1. 会議録本文
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000・会議録情報
平成九年十二月四日(木曜日)
午前十時一分開議
出席委員
委員長 葉梨 信行君
理事 住 博司君 理事 林 幹雄君
理事 細田 博之君 理事 八代 英太君
理事 遠藤 和良君 理事 武山百合子君
理事 山本 譲司君 理事 東中 光雄君
石橋 一弥君 江渡 聡徳君
奥山 茂彦君 桜井 郁三君
園田 修光君 田中 和徳君
田中 昭一君 松本 純君
富田 茂之君 西野 陽君
西村 眞悟君 吉田 幸弘君
佐藤謙一郎君 山花 貞夫君
秋葉 忠利君 堀込 征雄君
出席政府委員
自治省行政局選
挙部長 牧之内隆久君
委員外の出席者
自治大臣官房審
議官 的石 淳一君
自治省行政局選
挙部選挙課長 大竹 邦実君
自治省行政局選
挙部管理課長 山本信一郎君
参 考 人
(神戸市選挙管
理委員会事務局
長) 和泉善太郎君
参 考 人
(海外在住者投
票制度の実現を
めざす会会長) 金井 紀年君
参 考 人
(元ノールウェー
大使) 妹尾 正毅君
特別委員会第二
調査室長 田中 宗孝君
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十二月四日
海外在住者投票制度の実現に関する請願(遠藤
和良君紹介)(第一四七四号)
同(倉田栄喜君紹介)(第一四七五号)
同(石井一君紹介)(第一六二〇号)
同(武山百合子君紹介)(第一七一一号)
同(堀込征雄君紹介)(第一七一二号)
は本委員会に付託された。
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本日の会議に付した案件
公職選挙法の一部を改正する法律案(内閣提出
、第百四十回国会閣法第九二号)
公職選挙法の一部を改正する法律案(石井一君
外三名提出、第百四十回国会衆法第一八号)
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114104219X00419971204/0
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001・葉梨信行
○葉梨委員長 これより会議を開きます。
第百四十回国会、内閣提出、公職選挙法の一部を改正する法律案及び第百四十回国会、石井一君外三名提出、公職選挙法の一部を改正する法律案の両案を一括して議題といたします。
本日は、両案審査のため、参考人として神戸市選挙管理委員会事務局長和泉善太郎君、海外在住者投票制度の実現をめざす会会長金井紀年君、元ノールウェー大使妹尾正毅君、以上三名の方々に御出席いただいております。
この際、参考人各位の皆様に一言ごあいさつを申し上げます。本日は、御多用中のところ本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。本委員会での審査に資するため、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。
次に、議事の順序について申し上げます。
御意見は、和泉参考人、金井参考人、妹尾参考人の順序で、お一人十分程度お述べいただき、その後、委員の質疑にお答えをいただきたいと存じます。
念のために申し上げますが、発言する際には委員長の許可を得ることとなっております。また、参考人は委員に対して質疑することはできませんので、あらかじめ御了承願いたいと存じます。
それでは、まず、和泉参考人にお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114104219X00419971204/1
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002・和泉善太郎
○和泉参考人 おはようございます。神戸市の選挙管理委員会事務局長を務めさせていただいております和泉善太郎でございます。どうかよろしくお願いいたします。
本日は、この公職選挙法改正に関する調査特別委員会に出席させていただきまして、このような国政の場で意見を申し述べる機会をお与えいただきましたことについて、まことに光栄であると同時に身の引き締まる思いでございます。
また、国際化が急速に進展し、外国に居住される邦人の方々が急増する中で、これらの方々について、選挙権行使の機会を保障するための法律案が政府及び新進、太陽の両党から提出され、国会において熱心な審議が開始されましたことに、選挙事務に携わる者といたしまして深く敬意を表する次第でございます。
以下、実際に選挙の管理執行に当たる市区町村の選挙管理委員会の代表といたしまして、具体的な事務処理に関しまして意見を申し述べたいと思う次第でございます。
まず初めに、在外選挙人名簿への登録についてぐございますが、いずれの法案におきましても、私ども市区町村の選挙管理委員会が在外選挙人名簿の調製及び保管の任に当たることとされ、また、登録の可否の判断の最終的な権限も、私ども市区町村の選挙管理委員会が有することとされております。
したがいまして、私どもでは、申請を受け付けた領事官から申請書その他関係書類の送付を受けまして、その内容について、領事官の付された意見も参考にしながら書面審査をいたしますとともに、本籍地の市区町村長に対しまして、国籍の有無や年齢、犯罪人や禁治産者でないかどうかについての照会を行い、また、必要に応じ、国内に住所が残っていないかどうかについて住民課に照会をするなど、申請人が被登録資格を有するかどうかの調査を行うことになります。
ここで、在外選挙人名簿の登録は、随時申請することができ、また、随時登録を行うということで、国内の選挙人名簿の登録とはその取り扱いが異なりまして、国内の選挙人名簿の登録のように一定期間に集中して処理を行うというわけにはまいりませんので、選挙管理委員会としては、ほぼ常時その事務処理に当たる必要があるわけでございます。
もちろん、国民の貴重な選挙権の行使にかかわる事柄でございまして、私ども選挙管理委員会といたしましても一生懸命努めさせていただく所存でございますが、何分にも申請人が国外におられるという特殊性がございますので、申請を経由される領事官にも格段の御配慮を賜りたいと存じております。
例えば、外国語への対応ということがございます。
国外に住所を有することが在外選挙人名簿の被登録資格とされておりますので、申請人からこの居住要件を満たすことを証する書面が送られてまいります。それは多くの場合、アパートの契約書でございますとか、現地の政府が発行される外国人登録証の写してはないかと予想されるわけでございますが、当然のことながら現地語で書かれてございます。それらが英語で書かれておればまだしもでございますけれども、さまざまた言葉で書かれているような場合には、私どもといたしましてはその内容を審査することは非常に困難が伴いまして、ややもすれば審査に長期間を要し、それだけ登録がおくれるということにもなりかねません。
したがいまして、この点につきまして、審査の迅速化を図る見地から、できるだけ申請を経由される領事官の付される意見書のみで対応できるようにしていただきたいと存じております。具体的には、経由領事官におかれまして意見書をお書きいただく際に、現地語で書かれた書類の内容がわかりますように日本語訳の解説を付していただくことを希望いたします。
また、申請の内容に不備な点や疑義があるという場合には、当然申請人に確認しなければなりませんが、国外に居住しておられる申請人に日本国内の我々選挙管理委員会までお越しをいただくというわけにもまいりかねます。したがいまして、国際電話をかけて聴取を行ったり、追加の資料提出を求めるということになりますけれども、申請人の中には日本語を余り話せないという方々もおられるかとも存じます。このような場合、やはり在外邦人に身近な在外公館において対応していただければと存じております。
また、投票につきましては、公館における投票と帰国時の投票と並びまして、一部の選挙人には郵便による投票が認められることとされております。この郵便投票の投票用紙等の請求先につきましては、法律には規定がございませんが、政府案では、直接登録地の選挙管理委員会に対して請求することになると聞いております。新進党・太陽党案における請求先の取り扱いにつきましては承知しておりませんが、政府案によりますと、投票用紙の請求から投票済みの投票用紙の送付まで、海外の選挙人と市区町村の選挙管理委員会との間で、郵便によりまして一往復半のやりとりが必要となってまいります。
そうなりました場合、私どもといたしましては、郵送に要する日数等を勘案し、海外におられる選挙人の方々の投票権の行使に支障が生じることとならないよう、迅速な事務処理に最大限努めてまいりますが、例えば、選挙管理委員会において在外の選挙人の現住所が適時適切に把握できますよう、また外国語によるあて先記入が容易に行えますように制度を工夫していただきたいと存じます。
なお、この投票用紙等の交付の際、あわせて選挙公報をお送りすることも考えられますが、選挙公報が県の選挙管理委員会から本市の選挙管理委員会のもとに届きますのは選挙期日の一週間前ごろでございまして、これを投票用紙に同封をして、本市に登録された在外の選挙人に送付するのは不可能でございます。さらにまた、在外公館における投票期間は、原則といたしまして選挙期日前五日までの間とされておりますことから、これに間に合うよう選挙公報を在外公館に送付することも困難であろうと思います。
次に、選挙人等から郵送されてまいります投票の受理、不受理の決定についてでございますけれども、投票日当日におきまして、私ども、郵便局の配達の最終便が何時ごろになるかなど、非常に時間を気にしながらやっております。郵便投票の投票用紙のほか、他市町村における不在者投票ですとかあるいは船員の不在者投票についても郵送されてまいりますが、それぞれ事前に交付した枚数がわかっておりますので、あらかじめ郵便局と打ち合わせを行いまして、日曜日にも配達をしていただくなど対応をしております。
投票所の閉鎖時刻後到着した投票はもはや有効な投票として扱うことができませんので、投票所閉鎖後に多くの投票が届きますと、私ども、選挙の管理、執行に当たる選挙管理委員会といたしましても非常につらいものがございます。貴重な投票ができるだけ多く生かされますよう制度を仕組んでいただきたいと思っております。まして、在外選挙の郵便投票は遠い国外から送られてまいりますので、速やかに送致されてまいりますよう、関係機関には格段の御配慮をお願いいたしたいと存じます。
国外に居住しておられる日本国民の方々が、我が国の将来に貴重な一票を投じたいとお考えになることは当然のことでございまして、私ども選挙管理委員会といたしましても、その貴重な選挙権行使のために全力で取り組んでまいる所存でございます。
また、選挙時におきましては、当市の場合、約二千名を超える職員が選挙事務に従事しておりまして、ぎりぎりの体制を組んで当たっておりますので、正確な事務処理、選挙の公正な執行に支障が生じることのないよう、在外選挙制度のシステムは、選挙管理委員会においてできるだけ簡便な処理が可能となりますよう工夫していただければと思っております。
どうぞ、本委員会の委員各位におかれましても、私どもの意のあるところをお酌み取りいただきまして、海外在住邦人の選挙権行使の機会保障の早期実現のためさらに御尽力をいただき、また私ども選挙管理委員会に対しましても、今後とも御指導、御鞭撻を賜りますようお願い申し上げまして、私の意見の陳述を終わらせていただきます。どうもありがとうございました。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114104219X00419971204/2
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003・葉梨信行
○葉梨委員長 ありがとうございました。
次に、金井参考人にお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114104219X00419971204/3
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004・金井紀年
○金井参考人 金井でございます。ただいま、海外投票制度の実現をめざす会という会の会長をしております。
本日は、参考人として意見陳述できます機会を与えられまして、まことにありがとうございます。海外に在住する国民の一人といたしまして、本日審議されます二法案について三点ほど意見を述べさせていただきます。
まず第一は、日本国民が投票権を行使して国会議員を選定することは、憲法十五条に保障された国民固有の権利でございます。それにもかかわらず、海外に生活する五十万人以上の成人が、今日まで投票することができませんでした。この現実の不当性を改めてこの場で訴えたいと存じます。
我々は、国政選挙が行われるたびに悔しい、またむなしい思いをしてまいりました。また、ロサンゼルスに住む日本以外の外国人が自国の選挙に参加するのを見るにつけ、実に歯がゆい思いをしてまいりました。在外投票制度が先進国にあるのは当然のことでございまして、発展途上国でさえ、普通選挙を実施している国は大抵の国の人は国外で選挙をしております。この不当な現実の中で、何とか海外にいる日本国民が投票できることを願いまして私たちは運動を進めてまいりました。
一九九三年、今から四年前、ロサンゼルスに住む日本人が集まり、海外在住者投票制度の実現をめざす会が発足しまして、その後、ロサンゼルスだけでなく世界各地の都市にこのような会が誕生してまいりました。翌年、一九九四年、世界の各地にこういうような会を結ぶ海外有権者ネットワークというのが結成されまして、現在では十カ国十三都市を数えております。この三年間、署名運動、請願活動、日弁連への申し入れ、国会議員アンケートなどの活動をしてまいりました。一九九六年には、司法の判断を仰ぐために国家賠償訴訟も起こしておる次第でございます。
海外在住の日本人の数は年々ふえております。今後ますます国際化が進むことは間違いないと信じております。海外の有権者が投票できるようにする公職選挙法の改正を極力早期に行ってもらいたいと思います。今回の二法案が廃案になるようなことは決してあってはならないと考えております。
第二番目に、内閣提出法案では、附則において、当分の間、在外投票は衆参の比例代表選出議員の選挙に限って行うとあります。自治大臣は、その理由として、国外に居住する選挙人へ候補者個人に関する情報を伝達することは極めて困難であることを勘案してと説明なさっておられます。
そこで、海外における情報の取得について申し上げます。
この法律ができました一九五〇年と今とは大変海外の事情が違っております。国外に仕事や生活の本拠を持つ者であっても、自分自身も帰国することはありますし、人の行き来も頻繁であろうと思います。また、日常的に、電話、ファクス、手紙など、国内と連絡している人がほとんどだと思います。加えて、毎日、国際版の新聞を読み、NHKの衛星放送を見ることもできます。そのほか、ローカルのテレビジョン、短波ラジオ、レンタルビデオ、雑誌、書籍も容易に手に入りますし、最近ではインターネットや電子メールもございます。海外に居住する大部分の国民の生活は、情報に関して、国内にいるのとそれほど変わらないと思います。ですから、情報の伝達が極めて困難というのは、在外投票を当分の間比例選挙のみに限定する理由にならないと思います。
衆議院選挙でいえば、比例選挙のみの投票権では、五百名の議員のうち二百名の議員の選挙にしか関与できないわけです。これでは四割のみの権利でありまして、法のもとの平等に、憲法に抵触すると思います。
この委員会での審議においてぜひとも修正していただき、選挙区での選挙も在外投票の対象に加えていただきたいと考えております。
第三番目。海外で投票する仕組みは、できるだけわかりやすいものである必要があります。
この点で、内閣提出法案、野党法案の両案ともに、在外選挙人名簿の被登録資格を次のように規定しております。「将来国内に住所を定める意思を有する者と認められる者に限る。」という点で、この点は大変わかりにくいと思います。両案とも、将来日本に住所を定める意思を有する者であるかどうかの判定に関し「必要な事項は、政令で定める。」となっておりますが、その判定の基準はどのようなものか、大変危惧しております。
例えば、永住権、米国で言えばグリーンカードを取得した者を、一律に、将来国内に住所を定める意思を有さない者とみなすようなことは、万が一にもあってはならないと思います。
念のために説明いたしますと、私は、ここにパスポートを持っております。それから、ここに永住権、通称グリーンカードというのを持っております。これは年じゅう持っているんです。それで、このグリーンカードを持っておりますと、パスポートにビザは要らないんです。これで何回でも往復できる。それから、アメリカに永住することができる、それから、アメリカで働いて賃金をもらうことができるということなんです。したがって、もしこれがなくても、日本人であることには変わりないんです。あるいはこれは、こちらの、パスポートがない場合は、私は、アメリカに居住する、あるいは往復することは、グリーンカードだけではできないんです。これは、ビザの一種でありまして、決して、永住とか、それから、日本を捨てて将来絶対帰らないという証明にはならないのであります。この点を一つ認識していただきたいと思います。
日本の国籍を持つ限り、永住権のあるなしにかかわらず投票できることは当然であると思います。国籍の選択は非常に重い問題です。自分一人のことではなく、子供の国籍にもかかわってきます。一人一人が深く考えて日本の国籍を持ち続けているのですから、その選挙の時点で日本国民である以上、投票できなければおかしいのではないでしょうか。
そもそも、二法案ともに、なぜ将来国内に住所を定める意思にこだわるのか、判断できません。結婚した家族の事情で日本に帰国できないが日本の国籍を持ち続けている人もおります。また、帰国するかどうかわからない者もおります。それらも日本国民であることに何ら変わりはありません。国民である以上、日本の政治に影響され、日本の法律上の権利義務が発生する余地があるのですから、国政に参加する権利を持つことは当然であると思います。
そして、在外投票名簿の登録の際に、将来国内に住居を定める意思の有無を調べるため、私は将来必ず帰国しますという一札を入れるようなことを条件にすることは、あってはならないと思います。日本国民は、憲法によって、居住の自由、外国移住の自由を認められております。帰国するかどうかなど、尊厳が守られるべき個々の人間の選択に口を挟んだり、それによって投票できなくすることは許されるべきではないと思います。
最後に、私自身、昭和三十九年に渡米いたしました。三十三年になります。それ以来、日本と米国を行き来する生活をしております。中国の詩のとおり、「人間到るところ青山あり」であります。どこに骨を埋めるかわかりません。
不思議なもので、日本にいるときよりも、海外での生活が長くなるほど、日本のあり方について、日本を愛する気持ち、日本の文化を大切にする気持ちが深くなるものであります。
先生方も御承知のとおり、日本は、食糧も資源もエネルギーも外国に頼る通商国家であると思います。海外から物資を運ぶ者、日本の製品を海外で売る者なしには国家が成り立たないのであります。また、新しい知識を求め留学する者、政府の仕事で赴任する者、国際機関で働く者、ボランティア活動にいそしむ者、海外で多くの日本人が生活しております。
これらの者が海外で生活する中で、日本人であることを国内にいるときよりもずっと強く意識するのであります。日本と外国の制度の違いも見えできます。また、外国から見ると日本がどのように見えているかもわかってまいります。
こうして海外に生活する国民が考えることは、日本の進路にとって非常に貴重な示唆に富んでおると思うのであります。それが選挙を通じて国政に反映されなければ、グローバル化が進む中で、この国が進路を誤らずに二十一世紀を迎えることは難しいと思うのであります。
海外での投票制度の一刻も早い実施を要望いたしまして、参考人としての陳述を終わらせていただきます。ありがとうございました。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114104219X00419971204/4
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005・葉梨信行
○葉梨委員長 ありがとうございました。
次に、妹尾参考人にお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114104219X00419971204/5
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006・妹尾正毅
○妹尾参考人 妹尾でございます。
私は、比較的最近まで四十年近くの間を外務省に籍を置きまして、その約半分を海外で過ごしたわけでございます。任地は、イギリスに始まりまして、インドネシア、アメリカ、スイス、これはジュネーブの国際機関代表部でございますが、での勤務の後、サンフランシスコの総領事、それからペルーの大使、ノルウェーの大使の職にありました。在外公館や任地の状況というものは年とともに変わる点がございますが、大体の感じというものはそれなりに持っていると思っております。
私自身は、実は、在外選挙のことについて直接深くかかわったことはございませんし、現在当院で御審議中の公職選挙法の改正案についての知識も限られたものでございますが、私の申し上げることが審議に何らかの形でお役に立てば幸いと思いまして、気づきの点を若干申し上げたいと思います。
まず、在外選挙ということでございますが、言うまでもなく、この数十年間に日本も変わって、日本と外国との関係も大きく変わったわけでございます。海外に在住する邦人の数も、例えばこの十年間だけをとりましても、約五十万人から七十六万人と確実にふえてきておりまして、在留邦人の方々には我が国の発展の先兵として国際社会でますます大きな役割を果たしていただいているわけであります。私は、そのような邦人の方々に我が国の国政にかかわる機会を切り開くこの在外選挙制度というものは、大変意義の深いものだと思っております。
ちなみに、私が勤務いたしました国は、いずれも、それぞれ形態は異なりますけれども、在外選挙制度というものを持っておりまして、海外に在住する国民が自分の国の政治にかかわる機会というものを与えられているわけであります。今や先進国で在外選挙制度を持たないのは、日本だけでございます。途上国も次第にこれを導入しつつあります。日本におきましても、適切な審議を経まして、この制度が可及的速やかに実現するということを心から願っているものでございます。
次に、同時に申し上げたいのは、在外選挙制度というものは、ただ導入すればそれでいいというものではなく、当然のことながら、導入するからには成功させなければならないということだと思います。こういう当然のことをあえて申し上げますのは、現在考慮されています案においては、在外公館というものが一つの新たな、かつ主要な役割を担うということが予定されているからでございまして、この点に関連して三つの点を申し上げたいと思います。
その第一は、この制度の導入というものは、大使館や領事館に全く新しい大量の仕事を持ち込むことになるということでございます。
在外公館では、領事事務だけをとりましても、随分たくさんのいろいろな仕事をしておりまして、一日じゅう多忙をきわめているところが多いわけであります。
例えば、私がおりましたサンフランシスコの総領事館では、現在の数字になりますが、年間約一万七千五百件、そして、アメリカで一番大きいニューヨークの場合は、年間約二万五千件の領事事務を扱っているわけでございまして、これは案件の性格にもよりますけれども、人間相手の仕事というものは一件一件に時間をとられるものでございますし、何か緊急の大事件が起こればそれにかかり切りになるということでございまして、こういうことで多忙をきわめつつ、かつ年を経るごとに仕事の量がふえてきているということでございまして、こういう状況に在外選挙の実施に関する業務が新しく加わってくるということになるわけでございます。当然仕事の量がふえる、どの程度ふえるか、在外公館が深くかかわればかかわるほど、そして、正確に、迅速にそれに対応しようとすればするほど多くの時間を割かれることになるわけでございまして、若干の試算などでは、ところによっては業務量が倍増するであろうというような試算もございます。
いずれにいたしましても、現状に余裕があるのなら別でございますが、そうではなくしかも増加する業務量に人員の配置がついていけないというのが実情でございます。これが、陛下とか閣僚の方々が来られるというような場合ですと、一時的に近くの公館から館員、要員の派遣を依頼するわけでございますが、在外選挙の場合はほとんどすべての公館で同時一斉にこの仕事に取り組むことになるわけですから、ほかの公館からの応援出張ということは期待できない。そして、しかもその間、ほかの邦人保護その他の領事業務を中断することもできないということでございまして、追加業務に対する追加的な人的な手配というものが絶対必要だと思います。
今回、この在外選挙の問題について本院に提出されております。その資料を拝見いたしますと、所要経費に関する措置については言及がございますが、人的手当てについては全く触れられておりません。これは、明示的に規定、言及しなくてもその点はよくわかっている、そういう御趣旨なら大変失礼なことを申し上げることになるわけでございますが、もしそういうことは必要ないということでございましたら、ぜひこの際認識を改めていただく必要があるのではないかと思います。
それから、第二に、投票場所としての在外公館ということでございまして、これは、現在の在外公館というものは、総じて在外選挙の実施の場所となることを想定して建設したり購入したものではないわけでありまして、これを在外選挙に使うということにつきましては、個々にその適否あるいは対策というものを慎重に検討する必要があると思います。
一つは安全に関する問題でございまして、その場所にもよりますが、在外選挙の投票のためにたくさんの人が来る、そして不特定多数の人が出入りするということになりますと、これがテロとか侵入のターゲットにならないかということで、当然、警備安全対策上どうかということを考える必要がございます。
それから、国や地域によりましては、政情が不安であって治安が悪い、それで、多くの人がそういう在外公館に集まってくるということ自体が問題であるというところもあるわけでございますし、内戦とか地域紛争が生じている国、あるいはテロ事件が起こっている国などでは、日常生活上の外出自体が最小限度に抑えられているところもあるわけでございます。
こういうことも考えなければいけないと思いますし、それから、投票場所それ自体として、管内にたくさんの在留邦人がおられる、そういうところで一定期間内に投票を実施するということは非常に難しい館がかなりあり得るのではないかという気がいたします。通常の仕事をやりながら選挙もやるということでございますから、まず十分なスペースを確保できるとは限らないわけでありまして、ところによっては、そのほか駐車場とかエレベーターとか、あるいはその建物が週末になると閉鎖されるとか、いろいろございます。
それから、事務所は町中にあります。それから公邸を使ったらどうかということで、公邸でというと、これはまた静かな住宅地にあるということで、周りに混雑や混乱を与えないように、また近くの人々の反発とか抗議ということを招くことがないように投票を実施しなければいけない、それがうまくできるかどうかということを検討する必要があるわけでございます。
それから、三点目といたしまして、在留邦人への便宜ということでございます。
遠隔地に住む邦人の方は、大使館、総領事館で投票を行うということになりますと、飛行機その他の手段で投票に行かなくてはいけない。経済的にも時間的にも大変な負担になるわけでございます。
この点につきましては、また御質問がございましたらもっと詳細に御説明申し上げますが、特に北米の場合はそういうことが随分起こるのではないかという感じがいたします。カリフォルニア州だけを見ても日本全国と同じ大きさでございまして、そこに総領事館は二つしかございません。しかも、サンフランシスコで同時に持っておりますユタ州とかコロラド州あるいはネバダ州の一部というものは、これは全く公館がないわけでございます。ですから、こういう場合につきまして、在外公館投票というものを貫くということは、事実上投票するなということになるのではないかと思います。非常に説明も難しいと思います。適切な、現実的な対応策というものを考える必要があろうかと思います。
以上、いろいろ気づきの点につきまして意見を述べさせていただきましたが、要は、各地の実情に即した現実的な判断をもって対処する必要がある、そのような対応を可能にするような仕組みをあらかじめ考えておくべきであるということに尽きると思うわけでございます。
申し上げましたことは、やってみなければわからないという点もあるかとは思いますが、程度の差こそあれ、各館とも私が申し上げましたような点に配慮する必要がある、あるいはそういうことが起こってくるということはまず間違いないと思うわけでございます。実施に踏み切るからには、これらの点を十分念頭に置いていただきまして、この大変重要で画期的な在外選挙というものが円滑、適切に行われるように配慮し、準備を進めていただきたいと思っております。
申し上げましたことが、今後の法案の審議とかあるいは具体的な手続方法などについての政省令の検討に当たって参考になれば、幸甚に存じます。どうもありがとうございました。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114104219X00419971204/6
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007・葉梨信行
○葉梨委員長 ありがとうございました。
以上で参考人の御意見の開陳は終わりました。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114104219X00419971204/7
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008・葉梨信行
○葉梨委員長 これより参考人に対する質疑を行います。
質疑の申し出がありますので、順次これを許します。奥山茂彦君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114104219X00419971204/8
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009・奥山茂彦
○奥山委員 おはようございます。
自由民主党を代表して、参考人に質問をさせてもらいたいと思うのですが、我々も早くから、在外在住者の方々の投票権が日本はない、先ほどの話の中にもありましたが、ほとんどの国が実施されておって、いまだ日本が実施できない、こういうことには大きな懸念を抱いておったわけであります。
しかし、実際にやるということになってくると、我々もいろいろ考えてみると、なかなか技術的に非常に難しい問題がたくさん出てくるわけでありますが、選挙というものを考えると、これは大原則として、やはり平等でなければならぬ、国内に住んでおろうと、それから海外に住んでおろうと、投票する機会は平等に与えられなければならない、これが大原則であって、そのための環境をつくっていくということが大前提になってくるわけであります。
私自身も海外在住のいろんな方とおつき合いをさせてもらったり、そういうこともあるんですが、この間もある海外青年協力隊に行かれた方にこの問題についていろいろ聞いておって、日本の政治に対する関心をどういう形で持ち続けるか、初めは非常に日本のニュースが気になって、特に選挙なんかも関心を持っておったが、二、三年になってくると、その国のいろんなことに追われて、しかもまたなかなかニュースが思うように入らない、そういうこともあってだんだん日本の政治から関心が薄れてきた、こういうことを言っておられたわけであります。
そういう中で、在外邦人の方々が海外へいろんな目的でもって行っておられるわけなんですが、その方々の日本の選挙に対する関心度ですか、これはどの程度持っておられるのかどうか、金井参考人と妹尾参考人にお尋ねをしたいんです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114104219X00419971204/9
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010・金井紀年
○金井参考人 海外在住の日本人は、先ほど申しました戦前のいわゆる海外の在留日本人と現在の海外在留日本人とは、大変その意識が違うと思うんです。昔は移民という前提で海外へ行ったんですが、今はほとんどの方は自由意思で、そして仕事の上で滞在する、こういう方が多いわけですね。ですから、日本の国政、政治、経済、そういったものに対する関心は非常に強いです。
今申されました、海外に出てそして協力事業団というような方で、例えば極めて日本からの通信の届かないというところの人はだんだんとそれが薄れていくかもしれませんが、それは非常にまれな、特別なケースでありまして、普通の場合はほとんど都市に住んでおります。ですから、毎日メディアのニュースにさらされておるし、また仕事の上でも、毎日、例えば為替レートはどうなったとか株が落ちたとか上がったとか、これは自分の直接の商売に関係することですから非常に大きいんですね。それから、特に子供を持っておる方は、子供の教育というものについて非常に関心があります、子供の将来。そういうことで、私は、だんだん日本の政治に関心が薄れていくということは今の時代では考えられないことだ、ますます強くなっていくというふうに考えております。ですから、その点は私は御心配の点はないというふうに考えております。
以上です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114104219X00419971204/10
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011・妹尾正毅
○妹尾参考人 ただいま金井参考人のおっしゃいましたことは、私、全部そのとおりだと思って伺いました。特に、日本のことが外国ですぐわかるようになっていること、それから外国に長くいればいるほど自分が日本人であるということを非常に強く感じることというのはあるわけでございまして、国内の選挙というのは大変関心の的になっております。在外選挙が可能になれば、みんな大変喜ぶことは間違いないと思います。
それからもう一つ申し上げますと、私は、ペルーに三年九カ月という一番長い大使としての在勤期間の記録を持っているわけでございますが、ペルーの場合は、これは日系人の方でございますが、そういう方に至るまで非常に日本との結びつきというものを強く感じておられます。日本の選挙に大変関心を持っておられます。そしてそういうことを、いろいろ決議のときなんかにも出てまいりますので、あわせて申し添えたいと思います。
以上でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114104219X00419971204/11
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012・奥山茂彦
○奥山委員 これを実際にやるとなると、先ほどの話にも出ておりましたが、衆議院の比例並びに参議院の比例、こういうことだけに限定しなければならぬ、こういうことになっておるわけなんですが、我々もこれは少し、果たしてこんな形でいいのかと逆に疑問に思うんですが、例えば、欧米とか主な国々でやられている在外在住者の選挙は、どの範囲の方々までこの選挙の方法が適用されておるのか、少し参考になるようなことがあったら教えてもらいたいと思うんです、金井さん。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114104219X00419971204/12
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013・金井紀年
○金井参考人 その点について私は詳しい調査をしたことはありません。ありませんが、周囲を見ましたところ、大体国政というもの、大統領に関する選挙というものが一番多いですね。
そういうことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114104219X00419971204/13
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014・奥山茂彦
○奥山委員 そこで、我々もこの在外在住者の選挙制度をやるに当たって、どうしてもこれは、まず公平な選挙制度にしていかなければならない。ここが一番の問題であるわけなんですが、そこで一つは、先ほど妹尾参考人がおっしゃったんですが、海外の領事館、大使館等なかなか手が回らないということが言われておるわけなんですが、公館に投票所を設けるということが大変であれば、例えば郵便投票ということであれば、そこで具体的な事務を余りする必要がないわけなんですが、それはできるんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114104219X00419971204/14
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015・妹尾正毅
○妹尾参考人 物理的にできるかどうかということでしたら、もちろんそうだと思います。現にアメリカの場合は郵便投票をやっている理由の一つは、在外公館選挙をやるとその在外公館の仕事の量が過重になり過ぎるということ、それから安全対策上問題が起こり得るということ、遠隔地の人が困るということ、経費が余分にかかる、こういうことがアメリカでは郵便投票を採用するに至った理由だということが言われております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114104219X00419971204/15
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016・奥山茂彦
○奥山委員 それと、先ほど話もあったんですが、投票用紙を請求して、これは手に入るわけなんですが、そこで一番問題は選挙公報ですね。これがもらえないということになってくると、当然それはテレビ、新聞等で候補者の名前はわかったとしても、あるいは政党の名前がわかったとしても、具体的にその候補者、党がどういう政見を持って、公約を持って臨んでおるかということは、これはわからないままに投票しなければならない。そういうことになってくると、これは投票の権利として非常に不公平になるわけでありますから、特に公報ですね、こういうものを手に入れるということは技術的にはどうしても無理なんですか、和泉参考人。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114104219X00419971204/16
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017・和泉善太郎
○和泉参考人 奥山先生の御質問にお答えさせていただきます。
先ほども御意見を述べさせていただきましたように、選挙公報なんですけれども、その現状でございますがちょうど具体的な例を申し上げますなら、昨年でしたか、平成八年十月衆議院選挙がございましたね。このときの選挙公報、これは県の方から我々神戸市が受けるのですけれども、現実に受けましたのが、先ほども申しましたように、投票日の大体七日前前後というふうに、どうしてもおくれて入ってくるのですね。ですから、これを投票用紙等に同封させていただいて現地の御住所にお送りするのはちょっと不可能ではないかと考えております。以上でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114104219X00419971204/17
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018・奥山茂彦
○奥山委員 そうなってくると、先ほどの金井参考人の、インターネットあるいは日本語放送とかいろいろな形で、別にこれだけに限らないのですけれども、そういうニュースはある程度は入ったとしても、我々は、やはり基本的には、その候補者の主張等をとらえながら投票するわけでありますので、その辺は、どういう形であろうとまずそれが選挙人に届くということが大前提でないか、そうしなければ、一つは公平性が保てない、こういうことがあろうかと思います。
それともう一つは、妹尾参考人にお尋ねをしたいのですけれども、それぞれの在外公館が、その国に住んでいるというか、そこにいる日本人を完全に掌握できておるのかどうか。その方々にきちっとこういう選挙が行われるということを知ら
せることが、これは大使館の仕事であるかどうかわかりませんけれども、できるのかどうかということが一番問題であろうと思うのです。
そうなってくると、先ほどの話で、きちっとその選挙人名簿の作成が遺漏のないような形でできるかどうか、これは和泉参考人と妹尾参考人にお尋ねしたいのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114104219X00419971204/18
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019・妹尾正毅
○妹尾参考人 在外公館の方でできることということで申し上げますと、三カ月以上外国に在留する日本人は、大使館なり領事館なりに在留届というものを届けなければならないということになっているわけでございますが、これは建前ですし、罰則もございませんので、外国に行かれる方がそれに協力するというか、それをやっていただけなければ実現しないわけでして、実際は、所によって相当よく把握されているところと、それから、来られた在留邦人がどこかに行ってしまって、大使館にも総領事館にも全然顔を出さないということで、わからない人がかなりあるというところもあろうかと思います。
これは、実際問題としては、大使館、総領事館としても一生懸命在留邦人の実態把握をしなければならないわけでございます。特に、危ないところなどですと、緊急対策等の関係で相当そういうこともきちっとしておりますが、平和で安全なところなどですと、大使館も総領事館も必要がないという方もあり得るわけでございまして、その辺をどうやっていったらいいのかということは、御指摘のとおり、よく考える必要があろうかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114104219X00419971204/19
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020・和泉善太郎
○和泉参考人 我々といたしましては、経由領事官の方からお送りいただく書類に正確に住所等をお書きいただいておりましたら、それに基づいて処理をさせていただきますので、対応可能だと思います。
ただ、先ほども言いましたように、どうしたって投票用紙のやりとりとかいろいろなことがございますので、我々としても一生懸命努力はさせていただきますけれども、選挙人の現住所が適時適切に把握できますよう、またあて先記入が容易に行えますように、制度を工夫していただきたいと思っております。以上でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114104219X00419971204/20
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021・奥山茂彦
○奥山委員 時間がないので終わります。ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114104219X00419971204/21
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022・葉梨信行
○葉梨委員長 次に、吉田幸弘君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114104219X00419971204/22
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023・吉田幸弘
○吉田(幸)委員 新進党の吉田幸弘でございます。参考人の皆様、本日は大変貴重な御意見をお聞かせいただき、本当にありがとうございます。
私は、去年の選挙で当選をさせていただきまして、国会議員として一年たちました。そして、二十より十五年間、一度の国政選挙も棄権をすることなく投票はしてきたわけでございますが、この間、海外に住む方々、一度も投票に行かれていない、そういうような環境がつくられていない、このことに関して、議員となって改めてこの問題の重要さを感じさせていただいたわけであります。
参考人の皆様より御意見をいただいた在外選挙法案においては、昭和五十九年の第百一回国会で提出はされたものの、解散によって廃案となって以来、急速な進展もないまま現在に至っているというふうに聞いております。
一方、日本国憲法においては、十四条第一項、「すべて国民は、法の下に平等」とあり、十五条第一項には、選挙権は「国民固有の権利」とあります。さらに第二十二条第一項には、居住、移転の自由も保障されており、本法案がきょう現在まで実現しなかったことの方がむしろ疑問視されていると重ねて考えるわけであります。
新進党・太陽党案と政府案、これらには相違点はあるものの、ともに在外邦人の皆様に対する気持ちは同じであり、いずれにせよ成立は急務であると考えますが、今まで三人の方々、御意見を聞かせていただく中で、日本に対する思いということを特に強調されておられたような気がします。
特に金井さん、経歴を拝見させていただきますと、講道館柔道四段、私もずっと諸道館柔道を経験をしておりまして、この日本に対する思い、文化に対する思い、こういうものが最近の若者に、私も若者だと思っておりますが、欠けているんじゃないか。この選挙、確かにそういう思いで、行く方日本を憂えて、心配して、また日本の将来を思って、海外にいらっしゃる方々がこの選挙に参加をしたいという思いが先行してこの制度の実現ということを目指されていると信じておりますが、ややもすると、憲法違反なんだということが先行して広がるようなことも心配しております。
というのは、私、去年の選挙でということで、議員として一年余の経験しかございません。そこで、いろいろなペーパーを読ませていただきますと、憲法に沿った、そして憲法違反なんだという言葉がペーパーに目立つような気がしております。我々は選挙に参加をしたいんだ、そして日本を思う気持ちはこんなに大きいんだということが少し隠れてしまっているような、そういうような懸念も抱いておるわけであります。でも、いずれにしても、この法案というものは早期に実現をさせなければいけない、その思いで私も頑張ってまいりたいと思っております。
そこで今回、金井さん、妹尾さんにお伺いをさせていただきたいと思います。
新進党・太陽党案と政府案、対象となる選挙の範囲が異なっております。この異なりというのは極めて重要なことと考えますが、本件に関して、公館の手続等の煩雑化、こういうものが懸念されて相違があるというふうにも聞いております。実際のところ、選挙の範囲が異なるとどれほどの影響が出るのか、先ほど、きょうの委員会で皆様方お話をされておりましたが、明確に私には伝わってきておりません。選挙の範囲が、選挙区選挙も入れるとこれほどまで作業が煩雑になるんだ、そこのところをお聞かせをいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114104219X00419971204/23
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024・金井紀年
○金井参考人 我々は、この比例代表制と小選挙区制の両方の選挙に参加させてくれ、こういうことなんですが、これは、実際問題、先ほど申し上げましたように、もし比例代表制だけということになりますと、全議員の衆参とも四〇%の人しかカバーできないわけなんですね。ということは、法律の問題は別といたしまして、我々は全体の人に対する訴えということはできない。ということは、海外にいる者にとって大変残念なことだという気がするのです。
非常に煩雑であるということを理由に、できないということ、それから、選挙公報が各人のもとまで行かないということが非常に障害になっておりますけれども、これはやはり技術の問題でございまして、これは日本だけじゃないと思うのですね、外国にも全部あると思うのです。ですから、これを、例えば選挙公報を各人のもとにメールするという必要はもう今の時代はないと思います。毎日、新聞が発行されます。それは日本と同じです。それから、NHKのテレビも全部出ます。そういうことで、この選挙公報は実際に各人の家にまで届かなくても、いわゆるその選挙公報に載せるだけのデータを得ることはできると私は考えております。それで、そういうことができないのだから四〇%にとどまるのだということは、やはり一つの、我々は選挙をしたいのだという気持ちをそぐ非常に大きな要素だというふうに考えておりまして、ぜひそういったことを乗り越えてでもこの際やってもらいたいというのが我々の気持ちでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114104219X00419971204/24
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025・妹尾正毅
○妹尾参考人 法案の書き方について、政府部内でどういう議論があって現在のような表現になったかについて私存じませんので、その点についてはお役に立てないわけでございます。ただ、ございますのは、どうも程度の差ということはあり得るのじゃないかと思います。
まず、外国でいろいろな日本人が持てる情報、持っている情報というものは、これは実際は差があると思います。都市に住んでいていろんな新しいメディアに対するアクセスがたくさんある人と、それから、地方でぽつんと住んでいて、例えば外国人と結婚して地方に住んでいてという人では、日本のことは余り伝わってこないという、そういう人があることも事実だと思いますし、それから、その場合、比例区について持てるイメージと個々の候補者に対して持てるイメージというのは、全部きちっと持てる人もあるだろうし、それから、人によっては、個人についてはどうもよくわからないという人もあり得ると思いますので、私は、それはどうも人によって違うし、程度の差の問題でないかという気が個人的にはいたします。
ですから、そういう実態を法制化する場合、どういうふうに整理することかということではないかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114104219X00419971204/25
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026・吉田幸弘
○吉田(幸)委員 ありがとうございます。
ちょっと私の質問もよくなかったというか、思いが伝わっていなかったと思うのですが、選挙区選挙とその選挙の範囲ですね。政府案と新進・太陽案、要は比例区だけにする、選挙区も加える。この差によってそんなにも作業が煩雑化するのですかという質問をさせていただきました。この件に関して、する、しないで結構ですので、お三方に御意見を伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114104219X00419971204/26
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027・和泉善太郎
○和泉参考人 御質問ですけれども、私ども選挙管理委員会といたしましては、この内容にわたりますことについてはちょっと御返答しかねる、といいますのは、我々は、あくまでも、失礼な言い方でございますけれども、国会の方で御審議いただいてつくっていただいた法律を忠実に執行する立場でございますので、立場上はちょっと、申しわけないのですがお許しをいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114104219X00419971204/27
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028・金井紀年
○金井参考人 この煩雑化するかどうかという問題は、私は実際にその方面を担当するわけではないのでよくわからないのですが、先ほど申しましたように、煩雑化するのは同じだと思うのですけれども。比例代表制で行うのと小選挙区制で選挙を行うのと、煩雑さは別に変わらないと思うのですね。
ただ、問題は、先ほど申し上げたように、各人に選挙公報が届かないのじゃないか、インフォメーションが届かないのじゃないかという、そういう危惧だと思うのです。しかし、それはやはりやってみなければわからないのじゃないでしょうか。最初から考えて、五十年前の考え方と今の考え方とは、外国にいる人の気持ちでは全然違いますから、そういうことで、やはりやってみなくちゃわからない。一遍でそんなに一〇〇%ということはなかなか難しいと思いますけれども、やはりやってみる、我々はやっていただきたい、それに対して我々もそういった外国における世論を高めて、そして皆さん方に関心をさらに持ってもらう。両方からアプローチして、そして完全な情報を得るように努めるということもしたいと思います。
そういうことで、これをはっきりと否定することはできません。しかし、煩雑さという点では同じじゃないでしょうかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114104219X00419971204/28
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029・妹尾正毅
○妹尾参考人 恐らくそれは、どういう情報を提供すべきかということによって変わってくるのではないかと思います。もちろん、小選挙区、要するに比例区以外のものも入れるということになれば、当然それに伴う増加というものが、もう必ずそれはあるわけでございますが、それがどの程度ふえることになるかというのは、どの程度の情報を提供しなければならないかというその決めの仕方によって変わってくると思います。非常に機械的なものを送ればいいということでしたら大差はないということになりましょうし、あるいは、ものによってもっと詳しいものを提供しなければいけないということになると、現地公館側とすれば非常に追加的な仕事がふえるということになるかもしれませんし、ですから、それは決め方の問題でどれぐらいふえるかということが違い得るのではないかと思います。
それから、もちろん、現地の在留邦人の方が、どの程度の情報で決めればいいと思っておられるのかということもあるのかもしれません。それを事前に考える必要があるのかどうか、それは私は存じませんけれども。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114104219X00419971204/29
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030・吉田幸弘
○吉田(幸)委員 ありがとうございます。
いずれにしても、この法案、在外選挙制度の第一歩として認識をし、今後たび重なる修正を行ってよりよい在外選挙制度に改めていく、このように考えております。
そこで、金井さん、ぜひお答えいただきたいのです。
対象となる選挙の範囲、そして選挙の方法、さらには海外における選挙区の新設、これらを含めて、将来こういう形になると理想的だというような御意見をお持ちであればぜひともお聞かせいただいて、私は若うございます、ずっと年々かけてその実現を目指して頑張ってやらせていただきたいと思いますので、できますれば、簡単で結構ですのでお知らせください。お願いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114104219X00419971204/30
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031・金井紀年
○金井参考人 この選挙の方法ですが、先ほど論じましたように、直接公館で選挙する方法と、郵便投票、これはやはり併用がよろしいと思います。
それからもう一つ、在外公館が、非常に行くのが大変だとか、一カ所に集まると非常に問題が起きるという問題もありますけれども、これはやはり考え方の問題で、実はロサンゼルスの例を申しますと、先月、ロサンゼルスで、世界で初めて分館というのができたのです。というのは、ロサンゼルスの総領事館が、従来日本人町にありましたのですけれども、やはりいろいろな事情がございまして、いわゆるダウンタウンの非常なハイビルに移ったのですね。そのために、非常に行くのが面倒くさい、年寄りなど、エレベーター上がつたり下がったりなかなか大変だ、それから、パーキング代が一時間かかったら二十ドルぐらい取られてしまうというようなことで、ぜひもっと便利な方法を考えてくれという要望をしておりましたら、幸いに谷内総領事が非常にそういう点は考えてくれる方で、初めて日本人町の日米会館の地下に分館をつくってくれたのです。これは非常にありがたいことですね。ですから、選挙を、在外公館に行くのは大変だとか、そういう問題は極めて小さい問題であって、これはもう技術的にはどうでもできるのじゃないかと思います。
それから、海外の選挙区というのは、私はこれからこの五十万人が六十万、七十万、八十万とふえていくと思うのです。それで、将来は、私個人といたしましては、これはめざす会の方針ではないのですが、個人といたしましては、海外に住んでいる人の利益、それから日本に対する考え方というものを代表する海外区というものができてもいいのじゃないかというふうに私は考えております。しかし、それはなかなか難しい問題で、これは原理的に非常に問題があると思いますので将来の問題にゆだねるとして、現在はとにかく選挙をするということを第一歩に我々は考えておりますけれども、将来の面としてはそういった海外区というものの設定もぜひ行っていただければありがたい。これは私の個人的な見解でございます。ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114104219X00419971204/31
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032・吉田幸弘
○吉田(幸)委員 以上で質問を終了させていただきます。どうもありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114104219X00419971204/32
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033・葉梨信行
○葉梨委員長 次に、山本譲司君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114104219X00419971204/33
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034・山本譲司
○山本(譲)委員 民主党の山本でございます。
本日は、参考人の皆様におかれましては、大変お忙しいところ当委員会に御出席をいただきまして、本当にありがとうございます。
私ども民主党は、ほとんどの先進国で実施をされている在外選挙制度、これがない、いわば国際的な常識である制度がない今の日本の現状、ぜひこれを変えていく、在外選挙制度というものを一刻も早く導入をしたい、そんな立場でございます。ぜひ、きょうおいでをいただきました参考人のそれぞれの皆さんの御意見を、今後の法案あるいは法案成立後の運用に生かしていきたいということをまず申し上げたいと思います。
それでは、早速参考人の皆さんに質問をさせていただきたいと思います。
この制度が導入をされて、成立をした上で、成功しなくてはしようがないわけでございまして、成功とは何かというと、本当にたくさんの方に、より多くの方に選挙に参加をしていただくことだと思います。そこで、先ほどちょっと触れられましたが、まず第一に、その範囲を決めるのは、事前の選挙人名簿、この登録認定作業だと思います。この作業を行う上で、マンパワーなどの実務面での今のところ考えられる問題点はどのようなものがあるのか。これは和泉参考人と妹尾参考人にまずお伺いをいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114104219X00419971204/34
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035・和泉善太郎
○和泉参考人 お答え申し上げます。
先ほども申し上げましたけれども、我々神戸市の場合でしたら、二千名を超える大勢の職員が選挙事務に従事しておりまして、ぎりぎりの体制を組んで当たっておりますので、正確な事務処理ですとかあるいは選挙の公正な執行に支障が生じることのないよう、新しい制度のシステムは、選挙管理委員会においてできるだけ簡便な処理が可能となるような工夫をしていただきたいという、これはお願いでございます。
それとともに、我々、実現いたしました場合は、貴重な一票でございますので、やはり精いっぱい努力をさせていただきたいと考えております。
以上でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114104219X00419971204/35
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036・妹尾正毅
○妹尾参考人 先ほど冒頭に申し上げたことに尽きるわけでございますが、登録の段階から投票の実施に至るまで、全面的に在外公館が関与するといいますか、中心になって現地の仕事をしなければいけないということでございますから、そういう仕事が全部その現地の公館にかかってくるということ。それから、特に投票段階になりましては、その場所を提供して、そしてつつがなく投票が行われるようにということもございますので、事務的な仕事から、それから全体の計画を立てていく仕事に至るまで、広範囲の仕事をしなければいけないということでございます。これは、もちろん、すべきでないという意味で申し上げているのではなくて、きちっとやるためには相当いろいろな仕事をする覚悟をする必要があるということに尽きるかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114104219X00419971204/36
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037・山本譲司
○山本(譲)委員 事前の選挙人名簿に登録をされるその範囲、対象者というのは、在留届を出されている方になろうかと思うのですが、ちなみに、金井参考人は現在ロサンゼルスにお住まいということでございますが、ちょっと調べたのですが、ロサンゼルスの総領事館、この管轄地域では、平成八年の十月一日現在で五万四百四十六人の在留邦人がおられるということなんですが、旅券法十六条に定められました在留の届け出をされている方というのは、これはちょっとずれるのですが、平成九年の十一月段階ですが一万八千百九十三人、これは、在留届というのは家族まとめて一通出すということですよね。したがって、必ずしも在留邦人の数とイコールではないのですが、五万四百四十六分の一万八千百九十三ですから大体三六%ぐらいなんです。こういった現状、在留届の出され方の実態、これについてどう思われますでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114104219X00419971204/37
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038・金井紀年
○金井参考人 これは類推の範囲を出ないのですけれども、大体在留届を出している方の倍ぐらいが実際の数じゃないかと思うのですね。
それで、在留届を出すのは、例えば、ビザといいますかパスポートをまた新しく更新する場合、それから居住証明をとる場合、そういうような証明書を発行するときに、あなたは在留届出ていますか、こう言われるわけですね。そのときにどうしても在留届を出さなきゃならないのですね。ところが、そういう方は大体長くいる方が多いのですね。ですから、そういう必要のある方はどうしても在留届を出していますが、極めて短期の学生さんとかいう方は、そういう必要がないために、面倒くさいから出さないというようなことになっております。それで、いつも我々議論していますけれども、やはり倍ぐらいじゃないかということなのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114104219X00419971204/38
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039・山本譲司
○山本(譲)委員 妹尾参考人は、ノルウェーあるいはサンフランシスコにもいらっしゃったわけですね。このデータを先ほどのロサンゼルスの総領事館管内所管という、こういった数字に当てはめてみますと、サンフランシスコの場合は大体ロサンゼルスと同じような感じですね。ノルウェーは非常に高いのですね、届け出を出されている。これはどういう差があるのですかね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114104219X00419971204/39
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040・妹尾正毅
○妹尾参考人 そういう角度から考えたことは実はございませんが、あり得るのは、一つは、ノルウェーの日本人社会というのは、小さい、五百人前後のものでございますから、地域的にはいろいろなところに分かれて住んでいる人がありますけれども、お互いに日本人同士の連絡どか交流というものもございまして、非常に関係が緊密である。それから、長くおられる方が多いというようなことがその数字に反映しているのではないかという気がいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114104219X00419971204/40
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041・山本譲司
○山本(譲)委員 もっとも、日本国内ですと住民票、これを二週間以内に届け出ないと罰金刑ですと住民基本台帳法とかで規定をされているわけなんですけれども、旅券法は、これは罰則規定はないわけでございますよ。しかし、この在外邦人の投票権というものを付与するという制度ができたら、先ほどの金井参考人の非常に熱意あふれるお話をお聞きした上で考えてみますと、やはりこの制度を導入することで、在外邦人の皆さんの在留届を出していただく、そういった面でのインセンティブも働いてくるのではないかなと私自身考えております。
続いての質問でございますが、被登録者資格について、政府案によりますと管轄する領事官に在留三カ月以上、そして議員立法の方ですと国外に三カ月以上、いずれも三カ月以上ということになっておりますが、この両案の被登録者資格について、この三カ月間は投票権はなくなるわけですね、そのことについて金井参考人はどうお考えでいらっしゃいますでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114104219X00419971204/41
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042・金井紀年
○金井参考人 それは国内でも同様でございますから、全く異存はありません。三カ月以上にならなければ選挙権はないということでよろしいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114104219X00419971204/42
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043・山本譲司
○山本(譲)委員 妹尾参考人、ノルウェーでは、在外選挙におきまして事前投票の制度がありますね。投票受取人制度でありますとか、または洋上投票制度ですね、外国航路の皆さんの投票制度。さらには、在外投票だけでなくて、事前投票の中で、これは二カ月ぐらい事前投票期間がありますから一概には日本と比べて言えないと思いますが、その間郵便局員の方が家庭訪問して投票用紙を受け取る方式とか、こういったものも制度としてあるようであります。この制度についてもし御存じでありましたらお話しいただければ、またその感想などもいただければと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114104219X00419971204/43
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044・妹尾正毅
○妹尾参考人 私、詳しくございませんが、一般的な印象になりますけれども、申し上げられるのは、ノルウェーの人というのは物すごく政治に対する関心が大きい。それは、中世のころに、十六世紀ぐらいからデンマークと同君連合ということになりまして、事実上デンマークの王様をいただくということになり、それから最後はデンマーク、とスウェーデンのディールで、今度はスウェーデンと同君連合ということで、多分にスウェーデンの属国に近いような扱いを受けるようなことになる。そういうところで独立運動というものが始まって、非常に平和的な形でノルウェーはスウェーデンから独立するわけでありますけれども、その過程で、ノルウェーの人が自分たちで議会をつくって、独立運動の拠点にするというふうなこともございましたし、政治と国民のかかわりというものが非常に強いのではないかな、そういう気はいたします。
それから、国民として、ノルウェーの人というのは非常に細かいところまで丁寧な国民性がございますから、やることは徹底的にやるということもございます。
船舶の問題というのは、これはもう随分前からノルウェーというのは、十九世紀のころにはもう世界第二位の海運の国になっておりましたから、当然そういう問題が出ていたと思います。十分なお答えにはならないかと思いますが、そんな気がいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114104219X00419971204/44
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045・山本譲司
○山本(譲)委員 ノルウェーというと、本当に投票率も高い国でありますね。
ついでにと言ってはあれですけれども、スイスのジュネーブにもいらしたということで、先ほど来選挙公報をどうするか、送れるのか、そんなお話もございましたが、スイスには、在外スイス政治的権利に関する命令というのがあって、その十条で選挙用資料の発送という項目があるそうでありまして、これは、投票自治体は投票権者に公製の投票用資料及び連邦参事官の説明資料を直接国外の住所に発送するというようなことがあるわけですが、今回の政府案、議員立法案両方に、選挙公報の発送ということはないわけであります。この辺のスイスの状況についても、御存じでありましたらどうかお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114104219X00419971204/45
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046・妹尾正毅
○妹尾参考人 余りお答えにならないようなことかもしれませんが、やはりスイスという国も、周りからもまれながら、長い時間をかけて少しずつ連邦として広がって現在のスイスになったという国ですから、やはり政治というものが国民の生活と密着して国ができているということ、そして、連邦制というものが、同時に政治というものを国民の本当に身近な存在にしているということがあると思います。
そういうところから、スイスの国民は、やはりこれが一番いいんじゃないかと思うものを一生懸命考えてそういうものをつくってきたということは言えるかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114104219X00419971204/46
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047・山本譲司
○山本(譲)委員 終わります。ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114104219X00419971204/47
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048・葉梨信行
○葉梨委員長 次に、東中光雄君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114104219X00419971204/48
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049・東中光雄
○東中委員 日本共産党の東中でございます。
参考人の皆さん、御苦労さまでございます。
時間が大分過ぎておりますので、簡単にお聞きしたいと思うのですが、私たちの党としては、海外在住の日本国民の選挙権については、永住者を含めて、選挙権行使の法的保障を速やかにすべきであるという立場でずっと進んでまいりました。選挙権につきましては、これはもう申すまでもないことでありますが、憲法が保障する国民の基本的な権利だ、国民主権と議会制民主主義の根本をなす最も重要な権利だと思っております。それを、居住地が国内であるか国外であるか、その居住地域によってそういう基本的人権の行使をできなKしてしまうということは、憲法上の権利を、選挙人の登録をしてないからということで権利を奪ってしまう、そういう制度はこれは憲法上許されない状態だという立場でおります。
だから、今度在外邦人に対して選挙権を付与するというのは、これはもう当然のことだと思うのです。ただ、今度の場合、比例代表選挙はいいけれども、選挙区選挙及び小選挙区選挙についてはこれをなくするということを言っているんです。政府側の説明では、国外に居住する選挙人への候補者個人に関する情報を伝達することは極めて困難であること等を勘案して当分の間は比例選挙に限るということで、そういう説明をしているわけです。
比例選挙でも衆議院でも参議院でも、結局、名簿登載者個人の、その名簿に対して投票するんですね、投票の仕方は政党名であっても。それから、選挙区選挙であっても、それは政党本位の選挙ということになって、政党名を冠した、だから政党も選挙運動をやるということになっているわけです。だから、基本的には違わないわけなんです。それを、一方は与えるけれども一方は与えないというのは、これは間違いだ、私たちはそう考えているわけです。
それでお伺いしたいのですけれども、金井参考人の方で、情報は十分入る、新聞もありテレビもありということをおっしゃいましたが、私もヨーロッパを回ってみて、日経や朝日がさあっと来るので、随分二、三十年前と変わったなという感じを受けております、地域によってはそれは必ずしもそんなにないところもあるかもしれませんけれども。比例とそれから選挙区の選挙で入手する情報がそんなに質的に変わってくるというふうなことがあるだろうかということについて、金井さんなり、それから長らく外務省で海外におられた妹尾さんにその間の状況をちょっとお伺いしたいのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114104219X00419971204/49
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050・金井紀年
○金井参考人 私の考えから申しますと、いわゆる党の政策は、比例代表制の党の政策であろうと小選挙区の中における党を代表する候補者の方と同じだと思うのですね。ですから、その瞬間に、例えば一週間の間に理解するということについてだけ焦点を当てておられますけれども、日ごろの新聞とか雑誌等々で全部知っているのじゃないでしょうかね、その個人の意見というものを。そういう情報はどんどん、例えば、私は二区になりますけれども、どういう方が出て、そして対抗馬になってどうもまずいからどこか比例へ行ってしまったとか、そういうことはみんな知っておるのですよ。
ですから、例えばその一週間に限って政見を届けにゃならぬということは極めて極言された判断であって、私は、もう少し大局的に見ていって政治というものに対する意識を高めていくというふうにお考えいただきたいのですね。
それは、欠陥はあります。それはもちろん離れておりますからあるけれども、しかしそうだからといって四割しか認めないということになりますと、ますます希望が薄れていきますね。ですから、やはり私は、そういう小さい、制限するということでなくて、もっと広げるというようなものをお考えいただいて、両方ともひとつ参加できるようにしていただきたい、そういう努力をしていただきたい、我々もそういう努力をする、こういうふうに考えておりますので、よろしくお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114104219X00419971204/50
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051・妹尾正毅
○妹尾参考人 お答え申し上げます。
情報の入手ということだけで申し上げますと、私は、情報の入手できる度合いというのは場所によって違う、それは思います。場所により人により時期により違うと思います。例えば、ロサンゼルスとかサンフランシスコというのは最もたくさんの情報が集められるところでありますから、そういう点からしますと、例えば私がおりましたサンフランシスコの場合でも、例えばユタ州のソルトレークシティーの大学にいる日本人の先生あるいはデンバーにある日本の企業の支店で働いている人ということになりますと、ロスやサンフランシスコにいる人と同じ程度の情報が常に入っているとは思いません。ですから、情報の度合いというのは違い得ると思いますが、ただ、大きな町にたくさんの人が住んでいるということからすれば相当の人が相当のことをわかっているはずじゃないかと言われれば、それはそういうことも言えるかと思います。
そしてもう一つは、それじゃどの程度の情報が必要と考えるのかということになりますと、私は全く個人で参っておりますので、政府としてどういう議論を尽くした結果そういう判断をしているのか存じませんが、もしあるとすれば、同じ個人が出ていても、党だと党ということで判断しやすい、個人の場合はそれだけわかりにくいと思う人がいるのかもしれませんが。ですから、私は、その辺のところは物事の考え方であり、決め方の問題ではないかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114104219X00419971204/51
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052・東中光雄
○東中委員 選挙公報を出すのは、選挙期間との関係からいっても到底できないというお話がございましたが、選挙期間は、私が参議院へ初めて立候補したときなんというのは三十日間だったんですね、選挙運動期間が。今はもう半分になっています。だから、そういう点でいえば選挙期間を短縮してきたというところに一つの問題があるのですけれども、それは別として、比例代表選挙も公報を出しますね。それから選挙区選挙も公報を出す。その比例代表選挙と選挙区選挙との間で、公報を出すという点でいえばどっちも同じですね。比例はまだやりやすいけれども小選挙区だったらできない、そんな差はないでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114104219X00419971204/52
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053・和泉善太郎
○和泉参考人 東中議員さんの御質問にお答えさせていただきます。
比例代表と小選挙区の選挙公報の技術的なことでございますけれども、申しわけありませんが、我々市の選挙管理委員会は、国の選挙の場合は、例えば衆議院ですとか参議院でしたら県選管の方がつくられたものをちょうだいするという立場にございまして、つくるということはいたしておりませんので、その点御理解をいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114104219X00419971204/53
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054・東中光雄
○東中委員 いや、それは市の選管の事務局長としてはおっしゃるとおりですけれども、選挙公報は、比例だからあるいは選挙区だからといって違いはないはずだと私は思っているのです。海外在留の場合はどっちにしてもそれは配布できない状態だということが前提になって今進められているのですが、だから、もう選挙は海外の場合はその他の一般の情報によってやる、それはもう居住地によってそうならざるを得ないということであって、それで質的にもう選挙権自身をなくしてしまうというようなことは、これは許されないというのが私たちの立場であります。
それから、もう一点だけお聞きしておきますが、登録資格で、政府案は、引き続き三カ月以上その者の住所を管轄する領事官の管轄区域内に住所を有することと。だから、その領事官が管轄区域内に三カ月以上いるという人を確認すれば、それは資格のある人だ。ところが、衆法といいますか、政党から出されたものは、引き続き三カ月以上国外に住所を有することと。だから、自分の管轄のところへ来てまだ十日しかたっていないけれどもしかし海外にもういるということになったら、その十日の人もそこで海外に三カ月以上いたかどうかということで認定せにゃいかぬような格好が起こるのじゃないかと思うのですが、その辺、領事官の立場からいえばそういうことができるのかどうか、私ちょっと疎くてよくわからないのですが、どうでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114104219X00419971204/54
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055・妹尾正毅
○妹尾参考人 恐らく、領事官の立場からすれば、その管轄区域に三カ月以上ということがある方が処理上は便利だろうと思います。というのは、在留届は三カ月以上いる人は出さなければいけないということになっていますので、把握しやすいということはあるかと思います。ただ、これも義務的にはなっていませんし罰則もありませんので、在留届を出さない人がいれば、外国で場所を移っても出さないし、移る前から出さないという方もありますので、それは程度の問題ではございますが、把握しやすいということからすれば、恐らくその三カ月の規定がついている方が相対的に、程度の問題としては把握しやすいということは言えるかもしれません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114104219X00419971204/55
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056・東中光雄
○東中委員 では、終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114104219X00419971204/56
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057・葉梨信行
○葉梨委員長 次に、秋葉忠利君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114104219X00419971204/57
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058・秋葉忠利
○秋葉委員 社会民主党の秋葉でございます。
参考人の皆さんには、きょう大変お忙しい中、貴重な御意見を賜りまして、ありがとうございます。お礼を申し上げたいと思います。
特に、金井参考人につきましては、日本とアメリカの間を行き来していらっしゃるということを伺いましたけれども、たまたま参考人の御意見を伺うときに日本にいらっしゃったということで、これはこの法案にとって非常にさい先のいいしるしてはないかと思いますので、何点か伺いたいのです。
実は、私もアメリカに二十年近く住んでおりました。それから、武山議員もやはり長い間アメリカに住んでいらっしゃいますので、そういう意味で状況はいろいろとわかっておりますが、現在のこの法案の審議の過程といいますか、国会や各党の事情を見てみますと、大体賛成をする人が多いのではないかと思いますが、何点かについてまだ十分に説得がし切れていない点がございます。その一つが選挙の資格のところで、帰国をして日本に住む意思があるかどうかというところ。それからあとは、どの選挙に投票できるかというところですが、主に最初の点についてまず伺いたいと思うのです。
もちろん、先ほどの御意見にもありましたように、あるいは私たち本委員会の委員のかなりの者が主張をしているように、これは憲法によって保障されている権利だからそれに制限をつけ加えることはけしからぬという主張、それが一番正当な主張だと思いますけれども、ただ国会の中でいろいろな人を説得する際には、正しい議論を繰り返していてもなかなかできないというところがございます。この点にこだわっている皆さんの意見を少々伺いますと、その中には、恐らく自治省も入るのだと思いますけれども、どうも選挙権と関連をして日本の政治に関心があるかどうかが大事であるというようなところが一つの基準として採用されているような気がいたします。その背後にあるのは、永住ビザあるいはそれに類するものを持っている人たちは、ある意味でもう日本を捨ててしまった、捨てられた方からの逆恨みみたいなものが心理的には少しあるのかもしれませんが、そんなけしからぬやつに何で選挙権を与えるんだみたいな、ちょっと感情的な面もあるような気がいたします。
そこで、そういった方を説得するために、海外で長い間生活をしている日本人の皆さんがどういう重要な役割を果たしているのか。あるいは、先ほどもちょっと言及されていましたけれども、日本に対してどういう思いを持っていらっしゃるのか。その辺のところを何点か伺いたいのです。
私の経験、それから、主に西海岸には実は在米被爆者と呼ばれる人たちが随分たくさんいますけれども、アメリカで全部で千人ぐらい、そういった方々のお話を伺っても、例えば十二月、アメリカでは七日になりますけれども、真珠湾攻撃、もうすぐその日がやってまいります。例えばアメリカでその日がやってくるときに、日本人代表、日本社会代表、日本の歴史全部を背負って、日本はけしからぬ、インファミーという言葉がありますけれども、あんな卑劣なことをやったジャップはけしからぬというような形で差別用語まで飛び出してきますけれども、その矢面に立たされる。
それに対してきちんとした議論をしたり、あるいは日本の立場、日本の歴史といったものをきちんと説明して理解を求めるといったことは、大体長い間アメリカに住んでいる、あるいはほかの国でも同じ事情だと思いますけれども、長い間アメリカに住み、かつ永住権、パーマネントビザを持っていらっしゃる方、例えば金井参考人のような方が、そういったところでは日本の代表としてあるときはたたかれ、あるときは代表として代弁をするという立場にあるということを、私は実際見てまいりましたし、自分でも経験をしてまいりました。
その辺の事情について、改めて金井参考人の方からも、日本人のアメリカ社会における役割ということで一言お述べいただければ大変ありがたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114104219X00419971204/58
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059・金井紀年
○金井参考人 大変難しい広範な話になるわけなんでございますが、短く御説明を申し上げますと、私個人にいたしましては、日本からアメリカに行ってこんなに長く滞在するということは、日本にいたときには想像もしなかったのです。いわば偶然そうなったということなんです。
私は、学生のときに学徒動員でとられまして、そしてビルマで九死に一生を得たような感じなんです。それで、帰ってきて、また学校を出たんです。その戦争のとき、日本の天皇陛下のためにもう死ね、この気持ちは今でも鮮烈に残っているのです。これが一生を支配したと言っても過言ではないと私は思うのです。それくらいの者が、外国へ行って日本を忘れるなんということはそれは絶対できないのです、全部が日本なんですから。
これは、商売で向こうへ行ったということは本当の偶然、食べるために行ったわけなんです。しかし、食べるためには、やはりアメリカにいなくては私の商売はできないわけなんです。それほど日本との縁が深いわけです。その商売の対象はもちろん、日本人ではなくてアメリカ人が多いです。そういうためにつき合いはもちろんありますけれども、しかし日本というものとの関係なしには私の商売はできないということなんです。アメリカに住んで商売をしている人は、ほとんど日本と関係あるでしょう。アメリカだけで商売を、その中だけでやっているという人はほとんどないのではないでしょうか。
ただしかし、例えば専門職、プロフェッショナル、医者ですね。これでもやはり日本人が関係してくるでしょう。例えば弁護士、これも同じです。
先生でもそうですよ。先生で、アメリカの先生をやっている方でも、やはり日本の文化を教えるとかあるいは日本のことを教えるという方が多いですね。そういうことで、日本に全然関係なしに日本人でアメリカに住むということは、中にはほんのわずかあるかもしれないけれども、ほとんどないのではないでしょうか。そういう方は既にもうアメリカ人になっていますでしょう。シチズンを取っておりますよ。そういうことを私は申し上げたい。
それからもう一つは、それはアメリカだけではないのです。私はちょうど十年ほど前から北中南米、パンアメリカンと申しますが、北中南米に、日本人を含めまして二百二十万人の日系人が住んでおります。それらの方々は、それぞれみんな違った事情で海外へ渡っております。それで、やはり海外にいるということで、しかし音信が、連絡が余りなかったのです。それではよくないということで、メキシコにカルロス・カスガさんという二世の方がおられ、この方が提唱してパンアメリカン日系アソシエーションというのをつくろうではないかということで、そういうアソシエーションをつくった。親善ですね。それで、私は北米の代表を務めておりまして、ちょうどもう十二年になります。今名誉会長はペルーのフジモリ大統領です。フジモリ大統領も二世ですよ。今パレスにお母さんと住んでおられるのです。お母さんは熊本当身の方で、そして、日本の塊みたいな方です。ですから、フジモリ大統領は、お母さんから大変な精神的な影響を受けている。私もいろいろな縁があってフジモリ大統領とよくお会いしますし、お母さんともよく会って、いろいろな話をよく聞きます。そのスピリットの中には、もうまさに日本というものがあるのですね。
それから、パンアメリカン日系アソシエーションの綱領の一つに、海外にいる日系人ですね、今度は。今我々は、ここでは日本人を論じていますけれども、日系人というのがいるのです。日系人は、常に日本のアイデンティティーを持ち続けようじゃないか、こういうことなのですね。アイデンティティーということは文化ですね。日本の文化にほかならない。それを持ち続ける。これを忘れてしまっては、その国のシチズンになれない。よく言われますように、外国へ行くと日本がまざってしまうというのじゃないのですね。ちょうどステンドグラスのように、各国の文化が構成され、アメリカならアメリカの一つの美しい文化というものができている。そういう意味で、日本のアイデンティティーを忘れてしまっては何にもなくなってしまうのですね。そこで、各国の日系人は、そういうことを維持していこう、いろいろな問題を助け合っていこう、しかしアイデンティティーは持ち続けようじゃないかというはっきりした綱領があるのです。これは私も、なるほど、本当だなと思っております。
そういうことで、その間に、おっしゃられましたように、例えば戦時中、日本人がリロケートされて非常に苦しんだ、あるいはハワイの問題とかいろいろありますけれども、私は、頭で想像したときに、その瞬間は人間はかっとなりますから、アメリカ人もかっとなって日本を攻撃するとかありますけれども、今、アメリカ人の実際の識者は、あれはもう既に仕組まれたことであるとかそういうふうにいろいろ言う人もありますし、また単純に、アタックだと言う人もありますし、それはやはり時代というものがだんだんと解決していく。またそれを、日本人を代表して我々を、白人と言ってはいけないですね、アメリカ人は我々を見るわけですから、そういう緊張感がありますね。
ですから、日本人は、アメリカに入ってきた中で犯罪が一番少ないと言われているのですよ。それは、日本人は、やはりそういう日本という、自分は日本人だなという意識があると思うのですね。犯罪は若干あるが、ほとんどないですよ、ほかの国と比べるのはよくないですけれども。
そういうことで、しかし、我々は外国へ行かなければならない、外国で商売しなければいけないのだと。偶然、どうしても、好むと好まざると行くわけですから、そのときにいろいろな障害があるけれども、そのとき支えているのは、日本人である、日本のアイデンティティーであるということを私は思っているのです。私ばかりじゃなくて、パンアメリカン日系アソシエーションというのをつくろうじゃないかといって実行しておる人がたくさんいるということで、客観的にも証明されていると思います。
以上です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114104219X00419971204/59
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060・秋葉忠利
○秋葉委員 時間がありませんので、今の金井参考人の御発言、前からの御発言も含めまして、この日本に戻って住所を定める意思があるかどうかという項目、条件にこだわっている議員をお持ちの会派の皆さんにお願いいたしますが、これは自治省もそうなのですが、こういった条件をつけることが、ただ単に憲法上の規定から考えていわれなき差別であるだけではなくて、長い間海外でいわば私たち日本の代表として、日本人の代表として頑張っていらっしゃる金井参考人のような方々に対する極めて悪質なこれは侮辱であるということを御理解いただけたと思いますので、その線で説得、それから修正をよろしくお願いいたしまして、私の質問を終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114104219X00419971204/60
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061・葉梨信行
○葉梨委員長 次に、堀込征雄君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114104219X00419971204/61
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062・堀込征雄
○堀込委員 参考人の皆様、きょうはどうもありがとうございます。また、特に金井参考人には、長年この運動を続けられて、ようやくここまで来たわけでございまして、敬意を申し上げる次第であります。
きょうはせっかく専門家の皆さんおそろいでございますので、多少具体的なことをお尋ねさせていただきますが、今も秋葉議員から質問がありましたように、この前の審議、それからきょうの皆さんの御意見をお聞きして、政府案、野党案、どこかでまとめながら、できるだけ早くこの制度をスタートさせるという責任が私どもにあるのかなという感を実は深くしたわけでありまして、今御指摘のあった国内に住所を定める意思云々という問題も、これはそれぞれ与野党とも議論をしなければいかぬ問題だろう、こう思っております。
そこで、そのほか具体的に幾つか詰めなければならぬ問題がこの前の委員会でも指摘をされておりまして、そのうちの一つに、これはちょっと和泉参考人にお尋ねをしたいわけでありますが、先ほどの発言の中で、特に選挙人の登録申請、これはなかなか大変だ、在外公館でかなりの部分を負ってもらわなければだめだよというお話が冒頭にございました。
それから、申請もそうなんですが、実は、郵便投票の投票用紙ですね。これも、政府案では、市町村選挙管理委員会に本人が請求して投票用紙をもらう、こういう仕組みになっていまして、私ども新進・太陽案では、これはなかなか大変だろう、外国から市町村に投票用紙を請求して、また外国まで戻してもらうという仕掛けはなかなか大変だろうということで、やはりこれは在外公館に御苦労いただくしかないのじゃないかというふうに実は思っております。
そこで、この事務について、先ほど登録の方のお話があったのですが、投票用紙の事務、選挙期間も非常に短くなっていましてなかなか大変だろうというふうに思いますが、その辺の御見解はいかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114104219X00419971204/62
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063・和泉善太郎
○和泉参考人 ただいまの御質問でございますけれども、我々もこれ、郵便による投票の請求を受け付けましたら、最大限努力をさせていただいて、発送の手はず等はさせていただきたいと思いますけれども、その意味でも、おっしゃるように、各関係機関の御協力なり仕組みをいろいろと御工夫をいただき、御協力を賜りたいと思っております。
以上でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114104219X00419971204/63
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064・堀込征雄
○堀込委員 同じ質問ですが、金井参考人に、選挙人本人が市町村の選挙管理委員会に直接請求するというこの仕組み、僕は、海外在住の人たちも、これは在外公館がやった方がより現実的であろうし、その方がいいと思うのですが、いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114104219X00419971204/64
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065・金井紀年
○金井参考人 私の考えといたしましては、レジスターは在外公館でやることですから、在外公館の手続がふえるといっても、そこのレジスターした人にいわゆる投票用紙を送るわけですから、そんなに難しいことはないと思うのです。例えば、日本の市町村に手紙を出すとしても、市町村の住所、そういうものをまた公表しなくちゃならないし、そういった手間は非常に多いと思うのですね。ですからそれも、例えば選挙公報が送れない一つの煩雑さと同様に、非常に煩雑さを増すだけであって、少しも効果はない。やはり在外公館で行っていただきたいということで、私は野党の案に大賛成でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114104219X00419971204/65
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066・堀込征雄
○堀込委員 妹尾参考人に、実は、御経験からして、冒頭の御意見、よくわかります。本当に在外公館、大量の仕事になって大変だろう。とりわけこの法案で、所要経費については書いてあるが、人員配置についてはどうもきちんとしていない。そこは、まず在外公館としてはとても今の人員ではやり切れないよ、こういうお話、よくわかるのです。ですから、私どもも、これから委員会審議をして、外務大臣や自治大臣にも出席をしてもらいながら、当然そういう措置を講じなければこの仕事はできないだろうというふうに思っておりまして、しかし、さはさりながら、国際社会の中でこの制度はやはり仕上げていかなければならぬ、これは日本の国としてどうしてもやらなければならぬ制度だろう、こういうふうに思うのです。
そういう前提で、大変になることはよくわかるのですが、今の投票用紙のことやら、それから冒頭、和泉参考人がおっしゃった申請事務のことやら、いろいろなことをやはり在外公館で御苦労いただかなければならぬのじゃないか、こういうふうに思っておるのですが、御意見ありましたらちょっとお聞かせください。
今の投票用紙の事務を、これは本人が市町村にやるよりは、やはり在外公館でやってもらう方がどう見ても妥当だろうし、そういうふうにしてもらうべきではないか。あとは経費と人の話ですから、それはまた別途対応すべきではないかと私は考えるのですが、所見ございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114104219X00419971204/66
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067・妹尾正毅
○妹尾参考人 その問題については、私、もちろん外務省を代表するような意見を申し上げることはできないわけでございまして、全く個人的な印象ということになりますが、在外公館の役割そのものについては、私は、まず、二つの考え方があると思います。最小限度の仕事をすべきだという考えと、外国で起こっていることについては在外公館はあらゆることに対して責任をとるべきだという、基本的に二つの違う考えがあって、そのどちらをとるかによっていろいろ違ってくるということがございます。
それから、二番目に御指摘の点については、恐らく在留邦人の方々からすれば、それはもう在外公館の方が便利に決まっているのじゃないかと思います。
ただし、例えばニューヨークのように十万人近い日本人がいるということを考える場合、人的手当てはそのままにして、大使館がやったらどうかということだけお決めになると、それを実施する人間は大変だろうと思いますから、その辺の全体をよくお考えいただく必要があると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114104219X00419971204/67
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068・堀込征雄
○堀込委員 ありがとうございました。
最後に、金井参考人にお尋ねをしたいのですが、政府案の選挙区選挙を外している話なんですが、今違憲訴訟を海外ネットワークの皆さん起こしていらっしゃいます。今度の政府案ですと、当分の間ですが、衆議院では五百分の二百、要するに一票を認めないので、〇・四票しか認めていない、こういうことになるわけでありますが、これはやはり今の違憲訴訟を起こしていらっしゃる気持ちからして、そういう違憲の疑いありというような考え方をお持ちでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114104219X00419971204/68
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069・金井紀年
○金井参考人 もともと、海外投票の実現がされれば我々の訴訟は撤回するということは、最初からもうそういうつもりでやっております。やっておりますが、これは帰ってみんなの意見も聞かなければならないのですが、私の意見としましては、やはり一〇〇%を望んでおるわけなんですね。ですから、百分の四十でこれを撤回するということはみんな希望しないのじゃないかというふうに思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114104219X00419971204/69
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070・堀込征雄
○堀込委員 ありがとうございました。終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114104219X00419971204/70
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071・葉梨信行
○葉梨委員長 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。
参考人各位におかれましては、貴重な御意見をお述べいただき、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚くお礼を申し上げます。
御退席いただいて結構でございます。
この際、休憩いたします。
午後零時四分休憩
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〔休憩後は会議を開くに至らなかった〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114104219X00419971204/71
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