政大臣の認可を受けて、その目的を達成するために必要な業務を行うことができることとしております。
第四に、地域会社は、その目的を達成するため、地域電気通信業務及びこれに附帯する業務を営むほか、郵政大臣の認可を受けて、地域会社の目的を達成するために必要な業務等を営むことができることとしております。
第五に、会社及び地域会社は、それぞれその事業を営むに当たっては、常に経営が適切かつ効率的に行われるように配意し、国民生活に不可欠な電話の役務のあまねく日本全国における適切、公平かつ安定的な提供の確保に寄与するとともに、今後の社会経済の進展に果たすべき電気通信の役割の重要性にかんがみ、電気通信技術に関する研究の推進及びその成果の普及を通じて我が国の電気通信の創意ある向上発展に寄与し、もって公共の福祉の増進に資するよう努めなければならないこととしております。
第六に、会社は、新株等の発行、取締役及び監査役の選任等の決議、定款の変更等の決議、桑計画等について、地域会社は、新株等の発行、定款の変更等の決議、事業計画等について郵政大臣の認可を受けなければならないものとする等、それぞれの監督について所要の規定を設けることとしております。
第七に、附則において、会社は、施行日前において、郵政大臣の認可を受けて、国際電気通信事業を営む法人に出資することができることとしております。
その他、所要の規定の整備を行うこととしております。
なお、この法律は、公布の日から起算して二年六月を超えない範囲内において政令で定める日から施行することとしております。
以上が、これら三法律案の趣旨であります。(拍手)
――――◇―――――
電気通信事業法の一部を改正する法律案(内閣提出)、国際電信電話株式会社法の一部を改正する法律案(内閣提出)及び日本電信講話株式会社法の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明に対する質疑発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114005254X03219970508/53
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054・渡部恒三
○副議長(渡部恒三君) ただいまの趣旨の説明に対して質疑の通告があります。順次これを許します。河合正智君。
〔河合正智君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114005254X03219970508/54
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055・河合正智
○河合正智君 新進党の河合正智でございます。私は、新進党を代表して、ただいま議題となりました電気通信事業法の一部を改正する法律案及び日本電信電話株式会社法の一部を改正する法律案並びに国際電信電話株式会社法の一部を改正する法律案につき、総理及び郵政大臣に質問申し上げます。
昨年十二月六日、十四年間にわたりまして懸案とされ続けましたNTTの分離分割問題が、郵政省との間で合意されました。いわゆる純粋持ち株会社の一〇〇%子会社の形で長距離会社を分離、地域会社を東西二社に分割する、長距離会社は国際通信にも進出できるというものですが、これは、一九八二年、昭和五十七年七月の土光臨調基本答申のフレームを純粋持ち株会社でつなぎ合わせた合意内容と言えるのであります。
また、本社が持ち株会社形態で国際長距離会社と地域会社を所有するという点では、アメリカにおける一九八四年分割前のAT&Tの誕生とも言えるのでございます。結局、電気通信審議会の答申にもなかった持ち株会社というキーワードを使い、NTTは世界最大規模の一社体制を守り、郵政省は、規制、権限を手放さなかったと言えるのではないでしょうか。
なぜ十四年間もかかったのか。それは、翌一九八三年、中曽根内閣で、当時、自民党行財政調査会長であった橋本龍太郎私案で決着し、電電公社を民営化するとはしたものの、公社の再編成については十年後に先送りしたからであります。そして、一九九〇年に、政府はさらに五年見送り、さらに一九九六年に一年先送りをしたからでございます。情報通信の世界におきまして十四年間という歳月は、全く決定的とも言える歳月となりました。
そこで、総理にお伺いを申し上げます。
NTT再編のために十四年間もかかったというその政治の責任をどのようにお考えでしょうか。また、持ち株会社を特殊法人とし、さらに東西地域会社を特殊法人としたのはなぜか。しかも、地域の加入者線を独占したままでは国内における競争が働かず、結局消費者利益につながらないのではないですか。つまり、国民にとって利用料金は下がるのでしょうか。また、サービスはより多様化するのでしょうか。何のためにNTTを再編するのかという改革の原点を見失っているのではないかと私は思いますが、いかがでございましょうか。
次に、郵政大臣にお伺いいたします。
東日本会社から西日本会社に非課税の赤字補てんが認められているのはなぜでしょうか。内部補助による非効率な経営体質の改善こそNTT分割論議の最も重要な課題でなかったのでしょうか。
さらに、今回の改正案はNTTの地域回線網を前提にいたしておりますが、無線によるネットワークインフラの高度化により、電話加入権の概念が変わってくると思われます。その対策をどのように考えておいてか、お伺いいたします。
また、従来、我が国は、国内通信はNTT、国際通信はKDDとすみ分けをしてまいりました。改正案では、NTT長距離会社に国際進出を認め、KDDに国内通信業務を行えるようになっております。
総理が強い意向を示したと言われる今回の改正案は、NTTの国際進出を早急に進めることが至上命題でございました。そのため、KDDのあり方等については十分煮詰めないまま見切り発車した面があるのではないか。KDDを特殊法人のまま残したのはなぜでしょうか。むしろ、二年後KDD法は廃止すべきと私は考えますが、郵政大臣にお伺いいたします。
次に、総理に、情報通信の位置づけについてお伺いをいたします。
日本で先送りとしていた十四年間に、世界では何が起きていたのか。各国では、情報通信分野を国家戦略として位置づけていました。
アメリカでは、一九九二年、クリントン政権は、今世紀中にすべての教室、すべての図書館、すべての病院や診療所を全米情報基盤でつなぎ、そしてグローバルな情報基盤につなぐという大きな国民的目標を打ち立てました。シンガポールにおきましては、リー・クアンユー当時の首相が同じく一九九二年、IT二〇〇〇構想を発表し、現在は情報ネットワークの中枢を握り、電子国家を築こうとしております。マレーシアのマハティール首相は、マルチメディア・スーパー・コリドー計画で情報大国へ向けて強いリーダーシップを発揮しております。
その上、世界の通信市場では、コンサート、ワールド・パートナース、グローバルワンという三大メガキャリアが国境を越えた通信サービスを急拡大しております。
一方、一八七六年、ベルが最初に実用的電話を発明してから百二十年たちました今日、音声だけの電話の市場からデータ通信を初めとするマルチメディアサービスへの移行が急速に進み、この二つの世界の潮流に日本は今取り残されようとしているのであります。
今や文明は、紀元前における農業革命と、十八世紀の産業革命に次いでデジタル情報革命という第三の革命の中にあります。しかし、政府にはこうした認識に欠け、情報通信が二十一世紀の重要な経済戦略分野の一つであるという国家戦略がなかったと私は考えます。総理はどのようにお考えでしょうか。
次に、郵政大臣にお伺いいたします。高度情報通信分野で実現しなければいけないことが二つございます。規制緩和と競争ルールづくりであります。
日本の国内通信市場は六兆七千億円あり、国際通信市場四千七百億円に比較しまして著しく大きいのでございます。この点におきまして、国内の通信市場の規模が比較的小さいヨーロッパやアジアと異なっているわけでございます。我が国は、アメリカと同じように、十分に複数の通信事業者が競争できる市場環境と言えるのでございます。
したがって、我が国におきましては、思い切った競争政策により、通信産業の料金低下とサービスの高度化、多様化によりインフラ投資を拡大し、金融、保険、商社、コンピューターなどの産業の強化及び再編を進め、その結果、通信事業者の国際競争力を高める、そして相互主義の国際ルールの中で優位性を確保することが戦略的に重要であります。したがって、この観点から、規制撤廃・緩和と競争ルールにつきましては五年後をめどに見直しが必要と考えますが、どのようにお考えでしょうか。
次に、十二月六日の決定で公正競争条件を担保する仕組みを講ずることとなっていましたが、どのような対策をお考えか、お伺いいたします。
さらに、NTTに対しては段階的に規制緩和し、新電電に対しては大胆に規制緩和する、つまりアメリカのFCCが行いましたような非対称規制によるきめ細かなルールづくりが必要と考えますが、どのようにお考えでしょうか。
次に、NTTの独占的地域網につきましては、接続の円滑化についての今後の対応、技術的あるいは会計面での情報開示についてどのようにお考えか、お伺いいたします。
さらに、接続の推進等に係る行政のあり方といたしましては、従来の許認可中心、個別ケースごとの事前審査中心のやり方を廃し、事後的に介入する紛争仲裁型の行政のやり方に組織のあり方を含め移行していくべきと考えますが、郵政大臣はどのようにお考えか、お伺いいたします。
最後に、総理大臣にお伺いいたします。
NTTとKDDのアメリカ子会社が今年一月と二月にいわゆる回線リセールと呼ばれる国際通信サービスのビジネスを申請したところ、アメリカFCCは認証を保留いたしました。報道によりますと、アメリカ側が示した二つの条件は、一つ、今年九月期限のNTT調達取り決めの延長、一つ、NTTとKDDの外資規制の年内撤廃とのことでございます。これは、アメリカ政府が主張する相互主義と矛盾する上、資材調達交渉とは切り離して解決されるべき問題と考えます。
総理はこの件をどのように解決されるのかお伺いいたしまして、私の質問を終わります。(拍手)
〔内閣総理大臣橋本龍太郎君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114005254X03219970508/55
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056・橋本龍太郎
○内閣総理大臣(橋本龍太郎君) 河合議員にお答えを申し上げます。
まず、NTTの経営形態問題の解決に十四年という年月を要した、その政治の責任いかんという御意見でありました。
NTTの経営形態問題につきましては、随分さまざまな角度からの御意見があり、議論を続けてまいりました。今回、この問題についての結論を得ることによりまして、情報通信のグローバル化あるいはマルチメディア化といった大きな環境変化が生じつつあるこの分野の将来の展開に適切に対応できる体制が整ったと考えております。
次に、持ち株会社及び東西地域会社を特殊法人とする理由についてのお尋ねがございました。
持ち株会社につきましては、東西の地域会社の株式をすべて保有させ、我が国における全国あまねく電話サービスを確保することに寄与させるとともに、基盤的な研究を一元的に推進させるため、また東西地域会社につきましては国民生活に必要な電話サービスを安定的に提供させるため、これらの経営を適正なものとしながら公共性を確保する必要があることから、それぞれ特殊会社といたしたものであります。
なお、最初の御質問にも関連する部分でありますが、ここまでの論議の中にありました一つの大きなポイント、それは、旧電電公社の持っておりました研究開発機能をどのような形で存続することが一番その機能を低下させないか、そうした視点からの議論がありましたことも、ぜひお心におとめをいただきたいと思うのであります。
次に、今回の再編案では、競争が生じず、消費者利益につながらないのではないかというお尋ねがございました。
現在のNTTが長距離一社及び地域二社の別々の会社に再編されることによりまして、長距離通信市場における公正競争が促進されることになります。また、地域通信市場におきましても、比較競争などを通じた競争の活発化、地域における適正な経営管理の向上などが図られることにより、低廉な料金やサービスの多様化が期待できるものと考えております。
次に、情報通信分野における国家戦略について御意見がございました。
情報通信が経済を牽引する戦略分野であること、そしてその発展を図ることが極めて重要な国家戦略上の課題であることは、認識をいたしておるつもりであります。政府といたしましては、現在既に総理大臣を本部長とする高度情報通信社会推進本部を設置し、全省庁による推進体制を整備すると同時に、規制緩和の積極的な推進、競争環境の整備などの諸施策をも積極的に進めてまいったところでありまして、今後とも政府の重要課題の一つとして一層努力してまいりたいと考えております。
最後に、NTT及びKDDの米国子会社へのFCCによる認証留保につきましての御意見をいただきました。
議員御指摘のように、NTT及びKDDの子会社が申請している事業とは全く無関係の事柄を理由としたものであると考えております。このような不透明な措置は、WTOの掲げる自由貿易体制の精神にもそぐわないものだと考えておりまして、今後とも、早急に事業者への認証が付与されるよう米国政府に対し強く求めていきたいと考えております。
残余の質問につきましては、関係大臣からお答えを申し上げます。(拍手)
〔国務大臣堀之内久男君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114005254X03219970508/56
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057・堀之内久男
○国務大臣(堀之内久男君) 河合議員にお答え申し上げます。
東会社から西会社への非課税の赤字補てんについてのお尋ねでありますが、この特例制度は、再編成後の西会社が当面赤字の会社になる可能性があります。かつ、経営改善の成果があらわれるまでには一定の期間が必要と考えられますことから、現在NTTが一社体制のもとで果たしている全国あまねく電話サービスの安定的な供給が、再編成後においても滞りなく遂行されるよう措置したものであります。
ただし、この特例は、今回の再編成の趣旨にかんがみ、三事業年度に限った措置としており、この間に西会社は経営改善に努めることとなるため、今回の再編案は経営体質の改善という課題に十分こたえることができるものと考えております。
次に、無線によるネットワークインフラの高度化と電話加入権の関係についてのお尋ねでありますが、加入者系ネットワークインフラの整備に当たっては、光ファイバー網に加えて、加入者系無線システムを活用することにより高度化を進めることとしております。NTTの電話加入権につきましては、現在においても、その基礎となる施設設置負担金をめぐり議論が存するところでありますが、その将来のあり方につきましては、有線系ネットワークによる電話サービスの展開や加入者系無線システムのかかわり等の状況も踏まえまして検討を行う必要があるものと考えております。
次に、今後のKDDのあり方についてのお尋ねでありますが、我が国及び国民の利益を図るためには、国際情報通信基盤の整備や緊急時の通信の確保などの観点から、常に全世界とつながるネットワークを有する通信事業者が必要でありますが、現時点ではこのような役割はKDDに期待せざるを得ないことから、引き続きKDDを特殊法人としたものであります。
KDDにつきましては、今回NTTが国際通信分野へ進出可能となることを踏まえまして、国内通信分野への進出を可能とするものでありますが、KDD法の将来のあり方につきましては、ただいま申し上げましたKDDの役割を念頭に置きながら、国際通信市場の変化の動向等を踏まえつつ、引き続き検討してまいりたいと考えております。
次に、規制のあり方、競争ルールを五年後を目途に見直すべきではないかとのお尋ねでありますが、今回の法案においてはあらかじめ時期を特定した形の見直しは予定しておりませんが、法制度を新たな状況に即応して不断に見直すことは一般に望ましいことであります。変化の激しい電気通信分野の特徴にかんがみまして、規制や競争ルールについても、今後、状況の進展に応じまして適時適切に見直しを行ってまいる所存であります。
次に、公正競争条件を担保する仕組みについてのお尋ねでありますが、今回のNTTの再編成によって、独占的な地域通信部門と競争的な長距離通信部門とが別の会社になることから、両部門の内部相互補助の防止や公平な接続の実現が容易となります。新規事業者との公正有効競争が促進されるものと考えております。また、例えば長距離会社と地域会社との間での役員の兼任や営業部門の独立性のあり方について一定のルールを定めることによって、公正有効競争の確保を図っていく所存であります。
次に、NTT及び新電電に対する規制緩和のあり方についてのお尋ねでありますが、我が国においても、情報通信分野の規制緩和を積極的に推進いたしまして、裏業者間の活発な競争を通じて情報通信分野の発展を図ることが重要な課題であると認識しております。今回の法案におきましても、NTTの再編成にあわせまして、過剰設備防止条項の撤廃など諸規制の見直しを行うこととしております。
御指摘の非対称規制につきましては、さまざまな議論が存在するところでありまして、慎重な検討が必要と考えていますが、いずれにいたしましても、今後とも、変化の激しい本分野の特徴にかんがみまして、競争状況の進展に応じた規制の緩和について積極的に対応してまいりたいと考えております。
次に、NTTの地域網への接続の円滑化についての今後の対応及び情報開示に関するお尋ねでありますが、まず接続の円滑化につきましては、今回の法改正によりまして整備されることとなる接続ルールの策定及びその円滑な実施に努めることにより、公平、透明、迅速な接続を実現していく考えであります。また、接続に関する情報の公開につきましては、NTTのネットワークによって提供される技術的機能についての情報公開の充実や、接続料金の根拠となる会計情報の開示などを進めるべく、具体的な公開、開示の内容について鋭意検討中であります。
次に、接続の推進等に係る行政のあり方についてのお尋ねでありますが、今回の改正案では、目的や対象に応じて、事前審査と事後的関与の双方の仕組みを設けているところであります。将来、状況の変化に応じ、これを見直していくこととなる場合には、行政の公平性、中立性及び透明性を確保するための方策を含め検討してまいりたいと考えております。(拍手)
―――――――――――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114005254X03219970508/57
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058・渡部恒三
○副議長(渡部恒三君) 北村哲男君。
〔北村哲男君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114005254X03219970508/58
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059・北村哲男
○北村哲男君 私は、電気通信事業法の一部を改正する法律案、日本電信電話株式会社法の一部を改正する法律案、国際電信電話株式会社法の一部を改正する法律案に関し、民主党を代表して、総理大臣及び郵政大臣に質問いたします。
今回の改正案は、参入規制を撤廃し、事業者間の接続ルールをつくり、NTTの再編成及び国際通信への参入、またKDDの国内通信への参入を可能にするものであり、その大筋においては当然のことであります。
思えば、我が国の電気通信産業の改革は、NTTの経営形態の分離分割にこだわる議論に貴重な歳月を空費したことは否定できません。本問題の合意に長い時間を要したのは、NTTの分離分割による国内事業者間の競争の喚起を至上命題とする主張と、それではボーダーレス化している国際競争に太刀打ちできず、また国民、利用者の利益も後退しかねないと危惧する主張の両者間に理解が得られなかったことに尽きます。
この閉塞状態を打開した重要な要因として挙げられるのは、昨年八月の総理大臣の発言であります。つまり、NTTが可能な限り速やかに国際通信の分野に進出することを認めるなどの大胆な規制緩和を促したものでありました。このことは必然的にNTT法、KDD法の改正を要し、さらに従来の議論を超えた規制緩和を必要とするものでありました。
言うまでもなく、今回の改正案によっても、国民、利用者にあまねく電話が確保され、また福祉電話などのサービスが低下することなく、むしろそれらのサービスが向上するものでなければなりません。さらに重要なことは、利用者に新たな負担をもたらしてはならないということであります。今回の改正案によってもたらされるものは、国民生活への寄与であり、利便の追求でなければなりません。決して業者間のシェア争いを助長する結果のみをもたらしてはならないと思います。
そこで、総理、今回の改正案によって事業者と利用者はどのような利益を得ることができるのか、また電気通信事業が国際化する中で情報通信における我が国の国際戦略についてどのようにお考えか、あわせてお聞きしたいと思います。
今回の改正案のかなめの一つは、管理、制限された疑似的競争を排し、競争条件整備に基づく真の競争環境を創出することにあり、これを踏まえれば規制のほとんどは不要になること、すなわち原則自由・例外規制を基本とすべきことは当然であります。まずは、情報通信分野における許認可のあり方について、郵政大臣に基本姿勢を伺います。
次に、順次三法案について質問いたします。
まず、電気通信事業法の改正案について伺います。
真の競争条件を創出するためには、規制はユニバーサルサービスにかかわる部分などに限定すべきと思いますが、今回の改正案では、接続ルール、競争条件が定められることになってもなお、サービス、料金、契約約款などの細部にわたって認可制が残されております。その意義は一体どこにあるのでしょうか。
例えば、電気通信審議会がさきにまとめた情報通信二十一世紀ビジョン中間報告においても、料金の認可制の見直しが提言されております。基本的な料金をプライスキャップ制にし、その他の競争的なサービスや料金などは届け出制にすべきと考えますけれども、郵政大臣、いかがでしょうか。
また、加入回線総数の二分の一を超える固定伝送路設備を持つ事業者に多重に規制をかけることにしておりますが、しかし、今日の携帯電話やPHSの普及状況から見れば、いわゆる支配的事業者の基準を固定伝送路網のみではかることは、今後、状況の変化にそぐわなくなると考えられます。また、ケーブルテレビ網を利用した通信など、今後、多様なネットワークの成長が期待されます。
情報通信の進展はまさに想像を絶するスピードで進んでおり、今後、接続に関する規制も状況の変化に応じて随時見直すことが必要と考えますが、郵政大臣、いかがでしょうか。
なお、現在のところ、設備の有無によって電気通信事業者を第一種、第二種に区分することを基本とした法体系になっておりますが、これ自体、もはや世界の現状に取り残されつつあります。このままでは、情報通信のボーダーレス化、グローバル化あるいは通信と放送の融合といった新しい環境に十分適応できなくなることは明らかであります。次世代を見据えて、事業法のさらなる見直しと、電波法、放送法の改正に大胆に取り組むべきと考えますが、郵政大臣、いかがでしょうか。
次に、NTT法の改正案について伺います。
今回の改正三法案の眼目は、何といっても日本電信電話株式会社法の改正にあることは言うまでもありません。そこで、単刀直入にお伺いします。
まず第一点として、この改正案によればNTTは四社に分割再編されるわけですが、それはどのような目的からなのでしょうか。また、いかなる効果を期待しているのでしょうか。
二点目には、純粋持ち株会社の導入の理由、及び事業会社の株式を持ち株会社が一〇〇%保有することとしたのはどのような経過からなのでしょうか。
第三点目としては、地域電話会社を東西二社に分割するとのことでありますが、その根拠はどこにあるのでしょうか。また、この二社間での競争条件は改正案によって満たされているのでしょうか。
以上、三点あわせて郵政大臣の答弁を求めます。
次に、持ち株会社の取締役及び監査役の郵政大臣認可制が引き続き残っており、また年度ごとに持ち株会社と地域会社の事業計画を郵政大臣が認可することとなっておりますが、日々激変する電気通信市場に遭遇する地域会社において真にふさわしいものであるか、一考を要すると考えます。なお、持ち株会社における事業とは電気通信に関する基盤的研究開発となっておりますから、これを年度単位とすること自体余り意味のないことと思います。このような持ち株会社及び地域会社の規制については、法の施行状況を見た上でそのあり方を不断に見直していく必要があると考えます。郵政大臣、いかがでしょうか。
次に、KDD法の改正案についてお伺いします。
国際通信に関しては、既に競争状態が進展しつつありますが、現在、全世界に通信網を確保しているのは我が国ではKDDだけであります。今回の改正を機に、国際通信における公共性のあり方について議論を深める必要があると考えます。また、本改正案における規制緩和やNTTの国際化が実現した後には、特殊会社としての国際電信電話株式会社法は、もはやその使命を終え、廃止すべきものと考えますが、郵政大臣、いかがでしょうか。
以上述べてきましたように、条件、環境を整備し、真の競争の進展により多様なサービスと料金の低廉化を初めとした利用者の利益を増進するためには、今回の改正に加え、さらなる規制撤廃あるいは規制緩和が不可欠であります。
最後に、総理のお考え、御決意を伺って、私の質問を終わりたいと存じます。(拍手)
〔内閣総理大臣橋本龍太郎君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114005254X03219970508/59
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060・橋本龍太郎
○内閣総理大臣(橋本龍太郎君) 北村議員にお答えを申し上げます。
まず、今回の改正案によって事業者及び利用者へどのような利益があるのかという御指摘をいただきました。
この趣旨は、議員が御指摘になりましたとおりに、事業者間の公正競争の実現を通じて、情報通信分野全体の活性化を図ること、国民、利用者のために低廉で多様なサービスが提供される豊かな社会の実現を図ろうというものでございます。
また、情報通信分野における我が国の国家的戦略というお尋ねがございましたが、情報通信は、申し上げるまでもなく、現在、各国の経済を牽引するものとして世界じゅうがその競争力の強化に取り組んでいる分野であります。私としては、このような情報通信の将来性、これをめぐるグローバルな環境というものを念頭に置きながら、NTTを初めとする我が国の通信事業者の国際通信分野、海外市場への進出の支援、規制緩和の積極的な推進などによりまして、我が国の情報通信産業の国際競争力の向上を図っていきたいと考えております。
次に、情報通信分野における規制緩和のあり方について御意見をいただきました。
御指摘のように、急速な技術革新の成果を取り入れて競争状況の進展を図るために、情報通信分野の規制緩和を積極的に推進していくこと、そして活発な競争を通じ利用者利益の増進を図ることが極めて重要であるということは間違いありません。それだけに、今回の改革におきましても、NTTの再編成と国際進出にあわせまして、過剰設備防止条項の撤廃など幾つかの規制の見直しを積極的に行ってまいりましたが、今後とも、マルチメディア社会に対応した規制緩和や関連する他の諸制度の見直しを不断に進めてまいる必要があることは御指摘のとおりであり、そういう努力をしていきたいと考えております。
残余の質問につきましては、関係大臣から御答弁を申し上げます。(拍手)
〔国務大臣堀之内久男君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114005254X03219970508/60
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061・堀之内久男
○国務大臣(堀之内久男君) 北村議員にお答え申し上げます。
情報通信分野の許認可のあり方についてのお尋ねでありますが、郵政省といたしましては、かねてより規制緩和に積極的に取り組んできたところであります。最近では、国内専用線の利用の完全自由化、移動体通信料金の認可制の廃止等の規制緩和を実施いたしております。今回のNTT再編関連法案につきましても、過剰設備防止条項の撤廃を初めとする規制緩和を盛り込んでおります。そして御審議をいただいておりますが、変化の激しい本分野の特徴にかんがみまして、今後とも、競争状況の進展に応じた規制の緩和について適切に対応してまいりたいと考えております。
次に、料金規制の見直しについてのお尋ねでありますが、郵政省といたしましては、電気通信市場における公正有効競争条件の整備や実際の競争の進展状況等を踏まえまして、現行の認可制を見直し、届け出制への移行等を進めてきたところでありますが、今後ともこのような考えに立つで、御指摘のプライスキャップ制などの新しい制度の導入についても、あわせて検討を進めてまいる所存であります。
次に、接続に関する規制の今後の見直しについてのお尋ねでありますが、情報通信分野は変化の激しい分野であり、一度定めた制度についてもその変化に応じた不断の見直しが必要と認識しております。このような観点から、今回の接続に関する制度につきましても、法律の施行後三年を目途といたしまして、必要に応じて見直しを行う旨の規定を改正法案に盛り込んでおるところであり、状況の変化に応じた見直しを行っていく考えであります。
次に、電気通信、放送をめぐる関連法制の見直しについてのお尋ねでありますが、情報通信分野の規制につきましては、先ほど申し上げましたように、激しい変化に応じた不断の検討が求められるものと認識しております。これらの見直しにおいでは、御指摘のとおり、いわゆるデジタル化を中心とした急速な技術革新によりまして、通信及び放送の両分野のかかわりなども視野に入れるべきものと考えております。
次に、NTTの再編成の目的及び競争の促進等についてのお尋ねでありますが、NTTが保有している独占的な地域通信部門と競争が進展している長距離通信部門とを別会社といたしますのは、これによって公正有効競争条件を整備しようとするものであります。また、東日本、西日本において同程度の規模の会社を二社設立いたしますのは、これによってサービスの比較ができるようになり、いわゆる間接競争が促進され、情報通信分野における競争が進展するものと期待するからであります。
一方で、再編成後におきましても、各社は国民に対して電話サービスを提供するという公共性の高い事業を行うこととなりますので、これらの事業が安定的に行われ、国民がこれまでと同じように電話を利用できることを確実にするために、持ち株会社を設け、地域会社の株式の総数を保有させることとしたものであります。
次に、持ち株会社及び地域会社への規制のあり方の見直しについてのお尋ねでありますが、今回の改正法案は、持ち株会社及び地域会社の有する公共的な性格にかんがみまして、必要最小限の規制を設けておりますが、これらについては、法施行後の技術革新や地域通信分野における競争の進展状況及び持ち株会社制度の定着の状況などに応じて適時適切に見直しを行っていく考えであります。
次に、国際通信における公共性のあり方とKDD法の将来のあり方についてのお尋ねでありますが、国際通信分野においても、ユニバーサルサービスの確保や緊急時の通信の確保といった重要な公共的役割を確保する必要があり、我が国及び国民の利益を図るために、当面はこの役割をKDDに担わせていく必要があると考えております。KDD法の将来のあり方につきましては、こうしたKDDの役割を念頭に置きまして、国際通信市場の動向を踏まえつつ、引き続き検討してまいりたいと考えております。(拍手)
―――――――――――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114005254X03219970508/61
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062・渡部恒三
○副議長(渡部恒三君) 小坂憲次君。
〔小坂憲次君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114005254X03219970508/62
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063・小坂憲次
○小坂憲次君 私は、太陽党を代表して、ただいま趣旨説明のありました電気通信事業法の一部を改正する法律案外二法、すなわちいわゆるNTT関連三法について、総理並びに郵政大臣に質問いたします。
総理、私は、高度情報通信社会と呼ばれる現代にあって、電気通信事業にかかわる政策は、国の命運を左右するような大変重要な意味を持つものであると考えておりますし、橋本総理が訴えておられるいわゆる六つの改革を進める上でも、その中核となるべきものではないかと考えております。
一九八五年の電電公社民営化並びに電気通信事業法の制定以来十数年が経過いたしましたが、近年、急速な技術革新とともに、電話と電報の時代から、ファクスと携帯電話へ、そしてコンピューターによるマルチメディアのデータ通信時代へと、世界の情報通信は高度化への変革が加速しております。一方、我が国の情報通信市場は、ここ数年でようやく活発な新規参入が行われて競争環境が整備され、料金の大幅な低廉化と利用者の利便性の向上が図られるようになってきました。
高度情報通信ネットワークの発展は、産業インフラとして我が国の経済構造改革を推進する上で戦略的にも大変重要であり、電気通信産業の国際競争力の強化は我が国産業全体の発展にとって重要な意味を持つものであります。
そこで、まず総理にお伺いしたいと思いますことは、今回のNTT関連三法の改正をどのように評価されておられるのか、また、今後、高度情報通信関連の政策においてどのようなことを考えておられるのか、率直な御意見をお聞かせいただきたいと存じます。
政府は、今回の法改正は公正有効競争の促進が目的であると述べられました。しかし、本当にそうなるのでありましょうか。
今、電気通信事業の改革の中で国民が求めるものは、分割されて弱体化したNTTでも、競争に疲れ経営に行き詰まる新規参入会社の姿でもないはずであります。真に国民が求めるものは、世界の最先端を走る、豊かな創造性と活力に満ちた情報通信産業の姿であり、二十一世紀の豊かな市民生活を支える、公正な競争関係に裏打ちされた低廉かつ高い利便性を提供する電気通信事業であるはずであります。
本来、分離分割の効果は、新会社同士が切磋琢磨し、経営合理化の努力によって料金を引き下げ、新技術開発を促進することであります。しかし、今回改正による持ち株会社下の東西二社はいわば事業本部制のようなものであり、ユニバーサルサービスを前提に均一料金の意向と言われております。だとすれば、経営努力は価格競争に反映せず、相互の地域参入による競争も期待しがたいと思われます。また、分割によって一体性が損なわれて、大競争時代のメガキャリアとの競争力も弱められるとするならば、何ゆえに、資産譲渡益課税の特例や赤字補てんの損金算入特例まで認めて、この時期にやる必要があるのでしょうか。
このような意味で、分離分割の効果も中途半端、メガキャリアとの競争力維持の観点からも中途半端な今回の結論は、郵政省とNTTの妥協の産物としての中途半端な改正と言わざるを得ません。
現在、アメリカの通信会社AT&Tは再び統合の方向にあります。何ゆえ、今、法改正によってNTTを分割する必要があるのか。そもそもNTTを再編しなければならない具体的な理由は何か。総理の御見解をお伺いいたします。
それに加えて、民営化といいながら、NTT株の三分の二を政府が保有し続けて、今回さらに地域会社を特殊会社とした理由、また持ち株会社は長距離会社の株式を当分の間保有するとなっていますが、放出するとすれば、それはどのような時期にどのような環境と条件のもとで行うことになるのか。
さらには、今回、郵政省とNTTが合意に至るまでにいろいろと議論された論点、つまり、地域網の独占性、ボトルネックと言われる回線接続、株主の保護、ユニバーサルサービスの維持、将来のネットワーク構想、大規模災害時の重要通信確保等が今後どう解決されることとなったのか、今回の法改正によって具体的にどのような競争が促進されるのか提示し、NTT再編のメリットとデメリットについて、郵政大臣の御見解をお聞かせください。
現在、我が国の通信政策に求められていることは、今後の世界的な技術的進歩や国内外の通信市場の変化にも柔軟に対応できる競争の枠組みをいかに構築し、また自由公正な競争によって利用者の利便性をいかに向上させるかであります。そのためには、国際と国内、長距離と地域、有線か無線接続かといった従来分類による市場区分を撤廃し、それを超えた自由な競争の枠組みを前提にすべきだと考えます。
インターネットのように接続経路を特定しない接続形態や、衛星携帯電話並びにPHS等の無線デジタル伝送技術の発達、さらには光ケーブルの大容量多重通信技術によるコストの飛躍的な引き下げ等、急速な技術革新を見れば、今や従来の分類が次第にその意義を失っていることは明白であります。この点につき、高度情報通信政策の将来展望とあわせ、総理並びに郵政大臣の御見解をお伺いいたします。
次に、国際戦略とKDDに対する考え方についてお尋ねいたします。
アメリカの通信法の大改正やブリティッシュ・テレコムと米国MCIの合併など、いわゆる大競争時代に備え国際的な動きが加速しております。我が国でも日本テレコムとITJの合併など、民間独自の動きがありますが、大競争に参加できる体力を持った通信事業者の育成について、国としてどのような政策を展開しようとしているのか、総理の御見解をお聞きいたします。
また、国内通信業務を認められたKDDとその大株主であるNTTとの関係をどのように考えているのか。KDD法によってKDDが国際競争上不利となる可能性を懸念しますが、なぜ今後ともKDD法を存続させるのか、廃止する予定はあるのか、郵政大臣の御見解を伺います。
今回の再編によって、NTT持ち株会社と長距離会社並びに地域会社、それぞれに研究開発部門が分割されることとなりましたが、基礎研究と応用研究部門が分離されることにより、我が国の技術研究開発の総合力が損なわれ、国際競争に取り残される危険性を懸念するものであります。
持ち株会社が研究拠点を一元的に管理できるならば、子会社の研究拠点はより業務の実情に即した開発を機動的に進めることが可能となり、応用技術研究を基礎研究部門にフィードバックすることも可能となります。しかし、一方で、一元管理は今回の分割再編の意義を失わせることにもつながるはずであります。この点につき、郵政大臣の御見解をお聞かせください。
今回の電気通信事業法の改正で、周辺の諸権利との調整を図る上で必要な担保措置とされてきた過剰設備防止条項が撤廃されましたが、第一種電気通信事業者の電気通信回線の設置に当たり認められている公道、公用水面等の優先的利用や、他人の所有に属する土地等に対する公益事業特権の付与の理論的根拠は何か。また、今後、多数の新規事業者が土地利用特権等の公益事業特権を付与される結果、鉄塔など設備のふくそう、重複などによって土地所有者の権利侵害などの問題はないのか。郵政大臣の見解を伺います。
我が太陽党は、国会が与野党の対立の場ではなく、自由で透明な議論と対話によって市民、有権者の国家的課題に対する認識を高め、幅広い選択を提供する場となるような政治の実現を求めてまいりました。私は、今国会における情報通信政策を初めとした二十一世紀に向けた重要政策の審議に当たり、総理並びに政府が、議論を尊重するとともに、指摘された問題点には法案修正を含めて柔軟に対応し、市民、有権者の前に問題の本質を明らかにすべく、誠実に回答されることを期待するものであります。
今月二日、英国で今世紀最年少、四十三歳のブレア首相が誕生しました。この事実は、清新かつ柔軟な発想を期待し、地殻変動的な改革を求めた英国民の選択が小選挙区制という選挙制度を通じて、このように劇的な政権交代を生んだのであります。
二十一世紀を目前にした今日、国会に議席を有している我々に求められているものは、このような世界の急激な変革の流れに的確に対応しつつ、未来を見通す正しい政策判断と、強力で明確なリーダーシップを発揮する政治によって日本の新しい未来を描き出すことであることを改めて同僚議員各位に訴え、私の質問を終わります。(拍手)
〔内閣総理大臣橋本龍太郎君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114005254X03219970508/63
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064・橋本龍太郎
○内閣総理大臣(橋本龍太郎君) 小坂議員にお答えを申し上げます。
まず、NTT関連三法の評価、そして高度情報通信関連の政策についてのお尋ねがありました。
情報通信がそれぞれの国におきまして経済を牽引する戦略分野であること、我が国の経済構造改革のためにその高度化を図ることが極めて重要な政策課題であることは論をまちません。私としては、このことを念頭に置きながら、NTT関連三法案におきまして、規制緩和の積極的な推進、競争環境の整備などを行いますとともに、光ファイバー網の全国的な整備などを積極的に推進していくことによりまして、情報通信産業というものを活性化させ、我が国産業の発展を図る所存であります。
次に、NTTをなぜ法改正をもって分割する必要があるのかという御指摘をいただきました。
今回の再編成は、今申し上げましたような情報通信分野というものの持つ重要性にかんがみ、NTTの独占部門と競争部門を分離し、競争環境を整備することが一つ。同時に、これによってNTTの国際進出を可能にすることによりまして、NTT自身の活性化はもちろんでありますけれども、我が国の情報通信産業全体の活性化を図ろうというねらいを持っております。
次に、国内とか国際あるいは長距離とか地域といったこうした区分けが意義を失っている、高度情報通信政策の将来展望と競争の枠組み、そうした御指摘をいただきました。
これは、議員が御指摘のとおりに、情報通信技術の革新というものは大変目覚ましいものがあります。そして、情報通信は、国内と国際あるいは長距離と地域などの枠を超え、もう既に放送などの関連分野の産業も含みながら発展を遂げつつあるのじゃないでしょうか。そうした状態を踏まえながら、政策としてもその方向を踏まえ、競争の枠組みとしていくことが適切な対応だと考えております。
次に、大競争時代における体力を持った通信事業者の育成、これについて国の政策展開はいかがか、こうした御指摘をいただきました。
昨今の情報通信がグローバルな競争環境に置かれつつある状況を念頭に置きながら、NTTなどの通信事業者の国際通信進出、海外市場への進出を支援していきますとともに、規制緩和の推進や競争環境の整備などの施策を積極的に進めていくことにより、国際競争力のある事業者の育成に努めてまいりたいと考えております。
残余の質問につきましては、関係大臣から御答弁を申し上げます。(拍手)
〔国務大臣堀之内久男君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114005254X03219970508/64
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065・堀之内久男
○国務大臣(堀之内久男君) 小坂議員にお答え申し上げます。
民営化後もNTT株の三分の二を政府が保有し続け、今回さらに地域会社を特殊会社とした理由についてお尋ねでございますが、地域会社につきましては、国民生活に必要な電話サービスを安定的に提供させるために、その経営を適正なものとして、公共性を確保する必要があることから、特殊会社とするものであります。なお、政府保有株式については、平成元年度以降、円滑な消化が見込まれる市場環境になかったことから、実際の売却に至らなかったものであります。
次に、長距離会社株式の放出の時期、環境及び条件についてのお尋ねであります。
現時点では売却を予定しておるものではありませんが、仮に売却を行う際には、再編成後の通信市場の動向、株式市場の動向やNTT株主の利益の確保などを慎重に検討して判断してまいる所存であります。
さらに、今回の再編成の具体的なメリット、デメリットについてのお尋ねでありますが、独占的な地域通信部門と競争的な長距離通信部門とが別の会社になることによって、内部相互補助の防止や相互接続ルールの公平な適用が可能となります。公正競争が促進されるほか、地域通信部門が東西二社に分けられることによって、相互に比較可能性が生じるとともに、二社間の直接の競争も期待できるなど、独占的な地域通信分野における競争が促進されまして、NTTの経営の効率化につながるものと考えております。
また、あわせてNTTの国際通信への進出を可能とすることによりまして、グローバル化に対応した国際競争力の向上につながるものと期待しております。
さらに、再編各社が持ち株会社のもとで資本関係を維持すること及び基盤的研究開発が持ち株会社において一元的に推進されることなどから、かねて懸念されておりました株主の保護、ユニバーサルサービスの維持、災害時の通信の確保、研究開発力の向上等についても、適切に対応可能な仕組みとなっているものと考えておる次第であります。
次に、高度情報通信政策の将来展望と競争の枠組みについてのお尋ねでありますが、基本的な考えは、先ほど総理も述べられましたとおり、技術革新の進展によりまして、情報通信は、国内と国際、長距離と地域といった枠を超えた発展を遂げつつあります。また、政策としてもそのような方向を踏まえた対応が必要であると認識いたしております。今回の法改正におきましても、このような考え方に立って、再編後の長距離会社について国際通信や地域通信への進出を可能とするとともに、KDDの国内通信分野への進出を可能とすることといたしておるところであります。
次に、国内通信業務を認められたKDDとその株主であるNTTとの関係についてのお尋ねでありますが、NTTが現在KDDの株式を保有しておりますのは歴史的な経緯によるものでありますので、そのあり方につきましては、今後、NTTにおける検討も踏まえまして適切に対処していく所存であります。
また、KDD法の存廃に関するお尋ねでありますが、現時点においては、国際通信分野におけるユニバーサルサービスの確保や緊急時の国際通信の確保などの役割は引き続きKDDにより確保していく必要があることから、今回KDD法を存続させることといたしたところでありますが、今後、国際通信市場の動向などを踏まえまして、そのあり方について検討を行っていく所存であります。
次に、今回の再編後の研究開発体制についてのお尋ねでありますが、今回の再編成においては、現行NTTのすぐれた研究開発のリソースの分散を避けることに配意いたしまして、基盤的な研究については持ち株会社が一元的に推進することといたす一方、相互に競争することにより多様なサービス開発が可能となる応用的研究につきましては再編各社において行わせることといたしておるところであります。
このように、今回の再編案においては、再編各社の独自性の発揮を期待し得る体制としておりますが、その中においても、費用負担やテーマの選定を通じて持ち株会社と再編各社相互の連携体制が確立されることから、研究開発の総合力が損なわれることはないものと認識しております。
次に、公益事業特権の付与の理論的根拠についてのお尋ねでありますが、公益事業特権は、第一種電気通信事業者が、道路の使用等多数の行政庁の許可を得るために多大の時間を要することなくネットワークを円滑に構築するために不可欠なものでありますが、一方では、公共財を使用したり私権に制限を加えたりするものであることから、無制限に認められるものではありません。公益性がある事業であることを要件とすることが適当と考えております。
今回の改正法案におきましては、過剰設備防止条項が削除されましても、第一種電気通信事業の公益性の要件は電気通信事業法の他の規定により担保されておりますので、公益事業特権につきましても従来どおり維持できる仕組みといたしておるところであります。
また、土地所有者の権利侵害等の問題はないかというお尋ねでありますが、御指摘のような問題と第一種電気通信事業の公益性や特別扱いを認める必要性とを比較考慮した結果、公益事業特権を維持することが適当であるとの結論に達したところであります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114005254X03219970508/65
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066・渡部恒三
○副議長(渡部恒三君) これにて質疑は終了いたしました。
――――◇―――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114005254X03219970508/66
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067・渡部恒三
○副議長(渡部恒三君) 本日は、これにて散会いたします。
午後四時三十七分散会
――――◇―――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114005254X03219970508/67
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