1. 会議録本文
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000・会議録情報
平成九年六月十七日(火曜日)
午後二時開会
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委員の異動
六月十三日
辞任 補欠選任
加藤 修一君 水島 裕君
六月十六日
辞任 補欠選任
木暮 山人君 牛嶋 正君
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出席者は左のとおり。
委員長 上山 和人君
理 事
尾辻 秀久君
佐藤 静雄君
和田 洋子君
菅野 壽君
委 員
大島 慶久君
塩崎 恭久君
田浦 直君
中島 眞人君
長峯 基君
南野知惠子君
宮崎 秀樹君
牛嶋 正君
水島 裕君
山本 保君
渡辺 孝男君
今井 澄君
西山登紀子君
釘宮 磐君
国務大臣
厚 生 大 臣 小泉純一郎君
政府委員
厚生大臣官房総
務審議官 中西 明典君
厚生大臣官房審
議官 江利川 毅君
厚生省健康政策
局長 谷 修一君
厚生省社会・援
護局長 亀田 克彦君
厚生省老人保健
福祉局長 羽毛田信吾君
事務局側
常任委員会専門
員 大貫 延朗君
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本日の会議に付した案件
○介護保険法案(第百三十九回国会内閣提出、第
百四十回国会衆議院送付)
○介護保険法施行法案(第百三十九回国会内閣提
出、第百四十回国会衆議院送付)
○医療法の一部を改正する法律案(第百三十九回
国会内閣提出、第百四十回国会衆議院送付)
○良い看護の実現に関する請願(第三号外一八件
)
○放課後保育(学童保育)対策事業の法制化に関
する請願(第二八号)
○老人医療の患者負担に関する請願(第三七号)
○高齢者の医療と生活の安定等に関する請願(第
四五号)
○薬害エイズの真相究明、恒久対策の充実、薬害
根絶に関する請願(第六八号外一件)
○公的介護保障制度の早期確立に関する請願(第
一〇二号外三四件)
○介護保障の確立に関する請願(第一〇三号)
○介護保障の確立と医療・福祉・年金の改善に関
する請願(第一〇四号外一件)
○児童福祉法の一部改正に関する請願(第一〇七
号外一六件)
○国民健康保険制度の平成九年抜本改革に関する
請願(第一二二号外三七件)
○小規模作業所等成人期障害者対策に関する請願
(第一二四号外一件)
○公的介護保険制度創設反対、消費課税による介
護サービスの充実に関する請願(第一四一号外
一件)
○介護保険の創設と医療保険の改革に関する請願
(第一四五号外二〇件)
○厚生省汚職の糾明、医療保険改悪反対に関する
請願(第一九七号外一二〇件)
○医療保険制度改悪反対、医療の充実、介護保障
の確立に関する請願(第二一一号)
○医療等の改善に関する請願(第二二八号外七四
件)
○障害を持つ子供たちに対する福祉施策の充実に
関する請願(第二五〇号)
○児童福祉法の理念に基づく保育の公的保障の拡
充に関する請願(第二六八号外二五件)
○国民医療及び建設国保組合の改善に関する請願
(第三二〇号外六四件)
○医療改悪反対、介護の充実に関する請願(第四
一四号外二件)
○医療保険制度の改悪反対、医療の充実に関する
請願(第四一八号外四件)
○患者負担増となる医療費改正案反対に関する請
願(第四八九号)
○婦人相談所及び婦人相談員の義務設置存続に関
する請願(第五八四号)
○すべての希望者が安心して受けられる公的介護
保障に関する請願(第五八六号外三件)
○乳幼児医療無料制度の確立に関する請願(第五
九〇号外四件)
○保険による良い病院マッサージに関する請願
(第六四六号外一五件)
○平成九年度医療保険制度改正等に関する請願
(第六八三号)
○腎(じん)疾患総合対策の早期確立に関する請
願(第七二一号外五二件)
○健康保険法等の改定反対、患者負担の大幅な引
上げ中止に関する請願(第七三六号外五件)
○重度心身障害者及び寝たきり老人とその介護者
が同居入所可能な社会福祉施設の実現化に関す
る請願(第七四一号外九件)
○療術の法制化に関する請願(第七四三号外一五
件)
○男性介護人に関する請願(第七五〇号外八件)
○医療保険制度の改悪反対、介護保険法案の撤回
に関する請願(第八四二号外一二件)
○元満蒙開拓青少年義勇軍犠牲者に対する援護法
適用に関する請願(第九〇〇号)
○被爆者援護法の改正に関する請願(第九二二号
外一五件)
○医療と介護の拡充に関する請願(第一〇六八号
外四二件)
○医療保険制度の改悪反対、医療制度の抜本的改
革に関する請願(第一〇九一号)
○国民医療を守るための国立病院・療養所の充実
に関する請願(第一一二八号)
○障害者プランの拡充と具体的推進に関する請願
(第一一七三号外五件)
○重度戦傷病者と妻の援護に関する請願(第一一
八八号外一件)
○高齢者医療費値上げ中止に関する請願(第一二
〇七号)
○少子化対策の充実に関する請願(第一二四六号
外五件)
○被爆者援護法の改正等に関する請願(第一三一
六号外一三件)
○肝がん検診の制度化とウイルス肝炎の総合的な
対策に関する請願(第一四四五号外一四件)
○医療保険制度改悪を始めとする自己負担増加案
の撤回に関する請願(第一四四九号)
○医療保険制度改悪反対、医療の充実に関する請
願(第一五二一号外三件)
○医療保険改悪反対、建設国保組合の国の定率補
助削減反対に関する請願(第一五二二号外四件
)
○医療保障制度の充実と介護保障制度の確立に関
する請願(第一五六一号外一件)
○医療保険制度の抜本的改革に関する請願(第一
六一九号)
○小規模作業所等成人期障害者施策に関する請願
(第一九二二号外二二七件)
○遺伝子組換え食品反対等に関する請願(第二一
二〇号)
○医療保険制度の改革に関する請願(第二一六四
号外二件)
○ハンセン病対策の充実に関する請願(第二一六
五号外二件)
○総合的難病対策の早期確立に関する請願(第二
二一三号外六九件)
○国立病院・療養所の院内保育所の改善に関する
請願(第二五六〇号外三件)
○遺伝子組換え食品の表示と輸入禁止に関する請
願(第二六五〇号外一件)
○公的介護保険の給付対象への食事サービスの導
入に関する請願(第二八五二号)
○継続審査要求に関する件
○継続調査要求に関する件
○委員派遣に関する件
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014237X02019970617/0
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001・上山和人
○委員長(上山和人君) ただいまから厚生委員会を開会いたします。
委員の異動について御報告いたします。
去る十三日、加藤修一君が委員を辞任され、その補欠として水島裕君が選任されました。
また、昨十六日、木暮山人君が委員を辞任され、その補欠として牛嶋正君が選任されました。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014237X02019970617/1
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002・上山和人
○委員長(上山和人君) 介護保険法案、介護保険法施行法案及び医療法の一部を改正する法律案を一括して議題といたします。
三案につきましては既に趣旨説明を聴取いたしておりますので、これより質疑に入ります。
質疑のある方は順次御発言願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014237X02019970617/2
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003・牛嶋正
○牛嶋正君 平成会の牛嶋正でございます。
小泉厚生大臣には、予算委員会に引き続きまして二度目の質問になりますけれども、どうぞよろしくお願いをいたします。
私が属しております新進党では、この一年半にわたりまして新しい高齢者介護保障制度の構築のための検討を重ねてまいりました。その際、五つの理念と申しますか、目標を掲げさせていただきました。きょうは初めての質問でございますので、ちょっとお時間をいただきましてその五つの理念を申し上げたいと思います。
第一の理念は、新しい高齢者介護保障制度は、二十一世紀の高齢社会の中核をなす制度と位置づけられることから、できるだけ国民的合意を得ながら、その構築に取り組んでいかなければならないということでございます。
二番目の理念は、新しい高齢者介護保障制度は、弱者に対する単なる援助、救済ではなく人間としての尊厳を持って生きることができるように自立を支援するものであり、したがって適切なサービスが選択できる制度でなければならないということであります。
三番目は、高齢者にとって医療と介護は不可分の関係にあることから、医療と介護に対して一体的、総合的に取り組み、高齢者のニーズに最も適応した医療・介護体制の確立を目指さねばならないということであります。
四つ目は、日常生活における基本的動作、摂食、排せつ、着脱、入浴などでございますが、これを支える介護支援サービスは、国民の基本的権利としてどこでもだれでもいつでもひとしく受けることができる体制がつくられなければならないということであります。
そして、五つ目の理念は、二十一世紀の高齢社会においてだれもが生きがいを持って自立的生活を送っていくためには、連帯性に富む参加型地域社会の実現を目指さなければなりませんが、新しい高齢者介護保障制度はその推進役を担い、地方分権を推し進めるものでなければならないということであります。
きょうは、この五つの理念に基づきまして、次に申し上げます三つの基本的な問題について、順次御質問をさせていただきたいと思います。
第一の問題は、介護保障制度を検討するに当たって前提に置かれてきた新ゴールドプランについて御質問させていただきたいと思います。二番目は、なぜ介護保障制度は社会保険方式でなければならないのか、この基本的な問題についてお尋ねをしてまいりたいと思います。そして三番目は、国民的合意ないしは国民の理解について若干御質問をさせていただきたいと思います。
それでは最初に、新ゴールドプランにつきまして六問ほどお尋ねしてまいりたいと思います。
平成元年十二月に、高齢者保健福祉十カ年戦略として打ち出されましたゴールドプランの策定が、平成元年四月から導入された消費税と強く関連していることは明らかであります。これに対しまして、新ゴールドプランはゴールドプランの計画期間中に、ちょうど半ばでございますが、ゴールドプランの見直しという形で作成されることになりました。
その際、目標値の上積みだけであったのか、それとも基本的な考え方にも変更がなされたのか、そういうことも含めましてゴールドプランと新ゴールドプランの関連をまずお尋ねしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014237X02019970617/3
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004・羽毛田信吾
○政府委員(羽毛田信吾君) ゴールドプラン、それから新ゴールドプランの関連いかんというお尋ねでございます。
先生、今お話のございましたように、新ゴールドプランはゴールドプランをいわば発展する形でつくり上げました新計画でございます。その新ゴールドプランにおきましては、老人訪問看護ステーションといったようなゴールドプランの策定時にはまだ政策として熟しておらなかったものが新たにサービスの一つのメニューとして出てきたというようなことで、そういった新たな各種サービスの整備充実を図ってきた。そういうようなことに加えまして、平成二年のいわゆる福祉八法の改正によりまして、老人保健福祉の業務を基本的には住民に一番身近な市町村がこれを担っていただくという体制をつくりまして、そのことで市町村それぞれで市町村の老人保健福祉計画というものをつくっていただく、またそれを大成した形で都道府県の老人保健福祉計画をつくっていただく、そして、そういったものをいわば集大成した形で国の計画をつくる、そういう観点に立ちまして新ゴールドプランというものをつくりました。
したがいまして、いわば市町村の老人保健福祉計画の段階から福祉事業というようなものを把握し、それをいわば積み上げていく形の中で新しいゴールドプランというものが誕生いたしました。したがって、そこにおきまして、今までのゴールドプランで目標を掲げておりました整備目標というようなものを、それぞれにつきまして一層その水準を格段に引き上げるというようなことをいたしたわけでございます。そういう形で、平成六年の十二月に従来のゴールドプランをいわば全面的に見直す形で、規模も大幅に増加をして発足をしたのが新ゴールドプランでございました。
新ゴールドプランにおきましては、今申し上げましたような策定の経緯からいたしまして、介護サービス基盤につきまして、老人保健福祉計画によりまして把握をいたしました地域の高齢者の介護需要というものを踏まえて整備目標を大幅に引き上げを図ったこと。あわせまして、基本理念と申しますか、今後における介護あるいは高齢者保健福祉の推進ということを進めます場合の、いわばよって立つべき考え方というものを整理し明らかにいたしました。利用者本位でありますとか、先生が今お挙げになりました中にもありました自立の支援でありますとか普遍主義、総合的なサービスの提供あるいは地域主義というような観点に立ってこれからの高齢社会を進めていこうという、そういったよって立つべき原則を明らかにしたこと。
あるいは、そういった基盤整備を進めるに当たりまして、さらにその根っこにございます人材の確保でありますとか、そういった施策をどういうふうに進めていくかという基本的な枠組みを決めるというような、少しくだけた言い方をさせていただければ、ゴールドプランの段階よりもさらにそういった整備目標を大きくすると同時に、目配りのきいた、あるいは考え方をはっきりさせた計画という形で新ゴールドプランを策定したというところがゴールドプランから新ゴールドプランに移ります。その間の関連ということでお答えを申し上げられることだろうと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014237X02019970617/4
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005・牛嶋正
○牛嶋正君 ゴールドプランは、私は急ごしらえの計画だったと思います。ですから、当時から地域の実態とか実情を十分に踏まえていないという批判がありました。しかし、今お聞きしましたように、新ゴールドプランの方は全国の市町村が策定した老人保健福祉計画の目標値を集計するという形でまとめられたわけですから、一応ゴールドプランに対する批判はクリアされたというふうに私も思っております。
その事業費を見ますと、今数字でいろいろな施設の数値をお聞きしましたけれども、事業費総額では、ちょうどゴールドプランの前半五年間で約五兆円に対しまして、新ゴールドプランでは事業費は後半の五年間で九兆円を上回るということですから、二倍に拡大されたというふうにみなすことができます。
新ゴールドプランが策定されました平成六年度というのは、もう既に国の財政状況は非常に悪い状況に陥っておりましたですね。私、そのような国の財政状況を考えた場合に、よくこういった事業費が認められたなというふうな気がするわけでございますけれども、これはやっぱり今おっしゃいましたように、全国の市町村から提出された老人保健福祉計画の目標値を集計するという形で、下から積み上げてきたということが私はある意味では説得力があって、大蔵省を説得したんじゃないかなというふうに思うんですが、そういう理解でよろしゅうございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014237X02019970617/5
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006・羽毛田信吾
○政府委員(羽毛田信吾君) 新ゴールドプランにおきます整備目標は、先生今お挙げになりましたように、原則といたしまして各自治体で策定をされました老人保健福祉計画のいわば集大成としてそれを集計をいたしましたものでございます。
ただ、中身を子細に見てまいりますと、例えば在宅介護支援センターでございますとか、あるいは老人保健施設、あるいはケアハウスといったようなものについては、事業自体が比較的新しいというようなこともございまして、ただ地域で需要が、今時点での需要というだけではぐあいが悪いかなということで、今後における需要の顕在というようなことも見込みまして、若干集計値よりも上回る形でゴールドプランを作成をさせていただいた。
あるいは、デイケアでありますとか老人訪問看護ステーションというようなものにつきましては、さらにいわば新顔の部分がございましたものですから、これはむしろ国の新ゴールドプランをつくる段階におきまして、今後のいわば政策的な力の入れぐあいということも含めまして、目標で掲げさせていただいたというようなことはございます。
ただ、今おっしゃいましたように、やはり基本的にはそれぞれの地域の実情から積み上げてきたというところが、言ってみればこの計画の強みでもあり、またその計画としての重みであると思います。また、そういったことに対しまして、いろいろ税制改革上の御議論の中での一つの場面ではございましたけれども、きちっとした裏打ちがされたということで、御案内のとおり、今日までその計画に即しまして毎年度の予算も順調につけていただいている状況になってございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014237X02019970617/6
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007・牛嶋正
○牛嶋正君 最初に申し上げました一つの理念、国民的合意を十分に得ながら介護保障制度の構築を図っていくべきだという理念、これを考えますと、今御説明がありましたように、新ゴールドプランがそういった各市町村の老人保健福祉計画に基づいて、それを集大成する形でつくられていったというのは、私は非常に今申しました理念に合った望ましい手続であったと思っております。
しかし、そのためには各市町村が計画を作成するに当たりまして、地域の実態が十分に分析され、また地域住民の意向が十分に反映されていることが前提条件になるのではないかと、こういうふうに私は思うわけであります。果たして、それぞれの市町村でつくられた計画がこの前提条件を満たしているかどうかということが、私は新ゴールドプランの、先ほど申しました国民的合意を得ながらつくられたというところと関連して考えますと、ここのところは非常に重要なポイントになりますので、この点について厚生省はどういうふうにお考えですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014237X02019970617/7
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008・羽毛田信吾
○政府委員(羽毛田信吾君) 各自治体が老人保健福祉計画を策定をしていただきます際に、私どもとしてもやはりそれが地域の需要というものを的確に把握をしたものであるということが非常に大事なことであると考えまして、作成に当たりましてのいわば留意点といたしまして、高齢者の福祉需要というものを基礎にしてやっていくということはもとよりでございます。そこを的確に把握していくという点をあわせまして、住民でありますとか、あるいは住民を初めといたしまして、関係者の方々の意見を十分踏まえまして、これを策定するようにということを厚生省としても指導してまいりました。
各自治体におかれましても、今申し上げたようなことは、ある意味から言うと言わずもがなのことではございますけれども、十分そのことを踏まえていただいて、可能な限りそういう努力の上で今回の老人保健福祉計画というものをおつくりをいただいたものだというふうに思います。
ただ、先ほど申し上げましたように、平成二年に老人福祉の業務を市町村の業務ということでおろして、それで直ちに計画策定の段階に入るというようなことで、ある意味から言うとある種のふなれもございましたでしょうし、そういったことの中から実態把握が必ずしも十分ではないのではないか、あるいはその後の状況の変化があるのではないかというような御指摘もあることも事実でございます。
したがいまして、これから介護保険法が成立をいたしましたならば、その後における計画というものも当然法案の中につくっておりますから、その計画の策定に当たりましては、より一層そういった需要把握といったようなものについては意を用いるような形にしてまいりたいと思います。その間における新ゴールドプランあるいはそのベースになる老人保健福祉計画を地方団体がそれぞれおつくりになった経験、体験、あるいはその間における平成二年以来の市町村の体制の推移というものが、今度の老人保健福祉計画を策定する際のいわば知見あるいはそれまでの十分な体験として生かされてくるものであろうというふうに思いますし、そういうふうに生かしていかなければならないであろうと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014237X02019970617/8
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009・牛嶋正
○牛嶋正君 実は私、地元の愛知県と岐阜県と三重県の三県の市町村、二百五十六団体ございますけれども、そこから老人保健福祉計画を全部取り寄せて比較調査をいたしました。二百四十七団体からその計画を寄せていただきましたので、ほとんどの市町村がカバーできたというふうに思っております。
そのとき、私が第一番目に感じたことは、計画書に盛り込まれた調査の項目数、それから調査の内容からいって、二年という策定期間は非常に短過ぎたんじゃないかと。逆に言いますと、よく二年間でこれだけまとめられたなというふうに思います。村の中には、それこそ千人足らずぐらいの人口のところもあるわけですけれども、そういうところでもきちっとつくっているわけであります。
そこで、送られてきた計画書を全部調べてみたんですけれども、こういうことがわかりました。ほとんどの市町村が外部委託で策定しているんですね。しかも、委託先が全く同じという市町村が何団体もありまして、ひどいところはA社に対しまして、A社と言っておきましょう、コンサルタント会社A社に対しまして二十一団体が外部委託を申し込んでいるんです。その次に多いのは十六団体というのが二社ございました。ですから、計画書をずっと内容を調べていきますと、数字以外はほとんどいずれの市町村とも余り内容は変わらないというようなことが、私にとりましては非常に奇異に思えたわけです。やっぱり、二年という年月が非常に短かったんではないか。
そう考えますと、私が先ほど申しました前提条件というのは、もちろん少し規模の大きな市町村の場合はきちっとしたものをつくっているところもありますけれども、総体的に言って前提条件は満たされていないというふうに私は思いますけれども、改めてもう一度厚生省の認識をお聞きします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014237X02019970617/9
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010・羽毛田信吾
○政府委員(羽毛田信吾君) 老人保健福祉業務を市町村の業務にする一つの地方分権の流れということでお願いをしたわけでございます。やはり老人保健福祉というすぐれて地域住民と密着した行政は、市町村がまず第一義的な担い手になっていくのがいいであろうということにしたのでございますけれども、こういう業務を進めるときに必ずそういうことが起こるわけであります。考え方はいいですし、やはり一番最初にそういうことに心を砕くべきは市町村ということも間違いはないのでございますけれども、最初の段階におきましてはなかなかそこまでの気持ちにいわば体がついていかないというようなことに類する、いわば市町村の体制がなかなか十分整わなかったという状況はやっぱりあると思います。したがって、そこは率直に認めなければならないと思います。
そうした中で、基本的には私ども基本計画の策定に当たりましては、調査の集計あるいは技術的な作業について委託は行ったにせよ、いろいろ地域住民の声を聞く、あるいはその需要把握について主体的に市町村が役割を果たすというようなことについては、やはりそれぞれの市町村の置かれた中では十分意を用いていただいたはずであるというふうに思っておりますし、そういったところで今回の計画も基本的には策定をされてきているものというふうに思います。
ただ、何にしましても、そういう形で平成二年に市町村の業務になったときに、老人保健福祉計画も国がつくれと言ったからつくるというような形で市町村が対応すべきものではなくて、やはり本来はその市町村としてその地域の住民の老人保健福祉をどうするかということはその首長さんのまさに関心事である、そういう体制にしたいというのが言ってみれば平成二年の改正の趣旨でございます。そういう方向に持っていかなければならないはずですし、そういった方向にだんだん行きますけれども、最初の計画策定時にそこが非常に十分であったかという点については、先ほども御答弁申し上げましたように、特に小規模な自治体の場合につきましては、初めての経験ということもありまして、ふなれな面もあって主体性の発揮ということが必ずしも十分ではなかったんではないかというような指摘は、それはあろうと思います。
ただ、こういった老人保健福祉計画の策定を通じまして、そこに多少の不完全さ等はあったにしましても、いわば老人福祉に関する施策が市町村の主体的な業務であるということについて定着をしていく一つの端緒にもなっていったであろうというふうにも思います。そういった中で、今後の反省としていえば、さらに今後の介護保険事業計画をつくります際には、先ほども申し上げましたけれども、そういった経験が生かされるような形に持っていきたいものというふうに思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014237X02019970617/10
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011・牛嶋正
○牛嶋正君 なぜ私が三県の市町村から計画書を取り寄せたかということなんですが、私幾つかの研究テーマを持っておりまして、それでその研究テーマを分析するに当たりまして、二百四十七団体のデータを使えばある程度の分析結果は出るだろうということで取り寄せたのであります。
幾つかの研究テーマはありますからその一つを申し上げますと、要介護痴呆性老人の出現率と、それから地域の社会的及び自然的環境との間にどのような関連性があるかというのが私の一つのテーマでございます。
このテーマを選びましたのは、痴呆性老人の介護体制をどう整備していくかという場合にやはりこれは重要な一つの基礎的なデータになると思いましたし、また痴呆性老人の出現率を抑えるための予防法を確立していく場合にもこのデータが重要な意味を持つだろうというようなことで、そういう研究テーマを選んだんです。
それで分析していったわけですけれども、三県の市町村から取り寄せた計画書は全く無効でございました。使えなかったのであります。なぜかといいますと、痴呆性老人に対する実態調査をどこの市町村も行っていないんです。厚生省から示された全国一律の出現率で数字を出してきているからです。これは全国一律です。何の地域間のあれもありません、一律の出現率を使っているわけですからね。ですから、そういうことで出てきた数字は分析の役には立たないんですよね。
そうだとすると、今いろいろと作業の過程で、これだけのものをつくるわけですから、もちろんいろいろな効果はあったと思いますけれども、肝心のところでは私ちょっと問題かなというふうに思いますが、今の痴呆症老人の出現率についての私の考えは間違っているのかどうか、ちょっとあれしてください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014237X02019970617/11
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012・羽毛田信吾
○政府委員(羽毛田信吾君) 先生の御指摘、間違っているとは思いません。思いませんが、やはり痴呆性老人の把握方法というのは実はなかなか難しい問題であることも事実でございます。したがいまして、理想的には、やはりおっしゃるように、それぞれの地域環境に応じてどのように出現率が違うかとか、それぞれの地域できちっとした把握をしていただくということが大事であろうとは思います。思いますけれども、やはり痴呆性老人の把握自体をしていただくのにそれぞれの地域でいわば道具立ても私どもお示ししないままに出してこいといっても、これはなかなか難しいことも事実でございます。
したがいまして、当時全国的な一つの調査として痴呆性老人に関する調査結果が得られておりました。そこでの出現率というものを用いて全国の市町村がこれを当てはめて推計するというやり方もそれは可とするということの指導を行ったことは事実でございます。やはり実態把握に当たりまして、どうしても期間的な制約も実はございましたし、また痴呆性老人の出現率自体をそれぞれで客観的に把握するということはなかなか難しい作業であることは先生専門家でよく御存じのとおりでございます。また、そういった科学的な問題以外にも、それぞれの家庭でなかなかそこを、自分のうちの家族が痴呆性老人を抱えておるというようなことをいわば行政の側に知られるということがなかなかはばかられるというような気風、感情というようなものもありまして、そういったことをもあれしながらやっていかなければならない作業であったということからのある種の制約というものがあって、先生御指摘のような状態が出てきたであろうというふうに思います。そのことについては、先ほど申し上げましたように、全国的には出現率を一つの物差しにして考えるということもいわば次善の策としてやむを得ないという判断をそのときにしたことも事実でございます。
そうした上で、できるだけそれでもそれぞれの地域において、まさに市町村の把握という面で実情に応じた把握ができているということは大事なことでございますし、そういうふうな方向で努力をするようには私ども指導をいたしましたけれども、結果においてそういう部分があったことは事実であろうと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014237X02019970617/12
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013・牛嶋正
○牛嶋正君 やっぱり二年間という計画策定期間を厚生省が設定されたところが問題だと思うんですよね。やはりこういう実態調査を通じてでないとその地域に合った介護体制というのは私はつくれないんじゃないかというふうに思います。ですから、痴呆性を隠すというふうな地域性があったら、それもやっぱり一つの地域性なんですからね。それもやっぱり計画の中で取り上げていかなければ。
そういうふうに考えると、せっかく全国の市町村が計画をつくりながら、その計画が非常に私にとりましては、先ほどの分析をしてわかったんですが、非常に空虚に見えるんですよ。もしこの老人保健福祉計画に含まれるほかの重要な調査項目についても厚生省から示された出現率を用いて推計するというような方法がとられていたとするならば、私はせっかくこういう手続をとりながら、新ゴールドプランが老人保健福祉計画に基づいて作成されたという意義の大半は失われるんじゃないかと思います。そしてまた、新ゴールドプランの目標値の有意性もかなり低下するんではないかなというふうに思います。
最後に、厚生大臣にお聞きしますけれども、今のこのやりとりで何か御感想ございましたらちょっとお聞かせ願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014237X02019970617/13
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014・小泉純一郎
○国務大臣(小泉純一郎君) 厚生省が案をつくる場合にも地域の実情を考えなきゃいかぬ、地域の市町村が今度責任を持つことになりますから市町村が独自の調査をする、これをやはり尊重していかなきやならない、両方不十分な点があると思います。あるいは全国一律の基準を市町村が導入する場合にも、市町村としてはどのような基準で実情を調べたらいいかという場合にも、厚生省の基準を参考にしたいという気持ちもあると思いますから、そこは地方の自主性を尊重しても私はいいのではないか。
いずれにしても、各市町村ばらつきは出てくると思いますが、そういうばらつきの中でより水準の上の方を目指そうとすると思いますので、その点はやはり厚生省としても市町村同士の競争というのは歓迎すべきことではないか。そして、厚生省として全国で地域の格差が余り出ないような配慮も必要ではないかなという両面の、どっちがボールを投げてどっちが受けるかということではありませんが、厚生省もボールを投げる場合がある、あるいは市町村が投げる場合もある、どちらも受ける場合もある。そういう関係で計画なりを策定し、実施状況を見ながらキャッチボールしながらだんだんうまくなっていくといいますか、水準が上がっていくという方向で私はいいのではないかなと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014237X02019970617/14
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015・羽毛田信吾
○政府委員(羽毛田信吾君) 先ほど私の答弁申し上げたところであるいは誤解をいただくといけないと思いますので、痴呆性老人について確かに先ほどのような御答弁を申し上げましたけれども、言ってみれば、事ほどさように全体にという御議論がございましたけれども、痴呆性老人の把握の仕方とその難しさというものはほかのことから比べますと、やはり殊のほかの部分がございますので、全体について地域の実情を把握してやっていくという主体性に基づいて基本的にはつくられたという点はそのように私どもは考えておりますので、その点はちょっとあるいは私の申し上げようが悪かったかもしれませんので、補足をさせていただきます。
あわせまして、ついでに申し上げておしかりをいただくかもしれませんけれども、まさにそういった地域の実情を踏まえるためにそれなりの準備、それなりの念入りな地域での実情把握が要るという御指摘、そのとおりでございます。そのためにもこの介護保険法が成立されましたら、直ちにそういう形での私どもは全国に参酌すべき基準なりの作業、そして都道府県それぞれが把握をしていただきます作業に入っていただきたいというふうなことも思いまして、そういう意味でも、早くに成立をさせていただければなということを申し上げております中にはそういったこともあるということをちょっと申し添えさせていただきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014237X02019970617/15
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016・牛嶋正
○牛嶋正君 地方分権の推進というのはいろいろな考え方があると思いますが、私は地方分権で大事なことは、それぞれの地域が自分たちで自分たちの町づくりといいますか、こういった制度をつくっていく、こういう意欲をやっぱり持たなければ地方分権というのは進まないと思います。
それから考えますと、今回の新ゴールドプランの作成の過程で見ますと、厚生省は市町村がちょっと頼りないというふうにお思いになったのか、手を差し伸べ過ぎているのじゃないか。やっぱりもうちょっと自信を持たせるためにも、手を差し伸べるかわりに少し突き放すような感じのところがあってもよかったんじゃないかなと思います。次の計画のときにはぜひともそういうふうな姿勢で、むしろ地方分権を進めていくというふうな立場でお図りを願いたい、こんなふうに思います。
それでは次に、介護保険制度についてお尋ねしてまいりたいと思います。
日常生活における基本的動作、先ほども申しましたように摂食、排せつ、着脱、入浴、こういったものを支える介護支援サービスというのを、先ほど申しましたけれども、国民的な基本的権利というふうにみなす場合には、公的負担によってどこでもだれでもいつでもひとしく受けられることができる体制をつくっていくことが私は当然の考え方ではないかというふうに思っておりますけれども、なぜ政府案はあえて保険方式を導入されようとしているのか、まずこの点からお聞きしてまいりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014237X02019970617/16
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017・小泉純一郎
○国務大臣(小泉純一郎君) これは衆議院の委員会でも税方式がいいか保険方式がいいかということはかなり議論したところであります。私としては今までの議論の経過、過去のいろいろな勧告を見ましても、介護も税方式よりも保険方式の方がいいのではないかという点を主張してきたわけです。まず社会保障制度審議会の勧告、これは昭和二十五年度と平成七年度があるんですが、昭和二十五年度の社会保障制度に関する勧告という中にこういう勧告が出ております。ちょっと読ませていただきます。
国民が困窮におちいる原因は種々であるから、国家が国民の生活を保障する方法ももとより多岐であるけれども、それがために国民の自主的責任の観念を害することがあってはならない。その意味においては、社会保障の中心をなすものは自らをしてそれに必要な経費を醵出せしめるところの社会保険制度でなければならない。
これは昭和二十五年度の社会保障制度審議会の勧告であります。戦後五年たった、今に比べればはるかに貧しい。食うものに困る、着るものに困る、社会保障制度も完備していない、戦後の荒廃したときでこの考えが出てきております。
平成七年度、もう既に豊かな時代になっております。平成七年度の同じく社会保障体制の再構築という勧告に、
社会保険は、その保険料の負担が全体として給付に結び付いていることからその負担について国民の同意を得やすく、また給付がその負担に基づく権利として確定されていることなど、多くの利点をもっているため、今後とも我が国社会保障制度の中核としての位置を占めていかなければならない。したがって、増大する社会保障の財源として社会保険料負担が中心となるのは当然である。
これは平成七年度の社会保障体制の再構築という勧告であります。
昭和二十五年と平成七年度、四十年以上たった中においても似たような勧告が出ております。
そして、我が国においては、年金にしても医療にしても社会保険方式であります。それではなぜ介護だけ税だという方が私は難しいと思います。国民は年金も医療も今保険でなれております。ならば、全国民がこれから多かれ少なかれ関与する問題である、お互いが支え合うという問題だったならば、介護も社会保険方式をとる方がむしろ自然ではないかと私は考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014237X02019970617/17
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018・牛嶋正
○牛嶋正君 その点については順にまた御議論させていただきたいと思います。
今の現行の公費負担による措置制度というのを、仮に特別養護老人ホーム入所の場合の手続を振り返ってみますと、厚生省が措置基準を通知で出しております。それに基づきまして各市町村における入所判定委員会が決定する、そして入所を決めるという手続になっております。
ここで何がこれまでの手続の中で問題なのかということですけれども、しばしば措置制度について指摘されておりますように、要介護者に選択の余地が全く与えられていないということ、これが一番大きな問題点だろうと思います。しかも、新しい介護保障制度が自立支援ということをうたっているわけでございますから、そのことから申しまして、選択の余地というのは非常に重要な意味を持っております。
そういうふうに考えますと、選択の余地というものをどういうふうに今の現行制度の中に取り入れていくかということなんでしょうけれども、これについて今政府案というのは、社会保険制度というもので選択の余地というものを確保していこうというふうになさっているんだと思いますが、この点についてはいかがでございましょうか。
〔委員長退席、理事尾辻秀久君着席〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014237X02019970617/18
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019・江利川毅
○政府委員(江利川毅君) まず、措置といいますのは、一つの行政処分、行政庁の判断でサービスの内容は決定されるわけでございます。もちろん、仕組みを運用するに当たって運用上の留意とか配慮というのはあるかと思いますが、制度としてはそういうものではないか。
一方、保険制度の場合には、保険料を積み立てていく、保険料を掛けていくことによって、保険事故に該当しますと保険給付を受ける権利というものが形成されていくわけでありまして、それによりまして、例えば医療保険の場合ですと、病気になったときに患者が自分に合った医療機関を選択するというようなことができるわけでございます。
そういう意味で、介護保険法案におきましてもその条文の中で、第二条第三項でございますけれども、保険給付というものは被保険者の心身の状況、その置かれている環境等に応じ、被保険者の選択に基づいて適切に行われなきゃいけないというふうに規定されているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014237X02019970617/19
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020・牛嶋正
○牛嶋正君 政府がお考えになっておりますように、保険方式が持っているこういった被保険者の選択権、これをこういう新しい社会保険制度でもって導入しようというふうにお考えになっているわけです。
私は、それは一つの方法ではありますけれども、もう一つの方法としては、今ちょっとお触れになりましたけれども、公的負担という基本のところはそのままにしておいて仕組みをいろいろと部分的に変えていく。例えば政府案でお考えになっているような要介護認定制度を導入するとか、あるいはケアプランの作成をある程度前提にするとかいうふうな、こういった仕組みの中でそういうものを取り入れることによっても私は選択の余地というのは十分に導入できるのではないか、そして今の公費負担をベースにした措置制度が持っている大きな欠陥を補うことができるのではないかというふうに考えております。
むしろ、今私が申しました後の方法の方が制度の連続性から考えましても、措置権者となってまいりました市町村も無理のない形で新しい介護保障制度の構築に向かい得るのではないかというふうに思いますけれども、もう一度この点について厚生省のお考えをお聞きいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014237X02019970617/20
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021・江利川毅
○政府委員(江利川毅君) 新しい介護保障制度をどういうふうに仕組むかということでありますが、お話に入る前に、この問題をどんなふうにとらえるかというとらえ方が重要ではないかと思うわけであります。
寝たきり老人の出現という言葉が出始めたのは昭和四十年前後ぐらいからじゃないかと思うんですが、そういう意味で要介護問題というのは新しい今日的な問題でございます。医療保険制度もあるいは福祉制度もそれ以前からあるわけでございまして、社会福祉の仕組みは社会的弱者に対する救済の形で、あるいは医療保険は疾病の治療という形で運営されてきたわけでありますが、そういう新しい事態にそれぞれの制度を手直ししながらも対応してきたというわけでございます。
ただ、高齢化がどんどん進展する中で、そういう介護問題が一般的な問題となっている。だれでもが長生きをする、そして、だれでもが生涯のどこかでその問題にぶち当たるのではないかということになってきたわけでございまして、そういう一般的な問題になったときに、既存の古くからある制度の上に乗っていくだけで果たしてうまくできるのだろうか、こういう問題意識で新しい制度をつくろうというふうに考えたわけでございます。
そのときに、税か保険かという議論でありますが、税でやるというのはある意味で国の責任でやる、あるいは地方自治体の責任でやる。税でやるというのは、公共団体が責任者として事業をするからこそ税でやるということになるんではないだろうか。
そうすると、例えば要介護状態になりましたときに、それを世話するのは果たして国なり地方自治体の責任なんだろうか。だれでもがぶち当たる、一生涯におけるどこかで問題になる、生涯のリスクというんでしょうか、そういう問題であるならば、それは若いころからそれに備えていく、そういう自己責任をもとにそれに対応していくということも必要なんではないだろうか。そういう考え方からこの仕組みをまず自己責任をベースに置いた社会保険方式でと。ただ、そうは言っても保険料だけでは大変に負担が重たくなる可能性があるわけでございますので、公費を半分導入して、そういう意味で負担の軽減を図りながら保険方式の考え方をもって制度をつくっているわけでございます。
先生御指摘の税でというのは、まずそこのそもそも介護状態になったときに対する対応の責任がどこにあるんだろうかという議論があるわけでございまして、市町村側にあると考えるか、まずは自己責任で考えるかということでスタートが変わってくるのではないかと思います。
それから、連続性ということでございますが、確かに福祉だけを見れば現在も公費でやっている、そういう意味で税でやる、連続性があるわけでございますが、介護保険といいますのは、税でやっている、福祉でやっている世界と医療保険でやっている世界、それぞれが併存することによって生ずる矛盾とか不公平とかむだとか非効率とか、そういうものを直していこうというところにもあるわけでございます。
そういう意味で、福祉の世界、公費でやっている世界について、そこを若干修正をして、公費の世界を残しても医療保険でやる世界が残っている限りは、両制度が存続することによる非効率、矛盾というものはなお残っているのではないか。そういうことで、この両制度を再構築するという形で介護保険を考えるのが適当ではないかというふうに思っているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014237X02019970617/21
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022・牛嶋正
○牛嶋正君 私も最初に申し上げましたように、医療と介護は高齢者にとりましては不可分ですから、一体的に議論しなきゃいけないというふうに思います。
今おっしゃいましたように、医療について、特に老人医療保険について今の制度を前提にされているようですけれども、私は、そこにもまた問題が、この前の健康保険の負担のアップの問題も含めまして、やっぱり老人医療保険に対します拠出というふうなものを考えますと、果たして老人の医療についても今までどおりの保険でいいのかというふうな議論はあろうかと思います。そういうふうに考えていきますと、私が先ほど申しました連続性というのはそこも含めての話をしているわけでございます。
この議論をしますと、これは非常にまた医療の方にも入ってまいりまして、きょう用意いたしました質問が消化できませんので、ちょっとこの問題はまた後で議論することにいたしまして、先に進ませていただきたいと思います。
それで、今制度の連続性ということを申しましたけれども、現行の措置制度を全く新しい介護保険制度に切りかえる。その場合に懸念されることは、これは制度導入のための準備期間がかなりかかるのではないか、新しい制度ですから。その点、どういうふうに厚生省はお考えなのかということです。政府案では施行日が平成十二年四月一日となっております。もう既に三年を切っているわけです。こんな新しい制度をこの三年の間で十分に準備できるのかという気がいたします。
そういうふうに考えますと、私が先ほど提案いたしました、今の制度の連続性を考えて、やはり税方式でやっていくということになりますと、この準備期間というのは三年でも私は十分カバーできるのではないかなと思っておりますが、この点についてはどういうふうにお考えでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014237X02019970617/22
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023・江利川毅
○政府委員(江利川毅君) 新しい制度を実施していくということになりますと、先生の御指摘のように大変多大な準備作業があるわけでございます。例えば、新しい法律に基づきまして、新ゴールドプランの次の計画になります介護保険事業計画を策定するとか、あるいは要介護認定の体制づくりを行うとか、あるいは、保険制度になりますから、被保険者管理というようなこともあるわけでございます。こういう新しい事務がございます。
ただ、これらの事務のうち、例えば、先生が御指摘のような公費でやる方式を少し工夫して進めていくというようにいたしましても、恐らく要介護認定は同じように要るんではないだろうか。あるいはまた、その介護保険事業計画をつくる、これもまた同じように要るんではないだろうか。被保険者管理というところは、新しい保険ですから新しくなりますが。しかし一方、公費方式でいくということになりますと、医療をどう見るかによって変わってくるわけでございますが、医療まで公費を考えるということになると、これまた、今度は医療を切りかえる新たな作業が出てくるのではないかというふうに思うわけでございまして、どっちをとりましても結構大変なことではないかと思っているわけでございます。
当初、厚生省でこの原案を考えましたときは、実施時期を二段階ということで、在宅を平成十一年度から、施設入所は平成十三年度からというのがあったわけでございますが、与党三党で地方公聴会等をやりまして、各市町村等の意見を踏まえて、平成十二年度から実施をしょうということになったわけでございます。これは、新ゴールドプランができ上がった後引き続いてやるというのがいいという自治体の意向を踏まえて、そうなっているというふうに認識しているわけでございますが、三千二百余りある市町村が的確に準備を進める、これまた大変なことでございます。三千二百の中にはやっぱり行政規模の大きいところ小さいところありますし、小さいところも含めて円滑な実施にたどり着く、大変なことだというふうに思うわけでございます。
私どもは、その準備は大変だということを頭に置いて、この機会にぜひお願いもしたいというふうに思っているわけでございますが、国会で法案の中身が審議され、運営のやり方あるいは一部法案の中身が修正されるということは出てくるかもしれませんが、きょうがこの国会の委員会としては最後の審議日ということでございます。法案が仮に継続になるということにいたしまして、その場合におきましても、いわゆるその後の国会の議論の中でいろいろ修正等があれば、それを踏まえて直すのは当然の前提でございますけれども、可能な事務的な準備は進めさせていただいて、平成十二年四月、どんな市町村においても円滑な施行に移れるように準備をさせていただきたいというふうに思っているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014237X02019970617/23
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024・牛嶋正
○牛嶋正君 それでは、制度の連続性に関しましてはこれぐらいにしておきます。
社会保険方式の一つの大きなメリットは、このパンフレットでもおっしゃっておられますように、給付と負担の関係が明確であり、国民の理解が得られやすいことが指摘されているわけでございます。
しかし、私は、それには保険の対象となる疾病とか事故とか死亡、災害などのリスクに対して同じ程度の確率で直面している人々が、お互いに保険を掛け合って助け合うことが前提でなければならないというふうに考えておりますけれども、この点についての厚生省のお考えはいかがでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014237X02019970617/24
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025・江利川毅
○政府委員(江利川毅君) 民間保険で物を考えますと、これはもう全く先生の御指摘のとおりだと思います。
民間保険の場合にはへいわゆる給付というのは保険料見合いで決まってくるわけでございますし、負担と受益の関係というのが非常に明確にというか一体化しているというようなものであると思いますし、また保険料というのはリスクに応じて決まってくる。これは私は、民間保険はそういうことだと思うわけでございますが、社会保険制度の場合には少しそこら辺に違いがあるんではないだろうか。民間の場合には任意加入、加入は自由でございますが、社会保険制度でやる場合には強制加入でございます。
〔理事尾辻秀久君退席、委員長着席〕
そして、例えば医療保険について考えますと、乳幼児グループの疾病リスク、青壮年グループの疾病リスク、それから高齢者、特に後期高齢者の疾病リスク、仮にグループで分ければ疾病リスクはかなり違いがあるんだと思うんです。しかし、社会保険制度の場合には、集団全体としての疾病リスクに対して社会連帯でそれを補うという仕組みでございます。したがいまして、その中の一部のグループを抜き出してリスクが違うから云々というふうには必ずしもならないのではないか。現に、医療保険でも高齢者は疾病リスクが高いわけでありますが、所得に応じて負担していただいているという意味で、相対的には低い負担になっているわけでございます。働いている若い世代というのは所得は高いわけでございますが、一方、健康で余り病気はしないというわけでございます。しかし、そこを全体で見て、社会全体のリスクを社会連帯で保障する、これが社会保険ではないかというふうに思うわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014237X02019970617/25
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026・牛嶋正
○牛嶋正君 ですから、もともと社会保険というのはなじまないんですよ、と私は思います、先ほど言いましたように。
ですから、任意保険の場合は、それぞれリスクが違っても、リスクに対する保険料が違いますから、それで自由に選択して、自分のリスクを考えて保険料と見合って、それじゃ入ろうというふうなことになるわけです。しかし、社会保険の場合は強制性を伴うわけです。ですから、保険料は税になつちゃうわけです。ですから、私はそこが社会保険というのは非常にいいものに聞こえるけれども、問題を含んでいるのではないかなというふうに思います。
しかも、今おっしゃいましたように、税ですから、どうしても応能説が入ります。所得の高い人から、担税力のある人から保険料をもらうということになりますと、名前は保険かもしれないけれども、全く税ですよ。そういうふうに考えますと、もともと社会保険というのは、社会保険のメリット、保険方式のメリットと言ってもいいかもしれませんけれども、給付と負担の関係が明確であるというこの条件というのは非常に満たしにくいんではないかなというふうに私は思っております。これについては、もうちょっと議論がかみ合いませんので、そのまま次の問題に進めさせていただきます。
今、要介護状態に陥るリスクを、寝たきりとなる発生率あるいは出現率ではかりたいと思います。四十歳から六十四歳までのグループと、六十五歳から七十四歳までのグループ、これは前期高齢者ですが、それから七十五歳以上の高齢者、後期高齢者の三グループに分けまして、その平均発生率あるいは出現率、ちょっと示していただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014237X02019970617/26
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027・江利川毅
○政府委員(江利川毅君) 要介護状態となる者の発現率と、虚弱を含めた何らかの介護を要する人のグループの発現率と二つについてお答えさせていただきます。四十歳から六十四歳での発現率というのは約〇・一%でございまして、虚弱を含めると、それぞれ大体二倍だというふうにお考えいただければと思います。六十五から七十四歳は約二・五%でございます。虚弱を含めるとこれは大体倍になります。七十五歳以上では一二・二%ということでございまして、これも虚弱を含めると大体倍になるということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014237X02019970617/27
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028・牛嶋正
○牛嶋正君 この差をそんなにないんだというふうに見るのか、やっぱり差は大きいなというふうに見るのかということなんで、私はやっぱりかなり大きな差だというふうに見ております。
そうしますと、今の政府案の社会保険制度というのは、明らかにリスクの異なる被保険者の三つのグループを一つの保険制度でくくろうとされているわけですね。そうしますと、給付と負担の関係というのは、特に四十歳から六十四歳までの被保険者のグループについては非常にあいまいになっているんじゃないか。このあいまいさを厚生省はどのように明確化しようとされているのか、それをお聞きいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014237X02019970617/28
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029・江利川毅
○政府委員(江利川毅君) 先ほども申し上げましたように、民間保険であれば保険料というのはリスクに応じてということになるわけでございます。ただ実際、民間でも介護保険、生保や損保がやっておりますけれども、私どものあれでは平成四年ごろをピークにふえていない、あるいは若干減っているということが民間の場合にはあるわけでございます。
これは、いわゆる民間保険ですと要介護にならないかもしれないという人は入らない、なりそうな人だけが入る。そうすると財政的にうまくもたない、保険料が高くなってまたなかなか入らない。そういう逆選択の問題であるとか、お金だけではサービスが買えない、サービスがないわけでございますので、サービスがなければ本当は意味がないというようなこともあるのかもしれません。一時期、この介護保険というのは導入されてぱっと売れましたけれども、ストップしているわけでございます。
これは、そういう意味でリスクに合わせて、民間保険の発想でリスクグループごとに保険をとるというのでは多分成り立たないということなのではないか。そこで、いわゆる要介護状態になるかどうか、これは生涯を通じてどこかでそういう問題に直面するのではないか、そういう生涯どこかで直面する問題に備えていくことなんだというふうに考えますと、いわゆる介護問題を自分らの生涯のリスクあるいは自分の親がなるかもしらぬなということで気にかける、そういう世代ぐらいから入っていただいて、いわゆるその世代以上のグループ全体で、社会連帯として支えてもらうというのが適当ではないかというふうに思うわけでございます。
ですから、四十から六十四歳のグループというのは、確かに自分自身のリスクというのはその時点では小さいわけでございますが、将来いつかはその人たちも七十を超え、八十を超えていくわけでございます。また、自分の両親ともそうなっていくわけでございますので、そういうものを社会連帯で支える、そういう世代間扶養的な意味合いを持った保険料だということで御理解を賜ろうというふうに考えているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014237X02019970617/29
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030・牛嶋正
○牛嶋正君 公的保険の場合にはそういう相互扶助というふうな崇高な理念というのは必要だと思いますね。ただ私、今の説明でもまだよくわからないんですけれども、やはりこういつた給付と負担の関係があいまいのままということになりますと、保険方式の持っているメリットを一つ失うだけじゃないと思うんですよ。私は保険制度そのものを根底から危うくすることになるんじゃないか、こういう危惧を抱いております。
特に、介護リスクが一%以下というふうな四十歳から六十四歳の現役グループですね、恐らくこういう人たちは今後もずっと負担がふえていくわけですけれども、その場合に相互扶助という崇高な理念だけでどれぐらい持ちこたえることができるかということですね。
そうなりますと、私は、今の保険料の未納率、これは予算委員会のときにもいろいろと御議論させていただいたんですけれども、これがどんどんふえていくということになりますと、先ほど私が申しましたように、保険制度自体が崩れていくのではないか、私はそういう非常に危機感を持っております。
ですから、先ほど申しましたように、国民の基本的な権利、その部分はやっぱり公的負担をする、見る。そして、さらにそれ以上の介護サービスを受けたいという方については、場合によっては自己責任でもって任意保険に入るなり、あるいは自分でそれを手当てするなりというふうなことで出発しなければ、私は保険制度そのものがおかしなことになってしまうんじゃないかなというふうに思いますけれども、その点についていかがでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014237X02019970617/30
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031・江利川毅
○政府委員(江利川毅君) 給付と負担の関係があいまいであると先生は何度も御指摘になっているわけでございますが、民間保険と社会保険とそれから公費制度と、恐らくこの三つを並べて関係を考えるのではないかと思うわけでございます。
民間保険の場合には、まさにリスクと負担とがくっついている、非常に明確な関係だと思います。そして公費方式の場合には税ですから、目的税じゃなくて一般財源でやっているわけでありますので、負担と給付との関係というのはこれは明確ではない、結びついていないんだと思います。
私どもが社会保険方式は明確だと申し上げておりますのは、保険料を負担することによって事故が起こったときに受給権、権利を獲得する。そういう意味で、税金を納めても介護給付を受ける権利というのは出てくるわけじゃありませんので、保険料を納めることが権利に結びつくという意味で明確であると。それからまた、介護サービスに必要な費用を水準に応じて全体として保険料を負担していただく、給付と負担のトータルにおいての関連が強い、ここにおいて明確である。民間保険ほどぴたりではありませんが、しかし、税ほど一般化していない。そういう意味で明確である、あいまいではないというふうに申し上げているわけでございます。
先ほども何度も申し上げておるわけでございますが、私どもの調査では、六十五歳以上で亡くなった方の亡くなる直前の状態がどうかというのを調べたものがございます。それによりますと、半年以上寝たきりなり準寝たきり状態にあったという人が全体の半分ぐらいいるわけでございまして、そういう意味で、生涯を通じますと、非常にアバウトな言い方ですが、半分ぐらい要介護状態に遭遇するリスクがあるわけでございます。配偶者あるいは自分の両親、家族ということを考えますと、いわゆる介護問題というのは非常に身近な問題になっている。
そういうものへの対応だということについて十分御理解をいただくことによって、先生は少しあいまい過ぎて、相互扶助だけではいかないんじゃないかというふうに言われるわけでございますが、いっかは自分の問題である、そういう御理解をいただくことによって積極的にこの制度を支えていただけるのではないかと思っておるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014237X02019970617/31
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032・牛嶋正
○牛嶋正君 保険には年金保険というのがもう一つございますね。これはいわば貯蓄型ですね。いずれは自分が高齢者になって所得が入らなくなったときの生活保障ということを考えますと、自分で貯蓄して、それをためてふやして、老後はそれで食べてもいいわけですが、自分がいつまで生きられるかわからないわけですから、どれだけためなきゃいけないかわかりません。しかし、社会保険でいきますと一応平均寿命というようなところでやって、早く死んだ人はそれだけ損、長く生きた人は早く死んだ人の貯金をもらう。これが年金保険の一つのあれですね。
そういう年金保険の持っている意味合いを、何か今の御説明ですとちょっと介護保険にも入れて考えようとされているわけですけれども、全くこれは違いますね。むしろ医療保険に近いわけですね。そういうふうに考えると、やっぱりあいまいさは残るのかなという気がいたします。
この問題についての最後に、また厚生大臣にお尋ねしたいわけですが、私は先ほどから制度の連続性というのを申し上げてまいりました。その方が、こういった事業を進めていく主体になります市町村にとりましてもかなりうまく適用できるのではないか。全く新しいこういう制度を入れた場合、そこには相当準備に時間もかかりますし、そして制度の連続性もないわけですから、市町村にとりましてはまた一からやっていかなければならない。こんなことを考えますと、もう一度申し上げますけれども、むしろ公費負担方式をそのままにして、そして運営のところでできるだけ選択の余地が入るように工夫をしながら制度全体の連続性を保っていく方が、私は国民の理解が得られるんではないかと思いますけれども、この点についてもう一度厚生大臣のお考えをお尋ねいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014237X02019970617/32
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033・小泉純一郎
○国務大臣(小泉純一郎君) この介護保険制度は、昨年来から熱心に導入すべきだという方々が働きかけられて、むしろ選挙前にこの保険法案を国会に提出しようという声が一部から強く上がったわけであります。しかし、もっとじっくり議論した方がいいということで、昨年の通常国会が終わってからも、閉会中、各地区で公聴会等が行われ、そして十月に解散・総選挙が行われたわけでありますが、その前の臨時国会に出せという声もかなり強かったわけであります。そして選挙後、ようやく機が熟してきたということで、この保険法案を昨年の臨時国会に提出したわけでありまして、私としては、むしろ早く導入した方がいいという声に厚生省はこたえてこの法案を出したと理解しております。
そして今、税方式がいいか社会保険方式がいいか、給付と負担が明確でないということがありますけれども、それでは税方式ですよといった場合、その費用をどこから出すかという問題があります。消費税を上げていいのかということになりますと、三%から五%にするのでさえも、税方式がいいという政党でさえも五%の引き上げに反対されました。じゃ、どこで税を捻出するのかといった場合に、私はある意味においては社会保険というのは目的税と言えると思いますね。この保険は、介護保険は介護に使ってください。税だったらわかりません、色はついていませんから。税項目、どこを増税するのか、現実の問題として。
私は、国民の理解を得やすいということならば、むしろ社会保険というのは一つの目的税的な色合いを濃く持っている、しかも現在の日本の社会保障制度の基本が、年金にしても医療にしても保険方式でありますので、国民の理解を得られるという点からいっても公費と保険、両方という形の方が理解を得られやすいのではないか、また財源も調達しやすいのではないかというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014237X02019970617/33
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034・牛嶋正
○牛嶋正君 ちょっと今、財源の問題が出てまいりましたが、きょうは実はこの問題は私準備しておりませんので、また次の機会にやらせていただきたいと思います。
それで今、保険料というのは目的税的な性格を持っているんじゃないかというお話ですけれども、同時にそれは直接税としての性格も持っているわけですね。だとしますと、むしろ税でも間接税で目的税的なものをつくっていくということも今の大臣のお話の対案としては一つ出てきますが、この問題はまた機会をつくっていただきまして、御議論させていただきたいと思います。
最後に、国民的合意について若干御質問させていただきたいと思います。
このパンフレットにも、国民の八割強が介護保険に賛成していると、こういう説明をされております。このパンフレットでは、その情報源というのは、平成七年に総理府が実施されました高齢者介護に関する世論調査によるものであるという注釈がございました。
もう一つ情報源がございまして、それは平成六年の秋に毎日新聞社が行いました、「高齢化・介護」全国世論調査でございます。ここもやはり、国民の八割強が介護保険に賛成していると、こういう回答が出ております。
平成六年とか七年といいますと、まだ政府案が出ておりません。固まっておらない段階でどういう設問をされたのか、どういう設問でこういう結果が出てきたのか、ちょっとその設問を説明していただけますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014237X02019970617/34
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035・江利川毅
○政府委員(江利川毅君) 総理府の世論調査の設問でございますが、中身はこうなっております。
公的介護保険制度というのは、健康保険のように、国民があらかじめ保険料を支払い、高齢期に寝たきり等で介護が必要になった場合、介護施設や介護サービスを利用できる制度です。国などの公的機関が、公的介護保険制度のような高齢者介護のための新しい仕組みや制度をつくることについて、あなたは賛成ですか、それとも反対ですか、これが総理府の問いでございます。
それから、毎日新聞でございますが、毎日新聞の問いは、お年寄りを介護する人のために個人、国、自治体などが一定の金額を負担し、介護サービスや現金を支給する公的介護保険が検討されています。あなたはこのような制度の導入に賛成ですかということでございます。
ただ、この毎日新聞の問いは、この問いで賛成と答えた人が八六%いるわけでありますが、この賛成と答えた人にさらに実は枝番で問いがありまして、賛成と答えた人にこういう問いがついております。個人の保険料の負担額は一カ月幾らぐらいがよいと思いますか。例えば、ドイツでは月収の一%を労使で折半、自営業は全額負担です。そういう問いがついておりまして、一番多い答えが三千円くらいで二八%、その次は五千円くらいで二六%ということでございますので、最初の問いだけだと毎日新聞は果たして保険かどうかはっきりしない点がありますが、その賛成者に保険料まで聞いておりますので、保険制度だということがわかるような問いになっているんではないかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014237X02019970617/35
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036・牛嶋正
○牛嶋正君 私も、毎日新聞社の調査を検討させていただいておりますけれども、この介護保険制度導入に賛成と答えた人に対しまして、その理由を次の質問で尋ねているんですね。その回答を見ますと、一番多かったのが介護は社会的に解決しなければならないからというのが三五%、それから二番目に多かったのが家族で介護費用を出すのは大変だからというのが三三%、それから三番目は家族で面倒を見られないからというのが三〇%でございます。
こういうふうに見ていきますと、賛成理由から見ますと、私は答える人が介護保険と介護保障というのを混同したんじゃないかなというふうに思うわけであります。ですから、介護保険の賛成者八十何%という、その数字をそのままの形で受け取れない部分があるのではないか。むしろその八割強というのは、公的な介護保障制度に対する賛成論ではないかというふうに思いますけれども、この点についてはどんなふうにお考えでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014237X02019970617/36
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037・江利川毅
○政府委員(江利川毅君) 最初に申し上げました毎日新聞の設問、それから今、先生が御指摘になりました最初の枝の質問というんでしょうか、で見れば、確かに介護保険なのか、そうではない公的な、いわゆる保険ではない公費負担の仕組みなのか、そこは問いだけでははっきりしないとは思うんですが、さらに引き続いてその後に、先ほど申し上げましたように、個人の保険料負担額は一月幾らだということを聞いておりますので、その全体を合わせて考えればいわゆる保険制度ということで聞いているんではないかと思うわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014237X02019970617/37
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038・牛嶋正
○牛嶋正君 先ほども申しましたように、まだこの調査が行われました平成六年とか七年というのは政府案も固まっておりませんね。ちょうど老健審で御議論されている過程であった、途中であったというふうに思います。私はそういう状況のもとで出された一つの世論調査の結果、これをいつまでもこういうふうにパンフレットでお使いになるというのはいかがなものかなというふうに思うんですけれども、その後の調査はなさっていないんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014237X02019970617/38
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039・江利川毅
○政府委員(江利川毅君) 例えば、厚生省としてあるいは政府としては行っておりませんけれども、平成八年七月、ですから既に法案のもととなりました介護保険制度案大綱というのが発表された後でございますが、共同通信社による世論調査が行われております。これによりますと、六九%が制度を知っているというふうに答えておりまして、七九・四%が介護保険制度導入に賛成という回答になっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014237X02019970617/39
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040・牛嶋正
○牛嶋正君 それで、実は新進党が三月の初めに全国の自治体に対しまして「介護保険法案に関する自治体緊急アンケート」というのを実施させていただきました。設問は九つあるんですけれども、全国の市町村三千二百五十五団体を対象にして調査をいたしました。非常に短期間でありましたけれども、回答数は千四百七十三団体でございまして、まずまずの成績であったというふうに思っております。回答率は四五・三%でございました。
この調査の第一問で、介護保険の内容を国民はよく理解していますかという質問をさせていただいております。恐らくこの質問に答えたのは現場の職員だろうと思いますけれども、したがって直接地域住民と接している人たちの回答であります。まだまだ理解されていないと思うというのが千百八十団体の回答を得ております。それから、全く理解されていないと思うというのが二百二十三団体。合わせますと千四百三団体、回答の中でその比率を申しますと九五・二%の団体がまだまだ国民はよく理解していないというふうな回答を得ているわけです。
私はこれが本当の数字かなというふうに思っているわけですけれども、これは私たちがやったアンケート調査ですからそういうふうに思いたいわけですけれども、これについて、厚生省はこのアンケート調査の結果はお聞きになっておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014237X02019970617/40
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041・江利川毅
○政府委員(江利川毅君) アンケート調査の結果は新聞に発表されましたし、私どもも資料をいただいております。先生御指摘のように、確かに介護保険の内容を国民はよく理解しているかということについてのお答えは今御指摘のとおりでございますが、これは自治体職員に、いわゆる担当者に尋ねた質問である、そしてよく理解しているかというこの水準のとらえ方でございます。国民としては一定の保険料を納めれば一定の介護が受けられるんではないかというぐらいの意味での介護保険の理解というのは私は十分いっているんではないか、先ほどの新聞のマスコミ等にあるとおりだと思うんです。ただ、具体的な中身、市町村職員のレベルで考えているような理解度、こういう面で見ればまだ理解が不十分ではないかというような意味でお答えになったんではないか。
まことに恐縮でございますが、九つの質問全部見させていただきますと、九番目には介護保険についての御意見も聞かれているようでございまして、このアンケート調査の結果では、市町村はいわゆる介護保険制度を導入するということで五四%の方が賛成、公的制度でということについては四〇%の方というような数字になっているわけでございまして、まだ自治体の意見も分かれているといえば確かにそのとおりではございますけれども、保険という考え方も相当理解していただいているんではないかというふうに思うわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014237X02019970617/41
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042・牛嶋正
○牛嶋正君 この調査で私はほかの九つの質問を全部分析させていただいたわけですが、そもそも市町村の担当者も非常に、政府案のところは省令でお決めになるという部分が多いわけですから、どういう姿になっていくのかイメージがつかめてないんじゃないかなと、こんな気がしたんですよね。こういう形で出発しますとちょっと私はまずいんじゃないかと思うんですけれども、この点はどうなんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014237X02019970617/42
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043・江利川毅
○政府委員(江利川毅君) 介護保険制度の事業主体、実施主体は市町村でございますので、市町村がまずは十分理解するということが非常に重要なことだというふうに思っております。私どもは昨年の夏ですか、これは与党三党で修正される前の原案でございますが、それをもとにしまして、全国の都道府県で市町村長さん等に対しまして各都道府県ごとに説明をいたしまして理解を求めた。あるいは、全国の都道府県レベルが中心でございますが、都道府県の担当課長会議などがある場合に説明をして、県下への周知をお願いするということをやってきたわけでございます。また、パンフレットその他でできるだけ市町村だけじゃなく国民にも御理解をいただくようにという努力をしております。
まだ法案は成立していないわけでございますけれども、その後、与党の御指摘を受けて修正をし、あるいはまた衆議院側でも若干の修正がありまして附帯決議もついたりしているわけでございます。国会の中でもいろんな御議論がありました。そういうようなことを私どもとしては全都道府県にお知らせをしたり、あるいはまた都道府県単位に各市町村に御説明をしたりとか、そういうことを重ねて進めていきたい。それで、できるだけ正確な理解を持っていただくように努力をしてまいりたいというふうに思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014237X02019970617/43
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044・牛嶋正
○牛嶋正君 それでは、これで最後の質問にさせていただきたいと思います。
私は今までのこういったいろんな世論調査をずっと見てまいりまして、まだ現在のところ国民の理解というのは、介護保険が導入されれば介護の心配はなくなるだろうと、これぐらいの程度の理解ではないかなというふうに思っているんですね。そうだとしますと、これぐらいの国民の理解だとしますと、私はかえって介護保険制度が導入された後、国民が期待外れというようなことになっちゃいますと、国民の皆さんの老後に対する不安を一層かき立てるんじゃないか、こういう懸念も抱いているわけでございます。そういう意味で、私はやっぱり国民的合意というのは非常に大事だと思うんですよ。
これについて、今のようにただ府県を通じて市町村にいろいろ説明されているようですけれども、それは市町村に対する説明でありまして、もっと国民に対してはこういう問題も懸念されるんだというふうなところまでやっぱり説明しておく必要があるんじゃないかというふうに思いますけれども、その点についてはいかがでございましょうか。最後に厚生大臣にお願いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014237X02019970617/44
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045・小泉純一郎
○国務大臣(小泉純一郎君) 私は、介護保険が導入されれば介護の心配はなくなるだろうと思っている人は少ないんじゃないかと思います。
むしろ、今個人だけで介護の問題はもう解決できない、やはり社会的な公的な支え合いの制度が必要だろうという理解はかなり多数の方が持ってきたのではないか。私も、この保険が導入されれば介護の心配はありませんよなんと言う気は全くありません。どの程度の負担をすればどの程度の給付が受けられるかという理解は持ってもらわないとこの介護保険制度は成り立ちません。
しかし、現在の家族だけ個人だけに任せておけるような状況じゃない、お互い支え合っていこう。地方公共団体も政府も、介護保険、介護の問題というものを社会全体の問題としてとらえようということでこの制度を導入するわけであります。
私は、今後ともこの介護保険導入によりまして、民間のサービスも参入してきます、そして介護サービスを受ける度合いというものは人によって全く違います。しかも、介護保険が導入されるとしてもかなりの選択制になっていますから、これだけの負担を払えばこれだけのサービスが受けられます、この負担が払えないとなるとサービスも悪くなりますよという仕組みですから、その辺は理解できるんじゃないか。
しかし、今このままほっておいたら全部個人だけにしわ寄せされる。これはもうたまらぬということで、お互いもっと負担をしながら給付等の面を全体で考えていこうじゃないかということでありますので、私はこの介護問題に対する理解というものは今後不断の努力が必要である。そして、過大な期待を持ってもらうというのもこれはいけませんけれども、お互い不十分ならば少しでもよりょくしていこうという努力をしていく点が大事ではないか。
そして、いろいろ御心配があると思いますが、初めての制度ですから、来年ではありません、三年後に導入ということで準備期間も必要であります。ということならば、まずは早く法案を成立させていただいて、その準備のために体制を整えさせていただきまして、制度を導入したならば必ず予想していた以外の不備も起こってくると思います。それは実施を見ながら手直ししていこうということで、この介護保険制度を定着させていきたいというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014237X02019970617/45
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046・牛嶋正
○牛嶋正君 今、大臣おっしゃいましたように、私は準備期間というのは非常に大事だと思うんですね。ですから、もし準備期間で少し制度を運営していく場合に、まずい点が出てきたらそれはちゅうちょなくそこで手直しをしていただく。こういうことを、今、大臣おっしゃいましたように新しい制度をつくるわけですからそういったこれまでのいきさつなんかにこだわらないで、私はそういう姿勢をずっと取り続けて、本当に十二年四月一日に出発するときに、国民がああなるほどいいものができたというふうな感じの制度であることを最後にお願いいたしまして、私の質問を終わらせていただきます。
ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014237X02019970617/46
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047・今井澄
○今井澄君 民主党・新緑風会の今井澄でございます。
ただいま一時間半余りにわたり、牛嶋先生の大変含蓄に富んだ内容の濃い質疑を聞かせていただきまして、私としても大変勉強になりましたし感激をいたしております。
特に今、新ゴールドプランの意義とその作成過程、それから国民の合意をどう得られるか、最後のことにも関連して出たことや、あるいは社会保険方式なるものがいかなる意味を持つのかということについては大変的確な御質問であっただろうというふうに思っております。
実はこういう問題、既に社会保障制度審議会の第二次報告で初めてこの介護保険制度ということが公式の文書に出る、あるいはその前からいろいろ論じられている中でやってきたわけですが、基本的な考え方は私も税方式といいますか、保険方式というものが基本的にはなじまないんではないかという考え方はいまだに持っております。
先ほど小泉厚生大臣がくしくもおっしゃいましたように、これはいわゆるリスクに対して共同で集団的に備えるという保険原理の貫徹した制度ではない、むしろ一種の形を変えた目的税的な、そういう相互扶助システムであるというお話があって、まさにそういったものだろうというふうに思います。極めて現実的には、そういう目的税というシステムで早急に迫り来る高齢社会に対しての財源確保ができないということからこういう形をとるんではないかと理解しております。そういった意味では、まさに公的システムだろうと思っております。
江利川審議官の先ほどの答弁の中で、保険料だけでやったんではとても高くなってやり切れないから公費を入れるんだ、まさにそこのところにこれは保険原理を貫いたものではないということもあるだろうというふうに思っております。
そこで、私はそういう制度としてやっていくのは当面やむを得ないと思うわけでありますけれども、やっぱりこの社会保険制度に大きな問題点があると思うんですね。
一つは、まず新たな事務が発生する。被保険者の登録管理を行い保険料を徴収するという新たな事務が発生する。これにはお金も人手もかかるということですね。
それから二番目には、保険方式は日本の場合には確実に保険料未納者が発生するということ。既にこれは牛嶋先生もさっき示唆しておられましたが、年金制度ではもう三百万を超える無保険者がいる。これはずっと無保険者という意味ではありませんけれども、一定期間以上無保険者というのが生ずる。そうすると、今度は給付ということでいろいろ問題が出てくるわけですね。
それから三番目に、私は、受益者負担という考え方を一方で取り入れるとしても、こういう高齢社会の中での福祉システムは所得再分配という大きな枠の中でやっぱり考えるものであるだろうと思うんですね。そういう意味からいうと、保険料の負担というのはほかのいろんな税に比べても最も逆進性が高い。
例えば、消費税が逆進性が高いと言われますが、これはもう定率でずっと全部かかるわけですね。極端にいえば、同じ食べ物を買うんでも選ぶことができるわけですね。タイを買うかイワシを買うか選ぶことができるけれども、保険料は定率であっても選べない。全くの定率ですよね、定率だとすれば。定率でも上限と下限が必ずあるわけですね。だから、上限、ある程度以上は保険料を付加しないということが現にあるわけです。それから、もし定額ということになりますとこれは著しい逆進性ということになるわけです。そこで、こういうものを克服していく方向が必要ではないかというふうに思います。
これは質疑通告の中では申し上げていなかったんですが、新たな事務が発生する、これに関しては金額に換算するとどのぐらいの新たな事務が発生するかわかりますでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014237X02019970617/47
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048・江利川毅
○政府委員(江利川毅君) 現在の介護に関する事務というのは老人福祉と老人医療でやっているわけでございまして、これが再編成されまして保険事務になるわけでございます。その部分はふえるわけでありますが、一方、措置関係の事務はなくなるという意味で減少するものもあるわけでございます。
私どもが国保の事務量をもとに推計をしているわけでございますが、それによりますと全体にかかる経費が八百億円ぐらいではないか、それに対して少し縮減する部分というのは三百億円ぐらいあるんではないか、要介護認定事務などを中心に約五百億円ぐらい事務費がふえるんではないか。ふえる事務費の二分の一につきましては、国費で支援をしていこうというふうに考えているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014237X02019970617/48
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049・今井澄
○今井澄君 わかりました。
それから、このためにいろいろ被保険者の管理システムをつくるということもこれからなかなか大変なことだろうと思います。それから、保険料の未納者が発生するわけですが、これは未納者あるいは未納期間が一定程度を超えたものについては給付を制限するというふうに聞いているんですけれども、そういうふうな基本的な考え方でしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014237X02019970617/49
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050・江利川毅
○政府委員(江利川毅君) 私どもとしては、まずこの制度の趣旨をよく理解していただいて、そこを頑張るというのがまず第一でございます。
そして、極力未納者を発生させないように努力するということが前提でございますが、未納がありましたときに過去の保険料未納に対しまして給付率を下げる、九割給付するところを未納期間に応じまして七割給付にして三割自己負担にするというような考え方が一つ。これは時効によっていわゆる保険料を徴収できなくなった期間、そこを念頭において考えているわけでございまして、まだ時効にかかっていない部分は保険料を納めてもらうということが基本でございます。
それから、いわゆるまだ時効にかかっていない段階のものでございますが、その場合に、本来介護給付は現物給付でございますけれども、これを償還払い化する、そういうようなことによりまして保険料納付のインセンティブを与えたいというふうに考えておるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014237X02019970617/50
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051・今井澄
○今井澄君 そこが問題でありまして、これはやっぱり要介護状態に対してサービスを提供するための公的なシステムとして整備するわけですから、問題は、払わなかったからサービスしないというんじゃなくて、いかにサービスを受けられるようにするかということが問題なんですね。言ってみれば、やはりこれは形を変えた目的税的なものだという考え方をより強く持つとすれば、この保険方式でやるとしたら保険者の未納をなくす方法をいろいろ考えるべきだと思うんです。
その一つとして、私は一昨年ドイツの介護保険を見にいってまいりましたが、ドイツは介護保険に限りませんが、保険料未納者に対してはペナルティーがあるんですね。こちらで言う国民健康保険にしろ、向こうの介護保険にしろ、未納者については五千マルク、一マルク七十二円とか七十三円とかいいますが、購買力平価百円と考えて換算すると五十万円ですよ、五十万円の罰金を科すわけですね。日本で税の場合には、これは滞納をしたりすると滞納金がかかりますし、脱税なんかしたら大変な追徴金がかかりますね。これは非常に厳しい民主主義の原則だと思うんです。
そういう意味で、私はやっぱりそういうことも考えるべきだと思うんですが、諸外国でこういう保険制度あるいは社会保険制度をとっておるところで、未納者に対して給付で事後的に対処しているところと、それから徴収する段階できちっとペナルティーとか何かでやっているところはどんな国際的な状況か、もし調べてあったらお知らせいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014237X02019970617/51
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052・江利川毅
○政府委員(江利川毅君) 先生の御指摘のところまで普通の制度のあれではないわけでございますが、私どもアタッシェを通じて一応昨晩様子を聞いてみました。まず、普通のサラリーマンの場合には、給料天引きになりますからこれは未納ということはない、自営業者が問題になるんだと思います。
フランスの自営商工業者の医療・年金制度におきましては、保険料を納めない場合にはやっぱり罰金とか禁錮とか、そういう刑があるそうでございます。それからドイツは、ちょっと私どもの担当者が申し上げたのは先生と話が少し違っておるので、ちょっとお答えは差し控えさせていただきます。ということで、そんな情報を把握した程度でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014237X02019970617/52
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053・今井澄
○今井澄君 実はこの制度をつくるのに私も深くかかわっておりまして、当時の与党福祉プロジェクトの座長としてずっと新ゴールドプランからこのプランにかかわってきて、当初は当然のこととして二十歳からという、これは宮崎先生も御一緒でやってきたわけですけれども、二十歳が常識でやってきたんです。それをなぜ四十歳にしたかというと未納者問題ですね、簡単に言えば。
先ほど牛嶋先と言われたように、未納者がふえたらまずこの保険制度は崩壊するわけですよ。そういう崩壊するような制度をつくれないという心配から実は六十五歳そして四十歳という区切りをつけざるを得なかったというものがあるので、これは非常に重大な問題だと思います。そしてまた、日本人の価値観、日本の社会のいい面と悪い面だと思いますが、このあいまいさといいますか優しさといいますか、そういうものもあるんですが、ここのところはやっぱりきちっとしていくべきではないだろうかと思います。
保険料の逆進性の問題については後ほど時間があったら触れたいと思いますが、そういった意味で、大臣、いかがでしょうかね、こういう欠点を持つ中で発足させざるを得ないわけですね。しかし、一方ではこれは目的税的なものであるということですから、保険だ保険だということで、そういうところへ逃げてしまわないで、きちっと何か対処すべきではないかと思いますが、いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014237X02019970617/53
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054・小泉純一郎
○国務大臣(小泉純一郎君) 直接的なお答えにならないかと思いますが、じゃ逆に税方式でやろうといった場合、どういう問題点があるかということをちょっと考えてみると、どの税項目を今増税するか。消費税を増税するんでしょうか、所得税を増税するんでしょうか、あるいは法人税を増税するんでしょうか、どの項目に目的税を出すんだ、これ大変な問題だと思いますね。どの政党も言い出せないと思います、今の状況で。じゃ税でやると、そうすると必ず一定水準しかこの介護サービスを受けないという制度になります。所得制限を課さなきゃ無理だと思います。どうやってこの所得制限、どこまでするのかと、調査も大変です。受けるサービスも限られたものになると思います。
こういう問題を考えますと、恐らく民間の施設が参入してこないですね、税方式だと。そういうことを考えますと、私は今の民間参入を促す、保険料といっても段階をつけて、給付の問題につきましても保険料負担の度合いによって選ぶことができる、あるいは介護というのはもうやはり導入した方がいいという声を配慮するならば早い方がいいと、もう待てないと、何とか早くという声もあるわけです。導入をするんだったらば社会保険方式、かなり目的税的な色合いは持っておりますけれども、今までの年金、医療という保険方式が定着している日本だったらば税よりはこの保険の方が理解を得やすいし、そして、一度導入したならばサービス競争もこの保険の方がいろんなボランティアとか民間の施設も参入してきまずから、水準の向上が図られるのではないか。逆の言い方でありますけれども、税よりはよりょく国民の理解を得やすいし導入しやすいし、そして競争が始まりやすいというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014237X02019970617/54
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055・今井澄
○今井澄君 私はやっぱり消費税を何%は福祉目的税であると、介護目的税であるということで、税方式にするのが一番理想だと思います。
ただし、今のように税金のむだ遣いが余りにもたくさんあることが国民にわかっている段階ではそちらを節約する、行財政改革をやることなしに幾ら目的税だといっても消費税アップは難しいと思いますので、社会保険方式はやむを得ないと思っています。
もう一つ、今、大臣が言われた民間活力を導入するという意味では、私は税方式のすぐれた点だろうと思っております。これはもちろん日本の地方行政あるいは国家行政がもうちょっと規制緩和したりいろいろすれば、公費でも民間事業者の参入は無理ではないと思いますが、どうも今のシステムでは難しいので、医療保険にならって保険方式で民間の力をかりるという意味でプラスに評価しております。
さてそこで、先ほど牛嶋先生も言われましたことの心配ですけれども、やっぱり今一番問題なのは保険料を徴収しても保険あってサービスなしということにならないかと、これが実は私は一番心配なところであります。実は私、ほとんど毎週一回、少ないときでも月二回ぐらいは地元へ帰って大抵のところで介護保険の話をしております。それで、おかげさまで厚生省も大変御熱心のようで、このパンフレット、それからもう一つありますね、このパンフレットを私はいつも講演する、あるいはシンポジウムの現場に直送してもらうんですね。幾ら頼んでも頼んでも品切れにならないというところは、厚生省は相当やっていると思います。
実は、「医療保険制度を考える」、これは保険局でパンフレットをつくりまして、これを使って大分あちこちで講演するんですが、いつもファクスでどこどこへ何部直送してくれと頼むと、こっちは品切れになったというんですね、この前。ところがこっちは幾らやっても品切れにならないという。今まで一番たくさん頼んだのは七百部、実はおとといの日曜日には三百五十部お願いしましたし、今度の日曜日は二百五十部直送をお願いしております。大変にそういう点ではあれなんですけれども、これでいろいろ説明はしているんですけれども、やっぱり私は正直言って保険あってサービスなしになつちゃうよと。実は医療もかってそうだったと、国保が導入されたとき保険あって医療なしだったと。私の出身地のあたりなんかは慌てて村々の国保診療所から病院からつくらざるを得なかったんですね、国保制度が導入された後に。
どうもそうなるんじゃないかと思うんですが、先ほど出てきた新ゴールドプランですけれども、新ゴールドプランの例えばホームヘルパーの目標数は十七万人ですよね。ところが一方で、一昨年の暮れになりますか、老人保健福祉審議会に厚生省が八つの典型的なケースというのを出しました。こういう程度の人にはこういうサービスを行いますよという一週間の予定表、それでは完全寝たきりみたいな人には一週間にすると延べ二十時間を超える介護サービスを提供するという、かなり質の高いサービスだと思います。それを集計すると今の十七万人というホームヘルパーの数なんかではとても足りないと思うんですね。
質問の方、少し飛ばしますけれども、そういう典型的なケースということで、サービス内容、このパンフレットの中にも書いてあります。この十ページに、自分で寝返りすることができる、ということは起こしてやればポータブルトイレに座れる、それで、虚弱な高齢配偶者と夫婦二人暮らしの場合には一週間どういうサービスをするというようなことが書いてあるわけですね。なかなかのサービスだと思いますが、こういう厚生省がこの間老人保健福祉審議会に示したようなこういう資料でやっていくためには、二〇〇〇年時点でどのぐらいのホームヘルパーが必要になるのか、あるいは施設入所の特養の入所定員は何人分ぐらい必要になると考えておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014237X02019970617/55
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056・羽毛田信吾
○政府委員(羽毛田信吾君) 今、先生お挙げになりましたサービスモデルのような体制をとった場合に、今後どのように介護基盤整備が要るかということで二〇〇〇年時点のお話がございましたけれども、実は、私どものとっております考え方は、二〇〇〇年時点、つまり制度の立ち上げの時点につきましては、現在の新ゴールドプランの達成をいわば足元にして総論を考えるという考え方をとっております。
したがいまして、二〇〇〇年時点でのヘルパー等につきましては、先ほどお挙げいただきました十七万人ですし、例えば特別養護老人ホームですと二十九万人ということを整備目標にして、そこをまず達成していくということで現在大車輪で進めております。
さらに、その後いわば利用希望が上がってくるということで、その後の利用需要の増加ということを織り込んだ形で推計をいたしておりまして、そういう考え方で、いわゆるモデルを前提にしたいわば機械的な推計ではありますけれども、そういう形で、例えばその十年後の二〇一〇年、平成二十二年ということで申し上げますと、ホームヘルパーを五十八万人、それから、特別養護老人ホームについては三十三万五千人というような形
での見込みを一応いたしております。それは、言ってみれば平成十二年度時点をさっきあれしましたときから、ずっとこういうふうにだんだん伸びていくという前提で、あくまでも基本的にはこれから、先ほど来申し上げていますように、介護保健事業計画をつくってもう一回まず自治体の需要というものをきちっと積み上げてやっていくということでございますから、あくまでも今の時点におけるそういうサービスモデルを前提にした機械計算ではございますけれども、改めての需要予測は今のようなことでやっていくということになります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014237X02019970617/56
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057・今井澄
○今井澄君 今、二〇一〇年時点でホームヘルパーは五十八万人という、十七万人に比べると十年間でゴールドプラン、新ゴールドプランの十年の整備目標の倍を超える、三倍ぐらいのものがその後十年で必要というお話です。
実は、さっき牛嶋先生のお話にも出ましたし、今の老人保健福祉局長の答弁にもありました、新ゴールドプランは、市町村の老人保健福祉計画を積み上げて十七万人というのは、結果的にはその数字でありますけれども、実は新ゴールドプランをつくってくる過程ではそうではなかったと思うんですね。
先ほどゴールドプランと新ゴールドプランの違いは何かという牛嶋先生のお話に対して、大体のお答えはありました。ゴールドプランは急速つくった緊急整備計画、それに理念を盛り込んだとか、いろいろ新しいものを盛り込んだというのがありましたが、私は、もう一つその過程で出てきた、これは国会の審議あるいは与党の福祉プロジェクトなどの中で出てきたことは、ゴールドプランの段階では家族介護をいかに公的に支援するかという旧来の考え方だったと思うんですが、急速に家族介護から社会的介護へという考え方が転換してできたのがゴールドプランだったと思います。
その過程では、厚生省に設置された高齢者介護・自立支援システム研究会、ここにおける議論が非常に大きな影響を持ったと思いますし、私どももそういう形で、与党福祉プロジェクトでは厚生省の皆さんと一緒になって、少なくとも二十万人という案をつくったと思います。
ですから、新ゴールドプランができた平成六年の八月の概算要求の段階では、これは厚生省と一緒になってホームヘルパーは二十万人という案をつくったんですよね。ところが、概算要求の最後の段階では、大蔵省から財源問題でどうしてもこれはだめだということで、市町村のあれを積み上げたのが十六万七千でしたか、それで十七万人というふうにしていかざるを得なかったという経過があったと思います。やはり私は、そういう一方に確かに積み上げた経過があったとしても、一方においては介護を社会化する。そうすると、デンマーク、スウェーデン並みにいかなくてもそれに近づけようということで、少なくとも二十万人という目標を持っていたんだろうと思いますが、今十七万になってしまって、しかも財源がますます厳しいとなれば、当面二、三年後に十七万人を超えるものを、これは半分国が出すわけですから、予算を組めないという現実から出発しなければならない。
ところが今、局長お答えになりませんでしたけれども、二〇〇〇年、スタート時点で十七万人でやっていこうというのは、例えばもし全国の高齢者を判定すれば、ホームヘルパーの派遣が必要だという人がいると、だけれども、そのうちの希望してくるだろう人が四〇%ということを基本にして十七万人で何とかやれるんではないかと計算しているんではないでしょうか。そして、二〇一〇年時点での五十八万人というのは、ホームヘルパーを客観的に見て派遣した方がいいと思われる人の何%が希望する数字と見ておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014237X02019970617/57
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058・羽毛田信吾
○政府委員(羽毛田信吾君) まず、平成十二年、二〇〇〇年時点での整備水準の前提になります利用率であります。これにつきましては、今お話のございましたように四〇%と見込んでおりまして、これは全体のうちで四〇%しか満たされていないというよりは、今までの状況からいきまして、いわば希望してこられるのがサービス全体として四〇%程度を見込んでいけばだんだんに上がっていくということで考えておるものであります。
それで、先ほど申し上げました二〇一〇年時点は八〇%まで、これも段階的に上がっていくだろうという前提を一応置くとすれば、そういう数字になるということを申し上げておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014237X02019970617/58
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059・今井澄
○今井澄君 確かに、現在ではホームヘルパーを派遣してもらいたくても、他人に家に入られたくないとか、あるいは他人に見てもらっていることが世間体が悪いとかいうことで、特に地方に行くとなかなか希望をしないということもあるわけですから、今の延長線上に行けば二〇〇〇年では四〇%ぐらいだろうと。二〇一〇年で八〇%、最終的には家族がどうしても見たいあるいは見られるという人もいるわけですから一〇〇%は必要ないと思います。しかし、やっぱり保険制度はそこに落とし穴がありまして、保険制度で保険料を払うと今度は権利になるわけですね。そうすると、四〇%というのは非常に甘いんではないかと思うんですね。
現にこのことは、今度の介護保険法施行法の中でしたか、経過措置というのがあると思うんですね。そこも厚生省はある程度、もし希望が四〇%以上わっと出てきたときには一気に応じられないことも想定しているんではないかと思うんですが、そのことと、そのときにどうやって責任を厚生省としてはとるつもりか、これはできたら大臣からお答えいただければと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014237X02019970617/59
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060・羽毛田信吾
○政府委員(羽毛田信吾君) 先に二点、制度についてお答え申し上げます。
確かに、現在の施行法の中で給付水準がいわば全国的に追いつかない市町村の場合にどうするかということを経過措置として設けております。これは主として、先ほどのお尋ねの中でまだございませんでしたからお答えを申し上げませんでしたけれども、現在の新ゴールドプランを達成するにつきましても、全国的に残念ながらかなりの格差がございます。したがって、これはまずそういったおくれているところについての地域分析をして大車輪でやっていかなければなりませんけれども、そうしても全国的になかなか追いついていかないという事態がございますから、そういった場合についての配慮ということはそれなりにやっぱり要るであろうというところから設けております。
しかし、そういうことの裏腹で申し上げれば、後段のことにも関連をするわけでありますけれども、介護保険がスタートをいたしましても、依然として整備を大車輪でやっぱり進めなければならないという状態は介護サービスについてもあると思います。したがいまして、介護保険事業計画、先ほど来のお話もございますように、地域の需要をしっかり把握して、それぞれ地域の自主的なお取り組みというものの上に立って介護保険事業計画をもって基盤整備をさらに進めていくという考え方でやっていきたいというふうに思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014237X02019970617/60
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061・今井澄
○今井澄君 今、大臣にもお聞きしたんですけれども、次のことと含めてお答えいただければと思います。
それで問題は、この新ゴールドプランを大車輪で達成することにありますけれども、同時に、前回の市町村老人保健福祉計画は、さっきの牛嶋先生の御指摘のように、割合コンサルに任せっ放しみたいなところも多かったと思うんですね。今度こそ市町村が自主的に、自分の市町村はどうあるべきかということを立ててもらうべきだと思うし、それが介護保険制度というものができるにしろできないにしろ新しい介護システムをつくる上で大事だと思うんです。そういう意味では、ただ目標を達成するというだけでなく、新たな次のステップ、俗にスーパーゴールドプランとか新新ゴールドプランと言われるものを目指して各市町村に頑張ってもらわなければいけないと思うんですが、そこで、政府としては二〇〇〇年度の施行を目的にこの法案を出しているわけですね。
ですから、今後修正がいろいろあるとしても、介護保険事業計画を市町村につくってもらう準備とかその他人材の育成とかそういう点について、法案成立前にも進められる準備は進めていくべきだと思いますけれども、この点も含めて大臣の御決意、厚生省の責任、それをお答えいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014237X02019970617/61
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062・小泉純一郎
○国務大臣(小泉純一郎君) この介護保険制度が十二年度に施行されるように我々は準備を進めているわけですが、当然、この国会で今の状況を考えますと継続審議になるような状況でありますけれども、準備は早くすればするほどいいと思いますし、十二年度といってももう三年もないわけですから、私は相当な準備がかかると思います。市町村の体制をつくってもらう、また都道府県、国が支援するわけですけれども、このような計画をするだけでもあっという間に時が過ぎますし、そして施行した段階でも恐らく今想像していない面も出てくると思いますので、これからはむしろこの国会が終わっても、これは成立したという前提で、十二年度に導入するということを前提に事務的な準備は進めさせていただきたい。そして少しでもこの制度が円滑に施行されるように、そして施行後も修正ということがありますけれども、不備な点、不十分な点はいつでも手直しするというような体制もとっておかなければならないだろうと思いますが、ともかく今の時点においては早く、事務的な作業は十二年度施行を目標にさせていただきたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014237X02019970617/62
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063・今井澄
○今井澄君 その点は十分に、本当に保険あってサービスなし、介護なしということにならないようにぜひ準備をきちっと進めてもらいたいと思うんです。
もう時間がなくなってきてしまいましたので、せっかく資料をお配りしたんですが、その保険料問題はこれ次回に回さなければなりませんが、ちょっとだけこの資料のことで申し上げておきます。
私はいつもこのパンフレットの最後のページについているこれを使いまして皆さんに保険制度はこんなものですよと説明するんですが、この図にちょっと問題がありまして、一番右側の一番下に総額で四兆二千億かかりますよと、それを、その上のようかんのような棒グラフにあるように、半分は公費で出します、半分を保険料で、高齢者の保険料が一七%、若年者から三三%ということで話をしていくんですが、実はこれ全部足したものが四兆二千億と誤解されるんですよ。一割負担というのを原則にしているわけですね。ですから、この図はちょっと好ましくない。
それからもう一つだけちょっと申し上げておきますと、そのさらに左に移って、この丸の第一号被保険者、第二号被保険者の話をして、一番下にきて三年中期の保険料が二千五百円、若年の場合にはこれが労使折半だから千二百五十円、高齢者は二千五百円丸々払ってもらうんですよ、これが今までと全く違う考え方ですと話をするとびっくりするんですね。
先ほど牛嶋先生もお話しされたように、国民はこういうところまで含めて理解しているかというと、九九%理解しておりません。しかし、何か新しい制度ができるらしいから期待をしたいということだけは確かですので、ぜひ期待にこたえられるようにお互いに頑張りたいと思います。
以上で終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014237X02019970617/63
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064・西山登紀子
○西山登紀子君 介護保険の審議に入るわけですけれども、国民の大多数、とりわけ女性の場合は八三%ともいう世論調査の結果がありますように、非常に積極的に介護保険制度の導入というものを期待しているわけです。ですから、私もよりよい介護保険制度、しかも期待にこたえて早くつくりたいという思いは変わりません。しかし、拙速に問題が多い介護保険をつくっては、先ほど来議論をされておりますように、保険あって介護なしというようなものであれば、これは国民の期待を大きく裏切っていくことになるだろうと思っております。
それで、介護保険の審議に入る前に、今配られた資料にもありますように、介護費用の総額は約四兆円という大きな事業になるわけですけれども、これほど大きな事業の議論をする前提といたしまして、私はやはり厚生省の福祉汚職事件、先日、衆議院の予算委員会で岡光氏が参考人となったわけでございますけれども、この厚生省疑惑の真相というのはまだ十分明らかにされておりません。国民のこうした疑念をやはり払拭するということが必要じゃないか。この介護保険法案の審議をする大前提として、福祉が再び利権の場にされない明確な反省がされなければならないと思いますが、まず大臣の御決意からお伺いをしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014237X02019970617/64
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065・小泉純一郎
○国務大臣(小泉純一郎君) ちょうど昨年の十一月、岡光前次官事件の問題等が多くの国民の厚生省に対する不信を招いて大変な批判を浴びました。ちょうどあの事件が報道されてから七カ月が経過したわけであります。その間、地道に努力されていた方々にも大変御迷惑をかけ、福祉に携わっている方にも大きな負い目なり負担をかけたと思います。
その点を厚生省として深く反省し、二度とあのような不信を持たれるような不祥事を起こしてはならないということで、昨年十二月に厚生省としても倫理規程を策定しまして、綱紀の徹底的な粛正というものを今図っているところであります。さらに、本年三月末に取りまとめました施設整備業務等の再点検のための調査委員会の報告書にも基づきまして、これから再発防止策に不断の努力を講じたいと思っております。
いろんな施策をするにおいても信頼というのが一番でありますので、あの昨年来の不祥事というもの、これを大きな反省点といたしまして、今後地道な日々の行動によって厚生行政に対する信頼を取り戻していかなきゃならない。そして、引き続き、これからどのような時代になろうとも、社会保障制度という最も国民の関心のある政策を担当する役所としてお互いが支え合う社会保障制度の構築のために全力を尽くしていきたい。そして、不断の努力を国民にわかってもらうように政策面において、また制度面において全力を傾けていきたいと思いますので、御理解、御協力を賜りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014237X02019970617/65
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066・西山登紀子
○西山登紀子君 その大臣の御決意を今後しっかりと見詰めていきたいと思っております。
衆議院で採決されましたこの直後の新聞は、大変手放しては歓迎をしていないということです。例えば、「不安広がる福祉の現場」というふうな見出しがあったり、「金次第の介護招く」だとか「人材・施設の整備は難航」という形で、かなり厳しい国民の声を報道しているわけです。私たち日本共産党も、社会保険制度とそれから措置制度を組み合わせるというふうな形で、衆議院の段階で修正提案というものを出させていただいております。今後ともそういう点で努力をしていきたいと思っているわけです。
先ほど牛嶋先生の方からもいろんな点での御提案がありました。新しい法律をつくるわけですが、法律をつくっても魂が入っていないというのでは大変困るわけであります。私は、この介護保険をつくる際の理念といいますか、視点というのは、介護される側の視点、介護を受ける人たちの権利、これをやはり貫いたものにしなければいけないというふうに考えています。介護する人も介護される側もともに長寿を喜び合うことができるような、そういう社会をつくるための一つの社会保険方式というふうに考えているわけです。
ことしの一月に私は、当参議院の介護保険の海外視察団の一員に加えていただきました。南野議員が団長を務めてくださいました。こういう参議院厚生委員会調査室の「ドイツ及びオランダにおける介護保険の最近の動向」というパンフレットにその視察の一部がまとめられております。委員の皆さんには既にお配りをされているというふうにお聞きをしているわけですけれども、私は、そのとき勉強させていただいた一端を少し御披露もさせていただきながら質問をさせていただこうと思っております。
ドイツとオランダとデンマーク、この一月に視察をさせていただきましたが、どの国ももちろん公式の視察団ということで大変丁寧にきちっと応対していただきました。とてもそのことに感謝をしたいと思います。
それで、まずデンマークに参りましたときに、デンマークの社会福祉部の副長さんという方からお話をお聞きいたしましたけれども、そのときに、観光も兼ねてでしょうけれども、年間三千人の視察が日本からデンマークに来ていると。三千入ってすごいものですね。ですから、デンマーク、コペンハーゲン市のそのコーディネーターの女性は日本語で書いた名刺をちゃんと持っておりまして、日本人の視察団の方に丁寧に応対をしてくださっているということが非常によくわかりました。
それで、その社会省の方は、他の国が我が国の福祉に関心を持ってくれることを大変誇りに思っているが、現在のデンマークの社会福祉はきのうきようできたものではないと。二十年、三十年の歴史の上にでき上がったもので、政治家が国民とつくってきたものだと。その点誤解のないようにしてほしいという前置きをされまして、デンマークの福祉の基本は西ヨーロッパに共通する傾向だと見るけれども、結局、家族構成が非常に変化をしてきたと、女性の社会進出が五〇%を占め、そして典型的な家族は共働きになったために、国や県や市が育児や老人の世話をする必要が出てきてこういう施策が行われていると。
そして、八〇年代になって三原則、これは非常にデンマークの三原則は有名なわけですけれども、社会福祉調査委員会の提言という形で、その試行錯誤の中から三つの原則を引き出したというわけです。
一つは、選択の自由。つまり、介護される老人が最終的には決定権を持つ、老人に嫌なことはさせないという意味だそうですが、選択の自由。それから、二つ目が生活の継続性。いきなりどこか違うところのホームに入れられるとかそういうことがないように、自分たちが生活してきたその生活をずっと続けたいのであれば続けられるようにしよう。三つ目は残存能力の活用ということで、できるだけその能力を活用していく、寝たきりをつくるとかそういうことではなくて、できるだけいろんな能力を最後まで活用していただこう。こういうふうな三原則を打ち立てた以降、介護する側も非常に変わってきたというふうなお話をされておりました。単にあてがう、何でもパッケージにしてあてがうと、それがいいことではなくて、いろいろな能力を開発しながらお年寄りの意見も、これをやりたいあれがやりたいということも含めて、お世話する側が人間として見られるようになったと、そういうふうなお話も聞かせていただきました。
私は、単純な外国の直輸入は問題でもありますし、また単純な比較はできないというふうに考えますけれども、しかし長い歴史の中で培われてきたこうした人権思想、さまざまな試行錯誤の中でやはり高齢化社会はこういうふうな理念でもって進めればいいんだなというふうに到達しているそういう国の理念、それを我が国でも学ぶ必要があるのではないでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014237X02019970617/66
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067・江利川毅
○政府委員(江利川毅君) 御指摘のデンマークの三原則でございますが、これによりまして施設サービス重視から在宅サービス重視へと政策が大きく転換されたということは確かに有名なお話でございます。
我が国におきましても、老人保健福祉審議会の最終報告で実はこれと同じようなことがうたわれております。もう先生御案内のことかもしれませんが、一つは、高齢者の多くができる限り住みなれた家庭や地域で老後生活を送ることを願っていることから在宅介護を重視し、ひとり暮らしや高齢者のみの世帯でもできる限り在宅生活が可能となるよう二十四時間対応を視野に入れた支援体制の拡充を目指し、在宅介護を重視すると。そういう意味で生活継続性ということでございます。
それから、高齢者が利用しやすく適切な介護サービスが円滑かつ容易に手に入れられるよう利用者本位の仕組みとし、高齢者自身による選択を基本とすること、これは自主決定というんですか、自己決定ということでございます。
また三番目に、高齢者の自立を支援しその多様な生活を支える観点から、幅広いサービスを社会的に提供することを基本とするとともに、予防、リハビリテーションの充実を図り、要介護状態の悪化を防ぐこと、これは残存能力の活用ということでしょうが、そういうことでデンマークの三原則と同様の理念を審議会の答申でいただいているところでございます。
この理念は、介護保険法案の第二条第二項、時間の関係で読みませんが、第二項、第三項、第四項にそれぞれその理念を受けた形の条文が書かれておりまして、こういう考え方を我が国においても定着させていきたいというふうに考えておるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014237X02019970617/67
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068・西山登紀子
○西山登紀子君 もちろん実態的にはどうかということになれば、いろいろ申し上げたいこともありますけれども、そういう三つの原則をやはり日本でもきちっと取り入れていると、やっていると、やっていこうと思っているという御答弁だと思います。
それで、次に行きますけれども、ドイツに行きましたときに、ドイツ連邦社会省を訪問させていただいて、介護保険部長さんが直接私たちの応対をしてくださったわけですけれども、両国が非常に友好的だということで、随分この方、総務課長さんですか、日本にも行ったとかいうふうなお話があったわけですが、非常にドイツの介護保険を、日本の介護保険を導入する際にいろいろと御研究をされたという話をお伺いいたしました。
そこで、私は、もちろんこれからの介護保険の審議の際にはもっといろんな全般的な問題も御質問したいわけですけれども、とりわけドイツのお話を聞いておりまして、ドイツの保険をいろいろ参考にしたというんだけれども、介護手当が日本の介護保険には全く入っていない、取り入れられていない。しかし、向こうの現地でお聞きしますと、九四年の四月に法律が成立して九五年の四月から既に在宅介護の給付が始まっているんですけれども、その給付の八割が実は現金給付だったというお話を伺いました。そのこともありまして、ドイツの保険は黒字になったというようなこともお伺いしたわけです。
この点で、なぜ介護手当、いわゆる現金給付を日本のこの法案に盛り込まなかったのか大変不思議な気がしたわけです。当然その点を取り入れてしかるべき、私たちの修正案にもその点を盛り込んでいるわけですけれども、ドイツの介護手当というのはホームヘルプなどの現物給付とそれから現金給付、お金ですね、それを組み合わせてもいいという制度になっているわけです。もちろん介護の程度によってランク分けがあるわけですけれども、値段にして言いますとそんなに多くはないと思います。現物給付に比較して、限度額に換算しますと現金給付は約半分ぐらいですからそんなに高い現金給付というふうには思いませんけれども、しかし、現金給付が保険が導入されたときに大変たくさんの希望があったというふうに聞いているわけです。
この現金給付と現物給付の割合ですね、それから併給、これは実際のドイツではどうだったのか教えてください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014237X02019970617/68
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069・江利川毅
○政府委員(江利川毅君) 平成七年四月から在宅介護給付が実施されたわけでございますが、十二月三十一日までの期間における給付状況を見ますと、介護手当のみの給付を受けた者の割合が八四%、それから介護手当と現物給付の組み合わせを受けた者が七・八%、現物給付のみの者が七・八%でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014237X02019970617/69
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070・西山登紀子
○西山登紀子君 非常に高い率で現金給付に対する希望があったと。もちろん、それまでこういう保険制度がなかったわけですから、何らかの形で家族介護の手が既に打たれていて、実態的にそうなっていたからその現金給付の希望者が多いということであったのかもしれません。
私は、この点で特に日本で介護手当を導入する場合に、むしろ女性を家庭に縛りつけるからよくないという議論があったということを思っておりましたので、お伺いしてみました。ドイツではどうかということでお伺いいたしますと、介護手当金は女性を家庭に縛りつけるという議論というのは当たらないと。現金給付によって男性にも介護の機会がふえると。要介護者が現金給付でも現物給付でもどちらでも請求ができるし、併給もできるという選択権を持つことは非常に大事だし、多くの女性が介護しているという実態は介護手当が入る前からあったわけだから、というような御説明がありまして、この選択肢があるということが非常に意味があるという説明を受けたわけですね。
いただいた資料でも、ドイツではやはり高齢者の介護というのは女性が担っております。こういうふうな資料をもらっているんですけれども、だれが介護していますかという指標ですけれども、これを見ますと娘が一番高い。一位が娘、二番目が妻、三番目が親戚で、四番目が母。それからずっと下がって嫁というのが後から来るんですが、この点は日本の社会と少し違うかなと思うんですけれども、嫁が介護するというのは非常に下の方にあるわけですね。しかし、いずれにしましても、女の方が介護者であるという、娘、妻、母、嫁、姉妹、こういう指標を全部合わせてみますと、このいただいた資料の六四%がはっきりと女性が介護者だというのは指数として出てまいります。
日本の高齢者の介護の実態はどのようになっておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014237X02019970617/70
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071・江利川毅
○政府委員(江利川毅君) 平成七年の国民生活基礎調査によりますと、六十五歳以上の寝たきりの者に対します主な介護者でございますが、女性が八五%、男性が一五%でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014237X02019970617/71
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072・西山登紀子
○西山登紀子君 これはもうやはりはっきりと出ている。介護の主な担い手というのは女性だということは日本でも、むしろもっと日本の方が率が高いかとも思いますけれども、こういう実態というのはあると思うんですね。そして、ドイツでは介護保険が導入されたときに、八割以上が現金給付であったというふうなことを考えますと、やはりこれは日本でも同じ介護保険に対して同じ要求があると考えるのが自然ではありませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014237X02019970617/72
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073・江利川毅
○政府委員(江利川毅君) 先生が行かれました調査報告書の中に書かれていることでございますが、ドイツにおける最近の傾向としまして、だんだん現物給付を選択する者がふえてきているという傾向があるそうでございます。引用しますと、ある介護金庫連合会によれば、最近の新規申請者の割合では現物と現金が半々程度になっているというようなことでございます。
私どもの制度をつくるに当たりましても、実は現金給付につきましては積極的な意見あるいは消極的な意見、両方の意見がございました。積極的な意見としましては、高齢者、家族の選択あるいは外部サービスを利用しているケースとの公平性、そういうものから考えれば必要ではないかとか、家族介護と公的介護との選択の自由を尊重すべきではないかとか、あるいは仕事をやめる人がいるのでそういう収入源を補てんすべきではないかとか、そういうようなことで積極的な意見も出されたわけでございます。
一方、消極的な意見としましては、現金の支給は必ずしも家族による適切な介護に結びつくものではないということ、あるいは先生ちょっとお話がありましたが、女性が家族介護に縛りつけられるおそれがあるのではないかということ、あるいはまた寝たきりの状態が継続する方が現金支給を受けられるということになるとかえって自立を阻害する、寝たきりのままでいるというんでしょうか、自立を阻害するおそれが出てくるのではないだろうか、介護を家族だけにゆだねるといわゆる介護が密室化して介護の質が保障できないのではないか。そういうような両論の意見があったわけでございます。
私どもとしましては、限られた財源をどう活用するかという観点から、当面、意見の分かれている現金給付は行わないで、それを基盤整備の方に振り向けてその充実を図りたいというふうに考えているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014237X02019970617/73
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074・西山登紀子
○西山登紀子君 ドイツでお話を伺ったときに、これほど八割も介護手当金の希望が出るということは実は政府は考えていなかったと。それは予想が外れたんじゃないですかと私がお聞きしましたら、そういう誤りもあるんだということをあっさり、政府の予測が間違っていた、そういう誤りもある、しかしほかのことは大きく間違っていないので誇りに思っていると言って、非常にドイツ人らしいなと思ったんですけれども、そういう実際に実施したらこういうふうに現金給付が多かったというようなことを厚生省はどのように受けとめていらっしゃいますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014237X02019970617/74
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075・江利川毅
○政府委員(江利川毅君) 制度が動き出しましてドイツの場合まだわずかでございますし、先ほどの調査報告書の中にも、だんだん現物給付を選択する人がふえているというふうな動きもあるようでございます。また、お国柄の違いというんでしょうか、家族観とかあるいは地域社会の支え合う考え方とか、いろいろ違いがあるのではないかと思います。ちょっとそれについて今の段階でコメントを申し上げるのは少し早いのかなというふうに思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014237X02019970617/75
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076・西山登紀子
○西山登紀子君 私も何も現金給付を絶対に優先的に広げなきゃいけない、こういう立場ではありません。もちろん現物給付でヘルパーをたくさん整備していただくということが非常に大事だということを大前提にしてきょうは介護手当の議論をさせていただいているわけです。八割だったのが五割に減ってきているということであってもやはり五割現金給付の希望というのがあるわけですね。そして、ドイツは現物給付とそれから現金給付と併給も可能だ、選択も可能だという、選択の幅が非常にある、これは私は大変結構なことじゃないかと思っているわけです。
特に、じゃ日本の女性がどういう状況にあるかといいますと、総理府の八九年の女性の就業に関する世論調査があるわけですが、八三年当時の調査と比べて、女性が社会に出て働こうと思ってもできない理由の中に老人や病人の世話を挙げている率が三五・四から四八・七というふうに上がっているわけです。やはり女性の肩にこの介護が非常に重くのしかかっているということは、これは紛れもない事実でありまして、年間八万人もの女性が介護のために職場をやめていく、これはやめていくというか、むしろやめざるを得ないわけですね。そのやめる女性にとって何が待っているかというと、もちろん自分のお気持ちからどうしても家族を見てあげたいという方もいらっしゃると思いますけれども、それによって収入はなくなる、年金も途中で切れる、健康保険も途中からまた違う保険になっていく、こういうリスクがやめる女性には非常に高いんじゃないかと思うんですよね。だから、そういう現実をどう見るかということだと思います。
今、日本の高齢者の介護というのが個人の努力の限界を超えているということは皆さんお認めになるわけですが、とりわけ女性の犠牲の上にそれが成り立っているということをどのようにお考えでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014237X02019970617/76
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077・江利川毅
○政府委員(江利川毅君) 連合が調査した有名な介護についてのアンケート調査がございますが、これを見ますと、介護を受ける者に対して憎しみを感じたことがあるとか、介護を受ける者に対して虐待したことがあるとかなりの割合で出ているわけでございます。そしてまた、その介護問題が家庭の崩壊に結びつく、あるいはそれに近い状態になる、そういうような悲惨なケースもいろいろと聞かされているところでございます。
介護問題が一般化しているにもかかわらずというんでしょうか、そういうふうな動きになっている中において、現在、福祉と医療とで支えているわけでありますが、この支え方が不十分であると、そのために働いている家族のだれかが働くことをやめて家庭で介護をする、その多くが女性の方にしわ寄せになっているんだろうと思うわけであります。
私どものこの介護保険制度ではそういうことを、要介護者本人と介護している家族を支える制度にしたい。そして、精神的、肉体的な負担というものをバックアップをしまして軽減をしまして、家族ならではのようなソフト面の愛情的な支えというんでしょうか、家族愛の支えというんでしょうか、そういうものが行われる。いわゆる虐待云々という精神的に殺伐としたような状態になるようなものを防いで、家族の潤いが取り戻せるような、そういうことを支えるような仕組みにしたいということでございます。
今の仕組みではどうしても女性の方に多くの負担がかかっている。これを、この制度をつくることによって少しでも軽減したいというふうに考えているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014237X02019970617/77
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078・西山登紀子
○西山登紀子君 時間がないので済みません。もう最後になってしまったわけですけれども、現物給付、つまりヘルパーさんに来ていただければ保険で見てもらえる。しかし、家族で見ていたら全く何の給付も受けられないということでは、非常に保険という性格からしても不公平じゃないかという意見が多数あります。
平成七年の総理府の調査でも、その点の在宅介護者への現金支給をした方がいいかどうかということに、世論調査では五八・三%が現金支給をする方がよいというパーセンテージ。とりわけ私が注目したのは、その中でも、内訳を見ますと女性が六〇・九%、男性が五四・八%ということで、やはり介護を主に担っている女性の方が現金支給の希望というのは非常に高いというわけです。その理由も、結局、仕事を休職して介護に当たっている家族に対しては、やはり休職で失われた収入の一部を補うという、そういう必要があるんじゃないかとか。現金給付をしないと、外部サービスを利用している場合と比べて非常に不公平であるというような理由がそれぞれにあります。かえって女性を介護に縛りつける、そういう理由で支給は要らないと答えた女性はわずかに四・六%しかありません。
こういうふうな総理府のデータを見ても、この介護手当の女性の側の、あるいは国民的な切実さというのがデータでも示されているのではないかと思います。もちろん現物給付、ホームヘルパーをうんと充実させるということが第一義的には非常に重要だと思いますけれども、しかしそれで全部がカバーできるか、国民全部がそれを選択するかというとそうではないということなど、女性が主に介護の責任を負っているという現実を見ても、この介護手当の切実さ、国民的な切実さということがわかるんではないかと思います。
その点について、もう最後になりましたので、大臣にその点のお考えだけをお聞きして終わりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014237X02019970617/78
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079・小泉純一郎
○国務大臣(小泉純一郎君) この現金給付の是非についてはもういろいろ議論が今までもありました。
しかし、限られた財源というものをどちらに優先的に配分しようかということを考えると、私は当面は基盤整備の充実に向けた方がいいのではないか。これからもこの現金給付の是非は必ず出てくる問題だと思っておりますが、当面は家族の負担をどうやって軽減するか、そしてこの介護サービスに従事していただく方々をどうやって養成しふやしていくか、私はその基盤を充実させた方が現金給付よりも、よりしっかりとした介護サービス体制が築かれるのではないだろうかというふうに考えております。
今後、この現金給付はあり得ないとは言いませんが、当面はどちらを優先するかといえば基盤整備の充実に向けた方がいいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014237X02019970617/79
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080・西山登紀子
○西山登紀子君 私どもの修正案では月七万の介護手当金ということを提案いたしまして、新しい制度が発足するということ、もちろん財源も約四兆円規模ですか、あるわけですから、新しい制度の中で、財源を理由にしてまず最初からそのことをやらないということではなくて、ぜひ含めて御検討いただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014237X02019970617/80
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081・釘宮磐
○釘宮磐君 いよいよあすが会期末ということで、当厚生委員会もこれまで非常に重要法案を審議してまいったわけですが、最後の質問でございますので、ぜひよろしくお願いしたいと思います。
私は、今回、介護保険法案が結果的に継続審議になっていくということ、非常に残念でならないわけであります。ちょうどこの医療保険改革を議論している最中にも、介護保険との整合性という問題が随分議論をされてきました。医療と福祉をある意味では一体的に考えていく際に、この一方ののりしろ部分である介護保険の法案がここで継続審議になるということは、大臣が力強く答弁をされておりましたこれからの医療の抜本改革を議論する際にも、これはやっぱり介護がきっちり固まっていないということは非常に私は問題があるんではないかな、そんなことを思っております。
そういう意味では、今後閉会中にも私は積極的にこの介護法案の問題については当委員会としても取り組んでいくべきであると、このように思っております。厚生省の方からいただいたこのスケジュール表の概要を見ましても、これ六月から既に逆タイムスケジュールができているわけでありまして、先ほど大臣の答弁の中にもありましたけれども、ぜひ始められるところがらどんどん始めて、よりよいものをつくっていくということをぜひ冒頭にお願いをしておきたいと思います。
そこで、質問に入らせていただきます。今回私は、主に社会福祉の現場、特に私自身も社会福祉施設の運営に携わってきたという立場から数点お伺いをさせていただきたいと思います。
高齢化社会への対応という観点から、昭和五十年代後半以降、医療保険さらには年金制度についてはさまざまな角度から抜本見直しが行われてまいりました。しかし、社会福祉についてはそういう意味ではこの抜本的な見直しということについてはいささかおくれてきておったわけでありますが、今回介護保険の創設ということで、とりわけ老人福祉関係者には大きな不安があるということをまず申し上げておきたいわけであります。
そこでまずお伺いをしたいのは、今回の介護保険の創設というものが、旧来の措置制度を中核に形成されてきた社会福祉の部分にどのように影響をもたらしてくるというふうにお考えになるのか、その辺をひとつお伺いをしたい。
それからあわせて、我が国の社会福祉というのはいわゆる救貧対策からスタートをしてきたわけでありますけれども、今回のこの介護保険導入によって、老人福祉を中心にこれは普遍的なサービスへと対象を拡大してくるわけですね。そうなりますと、いわゆる福祉の概念、福祉が支えてきたものというのは今後どう担保されていくのか、その辺のところをまず基本的なお考えとしてお伺いをしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014237X02019970617/81
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082・羽毛田信吾
○政府委員(羽毛田信吾君) 今回の介護保険制度導入によりまして、老人福祉の従来の制度、これに対して、あるいはそれに携わっている人たちにどのような影響を及ぼし、また理念の上でどのように変わってくるのかということでございます。
今回の介護保険制度は、繰り返し申し上げておりますように、従来、福祉、医療、それぞれの制度にわたって縦割りの行政になっていて、利用者負担にしても利用の手続にしてもばらばらである、そういうことをいかに合理化をして利用者本位の仕組みにしていくかというのが今回の介護保険の制度化でございます。
そういった意味で、福祉の制度について申し上げれば、従来は措置という形でやられていたものを今回は保険による給付ということでございますから、基本的には契約ということで、従来の行政によっていわばサービスを配分するという形から、利用者がそれを選び取るという基本的な形に変わってくるということになります。
そうしますというと、給付を与える側といいますか、サービスを提供する側の施設等につきましていえば、従来以上にいわば利用者の側からそのサービスを選ばれる要素が非常に強くなってくるということになりますれば、今まで以上に利用者のいわば需要に合った、希望に合った施設体系あるいはサービス内容というものに留意をしなければいけない、そういうふうになってくるものであろうと思います。
ではございますけれども、しかし従来の福祉制度におきましても、大きな目的として、国民だれもが直面する普遍的、一般的な高齢者の福祉の問題ということについて、いわばいかに要介護になった方々に対して適切な福祉を適用していくかという基本のところにおいては、同じ理念に立って今後もやられていくものというふうに思います。
したがいまして、従来のいわば老人福祉施策の基本、これも出発は確かに救貧的なところがら出発をいたしましたけれども、今や老人福祉施策そのものも、いわゆる救貧対策、単なる救貧対策というよりも、国民だれしものそういった普遍的、一般的ないわば介護を要する状態というようなリスクに対してどう対応していくかということになってまいっております。
それをさらに今回の介護保険制度では一歩進めまして、利用者みずからがサービスを選択する、あるいは高齢者の自立を支援する総合的な介護サービスを提供する、あるいは適切な負担のもとに効率的なサービスを提供するというようなことがより一層求められてくる。そういうそれぞれのサービスがある種の競争という中で提供されてくる、そういう形になっていくものと思いますし、そういう意味での経営努力といいますか、運営者としての努力というものは今まで以上にさらに求められていくであろうと思っております。
そういうことを御理解いただきながら、従来の老人福祉施設の経営者の方々等につきましてもそういう意欲的な取り組みをお願いしているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014237X02019970617/82
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083・釘宮磐
○釘宮磐君 ちょっと私が聞こうとしたことと局長の答弁の部分でどうも一致点が見出せないんですが、要するに私がお聞きしたいのは、これまで我が国の福祉、特に老人については介護、これを支えてきた人たちはいわゆる私財を投じてそして施設をつくってサービスをしてきた。そこにはある意味ではハートがあったわけです、福祉の心というのがあった。それが、今も答弁の中にありましたけれども、いわゆる競争原理という問題とどうもなじみにくいという思いが現場の人たちにはあるわけです。
これは後ほどまたその辺を一つ一つ私も詰めていきたいと思うんですが、要するに、じゃ今までの福祉の対象者というものを普遍的にちょっと広げたことによって、従来救貧対策だとか、本当に困っている人に対しての慈悲の気持ちだとか、そういうようなものでやってきた部分というものがある意味ではここで、このまま自分たちもそういう競争原理の中で、土俵に上がるということの中に何か割り切れないものが私はあるんだろうというふうに思うんです。
そういう競争原理と福祉の心という部分での違和感みたいなものについて、厚生省としてどう考えるのか、その点をちょっとお聞きしたがったんです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014237X02019970617/83
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084・羽毛田信吾
○政府委員(羽毛田信吾君) 大きな意味での福祉の心というものは、今回の介護保険制度でも、いわば利用者の選択ということを中心とした競争ということで損なわれるということにはならないというふうに私ども思っております。
むしろ、利用者本位という形で、利用者がそのサービスを選択することを基本とすることによって、ある種の施設の側にはもっとより福祉の心を持った、福祉の心というのも結局のところいかに利用する人たちの需要にかなったサービスを提供していくかというところに帰着をすると思いますので、そういった意味での利用者の需要にかなったサービスを提供していくことの重要性、またそういうことにしないと、今後、施設がどんなサービスを提供していても、あれしていれば結局公費で丸抱えで見られるよというようなことは許されてこないという意味では、むしろそういう福祉の心のいわば競争といいますか、サービスの競争という形の中で貫いていかれる部分はあるんではないかというふうに思います。
もちろん、それぞれそういった意味での選択がされるということは一面厳しい面がございますから、従来以上にそういった面で、常に自分の提供する、例えば施設でございましたら、その施設で提供するサービスがどういうあり方になっているかということに今まで以上に気を配っていかなければならないという意味では厳しい面はございますけれども、大きな意味での福祉の心というようなことについては、今回の介護保険制度がそれを損なうというふうなことはないと思っております。むしろ、意欲的な施設経営の方々にとっては、介護保険制度でいよいよそういった福祉施設の役割なりなんなりが重要なものになりますし、施設としてもさらに積極的な経営ができるというふうになってくるのではないかと思っておりますし、施設の運営の方々の協議の中でも、そういった方向での御意見が大変強いように伺っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014237X02019970617/84
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085・釘宮磐
○釘宮磐君 今、局長は福祉の現場でこれまで取り組んでいた人たちの精神というのはそのまま受け継がれていくし、またそうなっていかなければならないという発言がございました。
私も当然これからある意味では競争原理が働くことによって、旧来の措置費というものがお客さんと一緒に来ていた、そのことによってある意味では施設関係者というのは措置費シンドロームみたいなものにかかっているという面がなかったかといえば、それは全く否定するものではありません。
しかし、現実の問題として、どうも私がひっかかるのは、従来の福祉という感覚とこの競争原理というものの中で、とりわけ老人問題というサイドから考えたときに、ある意味では評価をする部分が生まれてくればそれなりにそれぞれの努力というのはできる。先ほどから保険あってサービスなしというような状況が指摘されていまずけれども、ある程度施設が満杯、飽和状態になってきて、その上でお互いが競争できるような状況になればいいんです。
福祉関係者が心配するのは、従来だと低コストで自分たちは一生懸命頑張ってきた。しかし、これが競争原理の中で、施設の数はまだ十分でないとするならば、自分たちが今まで入ってきた人を寝たきりにさせないために一生懸命努力をして、食事に歩いていけるまでいわゆる更生をさせてきたという部分が、スタート当初から少なくとも施設が飽和状態になるまでの間にいわゆる選ぶような状況になるのかなと。それだったら、従来の自分たちがやってきたその制度をそのままやっぱり生かしてもらうということが大事なんではないかというような思いがあるということをぜひ御承知おきいただきたいと思います。
もう時間がありませんので、この問題はこの程度にして次に移りたいと思います。
私は先ほどから何度も言ってきているのは、要するに介護保険が導入され、これから在宅サービスは営利企業と、一方特別養護老人ホームは老人病院や老人保健施設との競合関係というものが生まれてくるわけです。要するに、利益追求を認められた集団と利益を否定し慈悲の精神で要介護者を支えてきた福祉法人が同じ土俵で競争することに果たしてそごは生じないのかどうか。そこのところをもう一度ちょっと聞かせてください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014237X02019970617/85
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086・羽毛田信吾
○政府委員(羽毛田信吾君) 今後の介護サービスを提供する事業主体としてどのような形に持っていくかということにかかわるわけでありますけれども、確かに将来的な中長期の課題としていえば、そういったいわば同じ経営上の条件で競争をする姿にするというのは、これは一つの方向であろうと思います。そういう意味で、中長期的な課題としていえば、そういった施設の事業、運営主体のあり方を含めた一元化というようなことは介護保険施設についても課題になるであろうと思います。
しかし一方において、現在の社会福祉法人あるいは民法法人等につきましては、それぞれに税制上の扱い、あるいは施設整備の場合でございますと施設整備に対する補助金の扱いが従来の部分がございます。こういったものを直ちにチャラにして御破算でスタートとなりますと、これは現実に、先ほど来御議論になっていますような保険あってサービスなしというような御議論との兼ね合いからいえば、そういった体制を整えることはさらに難しくなってくるということもございますし、円滑に介護保険の体制に移行していただくということからいきますと、従来の社会福祉法人の税制上の扱い等々については、今の体制を一応前提にしまして進んでいくことということになれば、やはりそこのところは非営利という一つの前提があって税制上の扱いなり補助金になっていますので、そういった意味で全く片方に利益を認めてとか、そういうことにはならないであろうというふうに思います。
やはり今の社会福祉法人そのものが基本的には今の性格を変更していないとすれば、社会福祉法人が行う事業については非営利を旨とする法人の趣旨にかんがみまして、優遇措置が講じられているということをも踏まえて対処をしていかなければいかぬのであろうというふうに思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014237X02019970617/86
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087・釘宮磐
○釘宮磐君 これは、私は児童福祉法の改定の際にも申し上げたんです。いわゆる保育所を自由競争にしていくんだと、そこで競争原理を働かしてよりよいサービスを提供していこう。これは今回の老人福祉の中でもある意味では共通部分というのは私はあるんだろうと。そういう意味では、施設の整備状況とかそういうようなものも、これは当然影響してくるということを先ほど私申し上げたんです。
あわせて、私は児童福祉法の際にも申し上げたんですが、同じ土俵で相撲をとらせるなら、やっぱり今社会福祉法人にかかっているいろんな規制がありますよね、ああしちゃいけない、こうしちゃいけない、はしの上げ下げまで全部通達で縛ってきている。これをある程度放してやらないと、一方は自由に動いて利益も出していい、一方はあれしちやいかん、これしちやいかん、これで競争しろというのは、私はやっぱりある一方では非常に不合理だというふうに思うんです。この規制緩和という面からはどのように進めていくつもりなのか、お聞かせください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014237X02019970617/87
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088・羽毛田信吾
○政府委員(羽毛田信吾君) 社会福祉法人のあり方、基本的には先生おっしゃるように、今後やはり規制緩和という方向で検討いたしていかなければならないと思います。
ただ、先ほど来お話がございますように、現在の補助の仕組みなりあるいは非営利ということを原則とする中で税制上の優遇措置なりというものが講じられておりますので、そういったこととの兼ね合いを全部総合的に考えながらやっていきませんとならないであろうと。やはり非営利で税制上も優遇措置がされているということについていえば、そういうことが担保されているかどうかというところが一方においてございますので、基本的な方向としていえばやはり規制緩和という方向には行かなければならないし、さらに規制を強化するというような方向はできるだけ避けなければならないと思いますけれども、もう一方においてそういう配慮というものが要るであろうというふうに思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014237X02019970617/88
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089・釘宮磐
○釘宮磐君 そこで、今、羽毛田局長から規制緩和に向けて進めていかなければならないというような答弁があったわけですけれども、実はきょうは社会・援護局長にも来ていただいていますが、社会・援護局のこれは企画から出た通達ですね、六八号、六九号、平成九年三月二十八日付の通達があるんです。
これは大変な厚さなんですね。これでは逆に社会福祉法人に対する、これは私四月だったですか、一般質疑の中でも申し上げた、要するに社会福祉法人に対してかえって規制を強化しようとするような動きがある。それは背景に何があったかというと、昨年のいわゆる厚生省がかかわった汚職事件の問題があった。私はこれは極めて不都合だと思うんです。これはある意味では厚生省が起こした問題を、いわゆる社会福祉法人に対してあれやっちゃいけません、これやっちゃいけません、あのとき理事に民生委員を入れなさいとか、あの当時そういういろんな話があった。だから私は、民生委員なんというのは田舎へ行けばほとんど名誉職で福祉なんというのはほとんどかかわりのない人もなっていますよという話もさせていただいた。これについて今回は、この通達の中では、「機械的に民生委員や社会福祉協議会の委員等の参画を指導するのではなく、この趣旨に則り、社会福祉事業の意義を十分理解し、本来の目的が達成できるよう幅広く地域の中から人材を求めるよう配慮されたい」と。
そういう意味では私が申し上げたことがここにある程度生かされている。私はそれは評価をしますが、今回はいわゆる理事を十人以上にすることとか、また利用者の家族の代表が加わることとか、さらには情報開示をしろとか、いろんなことが出ているんです。
私は、一つ一つをここで議論する時間はございませんから、きょうは亀田局長が参っていますのでお伺いをしたいのは、この通達、非常に評判悪いですよ、正直申し上げて。それはそうでしょう。まじめに一生懸命やってきた法人にしてみれば、今までちゃんと一生懸命やってきたのに、何で理事をふやせだとか何を加えろだとか、どうしてそういう話になるんだと。我々は結局信頼されていないのかという思いが強いわけです。
私は、そういう意味では、こういうふうに一律に、これから競争原理の中でお互いに選ばれるんだから一生懸命やりなさいよということを言っておきながら、一方で足かせをまた加えていくということは非常に私はこれは矛盾しているんではないかというような思いがありますが、その点についてお聞かせください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014237X02019970617/89
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090・小泉純一郎
○国務大臣(小泉純一郎君) 今、委員の指摘されたことは行政の難しさなんです。厳しくしろというのは、国会のあの不祥事件以来ほとんどの委員が言ったんです。むしろ、余り規制が強過ぎるんじゃないかと言ったのは衆議院の中でごく少数でした。本来、善意の人なんだからそんな規制なんかなくていいんだと。これは極めて少数意見でした。ほとんどがむしろ疑ってかかれということで細かい規制を加えた。これがあの不祥事件の中での規制強化と今後の規制緩和の一番難しい点だと私は思います。
本来、善意の人に何にも言わないで自由にやってくれということが私は一番いいと思うんです、その人が信頼できれば。ところが、あの去年の厚生省不祥事件、とんでもない、考えられないようなことがあって、これを規制しなさい、これをやりなさい、あれをやっちゃだめですよ、これをやっちゃだめですよというのがいろいろできたわけです。
しかしながら、倫理、綱紀粛正でもそうです。あつものに懲りてなますを吹くと。なますを吹かないと許さないような国民感情になっている。しかし、実際こういうことを経験しながら最小限の規制と、そして善意の人に自主的にいい活動をしてもらうという、これは今後とも厚生省としてよく気をつけなきゃいかぬ。確かに、今回はある面においては規制強化です、疑ってかかったと。むしろ、信頼すべき人も疑わなきゃならないという情けない事態になってしまった。
そういう面から、あの事件を反省しながら、今後、最小限の規制はどういうものか、そして善意の自主性を発揮してもらうためにどのような規制緩和がいいか。実に難しい問題を厚生省としても考えて、多くの方々が民間参入してこれからの福祉サービスをいかに向上してもらうかということを考えなきゃいかぬと。
具体的な今の規制の問題については局長に答弁をさせてもらいます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014237X02019970617/90
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091・亀田克彦
○政府委員(亀田克彦君) ただいま大臣から御答弁ございましたけれども、先生御指摘の六八号、六九号通知でございますけれども、事件の反省の上に立ちまして、昨年省内に調査委員会ができたわけでございます。そこで、できるだけの事実の解明をし、またどうしたらこういう事件が二度と起こらないかと、そういうことを十分議論いたしまして報告書をまとめたわけでございます。
今回の通知は、この報告書に沿いまして都道府県にお出しをいたしたわけでございます。いろんな内容を盛り込んでございますけれども、特に先生からもお話しございました社会福祉法人の運営関係の規制と申しますか改善措置と申しますか、これらにつきましては、ただいま大臣からもございましたが、今回のような事件を二度と起こさない、そのための必要最小限のもの、こういうことでお出しをいたしたわけでございます。
また、この通知の中におきまして、あわせましてこの通知の運用と申しますか、社会福祉法人あるいは社会福祉事業、そういうものの原点が社会福祉法人みずからの自主性あるいは創意工夫、こういうふうに認識をしておりますので、この通知にのっとって、過重な指導をいたしましたり、あるいは機械的に一律にこうしなさいというような指導はしないように、こういう配慮をぜひしていただきたい、このお願いもあわせてしておるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014237X02019970617/91
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092・釘宮磐
○釘宮磐君 時間が参りましたので、私は最後に、大臣がおっしゃられたこともよくわかるんです。先ほどから何度も言いましたが、保険あって介護なし。これから新ゴールドプランをどんどん充実させていく、ということは新規参入がどんどんふえるんですよ。私の県でも特養をまたどんどんつくろうとしている。やっぱり新規参入の時点でチェックすべきなんですよ、その人がふさわしいかどうかということは。既存の今まで本当に頑張ってきたところに同じように規制をかけていくということ自体に私は若干の不満があるということなんです。
少なくとも、これからそういうふうにして、指導をしていく上においてぜひ私は配慮していくべきだというふうに思います。そのことを申し上げて、私の質問を終わります。
どうもありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014237X02019970617/92
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093・上山和人
○委員長(上山和人君) 三案に対する本日の質疑はこの程度にとどめます。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014237X02019970617/93
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094・上山和人
○委員長(上山和人君) これより請願の審査を行います。
第三号良い看護の実現に関する請願外一千四件を議題といたします。
これらの請願につきましては、理事会において協議の結果、第一二四号小規模作業所等成人期障害者対策に関する請願外三百七十四件は採択すべきものにして内閣に送付するを要するものとし、第三号良い看護の実現に関する請願外六百二十九件は保留とすることに意見が一致いたしました。
以上のとおり決定することに御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014237X02019970617/94
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095・上山和人
○委員長(上山和人君) 御異議ないと認めます。よって、さよう決定いたしました。
なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014237X02019970617/95
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096・上山和人
○委員長(上山和人君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014237X02019970617/96
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097・上山和人
○委員長(上山和人君) 継続審査要求に関する件についてお諮りいたします。
介護保険法案、介護保険法施行法案及び医療法の一部を改正する法律案、以上三案につきましては、閉会中もなお審査を継続することとし、三案の継続審査要求書を議長に提出いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014237X02019970617/97
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098・上山和人
○委員長(上山和人君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
なお、要求書の作成につきましては委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014237X02019970617/98
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099・上山和人
○委員長(上山和人君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014237X02019970617/99
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100・上山和人
○委員長(上山和人君) 継続調査要求に関する件についてお諮りいたします。
社会保障制度等に関する調査につきましては、閉会中もなお調査を継続することとし、本件の継続調査要求書を議長に提出いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014237X02019970617/100
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101・上山和人
○委員長(上山和人君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
なお、要求書の作成につきましては委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014237X02019970617/101
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102・上山和人
○委員長(上山和人君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014237X02019970617/102
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103・上山和人
○委員長(上山和人君) 委員派遣に関する件についてお諮りいたします。
閉会中の委員派遣につきましては、その取り扱いを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014237X02019970617/103
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104・上山和人
○委員長(上山和人君) 御異議ないと認め、さよう取り計らいます。
本日はこれにて散会いたします。
午後五時八分散会
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014237X02019970617/104
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