1. 会議録本文
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000・会議録情報
平成九年十一月十三日(木曜日)
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平成九年十一月十三日
午後零時三十分 本会議
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○本日の会議に付した案件
預金保険法の一部を改正する法律案(内閣提出
)
及び農水産業協同組合貯金保険法の一部を改
正する法律案(内閣提出)の趣旨説明及び質
疑
午後零時三十三分開議発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114105254X01119971113/0
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001・伊藤宗一郎
○議長(伊藤宗一郎君) これより会議を開きます。
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預金保険法の一部を改正する法律案(内閣提
出)及び農水産業協同組合貯金保険法の一
部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114105254X01119971113/1
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002・伊藤宗一郎
○議長(伊藤宗一郎君) この際、内閣提出、預金保険法の一部を改正する法律案及び農水産業協同組合貯金保険法の一部を改正する法律案について、趣旨の説明を順次求めます。大蔵大臣三塚博君。
〔国務大臣三塚博君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114105254X01119971113/2
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003・三塚博
○国務大臣(三塚博君) ただいま議題となりました預金保険法の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明申し上げます。
本法律案は、最近における我が国の金融環境の変化に対応して、金融システム改革の制度的な環境整備として、預金保険機構が行う資金援助の多様化を図るなどの措置を講ずるものであります。
以下、その大要を申し上げます。
第一に、現行法で預金保険機構の資金援助の対象とされております健全な存続金融機関による吸収合併、営業譲り受け及び株式取得に加え、健全な金融機関と破綻金融機関の新設合併についても新たに資金援助が可能となるよう所要の措置を講ずることとしております。
第二に、平成十二年度末までの時限的措置として、二以上の破綻金融機関の新設合併に対し、金融機関の経営規律の低下を防止する観点から、厳格な制度的歯どめを設けた上で、預金保険機構の資金援助が可能となるよう所要の措置を講ずることとしております。
以上、預金保険法の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明申し上げた次第であります。(拍手)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114105254X01119971113/3
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004・伊藤宗一郎
○議長(伊藤宗一郎君) 農林水産大臣島村宜伸君。
〔国務大臣島村宜伸君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114105254X01119971113/4
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005・島村宜伸
○国務大臣(島村宜伸君) ただいま議題となりました農水産業協同組合貯金保険法の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明申し上げます。
本法律案は、現在の我が国の金融を取り巻く環境の変化に対処して、貯金者の保護とあわせて信用秩序の維持に資する環境を早急に整備するべく、農水産業協同組合貯金保険機構が行う資金援助の多様化を図る等の措置を講ずるものであります。
次に、この法律案の主要な内容につきまして御説明申し上げます。
第一に、農水産業協同組合貯金保険機構の資金援助の対象となる合併として、救済を行う組合による経営の困難な組合の吸収合併に加え、救済を行う組合と経営の困難な組合との新設合併を追加することとしております。
第二に、平成十三年三月末までの時限的措置として、経営の困難な組合同士による新設合併につき、都道府県知事のあっせん、都道府県知事による経営体制の整備等に関する実施計画の承認を経て、農水産業協同組合貯金保険機構が資金援助を行うことができることとしております。
以上、農水産業協同組合貯金保険法の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明申し上げた次第であります。(拍手)
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預金保険法の一部を改正する法律案(内閣提
出)及び農水産業協同組合貯金保険法の一
部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明
に対する質疑発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114105254X01119971113/5
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006・伊藤宗一郎
○議長(伊藤宗一郎君) ただいまの趣旨の説明に対して質疑の通告があります。順次これを許します。谷口隆義君。
〔谷口隆義君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114105254X01119971113/6
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007・谷口隆義
○谷口隆義君 私は、新進党を代表いたしまして、ただいま御提案のありました政府提出の預金保険法の一部を改正する法律案並びに農水産業協同組合貯金保険法の一部を改正する法律案について、橋本総理並びに関係大臣に質問を行うものであります。
現下の景気動向は確実に悪化の方向にあります。先日の日銀支店長会議における各地の状況報告、本年四月以降、百貨店、スーパーの売上高が前年対比で下落し続けておること、新車登録台数が七カ月連続の前年割れ、新設住宅戸数は前年対比八カ月連続の減少等、景気指標は不況の警告を発しておるにもかかわらず、政府は、景気は足踏み状態との判断を変えず、国民の間に深く浸透している景気後退との景況感に大きくギャップがあります。
そのような中で、政府は、ただいま参議院で審議いたしております財政構造改革法案を提出し、デフレ政策をとろうといたしております。
本年四月よりの消費税の引き上げ、特別減税の廃止、社会保障関係費用の引き上げ等により、九兆円の国民負担は景気に悪影響を与えると我々が申し上げていたとおり、大変深刻な状況となり、その上、今回のデフレ政策は弱った体力に冷や水をかぶせるという景気のもう一段の下降を意識的に行わせるような行為としか思えません。確かに我が国の五百兆を超える累積債務は重要な問題であり、解決の方途を考える必要があるのは十分認識いたしておりますが、もう一段の体力の回復を待ち、軌道に乗ったところで抜本的な対策を講じる必要があるのではないでしょうか。
それにつけ加え、ここに来て我が国の景気の足かせとなるような事態が起こっております。
一つはアジア通貨危機であり、もう一つは先日の世界同時株安であります。七月二日にタイのバーツの切り下げ、変動相場制への移行からアジア各国にこれが波及し、香港に波及するに及んで、ドルペッグ制を守るために翌日物銀行間貸借金利三〇〇%を超える水準にするという高金利政策が一方では株式市場を暴落ならしめたわけであります。香港の株の暴落は、アメリカ、日本にも影響し、これにより我が国の景気の腰折れ懸念さえ危惧されておるところであります。
このような景気後退の背後にある重要な問題が金融機関の不良債権の問題であり、私は従来より、この問題を解決しない限り本格的な景気回復はないと訴え続けてまいりました。
昨年の住専国会におきまして、政府は預金者のいない一般事業会社である住専処理に六千八百五十億円の公金投入を強行し、実際は農林系金融機関の救済ということから論点をそらしたわけであります。その結果、本来論じなければならない公的資金の導入に関する議論が行われず、不良債権問題が景気回復の足を引っ張り続け、バブル崩壊以降、六次にわたって行われた六十兆円を超える経済対策も顕著な効果を発現しない結果となったのであります。
公的資金導入論は、その前提で、金融機関経営者の責任、その他の関係者の責任を明確にするのは当然必要であります。それらを明確にした上で、それでもなお公的資金導入の議論は必要であります。これが行われなかったゆえに、政府は超低金利政策をとり、預金者の所得を金融機関に移転することにより不良債権処理を促進する方法をとったのでありますが、金融機関により体力の差があり、不良債権処理をするだけの体力のない金融機関は、来年四月よりの早期是正措置を前に貸し渋りを一層進行させ、それが一層の景気悪化を生じせしめる原因となっております。今次の株式市場の一段の下落でさらに大変厳しい状況になったのであります。
それにつけ加え、昨日の東京市場における株安、為替安、債券安というトリプル安について、市場関係者は橋本政権無策売りと言われております。本日も株式市場は続落し、百九十八円安の前場終わり値一万五千二百三十四円となっております。
そこで、まず初めに、東京市場トリプル安の現状認識及び対応について橋本総理にお伺いし、次に、現在の金融機関の経営状況、また公的資金の導入に関する御所見を総理並びに大蔵大臣にお伺いいたします。
今回政府提出の預金保険法の改正案によりますと、預金保険機構による資金援助の対象を恒久的措置と時限的措置に分け、時限的措置においては二〇〇〇年度末までということで、救済金融機関がない場合にも預金保険機構が破綻金融機関に直接資金援助することを可能としておるのであります。
経営悪化の銀行同士が新設合併し、新銀行を設立し、その際にそれぞれの銀行の不良債権を預金保険機構が時価で買い取り、資金援助をするというものであります。
しかし、このスキームには次のような問題点が内在しておると言わざるを得ません。
一つは、本法適用に関する明確な基準がないということであります。
従来から言われていた大蔵省の護送船団行政が我が国の金融業界の国際競争力を弱らしめ、また大和銀行事件に見られるように、欧米から強く指摘された密室行政、不透明行政を行わせたことから、ビッグバンにおいて護送船団行政からの決別を進めていたにもかかわらず、最近の政府並びに大蔵省の対応は不可解としか言いようがありません。
先日の三洋証券の経営破綻処理において、野村証券を初めとする大手証券四社や、東京三菱銀行など主力銀行三行に寄託証券補償基金の拠出を強要したのであります。今回のスキームでは、大蔵大臣が破綻金融機関に対し、地域経済の影響が大きいと判断すれば、合併をあっせんすることができるということでありますが、そこには明確な基準はなく、大蔵大臣の裁量の余地は大変大きいと言わざるを得ません。
一般的には、どのような金融機関であっても地域経済の影響は大きいものであります。どのような金融機関が救済の対象になり、また当該金融機関が債務超過か否かについても明確でなく、その結果、従来の大蔵省の裁量行政に立ち戻ることになり、透明性のない行政手法が行われた結果、信用秩序の維持ということで、本来淘汰されるべき金融機関の延命になりかねないのであります。明確な基準がないということに対し、総理の御答弁をお願いいたします。
また、一方、金融機関側は安易に預金保険に頼り、モラルハザードが生じることが考えられます。そして、このスキームが乱用されますと保険料の再引き上げにはね返ることになり、預金者に還元されるべき利息にも影響を与えかねないものであります。これについて総理の御見解をお願いいたします。
また、金融機関から預金保険機構が買い取る不良債権は大蔵省の査定に基づく時価ということでありますが、この時価の妥当性とその後、回収できなかった二次損失について預金保険機構が負担するのでありましょうか。来年四月からの早期是正措置の適用を避けるために、不良債権の買い取り価格を行政のさじかげんで行うのではないかという疑念があります。これらに関しまして、橋本総理には護送船団行政の決別という観点で御見解を述べていただき、その他の問題については大蔵大臣より御答弁を求めます。
次に、このスキームを適用した場合の旧経営陣の経営責任について、どのように考えているのか、総理に御答弁をお願いいたします。
次に、預金保険機構の資金の問題でありますが、預金保険の年間保険料収入は約四千六百億円ということであり、現在残高はマイナス二千億円ということで、資金的には枯渇しておるわけでありますが、資金の裏づけがないということで預金者は大変不安になっておるわけであります。平成九年三月末、日銀借入残高五千三百二十一億円、それに対する現在日銀からの借入限度額は二兆円ということになっております。この借入限度額につきましては、政令事項ということで増額も可能である、こういうようになっておりますが、無制限に増大する可能性もありますので、借入限度額については国会議決事項とすべきと考えておりますが、総理並びに大蔵大臣の御見解をお願いいたします。
今回の預金保険法の改正は、破綻金融機関の延命にしかならないのではないかという危惧を大変強く持っております。従来からの右肩上がり経済が続いておれば解決できたような問題も今や望むこともできず、延命は社会コストがかかるだけで全く効果のないものであります。ビッグバンの流れと全く逆行しており、自己責任原則を貫くという観点においても許容できないものであります。経営悪化した金融機関同士が合併した後の展望について、総理の御所見を求めます。
次に、大蔵大臣、農水大臣にお尋ねしたいわけでありますが、御存じのとおり、信用組合の経営状況も大変厳しく、一部では木津信用組合のように一兆円近い資金量を持ちながら経営破綻したところも出てきております。このような信用組合も今回のスキームの対象でございますが、悪い経営体同士の合併のあっせん承認を、預金保険機構では大蔵大臣というようになっておりますが、貯金保険機構の場合は都道府県知事となっており、扱いが異なっております。機関委任事務の観点から、それぞれこの違いを御答弁をお願いいたします。
先日も、大蔵大臣の裁量行政、奉加帳方式等、従来どおりの不透明な行政に対し、改革が進んでおらない状況に嫌気を差し、外国人が売り越し、株価悪化の原因にもなっております。
小手先の延命では、我が国の屋台骨が揺らぎかねません。現在の金融情勢について、市場の声を聞いてください。国民の声を聞いてください。中途半端な処理スキームで強行突破できるものではありません。今や現状は極めて厳しく、それこそ経済救国内閣をつくるぐらいの大胆な対応が求められておるのではないでしょうか。
九二年、九五年、また本年と大幅に株価が下落しましたが、どうも今回は従来と変わっているようであります。以前は体力に余力を残しておった金融機関が、現在はみずからの存続に必死であり、問題金融機関を救済することができない状況になっております。
それにつけ加え、景気のより一層の悪化と我が国の周辺をめぐる動向、すなわちアジア通貨危機はボディーブローできいてくるでありましょうし、株式市場のこれ以上の下落は金融システムの破綻のおそれさえ生じかねません。このような破綻金融機関の救済スキームだけでは連鎖危機を防ぐことはできず、証券、生保、またゼネコン等、どこからも経営危機のきっかけとなり得る現在の経営状況を視野に入れた対応が必要であるにもかかわらず、今回の法案のように、まさに一件一件綱渡りでフォローしていこうというやり方では対応し切れないと断ぜざるを得ません。インフラとしての金融システムを守るためにも、大胆な対応をとるよう強く訴えるものであります。
金融システムのきしみ音が聞こえてきそうな状況であります。現在、我が国の金融システムは、個別金融機関の経営破綻をシステム全体の動揺から断ち切るセーフティーネットが整えられておりません。今やらなければならないことは、預金者保護を前提として、預金者の不安心理の増幅を遮断する仕組みを整え、住専の処理の誤りを率直に認めた上で、真剣に公的資金導入の議論を行わなければならないことを議場の全議員の皆様にお訴えをいたしまして、私の質問を終わらせていただきます。(拍手)
〔内閣総理大臣橋本龍太郎君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114105254X01119971113/7
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008・橋本龍太郎
○内閣総理大臣(橋本龍太郎君) 谷口議員にお答えを申し上げます。
まず、トリプル安についてのお尋ねがございました。
為替相場や株式相場などの動向はさまざまな要因を背景に決まるものであり、その要因を特定することは困難であります。これらのマーケットの動向について、市場においては、景気の先行きに対する不安感等がその要因であるといった指摘もあります。しかし、私は、我が国経済のファンダメンタルズそのものが急激に変化したことによるものではないと申し上げなければなりません。
こうした中で、政府が経済構造改革を主眼とした効果的な経済対策を策定しているところであり、これにより、企業、消費者の経済の先行きに対する不透明感が払拭され、我が国経済の回復基調が、確実で、力強いものになると考えております。
いずれにせよ、マーケットの動向につきましては、国際的な視野を持ちながら、引き続き十分注視してまいりたいと考えております。
次に、金融機関の経営状況と公的資金導入に関するお尋ねがございました。
現在、金融機関は、不良債権の早期処理に取り組んでおり、個々の経営状況はさまざまでありますが、全体の状況は改善しております。
政府としては、昨年、金融三法により整備されました制度の基本的考え方を踏まえ、引き続き預金者保護を図りつつ、金融システムの安定性確保に万全を期してまいります。
次に、基準が明確でないというお尋ねがございました。
あっせんや対象金融機関の基準について、従来の定義などを変えるものではありません。
ただ、あらかじめ機械的な基準を課すとすれば、制度が機能しなくなるおそれが強く、これまで同様、個々のケースに即して判断すべきものと考えております。
いずれにしても、今回の措置の発動に当たりましては、厳正に対応してまいりたいと思います。
次に、モラルハザードについてのお尋ねがございました。
対象となる金融機関は、預金保険法上の破綻金融機関に該当するものに限られ、また、当局によるあっせんや業務の健全かつ適切な運営を確保するための計画の承認を要件とするなど、モラルハザード防止のための厳格な制度的手当てを設けており、御懸念のような事態は生じないものと考えております。
次に、保険料の再引き上げを招くのではないかとお尋ねがございました。
今回の措置により、経営が悪化した金融機関について早期に処理が図られ、結果的に預金保険機構における処理コストも縮減できるものと期待されます。したがって、この措置自体が預金保険機構の財源状況を悪化させる要因となるものではないと考えております。
次に、護送船団行政との御指摘でありますが、今回の措置におきましては、破綻した金融機関は法的に消滅をいたします上、新設される金融機関についても、責任ある経営体制の整備や思い切ったリストラなどについて、当局の承認にかからしめることとしており、護送船団行政により、本来淘汰されるべき金融機関の延命を図るとの御批判は当たらないものと考えております。
次に、旧経営陣の責任についてお尋ねがございました。
これまで預金保険を発動するに際しては、経営者の厳格な責任追及を行うという一貫した考え方、方針をとってきたところであります。今回の措置の適用に当たりましても、こうした一貫した考え方、方針に従い、旧経営陣の厳格な責任追及が行われることには変わりはないと考えております。
次に、借入限度額を国会議決事項とすべきではないかとの御意見をいただきました。
しかし、預金保険機構の借り入れば、保険料が納付されるまでの間、破綻金融機関の処理に要する資金に充てる、そのために行うものであります。したがいまして、この借入限度額は、破綻処理の所要額があらかじめ予測しがたいといった性格上、弾力的変更を可能としておく必要があることを御理解いただきたいと思います。
次に、金融機関の合併後の展望についてお尋ねがございました。
今回の措置におきましては、預金保険機構が不良資産の買い取りを行いますとともに、新たに設立される金融機関の業務の健全かつ適正な運営を確保するために、大胆なリストラ等の計画について、当局の承認にかからしめることにより、新設金融機関の健全経営を確保することといたしております。
残余の質問につきましては、関係大臣から御答弁を申し上げます。(拍手)
〔国務大臣三塚博君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114105254X01119971113/8
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009・三塚博
○国務大臣(三塚博君) 私に対する質問は四問でございます。
金融機関の経営状況と公的資金導入に関するお尋ねでございますが、現在、金融機関は不良債権の早期処理を進めているところでありますが、全体としては改善をいたしております。大蔵省としては、金融三法により整備されました制度の基本的考え方を踏まえまして、今後とも、預金者保護を図りつつ金融システムの安定性確保に万全を期してまいりたいと存じます。
預金保険機構による不良資産の買い取りについてのお尋ねであります。
機構は、当局の検査や監査法人の監査を経まして、企業会計原則にのっとり、適正に評価された時価により買い取りを行うことといたしております。買い取り後、生じました損失または利益は機構に帰属いたしますが、いずれにせよ、整理回収銀行への回収委託などによりまして、強力な回収を図ってまいりたいと考えております。
借入限度額についてのお尋ねでありますが、ただいま総理から御答弁がありましたとおり、円滑な事案処理を行うために借入限度額を弾力的に変更する必要があることから、政令事項といたしております。
信用組合の合併のあっせんに関するお尋ねでありますが、預金保険法は、信用組合に限らず、主力銀行等の金融機関を対象としておりますので、大蔵大臣のあっせんといたしておるところであります。
なお、このあっせんを行うに当たりましては、信用組合を監督し、経営実態を最もよく知る立場にあります知事からのあっせんの要請を前提といたしておるところであります。(拍手)
〔国務大臣島村宜伸君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114105254X01119971113/9
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010・島村宜伸
○国務大臣(島村宜伸君) 谷口議員の御質問にお答えいたします。
経営内容の悪い農協同士の合併のあっせんについてのお尋ねでありますが、農協の監督は、農業協同組合法により、地域の農業事情等に精通した都道府県知事に機関委任していることから、今回の改正による合併のあっせんについても都道府県知事が行うこととしたものであります。
ただし、農林水産大臣及び大蔵大臣は、都道府県知事のあっせんに先立って、信用秩序の維持の観点も踏まえ、その承認を行うこととしております。(拍手)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114105254X01119971113/10
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011・伊藤宗一郎
○議長(伊藤宗一郎君) 末松義規君。
〔末松義規君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114105254X01119971113/11
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012・末松義規
○末松義規君 民主党の末松義規です。民主党を代表して、両法案について総理及び関係大臣に質問いたします。
まず、預金保険法改正案の趣旨から質問いたします。
従来、金融システム改革を総理が説明されるときには、金融システムにつき、フリー、フェア、グローバルという原理のもと、これからは護送船団方式を改めて自己責任原則を取り入れていくのだと明言されてきました。その言葉に比べて、今回の法案の考え方、つまり破綻銀行同士を大蔵省が仲介して、しかも預金保険機構から資金援助を行うというのは、大蔵省による従来の閉ざされた護送船団方式の最たるものであり、金融システム改革の理念と真っ向から対立します。ビッグバン時代の幕あけというこの時期にこんな考え方でいいのでしょうか。総理の御見解を伺います。
まさに政府がやろうとしているのは、経営の失敗から淘汰されるべき破綻金融機関の救済のために日本の金融機関全体に高額の奉加帳を回して、日本の金融機関の体力や国際競争力を奪っているのです。実際に保険料を計算してみますと、平均で都銀一行当たり年間百四十二億円、二〇〇〇年度までの五年間で約七百億円の保険料を支払わねばならない。大手銀行でもかなりの負担であり、体力の小さい金融機関ではもたないと言う人もいます。こんなことでは、ビッグバン以降、外資系金融機関との間で熾烈な国際競争に日本の銀行が立ち向かっていけるはずはありません。総理は、英国のようにビッグバンによるウィンブルドン化、つまり場所は提供するがプレーヤーは外国勢ばかりということをも覚悟しておられるということでしょうか。
次に、破綻銀行同士の合併について思いますに、マイナスとマイナスを足してもマイナスでしかないと思うわけです。このような合併は極めて特異な合併と思われますが、うまくいく見込みはあるのでしょうか、大臣。
特に、この合併については、大蔵大臣の漠然とした裁量のみを発動要件としていることが問題。総理の主張される市場規律を基軸とした透明かつ公正な金融行政とかけ離れています。問題ではありませんか、総理。
特に、金融機関の極端なモラルハザードの例を言えば、それほど経営状況が深刻化していない銀行同士が結託して合併話を持ちかけ、預金保険機構から金を出させることもできるのではないかと思いますが、大臣、いかがでしょう。
さらに、経営責任については、どのクラスの役員まで責任をとらせるのでしょうか、大臣にお伺いします。
さて、今度は、行政のモラルハザードについて申し上げます。
要は、大蔵省の指導監督責任を問う必要があるということです。銀行は、社会に対し信用秩序維持の観点から公的な責任を負うがゆえに、健全経営の義務があります。一般企業では望むべくもない保険による救済などの特別扱いを受けてきたのも、この理由によります。この公的責任はだれに対して負っているのかといえば、銀行の預金者、株主にとどまらず、関連企業の関係者、ひいては地域経済の市民に対して責任を負っていると言ってよい。ということは、すなわち、これらの関係者すべてが銀行が健全経営義務を果たしているかどうかを常にチェックする権利があるということです。したがって、銀行には自己の経営状況をはっきりとわかりやすく示すディスクロージャー義務がもともとからあったということです。
その意味で、銀行の監督を行ってきた大蔵省には二重の責任があると思います。一つは、護送船団方式で全面的に銀行経営を指導監督する立場にありながら、実質上の破綻銀行が相次いだということから、金融機関の健全経営義務を果たせなかったという責任。もう一つは、金融機関の経営実態を知っていながら、地域や市民に対し十分でわかりやすいディスクロージャーをさせる義務を十分果たしてこなかったという責任です。今まで、指導監督を行う立場の者の責任が問われるシステムになっていなかったというのが一番の問題であります。大蔵大臣は、これらの責任をどう認識しておられるのか、伺いたいと思います。
特に、責任の明確化という観点から、破綻金融機関の清算や合併、新しい銀行設立などの処理に預金保険機構から資金援助をする場合には、過去数年間の当該金融機関に対する大蔵省の金融検査結果を公表するよう義務づけるべきです。同時に、金融機関の行った不正な行為に対して、公務員が職務上知り得た不正行為の告発義務を徹底させるなど、厳正な対応を求めるべきでしょう。大臣にお伺いします。
さらに、念のためですが、この大蔵省のあっせんを通じ、後で大蔵省のOBを役員に送り込むようなことはあってはならないと思いますが、念のため大蔵大臣にお聞きします。
さて、最近の経済の悪化を見ますと、政府が現在進めている預金保険機構の活用ではもう金融システムとしてはもたないのではないかと思わざるを得ません。
まず、預金保険機構の収支についてですが、大ざっぱな計算で、政府は、二〇〇〇年度までの五年間で約二兆七千億円の保険料収入を見積もっていますが、既に九六年度に一兆四千億円使っており、二〇〇〇年度までの残りが一兆三千億円しかありません。これだけで金融危機が乗り切れるという見通しを政府が立てているとすると、その見通しはかなり甘いと言わざるを得ない。
その理由は幾つかあります。第一に、株価の急落で金融機関の含み益が急速になくなったというより含み損が拡大していること。第二に、土地の値段がさらに下落すれば、不良債権額が今後もっともっと膨らむことになる。第三に、銀行が倒産すると不良債権額が一気にふえること。例えば京都共栄銀行の場合、公表不良債権額は二百五十八億円でしたが、直近の検査では一千三百億円前後に膨らみました。そして第四に、上場一部の株価が二百円を下回っている経営難の銀行の数が六行あり、証券も十一社ほどあります。円も一ドル百二十六円と円安ですし、日経平均もとうとう一万五千二百三十四円まで下がりました。
総理、これらを考えますと、とても残りの一兆三千億円で金融危機がおさまるとは思えません。新たな手を打つべきです。円安、株安、債券安という三重の日本売りが大きく始まっているというこのマーケットのシグナル、橋本政権に対するメッセージがおわかりになると思いますが、総理、いかがでしょうか。
では、巨額化した不良債権問題に今後どのような資金投入の選択があるかといえば、預金保険料の増額、日銀からの借り入れ、財政資金の投入ぐらいしかありません。現在でも過重負担となっている預金保険料率を上げることはまず無理。また、日銀借り入れについては、現在二兆円まで枠がありますが、返済のことを考えますと、むやみやたらにふやすことができないと思いますが、大臣、いかがでしょうか。
財政資金の投入については、住専のときがそうであったように、国民の理解がかぎとなります。
私は、この不良債権処理に当たっては、ぐずぐずと小手先で対応せずに、迅速かつ思い切った包括的な金融破綻処理の枠組みを提示すべきではないかと思います。
内容としては、二〇〇〇年を待たずに、ペイオフの時期を二年ほど前倒しして金融再編を一気に行い、できるだけ早く金融機関の経営健全化を確保することが極めて重要であります。こうすることによって、国民の負担も最小にできます。
さらに、成果として、金融機関が背負っている不良債権といううみが一挙に吐き出されて健全経営化するということ、そして、金融機関や預金者自身の間で自己責任の意識が急速に高まり、ビッグバンに沿った金融再編が加速化されるということ、そして、九九年度以降の国民の負担が軽くなるということです。その際、一時的にどうしても必要な場合には、預金者保護の立場から政府が財政資金を投入するということ、これを検討する、こういう時期に来ていると思いますが、総理、本当にそう思われませんでしょうか。
最後に、農水大臣に伺います。
住専問題を契機として、系統農協の金融システム改革はどうなったのでしょう。農協の会計収支等のディスクロージャーは進んでいるのでしょうか。また、不健全な農協の合併を前提に、本法案のようなシステムをつくる必要が本当にあったのでしょうか。
以上をお聞きいたしまして、私の質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。(拍手)
〔内閣総理大臣橋本龍太郎君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114105254X01119971113/12
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013・橋本龍太郎
○内閣総理大臣(橋本龍太郎君) 末松議員にお答えを申し上げます。
まず、護送船団方式との御批判がございました。
この法律案は、金融システム改革に伴い、今後、金融再編が加速するものと見込まれます中で、改革を円滑に進めるために、預金者の保護を図り、もって信用秩序の維持に資することができるようなその制度的な環境整備を図るものでありまして、金融システム改革を踏まえたものだと考えております。
次に、金融機関の国際競争力についてのお尋ねがございました。
現行の保険料は、預金者保護、信用秩序維持の観点や国際競争力への影響なども踏まえ、この水準を決定したものであります。今後の金融システム改革におきましては、金融機関の機能強化をもたらす施策が盛り込まれております。これらを踏まえて、我が国の金融機関がみずからの能力を最大限に生かし、国際的にも競争力のあるものとなることを期待をいたしております。
次に、発動要件についてのお尋ねがございました。
あっせんや対象金融機関の基準につきまして、従来の定義などを変えるものではありません。ただ、あらかじめ機械的な基準を課すことにすると制度が機能しなくなるおそれも強く、これまで同様に個々のケースに即して判断すべきだと考えておりますが、いずれにしても、今回の措置の発動に当たりましては厳正に対応してまいりたいと考えております。
次に、今後の金融危機が乗り切れるのかというお尋ねがございました。今後発生し得る金融機関の破綻を現時点で予測することは困難ですけれども、仮に、現在見込まれる預金保険機構の財源では対処が困難な状況が発生しました場合には、遅くとも平成十年度末までに保険料率について検討することといたしております。
最後に、ペイオフの時期の前倒し、そして財政資金の投入について御意見をいただきました。
しかし、現時点におきましては、ディスクロージャーがまだ充実の途中にありますこと、金融システムの安定に細心の注意を払う必要がありますことから、破綻処理におきまして預金者に直接負担を求めることは困難な環境にあると私は考えておりますが、二〇〇一年までのできる限り早期にこの環境整備がなされるよう努めているところであります。
いずれにせよ、政府としては、現時点におきましては、昨年の通常国会で成立をさせていただきました金融三法により整備された制度の基本的な考え方を踏まえ、預金者保護を図りながら金融システムの安定性確保に万全を期してまいりたいと考えております。
残余の質問につきましては、関係大臣から御答弁を申し上げます。(拍手)
〔国務大臣三塚博君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114105254X01119971113/13
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014・三塚博
○国務大臣(三塚博君) 末松議員にお答えを申し上げます。
まず、今回の法案における合併の実効性についてのお尋ねであります。
今回の措置においては、預金保険機構が不良債権の買い取りを行うことによりまして、当該銀行をいわゆるクリーンバンクにするとともに、新たに設立される金融機関の業務の健全かつ適切な運営を確保するため、大胆なリストラ等の計画について当局の承認にかからしめることによりまして、新設金融機関の健全経営を確保することといたしております。
次に、金融機関のモラルハザードについてのお尋ねでありますが、今回の措置は、法律の定義に当てはまる破綻金融機関に対し適用されるものでありまして、また、モラルハザード防止の観点から、当局のあっせんがある場合に限定することや、責任ある経営体制の整備計画について当局の承認を必要とするなどの厳格な制度的歯どめを設けているところであります。
経営責任についてのお尋ねですが、その範囲については、金融機関の破綻に至った経緯等を踏まえて、個別具体的に適正に判断される必要があります。これまでの預金保険を発動するに際しましては、経営者の厳格な責任追及を行うという一貫した考え方をとってきたところであり、今後とも変わりはございません。
金融機関に対する指導監督責任についてのお尋ねですが、従来より、健全性確保の観点から適切な指導監督に努めてきたところであり、また、ディスクロージャーについても拡充してまいりました。今後とも、金融機関の自己責任原則を踏まえ、預金者保護と信用秩序維持を図ることを基本とし、適切な対応を図ってまいりたいと存じます。
破綻金融機関の検査結果の公表と不正行為の厳正な対応についてのお尋ねでありますが、検査結果を公表することは、金融機関の取引先などに不測の損害を与えるおそれなどの問題がありまして、海外当局においても公表されてはおりません。
また、金融機関の法令違反が判明した場合には、今後とも、告発を含め厳正に対処してまいる所存であります。
今回の法案のあっせん措置と民間金融機関への再就職についてのお尋ねでありますが、今回のあっせん措置は、預金保険の発動に当たっての厳正な歯どめとして、公共的な観点から必要と認められる場合に行われるものでありまして、御指摘の事態はあり得ません。
なお、再就職については、従前より国家公務員法の規定等に従って適正に行われてきております。
預金保険機構の借入枠についてのお尋ねですが、借入枠の設定に当たりましては、機構の行う資金援助等の業務を円滑に実施するため弾力的に対応する必要がありますが、いずれにしても、将来の返済財源を勘案し、適正な水準とすることが必要であると考えております。(拍手)
〔国務大臣島村宜伸君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114105254X01119971113/14
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015・島村宜伸
○国務大臣(島村宜伸君) 末松議員の御質問にお答えいたします。
まず、農協系統の改革とディスクロージャーについてのお尋ねでありますが、農協系統金融機関は、我が国金融システムの一員として、事業機能の一層の強化と経営の効率化、健全化を進めるべく、昨年末に成立した農協改革二法に基づき、農協の広域合併や信連と農林中金との統合の推進、業務執行体制、監査体制の強化、自己資本の充実等に取り組んでいるところであります。
また、農協の経営内容のディスクロージャーについては、計画的に開示が進められており、今後とも適切に実施されるよう指導してまいりたいと考えております。
次に、不健全な農協同士の合併に対する資金援助についてのお尋ねでありますが、貯金保険機構による資金援助は、経営の健全な組合と経営の困難な組合による合併等を対象とすることが基本であります。しかしながら、地理的制約から、経営の健全な組合との合併が困難な場合も考えられることから、知事のあっせん、計画の承認等の制度的歯どめを設けた上で、特例的に経営の困難な組合同士による新設合併に対しても資金援助を行い得ることとしたものであります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114105254X01119971113/15
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016・伊藤宗一郎
○議長(伊藤宗一郎君) これにて質疑は終了いたしました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114105254X01119971113/16
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017・伊藤宗一郎
○議長(伊藤宗一郎君) 本日は、これにて散会いたします。
午後一時二十三分散会
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