1. 会議録本文
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000・会議録情報
平成九年三月二十一日(金曜日)
午後零時四分開議
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○議事日程 第十一号
平成九年三月二十一日
正午開議
第一 地方税法及び国有資産等所在市町村交付
金法の一部を改正する法律案(内閣提出、衆
議院送付)
第二 地方交付税法等の一部を改正する法律案
(内閣提出、衆議院送付)
第三 地方公務員法の一部を改正する法律案
(衆議院提出)
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○本日の会議に付した案件
一、児童福祉法等の一部を改正する法律案(趣
旨説明)
以下 議事日程のとおり
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015254X01119970321/0
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001・斎藤十朗
○議長(斎藤十朗君) これより会議を開きます。
この際、日程に追加して、
児童福祉法等の一部を改正する法律案について、提出者の趣旨説明を求めたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015254X01119970321/1
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002・斎藤十朗
○議長(斎藤十朗君) 御異議ないと認めます。小泉厚生大臣。
〔国務大臣小泉純一郎君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015254X01119970321/2
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003・小泉純一郎
○国務大臣(小泉純一郎君) 児童福祉法等の一部を改正する法律案について、その趣旨を御説明申し上げます。
児童福祉法は戦後間もない昭和二十二年に制定されましたが、近年、少子化の進行、夫婦共働き家庭の一般化、家庭や地域の子育て機能の低下、児童虐待の増加など、児童や家庭を取り巻く環境は大きく変化しております。しかしながら、児童家庭福祉制度は、発足以来その基本的枠組みは変わっておらず、保育需要の多様化や児童をめぐる問題の複雑多様化に適切に対応することが困難になっているなど、今日、制度と実態のそごが顕著になってきております。
今回の改正は、こうした変化等を踏まえ、児童の福祉を増進するため、子育てしやすい環境の整備を図るとともに、次代を担う児童の健全な成長と自立を支援するため、児童家庭福祉制度を再構築するものであります。
以下、この法律案の主な内容について御説明申し上げます。
第一は、児童保育施策等の見直しであります。
まず、保育所について、市町村の措置による入所の仕組みを、保育所に関する情報の提供に基づき保護者が保育所を選択する仕組みに改めるとともに、保育料の負担方式について、現行の負担能力に応じた方式を、保育に要する費用及びこれを扶養義務者から徴収した場合における家計に与える影響を考慮した方式に改めることとしております。
次に、保育所は、地域の住民に対し、その保育に関し情報提供を行うとともに、乳幼児等の保育に関する相談、助言を行うよう努めなければならないこととしております。
また、放課後児童健全育成事業を社会福祉事業として制度化し、その普及を図ることとしております。
第二は、児童の自立支援施策の充実であります。
まず、教護院について、家庭環境等の理由により生活指導等を要する児童も入所の対象とし、児童の自立を支援することを目的とする施設に改め、児童自立支援施設に改称するとともに、養護施設の目的として児童の自立支援を図ることを明確化し、児童養護施設に改称するなど、児童福祉施設の目的及び名称の見直しを図ることとしております。
次に、地域の相談支援体制を強化する観点から、保護を要する児童やその家庭に関する相談援助や指導、児童相談所等の関係機関との連絡調整を総合的に行うことを目的とする施設として児童家庭支援センターを創設することとしております。
また、児童相談所が施設入所措置等を行うに当たって、その専門性や客観性の向上等を図るため都道府県児童福祉審議会の意見を聞くこととするとともに、児童の意向等を聴取することとしております。
第三は、母子家庭施策の強化であります。
母子家庭の自立の促進や雇用の促進を図るため、母子寮について、入所者の自立の促進のための生活の支援をその目的に加え、母子生活支援施設に改称するなどの改正を行うこととしております。
このほか、保育所の広域入所等を促進するため、地方公共団体が連絡調整を図るべきこと、また、児童福祉関係者が連携しつつ、地域の実情に応じて積極的に児童や家庭の支援を図るべきこととしております。
最後に、この法律の施行期日は、平成十年四月一日としております。
以上がこの法律案の趣旨でございます。(拍手)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015254X01119970321/3
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004・斎藤十朗
○議長(斎藤十朗君) ただいまの趣旨説明に対し、質疑の通告がございます。順次発言を許します。山本保君。
〔山本保君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015254X01119970321/4
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005・山本保
○山本保君 私は、平成会を代表して、ただいま提案理由説明のありました児童福祉法等の一部を改正する法律案について、総理大臣を初め関係の大臣に質問をいたします。
児童福祉法が制定され五十年たった今、子供や家庭を取り巻く環境は子供の健全な育成には決して望ましいものとは言えません。
憲法二十五条に定められた「健康で文化的な最低限度の生活」、このミニマムの規定をもとに発展してきた我が国の福祉行政は、殊に児童福祉に関しては、子供たちが健康な体と精神を持ち、心豊かに安心して生きていく権利、また、子供が生きがいを持って生きていく、より高い権利の追求に質的に変わってきております。
我が国も批准した児童の権利条約には、児童の最大限、マキシマムの発達の保障、最高、ハイエストの水準の健康享受、そして児童の諸能力を最大限、フルエストの可能性まで発達させる教育と、子供の権利の内実が最上級の表現で明記されております。
児童福祉は、このように、欠けている部分を補助、代替するウエルフェアから、よりよい生活の追求と保障を意味するウェルビーイングヘと質的な転換を図りつつあります。
一方、教育に関して言えば、教育基本法には、人格の完成と国家社会の形成者という教育の二つの目的が示されています。これは、児童福祉法で児童自身の健やかな発達を目標として国や地方が責任を持つと定められている考え方とは明確な違いが存在しております。この違いは、例えば障害を持つ子供の育成は、人材形成というこの面から言えば後回しにされがちなことなどに如実にあらわれてくるのであります。
以上申し上げました福祉観の変化と、教育と福祉それぞれの特徴を踏まえ、総理大臣は、児童福祉のあるべき姿と、また、教育改革のねらいをどう考えておられるのか、最初にお伺いいたします。
次に、平成元年、いわゆる一・五七ショックと言われ、合計特殊出生率の低下が社会的問題となりました。このため、政府は、子育てに対する社会的支援のための少子化対策を進め、平成六年度からはエンゼルプランを実施しております。それにもかかわらず、平成七年には出生率が一・四二にまで下がっており、施策の効果があらわれていないのであります。高齢化への対応策としては医療や介護制度の大改革が予定されていますが、これと比較して子供の少子化対策は不十分かつ副次的なものと感ぜざるを得ないのであります。
私は、子育て支援基本法の準備を進めております。結婚や子育ての意欲のある人や子育てを行っている人が、安心して、また、喜びを持って出産、育児ができるような国を挙げての支援策が求められているのであります。この施策は、厚生省のみならず、教育、労働、住宅などにかかわる総合的な少子化対策であり、それを裏打ちする予算の確保が必要であります。
橋本総理大臣、総合的な少子化対策に政府を挙げての積極的な取り組みを図るべきだと考えますが、所感をお尋ねいたします。
次に、保育所制度についてお聞きいたします。
以前から、幼稚園、保育園を一元化すべきだという幼保一元化論が存在していました。しかし、現実には、横軸には子育て支援、幼児教育、女性の就労支援の三つの異なる目的があり、また、縦軸には施設入所、在宅サービス給付、相談と情報の提供、時間と金銭の給付のこの四つの手法が組み合わされまして、十二種類のサービスが存在していることであります。さらに、これらは営利、民間非営利、公立等の各事業主体によって提供されております。
これらの多様なサービスを、家で子育てをするお母さんにも、幼稚園や保育施設を利用する保護者にも、また、ベビーシッターを雇う人にも、だれでもが自由に公平に選択して利用できるよう幼保多元的な行政を確保すべきだと私は主張いたしております。 、
その観点から、まず厚生大臣にお聞きいたします。
中央児童福祉審議会の報告では、保育に欠ける乳幼児に対して「保育所以外の保育施設、ベビーシッター、家庭的保育(保育ママ)、子育てサークルなどについても、サービス内容の質に留意しつつ、地域の保育資源として位置付け、その活用が図られるようにすべきである」と提言されております。こうした保育所以外のニーズは極めて高く、早急に法的な整備を図るべきだと考えますが、今回の法改正ではそのことに何ら触れられていないのであります。その理由をお聞きしたい。
これと関連して、総理にお聞きします。
政府の地方分権委員会第一次勧告でも、幼稚園と保育所の連携強化が求められ、また、総理御自身が進めようとされている教育改革プログラムにおいては、幼稚園、保育所等のあり方を検討すると伺っておりますので、その基本的な考え方をお示しいただきたい。
また、労働大臣には、育児休業制度の拡大と給付の充実について御所見をお聞きいたします。
次に、保育所や個別の保育サービスを利用者が自由に選択できるように改めることは、保護者の多様なニーズにこたえる上で必要であると考えております。これまで保育所の入所は、保育に欠ける児童を行政が処分として保育所に措置する。こうした措置制度は時代おくれであり、国民のニーズにこたえる行政サービスを市町村が責任を持って実施することは当然のあり方でありましょう。
しかし、こうした権力的な措置から自由な選択の制度に改めることは、一般論としては理解できますけれども、本当に保育のサービスが向上し、子供たちや保護者の生活にプラスになるのかどうかを心配している方々もおられます。例えば、保育所の順番待ちの解消、大都市周辺部などの保育所不足などは解消されるのでしょうか。厚生大臣に見解をお聞きします。
また、措置という権力的行為をなくすことは、ひいては公的補助を後退させ、それが保育料の保護者負担の増大という形ではね返ってくるのではないかとの懸念が強くあります。このようなことは杞憂である、国の財政責任の後退はあり得ないという厚生大臣の積極的な御答弁をお願いいたします。
次に、その他の児童福祉施設についてお伺いいたします。
私は、一昨年十月、厚生委員会で、児童福祉法が実態にそぐわず、子供の福祉をむしろ阻害している事実を挙げ、改正すべきであると指摘いたしました。
特に、我が国の児童福祉の幕あけとして、明治三十三年、西暦一九〇〇年につくられた感化院、現在の救護院は、スイスの教育の実践家ペスタロッチの理念をもとに、子供の問題行動はよくない家庭環境と実社会に出るところでの失敗によるものであると考えまして、まず安定した家庭の愛情を与え、具体的な社会的自立の訓練や教育を行う施設としてつくられたものであります。
ところが、この百年を経ましていつしか社会的なスティグマを与えられてきておりますので、この名称や機能を改めるよう提案してきたわけでありますけれども、今回、改正案で「児童自立支援施設」と改まり、さらにアフターケアの事業も新設されたことは評価できるのであります。
しかし、条文には、「不良行為をなし、又はなすおそれのある」と、明治時代からの言葉がそのまま残っております。何か悪いことをした子供を罰則的に入れる施設である、少年院よりも幾らか軽い子供を入れるところであろうというようなイメージが払拭されていないのではないでしょうか。まことに残念であります。
さて、これらの施設に少年法による保護処分の決定を受けた児童の入所規定が今回明文化されております。これはややもすると、少年法が定める「罪を犯した少年」と、家庭環境などの理由により入ってくる子供とのいわば二つの類型の子供を入所させ、取り扱いも別のものであるとの誤解を招き、施設運営に混乱をもたらすおそれがあります。
厚生大臣、このような不安を与えないため、児童自立支援施設におけるサービス内容や、親や家族への支援の具体的な考え方について御所見を求めるものであります。
さらに、これまでこの施設に入所した子供は学校教育法の対象から外され、高校進学や就職にも悪影響を受けております。この特別な制度は実は昭和八年につくられており、当時としては、学校から疎外された子供に実質的な教育を与えるという恩恵的な措置であったのですが、六十年以上たった現在、逆に子供たちを差別する原因となっているのであります。今回の改正により、これが改められ、他の児童福祉施設と同じになったことは、ようやく関係者の願いを受けとめたものと高く評価いたします。
そこで、文部大臣にお聞きいたしますが、これまで児童福祉法の条文を根拠にこれらの児童を就学猶予・免除の対象としていたことを当然改めて、こうした子供への学校教育の充実に努力されるものと思いますが、御所見をお伺いいたします。
次に、登校拒否、不登校の問題が中学校などで大きな課題となっております。この子供たちに最も適した専門治療施設として情緒障害児短期治療施設がございます。ところが、この施設は、現行法では十二歳未満の児童を対象としており、現状に合わなくなっております。私もこれまで改正を要求しておりましたところ、年齢制限が撤廃されたことは適切な対応であると思います。
そこで、対象児童の拡大に伴い、施設や運営の基準、運営費等の改善が必要であると考えておりますが、厚生省はどう対応されるのか、厚生大臣にお聞きいたします。
次に、いわゆる学童保育についてであります。「いわゆる」といいますのは、幼児を対象とする保育という言葉をこの場合使いますのは適切ではなく、混乱をもたらすおそれがあるからですが。
さて、これまで厚生省は、予算補助により放課後児童対策として地域の児童クラブ事業に補助してきました。それが今回、放課後児童健全育成事業として明文化されました。このことは、児童館を含め、放課後の子供たちの遊びと生活の支援を総合的に展開することを厚生省として宣言したものと私は受けとめております。
この事業は、子育てと女性の就労の両立を支援し、また、放課後の子供の健全育成を図る上で重要なものですから、ハード、ソフト両面にわたる充実が必要だと思いますが、厚生大臣の御所見をお聞きします。
ここで、私は、約百六十年前、ドイツの教育の実践家として著明なフレーベルについて触れたいと思います。彼は、子供の遊びの意義を認め、遊びと生活の場としての幼稚園、キンダーガルテンを世界に広めたことで知られております。この理念が小学校にも取り入れられまして、当時、強い兵隊や労働者をつくるための訓練の場であった冷たい学校の中に、砂場や遊具などが導入されて現在の小学校のスタイルをつくり出したのであります。
私は、これをさらに進め、今こそ都市化社会の中で子供たちが楽しく生活する場として学校を再生することは極めて大事な視点ではないかと訴えたいのであります。練兵場をモデルとした運動場や画一的な教育スタイルはもう時代おくれであります。この意味から、児童クラブの拠点として、空き教室があるから使わせてあげようという消極的な対応ではなく、小学校のより一層の活用をお願いしたい。文部大臣の御所見を伺います。
ところで、中央児童福祉審議会の中間報告にありました里親制度や児童扶養手当制度については法改正が見送られておりますが、その理由についてお伺いをし、今後、積極的な対応をお願いします。
最後に、子供の福祉を充実させるという改正の目的を達成し得るかどうかは、それに従事する方々が自信を持って働くことのできるような社会的ステータスを持った労働条件などが整備されることが最も重要であると考えます。
中でも専門性の確立が求められます。優秀でかつ子供への愛情あふれる人材が人生をかけた仕事として携わっていただける大学院程度の高度な専門性と、一方、ボランティアの方々も気軽に参加していただけるという一貫的、総合的な専門職体系として職員の養成や処遇を整備する必要があります。このことによってこそ各施設運営が効率的、弾力的に行われるのであります。現状は、施設ごとに職員資格が変わったり、専門資質を必要としないものも多く、早急に検討すべきですが、改正項目には含まれておりません。厚生大臣はどのように取り組まれるのかお伺いをいたしまして、私の質問を終わります。(拍手)
〔国務大臣橋本龍太郎君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015254X01119970321/5
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006・橋本龍太郎
○国務大臣(橋本龍太郎君) 山本議員にお答えを申し上げます。
まず、児童福祉の理念についてのお尋ねがありました。
これは申し上げるまでもなく、児童が心身ともに健やかに生まれて、一人一人が個性豊かで、たくましく、思いやりのある人間として成長し、自立した社会人として生きていくことができるよう児童の保護者とともに社会全体で支援していく、これが児童福祉の基本理念である、そのように決められております。
また、教育基本法についてお尋ねがございました。
これは御承知のように、教育について、人格の完成を目指し、平和的な国家及び社会の形成者として心身ともに健康な国民の育成を期して行わなければならないこと、こうしたことを掲げますとともに、すべての国民がひとしくその能力に応ずる教育を受ける機会を与えられなければならない旨を掲げております。
教育改革を進めていくその上におきまして、当然ながらこの教育基本法の趣旨を踏まえながら、この国の将来を担う次の世代が国や地域の将来に高い志と国際的な視野を持って積極的にかかわっていく世代となるよう育てていく、こうした視点が必要でありますし、一人一人の子供を大切にしながら、その個性を伸ばし、豊かな人間性をはぐくんでいくという視点を大切にして教育改革を進めていきたいと思います。
殊に、答弁長くなってはいかぬと言われましたけれども、一つ私が申し上げたいことは、私の父親は障害者でありました。そして、当時の学校教育制度の中で、まず高等学校に入学する資格が、軍事教練ができないという一点で阻まれておりました。その後この制度は直りました。そして自力で行動のできる者には少なくとも受験のチャンスが与えられるように変わり、それは大学にも適用されるようになりました。
そうしたことを振り返ってみますとき、私は、一人一人の子供たちの自分の夢に挑戦する機会、これが妨げられてはならない、この点は教育基本法においても児童福祉法においても大切な視点ではないかと思います。
次に、少子化対策について御意見がありました。
この問題については、議員が指摘をされましたように、ただ単に教育あるいは労働分野、そうした幾つかの部分だけではなく、全体を束ねてさまざまな制度・慣習が存在をしている。そして、出生率向上のための政策の有効性につきましても、それぞれの視点からいろいろな議論が出されております。
政府としては、エンゼルプランを策定するなど、子育て支援施策というものを推進していますが、少子化問題についてはさまざまな論議が提起されていることも踏まえながら、幅広く国民の議論を求め、真剣に取り組んでいきたいと思います。
最後に、幼稚園と保育所について、そのあり方についてのお尋ねがありました。
私は、元来、子供の生活というものを考えたときに、遊びの中に教育を取り入れている保育の姿というものが、家庭にかわる環境をつくる上で非常に大きな効果を持つ、そう考えてきた一人でございます。一方、幼児教育という視点から幼稚園が整備をされ、立派な役割を果たしてまいりました。私は、双方の機能が将来にわたっても必要なものだと思います。そして、議員も指摘をされましたような多様な組み合わせの中から、保護者である親御さんあるいはそのお子さんのために最もふさわしい施設を選べるような、そうした状況をつくっていくことが何よりも必要ではないか、そのように思います。
そうした視点から、従来、私は、幼保一元化という議論を必ずしも好んではおりませんでした。そして、一つは、これから先、それぞれの地域社会にどちらが合っているのか、その地域の実情に応じて双方の施設の共用化等についても平成九年度中に検討を進めて弾力的な運営が図られるようにしていきたい、そのように考えております。一残余の質問につきましては、関係大臣から御答弁を申し上げます。(拍手)
〔国務大臣小泉純一郎君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015254X01119970321/6
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007・小泉純一郎
○国務大臣(小泉純一郎君) 山本議員の御質問は、長年児童福祉を専門に扱い、取り組んでこられた見識を踏まえた御質問で、多岐にわたっておりますので若干時間を要しますが、御了承いただきまして、順次お答えさせていただきたいと思います。
今回の改正で、認可保育所以外の保育サービスがないということをどう思うかということでありますが、認可保育所以外の保育サービスについては、認可保育所の定員にあきがある中で、認可保育所では、弾力化することによりサービスの質の確保等、保育需要の多様化にこたえていくことがまず必要であること、ベビーシッター等の保育サービスについては、地域の実情に応じてさまざまな形態で行われており、一律の法的規制を設けることは必ずしも適当ではない、こうした理由かち、今回の改正では法的に位置づけなかったものであります。
また、国民の保育需要に対応した保育所制度についてのお尋ねですが、今回の改正では、選択できる仕組みに改めることなど、子供や保護者の立場に立ったものとすることとしており、これとあわせ、種々の工夫を図りつつ、緊急保育対策等五カ年事業を着実に実施することにより、待機児童の解消など、国民の保育需要にこたえるよう努めてまいりたいと考えております。
保育所の公費負担についてのお尋ねですが、今回の改正においても、保育所の運営費を国庫が負担金として助成する仕組みは維持することとしております。公費負担については後退することがないよう努力したいと考えております。
児童自立支援施設におけるサービス内容や家族支援についてですが、少年法の保護処分を受けた児童についても、児童福祉法に基づく措置により入所するものであり、他の児童と同様、児童福祉の観点から、個々の児童の態様に応じた生活指導など必要なサービスを提供するとともに、家庭との調整など児童の自立に向けた支援を行ってまいりたいと思います。
それと、情緒障害児短期治療施設については、今回の改正により、その入所児童について「おおむね十二歳未満」という年齢要件を撤廃いたしました。これに伴う施設整備等の改善については、今後、中央児童福祉審議会において御検討いただきまして、その結論を踏まえて適切に対処していきたいと思っております。
また、放課後児童健全育成事業についてですが、今回この事業を法制化することにより、一層の普及を図りたいと考えております。このため、本事業を行う児童館の整備に努めるとともに、いろいろな工夫を図りながら、緊急保育対策等五カ年事業を踏まえ、その推進をしていきたいと思います。
それから、里親制度と児童扶養手当制度についてのお尋ねですが、里親制度については、現行制度の運用の見直しにより対応することとし、その運用の実態等を踏まえつつ、制度のあり方についても検討していきたいと考えております。
また、児童扶養手当制度については、法案提出に至る過程においていろいろ問題が出てまいりました。民法上の扶養責任との調整について議論がなかなかまとまらず、もう少し時間を要するのではないか。また、制度改正についてはいろんな御意見がありますから、その御意見を聞きながら、今後検討していきたいと考えております。
最後に、児童福祉に従事する人々の専門性の確保や資質の向上については、児童福祉の向上を図る上で、人というのは大変大事であります。この人材をどうやって確保し、また、水準を上げていくか。従来から、段階に応じた研修等により児童福祉従事者の資質の向上、処遇の充実等に努めてまいりましたけれども、今後とも中央児童福祉審議会の報告を踏まえつつ、必要な人材の育成のため努力をしていきたいと思います。
以上であります。(拍手)
〔国務大臣岡野裕君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015254X01119970321/7
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008・岡野裕
○国務大臣(岡野裕君) 育児休業についてお答えをいたします。
先生、現行育児休業制度は、去る平成七年四月発足をいたしまして二カ年を経過いたしました。その実態でありますが、実は、育児休業がとれるという男女労働者の中で現実にとっております者、一〇・四%ということに相なっております。また、男女のうちでとっておる者の中、九九・八%が女性だと、こう相なっております。したがいまして、まだ周知が行き届かないのではないかという反省をしております。もっと大いにこれの周知に努めたい。加えて、これがとれるような環境をつくってまいらなければならない、こう考えているところであります。
なお、育児休業の給付率のアップ、先生は充実とおっしゃいましたが、これをつかまえますと、実は失業給付との均衡がございますので、現行の給付率をもって適当ではないか、かように存じているところであります。
以上であります。(拍手)
〔国務大臣小杉隆君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015254X01119970321/8
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009・小杉隆
○国務大臣(小杉隆君) 山本議員から、文部大臣に二点質問がありました。
まず、児童自立支援施設入所児童に対する就学義務の扱い及び学校教育についてのお尋ねでありますが、従来、教護院入所児童については、学校教育法二十三条に基づきまして、原則として一律に就学義務の猶予・免除の扱いとしてまいりました。これらの児童については、児童福祉法第四十八条二項、三項、四項に基づき、教護院内において学校教育に準ずる教育が行われてきたところであります。
今回の改正で、教護院は、名称を児童自立支援施設と改めるとともに、児童福祉法第四十八条二項、三項、四項を削除して学校教育に準ずる教育を行わないこととし、施設の長には入所児童を就学させる義務が課されることとなるものと承知しております。このことに伴い、入所児童に関する就学義務については、従来のように、当該施設に入所していることをもって一律に猶予・免除の扱いとはならなくなるのであります。
児童自立支援施設の入所児童が学校教育を受けることとなる場合においては、その教育が適切に行われるよう対応してまいりたいと考えております。
次に、放課後児童健全育成事業に学校施設の積極的活用を行うべきとのお尋ねでありますが、文部省では、児童生徒の減少により都市部を中心に生じた余裕教室を学校教育以外の用途にも積極的に活用していくよう市町村などに対し指導するとともに、財産処分の手続の簡素化を進めてまいりました。それにより、余裕教室等の学校施設がいわゆる学童保育施設へも既に相当数転用されておりますが、今後とも余裕教室等が放課後児童健全育成事業を含め生涯学習や福祉など地域のニーズに即しより一層積極的に活用されますよう、星省とも連携しつつ努めてまいりたいと考えております。
以上でございます。(拍手)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015254X01119970321/9
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010・斎藤十朗
○議長(斎藤十朗君) 三重野栄子君。
〔三重野栄子君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015254X01119970321/10
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011・三重野栄子
○三重野栄子君 私は、社会民主党・護憲連合を代表し、ただいま議題となりました児童福祉法等の一部を改正する法律案につき、総理並びに関係大臣に質問いたします。
まず、児童家庭福祉制度再構築の視点でございます。
今回の改正は、実に五十年ぶりであり、子どもの権利条約批准後の国内法整備という大きな意味を持つものであります。
児童福祉法は戦後間もない昭和二十二年に制定されましたが、近年では、少子化の進行、夫婦共働き家庭の一般化、家庭や地域の子育て機能の低下、児童の虐待の増加など、子供や家庭を取り巻く環境が保育需要を含めまして児童をめぐる問題を複雑多様化し、法発足以来の枠組みのままでは適切に対応することが難しく、制度と実態のそごが顕著になっています。
こうした変化に対応して、子供の福祉を増進し、子育てしやすい環境の整備を図るとともに、次代を担う子供の健全な成長と自立支援が要請されています。
したがって、私は、今回の法改正が、子どもの権利条約の理念が十分に生かされ、子供の権利を尊重し、福祉を重視した親子のあり方や子供の育つ地域社会の実現という視点に立った二十一世紀にふさわしい改革を望むものであります。
特に、本法律案が、子どもの権利条約とあわせて、既に批准された女性差別撤廃条約、ILO百五十六号条約の求めている理念が生かされたものであってこそ二十一世紀を直前にした児童福祉制度の再構築への道だと考えますが、この点について、総理大臣並びに厚生大臣の御所見をお伺いいたします。
次に、地域・社会全体で子育てを支援するという視点でございます。
中央児童福祉審議会の答申は、児童保育施設、要保護児童施策、母子家庭施策を見直し検討するに当たって、子どもの権利に関する条約の理念を踏まえ、二十一世紀の少子・高齢社会を担う子供たちの健全育成を図るため、地域・社会全体で支援するという視点に立つことの必要性を述べています。現在、政府は、少子化への対応として平成七年度からエンゼルプラン及び緊急保育対策五カ年事業を策定、実施中でありますが、子育てに対する社会支援がようやく始まったと評価しているところであります。
しかしながら、今回の改正において、現行の児童福祉法が保育の対象児童について、保育に欠ける子と、そのままにしていますが、子どもの権利条約の理念からすれば、当然、保育を必要とする子と改めていくべきでありましょう。
私は、児童家庭施策の基本理念は、権利主体としての子供を位置づける、すなわち児童家庭施策を推進し個別の援助を進めるに当たっては、最大限、子供自身の意見をも反映する努力が必要であり、さらに自己の意見を表明する力の弱い子供たちについても、そのニーズに沿った児童の最善の利益にかなうサービス提供がなされる体制を整備すべきであると考えます。子供の権利保障、児童の最善の利益という言葉は、既に厚生省の子育て支援策ではたびたび使用され、市民権を得たと見られます。中間報告でも、子供の最善の利益を保障することを精神とする理念が明示されて使用されているところであります。
例えば、深夜労働、職住分離による遠隔地通勤や単身赴任、離婚、死別等々につきましても、これらは家庭の事情のみでなく社会的要求からも生ずるものであります。したがって、児童家庭施策は、行政改革、財政改革の一環とする統廃合や財政支出の一律削減というような物差しであってはならないし、親の責任とともに、国や地方自治体の公費負担による支援は免れることができないと考えます。
中央児童福祉審議会もまた、「二十一世紀の日本の社会は現在の子どもたちが支えていくものであり、次代の社会の担い手を育てる子育てについても社会全体で支援していくべきであるということを、国民合意として、再確認することが必要である」と指摘いたしております。少子化及び子供を産み育てる環境に大きな影響を持つ保育に対する施策には、公費の大幅な拡充と、国、地方自治体の責任はますます求められているのであります。
私は、子どもの権利条約国内批准五周年に当たる一九九九年をめどに子供基本法の実現を願うものですが、子供たちに夢と希望が見える総理の御所見をお聞かせください。
加えて、戦後五十年間保育の重責を担ってこられた厚生大臣並びに自治大臣、及び男女の多様化する労働実態から労働大臣の御意見もお願い申し上げます。
最後に、法案審議に対する要望であります。
本法案は、子どもの権利条約の具体化など七項目について述べておりますし、先ほども細かく説明がございましたけれども、その各項について前進面として評価できる点もありますけれども、我が党としては、まだまだ随所に討議と改革が必要であると考えます。
幸い、今回の児童福祉法改正に関する自民、社民、さきがけによる与党プロジェクトチームが設定され、さらに本法案提出に当たり、「子育て支援に対する国民の共通認識を得るよう努力し、早急に少子化対策の確立、エンゼルプランの拡充を図る。また、公費についても積極的に対応するよう検討する」ことや、平成十年度予算編成における配慮及び引き続きの検討事項等も含めた三党合意がなされております。
このプロジェクト並びに三党確認事項が法案審議に当たりまして尊重されることを要望し、総理並びに厚生大臣に所見を求めます。
なお、本法案のうち、教護院の名称、機能の変更改正がマスコミに取り上げられ、先ほども文部大臣からのお話もございましたけれども、保護者、教師など、そしてまた、広範な人々がこのことによって心配をいたしております。心配の内容については既にお通知しておりますから、この件についての文部大臣の御意見をいただいて、私の質問を終わります。(拍手)
〔国務大臣橋本龍太郎君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015254X01119970321/11
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012・橋本龍太郎
○国務大臣(橋本龍太郎君) 三重野議員にお答えを申し上げます。
まず第一点は、児童の権利条約などを踏まえ、児童家庭福祉制度を再構築すべきであるという御意見でありました。
今回の改正におきましては、議員よく御承知のように、児童の権利条約の趣旨を具体化するために、保護者が希望される保育所を選択できる制度、こうしたことを初めとして、この条約の趣旨を踏まえた改正を行っております。今後とも、こうした条約の趣旨がより具体化されるように児童家庭福祉施策の推進に努めてまいりたいと考えております。
次に、中央児童福祉審議会の提言についての意見を求められました。
これは次代を担う子供に対し地域・社会の支援策をどうするか、こうしたお尋ねでありますが、二十一世紀を担う児童が個性豊かに、また、たくましく、思いやりのある人間として成長するように保護者とともに社会全体が支援していくことは、最優先で取り組むべき事項の一つだと思います。こうした認識に立って、児童福祉法の理念にのっとった保育などの子育て支援について、引き続き社会全体で制度、費用負担の両面から支援してまいりたいと考えております。
最後に、与党プロジェクト並びに三党確認事項についての尊重を求められました。
今回の法案の提出に当たって与党三党の合意がなされました。この合意は、少子化対策の確立を初めとして、保育料、延長保育などについて三党間で確認をされたものであります。政府としては、平成十年度予算などにおきましても、その趣旨を踏まえ検討してまいりたいと考えております。
残余の質問につきましては、関係大臣からお答えを申し上げます。(拍手)
〔国務大臣小泉純一郎君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015254X01119970321/12
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013・小泉純一郎
○国務大臣(小泉純一郎君) 三重野議員に対しての答えですが、総理にすべて答弁していただいてしまったので、私も全く同じでありますので、省略させていただきます。(拍手)
〔国務大臣白川勝彦君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015254X01119970321/13
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014・白川勝彦
○国務大臣(白川勝彦君) 三重野議員にお答え申し上げます。
保育対策についてのお尋ねですが、自治省といたしましては、子供たちが健やかに育つ社会、だれもが安心して子供を産み、育て、働き続けられる社会の実現のため、緊急保育対策等五カ年事業の地方負担分及び関連する地方単独施策に対し所要の地方財政措置を講じ、その積極的な展開を支援してまいりたいと考えております。(拍手)
〔国務大臣岡野裕君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015254X01119970321/14
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015・岡野裕
○国務大臣(岡野裕君) 労働省の関係につきましてお答えをいたします。
先生冒頭おっしゃいましたように、夫婦それぞれが職場を持つという風潮が一般化してまいりました。したがいまして、労働省といたしましても、家庭生活と職場生活が両立をするようにというようなことを踏まえまして、例えば男女雇用機会均等法、時短促進法、育児休業法、あるいは労働基準法の中の勤務時間管理、労働契約のあり方をもう一遍検討するというようないろいろな角度から先ほどの要請にこたえてまいりたい、こういう次第でございます。どうぞよろしくお願いいたします。(拍手)
〔国務大臣小杉隆君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015254X01119970321/15
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016・小杉隆
○国務大臣(小杉隆君) 三重野議員からは、文部大臣に対して、今回の改正によって登校拒否児童にまでその対象を拡大されるのではないかという保護者や教師等の懸念についてのお尋ねだと思います。
今回の改正によって新たに児童自立支援施設の対象となる児童は、「家庭環境その他の環境上の理由により生活指導等を要する児童」ということになっておりまして、必ずしも登校拒否児童は対象とされるものではないというふうに承知しております。
なお、登校拒否については、文部省として、学校がすべての児童生徒の心の居場所となり、一人一人が生き生きとした学校生活を送ることができるよう努めたいと思っておりますし、学校が家庭や関係機関と密接に連携して対応していく必要があると考えております。(拍手)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015254X01119970321/16
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017・斎藤十朗
○議長(斎藤十朗君) 竹村泰子君。
〔竹村泰子君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015254X01119970321/17
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018・竹村泰子
○竹村泰子君 私は、民主党・新緑風会を代表して、ただいま議題となりました児童福祉法等の一部を改正する法律案に関し、総理及び厚生大臣にお尋ねをいたします。
本年は、児童福祉法制定五十年という節目の年に当たります。この半世紀の間に子供を取り巻く環境は大きな変貌を遂げました。さらに、近年の急激な少子化の進展や子どもの権利条約の批准によって、我が国の児童福祉は今、大きな転換期を迎えようとしております。特に、我が国が一九九四年に批准・発効した子どもの権利条約は、子供は権利の主体であるとの理念のもと、子供の最善の利益や子供の意見表明権の保障を規定しております。子供に関するこれからの政策立案に関しては、この精神を取り込むことが重要な課題であることは論をまちません。
しかしながら、今回の改正案では、子どもの権利条約の基本理念は全く反映されておらず、五十年ぶりの抜本改革に期待した私たちの期待は、残念ながら裏切られたと言わざるを得ません。
二十世紀初期、子どもの権利条約の基礎となった子どもの権利宣言の前文には、人類は子供に対して最善のものを与える義務を負うとあります。
政府が今回の改正の趣旨として児童家庭福祉制度の再構築をうたう以上、子どもの権利条約の精神に照らし、その総則、理念において子供の最善の利益及び子供の意見表明権を明記すべきではないかと思いますが、総理の御見解をお伺いしたいと思います。
次に、保育制度の見直しに関してであります。
今回の改正案によれば、現行の措置制度により保育所に入所する仕組みは、保護者が希望する保育所を選択する仕組みに改められるものとされております。しかしながら、大都市圏では申請しても入所できない待機児が数多く存在し、しかもその六割以上をゼロ歳から二歳までの乳幼児が占めているのが現状であります。利用者の保育を受ける権利や選択権を確保するためには、低年齢児を中心とする受け入れ枠を抜本的に拡充するとともに、産休・育休明け保育を含む低年齢児保育の拡大に向けて定員を弾力的に増減できるような仕組みを導入する必要があると考えますが、厚生大臣の御見解を伺います。
同時に、現場の保母や乳幼児を抱える多くの父母たちからは、今回の制度改正によって市町村の公的責任が後退したり、公費負担が減らされたりするのではないか、あるいは不当な競争原理によって保育の質が低下することはないのかといった不安の声が上がってきております。保育に対する公的責任、公費負担の維持拡充について総理の明確な答弁を求めるとともに、最低基準の引き上げを初めとする保育の質の維持向上について、厚生大臣の答弁を求めます。
特に、延長保育に関しては、昨年十二月の中央児童福祉審議会基本問題部会中間報告において、通常の開所時間内の保育サービス部分への公費の重点的投入が提言されていることから、延長保育の利用者負担が重くなるのではないかという不安が広がっております。延長保育事業に対する公的責任及び公費拡充について、厚生大臣の答弁を求めたいと思います。
さらに、今回の改正案では、保育の対象は依然として保育に欠ける場合に限られております。しかしながら、子供が保育に欠けるか否かの認定を市町村が行う限り、現行の措置制度が持つ欠陥は克服できないのではありませんか。子育てをめぐる環境が大きく変化し、密室育児や児童虐待が社会問題化している今、保育の対象を保育を必要とするすべての子供に広げる必要があると思いますが、厚生大臣の御見解を伺います。
次に、子供の自立支援施策の充実という観点から、教護院に係る改正事項についてお伺いいたします。
入所率が四割に落ち込んでいる教護院の生き残り策ともとれる改正でありますが、条文を読む限り、入所対象者の範囲が極めて不明確との感を否めません。さらに教護院は、従来、強制的な行政処分による入所措置が基本であり、これを前提とした入所対象者の拡大には問題があると言わざるを得ません。この際、入所対象者及び手続などの明確化を図り、行政処分による入所対象者を限定する必要があると思いますが、厚生大臣の御所見を承りたいと存じます。
最後に、子育て支援策の総合的な取り組みに関してであります。
現在、我が国においては‘急速な少子・高齢化が進展しており、子育て支援のための社会全体の取り組みがますます重要性を増しております。我が民主党・新緑風会は、未来に責任を負う政党として、次代を担う子供たちの権利とその健全育成を保障するための総合的な対策を早急に講ずべきと考えます。同時に、この問題は、総理も提唱される社会保障構造改革においても重要なポイントであると考えます。
総理は、今後、少子化問題への総合的対応についてどのように取り組もうとお考えなのか、その具体的スケジュールをお示しいただきたいと思います。
また、エンゼルプランにも盛り込まれた子育てコストヘの社会的支援のあり方についての検討の目途について、厚生大臣にお尋ねしたいと思います。
同時に、当面の課題はエンゼルプラン及び緊急保育対策等五カ年事業の着実な推進であります。しかしながら、現状を見る限り、早くもその達成に黄色信号が点滅しているとの懸念を持たざるを得ません。
総理も厚生大臣も、一人の父親としても子育てには大変に熱意のある方とお聞きしております。子どもの権利条約が批准されて三年たちますが、子供たちの周辺は変わったのでしょうか。受験地獄や体罰、いじめは依然として存在し、条約にある「子どもにかかわるすべての活動において子どもの最善の利益」が保障されているとは決して言えません。締約国は働く親を持つ子供が利益を受ける権利を確保するためにあらゆる適当な措置をとるということにも今回の改正は逆行しているのではないでしょうか。
エンゼルプラン及び緊急保育対策等五カ年事業の着実な推進と達成について総理並びに厚生大臣の御決意をお伺いして、私の質問を終わります。(拍手)
〔国務大臣橋本龍太郎君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015254X01119970321/18
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019・橋本龍太郎
○国務大臣(橋本龍太郎君) 竹村議員にお答えを申し上げます。
まず、今回の改正におきましては、児童の権利条約の趣旨をより具体化するために、保護者が希望される保育所を選択できる仕組みや、児童福祉施設への入所の際に児童の立場が尊重される仕組みの導入などを織り込んでおりまして、私どもなりに努力をしてまいりました。児童福祉法の理念の見直しという点につきましては、引き続き検討すべき課題だと考えております。
次に、今回の改正におきましても、市町村に保育サービス提供義務を課すと同時に、市町村の支弁する運営費に対しましてその一部を国庫が負担し、公的責任を果たすことによりまして、公費負担については後退しないよう努力してまいりたいと考えております。
次に、少子化問題についての総合的な対応というお尋ねがございました。
この問題にはさまざまな分野の制度や慣行などが関係しており、出生率向上のための施策の有効性につきましてもいろいろな考え方があることは御承知のとおりであります。政府としては、エンゼルプランを策定するなど子育て支援策を推進しておりますが、少子化問題についてはさまざまな考え方が存在することも踏まえて、人口問題審議会における審議を初め、幅広く議論を求めながら総合的に検討していきたいと考えております。
また、児童の権利条約批准後、子供たちの周辺の変化がどれだけのものがあるのか、こうしたお尋ねがありましたが、少子化の進行あるいは家庭や地域の子育て機能の低下などに対応し、エンゼルプランや緊急保育対策等五カ年事業など、子育てのしやすい環境の整備に努めてまいりました。今回の法改正は、次代を担う児童の健全育成を支援するために制度を再構築するものでありまして、条約の趣旨にも沿ったものとして考えております。
また、エンゼルプラン及び緊急保育対策等五カ年事業の推進につきましては、さまざまな工夫を図ることにより、今後とも着実に推進してまいりたいと考えております。
残余の質問につきましては、関係大臣からお答えを申し上げます。(拍手)
〔国務大臣小泉純一郎君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015254X01119970321/19
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020・小泉純一郎
○国務大臣(小泉純一郎君) 竹村議員にお答えします。
かなり多いのですが、総理の答弁とできるだけ重複を避けてお答えさせていただきたいと思います。
低年齢児等の受け入れについては、今回の改正により、利用者の多様な保育需要に柔軟に対応し得る保育制度とするとともに、いろいろな工夫を図りつつ、緊急保育対策等五カ年事業を着実に実施することにより、低年齢児の受入枠や産休・育休明け保育の拡大、これらのための定員の弾力化などに努めていきたいと考えます。
保育所の基準についてですが、時代の要請にふさわしいあり方について、サービスの質を確保しつつ効率的なサービス提供が図られるよう、その弾力化も含め中央児童福祉審議会において御検討いただき、適切に対応していきたいと思います。
延長保育事業についてですが、その具体的な仕組みや費用負担のあり方について、中央児童福祉審議会における議論等も伺いながら、今後検討していきたいと思います。
保育所の入所対象児を拡大することについては、保護者が保育できる児童に関する公費負担についてのあり方や幼稚園制度との関連などについて十分検討する必要があると思います。現時点では困難であると考えております。
いわゆる密室育児などの問題については、保育所における子育て相談事業の充実などにより対応したいと考えております。
児童自立支援施設の入所の対象者や手続については、今回新たに対象となるのは、家庭における養育が適切に行われず、基本的な生活習慣が身についていないなど、家庭環境等の理由により生活指導等を要する児童であります。児童相談所長が入所措置を行うに当たっては、都道府県児童福祉審議会の意見を聞くなど、客観的、専門的な見地から判断するとともに、親権者等の同意を得た上で適切に行うこととしております。
子育ての費用への社会的支援のあり方についてですが、例えば児童手当制度のあり方についても、今いろいろな意見が出ております。今後、人口問題審議会等の場で幅広く国民的な御議論をしていただく中で合意形成を図っていく必要があると考えております。
エンゼルプラン及び緊急保育対策等五カ年事業の推進でありますが、今後とも着実な推進に努めていきたいと思います。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015254X01119970321/20
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021・斎藤十朗
○議長(斎藤十朗君) これにて質疑は終了いたしました。
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015254X01119970321/21
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022・斎藤十朗
○議長(斎藤十朗君) 日程第一 地方税法及び国有資産等所在市町村交付金法の一部を改正する法律案
日程第二 地方交付税法等の一部を改正する法律案
(いずれも内閣提出、衆議院送付)
日程第三 地方公務員法の一部を改正する法律案(衆議院提出)
以上三案を一括して議題といたします。
まず、委員長の報告を求めます。地方行政委員長峰崎直樹君。
—————————————
〔審査報告書及び議案は本号末尾に掲載〕
—————————————
〔峰崎直樹君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015254X01119970321/22
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023・峰崎直樹
○峰崎直樹君 ただいま議題となりました三法律案につきまして、地方行政委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。
まず、地方税法及び国有資産等所在市町村交付金法の一部を改正する法律案は、平成九年度の固定資産税の評価がえに伴い税負担の抑制及び負担水準の均衡化を図るとともに、平成六年度の税制改革に伴う市町村の税収補てんのため、個人住民税及び地方たばこ税の税率調整により、道府県から市町村へ税源移譲を行うほか、特別地方消費税の平成十二年度廃止等の所要の措置を講じようとするものであります。
また、地方交付税法等の一部を改正する法律案は、地方財政収支が引き続き著しく不均衡な状況にあること等にかんがみ、平成九年度分地方交付税の総額の特例措置を講ずるとともに、後年度の法定加算額の特例を改めるほか、地方消費税収の未平年度化による影響額に対応するため、平成九年度限りの地方債の特例措置等を講じようとするものであります。
委員会におきましては、両法律案を一括して議題とし、深刻化する地方財政の現状と健全化への展望、地方分権の推進に伴う地方税源の充実策、固定資産税における評価のあり方、地方交付税制度の抜本改革の必要性等の質疑が行われましたが、その詳細は会議録に譲ります。
質疑を終局し、討論に入りましたところ、両法律案に対し、平成会を代表して小林理事より反対、自由民主党及び社会民主党・護憲連合を代表して関根理事より賛成、日本共産党を代表して有働委員より反対の意見がそれぞれ述べられました。
討論を終わり、採決の結果、両法律案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
なお、地方税法及び国有資産等所在市町村交付金法の一部を改正する法律案に対して、附帯決議が付されております。
次に、地方公務員法の一部を改正する法律案は、当分の間、地方公務員等の職員が職員団体の役員として専ら従事することができる期間の上限を五年から七年以下の範囲内で人事委員会規則または公平委員会規則で定める期間に延長しようとするものであります。
委員会におきましては、衆議院地方行政委員長穂積良行君より趣旨説明を聴取した後、直ちに採決の結果、本法律案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
以上、御報告申し上げます。(拍手)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015254X01119970321/23
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024・斎藤十朗
○議長(斎藤十朗君) これより採決をいたします。
まず、地方税法及び国有資産等所在市町村交付金法の一部を改正する法律案の採決をいたします。
本案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015254X01119970321/24
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025・斎藤十朗
○議長(斎藤十朗君) 過半数と認めます。
よって、本案は可決されました。
次に、地方交付税法等の一部を改正する法律案の採決をいたします。
本案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015254X01119970321/25
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026・斎藤十朗
○議長(斎藤十朗君) 過半数と認めます。
よって、本案は可決されました。
次に、地方公務員法の一部を改正する法律案の採決をいたします。
本案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015254X01119970321/26
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027・斎藤十朗
○議長(斎藤十朗君) 総員起立と認めます。
よって、本案は全会一致をもって可決されました。
本日はこれにて散会いたします。
午後一時十二分散会
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015254X01119970321/27
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