1. 会議録本文
本文のテキストを表示します。発言の目次から移動することもできます。
-
000・会議録情報
平成九年四月八日(火曜日)
午前十時開会
—————————————
委員の異動
四月三日
辞任 補欠選任
竹村 泰子君 今井 澄君
四月七日
辞任 補欠選任
大島 慶久君 中原 爽君
四月八日
辞任 補欠選任
今井 澄君 竹村 泰子君
—————————————
出席者は左のとおり。
委員長 上山 和人君
理 事
尾辻 秀久君
木暮 山人君
清水 澄子君
委 員
大野つや子君
塩崎 恭久君
田浦 直君
中原 爽君
長峯 基君
宮崎 秀樹君
水島 裕君
山本 保君
和田 洋子君
渡辺 孝男君
竹村 泰子君
西山登紀子君
釘宮 磐君
事務局側
常任委員会専門
員 大貫 延朗君
参考人
社会福祉法人全
国社会福祉協議
会常務理事 松尾 武昌君
社会福祉法人日
本保育協会常務
理事 藤本 勝巳君
弁護士津田玄児君
国立社会保障・
人口問題研究所
副所長 阿藤 誠君
社会福祉法人こ
まどり福祉会こ
まどり保育園園
長 羽生 悦朗君
社会福祉法人愛
育福祉会理事長 成田 錠一君
東洋大学社会学
部助教授 森田 明美君
子どもの人権保
障をすすめる各
界連絡協議会事
務局 菅 源太郎君
全国保育団体連
絡会会長 横田 昌子君
養護施設光の園
白菊寮延長 濱田多衛子君
—————————————
本日の会議に付した案件
○児童福祉法等の一部を改正する法律案(内閣提
出)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014237X00819970408/0
-
001・上山和人
○委員長(上山和人君) ただいまから厚生委員会を開会いたします。
委員の異動について御報告いたします。
昨七日、大島慶久君が委員を辞任され、その補欠として中原爽君が選任されました。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014237X00819970408/1
-
002・上山和人
○委員長(上山和人君) 児童福祉法等の一部を改正する法律案を議題といたします。
本日は、本案審査のため、十名の参考人の方々から意見を聴取することといたしております。
午前は四名の参考人の方々に御出席をいただいております。社会福祉法人全国社会福祉協議会常務理事の松尾武昌君、社会福祉法人日本保育協会常務理事の藤本勝巳君、弁護士の津田玄児君、国立社会保障・人口問題研究所副所長の阿藤誠君、以上の方々でございます。
この際、参考人の方々に一言ごあいさつを申し上げます。
本日は、御多用中のところ、当委員会に御出席をいただき、まことにありがとうございます。
参考人の皆様から忌憚のない御意見をいただきまして、本案の審査の参考にいたしたいと存じますので、よろしくお願い申し上げます。
議事の進め方でございますが、まず、松尾参考人、藤本参考人、津田参考人及び阿藤参考人の順序で、お一人十五分程度の御意見をお述べいただき、その後、各委員の質疑にお答え願いたいと存じます。
それでは、松尾参考人に御意見をお述べいただきたいと存じます。松尾参考人。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014237X00819970408/2
-
003・松尾武昌
○参考人(松尾武昌君) 私は、社会福祉法人全国社会福祉協議会の松尾武昌でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
まず初めに、児童福祉法等の一部を改正する法律案の審議が行われております当参議院厚生委員会にお招きいただき、貴重な時間を割いて意見をお聞きいただきますことに心から御礼申し上げます。大変緊張しておりますので、不手際の段お許しください。
私の所属しております全国社会福祉協議会は、全国の社会福祉関係団体等の連絡調整や情報提供及び人材研修など多様な事業を行っておりますが、児童福祉関係では次のような事業を行っております。
その第一は、児童福祉施設の全国的組織の活動や、児童の健全育成の推進活動を支援する事業であります。第二は、民生委員、児童委員、主任児童委員の全国的組織の活動や、これら委員の児童家庭への福祉活動を支援する事業であります。第三は、市区町村社会福祉協議会やボランティア活動などの中で、地域での児童家庭への福祉活動を支援する事業であります。
これらの児童福祉関係事業を、高齢者福祉事業や障害者福祉事業との連携のもとに、全国社会福祉協議会の重点事業として取り組んでいるところであります。
次に、全国社会福祉協議会の児童福祉についての基本的な考え方について申し上げます。
第一は、我が国は平成六年に児童の権利に関する条約を批准したところでありますが、二十一世紀を担う子供の最善の利益を保障する施策を推進することであります。第二に、子育てのしやすい環境の整備及び児童の健全育成は国民的課題であるとの認識に立ちまして、その推進に努めることであります。第三は、国民が利用しやすい利用者本位の児童福祉施設を構築することであります。
これらの基本的な考え方に立ちまして、全国社会福祉協議会及び児童福祉施設の全国組織は次のように取り組んでまいりました。将来を展望した児童福祉施設の再編への検討、提言、多様なニーズを持った子供や母子家庭などの抱える問題への対応についての検討、提言、さらに子供の視点あるいは子供の成長発達に見合った児童福祉施設のあり方についての検討、提言などであります。
さて、御審議いただいております児童福祉法等の一部を改正する法律案について、総括的に意見を述べさせていただきます。
各先生方には既に御存じのことではございますが、昭和二十二年、いち早く「福祉」という言葉を用いました画期的な児童福祉法が制定されました。法制定当時は戦後間もないころでもあり、貧困あるいは親がいないという、家庭に恵まれない児童の保護対策に主眼が置かれていました。それから五十年を経過したわけでありますが、近年は、いじめ、不登校、虐待などの児童をめぐる問題が多様化し、保護者がいるにもかかわらず、何らかの理由により社会的支援を必要とする児童が増加してきている状況にあります。
このように、法制定当時の社会状況と現在の児童を取り巻く状況は著しく変化してきております。とりわけ、最近の少子化、核家族化の進行は、従来の生活基盤である家庭、家族のあり方が大きく変化し、そこから生ずる家庭機能や育児機能の低下などによって親子関係にさまざまなひずみを生じさせています。こうした状況の中で、現状の社会的ニーズと現在の制度との間に乖離が生じてきました。このたびの児童福祉法等の一部改正は、このような状況を踏まえた上で児童家庭福祉制度をより充実させるものであり、制度の見直しの第一歩として基本的に改正内容を評価できるものであります。
さらに、各施策別に意見を述べさせていただきます。
まず、児童保育施策関係でございます。
今回の改正は、全国の公立、私立の保育所全体をカバーし、全国社会福祉協議会の構成団体でもあります全国保育協議会の考え方を厚生省において十分酌み取っていただいているところでありますので、基本的に評価いたします。特に、保育所の利用につきましては、情報を提供し公開を行って、保護者が保育所を選択し利用できるシステムとすることについて評価いたします。
次に、保育料についてでありますが、所得捕捉による不公平感を考えれば、無理のない形で徐々にでも、時間をかけて均一化を図っていくべきであると考えます。また、これからは保護者に選ばれる保育所としていく必要があります。このためには、公の規制や施設の基準は、延長保育の実施方も含め地域の実情などにも配慮して、可能な限り弾力化していただきたいと思います。
次に、児童支援施策関係でございます。
最初に、児童相談所でございますが、相談所の措置の専門性、客観性の確保の観点から、都道府県児童福祉審議会の意見聴取については基本的に評価いたします。ただし、意見聴取が形骸化しないよう、同審議会に専門家から成る部会を設けるなど、特に配慮する必要があると考えます。
次に、児童家庭支援センターが地域に密着した相談体制の柱となる重要な事業として創設されましたことを高く評価いたします。したがって、この運営に当たりましては、民間活力が生かせるように、弾力的な運営ができるようお願い申し上げます。また、児童相談所や児童委員等との有機的な連携が重要だと考えられます。
次は、児童養護施設でありますが、同施設の運営に当たりましては、家庭環境との調整やアフターケアの強化など、児童の自立支援機能の強化や施設機能を活用した在宅サービスの提供の充実が図られるようお願い申し上げます。
乳児院及び情緒障害児短期治療施設関係でございます。
乳児院につきましては、児童の最善の処遇を図る観点から、児童の入所年齢がおおむね二歳未満まで拡大されましたこと、及び情緒障害児短期治療施設の年齢要件が撤廃されましたことを評価いたします。現在の母子寮は、施設の名称を母子生活支援施設に改め、関係者が希望していました児童の在所年齢も満二十歳になるまで広げられるなど、入所母子の自立を支援するための生活支援機能が加わったことを評価するものであります。さらに、実際に機能するように、施設内保育の充実やケースワークの充実などに努めていく必要があると考えます。
児童自立支援施設、現在の教護院でございます。
児童自立支援施設における学校教育についてでありますが、教育関係と十分連携を図り、できる限り速やかに実施できるようお願い申し上げたいと思います。また、対象児童につきましては、このたびの法改正により不登校児童一般が対象になるかのような誤解が生じている向きもありますので、広報等に当たっては十分な配慮をお願いいたします。本施設の運営におきましても、家庭環境との調整やアフターケアの充実など、児童の自立支援の強化が図られますようお願い申し上げます。
次は、児童自立生活援助事業及び放課後児童健全育成事業であります。
この両事業につきましては、このたび法制化がされることになりました。評価したいと思います。さらに、この法制化により施設の自主性が損なわれないよう、弾力的な運用について配慮していただきたいことをお願い申し上げます。
これまで個別の施策について意見を申し上げました。ここで法改正後の今後の課題や要望について申し上げます。
その第一点でありますが、現在、我が国は少子・高齢社会を迎え、積極的な福祉施策を推進していただいております。心から感謝申し上げたいと思います。さらに今後とも、高齢者対策とともに、二十一世紀を担う子供への施策も国の重点施策として位置づけていただき、予算の確保やこれらに対応するシステムの構築についてなお一層推進していただくようお願い申し上げます。
第二点は、現在、緊急保育対策五カ年事業を含むエンゼルプランが推進されております。平成九年度は三年目に入りますが、今後ともその着実な推進が図られますようお願い申し上げます。
第三点でございますが、このたびの法律改正で新しい姿の児童家庭福祉制度が再構築されました。しかし、制度は的確な運用により初めて実効性を持つものであります。現場の声を十分に聴取され運用されることを要望いたします。
第四点は、利用しやすい児童福祉施設づくりなどを進めるためには、今後も引き続き児童福祉問題を重要な課題として検討を行うことが必要であると考えます。さらに、今後、児童福祉施設における質の高いサービスの提供が柔軟かつ効率的に行われるよう、最低基準の見直しの検討も行っていただく必要があると考えております。
最後に、全国社会福祉協議会の対応について申し上げます。
全国社会福祉協議会といたしましても、このたびの法律改正にこたえるべく、全国の市区町村社会福祉協議会や、民生委員、児童委員、主任児童委員及び児童福祉施設等の組織と連携協力して、二十一世紀を担う子供たちの最善の利益の尊重とその具現化のために、児童家庭福祉の推進に総力を挙げて取り組んでまいりたいと考えております。
各国会議員の先生方におかれましても、今後とも全国社会福祉協議会に対しまして御支援、御指導を賜りますようよろしくお願い申し上げます。また、本改正法律案の一日も早い成立をお願いいたしまして、私の発言を終わらせていただきます。本日は、貴重なお時間をいただき、ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014237X00819970408/3
-
004・上山和人
○委員長(上山和人君) ありがとうございました。
次に、藤本参考人にお願いいたします。藤本参考人。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014237X00819970408/4
-
005・藤本勝巳
○参考人(藤本勝巳君) 私は、社会福祉法人日本保育協会の常務理事をしております藤本と申します。
日本保育協会は主として民間保育所を会員とする団体でありまして、やっております事業を申し上げますと、児童の福祉の増進についての相談、それから保育所を経営する事業に関する連絡調整のほか、保育所職員の研修、保育事業の調査研究並びに普及宣伝、あるいは保育に関する出版物の刊行などでございます。
本日は、児童福祉法等の一部を改正する法律案の御審議に際しまして、意見表明の機会を与えられました。私ども保育に携わっております者にとりましては、先年の中央児童福祉審議会の審議段階から大いに関心を持っておりまして、また期待をしておりましたことでありますから、このような機会を設けていただきましたことに深く感謝をしつつ、本日出席させていただきました。
本日は、時間の制約もありますので、児童福祉法改正案のうち保育に関する部分につきまして、事項を絞りまして申し上げたいと存じます。
私ども、まず主として民間保育所を運営する立場から申し上げたい、また次に、日ごろ子供たちやその保護者に接している現場人の立場から申し上げたい、さらにはまた、市町村と住民のつなぎ手の役割を果たしているという立場から、日本保育協会を代表して簡潔に申し上げたいと存じます。
諸先生方を前にして改めて私から申し上げるまでもないのでございますけれども、よく言われておりますように、戦後五十有余年、児童福祉法が制定されましてからでも五十年、先ほど松尾参考人も申されましたように、児童を取り巻く環境は大きく変わっております。家庭、家族の子育て機能が低下したということが言われます。また、いわゆる少子化の進行が我が国の将来に大きな課題を投げかけております。
その間に、保育所をめぐる状況もまた保育所そのものも大きく変わってきております。よく保育の一般化、保育所の一般化と言われる言葉がそのことを象徴しておると思っております。また、保育需要の多様化と言われますように、住民の方々の保育ニーズはさまざまでございます。さらにまた、保育所には、今や保育所に入所している子供やその保護者たちだけではなくて、広く地域社会での役割といいますか、専業主婦をも視点に入れた活動が求められております。
このような状況の中で、政府で策定されましたいわゆるエンゼルプラン、それからさらには緊急保育対策等五カ年事業に私ども大いに期待をしております。その中で、保育所は子育ての社会的支援のために、今までもそうでありましたけれども、これからもさらにその中心的な役割を果たさなければいかぬというふうに受けとめております。
我が国の保育制度は、国情に合った極めてすぐれた制度であると私どもは考えております。そのもとで官民挙げて努力したたまものが今の保育の姿であるというふうに思っております。
保育所は全国的に満遍なく普及いたしました。中学校の数の二倍、小学校の数を若干下回るまでになってまいりました。また、そこで行われております保育内容も年々向上いたしまして、時代時代に応じてさまざまなニーズにこたえて今日に至りました。私は、世界的に見ましても我が国の保育所というのは、その普及の度合いという点、あるいは保育者といいますか、保母さんなどの職員のレベルの高さという点、あるいは地域を問わず一定の保育水準がどこでも確保されているという点、さらには保育所の利用者や保育所に対して公的な支援体制があるというところ、これらを総合的に見れば、日本の保育はとても高い水準にあると言ってもいいと思っております。
しかしながら、私どもは現行制度に全く問題なしとは考えておりません。措置制度、公費補助制度の果たした役割を認めつつも、その弊害と言われるものを手直しする必要があるというふうに考えております。児童福祉法制定当時から見ますと、保育所の利用者や保育所の果たす役割が大きく変質いたしております。保育所の一般化と申し上げました状況になっておりますのに、保育所の入所に当たっては、制度的には市町村の一方的な措置による入所先保育所の決定ということになっております。選べない、選ばれないということでございます。
保育料についても問題が表面化してまいりました。一口に言って、保育料については不公平感が強いということでございます。特に中堅サラリーマン階層には、保育料の額そのものの負担感も強いのでございますが、それと並んでさらにまた、あの人に比べてという相対的な意味での負担感といいますか、不公平感が強いと思います。現場ではそのことがよくわかります。何とかならないかということを会員の園長さんあるいは保母さんたちの間からしょっちゅう聞かされております。
そこで、今回の改正案の個別の内容について、私どもの考え方を申し上げたいと思っております。
入所方式がどうなるのかというのが実は我々の最大の関心事でございました。中児審の報告書の表現をおかりすると、「子どもの最善の利益の尊重」ということを理念として掲げまして、「子どもの成育段階に最適の養育をする」ために、「子育ての責任者が、その子に最も適している方法を選ぶ」という考え方に立ては、親たる「利用者が保育所、保育サービスを選択する仕組みとすべき」というのは当然の道筋であろうと思っております。
今回の改正で、市町村は保育に欠ける乳幼児の保護者から申込みがあったときはそれらの児童を保育所において保育しなければならないというふうにされました。保護者が希望保育所を書いた上で申し込みをするという実態はこれまでもありましたけれども、利用者が自分で選択するということが法文上明記されました。
実は、利用者の選択ということにした場合に保育についての公的な責任がどうなるのかという点について、審議会の段階で若干の懸念を持っておりました。この点についても、市町村は保育所において保育しなければならないという形で、保育についての公的責任に関しては変わらないということがはっきりいたしまして、我々の懸念は解消されました。選択と公的責任が共存したまさに時宜にかなった改正だというふうに考えております。
それから次に、市町村と保育所の双方に情報提供の義務が課されたことも当然であるというふうに受けとめております。保育所はまた、保育の相談に応じ、助言を行うよう努めなければならないとされました。先ほど小学校の数に迫るだけあると申し上げましたが、保育所に入所していない子供たちや保護者のための地域での子育て支援というのが、いわば保育所の第二の柱になったということを実感している次第でございます。
次に、保育料についての問題点は先ほど申し上げました。応能負担の保育料負担方式を改めまして、保育費用を徴収した場合の家計に与える影響を考慮して、児童の年齢等に応じて保育料を定めるという考え方になりました。この改正によりまして、今後、均一化を目指す、無理のない形で徐々にでもいいですから保育料の均一化を図っていくということによって、先ほど申し上げましたような保育料の負担感、不公平感の解消につながるんじゃないかというふうに期待しております。
次に、放課後児童健全育成事業に関する事項が初めて児童福祉法で規定されました。各地で行われている事業がいわば市民権を得たというものでありまして、保育所におきましても今後取り組みが進めやすくなるんじゃないかというふうに考えております。
最後に、今回改正されなかった部分に触れさせていただきます。
市町村の保育についての公的責任及びこれに基づく費用支弁義務、市町村の費用支弁義務、それから市町村が支弁した費用についての都道府県の負担義務並びに同様に国の負担義務、いずれも現行どおり残っております。当然のことではございますけれども、我々に安心感を与えるものだというふうに思っております。
日本保育協会は、日ごろから子供や保護者の立場に立って保育を考え、民間のよさを生かして保育を提供するということをやってまいりました。今回の法律改正は私たちの活動を後押しする内容だというふうに思っております。
法律改正とあわせまして、具体的な施策の実施に当たって特に申し上げたいことがございます。延長保育、乳児保育等の事業あるいは各種の基準につきまして、弾力化や規制緩和に努めていただきたいということでございます。民間保育所の活力を助長し、自発性、即応性が発揮しやすいようにしていただきたいというふうに思っております。
特に、延長保育については、日々勤務時間が異なる今日的な保育ニーズに的確にこたえることや、創意工夫ある運営という立場からは、基本的には将来は保育所の自主事業としていただきたいというふうに思っております。保育需要あるいは保育所の実態というのはそれぞれの地域によってさまざまでございます。何事も全国画一に実施するということではなくて、地域差を考慮した地域の実態に合った弾力的な運用をお願いしたいというふうに考えております。
最後に、少子化という事態の中で、議員の諸先生におかれましては、必要な施策の樹立並びにそのための財政措置の確保につきまして格段のお力添えをお願い申し上げたいと思っております。
高齢化問題は同時に少子化問題でもあります。高齢者の問題につきましては、社会的に支援しようじゃないかという点で今や大方の合意ができつつあるのではないかというふうに思っております。私どもといたしましては、今回の法案審議を機に、子育て問題、保育問題について国民全体の目が向いてほしいということを念願しつつ、参考人としての陳述を終わらせていただきます。どうもありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014237X00819970408/5
-
006・上山和人
○委員長(上山和人君) ありがとうございました。
次に、津田参考人にお願いいたします。津田参考人。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014237X00819970408/6
-
007・津田玄児
○参考人(津田玄児君) 弁護士の津田玄児でございます。
私は、日本弁護士連合会の立場で、今回の児童福祉法等の一部を改正する法律案について意見を述べさせていただきます。
私どもは日本全国の弁護士の参加している団体でございまして、かねがね児童福祉法の運用につきましてもさまざまな局面で子供の権利の問題として実際に取り組んでおりますし、法律等の整備についての提案もいたしてまいりました。そういうような立場でずっとフォローしてまいったわけでございますけれども、この改正の機会に、貴重なお時間をいただきまして意見を発表する機会をいただきましたことを感謝いたしております。
今回の改正作業に当たりましても、日弁連は、基本問題部会の審議中に「児童福祉法改正に関する意見書」を発表しております。お手元にその要約をお配りしてございます。さらに、中間報告が発表されました後、「中間報告に関する意見書」を発表いたしております。これもお手元に配付をしております。そして、この現在の法律案要綱が明らかになった時点で、これに対する私どもの要望といたしまして「会長声明」を発表しております。この会長声明はお手元の資料の後ろから三枚目あたりに入っているはずでございます。さらに、今月の三日でございますけれども、この最後の二枚でございますけれども、今回の改正でどうしても法律に入れていただきたいという趣旨で、総則の改正規定の提案を具体的に行っております。いずれの資料もお手元にございますので、御検討いただければと思っております。
今回の改正法律案につきまして、私どもはこの会長声明に記載をいたしました三点の要請をいたしております。
その第一は、児童福祉法の総則に福祉の主体としての子供の権利を明らかにする規定を設けるべきだということでございます。その第二は、要保護の子供の権利保障のレベルアップに関して、行政的な対応だけではなくて、これまでなおざりにされてきておりました大幅な法改正を行うべきだということでございます。その第三といたしましては、保育に関する改正案は公的な責任をあいまいにし、かえって現行制度を後退させるもので、なお論議を尽くすべきだということでございます。
その中でも私どもが最優先の課題として検討されなければならないものは第一の問題と考えております。この問題はほかの改革を進める基本的な視点を設定するものとしても重要でございます。きょうはそれを中心にして意見を述べさせていただきたいと思います。
この第一の問題につきましては、私どもは、今改正がなされるとすれば何を差しおいてもこれだけは改正すべきであり、そのことによりどこにも支障が生ずるはずはないと考えております。そして、どなたにも受け入れることができる具体的な提言を準備いたしました。お手元の資料の最後のページに総則の規定も参照条文として挙げてございますけれども、総則第一条に第三項を設けて、「すべて児童は、独立した人格としてその尊厳が重んぜられ、その尊厳にふさわしく成長発達するための特別な保護及び援助を受ける権利を有する。」という規定を入れていただきたいというのが第一点でございます。
第二点は、総則第二条の最後に「児童の最善の利益を確保しなければならない。」という文言をつけ加えていただきたいということでございます。
繰り返しますけれども、この総則規定の改正だけは、法案を修正してどうしても実現をしていただきたいというのが私どもの強い要望でございます。
なぜこの改正が今真っ先になされなければならないのかについて説明をいたします。
第一に、批准された子どもの権利に関する条約の実施といたしまして必要だということです。政府は批准に当たりまして、国内法の改正の必要はないといたしました。しかし同時に、参議院外務委員会では、「法的保護、福祉の向上をさらに一層図る一環として新たな国内立法措置が行われることを排除する趣旨ではない」ということで、機会がありますれば検討しなければならないという答弁もなさっているわけでございます。
批准の時点では、現在ある法律をどうするかという問題でございました。少なくとも現在は大改正が行われようとするそういう段階でございます。制定後五十年を経て、著しい児童や家庭を取り巻く社会環境の変化に対応して見直しが行われる、こういう状況の中におきましては、既にあるものを変えるか変えないかということではなくて、全体の見直しをするということでございますから、その中で変わってまいりました理念も正確に受けとめ、それを反映するように手直しをするということは当然のことだと私どもは考えております。むしろ、手直しをしないことは怠慢のそしりを免れないことになるのではないかと考えております。
現行児童福祉法の総則は、子供の成長発達に関し、子供自身が享受すべき権利として保護を位置づけております。これは当時の法制としてはすぐれた前進を示したものだと私どもは評価しております。しかし、その保護は、育成される、生活を保障される、愛護されるという、専ら児童に与えられるものとされております。これはこの時代の認識の限界を反映したものだと考えております。
与える側で子供にふさわしい保護だと善意で考えておりましても、子供自身のニーズに合わない、あるいは受け入れがたい保護であることは珍しくありません。また、子供が助けてほしいと求めても、与える側から必要がないと拒絶されることも珍しくありません。それは嫌と言えない押しつけやあるいは絶体絶命の追い詰めになってしまって、かえって子供の自尊心を傷つけ、大人不信を高める結果を招きます。時には反抗するしかないという状況になってしまうものです。
こうした問題が保護の運用を通して明らかになったことを受けて、今日では、保護を保護たらしめるためには子供の意向を踏まえることが欠かせないというふうにされていると思います。そのことが発展をしまして、保護は子供自身が要求する権利として位置づけられ、それが子どもの権利条約に結実したものです。
子どもの権利条約は、生存、発達のための最大限の支援を国に義務づけております。そして、その実施に当たっては、子供の最善の利益が主として考慮され、さらに子供に影響を及ぼすすべての事項につき子供の意見表明権を保障し、司法、行政上の手続については子供が聴聞される権利を保障しています。子供についても、人間として侵すことのできない尊厳、これは三十七条の(a)でございます。市民的自由、これは十三条から十六条にかけてでございます。これが保障され、健康、保健、社会保障、生活水準、これも二十四条から二十七条にかけてでございますけれども、そういう問題について権利行使の主体としての地位を明確にいたしております。
日本におきましても、児童福祉法が保障する保護が単に与えられるものではなく子供の権利として位置づけられ、その尊厳を脅かすような行使が許されない、そして子供の最善の利益に従って行使しなければならない、そういうことを明らかにすることは、この条約を実施する上で最低限必要なことだというふうに私どもは考えております。
第二に、改正は、現在の子供にとって受動的な総則規定のもとで、子供の意向にかかわりない運用がまかり通っており、現実に子供の人間としての尊厳を脅かし、その最善の利益に反する事態が生じていることを防止し改善する手がかりとして、どうしても早急に実現されなければならないというふうに考えております。
最近、千葉県の養護施設で、施設長の、子供を麻袋に入れて木につるしたり、たばこの火を押しつけたりする処遇に耐えかねて、子供が逃げ出したことが大きく報道されて問題になりました。施設長のこの仕打ちが問題になっても、これは必要なしつけが行き過ぎたにすぎないとして反省の色を見せていないということでございます。このような仕打ちが子供の人間としての尊厳を損ない、大人たちへの不信を深め、その心身に深い傷を残すことは言うまでもございません。
厚生省当局は、この事例について調査をしていないと答弁されたようです。つまり、このような話題をまいた体罰の非常に大きな事例でさえ、調査もされないで放置されているわけです。子供に関する権利の規定は、こうした運用を許さず、問題が起こった時点では即時適切な行政的な対応がなされるためにも必要だと考えております。
また、今回の改正作業の過程で、先ほども御指摘がございましたけれども、不登校児を児童自立支援施設に収容することが話題とされました。しかし、こうした運用は不登校児を損なう結果につながるとの批判を受け、不登校児は児童自立支援施設には措置しないという答弁がなされたというふうに伺っております。
不登校児につきましては、基本的には就学義務の締めつけに問題があるということは、今日、解明されつつある問題でございます。その子供のニーズに合致する措置が児童自立支援施設の収容なのかどうかということは非常に疑問があるわけでございますけれども、そうしたことを全く解明しないで、ただ対応が問題になるというところに非常に大きな問題がございます。子供のニーズも確かめないで措置を準備しようとする発想があったことは間違いないと思います。これも子供の状況とは関係なく、与えれば足りるとする発想と無縁とは言えないのではないでしょうか。
現状では、このように逆立ちをした発想から、子供のニーズに合致しない処遇を押しつけ、あるいは怠る対応がなされる危険が常に存在することを物語る例と言えます。子供の主体的権利の明示は、その意味でも必要だと考えます。
第三に、今回の改正は、制定後五十年を経て、著しい児童や家庭を取り巻く社会環境の変化に対応して行われる改正の最初のものという位置づけに当たります。そうだとすれば、まず今後の一連の改正の方向づけを明らかにする理念に関する改正がなされなければならないということは当然でございます。
日弁連が求める要保護の児童をめぐる法規定の整備は、大半が今後の課題として残されるものと思われます。その方向づけが明瞭にならない限り、どこに行くのかがわからないという不安が払拭できません。虐待に当たって親子に対処する法制の整備は、放置できない課題となっております。この解決は、子供の権利の視点を基本に据えなければ不可能です。
親も、何をしてもよいのではなく、子供の最善の利益に従って責任を遂行しなければならないことを明らかにする必要がございます。また、前述した施設における体罰に対する対応に当たっても、子供の尊厳を害するしつけが許されないという基本がしっかりと踏まえられなければならないと思います。施設最低基準の見直しに当たっても、子供自身に人間としての生活を保障する視点、傷つけられ不信に満ちている子供でございますから、通常の家庭の子供よりももっと豊かなケアを確保するという、こういう視点が必要だと思います。これらの改革に方向づけを与えるものとして、この改正はどうしても欠かせません。
また、今回の改正法案の中に、保育について、制度を措置から申し込みの受け入れに変更し、費用負担についても、現在明白にある「負担能力に応じ」という基準を削るという提起がなされています。例えば、延長保育や幼児保育が通常の保育よりも高い負担を強いられた場合、親の申し入れや負担能力により保育の要否が左右される事態につながります。公的責任を後退させ、子供自身のニーズが無視されるおそれが強くある改正案です。将来こうした改正を避ける意味でも、方向づけは必要です。
このように、子供の権利の明示がなければ、運用においても制度改革についても肝心の子供が無視されるおそれは大きいのです。今回の改正案の作成の過程で子供自身の意見を徴する機会がつくられていないことが何よりもその危険を物語っています。我々自身の自戒を含めて、この改正は欠かせないと考えております。
以上、意見を表明いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014237X00819970408/7
-
008・上山和人
○委員長(上山和人君) ありがとうございました。
次に、阿藤参考人にお願いいたします。阿藤参考人。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014237X00819970408/8
-
009・阿藤誠
○参考人(阿藤誠君) 私は、国立社会保障・人口問題研究所の副所長をしております阿藤でございます。
私は、二十年以上この人口問題、とりわけ出生率、少子化の問題の研究に携わっておる者でございます。本日は、児童福祉法等の一部を改正する法律案についての意見陳述の機会を与えていただきまして、ありがとうございます。
児童福祉法等の改正案の背景説明の中に、少子化の進行、夫婦共働き家庭の一般化、家庭や地域の子育て機能の低下など、児童や家庭を取り巻く環境が大きく変化していること、そして保育需要の多様化などが指摘されております。このうち、特に少子化の傾向あるいは夫婦共働き家庭の一般化ということに関連いたしまして意見を述べさせていただきます。法案そのものからやや離れた抽象的な話になるかもしれませんが、御容赦願いたいと思います。お手元に資料、図表を用意してございますので、それに従いながら話を進めさせていただきます。
最初に、日本の少子化傾向、特に出生率の低下現象でございます。
これは図表1にございますように、日本の出生率は七〇年代の半ば以降非常に低くなっておるわけでございます。出生率というのは、長期的に人口を維持できるレベルがございまして、これを我々は人口置きかえ水準の出生率というふうに呼んでおります。これは今の日本ですと二・〇八という数字でございます。一九五〇年代の末から七〇年代半ばまでは、日本の出生率はほぼこの人口置きかえ水準を維持してまいったわけでございます。ところが、七〇年代半ば以降、この人口置きかえ水準を下回り、以後二十年間おおむね低下傾向を続けております。現在は、この人口置きかえ水準を実に三二%下回るという状況でございます。
今日のような少子化傾向が続いた場合、一体二十一世紀の日本の人口の姿がどのようになるかということは、先般、本年の一月に、私の属しております国立社会保障・人口問題研究所が公表いたしました「日本の将来推計人口」に明らかであります。それにつきましては図表の後ろの方、8、9、10にその一たんが示されてございます。
ポイントは、要するに、二十一世紀半ばには国民の三人に一人が六十五歳以上となるいわゆる超高齢社会になる。そして、その時点ではほぼ人口一億人、そして毎年八十万人以上の人口が失われていくという人口急減社会が到来するということでございます。このような少子化、出生率低下の原因、背景でございます。
直接的な原因といたしましては、図表2、3にございますように、七〇年代半ばから日本では急速な未婚率の上昇、一口に申しまして未婚化あるいはシングル化ということが進行いたしております。その結果として、同時に晩婚化、結婚年齢のおくれということが進んでおるわけでございます。私どもの分析によりますと、最近の出生率低下の多くの理由はこのシングル化、晩婚化によっているということでございます。しかし、同時に、図表4に示されてございますように、結婚した御夫婦の平均の子供数というものも、この二十年ぐらいじわじわと漸減をしているという状況でございます。
こういったシングル化、晩婚化、少子化の社会経済的な背景、これは一体何かということでございます。
一方では、御承知のように、女性の社会進出が急速に進んでおります。一つは高学歴化、もう一つは職場進出でございます。同時に、男女の賃金格差が縮小しているという事実がございます。もう一方で、特に若い世代の価値観が大きく変化いたしております。これは特に八〇年代に大きく変化して、人々が、特に若い世代が個人の自己実現というものを中心に考える個人主義化の傾向が強まっておりますし、同時に、男性と女性が社会の中で同じような役割を担いだい、そういう意味での男女平等の考え方が急速に広がっております。
他方で、こういった女性の社会進出、価値観の変化の傾向と、従来の性別役割分業の考え方、すなわち男性が主として仕事をし、そして女性が主として家事、育児、家庭を守る、こういう考え方に立つ価値観とそれに基づく社会のシステム、社会慣行でありますとか制度でございますが、との間に不調和あるいはそごを来しているということが根本的な理由ではないかというふうに考えております。換言いたしますと、若い女性の目から見ますと結婚や家族を持つということの負担感が強くなっているというふうな印象を持つわけでございます。
翻って、ほかの先進諸国、これは主として北欧、西欧、南ヨーロッパ、それから米国、オーストラリアなどでございますが、こちらの方の出生率も同様の傾向を示しておりまして、図表5にございますように、七〇年代、八〇年代というのは、先ほど申しました人口置きかえ水準をおおむね下回るという状況になったわけでございます。
ところが、八〇年代後半から九〇年代にかけまして出生率の動向が多様化いたしております。一つは、北欧、英、仏、米国、オーストラリアなどの出生率は比較的高い水準を保つ。反騰いたしまして、ほかの国に比べて高い水準を保っている。他方で、ドイツ、それから南ヨーロッパの諸国、特にスペイン、イタリアなどは出生率が低迷あるいはまだ低下をしているという状況でございます。
出生率低下の背景というのはいろいろございますけれども、大きく言いますと、ヨーロッパ、アメリカなどでは近代的な避妊法でありますとか人工妊娠中絶の合法化というふうなことなどが七〇年代に行われまして、そのことが一つの理由になっていると言われております。それから、もう一つもちろん大きな理由は、日本と同様に女性の社会進出でございますとか価値観の変化ということが指摘されておるわけでございます。しかし、この九〇年代における日本を含む先進諸国の出生率の多様性というものも考えてみる必要があるように思われます。
先ほど申し述べましたような比較的高い出生率を持つ国、北欧、英、仏、米国、オーストラリアなどは、比較的あるいは特に低い出生率を持ちます日本、ドイツあるいは南ヨーロッパ諸国などに比べますと、図表6にございますように、女性の労働力率はむしろ高い傾向にございます。それから、図表7でございますが、男性の家事、育児、コミュニティー活動への参加率は高い傾向にございます。一口に申しまして、個人の選択の自由が大きく、男女共同参画型社会に近づいている国ほどむしろ出生率が高い傾向にあるということが読み取れます。
北欧諸国は、このことを男女平等を目標とする強力な家族政策によりましてある意味で実現をしたというふうに考えることができるように思われます。主としては、育児休業制度でありますし、公的な保育サービスの強化、そして児童手当でございます。アメリカやオーストラリアなどは、そういった意味での家族政策というものは基本的には実施しておりません。言いかえれば、これはむしろ民間の対応によって民間保育サービスがこの間に強化され、サービスが十分に提供されるようになった、あるいは労働市場の柔軟性などがこのことに寄与しているのではないかというふうに考えられております。
最後になりますが、少子化問題への対応、そして男女共同参画型社会の構築策の一つとして、子育てと仕事の両立ということのための社会的なニーズを満たしていくことが大いに必要であります。
今回の児童福祉法の改正案は、共働き家庭の一般化、核家族化の傾向などを踏まえまして、保育所の利用方法を弾力化する、とりわけ保護者が希望する保育所を選択できる、あるいは保育所が子育て相談に携わるといった点、それから小学校の低年齢児のための保育ニーズを満たすというふうな趣旨だと理解いたしておりますが、そういう意味で今日の時勢にかなった法案ではないかというふうに理解しておるところでございます。
最後に、この機会に意見を述べさせていただきまして、ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014237X00819970408/9
-
010・上山和人
○委員長(上山和人君) ありがとうございました。
以上で参考人からの意見の聴取は終わりました。
これより参考人に対する質疑に入ります。
質疑のある方は順次御発言願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014237X00819970408/10
-
011・田浦直
○田浦直君 自由民主党の田浦直でございます。
きょうは、四人の参考人の方々には本当に貴重な専門的な御意見を御披露いただきまして、心から厚くお礼を申し上げたいというふうに思っております。
各先生にお尋ねをしたいんですけれども、まず藤本参考人にちょっとお尋ねをさせていただきたいと思います。
今度の改正で利用者が保育所を選択できるというふうになるわけですけれども、これは逆に言うと保育所が選択されるということにもなると思うわけでございます。そうなりますと、利用者の保育ニーズに即応した対応が求められる、これまでの待ちの姿勢ということだけではできなくなってくるということにもなるわけで、ある意味では競争にさらされるということにもなるわけでございます。保育所の園長さんなど保育所の運営に責任を持つ人たちの経営感覚というものも問われるのではないかと思うわけでございます。
この場合に、基本として、親から預かった子供さんを大切に保育するという観点からサービスの質の向上が必要となるわけでございますが、保育サービスを提供するに当たってのコストの意識もまた出てくるんじゃないかというふうな気がするわけでございます。
こうしたことを踏まえて、藤本参考人は現場にはお詳しいと思うんですけれども、今後、保育所としてはどのように対応していくべきであるかということをまず一つはお尋ねをしたいと思います。
それから、同参考人にもう一つ。現場でいろいろ御意見があると思うんですが、保育料、先ほど参考人も述べられましたけれども、現在の応能方式では、ある階層、特にサラリーマンの中堅階層あたりにとっては負担感が強いという御発言をなされましたけれども、私もそういう気持ちももちろんあるんです。しかし、同時にまた、所得に応じて保育料を決める現在の方式、これも逆に言うと公平ではないかという御意見もあるわけなんです。
保育所を経営していく立場からいいまして、今後、保育料負担のあり方というのはどのようにすべきであるとお考えになるか、まずこの二点についてお尋ねをさせていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014237X00819970408/11
-
012・藤本勝巳
○参考人(藤本勝巳君) 申し上げます。
まず最初の選択の問題、あるいは経営者にも経営感覚が求められるんじゃないか、あるいは保育コストを意識するべきじゃないかという点についてでございます。
先生おっしゃいましたように、選択の時代に入るというわけでございますが、保育所の入所に当たりましては、御案内のとおり、現在でも申請書を出す、第一希望どこどこ、第二希望どこどこというふうに書いて出すのが実態でございます。でございますけれども、今度は法文上もはっきりとそういうふうに明記されるわけでございますから、保育所側にとっても選ばれるんだという意識が必要ですし、利用者の希望に応じた保育をしなくちゃいけないということが一層求められるようになると思います。
そういう意味でも、先生おっしゃいましたように、運営責任者として経営感覚が求められるというふうになろうと思います。今までは市町村が保育所の経営者のことを考えて措置してくれるので、それに安んじているというところがもし万一あるとすれば、保育所側も意識改革が必要じゃないかというふうに考えております。
コスト意識の点に触れられました。大事な点だと思っております。
私どもも、利用者の方々のニーズにこたえまして良質なサービスを提供いたしたいというふうに思っております。しかしながら、当然のことですけれども、どんどん公費をつぎ込むという状況にはないということも存じておりますので、これはぜひ保育所の取り組みやすいような仕掛けといいますか、仕組みにしていただきたい、規制緩和、弾力化を進めていただきたいというふうに思っております。そういうことによりまして保育所の創意工夫が生かされまして、それぞれの子供、家庭にとっての必要な保育というものが提供できるということで、保育所にとっても子供にとってもいい保育ができるんじゃないかというふうに思っております。
私ども保育所を経営する立場から申し上げますと、あえて申し上げれば利用しやすい保育所ということでありますけれども、そのためには運営しやすい保育所、保育しやすい保育所にしていただきたい、そういう配慮をぜひお願いしたいというふうに思っております。
それから次に、保育料のことでございます。
先生おっしゃいましたように、私どもも中堅サラリーマンの負担感が非常に強いと思っております。我々会員の中では保育料問題が最大の話題といいますか、課題でございまして、理論理屈以前に実感といたしまして、今の保育料の体系は余りにも傾斜がきつ過ぎるんじゃないかという気がいたします。園長さんたちの間の話では、金がないなら下を上げてでも上を下げていただきたい、上といいますか、中堅サラリーマンのところを下げていただきたいという意見でございます。これは園長の生の声であるということをお伝え申し上げたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014237X00819970408/12
-
013・田浦直
○田浦直君 どうもありがとうございました。
それでは続いて津田参考人にお尋ねをしたいと思います。時間がありませんので端的にお尋ねいたします。
子供の健全な育成を社会全体で支援するということは私も大変賛成でございますし、またこの改正案に児童の権利という言葉を入れるか入れないかということで御発言されたと思うんですが、この場合、親の権利、権利条約の第二条にもそう書いてありますけれども、親の権利との整合性といいますか、そういったこと。それからもう一つは、権利の意思表明といいますか、十五歳以上は法的には大体意思表明ができるということになっているんじゃないかと思うんですが、例えば三歳児が意思表明をした場合、それを認めるのかどうか、そのあたりのことをちょっとお尋ねをしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014237X00819970408/13
-
014・津田玄児
○参考人(津田玄児君) お答えいたします。
今の親の権利の関係でございますけれども、御存じだと思いますけれども、権利条約の十八条には、親が子供の養育、発達についての責任を有するとなっております。その親の責任の中に、子供の最善の利益は基本的な関心事項となる、こういうふうになっておりまして、私どもは、親がきちんと請求をするというのはむしろ子供の幸せのために権利を行使する、こういう関係だというふうにその点では考えております。したがって、矛盾は生じないというふうに考えておりますし、逆にその点ははっきりしておかないと、子供を親が虐待したような場合に介入したりすることができなくなる、こういう問題だと考えております。
それから二番目は、年齢でございますね。これも権利条約の十二条ではこういう表現を使っております。「児童の意見は、その児童の年齢及び成熟度に従って相応に考慮される」というふうになっております。これは実は子供というのは、先生おっしゃるように、表現能力も十分ではありませんし、場合によったら違ったことを違った表現で言うこともあると思うんですね。その場合に、子供のそういう年齢の状況、それから言っていることの本当の意味ということを、逆に、受けとめる側がきちんと理解をしてあげることが必要だ、そういう意味で正確に受けとめて子供の意見を実現していく、これが必要だという趣旨だというふうに私どもは考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014237X00819970408/14
-
015・田浦直
○田浦直君 ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014237X00819970408/15
-
016・渡辺孝男
○渡辺孝男君 平成会の渡辺孝男と申します。
参考人の方に御質問したいんですけれども、まず最初に阿藤誠参考人にちょっとお伺いします。
先ほど人口動態に関しましてお話しをいただいたんですが、二十一世紀の半ばには勤労者二人で一人の高齢者を支えるような時代になり、ますます少子化で子供さんの数は減っていくということになります。
現在、我が国では、財政再建という形でなるべく支出を少なくしょうということで、保育あるいは幼児教育に関しましてもなかなか財源確保が厳しいような状況でありますけれども、大胆な行財政改革を行いましたニュージーランドのように、子供の教育に関しましては例外的にふやしていったというような国もありますので、私は今後、少子・高齢社会を順調に発展させるため、国の運営を発展させるためには、やはり幼児教育、児童保育の公的負担は上げていくべきではないか、それが結果的には国の繁栄につながっていくんではないか、そのように考えておりますけれども、先生の御意見を拝聴できればと思います。よろしくお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014237X00819970408/16
-
017・阿藤誠
○参考人(阿藤誠君) 先ほど申しましたように、世界には二つのグループがあって、一つはいわゆる非常に大きな財源を使って家族政策を強力に実施して今のような男女共同参画型社会、それは同時に出生率も安定した社会でございますけれども、そういう社会をつくった国と、いわゆる民間対応でそれが実現できているアメリカのような社会がある。しかし、これは恐らくアメリカの場合には非常に歴史的な事情、例えば広大な国土、それからもともと非常に進取の気性が強くて自分で自分のことは解決する、あるいはコミュニティーというものを非常に大切にする、そういうことがあって民間の保育サービスというものがいろんな形で提供されているという側面があるように思うんですね。
日本の場合にはなかなかそういったものが一朝一夕に普及するわけでもないということがございますので、そういう意味では、やはり日本の場合には公的な保育サービスというものを相当程度強化していくということが望まれるんじゃないかというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014237X00819970408/17
-
018・渡辺孝男
○渡辺孝男君 どうもありがとうございました。
次に、藤本参考人に質問させていただきたいと思います。
橋本首相が本年の二月に、地方分権、そういう意味で幼稚園と保育所の施設の共用化ということでお話をされました。横浜市の場合は、年間千八百人の保育所入所待機者がいるということで、この四月から幼稚園の空きスペースを使った無認可の保育所事業への補助制度を設けるというような方針もあるようです。それからまた、過疎地におきましては、少子化、定員割れの理由で、幼稚園あるいは保育園の共用化というような方向性も出ているようでありますけれども、今後、文部省管轄の幼稚園とそれから厚生省所管の保育所が施設の共用化など共同して弾力的運営を行うに当たりまして留意すべき点あるいは解決しなければならない点、そういう点がございましたらばお教えいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014237X00819970408/18
-
019・藤本勝巳
○参考人(藤本勝巳君) 横浜市の事例は私どもも存じております。横浜、川崎あたりは非常に保育所の数が少ないものですから、待機児童が非常に多いという状況でございます。そういう中で、横浜市では今度、横浜型の保育施設という名前をつけて、いわば無認可保育施設に助成するということを打ち出したわけでございます。
たまたま今年度四十カ所やる中に幼稚園が五つ入っているものですから新聞で大きく取り上げられたという側面があろうかと思いますけれども、このように認可保育所がないところで無認可の保育施設がその量的な不足の面を補っているということは、やっぱりこれは過渡的にはいたし方ないところだというふうに思っておりますし、これは中央児童福祉審議会の報告でも、いわゆる無認可保育の施設は地域の保育支援という位置づけになっておりますので、それはそれで進めていただいていいことじゃないかと思っております。
そのことに絡めまして幼稚園との関係にお触れになりましたけれども、幼稚園との問題は非常に古くからある問題でございまして、何度か答申なり報告というのをいただいております。例えば、五十六年に、幼稚園及び保育所に関する懇談会というのがございましてそこの報告でも、若干共用化といいますか、弾力的な運用について触れているくだりがございますし、それから六十二年の臨教審の答申でも同様でございます。それから、去年の暮れの地方分権推進委員会の勧告でも、地域によっては施設の共用化、弾力化等を確立すべきであるということが言われておりますし、それを受けまして今度の教育改革プログラムでも、厚生、文部両省で検討するというふうに伺っています。
基本的には私どもは、従来からの文部省と厚生省のお話の中では保育所と幼稚園との関係についての認識は変わっていないというふうに受けとめておりますけれども、いろいろ保育需要も多様化した、社会情勢も変わったということで、改めてそれぞれのあり方を検討されるんだろうというふうに思っております。そういう受けとめ方をさせていただいておりまして、それぞれ地域によっては両者が弾力的な運用をなされるということは必要ではないかというふうに受けとめております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014237X00819970408/19
-
020・渡辺孝男
○渡辺孝男君 もう一つ、松尾参考人にちょっとお伺いしたいんですけれども、今後、二十一世紀になりますと高齢・少子社会になってまいりまして、児童向けの福祉の施設とか高齢者向けの福祉の施設がお互いに助け合いといいますか、高齢者向けと児童向けの施設の合築というような考え方も出てくるわけです。児童の保育に関して高齢者はいろいろな能力を持っていらっしゃる方がおりますので、地域におきまして児童の保育あるいは教育に関しまして高齢者の果たす役割、そういう地域の高齢者の能力をうまく保育の方に向けられないかということで、何かもしそういう高齢・少子化の社会における役割、そういうものに関しまして御示唆がいただければと思いますけれども、よろしくお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014237X00819970408/20
-
021・松尾武昌
○参考人(松尾武昌君) 私ども今感じておりますのは、福祉のあらゆる分野で地域に視点が移っているというふうに認識をしております。高齢者対策も障害者対策も、今度の児童福祉もそうだろうと思っております。
そういう意味で、私どもの構成団体に民生委員、児童委員、あるいは市町村社会福祉協議会というのがあるんですが、市町村社会福祉協議会につきましては、まさに地域福祉の基点であるわけでありますけれども、残念ながら、これは正直に申し上げましてまだまだ児童福祉に対して取り組みが非常に低いというふうに認識しております。私どもは、この法改正を機会に、市町村社会福祉協議会でこういう児童家庭に対する支援を、あるいはそういうネットワークをつくるということを最大の課題としまして取り組んでまいりたいと思っています。そういう意味では、いろいろ地方で実施しております事例を多く出して提供していくことが重要かなというふうに考えております。
以上でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014237X00819970408/21
-
022・渡辺孝男
○渡辺孝男君 続きまして藤本参考人にお伺いしたいんですが、今回、保育所を保護者の方が選ぶような方向になっておりますけれども、地方自治体の保育料とかそういう保育に対する施策によりまして条件が違ってくるということがありまして、越境して保育所に入りたいというような保護者の方も出てくると思うんです。そういう場合の保護者が得られる情報収集の方法、あるいは自治体が提供する、自分の自治体だけじゃなくて周辺の保護者に対しても情報を提供できるようになるのか、その辺につきまして御意見をいただければと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014237X00819970408/22
-
023・藤本勝巳
○参考人(藤本勝巳君) 今度の改正の中で、後ろの方にひっそりと広域利用を促進するための規定が入っておりますけれども、私どももこれは大変期待しているところでございます。現在でも他の地方公共団体の施設は利用できているところもありますけれども、今後そういうことが大いに進むようなことを期待しております。
そのためにも、情報提供というのは市町村も保育所も自分の市町村の中だけではなくてほかのところに向けてもやらなくちゃいけないということだと思っています。そういうことによりまして、保育所の利用がそういうふうに弾力的に行われることを期待しております。市町村にも期待しておりますし、私どもみずからもそういうための努力をしないといけないというふうに受けとめております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014237X00819970408/23
-
024・渡辺孝男
○渡辺孝男君 ありがとうございました。以上で終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014237X00819970408/24
-
025・清水澄子
○清水澄子君 まず、藤本参考人にお伺いいたします。
藤本参考人は厚生省のOB、児童家庭局の出身ですから、今度の法案とはまさに一致した御意見をおっしゃっていましたけれども、ぜひお伺いしたいのは、子供に最善の利益を保障していくというときに、入所方式は選択制ということの一つの道はあるかもしれませんけれども、私は、ここには保育の質というんですか、保育サービスの質というのをどうするのか、それからやはりそこに保育料と、この三位一体というのがとても大事だと思うんです。先ほどから規制緩和、運営の弾力化によってということで、今後の民間保育への移行をおっしゃっていますけれども、保育の質をどのように高めていくことができるのかということについて御意見を伺いたい。それとあわせて、今の最低基準でいいのかどうかということですね。
それから二番目には、やはり現在の保育料の不公平感は事実あるんですけれども、では保育料の均一化というときに、それには公費という負担がなくて均一化というのがやっていけるかどうか。そういう場合に非常に高額となっていけば、今度は逆に保育を利用する人たちの抑制につながっていくのではないかと思います。同時に、延長保育を自主事業として公費を撤退するという考え方があるわけですが、それでもその方が均一化になつて、均一化さえ進めばそれは子供の最善の利益になるとお考えか。
それから三点目、民間保育所の職員の勤続年数が非常に短いのはなぜなのか。子供たちに豊かな保育を保障していくためには、やはり多様な年齢の保母さんとか多様な体験を持つ経験の深い保母集団がいいと思うんですが、それはどのようにすれば民間保育所に定着てきるとお思いでしょうか。
まず、この三点をお願いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014237X00819970408/25
-
026・藤本勝巳
○参考人(藤本勝巳君) 先生おっしゃいますように、とにかく保育所で一番大事なことは、いい保育をするということだと思います。そのためにどういう仕掛けをつくるかということだと思います。私どもが弾力化と申し上げましたのは、そういうことによりまして、例えば今いただいている費用の中でも、もう少し有効に使えるあるいは臨機応変に使えるということでニーズにも柔軟にこたえられるし、保育の中身も高まるのではないか、こういう意味から弾力化、規制緩和ということが必要ではないかというふうに御提案申し上げているわけでございます。
それから、最低基準についてお話がございました。私どもも今の保育所の実態を見ますと、そこで保育をし、遊んで、それを片づけてそこでお昼御飯を食べて、それを今度片づけてまたそこでお昼寝をする、こういう実態がございます。国民生活の水準の向上に合わせまして、必要な最低基準の見直しというのが必要だというふうに思っております。承りますれば、今後、中央児童福祉審議会で最低基準についての検討が始まるというふうに伺っておりますので、ぜひ時代に合った最低基準の見直しというのを期待しております。
その中で、私どもも以前、保育について提言した中に、例えば乳児につきましては、もう一般化して最低基準の中に取り入れるべきではないかという提言をいたしておりますけれども、設備と並んで職員の面についても見直しをしていただきたいというふうに思っております。
それから、保育料のことについてのお話がございました。私ども、保育料というのは保育問題で一番重要な問題だと思っております。なれ親しんでいる今の保育料の体系でございますから、急にこれをどうかするということはやっぱりなかなか難しい問題だと思います。理屈でいってもなかなか納得はいただけないというふうに思います。ですから、保育料の問題は慎重に進めていただきたいと思います。今の傾斜のきつい保育料体系というものについての不満が非常に大きいですから、そういうものも徐々に是正していただきたい。
それから、延長保育との関係をおっしゃいましたけれども、当然保育料との関係が出てまいります。私どもとしましても、保育料の不公平是正などで保育料全体についての利用者の負担に配慮しながら、この延長保育のことも取り入れるべきだというふうに思っております。
それから、民間保育所の勤続年数が短いじゃないかというお話がございました。それはまさに民間保育所での園長さんの保育所経営での苦しみというか、悩みがあらわれているんではないかと思います。無理やり首切りしている状況にはないと思いますけれども、そういう意味では民間保育所におきましてもいい保育ができるためにも、長く勤めたい方は勤めていただくというような条件整備がぜひ必要ではないかというふうに思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014237X00819970408/26
-
027・清水澄子
○清水澄子君 それでは、阿藤先生にお願いいたします。
少子化社会と男女平等社会ということで非常に重要な問題を指摘されました。そしてそれは、特に北欧とかその辺ではやはり女性と男性の生き方そのものの価値観を変えながらそういう生活のスタイルも変わっているという、この面と合わせて、日本の中で今もう少し政策的にそれを支援していくには、少子化社会の中で、私は子供をより産めというんじゃなくて、産みたい人が産めるようにという意味と、そして男女平等社会の実現というときに、今、一番日本で何の政策が欠けているとお思いでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014237X00819970408/27
-
028・阿藤誠
○参考人(阿藤誠君) 非常に難しい御質問なので一般論として申し上げましたが、もちろんこれまで少子化問題に対応してといいますか、行われておりますような育児休業制度、さらにはその所得保障の強化といいますか、そういうことも一つございましょう。それから、今日議論されているような保育所の整備、これは官民問わずでございますけれども、サービスを十分に提供していくということも大きな柱だと思います。
それから、児童手当でございますが、子供を産み育てることが多くの家庭にとって負担と感じる、子供を育てることが何かペナルティーになるというふうな感触を持っているという家庭が多いとすれば、やはりこの児童手当についても十分な形で補強していく必要はあるんじゃないかなというふうな考えを持っております。これは結局、北欧社会、スウェーデン、ノルウェー等が行った政策でございますが、そこまで日本が財政難の折からできるかどうかは別にいたしまして、そういう方向に向かって一歩でも進んでいくということが必要であるように思います。
また、もう一つ、もちろん男女共同参画型社会ということでの啓蒙といいますか、やはり男性がもっと家庭、コミュニティー活動に参加できるような教育等を通じた啓蒙活動、教育活動もございましょうし、そういう面での円滑に進められるような社会全般の変革ということが必要じゃないかなというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014237X00819970408/28
-
029・清水澄子
○清水澄子君 津田先生にお願いします。
今、私も全く先生と同じですから、余り質問もそれ以上ないんですが、子供の虐待の問題、これは今日、日本社会の中では家庭内虐待とかあるんですが、それと同時に性的虐待とかあるんですが、その面についてちょっと御意見をお願いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014237X00819970408/29
-
030・津田玄児
○参考人(津田玄児君) 御回答いたします。
性的虐待と今おっしゃいましたのは、家庭内の問題をおっしゃっているんでしょうか、そうではなくて全体的な……発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014237X00819970408/30
-
031・清水澄子
○清水澄子君 両面、今二つの虐待問題があると思うんですね。その点についての今度の福祉法の改正についてどうお考えでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014237X00819970408/31
-
032・津田玄児
○参考人(津田玄児君) 性的な虐待の問題ということを今御指摘ございましたけれども、実は児童福祉法では性的な虐待につきましての適切な対応が不十分だというふうに私どもは考えております。いろんな問題がございます。虐待を発見する過程であるとか、それにどう対応していくであるとかといういろんなことはございますけれども、一つの問題としては、性的な虐待をしてはいけないということをきちんと明確にしていくということが今の法制では欠けているのではないだろうか。
児童福祉法の三十四条という規定がございまして、これは子供にしてはならない行為を挙げているわけでございますけれども、実はサーカスに子供を出してはいけないとか、街角で物ごいをさせてはいけないとか、性的な問題につきましては淫行をさせてはいけないというのはございますけれども、させてはいけないということでございまして、相手となって自分が虐待をするということにまでは規定が及ばないという形になっております。また、ある意味では保護者等が子供に対して不利益を与えた場合には余り介入できないというような雰囲気の規定も残されているわけです。三十四条の一項の九号あたりだと思いますけれども。
そういうようなことがありまして、基本的には、性的虐待はいけない、性的虐待を含む児童虐待全体をいけないというふうに言っていただきたいと私どもは思っているんですけれども、いけないということを明らかにしていただく必要があるだろう。少なくとも三十四条の規定の中にその点を加えていく必要があるだろう。それは審議の過程で、例えば罰則にすぐつながるのでほかの検討が必要だというようなことはございますけれども、その罰則も含めてこれは必要なのかどうかということは、やはりきちんとこの際検討してみる必要があるだろうというふうに思っております。
これは親による虐待だけの問題ではなくて、実はほかの人からの虐待の問題もございまして、特に私どもも外国に日本人が行って性的な虐待をしているという問題を取り上げたことがございますけれども、そういうような問題についてもなかなか日本の今の状況では理解をしていただけない。また、外国へ行って性的な虐待をするのは当然ではないかという認識がかなりの程度広がっているというあたりがございまして、そういうことをきちんと防いでいく上でも、やはり性的な虐待について、いけないという視点をきちんと確立する必要があろうかと思っております。残念ながら、今回の改正作業の中でその点は全く別の問題だということで除外をされたというふうに聞いておりまして、何らかの形でそういうことを取り上げていただければありがたいというふうに思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014237X00819970408/32
-
033・竹村泰子
○竹村泰子君 本日は、私どものために御多忙中おいでいただきまして、本当にありがとうございます。民主党の竹村泰子でございます。
〔委員長退席、理事情水澄子君着席〕
保育関係につきましてもいろいろお尋ねしたいことがあるんですけれども、きょうは午後も保育関係の多くの参考人の皆さんにおいでいただきますので、私は要保護の子供に関することを津田先生にお伺いしたいというふうに思います。
今も出ておりましたが、性的虐待ではなくて、先ほど先生お触れになりました千葉の施設の悲しい出来事のようなことを含めまして、体罰の禁止を法文に明記するということが私どもも大変必要であるというふうに思いました。
それと、子供の発言権と不服申し立て権、これを保障したいと強く審議の中でも求めてまいりましたけれども、本日いただきましたこの御意見の要約の中に、「発言権と不服申立権を保障し、あわせて第三者機関による救済制度を確立すべきである。」というふうにございますけれども、「第三者機関による救済制度」というのはどのようなことを考えておられますでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014237X00819970408/33
-
034・津田玄児
○参考人(津田玄児君) お答えいたします。
「第三者機関による」という趣旨は、実は身内のもので抑制をしていくという形ではどうしてもきちんとした対応ができないということを考えているわけでございます。
今の千葉の事例でも、実は私どもの同僚が千葉の県知事あてにいろんな要望をいたしておりますけれども、的確な対応をしていただけないという状況がございます。それからさらに、今回の改正の中では、措置、これは限定をされておりますけれども、措置、措置変更、それから解除ですか、に当たっては、ある場合には都道府県の児童福祉審議会の意見を聞くというような形を予定しておられますけれども、必ずしもそういう場で適切な対応がとれるというふうには私どもは考えておりません。
むしろ、きちんとした対応をとるのであれば、そういう福祉の系列から外れたところで第三者的な立場から福祉のやっていることが批判できるという、そういうところがらきちんとした批判を加えませんと、そういう問題というのは決して解決できないというふうに私どもは考えております。したがって、これは中間報告の中で第三者の機関を設けるという御提起がございましたけれども、むしろそういう方向をきちんと追求すべきではないだろうかというふうに私どもは考えているということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014237X00819970408/34
-
035・竹村泰子
○竹村泰子君 もちろん、日弁連のおっしゃっておりますことは、民間の第三者機関による救済制度ということでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014237X00819970408/35
-
036・津田玄児
○参考人(津田玄児君) お答えいたします。
民間も含めまして、私ども単に民間ということだけに限ってはおりませんで、行政系列あるいは行政系列を外れてもよろしいわけでございますけれども、国家あるいは自治体の機構としてそういうものを設けるということも当然考えられるというふうに考えております。オンブズマン的なものでございますね。こういうものも当然あり得るものだというふうに考えております。
民間の場合は、基本的にはその機構の権威というものがなければ実際の実効は上げられないという問題がございます。その点で、実効をどう上げられるかということが非常に大切になるだろうというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014237X00819970408/36
-
037・竹村泰子
○竹村泰子君 その発言権と不服申し立て権についてでございますけれども、私が今手元に持っておりますのは「児童福祉法に規定する事件」として家庭裁判所で特別家事審判がされたときの記録なのですけれども、この中で、「家庭裁判所は、承認事件に関する審判をするには、当該児童を現に監護するもの(虐待等を行っている者である)及び親権者の陳述を聴かなければならないし、その児童が満一五歳以上であるときは、その児童の陳述も聴かなければならない。規則では要求していないが、児童が一五歳未満でも、判断能力、思考能力があれば、事情を聴取するのが望ましいであろう。」というふうに言われているのですが、その点についてはどのようにお考えでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014237X00819970408/37
-
038・津田玄児
○参考人(津田玄児君) 今の十五歳という問題でございますね。十五歳というのは中学校を出る年齢でございまして、先ほども田浦先生にお答えしたわけでございますけれども、子供は子供なりにそれぞれの年齢に応じて意見を表明できる能力を私どもは持っていると思います。単にきちんと十五歳で切ってしまうという、十五歳はやや高過ぎるというふうに私は思っておりますけれども、切ってしまうというのではなくて、それより低い年齢であってもきちんとむしろ意見を聞いていくという姿勢をつくるべきだし、体制をつくるべきだと思います。子供が物を言えるような環境をつくってやり、そこの中で自由に発言をさせる、その中から子供の真意がどこにあるのかということをきちんと聞いていく必要があろうかと思います。
〔理事情水澄子君退席、委員長着席〕
例えば、親の問題につきまして家庭裁判所で、例えば離婚に当たってあなたはどちらが親権者として望ましいのかということを子供に問い詰めるというような形をいたしましても、それは決して子供の本当の意見が出てくるとは限らないわけです。そういうようなあたりについても子供が本当の意見を述べられるようなシステムをやはりきちんとつくってあげないといけないというのが私の方の考え方です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014237X00819970408/38
-
039・竹村泰子
○竹村泰子君 ありがとうございます。
私どもも全くそのとおりだと思いますし、この虐待禁止規定をどこかに入れたい、三十四条に入れられたらいいなと思っておりましたのですけれども、これからも努力をしてまいりたいというふうに思います。
それでは、時間が余りございませんので、最後に阿藤先生にお伺いいたします。
さっき清水議員の御質問にもありましたが、先日発表されました人口統計の毎年八十万人が消えていくという大変な数字を私どももショックを持って受けとめたわけでございますが、ヨーロッパも一時そういう状態になりかけていたことがあって、しかしそれを食いとめて、今、少しずつだけれども出生率が上がってきているというふうにお聞きしております。日本では公的な育児対策が一百点満点ではないけれども、いろいろと施策があるにもかかわらずそういうふうにはなかなかなっていかないということについて、その違いはどういうふうにお考えになるでしょうか。それと、もし方策をお持ちでしたらお教えいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014237X00819970408/39
-
040・阿藤誠
○参考人(阿藤誠君) これはますます難しい御質問でございますが、いわゆる社会制度としてそれを変えれば世の中が動くという部分と、やはり文化、特に家族のあり方みたいなものが非常に長い歴史と伝統に結びついているところがあると思います。
今、ヨーロッパで出生率がある程度上がっているとおっしゃいましたけれども、先ほどお示ししましたように、大きく言いますと二つのグループに分かれまして、北欧、英、仏などはそこそこの水準を維持している。しかし、ドイツとその周辺諸国、それから南ヨーロッパというのは非常に低い水準で、むしろ日本よりも低い状況でございます。その両者を比べますと、先ほどのように、その前者の方がそもそも女性の社会参加率がずっと高いとか、それから男性の家事参加率なども高いように見えます。
同時に、例えばドイツなどは非常に育児休業制度を強化しているんですが、実はドイツは母親が子供の面倒を見ることを非常に重視する規範というのが非常に強い。そういう中で、保育所というものを余り重視しない。ですから、保育サービスが余り発達しないというふうなことがあると聞いております。そういう意味で、やはりそういう価値観から来る制度の欠落といいますか、そういうものがどうもドイツの場合には大きく足を引っ張っているんじゃないかなという感じを持っております。
それから、ドイツ、イタリア、スペイン、日本を含めて共通するのは、まだまだ家族観というものが、女性が家事、育児に携わるというような価値規範が相対的に強いように思われます。そういう中では、むしろ今、日本で起こっているような結婚そのものを拒否するといいますか、しない、あるいは結婚そのものに非常に負担感を感じるという女性が多くなっているというふうな感じを持つわけでございまして、その点で、それをどういうふうに変えていけばいいかというと、なかなかこれは文化にもかかわるといいますか、家族観でございますから、先ほど申しましたように、教育、啓蒙も必要でございましょうし、あるいはそれにつけ加えるとすれば、男性がもっと家事に参加しやすいような職住接近が可能であるような産業配置といいますか、そういうことも大きな課題になってくるというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014237X00819970408/40
-
041・竹村泰子
○竹村泰子君 ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014237X00819970408/41
-
042・西山登紀子
○西山登紀子君 日本共産党の西山登紀子でございます。
きょうは、参考人の皆さんには本当にお忙しいところありがとうございます。ただ、時間が非常に短うございますので、皆さんにお聞きしたいんですけれども、それもかないませんので、津田参考人にまとめて御質問をさせていただきたいと思います。
日弁連の会長声明、非常に明確に保育所の問題につきまして、措置制度の廃止、それから保育料の一律負担は現行制度より後退だと、こういう声明を出されたわけです。何分この法文をよく読んでおりますと非常に紛らわしい表現がございまして、国民の中には、これは一体現状と変わらないのか後退するのか、非常に不安が広がっております。そういう中で日弁連がこういう明快な判断を提供されたということは、国民にとりまして非常に貴重な材料をいただいたというふうに私たちは考えているわけです。
私たちも実は修正案を出したいというふうに思っております。もちろん、理念の問題では、先ほど先生から御提案ありました子供の権利ということを第一条の第一項にきちっと盛り込みたいというふうに思っているわけです。二十四条につきましても、現行の措置制度を変える必要は全くない。親の意向を尊重するということ、現行運営要綱でこれは行われているわけですけれども、それを法文の二項に、保護者の意向を十分に尊重しなければならない、こういうふうな項目を加えたらどうかというふうにも考えているわけです。
この点につきまして、二十四条を子供の権利という観点からどのように日弁連はお考えか、二十四条は子供の権利であるというふうに二月の意見書ではきちっと述べられていらっしゃるんですが、その点もう少し詳しくお話しください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014237X00819970408/42
-
043・津田玄児
○参考人(津田玄児君) 御説明いたします。
保育でございますけれども、これはとかく親の権利として考えがちでございます。しかし、基本的には親が子供を養育していくその責任を援助するということでございますから、その基本はやはり子供にあるというふうに私どもは考えなければいけないというふうに考えております。
したがいまして、この改正が私どもは後退になるのではないかと考えておりますのは、現在でも養育費等につきましてはその負担能力に応じてとなっておりますけれども、負担能力をやや超える負担が課されているという問題が多分あるのではないかというふうに考えております。
したがって、例えば私どもが指摘しておりますのは、人件費についての負担がなされている。人件費というのは、こういうサービスを提供する場合には当然公的な負担で賄わなければならないと考えられるんですけれども、その人件費の負担分まで利用者に請求しているというのが現実のように承っております。そういうようなこと自体が非常に問題があるだろう。定額にしてしまいました場合に、例えば先ほど来問題になっておりますように、延長保育とか、それから幼児に対する保育とかというコストの高いものが別になってきて、それはコストが高いんだということになりますと、これが逆にはね返ってまいりまして、親に選択の自由があるということと連動してはね返ってまいりまして、負担能力の問題から、子供の保育はできないということにつながっていってしまう。
確かに、選択の機会を広げていくというのは結構なことでございますけれども、子供の保育の必要、あるいは今「保育に欠ける」と書いてございますけれども、保育に欠けるという場合に、保育が親の意向で行われなくなる、あるいは親の経済能力で行われなくなる、これを国が回避していくということになりますと大きな後退になるのではないかというふうに私どもは考えております。したがって、これはどうしてもやはり後退と考えざるを得ないという見解でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014237X00819970408/43
-
044・西山登紀子
○西山登紀子君 二月の意見書では、「第二十四条が、唯一、子どもの保育所に入る権利を保障している規定である。」というふうに述べられておりまして、「その唯一の根拠を奪う改革は、国民のニーズにも反するものであり、なされるべきではない。」と述べていらっしゃいます。市町村は調整義務のみになってしまうんだということで、これは「子どもの権利の保障を図るという時代の流れに逆行する制度改変である。」と、非常に明快に述べていらっしゃるわけですけれども、その点もう少し詳しくお話しください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014237X00819970408/44
-
045・津田玄児
○参考人(津田玄児君) 御説明いたします。
確かに、今御指摘がありましたように、現在、保育を義務づける規定としては二十四条しかないわけでございます。私どもは、措置という言葉が行政処分であるということで、これは利用する者の意向に関係ないものではないかというふうに言われがちでございますけれども、実は行政処分であるというのは、児童福祉法全体が予定しておりますように、これは子供の利益、子供の権利にこたえるものだということに応じての行政的な対応ということになっておりまして、その行政的な対応が義務づけられるということは非常に重要なことだというふうに考えております。
その点を抜いてしまいますと、実は行政責任は最終的にはとらなくてもいいということにつながっていくものですから、したがってそれが抜けるような改革というのはやるべきではないというのが私どもの見解でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014237X00819970408/45
-
046・西山登紀子
○西山登紀子君 どうもありがとうございました。
それに関連しまして、五十六条なんですけれども、私たちは、二十四条で保育所が措置施設ではなくなった、利用契約施設といいますか、利用選択施設といいますか、そういう施設に変わるということによって保育所の性格も変わるんじゃないかと思っております。五十六条ですね。
ですから、私たちが修正案を出したいと思っておりますのは、五十六条については新しい改正部分は削除いたしまして、現行の五十六条の「全部又は一部」というところの「全部」というのをむしろ削除した方が高負担感をなくする方向ではないか、こんなふうに考えているわけです。
五十六条のこの改正は、やはり二十四条で措置施設でなくなったというところから、保育所が利用者の受益者負担、費用は父母負担が原則だと、こういうふうに五十六条が改正されるというふうに私たちは考えるわけですけれども、その点どのようにお考えでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014237X00819970408/46
-
047・津田玄児
○参考人(津田玄児君) 御説明いたします。
今、御指摘のとおりだと私どもも考えております。基本的には、保育といいますのは親の養育責任を国が援助するという、そういうものでございます。したがいまして、これは公的なものであって、親が自分の子供を育てるというのとはレベルが違う問題で、国はいかなる子供に対してもそういう責任を負っているということを明らかにしているものだと思います。
したがいまして、その保育にかかるコストを全部負担しなければいけないというのは、むしろその責任を回避することにつながっていくわけでございまして、そういうあり方というのはやはり好ましくないというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014237X00819970408/47
-
048・西山登紀子
○西山登紀子君 最後になりますけれども、今回、学童保育所が三十四条に新しく法制化されるということ、これは評価できるわけですけれども、しかし、市町村、国の公的責任というのはまだまだやっぱり不十分だということで、この点も三十四条を私たちは修正したいと思っております。市町村が放課後児童健全育成事業を行わなければならないというふうな文言を入れることだとか、財政的な負担を国は補助することができるというふうな文言をやはり入れるべきではないかというふうに考えておりますが、この点いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014237X00819970408/48
-
049・津田玄児
○参考人(津田玄児君) お答えいたします。
今の点につきましても、前進をしていくというのは私どもは必要なことだと考えております。
国の親に対する責任、養育責任を援助するという義務は、学校に行っている子供に対しても同様に及んでいるわけで、私どもは、現在むしろ低学年の子供に限定されているということ自体が問題ではないかと思っております。親が本当に自分の子供を、安心して仕事ができるように、そして子供も親がいない間、不安等を覚えないで生活ができるということは、これは非常に大切なことで、当然今おっしゃったような方向で進めるのが権利条約の趣旨だと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014237X00819970408/49
-
050・釘宮磐
○釘宮磐君 きょうは大変御苦労さまでございます。太陽党の釘宮でございます。最後でございますので、よろしくお願いをいたします。
実は、昨日、私ども厚生委員会として教護院を視察してまいりました。私も久しぶりに教護院を見せていただいたんですが、そのときに特に感じたのは、たまたま前日に私は老人ホームの落成式に行きまして、そしてその近代的な老人ホームを見て、翌日、教護院を見まして、畳八畳の間に四人が寝泊まりしている。子供さんがおられまして、身長が一メーター七十八センチある。京間の小さな畳でありますから、多分布団を敷いたらそこには入り切れないんじゃないかと、そんな思いを実はして、余りにも落差の大きさを感じたわけです。
そこで、参考人の皆さん方お一人お一人に、簡潔で結構でございますので、今のこの児童福祉という問題が、社会的な認知という意味からもまた国の取り組みという意味からも、老人問題に比べて私は大変おくれているというふうに思うわけでありますが、基本的な認識についてお一人ずつお答えをいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014237X00819970408/50
-
051・松尾武昌
○参考人(松尾武昌君) 私どもの組織の中に、先ほど申し上げましたが、市町村社会福祉協議会というのがございます。当然、市町村社会福祉協議会は、高齢者、障害者あるいは児童家庭等への地域での支援をするわけでありますが、そこで見ておりますと、どうもやはり高齢者対策にほとんどその重点が行っておりまして、まだまだ障害者や児童家庭に対する支援については取り組みが低いというふうに認識しております。
したがいまして、今、釘宮先生おっしゃいましたように、どちらかというと全体が高齢者対策の方に動いているのかなという認識は皆さんがお持ちのようでございます。我々も、この児童福祉法の改正を契機に、ぜひ障害者あるいは児童家庭福祉についての取り組みを重点的にやっていきたいというふうに思っております。
以上でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014237X00819970408/51
-
052・藤本勝巳
○参考人(藤本勝巳君) 申し上げます。
先ほどの意見陳述の場でも申し上げましたけれども、私どもも、世間一般の意識といたしましては、高齢者について社会全体で支えようという意識が高まっているのに比べますと、子育てについての社会的支援ということについては、国全体の意識はそこまで、同じレベルまで来てないんじゃないかという気がいたしております。大変残念なことではございますけれども、それが実情じゃないかというふうに思っております。
ただ、政府におかれましては、エンゼルプランを四省合意でつくられましたし、具体的な保育事業の五カ年計画が厚生、自治、大蔵三大臣合意でできまして、政府での取り組みは進んでいるというふうに思いますので、そういう考え方が国民一般にぜひ浸透してほしい、この児童福祉法の審議を機会にさらにそういうムードが起きてほしいということを念願しているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014237X00819970408/52
-
053・津田玄児
○参考人(津田玄児君) 私も同様に考えております。
子供の問題につきましては、実は老人それから障害を持っている方たちは自分で発言のできる立場でございますが、子供というのは自分で発言をできないというのが特徴でございます。そのことが子供の福祉をおくれさせていく、こういう問題を持っているのではないかと思っております。
現実に、国の予算のかけ方等につきましてもその点では問題があろうかと思っております。少なくとも、私ども、子供にとって幸せなシステムをつくっていくということを考えると同時に、それに対してはやはりお金もきちんとかけていくという視点を確立していただかないといけないというふうに考えております。
今の社会状況の中で無理だという御指摘もございますけれども、全体の社会から見て、子供が幸せになるということは社会全体がよくなっていくということにつながり、全体のコストを下げていくということにも当然つながってくるわけで、そういう視点が今、大変後退をしている。ほかのことと同じように削っていくという、そういう対応は私は少なくとも子供に対してはとってはならないというふうに考えておりまして、先生方のぜひ前向きの御努力をお願いしたいというふうに思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014237X00819970408/53
-
054・阿藤誠
○参考人(阿藤誠君) アメリカのある人口学者がこういうことを申しております。かつてマルサスは、これはイギリスの人口経済学者ですけれども、人口の数と栄養水準ということ、食糧という問題を扱ったわけですが、要するに人の数が多くなることはむしろ福祉水準が下がる、そういうことを言った。今の先進国の社会の中では、むしろ高齢者の場合は逆である。数が多くなることがむしろボーティングパワーにつながり、そのことが高齢者の福祉水準をどんどん高めている。
それに対して、今、津田参考人がおっしゃったように、子供の場合にはまず自分に発言権がない。それから、子育てをする女性の期間というものも比較的短い。つまり、人生の長いライフサイクルの中で短い期間ですね。そういう意味で、子供の問題あるいは子育てをしている女性の声というものがどうしても全体の中では小さくなる。
高齢化問題については、本人の親の問題をまず抱える、それで次に本人、自分自身の問題を抱えるというぐあいに、だれしも万人が関心を持つ。この差がどうしても福祉予算の問題につながってくるという考え方がございますけれども、私は全くそれに賛成でございまして、忘れられがちな児童福祉に関する予算というものをぜひ強化していただきたいというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014237X00819970408/54
-
055・釘宮磐
○釘宮磐君 皆さんの御認識、全く一致しておりますし、私どももそういう意味ではおくれている児童問題を今回の児童福祉法の改正を契機にぜひとも底上げをしていかなきやならぬ、このように思っております。やはり政治家が反省しなきゃいけないのは、どうも子供には選挙権がないからかなというふうに思うわけでありますが、そういうことは別として、とにかく一生懸命これをやらなきゃいけないと思います。
時間がありませんので、最後にもう一点だけ、これは津田参考人にお伺いをしたいんですが、最近、児童を取り巻く虐待の問題というのが大変深刻化しております。あれは神奈川でしたか、子供が焼き捨てられて川に捨てられた事件とか、こういう問題は事件か何かにならないと顕在化してこない。いわば潜在している部分というのはこれは大変な問題があるんではないかというふうに思うわけで、きょうは午後から現場の方もお見えになりますので、その辺をつまびらかにして今後の対策を練らなきゃいけないというふうに思うわけです。
私は、親権の問題で、今の児相そのものの役割が本当に果たされているかという議論を実は随分してきたんですが、この専門性の問題もさることながら、そういうふうな問題をやっぱり事前に察知して適切に処置していくという手だてが十分できていないんではないか。また、親権の問題については、米国では家裁がその親権を預かるようなシステムがあるわけですけれども、先生は法律の専門家でありますが、そういうような部分も含めてこの虐待問題についての御見解をお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014237X00819970408/55
-
056・津田玄児
○参考人(津田玄児君) 御説明いたします。
虐待の問題につきましては、今御指摘のまさにそのとおりでございまして、日本における対応というのは実におくれているというふうに私どもは考えております。
まず、発見をする過程がきちんとしていないという問題があろうかと思います。これは例えばアメリカの例で申しますと、特定の人、例えば小児科のお医者さん等は、虐待を疑われる状況があればそれをきちんと通告をしないといけないということが義務づけられております。ところが、日本の場合はそれがない。お隣で子供がいじめられているような状況を察知しましても、それはお隣の問題にかかわりたくないということで表へ出てこないという問題があって、非常にひどい状況があってもそのまま放置されるという状況は多いわけでございます。
そういうまず発見の過程をきちんと改善していく。ある意味では、ある程度の人に義務づけるということが当然必要になってくるのではないかというふうに考えております。日本は、全体的に通告をしなきやならないということにはなっているんですけれども、逆に全体になっているためにだれも責任を負わない、こういう問題があります。
それから、今御指摘になりましたように、親と子供の関係でございますけれども、これにつきましても児童相談所の体制が今は極めて不十分だというふうに私は考えております。虐待を受けました子供に対するケアの問題、特にそれによって子供がおびえているというような状況に対して対応するシステムというのは今ないのではないかというふうに考えております。そういうようなあたりもきちんとしていかないといけない。
それから、先生おっしゃったように、児童福祉士の専門性を高めていく、これは実際に今、専門家でない方が配置されているというような問題がございまして、法に反しているわけでございますけれども、そのあたりの抜け道をふさいでいくということが必要だと思います。
それからもう一つは、家庭裁判所との連携が必要だと思います。児童福祉相談所は家庭裁判所との連携が今、十分とれているとは言えない。必要な、親と子供を分けなければいけないという場面が当然出てくるわけでございますけれども、その場合にきちんと分ける、必要な場合には分けるという対応が必要でございます。その点につきまして法制の方も、実は今、親権を剥奪するという手当てしかないわけでございますけれども、一時剥奪するとか、この問題については親の発言を許さないとかという、そういう手当てを法律としてもする必要があろうかというふうに考えております。
そして、そういうような問題につきましては、実は被害を受ける子供たち自体に対しましても、そういう問題については訴えることができるんだという認識を例えば教育の過程とかそういうところを通して与えていく。子供に与えるということは一般の人にも伝わっていくということになりますので、そういう体制をつくり上げていく全般的な見直しがこれは当然必要なので、今後やはりきちんと御努力をいただきたいというふうに思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014237X00819970408/56
-
057・上山和人
○委員長(上山和人君) 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。
参考人の方々には、大変貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして、厚く御礼を申し上げます。
午後一時に再開することとし、休憩いたします。
正午休憩
—————・—————
午後一時開会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014237X00819970408/57
-
058・上山和人
○委員長(上山和人君) ただいまから厚生委員会を再開いたします。
休憩前に引き続き、児童福祉法等の一部を改正する法律案を議題とし、参考人の方々から意見を聴取することといたします。
午後は六名の参考人の方々に御出席をいただいております。社会福祉法人こまどり福祉会こまどり保育園園長の羽生悦朗君、社会福祉法人愛育福祉会理事長の成田錠一君、東洋大学社会学部助教授の森田明美君、子どもの人権保障をすすめる各界連絡協議会事務局の菅源太郎君、全国保育団体連絡会会長の横田昌子君、養護施設光の園白菊寮園長の濱田多衛子君、以上の方々でございます。
この際、参考人の方々に一言ごあいさつを申し上げます。
本日は、御多用中のところ、当委員会に御出席いただき、まことにありがとうございます。
参考人の皆様から忌憚のない御意見をいただきまして、本案の審査の参考にいたしたいと存じますので、よろしくお願い申し上げます。
議事の進め方でございますが、まず、羽生参考人、成田参考人、森田参考人、菅参考人、横田参考人及び濱田参考人の順序で、お一人十五分程度の御意見をお述べいただき、その後、各委員の質疑にお答え願いたいと存じます。
それでは、羽生参考人に御意見をお述べいただきたいと存じます。羽生参考人。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014237X00819970408/58
-
059・羽生悦朗
○参考人(羽生悦朗君) 御紹介いただきました羽生でございます。保育園の園長をさせていただいております。
子供たちの人生の一番大切な時期にお預かりする責任の重さはありますけれども、きらきら輝くひとみに囲まれまして、毎日子供たちの成長を目の当たりにできるすばらしい仕事をさせていただいておるといつも感謝いたしております。
また本日は、児童福祉法等の一部を改正する法律案の御審議に当たりまして、意見を表明する機会を与えていただき、まことにありがとうございます。
私どもが加盟しております全国私立保育園連盟では、利用者主権システムへの変換を評価する立場に立って何度か意見を申し上げてまいりました。私自身もそれを支持しておりますが、きょうは、主に地方の立場から、そして日々の保育の第一線に携わる者としての立場から、児童福祉法改正案の保育に関する部分について意見を申し上げたいと思います。
地方の立場と申し上げましたけれども、私、鹿児島県から来ております。鹿児島県の現状は、大都市圏と違い過疎が進行し、保育所の定員割れ、定員減、廃園が深刻な問題を投げかけつつあります。しかも、運営費は措置費のみで、市町村の単独補助はほとんどないというのが現実でございます。一方、大都市圏は、未措置児を多く抱えながらも、土地や建物の問題で定員増など適切な対応ができずに、また夜間保育、延長保育、乳児保育、駅型保育所などの都市型の多様なニーズに翻弄されつつも、補助金で厚遇されているようにお見受けいたします。
このような立場の違う現状の中で、一つの問題を同じように論ずることが困難な場合が多々見受けられると思います。
そこで私は、あくまで地方の立場から意見を述べさせていただきます。
まず、児童福祉法改正で評価できる点について申し上げたいと思います。
第一には、措置制度の見直しを行い、利用者である子供や親が希望する保育所を選択できる制度としたことです。
利用者を法律上位置づけ、保護者の申し込みに対して、市町村が保育所において保育サービスを提供することを応諾しなければならないという選択・利用システムとすることは、いわば利用者主権システムとすることであり、これまでよりも利用者である子供や親の立場は強められるものと考えられます。また、選択するに当たっては、保育所についての的確な情報を市町村あるいは保育所が提供することが重要であります。定員の空きぐあいで入れそうな保育所はどこか、開所時間は勤務時間に合っているのか、大切な子供がどのような保育を受けるのかなとは、親としては最重要関心事でございます。
なお、措置制度が見直されるに当たっては、公的責任が後退するのではないかと懸念する向きが我々保育関係者の中にありましたが、市町村の実施責任が課せられ、必要な運営費も保育所に支弁され、これに対する国庫負担金制度が維持され、公的責任が維持されることになったことについては、現場の関係者も安心をしたところでございます。
第二には、子育て支援のための相談事業が保育所の努力義務となったことでございます。
今回の法改正で、子育て相談に関する規定が盛り込まれていることは、我々の年来の主張と実践が反映されたものとして高く評価したいと思います。各保育所では、折に触れ子育て相談をやってまいりました。保育所は、育児についてのノウハウを持った専門機関でございます。ぜひ、この機能を保育所に入所している以外の人々にも活用していただきたいと考えております。
次に、地方として心配している点について二点ほど申し上げたいと思います。
一点は、保育料についてであります。
均一保育料の考え方は、日ごろから所得捕捉の問題で矛盾を感じておりましたので、評価できます。しかし、均一の方向がどうなるのかという心配があります。保育所を利用しにくくなるような高額な保育料にならないように御配慮をいただきたいと思います。
このように申し上げますのも、地方の、しかも鹿児島の現状からこのことを考えますと、どうしても心配が先に立つわけでございます。東京の五万円は、極端に申しますと田舎の十万円の感覚である、そういうふうな御理解をいただきたいと思うわけでございます。
このことを、実際に政策を決定されている東京あるいは全国平均との比較で少し説明をさせていただきます。比較の仕方も、物価だとか税の捕捉の問題であるとか、そういったこともあるとは思いますが、私は、保育料とか措置費に関して比較することで申し上げたいと思います。
一点は、現在十段階に分かれている保育料の階層区分の中を措置人数で半々に分けたとします。そうした場合、全国平均では大体第七階層あたりに線が引かれるわけでございますが、その第七階層以上が大体五二・〇七%ございます。東京では第八階層か第九階層、その間あたりになるでしょうか、第八階層以上で大体五六・四六%でございます。それに対しまして、鹿児島県の場合、第七階層以上は二二・六五%、第八階層以上になりますと一四・六一%と、鹿児島県全体の所得がいかに低いかおわかりになると思います。
二点目に、措置費における保護者負担の割合は、全国平均では大体五〇%と言われておりますけれども、東京で五六・四七%、鹿児島県ではと申し上げますと、二八・一七%というふうになっております。公費負担五〇%ということで均一化されますと、単純に鹿児島の保育料は二十八分の五十と、約二倍にはね上がるということになりかねません。
さらに、国が示した保育料のうち市町村が独自で軽減措置を講じている割合でございますが、全国平均では二割強でございます。鹿児島では一割程度の軽減にしかなっておりません。国基準そのままの市町村も多くありますし、また同じ町内で定員規模によって保育料が異なるという極端な場合もあります。
以上のような現状を御理解いただきまして、保育料の均一化を図る場合はぜひ地方の事情をお酌み取りいただきまして、地域的な配慮をお願いいたしたいと思います。
それから、心配することの二点目でございますが、どんな地域の子供も等しく保育が保障されることという視点がはっきりしていないのではないかということでございます。
農山村や僻地の人々にとっては、保育所を選択する余地などはございません。そこにある保育所がどんなに子供が少なくなってもしっかり維持され、保育の水準が守られることを願うしかない状況でございます。利用者が保育所を選択するシステムの意義を評価いたしますけれども、それと同じ重さで、どんな地域の子供も等しく保育が保障されることを考えていただかなければ、私ども地方の者は、大都市偏重の改革という見方をせざるを得ないと思います。どうぞ地方のことをお忘れにならないでいただきたいと思います。
そこで、地方の立場から、どんな地域の子供も等しく保育が保障されることという視点も含めまして、鹿児島県の過疎の現状と過疎地対策について申し上げたいと思います。
鹿児島県内九十六市町村のうち七十二市町村、四市六十八町村が過疎指定市町村です。実に七五%になります。全国平均は三七・一%と言われておりますので、その過疎化率はすさまじいものがあります。さらに、鹿児島県の過疎地保育所の割合を見てみますと、保育所総数四百五十六に対しまして公立九十九、私立百三十一の計二百三十カ所が過疎地に位置しております。割合で見ますと五〇・九%でございます。全国平均では、ちょっと古い資料からで恐縮でございますけれども、一二・八%という数字が過去に出ております。さらに、鹿児島県にはこのほかに平成八年四月現在、僻地保育所六十二、農山村保育所三、合計六十五カ所があります。
このような現状の中で、特に私立保育園は措置費だけで血を流しながら頑張っているわけですが、毎年一、二カ所、休園から廃園に追い込まれております。抜本的な過疎地対策を早急にお考えいただきたいと思います。
そこで、全国私立保育園連盟が日ごろから申し上げております過疎地対策の要望を踏まえて、四点ほどお願いを申し上げます。
一点は、保育所の認可定員の下限を三十人から十五人に引き下げていただきたいということでございます。
二点目は、分園方式によって保育所が存続できるようにしていただきたいということでございます。十五人でも無理な保育所の場合は、近在の保育所の分園として存続できるような規制緩和をしていただきたい。
三点目に、保育所に学童保育、老人デイサービスセンターなどの機能をあわせ持つ小規模の地域福祉センター制度をつくっていただきたい。保育所として存立しつつ学童保育や老人デイサービスセンターとの複合化ができればよいのですが、それぞれ規模が小さ過ぎて単独では施設として成り立たない場合、いろいろな機能をひっくるめた小規模地域福祉センターとして存続できればと考えます。現在、地域福祉センターの制度はありますが、規模が大き過ぎて過疎地にはなじみません。その小型版の制度をお考えいただけないでしょうか。
四点目は、どんな手段を講じても存続が不可能な場合、これまで長い間果たしてきました役割に敬意が払われるような撤退の道を開いていただきたいと思います。具体的には、社会福祉法人の残余財産が創設時の寄附者に返還される道をつくっていただきたいということでございます。難しい問題はあると思いますが、政治的な配慮を切にお願いいたします。
次に、規制緩和と制度の弾力的運用についてお願いがございます。
委託費の使い方に余り制限を加えないでいただきたいということでございます。いろいろなニーズに的確に素早く対応するには、細かい規定が多過ぎるような気がいたします。
ほかにも、現在、老朽改築を行う際、公的補助が四分の三いただけるわけですが、あとの四分の一は法人負担であります。四分の一をどう工面するか。一般的な寄附は望めませんので、理事長あるいは経営者園長が、借り入れの返済も含めて身銭を切って工面しなければなりません。それまで二十年、三十年、四十年運営してきた努力は何ら報われないというのが現状でございます。せめて自己負担分について、施設整備引当金的なものをお考えいただきたいと思います。
昨年、特別養護老人ホームをめぐる丸投げ等の事件がございました。私どもは、同じ八年度に保育園と老人デイサービスセンターの複合施設を建設いたしました。その経験からは信じられない思いでございます。
ちなみに、そのときの状況といいますか事業費の内容を申し上げますと、大体五百二十平米の建物をつくったわけですが、設備、施設合わせまして総事業費一億三千六百三十万二千円。その中で補助金の占める金額は、国庫補助、中核市の補助、市の上積みの補助等合わせまして一億五百七十二万五千円でございます。それに借入金三千万円、寄附五十七万七千円を合わせて一応総事業費を賄ったわけでございますが、追加工事費として三百万円ほどまだ請求が来ております。これをどうするかといいますと、どうしても理事長あるいは私、園長の負担といいますか寄附行為で賄わなければならないというのが現状でございます。せめて自己負担分について、施設整備引当金的なものをお考えいただきたいというのはそういうことでございます。
ほかにも民間保育園の独自性を生かすためにとか特別保育事業の件などございますけれども、時間がございませんので割愛させていただきます。
最初に児童福祉法改正案の利用者主権システムという基本的理念は評価できると申し上げましたが、この理念がこれから実際運用されるに当たりまして、政令や省令、通達等にきちっと反映されることを期待しております。
最後に、少子化が進む中で、子供を産み育てやすい環境づくりを行う上で保育所の果たす役割は重要であります。また、家庭や地域の育児機能が低下していると言われる中で保育所の果たす役割は大きいものがあります。高齢社会ということで高齢者対策ばかり注目されますが、子育て支援対策は極めて重要であります。
保育所の保育内容をよくすること、保育料の負担の軽減を図る上で公費の充実を図ることをお願いしたいと思います。十年度以降の予算編成の中で、いろいろな面から御配慮をいただきますようにお願いいたします。
以上で意見を終わります。どうもありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014237X00819970408/59
-
060・上山和人
○委員長(上山和人君) ありがとうございました。
次に、成田参考人にお願いいたします。成田参考人。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014237X00819970408/60
-
061・成田錠一
○参考人(成田錠一君) 今御紹介にあずかりました成田でございます。よろしくお願いいたします。
私は、今現在、田舎の小さな町の保育所の理事長をやっております。この経歴も昨年の四月からでございますから、一年足らずでございます。その前は名古屋の市立の保育短大とか、あるいは兵庫教育大とか名古屋音楽大学とか、そういうところで教鞭をとっておりました。その間に、私自身も中央児童福祉審議会の臨時委員として、平成元年でございますか、あのときに出されました保育指針作成の検討委員会に委員として加わりまして、保育内容という点から、私どもは質の向上という点で何とか今までやってきたわけでございます。
現在も地域で、名古屋でございますけれども、個人的に研究所をつくりまして、そして保育所の皆さん方と勉強会を開いて、なるべく質的な向上のために保母さんたちと一緒に勉強しているという経歴でございます。よろしくお願いいたします。
今申し上げましたように、前の参考人の方と同じで、保育所という立場だけに限定させていただいて御意見を申し上げたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
まず、今回の児童福祉法の改正の趣旨が児童福祉の増進という観点からの改正だと、こういうふうにお聞きしておりますし、またそうだろうと思っておりますので、ぜひとも増進ということのために一つでもお役に立てられるような、そういう法律と申しますか条文の制定それから関係省令の改定という、その辺にぜひとも御努力をいただきたい、こんなふうに思っております。
それで、まず私の申し上げたい点、逐条で申し上げていきたいと思います。
今回の児童福祉法の第二十四条に挙がってまいりますところの、いわゆる措置入所というのを保育の実施と、こういう形で変えられました。措置制度の変更とも絡んでいるわけでございますけれども、こういう言い方、表現というのは、保護者の必要とする保育ニーズにこたえていくんだと、そういう観点から私もこの表現で非常によかったなと、こんなふうに思っております。何となく権力臭い措置という表現から変えられたことについては非常に高く私も評価したい、こんなふうに思っております。
それから、先ほどの参考人の方もおっしゃったと思いますけれども、第二十四条の一項でございますか、ここの中にございますような、市町村は保育所において保育しなければいけないという、ある程度義務規定だろうと私思うのでございますが、市町村の義務の責任というようなものがここの文章ではっきりしたという点についても改めてよかったなと、こんなふうに思っております。
私の今やっております保育所は、民間の保育所で法人立の保育所でございますので、御存じのように市町村から委託を受けてこれを受託してという形で運営をさせていただいているわけでございますが、この形で運営させていただいているという形では、もちろんメリットはすごくございますけれども、今町内にございます六つの保育所とそれから私どものたった一つの法人立のところで、私の住んでおります町の福祉というか保育所というのを運営しているわけでございます。
ここで私、後で忘れるといけませんのでこの際申し上げておきたいと思います。
各方面の方からもこのことは言われているとは思いますけれども、改めて先生方にお願いしておきたいのは、やはり運営上とかいろいろな点で非常に細かい点になるとは思いますが、このシステムといいますかやり方というのは大変ありがたい。つまり、町からの委託を受けるという形で、私どものところでいきますと定員確保という点では非常にうまく機能しておるわけでございます。その一方で、公立の保育所に対する公費の使い方、それと私どもが今いただいて使っていこうとしている民間の保育所の公費といいますかお金の使い方という点については、うらやましくて言っているわけではございませんけれども、公立の保育所に割合にたくさんのお金が流れているという点では何となく、やきもちをやくというわけではございませんが、こういう公立と民間とのお金の使い方、運営上のテクニックでございますか、どうなるかわかりませんけれども、その辺の是正を強く私どもとしては御要望しておきたいのでございます。
これは、これからのこの法律の運用の段階で決まってくることだろうとは思いますけれども、この辺もひとつ皆さん方のお力を得たいなと、こんなふうに思っております。ひとつよろしくお願いいたします。
話が飛びましたけれども、今、二十四条というところでお話しさせていただいているわけでございますけれども、この中で特に五項に挙がってまいります市町村の保育に関する情報が非常に具体的にここに書かれております。つまり、「設置者、設備及び運営の状況その他の厚生省令の定める事項」というふうに非常に具体的に書かれておりますので非常にわかりいいと思います。
つまり、選択という制度に切りかえていく、制度と申しますかそういう方向に切りかえていく、そういうためのキーワードは、私は、保護者に保育所に関する情報を的確にとらえていただく、こちら側としてはやっぱり的確な判断をしていただく情報を流していくということにかかってくると思います。ですから、地方自治体としてはこの二十四条の五項に挙げられておりますような、こういう情報を提供していただくことについてはぜひお願いしたいと思いますので、この点も非常に理解しておきたいなと、こんなふうに思っております。
それから、それと関連いたしまして私の申し上げたい最大のポイントを申し上げますと、今度は保育所側が情報提供、つまり地方自治体も情報提供するんだけれども、利用に当たってもう少し細かい的確な情報を伝達するにはというので、恐らくそれが「保育所の情報提供等」という項目でくくられております第四十八条の二で述べられておりますので、ここに触れたいと思います。
保育所自身としては、サービスの質の向上と保育の質の向上、こういうことを日ごろ努力してやっておりますので、このことも基本的には賛成でございます。
しかし、こだわるわけではございませんけれども、この第四十八条の二に書かれている文面上、保育所が「その行う保育に関し情報の提供を行い、」と、先ほどの二十四条の五項でございますか、地方自治体が行うものとよく似た表現になっております。この「保育に関し情報の」と、前の二十四条の場合には比較的、例えば設置者とかいろいろな具体的な例が頭に入ってきまして、そしてこういう情報ですよというふうに書かれておりますけれども、肝心の最も大事だと思われる、私どもが保育所を通して提供していきますところの保育の質にかかわる部分、つまり言葉の使い方でいきますと通称と言ったらいいんでしょうか、普通使われている言葉を使えば、いわゆる私どもがやっておりますところの保育内容でございます。つまり、保育内容に関する情報提供は当然その保育所しかできませんので、だからこの辺を大事にしていかなければいけないなと、こんなふうに思っております。
「保育に関し」という点でもう少しお話しさせていただければ、こんな恥ずかしい話を申し上げるのもどうかと思いますけれども、現実に地域住民の方には保育所保育という、そのこと自体福祉と言葉を言いかえてもよろしいんでございますが、保育ということの中身が、この情報がなかなか伝わっていない。率直に申し上げます。つまり、幼稚園は教育を行うところだ、保育所はお守りをするところだと、表現が大変まずいんでございますけれども、お許しいただければ、こういう格好でその情報は伝わっております。
ですから、まず本質的に私どもがやらなきゃいけない点は、保育所が提供していく保育内容というものの中身を、これは何だという点。つまり、保育を展開しています私ども関係者の方としては、当然勉強会で保育所保育指針とか、いろんなものを参考にしながら勉強しておりますので、大体筋書きとしてはわかっておると思います。つまり、保育所保育という言葉の概念というのは、先生方御存じのように、当然福祉を受けた養護と教育と、こういう概念から成り立っている。そして、そのために保育内容を整備しているわけでございますけれども、特に保育所が展開しておりますところの幼稚園と同質の教育、そういう側面の情報提供という点では、受け手の側としては今のような状況でございますので、ここもこれから私どもの内部で努力しながら地域の皆さんにわかっていただく、こういう方向を積み重ねていきたいと思いますが、今この文面にこだわって、つまり四十八条の二のこの文章にこだわってあえて申し上げれば、この「保育に関し情報の提供を行い、」という、その「保育に関し」という部分をいま少しここの段階で、つまり法律の文面の段階で、これは省令とかいろんなところで恐らく後から示されるものとは思いますけれども、言葉を正確に使えば、保育の内容等に関する情報提供、この文章では不可能かもしれませんけれども、ぜひこんなふうな表現に変えていただけるような御努力をしていただければ大変ありがたいと、こういうふうに私どもは思います。
つまり、ちょっと時間が長くなりましたが、結論から申し上げますと、今申し上げたように、私どもや市町村が提供する、特に保育所側が提供していくそういう情報の中に保育の内容の情報提供、これをもう少し的確に、本当にひがんだ言葉で言うようで申しわけないんでございますけれども、私どもも幼稚園以上の教育内容を保持しているんだ、それを展開しているんだというその辺のことがもう少し、普通の方が読まれてもおわかりになるような表現を使っていただければ大変ありがたい、こういうふうに思っております。
二十四条の五項と、それから四十八条の二でございますか、この辺に関連します情報の提供、こういう部分を中心にして、ぜひ先生方に私たちの考え方をお聞きいただきたいと思って時間をとらせていただきました。
私、最初にお断りするのを忘れておりましたけれども、この機会に意見を述べさせていただけることを大変光栄に思っておりますので、ひとつよろしくお願いいたします。
まだ時間ございますでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014237X00819970408/61
-
062・上山和人
○委員長(上山和人君) ちょうど時間になっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014237X00819970408/62
-
063・成田錠一
○参考人(成田錠一君) もう一つ補足させていただきます。
地域の実情をもっと具体的に申し上げれば御理解いただけると思いますが、今度は第五十六条でございます、ちょっと飛びますが。つまり、福祉の措置及び保障に関する連絡調整等という五十六条の六に新しく加わりましたこの条文です。
私ども、名古屋市に隣接していますちっぽけな町でございます。その名古屋市に、例えば例を挙げますとはっきりすると思いますが、乳児、とりわけ産休明けからお子さんを預かって保育をするという地域の空白の部分がございます。名古屋市は非常に手厚いんでございますけれども、その空白の部分がちょうどうちの町内と隣接しているんでございます。今、私どもに対する保育の要望はたくさん電話で受け付けておるんでございますが、産休明けからの保育を、これはそれこそ地域が異なりますので今の状況では不可能かとも思われますけれども、地域の壁を乗り越えてこたえていけるためにも、私どもとしてはぜひこの五十六条の六、この辺のところの運用を柔軟にお願いしたいな、こんなふうに思っております。
もちろん、地域におきましては産休明け保育の要望が非常に強いわけでございますけれども、この辺について、先はどちらっと私申し上げました公立保育園との関係で、つまりこれも町内に帰ったらしかられると思いますけれども、公立保育園の実施しておりますのが月数でいきますと六カ月からと、こういうところでやっております。これがございますので、私どもが産休明けからやりたいと思いましても、どうしてもここが踏み切れない。つまり柔軟な、例えば今特例保育でございますけれども、こういう産休明け保育からの乳児保育を私どもがやりたいと思いましても、つまらないことかもしれませんが、やはり公立保育園への市町村の配慮、財政の面もそうでございますけれども、人件費とかその他という点もあるでしょうから、そういう点の制約を受けまして、それを受け入れることができないというふうな状況でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014237X00819970408/63
-
064・上山和人
○委員長(上山和人君) そろそろまとめていただけませんか。かなり時間を超過いたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014237X00819970408/64
-
065・成田錠一
○参考人(成田錠一君) ですから、五十六条の六に関連いたしまして今のようなことを申し上げたわけでございますけれども、私の申し上げたかった点は、今言いましたように情報の提供、こういう点で保育内容の情報提供ということがここの文章から読み取れるような、そういう表現にぜひ変えていただきたいなと、こんなふうに思っております。
以上でございます。ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014237X00819970408/65
-
066・上山和人
○委員長(上山和人君) ありがとうございました。
次に、森田参考人にお願いいたします。森田参考人。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014237X00819970408/66
-
067・森田明美
○参考人(森田明美君) 東洋大学の教員をしております森田でございます。
私は、子育て家庭の生活実態と子育て支援政策の実証分析を専門にしております。これまで、研究あるいは実践現場の方々と調査研究をともにしてまいりました。そうしたことをもとに本日お話をさせていただきたいと思っております。
まず、日本の保育制度の果たした役割ということで、概説的に今の日本の制度の評価をしてみたいと思います。
私は、この十年ほど日本とアメリカの子育て家庭の実態調査をしてまいりました。その過程の中で、とりわけ私はミシガン州の調査をしてまいりましたけれども、日本とアメリカの大きな違いと申しますと、日本の制度に比しまして、アメリカの公的な保育制度は貧困家庭の利用に非常に限られているということ。それからもう一つは、中間層への制度としては税控除というものがほとんどを占めているということでございます。その結果、アメリカでは、働きながら経済的な自立生活をしょうといたしますと、親族に預けるかあるいは民間保育サービス機関を活用するかという二者択一の状況にあるということでございます。
私ども、民間保育サービス機関をこの間ずっと調査してまいりました。そうした過程の中で若干感じました点を、大まかではございますけれども申し上げてみますと、保育費用はかなり機関によって違いますが、資格を持たず保育経験も少ない保育者が非常に多い。保育というのは人件費が非常にコストとしてかかりますので、結局、安い保育所ですと専門的な知識や技術を持たない保育者がそこにたくさん雇われる、そういった形で保育の質が非常に落ちるということがございます。
そういったところで子供たちが保育されるとどうなりますかといいますと、現象的には非常にたくさんの保育者がいるように見えまずけれども、実態としては子供たちが所在なげにごろごろとしていたり、あるいは騒然としていたりという、子供たちが本当に子供たちの育ちを保障されないという状況になるわけでございます。
そうした機関を親たちが所得に応じてさまざまな形で選ぶわけでございますけれども、結果的に申し上げますと、収入の低い人は安い保育所、収入の高い人は高い保育所、このように親の所得に比した保育施設しか利用できないということが民間サービス機関によって起こってくるのでございます。
一見、選択の自由というふうに私たちは感じますけれども、実はその中に大きく経済効果あるいは経済の規制が働いているということにも一方で目を向けておかなければならないのではないかというふうに考えております。
実際、私ども、子育て家庭の調査をしてみますと、アメリカ等で、保育費用が民間のサービス機関ということになりますと、母親の収入の一六%ほどを占めるという状況が一般的でございました。
子育て家庭というのは概して若い世帯になってまいりますので、親の収入の一六%程度ということになりますと、もうこれが限界になります。そこで、結局所得に応じた保育施設しか使えないという状況が起こってくるのでございます。とりわけその中で、貧困層に対する公的な施設も使えないあるいは収入も低いということで、非常に中間層に対する手当てというものが薄くて中間層の子育てが困難であるという状況が明らかになってきております。
さて、それでは日本のよさということについて申し上げたいと思いますけれども、私は、日本のよさというのは親の収入によって子供が分けられないということ、このことが非常に大きな日本の保育の利点であったというふうに考えております。公的な保育所に預けて働く家庭では、どの子も一緒の保育所に通い、そして同じ質の保育が受けられたということに関しては高く評価をしております。
ただ、日本の場合も、これまでも例えば保育時間ですとか、それから保育年齢ですとかというものが合わないということで、いわゆるベビーホテルと言われるところですとか、民間保育サービス機関に預けたり、ベビーシッターを雇ったりという方がいないわけではございませんでした。私ども、こうした家庭に対する調査もしながら調べてみますと、やはり公的な保育制度を使えないところでは約一八%から二〇%ぐらいの保育費用を使っているということも明らかになってきております。中には、母親の収入のほとんどをそういった機関に払っているという世帯もございます。
そういったことを考えてまいりますと、日本の中で保育施設を考えた場合に、実態に合わせていくということ、そしてその実態に合わせながらもなおかつもう一つ申し上げたいことは、やはり子育て家庭というのは非常に若い世帯でございますから収入もまだ低うございます。そういった世帯が払えるだけの保育料でなければならないということ、そのことが非常に私は大切なことであるというふうに考えるのでございます。
きょう配付させていただきました資料をごらんいただきたいと思いますが、二ページ目のところに、これは大阪市と岡山県の津山市で、いわゆる保育所を利用できていない世帯の調査結果というのを参考資料につけさせていただきました。
資料一というのは大阪の資料でございます。保育所をかつて利用したことはあるけれども今は利用していないという世帯百二十三人に対して行われた調査ですが、料金が高いということで二五%の人が今利用していないということが明らかになっております。それから、資料二は津山ですが、働く母親でありながら幼稚園の利用をしているという場合も、ここに挙げましたように幼稚園を利用しているという層が一七%、斜線で示しましたけれども、この世帯が幼稚園を利用している。そして、その理由が、料金が安いからというようなことがございます。
つまり、こうした若い世帯が子供を育てるということを、ある意味では経済的な余り負担なくできるようなシステムを今考える必要があるのではないかと思います。とりわけ、延長保育あるいは夜間の保育をやっているところでは母子家庭も大変多いということを、私もさまざまなところで調査してまいりました。やはり、自立を支えるためのシステムということでは、こうした保育料を含めた軽減策あるいは必要に合った保育システムをつくり上げていくということがとても大切だというふうに考えております。
今回の法改正の中で、とりわけ規制緩和、民間サービス機関の積極的な育成ということがうたわれているように感じられます。そうした中では、まだ子育てをし始めたばかりの親たちを非常に孤独な、孤立化させた子育てに追いやっていくということを感じております。ぜひ、御検討いただきたいと思います。
それから、とりわけ私は、子供の最善の利益を守るという点で、保育の質を守るということの大切さを訴えておきたいというふうに思います。
それから、第二点目でございますが、子供を分断しないということを申し上げておきたいと思います。
今回、私はさまざまな問題点を感じましたけれども、限られた時間でございますので、とりわけ現在の小学校に入っていく子供たちが、都市部ではわずか三十人程度の学校のクラスの中に六つ、七つの幼稚園、保育所から入ってくるという状況がございます。子供たちは、小学校に入る前からもう既に生活空間を分断されているのでございます。小学校に入ってから子供たちに仲よくなれといいましても、これは大変子供たちに苦労を強いることになります。子供たちが仲よく地域で遊べるような、小さな地域を区割りした小さな保育園、こういったものをぜひお考えいただきたいというふうに思うのでございます。
そうした意味では、きょうの午後の第一番でお話しになりました小規模の保育所、これは何も過疎の地域にだけ必要なことではなくて、東京あるいは大都市圏においてもできる限り小さな保育所を、そして子供たちの遊び空間あるいは生活空間に合った小さな保育所を各地にちりばめていく。効率だけを考えるのではない、子供の育ちに合わせたシステムをつくり上げていただきたいということを感じております。
今回の制度の中では、むしろ広域の保育所利用を認めるということ、あるいは放課後健全児童育成事業の中で、この対象を保護者が労働等により昼間家庭にいない小学校低学年児童という形で、非常に限定された制度が考えられております。むしろ、子供たちは地域の中で自由な遊び相手を求め、遊び方、遊び場所、遊び相手、こういったものをふんだんに用意される中で豊かに育てられるのが基本だというふうに考えております。ぜひ、地域の中での子供たちの遊びの再生に向けての児童施策を検討していただきたいというふうに思っております。
子供たちは保育への権利を持っております。この保育への権利というのは、私は何人も侵すことのならない大切な権利だと考えております。このことが今回の児童福祉法の中で、幼稚園や保育所の子供たち、あるいは働いている親か働いていない親か、あるいは年齢で、こういった形で地域の子供たちの集団が壊されるようなことがあってはならない、切にそのことに対する配慮をお願いしたいというふうに思います。
それから、最後になりますが、子育て支援のあり方について意見を申し述べさせていただきたいと思います。
昨今、大変養育力が落ちたということが言われております。きょうのこの参考資料にもっけさせていただきましたけれども、先日、ちょうど朝日新聞の「ひととき」の欄で「〇歳では遅すぎる」という文句で非常に苦しめられている親の投書がございました。
私は、この投書を読みながら、親が情報の中で非常に追い込まれている、子育ての軸がなくなっているということに大変心を痛めました。子供たちが子育てにかかわる大人たちの思うように育たないという原因を、子育て中の親の無知あるいは子育ての技術の未熟さ、理解できない行動といったものに、私たち、ある意味では子育てをある程度通過してきた者たちが脅迫的に押しつけることはやめなければならないというふうに考えております。
子育てに自信をなくしていく若い親たちが大変今ふえております。もともと親たちに力がないのではなく、力をつけるチャンスがなかったり、きっかけがなかったり、あるいはこうした機会を親たちが与えられてこなかった、そうした結果だというふうにも私は考えております。
そうした意味で、だれにも邪魔されず個人生活を楽しんできた私どもの大学生たくさんおります。そして、一心不乱に仕事に励んできた若い時代。それが子供ができて子供たちに限りなく時間を奪われ、そして地域の中に一足飛びに出よと言われてもそう簡単にできるものではございません。むしろ、こうした親を育ててきてしまった教育の価値観あるいは生活の価値観というものを今見直しながら、生活を優先するあるいは子供たちが育つということを優先する国づくり、あるいは町づくりをぜひしていただきたいということを考えております。
その際、私はここに資料三としてつけさせていただきましたが、これは養護施設における子供たちの養護施設に入る前の生活実態をまとめた調査でございます。私はかかわった者ではございませんけれども、これを見させていただいたときに、約五二%の子供たちが家庭の中で虐待を受けて養護施設に入っているということが明らかになってまいりました。
こういった情報を見るにつけ、子供たちが置かれている家庭というのが非常に病んでいるけれども、この病んでいる家庭への援助ということを今私たちがしなければ、子供たちから家庭を奪うことになってしまうということ、この視点を私は今回の法改正の中で、ぜひ御検討いただきたいというふうに思います。むしろ、仮に育児力のない親がいるならば、親たちが育児力をつける機会の設定、親たちが子供たちとともに育ち、そして親たちが子供たちを育てることが楽しめるような、そういった施策をぜひ講じていただきたいというふうに思うのであります。
保育所の子供たちを長時間預かる、あるいは赤ちゃんのときから預かる。これは先ほども申し上げましたように、働くことが自立の前提である家庭にとりましては大変重要なことでございます。経済的な基盤がないところでは子供は育てられませんけれども、それ以上に、私たちは子供たちにとって家庭を奪うことになってはいけない。そうした意味で、労働政策あるいは住宅政策等も含めながら、ぜひ子供たちに親たちを返してやってほしい。そして、なおかつ子供たちが育つ中で家庭が再生するような、この児童福祉施設の支援ができるような体系をぜひお考えいただきたいというふうに思います。
保育現場は大変苦しんで今子育て支援をなさっていらっしゃる。これは私、さまざまな保育現場との交流の中でよく存じております。保育所しかり、養護施設しかりでございます。これらの施設の中で、ほとんどこうした子育て支援への援助、いわゆる補助金なしの状態の中で、ほんの微々たるお金の中で皆さん努力して子育て支援をなさり、そして地域の中での養育力の低下に驚きながらもそこへの手を差し伸べていらっしゃいます。
私は、地方自治体あるいは各施設等の努力がぜひ国で法的にバックアップされ、そして財政的に補強されて初めて、そうした一つ一つの点が線になり、そして面として子育ての支援状況というものがっくり上げていけるというふうに思っております。ぜひ、こうした点をつぶさないために線から面への施策ということをお願いしたいというふうに思います。
以上でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014237X00819970408/67
-
068・上山和人
○委員長(上山和人君) ありがとうございました。
次に、菅参考人にお願いいたします。菅参考人。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014237X00819970408/68
-
069・菅源太郎
○参考人(菅源太郎君) 子どもの人権保障をすすめる各界連絡協議会の事務局をしております菅源太郎と申します。児童福祉法改正案に関します意見陳述をさせていただけるということで、大変うれしく思っております。
子どもの人権保障をすすめる各界連絡協議会は昨年で設立十年を迎えまして、この間、子どもの権利条約を活動の中心に据えて国内法の改正あるいは条約の広報等々について研究あるいはさまざまな申し入れ等の活動を行ってまいりました。今般の児童福祉法の改正につきましては、昨年十二月に中央児童福祉審議会基本問題部会中間報告に関する要請書というものを厚生省の方にも申し入れているところでございます。
まず私ども、この児童福祉法改正案に関します意見としまして持ちますのは、子どもの権利条約が批准されて間もなく三年を迎えようとしているわけですけれども、その三年を迎えようとしている子どもの権利条約、この条約の趣旨や規定に基づく国内法の整備、そういうものとして今回の児童福祉法の改正が考えられるべきであるというふうに考えております。
午前中の参考人質疑の中でもございましたけれども、条約の承認時、政府は、新たな国内立法措置を必要としないというふうに説明していたわけですけれども、あわせて国会の答弁の中で、
条約に基づいていろいろ施策を進めていく上においては、従来よりはどちらかというと子供の立場に立って物を考えていく、こういうことで施策を施行していく場合にちょっとこの法律は少し直した方がいいのじゃないかというようなときは、ぜひそれぞれの関係省庁が法律の見直しということを私はしていただけるとありがたい、またそのようにお願いできればお願いをしていきたい
これは当時の武藤外務大臣の答弁でございますが、そういう国会での答弁もございますので、ぜひそういう意味で、条約を踏まえた前向きな法改正というふうに考えていただきたいというふうに思っております。
そういう観点から、まず児童福祉法第一章の総則規定、ここにやはりこの五十年間の変化というものを踏まえた改正をしていただきたいというふうに考えているわけであります。
また、これは子どもの権利条約、児童の権利条約と呼ばれておりますが、この十八歳未満を指す児童という言葉が適切な言葉であるかということについてもぜひ議論を進めていただきたいというふうに考えております。
その上で、条約第三条の子供の最善の利益の尊重、あるいは第十二条の子供の意見の尊重、意見表明権の保障、このような規定に基づいて、子供は権利の主体であり、独立した人格としてその尊厳が重んじられる、そういう趣旨、あるいは国、地方公共団体及び保護者は子供の最善の利益を第一義的に考慮し、子供の意見も正当に重視しながら子供の権利を保障する責任を負う、こういった趣旨の言葉がこの児童福祉法の第一章総則に盛り込まれるべきであるというふうに考えております。
特に、中央児童福祉審議会基本問題部会の中間報告でも児童の最善の利益、子供の最善の利益という言葉が繰り返し述べられておりまして、この最善の利益の尊重ということは少なくともこの総則の中に盛り込んでいただきたい、そのように考えております。
この法案の参議院本会議での先月二十一日の総理の答弁でも、理念の見直しについては引き続き検討すべき課題であるというふうに述べられていることを会議録で拝見しておりますので、ぜひ皆さんでこの点についての御検討を進めていただければというふうに思っております。
こういうことを申しますのは、児童福祉法が第三条で、「児童の福祉を保障するための原理であり、この原理は、すべて児童に関する法令の施行にあたって、常に尊重されなければならない。」というふうにこの総則を定めておりまして、この児童福祉法の総則規定がほかの法律の基本となってくる法律であるというふうに考えているからにほかなりません。そういう趣旨からも、ぜひこの点の改正について御検討をいただきたいというふうに考えるものです。
続いて、児童相談所あるいは養護施設あるいは今度名称が変更される教護院等々につきまして、この子どもの権利条約の趣旨から幾つか考えます点を申し述べたいと思います。
法案第二十六条第二項で、児童相談所の都道府県知事に対する報告書の記載事項に、措置についての子供と保護者の意向を追加して今回の法案が示されております。この追加したことを実効あるものとするためには、中央児童福祉審議会の中間報告にもあるように、子供と保護者に施設の処遇内容等を積極的に提供し、子供と保護者が十分な情報に基づいて意見を表明できるようにすることが必要であると考えております。
この規定が盛り込まれたことは結構なことなんですけれども、規定が盛り込まれただけで子供のや保護者が十分な意見を述べることは可能ではないというふうに考えておりますので、その点に留意していただきたいと思っております。
また、児童票等の自己情報の本人開示、あるいは措置会議への子供あるいは子供の代理人というものの出席ということも今後検討されていくべきことなんではないかというふうに考えております。
そして、きょう資料としてつけさせていただきましたのが、大阪府の「子どもの権利ノート」というものでございます。
この「子どもの権利ノート」、今申しましたこととも非常に密接に関係してくるわけでございますけれども、昨年一月から大阪府はこれを管内の施設に生活するすべての子供に配付しております。施設の入所から退所までの生活にわたって子供にわかりやすく、子供とも相談しながらこういったパンフレットがつくられております。既に施設に入所している子供に対しては施設の職員が、そして今後児童相談所から施設に措置される子供につきましては児童相談所のケースワーカーが説明をしながら、この「子どもの権利ノート」を一人一人の子供に手渡していく、そういうことが大阪府では昨年以来実施されてきております。
そういう子供、特に子供の意見を代弁する立場にある親や保護者が必ずしもその子供の意見を代弁できない状態にある措置される子供に対して、きちんと自分たちの権利というものが保障されているんだということを知らせていく。特に、児童相談所あるいは養護施設等の児童福祉施設で、このような「子どもの権利ノート」みたいなものを進めていく中で実効あるものにしていくべきではないかというふうに思っております。こういうことをすることによって、処遇内容についての子供、施設、児童相談所の意思疎通が進み、一人一人の処遇計画の適切な見直しや施設内での子供の権利侵害、午前中の質疑でも養護施設の体罰事件のことが触れられておりましたけれども、そのようなものも減少する、そういうものに貢献すると思われます。
また、法案では都道府県児童福祉審議会を児童相談所バックアップのための第三者機関として位置づけているようでございますけれども、審議会が第三者機関として位置づくのかどうかについては疑問がございます。子供の措置や処遇に対する不服申し立てを受け付けるものは、児童福祉以外の機関、人権擁護機関等もございますけれども、独立したオンブズパーソン制度も含めて、そのような機関を持って子供からの不服申し立てを受け付ける、そういうシステムが必要なんではないかと思います。
実は、この「子どもの権利ノート」も、最後に児童相談所の職員の氏名と電話番号を書いて、必要なことがあったらここに連絡するようにということを子供に言っているわけですけれども、措置した児童相談所のケースワーカーに対して意見を言うことが果たして子供に可能なのかどうか。やはり、そうでない第三者に訴えていく道をつくるべきではないかというふうに思っております。
また、児童相談所、児童家庭支援センター、施設の職員に対する定期的で効果的な人権教育を行っていくべきであるというふうに考えております。
福祉職員の、子どもの権利条約あるいは子供の権利、児童福祉法も含めた研修を充実させていく必要があると思います。人権教育のための国連十年の国内行動計画の中間まとめでも、警察職員あるいは教員等と並んで、福祉関係職員は特定事業従事者として人権教育を特に必要としている職種であるというふうに指定されておりますので、その点、計画等をつくって実施していくべきではないかと思っております。
そして、教護院を改称します児童自立支援施設、あるいは十二歳からの年齢制限が撤廃されます情緒障害児短期治療施設について申し述べたいと思います。
法案四十四条で、「家庭環境その他の環境上の理由により生活指導等を要する児童」を対象に追加したこと、あるいは第四十三条の五で、「おおむね十二歳未満」という規定を削除した。これらの対象児童の拡大によって、既に一部に見られます不登校の子供の施設入所が一層進められるのではないかという懸念が各方面から訴えられておるところでございます。不登校は、だれにも起こり得るものであることを文部省も九二年の学校不適応対策調査研究協力者会議の報告で認めておりまして、いわゆる施設に不登校の子供を入所させるという考え方に立つのではないかという懸念が、ある意味では今進んでいる流れに逆行する流れではないかという懸念が見られます。厚生大臣や文部大臣の答弁では、そのようなことはないというような答弁でございますけれども、そもそもこの不登校というものを問題行動として認識しているか否かという、これは認識にもかかわることでございます。今回、この対象児童の拡大という考え方が適切なものなのかどうか再検討していただきたいというふうに思っております。
また、自立支援における施設の位置づけを見直す必要もあるのではないかと思っております。施設だけで自立支援ができるものではありませんし、施設以外の自立支援の方法というものも模索していくべきではないかと思います。
また、法案第四十八条では、施設長の就学義務をこのたび課すことになりました。この就学義務そのものは大変重要であると思いますし、施設長の修了証書の発行に関しての規定は削除されましたが、当分の間、附則によって発行が認められております。学校図書館法の司書教諭のように、当分の間が四十年以上続くということのないように、この点、御検討いただきたいというふうに思っております。また、施設長に課される就学義務というものが保護者のものと同趣旨というふうに考えまして、いわゆる不登校の子供の出席を義務づける、そういうものではないのだということをきちんと踏まえていただきたい、そういうふうに思っております。
そして、法第三十四条の禁止行為に絡みまして、子どもの権利条約第三十四条に基づいて、子供の買春行為、ポルノの被写体とする行為、対価を伴うわいせつ行為、そういうものを禁止行為に追加してほしいと考えております。昨年、ストックホルムで開かれた子どもの商業的性搾取に反対する世界会議を受けて国内外の関心も高まっており、今回の法改正にぜひとも盛り込んでいただきたい。あるいは、条約第十九条に基づく保護者による身体的、心理的、性的虐待及び遺棄を禁止事項として追加していただきたいと考えております。
最後に、この子どもの権利条約の趣旨を踏まえれば、子供の関係法制、特に基本的な法制である児童福祉法も含めて子供の意見をぜひ聞いていただきたいと思っております。中央児童福祉審議会でも、あるいはこの国会でもそのようなことが今のところ実現していないことは大変残念に考えております。
本院では七月に子ども国会が行われるということも聞いておりますので、ぜひそういう取り組みの中で踏まえられていくことを期待しております。
あるいは、一九九九年にこの条約の採択十周年、そして日本での批准五周年を迎えますので、唯一の立法機関である国会が、子供の権利基本法というものも含めて子供関係法制を総合的に、少年法や学校教育法を含めて検討されることを期待申し上げまして、私の意見陳述とさせていただきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014237X00819970408/69
-
070・上山和人
○委員長(上山和人君) ありがとうございました。
次に、横田参考人にお願いいたします。横田参考人。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014237X00819970408/70
-
071・横田昌子
○参考人(横田昌子君) 私は、親の立場から保育問題にかかわりましてことし四十年になります。現在、全国保育団体連絡会の会長をしておりますが、私どもの団体は、公立、私立、無認可の保育所や幼稚園、学童保育、父母、保育者、指導員、園長、研究者などがおのおのの立場から実践の交流や調査研究を行って、全国組織と都道府県組織で構成している団体です。
今回、厚生委員会で発言の機会を与えられましたことに心から感謝し、保育所、学童保育に絞って意見を述べさせていただきます。
私たちは、子どもの権利条約を批准した後の初めての児童福祉法改正に当たって、子供の保育を受ける権利の内容がより明確に規定され、国や自治体の責任によって公的保育の保障が前進することを強く要望してまいりました。
お手元に資料として提出させていただきましたものは、「「児童福祉法等の一部を改正する法律」案について」、これが一つと、それから私どもの団体として中央児童福祉審議会への意見を表明した資料、これが二ページから三ページ左側にかけてあります。次に、「緊急提言 保育所の制度拡充を求めて」、私どもの研究機関であります保育研究所が、児童福祉法「改正」問題研究会を持ちまして提言をしているものでございます。今回、時間が限られておりますので、この資料等もあわせて御検討いただきますことを心からお願いいたします。
今回提出されている法案は、保育所を措置から親の選択による利用に変えること、これが最重点として掲げられていることです。
私どもは、第二十四条が変えられ、国や自治体の責任による公的保育の保障が大きく後退するのではないかという危惧を持っております。
二十四条の改正に連動して、第五十六条の保育料を所得に応じた額の徴収から保育の実施に係る児童の年齢等に応じて定める額を徴収する仕組みに変えるということが保育所を利用施設化にする道を開くものであり、率直に言って、現状を改善させるどころか制度の後退につながるものと考えています。
厚生省の説明によると、今回の法改正の背景には、少子化という大状況と共働き家庭の増加で保育所の利用自体が一般化していることの二つがあるとしています。特に、保育所入所世帯のうち所得税課税世帯が約七五%、四分の三に及んだということで、所得階層の高い人々が利用するようになっていることを挙げて、児童福祉法制定当時のようにどうしても働かざるを得ないような家庭ばかりでなくなったから制度見直しが必要だと強調しておられます。
このような発言は、国民の権利としての保育制度をあくまで恩恵的な制度ととらえ、全体として所得水準が上がったから措置制度は要らないとする基本的な考え方であり、このような方向で、安心して子供を産み育て、働き続けられるような社会がつくられるのか。保育所が利用しやすくなるのか。少子化に歯どめがかかるのだろうか。私どもはそうは思いません。
また、親が保育所を選択するシステムに変えるための法改正だと説明されていますが、現行でも保護者は既に希望する保育所を選んで入所を申し込んでおり、この間、一千名を超える全国の保育所保護者会長から寄せられた保育所措置制度を守ってほしいという要望が示すように、親たちは制度の変更を希望しておりません。第二十四条の措置を外す理由は国民の納得できるものではありません。
また、年齢に応じた均一料金体系を目指すという厚生省の説明も、保育予算を大幅にふやす裏づけがなければ料金は高いレベルで設定されることになり、保育料が払えない保護者は保育所入所ができなくなる事態も起こります。先ほどの森田先生の研究の御報告も聞きながら、本当に私たちは日本もそういうふうにされてしまうのではないかと心配いたします。
児童福祉法が制定されて五十年、保育所は国民の切実な要求によって都市、農村を問わず地域に密着した児童福祉施設として全国的に普及定着し、今日では小学校の数に匹敵するものになってきました。しかし現実は、核家族がさらにふえ、社会経済状況の変化の中で子育てと仕事の両立を求める母親はますます増加し、入所を希望して入れない待機児は毎年ふえる傾向にあります。このときに当たって、私どもは、もっと法制度も含めてさまざまな対策がこのような問題を解決する方向で動いてほしいというふうに思っております。
私たちが一番望んでいることは、住んでいる近くの保育所で産休明け、育休明け、年度途中の入所が行われ、勤務時間と通勤時間をカバーする保育時間の延長がなされることです。言いかえれば、特別の保育所だけでそういうことが行われるのではなくて、すべての保育所がこの国民生活の現実に即して保育所の水準を引き上げるような保育条件の改善が求められており、措置制度をなくすことではありません。
保育所運営の基礎をなしている保育所最低基準は、一九四八年の施行以来、一九六二年から六九年にかけて保母の配置基準をようやく三歳未満児六対一、三歳児二十対一、四、五歳児三十対一にされ、その後二十八年間全く改善がなされておりません。自治体では、国の最低基準を上回る職員配置や私立保育園への補助金など独自の充実策をとっている例がふえてはおりますが、自治体の独自施策や保育現場の努力だけでは限界があります。乳児保育の普及や保育要求にこたえた子育て支援事業の推進のために、最低基準の職員配置の改善と事務職員、看護婦、栄養士、用務員をすべての保育所に配置してほしい。このことによって、保育所は今日の社会的要請にこたえることができます。
また、労働基準法では、労働者の拘束時間は休憩時間を含めて一日八時間四十五分であり、通勤時間を合わせれば十一時間から十二時間の保育時間が必要になっています。基本的には労働時間の短縮が望まれる問題ですが、保育所は労働者の労働時間と通勤時間を考慮した保育時間を保育する、そういう保育が求められています。
今日、保育所の保育時間は全国的に十時間から十一時間が七割を占めるようになっています。しかし、最低基準の八時間原則という基準の矛盾はますます深まる一方です。例えば、延長保育対策でも、厚生省が出している補助金は、朝七時から夜七時までの十二時間保育に対して、措置費にプラスして保母一人の人件費、これがようやく財源保障としてなされた段階です。子供の命を預かる保育施設として責任が持てる体制とは言えません。
幼い子供たち一人一人の発達を保障する保育所は、子供の社会的、情緒的、知的発達を意図的、効果的に促すような一定水準の保育の質の確保が必要です。特に、日々の保育を通して親と保育者がともに子供を育てる関係をつくることが求められます。人と人とのかかわりが重要な保育条件となっているわけです。最低基準を子供の権利保障の立場から抜本的に見直し、改善することが必要だと考えております。
このような視点から、コスト削減を強いるサービス競争は、保育の質の低下や早期教育など不必要なサービスの提供を引き起こし、子供の権利侵害が発生しても規制や監督は事実上不可能になることは明らかです。子供の権利保障に市場原理は全くなじまないと言わざるを得ません。
日本の保育所の水準をつくってきた力は、私は、母親が働くことと子育ての両立を願い、保育関係者とともに保育所の増設と内容の改善を国や自治体に粘り強く働きかけてきたことによるものだと考えます。
今日、働く女性が二千万人を超し、日本経済を支える大きな力となって、さまざまな職場、都市、農村を問わず女性の労働はますます社会的にも要請される時代です。男性とともに社会に参加する女性が安心して子供を産み育て働くことに、国民が予算を増額することを反対しているでしょうか。私はそうは思いません。保育予算は困難だからこれ以上の対策の充実は不可能とする意見に関しては、私はこれはやはり改めてほしいというふうに思います。
現在、全国二万二千五百余の保育所で保育されているゼロから六歳までの子供は約百七十万います。保育に当たっている専任の従事者は、施設長、保育者、調理員を含めて約二十七万です。いわば、一人の大人が六人強の子供を育てている数字が出てまいります。保育所に費やされる税金は、今日の社会で最も効果的な付加価値を生んでいる事業であることを御理解いただきたいと思います。
また現在、全国には九千三百カ所の無認可保育所が存在しており、そこには二十二万の子供が保育されています。このような子供たちの権利を守るために、国は早急に必要な対策を立ててほしいと思います。
私たちが今回の法改正で緊急に行ってほしいことは、学童保育の制度化です。制度がない中でも子供の安全や放課後の生活や遊びを保障し、精いっぱい努力している親たちと指導員の長年の苦労を実らせてください。法制化によって国の財源保障と市町村の責任で学童保育の整備運営を行い、すべての小学校区で学童保育が安定的に実施されることを切に望むものです。
切実な保育要求は都市部だけのものではありません。過疎化した山村、農漁村でも、その地域の希望は幼子の誕生であり、子供たちの笑顔が地域の喜びである状態は、切実に各地から寄せられている声であります。言葉をかえれば、若い世代が定住し働ける地域をどうつくるかが自治体の重要な課題となっています。
これからも、時代の最先端に位置している保育所に新しいさまざまな問題が寄せられます。女子労働の保護規定の規制緩和は、たちまち保育時間問題になって保育所に持ち込まれます。倒産や失業、父親の単身赴任、家族の病気など、一つ間違えば離婚や家族崩壊になるような問題を抱えている親も少なくありません。子供たちも、小さな肩に親たちの生活や労働、家族の問題を背負って毎日保育所にやってきます。この子供たちの心をしっかりと受けとめ、親を励ます保育者たちと保育所の役割はますます大きくなって重さを増している時代です。
児童福祉法の改正の審議に当たって、地方自治体の意見や保育現場、私たちの意見を重視して拙速な法改正を行わないこと、保育所の措置の撤廃を撤回されること、これが私たちの切なる願いです。
どうも御清聴ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014237X00819970408/71
-
072・上山和人
○委員長(上山和人君) ありがとうございました。
次に、濱田参考人にお願いいたします。濱田参考人。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014237X00819970408/72
-
073・濱田多衛子
○参考人(濱田多衛子君) ただいま御紹介いただきました、養護施設を代表して参りました濱田でございます。
児童福祉法の法案を審議するに際しまして、養護施設の現場から意見を述べる機会を与えていただきましたことをまずお礼申し上げます。
現場をできるだけ知っていただきたい。たったの十五分の時間でどういうふうにお伝えできるのか本当に心もとない限りですが、資料を幾らか準備させていただきました。一番分厚いのがそうです。後で数枚扱いたいと思います。
〔委員長退席、理事情水澄子君着席〕
また、私どもの方は昨年創立の五十周年を迎えまして記念誌を出しましたので、皆様のお手元に記念誌をお届けしております。養護施設の一つの歴史、私どもの方は前身が結核の病院でしたので、その時代からのものをまとめております。後でごらんいただければありがたいと思います。
かなり緊張しておりますので、メモを読ませていただきますことをお許しください。
児童福祉法というのは、我が国における子供の精神衛生を維持促進する上で、その責任の所在をはっきりさせるための大切な法律であるというふうに認識いたしております。これしかないんです。ほかの国の人から日本の子供の精神衛生はどこが守るのですかと質問をされたときに、よりどころとなるのは児童福祉法しかないわけです。実は、外国の友人から尋ねられまして、考えてみますと児童福祉法しかないのだということを改めて気づかされた次第でございます。
その児童福祉法に基づいて、あるいはその成立の前から、戦後の養育における子供さんたちのお世話をさせていただいてきたのが私たち養護施設であるわけです。その中に私は長くかかわってまいりました。私自身、この園で育てていただきまして、創立者が一九七九年に亡くなった後、創立者の生前のたっての希望で園長に就任いたしました。
五十年前と現時点における養護施設に措置されてくる子供さんたちの状況それから家族背景を見詰めてみますと、大変な変化が生じております。その変化というのは、子供と家族が住む生活の場の背景が非常に異なってきているということです。
基本的な生活である衣食住一つとってみましても、昔は皆総じて食べるものも着るものも住むものも大変な状況があったわけでございます。つまり、子供が周りを見渡せば結構同じような子供さんたちがたくさんいたわけですけれども、現在は食べるものにしても着るものにしても住まいにしても随分と環境がよくなり、文化的な生活の基準は高くなってまいりました。その中で、現在私たちがお世話をしている子供さんたちは、幼いころより自分たちだけ大変な目に遭っている、周りの仲間とは違うんだという気持ちを根底に置いて、その中で、現時点では通常想像もできないような食事内容、衛生管理、教育環境、ひどいものでは小学校に上がる前から性的な虐待を受け続けているような子供さんたちがやってくるわけです。
そのような時代において示す子供たちの問題行動、家庭環境も整わず、通常の教育の流れの中においても普通とは異なる状態で虐げられた子供さんたちを私たちは日々お世話させていただいています。この子たちと生活をともにしながら、現時点での養護施設を初めとして乳児院、教護院など養護問題にかかわる施設のあり方を考えますと、幾つかの気になる点がありますので、意見を述べさせていただきます。
〔理事情水澄子君退席、委員長着席〕
現場での大きな悩みの一つは、養護施設の現場が一般の方々、教育関係者はもちろん、行政や児童相談所などの児童の専門機関と言われるところにさえ理解されていないということです。児童養護問題というのが社会問題であるということを官民ともに認識してきておりません。戦後の孤児たちの救済を中心とした児童福祉の視点からの施策、その延長線上に今なお意識されているというか、社会問題としての位置づけがないままに今日に至っていて、とても子供が大切にされていないということを感じさせられるわけです。
今現場は、午前中からずっとお話に出ておりますマルトリートメント、つまり不適切な処遇、アビューズ、虐待と訳されていますが、身体的アビューズ、精神的、性的なアビューズ、養育拒否、これらのケースが大変ふえておりまして、私どもの園ではアビューズのケースが六〇%を超えております。先ほど森田先生のお話の中でございました東京都のアビューズの専門家の調査によりますと、東京の養護施設の入所児童の五二%が該当児であるという結果が出ております。これは「東京の養護」という冊子で報告されておるものです。いわゆる非行を中心とした問題行動それから情緒障害、いじめなどなど、その根っこにこのアビューズの問題がございます。思春期に現象としてこのような問題行動としてあらわれてくる。
現時点では、これらのアビューズのケースというのは特に思春期に非常に取り扱い困難な症状をあらわしてくるわけですけれども、養護施設はこのアビューズのケースを処遇するサービスシステムになっておりません。これが養護ニーズとシステムのミスマッチとなっているところで、全国の多くの養護施設で利用率を下げている原因の一つとなっております。サービスを受ける必要のある子供さんたちがたくさん放置されている状況があるということでございます。
お手元に差し上げております私の資料の中の三ページをごらんいただきたいと思いますが、これは大分県の医師会の方で報告される予定になっているものです。マルトリーティドチャイルドとアビューズドチャイルドの予後ということで出されておりますが、自殺のケースがあります。これは大分県で、一昨年ですけれども、養護施設に措置されている思春期のかなり深刻なアビューズで来た子供が三名、同じ施設ですが、高いビルから飛びおりて自殺未遂を起こして重傷を負ったというケースがございました。私どもの園では死亡というところまでは至りませんけれども、こういう子供さんたちは幸せ崩しをいたします。本当に余りにもひどい取り扱いを受けてきたために、幸せになる方向に行くときに幸せ崩しをいたします。
先ほども虐待で養護施設の問題が取り扱われておりましたけれども、なぜそういうことに至ったのかというプロセスを、何かそういうことが起こったことをただ社会的に攻撃したり批判したりするということだけではなく、対象の子供さんたちがどれほど深刻な子供さんたちで、幸せ崩しをしていくプロセスの中で起こってきたことなのかというふうなこと、それと、それに対してのフォローをあわせて考えていかなければならないと思っております。
生存した子供がどうなるかといいますと、ここに載っております反復性身体的外傷、ですから重症心身障害のところに受け入れられたり精神発達遅滞となったり、それからあるいは反復性心理的外傷というところでは人格障害、これは精神病院なんかで、私どもの園でも、今大変取り扱いの難しい人格障害と診断された子供さんを預かっております。
ここに出てまいりますときにも、その子が起こした問題によってもしかしたらここに伺えなくなるかもしれないというふうな状況の中で、きのう夜遅くまでかかってケアをしてきた。ここに出てまいりますために午前三時ごろまで準備をしなければならなかったというふうなことも、何か押しつけがましいような表現ですけれども、決してそうではありませんで、そういう状況をわかっていただきたいと思って今申し上げたんです。
反社会的な行動が大変たくさん思春期に出てまいります、行為障害、非行、犯罪。思いますことは、こういう後始末のところでたくさん投資されている、ケアを受けているというところです。ここに二つの提言を挙げておりますが、一番、「ふつうに生きるための権利は保障されるべきではないのか?(死んでいった子ども達の声なき声を我々はもっと代弁していかなくてはならない)」。それから二番目に、「予防にかける行政的な費用と不幸にも障害が発生した後にかかる行政的な費用を考えれば、もう少し行政もこれらの子ども達にかかわるあり方を考えるべきではないのか?」というふうなことを挙げさせていただいております。
今、虐待のことも含めて児童を取り巻く社会環境の変化というのにちゃんと対応した社会問題としての位置づけをしていかなければ大変なことになるということをいろいろな分野の専門家の方たちもおっしゃっていますし、私ども現場では痛切に感じております。
ここで、私の出会ったたくさんの子供たちの中で最も心に焼きついて忘れることのできない一人のアビューズの事例を紹介させていただきます。
私どもの園は終戦直後に創設されまして、児童福祉法ができる前にいわゆる戦災孤児たちを一人、二人と連れ帰っては一緒に生活するというスタートの施設でした。創立者の長田シゲさんのお宅に迎える、長田家の子供として育てるという姿勢でございました。法制度ができた後も、システムの中で物を考えるというのではなく、その枠を超えて家庭の暖かさを提供してまいりました。一人一人が神の御前にかけがえのないとうとい存在であるということを大切にされた方でした。定員は四十五名で、子供たちと職員が寝食をともにしております。私も、思春期の男女児の建物に若いころからずっと住み込んでおりまして現在も寝食をともにしております。子供たちの家庭にかわる大切な場であるということを認識しております。私のことを先代のころからおかあまん、指導員、保母のことをおにいまん、おねえまんと呼んで日々生活をしております。
これから紹介するケースですが、仮に名前をMとしておきます。両親は十七歳のケースです。両親からひどい虐待、身体的、性的アビューズを受け、その後両親から捨てられ、あちこちをたらい回しにされた上で、私どものところに中三の三学期近くに入ってまいりました。神戸の震災以来一般的に使われるようになりましたPTSD、ポスト・トラウマティツク・ストレス・ディスオーダーという、つまり心的外傷ストレス症候群と言われる典型的なケースで、本当に深く心に傷をつけられてやってきた子供でした。
Mと一緒に住んでみると、しつけが身についていないので唖然とさせられる場面が多々ございました。中三の後半に入園すれば進路指導どころではないのですが、そのまま社会人として送り出すこともできず、本人の希望もあって進学させることにし、学習の特訓を始めました。本人も当園を気に入って、指導にも応じるようになり、無事高校に合格したものの、非行がおさまらず早々に退学となってしまいました。三カ月ほど、これからどうするかというふうなことをずっと本人に考えさせまして、園内での安定した人的かかわりになれてくると無断外泊、性非行などの問題行動が吹き出してきました。スタッフが夜捜し回ったり、問題への対応に振り回され続けました。その後、専門学校に通わせ、どうにか卒業いたしました。市内の恵まれた環境の職場に、寮のある職場ですが、そこに就職もでき、すぐやめるんではないかとみんな心配したんですが、意外なことに三年間続きました。けれども、たちの悪い人間関係が深まって、坂道を転がり落ちるように転落していきます。暴力団員とのつながりまで出てきてしまいました。
私どもは、本人との関係が切れてしまわないようにかかわり続けました。あるとき、自殺未遂で園にSOSがあり、その後も自殺のおそれがあるので、園の敷地内にあるスタッフの住む家にしばらく住まわせることにいたしました。少しずつ回復していったやさきに、再度悪い人間関係が復活し、薬物乱用の法律に触れる行為をして警察に逮捕されてしまいました。
接見禁止のため、私どもの法人の理事で弁護士の先生が面会に行き、本人の弁護を引き受けてくださいました。先生は、Mには私から頼まれたから費用については心配しないように、私には本人と契約したからと、双方に負担をかけないように心配りをしてくださってのことでした。養護施設には、恐らくどこでもこのような強力な支援者がいて支えられております。拘置所に移されてからも、先生は多忙な中、Mの面会に行ってお小遣いや差し入れをしてくださったりまでしました。
弁護士以外は接見禁止で、私は手紙を書き送りました。Mは、返事に次のようなことを書いて送ってきました。
今独房にいます。ここは心細いけど、おかあさんが書いた一通の手紙の内容を思い浮かべては、いろんな辛さ、寂しさを吹き飛ばしています。今の自分に一番の支えとなる手紙です。本当だったら、もう見捨てられるのが当然なのに、こんな自分にもまだ見守ってくれている人たちがいるんだなと思うと感謝の気持ちでいっぱいです。自分は恵まれています。今まで不幸な人生ばかりと思って生きてきた自分が嫌で情け無くなります。
やがて、この子は立ち直りまして、県外の職場に就職いたしました。裁判のときに検事さんから、同じことを繰り返すから二年間の求刑をするというふうなことを言われたときに、本人は、自分が一人ぼっちでないことがわかった、どんなことがあっても必ず支えてくれる人のいることがわかったからもう大丈夫だと答え、私は衝撃を受けました。人が信じる心を取り戻すのにこんなにも代償の必要なことを思い知らされたわけです。
出会ってから十四、五年の中で立ち直った子供ですが、このようにとても取り扱い困難な子供たちで、専門家のケアが日常的に必要な子供たちが数多く生活している現場である、そういうことを御理解いただきたいと思います。そして、これはほとんど専門家のいない児童相談所からの一方的な措置によるものである、ぞしてそのサポートも大変弱いものであるということ。
児童福祉法の改正案に対しては、四月一日に釘宮先生の方から質問のときに触れられた点について、私も同様の意見を持っております。基本的には、子供の施設は子供の発達を保障する場でなければならないと考えておりますが、この法案はこの発達を保障する内容となっていない面が散見され、残念に思っております。
現場としては、この法案というよりも、今後検討される施行上の問題点、最低基準の内容について大きな不安を感じております。
地方分権化、それから地域のケア、家庭の福祉のケアの見直し、そういう大きな流れの中で、これほど肥大化した中央集権のスタイルから地方分権化していく中で、中央と地方の格差は余りにも大きいものがありますから、権限と同様に財源を保障しながら、分権化のプロセスを国としても大事に見守っていくようなことを考えていただきたいというふうに考えております。
時間ですので、これで終わらせていただきます。
ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014237X00819970408/73
-
074・上山和人
○委員長(上山和人君) ありがとうございました。
以上で参考人からの意見の聴取は終わりました。
これより参考人に対する質疑に入ります。
質疑のある方は順次御発言願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014237X00819970408/74
-
075・尾辻秀久
○尾辻秀久君 自由民主党の尾辻といいます。
本日は、わざわざここまで来ていただきまして、貴重な御意見をお聞かせいただきました。資料も随分出していただきました。もうこの資料を見せていただくだけで、十五分のために参考人の皆さんが長い時間かけて御準備をいただいたことがよくわかります。改めて御礼を申し上げます。
せっかくおいでいただいておりますからお一人ずつ質問させていただきたいのですが、何しろ時間が私どもの方も一人十五分でございますので、同じ鹿児島というよしみで、私は羽生先生にお尋ねをいたしたいと思いますのでお許しください。
まず、お尋ねいたします。
今回の法改正では、利用者が保育所を選択できる制度になります。このことは逆に保育所側から言いますと、選ばれる立場、選択される立場になります。そうなりますと、どうしても保育所としては、今まで余りそんなことを考えなかったんでしょうが、当然経営努力ということを考えざるを得なくなると私は考えます。
そうしたことについて、保育所の側ではどんなことをお考えかなと思いますので、お尋ねをいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014237X00819970408/75
-
076・羽生悦朗
○参考人(羽生悦朗君) 保育所が利用者の立場に立って保育を考えるということからすれば、保護者の就業形態に合い、またどれだけ子供の個性に合った保育サービスを提供していくかということが大事であります。このためには、保護者の多くが望むような保育ニーズに関しては積極的に取り組んでいく必要があるわけです。具体的には延長保育でありますとか、低年齢児の保育でありますとか、乳児保育でありますとか、産休明け等々のいろんな事業があるわけですが、そういったことに積極的に取り組んでいく。
また、それをやるためには、今までいろんな規制がありまして縛られていたわけでございますが、そういったことの限界を取り除いていただくために、保育所側の創意工夫といいますか、やる気をそがないようないろんな規制、基準の弾力化を国あるいは市町村の方にお願いしたいと思います。
いずれにしましても、私どもは、いろんな要望に無制限にとは言いませんが、できるだけこたえていく努力をしていかなきゃいけないということは、今回の改正、選択ということに限らず今までもやってきていたつもりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014237X00819970408/76
-
077・尾辻秀久
○尾辻秀久君 私どもが今度の法改正で一番気になりますのは、完全な姿はないと思いますから、当然今度の法改正でもこれが完全な法律になった姿だとは思っておりませんが、それでも一歩でも二歩でも保育所がいい方向に姿を変えてくれるといいなというふうに思うわけであります。
今冒頭にお尋ねいたしましたのは、保育所がこれで少しは変わるでしょうか、どうでしょうか。そして、非常に単純な言い方をしていますが、現場としていい方向に変わってくれるとお考えでしょうか。そのことが気になりますのでお聞きをしておるわけでありますので、もう一回ちょっと端的に羽生先生。それから、現場の成田先生もお顔が見えますので、私のお聞きしておる趣旨はおわかりだと思いますから、簡単にその辺のことをお答えいただけますでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014237X00819970408/77
-
078・羽生悦朗
○参考人(羽生悦朗君) 今まで児童福祉審議会の中でいろんな議論がなされまして、そのことは逐次私どもも議事録を見せていただきながら、どういうことを我々は言われているんだということをずっと考えてまいりました。その中で啓発されることはたくさんございまして、私どもが足らないところもたくさんございます。
そういう叱責は叱責として、民間保育園はこれから生きていかなければならないわけでございますので、何が何でもいい方向に、しかもそれは子供にとっていい方向に進まなきゃならないということを肝に銘じて、また皆様方が児童福祉審議会で御発言なさったことを肝に銘じましてやっていくしかないと、そういうふうに思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014237X00819970408/78
-
079・成田錠一
○参考人(成田錠一君) 御質問にお答えします。
いい方向へ向かって変わるかどうかということでございますけれども、私はその方向へ変わると、そう思っております。そしてまた、これを機会にして変えなきゃいけないと現場では思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014237X00819970408/79
-
080・尾辻秀久
○尾辻秀久君 前向きにお答えいただいたので、大変安心をいたしました。
ただ、今のことについて言いましても、私どもも心配していることがないわけではありません。やっぱり選ばれる側に回るということは、これまた端的にわかりやすく言いますと、弱い立場になるという表現もできると思います。そうなりますと、預ける側の要求に対してどうしても迎合せざるを得なくなる面も出てくるかなと。特に、その要求が、場合によっては、私どものこの委員会でもいろんな審議をしてまいりましたけれども、必ずしも子供の保育にとって望ましい要求ばかりとは限らない場合もある。しかし、そういうものに対しても迎合せざるを得なくなったときにどうなるんだろう、こういうふうに思ったりもいたしております。ちょっと心配をしておることではあります。
ですから、大変難しいことだと思うんですが、子育ての好ましい姿と保育所の役割というのは、これはまさに難しい問題だなと思っておりますけれども、その辺についてやっぱり現場のお二人がおられるので、羽生先生と成田先生にお考えがあればお聞かせいただきたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014237X00819970408/80
-
081・羽生悦朗
○参考人(羽生悦朗君) 非常に難しい問題ではございますけれども、保育所においてはあくまで子供の健全な育成を目的に、何が望ましいかということを基本に置いて保育サービスの提供に当たっておるわけでございまして、そのことをそれぞれの保育所が自覚することがまず必要であると思います。そのためには、保育所は保育所保育指針というのがございます。そういったものをガイドラインにしまして、保育所の運営に反映させていくということが必要であります。
また、いろいろな情報があふれる中で、保護者に適切で正しい情報提供を行いまして、子供にとって本当によい保育というのはどういうことなのか、あるいは真によい保育を行っているのはどの保育所であるのか。そういったことを十分判断できるような情報の提供ということも求められておると思いますので、そういった面についても頑張っていきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014237X00819970408/81
-
082・成田錠一
○参考人(成田錠一君) 御質問にお答えします。
お母さん方に対する、どう言ったらいいんでしょうか、私どもと食い違う、そういう子育てに関する考え方のようなものというのは、日ごろ私どもずっと、すくすく相談と称しているのでございますけれども、今回の改正の中にも入ってまいりました、要するにお母さんの子育ての相談の機会とか、あるいは登降園の機会とかそういうところを通して、私どもは正しい育児情報というか育児に関する考え方を職員一同、日ごろからお伝えし納得していただく、こういう格好でやっております。
大変難しい、例えばパチンコをやっていて遅くなりましたというようなのは日ごろしょっちゅう出てくる問題でございますが、その辺も時間をかけてやっていけば、私どもに相談していただいたり、あるいは見聞きしたりしているような中身の中でお母さん方が変わったなというケースは、やっぱりむちゃくちゃなお母さんも残りますけれども、ほぼ半分ぐらいは、そういう形の相談あるいは助言といいますか、今回盛られましたその辺のことを通して何とかいけるんじゃないかなと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014237X00819970408/82
-
083・尾辻秀久
○尾辻秀久君 今、まさに先生が最後におっしゃったあたりを私どもも心配はいたしております。
今まででしたら、パチンコに行くのに子供を預けるなんて何ですかとこう言いやすかったのが、どうも選ばれる側に回ったからといってそれが言いづらくなるなということでは困ると思っておりますが、これはもうみんなで、まさに子供は社会全体で育てていかなきゃいかぬわけでありますから、頑張っていかなきゃいかぬと思いますし、先生方にも改めてよろしくお願いを申し上げておきたいと思います。
そこで、羽生先生にまたお尋ねしたいんですが、羽生先生はたしか最近デイサービス、お年寄りの福祉施設も保育所と一緒につくられたとお聞きいたしております。そうしたことについて先生のお考え、今までなさってきたことで思われることがあればお聞かせをいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014237X00819970408/83
-
084・羽生悦朗
○参考人(羽生悦朗君) 昨年度の事業で建設いたしまして、保育所と合築という形で三月二十一日にオープンをいたしました。名前は元気塾と申します。
今まで保育園の中で高齢者との触れ合いとかいろんなことはやってまいりましたけれども、特別養護老人ホームとかに行きましても、やっぱりそこではお客さんでございます。ここのところを子供たちとデイサービスに来られる御老人の方々との触れ合いを見ていますと、自然になれ親しむといいますか、そういう感じが見られて非常によかったなと思っております。また、お年寄りが住まれている近くで子供の姿を見ながら、人里離れていないところといいますか、言い方は悪いですが、ごく身近なところでそういう形での触れ合いができるということは非常にいいことじゃないかなと思っております。これは始めたばかりですけれども、このことに関してはよかったなと思っております。
そんな程度で済みません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014237X00819970408/84
-
085・山本保
○山本保君 平成会の山本保です。
私は、保育の方を中心にお聞かせいただき、時間がありましたら養護施設の濱田先生おいでですから、ちょっとだけお聞きしようかなと思っております。
最初に、羽生先生今大分お答えになったのでお疲れかもしれませんが、一つだけお聞きしたいんです。
今、尾辻先生のお話の中にも出てきたことかもしれませんが、今度の利用になると子供や親の立場が強められるだろう、こういうことをおっしゃいましたけれども、これは具体的にどんな効果が出てくるのだろうかということについて、想像の範囲で結構でございますが、簡単にお話しいただけますでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014237X00819970408/85
-
086・羽生悦朗
○参考人(羽生悦朗君) そうですね、いわゆる自主的にといいますか、今まで法律上は措置という形での取り扱いであったわけですが、実質的には一応保護者にとって選べるという形態はとっておりました。
ただ、それにしましても最終的な判断といいますか、どうしてもこちらに行ってくれというような形での、押しつけではありませんけれども、そういった形のものが出てきておりましたので、今回こういう形で利用者主権という形を打ち出したことでそういったことも少なくなるんではないかと。自分はこっちに行きたいんだけれども、ここが満杯だからこっちの方に行かざるを得ないという状況の中では、ある程度利用者の主権といいますか意見をもっと強く述べられるようになるんではないかなという意味ではかなり評価できるんじゃないかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014237X00819970408/86
-
087・山本保
○山本保君 どうもありがとうございます。
確かに、これまでの福祉というものが措置というこれは法律上のものであるとはいえ、後に出てきますいろんな施設と同じように法律上は全く同じに保育園が扱われてきた。しかし、これがそういう状況の中で、住民または父母の責任といいますか権利といいますか、それを強くして、そして当然そのことから責任が出てくるわけですけれども、こういう法改正をしていく一つ大きな試みであって、私も非常に期待するところが大きい。もちろん、いろんな問題が出てきてはいけませんけれども、この辺はしっかりやってもらわなきゃいかぬなと思っております。
では成田先生にお聞きしたいんでございますが、先生にはちょっと具体的に、きょうお話の中で一番中心になっておりました情報提供ということについて教えていただきたいんです。
今のお話にもありましたように、保護者が、本当によい情報とその評価基準といいますか判断基準を持ってこそ初めて子供のためになるわけでありまして、今までのように役所に任せていくというわけにはいかなくなるんだということでこの条文が入ったんだろうと私も評価するわけでございます。
先生がその中でおっしゃいましたのは、市町村が情報提供しなければならないということと、それから我々もちょっと議論の中で余り出てこなかったんですが、保育園、いわば園長さんでしょうか、保育園の方が情報を提供しなければならない、この二つが書き分けられている、こういうことを指摘されました。
これについて、例えば先生のお考えで市町村などがやらなければならない情報というのはどういう情報であるか。または、保育園で行わなければならない情報というのは例えばどういう情報であるか。そして、そのことは現状における保育園の状況というのをどのように変えていくことになるのか。この辺、整理されなくても結構でございますからお話しいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014237X00819970408/87
-
088・成田錠一
○参考人(成田錠一君) まず、市町村としてやれる情報提供というのは、例えば名古屋のような場合ですと、二百四十とか数が大変多い市もございます。うちの町内でございますと六カ園でございますので、ここから情報が提供できるというのは代表的なのは保育時間ですね。保育時間とかそれからお預かりする年齢とかそういうことが中心になろうかと思います。これは保育所で十分集約して提供できると思いますから、窓口で保護者はそこへ行けば、どこがどれぐらいの保育時間で何歳ぐらいから預かってくれるんだという情報は受け取ることができると思います。
今度は、窓口としての役所といいますか、区、町のとしてではなくて、今度はそれではできない部分というのは、それが先ほどから私が主張してまいりました後の方の章でございますね。つまり、四十八条にありますところの保育所が提供できる情報という、保育所しか提供できないというふうに考えていただければおわかりいただけると思いますけれども、これが保育内容ということになろうかと、こんなふうに思います。保育内容という言葉はちょっと語弊がありますので、保育の内容と御理解いただければありがたいなと、こう思います。これはやっぱり独自に保育所がやらなければいけない、そういう側面を持っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014237X00819970408/88
-
089・山本保
○山本保君 そうしますと、ちょっと具体的にお伺いしますけれども、市町村で行うというときに、例えばある保育園、幾つかありますが、その市内の、余りたくさんでもあれで、大きな区でもいいわけですけれども、例えば、面積そして保母さんの数、定員、そして実際に昨年入っていたような数、こんなようなものを出す。そうすると、例えば三月というよりも十二月ですか、今の高等学校の入学試験のような感じで各園のキャパシティーというのが出されて、それに対して要望が出るというようなことになるのかなと思うんです。
もし、こういうことになりますと、先生、その市内の保育園にどのようなよりよい効果というものがあるというふうにお考えでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014237X00819970408/89
-
090・成田錠一
○参考人(成田錠一君) 大変水臭い発言になりますが、公立が六つと私どもの法人立が一つあるようなところでございますので、ちょっと差しさわりがあろうかと思いますけれども、公立の場合ですと、素直に言わせていただければ、今子供の数に対して職員の数が余っております。
だから、こういう形の中で、しかも保育時間が非常に制限されているという状況の中ですと、公立保育所の中身と申しますか、その中で私たちのように大変人数が多い職員の十分なところでも、実際にゼロ、一歳の混合という形でしか、これは時間の配分とか労働時間とか、そういうことにかかろうと思いますけれども、そういう形の情報というのが公開されるわけでございます。この辺は、どういう表現をしたらよろしいでしょうか、どちらかといえば、これが選択の情報として使っていただけるんではないかなと思います。
民間でございますので、これぐらいの宣伝はさせていただいて、答弁になったかどうかはわかりませんが、よろしくお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014237X00819970408/90
-
091・山本保
○山本保君 済みません。ちょっと答えにくいところをお聞きしたのかなと思うわけでございますけれども、今のお話を伺いますと、皆さん努力されておられる。その努力に応じてといいますか、その努力の形が市民の皆さんに提供されて、それによってまた一層努力していただくというようなことがあるのかなというふうに思ったわけであります。
もう一つぐらいお聞きしたいんですが、もし時間が来ているとあれですので、先に養護施設のことについて少し濱田先生にお聞きしたいんでございます。
先生いろいろおっしゃいましたが、その中身についてはすごく専門的でありますので、ちょっと私の方からコメントはお聞きしませんが、一つだけお伺いします。
今度の法改正で、養護施設については、児童養護施設という名前の変更と、それから養護という今までの言葉というか機能に加えて、「あわせてその自立を支援すること」というのが入りましたけれども、このことについて先生はどのように評価され、また問題があると言われるのか、またはこういう面でいいとおっしゃるのか。その辺についてお聞かせください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014237X00819970408/91
-
092・濱田多衛子
○参考人(濱田多衛子君) これは全養を代表する考えとはならないかもしれませんが、私は、やはり養護という問題に社会的なイメージの悪いものをずっと感じさせられております。戦後の歴史的な経過の中で、養護という、何といいますか一つの社会的イメージ、非常に悪いものがずっとくっついてきていると思うんですね。また、よく現場を知らない方の方が多いですから、学校の養護の分野であるとかあるいは養護学校であるとか、そういうふうなところとの混乱があります。養い守るというのは悪い言葉ではありませんけれども、何かイメージチェンジすることはできなかったのかなということは名前について感じております。
また、自立を支援するということについては、自立を支援する場所、発達を保障する場所であるべきところですね。ですから、現状としては、法案の中で年齢は全く引き上げられておりませんし、じゃ自立を支援するのにどういうふうに法案の中で変わったのかというと、ただ言葉がついただけで、これは多分施行上出てくる内容なのかなというふうに感じております。
発達を保障するということは、何歳になったからもう自立てきますということではなくて、その子の、一人一人のケース・バイ・ケースの自立があるわけで、現実にはそれを現場は気持ちでやっているわけです。法律は、そこのところをさらに意識させたというふうな感じで私は受け取っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014237X00819970408/92
-
093・山本保
○山本保君 どうもありがとうございます。
釘宮先生がいろいろお聞きになるんじゃないかとは思ったんですが、申しわけありません、関心があるものですから。それと私ども、余り養護施設に関しては、まだこれから審議がありますけれども、今回議論が進まなかったものですからお聞きしたんです。
名前、その後のところですが、これはこれまで養護会などでもいろいろ問題になっております。特に機能論で、家庭代替というものなのか、それとも養護施設というものはもっとポジティブに子供に対して機能を持つべきではないかという議論、こういうこれまでの論議に一応の結果を出したものではないかなと、私自身は評価しておるわけであります。
この書きぶりはともかくとしまして、家庭の代替であるというだけですと、先ほどもそんな話が出ましたけれども、単なる子守であるというような意識になれば、これはそういうふうに社会的に見られれば社会的なステータスというのが上がりませんし、専門性というのはなかなか理解されないということからこういうのが入ったということは、私はいいんじゃないかと思っておったものですからお聞きしました。
まだ少し時間があるようですので、成田先生、またひとつお願いします。
きょう先生のおっしゃられた中に、これも言いにくいことであれば結構でございますが、二つの格差のことをおっしゃいました。それは公私の問題であり、それは今のお答えにももう一つ出てまいりました。
もう一つ、幼稚園教諭と、それから保育園の保母というものの間には格差というものがあり、それは現場では非常に困ったものだというような感覚かなと思ったのでございます。
その辺について、もう少し詳しくお聞かせいただけますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014237X00819970408/93
-
094・成田錠一
○参考人(成田錠一君) 御指摘の幼稚園の教諭とそれから保育園の保母、この間の格差は今のところはさほどありません。ただ、先ほども少しこういう表現をしましたけれども、幼稚園は教育をやっているんだ、あるいは保育園の方は、子守という言い方は余りしませんけれども、そうでないんだと。そういうのがやっぱり地域の住民に、古いところでございますので、広がっております。
ですから私、保育内容、保育内容と今まで使ってまいりましたけれども、これからやっぱり言葉の使い方を正しくいきたいなと思っておるのでございますけれども、幼稚園でも保育内容と使うわけなんです。だから、幼稚園の保育内容と当然重複する部分と、それから私ども独自の保育内容、福祉を受けた養護という側面の、ここを大事にしていくんだというようなところの地域住民への情報の伝達というようなことが、情報というのが伝わっていないという、本質的にまだうちの町内ではそんな状態でございます。
情報の公開という御質問の的から外れるかもしれませんけれども、そんなことを感じております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014237X00819970408/94
-
095・山本保
○山本保君 一つだけ、イエス、ノーで結構でございますので。済みません、確認でございます。
最後に、時間がないというふうにおっしゃったのでちょっとあれだったんですが、いわゆるこれまで越境だとか言っておったものに対して、各都道府県もしくは市町村の間で連携をするということについては、現場としてはこれは十分受けていくと、受けられるというふうにおっしゃったのでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014237X00819970408/95
-
096・成田錠一
○参考人(成田錠一君) そうでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014237X00819970408/96
-
097・山本保
○山本保君 どうもありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014237X00819970408/97
-
098・清水澄子
○清水澄子君 社会民主党の清水澄子でございます。
きょうは、本当にそれぞれの皆さんから大変貴重な提言や御意見お聞かせいただいて、ありがとうございます。
まず私は、森田先生に御質問したいと思います。
それは、今アメリカの実態やいろんな調査をしていらっしゃる中で、保育料の問題と、入所のときの選択方式というのは非常に利用者に便利であると言われながら、実際には親の所得と保育料との関係が出てくるというふうなお話があったわけですけれども、今回の改正について、そして保育料の問題についてはどのようにお考えになりますか。そして、保育料というのをどうあったらいいとお考えになっているか、このことをお聞かせください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014237X00819970408/98
-
099・森田明美
○参考人(森田明美君) 保育料に関してでございますが、私は、まずとても大切なことは、親がとにかく選択する力を持っているのかということが非常に大切な視点であろうと思います。
先ほどから選択ということが言われておりまして、もちろん子どもの権利条約も、子供が第一の権利行使の主体であるということ、そしてその次は親が代行するんだということを言っているわけですが、今現在、非常に親自体が選択力を失っている、あるいは子供たち自身の最善の利益を行使するだけの力を持っているかということに対する疑問がございます。
そうした意味で、親支援あるいは親の養育力を強化していくような支援体制というものが、これからの児童、家庭福祉という形での検討のされ方ということが私は必要ではないかというふうには思っております。そのことがまず第一点でございます。
世界では今、親になっていく過程の中で、例えばニュージーランドなんかでは、大人になっていくという教育を親支援の形で非常に手厚くしているというような国もございます。ニュージーランドなんかではエデュケアという概念を持ち込みながら、乳幼児期に教育と福祉の統一した保育システムをつくり上げようというような国もございます。まさに、日本の中に幼稚園、保育所というふうなそうした二元体制があるとすれば、それを統一する形で、さらによりよい子供たちの環境をつくるべきであるというふうなことを感じております。
そして、そういった公的なバックアップの中で親が選ぶ力をつけたならば、私は先ほど来申し上げましたけれども、非常に所得がまだ低い状況にある親たちですから、多様な形で私は保育料というのを考えていく必要があるだろうということを考えております。むしろ、保育料だけで考えるのではなく、私は、しょせん若い家庭に重い保育料をかけることは無理だと考えております。
そうした意味で、例えばこれ以上無理ならば、雇用保険の導入ですとか、あるいはアメリカ等が行ってきた保育費用の税控除の問題ですとか、あるいは児童手当、これを抜本的に改正してくださり、額の向上、今三歳までわずか五千円の児童手当でございます。これを諸外国のように額を引き上げ、なおかつ年齢をせめて義務教育のところまで、私たち希望は十八歳の子供たちというふうに考えておりますけれども、そういった期間の延長との併用の中で、若く収入が低い子育て家庭への支援というのを総合的、体系的な形で御検討いただきたいというふうに思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014237X00819970408/99
-
100・清水澄子
○清水澄子君 それでは、子育て支援の、本当に子供が豊かに育っていくということを保障するような最低基準の改善というのはどういうふうにお考えになるでしょうか。それとあわせて、最後にもう一問だけ、家庭の子育て機能の再生につながる児童福祉法の改正をと先ほどおっしゃっていたんですが、自立型子育て支援というのをどういうふうに具体的にお考えになっていらっしゃるか。
この二点をお尋ねします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014237X00819970408/100
-
101・森田明美
○参考人(森田明美君) 私は、子供を預かる、あるいは親から隔離することだけが子育て支援ではないということを先ほど申し上げました。
言いかえれば、子どもの権利条約等でもうたわれておりますように、子供たちに適切な家庭を取り戻させる、このことが非常に大切だというふうに思っております。むしろ、子供と大人のパートナーシップを探る力というものをつけるための援助こそが今求められているし、そうした人的な配置あるいは専門家の養成というのをなさった中で、各児童福祉施設の方にそういった機能を持った人たちを配置していくということも非常に重要だというふうに思っています。
まさに、エンゼルプランというのが児童福祉政策の中では今非常に大きな柱になっております。エンゼルプランの策定の中で、今まで厚生省がある種独占していたような子育て支援のところを、多様な形での各省の協力連携の中でこれを展開していくことを模索されたというふうに私は高く評価しておりますが、これが今回、初めに予算ありきという形で展開されたとすれば、この崇高なる児童福祉法がむしろ悪い方に動いてしまう。ある意味では、国民的な不安というのはそこにあるのではないかというふうに思っております。
そうした意味では、まさに今回の議論の中でエンゼルプラン等を含めて、よりよい形で予算も拡充しながら子供たちの育ちの支援をするのだという決心が私は非常に重要だろうというふうに思います。
親が選択するということを考えてまいりますと、例えば親が選択して早期教育に非常に重視、重点をした見かけのいい保育園に入れた。これは子供にとっていいかというと、決してそうではございません。私は、子供の最低基準というよりは、むしろ子供の育ちの最低基準、これを日本じゅうにちりばめていただきたい。どんな環境で子供が育とうと、この最低基準はどこでも同じである。子供の育ちの最低基準というものをぜひ検討していただきたい。施設の基準というよりは、私は子供の育ちの最低基準こそが今必要だというふうには思っております。
ですから、仮に入所したとして、転園の権利ですとか、あるいはもし親がこうした保育園を十分に選べなかったとしたら、保育内容等を含めてですが、私はいわゆる保育オンブズマンというふうな形での提言をよくしておりますけれども、地域の中での子育てをしっかり見守っていくような第三者機関をきっちりおつくりになって、そして子供たちの育ちを地域の中でしっかり見守っていくというシステムをつくり上げる。そして、地域の中で本当に次世代を担う子供たちを育てていくということの決断をしていただきたいというふうに思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014237X00819970408/101
-
102・清水澄子
○清水澄子君 ありがとうございました。
次に、菅さんにお尋ねいたします。
今回、子どもの権利条約の理念が反映していないということはこの委員会でもいろいろ議論はされているわけですが、特に不登校児という問題について、厚生省自身がいろんな文書にあたかも児童自立支援施設の対象に不登校児を対象にしているような文言を入れた文書も実際出回っていますから、非常にこれが不安を呼び起こしたと思います。この委員会では、そのことの行為をもって即対象児にはしないことははっきりしているんですが、現実にはいろいろ反社会的行動をとっている子供たちと並んでいろいろ対象になっていることも事実なんです。
そういう中で、私はここで問題を一つ、さっき施設以外の自立支援というものも考えられるのではないかとおっしゃったんですが、それはどういうようなことを考えていらっしゃるのか。
それからもう一つあわせて、この不登校児というのは、例えば学校に行けない、行かないという子供ですね。そのことの価値観はもう今考え方がはっきり、そのことが反社会的とは言えないということを言っているんです。今度は、この児童自立支援施設にそのことからまず端を発した問題行動が起きているというふうなことをよく言われるんですが、子供をその施設に入れて、今度は私たちは学習権を保障せよと言っているんですね。何か両方に矛盾があるような気がするんです。子供が勉強したいと言えばいいんですけれども、学校へは行けない、行きたくないと思っているとき、一方で入所したら学習権と言うとき、この矛盾というのはどのようにお考えになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014237X00819970408/102
-
103・菅源太郎
○参考人(菅源太郎君) まず、施設以外での自立支援ということですけれども、教護院、今度児童自立支援施設になるにしても、その教護院で行われている支援もかなり変わってきていて、実際に高校生等も入所させて個室のようなところで自立支援をしていくということを試みている例も見てきたんですが、そういう意味でいえば、実は教護院の方と話をしていましたら、そこから一歩出て、地域の中で家を例えば一軒借り上げて、まあ養護施設なんかではやられているようですけれども、やはりそこで生活して、適宜大人が一緒につくなりあるいは通うなりして、そういう形での自立というか、そういう方法がもっともっととられていいのではないか。
これには、もちろんそれにどういうふうに大人がかかわっていくか、施設の職員だけでかかわれるのか、あるいは児童委員、民生委員みたいな人たちに協力をしてもらうのか。私は、もっとボランティアというものも考えていいのではないかと思いますけれども、そういう形で施設以外での自立支援という方法も考えていいのではないかと思っております。
それから不登校のことですが、不登校児が入所対象にならないと言っているわけですけれども、いろんな理由から入って、入ったところでいわゆる就学義務が課されるということになりますと、これも教護院の方と会ったときに言われたんですが、例えば生活施設と学習施設が教護院の中にあって、きょうは生活施設で子供はじっとしていたいというか、ちょっときょうは学習施設には同じ敷地の中だけれども通いたくないんだと。今は、分校方式になっていなければ、どっちも福祉の職員ですからその辺の配慮を総合的にするらしいんですが、もし学校になって教職員が入ってきたら、何で通わせてないんだということを言われるんじゃないかという職員の方の懸念もあったんです。ただ、私は就学義務というのは課していいものだろうと思っております。
ただ、就学義務を課したときに、あるいは分校とか分教室というものが教護院に導入されたときに、今までいろいろ画一的とか硬直的とかというふうに指摘されている学校のシステムをそのまま持ち込んで子供に当てはめようとするなら、これはもう成り立たないわけです。そういう意味では、そういう分校みたいなものがやっている取り組みが実際に学校そのものを変えていくということにつながっていくという逆の発想で、ちょっと危険ではあるんですけれども、そういう発想で就学義務そのものは入れていくべきだろうと。不登校児が教護院に入らなければ、それである意味では矛盾しないのかなとも思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014237X00819970408/103
-
104・清水澄子
○清水澄子君 横田さん、無認可保育所についてはどういう改善と支援施策があるとお思いでしょうか。
そして、その次に養護施設ですけれども、予防行政のあり方といいますか、ここに提言で「予防にかける行政的な費用と不幸にも障害が発生した後にかかる行政的な費用を考えれば」とあるんですが、その予防行政というのはどういうことをお考えになっているか。
お二人にお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014237X00819970408/104
-
105・横田昌子
○参考人(横田昌子君) 私たちは、無認可保育所に対して長年にわたって、措置の責任を持つ地方自治体が、やはり保育に欠ける子供がそこに保育を受けているという事実から補助金を出してほしいという運動を全国的に展開いたしました。今日ではかなりの市それから県レベルで、その金額の多寡はいろいろありますけれども助成がされています。
しかし、国は今のところ監督基準というのを設けただけで、その存在、そしてそれが本当に子供の権利保障にふさわしい内容になっていくための対策というのはとれていないというふうに思うわけなんです。
これは八〇年のベビーホテル事件が起こって、子供の死亡事件から国は監督基準を設けたということにとどまっていて、実際に閉鎖命令も出せるという無認可の水準についての責任の基準ですね。良好な子供の育つ環境というのも最低基準の約二分の一の基準であればいいという、しかも保育者に対しても資格がなくてもいいというような監督基準になっているという問題点があります。
私どもは、無認可の実態というのは多様でありますので、一口に言うことはできません。基本的には、やはり認可保育園で保育されるべきというふうに一方では考えますが、今の現状では、例えば夜間だとか日祝祭日だとか、いろいろな多様化している保育というのにこたえているのはやはり無認可の保育所という実態がございます。
ですから、一つには、認可化できる施設に関してはやはり認可化をしてほしい。それに対して、この間、借地等でも認可ということを言って認める認可化の動きも厚生省は示していますけれども、三十人を最低限としている今の施設の整備に関する基準というのは、先ほど羽生先生もおっしゃいましたように、やはり改善されるべきであり、そして無認可で育てられている子供たちの問題というのをもっと真剣に解決していく、そういう姿勢を示してほしいということを願っています。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014237X00819970408/105
-
106・濱田多衛子
○参考人(濱田多衛子君) 今、深刻な自立困難な子供たちがどういうところへ行っているかというと、先ほどの医療とか司法関係のいろんな場所、そういうふうなところで非常に深刻な症状を示しているんですが、それが先ほどのマルトリーティドチャイルドとかアビューズドチャイルドの方々ですね。ですから、そういう専門家の方たちのお話によるとやはり早期発見、早期治療なんですね。身体的なアビューズを数多く扱っておられる小児科の先生方とかのお話によりますと、二歳ぐらいまでに発見してくれればというふうなお話です。
私は、森田先生が保育オンブズマンの話をされていまして、そういうふうなことをずっと言ってこられたというのは存じませんでしたが、私も実はずっと釘宮先生なんかに申し上げているのが、子供の応援団をつくらないとどうにもならないと。だから、これは厚生関係だけの問題ではない司法関係も、午前中もたしか裁判所のかかわり、必要性を津田先生がおっしゃっておられましたけれども、裁判所も児童問題をよく理解されていないということをとても感じます。
ですから、本当に子供を助けていくオンブズマンというものをつくっていかなきやというようなのは、何か一生懸命やっているところではみんな感じているんだなというものを、具体的には行政でどういうふうにしたらいいのかというのはわかりませんが、早期発見、早期治療ということです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014237X00819970408/106
-
107・竹村泰子
○竹村泰子君 本日は遠くからもおいでいただきまして、本当にありがとうございます。民主党の竹村泰子でございます。
もう大分、いろいろ皆様にもほかの議員からお聞きいたしましたので重なるかもしれないと思うんです。皆様にお一言ずつお聞きしたいのですけれども、時間の制限がございましてそうはいきませんので、失礼をお許しいただきたいと思います。
先ほどお答えになっておりましたが、自立型子育て支援の必要性ということを森田先生がおっしゃいました。家庭が病んでいるあるいは保育現場が苦しんでいるという、そういうお言葉がございまして、私も胸を痛くしたのでありますけれども、いかがでしょうか、先ほどのお答え以外に具体的にこういうことがあったらいいなということがありましたら一言教えていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014237X00819970408/107
-
108・森田明美
○参考人(森田明美君) 今、保育現場では多様に実践が行われていますので、本当にお時間があればたくさんの事例を御報告させていただきたいのですが、私はこういうふうなことだけではやはり足りないのじゃないかという点でのお答えにさせていただきたいと思います。
それは先ほども、例えば保育時間を長くして、親が働いている時間だけ預かる、あるいは家庭では食事が与えられない、実にこういった子供たちもたくさんいるわけでございます。朝の御飯を食べてこない。親は食べないのが常だから、子供も食べさせなくてもいいと思っている親もございます。そういった親もたくさんいるんですけれども、じゃ、家庭がそれができないから、養育ができないから保育園で遊ばせ、そして保育園で食べさせ、保育園で眠らせ、そして家庭に帰せばいいかというと決してそうではないということが私は申し上げたかったんです。
そしてまた家庭は、今回大変お母さんという言葉が出てまいりましたけれども、現代の社会の中では男女のパートナーシップあるいは男女共同参画型社会ということを非常に強くさまざまな場面で探られているわけです。
私は、先ほどの一番最初の主張のところで生活都市あるいは生活立国というふうな言葉を申し上げさせていただきましたけれども、やはり私たちは豊かな生活空間というものが得たい。五十年たってこれだけ豊かな国になったわけですから、それを私たちは子育ての場面でも豊かさ等を子供たちに与えたいというふうに思っております。
そういった意味で子供たちが豊かな地域生活ができるよな形での子育て支援、あるいは自立した子育てができて本当に選択力を持った家庭が子供たちに最適な環境が選べるような、そんな親たちを育てる、そのことも含めた子育て支援をしていただきたいというふうに思っております。
以上です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014237X00819970408/108
-
109・竹村泰子
○竹村泰子君 ありがとうございます。
菅さんにお尋ねをいたします。
児童相談所のことで、子供と保護者に施設の処遇内容等を積極的に提供して、十分な情報に基づいて両者とも意見を表明できるように、そして第三者機関あるいはオンブズマン制度というふうな御提案がありました。私も大賛成なんですけれども、児童相談所が地域においてこれまで行ってきた、あるいは現在行っているそれらの問題、それらの訴えを聞いている現状、そういうことと違うものを考えておられるのかどうか。何か具体的に、こういう形のこういうものが欲しいのだという御提案があれば伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014237X00819970408/109
-
110・菅源太郎
○参考人(菅源太郎君) オンブズパーソンという言葉、最近よく言われるようになっていまして、その具体像というのがそれぞれにあるんだと思うんですが、なかなかすぐにつくれと言っても、例えば児童相談所なら児童相談所のことにバックアップとしてつくるとなると、今回の法案にあるように審議会ということにもなります。一つにはやはり、まずできることとして、今この児童相談所での措置に対して、もちろんそうは言っても子供は非常に意見表明する力が弱いですから、その弱い子供に適切な代理人なり、結局先ほどの繰り返しになりますけれども、親あるいは保護者が代理できない子供の意見をきちんと代弁していくというシステムを今の児童相談所で措置するという仕組みそのもの、あるいはそこにオンブズパーソンのようなものを設けなくても、まずきちんとやっていくということが今の段階でできると思います。
次の段階でオンブズパーソンの導入ということになるわけですけれども、これは児童相談所だけのバックアップとしてオンブズパーソンを設けるか、あるいはもう少し都道府県なりで今だんだん導入されてきているオンブズマンの制度をこの福祉の措置に対しても当てはめていくということにするか。それは私は状況によって後者の、何も福祉のことに限ったオンブズパーソンでなくてもそれはそれでいいのではないかというふうに思っています。川崎市等で市民オンブズマン等をやられていますので、そういうものをもっと使いやすくしたものも一方で考えていっていいのではないかと。ただ、それが子供にアクセスできるものであったり、あるいは親にアクセスできるものであるということは非常に重要になるのではないかと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014237X00819970408/110
-
111・竹村泰子
○竹村泰子君 菅さんは子どもの権利条約にずっとかかわってこられたわけですけれども、実際にあれから何年かたつんですが、じゃ子供たちが子どもの権利条約のことをどのぐらい知っているかというと、やはり私どもの力も、それから周りの大人たちの力もまだまだ足りないと。学校の中でも、もし子どもの権利条約がきちんと通るならば、ほとんどの問題が解決をしてしまうということだって現場ではあるわけでして、そういう意味で条約の広報を、どうやって子供たちがきちんと学び、そして大人も学びということができるだろうかということで何かお考えがあったら教えていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014237X00819970408/111
-
112・菅源太郎
○参考人(菅源太郎君) 一つは、条約一般の広報は、私どもの調査でも、調査した都道府県、市でも大体四分の一強がいわゆる市報のようなものでの広報はこの三年間の間にしております。ただ、それがどれだけ見られたか、あるいは子供に見られたかということについては疑問が残ります。子供に対するパンフレット等の広報をしたという意味でいえば一〇%ぐらい、一〇%じゃないですね、もう少し少なくなりますか、一けたになっておりまして、それでも教育委員会あるいは児童福祉の領域ですべての子供に対して広報するということは進められております。東京都でも、あるいは川崎市でも、三重県でも、滋賀県でも年齢別のパンフレットをつくって広報しておりますので、こういうものが継続的にやられればそれはそれなりの効果を発揮するのではないかと思います。
ただ、そういうものはどうしても、知識として条約があるとか子供の権利があるということを教えるということにとどまりがちですので、そういう意味ではそれを活用する教員の資質によるところも大きいんですけれども、やはりきょう紹介したこの「子どもの権利ノート」のように、最も子供の権利が侵害されやすい状況にある子供に対して具体的に、例えば施設の中であなたはどういうことができるんだ、例えばプライバシーが保障されるんだとかそういう具体的な、非常に厳しい子供に対するところをやっぱり手厚く、あるいは外国籍の子供に対する広報も今のところ余りされているというふうには聞いておりませんので、そういうところがらまた全体にというふうに返していったらいいのではないか、こういう取り組みが非常に重要なのではないかと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014237X00819970408/112
-
113・竹村泰子
○竹村泰子君 以前、二年くらい前でしょうか、「子どもによる子どものための「子どもの権利条約」」の出版がされまして、私もときどき眺めているんですけれども、そういった子供たちが子どもの権利条約を自分のものに少しずつしていくという、そういう努力が大人の責任として重要なのかなというふうに思います。
もう一つ、施策の中に子供たちが参加していくと。大変これは難しいと思うんですけれども、子供代表の意見をきちんと審議会などでも、あるいは審議会のメンバーに子供にも入ってもらうとか、何かそういう方法があればいいと思います。今度、子ども国会というのが初めて開かれますので、私どももそれにかかわり、大切にしていきたいと思っていますけれども、そういう子供の施策に参画するということについて御意見がおありでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014237X00819970408/113
-
114・菅源太郎
○参考人(菅源太郎君) 特に、児童福祉の領域と絡んで言うならば、児童福祉施設、特に児童館のようなものの設計とか運営とかというものに対して子供の参加を保障していくと。特に、今まで児童館というのはどうしても低年齢の子供を対象にしがちであって、これを今、中高生も使えるものにしていこうという取り組みがあります。
例えば、東京都の杉並区というところでは、今度大型の児童館を区が建てるに当たって中高生の検討委員会というのを設けて、中高生の意見を大人がまた聞く、その大人と中高生との意見のやりとりの中で、施設をもうすぐ竣工して今度は運営の段階での子供の参加ということを盛り込んでいくわけですが、やはりまずできることとしては子供が利用する施設、特に子供が主人公、子供が主体となる施設の、児童福祉関係でいえば児童館の設計、運営に対する子供の参加というのは今すぐにでも取り組むべき課題ではないかというふうに思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014237X00819970408/114
-
115・竹村泰子
○竹村泰子君 もう余り時間がないのですけれども、私たちは、これは日本人のもしかしたら特性なのかもしれません、欧米ではもっと子供たちがいろんなところに参画していっているのではないかと私は思っているんですけれども、何か子供が子供がということで、ばかにしているわけではないんですが、やはり大人がすべてを取り仕切っていると。大人は権威があって、常識的でというふうな思い入れが非常にあるのではないかということですね。今の子供たちの中高生の検討委員会とかそういうことに児童館とか、例えば図書館とかそういうところに地域で参画をしていくということは非常に大事なことだし、結局みんなのためになるのではないかというふうに思います。
先ほどからお話にも少し出ておりましたけれども、エンゼルプランの地域での発展の仕方といいますか、具体的にこうやればもっとエンゼルプランが生活に密着していくよとか、エンゼルプランを出したけれども、ちっとも自分たちのものになっていかないみたいな、そういうそしりを受けがちでありますけれども、そういうことについて御意見があれば最後にお聞きして終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014237X00819970408/115
-
116・菅源太郎
○参考人(菅源太郎君) 私は、子育て支援の部分でのエンゼルプランについてどこまでここで申し上げられるか、ちょっと自信がないんですが、かなり都道府県レベルでは、大阪府の子ども総合ビジョンであるとか、神奈川県の子ども未来計画であるとか、こういう地域の児童育成計画というのは、一つはもちろん少子化あるいは子育て支援ということを踏まえつつも、もう一方で子供の権利の尊重、子供の主体性というものを同時に同じような比重で位置づけているんですね。単に子供が少なくなったからとか、あるいは就労と育児の両立とか、そういうことだけを柱に据えているのではなくて、両面を掲げているわけです。
もう一つ特徴的なのは、大阪府の子ども総合ビジョンでは、教育の充実ももちろん柱には立っているんですが、七つの柱の中のトップに遊びというのを位置づけているんですね。教育の充実を二つ目にして、一つ目は遊びというふうに、これは大分議論があったようですけれども。そういうことをしているということもありまして、そういう縦割りを超えた施策、大阪府はその推進のための本部もつくっております。
そういう計画をつくることによって体制も整備され、特に遊び等の子供社会というか子供環境というか、そういうものが子育てあるいは社会的な子育て支援と同じような比重で、そういうものももちろん結果的には子育て支援になるんだということで位置づけられている。そういうものが、もっとエンゼルプランの地域版の普及に当たっては考えられていいのではないかと思います。
最後になりますが、子供になりますとどうしても子供イコール教育というか、子供は教育の領域のことととらえられがちで、また教育の領域になりますとどうしても学校というふうになりがちということもありまして、そういう意味では、そうではないんだということをもう一遍この辺で考えてみる必要があるのではないかなというふうには思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014237X00819970408/116
-
117・竹村泰子
○竹村泰子君 ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014237X00819970408/117
-
118・西山登紀子
○西山登紀子君 日本共産党の西山登紀子です。
それぞれの角度から児童の福祉について非常に熱心な御提言、御意見をいただきまして、ありがとうございます。
午前中に引き続きまして、私は、保育の分野について少しまとめて御意見をいただきたいと思いますので、参考人の皆さんの中で御意見を伺えない方もあるかと思いますけれども、御容赦をいただきたいと思います。
横田参考人にお伺いしたいんですけれども、長い四十年間という保育運動の蓄積がおありになるわけですが、五十年ぶりの今回の法改正、いろいろな思いを持っていらっしゃると思います。先ほどの十五分間の陳述ではとても語り尽くせない思いがおありだろうと思います。
そこで、お伺いいたしたいと思うんですけれども、今回の法改正で、保育の現場で、例えば園長さんであるとかそれから保育者であるとか保護者であるとか、そういう方々がどんな不安をお持ちなのか、具体的に教えていただきたいと思います。
〔委員長退席、理事情水澄子君着席〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014237X00819970408/118
-
119・横田昌子
○参考人(横田昌子君) 一番共通した不安は、今回の法改正の流れが八〇年代から続いている公的保育の後退を迫るという中で出てきているということに対する不安、これが一番大きな不安だと思います。
特に、法案の二十四条に関してなんですが、例えばそういう選べることになることに対して現場はどんな不安を持っているのかというと、保育者たちは、子供たちはやはり就学時までは地域の友達や親たちの緊密な人間関係をつくっていくということが大変大事なので、保育者は親の選択が何を基準になされていくのかということを大変心配しています。
多様な保育要求という流れでその選択ができるということが強調されているわけですが、実際にはどの保育所もそういうふうになりたい、親の要求を受けとめていけるようになりたい、ですけれどもそうなれない問題ですね。そこにはやはり、先ほど私申し上げましたような保育の条件の限界というのがたくさんある。そのはざまでやはり不安を強く感じているということですね。
それから、入りたい保育所の親たちの評価というのは大体そんなに大きな差がないわけですね。そうしますと、そこに殺到してしまうんじゃないか。申し込みが殺到した場合には、かえって選択しても入れなくなるのではないか。いわば競争が激しくなるというか、入る側も一定制限がある定員の枠内で入所が本当に保証されるのだろうかという心配です。それから、森田先生もおっしゃいましたように、親はどのように情報を判断していいのかなかなかわからないという不安感を述べている親もございます。
また、保育所の側の、具体的に二十四条の三項の条文の中、定員オーバーとかというのは大変あいまいな表現で、親が入所を希望した場合に保育所に入所を図る考え方というのは大変あいまいで、定員オーバーだとか、これまでやはり子供の年齢に応じて発達を保障していくという観点で最大限年齢別の保育というのを考えてきた、それが否定されるのではないかというような不安もあります。
また、福祉事務所のケースワーカーなどに聞きますと、保育所はこれまで措置施設として、生活保護世帯や母子・父子家庭、これも最近大変保育園でふえております。毎年ふえる傾向にあります。虐待を受けているのではないかという子供の発見や、そしてその可能性のある場合の親への働きかけというのは、保育所というのは生活と遊びを通してという施設でありますから、親も援助が得やすいし相談もしやすいという一面がございます。そういう点で、今までやれていた実践が後退するのではないかというような不安を持っています。
〔理事情水澄子君退席、委員長着席〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014237X00819970408/119
-
120・西山登紀子
○西山登紀子君 今、五人に一人は保育所育ちということでございまして、私も三人の子供を産休明けから育ててきたんですけれども、もうその子供たちも三人とも有権者になっているわけです。
ということになりますと、五人に一人の有権者を小さいときから保育所で育てていくということですから、保育所というのは単に子供を短時間預かるというふうな、そういうものではないだろう、非常に重要な役割を持っていると思うんです。とりわけ、今日核家族化が非常に進行する、少子化というような社会のこういう変化のもとで、以前にも増してこの保育所の役割というのが非常に重要になってきていると思うんですけれども、今日的な保育所の役割をどのように評価されていらっしゃいますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014237X00819970408/120
-
121・横田昌子
○参考人(横田昌子君) 実際に、親たちは核家族がだんだんふえてきております。そういう意味では、働いているとか働いていないとかということではなくて、一人二人の子供を産み育てていく上では大変緊張も不安感も高いというのが私どもが保育の現場で見る姿なわけです。しかし、親たちは同じ子育てをしている仲間の親たちからの経験を聞いたり、そしてまた、信頼できる保育者との関係が結ばれていくということで、保育所は単に子供を育てるということだけではなくて、やはり親そのものが親になるという、そういう援助をしていかなければいけないという役割は今日大変大きくなってきているというふうに思います。
そういう点では、今日保育所が、これは例えば私どもの団体でいいますと、七〇年代の半ばくらいからそういう若い親たちの悩みを保育所としてはいろいろな地域の調査、親たちの声を聞く中で発見して、そして保育所をできるだけ地域に開かれたものにしていくという活動が始まりました。
その中で、やはり家庭で子育てをしている母親たちもまた核家族の中で、近くに子供の友達もいない、自分の友達も少ない、遊び場もない、交通事故の危険にさらされている、また育児情報にだけ頼ってみると自分の子育ては大変だめな子育てをしているのではないかという不安が強いわけです。そういう意味では、保育園の子供たちの育つ姿とか保育者の子供に対する働きかけを見ることによって、他の保育所に入れられない場合でも大変保育所との交流を強く期待しているという姿があります。
また、調査の中では八割近くの地域のお母さんたちが、自分が病気をしたときに緊急に預かってくれる保育所であってほしいという強い要望を持っておりまして、そういう意味では今回の四十八条の二の中での保育所の相談活動等の努力義務というのは、これは時代の要請にこたえる保育所の大変重要な役割だと思います。
というのは、保育所は、子供を育てる情報それから手だて、文化、そういうものをやはり蓄積してきているという点において、地域に大変密着して数多く全国的に存在しているということからも今後大きな役割を果たすものと私たちは自覚しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014237X00819970408/121
-
122・西山登紀子
○西山登紀子君 森田先生にお伺いしたいんですけれども、大変外国の研究もなさって示唆に富んだ御意見をいただいたと思っております。
そこで、日本の保育の非常によいところは、親の収入によって保育所がランク分けされていないところだと。これは私は、やはり日本の保育の措置制度が、最低基準も保障しているし、財政的にも保障しているし、それから組織もきちっと持っている、こういう結果ではないかというふうに思っております。
ところが、先ほど大阪の資料にもありましたように、実は保育所をやめた子供たちの理由は二五%が保育料が高いからだと、こういう現実の矛盾もあるわけですけれども、今回の法改正、二十四条、五十六条があるわけですが、こういうふうに日本の保育制度の非常によい点が果たして伸ばされるか。そして、今非常に困ってきている、保育料が高くて入れないという保護者の矛盾、問題、これが解決されていくか。その点はどのようにお考えでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014237X00819970408/122
-
123・森田明美
○参考人(森田明美君) 私は、基本的には措置という言葉に対してのこだわりは余り持っておりません。
ただし、私は、保育を必要としている子供たちすべてが保育への権利を持っているということを常々主張してきております。つまり、子供たちというのはどんなところにどんな家庭に生まれようとも、それぞれの子供たちに適切に育つ環境が与えられなければならない。それはどの子供たちにとっても与えられている権利であるというふうに思っているからでございます。
ですから、今回の法改正に当たって、私は最も大切に思っておりますことは、本来ならば「保育に欠ける」という条項を省いていただきたかった。そして、保育を必要としているという子供たちすべてに提供できるような形での変更をお願いしたがったというふうに思っております。このことが第一点。
それからもう一つ、そうなるとすると、公的な費用の追加投入といいましょうか、そういったことをやはりきっちり押さえていかないと、どうしても保育現場へのしわ寄せが厳しくなっていくということになります。
保育者が疲れていたのではいい保育はできない。これは諸外国等で見ていますと、非常にゆったりと、そして子供たちをゆっくりと育てております。なぜこんなに日本の子供たちが急ぎ、そしてあくせくして育っているのか。本来ならば楽しい子育ての時期を、親たちもあくせく、子供たちもあくせくして育っている。こういった環境を何とか解決しなければいけないというふうに思うわけです。
それから、保育料に関してでございますけれども、私は先ほど申し上げましたように、保育料そのもので軽減するというふうなことに関しては、やはり受益者負担という原則を貫く限りはかなり無理が生じているのではないかというふうに思っております。もちろん、それを受益者負担という形で考えなければいいわけですが、どうしてもそこのところを外さないならば、先ほど申し上げたような多様な形での所得の追加、いわゆる所得保障の追加をしていくということ、あるいはほかの保険制度を含めた形での抜本的な改革をしていくというようなことの中で、若い世帯の子育てを支援していくというシステムを考えなければいけないのではないかというふうに思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014237X00819970408/123
-
124・西山登紀子
○西山登紀子君 横田さんにもう一度お伺いしたいんですけれども、競争原理の導入で保育の水準が上がると大臣も答弁していらっしゃるわけですが、競争原理で保育園がよくなるというふうに思われるでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014237X00819970408/124
-
125・横田昌子
○参考人(横田昌子君) 今日の競争原理というのは、どちらかといえば日本のそういう経済的な法則として使われている言葉だと思うんですが、私は、子供は、先ほど森田先生もおっしゃいましたように、ゆったりとした環境の中でできるだけ保育者が密にかかわり、子供の要求している、私は赤ちゃんが泣くことだって子供の一つの要求の表現、意見表明なんだろうというふうに思うんですが、そういう子供の要求を受けとめるというのは、いわば競争原理で、コスト論でやっていく場合には全部、そういう子供の基本的に要求しているものを見失ってしまうということが一番問題なんだと思うんです。
さらに、今の福祉全体の流れからいいますと、公的にそれを保障していくというよりは、もっとコストが安くなる方法を導入していくためには民間企業でもいいじゃないかという考え方も出てきているという点で、やはりそういう点では絶対なじまないというふうに思っています。
競争原理の導入をするというよりは、やはりすぐれた実践をしている保育園や、それからいろんな理論から保育者たちが学び、専門性を高め、そしてよりよい保育を目指し、親たちにもその成果を親の子育て、そして親の子供の見方にもきちっと伝えていくということ、それこそがまさに保育がよくなる道だろうというふうに思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014237X00819970408/125
-
126・西山登紀子
○西山登紀子君 最後ですけれども、保育がよくなるために国に何を要望されますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014237X00819970408/126
-
127・横田昌子
○参考人(横田昌子君) 私は、子供を産み育てるそういう世代が本当に人間らしい子育てができるようにという点から、やはり措置制度というのは、午前中の日本弁護士連合会の津田先生がおっしゃいましたように、児童福祉法の中で唯一社会的責任を明確にしている二十四条の条文なんです。これは私は、四十年間の自分の体験で本当にまさに体験してまいりました。
というのは、私どもが、核家族が進み、女性の社会参加が進み出したいわばはしりの世代なわけです。そのときの保育所の姿というのは、三歳以上、保育時間も大体六時間程度、そして保育所の規模も本当に貧しいものだったと思うんです。一つの園に園長を含めて三人保育者がいれば、大体六十人の保育園が経営されているという時代でした。そのときに私たちは、二十四条があるということに気がついて、二十四条でまず入所させてほしい。そして、入所させて自分たちの子供に本当にちゃんと私たちが望むそういう保育を受けさせたいということで自治体に働きかけ、国に働きかけてくる過程が、まさに日本の保育所の数がふえ、そして内容が、本当に長くかかりましたけれども今日の姿になりつつあるということだと思うんです。
ですから、措置制度というのは、やはり保育に欠けるという大変言葉の上では、私はもっとこれは保育所が整備されていくならば必要とされるというふうに変わったらすばらしいことだと思いますけれども、保育に欠ける子供の保育の責任というのを社会的にきちっと規定して、そして保育の基準を最低基準で示し、その費用を国、地方自治体が負担していくという措置制度はやはり堅持されてほしいというのが強い要望です。
そして今、特別の保育対策として、多様化している保育に対する対策は五カ年事業ですね、エンゼルプランのもとで。しかし、この事業というのは継続についてのきちっとした厚生省の方針が出されていないわけです。そして、五カ年事業の中で重視されていますのは、乳児保育、保育時間の延長そして一時的保育、地域子育て支援センター事業というこの四つが柱になっていますけれども、最初の二つは既にもう大体達成に近い状況になってきている。むしろ、予算がそのために足りない、その足りない場合にどうするかというと、認めてきていた事業すら予算の範囲ということで切り捨てていかざるを得ないという厚生省の対応がございます。
そういう意味では、やはりちゃんと長期的に多様な保育要求にこたえられる保育所の条件整備をお願いしたい。予算をふやし最低基準を改善してほしいというふうに願っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014237X00819970408/127
-
128・釘宮磐
○釘宮磐君 最後でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
きょう、午前中の参考人の皆さんへの質疑の中で、私は老人福祉問題に比べて児童問題というのが非常に立ちおくれているというお話をさせていただきました。
その端的な例として、昨日我々がお伺いをした教護院と最近建てられた特別養護老人ホームの施設そのものを見ても非常に大きな差があるというようなお話をさせていただいたわけでありますが、午前中の四人の参考人の皆さん、異口同音にそういう認識を持っていただいておるということで、私どもはそういう認識に立って、これからこの児童福祉の問題、一生懸命取り組んでいかなきゃならないというふうに思っているわけです。
そこで、濱田参考人にお伺いをしたいんですが、最低基準の見直しが今後この児童福祉法の改正とあわせて行われていくわけですが、今施設における居住部門で非常に劣悪な部分があるという話をしましたが、施設を実際に経営されている濱田参考人に、そういった意味での最低基準の見直しについてお伺いをいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014237X00819970408/128
-
129・濱田多衛子
○参考人(濱田多衛子君) 皆様のお手元に資料としてお渡ししております一ページ目を見ていただきたいんですが、私は、最低基準の中で特に職員の配置基準とそれからスペシャリストの配置、それから職員の待遇改善ですね。それと、今、釘宮先生も言われた施設整備の問題があると思うんですが、一ページ目の資料でそれぞれの種別に、この資料は平成四年、ちょっと古いんですが、東京都の養護施設の部会で施設の措置費の積算について分析した冊子を出したんです。その中にある表ですが、施設の職種別措置費の本俸単価ということで、それぞれ指導員、寮母・保母、栄養士ということで、救護施設から養護老人ホームからずっと書かれております。
例えば、特別養護老人ホームの寮母さんというのは特に学歴とか資格を問わないわけですね。養護施設の保母の場合には短大か大学卒ということで、資格も国家資格を持たないといけないことになっておりますけれども、寮母さん、保母さんの措置費の中に含まれる本俸の基準、これがずっと、るる見ていただいたらおわかりになるんですが、養護施設のところでがたんと落ちているんですね。そして、指導員の算定の基礎、どういうふうなものが根拠になっているのかわからないんですけれども、ずっと高い額が積算として入っていて、養護施設のところで一万三千円くらいぽんと落ちているわけですね。栄養士さんもそうです。すべての積算の内容が低いものになっている。そして、その次のページでは今度は特殊業務手当というものがございます。特殊業務手当、それぞれの種別にずっと一二%であるとか高いところでは一六%、ところが養護施設は四%となっております。
こういうふうな、先ほどずっと述べました障害のある子供たちから見ると、養護施設で生活する子供たちは歩いたり食べたり何不自由なく振る舞えるわけですが、それで何ら問題なく見えます。でも、養護施設に預けられる子はまだ恵まれているんですけれども、それでも自分は家族から捨てられたという気持ちを持つことが多いんですね。
虐待されてかつほうり出されたという気持ちから、入園当初はしばしば無断外泊とか園で他児への暴力を振るったりとか、その子の受けた心の傷が深ければ深いほど激しい行動をとっていくわけです。そのたびに勤務時間を超過したり予測できない勤務交代が入ったりする中で、子供たちを捜し回ったりとか事故を起こさないように注意しているのが職員の大切な仕事の一つになっているわけです。措置される子供が急にふえたりとかあるいは子供同士の組み合わせが悪いとかというときには、数カ月あるいはもっと長く落ちつかない状態が続いたりすると、この仕事にやりがいを求めてくる若い職員たちも疲労こんぱいしてくるわけで、そしてやめていくようなことも起こっていく。
この人たちに、何をどのようにしてその情熱をなくさないように働きかけたらよいのかということを仲間たちと会うと頭を痛めるわけですけれども、やはりなぜ身分保障が養護施設のみこのように低いのか。実際には、私どもの方もほとんどみんな自分の意思で住み込んでくれておりますし、そういうふうな本当に一生懸命やっている者に対して措置費が、一つ職員の待遇のところをとってもこういうふうな状況であるわけです。
そして、職員の配置基準というものも、この五ページ目から、今回全養が最低基準改正に伴う検討課題の案について出しておりますけれども、それぞれ例えば定員六十名の場合にこれだけの人数が必要であるという数が、やはり二対一という数が提案されております。でも、この計算の中では研修とか出張とか、あるいは今私が前段のところでもるる申し上げた突然の対応を迫られるような何かのときの積算は入っていない、それで二対一。それは六十名定員の場合で言いますと、現在六十名定員のところでは十人という指導員、保母の数ですので、新しい基準としては三倍になるということになります。
それから、専門家の配置というのも、それぞれこういうふうな専門家が今の子供のニーズから見れば必要ですというふうなものもここにずっと挙げられておりますので、見ていただきたいと思います。
それから、施設整備ですけれども、これは利用率が全国的に下がっている原因の一つがこれだと思います。先ほど釘宮先生がおっしゃいましたけれども、老人の方に本当に手厚く施設整備のお金がつぎ込まれておりますけれども、養護施設はいろんな、例えばメニュー事業なんかをやろうと思っても、今生活している子供たちを情緒不安定にするような内容のものは突然できないわけですね。そこのところはやはり環境整備した上でしないといけない。でも、それだけの投資が行われてこないわけですから、とてもイメージの悪い場所として地域の中にある、存在を強いられているところが多いのではないかというふうに考えるわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014237X00819970408/129
-
130・釘宮磐
○釘宮磐君 今、濱田参考人からお話がありましたように、私は、この養護施設を含む、教護院もそうでありますが、本当に心に傷を負った子供を家庭にかわる場所として受けとめる施設として、やはり家庭以上のものをこれから備えていかなければならない、そんな感があるわけです。そのためにも、この最低基準の見直しの中で我々十分働きかけをしていかなきやならないと思うんですが、きょう濱田参考人が事例でMさんの話をしておりました。私は、Mさんは濱田園長にめぐり会えたから立ち直れたんで、そういう意味で心の痛み、それをしっかりやっぱり受けとめてくれる人、それを子供たちは求めているんだろう。
先日、小泉厚生大臣が、子供を育てていく中で、子供がやっぱり周囲に愛されているという実感を持つということで子供の健やかな成長があるんだというようなお話をなさっておりましたが、私は、まさにこのM君は濱田園長がこれでもかこれでもかというぐらい支えてきてくれたことによって彼が立ち直っていったんだというふうに思うときに、こういう子供を救えないような児童福祉法ではどうにもならない。私は、このことをあえて申し上げておきたいわけでございます。
私は、そういう意味で児相のあり方、これは児相の職員の資質の問題等も言いました。やはり、子供がそういういろんなケースを持ってきたときにその心の痛みをしっかり受けとめて、そして本当に子供を支えてあげる、また子供がこの人は自分の気持ちを受けとめてくれているんだというような実感を持ったときに子供の更生というのはあるんだろうと、私はこのように思っておりますので、ぜひ濱田先生には頑張っていただきたいなというふうに思います。
それから、時間がもう参りましたので、最後に森田参考人にお伺いをいたします。
保育園の問題で、特に過疎地域における保育園はこれから子供の争奪戦が相当激しくなると思うんですね。そのために、無認可保育所であるとか幼稚園であるとか、その辺とかなりの子供の奪い合いになる可能性があるわけですけれども、その際に、先ほどいみじくも親が選択力があるのかという話がありました。
私も、その点は非常に危惧をしておりまして、安かろう悪かろうで、とにかく親は安ければいいと。しかも、無認可保育所なんというのは、大型のバスで随分遠くから子供を集めてくるわけですね。しかも保育料は安い。そうなると、既存の認可保育所はもう大変な危機感を持たざるを得なくなるわけです。一方で、安かろう悪かろうで、もう小さな園庭にいわゆる芋を洗うような状況で遊んでいる子供の姿を私はかいま見たことがあるんですけれども、そういうふうな中で、一体その辺をどういうふうに防止していくのか。
これは、もう親が本当に選択権があればそんな選択をしないと思うんですけれども、その辺をちょっとお伺いをしておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014237X00819970408/130
-
131・森田明美
○参考人(森田明美君) 大変難しい御質問で、実は私、昨年東京都の方の生活都市東京プランというのを、東京都の方は国際都市からお変えになるということでの専門委員をさせていただきました。
そのときにも、東京は非常に過疎のところがございます。そこで、私も同じように、地域に子供たちを返してほしいというふうなことを申し上げましたときに、そちらの村の村長さんの方から、一体うちの保育はどうなるのかという御質問を受けて、本当に私は、そこの問題をどう解決するかということが大変重要な問題だということを考えたことがございました。そのときから、私、いろいろな書物あるいは調査データなんかをもとに考えてまいりまして、今現在はこのように考えております。
先ほども鹿児島の先生の方からもありましたし、それから全国私立保育園連盟の方からの資料の中にもございましたけれども、一つはやはり分園という方法もあるだろう。ただ私は、そんなに先ほども申し上げましたけれども、規模が大きければいいというふうには考えておりません。よく皆さん、子供には集団の規模が必要だとかとおっしゃるけれども、世界じゅうを見てまいりますと、十人前後のところで非常にいい保育が行われているところもございます。むしろ、私は大き過ぎるんではないかというふうに思っておりまして、しかも地域には何も子供だけがいるわけではない、高齢者も一緒に生きていく。
それからもう一つ申し上げると、その保育所の子供たちあるいは三歳から六歳までの子供、就学前の幼児になりますと幼稚園の子供たちもいるわけです。少し様子を見てみますと、実はその地域にまた幼稚園があったりする。この幼保関係の総合的な一元化を求めての検討も今必要だろうというふうに私は思っております。
子供がいる空間、小学校の低学年と幼稚園、保育所、こういった地域の子供たちが縦の関係の中で、もう一度地域の中で遊び込めるような、そういった地域の再生を考えて子供の数ということを保障していく。それはやはり、子供たちの遊びにとってはどうしても友達というのが必要です。仲間というのが必要です。ですから、どうしても子供というのは必要なんですが、それは何も同じ年齢じゃなくてもいい。そしてそれは、もし子供がいなければ大人たちでもいい。高齢者であってもいい。
私は、アメリカで、六十歳代の方たちがシルバーボランティアでたくさんおいでになっていらっしゃる、そういったセツルメントのところを訪問いたしました。赤ちゃんとお年寄りが同じような数で、お年寄りがロッキングチェアにお座りになって、そして赤ちゃんを本当に大切に抱っこしていらっしゃる。そういったシーンが日本の中にどうして再生できないんだろうかということも考えます。
そして、やはり地域の中で子供を育てる、高齢者を育てるという、そういった地域づくりをも含めた形での過疎地対策ということを考えられないだろうか。そういった人間を大切にする空間づくり、地域づくりということをぜひ御検討いただきたいというふうに思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014237X00819970408/131
-
132・上山和人
○委員長(上山和人君) 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。
参考人の方々には、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして、厚く御礼を申し上げます。
本日はこれにて散会いたします。
午後四時十七分散会
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014237X00819970408/132
4. 会議録のPDFを表示
この会議録のPDFを表示します。このリンクからご利用ください。