1. 会議録本文
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000・会議録情報
平成九年五月二十九日(木曜日)
午前十時開会
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委員の異動
五月二十九日
辞任 補欠選任
中原 爽君 依田 智治君
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出席者は左のとおり。
委員長 続 訓弘君
理 事
岡部 三郎君
久世 公堯君
浜四津敏子君
橋本 敦君
委 員
遠藤 要君
志村 哲良君
下稲葉耕吉君
中原 爽君
長尾 立子君
林田悠紀夫君
依田 智治君
大森 礼子君
山崎 順子君
及川 一夫君
照屋 寛徳君
伊藤 基隆君
菅野 久光君
国務大臣
法 務 大 臣 松浦 功君
政府委員
法務大臣官房長 頃安 健司君
法務大臣官房司
法法制調査部長 山崎 潮君
法務省民事局長 濱崎 恭生君
法務省刑事局長 原田 明夫君
最高裁判所長官代理者
最高裁判所事務
総局民事局長
兼最高裁判所事
務総局行政局長 石垣 君雄君
事務局側
常任委員会専門
員 吉岡 恒男君
説明員
法務大臣官房参
事官 菊池 洋一君
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本日の会議に付した案件
○商法等の一部を改正する法律案(内閣提出、衆
議院送付)
○商法等の一部を改正する法律の施行に伴う関係
法律の整備に関する法律案(内閣提出、衆議院
送付)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X01119970529/0
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001・続訓弘
○委員長(続訓弘君) ただいまから法務委員会を開会いたします。
商法等の一部を改正する法律案及び商法等の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備に関する法律案を一括して議題といたします。
両案の趣旨説明は既に聴取いたしておりますので、これより質疑に入ります。
質疑のある方は順次御発言願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X01119970529/1
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002・長尾立子
○長尾立子君 商法等の一部を改正する法律案と商法等の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備に関する法律案、この二本が議題になっているわけでございますが、私は、商法等の一部を改正する法律案及びこれに関連をいたします事項につきまして質問をさせていただきたいと思っております。
先回の当委員会におきまして、大臣からこの両法案についての提案の御説明がございました。その冒頭におきまして、「会社をめぐる最近の社会経済情勢にかんがみ、」というお言葉があったわけでございます。日本の戦後、特に昭和五十年前後から今日まで、我が国の経済社会の変貌、これは大変に目覚ましいものがあり、かついろいろな問題をはらみながら次の世紀へ向かっている、このように承知をしているわけでございます。
法務省では、この商法、特に会社法関係につきましては、数次の改正をもちましてこのような社会経済情勢への適応ということについて御努力をいただいてきたというふうに承知をいたすわけでございます。特に昭和四十九年以後の主な検討、それに対する改正、また今後特にどのような問題について検討を進められようとしているのか、こういった流れの中で、今回の改正についてはどのような位置づけをもって取り組んでこられたのか、このことについて御説明をいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X01119970529/2
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003・濱崎恭生
○政府委員(濱崎恭生君) これまでの商法改正の経緯を踏まえての今回の改正法案の位置づけといった観点からの御質問かと存じます。
さかのぼりますが、昭和四十九年にいわゆる大会社における会計監査人の制度の導入等を中心とする商法の改正及び商法特例法の制定が実現されましたが、その以後、会社法制全般について抜本的な見直しを検討しようということで検討が始まったわけでございます。これは会社法制全般について、有限会社法制も含めまして全般的な見直しをしようという大変幅広いことを目標にしたものでございました。
そういうことで、法制審議会において検討をしたわけでございます。しかしながら、全体をまとめてということになるとなかなか時間がかかるというようなことから、昭和五十六年に、これは株主総会制度の充実、監査役制度の充実等を中心とするかなり大幅な改正、特にこの改正におきましては、いわゆる総会屋の排除のための、株主に対する利益供与の禁止規定というようなものもこの際に設けられたのでございます。
その後、平成に入りまして、平成二年、五年、六年というふうに改正をしてきております。大体の流れといたしましては、昭和四十九年改正後にもくろみました全体的な改正、それを一体としてやるということはなかなか実際困難であるということから、このうち、そういう計画の中で緊急性の高いものから順次改正をするということを基本としながら、法制審議会で審議をいただき、改正を実現させていただいてきたという経緯でございます。
この合併法制につきましても、これは昭和十三年の大幅な改正以来、基本的な構造がそのまま維持されているということでございまして、合併法制におきましては、合併に伴う株主及び会社債権者の利益が害されることのないようにという観点から大変手厚い規定になっておりますが、この手厚さということが会社の負担との関係において、また外国法制との比較において見ましても、少し負担が重過ぎるのではないかという観点から、かねてから懸案事項となっておったところでございます。その昭和四十九年後に始まりました検討課題の一つでもあったわけでございますが、今申しましたような経緯から、今日までほかの問題についての改正に時間をとられてきたという経緯があるわけでございます。
そういう状況の中で、最近、企業グループの再編成、企業の効率化といった観点から、その手段としての合併手続の重要性ということの認識が経済実務界から高まりまして、この合併手続の簡素化を中心とする改正を早期に実現してもらいたいという要請が高くなってきたという状況を踏まえ、合併に関する株主、債権者に対する情報開示の充実という点もあわせまして、今回の改正に係る法制審議会の答申を得るに至ったということでございます。
さらに敷衍いたしますと、そういった社会情勢を踏まえまして、政府の平成七年三月に策定された規制緩和推進計画において、この合併手続の簡素合理化を図るということが決定されまして、それを踏まえまして平成七年三月から法制審議会の審議を行い、今回の答申を得るに至った、それを踏まえて提出させていただいたと、こういう経過でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X01119970529/3
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004・長尾立子
○長尾立子君 今、合併手続の具体的な法案の内容につきまして若干の御説明がございましたが、次に今回の改正のポイントについて御説明をいただきたいと思います。
いただきました資料を拝見いたしておりますと、会社の合併の実態が後ろについているわけでございますが、平成三年からの数字を拝見いたしますと、平成七年に至りまして非常に大幅にふえているという数字が載せられております。現在、平成九年ということに入っておるわけでございますが、このような大幅な合併という状況は今後増加をするような傾向にあるというふうに見られるのかどうか、また、これらの背景としてはどういうような事情があるのかといったようなことについてお答えをいただきたいと思います。
もう一つは、今もちょっとお話があったわけでございますが、改正の内容でございますけれども、簡略化をされたということにつきまして、具体的な例を挙げまして御説明をいただければと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X01119970529/4
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005・濱崎恭生
○政府委員(濱崎恭生君) 合併件数の推移ということでございますが、添付しております資料のように、平成七年において合併の件数がふえております。しかしながら、企業の規模別に見ますと、これは我が国の会社には中小規模のものが圧倒的に多いという実情を踏まえまして、この合併件数の中ではそれほど大会社の数が主要な数を占めるということでもないわけでございます。
ただいま申しましたように、最近の経済情勢を反映していわゆるリストラの観点からの合併手続の重要性というものが指摘されておるわけでございます。その後、平成八年の数字はまだ確定的な統計は出ておりませんけれども、いろんな資料によりますと、平成八年は平成七年よりもさらに増加している傾向を示しているというような状況にもございます。
そういうことでございますので、今後とも合併件数というのは高い水準で推移するのではないかというふうに推測されますけれども、ただしかし、これは企業の行動がどういうふうになるかということでございますので確定的なことは申し上げかねます。しかしながら、いずれにしても合併制度の重要性ということはこれからますます増大していくのではないかというふうに考えているところでございます。
それから、二点目の簡素合理化の要点ということでございますが、大きな柱といたしましては、一つは、現行法では合併をするには二度の株主総会を開かなければならない。合併契約書をそれぞれの当事会社において承認する承認総会と、それから合併手続が全部終わった後の報告総会または新設合併の場合の創立総会、この二つの総会を開催しなければならないということになっておりまして、大規模会社の場合には株主総会の開催というのは大変な費用と手数を要するわけでございます。それを承認総会だけでいいことにする、株主総会を一回で済むことにするというのが一番大きな改正でございます。
二番目といたしまして、債権者保護手続の合理化ということでございます。現行法のもとでは、債権者に合併に異議があるかどうかということを申し出る機会を与えるために、知れたる債権者には個別に通知を発して催告をしなければならないということになっておりますが、大規模会社になりますとそれが大変債権者の数が多くて費用と手数を要するということから、この点につきましては、諸外国の法制を参考にいたしながら、必ずしも個別の催告を要しないこととする。すなわち、公告を官報とそれから会社が定款で公告方法として定める日刊新聞紙に掲げてしたときは個別の催告は要しない、こういう改正をするということでございます。
いま一点の柱は、特別に簡易な合併手続を創設するということでございまして、比較的規模の大きな会社が比較的規模の小さい会社を吸収合併するような場合には、吸収される小さい方の会社にとっては大変大きな影響があるわけでございますが、吸収する方の大規模な会社にとってはそれほど大きな組織的な変更をもたらすわけではないということから、一定の要件のもとに、そういう場合には吸収する方の会社については承認総会も不要とする、そういう特別の手続を設けるということでございます。
簡素合理化という観点からの主要点は以上のものでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X01119970529/5
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006・長尾立子
○長尾立子君 今、改正の主な内容等について御説明をいただいたわけでございます。
ここで、ちょっと観点を変えました質問をさせていただきたいと思うのでございます。
法務省が所管をいたしております法律は、我が国の非常に数多くございます法律の中でも基本的な法律であるわけでございます。この法案の提案理由の中でもおっしゃいましたように、社会経済情勢の変化に即応していかなければならないという法制の要請、それから基本法でありますのでいろいろな観点から慎重な検討を加えていかなくてはならない。この二つの要請というのは、大変重要ではございますけれども、なかなかに両立させていくということは難しい面があるのではないかというふうに考えております。
多くの場合には、このような基本的な法律の改正につきましては、一応法制審議会等で、これは小委員会ということが多いのかもしれませんが、御検討になった上で試案を発表されまして関係方面の意見を十分に聴取される。こういったものを集めましてさらに第二の試案をつくる。それをまた公表されて検討をされ、意見を求められる。その上で、法制審にまたかけられるといった手続を踏まれてこられたように思います。
多分この商法関係の法律につきましても、先ほど御説明いただきました多くの改正の中でこのような手続をとられてきたというふうに思うわけでございますが、経済の流れ、社会の変動というのは大変に激しいものがございますし、それへの対応ということを法制面で怠りますと、これは社会的に大きな問題を起こしますし、経済上も摩擦を起こすというようなことも多々あるかと思っております。
こういう非常に目まぐるしく動く情勢の中で、こういった基本法の改正という問題については新しい手法ということを検討していただくべきではないかという思いがするわけでございますが、この点につきまして御意見を伺いたいというふうに思っております。
これに関しまして、法制審議会についてお尋ねをいたしたいと思うのでございます。
法制審議会は、我が国の法体系の基本を審議する、日本にございます幾つかの審議会、委員会等の中では大変権威の高いものであると思うのでございますが、このメンバーの構成は現在どのようになっているのかということについて、あわせて御説明をいただければと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X01119970529/6
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007・濱崎恭生
○政府委員(濱崎恭生君) 御質問のうちのまず最初の、時代の変化に対応した法改正の対応ということに関しまして、私の方からお答えを申し上げます。
委員から御指摘がございましたように、民法、商法等の民事関係の基本法は、これは広く国民一般の方々の社会経済生活を律するものであって、安定的なものであることが必要であるというような観点から、従来から基本的に法制審議会で慎重な審議を経た上で立案をしてきたところでございます。さきの通常国会で委員には法務大臣として御指導をいただきまして、民事訴訟法の全面改正を実現させていただきましたが、この審議には約五年の歳月を要しているわけでございます。こういったものは、民事訴訟制度の全般にわたって何を改める必要があるのかというようなことから検討してまいったわけでございますので、この程度の期間というのは御理解いただけるのではないかと思っております。
商法の改正につきましては、先ほども申しましたように、平成に入りましてからも、二年、五年、六年、そして今回の改正案を出させていただいているわけでございまして、それぞれ法制審議会の審議を経ておりますが、今の民事訴訟法のような長期間を要しているわけではないわけでございます。
そういうことで対応してまいりましたが、ただいま御指摘がありましたように、経済社会情勢の変化が大変に激しい、とりわけ今大きな変革の時期を迎えて民事関係の立法課題も山積している状況にあります。こういう状況に適正に対応する必要があるということは私どもも痛感しているところでございまして、法制審議会の審議につきましても、これは事柄の性質によりますけれども、必要なものはより一層迅速な御審議を賜れるようお願いをしてまいりたい、あるいは事務方としてもいろいろ工夫をしてまいりたい。そういうことで、御指摘のような状況に適切に対応できるように工夫、努力を傾けたいというふうに考えております。
なお、法制審議会のメンバーの件につきましては、調査部長の方から答弁をさせていただきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X01119970529/7
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008・山崎潮
○政府委員(山崎潮君) ただいま御指摘がございました問題につきましてお答えを申し上げます。
法制審議会は、他の行政庁に置かれております政策の立案にかかわる審議会とは性格が異なりまして、国民生活全般にかかわる極めて重要な基本法の制定、改正に関しまして、その内容を検討すること、これはもう当然でございますけれども、これに加えまして、その法律の中の体系といいますかバランス、あるいは他の法律との関係の調整、理論上の詰め、こういうものをさまざまな観点から当省の立案のスタッフと共同して作業を行うというような一種の法案の立案準備機関という性格を備えているものでございます。
そういうような特徴がございますので、やはり委員の任命に当たりましては、学界の権威者あるいは法曹の実務家、こういういわゆる法律専門家を選任する必要がどうしても生じてまいります。しかしながら、他方で、今、委員御指摘のような観点から実業界、労働界あるいは言論界等の有識者を委員に任命してきているところでございます。
ここ何年かの状況を見ますと、時々その動きはございますけれども、三十名の委員のうち大体五名前後が法律専門家以外の方というような構成になっているところでございます。
今後とも、今の御指摘を踏まえまして、さらに法制審議会に国民各層、各界の意見を反映することができるように我々としても最大限努力してまいりたいというふうに考えているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X01119970529/8
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009・長尾立子
○長尾立子君 法制審議会が他の審議会と若干色彩を異にするということは私もよくわかりますし、また法律というものは非常に長期にわたって国民生活、社会、経済、さまざまな面において基本的な方向を決めてしまうものでありますので、法律の専門家による慎重な御検討ということが必要であるということもおっしゃるとおりであると思います。
しかし、三十名の委員の中で、今も部長から御説明がありましたように、数名の方が、現在は私が承知する限り四名ぐらいの方だと思うんですけれども、いわゆる法律専門家とは言えない、各界を代表する方でございますが、四名程度の方しか参加をしておられない。それから、資料を拝見いたしますと、法律の専門家の方も、それぞれの分野の権威と言われるような法学者、また各種の法曹団体、例えば弁護士会、裁判所等を代表するような権威のある方々がメンバーになっておられるわけでございます。
もちろん、このほかの方々が法制審の中で十分御議論をしていらっしゃるということではあると思うのでございますが、やはりもう少し開かれた法制審、もし法制審がそのような形のいろんな限界があるとすれば、これを補うものとして小委員会の形、または法制審の審議の前提として確実にこういった議論を懇談会等でしていかなければならないというような柔軟性のある議論をしていただいてはどうかということを強く思うわけでございます。
先ほど、基本的な法律について時間がかかる、この点についてはいろいろ努力をしてきたという御答弁もあったわけでございますが、世の中に試案を出して、それについて意見を問うという形ももちろん重要であると思いますが、お互いが一つのテーブルの中で議論をし合うという場を充実していく、このことも私は非常に重要であると思っております。今後への取り組みについてさらに御検討をいただきたい、このように要望させていただきたいと思います。
次は、商法の現代用語化ということについてお尋ねをさせていただきたいと思います。
さっきちょっとお話がございました民事訴訟法の改正のときには、日本の法律史始まって以来の大きな改正であるというふうな御説明を私は受けたような記憶がいたしておりますが、それは、全文を現代用語化するという膨大な作業を一緒になさったからでございます。この商法、もちろん内容的には、昭和の時代に入って大きく基本的な骨組みは変わっているというふうに承知をいたしておりますが、明治年間の立法でございまして、中には、例えば手代とか番頭とか、今私どもの生活ではテレビの時代劇にしか出てこないような、そういう言葉が入っている。これは推測ができるわけでございますが、やはり片仮名文字の法律というのは取っつきにくいという印象は否めないように思うのでございます。
これを全面改正していくというのは、御当局にしますと、うんざりするぐらい手間がかかるというお気持ちになるわけでございましょうけれども、この点について考えていただけないものか、御質問させていただきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X01119970529/9
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010・濱崎恭生
○政府委員(濱崎恭生君) 御指摘のとおり、民事に関する基本法を国民にわかりやすいものにする、そのためにまずもって現代語化するということは大変大切な問題であるというふうに認識しております。
したがって、私どもといたしましても、担当者とそれから若干の学者とで商法の条文の一条一条について現代語化する案について勉強をしているところでございます。言葉を変えれば中身が変わるといったようなことがあるのかどうかといったような細かい検討が必要でございますので、大変時間を要しているわけでございます。
現在、商法典のうち、最も関心の高い会社法制の分野につきまして検討を行っておりますが、この分野だけでも五百カ条ございますので、なかなか大変な作業でございますが、できるだけ早く成案を得たいということで努力をしているところです。
商法より先に民法の方が、家族法の方は別にいたしまして、財産法の方は片仮名でございます。国民の立場ということを考えれば、まずもって民法の方が急がれるのではないかと、正直私どもそう思っておりまして、そちらの方もできるだけ早い時期に現代語化できるように頑張っているところでございますし、これからも頑張っていきたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X01119970529/10
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011・長尾立子
○長尾立子君 最後に、電子取引法制について質問させていただきたいと思います。
今の我々の社会の中で、情報化というものの流れ、これは大変急速なものがあると思っております。日本は諸外国に比べますとパソコンの普及率というのが大変おくれているというふうに言われていたようでございますが、最近の普及率は大変目覚ましいものがございますし、我々の生活の中にこういったものが日常的に入ってくる時代になってきているわけでございます。
こういう情報化の進展というのは、我が国の社会では大変に速いのではないかと思っているわけでございます。そういたしますと、このいわゆる電子取引、取引に関する情報を電子的に交換する、こういうことが活発になっていく、現実にももう既にスタートしているというふうに承知をいたしているわけでございますけれども、これについての法制、この検討状況はどのようなものであるか、またそのときに一番問題として考えておられること、これらのことについてお話をしていただければと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X01119970529/11
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012・濱崎恭生
○政府委員(濱崎恭生君) 御指摘のとおり、いわゆる電子取引というものがだんだんこれから拡大していくという状況にあります。そういう状況に対応して、各省庁においてもそれぞれのお立場からこの問題についてのお取り組みを始められております。法務省といたしましても、まずもって民事基本法を所管する、またこの取引にかかわる公証制度でありますとか商業法人登記制度といったものを所管する立場にございますので、電子取引の社会になりましてもこれらの制度がその果たしている機能を十分発揮できるようにするという立場から検討しなければならないと考えまして、いささかおくればせという御批判もいただいているところでございますが、昨年七月からこの問題に関する研究会を設置して問題点の検討をしているところでございます。
この電子認証、電子公証といった今申しました公証制度、法人登記制度に関連する制度面の問題、それから民事実体法上の問題、その双方の立場から研究をしていただいているわけですが、特に電子認証とか電子公証といった制度面につきましては、先般この研究の中間的な経過報告というような形で、どういつだシステムを構築するのか、あるいはどのような技術を活用するかといった観点からの中間的な取りまとめをしたところでございます。
今後の課題の柱といたしましては、商業登記制度や公証制度に基礎を置いた電子認証及び電子公証制度の具体的な内容について検討して、その制度のありようというものを見定める。それから、電子的な文書の作成者を明らかにするとともに、作成された内容が改ざんされていないことを証明するために、現在最も有効な手段とされる暗号技術を用いた電子認証の仕組み、あるいはその効力について法的な整備を進めること、そういったことをこれから詰めていきたい。
そういうことで、この研究会から本年度中には最終報告をいただいて、それを踏まえてシステムの構築等を考え、できるだけ早くそういった制度を実現できるようにしていきたいというふうに考えているところでございます。
どのような点が重要な問題点かということの御質問でございますが、いろいろ問題点は多岐にわたりますが、例えば電子認証制度、本人の同一性等を確認する制度、この仕組みにつきましては、この認証する主体をどういうものにするのか、民間にするのか公的な機関にするのか、あるいは法人登記を取り扱っている法務局が分担するのがいいのか。それから、技術的な面ではどのような暗号技術を採用するべきか。その際に、細かい点としては、いろんな不正なアクセス、改ざん等の防止というものはどういう方式を採用することによって最も防止できるのか。そういった観点等々、制度的あるいは技術的な細かい研究を詰めてやっていかなければならないというふうに思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X01119970529/12
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013・長尾立子
○長尾立子君 ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X01119970529/13
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014・浜四津敏子
○浜四津敏子君 平成会の浜四津でございます。
今、多くの企業は、国際競争激化の中で生き残りをかけて戦略を模索し、また日々の企業活動に必死に取り組んでおります。法制度がそれにブレーキをかけるのではなくて、バックアップしていかなければならないと思っております。各国ともにこの熾烈な国際競争時代に対応できるための法制度の整備に力を注いできておりまして、我が国も早急に整備を進めることが喫緊の課題であると思います。
ところで、我が国の商法制度の整備、見直しにつきましては、企業分割のあり方とかあるいは企業会計制度のあり方、配当規制のあり方、あるいはコーポレートガバナンスなど多くの問題が山積しております。また一方で、企業活動に関連しまして、消費者保護あるいは株主、債権者の保護などの法整備も同時に要請されているわけでありますけれども、こうしたさまざまな喫緊の課題を抱える法制度整備にどのように取り組まれるか、まず大臣の御所見をお伺いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X01119970529/14
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015・松浦功
○国務大臣(松浦功君) 会社の法制等につきましては、これまでも社会情勢の変化に伴いましてそれ相応の整備を図ってきたところでございますけれども、今後とも必要に応じて善処してまいりたいという気持ちを非常に強く持っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X01119970529/15
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016・浜四津敏子
○浜四津敏子君 今回の合併法制の改正につきましては、多少の問題点あるいは積み残しの課題はあるものの、こうした要請に沿った大きな前進であると思います。
今回の改正のポイントの一つとして、合併手続の簡易合理化が挙げられます。
従来から、合併手続につきましては、その手続が大変煩項である、そしてまた合併の規模を問わずにすべてを一律に処理するものとされていたわけでありまして、そうした点から幾つかのゆがみ、あるいは実態に合わない手続の要請への対応に実務関係者は苦慮しておられました。
現在の我が国における経済活動、企業活動は、国際化あるいは業態間の競争激化によりまして、業務提携、合併あるいは営業譲渡あるいは子会社化など、さまざまな方法を検討してきておりますが、そうした検討の中で合併が適切と、こういう考えに至った場合にも、手続が余りに煩瑣である、こういうところから、場合によっては時期を逸したり、あるいはあきらめたりというケースもあったと伺っております。そういう意味では実務者の方からも、今回の簡易合理化については基本的に賛成という声が寄せられております。
ところで、日本では実務上、対等合併が多く主張されてまいりました。そういう意味では、新設合併方式を選択する場合がもっと多くてよいと思われますけれども、実務上はほとんどが吸収合併で新設合併は敬遠されてまいりました。そこで、今回の改正につきましても実務の関心は、吸収合併がどう変わるか、そういう点にあります。
新設合併が敬遠されてきた理由といたしまして、主なものが三つ挙げられてまいりました。一つは、設立委員の職務権限が不明確だった、この点は今回改正されたわけであります。また、二つ目には、新会社設立の場合に新たな官庁の許認可を要する、従来の許認可を維持できないという点があります。また、証券取引所の上場も改めて申請手続を要する、こういう点が指摘されてまいりました。
そこで、合併による新会社設立につきましては、許認可やあるいは上場手続などの手続を簡素化する方向での検討をするべきではないかと思いますが、お考えを伺います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X01119970529/16
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017・濱崎恭生
○政府委員(濱崎恭生君) 今回の改正は、会社法制の立場から合併手続を可能な限り簡素合理化しようという立場で検討を進めてまいりまして、その観点からは、今御指摘のように、新設合併が敬遠される理由の一つになっている設立委員制度を廃止するということによって対応したわけでございます。許認可の手続あるいは上場の手続、こういったものは、それぞれ、その手続を所管する省庁あるいは証券取引所において取り扱われる問題でございます。
私どもとしては、今回の合併法制の改正ということを一つの契機にして、そういった場面でも適切な対応をしていただきたいという期待をしているところでございますが、この点につきましては私どもの直接の所管ではないということでございますので、そういう答弁で御理解を賜りたいというふうに思う次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X01119970529/17
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018・浜四津敏子
○浜四津敏子君 それでは、改正のポイントのもう一つの大きな柱として情報開示の充実があります。
事前の情報開示といたしまして、合併契約書承認総会の二週間前から一定の書類を会社の本店に備え置く、そして株主、債権者の閲覧、謄写に供せしめる、そういう制度があります。株主及び、殊に会社債権者にとりましては、相手会社の財産状態いかんによりまして重大な影響を受けるわけで、各会社でそういう意味では保護手続が必要とされるわけであります。
そこで、今回の改正では、この備え置き及び閲覧の対象書類を現行法に比べて質量ともに増加させております。
対象書類が四つありますが、まず、各会社の貸借対照表、これにつきましては総会前六月内のもの、合併貸借対照表をこの対象書類といたしまして、これは従前の作成時期について限定をしたわけであります。二点目の合併契約書、そして三点目が合併比率の理由を記載した書面、いわゆる割り当て比率説明書ですけれども、合併においては公正な合併比率ということが大変重要な課題であります。この割り当て比率説明書には具体的にどのようなことをどの程度まで明示すべきと考えておられるのでしょうか。
外国の例を見ますと、例えばECの法制では、合併当事会社の最近三営業年度の年次計算書類、営業報告書及び取締役等会社機関による報告書、特に株式の交換比率について、法律上及び経済上の観点からの説明とその根拠を詳細に示す報告書の作成と開示が要求されております。日本でもこのように理由書を詳細に作成させるべきではないかと思います。
具体的には、例えば資産負債の評価がえ及びその理由、のれんの額とその理由、あるいは企業の評価の方法としてどのような方法を採用したか、少なくともこういった点を書く必要があると思われますけれども、いかがでしょうか。あるいは専門家による報告書を添付させるとか、あるいは少なくとも法務省令で一定の基準を示すべきと思いますが、御見解を伺います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X01119970529/18
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019・濱崎恭生
○政府委員(濱崎恭生君) 合併比率理由書についてのお尋ねでございますが、合併比率というのは、結局、お互いの会社の企業価値の比較を基礎として決定されるものでございまして、その企業価値を把握する方法としては、純資産額を基礎とする方法、株価を基礎とする方法、それから会社の収益力を基礎とする方法、あるいはそれらを併用する方法があるというふうに言われております。
それぞれの会社の実情に応じてそういう方式を採用するということになりますが、この理由の記載においては、それらの方法のどういう方法をとったのかということ、それからその具体的な算定に当たってどういうことを基礎としてきたのかといった、そういった基本的な数値、こういったものを明らかにするべきものであろうというふうに考えております。
また、ただいま御質問にありました資産等の評価がえあるいはのれんの計上といったようなことを行う場合には、これらの事項も企業価値の算定に関連する重要な事項でございますので、その合併比率算定書に記載すべき事柄であるというふうに考えております。
ただ、具体的にどういう事項をどの程度記載するかということにつきましては、これはそれぞれの会社の規模あるいは合併の態様に応じて大変多様であろうと思います。したがって、具体的、個別的に何々を記載しなさいというような形で規則等で定めるということは大変困難なことではないかというふうに思っております。
ただいま御指摘のありましたECの指令におきましては、各種計算書類等が規定されておりますが、これは今回の改正法では具体的に貸借対照表、損益計算書というような形で具体化しております。ECの指令でこれに、合併比率理由書に該当するのは、株式の交換比率について法律上及び経済上の観点からの説明とその根拠を詳細にということが対比されようかと思うんでございますが、この規定も結局具体的な内容を指定しているわけではないということであろうと思っております。
いずれにいたしましても、今回、法改正をいたしまして新たにこれを開示してもらうということにしようとするものでございまして、その趣旨の周知徹底ということを図って、その趣旨に沿った適正な運用に期待し、その推移を見守りたいというふうに考えているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X01119970529/19
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020・浜四津敏子
○浜四津敏子君 ところで、商法四百八条の二項によりますと、株主総会の招集通知には合併契約書の要領を記載することを要すると、こういうふうに定められております。そして、大会社においてこの招集通知に参考書類を添付する場合には、大会社の株主総会の招集通知に添付すべき参考書類等に関する規則で、「合併を必要とする理由並びに合併契約書、各会社の商法第四百八条ノ二第一項の貸借対照表及び最近営業年度の損益計算書の内容」と、このように定められております。
この株式割り当ての理由書の内容は、ここで言う参考書類の記載事項に入ることになるんでしょうか。あるいは今回、四百八条ノ二の改正に伴ってこの参考書類規則も改正することになるのかについて伺います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X01119970529/20
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021・濱崎恭生
○政府委員(濱崎恭生君) 現在、参考書類規則の改正点について中身を確定しているわけではございませんが、ただ、合併比率説明書の内容が詳細になればなるほど参考書類として送付するということの負担がふえるというような問題もございます。
したがいまして、今回の改正では、合併比率の理由を見たいという株主は、総会の二週間前から会社の本店に備え置かれるわけでございますので、それを見るということによってその開示としては足りるのではないかなというふうに今現段階では考えているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X01119970529/21
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022・浜四津敏子
○浜四津敏子君 ところで、合併報告総会及び創立総会の廃止が今回の改正案に盛り込まれておりますが、これまで合併手続を複雑煩瑣及び長期化させていた原因としてこれらが指摘されてきたわけです。特に合併報告総会は、合併したという事実を株主に報告するだけのために開催されるというふうに受けとめられておりまして、招集通知の発送からあるいは会場準備とか、あるいは総会当日の運営、こういった膨大な労力あるいは費用を要することから実務界からも疑問視されてきたものであります。
ただ、合併報告総会廃止についてはそういう意味では基本的に賛成できる点でございますけれども、この廃止との対比から、新設合併についても創立総会を廃止するということについてはちょっと違う問題があるのではないかというふうに思われます。新設合併も一つの法人設立行為でありますから、一般の会社設立の際に要求されます創立総会の開催を合併の際には不要だということにしていいのかどうか。これは単に吸収合併との対比だけではなくて、会社の設立に際しての創立総会開催の必要性、そして合理性との対比も考えることが必要なのではないかと思いますけれども、御見解を伺います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X01119970529/22
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023・濱崎恭生
○政府委員(濱崎恭生君) まず、実質論からお答え申し上げますと、吸収合併の場合と新設合併の場合とで一番大きな違いは、新しい会社の役員を選任するということが新設合併の場合には当然必要となる。創立総会におきましては、報告のほかに役員の選任ということが重要な任務であったわけでございますが、今回の改正によって、設立される会社の役員は合併契約書で定めてそれぞれの会社の承認を得るという形で株主の意思を反映するという方法によって解決をするということにしているわけでございます。
それから、吸収合併の場合と新設合併の場合の違いという点について御指摘がございました。
確かにそういう違いはあるかと思いますが、現行法で新設合併について募集設立の場合に倣って創立総会を要求しているわけでございますけれども、株主となろうとする者を発起人以外の第三者から募集して株式会社を設立する募集設立の場合とは異なりまして、新設合併は合併当事会社の間で合併契約をして両会社が合体すると、その効果としてそれぞれの会社の株主であった者が新設会社の株主となるということでございまして、合併の方法の一つとして会社を設立するというものでございますので、一般に広く株主を募集する募集設立に類似した手続をとる必然性は必ずしもないのではないか。かえって新設合併というのは、そういう意味では第三者を株主として募集するものでないわけですから、発起設立に近い性格を持っているのではないか。
御案内のとおり、発起設立の場合は創立総会というものは必要がないわけでございますので、そういうことも考慮してこのような改正案とさせていただいた次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X01119970529/23
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024・浜四津敏子
○浜四津敏子君 それでは次に、反対株主に対する事後救済措置としての株式買い取り請求権について伺います。
買い取り請求手続につきましては、営業譲渡等の場合の株式買い取り請求の手続規定が準用されるわけですけれども、買い取り価額について合意が成立しない場合には株主が裁判所に価額の決定を申請するわけですが、その価額決定基準については明示の規定がありません。今回の改正でも示されておりません。これまでは裁判所の裁量にゆだねられてまいりまして、この公正な価額の決定基準につきましてはさまざまな考え方があるわけですけれども、判例では例えば東京地裁では同事業種基準方式を採用すると、こういうふうにしております。
この公正な価額の決定基準について法務省としてはどのように考えておられるのか、法律には不適切かもしれませんけれども、この際、通達などによって何らかの基準を示すべきではないかと考えますが、いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X01119970529/24
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025・濱崎恭生
○政府委員(濱崎恭生君) 申し上げるまでもなく、この価額というのは合併がなかったらどうであったろうという公正な価額ということでございまして、取引所の相場のない株式については、ただいま御指摘のありました類似業種の比較方式のほか、さまざまな方式があるというふうに言われているところでございまして、最終的には裁判所が何が一番適切かということで判断をされるということになっているわけでございます。
これは、法律の建前としては、合併しなければ有したであろうと認められる公正な価額というものは客観的にあると、それを裁判所に発見していただくという考え方でできておりますので、これは現在の裁判所の御努力によって解決していただくべき問題であろうと。そういうものに対して、行政の立場で通達を出すとか基準を出すとかというのはなかなか難しい事柄なのではないかなというふうに考えているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X01119970529/25
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026・浜四津敏子
○浜四津敏子君 それでは次に、債権者保護手続について伺います。
合併により当事会社の財産が合体されるわけですから、合併はその債権者の利害に大変重要な影響を及ぼすことになります。そこで債権者保護手続が要求されるわけですけれども、その法的措置のあり方につきましては大きく分けて事前予防的措置をとるべき立法と事後的な救済措置をとる立法とがあると言われております。
事前予防型では、債権者保護は厚くなりますけれども、反面、合併手続が複雑化、そして長期化する。他方、事後救済型では、合併手続そのものは簡易迅速化されますけれども、一方で債権者は債権が危険にさらされるおそれがあるということがあらかじめわかっておりましても合併の効力発生まで待たなければならないと、こういう点が問題であると指摘されてまいりました。
我が国は事前予防型でありまして、しかもかなり特異な事前予防型であると言われてまいりました。
例えば、通常、異議というのは裁判所に申し立てるのが普通でありますけれども、そしてその異議に理由があるか否か、あるいは提供される担保の額の相当性の判断というのは裁判所が行うのが他国の多くの立法例でありますけれども、これに対しまして我が国では、債権者は自身の判断で会社に対して自由に異議申し立てができました。
また、異議申し立てがあった場合には、会社は弁済あるいは相当の担保を提供するか、あるいは財産を信託しなければ合併手続を前に進めないこととされておりまして、いわば異議申し立てに合併手続進行を阻止する効力を与えておりました。
またもう一点は、知れたる債権者に個別に通知することを要する、これも我が国特有のものであったと言われてきました。
こうしたことから、今回の改正で、事前予防型を基本としながらもほんの少しだけ事後救済型に近づけたと言われております。
ところで、この改正法案四百十二条にこの保護手続の規定があるわけですけれども、この四百十二条は原則として、「公告シ且知レタル債権者ニハ各別ニ之ヲ催告スルコトヲ要ス」と、こう定めてあります。この場合の公告の内容については余り詳しく触れられておりません。商法は単に「合併ニ異議アラバ一定ノ期間内ニ之ヲ述ブベキ旨」としか定めておりません。また、今回の改正案でもそのようになっております。
実際の公告もその内容は非常に簡単になされておりまして、合併当事会社名、その存続、消滅、あるいはそれに異議申述期間程度は書いてあるのが普通であります。合併契約書等の内容には、通常、触れられておりません。他に公示の要求もなされておりませんから、債権者は公告の段階では合併後の会社が予定する資本金も知り得ないと、こういう制度になっております。
他国の例では、例えば合併当事会社の社名はもちろんですけれども、合併後の会社の新しい資本金あるいは増加資本金、移転する財産その他が詳細に公告され、また情報開示される、こういう制度をとっているところもあります。日本でも債権者にもっと合併の内容について情報を提供し、判断材料を与えるのが望ましいと思われますが、これも省令、通達などで公告内容を定める御予定があるのかどうか、お伺いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X01119970529/26
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027・濱崎恭生
○政府委員(濱崎恭生君) 現行法の考え方もそうでございますが、この債権者に異議を述べる機会を与えるための公告というのは、要するにどういう会社がどういう会社と合併をするかと、それでそれに対して異議があるかどうか述べるべき期間を知ってもらう、そういう限度での公告ということが予定されているものと理解をいたしております。
そして、債権者がそれに異議を述べるかどうかの判断のためには、会社の本店に備え置かれる書類を資料として判断するということが予定されているものと考えておりまして、今回の改正もその前提で、そして備え置き書面を充実すると。先ほど御指摘のような書面を備え置いて閲覧することができるということによって、債権者にとっても異議を述べるかどうかの判断の材料がふえるということで対応するのが適当であろうというふうに考えているところでございます。
新聞公告ということになりますと相当の経費を要するという問題もございます。そういうことを踏まえて、そのような対応で債権者保護に欠けることはないのではないかというふうに考えているところであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X01119970529/27
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028・浜四津敏子
○浜四津敏子君 同じく四百十二条のただし書きでは、例外として官報のほか日刊新聞紙、これを公告の方法として定款に定めた場合にはこの日刊新聞紙に掲げて公告すれば各別の催告を不要と、こういうふうに定めております。
ところで、商法百六十六条四項は、会社の公告の方法としてこう定めております。「会社ノ公告ハ官報又ハ時事ニ関スル事項ヲ掲載スル日刊新聞紙ニ掲ゲテ之ヲ為スコトヲ要ス」と、こう定めているわけです。つまり、官報か日刊紙のいずれかを選択するように要求しておりまして、しかも、いずれを選択しても本来その効果に差がないということにしていたはずであります。
ところが、今回の改正では、日刊紙を選択した会社には債権者保護手続について簡略化の方法を与えております。一方で、官報を選択した会社にはその便宜を与えておりません。いずれを選択するかというときには全く差を与えていなかったはずなのに、一たん選択した後でこれは法律によって差を与えるというのは不公平ではないかという意見もあります。これは、制度そのものとして反対するわけではありませんけれども、この点との整合性についてはどのようにお考えになっておられるのか、お答えいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X01119970529/28
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029・濱崎恭生
○政府委員(濱崎恭生君) 今回、こういう改正案にさせていただいておりますのは、公告の方法として二つの方法をあわせてとるということによって債権者が合併情報を知る蓋然性が相当程度高まる、そういうことを踏まえて個別催告を省略することができるということにするものでございます。
したがって、官報を公告方法として選んでいる会社が官報公告だけで個別催告を省略できるとすることは甚だ困難であるということからこういうことになっているわけでございまして、ただいま御指摘のような差別という見方もあるかもしれませんが、これは合理的な理由があるのではないか。
また、今回の改正によって、官報を公告方法として選択している会社にこれは従前以上の手続を課するということではございませんし、必要があれば定款変更ということで新聞による公告に改正するということも可能でございます。定款変更も合併承認も手続要件としてはいずれも同じ特別決議ということでございますので、そういう選択もしていただけるということですから、会社に過大な負担をかけるというものではないのではないだろうか、このように考えているところです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X01119970529/29
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030・浜四津敏子
○浜四津敏子君 そしてまた、各別の催告をすべき債権者の範囲については何も規定がされておりませんが、これは各別の催告をすべき場合には、債権の種類を問わず、あるいは大小を問わずすべての債権者ということで、その範囲には何も限定をしないという御理解でしょうか。例えば非金銭債権を有する債権者にはどうするのか、あるいは継続的契約に基づく金銭債権を有する債権者、こうしたものが、従来、実務では問題になってきたわけです。
具体例を申し上げて申しわけありませんけれども、例えば大手の不動産会社が実質子会社と合併する場合に、持ちビルのテナントがかなりたくさんいる場合にも、そのテナント、いわゆる貸借人に対しても合併について異議があれば全部述べるように各別の通知を出すべきなのかどうか、このような点が実務でもその都度問題になっておりました。
今回の改正でも、この各別の催告をすべき債権者の範囲には何ら限定をしないと、すべての債権者に催告をしなければいけないんだと、こういうお考えでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X01119970529/30
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031・濱崎恭生
○政府委員(濱崎恭生君) 御指摘のように、現行法の解釈として、特に非金銭債権につきましては、該当するかどうかをめぐって考え方が多様であるという状況にございます。そういう状況については今回特に手当てをいたしておりませんので、同じような解釈問題は引き続き残るということになるわけでございます。
今回の改正に至る議論の中におきましても、この個別催告を省略するということではなくて、個別催告はしなきゃならぬということにしておいて、催告しなければならない債権の範囲というものを明確にして線引きをする、そういうことによって個別催告制度を維持すべきではないかというような考え方も一部にあったわけでございます。しかしながら、それを法律で線引きするというのは、債権の種類は大変多様でございますし、例えば金銭債権でもどこで線を引くかというようなことになりますと大変困難な問題である。そういうことを踏まえて、むしろそういった問題を官報と日刊新聞紙と両方の公告によって個別催告を省略することができるということ、そういう形で解決するのが適当ではないかということで今回のような改正案になったというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X01119970529/31
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032・浜四津敏子
○浜四津敏子君 次に、今回の改正法案百条三項ただし書きによりますと、「但シ合併ヲ為スモ其ノ債権者ヲ害スルノ虞ナキトキハ此ノ限二在ラズ」、こういうことにしてあります。つまり原則としては、「債権者が異議ヲ述べタルトキハ会社ハ弁済ヲ為シ若ハ相当ノ担保ヲ供シ又ハ其ノ債権者二弁済ヲ受ケシムルコトヲ目的トシテ信託会社ニ相当ノ財産ヲ信託スルコトヲ要ス」と、こういうふうになっておりまして、例外をただし書きで定めているわけであります。
この場合の債権者を害するおそれがないというのは、具体的にどのような場合を指すのか。それはだれが判断するのか。それから、債権者を害するおそれがないということの立証責任はだれにあるとお考えでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X01119970529/32
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033・濱崎恭生
○政府委員(濱崎恭生君) 債権者を害するおそれというのは、合併をすることによって債権の満足を得られなくなるおそれということでございまして、そのおそれがない場合の最も典型的な例としては、債権者が十分な担保を有しているという場合が挙げられると思いますが、そのほか、合併する相手方の会社の資産状況、経営状況が良好であるという場合はおそれがないと考えられますし、また相手方の会社にそういう不安があっても、自分が債権を持っている当の会社が十分な資産状況にあるということであればそのおそれがないということになりましょうし、またそのおそれの有無は債権の態様、額によっても個別に違ってくる場合があろうと思います。
そういったことを基準にして判断するということになるわけですが、このおそれがあるかないかという判断は、まず異議の申し出を受けた会社が判断をして、そのおそれがないと思えば弁済等の措置をしないという対応に出るということになるわけでございます。それに不服がある債権者といたしましては、このおそれがあるのにもかかわらず弁済等の手続をとらなかったということは、手続違背として合併無効の原因になると解されますので、裁判所に対して合併無効の訴えを提起する、その段階で最終的には判断がされるということになろうと思っております。
立証責任という御指摘でございますが、その場面においては会社の方でおそれがないことを立証すると、こういう関係になろうと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X01119970529/33
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034・浜四津敏子
○浜四津敏子君 この債権者を害するおそれがないときの具体例を幾つか挙げられましたが、例えば合併の前からもともと不良債権であって、もともと全額弁済の可能性がなかった債権の場合もこれに含まれるでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X01119970529/34
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035・濱崎恭生
○政府委員(濱崎恭生君) 合併によってそのおそれが増大したということでなければ、おそれがないということになろうと考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X01119970529/35
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036・浜四津敏子
○浜四津敏子君 この百条では「債権者ヲ害スル」という表現になっておりますが、この「債権者ヲ害スル」という表現は、民法の四百二十四条、詐害行為取り消し権の規定にも同じ表現が出てまいります。法律においては、同じ文言の場合には原則として同じ解釈がなされるべきだと考えますけれども、この詐害行為取り消し権の場合の「債権者ヲ害スル」という文言から出てくる解釈と今回のこの百条で定めている「債権者ヲ害スル」という文言の解釈とは多少そごがあるというふうに思えます。その意味では、むしろ合併に応じた規定文言にすべきではなかったかとも思いますけれども、いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X01119970529/36
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037・濱崎恭生
○政府委員(濱崎恭生君) 御指摘の、双方の場面で多少は具体的な意味合いが異なる面があるのかもしれませんが、しかしながら、債権の引き当てになる債務者の一般財産が変動するということによって債権の満足が得られなくなるという意味では共通の概念なのではないだろうかというふうに考えておりますし、また同じ商法の中で、商法四百二十三条二項において、類似の場面につきまして、「他ノ債権者ヲ害スルノ虞ナキ債権」というような表現もございます。そういったことを考慮して、同じ表現でいいのではないかと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X01119970529/37
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038・浜四津敏子
○浜四津敏子君 それでは次に、この制度と合併登記手続の関係についてお尋ねいたします。
合併の登記を受理するかどうかというのは、登記申請の際に添付された書面によって合併手続が完了しているかどうか、これを登記官が判断して受理することになるわけであります。
債権者が異議を述べたにもかかわらず、合併によっても債権者を害するおそれがない、こういう理由で合併登記手続の申請がなされたときに、そのおそれがないということを登記官はどのような書面で判断することになるんでしょうか。これを恣意的になされないように、取り扱いの基準を通達などによって明確化する必要があるのではないかと考えますが、そういうお考えはありますでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X01119970529/38
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039・濱崎恭生
○政府委員(濱崎恭生君) 申請書には、当該債権者を害するおそれがないことを証する書面を添付すべきこととされておりますが、その書面として最も典型的なのは、十分な抵当権が設定されているということをいう場合に、その抵当権設定の不動産登記簿謄本といったようなものが考えられます。
ただ、一般的に申し上げれば、先ほど申しましたような会社の資産状態あるいは経営状態ということから判断されるということでございますので、異議を述べた債権者が有する債権について、その債権額、弁済期、担保の有無、両当事会社の資産状況、営業実績等を具体的に摘示して、弁済を受けることができなくなるおそれがないということを当該会社の代表者が証明するというような書面もこれに当たるものというふうに考えております。
いずれにいたしましても、御指摘の、審査における不統一がないようにという観点からは、適宜の方法で登記の現場への周知を図りたいと考えております。
害するおそれの最終的な判断は、いずれにいたしましても、先ほど申し上げましたように合併無効の訴えの中で判断される、そこで担保されるということ、これが基本的な考え方でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X01119970529/39
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040・浜四津敏子
○浜四津敏子君 それでは次に、消滅会社、そしてその消滅会社の株主及び債権者が合併によって損害をこうむった場合に、合併後における消滅会社の責任あるいは取締役等の責任についてはどのようにお考えでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X01119970529/40
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041・濱崎恭生
○政府委員(濱崎恭生君) 申し上げるまでもなく、合併は承認総会における特別多数決議に基づいて行われるものでございますし、債権者に対しては異議手続が定められているわけでございます。また、合併に法令違反がありますれば、それは合併無効の原因となり得るということでございまして、基本的にはこういう形で株主、債権者の保護を図っているということでございます。
ただ、合併に際して、消滅会社の取締役に法令違反等の違法行為があって、そのために株主あるいは債権者が害されたという場合には、事案に応じて取締役の株主または債権者に対する責任ということが問題になる場面もあろうかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X01119970529/41
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042・浜四津敏子
○浜四津敏子君 それから、ちょっと実務的な手続の関係で確認させていただきたいと思いますが、株式の併合、分割の手続について伺います。
株券提供の手続、それから新株券の交付等はどの時点で行われるべきものとされているんでしょうか。また、株券の提供期間の終期はどのように定められているのか。また、株式の併合、分割の効力の発生のときをいっと考えておられるのか、お伺いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X01119970529/42
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043・菊池洋一
○説明員(菊池洋一君) お答え申し上げます。
株式の併合または分割の場合には、旧株券を会社が回収するためにその提供を求めるということで株主に公告と通知をしなければなりませんが、合併の場合には、これはあくまでも合併を目指す併合、分割でございますので、通常は合併契約書の承認決議があった後に公告、通知が行われているというふうに聞いております。
提供の期間でございますが、法律で一カ月以上の一定の期間というふうに規定されておりまして、その範囲で最低一カ月ということで会社が決めるわけでございます。具体的に一カ月あるいは二カ月ということは公告、通知の中に書かれますので、それを見れば株主はいつまでに提供すればいいかということはわかることになっております。
それから併合、分割の効力発生時ですが、これも法律で今申し上げました株券提供期間の満了のときに効力を生ずるというふうに定められております。
最後に、新株券の交付でございますが、吸収合併の場合ですと、消滅会社の株主に新株券を交付するということでございますが、消滅会社の株主は合併の効力発生のときに存続会社の株主になりますので、合併の効力発生時、すなわち合併の登記があったら遅滞なく新株券を交付するということになるのではないかと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X01119970529/43
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044・浜四津敏子
○浜四津敏子君 次に、今回の改正で、存続会社が自己株式を有するときには、これを消滅会社の株主に割り当てることによって新株をその分発行しないことができるとした四百九条ノ二が新設されました。
そこで、合併における自己株式の処理についてお伺いいたします。
まず、消滅会社が存続会社の株式を所有している場合、これは合併によって存続会社の自己株式となるわけです。この場合の存続会社の自己株式を消滅会社の株主に与えるべき株式として使えるのかどうかお答えください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X01119970529/44
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045・菊池洋一
○説明員(菊池洋一君) 委員ただいま御指摘の四百九条ノ二という新設の条文は、存続会社が前から自己株式を保有しているという場面を典型的なケースとして念頭に置いて定めたものでございます。そういう自己株式を合併新株にかえて利用することができるということは現在の解釈でも認められているものでございますので、これはいわば解釈の明文化という位置づけでございます。
委員御指摘の点、すなわち消滅会社が存続会社の株式を持っている場合でございますが、この点につきましては、その株式が存続会社の自己株式となるのは合併の効力発生時でございまして、合併契約の締結時にはなおまだ消滅会社の財産ということでございますので、ここまで含めて条文でははっきり書いてございません。したがいまして、御指摘の点は今後の解釈なり裁判所の御判断にゆだねられるということでございます。
なお、学説におきましては、今、委員御指摘の点、積極に解する、すなわち消滅会社が持っている存続会社の株式も合併新株にかえて利用することができるというお考えもあるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X01119970529/45
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046・浜四津敏子
○浜四津敏子君 次に、存続会社が消滅会社の株式を所有している場合でございますが、消滅会社株式に存続会社の株式を割り当てて新株を発行することができるのかできないのかについてお伺いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X01119970529/46
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047・菊池洋一
○説明員(菊池洋一君) 結論から申し上げますと、今御指摘の点は今後の解釈なり判例にゆだねるということで、今回の改正案では特に盛り込まれておりません。
今の問題につきましては、現在でも合併新株を割り当てることはできるという考えと、割り当てることはできないという考えが学者の間で分かれております。そこで、法制審議会の商法部会では、この問題につきましても議論をいたしましたが、両論相半ばするという状態でございまして、最終的にどちらか一方にまとめると、意見の一致を見るということができませんでしたので、この点については立法によってどちらかに決めるということは見送ったわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X01119970529/47
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048・浜四津敏子
○浜四津敏子君 これは、存続会社が消滅会社に投資したために、消滅会社の株式の形で所有していたものが合併によって株式のかわりに直接それに対応する物的財産の形で所有することになるわけでありまして、この場合に消滅会社の株式に存続会社の株式を割り当てて新株を発行いたしますと、物的財産とそれからそれを表章する株式と二重に取得することになる、そういう意味で妥当ではないのではないかというふうに考えます。実質的に見れば、原始的な自己株式引き受けの場合と類似することになりまして、そういう意味では、本来、今回の改正で決着をつけるべきではなかったのかというふうに考えます。
次に移らせていただきます。
合併契約書の記載事項についてお伺いいたします。四百九条に合併契約書の記載事項について定められておりますが、資本の増加額の下限についてはどのように解釈すべきとお考えでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X01119970529/48
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049・菊池洋一
○説明員(菊池洋一君) 合併による資本の増加額につきましては、四百十三条ノ二という新設の規定でございますが、ここで考え方を明らかにさせていただいております。
下限についてのお尋ねでございますが、今申し上げました条文の第一項後段に規定がございまして、合併に際して額面株式を発行するときにはその額面の金額に発行する株式の総数を乗じた額は必ず資本に組み入れなければならないということになっております。これは、額面株式の機能からこのように考えられているわけでございますが、これが資本増加額の下限になるというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X01119970529/49
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050・浜四津敏子
○浜四津敏子君 ところで、商法二百八十四条ノ二、資本払込剰余金の規定がありますが、この規定は合併の際の資本増加額についても適用されると考えてよろしいのでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X01119970529/50
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051・菊池洋一
○説明員(菊池洋一君) 現行法では、御指摘の二百八十四条ノ二の規定が適用あるいは類推適用されるかどうかについて考え方の争いがございましたが、今回の改正案では、先ほど申し上げました四百十三条ノ二という規定で、合併の場合の資本の額はどうあるべきかという規定を設けさせていただきました。この新設規定が二百八十四条ノ二第一項の「別段ノ定」に当たるというふうに私どもは考えておりますので、改正後は二百八十四条ノ二の規定は合併の場合には適用がないというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X01119970529/51
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052・浜四津敏子
○浜四津敏子君 次に、会社の合併に伴う財産の変動とその処理方法についてお伺いいたします。
債務超過の会社を吸収合併することは認められるのでしょうか。あるいは、債務超過ではないけれども資本の増加が生じない、こういう合併は認められるのかどうか、お答えください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X01119970529/52
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053・菊池洋一
○説明員(菊池洋一君) 債務超過の会社につきましては、債務超過の会社を消滅会社とする吸収合併は認められないというふうに解釈されております。今申し上げました点は、今回の改正案でも同様の解釈を前提にいたしております。
なお、資本増加を生じない合併、実務上無増資合併というふうに言われているようでございますけれども、例えば一〇〇%子会社を吸収合併するような場合には合併新株を一切発行しない、したがって資本は全くふえないということがございます。それから、先ほど来御説明申し上げております四百十三条ノ二の規定で、額面株式を発行する場合には資本の下限がございますが、無額面株式の場合には、これは吸収合併の場合でございますが、下限はございませんので、資本増加を一切生じない合併というものも認められるというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X01119970529/53
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054・浜四津敏子
○浜四津敏子君 次に、先ほども少しお伺いいたしましたけれども、合併条件の中で公正な合併比率というのが大変重要な問題でございます。その前提となりますのは、両当事会社の株式の価値あるいは企業の価値が前提となるわけですけれども、この合併比率決定の基準、そして企業価値の測定方法についてはどのようにお考えでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X01119970529/54
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055・濱崎恭生
○政府委員(濱崎恭生君) 御指摘のとおり、合併比率というのは、基本的には合併両会社の企業価値の比較によって定められるわけでございまして、その算定方法といたしましては、純資産額を要素とする純資産額比較方式、株価を要素とする株価比較方式、収益力を要素とする収益力比較方式、それからこれらの方式を併用する折衷方式等があるというふうに言われております。会社の諸事情によってそれらの中から適切な方法を選択するということになろうと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X01119970529/55
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056・浜四津敏子
○浜四津敏子君 それでは次に、合併交付金についてお伺いいたします。
この合併交付金は存続会社の株主にも支払うことを認めるということでよろしいのでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X01119970529/56
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057・濱崎恭生
○政府委員(濱崎恭生君) 存続会社の株主に合併交付金を交付するということは、現在の解釈としても、会社の資本の払い戻しに当たるから資本充実の観点から許されないというふうに考えられていると承知しております。
規定の上でも、吸収合併の場合の合併契約書の記載事項を定めております四百九条の四号におきまして、「合併ニ因リテ消滅スル会社ノ株主ニ支払ヲ為スベキ金額」というふうに規定しておるところでございまして、条文上も存続会社の株主への支払いということは想定されておらないところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X01119970529/57
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058・浜四津敏子
○浜四津敏子君 それでは次に、合併貸借対照表についてお伺いいたします。
これは、評価がえは認めるのかどうか、またいつどういう場合に認めるのか、またのれんの計上あるいは資産の評価がえを行った貸借対照表を作成した場合の手続について御説明願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X01119970529/58
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059・菊池洋一
○説明員(菊池洋一君) まず、資産の評価でございますけれども、原則としては取得原価で貸借対照表を作成することになっておりますが、合併の場合には資産の評価がえをすることができるというふうに解釈されております。また、のれんにつきましては明文の規定がございまして、商法の二百八十五条ノ七でございますけれども、有償で譲り受けた場合と合併により取得した場合にはのれんを計上することができるということになっております。
したがいまして、合併の場合にはのれんを計上したり、あるいは資産の評価がえをするということができるわけでございまして、これらのことを行う場合には合併貸借対照表といいましょうか、あるいは合併期日において作成する計算書と申しましょうか、そういった書面にはのれんを項目を立ててのれん幾らと書き、また評価がえを行う場合には評価がえ後の価額を計上するということになるというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X01119970529/59
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060・浜四津敏子
○浜四津敏子君 細かいことになって申しわけありません。計算の承継の方法についてお伺いいたします、
合併貸借対照表の基準日後の消滅会社の計算につきましては、存続会社の計算と合体して行うことができるんでしょうか。その場合、合併による承継資産の評価は合併貸借対照表の記載によると考えてよろしいでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X01119970529/60
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061・菊池洋一
○説明員(菊池洋一君) まず、後段の方からお答え申し上げます。
実務上は合併貸借対照表といいましょうか、あるいは受け入れ貸借対照表という言葉で呼ばれているようでございますが、合併期日を基準といたしまして消滅会社が存続会社に引き渡すといいますか、承継される資産、負債の一覧表が作成されております。そこには資産とともにその評価額が記載されているわけでございますが、この受け入れ貸借対照表に記載されている価額でもって合併後は存続会社に承継される。したがいまして、存続会社におきましては、合併後最初の決算期に作成する貸借対照表の中には、その会社が従来から持っている資産、負債に加えまして、合併によって消滅会社から承継した資産、負債も合わせて、合体して一つの貸借対照表が作成され、それについて監査、それから定時総会の承認という手続が行われるわけでございます。
そういう意味で申し上げれば、実質的には消滅会社の合併前の最終の決算期の翌日から合併までの間の計算は、合併後に存続会社の最初の決算期において一緒に一体として行われているという言い方もできようかと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X01119970529/61
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062・浜四津敏子
○浜四津敏子君 それでは次に、有限会社法の改正についてお伺いいたします。
今回、違った種類の会社の合併について規定をされております。ただ、認めているのが新設の組み合わせ二つに限定されております。従来、商法五十六条一項で、人的会社と人的会社の合併によって株式会社をつくる、あるいは人的会社と株式会社の合併で株式会社をつくる、これは認めているわけです。ところが、今回の改正では、人的会社と人的会社を合併して有限会社をつくる、これを認めておりません。
現行法で認めている先ほどの二つの例、こういうものを認めてきたのに、今回、人的会社同士の合併での有限会社設立を認めないというのはちょっと矛盾するのではないかと思いますけれども、御説明願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X01119970529/62
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063・濱崎恭生
○政府委員(濱崎恭生君) 今回の有限会社法の改正によりまして、現行法の組み合わせに加えて、有限会社と有限会社が合併して株式会社になること、それから株式会社と株式会社が合併して有限会社を新設すること、こういう選択肢を新たに認めたわけでございますが、御指摘のように、有限会社と人的会社の合併、それから人的会社から有限会社への合併ということについては特別の手当てをしていないわけでございます。その点は、株式会社の場合と違うということはそのとおりでございます。
今回の改正においていろいろ検討しました結果、人的会社と有限会社との合併による流動化ということについての要請というのは比較的大きくないということと、それから一方、御案内のとおり、人的会社は社員の個人的な信用を基礎とする会社でございまして、無限責任会社が存在する、資本の制度がない、それから利益分配についても規制がないなどの点において、物的会社である株式会社、有限会社とはその性質を異にしている。そのような相互の乗り入れを認めるような合併まで今回の改正で積極的に認めるのがよいのかどうかという点については、もう少し検討をした方がいいのではないか。実務上の要請が比較的少ないということと、そういった問題点がある。
言いかえれば、現在の株式会社の場面で問題点があるというようなことを申し上げるようなことになるわけでございますが、今回の改正においてそこまで積極的に改正するという必要性はないのではないかという判断がされたわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X01119970529/63
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064・浜四津敏子
○浜四津敏子君 時間が少しオーバーして申しわけありません。
最後に、世界的な大競争時代に入っておりまして、各国の企業活動は日常的に国境を越えて行われております。EC各国でも法制度の違う国同士の合併というものを認めております。日本でも今後の課題として国際合併を認めるという検討をぜひしていただきたいと思います。
これは要請にとどめさせていただきまして、質問を終わらせていただきます。大変ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X01119970529/64
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065・照屋寛徳
○照屋寛徳君 それでは、私からも商法等の一部を改正する法律案について何点か質問をさせていただきたいと思います。
商法等の一部を改正する法律案の提案理由の中で、会社をめぐる最近の社会経済情勢の変化とそれに伴う合併手続の簡素合理化ということをうたっておるわけでありますが、会社の合併に関して言えば、調査室からいただいた資料によりますと、社会経済情勢の変化というよりもむしろ景気の変動というんでしょうか、これに深く関連があるのかな、こういうふうにも感ずるわけでありますが、最近の会社合併件数がどうなっているのか。その中で吸収合併、新設合併ごとにおわかりであれば数字をお示しいただきたいということと、資本金で言うとおおむねどのクラスの会社合併がふえているのか、そこらあたりお教えいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X01119970529/65
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066・濱崎恭生
○政府委員(濱崎恭生君) ちょっと数字の羅列で恐縮でございますが、まず第一の御質問の吸収合併、新設合併の登記件数、平成三年から平成七年までの推移について申し上げます。
まず吸収合併ですが、これは登記の件数でございます、平成三年が千四百九十九件、四年が千五百十一件、五年が千四百十二件、六年が千三百七十八件、七年が千六百四件。新設合併でございますが、三年が八十件、四年が七十三件、五年が百十三件、六年が百十三件、七年が六百十件ということでございます。申し上げましたように、吸収合併の方が圧倒的に多いということでございます。
それから、資本別の合併のお尋ねでございますが、これは各年通じまして、数から言うと、資本金が五千万円未満の会社が圧倒的に多いと。例えば平成七年で申しますと、五千万円未満の会社は千九十七件、五千万円以上一億円未満が百三十九件、一億円以上十億円未満が百七十七件、資本金十億円以上は五十七件ということでございます。これは、我が国におきましては会社の数の絶対数が資本金五千万円未満の会社が圧倒的な多数を占めているということに基づくものであろうというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X01119970529/66
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067・照屋寛徳
○照屋寛徳君 今度の法改正は、先ほど申し上げましたように、会社を取り巻く社会経済情勢の変化の中で、恐らく日本の現行商法における合併手続が極めて煩瑣であると。したがって、社会経済情勢の変化に即応するように合併手続の簡素合理化を図ろうと、こういうことが主たる目的だと思われるわけです。
この現行商法の合併手続と欧米における合併手続との比較、相違点というんでしょうか、どういうところで現行商法が手続的に煩瑣になっているのか、欧米の法制と比較してお教えいただければありがたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X01119970529/67
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068・濱崎恭生
○政府委員(濱崎恭生君) 欧米の法制といたしまして、ドイツ、フランス、それから欧州連合のディレクティブ、それからアメリカの法制を拾って比較して申し上げたいと思います。
まず、合併の承認総会でございますが、これはいずれの国においても承認のための株主総会が必要であるという点は変わりはございません。それに対して、合併の手続が全部終わった後の報告総会あるいは創立総会といったもの、これを必要としているのは今の法制では我が国の現行商法だけでございます。
それから、合併に反対する反対株主の株式買い取り請求権、これは我が国の商法、これは現行も改正案も同様でございますが、それからドイツ、アメリカにはこういう制度がございますが、フランス及びEUにはないということでございます。
それから、事前の開示書面についても今回改正をさせていただいておりますが、現行商法では貸借対照表だけというものを今回の改正で充実することにしておりますが、ドイツ法では合併契約書、貸借対照表等を備え置くべきこととされております。フランスでは合併契約書、貸借対照表、営業報告書等、EUでは合併契約書、その説明書、貸借対照表、営業報告書等、アメリカでは合併契約書またはその要旨ということになっております。
それから、特別に簡易な合併手続でございますが、今回改正法案で新たに導入することとしておりますが、この法制はドイツ、EU及びアメリカにおきまして、一定の場合には存続会社における承認総会も必要としないという制度が設けられております。
なお、債権者保護手続もかなり重要な相違点がございますが、これについてもあわせて申し上げさせていただきます。
債権者保護手続につきましても今回の改正案を提出させていただいておりますが、現行商法におきましては、先ほど来御指摘がありましたように、事前の救済手続ということになっておりまして、一定期間内に異議を述べた場合には、異議を述べた債権者に対しては弁済もしくは担保の提供あるいは信託会社への財産の信託を要するということにされており、しかも債権者に対して個別に催告をしなければならないということになっているわけでございます。しかも現行商法におきましては、これは合併をする前の事前の手続として要求されておりますので、弁済等の措置を講じなければ合併手続が前に進まないという形になっているわけでございます。
これを他国の法制と比較してみますと、まずドイツでは、これは合併登記をしてその公告をした後、すなわち合併手続がすべて終わった後、六カ月内に弁済、担保の提供を請求することができるという、いわば事後手続になっております。また、債権者に対する各別の催告ということは要求されておりません。
フランス法でございますが、これは合併契約書の公告後三十日内に裁判所に対して異議を述べることができるということになっております。裁判所はその異議の理由の有無を判断して、弁済または担保提供を命じるかどうかを判断するということでございます。これは合併手続が完結する前に異議の申し出ができるわけですが、異議を述べても手続の進行はとまらないという制度になっております。また、債権者に対する各別の催告は必要がないということになっております。
それからEUでは、これはディレクティブということでございますので、抽象的に合理的な債権者保護手続を設けなければならないという指令になっております。
アメリカ法においては、一般的に債権者保護手続が設けられておらないという状況でございます。
以上、少し長くなりましたが、御説明させていただきました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X01119970529/68
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069・照屋寛徳
○照屋寛徳君 ところで、会社の合併に伴って株主や債権者、あるいはまた吸収合併によって消滅をする会社との関係等でいわゆる合併無効確認訴訟などが提起される場合があるわけですが、最近、過去二、三年分でも結構でございます、あるいはまた東京、大阪の裁判所に限定しても結構でございますが、合併無効確認訴訟というのは何件ぐらい提起をされておるんでしょうか。
また、関連して、法律で定められた合併無効提訴権者のうち、どの者からの合併無効確認訴訟の提訴が多いのか、そこら辺もおわかりであればあわせてお教えいただきたいというふうに思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X01119970529/69
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070・石垣君雄
○最高裁判所長官代理者(石垣君雄君) 委員御指摘の訴訟ですが、これは現行法四百十五条では「合併無効の訴え」という表現をしておりますので、合併無効の訴えということで申し上げさせていただきますが、実はこの訴えについての正式な統計は、申しわけありませんが、把握をしていないというのが実情でございます。ただ、今回、東京地裁本庁と大阪地裁の本庁、いずれも商事関係事件の専門部を持っておる裁判所でございますが、そこの担当者に確認をしてまいりました。
東京地裁本庁におきましては、平成六年から八年までの間の三年間、毎年一件ずつ、したがって三年で合計三件の合併無効の訴えが提起されたということでございます。
また、大阪地裁本庁におきましては、平成五年に一件の合併無効の訴えが提起されて以来、合併無効の訴えは提起されていないということのようでございます。
どういう者からの訴えの提起が多いのかということにつきましても、正式な統計をとっていないということになるわけでございますが、先ほどお答えをした四件の事件のうち三件につきましては、その原告というのは株主またはこれに準じる者、これに準じる者といいますのは、有限会社の社員のようでございます。これが合わせまして三件、残りの一件は原告は債権者であったということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X01119970529/70
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071・照屋寛徳
○照屋寛徳君 合併無効の訴え、私が予想していた以上に非常に少ないなという印象を持ちました。また、今御報告いただいた東京、大阪、四件の中で、提訴権者三件は株主またはそれに準ずる者ということも承知をいたしました。件数が極めて少ない、特に東京、大阪でもこの程度の件数ということになれば、現行法上の合併手続の中で、もうほとんど法的な紛争がないというふうに思えるような気がするわけであります。
さて、ところで、この会社合併の経済的な目的等について、経営の合理化だとかいろんなことが言われております。今回、法改正をするについて、合併がバブル崩壊後のリストラの手段として活用されて合併件数が急増している、こういうふうなことを説明しているわけでありますが、どうも会社合併がリストラの手段として活用されているんだということがうまく理解できないんです。もしその具体的なケースで、こういう事例があるんだというふうことをお知りであれば、これまたお教えいただきたいというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X01119970529/71
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072・濱崎恭生
○政府委員(濱崎恭生君) 経済の実態あるいは企業行動の実態ということに関する御質問でございますので、私どもそのものを直接に承知しているわけではございませんし、今御指摘の、具体的にどういう事案があるかということについても御答弁いたしかねるわけでございますが、私どもいろいろ実務界から御意見を聞き、あるいはいろんな資料で承知しているところでは、合併の理由としてはさまざまなことが言われております。
企業規模の拡大による競争力の強化、それから企業グループの再編成による経営の合理化、効率化、例えば多くなり過ぎた子会社、関連会社を整理統合する、それから管理部門や二重投資の解消を図るといったようなことでございます。それから、不況時における経営基盤の強化、また新たな事業によるリスクを回避するために設立した子会社、関連会社が軌道に乗ったためにまた吸収するというようなこと、それから不振に陥った関連会社を救済整理するためいわゆる親会社に吸収する、そんないろんな形態があるというふうに聞いております。
リストラの手段としてのいろんな手段の中で、合併というものも一つとして使われるというのは、そういった諸要素を組み合わせてのものではないだろうかというふうに考えているところであります。この中では、企業グループの再編成によって経営を合理化し効率化する、ダブっている部門を一つに吸収する、あるいは投資を一カ所に集めるといったようなことが、今申し上げましたような理由の中では最も結びつくものではないだろうかと、このように感じているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X01119970529/72
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073・照屋寛徳
○照屋寛徳君 最後に、これまで法制審商法部会における合併法制についての見直し論議の経過、あるいはそこで出てきた論点というんでしょうか、争点、論議された問題点などについてお教えいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X01119970529/73
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074・濱崎恭生
○政府委員(濱崎恭生君) この合併法制をめぐるこれまでの法制審議会商法部会における審議の経過につきましては、先ほども御答弁申し上げたところでございます。課題としては昭和五十年当時からその問題意識を持っておったということでございますが、全体の課題の中から緊急を要するものから順次改正を実現してきたということから、この合併法制の改正の立案ということはこの段階になったということでございます。
したがいまして、合併法制の見直しということは、最近の社会経済情勢を背景にしてその実務的な要請が著しく高まったということはございますが、問題としては旧来からあった問題点である、それをこの要請の高まりを受けて、この際、手当てを講じさせていただいたということであるというふうに考えております。
それから、どういう点が議論されたかということでございますが、審議の過程で議論された問題点の大多数は今回の改正案として実現しているということでございます。それぞれの問題についてさまざまな議論が闘わされたわけですが、その際に何よりも大事なこと、これは手続の簡素合理化の面でも、それから情報開示の充実という面でも共通する問題でございますが、一方で合併によって株主あるいは会社債権者の利益が害されるということがないように、そういった株主、債権者保護の要地唄それと合併をする当事会社の負担、その間の均衡の問題をどういうことにするのか、会社の負担を軽減しながら、しかしながら株主、債権者の保護に欠けることがないようにという配慮、その落ちつきどころをどこにするか、こういったことがさまざまな面での議論の中心課題であったというふうに思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X01119970529/74
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075・照屋寛徳
○照屋寛徳君 終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X01119970529/75
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076・続訓弘
○委員長(続訓弘君) 午前の質疑はこの程度にとどめ、午後一時まで休憩いたします。
午前十一時五十八分休憩
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午後一時開会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X01119970529/76
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077・続訓弘
○委員長(続訓弘君) ただいまから法務委員会を再開いたします。
まず、委員の異動について御報告いたします。
本日、中原爽君が委員を辞任され、して依田智治君が選任されました。その補欠と発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X01119970529/77
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078・続訓弘
○委員長(続訓弘君) 休憩前に引き続き、商法等の一部を改正する法律案及び商法等の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備に関する法律案を一括して議題とし、質疑を行います。
質疑のある方は順次御発言願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X01119970529/78
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079・菅野久光
○菅野久光君 午前中に引き続き、御苦労さまです。商法等の一部を改正する法律案について、若干の問題について御質問申し上げたいと思います。
まず、今回の合併法制の見直しの検討でございますが、これは法制審議会商法部会において昭和四十九年の七月から開始された会社法の全面改正作業の際にさかのぼるわけでございます。昭和五十年の六月には、その作業において、会社法全面改正に当たって検討すべき七項目の問題点が公表されました。その中にはこの合併も含まれておりまして、当時既に合併手続の問題点が指摘されておったわけです。にもかかわらず、その後、数回行われました商法改正においては合併法制についての手当てはされませんでした。そして、二十年余り経過して、ようやく今回その見直しが実現をしたわけでございます。
先ほどからの質問にも、社会経済情勢に適合して、あるいはそういう要請にこたえてというお話がございましたが、この問題については当時からそういう社会経済情勢あるいは要請が強かったと思うんです。なぜ、この法制審での審議がこのようにあったにもかかわらず商法の改正がおくれたのか、法制審での審議の迅速化についてどのようにお考えになっておられるか、初めにお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X01119970529/79
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080・濱崎恭生
○政府委員(濱崎恭生君) 委員御指摘のとおり、昭和四十九年の商法改正が成った直後から会社法の全面改正ということを目指して審議に入りまして、五十年六月に問題点を取り上げて意見照会をいたしました。
その対象は、今七項目とおっしゃいましたが、その内容を申し上げますと、企業の社会的責任、株主総会制度の改善策、取締役・取締役会制度の改善策、株式制度の改善策、株式会社の計算・公開、企業結合・合併・分割、最低資本金制度及び大小会社の区分という、会社法全般にわたる大変幅広いものでございます。したがいまして、そのときは、緊急の要請があるかどうかということにかかわらず、考えられるあらゆる問題をピックアップして意見照会をしたということであったというふうに承知しております。
そういうことで作業に取り組みましたけれども、午前中も御答弁申し上げましたように、その全体ということになると何十年かかるかわからないというようなことから、昭和五十六年に株主総会制度、取締役・取締役会制度等を中心とする改正を実現し、その後は、それらの検討事項のうち緊急度の高いものから逐次成案を得るという方法で実現させていただいてきたところでございます。この今の問題点の中には、まだもってこれから検討しなければならないという問題も残っているのが実情でございます。
そういうことでございまして、今回の改正案を提案申し上げるのが大変遅くなったということの御指摘は、十分に私ども真摯に受けとめなければならないと思っておりますが、そういう実情にあるということだけは御理解を賜りたいというふうに思います。
今回の合併法制の改善につきましても、集中的な審議を始めたのが平成七年三月からということでございます。また、政府が平成七年三月に策定した規制緩和推進計画におきましては、この合併手続の簡素合理化については九年度中に結論を得てということになっておりましたところ、実務界の要請を踏まえて、その計画からは一年前倒しして八年度中に結論を得て今回提案させていただいたということも申し上げさせていただきたいと思います。
さはさりながら、検討に時間がかかり過ぎるという御批判は真摯に受けとめなければならないと思っておりまして、今非常に時代の流れが速い中、とりわけ各方面で改革が求められている中で、課題を処理するために迅速な対応ということに心がけていかなければならない、一生懸命頑張っていきたいというふうに思っているところであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X01119970529/80
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081・菅野久光
○菅野久光君 社会の要請あるいは特に国際化の問題というようなことなども含めて、特に商法の問題についてはいろいろ大変な問題があって御苦労なことだとは思いますけれども、今後こういったようなことについてもできるだけ社会の要請にこたえていくと、そういうことで今お話がありましたので、ひとつ一層の努力を私の方からも要請をしておきたい、このように思います。
先ほどからも質問にありましたが、債権者保護手続の問題でございます。
改正案はこの債権者保護の手続について、合併に異議を申し述べるための公告を官報で行うのに加えて、定款で定めた時事に関する事項を掲載する日刊新聞紙にしたときは、知れたる債権者に対する各別の催告を要しないものというふうにして、手続の簡素合理化を図っているわけですが、ここで言う時事に関する事項を掲載する日刊新聞紙とはどのようなものなのか。例えば、周知性が高いとは言えない地方紙に公告した場合に、遠方にいる債権者にとってその公告を読むことは大変不便を強いることにもなるというふうに思うんですが、その辺はどうなのか。また、その時事に関するとはどのように解釈したらいいのか。その点についてもお聞きをしたいと思います。
さらに、改正案では、債権者が異議を申し述べたときでも、その債権者を害するおそれがないときは弁済等をすることを要しないものとしている。
そこで、債権者を害するおそれがないときとはどのような例が該当するのか。また、その該当性はだれが判断するのか。弁済等を受けなかった債権者の救済方法、そういったようなものはどのようになっておるのでしょうか、お伺いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X01119970529/81
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082・濱崎恭生
○政府委員(濱崎恭生君) まず第一点目の、時事に関する日刊新聞紙についてでございますが、これは法律上も定義が定められているわけではございませんけれども、抽象的に申し上げれば、政治、経済、社会、文化、その他社会における出来事を幅広く報道する日刊の新聞紙というような意味に解されております。
したがって、例えばスポーツ紙であるとか、特定業種の事業者だけに当該業界の事情を報告するような新聞といったものはこれに該当しないというふうに解されます。
ただしかし、そういうものであれば、全国紙であるか地方紙であるかは問わないということでございまして、これは会社の規模、活動範囲等に応じて、利害関係人の範囲が広い会社にあっては全国紙を選択されるのが一般でありますが、活動範囲が地域に限られているという会社にあっては地方紙であっても差し支えないということでございます。
どの新聞に掲げましても、債権者あるいは株主にとってあらゆる新聞をとっているわけではないという問題があるわけでございますが、これは定款で定めると。定款は、株主はもちろん会社債権者も閲覧できるわけですし、定款で定めた公告の方法は登記がされますので登記簿を見ればわかるということでございますので、会社に重大な利害関係を持っておられる方は、その会社の公告紙がどこであるかということは一般的に理解いただいているということであろうと思います。そういうことで、それを見ていただくという機会を確保するということにしているわけでございます。
二つ目の、債権者を害するおそれがないときという御質問についてでございますが、これは合併によって債権の満足が得られなくなるおそれがあるかないかということで判断がされるわけでございます。
害するおそれがないという最も典型的な場合といたしましては、もう既に十分な担保があるという場合がございますが、そのほかにも合併当事会社の資産状況、経営状況等にかかわってくる問題でございまして、そういった状況が良好であるということであれば債権者を害するおそれがないということに当たりますし、また債権の性質、額によって個別に判断されるということでございます。この判断は、会社に対して異議が述べられれば、その債権者ごとに第一次的には当該会社が双方の会社の資産状況、経営状況とか債権の額とか担保の有無、そういった内容を総合判断して判断するということになるわけでございます。
その会社の判断に債権者として不服であるという場合につきましては、最終的には合併無効の訴えを提起するという形でおそれがあるかどうかということが判断される。害するおそれがあるのにかかわらずそういう措置をとらないということになりますと、合併無効の原因になるということによって最終的には債権者の保護が図られる、こういう構成になってございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X01119970529/82
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083・菅野久光
○菅野久光君 次に、簡易な合併手続を創設するわけでございますが、現行法では、合併契約の承認については多くの株主の意思を反映させるために、どのような規模の合併であれすべて株主総会の特別決議という重い手続を要求しておりました。ところが、今度の改正案では、大規模会社が小規模会社を吸収合併するときには、存続会社である大規模会社は承認総会を開くことなく、取締役会の決議だけで合併ができる簡易合併の制度を新設したわけです。
すなわち、存続会社は一度も株主総会を開くことなく合併手続を進めることができるようになるということで、合併手続を進める上で存続会社における株主の意思表明の機会はどのように確保されるのでしょうか。現行法で総会の特別決議を要求していることとのバランスをどのように考えたらいいのか、その点をお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X01119970529/83
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084・濱崎恭生
○政府委員(濱崎恭生君) 御指摘のとおり、規模の相対的に著しく大きい会社が小さい会社を吸収合併する場合には、これは吸収する方の大規模な会社にとっては合併による株主に及ぼす影響が少ないということから承認総会を開かなくてもいいという措置を講じたわけでございます。しかしながら、そういう合併でございましても、そういう合併に反対だという株主の保護という観点から、反対の株主には株式を会社に買い取ってもらうという買い取り請求権を認めるということにいたしております。
その前提として、この簡易な手続による合併をするということを公告すると同時に、株主に通知をするということになっておりまして、その公告または通知の日から二週間以内にそういう合併に反対であるという反対の意思を会社に通知した者は、自己の株式を合併がなければ有したはずの価格で買い取ってもらうという権利を付与するということにしております。
また、反対の意思の通知をした株主が多いという場合にまで簡易な手続による合併を認めることは相当でないであろうという判断から、発行済み株式総数の六分の一以上に当たる株式を有する株主が反対であるという意思を通知してきたときには、この簡易な手続による合併手続はすることができないという制限も付しているところでございます。
そういう形で、総会は開きませんけれども、株主の意思表明をする機会を確保しているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X01119970529/84
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085・菅野久光
○菅野久光君 次に、合併に関する情報開示の問題でございますが、改正案では、株主及び債権者への情報開示を充実する観点から、承認総会の前の情報開示については、現行の貸借対照表に加えて合併契約書、合併比率の理由を記載した書面及び損益計算書の三点を備え置くことを要求しています。株主及び債権者が合併の適正さを判断するために開示資料を増加させ、合併に関してより多くの情報を入手することができるようになった点については評価することができるというふうに思います。
しかし、さらに適正な判断を確保するには、各書類が適正に作成され、その内容も信頼できるものでなくてはならないわけであります。備え置き書類が適正なものであるということはどのように確保されるのか、その点についてお伺いいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X01119970529/85
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086・濱崎恭生
○政府委員(濱崎恭生君) これは何よりも、今回の改正を実現させていただいた暁には、改正の趣旨というものを会社関係者に十分知っていただくということが大切であろうというふうに考えております。そういうことを通じてこの法律の適正な運用を期待いたしたいというふうに思っておりますが、もしこの規定に違反して備え置くべき書面を備え置かなかったという場合については過料の制裁の対象になっております。したがって、備え置いたに値しないようなものであれば実質において備え置いたことにならないということで、そういう制裁の対象になろうというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X01119970529/86
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087・菅野久光
○菅野久光君 今回の改正の目的は、企業にとって費用や労力面での負担が重い合併手続の簡素合理化を図って、企業が合併を活用しやすくすることにあるわけであります。企業も経済の国際化に対応するために、国際競争力の強化、市場占有率の拡大、ライバル企業間の無用な競争の排除、あるいは生き残りをかけた経営再建を目的として合併を行い、その件数もここ数年で増加しているというふうに聞いております。
ところで、経営の合理化とかあるいは集約化を目指した合併には人員整理を伴うものがあるわけです。合併手続を進める上で労働者側への配慮は欠かせないものというふうに思いますが、今度の改正に当たって労働者側の反応はどうだったのか、その点についてお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X01119970529/87
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088・濱崎恭生
○政府委員(濱崎恭生君) 御指摘のとおり、会社の合併というのはさまざまな動機、目的のもとに行われるわけでございます。ただ、合併というのは、消滅会社にとりましても、その消滅会社の権利義務関係は包括的に存続会社に承継されるということでございまして、労働者との労働契約上の関係、労働契約上の地位といったことも承継されるということに相なります。その間、事実上の問題についてはいろいろ労使交渉等が行われるかと思いますけれども、法律的には労使の関係は承継されるということでございます。
そういうことでございますので、今回の法改正につきましては労働者の立場の方々からも特段の御異論が出されていないという状況でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X01119970529/88
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089・菅野久光
○菅野久光君 今回の法案からは若干離れますが、現在、野村証券や第一勧銀の総会屋絡みの事件が起きているわけですが、両者は証券会社、銀行であって、それぞれ証券取引法や銀行法による規制を受けるわけです。一般法である商法のルールも当然遵守されなければならないわけですが、特に大きな会社であればあるほどその社会的な責任は重いというふうに思います。
かつてオイルショックの際の石油業界やロッキード事件等の際にも、企業の活動に関して社会的責任が大きく問われたことがあります。昭和五十年に法制審議会商法部会でも、「会社法改正に関する問題点」として、企業の社会的責任を商法上規定すべきではないかということが論議され、検討されたと聞いておりますが、その後どうなったのか、お聞きしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X01119970529/89
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090・濱崎恭生
○政府委員(濱崎恭生君) 先ほども私から申し上げましたように、幅広い問題点の一つとしてそういうことが掲げられておりました。そういう観点からの問題意識といたしましては、株式会社の規定の中に会社の社会的責任に関する一般規定のようなもの、例えば取締役に対して社会的責任に対応して行動すべき義務があるというふうなことを明文で規定をするかどうかというような意見があったというふうに承知しております。これは、今日の大会社は単に株主の私有物ということではなくて、幅広い利害関係を有する社会的な存在であるという考え方に基づくものであろうと思います。
しかしながら、この社会的責任というものは一体何なのか。その内容を法律できっちり書くということは大変難しい問題でございますし、今のような抽象的な規定を置くというようなことが果たしてどういう効果があるのかという問題がございます。
したがいまして、現在までのところ、株主総会の制度の充実の観点、あるいは取締役会制度、監査役制度、そういった制度の改正の実質において企業が社会的責任に背くような行動がないようにチェック機能を充実する、そういう観点からの、いわば実質面においてそういう結果が生ずるような改正を実現するということで累次の改正をさせていただいているということでございます。
具体的には、昭和五十六年の改正で、いわゆる総会屋対策という観点から株主権の行使に関する利益の供与を禁止する、それに対する違反については罰則規定も設けるというような規定を創設したところでございます。
それにもかかわらず、なお不祥事は起こっているわけでございますが、今後ともそういう観点から関心を持って対応していかなければならないというふうに思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X01119970529/90
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091・菅野久光
○菅野久光君 最後にちょっと大臣にお尋ねしたいと思うんですが、今回の野村証券や第一勧銀の事件でも問題になっている総会屋への利益供与の禁止という商法二百九十四条ノ二は、今お話しのように昭和五十六年の商法改正で設けられたものです。しかし、この罰則は六カ月以下の懲役または三十万円以下の罰金でしかない。私はもう軽きに失するのではないかというふうに思うんです。
野村、第一勧銀の事件がどう進展するかはまだわかりませんけれども、仮に総会屋に大金を供与していた場合、六カ月以下の懲役または三十万円以下の罰金ということで、国民感情としてこれは納得できるかといえば、到底納得できるものではありません。しかも、こういったような罰則であるために公訴時効も三年で切れて、捜査当局が一生懸命やって解明してもこれは時効になりましたということになるのではないかと思いますし、こういったものというのは、実際にやってから何年か時間がたってからこういったようなものが明るみに出てくるという、そういう性格のものではないかというふうに思うんです。
もちろん、刑罰を重くすればそれで解決するという問題ではないというふうに思いますが、現在、組織犯罪対策が問題となっていて、法務省も法制審で検討中だと聞いておりますが、総会屋絡みの事件は組織犯罪そのものであって、この種の事件を根絶するためにも罰則の強化が必要ではないかというふうに私は思うんですが、その点、大臣の所感をお聞きできればと、このように思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X01119970529/91
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092・松浦功
○国務大臣(松浦功君) 罰則をどのように定めるか、これは極めて重要な問題でございますので、軽々に結論を求めるというわけにはなかなかいかないと思います。しかし、今、先生から御指摘がございましたような説が世の中に非常にたくさんあるということも十分承知をいたしております。
したがって、そういう考え方を関係当局とも十分に連絡をとりながらどう対処していくか、よりょい方向に向けて善処してまいることをお約束申し上げたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X01119970529/92
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093・菅野久光
○菅野久光君 ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X01119970529/93
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094・橋本敦
○橋本敦君 商法の改正問題についてお伺いをいたしますが、野村、勧銀の商法違反の件についてもお尋ねしたいので、刑事局長に最後までおっていただくのは恐縮ですから、最初にこの問題をお伺いしておきたいと思います。
今お話しの商法二百九十四条ノ二ということで、野村、勧銀の関係者、それから小池隆一と嘉矩が今逮捕されて取り調べを受けております。その被疑事実の要旨を拝見いたしますと、要するに、この小池等がお互いに共謀して株式会社小甚ビルの名義の取引勘定に利益を帰属させて財産上の利益の提供を受けたと、こういうことであると思いますが、その大筋は間違いございませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X01119970529/94
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095・原田明夫
○政府委員(原田明夫君) 大筋は委員御指摘のとおりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X01119970529/95
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096・橋本敦
○橋本敦君 きのうの第一勧銀の頭取は、取引はあくまで小甚ビルであって、小池とは関係がないと、こう言っているわけでありますが、私は、それはまさに社会的に責任を十分自覚しない言い逃れにすぎないということをきのうも厳しく指摘をしてまいりました。
刑事局長にこの点についてお伺いしたいと思うのですが、この二百九十四条ノ二で言う利益の供与とはどういう利益を一般的に法解釈としては言うのでしょうか。現金の供与だけでしょうか、その他の利益も含まれると解釈するのでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X01119970529/96
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097・原田明夫
○政府委員(原田明夫君) その点は、刑法上の同種の場合と同様に、経済的な利益ということを主眼にとらえられているものと考えられると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X01119970529/97
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098・橋本敦
○橋本敦君 野村、勧銀の場合は、その利益は合計約四千九百七十三万円相当の財産上の利益を供与したということでお調べになっているようですが、これは間違いありませんね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X01119970529/98
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099・原田明夫
○政府委員(原田明夫君) 若干正確にと申しますか、事実関係を申し上げますと、現在、検察庁が捜査している事件は野村証券に対するものでございまして、その事件に関してはただいま委員御指摘の経済的利益の供与、またその受供与ということを中心に捜査中というふうに承知しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X01119970529/99
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100・橋本敦
○橋本敦君 この件は、まさに厳しく今後も捜査を遂げていただきたいわけでありますが、この捜査に関連をして、第一勧銀にも強制捜査が行われました。第一勧銀に対する強制捜査は、この野村証券における今御指摘の被疑事実の証拠を収集するというその必要性から強制捜査が第一勧銀にも及んだと、こういうことでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X01119970529/100
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101・原田明夫
○政府委員(原田明夫君) 委員御指摘のとおりでございまして、野村証券の利益供与に絡みまして、その原資の流れでございますとか、事件の背景等を明確に一つの社会的事実として立証していくために行われた捜査活動の一つであるというふうに承知しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X01119970529/101
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102・橋本敦
○橋本敦君 私もまさに原資の流れ、それが第一勧銀からどのような経緯でどのように出たか、これがまさにお調べになっている大事な課題だというように思います。
そこで、その原資の流れということについて第一勧銀は、これはいろいろ問題がありますから申し上げませんけれども、簡単に言えば小甚ビルを経由して融資をしたということを常に言っておるわけです。この小甚ビルという会社は、まさに総会屋小池隆一の親族企業であり、まさにダミーとも言ってもいい、そういう小池隆一と密接な関係のある会社だという認識は検察庁お持ちでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X01119970529/102
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103・原田明夫
○政府委員(原田明夫君) 大変恐縮でございますが、現在進行中の事件の捜査の中身と申しますか、検察官がどのような立場でどのような事実について注目しているかという点にわたることでございますので、法務当局からお答え申し上げることは差し控えさせていただきたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X01119970529/103
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104・橋本敦
○橋本敦君 しかし、原資の流れの経路の追及であるということは明らかですから、当然そういった問題が関連してくることは明らかだと思うんです。
そこで、刑事局長にもう一点お伺いしたいのですが、総会屋に対する利益供与は、現実に総会対策のためあるいはその他いろんな理由があるでしょうが、現金を供与するという、そういう財産的利益の供与ももちろん許されませんが、通常なら融資が受けられないそういう無担保状態あるいは担保価値がない、あるいは特別の便宜で巨額の融資をする、こういった特別の扱いをして財産上の利益を融資という形で与える、これもまた商法の二百九十四条ノ二が規定する利益の供与に該当すると法解釈では当然言えると思いますが、いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X01119970529/104
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105・原田明夫
○政府委員(原田明夫君) 一つの法の解釈としてそういうこともあり得るかという点はございますが、法の当てはめと申しますか、刑罰法規の適用に関しましては、まさに具体的な事案を解明いたしまして、その実態に即して犯罪事実の成否を論じなきゃいけませんので、私の現在の立場で申し上げることは差し控えさせていただきたいと存じますが、一般的に経済的な利益というものについては、やはりその背景を含めた幅広い検討ということがなされるべきものと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X01119970529/105
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106・橋本敦
○橋本敦君 したがって、私は、今後の捜査の進展によっては、第一勧銀自身が、関係者がまさに総会屋に対する利益供与の商法違反ということで厳しく責任を問われなければならないという、そういうことも十分あり得る事件だということを申し上げたいわけであります。しかし、今お話しのように、時効の壁ということもあるでしょう。その点は問題であります。その時効の壁という点が問題であることはわかりますが、時効にかかっていない分については、私は徹底的な捜査を遂げていただきたい。
例えば、九四年の十月に大蔵省検査がございました。私どもが調べ、きのうも委員会でも参考人質問で議論したんですが、このときは大蔵省検査に対する偽装工作として第一勧銀は、大和信用が小池側に六億円を融資し、小池はこの資金で未払いであった第一勧銀の利息六億円を支払って、第一勧銀の小池関係企業が不良債権ということになっているのを正常債権に変わらせて、それを報告して不良債権でないような扱いをした。そして、検査の後で第一勧銀は無担保で同額の六億円を小池側に融資をして、こういった操作をして大和信用に返済させているという事実を私どもは追及をしております。
これはまさに無担保で六億円を融資するという、そういう意味では役員の背任罪にも該当する可能性があるんですけれども、そういう利益を供与して、そして大蔵省の検査をごまかした、不良債権を優良債権にしたというのもこれは商法の二百九十四条ノ二違反という、そういう疑いで捜査をすべき私は重要な問題だと思いますが、これはまだ時効になっていない。
こういう点について、私が指摘した事実を、今事実としてお調べかどうかわかりませんが、事実とすれば厳しく調べていただきたいと思いますが、どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X01119970529/106
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107・原田明夫
○政府委員(原田明夫君) 一般的に、どのような事項につきまして捜査当局が捜査してまいるかということにつきましては、まさに事実とそれを裏づける証拠に基づいて明らかにしていく事柄でございますので、法務当局として答弁を差し控えたいのでございますが、検察当局におきましては、ただいま御指摘の野村証券をめぐる事件の全容の解明へ向けて所要の捜査を尽くしてまいるものと思います。その過程におきまして、あくまでも事実全体の中で、刑罰法規に触れ、それが刑罰権を発動すべきものと考えられた場合には適切な措置がとられてまいるだろうというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X01119970529/107
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108・橋本敦
○橋本敦君 私は、一連の答弁から、第一勧銀についても捜査の進展いかんでは商法違反の重大な責任が生じてくるということを改めて指摘をしておきたいと思います。
次に、大臣にも御所見を伺いたいんですが、この第一勧銀が私は本当に許せぬと思うのは、こういった総会屋親族企業に国民から預かった莫大な金を融資して、しかも焦げつきという、そういう状態を起こさせた責任というのは、これはまさに銀行法二十七条が言う「銀行が」「公益を害する行為をしたとき」、これに当たるまことに許しがたいことだと思っているんです。
それに加えて、大蔵省検査に対して虚偽報告するというようなことをこうした大銀行かしてよいだろうか、私は絶対許せぬと思うんです。この点について参考人質疑でも、この大蔵省検査に対して虚偽報告をした、そういう可能性があることを参考人の頭取も認めて、調査中だということを言い、中間報告でもそういう事実が否定できないことを言っているわけですから、大蔵大臣が、その事実が明確になれば銀行法六十三条で大蔵省も告発をするということをはっきり言明されたのは私は当然だと思うんです。
こういう大蔵省の告発があれば、法務省としても当然厳重な捜査を遂げるということで国民の期待にこたえてほしいのですが、大臣の御所見はいかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X01119970529/108
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109・松浦功
○国務大臣(松浦功君) 具体的な内容になりますと、現在捜査をしている段階でございますから、刑事局長が言っておるように、中身についての御答弁は差し控えさせていただきたいと思いますけれども、一般論として考えますならば、全く委員のおっしゃるとおりでございます。十分大蔵当局とも相談をしながら、きちんとした処理をしたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X01119970529/109
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110・橋本敦
○橋本敦君 重ねて言うようですが、大蔵省から告発があればきちんとした対処をするというように承ってよろしゅうございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X01119970529/110
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111・松浦功
○国務大臣(松浦功君) そのとおりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X01119970529/111
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112・橋本敦
○橋本敦君 それでは、商法の法案に入らせていただきます。
会社の合併については、これまで、最近の合併件数がどういう状況であるかといったようなことについては既にもう御答弁をいただきました。そしてまた、合併手続を簡略化するということの必要性やその理由についてもいろいろお話がございましたので、重ねてその点については私も質問はさせていただかないようにしたいと思います。
これまでいろいろな調査があるわけですが、調査室がつくっていただいた資料から見ても、また通産省が調査をした資料から見ましても、現行法の問題点として、株主総会の二回開催、これが大変な問題なので、この合併報告総会の廃止をしてほしいという要望が九二・二%あったと。それから、もう一つの見直しの方向としては、知れたる債権者に対する通知という手続が、これがまた大変でございますから、これについては会社が適法な公告をした場合は不要とするということにしてもらいたいというのが、これが大変大きい要望として全体の六七・二%あったと。そしてまた、簡易合併についても、特に親子会社間の合併については九二・六%という要望があったと。
こういう状況であることが資料から明らかですが、これは法務省、間違いございませんね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X01119970529/112
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113・濱崎恭生
○政府委員(濱崎恭生君) 委員が御指摘のような概要の要請があったということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X01119970529/113
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114・橋本敦
○橋本敦君 そこで、先ほど民事局長の御答弁に、外国では会社合併に対して報告のための総会をやるということがほとんどないというお話がございました。ところが、我が商法では合併について、合併のための総会をやると同時に報告総会または創立総会をやるということを規定してまいりましたが、そういうことを商法がつくったもともとの法意はどこにあったんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X01119970529/114
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115・菊池洋一
○説明員(菊池洋一君) 古いことでございますので必ずしも正確ではないかもしれませんが、文献によりますと、かつては増資につきまして株主総会の決議が必要であり、増資が終わった後には間違いなく増資をしたということを報告するための株主総会が我が国の商法で要求されておりました。
合併の場合、特に吸収合併の場合には資本がふえますので増資と似たような面があるということで、増資の場合との横並びから合併につきましても事後的に報告総会を必要とするという立法がされたというふうに文献に書いてございます。
その後、増資の方につきましては、企業の資金調達を機動的に行うという観点から、アメリカの制度に倣いまして、いわゆる授権株式制度といいますか、新株発行は取締役会の決議だけでできるということに昭和二十五年の改正で改めさせていただきましたので、増資の場合につきましては増資の報告総会というものが今の商法にはないわけでございますが、合併だけは残っていて現在に至っていると、こういうことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X01119970529/115
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116・橋本敦
○橋本敦君 わかりました。だからしたがって、現在、報告総会をやらなくなっても商法の体系上矛盾がなくなっておるということですね。
そこで、次に進みますが、いわゆる知れたる債権者ということですが、これはこれまでも解釈上も運用上もいろいろ問題ございましたが、一般的に知れたる債権者というのはどういう債権者であるというように通説的には解釈、運用されてまいりましたか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X01119970529/116
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117・濱崎恭生
○政府委員(濱崎恭生君) 確定的な金銭債権というようなものは、まあこれは争いがないわけでございますが、例えば非金銭債権、それから先ほど御質問にありましたように継続的な契約関係に基づく継続的な給付義務、そういったものがこの債権者の債権というものに該当するのかどうか、それについてはいろいろな考え方がございます。通説的な見解がどうかということにつきまして、いろんな場面で問題になりますので申し上げることがなかなか難しいのでございますけれども、いろいろな解釈があったということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X01119970529/117
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118・橋本敦
○橋本敦君 おっしゃるようにいろんな解釈があったということで、解釈上も問題があった規定であったことは一つあります。
それからもう一つ、この知れたる債権者に大変な努力をして通知をしても、実際は、これまでの合併手続の中で債権者が異議を述べたというケースが極めて少ないという実情はあったんじゃありませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X01119970529/118
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119・濱崎恭生
○政府委員(濱崎恭生君) 御指摘のとおりであるということを実務界から聞いております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X01119970529/119
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120・橋本敦
○橋本敦君 したがって、この点を合理的にするという社会的合理性もあると私は思うんです。
そこで、今度は、債権者保護という観点から見た公告の問題に入りたいと思うんです。
先ほども議論がありましたように、定款でどこの日刊新聞紙に掲載して公告するかということを決めれば、それは個別の催告を要せず通知をしたことにするということですが、定款で決めなかった場合は、これはもう従来どおりですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X01119970529/120
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121・濱崎恭生
○政府委員(濱崎恭生君) 株式会社にありましては、公告の方法を必ず定款で定めなければならないということになっておりますが、その定款で官報をもって公告するということにした場合は、現行どおり、個別の催告を要するということになるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X01119970529/121
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122・橋本敦
○橋本敦君 合併するAという会社とBという会社がそれぞれ定款で、一方の方は公告新聞紙を決めていると一方の方は官報だけだというような場合、その点の照合性はどうしますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X01119970529/122
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123・濱崎恭生
○政府委員(濱崎恭生君) この債権者に対する催告手続は、合併両当事会社がそれぞれするわけでございますので、それぞれの会社の定款の定めに従っていずれの方法をとるかということが定まってくるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X01119970529/123
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124・橋本敦
○橋本敦君 私も、それはそういうように当然なるだろうと思います。
そこで、次の問題に移りまして、債権者保護の関係に入りたいんです。これも同僚委員から御質問がございましたが、債権者を害するおそれがないときというその判断はだれがし、またどういう要件でやるのかと、こういうことなんです。それについては、それはまさに合併をしても債権者を害するおそれがないという例として、十分な担保があるとか、あるいは弁済期が到来すれば十分弁済が可能であるという資産状況であるとか、そういったことを判断、勘案をして、そういう債権者を害することがないということを当の会社自身が判断することになるというお話がございましたが、具体的には合併するときの書面その他でその理由は明記をされることになるわけですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X01119970529/124
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125・濱崎恭生
○政府委員(濱崎恭生君) 今御指摘の判断は、債権者から異議の申し立てがあった場合に個々の債権者ごとにするわけでございますので、あらかじめ一般的に我が社は弁済等の対応をするとかしないとかということが定まっているものではございません。
ただ、その判断の重要な材料となるような会社の財産状況等を示す資料は、先ほど来御答弁しておりますように、承認総会の二週間前に備え置き書面として備え置かれるということはございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X01119970529/125
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126・橋本敦
○橋本敦君 それでは、債権者の方は異議を申し立てたいときに、自分はこういうことで異議を申し立てるんだが、それに対して会社の方はどういう判断をするかということについては、異議を申し立てる債権者は直接には会社と話をしなきやわからぬわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X01119970529/126
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127・濱崎恭生
○政府委員(濱崎恭生君) 今ほど申し上げました備え置き書面をもって合併の条件その他、双方の会社の資産の状況をある程度知ることができるということでございますが、具体的に会社がどういう対応をするかということは、御指摘のとおり、会社に異議を申し立ててみないとわからないということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X01119970529/127
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128・橋本敦
○橋本敦君 そこで、若干問題があるのは、そういう異議を申し立てたけれども会社が聞かないということで、受け入れずに合併登記を進めるということが手続的には可能ですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X01119970529/128
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129・濱崎恭生
○政府委員(濱崎恭生君) 御指摘のとおりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X01119970529/129
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130・橋本敦
○橋本敦君 そこで、その債権者保護が一体どうなるかという問題が残ってくるわけなんですが、合併登記手続で登記官が、債権者保護手続が十分できているか、完了しているかというこの実態的な審査はできますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X01119970529/130
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131・濱崎恭生
○政府委員(濱崎恭生君) 登記申請書に添付すべき書面として、債権者を害するおそれがないと判断して弁済等の対応をとらなかったという場合には、そのおそれがないことを証する書面を添付するということになっております。
ただ、その書面としてどのようなものが添付されるかということになりますと、さっき午前中も答弁申し上げましたが、十分な抵当権が設定されているというふうな場合に、典型的にはその抵当権設定がされている登記簿謄本ということがあろうと思います。一般的に申し上げれば、その双方の会社の資産状況、経営状況等々、諸般の事情を総合して判断してそのおそれはないということを会社代表者自身が証明した書面というようなものもその証明書になり得るというふうに考えております。
したがいまして、登記の場面というのは書面に基づく形式審査ということでございますので、その限りで登記官は審査いたしますが、最終的な当事者間の法律関係の決着というのは、その後の合併無効の訴訟の場面で決着がされるということになると存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X01119970529/131
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132・橋本敦
○橋本敦君 手続的にはおっしゃるとおりです。
私が言うのは、登記官はそういった書面審査ということで、実態審査権があるわけじゃないわけですから、だからしたがって異議のある債権者は、結局は、合併無効の訴えを起こすということの中で裁判所の判断を受けなきゃならぬということになるわけです。だから、そういう意味では、債権者にとっては合併無効の訴えを起こすということをやらないとなかなかできないということなんです。
しかし、合併無効の訴えは、先ほども同僚委員の質問でありましたように、実際はレアケースでほとんどないという実情がありますので、あえて私はそのことについてさらに深くは質問しようとは思いませんが、浜四津委員からも御指摘があったと思いますが、この債権者の保護のために、登記官が実態審査まではできなくとも、どういう書類を完備させる必要があるかということについて、なるべくならば、法務省としては一定の基準なり通達なりお考えいただいていく方がいいのではないかという考えを持っておりますので、御検討願っておきたいと思います。
そこで、今度は、その次に進みまして、商法四百十五条の合併無効の訴えの関係ですけれども、どのような場合、債権者が救済されるかということについてなんです。合併無効の訴えの中で、債権者が異議を述べたにもかかわらず会社が合併登記をしたという場合に、理由として債権者はそれによって損害を受けることを証明する責任がありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X01119970529/132
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133・濱崎恭生
○政府委員(濱崎恭生君) 債権者を害するおそれがあるのに会社がおそれがないと判断して弁済等の措置を講じなかった、そのことを理由として合併無効の訴訟が起こされたという場合におきまして、そのおそれの有無の立証責任の問題といたしましては、百条の第三項の規定ぶりからいたしまして、債権者を害するおそれがないということの立証責任を会社が負うという考え方でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X01119970529/133
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134・橋本敦
○橋本敦君 では、もう一つ合併無効の訴えに関連してあわせて聞いておきたいことがございますが、それは株主の株式買い取り請求権の問題なんです。この買い取り請求権を株主に認める法の趣旨というのは明白だと思うんですが、それが合併比率の関係で、合併比率は非常に大事な株主の権利に属するわけですけれども、それが株主に非常に不利だということで、株主がその問題について合併無効の訴えをすることができるのかどうか、その点はいかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X01119970529/134
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135・菊池洋一
○説明員(菊池洋一君) 御指摘の問題は解釈の問題かと存じますが、一般的に学説では合併比率が不公正であることは合併無効の原因とはならないというふうに解されております。
その理由は二点ございまして、一つは、合併比率は合併契約書に記載されているものであり、その合併契約書が株主総会の特別決議で承認されている、いわば株主の意思に基づいて合併比率が決まっているということ、第二点目は、その合併比率に不満のある株主は株式買い取り請求権を行使する権利が保障されているという、以上の二点が理由となっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X01119970529/135
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136・橋本敦
○橋本敦君 そういう解釈ですね。しかし、私は買い取り請求権を行使したくないんだ、合併比率はなるほど総会で決められたけれども私は反対なんだと、そういう意味で合併無効の訴えを起こすという、そのこと自体の権利までなくなるとは私は思わないんですが、それはどうですか。その訴えが却下されるのか、それとも、その訴えが今あなたがおっしゃったような法解釈で棄却をされるという可能性が高いという意味なのか、答弁はどちらですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X01119970529/136
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137・濱崎恭生
○政府委員(濱崎恭生君) 結論的に申し上げれば、ただいま菊池官房参事官が答えたような解釈に基づきますれば請求棄却ということになるのではないだろうか。門前払いの却下ということにはならないのではないだろうかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X01119970529/137
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138・橋本敦
○橋本敦君 といったような問題が法律的にはまだいろいろとあるということはございます。ございますが、しかしこの商法の今回の改正全体が今日の状況から見てそれなりの合理性があるということで私も賛成ではありますが、指摘したいろんな問題は今後の研究課題として御検討をお願いしたいということを申し上げて、質問を終わります。
以上です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X01119970529/138
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139・続訓弘
○委員長(続訓弘君) 他に御発言もないようですから、質疑は終局したものと認めます。
これより討論に入ります。——別に御意見もないようですから、これより直ちに採決に入ります。
まず、商法等の一部を改正する法律案について採決を行います。
本案に賛成の方の挙手を願います。
〔賛成者挙手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X01119970529/139
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140・続訓弘
○委員長(続訓弘君) 全会一致と認めます。よって、本案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
次に、商法等の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備に関する法律案について採決を行います。
本案に賛成の方の挙手を願います。
〔賛成者挙手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X01119970529/140
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141・続訓弘
○委員長(続訓弘君) 全会一致と認めます。よって、本案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
なお、両案の審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X01119970529/141
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142・続訓弘
○委員長(続訓弘君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
本日はこれにて散会いたします。
午後二時散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015206X01119970529/142
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