1. 会議録本文
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000・会議録情報
平成九年十月二十一日(火曜日)
午後一時開会
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委員の異動
十月二日
辞任 補欠選任
塩崎 恭久君 石井 道子君
十月十五日
辞任 補欠選任
渡辺 孝男君 海野 義孝君
十月十六日
辞任 補欠選任
海野 義孝君 渡辺 孝男君
十月十七日
辞任 補欠選任
中原 爽君 世耕 政隆君
十月二十日
辞任 補欠選任
世耕 政隆君 中原 爽君
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出席者は左のとおり。
委員長 山本 正和君
理 事
上野 公成君
南野知惠子君
浜四津敏子君
清水 澄子君
委 員
石井 道子君
尾辻 秀久君
田浦 直君
中島 眞人君
中原 爽君
長峯 基君
宮崎 秀樹君
木暮 山人君
水島 裕君
山本 保君
渡辺 孝男君
今井 澄君
西山登紀子君
釘宮 磐君
事務局側
常任委員会専門
員 大貫 延朗君
参考人
日本看護協会常
任理事 山崎 摩耶君
法政大学社会学
部助教授 伊藤 周平君
財団法人地方自
治総合研究所政
策研究部長
介護の社会化を
進める一万人市
民委員会運営委
員 池田 省三君
奈井江町長 北 良治君
甲府共立在宅介
護支援センター
長 生松みち子君
全国社会福祉施
設経営者協議会
会長 吉村 靫生君
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本日の会議に付した案件
○参考人の出席要求に関する件
○介護保険法案(第百三十九回国会内閣提出、第
百四十回国会衆議院送付)(継続案件)
○介護保険法施行法案(第百三十九回国会内閣提
出、第百四十回国会衆議院送付)(継続案件)
○医療法の一部を改正する法律案(第百三十九回
国会内閣提出、第百四十回国会衆議院送付)(
継続案件)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114237X00219971021/0
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001・山本正和
○委員長(山本正和君) ただいまから厚生委員会を開会いたします。
委員の異動について御報告いたします。
去る二日、塩崎恭久君が委員を辞任され、その補欠として石井道子君が選任されました。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114237X00219971021/1
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002・山本正和
○委員長(山本正和君) 参考人の出席要求に関する件についてお諮りいたします。
介護保険法案、介護保険法施行法案及び医療法の一部を改正する法律案の審査のため、本日の委員会に日本看護協会常任理事山崎摩耶君、法政大学社会学部助教授伊藤周平君、財団法人地方自治総合研究所政策研究部長・介護の社会化を進める一万人市民委員会運営委員池田省三君、奈井江町長北良治君、甲府共立在宅介護支援センター長生松みち子君及び全国社会福祉施設経営者協議会会長吉村靫生君を参考人として出席を求めたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114237X00219971021/2
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003・山本正和
○委員長(山本正和君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114237X00219971021/3
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004・山本正和
○委員長(山本正和君) 介護保険法案、介護保険法施行法案及び医療法の一部を改正する法律案を一括して議題といたします。
本日は、三案について参考人の方々から御意見を賜ることにいたします。
参考人の方々に一言ごあいさつ申し上げます。
本日は、御多忙中のところ、当委員会に御出席いただき、まことにありがとうございます。
介護保険法案外二案につきまして、参考人の皆様から忌憚のない御意見をいただき、委員会の審査の参考にいたしたいと存じますので、よろしくお願いいたします。
次に、議事の進め方でございますが、まず参考人の皆様からお一人十分程度で順次御意見をお述べいただきまして、その後、各委員からの質疑にお答えいただきたいと存じます。
なお、参考人の御発言は座ったままで結構でございます。
それでは、まず山崎参考人から御意見をお述べいただきます。山崎参考人。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114237X00219971021/4
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005・山崎摩耶
○参考人(山崎摩耶君) ただいま御紹介いただきました日本看護協会常任理事の山崎でございます。本日は、本委員会で発言の機会を与えられましたことをまず委員会の先生方に感謝申し上げたく思います。
私は、保健、医療の専門職の立場で参考人意見を申し述べさせていただくわけでございますが、同時に介護保険の利用者の立場も若干代弁させていただきたく存じます。
実は、つい先日も八十五歳で痴呆のお年寄り、寝たきりのお母さまを抱えていらっしゃる娘さんから、この方は在宅で訪問看護婦やヘルパー、ボランティア等の大変効果的なサービスを利用なすって、七年間も自宅の介護をしていらっしゃる方でございますが、介護保険が平成十二年からスタートするなら、私はあと二年頑張ればいいのねと言ったような、大変期待のこもった切実なお声を聞いたところでございます。そのような期待を裏切ることなく、本制度が利用者本位の仕組みでぜひ早期に介護保険法案を成立させていただきたいという立場から、本日は大変時間が短うございますが、幾つかの重視すべき点を申し述べさせていただきたく思います。
お手元に私の発言要旨と若干の資料を差し上げてございますので、ごらんいただきたく思います。
まず初めに、介護保険制度創設上重視すべき点と申しますか、以下の四つの点につきまして御審議いただきたく、実りある制度におつくりいただきたくぜひお願いを申し上げる次第でございます。
まず、基本的には、医療と介護といったものが一体的に提供できる仕組みでこの介護保険が運営されるということがやはり大変望ましい姿ではないかということでございます。そのために四つのことをちょっと申し述べさせていただきたいと思います。
一つは、これもやはり議論になっております要介護認定の問題でございます。平成八年、九年と全国でモデル事業を展開されておりますが、この要介護認定が迅速にかつ公平、しかもそのプロセスが透明にというようなこと、何よりも利用者の権利性がそこに発揮できる、そういった要介護認定のあり方が望ましいのではないかと考えている次第でございます。
二点目は、ケアマネジャーの役割とサービスを提供いたしますときに組まれるケアプランの質の担保といった問題でございます。自立支援というのが本制度の理念でございますが、自立支援のためには生活と健康状態といったものをトータルにアセスメントして、しかも、自立支援でございますから、要介護状態の改善、悪化防止などを目指した効果的なサービス提供が求められるわけでございます。保健、医療、特に看護職等は予防的、予測的な視点でトータルに利用者をアセスメントし、サービス提供のためのケアプランを立てるといったようなことを従来業務としてまいりましたので、この予防的、予測的な視点といったものが効果的にケアプランに反映されることが大変重要ではないかと考えている次第でございます。
三つ目には、要介護認定への不服申し立てとか苦情の処理体制の整備とサービスの質の確保といった問題でございます。これも法案の中に不服申し立てとか苦情の処理といったものは担保されているところでございますが、こういったものが制度の改善に反映される仕組み、これも大変重要ではないかと考えている次第でございます。また、介護認定をされなかった方への支援体制、このこともぜひとも御議論いただきたく思います。また、サービスの質の確保という点では、第三者機関によるサービスの質の評価、これは現在、医療機能評価機構等が既に動き出しておりますので、そういった仕組みも介護保険はスタートと同時に必要ではないかと考えている次第でございます。
四点目は、冒頭申し上げましたような老人の医療と介護のシームレスケアと申しますが、一体的にスムーズに運営できる仕組み、このようなことを重視いただいて制度創設に盛り込んでいただければということを申し述べさせていただきました。
二つ目は、基盤整備の強化といったことでございます。これにつきましてもいろいろ既に御議論していただいているところでございますが、特に新ゴールドプランの鋭意推進といった問題が一つあろうかというふうに思います。これも、新ゴールドプランのサービス個々によって若干ばらつきがございますが、まだ決して高い進捗状況であるとは言いがたいといった実態もあるわけでございます。さらに、今年度以降、全国市町村がこの介護保険制度のために介護保険事業計画を立案することになっているやに伺っておりますが、この介護保険事業計画もぜひ保健・医療職の参加を求めて老人福祉計画と一体的に推進をしていただく、このこともどうぞ御議論いただきたいことでございます。
そのために、三点ばかりきょうは少し申し述べさせていただきたいことがございます。
一点は、在宅の受け皿整備をぜひ二十四時間ケアのシステムでということでございます。このことのためには、いわゆる訪問看護といったものとホームヘルパー、ホームヘルプ事業といったものの協働、例えば訪問看護ステーションにヘルパーさんが一緒に働ける仕組みをおつくりいただくといったような協働の促進、これも大変重要でございますし、もう一つは、こういったホームヘルパーが介護者の日常生活を支えていただければこそ専門職訪問看護が有効に機能し得るのだ、このこともいろいろ私ども現場で聞き及んでいるところでございます。
また、もう一つは、ニーズに柔軟に対応する訪問看護の提供のシステムをぜひ整備していただきたいということでございます。二十四時間ケアということになりますと、早朝でも夜間でも御要望にこたえて飛んでいくということが二十四時間ケアでございますので、このためには現行の仕組みではなかなか柔軟な対応が難しいということがございます。
二点目には、医療依存度の高い利用者の訪問看護など医療的部分の給付上の配慮、これもぜひ御議論いただきたいところでございます。
お手元に差し上げてございます、私ども日本看護協会が調査いたしました長期入院患者の実態、これをごらんいただくとおわかりになりますが、現在、医療機関に長期入院していらっしゃいます患者さんの約半数は訪問看護があれば退院可能というふうに現場の者が判断をしているといったようなデータもございます。要介護度が高ければ高いほど医療ニーズも高まるという実情もございますので、ぜひこのことの御配慮をお願いしたいということでございます。
三点目には、地域の看護職や医療職を確保するための環境整備でございます。
先般の地方公聴会等でも、訪問看護婦のなり手がないという御意見もございましたようでございますが、在宅へのマンパワーのシフト、このことの促進策はやはり環境整備といったことになろうかと思います。
最後の点でございますが、ぜひとも今国会で早期にこの法案を成立させていただくとともに、市民の声を反映しまして、さらに三千三百市町村の地域特性を重視した制度の創設をお願い申し上げる次第でございます。
簡単でございますが、時間でございます。どうもありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114237X00219971021/5
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006・山本正和
○委員長(山本正和君) ありがとうございました。
次に、伊藤参考人にお願いいたします。伊藤参考人。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114237X00219971021/6
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007・伊藤周平
○参考人(伊藤周平君) 法政大学の伊藤と申します。きょうは参議院の厚生委員会の方に参考人として招いていただいて、どうもありがとうございます。厚くお礼を申し上げます。
早速本題に入りたいんですが、私は、多分この参考人の中では一人かもしれませんが、介護保険法案に対して反対の立場から意見を述べさせていただきたいと思います。
なぜ反対かといいますと、これは制度の内容がほとんど国民に知られておりません。介護保険証一枚あればサービスが自由に選択できる、そういうイメージで国民はとらえております。恐らく世論調査もそうだと思うんです。早く入れないと介護の現場の状況は悪化するとか、あるいは保険制度を入れないと介護サービスがふえないとかというのは、全く根拠はありません。少なくとも、介護保険制度を導入してもサービスがふえるかどうかはわかりません、介護報酬が決まっておりませんから。
こういう状態で、国民に幻想に近い期待を広げて、制度の問題点が十分国民にわかっていない段階で法案の成立を急ぐことは絶対やめていただきたい。こういうことをやって、後で恐らく期待を裏切るでしょうし、国民は介護保険制度に対して重大な不信感を抱くと思います。
そういう立場から、きょうお配りしたレジュメに沿いながらお話ししていきたいと思います。主として、介護保険制度を利用する立場から見た場合に、その制度にどういう問題があるかというのをお話ししたいと思います。
これは、衆議院の厚生委員会でもう既に明らかになったところですが、保険あって適用なしと。つまり、多くの国民は、医療保険と一緒で、保険証一枚あれば自由に介護サービス提供機関が選べて、例えば特養でも入所できる、あるいは在宅ホームヘルプサービスが受けられると思っているんでしょうが、要介護認定を受けない限り介護保険の適用はありません。
しかも、これは今の四つの社会保険制度と比べてもはるかに高いハードルが存在します。年齢による選別もありますから、当然、第二号被保険者は特定疾患、つまり加齢に伴う疾病が原因で介護が必要な状態にならないと介護保険の適用はありません。大きく見積もっても、厚生省の推計で見てもせいぜい介護保険の適用があるのは一割です。あとの九割の人は、保険は生涯掛け捨てです。
これは、税金とどこが変わるのでしょうか。なぜこれを保険でやらなきゃいけないんですか。政府が言っているような負担と給付の対応関係などほとんどありません。一割程度の適用しかないものを社会保険方式で行うのは制度設計が間違っております。これはどう見ても税でやるべきだと私は思います。
次のページですが、二番目に、この要介護認定、非常に手続が煩雑で、要介護認定自体が行政処分と、厚生省のQアンドAなんかには書かれております。行政処分ということは、今の措置制度と変わらないわけです。しかも、これは現在の措置制度よりも官僚的、利用者不在の制度となる可能性が非常に高い。
二番目に、要介護認定の手続が非常に煩雑です。申請から結果が出るまで一カ月、ケアプラン作成まで入れても二カ月かかります。そうなりますと、その前にサービスを利用しても、償還払いですから、すべて全額自己負担です。早ければ翌日からでもサービスの利用が可能な現行制度より大幅に後退したものになります。
あと、コンピューターで選別しますが、コンピューターの場合に既にモデル事業で三割近いずれが出たことが判明していますし、また痴呆が非常に軽く扱われております。サービスが不足すれば、当然認定は厳しくなるでしょう。ドイツでもそうでした。自治体の事務量の増大は確実です。財源確保はできているんでしょうか、人材確保は大丈夫なんでしょうか。恐らく、これは導入と同時に不服申し立て続出で、現場は大混乱になるでしょう。
三番目、国民の負担が大幅に増大します。
厚生省の推計で月二千五百円という保険料の水準は、これは明らかな過少推計です。恐らく、この推計では家族の介護三・四兆円ぐらい含まれていませんから、四・二兆円というふうになりますが、将来的に保険料の引き上げは確実です。それも国会を通さずに、政令、省令もしくは条例で行われます。年金額が月三万円余りしかない老齢福祉年金の受給者からも保険料を天引きする仕組みは、どう考えても低年金の高齢者の生活実態を無視しております。
さらに、保険料未納者に非常に厳しい罰則があります。これだけのペナルティーがあるということは、既に厚生省が保険料未納者がたくさん出るということを見込んでいるんだと思います。
利用者負担定率一割ですが、これも現在の福祉サービスの利用者の多くは明らかな負担増になります。利用者負担を払えないとどうなるか。法案には減免規定がありませんから、生活保護を申請してください、介護扶助を創設しますと。しかし、生活保護なんて高齢者はだれも受けたがりません。それほど厳しい制度です。
介護保険で想定されている保険外負担ですが、これは余り知られていないんですけれども、資料の一でお配りしたように、厚生省の資料で明らかに上乗せサービス、横出しサービスというのを想定しております。保険給付で賄われる範囲というのはごくごくわずかです。したがって、これだけでは自宅で自立した生活など到底不可能です。あとは自分で自己負担してお金を出して買ってくださいと。
上乗せサービスというのは保険給付以上のサービスです。例えば、ホームヘルプサービスが週三回しか保険給付では来てくれない、あとの残り週二回来てほしいんだけれども、その部分は自分でお金を出して買いなさいと。そのほか配食サービス、外出介助、おとといちょっと「サンデープロジェクト」でもしゃべったんですが、民間営利企業はここをねらって参入してきています。介護ローンなんかも今できております。したがって、これは当然利用者保護というのが必要なんですが、そういうのは全く法案にはありません。野放し状態です。
それも含めて最大の問題は、四番目の問題ですが、保険あってサービスなしとよく言われることですが、現在、新ゴールドプランの達成が不可能視されております、七割か八割の自治体かよく知りませんが。財政支援がちゃんとなされておりません。特にホームヘルパーについてはパート化が進んでおりまして、国の方針は、パートでふやせばいいという非常に現場を無視した方針です。ゴールドプランに基づく基盤整備の達成がなぜ困難なのか、それを最初にやるべきです、介護保険法案を出す前に。私はそう思います。
その在宅のサービス供給体制が整備される見通しが全く立っておりません。仮に新ゴールドプランが実現されても四〇%です。そういう状況で保険料の徴収など行うべきではありません。しかも、武蔵野市の推計では保険制度導入に伴う事務で全国で二千億円かかる。これだけのお金があれば常勤ヘルパーが六万人雇用できます。なぜそっちのサービスをふやすことにお金を使わないでこういうことに使うんですか。私は疑問でたまらないです。
それから、国や自治体のサービス整備責任が完全にこの法案では抜けております。これは憲法二十五条に違反するんじゃないかと私は思うんですが、それはともかくとして、いずれにしても、施設サービスも含めて新ゴールドプランの目標値自体も低過ぎます。
施設サービスの場合は特養が終身介護・生活施設ではなくなりますので、何と特別養護老人ホームは退所プランをつくるように迫られております。つまり、特養というのは生活していく場がない人が入っていることが多いわけで、その人たちを追い出してどうするんですか、要介護状態が低いということだけで。そういう問題もありますし、社会的入院も私は解消されないと思います。
いずれにしても、一番大きな問題は、政令・省令事項が非常に多い、つまり何も決まっていない、重要なところはすべて厚生省が決めるということになっておりまして、保険者といいながら、市町村は全く関与できません。立法府である国会も十分なコントロールがききません。こういう官僚主導型の法案というのは私は即刻やめるべきだと思います。
そもそも社会保険方式でやるということが間違いで、むしろ現在ある制度を、措置制度は問題がありますが、まずサービスをふやしていくということを考えるべきです。それが介護地獄から抜け出る唯一の道だろうと思うし、それをやらずして保険保険と言うのはなぜか、私は非常に疑問です。
衆議院の総括と参議院審議に望むことは、とにかく法案可決を急ぐということは絶対に避けてほしいということです。国民的議論をもうちょっと深めるべきです。
それから、厚生省もルール違反をしていると私は思います。法案が衆議院を通過した段階から厚生省は既に七月に介護保険制度準備室を設置しております。予算も計上しております。これは参議院での審議を無視しているとしか言いようがありません。まずサービス整備が先決でありまして、それでもしどうしてもお金が足りないということであれば、私は目的税なり税でやるべきだと、そういうふうに考えます。
以上です。時間が来ましたので、あといろいろ言いたいことがありますが、また質問のところでお答えしたいと思います。
どうもありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114237X00219971021/7
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008・山本正和
○委員長(山本正和君) ありがとうございました。
次に、池田参考人にお願いいたします。池田参考人。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114237X00219971021/8
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009・池田省三
○参考人(池田省三君) 池田でございます。このような場所でお話しできる機会をいただきまして、大変ありがとうございます。
私は、介護保険法案について、この臨時国会で問題点をさらに解明し、修正できる部分は修正の努力をお願いし、しかしながら、この臨時国会で何としても成立させて、二〇〇〇年度施行に向けて確実に準備を始めることを前提としていただきたいというふうに考えております。
さて、参議院で最も審議を深めていただきたい事柄は、介護サービスの基盤整備計画の問題であります。衆議院での議論は、介護サービスの質と量についての施策はほとんど提示されませんでした。政府も新ゴールドプランの着実な推進ということを語るだけで、新しい計画策定については全く触れておりません。
しかしながら、新ゴールドプランが完成したとして、確かに介護サービスは一九九五年度の二・二倍程度増加いたします。しかし、お配りした資料の一ページを見ていただくとわかりますように、実は家族介護は絶対量としてふえるのであります。一九九五年度と比べて一・四倍ほど増加いたします。すなわち、新ゴールドプランベースでは日本の高齢化、したがって要介護高齢者の増加に追いつかないということなわけです。皆さんは、介護保険制度が創設されたにもかかわらず、家族介護が増加するということに市民が納得されるとお考えでしょうか。
実は、老人保健福祉審議会においては、厚生省は新ゴールドプランに在宅介護サービスを上積みした計画を提出しております。ケースA、ケースBと言われるものですが、もっともケースAでも在宅サービスの整備率はニーズの半分、ケースBでも四〇%にすぎませんから、極めて不十分なものではあります。しかしながら、その不十分な計画すら法案審議の中でいつの間にか立ち消えになってしまいました。基盤整備の努力が放棄されているとしか言いようがないわけです。
まず、施設整備についてでありますが、デイケアセンターや在宅介護支援センターなど、在宅介護関係施設と特別養護老人ホームなどの建設を促進する必要があると私は考えます。この間の厚生省の考え方は、特養の建設に対して消極的であり、設置者負担に対しても社会福祉・医療事業団の融資の枠を狭めるというような傾向にあるようであります。在宅重視は私たちも賛成するところですが、それは今の日本で施設建設を抑制するということにはつながりません。
資料の図表四に示しておりますが、日本の施設利用高齢者はデンマークの十七分の一、イギリスの九分の一にすぎません。さらに、介護保険施行以降は、要介護認定とされれば軽度であっても利用者は施設介護を選択できることとなっております。現在の措置制度のように行政が職権で入所させるわけではないのですから、現在の措置制度の延長上で施設整備を考えるのは極めて危険だろうと考えるわけです。
今後、高齢化が急ピッチに進行していく中で特に考えなければならないのは、単身高齢者あるいは高齢者夫婦世帯が急増していくことであります。東京の多摩ニュータウンを考えてみていただければわかると思いますが、エレベーターのない高層集合住宅の未来を考えてほしいと思います。特別養護老人ホームの増設ということだけではなく、ケアハウス、グループホームを含め、限りなく在宅に近い施設建設は将来必ず必要となり、今からそれに着手すべきであると思います。
恐らく政府、厚生省も基盤整備に関して本音は推進したいとお考えではないでしょうか。しかし、それが及び腰になるのは財政再建という至上命令があり、社会保障予算を切り込むという政府の方針のためでありましょう。しかしながら、財政構造改革とは一律に歳出を削減することではなく、政策の優先順位、すなわちプライオリティーの再検討であるべきです。歳出のむだを排して、市民生活の安定を優先させる改革が求められる。であるとするならば、政策のプライオリティーからいえば、市民にとって介護サービス基盤の整備は第一位にも挙げられるべき課題であります。しかも、この基盤整備にかかる費用は大したものではございません。ゴールドプラン関係の施設整備予算は一九九五年で七百億円、九六年で一千三百億円、本年度で一千六百億円にすぎません。この五年間で六千億円にも達しない額にとどまっております。
御承知のこととは思いますが、本年度で終了する第十一次道路整備計画の総予算は七十八兆円であります。七十八兆円の一%は幾らでしょうか。七千八百億円です。介護の施設整備は道路予算の百分の一にも満たないというささやかな金額だった。これを倍あるいは三倍にしても、道路予算の二、三%にすぎません。しかも、その効果は後代にわたって極めて大きなものとなるでしょう。
しかし、ささやかな金額とはいえ財源は必要でしょう。財政再建の折、そのような財源はないと大蔵省はお答えになるかもしれません。しかし、財源はあります。介護基盤の財源を新しくつくる必要はございません。なぜならば、介護保険が導入された場合、私たちが保険料を負担することにより、従来国や市町村が負担していた金額が減少するからであります。
参考資料の五ページを見ていただきますと、現行の措置制度と老人保健制度における国の負担は利用料を除く費用のおおむね十二分の五に該当いたします。介護保険は四分の一ですから十二分の三です。したがって、国庫負担は十二分の二ほど軽減されるわけです。金額でいえば二〇〇一年度で五千億円と厚生省も試算しております。もっとも、最近政府は老人病院への社会的入院の解消に係る国庫負担減少分、これを外して三千七百億円としているようでありますが、実際の減少額は五千億円と見るべきでしょう。この介護保険導入による国庫負担減少分を前倒しにして基盤整備の費用に充てれば、財源は十分に確保できるということです。いや、この介護保険導入による財源を介護サービスの基盤整備に使用しないとすれば、それは私たちの保険料の一部が道路予算に流用されることと同じことになります。それは到底私たちの合意できるものではありません。
したがって、私たちは介護基盤整備緊急措置法というものを策定し、来年度より五カ年計画でサービス基盤を確立することを提案いたします。この場合、在宅も施設も生活圏域である中学校区で完結するように小規模特養、グループホーム、ケアハウス、在宅介護支援センターなどを建設するということが望ましい。介護保険が本格的に動き始め、サービスの選択が利用者の自己決定にゆだね始められますと、町外れの大規模特養は恐らく無用の長物と化します。クオリティーの高いものとすることこそが実は極めて効率的な投資になるということであります。
次にマンパワーの問題でありますが、教育、研修などの人材育成については、公費を投入して質の高い人材を育成すべきであります。しかし、ヘルパーなどの人件費については二〇〇〇年度以降は介護保険によって支出されるわけですから、公費でヘルパーなどの雇用をふやすことは困難だろうと考えます。したがって、この問題については介護報酬の水準を高目に設定し、民間セクターの参入を促し、優良な人材が集まるという労働市場の形成を政策誘導すべきではないでしょうか。
介護保険と基盤整備は車の両輪です。参議院ではこうした方向を打ち出し、第一号被保険者の保険料の引き下げによる制限給付という経過措置についても明確に時限を切り、いつから市民の介護サービス利用の権利が完全に保障されるか、それを明らかにすべきだろうと考えます。
加えて、簡単に二点ほど申し上げますが、衆議院の修正論議で第一条の「目的」に書かれた加齢疾病条項についてなぜ削除しないかが明らかにされませんでした。小泉厚生大臣も将来的には障害者への適用が望ましいと述べられたにもかかわらず、削除修正要求は無視されました。これは政府がアカウンタビリティー、すなわち説明責任を果たしていないということです。改めて加齢疾病条項の削除が検討されてしかるべきであります。
さらに、利用者の権利擁護システムが不分明であるという問題も指摘しなければなりません。
先般、法務省の研究会が成年後見問題研究会報告書を公表されました。しかし、民法の禁治産、準禁治産の見直し、財産管理が中心であり、身上監護を含めた本格的な成年後見法の策定にはほど遠いものがあります。したがって、身上監護を含めた成年後見制度の策定を急ぐとともに、当面、介護保険法案の中で市町村が財産管理、身上監護を代行するシステムを推進するような規定を設けることが必要ではないでしょうか。
加えて、市町村に被保険者代表で構成された苦情処理委員会を設置し、調査、勧告、公表の権限を与え、サービス提供事業者の情報公開及び利用者とのサービス提供契約に利用者の苦情に対する手続を明示するなど、そうした利用者の権利擁護の規定を新たに追加すべきであると考えます。
以上でございます。どうもありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114237X00219971021/9
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010・山本正和
○委員長(山本正和君) ありがとうございました。
次に、北参考人にお願いいたします。北参考人。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114237X00219971021/10
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011・北良治
○参考人(北良治君) 御紹介いただきました北海道奈井江町長の北良治でございます。住民に最も身近な立場にある町長といたしまして、お招きをいただき、意見を述べることができますことを本当に感謝を申し上げる次第でございます。
まずは、私の町の構成から申し上げたいと思いますが、人口七千八百人を割る小さな過疎の町でございます。かっては、石炭産業が全盛のころには大小十四の炭鉱がございまして二万人近くの人口があった時期もございましたが、昭和四十八年に最後の炭鉱が閉山した後は減少の一途をたどっております。
現在の六十五歳以上の高齢化率につきましては二二・六%であり、コーホート法による平成十二年の高齢化率につきましては二四・七%、まさに四人に一人という試算に相なっているところでございます。国の発表によりますと、高齢化の推移は昭和四十五年には七%を、平成七年には一四%を超え、平成十二年には一七%と試算しております。地方の高齢化の進行につきましては、先ほど申し上げましたように国の見込みより早く、介護問題は行政の最重要課題となっております。あわせて、少子・高齢化は産業構造にも重大な影響を与えているところでございます。
したがいまして、今回の介護保険制度の必要性と早期制定について、私はこうした立場に立って地方としての意見を述べさせていただきたいと思います。先ほど申し上げましたが、我が国において急速に高齢化が進行するとともに介護を必要とする者の数も急激に増加いたしております。あわせて、介護の期間の長期化や家族の核家族化による介護能力は大きな変化が生じております。
私は多くの高齢者から、自分や配偶者が寝たきりや痴呆になったらだれが介護してくれるかという不安の声を聞いております。私は、このたびの介護保険制度は、国民共同による連帯の理念に基づき高齢者を支えるという視点と、自助、共助、公助の相互扶助の精神により支えるという視点があるものと理解をいたしておるところでございます。
現在の介護は、保健、医療、福祉にまたがり、おのおのの制度により提供されており、公的介護保険制度は、これらサービスを一つの制度にまとめ、利用する者にはもちろん、提供する者にもわかりやすく、高齢者が安心して暮らすことのできるものとするための制度間調整を図るものと理解をいたしております。今まで地方からの三制度の制度間調整の要望に対応していただいたものと考えております。
また、利用者の負担や手続等が別々ということから、多くの高齢者から不公平感の指摘があり、これらを解消し高齢者が安心して暮らすための保健と医療、福祉が横断的に連携し、一体的な介護のサービスが受けられる介護保険制度の創設は極めて重要であり、早急に制度化されることを願うものでございます。
また、介護保険の財源の負担方法について税金か保険かの議論がございますが、私は、特に福祉について申し上げますと、今日まで行政がただ与えるものだ、行政からしてもらうものだ、こういう受け身の考えが率直に申し上げて定着しているのではないかと思います。同時に、市町村におきましても、ニーズに対し措置すればよいとの考えがございました。介護保険制度の創設によって保険者である市町村は、被保険者のニーズに対し、サービス等の政策の展開が必要となり、地方分権の具体化の一つであると考えております。
先ほど申し上げましたが、自助、共助、公助の相互扶助のシステムが必要であると考えております。高齢者におきましても、最小限度といいますか、一定の負担はみずからも負担するという自助の意識を醸成することもこれまた大切な一つでございます。とともに、権利義務の関係を明確にし、利用者の選択が可能となることから、保険方式が時代に適合する方式であると私は考えております。
私は、この介護保険は、市町村が保険者として実施すべきであると考えております。私は、介護保険制度の考えが提示されて以来、限られた財源、人材の確保が困難となることが予想される、我が町でもそのように考えるところでございますが、そういった立場から広域事業で取り組む。自治体の枠を超えて、隣町と協議をいたしながら、平成八年度には共同で要介護認定の事前試行や介護認定審査会の設置等も行いました。訪問看護ステーションについても共国運営する等、コストや人材の確保等に一定の成果をおさめたところでございます。
隣町と一体になってやった。そして、この保健、医療、福祉ばかりでなく、あらゆることについて両町の町民が協力をし合って、お互いにつくり上げていこう、こういう雰囲気になってきたこともこれまた事実でございます。
特に、両町のこれまでのノウハウを相互に提供し合い、行政の垣根を越え、住民のためのサービスを提供するという行政間の意識改革ができたことも私は大きな成果であると思います。
平成九年度からは、これらの成果を踏まえまして、近隣の町三町を加えまして五町でございます。この五町につきましては産炭地跡で高齢化率は非常に高うございます。純農村、そして都市のベッドタウン的な要素もあるところの町もございます。若干工業化している町もございます。町々が本当にケースが違いますが、隣町との成功の例を見まして、ほかの町からも声がかかってまいりました。ぜひ協力してやりましょう、そしてお互いに協力し合うことによって事務のスリム化だとか、これはもう現にできておるんです、隣町と。あるいは、御案内のとおり、マンパワーの不足だとかそういったものをこの五つの町で本当に知恵を出し合って、そして住民参加の中で協力し合ってこれをやろうという動きになっております。
そして、はっきり申し上げますと、介護認定の事前試行におきまして公平性の確保、客観性の確保、これは住民にとりまして非常に大切なことでございます。私の町だけで要介護認定の審査会をやらせていただきました。そしてその後、隣町ともやらせていただきました。お互いに参加して、その中でどういうことが起きたかといいますと、自分の町のことは医師、福祉関係者も含めて、自分の町のニーズ、人の状況というのは詳しくわかるわけでございます。しかし、ねたみが出ています。あの先生、あの医者にはお世話になっているから介護度を高く見た、こういうねたみであります。しかし、隣町が入ることによって全く白紙の状態で客観的に公平に見ることができる。これは町民がみんな言っております。聞いてみたらわかると思います。
そんなことで、私どもはこの五町の会議を真剣に昨日も行いました。皆さん協力し合いながら、町村間の垣根を取り払う。そしてまた、その隣の市もぜひ参加させてくれと呼びかけがございます。
介護保険法案にはいろいろな問題、課題がございます。先ほどからお話があるとおりでございます。しかし、現場で実際に介護等に従事している者や要介護者、市町村の意見を、制度を立ち上げると同時にぴしっとその制度に対する意見を反映できるようにしていただきたい。
問題点が多々ございます。ただ、それは従来の審議会方式でなく、実際運営を行っている人たちを主体にしながら意見の聴取をし、国会等に反映をしていただきたいとお願いを申し上げる次第であります。
また、個々の市町村の財政基盤は脆弱でございます。国がしっかりしたその財政基盤を支える調整あるいは支援の機能を確立していただく。真に本当に住民のため、国民のニーズにこたえながら、住民に密着した制度に育て上げることが必要であることを申し上げ、意見といたします。
終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114237X00219971021/11
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012・山本正和
○委員長(山本正和君) ありがとうございました。
次に、生松参考人にお願いいたします。生松参考人。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114237X00219971021/12
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013・生松みち子
○参考人(生松みち子君) 甲府共立在宅介護支援センターの生松と申します。
私は、支援センターに転勤する前は、甲府共立病院で医療ソーシャルワーカーを二十年経験してきました。私が病院及び在宅介護支援センターでの仕事を通して感じていることを総括的に申し上げたいと思います。
まず、お手元の資料一をごらんになってください。当支援センターでは、この四月から九月まで延べ件数で三百七十九件の相談を受けてきました。新規に相談受理したケースはちょうど百件ありました。寝たきり、痴呆については厚生省の障害老人の日常生活自立度判定基準と痴呆性老人の基準に沿って分類したものです。
相談者の半数が寝たきり状態の要介護状態で、特に後期高齢者の七十五歳以上の方が三十六名おられます。今年度民生委員さんが調査した要援護高齢者の実態調査で、甲府市には寝たきり老人が四百九十名、痴呆性老人が七十九名、ひとり暮らし老人が四千六十九名と報告されています。
当センターの位置する地区にはひとり暮らしで常に虚弱の方が百十七名、やや虚弱が四百五十三名住んでおられます。支援センターの協力員であります民生委員さんから紹介されて訪問いたしますと、想像以上に家の中にじっとしている、閉じこもる高齢者が多いことに驚きます。当センターの新規登録者でも四割の方が子供夫婦、孫たちとの同居世帯ですが、日中はひとり暮らしで、一日のほとんどをこたつに入ってテレビを見て過ごしています。ちょっと介護の手があればトイレで用を足せるのに、紙おむつを使って家族が夜仕事から帰るのを待っている、そういうケースがたくさんあります。
支援センターから出向いて在宅福祉サービスの御紹介をしても、ほとんどの方はまだ結構ですとおっしゃいます。日中ひとりで過ごせなくなったとき、家族からのSOSが発せられます。高齢者も家族もぎりぎりまで制度活用をしないで我慢し、みずからが相談の電話を入れるときには重症化し、重度化しています。家族の訴えは、せめて自分のことは自分でできるようになるまで入院させてほしい、在宅はとても心配、施設を紹介してくださいという訴えです。しかし、実際は病院にはなかなか入院できませんし、老人福祉施設にも入れません。仕方なく家で見るしかないといった捨て身の相談も多くなってきているのが支援センターの相談事例の特徴だと言えます。
悪戦苦闘している毎日の中で、介護保険法は深刻で切実な介護問題にこたえてくれる制度なのかどうか、疑問を持っております。
次に、介護保険法についての問題点を二点申し上げたいと思います。
第一点は、介護保険は医療保険の給付と比較して余りにも手続に手間がかかることと、低所得者にとって費用負担が大きく利用しづらいということです。申請から要介護認定審査を受けて三十日以内に通知を受けた後、ケアプランを作成していただき、そしてサービス開始となります。私は、障害年金や特定疾患の申請から決定まで数カ月を要しますが、介護保険法における介護認定のシステムもそれに近く煩雑で時間を要すると思われます。
また、介護保険料と利用料の定率負担は多くの市民にとっては介護サービスを受けられない深刻な事態を引き起こすものと考えられます。
資料二をごらんになってください。甲府市のホームヘルパーの派遣状況の資料です。利用者の約七〇%は利用料ゼロの世帯です。
そして、資料三をごらんになってください。甲府市の平成七年度の国民健康保険世帯の二八%が所得を全く持っていない世帯で、これに百万円以下の世帯を入れると四二%を占めています。国民健康保険料の未納世帯は、低所得者階層ほど多く、新たな介護保険料の負担はますます未納世帯を増加させることが予測できます。
資料四は、山梨県内にある八十床の特別養護老人ホームの調査報告書です。入所者の年金受給状況を見ると、福祉年金及び国民年金を受給している方が五十九名で全体の七三%を占めています。そして、国民健康保険加入者が八七・五%を占めています。そして、入居者のうち介護保険導入時の一割負担の概算額である四万七千円を負担できる方は二十六名しかおらず、あとの五十四名は負担できなくなると報告されています。
以上のような報告資料から読み取れることは、介護保険料の負担は、決して悪質ではない経済的理由から納入困難を生じさせます。法案には極めて厳しいペナルティーを課していますが、見直すべきだと考えます。
第二の問題は、要介護認定に当てはまらず、大量の介護給付漏れを引き起こすおそれのあることです。介護認定の基準を機能障害中心に置いています。
資料五をごらんになってください。一九九五年に甲府共立病院を退院した甲府市内に居住する六十五歳以上の高齢者四百十九名を訪問調査し、退院後の医療や介護についての実態調査を行ったものです。その中から要介護状態と判断した六十事例の中から、五十三例再訪問し事例調査を行いました。
厚生省のモデル介護認定審査会運営要項に沿って分類いたしましたところ、A群、要介護と認定される人の方が十九名、B群、要支援と認定される方が十四名、いずれにも該当しないC群が十九名おりました。介護認定から漏れるC群は麻痺や切断など機能障害はないが、腰痛などで動作に時間がかかる、足腰が弱くて余り外出できない、筋肉痛のために自分で買い物に行けない、内部障害で身体障害者手帳を持っているが家事ができないこともあるといったような多様な生活障害を抱えている方たちでした。これらの人々は多病で、たくさんの病気を持っています。例えば狭心症、胃潰瘍、慢性腎炎、肺がん、慢性呼吸不全、精神分裂病などの疾患を持っています。以上のような方たちはADLや身体機能面では特に問題はなくても、疾患などのために、身体虚弱のため家族の世話を受けなければなりません。換言するならば、介護保険法は以上のような方たちについては何の支援もないことだと思います。
問題は、こうした方たちに従来は措置制度による福祉サービスとして家事ヘルパーなどを派遣してきました。介護保険が実施され、従来行われていたサービスが廃止されることはとても問題だと思います。
最後に、私の意見をまとめて申し上げて終わりたいと思います。
少なくとも低所得者については次のような対策をとっていただきたいことです。
一つは、手続を簡略にし現金払い、償還払いなどを強いることなく必要即応の原則を明確にしていただきたいこと。第二には、非課税世帯だけでなく、生活保護基準の一・四倍以下といった低所得者の方たちにも保険料の全額免除と利用負担料の全額免除。第三に、保険料滞納者へのペナルティー制度はやめること。第四に、介護保険法ができても措置制度を残す方策をとること。
以上のように、多くの問題と課題を残しているとしたら、介護保険法の決定は、国民全体の十分な討議を得て実施するか否かを含めて決めてほしいと思います。
ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114237X00219971021/13
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014・山本正和
○委員長(山本正和君) ありがとうございました。
次に、吉村参考人にお願いいたします。吉村参考人。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114237X00219971021/14
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015・吉村靫生
○参考人(吉村靫生君) 全国社会福祉施設経営者協議会の吉村でございます。
当参議院厚生委員会にお招きいただき、貴重な時間を割いて意見をお聞きいただきますことに心からお礼を申し上げます。
私の所属しております全国社会福祉施設経営者協議会は、全国社会福祉協議会に組織されており、社会福祉施設を経営する社会福祉法人を会員とし、ほとんどの特別養護老人ホームが加入している組織であります。
今回、審議が行われております介護保険制度についての基本的考え方と要望事項を申し上げます。
まず、基本的考え方について三つ申し上げます。
第一に、現在我が国には二百万人を超える寝たきりや痴呆など介護を必要とする高齢者がおり、その介護の問題は要介護高齢者の増加、介護期間の長期化、要介護状態の重度化、介護者の高齢化など年々深刻化し、介護に対する福祉対策の需要はますます高くなってきています。
第二に、今後高齢化が急速に進む中で、高齢者の介護需要に的確にこたえていくことは、社会福祉施設を経営する者のますます大きな使命であると強く認識しているところであります。
第三に、今後の高齢者介護対策に対応するためには、現在の制度による財源調達等には限界があり、新たな介護保険制度の導入により、介護サービスを総合的に利用できるシステムを構築することには賛成であります。
次に、要望事項について申し上げます。
介護保険制度の導入は、これまでの措置制度から保険制度へと移行することとなり、根本的な改革を伴うものでありますから、福祉関係者の不安があります。このため、社会福祉施設を経営する関係者が安心しへ新しい保険制度にスムーズに移行できるようにするため、次の点について特段の御配慮をいただくよう要望いたします。
第一は、社会福祉事業の公益性、公共性を確保するためには、社会福祉法人制度の根幹は変えるべきではないと考えております。特別養護老人ホームにおける介護は、高齢者の最後の生活の場を保障するためのものであり、高齢者に不安を与えてはならず、何よりも安定性が求められております。このため、特に特別養護老人ホームは社会福祉法人で運営されるべきであると考えております。
第二は、特別養護老人ホーム等の福祉施設の整備については、福祉制度としての位置づけ、基盤整備の促進等の観点から、引き続き国及び地方自治体の公費中心で進める必要があります。また、施設整備に伴う設置者自己負担分については現在その返済財源を寄附金に頼っていますが、これは現状にそぐわない面が多いため、介護保険制度対象施設については減価償却制度を導入し、その相当額を介護報酬に算入していただきたいと考えています。
第三は、特別養護老人ホームは、これまで現行制度の中で高齢者や家族の立場に立った良質の介護サービスを提供してきており、このサービスの水準を低下させないため、定員別単価、級地区分別単価及び各種加算制度、例えば民間施設給与等改善費などについては現行制度を保障していただきたいと考えております。
第四は、福祉施設職員の処遇向上を図るため、現在、社会福祉・医療事業団で実施している退職共済制度等種々の制度については、現行の制度を保障していただきたいと考えております。
第五は、介護保険制度をスムーズに特別養護老人ホーム等福祉施設に導入するためには、十分な経過措置を講じていただきたいと考えております。
第六は、保険料やサービス利用に伴う自己負担は、一般の高齢者にとって無理のない妥当な水準を設定していただきたいと考えます。また、低所得者が不利益をこうむることがないよう十分な配慮を特にお願いいたします。
最後に、社会福祉法人の運営に関しては、例えば役員の構成や会計処理についても細かく規定されており、経営努力が生かされない現状となっています。今後、経営努力が生かされ、経営の安定化が図られるように社会福祉法人に対する規制は緩和する方向でぜひともお考えいただきたいと思います。このことは特別養護老人ホームのみでなく、社会福祉施設を運営する社会福祉法人の共通的課題であります。
各国会議員の先生におかれましては、本国会において介護保険法案をぜひ成立させていただきたくお願い申し上げます。あわせて、これら要望についてぜひとも実現いただきますようお願い申し上げます。
以上で私の発言を終わらせていただきます。貴重な時間をいただき、ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114237X00219971021/15
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016・山本正和
○委員長(山本正和君) ありがとうございました。
以上で参考人からの意見の聴取は終わりました。
これより参考人に対する質疑に入ります。
質疑のある方は順次御発言願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114237X00219971021/16
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017・中島眞人
○中島眞人君 自由民主党の中島眞人でございます。
六人の参考人の方々には、大変御多忙の中を貴重な御意見を賜りまして大変感謝をいたしております。
実は、世論調査を見てみますと、介護保険制度の導入に賛成か反対かという世論調査は、日とともに上がってきている。八月三十、三十一日の実施では七六%、なるべく早くというのが八〇%というふうなデータが出てきているわけであります。
そこで、全員の先生方にお聞きをしたいと思うのでありますけれども時間の関係上できませんので、まず実践をなさっていらっしゃる北さんと、そして、この制度が定着しない段階で既に御熱心な取り組みをなさっておりました山崎さん、それに、私どもと若干立場を異にしております伊藤さんの三名にちょっとお聞きをしてみたいと思います。
まず、北さんが町長さんとしてお取り組みになっております、五町で介護保険事務研究体制がスタートした。その中に、ちょっと読んでみますと、「制度の善し悪しは論議すべきですが、老後生活の不安要因を解決するための「介護保険制度」こそが、福祉の地方分権として、高齢者に常日頃接する市町村が取り組むべき最大の課題であると思っています。」と。こういう一つの御主張の中でいち早く五町でこのような事務の取り組みがなされた。同時に、福祉自治体ユニット設立趣意書を見ていきますと、ともかく日本の福祉の体系を一日も早く確立しなきゃならないんだ、その中に本日の参考人の池田参考人もお入りになっているということで、大変私ども地方は困るのではないのかというふうな危惧をしておった点の中で、そういう面で、地方でこのような地道な取り組みが行われているということに対して大変深い関心と敬意を表するわけであります。
そこで、北参考人にお聞きをいたしますけれども、とかくこの制度が導入をされていくと第二国保になるんじゃないのか、あるいは介護あって保険なしということが起こるんじゃないのか、要介護認定が大変煩雑で困るんではないのか、あるいはマンパワーが不足しているのではないのかというような御指摘がまさにこの制度を否定する一つの最大要因のごとく私どもには伝わってくるんですけれども、先ほど北町長さんが言ったようにこの制度こそ福祉の地方分権はここから始まるんだというそんな発想の中で、この問題についてはどんなふうにクリアしていったらいいんだろうか、そしてクリアできるんだろうか、こんな点を北参考人からお聞かせいただきたいと思います。
まとめて申し上げます。
次に、山崎先生には非常に早い時期から介護という問題に積極的にお取り組みをいただいているわけであります。
私どもいろんな御論議を聞いてまいりますと、先生も御指摘をしておられますけれども、マンパワーシフトの促進策というのがあります。確かに、過疎高齢化地域、農村部、山村なんかに行きますとそういうマンパワーが不足をしている、やはり薄いサービスといいますか、そういうものになってしまうんじゃないのか。そういう中で、このマンパワーを確保していく一つの対応というのはどういうことの呼びかけをしたらいいんだろうか。
同時に、介護といっても医療とのかみ合わせでございますから、やはり医療あるいは看護という中でその絡み合いというものを制度的に取り組んでいかなきゃいけない、こんなふうに思うんですけれども、特にそうでなくても看護婦不足がございます。しかし、看護婦さんの資格をお持ちになった、リタイアした看護婦さんというのはかなりいるわけであります。宝でございます。
こういうふうな方々も介護の実践の中にもう一回帰ってきていただきたいということを含めながら、看護協会としてこの介護保険導入に当たってどういう取り組みを考えていらっしゃるのか、こんな点をお聞かせいただきたいと思います。
次に、伊藤参考人でございますけれども、極論を申し上げますと、もう保険じゃだめなんだ、公費方式をとるべきだと。
具体的には、先生の著書なんかを読みますと福祉目的税を創設すればいい、福祉目的税が創設できない場合には消費税を目的税化すればいいというふうな、これは先生の持論をまとめて私は言っているわけでありますけれども、日本の現在の社会の中で消費税とか福祉目的税という形の中で介護をやっていくというシステムは国民が合意するんだろうか。
同時に、私は従来の福祉という問題から考えていきますと、先ほど御意見がございましたけれども、福祉というのは税金という形の中で、見てやるものだ、見てもらうものだという形の福祉、上から下へという考え方だった。しかし、やっぱり保険というものは、みんなが扶助していこう、助け合っていこうという形の中から生まれてきた日本の福祉の発想の大転換だと私は思うんですね。北欧のような高負担の中でも高福祉を望む国もございましょうけれども、日本の場合かつて苦い経験を、福祉目的税もありました、消費税の問題についてもございました。
そういう問題の中で、果たしてそのことが日本の国に合うんだろうかという問題、同時に、もしよしんばこの税負担でいくとしたら、これから進んでいく超高齢化の中で税負担の財源というのはどのぐらいを見込み、どのぐらいの国民負担をお願いしていかなければならないのか、そういうことをまずお聞きいたしたいと思います。
以上です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114237X00219971021/17
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018・北良治
○参考人(北良治君) それでは、御質問いただきましたので、私から冒頭、お答えといいますか私の考えを申し述べたいと思う次第でございます。
まず、御質問の最初にありました国保の二の舞になるのではないか、こういうお話でございますけれども、実は国保で私ども市町村は非常に厳しい財政運営を強いられて苦しんでいることもこれまた事実でございます。そして、御案内のとおり、毎年国保税が上がる、議会、町議会あるいは市議会等も含めて議論をし合いながら値上げをする。毎年のように、御案内のとおり今最高限度額が五十三万でございますけれども、そういったふうに徐々に値上げしていく。これが大変住民にとりましては不満が募っていることも事実でございます。
しかし、これの根拠は何かといいますと、私ども考えてみるに、あくまでもこれは医療費が膨大にアップしてきている、これもやはりきちっと冷静に受けとめなけりゃいけないと思うんです。したがいまして、私の考えといたしましては、介護の分野まで医療が全部見ている、これが医療費アップの大きな原因ではないかと思います。それが今回の介護保険によりまして医療費がある面で削減される要素が非常に強うございます。私どもの町だけでちょっとシミュレーション的に計算させていただきましたが、確かに医療費が下がるということがはっきり明確になってまいります。したがいまして、国保の二の舞という単純なことでなく、国保の運営のしやすいように介護保険を成立させてほしいというのが私の考え方でございます。
それからいま一つは、地方分権と介護保険がどうつながるんだというお話かと思いますが、これにつきましても今率直な話を申し上げますと、お話がありましたように福祉というものは与えられるものだ、全部何からかにまでしてもらうものだという考え方が措置費をいただくということによって案外定着をしてきていたんです。
しかし、私は、市町村がこれをみずから考える、みずから努力して、そしてその人らしく生きてもらおうというふうに考えていくためには、やはり今お話がありましたように介護保険によりましてこれも展開ができるだろう、こういうふうに私なりに考えている。ということは、みずからが市町村をどうしたらいいか考えていきます。そして、自己責任が拡大してまいります。それが地方分権の新しい芽をつくる一つの突破口ではなかろうか。
私は市町村長として責任がある。市町村長として、福祉は知らない、医療は知らない、これは一番大きな問題なんです。これはやはり私も体を張って、住民とともども解決していかなきゃならない。ですから、これは地方分権の流れをつくりたい、こういうふうに思います。
それから今、要介護認定で煩雑ではないかというお話、私どもも実際にやりまして、確かにそれは事実です。直すところは直していかなければいけない、こういうふうに思いますが、ただ基本的には、やはり福祉の介護度等につきましては、今若い人たちも相当前向きに勉強してきております、地域でも勉強してきております。それをなお養成する機関をきちっとつくっていただきたい、こんなお願いをいたしておきたいと思います。
それから、マンパワーの確保につきましては先ほど広域でというお話をいたしました。隣町と、そしてまた今度五町一市が加わるということになっておりますが、この五町一市でみんなで人材を拠出し合いながら、そしてこれらの介護認定に、あるいはまたマンパワー確保に当たりたい、こういうふうに思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114237X00219971021/18
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019・山崎摩耶
○参考人(山崎摩耶君) どうも御質問ありがとうございました。地域でのこういった介護保険提供サービスを担いますマンパワーについての御質問でございました。
先生が御危惧なさいますように、大変この看護婦不足の中で果たしてマンパワーがシフトしていくのかということでございましたが、幸いなことに看護婦等の人材確保法、九二年に先生方の御尽力で新しいものができました後、大変看護のマンパワーというものが充足してまいりました。離職率も下がってきておりますし、労働条件等も週四十時間労働等で職場も改善しておりまして、厚生省の将来見通しによりますと、介護保険がスタートいたします二十一世紀初頭には一〇三%程度で看護婦はもう充足してくる、こういった見通しの予測も出ております。その中では、約十万人ぐらいがこの介護保険の関連するサービス提供、在宅福祉ですとか訪問看護ステーション、それから福祉施設等に配置ができるのではないか、こんな見通しが一つ出てございますので、私どももろ手を挙げて楽観しているわけではございませんが、何とかなるのではないかというふうに考えております。
それからもう一つは、やはり看護職の中にも、こういった在宅の場ですとか老人看護、訪問看護等が大変魅力ある職場という選択肢の上位に上がってまいりまして、その理由の一つは、やはり先ほど離職ナースの活用という御意見もちょうだいいたしましたが、フレックスタイムで働けるメリットもございますし、例えば都心の訪問看護ステーションが二十四時間、夜間の訪問も施行してございますが、夜間だけのシフトで働きたいというような看護婦たちがそこに採用されたり、多様なシフトで働けるといった一転魅力のある職場になりつつある、こんなことも二つ目にございます。
こういった背景を受けまして、私ども日本看護協会としましてもこの介護保険にはやはり貢献をしたいというふうに考えておりまして、今まで幾つかの事業を進めてまいりましたが、一つはやはり担い手として、みずからの資質の向上といったものも努力させていただいておりまして、一つは訪問看護婦の認定研修ですとか、それから昨年度からはケアマネジャーの養成研修等も既に始めさせていただいているところでございます。
いずれにしましても、量の確保は何らかの形でいくのではないかというふうに考えておりますが、先ほど申し上げましたような経済評価と申しますか、やはり環境整備、先ほど池田参考人の方からは介護報酬を高く設定してインセンティブをという御意見も出ていらっしゃいましたが、そのような考え方も一考かというふうにも考えているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114237X00219971021/19
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020・伊藤周平
○参考人(伊藤周平君) 御質問ありがとうございました。
先ほどあったように、国民の合意といいますか、そういう福祉目的税なり消費税なりというのは果たして国民の合意が得られるか、日本にこういう税方式というのはなじまないんじゃないかという御質問です。それについてちょっとお話ししたいんですが、そもそも国民の合意が得られるかどうかという問題は、世論調査の調査もあるんですが、税というものが何に使われるかよくわからない、そこにあると思うんですね。消費税も最初福祉目的と言いながら、全然福祉に使われていないわけです。それがもし税というのが本当に目に見える形で、目的税なりなんなりで福祉に使われるのであれば、それをちゃんと説明して、これだけの費用が必要でこれだけの負担をしてください、そうすればこれだけのサービスが受けられますというのを国なりあるいは国会議員の先生方がちゃんと国民に説明すれば、私は十分合意は得られると思うんです。それをしないで、単に税だと国民の反発が強過ぎる、じゃ保険なら割と簡単に取れるんじゃないか、そういう安易な発想で私は介護保険が設計されているんじゃないか、そういうふうに思えてなりません。
じゃ、なぜ国民は増税にはたえられないというふうに断定してしまうんでしょうか。それはちゃんと、まさに先ほどおっしゃったアカウンタビリティーといいますか、説明というものをこっちがやっていないからじゃないでしょうか。それをちゃんとやって、これはこういうところに使います、福祉に使いますし、介護に使いますし、これだけのサービスを整備しますというふうに説明すれば、私は国民は増税にも納得すると思います。それをしないで、何に取られるかわからない消費税を上げていくからこそ国民の反発を買うのです。
それから、先ほど税でやれば権利意識が強くない、相手から与えられるような福祉になると言われますが、そもそもサービスが足らないから権利意識は生まれないのであって、サービスがふえていって多くの人がそれを利用するようになれば、だれでも手軽に利用できます。それは、税であるか保険であるかというよりは、保険であればそれは自分は払っているんだからサービスが受けられるという意味での権利意識は確かに生じるでしょう。だけれども、その権利意識というのは、よく考えてみると、自分が保険料を払っているのに給付が全く与えられないということになると、これは不満になってくるわけです。不満というか、もう不信になってくるわけです。
社会保険というのは保険の保険料負担と給付の対応関係から成り立っているわけです。その信頼関係で成り立っているわけです。それが崩れたときに保険制度に対する国民の不信というのは、今の年金制度もそうですが、私もゼミなんかでやると、若い人たちはもう年金払わないというんです。どうせ我々年金がもらえないんだ、給付はもらえないというわけです。そういう信頼関係から成り立っている保険なんです。
だから、保険料を払うためのインセンティブというのは給付がちゃんとしていることです。その給付がちゃんとしていないのに保険料だけ取られたら、それは不信に変わります。権利意識というよりは不信です。そうなれば、もう保険料は払わなくなると思うんです、介護保険制度自体。特に、我々みたいに給料から天引きされればどうしようもないですが、第二号被保険者といいますか国保の人なんかですと、そもそも医療保険を改善するために考案された、私はそう思っているんですが、その介護保険で国民健康保険に上乗せして介護保険料を取るわけです。そこで滞納が起こると今度はどうなるんですか、これは国民健康保険も巻き添えですよ。非常に私は、保険料だから権利意識が生まれるとか、そういうことは逆も考えてほしいと思うんです。権利意識が生まれる一方で期待が生まれているわけです。その期待を裏切るようなことをやれば、保険制度というのはもう崩壊します。これはもう絶対明らかです。今の年金がそうだと思います。
そもそも、社会保険というのは高齢化率が余り進まないで経済成長がずっと右肩上がりのときに有効な制度なんです。高齢化率がこれほどになったら、保険における給付と負担の対応関係というのは全然明らかになってこないわけです。
そういう中で社会保険制度、何で今まで税でやっていたのをわざわざ社会保険に変えなきゃいけないのか。先ほど地方分権とおっしゃいましたが、この介護保険制度は地方分権に私は反すると思います。だって、重要なところは中央で全部決めちゃうんです。介護報酬から何から全部決めてきて、市町村がやれることは政令に従って何かつくることぐらいです。
そんな中で、本当にこれが地方分権なんだろうか。というのは、よく市民参加とかなんとか言われますが、果たして市民が参加していってどれだけ修正していけるんだろうか、そう思います。私はかってちょっと官僚をやっていたのでわかるんですが、一回法律ができてしまえば官僚というのは非常に強いです。特にこれのように政令・省令事項で保険料まで決められてしまえば、もう権限はばっちり官僚が握っちゃうわけです。それに対して国会のコントロールとか市町村とかというのは非常に無力な状態に置かれます。だから、私はこれは早急に成立させるべきじゃなくてちゃんと議論すべきだ。もちろん私は保険には反対なんですが、もし保険にするにしてもちゃんと保険料率を書けとかそういう改正をやらない限り、これは走り出したら修正なんてほとんど不可能です。私はそう思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114237X00219971021/20
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021・渡辺孝男
○渡辺孝男君 参考人の皆さん、本当にきょうは貴重な御意見を伺いましてありがとうございました。
先ほどから税方式がいいのか社会保険方式がいいのかというお話になってまいりましたけれども、先ほど伊藤参考人の方から、一割程度の適用しかないものを社会保険方式でやるということ自体がおかしいんではないかというようなお話がございました。
私自身も、本来ならば、介護のサービスが充実している段階であれば介護保険という社会保険方式でも通用するのかなという感じはするわけですけれども、今までの新ゴールドプランの進捗状況を見ましても、まだまだそういう地域間格差があったり、五〇%ぐらいしかまだ目標を達成していないというような状況であっては、社会保険方式では、保険あって介護サービスなしというみんなが心配されることが現実になってくるんではないかというふうに私自身感じるわけであります。その不安というのが、本当に国民もだんだんに実情がわかってきた場合には強くなってくるんじゃないかというふうに感じております。
そこで、社会保険方式とそれから税方式、どちらが高齢者介護保障にふさわしいのか、もう一度伊藤周平参考人からお話をいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114237X00219971021/21
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022・山本正和
○委員長(山本正和君) 伊藤参考人、実はお一人の質疑応答で二十分となっておりますので、なるべく簡潔にお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114237X00219971021/22
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023・伊藤周平
○参考人(伊藤周平君) 今ちょっと私も話したとおり、保険制度でやる場合というのは、保険と給付の対応関係というのをある程度はっきりさせておかないと非常に国民が不信を抱くということなんです。制度自体に対する不信は、保険料未納につながるのは明らかです。したがって、保険におけるような給付と負担の対応関係が今明らかになりつつないわけですね、高齢化が進む中で。その中では明らかにもう税方式でやるしかないし、私は年金も、その基礎年金部分は税でやるべきだというふうに考えております。
それから、これを言うことはなんですが、やはり保険だと厚生省の権限が非常に強くなる。国会のコントロールというのは非常にききにくい。税ですと、例えば消費税を上げるときでもちゃんと国会の審議を通すわけですし、法律改正をやらなきゃいけません。ところが、この場合の介護保険なんて、保険料を上げるときそういうのを一切通さなくていいわけです。コントロールという面から考えても、ある意味でいえば厚生省なんか保険官庁ですから、だから私は保険でやりたいんだと思うんです。保険でやれば自分たちの権限は非常に強まるし、いろんな意味でうまみが大きいわけでして、その面で私は、国民の代表である国会でのチェックがきくという意味でも税方式というのがいいんじゃないかというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114237X00219971021/23
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024・渡辺孝男
○渡辺孝男君 政府が提案しております介護保険法案では、国民年金法や健康保険法とは異なりまして、保険料とかあるいは給付額の具体的数字を盛り込んでいないということであります。これは政令以下のもので決めていくということでありまして、保険料を払う立場から見ますと、将来どれくらい保険料が大きくなってくるのか非常に不安になるわけであります。政府や、また地方自治体の財政状況によって保険料率が将来急速に増加した場合に、特に年金受給者などは、年金受給額の物価スライドをはるかに超える介護保険料の改定が、これは三年ごとに行われるということでありますけれども、急激に増加していくということで、将来の不安というのが大きいんではないかというふうに考えるわけであります。
その点に関しまして池田参考人にお尋ねしたいんですが、こういう保険料とかが法令に定まっていないということに関しましてはどのようにお考えでありましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114237X00219971021/24
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025・池田省三
○参考人(池田省三君) 保険料率については、この制度では条例で定めることになっているというふうに私は理解しておりますので、地方議会のチェックがきくというふうに考えております。
もう一つ、おっしゃったとおり、今度の介護保険の保険料率で将来的に考え直さなければいけないのは、五段階の段階保険料率にはなっておりますが、実は所得比例の定率ではないわけであります。したがって、これはクヨロン、トーゴーサンピンという所得捕捉格差の問題を解決しないと根底的な解決になりませんけれども、ドイツの介護保険は収入の一・七%という定率方式をとっておりまして、将来的にはそのような所得に対する定率の保険料という方式をとるべきではないだろうかというふうに私は考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114237X00219971021/25
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026・渡辺孝男
○渡辺孝男君 今回の政府案では、保険料の未納者に対しましてペナルティーが科されるということになっております。非常に私自身は問題だと思うんです。
先ほども生松参考人の方からも御意見がございましたけれども、保険料が高くなってきますと、払おうとしても払えないような低所得者というのがやはり出てくる。あるいは、保険はあっても介護サービスがないとなれば、保険料を納めていても何のメリットもないということで保険料を払うのをやめてしまうというようなことも当然起こってくるわけであります。そういう方が市町村にどんどん出てきてしまった場合に、介護給付をある程度下げるにしても、全く提供しないというようなことは実際上市町村でできるのかどうか、非常に現場と市町村長さんは大変なことになるんではないかと心配するわけであります。
そのペナルティーに関しまして、伊藤周平参考人の御意見をお聞きしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114237X00219971021/26
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027・伊藤周平
○参考人(伊藤周平君) 私は、このペナルティーはもってのほかだと思っております。こういう罰則はやるべきではない。しかも、この罰則は施行規則か何かで国民健康保険法まで拡大されております。したがって、国民健康保険で一括して介護保険料を取りますが、介護保険料未納の場合は国民保険料も未納になっちゃいますので、国民保険の場合でもその未納者については医療給付の差しとめ、この場合はすることができるですよね。ただ、介護保険の場合は保険給付の差しとめをするものとするというふうに出ていまして、ちょっと微妙な違いがありますが、医療保険にまで拡大しております。
実際に、ちょっと私がかかわった日経の調査では、自治体の人にアンケート調査をしますと、これはやっぱりペナルティーについては恐らくできないだろう、これを厳格に適用することは現場では不可能だと。ケース・バイ・ケースという意見も多かったんです。したがって、困っている人が現実に市町村の窓口に来て、あなたはかって保険料を払っていなかったからこういうサービスはもう与えられませんということは、まず自治体サイドとしてはできないという意見が多かったです。
それから、ペナルティー自体は、先ほども言いましたが、これほど厳しいペナルティーというのは医療保険にもないわけです。なぜこれほど厳しいものを定めているかというのは、やはりつくった側が、厚生省の側がそれだけの保険料未納者が出るということを既に見越しておるわけですね。だから、そこにもう既に問題があるんじゃないかというふうに私は思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114237X00219971021/27
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028・渡辺孝男
○渡辺孝男君 同じ質問ですけれども、奈井江町長さんであります北町長さんは、そのペナルティーに関しましてどのようにお考えでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114237X00219971021/28
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029・北良治
○参考人(北良治君) 率直に言いまして、ペナルティーがかけられて、私ども市町村が窓口でそれを実施するということは難しいことだと思うんです。
ただしかし、今お話しございました中に、例えばサービスが行き届かないから保険料は払わないよ、こう言われないように、いわゆる保険あってサービスなし、こういうことにならないように私どもは真剣に取り組んでおるんです。ですから、なるほどなと理解できるように私どもとしては最大の努力をしなけりゃいけない。そして低所得者に対しては、低所得者対策がうたわれておりますけれども、これはやはりきちっと低所得者対策はやらなければいけない。当然のことですから、その中にも入っております。
ただ、国保でも私どもそうですけれども、高齢者はどこのデータを見てもわかると思うんですが支払いがいいんです。徴収率は非常に高いんです。お互いに支え合っていこう、自分たちもこうなったらどうなるか、こういうことから皆さん考えていただいているわけであります。したがいまして、保険あってサービスなしにならないように広域連携したりいろいろな連携をしながら、そして財政、マンパワーの確保のために市町村長は最大の努力をしなきゃいけない、私はそう思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114237X00219971021/29
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030・渡辺孝男
○渡辺孝男君 マンパワー、それから施設等を含めまして介護の基盤の整備、それを一番早く充実しなければいけないというのが皆さんの御意見であろうと思います。
マンパワーの確保に関しましても、介護保険料とかがまたこの法案そのものではきちんと決められていない。どのくらいの費用が介護保険料として設定されるのか、それによりましてマンパワーの確保も決まってくるのではないか。例えば、ヘルパーさんがどれくらいの給与をもらって一生の仕事とできるのかどうか、その辺がやはり現場としては非常に不安があるのではないかというふうに私自身は考えます。民間の方がそこに参入していけば自然と妥当な費用になってくるんだというようなお話もありますけれども、今までのいろんな例を含めますと、過当競争みたいな形で十分適切な介護費用が設定されないというようなことも当然考えられます。
そういう意味で、その介護費用が設定されていないと、民間業者が参入しても質的に十分な介護が提供されるのかどうか、かえって悪貨が良貨を駆逐するようなことにならないかどうか、現場ではどのようにお考えなのか、伊藤周平参考人にお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114237X00219971021/30
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031・伊藤周平
○参考人(伊藤周平君) ちょっと私がお配りした資料二を見てもらえるでしょうか。
「実質的に厚生省が決める重要事項の例」というのを挙げております。ちょっと質問とは違うんですが、第一号被保険者の保険料については、これは条例で定めるということになっていますが、この一のところ、これ百二十九条二項では「政令で定める基準に従い条例で定める」というふうになっていますので、標準保険料といいますか、あくまでも標準的な保険料は政令で定めます。したがって、それに従って二千五百円なら二千五百円、市町村によって若干の上下は出るでしょうが、条例で定めるということになっています。
もう一つは介護報酬の問題ですが、今おっしゃったように、つまり個々のサービスに保険から支払われる単価というものは今決まっていないわけですね。これが池田参考人もおっしゃったように高く設定されない限り、ホームヘルパーとかもちゃんと人件費すらも支払われないという状況になるんです。新しく医療保険福祉審議会というのができたそうでして、これはそこで審議して決めるということなんでしょうが、実質的に今の医療保険における診療報酬の決め方を見ていてもかなり密室で行われていますし、これは公開するとは言っていますが、どれだけここに市民が参加したりあるいは利益代表者が参加できるかわかりません。あるいはその意見が反映されるかも全く未知数です。したがって、民間を中心にサービス供給は増大するというように介護保険推進論者の方はおっしゃっていますが、これはわかりません、介護報酬によって決まりますから。
この介護報酬が明らかになっていないということは、まだわからないというのが研究者としては私はちゃんとした立場だろうと思うんですが、それはともかく、営利企業の人、民間企業の人に聞くと、恐らく介護報酬は低くなるだろうからここではもうからないというふうにもう断言されております。在宅サービスではもうからないだろうと。したがって、ほかの横出しとか上乗せの部分で何とかもうけていって、全体で採算が合えばいいやと。
実際に今ホームヘルパーの現場で私がよく知っている方とかに聞くと、労働強化が行われているんです。ホームヘルパーは今度事業費単価というようになって、介護報酬を見越してか何か知りませんがそういうふうになりまして、今まで午前中二時間、午後二時間というふうに滞在型でヘルパーさんがやっていたんですね。ところが今度事業費単価になると、市の方で今度は一時間とか三十分でやってくれと。あれは五人やらないとだめなんですね、一単位が。五人ということは、一人当たり一時間やっていたら五時間です。八時間労働としてあと三時間はもう移動とかなんとかで使われちゃいます。お年寄りにヘルパーさんがやっていて、私もやったことがあるんですけれども、物を食べさせるというのはすごく時間がかかるんですよ。そんなもの一時間か三十分でやっていたらとてもじゃないができませんで、のどに物を詰まらせて死んじゃったりするかもしれない。
したがって、ホームヘルパーというのは、先ほどもおっしゃったように、人材の面でこういう福祉の仕事に非常に熱意を持っている方がいらっしゃる。私の学生もいます。でも、実際にそんなまともな職業はないんですね、パートとか。結局そういう事業費単価とかなんとかで、補助金みたいな形で国の補助というのはどんどん減らされていっているわけです。今度介護保険になって非常に安い値段といいますか介護報酬を安く設定されれば、恐らく設定されるでしょう、そんなに高くならないと。私は厚生省の人に聞いたらそうおっしゃっていました。そうなると、当然のことですが、ヘルパーなんというのはもう民間企業なんかみんなパートか使い捨てということになって、マンパワーは当然育ちません。
ちょっと長くなりましたが、その辺でよろしいでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114237X00219971021/31
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032・渡辺孝男
○渡辺孝男君 時間的に最後の質問になるかもしれませんが、今回の介護保険の方が社会保険として成立することになれば、今まで医療が担っていた介護の部分が介護保険で賄えるということで、医療保険の方も節約できるんではないかというような最初の目的があったというふうに聞いてもおりますけれども、私自身は、介護保険が社会保険方式で出た場合に本当に医療費の方が削減されるのかどうか、そのとおり信じられないというような面もあるんです。
先ほど北町長さんあたりは国保の方の医療費も下がってくるんではないかというような期待を込めておりましたけれども、その点に関しましてもう一度伊藤周平参考人にお伺いして、これで終わりにしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114237X00219971021/32
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033・伊藤周平
○参考人(伊藤周平君) 医療保険については、厚生省の推計で二〇〇〇年で一兆千六百億円ですか、それは介護保険の導入によって減少するという推計がありますが、さきの衆議院の厚生委員会で厚生大臣が明言していましたが、医療保険は下げない、医療保険料の引き下げはないというふうにおっしゃっていました。実際に二〇〇〇年度で国民医療費が約三十八兆円ですか、全体から見れば介護保険の導入によって医療保険の負担部分が減るというのはごくごくわずかと言ってもいいわけで、実際にこの介護保険が入ったからといって医療保険の財政再建ができるというようなことはあり得ないわけです。これは厚生省もちゃんと認識しておりまして、だからこそ、健康保険法改正法案ですか、そういうふうな医療保険再建のための法案をまた今度も出すそうですが、そういうふうな政策をとっているわけです。
社会的入院がなくなるとか医療保険のむだが削減されるというのは、社会的入院というのは介護サービスがふえない限り減らないわけで、それで無理やり社会的入院を減らそうと思えば、一つのベッド当たりの費用を少なくする、ベッド数を減らすとか医師を減らすとか、そういう医療費抑制政策をやっているわけですね。そんな中で介護保険というのは、まさに家族介護を軽減するとかそういう言葉が使われていますが、家族介護はもっとひどくなるんじゃないかと思いますね、私は。
ましてや、さっき言ったように施設からも追い出されちゃうわけですよ、要介護認定で低く認定されればその人たちを置いていても施設は経営が成り立ちませんから。施設は良心的な施設であればあるほど倒産の危険がありますよ、介護保険が入ってくれば。すると、利用者にとっては本当に身近に利用者のためを思ってくれるような施設がなくなってくるわけです。あるいはそういうサービスがなくなってくるわけです。
私は、だからこれは家族介護にかわる新しい介護システムなんか真っ赤なうそで、これはどう考えても今の家族介護をもっとひどくするんじゃないか。介護保険制度は私は今より悪くなることはあってもよくなることは絶対あり得ないと、そういうふうに断言したいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114237X00219971021/33
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034・渡辺孝男
○渡辺孝男君 ありがとうございました。時間ですので終わりにいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114237X00219971021/34
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035・今井澄
○今井澄君 民主党・新緑風会の今井澄でございます。
六人の参考人の方からそれぞれのお立場で非常に貴重な有益な御意見をいただいたわけでありますが、ただ伊藤参考人の言われたことで一つ事実誤認があるので、これは最初に御指摘申し上げておきたいと思うんです。
今、厚生省が都道府県や市町村、主に都道府県などと協議をしながらいろいろ指示を出したりモデル事業をやっている、これは国会軽視のルール違反だというお話がありました。これは、百四十通常国会六月十七日の本厚生委員会の議事録を見ていただければ、そこできちっと私が質疑をいたしまして、大臣の答弁もいただいて、これは介護保険法案が成立するとすれば、二〇〇〇年施行までに時間がないので成立するという前提で準備万端整えるべきだということで、この委員会、私の後に二人質疑がありましたが、別に異論もなく行われておりますので、これは国会無視ではないかということでは事実誤認ですから、これだけははっきりさせておきたいと思います。
その上で、私は、先ほどから議論されております税か保険か、これは実は理念の問題とか何かで、どっちが正しいという問題ではなく、私も理想的には税方式でできれば一番いいなと思うんですけれども、現実には今の新ゴールドプランが一九九九年度で終わってしまう。その後の財源対策が何らない中で、今のように家族に負担をかけない介護をマンパワーにしろ何にしろ充実するにはどうするかということで今議論をしているんだと思うんですね。だから、悪くなるんじゃないかどうかという予想をされるのも御自由ですが、それよりはどうやって充実するかという前向きの議論を私はすべきだと思うんです。
その点で、まず第一に北町長さんにお伺いしたいと思うんですが、先ほども何人かの参考人の意見の中から新ゴールドプランの達成ができない、七、八割の町村でできないというふうな御指摘もありました。そうすると、新ゴールドプランの達成ができなければ保険方式だろうと税方式だろうとこれは二〇〇〇年は絶望なんですよ。
新ゴールドプランの達成が七、八割の町村でできないと言われているけれども本当かどうか、北町長さんの町では達成できる見込みがあるのかないのか。もしできないとすれば、あるいは御自分のところではできるけれども、よそでできないような市町村がありそうだということになるとすれば、その理由は何かについてお尋ねしたいんです。
私が考える理由は、まず一つは、市町村によっては目標を高く設定し過ぎたからできないということがあります。
それからもう一つは、国の財政支援が不足だからということがよく言われます。しかし、例えばこれはホームヘルパーだったら今は年間三百六十何万あるわけです。半分国が出すわけです。そうすると年俸三百六十万以内でヘルパーを雇える地域は国の財政支援はちゃんとあるわけです。ただ都市部などで四百万、五百万出さなきゃホームヘルパーを雇えないところはまさに超過負担が出るから財政支援がないと言えると思います。あるいは、特養をつくる場合も、場所によっては土地が高過ぎてできないというのはまさに財政支援が必要だけれども、地方へ行けば十分できるわけですね、国の基準でもできて、丸投げでももうかるところがあるというのですから。これはもう事実として、箱物については恐らく国の財政支援が不足しているということは否定されていると思うんです。そうすると、この国の財政支援が不足というのは一体どういう意味なのかということ。
それからもう一つは、マンパワーがなければこれは目標を立ててもできません。予算があっても、ホームヘルパーを募集したら応募者がいないとなればこれは新ゴールドプランは達成できない。けれども、これは私の聞いているところでは、今ホームヘルパーを募集すると最低五、六倍、多ければ十何倍の応募者があると聞いております。
そうすると、新ゴールドプランの目標あるいは市町村の老人保健福祉計画が達成できないできないという話が盛んにあるけれども、私にはそれができないという理由がわからないんです。その辺について町長さんのお考えをお聞きいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114237X00219971021/35
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036・北良治
○参考人(北良治君) 今のお話でございますけれども、一つは、いわゆる市町村が新ゴールドプランを初めといたしまして基盤整備が確立していないのでこの介護保険等についての法案が難しい、そして市町村がいわゆる目標達成が困難だ、こういうことで理由があるんです。
確かに、事実関係といたしましては、いわゆる過疎、高齢化率が非常に高い地方において特にそうです。先ほど申し上げました四人に一人、もう三〇%を超えているところもある。こういう大変な現実であることはこれまた事実でございます。したがいまして、そういう意味では、私どもの目標まで達するかどうか、これもはっきり申し上げまして確かに難しいと思うんです。
しからばどうするか。厳しい財源の中で、あるいは厳しいマンパワーの中でどうするか。先ほどからくどく申し上げておりますように、例えば隣町と連携をしてこれをクリアしていこう。そうすることによって、例えば要介護認定がございますけれども、先ほどもちょっと申し上げましたけれども、この事務経費が、もし要介護認定を一町一町でやっておりますとオフィスには二名なり三名置かなければいけないのです。これは二町で一つのことをやるとしますと二人ないし三人でこれができる。
そしてマンパワー。例えばホームヘルパーについても私どものところも率直な話、満度に達成しておりません。したがいまして、これも両町でまたがって連携をすることによってこれをクリアしなければいけないのです。達成できない達成できないと言って私ども放置するわけにはいかないんです、身近に住民がおりますから。
ですから、そういうことに工夫を加えながら連携を広めていくということが大切でございます。そして、やはり率直に申し上げまして、国が財政支援云々という話は、確かに財政は脆弱である、しかし私どもはその中でやはり知恵を出して財政援助をしてもらわなければいけない。知恵を出しながら住民対策をきちっとするということが広域連携によってこれは乗り切れる、こういうふうに申し上げておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114237X00219971021/36
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037・今井澄
○今井澄君 まだもう少し深めたいのですが、時間がないものですから、次に移らせていただきます。
基盤整備の点で、先ほど池田参考人が施設整備の必要性のことを言われました。それで緊急措置法、ある意味では保険料を集めることによってこれまでの公費が浮いてくる、これはもう絶対によそで使ってはいけないよ、施設の基盤整備に使う。これは私どもも大変すばらしい提案だと思いますし、その施設整備についても中学校区単位でグループホームとかケアハウスとか小規模特養など、そういう形で生活に密着した形、どこか山の中にでかい特養をつくってやるのじゃないという御提案は、まさに私どももそういうふうに思っているわけであります。
実は私は、とかくこの施設整備についてブレーキをかけるような発言をするので誤解を受けるのですが、私自身も施設整備がまだ十分ではないと思っております。ですから必要だと思うんですが、しかし、どちらかというと在宅の介護の整備をサボって、サボってというかそっちに力を入れないで施設をつくって入れちゃうといういわゆる土建型福祉国家の流れが変わらないものですから、私はむしろ警告的に申し上げている点がよくあるんです。
そこで、先ほどの池田参考人の示された資料の中でも、施設整備が必要なのはわかるんですが、私はちょっと疑問に思いますのは、三ページで、デンマークに比べると日本は十七分の一だというふうなお話ですが、デンマークは結局医療と福祉がはっきり分かれていて、医療は県、福祉は市。それで県の方からもう退院勧告が出るわけですね。入院したままだとペナルティーが出るから市が引き取らざるを得ない。そうすると、市の方で引き取るときに何と介護施設に酸素の配管があるんです。ある程度病院的なものを市がつくらざるを得ないということがありますので、この数字がそのまま、だから日本も今の十七倍、デンマーク並みに施設をつくればいいというふうにはならないと思うのです。
それはそれとして、私は今特養が二十九万床、老健が二十八万床、そのほかに療養型病床群として介護型が十八万床ですか、合わせて七十六万床の整備ということが目標として出されておると思います。ドイツの場合には五十数万床、介護施設が各種あると思いますが、この七十六万床は目標としてはまだそれでも少ないとお考えでしょうか、それともこのつくり方を変えるべきだという御提案と理解してよろしいでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114237X00219971021/37
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038・池田省三
○参考人(池田省三君) まず、私の資料の三ページに書いてある比較は、これは施設利用でありまして、別に特養利用だけをまとめたものではないということを改めて説明させていただきます。
つまり、御質問の中にもありましたが、必要なのは特養ばかりではない、ケアハウスが必要でありグループホームが必要であり、つまり限りなく在宅に近い施設を町中に建てる、そういう方向に転換するというのをまず第一の原則にすべきではないだろうかということがございます。
次に、では特養老人保健施設はこの数でいいのかといいますと、西暦二〇〇五年ぐらいの高齢化率というものを差し当たっての数字といたしまして、それに対応した施設、特養、老健というものを考えますと、残念ながらとても新ゴールドプランベースでは不足しておりますから、これは増設する必要があると思います。
もう一つ、そこで留意しなければならないのは、介護保険は、要介護状態と認定された場合、軽度であっても施設介護を選ぶことができるということです。要支援の虚弱は施設を選べませんが、要介護はだれでも施設を選べることになっております。そうしますと、今の措置制度であれば行政が職権でもって措置をするわけですからコントロールができますが、介護保険の原則でいきますと、軽度の方が施設を要望して入れないという状況、これはルール違反であります。したがって、ある意味で過剰ぎみにベッドをつくっておかないとうまく回らない、そういった意味でやや過剰ぎみであってしかるべきだろうと思います。
三番目の問題といたしましては、私は療養型病床群というものについて、基本的にそれはない方がいいとは言いません。それはある状況においては必要な施設ではあろうと思いますけれども、残念ながら介護保険に伴う施設整備を見ますと、これは多分施設の定数のつじつま合わせということなんでしょう、医師会はやはり老人病院を放したくない、厚生省は定数というものをつじつまを合わせたい。その結果、妥協の産物としてできたかなり社会的入院の要素の強い施設でありますので、これはむしろ縮小すべきだろうというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114237X00219971021/38
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039・今井澄
○今井澄君 ありがとうございました。
基盤整備が何よりも大事で、税だろうと保険だろうと基盤整備がなされなければどうにもならないわけです。今のお話ですが、確かに当初の厚生省の研究会報告では本当は施設は一本化するということだったと思うんですが、どうも分立して残ったのは今の池田参考人の御意見のように中途半端、社会的入院を残すと言われてもやむを得ない面があるなと私自身もちょっと思っております。
さて、そこで、基盤整備は必要なわけですけれども、今度は伊藤参考人にお伺いしたいんですが、きょうの資料の本文の方と意見のところですか、一ページ目のところにもありますが、九割が掛け捨てということですね。これは大変誤解を生むんではないかと私は思っております。この九割は掛け捨てというのは本当に事実なのかどうかということについてまず私は疑問に思うんです。
別に配られました本の三十三ページでは、第二号被保険者が四千三百万人で、その適用になるのが十万人だと〇・三%とか、あとは第一号被保険者も別に二千二百万人いるわけですね。こういうところから一割というふうに出されたのかもしれませんけれども、別の数字を見ますと、現在日本では、亡くなる半年前には大体半数以上が寝たきりになる。亡くなる日にちに近づくに従って寝たきりになるというわけですね。もちろんこれは病院に入る方もいるでしょうから、介護保険の対象にならない方もいる。そうすると、まず九割が掛け捨てというこの根拠がちょっとわからないんです。それをお教えいただきたい。
もう一つは、社会保険方式を否定される考え方からすればけしからぬということになるんでしょうけれども、この社会保険方式というのは一種の保険の要素を持つわけですから、保険というのは掛け捨てが当然前提なわけですよね、ある意味で、掛けて、そのサービスを受けない方が幸せと。残念ながらサービスを受けるような不幸な事態になった人のためにみんなで支え合うというのが保険の考え方ですから、掛け捨ての人が多ければ多いほど逆にいいという考え方だってできないことはない。
ただ、私は、この社会保険方式というのは形を変えた税方式だと思いますので、それはいろんな見方があると思いますけれども、このことについてこういうことをおっしゃることは別に基盤整備だとかいいサービスが受けられることとは関係のない一種の批判というか悪口であって、これは余り制度そのものを論ずる根本じゃないと思うんですけれども、いかがでしょうか。余りこういうことはおっしゃらない方がいいと思っているんですけれども。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114237X00219971021/39
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040・伊藤周平
○参考人(伊藤周平君) 最初の御意見、九割の根拠ということですが、根拠といいますか厚生省の推計で、そのレジュメにも書いてありますように、二千二百万人のうち二百八十万人というのは推計でして、これは六十五歳以上の第一号被保険者、それから第二号被保険者については四千三百万人のうち十万人、恐らくそこから推計して一割ぐらいだろうと。
先ほどおっしゃったように、八十歳とか九十歳になれば死ぬ半年ぐらい前はそういう要介護状態になると。したがって、もっとこの介護保険を使う人は多くなるんじゃないかとおっしゃっていますが、要介護認定が一カ月かかるわけです。しかも、ケアプランとかを作成したりなんたりすれば二カ月もかかると。その時期を考えて、実際にサービスが利用できるかどうかという時期からスタートして考えれば、これは例えば要介護状態になって二カ月ぐらいして亡くなったと、その後に認定が出てももう遅いわけですよね。そういうのは掛け捨てとは言わないんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114237X00219971021/40
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041・今井澄
○今井澄君 そうじゃない。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114237X00219971021/41
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042・伊藤周平
○参考人(伊藤周平君) ちょっと議論が違いますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114237X00219971021/42
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043・今井澄
○今井澄君 ちょっとそのことと関連しますと、二ページ目を私も時間があればお聞きしょうと思っていたのでお聞きしますが、かかった費用は全額自己負担となる、例えば要介護認定に一カ月、ケアプランに一カ月、二カ月もかかる、その間は償還払いで全額自己負担。これ事実誤認だと。事実誤認と言っちゃいけないですね。まだ法律ができないから、政令もできないから何とも言えませんが、今の方向としてはその認定を出したところにさかのぼるということになっておりますから、これは別に自己負担になるわけじゃないんですよ。これは後からでも払われるわけですから、ここはやっぱりちょっと事実認識が違うと思います。
それからもう一つ、一カ月かかるかかると言いますけれども、これは医療保険と違うのは、医療保険は突然風邪になったり熱が出たり腰が痛くなったりけがをするんですよ。だけれども、要介護状態というのは突然なるんじゃないんですね。問題なのは、今、医療と福祉の連携が悪いから問題なんです。例えば脳卒中で倒れて入院したときから既にこの患者さんはいつごろから在宅に帰そうとか、いつごろからこうしようという話が始まって、医療と福祉の連携がなければならないわけですから、既にその段階からもうこういう手続が始まるので、いざ本当に家に帰って介護が必要になってそこから始まるんじゃないんですよ。この認識が違うというか、現状を変えなければならないんじゃないかと私は思っているんですが、その辺はいかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114237X00219971021/43
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044・伊藤周平
○参考人(伊藤周平君) ちょっとそれは極論であれだったんですが、結局、償還払いというのを書いたのは、例えば要介護認定をさかのぼってと言いますが、その要介護認定の結果が出るまでにサービスを利用した場合はこれは全額自己負担になるというわけでしょう。(「違う」と呼ぶ者あり)それは違うんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114237X00219971021/44
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045・今井澄
○今井澄君 違うんです。さかのぼってという方針で今議論しているんです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114237X00219971021/45
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046・伊藤周平
○参考人(伊藤周平君) そのときも一割負担でいいんですか。法案を読んだらそういうふうに見えますが、全額負担ではないんですか。(「いや違う」と呼ぶ者あり)
償還払いというのはそういうことでしょう。だって、それは一たん払ったのを払い戻してもらうんでしょう、保険から。一たん払うときは全額払うんじゃないんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114237X00219971021/46
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047・今井澄
○今井澄君 全額払って、認定した度合いで……発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114237X00219971021/47
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048・伊藤周平
○参考人(伊藤周平君) そうですよね。だから、認定が出るまではそれずっと全額払わなければいけないでしょう。(発言する者あり)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114237X00219971021/48
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049・山本正和
○委員長(山本正和君) 速記録の関係がありますので、挙手をして発言してもらわないと速記がとりにくいので、よろしくお願いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114237X00219971021/49
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050・今井澄
○今井澄君 償還払いというのは、とりあえず自分で払っておいて、後で認定されたもののうちの自己負担分を除いたものが返ってくるんですから、保険の適用になるわけですよ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114237X00219971021/50
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051・伊藤周平
○参考人(伊藤周平君) それはわかるんですが、一カ月かかるわけですよ、認定まで。だから、その期間は、その前に使ったときは全額自己負担でしょう。だから、金策ができなかったら利用できないじゃないですか、サービスは。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114237X00219971021/51
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052・山本正和
○委員長(山本正和君) それでは、あと一分ございますので、どちらからか御発言ございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114237X00219971021/52
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053・今井澄
○今井澄君 もう結構です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114237X00219971021/53
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054・清水澄子
○清水澄子君 社会民主党の清水澄子です。
参考人の皆様にお礼申し上げます。
時間が短いものですから、私は奈井江町長さんと池田さんのお二人に質問させていただきたいと思います。
〔委員長退席、理事上野公成君着席〕
まず、北町長さんにお伺いします。
非常に過疎地、そういうところほど高齢者人口というのは多いと思うんですけれども、そういう自治体の場合に、介護保険の導入によってデイサービスや介護支援センターの運営費の補助金が今後減ると思うんですけれども、そうした場合に介護保険の支払い給付だけで運営ができるという見通しをお持ちなのか、それともそういう場合にはどういうことを希望しておられるのかという点。
それからもう一つ、先ほど奈井江町の場合は広域の他の市町村とうまく共同で運営したり、そういう方向に行っているというお話でした。
まず、きょうは自治体の代表としてお聞きしたいんですけれども、いろんな地域に行きますと、村の単位とか小さい町の単位で抱える人口の中で高齢者の方が非常に多いという市町村、そういうところが他の市町村と広域でやろうというときに、これまでの介護施設がそれぞれの自治体で一般財源が投入されておるわけですから、そこにほとんどそういう整備がなかったところの他の市町村の住民を受け入れるという場合になかなか話が一致できないと、そういうことも私どもは聞いているわけですけれども、こういう点については自治体の首長間ではどういうふうに今後やっていこうとされているか。
この二点についてまずお伺いしたいと思います。
〔理事上野公成君退席、委員長着席〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114237X00219971021/54
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055・北良治
○参考人(北良治君) それでは、答弁というより意見を申し上げたいと思うんですが、まず介護保険ができることによってデイサービスやその他サービスが非常に低下するのではないか、あるいは今まで本当に少ない料金だったのが高くなるのではないか、こういうお話でございます。それは確かに問題点としてあることは事実でございますが、これは私どもとしても常にこれをお話し申し上げながら要求をいたしておりますので、その点についてはひとつこれからもよろしくお願い申し上げたいと思います。
運営するに当たりまして、デイサービスや何かのサービスが低下するということはないと私は思っておりますが、料金については確かに介護度、正直に申し上げますと、介護度が六つに分かれた中で、そこに当てはまるかどうかという人たちも確かに利用されていることは事実でございます。したがいまして、厳格にそれをやるとなりますと落ちこぼれてくる人がその中で出てくることもまた事実でございますから、それらについてのフォローを、また理解をしてもらうためにどうするか、やはり今後ともこれらについては理解をしていきながら、なだらかな中で自立をするということのもう一つの柱を考えていかなければいけないだろうと、こういうふうに思います力
それからいま一つは、広域の中で連携していると施設の利用等についてもお互い超過負担とか、そういったものがあるではないか、これを一体どうするかというお話でございます。高齢化率によって確かにいろいろな問題点が出てきます。しかし、これは介護保険でも給付につきましては傾斜配分するということになっておりますから、そういったことをきちっと徹底して交付税措置をしていただきたい。そして、不足分はそういう立場で援助して、サポートしていただくことによって公平な、格差のないようにしていこう、こういうことで私ども考えております。施設の相互間の利用というのは決して何ら問題はございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114237X00219971021/55
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056・清水澄子
○清水澄子君 どうもありがとうございました。
それでは、池田さんに五点ばかりお伺いしたいと思います。
伊藤さんの方の九〇%の問題はもう終わりましたけれども、今後要介護認定基準によって現行のサービス水準の低下を招くおそれがあるという声が特に大都市であるわけなんです。そしてまた、現在の特養ホームなどに入っている人たちの問題ですけれども、現在のサービス受給者が将来的に排除される可能性があるという心配を私どものところへたくさん寄せられているわけですが、こういう問題についてはどういうふうに処理されていくべきとお考えなのか。
それから次に、要介護認定は審査会が決定しますね。そうしますと、利用者が自分の介護サービスを選ぶ権利、自己決定権とか選ぶ権利とこの審査会の認定基準との関係はどのようにあるべきかという点が二点目です。
それから三番目に、もちろんこの介護サービスの基盤整備が一番緊急の課題だと私も思います。そこで、先ほどおっしゃいました介護基盤整備緊急措置法の内容、イメージといいますか、それはどういうことか、ぜひお聞かせいただきたいと思います。
そして次に、今回衆議院で、市町村では介護保険事業計画策定に当たっては被保険者の意見を反映させるために必要な措置を講ずるべきだという修正をされたわけですが、そういう被保険者の権利を擁護する権利擁護システムはどういうシステムが考えられるかという点です。
最後に、国保連合におけるオンブズマン業務の運営に関してですけれども、ここでも第三者委員会の設置を提案していらっしゃるんですが、どういうシステムをお考えで、それには財源的なものはどういうふうにお考えかという点についてぜひお聞かせいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114237X00219971021/56
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057・池田省三
○参考人(池田省三君) かなりたくさん御質問いただきましたので、なるべく簡単に私なりの考え方を述べてみたいと思います。
まず、介護保険が入って、上限つきの定額給付でございますから、サービス水準の低下を招かないかという危惧は私もあちこちで聞きます。恐らく現在受けているサービスを例外的に下回るということは生じ得ると思います。
ここで考えなければならないのは二つございまして、現在の措置制度は主に所得に着目をして要介護で困っている人にサービスを配給するという仕組みをとっております。したがって、限られた人間にかなり大きなサービスが投入されているという実態はあるわけです。これがいわば所得、資産のある中流サラリーマン家庭にも全部広がります。そういった意味では、対象が広がるということによって限られた部分に大量に投入されていた財政が横に水平化することによって一部下がるという現象が起きる。しかし、それは社会的なサービスそのものの提供量としていえば大きく押し上げるわけですから、そこのところは誤解を招かないような表現として押さえた方がいいのではないかと思います。
次に、それではサービス水準の低下を招く高齢者というものが存在したらどうなるかということです。それはサービスを減少させることはできません。それは不可能です。今までサービスというものを提供していた人たちに対して、介護保険が入ったからサービスはこれでおしまいだよと、そういうことの言える鬼のような市町村長がいたら私は見てみたい。それはだめなんですね。新しい制度というのは常に制度の追加でございますから、既に給付していて介護保険でいわば足切りになった部分というのはその市町村が引き続き単独事業で見ていかなければならない事態が起きるだろうというふうに私は思っております。それはその地域の住民意思と地域政治の関係で、まさに自治の問題だろうと思います。
特別養護老人ホーム等の施設については、五年間は認定はしないで、たとえ健常であっても入所を排除することはないということになっていますから、二〇〇五年まではいられる。では二〇〇五年を越えて追い出すことができるだろうか。今の日本は江戸時代じゃないんですから、貧乏人の布団をはぐような福祉というものを想定した議論というのはもうやめた方が私はいいと思います。ここまで成熟した国が、やっと中流サラリーマンの要介護世帯というものを対象にして救済の手を伸べようとしたときに、貧乏人を見捨てるはずはないじゃないか、私はそのような一つの構えで介護保険というのは見ていくべきだろうと思います。
次に、認定審査会と選ぶ権利の問題でありました。これは衆議院でも随分議論をされましたけれども、認定審査会は認定に当たって意見を述べることができ、かつ保険者はその意見を考慮してサービスの種類を指定することができるということが法案に書いてあります。これは大問題として私たちは衆議院で議論しました。その結果、これは医学的管理あるいはリハビリテーションの必要性のある場合というかなり限定的な使い方しかしない、そういう答弁をいただいておりますのである程度は下がっているわけですけれども、それも実は指定ではなくて本来助言程度にとどめるものであって、やはりサービスの選択の権利というのは、悪く言えばリハビリを受けるのは嫌だよという選択も自己選択だということを含めて本人に与える、そういう方向で考えられていくべきではないだろうかというふうに思っております。
基盤整備のイメージ、これは資料としてお配りいたしましたので改めてまた読んでいただけると大変助かるのでございますが、私は、要するにその人が住んでいるふるさとというものを一つの福祉区域、福祉圏域というふうに見直すということ、そこから始まると思います。
中学校区というものが差し当たったはいいんでしょうけれども、中学校区内において在宅サービスが完結することが前提となっておりますけれども、施設サービスもやはり中学校区の中で完結していく。つまり、二十人、三十人の小規模特養、あるいは五人、六人のグループホーム、あるいは個室を中心にした限りなく自宅に近いケアハウス、そういったものを中学校区内で整備していく。大規模特養、収容型特養というものをやめて、そういったいわばクオリティーの高いものをつくっていくことこそが恐らく二十一世紀に向けて最も効率的な投資である。そういった面から、従来の施設整備というものをひっくり返して、地域というものを小さくとらえた上で基盤整備を行っていくべきであろうということを考えております。
さらにもう一つ、基盤整備というのは建物、ハードの部分だけではなくてソフトウエアも、すなわちマンパワーにもあるわけですけれども、マンパワー、これは自治体が直営でホームヘルプサービスをやるという形には介護保険以降なりません。民間セクター、とりわけ非営利あるいは営利団体というものが中心的な部隊になってきますので、繰り返しになりますけれども、それはそこに働くホームヘルパーが社会的に公正な待遇、報酬を受けられる、そのような介護報酬というものをきちんとつくっていくということです。
どうせ介護報酬なんか厚生省のやることだから安かろう悪かろうになる、それではだめなわけであって、そのために国会もあるし私たちも市民として発言をするわけですから、介護報酬について押し上げるという努力がマンパワーの問題では非常に重要になろうと思います。我々市民は、介護報酬が押し上がったことによって当然のことながら保険料は上がりますが、当然それは引き受けます。私たちは、高くてもより望ましいサービスというものを要求する、そういう立場に立っております。
あと、権利擁護システムの問題を言われました。実はこの権利擁護システムの欠如がこの介護保険法案の恐らくは最大の欠陥だろうというふうに私は思っております。
現時点で用意されていますのは、各都道府県に置かれた国保連合会にオンブズマン機能というものを持たせる、そしてそこは第三者機関として公益委員も入って苦情を受け付ける、この苦情の受け付けは市役所の窓口でもいいしケアマネジャーでもいいということになっていますから、そこまではできたんです。その苦情について公益委員が専門的に調査し、結果を本人に通知する、そこまでは確認されていますからそこまではいいんですが、実はこういった権利擁護システムというのは基礎自治体である市町村ごとに用意されなければならないと私は思っています。
例えば、中野区では福祉オンブズマンがございます。中野区の福祉オンブズマンが具体的に解決した内容を見ると、これは要するに窓口できちんと説明をして、そして問題があったらその現場に通達する、それだけのことで九〇%は解決するわけです。ということは、限りなく現場に近いところにそういった苦情処理機関を置けば恐らく九割は解消する。残り一割でどうしてもぶつかってしまうところは国保連合会に上げていく。そういう二段階システムの権利擁護システムというものをつくっていくべきではないだろうか。
もう一つ、事業者に対しては残念ながら警察権力がないわけですから立入調査もできません。協力を要請することだけになります。我々は、介護保険運営委員会というものを被保険者代表でつくって、そこに苦情処理機関を置き、そこが苦情処理を受けた場合、事業者に対して調査の協力依頼をする。大抵これは応じてくれるはずです、当たり前の事業者だったら。そして、調査をして、その結果問題があれば勧告する。そして、その結果を本人に通知する。なおかつ悪質な業者がいた場合は、その資格を取り消すのは都道府県知事。現在、機関委任事務ですから都道府県知事にしかございませんから、それは市町村はできません。
しかし、オーソリティーのあるそういった市民で代表された委員会がそういった問題を勧告してなお聞かない場合は公表すればいいんです。事業者にとって最も怖いのは公権力の行使よりも風評です。したがって、オーソリティーのある風評というものがその地域に立てばその事業者はやっていけなくなる。そういった形で具体的に市町村ごとに権利擁護システムというのを条例の中で組み込んでいく、それが次の取り組みになっていくのではないだろうかというふうに私は考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114237X00219971021/57
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058・清水澄子
○清水澄子君 財政的なものはこの法律だけでは、そういう専門家だけではできませんよね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114237X00219971021/58
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059・池田省三
○参考人(池田省三君) 財政につきましては、オンブズマンの財政だけではなくて、まず財政一般を申し上げますと、介護保険は市町村の財政構造というものを軽減の方向にもたらすということ、このことが随分誤解されているようであります。市町村の財政は構造的に介護保険が入ることによって六分の一から八分の一に下がるということ、したがって市町村にとっては非常にこれは望ましい財政構造だということは一つあります。
ただ、私たちが一番考えなければならないのは、現在市町村が直接あるいは措置委託によって提供している介護サービスのコストの問題であります。これは御質問の趣旨とちょっとずれるかもしれませんが、これは自治体によっては物すごい格差がございます。例えば私の知っているある首都圏の市では、ショートスティー泊の実際上のコストが三万九千円かかっております。これは帝国ホテルに泊まれます。あるいは、ある市における社会福祉協議会がやっているホームヘルプサービスは、ほとんど家事援助中心でありながら実際のコストは一時間九千円かかっております。
だから、そういった意味で、もし市町村が従来のような形で直営もしくは措置委託のような形でサービスを直接コントロールして提供しようとすることになると介護報酬との間に大変な差というものをつくって、いわゆる超過負担というものを莫大につくってしまって財政危機に陥るという可能性はあります。したがって、規制緩和であり多元化であり民間セクターの参入とその活用ということが最も望まれるわけでありまして、介護保険のランニングコストそのものについては非営利が一番望ましいと思いますが、非営利、営利を中心とした民間セクターがどこまで参入できるか、あるいは市町村がどこまで誘致してくるか、そのことによって大きく変わってくるだろう。
そのほかの事務費については半分国庫負担でございますし、国保連合会のオンブズマンにおける費用についても、私、直接確認はしておりませんけれども、公費でもって裏打ちされるということは間違いないのではないかというふうに理解しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114237X00219971021/59
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060・清水澄子
○清水澄子君 もう三十秒しかないのであれですが、看護協会の方、認定されなかった人への支援体制とか第三者機関によるサービスの質の評価というのはどういうことをお考えでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114237X00219971021/60
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061・山崎摩耶
○参考人(山崎摩耶君) 一つ目の御質問の認定されなかった方への手当てということでは、やはりこれは老人保健事業との連携を各市町村が真剣に考えなくてはいけないだろうということを考えているわけでございます。
それから、二つ目の第三者機関ということでは、先ほどもちょっとサービス提供者の質の保証ということで申し上げましたけれども、第三者質評価機構のようなものでランクを発表したり公表したりして利用者にきちんと情報が公開できる質の保証機関、このことが非常に重要だというふうに考えているわけでございます。これはもう既に医療の質評価機構で前例がございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114237X00219971021/61
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062・西山登紀子
○西山登紀子君 日本共産党の西山登紀子でございます。きょうは、参考人の皆さんには貴重な御意見をいただきましてありがとうございます。時間の関係で皆さんに御質問できないのが非常に残念なんですけれども、よろしくお願いいたします。
まず、生松さんの方にお伺いしたいんですけれども、現場で二十年間、医療のケースワーカーをしてこられたということで具体的なお話が伺えるかと思います。生松さんがお勤めの介護支援センターというところで、資料もいただいているわけですが、半年間で百件新しい相談があったということなんですが、その中で、閉じこもりとか寝たきりの方が非常に多いという地域を担当されているわけですが、この原因はどこにあるというふうにお考えなのか。そしてまた、このようなお年寄りに支援センターとしてどのような相談、具体的な支援をされてこられたのか。そして、改善されたケースなんかがきっとあると思いますので、具体的にお教えいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114237X00219971021/62
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063・生松みち子
○参考人(生松みち子君) 閉じこもりや寝たきりをふやしている第一の原因は、在宅福祉サービスが絶対的に足りないということだと思います。閉じこもりや寝たきりの直接的な原因は、老化や脳血管性の病気などで体が不自由になって今までできたことができなくなった。そのために外出ができなくなったりということはあると思うんですけれども、老いや病気や障害を持ったからといって、その人らしい生活ができない原因、やっぱりその辺を改善していくことが支援センターの仕事だと思っております。
といって、すぐに住宅改造とかホームヘルパーとか訪問看護ステーションの看護婦さんとかと機械的に導入するというそれだけではないと思うんです。孤独や寂しさの中にいるお年寄りの心に寄り添いながら、一緒にどうしたらいいのかということを考えながら、その共同作業をしながら、その方が今一番求めているものを探り出していくことだと思うんです。
私が今かかわっているケースで、二度の脳梗塞の発作で身体障害者手帳の一級をお持ちになっている方がいるんです。奥様と二人暮らしなんですけれども、その方は自暴自棄になって奥様をうんとどなったりとかするんですけれども、その方の奥様から御相談があったときに、何を希望するのかなというふうにずっと探っていきましたら、うんと頑張って無理して病院に通院するんですね。その通院を無理してしなくても往診ということで、それから訪問看護婦さんが来て健康管理をしながらということを通しながら、安心してお家の中で健康管理できるようになったんです。
その次に、訪問看護婦さんが、この方にリハビリをすれば起きられるようになるんじゃないかということで、介護支援ベッドと歩行支援具という、ベッドに柵をつけたんです。そうしたら起きられるようになって、そこからポータブルトイレに移動して、そして少しずつ歩けるようになってきました。
それで、おふろにも入りたいということで、ちょっと自宅のおふろが狭かったものですから、甲府市にあります巡回入浴サービスの申請をしまして、そしてそうこうしながら、在宅で閉じこもりをなくすデイサービスを使いたいということで、すごく生き生きと生きられるようになってきたんです。
やっぱり私は、そういう寝たきりでいらっしゃる方たちの孤独や寂しさをいやしながら、どう生活をしたいのかという、そういう共同作業がとても大事なことなのではないかなというふうに思っております。
それからもう一点は、支援センターは直接のサービス機関じゃありませんので、行政にこういうケースがあるよ、よりよい在宅の支援をどう組むのかという、そういうネットワークを組みながらやっていくことがとても大事なことなのではないかなというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114237X00219971021/63
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064・西山登紀子
○西山登紀子君 生松さんのお話の中で、山梨県の特別養護老人ホームの具体的な内容分析がございました。
この問題、私も非常に関心を持っている問題なんですね。私の地元は京都ですけれども、七十三の特養ホームのうち、この間三十七カ所をずっとお訪ねして、この介護保険法案についての御意見なんかも伺ってまいりましたけれども、この生松さんの御報告では、四万七千円負担できる人が非常に少なくて二十六名というようなことで、かなり率が高いかなと思うんですけれども、払える方が二十六名ですね、払えない方が七割ということですからね。私がお伺いした地元の施設では、大体二割から三割が介護保険法案が通ると払えない人が出てくるというふうに訴えがありました。
これは全国どこの施設でも共通しているというふうに思うわけですけれども、一つは、今入っている人の問題ももちろん非常に大事な問題ですけれども、そうなりますと、介護保険法案が導入されて経費が払えないという場合には入れないという人がたくさん放置されることになるんじゃないかと思うんです。
現在、甲府市の特養ホームの待機者の数、それからどういうふうな状態で待たされているのかということについて、わかれば教えていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114237X00219971021/64
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065・生松みち子
○参考人(生松みち子君) 私の住んでいる甲府市では、特別養護老人ホームの待機者は百数名と報告されております。
特別養護老人ホームの最近の入所場所はどこからかという統計もあるんですけれども、数年前は自宅から入所するという方もおりましたけれども、最近の特徴は老人保健施設からの入所が一番多いそうです。特別養護老人ホームに入るまでの間に医療機関を何カ所も転々としながら、最終的に老人保健施設で待機して、それであいてから入るというふうなことになっているんですけれども、特別養護老人ホームは入るのがとても大変という現状にあって、老人性痴呆の重度の方で、徘回だとかそういう問題行動のある方は二年以上待たなければ入れないという状況が生まれています。
在宅で見られない方たちが特別養護老人ホームに入所するわけですので、それと在宅支援が、どんなに障害が重くても見られるという体制があればお家で見られるんだろうと思うんですけれども、そういう方たちができないために入らざるを得ない、そういう最後の受け皿になっているんだろうと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114237X00219971021/65
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066・西山登紀子
○西山登紀子君 そこで、甲府市の高齢者保健福祉計画の達成状況がどうなっているかということなんですが、資料の七、平成八年度の到達度というのが出ているわけです。私これを見せていただきまして、達成率にアンバランスがあります。ホームヘルパー五〇%、デイサービスが三三%なんですが、ショートステイは一八〇%、それから食事のサービスは目標の五倍になっているわけですけれども、現在の介護保険法案では配食サービスが対象になっていないということがいろんなところがら指摘されるわけですけれども、この到達度というのは住民とのニーズではどんな関係にあるのか、説明をしてください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114237X00219971021/66
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067・生松みち子
○参考人(生松みち子君) お答えさせていただきます。
デイサービスについては、国のゴールドプランでは二回ないし三回というふうになっておりますが、甲府市では現在週一回の利用しかできないんです。それでかつこういう状況ですので、在宅介護支援センターで、閉じこもりをなくすためにデイサービスの申請をしても二カ月から三カ月も待たなければ実際利用できないという状況が生まれております。
それから、ショートステイについては、これは一八〇%と随分高いんですけれども、先ほどから議論されておりますように、広域圏域でのということですので、甲府市外の新しくできた特別養護老人ホーム、二十床ぐらいのショートステイのベッドがありますので、そちらにお願いをしてお借りして利用している状況です。それでもかつショートステイは、介護者が病気になったりしたときに利用するということではかなり有効な制度で、利用度も高いと思っております。
それから、食事サービスについては、介護保険では横出し部分ということで介護保険の適用というふうにはなされておりませんけれども、甲府市については当初予測した以上にニーズが高かったんです。ボランティア団体がいろいろ研究しまして、食事サービスを進める会が食事をつくって、甲府市が助成をして、そして配食をボランティアの方たちがしているわけですけれども、一軒一軒に声をかげながらお食事を届けてくださるんです。
今、私の働いている支援センターは町の真ん中なんですけれども、小さな商店が、お年寄りがお買い物に行く八百屋さんだとか魚屋さんがどんどんつぶれていって、大きなスーパーマーケットに車で行かなければいけない状況なんですね。お年寄りが買い物に行けないということから、食事をつくれないために退院できないという状況が生まれてきているんです。そういう方たちには、温かい手づくりの食事は本当に生きる意欲を一つ一つ開拓していくというとてもいい制度だと思っています。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114237X00219971021/67
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068・西山登紀子
○西山登紀子君 配食サービスというのは安否の確認というんですか、そこでお顔を見てお話ができるという点では非常な介護サービスじゃないかと思うんですけれども、こういうのもやはりぜひ対象にしていかなければいけないなというふうに思います。
生松さんに最後の御質問なんですけれども、この介護保険法案のもとでは営利を目的とした民間企業の参入というのが予想されているわけですけれども、既にそういういろんな形で動きが起こっているということがあちこちで報告されておりますけれども、生松さんのセンターにはどういうふうに動きがあるでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114237X00219971021/68
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069・生松みち子
○参考人(生松みち子君) 甲府市は地方都市ですので、そんなにたくさんのそういう企業はないんですけれども、少しずつ出てきています。毎日のように医療機器屋さんやベッド屋さんというか、そういう方たちが営業に見えられます。そういう面では介護保険をにらんだ企業がかなり研究し、商品を開発しているなということは実感しているんですけれども、私が仕事をしていて感じることは、民間でサービスを、今ホームヘルパーだとか緊急通報システム、二十四時間に対応するような緊急通報システムをつくっているんですが、入会料が十万だとか一カ月の利用料が幾らというふうなことなんです。私たちが日ごろ相談の対象になっている方たちはとても利用できない。
民間救急車なんかも、病気になったときに救急車がピーポーピーポーと鳴らしてくるのが嫌だからとおっしゃる方もいるんですけれども、そういう民間救急車を利用するということもやっぱり年会費を払ってということで、資産能力のある人についてはかなり利用はいいと思うんです。
それと、あと企業が対象者を選ぶんだと思うんですね。手のかからない方を選ぶんだと思うんです。私は、命はすべて平等だと思うんです。医療も介護もすべて平等でなければいけないんじゃないかなというふうに思っておりますので、本当に行政が責任を持って介護保障はされるべきではないかなというふうに日ごろ感じております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114237X00219971021/69
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070・西山登紀子
○西山登紀子君 どうもありがとうございました。
それでは、伊藤先生にお伺いしたいと思いますが、私は先生がお書きになりました「賃金と社会保障」に載せられました、衆議院の審議で十分に問題点が審議されたのかという論文を読ませていただきましたが、全面的に大変詳細に分析をされているということで、私たちも消費税という点については若干意見を異にいたしますけれども、しかし現行の介護保険法案の持っている問題点につきましてはかなり専門家としての鋭い御批判、御指摘を持っていらっしゃるということは私は敬意を表したいと思っています。
それで、特に参議院の審議に望まれる第一のところで、先生が拙速を避けるべきだと言っていらっしゃる点は私も同感でございます。そして、先ほど議論がありました一カ月償還払いがどうのこうのという、あれはやはり一カ月たっていろんな形で認定がされますと本当に九割はきちっと戻ってくるかどうかということも保証がありませんので、先生が一度やはり全額自己負担だという点はそのとおりだというふうに思います。
それから、その点で次に伊藤先生にお伺いしたいわけですけれども、時間がありませんので二点まとめてお伺いいたします。
先生は、基盤整備が非常にない中でこういう保険が実行されますと保険あって介護なしになるし、それは憲法の二十五条第二項に違反するというぐらい非常に厳しくその点を、基盤整備の国の責任をあいまいにするということについて指摘されております。私どもは修正案を出しておりまして、衆議院に出しましたけれども、第五条に基盤整備についての国の責任を明記すべきだというふうに提起をさせていただいておりますけれども、その点をどのようにお考えになるかということが一点であります。
それからもう一点ですけれども、介護保険を今早く成立させてほしいと言われる方の中には、確かに基盤整備が不十分だということは認めるけれども、しかしまずスタートさせて、その中で基盤整備不足が解消されるんじゃないかというようなことを言われる方もおられるわけです。
その点につきまして先生はどのような御指摘をされるのか、この二点について御意見を伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114237X00219971021/70
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071・山本正和
○委員長(山本正和君) 伊藤参考人、三分間ございますので、どうぞ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114237X00219971021/71
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072・伊藤周平
○参考人(伊藤周平君) どうもありがとうございます。済みません。先ほどからちょっと議事を混乱させて申しわけないです。
今の御質問なんですが、やはり基盤整備というのは、私が一番主張したいのは新ゴールドプランというのが今達成できないという状態にあるわけです。
いろんな原因があると思うんですが、自治体の財源不足、それから国がちゃんとホームヘルパーに対して補助単価をつけていないというのもあると思うんですね。予算人員はふやしているんですが、一人当たりの補助単価は大体年額六十万ぐらいです。ということは、かなり少ないので自治体が超過負担をして、それに上乗せしてかなり待遇をよくしないとヘルパーは集まらないという状況もあるわけです。
やはり、国の責任で新ゴールドプランというのはできたのであるから、最低限それを完全達成するという責任をまず追及していくと。あるいは、例えばヘルパーが集まらないなら全部パートでいいというふうにするんじゃなくて、ヘルパーさんは私は十七万人は全部フルタイムで必要だと思いますし、それだけの具体的なプランをまず出させると。それをしないでなぜ介護保険なのかというのが私は一番疑問で、急いでこれを導入しなきゃいけないという人たちは、つまり私の身近に話す人ですと、先ほどの御質問にもありましたが、介護保険を導入したらサービスがふえると、あるいは保険料を払うんだからサービス水準はよくなるだろうという漠然とした期待から皆さんある程度の賛意を示しているわけです。
ただ、実際に果たしてサービスがふえるかどうかというのは非常にわからないわけですね、先ほど言いましたように介護報酬ということで。介護報酬を市民の力でどんどん高くしていけばいいと言いますが、とにかくこれを成立させてその中で直していけばいいという議論は果たして私は成立するんだろうかと思うんですね。直していくというよりは、そもそもこれだけの問題点があるし、これだけ議論が必要なものに対して、なぜそれを早く成立させなきゃいけないのか。これはどう見ても、私またこういうことを言うと今井議員あたりから怒られるかもしれませんが、やっぱり問題点がよくわかっていないうちに早く成立させようという意図があるんじゃないかというぐらいに思うわけですよ。
実際、問題点がわかってきたら、例えば日経の世論調査ですと、早急に成立させるべきというのはわずか八%ぐらいしかいなくて、あとは問題点をじっくり議論するべきだ、あるいは法案を出し直すべきだという方が圧倒的に多いわけですね。なぜこの問題点がわからないのにこれを早くスタートさせなきゃいけないのかというところは極めて疑問で、それはもうちょっと税か保険かの議論も含めて国民的議論になっていないわけですよ。ほとんど内容を知らないわけですよ。内容を知らない人が七割で、賛成八割と、こういう総理府の世論調査もありましたが、これなんか全く私はばかばかしいと思うんですね。内容も知らないのになぜ賛成なのか。介護保険とは社会で支え合う仕組みですというふうに言ってこういうふうな質問紙法をやればだれだって賛成と言いますよ、今の現状から。これで反対と言う人はいないですよ。これは明らかに私は世論操作に近いと思うんですね。
だから、そこら辺も含めて私はもっともっと議論を深めるべきだし、国民に問題点が知られていないのになぜこれを早く成立させなきゃいけないのか。現場は待っていると言いますけれども、現場の実情をわかっている人はもう反対していますよ、実際に、特養の人たちでも。
なぜそれをこんなに急いで、しかも私は政治の世界で幻想を抱かせることは一番最悪の方法だと思います。幻想を抱かせておいて、これが実際に入ったとき、みんなが言っていたようなものと全然違うと思ったときに、期待を裏切られたときに、国民は本当に、政治家にもそうですが、みんな不信感を抱くと思うんですね。だからこそ、これはもうちょっと慎重に議論してもらいたいし、これを政治的な思惑で処理してもらいたくないというのが私の主張です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114237X00219971021/72
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073・西山登紀子
○西山登紀子君 ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114237X00219971021/73
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074・釘宮磐
○釘宮磐君 最後の質問でございますので、よろしく御協力をお願いしたいと思います。
きょうは参考人の皆さん方、本当に御苦労さまでございました。
今までにいろんな議論が出てまいりました。税でいくべきか、保険でいくべきか、最も根本的な問題のとらえ方から、さらにはそれぞれの認定の問題であるとか、また市町村、それぞれの自治体がどういうふうにこの問題をとらえているか、こういうふうな御意見もありました。
私は、ここで吉村参考人にお聞きをさせていただきたいと思いますが、日本の今日までの老人介護というのは、いわば社会福祉法人が経営する特別養護老人ホームが今日までこの任に当たってきたわけであります。しかしながら、今回の介護保険の導入によってこれが医療機関やさらには民間の営利団体、そして地方ではJA、農協あたりもこれに参入をしてこようという現在の状況であります。
私は最近特に特別養護老人ホームの皆さん方と意見交換をする機会が多いわけでありますが、今まで措置制度という一つの制度の中で老人介護というものを担ってきた特別養護老人ホームが、老人介護のニーズが増大してきたということによってこの介護保険制度の中に組み入れられていく、そのこと自体については我々もこれに異論を挟むつもりはない。
しかしながら、実際特養あたりを経営するについては、今までその建設に当たっては土地はみずから国家に寄附をし、さらには四分の三の補助はあるとはいえ、今一床当たり一千万ぐらいするわけですから、八十床つくればこれが八億円。この八億円のうちの四分の一といえば二億です。この二億円のお金をこれはみずから手出しをしてつくってきているわけであります。
しかしながら、この借金をどういうふうにして返していくかといえば、一つの規制の中で措置費の中から事務費のパーセンテージを決められて、これを返していく。この制度自体もつい最近起こったわけでありまして、ほぼ今日までいわゆる善意の中でこの制度というものは成り立ってきた。それが民間企業も参入する中でいわゆる競争原理の矢面に立つわけでありまして、吉村参考人がおっしゃったように、全く違った世界の中でこれからやっていかなきゃならないわけですから、大いに不安があることは事実だろうというふうに思います。
したがって、先ほど参考人が言われました、いわゆる免税の特典であるとか、それから退職金制度も今は公が二分の一は出してくれているわけですし、さらに特養あたりは五十人、八十人ぐらいですから職員数が非常に少ない。職員はある意味では定着率が高くなっていますから、定額で払われできますと、給与が上がっていきますと、定昇財源がもう確保できないというようなことも非常に不安として指摘をされておるわけであります。
そういう意味で、激変緩和といいますか、この制度がやっぱりなじむまで特養の関係者というのは、この制度そのものには賛成だけれども、ある意味では今までの社会福祉と営利を目的としたこの介護保険制度との間がなじむまではという強い希望があるようでありますが、その点について特に吉村さんの方から再度御意見があればお伺いをさせていただきたいというふうに思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114237X00219971021/74
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075・吉村靫生
○参考人(吉村靫生君) 今、釘宮先生からお話がありましたように、社会福祉法人の経営する特別養護老人ホームは非常に手厚くいろいろと国からも面倒を見ていただいていた、また地方自治体もいろいろな面で配慮をしてくださった。これは非常にありがたいことではございますが、それにずっと何十年も浸っておりましたので、そういう競争の原理が働く社会にはなれておりませんので、しばらくの間は引き続いて助成措置は続けていただきたい。そうでないと経営基盤が非常に弱いのであります。
例えば、特別養護老人ホームの定員は五十名のところが七〇%であります。また、所在地が非常にへんぴなところに多い、いわゆる過疎地でありますが、これは土地が安いからどうしてもそういうところで建設をするということになってきております。
したがいまして、こういう弱い体質の社会福祉法人経営の特別養護老人ホーム、これがいきなり競争場裏に投げ出されるとこれは風邪を引く、中には肺炎を起こしてつぶれてしまうところも出てくるんじゃないのかという心配もしておりますので、これについては手厚い経過措置を十分とっていただきたい、そういうことであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114237X00219971021/75
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076・釘宮磐
○釘宮磐君 吉村参考人にもう一点お伺いしたいんですが、今回の介護保険法の中で、在宅サービスについては民間の営利法人の参画というのを容認しているわけですが、将来的に施設サービスにも参入の論議が私は必ず出てくるんではないだろうかというふうに思っております。この点については参考人はどういうふうにお考えでしょうか、お聞かせください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114237X00219971021/76
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077・吉村靫生
○参考人(吉村靫生君) 施設サービスは従来行っておりますが、在宅サービスについては我々特別養護老人ホームももっと積極的にやっていく必要があるんじゃないか。その場で他の医療あるいは農協、あるいはまた生協とかいろいろの団体が入ってこられる、中には営利を目的とした企業も入ってこられる。その中でサービス競争をするということは、私は、今すぐでは困りますが、将来的にはいいことではないかと考えております。といいますのは、いろいろとサービスのいいことが行われますと、利用者がそれを選択することができる、利用者に選ばれるということは内容がよくなっていくのに一番いい方法ではないかと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114237X00219971021/77
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078・釘宮磐
○釘宮磐君 それでは、北参考人にお伺いをしたいと思うんです。
実は、私はもう当委員会でいつも過疎地域、過疎地域と、そういうふうにこの問題に強く危惧を持っておる一人であります。社会保障の改革が進んでいくときに、一番ある意味では切り捨てられていくのは過疎地域であろうというふうに思うわけです。
確かに、競争原理による選択をする、そのことによってサービスの悪いところは淘汰をされていってもこれはやむを得ないんではないかということがよく言われるんですが、私は過疎地域というのは競争原理が起こり得るような状況にはなかなかなり得ない。今、吉村参考人が言ったように、これから施設サービスにも民間参入もあってもいいんではないかというような話もありましたが、例えば在宅サービスでも、やはり競争原理、市場原理ということになれば、いわゆる顧客が多い地域には集まるでしょうけれども、顧客が少ないところはどうしてもそこに参入する人は少なくなってくるというふうに思うんです。
そういう意味で、北町長さんの地域は、先ほどの自己紹介の中で七千八百人と言われるような過疎地域、当然高齢化率も非常に高いというふうに思うんです。私は、競争原理といっても結果的に選ぶ選択肢が限られていればそこの部分ではサービスが低下することもあり得るんではないのか。ほかに選びようがないわけですから、そういう部分では逆に公的な部分が少しバックアップをしていくというようなことも必要なんではないのか。これは、医療がこれから抜本改革が進んでいっても同じような医療過疎という問題が起こってくるように、私はそういうふうな感じを持っているんですけれども、北参考人、実際に実務をやられていてどういうふうにお考えか、その辺のところをざっくばらんに聞かせてください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114237X00219971021/78
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079・北良治
○参考人(北良治君) 今、大変心温まる思いの中でお話しいただきまして、私も本当に感謝いたしておるところでございます。
特に、過疎地域においてはおっしゃるとおり、ただ市場原理に基づいてサービス提供をその中で競い合わせるということで、もしそういうことになりますと、それができるかできぬか、実際問題非常に難しいということを率直に言わなけりゃいけないと思います。したがいまして、やはり公的にしっかりと行政が支えていくという基本姿勢は忘れてはいけない、こういうふうに思います。
ただしかし、民間参入の中でJA等が最近非常に関心を持ち出しておりますから、JA等と協議を重ねながらこれらのことを十分考えていかなけりゃいけない。例えば、私どもの町は札幌から一時間の範囲でございますけれども、札幌から地方に来て業者がそれをやるとなると、なかなか地域の実態、そこの町の特性、こういったものはわかりませんから、やはり民間がやるとしても、今言いましたように公的なものの支えというのがあくまでも基本である、こういうふうに私なりに考えておるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114237X00219971021/79
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080・釘宮磐
○釘宮磐君 伊藤参考人にお聞きしたいんです。今と同じ質問なんですが、参考人はいわゆる税論者ですね。私は、税か保険かという議論、これはそれぞれ立場を異にしても、基本的にはサービスをみんなが公平に受けられるという状況の中で、今私は過疎地域の問題をあえて取り出して質問をしたんですが、北参考人の御意見にもありましたように、私は過疎地域というのはある意味ではサービス選択の幅が狭いんではないかなというようなことを思うんですけれども、そこの点についてはどういうふうにお考えでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114237X00219971021/80
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081・伊藤周平
○参考人(伊藤周平君) 私も全くそのとおりだと思うんです。結局いろんな形で、特に過疎地域ですと高齢化率が高いですし、私の地元の山口県の大島郡なんて四〇%という非常に高い高齢化率を誇っております。介護保険法案の場合は、社会保険診療報酬支払基金に一括して第二号被保険者の場合納入して、それを市町村のいわゆる高齢化率に応じて配分するというやり方をとっていますが、これは何も社会保険でやらなくても税という形でもできるわけです。実際に、社会保険というのは、先ほどからいろいろ議論がありましたが、画一的な給付をやるわけです、全国一律に。全国一律に画一的な給付をやるときにはどうしても給付から漏れてくる人というのはたくさん出てくるわけです、この画一的なものから。
ですから、これはやはりそういったその地方の実情に合わせた介護サービスを提供する、よりよい介護サービスを提供していくというためには、やっぱり税方式で、交付税みたいなといいますか、高齢化率に応じて分配するというふうに武蔵野市の土屋市長なんかがおっしゃっているようなやり方の方がはるかに効率的だし、事務経費もかからないと思うんです。
しかも、保険については、先ほど今井先生からも御指摘がありましたが、確かに掛け捨ての部分というのは出てくる。それが当たり前なんだ、幸福な掛け捨てをして死んでいく人がいるというのは、確かにそうなんです。
ただ、介護保険の場合には、皆さんはちゃんと保険証一枚あればと、こんなにハードルが高いとは思っていないと思うんです。気軽にサービスが受けられるだろう、そういうふうに考えておられる中で、入ってみたらすごいハードルが高かったと。掛け捨て九割とは言わないまでも、かなり出てくると。そうなると、医療保険なんかですと一度も使わないという人はめったに出てこないわけですが、介護保険になると一度も使わないという人はたくさん出てくるわけです。
しかも、それがちゃんと……発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114237X00219971021/81
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082・釘宮磐
○釘宮磐君 済みません、あとほかにありますので。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114237X00219971021/82
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083・伊藤周平
○参考人(伊藤周平君) 済みません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114237X00219971021/83
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084・釘宮磐
○釘宮磐君 もう時間がなくなりましたので、最後に池田参考人にお伺いしたいと思うんです。
施設介護の基盤整備の中で、要するに、小規模特養だとかケアハウス、グループホーム、こういうふうなものをつくっていくべきだと。私は、あるべき姿としてそこを追い求めるというのは非常に賛成なんでありますが、都市部ですとなかなか土地とかそういう場所を確保するのが非常に難しい場合が多いと思うんです。
今回の関連法案の中で、いわゆる有診、有床診療所の療養型への転換というようなこともありますが、私は、これだけ財源が厳しい状況の中で、やっぱりある程度既存のものをより新しい機能を持たせてやっていくということが求められていくんじゃないのかなというふうに思うんですが、その点お聞かせいただいて、私の質問を終わりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114237X00219971021/84
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085・池田省三
○参考人(池田省三君) 例えば武蔵野市では、学生寮を改築するときに、一階を軽費老人ホームにして上の方を学生寮という融合型の建物を建てたことがあります。そういった意味で、空き教室の利用とか既存の財産というものをうまく活用していくという知恵はこれから市町村に求められると思います。
ただ、なおかつ、中学校区単位にグループホームあるいはケアハウスあるいは小規模特養というものを設置するのが未来への投資としては恐らく一番合理的であり効率的であろうという考え方は私は変わらないという感じがいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114237X00219971021/85
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086・山本正和
○委員長(山本正和君) 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。
参考人の方々には、貴重な御意見をお述べいただきましてまことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼申し上げます。
本日はこれにて散会いたします。
午後三時五十八分散会
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