1. 会議録本文
本文のテキストを表示します。発言の目次から移動することもできます。
-
000・会議録情報
平成九年十一月二十七日(木曜日)
午前十時開会
—————————————
委員の異動
十一月二十一日
辞任 補欠選任
野村 五男君 青木 幹雄君
牛嶋 正君 水島 裕君
十一月二十五日
辞任 補欠選任
青木 幹雄君 野村 五男君
水島 裕君 牛嶋 正君
十一月二十六日
辞任 補欠選任
直嶋 正行君 益田 洋介君
十一月二十七日
辞任 補欠選任
片山虎之助君 保坂 三蔵君
西田 吉宏君 田村 公平君
益田 洋介君 平田 健二君
上山 和人君 梶原 敬義君
—————————————
出席者は左のとおり。
委員長 石川 弘君
理 事
河本 英典君
松浦 孝治君
牛嶋 正君
峰崎 直樹君
上山 和人君
梶原 敬義君
委 員
大河原太一郎君
金田 勝年君
清水 達雄君
田村 公平君
楢崎 泰昌君
野村 五男君
保坂 三蔵君
海野 義孝君
白浜 一良君
平田 健二君
広中和歌子君
久保 亘君
志苫 裕君
笠井 亮君
山口 哲夫君
国務大臣
大 蔵 大 臣 三塚 博君
政府委員
大蔵政務次官 塩崎 恭久君
大蔵大臣官房金
融検査部長 原口 恒和君
大蔵大臣官房総
務審議官 溝口善兵衛君
大蔵省主計局次
長 寺澤 辰麿君
大蔵省主税局長 薄井 信明君
大蔵省証券局長 長野 厖士君
大蔵省銀行局長 山口 公生君
証券取引等監視
委員会事務局長 堀田 隆夫君
国税庁課税部長 乾 文男君
事務局側
常任委員会専門
員 小林 正二君
説明員
自治省行政局振
興課長 小室 裕一君
参考人
日本銀行副総裁 福井 俊彦君
—————————————
本日の会議に付した案件
○理事の辞任及び補欠選任の件
○参考人の出席要求に関する件
○内国税の適正な課税の確保を図るための国外送
金等に係る調書の提出等に関する法律案(内閣
提出、衆議院送付)
○租税特別措置法の一部を改正する法律案(内閣
提出、衆議院送付)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114629X00419971127/0
-
001・石川弘
○委員長(石川弘君) ただいまから大蔵委員会を開会いたします。
まず、委員の異動について御報告いたします。
昨日、直嶋正行君が委員を辞任され、その補欠として益田洋介君が選任されました。
また、本日、片山虎之助君及び西田吉宏君が委員を辞任され、その補欠として保坂三蔵君及び田村公平君が選任されました。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114629X00419971127/1
-
002・石川弘
○委員長(石川弘君) 理事の辞任についてお諮りいたします。
楢崎君から、文書をもって、都合により理事を辞任したい旨の申し出がございました。これを許可することに御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114629X00419971127/2
-
003・石川弘
○委員長(石川弘君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
理事の補欠選任についてお諮りいたします。
理事の辞任及び委員の異動に伴い現在理事が二名欠員となっておりますので、その補欠選任を行いたいと存じます。
理事の選任につきましては、先例により、委員長の指名に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114629X00419971127/3
-
004・石川弘
○委員長(石川弘君) 御異議ないと認めます。
それでは、理事に松浦孝治君及び牛嶋正君を指名いたします。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114629X00419971127/4
-
005・石川弘
○委員長(石川弘君) 次に、参考人の出席要求に関する件についてお諮りいたします。
内国税の適正な課税の確保を図るための国外送金等に係る調書の提出等に関する法律案及び租税特別措置法の一部を改正する法律案の審査のため、本日、委員会の参考人として日本銀行副総裁福井俊彦君の出席を求めたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114629X00419971127/5
-
006・石川弘
○委員長(石川弘君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114629X00419971127/6
-
007・石川弘
○委員長(石川弘君) 内国税の適正な課税の確保を図るための国外送金等に係る調書の提出等に関する法律案及び租税特別措置法の一部を改正する法律案を一括して議題といたします。
両案に対する趣旨説明は既に聴取しておりますので、これより質疑に入ります。
質疑のある方は順次御発言願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114629X00419971127/7
-
008・金田勝年
○金田勝年君 自由民主党の金田勝年でございます。
きょうは、いわゆる国外送金等調書提出に係る法案といいますか、それと民間国外債の利子非課税措置に係ります本人確認制度、この二つの税制改正、これを審議いたしますに当たりまして幾つか最近関心のある点について御質問させていただきたい、こういうふうに思うわけでございます。
まず初めに、先週から今週にかけて、御承知のように、日本の金融証券市場、非常に大きな問題といいますか、都市銀行の一つであります拓銀、そして徳陽シティ銀行、四大証券の一角でございました歴史がある山一証券、そして三洋証券ということで、営業譲渡あるいは自主廃業といったような形で金融市場、証券市場を揺さぶるような事件が続いて起こってまいりました。そしてまた、きのうでございますか、徳陽シティもきのうでございましたが、安田信託銀行についてはスタンダード・アンド・プアーズの格付が引き下げられるというような事態が起こってまいりまして、預金者、投資家の不安感というものがここに来て非常に高まってきておる、こういう状況でございます。
昨日は、大蔵大臣、そして日銀総裁が談話という形で記者会見をされた。金融システムの安定への決意というものをその談話で発表されたという状況でございまして、国民に向けてのアピールをされたわけでございますけれども、一連の金融関連の問題についてまず初めに幾つか質問をさせていただきたい。そして、その後先ほどの二法案について御質問をしたい。限られた時間の中で御質問を申し上げるわけでございますから、私の視点といいますか、そういうことを初めに申し上げておきたいなと思うのであります。
去年の十一月に橋本総理の指示で金融システム改革、日本型ビッグバンというものが取り上げられております。フリー、フェア、グローバルという改革の三原則ということがいかに重要か、そして西暦二〇〇一年には日本の東京市場がニューヨーク、ロンドン並みの国際市場として信頼され、そしてまた力を持った市場になるべきである、国際金融市場に名実ともにならなければいけないということを目指す、それが二〇〇一年までに頑張ってやっていこうという日本型ビッグバンの内容であった。
そして、フリー、フェア、グローバルというこの三原則というものについては非常に重要なポイントとして述べられておるんですが、その中で私はフェアというところについて、この二つの法案も非常に重要な点になろうかと思いますし、同時に最近の金融証券市場でのさまざまな出来事についてもやはりフェア、透明で信頼できる金融資本市場にしなければいけない、そういう発想が一番重要なのではないかな、そういうふうに思うわけであります。
自己責任原則の確立のために十分な情報提供をしていかなければいけませんし、ルールも明確化していかなければいけない。ディスクロージャーも徹底して行い、そのディスクロージャーの制度も充実させていかなければいけないし、その適用もしっかりしていかなければいけない。それから、ルール違反に対する処分といったようなものも積極的に発動していかなければ、フェアというものに対する内外からの信頼というものは出てこないだろう、こういうふうに思うわけでございまして、そういう流れでいろいろと御質問をさせていただきたいな、こういうふうに思うわけであります。
そこで、まず初めにでありますが、四大証券の山一証券が十一月二十四日に自主廃業に向けて営業停止を行った、これは我が国の金融資本市場における大事件である、私はこのように思うのでございますが、同時に対外的にもやはり日本の証券市場への、あるいは日本の企業に対する信頼といいますか、そういうものが本当に存続できるだろうか、非常に重要な局面である、こういうふうに思うわけであります。
日本経済に与える影響ももちろん大きいわけでございまして、一方で三洋証券とか北拓銀行の場合は、私よく分析しているわけではありませんが、いろいろと新聞を見たり報道を見たりしますと、やっぱりバブル時代の経営判断のミスによるという要素があったんだろうと。徳陽シティもそういうふうに思われるのでございますが、それとはちょっと違って山一証券のケースは俗に飛ばしを行ったというふうなことが報道されていますし、それによって損失補てんをやったのではないかというふうに言う報道もありますし、違法取引の疑いはいろんな側面から出ておる。
そういった多額の簿外債務も含めた違法取引の疑いというものがあって、そしてまた一方で、その引き金になったのは二十一日のアメリカのムーディーズ・インベスターズ・サービスで投資不適格という烙印を押された、それから短期の資金調達が困難になった、事情がいろいろあるようでございますけれども、そういうふうな中で自主廃業という形になったのでございます。これは先ほどのフェアの原則というものから見て、二十五日、おとといの午後から監視委員会で調査中ということなんですけれども、やっぱりフェアの原則からいって非常に問題の多い事件ではないか、そういうふうに思うわけであります。
自主廃業という形になっておりますが、その実態が明らかになるにつれていろんな責任問題あるいはいろんなことが出てくると思いますが、まず山一証券のこのたびのそういった事件に関しまして、大蔵大臣の所見を伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114629X00419971127/8
-
009・長野厖士
○政府委員(長野厖士君) 山一証券の今般の事態に対しまして、他の証券・金融界におきます事柄との違う側面をただいま先生が御指摘いただきまして、そのとおりであろうと考えております。
もちろん、根っこといたしましては、こういった取引をするに至った背景に株式市場の下落という、バブルの崩壊という要素が、土地とは違って株式市場の低落というのが背景にあったというふうに私は認識いたしておりますけれども、その後の出てきたる問題というものはかなり異なった側面があると思います。それはまさに御指摘いただきました簿外債務の存在ということでございまして、これは投資対象としての企業のディスクロージャーの信頼性というものを著しく阻害した、そのことが日本の企業全体に対して諸外国から非常に厳しい目にさらされておるということは否めない事実であろうと存じます。
したがいまして、ここにいかなる問題がありいかなる法的に問われるべき事柄があるのかということを徹底して解明し、そういった事柄をきちんと解明する能力を日本の当局が持っておるということを示すということが今日国際的に大変重要な課題であろうと思っております。現在、大臣官房金融検査部と監視委員会によって実態解明に踏み出していただいております
他方で、この問題は、そういった山一証券の開示上の問題とともに、三洋証券と異なりますのは、国際的に非常に幅広く活動した四大証券の一つでございますから債権者の中には海外の方も大勢おられる。そのことが今度は山一自身の簿外の問題とは分かれて経営の存続性の問題ということになりまして国際的な金融市場を巻き込んだ大変危機的な状況がございまして、こちらの方につきましては日本銀行におきましていわゆる二十五条に基づく資金供給というような御決断もいただきながら、顧客資産、そして取引先の安定、これが損なわれますと大変に国際的な金融マーケットそのものの根幹を揺るがしかねないという判断を私ども持っておりましたので、そちらの方につきましても万全を期しておるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114629X00419971127/9
-
010・金田勝年
○金田勝年君 これからしっかり検査をするというお話しのように聞こえるんですが、やはり今のこういう事件の中身というのはいろんな形で報道にも出ておった、そしてそういう風評があった、そういう中で日銀はその考査において努力された、そしてまた証券取引等監視委員会あるいは金融検査部、いろいろございますが、そういう検査担当の体制挙げてやっている中での今日の出来事であるという点は非常に重要なポイントだと思うんですね。
そういう中で、個別にお聞きしていこうかどうか時間の関係もあるものですからあれなんですが、どうしてそのような検査で発見できなかったんだろうかという点でございます。
例えば、相手にうそをつかれたらどうしようもないんだという検査や考査であってはならない、そういうふうに思うわけで、こういう事件が起こるたびに市場の信頼というものが奈落の底に突き落とされるような形では、もうとてもじゃないけれども金融ビッグバンなんとは言っていられない、そういう状態であるわけであります。
私は、二十五日午後から監視委員会で調査を始めた、こういうふうに聞いておりますが、そういうふうなことに対してどのような方針で調査に臨もうとされているのか、今までの検査や調査とどこか変わってくるのか、そこのところをちょっとお教えいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114629X00419971127/10
-
011・堀田隆夫
○政府委員(堀田隆夫君) お尋ねでございますけれども、いわゆる飛ばし取引と申しますのは、企業が含み損を抱えている有価証券を決算期の異なる企業に直取引で転売をしていく、それを証券会社が仲介をするというものでございますけれども、これは通常簿外取引で行われているということでございまして、なかなか通常の検査あるいは考査等では把握しにくい面があるということでございます。
この飛ばしの問題については、先生お話しございましたように、いろいろな報道がございまして、ことしの六月にかなり具体的な報道がございましたものでございますから、私どもは山一証券に対しましてその過程で証券取引上の問題があったかどうか早急に社内調査を実施して報告するようにということで指示を出しまして、鋭意事実解明に努めてきたということでございます。
そうした経緯を踏まえまして、十一月十七日に山一証券の社長から、多額の簿外債務がある、さらに十一月二十四日に二千六百四十八億円の簿外債務が存在する、またその中にはいわゆる飛ばしの疑いのある取引が行われていたという報告があったということでございます。
二十五日から金融検査部と合同で検査に着手いたしましたけれども、これから私どもは簿外債務の発生の過程で証取関係の法令に違反する行為がないかどうかについて事実解明をしていきたいと思っております。
もう少し具体的に申し上げますと、その仲介をする際の証券会社の行為が証取法上の禁止行為になっております特別の利益を提供することを約して勧誘する行為に該当するのかどうかという点、それからさらには、これはディスクロージャーの問題になりますけれども、簿外債務につきまして臨時報告書が提出されたわけでありますけれども、過去の有価証券報告書の提出が証取法上に違反する有価証券報告書の虚偽記載に当たるのかどうかという点についても事実関係の確認、解明を行っていきたいと思っております。厳正に検査をいたし、対応していきたいと思っているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114629X00419971127/11
-
012・金田勝年
○金田勝年君 簿外負債というか、今回は飛ばしと言われておりますけれども、これが表面化しますと、一般投資家はもちろん、機関投資家の方たち、それから外国の人たちからもやっぱりそういうことをやっていたのか、あるいはまだあるのではないかなとか、ほかの証券会社でもやっておるのではないかとか、いろんな思いが出てくる。そういう不信感が日本市場や大事な証券会社に出てきたのではかなわないわけでありまして、まず新聞報道に即して質問させていただくわけでございます。
富士銀行は山一証券の簿外債務が十月時点で、十月六日という報道でございましたか、存在していたことを知っていたという報道がある。そして、大蔵省は十一月十七日時点で報告を受けたと。それまではそれぞれ知らなかったんだろうか、あるいは、十一月十七日に報告された後に二十四日に発表を行うわけでございますが、一週間もなぜかかるんだろうか、もっと早く公表すべきであったのではないかというふうに考えられるんですね。そしてまた、富士銀行につきましては十月時点で知っていたということなんですが、筆頭株主の富士銀行がこのようなことを知っていて、知った後どうしたんだろうか、非常に大きな問題がそこにあると思われるわけですね。
こういうふうなことはないとは思いますが、仮に飛ばしという事実があるのであれば、それはある企業の粉飾決算にもつながりかねない。そしてまた、それがどういう実態であったか、いろんな問題に波及していく可能性がある。だから、そういうことも含めると、何といいますか、今回の山一関係の問題というのは非常に大事な、そして見逃すことのできない、そういう事件であると。
そこで、大蔵省にお聞きしますが、実はきょう予算委員会の参考人質疑で富士銀行、そして山一証券の方がお見えになっておると聞きましたが、こちらは大蔵省の方がお見えになっておるので大蔵省の方にお聞きすることに限られるわけでございますが、十一月十七日時点で報告を受けておって、二十四日に発表を行った。もっと早く発表すべきではなかったか。と申しますのは、そのときの山一証券の株価を見ますとどんどん下がっていくわけです、そのプロセスの中で。詳しく株価は申し上げませんが、この市場の世界では常に信用売りで空売りをかけます。そして、空売りをかけた人間がこういうときには必ずもうかる。そういうことをどんどんやっていくプロセスの中で、なぜ一週間もかかるのかと、この点はもう本当にみんなが感ずるところだろうと思うんですね。もっと早く公表すべきではなかったかなと思いますが、いかがでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114629X00419971127/12
-
013・長野厖士
○政府委員(長野厖士君) 私が山一証券よりこの簿外債務について具体的な形で十七日に報告を受けました。監視委員会にも通報するようにという指示もいたしました。具体的に二十二日、こういった事柄は本来開示会社であります山一証券自身から公表すべき事柄でありまして、私はその報告書の提出を受ける立場でございますけれども、二十二日の記者会見で私の方から発表するという異例の運びをとらせていただきました。もちろん、十七日にあらあらの報告があった後、正確な対外的に発表できる事実関係の整理ということは求めておりまして、これは不正確な段階でただ巨額の飛ばしがあるということだけが発表されて、まあオーダーは千億台とかいうのを発表するにせよ、そのことによって市場はどうなるのか、不正確なままに言ってしまえばそれで済むということではありません。
先ほど申しましたように、この会社には多数の海外の債権者も含めて大勢の取引先がありますので、その瞬間に取りつけと申しますか、債務の履行を迫るような動きが出てきた場合に、支払い停止、債務不履行という事態が起こりましたら、一たん日本の大証券会社についてそういったことが起こりますと、それに対して何らの手だても講ぜられていないという段階での不正確な情報提供というのは世界の金融市場にとって大変危険であるという判断は私自身にございました。しかし、これはいつまでもおくらせていいものではない、それがどのくらいの許容範囲であろうかということは悩み抜きました。
アメリカにおきましても、大和銀行の簿外債務の事件がございました。ニューヨーク連銀がその事実を把握してから大和銀行に発表させるまでに八日間という日時、それは情報の正確性とその後投資家あるいは取引先がどのように債権債務を扱われるかということの認識が持てるような状況までそのくらいの日時であるということでございます。また、ヨーロッパの例で申しますと、これも日本が関連いたしますけれども、住友商事によります巨額の事件がございました。これもイギリスの当局が把握してからこの事実を公表するまで、やはり公表内容の正確性と市場への対応というもののある程度の準備をしてやっていることは事実であります。
そういったことを全部勘案いたしまして、早ければ早いほどよかったではないかという御指摘は私自身率直に受けとめさせていただきたいと思いますけれども、現実のすべての事柄を投資家の方々あるいは市場の混乱を防ぎながら事を取り運んでいくという中では、私はこの五日間というのは、申し上げていいのかどうかわかりませんけれども、全力を尽くしてできるだけ早くしたと申し上げさせていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114629X00419971127/13
-
014・金田勝年
○金田勝年君 信頼される市場をつくるためには、やはりディスクローズのあり方といいますか、そういうものが非常に重要だということを感ずるわけでございまして、その点をまずきっちりと受けとめていただいて、今回の富士銀行、そして大蔵省、そしてもちろん山一証券のディスクローズのあり方というものについて、きょうは時間の関係でこのぐらいになりますが、よく検討していただいて、そしてディスクロージャーに対する認識、問題のない形にきっちりと持っていっていただかなければいけないなというふうに思う次第であります。
そしてまた、大蔵省は山一の債務超過の可能性はないというふうに言っているんですけれども、この点についても果たしてそうなのかという疑問は、やはりしっかり検査していくプロセスの中で新たな簿外債務が見つかるという可能性が全くないのかどうか、そこら辺もしっかり検査をしていっていただいて、そしてまた見通しを持ってやっていただきたいな、こういうふうに思うわけであります。
日銀からも副総裁がお見えですが、金融検査の中で日銀の考査というものは何なのかというのはこれまでも大蔵委員会で私は何度も質問をさせていただいてまいりました。このたびもまた問題になったわけでございますので、あえて質問を申し上げませんが、やはり日銀の考査のあり方というものもきっちりとここで考えていっていただきたい、見直していっていただきたいというふうに思うわけであります。
そこで、山一証券の今回の問題は、今いろいろと出てまいりましたが、証券取引法上の問題、それから商法上の問題と数多くチェックしなければいけない問題があります。そういう意味で、限られた時間ではこの程度の質問になりますが、今後その検査の結果を踏まえていろいろ審議させていただきたいな、こういうふうに思っております。それだけではなくて、仮に飛ばしという実態があった場合には、それを要求したかどうか、その企業の罪というものも非常に重要なポイントだというふうに思いますし、その飛ばしに関係する企業がもしあるとすれば、その企業に対しては違法行為がなかったかどうか、きっちりとそれも調べていただかなければいけない。だから、そういうふうな意味で、今回の山一証券の問題というのは、やはりフリー、フェア、グローバルのフェアの非常に重要なかなめのポイントの話であるということを重ねて申し上げさせていただいて山一証券関係はこれで終わらせていただきたい、また次の機会にやらせていただきたいと思います。
次に、金融システムの関係で、今、安定化が重要だということを盛んに言われておりまして毎日の新聞の一面をにぎわしておって、何といいますか、未曾有の危機だと、こういうことでございます。抜本的な対策というものがどういうふうになるのか、そこら辺は今後の課題だと思うんですけれども、まず金融システムが崩壊して日本からほかの国の市場に金融不安をまた重ねて与える、あるいは我が国経済にとってももちろん大打撃になる、そういうことのないようにしていかなければいけないんですが、その点に関して幾つか聞かせていただきたいと思うわけであります。
北海道拓殖銀行の破綻の原因ということで個別金融機関の話になるのでございますが、リストラの徹底とか経営の健全化に向けた真剣な努力というものがなされていなかったという反省もあるようでございますが、やはりこういう徳陽シティ銀行も含めて個別の金融機関の破綻が相次ぐということは極めて深刻な事態だと思うんですね。
そこで、きのうでございますか、都市銀行など大手十九行の中間決算が発表になったんですけれども、そういう中では不良債権償却を行う結果十九行中十三行が経常赤字を計上する、そしてこれによってバブル経済の後遺症である不良債権の処理はほぼ終了だというふうな記述も報道の中にあったのでございますね。しかし、一方では地方銀行以下の中小金融機関では不良債権の処理というものは非常におくれているところが目立っている、こういうふうな状況にある。また、大手の都市銀の十九行、拓銀は除きますと十九行ですが、この中には体力の格差が鮮明になってきておる、こういう状況なんですけれども、この不良債権の状況というものを、大蔵省は全体として改善しているとこの前お答えいただいたんですが、個別にいろいろと見ていくとむしろ不良債権の状況というのは悪化しているのではないかと思いたくなるような節もあるんですけれども、その状況については、業態についてはどのように認識されているのか、教えていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114629X00419971127/14
-
015・山口公生
○政府委員(山口公生君) 最近、個別の銀行の破綻ということが生じておりますけれども、これはバブル経済崩壊後の不良債権の重荷ということが一つの原因であることも事実でございます。また、マーケットの厳しい選別というものの現象がインターバンク市場での資金のとり方を難しくしているという事情もございました。
それで、全体的な不良債権の問題についての認識のお尋ねでございますけれども、統一的な基準でもって不良債権を年々トレースしております。その結果、その統計は全体として見る限りにおいては改善の方向に向かっていることは事実でございます。ただ、全体としてよくなってきているということと、個別の金融機関がバブルの後遺症に押しつぶされるといいましょうか、乗り切れないというのが出てくるということはやや別の問題としてとらえる必要があるだろうと思っております。
したがって、ある意味では、先生の御指摘のように、業態別あるいは銀行別に少しずつ格差が出てきているということも事実でございます。しかし、破綻に至るという状況は相当な不良債権の重荷を自助努力では乗り切れなかったということでございますので、大多数の銀行におきましては今懸命なリストラと先ほど御指摘のありましたような赤字決算を組んでまで思い切って償却をしてマーケットの信用を得ようという努力をしておりますので、私どもとしては、一段のリストラの努力をして各金融機関がこの難局を乗り越え、新しい時代に備えて乗り出していってほしいというふうに思っているのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114629X00419971127/15
-
016・金田勝年
○金田勝年君 そういう状況だということですが、要するに金融システムが影響を受けると。今の状況を見ても、株価と円相場と債券といったトリプル安というものが生じておりますし、市場参加者とか投資家あるいは預金者といった方たちの不安感、不透明感は非常に増大しておる。それから、ジャパン・プレミアムも拡大しておる。そして、景気対策上非常に気がかりなんですが、貸し渋りも生じている。いろんな状況があわせて出てきておる。
そういう状況の中で、今後金融システムの安定性を確保するという意味でありとあらゆる選択肢を検討するというふうに言われておるんですけれども、何といいますか、対応策としてこれから不良債権の問題の解決と金融不安を取り除くという視点からは大蔵省は今後どのように対処していくつもりであるか、その点を教えていただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114629X00419971127/16
-
017・山口公生
○政府委員(山口公生君) 個別の金融機関の破綻が生じた場合に、私どもが最も重要だと思っておりますことは、まず預金者の保護をするということが第一でございます。第二に、システムを壊さない、不安定性をもたらさないということでございます。したがって、まず預金者の保護には万全を期しております。これは金融三法によってお認めいただいた機能を使っております。システムの維持につきましては、例えばインターバンク等の取引においても毀損しないような形をとらせていただいております。したがって、その面での信用収縮が起きないようにいたしております。
さらに、加えて申し上げますと、受け皿銀行を見出した形をつくりますと、健全な取引先がそのまま引き継ぐことができます。受け皿銀行ができませんと取引先はばらばらの状態になり、自分で銀行を新しく探さなきゃいけないという状況になります。したがって、私どもとしては、できれば受け皿銀行まで用意をして、それで健全な取引先までできる限りの保護をしたいというふうに思っているわけでございます。
そうした形で、個々の破綻の処理としましては、確かにその銀行は消滅してしまいますのでいろいろ社会的に御懸念を生み出すことは否定しませんけれども、システム全体あるいは預金者の動揺がないように万全を期しているところでございます。
さらに、もっと金融不安を起こさないように、あるいはもっときっちりと国民の皆様に御理解いただけるようにということで、大臣の方から改めてさらなる措置を検討しなさいと、あらゆる選択肢を念頭に点検し、検討を命じられておりますので懸命に努力してまいりたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114629X00419971127/17
-
018・金田勝年
○金田勝年君 そういう努力の方向、ありとあらゆる選択肢、これを真剣に精力的に検討していただきたいと思うんですが、日銀の方の対応としても金融システムの安定性確保のためにその役割というのは非常に重要だときのうも総裁が談話を発表していますけれども、その果たす役割について日銀がどのように認識をされているか。
それから、日銀特融の発動の条件なんですけれども、例えば資金の回収が確実な場合にのみ発動されるものなのか、あるいは債務超過のケースではどうなるんだろうかとか、あるいは債務超過となって日銀の回収ができなくなった場合はその後どういうふうになるんだろうかとか、そういったような点も含めてちょっと教えていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114629X00419971127/18
-
019・福井俊彦
○参考人(福井俊彦君) お答え申し上げます。
まず、信用秩序維持のための日本銀行の基本的な機能でございますが、御承知のとおり、日本銀行は日本の決済システムの中枢に位置しておりますことと、それからいわゆる最後の貸し手という機能を持っております。これらの機能を十分に発揮して信用秩序の維持に十分の効果を発揮していかなければならない、こういうふうに思っております。
信用秩序の維持に懸念が生ずることがないよう、事前的にはマーケットのプレーヤーの健全経営の確保、それから先ほど委員がおっしゃいましたフェアプレーを確保させる、こういった点が重要でございますので、そこにしっかり視点を据えて金融機関の動きをモニターしていくということがございますが、信用秩序維持のためには、マーケットに問題が生ずるリスクが生じた場合には、最後の貸し手機能を通じて必要に応じ適切な流動性供給を行いまして市場の安定を確保するということでございます。昨今の状況のもとで日本銀行は、マーケットに対しまして十分流動性の供給を行いながら、現下の秩序の維持に努めているところでございます。
なお、先ほど委員から御指摘いただきましたとおり、事前にプレーヤーの健全性を確保する、フェアプレーを確保するという観点からいきますと私どもの考査の機能が不十分ではないかという御指摘をいただきまして、今後とも考査の効率性向上、高度化に努力を重ねていきたいとお約束したいところでございます。
それから、日銀特融の件でございますけれども、委員既に御承知のとおり、日本銀行は金融機関の破綻処理の際に、いわゆるマーケット全体のリスクと申しますか、システミックリスクを引き起こすおそれがある場合、それから日本銀行がお金を出さなければ他に出し手がいない、つまり日銀の資金供給が不可欠である場合、それから関係当事者の責任が明確化されるということ、そして最後に日本銀行の財務の健全性確保、それら四点をしっかり確認しながら信用秩序維持のためにお金を出していくということでございます。
時として多額にこの融資が上ることがございますけれども、最終的に日本銀行がロスの穴埋めをすることによって日本銀行貸し出しが回収できなくなるというふうなことがないように十分フレームワークを整備しながらお金を出していくということでございます。
先ほど御指摘のとおり、最終的に債務超過でなければ日本銀行貸し出しは必ず返ってくるということでございますし、債務超過であっても例えば預金保険機構の発動によって最終的なロスがそこに吸収されるということでございましたら、そういうフレームワークが用意されている場合には日本銀行貸し出しは最終的には返ってくるということでございます。
そういったことも含め、いろいろな応用動作をきかせながら、基本的には今申し上げましたような考え方で今後とも対処していくということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114629X00419971127/19
-
020・金田勝年
○金田勝年君 この問題の最後に大蔵大臣からぜひその決意をお聞かせいただきたいと思います。
今まで見てまいりましたように、預金者保護とか金融システムの安定化とか、あるいは山一に見られるような飛ばしや総会屋事件といったような明るみに出た不透明な、非常に不安を与える経営というものに対しては改善をすべく検査、そういうものもきちっとする、早急に取り組むべき課題というものが非常に多いと思うわけでございます。
そういう中で、やはりこういうときには私ども政治家としてのリーダーシップを持って、ぜひ決意を持って安心できる、そしてフェアな日本の金融証券市場、資本市場をつくっていくということが非常に重要だと思いますので、その決意をお聞かせいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114629X00419971127/20
-
021・三塚博
○国務大臣(三塚博君) 今日の事態の中で一番大事なことは、主務大臣として当然のことでございますが、預金者の皆さん、そして投資者の皆さん、保険契約者の皆さん、この国民各位は信頼をして投資をし、預貯金をし、契約をいたしておるという原点を大事にしてまいりますことが金融制度の維持安定の基本であります。このことに全力を尽くして対応してまいりました。これからも日銀と協調を保ちながら、一抹の不安もありませんように万全の体制をしいてまいることといたしております。
金融は産業の血液と言われます。同時に、コール市場、インターバンクの問題もあります。同時に、基本的にはいついかなるとき、またいかなる事態にも対処をしていかなければなりません。あらゆる手だてを講じてこれに対応することによってシステムが維持され安定されますところから、今後の展望、展開が不安感の解消、そして不透明感の是正、こういうことになり得ますので万全の注意力と万全のこれに対する枠組み、構えをしっかりとさせていかなければなりません。そういうことで安定のための、安心のための施策を、何ができるか、やらなければならないかということで点検をしっかりといたしながら、新しい枠組み、政策をここに決めていかなければならないと、こう決意をし事務方に強く指示をいたし、早急にそのことの結論を出せるようにということであります。
私自身もこのことについて決意を強く持ちまして、国民各位の生活を守る、日本の経済国家としての最大の機能の金融システムの安定のために全力を尽くしてまいるということでありますので、参議院大蔵委員会の諸先生方におかれましては格段の御鞭撻、御支援賜りますようにお願いを申し上げる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114629X00419971127/21
-
022・金田勝年
○金田勝年君 時間の関係もありますので二つの法案の質問に移らせていただきたいと思います。
国外送金等調書提出法案と民間国外債に係る本人確認制度の法案でございますが、先ほど申し上げてまいりましたように、思い起こしますと外為法の改正、先般の国会でやったわけでございまして来年の四月から施行になるわけですが、外為法の改正が日本型ビッグバンのフロントランナーだと。この改正外為法によりまして我が国の金融資本市場が一層活発化するんだと、こういうことでございますが、どの程度内外の資本の流出入が活発化するんだろうか、あるいはこれによって国民生活に具体的にどのような影響を与えるんだろうかという点について簡単で結構ですからお答え願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114629X00419971127/22
-
023・溝口善兵衛
○政府委員(溝口善兵衛君) 外為法の改正は、内外の資金の移動に際しましてのボーダーをなくすということでございまして、例といたしましてはイギリスの例があるわけでございますが、イギリスの例などを見ますと、流入、流出とも数倍に増加しております。
日本におきましても、ビッグバンが達成されますと、外為法の改正がなされますと外から入ってくる資金も多くなりますし、日本から海外に投資、預金をする量も多くなる。定量的にはなかなか予測は難しゅうございますけれども、そういうことであろうと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114629X00419971127/23
-
024・金田勝年
○金田勝年君 そういうことで資金移動が活発化・多様化してくる、こういうことになるわけでございます。
これが国境を越えるということになるわけですが、市場原理が働く国際的で自由な市場にする、そしてまた、繰り返しになりますが、フリー、フェア、グローバルの中の公正な、フェアな市場づくり、これはルールにのっとった市場づくりということが非常に重要になってくるわけでございまして、これをどういうふうにかみ合わせるか、調和させるかということが非常に重要だと。利用者にとって魅力がある、あるいは自由で公正な市場であるということでございます。
そういう中で、税制の面から考えました場合には、租税の回避行為といいますか、こういうものをきちっと把握して防止を確保していくということもまた一方で非常に重要なわけですね。しかし、その適正な課税が確保されるという担保は大事なんですけれども、逆にそれをやり過ぎてしまうとまた自由化の効果というものはどこへ行ったんだと。そしてまた、いろんな手続に係るコストというものも出てくる。したがって、せっかくのビッグバンの効果がなくなるのではないかという心配も一方ではある。ですから、税制も国際的に見て整合性がとれているかどうかという観点も必要となってくると思うわけでございます。
そういう中で、この改正外為法を踏まえて、来年の四月から、同じ施行時期でこの国外送金等調書提出制度と民間国外債に係る本人確認制度が設けられる、これは調和という意味では非常に重要なんですけれども、これらが自由化の方向と適正課税の確保のバランスといいますか、そういう観点から、この二つの法案に共通する質問といたしまして、どのようにお考えか、そしてまたこれらの制度を導入することによって自由化を阻害するということにもならない、そして調和のとれた適正課税の確保ということもこれはできるんだよというところをきっちりお答えいただきたいなと、こういうふうに思うわけですが、いかがでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114629X00419971127/24
-
025・薄井信明
○政府委員(薄井信明君) この春に外為法の御審議を本委員会でも賜りましたが、その際に附帯決議におきまして「課税回避を防止するための海外送金等の報告制度や民間国外債に係る本人確認制度の整備に努めること。」ということをいただいたわけでございます。
私ども、春の時点で問題意識は持っておりましたが、どのような実態になっていくのか見きわめがつかない状況の中でこの夏に、附帯決議に基づきまして、今、金田委員御指摘のような両面から検討をさせていただきました。
両面と申し上げますのは、一つは為替の自由化ということですから、これは我が国にとって進むべき方向であると。一方で、そのことは脱税の自由を保障するものではなくて、フェアな中でお金が海外との間で自由に動いていく、これを目指さなければならないということになります。そうなりますと、その両方の目的をいかに調和させるかということと、あわせて我が国の現在の税制あるいは資料情報制度というものを前提にそれを仕組まなければならないという制限の中で考えたわけでございます。
簡単に申し上げまして、一つはお金を海外に送金する、あるいは海外からお金を受け取る、これを今後のいろいろな税務関係の調査に際しての端緒とすべく報告をしていただくということを制度として仕組みました。
もう一つは、日本の企業が海外の資金を使うということはどうしても必要なことでございます。その場合に、海外の方々、非居住者あるいは外国法人が購入したときにその国内債の利子について課税をするということでありますと、現在の国際的なこの方面のルールからしますと買う人がいなくなってしまうということで、国際的なルールに従ってここは非課税にするということは維持しつつ、この制度を居住者とかあるいは国内法人が悪用することのないようにどうチェックするかということに腐心したわけでございます。その際も、税制の面からだけぎちぎちと制度を仕組んでしまいますと、自分の名前まで、住所までわかってしまうならもう買わないということになる、これも困るわけですので、非居住者か居住者かというところだけをチェックするシステムをどうつくるかということでこの夏にまとめ上げたものでございます。
そういう意味で、二つの要請をどうバランスするかということでまとめたものではございますが、来年四月からこれを的確に運用していきたいと思っております。ただ、やってみないとわからないという面もあります。この点はどのようになっていくかを常に私ども注視しながらフォローしてまいりたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114629X00419971127/25
-
026・金田勝年
○金田勝年君 こういう制度を入れますと、送金をしたりします国民とか金融機関とか市場関係者にとっては新たな事務負担を伴う、それはそのとおりでございます。
まず、国外送金等調書提出制度につきまして、いわゆる資料情報制度ということなんですが、二百万円を超える顧客の海外送金等についてのみ資料を提出すればよい、こういうことになるわけです。二百万円以下であれば顧客の海外送金等については税務当局に資料を出す必要はないということになるんですが、外国の類似の制度を見た場合には、アメリカであれば一万ドル、フランスであれば五万フラン、円に換算しますとおおむね百万円程度という基準なんですが、これとの比較では二百万円というのは甘いのではないかと指摘する方がおるわけですね。
また、かつては百万円という基準あるいは二百万円にするか、そういう議論もかなりされたと聞いておりますが、それによって、これはあってはいけないことなんですけれども、例えば二百万円ジャストの送金を何十回、何百回と行えば、それなりのコストはかかるんですけれども、税務当局に知られない形で多額の資金を海外に実際は移すことができる、こういうことになるわけでございます。
こういう基準というものが適正な課税の確保という観点から見た場合に妥当なものと言えるかどうか、あわせて、基準を二百万円としたことによって実際にどれくらいの割合の海外送金がカバーされるんだろうか、この辺について簡単で結構ですから教えてください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114629X00419971127/26
-
027・薄井信明
○政府委員(薄井信明君) 委員御指摘のように、確かに送金額を分割いたしますと、ある程度の金額を分けてやられますとこちらに情報が入ってこないという事態が生じます。ただ、一方でどんな小さなものでも報告しろということは納税者、国民あるいは金融機関にとって極めて煩わしく受忍しがたいことになる、そうしますと為替の自由化ということの実を失うことにもなりかねないということでどこかで線を引かなければならないということで検討いたしました。この春御議論いただいたとき、私は百万円というのが一つの線ではないかということも申し上げましたが、金融機関ともたび重なる議論をいたしまして、両者のバランスということを考えたときに二百万円という線に到達したということでございます。
この二百万円という金額基準によりまして件数ベースでは送金の三分の一ぐらいが多分カバーできるのではないかと思っております。件数でいいますとかなり大きな部分が少額の送金でございます。詳細は私ども承知しておりませんが、例えば息子さんが海外に留学している、そういう方々の送金というのが大多数でございまして、私ども最も関心を持っている大きな送金につきましてはこの二百万円でほとんどカバーできるのではないかと思っております。
この点も先ほど申し上げたことと同じですが、仮にそれがうまくいかないという実態が出てくるならば、それはそのときにまた考えさせていただきたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114629X00419971127/27
-
028・金田勝年
○金田勝年君 そういうことで、実際にこの制度を運用するということになりますと国税庁ということになるわけでございまして、国税庁の方にお聞きしたいんです。
国際的な取引、資金移動というのは、抜本的に自由化されることも相まって、ボリュームが飛躍的に増大するだろう、こういうふうに想定をされますし、その取引内容も非常に複雑化・多様化していくだろう、こういうふうに思われるわけであります。税務調査がますます難しく厳しくなっていくというふうに思われますので、やはり適正で公平な課税の確保という税務当局の使命を実現するためにこの制度を活用することになりますね。
そのときに、どのぐらいの調書の提出と、それから提出された調書を税務署、国税局の皆さんは実際に有効に活用されるものなのかどうか、その辺について簡単に教えてください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114629X00419971127/28
-
029・乾文男
○政府委員(乾文男君) この国外送金等の調書提出制度が創設されました場合に、提出枚数がどの程度になりますか正確な数字を見積もることは困難でございますけれども、現在の時点で数百万枚程度の枚数になるものというふうに見込んでおります。
このように提出されてまいりました調書でございますけれども、私ども国税当局におきましてはこれを納税者別に名寄せをしました上で新たに申告が必要と見込まれる方の把握あるいは調査対象の選定、そして実際の調査において有効に活用してまいりたいというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114629X00419971127/29
-
030・金田勝年
○金田勝年君 そういうときに税務当局も、複雑化・多様化してくる、あるいは飛躍的にボリュームが増大する国際的な取引、資金移動の資料がどんどん出てくるということになりますと、限られた組織で新たな職務というものがふえてくるわけでございます。しかも、それが国際的なものであったり、時代の要請でどんどん高度化、複雑化した仕事がふえてくるわけでございますが、そのときに新たな制度をうまく対応できるように機構とか定員面でも、今、行革で非常に厳しい状況ではありますが、やはり配慮をしていかなければいけないのではないか、当然に現在の人員、予算に加えて確保すべき定員・機構というものもあるのではないかなと思うわけでございます。
特に、国際化、高度情報化の流れというものがありますから、そういう意味では国際調査情報官といったような専門的な職務を行う専門官ポストといいますか、そういうポストを増設していくべきだと思うんですけれども、どのようにお考えですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114629X00419971127/30
-
031・乾文男
○政府委員(乾文男君) ただいま委員から今回の新資料情報制度の導入に伴う必要な定員・機構の確保、さらには本制度の背景となります経済社会の国際化、高度情報化の流れに対応するために国税における定員・機構の確保を図るべきではないかとの御指摘でございましたけれども、御指摘のように、税務行政を取り巻く環境は複雑化、そして不正手口の巧妙化等によりまして質量ともに厳しさが増大しているわけでございます。
こうした中におきまして、国税庁におきましては、経済取引の国際化、会計処理の情報化等への対応の必要性、緊要性につきまして各方面の御理解を得まして、委員今御指摘になりました国際化に対応するための国際調査情報官、情報化に対応するための機械化調査情報官などの専門官ポストの増設を含みます機構の整備や所要の定員の確保等に努めてきたところでございます。
今後一層国際化、情報化等が進展いたします中で、厳しい財政事情のもとではございますけれども、税務の困難性及び歳入官庁としての特殊性を強く訴えてまいりまして、所要の機構の整備、税務職員の増員等について関係各方面の御理解を得られますよう今後とも一層の努力をしてまいりたいというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114629X00419971127/31
-
032・金田勝年
○金田勝年君 定員・機構、そういう側面からもぜひひとつ頑張っていただきますようによろしくお願いします。
そして、次の民間国外債本人確認制度に関しまして、ポイントとなる点でございますが、やはり為替の自由化、ビッグバンの流れの中では国際的に税制も整合性のとれたものである必要があると。そうでないと日本の企業の資金調達コストが上昇して金融資本市場が空洞化しても困るということになるわけでありまして、適正課税のために一定の本人確認というのも必要なんですけれども、国際的な競争にさらされている企業というものがユーロ債市場で起債をして効率的に資金調達するという道を閉ざすようなことがあってはいけないと。道を確保することも重要ですから、その意味でやはり適正課税の確保というものと市場への悪影響の排除というものの間のバランスをとっていく必要があると。そのためには、市場慣行というものも十分配意していく必要がありますし、外国との整合性も考えていかなければいけない。
そういう見地から内外の市場関係者と意見交換を行ってきたというふうには聞いておりますけれども、どのように意見交換を行ってこられたか、それが十分であったか、あるいは発行体等の市場関係者のコスト軽減という観点から配慮を行ってこられたかどうか、そしてまたアメリカやイギリスの本人確認制度と比べて我が国の制度はバランスが保たれているのかどうか、この点につきまして簡単にお答えをお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114629X00419971127/32
-
033・薄井信明
○政府委員(薄井信明君) 今、三つの御質問がございました。
第一の御質問は、どのように関係者と意見交換を行ってきたかという御質問でございます。
民間国外債の利子非課税制度を的確に運用するためにどうするかということにつきましては、実は一昨年来、還流制限の撤廃という問題が民間国外債については出てまいりました。来年の四月からは完全にこれが自由化されるということが最初に出てまいりました。これが問題意識の発端でございまして、私どもそのときから海外の市場あるいは関係者とも連絡をとりつつどうしたらいいか考えておったわけですが、昨年のこの時期になりまして外為法の改正ということがさらに加わったと。そういうことで、本格的に議論を始めたのが去年の今ごろからです。その後、国内の発行体、金融機関、それから米国、英国を初めとする主要国の税当局、さらには市場参加者との間で議論を積み重ねてきたつもりでございます。せっかくつくってもユーロ市場で忌避されたのでは困るわけですので、受け入れてもらえ、かつ我々の望むことがどうできるかというバランスを図ってきたということでございます。
それから二つ目の御質問は、それではどういう工夫がされているかということでございます。
幾つか工夫したつもりですが、典型的なところを一、二申し上げますと、現在ユーロ市場では広く行われているわけですが、債券発行後四十日目から利子受領者が非居住者である旨の情報を通知するというシステムがあります。これに私どもも乗るといいますか、対応させたということで、非常にスムーズに動くようになったかと思います。また、利子受領者がすべて非居住者であるというケースにおきましては、本人確認の手続は実質的に一回限りで済むというような仕組みにさせていただいたわけでございます。
それから最後の御質問は、米国、英国など外国といろんな面においてバランスがとれているかという御質問でございました。
私ども基本的にはバランスをとつたつもりでございます。ただ、それぞれに国内制度が違いますので、その中で工夫をしたというふうに御理解賜りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114629X00419971127/33
-
034・金田勝年
○金田勝年君 そういうことで、外為法改正に伴う税二法案について質問させていただきましたけれども、今後とも金融システムの改革の進展にあわせて金融関係税制の改革ということを進めていくことも非常に重要だと、こういうふうに思うわけでございまして、最近の金融機関の不良債権問題の速やかな処理という課題、あるいはこれに関しまして金融システムを安定化していくという課題も抱えているわけでございますから、どうか企業の活力を発揮させて国民の景気の先行きに対する不安感とか不透明感を払拭する、その信頼を高めるためにはやはり景気対策も非常に重要だと、こういうふうに思うわけであります。金融関係税制の改革としては、有価証券取引税とかあるいは取引所税、こういったものをぜひ撤廃してもらいたいなと、こういうふうに思うわけでございます。
同時に、私どもも十二月に景気を考えた対策というものを考えてまとめていかなければいけないという立場にあるわけでございますが、そういう意味におきましても、税制の面でもこの年末にかけて景気あるいは今のような金融システムの安定、市場のフェア、そういうものについて関連するスタンスからこの景気対策にかかわるさまざまな税制の見直しをしていきたい、こういうふうに思うわけでございますが、それに関しまして大蔵大臣の御所見を伺って終わらせていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114629X00419971127/34
-
035・三塚博
○国務大臣(三塚博君) 万般の観点から御提言、御質問をちょうだいいたしました。
特に、税制等経済対策についての最後の御質問であります。
経済対策は既に第一次政府経済対策、総合的な観点から前倒し等を行うなどをいたし、ごらんをいただいていると思いますが、行われておるところであります。
税制は政府税調において真剣な論議の中で構築をされるものでございます。今日の国会の論議、ずっとお聞きをいたし、また答弁申し上げておりますが、政府税調の御審議が積極的にただいま行われておりますので、それを見守りつつ、大臣としても重要なものについては時に提言を申し上げて対応してまいるつもりであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114629X00419971127/35
-
036・金田勝年
○金田勝年君 終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114629X00419971127/36
-
037・牛嶋正
○牛嶋正君 平成会の牛嶋正でございます。
きょうは、今議題になっております二法案を中心に質問させていただきまますが、この法案と関連いたしまして納税者番号制度についても若干御質問させていただきたいと思います。また、今の金田委員の御質問と若干重複する部分がございますけれども、私の視点から質問させていただきたいと思っております。
既に外国為替制度の自由化がなされております欧米では、自由化によって脱税やマネーロンダリング等の不適正取引が助長されないような環境整備が進められてきたところでございます。したがって、我が国においても、外国為替管理制度の抜本的見直しによって、自由化がもたらす租税回避資金の海外への送金・隠匿、クロスボーダー取引を利用した租税回避行為等の諸問題をあらかじめ予想して、未然にこれらを防止する環境をつくることは当然のことだと思います。
先ほど金田委員の御質問に薄井主税局長は、制度としてはやってみなければわからない部分もあるんだというふうなお答えでしたけれども、私はやはり新しい制度をつくるときにはあらゆる状況を想定してきちっとした制度をつくっていかなければならないのではないかと思っております。我が国におきましてこういった制度をつくるに当たりましては、当然欧米諸国の制度を参考にして租税回避等の不公正な行為を防止する制度を整備することは当たり前のことだというふうに思われますが、実際にこの法案の準備に当たりまして、いずれの国の制度を主に検討され、そして参照されてきたのか、この点についてまずお尋ねをいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114629X00419971127/37
-
038・薄井信明
○政府委員(薄井信明君) 今回の制度を仕組む必要が生じたのはまさに外国為替が自由化になるということでございまして、これまではそうでないことによって税制上は把握が可能であった面が今後はそうではなくなるのではないかという危機感といいますか、そういう問題意識から着手したわけでございまして、そういう意味では国境を越えての資金移動が既に自由化されているアメリカを初めとする欧米の状況について私ども強い関心を持ったわけでございます。
ただ、それぞれの国、国内の税制が皆違います。先ほどちょっと御指摘もありましたが、納税者番号のある国、ない国、そういった面でも違います。したがって、どこかの国のものをそのまま持ってくるということは、これは無理なわけでございまして、そういう意味では日本独自のものが最終的にはでき上がったわけですが、御質問のどこのを勉強したかという意味では欧米各国の制度を見させていただきました。
特に、アメリカとフランスにおきましては、金融機関に対して国境を越える資金移動がありますと記録の保存だとかあるいは資料情報の提出を義務づける制度が完備されておりますので、こういった制度を参考にさせていただきました。
また、イギリスでは、海外送金に関する資料情報そのものはないんですが、税務当局に国内の銀行口座情報についてかなり幅広い情報を収集できる権限があります。そういった形によって資料情報の質、量というのはかなり整備されているのではないかと思います。
そういった各国の状況を勉強させてもらいました。
なお、ドイツはその点が、歴史的というんでしょうか、銀行機密保護という観点が強いようでして、このため私ども余り参考になるところはなかったというのが正直なところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114629X00419971127/38
-
039・牛嶋正
○牛嶋正君 私は、いただきました参考資料に基づきまして、主要国におけるクロスボーダーの資金移動等に関する資料情報報告制度を比較させていただきました。この我が国の制度とかなり大きく違う点が一つございます。それは、今挙げられました欧米の主要国の中にはまだ納税者番号制度を入れていないところもありますけれども、かなりの国が入れているわけでございます。
参考にされましたアメリカの場合ですと、既に社会保障番号制度がございます。それは税務にも適用されることになっておりますので、管理機関は社会保障庁でありますけれども、そのまま納税者番号制度とみなすことができると思います。
したがって、先ほども二百万という金額が問題になりましたけれども、国外送金する者の本人確認は、私は納税者番号制度がある場合には、その金額にかかわらず、割合きちっと把握できるのではないかというふうに思います。ですから、まだ納税者番号制度を持っていない我が国は金額的にもやはり一定の額で決めていかなきゃいけないというふうなことになっているんだと思うんですね。
そういたしますと、私はむしろ納税者番号制度を持っていないイギリスあるいはドイツ、フランス、そういったところの制度が非常に参考になるのかなというふうに思っておりますけれども、この本人確認について日本の今回の制度ではどのように特徴を持たせておられるのか、お尋ねいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114629X00419971127/39
-
040・薄井信明
○政府委員(薄井信明君) 委員御指摘のように、納税者番号制度を持っているアメリカのケースは二つの点ですぐれていると思います。一つは、本人確認ということが番号の活用によって自動的にといいますか、システムとしてできるということと、それから番号があれば機械的に名寄せができるという、この二点に特徴があろうかと思います。
我が国の場合、今、納税者番号については検討途上でございまして、この点については勉強している状況で直ちにこれが入る状況にない現実のもとで何ができるかということを考えた際に、名寄せの問題はやはりどうにもなりません。しかし、本人確認につきましては金融機関の御協力を得ることによって可能であるわけでございまして、委員が御質問になりましたように、そこのところの工夫を今回したということでございます。
まず、顧客といいますか、国民の皆さんが送金をする際には、あるいは外国から送られてくるお金を受け取る際には金融機関に告知をしていただく、そしてその告知を受けた金融機関はその告知をもとに税務署に対して資料情報を出していただくというシステムを構築したわけでございます。ただ、本人口座が既にある方の場合、その本人口座というのは本人確認をした上で口座が設けられていると考えられますので告知の問題は省略されることになるということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114629X00419971127/40
-
041・牛嶋正
○牛嶋正君 今お答えいただいたように、本人確認がやっぱり前提になりますね。幾ら告知いたしましても、それが内国税の適正な課税の確保につながっていくためには本人確認が前提になるというふうに思います。
今回の制度では、告知書の提出に当たりまして、その者の住民票の写し、それから法人の場合ですと法人の登記簿の抄本等の書類を提出するということになっております。これにつきましては、為替管理法では金融機関に対しましては努力規定というふうなことを聞いておりますけれども、このことで本人確認が十分可能なのかということを再度お尋ねいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114629X00419971127/41
-
042・薄井信明
○政府委員(薄井信明君) 金融機関が本人を確認して、そして資料情報を税務署に出すということになりますが、まず顧客サイドからしますと告知書を出さなければなりません。この顧客の告知書の提出に関しましては、提出しなかった場合、あるいは虚偽記載による提出、うそを書いて提出したという場合には今回罰則を設けておりますので、ここで正しい告知がなされるというふうに私ども考えております。
これがまた正しいかどうかをチェックするために、今、委員が御指摘のように、住民票の写しとかあるいは法人であれば設立登記簿の抄本といったいわゆる公的書類を見せていただくということになるわけですが、実際上は、御存じのように、例えば老人マル優の申し込みのときに何をやっているかというと同じようなことをやっておりまして、この際には住民票といったものだけでなくて例えば運転免許証とか、そういうものも含めてやっておりますが、そう問題は生じていないというふうに私ども見ております。
厳正にやることは私ども税務当局にとってはプラスですが、一方で納税者の皆様にとってみれば、日ごろ所持している運転免許証でできればその方が便利なわけですから、その辺はこれもバランスということになろうと思います。
現在の老人マル優の本人確認、あるいは法人の利子の受領の際の本人確認に際して用いられているチェックの手法、これで私ども問題はないと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114629X00419971127/42
-
043・牛嶋正
○牛嶋正君 もう一つ、先ほどの御説明の中にありました特定送金と特定受領の場合でございますけれども、この場合には告知書の提出は要しないとされております。
この特定送金というのは本人口座からの振替等による国外送金ということになっておりますし、特定受領というのは本人口座においてなされる送金等の受領となっております。これで本人確認はできるわけでございますけれども、このことが内国税の適正な課税の確保につながっていくためには口座開設の場合の本人確認が前提になるんじゃないかと思うんですね。これはどのようになされているのか、教えていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114629X00419971127/43
-
044・薄井信明
○政府委員(薄井信明君) 金融機関に口座を開設する際には本人確認がされていると考えて間違いがないと思っております。ただ、今回の制度ができまして口座開設時の本人確認が行われているのかどうか不明であるならば、それは国外送金をするまでに確認をしていただくということが必要かと思っております。基本的には、口座開設時の確認で大丈夫だと思いつつ、不十分であるならば送金前にチェックしていただきたいというのが私どもの考え方です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114629X00419971127/44
-
045・牛嶋正
○牛嶋正君 それで、先ほど罰則の話が出ましたが、金融機関、それからまた郵便局もそうなんでしょうけれども、告知書の提出義務、それから国外送金等調書の提出義務及び調査従事者等の守秘義務に対する違反行為等については所要の罰則が科せられる、こういうふうになされておりますが、この国外送金する者の告知書に虚偽の申告があって、それが後から見つかった場合、それを取り次いだ金融機関には責任があるのでしょうか、ないのでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114629X00419971127/45
-
046・薄井信明
○政府委員(薄井信明君) 今回の法律におきましては、告知書に虚偽の記載をして銀行に提出した者、あるいは調書に虚偽の記載等をして税務署長に提出した者などの違反行為につきましては、御指摘のように罰則が付されておりまして、一年以下の懲役または二十万円以下の罰金ということになります。こういうことによって告知書につきましては問題がなくなっていくと私ども思っておりますが、罰則の七条におきましてそれ以外にも告知書を提出する際における金融機関等々の対応につきましては四項目にわたりまして罰則を設けております。ただし、金融機関自体がこれによって善意といいますか最善の努力をしている場合に罰則がかかることはないということになります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114629X00419971127/46
-
047・牛嶋正
○牛嶋正君 来年四月から外国為替法の改正によりまして自由化されるわけですが、その前から金融の自由化が進んできております。恐らくこれからも情報化、それから国際化の進展は進んでいくものと思います。それに伴いまして、金融資本市場の一層のグローバル化が図られていくというふうに考えられますが、同時に、先ほども金田委員の御質問にありましたように、金融取引の形態は電子マネーに見られるように非常に複雑・多様化してまいります。したがって、ますます資金の流れの正確な捕捉を難しくしているように思うわけであります。
そのため、所得税、法人税、相続税その他の内国税の適正な課税の確保を図るため、税源をできるだけ正しく把握するための環境を課税当局は積極的に今後も整備していかなければならない、こんなふうに思っております。そのことは、単に税収の確保だけではなくて、課税の公平を確保することで納税者の税負担感をできるだけ和らげるためでもあるわけであります。私は、そのためには多少の徴税費がかかってもやむを得ないというふうに考えております。
この点に関連いたしまして、今回の制度の導入によりまして初期投資としてどれほどの費用が予測されているのか、もし試算されておりましたら教えていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114629X00419971127/47
-
048・乾文男
○政府委員(乾文男君) 今回の国外送金等の調書提出制度が導入されました場合、国税当局におきましては、まず第一に、コンピューター処理をいたしますけれども、コンピューターへの入力の費用、そしてシステムの開発費が必要になってまいります。それから、コンピューター入力の事務とは別に、その調書を税務当局で収受、受け付ける事務、そしてまた全国の税務署にそれを交付する事務、また活用の事務量が増加してまいります。
したがいまして、制度の導入に伴って必要とされる費用でございますけれども、制度の趣旨に沿いました適切な事務運営が行えるように、平成十年度の概算要求におきまして所要の経費といたしまして約九億円の予算要求を行っているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114629X00419971127/48
-
049・牛嶋正
○牛嶋正君 課税当局の方の初期投資としてお答えいただいたわけですが、同時に、告知書の提出義務を負っております金融機関等につきましても恐らく事務量がかなり増大していくというふうに思いますけれども、これについては何か御試算はございますでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114629X00419971127/49
-
050・薄井信明
○政府委員(薄井信明君) 結論といいますか、具体的な数字としてどれだけの費用がかかるかということは計算はできておりません。この制度の導入によりまして新たな事務負担がふえるということは確かでございます。したがいまして、この制度を構築するに際しましては、関係金融機関と大分議論を続けました。その一つの答えとして二百万円を超えるものという制度をつくったということも事務負担を軽減する、かつ必要なものは報告できるという線を探ったということになるわけでございます。
その他、例えば輸出入貨物に係る荷為替手形等の取り立て等によるもの、こういうことに付随するお金のやりとり、こういったものは資料情報がなくても間違いがないと思いますので、そういうふうに内容的に外していったものもございます。金額的あるいは内容的に外していくことによって事務負担をなるべく減らそうという努力をさせていただいたということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114629X00419971127/50
-
051・牛嶋正
○牛嶋正君 いろいろお話を聞いておりますと、やはり金融取引に係る税源の正確な捕捉のための制度といたしましては、私は最も有効な制度は納税者番号制度ではないかというふうに考えております。したがって、この制度についてはできれば本委員会におきましても一度本格的な議論をしていただきたいなと思っておりますが、きょうは少しだけ時間をいただきまして、基本的な問題について二、三質問させていただきたいと思います。
先進諸外国でも、我が国と同じように、先ほど申しましたようにイギリス、ドイツ、フランスなどはまだ制度を導入はしておりません。こういった主要国でまだ納税者番号制度が導入されていないわけでございますけれども、特に我が国の場合、これまでいろいろな議論がなされてきたにもかかわりませず、今日までこの制度が導入されなかった最も大きな障害というのはどういうふうにお考えになっておるのでしょうか。そしてまた、既にこういった制度を導入しておる欧米諸国では日本の導入に当たって障害になっているような問題がどのように対処されているのか、こういった点をまずお聞きいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114629X00419971127/51
-
052・薄井信明
○政府委員(薄井信明君) 我が国では納税者番号制度についてかなり前から議論をさせていただいております。一つには、税制を構築するに際して、先ほどから委員の御指摘のように、納税者番号があることによってより公平な税制が仕組めるという観点、それからもう一つは税務執行に当たって適正な課税が確保できるという観点、いずれも税制の面からしますと、あるいは執行の面からしますと納税者番号があるということは望ましいことかと思います。
ただ、それは一面的な問題でございまして、もう一つの面はこの納税者番号が入ることによって国民の皆様には煩わしさというか受忍義務が発生すると。といいますのは、納税者番号というものができたときに、これを税務署だけが使っているということではなくて、納税者番号制度というのは何かといいますと取引をする際に納税者自身が自分の番号を記載するという義務を負うわけですが、この煩わしさなりあるいはプライバシーの問題、自分の行動、経済活動について常に報告していなければならないということは納税者番号の負担の面になろうかと思います。そういう意味で、プライバシーの問題。それからもう一つは、この納税者番号が使いやすい経済分野とそうでないものがありますが、そうしますと資金シフト等が起きないかという問題が指摘されております。さらには民間——個人、法人もそうですが、それから行政面のコストがどれぐらいかかるか、コストベネフィットの関係を議論しなければいけない。この三点が大きなポイントかと思っております。
ただ、いずれにしましても、機械あるいはコンピューターが非常に発達してきております。それから、私ども個人の生活におきましても、カード時代といいますか、カードが自由に処理できるという時代になっています。そういう新しい環境の中で膨大にふえていく経済取引を的確に把握していくということのためには番号制度というものは必要ではないかなという認識が前に比べれば高まってきていると思います。
そういうことで、私ども問題点をなるべく整理して、また国民の皆様に納番というのは何であるか、国民の皆様に何を求めるのかということについて十分御理解を得ながらこの議論を進めていきたいと思っております。
なお、外国についての御指摘がございました。外国におきましては、アメリカでは納税者番号制度はかなり前からうまく動いております。これはアメリカの納税意識、納税思想、そういうことに支えられているのかと思いますが、一方でイギリス、ドイツ、フランスでは納税者番号はございません。また、北欧ではございます、イタリアにはありますということで、国情といいますか、国民のプライバシーなり、課税の適正公平ということについての意識がここにあらわれているのかと思います。
そういうことで、それぞれの国、それぞれの地域においてこの問題についてはそれぞれの対応をしているのが実情であるということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114629X00419971127/52
-
053・牛嶋正
○牛嶋正君 今、プライバシーというふうなお話が出ました。また、こういった制度が入った場合の国民の煩わしさというふうなお話もありました。課税当局は、こういった煩わしさというのは納税者が税を納める場合のいわゆるコンプリアンスコストと申しますか、納税協力費と申しますか、そういったもののうちに私は含めて考えてもいいのではないかと。
そういたしますと、先ほど申しましたように、課税の公正を保つためには多少のそういうコンプリアンスコストも含めたコストはやむを得ないというふうに思っております。ここらあたりは税をどういうふうに考えるかということですが、我が国の場合だんだん税負担がふえていくわけでございますから、今後できるだけ納税者の税負担感を抑えていくということになりますと改めて課税の公平が問われるのではないかと、こんなふうに思っております。
税制調査会におきましても、この納税者番号制度につきましては非常に早くから取り上げられております。既に昭和五十四年度の答申の中でこの制度に対する意見が述べられているわけでありますからもう二十年近く議論されてきているわけです。その間にはグリーンカード制度の導入が図られたこともございました。
そして、昨年の秋出されました平成九年度の税制調査会の答申を見ますと、少し長くなりますけれども、こういう文章がございます。「今後とも、納税者番号制度については、国民の受止め方を十分に把握するとともに、納税者番号として利用しうる番号の整備状況を見極めつつ、プライバシーの問題等、従来指摘してきた諸課題や、今回指摘した新たな課題について幅広い観点から議論を深めていく必要がある。」と、こういうふうに述べた後、「納税者番号制度についての国民の理解が更に深められ、活発な議論が行われることが重要と考える。政府においても、本年作成した納税者番号制度に関するパンフレットのように、制度の具体的なイメージを抱けるような素材を国民に提供していくことを期待したい。」と、こういうふうに述べられております。
各年度の税制調査会の答申を見ていきますと、この制度に対して表現がだんだん積極的な表現になってきているようでございますが、政府はこの答申をどのように受けとめ、そしてまたこの期待に対してどのようにこたえようとされているのか、できましたら大蔵大臣にお尋ねしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114629X00419971127/53
-
054・三塚博
○国務大臣(三塚博君) ただいま委員から御披露いただきました政府税調の取りまとめが累次にわたり行われておるところでございます。御指摘の問題点が網羅されております。
問題は、国民の間の議論の存するところということであろうと思いますし、国民の受けとめ方を十分に把握すべきであるという御指摘もございます。これを受けまして、政府として、このことについて素直に受けとめ、今後も対応してまいりたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114629X00419971127/54
-
055・牛嶋正
○牛嶋正君 これまで納税者番号制度に関しまして幾つかの課題が指摘されておりますけれども、その一つ一つをきょうは時間の関係で取り上げることはできません。したがって、その中から番号付与の方式だけを取り上げて、最後の質問になりますけれども、お尋ねしたいと思います。
欧米先進国の納税者番号制度を見ますと、一つは年金番号方式を採用しているアメリカ、それからカナダがございます。そして、住民基本台帳方式を採用しております北欧諸国とイタリア、それからオーストラリアがそのようでございます。そしてもう一つは、まだ納税者番号を導入していない我が国を初めとしたイギリス、ドイツ、フランスの三つのグループに大体大別できるのではないかと思っております。
この第三のグループ、まだ納税者番号制度を導入していないグループでございますが、先ほどもちょっと御説明がありましたが、クロスボーダーの資金移動等に関する資料情報の収集がそれぞれの国情に応じて少しずつ違うようでございますが、特に日本の今回の制度と違うものを採用している国がございましたら御説明いただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114629X00419971127/55
-
056・薄井信明
○政府委員(薄井信明君) 最初に私申し上げましたが、それぞれみんな違うというのが実情でございまして、例えばアメリカの場合は、クロスボーダーの送金等につきましては報告義務はさせていませんけれども、記録保存をさせておくという形をとっております。それは、そういうことで済むのは、一方で納税者番号制度があって、国内の資料情報について相当資料情報を収集する機能を課税当局に与えているということから可能になるのかと思います。
また、英国は英国でさらにそれが違う形といいますか、国外送金については関心を示さず、国内における情報について、多分アメリカ以上かもしれませんが、強い機能を課税当局に与えている。
ドイツにおきましては、これまでの経緯もあり、かなりそこのところが課税当局の力が相対的に弱いということで、どちらかというと司法当局、裁判所からはそういうことでは課税の公平が図られていないのではないかという時には違憲判決的な判決も出ていて、徐々にドイツはこれを是正しようとしているというように、各国それぞれ悩んでいると。そういった中で、今回は日本型のものをつくらせていただいたというふうに御理解いただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114629X00419971127/56
-
057・牛嶋正
○牛嶋正君 我が国の場合、番号制度の整備状況を見ますと、本年一月から基礎年金番号が実施されております。また、自治省が住民票コードの設定を進めておられますけれども、こういうふうに見ていきますと、いずれの方式に対しても十分に対応できる状況にあるのではないかというふうに私は考えております。ただ、これまで我が国における住民基本台帳の適正な管理の状況というふうなことを考えますと、私は年金番号方式よりも住民基本台帳方式が適当な方式ではないかというふうに思っておりますけれども、大蔵省の見解はいかがでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114629X00419971127/57
-
058・薄井信明
○政府委員(薄井信明君) 先ほど政府税調が納税者番号に対してかなり積極的になってきているという御指摘がございましたが、その背景の一つには、委員今御指摘のように、現実に世の中に番号というものが出現しつつある、あるいはしているという環境の変化が大きなポイントの一つだと思います。それと、先ほど私申し上げましたように、一般の国民生活がコンピューターの普及により番号とかカードになれてきたということもあろうかと思います。
そういった中で、今の御質問は、現在番号が整いつつある住民基本台帳方式、それから年金番号、どちらを大蔵省は考えているかという御質問でありました。
この点につきましては、ちょっと話が戻るかもしれませんが、実は長い期間を経て議論してきているこの納税者番号の議論の中で、最初にどういう番号を使うかという議論を政府税調なり大蔵省ではいたしました。その際には三つの類型があると考えました。第一は、アメリカ、カナダの方式であり、これは年金番号、社会福祉、社会保険証番号といったようなものを活用する手法。それからもう一つは、北欧方式であります住民登録制度に基づいた番号を使う方式。それからもう一つは、イタリアがやっておるんですが、税務当局がみずから番号をつくる方式。この三つをベースに議論しました。ただし、この中でイタリア方式は国民感情とかあるいは国税庁の能力からいって無理だろうということで落とされました。アメリカ方式、北欧方式が残ったわけです。
そういった中で、そのときはまだ番号はなかったんですけれども、現実に年金番号がこの一月から動き出した。それから、自治省が住民基本台帳の本格的な検討を始め、現実的にこれがなろうとしているという状況に今あるということでございます。
そこで、どちらがいいかということにつきましては、両論あるわけです。と申しますのは、やはり社会保険証の番号を使うというのは、社会保険の番号というのは給付を受けるための番号ですから国民にとってなじみやすい、拒否感がないのではないか、それをもって納税者番号にするというのはその面でプラスがあるんじゃないかと。これに対して住民基本台帳の方は、生まれたら番号をつけられる、何となく人間にとってこれはいいんだろうかというような、私がそう考えるという意味じゃなくて、そういう議論がどこかにあると。逆の面で、住民基本台帳の方は漏れがない、きちっと一生涯の番号がフォローできるというメリットがあります。それに対して年金番号とか社会保険証番号の方は、どうしても受給者じゃないと番号を持ちませんので穴があいているという問題があります。
つまり、一長一短があるわけでして、その中でどれを選ぶかということは、先ほど来申し上げた国民がこの番号についてどう考えるかというところと結びついてくるのではないかと思っております。
結論的には、まだ結論は出ていないわけですが、実はかなり前になりますが、与党においては平成六年の九月に税制改革大綱というのをまとめました。その際には、そういった番号制度が今後現実的に入手できる番号ができる時期を頭に置く、二十一世紀初頭を目途にいろいろなことを考え、また国民に理解を求めていく必要があるのではないかということを大綱でまとめております。
私どもも、まだ時間があると思いますので、先ほど来申し上げている納番とは何か、あるいは国民にどういう義務を負っていただくことになるのか、またこれによってどういうプラスがあるのかということについて十分説明をし、かつそのときにはどちらの方がベストなのかということもとことん議論させていただきたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114629X00419971127/58
-
059・牛嶋正
○牛嶋正君 私は、先ほど申しましたように、住民基本台帳方式の方に関心がございます。
この点について、自治省は平成八年三月に「住民記録システムのネットワークの構築等に関する研究会」報告書を発表されておりまして、その中で住民基本台帳ネットワークシステムの早期導入を提言されております。これに私非常に関心を持っているわけですが、平成九年六月、ことしの六月には住民基本台帳ネットワークシステムの構築について住民基本台帳法の一部改正試案を公表されております。
このように住民基本台帳ネットワークシステムづくりに対する自治省の積極的な姿勢を私は見るわけでございますが、きょう、自治省においでいただいておりますので、できましたらこのネットワークシステムの内容について簡単に御説明いただき、そしてあわせて今後このシステムの構築に向けてどのようなスケジュールをお持ちなのか、この点についてお尋ねしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114629X00419971127/59
-
060・小室裕一
○説明員(小室裕一君) 御質問いただきました住民基本台帳ネットワークシステムでございますが、これは市町村ごとに管理をしておりますいわば行政の基本となります住民基本台帳を基礎にしまして全国的なネットワークを構築し、個人情報保護に万全の措置を講じながら、国の行政機関等へ効率よく本人確認のための情報を提供できる全国共通の本人確認システムとして、高度情報化社会に対応した行政情報化を推進し、国、地方を通じた行政の簡素・効率化、あるいは住民の負担軽減、サービスの向上を図ろうとするものでございます。
これまで御紹介ございましたように二年にわたります検討を行いました研究会の最終報告書、また、自治大臣が主催します懇談会の意見、国会の議論、これらを踏まえますとともに、地方公共団体を初めとする関係方面との意見調整を行いながら制度化に向けて検討を進めてきたところでございます。
この制度化に当たりましては、個人情報保護措置や利用分野などについて法律で規定を置く必要があると考えてございますので、この六月には自治省として具体的な制度案を広く世に示し、国民一般を含め幅広く御意見を伺うために住民基本台帳法の一部改正試案を公表いたしましたところでございます。
今後、この試案をもとに、個人情報保護について十分な措置を講じ、十分な国民の理解を賜るよう留意しつつ、両省庁との調整、法制的・技術的な検討を進め、各般の条件が整えば住民基本台帳法改正案を国会に提出てきますようネットワークシステムの導入の取り組みをさらに進めてまいりたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114629X00419971127/60
-
061・牛嶋正
○牛嶋正君 その議論の中でこれを税務へ適用できるというふうな御議論はあったのでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114629X00419971127/61
-
062・小室裕一
○説明員(小室裕一君) 先ほど御紹介がありました研究会の最終報告書の中において、「政府税制調査会をはじめ各方面の議論等を踏まえて、将来的に納税者番号制度が導入されることとなる場合においては、このネットワークシステムを活用することが可能となる。」、こうした報告をいただいております。
ただ、先般発表しました試案におきましては、公的部門の利用を前提としておりますので、納税者番号制度のようにこれから国の政策として一定の形で民間にも提供しなければならないというものが将来的に出てまいりました場合には、こちら側の法律をそれに合わせて改正することを検討しますとともに、利用する制度の方におきましても個人情報保護等についての御議論が必要になるかと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114629X00419971127/62
-
063・牛嶋正
○牛嶋正君 もう一点だけお尋ねいたしますけれども、納税者番号制度に移行するのは技術的にはそれほど問題はございませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114629X00419971127/63
-
064・小室裕一
○説明員(小室裕一君) このネットワークシステム自体は非常に汎用性の広いもので、いろいろな形での御利用ということを念頭に置いてシステムの検討をしておりますので、それをどういうふうに使うかという御利用の観点についてはまさに国会等の御議論を賜るわけでございますが、システム的には幅広く検討してございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114629X00419971127/64
-
065・牛嶋正
○牛嶋正君 それでは次に、租税特別措置法の一部を改正する法律案の方で二、三御質問させていただきたいと思います。
民間国外債の利子を非居住者または外国法人が受け取る場合に限り所得税を課さないとするこの制度も昭和四十年四月一日から導入されておりますね。それ以来何度か改正が行われてきておりますけれども、昭和四十七年四月一日の非課税措置の廃止、これはこの制度についてはかなり大きな改正であったというふうに思います。そして、昭和四十九年四月一日にもう一度この制度が復活を見ているわけでございます。
今回の改正は非課税適用申告書を提出した者について利子に対して非課税とするということでありますので、今回の改正もかなり大きな改正というふうに私は考えておりますけれども、今回の改正と昭和四十七年度の改正を比較いたしまして、その背景、それから租税特別措置でございますのでそこに盛り込まれている租税政策の意味合い、そういったものがどういうふうに異なるのか、御説明いただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114629X00419971127/65
-
066・薄井信明
○政府委員(薄井信明君) 日本の国内の法人が資金調達のためにいわゆる民間国外債を発行した場合、これを購入する外国人、非居住者あるいは外国法人につきましては、これは原則的には課税するのが本来の姿だと思います。
そういう意味で、昭和四十年に非課税制度を設けたということは、当時の国際収支の赤字というものを背景に、ユーロ市場における本邦企業の起債というものを容易にして、長期的かつ安定的な外資導入を図ろうという政策的な意図から民間国外債非課税制度というものができたという背景にあったと思います。
この制度が昭和四十七年には廃止になりました。この廃止の背景は、当時大幅な黒字になっておりまして外資導入の意義が薄れたという判断でございました。したがって、期限到来をもって租税特別措置の廃止という形をとったわけでございます。
ただし、その後二年をして再開するということで、やはり日本の企業が資金調達をユーロ市場からしていくということは必要なことであるという判断に戻ったということでございまして、四十九年以降今日まで非課税制度を継続しているというのが実情でございます。
今回、それではどういう考え方の変更をしたのかということを申し上げますと、為替が自由化していないというのはおかしいんですが、来年の三月までの外国為替の状況のもとにおきましては、民間国外債は基本的には外国人あるいは外国法人が購入する。日本人が国内で買う場合には水際源徴というものでチェックしていくという整理をしてきているわけですが、来年四月以降のことを考えてみますと、日本人が外国に円建ての口座を設けて、そこで日本の法人が発行した民間国外債を買ってしまうことも自由になるということです。つまり、外国人が買ったのか、あるいは日本人が買ったのか、それも外国に口座が置いてある限り分けようがない、区分して見ることができなくなるという状況が出てきたわけでございます。
そこで、私ども考えましたのは、この制度は日本人が、居住者が利子を受けたときには課税されるのは当然でございます。外国で買っても、これは外国の口座に利子が入るにしても課税すべきだという考え方になります。しかし、非居住者とか外国法人が買う場合には、よその国と同じようにユーロ市場において課税にすると日本には資金が入ってきません。そこで、非課税制度を維持しつつ国内の人がこれを買った場合には課税する仕組みをつくらなければならないということで、法律の形式を変更することによって両方の目的を達成しようとしたわけです。
どういうことかといいますと、民間国外債につきましては一五%の源泉徴収を発行体においてしますよと、しかし買う人が非居住者なり外国法人であるということが通知された場合には源泉徴収はいたしませんという法律の構成にしたということです。したがって、外国の法人あるいは非居住者にとっては何ら今までと制度は変わらない。それから、日本人にとってみれば、今まではそういうことがしにくかったことが今後はしやすいわけですけれども、その場合には一五%の課税が源泉徴収でされますという制度になったということでございます。
やや複雑ですが、今回の趣旨はそういうことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114629X00419971127/66
-
067・牛嶋正
○牛嶋正君 今、説明の中で出てまいりました居住者または内国法人に対しましては、一般民間外国債の利子の支払いを行う者はその支払いの際一五%の税率が適用される、こういうふうに決められております。恐らくこの一五%というのは利子所得に対する二〇%の源泉徴収の際の徴収率から地方税分の五%を引いたものというふうに解釈できるわけですが、それじゃ地方税の五%についてはどういう形で課税をするのかということです。むしろ、地方税が住居地主義に立っているということを考えますと、私は一遍に税率を二〇%で源泉徴収してもいいのではないかというふうに思いますが、この点についてどういうふうな根拠で一五%にされたのか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114629X00419971127/67
-
068・薄井信明
○政府委員(薄井信明君) 今回の制度で居住者、それから内国法人についての源泉徴収は一五%になるというふうに働くわけでございますが、制度を動かしたときにこの源泉徴収を受ける人が居住者だけでなくて非居住者であることもないわけではないというケースが出てきます。その場合に地方税についてまで源泉徴収をしてしまうことは問題があろうかと思います。と同時に、国税の方の一五%も、これは総合課税を後ほどする前提での一五%でありまして、源泉分離課税ではありません。そういう意味では、地方税について税金がかからないというのではなくて、地方税については総合課税をした上で所得割の賦課が行われるという前提になっているということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114629X00419971127/68
-
069・牛嶋正
○牛嶋正君 非常に細かな議論になってまいりましたけれども、先ほど申しました昭和四十七年改正のときに非課税制度の廃止が決定されたわけですけれども、そのとき非居住者または外国法人に対する取り扱いはどういうふうにされたんでしょうか。今回の改正と比較して、その点少し御説明いただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114629X00419971127/69
-
070・薄井信明
○政府委員(薄井信明君) 御質問の趣旨をあるいは取り違えているかもしれませんが、昭和四十七年の非課税措置の廃止というのは、非居住者あるいは外国法人が民間国外債を購入した場合の利子について非課税措置を適用しない、課税であるという改正でありましたということです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114629X00419971127/70
-
071・牛嶋正
○牛嶋正君 恐らく今と同じように源泉徴収をされたと思うんですけれども、そのときの税率など今と比較してどう違うのかということは。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114629X00419971127/71
-
072・薄井信明
○政府委員(薄井信明君) 一〇%の軽減税率を適用していたかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114629X00419971127/72
-
073・牛嶋正
○牛嶋正君 非居住者等の所得に対する課税につきましては、原則といたしまして国内源泉所得に対しては課税いたします。その場合、総合課税であったり源泉分離課税であったりするわけです。
国外の源泉所得に対しては原則として課税対象外とされているわけですが、この根拠は何に基づいておるのでしょうか。また、諸外国における非居住者または外国法人に対する課税の状況をあわせて御説明いただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114629X00419971127/73
-
074・薄井信明
○政府委員(薄井信明君) 非居住者あるいは外国法人に対する課税の問題ですが、利子についての御質問ということだと思いますが、日本国内に源泉がある場合にのみ課税するというのが日本の制度でして、これは外国もほぼそのようになっております。国際的にというか、取り決めがあるわけではありませんが、慣行として国内源泉分について課税するという取り扱いになっておりまして、グローバルスタンダードにその点では合っていると思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114629X00419971127/74
-
075・牛嶋正
○牛嶋正君 最後の御質問でございますけれども、きょうは私、今後ますます経済・金融のグローバル化が進んでいく、そして情報化に伴いまして例えばペーパーレス化も進展するわけでございまして、こうなりますと課税当局は適正、公正な課税の確保のための環境整備というのは遅滞なく進めていかなければならない、こういう立場から御質問をさせていただきました。
もう一度先ほどの質問に戻りますけれども、そういうことを考えますと、多少の障害はあっても、私は適正、公正な課税を確保するためには早急に納税者番号制度の導入を図るべきである、こういうふうに考えております。
最後に、この点につきまして大蔵大臣の所見をお聞きしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114629X00419971127/75
-
076・三塚博
○国務大臣(三塚博君) ただいま納税者番号制度についての御質疑を拝聴させていただいてまいりました。
これまでも税務行政の機械化、効率化によります課税の一層の適正化等の観点から鋭意検討をしてまいったところでございます。
今後とも、各種カードの普及に伴う番号利用の一般化、経済・金融のグローバル化、情報化等の動きを踏まえまして、納税者番号制度に対する国民の受けとめ方を十分に把握いたしますとともに、プライバシーの問題等についてより具体的かつ精力的に検討を深めていく必要があると考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114629X00419971127/76
-
077・牛嶋正
○牛嶋正君 これで質問を終わらせていただきますけれども、再度申し上げます。
やはり、市場原理の導入もいいですけれども、税負担というのはこれからも増大をするわけでございますのでできるだけ適正な、そしてまた公平な課税の確保というのは私はその場合第一条件だというふうに思っておりますので、もう一度、再度納税者番号について積極的にお考えいただくことをお願い申し上げまして、私の質問を終わらせていただきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114629X00419971127/77
-
078・石川弘
○委員長(石川弘君) 午前の質疑はこの程度にとどめ、午後一時十五分まで休憩いたします。
午後零時七分休憩
—————・—————
午後一時十五分開会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114629X00419971127/78
-
079・石川弘
○委員長(石川弘君) ただいまから大蔵委員会を再開いたします。
この際、委員の異動について御報告いたします。
本日、上山和人君及び益田洋介君が委員を辞任され、その補欠として梶原敬義君及び平田健二君が選任されました。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114629X00419971127/79
-
080・石川弘
○委員長(石川弘君) 理事の補欠選任についてお諮りいたします。
委員の異動に伴い現在理事が一名欠員となっておりますので、その補欠選任を行いたいと存じます。
理事の選任につきましては、先例により、委員長の指名に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114629X00419971127/80
-
081・石川弘
○委員長(石川弘君) 御異議ないと認めます。
それでは、理事に梶原敬義君を指名いたします。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114629X00419971127/81
-
082・石川弘
○委員長(石川弘君) 休憩前に引き続き、内国税の適正な課税の確保を図るための国外送金等に係る調書の提出等に関する法律案及び租税特別措置法の一部を改正する法律案を一括して議題とし、質疑を行います。
質疑のある方は順次御発言願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114629X00419971127/82
-
083・峰崎直樹
○峰崎直樹君 民主党・新緑風会の峰崎でございます。
きょうは二法案の審議でございますが、その前に、実は私の出身であります北海道において大変大きな出来事が先週来発生しているわけでありまして、御存じのように、拓殖銀行が事実上倒産をするということで地元の経済界あるいは社会全体に甚大な影響を与えているわけでありまして、この点を中心にきょうは御質問させていただきながら、最後にこの二法案に触れてみたいと思います。
最初に、拓銀が破綻をした、破綻というふうに言っていいんでしょうか、破綻をしたときに北海道拓殖銀行から「当行の業務を北洋銀行など他の金融機関に承継願うことについて」という談話がございます。その中で、どうしてこのような事態になったのかということについて、「最近の当行に対する信用不安から来る格付の低下や株価の低迷に加えて、金融機関等の経営破綻の影響を受けて、短期金融市場からの資金調達が急速に困難となり、資金繰りが行き詰まる事態に立ち至りました。」、これがいわゆる公的に拓銀の側から発せられたことなのであります。
私は、この十一月十日の財政構造改革法案のときに質問をいたしました。このような事態は金融恐慌再来かというふうな雑誌などの表現もあるぞということと関連させて私が質問した答えとして、三塚大蔵大臣の方から、不良債権の解消は全体としてうまくいっておる、そして御指摘のような事態が起きるとは思っておらない、ファンダメンタルズ、経済の基礎的条件はきっちりしており決して悪くない、こういうふうに言い切られたわけであります。
私は、このような事態を見ると、どうもクレジットクランチという状況から信用収縮、難しい言葉で言いますとクレジットコントラクションですか、信用収縮というところまできているのではないかと。
その意味で、私が十一月十日に質問をしたときの状況認識と、そして昨日、日銀総裁と共同で記者会見をされて国民に向かってアピールを出しておられますが、大臣、そのときの認識とでは差があるのでしょうか、それとも差はないのでありましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114629X00419971127/83
-
084・山口公生
○政府委員(山口公生君) 今回の拓殖銀行の資金繰りに行き詰まったことによる破綻でございますけれども、実はコール市場で三千億程度の資金をオーバーナイトで取っておったという状況でございました。それも最初は無担での取り入れが可能だったわけですが、それが有担での取り入れしかできない、それもだんだん細ってきたということであったんですが、三洋証券の処理に伴うコール市場での一部デフォルトが生じております。そういうこともありまして、市場が非常に警戒的になったということがその後の大きな変化、それがやはり金融市場にとってみますと、インターバンクの取引というのはある意味では金融機関にとって血流みたいなものでございますから、非常にそれが早く影響としてあらわれたという、ある意味ではインターバンク市場の状況の変化というものの影響があったのではないかと思うわけでございます。
ただ、ここで一つつけ加えさせていただきたいのは、しばしば大臣のお言葉でも申し上げていますように、インターバンクはきっちり守られておりますのでその辺をしっかりと受けとめて安心してやっていただきたいということを呼びかけているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114629X00419971127/84
-
085・峰崎直樹
○峰崎直樹君 私、事前に大臣に直接こういうことを質問するということを言っていなかったからかもしれませんが、十一月十日の時点では拓銀もまだ事実上倒産しておりません。その段階において質問したときの認識と、昨日、今、山日銀行局長がおっしゃいましたけれども、インターバンク市場においてもこれは風評に流されないでとにかく守るからと、こういうことをおっしゃっているわけですが、ある意味では事実認識として今の状況はクレジットコントラクション、信用収縮が起き始めているという危険性がないのかどうなのかという点について大臣にお聞きしたんですが、大臣、この点はいかがなんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114629X00419971127/85
-
086・三塚博
○国務大臣(三塚博君) 今、銀行局長からその後の状況、さまざまな要素の展開を説明させたところであります。
システムの安定維持というのが私に与えられました最大の責任であります。同時に、預金者保護等、投資家も含め保険契約者も含め、それが完全に守られてまいりますと、こういうことで申し上げてまいったところでございます。
その認識はそういうことの中で、しかし主務大臣はいかなる事態にも的確に対応し、万全を期するという職務がございます。この職務の遂行をやらさせていただいたということでございまして、不良債権の問題も出ましたけれども、これは強く大蔵省として解消に向けての努力を進めるようにと、こう申し上げてきておるところでありますし、早期是正措置、四月一日からスタートを切るわけでございますから、そういうことで健全化に向けて各行リストラを敢行しながら健全経営に向けての努力が行われておるという状態でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114629X00419971127/86
-
087・峰崎直樹
○峰崎直樹君 その点はもっといろいろ議論してみたいことはあるのでありますが、実は昨日、九時三十分にNHKでちょうど拓銀がなぜつぶれたかというのをやっておりました。私、それを見ておりました。
その中で、やっぱり拓殖銀行の側にも一定のある意味では甘えがあったのではないかと、こう言うんですね。それは何かというと、大手二十行は一行たりともつぶさないと、私これを大蔵省の方に確かめてみたいんですが、大蔵省の方でこの大手二十行は一行たりともつぶさないという言質を一度でも出したことがあるのかどうか。もしそうでないとしたら、その拓銀の側は、きょうは別に拓銀を聞いているわけではありませんが、どうもそういう甘えがあったのではないかということを各界、北海道の識者も指摘をしておりますが、そういった点、今ちょうど大蔵省の検査も入っておるようでありますが、これらの点については銀行局としてはどのように思っておられるのか。
そして、大蔵大臣として、そういう大手二十行は一行たりともつぶさないというようなことが大蔵省のこれまでのある意味では護送船団行政と言われているものの延長線上にもしあったとすれば、これが事実上倒産をしていくということに対する責任という問題は一体どのように考えておられるのか、この点をお伺いしたいんです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114629X00419971127/87
-
088・山口公生
○政府委員(山口公生君) 二十行についていろいろな御議論がございますけれども、確かに最初は、これは大和銀行事件のときだったと記憶しておりますけれども、ジャパン・プレミアム等が高騰しまして海外が非常に日本の金融システムに不安を持った時期がございました。そのときに、日本の方からきちっとしたインフォメーションを与えなければいけないということで、海外業務を主にやっているのは主要行ですと、今二十行ですが当時は二十一行だったと思います、そういうメジャーバンクスについては海外の皆さんに御心配かけるようなことはしないというような趣旨を言っておるというふうに記憶しております。
それで、その後大臣の方からも、日債銀のときだったと思うんですけれども、きちんと自助努力をしてしっかりした再建をやっているところについては全力を挙げて支援するという趣旨をおっしゃっていただいて力強くサポートしていただいておりました。
そういうことで、二十行という銀行そのもののネームを云々という趣旨では言ってはいないんじゃないかというふうに思っておりますが、いずれにせよ大事なことは、二十行が海外でも国内でも大変大きな存在でございますので、その果たしている金融機能をいかに守れるか、海外の例も御説明しましたけれども、取引関係が毀損されることがないようにするということは非常に大切な点ではないかと思うわけであります。
したがって、今回の拓銀というものが消滅してしまうことになるわけでございますが、その機能というものは、国際的なものと国内的なものに分けますと、四月の時点で国際的なオペレーションは撤退をしております。したがって、国内的な活動をやっておるということでございます。そうすると、国内的な存在としては北海道経済における拓銀の存在というのが大変大きなわけでございます。その金融機能が非常に地域経済にとって重要だとなるわけでございます。
今回、御承知のように、北洋銀行を受け皿にしていただきまして、そこでその機能を引き継ぐ、それでほかの銀行も協力するということで健全な取引先に迷惑をかけないようなできるだけの措置をしたということで、二十行の一角でありました拓銀の果たしている機能そのものについては極力引き継ぎができるようにしたと、こういう趣旨でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114629X00419971127/88
-
089・三塚博
○国務大臣(三塚博君) 今、局長からそれぞれの視点からお話がございました。
大蔵省としては、国際的に活発に活動しておる銀行については、その破綻により国内のみならず国際的にも大きな問題が生ずる懸念がありますことから、その金融機能が損なわれ、内外の金融システムに大きな動揺が生ずることのありませんように対処する旨述べたところでございます。
拓銀は、ただいまもお話しのように、海外営業拠点を廃止するなど既に海外業務から撤退をしておりますことは御承知のとおり。もはや国際的に活動をしている銀行ではありませんが、我が国、とりわけ北海道において重要な金融機能を果たしてきておりますことも事実でございます。こうした状況を踏まえながら、受け皿銀行を確保し、引き続き預金者や健全な融資先の取引に支障が生じませんよう政府として最大限配慮いたしておるところでございます。こうした対応について拓銀が果たしてきました金融機能は今後も維持され、金融システムの安定性は十分確保されていくと考えておるところであります。
いずれにいたしましても、大蔵省としては我が国金融システムの内外の信頼を維持していくために今後とも適切に対処をしてまいるということであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114629X00419971127/89
-
090・峰崎直樹
○峰崎直樹君 戦後の大蔵行政全体に絡む大きい問題だろうと思いますが、今お聞きしている限り、その点の責任を余り痛感しておられないようなので本当に残念だなと思いますが、時間がありませんので先に進みます。
拓銀に関しては、日銀法の二十五条でしたか二十六条でしたか、それによってこれまでどおり業務をやっていいということでございました。
そこで、実は貿易業務をやっているような企業が従来は信用状、LCを拓銀を通じて出していた、あるいは為替予約などもそこでやっておったと。ところが、通常どおりやっていいよという、預金者はもちろん今保護されておると思いますが、そういう業務をやっている貿易業者なんかは実は拓銀を通じてそういうものをやっていたのが、LCを出しても相手側が拓銀が出したLCじゃもう認めてくれないと、こういうことが実はもう既に起きてきているわけですね。ですから、現実にそういうことに対して一体どうしたらいいんだろうかという、そういう問い合わせも私たちに来ているんです。
もちろん、貸し渋りだとかこれからも恐らく年末に向けて出てくるんだろうと思いますが、特にそういう問題について、今拓銀に検査が入っていると思うんですけれども、この拓銀に対する大蔵省の検査はいつまでかかるんでしょうか。それから、北洋銀行に営業譲渡をするのは大体いつごろをめどにされているんでしょうか。それから、今もお話ししたようないわゆるLCを出すような業務はどういう形で大蔵省はいわゆる迷惑をかけませんよということに対する対応をとるべきだというふうに考えているのか、この三点をお聞きしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114629X00419971127/90
-
091・原口恒和
○政府委員(原口恒和君) まず最初に、拓殖銀行に対する検査についてのお尋ねでございますが、拓殖銀行については去る十月十四日に検査に着手しておりまして、現在鋭意検査を続行しております。終了する時期を含めまして個別金融機関の検査に関する事柄の詳細については従来よりお答えを差し控えさせていただいているところでございますが、一般論として申し上げますと、この程度の規模の銀行であると大体二カ月程度を要しているということでございますが、ケース・バイ・ケースということもございますし、今の時点では鋭意検査を行っているということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114629X00419971127/91
-
092・山口公生
○政府委員(山口公生君) お尋ねの二点目と三点目にお答え申し上げます。
二点目は、北洋銀行に対する営業譲渡がいつごろ完了するのかというお尋ねでございますが、営業譲渡が完了するまでには、例えば人員の引き取りとかあるいは店舗網の統廃合とかシステムの統一など検討すべき課題も多いと思いますけれども、拓銀、北洋の両行間で営業譲渡に当たっての課題を具体的に検討すべく、早速去る二十五日に引き継ぎ委員会を設置したと聞いております。今後、週一回の精力的なペースでこの検討を進め、スムーズにその処理をしたいということでございます。
いつまでに完了するかと確たることを申し上げられる状況ではございませんけれども、今御報告申し上げましたように、検査をしておりますが、その資産内容が把握されますとその前提となる財務計数が明らかになるわけでございます。それで、日銀を初めとする関係機関と協議しながら、受け皿銀行にその機能がスムーズに引き継がれるように私どももいろいろ支援をしていきたいと思います。
それから第三点目のお尋ねは、LCの例をお出しになって業務のことをお尋ねになりました。業務につきましては、今回受け皿銀行が見つかったということ、それから日銀の方で二十五条の特融を出していただいたということで窓口をあけたまま処理ができることになりました。したがいまして、お客様としてはいつものとおりの取引ができるわけですけれども、一方で業務改善命令を出しました。これはなぜかといいますと、北海道拓殖銀行の処理に当たっては、やはり預金保険機構の発動等があるわけでございますので、資産をどんどん劣化させるようなことがあってはならないということでございます。したがって、健全な取引先への取引は当然続けることは可能でございますけれども、もうとても回収できないようなところに追い貸しをするようなことをしちやいけないということであります。
その関係からいいますと、先ほど申されたLCのような処置としては、拓銀の方に信用力さえあればそれは可能なわけでございますけれども、先生御指摘のように、拓銀自体が信用力がなくなったとなれば、これは幾らやれるという業務であっても実際発行できないということになるわけでございます。そうした場合、このLCのケースにおきましても利用者の方々に対しては御迷惑をなるべくかけないように、北洋銀行等での信用状発行をお勧めしたり、信用状に他銀行の保証を付与して信用力の向上を図るといった対応をして、できるだけその利用客の不便にならないように配慮をして努力をしているというふうに聞いておるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114629X00419971127/92
-
093・峰崎直樹
○峰崎直樹君 もっともっと聞かなきゃいけない点があるんですが、実はもっと大きい問題の方に移っていきたいと思うんです。
こういう形で巨大な銀行が倒産をするということで、またきのうもある銀行が倒産をしているわけでありますけれども、心配になってくるのは二つあるわけです。
一つは、預金保険機構がこれによって一体どうなっていくのかなと。預金保険機構は財務状況は今どのようになっているのか。しかも、これは毎年毎年たしか預金残高の〇・〇八四%ですか、それで積み上がっていくことになってはおるんですが、このいわゆる展望というのは一体あるんだろうかと。この点は今後の破綻、今後のというか今破綻をしている拓銀、これも計数がまだ整理されていないでしょうけれども、この点一体どういう展望を持っておられるのか、これは預金保険機構の財務状況についてまずお聞きしたい。
時間がなくなったらいけないので、実は日銀にきょう来ていただいているんですが、日銀は特融を出していますね。
特融はどのぐらいあるのかなということできのうも資料を開示して、新聞には諸説あるんですが、相次ぐ特融で、きょうの毎日新聞によれば三兆八千億円特融やっていると、別の新聞を見ると三兆四千億だと言っている。現時点で特融は一体どのぐらい出しているんだろうか。そして、この特融はあの昭和四十年の山一証券、折しもそうだったでしょうか、無担保、無制限といったようなそういうものではないはずなんですね、融資ですから。そういうものの担保の問題についてちゃんととれているのかどうか、このあたりが今一番みんな心配をしている点だろうと思います。
まず最初に、いわゆる預金保険機構の財務状況、それから今後これは本当に大丈夫なのかということ、それから、もしそこが不足した場合には、これは今ちまたで言われているいわゆるまたさらに保険料を上げる対応をするのか、それともこれは税金を投入するというような形になるのか、そのあたり率直に今の現状と今後の展望をお聞かせ願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114629X00419971127/93
-
094・山口公生
○政府委員(山口公生君) いろいろな破綻が生じておりまして、最終的にはそのロス埋めとしての役割が預金保険機構の役割になるわけでございますが、現時点での状況を申し上げますと、金融三法でお認めいただきました特例期間に二・七兆円の財源が確保できる見込みでございます。そのうち一・四兆円を贈与しております。使っております。それは非常に大きい木津信組、これが一兆円程度ありました。そういったものを含めて一・四兆円。そうすると、残りは単純に言いますと一・三兆円あると。あると言いましょうか、入ってくると言った方が正確かもしれません。五年間でございます。
それが間に合うかどうかの判断でございますが、非常に大きな銀行である拓銀の破綻が生じた結果足りないのではないかという議論が起こっておりますけれども、ただ、ロス埋めとしての役割の預金保険は大きさそのものには関係ございません。つまり、どの程度の債務超過になってしまうのか、どの程度のロスかということでございます。したがって、ロスがほとんど出ない、資本金で埋めてしまえるようなロスであれば預金保険の負担はなく、むしろ不良債権の買い取りだけで済む、それも時価での買い取りでございますから少なくとも一時的なロスはないという状況であります。したがって、楽観的に申し上げるべきではないと思いますけれども、大きい銀行だからたくさんロスが出るというものではありません。したがって、それは今後の検査を見て確定していくものでございます。
ただ、今後どれくらいの破綻というものが将来予測されるのかということとの兼ね合いで預保の財源問題というのが決まってくるわけでございますが、五年間の措置をお認めいただいて今ちょうど一年半ぐらいたった状況でございます。それで、法律の規定では十年度の末に足りないような状況が現出した場合には保険料の改定等をやると、これは政令におりておりますが、なっておりまして、「十年度末までに」と、こう書いてありますが、そこで財源問題も議論をするということになっておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114629X00419971127/94
-
095・福井俊彦
○参考人(福井俊彦君) 特融に関してお答えを申し上げます。
現在、日本銀行が実行しております日銀法二十五条に基づく特融の残高でございますが、実は十月末では三千七百二十五億円でございました。当月になりましてから、御指摘のとおり、北海道拓殖銀行のケース、それから山一証券のケースが出てまいりまして急増いたしております。けさの時点で三兆六千億円というふうに急増いたしております。
こういう姿は、例えば日本銀行の貸借対照表等をごらんになられますと、日本銀行のバランスシートが正常でない姿に一時的に急激に変わっているということでございます。これは最終的にはまた日本銀行のバランスシートを正常な姿に戻さなければいけない。そのためには、御指摘のとおり、特融というものが最終的な回収可能性ということをしっかりにらんでいるかどうかということでございます。
当然、私どもはそこをしっかり押さえながら特融を実行いたしておりまして、金融機関の破綻に関する特融につきましては当該金融機関の最終的な破綻処理、つまり預金保険機構の発動を伴う最終的な処理が行われます段階で日本銀行が全額回収するという仕組みになっておりまして、現にこれまでも、例えばコスモ信用組合その他のケースがございますが、最終時点でいずれも全額回収をいたしております。
それから、山一証券の場合について申し上げますと、これは山一証券が廃業いたすわけでございまして、最終的に廃業して山一証券のブックを閉じるまでの間に顧客資産を返還する、あるいは既往の取引を最終的に決済し終える、その間のプロセスを円滑に進めるためのつなぎ資金でございます。したがいまして、山一証券のブックがクローズされるときには最終的には全部返る、こういう見込みのもとにファイナンスを行っているという性格のものでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114629X00419971127/95
-
096・峰崎直樹
○峰崎直樹君 もうほとんど時間がなくなってきました。
質問通告しておりませんでしたが、アジアの最近の金融不安といいますか、大変深刻だと言われております。日本の銀行がアジアに貸し付けている融資残高は約三十兆円というふうに私どもある資料で見ております。
これが今、実は大変バブルにまみれて事実上不良債権になっているんじゃないかというふうにも予測をされているんですが、銀行局長、そういった点はどのようにつかんでおられますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114629X00419971127/96
-
097・山口公生
○政府委員(山口公生君) 手元に計数がございませんので正確な形での御報告は申し上げられないのは残念でございますが、日本の銀行がアジアの諸国にいろいろな融資等を行っております。それにつきましての残高ベースの比率は、間違っていたら恐縮ですが、主要三カ国で三%強ぐらいのウエートでございました。
それで、為替レートの関係、つまり為替リスクの観点からいいますと、日本の銀行はほとんどそれをスクエアにしておりますから為替差損という意味は余りないのではないかと。
それから、貸し付けの方でございますが、主として貸しておりますのは日本から出ていっている企業へ貸しています。つまり、本邦系の企業でございます。だから、本邦系の企業が痛手を受ければそれはもちろん影響はあります。しかし、現地の企業への貸し付けよりはそれが多いということです。
それから、非常に問題になりました現地のノンバンク等への貸し付けば比較的少なかったという気がいたしております。だから、私は影響がないと申し上げるつもりはありません。しかし、アジアの現象がもろに日本の金融機関の不良債権をまた一段と倍加させるような議論が時々ありますけれども、そのウエート及びリスクのとり方、相手先等から見まして、十分な注視は必要でございますけれども、過大に心配する必要はないのではないかと思っております。
先ほどの数字が出ました。東南アジアでは三%、アジア三カ国で二%でございます。それぐらいの貸し出しになっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114629X00419971127/97
-
098・峰崎直樹
○峰崎直樹君 比率ではよくわからぬです。金額でどのぐらいかと。
それと、きょうの新聞なんかを見ると香港の地価の水準が相当下落しているとか出てきていますから、どうも日本で起こったことが何年かおくれでアジアで今起きてきているんじゃないかなという懸念を非常に持っています。この点はまだ私も十分つかんでおりません。
そんなことで、決して暗い話ばかり連続してまたダメージを与えようということじゃないんですが、ぜひこれはディスクロージャーを、やはり我々よくわからないものというのは正しくディスクローズされていないからわかってこないという側面が私は非常に強いんだろうと思うんですね。
そこで、よく問題になるのは、日本のいわゆるディスクローズするときの基準とアメリカのSECでやっている基準と二つあって、SECの方がはるかに厳しいと。ですから、銀行が倒産をして、ふたをあけてみたら今までの公表の不良債権の倍あったとか、いやいや中には十倍あったというようなことがありますね。その意味で、アメリカの基準がいいかどうかは別にして、このダブルスタンダードはより厳しい方向で早く公開基準といいますか、それを定めていく必要があるのではないかなと。
それと同時に、いわゆる破綻が非常に激しくなって進んでまいると、私はやはりどうもペイオフをしないというのが、二〇〇一年まではしないというのが閣議決定ですが、ある意味では公開を、ディスクローズを早めたりいろんなことをしながら、むしろペイオフをしないということが何だかぐずぐずしている大きな原因になってやしないかなというふうに思うんです。
この点、最後に大蔵大臣にそういう意味での今後の決意なども含めてお聞きして、何点か法律に関係するものは持っておったんですが、あっという間に時間が過ぎてしまいましたので薄井局長には大変申しわけないんですが、この辺で質問を終わらせていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114629X00419971127/98
-
099・三塚博
○国務大臣(三塚博君) ただいま前段の答弁で申し上げましたとおり、大蔵大臣としての責務は預金者保護であります。これに万全を期してまいりますことが我が国経済の生活の基盤がそこできっちりと担保されることであります。
それと同時に、金融システムの問題でございまして、本件についてしっかりとこの機構が維持されますように、不安がありませんように、産業の血液が順調に滞りなく流れてまいります限りまさに盤石になりますので、その方向で全力を尽くしておると、このことだけを申し上げ、答弁にかえます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114629X00419971127/99
-
100・峰崎直樹
○峰崎直樹君 終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114629X00419971127/100
-
101・志苫裕
○志苫裕君 もう既に午前中から取り上げられておりますが、相次ぐ金融機関の不祥事と破綻で、一体この世の中はどうなっているんだと、そんな印象ですね。銀行といえば昔から手がたいというものの代名詞で、あれは銀行みたいな男だとよく言われたものです、私なんか言われたことないけれども。これから一体だれを信用してお金を預けたらいいのか、それが率直に言って国民の気持ちだと思います。
大蔵省は破綻処理のシナリオをコントロールする能力を失ってしまったのではないか。大蔵省の金融行政の限界を超えたところで金融機関の破綻が起きているようにも思えます。住専問題や前回の証券スキャンダルの学習効果が余り上がっていませんね、皆さんは。そんな感じが強くいたします。
山一に関していえば、この会社は鳴かず飛ばずの会社だったわけではなくて、昭和四十年ごろには投信の失敗で日銀特融にすがりついて、また一連の総会屋事件では社長が捕まるとか退陣に追い込まれるなどのスキャンダルには事欠かなかった。株価は危機水準をもう超えていた。当然に大蔵省や監視委員会の網にかかってしかるべきだったわけです。
一方、十一月十六日の毎日新聞には根本的な経営改善策の骨子が掲載されておりましたが、記事のとおりであるならば大手証券の一角の崩壊がもう既に鮮明になったということにもなります。そこへもってきて、けさの東京新聞、真偽のほどはもちろん私は確かめてはおりませんが、山一の前会長、元会長二人で六十万株近く自社株を大量に売り抜けたという話が載っていますね。これの事実関係はわかりませんが、何かコメントがあればお伺いしたいし、もし事実だとすれば課税関係はどうなっておるのかもあわせて税務当局に聞きたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114629X00419971127/101
-
102・堀田隆夫
○政府委員(堀田隆夫君) お答えを申し上げます。
ただいま先生が御指摘になりましたような報道がなされていることは私ども承知しております。ただ、現時点においては本件に係る事実関係をまだ確認しておりません。また、行平前会長は本日午前の国会で御本人の口から持ち株の売却はしていないという御説明をされているようでございます。
役員などの会社関係者が重要事実の公表前にその当該事実を知りながら自社株を売買するという場合にはインサイダー取引で違反するということになります。私どもとしては、仮にその取引の公正を害するような証取法違反があった場合には厳正に対処していく必要があると考えているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114629X00419971127/102
-
103・志苫裕
○志苫裕君 午前中からしばしばお答えになっているけれども、まとめる意味で、この問題に大蔵当局はどのようにかかわってきたのか、できれば時系列的に少し整理をしてくれますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114629X00419971127/103
-
104・堀田隆夫
○政府委員(堀田隆夫君) 山一証券に対する調査等の経緯について御説明申し上げます。
山一証券につきましては、先ほど先生から御指摘ございましたように、いわゆる総会屋だけではなくて法人顧客に対する損失補てんの問題を把握いたしまして、その事実を解明いたしまして検察庁に対して先般告発を行ったところでございます。また、その告発後におきましても、そうした行為が社内で行われていた背景として内部管理体制上の問題があったのではないかということで、その点の報告を聴取してきたところでございます。
一方、いわゆる飛ばし行為につきましては、六月時点で具体的な報道が行われたこともございまして、私どもは山一証券に対しまして社内調査を指示いたしております。証取法上の問題があったかどうかという点から社内調査を実施して私どもに報告をするようにということで指示をしたところでございます。
その後、会社から明確な事実関係についての説明はございませんでしたけれども、ただいまお話しございましたように、十一月十七日に至りまして山一証券の社長から多額の簿外債務が存在する旨の報告を受けたということでございます。
私どもは、監視委員会と金融検査部の合同で二十五日からこの点の事実解明等を行うべく特別検査に入っているということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114629X00419971127/104
-
105・志苫裕
○志苫裕君 午前中もそうお答えになっているんですが、率直に言って皆さんは情報も遅いしアクションも遅いんですよ。その間にも預金者はなけなしのお金を預けて、下手をすればえらいことになったかもしれない、そういう時間を皆さんは率直に言ってのうのうとしておったと言えないわけでもない。
ここにあります十二月二日付のエコノミストは山一が怪しい、海外取引が問題だと論じておりますね。富士銀行も、先ほどあったように、その経営実態を十一月十七日の時点で承知していた。このエコノミストの販売は二十五日ごろですけれども、記事はその前にまとめられたと推認できますから相当早い時期にある程度の話が広がっていたことを意味する。知らぬは何とかばかりなりで、知らぬは大蔵省と監視委員会ばかりなりというんじゃ立つ瀬がないじゃないの、率直に言いまして。
大臣、何かコメントございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114629X00419971127/105
-
106・三塚博
○国務大臣(三塚博君) 私は、金融検査部も証券監視委員会も少ない態勢の中で精いっぱいのことをやっておると思っておりますし、そういうことで事態の対応、その前段の検査であり、監視委員会の調査というものが的確に行えるよう全力を尽くしてやっておると信頼を申し上げております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114629X00419971127/106
-
107・志苫裕
○志苫裕君 この間の記者会見で大蔵大臣も一生懸命にやっているんだというお話ですが、残念ながら世間様はそうではない、少し手抜かりがあったんじゃないかなと、率直に言いましてそう思っていることは間違いがない。
とにかく、海外市場の信頼の下落が背景になっているようにも思われますが、この不信感をどうして克服するのか。いずれにしても資金の投入が不可欠の事態でありますけれども、そのルールづくりも急がなければならない局面ですね。
先ほど来ありましたように、まずは情報開示が不可欠だ。責任の所在も明確にしなきゃならぬ。その上にさまざまな手だてを講ずるんですが、今、預金保険法が出ておりますが、それも一連の出来事に対する手当てだと思います。また、山一のこういう事態を踏まえて、来国会には新たな法案の用意をしたいという報道が流れておりますが、この国会に預金保険法を出して、また来国会に変えるというのなら、いっそのことこの預金保険法は一遍下げて、もっと十分なものにして出した方が朝令暮改にならぬでもいいような気がしますが、その辺はいかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114629X00419971127/107
-
108・三塚博
○国務大臣(三塚博君) 本件につきましては、預金保険法改正案を提出いたしました。提出した者としてぜひとも今国会において成立を期していただきますように、こうそれぞれのところに御要請を申し上げておるところ、委員会の審議も衆議院段階、まだ入っておりませんが、ぜひその御審議をお取り組みできますようにお願いを申し上げておるところであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114629X00419971127/108
-
109・志苫裕
○志苫裕君 この法案との関連でいきますと、山一は海外支店を使って簿外取引をし、それが自主廃業の原因になったとされておりますが、本店、支店の資金移動及び本店、支店の取引の把握、指導監督及び課税関係は今まで制度上どうなっておったんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114629X00419971127/109
-
110・原口恒和
○政府委員(原口恒和君) 金融検査におきましては、金融機関の資産の財務内容等についていろいろな方面から実態把握を行っております。そういう中で支店における帳簿等も見ておるわけでございますが、今回の形は表面上は通常の取引の形態をとっておると、また支店の帳簿そのものといいますか、支店の運用としては正常な形をとりながら、その運用先の銀行を通してさらにその先の会社等において簿外の取引を含んでおったということでございますので、そういう通常の検査では把握をできなかったということはございます。
今後、特別検査の中でその実態をできるだけ解明してまいるとともに、どういう点を見るべきかということも含めてまた検討していきたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114629X00419971127/110
-
111・志苫裕
○志苫裕君 いや、本店、支店の資金移動や取引が把握できるし、指導監督権もあるし、課税関係もちゃんとした仕組みがあったのだということになればこういうことにならなかったわけなので、そうするとどこに手抜かりがあったことになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114629X00419971127/111
-
112・原口恒和
○政府委員(原口恒和君) 資金移動について一般的に検査をする仕組みといいますか、責任は検査部及び個別の事柄でございますれば証券監視委員会にありますが、そういう検査の中で裏に隠されておった、あるいは支店の帳簿そのものではなくて、支店から運用した先のまた先において隠されておったということで把握できなかったということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114629X00419971127/112
-
113・志苫裕
○志苫裕君 大蔵省の目をごまかした不届きなやつですね、本当に。わかりました。
法案の質問を若干続けましょう。
これによりますと、輸出入に係る荷為替手形というんですか、あるいは銀行自身の為替取引、証券会社を通じた対外証券取引はこの法案の対象外になっておりますが、これらへの適正課税はどのような扱いになるんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114629X00419971127/113
-
114・薄井信明
○政府委員(薄井信明君) 今回の資料情報制度のもとにおきましては、すべてのお金の動きにつきまして報告を求めるということにはしておりません。御指摘のように、荷為替手形といいますか、輸出入貨物等につきましては、それに伴ってお金が動く場合には情報は要らないというようになっております。また、金融機関における信用状の発行手続だとかあるいは荷為替手形の取り立ての際の船荷証券等の運送書類、こういったものの検査等も厳格に行われるということですので、ここでは不正は行われにくいと見ております。
このように、物の動きだとか銀行間あるいは証券の公正な金の動きが考えられる部分については情報は要らないということに今回の制度ではしてございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114629X00419971127/114
-
115・志苫裕
○志苫裕君 自由化の一方で、二百万を超える海外送金については、ここにありますように、銀行や郵便局あるいは税務署への調書の提出と送金する本人確認の仕事がふえるわけですが、送金する本人は口座による場合を除いて告知書を金融機関の営業所長等に提出しなければならないとなっておりますね。
ちょっと意味がわかりにくいんですが、これはどういう目的での送金を想定しているんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114629X00419971127/115
-
116・薄井信明
○政府委員(薄井信明君) 送金の目的との関係で申し上げますと、先ほど申し上げましたように、例えば輸出入の関係だとか金融機関間というようなものを除いて、それ以外のものは選別せずにすべてのものを対象にしたいと思っております。これを選別しようとしますと、金融機関がそれぞれの送金がどういう目的のものかを確かめないといけない。それは事実上不可能ですので、明らかに関係のないものを外してその他のものはすべて情報を出していただきたいと思っております。ただし、少額のものまでお願いするのは気の毒ですので、二百万円という線を切ってあるということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114629X00419971127/116
-
117・志苫裕
○志苫裕君 先ほど同僚議員が資料情報の数量的な見通しを尋ねたのに対して数百万通という見込みだというお話がありましたが、いずれにしても膨大な量になるでしょう。資料情報がますます蓄積されていきますが、適正課税をする上での実際の効果が期待できるならそれも選択する道だと思いますが、必要な税務執行体制については大臣から万全を期してやってもらいたい、私からも要望いたしておきます。
それで、さっき牛嶋議員と納番制のことでやりとりがありましたが、納番制度を導入すれば個人については手続はある程度簡略化できるんじゃないですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114629X00419971127/117
-
118・薄井信明
○政府委員(薄井信明君) 納番制度のよい点は、例えば薄井信明何番というふうに決まっておりますので本人確認というものが要りません。そういう意味で、委員が御指摘のように、納番があればそれはこういう制度をつくる上で極めてやりやすくなると思います。
ただ、納番そのものの問題についてはまだ日本ではすべての問題をクリアしていないと思いますので、納番がない中で今回のような制度を構築させていただいたということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114629X00419971127/118
-
119・志苫裕
○志苫裕君 先ほど牛嶋委員と局長のやりとりが長々とありまして伺いました。局長もくどくどと御答弁があったけれども、一口に言うとなかなか導入は面倒だという話を言っておるんだね、あなたは。これは前からの宿題なんですよ。私なんかばかの一つ覚えでいつでもこれを言っているんです、十年も。これは宿題なので、そろそろ実行すべき時期ですよ。税務当局としてもメリットがない話じゃないので、あなたも面倒な理屈をつけて断っていないで、はいはいと踏み切ってやるべき時期に来ていますよ。どうですか、その辺は。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114629X00419971127/119
-
120・薄井信明
○政府委員(薄井信明君) 税制を担当する主税局あるいは税務を担当する国税庁にとりまして、納税者番号があればそれは便利であるということは委員御指摘のとおりでございます。
ただ、一方で、先進国でもイギリス、ドイツ、フランスにおいて納税者番号がない。そのない理由は、先ほど申し上げたようなプライバシーを初めいろいろな国民的な議論があっての結果でございます。したがいまして、日本でもその辺を含めて御議論いただいた上で導入されるのであれば、私どもは喜んで活用させていただきたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114629X00419971127/120
-
121・志苫裕
○志苫裕君 私もこれはもういつでも言うんですが、特に今、財政構造改革でとにかく歳出にあれだけの厳しさを求めるわけですから、一方で歳入についても徹底した確保を図らぬといかぬのです。それにこの納番制度というのは大変有力な手だてになるはずで、財政構造改革を言う時期ですからこの際思い切って踏み込んでいくべきだと私は思います。
私は、前国会では村山総理に消費税の引き上げの締めくくりの段階で大分決断を求めたんですが、あの人もわかったようなわからぬことを言って、だけれども最後は前向きに対応しますというので前は向いてくれたんですが、大蔵大臣、どうでしょう。この辺で一歩踏み出しましょう、与党の宿題にもなっておるんですから。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114629X00419971127/121
-
122・三塚博
○国務大臣(三塚博君) 志苫委員のかねがねの本件に対する取り組み方についてはよく承知をいたしておるところであります。
物事を決めるときに極めて重要なことは国民的な合意、その合意が見とれるところまで執行部が全力を尽くして分析してまいらなければなりません。
先ほど来の御論議の中で指摘されました諸問題については、より具体的かつ精力的に検討を進めていく必要があると痛感いたしておるところです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114629X00419971127/122
-
123・志苫裕
○志苫裕君 プライバシーの保護を前提に置きまして、納番がいいのか社会保障番号がいいのか、あるいは先ほどあった住民基本台帳のネットワークシステムの活用がいいのかはこれはまたいろいろ一長一短があるでしょう。また、住民がどれが一番なじみがいいのかもあるでしょう。でも、これはやっぱり一歩前へ出るということを大前提にしてもらいたい。
主税局長、これはあなたが寝ても覚めても一生懸命やらなきゃだめですよ。さっきの牛嶋さんへの答弁のようにできるだけ逃げよう逃げようとしてはだめですよ。これはまたこの次にやりますから、そのときまでにいい返事をしてくださいよ。
租特の法案でちょっと一、二間。
これも私思うに、租特があるからこんなややこしい法案がまた要るので、いっそのこと租特をなくしてしまえばこんな法案は要らないんですね。それはゴム風船の一方を押せば一方が膨れるように、あの中の空気みたいに絶えず抜け道を探して税金を逃れて歩くやつがいるんです、どこの世の中にも。ですけれども、その人たちが悪用しやすいような租特をつくるからこういうまた使わぬでもいい頭を使うことになるんだから、いっそのこと租特をやめたらどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114629X00419971127/123
-
124・薄井信明
○政府委員(薄井信明君) 税制の観点からいいますと、確かに非課税措置がないということは一つの見識であろうかと思いますが、経済がこれだけグローバル化し、各国の企業、日本を含めてですが、その資金調達の方法が多様化しております。日本の産業あるいは企業がユーロ市場から資金を調達する、これはどうしても必要な手だてだと思っております。その際に、他国においてはこの種のものにつきましてはすべて非課税としております。日本だけがこれを課税にした場合に、日本の企業が資金調達できなくなる。つまり、ユーロ市場で資金を調達できなくなることが日本経済全体にとってマイナスであると思っております。
そういう意味では、法律上は租税特別措置の形はとっておりますが、先進諸国の一角を担っている我が国の産業あるいは経済にとってこの非課税措置はやはりどうしても必要なものと思います。ただし、それが国内の人間に悪用されるのは適当でないと思います。したがいまして今回のような本人確認制度を設けたということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114629X00419971127/124
-
125・志苫裕
○志苫裕君 しかし、局長、税金逃れをするような不心得な日本人のために海外の証券会社や銀行にこの余計な作業をお願いすることになりますと、そんな面倒なことを言うのなら日本の債券を扱わない、こういうことになりませんか。そうなれば、せっかくの国外債の市場をつぶすことになってしまう。これはどうなりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114629X00419971127/125
-
126・薄井信明
○政府委員(薄井信明君) 委員の御指摘になったその点がこの制度の最大のポイントでございまして、この制度をつくろうということを言い出した途端に関係者は、それではもう日本では発行できなくなる、そういう面倒なことをさせられるならば、本人確認をさせられるならば日本の企業が発行した債券はユーロ市場では売れなくなるということを言われました。
そこで、私どもは世界各国のやり方を勉強したわけです。特に、アメリカがこの種のことをやっております。アメリカも外国人が買うものについては非課税にしておりますが、国内、アメリカ人が買うものは課税にしております。そのときにどういうシステムをとっているかということを調べますと、ユーロ市場において居住者か非居住者かということを判別させる。例えば、住所とか氏名はもう結構ですと、居住者か非居住者かということを確認させる、こういうシステムをユーロ市場の中にやらせているというか、ユーロ市場の方がそれを受け持って対応しているという実態があります。
そこで、日本もその仕組みを利用するというか、乗りまして、アメリカがやっているのと同じような形での本人確認、本人確認といっても非居住者性だけなんですけれども、これをさせる。しかも、何度もしないで済むように事務負担が少なくて済むような工夫もさせていただきました。その結果、市場関係者からこれなら大丈夫であるというお墨つきをいただいておりますので、まさに委員御心配の点が我々が一番苦労したところであるということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114629X00419971127/126
-
127・志苫裕
○志苫裕君 それにしても、利払いごとに本人の確認を求めることになるわけですが、これなんか一遍でいいとか、何かそういううまい方法は考えつかないんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114629X00419971127/127
-
128・薄井信明
○政府委員(薄井信明君) この点も、お見通しのようにというか、関係者から毎日本人確認するのではとてもというお話がありました。そこで、そこについての工夫といたしまして、海外のこれを扱う金融機関ごとの利子受領者がすべて非居住者である場合には最初に確認したら後はもう結構ですよという仕組みをとらせていただいております。
ただ、非居住者と居住者が混在するケースについては、その比率を報告してもらうということになりますので、そこはやや複雑なところは残りますが、一回限りという手法も制度の中に取り入れさせていただいております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114629X00419971127/128
-
129・志苫裕
○志苫裕君 法案とは直接関係ないが、一、二問。
財投の融資残高といいますか、財投の残高がどれぐらいになっておって、そしてたくさんある財投機関では中には焦げついて成績の悪いのがありますね、これの焦げつきはどれぐらいか、返済が滞っているのはどの程度の状況になっていますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114629X00419971127/129
-
130・薄井信明
○政府委員(薄井信明君) 突然の御質問で私自身その辺の実情、数字はわかりませんので、後ほど調査してお答え申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114629X00419971127/130
-
131・志苫裕
○志苫裕君 不良債権を抱えているのは民間の金融機関とは限らぬので、政府も、特に特別会計は不良債権を抱えておる、特に財投機関は不良債権を抱えておるのも随分ありそうだと。この間、総務庁だか会計検査院だか、どこかから指摘がございましたね。これは適当な機会に報告をしてくれませんか。財投というのは大蔵委員会でも余り議論しない。一般会計予算よりも大きいぐらいのものなんですが、しかもそれが七十も八十も機関があるものですから議論しない。そうこうしているうちにどんどんそこに資産もたまりますが、一方で不良債権もたまる。何のことはない、政府も立派な不良債権を抱えておることになつちゃうわけで、これはしかるべき機会に報告をするような手だてにしてください。大蔵委員会は大蔵関係の特殊法人なり金融機関だけしか対象にしませんけれども、金融全体となりますとほかの省庁所管でもこの委員会は関係あるわけですから、これは大臣、報告するルールをつくってください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114629X00419971127/131
-
132・三塚博
○国務大臣(三塚博君) 承知しました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114629X00419971127/132
-
133・志苫裕
○志苫裕君 それから、この間私は財革法の審議にもかかわったのですが、そのときにこれだけ歳出を切り詰めるのなら、財政の収支均衡というのならもう少し歳入の方でも工夫したらどうだと、今までのルールにこだわらないで。そこで一つだけ例を挙げたのが膨大な二千億ドルと言われる外為特別会計に外貨準備高が平成九年末で二千二百八十二億ドル、一ドル百二十五円としますと二十八兆円。これはアメリカの財務省証券で運用しているらしいんですが、これは金利五%。仮にこの五%で外貨準備が回っているとしますと、収益は実に二千億ドル、ですから月百億ドルぐらいになります。何のことはない、一年間に軽く一兆円を超える収益があるわけですが、この特別会計がこれだけの金融資産をため込むには一般会計がさまざまな形で寄与しているわけです。ところが、そこで収益が上がっても一般会計には何も入ってこない。一方、国債は一般会計がひとりでこの返済を賄うというまことに損な役割をしているんですが、特別会計で運用した収益が一般会計に入るというルールをつくってもいいんじゃないですか。それはどうでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114629X00419971127/133
-
134・寺澤辰麿
○政府委員(寺澤辰麿君) 御承知のとおり、特別会計は財政法の規定に基づきまして、一般の歳入歳出と区分して経理する必要がある場合に法律をもってそれぞれの趣旨、目的に従って設置をされておりまして、この経理は一般会計から区分されているということでございます。したがいまして、一般会計と特別会計の間の繰り入れ、繰り戻し、特別会計の一般会計への納付も含みますけれども、につきましては法律の根拠が必要となっていると。
それで、今御指摘の外国為替資金特別会計につきましては、金融収益を含む決算上の剰余につきまして予算の定めるところにより一般会計に繰り入れ、残余の部分については積立金として積み立てることとされているわけでございまして、平成九年度につきましては九千三百億を一般会計に繰り入れておるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114629X00419971127/134
-
135・志苫裕
○志苫裕君 一般会計と特別会計の間には国境があってえらい壁があって簡単に行き来できないんだというお話は前から伺っておるんですが、そういう仕組みを変えようというのが財政構造改革なので、そうこだわらないで、これはそれを取り込む方が一般会計のために、国家のためにいいんだったらその辺は大胆に見直してもいいじゃないかと。
私は外為だけ言いましたけれども、これはそのほか特別会計、たくさんあるわけでして、しかも皆さんは財政赤字の計算をするときには特別会計も事業会計もみんな仲間にして財政赤字がこれだけあると言うんですが、その収益を見込めということになりますと国境があってだめだと言うんでしょう。そんなわけのわからぬ言い分はないので、直すものは直しなさいよ。この辺はどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114629X00419971127/135
-
136・寺澤辰麿
○政府委員(寺澤辰麿君) 金融収益を生むような特別会計につきましては、例えば産業投資特別会計、都市開発資金融通特別会計がございますけれども、これらはその収益を新規の融資財源に充てるというような形になっておりますので、そういったものをすべて一般会計に入れることがいいかどうか御議論があると存じますけれども、先生御指摘のように、現在非常に危機的な財政状況でございます。個別の特別会計の剰余金等につきましては、その性格に応じて一般会計に繰り入れを現に求めているものもございますが、求めていないものもございます。また、特別な立法措置をいたしまして特例的に一般会計に御協力をいただいたこともございます。
そういう経緯を踏まえまして、今後特別会計の剰余金、積立金について、個別の特別会計の趣旨、目的等を踏まえながら、今後とも問題意識を持って勉強してまいりたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114629X00419971127/136
-
137・志苫裕
○志苫裕君 いろいろ聞きましたが、無理に断っておらぬで検討しますというぐらいのことを言いなさいよ、あなた。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114629X00419971127/137
-
138・寺澤辰麿
○政府委員(寺澤辰麿君) 問題意識を持って勉強すると申し上げましたのは検討するという意味でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114629X00419971127/138
-
139・志苫裕
○志苫裕君 終わります。ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114629X00419971127/139
-
140・笠井亮
○笠井亮君 日本共産党の笠井亮でございます。
先ほど来、山一証券の問題あるいは北海道拓殖銀行をめぐる問題を初めとして議論があります。私は、あらゆる選択肢という御答弁も含めて伺いたいことがいっぱいあるんですけれども、時間の関係でその問題は別途の機会を見て伺うことにしまして、きょうは税制関係の二法案に限って伺いたいと思います。
まず、内国税の適正な課税確保のためということで国外送金調書等の提出を義務にする問題でございます。
外為法の改正によって国境を越える資金の移動、それから資金の調達、運用が欧米並みに自由化、国際化されることになるということでありますが、これに伴って増大が懸念される租税回避行為、脱税について薄井主税局長は衆議院の大蔵委員会での答弁で具体的には三つのケースということを例示されていたと私は会議録で拝見しているんです。一つは、簿外の資産を海外移転することが容易になる。それから二つ目に、海外預金口座の開設が円建てでできるようになって、そこで発生した所得について適正な申告がされなくなる。それから三つ目に、クロスボーダー取引を利用した海外への売り上げの除外や架空経費の計上などが容易になる等々があるということを挙げられました。
これらを防止するための措置が今回の告知書本人確認、そして二百万円を超える金額の国外送金の際の調書提出義務づけということだというふうに理解してよろしいんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114629X00419971127/140
-
141・薄井信明
○政府委員(薄井信明君) いわゆる資料情報制度を私どもが発想いたしましたのは、この春、外為法の審議の中で、あるいは外為法の自由化といいますか、為替管理の自由化ということを前にして、税制の立場から考えますと、あるいは課税する立場から考えますと、これまでは外為法で守られていた部分が取っ払われるわけですから、皆さんそう悪意でやるとは思いませんけれども、悪意で脱税しようとすればしやすくなる状況になることは間違いないわけでして、それをいかに適正に把握し、的確に課税している人との間の公平を保てるかということが私たちの問題意識でございました。
したがいまして、いろんな手法があろうかと思いますが、我が国の現行制度の中で、かつ為替の自由化という望ましい方向を阻止しない形でどういうものがあり得るかという検討の中から生まれたのがこの資料情報制度でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114629X00419971127/141
-
142・笠井亮
○笠井亮君 春の外為法の改正の議論というのを私も会議録で読ませていただきました。局長もあのときは百万円と言われて、それで午前中もありましたアメリカ、フランス並みの水準だというふうに言われていたのに、今度は二百万円ということで緩められたこと自体、それ以下に分散して送金されて不正が行われたら把握できなくなるという問題も先ほど議論があったところでありますが、私はこれ自体大いに不十分だというふうに思うんです。
いずれにしても、局長は先ほどの答弁でこのことによって今後の端緒とするということを言われましたが、つまりは租税回避行為、脱税を防いでいく上ではさまざま検討されたけれどもこれですべてではなくて、いわば一部の措置であって万全とは言えないという御認識はあるんでしょうか。その辺はいかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114629X00419971127/142
-
143・薄井信明
○政府委員(薄井信明君) 御存じのように、我が国の税制の中心に位置づけられます所得税、それから法人税、法人税というのは法人所得課税、この個人と法人の所得課税が、我が国の税制の中心にあるわけですが、この所得課税につきまして、これを中心にといいますか、自主申告制度になっております。私ども、それぞれ国民全員がこの国をつくり、あるいは地方公共団体をつくっている以上、その費用は自主的に自分で申告して納税する、こういう前提でつくられております。
その自主的な申告をまずは私ども正しいものと考えるわけですが、所得に対して課税するということは極めて難しい面がございまして、特にこういうふうに経済が複雑化し国際化していく中で、本人自身も本当の所得が何かというのは難しい面も出てきております。それから、悪意の人は悪意の脱税をしやすくなっている面もあろうかと思います。そういう意味で、所得というものを申告してもらう制度になっている中で確実に把握するというのはなかなか手がない、すべて何をやってもどこかで難しい面は出てくるんだと思います。
そうなりますと、お金の動きを端緒として把握することによって所得だとかあるいは資産の実情を把握していくという手法しかないのではないかと思います。今回もそういう意味でこの条件といいますか、環境のもとで可能な限りのものを構築したのがこの制度でございまして、これを的確に運用し、またそれがどう機能していくかを注視してまいりたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114629X00419971127/143
-
144・笠井亮
○笠井亮君 本人が申告するという問題と、それから悪意があればということで、確実な手はなかなかないというふうに言われました。まさに今、金融機関の反社会的行動といいますか、違法行為が問題になっている。そして、先ほど部長は不正手口の巧妙化ということも言われたわけであります。そういう中で、端緒としてはこれしかないというふうな言葉で踏み込んで言われたわけですけれども、春の論議でも、産業構造審議会の小委員会ですか、七つの場合ということで課税回避行為の問題が取り上げられて、それについての質疑があったと思うんですが、課税回避行為を防ぐためにはやはりそのほかにも検討しなきゃいけない。しかし、まだ結論が出ていない、あるのかもしれませんが。そういう問題もやっぱりあると思うんですね。
具体的には今回結論に至らなかったけれども、こういう点についてはさらに検討するということがあれば端的で結構ですから挙げていただけませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114629X00419971127/144
-
145・薄井信明
○政府委員(薄井信明君) 今の答弁の中でこれしかないという表現を使いましたが、それは為替の自由化、経済が国際的に流動化、流動化といいますか相互に助け合って動き合うというものを生かしつつ、かつ課税の適正化を実現する、その両方をにらんでいくとこういう手法しかないというか、こういう手法が最も現実的であるという意味で申し上げたわけでして、委員御指摘のように、極めてきつい、税制当局からすれば適切だけれどもそれをやったら経済が動きにくくなるというものを考え出せばそれは幾らでも、幾らでもというのはこれも行き過ぎかもしれませんけれども、幾つか手法があると思います。そういう意味でのバランスの上ではこういうものなのかなと思っております。
なお、外国の制度を見ますと、それぞれの国内の税制が違いますからそのままそれを日本に持ってくることはできませんけれども、例えば外国にある資産について報告をさせるとか、そういったことまでさせている国はあります。ただ、日本の現状において、国内における情報制度との関係も含めて、あるいはプライバシーだとかいろんな問題を含めて、そこまで行くのは行き過ぎであろうと私どもは思っている次第です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114629X00419971127/145
-
146・笠井亮
○笠井亮君 私はある意味では、バランスということも言われましたが、この租税回避の問題についてはやっぱりあらゆる穴をふさぐための措置を検討するということが必要だと思うんですよね。
金融、為替の自由化ということが一方である、一方では課税があるということで、余りやり過ぎるとという話は先ほど午前中も金田先生がその辺の話をなさいましたけれども、私は外為法における規制緩和を租税制度が妨害するということでは全くないと思うんですね。
国家の活動といいますと、やっぱり政策目的を実現させるための規制というのがある、それから財政目的を実現させるための活動というのが大きくあって、そして課税というのは規制ではないというふうに思うわけでありまして、局長も言われましたが、これまで外為法があってそれが一定機能していたからこそ国際取引については租税法上の特別な執行強化を打ち出す必要はなかったかもしれないけれども、外為法で自由化するならば租税法上何かの措置を、やっぱり具体的にこれはあらゆる手だてを講じていくということが必要だという問題ではないかというふうに思うわけでございます。
そこで、大臣に伺いたいところなんですが、今、局長も触れられました。外国との関係ということで、従来の日本よりも外為法上の規制が緩い分だけ海外保有資産に対する課税上の捕捉手段というのが諸外国では日本と比べ物にならないほど充実しているということが既にもう常識ということでもなっているんじゃないかというふうに思うんですけれども、グローバルスタンダードということを言うならばこういう点こそもっと有効な措置を講ずべきではないかというふうに私は思うんです。
先ほどから納税者番号制度の問題がありました。これはもっとやれという御意見もありましたが、しかし局長自身もおっしゃったみたいにプライバシーの問題を初めとして問題点が多いということもお認めになっているわけですので、私はそういう点では日本の税制度と欧米とは違うんだということを踏まえつつも、ある意味では欧州型といいますか、ヨ一ロッパ型でいう資料収集制度ですね、網羅的なものがあるという点でより網羅的にされているということも踏まえて、納番制ということでいろいろ問題点があるならば、いっそのこと今回の法改正をさらに超える形で今後の検討課題としてより現実的な問題から手をつけるべきじゃないかというふうに思うんですけれども、その点での大臣の所見はいかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114629X00419971127/146
-
147・三塚博
○国務大臣(三塚博君) 経済のグローバル化、国際化ということの中で望ましい税制とは何かということであります。主税局長が言われましたとおり、その中における税制のあり方、また金融税制も含むという意味でございますが、この見直しが緊急課題であったことは事実でございます。
一方、国家間の税の競争が行き過ぎますと、金融等の足の速い活動への課税が厳しくなりましたり、労働、消費の足の遅い活動へ税負担がシフトする問題などが起きてくることは御案内のとおりであります。
税制は各国の主権にかかわるものでさまざまでございます。これは各国の歴史的、文化的背景をベースに異なるというふうに私は見ておりますが、一義的には望ましい税制が直ちに決められる状況にない国際状況も御理解をいただきながら課税の適正化を図る、税の公正を期する、国際間における我が国の立場、我が国の税制の中の整合性、こういうことの中で答弁をしてきたところと思っております。
今後によく勉強し、外国制度のよき点、またなじまない点、しかし基本的にはグローバルスタンダードでなければならないということだけは重要なポイントであろうと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114629X00419971127/147
-
148・笠井亮
○笠井亮君 その先で伺おうと思ったところをもう先にいろいろと御答弁いただいたのですけれども、問題意識としては私もおっしゃること、どういうことかということは今受けとめたところであります。
次に、非居住者の確認制度問題でありますが、これについては居住者、内国法人が国外で直接受領する民間国外債利子課税について総合課税のまま源泉徴収制度を導入するということで、居住者、内国法人が非居住者を名乗って租税回避行為をするということを防ぐためにチェックするということであれば、これは当然のことだと思うわけであります。
我が党は、外為法改正には反対しましたけれども、施行される以上、今回の二法案は最低限必要な措置だというふうに考えているところです。
そこで、さらに事態が進んで、今、政府が目指しておられるような形でいわゆる金融システム改革、日本版ビッグバンが進行するというもとで自由な資金が国境を越えて動いていく時代を目指しているということでありますけれども、そういうことに対応して、じゃ税制のあり方はどうあるべきかと、今、大臣が言われたこととラップしてくる問題であります。
私は、イギリスの雑誌の「エコノミスト」、ことし五月三十一日付を大変興味深く読んだんですけれども、まさにさっき大臣が言われたように、税は主権にかかわる問題だということを言った上で、グローバル化に伴って企業利益に対する税は消え去るかもしれない、それから課税は資本に対するものからより動きにくい労働者に対するものに移りつつあって個人所得税が重要な税収源になっている、さらに課税ベースが所得から移動しようもなく隠しようもない消費や財産に移動しつつあるというようなことも指摘をしておりました。
経済の国境がなくなると逃げやすい所得があるという問題でありまして、金融や資本は国外に逃げやすくなると。そうすると、それに対応するために税を軽くするという動きが出てくる。そうなれば、税収を確保するには逃げにくい労働や消費、個人所得への課税が重くならざるを得ないというようなことが議論されていると思うんですけれども、日本もこういう対応でやっていくかということなんですが、どうでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114629X00419971127/148
-
149・薄井信明
○政府委員(薄井信明君) 税制は何のためにあるかという根本に戻れば、自主的に国民が法律上決められた税額をきちっと納めていただくというところから成り立つということはもう当然のことなのでありますが、一方、悪意とかあるいは脱税ということを抜きにしても、経済がこれだけ国際化し、あるいはコンピュータライズした活動の中で所得の種類が極めて多数に複雑に広がっていく、こうなりますと、かつて所得課税、個人所得課税、法人所得課税のときに想定していた所得というものと現在あるいはこれからの所得というものはかなり質が違ってくるんだと思います。そうなりますと、所得の把握ということを前提にした所得課税というのはなかなか難しくなってくると。
私は一般論として申し上げているんですけれども、そうなると所得課税から消費課税へ移さざるを得ないというのが大きな流れだと思います。学問の世界では支出税という世界がありますが、これはその方が同じ担税力といいますか、負担能力をはかる上でも所得よりもいいのではないかというのが今や学界の中心になってきております。
ただ、現実の世界の税制を見ますと、まだ所得課税が中心となっておると。この所得課税を中心とした各国が今一番悩んでいるのが、委員御指摘のように、悪意があってもなくてもなんですが、なかなか所得というものが把握できない、わかりにくくなっているという現実でございます。
そこで、これをどう対応していくかというのがOECDの舞台でも議論されておりまして、これは二面に分かれますが、一点は資本などを誘導するために故意に税制を安くしている国があって、そこに経済が移っていってしまう。これは、悪貨が良貨を駆逐するという言葉がありますけれども、よその国が高い税率のところに低くすれば経済がそこに集中していく、あそこがあんなに安いんだから日本も安くしてくれという形でどこの国も税負担を安くしていくと国が成り立たなくなる、そういう面ともう一つは、ちょっと長くなって済みませんが、先ほど申し上げた所得課税の限界みたいなものがあるのではないかという指摘、この二つから今議論がされているわけです。
したがって、委員おっしゃるように、そういうことのないように所得を完全に把握したらいいじゃないかと言われても把握できない状況も今後考えられる、そういったときに税制というのはあるいは必要な税負担をどこから求めるかという基本的な議論をしなければいけない事態にもなってくるのではないかなと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114629X00419971127/149
-
150・笠井亮
○笠井亮君 OECDの問題も取り上げられました。OECDは、税の引き下げ競争の問題について、それを回避するということで新しい国際ルールづくりを今進めていて、来年の春を目途にということで報告書が出ると。日本も共同議長になられているということであります。私は、問題の性格上、一国だけではやっぱり対処できない、解決しないことは明らかなので、何らかの税制上のそういう意味での国際ルールは当然必要だというふうに思うわけであります。
最後に伺いたいことでありますけれども、今言われたような議論の中で、逃げ足の速い金融所得というのがビッグバンの中で一層逃げやすくなるわけですから、いわばそういう点ではそれをいかにつかまえて適正に課税して他の所得との課税の公平を図るかというのは、やっぱりこれは基本に据えられなきゃいけないというふうに思うんですね。
その点で一つ問題となるのは有価証券取引税の問題でありますが、これをめぐって専ら一方では株価対策とか景気対策という観点から廃止を求めた課税軽減の大きな動きが出てきていると。それからまた、これは違う議論ですけれども、かつて主税局におられて元財務官だった内海さんという方が十月十四日の日経新聞で有価証券取引税の全廃はビッグバンの不可欠の一部とまで言い切っておられるわけでございます。
これらの動きから、いろいろ議論は違うわけですけれども、有取税の撤廃の主張をされるということになりますと、本来の税のあり方、大蔵大臣が繰り返し強調されますが、課税の公平ということを言われる点から見るとこれはやっぱりおかしいんじゃないかというふうに思うんですけれども、最後にその点について、大臣、お答えをお願いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114629X00419971127/150
-
151・薄井信明
○政府委員(薄井信明君) 有価証券取引税について御質問でございましたが、日本の場合、証券税制といいますか、株の売り買いについてのキャピタルゲイン課税の問題もあります。そういったこととの全体の中でこの年末に答えを出していきたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114629X00419971127/151
-
152・三塚博
○国務大臣(三塚博君) 主税局長が言われましたとおり、本件については経済政策との整合性、また同時に租税という基本的な財政の根幹にかかわる問題、これをどう調和させるかという問題点がございます。
政府税調を中心に御論議をいただいておるところでございますが、十二月中旬ぐらいかなと思っておりますが、国会後であろうと思いますが、答申をいただくことに相なります。真剣な検討を高い見地からお願いを申し上げております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114629X00419971127/152
-
153・笠井亮
○笠井亮君 終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114629X00419971127/153
-
154・山口哲夫
○山口哲夫君 納税者番号制度から質問をいたします。
日本版ビッグバンを契機にいたしまして、資産を海外で持ったり、また多様な金融商品で資産を運用したり、動きが大変加速されると思います。いわゆる足の速い所得と言われる金融所得の捕捉がそうなりますとだんだん困難になってくるのではないかとも言われております。したがって、不公平がますます助長されるのではないかという心配もございます。
そこで、国税庁は課税逃れを防止するために納税者番号制度の導入が必要だというふうに考えているんでしょうけれども、衆議院の決議では背番号として利用することを禁止するという項目が加えられておりました。
そこでお聞きしたいんですけれども、この納税者番号制度というものをとった場合に、税以外に絶対に使用しないということが可能なのかどうなのか、この点についてお聞きしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114629X00419971127/154
-
155・薄井信明
○政府委員(薄井信明君) まず、納税者番号そのものは、けさの御議論にありましたように、むしろ税以外の世界でできる番号を使わせていただく方向で議論がされている。例えば年金番号、年金のための番号を使う可能性、あるいは住民台帳ですか、そちらでつくられた番号を使わせていただくということで番号そのものはむしろ税以外に生まれたものを使うのが検討の方向です。
そして、その納税者番号というものを税の世界で義務づけた場合に、例えば口座を開設するときに納税者番号を書く、そうするとその納税者番号が税務署に行き、税務署ではだれそれはどういう預金を持っているということがわかるといったような形で情報が集まります。この情報は税務署から外に出ないようにきちっと管理する、一方で税務職員がこれを漏らさないように守秘義務をきちっとかける、両面から外に集まった情報が出ないようにするということをすると。そういう意味では、委員が御指摘のように、税以外の目的に納税者番号によって得られた情報が出ていかないという制度であるというふうに認識しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114629X00419971127/155
-
156・山口哲夫
○山口哲夫君 ただ、今この納税者番号制度の問題でどうしてもプライバシーが守られないのではないだろうか、いわゆる背番号制になっていくのではないか、そういう不安があるわけですね。それが絶対にそういうことがない、もう税金以外には一切これは使わないで済むんだということがはっきりしてくればその議論というのはまた別な形になってくるのではないかなと思うんですね。
ですから、そこが大蔵省として確約できるのかどうなのか。もう少し踏み込んで言えば、こうこうこういう理由で絶対に安心してもらえるんだというところまで納得させるだけの自信があるのかどうなのか、その辺が国民は一番知りたいところではないかなと思うんですね。どうでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114629X00419971127/156
-
157・薄井信明
○政府委員(薄井信明君) 二つの側面から議論する必要があろうと思います。
現在も税務署に対しては個人の秘密に類するもの、所得なり何なりを報告していただいております。これは税務署に伝えるというこの関係では守秘義務といいますか、私どもは外に漏らしませんけれども納税者は税務署には秘密を知らせているという関係でありまして、その関係は今後とも維持されるんだと思います。それで、納税者番号ができたときにその情報がさらにふえる、個人から税務署へ送られる情報が今よりふえるということになります。そのことについて個人の方々が納得するかどうかというのが一つのポイントです。
それからもう一つは、今、委員の御心配のところだと思いますが、税務署に入った資料が外に漏れちゃわないでしょうねという問題です。漏れてしまっては私ども制度を持っている者としては問題だと思っておりますので、漏れないようにするにはどうしたらいいか、つまりプライバシーの保護をどうしたらいいかというのは十分に検討し尽くさないと導入できない問題だと思っております。
一方で、この番号制度自体を議論している自治省でも、いろんな行政に番号を使うわけですから、プライバシーとの関係はそちらの立場でも議論すると思います。委員御指摘のように、そこのところが完全なものが今あるということではないですけれども、漏れないシステムでなければ納税者番号としては適当でないと私は思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114629X00419971127/157
-
158・山口哲夫
○山口哲夫君 よくわからないので聞くんですけれども、そうすると納税者番号を実際にやろうとする場合に具体的に何を使うんですか。住民台帳のそれを使うのか、あるいは年金の番号を使うのか、それとも全く別につくるのか。ただ、先ほど御答弁の中でイタリアの問題が出ていましたね。イタリアは完全に税以外のものには使わないようなシステムになっていると。しかし、今、政府の方で考えているのはそれは対象にしていないんだというようなお答えがあったんじゃないかと思うんですけれども、そうしますと具体的にどういうものをつくろうとされるんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114629X00419971127/158
-
159・薄井信明
○政府委員(薄井信明君) 納税者番号制度という言葉で意味することとどの番号を使うかということをちょっと分けて考えていただいたらいいと思うんです。
どの番号を使うかというときには三つの方式が考えられます。一つは国税庁独自に番号をつくってしまう方式、もう一つは厚生省が今もうつくっております年金番号を使う方式、年金番号を貸していただく方式、それから三つ目は自治省が検討している住民基本台帳番号を使う方式、この三つがあります。
納税者番号制度というのは、その使わせていただく番号を納税者一人一人に例えば口座を開いたときにはその番号を記入しなさいということを義務づけるのが納税者番号制度です。その記入された紙をもらった金融機関は税務署にそれを届けなさいという義務もつけるのが納税者番号制度なんです。
したがって、やや私の説明が下手だったんだと思いますが、例えば年金番号を使う場合には年金の世界で使われている番号と同じ番号をこちらは使いますけれども、別に情報としては混乱しないわけです。税の世界でその番号だけを利用して、個人が申告というか取引をするときに、すべての取引ではありません、例えば資産を売ったり買ったりするようなときには名前の後にその年金番号を書いていただく、そうするとそれをもらった業者の方々は税務署にこの人がこういうものを買いましたよという資料を出していただく、税務署には番号入りの取引の状況がわかるようになるということです。その情報というのは外に出さないということです。したがって、番号自体がどれであるかということと納税者番号制度というのはちょっと分けて考えていただきたいと思うんです。
そうなったときに、先ほどのお答えの繰り返しになりますが、国税庁自身で番号をつくる方式はとらない方がいいというのが政府税調の考え方です。それはコストの面からいってもメンテナンスの面からいっても無理だろうと。やはりほかの世界でできたものを利用した方が世界の例からすると適当ではないかと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114629X00419971127/159
-
160・山口哲夫
○山口哲夫君 どうも私が頭が悪くてよくわからないんじゃないかなと思うんですけれども、また詳しく一回聞かせてもらいたいと思うんですけれども、今のお話から解釈すれば、例えば年金番号なら年金番号を使う、私が一〇〇〇番なら一〇〇〇番という年金番号を持っている、そうすると例えば所得で一千万、それから勤労所得で一千万、株の取引でまた幾らかあった、そういういろいろな所得について全部申告するときに、その年金の一〇〇〇番なら一〇〇〇番という番号で届け出をするということになれば、結局は国税庁の方としては山口なら山口の一〇〇〇番という年金の番号にすべてのものがちゃんと集まって事実上の納税者番号制度の結果がそこに出てくるというように解釈していいんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114629X00419971127/160
-
161・薄井信明
○政府委員(薄井信明君) 山口先生が申告するときにそれぞれに番号ということではなくて、山口先生が配当をもらった、あるいは利子をもらったというときに、配当を払った株式会社、それから利子を払った金融機関が、山口先生、こういう番号の方に幾ら配当を払いました、幾ら利子を払いましたという情報を税務署に出していくわけです。したがって、先生の方はもらった配当なり所得をそのまま書いていただければいいんですけれども、税務署の方は全部それをわかっていますから、先生がどれか抜いていると、あっ、これは脱税だと。そういう意味です。
したがって、この納税者番号の機能というのは、受忍義務として自分が口座を開いたり株式を買うときに自分の名前と住所のほかに番号も書きなさいと、それをもう法律の義務として書かされるわけです。それから、それを受け取った金融機関なり証券会社はその番号込みで税務署に情報を渡すということです。そうしますと、税務署の方はそれは機械で名寄せができます。一〇〇〇番なら一〇〇〇番というボタンを押すとずっと集まってくる。そうすると、山口先生が税務署は何も知らないと思って抜いて出せば、違うじゃないかと。それが納税者番号です。
ですから、我々にとっては便利ですけれども、納税者にとってみればちょっとこれはきついねということになるわけです。そこがプライバシーの問題でもあり、それから受忍義務の問題であり、煩わしいじゃないかという問題でもあると。
ただ、売り買いすべての情報をやっている国はありません。大きな資産だとか金融資産についてそういう情報網をつけている国が多い。国が多いと言いましたけれども、アメリカがそうやっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114629X00419971127/161
-
162・山口哲夫
○山口哲夫君 何となくわかりました。
要するに、脱税だけはきちっとなくしていかなければならないし、これから質問する総合課税制度というのは私はどうしてもとるべきものだと思うんです。そうなりますと、やはりこの納税者番号制度というものは必要になってくるかもしれない。しかし、一方では反対する意見も相当あるわけですから、そういう反対する人たちが納得できるような形で、プライバシーだけは絶対に守ることができる、税務以外のものについてはもう使用しないことができるということをやはり納得できるような、そういう内容をつくっていかなければいつまでも進まないんじゃないかなと思うものですから質問したわけです。
それでは次に、金融関連所得、これはやっぱり総合課税にするべきであるという立場で質問をいたしますが、金融に対する課税の見直しというのはやっぱり必要だと思うんですね。現在の税制というのは、配当は原則総合課税、利子は源泉分離課税、それから株式譲渡益はみなし譲渡益に課税する源泉分離課税とそれから申告分離課税の選択制とみんな違うんですね。
それで、金融商品の間でこういうように税制上のアンバランスがあるということは私は好ましくはないと思うんです。しかも、ビッグバンに伴いまして新しい金融商品がどんどん登場してくるだろうと思います。そうなりますと、一体これが利子所得なのかキャピタルゲインなのかますますわからなくなってくるところも出てくるのではないだろうか。そう考えたときに、やっぱりこの際金融関連所得はすべて私は総合課税にするべきであるというように考えるんですけれども、いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114629X00419971127/162
-
163・薄井信明
○政府委員(薄井信明君) そういう考え方は非常に理路整然とした有力な考え方だと思います。
ただ、日本でそれができない、あるいはしていないというのはそれなりの理由がありまして、簡単に申し上げると、例えば利子についてですが、利子所得というのはほとんどの方があるわけですが、利子で資産運用をしようとするケースというのは余りないと思うんですね。たくさんの運用をしようと思えば株式に投資するとか、違う形が多いと思います。それから利子は非常に口座数が多いです。ということは、その口座数というか、一個人をとってもいろんな銀行に預けていることがあり得ます。そういう非常に多数の利子が出てくるときに、それをすべて総合課税することが適当かどうかという問題があります。
これは、どちらかというと所得課税を累進構造で仕組んで急なカーブがいいと考えるか、それとも時代はフラット化していると考えるかでまた違ってくるわけです。端的に言いますと、世界の流れはフラット化でございます。フラット化していく中で総合課税する意味はだんだん薄れてきている。一方で、個々に勝負してしまって、申告しないで済むようにした方がお互いに便利であるという面もあります。したがって、どっちがいいかというのは今拮抗しておりまして、学界でも金融所得についてはむしろ分離課税の方がいいんじゃないかという説もあるわけです。ただ、日本のように余り細かいのはどうかなということかもしれません。現在、金融問題小委員会というのを税調でやってもらっていますが、まさにこの議論をさせていただいております。今のままでいいということではないと思いますが、じゃ総合課税にすることがベストかということについては、やや今は疑問も出てきているということです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114629X00419971127/163
-
164・山口哲夫
○山口哲夫君 ただ、利子の把握の仕方については、すべてのいろんな銀行の中で持っている預金に対して利子が出る、それをきちっと把握できるかというのは、これは先ほどの納番制さえしっかりしてくれば不可能なことではないですね。ですから、そういう面では私は問題はないと思うんですけれども、例えば株式の譲渡益、これは余りそういうことをやっていない我々庶民の立場から見れば、物すごいお金を動かして株でもってもうけているじゃないか、それが何でそんな低い税率で済むんですかという不公平感はぬぐい去れないと思うんですね。
ですから、そういうものもやっぱり納番制さえきちっとすればこれは総合課税にすると、一人の人間がいろんな所得があるわけですから。諸外国だって総合課税をやっている国はありますよね。カナダなんかもやっていると思うんです。そういう総合課税制度をとった方が国民全体が税に対する不公平感というのがなくなってくるのではないかなというふうに私は思うんですけれども、どうでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114629X00419971127/164
-
165・薄井信明
○政府委員(薄井信明君) 昭和二十五年にシャウプ税制を実施しました。このときには先生おっしゃるような総合課税をいたしました。理論的には、あるいは税制としてはもうこれ以上のものはない制度だったわけですけれども、それが二年にしてひっくり返りました。そのひっくり返った理由は、制度はそうなるんですけれども、おっしゃるような手法をとると譲渡損が出たときには引けるわけです。控除しないといけない。そうしますと、申告は損した人だけが申告してくる。得した人はどこかに逃げてしまう。これは納税者番号があればできるじゃないかとおっしゃられるかもしれませんが、例えば五年前にAという株を買って、きょうそれを幾らで売ったと。その一対一の関係というのはわからないわけですね、税務署にとってみれば。したがって、譲渡益という世界、特に株の譲渡益について、損が出たときは申告してくる、得したら逃げちゃうというのは納税者番号が入ってもできる世界だと思います。そうならば、売り買いしたら損でも得でもいいから何%かいただくという方が公平ではないかという考え方もあるわけです。今の制度はむしろそれに近いわけです。
どれが正しいということではないですけれども、いろんな経験の中から今の制度ができてきているということを申し上げたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114629X00419971127/165
-
166・山口哲夫
○山口哲夫君 これもわからないんですが、株式の譲渡益というものは本人が申告しなくても、証券会社がこの人間が今回の株式の売買によってこれだけの利益を上げたんだと、これだけの利益が上がったということは証券会社の方からきちっと申告できないものなんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114629X00419971127/166
-
167・薄井信明
○政府委員(薄井信明君) 五年前にB証券会社から株を買って、それを今度A証券会社で売ってしまえばA証券会社はB証券会社で幾らで買ったかわからないわけです。つまり、同じ証券会社の同じ窓口でやっている部分だけはわかるかもしれませんけれども、そんなことをしている人はいないんじゃないですか。いろんな窓口を使ってたすきがけにいろんなことを日々やっているわけですから、正確な情報は証券会社も持っていない。ただ、有力な顧客について、全部自分でやっている、任せてくれといってやっている部分についてはわかるかもしれませんが、そうでない部分はわからないということです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114629X00419971127/167
-
168・山口哲夫
○山口哲夫君 やっぱり株をやったことがないからわからないので、これはもう少し勉強させてもらいます。また教えてください。
それで、最後に、アメリカ、フランスは国外に銀行口座を持つ場合にも報告義務を課していますね。特に、アメリカは国外に総額一万ドルを超える銀行口座などを有する場合には名前と住所と納税者番号と口座情報などを税務当局に報告する義務がある。これは先ほども質問がありましたけれども、なぜ我が国の場合にはこれを法案から除外したのか。私は当然これはきちっと税務当局に報告する義務を課すべきだと思うんですけれども、どうでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114629X00419971127/168
-
169・薄井信明
○政府委員(薄井信明君) これはある意味で人生観というか、そういうところにたどり着くのかもしれませんが、所得課税、先ほど来申し上げている個人所得、法人所得の所得課税というのは、自分がどれだけ所得を稼いだかを自主申告する制度として制度ができております。
正しい申告がベストなんですけれども、そのためにどこに資産を自分が持っているかということを税務当局に知らせなければならないかどうかというのは別の次元の問題としてとらえる方もいるわけです。税務の立場からすれば何でも情報があった方がいいに決まっていますけれども、ちゃんと的確に申告している方がほとんどなのに、外国にある資産を全部税務署に届け出なさいということが、そこまで義務づけることがいいのかどうかということで国ごとに、あるいは時代ごとに資料情報の程度というのは変わっているわけです。
今回初めて送金したら情報をいただけるという制度を私どもいただきました。この制度は十年前だったらとてもできなかったと思います。何でそんなことまで報告させるのか、所得と関係ないじゃないか、金の動きだけなのに何で報告させるのかと我々は言われたと思います。しかし、時代が変わって、そういうものがないとおかしいということで今回認めていただいているわけです。
そういう意味で、先生おっしゃるようなことも当然やるべきだという考え方の方も、今もいらっしゃるでしょうし、将来出てくるかもしれませんが、私どもとすれば、ほかの制度との関係からして、今そこまで求めるのは無理があると思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114629X00419971127/169
-
170・山口哲夫
○山口哲夫君 ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114629X00419971127/170
-
171・石川弘
○委員長(石川弘君) 他に御発言もないようですから、質疑は終局したものと認めます。
これより両案について討論に入ります。——別に御意見もないようですから、これより直ちに両案の採決に入ります。
まず、内国税の適正な課税の確保を図るための国外送金等に係る調書の提出等に関する法律案について採決を行います。
本案に賛成の方の挙手を願います。
〔賛成者挙手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114629X00419971127/171
-
172・石川弘
○委員長(石川弘君) 全会一致と認めます。よって、本案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
次に、租税特別措置法の一部を改正する法律案について採決を行います。
本案に賛成の方の挙手を願います。
〔賛成者挙手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114629X00419971127/172
-
173・石川弘
○委員長(石川弘君) 全会一致と認めます。よって、本案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
この際、牛嶋君から発言を求められておりますので、これを許します。牛嶋正君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114629X00419971127/173
-
174・牛嶋正
○牛嶋正君 私は、ただいま可決されました内国税の適正な課税の確保を図るための国外送金等に係る調書の提出等に関する法律案及び租税特別措置法の一部を改正する法律案に対し、自由民主党、平成会、民主党・新緑風会、社会民主党・護憲連合及び新社会党・平和連合の各派共同提案による附帯決議案を提出いたします。
案文を朗読いたします。
内国税の適正な課税の確保を図るための国外送金等に係る調書の提出等に関する法律案及び租税特別措置法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)
政府は、次の事項について、十分配慮すべきである。
一 国外送金等調書の提出制度及び民間国外債の利子非課税措置に係る本人確認制度の運用に当たっては、外為法改正による国境を越える資金移動の自由化の趣旨を踏まえ、適正・公平な課税の確保に努めること。また、本制度の実施状況を十分注視しつつ、必要に応じ制度の適切な見直しを行うこと。
一 本制度の運用に当たっては、金融関係者の事務負担や利用者の便宜にも十分配慮するとともに、費用対効果を考慮に入れつつ、制度が実効性のあるものとなるよう税務当局における執行体制の十分な整備等必要な措置を講じること。
一 クロスボーダー取引を利用した租税回避等に対処するため、諸外国の税務当局との広範かつ十分な意志疎通を図り、税制に関する協力関係を強化すること。
一 税の捕捉を図り課税の公平を実現する観点から、プライバシーの問題や経済取引への影響等にも十分配慮しつつ、今後、納税者番号制度の導入について更に掘り下げた検討を行うこと。
一 金融取引の自由化、国際化に対応して、いわゆるグローバル・スタンダードの観点をも踏まえつつ、金融・証券税制について適切な見直しを行うこと。
右決議する。
以上でございます。
何とぞ御賛同いただきますようお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114629X00419971127/174
-
175・石川弘
○委員長(石川弘君) ただいま牛嶋君から提出されました附帯決議案を議題とし、採決を行います。
本附帯決議案に賛成の方の挙手を願います。
〔賛成者挙手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114629X00419971127/175
-
176・石川弘
○委員長(石川弘君) 多数と認めます。よって、牛嶋君提出の附帯決議案は多数をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。
ただいまの決議に対し、三塚大蔵大臣から発言を求められておりますので、この際、これを許します。三塚大蔵大臣。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114629X00419971127/176
-
177・三塚博
○国務大臣(三塚博君) ただいま御決議のありました事項につきましては、政府といたしましても御趣旨に沿って配意してまいりたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114629X00419971127/177
-
178・石川弘
○委員長(石川弘君) なお、両案の審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114629X00419971127/178
-
179・石川弘
○委員長(石川弘君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
本日はこれにて散会いたします。
午後三時十二分散会
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114114629X00419971127/179
4. 会議録のPDFを表示
この会議録のPDFを表示します。このリンクからご利用ください。