1. 会議録本文
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000・会議録情報
平成九年四月十五日(火曜日)
午前九時三十分開会
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委員の異動
四月十四日
辞任 補欠選任
鈴木 栄治君 松村 龍二君
照屋 寛徳君 清水 澄子君
筆坂 秀世君 吉川 春子君
出席者は左のとおり。
委員長 倉田 寛之君
理 事
石川 弘君
永田 良雄君
野間 赳君
泉 信也君
風間 昶君
角田 義一君
齋藤 勁君
笠井 亮君
委 員
板垣 正君
加藤 紀文君
亀谷 博昭君
関根 則之君
成瀬 守重君
保坂 三蔵君
松村 龍二君
三浦 一水君
宮澤 弘君
山本 一太君
依田 智治君
吉村剛太郎君
今泉 昭君
鈴木 正孝君
田村 秀昭君
高野 博師君
益田 洋介君
山崎 力君
清水 澄子君
田 英夫君
前川 忠夫君
本岡 昭次君
吉川 春子君
島袋 宗康君
椎名 素夫君
北澤 俊美君
国務大臣
内閣総理大臣 橋本龍太郎君
外 務 大 臣 池田 行彦君
国 務 大 臣
(内閣官房長官)梶山 静六君
国 務 大 臣
(防衛庁長官) 久間 章生君
国務大臣
(沖縄開発庁長
官) 稲垣 実男君
政府委員
内閣審議官 及川 耕造君
内閣法制局長官 大森 政輔君
内閣法制局第二
部長 宮崎 礼壹君
北海道発庁計
画監理官 八木 康夫君
防衛庁参事官 山崎隆一郎君
防衛庁参事官 藤島 正之君
防衛庁防衛局長 秋山 昌廣君
防衛庁経理局長 佐藤 謙君
防衛施設庁長官 諸冨 増夫君
防衛施設庁総務
部長 伊藤 康成君
防衛施設庁施設
部長 首藤 新悟君
防衛施設庁建設
部長 竹永 三英君
防衛施設庁労務
部長 早矢仕哲夫君
経済企画庁調査
局長 中名生 隆君
沖縄開発庁総務
局長 嘉手川 勇君
沖縄開発庁振興
局長 牧 隆壽君
外務省総合外交
政策局長 川島 裕君
外務省アジア局
長 加藤 良三君
外務省北米局長 折田 正樹君
外務省欧亜局長 浦部 和好君
外務省経済局長 野上 義二君
外務省経済協力
局長 畠中 篤君
外務省条約局長 林 暘君
建設省建設経済
局長 小鷲 茂君
事務局側
常任委員会専門
員 田中 久雄君
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本日の会議に付した案件
○参考人の出席要求に関する件
○日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び
安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並び
に日本国における合衆国軍隊の地位に関する協
定の実施に伴う土地等の使用等に関する特別措
置法の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議
院送付)
―――――――――――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014960X00419970415/0
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001・倉田寛之
○委員長(倉田寛之君) ただいまから日米安全保障条約の実施に伴う土地使用等に関する特別委員会を開会いたします。
参考人の出席要求に関する件についてお諮りいたします。
日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定の実施に伴う土地等の使用等に関する特別措置法の一部を改正する法律案の審査のため、明四月十六日、参考人の出席を求め、その意見を聴取することに御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014960X00419970415/1
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002・倉田寛之
○委員長(倉田寛之君) 御異議ないと認めます。
なお、その人選等につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014960X00419970415/2
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003・倉田寛之
○委員長(倉田寛之君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
―――――――――――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014960X00419970415/3
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004・倉田寛之
○委員長(倉田寛之君) 日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定の実施に伴う土地等の使用等に関する特別措置法の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を行います。
質疑のある方は順次御発言願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014960X00419970415/4
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005・依田智治
○依田智治君 おはようございます。自由民主党の依田智治でございます。
この特措法審査も、既に衆議院の特別委員会の審査を終え、昨日、当参議院の特別委員会においても各方面にわたって審査が行われ、私は、これまでに大体問題点は出尽くしたな、こういう感じがしております。それに、そもそもこの沖縄における駐留軍用地の特別措置法に基づく土地の使用、これを内閣総理大臣に対して防衛施設局長から申請したのは、我々が参議院に出る前の既に平成七年の三月でございまして、もう二年以上過ぎておる。二年以上過ぎておるのにいまだに先が見えない、これは大変なことだなと、これだけ国家の重大な問題を。
そういうことで、今回の特措法の改正というのは、総理も防衛庁長官も言っておられますように、慎重に土地収用委員会が審査している間のまさに最小限の改正であるということで、私は賛成の立場から幾つかのポイントで質問させていただきたいと思います。
私は、これまでの質疑等を通じまして、大体頭の中で二つに分けておるんです。一つは、沖縄における長年にわたる県民の過重負担、戦前それから沖縄戦の悲惨さ、その後の占領下における土地の収用、さらに今日なお在日米軍基地の七五%が沖縄に集中しているというこの状況、こういうのを踏まえながら、この沖縄の過重負担を解消してくれ、ついてはもう何が何でも基地は整理、統合、縮小して、海兵隊は早く撤退するように政府としても真剣な努力をしてくれという立場から、特措法は反対、こういう立場があると思うんですね。
これは理解できるところでございますが、じゃ海兵隊等が撤退し、その後現在の国際情勢等が変わらない中で、そこに大きな穴があくんじゃないか、その穴をどうするんだろうか、その穴は自衛隊で埋めるというような覚悟があるんだろうか、こういうような疑問を感ずるわけでございます。この立場は私はなかなかとれないなと、こう思っておるわけでございます。
あと一つは、総理も申されておりますように、本当に沖縄の過重負担、戦中、戦後を通じてのこの負担というものを十分我々も踏まえながらこれにいかにこたえていくか。しかし一方、日米安保体制を基軸とするアジアの安定、我が国の安定、国民の安全保障確保、こういう視点に立った場合に、沖縄におけるこの土地の問題というのは私は根幹にかかわる大変重要な問題だという認識に立って今回の法改正をする、こういう立場でございます。
もちろん、私はこういう立場をとってこれでいいのだということでなくて、将来にわたってアジア、世界における安全保障環境というものを、できるだけ軍事力に頼らない安全保障体制というものができるような状況をつくっていくということが大変重要で、そういう面の努力を行いつつ中長期的視点に立ちながら対策を講じていく、こういう立場でございます。
そこで、私は去年の予算委員会で初めて議員として質問に立たせていただきました。そのときに、大蔵大臣はまだ久保先生で、橋本総理に対しまして、総理、国の安全保障というものについてはどうお考えですかという質問を第一問でさせていただいたことを覚えておるかと思います。
それに対して総理は、安全保障という問題を考えるのに、まず国政という問題、それで国民が豊かに生活できる環境をいかに保持していくか、これが大きな安全保障だという見地に立って、国際的視野に立った協力関係の樹立とか国内の治安にも言及されて、そして最後に、その基軸は日米安保体制の堅持であって、これを基軸としつつ国際的ないろんな多面的な外交活動を展開するんだということで、私はそのとき強く共感を感じたのを覚えております。
こういう総理でありますから、私は、今日の沖縄問題に対する取り組み、これは歴代総理の中でも大変精力的な取り組みだと思っております。そういう立場に立ちまして、日米安保体制の堅持というものに対する政府の責任、また私は安全保障確保という視点に立てば国民に対する責任でもあると思うわけでございますが、この点に対する総理の御見解をまずお伺いしたいと思います。よろしくお願いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014960X00419970415/5
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006・橋本龍太郎
○国務大臣(橋本龍太郎君) 私はこんなふうに考えます。冷戦構造が終結をいたしました後、一たんは皆が世界というものにバラ色の夢をかけた時期がございました。そして、これで本当に戦争はなくなるだろう、平和な時代が来るだろう、そんな意識がありました。ところが、気がついてみますと、その冷戦構造が存在していたおかげで、逆に消えておりました地域間の紛争、これには民族的なもの、宗教的なもの、あるいは過去の行きがかり、いろいろなものが原因をなしているわけでありますけれども、またそこには新たに発見された資源といったものが介在している場合もありますが、むしろ地域紛争は拡散してしまった。
その意味では、国際社会というものが依然として不安定要因を内蔵している。そうした中で我が国の安全ということを考えますときに、日米安全保障というものは我々の防衛と安全保障という上で欠くことのできない極めて大切な条約であります。
同時に、この日米安全保障条約によって米軍のアジア太平洋地域へのプレゼンスが確保されていること、これはこの地域全体に対しての非常に大きな安定要因ともなっております。そして同時に、これは国際社会の中で日米両国が手を携えてさまざまな問題に取り組んでいける、それだけの信頼をつくり上げてきた基盤ともなっております。
そしてその中で、実は一方、国内を振り返ったときに、沖縄が返還され施政権が戻り皆大喜びをしたわけでありますけれども、当然ながらそのとき、沖縄県に存在する膨大な基地の所在、これをできるだけ減らしていかなければという思いは皆にあったはずでありますが、いつの間にかそれが、第一次振計、第二次振計、第三次振計と振興計画が進展しておりますうちに、本土の私たちの中には次第次第にその問題が希薄になっていった。そして、沖縄の方々が思われるほど本土政府としてこの沖縄県に所在する基地の問題に真正面に取り組んできたとは全く言えない状況が続いておりました。
こうしたことを考えてみますと、現在我々は沖縄県民に非常に大きな負担をかけておりますし、その中で日米両政府が県民の御理解はいただけないまでも最善を尽くして努力してまとめましたSACOの最終合意の中でも、その相当部分といいますかほとんどが残念ながら県内移設をせざるを得ない状況でありますが、その中でもKC130の岩国への移転、あるいは現在、防衛庁長官以下、防衛庁、施設庁の諸君に大変苦労をかけております一〇四号線越え射撃訓練場の本土への分散の問題、要するに県から外へ出していくという努力もそれなりに払ってまいりました。
その上で、この条約上の我々が持つ義務は何かというならば、いろいろなものを言わなければなりませんけれども、基本的には安保条約によって駐留する米軍に対しその必要とする基地、施設設備というものを安定的に円滑に提供を続けることであると思います。
今回は、この部分で私どもは国会にも大変厳しい選択をお願い申し上げることになりました。そして、これは一人一人の国会議員の今までの沖縄県に対するかかわりとか、あるいは国の安全保障に対する思いの中から厳しい御判断を願うことになっております。
こうした状況の中で、我々としてはぎりぎり最小限ここまではという案を最善のものとして今お願いをし、審議をいただいているわけでありますが、一日も早くこの結論をお出しいただきますとともに、同時に我々はこれから先も沖縄県のための努力を怠ってはならない、直接のお答えになりませんけれども、そのように私は考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014960X00419970415/6
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007・依田智治
○依田智治君 総理、今の答弁の中で、米軍に安定的な駐留を提供するということが我が国の義務だという趣旨でお話がございました。私は、今回のいろんな委員会における審議等を通じましたり、また各党間の話し合い等の中で感じますのは、何かしら米軍の縮小を政府は申し入れるべしというようなのを条件に出してきたりしているところもございますが、本当にこの日米安保体制の基幹というのは、中核というのは、現在の国際情勢下においては、米軍が我が国に駐留しておるこの事実というものが極めて大きな役割を果たしておるというように感じておるわけです。
したがいまして、私は、これを何か占領下で米軍が居残って居座っているというような感覚では全くおかしなことで、これは我が国の安全、この地域の安全、そして国際の平和と安全のために我が国もこの一翼を担って、ここに米軍がプレゼンスを置いているということは大変な意味があることだと、こういう認識がまず前提になきゃいかぬと思うわけです。
その中で、また沖縄に関係あるんですが、海兵隊が沖縄にいるというのは沖縄にとっては大変な負担であると思います。しかし海兵隊というのは、以前の予算委員会で質問等をしたことがありますが、陸海空の統合能力を備えていつでも展開できる即応性というものを持っておるそういう海兵隊が、沖縄という我が国のシーレーン等から眺めたら極めて重要な位置に駐留しておる。事前集積とか有事駐留とかいろんな意見もありますが、現在の国際情勢、特に我が近隣等においてはまだ非常に不安定な状態が続いていると見ますと、この海兵隊の駐留というのは極めて私は重要である。
そういう見地に立った場合に、政府としてこれをアメリカに申し入れるような時期ではない、このように感じておりまして、再々そういう趣旨の答弁はいただいているんですが、改めて外務大臣、この点についての御見解をお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014960X00419970415/7
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008・池田行彦
○国務大臣(池田行彦君) 冷戦後の動向につきましては、先ほど総理の御答弁にもございましたが、これをアジア地域について見ますと、全体として見ますと安定化への大きな流れというものはあるのだと思います。それぞれの国が経済発展を遂げながら、またさらなる国民生活の向上を図るためには、やはり平和が大切だなという基本認識があると思います。そしてまた、そういったことを多国間でも、お互いに信頼を醸成していこうといった流れもARFに見られるようにいろいろ進んではきているわけでございます。
しかしながら、そういったものをきちんと固めていくような体制にあるかと申しますと、これはヨーロッパとは趣が随分違っておると思います。アジアの国々、それぞれ発展段階も違いますし、それからまた国家運営の基本的な仕組み、構造につきましていまだに異にするような国も存在するわけでございます。そういった意味で非常に不確定、将来も不確定でございますし、現在も不安定要因がございます。
何と申しましても、最終的に安全を保障する実力を備えた多国間の枠組み、例えばNATOのようなそういうものがないということは、この地域は今の安定への流れというものがあるのはあるけれども非常にまだやわらかいものである、きちっとしたものではないということがあると思うのでございます。
そういった情勢の中で、先ほど経済成長というものは基本的には安定の方向にと申しましたけれども、これを見方を変えますとそういった経済成長の成果というものを軍事の近代化に振り向けるという面もあるわけでございまして、トータルとしての兵力は削減されておりますけれども、しかし近代化という形でのいろんな努力が各国で行われているというのはこれは現在のアジアの特性だと思うのでございます。
そういった政治的な安定度がまだ十分でないということ、あるいは軍事面でのいろんなそういうことがあるということ、しかも枠組みがないということ、こういうことを考えますと、私どもはみずからも、そしてまた他の国々と協調しながら安全を保障していくという枠組みをきちんとやらなくちゃいけないと思います。我が国の場合には、従来からとってまいりましたみずから節度ある防衛力を整備すると同時に日米安保体制を堅持していくというこの枠組みが現在のようなアジア太平洋の地域情勢の中で不可欠である、こう考えるわけでございます。
それと同時に、こういった日米安保体制というものは、この地域全体の安定化を図る上においても大きな役割を果たしておると思います。これは総理がシンガポールにおきまして、ある意味では日米安保体制というのは安定をもたらすための国際公共財だ、そういうことをおっしゃった、そういったところにあらわれているところでございます。
そういった意味で、まず我が国の安定にとって、そして地域の安定のために不可欠なものである日米安保体制の中核をなすものは何かといいますと、これは我が国に駐留する米軍、これがもし極めて緊張する状態になった場合には直ちにそれに対応、即応できるよといった態勢を示しているわけでございますし、そのことが平時におきましてもいわゆる抑止力としての効果を持つ、見方を変えれば、先ほどから申しております安定化の大きな力になっている、こういうことでございますので、やはり我が国における米軍の駐留、プレゼンスというものは安全保障の観点からいって欠くことのできないものだと思います。
そのレベルがどの程度のものであるべきか、あるいは兵力構成がいかなるものであるべきか、この点についてもいろいろ御議論ございますけれども、私は、そこのところは一義的には、安保条約上の米国としての義務を果たしていこうという米国、あるいはこの地域の安定のために米国がしているコミットメントを担保していくということで、ここがその役割を果たすためにはどういうものであるべきかということで考えるべきものであると思います。もとより、私どもの方も条約の一方の当事者として、それが現在の国際情勢との関係において適切なものであるかどうかは当然考えなくちゃいけない、こう思います。
しかしながら、冒頭に申しましたような情勢から考え、それからいろいろな軍事情勢、各国の軍事情勢等も考えました場合に、かつてこの地域に米軍十三万数千というプレゼンスがございましたのが今十万ぐらいのレベルになってきております。日本の場合も、沖縄返還の時点では六万数千というプレゼンスがあったのが現在四万七千と言われております。現実には若干低うございますけれども、そういったものが適切であるという判断は日米共通の判断でございます。
そしてまた、兵力構成につきましても、例えば海兵隊についていろいろな議論がなされておりますが、海兵隊という軍事集団の持つ機動性なり即応性というものから考えまして、先ほどから申しますような安全保障を図る上で非常に大きな役割を担っている、こういうふうに考える次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014960X00419970415/8
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009・依田智治
○依田智治君 現在の安全保障を確保していくというためには、軍事のみでできるものじゃありませんし、軍事がなくしてできるものではない。そこの調和というものを図りつつ、いかに国際的な安全保障体制を確保していくか、こういうことじゃないかと思います。我が国自体の安全、周辺地域の安全ということを考えた場合に、やはり我が国は自衛隊を維持し、そして日米安保体制を置き、米軍が駐留しておる。
この米軍駐留の抑止力としての価値というものは、昨年三月、中台の緊張があった際に我が国近海にもミサイルが大分飛んできておったわけです。通常の国ならば、国の領土の近くにそういうミサイルが飛んでくるということになれば、警戒なり予防のために近海に軍を進出させるくらいのことはやるんじゃないかと思います。日本の場合はそういうことをやっていませんが、アメリカの空母が二隻台湾沖に進出することによって、その抑止力によってそれ以上の暴走が抑えられた。私は抑止力を見た大きな例じゃないかと思うわけでございます。
そういう視点に立ってみますと、今日我が国の海洋国家、シーレーン防衛なんというのは極めて重要な役割ですし、それから尖閣を初め我が国には離島も結構あります。そういう防衛というものを考えた場合に、非常に弱い体制になっておるというようなこと。それから、周辺有事の対応につきましては、現在ガイドラインの見直しにおいて政府等においても鋭意検討されておりますが、これについても、よほどの腹構えを持って我が国の安全保障確保の見地から真剣に我が国としての役割を考えていかなきゃならない。
こういうことを考えてみますと、米軍のプレゼンスというものがいかに重要か。じゃ、逆に米軍がいなくなった場合ぱっと穴があくのか。そのときに、これは防衛庁長官にお尋ねしますが、我が国の自衛隊は、米軍がいなくなったときに十分肩がわりして我が国を守り切るだけの力があるのか、それから防衛政策的にもちょっと無理かな、そういうような政策はとっていない。
一例を挙げますと、我が国の海上自衛隊というのは護衛艦が相当ありますね、トータル六十隻ぐらい。しかし、この自衛艦は独立してシーレーンを守る、要するに海上機動力とか海上の防空力とかいうものは余り備えていない。要するに、アメリカの空母、機動部隊みたいにどこへ行っても自分を守りつつ専守防衛に徹すればそれだってできるわけですが、そういうものを備えているわけですが、日本の自衛隊はやはり米軍と共同作戦をしつつ補完し合って任務が完遂できる、こういうものでございます。
飛行機にしても、撃ってきた場合に、敵が来た場合にそれを迎撃する、極めて足が短いようになっておる。空中給油機についても、中期防で検討して結論を待って対処するということになっていますが、まだ一機も空中給油機がない。そうすると、シーレーンにおいて何か起こっても、そこまで行っても帰れない、落ちる以外にない。こういうことになつちやうわけでして、そういう点を考えますと、我が国の自衛隊というものも、そろそろそのあたりも専守防衛に徹しつつも考える時期かなという感じもなきにしもあらず。
そういう点に立って、今の質問に対して防衛庁長官、ひとつ御見解を例えればありがたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014960X00419970415/9
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010・久間章生
○国務大臣(久間章生君) 我が国の防衛をどう考えるか。それを当初に考えられました皆さん方は、当時の経済的なあるいはまた政治的ないろんな角度から我が国はとにかく憲法上ディフェンスに徹するんだという枠をはめられました。その枠内で防衛を考えるとすれば、我が国の適切な防衛力は整備するというものの、それをカバーするものとして日米安保条約を締結することによって万全を期すという策をとられたわけでございます。
私は、戦後のこの五十年間を振り返ったときに、そういう選択は間違っていなかったというよりもすばらしいものであった、そういう気がいたしております。
今日、もし我が国が米軍にかわるような機能をすべて備えるとすれば経済的にも大変なことになるでしょうし、それと同時に、隣国、近隣諸国に与える心理的なあるいはまた政治的なことを考えましても、そういうことをとった方がむしろ緊張感を増して、いわゆる軍拡競争に走るおそれがもっとあったんじゃないか。そういうことをしないで、我が国は適切な防衛力を持つ、そのかわり米軍にいざというときにはカバーしてもらうという日米安保条約を結ぶことによってとにかく万全を期した。私はすばらしい選択であったというふうに思います。
そういう目で見ますと、今日冷戦が解けましたけれども、アジア太平洋地域では不安定、不確定な要素がまだ残っておりまして、決して安全保障に関するいい環境が構築されたとはなかなか言い切れない面もあるわけでございます。そういう意味では、残念ながら日米安保条約によるべきものがまだまだ多いわけでございます。
そういう意味で、昨今のいわゆる不要論というのは、不要論まではいきませんけれども、もっともっと削減すべきだということには、必ずしもそれはとるべき策じゃないんじゃないかというふうに思っております。
今おっしゃられましたシーレーン等にしましても、我が国の自衛隊にしましても、我が国に対する攻撃が継続的になされるということになりましたら、偶発的にたまたまそこであったというだけで防衛出動というわけにはまいりませんけれども、それが我が国ということであっても継続的にシーレーン目がけていろいろとあります場合には防衛出動だって可能でございます。現在の我が国の自衛隊の能力では、海上でいいますならば一千マイルがいいところじゃないかと言われているのはもうやむを得ないことでございまして、それ以上についてもしそういうような事態があると米軍に頼らなければならない。そのためにこそ日米安保条約はあるわけでございます。
離島とおっしゃられましたけれども、離島についても態様とかあるいは規模、そういうことによってそれは自衛隊でも十分対処できるかもしれません。しかしながら、そういう場合にも緊密な連絡をとりながら連携して対処しなければならないような場合だって出てくるかもしれません。いろんなことを考えましたときに、我が国は今、日米安保条約と適切な防衛力の二つが相まって一番いい体制をしいておるんじゃないか、これが先ほど言いましたように政治的にも経済的にも一番望ましい方法じゃないか、そういうふうに考えているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014960X00419970415/10
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011・依田智治
○依田智治君 今、防衛庁長官から、我が国の戦後の防衛政策はすばらしいものだと。私も一面においてそういうように感じます。しかし、国際情勢のいろんな変化の中でいつまでも本当に他国依存型の防衛政策というものがいいのかどうか。このあたりはそろそろ考える時期に来ておるんじゃないかなと。
しかし、今の状況を維持しつつ、防衛政策を維持しつつ、政策を転換せずに、かつ米軍が遠方に、何しろアメリカは一時十年前くらいは日本の十倍の防衛費、三千億ドル対三百億ドルと言われた。GNPは日本の二倍もないのに十倍の防衛費であった。最近でこそ円レートの関係とかで若干削減があって恐らく七、八倍程度じゃないかと思いますが、それだけ費やして極東にも展開しヨーロッパにも展開する必要のないような国際情勢をつくっていくということが、まず我が国において現在何が何でも米軍の撤退を議題にするよりも重要なことだと思うわけでございます。
そして、周辺国家をいろいろ見ましても、まだまだ国家的に政治体制等が非常におくれておる。先般、参議院で安保プロジェクトとして某講師を呼んで、これからの国家像のあり方というのはどういうものだということでいろいろ議論したときに、やはり先進民主主義国をつくるということが大変重要だと。先進民主主義国同士ではそんな軍事的衝突というのは起こり得ない。しかし、我が国周辺を眺めた場合にまだまだほど遠いし、世界各国を眺めても極めてまだ後発的な国が多いわけです。だから、そういう面ではODAを初め経済援助、さらに紛争の多発しているような地域に対しては我が国としてもPKOを初め国連協力等で積極的に協力していく。
先ほど外務大臣から、この地域にはまだ軍事的な枠組みもないという話もございました。いかにしてこれから本当に軍事力に頼らないような仕組みというものをつくれるか、そういう外交努力というものが大変重要だと思います。
この面に関する外務大臣の御見解をお伺いしたいと思うわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014960X00419970415/11
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012・池田行彦
○国務大臣(池田行彦君) それぞれの国がみずからの安全を確保していく、地域として安定あるいは平和を確保していく。そのためにはいろいろな努力がございますが、そういった中で外交努力というものも非常に大きな役割を果たさなくちゃいけない、それは当然のことだと思っております。そういったことで、アジア太平洋地域におきましてもそのような努力はいろいろ進められております。
そういった中で一番典型的なものといいますと、ASEAN地域フォーラムというのがございます。これは、要するに安全保障の観点からお互いの対話を進めていく中で信頼を醸成していこうじゃないか、今それを中心にして対話を進めております。そういった中で我が国は、信頼醸成に関する部会といいましょうか、それを進めていくグループの共同議長をインドネシアと二年間務めてまいりまして、かなりの成果を上げてまいりました。
例えば、お互いの軍備のあり方というものの透明度を増していくというふうな努力もしたわけでございますが、そういった中でARFのこういった面での役割も随分高まってまいりました。現在は、中国が日本、インドネシアを引き継ぎましたそのグループの共同議長をフィリピンとともに務めております。
そういった中で、御承知のとおり、中国もかつての国防白書に相当するようなものを発行したわけでございますが、現在ではそういったグループの中心的な存在になっていることもあり、さらに透明度を高めたものを出していこうというようなことも言っております。
それから、さらに申しますと、直接この組織の中での動きではございませんが、そういった場でいろいろ話をする中から例のミステーク、南沙群島でございますね、それに関連する国々数カ国が集まっていろいろ話をするなんという場もできました。それがまだ具体的な成果に結びつくにはほど遠いとは思いますけれども、そういったこともございます。
いろんな意味のそういった多国間の外交努力もありまして、その中で日本もきちんと役割を果たしておるわけでございます。
それから、多国間の仕組みとしては、そのような国として話し合うものだけではなくて、民間ベースのシンクタンクであるとか大学等が中心となっていろいろ対話を進めるフォーラムもございます。そういった中には各国の安全保障関係の責任ある地位にある者、日本で申しますと防衛庁であるとか外務省とかいうところに属する人間も、個人の資格ではございますが、参加して忌憚のない対話を進めておる、こういったこともいろいろ将来の地域の安定に役立っていくんだと思います。
もとより、二国間の安全保障の対話というものも大切でございます。我が国の場合で申しますと、日米安保体制の仲間でございます米国との間の対話は当然でございますが、そのほかにも最近では韓国、中国、ロシア等ともいろいろな対話が進められておるということでございまして、そういった外交努力を進めてまいりたいと思います。
今まで申しましたのは、すぐれて安全保障にかかわりのある仕組みでの外交努力でございますけれども、もちろんそれだけではなくて、経済面でのいろいろなつながり、文化面でのつながりといったものも広い意味で相互の連携を強め、そして安定への流れを強化するものでございますが、そういったものにかかわる外交活動も当然のこととして大切に考えているわけでございます。
しかしながら、そういったことを進めると同時に、一方ではやはり実力を備えた安全保障の装置というものも大切である。そういったものがアジア太平洋の場合には基本的に二国間の枠組みでこれまでもありましたし、日米安保体制のように一方の当事者を米国とする二国間の仕組みが幾つかございます。そういったものが冷戦後の今日の時点におきましても、一番その根っこにあります地域の安定を守っていく上での装置として働いているというふうに認識している次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014960X00419970415/12
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013・依田智治
○依田智治君 これまで見てきましたように、結局、現在の情勢下においては我が国における米軍の駐留というのは不可欠である、一方それを減少させていくような国際的仕組み、信頼醸成の安全保障環境というものはまだできていない、こういうことだと思うんですね。だから、我々としては引き続きこういう面の努力というものを積極的にやっていく必要があると思うんです。
けさ、テレビをちょっとひねりますと、沖縄の知事さんがアメリカのワシントンの方へ行きまして、経済戦略研究所かどこかで米軍兵力削減を訴える講演をしておったわけでございます。この国会にでも来て真意を聞かせていただければありがたいなという感じがしたんです。しかし、我々が今議論したような国としての必要性、まだアジアの環境はこんな状況にあるという中で、沖縄の県民投票では相当高い基地反対の数字が出ておる、また知事さんは国会よりアメリカに行って削減を訴えている、こういう状況でございます。
しかし、やはりこれからいろいろSACOに基づく削減、基地の整理、縮小、統合等をやっていくためには、いずれにしても知事さんを初め県民の理解と協力が不可欠だ、こういうことになりますと、これは大変に難しい問題だと思うわけでございます。
総理、この点につきまして、いかにして県民の理解を得つつこれをやり切っていくのかということについて今どういう決意を持っておられるか、お伺いしたいと思うわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014960X00419970415/13
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014・橋本龍太郎
○国務大臣(橋本龍太郎君) これまで就任以来何回知事とお目にかかったか、ちょっと回数が今出てまいりません。しかし、たしか三月二十五日であったと思いますけれども、知事さんと随分長いお話をいたしました。残念ながら、そのときの議論のほとんどは平行線だったわけでありますが、にもかかわらず、官邸を出られた知事さんが記者会見で信頼関係に傷が入っていないんだということを言っていただいたということを聞いて、私は大変幸せに思いました。
その上で、今私ども、さまざまな場面で県内の市町村の皆さんとお話をする場合にも、県に間に入っていただきたいということをしばしばお願いを申し上げております。
例えば、普天間基地の移設という問題を知事さんから大変強く訴えられ、状況を思い起こし、そしてとにかくどこかに移そうということの合意をとりました後で適地を探す、そのプロセスの中から撤去可能な海上移設という考え方が出てまいりました。同時に、昨年十二月に沖縄県を訪問いたしましたとき、このときも基地所在市町村長の方々と随分長いお話をいたしましたが、そのとき私は率直に、SACOの報告というものも先の部分だけではない、率直に申し上げて県内移転の部分があり影の部分がある、しかしそれを乗り越えさせていただかないと次に進めない、ぜひ御協力をいただきたい、同時に地元の方々に納得を得ないままに国が強行をすることはしないということを約束してきました。
そして、その議論の中から、シュワブ沖を候補地として調査させていただきたい、そこがいいかどうかも含めて調査をさせていただきたいというお願いを防衛施設局から名護の市長さんにお願いをしましたとき、名護の市長さんからは県の同席を求めると、県の同席がなければ自分の方では話が聞けないと言われました。その上で県にまた御協力をお願いをいたしましたが、その時点、残念ながら御協力は得られなかったわけであります。
先日、大田知事がアメリカに出発される前に名護の市長さんとお会いをいただき、少しずつこうした問題は動き始めております。
私は、賛否は別として、国もまた県もそれぞれの役割を果たしていく中で、市町村を通じ、沖縄県民の心に、少なくともこれも賛否を別にして、政府がどう、あるいは日米両国がどう行動しようかということを考えているかを知っていただくことができる、そう思っております。
それだけに、昨日もどなたかの御質問に対して、これから後も私は知事と機会があればできる限りのお話し合いもしたいし、力を合わせて協力をしていきたい、その中で県民の心に少しでもかなうような沖縄をつくりたいということを申し上げてまいりました。これは、基地の問題、また県政の振興策における問題、同様の視点でありまして、我々はそうした姿勢でこれからも内閣として全力を挙げていきたい、このように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014960X00419970415/14
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015・依田智治
○依田智治君 次に、今のような日米安保体制の重要性という考えに立った場合に、今回の特措法の改正というのは、冒頭、必要最小限の妥当な改正であると申し上げました。この特措法の点についてきのうも議論が出ておりましたが、何か収用委員会で全く新しい土地の収用裁決を求めるとか、そういうような印象を持っている人が非常に多いわけです。これ自体はもう二年も前に総理が使用の認定をして、それをもとにどれぐらいの期間、どういう価格の補償をするかということについて収用委員会に裁決を求める、こういうことであって、却下等の場合というのも、明白な手続上の瑕疵等がない限りは却下はあり得ない、こういう種類の審査だというように理解しておるんです。きょうは建設省に来ていただいていますが、この点は間違いございませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014960X00419970415/15
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016・小鷲茂
○政府委員(小鷲茂君) お答えを申し上げます。
基本的にはただいま先生おっしゃったとおりでございます。一般的には、土地収用法の場合ですと、事業認定という柱と収用委員会の裁決という二つの柱で成り立っておるわけでございますが、土地を収用または使用する必要性があるかどうかという公共性の判断は事業認定で尽きておるわけでございます。
そういった事業認定のあった土地について、個別の具体的な土地についてどういう権利の負担を課すべきか、あるいはまたそれに対する適正な補償額はいかほどなものが必要であるかという判断を収用委員会の裁決がするわけでございます。使用の場合ですと、使用の方法でございますとか、その期間でありまするとか、使用を始める時期でありまするとか、そういうことについて収用委員会が判断をする、そういうことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014960X00419970415/16
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017・依田智治
○依田智治君 それが駐留軍用地特措法では事業認定のかわりに使用認定をすると。この使用認定についても同様に、土地収用委員会の審理の際に特にこれは直接その適否を審理するものではない、こういうふうに理解していますが、これは防衛庁長官、いかがでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014960X00419970415/17
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018・久間章生
○国務大臣(久間章生君) この駐留軍用地特措法をつくりまして、認定につきましては使用認定として内閣総理大臣が行うということにしたわけでございまして、土地収用法とはそこの手続が違います。
しかしながら、そのほかの点につきましては収用委員会に係るいわゆる土地収用法の適用をして、先ほど言いましたような始めの時期、あるいはまた期間、あるいはまた損失の補償額、こういうことにつきましては土地収用法を適用しておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014960X00419970415/18
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019・依田智治
○依田智治君 以上のようなことで、非常に私は、もう二年前に使用認定をしてからずっとまだいまだにめどが立たないというようなことというのは本当に異常なことだなと。やはりそれは、きのう来いろいろ議論になっていますが、三千人からの一坪共有地主が反対のために反対しておる。むしろ私は、憲法違反というわけでもありませんが、何かちょっと権利の乱用ではないのかなというくらいの気持ちがしております。
そこで、やはり私は、今回の法律は、本当に審理を慎重にすると、それだけ反対する人がいるんですから意見を聞けば長くなる、長くなると期限が切れる、期限が切れたら即座に返還すべしという主張をする人がいますが、返還するとなったらどういう事態が起こるか、大混乱が起こるんじゃないでしょうか。日米安保体制というものが揺らぎ、基地について、ただ返還していいというものではなくて、返還するについては、長期にわたってそれがずっと地域の自立経済とつながるような本当にきめ細かな施策を講じつつ、これまで基地の維持に協力してきた方々が路頭に迷うことのないように、また地域の経済が基地経済依存型から自立経済型になっていくための転換を図っていくということになれば、期限が切れたからといって直ちにこれはやめた、はい返しますというわけにいかない。となると、強いて違法とは言えない状態が続くということになると非常に不安定、あれだけ重要な国家安全保障の問題が不安定なんです。だから、その間は暫定的に使わせていただきますと。
それでまた、それが決まっていないと適正な対価も払えない。憲法で適正な対価を払って使いなさいというのに、違法状態みたいに形の上でなっていれば適正の対価すら払えない状態が続くということはむしろ憲法違反じゃないかということなんで、私は今回の法律改正は決して憲法二十九条の財産権の保障に関する違反でもないし、また適正手続に関する憲法の規定の違反でもないし、またもし将来情勢が変わって本土で同様の事態が起こったらこれも適用される一般法ですから、やはり特別地域だけをねらい撃ちした法律でもない。あらゆる角度から見て憲法に違反するものではないと考えるわけです。
せっかく法制局長官に来ていただいていますので、私のこの見解について改めて御意見をお伺いしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014960X00419970415/19
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020・大森政輔
○政府委員(大森政輔君) 今回、法案において提案しております暫定使用の制度は、まさに委員から指摘いただいたような趣旨、目的、内容を有するものでございまして、憲法十四条、二十九条、三十一条あるいは九十五条、あらゆる点から検討いたしましても何らそれに違反するような懸念は生じないということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014960X00419970415/20
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021・依田智治
○依田智治君 以上の点を考察しますと、私はこの問題というのは国の責任においてやっぱりやるべき問題かなと。二年たっても全くそういう期間と補償額を決めることすらできないということ自体は異常なことなんで、やはり国の責任においてやれるように。
そのためには、総理も昨日答弁されておりましたが、国と地方の役割分担、地方分権推進委員会等もございますが、そういうところで十分審議して、この問題だけじゃないと思うんですが、国、地方の役割分担について今後本当に真剣に検討する、そういう中の一つとして検討してほしい。この点は要望しておきます。
あと十分足らずになりましたが、最後に二、三の問題についてちょっと意見を申し述べて、伺いたいと思います。
一つは、SACOは去年の暮れにまとめられ、これからいよいよ推進しなきゃならぬ。普天間の移転という歴史的事業、調査等もようやく方向が見えてきておりますが、いずれにしてもこれに全力投球でいかにゃいかぬということはもちろんでございますが、それには膨大な費用がかかる。しかし、これは費用のことを言っておれませんので、我々としてもあらゆる努力をしてこの事業の推進に努力していくとともに、一方、中長期的視点に立った防衛関係の防衛力整備も国としておろそかにできない。
我が国の防衛の特徴というのは非常にコンパクト、地上軍だって十五万しかないんです。北鮮が食糧難だといいながら百五万の大軍を持っているんですから、そういうのに比べたら予備兵力というのは本当に少ないんですね。それで、我が国の特徴は近代的な装備というものを持った、しかし近代的装備も武器輸出三原則で一切輸出しませんから、つくっても売らないから物すごく高くついてもこれはやむを得ない、こういう形になって防衛費はかさんでおるわけです。
それで、中身を見ますと、きのうも板垣先生からも指摘がありましたが、人件・糧食費四十数%とか、基地対策費等も十数%ありますし、そういう点を考えると本当に装備を買う金というのは二〇%程度。
そういう状況の中で、今後我が国としてコンパクトながら近代的な装備というものを充実していく。そしてまた、県道一〇四号線越えの問題がありますが、これは米軍の必要だけじゃなくて、我が国としても自衛隊の訓練ということは不可欠でございます。あらゆる面で訓練のない自衛隊なんというのは意味がないわけであります。
そういう点から考えますと、訓練費というものが結局しわ寄せになってくるということになりますので、SACO関連の事業の推進と防衛力整備、これはぜひ両輪で進んでいかなければいかぬということでございまして、防衛庁長官、そういう面の問題に関するひとつ御意見をお伺いしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014960X00419970415/21
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022・久間章生
○国務大臣(久間章生君) 昨年十二月二日に出されましたSACO最終報告に盛り込まれました措置の実施につきましては、政府として閣議決定を行いまして、政府全体が協力してあらゆる努力を行っていくことが必要であり、これを的確かつ迅速に実施するため、法制面及び経費面を含め政府全体として十分かつ適正な措置を講ずることとしたわけでございます。したがいまして、今財政構造改革元年と言われるときに、財政構造改革会議から示されました今度の基本的な考え方におきましてもSACO関連事業を着実に実施するということがその中に一応入れられております。
一方、委員今御指摘のように、そういう中で、我が国の防衛費についても今度の構造改革会議で、あるいはまたその後の企画委員会等でやっていくにしても、防衛関係費もぎりぎりじゃないかと言われることはそのとおりでございまして、私どもも中期防を決めた当時からそういう考えを持っておりましたし、また今におきましても、先ほど言われましたように、経費の性格そのものがなかなか変動しにくい内容になっておりますだけに、その辺の内容等につきましては企画委員会等でも意見を開陳させていただいて御理解を賜りながら、さりとて財政再建を目指しておられる総理の姿勢に私どもも共鳴して一緒になってやっているわけでございますから、どういうやり方で防衛関係費を適切なものにしていくことができるか知恵を出していかなければならない、今努力をしているところでございます。
そういう中で、ただ一言だけ言いますと、SACOの経費につきましては去年の概算要求のときもいろいろ議論がございまして、これは別枠にすべきであるという与党三党の御意見等もございました。それと同時に、予算編成のときにもこれについていろいろ議論がございました。結局防衛庁の予算要求の中に入れてもらいましたけれども、一応事項立てで別扱いにすることにいたしておるわけでございまして、この辺の問題についてはそういう過程の中でこれから先議論をさせていただきたい、そういうふうに思っているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014960X00419970415/22
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023・依田智治
○依田智治君 あと二、三、項目はあれですが、もう時間がなくなってきました。
県道一〇四号線越え、私も山梨県の出身でございまして、北富士に対する担当ということでいろいろ県の関係者とも接触して、ようやく防衛庁側からの説明を聞きましようという方向にまでこぎつけてきました。
その際につくづく感じましたのは、沖縄の問題が過重負担だということで沖縄に目が向いておりますが、自衛隊の基地等は本土に圧倒的にたくさんあるのでございます。しかも、その周辺の土地というのは砲弾にしても何にしても、山中湖村なんというとたかが一キロもないところでずどんずどんと家が響いているわけでして、そういう負担というのはやはり基地所在のところは同じなんだと。沖縄で苦労しているからこっちで引き受けてくれということじゃなくて、本当に長年苦労されているけれども、ひとつぜひ沖縄の負担をよろしくということで私も頭を下げて歩いているんですが、これについては答弁は要りません。今後とも積極的に防衛庁長官を中心に地元の理解を得る努力をお願いしたい。
最後に一点、沖縄振興策でございます。
沖縄開発庁長官に来ていただいていますが、本当に那覇軍港施設等も長年たっても移設できない。これから普天間の基地だって、やはり本格的に沖縄が自立していくためには、そういう大型の移転というものがあって、その跡地に本当に魅力的な振興策をつくるということが大変重要であり、その間でもできることはもうやっていくという努力が必要でございます。
そういう点で、各論をやっている時間がないので、せっかくお見えでございます沖縄開発庁長官に今後の取り組みの決意等をお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014960X00419970415/23
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024・稲垣実男
○国務大臣(稲垣実男君) 委員御承知のとおり、沖縄が本土に復帰しましてからこの二十五年間で、国としても約五兆円を投じてまいりまして、三次にわたります振興開発計画を進めてまいりましたが、総体に言いますと、随分発展してまいりましたが、いまだしという感じはしておるわけであります。
そこで、私どもとしては、ちょうどこの九年度から、第三次振計の折り返し地点でございますので、後期の計画をしっかりとひとつ見定めて、何にしましても経済は自立していかなきゃならぬと。いろいろな入れ物をつくったりいろんな施策をしても、それが成り立ってそろばんに合っていかなければ、これは自立したとは言えないわけでありますので、そういう意味でやはり後期の展望といたしましては、社会全体がこれから国際化、グローバル化を進めていくだろう。しかも、環境に対しても十分な配慮をしていかなきゃならぬ。また少子・高齢化社会でもある。そういった点を十分考えながら、しかも高度な情報化時代にも対応していく。
もろもろのことを考えてみますと、後半の施策の展開の方向づけというものは、当然そういう点をピックアップしていくわけでありますので、言ってみれば、地域特性を生かした特色ある産業をどのような形でつくっていくか。跡地を、いろんな計画はあるけれども、それが自立をしていくような経済計画を進めていかなきゃなりませんし、それからまた、国際性豊かな県民性の地域特性を生かしていくというふうになると、やはり南の国際的な交流拠点化を図っていかなきゃならぬ。また、自立的な発展を支える社会資本の整備を思い切ってやっていかないと、これはでき得ないわけでありますので、そういったことや、緑豊かで多様な自然環境の継承とかあるいは保全とか、環境に十分配慮しながら、しかも離島等々もございますので、そういった点につきましては基盤の整備をやるとかあるいは県内外の交流を促進して圏域の格差をなくしていかなきゃいかぬだろう。
そしてまた、委員おっしゃったように、米軍施設の返還跡地の有効利用、これは極めて大切であります。あそこにいろいろな例えば建物を建てていっても、果たしてそれが実際上、建物は建ったけれどもうまくそれが機能していきませんと、これは形骸化に結びつくわけでございますので、そういう有機的な面を考えていく。
しかも、沖縄県が策定いたしました国際都市形成構想、また自由貿易地域の拡大、こういった点を考えていきますと、思い切った大胆な改革を含めた必要な支援を国としてやっていく必要があろう、こう思うわけでございますので、経済の自立を目指し、そして雇用の確保の安定、県民の生活の向上等、計画の目標達成のために一層努力してまいる覚悟でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014960X00419970415/24
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025・依田智治
○依田智治君 総理を陣頭に、ひとつ懸命な努力をお願いいたします。
残余の時間は山本一太委員に譲って、私の質問を終わります。どうもありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014960X00419970415/25
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026・山本一太
○山本一太君 本日は、先輩議員の皆様の御好意によりまして、初めて橋本総理、外務大臣、そして防衛庁長官に御質問させていただく貴重な機会をいただきました。もう随分議論は出尽くした感がありますけれども、あと四十一分、張り切ってやらせていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
まず最初に、橋本総理に一言申し上げたいと思います。
総理、私は昨年の八月に、アメリカ民主党のシカゴで行われた党大会に同僚の若手議員と一緒に視察に参りました。巨大なシカゴのコンベンションセンター、これはマイケル・ジョーダンがいるシカゴ・ブルズで有名なバスケットボールチームの本拠地でもあるんですけれども、この大コンベンションホールで、クリントン大統領の民主党候補指名受諾演説、これは二十一世紀のかけ橋というタイトルの大演説を聞きました。
その後、二人でワシントンに移りまして、そこで上下両院、主に若手、中堅の議員を中心として、両党の議員の方々といわゆる議員外交をする機会に恵まれました。この滞在中に、米国議会のスタッフの方々とも二十名近くいろいろと意見交換をさせていただいたわけでございます。その中で、私は会うたびごとに、議員やスタッフの方々に、橋本総理についてどう思うか、アメリカは橋本総理をどう評価しているかという質問をぶつけたわけでございます。
私は群馬県、上州で、大変ストレートな性格でございまして、角田先生もそうですが、お世辞は申し上げないわけでございますが、ほとんどの方々は橋本総理に大変期待をしている、今クリントン政権は橋本総理に大変高い評価を与えているという答えでございました。これは事実でございまして、私も素直に自民党議員として大変うれしく思いました。
そしてまた、この二期目のクリントン外交を支えるのは、あの鉄の女とも呼ばれておりますオルブライト国務長官でございます。実は、オルブライト国務長官は、国務長官に任命をされる前にワシントンのジョージタウン大学で国際関係の教鞭をとっておられまして、私が八〇年代の前半にジョージタウンの大学院にいたときの恩師でございました。その当時、やはり衆議院の河野太郎議員が私と同じように、別の授業でしたがオルブライト先生のお世話になりました。
オルブライト先生は、一言で言うと大変厳しい先生でございまして、私がどんなに交渉しても私の成績を上げてくれなかったことは今でも忘れられないわけでございます。とにかく、オルブライト先生の方針は、議論に参加せよ、みずからの立場をきちっと明確にして議論を闘わせて結論を得ていくのが民主主義の原則だということでございまして、大変厳しかったわけですが、その反面、努力をする生徒については一番最後にチャンスを与えてくれるというようなフェアな面もあったわけでございます。この人がクリントンの外交に、アメリカの外交に大きな影響を与えていくということになりますと、大変手ごわい相手だと思うわけでございます。
そして、先般、橋本総理が初めてオルブライト長官にお目にかかられた。一日半という滞在ですが、日本に来られたときに、私も生徒ということで特に時間をとって会っていただきました。外交の話や総理の話をお聞きする時間はありませんでしたけれども、十分間、いろいろ大学の話や、あなた今何をしているのというような話をいたしまして、その後、オルブライト国務長官の周辺の方々あるいは近い方々からのいろいろなお話を聞くにつけ、オルブライト長官も、またクリントン大統領もそうかもしれませんが、橋本総理は本物の議論ができるリーダーだという評価を持ったというふうに私は伺っておるわけでございます。こうしたアメリカの橋本総理の手腕に対する高い評価を受けた上で、今後、この後、橋本総理がクリントン再選後初めての日米首脳会談に臨まれるということになっているわけでございます。
昨日の答弁で総理はおっしゃいました。いろんな問題を話し合わなきゃいけない、幅広い問題だと。例えばデンバー・サミットのエリツィンの参加の問題、ゴア副大統領が来たときにはちょっと避けた通商の問題、いろんな話をしなければいけないということでございましたけれども、こうした状況の中で、この会談に臨む総理の御決意、もう何度も決意を尋ねられて大変面倒なこととは思いますけれども、いつ総理にこの後質問するチャンスがあるかもわかりませんので、ぜひ一言コメントをお願いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014960X00419970415/26
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027・橋本龍太郎
○国務大臣(橋本龍太郎君) もし、本当にそれだけ評判が回復しているとすれば大変幸せでありまして、自動車協議でカンターと大げんかをした後、私の評判は総スカンでありました。それだけに、それだけもし評価が変わっていれば大変ありがたいと思います。
そして、ちょうどヘルシンキのエリツィン大統領との首脳会談に出発される直前、クリントンさんと電話で話をしましてから、会うのは本当に久しぶりです。そして、昨日も申し上げたように、まだ会談のテーマの報告を受けておりません。
きのうは、たまたまそのサミットの話から申し上げ、また経済問題というものを申し上げましたけれども、補足をして申し上げるなら、当然私は、現在進行しつつある米朝の協議、そしてそこから必ず出てくるであろういわゆる四カ国協議というもの、そしてその四カ国協議あるいは米朝韓の三国の話し合いの中から、もしもできるものならば南北の直接対話というものが始まらないだろうか、それに向けて我々が手伝えるとすれば何だ、今我々の持っている関心事項の一つはこれです。
そして、こうしたこの地域の情勢、当然ながらその中には我が国をめぐる安全保障の問題が入ってきますし、それから何回も申し上げましたように、私は今回、兵力の削減を求める気はありません。しかし、その上で、沖縄の問題に対応するその努力の必要性というものは今後とも変わるものではない、アメリカ側にもそうした点での協力を求める、配慮を求める、こうした話というものは当然出てくるでしょう。
日米経済問題あるいはアジア太平洋をめぐる国際問題等さまざまな論点はあろうかと思います。そして、やはり私は、そのヘルシンキにおける米ロ首脳会談の話も聞きたいですし、ペルーの問題解決にアメリカとしての協力も、これからも関心も持ってもらいたい、協力もしてもらいたい。
そのようなさまざまな課題を持ちながら、できるだけ深く真剣な議論ができることを願いつつ参ろうと思っています。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014960X00419970415/27
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028・山本一太
○山本一太君 ありがとうございました。
今おっしゃったように、いろいろ重要な懸案があると思いますけれども、安全保障の問題も含めましてよく日本の外交には顔がないと言われるわけでございますが、総理そして外務大臣にぜひとも強力なリーダーシップを持ってこの会談に臨んでいただきたいと思います。そして、橋本総理には、クリントン大統領を初めとする米首脳に対しまして、堂々と日本の国益という立場から議論を展開していただきたいと思います。そのことが長い意味で橋本長期政権と米首脳との信頼醸成をつくる道である、このように私は確信をしているわけでございます。
今、総理の方から、今回の会談で兵力の削減はもちろん求めないというお話がありましたけれども、私の最初の質問は、そのアメリカの兵力削減に対するスタンスということでございます。もうちょっと大きく言えば、アメリカのアジア太平洋地域に対するこのポスチャー、姿勢というものが変わったのかどうかという点でございます。
在日米軍については、これまでもアメリカ国内でいろいろな見解があったことは外務大臣も御存じのとおりかと思います。例えばジョセフ・ナイ前国防次官補のように、朝鮮半島の情勢とやや結びつけて規模を考える方もおられますけれども、一般に言って、やはり政権にいる閣僚あるいは現役の担当官からは、この東アジア地域には十万人の米軍の勢力はこれは確固として必要だという議論でもちろん変わってないとは思うわけであります。
しかしながら、私は、この数カ月間でどうもアメリカのこの問題、すなわち東アジアにおける兵力維持というスタンスがやや変わって、より厳しいというか強硬なものになったような、そういう印象があるわけであります。先ほど話に出たオルブライト長官を皮切りに、その後すぐゴア副大統領が来て、コーエン国防長官が来られて、そしてギングリッチ下院議長は外すとしても、その後、例の統合本部議長、非常に難しい名前なんですが、シャリカシュビリ、その統合本部からの参謀の責任者も来られたりして、もう予見し得る将来にこの削減はないということを何度も明言をされたという印象を持っているわけであります。
どうも、今までの発言をちょっときのう調べてみたんですが、三月の例のキャンベル国防次官補代理ですが、あの方の発言あたりから多少アメリカの態度が変わってきたのかなという感触を持っておりますけれども、そこら辺について、外務大臣、アメリカのこの軍事プレゼンスに対する姿勢に変化があったのかどうかということをちょっと伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014960X00419970415/28
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029・池田行彦
○国務大臣(池田行彦君) 結論的に申しまして、基本的に変化はありません。米国の立場というものは一貫したものであると考えております。
若干敷衍いたしますと、今委員も御指摘になりましたけれども、ナイさんの名前を挙げられました。そもそも、ナイさんがまだ国防、安全保障の責任あるポストにおいでになりましたときに、日本も含めて東アジアあるいはアジア太平洋に対する米国の戦略いかにあるべきかということでいろいろ検討がなされました。
いわゆるナイ・イニシアチブと言われるものでございますが、ああいった中で、やはり米国がこの地域で地域の安定のためにコミットしていくと。それはもとより、単にこの地域のために貢献するというだけではなくて、米国自身もこのアジア太平洋に対するかかわりがどんどん深まってきておりまして、みずからのインタレスト、いわば国益の立場からいってもそれが必要だという観点を含めてのお話でございましたが、そういった中で、いわゆる十万人のプレゼンスという話がずっと出てきたわけでございますね。これが大体九三年あたりからだったと思いますが、そういったものを踏まえながら日米間でもいろいろな話はしておりました。
そういったことを踏まえまして、米国としまして、我が国における四万七千人のプレゼンスを含めてこのアジア太平洋地域十万というものが、現在の国際情勢の中で米国としてのこの地域の安定のためにしているコミットメントを担保していくために必要だ、それを維持していくという大きな方針が確定したわけでございます。そういった上に立ちまして、昨年四月の日米首脳会談での日米安保共同宣言がございました。
そして、そのことは、繰り返しクリントン大統領を初め米国の責任者の口から表明されておったわけでございますが、日米間では、十二月二日に行われたいわゆる2プラス2におきましてもこれは確認されたわけでございます。その後、ことしになりまして、委員が御指摘になりましたように、クリントン第二期政権の安全保障にかかわる責任ある立場の方々がもうほとんどすべてと言っていいぐらい日本を訪問されました。
そういった方々の口から今申しましたような基本的な米国の立場が繰り返し言われたわけでございますが、それは決して強くなったというわけじゃございませんで、まあいろいろなことがあったのでございましょう。我が国でのいろいろな議論も踏まえて、そういった訪日された方々に対してプレスの方々がいろいろ御質問なさいましたね。そういう御質問に答える形で基本的な立場を繰り返された、そしてそれがまたいろいろメディアに乗って大きく伝えられた、そのことがあるいはさらに強くなったかという印象を与えたのじゃないかと思います。
そのことは、典型的にはコーエン新国防長官が言っておられるわけでございまして、いや、いろいろ言われたけれども、これは基本的な米国の立場をそのまま言ったんだと、それをプレスがいろいろ言われるものですから、それで今委員も引用されましたが、例えば予見され得る近い将来においてもその変化はないというふうなことになったんだということを言っておられました。
なお、予見され得る将来においてもという観点で申しますと、今いろいろ議論されます場合に、現在のアメリカのいろいろな安保戦略についていわゆるQDR、四年に一度の見直しがあるじゃないかと、これは五月十五日に国防総省として一応報告を議会へ出すことになっておりますが、それとの関連であれこれ言われることはございますけれども、これにつきましてもコーエンさんを初め責任者は、このQDRにおいてすべての面を爼上に上げて検討はするけれども、しかし、これは基本的なところ、アジア太平洋における十万人のプレゼンスというところは、これは動かすつもりはないんだということは明言されておるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014960X00419970415/29
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030・山本一太
○山本一太君 アメリカの立場は一貫して変わっていないという御見解でした。それに関連してちょっと別の質問をさせていただきたいと思います。
それでは、この数カ月間のアメリカの一連の外交にはどういう意味があったのかという点であります。
先ほど依田委員の方からもございましたけれども、日米安全保障条約は、もう申し上げるまでもなく日本の外交、安全保障の根幹でありまして、まさしく日本の国益であるというふうに思っております。さらにまた、それはアジア太平洋地域における安全保障のバランサー、いわば安定装置であるということも周知の事実でございまして、この意味で橋本総理が使われた公共財という言葉は大変うまい表現だなというふうに私も思った次第であります。
また、同盟国としての信義ということもあると思うんです。昨日、椎名委員の方から、アメリカはピザの出前じゃない、誇りを持って同盟国として日本に来ている、いわばお互いにいい番犬になるという番犬論みたいな、そういう関係が実は成熟した同盟関係ではないかということも聞いて、なるほどというふうに私は思った次第でございます。そして、その関連から、日米安保体制維持ということについて、この特措法改正は不可避の措置であったということも私は確信を持っているわけでございます。
それはそうとして、一方、この基地問題について沖縄県の方々、沖縄県民の方々が重荷を背負ってきたということも厳然たる事実だというふうに私は思います。昨日、板垣委員からの質問に総理がお答えになった、もし仮定としてあらゆるいろんな要素を外して、そういう問題を全部抜きにして考えたら、沖縄県民で本当に基地が欲しいという人はいないんじゃないかというお話を伺いまして私は感銘を受けたわけであります。
日米安全保障条約の必要性、国益の追求というのは大事ですが、やはり総理のおっしゃった気持ちがすべてのスタートであり、先ほど申し上げましたけれども、県民の心にかなった沖縄建設という真摯な態度でこれまで努力をしていただいてきているんだ、こういうふうに思っているわけでございます。そしてまた、いろいろな発言から見ても、これまでの経歴等から見ても、橋本総理の日米安保体制に対するコミットメントは非常に明らかであったということがあると思うんです。
そして、この特措法改正などをめぐる非常にセンシティブな時期、沖縄県民の方々にも真摯に説明をしながら進めていかなければいけないこのときに、アメリカから一連の首脳が日本に来られました。
私はアメリカの立場はよくわかります。もうこれは、私は何人かアメリカ人のワシントンの友達や大使館に電話をかけて話をしたんですけれども、これは日本の国内問題であるという立場もよくわかるわけであります。まあオルブライト、ゴア、コーエンぐらいまでだったらいいんですけれども、その後も何か四連発五連発という感じでこの時期にアメリカから来て、さらに予見し得る将来はいわゆるその兵力を維持する維持すると言うのは、私はもうわかっていることを、ツーマッチじゃないかという、率直に個人的に思ったんです。
それで、そのことについて、これは私の本当に一年生議員としての私見ですが、同盟国の総理に対する、これはもちろん国内政治ではないにせよ配慮というものがもうちょっと、三連発ぐらいだったらいいんだけれども、四、五、なぜここまでやるのかという私は率直な感想を持って、その不満を大使館の友達に言ったら、おまえそう言うけれども、いつもジャパン・パッシングなんて言って、見てみろと、二カ月でこんなにアメリカの首脳が来て全然ジャパン・パッシングじゃないだろうと言うので、じゃ何でゴア副大統領は日本に一日しかいなくて中国に四日いたんだと言ったら中国の方が広いからだという話で、それは関係ありませんけれども、この一連のアメリカの動きに対して、総理の率直な感想を私は伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014960X00419970415/30
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031・橋本龍太郎
○国務大臣(橋本龍太郎君) 今、議員の論議の組み立てを聞いていて、ああそういう見方もあったんだなと思いました。
というのは、私は、本年の一月にクリントンさんが再選をされ、そしてその新しい人事が進むにつれて、できるだけ早くそれぞれのカウンターパートと会っておく必要性ということを実は閣内でも関係の閣僚に対して申しておりました。そして、実は池田外務大臣にもオルブライトさんに会うためにワシントンに行ってくれと言った直後に向こうの方から来るという連絡をもらいました。その意味では私は、逆にこのところ引き続いてそれぞれの分野、議員のお話の中で一つ落ちていたのは財務省系統、ルービン財務長官、サマーズ副長官というところですが、私はこれは決して我が国としてマイナスじゃなかったと思うんです。
そして、むしろ私は、その十万人体制をアジアで必要とする日本の兵力構成を今いじる意思はないということを彼らが一々発言したと報ぜられているのは、記者さんたちが繰り返し繰り返し質問するから彼らはみんな答えたとか、自分たちの質問の部分は落として発言が記載されますと、なるほど確かに押し売りに聞こえたかもしれないなと思います。
しかし、むしろ私は、逆にできるだけ交流は多い方がいいと思っています。そして、本来もう少し国会でゆとりを認めていただけるのであれば、実は港湾の協議がつい数日前まで非常にぎくしゃくしました。これなんかでも、実は閣僚レベル交渉でどこかで舞台を変えた方がもう少し早く整理がついたかもしれない、その意味ではちょっと運輸大臣に気の毒したなと思っている部分があります。
そして、私自身閣僚のときに、ロンドン日帰りとかパリ日帰りとかいうそういう日程でもやはり向こう側の閣僚と会う時間をつくり、議論をすることをできるだけ積極的にやりました。ですから、私は確かに議員の考え方を伺っていてなるほどなと思った部分はありますけれども、私自身はむしろこうした交流はもっと多い方がいい、率直にそう思っています。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014960X00419970415/31
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032・山本一太
○山本一太君 私も総理のお話を聞いて、ようやく幾つかなぞが解けたような思いがいたしております。やはり立場が違えば、そういう見方といいますか、そういう御見解になるんだなという気がいたしております。
いずれにせよ、総理と外務大臣の御答弁を聞きまして、この問題についていろんな報道がなされたこともあるんでしょうけれども、とにかく日本とアメリカのパーセプションギャップはないということを確認させていただきました。ありがとうございました。
この一連の訪日をされた方々の中に、先ほどもちょっと申し上げましたけれども、ギングリッチ下院議長がおられました。この方は大変哲学的なおもしろい方で、非公式にまたいろんな発言をされたということを同行した方から聞きました。例えば、日本は偉い、中国の横に四千年も一緒にいたのに中国の一部にならなかったとか、日本の民主主義は台があって花と花瓶がないというようなことをおっしゃったというようなことも伺っております。
そのギングリッチが指揮する米下院で、先般、たしか三月十一日だったと思いますけれども、沖縄感謝決議が採択されたのは御存じのとおりでございます。これは、裏で動いたのは、下院というよりは総理もよく御存じのあの上院の財務委員長のウィリアム・ロス議員でございました。ロス議員がいろいろなところに根回しをして、この決議の採択のために走り回られたということでございます。
そして、この決議の目的は、アメリカ議会とアメリカの社会に対して沖縄と安保問題の大切さを改めて認識してもらうという目的だったということでございますけれども、この感謝決議の動きについて総理がどのような御見解を持っているかお聞きしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014960X00419970415/32
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033・橋本龍太郎
○国務大臣(橋本龍太郎君) ちょうどギングリッチ下院議長を朝食にお招きをしましたとき、私は冒頭この感謝決議に対して謝意を表しました。
そしてそれは、一つは素直にその沖縄の方々に対する感謝の意を表した決議ですけれども、同時にそれは、日米安全保障条約というものの必要性をもう一度アメリカ国民に認識をさせるものであり、その中で一番大きな基地を抱え苦悩しておられる沖縄の方々に対する思いというものをもう一度彼らが思い起こす、アメリカにおいても思い起こす、そういう役割を果たしてくれる決議だから、私はそう思いました。
そして、ギングリッチさんに、上院の方もできるだけ早くできるようにしてくれと、同時にSACOが終わったら、合意ができたら沖縄の問題が終わったわけではない、引き続きアメリカ政府の協力を求める、議会からもその支援をよろしく、そんなことを申し上げる、この決議は私にとってそんな役割も果たしてくれました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014960X00419970415/33
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034・山本一太
○山本一太君 この下院の決議は、総理も御存じのとおり、思ったより簡単にいかない面もございまして、予想以上に修正文の要求が出たり、あるいはこの種の決議としては十人以上の反対が出るというのは珍しいんですが、十六票のたしか反対票があったというような、十六票だったと記憶しておりますけれども、ちょっと細かい数字はまた後で私の方も確認をさせていただきます。
こうした中で、知日派の議員の方が少ないなという私も思いを持ちました。ウィリアム・ロス議員は、今回も別件で来日されたときに何度かお話をする機会があったわけですけれども、もちろん総理に首脳外交を展開していただくことも大事ですけれども、我々議員一人一人が議員外交を通じて、アメリカにきちっとした知日派の人脈をこれからもつくっていかなければいけないな、そういうことをこの下院決議で私も感じたわけであります。
また、これに関連して、今衆議院の方でどうも同様の決議を採択するような話、この検討が行われているやにも聞いておりますけれども、参議院の方も重要法案をいっぱい抱えておりまして、どうかなと正直言って思うところもあるわけでございますが、推移を見守ってまいりたい、このように思っているわけでございます。
次の質問ですけれども、関連しておりますが、そのロス議員に昨年の十月にワシントンでお目にかかったときに沖縄問題の話が出ました。そのとき私は、ロス議員がおっしゃった一言が大変印象的だったんですけれども、議員はこういうふうにおっしゃいました。
私が沖縄問題で一つ心配しているのは、沖縄で行われているその反基地運動みたいなものが、これがCNNとかあるいはABCとか大きなネットワークに取り上げられてアメリカで放映される。それを一般のアメリカ国民が見て、沖縄の全部の人が基地に反対しているんだな、日本国民全体はやはりアメリカの存在というものを全く歓迎してないんだな、じゃ何で我々がこんな苦労をして日本にいわゆるミリタリーを送らなきゃいけないんだと、こういう間違ったメッセージが視聴者、国民に送られるというのを非常に心配されておりました。
これに関連して、この沖縄問題に対するアメリカの世論あるいは議会の動向などについてどうとらえておられるか、情報があれば少し外務大臣にお聞きしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014960X00419970415/34
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035・池田行彦
○国務大臣(池田行彦君) 委員のおっしゃるところ、私どもも本当によくわかるところでございまして、実は先般、ロス議員、ギングリッチ下院議長と御一緒の時期にお見えになりました。そして私も、御両者それぞれ別にお話し申し上げた次第でございますが、そのときもロス議員は同じような御心配をなさっておりました。
そして、そのときも話題になったのでございますが、やはりロス議員の大変なイニシアチブのもとにあのような下院の決議がなされた。また、上院でも引き続き努力はしておられるようでございます。そのことが沖縄の方々に、自分たちの苦労がアメリカにも評価されているんだということ、そういったことを知っていただくという意味でも大切ではあるけれども、同時にやはり、アメリカにおける日米安保体制の重要性、そして沖縄のその負担の有する意味というものの認識が広まる、そういったことが大切だということで意見の一致があったわけでございます。
しからば、この決議によってそれじゃどの程度米国の国民がこの問題を知るに至ったかといいますと、それはああいう国でございます、御承知のとおり向こうのメディアは国際問題に関する報道というのは日本ほどウエートがない。特に各地域地域に新聞がある、全国紙的なものが比較的少ないということもございます。
しかし、それにいたしましても、私ども見ておりまして、いわゆるクオリティーペーパーズと言われるような新聞の報道の中にも、この沖縄あるいは安保の問題が取り上げられております。それも今委員が心配されましたような一部の反対運動だけではなくて、比較的バランスのとれた形で報道がされるように最近なっているんじゃないかというふうな報告にも接しております。そういった意味でも、下院の決議というものは大きな意味があったと考える次第でございます。
それからなお、一点だけ付加させていただきますが、先ほどの御議論の中で、米側がこの安保の重要性あるいは現在のプレゼンスが変わらないということのみを強調したという点がございましたが、それだけじゃございません。沖縄の方々の御負担というものにも非常に深い認識を持っておりまして、そして今後ともその点は大切に考えなくちゃいけないと、これは強調しておりました。
典型的に申しますと、ゴア副大統領が、引き続き沖縄の問題についてはセンシティブに、米国としても敏感に対応していきたいという話をしておられました。また私は、ゴアさんとの話の中では、この安保体制をきちんとやっていくためにも、沖縄のいろいろな問題について米国もしっかりと対応していくことが大切だということをかなり時間をかけて話をしていった。これが安保体制の有効性を維持するためにも一番肝心なところだということは米側もよく認識しているというところを付言させていただきたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014960X00419970415/35
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036・山本一太
○山本一太君 わかりました。
大臣、御存じかもしれませんが、たしか昨年、外務省がアメリカのギャラップに依頼をして米国の世論調査をしておりますけれども、それによると七割の米国民が安保体制を一応評価するという回答をしたという記憶がございます。いずれにせよ、この問題についてはアメリカ側にも間違ったメッセージを送らないように、ぜひともそういう旨をもって政策を進めていただきたいと、このように要望を申し上げます。
防衛庁長官、先ほどからお待たせをいたしまして申しわけございません。次に長官に二言伺いたいと、このように思います。
私は、安全保障の問題というのは、政治的な側面ということはもちろんでございますけれども、ここにやはり純粋に軍事的、戦略的な見地からの分析というものを加えて総合的に判断すべき問題であるというふうに常々思っております。この点から、いわゆる同盟国、関係国の間では、軍事関係者の間による交流の活発化ということが信頼醸成措置の一つとして大変重要な役割を持っているというふうに認識をしているわけでございます。
アメリカに関して言えば、もうこのような交流は随分行われておりまして、お互いに留学生も交換しておりますし、幕僚長とか向こうの統合参謀本部の議長とかそういう方の会合もたしか行われておりますし、また聞くところによればアメリカのセミナーに制服組の方が参加をしているということも伺っておるわけでございますけれども、この日米の制服組の間の交流、これはもちろん沖縄の問題を考える上でも大変重要なポイントだと思いますけれども、この現状について簡潔に一言御説明いただければと、このように思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014960X00419970415/36
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037・久間章生
○国務大臣(久間章生君) 今、委員が御指摘のとおり、国の安全を守っていくためには防衛力を整備するだけではなくて外交努力、またなかんずくそういう制服組を含めました防衛当局者がやはり交流することによってお互いの信頼関係を培っていくことが大事でございまして、防衛大綱においてもそういう信頼醸成をこれから強めるということを書いておるわけでございます。特にアメリカとの関係ではそういうことが大事でございますから、これまでも頻繁にやってきております。もし必要ならば、今政府委員の方から最近の状況について説明をさせようと思いますけれども、これからも引き続きそういうようなことについては努めていこうと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014960X00419970415/37
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038・山本一太
○山本一太君 また詳しい資料は後でいただくことにしまして、時間もありませんが、いずれにせよ、防衛庁長官がおっしゃられましたように、この方面での協力もぜひとも推進をしていっていただきたいというふうに御要望を申し上げます。
もうあと八分しかありませんので、最後の質問になるかと思うんですが、日米防衛協力のガイドラインの見直しの問題について触れさせていただきたいと思います。
日中関係については、昨日の橋本総理の答弁で、ちょっとぎくしゃくしたと、しかしながらこの秋の国交正常化二十五周年に向けて関係改善を図るし、またそういうふうになっていくと思うという、こういう御答弁もあったわけですけれども、中国のいろいろな動向を見ておりますと、この日米の防衛協力ガイドラインに対する中国側の懸念は消えていないように思うわけでございます。
私は先週、ヘラルド・トリビューンをざっと、ぱらぱらと見ておりましたら、四月十日付だったと思いますけれども、こういう記事が載りました。「チャイナ・トライズ・ツー・ビー・キング・オブ・ザ・ヒル」というタイトルでございまして、中国は丘の上の王様になろうとしている、まあウォルト・ディズニーのライオン・キングみたいになろうとしているという記事でございまして、そこのサブタイトルの見出しで、アジア諸国は、中国がアメリカのアジアにおけるプレゼンスに反対をしているということに対して大変心配をしている、こういう記事であったわけであります。
その記事の中でも触れられていたんですが、冷戦の真つただ中であった八〇年代、中国は実は個人的にはアメリカの軍事プレゼンス、アジアのプレゼンスというものをソ連への一つの対抗勢力として歓迎をしていた。冷戦崩壊後ですら、いわゆる日本に対する瓶のふた論もあって、アメリカのアジア太平洋における軍事的プレゼンスというものを是認していた。しかしながら、最近随分調子が変わってきて、特にあの例の共同宣言あたりから、日米というのは朝鮮半島情勢の先にどうしても中国をにらんでいるんじゃないかという論調がいろんなところから出てくるようになったわけであります。
総理も外務大臣もおっしゃっているように、中国に対してはコンストラクティブ・エンゲージメント、建設的な関与で中国という二十一世紀に向けてまさに超大国の仲間入りをする可能性がある国をソフトランディングさせると、そういう政策が基本になっているわけですけれども、このガイドライン見直しが秋に向けて作業が進んでまいります。その中で、どのように中国の理解を得ていくのかということについて一言お聞きしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014960X00419970415/38
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039・池田行彦
○国務大臣(池田行彦君) 昨日のこの委員会におきましても総理が御答弁なさっておりましたけれども、日米安保体制というものは決してどこか特定の国を対象にしたものじゃないんだということ、そしてまた中国との関係は日米両国とも、委員も今御指摘になりましたように、国際社会の建設的なパートナーズとしての役割を果たしてもらいたいと考えているんだ、中国との関係を良好にしようとしているんだということを中国側にも、例えば昨年秋のAPECの際の日中首脳会談で総理御自身の口からもおっしゃっていただいております。
そういった日米安保体制についての話をベースにいたしまして、そのガイドラインについても透明性を持った形で進めていくということをこれも総理の口から江沢民書記にもおっしゃっていただいたわけでございます。
昨年を今思い返してみますと、銭其シン副首相兼外相との間で、七月そして九月さらに十一月と三回にわたり、会談の際に安保の関係、中国が心配しておられますけれども、そういうことはないんだということを私自身は繰り返し申しております。
また、先月、北京に参りまして外相会談を持ちました際にも、安保の性格については申し上げているんでもうその点は繰り返さないけれどもと言いながら、実は局長レベルの日中の安保対話が三月に行われました。そこでかなり突っ込んだ腹蔵のない意見の交換をいたしました。ああいうことが非常に意味があるんだということをこちらから申しまして、ぜひこれからもそういったものを進めていこうということを申した次第でございます。
ガイドラインの作業の透明性については、我が国の国民の皆様方にそしてとりわけ国会に対して、どういうことを考えているか政府としても明らかにしなくちゃいかぬという観点もございますが、それと同時に、中国を初め近隣諸国との関係においても透明性を持って進めてまいりたい、こう考えている次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014960X00419970415/39
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040・山本一太
○山本一太君 今、外務大臣の方から御答弁をいただきました。総理も再三おっしゃっているように、アジア太平洋の安全保障あるいは世界の安全保障には、日米中のトライアングルをいかに円滑にいい関係にしていくかということだと思いますので、引き続きその方向で政策を推進していただくようにお願いを申し上げます。
あと三分ですので、私は中国について一言申し上げたかったことを述べさせていただきたいと思います。
先般、ある雑誌のインタビューで、ウィンストン・ロードというこれもアメリカの前国務次官補なんですけれども、こういうことを言っておりました。エンゲージメントというのは硬軟両用の政策のことを含んでいるんだと。私はなるほどなというふうに思ったわけでございます。よく中国に対する建設的関与、エンゲージメントという言葉がありますけれども、中国が警戒する封じ込めということは、ケナンがフォーリン・アフェアーズにX論文として書いた時代と全く状況が違いまして、これは理論的には可能であっても実際には中国を封じ込めるということは不可能であるというふうにまず認識を持たなければいけないと思うわけであります。
その上で、ウィンストン・ロードの言葉をかりますと、エンゲージメントというのは、協力的姿勢と断固たる態度を組み合わせた政策である、その目的は、二十一世紀の大国になろうとしている中国を攻撃的大国、すなわちアグレッシブパワーから協力的大国、コオペラティブパワーになってもらうため国際社会へ統合を促進するものだということになっているわけでございます。
もちろん、中国を脅威扱いすることは不適切であるということは十分存じ上げておりますけれども、しかしながら、国際政治の現実というものも見詰めながら、もちろん中国のWTO加盟も日本として支持をしまた建設的関与を進めていく中で、時には毅然たる態度で日本外交の指針というものを中国に対して示していただきたい、このように思います。
このことについて御要望を申し上げ、あと一分ということになりました。もう随分議論が出尽くした問題で、私も一年生議員ですからいろいろ乱暴な質問もありましておわびを申し上げますが、一問一問、総理、外務大臣、防衛庁長官、真摯にお答えをいただきましたことに心からお礼を申し上げまして、質問を終わらせていただきます。
ありがとうございました。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014960X00419970415/40
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041・鈴木正孝
○鈴木正孝君 平成会の鈴木正孝でございます。
連日特措法の改正の審議ということで、橋本総理初め閣僚の皆様には大変お疲れだろうと思いますけれども、よろしくお願いをいたしたいというふうに思います。
先般来、橋本総理の沖縄とのかかわり合いはたしか四十年の八月から行かれたというようなお話を聞いておりますけれども、私も個人的な沖縄とのかかわり合いを、こういう機会ではございますけれども、いろいろと思い起こしてみたわけでございます。
沖縄返還が四十七年の五月であったわけでございますけれども、ちょうどその一年ほど前に、それこそ私、防衛庁におりましたので、沖縄の基地の引き継ぎの事前調査というようなことで、四十六年の夏ころでございましたでしょうか、初めて沖縄に行きまして、沖縄本島の米軍の各基地あるいは宮古島のレーダーサイト等を見せていただいたということが全く初めてのことであったわけでございます。
そして、五十二年、それこそ五月十五日、当時は参議院の方はたしか内閣委員会で位置境界明確化法の審議をやっておったわけでございますけれども、なかなかその審議が進捗しないということで、結局五月十四日、十五日を迎えて、言うところの空白の四日間というような事態が生じたわけでございます。そのときも、ちょうど今あそこにおりますけれども、施設庁の伊藤総務部長、彼と一緒に、防衛庁で基地問題関係の対策担当者の一人として、四月の中旬くらいから、どうなるだろうかと、本当に駐留軍のみならず、当時は自衛隊の権原の問題そのものでございますから、それを政府というものはどのように考えるんだろうかあるいは国会はどのように考えるんだろうかという思いを非常に強くしながら、それこそ徹夜で一緒に時間を過ごしたというような経験がございます。
そのときもまた、五月十五日の未明でございましたでしょうか、記憶がどうかなと思いましてちょっと新聞を調べてみたわけでございますが、嘉手納の基地に明け方に車が突入していろいろと物議を醸したというような、そんなこともございました。
そして、昨年の夏、私も非公式ではございましたけれどもアメリカのワシントンに行きまして、国防省あるいは国務省あるいは議会筋あるいはそれぞれの専門家の方々と、言ってみますと安全保障全般にわたるような意見交換といいましょうか情報収集といいましょうか、そういうようなことを兼ねていろいろと沖縄問題につきまして議論をしたというようなことでもございます。
その中で、アメリカにおきましても大変いろんな意見があることは御承知のとおりでございますけれども、特に在日米軍のあり方について、この東アジア、アジア太平洋地域の国際的な軍事情勢あるいは朝鮮半島あるいは中国大陸・台湾問題あるいはロシアの民主化、近代化の話等々、非常に微妙な事柄があるというようなことでございます。
それはよく承知をした上でということであるわけでございますが、そしてまた昨年四月十七日に日米安全保障共同宣言が行われて、この中で、私も昨年の予算委員会あるいは本会議でいろいろとこのことについて大変前向きに評価しているというようなお話をした記憶もあるわけでございますけれども、兵力構成を含む軍事態勢について日米両政府が緊密な協議をするという姿勢そのものが大変重い、そしてまた二十一世紀を見据えてみますと非常に意義のあることだというふうに私自身非常に強く思っているわけでございます。
そんな中で、先般来アメリカの要人が、オルブライト国務長官あるいはゴア副大統領あるいはコーエン国防長官などいろんな方々がいらっしゃっているわけでございますけれども、そういう中でアメリカの方々は、東アジアの現在における兵力水準は維持するという言い方で非常に強い確固たる方針を表明しているというようなことだろうというふうに思って見ております。
そんな中で、総理も、現在の微妙なアジア情勢の中で日本政府としては兵力削減を求めることはないということを言われているわけでございまして、私自身もそれはそれなりに理解はしているわけでございます。
ところが、多くの国民の皆さんは、このアメリカの確固とした姿勢に押されて、どうも日本側から例えば海兵隊の兵力削減などは求められない、そういうことを言い出せないというような、これは大変失礼な言い方かもしれませんけれども、恐らくそういう印象をお持ちになっているのではないかなと、そんなような気もするわけでございます。
私自身、この海兵隊の兵力削減につきましては、総理の言われる立場ということにつきまして、そういうテーマを持ち出さないということにつきましてはそういうことかなというように思うところももちろんございますし、結果的に言えば、私も、今沖縄の海兵隊の削減を云々するというような情勢ではないんではないかというふうに結論的には思っているわけでございます。
ところが、国民の皆さんの中に、日米の首脳会談の中でそういうことをテーマにできないということ自体がどうもすとんと気持ちの上で落ちてこないというような思いもあるように思うわけでございます。
もうずっといろんな議論を通じまして出ているわけでございますけれども、この実質的な兵力構成やなんかの日米間の協議というもの自体が、言ってみますと特定のテーブルでやられる必要のある話ではもちろんございません。昨年の共同宣言に先立ってのナイ・レポート、そういうようなものの作成段階、いろんな形で日米のいろんな方々が実質的な話し合いをそれなりに詰めるところは詰めながらやられておったはずであるわけでございますけれども、どうも事務方だけのやりとりでもぐあいが悪いし、また首脳同士だけのやりとりだけでもこれもまたぐあいが悪いだろうというような、そんな感じもするわけでございます。
そんな中で、安全保障にかかわる事柄でございますから、日米間相互の信頼関係ということが非常に大事でありますし、そういうものを受けながら、しかしながら片方で、勇気を持って国民の皆さんに相手方との話し合いの結果をお示しする、あるいは語りかけるということも大事であるわけで、それ以上にまた相手方にも国民の気持ちを率直に伝えるという工夫と努力も必要だろうというふうに思うわけでございます。
その辺が、戦後この安全保障、防衛問題をめぐって長々と国民と政府あるいは国会との間の乖離というものが埋まらない大変不幸な状況なのかなというような思いもするわけでございますが、先ほど来のお話の中で、総理自身、もう少しわかりやすく気持ちを国民に語りかけていただくように、テーマにしないということについてのお話を、御説明をぜひわかりやすくしていただければ幸いだと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014960X00419970415/41
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042・橋本龍太郎
○国務大臣(橋本龍太郎君) 昨年、御承知のように日米首脳会談を行い、その際、日米安保共同宣言をクリントンさんと二人で発表することによって、私どもは日米安全保障条約というもの、そしてその体制というものを再確認いたしました。そして、その時点における議論のときの米軍の兵力構成というものは、現在と変わらないアジア太平洋地域に十万人体制、そして日本に四万七千人の米軍を駐留させる、もちろん多少の移動ででこぼこはありますけれども、基本形はこういう形のものでありました。同時に、朝鮮半島に陸軍を中心とした部隊配置が行われる、大きく分けてそのような形でスタートをしました。
そして、その体制の中で、御承知のように、私たちは沖縄県における米軍基地の整理、統合、縮小というものを、米軍の配置を前提にしながらも全力を尽くして日米両国で努力をしてまいりました。その結果、いわゆるSACOの最終合意というものがなされたわけでありますけれども、私たちはこれによって少しでも沖縄の皆さんに基地をお戻しできる、またその中から少しでも本土に移しかえられるものがあったということで、これを今実行しようとして努めております。
ところが、どの瞬間からか私にもわかりません。いつの間にか、このSACOの答えが、最終合意が出ればすぐ続いて次の基地の整理、統合、縮小にかかれるような、あるいはかかるのが当然であるような議論というものが世の中にいっぱい出てまいりました。
そして、そういう議論の中で一つ目立ちましたのは、ヨーロッパ正面が十万人体制を割ろうとしているんじゃないか、もっと兵力は少ないんじゃないか、あるいは他の二つの海兵の集団はアメリカ合衆国内にいる、ヨーロッパのどこかの国に基地を設けているわけではない、なぜ安保条約に基づいて緊急展開部隊としての性格を持つ海兵隊が日本にいるんだと。これは武器だけ事前に集積をしておいて何かがあったら飛んできてもらえばいいではないか、あるいは武器の集積も含めてどこかへ移ってもらって、こちらが本当に危険になったら来てもらえばいいではないか、こうした意見も飛び交うようになりました。
また、ちょうどそのころアメリカの中でも実はいろいろな角度からの議論が出てくる中に、海兵隊のあるいは在日米軍の駐留そのものを移せという意見も出てきましたし、またアメリカ自身の中で例えば基地が閉鎖されるなら沖縄にある部隊を私のところへ連れてきてくださいといった要請が出てくる。さまざまな私は状況の変化があったと思います。
その上で、私は今回の首脳会談において、現時点でアメリカの兵力構成を問題とする気はありませんし、またその撤去を求めると現時点で議論をするつもりもありません。
私は、ヨーロッパ正面とアジア太平洋地域と大きく違うことは、まず第一にNATOという一つの地域安全保障の仕組みのしっかりとしているヨーロッパ、それに対して地域間の協力、安全保障協力の枠組みが軍事の上でできていないアジア太平洋地域、これは大きな私は差があると思っております。そして、NATOの中から外に出られないという制約を受けておりましたときにも、例えば湾岸危機から湾岸戦争に至る時期、ドイツ軍はNATOのエリアであるトルコのぎりぎりまで進出をし、イラク空軍機がトルコの上空に侵入した瞬間からNATOの一員としての責務を果たす形で戦闘に参加できるよう、その態勢をとっておりました。
そして今、中東欧諸国、長い社会主義の国から市場経済と民主主義に変わりつつあるこの国々も、今NATOへの参加を希望し、むしろそこに危機感を感じるロシアとの間でNATOの拡大問題が非常に議論になっている。それぐらいしっかりした地域における安全保障の仕組みがあるヨーロッパ正面、そしてアジア太平洋地域の中には非常に大きな差が私はあると思っております。
もう一つの大きなポイント、緊急展開部隊としての性格を持っておる、これはもう委員には申し上げるまでもない海兵隊。このアジア太平洋地域が非常に多くの島嶼部を抱えている国々から成っている地形的な問題も私は一つあると思います。ヨーロッパは陸続きです。そして、必要とされる兵力構成も、当然ながらその兵力構成に対応して整備されるべき武器の性格も、島嶼部の多いアジア太平洋地域との間にはおのずから性格を異にする部分があると思います。
そして、その中で日米安全保障条約という、我々が独立を回復する時点において我々の先輩が選択をされました安全保障の仕組みが昭和三十五年に国論を二分する大騒動の中から今日の姿になり、そして引き続き我々はこの条約のもとに我が国の安全保障というのをゆだねて今日まで参りました。
そして、我が国の周辺地域を考えますときに、不安定な要因がなくなったわけでは決してない。むしろ不安定さは増しているのかもしれません。そして、特定の国、地域を予定して名を挙げるつもりはありませんけれども、我々はその不安定さと不透明さというものに対しそれなりの注意を払い続けております。
こうした状況の中において、私は、現時点においてこの海兵隊を含む在日米軍の構成を論議し、これの縮小を求めるといった状況にはない。むしろ、そういうことを今回は議論の俎上に上らせること自体でマイナスの方が大きいと判断をいたしました。
しかし同時に、中長期的に、共同宣言の中にもありますように、状況の変化に対応して兵力構成を含む軍事情勢というものについて我々は議論のできる仕組みを用意いたしております。そして、この十万人体制あるいは我が国の四万七千人体制を言うべきかもしれませんが、この点について日米両国が議論を交わし、これを確認したのは昨年十二月の2プラス2の時点でありました。その後、状況の大きな変化の生じていない中でこの問題を今爼上に上らせる、むしろ私はそれは得策ではないと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014960X00419970415/42
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043・鈴木正孝
○鈴木正孝君 今、総理、最後のところで中長期的な協議の枠組みをつくっているんだから状況の変化があればそれは話は別だと、そのような御発言がございました。まさにそのとおりだろうと私も思います。
先般コーエン国防長官が来られたときに、来日前の朝鮮半島の認識の話と、それからこちらへ来られてからの話、いささか修正発言風のところがあったわけですけれども、朝鮮半島統一は遠い将来のことで、時期尚早の兵力削減はないというようなことを申されたというように承知はしているわけでございます。要するに、中長期的なアジアの情勢、軍事情勢などいろいろと変化があれば兵力構成の見直し、削減はあり得るということを恐らくコーエンさんも言われたんだろうと思いますし、それに答えて、今の共同宣言の枠組みの話の中で、総理も今状況の変化があれば兵力削減の問題もテーマになり得るというような趣旨のお話だろうというふうに思いますので、質問を次の方に移らせていただきます。
北朝鮮の最近の全般情勢、食糧の問題、エネルギーの問題など非常に微妙なところが多かろうと思います。全般の情勢と、そしていろんな報道でもあるわけでございますけれども、ノドン一号の配備の状況、いささかその発射実験が可能な段階に入ったというような報道もあるわけでございまして、その辺どのようになっておるのか、外務大臣あるいは防衛庁長官、御説明いただければ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014960X00419970415/43
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044・池田行彦
○国務大臣(池田行彦君) まず、北朝鮮の経済あるいは政治の状況について私どもの認識を御答弁申し上げたいと思います。
経済の関係につきましては、全体といたしましてもここ数年、見方によっては七年という言い方をする方もありますけれども、いわゆるマイナス成長ということになっておりまして、極めて厳しい状況にございます。特に、そういった中で食糧並びにエネルギーの窮迫状態は大変厳しくなっておりまして、例えば食糧の不足量についてはいろんな見方がございます。大きいのはもう三百万トン台なんというのもあるわけでございますけれども、あれこれ見まして、小さく見積もっても百万トンというオーダーに乗るんじゃないかということで関係各国あるいは各方面の見方が大体一致しているところでございます。それから、エネルギーにつきましても、御承知のとおり、かつては旧ソ連であるとかあるいは中国等からいろいろな供給もあったわけでございますが、そういうこともないというので非常に厳しい状態になっております。
そういった情勢でございまして、食糧の情勢なんかも、おととしあるいは去年あたりは異常天候に基づく天災だというような見方もいろいろございましたけれども、そうではなくて、やはり基本的には経済運営の失敗と申しましょうか、それは友好国との関係が非常におかしくなったということも含めてでございますけれども、要するに構造的な問題である、こういうふうに私どもは見ております。
そこのところは北朝鮮当局自体も認識しているんじゃないかと思われる節がございまして、報道されるところによりますと、最近、金正日書記が某所で行ったスピーチの中で、そういった食糧の問題が非常に窮迫しているということを認め、そして経済運営はどうなっているんだということを指摘したという報道もあるところでございます。
そういった非常に窮迫した経済状態でございますが、しからば政治の方はどうなっているのか。そういった状況になると、当然あの国の国民の不満も高まることも予想されるわけでございますが、かなりきしみというか動揺が見られているということも否定できません。それが端的にあらわれましたのが例の黄長燁書記の亡命でございます。ほかにも、これほど著名な人でなくてもいろいろ亡命事件というのが起こっているのは御承知のとおりでございます。
そういったことで、その体制内におきましてもいろんな動揺がございますし、いわばそれを指導する理念についてのいろんな争いといいましょうか、そういうものもあったやに見受けられるところでございます。
しかし、そういったことも含めまして、全体としての政治の指導体制はどうかと申しますと、やはり金正日書記を中心とした指導というものが現在も維持されている、こう見なくてはいけません。
そして、そういった中で、いろんな交代といいましょうか大事なども伝えられております。御承知のとおり、首相が高齢のせいもございましょうが、実際の職務から外れたのでございましょう、首相代理ということでいろいろ報道されているということもございますし、党におきましても国際部長の交代があった。それから、つい昨日のことでございますけれども、軍部の極めて大幅な異動があった、こういうふうになっております。
そういったことで、金正日の指導というものが一応維持されておりますが、その中でのやはり世代の交代なりあるいは軍の影響力がどうであるかといったことで、この体制自体のあり方というものも非常に注目を要するところだというふうに思われるところでございます。
そして、そういった状況の中にありまして軍事の方はどうか。これはあるいは防衛庁長官からの御答弁をちょうだいした方がいいのかもしれませんけれども、端的に私から申しますと、依然として地上兵力百万を超すものを中心とした膨大な軍事力を維持しておる。そして、経済力のかなりの部分を軍事の強化あるいは維持に回しておるという実態は変わっておりませんし、軍事境界線の方向に向かって軍事力の相当部分を前方展開しているという体制も変わらないということでございまして、総じて申しまして、経済社会的には苦しい状態にはあるけれども、政治そして軍事面での基本的なこれまでのスタンスは変わっていない、こういう状態でございます。
しかし、一方において、例の四者協議への対応が事前説明会に出てくるとかいうふうな形になっておる、あるいはKEDOのプロセスも進んでおるというふうに、国際社会とのつながりを従来よりは少し広げていこう、あるいはそれをなくしてはやっぱりやっていけないんだという事態に置かれている、そういった兆しが見えるということも事実でございます。そんなふうに見ております。
最後に、ノドンの件につきましてはいろいろな報道があるのは私どももよく見ております。そして、かつてノドンというのは射程五百キロ、こう言われておりましたけれども、それが千キロあるいはそれ以上に延びたんじゃないかとか、あるいはその中の幾つかは現実に配置されたんじゃないかというふうな報道もございますし、私どもも私どもなりにいろいろ収集している情報の中にそういったものもございます。しかしながら、現実が、実態がどうなのかという点について確認するまでには至っていない、こういう状況でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014960X00419970415/44
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045・鈴木正孝
○鈴木正孝君 ノドンにつきましては、配備場所によりましては日本全島を射程圏内におさめることができる、そういうことであるわけでございますけれども、このミサイルに対しての対処能力というのはいろんな手だてをしてみてもなかなか有効なものは現在の段階ではないだろうというふうに思います。
そんな中で、先般来、TMDといいましょうかBMD構想に絡みまして、いろいろと日米間で研究もし、なるべく早く結論を出すようなことだろうと思いますけれども、その辺の研究状況につきまして、あるいはまた最高責任者としての総理のBMD参加問題についての考え方、あわせて防衛庁長官あるいは総理から御答弁いただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014960X00419970415/45
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046・久間章生
○国務大臣(久間章生君) このミサイル防衛ということにつきましては、防衛政策上も極めて大事な問題だと思っております。したがいまして、防衛庁としましても、数年前から予算を計上していただきまして、これらについて知見を有するアメリカの協力を得ながらいろいろと研究を行ってきたわけでございます。
まず、どういうシステムで技術的に可能であるか、そういう研究と、またそのときの費用対効果、そういうことについていろいろと研究していかなきゃならないわけでございます。
これまでの研究でかなり進んでまいりましたけれども、まだまだそういう問題につきましてはいろいろと詰めていかなきゃなりませんので、政策判断をする以前のそういう研究成果を早く得るべく今鋭意検討しておるところでございます。また、今後も引き続きこれについては共同研究をしていこうということで、先般コーエン長官がお見えになりましたときもこの話が出まして、引き続き共同研究をやっていこうというようなことになったわけでございます。
確かに、いろいろミサイルありますけれども、特に弾道ミサイルということになりますと、先ほどの例を挙げるのはあれでございますけれども、発射してから八分ないし十分で到達するわけでございますから、その時間内にこれを迎撃しなければならないという非常に技術的にも難しい問題がございます。
それと同時に、こういう研究をし、あるいはそれを政策判断しますときには近隣諸国にいろいろとそれに対する疑義を持たれないように、そういうこともしなければなりませんから、あらゆる角度から政策判断する場合には決定をしていかなきゃならない。
少なくともその前に研究についてだけはきちっとしたものをつくっておこうということで今までやってきたところでございますので、どうかひとつしばらく御猶予をいただきたいと思う次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014960X00419970415/46
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047・鈴木正孝
○鈴木正孝君 大変大事な問題であろうと思いますので、着実な研究をぜひお願いいたしたいというふうに思います。
特措法の改正の問題に入りますけれども、この手続がなかなか難しくて、間にいろんなものが入ってかえって混乱しているというようなところもあるのかなというふうに見ているわけでございます。
建設省の方いらっしゃっていると思いますけれども、今収用委員会の働いているこの意味が非常に大きいように思うわけでございますが、全国の各都道府県の収用委員会で例外なくこれが正常に機能しているのかどうか、その辺の現状を御説明いただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014960X00419970415/47
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048・小鷲茂
○政府委員(小鷲茂君) 全国の収用委員会の状況でございますが、おおむね順調に機能していると考えてよろしいかと思いますが、御案内のとおり、千葉県の収用委員会だけが実は委員がまだ選出されない状況のままで今日に至っております。
御案内のとおり、千葉県の収用委員会におきましては、昭和六十三年の九月二十一日、成田空港二期工事に反対する過激派によりまして収用委員会の会長が襲撃をされるという事件が起こりました。その後も、委員全員あるいはまたその家族に対しまして執拗な脅迫、嫌がらせが行われるという状況のもとで、同年の十一月二十四日、収用委員会の全委員及び予備委員、これがすべて辞任するというやむなきに至っております。
このような状況は、言うまでもなく、大変不正常で異例なことでございまして、私どもといたしましては、千葉県内の他の公共公益事業の円滑な執行という観点からも好ましくございませんので、速やかに体制の整備が図られる必要があると考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014960X00419970415/48
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049・鈴木正孝
○鈴木正孝君 今お話のありましたように、千葉におきましては収用委員会そのものが存在をしていない、そういう状況だということであるわけでございます。
仮定の問題といたしまして、法律論としてということになろうかと思いますが、今、テーマが沖縄に事実上あるわけでございますけれども、この問題が千葉県で仮に起こりました場合、考えてみますと委員会が事実上ないわけですからこれは裁決も出せない、あるいは申請そのものも収用委員会に持ち込むこともできないというようなことになります。改正案で事実上対応できるということでいろいろと御検討、あるいはそのような御答弁をたくさんいただいているわけでございますけれども、仮定の問題といたしましてこういうようなことが起こり得る、治安状況全般の中でこういうこともひょっとして起こるかもしれないということを考えてみますと、防衛庁長官あるいは法制局長官、どのように有効に対応できるのか、御見解をいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014960X00419970415/49
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050・久間章生
○国務大臣(久間章生君) 今、千葉県には駐留軍用地がございませんので、そういう仮定の話すらちょっといかがかと思いますけれども、確かにこの駐留軍用地特措法というのは各都道府県に収用委員会があるという前提で、しかもそれが機能しているという前提でこの法律は収用法を適用しているわけでございますから、その収用委員会がないということ自体が非常に不正常な状態でございまして、むしろ土地収用法上の収用委員会がない、こういう状態がこう長期に続いていいのかという、そっちの問題だろうと思います。法律上は、幸いといいますか、そういう問題が実態上もございませんし、また今の沖縄の問題と若干異なりますので、ここで云々する必要はないんじゃないかと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014960X00419970415/50
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051・鈴木正孝
○鈴木正孝君 どちらにいたしましても、仮定の話でございますのでそういうことかなというふうに思いますが、理論的に言えば、理屈を言えばそういうこともあり得るということで、どちらにしても何らかの形で抜本的な対応を考えざるを得ない。それほど先の話ではなくて、そういうことを考えざるを得ないのではないかというふうに思うわけでございます。
そういう中で、収用委員会をこの特措法の中で、あるいはその全般の手続の中で位置づけていくこと、あるいはその期限を今設定することもなくエンドレスでいろいろと議論が行われるというような状態、あるいはそのことの是非ということはもちろんあるわけでございますけれども、抜本的な対策の中に、政府あるいは政府に近い、あるいはそれに準ずるような形での中央での委員会のようなものを設ける、あるいはそのやり方を地方との間で分割するというようなやり方もあろうかと思いますけれども、その辺につきましてどのような御見解をお持ちかお伺いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014960X00419970415/51
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052・久間章生
○国務大臣(久間章生君) 現在でも、この駐留軍用地特措法でも一応建前としましては、いわゆる土地収用法で言う事業認定にかわる使用認定としては、これは内閣総理大臣がいろんな手続を経て認定することになっております。ただ、使用期限をいつにするか、どの期間にするか、あるいはまた損失の補償の金額をどうするか、これはやはり地元の、いわゆる詳しいというようなこともございまして、土地収用法を適用して土地収用委員会で裁決をするという仕組みになっておるわけでございます。
この土地収用委員会の制度そのものも機関委任事務といえば機関委任事務かもしれませんので、いわゆる地方分権推進委員会でいろいろ議論がされておりまして、先般の中間報告といいますか勧告においても先送りされておるわけでございますけれども、そういうような議論の中でこれから先、こういうような問題について土地収用委員会の現在の制度そのものについても議論があろうかと思いますので、そういう段階で、その議論を経た上で我々としては考えていくべき問題じゃないかと、そういうふうに思っておるわけでございます。
ただ、全くその地方の問題を国だけで、損失の補償金額その他を国だけで決めるというようなことがいいかどうか、これまたそのときに議論されればいいことでございますので、その辺の問題については同じ抜本改正といいましても若干違うんじゃないかなという気はいたしております。
いずれにしましても、そういう問題を全部ひっくるめて、地方分権推進委員会の議論等を経た上で、そういう結論を得た上で判断すべきものじゃないかというふうに理解いたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014960X00419970415/52
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053・鈴木正孝
○鈴木正孝君 ことし、こういうようなことがいろいろと議論されているわけでございますけれども、ちょうどあの沖縄返還の年、昭和四十七年一月の初めに、総理が師と仰ぐ佐藤総理の施政方針演説の中で、「沖縄における人口密集地帯及び産業開発と密接な関係にある地域に存在する米軍の施設・区域については、復帰後できる限り整理縮小することについても米側の理解を得ております。」と、これは施政方針演説の中でそう言われておるわけでございます。あるいは、「沖縄百万の同胞は、戦中、戦後を通じて大きな犠牲を払ってこられました。」「国民各位とともに、沖縄県民の御労苦を深くねぎらいたいと思います。」というようなことで言われているわけでございます。
その中で、こういう振興策を含めまして、沖縄問題の全般的な解決について大変御尽力いただいているということであるわけでございますけれども、この際、もう一度総理の御決意をお聞かせいただければと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014960X00419970415/53
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054・橋本龍太郎
○国務大臣(橋本龍太郎君) 委員からその御指摘があると聞きまして、改めて昭和四十七年一月二十九日、両院において行われました佐藤総理の施政方針演説、この部分を取り寄せてみました。私は本当に感慨深くこれを拝読いたしたところです。
そしてまた、よくこうした点に触れられますと、「沖縄県民斯ク戦ヘリ」というあの有名な大田さんからの電報の話が出てまいります。まさにそういう時代があり、そして佐藤総理の本当に執念ともいうべき粘り強い交渉が実り本土復帰が実現をするというときの施政方針、その思いが本当に込められたものだと思います。
しかし、その後、しばしば申し上げてきたことでありますが、私は、当時国会におりました者また政府、立場のさまざまな差はありましても、同じような思いで沖縄の本土復帰というものを迎えたと思いますが、その後、第一次振計、第二次振計、第三次振計と振興計画が動いていく中でいつの間にか、私自身はそうでした、同じ思いをされる方は多いと思いますけれども、いろいろな個別の御相談に応じていく中でいつの間にか、基地の問題というものについての意識がだんだん薄れていってしまう。そして、問題意識として持っておりましても、基地の整理、統合、縮小という目標よりも、何となく整備を要請される道路でありますとかさまざまな施設でありますとかを実現する、そうしたことの中にいつの間にか私たちが埋もれてしまっていた。
そして今日、改めてその重荷というものを振り返るとき、本土の基地の返還、縮小というものが進められたのに比して余りに沖縄においての変化は乏しかった。私はこれは本当に申しわけないと思いますし、その申しわけないという思いを皆共有しながら内閣として今日まで努力をしてまいりました。その中で、SACOの最終合意をまとめてまいりましたプロセスにおいても、県民の方々からは御不満が残っておることは承知していますけれども、少なくとも日米両国政府の関係者は全力を尽くしてくれた、これだけは私は知っていただきたいと思っております。
一方、県勢の振興という上でも、私どもはなさなければならないことを多く持っております。そして、もう今さら長々申し上げはいたしませんけれども、知事と御相談を申し上げてきたことも既に動き始めておるものもありますし、御相談をした上、県が御自分のところに委員会をつくられ、その結果を閣僚とともに構成をする沖縄政策協議会の場にまとまり次第持ち上げると言っておられるテーマもあります。そうしたそれぞれのテーマに私どもなりに全力で取り組んでいく、そうした思いを持ちながら今ここに立っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014960X00419970415/54
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055・鈴木正孝
○鈴木正孝君 この改正案の審議は、こういうような形で間もなく成立するというような状況になろうかと思いますが、法律としては公布されて施行されてしまえば一件落着というような印象があるわけでございますけれども、このこと自身、沖縄問題を考えれば新しいページの始まりというようなことであります。
立法形式としては沖縄にのみということではないわけでございますが、実態を見ればまさに沖縄の米軍用地確保のための法律ということでございまして、沖縄県民の皆さんに対してそれなりの説明というものが必要ではないかというふうに思います。私、一番いいのは、総理がみずから沖縄に赴いていただいて、そして直接県民に状況を説明されて、またさらなる協力をお願いするというような、そういうことがあるのかなというように思います。
先ほどもお話がありました、二十年六月に打たれたあの有名な「後世特別ノ御高配ヲ賜ランコトヲ」と言われた大田少将、この決別の電報の真意にもこたえるようなそういう思い、あるいは佐藤総理の施政方針演説にあったその思いにもまたつながるようなものではなかろうかというような思いもするわけでございます。
そんな中で、ぜひ総理自身、所管大臣でございます防衛庁長官あるいは外務大臣にお任せすることなく、なかなか日程は厳しいのかもしれません、あるいは政府専用機でワシントンに赴く途中、那覇経由というようなこともあるのかもしれません。そういうことも可能かもしれません。ぜひその辺をお考えになっていただいて、新しい一ページを切っていただくようにお願いをしたいというふうに思います。
私自身、この問題で新しい沖縄返還交渉の場に入っているなと思いますし、あるいはまた第二の砂川事件に沖縄をしてはならないというような思いでずっと見ておったわけでございます。そんな中で総理のこういう決断をぜひお願いしたいというふうに思います。
いかがですか、総理。直接沖縄に赴いていろいろとお話をしていただくというわけにいきませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014960X00419970415/55
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056・橋本龍太郎
○国務大臣(橋本龍太郎君) 就任以来、私は何回か沖縄にも参上してきました。決して私はその手間を省くつもりはありません。県が迎えてくださる気があるなら私はいつでも参ります。どうぞ、国会もそれだけの時間をお与えくださるようにお願いをいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014960X00419970415/56
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057・鈴木正孝
○鈴木正孝君 もう時間もございませんので、あと東富士、一〇四号線越えのものでございますが、簡単にちょっと今の状況を御説明いただければありがたいというふうに思います。
一〇四号線の本土移転のテーマ、それぞれのところで大変御苦労をしているわけでございますけれども、特に私も東富士にかかわっておりますので、地元でもいろんな意見がございます。地元の方々も大変心配をしているという状況でもございますので、これからどんなタイミング、段取りで進まれるのか、その辺を最後の質問として終わりといたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014960X00419970415/57
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058・久間章生
○国務大臣(久間章生君) 私どもがSACOでしましたうち、本土でとにかく受け入れてもらうということで決めましたことについては、これはやはり何が何でもお願いしていかなきゃ、そうしなければ沖縄の方々に対しても申しわけないということで、その間におきまして鈴木委員におかれましても、本当に地元のことでつらい立場でありながらいろいろと御苦労していただきまして大変ありがたいと思っております。
幸いにして、各地区とも説明会等をいろいろと開いていただきまして、今言うような沖縄のものについて、どういう内容でどの程度というようないろんなことを聞いていただきまして、まあその程度ならば賛成とは言えぬけれどもやむを得ぬかなという、そういう空気に大分なってきていただいております。
一日も早くというように思っておるところでございまして、各地区で今お願いしておりますのは、具体的には例えば十日ですよ、三百人ぐらいですよ、大砲でいうならば十二門ぐらいですよと、そういうようなことでお願いをしております。一日も早くということでございますから、もうしばらく、これまた無理するわけにいきませんので、とにかく御理解を一歩一歩得ながら、できるだけ早く実施計画が立てられるようにしたいと思っておるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014960X00419970415/58
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059・鈴木正孝
○鈴木正孝君 終わります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014960X00419970415/59
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060・倉田寛之
○委員長(倉田寛之君) 午後一時十分に再開することとし、休憩いたします。
午後零時九分休憩
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午後一時十二分開会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014960X00419970415/60
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061・倉田寛之
○委員長(倉田寛之君) ただいまから日米安全保障条約の実施に伴う土地使用等に関する特別委員会を再開いたします。
休憩前に引き続き、日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定の実施に伴う土地等の使用等に関する特別措置法の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を行います。
質疑のある方は順次御発言願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014960X00419970415/61
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062・高野博師
○高野博師君 平成会の高野でございます。
まず最初に、きのう私の尊敬する椎名議員から、在日米軍はそば屋じゃなくて番犬だという議論がございました。私はちょっと反論があるものですから、少々お話をさせていただきたい。
この番犬論については、先生のお話によると、いざというときにほえたり、主人のためにかみつく、しかしそのためにはえさもやらなくちゃいかぬ、あるいはブラシもかけて愛情も注がなくちゃいかぬと、こういうことを言っておられました。
私は、この番犬というのはもう古いんではないかと、考えそのものが。番犬はえさをやったりブラシをかけたり大変面倒だと。主人自身にもかみつくことがある。沖縄の少女の暴行事件、まさに主人にかみついた事件でありまして、むだぼえも多過ぎるのではないか。これは劣化ウラン弾の使用とか、あるいは爆弾の落下事件、いろいろある。むだも多いんではないか。スペースもない。番犬を今飼っている人はいない。ほとんどペットで飼っている。
そういう意味では、セコムのようなアラームシステムが在日米軍のあり方ではないか、必要なときにだけ作動して、そしていざというときに駆けつけるというのが本来のあり方ではないかなということを私の所感として申し上げておきます。
総理、何か御意見ございましたら。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014960X00419970415/62
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063・橋本龍太郎
○国務大臣(橋本龍太郎君) 意見と言われますと、私なりの感じはございますけれども、もともと椎名先生のお父様、椎名外務大臣の国会における非常にユーモアのあるやりとりとして、日米安全保障条約におけるアメリカの法的地位いかんという問答は私どもが国会に出ましたころから伝説的になっておりました。そして、そのお父様の言葉を引かれた椎名先生、非常にうまく引かれたという感じで私は拝聴しておった次第です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014960X00419970415/63
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064・高野博師
○高野博師君 それでは、アジア太平洋地域の政治情勢と日米安保の意義についてお伺いいたします。
この問題については、アジア太平洋地域は世界で最も不安定要因の多いところということはこれまで何度も議論されているところでありまして、核兵器を含む多大な軍事力が存在するとか、あるいは領土問題がある。朝鮮半島あるいは中国と台湾の動向、関係、インド、パキスタンの関係、こういうさまざまな状況の中で日米安保体制が抑止力として働く。これが平和と安定に貢献しているということも何度も議論されたことでありますが、相互経済依存関係の中に各国を組み入れるということがまた地域の繁栄にも資するということも言えると思います。
そこで、総理が日米安保体制はアジア太平洋地域の安定と繁栄のための国際公共財だという発言をされました。国際公共財というのは、これを供給できる国はしばしば政治経済上の観点から覇権国、ヘゲモンと呼ばれている。ということになると、アメリカあるいは日本というのはこういう覇権国という認識をされた上での発言だったんでしょうか。総理、いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014960X00419970415/64
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065・橋本龍太郎
○国務大臣(橋本龍太郎君) 外交の専門家でおられる議員から、そのようなお問いかけを受けるというのは私は全く予想をいたしておりませんでした。
その上で、私がその公共財という言葉を使いましたのは、昨年一月就任をいたしまして以来、例えば第一回のアジア・ヨーロッパ首脳非公式会合あるいはAPEC、さまざまな機会にアジア太平洋地域の各国の首脳たちとお話をする。そして、そうした中でかつて日米安保条約というものに対し懸念を表明しておられたような国を含めまして、むしろ現在におきましては日米安全保障条約体制というものが現実にしっかりと存在し、その中に定められております基地提供の責任、義務を日本は履行し、米軍のこの地域における駐留を確保していること、それがまさにアジア太平洋地域の平和と安定の確保につながるという評価を現に受けているということ、そしてそれは本年の正月早々にASEANのうちの五カ国を回りましたときにも同じような印象を持つ会話が続きましたこと、そうしたことの中から私は用いた言葉であります。
同時に、我が国が覇権主義をとり、覇権を唱えるというような状況を、少なくとも第二次世界大戦終了後独立を回復し今日までの足取りの中で行ってこなかったことは、そしてまた現在も行おうとしていないことは議員がよく御理解のとおりだと私は思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014960X00419970415/65
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066・高野博師
○高野博師君 この覇権国という点については、村上東大教授が次のように再定義しております。歴史の流れを把握して、世界のあり方を提示する思想の力を持ち、それを実現する方向で国際公共財を提供する経済力を備えている国だというふうに言っております。私は、総理がこういう覇権国についての認識があって発言されたかどうかはわかりませんが、公共財という使い方の背景にはこういうことがあるということを指摘しておきたいと思います。
次に、アジアの中での北朝鮮の動向についてでありますが、食糧援助に関しては政府の立場をもう一度確認しておきたいと思います。外務大臣、お願いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014960X00419970415/66
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067・池田行彦
○国務大臣(池田行彦君) 現在、北朝鮮はいろんな面で困難な状況にございますが、とりわけ食糧事情につきましては非常に窮迫した状態にある、このように見ております。それは一昨年あるいは昨年も同様であったわけでございます。
一昨年、昨年は、異常天候に基づく食糧不足というふうな言われ方が少なくとも表面上されたわけでございます。しかしながら、現在の情勢を見ておりますと、これは単にそういった一時的なものではなくて、農業生産も含めまして、あの国の経済運営なりなんなりがうまくいっていないんじゃないのかな、構造的な不足であろうと、このように見ております。
そして、一方におきまして、WFPあるいは国連人道問題局等がその中心になりまして、国際的な人道的な観点からの北朝鮮に対する食糧援助のアピールを提起しておりまして、これに対して既に米国、韓国を初め数カ国がそれに応ずると、こういった姿勢を見せていることも我々はよく承知しております。
そういった中で我が国としてどのように考えていくかということでございますが、私どもといたしましては、ただいま申しましたような一方における北朝鮮の食糧不足、そして一方において人道的な見地からの国連のアピールというものを当然その念頭に置いております。しかしながら、このような問題を進めるかどうかということを検討いたします場合にはほかのいろいろな要素を総合的に勘案しなくちゃいけないだろう、こう考える次第でございます。
もとより、その一つ一つの要素が直ちにこの事柄を進めるか否かについて直接的にリンクしている、あるいは決定的に大きな要因になるとは限りませんけれども、いろんな要因を勘案しなくちゃいけない、そして国民の皆様方のお気持ちがどういうふうなところにあるだろうかということも十分勘案しなくちゃいけない、このように考えている次第でございます。
今そのようないろいろな要因を総合的に見ながら引き続き検討している、そういうところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014960X00419970415/67
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068・高野博師
○高野博師君 いろんなさまざまな要因を総合的に勘案してこれを検討するということでありますが、今の政府の立場として、少女の拉致事件、さまざまな事件があって、正面切ってこれを持ち出すことはなかなか難しい面もあると思うんですが、こういうことも考えて今の立場をずっと堅持すると、実際に援助する段階になったときの理由づけが難しくはならないかなと。拉致事件の見通しとか、あるいは北朝鮮側の何らかの対応がなければ援助しないというようなことになると、実際には、国際世論が今高まっておりますので、日本が追い込まれたような形で、国際機関とかあるいはアメリカとか韓国のある種の圧力に押し切られたような形で援助をするようなことにならなければいいなというふうに私は思っております。
何か御意見ございますか。簡単で結構でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014960X00419970415/68
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069・池田行彦
○国務大臣(池田行彦君) もとより、今お触れになりました北朝鮮が関係しているんじゃないかと言われる我が国の国民の人道にかかわる問題について、何らかの解明あるいは情勢なり姿勢なりの変化というものがあるかないかということがこの問題に対する国民のお気持ちに影響はすると思います。ただし、先ほど私が申しましたように、それが直接に政策決定にリンクするかどうかはまた別の問題だと思います。
そのほかに、当然のこととして、私どもは朝鮮半島の安定化を図るという観点からどうなのかということを考えなくちゃいけない。それはまた我が国自身の広い意味での安全保障にもかかわるものでございます。さらに申しますと、関係の正常化交渉がとんざしているという事情もございます。
そういったこともすべていろいろ勘案しながら検討を進めているということでございまして、決して他の国がいろいろこうやっているから、あるいはそういった国々がこういうふうな期待をしているからといって、そのことで我が方が追い込まれて決定するとかそういうことではない。それはいろいろな報道にはそういう字が躍るかもしれませんけれども、あくまで我が国は我が国としていろいろな事情、要素を総合勘案しながら独自の立場で決定していく。しかし、そのとき、当然ながらこの地域の問題について共通の関心と利害を持つ国々とは緊密な連携をしていくということはあるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014960X00419970415/69
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070・高野博師
○高野博師君 それでは、コーエン国防長官の発言についていろんな議論があるんですが、朝鮮半島統一後も在日米軍を含むアジア太平洋の米軍兵力を維持するという発言をめぐっては、アメリカ国内向けの発言ではないかとか、あるいは北朝鮮の脅威を理由にした有事の主張が説得力を失った、アメリカと北朝鮮がそれぞれ連絡事務所を開設するとか、四者協議が実現すれば脅威というものは減少していく、そういう事情が背景にあったんではないかという見方もあります。これについて答弁を求めると時間がなくなりますので、こういう見方もあるということ。
そして、日米安保体制との比較においての韓国とアメリカとの相互防衛条約、この目的あるいは適用範囲というのは何なのかお伺いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014960X00419970415/70
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071・池田行彦
○国務大臣(池田行彦君) 米韓相互防衛条約の目的でございますが、これは文字どおりその条約の前文に記してございまして、「太平洋地域における平和機構を強化すること」、「外部からの武力攻撃に対して自らを防衛しようとする共同の決意を公然とかつ正式に宣言すること」、「また、太平洋地域における地域的安全保障の一層包括的かつ有効な制度が発達するまでの間、平和及び安全を維持するための集団的防衛についての両国の努力を強化すること」を目的としたもの、こういうふうに認識しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014960X00419970415/71
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072・高野博師
○高野博師君 それでは、在韓米軍の兵力の推移については、八三年から九六年ぐらい、どのように減少しているのでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014960X00419970415/72
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073・加藤良三
○政府委員(加藤良三君) 一九八三年の総数は三万八千八百八十二、それから一九九六年の総数が三万六千七百二十四、それぐらいの減少ぶりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014960X00419970415/73
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074・高野博師
○高野博師君 韓国では、沖縄の基地問題は日本のためだけにあるのではない、日本は非常に内向きな議論をしているというような批判もあります。在韓米軍については、先ほど答弁がございましたように太平洋地域の安全ということなんですが、東アジアの平和と安定を維持する、この地域に覇権勢力が登場するのを防ぐためだというようなとらえ方をされておりまして、朝鮮半島統一後も在韓米軍は地域のバランサーとして残すということはもう納得済みだというようなことも言われております。
韓国としては、東アジアの将来の覇権勢力として中国とそれから潜在的な意味で日本を想定しているというようなことが言われております。これは韓国の大学教授、報道にもありましたが、米軍が韓国から完全撤退してしまえば十九世紀末と同様にこの地は中国と日本の勢力争いの場になると。覇権競争を抑制して、一方で、韓国内で起こり得る核武装論を阻止するために統一後も若干の米軍を残すのが望ましいという意見も多々あります。日本に対する警戒感というか不信感が非常に根強いということも指摘できるかと思うんです。
日米同盟は特定の国を対象としたものではないということは何遍も議論されておりまして、アジア太平洋の平和と安定ということでありますが、米韓同盟というのは北朝鮮の問題が解決した後も中国ないしは日本を対象にしているという議論があるんです。そうすると、日米同盟それから米韓同盟というのは矛盾しないのか、あるいはアメリカの立場というのは矛盾しないのか。
恐らくそうではないというお答えになるんだと思いますが、その辺についてどのような感想をお持ちでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014960X00419970415/74
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075・池田行彦
○国務大臣(池田行彦君) 韓国に限らずどの国にも、民間にもいろいろな専門家あるいは研究者もいるわけでございまして、さまざまな意見があるということはそのとおりだと思います。
しかしながら、全体として見ますと、韓国は御承知のとおり我が国とは今極めてかたい関係にございます。友好関係にあるわけでございます。実は、ちょうど昨夜もこの委員会が終わった後、私は韓国の外務大臣と四時間にわたって両国関係、さらには国際問題についてもいろいろ話し合いをしたわけでございますが、その中でも両国間の関係をさらに未来へ向かって高めていこうという話をいたしました。
そういった中で、安全保障問題につきましても、これまでもいろいろな形での対話を進めてきたけれども、これをもう少しきちんと整理して、お互いに安全保障問題についても緊密に連携していくような枠組みをきちんとつくろうじゃないかというふうな点でも合意したところでございまして、決して今韓国の政府が我が国を念頭に置いてあれこれ考えているということはないと、こう存ずる次第でございます。また、中国との関係におきましても、御承知のとおり先年国交関係も回復され、今両国間のいろいろな面での交流も進んでいるところでございます。
そういった意味におきまして、日本、韓国、そして中国というのは、この北東アジア地域におきましてこれからいよいよ大きな役割を果たしていかなくてはなりませんし、この三カ国間の友好関係というものが大切であるということはお互いそれぞれ十分に認識しているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014960X00419970415/75
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076・高野博師
○高野博師君 それでは、領土問題と日米安保条約の関係について二、三確認しておきたいと思います。
尖閣諸島について日米安保条約が適用されるということはアメリカ側も明言しておりますが、竹島、北方領土について日米安保条約は適用されるんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014960X00419970415/76
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077・池田行彦
○国務大臣(池田行彦君) 安保条約五条に基づきまして共同対処行動をとられますのは日本国の施政のもとにある地域と、こういうことになっております。
そういった観点から申しますと、北方四島あるいは竹島という地域は、残念ながら現在事実の問題といたしまして他国が占拠するということになっておる、そういった意味では我が国の施政のもとにあるとは申せません。そういった意味で安保条約五条の共同対処行動の適用ということはないと、このように理解しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014960X00419970415/77
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078・高野博師
○高野博師君 竹島は日本の施政下にはないということでございますね。これは重大な発言だと思いますが、念のためにもう一度確認したいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014960X00419970415/78
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079・池田行彦
○国務大臣(池田行彦君) 先ほど申しましたように、事実問題として、竹島のケースで申しますと、事実上韓国が占拠しておりまして、我が国が施政を行い得ない状態にあるわけでございます。これは国際法上、私どもが繰り返しいつも御答弁申し上げておりますように、我が国固有の領土でございます。しかし、事実上我が国が施政を行い得ないような状態になっている、そういった意味におきまして、安保条約との関連においては適用できない、こういう事実あるいは条約の解釈との関連でそういう状態になるとへこういうことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014960X00419970415/79
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080・高野博師
○高野博師君 この問題は後ほど別な機会にまたやりたいと思います。
それでは、アジア太平洋地域における軍事力について、過去十年間の防衛費の伸び率、世界で上位三位はどの国でしょうか、日本は何番目でしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014960X00419970415/80
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081・秋山昌廣
○政府委員(秋山昌廣君) 防衛費あるいは国防費につきまして国際比較をいたしますときに、定義ですとか内容ですとか範囲ですとかなかなか区々でございますので、国際比較というのは非常に難しいわけでございます。
特に、あえて伸び率で比較しようとする場合に、それぞれの国の物価ですとかデフレーターとかございますので、それが公表されていない以上伸び率を比較するというのはなかなか困難であるというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014960X00419970415/81
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082・高野博師
○高野博師君 実に変な答弁であります。
この「日米安保ハンドブック」には主要な国の防衛費について一覧表があります。これを見ると、防衛庁はいろいろな計算の仕方があると言っておりますが、防衛費、国防費の支出というのは大半の国が出ております。これによれば、NATO諸国はもう相当減少している、これは一九八五年から九四年までの統計です。ソビエト、ロシア、これも三分の一に減っている。中東諸国も半分以下に減っている。世界的な減少傾向の中でアジアだけが伸びている。
その中でも日本というのは倍近く増大している。日本の場合は円高の問題とかあるいは人件費の問題等がありますけれども、それにしても十年間で倍近い伸びを示している。これは金額的に見ても伸び額としても世界一であります。数字だけを見れば、日本は世界第三位の軍事大国と見られはしないかという危惧を持っております。
そこで、日本は憲法第九条のもとで必要最小限度の自衛力のみを保有して専守防衛に努めてきたと、これは政府の見解でありますが、一体何を基準に必要最小限度の自衛力と言っているのか、そしてだれがこれを判断しているのか、簡単にお答え願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014960X00419970415/82
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083・久間章生
○国務大臣(久間章生君) それぞれの国はそれぞれの国の立場で自国の安全をどうやって維持するのか、それなりに防衛政策はあるわけでございまして、私どもは我が国の防衛をそういう角度から見たときに、外交とかいろんなことがありますけれども、日米安保条約に基づく提携と同時に我が国の防衛力を整備しなけりゃならない。
そういう中でどれだけのことをやるかというのを、日本の地形あるいは周りの状況、そういうのをにらみながら積み上げていって、防衛大綱で一応の大枠を決めまして、その中で五カ年間なら五カ年間における中期防衛力というものを策定いたしまして、それに基づいて各年度の防衛費を積算して、予算との関係がございますけれども、予算の折衝の中で決めさせていただいて、適宜、逐次整備を図ってきておるというのが我が国の防衛の現在の進め方でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014960X00419970415/83
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084・高野博師
○高野博師君 全然答えになっておりません。必要最小限度の自衛力というのは一体何を基準にして言っているのか。
これはまた別なところでは、日米安保体制によって、核の脅威に対しては米国の抑止力のもとで適正規模の自衛力を保持し侵略を未然に防止する、これは防衛の方針でありますが、この新防衛大綱の中で自衛力、防衛力についてはこういう表現はたくさんあります。適切な規模の防衛力の整備、あるいは節度ある防衛力を自主的に整備する、あるいは効率的な防衛力の整備、または効率的で節度ある防衛力と、さまざまな表現があります。
一体何を基準にしてこういうことを決めるのか、これらの表現はみんな同じ意味ととらえていいのかどうかお答え願います。簡潔にお願いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014960X00419970415/84
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085・秋山昌廣
○政府委員(秋山昌廣君) 我が国の防衛力整備を行う基本は、防衛大綱の中にも書いてありますけれども、基盤的防衛力整備という考え方でやっているわけでございます。
もちろん、日米安保体制ということを前提にしての適切な防衛力整備ということでございますが、この基盤的な防衛力整備というのは、力の空白をつくるということはかえって不安定をもたらす、したがって特定の脅威を見積もってそれに対して防衛力を構築するということではなくて、そういった力の空白をつくらない、独立国としての必要最小限度の防衛力を持つということで、防衛大綱にも陸海空のそれぞれの考え方を書いてございますけれども、数量的あるいは具体的には防衛大綱の別表をもって我々は必要最小限度の防衛力をお示ししているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014960X00419970415/85
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086・高野博師
○高野博師君 要するに客観的な基準がないということだと思うんです。したがって、これはもう歯どめがきかない、その時々の国際情勢等によって幾らでも幅のある、そういう防衛力になりはしないかという危惧を私は持っております。
国際環境の変化の中でも、PKOとかあるいは災害対策、テロ対策、いろんな事情が変わってきたのはよくわかりますが、必要最小限度とかあるいは適正とか適切という言葉は非常にあいまいなものがありまして、もう少しわかりやすい基準というものを設けるべきではないかなというふうに思っております。これは答弁は求めません。
次に、ASEAN諸国の軍事力が相当ふえているということで、特にアジアの国に対して、我が国が社会経済発展のために相当のODAを供与しています。そのODA大綱の中に、大量破壊兵器の開発や武器の輸出入などの動向に十分注意を払うという原則がありますが、この原則に基づいて実施してきたのかどうか。各国の軍事力あるいは防衛力の増大の現実を見ると、我が方はこの原則に反してはいないかという感じがするんですが、この点はいかがでしょうか、簡潔にお答え願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014960X00419970415/86
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087・池田行彦
○国務大臣(池田行彦君) 確かに最近ASEAN諸国の国防費は増額しております、経済的な成長も背景にいたしまして。しかしながら、その内容を見てみますと、主として旧式装備の更新というものを対象にしている、そういった近代化が中心でございますので、現在の状態でこの地域の安定を損なうようなものにはなっていない、このように理解している次第でございます。
そして一方、ODA大綱の方でございますけれども、これは確かに委員の今おっしゃいましたような記述がございます。「軍事的用途及び国際紛争助長への使用を回避する。」とございます。しかしながら、その上の方をごらんいただきますと、「相手国の要請、経済社会状況、二国間関係等を総合的に判断の上、実施するものとする。」と、こういうことになっておりまして、そもそも現在のASEAN諸国における国防費というのは近代化が中心であるというので、先ほど申しましたような国際紛争助長云々ということにはならないんじゃないか。ましてや、我が国からのODAがそういうものに使われるということではない、こういうことがございますし、またODA大綱もいろいろな事情を総合勘案するということになっているということを御理解賜りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014960X00419970415/87
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088・高野博師
○高野博師君 この地域の軍備力の近代化でこれがこの地域の安定を損なうものではないという御答弁が今ありましたけれども、地域の安定を損なうおそれがあるという、まさにそこに日米安保体制の存在の意義というものがあるんだと思います。ですから、総合的に勘案してODAを供与するという、まさに総合的な勘案ということにあいまいな点があるんだと思います。
このアジア諸国に対するODAについては、ある意味ではばらまき的な供与の感じがあります。特に軍事力増強については、日本のODAによって浮いた金を軍事に回すというようなことがないように厳重なチェックをしてもらいたいと思います。
次に、アメリカ国民の日米安保体制に対する評価でありますが、この安保ハンドブックによると、「日米安保体制を基盤とする日米関係は「世界の歴史上、最も成功している二国間関係」と評価されるに至っています。」と、こういうふうに書いてありまして、歴史上最も成功している同盟関係と自画自賛しておりますが、本当にそうなのかどうか、だれがそういう評価をしているのか、簡潔にお答え願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014960X00419970415/88
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089・池田行彦
○国務大臣(池田行彦君) それでは、簡潔に端的にお答え申し上げます。
昨年、外務省が米国において行いました世論調査によりますと、日米安保条約がこの地域の平和及び安全に貢献している、そういうふうに答えた方が六六%になっております。また、日米安保条約が米国自身の安全保障にとり有益であるかどうかという点についても、同じ六六%が有益であると回答しております。さらに、米国として現在の日米安保条約を維持すべきかどうかという質問に対しましては、七五%が維持すべきと、こういうふうな回答が寄せられておる、これが端的に申しまして、現在の米国の世論を示しておると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014960X00419970415/89
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090・高野博師
○高野博師君 その世論調査については後で聞こうと思ったんですが、もう答えていただきましたので……。
これはちょっと余談になりますが、トインビーが政治建築の最高傑作だと、こう言っているのがローマ連合であります。紀元前の話でありますが、ローマがラテン同盟ということで、今で言う集団的安全保障とかあるいは集団的自衛権の考え方に近い同盟関係を結んだのですが、いざというときにだれも助けてくれなかったと。それで、ケルト人に攻められたということで、立ち直るのに二十年もかかったというその経験から同盟関係を張りめぐらすのですが、この同盟関係は結んだ相手同士では同盟関係を結ばせない、相手国同士で何か紛争があったときは必ずローマが入ってくるというような同盟関係を結んで、これがその後のローマの発展に大いにつながったわけであります。歴史上でいえばこういうものはたくさんあるわけですが、日米関係についてはわずか四十年でありまして、これまで成功してきたというのは冷戦下の米ソの対立のはざまで有事がなかったからうまくいったんではないかなと、そういう感じを持ちます。
そこで、今、外務大臣から、対日世論調査の中で、日米安保条約は極東の平和と安定に貢献しているかということに対して、一般のアメリカ人は六六%が肯定している、有識者では八二%。それから、安保条約はアメリカ自身の役に立っているか、有益かということに対して、有益と思う人が六六%、しかし有識者はもっと高い八三%。それから、アメリカは日米安保条約を維持すべきかということに対して、維持すべきというのは一般の国民は七五%、有識者はもっと高くて八三%。日本は防衛力を増強すべきかということについては、増強すべきというのは四二%で、有識者はもっと多い六六%ということで、けさほどもこのギャラップの世論調査については指摘がありましたけれども、アメリカ国民の七割以上が日米安保体制について肯定的に評価している。
しかし、日米安保体制について問題は、アメリカ側の一方的な防衛義務があるということ、それから日本が憲法第九条の規定によって集団的自衛権の行使ができない、すなわちアメリカ軍が攻撃を受けたときは日本は援助の戦闘行為ができない、したがって対等の同盟関係ではないと、こういうことを認識しているアメリカの国民はほとんどいないと言われております。もしそういう事態が起こったならば、日米安保体制は一気に崩壊するおそれがあるという指摘もしばしばなされております。
これから世論調査等をやる場合に、日米同盟の中身をちゃんと知らせた上で調査をやるべきではないか。政府としては、アメリカ国民は当然でありますが、日本国民についても、日米安保体制の中身についてあるいは条約の中身についてもっと理解を得るための説明の義務というか、アカウンタビリティーというのがあると思うのでありますが、総理がいらっしゃいませんので、外務大臣の御所見を伺います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014960X00419970415/90
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091・池田行彦
○国務大臣(池田行彦君) 国の施策すべてについてそうでございますけれども、とりわけ安保体制のように重要な問題につきましては、アカウンタビリティーとおっしゃいましたけれども、なるべくその内容を国民にも理解していただき、そうしてそれを評価してもらう、こういうことが大切だというのは委員御指摘のとおりだと思います。そういった意味での努力はこれまでもやってまいりましたが、これからも続けてまいりたいと存じます。しかしながら、特に米国民の間にと申します場合には、これは極力そういう努力をするにいたしましても、どの程度まで詳細にするかというのはまた判断を要するところかと存じます。
そういった中で、先ほど委員が御指摘になりましたように、安保体制の内容について比較的理解をしておられると思われる米国の有識者の中でかえってこれを評価する声が米国民一般よりも高かったということは、先ほどおっしゃいましたように、日米安保条約のいわゆる片務性というものがあったとしてもなお米国自身の国益のためにもあるいは地域の安定のためにも有益であるという認識が米国、とりわけ有識者の中にあることのあらわれでもあろうと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014960X00419970415/91
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092・高野博師
○高野博師君 それでは、日本の防衛の基本政策についてお伺いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014960X00419970415/92
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093・久間章生
○国務大臣(久間章生君) もう委員御承知のとおり、我が国は日本国憲法のもと、外交努力の推進及び内政の安定による安全保障基盤の確立を図りつつ、専守防衛に徹し、他国に脅威を与えるような軍事大国とならないとの基本理念に従い、日米安全保障体制を堅持し、文民統制を確保し、非核三原則を守りつつ、節度ある防衛力を自主的に整備することを防衛の基本方針としていると、従来からこういうような考え方でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014960X00419970415/93
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094・高野博師
○高野博師君 この防衛の基本政策の中で、日本がアメリカのあるいは日米同盟あるいは日米安保体制の抑止力を期待しているということは、バランス・オブ・パワーという考え方に立っているんではないでしょうか。そう理解してよろしいでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014960X00419970415/94
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095・久間章生
○国務大臣(久間章生君) 抑止力というのは、確かにおっしゃるとおり、相手が攻撃した場合には反撃がある、しかも日米同盟ができておる、それによって攻撃する以上の反撃があるだろうと、そういう予想を持つことによって抑止されるわけでございますから、そういう意味ではまさにバランス・オブ・パワーという言葉になるのかもしれません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014960X00419970415/95
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096・高野博師
○高野博師君 アメリカの対外政策と防衛政策の基本理念もお伺いしたいんですが、時間がないので私の理解している限りで述べますと、アメリカは自由と民主主義あるいは人権という普遍的価値を守るためならばもう世界のどこでも飛んでいく、しかしそれでも代償を求めないというところがあるのではないか。国際秩序を維持するという責任をみずから担っている。
それからまたもう一つは、対外政策の基本としてアメリカは常に脅威というものを見つけてこれに対抗するというやり方。脅威とは、具体的にはアメリカの安全保障にとっての脅威もあり、あるいはまたアメリカの持っている価値観、人権、自由あるいは民主体制にとっての脅威というものも考えられると思うんですが、また一方で、アメリカにおいては軍事戦略と経済政策を一体とみなしてきたということが言えるのではないかと思うんです。
アジア太平洋の安定と平和というための日米安保体制の大義名分はありますが、実際は自国の経済的な権益を守るのが第一義なのではないかという私は個人的な意見を持っておりますが、総理はどうお考えでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014960X00419970415/96
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097・橋本龍太郎
○国務大臣(橋本龍太郎君) 私は必ずしもそう思いません。
むしろ、第二次世界大戦後、我が国は国内における全面講和か単独講和かという論議の中で単独講和という道を選択し、同時に、一方に非常に強くありました再軍備という声を最小限に抑えるために、警察予備隊から保安隊、そして現在の自衛隊と発展をしていくプロセスをも最小限に抑えながら、まさにアメリカの支援のもとに国を守るという道を当時の先輩方が選択をされ、その中で日米安全保障条約体制というものを我が国の安全保障上の柱として独立をスタートさせたと思います。
当然ながら、その後の国際情勢の変化の中におきまして、三十五年にこの安保の改定が行われました。この際も国論は分裂に近い大変激しい混乱がございましたが、現行憲法のもとにおける基本的な性格というものは維持をされ、今日もそれが続いておると思います。
そして、現在になりますと、私は、アメリカが考えるその要素の中には当然独立回復直後の日本に対するのとは違ったさまざまな要素が入ってきているであろうことを想像するにかたくありません。しかし、基本的な性格というものは変化をしておりませんし、先ほど幾つかアメリカの考え方の基礎になる部分を議員は列挙されましたが、その普遍的な価値というものに着目したアメリカの行動というものを私もそういう感じで見ております。殊に、ソ連がロシアに変わり、旧ソ連邦の中で新たな独立国が多数誕生じ、しかもその国々がそれぞれに社会主義から民主主義、計画経済から市場経済へという道をたどる中で、軍事的スーパーパワーとしての存在がアメリカだけになっている。そうした中で他の要素が当然入ってはいるでしょう。しかし、現行憲法のもとにおける枠組みを前提として改定が行われ、昭和三十五年以来定着をしているその基本線というものは変質しているとは私は考えておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014960X00419970415/97
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098・高野博師
○高野博師君 アメリカの対外政策についてキッシンジャーは、歴史上アメリカがバランス・オブ・パワーに参加したことはない、冷戦はバランス・オブ・パワーとは全く違った原理に従って動いていた、深いイデオロギー上の対立があったというようなことを述べております。
しかしながら、私は実際にはアメリカというのは結局はバランス・オブ・パワーの原理にのっとっているのではないかという感じを持っております。現在の主権国家の併存する国際社会の中で、依然としてパワーポリティックス、力による政治が支配的ではないか、こう思っております。
こういう思考から脱却しないと本当の世界の平和というのは望めないのではないか。同盟とか国家の安全保障といったものが意味をなさなくなるような社会をつくっていくことを目指すべきではないかと私は思っております。世界がグローバリゼーションという時代に入って、地球的規模の問題群というのはたくさん深刻化している、一方で主権国家の壁というのは低くなりつつあるという認識ができるかと思うんです。
そこで、パワーポリティックスにかわってソフトパワーへの転換が求められているのではないか。軍事力以外の、外交、政治あるいは文化、教育、こういうソフトパワーによって問題の解決を図っていくというのが時代の要請ではないかと私は思っております。
したがって、例えば平和教育とか人権教育とか環境教育とか、こういうことを積極的に推進する必要があるんだろうと思います。まさに予防外交とか、あるいは最近は予防開発というような概念もできているそうでありますが、信頼醸成措置、けさほど大臣からお話がありましたARFとか、そういう信頼醸成の機構をつくっていく、こういう点に関して日本はもっと率先してやっていくべきではないかと思いますが、総理の御見解をお伺いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014960X00419970415/98
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099・橋本龍太郎
○国務大臣(橋本龍太郎君) 今いろいろと例示を挙げられましたようなもの、これを一くくりにして予防外交と申しますなら、私は予防外交によりこれからも努力をしていくべきであるという御指摘に全く異論を申し上げるつもりはありません。
その上で、現実の世界がそれほど理想的な姿を保っているかというなら、依然として私は日本の周辺において不安定な要因が現実に存在していると考えております。そして、それは我々がいわゆる予防外交と言われるものにすべてをゆだねて国の安全が維持できると確信のできる状態ではない、私はそう思うんです。
当然ながら、これから先も我々はそうした努力は果たしてまいりますが、それでも例えば対話を呼びかけてそこに入ってこない国があるとか議論の成立しない相手があるとかという現実は、我が国だけが予防外交をかざし、その旗印のもとに行動しようとしても、それを十分に許すものではない。現実を考えますときには、そうした思いも私にはいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014960X00419970415/99
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100・高野博師
○高野博師君 その点も私も認識は同じであります。現実は非常に厳しいという中で、しかし目指すべきものはそういうことではないかというふうに考えます。
それでは、先ほどの竹島の問題について、時間がありますのでもう少し触れたいと思います。
先ほどの答弁で、竹島は事実上実効的な支配をしていないということで安保条約の適用の対象にならない、施政権下にはないということでありますが、ということは領土ではないということでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014960X00419970415/100
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101・池田行彦
○国務大臣(池田行彦君) 先ほども御答弁申し上げましたけれども、領土というものと施政下にあるかどうかということは分けて考えていただきたいと思います。
竹島あるいは北方領土が我が国固有の領土であるということは繰り返し申し上げてきているところでございます。しかしながら、先ほどの御質問は日米安保条約の適用があるかという御質問でございましたので、これは安保条約五条で、若干詳しく申しますと、「各締約国は、日本国の施政の下にある領域における、いずれか一方に対する武力攻撃」、こういったときに共同対処行動をとるわけでございます。
そういった意味で、日本の施政のもとにあるか否かという観点から見ますと、残念なことではございますが、現在事実上この地域が他国の占拠するところとなっておりまして、我々はその施政を行いたいのでございますけれども、残念ながら施政を及ぼすことができない状態にある、こういうことでございまして、固有の領土であるということは疑問のないところでございます。しかしながら、安保条約で規定しております「施政の下にある領域」を対象にするという観点から申しますと、残念ながら適用することはできない、こういうことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014960X00419970415/101
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102・高野博師
○高野博師君 安保条約の適用の対象にはならないという発言は韓国政府に誤解を与えないでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014960X00419970415/102
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103・池田行彦
○国務大臣(池田行彦君) 固有の領土であるということを申し上げております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014960X00419970415/103
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104・高野博師
○高野博師君 固有の領土といっても、施政権下にないという状態が相当長い間続くとすれば、これはもう固有の領土という主張は通用しなくなると思いますが、いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014960X00419970415/104
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105・池田行彦
○国務大臣(池田行彦君) そこの点につきましては、国際法上は争いのない状態でずっと占有されているという状態がなくては領有権がどうこうということはないわけでございまして、私どもは機会のあるごとに我が国の固有の領土であるということを韓国側に対しましても申しております。
そういうことでございますので、単に事実上の占拠状態が続いているということをもちまして国際法上我が国の固有の領土であるということが変わってくるということはない、こういうことでございます。(「外務大臣が施政権下にないということを認めることが問題なんだよ。そんなことが許されるのかね、本当に」と呼ぶ者あり)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014960X00419970415/105
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106・高野博師
○高野博師君 今の問題についてはまた再度別の機会でやりますが、やっぱり施政下にないというか占拠状態にあるということをいかにして早く排除するかというのが大事だと思うんです。その努力をこれからも続けていただきたい。一日も早く日本の政府の施政下に置くような状況にしてもらいたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014960X00419970415/106
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107・池田行彦
○国務大臣(池田行彦君) 問題なのは、先ほどから申しましたように、不幸なことながら事実上他国の占拠状態にあると申しました。だから、問題なのは、安保条約の解釈で適用されるかどうかということではなくて、むしろそういった占拠されて我が国の施政が及ばない状態だということが問題なのでございます。
それで、そういった状態を解消して我が国の固有の領土であるという状態が十分に実現するということ、そのためには我々努力をしなくちゃいけないし、努力はしているつもりでございます。ただ、この努力をいたします場合に、あくまで話し合いを通じた平和的な解決を目指していくということで粘り強く取り組んでいく、こういうことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014960X00419970415/107
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108・高野博師
○高野博師君 時間がありませんので、最後に沖縄の基地の問題について、政府と沖縄県知事あるいは沖縄県民との間の信頼関係というのが損なわれないようにしていただきたいというか、もしこの信頼関係が損なわれると、長期的に見て日米安保体制にいい影響を与えないというふうに認識しております。そのためにも、基地の国内移転あるいは沖縄振興に政府は全力で取り組んでもらいたい、そしてまた国民全体としてもこれに協力するようにお願いして、私の質問を終わります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014960X00419970415/108
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109・清水澄子
○清水澄子君 防衛庁長官にお尋ねをいたします。
駐留軍用地特措法の改正案につきましては、実は沖縄では昭和五十七年、それから昭和六十二年、それから平成四年にはもう既に米軍用地の使用について県収用委員会の適用を見ていると思うわけです。今回は四回目の審理であるわけですし、聞くところによりますと、沖縄県収用委員会の公開審理は整然と行われていて、月二回の審理が行われ、順調に進んでいると伺っております。ところが、政府は法に定められている緊急使用の申し立てを行わずに駐留軍用地特措法改正案というものを提出いたしました。
なぜ今回この特措法改正法案の提出に至ったのか。余り長く答えていただかなくていいんですが、特に私は、一般的に言われていることじゃなくて、なぜ今度それをやらなければならなかったのか、踏み切ってしまったのかということについて、この最悪の法改正に踏み切った原因をお答えいただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014960X00419970415/109
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110・久間章生
○国務大臣(久間章生君) 私どもも、今の沖縄と国との関係その他を考えますと、こういう法律をつくらないで裁決をお願いできたら一番いいというふうに思っておりました。そして、そのために早くから、二年前から、平成七年の三月三日に手続に入ったわけでございますけれども、いろんな事情がございまして非常におくれてしまいました。しかし、その後は沖縄の知事と橋本総理との関係、いろんなことで信頼関係もでき上がりまして手続に入ることができまして、粛々と来たわけでございます。
ただ、そういうふうに粛々と来ておりまして、審理が行われているときに緊急使用の申し立てをするような雰囲気でもなかったわけでございます、ことしに入りましてからも。我々は一月中に第一回をと言いましたけれども、それは二月になりましたが、二月、三月と行われてまいりまして、これでもまだ裁決が行われればそれでもいいなと思っておりました。むしろ緊急使用の申し立てをすることによって、じゃ本裁決の方をやめましょう、緊急裁決の話に入りましようと、二月、三月に取り上げてもらいまして本裁決がおくれてしまうと、二月、三月のときに仮に出ましたとしても、これから六カ月しかないわけでございますから、本裁決の方が今度はずっと後になるわけです。
そういうことを考えますと、これは本裁決をお願いしていった方がましじゃないかということで緊急使用の申し立てをしないでこれでお願いしてきたわけでございます。そして、三月の末になりまして、次の委員会がいつ開かれるかわからないという状態になりましたために、これではもうどうにもならないというところまで追い詰められたわけでございます。
ところが、その時点で緊急使用の申し立てをしましても、今までの例からいきますと、やはり一カ月半、四十五、六日かかるということになりまして、五月十四日までに緊急申し立ての許可すら、許可か不許可かわかりませんけれども、仮に許可になったとしても五月十四日までにもらうという確実性がなくなったものですから、これはもう法律改正をお願いして、国会の場で法案を提案させていただいて、それで解決してもらう以外に道はないということで今回提案させていただいたわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014960X00419970415/110
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111・清水澄子
○清水澄子君 それはあくまで政府側の言い分でありまして、法治国家というのであれば、やはり法的な手続をきちんとやった上でその次の段階ということが必要であったと思っております。
そこで、法制局長官にお尋ねいたしますが、今回の改正案の目的は、国が県収用委員会に裁決を申請している土地に対して担保を供託することで暫定使用権を得るというものであります。私が非常に理解しがたいのは、どうして担保を供託するだけで国が土地の強制使用権原を得られるのかということです。
憲法二十九条は財産権の保障であるわけですが、仮に軍事目的に高度の公共性があるという主張を認めたとしても、憲法二十九条第三項には「正当な補償の下に、これを公共のために用ひることができる。」とあるわけです。この規定に従えば、正当な補償がなされなければ使用権を得られないわけなんですが、今回の法改正では担保を供託するだけで国は、暫定という言葉がついているわけですが、これは期限がありません。ですから、その使用権が得られる。これは憲法二十九条第三項に触れる、やはり憲法に反すると私は思うわけですが、どのような御見解ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014960X00419970415/111
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112・大森政輔
○政府委員(大森政輔君) ただいまお尋ねの件につきましては、この「正当な補償」、これの額を確定するためにはあらかじめ期間が決まっていなければならない、こういうことになろうと思いますが、御案内のように、この暫定使用といいますのは本案裁決によってその使用権原を得るまでの間と、こういうことで、その担保を提供する始まりにおいては期限が決まっていないという性格のものでございます。したがいまして、その補償すべき額を確定することができないことになりますので、暫定使用に先立ちまして予想される損害の担保を提供するということによって使用を開始することを認めている制度でございます。
したがいまして、この担保といいますのは、この「正当な補償」を確保するためのあらかじめの措置という性格を持っておりまして、この担保を提供しただけで正当な補償をしているんだということではさらさらございません。法案をお読みいただきますとわかりますように、使用を開始した後にこの権利者がその担保を取得したいということになりますと、将来の正当な補償の内払いとしてその担保の取得を認めますし、また最終的には損失補償を確定することを任務とする収用委員会の裁決によってその損失補償額を確定して補償するということを予定しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014960X00419970415/112
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113・清水澄子
○清水澄子君 私は、「正当な補償」というのは、単に金銭的にその価値が支払われているという、それだけで十分ではないと思います。土地収用法というのは、単に金銭的に償いをすれば何でも収用できるというものではないはずです。だからこそ適正な手続が必要なんだと思います。ですから、その適正な手続ということで、国民の私有財産を収用する場合には、やはりその公正さを保つためにわざわざ独立性を持たせた収用委員会という制度を設けているというのが私はその証明だと思います。
その収用委員会の運営、決定、それらを形骸化させていくという、実質的な審理をする権限を行使できなくしてしまう、政府の一方的な都合だけですべてがまかり通っていくという制度、これは私はやはり憲法に言っている「正当な補償」という中身の適正な手続を実質的に奪ってしまうものではないか。そういう意味でも私は、非常にこれは憲法と深くかかわっているという危惧を捨てることができないわけです。
そこで、法制局長官にお尋ねいたしますが、国が担保を提供するだけで使用権原を得られるとした立法例がほかにあるんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014960X00419970415/113
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114・大森政輔
○政府委員(大森政輔君) 担保を提供しただけで使用権原を取得する立法例があるかということでございますが、立法例といたしましては、収用委員会の裁決によらず、しかも担保の提供も必要としていないという立法例すらございます。例えば、土地収用法百二十二条、これは非常災害に際し公共の安全を保持するために事業を特に緊急に施行する必要がある場合には、市町村長の許可を受けて直ちに他人の土地を使用することができるとしているものでございますし、また電気通信事業法七十四条二項あるいは沖縄における公用地等の暫定使用に関する法律による暫定使用、これらの立法例がございまして、これは使用後に、事後に正当な損失補償額を収用委員会が裁決をいたしまして補償しているという制度でございます。この点につきまして、いずれも憲法違反であるという非難はございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014960X00419970415/114
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115・清水澄子
○清水澄子君 今の例は火災や水害のときの緊急事態ですね。そういうのは当然あるわけです。ですから、そういうことの例しかないんだろうと思います。
特に、今回の米軍用地特措法の根拠法であります現行の土地収用法制定時に、軍の目的のためというのをわざわざ外した経緯から見ましても、やはりこの憲法第二十九条の財産権というのは公共の目的に用いることを認めてはいるわけですが、これは軍事目的のために認めているわけではないというのは、憲法そのものの構成から見てもはっきりしていると思うわけです。その点は、今回の法改正は非常に重要な内容を持っているということを私は警告をしたいと思います。
次に、防衛庁長官ですが、今回の法改正で土地収用法の準用規定はそのまままになっております。また、知事や市町村の権限は従来どおり、それから収用委員会の審理も従来どおりと、防衛庁はそういうふうに私たちに説明をしておられます。
ところが、七日の衆議院安保土地使用特別委員会の質疑において、新進党の方の質問に対して、本来国が執行責任を負うべきものと総理が答弁をされているわけですが、この答弁に従いますと、政府は現行制度を将来的に改革する必要があるという考えを示されたのではないか、そのように受けとめるわけです。防衛庁長官、今までの知事や市町村の権限は従来どおりだとか収用委員会の審理も従来どおりという説明は、そのまま私たちは正直に受けとめていいのでしょうか。今回の改正がとりあえずの改正なのかどうか、お答えください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014960X00419970415/115
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116・久間章生
○国務大臣(久間章生君) 現在提案している法律の改正によって、要するにこの法律の改正案では、今私が申し上げましたとおりでございます。
総理が言われましたのはそうじゃございませんで、これは国が執行すべきものである、これについてのいろいろ議論はある、しかしそういう問題についてはやはり地方分権推進委員会等の議論を経ながら、機関委任事務等についてどうするかとか、そういうような幅広い議論があるので、それを見た上で、そういう方向でいろいろ整理されるときに爼上に上る問題であろうと、そういうことを言われたのでありまして、この改正案によって直ちに変わるものじゃございません。この改正案を出している私どもとしましては、ただいま委員が御指摘になりましたように、収用委員会の権限その他については一切触れるものではございませんし、また今の時点で将来の改正を見越してとりあえずの改正をやっているというようなものでもございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014960X00419970415/116
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117・清水澄子
○清水澄子君 今の防衛庁長官の見解と橋本総理の見解は全く同じなんでしょうか。
実は、総理と小沢新進党党首との会談が持たれて、三項目の合意があるわけですけれども、その第三項目めの合意が、「沖縄の基地の使用に係る問題は、県民の意思を活かしながら、基地の整理・縮小・移転等を含め、国が最終的に責任を負う仕組みを誠意をもって整備するもの」であるということなんですね。
これは非常に何か意味を含んでいるんじゃないかと思いますのは、実はこの合意があった翌日でしたけれども、新進党の幹事長の方がテレビ番組で、これから国が基本方針にする原発とかそういうものが、やっぱり国が最終的に責任を負う形でそういう法律が必要なんだということをおっしゃったとき、これは現在、国会に出されている特措法を上回る内容が合意されたのではないかという非常に大きな不安をテレビから受けとめた人は私一人ではございません。
そういう意味で、ぜひ総理、この第三項目めの真意ですね、これは現在の土地収用制度の抜本的な改革を視野に入れた、将来、その土地の収用権を国に移行する、そういう改正を小沢党首と約束されたものなのかどうか、お伺いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014960X00419970415/117
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118・橋本龍太郎
○国務大臣(橋本龍太郎君) まず第一に、この合意事項の三、これは「沖縄の基地の使用に係る問題は、」から始まっておりますとおり、その他の問題、例えば原子力発電所の建設とかそうしたものを意図して書かれたものではないということは、冒頭これは申し上げなければなりません。
そして、私は昨年、楚辺の通信所の使用権原問題が議論をされましたときに国会の答弁の中で、衆参いずれでありましたかちょっと失念をいたしましたが、使用権原の問題が論議になりましたときに、本来、条約上の義務を履行するための責任というものは国が負わなければならないもの、そういう意味のお答えをいたしたことがございます。事実、私はそう思っております。
そして、そういう意味では、まさにこの駐留軍用地の使用権原の取得、これは我が国の生存、安全を確保する上で極めて重要である、また高度の公共性を有する米軍の活動の基盤にかかわるものでありますし、さらに日米安保条約上履行する責任を持つ義務に関するものでありますから、私は本来国が執行責任を負うべきものだということは昨年も申し上げてまいりました。
その上で、私は、繰り返しお答えを申し上げてきましたように、現在、政府の責任者として地方分権推進委員会に機関委任事務の問題についての作業をお願いいたしております。そして、昨年の十二月に出されました第一次勧告の中に、この問題を意図された、意識して書かれた文章がございまして、この事務については検討中とされております。ですから、私は、この地方分権推進委の御意見なども見ながら幅広く検討してまいりたい。衆議院でも同様にお答えを申し上げてまいりました。また、四月三日の新進党小沢党首との会談でも同じようなことを申し上げてきておる話であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014960X00419970415/118
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119・清水澄子
○清水澄子君 今のお考え、きょう今御答弁いただいて、現在はそのことを私は見守っておりますので、どうぞこの点の不安というものをこれ以上増幅しないようによろしくお願いいたします。
それから、防衛庁長官、今回の特措法の改正で有事法制とのかかわりが懸念をされます。政府は結果として土地を強制的に使用する権原を得るわけですけれども、自衛隊法の百三条は、有事の際に物資の収用とか土地の使用などを規定しております。ところが、この百三条は政令の制定をまだ見ていないわけですけれども、つまり発動の要件が整っていないわけです。今回の特措法改正で、また今後国がこの土地の収用権を持つ方向で法の整備が進めば、百三条の政令制定が推進されるんじゃないか、そして有事法制の整備につながっていくのではないかという心配を持ちます。
そこで、今回の特措法改正が今後の自衛隊の土地収用に、使用に及ぶことを視野に入れていないということについて、はっきりした御決意をお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014960X00419970415/119
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120・久間章生
○国務大臣(久間章生君) 今度の特措法改正は、全くそれは関係ございません。それははっきり言えると思います。
ただ、有事における法整備のあり方につきましては、これはやはり政府内でも検討すべきであるということで、従来から自衛隊に係るもの、要するに防衛庁関係の法律についてはどういうものがあるか、あるいはまた防衛庁所管でない他省庁の所管に係るものについてはどうであるか、これは政府内で検討がされておるわけでございます。あるいはまた、どこの省庁かわからないものについての検討がまたこれも必要でございます。それは、法律だけではなくて政令等についてもしなければならないことでございまして、これはいずれにしましてもこの特措法の問題と全く関係なくしなければならない。
いざというときに法律が機能しないということがあってはならないわけでございまして、法律上は政令にゆだねているのに、もしその政令がつくられないというようなことになりますと、立法府からは逆に、こういう法律をつくったのになぜ政令を定めないのかというおしかりこそあれ、そういう整備をしていない方がどちらかというと問題なわけでございます。
ただ、これから先、有事における法整備をしていくときに、委員今御指摘のような一方的な強権的なやり方でいいのかどうかとか、そういうことは慎重に議論すべきものでありますけれども、法整備をしておくということはやはり必要なことじゃないか、それは思っております。
ただ、重ねて言いますけれども、その問題と今度の特措法とは全く関係ないので、この特措法の改正がいったから、それについてもまたごしごしやるのかというような発想にもし立たれるとすれば、そういうことはございませんということを申し上げたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014960X00419970415/120
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121・清水澄子
○清水澄子君 総理、私は特措法のこの中身、それからこれまでの皆さんの審議のあり方をずっと伺っておりまして、政府が非常にいろいろ苦悩しているその側面もよく理解する部分もあるのです。しかし、ここでいろいろ説明をされているわけですけれども、今回の法改正は沖縄の米軍用地を強制的に使用していくというものであるわけでして、しかもこれは沖縄の基地を、米軍のブルドーザーで接収されたと言われている基地を今度は私たち本土、日本の法律でもって、法のブルドーザーでこれを接収していくというような非常に無理な法体系になっていると私は感じます。これは国民の基本的な権利を抑えて政府が土地の使用権を確保しようという法律ですから、沖縄県民はこの特措法に対して、これは沖縄に対する差別立法であるということ、そういう受けとめしかしておりません。それは私たち、大いに本当に考えなければならないと思うわけです。
それは、やはり私たち本土の政治家が沖縄とそこに住む人々の異議申し立てについて、それを押しつぶしているという私は実感がします。ですから、私は毎日とてもつらい思いをしているわけです。この沖縄の皆さんたちの心の叫びというものをもっと私たちは真剣に受けとめなきゃいけない。そして、私は、そう安易に国益論だからとか安保優先論でこの問題を簡単に片づけてしまうということができないでいる一人です。
それは、私が沖縄に初めて行きましたのが一九六九年で、それまではなかなかアメリカのパスポートがおりなくて行けなかったのですけれども、そして沖縄へ行って私は非常に大きな衝撃を受けました。それは、一つは沖縄戦の実態というのは余り私たちは知らなかったんです。そして、沖縄戦は結局日本の大本営が沖縄を本土決戦の捨て石とした作戦をしていた。そして、十二万人の住民自身がその犠牲になっているわけですけれども、それだけじゃなくて、私のショックは日本軍によって殺された人たちです。そういう体験というのは、本土にいた私たちの戦争体験ではそういう記憶はないわけです。
ですから、当時は軍隊というものに対しては敬けんなものを持っていたのですけれども、沖縄の皆さんたちが、軍とは何かとか、平和とは何かとか、国家を守るということはどういうことかということを非常に真剣におっしゃるときに、私はそこで初めて自分たちの非常に薄っぺらな戦争観とか沖縄の認識というものを反省させられたわけです。
〔委員長退席、理事永田良雄君着席〕
そして、その当時、私どもは正直言いまして日の丸を振るということはしていませんでした。しかし、沖縄は祖国復帰闘争の最中でしたから、みんな手に手に日の丸を持って母なる祖国への復帰ということで、私もそれを見まして、本当に本土にいたら私たちは祖国から切り離されたとか、捨てられたとか、そういう体験がないわけですから、この沖縄の皆さんたちの民族的なといいますか、その思いというものに本当に考えさせられたわけです。
そういう中で、あれほど沖縄の皆さんたちは憲法のもとへの本土復帰ということを言いました。そして、母なる祖国への復帰。その憲法のもとで復帰をした沖縄がその後どうであったかということを考えると、本当にまた憲法の中でも、沖縄に特別こういう法律を課すというのはやはり私は非常に問題があると思うわけです。そして、それは戦争だけではありません。戦後も、私たち自身がどうしても沖縄の問題というのを本当に認識することがやはり弱いんだと思います。
一九五四年に元総理大臣の芦田均大臣が沖縄の祖国復帰運動の高まりに対して何と言ったか。沖縄の土人は戦前はヤシの実を食べ、はだしで歩いていたが、今ではアメリカのおかげでいい生活をしているじゃないかと放言して、沖縄県民の怒りを買ったという記録が残っております。そしてまた、一九五五年には、沖縄の軍用地問題が国会で初めて問題になったときに、当時の鳩山一郎首相が野党の質問に答えて、沖縄はアメリカの信託統治なんということを答弁したわけです。これは信託統治では絶対ございません。でも、それほどまでに、総理大臣までが沖縄はアメリカの信託統治だと言ってしまうほど沖縄に対する国民的な関心というのは非常に薄かったと思うわけです。
そしてまた、私は、沖縄の問題にかかわるようになってからずっといろんなことを読みながら、自分たちの認識がいかに、自分たち自身も反省しなきゃいけないというのが非常に強まっているわけです。
一九五七年に岸総理とアイゼンハワー大統領との間で共同宣言が行われて、そしてそこで日本に在駐していた、現在沖縄にいる第三海兵隊が沖縄に移駐するわけですね。その共同宣言の中ではっきり、来年中には日本国内の在日米軍の兵力をすべて撤退させるという共同宣言になっております。沖縄は日本国土じゃないんですね、この時期でも。だから、日本国内の在日米軍の撤退、第三海兵師団はすべて沖縄に移駐させたんですけれども、その談話の中で、当時の津島防衛庁長官も、在日米陸軍部隊、陸上戦部隊のすべてが近く我が国から引き揚げますと。それは全部沖縄へ行ったわけです。
ですから、そういうふうに日本という範疇の中に沖縄というものをやっぱり絶えず為政者たちも忘れていた、落としていた。私たちは本当に差別をしていたんだと思います。
ですから、今振り返れば、七二年の沖縄返還のときにも、沖縄が本土復帰したという努力はあったんですけれども、やはり佐藤総理も沖縄は終わったとおっしゃったんです。そして、今私たちがこれほど悩んで、この問題を何とかしなきやいけないと思っているわけですから、当時そこで沖縄は終わったわけではなくて、むしろそれからであったわけです。
そういう意味で、橋本総理が去年の九月に沖縄問題についての総理談話を発表されたときに、私はこれまでの総理の中では本当に沖縄の問題に心を砕かれたなということを感じました。それは、沖縄県民が耐えられた苦しみと負担の大きさを思うとき、私たちの努力が十分なものであったかということについて謙虚に省みたいということをおっしゃったとき、ああ今までの総理の中で本当にその辺は沖縄の知事やら皆さんと話し合ってくださったことで、沖縄が何を主張しているかをわかっていただけた一人だと思ったわけです。そして、沖縄の痛みを国民全体で分かち合うことがいかに大切であるかを痛感しておりますとおっしゃいました。
ですから、私はここで総理に伺いたいんですけれども、沖縄の痛みを国民全体で分かち合うというのは具体的にどのようなことを指していらっしゃるのか、改めて簡潔にお聞かせください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014960X00419970415/121
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122・橋本龍太郎
○国務大臣(橋本龍太郎君) 簡潔にと言われました。簡潔にお答えをする自信はありませんが、できるだけまとめてみたいと思います。
と申しますのは、委員は六九年に沖縄に初めて行ったと言われました。私が沖縄に初めて参りましたのは、その言い方をいたしますなら一九六五年、昭和四十年であります。それ以来、さまざまな局面で私も沖縄の問題とかかわってまいりました。そして、議員が述べられましたような、我々が知らなかった沖縄戦というものをいや応なしに知ることになりました。
そして、その中で幾つかの残されておりました問題のお手伝いをしながらある程度の勉強をしたつもりでありましたが、総理になり、大田知事とお目にかかる前に大田知事の本を読みました。正直に言いますと、最初私はその内容を素直に信じませんでした。幾つかの点を私なりに調べ直してみました。そして、むしろ書かれていた以上にその背景にさまざまのものがあることも知りました。その上で知事と何回かひざを突き合わせての話ができる中で、知事さん自身の言葉としてのさまざまな思いも聞かせていただいております。その中には知事が夢として語られたアクションプログラム等もありました。
〔理事永田良雄君退席、委員長着席〕
そうしたことをも伺った上で、日米両政府は全力を尽くして、沖縄県に残る、非常な負担をかけております基地の整理、統合、縮小に努力をすべく全力を尽くす。県民からすれば不十分であることはわかっております、相当部分が県内移転なんですから。
しかし、少なくとも現状を変えていこうとSACOの最終合意をまとめました。岩国へのKC130の移転あるいは一〇四号線越えの射撃訓練の本土における五つの射撃訓練場への移転の問題、こうしたものを中に含んでおります。その受け入れにつきまして、現在も防衛庁の諸君、施設庁の諸君が苦労をいたしております。本当に、むしろ早くこれらの協力をいただくことができれば少しでも県民の抱える負担を減らすことができるでありましょう。
そして、今週いっぱいこの国会の御審議が続くようでありますから、国会のお時間をいただけるようになり次第、防衛庁長官にそれぞれの県に足を運んでくれるように私は依頼し、防衛庁長官もみずから自分でその努力をし、少しでも沖縄県の負担を減らしていこうといたしております。こうしたこともその一つであります。
また、たまたま知事とお話をしておりますうちに内航海運の問題がありまして、内航海運の関係者にそのお話をいたしました。代表者が県に赴き、船腹調整を行っておりますさなかで、沖縄の場合だけは別に彼らのルールを大きく変えて新しい船舶の建造を認めると同時に、たまたまそのとき聞いた話として、県内における水産学校等船員志望の若い方たちが就職の時期を控え就職ができずにいることを聞き、自分たちもリストラを続けている中でありながら、沖縄の若い諸君、船員志望者全員を内航海運で引き受けますということを言い切り、ちょうど昨日、その会長さんからお約束どおり全員採用しましたという手紙をいただいたばかりであります。
私は、さまざまなやり方で県民の痛みを分かち合う努力はこれからもしていかなければならないことだと、そのように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014960X00419970415/122
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123・清水澄子
○清水澄子君 外務大臣、沖縄の基地の整理、縮小と沖縄振興策の具体化についてなんですけれども、二十三年前に返還を合意したままの那覇港湾施設、これの返還が実現しない最大の理由というのは、移設を条件にされているからだと思いますが、年に数回しか使われない那覇港湾施設を移設という条件を取っ払って返還を求めるべきだと思うわけです。そして、沖縄振興策の最大の具体化というのは那覇港湾をきちんと機能させることだと思いますけれども、外務大臣、この港湾返還をアメリカ政府に求める考えはございませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014960X00419970415/123
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124・池田行彦
○国務大臣(池田行彦君) 委員御指摘のとおり、那覇港湾施設につきましては、昭和四十九年の時点で移設を条件に全面返還することに一たん決まったわけでございます。
しかしながら、なかなかその移設先の調整が進みませんで、その後平成六年にはこの問題だけを特別に扱う作業班も設置していろいろ検討いたしました。そして、平成七年にもまた合同委員会を開きまして、浦添埠頭地区への移設を条件にしてということで那覇港湾施設の全部返還が勧告されたわけでございます。
そしてさらに、昨年行われましたSACOの作業におきましても、この問題を何とか解決しようということで日米間であれこれ具体的な事情等も勘案しながら協議いたしました。そして、昨年の十二月に出ましたSACOの最終報告におきましては、その浦添への移転ということを日米双方が最大限努力していく、こういうことで那覇港湾施設の全面返還を急ごうと、こういうことで合意がなされたわけでございます。
こういった経緯がございますので、今後、移設先の浦添市を初め関係の方々の御理解と御協力を得られるようにさらに最大限の努力を傾注してまいりたい、こう考える次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014960X00419970415/124
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125・清水澄子
○清水澄子君 移設を条件にしている限り縮小、返還というのはなかなかいかないと私は思いますが、アメリカにこのことはしっかり交渉していただきたいと思います。
そこで、梶山官房長官、もう時間が少なくなってまいりましたので、沖縄の経済振興策にとって那覇港湾施設の返還は重要な課題と私は思うわけですけれども、この点についてどのようにお考えになっていらっしゃるか。そして同時に、基地の返還、縮小問題と沖縄の経済振興策についてどのような見解を持っていらっしゃるんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014960X00419970415/125
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126・梶山静六
○国務大臣(梶山静六君) 委員御案内のとおり、当地区の移設計画、移転計画というものと沖縄振興というのは大変密接な関係を持っております。
そして片や、委員今御指摘のように、那覇港の移設先の浦添もこれまた後背地にいろんな問題を振興策として考えております。
ただ、沖縄移設でない方法といいますと、那覇港の港湾施設の概要というのは、今の沖縄米軍のための貨物の積みおろし等を行っている港湾であります。利用度が頻繁であるか少ないかは別として、沖縄に米軍の存在があるとするならば、貨物の輸送というものを否定して軍が成り立つものでないという大変難しい接点にあるわけでありますから、何とかその移設を可能にして、なおかつ沖縄の振興を図るための合意を得たものであって、残念ながら地元と県の了解が一〇〇%得られない形の中での計画、そういうものが進められているのが現状でございます。埋め立てその他については相当進んでいる分野もございます。投資とかあるいは活用とかいうものに向かって、近い将来に大きな進展があることを期待しながら私はこの問題の処理に当たりたい、このように考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014960X00419970415/126
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127・清水澄子
○清水澄子君 総理、基地返還と沖縄振興策は切り離せない関係にあると思います。ですから、今回の特措法改正で、沖縄県民は基地が二〇〇〇年になってもさらに固定化するのではないかという大変な危惧を抱いているわけですが、総理は、西暦二〇一五年までに基地の全面返還を求めている沖縄の基地返還アクションプログラムについてどのように尊重されていくのか、お考えを聞かせてください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014960X00419970415/127
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128・橋本龍太郎
○国務大臣(橋本龍太郎君) 昨年の何月でありましたか、知事からアクションプログラムを御説明いただきましたときに、自分たちの夢という言葉を使って御説明をいただきました。そして、そのお気持ちを体しながらSACOの作業にも当たりましたということを先ほど申し上げた次第であります。
その上で、県内移設は嫌だとおっしゃる気持ちを私は全く理解しないのではございません。しかし、大変言葉を選ばずに申しますならば、那覇軍港であればそれが二十年そのまま未解決でも経済的な被害、心理的な被害だけでとまりますけれども、普天間の場合にはあれだけ人家が密集している中にある基地、しかもそれが外にということであったら合意ができなかったもの、そうすればこれを動かすための努力というのは私は真剣に県にも協力をいただきたいと思いますし、その議論の中で私どもなりに海上移設、撤去可能な方式をもってという案をつくりました。
それがいかぬと言われればこれはやむを得ませんけれども、その場合には現在の普天間がそのまま残ってしまうということをどうとらえたらいいんだと。一歩でも二歩でも沖縄県の抱えている危険を減らしたい、そして少しでも安心していただける状態をつくりたい、私は本気でそう思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014960X00419970415/128
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129・清水澄子
○清水澄子君 総理、沖縄振興策に関する与党合意がございますけれども、これについては、政府はこの合意を尊重して今後政策を推進されていく御決意がございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014960X00419970415/129
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130・橋本龍太郎
○国務大臣(橋本龍太郎君) これは既に委員よく御承知のように、内閣官房長官、関係各閣僚とともに沖縄県知事に対等の構成メンバーとして参加をしていただいている沖縄政策協議会を設置して、今日まで振興策について具体的に論を交わしていただいてまいりました。そして、例えばアクションプログラムにいたしましても、知事御自身が構成員の立場でここにも御披露になっておられます。
また、昨年の十一月、いわゆる島田懇、沖縄米軍基地所在市町村に関する懇談会、官房長官の大変な努力で地元の方々も代表で何人か加わられた作業の中から提言をちょうだいいたしました。そして、内閣として既にその実現のために引き続き最大限の努力をしてまいりたいということを申し上げ、閣議でも、閣僚懇の席上、私から関係閣僚に指示をいたしております。
そして現在、県は、例えば規制緩和の問題について県自身の委員会をおつくりになっておられます。これがまとまりますならば、沖縄政策協議会のメンバーとしての知事さんから提言もなされるでありましょう。
御指摘の合意というものは、こうした政府の取り組みを踏まえて、幅の広い観点から振興策について努力していくことを合意されたものと私どもは考えております。そして、今後ともに沖縄振興策に内閣は全力を挙げて取り組んでまいりたい、そのように思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014960X00419970415/130
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131・清水澄子
○清水澄子君 池田外務大臣、沖縄の基地問題は今回の特措法改正では全然解決しないと私は思っております。過重な基地負担を沖縄からどうしたら減らせるかということを絶えずやはり政策として考えていかなきゃならないと思うわけです。
そこで、沖縄から強く要望が出されています海兵隊の撤退問題でございますけれども、政府は、沖縄の、特に第三海兵隊なんですが、その駐留目的をどのように認識しておられますか。簡単に言ってください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014960X00419970415/131
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132・池田行彦
○国務大臣(池田行彦君) 沖縄にございます海兵隊も含めまして、駐留米軍は、日米安保条約上の米国の責務、それを果たしていくために駐在しております。すなわち、我が国の安全を守るということ、そしてまた極東地域の平和と安定を確保していく、そういった役割を果たす中核的な存在として駐留米軍は存在するわけでございまして、その中で海兵隊はそれの持つ機動性あるいは即応力というもの、そういった特徴を生かしまして在日米軍の重要な一翼を担っているものと認識しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014960X00419970415/132
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133・清水澄子
○清水澄子君 もう時間がありませんので、最後に総理に質問いたします。
沖縄の海兵隊は、日米安保条約の基軸である日本の防衛と極東の安全というその目的とは直接関係のない目的を持っていると思うんです。
特に一九八二年のアメリカの上院で、沖縄海兵隊の役割についてというのでワインバーガー国防長官が非常に重要な発言を行っております。それは、沖縄の海兵隊は日本の防衛任務には当てられていないと、そうではなくて第七艦隊の即戦海兵隊をなして、西太平洋、インド洋のいかなる場所にも配備されるものであって、将来はペルシャ湾の緊急配備軍もあり得るのだということをアメリカの上院歳出委員会の公聴会で発言をしておられます。そして、それは言うまでもなく、昨年の日米共同宣言によりましても安保の範囲というのは非常に拡大をされているわけですけれども、そうしますと、この第三海兵隊の駐留目的というのと出動地域とかが全然異なっているわけです。
そういう意味で私は、今日、日本というのはアジアの中で、やはり平和というのはまず近隣から信頼されることが一番大事だと思うんですね。どんなに巨大な米軍がいてくれても、近隣諸国から不信を買っているような状況では私は平和も安全もあり得ないと思うんです。
総理は今度アメリカに行かれてクリントン米大統領と会談されるというんですけれども、これは今回出さないとおっしゃるんですけれども、この問題についてもはっきり、今後やはり米軍の、これは兵力構成というよりは、第三海兵隊については任務が違うわけですから、これの撤退についてぜひ私は御協議をいただきたい、その議題にしていただきたいということを強く要望したいと思います。
最後に一言だけお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014960X00419970415/133
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134・橋本龍太郎
○国務大臣(橋本龍太郎君) 本日も何回かお答えを申し上げましたが、私は現時点において、海兵隊の撤退を含む、アジア太平洋地域における、また在日米軍の兵力構成を、またその縮小といったものを議論するべきではないと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014960X00419970415/134
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135・前川忠夫
○前川忠夫君 民主党の前川でございます。
既に衆議院の段階の議論、それから参議院も昨日から議論をしておりますので、大分さまざまな問題が論議の爼上にのっておりますので、私もできるだけ重複をしないように総理とそれぞれの担当の皆さん方にお伺いをしたいと思います。
たまたまことしは復帰二十五周年という節目の年にさまざまな沖縄の問題が爼上に上がって今こうして議論をしているわけですが、私はきょうは振興策と基地の問題という関係でいろいろとお尋ねをしたいと思うんです。
総理も第一次振興計画あるいは第二次、第三次とさまざまな計画を遂行してきたと。私もいろんな数字を見ておりまして、特に社会資本、インフラという点ではかなり改善をされたという点は数字を見て承知をいたしておりますが、しかし依然としてまだ格差があるということがよく言われるわけです。
このことは一体どういうことなんだろうかというふうに私は私なりに考えました。その一つの理由として、戦後の二十七年間、実はこの二十七年間というのは昭和四十七年、一九七二年まででありますが、日本が敗戦から立ち直って高度成長のまさにピークに近い状態になったときということでありまして、その間沖縄は、そのらち外と言うとしかられるんですが、アメリカの施政権下にあった。高度成長という日本全体の大きな波に乗りおくれてしまったというハンディが私はあるんじゃないかというふうに一つは思います。
そこで四十七年に復帰した。ところが、経済はもう既に転換期に入っているというようなこともありまして、沖縄経済自身が立ち直るきっかけをそこに見出すことができなかったということが一つ私はあるんじゃないかというふうに思います。
そういう意味では、私は二つの問題で政府の責任というのは当然問われるだろう。一つは、当然敗戦という事実があるわけですから、二十七年間のアメリカの施政権下ということについてはこれはやむを得ないという言い方があると同時に、やはり日本の責任、日本の政府の責任あるいは日本の国の責任ということが一つは言えるだろう。それからもう一つは、その後の基地の問題、何度も議論をされていますように、七五%もの基地が沖縄に集中をしている、そのことが沖縄の経済の発展のやはり妨げになってきたんじゃないかという感じを私は持つんです。この私自身の見方について、総理の所見がありましたらお聞かせをいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014960X00419970415/135
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136・橋本龍太郎
○国務大臣(橋本龍太郎君) 私は、基本的に議員の述べられた認識を否定するものではありません。その上でなお多少つけ加えますならば、県全体が離島である、そのために人であれ物であれ輸送というコストが他の都道府県に比べてどうしても割高なものになる、これもやはり大きなハンディの一つになっているだろうと私は思います。
しかし、それを超えて先ほど議員が述べられましたような認識を共有いたしますし、その中で、第一次振計から現在進行中の第三次振計までを含めまして、投資は一生懸命に努力をしてきたけれども、継続的な雇用の場を提供する、言いかえれば産業を育てるという点に手抜かりのあった部分もあるいは追加すべきかもしれません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014960X00419970415/136
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137・前川忠夫
○前川忠夫君 今申し上げましたように、あるいは総理もたびたびお答えいただいていますように、三次にわたる振興計画が、社会資本という、つまり国がかかわれる部分についてはある程度カバーすることができたという点は沖縄の人たちも率直に認めていると思うんです。
そこで、問題なのは、経済とかあるいは産業という分野なんです。これはなかなか国がかかわろうと思ってもかかわりにくい部分があります。この部分について実は一番望んでいるのは沖縄の人たちだと思うんです。
今でも沖縄の経済全体を見てみますと、公共投資が占めるウエートというのは非常に高い。それから、復帰当時に比べますと確かに減っているとはいうものの、いわゆる基地関係の収入といいますか、これも復帰当時は一五%程度だったようですが今は五%ぐらい。もちろん五%という数字も、例えば直接的な基地の賃貸料ですとかあるいは軍人軍属の方の消費だとか、あるいは基地で働いている方々の収入だとか、そういう直接的な部分ですから、それ以外の部分を含めるともう少しこの数字が大きくなるような気がするんですけれども、いずれにしても公共投資とか基地関係の収入、こういうものだけが何か大きく取り上げられて、産業全体の基盤が非常に弱い。このことがある意味では沖縄の人たちのいらいらにつながっているんじゃないか、私は率直にそう思うんです。
その場合に、既に衆議院の段階からいろんな議論を聞いておりまして、総理は日本の国を預かる立場から安全保障の問題について非常に重きを置かざるを得ないという立場であります。沖縄の大田知事は沖縄県という県民の生活を預かる立場から、やはりできれば経済の自立を考えたいと。
こういう立場から考えますと、片や基地をしっかりと提供しなければならないという義務もあればあるいはそれなりの意義もある、片や基地が存在をすることによって、経済やあるいは産業の発展のための弊害になっているという認識が沖縄県あるいは沖縄の大田知事にはあるんじゃないか。もちろん、そのことについては、総理もおっしゃっているように、議論の過程の中でさまざまな論議をされたと私は思うんです。
その場合に、私はぜひお願いをしておきたいんですが、例えば沖縄にいずれは自立をしていただきたい、そういう手だてをとるのは当然なんですが、それまでの間沖縄に対するさまざまな振興策をとるのは、ある意味では私は当たり前だと思うんです。ところが、本土の方といいますか、今なぜ沖縄にだけという声が実はあるんです。例えば、ついせんだって航空運賃が租特の関係で引き下げられました。うちの方も何とかしてくれよという声が出てくるんですね。
こういう問題について、やはりここは総理自身の問題意識と、あるいは現在沖縄が置かれている現状を含めて、できればしっかりとした指導性を発揮していただきたい、こんな感じを私は持つんですが、いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014960X00419970415/137
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138・橋本龍太郎
○国務大臣(橋本龍太郎君) 今、たまたま航空運賃を例にとられましたが、事実、これは引き下げることができました。そして、他の地域からなぜ沖縄だけという声を受けておりますけれども、沖縄だけ下げたからこそこれは意味があるのでありまして、みんな同じように下げたら、実はまた格差は開いちゃうわけです。
そして、先ほど清水委員にお答えを申し上げる中で、私は内航海運の例をとりましたが、内航海運の諸君が、彼らの業態の中で沖縄県の置かれている特別な立場、特殊性、一つは離島航路ということにも着目をし、彼ら自身のルールを既に沖縄については変えております。そしてしかも、新たな雇用という意味で、本当に私は彼らが約束を守ってくれたことを非常に喜んでおりますけれども、就職の決まっておらなかった県の若い船員学校の諸君、水産学校の諸君全員を採用する。まあ確かにこれも特例です。
そして、今知事さんと御相談をしている中に、例えば大学の海外留学、あるいは高等学校の生徒さんたちの海外における留学といいましょうかホームステイといいましょうか、沖縄県のみを対象にしたものは既に動き始めておりますし、現に調査研究の対象としてチェックをいたしておるものの中にもそうしたものは多々ございます。
問題は、そういうもの一つ認めましたときに、何で沖縄だけとか、沖縄にこれをやったのなら私のところにもこれをやってほしいという声をどこまで我々が抑えられるか。これには国会にもぜひ御協力をいただかなければならないことでありまして、我々は、沖縄県に抱えていただいている重みに報いるだけの努力をしていく責任は政府にある、また国会にもそのサポートをお願いしたい、そのように思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014960X00419970415/138
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139・前川忠夫
○前川忠夫君 そこで、沖縄開発庁長官にお尋ねをしたいと思いますが、先ごろ第三次振計の後期展望、審議会の方から報告がございました。さきの沖縄北方問題の特別委員会の中でも若干の議論をさせていただきましたが、私はこの内容をずっと見ておりまして少し抽象的過ぎるという感じがするんですね。もちろん沖縄にはさまざまな問題はありますから、いろんな問題を取り上げなければならないという意義は頭から否定をするつもりはないんですが、余りにも総花的過ぎないかという感じが実は率直に言ってするんですね。
それが平成四年にスタートをしたときに、審議会の報告なり、あるいは計画をそのままきちっとトレースをする形で後期展望を出したものだから、全部をチェックしたから、後期展望の方も全部のことを書かなければならなくなってしまった。つまり、せっかく折り返し点でチェックをしながら、手がつかなかったから何をこれから重点にやります、あるいは新しくこの問題が出たからこの問題をつけ加えてやりますという点が余り浮かび上がってきていないんですね。その点は後ほど開発庁の方から御感想がありましたらぜひひとつお聞かせをいただきたい。
この中に、沖縄県が出しております国際都市形成構想との関連については、これの具体化について明らかになった時点でそれぞれ支援をしていくということがうたわれております。これは大変積極的な姿勢として私は評価をしたいんです。
問題は、国としてのかかわり方の部分と、それから沖縄県としてやりたい、あるいはやっていきたいという部分との整合性を開発庁としてはどんなようなスタンスでやられようとしているのか、その点について御感想をお聞きしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014960X00419970415/139
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140・稲垣実男
○国務大臣(稲垣実男君) お答え申し上げます。
確かに、三次振計の前期とこれから折り返し地点の後期展望を見るというところで、事業というものは継続性がございますから、急に突発的に何をやるというわけにはいかないわけでございます。
しかし、今日我々がどのようにとらえておるかというのは、これまた政治改革その他経済の構造改造とかもろもろの問題が出てきております。社会経済そのものが大変革期にあるわけでありますので、当然沖縄に対する影響というものもこれまたあるわけでございます。
そこで、後期展望の中ではできるだけ視点をグローバルに見ていこう、こういう視点で見ていくということと、それからやはり高度情報化時代に備えて、また少子・高齢化時代でもあると。こういう問題になってくると、従来の視点から少し新しい展望を見た方向に行かなければ、例えば自立経済といいましても、言葉はいろいろあります。
率直に言って、本当に何かの事業をやろう、例えば農業にしても畜産にしても商業問題にしましても、例えば建物を建てましても、そこに入って利用して家賃が稼げる形でない限りは建物は建たないわけでありまして、農業でもやはり地域の特性というものがあるわけですから、そういう地域の特性を生かした形でなければ、例えば冬春季でありますと、本土の各府県では寒い地域でありますからなかなか野菜もできない。やはり気候が温暖な地域でありますから、そういうものをつくればどんどん売れるだろう、花卉も年がら年じゅう好きなものがどんどんできるだろう。こういう特性を生かしながら、そこに農家の人たちが自分でお金をかけても十分採算が合うということになって初めて自立経済というものが成り立つわけであります。
そういうことをやるにしましても、国で考えているものと沖縄県の考えでいるところに整合性というものがなくちゃいかぬ。そこに私は開発庁の役割があろうかと思うわけでございまして、そういう点においてこれから鋭意努力していきたいというのがこの三次振計の、つまり後期展望のゆえんとするところではないかと思うわけでございます。
以上であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014960X00419970415/140
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141・前川忠夫
○前川忠夫君 実は今申し上げました沖縄県のこの国際都市形成構想というのは、その前提として例のアクションプログラムというものがある意味ではセットの関係に私はあると思うんです。実は沖縄県自身もすべての基地をあした返してくれと言っているわけじゃない。これはそんなことができるわけないわけですね。ある程度段階的に返していく。
先ほど総理は、知事から沖縄県の夢ですというようなお話があったということを言われましたが、確かにこの種の構想を立て、あるいはこういうプログラムをつくっていくという場合に、その実現のためにはさまざまな弊害あるいは障害がある、これは私は当然のことだと思うんです。ただ、今沖縄の人たちが求めているこういうこれからの沖縄の将来のあり方、あるべき姿、あるいは二十一世紀に向けて、そのことと、今現在、きょうここで議論をしておりますように、特措法の改正ですとかあるいは沖縄の海兵隊の問題だとか、あるいは具体的には基地の問題まで踏み込んで考えますと、なかなか現実の問題とはかなりと言っていいくらいの大きなギャップがあるわけです。
そこに、今沖縄の人たちの気持ちというのは、やっぱりだめなのかというような、挫折感とは言いませんけれども、そんな思いが実は政府あるいは私どもに向けられているんじゃないか、そんな感じがするんです。もちろんこれは計画でありあるいは構想かもしれませんけれども、少なくともそれらにこたえるような姿勢というものが私は必要なんではないだろうかというような気が実はするわけです。
沖縄自身が、公共投資やあるいは政府のさまざまな支援だけで沖縄県を発展させていくというんではなくて、みずからの力で発展をしていきたい、そういう気持ちを大事にするためにも、私は、片方にある難しい問題、つまり基地の問題あるいは米軍の兵力の問題等についても機会をとらえてやっていただきたい。そのことと相まって初めて沖縄の自立という問題についての一歩が踏み出せるんじゃないか、私は実はそんな感じを持っております。
この問題について、開発庁長官でも結構ですし、できれば総理の方から御感想がありましたらお答えをいただいて、あと具体的な開発計画の細部の問題についてお伺いをしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014960X00419970415/141
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142・稲垣実男
○国務大臣(稲垣実男君) ただいまお話がありましたとおり、特に沖縄の特性として南の拠点である、これをひとつ十分生かしてということになると、沖縄県が提唱しておられる国際都市形成構想並びに地域一帯をできるだけ自由貿易地域にしていきたいと。現在あるのでは小さいからもっと大きく、またその処方としては、開発庁といたしましても四千二百万円でどのようなものができるかという調査費を組んで今やっておるわけであります。その中に、いろいろ調べてまいりますと、税制上の問題を考えていかにやならぬ、あるいは来る人たちの受け皿のことも考えていかにやならぬ、もろもろの問題があるわけでございますが、そういった問題を取り上げて真剣にやっていかにやなりません。
しかし、沖縄県自身も検討委員会その他をつくっておられるわけでありますから、そのお知恵もかりにゃいかぬ、それとどう整合していくかということが非常に大切であります。また、本庁内におきましても協議会をつくっておりますので、しかも政策協議会では十のプロジェクトチームを組んでおりますので、県の知恵だけじゃなくて国の方からも積極的な意思を持ってひとつもろもろの知恵を出していこうということで、プロジェクトチームに入ってただいまやっておる最中でございます。これの答えが出てまいりますと、なるほど国の方は、県の考え方だけじゃないぞ、国の方もしっかり踏まえてやっているぞと、こういうことになろうかと思うわけでございますので、鋭意これから検討を進めてまいる覚悟であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014960X00419970415/142
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143・前川忠夫
○前川忠夫君 既にこれまでも開発計画等についての議論がございましたが、政府自身が直接かかわっている内容としては沖縄政策協議会というのがある。それから、官房長官が主宰をしました基地所在市町村に関する懇談会、いわゆる島田懇、それから開発庁が今担当しておられます開発計画、さらには沖縄の方の開発審議会、さまざまな計画がたくさんあるわけですね。あるいは起案、立案をするところはたくさんあるわけですね。問題は、それをどう具体化していくかということが私は一番大きな課題なんだろうというふうに思います。
そこで、私もこの島田懇の方の報告書、さっと目を通させていただきました。特にこの中で私もなるほどというふうに思いましたのは「基地所在市町村振興のための特別プロジェクト」ということで、その中で幾つかの項目が挙げてありますが、「市町村の経済を活性化し、閉塞感を緩和し、なかんずく、若い世代に夢を与えられるもの。」とか、あるいは「継続的な雇用機会を創出し、経済の自立につながるもの。」とか、あるいは「長期的な活性化につなげられる「人づくり」」、こういったことがこの報告の中、特にプロジェクトとして提起をされているわけです。報告に際して島田座長の方からも、私的な見解ということだったんだと思いますが、このためにかかる経費についておおむね数百億から一千億程度じゃないかというような発言があったやにお聞きをいたしています。
またさらに、今沖縄政策協議会の中でもさまざまな議論がされていますけれども、もしこれだけのお金がかかるとしますと、これはこれまでも議論がいろいろとされておりましたが、政府全体の財政再建との関係というのはまた非常に大きな焦点になってまいります。ぜひこの辺についての見解、決意をまず最初にひとつお聞きをしておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014960X00419970415/143
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144・橋本龍太郎
○国務大臣(橋本龍太郎君) ちょうど島田懇からその提言をいただきましたとき、私から、この報告を受けた閣僚懇談会で、関係各大臣も提言を重く受けとめるとともに、実現のため最大限の努力をしていただきたいという指示をいたしました。
そして、それを受けた形で十二月四日、沖縄に参りましたとき、この基地所在の市町村長さん方との懇談会の席上、今後五年から七年間に数百億から一千億円の事業費を要するとの懇談会の島田座長が言われましたことを閣議においてしっかり受けとめてまいります、そのような言い方で地元に対する意思を表明してまいりました。
そして、私は、今いろんなものができちゃっていると言われましたが、これを全部まとめますのは沖縄政策協議会だと思います。なぜなら、これは官房長官初め関係閣僚と沖縄県知事が対等の立場で委員として構成する協議会でありまして、全体をカバーしていくわけでございます。そして、開発庁長官はその中での議論を受けまして個別に今非常に苦労をしてもらっておりますが、その意味では私は、その組織的な重複のために全体の計画が狂うあるいは混乱を生ずる、そういったおそれはない、そのように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014960X00419970415/144
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145・前川忠夫
○前川忠夫君 そこで、私もこのプロジェクトの進捗状況というのは実は大変気になっているんですが、担当は内閣内政審議室だと思いますが、現在の進捗状況がどうなっているのか。もちろんこれはかなり広範囲にわたっていますので、個別テーマごとにまとまるのはそれぞれ違いが出るかと思いますけれども、あらかじめある程度のめどといいますか目安というものが当然あるんだろうと思いますので、もしそんなものがありましたらお聞かせをいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014960X00419970415/145
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146・及川耕造
○政府委員(及川耕造君) お答えを申し上げます。
政策協議会、十のプロジェクトチームで御案内の各プロジェクトについて検討いたしているところでございます。取り扱っておりますテーマは大変広範にわたっておりまして、例えば普天間の跡地利用といったような大変長期な課題もございますし、また他方、先ほども御議論ございました航空運賃の引き下げでございますとか留学生の派遣といった、もう既に事業化に進んだ、ある意味では解決をいたしましたものもございまして、大変さまざまでございます。
したがいまして、一概にいつまでにという結論を出せるか申し上げがたいところでございますけれども、現在、大方のテーマにつきましては調整費を活用いたしまして調査に入っている段階でございますので、それが大体終了すれば大筋のめどは立つかなと、かように考えているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014960X00419970415/146
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147・前川忠夫
○前川忠夫君 ということは、それぞれのプロジェクトが全部まとまらなければとか、あるいは一つのプロジェクトの内容が全部合意をしなければスタートをしないというのではなくて、ある程度まとまったものは順次実現をしていくあるいは予算化をしていく、こういう理解でよろしいですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014960X00419970415/147
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148・及川耕造
○政府委員(及川耕造君) さようでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014960X00419970415/148
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149・前川忠夫
○前川忠夫君 そこで、これまでもこのプロジェクトの中でも議論があったんだろうと思いますが、これまで衆議院の段階でもいろんな議論がございました。例えば、一国二制度あるいは二制度的なというような表現があったり、あるいは自由貿易地域の拡充、いわゆるフリーゾーンの問題ですとか、あるいはノービザ制度の問題とか、さまざまな議論が交わされてまいりました。
これらについて、きょうここで細かく質問をする時間がございませんので、私の印象として申し上げますが、沖縄振興で一番大きいのは、先ほど総理もちょっと触れられましたが、足の問題をどうするかということだと思うんですね。地理的な条件、これはもう仕方がないわけです、本土から離れているというこの事実。
私は、せんだっての沖縄北方問題特別委員会のときに申し上げたんですが、これを逆手にとる、つまり日本の本土から離れて逆に東南アジアの方に近いんですから、これを逆手にとるような発想の転換で新しい経済や産業の育成を考えたらどうなんだろうという提起を実はいたしました。
そのためには、沖縄県の空港あるいは港湾等々が今のままでいいんだろうかというふうに考えてみますと、例えば那覇空港、これは米軍との関係でいわゆる管制区域の問題等に非常に難しい問題があることは私も承知をしていますが、那覇空港のハブ空港化の問題についてどんなような構想があるのか。先ほどコストの問題については、航空運賃の引き下げの問題についてお話がございました。貨物については一体どうなっているんだろうか。あるいは那覇と本土との間は引き下げがあったけれども、ほかの離島との関係はどうなんだろうといったような関係で、足の問題が非常に大きな問題だと私は思います。
と同時に、これは総理も何度も沖縄に行っておられて御存じだと思いますが、あの那覇市内の交通の混雑というのは大変なものでありまして、非常に狭いところに人口が密集しているんだからしょうがないんだといって割り切ってしまえばそれまでなんですけれども、例えばあそこで何か商売を始めましようといった場合に、離島的な発想でのんびり商売ができればいいんですが、日本人というのはなかなかそうはいかないわけですね、せっかちなものですから。どうしても動くということになりますと、交通事情というようなものが場合によってはブレーキになるかもしれない。
私は何でもかんでも開発しようと言うんじゃないんです。自然環境とのバランスというのは非常に大事なんですけれども、そういう意味でこれからの運輸政策、これは沖縄本島はもちろん、島嶼部を含めた交通機関、こういった問題についてどんな手だてをこれから考えておられるのか、ぜひお聞かせをいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014960X00419970415/149
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150・稲垣実男
○国務大臣(稲垣実男君) 今、委員からお話のありましたとおり、空港というのが人を運ぶ手段として、ああいう島嶼地域にある沖縄としては当然のことでございまして、空港とか港湾の整備が非常に大切でございます。
ちなみに申し上げますと、那覇空港は国が設置、管理いたします三千メートルの滑走空港でございますので、現在、本土路線や島内路線、国際路線のネットワークにより年間約八百七十万人の利用客がございます。当空港におきまして、当面まずターミナル地域の統合とか拡充整備が重要な課題でもありますので、平成十一年春の供用開始を目途としてただいま整備を進めておるところでございます。
それからまた、そこを拠点にいたしまして、離島県でもございますので、港湾とかあるいは空港という問題では足の確保が非常に大切であります。本土から距離も非常に遠い、また県民の生活と産業の振興のためには、ただいまおっしゃったように、貨物の輸送というようなことをいいますと陸と海との問題ということになるわけでありますので、現在、港湾については重要港湾六港を初めとして四十九の港湾があります。空港については、那覇空港と宮古、石垣を初めとして主要な島に配置されている空港が十三ございます。海上、航空輸送需要について非常に活発な状況にありますし、また所得水準の向上などによりましてさらに増大する傾向にございますので、積極的にこれを進めてまいりたいと思います。
ただいま委員が言われましたように、運賃の低減というものが非常に大きなインパクトを有するのでございまして、今回は本土-那覇路線の航空運賃が主体でございますが、さらに一層検討を進めてまいりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014960X00419970415/150
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151・前川忠夫
○前川忠夫君 そこで、格差問題というのは本土と沖縄だけではなくて沖縄の中にもあるんですね。これは本島と離島との関係ですとか、あるいは北部と中南部といいましょうか、それからさらには南シナ海側と太平洋側といいますか、さまざまな格差が実はあります。
特に、先ほど総理と他の委員の方とのやりとりをお聞きしておりまして、例えば基地の県内移転の問題一つとりましても、例えば北部の方に米軍の訓練地域もあります。しかし、あの辺は貴重な動植物がたくさん存在をするということで、勝手にどんどん開発をするというわけにはいかないわけですね。そうしますと、あの自然は残しておかなければならない。しかも、中南部の方に人口が非常に集中をしていますから、例えば基地の県内移転といってもなかなか制約がある。例えば働く場所についても同じことが言えるんですね。じゃ、北部の方に企業の進出を、誘致をといってもこれはなかなかそう簡単ではないと私も思います。
それから、よく議論になりますのは、沖縄の場合には水の問題とか赤土問題ですね。私もある電気関係の方とお話をしておりましたら、電気製品、特に最近の半導体関係の品物というのは小さいものですから、輸送コストといったってそう大きな負担にはならないわけです。沖縄で工場をという構想もないでもなかった。しかし、御案内のように半導体の工場というのは猛烈に水をたくさん使うんですね。しかも、いい水でなければならないという条件がくっついておるんです。
そう考えてまいりますと、これから先、沖縄というあの条件の中で、なおかつ中南部だけではなしに、働く場所をどうやって広げていくのか、拡大をしていくのかということになりますと、これは私は大変大きな問題だろうと思うんです。現に先ほど申し上げましたこの三振計の中でも、当初の計画に対して就業人口はむしろマイナスになっているんですね。それから、県民所得も当初の見積もりに対しますと大幅に、本土全体もそうなんですけれども、それに比較をしても沖縄の伸びは非常に低い。働く場所そして所得があって初めて生活の安定ということが言えるわけですね。結局、その反作用として基地があるからだということになるわけです。
ですから、もし基地がすぐ全部なくなるということが困難だとするならば、そのかわりというと変ですけれども、あらゆる努力を払って、例えば働く場所をどうするのか、あるいは沖縄本島の中にもある格差や離島との間の格差の問題をどうやって解決をしていくのか、一つ一つ具体的な手だてというものを示してやることが沖縄の人たちの心にこたえることにもなるんじゃないか、私はそんな気がしますが、いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014960X00419970415/151
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152・稲垣実男
○国務大臣(稲垣実男君) 今、委員から申されたように、沖縄の中でのまた格差があるではないかと。そのとおりだと思いますが、そこで御指摘のように、第三次沖縄振興開発計画におきましても地域間の格差是正に配慮することになっております。
例えば、圏域別の開発の方向として各圏域の均衡ある発展に十分配慮をすることになっておりますし、また本島と離島との間の問題もございますので、離島の振興についても、離島の持つ不利性の克服を図って県土全体の均衡ある発展に努めてまいりたいと思う次第です。
このために、三次にわたります沖縄振興開発におきましても、いわゆる交通通信体系やあるいは生活環境施設の整備、水等もそうでございますが、そういうこと等をあわせながら、産業の振興や各般の事業の施策を推進してまいりたいと思います。
例えば、北部圏は非常に豊かな自然環境を有しているものの、中南部に比べてまいりますと人口だとかあるいは諸機能の集積に相当な立ちおくれがありますので、人口の減少の続いておる地域がございます。そしてまた離島も、本島に比べますと生活水準も低いし、また生産機能の面からも製造業というのはなかなか難しいわけでございます。過疎化の進行も見られておるわけでございますので、三月の沖縄振興開発審議会で取りまとめられた三次振計後期展望におきましても、離島あるいは圏域の振興について、県内格差や地域間格差の是正に引き続き十分配慮していくべきだと、こういうことの指摘等もございますので、離島の振興を図りながら全地域の均衡ある発展を今後とも進めてまいりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014960X00419970415/152
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153・前川忠夫
○前川忠夫君 格差格差といいましても、そう簡単に格差が縮まるほど生易しいものではないということを百も承知をしながらこういう議論をしなければならないという点について、私自身も実はジレンマがないわけではありません。しかし、黙っていてはこの格差の問題というのは解消しませんので。
ある新聞社が調査をしましたら、整理統合対象の行政官庁の中で、北海道開発庁、沖縄開発庁、国土庁が真っ先に挙がっていると。もちろん開発庁の皆さん方が仕事をしていないという意味じゃなくて、さまざまな仕事の重複部分で統合した方がいいという意見だったんだろうというふうに、首長さん方のアンケートについては思いたいと思います。と同時に、それなりの役割を果たしているという事実を、やはり結果を含めて出していただけるように御努力をいただきたいと思います。
そこで、話題が変わりますが、もう一つの特措法についてお尋ねをしたいと思います。それは、軍転特措法と言われている駐留軍用地の返還に伴う特別措置法の問題についてであります。御承知のように、これは一昨年の五月に国会を通過いたしまして、六月にたしか施行されたというふうに承知をしています。
法施行後に、この特別措置法の対象になった返還の跡地が何件あって、現状はどうなっているのか、お聞かせをいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014960X00419970415/153
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154・諸冨増夫
○政府委員(諸冨増夫君) お答えいたします。
ただいまのは、沖縄県における駐留軍用地の返還に伴う特別措置に関する法律でございまして、平成七年の六月二十日に施行されておりまして、私どもこの施行を受けまして、平成七年度に返還されたいわゆる旧恩納通信所ほか三施設にかかわる第一回目の返還給付金というのを本年の三月に初めて支給したところでございます。
現在、件数としては、平成八年度、旧恩納通信所ほか三件ということで、キャンプ瑞慶覧、嘉手納、キャンプ・マクトリアス、計四施設でございます。支給対象者は五十二名でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014960X00419970415/154
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155・前川忠夫
○前川忠夫君 跡地の計画というのは私は非常に時間がかかるんじゃないかと思うんです。
参考までにちょっとお聞きをしたいんですが、あれは読み方は正式にどういうんでしょうか、アメクというんでしょうか。今、那覇の新都心の計画がたしか進んでいると思いますが、あれが返還の合意がされたのがいつで、具体的に返還されたのがいつで、それで今現在の進捗状況はどうなっているのか。できれば、民有地があの中にどのくらいあるのか。これは事前に言っていなかったかもしれませんので、わからなければ結構ですが、お知らせいただければと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014960X00419970415/155
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156・諸冨増夫
○政府委員(諸冨増夫君) 先生御指摘の天久住宅地区と上之屋住宅地区の二カ所だと思われますが、具体的には、この地域は昭和四十八年の第十四回日米安全保障協議委員会において返還計画が了承されておりまして、昭和五十二年四月三十日に二十二・九ヘクタールの返還がまず行われております。引き続きまして、昭和四十九年の第十五回日米安保協におきまして、昭和六十二年五月三十一日に約百六十七ヘクタールがそれぞれ返還されておるところでございます。それで、それぞれの返還面積は合計で百八十九・五ヘクタールでございます。
民有地等についてはちょっと手元に資料がございません。返還の総面積でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014960X00419970415/156
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157・前川忠夫
○前川忠夫君 というように、今住宅地の返還でかなり大きな面積が、本当に那覇市の近くです、返ってきて、私もよくあそこを通るものですから何ができるんだろうと楽しみにしているんですが、相変わらずいつ行っても更地のままになっていますのでね。
というのは、軍転特措法の中で、基地の返還以降三年以内については給付金を支給するという仕組みに実はなっているんですね。三年というのは余りにも短い。もちろん、計画がすぐに立って実行できるような小さいところだったらいいですよ。今お聞きをしたように、百八十九ヘクタールからの面積になりますと、これは跡地をどうしようかなんという話になったら、かなりの時間がかかるわけです。現に、天久の場合にでも、遅い方の部分でも昭和六十二年です。昭和六十二年からですから、もう十年以上たっているわけです。
これは実際には制度が発足する以前の話ですけれども、もし仮に民有地があったとして、今もしそこに地主さんがいたらどうするんだろうかと思うんです。地主の皆さん方は国のためにいろんな協力をして基地を提供してきた。返還になった。跡地の利用が決まらないと。
もちろん、まだ働いて、基地の収入なんというのはちょっと小遣い銭ぐらいだと思っている人がいれば別ですよ。年配の方々が非常に多いというようにお聞きをしているんです。そうしますと、基地の収入というのはばかにならないわけですよ、生活の上でも。せっかく協力をしてきたけれども、結果的には三年以内でこれは打ち切られてしまうということになるわけです。
今さまざまな形で、SACOの最終報告にもありましたたくさんの施設がこれから、難航はしていますけれども、返還のための努力はされているんですね。ところが、今申し上げましたように、仮に返還をされてもこういう実態では、それは地主の人たちは、何だという話になりかねないわけです。
私は、まだ一昨年に法律ができたばかりだからという言い方もあるかもしれませんが、現に一昨年の場合には、何とかこの法律を通そうということでさまざまな関係者の努力があってこの法律ができ上がったということを承知しています。承知はしていますけれども、今これだけ基地の問題が大きな問題になっているわけですから、ぜひこの軍転特措法についても、ある程度の期間が来たら、できるだけ早い時期に見直しをしていただきたいと思うんですが、いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014960X00419970415/157
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158・久間章生
○国務大臣(久間章生君) 今御指摘の軍転法による返還給付金の期間の延長等につきましては、沖縄県初め地方自治体等から要望があることはよく承知しております。
しかしながら、これは議員立法でつくられましたときの国会の議論でも種々ございましたし、そして委員今いみじくもおっしゃいましたが、平成八年に初めて支給を開始したわけでございますので、そういう意味ではその成果も見なければなりません。そういうことと、もう一つは、今言われましたように、今までこの法律施行前に返した方は全くもらえないわけです。この法律施行された方は、三年はもらえるわけでございます。
今度、またこの次に法律ということになりますと、現在進行中のもの等もいろいろありまして、その辺の問題、あるいは国が他の事業で借り上げているそれの問題等もございます。そういう問題等がございますため、今防衛庁としては延長は考えていないわけでございます。
ただ、先般来、現在民有地を基地に提供しておられる方々の代表がお見えになりまして、我々は今まで協力して貸してきたんだ、今度の反対運動みたいな、一坪反戦地主みたいなそういう形じゃなくて、協力をしてきたんだ、それが我々の意向なくしてぽんと返された日にはたまったものじゃない、そういうふうな御意見でございました。国に協力してきた人たち、反対してきた人たち、さまざまおられるわけでございますので、その辺の問題等も種々あろうかと思います。
いずれにしましても、この法律は議員立法で提案されてかなり議論されたことを伺っておりますので、これから先も私どもも関心を持ってまいりたいと思いますけれども、差し当たって今、防衛庁としては延長は考えていないということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014960X00419970415/158
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159・前川忠夫
○前川忠夫君 確かにまだできて二年足らずの法律ですから、今すぐに改正しますとはなかなか担当の方としては言いにくいというのはわかります。わかりますけれども、三年で開発計画がまとまってその跡地の利用がスタートするわけはないんです。もちろん、それはさまざまなケースがあるわけですから、その辺を柔軟に扱えるような制度改正を考えられても私はいいんじゃないかというふうに思います。これは基地に賛成をして貸している人も、あるいは反対をしていても結果的に貸している人も、さまざまな人たちがいても私は条件は同じだと思うんです。ぜひその辺はこれからの課題としてひとつ重く受けとめていただきたいと思います。
時間がありませんので、最後に一つだけ要望を申し上げておきたいと思います。
私は、この基地問題というのは、やっぱり安全保障の問題を抜きにしては考えられないと。安全保障というのは、ある意味では国が存在をする限り永遠なんです。安全保障上基地が必要なんだという話になってきますと、今沖縄の人たちが心の中で思っているのは、沖縄の基地は永久にここに残るんじゃないかという思いがあるんです。これは私どもとしては何とか、きょう無理でもあした新しい努力をする、あさってまた新しい事態ができたらその段階で努力をする、そういう姿勢を見せることが沖縄の人たちの期待にこたえることになるんじゃないか、私はそんな思いがしてならないわけです。
私どももさまざまな舞台で責任があるわけですから、その都度、問題提起をさせていただきたいと思いますが、ぜひ総理にも、今度の日米首脳会談の中で、具体的に兵員削減の問題についての議論ができないとしても、これからの日米間の協議のあり方等については積極的な提起をしていただきたい、このことを最後にお願い申し上げまして、私の質問を終わらせていただきます。
ありがとうございました。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014960X00419970415/159
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160・笠井亮
○笠井亮君 日本共産党の笠井亮でございます。
本法案について質問したいと思います。
今、現に米軍に提供している沖縄の基地は、あの沖縄戦で日本軍が強制的に接収をし、米軍がハーグ陸戦法規に違反して住民の土地を強奪してつくられて、さらに銃剣とブルドーザーで無法に拡張されたものだと、これは歴史の事実が示していることだと思います。こういう中で、米軍に一度も貸した覚えがないという地主さんがいることは当然だと思うわけであります。それが復帰によって、財産権の保障など憲法が沖縄に適用されて、本来ならばそのときに返すべきだった、ところがそれを返さないで済むように二十五年間いろんなやり方をして無理やり引っ張ってきたと、一言で言えばこういう経過だと思うわけであります。
現在、沖縄県の収用委員会が、憲法と土地収用法に基づいて本来の役割を発揮して実質審理をやっていると。期限が切れて、あるいは却下される可能性もあるという事態が生まれているわけであります。そこで、政府は今回の改悪で暫定使用を強行しようとしているわけでありまして、これが本改正案のねらいだというふうに思うわけでございます。
そこで、まず防衛庁長官に、そもそも戦後の現行の土地収用法では、現憲法の当然の要請として、国防その他軍事には、皇室陵墓の建造とか神社の建設に関する事業とともに、強制収用または使用の対象にできないということが明確にされていると思うんですが、これはあの九条を持つ平和憲法の原則から見て当然のことだと思うわけですけれども、長官のお考えを伺いたいと思うんですが、いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014960X00419970415/160
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161・久間章生
○国務大臣(久間章生君) 今言われたのが、国防の関係といいますか、自衛隊に適用できないかどうかという御質問なんですか。駐留軍に対してですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014960X00419970415/161
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162・笠井亮
○笠井亮君 軍事に対して。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014960X00419970415/162
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163・久間章生
○国務大臣(久間章生君) 軍事についてですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014960X00419970415/163
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164・笠井亮
○笠井亮君 国防その他軍事。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014960X00419970415/164
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165・久間章生
○国務大臣(久間章生君) その問いの趣旨がわかりませんけれども、我が国は御承知のとおり、自衛隊はありますけれども軍隊はないわけです。米軍はおるわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014960X00419970415/165
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166・笠井亮
○笠井亮君 土地収用法の趣旨について。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014960X00419970415/166
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167・倉田寛之
○委員長(倉田寛之君) 一問一答せずに趣旨を。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014960X00419970415/167
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168・笠井亮
○笠井亮君 よく聞いていただきたいんです。
土地収用法ができたときの趣旨が明確になっている。法律の趣旨であります。つくられたときに明確に、国防その他軍事については陵墓なんかと同じようにこの強制収用または使用の対象にできないということが法律がつくられたとき明確にされていると思うんです。それは憲法の原則からして当然だと思うんだけれども、いかがでしょうかと伺っているわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014960X00419970415/168
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169・久間章生
○国務大臣(久間章生君) 私どもは、現在ある法律を見ながら、法律の中身を読みながら、その中にあることについて、これは適用できるかできないか、趣旨のところまで一々全国民が提案理由説明その他を読みながらじゃなくて、現行公布されております法律を見ながら適用をしていくのが普通じゃないでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014960X00419970415/169
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170・笠井亮
○笠井亮君 ここで余り議論するつもりはないんですけれども、国民のことを言っているんじゃないんです。政府の側が、この法律ができたときに、戦前の土地収用法では第一に国防が挙がっていた、それで強制的に収用するということがあった、それが今の憲法のもとでそういうことをやつてはならないということになったということを今言っているわけで、それが認められないというのは、今、国の閣僚として、内閣の一員としてやられているという点では私、大変に驚くべきことであります。
先に進めたいと思うんですが、まさにそういう原則があると。その例外として、米軍用地について強制収用や使用を認める特措法ができたという経過でありますから、これはもうそもそもそれが憲法違反ということは明らかだと思うんですよ。これもう一回、そこのところをはっきりさせていただきたい。まあそこはいいです。
そういう中で、また憲法二十九条の公共の施設のために適用するかどうかを収用委員会が独立の公正な第三者機関として実質的に審理して判断できることは憲法に照らして明確だと、当然だということを改めて言いたいわけでありますし、総理の行った米軍用地の使用認定という行為が果たして二十九条で言う公共の施設のために適用するかどうかと、これをきちっと収用委員会として、独立した第三者機関としてやるのは当然だということを改めて言いたいわけでございます。
その上で、防衛庁長官に伺いますが、楚辺通信所のある、あの知花さんの土地の緊急使用申請というのが昨年ありました。昨年五月、沖縄県の収用委員会がこれに対して、緊急性、必要性の問題、裁決遅延による使用の遅延の問題あるいは日本や極東の平和の維持に著しい支障のおそれ、こういう幾つかの要件があったけれども、そういう要件をいずれも満たしていないと判断して、国の側、政府の側は緊急性、公益性などを繰り返して主張されましたけれども、結論的には収用委員会としては不許可にしたということがあったと思います。
私はこれは当然だと思うんですけれども、それに対して国が決定の取り消し、これを求めなかったのはこの収用委員会の判断をお認めになったからでしょうか。そのことについて伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014960X00419970415/170
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171・久間章生
○国務大臣(久間章生君) そのときには既に収用委員会の方に裁決の申請を出しておりましたので、本裁決を得られるのが間近であろうということでそのまま推移したのだと思っております。
なお、先ほど委員が土地収用法について云々ということで言われましたけれども、そのときに、現在の特措法が憲法違反であるかのごときことをおっしゃいました。というのは、土地収用法の中にそういうことが入っていない、憲法九条との関係で書かれなかったのだ、だから特措法も軍を対象としてやっているから憲法違反だというようなことをおっしゃいましたけれども、先般の、昨年八月でございましたか、いわゆる県と国との訴訟の中において、最高裁まで行きまして、いわゆる総理大臣の今度の使用認定については、これは憲法の公共の福祉に合致するということを判決で出していただいたわけでございますから、それを見ましても米軍のためのいわゆる駐留軍用地特措法が憲法違反でないということは明らかだということを、これは一方的におっしゃいましたので、さも今の法律が憲法違反かのような印象を与えられては困りますので、違反でないということをはっきり申し上げさせていただきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014960X00419970415/171
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172・笠井亮
○笠井亮君 米軍というのは明らかに軍事だと思うんですよ。自衛隊についてはいろいろ解釈されています。それは私も承知しております。それを認めるわけじゃありませんが、米軍は軍事だと。土地収用法ができたときには、明らかに戦前の旧土地収用法との関係で、国防、軍事のためにはやったらいけないということで新しいのができた、これは経過からも趣旨からも明らかでありまして、そこのところは改めて確認をしておきたいと思うんです。
それで、さらにその先に進みたいんですけれども、そういうことで今おっしゃいました、訴訟をしなかったと。それはもう間もなく裁決がおりて、なるんじゃないかということがあったからだと言われたわけでありますけれども、現実はどうだったかということであります。
昨年の三月三十一日で権原が消滅をした。本来あれは土地所有者に返すべき土地でありました。にもかかわらず、政府は、梶山官房長官が、私も内閣委員会を含めて繰り返しお伺いしましたところ、再三お述べになったように、政府としては、長期にわたれば違法だけれども、これは適法でないけれども直ちに違法ではないということを繰り返されて、昨年十二月の質疑だと思いますが、今苦しいとありました。官房長官御自身がまさにいわばこういう心苦しい答弁をいたしていることは間違いありませんというふうにみずからもお述べになったわけであります。
そこで、防衛庁長官に伺いたいんですけれども、間もなく裁決がおりるかもしれない、そういうことで緊急申請もやらなかった、不許可になっても裁判を起こさなかったんだということがありましたけれども、裁決がおりずに一年以上経過して、そしてまさに長期化したと、緊急使用の申し立ても不許可になったと。現在はこれはだれが見ても明白に長期になっているんじゃないか、もはや直ちに違法ではないということで引っ張ってきて説明できないと思うんですけれども、現時点では違法だ、このことをお認めになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014960X00419970415/172
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173・久間章生
○国務大臣(久間章生君) 決してそれから政府は何も努力しなかったわけじゃございませんで、先ほど言いますように、収用委員会の裁決を一日も早く得たいということでそれぞれ努力したわけでございます。
そういうことを考えますと、その当時、官房長官談話で発表しました内容と現在とも変わっていない、そういうふうに思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014960X00419970415/173
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174・笠井亮
○笠井亮君 ちょっとだれが聞いても納得できないですよ。変わっていないというのは、要するに違法でないということですか、直ちに違法でないという状況だということですか。もう少し詳しく説明してください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014960X00419970415/174
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175・久間章生
○国務大臣(久間章生君) 権原がないわけでございますが、一方では、今度は米軍に対して提供しなければならないということで返還しない状態が続いておるわけでございます。知花さんの場合は、御承知のとおり、強制使用という形で使っていた土地じゃございませんで、お父さんの代からの契約関係に基づいて賃貸借契約に入っておった。その土地につきまして、知花さんが生前贈与をそのうちの一筆について受けられて、それについて契約更新のときに契約をされなかったという状態になっているわけでございますから、いわゆる賃貸借契約が終了して、その後それが返還されていないという状態になるわけでございますけれども、そういうときに無権原であるからといって直ちに違法かというと、直ちに違法とは言えないというような談話をされたわけでございまして、そういうような形でいわゆる占有状態がその後続いておる。
ただ、それが、政府が何もしないでその状態が長期化した場合には問題があるんじゃないかと思いますし、全然問題がないとは思いません。確かに法的に非常に不安定な状態、どちらかというと政府にとってはやはりマイナスな状態が続いていることは間違いないわけでございますけれども、直ちに違法であるとは言えないのではないかと、そういうような答弁をあの当時されたのはそういう趣旨だろうと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014960X00419970415/175
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176・笠井亮
○笠井亮君 あの当時からもう一年たっていると繰り返し言っているわけです。
安保条約上の義務があるということも言われましたけれども、義務があるとしても国内法がなければ、裏づけがなければできないというのは明らかでありまして、正当な使用権原がないとおっしゃるならば、そして長期にわたって占有しているのは事実だと言われれば、それは不法占拠状態ということじゃないんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014960X00419970415/176
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177・久間章生
○国務大臣(久間章生君) 権原がなくて、そしてその土地を米軍に提供しているわけでございます。米軍の方には条約に基づいて使用する権利があるわけでございますから、これは直ちに日本国政府に返すわけにはまいらない。日本国政府も返ってこなければ本人さんに返すことはできないとなれば、そうすると本人さんと日本国政府の間ではそれに伴う賠償はどうするのかと、そういう問題はあろうかと思います。しかしながら、返さないことが直ちに違法であるとは言えない、そういうことを言っているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014960X00419970415/177
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178・笠井亮
○笠井亮君 いろいろ言っていますけれども、本当につじつま合わせにもならないんですよ。今でも直ちに違法ではないというふうに言われますけれども、そして法的には不安定だと、じゃどういう根拠に基づいて違法ではないと言えるんですか。法的根拠を言ってください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014960X00419970415/178
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179・大森政輔
○政府委員(大森政輔君) 楚辺の土地につきまして、国際法関係及び国内法関係の複合する法律関係のもとにおきまして、諸般の事情を考慮すれば、法秩序全体の立場から見れば返還しないことについて直ちに違法と言うには当たらないんではないかということを申し上げてきたわけでございます。ただ、やはり国が正権原を有せず使用を続けるということは本来好ましい状態ではございません。
これは好ましい状態であると胸を張って言っているわけじゃ決してございません。それとともに、やはり他人の所有土地を使用し続けておるわけでございますから、その不当利得の返還の問題ということは生ずるわけでございます。しかも、そういう正当補償についての手続的な保障なく使用をし続けているという問題もございます。
そういうことから、今回予想される事態に際しましては、そういう事実的な問題を避けるために今回暫定使用制度の創設という立法措置をお願いして、ただいま審理を求めているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014960X00419970415/179
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180・笠井亮
○笠井亮君 だんだんわかってきました。
要するに、諸般の事情ということをいろいろ言いながら、法的根拠については法制局長官も今言えないわけでしょう。そして、好ましくない状態だということはお認めになるわけですよ、法的には好ましくないと。
どういうことですか、好ましくないというのは違法ということじゃないですか。今最後におっしゃったことですよ。違法状態だからこそ、まさにおっしゃったように、そこに使用権原を生じさせるために急いで法律をつくらなければ違法状態を解決できないというのが今回の法律のねらいだということじゃないですか。非常にはっきりしたと思うんですよ、そこのところが。
もう一つ、法制局長官に次の質問をいたします。
国の権原のない状態、行為が後になって正当とされるような、いわゆる不遡及の原則、遡及しない原則の例外を認めた法律というのはこれまでにあったんでしょうか、法制局長官。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014960X00419970415/180
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181・大森政輔
○政府委員(大森政輔君) ただいまのお尋ねに対してお答えする前に一言だけ申し上げさせていただきたいと思います。
先ほどの直ちに違法というには当たらないんではないかということの意味でございますが、これは返さないことについてというもちろん限定をつけました。これはどういう意味かということをちょっとお聞きいただきたいと思いますが、要するに所有者から直ちに返還請求をすれば、多分御案内と思いますが、板付飛行場事件についての最高裁判所判決等に照らしますと、権利の乱用に当たるとして判断される可能性があると、その反面といたしまして返さないことについて直ちに違法というには当たらないんではないかと申し上げた趣旨でございまして、そのように限定的にお聞き取りいただきたいと思います。
それから次が、ただいまお尋ねいただきました問題でございますが、御案内のとおり、沖縄における公用地等の暫定使用に関する法律による使用権原は昭和五十二年五月十四日の期限を経過することによって一たん消滅したわけでございます。ところが、同月十八日に同法の改正を含む沖縄県の区域内における位置境界不明地域内の各筆の土地の位置境界の明確化等に関する特別措置法が施行されまして、使用権原も同法の施行によって再び将来に向かって発生したという立法例、事実がございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014960X00419970415/181
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182・笠井亮
○笠井亮君 もう繰り返しやるつもりはありませんけれども、とにかく正当な使用権原がないということで、そして直ちに違法ではないなんと言って法的根拠が言えないわけですから、これはもう違法状態だということはもちろん明確だと思うんです。
それから今、後半で不遡及のことを伺いました。まさにあの大問題になった空白の四日間、それが唯一の前例だったというお答えだと私は受けとめているわけですけれども、そのときしか先例がないと。それほどかつてない極めて異例なことであり、あのときも大問題になって、とにかく地主、土地所有者の所有権を取り上げるということで、そういうことでも法的手続が空白になって、それを後から遡及するというのは大問題になったわけでありますが、そういう過ちをまた繰り返して異例に異例を重ねるというのが今回の特措法の改正だというふうに普通に考えれば理解する、私はそういうふうに思うわけでございます。
本人の意見も反論を聞く機会も事実上取り上げて、法律の本文ではなく、単なる附則によって法の不遡及の原則を踏みにじってまで合法化しようというのは、私は憲法三十一条から見ても法治主義の原則からも断じて許されないというふうに思うわけでございます。
この点について、行政法学者で元最高裁判事の田中二郎氏は「行政法規の遡及的適用を認めることは、一般的には、法治主義の原理に反し、個人の権利・自由に不当の侵害を加え、法律生活の安定を脅かすことになるのであって、これを一般的に是認することはできない。従って、それは、そうしたことの予測可能性を前提とし、しかも、個人の権利・自由の合理的保障の要求と実質的に調和しうる限りにおいてのみ許される」というふうに述べていることもつけ加えておきたいと思います。
次に、この改正案の十五条の一項の問題をめぐって伺いたいと思うんです。
防衛庁長官は、この間の答弁の中で、総理大臣が米軍に提供するとして使用認定をした土地について収用委員会が却下した場合、不服審査請求、いわゆる審査請求をしたのに対して、建設大臣が棄却または却下するということなどは事実上あり得ないということで幾つか議論になったと思うんですが、そのことは事実上あり得ないということをお認めになりますね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014960X00419970415/182
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183・久間章生
○国務大臣(久間章生君) 先般、筆坂議員さんが質問されましたときに、自分の方で、そういう棄却するあるいは却下するのはレアケースだというようなことを自分の引用の中で言われたような気がいたします。私は、だからそれは言っていないと思います。照屋議員さんこのときに棄却することもあり得るということを言ったと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014960X00419970415/183
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184・笠井亮
○笠井亮君 では改めて伺いますが、そういう場合に建設大臣が棄却や却下を行うことは事実上あり得るとお思いでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014960X00419970415/184
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185・久間章生
○国務大臣(久間章生君) 論理的にはもう全部があると思います。
まず、収用委員会の皆様方がこの法律に違反して申請がされていると判断して却下されることもあります。ところが、その違法だと判断されたことが内容的におかしいということで、今度はいわゆる申請者といいますか施設局長がそれに対して審査請求することもありますし、それを受けて建設大臣が棄却することもあるし、あるいは逆に今度はそれを認めて取り消しの裁決をすることもある。すべて論理的には全部あるわけですから、そういうすべてのことを想定しながら、法律上は全部手続が終わるまでの間はとにかく暫定使用を認めてもらいたいという形で今度の法律をつくっているわけでございますので、今言われましたこと、もし言うならば全部があるということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014960X00419970415/185
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186・笠井亮
○笠井亮君 仕組みとしてはあると。これは後で議論したいんですが、実際にそれが働くことはあると思いますか。そういうことになるということは想定できますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014960X00419970415/186
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187・久間章生
○国務大臣(久間章生君) とにかく違法と判断して収用委員会の方々が却下された、それが適切だと思えば、建設大臣は今度は上がってきた審査請求に対してそれを棄却すること、あるいはそのまま却下ですね、それを認めて棄却することはあり得ると思います、それは。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014960X00419970415/187
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188・笠井亮
○笠井亮君 それでは、そういうときにこれはまさに問題になる。衆議院でも議論があった。私は衆議院の会議録を読んだら、答弁なさったという明確な記憶があるのでさっき言ったんですけれども、そういう場合、じゃ建設大臣が却下、棄却すると。そうすると、これは橋本総理に伺いたいんですが、総理大臣としてはどうなさいますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014960X00419970415/188
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189・久間章生
○国務大臣(久間章生君) それは、とにかく総理大臣のもとにおける建設大臣じゃなくて、審査庁としての建設大臣でございますから、その建設大臣が棄却をしてしまって、その後、総理大臣がどうこうする余地はもうないわけでございますから、建設大臣が棄却をしたらもうそれで終わりなわけでございまして、それに対して総理が建設大臣の任命を変えるとかなんとかということだってできないわけでしょう。
だから、言っておられる意味がよくわからないわけでございまして、使用認定をした総理大臣と建設大臣とが同じ内閣の一員であるから、そういうことによって建設大臣は多分しないであろうというような想定のもとで言っておられるとすれば、それは現実の問題としてはそういう議論はあるかもしれませんが、今言っていますように、今度の法律をつくるときには論理的にすべてのことを想定しながら出ているわけで、そもそも収用委員会が却下の裁決をすること自体が非常に少ないんじゃないかと初めから私は申し上げているわけでございます。
しかしながら、絶対ないとは言い切れないので、この法律に違反していると判断してやることだってある。ところが、実際は違反していなかったというようなケースだってあるということで組み立てておるわけでございますから、とにかくそういうような論理的な話を現実の話に引き戻して議論されますと大変ややこしくなるんじゃないかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014960X00419970415/189
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190・笠井亮
○笠井亮君 わかりました。実際上はあり得ないということを今言われたということを一つ理解して、そうすると要するに……(「いや、そんなことないよ」と呼ぶ者あり)いや、今おっしゃいました。実際にはあり得ない、論理的にはあり得るけれども実際上はそういうことはあり得ないというふうに言われたんですよ。(発言する者多し)言われました、言われました。
ですから、要するに実際上は……(発言する者多し)じゃ、もう一回聞いてもいいですよ。実際上はあり得ないけれども論理的にはあり得るんだと。だから法律の仕組みをつくったとおっしゃいましたので……(「あり得ないとは書っていないよ」と呼ぶ者あり)いいですか、そこのところはあれですけれども、そういうふうになりますと、実際上はあり得ないとなれば、これはもう絶対強制使用が続けられるということになるんですが、わかりました。論理的にあるとおっしゃったから、そこを聞きます。
論理的にあると。それで、法が却下、棄却をしてはならないとあるわけじゃないですから、論理的にあり得ます。万一、建設大臣が、こういうことは私はあり得ないと大臣も思っていらっしゃると思うけれども、棄却や却下をした場合、それまで必ず認められるということで、裁決申請しただけで暫定使用をしてきたことは当然違法だったと、不法占拠をしていたということになりますね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014960X00419970415/190
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191・久間章生
○国務大臣(久間章生君) それは法律に書いてありますように、そういうことで手続が終わった場合には規定のとおり権原がなくなるということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014960X00419970415/191
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192・笠井亮
○笠井亮君 権原がなくなって、いや、なくなるというか、要するにそういうことで引っ張ってきたということでありまして、まさに暫定使用をしてきたこと自体が違法だった、不法占拠していたということになるわけじゃないですか。ここは非常に大事な点ですよ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014960X00419970415/192
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193・久間章生
○国務大臣(久間章生君) 先ほど直ちに違法でないという議論を盛んにされましたが、あれと同じでございまして、とにかく権原がなくなるというのは実際なくなるわけでございますね。ところが、具体的に、じゃ土地を返還しないこと、これがそのときに返還する、直ちに返還することになるかどうか、そういう問題を恐らくつなげようとしておられるんだと思いますけれども……発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014960X00419970415/193
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194・笠井亮
○笠井亮君 まだそこまで言っていない。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014960X00419970415/194
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195・久間章生
○国務大臣(久間章生君) こういう場合に、多分それを意図しておられるんだと思いますけれども……発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014960X00419970415/195
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196・笠井亮
○笠井亮君 余り先に行かないでください、順番にやっているんだから。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014960X00419970415/196
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197・久間章生
○国務大臣(久間章生君) とにかく返還しないことをもって直ちに違法と言えないというのは、国は米軍に対して提供の義務があるわけですね、これを。それに基づいて提供されてしまっている、継続している、そういう状態が続いておるわけですから、一方では。
そして、国は一方では土地所有者に対して無権原の状態になってくるわけですね。そういう板挟みの状態に国は置かれるということでございまして、それでもって土地がその本人さんに移ることについて直ちに違法かどうかということについてはまた別の議論になるわけでございまして、そこには、先ほど法制局長官が言われましたように、返さないということでもって直ちには違法でないというのは、すなわち権利の乱用に当たる場合にはそのままその状態が続くし、そのかわりに使用権原がなくなっているわけですから、その分について国に対していろいろ補償といいますか損害賠償なり、いろんな問題は生ずるんじゃないかというふうに思うわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014960X00419970415/197
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198・笠井亮
○笠井亮君 この法案をつくっている改正案の前提が、必ず裁決をされる、いずれは裁決されるということを前提にして暫定使用をするという仕組みをしたわけでしょう。ところが、今、建設大臣のこの場合ですよ、棄却、却下されるわけですから、それで終わるわけですよ。前提にして暫定使用をしてくること自体がこれは違法だったということになるわけじゃないですか。法的根拠がない。不法占拠をしてきたということになるわけじゃないですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014960X00419970415/198
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199・大森政輔
○政府委員(大森政輔君) 法案の内容に関しますから、私から答弁させていただきたいと思います。
多分、委員の御質問の趣旨は、却下裁決に対して審査請求があり、それも却下または棄却されれば、さかのぼって暫定使用はまず初めから違法になるんじゃないかというのが一つの御疑問だろうと思います。
しかしながら、私どもはそうは考えないと。それまでは適法な暫定使用であったわけですから、その第一項の審査請求に対する却下または棄却の裁決があった日以後なお使用を続けるとすれば、それは暫定使用権原は消滅しますから、正権原のない状態に立ち戻るということはそのとおりでございます。
この法案十七条も、審査請求、却下または棄却までの暫定使用に対する損失補償につきましては、十七条がその損失補償に関する手続を予定しているところでございまして、それ以後なお使用を続けるかどうかというのはひとつなかなか難しい言いがたい点はあるわけでございますが、それにつきましてはやはり楚辺の使用権原が消滅した後の状態ということと同じ性質の問題になろうと、このように考える次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014960X00419970415/199
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200・笠井亮
○笠井亮君 ちょっと伺っていてもわけがわからないんですよ。
趣旨説明されてきたところをずっと追っかけてみますと、本人からもまともに意見も聞かないで、そして裁決申請しただけで暫定強制使用ができて、さらに裁決が気に入らないといって不服申請をすると。そしてそれが棄却、却下されると。そんな事態が起こったら、国の暫定使用そのものがやっぱり不法占有であったことが明白になると思うんですよ。
そして、その上に立って、じゃ地主に対してそういうときどうするかと。損害賠償と今言われました。賠償とさっき長官は言われましたね。損害賠償のことも考えなきゃいけないと言われました。言われましたでしょう。(「将来に向かって」と呼ぶ者あり)いや、その間についてですよ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014960X00419970415/200
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201・倉田寛之
○委員長(倉田寛之君) 一問一答をやらずに、質疑者は質疑を明確にしてお尋ねください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014960X00419970415/201
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202・笠井亮
○笠井亮君 はい。ちょっと待ってください。もう少しまとめて聞きます。
今、法制局長官も損失補償のことがあるからいいんだと言われましたけれども、私が言ったような経過をたどって、まともに意見も聞かずに申請しただけでやってきて、それがだめになったということについては損失補償じゃないんです。これは行政行為の違法を前提にした、被害を受けたということになるわけですから、その期間、間違ったことをされて。ということになれば、その損害を償う損害賠償がなければいけないし、この場合にどうやって国が暫定使用ということで強行してきた不法な権利侵害に対して土地所有者に償っていくのか。
そのようなことについて本法案に対してきちっと書かれなければいけないというふうに思うんですけれども、そういうことがきちっと書いてありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014960X00419970415/202
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203・久間章生
○国務大臣(久間章生君) 私が言いましたのは、棄却されてそこまでの間は暫定使用権があるけれども、それから先は無権原になるから、その無権原になってしまった状態についてはいわゆる不当利得の返還請求なりあるいは損害賠償なり、いろんな議論はあるでしようと言ったわけでございます。棄却されてそこまでの間は暫定使用権が実はあるわけでございますから、それはいわゆる適正な補償という形で補償がされる、そういうふうに思うわけでございますから、損害賠償の話は出てこないわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014960X00419970415/203
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204・笠井亮
○笠井亮君 この問題は非常に重大な問題だと思うんですよ。それで、この新しい法改正で仕組みをつくろうとしている、そのこと自身が、もう繰り返し議論になっておりますけれども、とにかく収用委員会の権限というのは、政府の側の説明によりますと、期限と補償の額だけ決めるんだ、必ずいっかは裁決されるんだということを前提にして、その枠組みの中でこうやってつじつま合わせをするということでやるわけですね。
ところが、そういうことを前提にして暫定使用を行う、その際には事実上権利を奪われる側の地主が意見を言う機会もないままにその使用権原が発生をするということをやってきて、結局それが棄却、却下されてしまうということになるわけですから、それが正当でなかったということになるわけでしょう、そういうことをやってきたことが。それに対して、まさに賠償のこともないということでやっているのは、本当に法的にはこれは欠陥だということを言わざるを得ない。私はこのことを強く指摘したいと思うんです。
それで、そのことを言った上で、次に行きます。
問題は、こういうやり方が単なる一時的、暫定的なものではないということだと思うんです。第一回の公開審理で防衛施設局の使用裁決申請理由というのがございまして、その中で述べられていることでありますけれども、「駐留軍の駐留は、今後相当長期間にわたると考えられ、その活動の基盤である施設及び区域も今後相当長期間にわたり使用されると考えられるので、その安定的使用を図る必要がある。」ということが明記をされております。
防衛庁長官に伺いますけれども、相当長期間というのはどのくらいの期間なんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014960X00419970415/204
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205・久間章生
○国務大臣(久間章生君) それは一概に何年というのは言えないかもしれませんけれども、要するに短期ではないということでございます。
この法律を出します前に、収用委員会に裁決の申請を防衛施設局でやっているわけでございまして、そのときは十年ということで申請をお願いしておるわけでございますから、少なくとも十年以上だということを前提にして議論はしているとしか言えないと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014960X00419970415/205
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206・笠井亮
○笠井亮君 短期ではないというようなおっしゃり方というのは非常に無責任だと思うんですが、少なくとも十年以上というのはこれはまた非常に長期であるということを改めて私は痛感したところであります。
総理大臣に伺いますが、相当長い期間ということで、総理大臣の御認識はどれぐらいの期間を考えていらっしゃるか。先ほど来議論がありましたけれども、政府に米軍の削減や撤退を求める意思のない限り、今十年ということも防衛庁長官は言われましたけれども、十年以上、二十一世紀にわたってかなりの期間、相当長く続くということで総理大臣も御認識でありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014960X00419970415/206
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207・橋本龍太郎
○国務大臣(橋本龍太郎君) 大変学問的におもしろい議論を拝聴しておりましたけれども、そもそもこの申請をいたしております収用委員会への防衛施設局からの申請、これ自体が十年であります。今そのことを防衛庁長官は踏まえて、どんなに短くてもそれよりも長いものを想定するのが論理的であろうということをお答えになりました。
同時に、よく大田知事のお考えとして、本委員会でもいろいろな方から御披露のありますアクションプログラムも十年以上の年数を想定しておられることを申し添えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014960X00419970415/207
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208・笠井亮
○笠井亮君 総理も今おっしゃいましたが、アクションプログラム、沖縄の人たちは二十一世紀には基地のない平和で豊かな沖縄をということを願っているわけであります。
そういう方向から見て、今お二人から御答弁ありましたけれども、この沖縄の基地を相当長期間にわたって、十年以上米軍に提供し続けるためにそれをやれるような措置法をつくると、基地固定化のための法律だということになりますし、これは本当に憲法上も重大だということを改めて痛感したということを申し上げて、私の質問を終わりたいと思います。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014960X00419970415/208
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209・島袋宗康
○島袋宗康君 駐留軍用地特措法は、形式的には昭和二十七年五月十五日、法律第百四十号で当然全国に適用されたものでありますけれども、実質的には本土では昭和三十七年以来適用された例がなかったものを、昭和五十七年に沖縄だけに二十年ぶりに息を吹き返した法律であります。昭和五十七年以来今日まで十五年間、沖縄だけで生き続けている今回のこの法律の改正により、さらに二十一世紀までその怪物性を発揮させるための改悪であると指摘せざるを得ません。
この法律は実質的には沖縄県のみに適用される法律であり、いわゆる地方特措法と呼ぶべきものであると私は思っております。それならば、その改正という名の立法は憲法第九十五条の規定に従って沖縄県民の意思を問う必要があるのではないかというふうに私は思っております。
防衛庁長官、そして内閣法制局長官の御見解をお願いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014960X00419970415/209
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210・久間章生
○国務大臣(久間章生君) この改正をする前の特措法も日本全国を対象としている法律でございますし、今回の改正法もまた同じようなものでございます。
現在進行中のものを対象とする部分については、これは沖縄の方に事実上適用されるのは確かにそのとおりでございます。また、沖縄において現在裁決が進行中のものについて無権原になるということから、これを解消すべく提出したわけでございまして、その点については現在進行中のものに深くかかわってくるのも事実でございます。
しかしながら、憲法第九十五条というのは、御承知のとおり、ある地方公共団体の組織運営権限等にかかわるものについてはいわゆる住民投票ということを要求しているわけでございますけれども、この法律はそういう地方公共団体の組織運営権限等に影響するものではございませんので、これは憲法九十五条で言う投票は要らないというふうに私どもは解して、この法律を提案させてもらっているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014960X00419970415/210
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211・大森政輔
○政府委員(大森政輔君) ただいま防衛庁長官から答弁がありましたとおりでございます。
一言だけ付言いたしますと、ある法案が九十五条に言う特別法に当たるかどうかということは、立法の流れからしますと最終的には国会がお決めいただくことである。すなわち、地方自治法の二百六十一条におきまして、最後に議決した議院の議長が当該法律をそういう特別法に当たるという判断をされた場合には、当該法律を添えてその旨を内閣総理大臣に通知しなければならない、このように定めておりまして、法律を提案いたします前に、これは地方特別法でございますということを内閣から申し上げるシステムにはなっておらないということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014960X00419970415/211
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212・島袋宗康
○島袋宗康君 いわゆる沖縄だけしか適用しないという改正でありますね。先ほど答えられたように、沖縄だけしか適用しない。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014960X00419970415/212
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213・久間章生
○国務大臣(久間章生君) いやいや、そうじゃない。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014960X00419970415/213
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214・島袋宗康
○島袋宗康君 さっきおっしゃったじゃないですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014960X00419970415/214
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215・久間章生
○国務大臣(久間章生君) 私の言いましたのは、この法律は沖縄だけに適用する法律じゃなくて全国に適用される法律でございますし、この改正案もそのとおりでございます。
ただ、現在沖縄の裁決が進行中のもそれの中に含まれますということを言ったわけでございまして、だから現実に今進行中のはそういうことでございます。ただ、法律はそういうことじゃなくて、全国を対象としてこれから先も本土で生ずるであろうそういうことまでも全部対象としているということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014960X00419970415/215
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216・島袋宗康
○島袋宗康君 それは実質的には沖縄だけに適用されるいわゆる改悪であるというふうに私は思っております。
法を誠実に遵守し執行すべき政府が今みずから法をじゅうりんし、法を無視している。昨年三月三十一日で使用期限が切れた楚辺通信所内の一部土地については、不法占拠を続けることによって法をじゅうりんし、ことし五月十四日で使用期限切れを迎える十二施設の土地については、法の定める緊急使用の手続を踏まないことによって現行法の規定を無視しようとしている。少なくとも政府の立場では緊急使用の申し立てをすべきである。
昨年は使用期限切れの二日前の三月二十九日に沖縄県収用委員会に対して緊急使用の申し立てをしているにもかかわらず、ことしはなぜそれをしないのか。昨年の前例に倣えばこれからでも遅くはないと思うが、現行法を尊重するという立場から緊急使用の申し立てをする考えがあるかないか、防衛庁長官。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014960X00419970415/216
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217・久間章生
○国務大臣(久間章生君) 御承知のとおり、あのような状態で、いろんなことがございましたために県と国との関係が大変スムーズにいっていなかった、そういう時期がございました。しかしながら、その後、大田知事が公告縦覧に応じていただきまして、そういう中で収用委員会の審理が粛々と行われておりましたために、今度は裁決が行われるんじゃないか、期限までにあるんじゃないか、そういう期待を持ってずっと見守っておったわけでございます。
したがいまして、その間に本裁決を待ってくださいということをやめてもらって緊急使用の方を先にやってくださいというような状況じゃなかったわけでございまして、本裁決がこれなら得られると思って、むしろそれを待っておったわけでございます。
ところが、さっきも当委員会で言いましたけれども、三月の二十七日になりまして公開審理がございましたが、そのときになって、本裁決が次にあるかと思いましたら、裁決の審理の日取りも決まらないというような状況になりましたので、これではもう無権原になるということで、その前の昨年の無権原状態、これだって直ちに違法ではないというふうな発言はしておりますけれども、これが好ましい状態でないことは間違いないわけでございます。
ましてや、今度無権原な状態が発生したら、知花さんのときでも立ち入りその他が一人について六十人もの方が立ち入りをされたわけでございまして、しかもあのときは米軍に頼んでやりましたが、施設・区域を提供している我が国が米軍にまた昨年と同じようなことを要求することすら、国際法上は信用を失墜する、そういうことにもなりかねないので、今回こういう法律を改正してお願いするということで審議を願っているわけでございます。決して法をじゅうりんするとかそういうような気持ちは毛頭ございませんので、どうかその点はよろしくお願い申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014960X00419970415/217
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218・島袋宗康
○島袋宗康君 土地収用法第百二十三条の緊急使用という概念を空洞化する暫定使用という概念は、より軽い要件によってより長期間の使用が可能となるという点において土地所有者に不利益の結果をもたらし、法の権衡を欠くことから、違法性を帯びるのではないかということが言えるのではないかというふうに思っておりますけれども、法制局長官の見解を承りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014960X00419970415/218
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219・大森政輔
○政府委員(大森政輔君) 緊急使用に関する土地収用法百二十三条の規定ぶりをごらんいただければおわかりいただけると思いますが、この緊急使用許可の申し立てと申しますのは、必ずそれを申請しなければならないということをその起業者に義務づけているものではございません。その時々の情勢によりまして、緊急使用によることが相当だと認められる場合は緊急使用許可申し立ての道を選ぶことがもちろん相当でございますけれども、本件におきましては、ただいま防衛庁長官から説明がありましたとおりのような事情で、緊急使用許可の申し立ての方法をとらなかったということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014960X00419970415/219
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220・島袋宗康
○島袋宗康君 この改正案は沖縄をねらい撃ちにした地方特別法であり、政府が言うような最小限の改正ではなく、実質的な特別立法だと思います。政府が安保条約の義務を履行するためと称して土地を強制使用したくても、土地収用法の定めに従って慎重な手続を経なければなりません。
御承知のように、米軍基地についての土地収用法の特例を定めたのがこの特措法でありますが、沖縄返還の際には沖縄に限っての特例として公用地暫定使用法が立法され、結局十年間のこの法律によって沖縄の米軍基地は強制使用されました。つまり、沖縄ではこれまで土地収用法の特例が二重に適用されたことになるわけであります。今回はさらにその米軍用地特措法に可能な限りの土地取り上げの方法を盛り込み、沖縄にのみ三重の特例による土地強制使用がなされようとしていると思います。
民法学者で神奈川大学の清水誠教授は今回の改正案を評して、法を研究した者としてその異常さに驚かされると新聞で述べておられます。沖縄の基地を使用するために一体何種類の法律をつくれば気が済むのか、このような法体系でいささかも問題はないのか、防衛庁長官、法制局長官、どうお考えですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014960X00419970415/220
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221・久間章生
○国務大臣(久間章生君) 沖縄が復帰しましたときにいわゆる公用地暫定使用法によったというお話、これもまた非常に無理な法律を押しつけたんだというお話でございますけれども、決してそうじゃございませんで、私自身、四十五年当時林野庁の方におりまして、復帰が間もないけれども、返ってきたときにいわゆる昔の営林署跡地と民有地との境がどうなっているだろうか、そういうことで四十五年三月に一カ月ほど沖縄に行きまして、北から南の西表までずっと回ったことがございます。
それほど、いわゆる土地のいろんな権利関係が書類その他もない、そういう状況でございましたために、公用地暫定使用法という法律でつないで、そしてそれは五年間という期限を切ってそういう形でやったわけでございます。これは沖縄が復帰した当時の土地の使用関係その他から考えますと、それまでの米軍が使っていることについて地主さんがだれでどうかというような形のためにそのまま延長したわけでございます。
ところが、五年後にその法律が消えますときにどうするかとなりましたら、今度は境界がはっきりしないということで、さらに努力しなさい、しかも公用地暫定使用法ではできるだけたくさんの人の同意をとってその間に努力しなさい、そういうことを言われまして、そういう努力をしてそれが十年続いたわけでございます。十年の間に境界地その他もはっきりしましたから本土にあります法律を適用したわけでございまして、その間においてできるだけたくさんの人の同意をとれということで、一生懸命やって施設庁は同意をとったわけでございます。
だから、今までの歴史的な経過の中で、つくられますときにはブルドーザーと銃剣によって土地が収用された、それはそのとおりかもしれません。しかしながら、復帰しましてから今日までの間では、防衛施設庁が中心になりましてたくさんの方々に当たって全部任意で同意をとっていって、その結果わずか百十三名、あの当時何名ですか正確には今数字を持っておりませんけれども、かなりの、二万数千人の方々の同意を得て切りかわったわけでございますから、決して法律によってその全部を接収したような印象を与えることはおやめいただきたいと思うわけでございます。たくさんの方々が同意をしていただいて、その結果いわゆる駐留軍用地として提供しているわけでございます。
今回も、そういう意味では、権原が切れるその期間だけをともかく無権原状態で迎えたら大変だということでお願いをしているわけでございますので、決してこれで未来永劫にじゃなくて、今度は裁決までの間の暫定使用を認めていただきたいということをぜひ御理解していただきたいと思うわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014960X00419970415/221
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222・大森政輔
○政府委員(大森政輔君) 委員の御質問になる心を理解しないわけじゃございませんけれども、私の立場から申し上げまして、ただいま防衛庁長官からそれぞれの事情、説明がございました。そのような説明はそれぞれ合理的であると言わざるを得ないわけでございまして、法制上の問題としては何ら問題がなく、御指摘のように法律的に見て異常な状態であると言うには当たらないのではなかろうかと思うわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014960X00419970415/222
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223・島袋宗康
○島袋宗康君 時間が迫ってまいりました。次に進みます。
今回の改正案の成立は四月三日の橋本・小沢会談で密室の中で合意されたような感じがいたします。一九七二年の復帰の際には、木に竹をつなぐような方法で米軍基地の利用権が合法化され、屈辱的な公用地法が国会で押し切られました。この改正案が成立すれば、今後すべての政府の土地強制使用は合法化されるわけであります。
そこでお伺いいたしますが、この土地取り上げの憲法上の問題は十九条について問題はないのか。すなわち、反戦地主の戦争につながる基地のためには自分の土地は提供できないという主張を認めずその土地を強制的に使用することは、果たして個人の思想及び良心の自由を定めた憲法十九条に抵触しないのか、大いに疑問があります。御見解を承りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014960X00419970415/223
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224・大森政輔
○政府委員(大森政輔君) ただいま御提案申し上げています改正法による暫定使用のみならず、現行の特措法あるいは土地収用法の規定による土地の使用、収用と申しますのは、あくまで土地という財産に着目しまして、これを正当な補償のもとで公共のために用いるという制度でございます。したがいまして、この使用、収用によりまして個々の国民の思想や良心に何らかの制約を課するということにはならないんではなかろうか。したがいまして、憲法上の解釈といたしまして、憲法十九条に違反するというものではないんではなかろうかと考える次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014960X00419970415/224
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225・島袋宗康
○島袋宗康君 昨年の三月三十一日の楚辺通信所の使用期限切れと、今回の五月十四日の十二施設の使用期限切れとは法律上の性格が異なるのかどうか、その点についてお伺いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014960X00419970415/225
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226・久間章生
○国務大臣(久間章生君) 使用権原が切れることについては同じでございます。ただ、先ほど言いましたように、昨年の使用権原が切れますときにはいわゆる契約があって、それに基づいて契約をしておったのが更新のときに応じてもらえなかったということで、そこで切れたわけでございますし、今回の他の人方、いわゆる契約の場合は別ですけれども、契約以外の強制使用で使用している、それについては期限が来ることによって無権原になるということでございます。
いずれにしても、どちらも無権原状態になるわけでございますから、今度の法律で、既に今まで使用している状態の土地であってなおかつ申請がなされているもの、その以前にいわゆる使用認定がなされているもの、これについては担保を提供することによって裁決が行われるまでの間は暫定使用を認めてもらう、そういうような制度をつくっていただきたいということで法律を出しているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014960X00419970415/226
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227・島袋宗康
○島袋宗康君 私が言いたいのは、去年はそういうふうな法手続をちゃんとしてやっているのに、ことしは法の改正によって対応するというふうな異なった条件になっているのでそれは一貫性がないのではないかというふうなことで、なぜ一貫性がないような改正に至ったのかということを聞きたいわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014960X00419970415/227
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228・久間章生
○国務大臣(久間章生君) 昨年の場合は確かに無権原状態になりましたけれども、もう裁決申請が出されておりまして、今度の十二施設と一緒に裁決がなされるであろう、そういうようなのが期待されておったわけでございます。ところが、今回の場合は、五月十四日までに裁決が得られる見通しがまずなくなったという状況で、これはどうにもならないということで出したわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014960X00419970415/228
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229・島袋宗康
○島袋宗康君 官房長官、ちょっとお尋ねします。
昨年三月二十九日の内閣官房長官の談話では、この土地が土地所有者に返還されないでいる状態について、「「直ちに違法である」ということには当たらないのではないか」ということで、非常に歯切れの悪い言い回しで違法ではないというふうなことをおっしゃっておりますけれども、なぜことしはそのような態度を貫かずに強権的に、しかも専制的にこういった法を改正していくのか、その点について御見解を承りたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014960X00419970415/229
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230・梶山静六
○国務大臣(梶山静六君) 今、防衛庁長官が申し上げましたように、駐留軍用地特措法に基づいて土地使用の権原を得るための所定の手続をとり、引き続き適法に使用し続けるための努力を払っていることなどから、当該土地が土地所有者に返還されていない状態について、私は直ちに違法であるというのには当たらないのではないかという答弁を確かに申し上げております。
それと今回はどうかということは、直ちに違法とは言いがたいというのは、望ましい適法状態であるというその反語として、私は必ずしも直ちに違法であるとは言いがたいのではないかと。決して望ましい状態ではないと、法治国で。ですから、望ましい状態に置かなければならないという法治国家としての建前を今回は貫くべきだ、私はこのように考えて、前回直ちに違法と言いがたいと言うのならば、今回も違法と言いがたいのではないかというその延長線上でこの問題を処理することは、時間の推移とともにそういうことは当たらない。ですから、そういう前の見解をむしろ正常に戻すための努力を払っていると御理解をいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014960X00419970415/230
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231・島袋宗康
○島袋宗康君 今でも違法ではないというようなことはお思いですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014960X00419970415/231
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232・梶山静六
○国務大臣(梶山静六君) 直ちに違法ではないと申し上げたことに変わりはございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014960X00419970415/232
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233・島袋宗康
○島袋宗康君 日本の安全、極東の平和と安定のために日米安全保障条約が必要であるとしたら、それによってもたらされる利益の七五%を沖縄県民が受けているとでも思っておられるのですか。日米安保条約によって負担する基地提供の義務を履行するためには今回の特別措置法の改正はやむを得ないものであるとしても、沖縄の心を傷つけることにいささかのためらいも見せない厚顔さにあきれるばかりであります。
日米安保条約が日本のために必要であるならば、その利益は国民全体が受けていていいはずであります。それならば、その義務も国民全体で負担すべきではないかと私は考えます。それを沖縄県民のみに押しつけて、さらに差別と犠牲を強いることは人間として許されるものではありません。ましてや、政府は公平公正な行政を行う責任があると思います。
そこでお伺いいたしますが、政府が海兵隊の削減を申し入れないとするならば、安保条約の義務を履行するために、沖縄への米軍基地の集中を是正し、日本全国に平等に米軍基地を分散配置する覚悟があるのかどうか、皆さん方の決意を承りたい。総理大臣並びに外務大臣、防衛庁長官、お願いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014960X00419970415/233
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234・橋本龍太郎
○国務大臣(橋本龍太郎君) 議員とは沖縄県をめぐるさまざまな問題を、本委員会におきましてもまた予算委員会におきましてもしばしば議論をさせていただいてまいりました。そして、その都度議員は大変厳しい言葉を私たちにぶつけられました。そして、その御質問により、おわびを申し上げたこともありますし、政府としての立場で一生懸命に御理解を求めようとして努力をいたしたことも、また過去どのような努力をしてきたかもお聞きいただいたことを御記憶いただいていると思います。
その上で、繰り返し申し上げておりますように、私どもは本当に少しでもその負担を減らそうとしてSACOの最終合意を形成するために昨年も日米両国の政府で努力をいたしました。そしてその中で、これも繰り返し御答弁を申し上げておりますが、国会の方で多少とも時間をちょうだいできる状況になりましたなら、一〇四号線越えの射撃の問題一つにいたしましても、防衛庁長官はそれぞれ本土内各地域にあります射撃訓練場所在の県まで足を延ばし、地域の方々に沖縄の痛みを少しでも分かつために協力を求めるとまで繰り返し申し上げております。
そうした気持ちを全くお酌みいただけないとするなら私どもにとっては大変残念なことでありますが、そのことによって私どもが沖縄県に対し負うております精神的な負い目、また復帰後今日までの間に努力をし、一次振計から三次振計までを繰り返し、少しでも格差を縮めようとしてきた努力を我々はこれからも怠るつもりはありませんということを申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014960X00419970415/234
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235・池田行彦
○国務大臣(池田行彦君) 私どもも、ただいまの総理の御答弁と同じような認識と気持ちで取り組んでおるところでございますが、外務省といたしましても、沖縄の県民の方々の御負担が少しでも軽減するようにSACOの作業にも全力で取り組んでまいりました。そしてまた、米軍が駐留することに伴ういろいろな生活上の御不自由やらあるいは御阻害なんかを極力なくしていくように、引き続き米側にも強く求めていく所存でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014960X00419970415/235
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236・久間章生
○国務大臣(久間章生君) 同じでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014960X00419970415/236
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237・島袋宗康
○島袋宗康君 終わります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014960X00419970415/237
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238・椎名素夫
○椎名素夫君 総理以下、大変長時間でお疲れですが、もうしばらくおつき合いを願います。相変わらず大ざっぱな話にわたるかと思いますが、よろしくお願いをいたします。
今、島袋先生と総理とのやりとりを伺っておりまして、本当にこの沖縄の心というものと、これは沖縄、本土というような区別をするのは私は好みませんけれども、しかしその間の心理的な大きなギャップというものをやはり常に感じる。今回のことだけでなしに、きのう申し上げましたけれども、日米安保の問題についてもあるいは沖縄の振興あるいは負担の軽減ということについても、これからの本当に長い勝負になるということは確かだろうと思いますし、その中でそのギャップをどうやって埋めていくかということは非常に大事なんだろうと思っております。
例えばプレスとか、あるいはこの国会の審議でもそうでありますけれども、沖縄の方々がいかに苦労されたかというお話を伺って、本当に肺腑にしみるようなものがある。しかし、それに対して大田中将の言葉を引用し、そしてそれぞれの方々の沖縄とのかかわりをお述べになって、私も私なりに沖縄のことはわかっているというようなやりとりが随分行われているように思います。
しかし、私もいろいろ勉強させていただきましたけれども、勉強すればするほど想像を絶する苦労をなすったということであって、本当にその心を全く同じ状態で理解するということは大変困難であるというよりも、むしろ不可能ではないかというような気がするんです。これを一体どうするかということがこれからの仕事を進めていく上において大変重要な要素ではないかと私は思っております。
歴史にイフはないと言いますが、大変に乱暴な歴史のもしもということをちょっと考えさせていただきたいと思うんですが、この沖縄と本土のギャップというものを生んだいろいろな問題がございます。歴史を言えば明治時代にさかのぼるようなこともある。しかし、決定的なのは、やはり前の戦争での沖縄戦の経験、これが一番大きな要素であるというふうに考えるわけです。
日本が降伏をいたしましたのが昭和二十年の八月十五日である。沖縄攻撃が始まったのは同じ年の三月二十三日、そして慶良間諸島に上陸したのが二十六日、本島に四月一日に上陸し、そして六月二十三日に組織的戦闘はすべて終わったというのが沖縄戦の経緯であります。この戦いに際して、途中で戦艦大和が撃沈されたり、いろいろなことが起こっておりますけれども、この戦いの経過の中で沖縄の方々が本土上陸をいささかでも延ばすためにいわば捨て石として使われたということが言われております。
少しさかのぼりますと、サイパンが昭和十九年の七月七日に陥落をしている。間もなく飛行場をつくりましてB29を配備して、最初は偵察をやり、そのうちに本土の空襲、昭和二十年に入りましてからは三月十日の大空襲を初めとして日本じゅうを焦土にするような空襲が行われたということです。
私は、ちょうど六〇年安保の前の年ですが、実はアメリカの原子力の研究所におりまして、当時アイゼンハワー大統領の平和のための原子力という計画であそこにぶらぶらしておったんです。そのときにおりましたアメリカ人が、私が日本から来ているというのを聞いて、どこから来たと言うのですね。あの当時ですから、そんなどこから来たなんて言ったって知っているわけがないはずだと思ったが、私は岩手県と言った。どの町だと、こう言うのですね。水沢だと言った。そうしたら、いやそれは南に行くと一関だなとか、北隣はたしか黒沢尻、今の北上ですが黒沢尻、秋田に越えると横手だなというような話なんです。
それでびっくりして、ほかにもほかの地方から来ている日本人がおりましたが、全部知っている。一体おまえは何をやっていたんだと言ったら、サイパンに飛行場ができた途端に配備をされて、偵察機に乗っかって日本の上を三十数回飛んだと言うのですね。だから全部知っている。それは写真まで全部撮ったというのがもう昭和二十年明けたころには全部整っていたということなんです。
いや、我々は下で一生懸命電灯の光が上に漏れちゃいけないというのでかぶせて灯火管制なんかやっていたけれども、ああいうことは役に立つんだろうかと言ったら、いやもう全然そんなものあろうがなかろうが、どこに何があるかみんなわかるんだから、どかどかやっちゃったと、こういう話でありました。慄然といたしました、私は六〇年になって。
非常に難しかったかと思うけれども、もしも当時の日本の指導者が五カ月前に戦争をやめていたらどうなったかというのが私のイフであります。
そうしますと、沖縄戦はない。大きなことで言えば広島、長崎はありません。ソ連の参戦も間に合わない。朝鮮半島は恐らく一体となって独立したというような話になっていたでしょうね。沖縄に話を限れば、日本の全く一部として降伏をする。そうしますと、昭和二十年、焦土になった日本からの復興を一生懸命我々の先輩が働いて五〇年代、六〇年代伸びながらやってきましたが、そういうことを恐らく御一緒にできただろうと思うんです。
それから同時に、仮に五カ月前であっても、その後の世界の様子というのは、現実に起こったことと余りそう大きな差はなかったろうと思う。やはり日本が西側と、とりわけアメリカと今のような取り決めを結んで安全保障を図らなければいけないということになったと思います。
しかし、その場合に、沖縄にこれだけの基地が集中するということは恐らく起こらなかっただろうと思うんです。そして、この負けた日本を一緒になって復興しようじゃないかという仲間として、アメリカの施政権下にあった二十七年、我々と一緒に働いてくることができたということがもしもあの時にこのイフが起きていれば実現しただろうと思うわけです。
わずかに五カ月のことである。どうせ最後はもっとひどい目に遭って負けちゃったんですから。しかし、現実はそうならなかった。そのときはとてもそんなことはできないとみんな思ったんですよ。いわゆる軍官僚が頑張ったということもあるかもしれない。
しかし、このごろ、この平和の時代、この五十年間をずっと振り返ってみて、四カ月、五カ月というのはちょっと昼寝している間に過ぎてしまうような時間である。このわずかに五カ月というものがどれだけ後世の歴史に、五十年あるいは百年影響を及ぼすかというようなことが現実にあることを、これはこの沖縄の問題を一時棚に上げて考えても、我々政治に携わる者は本当にこれからそういうことを起こさないという覚悟を決めて毎日を送らなきゃいかぬという教訓だろうと思うんです。
こちらばかりしゃべって申しわけありませんが、もう少ししゃべらせていただきます。
そのようなことを考えると、我々は沖縄問題を考えるときにどこに戻って考えるべきか。もしも、この現実に起こったことでなしに、ずっと御一緒に働けるということがあった場合に、その出発点にどれだけ我々は近づけることができるかということが、沖縄の方々と本当に一体になって働くという条件の心理的な基礎になるんじゃないかというふうに私は考えております。
現実に起こったことだけを基礎にして議論をしている限り、この歴史の重み、特に沖縄戦の重みということについての大きなギャップをそのままにしておきますと、歴史を盾にして文句を言い、こちらは時々謝らなければいけないとこかの国と日本とのかかわりと似てきてしまう、これは私は健全なことじゃないと思うんです。
ですから私は、この沖縄問題にこれから取り組んでいくということ、負担の軽減についても、あるいは経済の振興ということについても、もしもそういう状態だったら我々はどういうふうに一緒に働けただろうかと、それを出発点にすべきだと思っておりますが、総理のお考えを聞かせていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014960X00419970415/238
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239・橋本龍太郎
○国務大臣(橋本龍太郎君) 私自身がそのイフを考えるのが好きな人間ですけれども、議員が今組み立てられたような形で沖縄というものを分析したことは必ずしもありませんでした。そして、殊に歴史の重みのような形で問題を引きずり続けることの愚かさ、そしてある意味では振り出しに戻していくための努力、こうした点から議論を組み立てられたことを私は非常に敬意を表します。
そして、もしその議員のお尋ねに乗った形で考えました場合、沖縄県、これは第二次大戦におきまして非常に不幸なことに戦略的な重要性、しかも本土防衛に対する戦略的な重要性ということから極めて大きな犠牲を払われることになりました。
これは言いかえれば、例えば通商とかあるいは経済活動とか、こういう面での要衝になり得るのではないかという議員の御指摘だと私は今のお話を受けとめたいと思います。そして、ある意味では、その地理的あるいは気候的な特性というものを生かした、そうした沖縄県の方向づけを国も協力すべきではないか、そういった御指摘でありますなら、私は、それは私どもが現に大田知事と議論をし合いながら模索をしている方向に非常に近いもの、そのように感じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014960X00419970415/239
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240・椎名素夫
○椎名素夫君 さすが総理で、私が確かに言おうと思っていることをおっしゃいました。
まず第一に、沖縄の負担の軽減という問題からいうと、今まで総理が本当に一生懸命に取り組まれて、アメリカとの交渉もあり、SACOの計画というのをきちっと立てられた。これは大変に貴重なものであると思うし、まずこれを実施するということに全力を挙げるということが第一でありますけれども、そしてまた歴史のイフは起こらなかったんだし、現実にはこうなっているという中でできる範囲のことというのはおのずから限定がある。
しかし、心の中では、これは総理に申し上げるというよりは日本の国民全体がそう思うべきだと思うんですが、もしも一緒になって昭和二十年八月十五日出発していたらこんな御負担はかけなかっただろうということはしっかり覚えながら現実の仕事を続けていく、これがまず大事なことだと思います。
経済振興ということについても、全く総理がおっしゃったとおり、同じであります。申しわけないことをしたから贖罪意識でやるとか、あるいはお役人によっては時々そんなことを言うけしからぬのがおりますが、余りうるさいから少しは何かやらなきやというようなことじゃないんです。一緒に五十年余りを働いてきて、日本がこういう状態になり、アジアの勃興があり、その中での非常に貴重な一部としての沖縄にどういうふうに日本のために役立っていただくか、一緒になって繁栄というものを追求しよう、これが一番大事なことだと私は思っております。
それに関連していろいろなことが提案をされている。一つ気になりますのは、県の方で、二〇一五年には基地が全部なくなるという前提で、何かそれが既定になって計画を立てるということになると、これはまた困るんですね。しかし、これも沖縄の方々に考えていただきたいんですけれども、私どもがそう思うのと同時に、沖縄の方々も一緒になってやってきたその延長線上だというふうに考えていただけるならば、ある程度の負担というものはやはり必要な期間は続くということも覚悟していただかなければならないと私は思うんです。その上で現実的に何ができるかという組み立てでなければいけないと思うんです。その中で、単に箱物とかその他でなしに、いわばシステムの要求などがある。そこで、一国二制とかいうようなことが言われている。
実は、私は二年ばかり前に、日本がいわゆるグローバルスタンダードと調和をするということはなかなか時間がかかりそうなので、ひとつ日本のどこかにフリーポートというようなモデル地域をつくって実験してみたらどうかということをぽんと書きましたら、大変あちこちでその資料をくれというようなことで、実は沖縄もその中に入っている。
どれだけ私の考えましたことが影響を与えたかということは、私は決して積極的にはけしかけませんでしたからわかりませんけれども、そういうものを出したときに、一国二制ということになりはせぬかというのがお役人の方から出てきた。私は、いいじゃないかと、こう言ったわけです。中国が言っているような、社会主義と資本主義と二つがあるというようなのが、これを一国二制と言うんでしょうね。
しかし、同じシステムの中でおのずから濃淡をつけるということからいいますと、非常に乱暴なことを言うと、アメリカは一国五十制であります、税金なんか皆違うんですから。それから、酒を飲んじゃいけないというような町まであって、そういうところにぶつかると大変苦労したりすることがあります。スイスに至っては三つの言葉を公式語として使っているし、ベルギーに行っても南と北とは全然違うから、しょうがないから大臣を二人ずつというので、内閣というのは五十人ぐらいいるというようないろんな例がございます。
その上に、私があのとき申しましたのは、決してどこかでやらなきゃいけないと思っているわけじゃない、日本全体がグローバルスタンダードに合うようになってしまえば特別の地域は要らない。だから、むしろ日本全体をそうした方がいいんじゃないかと私は言ったんだということを、聞きに来た人にも言ったことがある。
今、総理は六つの改革を掲げて本当に日本のシステムを前進させようと思っていらっしゃると私は思っておりますが、そうだとすると、少し前に走っても、日本全体の改革があればそこに収れんをして、一時、二制度に見えても一制度に収れんしてしまうということだと思うんです。だから、ああいう一国二制とかいうことで、今までのシステムを変えまいという抵抗というのは当然予想されますが、しかしその目安としては、本当に開かれた日本をつくったときの終点のところからはるかに超えるようなものは困るけれども、しかし総理が目指しておられるようなところの範囲にとどまることなら私はどんどんやらせてしまって構わないんじゃないかと思っております。そういうようなことを恐らく三党合意でも何か言っていらっしゃるんじゃないかと思います、ちゃんと聞いたことはないけれども。
総理と、それから官房長官も時々これについては御発言があるようなので、伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014960X00419970415/240
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241・橋本龍太郎
○国務大臣(橋本龍太郎君) いわゆる椎名論文、「フリーポートX」、当時非常におもしろく拝見しましたし、今回改めてまた目を通してみました。
そして、私、その経済構造改革の特に規制について随分国としても進めてきたものがあるわけですが、それとは別に、ちょうど沖縄政策協議会のメンバーとしての知事さんのもとに県が県自身の検討委員会をつくっておられるので、どういう中身の毛のを持ってこられるか、出されたらこれは真剣に検討するということで、非常に興味津々で実はその作業を待っております。これを率直に申し上げるなら、まさに一歩先にやってみりゃいいじゃないかという気持ちが決してない話ではありません。
そして、私はそういう意味では、一国二制度というとちょっと本当に抵抗があります。それはなぜかといいますと、特に今密入国を組織的に助けるグループがあるということが言われ、現に送り出しのグループが存在するようですし、日本側にその受け入れのグループがあるとするなら、これは本当に取り締まらなきゃなりません。これがノービザというようなことになりますと、私は実は本当に問題があると思っています。
それともう一つは、ドル建てという発想でありまして、外為法改正を今度御審議いただいているわけですから、これが終わるとあれは要らなくなっちゃうわけでして、あそこだけは変えていただきたいと思いますけれども、全体に議員が考えられたような方向というものは、むしろ今議論している中にもありますし、これから議論していく中にもある、特に熱帯性の気象を生かした研究というものに対しては、我々は非常に大きな期待をこの地域にかけております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014960X00419970415/241
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242・梶山静六
○国務大臣(梶山静六君) 椎名委員のように大変長い間持論を展開され、またいろんなお知恵をお持ちの方に私が答えるわけにはまいりませんけれども、率直に申しまして、私は椎名委員にはこれからお知恵を拝借したいという申し入れをしているはずでありますから、たくさんのお知恵をちょうだいしたいと思います。
ただ、椎名委員に対して、ここで政府として公式な見解を私は述べるだけの自信がございません。しかし、今前段の話を聞いておりまして、ふと思い出したのが、賀屋興宣元大蔵大臣が、国内問題はどうにでもなるけれども事外交の道を誤ると大変なことになる、私は特に日中の問題に関して戦費調達のいわば責任を負ってやってきた、これが将来五十年、百年にわたって大変な禍根を残すという、このことに私は今大変恐れおののいているという話をお聞かせ願いました。戻らない、戻れないというその現実と、一つの決断がどれだけ長い間自分の国の運命を左右するか。この問題を今、椎名委員が太平洋戦争史をお話しされている中で、ふと思い出したわけであります。
私は椎名委員より若干早くて、もっと戦争の惨禍を知っているつもりですし、それからその後、戦史も調べているつもりであります。
ただ、もう一つお互いに考えなければならないのは、明治以来、日本が開国をして、そして何とか日英同盟ができ上がり、弱い国、後なる国、懸命にやっている国だという援助をもらった。そして、いずれの日かロシアというものの力が南に加わってくる。それに対する恐怖心が欧米国にあった。それと相まって日本は援助をしてもらったわけでありますが、ソ連が革命というか、それに成就をしてから南進の圧力が減った。その後、やはり日本も各国の列強の進路と同じような富国強兵の道を歩んだわけでありますが、不幸にして日英同盟が破棄される、いわば四国条約になる間において、日本という国はそれ以降変質をした。
これは、今ちょうど日米安保というものが、音がうるさいから、海兵隊がだめだからなくなった方がいいという思いがあるかもしれませんが、(発言する者あり)短くて済みますからちょっと聞いてください。
そういう思いを込めますと、何としてでも、この日米安保条約というのはちょうど日英同盟のようなもので、漠然とした日本に対する安定感、その日英同盟がなくなってから我々は狭隘な軍国主義の道を歩んで、負けられない負けられないというところから必勝の信念に変えてしまった。
そういうことがあるので、日米安保条約というのを今日的な見解だけで見るのではなくて、やはり日本が軍事大国にならないための一つの私は手法であると思いますし、それからもう一つは、日本が軍事大国にならないまでも、米軍がいなかったら日本は自衛のためにもうちょっと補強しなきゃならない、それがアジアにどんな影響を及ぼすかということを考えてみますと、この日米安保条約の効用というのは大変大きい。
それにしても、沖縄に余りにも大きい。五カ月と言われますが、なかなかそれはできなかったと思います。焦土作戦のいわば準備行動、そういうのを考えれば大変な問題があったわけでありますから。
これからは日本のいわば先兵的な役割というか、沖縄がこれからアジアに開かれた地域としてどんなことができるか。いや、日本のいわば一番の担い手になり得る可能性があるんではないか。そういうことから、椎名委員のひとつ御教示にあずかりたい、こういう思いでおりますので、公的な場での討論はできませんが、ぜひお教えを願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014960X00419970415/242
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243・椎名素夫
○椎名素夫君 どうもありがとうございました。時間をとりまして申しわけありません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014960X00419970415/243
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244・北澤俊美
○北澤俊美君 委員長、だめだよ、こんな。どんな立派な答弁だろうが何だろうが、議会だよ、ここは。議会で時間を決めてやっているのに、一言も言わぬということはどうなのか。みんなに委員長が、少し時間を欲しいとかなんとか裁きをしなかったらだめですよ、これは。
これから始めます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014960X00419970415/244
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245・倉田寛之
○委員長(倉田寛之君) 後ほど、また理事懇等でそのお話は承ることにいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014960X00419970415/245
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246・北澤俊美
○北澤俊美君 最初に、総理と法制局長官に聞いておいていただきたい。
政府委員というのは、総理大臣が任命をして国務大臣の補佐をするためにここへ出てきておられる。これは国会法で決めてあるわけです。
そこで、きのうの議事録をちょっと読むと、こういうことになっておる。「法制局長官の答弁なんかいいですよ、いい。聞いちゃいないんだから。何やっているんだ。委員長、おかしいよ。質問者が聞いてもいないのに何で出てくるんだよ。」、ここで法制局長官が出てきて、「先ほどからの御議論の組み立てを聞いておりますと、自分の土俵で相撲をとっておられるわけでございますが、」と、こう言っている。これは、理事会で処分はいろいろと議論をすることでありましょう。自分の立場というのをわきまえて発言しなきゃいかぬし、これはまた任命した総理の責任にもなるわけですから、この辺のけじめをきちっとしていただきたい、まずそれを申し上げておきます。
さて、この法案の提出者にきのう私は答弁を求めないで幾らか申しわけないような気がしておったわけでありますが、きのう、きょうの審議を聞いておりまして、私もこの法案については賛成の立場で臨んでおるわけでありますけれども、これで沖縄は基地がずっと今の形で、努力はして削減をしていくんだろうと思いますけれども、永続するんだなと、こういう気持ちになったわけです。
先ほどちょっと椎名さんからもお話がありましたように、沖縄の方針はまた二〇一五年にということもありますけれども、こういう中で、きのうからの議論を聞いておりますと、一坪地主のことを盛んに言う。長官もなかなか苦労して、ままならないものだから、かなり過激なことも言っておった。
私も地方議会出身でありますけれども、もう二十数年議会をやっております。しかし、私がいつも心がけておるのは、自分の心がけをいいと言っているわけじゃないんですけれども、少数者の意見の中にどこかに真実がないかということを常に考えることは議会人としては大事なこと、それからまた特に施政者としてはこれは大事なことなんですよ。
いつも県議会に一人か二人しか当選してこない政党があります。この人たちの議論を聞いていると、唯我独尊であったり思い込みが強過ぎたりして辟易することの方が多いんだけれども、しかしその議論の中に大変に先見性のあるものを見つけることがたまにあるんですよ。例えば、学校の四十人学級、三十五人学級なんというのをかなり早くから言っていた。しかし、彼らが言ったときにもしやれば財政的に大変な負担を国が負っちゃったかもしらぬ。しかし、それは二十年たったら現実のものになっているわけですね。だから、議論をするときには必ず少数者の意見の中にどういうものがあるか。
今度のこの法律は、政府側にはいろんな言い分もあるかと思いますけれども、行政府が手詰まりになってきた中で、その解決を立法府にゆだねてきたわけでしょう。だから、政府はそういう手だてを持っているわけだ。一方で、沖縄の一坪地主と言われる人たちは、手法がどうのこうのという批判は受けるかもしれないけれども、合法的に抵抗をしているわけですよ。彼らにはそれしか方法がなかった。私もそのことにくみするつもりは全くない。しかし、そのことをみんなが議会で寄ってたかってあしざまに言ったのでは、法治国家としての体をなさなくなってくるわけだ。
まず、この辺の感想を伺います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014960X00419970415/246
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247・久間章生
○国務大臣(久間章生君) 御承知のとおり、私も防衛庁長官に就任しましてから、一坪地主の話はほとんどしてきませんでした。もうずっと土地収用委員会の裁決を期待して来ておりました。ところが、三千人の人がこぞって反対しているじゃないか、そういう中で政府はこういうことをやるのか、ああいうことをやるのかというような議論が大変幅広く出てまいりました。一方、二万九千人の賛成しておられる方々が陳情に来られまして、我々これだけ大多数が賛成しているということはほとんど表に出ない、反対の三千人ばかりの話が余りにも出るというようなことを言われましたために、これは公平に見なきゃならないと、そう思って調べてみました。
そうしたときに、とにかく百十数名の方々は、戦前からその土地を持って、自分の信念に基づいて、そして反戦の意思もあられるでしょう、あるいはまた自分は自分の土地として使いたいという気持ちもあられるでしょう、そういう信念のもとにずっと反対運動を貫いてきておられる。
これは私はそれなりに敬意を表しましたが、そのうちの二人の方が手放されて、しかもそのうちの一人の方が残りの土地については国に払い下げをされて、もう在来地主をやめてしまわれた。そういう状態の中で、そのたった二人のところに三千人の人たちが全部ぶら下がっているという状態を見たときに、これはやっぱり異常だと、このことについては事実を明らかにしなきゃならない、した上で判断してもらわなきゃならないと思いまして、私はそういう意味じゃ憎まれ役になるかもしれないけれども、この事実だけはしようと思いました。
私は、少数だから大きいからということで、それによって耳をかさないということはございません。必ず聞いてきておりますけれども、少なくともこういう異常事態の中で、国民にも知ってもらった上で判断してもらうべきだというような気持ちになったのは事実でございます。そのためにやや感情的になったんじゃないかととられたとすれば、それは私の不徳のいたすところであって、大変反省しますけれども、土地の利用のあり方として私は決して望ましくない。
そして、こういう状態が本土に移ってきたときに、私は大変になると。だから、今度の法律でいわゆる時限法にしなかったのは、そういうことが来年、再来年にあり得るということを恐れたからでございますので、どうかひとつ、今度の問題でとにかく完璧を期したというのは、そういう意味じゃ非常に細かいところまでやってしまったという気がせぬでもないですけれども、それはそういうようなおそれがあったからでございますので、どうぞよろしくお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014960X00419970415/247
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248・北澤俊美
○北澤俊美君 長官が健全なお気持ちをお持ちになっていることを疑っているわけではない。
総理を持ち上げるつもりはないんだけれども、ちょっと昨日の答弁の中で、沖縄の人たちにあらゆる条件を外したら、だれ一人として基地を欲しいなんて思っている人はいないだろうと。これが原点であると僕は思うんです。
沖縄の人たちというのは、きのう僕もちょっと言ったけれども、明治で三十年、それから戦後で二十五年、これだけハンディキャップをしょっているんですよ。国がおくらせちゃったわけなんだから。それで、沖縄に戦後もう既に五兆円を超える金を出しているじゃないかというような発想は、やっぱり言葉を慎んでいかなきゃいかぬと私は思うんです。
ありきたりで、人の言葉を使って恐縮ですけれども、重ねて沖縄を思うときに、私はきのうもちょっと東恩納寛惇教授の言葉をかりましたけれども、もう一つ、アメリカ軍が沖縄の住民の土地を強制収用したときに言った言葉があるんです。権力をもって沖縄の土地にくいを打ち込むことはできても我らの精神にくいを打ち込むことはできないのである、これこそ歴史を持つ民族の力である、一千年の文化に誇りを持つ者の力である、こういう言葉を残していっておるわけですから、そのことを我々はよく腹に、心に置かなきゃいかぬというふうに思います。
そこで、外務大臣、済みません、きょうの通告はしないで、きのうの通告の残余をやっておりますので。
アメリカ側からの発言については、きょういろんな人も発言をしてこられて、兵力の削減についていろんなシグナルを送ってきています。これは私なりの考え方ですけれども、これは相当意味があって、我々は沖縄の問題をこれで処理が、条約上の義務は果たすことができるわけですけれども、北朝鮮の状況について、私たちが知らない水面下で相当情勢は動いているのではないかというふうに思うんですよ。北朝鮮はもうアメリカに頼らなかったら、アメリカと窓口を開かなかったらどうにもやっていけない状況だというふうに思うんです。
そうしますと、極東の軍事情勢を論じてきた北朝鮮の脅威というカードは使えなくなってきている。したがって、それに煙幕を張って新しい展開をするためにアメリカはいろんな立場からシグナルを送ってきているのではないかと思うんですが、まずそのことについて、どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014960X00419970415/248
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249・池田行彦
○国務大臣(池田行彦君) まず一つ、北朝鮮が米国と、それは確かにそういう面はあると思います。現在、いわゆる四者協議というプロセスの前段階が進んでおりますけれども、そういった中でも北朝鮮がまず米国と話をしながら今の窮状から抜け出す力をという考えを持っていることはうかがわれます。しかし、南北対話が中止になったということで今韓国もいろいろ努力している、我々もそれを支持している、こういう点がございます。
それから、そうなるといわゆる北朝鮮の危険性と申しましょうか不安定要因といいましょうか、そういった要素がなくなってくるので、米国としてほかのところに米国のプレゼンスの根拠を求めているのじゃないかという御趣旨かと存じますけれども、従来、米国も北朝鮮あるいは朝鮮半島の不安定要因というものは非常に重視はしておったと思います。しかし、それだけでこのアジア太平洋の問題を考えておったのではないと思います。ほかにも不安定な要素というのはあちらこちらにあるわけでございます。
そういったことを考えて、全体としてこの地域の安定を図る上で米国がこの地域にプレゼンスを維持するということは大切だ、こういうことで考えておったと思いますので、必ずしも北朝鮮の動向によって急に論拠を変えたということではないと思います。
ただ、あえて申しますならば、これまでもいろいろ理由を挙げておりましたのが、朝鮮半島情勢を非常に強調しておったのが、ほかの要因もあるんだぞということを改めて述べておるという傾向はあるいはないとは言い切れないと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014960X00419970415/249
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250・北澤俊美
○北澤俊美君 先ほども官房長官が言われておりました。私たちは新しい時代へ一日一日と出ていくわけですけれども、常に物事は歴史に学んでいかなきゃいかぬわけで、私は現在考えられる最大の安全保障はやっぱり日米の安全保障をきちんとしていくことだというふうに思います。
かつて、官房長官もちょっと言われていましたけれども、思い上がって日英同盟をだめにした、ここから我が国の悲劇が始まったわけです。それはそんな何百年も前の話じゃないんですね、つい先ごろの話。
これを考えたときに、私は、日米の安全保障条約というものを国民がもっともっと日常の中で理解のできるような、議会の中でけんけんがくがく議論して、なかなかはっきりした道筋がわからぬような現状であってはいかぬというふうに思うんです。
それだけに、今度総理が日米会談に行かれるわけですけれども、外務大臣の立場として、今までは、海兵隊の削減は、もうこんなものは言うべきじゃないと、言うなんということを言う方が常識的じゃないというような論調になってきていますけれども、私は、この法律を成立させて条約に対するきちんとした日本の立場を築いた以上は、アメリカに対して日本の国民が持っている気持ちというのを伝えることが大事なことだと思うんだが、どうですか、外務大臣。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014960X00419970415/250
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251・池田行彦
○国務大臣(池田行彦君) 私どもが申し上げておりますのは、現時点で国際情勢その他を考えた場合に、海兵隊も含めまして今の兵力構成なりプレゼンスのレベルというものが適切であると申しております。
ただ、中長期的には情勢の変化があればまたいろいろ変わり得るわけでございます。情勢だけではなくて、例えば軍事技術の変化なんという要因もあり得ましょう。そういうことは我々も否定いたしません。そして、安保共同宣言の中にもそういった国際情勢の変化等があった場合には、それに最も適切に対応するのにはどのような防衛政策あるいは軍事体制がいいか、それは日米間で協議しようということも書いてあるわけでございますから、それはきちんとやってまいりたいと思います。
ただ、現時点ではそういったことを提起すべきタイミングではない、こう思っております。
もう一点、委員のおっしゃいました、しかし日本人の中にそういった気持ちがあるということは米国に伝えるべきではないかという点でございますが、それはおっしゃる意味はよくわかりますし、現に私どももこれまでも申してきております。こういう議論も随分あるんだ、こういう論調でというようなことは米側に伝えまして、ただし現時点ではそういったことは日本政府も適当ではないと考えている、こういうことを申している次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014960X00419970415/251
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252・北澤俊美
○北澤俊美君 そこで、ちょっと視点を変えてほかのことを聞きますが、北朝鮮に拉致をされたんではないかと思われる今マスコミで取り上げられております横田めぐみさんの一件。さらには、国内から六件九名、これは横田さん抜きで。それから国外で三名想定されます。それから、漁船員で三名。これだけの人が北朝鮮に拉致されたんではないかと。しかも、かなりの資料がある。これは公的なものではないとはいいながら、非常に積み上げた資料がある。それから、北朝鮮から亡命をした人たちの証言もある。これに対して、我が国がどれほどのことをしているかという疑問が今度は政府に向かってあるわけです。
私は、アメリカの政治を見ていますと、これは大統領制であるということの違いもあるのかもしらぬけれども、こういう問題が起きると必ず大統領は記者会見をして国民に対してぴしっと言う。日本にはそういう習慣がない。今現在、国はこのことについてどの程度のことをしていますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014960X00419970415/252
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253・池田行彦
○国務大臣(池田行彦君) 今御指摘の横田めぐみさんを初め北朝鮮が関与したのではないかという疑惑のある事件につきましては、政府といたしましても情報収集の努力はしておりますし、また捜査当局はやはり当然関心を持ってしかるべき調査あるいは捜査の努力は進めているものと承知しております。
ただ、現段階におきまして、それが残念ながら解明されていないと申しましょうか、そういった疑惑というものが真実であるとか事実ではないとか、そういうことが確定するには至っていないということでございます。
今後とも、非常に事柄の性格上難しい点はございますけれども、委員も御指摘のように、最近のあの地域の情勢が流動化する中で新しい情報源となり得るもの、人物あるいはその他のものも出てくる可能性もこれからもございますので、我々としてもなお注目して適切に対応してまいりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014960X00419970415/253
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254・北澤俊美
○北澤俊美君 何でこれを言ったかというと、先ほども申し上げましたように、我が国の安全保障の問題を論じているわけですね。これは国民的な課題として大変大切なことなんです。
ところが、国民一人一人からすれば安全保障というのはある種空気のような存在に思う人もいる。しかし、我が身に危険が及んだときに、我が息子が、我が娘が拉致されて行方もわからぬということになったときに、我が国の安全保障ということについてどういうふうに思いますか。国を守るためには膨大な費用もやり、国を挙げて議論をしているけれども、自分の子供が外国の手によって、しかもそれは組織的な手によって拉致されているということを思ったら、国民は政府に対して信頼感を持ちますか。
しかも、私がいささか憤っているのは、この議員連盟をつくる段になって、拉致疑惑日本人救援議員連盟、こういう名前をつけたら外務省から、これは内々であるようでありますけれども、そういうストレートな名前を使われると北朝鮮を刺激するから困る、違う名前にしてくれと、こう言ったんだよ。こんなばかな話がありますか。聞いていませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014960X00419970415/254
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255・池田行彦
○国務大臣(池田行彦君) 私自身が北朝鮮がかかわった、その疑惑があるとつい先ほども答弁した次第でございまして、今のようなことがあったのかどうか私は承知しておりませんでしたけれども、その点は私どもも決して北朝鮮が拉致したと断定しているわけではございません。断定すればそれはやはり問題かもしれませんけれども、かかわったという疑惑があるということでございますから、そこのところはもしそういうことがあったとしますと少し神経過敏症だったのではないかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014960X00419970415/255
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256・北澤俊美
○北澤俊美君 神経過敏とおっしゃったけれども、現実に一つの家庭の中で十三歳のかわいい盛りの娘が忽然としていなくなった、チラシを配って一生懸命に捜した、ずっと歳月が過ぎて二十何歳の女性に成長したその人を見た、その人と話をしたという人が、北朝鮮にいた人間がそれを証言したとしたら親の驚愕はどれほどかということですよ。それから、それを……発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014960X00419970415/256
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257・池田行彦
○国務大臣(池田行彦君) 外務省の方が過敏だったと言ったんです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014960X00419970415/257
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258・北澤俊美
○北澤俊美君 ああ、そうですが。まあ、それはいい。
しかし、池田外務大臣に少し教えておきますけれども、こういうときに余り笑わぬ方がいい。総理ほど苦虫をかみつぶしてばかりいてもいかぬが、こういうときには笑わぬ方がいい。これはやっぱり問題が問題ですから。
私は、ぜひ外務省のお役人さん方の対応を考えていただきたい。大臣、これからちょっと念を押しますが、この問題について我々議員連盟が何かをやるときに積極的に協力をすることと、それから少なくとも拉致疑惑日本人救援議員連盟という名前を使うことをやめてほしいなんという発想は、絶対これは大臣からしかりつけていただきたい、究明していただきたいと思いますけれども、どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014960X00419970415/258
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259・池田行彦
○国務大臣(池田行彦君) 外務省といたしましては、当然のこととして外交を扱うわけでございますから、各国との関係がどうなるかという点には十分な配慮をしなくてはならないと思います。そして、そういう際にいろいろ考えまして、これは常識的な感覚で特定の国なりなんなりを非難してもいい、あるいは批判してもいいと思われる際でも一歩控えておくということがあるというのが外交の世界でございます。その点は御理解賜りたいと思います。
しかし、そのことと今具体的に委員のおっしゃいました議員連盟の名称云々というところは、これはすぐ結びつくものではない。そういう意味で私は、先ほど申しましたように、その名称について再考を願いたいということを外務省から申したとすれば、それは外務省側が神経過敏であったというふうに私は考えますし、またそういうふうにこれからも外務省の方で心得て行動するようにさせたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014960X00419970415/259
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260・北澤俊美
○北澤俊美君 通告をしてなくて恐縮ですが、総理、今の問題につきまして総理の考え方と、それから間もなく日米会談がされるわけですけれども、北朝鮮に大きなチャンネルを持っているアメリカともこのことについてお話をしていただきたいというふうに思いますが、総理のお考えを最後にお聞きします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014960X00419970415/260
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261・橋本龍太郎
○国務大臣(橋本龍太郎君) もともと、御記憶のように、日朝正常化交渉、この話し合いが中断をいたしましたのが李恩恵という名前で呼ばれる日本人とおぼしき女性の安否の問題、身元の確認の問題でありました。そして、それ以来国交正常化交渉が動かずにいる。しかし、我々はその疑いを捨てたわけでは決してない。
そうした状況の中に、議員からも今ありましたように六件九名、その疑いを持たれるケースが国内に存在し、海外まで入れればあと三名の方が同様の懸念を有されている。国としてこうした情報に関心を持つのは当然でありますし、調べられる限りの手法を通じ、それが正しいものであるのかどうか、その情報が正しくないとすればなぜそういう情報が出たか、こうしたことは我々として確認をしていかなければなりません。その上で、さまざまな手法を駆使してまいります。議員の御要望として承りましたことと、お返事を控えることはお許しをいただきたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014960X00419970415/261
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262・北澤俊美
○北澤俊美君 中身のある答弁でありましたから、私はこれで終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014960X00419970415/262
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263・倉田寛之
○委員長(倉田寛之君) 明日は午前九時三十分に開会することとし、本日はこれにて散会いたします。
午後五時四十六分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114014960X00419970415/263
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