1. 会議録本文
本文のテキストを表示します。発言の目次から移動することもできます。
-
000・会議録情報
平成九年三月十七日(月曜日)
午後零時九分開議
━━━━━━━━━━━━━
○議事日程 第九号
—————————————
平成九年三月十七日
正午 本会議
—————————————
第一 国務大臣の報告に関する件(平成九年度
地方財政計画について)
第二 地方税法及び国有資産等所在市町村交付
金法の一部を改正する法律案及び地方交付税
法等の一部を改正する法律案(趣旨説明)
第三 労働時間の短縮の促進に関する臨時措置
法の一部を改正する法律案(趣旨説明)
━━━━━━━━━━━━━
○本日の会議に付した案件
議事日程のとおり
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015254X00919970317/0
-
001・斎藤十朗
○議長(斎藤十朗君) これより会議を開きます。
日程第一 国務大臣の報告に関する件(平成九年度地方財政計画について)
日程第二 地方税法及び国有資産等所在市町村交付金法の一部を改正する法律案及び地方交付税法等の一部を改正する法律案(趣旨説明)
以上両件を一括して議題といたします。
まず、自治大臣の報告及び趣旨説明を求めます。白川自治大臣。
〔国務大臣白川勝彦君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015254X00919970317/1
-
002・白川勝彦
○国務大臣(白川勝彦君) 平成九年度の地方財政計画の概要並びに地方税法及び国有資産等所在市町村交付金法の一部を改正する法律案及び地方交付税法等の一部を改正する法律案の趣旨について御説明申し上げます。
平成九年度の地方財政につきましては、極めて厳しい地方財政の現状を踏まえ、地方財政の健全化、行財政改革の推進が現下の最重要課題であるとの観点に立って、歳入面においては地方税負担の公平適正化の推進と地方交付税の所要額の確保を図り、歳出面においては経費全般について徹底した節減合理化を推進するなど、限られた財源の重点的配分と経費支出の効率化に徹し、可能な限り借入金への依存度の引き下げを図ることを基本といたしております。
以下、平成九年度の地方財政計画の策定方針について御説明申し上げます。
第一に、地方税については、評価がえに伴う土地に係る固定資産税の税負担の調整措置等を講ずるほか、平成六年秋の税制改革に伴う市町村の減収補てんのため、都道府県から市町村への税源移譲を行うこととしております。なお、個人住民税の特別減税は実施しないこととし、また、地方消費税を平成九年四月一日から導入することといたしております。
第二に、地方財政の運営に支障が生ずることのないようにするため、地方消費税の未平年度化による影響額について臨時税収補てん債の発行により補てんするとともに、それ以外の地方財源不足見込み額についても、地方交付税の増額及び建設地方債の発行により補てんすることといたしております。
第三に、地域経済の振興や雇用の安定を図りつつ、自主的、主体的な活力ある地域づくり、住民に身近な社会資本の整備、災害に強い安全な町づくり、総合的な地域福祉施策の充実、農山漁村地域の活性化等を図るため、地方単独事業費の確保等、所要の措置を講ずることとしております。
第四に、地方行財政運営の合理化と財政秩序の確立を図るため、定員管理の合理化及び一般行政経費等の抑制を行うとともに、国庫補助負担金について補助負担基準の改善を進めることといたしております。
以上の方針のもとに、平成九年度の地方財政計画を策定いたしました結果、歳入歳出の規模は八十七兆五百九十六億円となり、前年度に比べ一兆七千七百四十八億円、二・一%の増加、公債費等を除く地方一般歳出は前年度に比べて〇・九%の増加となっております。
次に、地方税法及び国有資産等所在市町村交付金法の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明申し上げます。
平成九年度の地方税制改正に当たりましては、最近における社会経済情勢等にかんがみ、住民負担の軽減及び合理化等を図るため、平成九年度の固定資産税の評価がえに伴う土地に係る固定資産税及び都市計画税の税負担の調整措置、宅地等に係る不動産取得税の課税標準の特例措置の創設等の措置を講ずることといたしております。また、都道府県と市町村の間で個人住民税及び地方のたばこ税の税率の調整を行うとともに、非課税等特別措置の整理合理化、特別地方消費税の平成十二年度からの廃止等を行うことといたしております。
最後に、地方交付税法等の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明申し上げます。
平成九年度分の地方交付税の総額につきましては、地方交付税法第六条第二項の額に、平成九年度における法定加算額二千六百億円、臨時特例加算額一千億円、交付税特別会計借入金一兆七千六百九十億円及び同特別会計における剰余金一千百億円を加算した額から、同特別会計借入金利子支払い額五千二百五十九億円を控除することとした結果、十七兆一千二百七十六億円となっております。
なお、交付税特別会計借入金の一部につきましては、後年度においてその償還金に相当する額を一般会計から同特別会計に繰り入れることといたしております。
平成九年度分の普通交付税の算定につきましてに地方団体が必要とする経費の財源を措置するため単位費用を改正するほか、阪神一淡路大震災復興基金の増額に伴い必要となる経費を措置する等、所要の改正を行うことといたしております。
また、平成九年度に限り、地方団体は、地方財政法第五条の規定にかかわらず、地方消費税の夫平年度化による影響に対処するために必要な地方債を起こすことができる旨の特例を設けることといたしております。
以上が地方財政計画の概要並びに地方税法及び国有資産等所在市町村交付金法の一部を改正する法律案及び地方交付税法等の一部を改正する法律案の趣旨であります。(拍手)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015254X00919970317/2
-
003・斎藤十朗
○議長(斎藤十朗君) ただいまの報告及び趣旨説明に対し、質疑の通告がございます。順次発言を許します。小林元君。
〔小林元君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015254X00919970317/3
-
004・小林元
○小林元君 私は、平成会を代表いたしまして、ただいま議題となりました質問に先立ち、茨城県選出の議員でありますので、東海村動燃再処理工場のアスファルト固化施設の火災爆発事故につままして、私も十五日、現地調査をしてまいりましたので、これに関しまして緊急に質問をさせていただきます。
昭和三十二年以来、茨城県には東海村を中心に二十二の施設が立地し、原子力のメッカとして、原子力発電、燃料の開発及び再処理、核融合の研究開発がなされ、原子力の平和利用に大きな役割を果たしてまいりました。県及び関係市町村は、研究開発に当たっては住民の安全と環境の保全を第一として、安全協定の締結、環境放射線の常時監視、監視委員会の設置、原子力防災計画の策定、防災訓練の実施などに努めてまいりました。
私も、県職員として、ちょうど再処理工場の試運転時代に二年間原子力安全対策に携わった一人であり、茨城県ではこれまで四十年間大きな事故もなく経過し、さらなる安全を願っておりました。
しかし、今回の動燃の火災爆発事故の発生は、安全審査でも爆発を想定していなかったこととあわせ、遺憾のきわみであり、事故への対応については「もんじゅ」の教訓は全く生かされておらず、運転や事故処理のマニュアルの不徹底などによる初動態勢のおくれ、鎮火の不確認、放射能漏れの把握の不徹底、県、市町村、消防署への報告のおくれ、周辺住民への周知もなくずさんな対応に、地元住民はもとより国民の不安が高まっております。茨城県知事からも、十三日、総理初め関係大臣に安全管理の徹底について強く要望したと聞いております。十五日には、地元選出の危機管理担当大臣の梶山官房長官初め三大臣が現地調査をされました。
原因究明、安全管理の総点検など、危機管理の確立は極めて重要かつ緊急の課題でありますので、総理の御所見をお伺いいたします。
次に、議題に関しまして総理及び関係大臣に質問させていただきます。
まず、地方分権についてであります。
明治以来の中央集権体制は、戦後の諸改革の中で、理念の上では地方自治がうたわれ、憲法にも「地方自治の本旨」として規定されました。しかし、実際には、高度成長期を通じて新たな法律の制度や通達行政の濃密化、補助金行政の拡大などにより新たな形での中央集権が進み、事務配分と財源配分のミスマッチが続き、三割自治とも言われ、地方自治の本旨は形骸化されているのであります。
いわゆる中央集権型行政システムは、先進国へのキャッチアップや一定のナショナルミニマムの実現といった目標達成の面では確かに有効な機能を果たしたとの評価もあります。しかし、我が国が既に世界のトップレベルの経済水準を達成した今日、その弊害が目立ってきております。
権限、財源、情報などの過度な中央集中は、地方の活力を低下させ、国と地方の上下関係を生み、予算配分を求めて現在問題となっている官官接待を招いたのであります。また、全国的な画一化や公平性を過度に重視し、地域社会の多様性が軽視され、経済大国の国民が日常生活で豊かさを実感できない一因ともなっております。
このような弊害を除去し、地方公共団体が個性あふれる行政を展開できるよう、自主性及び自立性を高め、活力ある地域づくりを進めることが国民一人一人がゆとりと豊かさを実感できる社会を実現する上で極めて重要であり、そのためには、中央集権型行政システムから分権型システムヘの転換を図ること、すなわち地方分権の推進が不可欠であると考えるものであります。
さく総理は、昨年、地方分権推進委員会の勧告が出る一カ月前に諸井委員長らを呼んで、勧告の内容は完璧でなくとも実現可能なものとすること、地方行革の必要性を書き込むことを指示したと報じられ、この総理の発言で中央省庁が巻き返しを図ったとも言われております。総理は、改革には痛みを伴うが、火だるまになって改革をやると言っておられるのでありますが、果たして本当に改革をやる覚悟があるのか、極めて疑わしいと言わざるを得ません。この発言に関して、改めて総理の御決意をお聞かせ願いたいのであります。
次に、昨年十二月、第一次勧告が出されました。この勧告は、中央集権型行政システムの象徴である機関委任事務の廃止の方向を打ち出した画期的なものでありますが、自治事務としながらも、国との事前協議、合意や同意が随所に留保されるなどの問題も指摘されております。また、勧告の中でも地方自治の根幹に言及しておりますが、我々はへ国と地方の役割分担の明確化、国と地方の関係を上下主従の関係から対等協力の関係とすること、国の包括的な監督権を排除することなど、この際、地方自治のあり方に関する理念、基本的原則について地方自治基本法を制定する必要があると考えるものであります。これらのこともあわせ、総理はこの勧告をどう受けとめておられるのか、お伺いいたします。
次に、地方財政計画についてお伺いいたします。
我が国の財政は、最終支出ベースでは国と地方の比率がおおむね一対二に対し、租税収入の配分においてはおおむね二対一と逆転しており、その間に大きな乖離が生じております。その乖離を地方交付税及び補助金などの国庫支出金によって充当する仕組みが続いており、地方公共団体には歳入の自治が確立されていないのであります。
平成九年度においても、収支不足額は四兆六千五百四十四億円に上り、平成六年度以来、四年連続の財源不足は十五兆二千億に達しております。多くの国民が反対している特別減税の廃止、消費税率の引き上げによる七兆円の増収をカウントしてもなお収支不足が解消できない状態はまことに遺憾であります。今年度もまた抜本的改正はなされず、単年度の措置をとろうとしておりますが、このことはまさに問題先送り、後年度へのツケ回しであります。交付税特別会計借入金のうち地方負担分及び財源対策債は、いずれも次年度以降の交付税を先食いしているのであります。
このようなその場しのぎの措置を続けることは、地方の国依存体質を強め、地方財政対策のすべては国の責任に帰することになるのではないかと憂慮するものであります。交付税率の引き上げや国と地方の税財源の配分の改革を行うべきだと考えますが、大蔵大臣並びに自治大臣の御所見をお伺いいたします。
次に、地方債の許可制度についてお伺いします。
地方債許可制度は、当時の窮迫した資金事情などもあって、まさに当分の間として許可制度が採用されたものであると考えられます。当分の間としながら、一体何年続くのでしょうか。ことしは地方自治制度五十年の節目の年であります。地方債の発行は大臣許可、地方債の償還は地方交付税に算入される現行の制度は、補助金と相まって地方財政の大きな部分を国が握っており、財政再建について国と地方の一体感が生まれがたいことを恐れるものであります。
これまでも平成四年の民間臨調で地方債許可制度の改善の方向が提言されたこともあり、地方分権推進委員会においても鋭意検討されており、今年半ばには勧告が出される予定でありますが、地方分権を進める立場にある自治大臣の積極的な御答弁をいただきたいと思います。
次に、固定資産税についてお伺いします。
土地に係る固定資産税の課税は、長年にわたって負担水準にかなりの格差が生じていた中で、バブルによる地価の高騰、その後の下落によって一層格差が増幅され、国民の間に不公平感が生じ、平成六年度不服審査申し出件数は約二万件に達しております。土地の評価は、その性格上、客観的評価が難しく、課税に当たって公平性を確保するために市町村は大変な努力をしております。
憲法第八十四条に租税法定主義が規定されておりますが、租税関係法令は、納税者である国民のサイドから見ると極めて難解複雑な規定がなされております。特に土地評価については、大臣告示によって評価基準が定められ、また、三年ごとの評価がえのために附則が次々と改正されているわけであります。納税者である住民が容易に理解し、納得して納税するためにも、土地に係る固定資産税の法令を全面的に見直し、改正すべきだと考えるものでありますが、法律の専門家でもあります自治大臣の御所見をお伺いいたします。
次に、厚生省汚職に関連して、地方公共団体の幹部ポストを中央官僚の指定席とするいわゆる天下りの慣行の問題であります。
都道府県並びに政令指定都市の課長級以上の出向者は、建設省百八十二人、自治省百四十九人、厚生省七十一人を初め、六百人を超えております。交付税及び補助金など財源の配分権や許認可権限を持つ中央省庁からの出向者が自治体の特定ポストを独占してきたことが今回の汚職につながったとも指摘されております。
地方公共団体の自主性、自立性を尊重し、地方分権の流れに沿ってこれらの慣行について強く見直しを求めるとともに、新時代にふさわしい人事交流のあり方について、自治大臣、建設大臣並びに厚生大臣の御見解をお伺いして、私の質問を終わります。(拍手)
〔国務大臣橋本龍太郎君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015254X00919970317/4
-
005・橋本龍太郎
○国務大臣(橋本龍太郎君) 小林議員にお答えを申し上げます。
まず第一点、動燃の事故を踏まえた危機管理についてのお尋ねがございました。大変申しわけない事故を発生させたと、その責任を感じます。
原子力施設において事故が発生した場合には、的確な状況把握と迅速な情報伝達が不可欠であります。その点で、今回の事故の対応には、「もんじゅ」事故の経験、反省が全く生かされておりません。本当に残念な事態でありました。
今後、地元の方々の不安や不信を払拭し、「もんじゅ」の事故の後、円卓会議などである程度回復してまいりました信頼をもう一度取り戻すために、情報伝達に万全を期す体制を整えるとともに、調査委員会を完全に公開で行わさせていただきたい。そして、その調査委員会の議事を公開することによって少しでも信頼を取り戻しながら、事故の原因究明と再発防止に全力を挙げてまいりたいと考えております。
次に、地方分権の推進についての決意はどうか、そして地方分権推進委員会の第一次勧告を前にして私が地方分権推進委員会の委員を呼んだというお尋ねでありましたが、既に本院本会議場でもお答えを申し上げましたように、勧告の前に説明をしたいというお申し入れを受け、私は確かに二回お話を伺いました。
そして、その際、私が申し上げましたことは、漠然としたことではなくて、具体的にすぐ使える、実現可能でしっかりした内容の勧告をいただきたい、そのようにお願いを申し上げた次第であります。そして、今申し上げた言葉は、そのまま同じような御趣旨の質問がこの本会議場で出ましたときお答えをしたと同様の言葉でございます。
地方分権の推進は、議員から御指摘を受けるまでもなく、これまでの経済社会システムの変革を求められている中で、その一環としてぜひともなし遂げなければならない大きな柱と考えており、実りのある成果が上がりますよう強い決意で取り組んでまいります。
次に、この第一次勧告についてどう受けとめるかという御指摘がございましたが、たびたびお答えを申し上げてまいりましたように、今回の勧此というものは、国と地方の役割分担の基本的な考え方を示しておるもの、そして機関委任事務制度を廃止するなど、これまでの国と地方の関係を根本的に改善するものであり、地方公共団体の自主性、自立性をめぐってこの議論を高めていく上でも意義の深いものであります。この勧告を最大限に尊重し、地方分権推進計画の作成作業に取り組むとともに、指摘事項につきまして、分権計画とかかわりなく、可能な限り前倒しして進めてい去たいと考えております。
また、政府としては、地方分権推進委員会の勧告を受け、地方分権推進計画を作成して、必要な法制上の措置を講ずることとしております。そして、その一環として、国と地方の基本的事項を定めた法律であります地方自治法につきましても、機関委任事務制度の廃止に伴う関係規定の見直しを初めとした所要の見直しに取り組んでまいることといたしております。残余の質問につきましては、関係大臣から御答弁を申し上げます。(拍手)
〔国務大臣白川勝彦君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015254X00919970317/5
-
006・白川勝彦
○国務大臣(白川勝彦君) 小林議員にお答えいたします。
地方交付税率の引き上げ等を行うべきではないかとのお尋ねでございますが、平成九年度の地方財政は引き続き大幅な財源不足が生ずることとなりましたが、国の財政も深刻な状況にあること等から、交付税率の引き上げ等の恒久的な制度改正は難しいとの判断のもとに、単年度の交付税の増額措置を制度化することにより対処することといたしたところであります。今後とも地方財政の運営に支障が生ずることがないように適切に対処してまいります。
次に、地方債許可制度についてのお尋ねですが、地方債許可制度は、公共事業費等の重要な財源である地方債について、地方債計画を通じマクロの所要資金量を確保するとともに、財政力の弱い団体でも良質の資金を確保できるようにする機能を有するものであり、地方交付税と並び地方財政制度の一環をなすものと認識いたしております。今後、このような機能を維持しつつ、地方団体の自主的、主体的な財政運営に資する観点から、そのあり方につき幅広く検討してまいる所存であります。
次に、固定資産税の仕組みについてのお尋ねですが、現行の固定資産税の課税の仕組みは、各年にわたって特例措置を講じた結果、複雑化した面があることは事実です。今回の改正では、なるべく簡素でわかりやすい仕組みにすることを念頭に置いて思い切った見直しを行い、負担水準の均衡化を図るという観点を導入した新しい課税の仕組みを設けることとしております。今後ともわかりやすい課税の仕組みとなるよう心がけてまいりたいと考えております。
最後に、地方公共団体への出向に当たり、特定ポストの指定席化を見直すべきではないかとのお尋ねですが、私は、国と地方双方にとって有意義な人事交流を進める意味からも、自治省に関しては、同一ポストに連続して出向させないよう事務当局に指示しているところであります。
以上です。(拍手)
〔国務大臣三塚博君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015254X00919970317/6
-
007・三塚博
○国務大臣(三塚博君) 地方財政対策についてのお尋ねでございますが、平成九年度の地方財政は引き続き大幅な財源不足が見込まれる一方、国の財政事情も特例公債を含め大量の公債を発行せざるを得ない危機的状況等にありますことなどを考慮いたし、恒久的な制度改正は難しいとの判断のもとに、単年度の特例措置として、国と地方で折半して負担し交付税を増額する等の措置を講じたところでございます。地方財政の運営に支障を生ずることのないよう対処いたしたところであります。(拍手)
〔国務大臣亀井静香君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015254X00919970317/7
-
008・亀井静香
○国務大臣(亀井静香君) 議員御案内のように、我が建設省はきら星のごとく人材が豊富でございます。自治体からの御要請に従って割愛を申し上げておるところでございますけれども、機械的に固定化をしてきたという感も否めません。
今後は、地方自治の本旨にのっとり、かつ自治体と建設省との風通しのよさも確保する配慮をしながら、人材の活用に努めてまいる所存でございます。(拍手)
〔国務大臣小泉純一郎君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015254X00919970317/8
-
009・小泉純一郎
○国務大臣(小泉純一郎君) 小林議員の地方自治体への出向についてのお尋ねですが、特定のポストを独占し続けるのはよろしくないと思いまして、今後は地方自治体の意向を尊重しながら、人事の交流については多様化を図っていきたいと思います。特別に専門的な職務を除いては前任者と同じポストとならないよう見直しを図っていきたいと思います。(拍手)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015254X00919970317/9
-
010・斎藤十朗
○議長(斎藤十朗君) 朝日俊弘君。
〔朝日俊弘君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015254X00919970317/10
-
011・朝日俊弘
○朝日俊弘君 私は、民主党・新緑風会を代表いたしまして、ただいま議題となりました一九九七年度地方財政計画と地方交付税法等の一部を改正する法律案、地方税法及び国有資産等所在市町村交付金法の一部を改正する法律案について、総理及び関係大臣に質問いたします。
本年五月三日の憲法記念日は、地方自治法が施行されて五十周年の記念日でもあります。つまり、新しい憲法のもとで戦後の地方自治制度が発足してちょうど半世紀という節目の年を迎えるわけであります。折しも、明治維新、戦後改革に次ぐ第三の改革とも位置づけられる地方分権の推進がまさに正念場を迎えようとしております。このようなときであるだけに、今、国政の場にある私どもは、いわば歴史的な責任を負っているというべきでしょう。
今こそ、これまでのような追いつき追い越せ型の経済社会構造から成熟型の経済社会構造への転換、言いかえれば、いわゆる護送船団方式による経済運営と全国均一のナショナルミニマムの達成を目指す社会から、むしろ多様な選択肢が提供され、違いこそが豊かさであるとお互いに認め合えるような社会、そして安心して暮らせる地域づくりを目指す社会へと大きく発想とその枠組みを転換していくことが求められていると思います。
そうしたときであるだけに、地方分権の推進、私はこれを地域主権の確立と申し上げたいわけですが、この地方分権の推進は一歩たりとも引かぬ決意で臨む必要があると思います。総理大臣としての御決意をお聞かせください。
あわせて、総理は、実際の地方分権推進計画の策定以前においても、地方に移管すべき事務等についてその一部を前倒しして実施すると述べておられますが、その際の基本的な考え方といいますか、どのような柱立てをお考えでしょうか、お伺いしておきたいと思います。
次に、このような節目の年に当たり、地方財政の強化を図る観点からお尋ねをいたします。
私は、この機会に地方財政に関する国会審議や決議などを振り返って見てみましたが、衆参両院における地方行政委員会において、地方財政の拡充強化に関する決議がほとんど同じような内容で何度も何度も繰り返し行われているわけであります。
特に、決議の中で取り上げられている重要な課題の一つは、自主的な税財源の確立についてであります。改めて申し上げるまでもなく、国と地方の財源配分を見ますと、租税収入ベースと最終支出ベースの間の乖離が大き過ぎる。つまり、地方財政の財源確保に関して国の権限と関与が大き過ぎる。もっと地方の自主財源をきちんと確保しなければ、地方財政の確立はほど遠いと言わねばなりません
ちょうど来年からは新たに地方消費税の制度が導入され、消費税率五%のうちの一%分が地方消費税として充てられることになっております。地方の財源確保の一環として、この消費税のうちの地方消費税分の比率を例えば思い切って三対二にするなど、何らかの具体的な方策の実施に踏み切る時期に来ているのではないかと思うのですが、この点についてはぜひ自治大臣にお尋ねをしたいと思います。
次に、地方交付税のあり方についてお尋ねしたいと思いますが、九七年度におきましても四兆六千五百四十四億円という、しかも前年度に引き続く巨額の通常収支不足額が出ており、地方交付税法の第六条の三第二項で言うところの制度改正が必要な事態に立ち至っていると判断せざるを得ません。
ところが、総理は、この問題についてさきの衆議院本会議においても、国の財政も深刻な状況にあり、交付税率の引き上げ等の恒久的な制度改正は難しいことから、単年度の特例措置で対処したと答弁されております。それでは地方交付税の規定は一体何なのか、何のための規定なのかと疑いたくなります。
この点について、つい先日、三月七日の衆議院地方行政委員会では、「地方交付税総額の長期的安定確保のため、地方交付税法第六条の三第二項の趣旨を尊重し、通常収支不足を解消するための方策を講じること」との決議がなされております。この点を踏まえまして、このように引き続く通常収支不足の解消に向けた今後の対応策について、改めて総理にお伺いしたいと思います。
最後に、私たち民主党は、財政改革に向けた重要な柱の一つとして公共事業の抜本的な見直しを求めておりますが、御承知のとおり、公共事業の多くは地方公共団体が実施しているのが現状であります。しかも、その財源の大半は地方債に依存しているわけですが、こうした地方公共団体のこの間の借金体質を大きく切りかえていくためにも、今こそ思い切った手を打っておかないことには到底未来への責任を果たすことはできません。
公共事業の計画・実施過程において地方公共団体が直接に関与する余地を広げ、当該地域の実情にそぐわないむだな事業を廃止し、あるいは一層のコスト削減を図るなど、より徹底した対応策を講ずることによって具体的な改善を図るべきであると考えますが、この点に関する総理の見解を求めまして、私の質問を終わります。ありがとうございました。(拍手)
〔国務大臣橋本龍太郎君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015254X00919970317/11
-
012・橋本龍太郎
○国務大臣(橋本龍太郎君) 朝日議員にお答えを申し上げます。
まず、地方分権の推進についてお尋ねがありました。
地方の自主性、自立性を強めるために、機関委任事務制度を廃止する、そして国と地方の役割分担のあり方に即し、権限の委譲、国の関与や補助金等の整理合理化、地方税財源の充実確保、効率的な地方行政体制の整備確立に資する施策などを進めていかなければなりません。地方分権の推進は、これまでの経済社会システムの変革を図るための大きな柱でありまして、強い決意でその実現に臨んでまいります。
地方分権推進委員会の第一次勧告につきましては、推進計画の策定を待つことなく可能な限り前倒しで実施することとし、まず勧告で最終の結論を出していただいております二十五項目のうち二十二項目、そのほかの十項目につきまして、遅くとも平成九年度中に実施することにいたしております。
また、監査機能の充実強化につきまして、今国会に地方自治法改正案を提出いたしましたほか、機関委任事務制度廃止後における地方公共団体の事務のあり方について、平成九年中に大綱を取りまとめることといたしております。
次に、通常収支不足への対応についてのお尋ねがございました。
平成九年度におきましては、国の財政も非常に深刻な状況にありますことなどから、やむを得ざる措置として、単年度の増額措置を制度化し、地方財政の運営に支障が生じないよう所要の交付税総額を確保したところでありますが、今後におきましては、財政構造改革会議における論議を踏まえながら、国、地方を通じる財政の健全化の方策について検討してまいることにいたしております。
次に、公共事業のあり方について、地方公共団体が直接関与する余地を広げるなど具体的な改善をという御指摘がございました。
社会資本整備は、国と地方の適切な役割と責任の分担のもとに一体的に進めることが基本であり、これまでも地方公共団体が実施される補助事業については、地方の御意向を十分踏まえながら箇所づけ等も行ってきたところでありまして、今後とも地方の自主性、主体性を極力尊重した事業の実施を図ってまいります。
また、地域の実情にそぐわないむだな事業の廃止とコスト縮減についてのお尋ねがございました。
政府といたしましては、社会情勢の変化や地域の実情に沿って事業の不断の見直しを引き続き行ってまいります。また、コストの縮減につきましては、先般、公共工事コスト縮減対策関係閣僚会議を発足させ、今年度末を目途に政府全体の行動指針を作成するよう指示し、広範な施策を検討いたしております。
残余の質問につきましては、関係大臣からお答えを申し上げます。(拍手)
〔国務大臣白川勝彦君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015254X00919970317/12
-
013・白川勝彦
○国務大臣(白川勝彦君) 朝日議員にお答え申し上げます。
地方消費税を例に挙げての地方の自主財源確保についてのお尋ねでございますが、昨年末に出された地方分権推進委員会の税財源に関する中間取りまとめにおいても、地方における歳出規模と地方税収入との乖離をできるだけ小さくするという観点に立ってその充実確保を図っていくべきであるとされているところであります。
今後の具体的な充実方策については、幅広い観点から検討してまいりたいと考えております。(拍手)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015254X00919970317/13
-
014・斎藤十朗
○議長(斎藤十朗君) 有働正治君。
〔有働正治君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015254X00919970317/14
-
015・有働正治
○有働正治君 国の財政の破局的破綻は、今日、もはやだれの目にも明白であります。同時に、重大なことは、地方財政は一九五〇年代前半、七〇年代後半に続く戦後三度目の深刻な危機に見舞われているのであります。私は、その特徴と原因をめぐり、主として政府の施策とのかかわりで質問いたします。
第一は、今日の地方財政危機の特徴をめぐってです。
過去二回の財政危機は、赤字団体数、赤字額の顕著な増大にも示されたように、不況の中で法人税収の激減などがもたらしたものでした。ところが、今日の財政危機は、赤字がほとんど出ないかわりに、自治体の借金、地方債の増大、その残高の雪だるま式の増大という形をとっているのが新しい特徴となっています。
およそ年間の地方債発行額は、七〇年代後半の七八年度約五兆円だったのが、九二年度に十兆円を突破、九六年度は十三兆円弱と、この十八年間で二・五倍にはね上がり、その残高は、九七年度末には地方債だけで百九兆円弱、これに公営企業債の普通会計負担分二十四兆円弱、交付税特別会計借入金の地方負担分十五兆円強を含めますと、合計百四十六兆九千億円に達すると見込まれています。
自治大臣は、戦後地方財政史上から見た今日の地方財政危機の新しい特徴をどう考えるか、事実関係を含め、所見を求めます。
第二は、なぜ地方債が近年異常に膨れ上がったのか、その根源と責任をめぐってであります。
その要因の一つには、税収の落ち込み、一方、経常的支出の一定の増加もあります。同時に顕著に目を引くのは、投資の増大、わけても、地方自治体が国から補助金や負担金を受けずに一般財源と地方債とに基づいて単独で、時には補助事業を継ぎ足す形で行う地方単独事業の異常な増大であります。
八〇年度、全国の合計で補助事業八兆七千億円弱に対し、単独事業は五兆四千億円弱、つまり単独事業は国の補助事業の約六割でありました。それが九四年度には、補助事業十一兆二千億円弱に対し、単独事業は十七兆円強にふえています。この十五年間の国の補助事業の伸びが三割に満たないのに対し、単独事業のそれは十倍以上の三・二倍に膨張しています。
公共事業の費用を国と自治体がどう分担しているかを見ると、九三年度には総額五十一兆一千三百億円弱のうち国負担十七兆八千億円、自治体の負担は三十三兆三千三百億円弱で、自治体は国の二倍負担し、十九兆円余に上る市町村の負担分だけで国負担分を大きく上回っているわけであります。
自治大臣、このように地方単独事業とその地方負担が近年急激に増大している事実をどう認識していますか。
私どもは、ここにゼネコン型公共事業への自治体財政の強力な動員の姿があらわれていると考えています。その姿は、大型開発へは何百、何千億円と投入させながら、敬老祝い金の廃止や小中学校のトイレットペーパーの父母持参など、終戦直後を思わせるような福祉・教育への徹底したしわ寄せとしてあらわれ、それが自治体リストラの名で、実態的には自治省の干渉と強要のもとで強引に推し進められているのであります。その中で、福祉や健康、安全を守る自治体本来の姿が失われていることが近年の自治体の姿ではないでしょうか。
そこで、総理に聞きます。
地方単独事業のこのような急膨張が地方財政破綻の原因となっていること、今日の自治体が本来の姿と相入れない姿になっているとの厳しい指摘をどう受けとめるのか、総理の見解を求めます。
第三に、このような地方単独事業の増大については政府に重大な責任があるのであります。
この間の自治省の出した通達を調べてみると、八七年五月二十九日の「緊急経済対策について」、八七年六月二日の「昭和六十二年度上半期における公共事業の事業施行等について」、九〇年六月二十九日の「公共投資基本計画について」、同じ日の「日米構造協議長終報告に関する日本側の措置について」、その後の九二年八月二十八日の「総合経済対策について」、以下一連の政府の景気対策に伴う自治省通達で、政府は次々に自治体に地方単独事業の拡大を要求し、事実上強要してきました。この四回の景気対策における地方自治体への単独事業の追加は四兆九千億円に上っています。
自治大臣、この点間違いないかどうか。そして、こうした自治省通達による地方単独事業の事実上の強要こそ地方債増大に拍車をかけたことは明瞭ではありませんか。責任ある明確な答弁を求めます。
通達は、その後、従来の港湾、有料道路等の事業を借金財政で一層促進できるようにするための九四年四月二十六日付「地域開発事業債の取扱いについて」の通達など、既に破綻し、その根本的見直しが求められている事業を含め、借金で促進させる通達などが相次いでいるわけであります。
また、六百三十兆円の公共投資計画の中でも、前期の四百三十兆円の公共投資計画の中では明記されていなかった地方単独事業を明記して特別に位置づけ、各長期計画のその合計金額は前の計画の二倍以上に増額されています。そして、今後も長期にわたり借金財政の上乗せを強要しようとしているわけであります。
このように、法律によらない通達指導による行政指導で自治体に公共事業を事実上強要することは、憲法九十二条の「地方自治の本旨」に反するもので、自治体の自主性を奪うものであり、やめるべきであります。そして、公共投資計画は地方財政危機対策の上からも根本的に見直すべきであります。総理の明確な見解を求めます。
関連して、白川自治大臣に聞きます。
政府は、公共事業、地方単独事業の伸びについて、よく高齢化社会への対応とか災害対策や福祉施設などに力を入れていると述べるわけであります。しかし、事実はどうか。
九四年度実績で見ると、地方単独事業費のうち、福祉施設など民生費には単独事業費のわずか四・三%にすぎません。道路、橋梁・街路、河川、区画整理などの土木費に五一・三%、金額的には八兆七千三百七十二億円も注ぎ込まれており、この土木費などの地方単独事業の急増が自治体の財政破綻をもたらした大きな要因であることを否定できないことは極めて明白であります。高齢化社会のためなどという言い分は、数字の上からいっても看板に偽りあると断ぜざるを得ないではありませんか。所見を求めます。
第四に、政府がその政策を自治体を通して推進するための仕組みで見逃せないいま一つは、政府中央省庁から自治体への出向、天下りの人事配置による地方自治体への締めつけがあります。
都道府県の課長級以上に出向している国家公務員が、自治省の百七十七人を初め七百人を超えており、特に自治省から地方自治体へ出向している職員は二百四十人で、これは自治省本省の定員数の半分に当たります。しかも、都道府県の副知事、総務部長、企画調整部長などに加えて、財政課長だけをとってみましても、出向、天下りているところが全国の約六割の道府県に達し、政府・自治省の地方単独事業拡大政策を推進する役割を果たしてきたのであります。
都道府県あての自治省通達の中にいつも盛り込まれる「市町村へも徹底されたい」という、いわば旧内務省的感覚とも言うべき自治体締めつけの言葉の背後に、こうした人的配置が構造的に機能しているからではありませんか。地方自治を侵すこのような体制は、速やかにメスを入れ是正するのが当然ではありませんか。総理と自治大臣の見解を求めます。
ことしは、憲法と地方自治法が施行されて五十周年を迎える記念すべき年であります。地方自治制度は、憲法の大原則の一つとして、住民の身近な行政は自治体が行う制度であり、地方自治法第二条で示されている自治体の仕事の第一に「住民及び滞在者の安全、健康及び福祉を保持すること」と書き込まれているとおり、憲法のもとで地方自治体の果たす役割がいよいよ重要になっています。
ところが、今日、最大の問題となっているのは、私が以上指摘してきたように、自治体の第一の仕事を果たせないほど政府が自治体を従属させる政策、仕組みを温存し、借金をふやし続けさせていることであります。今こそ真の地方自治の拡充が求められています。そのため、このゆがめられた構造に根本的にメスを入れることを要求いたします。
この点での総理の所見を求めて、私の質問を終わります。(拍手)
〔国務大臣橋本龍太郎君登壊、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015254X00919970317/15
-
016・橋本龍太郎
○国務大臣(橋本龍太郎君) 有働議員にお答えを申し上げます。
まず、現下の地方財政が悪化したその理由ということでありますが、これは景気の後退に伴いまして地方税収、地方交付税収が低迷をしていること、景気対策や減税の減収補てんのために増発いたしました地方債の償還費が増嵩していること、さらに住民ニーズにこたえるための地方公共団体の財源需要が増大していること等によるものと考えられます。
自治体本来の姿、こういうお尋ねがありました。
それぞれの地方公共団体におきましては、住民の代表である首長及び議会のもと、住民ニーズにこたえながら、地域の実情に応じてそれぞれの判断により住民福祉の向上と地域社会の発展に尽くしていただいているものと考えております。
地方公共団体に対する要請等につきましては、通達などは、公共事業等に係る地方財政措置の内容を地方公共団体に伝えるとともに地方単独事業を含め公共投資の七割以上が地方公共団体により実施されることから、国の国土政策や経済財政政策との整合性を保ちながら適切に対処されるよう要請しているものであります。具体的な事業実施につきましては、各地方公共団体が議会の審議を経て自主的判断により行われるものであります。
次に、公共投資基本計画は、住民生活に密接に関連した社会資本の整備は地方公共団体が地方単独事業などにより地域の特性に応じ実施されることとしております。他方、この計画の具体的実施に際しては、財政の健全性を確保しながら、各時点での経済財政状態を踏まえて機動的、弾力的に対処するものであります。なお、財政構造改革会議の中では聖域なく議論が行われることとされており、この点についても十分な議論が行われると思います。
次に、国から地方への出向についての御質問がございました。
私は、人事交流そのものについては、相互の理解の促進あるいは専門知識を有する職員の確保といった点からも意義のあることだと思っております。ただし、ポストの指定席化などについての御批判もこれは事実でありまして、また、地方公共団体職員の士気の高揚等にも十分配慮をしながら適切な交流が行われる必要があると思います。
次に、国と地方の関係について御意見をいただきました。
各地方公共団体は、地域の実情に即して住民福祉の向上や地域経済の振興などに取り組んでおられます。今後、さらに地方分権を推進するためには、地方分権推進委員会における審議などを踏まえながら、国と地方の役割分担の見直し、補助金などの整理合理化などの検討を進めるとともにへこれに応じた地方税財源の充実確保を図る必要があると考えております。
残余の質問につきましては、関係大臣から御答弁を申し上げます。(拍手)
〔国務大臣白川勝彦君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015254X00919970317/16
-
017・白川勝彦
○国務大臣(白川勝彦君) 有働議員にお答え申し上げます。
地方債発行額等についてのお尋ねでございますが、御指摘のとおり、地方財政計画の規模がこの十八年間で二・五倍に増加しており、これに対応して地方債発行額もこの間に二・五倍となっております。また、平成九年度末の地方の借入金の残高は百四十六兆九千億円に達する見込みであります。
次に、地方財政についてどう認識しているかということでありますが、四年連続して多額の財源不足が続いておること、借入金残高も百四十七兆円に達するなど、極めて厳しい状況にあると認識をいたしております。
次に、地方債と地方単独事業についての数点のお尋ねでございます。
まず、近年の地方債残高の増加は、景気の後退に伴う地方税収の落ち込みや減税による減収を補てんするとともに、数次の景気対策等のため地方債の増発等の理由が重なったものであると考えております。また、平成四年八月の総合経済対策以降、四回の景気対策における単独事業の追加要請は四兆九千億円であります。
地方単独事業の増大につきましては、公共投資基本計画等の考え方に沿って、地方公共団体が住民生活に密接に関連した社会資本の整備を地域の特性に応じて実施した結果であると考えております。また、その事業規模や内容につきましては、地方公共団体におきまして、住民の代表である議会の議決を経て地域の住民のニーズに応じた選択をしていただいたものと考えております。
地方単独事業の財源及び地方債の元利償還費については、毎年度の地方財政計画の策定を通じて所要の財源を確保し、地方公共団体の財政運営に支障が生じないよう対処してまいったところであります。
なお、平成九年度の地方財政計画においては、地方財政の健全化を図る観点から、地方単独事業について伸び率をゼロとすることといたしたところであります。
最後に、自治省から地方公共団体への出向人事のあり方についてのお尋ねでございますが、ポストの指定席化につきましては種々の問題があると認識しており、自治省に関しては、同一ポストに連続して出向させないよう事務当局に指示しているところであります。
なお、御指摘のように、特定の国の施策を押しつけるためにこのような人事交流を行っているというようなことは、全くそういうものではないと認識をいたしております。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015254X00919970317/17
-
018・斎藤十朗
○議長(斎藤十朗君) これにて質疑は終了いたしました。
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015254X00919970317/18
-
019・斎藤十朗
○議長(斎藤十朗君) 日程第三 労働時間の短縮の促進に関する臨時措畳法の一部を改正する法律案(趣旨説明)
本案について提出者の趣旨説明を求めます。岡野労働大臣。
〔国務大臣岡野裕君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015254X00919970317/19
-
020・岡野裕
○国務大臣(岡野裕君) 労働時間の短縮の促進に関する臨時措置法の一部を改正する法律案について、その趣旨を御説明申し上げます。
労働時間の短縮は、ゆとりある勤労者生活の実現の観点から不可欠な国民的課題であるとともに、国際社会との調和のとれた国民経済の発展のためにも重要であります。このため、政府といたしましては、完全週休二日制の普及、年次有給休暇の取得促進、所定外労働の削減を柱として労働時間の短縮に取り組んできたところであります。
特に、週四十時間労働制については、昭和六十二年及び平成五年の二度にわたり労働基準法の改正を行うなど、計画的かつ段階的に実施を進めてきたところであり、本年四月一日からは従来適用が猶予されてきた中小企業におきましても実施されることとなっております。
これらの中小企業において週四十時間労働制が円滑に定着するためには、その実情にかんがみ、確実に定着するまでの間、懇切丁寧な指導や援助を精力的に行うなどの特別の措置を講ずることが必要不可欠であります。
また、これまでの労働時間の短縮に向けての施策の展開や労使による真摯な取り組みにより、労働時間の短縮に大きな進展が見られてきたところではありますが、今後とも労働時間の短縮のための施策を積極的に講ずることが重要であると考えております。
政府といたしましては、このような課題に適切に対処するため、中央労働基準審議会の報告を踏まえ検討を加え、労働時間の短縮の促進に関する臨時措置法の一部を改正する法律案を作成し、同審議会の全会一致の答申をいただき、ここに提出した次第でございます。
次に、この法律案の内容につきまして、その概要を御説明申し上げます。
第一に、週四十時間労働制の定着及び労働時間の短縮の促進のための指導、援助を効果的に実施するため、本年八月末とされている労働時間の短縮の促進に関する臨時措置法の廃止期限を、年間総労働時間千八百時間の達成、定着を図る旨をうたっている構造改革のための経済社会計画の計画期間に合わせ、平成十三年三月三十一日まで延長することといたしております。
第二に、週四十時間労働制の適用が猶予されていた中小企業等に対しては、本年四月一日から平成十一年三月三十一日までの二年間を指導期間とし、国は、最近における経済的事情の著しい変化にかんがみ、本年四月一日以後週四十時間労働制が適用されることとなったことを考慮しつつ、きめ細かな指導、援助等を行うよう配慮しなければならないこととしております。
なお、この法律は、公布の日から施行することとしております。
以上が労働時間の短縮の促進に関する臨時措置.法の一部を改正する法律案の趣旨でございます。よろしくお願いを申し上げます。(拍手)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015254X00919970317/20
-
021・斎藤十朗
○議長(斎藤十朗君) ただいまの趣旨説明に対し、質疑の通告がございます。順次発言を許します。今泉昭君。
〔今泉昭君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015254X00919970317/21
-
022・今泉昭
○今泉昭君 私は、平成会を代表いたしまして、ただいま議題となりました労働時間の短縮の促進に関する臨時措置法の一部を改正する法律案に関して、総理初め関係各大臣にお伺いいたします。労働時間の短縮は、豊かでゆとりある国民生活の実現はもとより、先進国の一員として国際協調を図りつつ、活力ある経済社会を目指す構造改革の一環として国を挙げて取り組んできた最重要課題の一つであります。
このため、一九八六年に出された前川レポート以来、その後三回策定されました経済計画におきましても、年間総労働時間千八百時間の早期実現を掲げてまいりました。
一九八七年には、四十年ぶりに労働基準法を改正し、原則週四十時間労働を翌年の一九八八年四月一日から施行するとともに、同年五月に策定された経済計画「世界とともに生きる日本」において初めて、計画期間中、すなわち九二年度までに週四十時間制、年間総労働時間千八百時間の達成を目指すことを公表し、国際的な公約ともなったわけであります。
しかし、この計画の達成目標年次をはるかに過ぎた今日、我が国の労働時間の現状は、九六年で年間総労働時間の平均が千九百十九時間であり、基準法に定めた週四十時間をはるかに上回る長時間労働のもとで働く労働者が約二千四百万人に上る状況にございます。
我々は、我が国経済を支える勤労者の皆さんが豊かでゆとりある生活を実感できるために、一日も早く法で定めた週四十時間制を完全に実現できる政策の実行が必要であると考えます。
時短促進法改正に関しくまた、労働時間の短縮に関して、以下の問題について政府の見解を伺います。
まず第一は、労働時間短縮に向けての政府としての姿勢についてであります。
一九九二年に決定を見た生活大国五カ年計画によれば、九二年度から九六年度までに年間総労働時間千八百時間を達成することを目標とするとされました。しかし、今日の実情は、目標を百時間以上も上回る状況にございます。この間、時間短縮の実現に向け時短促進法を施行する等、中小企業への援助、指導、さらには猶予措置等の工夫がとられ、労働時間短縮への環境整備がなされてきたはずであります。しかし、ここ数年の状況は何ら前進が見られていないと言っても過言ではないと考えます。
そのように実効が上がらないのはなぜでしょうか。週四十時間、年間千八百時間という目標に問題があるのか、それとも企業者側、あるいは勤労者側にその熱意がないと考えられるのか、総理の見解を伺いたいと思います。加えて、今回同じような措置を延期するだけで実効が上がると確信を持っておられるのかもお聞かせ願いたいと思います。
第二点は、法のもとには万人が平等であるべきという点についてであります。
労働時間の実態は、産業別、業種別、そして企業規模別により大きな格差が存在しております。労働時間は労使の自主的な交渉により決められるのでありますから、企業労使の力量や企業経営のよしあしにより格差が出るのは、自由主義経済のもとではある程度やむを得ません。
しかし、労働基準法に定められている法定の労働時間は、我が国社会における生活権のミニマムであります。社会の構成員として当然守らなければならない社会的規範であります。したがって、週四十時間という基準法に定められた労働時間に猶予を設けたり例外的取り扱いをすることは、そこに働く人を法が守らないことであり、法のもとでの不平等を生むことになります。
政府並びに行政は、そのようなことがないように、その危険性のある企業に対し強力な行政指導、監督はもとより、企業の環境整備に援助を含めた工夫を凝らすべきだと考えますが、労働大臣及び通産大臣の見解をお伺いいたします。
第三点は、法の精神についてお伺いいたします。
四月一日から猶予措置の期限が切れる中小企業の一部の経営者に対して、経営側四団体は、労働時間の短縮がコストアップとなるのを防ぐために、労働時間の短縮分だけ基本給を引き下げることを指導していると聞きます。法律上は、時間当たりの賃率さえ下がらなければ違法とは言えないでしょう。しかし、そこで働く労働者は、日本独特の賃金制度のため、基本給の引き下げが月収賃金の減少、ボーナス、退職金の低下につながることになるわけであります。
労働時間の短縮は、豊かさ、ゆとりを実現するためのものであり、賃金の減少、ボーナス、退職金の低下と引きかえにする二者択一のものではありません。国際労働基準であるILO条約第四十七号並びに第百十六号におきましても、週四十時間に伴う賃金の引き下げをすべきでないと明確に示されています。
今回の措置で二年間の行政指導の強化が言われていますが、経営者団体のこのような考え方は法の精神に反するものと考えますが、労働大臣の見解を伺いたいと思います。
第四点は、今後の労働時間短縮への展望についてお伺いいたします。
経済計画に示された年間千八百総労働時間の実現を図るためには、基準法に定められた週四十時間の達成だけでは実現不可能であります。すなわち、年次有給休暇の取り扱いや時間外労働の制限をどのように取り扱うかが重要なかぎとなります。
我が国の場合、年次有給休暇のミニマムは十日、平均付与日数は約十七日となっていますが、実際に使われるのは平均九・五日程度にしかすぎません。千八百時間労働の実現のためには、付与日数、取得日数とも最低二十日は必要だと考えられますが、今後の有給休暇の取り扱いを基準法の中でどう考えておられるのか。審議会の検討を待つのでは千八百時間の実現はさらに遠のくのではないでしょうか。
また、特例措置として残されている商業、映画・演劇、保健衛生、接客娯楽業について、どのような対策を考えておられるのかを労働大臣にお伺いいたします。
過去二回の経済計画における労働時間短縮計画は、残念ながら成功したとは言えません。現経済計画における目標は、まさに三度目のものであります。三回も失敗に終わる計画はまさに国際的な信頼を失いかねません。
現経済計画の計画期間は二〇〇〇年度までであります。この計画期間中に、週四十時間、年間千八百時間をぜひとも達成し、二十一世紀の我が国の勤労者がゆとりと豊かさを実感できる社会となるよう期待をしながら、そして今回改正案がそのための役割を十分果たすことを祈念いたしまして、私の質問を終わります。(拍手)
〔国務大臣橋本龍太郎君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015254X00919970317/22
-
023・橋本龍太郎
○国務大臣(橋本龍太郎君) 今泉議員にお答えを申し上げます。
まず第一点、労働時間短縮の認識についてのお尋ねがございました。
内外情勢が大きく変化をし、非常に厳しい経済状況が続きましたことから、残念ながら年間千八百時間の目標がなお達成に至っておりませんので、その達成、定着に向けて労働時間の短縮に積極的に取り組んでまいります。
時短促進法の延長によるその実効性という御意見をいただきました。
今回の時短促進法の改正は、本年四月一日から全面的に実施される週四十時間労働制が中小企業において円滑かつ確実に定着するよう、きめ細かな指導、援助を精力的に行おうとするものであります。これを活用することにより、労働時間短縮の実効が上がるよう全力を尽くしてまいりたいと考えております。
残余の質問につきましては、関係大臣から御答弁を申し上げます。(拍手)
〔国務大臣岡野裕君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015254X00919970317/23
-
024・岡野裕
○国務大臣(岡野裕君) 労働省にお尋ねのくだりにつきましてお答えを申し上げます。
まず、法のもとの平等である、したがいまして、労働時間短縮の定着のためには、ただ行政指導に任せることなくその他援助を行えという御趣旨と存じますが、今、私どもは、なるほど指導助言の機会、これを二年間設けておりますが、これにとどまるものではございませんで、例えば中小企業などで省力化施設、これを導入して時間短縮を行おうとか、あるいはまた、変形労働時間等を導入してコンサルタント等と相談をしながらポジティブに時間短縮の取り組みをするというようか企業主に対しましては、援助措置を講じてこの四十時間への時間短縮の定着を図ってまいろう、こう思っているところでございます。
二つ目であります。
経営者団体等が指導のよろしきを得ておらない、賃下げをしてもよいというようなことを言っているというおしかりでございますが、その種の経営者団体の行為について、いまだ私の耳には入っておりません。ただ、こういうことがあります。
一時間の労働に対しての対価が、労賃が千円だということにいたします。そうすると、今までは四十四時間でございました。したがって、千円掛ける四十四イコール四万四千円、こういう所得。ところが、今度四十時間になりました。したがいまして、千円掛ける四十で四万円。そうすると四千円減ったようでありますが、提供労働時間が減っておりますので、これは不合理だというふうには考えられない。ただ、週休二日になった、したがって休めた、リフレッシュされた、したがって翌日の労働提供の能率がうんと上がるとか、あるいはパソコンを自発的研修で物にした、したがってやっぱり効率が上がったというような面があろうと思っております。
だから、四万四千円が四万円ということではなくて、そういった能率アップの面、生産性が向上した面、これらも勘案をして、これはやっぱり細かな問題、その職場職場の問題でありますので、労使間の団体交渉でお決めをいただくこういうふうに理解をいたしております。
三番目であります。千八百時間労働制の実現のためには、年次有給休暇であるとか時間外労働であるとかサービス業等の今ありますところの特例措置、これの対策はどうかということでございます。
今、今後の労働時間制、この法制全般につきまして中央労働基準審議会において、いかにあるべきかということを労働省としては諮問をし、御検討をいただいているところでございます。七月一日までには答申を欲しい、こう言っておるところでございます。答申を得ました上で、それを十分読みまして対処をしてまいりたい、かように存じております。よろしくお願いをいたします。(拍手)
〔国務大臣佐藤信二君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015254X00919970317/24
-
025・佐藤信二
○国務大臣(佐藤信二君) 私に対する御質問は、時短を行う企業の環境整備に対する援助の問題でございました。
政府といたしましては、省力化投資等により週四十時間労働制への移行に取り組む中小企業に対しましては、助成金、九十八億でございますが、これを創設する等支援措置を講ずることとしております。
いずれにいたしましても、引き続き労働省と協力しつつ、週四十時間労働制への円滑な移行、これを支援してまいりたいと考えております。
以上です。(拍手)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015254X00919970317/25
-
026・斎藤十朗
○議長(斎藤十朗君) 笹野貞子君。
〔笹野貞子君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015254X00919970317/26
-
027・笹野貞子
○笹野貞子君 私は、民主党・新緑風会を代表して、ただいま提案説明がありました労働時間の短縮の促進に関する臨時措置法の一部を改正する法律案について質問いたします。
周知のように、アメリカの労働団体が、ほぼ百年前の五月一日、労働時間短縮という要求を掲げて大規模な大衆運動を繰り広げました。労働者は、八時間の労働、八時間の休息、八時間の教育をスローガンに掲げてストライキとデモを展開し、一部地域では流血の事態となりました。この五月一日がメーデーとして今に受け継がれています。
約一世紀を経て、経済社会の発展とともに労働時間の短縮が進み、今日に至っております。歴史的に見ても、時短は労働者の生活と文化の質の向上を図る上で極めて重大な意義を持っていると言えましょう。
我が国は、一九八七年当時、貿易摩擦が過熱している中で、いわば国際公約として、年間総労働時間をアメリカ、イギリスの水準を下回る千八百時間程度に短縮していくこととしました。しかしながら、現状を見ると、九六年度の総実労働時間は千九百十九時間で、ここ一二年間引き続いて増加しています。依然としてこの目標は達成されず、いまだ百時間程度の開きがあります。
このような現実を踏まえて、我が国における労働時間短縮の今日的意義及び現状認識、並びに年間総労働時間千八百時間達成に向けた基本姿勢について、総理のお考えをお聞かせください。
次に、週四十時間労働制については、欧米先進国では以前から実施されている中で、我が国では、一九八七年の労働基準法改正から十年、時短促進法制定から足かけ五年を経てなお週四十時間労働制が達成されず、今回、時短促進法の延長という事態を迎えていることはまことに遺憾と言わざるを得ません。
言うまでもなく、時短の王道は労使合意による生産性の向上にあり、中小零細企業等の実情を踏まえることは当然であります。しかし、今回政府が提案している法改正の趣旨、とりわけ指導期間の設定について、週四十時間労働制の実施が二年間猶予されたとの誤解や曲解が生まれ、週四十時間労働制への移行、定着が滞るということは断じて許されません。総理及び労働大臣の認識、決意を明らかにしていただきたいと思います。
週四十時間労働制への労働時間の短縮について、ILOの条約や勧告は、時短によって賃金の減少や生活水準の低下をもたらさないよう適切な措置を求めております。
時短の歴史的な意義は、労働者の生活と文化の質の向上にあります。ところが、最近の報道等によると、週四十時間労働制の実施に伴い、時間当たり賃金が減少しない限り賃金額の引き下げを行うことは問題とならないとの見解が横行しております。私は、時短の望ましいあり方とは、賃金水準の引き下げなき労働時間の短縮だと考えます。もとより、賃金の取り扱いについては、基本的には労使間の協議にゆだねられるべきものです。しかし、時短の意義に照らしてみるとき、いやしくも今回の法改正を奇貨として賃金を引き下げることのないよう十分配慮する必要があります。労働大臣のお考えをお聞かせください。
ところで、週四十時間労働を達成しただけでは政府目標の年間総労働時間千八百時間は達成できません。所定外労働時間の削減や年次有給休暇の取得の促進が不可欠です。特に、所定外労働時間については、政府が今国会に提出されている男女雇用機会均等法の改正にあわせていわゆる女子保護規定を撤廃する法案が提出されていることから、早急にその抑制の枠組みを確立する必要があります。
時間外労働は、本来、臨時的なものとして必要最小限にとどめられるべきであり、現行の割り増し賃金率の引き上げや段階的な割り増し賃金率の導入などの措置をとるべきです。
また、時間外労働の目安となる指針に基づいて指導されていることは承知しております。しかし、家庭責任と職業生活の調和、男女平等の家庭責任の分担という観点からも、男女共通の上限規制を法令に位置づける必要があると考えます。中央労働基準審議会で時間外労働について検討されるものと承知しておりますが、一定の結論を得る時期も含めて労働大臣の認識をお尋ねいたします。
次に、我が国の労働時間短縮が進まない原因の一つとして、年次有給休暇の取得が進んでいないことが挙げられます。これまでの推移を見れば、労働者がみずからの権利である年次有給休暇を完全消化できないような環境がまだ多くあることも事実です。
年次有給休暇の本旨から見て、一定のまとまった日数の連続取得が望ましいと考えますが、これを容易にするためにも年次有給休暇の最低付与日数の引き上げが必要ではないでしょうか。年次有給休暇の取得を促進するための方策をどのように講じていくのか、この点について労働大臣にお尋ねいたします。
さて、最後に、時短が生産性向上に大きく依拠していることから、より効果的に時短を進めるためには、労働施策のみではなく、産業政策等の多様な側面から十分な施策を行っていくことが有効です。まさに政府一体となって時短を進める体制を整え、関係省庁が労働省とも十分な連携を図りっっ、積極的な施策を展開していく必要があると考えます。この点について、総理及び産業政策を所管する通産大臣の見解を伺って、私の質問を終わります。(拍手)
〔国務大臣橋本龍太郎君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015254X00919970317/27
-
028・橋本龍太郎
○国務大臣(橋本龍太郎君) 笹野議員にお答えを申し上げます。
労働時間の短縮は、議員もお触れになりましたが、働く方々が喜びを感じながら働けるようにするためにも大変大事なことであります。現状を見ますと、残念ながら経済計画に掲げられている年間総労働時間千八百時間にはなお、御指摘のとおり、開きが見られるところでありますので、その達成、定着に向けて引き続き積極的に取り組んでまいります。
週四十時間労働制につきましては、本年四月一日から労働基準法の現行規定どおり全面的に実施いたすこととしております。その実施に当たり、中小企業において週四十時間労働制が円滑かつ確実に定着をしてまいるよう、二年間の指導期間を設け、きめ細かな指導、援助を精力的に行うこととしております。
労働時間の短縮は労働省だけではだめだ、これは御指摘のとおりであります。この問題は、政府が取り組むべき最重要課題の一つと考えておりまして、今後とも産業政策の面からの取り組みも含めて政府一体となって積極的にその推進に努めてまいります。
残余の質問につきましては、関係大臣からお答えを申し上げます。(拍手)
〔国務大臣岡野裕君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015254X00919970317/28
-
029・岡野裕
○国務大臣(岡野裕君) 労働省にお尋ねのくだりにつきまして、笹野議員にお答えをいたします。
まず、二年間の猶予は誤解を招く、この点につきましては総理からたったただいまお話があったとおりであります。労働省といたしましても、総理の御意図を体し、一生懸命頑張ってまいる所存でございます。
二番目の問題でありますが、四十時間労働制の実施で賃金が引き下げられる云々のお話であります。
先ほどの今泉先生にお答えをいたしましたとおりでございまして、ひとつ自主的に労使間で時短の意義を踏まえまして合理的な解決をしていただくよう環境づくりに相努めたい、こう思っているところであります。
三番目でありますが、時間外労働につきまして、あるいは割り増し賃金率、これを上げたらどうか、また、男女共通の上限を設けてはいかがであるか、こういうお話でございますが、時間外労働は景気の好不況あるいは仕事の繁閑、これにつきまして調整機能を持っておりますこと、笹野議員も御存じのとおりであります。特に、時短を行いました直後におきましては、緊急的なやはり時間外労働が必要だなというような場面場面が多く出てまいる、こう思っております。したがいまして、この時短が円満裏に軟着陸をするに際しましては、割り増し賃金率のアップについては慎重に対処をしてまいらなければいけないのではないかな、こう思っているところであります。
いずれともあれ、今お話が出ております割り増し賃金率でありますとか時間外労働全般の問題について、これは実は中央労働基準審議会において御審議をいただくべく私の方からお諮りを申しているところであります。先ほどのお話と同じように七月一日までに結論を賜りたい、こうお願いをしております。結論を得ました上で、労働省としてもいかが施策を講ずるか考えてまいりたい、かように存じている次第であります。
四番目でございますが、年次有給休暇について連続取得を容易にできるようにしたらどうか、あるいは最低付与日数の引き上げはどうかというお話であります。
やはり千八百時間達成のためには、この連続取得ができること、あるいは休暇の日数が引き上げられることは、大きく前向きに意義のあることだとは存じているところであります。この問題もひっくるめまして年次有給休暇の問題につきまして、先ほどの時間外労働と同じく中央労働基準審議会に諮問中でございます。答申を待っているところでございます。よろしく御理解を賜りたいと存じます。
以上でございます。(拍手)
〔国務大臣佐藤信二君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015254X00919970317/29
-
030・佐藤信二
○国務大臣(佐藤信二君) 私に対する御質問は、効果的に時短を進めるための産業政策等の展開でございました。
時短を円滑に実現していくためには、御指摘のように、国民経済全体の生産性の向上、これが大変重要と認識しております。こうした認識に立ちまして、昨年の十二月に閣議決定をいたしました「経済構造の変革と創造のためのプログラム」、これに従いまして、高付加価値型の産業の形成を図り、関係省庁と十分な連絡を図りながら、活力ある豊かな経済社会の実現に努めてまいりたいと思います。
以上です。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015254X00919970317/30
-
031・斎藤十朗
○議長(斎藤十朗君) これにて質疑は終了いたしました。
本日はこれにて散会いたします。
午後一時四十七分散会
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015254X00919970317/31
4. 会議録のPDFを表示
この会議録のPDFを表示します。このリンクからご利用ください。