1. 会議録本文
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000・会議録情報
平成九年五月十五日(木曜日)
午前十時開会
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委員の異動
五月十四日
辞任 補欠選任
菅野 久光君 川橋 幸子君
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出席者は左のとおり。
委員長 続 訓弘君
理 事
岡部 三郎君
久世 公堯君
浜四津敏子君
橋本 敦君
委 員
遠藤 要君
志村 哲良君
塩崎 恭久君
中原 爽君
服部三男雄君
林田悠紀夫君
大森 礼子君
山崎 順子君
及川 一夫君
照屋 寛徳君
一井 淳治君
川橋 幸子君
衆議院議員
発 議 者 保岡 興治君
発 議 者 太田 誠一君
発 議 者 坂上 富男君
国務大臣
法 務 大 臣 松浦 功君
政府委員
法務大臣官房司
法法制調査部長 山崎 潮君
法務省民事局長 濱崎 恭生君
法務省刑事局長 原田 明夫君
事務局側
常任委員会専門
員 吉岡 恒男君
説明員
大蔵省主税局税
制第一課長 伏見 泰治君
大蔵省証券局東
京証券取引所監 藤井 秀人君
理官
大蔵省証券取引
等監視委員会事
務局特別調査課
長 滝本 豊水君
国税庁課税部法
人税課長 小武山智安君
労働省労働基準
局賃金時間部賃
金課長 小泉万里子君
参考人
東京大学法学部
教授 江頭憲治郎君
一橋大学商学部
教授 伊藤 邦雄君
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本日の会議に付した案件
○商法の一部を改正する法律案(衆議院提出)
○株式の消却の手続に関する商法の特例に関する
法律案(衆議院提出)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X00919970515/0
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001・続訓弘
○委員長(続訓弘君) ただいまから法務委員会を開会いたします。
まず、委員の異動について御報告いたします。
昨十四日、菅野久光君が委員を辞任され、その補欠として川橋幸子君が選任されました。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X00919970515/1
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002・続訓弘
○委員長(続訓弘君) 商法の一部を改正する法律案及び株式の消却の手続に関する商法の特例に関する法律案を一括して議題といたします。
本日は、両案の審査のため、お手元に配付の名簿のとおり、二名の参考人の方々から御意見を拝聴いたします。
御出席をいただいております参考人は、東京大学法学部教授江頭憲治郎君、一橋大学商学部教授伊藤邦雄君のお二人でございます。
この際、参考人の方々に一言ごあいさつを申し上げます。
本日は、御多用中のところ本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。
参考人の皆様から忌憚のない御意見をお聞かせいただき、審査の参考にいたしたいと存じますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。
議事の進め方でございますが、まず、江頭参考人、伊藤参考人の順に、お一人十五分程度ずつ御意見をお述べいただきまして、その後、各委員からの質疑にお答えいただきたいと存じます。
なお、念のため申し添えますが、御発言の際は、その都度、委員長の許可を得ることとなっております。また、各委員の質疑時間が限られておりますので、御答弁は簡潔にお願いいたしたいと存じます。
なお、参考人の意見陳述及び各委員からの質疑に対する答弁とも、着席のままで結構でございます。
それでは、まず江頭参考人にお願いいたします。江頭参考人。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X00919970515/2
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003・江頭憲治郎
○参考人(江頭憲治郎君) 江頭と申します。
本日、当委員会において、参考人として意見を述べる機会を与えられましたことを大変光栄に存じております。
私は商法を専攻しておりますが、去る五月十二日に、全国の大学で商法を専攻している専任講師以上の学者二百二十五名が、ストックオプション制度導入等のための本法案に関する声明を発表いたしまして、私も呼びかけ人の一人でございまして、声明については新聞でも報道されておりますので、最初に一言、その趣旨について説明させていただきます。
その声明は、ストックオプション制度の導入等自体について、賛成とか反対とかの意見を表明するものではありません。ストックオプションの導入自体に対する賛否を全国の商法学者に尋ねれば、導入に大賛成で、この法案には無用の制約が課され過ぎていると批判する者から、証券市場の透明性を高めることが先決で、現在ストックオプション制度を導入するのは時期尚早であると批判する者までさまざまでありまして、まとまるはずがありません。
この声明の賛同者である商法学者が一致している点は、そのようにさまざまな意見があり得る商法改正が、経済界と申しますか、もう少し正確に言えば、オプション権をもらう側の経営者またはその経営者予備軍である幹部従業員の意見だけが徴されて、それ以外の利害関係者、すなわち株主、債権者等の立場を代弁して意見を述べるであろうはずの学者とか法曹界等は意見を表明する時間的余裕が与えられずに法律が成立しようとしている、その立法プロセスに対する遺憾の意の表明であります。
また、声明は、今回の議員立法という立法形式を批判しているわけでもありません。一部で誤解されているように、法案を法制審議会にかけるべきであったと主張しているわけでは決してないのです。
声明は、議員立法による商法改正も、法案内容等をマスコミ等を通じてオープンにして、国民や専門家に十分議論、検討する機会を与えた上で行われるものであれば、議員立法はよいものであると主張しております。しかし、今回のやり方は、余りに性急で透明性に欠けるという点を問題にしているわけでございます。
そのように、全国の多くの商法学者は、この法案の問題点について、自分が意見を述べる時間もなく法律が成立しようとしているということ、例えば、私の友人の商法学者の一人は、既に出版社に今回の法案の内容に関して見解を述べる論文原稿を渡したそうですが、それが雑誌に載るのは来月になるというので大変残念がっておりますけれども、そういう残念に思っている商法学者が多い中で、本日、私がこの参議院の法務委員会という重要な席で、法案に対する自分の意見を述べる機会を与えられましたことは、まことにうれしく存ずる次第であります。
先ほど申しましたように、今回の法案の内容に対する商法学者の意見はさまざまでありまして、以下は全く私個人の意見でございます。
基本的立場といたしまして、私は、いわゆるインセンティブ報酬の一種であるストックオプションの導入、あるいはROEの向上に資する株式消却をやりやすくすることを目的とする法案のねらいには賛成であります。そうした措置は、今後の日本経済の発展にとって必要だと思うからであります。
ただ、法案のねらい自体はよいとしても、法技術的あるいは法政策的観点から見ますと、今回の法案にはいろいろ問題もあると思われる点がありますので、以下、それについて意見を申し述べたいと思います。
お手元に、極めて簡単なレジュメが参っているかと存じます。
論点といたしましては、最初に、二と書いてある部分ですけれども、ストックオプションに関し、法案は自己株式方式とそれから新株引受権付与方式の二種類を認めることとしておりますが、私は、ストックオプションの実施は新株引受権付与方式だけで十分であって、自己株式方式は弊害を伴うおそれが大きいので認める必要はないのではないかと考えておりますので、まずその点について意見を述べ、第二に、三と書いてあるところでありますが、解釈上の論点及び立法政策的論点、双方について非常に問題が多いのがストックオプションに関する総会決議にかかわる部分でありますので、その問題について述べ、最後に、株式消却の特例法につきましては、もっと利用しやすくすべきだと考える点がありますので、その点について意見を述べさせていただきたいと思います。
まず、最初の点、すなわち自己株式方式のストックオプションにはどういう難点があるかということでありますが、一つには、会社がストックオプションに使う目的で自己株式を市場から購入したけれども、残念ながら会社の業績が悪く、その後株価が低迷したという場合、取締役、使用人はオプションを行使して株式を買い取ることをしないでしょう。それでも会社は、その自己株式を義務として十年間保有し続けなければならないことになります。この状態は、自己株式保有が原則禁止とされている大きな理由、すなわち自己株式というものは、会社の業績が悪い場合、自己株式自体の資産価値の減少によって会社に二重の損失をもたらすということ、まさにその状況が生ずることを意味します。つまり、会社の業績がよく、オプションが行使されればよいけれども、そうでなく、オプションが行使されない場合、会社債権者保護等の上で大きな問題を生じかねない。これは、自己株式方式を新株引受権付与方式に比較した場合の難点であります。
第二に、自己株式を十年間保有するということになりますと、企業会計の上でも自己株式の取り扱いの再検討が必要になるのではないかと思います。
というのは、自己株式は、会社が倒産したときには資産価値がゼロになるものですから、そもそもディスクロージャーの上で貸借対照表の資産の部に計上してよいのか。逆に言うと、株式消却の取り扱いにしなくてよいのかという問題があるわけであります。当委員会で配付されている資料の中にも、必ず消却の取り扱いをするカリフォルニア方式というのが紹介されておりますけれども、日本でこれまで自己株式を貸借対照表の資産の部に計上することが認められてきたのは、会社は短期間にその自己株式を売却すべきものだという前提で制度がつくられてきたからであって、今回の法案のように、十年間保有が認められるのであれば、企業会計上自己株式の資産性を否定するとか、または制限する措置も考える必要があるように思います。
新株引受権付与方式一つであると、オプション行使時に発行済み株式数がふえるから困るという考えで、法案は自己株式方式を認めているのかもしれませんが、発行済み株式数の増加が困るのであれば、ストックオプション付与の段階で一定数株式を消却しておけばよいわけであります。
次に、ストックオプション付与に関する総会決議については、いろんな論点があります。
第一に、自己株式方式のストックオプションは、法案第二百十条ノ二第二項によりますと定時総会の普通決議で実施できるのに、新株引受権付与方式は、二百八十条ノ十九第二項によれば株主総会の特別決議が要ることになっています。この点で整合性がとれておりません。こういうことになった理由は、法案は、自己株式方式を従業員持ち株制度の円滑な運用のための条文だったところに突っ込んで、他方、新株引受権付与方式については、新株の有利発行であるから株主総会特別決議が要るという建前を崩していないからです。整合性をとるためにどちらに合わせるべきかということにつきましては、法案を見た商法学者の間でも意見が大変分かれているんですけれども、ともかく現在の案に不整合があるという点については学者の意見は一致しております。
第二に、総会決議事項の中に、付与されるストックオプションの理論価格を明示して決議せよということが欠けている点であります。この点は伊藤教授の方が御専門でありますが、今、経済学ではオプションという分野は急速に進歩しておりまして、行使期間とか株価のボラティリティーの関数として、評価モデルを使ったオプションの理論価格は算出できるわけであります。そして、総会決議の際にそれを示してもらうことは、報酬の実質的払い手である株主にとって非常に重要なことだと思いますが、法案はそうしたことに全く関心を示しておりません。
第三に、既に法律の成立を見越して、各会社の方が顧問弁護士のところに相談に行かれて、弁護士からそんな解釈があるものかと言われてすったもんだしているとうわさされているのが法案第二百十条ノ二第二項三号及び二百八十条ノ十九第二項の、総会でストックオプションを付与される「取締役又ハ使用人ノ氏名」を決議せよと規定されている点をめぐってでありまして、会社の方は、「取締役又ハ使用人ノ氏名」と条文上規定されているけれども、解釈上、例えば取締役全員とか当社の規定上何級以上の従業員全員という決議の仕方でよいと主張しておられるようですが、「氏名」と法律に規定されているのに氏名を明かさないで有効な決議になるとは、法律専門家の間ではまず通用しない議論のように思います。
とにかく、法案の総会決議に関する部分は非常に問題が多いということを申し上げたいと存じます。
最後に、株式の消却の手続に関する商法の特例に関する法律案でありますが、この法案の問題点は第三条であるように思います。
第三条一項は、「公開会社は、定款をもって、経済情勢、当該会社の業務又は財産の状況その他の事情を勘案して特に必要があると認めるときは取締役会の決議によりその株式を買い受けて消却することができる旨を定めることができる。」とされ、「特に必要があると認めるとき」というのが特例の適用の要件とされております。しかし、この要件は不明確で、実務界にはどういう場合に要件を満たすかについての不安があるようです。公開会社は、商法二百十二条ノ二の規定にかかわらず、定款をもって取締役会の決議によりその株式を買い受けて消却できる旨を定めることができるという単純な規定でよいのではないか、その方が実務的不安を解消して特例の利用の利便性を高めるのではないかと私は思います。
以上で、私の意見陳述は終わらせていただきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X00919970515/3
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004・続訓弘
○委員長(続訓弘君) ありがとうございました。
続きまして、伊藤参考人にお願いいたします。伊藤参考人。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X00919970515/4
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005・伊藤邦雄
○参考人(伊藤邦雄君) 伊藤でございます。
ただいま江頭先生が本法案の作成に至るプロセスについて述べられましたので、私は重複を避けて、それについては一切触れません。
まず、この法案に関します私の感想といいましょうか、基本的評価について述べさせていただきたいと思います。
まず第一に、これは長年の懸案であったと言ってよかろうかと思いますが、ストックオプションへの道が事実上開かれて、さらに株式消却の機会の拡大が図られたということは非常に好ましいことと評価したいと思います。
企業にとっては、業績、株価に連動しためり張りのある役員、社員への報酬制度の拡充が図られまして、とりわけ資金的余裕のない中堅中小企業あるいはベンチャー企業にとって優秀な人材の獲得がこの制度によって可能になるということも評価できる、あるいは期待できるというように思います。これによりまして、我が国の企業経営システムが企業の重要なステークホルダー、利害関係者としての株主の視点を企業経営に織り込みまして、いわゆるグローバルスタンダードに適合する経営のスタイル、言いかえればいわゆるコーポレートガバナンスが確立されることを望みたいと思います。
さらに、現在、日本企業が抱えている問題は、御承知のように、かつてのバブル期に旺盛なエクイティーファイナンスをいたしまして、それによって発行済み株式総数のある種のインフレーションを起こしておりました。それに企業は悩んでいたわけでありますが、そんなこともありまして、いわゆる株主資本利益率、ROE、あるいは一株当たり利益、EPSがアメリカ等の国の主要な企業と比べまして低いという、そういう現状の一因ともなっていたわけであります。この点で、既に発行した流通株式の調整が株式消却という形で発行済み株式総数の整理が従来よりしやすくなるという点で評価できると思います。
以上のように、私は基本的に本法案に対しては賛成という立場をとっております。しかしながら、今回の法制度の改正が実効を上げるようにするためには、やはり多くの課題、問題点あるいは事後的な対応が必要になるということも指摘しなければならないと思います。
多少技術的な問題に立ち入ることをお許しいただきたいと思います。時間がなくなりましたら、また後で質疑応答のところで補完をさせていただきたいと思います。
まず、今回対象になっておりますこの法案自体に対するコメントあるいは若干の疑問を申し上げたいと思います。
まず、法案の条文を見てみますと、とりわけ自己株式の取得によるストックオプションに関しまして、ストックオプションについての種類の定めがないわけです。ストックオプションについてはアメリカが先進国でありますが、アメリカでは、ストックオプションと一口に言ってもいろいろな実はタイプがございます。今回そのような具体的なタイプを定めていないということは、実はいろいろなタイプのストックオプションがこの法律によって可能になるんだという解釈もできるかと思います。
そこで、我が国では余り知られていない、しかしアメリカで比較的使われているストックオプションでSARというのがございます。ストック・アプリシエーション・ライトというそれの頭文字をとったものでありますが、従来のストックオプションですと行使価額に相当する金額を役員、社員の方が払い込むわけです。その後、売却するわけですけれども、もし多くのストックオプションを行使するとなりますと、それだけの資金的な工面をしなくちゃならないわけです。果たしてそれだけの資金的な工面ができるかというと、なかなか難しい点があります。それに配慮したものがこのSARでありまして、簡単に言いますと、その行使するときの行使価額、あらかじめ決められました行使価額とそのときの市場価格、当然市場価格は上回っておりますので、この差額分だけ会社が株式もしくは現金で役員、社員に与えるという、こういうタイプのものがあるわけであります。
私は、今度の法案を見てみますと、これもできるんではないかというように思います。新株引受権のところは、引受権に相当する金額を払い込みなさいと書いてあるんですが、自己株式のところは、その行使価額に相当する金額を払い込みなさいとはたしか書いてないんだろうと思います。そうしますと、このアメリカで認められているSARというのが恐らく認められるんではないか、かなり役員、従業員、社員の方にも歓迎されるのではないかというように思います。
ところが、このSARを日本で実行しようとなりますと実はかなり大きな障害がございまして、これは商法の障害ではなくて、証券取引法に二百一条で差金決済禁止という条文がございます。今言いましたのは、まさに差金なんです。この差金決済というのは、ある種の賭博を禁ずるというようなところからどうやら立法されたようであります。この証取法二百一条が現在障害となっておりますので、この法案が法律として通っても実はSARは実行できないという、そういう問題を抱えているわけであります。これが第一でございます。
それから、今度の法案自体に対します多少の問題点として申し上げたいのは、株式消却に関してであります。
株式消却に関しまして、新たな財源規定が設けられているわけであります。中間配当財源マイナス中間配当額の二分の一と、こうされているわけであります。これについて私、どうもうまく理解できないのでありまして、実際に中間配当を払ったということになりますと、中間配当を払う前の株式消却というのは一体どうなるのか、中間配当の予定額を考えるのかという感じもいたしますし、さらにこれは恐らく実務上かなり困ってしまうんではないかというように思います。
と申しますのは、今多くの企業は中間配当というのをやっておりますが、中間配当の財源は、商法上の規定は、言ってみれば前期の任意積立金とそれから前期から繰り越された利益と、この二つが事実上、多少大ざっぱに言えば財源になるわけであります。ただ、任意積立金は株主総会を待たないと、要するに三月そして六月の期末の株主総会を待たないと取り崩せないんです。そうしますと、事実上は前期繰越利益だけが中間配当財源になっているんです。ですから、中間配当額の多少上回った額を前期繰越利益に事実上はしているわけですけれども、そうしますと実務上は、この中間配当財源マイナス中間配当額の二分の一となりますと、株式消却の財源は相当に狭まってしまう。そうなると、せっかく株式消却の道を広げた、窓口を広げたにもかかわらず、実務上はむしろその幅を狭めてしまうというようなことにならないかという危惧をいたしているわけであります。
さらに、これはまた後で申し上げたいと思いますが、ストックオプションに関する情報の開示に関する手当てがどうもなされていない、先ほど江頭先生も指摘された点でございます。
以上が今回の法案に対するコメントあるいは疑問あるいは課題でございます。ただし、今回ストックオプションがうまく機能するということがねらいでありますので、先ほど証取法についても触れましたが、周辺の法制度についても若干申し上げたいというように思います。
まず、証券市場、証券取引法上の問題でありますが、現在まさに今、証券市場の規制緩和の議論が進んでおります。私も証取審の末席を汚しながらビッグバンの構想を今やっているわけでありますけれども、ストックオプションが機能する大前提として証券市場、株価の透明性というのが確保されなければならないわけでありまして、これは幾ら言っても言い過ぎるということはないと思うんです。ですから、こういった証券市場、株価の透明性というインフラがもっともっと整備されないとうまく機能しないおそれがあると思います。
それから、あとは、インサイダー取引規制、とりわけ役員がストックオプションを行使するということになりますとインサイダー規制の問題が絡んでまいりますので、これを今後もっと検討しなくちゃならないだろうというように思います。現在は証取法百六十四条で、役員がその株式購入後六カ月以内に株式売却して得た利益は返しなさいということになっておりますが、それはそれで機能するんですが、果たしてこれでいいかという問題であります。
それから、これは大変重要な問題でありますが、ストックオプションに関する情報開示の問題であります。まず、その商法上の情報開示をどうするかという、これは今後至急に対応しなくちゃならない問題だろうと思います。総会で何を決議するかということは法案に盛ってあるわけですけれども、株主総会であるいは株主総会後でもいいんですが、では例えば附属明細書にどういう情報を盛り込むとか、あるいは営業報告書にどういう情報を盛り込むとか、そういった情報開示の問題が触れられておりませんので、ここは今後ぜひ早急に検討をしていただきたいというように思います。
この点に関しまして、アメリカの事例をごく簡単に申し上げたいと思います。
大変参考になるだろうと思いますが、法案の中に盛り込まれました株式の種類とか氏名だとか、そういった条件に加えて、アメリカでは、前期中にすべての従業員に付与されたストックオプションの総数に対する個々の役員へ付与されたオプションの割合を、これはSECが規定しているわけですが、開示しなさいと、こういうのがあります。
それから、先ほどこれはまさに江頭教授が言われた点でありますが、オプションのその公正価値をディスクローズしなさい、開示しなさいということになっております。それから、さらにオプションの行使状況も書きなさいと、こういうようになっているわけであります。
さらに、最高経営責任者と報酬額の多い上位四人の役員は、個々の名前を出してストックオプションに関する情報を開示しなさいということになっておりまして、やはり情報開示によってそのストックオプション制度を適正なものにするという工夫がされているわけでありまして、その点は我が国でも大いに今後検討の素材として見ていったらいいだろうというように思います。
時間がございませんので、この後、税務上の問題と会計上の問題を極めて簡単に申し上げたいと思います。
まず、今回導入されるストックオプションの魅力が出るか出ないかは、実は一つは税法でどういうような規定を、取り扱いをするかということにかなりかかっております。
アメリカの実例を簡単に申し上げますと、我が国でもこれからそういう議論が出てくるかと思いますが、ストックオプションは大きく分けて、先ほどのSARを除きますと、二つに分かれておりまして、一つがインセンティブ・ストックオプションと言われているもので、我が国では奨励型ストックオプションと、こう呼ばれております。それからもう一つは、ノンクオリファイド・ストックオプションということで、これは非適格のストックオプションであります。つまり、一定の条件を満たさないものを非適格ストックオプションと、こう呼んでおります。こちらがISOということで奨励型です、それからこちら側がノンクオリファイドということでNSOと、こう呼んでおりまして、この二つで税法上の取り扱いを変えております。
まず、そのノンクオリファイドの方は、まずストックオプションを行使したときに、行使価額とそのときの市価、この部分にまず最初に課税してしまいます。さらに後に、売却したときにまたその売却差益に対して課税するということで、どちらかというと付与された者は課税上のメリットを受けにくいという形になっておりますが、他方、また会社側は付与したときに損金算入ができるという、メリットとデメリットがうまく抱き合わされているんです。
それに対しまして、先ほど冒頭に申し上げた奨励型ストックオプションですと、これは売却時に売却益のみに課税するという、つまり課税のタイミングを随分後ろにずらせるという、こういう形をとっております。言ってみれば、その奨励型のISOは優遇税制を受けられるわけですが、そのために条件を幾つかつけておりまして、例えば株式の売却はオプションの付与から二年以上経過して、かつオプション行使による株式の取得から一年以上経過しなさい、要するに一定期間は持っておきなさいと、こういう条件をつけているわけです。これは、付与してからすぐ行使しますと、果たして長期インセンティブプランとしてストックオプションが機能するかという問題がございますので、言ってみれば、税法上そういうような担保をしていると言っていいだろうと思います。
それ以外にも条件はございますが、省略させていただきます。
続いて、これも今後対応する必要がある問題としまして、会計上の取り扱いでございます。
今回の立法化に当たりましては、ストックオプションをどういうように会計処理するかということは余り議論されていなかったのではないかというように思います。ストックオプションの経済的実態を適切に会計処理するということが大変重要になっておりまして、御承知のように、会計基準の国際化という流れがございますので、我が国のストックオプションもその経済的実態をもっともっと適正に会計処理してディスクローズするという、そういった対応が今後も必要になるかと思います。
それから、会計上、もう一つ大変大事な問題は、これはもう江頭教授が先ほど申されましたのであえて繰り返しませんが、自己株式の会計上の表示をどうするか。今、貸借対照表の流動資産に持っていっておりますが、十年という長い期間になりますと、もうこういうような会計処理あるいは表示では済まないと思います。言ってみれば、貸借対照表のこの株主資本の部の全体から引くか、あるいは先はどのように、株式消却と同じような、減資と同じような会計処理もしくは表示をするかという問題が大変重要な問題として我が国でも浮上してくるだろうと思います。従来は、そういった問題は実務上あるいは制度上ありませんでした。
それから最後に、これは必ずしも法案の問題とは関係ないかと思いますが、大変本質的な問題としまして、やはり今後そのストックオプションがうまく機能するためには、先ほど申し上げましたような情報開示をもっと進めるということと並んで、言葉はきついんですが、ある意味ではお手盛り的なストックオプションが、つまり乱用が起こり得るということも否定できません。
そうなった場合に、現在いろいろ企業の不祥事ということが出ておりますが、例えばアメリカのように、アメリカでは取締役会の中に報酬委員会というのを設けておりまして、この報酬委員会は全部社外取締役から成っております。つまり、中立的な立場でストックオプションをだれにどのぐらい上げるかということを議論して決めているわけでありまして、今の日本の制度を前提といたしますと、こういったストックオプションの付与の公平性、公正性というのがどれだけ維持できるかという問題がありますので、そういった意味では企業の監視体制をもっともっと強化するということが必要になるかと思います。
以上でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X00919970515/5
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006・続訓弘
○委員長(続訓弘君) ありがとうございました。
以上で両参考人の御意見の陳述は終わりました。
これより参考人に対する質疑を行います。
質疑のある方は順次御発言願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X00919970515/6
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007・塩崎恭久
○塩崎恭久君 自由民主党の塩崎恭久でございます。
きょうは、先生方、大変お忙しいところ私ども参議院の法務委員会においでをいただきまして、ストックオプション並びに自社株の消却目的の特例法ということで審議をする際の参考の御意見をちょうだいいたしまして、まことにありがとうございました。
今いろいろお話をちょうだいいたしまして、また、一つ一つの問題についての今回の法案の提案者の考え方、あるいは私どもも賛同者でございますので、一々の反論というのもないわけではないわけでございますが、それよりも、きょうは先生方の御意見をできるだけたくさんお聞かせ願って、今後の審議の糧としたいと思いますので、幾つか御意見を賜りたいと思います。
まず一つは、今回、江頭先生もそのお一人だというお話が先ほどございましたけれども、手続的にいろいろ問題があったのではないかというお話がございました。今回、この問題については、確かに政府の規制緩和の見直しの中で、来年度の早期にということで一応方向性は出ておったわけでございますが、それをあえて一年前倒しで議員立法でやろうというのは、やはり今御案内のように、六つの改革というのを橋本総理を先頭に私ども、これはもう恐らく気持ちの上では与党も野党もなくやっているほど日本の経済、社会、あらゆるところに今危機感を感じながらやっているわけであります。特に、これだけグローバライゼーションが進む中で、世界はなかなか待ってくれないということが私どもこのところ非常に募ってきている気持ちであるわけでございます。
そういう意味で、今回のこの二つの改正案につきましては議員立法で、来年の株主総会ではなくて、ことしの株主総会で企業の人たちが対応できるというようにぜひしたいという気持ちが強く働いてこういう形になったということでございまして、時間的な問題について先生の御指摘は確かだと思うんです。
ただ、それは、実はこの問題は今まで全然審議していなかったかといえば、それもまたうそでございまして、私ども自由民主党の中では随分議論はしてきたつもりでございますし、それから日弁連の方にもおいでをいただき、あるいはマスコミの方にもおいでをいただいたりしながら今回の法案をつくっていった、こういう経緯があるわけでございます。そこにはやはり根底には、今まで基本法は法制審でというのは、これは私どもも今も思っている共通の思いでありましょうし、基本法はそう簡単に穴をあけるわけにいかないということであって、議論をきっちりしなければいけないということでありますが、ただ、往々にして今日まで法制審がかなり時間をかけてきた。新規事業の場合は一年でやったんだと、こういうお話がこの声明の中にもあったかと思うわけでございますが、それでも大体、商法そのものを改正するとか民法そのものを改正するとかいうときには、長いときには五年とか十年とかということであって、ますます世界は待ってくれないという気持ちであるわけでございます。
特に、私ども今回、例えばビッグバンというのを橋本総理が訴えましたが、このときも大蔵大臣と法務大臣、お二人を呼んだ。そこが非常に大切なところであって、この三月末にまとめた金融・証券の規制緩和の中でも法務省関係のものというのが幾つかあって、このストックオプションも一つありましたけれども、そのほかに、例えばABS、これは第三者対抗要件の問題というのがなかなか解決がつかないということでありましたけれども、これも入れるようにいたしました。それから、ミディアム・ターム・ノートというのを導入することにしましたが、これも社債を取締役会に一括授権して機動的な発行をするということで、これはいわば法律の解釈の問題でありましたけれども、これまではできなかったというようなことがかなりネックであった。これはいつも言われることですが、デリバティブズは例えば物によっては刑法の賭博罪になる、先ほど差金決済の話がありましたけれども、そういうことでまだできないということで、随分長い間議論はしてきたけれどもなかなか前に向いて進まない、こんなことがあったと思うんです。
ですから、江頭先生に、まずこの法制審の今後のあり方、世の中の、世の中というのは日本だけじゃなくて世界の大きな流れの中で、これからの法制審の進め方についてのお考えをひとつお聞きしたいというのが第一点でございます。
それから、江頭先生の第二点、先ほどストックオプションで、ワラントの方だけでいいじゃないかとおっしゃいました。確かに、これ新規事業の場合は自己株の金庫株だけということでありましたけれども、今度ワラントを入れるということになって、そうすると損するじゃないかということでありますけれども、これは選択ができるから二つあっても構わないんじゃないかなというふうに思いますが、いかがでしょうかというのが第二点。
第三点は、先ほどのあの特別決議と普通決議の問題であります。これについては、やはりワラントで新株発行ということでありますから、当然既存株主の持っている株式の価値の希薄化というのが生ずるおそれがあるわけでありますから、その付与に当たっては総会の特別決議がやはり要るんじゃないかというふうに思うわけであります。その点についてどう思うかということが第三点でございます。
伊藤先生に幾つかありますが、一つは、これは江頭先生もおっしゃいましたけれども、情報開示の問題、重要性を先生方お二人とも御指摘をされました。それで、今いろいろな問題、野村証券の問題を含めていろんなことが起きているわけでありますけれども、その情報開示の問題、まさに私も全く同感であります。そういう中にあって、コーポレートガバナンスと情報開示の問題でアメリカ型の報酬委員会のお話がございましたが、社外取締役のみで構成されているというお話がありました。
今実は我々、このストックオプション、それから自社株消却の話のときも、一体日本で会社とはだれのものだ、よくわからないじゃないかということでもありますが、こういったストックオプションのようなものを導入することによって株価重視といいましょうか株主重視、そういうメンタリティーの醸成という意味でも大事なんじゃないかという考えで入れているわけであります。根本的にはやはりコーポレートガバナンスというものが公正性、公平性というのを保つためにも必要であろう。しかし、そういうときに、言ってみれば企業風土みたいなものでありますから、この企業風土みたいなものを法律でどこまで変え得るのか、つまり、さらにこの社外取締役のみで報酬委員会みたいなものをつくったらどうだろうというのも一つの案だと思いますが、これが日本の風土に合うのかどうか、あるいはもし合わないんだったら合わせるためには何をしたらいいのか。大きな問題で恐縮でございますが、この点をお聞かせいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X00919970515/7
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008・江頭憲治郎
○参考人(江頭憲治郎君) ただいま塩崎委員から三点御質問いただきましたので、順次私の考えを述べさせていただきます。
まず、法制審議会の今後のあり方という点でありますけれども、私も法制審議会商法部会の委員をしておりますけれども、経済界を中心に、法制審議会にかけていたんではテンポが遅くてとても経済の動きについていけないという批判があることは承知しております。
遅いということは、要素は二つあると思うのでありまして、一つは、そもそも経済界の要望するものを法制審議会がなかなか取り上げてくれない、テーブルにのせてくれないというのが一つだろうと思います。それからもう一つは、のってからが遅いということだろうと思います。
それで、経済界の要望が法制審議会のテーブルになかなかのらないという点につきましては、これは全く、何をのせるかは私の認識では法務省と経済界だけがお決めになっております。弁護士とか学者とかその他の委員は、新聞に出ましてから、ああそういうことになったのかと知るのが実態であります。ですから、その点については我々はどうしようもない点であります。
それから次に、のってからが遅いという点でありますけれども、これにも経済界の方が遅いと思われる理由は二つあるんだろうと思います。
一つには、これは言っては悪いですけれども、よく言われる審議会批判で役所の隠れみの的な審議会というのがありますが、法制審議会の場合はそうではなくて、つまりこれは学者だけではなくて弁護士もおります、それから裁判所の商事部の裁判官も来ております、その委員同士で非常に活発に議論をいたす点、それが一つであります。
それからもう一つは、ほかの審議会と顕著に違いますのは、法制審議会にかかる法務省所管の法律といいますか、民法とか刑法とか、そういういわゆる六法ですね、これを取り扱う法制審議会は、単に政策を決めているのではありませんで、一カ条一カ条、もうほとんど条文を書くに等しい作業をしております。これは、そういう商法を含みます六法は、裁判規範であるという点が大きいわけです。つまり、そういういわゆる六法ではなくて、行政法規でありますと、これは普通、官庁の行政指針みたいなものでありまして、それが裁判所で争われるということはまず考えていないんじゃないかと思います。
ところが、こういう六法の場合は、いきなりだれが訴訟を起こすかわからない。いきなり裁判所へ出ていくわけですね。それで、先ほど言いましたように、関係者、訴訟を起こす人間は一般市民でありまして、一般市民は、役所の通達、行政法規でありますと、法律にこう書いてあっても実は通達でそういうふうには運用されていないというようなことは実際あるんじゃないかと思うんですけれども、この裁判規範の場合は、文字どおり六法だけを見て市民は行動しているわけであります。だから、やはりどういう言葉が使ってあるか、一つ一つ詰めていかなければいけない。先ほどの氏名も、出てしまったらこれは法律家の感覚では氏名を書かざるを得ないんですね。そういうことがありますので、一つ一つ言葉を詰めていく、そこがほかの審議会との違いでありまして、この点で経済界の方は遅いと思っておられるんではないかと思います。
確かに、遅いという批判ももっともなところはありますが、ただこれは、法制審議会は法務大臣の諮問機関でありますから、法務大臣が早くやれと言ったらやった例は過去たくさんあるんです。ということでありますが、塩崎議員御指摘のように、法制審議会には改善すべき点は実はたくさんあると思うんです。
これ越権ですけれども、私は法制審議会の運用につきましては何の権限もないんですけれども、経験からして私の意見を言わせていただきますと、一つは、世間でも言われておりますし、私も感じますのは、やはり各省庁縦割りの審議会になっておりますので、商法の場合、伊藤先生御関係の企業会計審議会とかそういうものと関係するものが多いんですけれども、従来、これ一緒にやるなんということはしていないわけです。一応企業会計審議会をやって、それが法制審議会に投げかけられて、また向こうへ投げ返すとか、そういうことはちょっとむだではないかと思う点は確かにあります。
それから、もっと小人数のグループをつくって機動的に一時にたくさんの課題に対応するということも今後はやはり必要なんではないかという気もいたします。そういう形でよりスピーディーな運用はできるんではないかと考えております。
それから、審議内容をもっと公開せよという点も私も感じております。法制審議会の準備会とか小委員会とかいうのがあるんですが、そういうところはかなり細かい法律的な議論がされておりまして、そういうのは学問的価値もあると思いますので、私は公表した方がいいと思っております。
長くなりまして恐縮ですが、次に第二点、ワラントと自己株の選択の余地があることはいいことではないかというお話ですが、私は、それは選択の余地があるのは悪いことではないかもしれないけれども、やはり弊害との関係で、弊害が多いものであればやめておいた方がいい。確かに、諸外国は自己株方式でストックオプションをやっている国は多いんだと思います。アメリカはそういうのが多いんだと思います。ただアメリカの場合は、会社法の体系自体は債権者保護ということを余り言わない体系なんです。ですから、これはそもそも自己株式取得自由だという前提でできております。
それから、ヨーロッパの場合、ドイツなども今度、自己株方式のストックオプションの導入を考えているようでありますけれども、ヨーロッパ各国はまたちょっと事情が違いまして、ヨーロッパ各国の会社法は大体新株引受権が株主に与えられているんです。つまり、新株発行によって株式の持ち株比率が変わるということを非常に嫌うヨーロッパの会社法です。ですから、そうなりますと、新株引受権付与方式のストックオプションというのはなかなか難しいので、どうしても自己株でやろうという発想になるんではないかと。その点は日本とはちょっと違うんじゃないかという考えであります。
それから、一方は普通決議、一方は特別決議というのはおかしくないんではないかということでありますが、考え方としては、これはストックオプションは一種のインセンティブ報酬でありますから、報酬と割り切ってしまえば普通決議でもいいんではないか、新株の有利発行だということにそんなにこだわらなくてもいいんではないか。それから、先ほど言いましたように、私は、オプションの理論価格を総会決議のときに明示した方がいいと思っておりますので、それをやれば別に普通の報酬と同じでありまして、そんなに普通決議でも弊害が起こるものではないんではないかという気がしております。
以上でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X00919970515/8
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009・伊藤邦雄
○参考人(伊藤邦雄君) 塩崎委員からは情報開示の御質問がありましたが、その前の最初の、私は法制審のメンバーではありませんから、それについて発言できる立場にはありませんが、今私は証券取引審議会の総合部会に入っておりまして、六月に中間報告をまとめる予定で、きょうも日経新聞に一部出ておりました。
新しいやり方であったんではないかなというように思いますのは、大変印象的だったのは、第一回目に、要するに議題を決めずに、皆さんから何が問題かというのをフリーディスカッションといいましょうか、ブレーンストーミング的に出してもらいまして、それを何回かやったんです。そのときに、大蔵省側の発言が、ここでの議題あるいは議論に聖域はないという言い方で始まりましたので、その辺で皆さんかなり自由にディスカッション、議論できたと思います。
やはり証取審で議論していますと、こういうふうに金融ビッグバンとかかなり大きな問題を扱うようになりますと、ほかの審議会といろんなところで絡んでくるのは当然でありまして、そうなったときに、ある種のタスクフォースを横割り的につくるとかいう形にしないとなかなかうまく対応できないだろうなという、そういう感想を持っております。
それから、御質問のコーポレートガバナンスの問題でありますけれども、私は期待を込めまして、今度のストックオプション制度の導入がかなり日本のコーポレートガバナンスのある種のグローバルスタンダード化に近づく有力な一歩になるんではないかというように思っております。
私自身が企業の経営者の方とお話ししていても、なかなかやはり株主の視点というのは言葉として出てこないんです。もちろん、株主総会の場面になりますとそういうようなことを意識するわけですけれども。ストックオプションというのは、ある種、経営者、役員あるいは社員の方の視点とそれから株主の方の視点がかなり融合化するということになりますので、そういう点では日本のコーポレートガバナンスはこれで大分変わってくるんではないかというように思います。
それから、御質問の、法制度によって企業風土は変えられるのかという大変難しい問題でありますけれども、先はどのように報酬委員会というようなものをつくって、内部の事情を余り知らない方だけでストックオプションの付与を決めるというのはなかなか日本ではまだまだ難しいだろうと思います。
それと並んでといいますか、その前にといいましょうか、私はかねがね思っておりまして、取締役という地位と役員という地位、これは実は日本では同じになっているんです。これをやはり分けて考えるということが必要なんじゃないか。どちらかというとアメリカはそういうようになっていると思いますが、ディレクターと取締役会メンバー、つまりボードメンバーと業務執行役員、オフィサーは本来一応分かれているんだと。アメリカですと、実は取締役会メンバーというのは非常に少ないです。GEだとかああいう大きい会社でも十人とか、その程度なんです。この人たちはディレクターなんです。その中に、ジャック・ウェルチを含む極めて少ないオフィサーの方が入っているんです。
ですから、CEOというのはチーフ・エグゼクティブ・オフィサーですから、その方がボードメンバーに一部入っているという形で、日本のように業務執行もする、それから取締役会メンバーとしてある種の監視もするというのは、これは大変難しい要求をすることになっているんで、この辺はやはり今後考えていく必要があるんではないか。そういう点では、法制度としてその辺も担保していく必要があって、そういう点でも法制度によって企業風土というのはかなり変えられるんではないかというように私自身は思っております。
以上でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X00919970515/9
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010・塩崎恭久
○塩崎恭久君 ありがとうございました。時間ですから、結構です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X00919970515/10
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011・浜四津敏子
○浜四津敏子君 平成会の浜四津でございます。
本日は、江頭先生、伊藤先生、お忙しいところ大変ありがとうございます。
まず、江頭先生にお伺いいたします。
まず、今回の手続面ですけれども、法制審の委員をしておられて基本法の改正等にも携わってこられたかと思いますが、法制審での立法のプロセスの中では少なくとも一方当事者だけの意見を聞いて法律案をつくるということはなかったと思います。そういう意味では、今回議員立法という形で、学者の皆様が声明の中でおっしゃったように、確かに、各界の意見をバランスのとれた形で聞いて利害調整をその中に盛り込むという、その手続に若干欠けていた面があったのではないかと私も思っております。この議員立法のプロセスの中にこうした手順を今後は組み入れていった方がいいと考えているんですけれども、江頭先生、議員立法について、あるべき姿についての御希望なり御意見なりがございましたら、簡単にお述べいただけますでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X00919970515/11
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012・江頭憲治郎
○参考人(江頭憲治郎君) 先ほども申しましたように、私たち声明の参加者は議員立法そのものには反対ではありませんで、むしろこれがよく機能すればそれが憲政の常道だというふうに考えております。
議員立法の場合にも、基本法の場合はどこに利害関係者がいるか本当にわからないわけであります。特に学者の立場から申しますと、論文を書いて公表するまでには少し時間がかかりますので、コンクリートな法案の形で出していただく必要は全くないと思うんですが、やはりある程度は、大体こういう線だというようなものは法律専門誌なりなんなりに基本法の場合は出していただいて、学者が議論するというような機会をつくっていただければ大変ありがたいと思います。
従来の法制審議会を通すやり方というのは、これはある意味では役所に何か立法のあれが一元化されておりまして、確かに全国の学者に意見照会はいたしますけれども、それっきりでありまして、あとは法制審議会に関係している者がごちゃごちゃ議論しているという形になるんです。そういうふうにオープンに議員の方々がいろんな案をいろんなところに公表していただいて、学者がそれに対して自由に意見を述べるということになれば、より開かれた風通しのいい基本法の改正になるんではないかというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X00919970515/12
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013・浜四津敏子
○浜四津敏子君 次に、日本におきまして株価の上下あるいは変動をもたらす要因にはどのようなものがあるとお考えでいらっしゃいますでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X00919970515/13
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014・江頭憲治郎
○参考人(江頭憲治郎君) まさにストックオプションというものは、ある人間の努力によって、取締役、使用人の努力によって株価が高くなる、そういうインセンティブを与えるための制度である。したがいまして、ある人間の努力、そういうものが株価に反映するということが制度的に重要な要素になっていると思いますが、これはまさにベンチャー企業のようなものについては非常に当てはまるんだと思います。
ただ、いろんな多くの部門を抱えた大企業になりますと、必ずしも個人の努力は株価に直接反映するわけでもない、そういう要素はだんだん減ってくるんだと思います。ある人が非常に努力してその部門は非常に業績が上がったけれども、ほかの部門が足を引っ張るから株価が上がらないとか、逆に、ある人は怠けているけれども、ほかが頑張ってくれたから株価が上がるというようなことも出てまいるんだろうと思います。大企業の場合は、むしろそういう個々の業績よりも、金利とか為替の影響というのも相当大きな要素を持っているんだろうと思います。
ですから、ストックオプションのあり方としては、そういう金利や為替の動向でストックオプションがもうかったというような時価と行使価額の差額といいますか、そういう決め方でなくて、やはりかなり業績がまさに反映していますねという、そういう行使価額の設定は必要だろうというふうに思います。
それから、大企業でどういうインセンティブ報酬制度を設けたらいいんだというのは、これはまた一つの検討課題であろうと思います。つまり、ある部門の業績に比例した報酬体系をつくればいいわけでありまして、何も株価にそれが反映するというストックオプションだけがインセンティブ報酬ではありませんので、そういうことも今後は大切かなというふうに認識しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X00919970515/14
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015・伊藤邦雄
○参考人(伊藤邦雄君) 今御質問の件について言申し上げたいと思いますが、株価の上下動の要因というのがわかれば、私も全財産を証券市場に全部つぎ込みたいと思いますが、これはもちろんわからないと言った方が正確だろうと思います。
今、江頭先生も言われたように、マクロ要因でかなり動くと思います。当然、為替で動いたりしますが、傾向としてはいわゆるファンダメンタルズということで、企業の業績を織り込んだ形で日本の株式市場あるいは株価も形成されるようになりつつあります、それはバブルのある種の反省だろうと思いますが。これもそういう動きで今後加速されると思いますが、日本の生保等の機関投資家がいわゆるROEをベースに投資意思決定をするよということをもうまさに声明しておりますので、これがグローバルスタンダードですので、その業績にリンクした形で今まで以上に株価が形成されていくようになるだろうと思います。
ただ、難しい問題は、まだ流動的でありますが、持ち株会社がどういうような形で導入されるかによって、例えば持ち株会社の傘下にある会社がストックオプションを導入しようとしたときに、その子会社の株式にするのか、持ち株会社の株式を対象に行うのでは大分違ってきてしまうんです。
ですから、もちろん情報開示の問題もございますので、その辺はまだまだ不確定、流動的だろうと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X00919970515/15
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016・浜四津敏子
○浜四津敏子君 経営者の方々に伺いますと、経営者の経営努力というのが何にストレートにあらわれるかというと、株価というよりもむしろ経常利益ではないかというのが率直な御感想のようです。そういう意味では、最も目に見えて経営努力の結果が決算期の経常利益にあらわれる、株価とどう連動するかというような声も聞くわけです。
今少しお話が出ましたけれども、このストックオプション制度が十分に機能するためには、やはりその前提条件として、今、先生がおっしゃられたように、経営努力があるいは業績が株価に連動するようなそういう市場になっていなくてはいけない。あるいは、市場の透明性とか健全性とかいろんな前提条件が考えられると思いますけれども、非常に重要なこのストックオプションがこれから機能し、効果を上げるために、大前提としてこれだけは欠かせないという前提条件としてはどのようなものをお考えでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X00919970515/16
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017・伊藤邦雄
○参考人(伊藤邦雄君) 経営者の方が、経常利益が大事で株価ということをおっしゃられている方は確かに多いんですが、そう言っている経営者の方が実は経常利益の下の特別利益のところにも大変関心を持っておられます。つまり、業績が悪くなりますと土地を売却したり、あるいは長期短期に持っている保有有価証券を売却して益出しをするだとか、こういうことがあります。ですから、株価に経常利益がより敏感に反応しているのか、その下の売却益、土地の売却益だとかそういったものを出した後の当期純利益に反応しているのか、大分違うと思います。
日本ではまだそこまで実証されておりませんが、アメリカでは継続的な利益の獲得能力といいましょうか、一時的にクロス売買で含み益を吐き出すのではなくて、あれは一時的なものですから、継続的な収益獲得能力で見ようという形になっております。日本もだんだんそういうような形にはなっていくだろうと思いますが、大前提はやはり情報開示だろうと思います。どういうような会計処理をしてこういうような利益に至ったのかという、そこが見えないと、株価とうまく連動しているのかどうかさえもわからないと思うんです。
ですから、そういう意味では、繰り返しになって大変恐縮ですけれども、やはり企業情報、財務情報、会計情報のより詳細なディスクロージャーをもっと進めていく必要があるだろうと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X00919970515/17
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018・浜四津敏子
○浜四津敏子君 先ほどのお話で、アメリカではストックオプションというのは大変ポピュラーになっている、これも機能しているという実態があるようなお話がございました。アメリカと日本では、例えば証券業界のあり方、今おっしゃられた情報開示の問題、あるいは一般株主保護のための規制、あるいは経営監視、市場監視のシステムその他、今おっしゃられたいろんな前提条件といいますか、あるいは環境整備といいますか、こうした面がかなり違うと思われます。
その条件が違う中で、アメリカでストックオプションが成功しているから日本でもと、いわばアメリカの制度の都合のいい部分だけつまみ食いするという言い方もある方はなさっていらっしゃいましたけれども、これが本当に周辺の環境整備をしないまま日本で導入して成功するのかどうか、うまく機能するのかどうか。特に今、野村証券の事件にも見られますように、証券業界全体が抜本改革を求められている。こういう中で、今早急にストックオプションの制度を日本に導入して、本当にその本来の目的を達することができるとお考えかどうか、お聞かせいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X00919970515/18
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019・江頭憲治郎
○参考人(江頭憲治郎君) ストックオプション制度というのは、まさに業績が株価に反映するということを前提にしておりますので、おっしゃられたようなことを確保するのは非常に重要なことだと思います。私も、伊藤参考人がおっしゃいましたように、まず情報が株価に反映する、そういうシステムをつくり上げるのが重要なことだと思います。
従来から問題がありますのは、一つは、日本の株式持ち合い、これがやはり株価の形成をゆがめているという点はあると思いますし、それから、情報開示にどの程度企業自身が熱心かということもアメリカと日本では差があるのではないかと思います。
これは、企業が悪いというよりも、投資家が弱過ぎるんではないかというのが私のいつも言っていることであります。アメリカは、投資家が要求するから情報を出さざるを得ない。日本の場合は、どうも投資家と発行会社が対等に向かい合っているというよりは、投資家の方は非常に弱くて、証券取引法のような、そういう対等の当事者が向かい合っているというイメージよりは、会社法学者が頭に描く強い会社と弱い株主という図式が当てはまっているのではないかという印象があります。情報開示、投資家が強くなるということが必要なんではないかと思います。
それから、インサイダー取引、相場操縦といった面、これもそういう証券取引法のいわゆるエンフォースメントの点でアメリカよりも日本は劣ると言われます。これは、行政機構の簡素化というものとは矛盾する面もありますから、いろいろ難しい点はありますけれども、そういう問題があることは事実だというふうに思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X00919970515/19
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020・伊藤邦雄
○参考人(伊藤邦雄君) 確かに、見方によっては、ストックオプション制度を日本にというのは、要するにつまみ食いではないかという見方も成り立ち得るかもわかりません。また、そういうことを言う方もおられますが、私自身は、つまみ食いではなくて主食だと思っております。
例えば、アメリカの経営者の方といろいろ話をしておりますと、こういう質問をするとアメリカの経営者の方はびっくりしてしまうんです。もしアメリカにストックオプションがなかったとしたらどうですかという質問をしますと、まず面食らいます。面食らうということは、それだけ根づいている、あるいは経済活性化に非常に貢献しているというように言えると思います。もちろん土壌が違うところはありますが、私はそれだけアメリカという一国の経済の活性化に貢献している制度であれば、そのつまみ食いはもうかなり主食に近いぐらいになっていて、我々はよくベンチマーキングといいますか、いい制度はどんどん導入しようということで、私はそれは大いに結構なことではないかと思います。
ただ、先ほどから繰り返し申し上げていますように、乱用の危険性もなきにしもあらずでありますので、これは大変大きな問題でありますけれども、先ほど私は証券市場あるいは株価に対する透明性と申し上げましたが、信頼感、これをやはりつくっていかなくちゃならないと思います。
そのためには、私、先ほどから情報開示ということを申し上げておりましたが、とりわけストックオプションということが問題になりますと、企業の中の情報が企業の中の方によって知られているだけじゃなくて、外に出るということですね。企業外部にきちっとディスクローズされるということがないと、いわゆる投資家からすれば、また企業の中で密室でいろいろやっているというような批判も出かねませんので、情報を外にできるだけ開示するという、そういうことが必要になってくるだろうと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X00919970515/20
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021・浜四津敏子
○浜四津敏子君 それでは、情報開示が大変大事だ、重要だという御意見が両先生から出ましたので、ちょっと各論に入って申しわけありませんが、具体的な開示の方法についてでございます。
今回の改正法の中で、ストックオプションに関しての株主総会決議の中で、取締役または使用人の氏名とか、あるいはその株式の種類、数、譲渡の価額等が決議事項と、こうされております。
これも一つの情報開示の方法かと思いますが、例えばストックオプションで自己株式を取得した場合に、これは株主総会で取締役が授権をされて、その授権の範囲内で具体的に自己株式を取得する。この事後報告ですけれども、これは改正法に何の規定もないわけです。取得後に初めて開催される株主総会に、自己株式取得の理由とか、あるいは種類、数、価額、それから発行済み株式総数の中に占める割合等について報告させる制度を設けるべきではないか。
あるいは計算書類の中でも、先ほど少しお話が出ましたけれども、例えば貸借対照表の中で流動資産の部に他の株式と区別して記載しなければならないと、その程度しか載っておりません。これが短期間の保有であればもちろん問題ないというお話、先ほどもございましたけれども、今度は十年という大変長期になりますので、これにつきましても整備が必要だろう、はっきり目に見える形で示すことが必要なんだろう、こう思います。
また、損益計算書上でも、あるいは営業報告書の中でも、こうした詳細に明示させるという方法が今はありませんけれども、こうしたことから開示を進めていくべきだという意見があります。それについてお考えをお聞かせいただければと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X00919970515/21
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022・伊藤邦雄
○参考人(伊藤邦雄君) 開示の仕方は、幾つか選択肢はあるだろうと思います。ただいま指摘されたような計算書類、貸借対照表のいわゆる注記事項という形で、これからもバランスシートの、貸借対照表の流動資産に載るか、あるいはいわゆる株主資本から控除する形になるかは別としまして、それに対する注記事項という形もあり得るだろうと思いますし、あるいは附属明細書という形もあり得るだろうと思います。ただ、附属明細書は見にいかないと見られないという制約がございますので、直接に出向かないとならないということがありますので、ちょっとその辺の限界はあるかと思います。
そういう点では、これは法制度ではありませんが慣行的にといいましょうか、各企業は株主総会後に事業報告書というのを各株主に送っております。これは法律では要求していないわけですけれども、事実上ほぼ例外なく各企業が、名称は事業報告書という名前をつけていないところもありますけれども、株主に送っております。そこで、そもそもボランタリーなものに、ねばならないとするのは矛盾かもわかりませんが、そういうような慣行をもっともっと根づかせていくという、つまり強制ともう一つは任意の開示という両面から考えていく必要があるのではないかというように思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X00919970515/22
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023・浜四津敏子
○浜四津敏子君 ありがとうございました。以上で終わらせていただきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X00919970515/23
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024・照屋寛徳
○照屋寛徳君 社会民主党・護憲連合の照屋寛徳でございます。
江頭参考人、伊藤参考人、御両名の参考人には貴重な御意見を賜りまして、心から感謝を申し上げます。
私は基本的に今回の改正案に賛成の立場でございますが、幾つか疑問点などについて両参考人から御意見をいただければありがたいというふうに思っております。
最初に、江頭参考人にお伺いをいたします。
昨日の朝日新聞の「論壇」に、早稲田大学の総長の奥島孝康教授が、「開かれた商法改正手続を求める商法学者声明」呼びかけ人の一人として投稿されておるのを読ませていただきました。その奥島教授の「論壇」の中で、「全国の商法学者の圧倒的多数が、今回の商法改正を遺憾とする「声明」に賛同を寄せている。」、こういうふうな記述の部分がございます。
江頭参考人から声明に至る経過等御説明をいただいたわけでありますが、今回の商法改正を遺憾とするという商法学者の先生方の御意見というのは、参考人から先ほどお話しありました立法プロセスに対する疑問というか問題提起なんでしょうか。それとも、内容そのものに商法学者の圧倒的な多くの先生方が遺憾だと、こういうふうな論議の過程だったのか。そこら辺をお教えいただければありがたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X00919970515/24
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025・江頭憲治郎
○参考人(江頭憲治郎君) 先ほど申しましたように、声明の趣旨は、立法プロセスについて意見を言う機会が全くなかったということでありまして、内容に入りますと、自分はこの点が気に入らない、この点を言いたかったというのは、これは四分五裂、物すごくたくさんありまして、それは
一致はしません。
内容についても、先ほども申しましたように、ストックオプションをこれでやろうとしても無用の制約が多過ぎてできない。例えば総会決議で氏名をあらわせということになりますと、これは日本の経営風土を非常に変える話です。とにかく報酬の額を総会で明示せよと言われますと、今までは非常に嫌う。典型的なのは退職慰労金でありまして、退職慰労金についてはこれは報酬の一種だというふうに最高裁の判例でも考えられておりますので、総会で決議しなければいけないわけですが、決して金額は言わない。当会社の内規に従って取締役会が授権してもらう、ただそういう決議をするわけです。これもさんざん訴訟になりまして、いろいろ紆余曲折あったあげく、そういう決議のやり方でも適法だということになっているわけですけれども、そういう風土があります。
そこで、この氏名ということが出てきましたので、あ、これはすごいことだなと。しかし、本当にこれでやる会社は幾つあるか、これは実際できないのじゃないか、だから反対だという人もおります。それから他方では、自分は証券市場の透明性が確保されていないと思うから反対だという人もおります。
そういうふうに、各人が考えておりますのは、そういう手続上問題があったから内容も問題がある、そういう言い方で不満を述べている、こういうのが実態かと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X00919970515/25
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026・照屋寛徳
○照屋寛徳君 伊藤参考人にお伺いをいたしますが、この改正案の提案理由の中で、「株式会社の取締役及び使用人の意欲や士気を高め」る目的、こういうことが言われているわけでありますが、ストックオプションを採用することによって、本当に日本の会社の形態というか実態に照らして、取締役などの士気向上につながるんだろうか。つながるとすれば、どういう条件が整備されていることが必要なのか。
本来、株式会社というのは、資本と経営が分離をしているというのでしょうか、そこに特徴があるはずなのに、今その提案理由に盛られている取締役及び使用人の士気の向上との関係で、先生の御意見をお聞かせ願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X00919970515/26
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027・伊藤邦雄
○参考人(伊藤邦雄君) 御承知のように、この数年、バブルがはじけてからは日本企業は人事制度をいろいろ改革、改善しておりまして、基本的な方向は能力主義という方向に行っているわけであります。
私の知る限りでは、能力主義ということは、社員の方に配分するいわゆる賃金といいましょうか給与の総額はそのままにしておいて、そのパイの分け方をどういうようにめり張りをつけていこうかと。今までは、ある意味では悪平等ではないかという意見もありまして、それが今、日本企業がやっているのは、一定のパイをどういうようにめり張りをつけて、能力ある人により大きなパイを与え、そうでない人にはちょっと減らすとか、そういうことをやっているんだろうと思うんです。
それも一つ、確かに意欲を向上させるという点があるかと思いますけれども、もう一方で、ストックオプションというのは、これは私の見方では、パイの分け合いではなくてパイを大きくすることなんだというように思っております。会社から現金を渡すわけではありませんので、むしろ証券市場でその資金が社員、役員の方に入ってくるわけですので、今やっているパイの分け方をどういうようにめり張りをつけるのかということに加えて、ストックオプションというのはパイを広げるんだということで社員の方の士気を高めることにつながってくるだろうと私は思います。
ただし、どういうようにストックオプションを運用して与えるかは、これは経営者の問題ですので、極めて薄く全員にというようなことをやっていますと、これは余り効果はないかもわかりません。これは企業経営の問題だろうと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X00919970515/27
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028・照屋寛徳
○照屋寛徳君 奥島先生の「論壇」の中でも、「この制度は、証券市場の価格形成が、取締役や従業員の会社に対する貢献・努力を反映する健全かつ公正なものであるとの仮定の下に成り立っている。」と。しかし、そういう証券市場の価格形成が一体前提どおりになっているんだろうかという疑問を呈しておられます。
私どもが心配するのは、いわゆるストックオプションの権利乱用、これが非常に心配されるわけであります。野村証券の不祥事などに見られますように、証券市場における公平性が担保されていないという、さまざまな不祥事が発生しているという状況の中では、国民もそこら辺に心配があるのだろうと思いますけれども、起こり得る乱用の形態というんでしょうか、それを防止する有効な手だてということについて、両参考人からもう少し具体的な御意見を拝聴させていただければありがたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X00919970515/28
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029・江頭憲治郎
○参考人(江頭憲治郎君) このストックオプション制度が乱用される危険というのは、幾つか考えられると思います。
一つは、これは株価が上がれば取締役、使用人が得をするという制度でありますから、一番悪い形態は相場操縦が行われるというのが考えられることでありますし、それからまた弊害としては、場合によってはインサイダー取引といったようなことも考えられます。つまり、ストックオプション権を持っている者が、会社に悪いニュースが発生したときに、それが世間に知られないうちに早く行使して売却しなければ損をするというのでそういう行動をとるというような危険もあり得るかと思います。
日本におきましては、特にインサイダー取引につきましては、従来確かに会社ぐるみのインサイダー取引と言われた事件もあるわけです。ですから、ストックオプションを多くの会社の人が持っておりますとそういうことが起こる可能性もあります。日本のインサイダー取引規制は、これはアメリカのように非常に重い刑事罰を科すとか非常に重い罰金を科すとかいうことではありませんで、むしろ社内管理体制をしっかりして一種の自主規制でやっていこうというのが基本的な考え方でありますので、社内の従業員教育、それから情報管理の徹底といったことが重要であろうと思います。
それから、相場操縦の方につきましては、これはこれまでも最高裁まで刑事事件が上がっていった協同飼料の事件を初めといたしまして幾つか事件が摘発されております。この問題は、実はいわゆる証券取引法百五十九条の誘引目的というものをめぐりまして非常に判例も分かれている難しい解釈問題があるわけでありますけれども、そういう法律解釈を明確化するという点と、それからやはり証券取引等監視委員会を中心とする監視体制の充実ということが必要であろうというふうに思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X00919970515/29
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030・伊藤邦雄
○参考人(伊藤邦雄君) 今、江頭参考人が言われた点は私も大変大事だと思っております。インサイダー規制をどういうように行っていくかということだと思います。
重複を避けて申し上げますと、不祥事が起こっているということと、株価の形成がそれなりに公正に行われているんだと、要するに、不祥事が起こっているから株価の形成が不公正であるというようには必ずしも言えないと思います。現に、アメリカでも当然インサイダーにかかわる問題はSECによってかなり多く毎年摘発されているわけでありますから、不祥事が多いからそこで形成されている株価は不透明あるいは適正でないとは言い切れないだろうと思います。
私はむしろ、言ってみれば、不祥事があるとメンタルな問題で証券市場に対する信頼性というのがどうしても落ちてしまいますので、まずそれに対処しなくてはならないだるりと。つまり不祥事撲滅という、それは大変大事だと思います。
もう一つは、これはアメリカと違うのは、日本の証券市場での株価形成が適正に行われているかどうかというのは実はわからないんです。これは我々学者の、研究者の怠慢と言われれば大変内心じくじたるところがありますが、アメリカでは、こういう情報が出たとき、どういうように株価が形成され、あるいは証券市場が反応しているかという実証研究はごまんとあるんです。それをもってエビデンス、裏づけができているわけです。
ところが、日本では余りにも少ないんです。言ってみれば、ファンダメンタルズにかかわる情報が株価、証券市場にうまくビルトインされているかということをきちっと証明する成果といいましょうか、それが足らなさ過ぎるんです。ですから、不祥事が起こったときにびいんと反応してしまうんです。証券不祥事が起こると当然それに輪をかけた形で過剰な反応で、証券市場あるいは証券会社は悪というようになってしまうものですから、メンタルな問題を解決すると同時に、もう一つ、実証的な裏づけをもっと地道に我々はやはり蓄積していかなくてはならないなと。それは、我々研究者だけではなくて、証券に直接間接絡んでいる方たちの努力ももうちょっと必要ではないかと思います。
それからもう一つ、これは、うがち過ぎの懸念だと思いますけれども、これは役員、社員の方を対象にストックオプションを与えます。もちろん株価がどんとはね上がってくれれば株式を譲渡することになると思いますが、一時的には従業員の持ち株比率が高まるんです。そうしますと、どちらかというと、株主総会で従業員持ち株会だとか社員の方がいわゆる投資家の方の発言を何といいましょうか、やや障害となるような行動をとるとかということがあります。今まで日本企業は従業員主権だと、株主無視だと言われてきたところが、株主ではあるけれども従業員、つまり従業員持ち株比率が高まるとまた難しい問題が起こってくるということはあり得るのかなと。これは多少杞憂になるかもわかりませんが、いわゆる従業員以外の方の持ち株比率が下がってきてしまうとちょっと難しいことがあり得るかなと、起こり得るかなということを思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X00919970515/30
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031・照屋寛徳
○照屋寛徳君 終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X00919970515/31
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032・一井淳治
○一井淳治君 民主党の一井でございます。
まず、江頭参考人の方からお尋ねしたいと思います。
商法学者の声明というのを私も拝見いたしました。これは、私はコピーをもらっているんですが、最初二ページありまして、続いて「今次商法改正法案の問題点」というのが四ページばかりあるんです。これが前から一体となっておったものかどうかわからないんですが、私の手元にはそういう形でとじられてきております。最初に手続面ということが問題点の一に書いてありまして、二番目に会社あるいは証券市場の監視機構の整備等の環境面の問題の指摘がございます。
そこで、会社の監視機構の整備についてお聞きをしたいわけなんですけれども、私も、会社法がきちんと実行されて公正で透明な会社の運営ができなくちゃいけないんだ、もっと日本の会社が近代化しないといけないという気持ちをいつも持っております。
せんだって住専問題が起こりまして国会も大変であったわけでありますけれども、その中でだんだんわかってきましたことは、商法では土地の値段が下がった場合には下げて評価しなさいということが書いてあります。ところが、担保となっている土地の評価を下げなかったということが一番大きな問題になっていると思いますけれども、非常に高く土地を評価しているために優良会社みたいに決算書類ではなっているわけです。
これに対して監査役は恐らく何の機能も果たしていなかったと思いますし、取締役会の状況も、ある住専会社は配当をしているわけです。とんでもないことだと思うんですけれども、それから株主総会でもそういった問題は全く論議されておる状態にない。もちろん、一般的に日本の株式会社は、総会屋が出入りしたりして本当にあっという間に株主総会は終わってしまうわけでありまして、株主の追及というものも、これは子会社であったということがあるかもしれませんが、なされていない。
そういうことで、私はどうも現在の商法の会社の監視機構すら十分に動いていないんじゃないか、機能していないんじゃないかという感想を持っているわけでございますけれども、そういうふうに評価していいのかどうかという点が第一点でございます。
もう一つは、それに対する対策です。どういうふうに対策を講ずると、より公正で透明性のある株式会社になっていくのかということをまずお聞きしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X00919970515/32
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033・江頭憲治郎
○参考人(江頭憲治郎君) ただいま一井議員より引用されました、「今次商法改正法案の問題点」というのは、これは記者会見の席上プレスに参考として配ったものでありまして、必ずしもこれを読んで商法学者がこれの内容にも賛同しているというわけではありませんで、むしろこれは呼びかけ人の事務局が、例えば先ほど手続が悪いから内容も悪いと商法学者が多く言っていると申しましたが、例えばこういうことだという参考としてお配りしたものでございます。
それで、お尋ねの、現在日本の大会社と言っていいと思いますが、大会社の経営監視機構が十分機能していないんではないかという点でありますけれども、おっしゃったような不祥事というものが確かに出ているわけであります。住専問題の例を挙げられましたが、結局、資産の評価等につきましても十分監査役あるいは公認会計士というものが機能していないという御指摘かと思います。
これは、おっしゃるとおり、日本の会社というのは、日本の会社の経営監視機構の特徴といいますのは、社長独裁であるというふうに商法学者の多くは考えております。つまり、アメリカの会社でありますと、先ほど伊藤先生からもお話がありましたように、ディレクターとオフィサーとがはっきり分かれておりまして、会社の経営を本当に日常勤かしているのはオフィサーでありまして、それを非常勤の取締役を中心とする社外取締役が監視しているという、こういうシステムになっております。それから、ドイツはその社外取締役に当たるものが監査役会でありまして、オフィサーに当たるものが取締役で、これが日常業務をやっていて、監視機構としての監査役会があるというシステムであります。
日本は、取締役会が社長を中心とする代表取締役を監視するという建前でありますし、それから、監査役も公認会計士もそれぞれ会社の経営監視機構としての役割を果たすということでありますが、実際上は社長の力が非常に強いためにどれも機能していない。監査役にしてみても、それから各取締役にしてみても人事権を握られておるという問題があるわけでございます。
例えば、実務界の人とも話をするときによく話として出すんですが、会社の中である人が不祥事を発見したというときにどうするかと。日本ではこれがどうも会社の方もよくわからないんですね。アメリカだとこれははっきりしておりまして、もうこれは不祥事、それでどうも日本風に言えば社長が絡んでいるらしいと思えばどうすればいいかというのは、社外取締役のところへ行けということなんです。ところが、日本ではどうもそういう発想は全く、どこへ行っていいかわからないんで、そういうことを発見したらどうしたらいいんでしょう、どこかへ垂れ込むんですかと、こういう話になる。それぐらいしかないわけであります。
それで、おっしゃるような問題はどうしたらいいかということであります。これはいろいろ考えられるわけでありますけれども、日本でもこれは株主代表訴訟とかあるいは株主総会の充実とか、いろんな手だてはあるわけですけれども、株主総会とか株主代表訴訟というのは非日常的な問題の監視しかできませんで、日常的に監視していくシステムというのは、やはり取締役会による監視、それから監査役、会計監査人の監視ということになるんだと思います。これをどうやって機能するようにしていくかというのは日本のコーポレートガバナンスの非常に大きな課題ですけれども、これははっきり申しまして特効薬はない。
私の二十年前アメリカに留学したときの恩師でカリフォルニア大学のアイゼンバーグ教授という人がおります。三、四年前アメリカで、アメリカン・ロー・インスティチュート、アメリカ法曹協会というのがコーポレートガバナンスという報告書のようなものを出したんですけれども、それのチーフレポーターをしているのがアイゼンバーグ教授であります。つまりアメリカのそういう学界の中、心人物でありますけれども、彼が日本へ二、三年前に来まして言ったことは、コーポレートガバナンスの問題というのは、これは世界共通の問題であるが特効薬はないのであると。先ほど申しました取締役会等を中心とする内部監視体制、それから株主代表訴訟等、それから恐らく長期的に見ればもっと力が強いのは証券市場等市場を通じる監視、そういういろいろな制度を一つ一つ粘り強く改良していくことしかないんだということを強調しておられました。
ですから、これは、これさえやればということは言えない性格のものなんですが、日本で先ほど申しましたような内部監視体制を強める努力というのは、それではどういうふうにすればできるのかということを申しますと、やはり一つは、はっきり申しまして法律で社外取締役、今、社内監査役は強制されておりますけれども、法律で強制してみてもなかなかこれは機能しないんです。社長が嫌だと思えば、人事権を実質上握っておりますから、どうでもいい人間を連れてくるわけです。社外取締役を強制してみても恐らくそうなると思います。ですから、本当に株主側から見て役に立つ人をそういう社外監査役、社外取締役にしてもらうことにするためには、ちょっと弱い言い方ですけれども、結局、社長が、ああやっぱりそういう本当に独立した社外監査役、社外取締役というものを置いているといいんだなという、社長がそういうインセンティブを感じるような制度にするということは一つ考えられると思います。
それから、日本でもう一つ弱いのは自主規制機関です、証券取引所とか証券業協会。アメリカでは社外取締役が取締役会の構成メンバーの過半を占めておりますけれども、それは法律で強制しているわけでは決してありませんで、一つは市場のプレッシャーでありましょうけれども、もう一つはっきり形にあらわれているのは証券取引所の規則であります。日本の場合は、証券取引所がそういうことを要求できるというような力関係ではとてもないんです。やはりそういう自主規制団体の力を強めるということも必要なことではないかというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X00919970515/33
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034・一井淳治
○一井淳治君 次に、伊藤先生にお伺いさせていただきます。
証券市場といいますか証券取引の中での公正、透明性といいますかあるいは情報公開といいますか、これが非常に不十分ではないか。さっき住専問題について私言ったんですけれども、例えば銀行が倒産するという、そういった問題が起こりまして有価証券報告書というものを見ますと、いよいよ行き詰まるまで、問題になるまで、内容がそう悪い表示になっていない。それに対して、公認会計士の監査みたいなのが書いてありますけれども、別に問題点を指摘しているわけではない。それで、非常に今の状態がどうも情報開示していないんじゃないか。
それからもう一つは、ある取締役が新製品をつくるようなことを考えて企業の発展を考えるようなことが、ある特定の製品がどんどん伸びているということを適切に情報開示すれば、そうすればまさにストックオプションの効果が発生すると思うんですが、今のような体制ではうまく評価される状況にはないんじゃないか、取締役の努力は適正に評価されないんじゃないかという心配もするわけでございます。
私の質問時間はあと二分しかないんですけれども、簡単に御所見をお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X00919970515/34
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035・伊藤邦雄
○参考人(伊藤邦雄君) 一つのその手だては、時間がありませんから手だてだけを申し上げますと、今度の不良債権の問題も公認会計士の方が基本的には適正意見というのを出してしまうわけですね、問題なしとしてしまうわけです。
アメリカでは事態が大分変わってきまして、今、日本でも少しずつそういう方向に歩を歩み始めたと思いますが、監査法人あるいは公認会計士が監査しまして、最終的には監査報告書というのを有価証券報告書の一番後ろにくっつけるわけです。あれを見ますと、みんな適正適正と書いてあって何の変哲もないんですが、今まさに言われたように、情報化ですね、あそこにもつと情報を盛り込みなさいということで、つまりこの企業の存続する可能性、逆に言えば倒産する可能性を、会計士の立場からちゃんと投資家に示してくださいというような形になってきているんです。当初、アメリカでも、公認会計士やあるいは監査法人の方は拒絶反応を示したんですけれども、社会の期待がそういうふうになっているわけです。
今度もやはり不良債権開示の問題で、公認会計士の方に対する社会の期待は、もっと内部に通じている、通じているというと失礼ですけれども、内部の情報を持っているんだから、もっときちっと情報を開示してください、こういうことを言ったんですが、そうはなりませんでした。
ですから、その監査報告書というあの中を紋切り型にしないで、もっと投資家の方に公認会計士として伝えるものを伝えていくという形でこれから担保するというのも、一つのやり方だろうと思います。
先ほどの御質問で、一つだけちょっとつけ加えさせていただきますと、監査役の問題もありますが、監査役の方とお話ししていて、監査役の方もある種同情できる点がありまして、監査室というのがあるんですね。スタッフを抱えているんですが、少ないんです。会社によっては、あの監査室のスタッフはだれのためのスタッフかというのがわかっていないんです。基本的に、多くの場合は社長のスタッフなんですよ、監査役のスタッフではなくて。そうしますと、監査役の方はスーパーマンでもない限り、そんないろんなことを調べて、ここおかしいんだよということを発見することはできないんです。ですから、そういう制度面でのまだ不十分な点があるだろうと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X00919970515/35
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036・橋本敦
○橋本敦君 きょうは、両先生、御多忙の中ありがとうございました。
江頭先生の先ほどのお話もございましたが、学者の皆さんが今回の問題について声明をお出しになりまして、議員立法による商法改正に反対するものではないけれども、この問題については、声明のお言葉によりますと、ストックオプションを導入するにしても、それに伴い株価操作やインサイダー取引等の弊害が生ずるおそれが少なくないためにどういう方法をとるべきかなど、法政策的、法技術的見地からの議論はいろいろあり得るわけである。そういうわけで、情報を国民に十分公開して、我々法律学者あるいは法曹実務者等の意見も十分に踏まえた上で、種々の法的問題を検討して、その上でなされるということが望ましいという御指摘がございまして、私ももっともな御意見だというように拝聴いたしました。
そういう点で、きょう両先生にお越しをいただいて、参議院法務委員会で審議をやったということは、そういう意味では一定のよいことであったというように思っておるわけでございます。
まず、江頭先生にお伺いしたいんですが、我が国の商法が二百十条を原則として、自己株式の保有を基本的には禁止をしてきたと。そういうことから見ますと、九四年の改正に続いて、そしてまた一部新規企業におけるストックオプションの導入に続いて、今度の改正というのは非常に大きい問題でございます。
こういうストックオプションの全面的なと言ってもいい大きな導入については、私はまだまだ議論を深めなきゃならぬ問題が多々あると思うんですが、差し当たり第一の問題として、先生がおっしゃいましたが、ストックオプションを導入するとしても、新株発行引受権を与えるというだけでよいのではないかと。自己株式の保有を会社がやり、それを取締役及び無差別的に使用人全部にも出せるという仕組みは、我が国の今の制度の現状からも、あるいは種々の予想される株価操縦や会社支配やあるいはインサイダー取引などという弊害を、九四年改正が行われた現在以上に助長するというおそれもあるので、その部分は問題ではないかという御意見かと思うんです。
先生のおっしゃる新株引き受けたけでよいのではないかという、そういう点についての御意見をもう少しお伺いさせていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X00919970515/36
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037・江頭憲治郎
○参考人(江頭憲治郎君) ただいま御指摘がありましたように、私は、先ほど申しましたように、自己株式方式のストックオプションというのは危険が大きいというふうに思っております。法律家は大体ペシミストが多いのか、悪く出た方のことを常に考えます。
例の変額保険という問題がありましたけれども、私は実はあの変額保険を導入したときの保険審議会の専門委員をしておりました。そうしましたら、ある週刊誌に、ああいう制度はけしからぬと、あれを決めたときの委員の名簿はこれこれだというのが出まして、私の名前も出たんですが、そのときはまさか銀行からお金を借りて保険料を払い込むなんということは夢にも思っておりませんでした。インフレに強い、インフレ対策としての長期の保険だというふうにしか思っておりませんでした。しかしながら、ああいうバブル経済の楽観的な雰囲気の中でああいうことが起こったわけです。
このストックオプションについても、やはり悪いときのことというのは考えておかなければいけないのであって、そのときのことを考えますと、新株引受権付与方式のみの方が安全ではないかということを考えております。
ただ、これは先ほどもちょっと御意見が出ましたけれども、チョイスでありますので、こういう法律ができましても、新株引受権付与方式だけを採用していただければそういう弊害は起こりませんので、私は、この法律がもし成立するのであれば、ぜひそういうふうに運用していただきたいと会社に期待する次第であります。
それから、これは十分の一ということになっておりますけれども、恐らく大企業を考えますと、十分の一なんというのは物すごく大きな数でありまして、こんなことにはならないと思うんです。これは、中小企業も考えておるから十分の一なんだろうと思います。
そういうことで、この法律が通るのであれば、賢明な運用がなされるということをこいねがう次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X00919970515/37
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038・橋本敦
○橋本敦君 もう一つ、私も先生の御意見に全く同感なんですが、総会決議の問題なんです。配当及び利益の処分、これは株主総会の決議の専権的な事項といいますか、権限に属するわけですが、この問題で、普通決議でいいのか、特別決議でいいのか、これは慎重に考える必要があると思います。取締役及び使用人が新株の引受権を持つ、あるいは自己会社の株式の権利行使ができる、こういうことになってきますと、現在の取締役の会社支配ということが非常に強くなってくるという心配があるわけです。
そうなりますと、一般株式の権利ということとの兼ね合いで考えますと、そういうストックオプションをやる上について、一般株式の権利を平等に保障するという点からいえば、総会での特別決議がやっぱり要るんではないかというように私も思っておったんです。その点について、先生が総会で特別決議が必要だという御意見をお述べになったその理由をもう少し具体的にお述べいただければと思うのですが、いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X00919970515/38
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039・江頭憲治郎
○参考人(江頭憲治郎君) 御指摘のように、改正法案の二百十条ノ二は普通決議、そして二百八十条ノ十九は特別決議ということになっております。
それで、二百十条ノ二はもともと従業員持ち株制度を円滑に運用するためでありまして、これは従業員持ち株運用のときは六カ月以内に売るわけです。ですから、これは自己株式取得は一種の利益配分だから買うときに普通決議が要ると。従業員持ち株会に売却するときについては半年以内だから、確かに買い値よりも時価が上がっていることはあり得るけれども、そんなに変わっていないでしょうということで普通決議でかつ取得価額で売ってもいいですよと、これが二百十条ノ二であります。
それで、そこへストックオプションを突っ込みますと、これはストックオプションが行使されるときというのは、つまり会社から売るときは常に価格は上がっているわけです、時価は。そういう意味では、これは会社の新株の有利発行と全く同じではないかという発想をすると、この二百十条ノ二も特別決議にしろということになってくるわけであります。
他方では、いや、これは確かに新株の有利発行ではあるけれども、これは見ず知らずの人に渡すのではなくて取締役、従業員であるから一種の報酬なんだというふうに考えますと、現在の報酬は二百六十九条で普通決議で決定できますので普通決議だ、こういう考えになってきまして、これは学者の意見も今真っ二つに分かれております。
私はまだ決めかねてはおりますけれども、先ほど申しましたように、このストックオプションの現在の時点で見た理論価格は幾らでありますということを公示すれば、まあこれは報酬と同じと見てすべて普通決議でよいのではないかと今のところちょっと考えておりますが、また考えが変わるかもしれません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X00919970515/39
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040・橋本敦
○橋本敦君 今の点に関連をして両先生の御意見をお伺いしておきたいんですが、報酬ということになりますと、一般の使用人、つまり従業員全部にもストックオプションということが適用されると、法律の定めはそうなっているんです。そうなりますと、御存じのとおり、労基法二十四条の給与の現金払い原則ということとの関係でどう見ておくかということも検討しておかなくちゃならぬと思うんです。その点について両先生の御意見はいかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X00919970515/40
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041・江頭憲治郎
○参考人(江頭憲治郎君) 御指摘の点は、まさにこのストックオプション制度がどのように運用されるかということにかかっているわけでありまして、本当にキーマンにのみインセンティブ報酬として渡すというのであれば労基法上の問題というのは出てこないと思いますが、全従業員に薄く広くばらまくということになりますと、もうこれは要するに賃金、ボーナスを上げたくないから、そのかわり、ただ給料を上げないというだけでは承知しないだろうからこれをあれするということであれば、確かに御指摘のような問題が出てくる。これは、制度の趣旨に沿った賢明な運用がなされることを私は願っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X00919970515/41
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042・伊藤邦雄
○参考人(伊藤邦雄君) 多少繰り返しになりますけれども、基本的には現金報酬ということになっておりますけれども、実際上日本企業でも現物でボーナス等を与えることがありますので、その場合には労働協約でやっておるわけです。ですから、基本的に、今の一時的な現物支給の延長線上だということになればそれほど問題はないだろうと思いますし、あるいは株式という現物で渡しますけれども、この換金能力が非常にあるということであれば、つまりそれだけ高い流動性を持っていれば、これはある種の現金等価物を与えるんだという解釈もできなくはないだろうというように思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X00919970515/42
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043・橋本敦
○橋本敦君 つまり、現金に類似性があると見ていいということですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X00919970515/43
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044・伊藤邦雄
○参考人(伊藤邦雄君) はい、そういうことです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X00919970515/44
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045・橋本敦
○橋本敦君 ですから、その場合、株価が下がるということがあり得ますので、そこらあたりをどうするかということは先生の御意見とちょっと私は違ってくるんですけれども。
もう時間がありませんので、もう一点、伊藤先生に最後にお伺いしたいと思います。先生もおっしゃるように、ストックオプションを導入するとしても、市場の公平性、株価の透明性の確保が先決だということは全くそのとおりでございまして、私もそういうように考えるんです。実際問題として、その透明性なりあるいはインサイダー取引の規制をどう強化するかということは、今度の改正法自体ではなかなか明確にされておりませんで、今後の課題だということです。
それで、もう一つ考えにやならぬのは、私は、日本の株式の現況として、いわゆる一般株主の株を持つということのインセンティブを与えるために配当性志向、これを高めるということをもっと考えるべきじゃないかということを考える必要があると、こう思うんです。先生のおっしゃる株価の透明性確保、そしてまたフェアな市場ということとの関係で、その点はあわせてどうお考えか、もし時間があれば両先生にお伺いしたいと、こう思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X00919970515/45
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046・伊藤邦雄
○参考人(伊藤邦雄君) 透明性についてはこれまでも何度か述べてきましたが、基本的には、透明性が確保されているということは投資家の方が納得して売買ができるということだろうと思いますので、投資家の方にいかに納得して売買ができるようにしたらいいかということを考えるべきだろうと思います。その有力な手だてとして、先ほどから繰り返しておりますように、情報開示をもっと充実しなくちゃならないということがあります。それから、もちろん証券取引等監視委員会のもっと機能といいましょうか、を強化してほしいというのがあると思います。
それで、配当性向の問題でありますが、一般論としては私ももっと配当性向は高くてもいいんじゃないだろうかと。例えばアメリカ企業ですと、平均してほぼ五〇%になりますので、日本もそのぐらいあってもいいだろうと思います。ただ、注意しなくちゃならないのは、どの企業も配当性向を高めるべきだということになりますと、これはやや乱暴でして、例えば非常に収益性の高い、成長性の高い企業であれば、配当に回すよりも会社内に留保して、もっと高い利益が得られる投資先に資金を向ければいいわけであります。ですから、例えばマイクロソフトは創立以来配当しないで、しかしあんなに株価が高いわけです。ですから、その辺の会社のポリシーというものをもっとはっきりうたうべきだろうと思うんです。
現在の有価証券報告書での配当政策についての開示がありますが、いささかやはり紋切り型のメッセージになっておりますので、もっとやはり経営者の方が投資家の方に、こういう考え方で配当していきます、場合によっては配当しませんという方針をクリアに開示していくべきだろうと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X00919970515/46
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047・江頭憲治郎
○参考人(江頭憲治郎君) 私も、これは日本社会共通のあれかもしれませんが、要するに横並びでやっておれば間違いないと、そういうことが日本経済の現状を生んでいるところがあると思います。ストックオプションというのは、それと全く正反対の発想だと思うんです。ですから、やはりそういうふうに、いい方に変わっていってくれればいいなというふうに考えておる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X00919970515/47
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048・橋本敦
○橋本敦君 ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X00919970515/48
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049・続訓弘
○委員長(続訓弘君) 以上で両参考人に対する質疑は終了いたしました。
参考人の方々に一言御礼のごあいさつを申し上げます。
本日は、御多用中のところ貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。本委員会を代表いたしまして厚く御礼申し上げます。
午前の質疑はこの程度にとどめ、午後一時まで休憩いたします。
午前十一時五十八分休憩
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午後一時開会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X00919970515/49
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050・続訓弘
○委員長(続訓弘君) ただいまから法務委員会を再開いたします。
休憩前に引き続き、商法の一部を改正する法律案及び株式の消却の手続に関する商法の特例に関する法律案を一括して議題といたします。
これより質疑に入ります。
質疑のある方は順次御発言願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X00919970515/50
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051・塩崎恭久
○塩崎恭久君 自由民主党の塩崎恭久でございます。
けさほど、議題にあります二つの問題につきまして、参考人においでをいただきましていろいろと御意見を聞いたわけでございます。いよいよ我々の審議ということになるわけでございますが、今、我が国の大きな流れ、二つあるのかなと私は考えております。
一つは、けさもお話が出ましたけれども、例えば住専の問題であるとか野村証券あるいは大和銀行、あるいは海外ではベアリングスみたいなのもありましたけれども、日本でも住友商事のような問題も起きる。あるいは、近くは動燃の問題もまた起きまして、いわば日本型民主主義というのはこの新しい時代にどういうものであろうか。そのチェックの仕方といいましょうか、今まで行政も含めて余りにもいろいろな問題がチェックをされずに問題が起きてしまった。民主主義の熟度が問われているのが一つの問題ではないかと思います。
もう一つは、そういう中にあって世界がどんどん動いている。その中で、対外競争力もつけなければいけないし、新しいビジネスも生み出すことによって雇用も確保しなければいけない。そういうことで、グローバルスタンダードへのルールの変更といいましょうか、そういうことをやっていかなければいけない。規制緩和に代表されるような自由化への動きという、この二つの大きな流れがあるのかなというふうに思っているわけでございます。
二つの動きを同時に今やろうとしているのが、いわば六つの改革という橋本総理を先頭とする改革だろうと思いますが、多少ちぐはぐするところも時々はあって、けさも多少やり方等について、この議員立法について御批判もあったわけでございます。しかし、同時並行でやらなければ間に合
わないということじゃないかと思いますし、また、今の日本を変えるには政治のリーダーシップが必要だ、こういうことじゃないかと思うわけでございます。
今回、ストックオプションとそれから株式の消却の手続をこの議員立法で変えていこうということでございますけれども、特にストックオプションにつきましてはビッグバンの関連でも議論が重ねられてきました。けさもいろいろなお話がありましたけれども、結局は、ストックオプションというのは、企業が創造する付加価値を取締役あるいは使用人に分配する一つの手段として資本市場のメカニズムを使うというところが本質かなというふうに思うわけでございます。つまり、将来の企業価値の上昇が実現した場合の取り分を前もつて決めておく、そして実際の企業価値の事後的な評価を資本市場にゆだねるということではないかと思うわけでございます。
ただ、そのときに、けさもいろいろな先生方からも御意見も出ましたし、参考人からもお話がありましたが、ディスクロージャーが大事だ、あるいは不正行為に対する罰則が大事だ、こんなことが言われていたかと思うわけでございます。
けさも議論になりましたが、今回、政府の三月末の規制緩和の再改定の場合には、来年度、十年度の早期に何とか導入しようということになっておりましたけれども、これをあえて議員立法で早期に成立させようというふうに目指すことになった趣旨を提案者にまずお聞きしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X00919970515/51
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052・保岡興治
○衆議院議員(保岡興治君) 今、塩崎先生からるるお話がありました認識は、提案者としても全く共有するものでございます。
今、日本は非常に大きな歴史の大転換に立っていて、世界の民主主義、自由、あるいは市場原理にという一つの理想で覆われていく壮大な人類始まって以来の歴史に日本がこれから船出していく、そのための日本の経済構造、あるいはそれを支える国民や関係者の意識の改革、そういったことを強く促すものがありまして、政治もそういう社会の急激な変化、新しい歴史の展開に対して的確迅速に対応する責任が非常に強く求められている時代だと思っております。
このたびのストックオプション制度の一般的導入、あるいは自社株取得・消却の緩和の議員提案につきましては、かねて政府でも一生懸命前向きに検討していただいていると伺っております。ストックオプション制度については、政府の規制緩和基本計画の改定計画においても、九年度中に結論を得て十年度には通常国会に提案して実施ができるようにするという方針も明らかにされて、そして法務大臣も積極的な姿勢を委員会等で表明をしていただいております。
そういうことで、我々はその政府の姿勢を高く評価しつつも、しかしながら、現下の日本の置かれている経済情勢や、急激に経済あるいは社会環境が日に日に変化している、政治がむしろ対応がおくれていろんな対策が後追いになっているというような批判もある。
そういう中で、ぜひことし、一年前倒ししてこの制度が生きるような措置をとるべきじゃないかというふうに考えまして、実は議員提案の方向で努力をいたしまして、過日、連立与党三党の中で取りまとめたものに対し、共産党が残念ながら入っていただけませんでしたが、他の政党は全部共同提案ということにさせていただきまして、国会に提出する運びになったものでございます。
今、塩崎委員がお話しになりましたとおり、ストックオプションというのは、会社が取締役、従業員に対してあらかじめ定められた価額で自社の株式を購入する権利を付与するものであって、株価が上昇すれば取締役等はその値上がり分の利益を得ることができるわけで、ストックオプション制度は有能な人材の確保に資する。要するに、企業は人なりと、これからの時代に対応する有効な制度であり、また取締役、従業員の業績向上へのインセンティブとして機能するとともに、何よりも株主重視の経営に転換を促して企業の活性化やひいては株式市場の活性化にとてもよい効果が、大きな効果が期待されるものである。
自己株式取得・消却については、ROEの向上、したがって株式の魅力が投資対象として大きくなる。そしてまた、だぶつきぎみの株式市場の状況、けさの大学の先生からの御指摘にもありましたが、そういったものを引き締める。あるいは会社の持ち合い制度を解消するということが、これから会社の経営体質を健全化していくためには重要なテーマである、そのことにも受け皿となって働く。また一方、成熟企業の余剰資産というものがこの消却制度を通じて市場に返されて、それが新たなベンチャー企業や投資意欲旺盛な企業の投資に回っていくというパイプ役を務める。
こういった、今の日本にとっては一年でも早く導入すべき重要な制度であると考えて、政府の方針を一年前倒しをして議員立法に至ったのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X00919970515/52
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053・塩崎恭久
○塩崎恭久君 ありがとうございました。
そこで法務大臣に、今回の二つの改正の評価というか、どういうふうにお考えになっているか、お聞きしたいと思うのでございます。これは、もう一足早く通産省が新規事業法、そしてまたことしになって郵政省が開発法ということで、ストックオプションについては既にもう進んでいるところがあるわけでございます。今回は、商法そのものを改正するということでございますし、この自社株消却については今までよりもまたさらに踏み込んでということでございます。
この二つの改正について、法務大臣の御見解をお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X00919970515/53
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054・松浦功
○国務大臣(松浦功君) いずれの法案につきましても、我が国の経済の健全な発展に強く影響を与える問題で、極めて意義のある改正だと思っております。
同時に、時期的にも一年前倒ししていただくということになれば非常に結構なことだというふうに思って、何とか皆様方の御協力によって成立をひとつお図りいただきたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X00919970515/54
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055・塩崎恭久
○塩崎恭久君 ありがとうございました。
それでは、これから具体的な確認をさせていただきたいと思います。
最初に、労働省にお願いをしたいと思うのでございますが、けさの参考人のお話の中にも、要はストックオプションというのは賃金なのかどうかという議論がございました。仮に賃金だと労働基準法とどういう関係になるのか。それから、通貨で払わなきゃいけないというこの取り決めとの関係はどうなのか、こういう点がいろいろな方から指摘をされているわけでございます。
特に、一握りの取締役の場合には余り問題ないと江頭先生などはおっしゃっていましたが、全従業員とかそれに近い形で、ドイツ・テレコムなんというのは大体半分ぐらいの人が、何万人という人たちがオプションを与えられているという例があるわけであります。そういうようなケースを含めて、このストックオプションを賃金と見るかどうか、お答えをいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X00919970515/55
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056・小泉万里子
○説明員(小泉万里子君) お答え申し上げます。
今回の改正商法に基づいて行われますストックオプションから得られる利益は、それが発生する時期及び額ともに労働者の判断にゆだねられているため、労働の対象ではなく、労基法上の賃金には当たらないと考えております。
したがいまして、労働基準法二十四条の通貨払い原則との間では問題は生じないものと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X00919970515/56
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057・塩崎恭久
○塩崎恭久君 今、ストックオプションは賃金ではないというお答えをいただいたわけでございます。そうはいいながら、いろいろな運用の仕方があると思うので、これは運用の面でやっぱり我々はウォッチをしていかなきゃいけないのかなと、こんなふうに思っております。
以下、あと大分項目が多いので、提案者を含め簡潔にひとつお答えをいただきたいと思うわけでございます。
まず第一に、ストックオプションを付与する場合の問題でございますが、氏名あるいは株式の数とか譲渡の価額とか、かなり具体的に随分書いてあります。中でも特に、例えばオプションプラン的に株主総会で決めて、あとの中身をまた取締役会に授権をし得るかどうかという問題で、例えば採用予定者であるとか、あるいは課長以上という決め方をしていたら年度途中で課長になった人とか、そういうことが可能かどうか、提案者にお聞きしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X00919970515/57
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058・保岡興治
○衆議院議員(保岡興治君) この氏名等の事項を総会決議事項にいたしました趣旨からいって、これは、ストックオプションプランがより明確な形で示されて、その結果株主が正しい判断ができる基礎資料ということでございますので、何も氏名を全部、固有名詞を固定的に明らかにしろという趣旨ではないというふうに考えています。
したがって、年度途中で身分資格を取得して、その身分資格等がストックオプションの対象になる理由等がわかるような明示の仕方がきちっとされていれば、予定者であれ既に会社に存在する者であれ、それは必ずしも氏名を明確にすることまでは求めていないと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X00919970515/58
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059・塩崎恭久
○塩崎恭久君 わかりました。
次に、たしかワラント方式のものは譲渡できないということになっていたと思いますけれども、問題は、このストックオプションを相続あるいは生前贈与など特定の場合、近親者とか身近な人に移転することができると解釈できるかという問題について提案者にお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X00919970515/59
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060・保岡興治
○衆議院議員(保岡興治君) 相続は、権利者の意思に基づくものでない権利の移転でございますので、その場合、これは株主総会の決議においてどう取り扱うかを決めていただくという法の趣旨でございます。ただ、生前贈与は権利者の意思に基づく譲渡の一態様でございますので、これはストックオプションの趣旨からいって認められないものと考えています。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X00919970515/60
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061・塩崎恭久
○塩崎恭久君 わかりました。
次に、やはりワラント方式のストックオプションの場合でございますけれども、条文に、会社は定款に定めがあり、正当な理由があるときは取締役または使用人に新株引受権を与えることができるというふうに書いてあるわけです。この二百八十条ノ十九に言う正当な理由、たしかけさの参考人の質疑にも入っていたと思いますけれども、これを定款に記載する必要はないというふうに解釈ができるかどうか、この点はいかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X00919970515/61
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062・保岡興治
○衆議院議員(保岡興治君) 正当の理由があるときに該当するかどうかということについて、個別具体的な事情をこれは株主総会で判断をしていただくという趣旨でそこに要件として定めたものであって、必ずしも定款にその正当の理由の記載は必要ありません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X00919970515/62
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063・塩崎恭久
○塩崎恭久君 これも同じくストックオプション、施行期日を見ますと、自己株型はこの六月一日というふうになっているわけでございますけれども、法案を見ますと、ワラント型の方は施行日を本年の十月一日というふうに書いております。
恐らくこの六月にはたくさんの株主総会が行われることになると思うわけでございますけれども、このワラント方式によるストックオプションに関する決議を十月一日の前に開催される株主総会において行うことは認められないんではないかと私は思いますけれども、その点はいかがでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X00919970515/63
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064・保岡興治
○衆議院議員(保岡興治君) それは、塩崎委員の御指摘のとおり、認められない。ワラント方式は主としてベンチャー企業向けのストックオプション制度でございますので、それらは必ずしも六月に多い定時株主総会ということを頭に置かなくても、制度の運用は十分前倒しの意義を果たしていける環境にあると思います。
一方、自社株取得の方は六月一日の施行で、ことしの定時株主総会にできるだけ間に合わせて、制度が運用されることを期待して施行日を決めたものでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X00919970515/64
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065・塩崎恭久
○塩崎恭久君 今度は、自己株型の方のストックオプションに関する質問でございますけれども、毎年実施をするというようなケースの場合に、前年度に権利付与時に取得した株式、金庫に入っているわけですね、そのうちのいまだに取締役であるとかあるいは使用人に譲渡されていないものを今年度の権利付与の対象として流用、充当するということができるのかどうか。いわゆるプラクティカルなお話でございますけれども、こういう場合の解釈はいかがでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X00919970515/65
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066・保岡興治
○衆議院議員(保岡興治君) ストックオプションのための自社株の取得、保有は、特定の取締役または従業員に譲渡するための株主総会の決議に基づいて認められるものでありまして、しかも、ストックオプションの付与は次の定時株主総会の終結時までにしなければならない。したがって、この時点までにオプションを付与しなかったときは、一般的に言えば、そのために取得した自社株は保有する必要がないことになるわけですから、二百十一条の趣旨に沿って相当の時期に処分しなければならないということになるのでございます。
しかし、その相当な期間というのは、まあ二、三カ月か数カ月かということでございますので、その間に定時株主総会があって、そこで再びそれをストックオプションに利用する旨の決議がきちっと株主の意思でなされれば、それは必ずしも排除する必要はない。一たん放出をしてまた取得する手間を省く意味でもそういった運用が正しいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X00919970515/66
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067・塩崎恭久
○塩崎恭久君 今、提案者もおっしゃいましたけれども、株主の意思がきちっと総会で示されるということが大事であろう。そうでなければ、相当の時期に処分しなければならないという原則には、やっぱり原則として従わなきゃいけないことだろうと思います。
同じように、相当の時期に処分するべきかどうかという問題に関連する問題でございますけれども、この自己株型のストックオプションで当事者間の約定に従って権利が消滅する場合には、その権利の行使により取締役、使用人に譲渡されるはずであった自己株は、この第二百十一条括弧書きによって相当の時期に処分しなければならないこととなるのかという問題。
それから、例えばその相手の人が亡くなってしまったとか、そういうケースですが、事情によって権利付与の対象の方の人数が減ってしまったという場合とか、それから権利付与の対象者が契約締結を拒否したような場合、この場合にはやはりこの二百十一条の括弧書きによって相当の時期にそれに応じた数の株式を処分しなければならないのか。
いささか細かい話でありますけれども、お答え願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X00919970515/67
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068・保岡興治
○衆議院議員(保岡興治君) そういった付与できなくなったような事態、それが合理的な理由で発生したものであって、その相当の期間というものが次の定時株主総会の時期に当てはまるような場合は、先ほど申し上げた趣旨で新たなストックオプションのプランの対象に私はできると思いますが、先ほど委員も御指摘のように、それはあくまでも例外であって、原則として二百十一条の趣旨に沿ってそういう場合は処分すべきものと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X00919970515/68
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069・塩崎恭久
○塩崎恭久君 次は、その消却の方の問題でございます。
定款を変更して取得限度株式数を規定した場合、その限度株式数をすべて買い入れない限り再度の定款変更は行うことができないと考えるべきかどうか。つまり、今回のこの法律では発行済み株式総数の一〇%以内ということになっていますね。これを使い切らないで五%残ってしまったと、そういう場合に翌年度にまたすぐ一〇%に戻せるのかどうかということかと思うのでございますけれども、こういうケースの場合はどうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X00919970515/69
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070・保岡興治
○衆議院議員(保岡興治君) 定款に定められた株式数をすべて買い入れなくとも定款を変更することはできると解します。その場合には、再度定款を変更する時点における発行済み株式総数の十分の一が定款で取締役会に授権できる上限となり、再度の変更前に定款で取締役会に授権されていた株式のうちまだ買い入れていない株式数については、再度の定款変更で取締役会に授権される株式数に含めることになると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X00919970515/70
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071・塩崎恭久
○塩崎恭久君 ややテクニカルな問題の確認の最後でございますけれども、消却の場合とそれからストックオプションの場合といずれも上限が一〇%ということになっているわけでございます。十分の一ということになってございますけれども、自己株型のストックオプションとそれから自社株消却と同時に並行して実施をするという場合に、これは当然別物ということで発行済み株式数の五分の一までできるというふうに考えられるのか、それとも十分の一なのか、その辺はいかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X00919970515/71
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072・保岡興治
○衆議院議員(保岡興治君) 消却のための自社株取得とストックオプションのための自社株取得は異なる趣旨の制度でございますので、取得し得る株式総数の限度の計算も別々に行う。したがって、今、塩崎委員がお話しになったことを前提としますと、五分の一までは可能だと。
なお、自社株の消却は商法の第二百十二条ノ二に基づいて行うのが本則でございます。これによる消却の方は、株式数の限度は法律上定められていない、これもまた並行して行うことが可能でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X00919970515/72
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073・塩崎恭久
○塩崎恭久君 ありがとうございました。
今のお話を聞きますと、法文だけを読むよりは大分フレキシブルな運用ができるのかなという感じがいたしますけれども、余りフレキシブル過ぎても、特に今まで議論がなされてまいりましたその他の株主の利益の問題とかいろいろございますので、その辺のことについてもきっちりとこれからまた詰めていく必要があるのかなというような感じがいたします。
最後に、税の問題でございますけれども、衆議院の場合にも附帯決議で税制上の措置に言及をされておりました。アメリカあたりのベンチャーキャピタリストに聞いても、ストックオプションのキーポイントは税だという話でございます。これをこれからどういうふうに、優遇措置を講ずる必要が私はあるんじゃないかと思います。ですから、ごく簡単に、まず提案者からその必要性それから新規事業法との差異との平伏についてお答えいただき、そして大蔵当局の方からこの点についての方針をお聞かせいただきたいと思います。簡潔にお願いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X00919970515/73
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074・保岡興治
○衆議院議員(保岡興治君) ストックオプション制度については、やはり税の優遇措置というのが重要な意味を持っておりまして、それは諸外国でもそういうふうに認識されて制度を支える仕組みになっております。
先ほどお話しのように、新規事業法あるいは開発法という先行した通産、郵政両省所管の認定企業の場合は、これは取得時には給与所得ということになるわけでございますが、その時点では課税を実施せずに猶予しまして、株式を取得した後売却する時点で、そのストックオプションを行使したときに得た経済的利益とキャピタルゲインもあわせて一緒に課税をする。その場合は、分離課税で二六%、国税二〇%、地方税六%ということでございますので、総合課税の六五%の最高税率を頭に置くと相当な優遇措置になるということでございます。
一般的に導入した今度の制度も同じように税の恩典をつけるべきでございますけれども、この点については、オプションを行使するのはまだしばらく先の話でございますので、来年度税制で手当てをしようということで、我が党の税制調査会でもそういう方向で検討するということを基本的に認識していただいておりますし、姿、形についても基本的にはこの分離課税二六%を基本とすべきではないか、そういうふうに私としては考えております。
しかし、税の公平その他、原則というものがございますので、そういった調和なども含めて結論を得るものと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X00919970515/74
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075・伏見泰治
○説明員(伏見泰治君) 税制の関係、今、保岡先生の方からお話がございましたが、御案内のように、現行の所得税制、原則としまして、ストックオプションの行使により生じます経済的利益、これにつきましては給与所得として課税をするということになります。
繰り返しのお話になりますが、いわゆるベンチャービジネス優遇のための特別な方式として現在ベンチャービジネス税制のようなものがあるわけでございますが、今御議論いただいておりますこのストックオプションのいわば一般化ということになりますと、現行の極めて少数の事業、少数の会社を対象といたしましたものとは、どうしても仕組みを含めまして考え方をもう一回整理する必要があるんじゃないかと思っております。
したがいまして、今後私どもといたしましては、さらにこうした制度の詳細を十分に研究させていただきまして、今お話がございましたが、税制の立場からやはり課税の適正公平、そういったものを確保しつつ、どういうふうに対応すべきかという議論を勉強させていただきまして、今後の十年度改正に備えまして十分御議論をいただくように準備を進めたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X00919970515/75
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076・塩崎恭久
○塩崎恭久君 ありがとうございました。
もう時間でございますのでやめたいと思いますけれども、いずれにしても、今大蔵省からお話がありましたように、特例法ではなくて全般的に一般的にストックオプションを導入するということでもございます。そういうことでもございますから、税に限らずいろいろな面で影響が出てくるわけでございますから、我々としては、健全なる経済といいましょうか会社社会というものをつくるために、けさほども随分出てまいりましたディスクロージャーの問題、あるいは不正行為に対する罰則等々、そういった大きな枠組みも考えながらやらなければいけないと思っているところでございます。
以上で質問を終わります。ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X00919970515/76
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077・浜四津敏子
○浜四津敏子君 平成会の浜四津でございます。
午前中に参考人の方からも御意見が出ました、また商法学者の二百二十五名の方々の声明にも出ましたけれども、今回の立法のプロセスにおける問題点、これは中身がまあ仮にきちんとしているとしても、あるいは結果がオーケーであったとしても、それであれば手続はどうでもいいということではありませんで、民主主義におけるデュープロセスというのは非常にそれ自体が価値を持っている大変重要なことでございますので、この手続の問題について質問させていただきます。
商法学者の方々二百二十五名がこぞって声明を出されるというのは非常に例がない、異例なことであると思います。これは、午前中の参考人の方の発言にもありましたけれども、内容についてはそれぞれさまざまな意見があると。しかし、この手続については、オープンで自由な論議がなされないままに強行された改正であると、問題は学者外しや法制審議会外しにあるのではなくて、改正作業の密室性それ自体にある、声明文の中にもそうあります。
ともかく、一部の関係者のみの意見だけで、株主あるいは債権者の意見を代弁する学者とかあるいは法律実務家の意見を述べる機会も与えられなかった、大変不透明で秘密主義的な印象を禁じ得ない、こういう批判がなされているわけでございます。また、この学者の方々の御意見の中では、情報を十分に国民に公開して、法学研究者とかあるいは法曹実務家等の意見も十分に踏まえて、種々の法的問題を検討した上でなされるのであれば、議員立法による商法改正に反対するものではない、我々が危惧するのは、今回のような不透明かつ法的問題の検討が十分になされないままの商法改正である、こういう批判がなされております。
そこで、今回の議員立法に至った経緯と背景について、まず御説明いただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X00919970515/77
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078・太田誠一
○衆議院議員(太田誠一君) 浜四津議員の御質問でございますが、まず、この法案については、平成六年度の商法改正で、自社株を取得し、消却あるいは従業員持ち株会に対して譲渡できるという、全面的に禁止されておりました自社株取得について初めてそこで穴をあけたということでございます。
私は議論をするとすれば、一部について自社株取得を認めるということが一番大きな改正であったと思うわけです。その延長線上として、従業員持ち株会、従業員の持ち株制度に対する事柄のほかに、取締役にもストックオプションという形でもって自社株を取得してそれを与えるチャンスを与えるということであります。
自社株の取得利益による消却ということについては、これは十分の一についてのみ取締役会にゆだねるということでございますから、これは本質的に内容が平成六年度から変わったということではない。いずれも延長線上のことだろうと思っております。
そうして、今の商法学者の方々の批判というものは、私は、法制審議会を通している通していないというのは、これは行政府の問題であって、内閣の問題であって、それは法務大臣がそこに諮問するかしないかということは法務大臣の裁量にゆだねられていることだと思います。
特に今回の場合は、例えば参議院の法務委員会で審議をされる中で、既に午前中も商法学者の方々の意見を聞いておられるわけでございますので、私は、こういう国会の委員会で審議をしていることこそがまさに開かれた審議であって、そこに出てくる前に自分たちが聞いていないということを議論するというのはいかがなものかというふうに思っております。
また、自由民主党の中での手続から申し上げれば、昨年の今ごろ、一年前からこのことについては議論をいたしておりまして、自由民主党の商法に関する小委員会で、学者は呼んでおりませんけれども、報道関係者やあるいは実務家の意見も聞きまして案を練ってきたところでございます。そして、ことしに入りまして、政府側もこの一年間の間にストックオプションを導入する、規制緩和の一環としてということだと思いますけれども、導入をするということを決め、来年に至ってそれを実行できるように法改正を急ぐという方向も出てまいりましたので、よいと思う方向が出てきているのに一年間時間をかけるというのはいかがなものであろうかということで、一年前倒しでやった方がよいという判断になったわけであります。
これは、当然立法府の裁量権にゆだねられていることであって、それを短時間で済ましたことは、そのとおりでございます。時間が短過ぎたということは、御批判は幾らでも、それはそのとおりだというふうに認めるわけでございますけれども、短時間で済ますということのメリットとデメリットをどう判断するかというのは、これは政治家の判断だというふうに思っております。手続上、時間が短かったということはそのとおりだけれども、何か手続を誤ったとか、密室であったということはない。
例えば、各党で審議をしておることを、その内容を我々が隠したというなら別でありますけれども、自民党の中での論議については新聞記者にもいつでも内容について説明をいたしておりますし、またこういうところで現にこのやりとりを聞いておられるということが、これが開かれた政治ということでございます。
言いたくないけれども、審議会の場合は内容については開示をされておりません。今は開示されたと言われておりますけれども、個々の委員が何を言ったかということは開示されていないわけでありますから、法制審議会のこれまでのずっと続いてきた論議が開かれた論議だということは言えない。さらにまた、大学関係者や法律関係者の間では確かに意見聴取はさまざまな法改正のたびに行われてまいりましたけれども、それは法律の専門家の間の話であって、広く全国民に対してこのような問題はこうなっていますということを、もしそれが報告されるとすれば、これはテレビとか新聞とか一般の報道機関のことであって、一般の報道機関が関心がなければ報道しないわけであって、我々が隠したのではなくて、報道されなかったということにすぎないわけでございます。報道されなかったことをもって密室であるということは、これは全く見当違いの批判だと思っております。
ただ、商法学者の方々の意見は、本来、私もよくお聞きをして参考にすべきことだと思っておりますので、ここできょうお聞きをいただいたことは私は幸いだったと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X00919970515/78
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079・浜四津敏子
○浜四津敏子君 さまざまなお答えをいただきましたので、それぞれの項目別に後でまた具体的にお聞きいたします。
私たち参議院で参考人の方の御意見を伺おうということにいたしましたのは、これは、こういう声明も出た、また現実に自民党の方では一年前から議論がされていたというお話ですけれども、それだけの時間的余裕があるのであれば、少なくとも法律の専門家、しかもその分野の専門家である商法学者の意見を聞く時間もあったはずですし、方法も幾らでもあったというふうに思ったわけでございます。それが全くそういう機会がなかった。しかも、商法というのは日本の六法、最も大事な基本法の一つでありますから、それについて改正がなされるという場合には、さまざまな影響が出てくるわけですから、それは当然に学者の意見も聞かなくてはいけない、また実際に実務をしている人の意見もやっぱり聞くべきだ、こういうふうに思います。
参考人の方に来ていただいたのは、そういう機会がなかった。そして、衆議院でも趣旨説明から採決までたった一日で全部通された。今、太田先生が確かに時間が短いといえばそのとおりだというふうにおっしゃいましたけれども、やはりこれだけの基本法の大事な問題について大変性急過ぎる手続というのは、粗っぽいと言うとちょっと言葉が厳しいかもしれませんけれども、粗っぽい手続でつくったものというのは、どうしても内容もそれを反映してどこか抜けてくるものが出てくるというふうに危惧しております。
また、今回の議員立法のこういうプロセス、こういうやり方を先例として同じやり方でまたさらに別の議員立法を進めよう、こういう動きがあるというふうに報道されております。特に、株主代表訴訟についての法改正についてこうした危惧の声があります。
例えば、先ほどの商法学者の方の意見の中でこういう部分があります。
それでは、今回の商法改正の真の狙いは何なのだろうか。経済界には、株主代表訴訟制度を事実上困難にさせるため商法を早急に改正するべきだとの声がある。これを経済界と一部の官庁だけが関与する形で実現させるための地ならしこそが、今回の改正のやり方ではないかと私たちは考えている。
こういう危惧を持たれております。
そして、この方はまたさらにこうおっしゃっております。
今回のような立法方式は決して繰り返されてはならない。仮に株主代表訴訟制度に問題があるとしても、ことはわが国企業社会の将来像の根幹にかかる問題であるから、国民各層の意見が広範に取り上げられるべきである。
こうおっしゃっております。
また、別の声明ではこういうふうに言われております。
われわれが更に危惧するのは、今回の商法改正を推進した経済界の一部に、株主代表訴訟を事実上困難にする商法改正が、今回と同じ方法、すなわち、経済界と一部官庁だけが実質的に関与できる形で早急に行われることを待望する声があることである。しかし、株主代表訴訟が、総会屋に対する利益供与、建設業界の贈収賄等をめぐって提起されていることに鑑みても、株主代表訴訟に、企業経営の健全性維持の機能を期待する国民も多い。したがって、株主代表訴訟制度の今後のあり方は、経済界のほか、法律専門家、言論界をはじめ全国民のオープンな議論に委ねられるべきものであり、今回のような不透明・秘密主義的なやり方の下に制度の変革が行われては決してならないと考える。
こうあります。
また、これは新聞報道によりますと、「自民党は今後、経団連が「取締役の負担が重すぎる」として改革を求めている株主代表訴訟の見直しに乗り出す方針だ。」と、この形式で議員立法でやる、こういうような報道がなされております。
それが本当かどうかというのは私たちにはわかりませんけれども、少なくともそういう声が上がっている、そういう危惧の声があるということについては、私たちはやはりこれは真剣に真正面から受けとめなくてはいけないんだろうと思います。
この株主代表訴訟についてこうした危惧がある、今回の法改正のプロセスが株主代表訴訟改正の前段階の地ならしなんだという危惧の声があることについてはどのようにお考えですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X00919970515/79
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080・保岡興治
○衆議院議員(保岡興治君) 先ほど私からも申し上げましたし、また太田誠一議員からもお話がございましたが、このたびの議員立法は、かねてから規制緩和の一環として経済界から強い要望がずっと出ていて、検討してきた問題でございます。
その中には、おっしゃる株主代表訴訟の問題をどう法改正していくかという提案も、テーマも出されております。したがって、太田議員が先ほど申し上げましたように、自民党の法務部会などでもかねてずっとこの問題については論議をしてきております。したがって私どもは、先ほど申し上げましたように、法制審議会を軽視したりせずに、あるいは学者先生の御意見をよく踏まえて法改正をしていくという点については、今後もそういうことを大事にしていくべきだという浜四津議員の御指摘は、十分意味のあるところだと受けとめます。
しかし一方、急激な社会の変化に対して本当に的確迅速な法改正作業をやって、特に日本の経済構造改革というものを思い切って進めていく。そういう中で、この株主代表訴訟制度というものも会社の経営陣のあり方についてこれをチェックする重要な制度である。したがって、この間の改正で、八千二百円でこの訴訟が提起できるようになったという手数料の点について明確にした改正がありまして、急激に株主代表訴訟がふえる傾向がございます。そして、社会でこの株主代表訴訟が、最近のいろんな経済不祥事の問題が出てきていることに対応して重要な役割を果たしつつあるというものも我々は認めます。したがって、それゆえに、この株主代表訴訟の社会的、経済的に果たしている機能の重要性を踏まえつつも、しかし問題点があれば時宜を失わず積極的に改正に当たっていく、私はむしろそういう要請が法の改正の必要性としてあるという認識をいたしております。
したがって、いろんな考え方が株主代表訴訟にはありましょうから、議論は広く国民にまたお互いに尽くして改正しなきやなりませんが、それも一年も二年もかけてやる性質のものではない。したがって、来年の通常国会にはきちっと出せるような議論をみんなで急いでやっていくべきではないか、私はそういうふうに考えます。社会の経済情勢に対して的確にいい制度をつくっていくことについては、それぐらい我々立法府は重い責任を負っておる。
先ほど商法改正について、基本法であるからこれは法制審議会を大事にしなきゃならぬという趣旨の御指摘もございましたが、そういう慣行もあるということですが、しかし私は、ある意味では、基本法だからこそ国会がもっと積極的にその改正の是非というもの、あるいは政策的判断についてはきちっとしなければならない現下の状況にあると思っております。
今度の改正においても、期間は短かったのでございますけれども、大蔵、法務両省や関係者とは慎重に協議を重ねまして、内容についてはきちつとしたものを出したと自負をいたしております。したがって、学者の先生やきょうの審議でもどこに不備があるかということをできるだけよく御協議いただいて、実質この制度がうまく進んでいくように議論を尽くすべきだというふうに考えております。
三ケ月章先生は、かねて法制審議会の重要なメンバーでもおありになりましたし、法務大臣もお務めになりました。日本の民訴学界の最高峰におられる方でありますが、この方がある雑誌で「「朝令暮改」非か、「不磨の大典」是か」という論文を出しておられます。その中にこう書いてあります。
法は時代の流れに敏感に対応してゆくべきもの
であって、社会変革の流れが激しい時には法の
頻繁な改正こそが必要であり、法の改革をただ
嫌っているばかりであってはならぬものである
ということが国民の常識となるように努力する
ことが、法に携わる者の使命となると思われて
ならない。法がどんな法でもよい点もあれば
裏側に悪い面があるということは免れないので
あって、それが法というもののもつ宿命でもあ
る。
過去の法制度のマイナスにくらべて、新しく構
想する法制度のプラスの方が少しでも多い時
は、過去への執着を克服して果敢に新しい法制
の導入を意欲するのに臆病であってはなるまい
というのが、半世紀に近い私の立法生活の一つ
の総括なのである。こう言っておられます。
私は、本当に日本の法律についてお互い立法府が一番その責任が重いのでございますけれども、本当に学者の先生方の意見もよく踏まえなきゃなりませんが、きちっとした法律を迅速につくっていくことは現下の情勢において極めて必要なことだと承知しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X00919970515/80
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081・太田誠一
○衆議院議員(太田誠一君) 依然として、浜四津先生が、密室だとかあるいは一部の者がというふうなことを表現されますので、再度お答えをいたしますけれども、例えば我々が自民党の中でやっておることは、常にそこに自民党の所属の議員ならだれでも出席できる状態にしておいて、その内容を公開してだれでも来られる状態にしてやっておりますし、それについて報道機関が尋ねてくれば内容をどんなに詳しくでもしゃべれるようにいたしております。後は、その状態について例えば報道機関がどう反応するか、あるいはそこで聞いたことを載せるかどうかというのは、それは報道機関の判断でありますので、我々はオープンな手続をきちんと踏んできておるということを再度申し上げたいと思います。
浜四津先生は私と同じ立場なんですから、もしこういうことについて危惧をされたり御関心があるときは、浜四津先生は浜四津先生のグループで、あるいはきょう現に行われたように、こういう場所で御意見をお聞きになることがこれが本当の開かれた手続だと私は思っております。
先ほど株主代表訴訟についてお話しになりましたけれども、株主代表訴訟の今の制度がいいか悪いかということ自体も、これはいいと思う人もいるし悪いと思う人もいるわけでありますから、それは国会であるいは各政党において議員が議論をすればいいのであって、あらかじめ、代表訴訟について法改正をしようとしているのは、あしき意図に基づくものだということは決して言えないわけであります。
そういう、何がよくて何が悪いかということを議論するためにここはあるわけであって、しかもこの国民主権の日本の国においては、国民を縛ることになる法律や制度をどうするかということは、国民からゆだねられた我々国会議員がその責任を負っているわけであって、その我々国会議員がどれだけ熱心に広く各界の意見を聞くかということは、我々の裁量に任されているというふうに思うのでございます。ですから、商法学者の言っていることは、私は憲法をよく読まない人の議論だろうと思っているわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X00919970515/81
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082・浜四津敏子
○浜四津敏子君 今、私が密室だとかあるいは秘密主義だとこう言っているというのではなくて、日本のこの分野の専門の商法学者の方々のほとんどがそう受けとめているということ自体が問題ではないかというふうに申し上げたわけです。
それから、学者の意見はこういう形で国会の場で議論すれば、意見を聴取すればいいではないかという御発言もありましたけれども、既に法案の内容が全部固まってしまった後で意見を聞くというのでは、これは十分にその意見を反映することにならない、こういうふうに思います。
時間がありませんので、この点につきましては、また議論をさせていただく機会がありましたらぜひさせていただきたいと思います。
この議員立法のあり方、立法のあるべき姿につきましては、新聞によっては、今回の議員立法を歓迎するという社説もありましたし、また一方で今の商法学者の方々と同じ意見のもありました。
今の御答弁の中にもありましたけれども、どうも審議会の審議の手続には問題が多い、あるいは審議会の手続を経ていると時間がかかる、こういう批判があるということがありましたけれども、それはちょっと誤解もあり、また審議会一般についての一般論を述べておられると思いますので、特にこの基本法の立法、改正を審議する法制審議会について質問させていただきたいと思います。
まず、法務省に伺いますが、法制審議会ではこの商法改正につきましては当然検討されてこられたわけで、情報によれば、まず優先順位として会社の合併・分割法制の見直し、それの次がストックオプションの制度の検討。確かに会社の合併・分割、これは今国会に改正案が出ております。
ストックオプションにつきましては、一年間調査をした上で、検討を経た上で次期通常国会に提出する、この予定で審議を進める、こういう予定になっていたようです。それはやはり優先順位でそう決められたというところからいたしますと、それを飛び越えて突然にストックオプションが出てきてしまった、調査も余り十分でない、法制審議会にとっては検討も余りしていない、こういうことになるんだろうと思いますけれども、法制審議会としてはこれまでストックオプションについては具体的にどういう審議、検討をされてこられましたか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X00919970515/82
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083・濱崎恭生
○政府委員(濱崎恭生君) 御案内のとおり、平成六年の商法改正におきまして自己株式の取得規制の緩和の改正を実現させていただいたわけですが、その審議は平成四年から始まりまして、その検討の対象としてストックオプションの導入ということも取り上げられたわけでございます。その中で、平成五年二月には、いわゆる問題点というものを公表して各方面の意見を伺ったわけですが、その問題点の中にはストックオプションの採用の可否ということについても意見照会が含まれておったわけでございます。・そういうことでございましたけれども、当時の状況におきましては、実務界においても今すぐにこれを使いたいという要請がそれほど大きなものではなかったということ、またそれから、我が国の企業あるいは企業関係者の考え方になじまないのではないかというような意見もあったこと、そういったことから、平成六年改正においては取り上げられなかったということでございます。
法制審議会としては、その後、現在閣法として国会に提出させていただいております合併制度の改善ということの審議に集中してまいった、こういう経過でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X00919970515/83
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084・浜四津敏子
○浜四津敏子君 法制審議会でこれまで審議されてきたこと、あるいは立法のプロセスに関与されてきた場合には、その手続の中では、例えば審議が一定の段階に達したときにその結果を中間報告として発表して各界の意見を求める、それを意見を聴取した上でまたその意見調整をしてという慎重なプロセスを通常は踏んでこられたんだろうと思います。
この法制審議会と他の審議会との大きな違い、特色がどこにあるのか。一般にこの立法のあり方を議論されるときに、審議会の密室性とかあるいは人選とかというようなことが議論されますけれども、法務省の方から、この法制審議会と他の審議会との大きな違いについてあるいは特色について簡単に御説明いただければと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X00919970515/84
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085・山崎潮
○政府委員(山崎潮君) 法制審議会につきましては、昭和二十四年の六月一日に法務省の附属機関として設置されたものでございます。
この内容は、法務大臣の諮問に応じまして、民事法、刑事法、その他法務に関する基本的な事項について調査審議を遂げる諮問機関であるということでございます。その調査審議の範囲につきましては、民法、商法、刑法等の実体法、あるいは民事訴訟法、刑事訴訟法等の手続法、それに関します基本法令、こういうものが調査の対象ということで、法務省の所管する法律全般にわたっているわけでございます。その沿革を申し上げますと、明治二十六年に設けられました法典調査会にさかのぼるものでございます。
法制審議会は、他の行政庁に置かれております政策の立案にかかわる審議会とはやや性格が異なりまして、法典調査会の流れをくんでいるという影響もございまして、国民生活全般にかかわる極めて重要な基本法の制定、改正に関しまして、法典そのものの体系やそれから他の法律との整合性、それからあるいは法理論上の問題点等、さまざまな観点から法務省の立案スタッフと共同して立案作業を行う、こういう性格を持っておりまして、一種の立案準備機関としての性格が非常に強いというのが特色でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X00919970515/85
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086・浜四津敏子
○浜四津敏子君 今御説明ありましたように、基本法についてはほとんど法制審の審議事項になってまいりました。それは、社会の基本法というのは、国民全般の基本的な権利とかあるいは弱者の権利をどこまで守るかとか、そういう根本問題に関係してくるものが多いためである、こう説明されております。
いずれにいたしましても、他の各省庁の多くの審議会、行政機関のその都度ごとの政策策定を助ける審議会とはそういう意味では沿革もまた使命も目的も大きく異にしているんだろうというふうに思います。
それから、法制審にかけると立法、改正に大変時間がかかって経済情勢の変化に対応できないんだと。何かこれに対応できるために、迅速な立法をするために議員立法でやるんだという御答弁がありました。これは、逆に、例えばPL法とかあるいは約款規制法とかあるいは有体動産の売買条約の批准とか、こういうことについては遅いじゃないかという声はほとんど出ませんで、そう言えばちょっと言葉が厳しくなるかもしれませんけれども、要するに経済界にとってどうしてもこれが自分たちに必要と、こういうものについてなかなか進まないとそういう批判が出てくるという面もあります。また、法制審議会自体も、局付検事の方の員数もなかなかふえない、あるいは予算も十分に法務省は配分がなされていない、こういうさまざまな問題があって多少時間がかかるということはあるかもしれませんけれども、それは基本法の性格上もあり、また早期に改正しようと思えば一生懸命やってきた例もあるわけですから、必ずしもその批判は当たらないのではないかというふうに思います。
次に、ストックオプション制度導入の前提となる条件ですけれども、これも午前中の参考人の方から種々御意見が出ましたけれども、その制度導入の前提となる条件が今の日本の中では整備されているのかどうか。証券市場の価格形成が、経営者とかあるいは従業員の努力あるいは貢献をきちんと反映させる健全かつ公正なものになっていなければ、このストックオプション制度というのは十分に機能しないわけです。そういう意味で、証券市場のあり方、あるいは情報開示、あるいは経営の監視の制度等につきまして、このストックオプション制度を今すぐ導入して大丈夫なんだと、もうその前提条件は十分整備されているんだというふうにお考えでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X00919970515/86
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087・太田誠一
○衆議院議員(太田誠一君) 最後の質問についてはまたお答えがあるでしょうけれども、今、何か我々が経済界の手先のように表現をされるんですけれども、私たちは浜四津先生と同じ国会議員ですから、立法の必要性があるということがあれば、当然それを要望しておられる方々の意見は聞きますけれども、別に我々は経済界の手先としてやっているんではない。あなたと同じ立法府の一員だということでやっておりますので、これは念を押しておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X00919970515/87
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088・保岡興治
○衆議院議員(保岡興治君) 今、浜四津委員の御指摘の、ストックオプションの導入の環境条件が整っているかどうかということでございますが、これはいろいろ不断の制度の充実強化によって着々と準備がなされている。確かに、制度だけで日本の経営や経済の環境条件が整備されていくのではなくて、経営者の意識であるとか、逆にまた株主の意識であるとか、そういったいろんな要素が一緒になってそういう前提というものは整えられていくものでございますから、今後とも引き続き、そういった条件整備にインセンティブを与えるいろんな制度改正や運用や努力というものを重ねていく必要がある。
しかし、現時点においては、私は、このストックオプション制度を導入する前提条件を欠く状況では決してない。むしろ、必要性が大きいからこそ緊急にこのような議員立法を提案したんだということを申し上げたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X00919970515/88
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089・浜四津敏子
○浜四津敏子君 ちょっと私も反論させていただきますが、私は太田先生が経済界の手先として一生懸命やっていらっしゃるなんということは少しも思っておりませんで、仮にそうだとしても、日本の経済界が日本においては大変重要な立場も地位もあるいは使命も目的も持っているわけですから、それはそれで重要なことだろうと思います。十分にその意見が反映されなければいけない、私はそう思っております。
ただ、一方的にそちらの意見だけが反映されるという立法プロセスだけは、それは避けなければいけない、こういうふうに申し上げただけで、別にそんな手先だなんということは申し上げておりませんので、ちょっと反論させていただきます。
それから、ちょっと次に進ませていただきますけれども、自己株式取得につきましては、何度も説明がございましたけれども、商法二百十条で原則禁止、必要な場合に限って例外的に認める、こういうことでずっと来ているわけでございます。原則禁止の理由につきましては、資本充実を害するとか、あるいは株主平等の原則を害しやすい、あるいは会社支配の不公正を招きやすい、インサイダー取引あるいは株価の相場操縦などの不公正が行われやすい、いろんな理由があるわけです。この自己株式取得の弊害、午前中の参考人の方は、非常に弊害が大きいから、このストックオプションの制度の中でも自己株式方式は認めるべきでない、こういう御意見を述べられました。仮に、自己株式取得の弊害がかなり大きいとしても、それをきちんと防止する措置をとり、しかもその自己株式取得を認める必要性が非常に大きいんだということであれば、法律できちっとその措置をすればいいんだろうというふうに思います。
そこで、その規制がきちんとされているのかどうかについてお伺いいたします。
まず第一に、取得目的による規制、今回はストックオプションの目的、こういうことで認めるわけでございますけれども、問題は、何の目的で取得したのか。これは、手続的に見ますと、確かに株主総会でストックオプションのための自己株式取得を取締役に授権する、そしてその授権に基づいて取締役が自己株式を取得する、こういう手続になる。何の目的かといえば、ストックオプションのためだと、こういう説明になるわけです。
それでは、この制度のもとで取得した自己株式取得というのであれば、証券取引法上の例えば相場操縦の規定の適用はないことになるのか、それとも誘引の目的があれば、このストックオプション制度のための自己株式取得であっても、それは場合によっては相場操縦の規定の適用があるということになるのか、どちらでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X00919970515/89
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090・保岡興治
○衆議院議員(保岡興治君) 自己株式取得型のストックオプションが相場の操縦などの疑いを受ける余地があるのかという御指摘かと思うんですが、通常、ストックオプションは、お話しのように、ストックオプション制度の意義に照らして会社が経営方針として株主の同意を得て実行するものでございます。そういうことですから、法律によってストックオプションプランというのは氏名等を決議事項にしたように、総会で明らかにして株主の同意を得るという形式を踏んでいる。
したがって、オプションプランがいいかげんなもので、非常に荒唐無稽なものであって、しかもその後の実施状況を見ると、とてもストックオプションの制度を実現するためのものでないというようなことが証拠上明らかになって、これは相場操縦としか見れないというようなことになれば、それは当然証券取引法上の違反という対象になり得るものと思いますが、一般的にはそういうことは起こり得ないのではないかと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X00919970515/90
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091・浜四津敏子
○浜四津敏子君 それでは次に、財源規制に移ります。
今回は、配当可能利益の範囲内で自己株式を取得できると、こういう財源規制があるわけですけれども、このことによって自己株式を取得できる時期というのは何らかの制限を受けることになるんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X00919970515/91
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092・保岡興治
○衆議院議員(保岡興治君) そうです。ストックオプションの株主総会決議後、最初の決算期に関する定時株主総会の終結時までに取得しなければなりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X00919970515/92
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093・浜四津敏子
○浜四津敏子君 次に進ませていただきます。
次に、数量規制に入りますけれども、発行済み株式総数の一〇%という数量規制があります。この一〇%の根拠ですけれども、三%から一〇%に拡大する根拠と、それから一〇%というのはいつの時点を基準として決められるのか。また、このパーセンテージ規制というのは何のために行われるのか。これは会社支配の関係からこういう規制がなされるのか、それともマーケットに対するインパクトという意味もあるのか、その辺の御説明をいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X00919970515/93
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094・保岡興治
○衆議院議員(保岡興治君) ストックオプションの自己株式取得の一〇%の制限の問題ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X00919970515/94
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095・浜四津敏子
○浜四津敏子君 はい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X00919970515/95
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096・保岡興治
○衆議院議員(保岡興治君) これは、自己株式長期保有の弊害の一つとして会社支配の可能性というものもよく取り上げられるところで、そういったことがないようにするための歯どめとしてこういった一〇%の上限を設けているほか、やはり株主平等の原則を余り広範に侵食することがないように、ストックオプション制度の意義との調和という点もございます。また、実際に一〇%という額を具体的に決めたのは、既発の認定企業によるベンチャー企業が三分の一、五分の一の範囲になっていることとの対比とか、あるいはアメリカにおける実績、あるいはドイツとかフランスの法制度、そういったグローバルスタンダードという観点から決めたものでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X00919970515/96
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097・浜四津敏子
○浜四津敏子君 細かい点で申しわけありませんが、発行済み株式総数の一〇%というのは、それはどの時点で決めるのか。仮に株式消却が行われた、あるいは新株発行が行われたということになりますと、発行済み株式総数自体の増減が起きるわけですけれども、この基準時点をお答えいただけますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X00919970515/97
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098・保岡興治
○衆議院議員(保岡興治君) これは、今度の法の趣旨からいって、決議をするときにまずその要件を満たしていなきゃいかぬ、それから、取得するときもまたこの要件を満たしているものと解するのが正しいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X00919970515/98
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099・浜四津敏子
○浜四津敏子君 次に、取得手続の規制に移ります。
この自己株式取得の手続決定権限あるいはその手続ですけれども、これも午前中の参考人の方からの御意見として出てまいりましたが、改正法の二百十条ノ二の二項ですけれども、取締役または使用人に株式を譲渡する場合、これは定時株主総会の決議、つまり普通決議が要求されている。それから二百八十条ノ十九、これは新株発行の場合ですけれども、この場合には、新株発行を授権する場合には特別決議が必要である。こういうふうに、片方は普通決議、新株引受権方式のストックオプションについては特別決議と、こういうことになっております。
今回のストックオプションで自己株式方式と新株引受権方式、その目的もあるいは経済的な実態も同じであるのに手続が違うというのは、これはどういう理由なんでしょうか。また、これを整合性を持たせるということで再検討されるお考えがおありなんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X00919970515/99
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100・保岡興治
○衆議院議員(保岡興治君) その点については、午前中の大学の先生方の参考人のお話でも、いろいろ考え方は分かれるところだというお話がございました。
我々は、自己株取得方式のストックオプションは株式の数を変動させるものではないけれども、新株付与方式は、将来それが実行されて市場に出た場合は既存の株主の希薄化を招く、そういった点を配慮して特別決議にすべきだと。これは、有利発行方式のワラント債、あるいは有利新株発行の場合に特別決議を要している現行の趣旨と同じように考えていかなければならないということで解釈しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X00919970515/100
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101・浜四津敏子
○浜四津敏子君 それからもう一つ、手続の点でございますが、これはストックオプションを与える場合、その株主総会の決議事項の中に、改正法二百十条ノ二の第二項三号で、「其ノ取締役又ハ使用人ノ氏名、其ノ者ニ譲渡スベキ株式ノ種類、数及譲渡ノ価額並ニ其ノ権利ヲ行使スルコトヲ得ベキ期間並ニ其ノ権利ノ行使ニ付テノ条件」、これを開示することが必要であると。
それから、二百八十条ノ十九にも同じように、その二項で、「新株ノ引受権ヲ与フベキ取締役又ハ使用人ノ氏名、其ノ者ニ与フベキ新株ノ引受権ノ目的タル株式ノ額面無額面ノ別、種類、数及発行価額並ニ新株ノ引受権ヲ行使スルコトヲ得ベキ期間」等々を総会の決議事項として明確に掲げられております。
先ほどの御答弁を伺っておりますと、これは「取締役又ハ使用人ノ氏名」と、こういうふうに法文上は書いてあるけれども、一定の役職以上の者に与えると、こういうことでいいんだ、あるいは取締役何名ということでも構わないんだというような御答弁があったように思うんです。それは、法律の法文上「氏名」と明確に書いてあるわけですから、これは法律の解釈上としては、一定の役職以上の者あるいは合計何名で合計幾らと、決議の対象としてその程度の明示でいいんだということは、この条文からは到底読めないわけです。もしも抽象的なものでいいんだというのであれば、最初からこの条文にそのことを書くべきであって、こういうふうにきちんと「氏名」と書いてある以上は、個人の氏名を当然総会の決議事項にすると、これが法律の解釈としては当然であろうというふうに思います。
先ほども何度も出てまいりましたけれども、このストックオプションの制度が十分に機能するためには情報開示が必要であると、こういうお話が何度も出ました。なるべくグローバルスタンダードに近づけようと、こういうお話もありました。アメリカでも、先ほど参考人の方からもお話がありましたけれども、これは明確にきちんと明示されている。
これは、この法文の読み方についてはちょっと問題があるんじゃないでしょうか。もう一度御答弁いただけますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X00919970515/101
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102・保岡興治
○衆議院議員(保岡興治君) 商法というのは、株式会社を対象とする法律規制という場合に、これは小さい会社もあれば大きな会社もあるわけです。実態がいろいろ違います。そういったすべての会社に当てはまるようにこの制度の趣旨をより明確にするために、「氏名」と書いてあるからといってその制度趣旨から、大きな会社の場合には、一々たくさんの従業員の名前をずらずら一万人並べるとか五千人並べる等を要求していると考える解釈をする方が私はおかしいのであって、小さい会社の場合は、それら氏名を一つ一つ明らかにすることでプランが明確になるということもありましょう。
大きな会社の場合には、むしろ与えられるポストとかその実績についての何かの考査を基準とするとか、いろんなオプションプランというものがいかに会社の業績向上に将来つながるかというそういうオプションプランの趣旨が明らかになるということのため、あるいはこのオプションプランが決して株価操縦やその他不当な手段として使われているのではないということを、求める決議の内容自体から明らかにして株主の同意を得ていくという、そういう機能をこの氏名等の決議事項にしたところに求めているわけでございますから、私は、いろんな会社に当てはまる規定の仕方として「氏名」とだけ書いておいて、できるだけ特定してプランを明らかにすべし趣旨がそこにあらわされているという解釈は決してできないことはない。私も法律家でございますが、決してそういう解釈が不可能だとは思いません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X00919970515/102
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103・浜四津敏子
○浜四津敏子君 仮に、それが本来の立法趣旨なんだということであれば、法文の中に、一定規模以上の大きな会社についてはこういう扱い、小さな会社については氏名、こういうふうに明確に定めるべきであろうと思います。これは水かけ論になりますから、また別の機会に議論させていただきます。
次に、権利行使期間ですけれども、このストックオプションの制度では権利を付与されたらもうすぐにでも行使できる、理論上はそういう制度になっております。その場合には、会社への貢献度と関係なく、一定の行使禁止期間を置くこともなく、すぐにオプションを行使できる。
そうなりますと、インセンティブ報酬の一つとしてこのストックオプション制度を認めるんだ、こういう御説明がありましたけれども、一定の行使禁止期間も全く置かない、もらったらすぐにでも権利を行使できる、そして売却もできるという制度にするというのは、制度の趣旨と少し外れるのではないかと思います。この点については、短期間行使も認める、こういう御趣旨なんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X00919970515/103
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104・保岡興治
○衆議院議員(保岡興治君) ストックオプションについて権利を行使して取得をすれば、それを市場に放出して換金するということはすぐできるという趣旨でございます。それは、市場を通じて将来の業績向上により利益を得る、それをインセンティブにして日本の企業やひいては証券市場あるいは経済を活性化していこうという趣旨でございますから、むしろそれを一定期間保有していなきゃ放出しちゃいけないよという制度の方が固定化していて、この制度の趣旨になじまないと考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X00919970515/104
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105・浜四津敏子
○浜四津敏子君 次に、保有規制に移らせていただきます。
自己株式を保有する会社は、その自己株式についてどういう権利を有するのか、あるいはまた行使できるのかに関してでございますけれども、商法二百四十一条二項は、自己株式について議決権がない、これを規定しております。また、利益配当請求権がない、こういうことについても明文を置いておりますが、そのほかのいわゆる自益権については、自社株についてはどういう権利が認められるのかあるいは行使できるのか、御説明いただけますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X00919970515/105
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106・保岡興治
○衆議院議員(保岡興治君) 自社株というのは今まで例外でございましたが、こういうふうに一般的に取得できる道が開かれれば、そういう問題もいろいろ解釈を明確にしていかなきゃならないという委員の趣旨はよくわかります。
その点については、法律技術的なことでございますから、今までの制度にかんがみてどうだということを法務当局からお答えいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X00919970515/106
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107・濱崎恭生
○政府委員(濱崎恭生君) 御指摘の問題は、先般の平成六年の商法改正によって、いわば自己株式を取得する場合を増加させたということの際にも検討されるべき問題であったと考えております。
今御指摘のありました議決権が認められないということについては従来から規定がございましたが、平成六年の改正の際に、利益配当請求権がどうなるか、中間配当とかあるいはいわゆる建設利息の請求権も同様でございますが、そういう問題についてはこれは明文化する必要があるだろうということで、そういった利益配当請求権等についてはこれを認めないという改正規定を加えたわけでございます。
そのほかの問題については、御指摘のとおり、解釈にゆだねられているわけですが、例えば株式分割といったようなことに関して言えば、これはもう株式が分割されるわけですので、当然持ち分が動くというのはおかしいということで、解釈上当然に認められるというふうに考えられます。また、そのほかの議決権以外の共益権、それから会社が解散した場合の残余財産分配請求権、こういったものは性質上当然に自己株については認められないという解釈がされているところでございまして、そういったことについては解釈にゆだねていて大過ないのではないかと考えられて、そういう手だてがされたわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X00919970515/107
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108・浜四津敏子
○浜四津敏子君 次に、保有する自己株式の開示についてお伺いいたします。
これは、消却特例法には定めがありますけれども、ストックオプションで自己株式を取得した場合に、取締役が株主総会で授権された範囲内で自己株式を現実に取得したと。この自己株式取得については、その取得の事由とかあるいは種類、数量、取得価額、あるいは期末に保有する自己株式の種類、数量、発行株式中に占める割合などを、取得後初めて開催される株主総会に報告しなければならないという規定をむしろ入れるべきではないかと思いますけれども、いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X00919970515/108
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109・保岡興治
○衆議院議員(保岡興治君) ストックオプションについては、有価証券報告書等において当該権利の対象者や株式の種類、株式数、譲渡価額、発行価額、権利行使期間及び権利行使についての条件、権利未行使株式数などを開示させることにしております。
したがって、ストックオプションに関しては、付与状況の開示が十分にされる一方、午前中もいろいろ議題になっておりましたけれども、総会に提出する必要的な書類の中にその開示を求めたり、その他運用によって行われている業務報告書その他においても、恐らくストックオプションの制度の意義を高めて、会社がより広く会社の評価というものを市場における株価ということで評価してもらうというふうに、株価の評価ということを通じて会社というものの経営の評価をしてもらおうという傾向は今後ますます強くなってくると思いますので、経営者側の意識としてもできるだけ開示をしていくという方向になると思います。また今後、法の整備においても、よりディスクローズが徹底していくように努力をしていくべきものと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X00919970515/109
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110・浜四津敏子
○浜四津敏子君 次に、自己株式の会計上の処理についてお伺いいたします。
今回の改正案では、取得後の自己株式を、いわゆるひもつき金庫株などと言われておりますけれども、いずれにいたしましても、権利の行使がなされなければ十年間は保有していなければならない、そういう義務が生ずるわけでございます。現行法は、保有する株式というのは貸借対照表の「流動資産の部に他の株式と区別して記載しなければならない。」、こう規定されておりまして、それ以上の計算上の処理はこの計算書類規則には示されていないと理解しております。
会社の業績がいいときはいいわけですけれども、業績が不振になりますと保有する自己株式についても価額は下落するわけで、そういう意味で会社に二重の損害をもたらす可能性がある、こう言われております。これまでは、自己株式については保有が例外的であったためにこの程度の規定、こういうことで足りたんだろうと思いますけれども、今後もこの流動資産の部に資産として、また自己株式の科目をもって別に掲記するということになるわけですけれども、こういうことで、これは整備しなくてもこのままでいくというお考えでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X00919970515/110
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111・保岡興治
○衆議院議員(保岡興治君) おっしゃるように、今までは流動資産として資産に計上すればよかったんですが、そういうふうに取り扱ってもきたんですが、一定の量を十年という長期の期間、自己株式を保有するということで、資本から控除するような新しい考え方をとる方が資本充実の原則に沿うのではないか、そういうようなことについてどうするんだという趣旨だろうと思いますけれども、これについては今後法務、大蔵両省ともよく協議していただきまして、この法の趣旨に沿ってしかるべき結論を得ていただこうと思っています。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X00919970515/111
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112・濱崎恭生
○政府委員(濱崎恭生君) 先ほど御質問がありました情報開示等の問題とも関連いたしますが、現行の計算書類規則におきまして、御指摘がありましたとおり、貸借対照表上の流動資産の部にこれは自己株式であるということで他の株式とは区分して記載する、そういうことで自己株式であるということを明確にして記載をするということになっているわけで、これが一つの情報開示、保有する自己株式の量を開示するという役割を果たしていると考えております。
今回の法案によりますストックオプションのための自己株式の保有についても、これは他の一般の株式とは区分して貸借対照表上に記載していただく、そういうことで保有する自己株式の総量を明らかにするということになろうと思います。
その際に、流動資産の部ということにしておくのか、あるいは二十二条の長期保有の株式の欄に書くのか、この点についてはこの法律案の成立を前にして私ども今検討しているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X00919970515/112
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113・浜四津敏子
○浜四津敏子君 それでは次に、損益計算書の関係ですけれども、現行の計算書類規則では、損益計算書上の自己株式の売買の損益の記載方法につきましては規定がございません。一般的には、ほかの会社の株式の売却損益などとあわせて営業外損益の部に記載されているのが実務の実情だろうと思います。しかし、今回こういう制度が導入されることになりましたら、この自己株式の取得あるいは処分による損益の状態というのをやはり別個に明らかにするべきであろう、そういうニーズが生じてくるんだろうと思います。この特別損益の部にこれも別項を設けて記載するということが必要なのではないかと思いますけれども、そういう方向で御検討はなされているんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X00919970515/113
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114・濱崎恭生
○政府委員(濱崎恭生君) 御指摘の点につきましては、これは自社株を取得原価で会計帳簿上記載するということになりますから、基本的にはその変動は生じないということであろうと考えられます。そういうことでございますので、自社株を保有していることに基づく損益というものがどういう形であらわれてくるのか、これは必ずしもそういう形であらわれてくるものではないのではないかというふうに考えておりまして、その点について損益計算書の記載方法について今具体的な検討をしている状況にはございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X00919970515/114
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115・浜四津敏子
○浜四津敏子君 それでは次に、営業報告書ですけれども、これも営業報告書上の自己株式の記載方法については規定がございません。しかし、当該営業年度中に取得した自己株式につきまして、取得の事由とか種類あるいは数量、価額とかというような、こういう取得保有の状況あるいは処分の状況につきましては営業報告書上に開示させる、これも情報開示の観点から必要ではないかと考えられます。その意味では、今回の改正に伴う計算書類規則の整備というのは、これから検討ということなのかもしれませんけれども、こうした点についてもぜひ整備を進めていっていただきたいと思いますが、この点についてはいかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X00919970515/115
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116・保岡興治
○衆議院議員(保岡興治君) 現行法上も計算書類規則四十五条一項八号の二において、自己株式を取得した場合には、取得したものの種類、数及び取得価額の総額、相対取引により取得したときはその売り主、処分したものの種類、数及び処分価額の総額、決算期において保有するものの種類及び数を、取得の事由ごとに営業報告書に記載しなければならないこととされているのは、先生の御指摘のとおりでございます。したがって、ストックオプションのために取得した自己株式についても、同様に営業報告書に記載しなければならないとする予定でおります。
なお、営業報告書は、その備え置き及び総会の招集通知への添付により、株主にも開示されるということになると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X00919970515/116
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117・浜四津敏子
○浜四津敏子君 自己株式取得につきまして、数量規制とかあるいは手続上の規制とかさまざまな規制がかけられているわけですけれども、こういう規制に違反して取得した自己株式の取得の効力についてはどのように考えればよろしいんでしょうか。これまでも判例等は出ておりますけれども、会社が会社名義で自己株式取得規制に違反して取得した場合のその取得の効力についての御見解を伺わせていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X00919970515/117
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118・濱崎恭生
○政府委員(濱崎恭生君) 御案内かと思いますが、裁判例としては平成五年の最高裁の判例で、これは有限会社の自己持ち分の取得の事例でございますけれども、その禁止規定に違反する取得の無効、これを譲り渡し人、譲渡した方から主張することはできないという解釈が示されているものがございます。
ただ、これは譲渡人から主張することができるかどうかということだけでございまして、一般的に禁止規定に違反する取得の効力ということは解釈にゆだねられているわけでございます。現在の有力な解釈といたしましては、その取引の時点で譲渡した者が禁止規定違反であるということにつき悪意である、知っているという場合にはそれは無効になるだろう、その点について善意であればこれは無効とすることはできないのではないか、そういう解釈が有力であると考えております。
一般に、上場会社あるいは店頭登録会社の場合でございますと、市場で、あるいは公開買い付けという方法で取得するわけでございますので、そういう場面で譲り渡し人が悪意であるということは極めて例外的なことではないだろうかというふうに考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X00919970515/118
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119・浜四津敏子
○浜四津敏子君 仮に、自己株式取得規制に違反して取得された自己株式がある場合に、この自己株式についてはどうするのがいいのか、どう処分すべきか、その処分についての明文の規定はないわけですけれども、例えばその取得の一定期間、一年とかあるいはもっと短くてもいいわけですけれども、一年以内に処分するというようなことを義務づけるなどの手当てをする必要があるとはお考えになっておられないでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X00919970515/119
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120・濱崎恭生
○政府委員(濱崎恭生君) 自己株式の処分につきましては、一般的な規定として二百十一条の規定で、相当の時期に処分することを要すと、これは適法に取得した場合を前提としての規定でございますが、解釈上当然に、違法に取得したものについてもそれは相当の時期に処分すべきものというふうに解されると存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X00919970515/120
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121・浜四津敏子
○浜四津敏子君 それでは、利益消却の特例法の関係で、この三条に「公開会社は、定款をもって、経済情勢、当該会社の業務又は財産の状況その他の事情を勘案して特に必要があると認めるときは取締役会の決議によりその株式を買い受けて消却することができる旨を定めることができる。」とありますが、「特に必要があると認めるとき」という、この必要性とは具体的にどういう場合を言うんでしょうか。また、必要性の判断というのはだれがすることになるんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X00919970515/121
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122・保岡興治
○衆議院議員(保岡興治君) 平成六年の改正で定時株主総会で自己株取得消却ができるようになりましたけれども、今、非常に経済の情勢が激変する時代でございます。株価とか金利とか為替とか、それは非常によく変化して、その影響を受けてまた会社の業績も非常によくなったり悪くなったりする。そういうことですので、定時株主総会の時点で自己株取得消却をする適当な機会だということが必ずしも予見できるものではない。
そういうことに対応して、一定の制限のもとに定款をもって上限を定めまして、特別決議によって取締役会に消却の授権をすると。そして、機動的にこういった事態に対応できる道を開く、弾力的なまた臨機応変の消却の道を開く、そのことによって既に定めた定時株主総会の消却、この制度をもっともっと生かしていく、そういう引っ張り役にもするということで、今、日本の経済あるいは証券市場の状況は先ほども申し上げたとおりで、自己株式消却制度の効果は非常に大きく期待されておりますので、そういった意味で、そういったことを特に必要があるときということで、株主総会の意思でそれを御判断いただくということになるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X00919970515/122
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123・太田誠一
○衆議院議員(太田誠一君) 自分の会社の株価が実際経営者が判断する以上に低下をしていくという過程で、従来の株主が持っている財産が減ることになるわけだけれども、そういうことに対して、株価を重視する経営者がそういう判断をするということはあり得ることで、それは短期的な判断であり得ることでもあります。
また、例えば、内部留保をたくさんしておくことが必ずしも株主の意思に沿うものではないと、配当するか、自社株を取得することによって資金を引き揚げた方がいいという、株主のための判断をその経営者がするということはあると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X00919970515/123
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124・浜四津敏子
○浜四津敏子君 それでは、この三条の「特に必要があると認めるとき」というこの文言は、特に必要がなければやってはいけないという意味ではなくて、臨機応変に必要に応じてむしろやりやすいようにする、そのためにつけられた文言と理解してよろしいんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X00919970515/124
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125・保岡興治
○衆議院議員(保岡興治君) 「特に」とした趣旨は、利益処分権はあくまでも株主総会にあるんだよと、したがって消却をする場合には、本来なら株主総会の決議でやるべきところだけれども、弾力的また臨機応変の対応というものをする必要もあるから、「特に必要がある」という趣旨はそういう意味で、例外ではあるけれども先ほど言ったように大きな新しい制度として役割を期待している、その両方をあらわした趣旨でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X00919970515/125
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126・浜四津敏子
○浜四津敏子君 それでは最後に、税務処理について伺います。
このストックオプションを付与された取締役及び従業員に対する課税がいつの時点でどのような税務処理になるのか、また会社側はどのような税務処理ということになるのかを御説明ください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X00919970515/126
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127・小武山智安
○説明員(小武山智安君) お答えいたします。
所得税法は、所得が実現したときをその収入すべき時期としておりまして、ストックオプションにつきましてもその所得が実現したときに課税が行われることになるわけでございます。
現在議論されておりますストックオプションにつきましては、具体的に付与されるストックオプションの内容に従いまして、ストックオプションの付与時及びストックオプションを行使したときに、それぞれ経済的利益が実現しているかどうかに応じまして、その実現したものと判定される経済的利益を原則として給与所得として課税することになります。また、取得した株式を売却したときには、株式等に係る譲渡所得等として申告分離課税または源泉分離課税により課税することになります。
いずれにいたしましても、現在議論されているストックオプションにつきましては、新たな制度でございますし、具体的に付与されるストックオプションの内容の詳細を検討の上、税務上の取り扱いは改めて検討しなくてはならないと考えております。
また、付与した会社側の処理のお尋ねでございますけれども、これは法人税法上、法人が役員または従業員に対しまして経済的利益の供与を行ったときにつきましては、原則としてその役員または従業員に給与を支給したものとして取り扱われるということになるわけでございます。
現在議論されておりますストックオプションにつきましては、利益供与の時期について、その内容によりまして、ストックオプションを付与した時点で認識しなければいけない場合、またその権利を行使した時点で認識しなければいけない場合が考えられるわけでございます。
いずれにいたしましても、やはり現在議論されているストックオプションにつきましては、新たな制度でございまして、オプション権の譲渡が禁止され、一身専属的な権利となっていること等の事情があるので、こうした点を踏まえまして、今後税務上の取り扱いを検討しなければいけないと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X00919970515/127
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128・浜四津敏子
○浜四津敏子君 あと二分ありますので、これが本当の最後になりますが、証券取引法についてちょっと簡単にお尋ねいたします。
証券取引法の百六十三条、それから百六十四条関係ですけれども、オプションを行使することによって株式を取得するということは、この百六十三条に言う買い付けに当たるのか、あるいは今度は、この株式を売却する場合には売り付けに当たり、そして報告義務が出てくることになるのかを簡単にお答えいただけますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X00919970515/128
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129・藤井秀人
○説明員(藤井秀人君) お答えいたします。
証取法百六十四条は、会社または株主に会社の役員等が得た短期売買利益の返還請求権を付与いたしております。また、今、先生おっしゃいました百六十三条におきましては、大蔵大臣に対します売買報告を行うことといたしております。これらの百六十三条及び百六十四条は、それぞれインサイダー取引規制をいわば補完する規定というふうに考えております。
今御指摘のストックオプション制度は、株主総会の決議を経まして、いわば株主が事前に承諾しているものである。換言いたしますと、株主の株式売買益の取得、これをあらかじめ認識し、かつ承諾をしているというふうに考えられますので、今回この法律が成立いたしますと、それぞれ百六十三条及び百六十四条につきまして適用除外という大蔵省令を公布、施行するというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X00919970515/129
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130・浜四津敏子
○浜四津敏子君 もう一点だけ。
新株引受権オプションによって得て、その株式を売るときには、百六十六条のインサイダー取引の規制がかかってくるというふうに理解してよろしいんでしょうか。
それから、自己株式取得について、取得予定日とかあるいは予定数量、方法等の決定は百六十六条に言う重要事実に該当すると解釈してよろしいんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X00919970515/130
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131・藤井秀人
○説明員(藤井秀人君) 今、先生がおっしゃった点、そのとおりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X00919970515/131
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132・浜四津敏子
○浜四津敏子君 以上で終わります。ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X00919970515/132
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133・照屋寛徳
○照屋寛徳君 社会民主党の照屋寛徳でございます。
保岡先生を初め提案者の皆さん、大変御苦労さまでございます。私は、本法案に賛成をする立場でございますが、幾つかお教えをいただきたいと思います。
保岡先生に先にお聞きをしたいところでございますが、法務大臣がお見えでございますので、昨今、いわゆる銀行・証券業界の不祥事が多発をしておりまして、証券市場の公平性、信頼性が保持されなければならない、また情報公開等による透明性が確保されることが国民から望まれておるんだろう、こういうふうに思うわけでありますが、法務大臣は、野村証券問題などを含めて昨今の金融・証券不祥事についてどのような所感をお持ちなのか。また、法務省として、当面、緊急に考えておられる対策等がございましたらお教えいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X00919970515/133
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134・松浦功
○国務大臣(松浦功君) ただいま御指摘の各種の事件につきましては、あってはならない問題だと考えております。こんな事件が発生することを非常に情けないことだと思っております。
検察当局といたしましては、今後ともに刑事事件として取り上げるべきものがあれば厳正に対処していくものというふうに理解をいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X00919970515/134
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135・照屋寛徳
○照屋寛徳君 それでは、保岡先生に改正法案について幾つかお尋ねいたします。
最初に、改正法案の提案理由の中で、ストックオプション制度の導入によって株式会社の取締役及び使用人の意欲や士気を高める目的が強調されております。あるいはまた、優秀な人材の登用ということも言われるわけでありますが、私は本当にそうなのかなというふうに疑問を持ったりするわけです。
既にストックオプションを採用している諸外国の事例、もちろんこれはそれぞれ国によって企業風土も違ってくるわけでありますが、本来、株式会社はいわば資本と経営が分離しているというのが他の会社と比べて特徴なわけですが、提案理由でおっしゃっている取締役の士気向上ということについて、提案者のお考えをお聞かせいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X00919970515/135
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136・保岡興治
○衆議院議員(保岡興治君) 照屋先生お尋ねの、インセンティブがどう期待されるかということだろうと思うんですけれども、実はストックオプション制度が非常に一般的にビジネス社会の不可欠な要素として使われているのがアメリカでございます。
アメリカは自動車産業などが本当に行き詰まって、一時、国が経済に自信を失いかけた。そのときに、情報産業などを中心とする技術開発という点に着目して、いわゆるベンチャー企業というのかニュービジネスが経営者の新しい能力により、すばらしい考え方により、商品や経営のあり方について強く社会経済のニーズにこたえる、そういうものを開発すると同時に、それを支える、企業は人なりという、資金がないとか、あるいはまだまだリスクはあるけれども将来大きくハイリターンする可能性のある、そういうところに人を得る手段としてストックオプション制度が大きな力を発揮して、まさに起爆剤的な役割を発揮してアメリカの経済を再生というか蘇生させたと言われているぐらいでございます。
そういった意味で、今回の改正には、ワラント方式はそういったベンチャー企業用、それから大きな成熟企業については、どちらかというと自社株取得方式によって会社経営陣が経営を行うために必要な会社の人材をストックオプションによって得て、能力主義、実績主義、こういったものを日本の雇用あるいは人事の体系にももっともっと取り入れて、そしてまさに人間の本当にすばらしい能力によって、個性によって、着想によって企業というものをどんどん伸ばしていく力にしようというのがストックオプション制度を導入した理由でございます。
そういった趣旨で、これは教育のあり方とも関係するんですが、まさに二十一世紀の日本、元気のいい活力のある国をつくっていくために、どういう制度がそれぞれ関連し合ってそれをつくり上げていくかということから考えれば、このストックオプション制度は新しい日本に重要な役割を果たすものだというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X00919970515/136
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137・太田誠一
○衆議院議員(太田誠一君) 聞かれてもいないのに答えて申しわけないんですが、資本と経営が分離していることがよいことかどうかという話なんですね。
それで、私は、今、野村証券の総会屋に対する利益供与のような問題がしばしば起こってくるのは、株主に対する思いというのが余りにも我が国は希薄なんではないかと。そのことがむしろ資本と経営を分離させてしまって、資本、つまり株主の方は余り考えないでもいいという風潮があることがむしろいけなくて、経営執行部にいる人たちが、あるいは従業員、幹部の社員の方々がみずから株主になって株主としての痛みを分かち合うようになるということは、いずれにせよこの国の企業の中の責任体制というのをはっきりさせるし、あるいは保岡代議士が今言われるように活性化することになるというふうに思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X00919970515/137
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138・照屋寛徳
○照屋寛徳君 太田先生にお伺いをいたします。
先ほどの御答弁の中で、政治の責任それから議員立法の重要性、必要性、そしてストックオプション制度については法制審で検討しておったよりも一年前倒しでやるんだという表明がございましたけれども、ストックオプション制度導入についての経済界の要望、それについて先生の知り得る範囲でお聞かせいただければありがたいなと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X00919970515/138
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139・太田誠一
○衆議院議員(太田誠一君) 経済界というよりも、自民党で商法の小委員会を設置いたしましたのは一九八五年のことでございます。今から十三、四年前のことでございます。
そして最初に、講師というか卓話というか、おいでいただいたのが当時のソニーの盛田会長さんでした。ソニーの盛田さんは二つのことを我々に強く要望したわけでして、その一つがストックオプション制度を含む自社株取得について一部緩和をしてもらいたい、それと持ち株会社制度のことでありました。私たちは、そのときに盛田さんから、広く国際社会、特にアメリカやヨーロッパの状態がどうなっているかということをお聞きして、いずれはこのストックオプション制度を導入しなければならないというふうにそのときに思って、心づもりをしてきたわけであります。
現在、私は、経済界の、別にどこの団体がどうだということではなくて、あるいは企業の大小にかかわらず、前向きにやっていこう、あるいは企業がこれから伸びていこうというところの役員の方々はおおむねどなたも歓迎していただいているように思うのでございます。具体的にどこの会社の人が喜んでいるかということは、言えば切りがないものですから、相当広範囲であるということを申し上げておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X00919970515/139
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140・照屋寛徳
○照屋寛徳君 午前中に当委員会で江頭、伊藤両教授を参考人にお招きいたしまして、改正法案についての御意見を賜ったところでありますが、東京大学の江頭教授は、先ほどから話題になっております「開かれた商法改正手続を求める商法学者声明」の呼びかけ人の一人でもあるというお話でございました。同呼びかけ人の一人であります早稲田大学の奥島総長が、昨日の朝日新聞の「論壇」に投稿されておるのを私も拝見いたしました。
この「論壇」の中で、奥島総長は、ストックオプション制度は、証券市場の価格形成が取締役や従業員の会社に対する貢献、努力を反映する健全かつ公正なものであるとの仮定のもとに成り立っている。ところが、我が国の証券市場の現状というのは、その信頼回復のためにさまざまな抜本的制度改正が論じられている段階なんだと。そうすると、取締役や従業員は価格形成に影響を与えることができる立場にもあるから、その能力に対する成果ではなくして、株価操作的行為またはインサイダー取引による不当な成果を獲得することにもなりかねないと、こういうふうな指摘をしておられます。
このストックオプション制度導入に伴うインサイダー取引への懸念というか、対策が当然求められておるんだろうと、こういうふうに思いますが、提案者の方はどういうふうにお考えになっておるんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X00919970515/140
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141・保岡興治
○衆議院議員(保岡興治君) 照屋先生御指摘のとおり、ストックオプション制度にインサイダー取引などのいろんな疑いがかかるような事態になってはならない、そういうことに対してはきちっと対応しなきゃならないという一方の問題があると思います。
それについては、従来のインサイダー取引規制あるいはその他の不正取引規制というものはストックオプション制度にもそのまま適用になりますし、今後厳格な運用で対処していく必要もありますし、またいろいろ制度を運用しながら将来工夫をしていくことも必要だと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X00919970515/141
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142・照屋寛徳
○照屋寛徳君 インサイダー取引などの制度の悪用が危惧されるということは保岡先生も今答弁されたところでございますが、それの弊害を除去するというか防止するために、証券取引法などの厳格な運用で足りるというふうにお考えなのか、あるいは将来的に罰則強化を含む法整備を図る必要があるというふうに現段階でお考えなのか、お聞かせいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X00919970515/142
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143・保岡興治
○衆議院議員(保岡興治君) これからは、証券市場に限らず日本全体、経済もまた自己責任とかいろいろ自浄力によって健全性、公正さを確保していかなきゃならない。非常に一方で競争が進む反面、ルールを大事にして、そしてそれをきちっと守って公正さ、健全さを守るという手当ても必要です。そういった意味では、またグローバルスタンダードということも非常に重要だと思います。例えば大和銀行事件みたいに、日本では形式犯と思って軽い取り扱いをなされている虚偽報告などが外国では厳しく処罰される。そういうことで、大和銀行事件でミスをしてしまったあの件なども、一気に日本の金融機関の信用を失墜させるような流れになっていく。
そういった意味で、やはりビッグバンを控えて証券市場の健全化あるいは公正さを保つ方向については、いろいろ諸外国の法制度あるいはまた他の経済規制なども参考にしながら、新しい日本のルールを大事にする公正な競争社会とは一体何だというテーマに向かってきちっとした答えを出していく検討は引き続きすべきだと。今度、証券取引審議会が六月に答申をされるようでございますが、そういったことについても留意をされるのではないかと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X00919970515/143
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144・照屋寛徳
○照屋寛徳君 インサイダー取引などストックオプション制度の悪用等については、本改正案を私ども社会民主党の法務部会で検討する中で、罰則強化を含む法整備を早期に行う必要がある、こういう取りまとめもあったということをぜひ提案者にも御理解をいただきたいというふうに考えております。
それで、これまで発生したインサイダー取引の事例等について報告をしていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X00919970515/144
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145・滝本豊水
○説明員(滝本豊水君) 証券取引等監視委員会が平成四年七月に設立されまして、それ以後告発いたしましたインサイダー取引について御答弁申し上げたいと思います。
まず、当委員会が平成六年十月に告発いたしました日本商事の事件につきましては、同社が製造販売しました新薬により副作用で死亡例が発生したという同社の重要事実を知った同社の社員等が、その事実が公表される前に同社の株式を売り抜けたという事案でございます。また、平成七年二月に告発しました新日本国土工業の事件につきましては、同社の振り出した約束手形が不渡りになったという同社の重要事実を知った取引先の銀行等が、その事実の公表前に同社の株式を売り抜けたという事件でございます。また、日本織物加工の株式に関するインサイダーにつきましては、同社が第三者割り当て増資を行うということを決定したという重要事実を知ったその割り当て先の会社の代理人であり弁護士である者が、その事実が公表される前に知人名義などを使用して同社の株式を買い付けたという事件でございます。そのほかに、今年の四月になりまして、鈴丹株式及びシントム株式の二件につきましてインサイダー事件で告発しておりまして、委員会設立以来、合計五件のインサイダー取引について告発を行っているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X00919970515/145
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146・照屋寛徳
○照屋寛徳君 保岡先生、午前中の参考人のお話を聞いておられたと思いますが、その中で、江頭参考人から、自己株式方式のストックオプションは弊害が多過ぎる、だから新株引受権方式で十分ではないかというふうな趣旨の意見が述べられておったように思いますけれども、提案者としてどういうふうな感想をお持ちでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X00919970515/146
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147・保岡興治
○衆議院議員(保岡興治君) 前にも御答弁申し上げたかと思うんですが、ベンチャー企業にはワラント方式が比較的利用されるだろう、そして成熟企業については自己株式取得方式がなじむのではないだろうか。これは資金力の差ということもあります。また、市場から株を取得するということは、ROEを高めるとかあるいは余剰資産を他の投資意欲のある企業に流すパイプ役をするとか、その他持ち合いの解消の受け皿になるとか、株式がそのために取得される分だけ市場でタイトになって値上がりする分だけ株主の利益につながるとか、そういういろんなメリットもありますので、経済界からはどちらかというと自己株取得型のストックオプションの要請が非常に強い。そういった意味では、ストックオプション制度にもいろいろありますけれども、自己株式取得方式というのは日本の経済にかなりニーズの高い、要望の強い方式だというふうに認識しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X00919970515/147
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148・太田誠一
○衆議院議員(太田誠一君) 江頭さんがどういうことをおっしゃったか、私は聞いていないんですけれども、自社株を市場で取得して、そしてそれをストックオプションに供するという方が、それはワラントで与えるよりも一般の株主とそれから取締役の立場というのが平等になるんだと私は思いますので、むしろ自社株取得の方が公平な方法だというふうに思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X00919970515/148
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149・照屋寛徳
○照屋寛徳君 それから、制度導入に伴う監視体制というんでしょうか、先ほどからインサイダー取引の規制のことについても論議がありましたし、要するにストックオプションの権利の乱用が起こらないようにしっかりした監視体制みたいなものをつくっていく必要があるんだろうというふうに思われます。同時に、ストックオプション制度を導入することによって現経営者の会社支配権を維持するのに利用されるんではないか、こういうふうな懸念も制度導入に当たってあるやに聞いておりますが、この監視体制の問題については提案者はどのようにお考えでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X00919970515/149
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150・保岡興治
○衆議院議員(保岡興治君) 照屋先生のおっしゃる監視体制というのがちょっとよく意味がわからないんですけれども、不正取引とかインサイダー取引という不正に巻き込まれない、そういうものに利用されないようにという意味では証券取引委員会などの十分な対応、適切な対応ということになりましょうし、また、ストックオプション制度がいろいろ適正に運用されて、その目的どおり使われるためには、株主総会の健全な、適正な運営ということもございましょう。また、このストックオプション制度というのは会社の実績を株価に反映させる一つのインセンティブにもなるわけで、そういった意味では市場や一般にディスクローズをするということも非常に大事でありましょうし、そういった体制がこもごも一緒になってストックオプション制度を社会が監視する体制というものが整うのではないかと思います。
制度自体にはもちろん一定の制限を設けて自社株取得の弊害がないように対応していることは、先ほど来、先生方の御質疑の中で明らかにしているとおりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X00919970515/150
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151・照屋寛徳
○照屋寛徳君 それから、先ほどの浜四津委員と保岡先生のやりとりを聞いておって、私もまだ納得できないのは、株主総会における決議事項の中で、新株引受権を与える取締役または使用人の氏名の問題です。これは会社の規模の大小を問わず、文字どおり厳格な意味での氏名というふうに理解をして、また、そういうふうに運用すべきではないかというふうに私は思うんですが、もう一度先生のお考えを。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X00919970515/151
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152・保岡興治
○衆議院議員(保岡興治君) 先ほど浜四津先生は、それならば大きい会社か小さい会社かで書き分ければいいじゃないかというような御指摘をされました。
それは、私が会社の規模やあるいは会社の態様にもいろいろあるからと。小さいものから大きいもの、いろいろあるので、できるだけオプションプランが明確になるような趣旨をこの文理の中に込めて法律をつくらせていただいているので、私は、そういった多様な対象に対して制度の趣旨を適用する法文の書き方として決しておかしくないと思うんです。大きい会社、小さい会社というと、一体どこに線を引くのかということをはっきりしないとまたおかしな法律になってしまいます。それもいろいろ段階があるので、真っ二つに分けて右か左かという法制も難しいわけですから、私たちがつくった法文で、かつ、申し上げているとおりの解釈で対応すれば、この制度は適切に運用される。
むしろ、厳格に解釈して必ず氏名を全部書かなきゃならないとすると、大きな会社の場合は極めて煩瑣な手続を意味なく求められるという結果にもなる可能性があるし、それから、途中採用予定者とか途中で資格を得る者とか、いわゆるヘッドハントとか、途中で業績を示して一定の基準に達する者などに対するストックオプションの付与が難しくなったりしますので、先ほど来からの解釈や条文上の決め方については御理解をいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X00919970515/152
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153・照屋寛徳
○照屋寛徳君 最後に、大蔵省にお伺いいたします。
ストックオプション制度の導入に伴う税制の問題です。特に、適正公平な課税、こういう観点からどのような対策を考えておられるのか、お聞かせ願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X00919970515/153
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154・伏見泰治
○説明員(伏見泰治君) 現行所得税制でございますけれども、原則といたしましては、ストックオプションが行使されますと、そのときにいわば経済的な利益が得られるわけでございます。したがいまして、給与所得としての課税が行われるというのが原則でございます。
現在、先ほどからいろいろ御議論になっておりますけれども、いわゆるベンチャービジネスの振興というような観点から、特定新規事業実施円滑化臨時措置法等に基づく一定の場合でございますが、特定の事業、特定の会社につきましては、いわばベンチャービジネス税制という形で、一定の限定の中での税制上の特別措置が行われているわけでございます。
現在御審議が行われていますこのストックオプションのいわば一般化ということになりますので、そういたしますと、既存の少数の会社あるいは少数の対象者というのではなくて、多くの企業がいわば広く多数の従業員を対象としたこういうストックオプションというのが今後展開される可能性がございます。そういたしますと、現在の特定のエリアに限りました税制上の仕組みというのが基本的には作用しないということになろうと思います。また、先ほどからの御議論もありますように、そのストックオプションの方式としましても、今までのものとまた違う新たな方式も入ってくる。したがいまして、税制上の扱いといたしましては、改めてそういったその仕組み全体を含めまして、もう一回基本的に考えてみたいというふうに思っているところでございます。
技術的、実務的な要素もございますので検討に時間がかかりますが、いずれにしましても、仮に今回のストックオプション制度が導入されるということが決まりましたならば、私どもといたしましては、平成十年度の税制改正の議論に間に合うようにいろんな準備をしたいというふうに思っておるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X00919970515/154
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155・保岡興治
○衆議院議員(保岡興治君) 先生は税制のことでお尋ねですので、実は直接お聞きいただいたことではないんですけれども、もう一つの方の自社株消却についての税制も私たちは非常に重視しております。
これについては、平成六年度に定時株主総会における消却の道が開かれたときに、みなし配当課税の特例措置、みなし配当課税を凍結する措置を平成十一年三月までとっております。したがって、今度の改正による消却も当然これが適用になるわけでございますが、実は我々はこの三年の時限立法にしたときに、短期に集中してこの消却が進むように誘導するつもりで考えたのでございますけれども、むしろある意味で、ある程度の期間この税制が措置されることが消却制度をぐいぐい動かしていく、日本の株式市場その他、経済環境を変えていく力になる、これもストックオプションの税制と同時に、今回の議員立法のもう一つの税制として非常に我々が重視していることを加えさせていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X00919970515/155
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156・一井淳治
○一井淳治君 提案者の方には、参議院まで御足労いただきましてありがとうございました。
また、政治の力で沈滞した経済を改革していこうというこの強い意欲に対しては、まず敬意を表したいと思います。
ところで、先ほど浜四津先生と提案者の御議論を聞かせていただいたわけでありますけれども、その中に、今回の法案が、株主代表訴訟を事実上困難にするような商法改正を今回と同じ方法で進めようというその地ならしなんだと、たしか浜四津先生はこの法案を地ならしなんだと表現されたと思います。確かに、五月十四日付の朝日新聞などを見ますと、今回の商法改正の真のねらいとして地ならし論が展開されておるわけなんですけれども、地ならしてはないかという御質問があったわけであります。これに対して、私は耳を澄ませておったんですけれども、そうじゃないんだと否定する、否定の御回答がなかったというふうに思うんです。
私は、地ならしをするような、単なる地ならしの法案が堂々と通っていくようじゃ困りますので、その点はまず否定してもらわないと、参議院は衆議院のチェック機能を果たすのですけれども、そんなものが参議院を堂々と通ったら困りますので、もう一遍その辺を確かめさせていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X00919970515/156
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157・保岡興治
○衆議院議員(保岡興治君) 一井先生御指摘のとおり、決して地ならしてはございません。私は答弁の中で、趣旨をそういう意味で否定させていただくような内容で申し上げたつもりでございます。
要するに、株主代表訴訟も近年非常にたくさん提起されるようになっております。そして、このことは一方で企業の適正な業務執行を確保する重要な機能を持っていると同時に、会社経営者に対しても重大な責任を問う内容になっています。
したがって、この制度にもし問題があるならば、実は昭和二十五年にこの制度が法制化されて以来、実際に行われないものですから、その検討も十分なされてこなかった。
しかし、ここに来て、制度を使って訴えが一気に起こってきた。そうすると、この制度の問題点というものも当然浮き彫りになってくる。浮き彫りになってくれば、これはむしろそういう機会をとらえて積極的に法改正に当たるべきじゃないかというふうに私たちは基本的に考えて、先ほどの太田提案者もるる言われたように、我々自民党においては、少なくとも商法小委員会で前々から検討を進めているところであります。
先ほど申し上げたように、これも一年も二年もかけてやるべき趣旨ではないと我々は考えておりますので、ぜひ来年の通常国会には間に合うように、一年近くあるわけでございますから、やがてきちっと結論を出していくべき姿勢で今後の改正に臨みたい、取り組みたいと我々は思っております。
それから、議員立法でしたことに対していろいろな御批判も学者の先生からございましたけれども、今どちらかというと議院内閣制をとる日本は、右肩上がりで一つの方向性がきちっと決まっていたから、重要なものはほとんど内閣でまず取り上げていただいて、重要であればあるほどそれを審議会にゆだねて、そして一年、二年の期間を経た上、答申を得て、それを内閣法という形で日本の法制度を整備してまいりました。しかし、こういう急激な変化の時代には、そういうパターンだけでは間に合わない。
まさにこういった制度の上に乗っかっていれば、どんなに総理大臣が政治的にリーダーシップをとりたくても、一定のお役所の利害調整を要するとか、あるいは先のリスクのある判断をお役人にゆだねるということはなかなか難しい状況にあるので、我々としては、そういう判断はむしろ政治がやる責任であって、そういった意味では、こういった議員立法制度の道というのは、今後、行政の対応と両々相まって、変化の激しい日本の変革に必要な一つの道を開いたというふうにも考えています。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X00919970515/157
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158・太田誠一
○衆議院議員(太田誠一君) 株主代表訴訟についての問題点とそれから今度のストックオプションなどの法改正というのは、ほぼ同時期に議論をしてきたことは事実であります。中には、この際、一緒にわっと出しちゃおうという意見もありましたけれども、もともと別の話なんだからこれは別々に分けてやるべきだということで、独立の課題として今取り扱っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X00919970515/158
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159・一井淳治
○一井淳治君 長い御説明をいただいたわけでありますけれども、ここは論議の場でありますから、私どもの意見を言わせていただきます。
日本では株主総会の制度は十分に機能していない、これはある程度は共通の認識になっていると思うんです。そこで、株主として手段はないかといった場合に、裁判所に訴えるということで、これも相当法制審議会等で議論をいただいた上で今の一つの方向が出たわけでありまして、株主代表訴訟がかなり出てくるようになった。ですから、裁判の結果が出るまでには、十年裁判ということがありますけれども、少なくとも第一審の判決が出るまでは、その内容等につきましてはまだかなり十分慎重な検討が要るんじゃなかろうか。
特に、今出ておりますのは、背任的な行為とかあるいは処罰される行為とか、これが多いわけであります。今まではこれがもう黙殺されておったわけですけれども、公正な社会を目指して日本もいよいよ国際社会の仲間入りをしようということで、そういう方向にようやく動き出したわけでありますから、これをすぐ芽のうちに摘み取るのはどうかという意見もあることをどうか御認識いただきたいと思います。
それからもう一つ、私も同じような質問を準備しておった関係で言わせていただきますけれども、浜四津先生の方から密室的ではなかったかというふうな御質問がありました。私の質問の方は、性急に過ぎるんじゃなかろうかという質問をさせてもらいます。
いろいろとお話をいただきまして、確かに私どもの目も広くなったと思います。しかし、太田先生から、自民党内で議論をしておったと、そしてこれは新聞記者にも公表しておったということで、確かに秘密主義ではなかったということは私よくわかります。しかし、現在の政党の状態を言いますと、自民党さんとどこかの政党は与党とか野党というので財界に対して主導権争いをなさる。だから、今も恐らく自民党こそが皆さん方の意見をよく体していけるんだということは言っておられるんじゃないかと思います、私わかりませんけれども。もし自民党が、民主党も大いに経済の回復は考えているから、自民党に来た経済界の方々に民主党にもひとつよく話をしに行きなさいよというふうに言ってくれたら、そこで公開というか、なると思いますけれども、まあ政治の現場はそうはいきませんので、新聞やあるいは学者の意見に出ているような不透明の印象を禁じ得ないという状況があったことは否めないんじゃないかと私は思います。
それからもう一つは、保岡先生の方から、きょう午前中に参議院で参考人の意見を相当聞いたんじゃないかというふうな御意見がございました。それがそのまま通ればそのとおりなんですけれども、しかし午前中に意見を聞いて午後に採決というんでは、参考人の意見を十分聞いて、これを糧にしてさらに審議の充実を図ろうということからすれば、とてもそういうふうになっていないわけです。
ですから、これは衆議院の方の提案者の熱意に負けて、負けてかどうか知りませんが、特に保岡先生も提案理由の説明におきましては本当に丁重なごあいさつがあったわけであります。だから、これは参議院も非常に厳しい時間帯の中で大変無理して協力しておるんだということをおわかりだと思って、我々もこういうふうにやっているわけでしょう。それを、参議院の審議は参議院が決めることであって衆議院の方からあれこれ言われる筋合いじゃないんですけれども、おまえらどうしたんだよなんて言われると困るのでありまして、やはりこの審議は例外的だと思うんです。これほど大事な審議をこんなに短時間でやってしまってはいけないんでね。
特に、性急に過ぎるというのは、一つは法案の審議自体が十分にできないということと、もう一つは、いろんな外部の環境の整備があります、これはいろんな人からいろんな意見があります。その外部環境の整備ができていないのに、これだけ先に行ったらどうかという意見もあるわけです。ですから、そういったことも十分お考えいただいて、今の審議が当たり前だ、こういうふうに急いでやるのが当たり前だという気持ちは、質問通告はしておりましたけれども答弁は結構ですから、どうかそういうお気持ちになっていただくようにお願いをしたいと思います。
それから、私は民主党でございますけれども、民主党は昨年の総選挙におきまして、中小企業対策としてストックオプションを導入するということを実は公約させてもらっております。ところで、今回の法案につきましては、私も非常に浅学でありまして十分に勉強ができていないわけでありますけれども、五月十四日の朝日新聞などを見ますと、早稲田大学の総長さんが商法改正は大企業偏重だというふうなことを言っておられまして、実態はどうなんだろうかという気もするわけであります。
そこで、中小企業に対してどのようにメリットがあるんだろうか、あるいは中小企業の人たちはこの制度をどのように使っていけば中小企業の伸展が図られるんだろうかという点につきまして、我々民主党の提案者であります坂上先生の方からひとつ御所見をいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X00919970515/159
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160・坂上富男
○衆議院議員(坂上富男君) 民主党の坂上富男でございます。民主党を代表いたしまして、提案者の一人にさせていただきました。
きょうは、朝から学者先生、それからまた午後から各委員の先生方から、本当に学識のある立場からの御質問あるいは御提案をいただきまして、大変勉強させていただいたわけでございます。
今、一井先生からおっしゃいましたとおり、我が党は昨年の総選挙におきまして中小企業対策としてこの制度を導入するという公約をしたんです。決して大企業のために導入するということを言っていないんです。そういう観点です。
選挙が終わりましたら、私は、もう一度おまえ法務部会長をやれということになりまして、きょうまでいろいろとストックオプションの問題について検討をさせてもらってきておりました。
どういう点を検討してきたかと申しますと、一つは株主平等の原則に反しないかということ、それから資本の維持の原則に反しないかということ、それから株操作にならないか、あるいはインサイダー取引のおそれはないか、そういう点についてどういうふうに検討をしているか。それから、アメリカなどは資本と経営が分離をしておるものでございまするから、アメリカあたりは経営をしている人に頑張ってもらうためにこういうオプション制度を入れるということはよくわかるんですが、日本は資本と経営というのはどちらかというと一体だというような観点から果たしていかがかというようなことをずっと検討させてもらってきておりました。
そこで、たまたまこの連休あるいは先月二十六日ごろからでございましたでしょうか、三、四日前に自民党の先生方から私らの方に申し入れがありました。民主党の方も提案の一員になっていただけないかということがあったのでございますが、しかも連休前に御賛同いただきたいという大変せっぱ詰まった話でございますから、私は非常に戸惑いました。しかし、うちの公約であるということも私は頭にあるんですが、その公約は大企業の方でなくして中小企業を育成するための導入なんだというようなことがあるものでございまするから、果たしてこういう問題を八割ぐらい克服、検討しても、あと二割はまだ残っておったものでございまするから、どうだと言われましても、私としてはもう少し勉強の時間をいただかないといかない、こう申し上げたわけであります。
また、選挙のとき、このことを私は中小企業の皆様方に訴えました。そしたら、どういう返事かというと、坂上さん、おまえさんの言うことはよくわかるけれども、その大前提はおれらにもうけさせてもらわぬと困る。今はもう赤字だらけで、そんなストック何とかなんというようなことよりも、どうやったらもうかるか、税金をどうやったらまけてくれるか、そういうことが大事なんだと、こういうお話で、まさにそのとおりでございます。その前提の上に立って、この制度を導入するということによってますます中小企業が育成されるんじゃなかろうかと思いますというふうな答弁をしたのでございますが、私はもう率直な言葉だろうと実は思っていたわけでございます。
そんなような観点から申し入れがありました。そこで私は、ちょっと早過ぎるんじゃないか、猪突過ぎるんじゃないか、検討の時間が足りないんじゃなかろうかということは強く申し入れをいたしました。そうしましたら、うちの方へはまた別途政審の方にも申し入れがありました。それから、国対にも申し入れがありました。政審は、公約ですからオーケーと、こうなったんだろうと私は思います。国対の方は、余りにも急ぎ過ぎるじゃないか、だめだよと、こういうような意見がありました。二つの意見が相対立する形でございましたが、結果的に法務部会長に一任をするというような形になりました。私は本当にこの連休期間中勉強させてもらいました。自民党の先生方に、返事は連休の三十日にさせてもらいますということにいたしまして、検討いたしました。
ほかの部会の先生からの御賛同は事後承認ということで御理解をいただきまして、いろいろと検討いたした結果、私たちの方は中小企業の育成のためにこれを導入するという約束をしている以上は、確かに政府の方は来年だと、こういう意見なのでございますが、制度そのものはいいことであり、私たちの公約なんだから、たとえ大企業がこれに加わろうと中小のためにもなるんじゃなかろうか、こんなようなことで私は三十日に判を押したわけでございます。それで、提案者の一人として提出をしたわけでございます。それで、六日に提案になったというようなことでございます。
そこで、衆議院を通りましたら、商法学者の先生が、何か問題がある、こういうお話があったようでございます。しかも、朝日新聞に「商法改正案は大企業偏重」、こう書いてあるものですから、大企業偏重でもいいのでございますが、この偏重の結果中小企業を圧迫している、このことは中小企業のためにならぬと書いてあるのかと読んだら、それは書いてないんですね。だから、この表題と内容というのは一致しないんです。
私は、確かに学者の先生方がおっしゃるんだからこの法案に重大な欠陥があるんじゃなかろうかと大変心配をしておりまして、ずっと読んでまいりました。きょうもまた先生方の御意見も聞いたわけでありますが、欠陥はないんですね。いろいろ問題はあるんです。しかし、これはクリアできる問題だなと私は実は思っているわけでございます。
そんなようなことでございますから、我が党の立場といたしまして、中小企業育成のための導入でございますが、私はこれはやっぱり必要だな、こういうふうに思っております。
しかも、法制審議会のこともありますが、民法については、法務省は余り法制審議会の答申を尊重しないで民法改正案をお出しになっておらないという状況もありまして、法制審議会のあり方というのは、この際、また議論をするのも大変意義があるんじゃなかろうかと私は実は思っておるわけでございます。余計なことでございますが、法制審議会にかけなかったことが大変大きな問題になっておるようでございますが、この際、いろいろ議論をしていただくことは私は大変意義のあることなんじゃなかろうか。
我々の提案した法案に根本的な致命傷があるかといえば致命傷はない、これはクリアできる。しかも、その目的は、私たちは、中小企業の育成のために役立つ、こう確信をしたと、こんなようなところでございますから、我が党の方針にも相反しないと私は確信を持っております。そういうわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X00919970515/160
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161・一井淳治
○一井淳治君 次に、株式会社の経営監視制度が十分機能しておるということが環境的に必要ではなかろうかと思うわけでございます。振り返って考えますと、住専問題で我々国会も非常に後ろ向きといいますか、住専問題が起こらなかったらもっとほかの意義深い審議ができたと思うんですけれども、大変振り回されましたし、また日本経済も住専問題では非常に傷ついて後遺症が残っているわけであります。
この住専問題をよくよく分析いたしますと、土地の評価が現状以上に高く評価されておると。土地の評価につきましては商法に規定があって、値段が下がった土地については安く評価しなさいと商法に書いてあるんですけれども、商法どおりには各住専の会社が決算書類を評価していなかったと。それを取締役会も当然という前提で、中には配当すらやっておった。監査役もほったらかしにしておった。株主総会もいいかげんであった。そして、有価証券報告書には公認会計士の監査もあるんですけれども、これまたいいかげんであった。結局、株式会社の経営監視制度が十分に働いておれば、あの問題は多少は起こったかもしれないけれども、もっと手前で防止できたというふうに思うんです。
そういったことで、きょう、私、参考人の方に質問いたしましたけれども、日本の株式会社の経営監視制度というものは非常に不完全であるということであったと思います。
そこで、今後この株式会社の経営監視制度というものを十分機能するように、結局、国際社会に出ていって日本がきちんとやっていけるためにこれは不可欠だと思うんですけれども、そういう意味を含めましてどのようにお考えなのか、提案者とそれから法務省の御所見をお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X00919970515/161
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162・保岡興治
○衆議院議員(保岡興治君) 一井先生のおっしゃる点は、国際化する日本の経済にとって非常に重要な問題で、住専の会計処理あるいは会社の経営の監査体制というものは、なぜああいう住専のような経済状況が生まれたか、監査制度にどこに問題があるかということは非常に大事な問題で、このことについては実は昨年の我々の対応の中でも一つの重要なテーマで、恐らく各方面でその点については積極的に諸外国の法制あるいは適正な会計基準などを求める、経験を踏まえた、反省を踏まえた検討が進んでいると思います。そういう法制については、今後我々としても積極的に取り組んでまいりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X00919970515/162
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163・濱崎恭生
○政府委員(濱崎恭生君) 会社の運営の適正を期する観点から、いわゆる内部監視体制というものが大変重要であるということは御指摘のとおりでございまして、商法の会社に関する規定の多くもそういうことのために使われているということだと思っております。
その監視体制としての株主総会、それから取締役会、一番大事な監査役、それには会計監査委員制度、こういったものについてはいろいろ御批判もあろうかと思いますが、要請に応じて随時改正をさせていただいてきた、一番最近では平成五年に監査役制度の改正を実現させていただいたということでございます。
しかしながら、制度としていかによくいたしましても、その制度に従った会社の運用がされなければその実を結ばないわけでございまして、御指摘のように、いろいろ後から振り返ってみれば、それが制度として実際に生かされていなかったということがあるということは御指摘のとおりであろうと思います。
その役職に人材を得てその人たちが法の期待する活動をしていただく、こういうことが何よりも大事なのではないか、そういう観点から私どもといたしましては、適正な運営が図られるよう制度の周知に一生懸命努めさせていただく、これが当面我々としてしなければならないことではないのか。さらに、将来の問題としては、重大な関心を持って対処していきたいというふうに思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X00919970515/163
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164・一井淳治
○一井淳治君 同じことが、今、証券取引業界の信頼回復のために抜本的な改革を進めようということが言われておるわけでありますけれども、言いかえると、我が国の証券取引市場はまだ条件が十分整っていないということが言えると思うわけであります。
これはもう言わずもがなでありますけれども、さっきの住専問題にしても、あるいは信用金庫などは別にして、銀行が倒産をした事例がありますけれども、有価証券報告書の記載などを見ますと、もういよいよ問題が大きくなるまでそういったことがあらわれてこない。私は国会質問で大蔵省の方に、その監査報告をした公認会計士の監督をどうするのかということも質問いたしましたけれども、それっきりというふうな状況であります。どうも透明性ある、国際性のある証券市場をつくっていくという辺がなかなか進まないようでありますけれども、大蔵省の方の御意見をお伺いしたいと思います、環境整備についてどういうふうにお考えになるかということを。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X00919970515/164
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165・藤井秀人
○説明員(藤井秀人君) お答えいたします。
現在、証券取引審議会におきまして、市場の活性化のために多岐にわたる面からの種々の議論が行われております。資金調達者あるいは投資家等、それぞれにとって市場の活性化を図るための諸施策、これにつきまして現在議論が行われているわけでございます。
このストックオプションの導入につきましても、昨年の十一月末でございますけれども、証取審の中間報告でこの必要性が指摘をされているわけでございます。証取審のこれらの報告の中には、さまざまな点で相互に絡み合うような種々の問題がある一方、場合によっては支障なくでき得るものについては逐次早急に実施に移していく、これがひいては市場の活性化、経済構造改革にも資するということかと思います。そういう中で、このストックオプションにつきましては、証取法上の各種の不公正取引規制というものが厳格に適用されることになっております。
今、先生がおっしゃいましたように、市場の公正性を確保するためには、それぞれのそういうインフラとあわせましてディスクローズの問題が極めて重要でございます。また、特にストックオプションでいいますと、先ほど来お話がございましたように、経営者の方々へのこの制度の趣旨の周知徹底あるいは各種の情報の管理等々、あらゆる面でのいわば経営者意識の改革、株主に向けての経営意識の改革というものが必要かと思います。
そういうことからいいまして、私ども、先生が今おっしゃいました市場活性化に向けてのいろいろなインフラ整備、ディスクロも含めました種々の方策について現在証取審で鋭意検討が行われ、六月には何らかの報告が出るというような予定になっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X00919970515/165
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166・一井淳治
○一井淳治君 あと一分でありますけれども、今回の発行済み株式総数の十分の一という基準は、外国の事例の平均などをとって外国の例に倣ったというふうにお聞きしておりますが、外国の場合は会社の情報開示の制度が日本とは相当異なるわけで、私どもは外国の方が前進していると思うわけであります。
どうか今後、経営情報の公開の促進、市場の透明化を大蔵省、法務省、そして関係者の方々が進めていただきますように要望を申し上げまして、質問を終わらせていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X00919970515/166
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167・橋本敦
○橋本敦君 きょうは、提案者の諸先生、御苦労さまでございます。私からもストックオプションの導入に関連をして質問させていただきたいと思うのであります。
今回のストックオプションの導入は、九四年の商法改正による自己株式取得の一部の規制緩和と違いまして、我が国の会社制度のあり方の基本にかかわる、また商法の基本原則にかかわる重大な改正を含んでいるわけです。
したがって、私はこの問題については、いろいろ議論がございましたが、やはり本来的には法制審議会の慎重な審議を経て、それから後に行われるべきだという考えを依然として持っておるわけであります。この点については、既に議論がありましたように、御存じのとおりに五月十二日には二百二十五名に上る我が国商法学者の皆さんが連名で声明を発表されました。
その声明の中では、「われわれも、今日わが国が直面している経済社会の変化に鑑みると、ストックオプション等、取締役・従業員のためのインセンティブ報酬制度の導入等が必要であるとの考えは理解できないわけではない。」と、こうおっしゃった上で、しかしながらこの導入については、それに伴って株価操作やインサイダー取引等の弊害が生ずるおそれを少なくするためにいかなる方法をとるべきか等、法政策的、法技術的見地から議論がいろいろあることであるので、その点について言うならば、余りにも拙速、急ぐのではなくて、情報を国民に十分に公開し、我々法律学者あるいは法曹実務家等の意見も十分踏まえて、これらの論議を検討した上でなされるならば、議員立法による商法改正にも反対するものでないという趣旨が述べられているわけです。
私は、このような意見というのは謙虚に受けとめるべきだというように一つは思っておるわけであります。
そこで、経過を振り返ってみましても、例えば平成六年の改正のときには、御存じのとおりにこの改正に当たっては平成四年四月から審議が開始をされました。そして、自己株式の取得及び保有の見直しの作業について言うならば、平成五年一月二十八日に法務省民事局参事官室名で「自己株式の取得及び保有規制に関する問題点」を公表されました。その公表に基づいて法務省としては、慎重な審議をするために各界に対して回答期限を付して、裁判所、弁護士会、大学、経済界と二百に余る関係機関・団体に意見照会が行われる、こういう手続も慎重に経てなされたわけであります。
かねて財界から、規制緩和あるいは自己株式取得についての一層の緩和、ストックオプションを含めた意見はありましたが、こういう慎重な審議を経た上で、平成六年には今私が指摘した範囲の改正にとどまったわけです。私は、これは非常にやっぱり慎重な審議がそういう意味では尽くされてきたと思うんです。
そこで、法務省に伺いますが、このときにも既にストックオプション制度の採用については議論されておりまして照会がなされておるんですが、ストックオプション制度の利用について大方どういう意見であったか、もしも今お手元にありましたらお知らせいただけますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X00919970515/167
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168・濱崎恭生
○政府委員(濱崎恭生君) 御指摘のとおり、ストックオプション制度導入ということも一つのテーマとして掲げまして意見照会をしたわけでございますが、この導入についての意見は賛成、反対に分かれておったというのが実情でございます。単純に数だけ言えば、賛成意見の方がやや反対意見を上回っているということでございますが、相半ば、分かれておったということでございまして、もちろん経済団体等からは賛成意見が述べられておりましたし、また反対意見は日弁連のほか大学の相当数のところ等からあったわけでございます。
反対意見の理由といたしましては、そのような必要性が今我が国にとってあるのかということ、また、このストックオプションという制度は我が国の会社のこれまでの考え方とはなじまないのではないか、そういったことが反対意見の主な理由であったということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X00919970515/168
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169・橋本敦
○橋本敦君 私も資料でそのように伺っております。
それで、財界は賛成意見が多かったということですが、おっしゃるように相半ばする、そういう状況にあったわけで、圧倒的に賛成意見が多かったわけじゃありません。日弁連や大学は反対意見が多かった。特に記録によりますと、裁判所については賛成の庁が八庁だけで反対が十四庁であり反対意見が多数を占めた、こういうことがあるんです。私はかなり慎重な意見が展開されたと思うわけであります。
この問題について論議が参議院の法務委員会でも行われたわけですが、参議院の平成六年六月二十一日の法務委員会の議事録を見ますと、濱崎民事局長が、このときにストックオプションを採用しなかった理由については、「これはアメリカで利用されている制度でございますが、我が国において同じような要請が現実にあるかどうかというニーズの問題等もございまして今回の改正ではこれに対応することを見送るということになった次第でございます。」と御答弁なさっていらっしゃいます。こういう御答弁があったことは局長も御記憶ございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X00919970515/169
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170・濱崎恭生
○政府委員(濱崎恭生君) そのように答弁申し上げたと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X00919970515/170
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171・橋本敦
○橋本敦君 したがって、わずか三年前には本当に緊急にストックオプション制度を導入しなければならないという、そういうような状況というのは一般的になかったわけです。
だから、政府の対応を見ましても、平成八年の閣議決定による規制緩和推進計画はありましたが、そこで金融・証券・保険関係等についていろいろ議論をされ、ストックオプション制度の検討も掲げられました。しかし、それではすぐやるということにはなっていなかったのでありまして、平成九年、つまりことしの三月二十八日の閣議決定で規制緩和推進計画の再改定を行った中で、ストックオプション制度の一般的導入が改めてここで掲げられました。その措置内容としては、特定新規事業に関する新株有利発行制度の運用実態調査を行い、調査結果を踏まえて、ストックオプション制度のあり方について検討に着手して、本年度中に結論を得て、皆さん先ほどから議論されているように、法改正は十年度中早期にと、こうなったわけですね。これはまさに政府の経過そのものであることは間違いがない。
この中でも、政府みずから閣議の方針で、先行しております特定新規事業に関する新株有利発行制度の運用実態調査も行うと、そういう実態調査も行って慎重にやるんだと、こう言っているわけであります。
ところが、これが行われないまま、三月二十八日の閣議決定がなされたその直後に、四月四日、新聞報道によりますと、突如、橋本首相は、与党が検討しているこの商法改正について今国会での成立を目指すということの意向を固めて、三塚蔵相と松浦法相をお呼びになって全面協力するように指示されたと、こういうことが報道されておる。この経過は法務大臣、経過自体は間違いございませんね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X00919970515/171
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172・松浦功
○国務大臣(松浦功君) 間違いございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X00919970515/172
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173・橋本敦
○橋本敦君 そこで、なぜこれほど、今まで政府自身が言ってきたこととも違ってこんなに急がざるを得ないのかということが、やっぱりどうしても私どもとしては疑問を持たざるを得ない状況になってくるわけです。
そういうことで新聞を見ますと、例えば、四月二十三日にはトヨタ自動車が、九七年度中のこのストックオプション制度の導入解禁を見据えた上で、取締役以上の五十五人全員に対して年間数千株以上の買い取り権を与えると、こういうことで早速役員報酬と業績評価の連動性を高める、こういう方向へ定款を変えていこうということが報道されるというありさまですし、トヨタに続いて、コマツ、オリックス、ミスミも導入するということで、今年六月末の株主総会でのストックオプション向けの自社株買いを決議する方針という記事がどんどん出てくる。
こういう状況を見ますと、まさに我が国経済界の変動というような話もいろいろありましたが、具体的には、太田先生は先ほど、私は大企業の手先じゃないよとおっしゃったけれども、手先とは言いませんが、直接、まさに背景にはこういう財界の強い要求があったという状況、事実は、これは否定できないんじゃありませんか。保岡先生、いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X00919970515/173
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174・保岡興治
○衆議院議員(保岡興治君) 先ほど太田提案者からも御説明があったとおり、これは、日本の経済状況を踏まえて、経済政策の一環として商法改正も思い切って議員立法でやるべきだという判断でございまして、決して特定の団体の意向を踏まえて改正に踏み切るというような不見識な対応をしたつもりはありません。むしろ、取り急ぎ取りまとめて提案しなきゃならなかっただけ慎重に、党でも、また与党の間でも検討しましたし、また役所とも綿密に連絡いたしまして成案を得ました。かねてからの党としての長い間の検討の結果でもあります。
我々は、総理が、こういった議員立法と政府と相協力して本当に政治がリーダーシップを発揮しなきゃならない点について、このたびきちっと指示をしていただいたこと、このことはやはり今後こういうようなパターンの法改正が重要になってくると私は思います。
そういう意味を含めて、私としては今回、先ほど坂上先生も言われましたが、各界にそういう問題提起をして、いろいろ急いだために商法学者の先生方の御意見を聞く時間がなかったこと等については、また遺憾な点もございますけれども、今後またそういうことも十分留意してやっていく必要があるということは、きょうの委員会の参議院の皆様の重要な御意見でもあろうと思いますので、今後もまたそういうことも十分配慮して対応していこうと思って伺っておりました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X00919970515/174
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175・橋本敦
○橋本敦君 私は、特定の大企業の要求とは言いませんが、財界の要求が極めて大きなまさに背景的事情にあったということは否定できないのではないかということを言っているわけです。
そして、それはいいとして、今おっしゃったように、このことが、橋本総理が言われる六つの改革を含む新しいこれからのそういう改革を進めていく一つの手法だとおっしゃられるならば、それは私は大反対せざるを得ない。それはもう議員立法と政府と一体となって与党が多数で、法制審議会もその他の審議会も国民に公開されていくことなしにどんどんやるなんということになると、これは私は大反対せざるを得ません。
しかし、そこまで私はきょうは議論するつもりありませんけれども、仮に議員立法であるとしても、慎重な国会の審議なり国民に開かれた論議を十分尽くすということの必要性は一致しているはずですからね。
そこで次に、中身に入って議論していきたいと思いますが、そもそも我が商法が二百十条を中心にして自己株式の取得を原則として禁止してきたというのは、それなりに重要な意味を持つと思うんです。それは、なぜそういうような禁止が必要であるかということについては、今日まで学界でも多くの議論がいろいろなされてきました。
簡単にその点について民事局長にもお伺いをしたいと思うんですけれども、まず第一は、何といっても資本法定準備金を財源として自己株式が取得されるようなそういう状況になってくると、事実上株主への出資金の払い戻しということになって、まさに会社債権者への利益資本の充実に反します。これが一つは大きな問題になっている。
第二番目として、会社の業績がよいと資産価値が増加し、悪いと減少するという、こういう傾向で株価変動は常にありますから、そういう意味では、自己株式取得ということは会社の資産運用としては最も適しないものじゃないか。株価が値下がりすれば会社は二重の損害を受けるという議論もさんざん行われてきた。
それからまたさらに、自己株式取得は、ここで議論されたようにインサイダー取引やあるいは株価操縦というそこにインセンティブが行くということで、株式の市場の公平性を害するというおそれもある。こういうことがこれまで基本的には原則的に自己株保有の禁止の考え方だったと思うんですが、これは民事局長、間違いありませんね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X00919970515/175
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176・濱崎恭生
○政府委員(濱崎恭生君) 商法が自己株取得に厳しい態度をとってきた理由として一般に言われておりますところは、今、委員が御指摘になりましたような、そういうおそれがあるということであると理解しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X00919970515/176
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177・橋本敦
○橋本敦君 したがって、九四年の改正のときにも、発行株式総数の三%以内とかあるいは財源が配当利益の範囲であるとか、いろいろ制約が課されてきた、これは非常に大事な制約。だが今度は、一遍に一〇%になるということ、そしてまたそれだけではありません、使用人、つまり従業員に渡すだけでなくて取締役にも株の譲渡を認めるということですから、そういう意味では非常に大きな変化が行われるということの中で、会社の取締役と従業員が一体となって会社業績を上げるということに向かっていくというインセンティブをねらっていると、こう言うんだけれども、逆に言うと株価をつり上げるためのインセンティブもそこで働く。
そして、取締役も従業員も会社の内部情報をよく知る立場にありますから、インサイダー取引だとか株価操縦の危険が一層増大するという、そのことを真剣に心配する必要があるんじゃないか、この点については民事局長、どうお考えになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X00919970515/177
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178・濱崎恭生
○政府委員(濱崎恭生君) 先ほどの御質問とも関連するわけでございますが、いわゆるストックオプションの導入を要請する実務界の要請というのは、平成六年改正当時以後の経済情勢の変化に伴って大変強いものになってきた。
そういうことから、政府の規制緩和推進計画でも、最初に規制緩和推進計画にのったのは、平成八年三月の第一次の改定計画の中でこの検討に取り組むということが取り上げられたわけでございますが、そういう経過を経て、法務省としてもこの問題については早急に取り組まなければならないという考え方になってきたという経過がございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X00919970515/178
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179・橋本敦
○橋本敦君 私の質問に答えてください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X00919970515/179
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180・濱崎恭生
○政府委員(濱崎恭生君) 御指摘の株価操縦、インサイダー取引の問題につきましては、これは、先ほど来大蔵当局から御答弁いただいておりますように、現行の証券取引法の規定の厳格な適用によって対処いただけるというふうに考えているところでございます。
また、会社支配を助長するのではないかという点につきましては、この改正法案におきまして、ストックオプションを付与するためには株主総会で付与する対象者ごとに明らかにして決議をするということを要求していること。また、それから、取得することができる株式の総数を、従来よりも増加しておりますが、一〇%以内というふうに制限していることによって可及的に防止するという措置が講じられているというふうに考えているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X00919970515/180
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181・橋本敦
○橋本敦君 一〇%以内にしたからじゃなくて、三%を一〇%にしたこと自体が大変大きな問題なので、そこでチェック機能を一層高めにやならぬけれども、一体それはどうなるのかという趣旨の質問をしているわけですよ。一〇%があるからいいというようなことで私は納得できません。
インサイダー取引の問題で考えてみますと、確かにこのインサイダー取引の問題について言うなら、いわゆる証取法百六十六条二項の重要事実には自己株式の取得がありますね。それと同時に、百六十六条二項四号には、「当該上場会社等の運営、業務又は財産に関する重要な事実であって投資者の投資判断に著しい影響を及ぼすもの」、これも重要事実だと、こう書いてある。これは、読み方によれば、会社の営業方針、企業方針、営業実態、それからこれからのプラン、いろんなものも含めて広範なものが入るんです。こういうものを知り得る立場というのは、これは単なる使用人以上に取締役なら完全に知ることができるわけですから、そういう意味では、インサイダー取引で言う重要事実ということは、今度取締役にストックオプションを付与するということになれば、このインサイダー取引禁止の規定の厳格な適用というものが一層今まで以上に厳しくやられなきゃならぬということになると思うんです。
ところが、証券取引等監視委員会の方にお伺いしますが、このインサイダー取引ということについて今日まで指摘された事件はたった五件にすぎないんじゃありませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X00919970515/181
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182・滝本豊水
○説明員(滝本豊水君) 証券取引等監視委員会は平成四年七月に設立されましたが、それ以後今日まで告発した件数について御答弁申し上げます。委員会はこれまですべてで十一件の告発を行っておりますが、そのうちインサイダー取引として告発したものは、御指摘のとおり、五件でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X00919970515/182
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183・橋本敦
○橋本敦君 我が国は膨大な会社があるんですが、そういう実態であるし、証券取引等監視委員会自体はアメリカに比べたら人数がはるかに少ないから、監視機能も実際はなかなか難しいことはもう当然なんですよ。
それで、今度はこの商法改正が、特定新規事業だけじゃありません、全会社に及ぶという改正ですから、それから考えますと、これからの監視機能の強化というのは並大抵のことでできるわけじゃないはずなんです。
取締役による会社の支配の固定化なり、そういう問題をもう一つ別の面から考えてみますと、これが従業員持ち株会が持ち株を持って、それが安定株主になって取締役の会社の支配を助けるという程度じゃなくて、取締役と一体となって会社の支配を強化していく上で、自己株取引というのが非常に大きな力になってくることはもう言うまでもないわけでしょう。そしてそのことが、今私が指摘したインサイダー取引にも密接に関係してくることになるんですが、株価操縦という問題について監視委員会にもう一遍伺いますが、不当な株価操縦ということで監視委員会がこれまで摘発した件数及び事例はどうなっていますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X00919970515/183
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184・滝本豊水
○説明員(滝本豊水君) 株価操縦につきまして当委員会が告発した事案は、日本ユニシス事件一件でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X00919970515/184
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185・橋本敦
○橋本敦君 わずかにそういう程度なんですよ。だから、今度の商法改正について、情報公開が大事、監視機能の強化が大事と言いますけれども、今までの実態から見ますと、そういった点をどう整備するかということ、ここのところを本当に真剣にやっていかないことには、提案者の皆さんを初め皆さんがおっしゃるような形式的なことだけでは、この問題は私はなかなか済まないと思いますよ。
例えば、その問題で考えてみますと、アメリカのSECの関係で、皆さん御存じのとおりに、いわゆるセーフ・ハーバー条項が議論になりました。証券取引審議会公正取引特別部会の報告を拝見いたしますと、いわゆる相場操縦の問題、今言ったようにたった一件しかないというんですが、これに対する取り締まりの問題についてどうするかという議論がなされて、こういう議論がなされている。
現行の相場操縦の規定が、主観的要素と取引態様を総合的に勘案した上でその適用の有無が判断されてきたことがらして一定の外形的な基準であらかじめ相場操縦行為とならない、あるいはなる行為を類型として法令に規定することは困難だと。
こういう議論があって、セーフ・ハーバー条項の規定の制定や一定の取引形態で規制するということは困難だという結論で、やらなかったというんです、やらなかった。そういう結果が、今お話ししたように、たった一件しか監視委員会は摘発できないという状況をもたらしているわけでしょう。これに対して、アメリカの方はストックオプションによるいわゆるインセンティブ・コンペンセーション・プランズが非常に一般的だと、こう言うけれども、そのかわりに極めて厳しいルールが向こうではやられているじゃありませんか。
例えば、まず第一に、会社がブローカーまたはディーラーに発注して自己株式を取得する場合には、一日に一ブローカーまたは一ディーラーを利用することしか認めませんよと。これが一つあります。これは、当該株式にあちこちから買いが入りますと、広い関心が集まっているという外見が高まって株価が不当に高くなる、それを防止するということでしょう。
第二番目には、会社による自己株式取得の取引を、その日の当該市場における最初の取引として成立させてはならぬとか、あるいは最終取引終了前三十分内の取引として行ってはならないとか、こういうことです。自己株式の取得が相場を誘導したり操縦したりしないようにせよという厳格なことがあります。
第三には、ブローカーまたはディーラーを通ずる一日の自己株式の買い付け数量も、これはまさに厳しいことですが、複数の市場であるならば、そこですべて行われている取引を合算して、買い付けがなされる週に先立つ四週間の当該株式の一日の平均取引高の二五%を超えちゃならぬ、これも厳しい規制です。
こういう点で、価格の点でも発行会社が小口資本をどんどん出して株価の下落を阻止するということを意識的にやることを防止するという、こういうルールをつくっているわけでしょう。
九四年のときにはいろんな議論があって、そこまではしなくてもということで、一定の範囲の自己株取得の緩和だったからいいとしても、今度のようなことをやる場合には、こういったことも参考にして、先決問題として厳しい規制ルールをまずやるというのが日本の株式市場の今日の現状からいって私は大事だと思いますが、提案者の御意見はいかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X00919970515/185
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186・保岡興治
○衆議院議員(保岡興治君) ストックオプション制度を導入する前提として、制度に伴ういろんな問題が起こる可能性を防ぐ手だてを完全にきちっとして立法すべきではないかという御指摘だと思います。
その点については、我々としては、完璧に条件を全部きれいに備えなければ議員提案ができないというような考え方ではなくて、必要な制度は迅速に制度化した上に、それに伴ういろんな問題をかねても検討し、また日ごろも厳格な法の適用をそれなりに責任のある方々が努力をしているわけで、そういう努力の中で将来のまたいろいろな問題を予測してできるだけそういう環境整備に全力を尽くしていくと。不断の努力が必要であって、そういった趣旨は、グローバルスタンダードというか国際調和の必要な日本の経済にもまた十分求められているということは先ほど申し上げたとおりでございまして、時期を得て制度がより充実して、日本の証券市場の健全、公正化に資するように今後も引き続き努力をしていくということだと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X00919970515/186
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187・橋本敦
○橋本敦君 私は順序が逆だという意見を強く持っているわけで、御意見が一致しないんですけれども。
今おっしゃるグローバルスタンダードに適合するようにということは、これは前からも言われている、財界も言っています。ならば、グローバルスタンダードに見合うような証券市場のフェアな確保のための規制をやったらどうですか、やるべきじゃありませんか、一緒に、あるいは先行的にやるべきじゃありませんか。片方だけ、インセンティブのコンペンセーションプランだけをまずグローバルスタンダードとして導入するというのは、これは一方的じゃありませんかと、こういう議論をしているわけです。
しかも、私は、それをやる余裕が全然ないというわけじゃないと思うんですよ。といいますのは、一定のベンチャー企業、特定企業についてはもう既にストックオプションが導入されているというそういうことがありますから、そこはそれでやるでしょうよ。
それから、さらにもう一つは、御存じのように、ソニーなどがやっているいわゆるワラントつき社債を発行した疑似ストックオプション制度も
一般的にやられていますでしょう。それからさらに、参議院の調査室が調査したストックオプション型ワラント発行会社の現状を見ますと、ソニー以下、ミスミ、コナミ、プロルート丸光とかメルコとか日本プロセスとか、あるいはカテナとか余り知られていないベンチャー企業関係の会社が多いんです。
だから、日本の大企業、スタンダードな大会社全体が今すぐストックオプションということにそう向いているという状況でもないということですから、私は慎重にやっていく余裕があるという考えがありますので、ここは提案者と意見が違うかもしれませんが、そういう考え方をしているわけです。
次の問題に移りますが、もう一つは今度は消却の問題でございます。
株式の消却の手続に関する商法の特例法案によりますと、「定款をもって、経済情勢、当該会社の業務又は財産の状況その他の事情を勘案して特に必要があると認めるときは取締役会の決議により」云々と、消却できると、こうなっております。
これを見ますと、特別に必要があるときはというのはどういうときかということが議論にもなりましたが、「経済情勢、当該会社の業務又は財産の状況その他の事情を勘案して特に必要があると認めるときは」ということになりますと、法律の構成要件的規制としては一体これは何だろうかと、何でも入るじゃないかと。どんな場合でも、考え方によったら経済情勢の問題だ、また会社の業務の必要性だ、財産の状況はこういう状況だ、それを総合的に勘案するというんですから、いつでも、どんなときにもこの取締役会決議による消却ができるよというような、いわゆる法の厳格な規定の適用じゃなくて、あいまいな適用になってしまいはしませんかという心配をするんですが、いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X00919970515/187
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188・保岡興治
○衆議院議員(保岡興治君) この取締役会だけで自己株式の消却ができる今度の制度改正は、例えばその上限を一〇%の範囲にとどめるとか、あるいは配当可能利益の範囲内にとどめるとか、そういった一定の条件のもとに認めるというふうに歯どめをかけて制度化してあります。
そういった意味で、私は制度としてこの制度の欠陥はないものと思っておりますが、ただ、利益処分権というものは株主総会の大事な権利でございますから、特に認めたんだよと、適正に運用してほしいという、そういった法の趣旨とか、それからこれを悪用するようなことがないようにというような気持ちを込めて、それを制度として求めているよということを明らかにしている趣旨で、そういう意味でこの文言を理解していただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X00919970515/188
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189・橋本敦
○橋本敦君 おっしゃるように、配当を含む利益処分は株主総会の専権的事項と言ってもいい権限ですから、取締役会にこれを任せるというのはやはり一定の規制が要る。そういう規制があるように読んでほしいとおっしゃるんですが、私が指摘したように、これはどう読んでも取締役会の自由な判断で可能なように、法的な解釈要件としての縛りがありませんよということを心配しているわけですよ。ですから、そう読んでほしいとおっしゃっても、私は、これは法の規定としてはそういうようには読めないという問題を持っておるというふうに思わざるを得ないんです。
時間がありませんから先に進みますけれども、このストックオプションということで、取締役あるいは労働者に企業利益を上げる、あるいは取得した株の売却による資産を獲得するというインセンティブが与えられるということになりますと一体どういうことになるのかという、そういう面で私が非常に心配しますのは、「週刊東洋経済」の九六年三月二十七日号に、半導体回路設計のベンチャー企業、シリコンバレーリサーチの社長で、有名な方のようですが、これは高木稔さんという社長がアメリカの例をおっしゃっているんです。アメリカでは技術さえ持っていれば、五年後の株公開を夢見て、有能な若者たちが飲まず食わずで働いていると、まさに株式公開と同時にストックオプションが巨万の富に変身するからだ、必要なのは飲まず食わずの代償だ、こういうことをおっしゃっているんです。
これが本当にそうであれば、日本の経済と労働関係の秩序をまさに利益を得るためのそういうインセンティブ一色に塗りかえてしまうというふうなことになれば、私は、これは本当に大変な社会秩序の問題で、経済界の大きな変動を起こすという大問題だと思うんです。
そういうこともあって、ストックオプションを採用しているアメリカ自身の中で、我が国より格段に厳しい規制をとっていますよ。そのとっているアメリカにおいてさえ、近時、ストックオプションを富の偏在を招く歯どめのきかない報酬制度である、富の偏在を招くというんですよ、そういう報酬制度であるという批判的意見が出されているという記事を私は読んでおるんですが、こういう批判があることは提案者の方も御存じですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X00919970515/189
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190・保岡興治
○衆議院議員(保岡興治君) アメリカにおいて、ストックオプション制度の反省としてそういう点の事実を指摘している向きがあるということは承知しています。しかしながら、私は、日本はアメリカなどのように完全に自己責任で競争社会で優勝劣敗という厳しい社会とはちょっと社会風土が違って、やはりみんなで仲よく和を保ってというような国民性があると思います。
そういった意味で、アメリカほどすさまじいストックオプションによる所得格差などが生まれるような状況ではなくて、むしろ日本の経済に活力を持たせるために、元気のいい日本をつくるために、能力主義、実績主義というものをもっと、教育の分野でも個性を大事にするとか、そういった人の能力を引き出す教育制度が今大きな教育制度の改革の基本になっているように、やはり日本の企業もそういったすばらしい技術とかすばらしい人の能力というものを生かす、そういったものを雇用体系や人事体系に組み入れていく必要がある、そのことにこのストックオプション制度は大きなインパクトを与える、そういうふうに考えておるものでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X00919970515/190
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191・橋本敦
○橋本敦君 当然、提案者と私と見解が違うからそこは仕方がないんですが、私はむしろこういった弊害が助長されるおそれがあるということを心配しておるわけです。
そこで、我が国の証券市場が一体本当に信頼されるフェアな、公平かどうかということについて重大な事件が野村証券事件ということで現に起こっているわけです。この野村証券事件について、証券取引等監視委員会からの告発を受け検察庁は今鋭意捜査に乗り出していらっしゃるということですが、私は、この事件については会社ぐるみの犯罪ではないかという疑義が強いし、いわゆるVIP口座だということで特定の者に利益を与えるという、まさに株式の公平を疑わせる、国民の信頼を疑わせる事態もあるし、この問題については徹底的な捜査を遂げていただきたいと思うんですが、まず証券取引等監視委員会が告発した趣旨をお伺いし、刑事局長に捜査についての御見解、決意を伺って、質問を終わりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X00919970515/191
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192・滝本豊水
○説明員(滝本豊水君) 野村証券の事件につきましては、当委員会として、昨年来、事件の解明に努めてきたところでございまして、さきの五月十三日に、野村証券株式会社及び同社の元役員等三名を、有価証券について生じた顧客の損失を補てんするため特定の顧客に財産上の利益を提供したという、証取法に違反する損失補てんの嫌疑で東京地方検察庁に告発したものでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X00919970515/192
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193・橋本敦
○橋本敦君 刑事局長、それだけではなくて、まさに九五年の田淵氏の復帰に伴う役員の変更のための株主総会、これを乗り切るため、そしてまた、連結決算で赤字が出てきたそのことを乗り切るため、そういった株主総会を乗り切るために便宜供与を総会屋に与えたというそういう重大な疑惑もあると思いますが、その点の捜査もおやりになるはずですが、どうですか。そうなりますと、その株主である総会屋に対しても厳重な事情聴取なり捜査を発展させていかねばならぬと思いますが、いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X00919970515/193
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194・原田明夫
○政府委員(原田明夫君) 捜査の具体的内容にかかわる事柄でございますので、法務当局といたしまして、検察官の捜査がどのような形をとっていくかということにつきまして申し述べることは差し控えたいのでございますが、検察当局におきましては、今後、鋭意所要の捜査を進めまして、事案の解明を進めた上で適切な処理をするものと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X00919970515/194
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195・橋本敦
○橋本敦君 余り抽象的でよくわからぬのですが、証券取引法違反は、これは損失補償でしょう。それからもう一つは、商法違反はまさに総会屋に対する利益供与でしょう。この二つの点について、総会屋を含めて具体的事実をはっきりさせるということ、それから私が指摘したVIP口座の有無等について、それにも便宜供与があったかどうか、それも含めて視野を広げて捜査するというのは当然じゃないですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X00919970515/195
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196・原田明夫
○政府委員(原田明夫君) 御指摘のとおり、五月十四日に野村証券関係者三名を証券取引法違反及び商法違反ということで逮捕いたしまして、所要の捜査を進めているところでございます。
事実関係全般にわたりまして所要の捜査を進めていくものと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X00919970515/196
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197・橋本敦
○橋本敦君 終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X00919970515/197
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198・続訓弘
○委員長(続訓弘君) 他に御発言もないようですから、質疑は終局したものと認めます。
これより両案に対する討論に入ります。
御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X00919970515/198
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199・橋本敦
○橋本敦君 私は、日本共産党を代表して、商法の一部を改正する法律案及び株式の消却の手続に関する商法の特例に関する法律案について、反対の討論を行います。
反対の理由の第一は、本改正案が我が国会社制度のあり方の基本にかかわる商法の重大な改正であり、本来なら法制審議会の十分な審議と各界の意見を聴取し、慎重になされるのが当然であるにもかかわらず、余りにも性急に強行され、手続的に重大な問題があることであります。
この点については、我が国商法学者二百二十五人の連名で五月十二日の記者会見で、「開かれた商法改正手続を求める商法学者声明」が発表され、その中で、法案は自民党と一部の経済界の関係者が協議し、それに法務省、大蔵省が協力する形で作成され、法案の内容は一般に開示されることはなく、ようやく国会提出の数旦別に新聞にその骨子が報道されたにすぎない。これまでの商法改正が、大学、弁護士会、経済団体等に対する問題点公表、意見照会等が行われた後、その結果を踏まえた法制審議会の審議を経るというオープンな過程を経て行われてきたのに比較すると、不透明、秘密主義的な印象を禁じ得ないと、厳しく批判しているのは当然であります。
これは、一部の大企業の要求に基づくことが背景にあることは明白で、それを急ぐために、ストックオプション導入の是非はもちろん、それをめぐる株価操作やインサイダー取引などの弊害を規制する諸問題について、オープンな開かれた論議を尽くさないということは、商法という基本法の改正についてとるべき態度ではないと思うからであります。
反対理由の第二は、自己株取得方式及び新株引受権ワラント方式によるストックオプション導入等本改正案は、これまでよりはるかに会社の自己株式取得に伴う弊害を助長するおそれが多大であるのに、本来先決問題であるべきこれを抑止する監視体制や適正な規制が十分になされていないことであります。
言うまでもなく、現行商法は、第二百十条を基本に会社資本の充実と株主や債権者の保護、株主平等の原則、フェアな取引の確保等のため、資本の空洞化やインサイダー取引のおそれを助長する自己株式の取得を原則として禁止してきました。
九四年の商法改正は、一定の限度で制限を緩和したものでありますが、今回の改正はストックオプション導入により、使用人に加えて取締役に対する譲渡目的のためにも自己株取得を可能にする、株式消却の決定も取締役会の決議だけでも行えるようにするなど、株式会社の株主と債権者軽視、経営者支配を助長する、インサイダー取引の危険も一層増大させるものであります。自己株式取得の限度を三%から一〇%に一挙に三倍以上にして、株式会社の資本維持・充実の原則からも遊離するものであります。
ストックオプションにより会社の株価の値上がりが自己の利益に直結するインセンティブが強く働く以上、企業情報を操作し株価のつり上げを図る企業関係者の不正な取引をどう防ぐか、アメリカのSECルールのような規制や監視体制の強化が極めて重要であります。しかるに、この点の歯どめあるいは効果的規制は十分なされていないことも明白であります。
株取引のフェアなルールの確立と資本の充実、株主平等の原則、配当性向の向上による一般株主の増加を図る施策こそ必要であるのに、現に野村証券事件、日本商事事件等に見られるように、我が国の株取引や証券市場の公正、透明性が到底確保されていない現状のもとでは、この法案に強く反対せざるを得ません。
以上であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X00919970515/199
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200・続訓弘
○委員長(続訓弘君) 他に御意見もないようですから、討論は終局したものと認めます。
これより採決に入ります。
まず、商法の一部を改正する法律案について採決を行います。
本案に賛成の方の挙手を願います。
〔賛成者挙手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X00919970515/200
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201・続訓弘
○委員長(続訓弘君) 多数と認めます。よって、本案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
次に、株式の消却の手続に関する商法の特例に関する法律案について採決を行います。
本案に賛成の方の挙手を願います。
〔賛成者挙手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X00919970515/201
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202・続訓弘
○委員長(続訓弘君) 多数と認めます。よって、本案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
浜四津敏子君から発言を求められておりますので、この際、これを許します。浜四津君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X00919970515/202
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203・浜四津敏子
○浜四津敏子君 私は、ただいま可決されました商法の一部を改正する法律案及び株式の消却の手続に関する商法の特例に関する法律案の両案に対し、自由民主党、平成会、社会民主党・護憲連合及び民主党・新緑風会の各派共同提案による附帯決議案を提出いたします。
案文を朗読いたします。
商法の一部を改正する法律案及び株式の消却の手続に関する商法の特例に関する法律案に対する附帯決議(案)
政府は、次の諸点について格段の配慮をすべきである。
一 ストック・オプション制度の導入及び株式の消却のための自己株式の取得規制の緩和に際しては、会社による株価操作あるいはインサイダー取引といった弊害を惹起することのないよう、証券取引法の厳正な適用を行うとともに、不正取引の監視体制の強化を図ること。
二 ストック・オプションを付与するに当たっては、株主総会の現状にかんがみ、株主の正当な利益を保護するため、株主総会の運営及び経営監視体制について適切なルールの確立を求め、その適正な運営に努めるとともに、情報の開示を促進させること。
三 ストック・オプション制度に係る税制については、制度の趣旨及び適正・公平な課税の観点から、平成十年度税制改正において検討すること。
右決議する。
以上でございます。
何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X00919970515/203
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204・続訓弘
○委員長(続訓弘君) ただいま浜四津君から提出されました附帯決議案を議題とし、採決を行います。
本附帯決議案に賛成の方の挙手を願います。
〔賛成者挙手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X00919970515/204
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205・続訓弘
○委員長(続訓弘君) 多数と認めます。よって、浜四津君提出の附帯決議案は多数をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。
ただいまの決議に対し、松浦法務大臣から発言を求められておりますので、この際、これを許します。松浦法務大臣。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X00919970515/205
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206・松浦功
○国務大臣(松浦功君) ただいま可決されました、附帯決議につきましては、その趣旨を踏まえ、適切に対処してまいりたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X00919970515/206
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207・続訓弘
○委員長(続訓弘君) なお、両案の審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X00919970515/207
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208・続訓弘
○委員長(続訓弘君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
本日はこれにて散会いたします。
午後四時四十二分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X00919970515/208
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