1. 会議録本文
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000・会議録情報
平成九年十一月十九日(水曜日)
午前十時二分開会
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委員の異動
十一月十八日
辞任 補欠選任
吉田 之久君 牛嶋 正君
和田 洋子君 益田 洋介君
江本 孟紀君 椎名 素夫君
十一月十九日
辞任 補欠選任
橋本 敦君 西山登紀子君
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出席者は左のとおり。
委員長 遠藤 要君
理 事
片山虎之助君
高木 正明君
野間 赳君
三浦 一水君
荒木 清寛君
広中和歌子君
伊藤 基隆君
赤桐 操君
笠井 亮君
委 員
鹿熊 安正君
金田 勝年君
亀谷 博昭君
久世 公堯君
沓掛 哲男君
斎藤 文夫君
清水嘉与子君
田村 公平君
常田 享詳君
長尾 立子君
野村 五男君
林 芳正君
保坂 三蔵君
宮澤 弘君
泉 信也君
今泉 昭君
岩瀬 良三君
牛嶋 正君
小林 元君
菅川 健二君
高橋 令則君
寺澤 芳男君
益田 洋介君
小島 慶三君
齋藤 勁君
峰崎 直樹君
田 英夫君
西山登紀子君
吉川 春子君
佐藤 道夫君
山口 哲夫君
国務大臣
外 務 大 臣 小渕 恵三君
大 蔵 大 臣 三塚 博君
文 部 大 臣 町村 信孝君
厚 生 大 臣 小泉純一郎君
通商産業大臣 堀内 光雄君
労 働 大 臣 伊吹 文明君
建 設 大 臣 瓦 力君
自 治 大 臣
国 務 大 臣
(国家公安委員
会委員長) 上杉 光弘君
国 務 大 臣
(防衛庁長官) 久間 章生君
国務大臣
(経済企画庁長
官) 尾身 幸次君
政府委員
防衛庁防衛局長 佐藤 謙君
経済企画庁調整
局長 塩谷 隆英君
経済企画庁総合
企画局長 中名生 隆君
経済企画庁調査
局長 新保 生二君
外務省総合外交
政策局国際社会
協力部長 朝海 和夫君
外務省アジア局
長 阿南 惟茂君
外務省経済局長 大島正太郎君
外務省経済協力
局長 大島 賢三君
外務省条約局長 竹内 行夫君
大蔵大臣官房総
務審議官 溝口善兵衛君
大蔵省主計局長 涌井 洋治君
大蔵省主税局長 薄井 信明君
大蔵省理財局長 伏屋 和彦君
大蔵省証券局長 長野 厖士君
大蔵省銀行局長 山口 公生君
文部大臣官房長 小野 元之君
文部省生涯学習
局長 長谷川正明君
文部省初等中等
教育局長 辻村 哲夫君
厚生大臣官房総
務審議官 田中 泰弘君
厚生大臣官房審
議官 江利川 毅君
厚生省児童家庭
局長 横田 吉男君
厚生省年金局長 矢野 朝水君
通商産業省産業
政策局長 江崎 格君
中小企業庁長官 林 康夫君
労働省女性局長 太田 芳枝君
建設大臣官房長 小野 邦久君
建設大臣官房総
務審議官 小鷲 茂君
自治省財政局長 二橋 正弘君
自治省税務局長 湊 和夫君
事務局側
常任委員会専門
員 田中 久雄君
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本日の会議に付した案件
○財政構造改革の推進に関する特別措置法案一内
閣提出、衆議院送付)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114269X01019971119/0
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001・遠藤要
○委員長(遠藤要君) ただいまから行財政改革・税制等に関する特別委員会を開会いたします。
財政構造改革の推進に関する特別措置法案を議題とし、質疑を行います。
質疑のある方は順次御発言願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114269X01019971119/1
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002・牛嶋正
○牛嶋正君 私は、平成会の牛嶋正でございます。
きょうは、財政構造改革と社会保障改革の関係を中心に、三塚大蔵大臣、小泉厚生大臣、尾身企画庁長官にお尋ねしてまいりたいと思います。特に、小泉厚生大臣につきましては、厚生委員会から引き続いての御質問になりますけれども、よろしくお願いいたします。
ことし一月に、国立社会保障・人口問題研究所が日本の将来推計人口について発表しております。それによりますと、少子・高齢化の進展は一層加速しておりまして、二十一世紀の初頭には高齢化率一七%という、世界でも類を見ない超少子・高齢社会を迎え、二〇〇八年からは人口の減少が始まると予測されておるところでございます。
このような極めて厳しい人口推計のもとで、社会に一定の活力を維持しながら国民生活を守っていくことは、私たちにとっては試練とも言うべき難問題ではないか、こんなふうに思っております。しかも、これまでのようにGDPの伸びが期待できない上に、今回のこの推計値に基づきましたいろいろな情報が流れております。その中には、国民の負担増が必至であるというさまざまな情報もあるわけでございまして、このことが国民の老後の不安を一層強めているのではないかと思います。そして、ひいてはそれが現在の景気の足踏み状態をつくり出しているというふうにも考えられます。
そういたしますと、二十一世紀の超少子・高齢社会に適合した社会保障制度を構築するための社会保障改革こそ、今政府が進めております六つの改革の中でも第一に取り組むべき改革ではないかというふうに私は考えております。
きょうは、この立場に立って、社会保障関係費を中心に財政構造改革法案について質問させていただきたいと思います。
現行社会保障制度の中核をなします年金制度及び医療制度は、その基本的枠組みが形成されていきますのが我が国が順調な経済発展を続けていた一九六〇年代から七〇年代にかけてでありました。この前提にGDPの高い成長率が置かれていたことは明らかであります。しかも、当時はこんなに速い速度で少子・高齢化が進展するとはだれも予測していなかったのであります。今この前提条件が完全に崩れてしまった。このときに私は、抜本的な見直しを行って現行制度の基本的枠組みを全く新しいものに置きかえていかなければならないのではないか、こんなふうに思っております。
その場合に、二十一世紀の新しい社会保障制度のあり方としてどのような理念を掲げるのか、これは非常に重要な問題だと思っております。財政構造改革法案では、第二条で「安心で豊かな福祉社会」という表現をしております。しかし、これでは国民から見て余りにも抽象的で漠然としておりまして、わかりにくい表現であります。
厚生大臣に、改めて二十一世紀の社会保障制度のあり方についてどういうふうにお考えになっているのか、まずお尋ねしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114269X01019971119/2
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003・小泉純一郎
○国務大臣(小泉純一郎君) 私が初めて当選した昭和四十七年、そして四十八年がたしか福祉元年と言われた年だと思います。ヨーロッパの先進諸国に倣って福祉充実を図ろうと。そのころは高度成長がずっと続く前提のもとでの福祉諸施策の拡充だったと思います。いわば経済成長が進み、黙っていても自然増収が上がってくる、その税収を福祉の充実に向けることができた、これが当分続くという前提でありました。しかし、現在二十五年たってみまして、今や高度成長は望めない、低成長の時代で、なおかつ高齢者がどんどん増加して若い世代が減っていくという高齢・少子社会を迎えて、新たな社会保障制度をどうやっていくかというのが現下の最大課題になっているのは御指摘のとおりでございます。
そういう中にあって、今財政構造改革を論議いただいておりますけれども、福祉の充実、社会保障制度の改革という中において、財政問題というのをどうしていくかというのが欠かせない視点になってまいりました。というのは、これからの状況を見ますと、社会保障関係費というのはいやでも応でもふえていきます。現在でも一般政策費の中では一番国民の税金を使っている分野でありますし、これからも今の制度を前提にしていきますと、高齢者がふえるということを考えていきますと、黙っていてもお金を要する分野であります。
そこで、問題になってきたのが、給付を受ける側とそれを負担する側の公平の問題だと思います。これをどのようにお互いが支え合っていくか。いわゆる給付と負担の均衡、公平をどうやって図っていくか。
と同時に、二十数年前は働き手として若い世代がたくさんおられましたけれども、これが減っていく中において、今後高齢者の社会参加をどうしていくかと同時に、障害者も健常者もお互い社会の一員として平等な機会のもとにこの社会を支えていこう、支え合っていこうという高齢者と障害者、そして婦人の参加を、これからの二十一世紀の時代にお互いこの社会を支え合う一員としてどうやって共同参画をしていこうかという視点を持って、年金にしても医療にしても介護にしても考えていかなくてはならないのではないかというふうに私は考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114269X01019971119/3
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004・牛嶋正
○牛嶋正君 ありがとうございました。
私も、これからは余りパイが大きくならないわけですから、みんなでどういうふうに公平に分け合っていくかということが非常に問題になってくると思うんです。その点について今厚生大臣が御指摘になりましたが、非常に重要な点がございます。
私も、やはり社会が一定の活力を保持していくためには、今よく言われますノーマライゼーションの理念というのを非常に尊重していかなければならないんではないか。高齢者や障害者等がそれぞれの様態に応じて社会に参加し、そして応分の役割を担っていけるような社会保障制度を構築していくこと、これが目標になってくるのではないか。この点では厚生大臣のお考えと一緒だというふうに思っております。
言いかえれば、自立、参加、貢献の三つの要素をだれもがその生活の中で持つことこそ活力ある社会をつくっていく基本と考えております。この点について厚生大臣にコメントをいただこうと思っておりましたけれども、先ほどの御答弁で十分理解をさせていただきましたので、次の問題に移らせていただきたいと思います。
ところで、財政構造改革法案に盛り込まれた構造改革の進め方を私なりにちょっと整理させていただきました。
まず、改革の目標として三つの課題を掲げておられます。効率的で信頼できる行政、そして先ほど申しました安心で豊かな福祉社会、そして三つ目は健全で活力ある経済、この三つの課題であります。
この三つの課題を二十一世紀に向けて実現していくためには、ともかく財政収支の健全化を推し進め、もって適応性に富む柔軟な財政構造をつくっていかなければならない、こういうふうに改革の進め方を示しておられます。そして、そのために社会保障関係費を中心に主要な経済項目に重いキャップをはめ、歳出削減を図っていくとしておられるわけです。このように、今回の財政構造改革フレームは極めて単純明快であります。そしてまた、一方向的であり直線的であります。
これまでの衆参の特別委員会での議論の多くは、この改革フレームの一方向性に向けられていたように私は思うわけです。実際、社会経済の仕組みは複線的であり多方向的であり、時には循環的であります。それにもかかわらず、あえてこのような単純な一方向性の改革フレームで改革を進めようとされてきた意図がどこにあるのか、大蔵大臣にちょっとお尋ねしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114269X01019971119/4
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005・三塚博
○国務大臣(三塚博君) 保守したくば改革せよとイギリスの保守党政治家が申されましたが、まさに至言だと思います。
急速な高齢化社会を迎える、少子化時代を迎える、先ほど来の御指摘のように過度な成長は望めませんし、こういう経済状況、そういう中で過大な国債費を持ってこれから二十一世紀に行かなければならない。
こういうことを考えますと、ただいま牛嶋委員が言われました三つの原則、逆に言いますと、健全で豊かな経済をベースに安心で豊かな社会をつくり上げていかなければならないということになりますと、社会保障関係というのが大きな支えになりますことは間違いありません。
しかし、二十一世紀をにらんだ展望の中で変わっていかなければならないだろう、この点も御指摘のとおりでございます。六改革の中で社会保障改革を基本としてやられたらどうだという御指摘も理解いたすところでございます。しかしながら、全体が吹きだまったものでございますから、これはどんなにつらくとも並行して取り組んでいかなければならない大きな課題ではないだろうかという認識のもとにスタートを切らせていただきました。
当面の問題として社会保障改革がありますし、直ちに来年度に向けてスタートを切らなければならない財政構造改革があります。そして、四月一日以降の金融システムの本格的なスタートに当たりまして行うべき手だても進めなくちゃいけない。景気政策、経済政策で高コスト是正その他の諸目的を達成するための経済構造改革、全部相互にこれが連結し、相影響しながら進まなければなりませんものですから、そういうことで本法律案は、当面の目標の達成に向けて、主要な経費ごとに性質に応じましてめり張りのきいた縮減目標を掲げたわけでございます。
そういう点で、社会保障の分野におきましても、社会保障制度や年金制度等の抜本的改革を行うべしという義務づけが行われておるところであります。
容易に達成される健全化目標でないことを百も承知で今やらねば大変な事態になるであろう。こういうことで財政構造改革を強力に推進することによって、他の五改革と相並行し、痛みを分かち合いながら、まずベースづくりをしっかりと仕上げていこうではないか、こういうことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114269X01019971119/5
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006・牛嶋正
○牛嶋正君 これまでも大体そのような御答弁をいただいておりましたので一応は理解できるんですけれども、私は何回も財政構造改革のフレームを検討いたしましたけれども、このフレームに沿って改革を進める場合、私はどうも二十一世紀の少子・高齢社会に適合した社会保障制度の構築は望み得ないのではないかと。今、大蔵大臣は、ベースをしっかりして、そしてその上で五つの改革と並行的に進めていくというふうなことをおっしゃったわけですけれども、私はむしろ、そうであれば、社会保障改革に関してはこの財政構造改革フレームから切り離して、今直ちにこの改革を推し進めるべきであるというふうに思っております。きょうはこの提案をさせていただくべく、後いろいろな御質問をさせていただきたいと思っております。
これまでの委員会での議論を振り返ってみますと、最も多かった論点は、財政収支の健全化を推し進めることで果たして健全で活力ある経済の実現が可能かという点であったと思っております。いわばこの議論は財政再建と経済再建のいずれを先行させるかということでありましたが、この問題について私は今ここで議論するつもりはございません。ただ、その議論の中で出てまいりました個人消費の伸び悩みの問題をここでは取り上げさせていただきまして、それと社会保障改革との関係を少し明らかにしてみたいと思います。
この点については余り議論がこれまでなされませんでしたので、この点について企画庁長官にお尋ねしていくわけですが、景気を立ち直らせる最も有力な要因とみなされる個人消費需要の伸び悩みについてはいろいろな原因が言われておりますが、その原因の中で共通して言われておりますのは、先行き不安感という要因ではないかと思います。この前の参議院本会議での経済企画庁長官の答弁の中にもその言葉が出ましたし、昨日の予算委員会の集中審議におきましてもそういったお言葉を使っておられたと思います。
しかし、この先行き不安感というのは極めてあいまいな言葉です。したがって、ここから具体的な政策はなかなか出てこないというふうに思います。そのため、政策につながっていくためにはもう少しこの言葉の意味を明確にしておかなければなりませんが、私はその一つの試みとして、先行きという場合どういう時間で考えているのかということが一つ問題になると思うんです。
そこで、私は試みにこの時間の長さを三つに区分してみました。その一つは、差し当たって今年度後半に向けての景気の動向がどうなっていくのかという先行き、これはいわば短期の先行きと言っていいのかなと思います。それから次は、ちょうどこの改革案の中で集中改革期間に当たる二十一世紀までの二、三年の中期の先行きがあると思います。そしてさらに、二十一世紀の少子・高齢社会がどのような形で迎えられるのかという長期の先行き不安感があると思います。
そういたしますと、先行き不安感という場合に、どういう時点でどういう時間の長さでそれを言っているのかということでかなり議論が整理されていくんではないかと思いますけれども、企画庁長官は今私が分類いたしました三つの期間分類についてどういうふうにお使いになっているのか、教えてください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114269X01019971119/6
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007・尾身幸次
○国務大臣(尾身幸次君) 期間のことにつきまして端的に申し上げますと、やや中長期の問題点であるというふうに考えております。
それから、私自身は先行き不安感という言葉は使っていないと思いまして、経済の先行きに対する信頼感が不足しているというような表現にしていると思っておりますが……(「同じことですよ」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114269X01019971119/7
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008・遠藤要
○委員長(遠藤要君) 御静粛に願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114269X01019971119/8
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009・尾身幸次
○国務大臣(尾身幸次君) そういうふうに使っていると思いますが、その意味は中長期の観点であるというふうに私自身考えております。
そこで、その内容でございますが、一つは社会保障という点もあろうかと思います。これは厚生大臣の方の仕事でございます。それからもう一つは、日本経済が一体どういう方向に行くんだろう、財政構造改革をして財政を健全化すると言うけれども、一体どういう方向に行くんだろうという、その方向性についての見通しがはっきりしていないということにもあるのではないかと思っている次第でございます。
そこで、昨日の緊急経済対策、二十一世紀を見通したというふうに考えているわけでございますけれども、その中で、これからは民間活力中心の経済活性化を図っていくという趣旨をしっかりと出して、そしてまた、そのためへの規制緩和とかあるいは土地の有効利用とか、そういう具体策も含めまして方向性をしっかりと出していく。そして、その中から民間企業に新しいビジネスを起こしていただくという民間活力中心の経済体制に二十一世紀は行きたい、そういう方向性をしっかり出すことが経済の先行きに対する信頼感を回復するゆえんであるというふうに考えて申し上げている次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114269X01019971119/9
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010・牛嶋正
○牛嶋正君 今私が問題にしておりますのは、そういった企業の経済活動の問題ではありませんで、個人の消費について議論しております。
それで、個人の消費の伸び悩みということについては、信頼という言葉を今使われましたけれども、たしか私は、本会議では、先行き不安感という言葉を使われたというふうに記憶しております。
老後がどんどん長くなっていく、そして自由時間も延長されていく。バブル以降の国民のライフスタイルを見ていきますと、かなり変わってきているわけです。また、生活における姿勢、態度、そういったものも大きく変化しております。こういったものを見てまいりますと、先ほど私が区分いたしました短期、中期、長期の先行き不安感のうち、私は長期のものがかなり大きく個人消費動向に影響を与えているのではないか、こんなふうに思っております。もしこれに反論があれば反論していただきたいと思うんです。
そうしますと、財政構造改革フレームでは、財政収支の健全化を通して安心で豊かな福祉社会、それから健全で活力ある経済をほぼ同時に実現するということになっておりますけれども、私はむしろ安心で豊かな福祉社会を先行させ、国民の長期の先行き不安感を取り除くことが先決ではないか、これこそが景気回復の決め手になるのではないかというふうに考えております。
今の消費需要の停滞につきましては、最初は四月の消費税の税率アップが議論されておりましたけれども、ここまで続いてまいりますとそれでは説明できないわけであります。私はむしろ、九月から医療にかかる費用負担が増額になっておりますけれども、こういうことがじわじわっと先ほど言いました長期的な不安感を強めているんではないかというふうに思います。
そうだといたしますと、個人消費に与える影響も、負担増による可処分所得の減少の何十倍という形で消費需要に影響を与えているのではないかと私は思いますけれども、これについての経済企画庁長官の御見解をお尋ねいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114269X01019971119/10
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011・尾身幸次
○国務大臣(尾身幸次君) なかなか難しい問題でございまして、これは私の所管ではございませんが、あえて申し上げますと、少子・高齢化社会が進む中で、どうしても支えられる人と支える人との数のバランスが変わってくるわけでございまして、そういう意味では、いわゆる社会保障構造改革というものも進めていかなければならないと考えております。それが国民負担率の問題あるいは自己負担の問題も含めてどういうふうになるのかというその姿を、今よりも厳しくなると思っておりますが、厳しいながら一体どういう形になるのかという姿をしっかり示していただくことが必要なのではないか。そうすれば個人個人が自分の生活設計というものが立てられる、こういう意味でそういうことが大事なのではないかというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114269X01019971119/11
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012・牛嶋正
○牛嶋正君 私もそう思います、厳しくなることは確かなんですから。
ですから、やっぱりきちっと国民の合意を得ながら改革を進めていけば国民も納得できる。そして、二十一世紀の自分たちの老後の姿というものがある程度描ければ私は非常にいいのではないかというふうに思っております。
ここで一つ問題が出てくるわけであります。そういった安心で豊かな福祉社会を確立していくということになりますと、我が国経済がある程度の活力を取り戻して一定のGDPの伸び率を確保されなければならない、それが私は前提になると思うんです。そうだといたしますと、先ほど申しました安心で豊かな福祉社会と健全で活力ある経済というのは複線的、循環的関係にあるわけです。それがフレームでは並列されているというところに問題があると思うんです。いわば一方の目的が他方の前提になっているわけです。そして、他方の目的がもう一方の前提になっているという関係なんです。
ですから、どちらが先なのかということが非常に問題になってくるわけでございまして、今の財政構造改革フレームではこの関係は全く触れておりません。そうだといたしますと、私は、財政収支の健全化によって二つの目標を同時に実現していくというのは到底考えられないわけであります。
そこで、大蔵大臣にもう一度お尋ねしますけれども、この改革フレームに示されているような一方向的な改革の進め方で、本当に今申しました三つの課題というのは実際に実現するのでしょうか。もう一度お尋ねいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114269X01019971119/12
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013・三塚博
○国務大臣(三塚博君) 御指摘の考え方は、一つの分析経済というんでしょうか、関連経済の中で導き出されるもの、それを乗り越える道は難しかろうがどう考えるのだ、そんなふうにも聞こえます。
さてそれで、足元に戻りまして財政の状況でありますが、九年度予算七十七兆三千九百億円でありましたことは御案内のとおり。本件が歳出予算のウエートを占める率は一九%であります、社会保障関係費という意味であります。そして、地方交付税交付金が二〇%になります。そして、国債費がトップで二一・七%、合わせまして六〇%を超えるわけでございますが、歳出予算の六〇%がこの三本立てということに相なります。
そういう中で、社会保障は我が国の国是である福祉国家を達成していく柱であります。そういう点で、これを達成するためには、厚生大臣が前段答弁されましたように、また先生が言われます安心で豊かな福祉社会、こういう制度をしっかりとキープしながら国民生活の柱にしていかなければならない。こういうことで御苦労いただいておるわけでありますし、国会におきましても真剣な論議が闘わされておりますことを御承知いたすところでございます。
兄たりがたく弟たりがたしという言葉がありますが、一体的にこれが相関係しながら取り組んでまいりますのが世紀末の今日であろうと思います。この難問を国民の英知によって、特に指導者の皆々様方、経済学者、この分野のエキスパートの皆々様方の知恵を寄せていただきまして、最終的には国会論議の中でこれを確定させていく。大きな難問題でありますけれども、突破口を切り開いていくそのベースをつくり上げていくということで、初めて二十一世紀が国民各位に喜ばれる、信頼される国家像、また全体の社会制度、経済制度がそこに定着をしていくのではないでしょうか。
そういう意味で、二兎を追う者一兎も得ずという言葉がありますが、そうではなく、複雑な経済社会の中にあって予想できない少子・高齢化時代というのが到来してまいりました。何をなさなければならないかというと、その目標に向けてそれぞれのパートでお互いが努力をしていかなければならない時代が到来した、こういう認識の中で諸改革を今前進させていただくべく御審議を賜っておる、こういうことであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114269X01019971119/13
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014・牛嶋正
○牛嶋正君 聞いておりますとだんだん余計不安になってくるのでございますけれども、今御議論もありましたものですから少し数字の方に入りたいと思います。
財政構造改革フレームでは、ともかく財政収支を健全化するということで、平成十年、十一年、十二年を集中改革期間と、こういうふうに定めておられまして、主要な経費項目について重いキャップをかけて歳出削減を図っていくことが中心になっていると思うんです。これをそのまま社会保障関係費に当てはめることについてちょっと私は心配な点が幾つかございます。
社会保障関係費につきましては、この集中改革期間におきまして二%の伸びが設定されている。ほかの主要項目がほとんどマイナスであるのに対しまして二%であります。しかし、高齢化の進展に基づく当然増が大体五、六%想定されておりますので、やっぱりかなり重いキャップがかけられているというふうに思います。当然、高齢化の進展に伴う義務的かつ当然増経費に財源不足が生ずることは避けられないというふうに思います。
財政構造改革フレームではその点をどういうふうに説明しているかといいますと、この財源不足分は医療改革それから年金制度の改革、そういったものを通じてその中でうまく埋め合わせていくように工夫しなさいというふうに言っているわけであります。
しかし、国民の側から見れば、公費が不足する部分は結局給付水準の抑制あるいは国民への負担増になって返ってくると考えるのは当然ではないかというふうに思います。その場合、国民が改革には痛みを伴うことはやむを得ないと考えるにしても、またこれは福祉の切り捨てだと思うにいたしましても、そこで進められる諸制度の改革によってつくられていく福祉社会に対して国民がどう思うかということです。
私は、そういうふうにキャップをまずはめて、そしてこの中で何とかつじつま合わせというようなやり方でできた社会保障制度が、果たして国民にとって安心で豊かな福祉社会というふうに考えるでしょうか。もしそのように考えないといたしますと、私はまた先ほどの議論に戻りますけれども、経済の立ち直りというのはもうだんだんおくれていくんじゃないかというふうに思っております。また国民負担率が五〇%を超えないという財政運営の目標も、私は実現しないんではないかというふうに思っております。
こんなことで、社会保障改革は財政構造改革フレームから切り離して私は進めるべきだと思いますけれども、これは厚生大臣にお尋ねをいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114269X01019971119/14
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015・小泉純一郎
○国務大臣(小泉純一郎君) ちょうど二十五年前の社会保障制度を考える場合は、いかにふやして改革を進めるかという時代だったんですね。今はさま変わりになって、いかに減らして社会保障改革を進めるかという全く逆のことをしなきゃいかぬ。それだけつらく苦しい作業でありますが、私はこの二十五年の間に、どんどん税収が伸びてふやしていくという想定から、このまま十六兆円以上のお金が全く新規の政策事業に使えないというこの財政硬直化、これをどうするのか。
そういう中で、社会保障関係費が一番費用が伸びていく分野であります。これを別にして、それでは財政再建、財政構造改革をしようとなると各省庁の予算はよほど削減しないとできません。社会保障だけを論議すると必ずふやせという要求ばかりであります。これが果たして可能か。一番ふえる分野でこれは例外だといった場合に、ほかの省庁、ほかの分野の必要性はもっと削減しなきゃならない。そんなことが許されるのかというと、現実の政治から考えてそれは無理じゃないか。
やっぱり一切の聖域をなくして見直す。我慢しながらも、社会保障分野においてもむだな部分、非効率な部分があると思います。これは将来伸びるために縮まなきゃならないということもありますけれども、そういう時期も必要ではないか。今回の厳しい、ふだんだったらとてもできない、切り込まなきゃならないある時期も必要なんだ、それが今の時期ではないか。このむだな部分、非効率な部分を切り込んだ後の社会保障制度改革というのは、後の世代のためにやってよかったなと、よく我慢してくれたなということが言われるような見直しが今必要ではないか。
そういう面において、私は、一切の聖域なく、社会保障関係もほかの分野と同じく聖域なく見直しという視点も必要なのかなというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114269X01019971119/15
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016・牛嶋正
○牛嶋正君 ちょっと今の小泉厚生大臣のお話を聞いておりまして、私、通告した質問ではございませんので、大蔵大臣に御感想だけいただきたいと思います。
私、ずっとこういうふうに切り離せ切り離せと言ってまいりましたのは、もっと基本的なところに問題があると思っているんです。
今の一般会計というのはどんぶり勘定になっているわけです。ですから私は、これだけの社会保障関係費の増額になってきておりますので、福祉会計といいますか福祉勘定といいますか、これは独立させるべきではないかというふうに思っております。その方が非常に会計的にも扱いやすいですし、国民も見てよくわかると思うんです。したがって、今の一般会計の一般行政の部分を一つ独立させまして、それから福祉関係費を独立して福祉勘定といいますかあるいは福祉会計といいますか、そういうものをつくらなきゃいけないと思っております。
私は、むしろ財政構造改革というのはそんなことじゃないかと思っておったんですけれども、ただ財政収支の健全化ということで、財政構造改革なんてちょっと名前にふさわしくないんじゃないか。私は、そういう今の会計制度を抜本的に見直すようなことが構造改革ではないかというふうに思っておりますが、この議論をしますと非常にまた時間がたちますので、そういう考えを持っているということだけ申し上げまして、もしそれについてコメントがありましたら大蔵大臣にお聞きしたいと思います。なければ結構です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114269X01019971119/16
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017・三塚博
○国務大臣(三塚博君) 構造改革ですから、すべての根幹を点検、分析、そしてその先に、次の世紀に向けて望ましい制度とは何かと。特に社会保障関係、給付と負担という永遠の命題を抱えていくわけであります。何回も厚生大臣言われておるところであります。
そういう点で、まず土壌、ベースを再点検する。相並行して健全化目標をつくり量的縮減目標を設定いたした心は、諸制度、今日までのベースになった慣行等々を洗い出しまして、二十一世紀に対応できるものをつくり上げていかなければならない。そのための突破口、それは義務としてやらなければならない編成の基準として明示をさせていただきました。よき制度を前進させるために元も子もなくなってしまうようなことであってはならないという危機感の中でスタートをさせていただきましたと、こういうことであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114269X01019971119/17
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018・牛嶋正
○牛嶋正君 それでは次に、給付と負担の問題に移らせていただきたいと思います。
現行の社会保障制度を構成しております三つの柱、年金、医療、福祉、このうち年金、医療は保険方式によってその費用の大半が賄われております。これに対して、福祉に関してはほとんどの費用が税方式で賄われてきました。
保険方式の背景にあります相互扶助の理念、それから税方式の背景にあります公的扶助の精神を考えますと、これまでの保険方式と税方式の使い分けはおおむね適切な使い分けであったというふうに思っております。これは、先ほどの厚生大臣の御答弁の中にもそういうような意味が込められておったかと思います。
ところが、高齢化率が一〇%前後に達してまいりますと、医療や年金の分野で世代間の負担配分が量的に拡大し始めました。そこで、保険方式の枠組みでの世代間の負担配分に大きなきしみがあらわれてきたということは確かだろうと思いま.す。
今、その一つの例といたしまして厚生年金負担の世代間格差というのを見てまいりますと、現在既に年金給付を受けている一九二五年生まれの高齢者をとってみますと、今まで自分が負担してきた額の七・三五倍の給付を受けているわけでございます。ところが、一九五五年生まれ、ですから今の四十代の現役世代の人々ですけれども、こういう人々は自分の負担する額の一・二三倍の給付しか受けられないという計算になっております。それでもまだ負担より給付が多いわけですからいいわけですが、一九六五年以降に生まれた方というのはもう逆転いたしまして、自分たちの負担した分さえ給付されない、こういうことになります。
私は、これが世代間の負担配分のきしみの典型的なものではないかと思いますが、医療保険にもそういうものが見られるわけでありまして、現在高齢者一人当たりの医療費は現役世代一人当たりの医療費の五、六倍になっているわけですね。そうしますと、高齢者がふえていきますと、どんどん現役世代がそこのところを支えていかなきゃいけないということになってくるわけであります。このようなきしみは、私は相互扶助の理念ではカバーできないほどの負担を現役世代にかけ始めているんではないかというふうに思うわけです。
恐らく、この問題が高齢化の進展とともにますます拡大していくことが想定されるわけです。そうだといたしますと、医療にしても年金にしても、保険方式の枠組みの中だけで改革を進めていって果たして安心で豊かな福祉社会の実現が望めるのか、私は非常に難しいのではないかと思いますけれども、これについての厚生大臣の御見解をお尋ねいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114269X01019971119/18
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019・小泉純一郎
○国務大臣(小泉純一郎君) 今国会の介護保険法案の御審議の中でも、むしろ野党の方から保険の財源ではなくて税で見ろという意見が出てきたことについて私は注目しているんです。これは今御指摘の年金にしても医療にしても介護にしても、保険料についての若い世代に対する過重な負担、これをどうするかという問題と関連してきますけれども、考えてみますと保険も強制であります、保険税と言われるぐらい。
しかしながら、一般の税と比べれば、年金にしても医療にしても介護にしても、これは年金だけに使われます、医療だけに使われます、介護だけに使われますというと、保険料というより一つの目的税的な性格が強いと思います。これがある程度いきますと、程度を超えると、それじゃ税の方がいいじゃないかという議論は委員御指摘のように私は出てくると思います。そのはしりが今の介護保険は税でやれという意見だと思います。
ヨーロッパでもなぜ消費税が導入されたかというと、保守党ではなくて社会主義政党が付加価値税、消費税を提唱したわけです。これは、当然日本も社会保障制度の充実を考えると、そういう考えが与野党を通じて出てくると思います。
三%の消費税を導入するときも、むしろ福祉税にしろという議論が一部でありました。今の委員の御指摘と関連してくると思いますけれども、そのときにも、それでは消費税を福祉目的税にしろとなるとこれは三%じゃとても足りない。そして、今後社会保障関係費は必ず伸びてくる、もし消費税を福祉目的税にしたならばかなりの段階で消費税率を上げなきゃならないということで強い反対論が出ました。結局、目的税じゃなくて一般の方がいいということで三%になりました。
現在でも、委員の御指摘を考えますと、消費税を福祉目的税にしろという議論が将来出てくるのかなという感じを持ちながら拝聴しておりましたけれども、今後社会福祉費用をどういう形で捻出するか、税と保険、私は大変重要な御指摘をいただいたと思って聞いておりました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114269X01019971119/19
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020・牛嶋正
○牛嶋正君 そういうふうに考えていきますと、財政構造改革フレームでは、法案の第九条と十条で医療保険制度それから年金制度の改革をうたっているわけですが、まだ保険方式を堅持するということがその根底にございます。ですから、従来の枠組みの中での改革ということになるわけです。この点からも私は、財政構造改革フレームの中で社会保障改革を進めていく限界があるんじゃないかなというふうに思っておりまして、これは改めてまたそういう理由から社会保障改革を独自に進めていく必要があるんじゃないか。
そうしますと、今度は財政構造改革の方がもう全然形がなくなってしまうというおそれがありますけれども、私はそういうふうに思っております。むしろ財政構造改革というのは、先ほど言いましたように、今の会計制度をどうするかとか、そういうところにもつと議論を向けていかなければならないのではないかというふうに思っております。
それで次は、保険方式を続ける場合の一番気になります納付率の問題についてちょっとお尋ねしたいと思います。
先日、社会保険庁が平成八年度の国民年金の納付率が八二・九%に下がってしまったという報道をしております。これは平均でございますので、ですから若い世代のところは納付率がもっと低いと聞いております。その理由ですけれども、保険料が高過ぎる、それから制度が当てにならないという理由があるわけです。そういうふうに考えますと、相互扶助の理念なんというのはどこかへ行ってしまっているわけでありまして、それほど世代間の負担配分が量的に拡大してしまったというふうに思うわけであります。
ですから、二十一世紀の少子・高齢社会にふさわしい社会保障制度の構築の決め手は、最初に厚生大臣がおっしゃいましたように、やはり増大してやまない世代間の負担配分を、国民のすべての同意を得ながら、しかも現役世代のインセンティブを保持できるような形でどういうふうに組み立てていくかということにかかっているんじゃないかというふうに思いますけれども、この点についてもしコメントがございましたらいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114269X01019971119/20
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021・小泉純一郎
○国務大臣(小泉純一郎君) 若い世代の保険料負担というのは、私は今後年金も医療も介護も総合的に見なきゃいけないと思います。一部分で、年金だったらこの程度負担できるだろう、医療だったらこの程度負担できるだろう、介護だったらこの程度と、やっぱりこの三つはみんな保険ですから、この総合としてどの程度負担できるのかということを考えないと過重な負担になってしまう。
そして、高齢者は給付を受けるだけじゃない。若い人が過重な負担にならないように、世代間の紛争が起こらないように、やはり高齢者もそれ相応の負担をしていただこうというのが、今度の介護保険においても高齢者にも負担をお願いする。さらには、これからの医療制度改革におきましても高齢者だけの保険制度をつくろうじゃないかというような議論が起こっています。その際には、高齢者にも保険料を払ってもらおうという形の議論が今行われております。
でありますので、これから若い世代にどの程度負担をお願いできるかというのと、それでは給付をどの程度するかという、まさに今盛んに言われております給付と負担の公平、どうやってこの均衡を図るかということがもう最重要課題になってくると思います。
その点においては、負担の方においても給付においても、年金一つ、医療一つ、介護一つだけじゃないです。これは、私は三つを総合的に見る必要があるというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114269X01019971119/21
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022・牛嶋正
○牛嶋正君 今、厚生大臣は私の考え方に近い考え方でお答えをいただいたわけですが、私が心配しているのは、二十一世紀の社会保障制度を考えていく場合にやっぱり保険が中心だと思います。保険方式を中心にしていかなきゃいけない、保険の持っているよさというのは、御指摘のように給付と負担が非常にはっきりしているということですから。
ただ、その保険方式を保持していく場合に、私は納付率が八〇%を切りますと、ちょっと公的保険としては成立条件を欠くのではないかということを考えます。もしそういう状態がやってきますと、それは保険方式をこれからも中核にしなければならないのにそこが崩れていく。そうしますと、全体として社会保障制度が非常に不安定な制度になってしまうというふうな考え方を私は持つています。
ですから、今、もちろんその給付と負担の公平な配分というものを考えていかなきゃいけませんけれども、保険方式をもう少し中核に置きながらやっていくとするならば、今こそ税方式を思い切って取り入れて補強する必要があるのではないかと、こんなふうに思っておりまして、介護につきましてもずっと税方式を導入することを主張してきたわけでございます。
最初に申しましたように、国民が納得できれば私はかなり厳しい給付水準の抑制でもそれは受け入れてもらえるのではないかと思います。むしろ、私はそこへ持っていく議論のプロセスが大事であると。こういうプロセスを大事にしなければならないのに、財政構造改革フレームではキャップではあんと抑えてしまって、これでやれというふうなやり方ではどうかということで、きょうはずっと一貫して御議論をさせていただきました。
そして、最後にもう一度提案させていただきたいと思いますけれども、そういう中で、またまた財政構造改革フレームでは介護保険法の成立を図っていくという文言がはっきりうたわれているわけです、今これは審議中でございますけれども。私はこれを見まして、世代間の負担配分のきしみを福祉の分野まで持ち込むというおそれがあるというふうに思っております。
そうだとしますと、介護保険制度そのものも維持が非常に難しくなりますし、そのことが医療保険にもあるいは年金保険にも悪い影響を与えていくのではないかというふうに思っておりまして、ぜひ介護保険法につきましては考え直していただきたい、こんなふうに思っております。これにつきましては、厚生委員会でずっと厚生大臣とやりとりをしてまいりまして、政府の立場もありますが、私はもう一度そのことをお願い申し上げたいと思っております。御見解は結構でございます。
次の荒木先生に質問を譲りたいと思っておりますけれども、こういう議論を進めてまいりますと、もう少し前向きで税方式の取り入れを考えていただきたいということ、それから、何回も繰り返しになりますけれども、社会保障改革は一応切り離して独立て進めるべきではないかということ、そして、できましたら今の一般会計から独立させて福祉会計というふうなものも考えていかなければならないのではないか、こんなことを最後に申し上げまして、私の質問を終わらせていただきます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114269X01019971119/22
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023・荒木清寛
○荒木清寛君 まず、昨日政府が発表いたしました経済対策につきましてお尋ねをいたします。
この頭に「緊急」という二文字がついておるんですが、経企庁長官、何か即効性のある対策がこの中に入っているんですか。そのことが一番きのう、きょうの論調でも厳しく、中長期的な対策としては一定の評価があったようですが、即効性がないという話ではなかったんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114269X01019971119/23
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024・尾身幸次
○国務大臣(尾身幸次君) 二つの局面が実はあると思っておりまして、二十一世紀を切り開くという意味と緊急経済対策と、緊急という単語も入れさせていただきました。
これは一つは、金融状況等を踏まえて中小企業に対します金融をしっかりつけて、これを支えていく、そういうことを考えている次第でございまして、バブルの後遺症を含めて、ややいわゆるクレジットクランチというようなことの中から中小企業に対する十分な金融が行かないおそれがあるという感じもございまして、政府関係金融機関の金融支援を強化するという方向を出させていただきました。量的にもそれから担保等の面でも強化するという方向を出させていただきました。
それからもう一つは、規制緩和等につきましては、二十一世紀に向かって民間活力中心の経済発展をしていくということでございまして、その中には電気通信の規制緩和の問題とかあるいは土地有効利用についての規制緩和の問題とかいろいろ入れさせていただきました。
それから、具体的な即効性という点から見ますと、郊外型住宅の問題とかあるいは都市中心部における容積率の規制緩和等の問題がございます。都市中心部の容積率の規制緩和の問題につきましては、例えば東京で申しますと、銀座とか日本橋にあります昭和三十年代に建てましたビルが、実は容積率で見ますと一〇〇〇%とか一二〇〇%という容積率のビルになっております。
昭和三十九年に八〇〇%という容積規制が新設をされまして、それまでの古いビルは新しい容積率の規制から見ると過剰になっている、既存不適格という単語を使っているわけでございますが、既存不適格ビルになっているわけであります。そこで、そういうビルを建て直したいという希望がありましても、今の規制のままで建て直しますと小さいビルになってしまう、十分の八とか十分の七とかいう小さいビルになってしまう。そこで、建てかえたいと思っていても建てかえられないでいるという状況でございます。
そこで、例えば銀座、日本橋地区等は八〇〇%の容積率になっておりますが、建設省の建築基準法でいきますと一〇〇〇%までいいということになっておりまして、例えば大阪あたりの中心市街地は一〇〇〇%になっております。そこで、この八〇〇%を一〇〇〇%に上げていただきまして、同時に建設省でさらに高度利用地区に指定をしていただきますと、三〇〇%の容積緩和ができるということでございまして、最高一三〇〇までできるということでございます。
そういたしますと、実は従来こういう地域にあります既存不適格のビルで、耐震上もそれからOA機器の導入という観点からも非常に建てかえたい、しかし建てかえると小さくなるのでできないなと思ってずっと我慢していた方々が建てかえを始めるということでございまして、そういう点では極めて大きな即効性がある部分も含んでいる、こういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114269X01019971119/24
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025・荒木清寛
○荒木清寛君 内容は私承知しておりますので、一々御詳細に説明いただかなくていいんです。
今のこの金融状況を考えての中小企業に対する融資の拡大、これはそれで評価をいたしますが、しかし、もっと市場といいますか国民は直接的にこの不良債権処理の問題を心配しているんじゃないですか。拓銀の破綻とともに逆に株価が上がったということは、逆の意味でそれを証明していると思うんですね。そういう意味での不良債権対策というものがこの緊急対策にないわけです。そういうものこそ必要だったんじゃないですか、本当は。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114269X01019971119/25
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026・尾身幸次
○国務大臣(尾身幸次君) 不良債権の問題につきましては、かねがねここで申し上げておりますが、土地取引の活性化、土地の有効利用という観点で、いわばしこっております担保不動産の処分をして、それをいわゆる生産活動に投入するということが実を言いますと不良債権の処理を促進する非常に大きなファクターであるというふうに考えております。
土地取引につきましても、国土庁でいろいろやっておりますけれども、政策の目的が地価抑制から土地取引の活性化という方向に向かってきている、土地の有効利用という方向に転換していることを踏まえまして、土地取引の事前届け出制を事後届け出制にいたしまして、利用目的については個々の案件についてチェックをいたしますが、価格については自由な経済活動に当面任せる、こういうふうにも決定をしていただきましたところでございまして、そういう点では不良債権の処理にプラスの効果があると考えております。
それから、もう一つ申し上げたいのでございますが、不良債権の処理で大きい要因は税制の問題でございまして、土地譲渡益課税の問題とかあるいは買いかえ特例の問題とかそういう問題につきましては、実は十二月に出します税制の問題でその不良債権の問題も踏まえました土地関係の税制について必要な手当てをしていただきたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114269X01019971119/26
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027・荒木清寛
○荒木清寛君 今言ったお話で果たしてどれほど金融不安が解消するかというふうに思うんです。
それで、自民党の方では金融機関支援のために公的資金で優先株購入というようなことも検討されているようですが、そういうことも含めて、今の税制の話とはまた別に、金融不安の解消策というのをさらに今後緊急対策として打ち出していくお考えはないんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114269X01019971119/27
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028・尾身幸次
○国務大臣(尾身幸次君) 私ども、昨日出しました経済対策を取りまとめるためにきのうまで全力でやってまいりまして、これからどういうふうにするかということについてはまだ実は検討していないという状況でございますが、経済の政策でございますから、その場の経済状況に応じましてこれからもいろんな対策をやっていくことになると思います。
今おっしゃいました問題についてどういうふうにするかということについては、今のところまだ具体的に申し上げる段階になっていないということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114269X01019971119/28
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029・荒木清寛
○荒木清寛君 私は、ぜひこの公的資金導入の是非も含めて検討いただきたいというふうに思います。
そこで、大蔵大臣に法案のことについてお尋ねしますが、法案の第四条では二〇〇三年までに財政赤字の対GDP比を三%以下にするという目標を置いております。この財政赤字については貯蓄投資差額という概念で計算をするということでありますが、なぜこういう難解な概念を用いられたのか。法案自体にも貯蓄投資差額なんという説明は一切ないわけですね。私も一時間ぐらい説明をしてもらってやっとわかったわけですが、どうしてこういう国民にわかりにくい概念で財政再建の目標を設定されたんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114269X01019971119/29
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030・涌井洋治
○政府委員(涌井洋治君) お答え申し上げます。
荒木先生御承知のとおり、今回の法律案におきましては、GDP比率の財政赤字と同時に、国の予算のコアである一般会計予算につきましても特例債からの脱却と公債依存度の引き下げという目標をあわせて使用しているわけでございます。
なぜこの貯蓄投資差額という概念を使ったかということでございますが、これは国及び地方の一般会計だけではなく特別会計等を含んだ、いわゆる国全体、中央政府、地方政府全体を通じた財政赤字を示すものでございます。これはどうしてこういう概念が使われているかと申しますと、財政が民間部門から資金を吸い上げることによる経済への影響を示せるということでこれは国際的に広く用いられておりまして、マーストリヒト条約あるいはヨーロッパ諸国の財政赤字の縮減目標でもこれを使っております。あるいはカナダにおいてもこのような目標を使っております。
ただ、法律上は非常に難しい規定になっておりまして、かつ貯蓄投資差額という言葉も非常にわかりにくいことはもう先生の御指摘のとおりなんですけれども、その財政赤字の数字を法律的にかっちりした、法律ですから当然のことながらその概念をはっきりさせなくちゃいかぬということでこういう言葉を使っておるかと思います。これは、単純に言えば政府のトータルの収入と支出の差でございます。しかも、これは一般会計だけではなくて特別会計、かつ中央政府、地方政府を通じたものであるということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114269X01019971119/30
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031・荒木清寛
○荒木清寛君 それでは、この貯蓄投資差額については、経企庁の国民経済計算年報、平成九年版が出版されまして、平成七年度分までの確定値が出ているわけであります。しかし、大蔵省、自治省は平成八年度、九年度につきましても、財政赤字の、貯蓄投資差額の推計額を独自に算出しているわけでありますが、どうして確定値がない段階で平成八年度、九年度のそういうパーセンテージが計算できるのか、どうやって計算をしたのかという数式といいますか根拠を示していただけますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114269X01019971119/31
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032・涌井洋治
○政府委員(涌井洋治君) 荒木先生御指摘のとおり、これは国民経済計算の実績が出ませんと最終的な数字は出てまいりませんが、今回推計として出しております数字の推計方法を申し上げますと、分母はもちろん政府の経済見通しのGDP五百十五兆八千億円という数字でございます。
それから、これは国と地方と分けて考えまして、国の財政赤字の推計は、一般会計の普通国債の純増額、国債発行額、日本の場合は償還が一部ありますので、新規の発行額マイナスの償還分と、それから一般会計の借り入れの増加額、それから特別会計の借り入れの増加額、これを合わせた数字でございまして、これが大体十七兆五千億程度になります。
それから、同じように地方につきましても、地方の地方財政計画に基づきまして、地方債の発行額から償還額を引いたものに交付税特別会計の借入金を入れたもの、これが約十一兆二千億円ということで、国が三・四%、地方が二・二%ということになっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114269X01019971119/32
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033・荒木清寛
○荒木清寛君 そうなりますと、今の計算は全く貯蓄投資差額という考え方と別の考えで推計しているわけですね。簡単に言うと、国債の新たな発行額、それから一般会計の借入金の純増額、特別会計の借入金の純増額、これを推定されるGDPで割るというわけでありまして、そういう難しい貯蓄投資差額というような考え方に基づいて推計した数字じゃありませんね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114269X01019971119/33
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034・涌井洋治
○政府委員(涌井洋治君) この推計は、先ほど申し上げましたように、貯蓄投資差額というものは国及び地方の一般会計、特別会計等の収入、支出の差額の合計でございますので、考え方としてはそれに沿った推計をしているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114269X01019971119/34
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035・荒木清寛
○荒木清寛君 そうですがね。
そうなりますと、そういう考え方で計算をしたものと貯蓄投資差額という考え方でやった値というのはほぼ一致するという考え方なんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114269X01019971119/35
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036・涌井洋治
○政府委員(涌井洋治君) 概念的には同じでございますが、ただ実績値となりますと、例えばGDPがどうなるかとか政府の経済見通しどおりになるかどうかというのは、これはもう経済ですから、生き物ですからわかりませんので、実績値とぴったりと一致することになるかどうかはこれは実績の数字が出て初めて確定するものでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114269X01019971119/36
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037・荒木清寛
○荒木清寛君 ですから、概念的に同じであると言うのであれば、私が申し上げたいのは、第四条の目標値も今おっしゃったように国債の純増額、一般会計借入金の純増額、特別会計借入金の純増額をGDPで割るという非常に国民にとってわかりやすいものを設ければ足りるのに、なぜそんな貯蓄投資差額という複雑なものを設定しているのかということを言いたいわけなんです。
しかも、第五条によりまして、予算を国会に提出した後に、あるいは地方財政計画が定まった後にこの推計値を報告しなければいけないというわけでありまして、我々は予算審議の段階では、確定している財政赤字のパーセントと推計値を比べてこの予算を審議するわけですから、当然同じ数式のもとにこの確定値も推計値も計算されなければ比較ができないではないかというふうに思うわけなんです。
この問題はこれで終わりますが、重ねてお尋ねしますけれども、そういうことであればなぜ難しい貯蓄投資差額、そういう概念を持ってきているんですか。もう一回教えてください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114269X01019971119/37
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038・涌井洋治
○政府委員(涌井洋治君) 先生、実はこの国民経済計算の概念の中で、特別会計といえども国民経済計算上の貯蓄投資差額に入るものと入らないものがあるのでございます。例えば国の特別会計で言えば、企業的な会計は企業に分類されるものですから中央政府に入らないとか、それから大きなものとしては、社会保障基金はこの概念から入らないとか、この法律で規定しないと膨大な、これは入る入らないということを一々規定していかなくてはいかぬということで、国連の統計という概念をそのまま法律の規定に持ち込んでいるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114269X01019971119/38
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039・荒木清寛
○荒木清寛君 そうなりますと、確定値と推計値が同じ考え方に基づいて計算されていないわけでありまして、そういうものを国会にあるいは国民にこの第五条で報告してもらって、果たして比較ができるのかという疑問がぬぐい去れません。
次に、大蔵大臣に、今、涌井局長もお話しになりましたが、財政再建の目標としまして、国と地方の財政赤字をGDP比三%以下に抑える、二〇〇三年ですか、と同時に、赤字国債からの脱却ということも、特例国債からの脱却ですか、これも同じく四条でうたっているわけですね。この特例公債からの脱却というのをあえてここに目標として重ねて設定された意味についてお答えいただけますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114269X01019971119/39
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040・三塚博
○国務大臣(三塚博君) 法律にします根拠は政府委員が答えたとおりでありますが、明示をいたしました理由は、このまま赤字公債発行に歯どめがかかりませんと破局的な財政状態が出るであろう。歳出の面、御案内のとおり社会保障関係費だけに及びませんで、ありとあらゆる分野で要求が出ます。同時に、税財源についての要求も出ます。
そういう中で、健全財政ということであれば、当面の目標でありますが、国債費除きの租税と歳出が同額になるということが財政の基本的なスタート台である。本来であれば、歳出に見合う財源がありますことが一番正しいわけでありますけれども、なかなか累増いたしました公債費の残額が御承知のとおりでありますから、本年が御承知のとおり十七兆の利払い費等であります、一部、元金の借りかえの際に出る部分もありますから。そう申し上げさせていただいたわけであります。
要すれば、そういう目標と計算値はこちらにありますけれども、G7各国だけでなく、特にEUにおいて統一通貨を目指していくという際に基礎的経済状況の基本に通貨があるわけでございますから、財政がしっかりしておることが大事ではないのかと。こういうことで、加入の条件に御案内のとおり……発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114269X01019971119/40
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041・荒木清寛
○荒木清寛君 それはわかっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114269X01019971119/41
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042・三塚博
○国務大臣(三塚博君) はい。
そういうことで、それを参考にしつつ、やはり世界経済の中の経済国家としての我が国もそれだけの気迫を持って取り進めていかなければならない。単年度で解消されるものでございませんから、六カ年で目標値として発行ゼロを明確にすることで、歳出カットの努力、体質改善の努力、大きくは構造改革を断行してまいりたい、こういうことであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114269X01019971119/42
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043・荒木清寛
○荒木清寛君 私の質問の仕方が悪かったのかもしれませんが、おっしゃるような破局的な財政とか公債の歯どめなき累増というのは、財政赤字を三%に抑えるという目標によって達成できるんじゃないかと思うんです、政府のスタンスに立てばですよ。それ以上になぜこの赤字国債ゼロという目標をそれに加えたのかということを私は今聞いたわけなんですが。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114269X01019971119/43
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044・三塚博
○国務大臣(三塚博君) 目標がございませんと気迫が出ません。そして、法律的に明示をすることで御審議をいただき、国会の意思を明らかにさせていただくことによって国民とともに赤字解消に全力を尽くす、こういうことであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114269X01019971119/44
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045・荒木清寛
○荒木清寛君 別の聞き方をしますと、大臣、GDP比三%の範囲であれば、建設国債はいいけれども赤字国債はだめなんだという、そういう明確な仕切りをしたのはなぜですかということをお伺いしているんです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114269X01019971119/45
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046・三塚博
○国務大臣(三塚博君) こういうことなんでしょうか。ストックは九〇を超えているわけですが、そちらに目標を掲げずして赤字公債だけの削減を三%以下としたのかということと同義語であれば、それは赤字公債プラス建設国債と、このトータルが公債費総額でございます。
それで、その分類をいたしますと、ストックの分が今申し上げました九〇を超えておる、九二ということでしょうか、これをそれ以上累増させることなく九〇に抑えるためには、まずもって赤字公債の発行を六カ年でゼロにしていくことが大事と。数値的な計算方式は政府委員から必要があればさせますが、これをやることで九〇に抑えることができるという計算値が明示されているところであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114269X01019971119/46
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047・荒木清寛
○荒木清寛君 政府委員にお聞きしますが、そうしますと、この建設国債、赤字国債を分けるというのは国際的なルールなんでしょうか、あるいは諸外国の財政再建においても建設国債、赤字国債というのは区別をして目標を設定しているんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114269X01019971119/47
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048・涌井洋治
○政府委員(涌井洋治君) 諸外国の例で見ますと、ドイツにおきましては日本と同じような考え方がございますが、その他の国におきましてはそういう考え方はございません。
なお、この法律で赤字国債の脱却を法定している理由といたしましては、我が国におきましては、財政法は負担の世代交代という考え方に立ちまして、公共事業等については見合いの資産が残るということで建設国債の発行を例外として認めるところでございまして、見合いの資産の残らない特例公債の発行については、将来世代への負担の先送りをするものであるということから、財政法上はこれは厳に回避すべきものであるという考え方でございます。
そういう意味で、まず赤字国債からの脱却、さらに建設国債も減らしていくというのが考え方でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114269X01019971119/48
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049・荒木清寛
○荒木清寛君 要するに、赤字国債は悪で建設国債は善だという、そういう割り切りが私はあるように思うんです。しかし、建設国債についてだってむだな公共工事というのはあるわけですし、逆に赤字国債を財源とした福祉対策とか、あるいは景気の腰折れを防ぐための所得減税というのも私は有用だと思うんです。
ただ、問題は赤字国債か建設国債かということじゃなくて、国債を発行することによってどういう経済的な効果が出るかということこそ大事じゃないかと思うんですが、大臣いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114269X01019971119/49
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050・三塚博
○国務大臣(三塚博君) おっしゃるとおりです。建設国債が悪でこっちが何だと、こっちが悪でこっちがどうだと、こういうことではなく、建設国債は世代間公平な負担、それでそのことをなし遂げることによって国民の財産として国民に便益を与えていくであろう、こういうことであります。
赤字国債は、やむを得ず税収の足らず前を補てんする意味でこれを行っていかなければならないという基本的なことがあり、しかし、野方図にこれを時の政府の判断に任せるだけでは財政が破綻をいたしますから国会の承認を得なければならない、こうさせていただいておるところでございます。仕分けはまさに両々相まって必要な場合にどう対応するかという財源の捻出の仕方でありますが、今回この法律をつくりました理由は、まさに破局的な国、地方の財政状況に相なりましたことに着目をし、後世にツケ回しをすることでいくことは、世代間断絶だけではなく、財政がアウトになり国民生活が危機に追い込まれますと、この点に着目をして赤字公債の発行を六年間かけてゼロにする、こうさせていただいたところであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114269X01019971119/50
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051・荒木清寛
○荒木清寛君 かみ合わないうちにもう時間になりましたが、私は今後の例えば不良債権の処理につきまして、場合によっては公的資金投入ということだってあり得るわけでして、その場合には赤字国債しか財源は私はないんだと思います。そういう政府の機動的な財政運営までもこの法案によって禁じてしまっていいのかという懸念を表明しまして、終わります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114269X01019971119/51
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052・小島慶三
○小島慶三君 大臣さん方、どうも御苦労さまでございます。
政府の緊急経済対策も発表になりましたし、株価も一万七千円を回復いたしましたということで、そういった喜ぶべき面もあるんですが、一方、私が非常に関心を持っていますのは、昨日新聞に出ました、十月の倒産件数が非常に多い、またそのレベルが非常に高いということでございます。倒産件数が十月までの累計で一万三千何がしか、それから累計でいきますと年末までに恐らく十一兆という大変な数字が見込まれる、その大半が中小企業であると思います。
そこで、通産大臣、お見えいただきましたので、まず初めに中小企業のこういった惨状に対してどういう見解を持たれるかお伺いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114269X01019971119/52
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053・堀内光雄
○国務大臣(堀内光雄君) お答えを申し上げます。
先生御指摘のとおり、中小企業の倒産件数が非常に増加をいたしております。本年七月、八月、九月と眺めてまいりましたが、十月の倒産件数は非常に大きくなりまして、件数全体では千六百四件に達しておりまして、そのうち一千五百九十五件が中小企業の倒産でございます。最近五年間の中小企業の月平均の倒産件数が千百三十三件ということを考えますと、中小企業の倒産件数は大変高水準にあるというふうに考えます。また、全体の倒産件数の内容を見てまいりますと、販売不振あるいは赤字の累積等が主因となっている倒産、不況型倒産件数が約六割を占めているということ、また約三分の一が建設業、あるいはまた三分の一ぐらいが小売業というように、小売、建設業が非常に大きなウエートを占めてきております。
中小企業を取り巻く厳しい状況を踏まえますと、今後とも中小企業の倒産動向については注視をしていかなければならないと考えておりまして、こうした厳しい状況に対処するために、昨日、政府として発表いたしました経済対策にもありますように、金融機関との取引に著しい変化を生じて資金繰りに支障を来すおそれのある中小企業者に対しましての別枠の融資制度を創設いたしました。十二月一日から実施をいたすことにいたしております。
また、中小企業の資金繰りに支障がないように万全な措置を講ずるとともに、民間資金の貸し出しを有利にするための保証制度についての枠も拡大するというようなこともいたしておりまして、同時に、倒産関連特例保証制度等の倒産防止対策についても引き続き実施するように全力を挙げて万全を期してまいりたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114269X01019971119/53
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054・小島慶三
○小島慶三君 ありがとうございました。
それで、私は、いろいろな経済指標も出ますけれども、失業と倒産、これが一番実体経済の面では深刻な問題だと思っております。そういう点から見まして、完全失業率の非常な高さ、今の中小企業の倒産、これから見るとやはり我々はもう不況の深淵に直面しているというか、あるいはそこにもう入り込んだというか、そういう感じがしておるわけでございます。
今、イギリスあたりではロングウェーブ仮説というものが行われておるそうでございます。これは昔のコンドラチェフの長期波動論の現代版であると言ってもいいと思うんですけれども、その第一局面は高度成長、第二局面はそれからの後退、第三局面は見せかけの繁栄、日本で言うバブル、第四局面がそれからの第二回目の後退というものだそうでございまして、これが日本の経済の現況にぴったりするのではないかという説がございます。その第四の局面に参りまして、さらに、そこに金融の機能不全という問題が出てまいりますと、これはもう恐慌と言ってもよろしいような状態になるということだそうでございます。
そういう点から見ますと、企画庁長官には申しわけないんですけれども、企画庁のずっととられてきた緩やかな回復、それから今の足踏みという表現が少し生ぬる過ぎるのではないかというふうに思うのでございますが、その点、長官、いかがでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114269X01019971119/54
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055・尾身幸次
○国務大臣(尾身幸次君) 私自身がいろいろな経済指標を見ておりまして、住宅建設は非常に落ち込んでおります。これは消費税の反動ということもございまして落ち込んでおりますし、また消費もそう大きな伸びを示していない、むしろ横ばいのような感じでございます。他方、公共投資関係はこれからそんなに伸びていかない、むしろ下がりぎみであるというふうに考えております。
ただ、設備投資とかあるいは輸出関係につきましては、輸出はかなりいいと思っておりますし、設備投資も前年比でそこそこの増大を示している状況でございます。ですから、そういう意味から見て、全体として景気回復の基調は失われていないけれども足踏み状態にあるというふうに表現をしているわけでございますが、なお、日銀短観等に見られます企業の景況感というのはかなり落ち込んでいるのも実態でございます。
そういう意味で、私どもは昨日「二十一世紀を切りひらく緊急経済対策」を出させていただきました。短期に効果があるものもございますし、やや中長期にわたって日本経済の活性化を図るものもあると思っておりますが、この政策が現実にずっと進行していきまして、企業の先行き、あるいは消費者の経済の先行きに対する信頼感というものが回復してくれば、景気は徐々に上向き、正常な回復軌道に乗るものと期待をしているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114269X01019971119/55
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056・小島慶三
○小島慶三君 ありがとうございました。
その辺が少し長官と見方が違うのかもしれませんが、思い起こしますと、昭和恐慌のときの日本の経済はたしか四年間に〇・七%の平均成長率であったというふうに記憶しております。今度はもっと期間が長いんですね。もう既に六年に及んで、六年の平均成長率は一・一%ということで、しかもことしについては各民間の経済機関予測がいろいろ出ておりますが、〇・九というふうな数字を挙げております。したがいまして、そういう点からしますと、昭和恐慌のときとは大分情勢は違いますけれども、それに近づく危険というものはあるのではないか、そういうふうに考えております。
そういった意味では、もう景気対策というものをゆるがせにすることはできない、むしろ一刻を争うということかとも思いますので、今度の政府の施策がどれほど効果があるかということを見守りたいわけでありますが、どうも即効性はないという感じがいたします。
そこで、次の問題に移りたいと思うんですけれども、そういうふうなスタートを切るということで、これからの中長期の経済運営というものが果たしてうまくいくのかどうかという点が大変心配になります。
私は、かねがねこの国会でも申し上げましたように、人口の増勢が落ちる、人口成長率が落ちる、若年労働者が減る、それから空洞化が強まる、それから今の低金利のもとではもっと金が流出するでありましょう。それからもう一つは、環境の状況が悪くなる、環境制約が強まるというふうなことから、大体今後一%ぐらいの成長しかないというふうに思っておるわけでありますが、政府の見通しはもちろんそれより高い三・五とかそういうことを想定しておられますが、果たしてこの三・五までずっと維持していく間に日本の経済が失速するということはないものだろうか。
例えば、ビッグバン一つとりましても、ビッグバンによりイギリスの金融機関で生き残ったものは三分の一であるというふうに言われております。日本もそれに近いようなことになるかと懸念されておりますが、そういう点、大蔵大臣は、その先行きにつきましてどういうふうにごらんいただいておられるでしょうか、お伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114269X01019971119/56
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057・三塚博
○国務大臣(三塚博君) ただいま通産大臣、また昨日発表されました経済政策、これに今後の経済展望を開いてまいりますために、中長期的な視点をしっかりと踏まえ、短期的な効果の出るものもそれなりに取り進めていくという強い決意を、具体的な政策の提示をすることによって国民皆様と一緒に取り組もうという姿勢を示したものと思っております。
経済見通しにつきましては、確実にここでどうなりますと申し上げるということは困難でありますけれども、先ほど来のお話のように、経済の見通しにつきましては、経済構造改革を断行することにより、また規制撤廃、規制緩和等を前倒しすることにより高コスト構造が解消されていく中で経済の活力が盛り上がってまいりますと、こういうことで全力を尽くされておるところでございます。
特に、私どもは昨日発表の経済対策、これの確実な実施のために各省庁力を合わせてその具体化のために取り進んでまいるということでありますので、見通しを基本に、それに向けて年度後半全力を尽くすことになるでありましょうし、新しい年度に向けましても、そうなると思って立派な改革のベースに立った国家予算編成と、こういうことで取り進めてまいりたいものだと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114269X01019971119/57
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058・小島慶三
○小島慶三君 ぜひ、そういう形の経済運営をお願いしたいと思います。
ただ、私、非常に気になりますことが一つありますけれども、これは政府からいただきました「財政事情の試算」というものでございまして、この表をずっと拝見しますと、平成十年度におきましてはいろんな対策を講じてもなお二兆一千億ないし二兆九千億。これは成長のグレードが違いますから、三・五%の場合が二兆九千億、それから一・七五%の場合が二兆一千億ということだと思うんですけれども、この手当てが書かれていないわけであります。要調整額となっているわけであります。この要調整額というのはどういう意味でございましょうか。
それから、これを調整するとしてどういう形でこの穴を埋めるというお考えでございましょうか。大蔵大臣にお伺いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114269X01019971119/58
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059・三塚博
○国務大臣(三塚博君) これは御承知のとおり、財政事情の試算、名目成長率一・七五と三・五ということで税収の基本をそれで計算をして作成いたします。同時に、他の税収以外のものも国庫納付金等あるわけでありますが、それはそれとしてこれに加えさせていただきまして歳出歳入をここに見積もったわけでございます。
収入が歳出に見合いませんければ、調整しなくちゃいけないということで要調整額。収入が歳出を上回っておれば問題は全くございません。国債費の支払いに純粋にそれが発動されていくわけであるからであります。
税収が落ちるということになれば、歳出をどうカットしてその埋め合わせを行うかという一般的な運営の方法を今申し上げさせていただきましたが、この仮定計算はまさにそういう意味で、歳出歳入、そのギャップが、一・七五の場合が二・九兆であり、三・五の名目成長率の場合は二・一兆、こうここに計算をしてはじき出したわけでございまして、歳入と歳出のギャップの額、それが予算編成の上から諸基準を踏まえてつくり上げました場合、この場合は財政構造改革の法律を通させていただいたという前提で計算をいたしておりますので、十年度はまさにここに二・一から二・九という要調整額が出ます、こういうことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114269X01019971119/59
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060・小島慶三
○小島慶三君 お答えをいただきましたけれども、質問の後の半分の、その手当てをどうするのかということについてはいかがでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114269X01019971119/60
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061・三塚博
○国務大臣(三塚博君) どうも失礼を申し上げました。
要調整額を埋めなければ十年度予算が編成でき得ません。財政構造改革法の基本に沿いまして埋めていかなければならない、こういうことになります。
大変困難な道でありますけれども、キャップがかかっておるところ、縮減、削減を図るというめり張りのきいた編成の中で取り組んでいかなければなりませんし、そういう点で大変初年度は初年度の重みがございますものですから、国民皆様の理解を得られるよう五つをまたお願いを申し上げまして、この困難な原案作成に当たっていかなければならない、こういうことになります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114269X01019971119/61
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062・小島慶三
○小島慶三君 そうしますと、仮にこれが埋まらないという情勢であれば、公債増ということはできないでありましょうから、一層歳出を切り込む、こういうことになりますでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114269X01019971119/62
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063・三塚博
○国務大臣(三塚博君) 結論的にはそうです。まさにそのとおりの手法が最後に残された道、こうなります。
この要調整額が縮み、達成されますように、それまでの間、不要不急のものをどう整理していくか、民業移管をどのようにつくり上げていくか、行政経費の節減を従前毎年やってきておるわけでありますが、さらにこの部分の経費節減を期するために全力を尽くしていかなければならない、ありとあらゆる見直しの中で対応をしてまいるということになります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114269X01019971119/63
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064・小島慶三
○小島慶三君 この財政構造改革のこの法案の裏にはそういう難問があるということが今の御答弁でわかったわけでございます。その点、私どもは非常に不安に思いますけれども、そういう形でさらに財投とかいろんな面で努力されるということと了解してよろしゅうございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114269X01019971119/64
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065・三塚博
○国務大臣(三塚博君) まず歳出カットをし、むだを省き、スリムな十年度予算編成を目標にやり抜いてまいります。税収も予定されておるわけでございますから、この税収の確保につきましても努力をしてまいらなければなりません。
財投という具体的な御提示でございましたが、今直ちに財投に頼る、こういうことではなく、見直しの真っただ中でございますから、オーソドックスな、基本的な取り組みの中で全力を尽くしていかなければならない、こういうことで最大の努力を今いたしておるというところであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114269X01019971119/65
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066・小島慶三
○小島慶三君 大分しつこい質問になりまして恐縮でございました。
そういたしますと、十年以降もやはりそういう状態が出てくると思うんですけれども、その前に、先ほどちょっと私は、先の見通しとしても一%ぐらいまでしか見込めないんじゃないか、中期的にそういうふうな展望を申しましたけれども、この点は企画庁長官にお尋ねをいたしますけれども、その三・五というのは私のそういう見解と大分違ったことになりますが、どういうふうにお考えでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114269X01019971119/66
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067・尾身幸次
○国務大臣(尾身幸次君) この中長期経済の見通しにおきまして一・七五あるいは三・五という数字を見込んでいるわけでございますが、私どもといたしましては、従来の財政出動型の経済対策ではなしに、民間活力を生かすために規制緩和を進め、土地の有効利用を進め、あるいは法人課税問題等につきましても、企業が国を選ぶ時代に外国と匹敵するような事業環境を整えるという観点からの見直しを行う等によりまして、我が国における企業活動、民間活動を活性化していく、そのことによって三・五%程度といいますか、中長期経済の見通し、規制緩和を進めまして実現をしていきたい。
ちなみに、一・七五という数字と三・五という数字と二つありますが、一・七五は現状規制緩和が進まないケース、三・五は規制緩和等によって民間活力が生かされるケースという考え方で整理をしているところでございまして、その民間活力を生かしたような体制に持っていきたいというふうに考えている次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114269X01019971119/67
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068・小島慶三
○小島慶三君 問題はその規制緩和でございますが、その規制緩和に少し荷がかかり過ぎているんじゃないかというふうに私は感ずるのでございます。
規制緩和は、確かにこれからの活路を開く一つの切り札であろうと思いますし、私もその効果は否定しませんが、今の規制緩和はある程度じわじわと効果を生んでいくもので、当面の景気の状況のもとでは必ずしも規制緩和がプラスに働いているという感じがないわけでございますが、企画庁の方で規制緩和による経済効果といいますか、計量的にそういうふうなものについて御検討いただいておりましたらお教えいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114269X01019971119/68
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069・尾身幸次
○国務大臣(尾身幸次君) かつて規制緩和につきまして検討いたしました際に、いろんな形での規制緩和を進めることによりましてGDP年率〇・九%ぐらいのプラスを実現できるという計算を経済企画庁でしたことがございます。
それから、最近の実例で言いますと、例えば移動通信市場における規制緩和によりましていわゆる携帯電話等が爆発的に売れた。それによってかなりの、九三年度九千億円から九四年度には一兆四千億円にも市場規模が拡大をしたということがございました。九六年度四兆円、今年度は五兆円を超えたものと見込んでいるところでございまして、そういう点でも規制緩和の経済に及ぼす効果というものはかなりあるというふうに考えております。特に、今回、電気通信関係の規制緩和をかなり思い切ってさせていただきました。そのこともこの期間中には効果を発揮するというふうに考えております。
なお、短期的な問題でございますと、都市中心部におきます容積率の規制緩和によりまして、今まで建て直しができなかったビルの建て直しがすぐにでも始まると考えておりますし、それから郊外型住宅につきましても、農地の転用とか、あるいは市街化調整区域における開発許可の弾力化という規制緩和によりまして土地の手当てがうまく進みますと、実需が直ちに出てくるというふうに考えている次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114269X01019971119/69
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070・小島慶三
○小島慶三君 確かにそういうふうな面がプラスとしてあると思うんですけれども、やはり一方では規制緩和というのは当然参入者の増加、競争の激化というものを伴いますから、当然その間に脱落する者もあり、それから価格のダウンということで痛手をこうむる者もありということで、景気の面からするとうまくかみ合わない、政策の目的にうまくプラスになって生きてくるということばかりではないように思うのでございますが、これは私の見方でございます。
それから、せっかく外務大臣にわざわざこちらへおいでいただきましたので、外務大臣に一、二点お伺いしたいと思います。
この前の本会議の質問のときにも私申し上げたことでございますが、改革を妨げるものが幾つかあると。
その一つは、改革の対象になる方々の痛みと申しますかあるいは怒りと申しますか、そういったもの。それとまた、最近のサッカーでいえばサポーターですか、サポーターの反対といったようなもの、これが一つある。
それからもう一つは、今の景気の問題、景気か改革かという二者択一の問題がある。
それから三つ目には、アメリカによる外圧というものがあるのではないか。一つは、日本の不況というものを財政出動によって内需を拡大してその面から不況を脱するようにというふうな注文と申しますか内政干渉といいますか、そういうふうな動き。それからもう一つ、不良資産の処理について日本政府は財政出動をして早くこれを片づけるべきである、こういう主張。これを国務長官なり国務次官なり、いろんな要路の人が発言をしているということがあると私ども聞いておりますが、最近の日米交渉等について依然としてそういう発言が日本に覆いかぶさってきているのかどうか。
外務大臣、外交上の機微になることでしたら御遠慮申し上げますけれども、何かそういうことでお気づきの点があったらお教えいただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114269X01019971119/70
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071・小渕恵三
○国務大臣(小渕恵三君) 今の小島委員の御質疑の論点は、日米間の経済問題と承らせていただいたわけでございますが、最近の日米におきましては、ガイドラインに見られますように安全保障上の問題等々、全く同盟国としてお互い理解を深めております。
ただ、残念ながら経済問題、特に日米間のインバランスの問題につきましては、昨今また我が国の輸出ドライブはかなりかかっておるんじゃないかと。逆に言えばアメリカ側が購買力が非常に強いということだろうと思うんですが、そのことが双方の収支バランスを崩しているという点についていろいろな意見が出つつあるということを慎重に考えていかなきゃならないと思っております。
二十一日からバンクーバーでAPECが開かれる予定に相なっておりますが、私といたしましても、カウンターパートでありますオルブライト国務長官等とも日米間の経済問題について、お互い非難のし合いということではなくて、解決できるものは一つ一つ解決するという形で処理することによって、長い友好関係を維持していきたい、こういうふうに努力をしてまいりたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114269X01019971119/71
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072・小島慶三
○小島慶三君 ぜひそういうことで御努力をいただきたいと思います。外圧に屈するなかれ、恫喝に屈するなかれということを私繰り返して申し上げたいと思います。
これは最後の質問になりますが、最近、外交上、首脳会談というものがかなり上手に行われてきているというふうに私思うのでございます。先般の、私ども予期しなかった米中会談というようなものも、これもまあ半ばでありますが成功したようでありますし、それから橋本総理の非常にお骨折りで日ロ関係についても何か目鼻がついたような、そんな感じがしないでもありません。これからさらに中国とロシアとのトップ会談が行われますし、その後も続々とこういうふうなトップによる意見交換というものがあると思うのでございます。
私、同僚の武田邦太郎先生の驥尾に付して、そういったことをベースにして、日米中、場合によってはロを加えた四カ国の不戦の誓いというか不戦条約というか、あるいは核廃棄の問題を具体的に込みにしてもいいと思いますが、そういうふうな国際環境というものがっくれないものかということを武田先生とともに言っているわけでありますが、非常にデリケートな難しい問題でもございますし、非常に大きな問題でもございますので、果たしてそういうことが可能かどうか。しかし日本政府としては、有事で一番困るのは日本でありますし、それから日本だけが恐らく居中調停というかそういう発言ができる国ではないかというふうに思いますので、この辺についての推進といいますか、そういうお考えはございませんでしょうか。この点を外務大臣にお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114269X01019971119/72
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073・小渕恵三
○国務大臣(小渕恵三君) 御定見かと存じます。
最近、御指摘のように二国間の首脳会談ということが頻繁に行われておりまして、それなりの成果が上がっておりますことは大変結構なことだと思います。日中、日ロあるいは米中、米ロ、それぞれ大きな問題を解決するきっかけになっておることは大変結構なことだと思います。かつての冷戦構造のときのように、日米と中ソとが相対立する時代から考えますと、この四つの大きなパワーある国が、お互いに首脳同士が話し合っておるということは大変いい姿だろうと思っております。
ただ、御指摘ございましたように、四カ国でやられるということについては若干逆の抵抗もなきにしもあらずではないかと危惧するのは、四カ国だけで首脳同士が話し合って世界の問題を処理していくというような形になりますと、またアジアにはそれぞれの諸国がございますので、そういった点で、マルチでできるところはマルチでやりますし、また国際的に共通する課題、例えば先ほど御指摘のありました核廃絶決議のような形は、やっぱりこれは国連総会で決議案が、米中ロを含め国際社会の中の圧倒的支持を得て採択されておるというようなこともありますので、国際連合の中で処理できるものは処理していきたいと思っておりますが、同時に、今御指摘のように、四カ国それぞれが十分腹を割って話し合っていくということは大切なことだろうというふうには考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114269X01019971119/73
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074・小島慶三
○小島慶三君 終わります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114269X01019971119/74
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075・遠藤要
○委員長(遠藤要君) 午後一時十分に再開することとし、休憩いたします。
午後零時十二分休憩
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午後一時十四分開会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114269X01019971119/75
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076・遠藤要
○委員長(遠藤要君) ただいまから行財政改革・税制等に関する特別委員会を再開いたします。
休憩前に引き続き、財政構造改革の推進に関する特別措置法案を議題とし、質疑を行います。
質疑のある方は順次御発言願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114269X01019971119/76
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077・田英夫
○田英夫君 法案の御質問をする前に、外務大臣においでいただきましたので、私は、先日、与党訪朝団の一員として北朝鮮に行ってまいりましたので、この問題について若干お尋ねをしたいと思います。
今回の訪朝団の北朝鮮側とのやりとりは新聞でも伝えられておりますけれども、実際にはそれ以上に激しいやりとりでありました。激論という言葉がぴったり当てはまるようなやりとりをやりました結果、一定の成果があったのではないかと思いますが、外交を預かっておられる外務大臣として今回のこの訪朝団の結果についてどうお考えか、まずお聞かせいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114269X01019971119/77
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078・小渕恵三
○国務大臣(小渕恵三君) 委員みずから団員として御参加された今回の訪朝団でございますし、今ほどお聞きをいたしましても、双方とも大変真剣な話し合いをなされたと承っております。
いずれにいたしましても、率直な対話が行われ、国交正常化交渉の早期再開に向けて双方政府間で一致をしておりますことでございますから、これを支援することで意見が一致されたということは政府としてありがたいことだと思っております。
北朝鮮側からの日本人配偶者の故郷訪問の継続実施も表明されたと承知いたしております。また、拉致疑惑につきましても、北朝鮮側より、北朝鮮とは関係のないことであるとしつつも、一般行方不明者として調査するという回答をされたと聞いておりまして、大変注目もいたしております。
政府としては、北朝鮮がこのような調査を真剣に行い、問題の解決のため具体的行動がとられるよう引き続き努力をいたしてまいりたい、このように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114269X01019971119/78
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079・田英夫
○田英夫君 外務大臣が今おっしゃったとおり、北朝鮮側は拉致問題については極めて激しい反論をしてまいりましたけれども、結論として行方不明者の調査という表現で、これをいわば調べるという態度になっております。
そのほか、日本人配偶者の里帰りの問題も含めまして今度のやりとりの中で感じましたことは、突っ張りっ放しということではなくて、柔軟とは言えませんけれども、従来に比べてかなり余裕のある態度をとり始めた。これがいわゆる金正日総書記就任の中で出てきているならば大変結構なことだ、新しい政治の、政権の方向だとすれば大変いいことだとは思いますが、まだ予断は許しません。
しかし、いずれにしても国交正常化交渉の障害物であったものが、地ならし程度ではありますが、まだ荒れ地の状態ではありますけれども、一応障害物は取り除けたというふうに私どもも思っているわけであります。できるだけ早く第九回の国交正常化交渉が再開されることを願っておりますけれども、外務大臣としては大体のめどとしていつごろと、もしそういうことをおっしゃれるならばこの機会にお知らせいただければと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114269X01019971119/79
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080・小渕恵三
○国務大臣(小渕恵三君) 相手方のあることでございますので、この時点でその時期を明確にすることはできませんが、願わくばぜひことしじゅうの早い時期に第九回正常化の交渉が再開されることを期待いたしております。
委員今御指摘のように、従来でございますと、拉致問題等につきましてそうしたことが正式な議題に上がりましたら会談は中断と、これは李恩恵問題をめぐってそうした事態になっておるわけです。今回の訪朝団を通じましていろいろ強い主張がそれぞれあったやに聞いておりますが、何はともあれこの問題も真剣に行方不明者として考えていくということでございますので、この交渉におきましても、仮にそうしたことを議題に取り上げましても直ちに会談が中断するというようなことはないと確信をして、これから一日も早い再開を望んでまいりたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114269X01019971119/80
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081・田英夫
○田英夫君 答礼宴の席に北朝鮮外務省の幹部も出てきまして、そこでの話で、これは個人的なやりとりで、北朝鮮側も十二月の早い時期に再開したいというような発言がありました。今の大臣のお話とほぼ一致する感じがいたしますが、ちょうど十二月十八日には韓国の大統領選挙が行われるわけで、これまた注目すべきものでありますから、そんな関係も当然外務省としてはお考えになると思いますけれども、ひとつできるだけ早く軌道に乗せていただくといいと思います。
橋本総理、小渕外務大臣の最近のロシアに対する交渉、御発言、二十世紀に起こったことは二十世紀中に片をつけたいと。そういう意味では、ロシアの場合も北方領土という大きな障害物があったわけですけれども、これをちょっと横に、入り口に置かずに横に置いて、あるいは部屋の中へ置いて、お互いに部屋に入って話をして、この障害物の石を、北方領土をどうするかということもその中で話そうという姿勢と私は受け取ります。北朝鮮の場合も障害物があることは事実ですけれども、それはひとつ横に置いて、部屋の中に置いて、これをどうしようかという話をやはり二十世紀中にやるぐらいのことで、二十世紀中に起こったことは二十世紀中に片をつけて新しい二十一世紀を迎えるという、このことは私は両方に当てはまるのではないかと、この機会にお願いをしておきたいと思います。
ことしじゅうにもということになりますと、国交正常化交渉というのは一体何から入っていくのか、どういうことが課題になってくるのか、当然考えていらっしゃると思いますが、もう韓国とは日韓基本条約が結ばれて久しいわけでありまして、しかも、その中では三億ドルというはっきりした金額が出ているわけであります。その三億ドル、三百六十円時代の三億ドルということをやはり当然双方とも頭に入れているということになってくるわけで、きょうはその金額のことまでは到底触れるべきではないと思いますから触れませんけれども、大まかなところ、どういう問題から入っていかれるのかということを例えればと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114269X01019971119/81
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082・阿南惟茂
○政府委員(阿南惟茂君) お答え申し上げます。
日朝間の国交正常化交渉の課題につきましては、今、委員もおっしゃいましたように、今後行う交渉でございますので、現段階で明確にどういう問題からということを申し上げる状況にはございませんが、一般的には日朝間の基本的問題、管轄権の範囲等の問題、また財産請求権等の経済問題、さらには双方が関心を有する諸問題等がございます。これらの問題が再開後の日朝国交正常化交渉において話し合われるものと考えますが、日韓基本条約との関係につきましては、これも御指摘のように、当然のことながらその関連を十分に念頭に置いて交渉していく必要があろうと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114269X01019971119/82
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083・田英夫
○田英夫君 今度もしばしば出た言葉ですけれども、近くて遠い国という状態が続いているわけでありまして、実はチャーター便で行きましたら二時間半で実際は行けるわけであります。本当に文字どおり近い国になるように、もっともっと北朝鮮側も国際社会に柔軟に門戸を開いてほしいと私も願っておりますが、そういう日が早く来ることを願っております。
午前中、小島委員が最後におっしゃいましたが、日米中、それにロシアを加えるというような形の体制はどうだというお話がありまして、私も全くかねてからの持論であります。
日米中トライアングルという言葉が最近よく使われます。アメリカでも、オーバードーファーというワシントン・ポストの国際問題の記者とか、これはベテラン記者ですが、あるいはブレジンスキー氏なども同意見であります。中国でも国際政治学者の中でこのことをしきりに言っております。松永元駐米大使も、今、国際問題研究所の理事長をしておられますが、同意見と聞いております。
こういう問題も改めてまた機会がありましたらひとつ外務大臣と意見交換をしたいと思いますが、大臣は外交日程がおありですから、法案の方の関係する部門に入りたいと思います。それはODAの問題であります。
今度の財政改革法案の中で、実はODAが来年度一〇%削減、そして十一、十二年度は前年度の当初予算を下回らなければいけないという規定があります。このことは、政府の財政再建への決断を示されるという意味では一つの国際的な面まで含めて効果はあるかと思います。しかも、ODAも聖域ではないということもこれによって示されているわけではありますけれども、同時に今、国際的に実は御存じのとおり非常に大きな反響を呼んでおります。
その一つは、ODA予算の中に国際機関への拠出金が含まれているために、国連事務総長とかあるいはUNHCRの責任者の緒方貞子さんとか、いろいろな機関の責任者からこれに対して遺憾の意が表明をされているということも事実でありますが、外務大臣は国際機関への拠出金の削減ということについてはどういうふうにお考えですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114269X01019971119/83
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084・小渕恵三
○国務大臣(小渕恵三君) 来年度予算に関しまして、ODA関係予算を一〇%を超えない範囲で削減するという方針に基づきまして十年度予算についての概算要求がなされておるわけでございます。
委員御指摘のように、国際機関への拠出金の削減、これもかなり厳しい削減率になっておるわけでございます。数字的には三五プロから四五プロで、若干その中の幅はありますけれども、いずれにしても大変な削減率でございます。恐らくこれは、予算を編成する一つのスケジュールの中で八月末までに概算要求を出さなきゃならない。しかし、その前に一〇%カットという厳しいショッキングな政府の方針が決められましたので、それぞれの分野におきまして同様のカット率になっているんだろうと思っております。
しかしながら、今御指摘のように、国際機関については大変各国とも予想だにしなかったということで、上はアナン事務総長からそれぞれの担当の方々、総理を初め我々にも手紙をたくさんちょうだいしているような状況でございます。
結論から申し上げますと、ODAにつきましては、十九省庁それぞれ予算がありますけれども、その中でもう一度全体をよく精査いたしまして、今後、最終的な来年度予算の編成時期、すなわち十二月、一月にかけまして、財政当局の御協力も得ながら、こうした国際機関に対する削減につきましては、可能な限り、もとに戻すと言っては言葉が不足かもしれませんけれども、ぜひ国際的な信頼を失わない範囲においてこの問題について処理をしたいと思います。総理自身も概算要求を提出する前の段階でそのような御意思を示されておると聞いておりますので、その意思に基づきまして、お隣にいる大蔵大臣の御協力も得ていきた
い、こう思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114269X01019971119/84
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085・田英夫
○田英夫君 ちょうど大蔵大臣も聞いておられるわけでありますけれども、これは政府委員に伺いますが、典型的なもので例えばUNHCRと国連大学、日本にありますから、これを例にとって、どのくらい今の計画でいくと削減になるのか、パーセンテージで示していただければと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114269X01019971119/85
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086・朝海和夫
○政府委員(朝海和夫君) ただいま大臣から答弁いたしましたとおり、ODAの一〇%減、外務省所管の予算で申しますとおよそ五百八十五億円の減ということになろうかと思いますが、そうした中でこの拠出金についてもそれなりに削減をせざるを得ない状況でございます。
御質問の国連難民高等弁務官計画、UNHCRは三十七億円を削減しまして、約三九%削減ということでお願いしてございます。国連大学の場合は全体で六億円でございますが、そこから二億円を引いて約マイナス三八%ということでお願い申し上げているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114269X01019971119/86
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087・田英夫
○田英夫君 大臣、お聞きのように、金額はそんなに日本の予算の中でいえば大きいものではないわけですけれども、例えば難民高等弁務官事務所としては日本の拠出金が全体の中で占める割合は大きいものですから、非常に大きな打撃を受けるという緒方さん自身のお話であります。三九%削減というのは非常に大きいわけですね。
それから、国連大学を例に引きましたのは、これは日本が誘致をして、今、東京の青山にあるわけでありますが、実は私も評議員というのをやらされておりますので、国連大学学長から非常に困ったという手紙もちょうだいをしております。
いわば国際信義と言うと大げさのようでありますけれども、特に難民高等弁務官事務所とか国連大学とかいうところは、それぞれ性格は違いますけれども、難民の場合などはもうまさに困っている人を助けるために置かれている、そういう仕事をしているところの活動が半減しかねないと、こういうことを緒方さんも言っておられるわけであります。ぜひこれは大蔵大臣もお考えいただきたいし、外務大臣も大いに政治力を発揮していただいて日本の信頼を失わないようにしていただきたい、このことをお願いしておきます。
そして、全体として一〇%ということ、これは後でちょっと触れますけれども、今度の法案の中でテーマごとに削減のパーセンテージが違うというところが一つの特徴と言ってもいいと思うんです。このODAの場合は一〇%、十分の九となっておりますが、これは対外的な問題ですから、国内の景気の問題とかそういうこととは離れているものですから、変な表現ですけれども切りやすいかもしれません。しかし、影響するところはこの日本という国として非常に大きいんじゃないか、このことをぜひお考えいただきたいと思います。
これは政府委員の方からお答えいただいて結構ですけれども、具体的にはどういうふうに切るのか。十九省庁にまたがって技術援助は行われている。各省庁、外務省関係、大蔵省関係が多いわけですが、農水省とか十九省庁にかかわってそれぞれが予算を持っている。そうすると、それぞれ一〇%みんな一律に切れということなのか、どういう切り方をされようとしているのか、お答えいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114269X01019971119/87
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088・涌井洋治
○政府委員(涌井洋治君) お答え申し上げます。
先生御指摘のとおり、ODA予算については各省にまたがっております。この法律におきましては、キャップは全体としてかかっているわけでございまして、これからの予算編成の過程におきまして、これは総理からも指示が出ております。各省の枠を超えて、各施策の執行状況とか内容を吟味して、総合調整を行って、最も重点的、効率的な予算配分を行うよう総理からの指示がございますので、そういう方向で今鋭意予算編成の作業を進めているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114269X01019971119/88
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089・田英夫
○田英夫君 法律に明示してある以上、パーセンテージというものは変わらないわけでありますけれども、実際のODAという活動が効力を減少するようなことになってはいけないと思いますし、具体的なことはまた改めて機会がありましたら外務委員会などでお尋ねいたします。
実は、参議院には調査会という制度があります。今、国際問題調査会というのがありまして、参議院議員が六年間の任期ということを生かして、中長期的にさまざまな問題について勉強をし、議論をし、一つの提言を政府その他にしよう、日本の政治のためにそういうお役に立とうということで調査会をやっております。
国際問題調査会、私も入っておりますが、そこに今回、この臨時国会から小委員会を設置しまして、ODA問題の小委員会でありますが、ここで、今、毎週一回というペースで、極めて熱心な議論を行っております。
そこの議論の中で、いろいろな問題が既に取り上げられておりますけれども、一つの問題は、この十九省庁にまたがる技術援助というもの、技術協力というものを統括する組織がない。外交であるにもかかわらず、外務省がすべてを統括しているわけではない。そういう構造になっているところが一つ問題として浮かび上がっている。以前からこれは問題なんですけれども、十九省庁体制の中で、つまりコントロールタワーがない。それから、借款については四省庁体制で、OECFは経済企画庁が担当しておりますので、経済企画庁が幹事役をして四省庁体制で借款は行っている、こういうことでありますが、この十九省庁の方は全くコントロールタワーがない。
先ほど、どうやって予算を切るんですかということで主計局長からお答えがありましたけれども、実は本来ならば、これは発展途上国に対する重要な外交でありますから、外務省がコントロールタワーになるのがいいのかどうかという議論があっていいし、今行政改革の中で、一時行革会議ではODA庁を外務省の外局にしよう、置こう、こういう声が出ておりますが、今それが消えつつあるように伺っております。すると、またもとへ戻って、コントロールタワーがないまま行ってしまうのか。
それから、行革会議の案では経済企画庁はなくなるわけですから、なくなると言うと失礼ですが、そうすると四省庁体制の方の世話役は一体どこになるのかというような点を、ほかにも行革の中では大きなテーマがたくさんありますから議論はそっちの方へ行ってしまっていて、外交関係でいえばこのODAを統括するコントロールタワーをつくるということが実は極めて重要な行政改革の一つのテーマだと私などは思うんですけれども、この問題がさっぱり浮上してこない。
これはぜひ、外務大臣として声を大にして、政府の中でもあるいは行革関係者の皆さんにも声を出していただきたいと思うんです。
実は、参議院のODA問題の小委員会でも、こういう状態ならばODA基本法というようなものをつくって、そして法律の方からコントロールタワーをつくるようにしていったらどうだという声も出始めております。
この法案で一〇%削減ということで国際的に大きな反響が出ているというこの状態をぜひお考えの上で、同時にこのコントロールタワーをつくる問題も外務大臣はぜひお考えいただきたい。これはお願いとして、この機会に申し上げておきます。
外務大臣、外交日程があるそうですから、どうぞ。
引き続き、この法案の問題で大蔵大臣にお尋ねをいたします。お尋ねをいたしますというよりも、若干意見を申し上げたいのでありますが、先ほどODAのことで申し上げたように、今回のこの法案を見ておりますと、一番最初に社会保障が出てきました。そして、その中で医療制度などにも触れている。そして公共事業、さらに今のODAとか防衛とか、項目別に条文の中で削減率が出てきている、こういう構造になっているわけです。失礼ながら、これを拝見しておりますと、政府のテーマごとの削減率によって現在の政府のいろいろな政策、プロジェクトについての軽重のお考えがにじみ出ているというそういう感じがいたしまして、大変私は興味を持ってこれを見ているんです。
例えば、社会保障の中で一つ気になりますのは、「人口構造の高齢化等に伴う社会保障関係費の増加額をできる限り抑制すること」と、私は今要綱の方を見ながら申し上げているんですけれども、そういう言葉が出てきております。そして、社会保障関係費の量的な縮減目標として、平成九年度の当初予算における額に三千億円を加算した、つまり今年度より三千億円上まではよろしいというのが一つあって、その次、十一年度、十二年度はそれに百分の百二という数字が出ている。少しずつ社会保障関係費については上がることを認めると、こういうことがにじみ出ているわけですね。全体を抑えるんですから、さっきのODA一〇%削減というようなことに比べれば、ODAの点は私は不満ですけれども、とにかくこれは削減しない、カットしないということを前提にしておりますから、これはこれで苦しい財源の中でここは認めようという姿勢がにじみ出ている。
公共投資関係のところでは百分の九十三と、こういう数字が出ておりまして、これはいわば若干減らす。そういうことで、従来、よく景気が悪くなれば公共投資だと、こういういわば神話のようなものが通用してきておりましたけれども、私に言わせれば、ようやくその神話は崩れつつあるということを示すものとして、私はこれは賛成であります。
きのうも参考人の質疑の中で申し上げましたが、これは余談のようなことですが、以前に私は、景気をよくするためには公共事業だ、これはおかしいじゃないか、いわゆるゼネコンがもうかるだけじゃないかと、こういうことを雑談の中での話ですが言いましたら、公共事業関係の方が、いや、それはゼネコンがもうかると同時に、となればその公共事業が行われている町の飲み屋が夜になりゃもうかるんだ、繁盛するんだと、こういう雑談をしたことがあります。
これはいささか象徴的なことを申し上げたんですが、もう一つ例を挙げますと、四番目の「防衛」という項目があります。これは数字が実は余りはっきりしておりません。この辺が問題であると思うんですが、「節度ある防衛力の整備を行う必要があることを踏まえつつ、財政構造改革の推進の緊要性に配意して、抑制するものとする。」と、こういう非常に微妙な記述がありまして、ここに限って数字が出てこない。これは本当はお聞きしたいところですけれども、時間がありませんからのみ込んでおきます。そういうことだけ指摘しておきます。
今、国際的に冷戦構造が崩壊した中で、軍縮が先進国を中心にして行われていることは事実であります。こういう状況の中で、「節度ある防衛力の整備を行う必要があることを踏まえつつ、」と、そういうことでいいんだろうかということを申し上げたいわけです。ここはむしろ国際的な感覚も含めて言えば数字を出すべきじゃないか、このことを不満として申し上げておきます。
そしてその次に、先ほど申し上げたODAの削減、十分の九という数字が出てくるわけでありまして、こうやってずっと条文の中にある数字を見てまいりますと、さっき申し上げたように、政府の中でのそれぞれのテーマについてのお考えがにじみ出てくる。これは大変興味があると同時に、結果を申し上げれば私は不満であります。もっと大胆に削るべきところを削っていただきたいし、同時に、最後に大蔵大臣にこれはお答えいただきたいんですけれども、この財政構造改革、何を基本としているかという、要するに苦しい財政の中だからこういう削減をしようというその哲学が見えない。これをぜひもっと明快に国民の皆さんの前に示す必要があるんじゃないだろうか。
そこで、私が言いたいのは、政府が、財政ですから政府であることは間違いない、同時に経済を考えるときには政府の財政とそれから企業の経済、そして家庭と、きのう参考人はおっしゃったけれども、私は庶民と言いたい、あるいは市民と言ってもいいと思います。そういう三つを考えながら財政構造改革をやらなくちゃいかぬと思うんですが、どうもこの法案を見ていくと結果として庶民のところにしわが寄ってくる。しかも元気なお年寄りは、一定以上の収入がある高齢者についてはやっぱり金を出してもらおうじゃないかという感じがにじみ出ている、こういうことでいいんだろうかと私は思うんですね。防衛費のところは削減額も示されない、こういうことでいいんだろうかということを申し上げたい。
最後に、大蔵大臣としての哲学をお聞かせいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114269X01019971119/89
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090・三塚博
○国務大臣(三塚博君) 本件の基本的な取り組み、哲学についてのお尋ねでございます。
削減率、縮減目標と言っておりますが、これは今日までの我が国の成り立ち、と言っても戦後でありますが、そして今日まで参りました経過の中で、毎年予算編成を行い、予算はその内閣の基本的な哲学、政策がにじみ出る、そういうことのプロセスを見ながら財政構造改革という基本的な問題にどう取り組むべきであろうかということで法律が組み立てられました。
借金をこれ以上後世にツケ回しすることによって生ずるもろもろの問題、世代間の断絶とよく言われますが、私は、世代間の断絶の奥に、日本がどんな困難な場合でも国民が一体となってこの国のため、この国の持つよき伝統文化を構築し堅持をしてきた。このところをしっかりと大事にするためには、やはり厳しくても辛抱の哲学でやることでなければならない。一々の項目についての田先生の見解、傾聴をいたしておりました。
そういう中で、そのことによってもたらされるいわゆる財政構造改革が従前の方式によって惰性に流れるとあえて申し上げます、歯どめがきかなくなることによって最終的にはバランスが崩れて、こちらには重くこちらには軽くということであっては政治の目的を達したと言えませんし、政治の哲学の基本から外れることになるのではないか。ひとしくそれぞれの立場において痛みを分かち合いながら取り組まなければならないというのが第一点であります。
第二点は、国民各位に新しい御辛抱をいただくということであれば、小さくスリムな政府、行政機関を国、地方においてつくり上げることにょって、行政経費というものがぎりぎりいっぱいのところになるように努めなければならない。しかし、一朝にしてこのことが成るわけでございませんから、スタートを切りまして、車の両輪である国家機関と地方機関、それぞれ独立な団体でありますから、相協調しながら二十一世紀にたえ得る地方政治、国の政治というものに対応していかなければならないのではないだろうか。そうすることによって、二十一世紀において、このままの場合の数々の禍根が克服をされていくのではないだろうかということが基本的な考えであったと思います。
以上のことを申し上げさせていただきまして、意を尽くしませんけれども、歴史の潮流をしっかりと見きわめ、潮流の先頭に立って改革が断行されていくことによって初めてこの国と国民の幸せがあるのではないだろうかと思ったところであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114269X01019971119/90
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091・田英夫
○田英夫君 ありがとうございました。
終わります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114269X01019971119/91
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092・西山登紀子
○西山登紀子君 日本共産党の西山登紀子でございます。
この財革法案につきまして、今障害者の皆さんや障害者の家族の皆さんの中で大変な不安が広がっているわけでございます。その関連で質問をさせていただきたいと思います。
この財革法案というのは、第七条で生活保護、社会福祉それから社会保険、保健衛生、失業対策などの社会保障関係費の増加額をできる限り抑制するとしております。そして、第八条では、わざわざ社会保障関係費の量的縮減目標として、平成十年度は「平成九年度の当初予算における社会保障関係費の額に三千億円を加算した額を下回ること。」、平成十一、十二年度はそれぞれ「前年度の当初予算における社会保障関係費の額におおむね百分の百二を乗じた額を上回らないこと。」、こんなふうにしております。
これでは財政構造改革という看板に偽りあり、むしろ社会保障削減法案というふうに名づけた方がいいんじゃないか、こういう声もあるわけです。国民にとって切実な福祉や医療の削減を向こう連続三年間国会に承認をしなさいという法案だと思うわけです。
そこで、改めてお伺いいたしますけれども、第八条の二項は、社会保障関係費の範囲は各年度の当初予算で決めるとしております。今大きな問題になっている医療だけではなくて、生活保護や児童扶養手当やそれから年金や保育所なども含めて第七条二項のすべての分野が対象となる、それはそういうことですね、すべてが対象になるということですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114269X01019971119/92
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093・涌井洋治
○政府委員(涌井洋治君) 財政構造改革法第八条に定める社会保障関係費の量的縮減目標は、これは社会保障分野のすべてを対象としておるわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114269X01019971119/93
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094・西山登紀子
○西山登紀子君 つまり、お年寄りも子供も障害者も生活保護の世帯も母子家庭も、すべて社会保障の関係費用を削減するという法案であります。
そこで、具体的に障害者プランを含みます障害者対策予算についてお伺いしたいわけですけれども、国際障害者年を契機といたしまして、関係者の皆さん、国民の皆さんの大きな運動の中でようやく障害者基本法が超党派で成立をいたしまして、平成五年十二月に公布がされたわけでございます。この障害者基本法の第三条にはその基本理念を「すべて障害者は、個人の尊厳が重んぜられ、その尊厳にふさわしい処遇を保障される権利を有するものとする。」、そして「すべて障害者は、社会を構成する一員として社会、経済、文化その他あらゆる分野の活動に参加する機会を与えられるものとする。」と基本的な理念を明記しております。
この意義は極めて大きいものでございますが、この障害者の完全参加と平等の理念、今後とも一層尊重し充実させていく理念ではないかと考えますが、いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114269X01019971119/94
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095・小泉純一郎
○国務大臣(小泉純一郎君) 障害者基本法の理念に沿って施策の充実を図っていきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114269X01019971119/95
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096・西山登紀子
○西山登紀子君 この障害者基本法の第七条の二には、「政府は、障害者の福祉に関する施策及び障害の予防に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るため、障害者のための施策に関する基本的な計画を策定しなければならない。」と定めているわけです。そして八条では、「政府は、この法律の目的を達成するため、必要な法制上及び財政上の措置を講じなければならない。」とも明記をしているわけでございます。
そこで、障害者施策の中の障害者プランはどうかということですけれども、平成七年十二月に障害者プランの数値目標が定められたわけですけれども、この目標は非常に低いです。しかも、厚生省と建設省の一部に限定がされている。そのほかはまだできておりません。また、市町村の対応も非常におくれておりまして、市町村の障害者計画の策定状況というのは総理府の調査では一七%、極めて低いです。しかも、その中で数値目標を明らかにしているのは全体のわずか一八・六%ですけれども、これは間違いございませんね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114269X01019971119/96
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097・田中泰弘
○政府委員(田中泰弘君) お答えいたします。
市町村で障害者の計画をつくり数値目標をつくっておるところは一七・九%でございます。それで、九年度中でございますが、今年度中に策定できるというところが六百八十六市町村ございまして、合わせて千二百六十七でございまして、三九・一%に九年度末にはなるという見込みになっております。
以上でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114269X01019971119/97
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098・西山登紀子
○西山登紀子君 確認をしていただいたわけですけれども、非常に少ないです。市町村の障害者プランの計画というのは非常におくれていると言わなければなりません。したがって、現行の障害者プランそのものが非常に内容的にも不十分なものである、政府の一層のイニシアチブの発揮が求められていると私は思うわけでございます。
そこで、それでは私が大変不十分だというふうに思いますこの障害者プランの実行がどのように進められるのかということでございます。
この障害者プランを予算ベースで見てまいりますと、例えばグループホーム、福祉ホーム、障害を持っている皆さんが数人で自立して一緒に生きていこう、そういうグループホームや福祉ホームの事業なんですけれども、これが九六年度以降の増加分はどうかといえば、九六年度は二千七十五人分予算ベースでふえているんですが、九七年は千七百五十一人分、来年度の概算では千四百五十二人分と、年々減少をしているわけです。障害者プランの二〇〇二年の目標を達成するためには、今後四年間に新たに九千四百三十五人分ふやさなければならない。そういうことになるわけですが、数の確認ですけれども、その点は確かにそういうことになりますね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114269X01019971119/98
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099・田中泰弘
○政府委員(田中泰弘君) 今、先生おっしゃった数字のとおりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114269X01019971119/99
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100・西山登紀子
○西山登紀子君 向こう四年間に、単純に年間ベースの計算をいたしましても二千三百五十九人分ふやしていかないとこの目標の達成は難しいということになろうかと思います。つまり、この財革法の関連で予算を縮減する、こういう傾向がこのグループホーム、福祉ホームの中にも影を落としているということだと思います。
さらに、障害者プランの中で、授産施設、福祉工場についても大変心配な数が出ているわけでございます。
増加分を見てみますと、これもやはり縮減傾向が出ているわけです。授産施設、福祉工場の九七年度、四千九百二十一人分というのが、十年度の予算では二千七百六十人という形で減らされてきているわけです。そういたしますと、あと四年間で一万四千十五人分ふやしていかなければ目標の達成ができないということになろうかと思いますけれども、これもそのとおりですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114269X01019971119/100
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101・田中泰弘
○政府委員(田中泰弘君) お答えいたします。
先生のおっしゃるとおりの数字でございますが、少し経緯を申し上げますと、私どもの方で各年度整備量をどの程度にするかというのは、地方公共団体、県等の要望を踏まえながら数字を決めていっているということでございます。これまでのところ、必ずしも立ち上がりにおいて要望が強くないという実績を踏まえまして、これを障害者プランの後半に重点を移すということで今回のような整理になっているということでございまして、後半におきまして市町村と協議しながら、達成に向け努力をしていきたいというふうに思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114269X01019971119/101
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102・西山登紀子
○西山登紀子君 私は数字の確認を求めたわけですけれども、市町村の対応によってこういう数になっているというようなお答えであったと思います。
先ほど私が申し上げましたように、市町村の障害者プランの策定状況というのは一七・九%です。しかも、その中で数値目標を持っているのはわずか一八%です。ということで、これからますます市町村の需要というのはふえていくだろう。ところが、それとは逆に、九年度四千九百二十一名の増加分を見込んでいたのに、来年度は二千七百六十ということに減らしてしまう。そして、目標を達成しょうと思えば、単純に計算いたしましても年間三千五百四人分これから毎年毎年ふやしていかなければこの目標を達成することは不可能だと、こういうことになろうかと思います。
さらに、重症心身障害児者の通園事業というのがあるわけですけれども、私も児童相談所に勤めておりましたので、小さな子供の障害が早く発見されますと、それを放置するのではなくて、そういう子供たちに通園をしていただいて、集団の中で、あるいは専門の先生方の指導もあって発達を保障していくという、この通園事業というのは大変地域の皆さん方からは切望されている事業でございますが、これも九年度予算では九十二カ所ふえていたんですが、来年度の予算では六十八カ所ということに減ってしまっている、減らされている。今後四年間で新たに七百十カ所ふやさなければならないということですが、これも確認をしていただけますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114269X01019971119/102
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103・田中泰弘
○政府委員(田中泰弘君) お答えいたします。
先生の御指摘のとおりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114269X01019971119/103
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104・西山登紀子
○西山登紀子君 少し数の確認が続きますけれども、やはり障害者プランというのは、本当に光の当たらなかった部分で、ようやくこういう年次計画をもって施策が進められていくということで、関係者の皆さんは大変喜んでいらっしゃる。その中で、しかし来年度の予算の中では数が減っていく、こういう状況なので、るるお聞きをしているわけです。
次にお聞きしますが、地域生活支援事業、三事業ございますけれども、これも九八年度、市町村障害者生活支援事業は四十カ所、障害児者の地域療育等支援事業は六十カ所、これは七十が六十に減っているわけです。それから、精神障害者地域生活支援事業というのは、九年度予算で四十七カ所ふえていたんだけれども、来年度は二十一カ所に減らされているわけであります。ですから、これも今後四年間で、それぞれ百七十カ所、四百九十カ所、五百三十五カ所という形でふやさなければならない、そのような計画になっているということですか、確認をしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114269X01019971119/104
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105・田中泰弘
○政府委員(田中泰弘君) お答えいたします。
先生の御指摘のとおりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114269X01019971119/105
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106・西山登紀子
○西山登紀子君 大変予算が抑えられて、そして目標を達成するためには、例えば市町村障害者生活支援事業なんというのは、あと百四十三カ所毎年毎年つくらなければこれはできない数になっているわけです、残っている数は。それから、障害者の地域療育等支援事業というのも、あと四百九十残があるわけですが、これをやろうと思えば、来年度予算プラス六十しかついていませんけれども、年間百二十三カ所ほどずんずんふやしていかなければこれは目標は達成できません。精神障害者の地域生活支援事業というのも、来年度は二十一カ所しかふえていないわけですから、あと五百三十五カ所分をやろうと思えば、単純計算でいっても年間百三十四カ所ふやしていかなければならないということに計算上はなるわけでございます。
社会保障費を削減するというこの財革法のもとで、この目標の達成ができるのか、責任を持ってできるというふうに言えるのか、断言をしていただきたいと思うんですが、どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114269X01019971119/106
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107・田中泰弘
○政府委員(田中泰弘君) お答え申し上げます。
先ほどお答え申し上げましたように、市町村での現在の進捗状況を十分見きわめて、それが対応可能な数値ということで組んでいるところでございます。
それから、障害者プランの今後の進め方の問題でございますが、先ほどからお話がございますように、十四年度に達成目標を定めて進んでいるところでございますし、十年度概算要求におきましても厚生省全体、大変厳しい予算の中でございますけれども、障害者プランの関係の予算では六・七%の伸びでございまして、厚生省の予算の伸びは二%足らずということでございまして、厚生省の中でも力を入れているということでございます。
今後の対応といたしまして、施設の共同利用などいろんな工夫を加えながら、事業の効率化も図りながら、この障害者プランの達成に最大限の努力をしたいというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114269X01019971119/107
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108・西山登紀子
○西山登紀子君 私がお聞きしましたのは、対応可能な数だとかそういうことじゃなくて、今るる私が説明いたしましたように、予算上の目標がぐんぐんと抑えられているじゃないか、その中でこの目標が達成できるのかというふうにお聞きしたわけですね。こういうことをやっているじゃないかというふうにるるおっしゃいましたけれども、障害者プランの予算の中で六十九億円も目減りをしております。減っています。また、四・二%も増加率というのは減っているわけですね、来年度の増加率というのは。そういうもとで、この目標を達成することをお約束できるかというふうにお伺いをしている。努力じゃないんです。達成できるかということをお伺いしているんです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114269X01019971119/108
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109・田中泰弘
○政府委員(田中泰弘君) 達成に向けまして最大限努力をしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114269X01019971119/109
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110・西山登紀子
○西山登紀子君 そういうことをお伺いしているわけではないんです。
障害者の皆さんというのは毎日生きていくのに精いっぱい生きていますよ。そういうもとで、この目標だって本当に十分な目標じゃありません。先ほどもるる説明いたしましたように、市町村の計画だってまだ緒についたばかりです。そういう中で、目標だって対応可能な数じゃ絶対ないですよ。それを対応可能な数だといってお決めになったその目標も、こんなふうに目減りをしていっているじゃないか。予算だって六十九億円も減らしているじゃないですか。予算の伸び率だって、平成九年度は一〇・九%ふえたんだけれども、来年度は六・七%に抑えているじゃないですか。そういうもとで、障害者の皆さんの期待にこたえることができるのか、目標は達成できるのかというお伺いをしているんですが、努力する努力すると、そういう答えしか返ってまいりません。
大蔵大臣にひとつ御答弁いただきたいと思うんです。こういう障害者のプラン、達成できるど大蔵大臣の方から御確約をいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114269X01019971119/110
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111・三塚博
○国務大臣(三塚博君) ただいま御熱心な質疑応答を承っておりました。社会的ハンディキャップを負っております障害者の方々は、社会的連帯の中で支援する必要があることは言をまちません。このため、政府としては平成八年度より御案内のようにプランを策定し、それに従って障害者福祉の充実に努めてきたことだけは御理解をいただけると思います。
こういう中におきまして、障害者の方々に対する社会的連帯による支援の必要性を十分に認識しながら、障害者が地域でともに生活のできる社会を目指して、引き続き障害者プランの着実な推進に努めてまいりたい、こう考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114269X01019971119/111
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112・西山登紀子
○西山登紀子君 抽象的な御答弁だし、本当に確約するという御回答はいただけなかったわけですね。できないはずだと思います。
それで次に、障害者介護についてお伺いしたいと思うんですけれども、障害者の皆さんの介護というのは、例えば、もちろん中途障害もあるわけですけれども、障害児を産んだ母親の立場からすれば一生介護しなければなりません。介護者の実に九六%、あるいは九三%という統計の数もありますけれども、介護者は母親でございます。
そこで、障害者介護の問題についてお伺いしたいわけですけれども、九六年一月、ショッキングな事件が報道されました。これは埼玉県秩父市で起こった事件なんですけれども、当時六十五歳の母親と三十六歳の脳性小児麻痺の長男が浴槽の中で水死するという事件があったわけです。御記憶の方もいらっしゃるかと思います。
お母さんが体の不自由な息子さんを入浴させようとして、その際に心臓発作が起きて亡くなつて、そして身動きのとれなくなった障害を持った御長男がおふろ場で死亡する、こういう事件があったわけでございます。入浴サービスがなかなか行き届かなくて、障害者の入浴サービスがなくて利用することができない、こういうことであります。お母さんも非常に高齢ですからそういう状況になっているわけです。
したがって、障害者の在宅介護には在宅介護三本柱というのがあるわけですが、やはりホームヘルパー、ショートステイ、デイサービス、こういう三つの事業の抜本的な充実が非常に求められているというふうに思います。
障害者プランのまずホームヘルパー、これは四万五千三百人ふやすという目標なんですけれども、非常にこれは少ないというふうに言わざるを得ません。これはどうやって目標を決めたのかということなんですけれども、厚生省にお伺いしますと、身障者の実態調査をもとにして、老人保健福祉計画の際の対象者の把握に用いた寝たきり度の判定基準を勘案して要援助者の数を推定した、十八歳から六十五歳ですから子供は入っておりません、ということです。ですから、もともとこの四万五千三百という数が本当に少ない数だというふうに私は指摘せざるを得ないと思います。
そこで、もう一つ問題は、ホームヘルパーの派遣回数とかいろいろな基準を採用しているわけですけれども、寝たきり老人の基準を採用しているんです。
私は、具体的にきょうは、和歌山に住んでいらっしゃる五十七歳の女性で、身障者手帳一級、電動の車いすを使ってひとり住まいをしていらっしゃる、障害者用の市営住宅に住んでいらっしゃる方が、一日どんな生活ぶりをなさっているのかという聞き取り調査の資料を持ってまいりました。
これを少しだけ御紹介いたしますと、起床時間は七時にヘルパーさんが来て起きる。パジャマは下だけ取りかえる。ヘルパーの回数と時間は一日二時間毎日来てもらっている。しかし、それでも足りないので生協のヘルパーさんにも来てもらっている。この方は電動いすを動かして買い物にも行ったり、いろんなことを積極的にやっていらっしゃる方なんですけれども、これはそれこそ一日じゅう、常時ヘルパーを必要とするというような状況になっております。
重度の障害者の方が自立をして生きていく場合には常時ヘルパーが必要だ、こういう状況にあるということは厚生省はお認めになるでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114269X01019971119/112
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113・田中泰弘
○政府委員(田中泰弘君) お答えいたします。
障害者に対する介護の問題でございますが、介護の度合いは、障害の程度あるいは家族の介護の状況等も含めまして、その必要度を判定して派遣するということでございますので、すべての方が必ず常時介護が必要ということにはならないのではないかというふうに思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114269X01019971119/113
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114・西山登紀子
○西山登紀子君 こういう方が一生懸命自立して生きていこうと思えば、この基準になっているホームヘルパーの派遣回数、週三回から六回というのは余りにも現実離れがしているというふうに指摘せざるを得ないわけです。
それで、さらにお聞きしますけれども、この四万五千人のホームヘルパーの目標が非常に低いということなんですけれども、これは寝たきり老人の介護を基準にしているということが一点。それを機械的にこの障害者介護に運用している。ノーマライゼーションで一生懸命社会参加したいという、そういう障害者の需要にかなっているのかという問題であります。
そして、さらに申し上げたいのは等級別に見た身体障害者の数なんですけれども、障害者の総数というのは、いただいた資料によりますと二百七十二万人ですが、一級の方はそのうち六十三万八千人、二級の方は四十五万四千人いらっしゃるわけですね。そうすると、一級と二級の方を合わせると約百万以上の方が身障手帳を持っていらっしゃる方でございます。
私は、障害者のヘルプというのはマン・ツー・マンというようなサービスが必要だというふうに思いますが、四万五千三百人という目標は、この障害者の方々の人数からしましても、余りにも低過ぎるんじゃないでしょうか。四万五千三百の目標を上げるべきではありませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114269X01019971119/114
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115・田中泰弘
○政府委員(田中泰弘君) お答えいたします。
このホームヘルパーの数値の目標でございますが、先ほど先生御指摘されましたような形で推計をいたしたわけでございます。
当面、当面というか、まずはこの計画に沿って、その養成数の確保ということに力を入れたいと思っておりますが、先ほど御指摘ございましたように、市町村での障害者計画が現在進捗しているところでございまして、私どもの方にまた数値が上がってくることもございますので、その過程で必要に応じて見直しをしたいというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114269X01019971119/115
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116・西山登紀子
○西山登紀子君 市町村の目標が上がってからということをおっしゃったわけですけれども、市町村の目標は先ほども言いましたように、プラン自体をつくっているのが一七%しかありませんね。その策定しているプランの中で数値目標を持っている市町村はわずか一八%しかありません。ですから、おっしゃるように、今後市町村がどんどん目標をきちっと立てて実行しようということになれば、当然目標は引き上げなければならない、そういうことになりますね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114269X01019971119/116
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117・田中泰弘
○政府委員(田中泰弘君) お答えいたします。
市町村での障害者計画の策定の状況を十分見きわめて対応したいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114269X01019971119/117
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118・西山登紀子
○西山登紀子君 その答弁では私は納得できません。
質問を先に進めますけれども、それでは精神障害者のヘルプというのはどうなっているのかといいますと、実はこの四万五千三百のホームヘルプの対象者の中には精神障害者の方々は含まれておりません。精神障害者の方々というのは、障害者基本法の中で「障害者」ということできちっと明記された障害者の方々でございます。
精神障害者の総数は今百八万人という資料をいただきました。その中で、在宅精神障害者は七十五万人いらっしゃるわけですね。現在、精神病院等に入院されている方は三十三万人ですが、条件が整えばノーマライゼーションということで社会で生活なさる方もふえてまいります。
そういう精神障害者の家族の方々から、やはりこのホームヘルパーの介護システムの中に精神障害者も対象にしてほしいという要望があるわけですけれども、これはその要望にこたえるべきだと思いますけれども、いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114269X01019971119/118
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119・田中泰弘
○政府委員(田中泰弘君) お答えいたします。
精神障害者の方々にとって、地域での自立、社会参加は大変重要でございますし、そのために精神障害者の在宅支援対策というのは極めて重要でございます。
そういうことから、御指摘の精神障害者に対する訪問看護の問題につきましては、現在、障害保健福祉関係審議会の合同企画委員会で障害者の福祉対策のあり方について検討を行っておりまして、その中でこの問題も検討項目の一つとして取り上げられ、議論が行われているところでございます。
この問題に関しましては、平成九年度の厚生科学研究におきましても、精神障害者の障害特性によりますニーズの相違、それから適切なホームヘルパーサービスの提供のあり方についても鋭意検討を急いでおるということでございまして、これらの議論を踏まえまして適切に対応していきたいというふうに思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114269X01019971119/119
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120・西山登紀子
○西山登紀子君 ちょっと今トラブルがありまして十分お伺いできなかったわけですけれども、精神障害者の皆さんに対する訪問看護をお聞きしたわけじゃありません。ホームヘルプの数に精神障害者も対象にして、その目標を引き上げるべきじゃないかというふうにお伺いをしたわけですが、それに対する御答弁はなかったように思いますけれども。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114269X01019971119/120
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121・田中泰弘
○政府委員(田中泰弘君) お答えいたします。
先ほども申し上げましたところでございますが、精神障害者の障害特性によりますニーズ、それからそれへの適切な対応、こういったことについて今検討を急いでいるところでございます。それからまた、障害者の今後のあり方について検討しております審議会がございますが、この中でも今の問題について検討を急いでいるということでございまして、その検討の結果を踏まえまして対応したいというふうに思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114269X01019971119/121
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122・西山登紀子
○西山登紀子君 当然、精神障害者の方々もそのヘルプの対象にしていくと、こういう方向だということを確認させていただいてよろしいですね。
次に移りますけれども、「障害児・者を介護する父母・家族の健康と人権を考える交流・シンポジウム」というのがことしの二月に行われました。
障害者を抱える家族の方々の健康状態は一体どうなのか、これをきちっと調査するというのはなかなか難しいことですけれども努力をしてやられまして、これは大阪実行委員会の皆さんですけれども、こういうパンフレットが出ております。また、私の地元の京都ですけれども、「障害(児)者・家族のくらしと介護者の健康調査」京都実行委員会という形できちっと調査をまとめているわけですね。
これは、本当に一度私は大臣もぜひ見ていただきたいと思いますけれども、大阪は三千名、それから京都は一千名、有効回答は九百八十三名ですけれども、詳細なアンケート、それから自由記述も含めた調査結果がまとまっているわけです。
これは先ほども私も言いましたように、京都の場合は介護者の九二%が母親でございます。そして、その中で六十歳以上の介護者が九・六%です。つまり、高齢者が子供あるいは高齢の障害者を見ているという数字でございます。
重複の障害を持っている方々もいるわけですが、その介護の内容というのは、食事の介助六六・五%、移動・外出が六二・六%、送迎・通院、学習・訓練、さまざまでございますけれども、親が病気になったり倒れたときのことが心配だという回答数は、実に六七・九%。将来の見通しが持てない、不安だというのが五五・二%。それから、介護者自身がお医者さんに診てもらっている、ぐあいが悪いというのが六割を超えているわけです。健康上の何らかの自覚症状を持っている方は九六%にも及んでいます。
大変な状況にあると思いますが、こういう障害児者を持っていらっしゃる介護者の支援、ヘルパーとかデイサービス、ショートステイ、深刻な状況だと思いますけれども、大臣の御認識をお伺いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114269X01019971119/122
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123・小泉純一郎
○国務大臣(小泉純一郎君) 障害者を抱えておられる家族、特に重度の障害者を抱えている御家族の苦労というのは本当に大変だと思います。御自身でさえもうへとへとに疲れてしまう、家をあけられない、いろいろ家族の事情を伺うにしても大変な御苦労だなということはよく理解できます。
そういう中で、障害者に対する施策も、厚生省十年度予算は非常に抑制されておりますが、ほかの予算に比べまして伸び率は高目に確保して、できるだけ障害者の施策に支障なきょうこれからも努力を続けていきたい、そう思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114269X01019971119/123
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124・西山登紀子
○西山登紀子君 努力というお答えしかいただけないわけですけれども、障害児を抱える家族や障害者の皆さんは本当に緊迫しております。
私も地元で共同作業所に通っていらっしゃる方々からお伺いしましたけれども、お母さんが倒れちゃって病院に行かなければならなくなっても介護者がいないということで、共同作業所の先生と一緒に共同作業所に泊り込んじゃった、そういう事態すら本当にあるわけです。待ったがありません。
そこで、最後に大蔵大臣にお伺いいたします。
こういう非常に緊迫した緊急な障害者の皆さんに対する、あるいは家族の皆さんに対する障害者プラン、これ自体が非常に失速させられていっているという状況、この財革法というのは障害者の、皆さんに対して非常に不安を与えております。大蔵大臣はこういう障害者の皆さんや家族の皆さんの不安とか痛みについてお感じにならないか、最後にお伺いをしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114269X01019971119/124
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125・三塚博
○国務大臣(三塚博君) 大変御熱心な背景説明と現実に遭遇いたしておる事態の御紹介もいただきながら御質疑を拝聴させていただきました。障害を持つ方々を抱える家庭が大変であることをよく認識いたしております。
先ほど来御答弁申し上げましたとおり、厚生大臣との連携を密にしながら、今次の十年度予算、キャップがかかり厳しい条件でありますが、概算要求を精査しながら、何ができるか、どう進められるか、真剣に対応してまいります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114269X01019971119/125
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126・西山登紀子
○西山登紀子君 最後に、こういう障害者の予算に対してはやっぱりキャップをかけない、必要な予算を抜本的にふやしていく、目標も達成していく、こういうことが望まれるわけでありまして、こういう三年にわたって連続してキャップをかけるという財革法案については、私は廃案にしていただく以外ないということを訴えたいと思います。
どうもありがとうございました。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114269X01019971119/126
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127・遠藤要
○委員長(遠藤要君) 速記をとめて。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114269X01019971119/127
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128・遠藤要
○委員長(遠藤要君) 速記を起こして。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114269X01019971119/128
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129・佐藤道夫
○佐藤道夫君 大蔵大臣には、連日まことに御苦労さまでございます。前回に引き続きまして、本法案の基本的な考え方について質疑を続けたいと思います。
前回、我が国の財政状況がどんなに危機的状況にあるかということにつきまして、深刻な状態にあるかということにつきまして大蔵大臣からるる説明を承りました。状況がそうであって、その状況は一体どうして来たのか、その原因はどうか、こういうこともお尋ねいたしました。
前回は、たまたま北海道拓殖銀行破綻発表の日でありまして、それにかこつけまして、私、北海道拓殖銀行がなぜ破綻したかと。これは一言で申し上げれば、バブルに踊って担保の査定が不十分なままに不動産融資をする、あるいはまたレジャー産業に融資をする、そのツケが来たことだと、こう言ってもいいわけだろうと思うのであります。同時に、この拓銀を引き受けることになりました北洋銀行はまさしく昔ながらの銀行そのもので、拓銀に比べますともう五分の一以下のちっぽけな銀行ではありますけれども、手がたい一方、石橋をたたいても渡らない、こう言われていたような銀行でありますが、それが見事に花を吹かせた、こういうことであります。
我が国の過去の財政運営は、はて拓銀型なのか北洋銀行型なのかと、こうお尋ねしましたら、そういうお問い合わせである以上はもう拓銀型であったとしか言いようがない、こういう御答弁であったように覚えております。これで状況と原因がわかりました。
次は、責任であります。
この責任問題をぼかしたままに対策を打ち出すと本当の対策にはなりませんし、国民の理解も得られないと思うわけであります。厳しいことではありまするけれども、どうしてこういう深刻な財政状況を招くに至ったのか、大臣としてもきちっと総括してほしい、こう思うわけであります。
先ほども言いましたけれども、金融機関の中で破綻したのは、全国の金融機関何千とあります、二千幾つかあろうかと思いますが、そのうち銀行が三つ四つ、信用組合が三つ四つ、信用金庫が一つあったかどうかわかりませんが、いずれもその程度であります。全部が全部これが危機に瀕しているとすればまさしく不可抗力なんでありましょうけれども、一部の例外現象だと、こう言ってもいいわけであります。
そのことにつきましては、経済評論家あるいは新聞の報道なりによりますと、やはり経営陣が野方図な融資を続けたためである、それはもう率直に認めざるを得ないと、こう言っておりますし、中には刑事事件にまで発展しているものもあるわけで、厳しく経営者の責任が問われておるわけでありますが、はて、我が国の財政状況のこういう深刻な状態を招いた責任はどこにあるのか、大臣の御所見を承れればと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114269X01019971119/129
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130・三塚博
○国務大臣(三塚博君) 政治は結果責任を大事にするというところから民主主義が成り立っておると思います。そういう意味で厳しい御指摘でございます。
まさにバブル崩壊による我が国の経済状況、この難局にどう立ち向かうかということの中で累次の政策が行われました。
そういう中で民間への移管なども施行されてきましたが、財政赤字という負の遺産が累憎いたしたことは委員御案内のとおりであります。そういう中で、高齢化社会を迎えた自然増にどう対応するか。先ほどの御質疑もありましたが、立場の弱い方に対する手当ては政治の基本的な問題、さらにまた役割は政府にとって大きくなる、こう思います。
公債発行による累増の赤字、こういうものを見るにつけましても、責任の果たし方ということについて私は政治家の一人として責任を痛感いたすところでありますけれども、現時点の果たし方は、歴史に学び、経験を生かし、国民各位の知恵と創意工夫、こういう御提言をいただきながら全力を尽くしていかなければなりませんし、さらに構造的な問題に対する反省の中でこの改革を断行していかなければならない。そういう意味で責任は果たしていかなければならない、こう思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114269X01019971119/130
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131・佐藤道夫
○佐藤道夫君 いかにも政治家らしい御答弁でございまして、敬服しておりますけれども、私の問いかけにはまともに答えていないことも確かではないかと思います。
評論家諸氏などをして言わしめると、これは多年にわたる自民党政権のツケである、これがまず一つですね。何しろ収入以上の生活、金が足りないといえば公債を発行しろ、こういうことでやってきたそのツケであると。それから財政当局はどうなのか。政治の言いなりになって公債を発行してきた、そんな財政ならば子供でもできる、別に東大を出た優秀な官僚諸君にお願いすることもないだろうと。
それからもう一つは、国民サイドはどうなんだろうか。やれ橋をつくれ、やれ新幹線だ、やれ空港だ、やれ堤防だといってわがまま放題、要求し放題という感じがあって、その先頭に立って動いてきたのもこれは政治家諸氏ではなかったのかなと、こういうことも言う人が多いわけであります。
今、この国会は陳情団でごつた返しております。それから、私は朝いつも歩いてくるわけですけれども、座り込みの抗議団がおります。いずれもこれはこの法案に反対の諸団体のようでありまして、暇なものですからちょっと聞いてみましたら、例えば私立学校助成費の抑制に異を唱える学生さん、公共事業費削減を恐れる建設業者の団体、地方自治体の管理職の方々まで、何かわかりませんけれども抗議に来ておる。医療保険制度の改革に反対する婦人グループとか人員合理化を恐れる労働組合幹部とか、いずれも口をそろえて反対反対と、こういうことを叫んでおるようであります。
この深刻な財政状態を一体どういうふうに彼らは考えておるんであろうかと思いながらテレビをつけてみますると、やっぱりいろんな方々が登場して、財政再建も大事だが当面の景気も考えてほしい、法人税を中心とした大幅な減税をというふうなことを言い出しますと、それまで胸を張って答えていた閣僚さんなんかも急に口ごもっちゃいまして、御意見は御意見として承り、そして慎重に考えさせてほしいと。ああいう際に、土井さんをまねるわけじゃありませんけれども、だめなものはだめだ、ないそでは振れないと、なぜこういうことがきちっと言えないのであろうかという気がしてしようがないわけであります。
いずれにしろ、ないわけでありまして、当面の景気回復も大事かもしれませんけれども、この膨大な赤字を一体どうするんだ、健全な形で子孫に引き継いでいくことができるのかどうか、それを考えれば余りごたごた並べ立てている暇なんかないのではないかなと私は私なりに考えるわけであります。
国民に対するPRといいますか、啓蒙活動が十分に行われていない、口で何かもごもごしちゃう。国民も、まあそんなこと言っても大したことはないんだろうというふうに考えて、反対反対、出すものは出せと、こういうことになってくる。
こういう問題につきまして、大蔵大臣、いかがお考えか、また御所見を承れればと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114269X01019971119/131
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132・三塚博
○国務大臣(三塚博君) 重要なポイントについて御提言であります。
私は、この国会が召集されるまでの間、財政の危機的状況のもたらす諸要因、影響というものの深刻さを踏まえた一人であります。よって、年初以来、全体会議を何回も何回も開き、六月三日決定ということで法律案作成という今日までであります。
なかなかそのことが国民各位に伝わらないことは、政治がもっとこの件について、与党がやらなければならない、また国会、野党の政党に対しても理解を求めるべく努力をしなければならない。それぞれのポジションでおやりをいただいておるものと私は理解しますけれども、国会が召集されましてから大変な論議が行われて、このこと自体が、国民理解を進めるに当たり非常に効果が出てきつつあるのではないか。諸先生方からずばっとした本音に迫る御開陳をいただきながら、政府はその都度、不退転の決心でその諸項目を達成しやり抜いてまいります、すべての責任を傾注して頑張り抜きます、こういうことでありまして、辛抱の哲学、それで、協調、協力の中でと。そのためには国会で意思を決定いただくということが最大のポイントということでお願いを申し上げているところであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114269X01019971119/132
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133・佐藤道夫
○佐藤道夫君 もう時間でございます。これで終わります。中途で終わりましたので、この続きはまたの機会に譲らせていただきたいと思います。その際もよろしくおつき合いください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114269X01019971119/133
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134・山口哲夫
○山口哲夫君 きょうは、この法案の第二十条、防衛問題で質問をいたします。
ソ連邦が崩壊いたしまして、そしてまた冷戦構造も崩壊をする、そういう中で先進諸国は一斉に軍縮を行ってまいりました。まず、アメリカは九二年度から九六年度までの五年間を見ますと、九三年、九四年、九五年、九六年と四年間連続軍縮を行って約一二%の軍縮です。ドイツは九二、九三、九四、三年間で約一〇%、イギリスは九三年から引き続き四年間で約一二%、フランスは九四年、九六年と四・五%、そしてイタリアは九四年に一・五%、カナダは九二から九四、三年間約一五%。G7の国で軍縮をやっていないのは日本だけであります。なぜ日本がこういう冷戦構造が崩壊した中で軍縮をできないのか、私には到底理解できません。
しかも、これだけの財政再建をやらなければいけないという中で、この防衛費だけは、読んでみますと、「集中改革期間における各年度の当初予算を作成するに当たり、防衛関係費の額が当該各年度の前年度の当初予算における防衛関係費の額を上回らないようにするものとする。」。上回らないんですから、同額でいいということですね。しかも、集中期間三年間に限るわけです。その後はまた軍拡をするかもしれない。一体その理由は何なんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114269X01019971119/134
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135・久間章生
○国務大臣(久間章生君) 委員御承知のとおり、我が国は自衛のための最小限の備えをしているということでございまして、冷戦構造のさなかにありましてもそういう建前でございますから、冷戦が終わりましてからもその基本的な立場というのは変わっていないわけでございます。
したがいまして、冷戦構造の中ではアメリカはソ連と真っ向から対立しておりました。また、ヨーロッパ等においても、NATOに加盟している各国はワルシャワ条約機構と全面的に対決しておったわけでございますけれども、我が国は自衛のための最小限の備えをして、そのカバーする部分をアメリカと日米安保体制によってカバーをしておったわけでございます。したがいまして、東西冷戦が終わりましても、我が国はそういう基盤的な防衛力、独立国として自分の国を保全するための最小限の備えをするという姿勢は変わっておりませんので、そういう意味では基本的には変わらないという形になるわけでございます。
しかしながら、その中におきましてもできる限り、やはり冷戦構造が解けたわけでございますから、我が国としてもその中で合理化、コンパクト化、そういうことができないかということで防衛大綱を定めまして、今計画的に実行しているわけでございます。
そういう中で、今、委員は三年間過ぎたらと言われましたけれども、あるいは三年間も同じじゃないかと言われましたが、我が国は御承知のとおり、人件費がずっと上がってきているわけでございまして、その人件費のアップの中で従来どおりの金額で抑えていくというのは、これはその分だけ着実に頭が押さえられるというよりも減っているわけでございますから、そういう点についてもぜひ御理解をしていただきたいと思うわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114269X01019971119/135
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136・山口哲夫
○山口哲夫君 人件費が上がっているのは日本だけじゃありません。私はそれは理由にならないと思うんです。
それで、日本は専守防衛ですよね。それならば、攻めてくる国がなければこれだけの軍備を整えておく必要はないと思うんです。一体どこの国が攻めてくるんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114269X01019971119/136
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137・久間章生
○国務大臣(久間章生君) これは、考え方でございますけれども、私どもはここが、ここというのは日本が空白区になることによってそれがきっかけにならないように絶えず備えをしておくということでございまして、どこの国が攻めてくるからそれに備えてやるという、どこか敵国をきちっと決めながら、それとの対抗上の必要な防衛力を整備するというのではなくて、独立国として空白をつくらないための必要最小限の防衛力を整備する。
しかし、そうはいっても強大な国が来た場合には困りますから、そういう点でアメリカと安保体制を結んでそれを保持していく、そういうような構えをしておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114269X01019971119/137
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138・山口哲夫
○山口哲夫君 日本が空白国になるというのはどういうことですか。空白区になったら、それじゃ近い国は喜んで攻めてくるというわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114269X01019971119/138
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139・久間章生
○国務大臣(久間章生君) 先ほどからも言っておりますように、攻めてくるという前提に立ってじゃなくて、そういう空白の状態をつくっていることが不安でないかどうか、国民が安心できるかどうか、そういうような視点に立って考えていただいたらいいと思うんです。
やはり、それだけの必要最小限の防備をしておくことによって非常に安、心が持てるという場合と、何もしないで来たときはそのときはバンザイだという、そういう構え方と二通りあろうかと思います。私どもはその前者に立って必要最小限の防備だけはしておくということでその構えをしておるわけでございますから、その辺は考え方の違いによるかもしれませんけれども、私は、これは今の日本国民の大多数の意見じゃないか、そういうふうに思うわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114269X01019971119/139
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140・山口哲夫
○山口哲夫君 軍事専門家の方々の意見を聞きましても、今冷戦構造が崩壊された今日において、理由もなく他国に侵略をするということはまず全くあり得ない、こう言っておりますよ。これが僕は世の中の今の常識だと思うんです。どうして侵略をされるというふうに考えるのか。ということは、逆に言うと、何にも理由がなく、相手が静かにしていることに乗じてこちらから侵略をしょうなんという、そんな今の時代ですか。私は全然認識が違うと思う。
大体、防衛白書の書き方そのものが実におかしいと思いますよ。「侵略のおそれが全くない真に平和な安全保障環境を得るには至っていないのが現実である。」そして、「外交や内政の分野の努力のみでは、外国からの実力をもってする侵略を必ずしも未然に防止することはできず、また、万一侵略を受けた場合に、これを排除することもできない。」。だから、まるっきり外交関係では侵略を防ぐわけにはいかないんだと。ですから、どこかの国が侵略をする意図があるんだというように解釈しているとしか思われないんです。この平和な今の世界で、他国に対して理由なく侵略するということもやっぱりあり得るんですか。(発言する者あり)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114269X01019971119/140
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141・遠藤要
○委員長(遠藤要君) 御静粛に。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114269X01019971119/141
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142・久間章生
○国務大臣(久間章生君) どうもかみ合わないようでございますけれども、どこが侵略するか、そういう特定の国を想定しているのではなくて、国防、防衛というのは、今この瞬間だけではなくて、これから十年一二十年、三十年先にわたって、この地域でそういうふうに何もしないでおくことがいいのか、それとも何かやはりそれだけのことをみんな備えておるのがいいのか、そういうことを考えていただければいいと思うんです。
世界にはたくさんの国がございますけれども、どこの国もやはり軍事力といいますか、防衛力というのは持っているわけでございます。中立国のスイスといえども、それは持っているわけでございます。攻めてくるのがどこかはっきりしてないじゃないか、それなのになぜ持っているのかというのは、それはどこの国でも言えることだと思うんです。しかし、国民の大多数が無防備であるよりは必要最小限の防衛力は持っておくべきだというような気持ちが強いから、その国民世論に従って、政府としては安心感を保つためにも必要最小限の防衛力は持たせていただくというのが今のとり方でございます。
ここで、アジア太平洋地域はこれから先向こう三十年、四十年たっても全くもう何もしないでいいかと言われると、それは国民の生命、財産を預かる政府としましてはそういうわけにはいかない。やはり必要最小限のことはしなければならない。ただ、諸般の情勢から見まして幾らかの、何といいますか、安心感をもう少し縮めてもいいじゃないかということで、村山内閣当時に新しい防衛大綱ができましたけれども、そのときにつくられました内容に従って合理化、コンパクト化を図っていくということでございますから、どうかその点については、そういうような意見が大多数であるという前提に立って政府は動いているということに御理解をいただきたいと思うんです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114269X01019971119/142
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143・山口哲夫
○山口哲夫君 中立国でも、スイスもオーストリアもスウェーデンもコスタリカも、コスタリカは全くの無防備ですが、私は防衛の量の限度があると思うんです。日本は世界第四位の軍事大国だと言われているんです。それほどの軍備を用意する必要が私はないと思うんです。特定の国を全然意識しないで、ただ日本が空白区になればどこかの国が攻めてくる危険性があるなんという考え方自体がおかしいので、日本を取り巻く特定の国があるわけですから、そういう国々が絶対日本に侵略する危険性はないというふうに考えたならば、それはもっと軍縮をしていくのが私は当然だと思うんです。
せっかく防衛庁長官と議論をする機会をやつとつくっていただいたんですけれども、時間がありませんので総論で終わりましたけれども、あしたまた具体的なもので質問いたします。
終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114269X01019971119/143
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144・金田勝年
○金田勝年君 連日にわたりまして、非常に我が国の将来にとって重要な財政構造改革の推進に関する特別措置法案の審議を委員の先生方はしてまいりまして本当に御苦労さまでございますし、閣僚の皆様も本当に御苦労さまでございます。あと一息でございますので、この法案を早く通して、日本の国の二十一世紀の将来のために構造改革をきっちりとやって、そして新たな時代にふさわしい日本の財政構造、経済構造をつくっていく、それがやはり私どもにとりまして重要な課題だ一最重要の課題だということを踏まえて、幾つか御質問をさせていただきたいと思う次第であります。
まず、今回のこの法案でございますが、今まで何度となくその趣旨、意味づけにつきましては御説明いただいたわけでございますけれども、今まで財政当局の予算編成に当たって、こういうふうなバックボーンとも言うべき考え方ができて予算編成を行ったということはかつて歴史上ないわけでございまして、そういう意味におきまして今どれだけこれが重要な法律かということでございます。
実はキャップ方式ということで今この方式が言われております。昭和五十五年にシーリング方式というのが導入されたわけであります。昭和五十五年からおよそ十八年間シーリング方式がとられまして、そして概算要求基準をシーリング方式で行った。そして、このたびは法律を出されて、キャップ方式ということで新たにこういう厳しい財政事情をベースとした対応をされた。
非常に画期的なことだと思うのでございますが、その間、歴史を振り返ってみますと、五十五年にシーリング方式を設けましてからは一律に、一般行政経費はこのぐらいの水準でいこう、あるいはその他の経費の伸び率をこのぐらいにしていこうという考え方が年々示されて、そして五十七年には御記憶あろうかと思いますがゼロシーリング、五十八年にはマイナスシーリング。昔から財政構造を何とかよくしていかなければいけない、やはり子供や孫の時代に無用のツケは残してはいかぬ、そういうことを本当に真剣に取り組んできたこれまでの経緯というものがあるわけであります。
そのときに、平成二年度には一時赤字公債が発行ゼロになる。そして、財政再建がそういう観点から実現いたしまして、平成六年度にはまた赤字公債を発行せざるを得ないという状況に戻って平成九年度予算まで来た。こういうふうな経緯をたどっているわけであります。
そういう中で、今まで数多くの機会に総理並びに大蔵大臣からその趣旨をお聞きしてまいりました。改めてこのたびのこの法律の趣旨につきまして大蔵大臣から伺いたいのでありますが、そのときにお願いできますれば、これをやらなければこういうふうなことが問題だよという説明もあろうかと思いますけれども、同時に、厳しいけれどもこれをやることによってその先の未来にこういう明るさがあるよというふうな、やはり国民にわかりやすい説明をぜひともお願い申し上げたいと思う次第なのであります。
そして、そのときにお願い申し上げますとすれば、政治というのは将来に国民の皆様に夢と説得力を持つ、これが一番大事なことではないかというふうに思うものですから、どうかわかりやすく、そして国民の皆様になるほどなと思っていただくような言い方でぜひこの法律の趣旨の御説明をお願いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114269X01019971119/144
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145・三塚博
○国務大臣(三塚博君) 幾たびか申し上げておって、総合判断をいただければ明るい展望が開けるということが御理解いただけると思います。
そういう中で、借金のツケ回しをやりながらやりますと、お話の、下世話の中でも借金で首を絞められてしまったという言葉がたびたび出ます。そうしてはならない、そうする可能性が極めて濃厚、こういうことであります。
そのことについて、政府も今日の財政が危機的状況ということについて広報をいたしておるところでありますが、前段申し上げましたが、この国会の論議が確実に国民各位に伝わっていくことにより、また議員各位の国政報告、地域懇談会等において御理解を賜るということでありますと、政府の意図というよりも国民的課題に、政治の原点に戻って、危機を知ったならばその危機回避のために全力を尽くすということでなければならない、こういうことであります。
この失敗をする、従前の方式で何とかなるだろうということでいけば何とかならず、特例公債の増発によって、借金だけではなくその他特例公債の増発を期さなければならない、健全財政でない深刻な状態、国民の幸せはそれによってストップがかかる、エッセンスを言いますとそういうことで、やることはやり抜いて明るい展望を開く、こういうことに尽きようかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114269X01019971119/145
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146・金田勝年
○金田勝年君 そういうことで、この法律の第二条を拝見しますと、趣旨ということで出ておりますが、「安心で豊かな福祉社会及び健全で活力ある経済を実現することが緊要な課題である」、そのためにやるんだと、まさにそういうことだと受けとめておるわけでございます。
これを諸外国に例を求めますと、既に何度か質疑で出てまいりましたけれども、アメリカにおきましては、裁量的経費をキャップ制度ということで九三年に歳出の上限を定めておる。そして、ペイ・アズ・ユー・ゴーの原則ということで、義務的経費につきましてはOBRA九三、これで九三年に措置をしておる。それから、ヨーロッパの国々は、これはオランダの名前ですけれども、マーストリヒト条約で欧州通貨同盟に入るための基準を満たすためにそれぞれの国が頑張っておる。
こういうふうな状況の中ではございますが、やはり私どもの国も例外ではなく、そうした努力をここで一生懸命にしなければいけない。そして、この第二条の条文の中に出てまいりますが、安心で豊かで、健全で活力ある経済社会を実現するために経済構造改革を一緒に推進しつつということが出てくるわけであります。
この財政構造改革と経済構造改革、非常に重要な二つの輪といいますか、そういうものであるということは、今までの閣僚の皆様の数多くの答弁にも出てまいった次第であります。そういうことを国民の皆様にぜひPR、理解してもらうことが大事ではないか。
今、長期債務残高は国と地方合わせて九年度末で四百七十六兆円、そしていわゆる隠れ借金と言われるものも入れますと約五百二十兆円と言われております。大変な額でございまして、これにどういうふうに対応していくかということは、我々の子供や孫の時代への本当に最優先の課題だ、こういうふうなことでございますから、そこのところを国民の皆さんにおわかりいただきたい、こういう思いでいっぱいであります。
そこで、私は財政構造改革が非常に重要だと思うのでありますが、同時に重要なポイントもございます。九月に出ております四−六月のQEでございますが、これは四半期の前期比でマイナス二・九%、実質年率一一・二%の減というふうなQEが出ておる。そしてまた、十月には日銀の短観が出た。九月に調査した段階では、製造業、非製造業ともに、そして主要企業、中小企業ともに低下をしておるという業況判断が日銀の短観では出ておる。そしてまた、つい先日、十一月十四日に月例経済報告が出ましたけれども、これでは、景気は回復基調は失われていないものの足踏み状態であるという表現がなされておるわけであります。
こうした次々に出てまいりました現在の景気を示すいろいろな指標がございまして、ここへ来て景気対策も非常に重要だということで、自由民主党ではこれまで二度にわたり、第一弾、第二弾の景気対策を行ってきたわけであります。
そういう中で質問を申し上げたいと思うのでありますが、現在の極めて厳しい景気の状況、経済状況というものを考えたときに、確かに短期的には財政構造改革法案というのは痛みを伴う、そういうふうに思うわけでございますが、もしこれでもって経済が影響を受けるといったようなことになった場合には、財政出動の方がむしろ必要なんではないかという見解を述べられる方もいるわけでございます。
大蔵大臣、現在の景気動向と重要な経済政策の手段としての財政政策をここ数年間法律で拘束してしまうことになるのではないかという心配、そういうものをあわせ受けとめていただいて、もう少し財政再建のプログラムを弾力的にしてもよかったのではないかという意見も聞くのでございますが、それに対してはどのようにお考えか、お聞かせいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114269X01019971119/146
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147・三塚博
○国務大臣(三塚博君) 先ほど来の論議も含め、極めて景気の問題について深刻な分析の開陳がございます。そうでありますだけに、昨日発表の政府の経済政策に、これを乗り切るためのありとあらゆる諸施策を網羅いたしました。網羅するだけではなく、前倒しでやれるように具体的に提示をいたしました。これがスタートを切ることによりまして、確実に一歩一歩手がたい前進の中で、トータルで見ますと我が国経済構造がここに生まれ変わるという形の中で、力強い足取り、そして民需中心の経済成長というものが安定的に期せられるのではないだろうかということであります。
財政出動の話がございました。限られた財源、決められた財源、今日ただいま増税できるような環境にない中で何をやることができるかといえば、経済の高コスト構造の改革、規制の撤廃、自由な民間の経済活動ができるようにする基盤をつくり上げるということでございます。
財政に頼ることが財政構造改革のこの法律の基本的なテーマになっております。九年、七・二兆円発行いたしました特例公債を六年間かけて発行ゼロに持っていこうということでありますから、両手を縛られて経済対策をということであれば、活力の源泉である経済に活力を与える。こういうことで、規制緩和を中心とし、なおかつ不必要なものは撤廃をしていく、機能しないものは撤廃をしていく。経済の根幹の押さえになっておるものがあるとすれば、それも是正をしていかなければならないだろう。民活が経済活動の中で政府、行政、地方団体の活動の中にも生かされるべく努力をして、全体の経済が盛り上がるようにしていかなければならない、このように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114269X01019971119/147
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148・金田勝年
○金田勝年君 そういう状況の中でございますが、この法律案を見ますと、第一条から第四十一条まで本則がございまして、六条までは目的、国の責務、それから当面の目標、財政運営の当面の方針、非常に大事なことが出ております。各論も九つの主要な経費に分かれて、第七条から三十一条まで、量的な縮減目標に加えて改革の基本方針というものがそれぞれ出ておるわけであります。
本来であれば予算の編成過程で毎年非常に議論になってなかなか難しい、そういうテーマのような考え方がその基本方針に盛り込まれ、そしてまた縮減目標とされておるということ、こういうふうな法律の考え方は本当に不退転の決意でこれをやるんだという心のあらわれといいますか、そういうことで非常に一つ一つについて今までたくさんの御議論があったことを私もしっかりと受けとめてこれからも勉強してまいりたいと思うのでございます。
こういう中で盛り込まれていないものとして、あるいは盛り込まれておるものもございますが、例えば補正予算につきましてはどういうふうにこの法律からは読めるのか。何回か質問があったと思いますけれども、その点について簡単に教えていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114269X01019971119/148
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149・三塚博
○国務大臣(三塚博君) 補正の要素は、財政法二十九条、法律の義務を果たさなければなりませんとき、「緊要」という言葉になっておりますが、緊急な事態、災害等、その際はその限りにあらずと、こういうことであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114269X01019971119/149
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150・金田勝年
○金田勝年君 それから、特別会計につきましては、第六条でその考え方が出ておりまして、第六条第一項で、一応特別会計も一般会計と同様に網をかけたという規定になっておるわけでございます。
また、後ほど地方財政、そして財投についてもお聞きしたいと思いますが、ここでは景気の関係の続きといたしまして、減税についてお考えをお聞かせいただきたいと思う次第であります。
今の景気情勢、先ほど申し上げました情勢の中で、やはり減税の効果というものに対して非常に大きな期待が出てきておる、そういう考え方もございます。短期的にはそれほどきかないんだという考えもございますけれども、いずれにせよ中長期的には確実にきいてくるんではないかという意見もございますし、アメリカにおいての分析として次のような考え方をおっしゃる方もおったわけであります。現在の経済的な繁栄というものはレーガン政権時代の減税の効果であるというふうな考え方を述べられる方もおられた。持続的な景気回復のためにも、法人税なり所得税なりの減税を実施すべきではないかという意見が数多くございました。どういうふうにお考えでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114269X01019971119/150
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151・薄井信明
○政府委員(薄井信明君) 税金の御質問でございます。
税負担を考える場合に、税が公共サービスの財源であるという観点、これが大事だと思っております。そういう意味で、日本の租税負担率が二四・四%ということはかなり低い方でございまして、それをさらに下げるということは税のあり方として基本的に考えなければいけない問題があると思います。
一方、短期の経済との関係で、税負担が低ければ低いほど経済活動にプラスであろうというのは、また方向としては正しいと思いますが、これも限度があろうかと思います。特に、今御指摘の二つの所得税と法人税の問題ですが、所得税につきましては平成六年から七年にかけて大議論しまして、平成七年の制度改正で、住民税と合わせて三・五兆の恒久減税をしてあるということです。その結果、日本の一般的な方々の個人所得課税の負担率というのはアメリカの半分ぐらいになっているという実態を御想起いただきたいと思います。
また、法人税につきましては、確かに税率水準が高いという御指摘がありますし、私どももそう思いますので、この税率水準を下げるべく今努力しておりますが、国際的な観点、観点というかグローバルスタンダードという意味では、今度は課税ベースがそれではどうかということも必要でして、両面から今議論を積み重ねているというところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114269X01019971119/151
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152・三塚博
○国務大臣(三塚博君) 減税のために、その財源として特例公債を発行する状況にはございません。法律にも、今度の財革法でありますが、法律の条項にも、特例公債の発行は厳に減額をしてまいると、こういうことになっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114269X01019971119/152
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153・金田勝年
○金田勝年君 厳しい財政事情だということで、特例公債によらざるを得ないものは財政構造改革と平氏が合わないという御説明のようでございますが、所得税減税につきましては、考えてみますと、六年の改正で五・五兆円の特別減税、そして七年から三・五兆円の恒久減税をやっておるわけでありまして、これは今も生きておるということは言えるんだろうと。そして、二兆円ございました七年、八年の特別減税は八年までと、こういうことになっておる今の現状、そして今のような御説明ということでございますが、それでは、法人税につきましてはどういうふうに考えていくか。そのときに、財政構造改革法案の第二条で「経済構造改革を推進しつつ、」という文言があるわけですね。これが私は非常に重要なポイントだなというふうに思うのであります。
それはなぜそういうことになるかといいますと、経済構造改革というのは、何度も大臣の皆様がおっしゃっていますけれども、財政構造改革と車の両輪だと。こういうことになりますと、今企業活動というのが非常にボーダーレスになってきて国際化されてきておるということを考えますと、企業が国を選ぶ時代に入った、こういう御答弁も何度もお聞かせいただきました。そういうことを考えますと、企業活動が外国に比べてイコールフッティングできるような事業環境というものをつくってやるということが非常に重要ではないか。
そしてまた、後でちょっと触れるのでございますが、証券市場なんかは、金融、税制としては有価証券取引税なんかも重要な議論の一つに入ってくるだろうと思います。これもやはり東京市場をニューヨーク、ロンドン並みに育て上げていきたいというふうな考え方のあらわれだと思いますし、一方で経済構造改革をやるには、何といいましても、新しい事業を起こしていこうというそういう動機に対しては、それをサポートしてやろうという規制の緩和、それから民間活力を生かしていこうという体制づくりが非常に重要だ。
そしてもう一つは、また後で触れるのでございますが、バブルが発生した後の不良債権の処理を早目に進めていくのが重要ではないか、こういったことをあわせてやるのが経済構造改革だと、こういうふうな考え方が私にもでき上がってきたのであります。
そういうことで、不良債権の処理につきましては、また土地取引の問題、有効利用あるいは活発化の方策。ですから、当然にしていろいろと土地税制、譲渡益課税とか地価税とかいろんな議論を本当はしたいのでございますが、それはまた後の方に譲るといたしまして、とにかく法人税は、企業活動が外国に比べてイコールフッティングできるような事業環境に置かれるという意味で、法人税の税率の見直しというのは非常に重要な課題だ。
そして、国際競争の観点というのは申し上げたとおりでありますし、加えて、先ほど申し上げました景気の厳しい状況というものを考えますと、やはり法人税につきましてはネット減税をぜひとも行ってもらいたいなと、こういうふうに思うのでございますが、いかがなものでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114269X01019971119/153
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154・三塚博
○国務大臣(三塚博君) 法人税の減税は、党及び自社協議、また国会論戦を通じて出ておるところであります。よって、課税ベースの拡大、合理化によって得られる財源をもってこれに充てる、こういうことになるわけでありまして、その財源がどれだけの広がりを持つかということで、全体を見ながらただいま政府税調において真剣な論議が行われております。また政党側においても議論が行われておると聞いております。
今回の経済政策においても、法人税を含め、市場、土地税制について今後検討を進めるということなども明記をされておることを申し上げて答弁にかえます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114269X01019971119/154
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155・金田勝年
○金田勝年君 ぜひ法人税のネット減税というものを考えていただきたいと思うのでございますが、課税ベースの拡大、適正化ということも、今お話にありましたように、税率を引き下げる際の考え方としては何度ともなくお示しいただいておるわけでございまして、今後の議論を注視してまいりたいと思うわけでございます。
同時に、外国と税率を比較いたしました場合に、アメリカでは一九八六年に法人税改革が行われた、そして税率を四六%から三四%に下げた。イギリスでは一九八四年に改革が行われて、五二%だった税率が現在は三一%になった。ドイツでも一九九四年の改革によりまして税率の引き下げが行われたということでございまして、国際比較をしてまいりますと、かなり我が国が高いというのは、これまでのほかの委員の先生方の質問でも示されたとおりであります。
そういう中で、自治大臣にお伺いしたいと思うのでございますが、私は法人課税を見直す際には、法人の税負担の軽減ということで考えました場合には、赤字法人課税といいますか、それから法人事業税、法人住民税とございますが、法人事業税につきまして外形標準化を考えるべきではないか。赤字法人課税を検討するのも重要なことでございますし、事業税の外形標準化を考えることも重要ではないか。そういうふうな両方の税を考えた場合には、応益負担の観点から議論すべきものという考え方を私は持つわけでございます。
これは、法人事業税は現在地方税でございますし、そういうこともございまして、地方税の問題として検討を進めていくべきではないか、こういうふうに思うのでございますが、自治大臣のお考えを教えていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114269X01019971119/155
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156・上杉光弘
○国務大臣(上杉光弘君) お答えいたします。
事業税につきましては、御案内のとおり、事業が地方団体から受ける行政サービスに必要な経費について分担すべきであるという考え方に基づきまして、事業の規模や活動量を示す外形基準により課税することが望ましいとされております。この外形基準の導入によりまして、御指摘の赤字法人課税の適正化に資するとともに、課税ベースが拡大すること等によりまして法人の所得に対する税負担も軽減されることと考えております。
この問題につきましては、具体的な外形基準のあり方、税負担の変動など、なお検討すべき課題がありますが、これらの課題に取り組みながら、私といたしましてはその実現に向けましてさらに検討を深めてまいりたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114269X01019971119/156
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157・金田勝年
○金田勝年君 実現に向けて検討を進めていくという、非常に力強い御答弁を自治大臣からいただきました。経済構造改革の中核を占める法人の企業の活力、これはやはり何と申しましても内部留保を通じて設備投資につながるか、あるいは雇用所得に影響が及ぶか、いろんな意味で景気に非常にプラスになる話であると思いますので、そういう意味では法人課税の見直しという観点から、国税の法人税そしてただいまの赤字法人課税ないし法人事業税の外形標準化といったものの御検討を進めていただきたい。よろしくお願い申し上げたいと思います。
それで、続きまして、ただいま申し上げましたように、経済構造改革を考えました場合には、私どもは、建設公債と赤字公債、特例公債でございますが、この違いというものもやはり一度はここで議論をする。そして建設公債というものは見合いの資産が将来残るわけであります。私たちは財政構造改革をやっておりますのは、将来の子供や孫のためにやるわけであります。ところが、建設公債で見合いの資産が残る場合には、社会資本としてナショナルミニマムのものはもうできるだけ早くやらなければいけない、そういうものを将来の子供や孫に残してあげられるわけです。
そういう見合いの資産が残るという意味において、私は、建設公債対象の事業というものは前向きに考えていかなければいけないのではないか、こういうふうに思うのでございますが、このたびの法案の第四条第一号に書いてありますのは、平成十五年までに財政赤字の対GDP比を三%以下とするという財政健全化目標の中には、特例公債のみではなくて建設公債の発行による債務も含んでいるわけであります。
したがいまして、私としては、建設公債につきましては特例公債と別個の数値目標を設定するという考え方もあるのではないか、こういうふうに思うものですから、御見解を伺いたいと思う次第であります。よろしくお願いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114269X01019971119/157
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158・涌井洋治
○政府委員(涌井洋治君) お答え申し上げます。
現行の財政法におきましては、世代間の負担公平の考え方に立ちまして、見合いの資産等が残る公共事業等に限って建設公債の発行を認めております。
他方、本法案におきましては、建設国債といえどもその国債費を賄うために特例公債の発行の増加を招くという問題があることを考えまして、国、地方の財政赤字の対GDP比の三%ということにいたしたわけでございます。あわせて、公債依存度を下げるということで、建設国債といえどもやはり安易に増加させてはいけない、むしろ減らしていかなければならないというのがこの法律の考え方でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114269X01019971119/158
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159・金田勝年
○金田勝年君 公債依存度を引き下げるということを目標とされていますが、九年度の当初予算でまいりますと、特例公債七兆五千億に対して建設国債は九兆二千四百億ということでございまして、これの国債費というか利払い、そういったものについては特例公債の発行を招くんだという考え方があるから一緒になるんだ、そういうことかなと、こういうふうに思っているわけですが、次に進ませていただきます。
地方経済に与える影響ということでございますが、このたびの法案が、今地方経済というのは何と申しましても公共事業のような公的部門に依存していることは間違いないわけであります。そして、画一的な財政緊縮ということで、例えば対前年七%減ということをやられますと、私は地方出身なものですから、本当に地元のそういう思いが非常によく伝わってくるのでございますが、地方の人たちというのは地方にしわ寄せが来るのではないか、あるいは地方切り捨てになってしまうのではないかという非常に大きな心配を持つわけであります。
地方経済にとって公的部門の公共事業というのは非常に大きな事業でございますし、実際に農村では農業をしながら建設業もやっておるというような人が非常に多いわけでございます。そういうことも考え合わせますと、これは非常に大きな問題というふうに受けとめざるを得ないわけでございますが、公共事業の削減というものが地方経済に与える影響というものをどのようにお考えになっているかを教えていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114269X01019971119/159
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160・瓦力
○国務大臣(瓦力君) 金田委員にお答えいたします。
公共事業の効果は、社会資本整備の本来の効果でありますストックの効果にとどまらず、GDPを押し上げ雇用を創出する、いわゆるフロー効果を有するものであることは委員御指摘のとおりでございます。社会資本の整備、公共事業の充当というのは、都市圏に比しまして地方圏でこれを必要としていることも御指摘のとおりであります。地方におきましての生産力を誘発いたしまして就業機会を創出する上で重要な役割を果たしておりまして、地方の潜在的な能力というものをますますこれから必要とする時代であろう、こういうぐあいに考えるものでございます。
具体的に申し上げまして、地域別のGDPに占める公的固定資本形成の比率を見てまいりますと、地方圏では都市圏のおおむね二倍程度、関東では五・四%と見まして、東北地方では一一・一%でございますし、また公共事業が就業機会に与える影響、これを見てみましても、公共事業が北海道で全国平均の二倍の就業機会に影響を与えるわけであります。
このように考えてまいりますと、公共事業が地方経済に及ぼす影響は極めて大きいものでございます。建設省といたしましても、地域経済への配慮を十分に行いつつ公共事業を適切に執行してまいる、こういうことが「財政構造改革の推進について」という閣議決定にも方向が示されておるわけでありますので、これらを踏まえて地方経済への影響も十分そんたくしてまいりたい、かように考えておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114269X01019971119/160
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161・遠藤要
○委員長(遠藤要君) ちょっと速記をとめて。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114269X01019971119/161
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162・遠藤要
○委員長(遠藤要君) 速記を起こして。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114269X01019971119/162
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163・金田勝年
○金田勝年君 続いて、建設大臣にお願いしたいと思います。
私の地元の例で恐縮でございますが、例えば整備水準の差といいますか、格差といいますか、私の地元は秋田でございますが、下水道の普及率というのは平成八年度末で二六%でございます。統計で百万人以上の都市では現在九七%の普及率というふうに聞いております。そして、全国平均が今五五%だそうでございます。
そういう意味で、私の地元では非常に都市と地方の、例えばこれは下水道でございますが、そのほか道路等々で整備に大きな差があるわけでございまして、そういうふうな差というものをどうか御配慮いただいて、きっちりとそういうミニマムインフラ、ナショナルミニマムといいますか、そういうものはきっちりと整備していただくということを、財政構造改革のその重要性は申し上げるまでもないんですが、その中でお願い申し上げたいなと、こういうように思うわけでございます。
実は、六月三日に出ました「財政構造改革の推進について」という閣議決定でございますが、これは財政構造改革を進める精神が全部載っておるのでございます。この中の「公共投資」というところに、「地域経済への配慮を行うとともに国土の均衡ある発展と整備水準についての地域間の格差の是正という観点にも留意する。」と、こういうふうな一文をいただいておるわけでございます。これをしっかりと私どもはいただきながら今後の予算編成を見きわめていきたい、こういうふうに思うわけでございますので、建設大臣からもお力添えを賜りますようにひとつよろしくお願い申し上げたいなと思うんです。
実は、公共事業に対するいろんな意見がございますが、この中にさまざまな努力すべきスタンスというものも出ているわけであります。そういうことで見ますと、この法案の第十三条に公共事業が出てまいります。その第十三条にうたわれておりますが、さまざまな財政構造改革を進めていく上で、重点化、効率化のための工夫をしろ、公共事業の構造の改革も不可欠であるよと、こういうふうな記述があるわけでございます。これは私が調べましたところ、建設省でも非常に努力をしておられるんですね。建設省に限らず、公共事業をやっておられる役所は一緒になってコスト縮減の努力に励んでおる、その取り組みをされておる。また、費用対効果分析というんですか、これでいろいろと知恵を出すということでやっておられる。
例えば、費用効果分析に際しましても、これまでは道路、河川といった事業ごとにしか行っておらなかった分析を総合的に行うという対応に今努めておるというふうに聞いたんですけれども、建設大臣、その辺の状況はどうでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114269X01019971119/163
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164・瓦力
○国務大臣(瓦力君) 金田委員に重ねてお答えいたします。
前段に金田委員から御指摘がありましたように、特に地方においておくれておるところの社会資本整備でございますが、下水道を例にとられて御指摘がございました。これらのことに十分配慮をしていく予算立てといいますか、要望が必要だと思いまして、建設省も、御指摘のように町村の下水道整備が大変おくれておりますので、そういったところにもウエートを置きつつ、また中心市街地の活性化等も今急がれる問題でありますので、これらも重点化の中に入れておるわけであります。
また、地方におきましてそれぞれ地域高規格道路等の要望も非常に強いわけでありまして、中央、地方を問わず、我が国の社会資本基盤を進めてまいることは極めて重要と心得ておるわけであります。
また、委員御指摘のように、これからの公共事業を進めるに当たりまして費用効果分析手法の開発や試行がどのように進められておるか、同時にまた総合的な費用効果分析はどういうぐあいに検討を進められておるかということでありまして、これらの課題は既に取り組んでおるところでございます。しかし、それぞれの異なる目的、内容を有しております各事業に共通する総合的な費用効果分析を行うことはなかなか困難な面もございます。
そういった意味合いにおきましても、これらの効果というものは一方において期待されるわけでありますので、事業実施に向けましては、信頼性であるとかあるいは透明性の一層の向上を図ることを主眼といたしまして、各事業間で共通化が可能な項目についてはできるだけ統一化を図ることといたしておるわけであります。統一化を図るための運用指針の策定を鋭意進めているところでありまして、費用効果分析の一層の効果をこれからも研究し図ってまいりたい、かように存じております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114269X01019971119/164
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165・金田勝年
○金田勝年君 そういう方向できちっと努力をされる、そういう対応がまさにこの財政構造改革の精神に合致すると思いますし、そういう御努力をされながら、そして一方では社会資本の整備を計画的かつ着実に進めていくということは、私たちの将来の子供や孫たちに残してあげるものとしても、やはりこの重要性はいささかも変わるものではないというふうに思いますので、そういうことでぜひ頑張っていただきたい。
そして、先ほど申し上げました地方と都市との大きな整備水準の違い、こういったものもどうか御理解いただいて、この法案に沿ってまいりますれば七%減となるでありましょう公共事業の中においてぜひできるだけの御配慮を賜りたい。
そしてまた、全体で見ると欧米諸国との格差というものも整備水準にはあるわけでございまして、そういうことも踏まえて手当てをしていっていただきたいというふうに思うわけであります。
そこで、先ほどの話に戻るのでございますが、経済構造改革、これは車の両輪。この中で出てまいりました、三つ申し上げたうちのバブル後の不良債権の処理を早く進めるのが大事だと、こういう話に関連してちょっと御質問をさせていただきたいと思うわけであります。
景気の不透明感が強まっているのは先ほど申し上げたとおりでございますが、その中で巨額の不良債権を抱えた拓銀、北海道拓殖銀行が経営破綻をした。そしてまた、その前には三洋証券が会社更生法を申請した。そういうことで、驚くことに都銀までが破綻に追い込まれてしまった。これは国民としては、金融大競争が始まると言われる日本版ビッグバンを控えてどういうことになるんだろうか、こういう思いを皆さん持ってこの報道を受けとめておるんではないかと思うんです。
その際に、こういう拓銀の経営破綻などによって金融システムに対する不安感、そういうものが広がってくることが非常に問題だと思うんですが、そういうことに対しまして、大蔵大臣の御認識はどうでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114269X01019971119/165
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166・三塚博
○国務大臣(三塚博君) 拓銀の経営破綻につきましては、同行が我が国金融システム、なかんずく北海道におきまして重要な金融機能を果たしてきたことにかんがみまして、受け皿銀行等への譲渡、日銀特融の実施などその金融機能を維持するための所要の措置を講じ、金融不安の起こりませんように万全の策をとったところであります。
また、全体的な金融機関の不良債権問題にも言及をされておりますが、現在の各金融機関は経営合理化を行いながら不良債権の早期処理に取り組んでおります。個別の金融機関の経営状況はさまざまでありますけれども、全体としては不良債権処理の状況は改善をしておりまして、金融システムに対する不安感が広がっているとは考えておりません。
大蔵省としては、昨年の通常国会において成立をいたしました金融三法により整備をされた制度の基本的考え方を踏まえまして、引き続き預金者保護に徹しつつ金融システムの安定性確保に万全を期してまいるつもりでおります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114269X01019971119/166
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167・金田勝年
○金田勝年君 全体としては不良債権の処理は進み、改善しているとの受けとめだということで安心いたしました。
大蔵大臣にお聞きしたいんですが、十四日の株式市場の大引けの終わり値というのは一万五千八十二円だったんです。それまで景気対策もあったと思いますが、ずっと市場がそうなってきた。そして、十七日の月曜日に拓銀の首脳の皆さんが緊急記者会見したわけですけれども、続落をだれもが懸念した。ところが、東京株式市場の平均株価は十七日の大引けでは一万六千二百八十三円と千二百円上がったんですね。一万二千円上がればそれは大変なことになりますが、千二百円上がったわけです。これには私も驚きまして、どうしてこういうふうな結果になったものかなということで、これは続落の懸念が急騰した。この原因について大蔵大臣はどういうふうにお考えでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114269X01019971119/167
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168・三塚博
○国務大臣(三塚博君) これはどう考えるか、さまざまな要素がございまして一概に申し上げることは難しいわけでございますが、市場関係者の間では、一昨日及び昨日の上昇は今般の拓銀の営業譲渡における金融当局の対応等を受けたものであるとの見方もあると言っております。
ただ、前段申し上げましたように、株価はさまざまな要因を背景に決まるものでございまして、その要因を特定することは困難であります。
いずれにいたしましても、今後の株式市場の動向につきましては、国際的な視野を持ちつつ、引き続き、十分注視してまいる所存であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114269X01019971119/168
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169・金田勝年
○金田勝年君 私は、今の大臣の答弁に近いんですが、やっぱり市場の期待というものがあって、拓銀の破綻を受けて政府が抜本的な対策を講ずるんではないかという期待があって、それにマーケットが反応したんだというふうに言う方がいるんですが、私もそうかなと、こういうふうに思っていたんです。
いずれにしましても、今この時期というのは大変な時期でございます。来年四月には金融機関に対します早期是正措置が実施されます。と同時に、来年の同じ四月には外為の完全自由化を皮切りに、ビッグバンがスタートする。もうそれこそ激烈な競争の時代に入ります。そういうときに備えて銀行が不良債権処理を進めるというのも当然ですし、ただ貸出資産の圧縮に努めてしまえば、それが批判されているような貸し渋りというものにつながっていくおそれがあります。そうしますと、また景気にいろんな影響が出てくるということで、この辺の問題というのは非常に大事でございますので、この臨時国会中、別途金融関係法案が提出されておるわけでございますが、その審議も含めていろいろまた大蔵大臣のお考えを教えていただきたい、こういうふうに思っておる次第であります。
そこで、時間の関係で進ませていただきますが、この財政構造改革法を拝見しますと、先ほどちょっと触れましたが、補正、特別会計、考え方は先ほどお聞きしました。続いて地方の財政構造改革についても出ております。これは第三十九条に自治体の責務ということで出ておりまして、四十一条までの三条でその精神といいますか、何か私が読みますとどうも精神規定のような感じがいたしまして、非常に抽象的で余りわかりません。具体的に何をするのかというのがわからない。
なぜかといいますと、国の財政構造改革に関しましては、主要な経費ごとにキャップがかかるわけであります。九つの主要な経費ごとにキャップがかかっておる。ところが、それでいけば財政構造改革の道筋がかなり詳細に規定されたということが言えるのでございますが、地方の財政構造改革に関しましては、三十九条から四十一条まで規定がかなり抽象的なものとなっておりますので、こうした規定で本当に地方の財政構造改革ができるんだろうか、やや私も疑問なしとはしないわけであります。
今後どのように地方の財政構造改革を行っていかれますのか、自治大臣の御決意を伺いたいと思うわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114269X01019971119/169
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170・上杉光弘
○国務大臣(上杉光弘君) お答えいたします。
たびたびこの場でお答えしてまいりましたが、財政構造改革は、国と同様、地方におきましても次世代に残してはならない、この私どもの世代でぜひともやり遂げなけりゃならない課題であることは、もう申し上げるまでもないことでございます。
そのためには、国、地方を通じる財政赤字、三%以下とする目標がございますが、この達成に向けまして、国、地方双方の歳出抑制につながる施策の見直し、地方単独施策の抑制などにより全力を挙げて取り組む考え方でございます。
また、今後地方公共団体に対しましては、あらゆる機会をとらえまして財政の現状と財政構造改革の趣旨を徹底いたしますとともに、自主的に徹底した行財政改革に努めるよう要請をしてまいりたい、このように考えておるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114269X01019971119/170
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171・金田勝年
○金田勝年君 地方財政につきましても、どうぞ今の方針でしっかりと財政構造改革ができますように、ひとつ御努力されるようにお願いしたいと思います。
次に、財政構造改革に当たりまして、記述がない財投につきましてもひとつお聞きしたいと思うわけであります。
一般会計の記述、特別会計の網かけ、それからただいまの地方財政とあるんですけれども、やはり財政投融資も現在政府の資金運用審議会の懇談会で議論を重ねられておるという状況で、また自由民主党の行革推進本部での議論もまとまりつつあるとは聞いておるんですが、財政投融資というものも、一般会計とか特別会計からの出資金あるいは利子補給金というものを国費と組み合わせて用いられるということが多いわけであります。そういうこともありますので、財政投融資の改革は財政構造改革の重要な要素の一つだというふうに考えていいんだと思うんです。
したがいまして、財政投融資の改革を断行する必要があると思うわけですけれども、財政投融資は有償資金を用いる財政の一環だという観点も踏まえて、財政構造改革の視点からの御説明をいただきたいと思うわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114269X01019971119/171
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172・伏屋和彦
○政府委員(伏屋和彦君) お答えいたします。
御指摘のように、この法律案は、平成十五年度の財政健全化目標の達成に向けました歳出の改革と縮減のための方策や枠組みを規定するものでございますので、財政投融資については規定はございません。
ただし、財政投融資につきまして、本年六月三日の財政構造改革会議の決定を受けました閣議決定、「財政構造改革の推進について」におきまして、先ほど委員が言われましたように、やはり財政構造改革を推進するに当たっては、民業補完や償還確実性の徹底等スリム化を目指した財政投融資の見直しなど、幅広い観点に立った改革が不可欠であるとされたところでございます。
現在、先ほど御指摘もありましたように、資金運用審議会懇談会におきまして、財政投融資につきまして改革を推進する観点から広く専門家の意見を聞きまして本格的な検討、研究が進められておりまして、今後この改革についての取りまとめが行われる予定でございます。
いずれにいたしましても、財政投融資につきましては、先ほどもございましたように、財政政策の中で有償資金の活用が適切な分野に対応するという基本的な役割、必要性は将来においても残ると考えておりまして、その受け持つ具体的な役割は社会経済情勢の変化等に応じて変わっていくことが必要であると考えております。
したがいまして、この懇談会における議論をも踏まえながら、改革を推進するとの基本方針のもとで、先ほどありましたような民業補完や償還確実性の観点から対象事業の徹底した見直しを行うなど、資金の重点的、効率的な配分を図り、スリム化を目指していきたいと考えておるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114269X01019971119/172
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173・金田勝年
○金田勝年君 終わらせていただきます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114269X01019971119/173
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174・清水嘉与子
○清水嘉与子君 大変貴重な時間をちょうだいいたしまして、もうしばらく大臣の皆様方おつき合いいただきたいと存じます。
少子化というのが非常に大きな問題になっているわけでございまして、この一月に人口推計が出てきた。そうしますと、毎回出るたびにどうもぐあいの悪い推計が出てまいりまして、がたがたがたとなってくる。特に今社会保障改革にいたしましてもまずこの人口推計がもとになっているわけでございまして、大変厚生省は暗い雰囲気になっているわけでございます。
そこで、まず厚生大臣にお伺いしたいんですが、この少子化の問題を厚生大臣は人口問題審議会に諮問されまして、検討をされ、先般、「少子化に関する基本的考え方について」という報告書をまとめられたわけでございます。
これを拝見しますと、かなり幅広い議論がされたように伺っておりますけれども、厚生大臣、こうした報告書を通して、少子社会の課題をどのようにとらえていらっしゃるのか。そして、もし少子化というものを放置しておけないというふうな御認識でございますならば、どのような対策が本当に必要なのかというあたりを教えていただきたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114269X01019971119/174
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175・小泉純一郎
○国務大臣(小泉純一郎君) 今回の報告書は、人口が減少する社会をどのように予測するか、未婚率の上昇等、少子化の要因に対してどのように対応するかといった点について、公的な審議会として初めて取りまとめを行ったものでありますが、少子化については個人の価値観にもかかわる問題だと思います。いろんな意見がありますが、それをよく丁寧に取りまとめていただいたものと私は考えております。
まず、少子化への対応として、男は仕事、女は家庭という固定的な男女の役割分業や、家庭よりも仕事優先を求める雇用慣行の見直し、仕事と育児の両立支援ということが特に重要とされておりますので、こういう点について踏み込んだ検討方向が示されたのではないかと考えております。
今後、少子化への対応は国民的な議論と合意を得て行うべきものと考えておりまして、大いに国民各界各層で議論をしていただきたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114269X01019971119/175
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176・清水嘉与子
○清水嘉与子君 どこからほぐしていっていいかわからないような大変な問題がたくさんあるわけでございますが、私は、少子社会の中で一つの問題としてこれから起きてくる労働力の不足にどう対応するかという大きな問題があろうかと思います。
そのときに、女性の能力を、あるいは能力と言わずに女性をもっと労働市場に活用しようという労働界のニードが非常に大きくなるというふうに思いますし、また一方におきまして、女性の高学歴化が非常に進んでおりまして、こういうことを通しまして、自分たちが働くということを通して自己実現をしようという女性が非常にふえてきている。
そういう意味では、今までの例えばパートでありますとか短い時間働く、あるいは臨時に働くというような、労働の女性に対する期待といいましょうか、そういうイメージから大分離れた形でこれからの女性が働けるような形になるのかなという気もするのですけれども、ぜひ労働大臣に、来世紀、少子社会に女性の労働力が質量両面にわたりましてどのように活躍できるだろうか、その辺の予測をぜひお願いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114269X01019971119/176
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177・伊吹文明
○国務大臣(伊吹文明君) 私は二つの側面があると思いますが、まず女性が社会に出て、家庭にいるときだけではないいろいろな価値観に触れて、そのことが女性を人間として大きく育てるということは非常に私はいいことだと思いますし、その権利を男性だけが独占しているような社会からだんだん脱皮していくべきだろうと思っております。
もう一つは、今、委員がおっしゃいましたように、少子化社会というのは、将来は働くマンパワーというものが少なくなってまいります。当然、少子社会を脱するための政策も一つ必要なのでありますが、しかしながら、この傾向がある程度続くと仮定すれば、そこを埋めていく労働の供給サイドとしては、女性の方にもっと働きに出て社会に参加していただくという部分と、それから高齢者の方々にもう少し頑張って社会を支える側に回っていただくということ、それからあえて言えば海外からの労働者を入れるという部分があると思います。
三番目は、少し経済の問題を超えて大きな問題を私は惹起すると思います。やはり女性の供給サイドから見たマンパワーに期待するところは非常に大きいですし、高学歴化が進んでおりますし、統計から見ましても、高学歴の方の勤務の比率が高くなっておりますから、先般の共同参加の法律等も考えますと、これからは女性の果たされる仕事のグレードもうんと私は高くなってくるし、またそうしなければならないと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114269X01019971119/177
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178・清水嘉与子
○清水嘉与子君 ありがとうございました。
女性の年金権の問題について少しお話をさせていただきたいのでございます。
今、労働大臣からも御指摘がございましたように、女性がかなり高いレベルで専門職としてあるいは管理職としていろんな面で活躍する部分が期待される。今、女性は働いていないかあるいは収入のない、少ない女性というのは夫の被扶養者ということになっているわけでございまして、老後もその夫の年金収入によって扶養されるという仕組みになっているわけでございます。いわゆる第三号被保険者の問題でございます。
こうした妻である第三号被保険者が約千二百万人、これが基礎年金をいただくわけだけれども、保険料を払わずに。そして、その分夫が払うかというと、夫も払わずにいる。この辺について働いている女性からは少し専業主婦を優遇し過ぎじゃないかというようなことで問題が提起されているわけでございます。
一方におきましては、年金の問題というのは、次期十一年の年金制度見直しの時期に向かって、今非常に急ピッチで年金審議会で検討が進められているというふうに伺っておりますし、大臣もこの委員会におきましても、しばしば十二月の初めには論点の整理をして幾つかの選択肢を提示されるということを示されているわけでございます。
しかし、なかなかこの第三号被保険者の問題というのは、一体何がどんなふうに問題になっているのか余り聞こえてまいらないものですから、ぜひ年金審議会でこの第三号被保険者の問題なかなか難しい問題とは思いますけれども、将来のことを考えると一つその方向を出していかなきゃいけない問題ではないかと思いますものですから、どんな検討をされているのかということについてお伺いをしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114269X01019971119/178
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179・小泉純一郎
○国務大臣(小泉純一郎君) いわゆる第三号被保険者がみずから保険料負担をしない反面、基礎年金を受給できる仕組みとなっていることについての意見が大きく分けて二つあると思います。
一つは、働く女性と専業主婦の間で負担が不公平であるという視点や女性の就労が抑制的に働いているという視点に立って、第三号被保険者からも保険料を徴収すべきという意見が一つであります。
もう一方では、社会保険は所得のある者が所得額に応じて負担するべきものであって、所得のない専業主婦には負担させるべきではないという意見がもう一つであります。
これについては、現時点では負担の公平についての国民の合意点をどう見出すかという問題のほかに、実際に専業主婦から保険料を徴収する場合に未納者がふえないような事務処理をどうするかなど、現行制度を改めるには非常に多くの課題があるのではないか。まだこれの結論を出すのにはかなり時間がかかるのではないかと私は思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114269X01019971119/179
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180・清水嘉与子
○清水嘉与子君 今払っていない千二百万人の方に、制度を見直して、払いなさいというのはやっぱりできないことではないかと思うんです。しかし、二十一世紀に新たに年金のお金を払おうというような若い人たち、この人たちが一体どういう姿になっているのだろうか。
先ほどの労働大臣の御指摘もありますように、ほとんどの女性が何らかの形で社会参加する姿、そして何らかの形で年金のお金を払えるような姿になる。第三号被保険者というのはこんなにいなくなるんじゃないだろうかという想定もあるわけでございますし、また年金というのは男性よりも、申しわけないのですが女性の方が長くちょうだいできるわけでもございますし、やがて、今審議されております介護保険法なんかも通りますと、介護保険のサービスも受けなきゃいけないというふうになってくるわけでございまして、恩恵は女性に多いんじゃないかというふうに思うわけでございます。
私は、確かに第三号被保険者が不公平だということもあるんですけれども、そういった生活パターンが変わってきた女性の人たちが、ある程度自分で払い、職業人として働き、子育てをし、老後には自分の年金をもらって、そして介護保険の費用くらい自分で払えるというふうな年金の設計というものができないだろうかということを思うわけでございます。
そうなりますと、年金を今のように家族単位のものから個人に着目した形に変えていかなきゃならないような問題になってくると思うんですが、この辺については検討課題として考えられないでしょうか、お伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114269X01019971119/180
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181・矢野朝水
○政府委員(矢野朝水君) お答えします。
既に年金審議会で審議が進んでおるというのは先生のお話のとおりでございまして、その中で、この年金の給付設計を個人単位にすべきなのか、世帯単位にすべきなのか、こういった非常に年金制度の基本にかかわる問題につきましても御議論が行われている、こういう状況でございます。
現状は、御案内のとおり、厚生年金は世帯単位の給付設計になっておるわけでございまして、だんなさんが働いて専業主婦の奥さんがいらっしゃる、こういう世帯を想定した給付設計が行われている、こういうことでございます。
したがいまして、これを個人単位にするということも当然考えられるわけですけれども、現在の日本の実態を見ますと、今御指摘がございましたように一千二百万を超えるような専業主婦の方がいらっしゃるということでございます。これを個人単位にいたしますと、そういう専業主婦の方というのは所得がないわけでございまして、そうしますと、社会保険方式でやりますと保険料が少ない、つまり負担が少ないから給付も少ない、こういうことになりまして、女性の老後にとってかえって非常に問題が出てくる、こういう指摘もあるわけでございます。
そういうことで、この個人単位という考え方というのは、考え方としては十分尊重すべきものではありますけれども、日本の実態というのは、専業主婦がまだまだたくさんいらっしゃるとか、あるいは働く場合であっても賃金が低いとか、あるいは加入期間が短いとか、こういう実態があるわけでございます。こういった実態を無視して理論だけで給付設計を改めるということになりますと、今度はまた別の大きな問題が出てくる、こういう点もあるわけでございますので、こういった問題は慎重に検討すべき課題じゃないか、こう思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114269X01019971119/181
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182・清水嘉与子
○清水嘉与子君 最初に申し上げましたように、今の千二百万を考えると確かにそういうふうになつちゃう、そういう結論しか出てこないわけでございますけれども、もっと先の先、二十一世紀のもっと先の話くらいになりますとやはり多少違ってくるのじゃないかなと思います。
また、確かに今おっしゃるように、これは年金だけじゃございませんね。健康保険の問題もそうですし、いろんなところで税法上の優遇措置も世帯単位でやっている実態ですから、年金だけ引き離すというのは難しいのかもしれません。しかし、年金とか、特に介護保険、このあたりは個人の問題に必ずかかわってくる問題でございますので、今後またぜひそういうことも考えていただきたい、検討していただきたいというふうに思うわけでございます。
それからもう一つの問題といたしましては、先ほど厚生大臣もおっしゃいましたけれども、要するに三号被保険者としてとどまるために百三十万円の壁を乗り越えないでいる人たちがいて、労働時間を短くしてしまう人がいるんじゃないかという話でございます。
このことを避けるために、避けるといいましょうか、私は必ずしもそういう人たちばかりでないと思うのですけれども、できるだけ厚生年金を適用して、三号から二号に移っていただくような仕掛けをもうちょっと緩やかにできないだろうか。今の仕組みですと、常用労働者の四分の三の勤務をしていなきゃだめだということでございますけれども、もう少し緩和をして、多少それは保険料を払うわけですから負担はありますけれども、やがて自分にも少し年金が返ってくるというプラスもあるわけでございます。そういった意味で、パートの厚生年金の適用要件をもうちょっと緩和できないだろうかということをお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114269X01019971119/182
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183・矢野朝水
○政府委員(矢野朝水君) パート労働者の厚生年金適用の問題も、従来から非常に議論が行われてきたわけでございまして、今回も年金審でこの問題が取り上げられておるわけでございます。
この問題につきましては、やはりいろいろ複雑な問題がございまして、基本的にはできるだけ被用者の方は被用者保険でカバーする、こういうことが基本だと思うわけでございますけれども、これに対する反対意見といいますか、いろいろ問題点も指摘されております。
一つは、パート労働者本人あるいは事業主、こういった方の保険料負担がふえるわけでございまして、こういった点、納得が得られるかという問題が一つあるわけでございます。
あるいはパート労働をどう定義するかという問題でございますけれども、先ほどおっしゃいましたような四分の三ということで現在パートか常勤かということが仕切られておるわけですけれども、この基準をどう設けるかということでございまして、新たな基準を設けますとまたそれをくぐり抜ける、こういうことも考えられるわけでございまして、どこまで適用するか、こういった問題が当然ございます。
それから、先ほど申し上げましたように、現在の厚生年金の給付設計というのは、だんなさんがいて専業主婦の方がいらっしゃってと、こういうことで世帯単位で必要な年金を賄うんだ、こういう給付設計をしておるわけでございます。したがいまして、パートの方にも厚生年金を適用するということになりますと、世帯で見た場合に年金給付が多くなるんじゃないか、こういう指摘もあるわけでございます。
そうしますと、今の厚生年金の給付設計自体を根本から見直さなきゃいけない、こういうことにつながるわけでございまして、いろいろ問題も多いということでございます。これも引き続き検討していきたい、こう思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114269X01019971119/183
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184・清水嘉与子
○清水嘉与子君 検討ということでございますから、ぜひ検討していただきたいわけでございますけれども、今のお話はちょっと何か解せないんです。
要するに、御主人の年金というのは夫婦二人分がプラスになって二十三万に設計されている、こういう話ですね。だから、奥さんがパートだとすごく収入がふえちゃって多く行き過ぎるんじゃないか、少し設計を変えなきゃいけないという御議論でございましたけれども、しかし、そんなことを言ったら女性が本当に男性と同じような仕事をしている、キャリアを持っているというときには、これは男性と同じように年金をいただけるわけですから、パートで働いたから自分で年金の保険料を払っているにもかかわらず、少し上積みされることがおかしいというのもちょっと私もよくわかりません。また後で教えていただきたいと存じます。
それから、今パートの問題も出たし、それから三号被保険者の問題も出たわけですけれども、実を言いますと、今のままこれをやったら大変なことになる。さっき厚生省側もおっしゃいましたけれども、男性と女性の賃金格差がひどいわけですね。同じような仕事をしているはずなのに、今六〇%くらいというふうに言われているようですが、この格差をなくして、そして育児等で職場を離れている間の手当を何とかするというような工夫をすればいいんじゃないかと思うのです。
労働大臣に伺いたいんですが、雇用機会均等法の改正も行われたことでございますし、男女の平等な取り扱いをもっと進めることによってこの問題を何とか、明らかに同じ仕事をしていながらこんなに賃金格差がある、昇給もしていかない、昇進もしていかないというような姿を改めなければいけないと思うのです。この辺についてぜひ労働大臣に見守っていただきたいのですが、いかがでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114269X01019971119/184
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185・伊吹文明
○国務大臣(伊吹文明君) 委員も労働省で政務次官としてそのあたりの御努力を重ねておられたということは私も労働省でよく伺っておりますが、労働省だけでできることではございません。
今、年金の例をお挙げになりましたが、関係各省とも御相談をしなければなりませんし、何よりも日本社会全体の、特に男性をも含めて、あるいは働いていない女性をも含めて、意識を少しずつ変えていかねばなりませんから、よくお考えを尊重しながらやらせていただきたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114269X01019971119/185
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186・清水嘉与子
○清水嘉与子君 それでは、年金の最後の問題なんですが、今一年間、育児休業をとっている人には年金の保険料が免除になっております。一定の期間、例えば育児をしている人たちの保険料を免除する、本来こういうところに年金を出すのはおかしいのかもしれませんけれども、そういうことによって育児支援をするということ。あるいは、今本当に若い人の年金離れがすごいですよね。そういうことによって多少年金離れを食いとめるようなことにもなるのかなという気もするんですが、年金の中でこの子育てについて配慮することができないか、こういう問題でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114269X01019971119/186
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187・矢野朝水
○政府委員(矢野朝水君) 少子化対策を年金としてやるべきかどうかという点は、次期制度改正の非常に大きな論点になっておるわけでございます。
年金といいますのは、要は、昔家庭の中で子供が親の面倒を見ていた、これがいろんな事情でそういうことができなくなったということで、社会全体で親の面倒を見ましょう、こういうシステムだととらえられると思うんですけれども、そういたしますと、これからの将来世代がどうなっていくかということに年金というのは非常に影響を受けるわけです。
そういうことで、年金制度として少子化対策をきちんとやるべきだ。そうじゃないと、現役時代は子供をつくらずにいい生活をして年をとったらほかの人が産んだ子供のお世話になる、年金を通じてお世話になる、こういうことが一番楽じゃないかと。こういうフリーライダーを許すべきじゃない、したがって年金制度の中でも子育て支援をすべきだ、こういう積極的な意見が一方でございます。ただ、一方では、年金としてそういう子育て支援をするというのはやはり邪道じゃないか、年金の域を超えているんじゃないかということでございまして、年金は年金として給付と負担の仕組みの中でやるべきだ、こういう否定的な御意見もあるわけでございます。
そういうことで、この問題といいますのは、年金として本当にやるべきかやらざるべきか、あるいはやったとしてもそういう効果があるのかないのか、あるいはそういった政策としての妥当性、こういったものを総合的に考えなきゃいけないわけでございまして、これも今後の大きな検討課題、こういうことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114269X01019971119/187
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188・清水嘉与子
○清水嘉与子君 検討すべきことがたくさんございますので、また議論をさせていただきたいと存じます。
それでは次に、子育ての問題についてお願いをしたいと思います。
今月の初め、経企庁が国民生活白書を出されました。これが「働く女性「新しい社会システムを求めて」」という、女性を取り上げたのが初めてなんだそうで、なかなかおもしろく読ませていただいたわけでございますけれども、ここにありますのも、例えば女性の社会、職場進出というのは世界的に広範に起こっている現象だと。我が国でも二十歳から五十歳代の女性の約三分の二が家庭の外で働いている、特にサラリーマン世帯の妻の就業率の上昇は顕著だ、もう半分以上は表へ出て働いている。だから、随分専業主婦も姿が変わってきているんだと思うんですけれども、そんなことも書いてございます。
そしてまた、高学歴の女性が結婚し、子供を持ち続けながら働きたいという人が結構、理想ではたくさんいるというデータがあるんですね。ところが、現実問題となるとそれがどうも引っ込んじゃうというようなこともありまして、先ほど来から議論されておりますように、女性が本当に社会に役立つすばらしい労働力として働き続けるために、育児の問題をもう少し見直しをしなきゃいけないんじゃないかというふうに思いますので、育児の問題について少し触れさせていただきたいと存じます。
ところで、今、日本の乳幼児というのはどんなところでどんなふうに保育されているのでしょうか、教えていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114269X01019971119/188
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189・横田吉男
○政府委員(横田吉男君) 就学前の児童ということで、平成八年度現在をとりますと、ゼロ歳児から六歳児まで七百八十万人ほどいますけれども、このうち百六十万人が保育所に入所いたしております。全体の割合から申しますと二〇・六%。それから、百八十万人が幼稚園に入っていまして、全体の割合から申しますと二三%ということでございます。その他、家庭等において養育されている子供が約四百四十万人、全体の五六・四%ということでございます。このうち三歳児未満が三百二十万人を占めておりますので、家庭といいましても、その約四百四十万のうち七割は三歳児未満の児童ということでございます。
また、無認可等いろいろ事業所内保育所等がございますが、こういったところに入所している児童が約二十二万人、これは先ほど申し上げました保育所、幼稚園、あるいはその他のところとダブルカウントされているということでございますけれども、そういう状況になっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114269X01019971119/189
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190・清水嘉与子
○清水嘉与子君 こういうデータをちょうだいすると、保育所と幼稚園は出てくるんですが、その他の無認可の実態とかそういうのは余り出てこないんですね。今さっと伺いましたところでは、七百八十万のうち半分近くがどこかの施設、保育所なり幼稚園なり無認可なりというような形で施設に入っているという状況でございまして、そうすると、施設を利用して働いているお母さんもたくさんいると思うんですけれども、そこの問題が大きいんじゃないかというふうに思います。
まず保育所の問題なんですが、これは拝見いたしますと、保育所に入っている入所率で大体八〇%くらいしか入っていないということでございます。ところが、実際に大都市部を拝見しますと、待機児童がかなりいて、待っている。そして、いろんな人たちに聞きますと、要するに保育所に入りたいんだけれども入れなくて、しょうがなくて無認可保育所に入っているというような人が結構いるわけでございます。一体これはどういうふうになっているのか、そしてどうして保育所に入れてもらえないのか、この辺を教えていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114269X01019971119/190
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191・横田吉男
○政府委員(横田吉男君) 保育所の定員は百九十万人ということでございますが、現在全国で入所している児童数は百六十万人ということでございまして、御指摘いただきましたように、全体の入所率が八四%ということで、三十万人程度のあきがあるわけであります。
ただ、地域をとりますと、大都市におきましては待機児童が多い。全国では八年四月一日現在で三万二千人ほどでございますが、特に大都市で待機児が多いという傾向が出ております。東京都だけを例にとりますと、待機児が七千人もいるということでございます。ただ、同じく東京都におけるあきの状況を見ますと一万九千人ほどあるということで、これはさらに地域ごとに細かく見ていく必要があると思いますけれども、こういった需給のミスマッチが生じております。
これはいろいろお伺いしてみますと、保育所の方におきまして、全体の定員枠に加えまして年齢別の定員等を設けているところもあるということで、全体の定員と入所者数が必ずしもぴったり一致しないという結果にもなっているというふうに聞いております。
私どもといたしましては、こうした待機児童の解消というのが現時点における最重要課題であるというふうに考えておりまして、今回、児童福祉法を改正したわけでありますけれども、これによりまして各保育所ごとの情報公開を徹底いたしまして、入所定員、入所状況等をそれぞれ明確にして、利用者がどの保育所に入りたいか選べる仕組みにして、これらの有効な活用を図ってまいりたいと考えております。
また現在は、非常に努力していただいている保育所におきましては、年度途中、定員を超えて一五%まで入所することを認めておりますけれども、これをさらに年度当初も含めまして一層弾力化を図ることについて検討いたしたいというふうに考えております。
また、特に多いのがゼロ歳児の待機児でございまして、これは従来、乳児指定保育所ということで八千六百ほどの保育所に限定されておりましたけれども、これを二万二千五百の保育所に一般化いたしまして、どの保育所でもゼロ歳児から預かれるようにいたしたいということで、来年度要求に向けて努力してまいりたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114269X01019971119/191
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192・清水嘉与子
○清水嘉与子君 今まで保育所の施策というのは保育に欠ける子供を措置するという形でいたわけでございまして、そういう条件でないと市町村が認めてくれない、入れない。しかも、非常に厳しいといいましょうか、入りにくい、使いにくい施設であった。今度、児童福祉法の改正によってそこを多少選べる保育所にするんだというお話でございまして、しかし予算の関係等もございまして、なかなか本当にお母さんたちから見て使い勝手のいい、いつでも使えるような、本当に必要な保育サービスがだれでも受けられるようなシステムになるのかなということを大変心配しておりますけれども、ぜひ今度の改正を機会によろしくお願いをしたいというふうに思っております。
保育所にも相当なお金がかけられているわけですし、一部の子供たちだけに保育費がかかるのではない。ちょうどきのう発表された政府の経済対策におきましても、今度保育所にも民間の企業を参入させるというようなことが出ておりましたけれども、そういたしますと、今だってもう実際には無認可の保育所という形で民間が参入しているわけでございますから、もう少し緩やかに、お金の使い方をどうするのかという問題はありますけれども、全体的に保育行政の中で、無認可、認可だというふうに分けてやるのではなくて、全体を見ていただきたいなというふうに思いますので、ぜひこの辺はよろしくお願いをしたいというふうに思っております。
時間もありませんので、次に行きます。
次は、幼稚園と保育所の問題です。
これは前から幼稚園とか保育所の問題というのはともすれば一元化みたいな話になっちゃうんですけれども、それはそれとして、非常に幼稚園というのは本来は幼児の教育機能を標榜していたわけですけれども、だんだんに三歳児がふえてきて、あるいはまた今度の資料を見ますと、私立幼稚園の約半分は預かり保育をやっている。つまり、四時間以上に延長して保育をしているというふうに、教育の場だけではない保育機能も期待されるようになってきました。
また、保育所におきましても四歳から六歳の子供たち二六%が入っている。そしてまた、そういう子供たちがじゃどうしているかというと、幼稚園教育要領に準じて教育をしていると、こういうふうに言っているわけでございまして、かなり機能としては近くなってきているわけでございますね。
そのあり方についても、地方分権推進委員会の第一次勧告もあって、ことしは特に文部大臣の教育改革プログラムにおきましても指摘されて厚生、文部両省で検討しているというふうに伺っているわけでございますけれども、その辺の話を聞くと、施設を一緒に共用しょうやみたいな話がどうも進んでいるようでございます。
私は、これから二十一世紀に向かって、今後我が国の乳幼児の保育あるいは学齢前の幼児教育をどのような形でするのか。あるいは、公費助成の仕方、これも幼稚園、保育所違います、この仕方だとか、あるいは保護者の負担の仕方とか、こういったことも含めて、もう少し国民にわかりやすい形で議論を進めていただけないだろうかということを心から思うわけでございまして、ぜひこれは厚生大臣、文部大臣に一言ずつ御意見をちょうだいしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114269X01019971119/192
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193・小泉純一郎
○国務大臣(小泉純一郎君) 保育所と幼稚園、それぞれ役割が違うんですが、最近では同じお子さんを預かるということで共通している面も出ているんじゃないかということから、お互い文部省とよく連携して、補い合うような形で何か改善できる点はないかということで今まで検討してまいりました。
この保育所と幼稚園のあり方については、昨年十二月の地方分権推進委員会勧告や、ことし一月の教育改革プログラムに沿って、各地域の実情に応じ、双方の連携強化及び施設の総合化を図る方向で厚生省と文部省で共同して鋭意検討を行っておりますが、地域の実情に応じた施設の共用化について弾力的な運営が図られるよう、本年度中に具体的な方針を取りまとめたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114269X01019971119/193
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194・町村信孝
○国務大臣(町村信孝君) 委員御指摘のとおり、確かにこちらは教育施設、こちらは言うならば福祉だと。それから年齢も、こちらはゼロ歳児から、こちらは三歳児からというようなことで、違いはあるといえばあるんですが、今まさに委員御指摘のとおりに、実際やっていることは、幼稚園が預かり保育をやったり、あるいは保育所で教育機能を強化したりということで、非常に似たようなものに私はなってきていると思うんです。
それにもかかわらず、公的負担が違ったり保護者の負担が違ったりというので、保護者の立場から見るとどうも釈然としないという声が実際多いと私も受けとめております。しかし、長い歴史があるものですから、一遍にがちゃんと幼保園というような名前をつけるわけにもまいらぬのでしょう。
そんなこともありまして、本年は、今、厚生大臣お答えになられたとおりに、まず施設の共用化というところから議論を始めているわけであります。今年度中に答えが出ましたならば、私自身まだ小泉大臣と詰めた話をしているわけじゃございませんが、これは言うならば第一段階の作業かなと思っておりまして、さらに第二段階、第三段階という作業を進めていってはどうだろうかと、私は文部大臣の立場からはそのように考えております。
いずれにしても、子供を持つ、幼児を持つ親の立場から見て納得がいくような姿で作業を進めていくべきではなかろうか、このように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114269X01019971119/194
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195・清水嘉与子
○清水嘉与子君 ぜひ、よろしくお願いを申し上げたいと思います。
今具体的に検討が始まって、せめて施設の共用をやろうかというようなことが出てきたわけでございます。市町村によっては同じ隣り合わせになって、こっちから入れば幼稚園、こっちから入れば保育所というような形で中の施設は一緒に使う。こっちへ出ちゃいけない、こっちから入ったらこっちへ出るというようなことでやっているところもあります。それから三歳までは保育所、そして四歳からは幼稚園に行くというふうにやっているところもあるように伺っております。
むしろ、市町村の方がずっと知恵を出していろいろやっておりますので、そこは余り足を引っ張らないで自由にさせていただきたいということをお願いしたいし、また、それによってお母さんたちの負担が余り大きくなっちゃうといけないんですね。両方入らなきゃいけない、両方お金を取るなんということではなくて、ぜひその辺のこともよろしくお願いをしたいと思います。
それから、これはもう余り問題ないのかもわかりませんけれども、幼稚園は幼稚園の先生がいるわけですね。保育所には保育所の保母さんがいる。非常に教育課程も似通ってきまして、やっている中身もそんなわけですから、これはかなり垣根を低くしてもいいんじゃないかなというふうに思いますけれども、設置法がそれぞれ違いますから、幼稚園の先生、保母さんと分かれていますね。ですけれども、その辺もまたこれからの協議の中で検討していただきまして、できるだけ垣根を低く、この資格がこっちでも使えるような形でぜひよろしく、これは希望でございますが、お願いをしておきたいと思います。
それから、労働大臣にお願いしたいんですが、労働省でもこの保育の問題に結構かかわってやっていらっしゃるわけですね。事業所内保育所ということでいろいろやっていらっしゃるわけですが、これはこれからどんどん進めていかれるおつもりなのかどうかということをちょっと伺いたいのです。
実態から伺うと、かなり大きな企業が立派に保育所をつくっているというふうに伺ってはおりますけれども、これは千差万別じゃないかと実は思うんですね。大きいところはもう立派に保育所の設置基準を十分満たしているような保育をやっているというふうにも伺いますけれども、私が前にやった病院の看護婦の保育所なんというのは、中には託児施設のような、ただお部屋を用意しているようなところも、それも保育所として認めざるを得ないことでございまして、全く事故がなければ本当にいいなという感じもしないこともなかったようなところもございます。
そういう意味では、子供の保育という点から考えて、ラッシュの時間にお母さんと一緒に、大体お母さんと一緒ですね、お父さんと一緒じゃなく大概お母さんと一緒に行くわけでしょうけれども、そういうところに連れていくのが本当にいいのか。やっぱり地域の中で子育てをするというようなことも考えていかなきゃいけないような気もしますものですから、事業所内の保育所というものについてどんなふうにお考えになりますか。私は、きちんとチェックもしていただきたいなというふうに思っているわけでございますけれども、もし何か御意見ございましたらちょうだいしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114269X01019971119/195
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196・太田芳枝
○政府委員(太田芳枝君) お答えいたします。
事業所内託児施設につきましては、今、先生御心配の設置の基準でございますけれども、私どもの設置の助成対象といたしております施設の基準につきましては、必要な面積が確保されているということとか、それから保母さんは子供の年齢と人数に応じて決められた一定の人数以上配置することなどを基準にしておりまして、これは厚生省がやっておられます認可保育所の基準と現在ほぼ同じものをやらせていただいております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114269X01019971119/196
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197・清水嘉与子
○清水嘉与子君 それでは、最後でございますけれども、労働大臣には、女性が本当に働き続けられるように育児休業制度をもっと充実するとか、あるいはもう少しフレキシブルなフレックスタイムだとか、短時間勤務だとか柔軟な働きができるような、こういった考え方を企業にもっと取り入れていただくようなこともぜひこれから奨励していただきたい。つまり、働き続けたい女性はいっぱいいるんですね。一回やめてしまうとまた帰れないという実態がございますので、ぜひその辺もこれからよろしくお願いをしたいということ、これはお願いでございます。
最後でございますが、国民生活白書でもあるいは人口問題審議会の報告の中でも一様に指摘しております問題が、さっき一番先に厚生大臣がおっしゃいました固定的な男女の役割分業、あるいは女性に不利になっている長期間雇用だとか年功序列、こういった日本的ないわゆる慣行を破っていかなきゃいけないんじゃないか、つまり人々の意識改革だと。これは男性だけじゃありません、女性も含めて意識改革しなきゃいけないというようなことがどこにでも書いてあるんですね。これは確かにそうだというふうに思うんです。しかし、どうやって実際にそれを普及させていくのか。
こういう資料を持ってきた経企庁の方にも、あなた、じゃ、そういう生活できますか、できませんという話でございまして、恐らく公務員はなかなか早く家庭に帰って子育てをするなんということもできないんじゃないかと思いますけれども、これから労働時間の短縮ということも実際に行われつつあります。
今、非常に景気が悪くて大変だということが盛んに言われているわけでございますけれども、仕事がない、超過勤務がない。だったら、ぜひ子供のところに帰っていただきたい、ぜひお父さんを家庭に帰してほしい。やっぱりこういうことをもうちょっとしていきませんと、本当に両親が子育てをして、家庭でも安心して団らんを迎えるというようなことに日本はならなくなっちゃうんじゃないかということを心配するわけでございます。
そういうわけで、こういった考え方をぜひ全大臣には支持していただきたいわけでございますけれども、御自分の省も含めて、ぜひ固定的な男女の役割分業を変える、あるいは日本的な雇用慣行の見直しをするというようなことについての御感想などをちょうだいできたら大変ありがたいと思います。
まず、厚生大臣からよろしくお願いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114269X01019971119/197
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198・小泉純一郎
○国務大臣(小泉純一郎君) 現在の雇用慣行を変えるということと、お互いがゆとりある生活、子育てについてどういう意識を持っているかというのは、一人ではなかなかできません。男は仕事、女の仕事は家事、育児なんというのはもう何十年も前のことでありまして、今は男も、家事も育児も仕事も分かち合ってやろうという時代になってきたと思います。
そういう中で、子育てというのは親が子供を遊ばせるんじゃなくて、実際は子供に親が遊んでもらっているという場面も随分あるんですね。人間の成長に、大人の成長にも大変大きな影響を与えていると思います。
それを社会の慣行なり、企業が、男でも子供と遊ぶのが大事だ、女性と一緒に仕事なり家事なり育児を分かち合うのは当然だと。休むのが悪いんじゃなくて、むしろ休日は家族一緒に過ごした方が当然である。夜の時間も、女性は家庭で、男は外で飲んだり遊んだりしている、あるいは仕事をしているということから、だんだん最近は変わってきていますね。
社会全体で、お互い男も女も同じ、本質的には同じなんだと。仕事の喜びもあるし、家事、育児の喜びも、男も女もそれぞれ持っているはずだという意識を全体で盛り上げていくにはどうしたらいいか。どこまでそういう点を国なり役所ができるのか。また、企業なりが、男は仕事なんだということじゃなくて、むしろ自分の家庭を大事にする、自分の時間を大事にするということを上司なり同僚が尊重するかという意識の観念もあると思います。そういう点についていろいろな場で論議することも大事だと思います。
慣行ですから、長年根づいたものでありますから、これを変えるのは大変だと思いますけれども、社会全体でそういう今の新しい時代における男女共同参画社会について理解のある態度をそれぞれが持つということが大事ではないかと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114269X01019971119/198
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199・伊吹文明
○国務大臣(伊吹文明君) 大きな歴史の流れの中での現在ということを考えてみますと、女性が社会に出られていろいろな価値観に触れられて、人間的に大きくなられる権利を持たれるということは、女性にとっても、また女性のパートナーである男性にとっても、私はすばらしいことだと思います。
ただ、我々男性がどんなに背伸びをしてもできない女性の一つの特性というのは、子供を産むということです。子供を産み育てるという価値観と、社会に出て人間的に大きくなる価値観というものがぶつかり合うところに、私は少子社会というものがあると思うんです。
しかし、委員が今おっしゃったように、子育て、それからこれは伝統的に女性がやるのが当然だと思っていた日本の社会だと思いますが、逆にお年を召した方の介護、こういうことを女性だけに押しつけずに、みんなで、男性もともに、今、厚生大臣からのお話もあったように分担をするということによって、女性の方も子供を産んでも社会にもう一度参加できるんだという労働法規だとかあるいは雇用慣行だとか、こういうことを改めていくと、私は少子化社会というのを克服しながら女性の方もまた生き生きと社会で活躍できると思うんです。
そういうことからしますと、どうもあの先生はしつけをしてくれないから悪い先生だなんというような評価がありますが、私はしつけはやっぱり家庭でやるべきことだと思いますので、家庭で男性と女性ができるだけ時間がとれるように、具体的に言えば、育児休業制度というものをすべての企業に義務づけたということは御存じのとおりでございますし、介護の法案がいずれ本院のお認めをいただければ、私は雇用保険の分野で介護休業の制度というものもつくりたいと思っておりますので、家庭の価値をもう一度しっかりと再確認する中で女性の方がどんどん活躍していただけるように、私も意識改革の一端を担いだいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114269X01019971119/199
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200・町村信孝
○国務大臣(町村信孝君) 固定的な父親、母親、男女の役割分担ということを打ち破るのはなかなか難しいことでありますが、しかし私は急速に変わっているのではないだろうかなと。もう我が家なんかは相当変わっていると実は自負しているわけでございます。
ただ、日本の場合、ある民間団体の調査によりますと、父親が平日に子供と一緒に過ごす時間というのが諸外国と比べるとかなり少ないという問題があります。また、子育ての役割分担という意味でも非常に存在感が希薄であるといったような指摘がある。また、中教審もそのような指摘をしております。
したがいまして、子供を育てるというのはややもすると母親の仕事というのは基本的に間違っておりまして、父親、母親一緒にやらなければならない大切な仕事だ、こう私も思っております。
そのために、今、労働大臣、厚生大臣、それぞれのお立場で言われたことに加えて、私も先般来から日経連でありますとか、あるいはその他の経済団体の方々とも会ってお願いをしているんですが、その中に必ず、とにかく残業を減らしてくださいというお願い、あるいは単身赴任をできるだけ減らしてくださいといったようなこと、あるいは育児休業の期間を超えてもできるだけ休暇をとれるようにしてください、そして父親が子供たちと触れ合う時間をできるだけ長くとってもらうことによって、もしかしたらばそのことが家庭のしつけ、あるいは登校拒否、こうしたことの改善の一助になればなと、そんなことを期待しながら強くお願いをしたりしております。
文部大臣の役割としても、先生が御指摘の方向で最大限の努力をしてまいりたい、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114269X01019971119/200
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201・清水嘉与子
○清水嘉与子君 ありがとうございました。
大蔵大臣、大蔵大臣には特に通告をしていないんですけれども、今この男性、女性の役割分担の話、それから子育ての話をしてまいりました。
先日、優秀な大蔵省の役人の方に伺いましたら、まだ子供がいないと。今子供をつくったら奥さんが仕事をやめなきゃいけない、とても今つくれないということをおっしゃいました。こういう大変優秀な人たちが子供をつくれないようじゃ困ると思っているんです。こういった子育ての事業にもぜひお力をちょうだいしたいと思います。例えば大蔵省は公務員宿舎なんか持っていらっしゃるわけですから、そういうところに保育所を必ず用意するとか、そんなようなこともぜひやっていただけたらいかがかなと思うのです。
ちょっと申しわけないんですが、今の固定的な男性の役割を見直す、あるいは女性がもっと社会進出しやすい、そして男性も女性もともに喜んで子育てができるような仕組みをどうやってやるのか、何かコメントがあったら愛妻家の大蔵大臣、三百コメントをちょうだいしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114269X01019971119/201
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202・三塚博
○国務大臣(三塚博君) 清水委員の人間としてのいつも深い愛情に支えられた物事の分析と行動に敬意を表しているところでありますが、御指摘ありましたとおり、少子社会は深刻な問題になっていくことは間違いありません。
そういう中で、国家公務員の皆さん、私の所管する大蔵の皆さん、ただいまのお話を承りつつ、やはり少子化時代に国家公務員がもって範を示す。そして、保育所が完備し、お産をいたしました後どこかの国のように男性が成りかわってやるという諸制度などもございます。そういう社会保障関係、福祉関係の先進国に向けてよき点は取り入れていかなければなりません。これは日本の前途を切り開いていく大事なポイントであるという意味で、まさにこれこそ夫婦は平等で、昨今は奥さんの方がきちっと男性をリードする世の中で、大変いいことだと思っておりますが、そういう慣行、よき伝統がつくられていくようにしなければいけないのかなと。
以上、要領を得ませんようでありますが、コメントにかえさせていただきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114269X01019971119/202
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203・清水嘉与子
○清水嘉与子君 ありがとうございました。
終わります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114269X01019971119/203
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204・遠藤要
○委員長(遠藤要君) 明日は午前十時に開会することとし、本日はこれにて散会いたします。
午後四時五十八分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114269X01019971119/204
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