1. 会議録本文
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000・会議録情報
平成九年十二月十一日(木曜日)
午前十時二分開会
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委員の異動
十一月十八日
辞任 補欠選任
福本 潤一君 山下 栄一君
松 あきら君 但馬 久美君
十二月一日
辞任 補欠選任
阿部 幸代君 吉岡 吉典君
十二月二日
辞任 補欠選任
吉岡 吉典君 阿部 幸代君
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出席者は左のとおり。
委員長 大島 慶久君
理 事
小野 清子君
北岡 秀二君
日下部禧代子君
委 員
井上 裕君
岡 利定君
塩崎 恭久君
世耕 政隆君
田沢 智治君
本岡 昭次君
阿部 幸代君
江本 孟紀君
堂本 暁子君
長谷川道郎君
事務局側
常任委員会専門
員 巻端 俊兒君
参考人
東海大学体育学
部教授 山下 泰裕君
筑波大学体育科
学系教授 八代 勉君
日本スポーツ少
年団常任委員 恵美三紀子君
財団法人日本体
育協会会長 安西 孝之君
東京都地域婦人
団体連盟常任参
与 田中 里子君
大阪体育大学教
授 池田 勝君
社団法人日本プ
ロサッカーリー
グチェアマン 川淵 三郎君
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本日の会議に付した案件
○参考人の出席要求に関する件
○スポーツ振興投票の実施等に関する法律案(第
百四十回国会衆議院提出)(継続案件)
○日本体育・学校健康センター法の一部を改正す
る法律案(第百四十回国会衆議院提出)(継続
案件)
○スポーツ振興法の一部を改正する法律案(第百
四十回国会衆議院提出)(継続案件)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115077X00319971211/0
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001・大島慶久
○委員長(大島慶久君) ただいまから文教委員会を開会いたします。
まず、委員の異動について御報告いたします。
去る十一月十八日、松あきら君及び福本潤一君が委員を辞任され、その補欠として但馬久美君及び山下栄一君が選任されました。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115077X00319971211/1
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002・大島慶久
○委員長(大島慶久君) 参考人の出席要求に関する件についてお諮りいたします。
スポーツ振興投票の実施等に関する法律案、日本体育・学校健康センター法の一部を改正する法律案及びスポーツ振興法の一部を改正する法律案、以上三案の審査のため、本日の委員会に参考人として東海大学体育学部教授山下泰裕君、筑波大学体育科学系教授八代勉君、日本スポーツ少年団常任委員恵美三紀子君、財団法人日本体育協会会長安西孝之君、東京都地域婦人団体連盟常任参与田中里子君、大阪体育大学教授池田勝君及び社団法人日本プロサッカーリーグチェアマン川淵三郎君の出席を求め、その意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115077X00319971211/2
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003・大島慶久
○委員長(大島慶久君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115077X00319971211/3
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004・大島慶久
○委員長(大島慶久君) スポーツ振興投票の実施等に関する法律案、日本体育・学校健康センター法の一部を改正する法律案及びスポーツ振興法の一部を改正する法律案、以上三案を一括して議題といたします。
三案につきましては、先国会において既に趣旨説明を聴取しておりますので、これより質疑に入ります。
なお、本日は、参考人の方々から御意見を賜った後、質疑を行うことといたします。
まず、午前中は、東海大学体育学部教授山下泰裕君、筑波大学体育科学系教授八代勉君及び日本スポーツ少年団常任委員恵美三紀子君に御出席をいただいております。
この際、参考人の方々に一言ごあいさつを申し上げます。
本日は、御多忙のところ本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。
皆様方には、主にスポーツの振興について忌憚のない御意見をお述べいただきまして、今後の審査の参考にいたしたいと存じますので、よろしくお願い申し上げます。
それでは、議事の進め方でございますが、まず山下参考人、八代参考人、恵美参考人の順序でそれぞれ十五分以内で御意見をお述べいただいた後、各委員の質疑にお答えいただきたいと存じます。
なお、御発言は、意見、質疑及び答弁とも着席のままで結構でございます。
それでは、まず山下参考人から御意見をお述べいただきたいと存じます。山下参考人。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115077X00319971211/4
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005・山下泰裕
○参考人(山下泰裕君) ただいま御紹介いただきました東海大学の山下でございます。
国政に携わっておられます先生方を前にしまして、若輩の身で身が引き締まるような思いでございます。非常に緊張しております。
きょうは、スポーツ振興全般につきまして、私自身の体験を踏まえまして素直に話をさせていただきたい、こう思っております。
まず、私は小学校四年生で柔道を始めたんですけれども、小学校に入りましたときからもう人並み外れて体が大きく、しかも非常に元気がありました。元気があり余っていました。このあり余ったエネルギーをうまく発散させることができなくて、教室で暴れたり、物を壊したり、仲間をいじめたりして周りじゅうに迷惑をかけていたわけです。小学校四年生になりましたときには、何とクラスメートの中に、山下君が怖くて学校に行けないと登校拒否を起こす者も出てきました。
そういう中で、私の両親が、このままではうちの息子は大変なことになる、将来、人様から後ろ指を指されるような人間になってしまうんじゃないかと私の将来を心配しまして、柔道でもやらせたら少しは人に迷惑をかけないような人間になってくれるんじゃないかと、こういう母の勧めで柔道を始めました。
私は、柔道を通しましてすばらしい恩師とも出会いまして、柔道の道、人間としての生き方、また人間形成、これが柔道を通して少しずつでき上がってきて今日に至っているのではないかなと、こう思います。
私は、いろんなところで、主としてお子さんが柔道をやっている関係のお母さん方から、先生、どうしたら先生みたいに強くなれますか、こういうふうな質問を受けます。
私の答えはいつも決まっています。柔道を通して、あるいはスポーツを通して丈夫な体、強い心、礼儀、それから相手をいたわったり思いやったりする心、我慢すること、忍耐することの大切さ、力を合わせること、こういうことを学べば十分じゃないですか、お母さんこれ以上何を望みますかと、そういうふうな言い方をするんですけれども、なかなかお母さん方には理解していただけないようです。
でも、これが私はスポーツのすばらしさではないかなと、こう思っております。そして、これは現在の学校教育の中の勉強では身につけることができないことじゃないかな、しかし世の中に出ていったときには非常に大切な部分じゃないかなと、こういうふうに思っております。
実は、私が小学校一年生のときに東京オリンピックがありました。今、正面に座っておられます小野先生も出られまして活躍されましたけれども、このオリンピックは私にとりまして非常に強烈な印象がありました。
私は、中学校二年生のときの国語の時間に「将来の夢」という作文を書かされまして、その中で、ぼくは柔道が好きだ、一生懸命頑張ってオリンピックに出られるような選手になりたい、私の夢はオリンピックに出場してメーンポールに日の丸を仰ぎ見ながら金メダルをもらうことです、そして現役を終わった後は、柔道のすばらしさを世界の人々に広げられるような、そんな仕事がしたいということを書いておりました。
一言お断りしますと、私の日の丸、君が代には思想的なものは全くありません。多分、私が小学校一年生のときに、日本代表の選手が活躍してメーンポールに日の丸が上がって君が代が流れた、これが非常に強烈に心に残ったからじゃないかなと、こう思います。
自分の小さいころからの夢を実現できて、そして現在もその夢の中を歩んでいける自分自身を、私は本当に幸せ者であると、こう思っております。
もちろん、私はこの目標を達成するために、夢を実現するために全力を傾け、この目標を目指し、努力し、工夫し、また試合においては命をかけるつもりで戦ってきました。そして、すばらしい指導者ともめぐり会いました。また、東海大学という本当に恵まれた理解ある環境の中で学べ、働くこともできました。
私の経験からいいまして、世界をねらうには本人の素質、努力だけでは無理です。すばらしい指導者との出会い、そして恵まれた環境、思い切りそのスポーツに打ち込める環境が不可欠です。そういう意味で私は非常に幸運だったと、こう思います。
しかし、今日本は、すばらしい世界に通用するような指導者の育成、それから選手が思い切ってその競技に打ち込めるような環境づくりの面で言いますと、外国と比べて非常におくれている、これは私だけの思いではないと思います。今は現場の指導者の情熱に任せるばかりで、また一部の恵まれたスポーツでは違いますけれども、それ以外ですと、選手が安心してその競技に打ち込める環境はないと思います。
ちなみに、私の尊敬しております故松前重義前東海大学総長は、柔道をこよなく愛しておりましたけれども、私に一度も試合で勝ってくれと言われたことはありませんでした。いつもいつも私に言われたのは、柔道を通して、スポーツを通して世界の平和に貢献できる人間になってくれと、このことをいつも何度も何度も言われました。
私は、幸運にもロサンゼルス・オリンピックで自分の夢を実現できました。しかし、実は私は、不本意にも二回戦で軸足のふくらはぎを肉離れするというアクシデントを起こしてしまいました。非常に勝負師としては情けない、恥ずかしいことです。
準決勝を勝ち上がりまして、決勝まで上がりました。決勝を控えて控室におりましたら、私が二回戦を戦った相手の旧西ドイツの選手が私の控室に入ってきました。彼は申しわけなさそうな顔をして、山下、おまえが足をけがしたのはおれのせいか、おれが何か変なことをしたからおまえは足をけがしたのかと、こう尋ねてきました。私は正直に、いや違う、このけがはおまえと何も関係ない、これはすべておれが悪いんだ、心配しないでくれ、そう言いましたら、彼はちょっとほっとしたような顔をして、そして、ああそうか、もう一試合だから決勝頑張ってくれよと、こう言い残して私の控室を去っていきました。
決勝が終わって、自分の夢を実現できて表彰式に臨んだとき、私の足のけがを心配して、表彰台に登ろうとする私、表彰台からおりようとする私、この私に手を差し伸べてくれたのは決勝を争ったエジプトの選手でした。
我々は、オリンピック、世界選手権、こういった大会では、それぞれの国の代表として、その誇りと名誉を胸に戦います。徹底的に戦います。戦って戦って戦い抜きます。しかし、一たび試合が終わりますと、あるいは試合場を離れますと、同じような目標に向かって頑張っているからこそお互いのことが理解できる、お互いのことが尊敬できるんですね。
スポーツに国境はありません。宗教も人種も思想も関係ありません。私は柔道というスポーツを通して世界じゅうにすばらしい友達をたくさんつくることができました。もし信頼とか人間関係とかこういったものを財産として見ることができるのであれば、私はスポーツを通して非常に大きな財産を、宝を手に入れることができたんじゃないかなと、こう思います。
私は現役を引退した後、一九八六年に日本オリンピック委員会から派遣で、これは在外研究員制度というすばらしい制度です、費用は文部省から出ております、これで一年間イギリスに留学しました。そして、ヨーロッパの柔道について勉強する機会を与えていただきました。
先生方ももう既に御存じと思いますけれども、ヨーロッパでは至るところで、小さな子供からかなり年配の方々までが気軽に、楽しく、身近にスポーツを行える環境がありました。その雰囲気を見ておりまして、ヨーロッパの人々の生活にとってスポーツは不可欠なものだなということを私はヨーロッパの至るところで強く感じました。
日本でも青少年の健全育成、高齢化社会、健康で生き生きとした社会づくり等を考えますとスポーツの振興は必要不可欠でありまして、まだまだ日本はスポーツ後進国であると、こう感じました。そして、現在もそのための環境整備の必要性を強く感じております。我々大人にとりまして大切なことは、次の時代の子供たちに何を残してやれるかということじゃないかなと、そう思っております。
また、我々、強化に携わっている人間が直接関係しておりますナショナルトレーニングセンターの建設に関しましても、私が回ったほとんどの国々ですばらしい、国立にふさわしい立派なものができております。外国の友人の中には、こんなにお金持ちの日本でなぜナショナルトレーニングセンターの一つもできないのと、こういうふうに驚く者もおります。
話は変わりますけれども、実は私にはオリンピックに出場できそうなチャンスが三度ありました。一回目は一九七六年のモントリオール・オリンピック。残念ながらいま一歩力が及ばず、私は補欠で終わりました。二度目は一九八〇年のモスクワのオリンピック。このとき、我々選手は参加することができませんでした。日本はこのモスクワ・オリンピックをボイコットしました。三度目がロスのオリンピックです。
モスクワ・オリンピックには柔道から私を含め七人の代表が選ばれました。七人全員が初出場でした。しかし、この七名の中で四年後のロスのオリンピックに出場できたのは私だけです。オリンピックは四年に一度開かれます。見る側にとっては四年に一度です。しかし、大半の選手にとっては一生に一回のチャンスです。私以外の柔道の六名の選手、それから多くのモスクワ・オリンピック代表選手は一生に一度のこのチャンスを奪われました。
このモスクワ・オリンピックに関しまして、非常に残念なことがあります。同じくボイコットしましたアメリカ合衆国の当時大統領でありましたカーターさんは、USAのモスクワ・オリンピック代表のすべての選手と役員をホワイトハウスに招かれました。そして、なぜUSAがこのモスクワ・オリンピックをボイコットしなければいけないのかについて説明されました。そして、USAのために、西側の諸国のために、皆さんには申しわけないけれども私の決定を理解してほしいと訴えられました。そして最後に各テーブルを回られたそうです。私の友人のアメリカのコーチは、このときの写真を大事に自分の家のテレビの上に写真立てに入れて飾っております。日本では、日本オリンピック委員会から一枚の認定書が送られてきただけでした。日本と外国の国政に携わる方々のスポーツに対する認識、理解の大きな違いに非常に寂しい気持ちになったものです。今から十七年前です。
一九八二年には、当時副総理であられました故江崎眞澄先生が私の祝勝会に来ていただきました。そしてスピーチで、先日フランスでミッテランと会ったんだけれども、いきなり日本おめでとうと言われて戸惑ったよ、君の話から話が始まって、十五分間の会談が四十五分になったよと喜んで話されました。私の結婚式にも来ていただきまして同様の話をされました。実はその前年の一九八一年に、世界選手権、これはオランダで開かれましたけれども、私がここで史上初の二階級制覇をなし遂げました。それでフランス・スポーツアカデミーから一九八一年度のグランプリ、最高賞をいただいたわけですね。ミッテラン大統領が江崎副総理に会ったときに、日本おめでとうとそれで言われたということなんですね。
先日も、橋本総理がサウジアラビアに行かれましたときに、ファハド国王とワールドカップサッカーの予選の話が持ち上がったということを聞きました。私が見聞きする限り、国政に携わっておられます外国の方々のスポーツに対する関心は非常に高い、私はそう感じております。
私は、現在、大学教授の傍ら全日本柔道男子監督をしております。柔道は、日本オリンピック委員会からは、他の競技団体と比べますと多額の強化費用をいただいております。しかし、貧乏な団体です。この十月にパリで世界選手権が行われました。この世界選手権を行ったフランスと比較しますと、全日本柔道連盟、全柔連の年間の予算が七億五千六百万、フランス柔道連盟が二十二億、約三倍です。そのほかに、専務理事を含めまして連盟の幹部職員十名と地方連盟の技術指導者七十二名、計八十二名が国家公務員です。日本の全柔連の場合には、もちろん国家公務員はゼロ名です。
また、七月にイギリスの友人に会いましたら、イギリスの柔道やスポーツはこれから強くなるぞ、新しくナショナルトレーニングセンターもイギリス中央部にできるし、それからまた柔道連盟の予算も十倍ぐらいになるぞと喜んでおりました。イギリスの前首相メージャーさんも、現在の首相のブレアさんもスポーツの強化に対しての関心が高く、昨年のアトランタ・オリンピック惨敗がきっかけで、強化費が最低でも年間約五百億ぐらいは増加すると、彼はこう言っていました。
貧しい団体ですから、監督の私自身が、全柔連の主催する大会のスポンサーをお願いして各企業を回ったり、それからドクターやトレーナー、マッサー、メンタル、栄養等のスタッフを出していただけるように会社を回ったりしてお願いしております。非常にありがたいことに、私が頭を下げて回りますと、企業の中には、協力してくださるスポンサーもありますし、そういうスタッフを派遣してくださるところもあります。また私自身、ふだんからいろんなことでいろんな方に協力していただいております。
最近は、私が私自身のために一生懸命頑張ったことが、結果的に多くの方々に感動を与え、そして勇気づけた、そういうことで多くの方々が私に対して協力してくださるのかなと、こう思っております。
サッカーのワールドカップ出場、引退したテニスの伊達公子さん、大リーグの野茂選手、彼らの活躍は、日本国内のみならず世界じゅうの日本人あるいは日系の方々に明るい話題を提供し、そして我々に感動や夢や勇気、希望、そして誇りを持たせてくれたと思っております。来年二月の長野五輪では多くの日本選手が活躍し、子供たちから年配まで我々日本人に夢や感動を与えてくれる、私はそう信じています。そして、これらの日本選手の活躍は、人々のスポーツに対する関心を高め、興味を持たせ、生涯スポーツの発展にも役立つと確信しております。
時間がオーバーしましたけれども、どうも御清聴ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115077X00319971211/5
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006・大島慶久
○委員長(大島慶久君) ありがとうございました。
次に、八代参考人にお願いをいたします。八代参考人。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115077X00319971211/6
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007・八代勉
○参考人(八代勉君) 八代でございます。今お話しになりました山下さんのような華やかな経歴は全くございません。学校の体育とそれからコミュニティー、地域のスポーツの状況を身近なところではい回りながら調べている、そういう程度の者でございます。
今、スポーツのすばらしいお話がございましたが、私は特に、自分のフィールドとの関係で、地域におけるスポーツの振興をメーンのテーマにして少しお話をさせていただきたいと思います。余り話がうまくありませんので、ちょっと資料をつくっておきました。その概要のところをお読みいただけばいいんですが、一分程度で終わってしまいますので、少し説明させていただきたいと思います。
もう先生方の検討の中で、スポーツが人類の文化であるということについては既に語られ、十分理解されているというふうに理解しております。ただ、我が国の実態を見ますと、まだまだ文化という名にふさわしい状況ではないということも言えると思います。今、山下先生の方からスポーツの後進国、発展途上の国であるというような位置づけをなさいましたが、まさに私もそのように思っております。
文化だ文化だと最近特に言うようになったわけですけれども、スポーツがもたらしてくれるさまざまな効果とかベネフィットが期待できるほどスポーツをやっている人の数は多くございません。後で申し上げたいと思います。そして、もっと問題なのは、この十数年、東京オリンピック以降ですから三十年ぐらいになるんでしょうか、そのころスポーツ振興という言葉が世の中に初めて出たかと思いますけれども、いまだにスポーツ振興という言葉でお金をいただいておるような状況で、なかなか実際に言葉で言われるほど状況が変わっていないという事実をやはり直視しなければいけないと思いますし、いろんな調査を見ましても、特にこの十五年間ほど、それほどスポーツ実践者はふえていないんじゃないかという見方が私どもの一般的な見方でございます。そして、スポーツをやる人も、個人の自由でもあるわけですけれども、地域に根差したスポーツ活動が非常に少ないというようなことも非常に大きな問題点だと思っております。
もっと根本的なところへいきますと、スポーツに対する価値観の違いあるいは価値の置き方が非常に低い。主要五教科なんというのは教育でよく語られますけれども、もちろん体育は入っておりません。そんな意味では、きょう、こういうところでスポーツのことを論じてお話しさせていただくだけでも、職員室でたまに年に一回出てくる体育の話題に似た感じを持つわけですけれども、そのような位置がまだまだ続いてきている。これをやはり変えていかなきゃいけないというのが私の根本にございます。
したがいまして、我が国におけるスポーツ振興の方向としては、私どもが言っているような、生活の中に溶け込んだ、文化という名にふさわしい状況をやはり時間をかけてつくり上げていくことである。その事実をつくっていくということは、別の言葉で言えばスポーツ人口をやはりもっとふやしていく。そして、特にスポーツが与えてくれる社会にとっての便益、後で申しますが、社会的な便益を上げていく。私は、その中で特に地域社会の再構成といいましょうか、コミュニティーの形成、町づくり、これが非常に重要なベネフィット、便益だと思っておりますけれども、そういうものを目指していかなければいけないと思っております。
具体的には、地域に根差した、そして住民のボランティア活動をもっともっと多く用いた、ボランティア活動を基軸としたスポーツの振興が求められる。そのためには、住民の活動の拠点となる身近な施設の充実は何より必要なことでございますし、住民活動を支援するためのお金も欲しいなと思っておりますし、さらに、住民のボランティア活動だけではなかなか事は進みません。そのボランティアを束ね、組織したりあるいは調整をする、そういうスポーツの専門家をぜひコミュニティーレベルで養成あるいは配置していただきたい、こんなことを思っております。これが私の申し上げたかった概要でございますが、もう少しございますので、少しお話をさせていただきます。
もう周知のことでございますが、スポーツは人類の文化とされています。特にその中に、さまざまな個人的あるいは社会的な便益をスポーツがもたらしてくれるからというふうに私もとらえております。特に個人については、健康や体力の問題にしましても、今や生きがいだとか交流、さまざまな個人にとっての便益というのはよく理解されておりますけれども、むしろ政治が関与し、あるいは行政がたくさんのサポートをしていくその背景には、社会的な便益を期待するからだと思っております。青少年の健全育成、これは長い歴史を持つスポーツの社会的な便益の一つでございますし、かつては能率の向上等も企業のスポーツでよく用いられておる一つの便益でした。私は、地域社会の形成というものに今一番関心を持っているところでございます。スポーツの持っているこの両方の便益、個人、社会両方の便益をもっと大きくしていく、あるいはバランスのとれた形で大きくしていくというのが今求められておりますし、そうなって初めて文化という名にふさわしい状況と言えるんじゃないかと思っております。
同じようなことなんですけれども、スポーツは今日の社会が持っておりますさまざまな問題解決に貢献できる可能性をたくさん持っている。山下先生もそのことについてたくさんお触れになりましたけれども、私、学校の関係を少し持っておりますが、もうまさに学校週五日制が始まらんとしている中で、学校だけではなくて、地域あるいは家庭と連携を図りながらスポーツを初めとする教育をしていかなければいけない時代になってまいりました。今の子供たちに生起しておりますさまざまな問題点は、もうよく言われているとおりでございますが、単に体力の問題だけではなくて、心の優しさやあるいはたくましさ等々の問題がむしろ深刻だとも考えられます。
あるいは高齢者の問題にしましても、日本の高齢者の扱い方というのは、コミュニティーの中に置きながら、あるいは家庭、在宅でというよりも、特定の施設に収容するという形がまだ多いというようなことを見る中で、やはり我々は、多くの元気な高齢者に対して、スポーツを楽しんでいただくだけではなくて、スポーツをつくる立場の人として迎え、彼らに生きがいを与えていく、こういうこともできると思っております。
医療費が三十兆円を超えたということも報道されておりますが、どの国もやはりスポーツと医療費の軽減の問題を何らかの形で結びつけようという努力が出ておりますし、地域社会の問題については、何度も申しますが、亡くなっていたのに地域のだれも気づかなかったというような寂しい事件もよく起こります。あるいは、地域社会の中で子供を育てるという環境は、今むしろ非常に弱まっているというようなこともございます。このようなさまざまな社会の問題を解決していくということを、本当に本音でスポーツを活用していくという必要を私は感じております。
三番目に、スポーツというのは、行う、これは当然でした。そして今、見て楽しむ。山下先生のすばらしい柔道の、我々も覚えておりますが、オリンピックでの活躍は見る人に感動を覚えさせる、これはもう当然でございます。行うことも見ることも大事であるということは多くの人たちが言うところでございますが、私は、もう一つ、最近よくかかわるという言い方をする人もいますが、私は創造の創という言葉を使って、「創って楽しむ」と。スポーツを「創る」というのは、何かニュースポーツをつくるわけじゃございません。それも一つあるんですけれども、スポーツの仲間をつくるのもありましょうし、スポーツのイベントをつくるとか、さまざまな地域の中で食べる側に回っていた人間が、今度は「創る」側に回る。ですから、スポーツは、見て、行って、そして創って、創ったということは他者にそのスポーツの楽しさ、喜びを与えるということですけれども、スポーツと人間とのこの三つの関係をもっともっと重視していくことがこれからのスポーツを振興していく上でとても大事なことだと思っております。
特にこの第三番目のかかわりについては、ほとんど調査結果もございませんけれども、例えばスポーツに関するボランティア活動等をやっているという人は、恐らく極めて低い状況ではないかと思います。
ちょっと先を急ぎます。四番目のスポーツの特性については、これはちょっと省略させていただきますけれども、スポーツといってもさまざまなスポーツがございます。人間の一年のシーズンの中でのスポーツの楽しみ方、そして、人間の生涯にわたるライフステージに応じたスポーツの楽しみ方ということを考えたり、あるいは、種目が多様だけではなくて、クラブに入って楽しむスポーツもございますし、いろんな人から物事を教わったり、イベントに参加して楽しむスポーツもございますし、夫婦でふらっと裏の庭で軽いバドミントンの打ち合いをするのもスポーツでございます。
いろんなスポーツの楽しみ方、行い方があるということを考えながら人々の多様なニーズにこたえていく、これが実は今文部省が、そういうことを総合的にできるスポーツ環境ということで、総合型地域スポーツクラブづくりに平成七年からかかられたと、私自身はそういうふうに理解しております。そういう意味では、幼児から高齢者まで、障害者をももちろん大事な仲間に包み込んだ地域の中で楽しめるスポーツの装置といいましょうか、システムとして総合型の地域スポーツクラブ、これをつくっていくことが日本のスポーツの文化としての価値を高めていくためにも必要かと思います。
実施状況については、日本人のスポーツをやっている人は大体成人の三割、七割の人たちはほとんど週単位の運動はしていない。これも非常に問題だと思います。その状況がこの十数年ほとんど変わっていないということを申し上げたわけですが、この資料に載せておきましたのは諸外国の比較の例でございますけれども、日本の男女ともこの比較した国に比べて極めて少ない運動量であることが一目瞭然でございます。
三ページ目に書かせていただきましたスポーツクラブヘの参加状況。日本のクラブは三十人程度の小さい小規模型のクラブでございます。今文部省が目指しているのは、千人とも、あるいは多ければ多いほどいいコミュニティーをベースにした総合型のスポーツクラブですから、このクラブとはかなり様相が違いますけれども、今回と書いてあるのは平成六年の意味なんですが、平成六年の実態を見ますと、国民の一六%がスポーツクラブに入っている。ちなみに、ドイツはもう既に三五%を超えたスポーツクラブヘの参加率だということも聞いておりますし、下にいろんな国のスポーツクラブヘの加入状況等も資料の中へ添付させていただきました。
そこで、こういう状況を踏まえて、これからの日本のスポーツの振興についてどういうように取り組んだらいいかということについて簡単に申しますと、今までのスポーツはどうしてもやはり行政におんぶにだっこの、しかも、施設を町の中心部に据えた中央集中型のスポーツ振興システムであった。これをやはり住民がもっと、先ほど「創る」という言葉を申しましたが、スポーツイベント、スポーツ教室、あるいはスポーツ施設の自主管理、こういうことを自分たちで住民がみずからやっていく、そして、身近な施設を使った住民主導型あるいは参加型の地域分散型のスポーツシステムへ転換していかなきゃいけない。その転換された形が、ここに書きました小学校区あるいは中学校区において住民を主体とした総合型の地域スポーツクラブということになると思っております。
日本の三千数百の自治体がみんなこういう形でいけるかどうかは全く私もわかりませんけれども、基本的に、今までやはりどうしても住民は甘やかされていた面がございます。施設等々まだまだ不足ですけれども、自分の町は自分でつくるということと同じように、その一環としてのスポーツを自分たちでつくっていく、こういう考え方と行動が今求められているというように思っております。
そのような仕組みをちょっと図であらわしてみました。わかりにくい図なんですけれども、行政は一たん外へ出て、スポーツ経営に必要な資源は人、物、金、情報とよく言われますが、特に施設等の、そして指導者等の、住民がスポーツを自分たちで自主的に進めていくための元手となる資源を整える役割に行政は徹していただく、そんな中で自分たちの創意を、そしてボランティア活動を通して自分たちのスポーツの楽しみを自分たちでつくっていく、こういう仕組みをぜひこれから構築していく必要がある。現に、進んだ地方自治体の振興方法というのは大体この住民主導型ととらえていいかと思いますので、全く世の中にこういうものがないわけではございません。
このようなことを私は考えておりまして、そのためには、自主的な住民の活動あるいはボランティア活動をやるためには活動の拠点がないことにはどうしようもないものですから、身近なスポーツの活動拠点が欲しい。新しい施設をつくるのは大変ですから、学校という非常に世界にも誇る財産を日本は持っております。この学校の施設を大幅に改築していく、あるいはつくりかえていくことによって質的、量的な性能をアップさせれば、これが非常に重要な地域住民の活動拠点になろうかと思います。そしてボランティア活動を組織化していくわけですけれども、ボランティアだけではなかなか事が動きませんので、そのボランティアを束ねる指導者の配置にもぜひ力を入れていかなければいけないということ、そのようなことをスポーツ振興として特に考えております。
しかし、そんなに急にできることではございませんので、このような方向を持ちながら、ドイツのスポーツクラブも既に百年の歴史を持ちながら現在三三%から三五%の参加率であるということを聞きますと、平成七年から始まったこの日本の総合型スポーツクラブ構想も、そのぐらいの長期的なビジョンを持ちながらこのような状況を少しずっつくり上げていく。そして、行政と住民と両方がお互いに役割を分担しながら共同し合ってこういうスポーツの状況をつくり上げていく、こういう社会が望ましい社会ではないか、このように思っております。
どうもありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115077X00319971211/7
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008・大島慶久
○委員長(大島慶久君) ありがとうございました。
次に、恵美参考人にお願いいたします。恵美参考人。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115077X00319971211/8
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009・恵美三紀子
○参考人(恵美三紀子君) 御紹介いただきました恵美三紀子でございます。
私は、山下選手のようなすばらしい選手でもございませんし、八代先生のような研究員でもございません。一地方で長年子供たちを相手に地域でスポーツをしてまいりました者でございます。そういう者にこういう発言の機会を与えていただきましたことを本当に感謝申し上げます。ありがとうございます。
これからしばらく、私がかかわってまいりました地域におけるスポーツ団体の活動状況、そして課題ということでお話しさせていただきたいと思います。
私が今までかかわってまいりましたのは日本スポーツ少年団という組織でございます。この日本スポーツ少年団は日本で一番大きな青少年のスポーツの組織となっております。一九六二年、東京オリンピックの開催を機に創設されまして三十五年たっております。スポーツ少年団の目的は、スポーツによる青少年の健全育成ということで、すべての子供たちにスポーツの喜びを知ってもらい、そして地域の子供を地域の大人がスポーツを通して心身ともに健康に育てるということを目的にして活動してまいりました。現在、団員が九十七万四千人、そして指導に携わっております者が十七万六百人ということで、およそ百十万ぐらいの組織でございます。ちなみに団数は三万四千三百ございます。完全メンバーシップ制をとっておりまして、物事を決定するに当たりましては代議員制をとっております。
活動内容でございますが、地域で活動しております。そして、スポーツを中心に、文化、社会、奉仕活動なども取り入れて活動しようということで、生涯スポーツの基礎づくりを目指しております。子供たちの体の発育、発達のすばらしい時期に多種目を経験させることによりまして、体の各部位を発達させ、いろいろな運動能力を身につけさせようということで、多種目を経験させることを基本に置いております。
現在、この組織率でございますけれども、団員九十七万四千のうち、小学生がおよそ〇%、そのほかは中学、高校生となっておりまして、高校生はごくわずかでございます。ここが残念なところでございますが、小学生は、この対象年齢のおよそ一割が日本スポーツ少年団の組織に加入しております。
このスポーツ少年団の活動の形態でございますが、多種目を取り入れて活動しております複合団がおよそ二〇%、そして、例えば野球ですとかサッカー、馬術、水泳、カヌーなど四十七種目今登録されておりますが、そういう単一種目をやっておりますのがおよそ八〇%ぐらいでございます。活動日数ですが、週に三日から四日、時間は一回当たり一時間半から二時間ぐらいが平均的なところでございます。
この子供たちを指導しておりますのが地域の大人、ボランティアでございます。ただいまは団員の父兄、父母を中心に組織されておりますけれども、中には、二十年、三十年と、お子さんが卒業なさっても、卒団なさっても続けている指導者の方もございます。
この指導者になりますには、日本スポーツ少年団の方で認定講習会というものを持っております。これは、やはりまだ発育、発達途上にある子供たちを指導するに当たって、体のこと、それから心の健康、それを知った上で指導していただきたい、全人格的に子供を育てようということでございますので、技術指導だけではいけないということで認定講習会を持っております。ここで、心身の発育、発達、団の運営の仕方というようなこと、安全対策なども含めまして、六単位十四時間の講習を終わった後に認定指導員ということで登録していただいております。残念ながら、これは義務づけではございませんので、ただいま十七万おります指導員のうち約五一%がこの認定講習会を受けて指導をしております。
この子供たちの活動している場所でございますが、学校、それから公民館ですとかコミュニティーセンターのような公的なところを使っておりますのがおよそれ五%、残りは道場ですとか民営の施設で活動をいたしております。
以上のようなところがスポーツ少年団活動の現在の状況でございますが、このスポーツ少年団を支えておりますものに、地域の育成会、そして母集団というものがございます。日本スポーツ少年団は、地域の大人が地域の子供をということで地域に根差した活動を目指しておりますので、地域との連携を大切にしております。
育成会には、学校、PTA、地区体協、そしてスポーツ少年団の関係者が参加をしております。そして母集団の方は、団員の父母を中心にいたしまして、子供たちのスポーツ環境の整備などを行っております。現在は、母集団も、みずからも活動する団体になろうということで、子供たちと一緒にスポーツを楽しむということを目指しております。これはスポーツの習慣化ということにもかかわってまいりまして、やはり親がスポーツをいたしますと、その子供もスポーツに親しむ機会も多くなります。ということで、親を通して子供にスポーツの楽しみを知ってもらいたいというところも目指しておりますし、もう一つはこの母集団の中から指導者も育ってほしいという願いもございます。
このようなことでスポーツ活動をしておりますが、課題は指導者の問題と活動場所でございます。
まず、指導者の問題でございますが、先ほども申しましたように、団員の御父兄が中心になって指導してくださっていますので、どうしても団員がその団から抜けますと指導者も一緒に抜けてしまう。せっかく経験を積まれたいい指導者の方が残っていただけない、これが一つの悩みでございます。それからもう一つは、女子の指導員が少ないということでございます。これは、団員九十七万の中に男子が三分の二、女子が三分の一というところにも関係してまいりますが、女子の指導員が少ない。女子の指導員が少ないということは、やはりこのスポーツ少年団活動の上におきましても、ともすれば技術中心に走りがちな指導を、女子が入ることによりまして生活習慣の指導ですとか心を育てていくというようなことにも目が向いていくと思いますが、そこがちょっと今足りないところかと思っております。
もう一つは、活動場所のことでございます。現在は学校、公民館などというところにおよそれ五%お願いしておりますが、それでも活動の活発なところは団数に比べまして活動場所が少のうございます。中には取り合いなどということもございまして、そのために育成会がバランスをとりながら活動しておりますけれども、そんなことで活動場所が少ない。このことは種目をふやすことができないということにもつながってまいりまして、実は女子の団員が三分の一しかいない原因の一つに、女子に向いたスポーツが少ないということがございます。現在はサッカーでもラグビーでも女の子が入っておりますが、これはまだまだ一部で、どうしてもそういう野球、ラグビー、サッカーというような人気のある種目は男子優先になっておりまして、女子のやりたい例えば新体操のようなことですとか体操のようなことは場所がなくてできない。
そしてもう一つは、そういう指導者の方も少ないということもございますけれども、女子のスポーツを盛んにするためにも、活発にするためにも、私はやはり活動場所、そして指導者をふやしていかなければいけないのではないかと思っております。
この活動の場所、そして指導者のことについてでございますが、実はこれは大変その地域によってばらつきがございます。現在、日本スポーツ少年団で一番対象年齢の子供たちの組織率が高いのは東北地方でございまして、秋田、山形というようなところは対象年齢の三〇%以上の子供がスポーツ少年団に入っております。しかし、大都市圏におきましては一〇%にも満たない、七%、六%というような大変ばらつきがございます。
この辺のところは、先ほど八代先生のお話にもございましたように、やはり行政側がスポーツに対する関心をどれぐらい持っているかということに大きな原因があるのではないかと思っております。大変組織率の高いところは行政がスポーツに対して関心が高いということになりますと、場所の確保についても考えていただけますし、指導者の待遇についても御配慮があるということでございまして、これから地域スポーツを盛んにしていくためには、やはり行政の関心を高めていかなければいけないのではないかと思っております。
この地域単位にスポーツクラブがあるということは、やはり身近なところでスポーツができるということにつながってまいりまして、これは大人に関しても言えることだと思います。秋田県で実は調査したことがございますが、スポーツをしていない人たちになぜしていないのかと聞きますと、やはり身近なところで活動できないとか、それから私にはスポーツ音痴だからスポーツができないというような返事が返ってまいりまして、決してスポーツ嫌いだからという返事は多くございません。
ということを考えますと、スポーツといいますとどうしても単一スポーツ、競技スポーツを思い浮かべますが、身近なところでもっと気軽に体を動かして楽しむことだというふうに広く考えてまいりますと、多くの方が参加していただけることになるのだと思います。これからは、地域のスポーツ、地域で体を動かすことができるそういう施設づくりをしていただければ、スポーツだと感じないまま体を動かしてスポーツをしていく方々がふえるのではないかというふうに考えております。
この地域ごとのスポーツ活動といいますのは、そこで大人も子供も一緒に触れ合えます。そのことによって、社会が子供を育てていく、社会が子供を教育していくという力もまた回復できるのではないか、そのようなことを考えて、私どもはこれからも地域でスポーツ活動を続けていきたいと考えております。
以上でございます。ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115077X00319971211/9
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010・大島慶久
○委員長(大島慶久君) ありがとうございました。
以上で参考人からの意見聴取は終わりました。
これより質疑に入ります。
午前の質疑は、あらかじめ質疑者等を定めることなく、委員の皆様に自由に質疑していただきます。
質疑を希望される方は、挙手をしていただき、委員長の指名を待って御発言を願いたいと存じます。
なお、御発言は、お一人一分以内でお願いをしたいと存じますので、よろしくお願いいたします。
また、参考人の方々にお願いを申し上げますが、時間が限られておりますので、答弁は簡潔にお願いをいたします。
それでは、質疑のある方は挙手を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115077X00319971211/10
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011・小野清子
○小野清子君 それでは、時間が一分と限られておりますので端的に申し上げます。
三先生、ありがとうございました。
山下先生にお伺いさせていただきますが、環境整備の必要性ということをおっしゃられました。特に、日本予算が年間七億、フランスが二十二億ということで、私もよく国会の中で何で弱いんだ、オリンピックで負けるんだと聞かれますと、予算に合わせてますと、こういうふうに返事をさせていただいておるところでございますが、学校教育の一環として日本はスポーツ振興をいたしましたので、スポーツにお金がかからないという認識が皆多うございます。やはりスポーツはそういう費用がかかる。この七億と二十二億の差の中で、どういう面で一番予算的な響きをお感じになられるのか、それを一点伺わせていただきます。
あと、八代先生には、三十人程度のスポーツクラブが日本はどうしても多いと。諸外国を見ますと二百人、三百人という規模です。おとといの夜ですか、フィンランドの方は今回のオリンピックのために千五百メートルの屋根つきのドームを国が用意したと、選手の活躍のために。そういうのを見ても、フィンランドとか他国の場合にはチャンピオンスポーツと市民スポーツが一緒なのか別なのか、その辺を伺わせてください。
最後に恵美先生の方には、指導者不足で、継続するために、子供と一緒に卒業しないために何をどう努力したらいいのか、その辺をお聞かせいただきたいと思います。
以上でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115077X00319971211/11
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012・山下泰裕
○参考人(山下泰裕君) 環境整備の話ですけれども、私が言わせていただきましたのは全体としてのということで、先ほどの話で言いますと、子供たちが身近に体を動かそうとする場所も十分ないと。そういうことからナショナルトレーニングセンターがないということも全部含めての意味だったんですね。
競技団体の方で言いますと、柔道はまだましな方なんですね。と申しますのは、講道館という我々が集まって合宿できるところがあるんです。恵まれない競技団体になりますと、合宿をやるにも、その場所を確保するのも大変。そういうことで非常に苦労している。ですから、ナショナルトレーニングセンターの建設をぜひとも実現してほしいというのが競技スポーツ界全体のお願いなんですね。
それから日仏の差に関しましては、国からの直接の予算というのは日本に比べて二倍から二・五倍ぐらいしかないんですけれども、それ以外に会員の登録費が日本に比べるとかなり多いです。それから、約七億五千万といいましても、やはり人件費等がかなりを占めるんですね。そうすると、フランスなんかで連盟の専門の幹部が十名ぐらい、それからそういう正しい技術指導をしていく、地方の底辺を広げていくのが七十二名ですか、これだけが国家公務員であるというのは、これは長い目で見たときのスポーツ全体の振興・普及、柔道に関して非常に大きな差が出てくるのではないかなと。
今までは学校スポーツ、それから柔道ですと町道場がそれを担っておりましたけれども、やはり今の時代、代がかわってきますと、あれは経営するというよりもボランティア活動で、自分で得た富を、お金を何らかの形で柔道界のために還元したいということで、お金をつぎ込んで町道場をやっているのが現状です。だんだん代がかわってきますと、そういうことをするよりも、自分自身で楽しみたいとか、もっと自分のためにお金を使いたいという形になっているものもあるんですね。ですから、かつての柔道を支えていた町道場も非常に減ってきているというのが現状でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115077X00319971211/12
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013・八代勉
○参考人(八代勉君) 御質問にありましたチャンピオンシップスポーツと、もう一つのスポーツは私は生活スポーツという呼び方がいいかなと思います。今、生涯スポーツと呼んでいるのが多いんですが、生活スポーツ、生活を豊かにしてくれるスポーツと。ヨーロッパのスポーツクラブの場合、一緒になってトップクラスのチームを持っているという例もよく紹介されております。
ただ、日本の場合は、やはりチャンピオンシップスポーツと、底辺に住民のスポーツがあって、それの頂点にチャンピオンシップスポーツというもの、Jリーグはそういうスポーツクラブづくりを目指しておられますけれども、必ずしもそれがいいと私個人は思っておりません。むしろ両方あって、やはりいい選手を育てるためには別に育てていかないと、もう今は世界のチャンピオンスポーツの中で過ごしていけないんじゃないかと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115077X00319971211/13
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014・恵美三紀子
○参考人(恵美三紀子君) 指導者がなぜ続かないのかという原因でございますが、一つはやはり経済的な負担が大きいということだと思います。実は、指導者になるためには日本スポーツ少年団に登録いたしますが、登録の費用、そしてスポーツ安全保険の費用、それから研修の費用、それらがやはり全部指導者個人の負担になっているところが多いと思います。行政が理解のあるところは、一部負担や補助がございますけれども。そのほかに、やはり指導者といいますのは、子供たちにいろいろと練習の後でジュースですとかお菓子ですとかを買ってあげるなどということもよくございますので、そういう経済的な負担が結構あるということです。
もう一つは、やはり活動時間の回数が多いと御自分のプライベートな時間がなくなりますので、どうしても子供がいる間だけで燃え尽きてしまうのではないか、そういうふうに考えられます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115077X00319971211/14
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015・長谷川道郎
○長谷川道郎君 八代先生にお伺いをいたしますが、先ほど先生のお話の中で大変すばらしい御提言というかアイデアをお示しいただいたと思うんですが、身近なスポーツ施設として学校をというお話がございました。身近なスポーツ施設として学校をということであれば、今学校開放というような問題があるわけでありますが、その後に先生は学校改造云々というお話をされました。
少なくとも私は、学校を改造してそれを地域のスポーツセンターにするという、そこまで踏み込んだアイデアは持っておりませんでしたもので、改造云々以下のお話は大変すばらしいお話だったと思うんですが、具体的にどういうイメージで、例えばロッカー施設ですとかシャワールームだとか、そういうのも当然今の学校にない施設を付随させるというようなことだと思うのでありますが、どういうイメージで考えたらよろしいでしょうかというのが一点。
それから、日曜日に学校開放しておる学校があるわけでありますが、一番困っているのは、率直に申し上げてマナーの悪い、夕方になるとたばこの灰、吸い殻がいっぱい、ジュースの空き缶がいっぱいというようなマナーの悪さで、管理者側がこんなことはもう嫌ですよという、それがネックになってなかなか進まないという現実があると思うのでありますが、まず第一点はイメージの問題、それから管理上の問題、その二点についてお伺いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115077X00319971211/15
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016・八代勉
○参考人(八代勉君) イメージとしては、二十年前に実はイギリスのある中・高等学校を見学しましたときに実際見聞きしたんですが、約二万ぐらいの住区でしたけれども、うちの学校では、この学校の建物はすべて子供のものであると同時に地域住民二万人のものです。子供が入っちゃいけない場所が二つあります。大人は全部入っていいです。子供が入っちゃいけないところはどこでしょうかというと、これはバーです。私たち年寄りはバーというのはわかるんですが、今はスナックと言ったりしていますけれども、よくお酒を飲む場所が、ライセンスバーが二つある、そういう学校でした。日本もそうなれば一番いいかなと思っておりますが、これは理想ですね。
なお、そこでもう一つ感心したことがあるのでついでに言わせてください。
その昼間は学校、夜は地域の人たちが使うところに昼夜両方通しで働く先生が何人かいて、昼夜の地域の人たちのスポーツ活動やさまざまな文化活動のいわゆるマネジメントに当たる、そういう形で地域住民の活動を支援している、こういうことがすばらしかったと思います。
学校の改造というのは、クラブハウスやロッカールーム、シャワールーム等はもう既に今文部省でもその充実へ向けてやっていただいておりますけれども、せめてもっと明るい体育館であるとか、あるいは電気が切れてもなかなかかえてもらえない体育館なんですけれども、小学校の体育施設は、子供が小さいからといって一番小さいのではなくて、むしろ一番地域の人がたくさん集まりますから、高等学校や中学校と同じような広さの体育館すら求めたいとも思っております。
しかし、余りそういう理想を掲げてもいけませんけれども、新しいスポーツ施設をつくるよりもずっと安いコストで、しかもアクセスが非常にしやすいものが学校ではないかと思っています。そのためにも、学校教育に支障のない限りというあの文言がある意味では学校側を非常に守っているという側面もありますので、できればその辺もぜひまた御検討いただけたらと思っております。
学校の利用のマナーの悪さの問題は初期的な問題でございまして、最初の時点で利用者に対して訴えればかなり早期に解決できると考えております。
以上です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115077X00319971211/16
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017・日下部禧代子
○日下部禧代子君 きょうはお三人の参考人、どうもありがとうございます。
山下参考人にまず最初にお尋ねいたします。
昨年、私はアトランタのオリンピックに政府代表で行かせていただきまして、特に柔道は一生懸命応援させていただきました。選手の御活躍に大変胸が熱くなる思いでございました。
しかしながら、山下参考人のお話にもございましたけれども、柔道が日本の国技であるというふうに言われながらも、だんだん今外国に押されぎみである。山下参考人が今御指摘になりました財政の問題というのは、フランスの場合と比較なさいましたけれども、非常に大きな隔たりがあるなということを感じましたし、またホワイトハウスでのカーターさんのお話も大変に感銘深く承りました。
ところで、スポーツの振興ということに関しては、すそ野を広くしていくということ、スポーツ人口を広めるということと同時に、また山下先生のように、トップレベルでのいわゆる選手としての養成ということがあると思いますが、特にトップレベルでの選手の養成についてもう少し具体的に、例えば先生の御専門である柔道の場合ですと、どういうふうに選手養成というもののレベルアップができるかということの先生の理想をお持ちでいらっしゃると思いますので、もしそういう理想があればここでお示しいただきたい。国がどうしたらいいのか、あるいは地域でどうすればいいのか、選手養成についてのシステムがこうあるべきというふうなことがあれば、まずお尋ねしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115077X00319971211/17
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018・山下泰裕
○参考人(山下泰裕君) まず、私が話させていただいたことなんですけれども、私個人としては競技スポーツを代表してという気持ちがありまして、その一つの具体的な例としての柔道を挙げた、一つの具体的な例としての私の体験を挙げたということでありまして、わかりやすくということで挙げただけで、私個人としては競技スポーツを代表してということできようは話させていただきました。
全日本の監督をやっていまして、どうしてもなかなか高いところから見ることができなくて、そういう理想とする姿というものをとらえることはできない部分があります。それから、お金の問題もありますけれども、我々全日本柔道連盟そのもののあり方という点も、これがやはり一番問題じゃないかな、各競技団体がまずしっかりしていくことが非常に大事じゃないかなと思います。
わかりやすく言いまして、ではどうやったらこれから日本の柔道は勝っていけるのかといったときに、一つはやはり柔道がもっともっと魅力的になって、運動能力の高い子供が柔道に入ってくるようなそういうふうな連盟に、そういう子供たちがあこがれるような選手をつくっていくということが大事だと思います。
そのためにやはり指導者の育成。実際に子供たちを現場で指導してくださっている先生方は自分の経験と自分の情熱でやられていますけれども、こういう先生方を計画的に研修を行ったり指導したりしながら、間違った方向に進まないように、バーンアウト、ドロップアウトしないように、そして柔道の本来の本質というものをしっかり身につけさせながら楽しくやらせていく、そしてもっともっとやりたいという気持ちにさせていく、そういう底辺の指導者の育成というのが非常に大事な部分じゃないかな。
それからもう一つ、私は大学の教授ですけれども、全日本のシニアのコーチが六名おりまして、全部六名とも大学の教員なんですね。ほかのコーチはほとんど私が招聘したんですけれども、なぜか私の代は優秀な連中は大学に集まってしまったんですね。そうすると、大学で授業を持ちながら私は年間百二十日ぐらい全日本の活動で大学をあけています。それから、大学におりましてもファクスや何だで年間百六十日ぐらいは全日本監督としての仕事に使っています。ですから、大学ではもう頭をぺこぺこ下げて低姿勢です。まだ監督だから許せますけれども、ほかのコーチの場合はもっときついですね。やはり、日本が勝っていくためにはかけ持ちでは限界があると思います。外国のプロの監督、コーチが日本に来て活躍されているように、それで食べていく専任の指導者を、一人じゃなくて、スタッフをある程度つけるということが大事じゃないかな。
それから、連盟が機能していくためには、これもやっぱり幹部の方々が自分で仕事をやりながらではなくて、連盟を支える幹の部分の方々、専務理事とか常務理事とかこういう方々が専任になってそのことにかかり切りになっていかないと、一生懸命やられても使える時間が限られておりますので、外国の一つの例としてフランスを出しましたけれども、連盟幹部十人が専任でフランスの柔道の普及、強化だけを考えているのと、仕事を持ちながらやっているのではやはりこれはもう限界がある。この辺から変えていくと、もっともっと日本柔道のやるべきこと、現在の課題等が明確になってきて強化が進んでいくと思うんですけれども、この辺が今私は一番の問題かなというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115077X00319971211/18
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019・阿部幸代
○阿部幸代君 山下参考人に伺います。
トップレベルの選手の競技や、それから競技の後の競い合った者同士の尊重の姿というか、そういうものに私は大変感動しているんですが、きょうのお話にも感動しました。初めにお願いですが、スポーツマンはもっとスポーツのすばらしさを語っていただきたいと思います。感動する人がたくさんいると思います。
質問に入りますが、先ほどのお話の中で、オリンピックに出場するチャンスというのは普通は一生に一度あるぐらいだろう、その一回のチャンスが奪われたということでモスクワ・オリンピックの参加ボイコットのことをお話しなさいました。日本のスポーツマンにとって、またスポーツ史にとってモスクワ・オリンピックのボイコットというのがどんなに痛恨の思い出になっているかということがよくわかりました。本でも読むんですけれども、直接お話を聞きますとそれが一層よく伝わってまいります。
それで、たしかあのときには政府が政治的な介入をして、もともとは出場することになっていたものがストップになったんだというふうな記憶があるんですが、こうした政府の政治的な介入の問題。その一方で、先ほど来予算の問題をお話しになっていると思うんですけれども、私は衆議院の財政構造改革特別委員会に文部省から出された資料を見てみたんですけれども、「スポーツ白書二〇〇一年のスポーツ・フォア・オールに向けて」という中に出てくる資料なんですが、一九九〇年度の政府予算の対GDP比を見ると、トップがポルトガルの〇・二八%なんですね。その続きが、フランス〇・二一%、ベルギー〇・〇九%、スペイン〇・〇六%、フィンランド〇・〇五%、デンマーク〇・〇四%、スウェーデン○・○二%、イギリス、ドイツ〇・〇一%と続いていくんですが、日本は一けた低い〇・〇〇三%です。
一方で政治的な介入、口出しをしながら、その一方で財政的には本当に諸外国に比べると支援らしい支援をしない。それで、スポーツ振興法に基づく基本計画もたしかまだつくったことがないんですね。こういう国のスポーツ行政について率直に言ってどんな感想を持っておられるか。また、昨今、財政危機の問題とかいろいろありますが、政治が変わればこういうものも変わり得るわけですから、本来、国のスポーツ行政というのはどうあってほしいのか、基本について伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115077X00319971211/19
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020・山下泰裕
○参考人(山下泰裕君) 非常にレベルの高い話で、それについていけるのかわかりませんけれども。
まず、モスクワ・オリンピックのボイコットに関してですけれども、私はやはりこう思っています。スポーツと政治は、スポーツは政治から干渉されないというのが理想であると思います。ただ、現実問題として、日本人である以上は日本の決定に対しては従うべきじゃないかなと。ただ、多分アメリカ人の大半の選手は、あそこでカーターさんがああやって話して、話を聞いて納得したと思うんですね。でも日本では全く説明もなかった。それでやはり私は納得できない部分があった。だから、個人的には非常に夢を奪われて、悔しいし残念で、二度とこんなことがあっちゃいけない、次の若い選手たちにこういう思いをさせちゃいかぬ、そのために何らかの役に立たなきゃいかぬという気持ちは持っていますけれども、ただ、やはり国民であるということは国の決定に従わなきゃいかぬ、でも納得するような説明は欲しいなというのが私の素直な感想です。
それから、もう一つ素直な感想を言いますと、その必要性が叫ばれながら実際的な効果が出てこないというのは、スポーツは票につながらないからかなと。ですから、青少年の本当に健全育成を考えていったときに、今の青少年の非行化とかいろんな問題があります。スポーツはチャンピオンスポーツじゃなくて、スポーツで汗を流して、ともに力を合わせたり頑張ったり励まし合ったりしていくことが僕はかなりプラスになると思うんですね。だけれども、そういうことに対して格段の効果があらわれるような策が打たれていない。諸外国に比べてもやっぱりお金をかける数が少ない。これは何でかなと思ったときに、僕のレベルですと、スポーツじゃ票にならぬものなと。でも、二十年後、三十年後の日本というもの、あるいは五十年後の日本ということを考えたときに、青少年、次の時代を担う人間をつくっていくには、やっぱりたくましい体と心と他人を思いやる心、力を合わせる心、我慢できる心、こういうものが絶対必要であって、頭でっかちじゃだめだと思うんですね。
そういうところがやっぱりだんだん子供から欠けてきている。そうすると、票にはつながらなくても、これはぜひとも全力で将来の日本のために何とかここの先生方に頑張っていただきたいなというのが私の素直な思いでございます。
ちょっとまとまりませんけれども、申しわけございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115077X00319971211/20
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021・岡利定
○岡利定君 八代先生にちょっとお伺いしたいんですけれども、地域で自分たちのスポーツを自分たちでつくっていくということが大変大事だということだけれども、まだそこまで行っているところはそうないというようなお話だったわけです。先生のいろんな御調査の中で、この辺はうまくやっているんじゃないかというような例があったら教えていただきたいなというのが一つでございます。
もう一つは、そういう地域においてスポーツを振興していくといったときに、行政側の対応と、もう一つはそれを支えるボランティアの存在というのが大変大事だというお話であったわけですけれども、以前は、ボランティアというのは青年団というのが大変大きな役割を果たしておったと私は思うんですね。地域でのいろんな行事を自発的にみんなでやっていくということ、だからこれはスポーツだけじゃなくて、高齢者対策とかあるいは地域の清掃だとかも含めていろんな面であった。しかし、残念ながら最近そういう青年団活動というのはまずほとんどどこにもないんじゃないかと思われるわけでありますので、それにかわるようなボランティア的なものというのがやはりコミュニティーを活性化していくのに必要じゃないんだろうか。そういう意味でスポーツの振興という面から見たときに、そのボランティアのあり方、育成ということについて先生のお考えがあったらお教えいただきたいなと思っております。
それからもう一点は、山下先生のお話ですけれども、先生の御経験としてすばらしい指導者に会えたというお話がありました。指導者の条件というのはいろいろとあると思いますけれども、人格だとかあるいは一つの技術にすぐれているとか、先生のお考えになっているすぐれた指導者の具体的な条件というのはどういうようなことだろうか。
また、そのスポーツを振興していく、あるいは特にオリンピック選手なども含めて、少年団の方でもそうなんですけれども、指導者の育成というのが一番大事だと。指導者の育成のために、先ほど大学の教授を兼ねながらっいでにやっていくというのも大変だというお話を承ったんですけれども、そういうことも含めて、環境整備としてこういうことを国なり政府なりにやってもらいたいということがあったらお聞かせいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115077X00319971211/21
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022・八代勉
○参考人(八代勉君) 住民が自分たちでスポーツをつくっていくというのは、まだまだ日本ではそんなに多くございませんが、身近なところで私がよく調べさせていただいている三鷹市に一つ例がございます。三鷹市人口十五万の町を七つのコミュニティーにゾーニングいたしまして、そしてコミュニティーセンターをそれぞれ各一個持っております。そしてその施設の運営に関しては、行政のプロが若干名と、むしろ実際に施設を動かしていく運営に関しての主体性は、地域住民の人たちのそういう組織で動かしている、こういう例がございます。また、かなり全国的に有名なところでは、岩手県の金ヶ崎でしたか、あそこは生涯教育宣言都市ということで、そこもやはり町を幾つかのコミュニティーにゾーニングして、それぞれごとに住民の活動拠点をつくり、拠点がないと活動が生じないということでそういうふうにやっております。柏崎等もやはり市を二十幾つにゾーニングして、そこに必ずコミュニティーセンターを持っているというところが共通でございます。
それから、ボランティア活動。かつては青年団、婦人会、子供会もいろいろあったかと思うんですが、今、子供会は、大人のつくる子供会はございますが、確かにありません。私も、今住んでいる団地でこの前消防訓練をやりましたら、集まってきたのが御婦人と高齢者ばかりで、働き盛りはほとんどおりませんで、青年団もおりませんでした。
そういうようにして、昔であったら人々が連帯しなきゃいけないことが非常に今少なくなって、専門業者が出てきたり企業がやるようになったものですから、昔の消防に当たったり防犯に当たるものをプロがやるようになりましたので、自分たちでできるものとしてはスポーツとかあるいは生涯学習、そういうものをやることによって地域の連帯を図っていく、こういうことがなおさら必要と私は考えております。
以上でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115077X00319971211/22
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023・山下泰裕
○参考人(山下泰裕君) 指導者の条件ということですけれども、私自身が今勉強中でして、十分理解していない部分もありますけれども、まず指導者が言われたことで非常に私の心に残っていることが一ついつも胸にある。試合で勝つこと、オリンピックで勝つこと、これも大事だ、しかしもっと大事なことは、そうやって頑張った頑張りを生かして社会人として世の中の役に立つ、社会人としての勝利者に、社会人としての金メダルを自分の胸につけることが大事なんだよ、そのために今頑張っているんだよ、このことを中学時代に言われました。ですから、私は何とかして先生の教えのとおり社会人として役に立つ人間になれるようにと思って今頑張っています。やはりそういうポイント、ポイントでの言葉というのは非常に大きいかなと。
私が指導者の条件として思いますのは、まずはやはり情熱じゃないかと思います。そのスポーツに対して、そして子供に対しての情熱、これがなければとても務まらないと思います。それから、口先だけじゃなくてみずから実践し、これは技術だけではなくてふだんの行動、マナーの面からもみずから実践し、そして常に飽くなき向上心を持つこと、子供からでもいろんなことを学ぼうという気持ち、これが大事じゃないかな。それから、選手強化だけじゃなくて、子供たちを教えるにしても自分だけの力ではできません。周りの人の協力を得て一緒に頑張っていこうという、そういうふうな広い心を持たないと一流の指導者になることは、底辺レベルでもあるいはトップレベルでも難しいんじゃないかな。ほかにもいっぱい要素があると思うんですけれども、この三つは私は欠かすことができないことではないかと思います。
それから、指導者の育成ということに関してですけれども、先ほど申しましたが、私は在外研究員ということで、現役を終わりました後一年間自由に自分の好きなところに行って、外国へ行って勉強しなさい、何をやってもいいよと言われてイギリスの方に行きました。この一年間イギリスで勉強したことがなければ、多分私はきょうここに立っていることはないと思うんです。この一年間日本を離れて外に出て、外から日本を見て、あるいは外国の人たちといろんなことを話し合ったり一緒にやったりして、私は貴重な財産とも言えるもろもろのことを学びました。
私は前々から文部省の方にもお願いしているんですけれども、どこへ行っても外国人に、すばらしいな、そんな制度が日本にあるのかと言われますけれども、来年度はどうも予算が三人分ぐらいしかないらしいんですね。できれば柔道で毎年三人ぐらいそういう指導者を出したいぐらいですね。トップを育てていくのに、そういう幅広い認識と幅広い人脈を持ちながら、日本が勝てばいいだけじゃなくて、国際的なマナーとか常識とかそういうものをわきまえた、世界と一緒に協力してやっていけるような指導者をつくっていく必要があるんじゃないかと。
それから、もう一つ非常に気になっていますのは、全柔連でもありますけれども、トップクラスの選手でも、勝てばいいんだろうと。学校教育の一環と言われる大学の監督の中にも、勝てばいいんだろう、勝ちがすべてだよ、何でそんなうるさいことを言うんだというような方も実際におられます。そうすると、選手として世界的に活躍しても、私はその選手の十年後、二十年後、三十年後がすごく心配です。底辺を見渡してみましても、親もそれから先生も周りの評価も、小学校で勝たせた、中学校で勝たせた、そのことをすごく評価して、そのことによって子供が燃え尽きたり、あるいは子供の自主性や積極性、自分で何かをつくり出していこう、こういうすばらしい芽が摘まれてしまったりする。そういうことからいいますと、勝つことはすばらしいことですけれども、勝ちだけにこだわるのじゃなくて、一生懸命頑張っていきながらいろんなことを学んでいくことを大事にしていく。
スポーツは私は教育的価値が非常にあると思うんですけれども、そういうところも含めて、技術的な面も含めて、現在いろんなスポーツで、各競技団体がそういう底辺の指導者に対しての適切な指導をやれるだけの財源もない、時間もないんじゃないか、スタッフもそろってないんじゃないか、そういうところが大事なんじゃないかなと。
それからもう一言言いますと、点数を取ればいいんだろう、いい大学に入ればいいんだろう、いい企業に入ればいいんだろう、多分これとつながっているんじゃないかな。僕はこれは一つの大きな間違った価値観じゃないかなと個人的に思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115077X00319971211/23
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024・江本孟紀
○江本孟紀君 自由の会の江本と申します。きょうは質問だけさせていただきます。
先ほどのいろいろなお話を伺っておると、参考人の皆さんはスポーツは大変重要であるという御認識はもう共通しておると思いますので、これは御意見があっても、それから簡単にイエスかノーかで言っていただいても結構ですが、スポーツ行政ということで言いますと、スポーツ省とかスポーツ庁とか、そういったものは必要なのかどうかということをお聞きしたいと思います。
それからもう一点、スポーツに関してはいろんな子供さんが関心を持つ。それで、スポーツというのはいろんなスポーツが今はあるものですから、必ずしも野球だとかサッカーとか相撲とか柔道とか、相撲というのは余り聞かないですが、そういう目立ったものだけではなくて、子供によってはいろんなものをしたいという人がいると思います。その中で、皆さんの御認識をちょっと聞きたいのは、競輪の選手、競馬騎手、ボートの選手、オートレースとかありますね、要はギャンブルにかかわっているそういうスポーツ選手のことをスポーツ選手と認識されているのかどうか、その二点をお聞きしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115077X00319971211/24
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025・山下泰裕
○参考人(山下泰裕君) スポーツ省についてですけれども、私のこれについての考えはイエスです。
今、いろんな省にまたがっていろんなスポーツに関してのいろんな試みというか行政が行われていると思うんですけれども、やっぱりこれを一つにまとめてスポーツ省としてやるべきじゃないかなと。そして、それは青少年の健全育成、高齢化社会、生涯スポーツ、教育、すべてまとめて、それはそれだけの価値は十分ある、こう思っています。非常に現実が難しいことはよくわかっていますけれども、これは強く願っています。
それから、二番目もイエスです。確かにギャンブル的な要素はありますけれども、じゃお金がかかっているからスポーツ選手じゃなくてかかっていないからスポーツ選手か、そういうふうには見れませんし、我々は実際にそういう人たちも我々スポーツの仲間であるというふうに思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115077X00319971211/25
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026・八代勉
○参考人(八代勉君) スポーツ省の設置につきましては、私は大変慎重論でございまして、やはり教育というものと非常に絡む部分があります。確かに、いろんな省庁で四千数億のスポーツ関連のお金があるとか伺いますけれども、一緒にしてしまうとかえって出ないんじゃないかとも思っておりますし、慎重論で私は対応しております。
それから、スポーツの選手ということでは、競輪、競馬、ボート等々がスポーツでないということは考えておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115077X00319971211/26
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027・恵美三紀子
○参考人(恵美三紀子君) 初めのスポーツ省、スポーツ庁のことでございますが、生活スポーツ全般も含めて考えていただけるという条件つきで、私はひとつ独立した方がいいと思っております。
それからもう一点の方は、私は当然選手だと思っております。かけるのは勝手でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115077X00319971211/27
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028・江本孟紀
○江本孟紀君 ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115077X00319971211/28
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029・田沢智治
○田沢智治君 私は山下参考人と八代参考人に聞きたいんですが、プロ野球で、巨人が大変金を使って優秀な選手と言われる人を自分のチームにトレードした。それで優勝するかというと優勝しない。お金さえ使えば優勝できるというものじゃないなということをよくわからせてもらったんです。また、全然お金を使わなくて優勝するということはあり得ないにしても、要するに、今の先生方の話を聞くと、一般社会的な次元でとらえた場合、競技スポーツ振興策と、市民スポーツというか生涯スポーツの振興策と、大体二つぐらいに分類されるのか。あるいはもちろん学校スポーツというのもあると思います。そうすると、競技スポーツというのは、もちろん世界の水準レベル以上に、常に世界のトップクラスを目指すという切磋琢磨をしなきゃならぬと思うんです。
そうした場合、受け皿とすれば、今、日本体育協会というものがその受け皿として主たる役割を果たしていると思うんですが、じゃ果たしてその日本体育協会だけを強化すればうまく世界的水準に競技スポーツのレベルが達成できるのかと。もちろん、行政なり政治がそれを支援するということは必要であるし、また国民世論がそれを支えていくということも必要だと思いますが、まず、その受け皿として、競技スポーツの場合はどこをどう充実したらいいのか、これが一点です。
それから、市民スポーツなり生涯スポーツの振興策を考えたときに、特に恵美さんが大変御苦労なさっているというふうに私は思うんですが、やっぱり地域社会の中では行政が関心を持ってほしいということは私は必要だと思います。しかし、余り行政が関心を持ち過ぎて干渉的な立場になっちゃうと死んじゃうんじゃないだろうか、拘束されて。だとするならば、地域社会の市民スポーツを振興させるには何か受け皿がそこに必要じゃないのかなと思うと、先ほど三鷹の例を話されたとおり、やはり地域のコミュニティー形成というものがその受け皿として大事じゃないかというふうに私は思うんです。何にしても、よきコーチ、よき指導者をきちっと計画的に養成ができたとすれば大変成果は上がるんじゃないか。
私も日本大学におる関係で、うちの大学は柔道も強けりゃ相撲も強いしゴルフも強いし、大体三十何ぼは全国一になっているんですが、それを見ると、やっぱり専門的な知識を持ったコーチのある程度生活を保障してやらないと、これはなかなか難しいんです。監督だけじゃ強くならぬです。
そういうようなことを考えてみると、財政的な、ある意味において国なり自治体なりが保障というかある程度の環境づくりを支援してあげる。私は干渉しちゃいかぬと思うんだ、国も地方自治体も干渉しちゃいかぬけれども支援をしてあげなければならない。それを中長期的な視野に立ってやらない限り成果は出ないと思うんです。
今何が必要で何をどうしてもらいたいんだという具体的な、競技スポーツという領域の中で、あるいは市民・生涯スポーツの領域の中で皆さん方は求められているのか、ちょっとお三人の方々、それぞれのお立場で結構でございますが、その辺のところをお聞かせいただきたいと思うんです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115077X00319971211/29
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030・山下泰裕
○参考人(山下泰裕君) 先生の言われることはごもっともと思います。
まず初めに、我々競技団体に携わっている者あるいは競技団体の幹部の者たちがもっともっと勉強して、もっともっと努力して自分らの団体をよりよくしていくということがまずやっぱり基本になると思います。
半面、やはり世界のレベルで争っていくためには、小野先生の話じゃありませんけれども、何でこれしか頑張らぬのか、やっぱり予算のレベルでしか頑張れないと。やはり世界を見たときに余りにもかけ離れている。日本として、いいんだよスポーツは、そんなのいいんだ、勝たなくてもいいんだということであれば別ですけれども、勝ち負けだけじゃなくて将来を幅広く考えたときに、本当にこれでいいのかなと。そうすると、諸外国に負けないぐらいのお金をかけていかなければ、単にメダルの数幾つじゃなくて、大きな意味からやはり大事じゃないかなと思います。
それから、お金が直接競技団体に来ていいものかというと、私は、正直言ってどこまで言っていいのかわからないけれども、疑問視します。
まずは競技団体がもっともっと努力しなきゃいけないことがいっぱいあるわけです。そうすると、我々の場合は、それを統括している団体というのは日本体育協会というよりも日本オリンピック委員会の方、前の保体審の社会体育分科審議会でも私何回か言わせていただいたんですけれども、このJOCをやはり強化していくことが非常に大事じゃないかなと。JOCには各競技団体からすばらしい先生方が集まっていますけれども、みんな専任じゃないんですね、専務理事ですけれども専任じゃないんです。どうやったら日本のスポーツを強化できるかということを真剣に考えて、そこに常にいるスタッフが最低四人ぐらいはいないと、そして、その方々がやはり各競技団体を指導したり引っ張っていかないと、今のままですと役につかれる方々もやっぱりやれる仕事には限界があると思うんですね、かけ持ちでやっていますから。
だから、私としては、効果的なお金の使い方をするためには、まずそこを専任化していくことが不可欠ではないかなと、これは私の低いレベル、監督レベルですけれども、そういうふうに思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115077X00319971211/30
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031・八代勉
○参考人(八代勉君) 競技力向上の方は得意ではないんですけれども、今お話ございましたことに関して言いますと、もちろん日体協及びJOCの組織の強化は言うまでもありませんし、JOC傘下のそれぞれの競技団体のもっと自律的な、あるいは本当に強くしようとか、あるいは競技人口をふやそうということに対しての自分たちの努力を本当に私たちもしてほしいなと思っております。
そのために、よき指導者、よきコーチ、今先生おっしゃったとおりでございますが、加えて言うならば、よきマネジメントができる人材がいないんじゃないかなとも思っております。その辺が、日本の組織は、日本の企業の組織は立派かもしれませんが、競技団体の組織が弱いところは経営ができていないことかなと思っております。評論家的ですけれども、そういうふうに思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115077X00319971211/31
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032・恵美三紀子
○参考人(恵美三紀子君) 競技力強化のことにつきましては私よくわかりませんが、ただ子供たちを見ておりますと、ここでつぶしてしまってもったいないなということをよく感じます。もっとゆっくり伸ばしてやれば将来的にいろいろなことができる選手になるのに、なぜ小さいときから一種目だけに偏った育て方をするのだろうというようなことをよく考えております。
日本スポーツ少年団では、そのことを考えまして複合的にいろいろなスポーツをというふうに指導をしておりますけれども、やはり地域に行きますと、先ほど山下さんがおっしゃいましたように、勝つ指導者がいい指導者ということで、地域の指導者は勝つことを中心にどうしても指導をしがちです。そうなりますと、せっからに育ててしまって、せっからに芽を摘み取ってしまっている。それが私は今の、最終的にオリンピックの選手の方々がなかなかたくさん育っていらっしゃらないという申し上げ方は失礼ですけれども、たくさん人材がいない原因じゃないかなと。ごくごく一部のそれに耐えられた方しか残っていらっしゃらない。もう少し上手に小さいときから育てれば、もっとふえるのではないかということを一つ思っております。
それからもう一つですが、生活スポーツを振興させるために何を期待されるかという御質問ですが、私は、行政は縁の下の力持ち、環境整備に徹していただきたい。活動の内容につきましては、やはり地域の方々にゆだねていただきたいと思います。そのために、今ある組織、一つは地区体協というのがございますけれども、もう一つは私どものスポーツ少年団というような組織がございますので、これは三十五年、地域で活動しておりますから、ここを中心に対象者を広げて、先ほど申し上げました母集団のような、大人の方も巻き込んで、それを高齢者までつなげていく、こういうやり方が私は一番スポーツが長続きすることではないかというふうに感じております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115077X00319971211/32
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033・日下部禧代子
○日下部禧代子君 八代先生にお尋ねいたしますが、先ほど先生は、スポーツが日本ではまだ文化になり得ていない、そしてまた生活の中に溶け込んだスポーツということにはなっていないということを御指摘なさいましたけれども、そういういわゆるスポーツについての意識形成、価値観の形成ということにやっぱり学校教育というのはかなり重要な位置を占めるんではないかと思いますが、そういった観点から、学校教育における体育、スポーツのあり方について、先生のこれまでの御経験からお話をいただければと思います。
それから、恵美参考人にお尋ねしたいのですけれども、スポーツ少年団といいますと、これは小中高校生でございますね。日本のスポーツで非常に問題になるのは、学生時代はスポーツ、何らかにかかわっているけれども、学生じゃなくなって社会人になった場合には本当にスポーツから離れてしまう。それが生活の中に溶け込んだスポーツがないということにもなると思うんですけれども、一生を通じて、生涯の連続性ですね、これをどのようにつなげていったらいいというふうに御体験の中からお思いになっていらっしゃるか、その点を伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115077X00319971211/33
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034・八代勉
○参考人(八代勉君) 今度の教育課程審議会の中間報告で、体育の授業時数を二・六というように、半端ですけれども、減らされてしまうそうです。体育の授業時数だけじゃなく学校全体がスリム化されるわけですけれども、我々としては大変困った現象だなと思っております。
しかし、全体をスリム化する中で、学校体育としては非常に重要な役割を果たさなきゃいけないとすると、教科の体育だけではなくて、運動部活動あるいは体育的な行事等々、学校の子供たちのスポーツ教育をする場が教科、特別活動、自由な参加というように、いろいろ学校の中に体育活動がございますので、ぜひそれを総合的に学校としては充実していただきたいという願いであります。しかし、残念ながら事実は、学校週五日制の漸次移行の中で、子供たちの楽しみの行事が削られたり、あるいは運動部活動についても存続が今非常に危ぶまれているところもございます。
先生おっしゃいましたように、本当の日本のスポーツを、文化としてのスポーツを形成していく上での一番の根本的なところは、実は学校教育、スポーツ教育の重要性を抜いては語れないんですけれども、残念ながら今、状況としては決していい状況になっていないと思います。
ただ、そういう中でスポーツの、かなり体育の授業も変わってまいりまして、昔はただ鍛える、やらされるという時代からしますと、スポーツの楽しさをどの子供たちにもわからせようという教育にかなり転換してきておりますし、ただ楽しめればいいだけではなくて、楽しみ方をしっかり学ばせるということを今強調しております。
その楽しみ方の中に、私は、するということの楽しみと、見る、スポーツの見方や観戦の仕方、これも重要なスポーツの教養として小中高校あるいは大学を通して学ばせていってほしいと思っておりますし、最後に申しました創るという、みずからスポーツを創ることこそ学校時代にしっかり学ばせることでボランティア活動にも備えればと思っております。
そういう意味では、体育の教師も非常に質を変えていかなければいけませんけれども、学校の教員全体でこのようなことについては取り組んでいく体制をもう一方でやっていかないといけないんではないかと思っております。受験で駆り立てる先生、部活で駆り立てる先生が拮抗しているようでは学校はよくならないなと思っております。
以上でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115077X00319971211/34
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035・恵美三紀子
○参考人(恵美三紀子君) 一生を通じてスポーツをしていくための基礎づくりは私は子供のときにあると思っています。ですから、子供のときにスポーツの楽しさを知った子供は、一度離れましてもまた戻ってくる。もっと言いますと、組織化されていなくても、自分たちでスポーツをする場を求めてあちこちでスポーツをしているのではないかと思います。
ですから、学校時代には活動しているように見えますけれども、ある部分ではこれは強制されてやらされているのではないかということも感じますので、本当の意味でスポーツの楽しさを教えられた人たちは、私は、一時的に仕事ですとか職場から離れても、そしてクラブに通えなくても、自分なりにスポーツをすることを見つけて活動していると思っております。
先ほどほかの方の御質問にもあったことなんですけれども、私は、よき指導者というのは、スポーツの楽しさを教えられるということと、もう一つは、多面的にその子を見て、そしてそのいいところを伸ばせる指導者だというふうにも思っております。
以上でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115077X00319971211/35
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036・塩崎恭久
○塩崎恭久君 三人の先生方のお話を拝聴いたしまして、スポーツの大事さというのも言うまでもなくよくわかったわけでございますけれども、結局私は、スポーツをスポーツとしてだけ見るというのはどうかなという感じがいたしておりまして、きょう、山下先生から繰り返し、国政に携わっている我々国会議員がスポーツをどれだけちゃんと認識するかということがいかに大事か、こういうお話がございました。
アメリカとか、それからこの間私はニュージーランドに行ってまいりましたが、アメリカの国会議員の中で、プロの例えばフットボールの選手だった人とかいう方々が結構いるんですね。それから、この間ニュージーランドへ行ったら、オールブラックスの選手だった人とか、そういう人が平気で国会議員をやっている。
それから、私は高校のときアメリカに一年留学しておりましたけれども、そういう中で友達を見ていると、あるシーズンはフットボールの選手、あるシーズンはバスケットの選手、あるシーズンになると水泳の選手、それを一年じゅう続けてやっているオールマイティーな方々が結構おられます。それが日本だと、大体そういう方々は大学はそういった専門に行かれる方が割合多いわけであります。あるいは途中で挫折するか、さっき続けるべきなのにというお話がありましたが。ところが、アメリカなんかの場合、ハーバードとか何かすごい大学に平気で行ってしまう。
ですから、結局、価値観の多様化というものを社会がどういうふうにどれだけ受け入れられるのかということが結局スポーツのあり方というものを社会の中で位置づけていくんじゃないかなという感じがするんですね。
ですから、大学の受け入れの体制であるとか、あるいは社会、つまり企業に勤めるとか、そういう場合のスポーツをやってきたということに対する価値観の判断というか、そういうものが結局問題になっちゃって、途中でお母さんたちもだんだん心配になってきて、私の子供もスポーツ少年団でソフトボールをやっておりましたが、これは私が悪いのか家内が悪いのかよくわかりませんが、途中でやめちゃいましたが、やっぱりそういうところがいろいろ問題なんだろうなと。やっぱり最終的に社会的に受け入れられるかどうかということを考えちゃう。そんなところについて先生方はどんなふうに思っていらっしゃるのかということが第一点。
小さい問題かもわかりませんが、さっきスポーツ少年団の中で、少年団という名前がいかがかと思いますが、女性が少ないという話がありました。なぜ女性が少ないのか、指導者なのか何なのか、その辺、もしお伺いできればもう少しお話しをいただけたらと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115077X00319971211/36
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037・山下泰裕
○参考人(山下泰裕君) 今の先生のお話はよくわかります。
思うんですけれども、日本の場合ですと、中学から高校に入る、あるいは高校から大学に入るときに、スポーツも頑張りたい、しかし将来医者になりたいとか、将来自分で何か経営してみたいとか、そういうときに勉強かスポーツかを選択しなければいけない形になっていると思うんですね。それはやっぱり学校スポーツとしてやっているから、スポーツをやるんだったらやっぱりスポーツの強い学校に行かなきゃいかぬけれども、そこへ行ってそこのレベルで勉強しちゃうととてもじゃないけれども医者になんかなれないと。そういうところがやっぱり一つあって、ほかの国の場合には、学校じゃなくて地域のクラブスポーツでやっているという問題がある。
それからもう一つは、より外国の選手の方が自分から進んで自分で自分の人生をつくって歩んでいるという感じが見えますね。ですから、柔道はありましたけれども、おれは医者になると、だから今度のオリンピックまではとにかく柔道だけ頑張るんだ、オリンピックが終わったら柔道はやめてそれで医者の道を歩むとか、そういうふうな形で考えていくんですけれども、日本の場合ですと、そこで一年、二年ストップするということを、回り道してもその回り道というのは決してむだじゃないしかえってプラスになると思うんですけれども、長い人生で物を見れない部分があるんじゃないかなと。
もう一つ言いますと、やはりスポーツができる人間の中には勉強もすごくできる人間も結構いるんですね。そういう人間は大半は、スポーツ好きだけれどもやめて勉強の方に行きます。そういうところがあるかなと。
それから、やはり日本のスポーツ界は男性社会ですね。私は、これはやはり早急に改善されるべきじゃないかなと。人間の半分は女性です。女性にはすばらしい方がいっぱいおられます。ですから、柔道界でも私よりも後輩でしっかりした若い指導者、選手がおりますけれども、やっぱりどんどんそういう女性の指導者が女性のコーチとして、あるいは連盟の役員としてなっていけるような社会にぜひなってほしいなと。これは私は男ですけれども心から強く願っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115077X00319971211/37
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038・八代勉
○参考人(八代勉君) 地域づくりなんかをやっている方からよく聞く話なんですけれども、スポーツをやっている人は町づくりに協力的でないということがあります。スポーツのリーダーは町づくりに逆に足を引っ張ると。それに比べると、他の学習活動をやっている方々は非常に町づくりに熱心であると。これを言われるのが私は一番つらいと思っております。
ですから、逆に言えば、私は、スポーツをスポーツとしてだけ、あるいはスポーツだけよければいいという考え方をむしろ変えなきゃいけないし、スポーツをやる者も、動と静がやれるように、あるいはたまには歌を歌ったり絵をかいたりとかいろんなことができるような生活、それをできれば子供のときからずっとできるように、そういうようになりたいなと思っております。
ですから、文部省でやっておられるクラブづくりも、スポーツだけではなくて、むしろさまざまな学習活動が可能な地域のシステムとしての総合型のクラブにつくってほしいなという願いを持っております。
それから、途中でスポーツを中断せざるを得ないという日本の状況は私たちも非常に残念に思っておりますけれども、中学では七割から八割の子供が運動部活動に参加しておりますが、高校になりますと四割から三割、七割の子は運動部から脱落していくというのが現実です。これはやはり先ほどおっしゃったことが心配で続けられないということもたくさん原因になっているかと思います。これはぜひ国で考えていただかなきゃいけないことだと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115077X00319971211/38
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039・恵美三紀子
○参考人(恵美三紀子君) まず、スポーツに対する考え方なんですが、日本では、一つの種目を続けていますと認められますが、あちこち渡り歩きますと認められないというようなことがあるような気がいたします。それがその続けられない理由の一つになっているのではないか。私はスポーツというのは何をやってもいいんだと思うんですが、一つのことを続けられないと、あいつは根性のないやつだということでどうしても切り捨てられてしまう。そこを変えていきませんと、幅広くスポーツを楽しめる人は育ってこないのではないか。そして、そういう考えの方が御指導くださいますと、いろんな種目を試してみたいというかやってみたい子供はどうしてもスポーツから離れていってしまうのではないか。これが一つございます。
それから、女性が少ない理由、ただいま山下さんおっしゃってくださいましたが、確かにスポーツ界は男性上位でして、女性の指導員が出てきますと余り男性は喜びません。しかも、私も男性十人の中の一人でやってきたことがございますが、女性の発言は男性の発言よりも軽く見られるというようなところがございまして、同じことを申し上げても、男性の場合はそうだと言っていただけますけれども、女性の場合は生意気だで終わってしまうようなところもございますので、その辺の意識を、今の若い人たちはだんだん変わっていくんだと思いますが、変えていただくことが一つ。
それからもう一つは、やはり経済的な面がございます。それと活動時間です。
今、スポーツ活動に携わっていただけそうな若い女性の方はパートタイムで働きに出る方が多いです。スポーツ少年団の活動を指導なさる時間というのはどうしてもあいた時間でなければならない。男性はうちへ帰って御飯の支度をなさらなくてもよろしいですから、その時間をスポーツ活動に当てられますが、女性の場合はパートから帰ってきて御飯の支度をしなければいけない。日曜日は、男性は家庭をおいても外ヘスポーツだと言ってお出になれますが、女性は洗濯、掃除をしなければいけない。そういうようなこともかなり多いと思います。ですから、女性の指導者で長く続けていらっしゃる方は、御主人も一緒にスポーツ活動をしていらっしゃる方、もしくは大変御理解のある方ということになると思います。
それから、私の場合には、これは活動時間帯が幸いしておりまして、家族がいない時間帯に子供たちと一緒に活動しておりましたので、二十何年続けられたということもございます。
以上でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115077X00319971211/39
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040・大島慶久
○委員長(大島慶久君) ありがとうございました。
まだまだ質疑もあろうかと存じますけれども、特に参考人の皆様方には予定時間内に終わるということを条件にきょうは御出席をいただいております。予定した時間が参りましたので、午前の参考人に対する質疑はこれをもって終了したいと存じます。
この際、参考人の皆様に一言ごあいさつを申し上げます。
参考人には、御多忙のところ本委員会に御出席をいただきまして、貴重な御意見を賜りまして、まことにありがとうございました。本委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。(拍手)
午後一時まで休憩いたします。
午前十一時五十九分休憩
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午後一時一分開会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115077X00319971211/40
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041・大島慶久
○委員長(大島慶久君) ただいまから文教委員会を再開いたします。
休憩前に引き続き、スポーツ振興投票の実施等に関する法律案、日本体育・学校健康センター法の一部を改正する法律案及びスポーツ振興法の一部を改正する法律案、以上三案を一括議題とし、質疑を行います。
午後の委員会には、参考人として財団法人日本体育協会会長安西孝之君、東京都地域婦人団体連盟常任参与田中里子君、大阪体育大学教授池田勝君及び社団法人日本プロサッカーリーグチェアマン川淵三郎君に御出席をいただいております。
この際、参考人の方々に一言ごあいさつを申し上げます。
本日は、御多忙のところ本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。
皆様方には、主にスポーツ振興投票について忌憚のない御意見をお述べいただきまして、今後の審査の参考にさせていただきたいと存じますので、よろしくお願いをいたします。
それでは、議事の進め方でございますが、まず安西参考人、田中参考人、池田参考人、川淵参考人の順でそれぞれ十五分以内で御意見をお述べいただいた後、各委員の質疑にお答えいただきたいと存じます。
なお、御発言は、意見、質疑及び答弁とも着席のままで結構でございます。
それでは、まず安西参考人から御意見をお述べいただきたいと存じます。安西参考人。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115077X00319971211/41
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042・安西孝之
○参考人(安西孝之君) 私は、日本体育協会の会長を務めております安西孝之と申します。最初にお時間をちょうだいいたしましたので、私どもの考え方を述べさせていただきます。
日本体育協会は、五十六のスポーツ競技団体と四十七都道府県体育協会を加盟団体といたしまして、我が国アマチュアスポーツの統一組織としてスポーツの普及、振興の活動を行っております。
具体的に申し上げますと、スポーツ指導者の養成、ジュニアスポーツクラブとしてのスポーツ少年団の活動、スポーツ医科学研究の推進、アジア・オセアニア地区の生涯スポーツ活動への支援、交流等の国際交流事業の推進、国民体育大会等スポーツイベントの開催等がその主なものでございます。
さて、スポーツは、健康や体力の向上のみならず、爽快感、達成感等の精神的な充実や楽しさ、喜び、とりわけ青少年にとって人間形成に大きな影響を与えるなど、国民の心身の健全な発達と明るく豊かで活力に満ちた社会の形成に寄与するものであろうと自負いたしております。
このようなスポーツの持つ役割は、現在、世界的に見て二つの方向から重要性が増してきているように思います。
その一つは、スポーツの大衆化であります。今日、急激な高齢化の進展や週休二日制など余暇時間の増大が進む一方、子供の体力低下あるいは高度技術社会、情報社会などによるストレス要因も加わり、大きな社会変化が進行しております。
このような状況を踏まえますと、子供たちからお年寄りまで充実した生活を実現していく上で、みんなで気軽にスポーツに親しみ、楽しむ機会をふやしていくなど、暮らしの中にスポーツ環境を整備していくことがますます必要になってきていると思います。
私ども日本体育協会では、スポーツの楽しさを一人でも多くの人に知っていただき、継続して楽しくスポーツ活動ができるように、スポーツ指導者の養成に努力いたしております。現在、私どもが認定しておりますスポーツ指導者は全国におおよそ七万人ほどおり、各地でボランティア活動に汗を流して頑張ってくれております。また、私どもは三万四千のジュニアスポーツクラブとしてのスポーツ少年団を組織しており、これら少年団には、子供たちと指導者合わせて百十五万人が活発にスポーツを楽しみ、交流を続けてくれております。
しかしながら、多様なスポーツクラブを育て、例えばドイツでは国民の三人に一人、約二千四百万人の人たちが何らかのスポーツクラブに属してスポーツを楽しんでいるといったヨーロッパの国々を見るとき、我が国においても、いろいろな世代の方々がさまざまな種類のスポーツを楽しみ、クラブハウスで交流するといったスポーツクラブを歩いていける距離に一つ、つまり中学校区程度に一つ、数で言いますと全国に一万カ所ぐらいつくり上げ、多くの国民が手軽にスポーツを楽しむ受け皿にしていくことがこれからの重要な課題ではないかと思っております。
スポーツの持っている二つの方向のもう一つは、スポーツの高度化ということであります。
オリンピックや世界選手権などのトップレベルの競技は、私どもに手に汗を握らせる熾烈な競争が展開されております。そして、このような国際競技大会における日本選手の活躍、例えばついこの間のサッカーにおける日本・イラン戦でも明らかなように、国民に夢と感動を与えると同時にスポーツに親しむきっかけともなり、生涯スポーツの振興や活力ある健全な社会の形成にも貢献するものであろうかと考えます。
しかしながら、現状においては、競技スポーツの振興は選手や指導者の個人の善意と献身的なボランティア精神に支えられている状況であって、国際的な競技力は相対的に低下傾向にあるのではないかと危惧いたしております。世界のスポーツ界は厳しい高度化が進められており、コーチ、トレーナー、スポーツドクターからスポーツ栄養士といったスタッフが一貫したシステムで協力する形が確立しております。また、アメリカ、ドイツ、フランス、韓国、中国などには選手強化の合宿などを行うことのできる専用の大規模なトレーニング施設が整備されておりますが、日本にはそのようなナショナルトレーニングセンターなどの拠点の施設もなく、選手の育成環境は著しく立ちおくれてしまいました。
選手強化のトレーニング施設の整備とともに、ジュニア期からすぐれた選手を見出し、適切に育てていくシステムの構築も我が国にとっては大きな課題であると思います。
次に、スポーツ医科学の推進について触れさせていただきます。
ただいまも申し上げましたとおり、すぐれた選手を育てていくためには、一人の天性に恵まれた選手が存在するだけにとどまらず、彼らを取り巻く支援スタッフの組織的存在が強く求められるようになってきております。とりわけ我が国にとって大きな課題と考えておりますのは、スポーツ医科学の整備充実ではないかと日ごろから強く思っているところであります。
スポーツ生理学、スポーツ運動学、スポーツ心理学、スポーツ栄養学といった側面からの科学的支援が極めて重要であり、その意味で、国立科学センターのようなものがきちんと運営され、選手強化に貢献していくことが求められていると思います。スポーツ医科学の推進は、単に選手強化だけにとどまらず、生涯スポーツの分野でも、子供からお母さん方、そしてお年寄りの方々と、年齢に応じた適切なスポーツの取り入れ方と健康指導といった側面からも大きな意味を持っていると考えております。
私ども日本体育協会では、スポーツドクターという資格を認定しておりますが、こういう方々がどんどんふえて、地域の中でスポーツを楽しみ、より一層健康な生活を築いていく面で貢献してほしいものだと思っているところであります。
このような、国民のだれもがそれぞれの地域で手軽にスポーツを楽しむ環境を整備したり、国際競技力を向上するための条件を整備するためには相当規模の安定財源が必要であります。
先ほども触れましたように、ドイツでは、地域のスポーツ環境を整備するために、一九六〇年、昭和三十五年から一九七五年、昭和五十年にかけまして、ゴールデンプランと称して、サッカーくじの収益などを使いながら、約一兆一千億の経費をかけて地域スポーツの環境整備に当たったと聞いております。
昭和五十一年、私ども日本体育協会とドイツのスポーツユーゲントの交流でドイツに出かけました際の報告によりますと、ドイツではこの十五年間に、スポーツクラブでスポーツを楽しむ人は六百万人から千二百万人に増加したと伝えられております。その後、ドイツはさらに第二次計画、そして東西ドイツ融合による新しい取り組みにより、現在三人に一人、二千四百万人がスポーツクラブを通じてスポーツを楽しんでおります。
昭和三十五年、ゴールデンプランが発足したその当時の貨幣価値は現在とは異なりますけれども、先ほど申し上げましたように、十五年間で一兆一千億ということは、年平均七百億円の経費が生涯スポーツのために投じられたことになります。
我が国におきましては、文部省等でも毎年種々工夫をしながらスポーツ予算の獲得に努めてこられたようでございますが、国のスポーツ振興予算は百八十億程度で伸び悩んでおります。日本体育・学校健康センターのスポーツ振興基金、その他私どもや日本オリンピック委員会が国庫補助以外に集めている財源を合わせましても、国費ともども三百億円に達しない程度でありまして、抜本的スポーツ振興を図るには不十分と言わざるを得ません。このため、スポーツ振興費の充実はスポーツ関係者の久しく願うところでありましたが、国家財政は危機的状況にあり、聖域なき財政再建が求められていることを考えますと、今日、新たな財源支出を期待することは極めて困難であります。
スポーツ関係者は上品で弱気過ぎる、もっと強く国に要求すればいいではないかという声も聞かれますが、私どもは今も、これからも必要なものは要求させていただくつもりでございますが、みずからできることも掘り下げ、さらに国民一人一人が自主的に参加していただくような、新しい工夫をさせていただくことも必要ではないかと思っております。
そこで、平成四年から我が国にもJリーグというプロサッカーが誕生したのを契機に、先に述べたドイツや、一千億を超えるスポーツ振興予算の大部分をサッカーくじの収益で賄っているイタリアのように、諸外国で成功しているサッカーを対象としたスポーツ振興財源の確保が最善ではないかと考えるとともに、その創設を強く希望するに至ったものでございます。
スポーツ振興くじは、スポーツ振興の財源にギャンブルを導入し、青少年の健全育成に少なからず悪影響をもたらすのではないかとの御批判もあるようでございますが、私どもが要請した後、これをお取り上げくださったスポーツ議員連盟におかれましてはさまざまな工夫をされ、ギャンブルが持っている危険な要素を排除され、宝くじに似たくじとして、明るく楽しいものにしていただいたと考えております。そして、スポーツ振興くじの収益によって使われるさまざまなスポーツ振興策を通じて、青少年の育成にも貢献することができると固く信じております。
スポーツ振興くじの対象をサッカーとしたことについては、スポーツ議員連盟において諸外国の情勢を踏まえつつ慎重な検討をされたものと承知いたしておりますが、サッカーは集団スポーツで特定の個人に負担が偏らないことなど、試合が公正に行われる条件が整っていること、天候に左右されず予定どおり実施できること、プロスポーツとして国民に支えられていることなどなど、くじの対象としてふさわしいスポーツであると考えます。
以上のとおりでございますが、私どもといたしましては、できるだけ早くスポーツ振興くじの法案を成立させていただき、スポーツ振興に積極的に取り組んでいくことができますよう強くお願いを申し上げて、終わりにいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115077X00319971211/42
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043・大島慶久
○委員長(大島慶久君) ありがとうございました。
次に、田中参考人にお願いをいたします。田中参考人。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115077X00319971211/43
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044・田中里子
○参考人(田中里子君) 私は、東京都地域婦人団体連盟の田中でございます。スポーツ振興投票の実施等に関する法律案の審議に当たりまして、参考人として意見を述べさせていただきます。スポーツ振興投票の実施等に関する法律案、私どもサッカーくじという名前になれておりますので、以下はサッカーくじというふうに言わせていただきたいと思います。
私どもの東京地婦連では、平成四年、一九九二年にサッカーくじ構想が浮上してから一貫してくじの導入に反対してまいりました。まず、反対の理由を申し上げたいと思います。
一番目に、国民的コンセンサスを得られていないサッカーくじ法案は、将来にわたり社会的影響が大きく、強行されるということは民主主義の根幹を揺るがすものにもなりかねないと思っております。特にサッカーは、今回のワールドカップアジア予選イラン戦などで見られますように、青少年も子供たちも、そして高齢者までが純粋に楽しんでいるものです。フェアプレーに拍手を送る人々、それから泥にまみれてスポーツに興ずる子供たち、いずれを見ても、本当に勝負、それからお金に左右されているものではありません。資金獲得が目的のくじの導入は、純粋なスポーツの精神に反するものではないでしょうか。私たちは、青少年、子供たちに、勝てはお金が入るという思想を持ち込むことに反対なのです。
このサッカーくじ法案の発案当初の事情を考えますと、私は、オリンピックにおける日本の成績が思わしくないのを国威の失墜とみなして、国威宣揚のためのスポーツ振興という、本来のスポーツ振興とはかけ離れた意図が根本にあったのではないでしょうか。スポーツ議員連盟のパンフレットを見ましても、選手の人たちの姿が大きく出ているということに気がつきました。本来のスポーツ振興は、国民皆スポーツを実現した中から自然にエリート選手が生まれてくるような息の長い施策こそが本来のスポーツ振興と思います。
二番目に、国民のだれもが参加し愛するスポーツの振興は、ギャンブルによる財源確保ではなく、国の文教・スポーツ予算の増額、民間の協力をもって実現する努力を早急に行うべきではないでしょうか。確かに、日本の財政事情は危機的段階にあって、文教予算の増額は極めて困難ということを皆さんおっしゃっています。しかし、生活大国を目指す国の方針を確立するためには、文教委員の方々こそ本筋の国の予算獲得に全力を挙げるべきではありませんか。
お金はあるにこしたことはありません。でも、最近のバブルの後遺症を見ても、身の丈に合った予算で知恵を生かしていくというのが本来のスポーツ振興の姿だと思います。
三番目に、教育・文化の振興、青少年の健全育成を掲げる文部省がサッカーくじの指導監督を通していわば胴元的役割を果たす根本的な矛盾はどうしても納得できません。
四番自に、確率百万分の一とか百六十万分の一であれ、サッカーくじは勝負にかけるギャンブルに変わりありません。射幸心をあおるものです。さらに、十九歳未満の購入を制限することは事実上不可能だと思います。どういうふうにお考えなのか、どうされるのかということもお聞きしたいと思います。
こうした反対の趣旨は当初から変わっておりません。初め私どもが運動の口火を切りましたが、二年後には東京消費者団体連絡センターと連名で運動を続けました。三、四年前から仲間が次々とふえました。まず、私どもの全国組織、全国地域婦人団体連絡協議会は、北海道から沖縄まですべての都道府県と指定都市にそれぞれ地婦連があり、市町村組織の会員を合わせると六百万人に及びます。別の要望書にありますように、主婦連合会、消費科学連合会、全国消費者団体連絡会、東京都地域消費者団体連絡会、日本消費者連盟、日本青年団協議会、日本婦人有権者同盟、さらには新日本婦人の会、日本婦人会議など、また日本PTA全国協議会、日本弁護士連合会など幅広い活動を続けているところが反対ののろしを上げております。私は、自主的な女性、消費者、青少年団体で賛成の意思表示をしているところを知りません。これほどの反対意見を無視されてよいものでしょうか。
この法案の提案理由の冒頭に、「スポーツは、心身ともに健やかな人間を育て、生活に潤いと活力を与え、また、世界の人々をつなぐ大切な人類共通の文化」と言われていることに全面的に賛意を表します。こうしたスポーツ振興に要する経費こそ、今いろいろ話題にもなっております公的資金である税金を投入することに異論のある国民は恐らくないと思います。しかし、国の財政事情が厳しいからといって、財源をギャンブルに頼ることこそ問題視されなければならないでしょう。「諸外国でも定着しているスポーツ振興投票制度を導入し、」と、これも提案理由にございます。発展途上の日本のサッカー界が、古い歴史を持つ、先ほど安西参考人も言われましたドイツやイタリア、そういうサッカー先進国のくじを見習うのはナンセンスでしょう。
また、最近のマスコミ報道によれば、自民党を中心に、教育上の問題が発生した場合はくじ発行業務を停止するなどの修正案が出ているとのことですが、提案者みずからがこの法案の問題点を認めているものと思わざるを得ません。そうしたことを考えますと、いろいろ私どもは問題を投げかけざるを得ないと思います。
最後に、私たちは、前国会で衆議院文教委員会をわずか三時間で、しかもたった一人の議員の反対のみで採決したことの異常さを目の当たりにして、私たちのような国民と国会の余りの違いに愕然としたことを鮮やかに思い浮かべました。良識の府である参議院文教委員会の皆様の勇気ある廃案への御決断を期待して、私の発言を終わりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115077X00319971211/44
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045・大島慶久
○委員長(大島慶久君) ありがとうございました。
次に、池田参考人にお願いいたします。池田参考人。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115077X00319971211/45
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046・池田勝
○参考人(池田勝君) 私は、諸外国におけるスポーツ振興策の最近の動向につきましてお話しし、今後の我が国のこの方面に少しでもお役に立てればと思っております。皆様のお手元に配りました参考資料にお目をお通しいただきたいと思います。
最近の各国のスポーツの動向を少し調べてみますと、四つのスポーツ先進国の動向と申しますか、それが非常に目に映ります。それは、最初の資料に挙げましたように、オリンピックの過去三大会におきまして、つまりソウル、バルセロナ、アトランタでメダル獲得数が大変伸びている国、すなわちオーストラリア、イタリア、カナダ、フランスの例でございます。
このグラフをごらんになっていただきまして御理解いただけると思いますが、この四カ国は突出してソウル以降メダル獲得数が伸びております。一国のスポーツの振興をメダル獲得数で云々するのはどうかとは思いますが、しかし、これはただ偶然によってこのようなメダル獲得数が伸びたわけではございません。やはり、何らかのそれぞれの国のスポーツ振興策の明確な理念あるいは事業活動があった結果、こういう結果になったんじゃないかと思います。
例えば、二〇〇〇年にシドニー・オリンピックを開きますオーストラリアでございますが、このようにアトランタでは四十一個のメダル獲得数でございます。一九五六年にメルボルン大会を行いまして、それ以後オーストラリアは、かつてのスポーツ大国は非常に衰退しました。一九七六年のモントリオールのオリンピックが、金メダルがゼロというオーストラリア国民あるいはスポーツ関係者にとっては大変ショッキングなことでございました。これではいけないということで政府が乗り出しまして、一九八一年一月二十六日のオーストラリア建国記念日にナショナルトレーニングセンターを開設し、今日に至っております。
ただ、そういうトップアスリートだけではなしに、例えばアトランタの成績を見ますと、そのオリンピックの後に開かれましたパラリンピックの大会でもオーストラリアの身障者たちは大変活躍いたしまして、金メダル数は開催国のアメリカに次いで、わずか一個の違いで第二位、メダル総数も第二位でございます。そういう面からしましても、単なるトップアスリートだけじゃなしに、そういう身障者にも目を向けて政策を展開してきたかわかると思います。
御承知のように、イタリアはいわゆるトトカルチョ、サッカーくじを一九四六年から導入しておりまして、その資金を有効に活用しております。特に、収益金の三%を施設の建設整備に充てるというふうにきちんと定めておりまして、その資金を活用しながらトレーニングセンターあるいはスポーツクラブ等の整備に当たってきております。
カナダは、一九八八年のソウル・オリンピックのときに、ベン・ジョンソンのあのドーピングの問題がございましたが、あれで打ちひしがれることなく、カナダの政府は、スポーツをカナダ国民のトレードマークにしようという壮大な計画のもとに、それ以後も積極的にスポーツ政策を展開いたしました。その結果はこういう結果になっております。
フランスは、一九八五年にいわゆるスポーツくじ、フランスの法律を見ますとこのように書いております。利益がスポーツに還元される新方式のスポーツくじの開設、これを一九八四年、ロサンゼルス・オリンピックが終わった直後にこういうスポーツくじを行っております。
導入に当たってはいろいろ問題がありましたけれども、隣の国のイタリア、イギリスあるいはドイツもスポーツくじを展開してスポーツ政策を積極的に展開している、そうするとフランスだけがおくれているんじゃないかということが国会でも論議になりまして、それ以後このスポーツくじの収益を有効に使いまして、今日、フランスはスポーツ先進国の一つに仲間入りしたわけでございます。先般の世界柔道選手権でも、フランスで行われましたけれども、フランスの選手は大変活躍されたことを皆様も御承知と思います。
こういうふうに、スポーツ先進国と言われるところは決して偶然にこのようなメダル獲得数を上げたのではなく、やはり一つの信念、理念、政策があったからだと思います。
こういう四つのスポーツ先進国から考えまして、私は次の三つのことがこれからの我が国のスポーツ政策、スポーツ振興策に参考になるんじゃないかと思います。
一つは、次の二枚目の表でございますが、いわゆる先進諸国と言われておるG7の国、アメリカ、カナダ、イギリス、フランス、ドイツ、イタリア、そして日本、このG7の国でナショナルトレーニングセンターがないのは我が国だけでございます。そこに挙げておりますように、早くからこれらの日本以外のG7の国は準備しております。例えば、アメリカは一九七七年にコロラドスプリングスにオリンピックトレーニングセンターを開設しておりますが、一昨年、新たな夏季のトレーニングセンターとして、カリフォルニア州のサンディエゴに大変広い七十ヘクタールもある立派な第三のトレーニングセンターを開設しております。このように、各国とも非常にこのナショナルトレーニングセンターの整備に努めております。
ナショナルトレーニングセンターと申しますと、何かトップアスリートだけが競技力の向上のために、あるいはメダルを獲得するために寝泊まりして行うという場所の印象が強いわけでございますが、決してこういう各国はそういう考え方でナショナルトレーニングセンターを開設しておりません。いわばその国のスポーツ振興策のシンボルになるという意気込みでこういうことをやっております。
つまり、国を代表するアスリートをトレーニングすることは、単に競技力の向上だけでは今日の国際社会では通用いたしません。そのトップアスリートが例えばメダルを獲得した場合に、記者会見のときの話し方あるいは身だしなみ、あるいは将来の自分の学業あるいは就職、そういうものまでも支援して行っております。したがいまして、その国民を、国を代表するアスリートとしての自覚を持たせる、あるいはいわば国の外交官の一人であるという自覚を持たせるようなことをやっております。
第二番目に、ナショナルトレーニングセンターが重要視されていますのは、トップアスリートの競技力、体力の向上のノウハウが一般国民の健康づくりに寄与する、そういうデータを出すことに専念しております。したがいまして、スポーツ医科学センターであるとか、スポーツ科学センターであるとか、スポーツ情報センターというのがこういったナショナルトレーニングセンターに附置されているわけでございます。
それから、そのナショナルトレーニングセンターは、最近注目されているのはいわゆるスポーツ産業に大いに貢献するというわけでございます。トップアスリートに使用したいろんな器具、ウエア、そういうものが一般の国民のそういう日常生活のことに役立つ、スポーツ科学の最先端の技術が一般国民の生活にも寄与している、プラスになっているという観点でスポーツナショナルトレーニングセンターが見直されております。
第三番目の問題でございますけれども、こういったスポーツ先進国の今のスポーツ活動の実態を見ますと、三枚目に四つの表がございますが、印刷が悪くて見苦しい点があるのをお許しいただければ幸いです。
このように見ますと、日本は、平日のスポーツの実施時間あるいは実施の量、実施のレベルというものが極めてほかの国と比べて低い状況にございます。特に注目されるのは、右側の上の表一の「運動・スポーツ実施レベルの国際比較」でございますが、このパーセンテージで示した値というものは、国民の健康維持向上のレベルに必要な運動量を示したものでございます。それを見ましても、日本国民の実施率、レベルというものは極めて低いことが御理解していただけるんじゃないかと。特に高齢者の女子におきましては二%にも満たない状況でございます。
なぜ欧米諸国でスポーツがこれほどまでに積極的に日常生活の中で行われているのかと申しますと、それは先ほど安西会長からお話がありましたように、欧米諸国では地域に根差したスポーツクラブが確立していると言っても過言ではないと思います。つまり、営利を目的とせず、住民の自発的加入、自主的運営によって成り立っており、国や地方自治体からの財政援助、スポーツ施設など公共用地・施設の優先利用、事業収益及び固定資産に対する税制優遇措置、例えばアルコール販売を許可するとか、そういうことを行政機関によって法的に認可された法人格のクラブがほとんどであるということでございます。したがって、いろんなことで優遇を受けておるわけです。
例えば、右下の表三でございますが、これは「EU諸国のスポーツクラブとサッカー人口」を載せたわけでございます。サッカー人口をあえて載せましたのは、サッカーをやっている人間がこういう国では断トツに多いわけでございまして、こういうデータからも、いかにスポーツが広々としたところで行われているか、それがクラブを中心にして行われているかということがわかると思います。
それと同時に、例えばデンマークであるとかフィンランドといった北欧諸国は国民の四〇%以上がスポーツクラブに加入しております。ということは、これは単なる日照時間が長い、そういう問題ではございません。政府の積極的なこういうスポーツクラブに対する援助があるわけでございます。例えば最もスポーツクラブの加入率の高いデンマークにおきましては、二十五歳以下の青少年に対するプログラムを実施した場合には、その運営費の四分の三、七五%を政府が、地方自治体が認めようということをやっております。
ドイツのある州では、スポーツクラブの会員の二〇%以上が青少年であった場合にはそれに対して補助金を出そう、そうでないクラブには補助金を出さないというような線を引いております。このようにして、地域に根差したスポーツクラブ、それに対する政府の積極的な援助があるからこそ、このように実施率が高いのではないかと思います。
最後のページでございますが、「主要先進国の体育・スポーツ予算概況」並びに「ヨーロッパ諸国のスポーツ財政比較」を載せました。これを見ていただいたらわかると思いますが、最近の動向としまして、やはりどこの国も苦しい財政状況でございますので、公的資金以外の財源の確保に積極的に取り組んでいるということでございます。
サッカーくじ、いわゆるスポーツくじはもちろんのこと、例えばイギリスでは一昨年から国営宝くじを導入しまして、その五%をスポーツに充てております。五%といいますのは一九九五年で見ますと三百億円のお金でございます。このお金を使いまして、いわゆる古くなった施設のリニューアル、補修、改修、あるいはいわゆる国際試合にたえ得るような施設づくりをやっております。イギリスの場合、もう既に立派なナショナルトレーニングセンターをお持ちなんですけれども、非常に古くなっております。そのリニューアルを今三候補地につくろうと、オーストラリアに負けない、あるいはアメリカに負けない、そういう施設をつくろうというふうにやっております。
最後に、この委員会はスポーツくじの問題でございますが、よくギャンブルとかそういう言葉が使われておりますが、ここにヨーロッパ評議会のレポートがございます。これは、どのようにスポーツ財源を確保しているかの十三カ国を調査したものでございます。そういったいわゆる公的資金以外の財源のことをゲームズ・オブ・チャンスと言っています。つまり、スポーツくじもサッカーぐじも宝くじも競馬も、そういったものをすべてゲームズ・オブ・チャンス、つまり運だめしのゲームなんだというような感じでこういうスポーツくじを取り扱っているということを御参考までに申し上げまして、私のお話を終わりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115077X00319971211/46
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047・大島慶久
○委員長(大島慶久君) ありがとうございました。
次に、川淵参考人にお願いいたします。川淵参考人。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115077X00319971211/47
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048・川淵三郎
○参考人(川淵三郎君) 川淵です。
きょうは、Jリーグができた経緯、その設立趣旨、そしてJリーグの現状、将来展望、そういったものをお話しさせていただきたいというふうに思います。
一九六〇年、四年後の東京オリンピックを目指して日本のサッカー協会は画期的な決断をしまして、外国人から初めて指導を受けるということになりました。
一九六〇年の夏、私も日本代表チームの一員として初めてドイツを訪問しました。合宿する場所であるドイツのデュースブルクのスポーツシューレに行ったときに、その施設のすばらしいことにびっくりしました。シラカバの林に囲まれて、体育館が三つ、ホテルのような宿泊設備、二百人は優に一堂に会して食事ができるレストランのような食堂、医務室、映写室、階段教室、そしてその後ろに、シラカバの林に囲まれて緑豊かな芝生のグラウンドが八面もあったんです。当時の日本代表チームの練習というのは、土の穴ぼこだらけの石ころのいっぱいあるグラウンドで練習していましたから、それを見ただけでびっくりしたんです。そして、グラウンドに行ってみると、十歳前後の子供たちが二百人ぐらい、多くの指導者のもとでサッカーの練習をしていた。これを見て、こんな小さなときからこんなすばらしいグラウンドで練習する国に百年たっても勝てないなと思ったんです。
そして、一つの体育館に行ってみたら、身体障害者の人が車いすに乗って、低いネットを張って、バレーボールを使って何かテニスのような競技をしていました。一九六〇年といえば、日本では車いすなんか余り見ない時代です。車いすの人が自由に表に出ない時代です。そういう身体障害者の人がスポーツをするのかと、スポーツを楽しみたいんだなと、そういうことを私自身が理解していなかったことにすごくショックを受けました。ああ、こういう国に生まれた人は幸せだなと。こういうみんなが楽しめるスポーツ施設、そういうものが日本にできたらいいのになと思って三十数年、そしてそのときにサッカーのプロ化を通じてそういうものを実現したいな、そういう施設をつくりたいなということでJリーグはスタートしたんです。
一九六五年、東京オリンピックが終わった明くる年、当時の日本サッカー界の父と言われたデッドマル・クラマーさんの提言で、サッカーの場合の世界のひのき舞台というのはオリンピックとワールドカップなんですが、これに出るためには日本のトップクラスで組織された日本リーグというものをつくらないと日本のサッカーは世界のレベルに追いつきませんよと言われて、一九六五年に日本サッカーリーグというものがスタートしたんです。
しかし、その三年後にメキシコのオリンピックで銅メダルを取って以来二十数年間、日本のサッカーは世界のひのき舞台に出れなかったんです。世界のひのき舞台に出るためにつくった日本サッカーリーグが機能していない。これを機能させるためにどうしなければならないかということからプロ化の検討が始まったんです。
そして、そこで結論的に出されたのは、企業内スポーツである限りは絶対にだめだと。それはなぜかというと、当時、会社がサッカー部に使っていた年間予算は、少ない会社で約二億円、多い会社で約十億円、平均五、六億円の予算がサッカー部のために使われていました。お客さんが試合に一人も入らなくても、選手が適当なプレーをしていたってそのお金は選手に渡るんです。そういうことで強いチームができるわけがない。強い選手ができるわけがない。こういうアマチュアでもプロでもないような状況を脱皮しない限り日本のサッカーは世界のひのき舞台に出られないな、こういう仕組みそのものを変えようと。
じゃ、どうすればいいんだ。それはヨーロッパにあるように、地域社会の人たちがいつでもだれでもがそこに行って自分の好きなスポーツを楽しめる、そこにはそれにふさわしい指導者がきちんといて、コミュニティーの人といつも触れ合える、そういうスポーツクラブがあって、そこにたまたま強いプロのチームがあって、おらのクラブの代表だから、おらの町の代表なんだからみんなで応援に行こうと、そういうふうな仕組みにならない限り、いい選手も育たないし強いチームも育たない、そしてファンもふえていかないんだ。そういうヨーロッパの地域社会に根差したスポーツクラブというものを我々としてはプロのコンセプトとして打ち出して、プロ化をしていこうということを決めたんです。
そういうことで、我々の設立の趣旨というのはスポーツ文化の振興、サッカーだけのことをとって言えば水準の向上、選手、指導者の地位向上、設備の拡充ということなどが挙げられています。しかし、Jリーグで一番重要な理念というものは、豊かなスポーツ文化の振興及び国民の心身の健全な発展に寄与するということをJリーグの一番大切な理念として掲げています。これを言葉をかえて言えば、先ほど申し上げましたように、地域社会の人たちがそこに行けばだれでもがいつでもいい指導者のもとにどんなスポーツでも楽しめる施設、仲間、そういうものを我々としては提供していこうということなんです。日本にそういったものがゼロなんだから、こういうものができるためには十年かかるか二十年かかるか、三十年かかるかもわからない、百年かかるかもわからないということで、Jリーグはこれを百年構想ということで名づけてやっています。Jリーグは、そういうことで、地域に根差したスポーツクラブづくりを理想としてスタートしました。
御存じのように、スタートしたときは爆発的なブームでした。異常な格好でした。まさにブームでした。そして、各クラブが予想もしなかったグッズの売り上げのロイヤルティー、テレビの放映権料、入場料収入ということで、収入が一年目、二年目、三年目と右肩上がりに伸びていきました。それに比例するように選手の年俸が異常に上がってしまったんです。先ほど田中さんが言われたような、身の丈に合った予算というんですか、そういう格好にはまるでなってなかったんです。そして、去年ことしと、大幅に試合数が減ったこともありますけれども、大幅な収入減になり、一部経営の危機が叫ばれるチームも出てきました。
今、清水エスパルスでは、そういう意味では経営の危機に瀕しております。十一月に入って、一カ間で約三十万を超える署名がエスパルスの灯を消すなということで集まりましたし、今一千七百万円の募金も集まっています。そういったことで、その清水の地域社会で鈴与さんを中心にどうエスパルスを立て直していくのか懸命に今検討をしていただいています。
初めのブームでJリーグに参加を希望するチームがいっぱい出てきましたけれども、とりあえずスタートすれば何とかなるというふうなことだったんですが、やはり収入に見合った支出という考え方からすると、ことしはまさにもう一度原点に戻って経営基盤をしっかりしたものにするためのターニングポイントになる年だというふうに位置づけています。
一九九九年からJリーグは一、二部制をしきます。現段階では一部十六チーム、二部のチームには、現在のところでは十チームか十一チームになると思いますが、経営面での見通しがつけばJリーグに入りたいという芽が全国にいっぱい広がっていますから、そういった意味で、将来の展望ができてくれば、五年後には二部も十六チームになっていくだろうというふうに予想しています。
サッカー界の仕組みというのは、一部のJリーグがトップにあり、その下にJFLというアマチュアの全国リーグの組織があり、そして九地域があって、その下に都道府県があるというピラミッド型に組織されています。これ以外の組織はサッカー界では絶対につくることはできないんです。だから、どんな田舎のどんな草サッカーのチームでも、実力をつけてそれだけの条件をカバーしていけばJリーグに入れるというのがサッカー界の仕組みです。
私自身の今の夢は、小学校、中学校、高校、そういった校庭が全部芝生になって、子供たちがそこで楽しく遊べるようになるのが私の夢です。日本はどちらかというと、はっきり申し上げてスポーツ二流国だというふうに思っています。土のグラウンドの上でスポーツをするのが当たり前だと思っている国は、先進国では日本ぐらいだろうと思うんです。芝生の上でやってこそ、例えばスポーツの嫌いな子供たちだってその上では跳び回りたいと思うだろうし寝っ転がりたいと思うだろうし、芝生は人の気持ちを豊かにし、そこにいたいという気持ちにつながるわけです。
先ほど体協の会長からもお話がありましたように、日本全国にそういった施設を一万カ所ぐらいつくりたいという意味は、県に二百カ所ぐらいできないと気軽にだれでもがスポーツを楽しむような環境はできないというように思います。そこには最低限クラブハウスと芝生のグラウンド、あるいはそういうスポーツクラブは小さなゲートボールのスポーツクラブだっていいわけで、いろんな地域のあり方、環境によってそういうものがどんどん広がっていけばいいなというふうに思っています。
今の子供たちは、ファミコンやテレビゲームを中心に、友達と遊ぶ時間はどんどん少なくなっていきます。人間の骨格というのは十五歳までに形成されるようですが、そういった大事な時期に遊びを通じてそういうものが培われる方がいいに決まっていると思うんです。そして、人間性として大事な、人を思いやる気持ち、優しさ、協調性、リーダーシップ、連帯感、そういったものは遊びを通じてこそ私は培われるものだと思っています。
しかし、遊びを通じてといったって、遊ぶところがないじゃないですか。だれもが行きたいと思う場所がないじゃないですか。そういうものを日本に多くつくりたいというのがJリーグの思想なんです。運動能力の低い子がクラブ活動の中でどういうことをやれるかというと、そういう狭い中で指導者も余り多くなくて活動するためには、運動能力の低い子はボール拾いをしておれ、声だけかけておけというふうなのが現状でしょう。スポーツ好きでもそういう運動能力の低い子はどこに行って遊べばいいんですか。そういう子供たちが自由に遊べるような場所こそが日本には必要だと思っているんです。
例えば、バスケットボールで十回投げて五回入る子、十回投げて何にも入らない子を見た場合に、今の評価は、五回入る子は偉くてこちらはだめだというのが日本の一般的な物の見方でしょう。しかし、そういう子供たちが一つのチームの中で、おい、あいつにきょう試合の中で一点入れさせてやろうやというようなことで、仲間たちが一生懸命になってその子にパスをどんどん出す。その子が何遍も失敗しながらやっとゴールしたそのときの達成感、満足感、そのことで得た自信、そして、みんながよかったよかった、よかったねという連帯感、そういうものの機会はスポーツを通じて与えられることが一番多いと思うんです。
日本のスポーツ界は、特に、野球をやれば野球ばっかり、サッカーをやればサッカーばっかり、水泳をやれば水泳ばっかりと、そういうあり方が普通です。いろんなことをやりたくたって、いろんなことをやれる場所がないからそうなっちゃうんです。
健全な、ヨーロッパのような、そこに行けばどんなスポーツでもすばらしい指導者のもとで、運動能力の高い人も低い人もそれぞれがスポーツを楽しめるような場所づくり、またそういったいい指導者を経済的にもバックアップしていくような仕組みづくり、そういったものにこのスポーツくじが使われるのならば、私としては大賛成です。
どうもありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115077X00319971211/48
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049・大島慶久
○委員長(大島慶久君) ありがとうございました。
以上で参考人からの意見聴取は終わりました。
これより質疑に入ります。
なお、参考人の方々にお願いを申し上げます。時間が限られておりますので、答弁は簡潔にお述べをいただきますようお願いいたします。
それでは、質疑のある方は順次御発言願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115077X00319971211/49
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050・田沢智治
○田沢智治君 私は、自由民主党を代表いたしまして、スポーツ振興投票くじについて諸先生方にお伺いをいたしたいと思います。
申すまでもなく、我が国は平和文化国家に徹して世界の平和に貢献することが国是となっておるわけでございます。私は、スポーツの文化振興を図り、スポーツの国際交流を通じて世界の平和に寄与してきた歴史はかなり高いものであると評価しております。
私の同僚だった荻村さんが、卓球を通して国交回復を含む日中の友好親善に大変大きな力を出して、隣国中国との関係を正常な方向に努力なされた。あの心にあるものは、スポーツこそ平和の使者として、何人といえどもそれを侵すことはできないという信念に基づいて彼は一生懸命尽くされた。
そういうようなことを見ると、スポーツ文化というものが、ただ競技の対象、生涯教育の中での位置づけだけではなくして、人間本来の心の中にある善良な心をスポーツを通して啓蒙啓発していくという、大きな人間形成に貢献していく大切なものであると私は信じておるんです。
しかし、日本のスポーツ予算というものを見ると大変少なくて、しかもオリンピックというような現実の中で、十四個のいろいろなメダルをとるというのは大変なことなんだなということをつくづく私、今話を聞いてわからせてもらっているのでございます。
安西参考人にお聞きしますが、今、体協が我が国スポーツの振興あるいはスポーツ精神の普及に努力をしていることは十分に承知をしておりますが、今、年間どのぐらいの予算で賄っておられるかちょっとお聞かせいただきたいと思いますし、また、JOCなどの年間予算がわかればお知らせをいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115077X00319971211/50
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051・安西孝之
○参考人(安西孝之君) ただいまの御質問に答えさせていただきます。
日本体育協会の年間予算は約四十五億円でございます。それからJOC、日本オリンピック委員会は、来年度長野オリンピックということで若干いろいろな寄附等もふえておりまして、六十五億円程度でございます。合わせて百十億円でございます。
そして、この中で国庫補助が約二五%、その他の補助金あるいは助成金、寄附あるいは事業収入で賄われております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115077X00319971211/51
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052・田沢智治
○田沢智治君 考えてみると、公的補助というか助成というのはまことに少のうございまして、よくこれでやっていっているんだなというふうに思わせてもらうわけでございますけれども、例えばフランスあたりは一兆一千億、イギリスが約九千五百八十一億、大体一兆円ぐらい、ドイツが七千二百九十四億円、イタリアがスポーツくじだけでも一千億というような実態から見ると、百十億前後で日本のスポーツ振興を担うというのは、大変な苦労をなさっておるということを私たちもじかに聞かせてもらいまして、皆さん方の御苦労について大変心が痛む思いをしております。
スポーツ振興くじについては、いろいろなところで反対意見もあるし賛成意見もある。我々としては、つぶさにそういう陳情を含めて一つ一つ整理整とんしながら見てみますと、スポーツという純粋性の中に宝くじみたいなものを導入することは、それを汚すんじゃないかというような意見もありましたし、青少年に与える影響がマイナス的なものが多いんじゃないかと懸念される意見も十分にあるわけでございますが、今回私たちがこの法案を審議するについては、まず各界関係者から具体的な話を聞いて、その中に立って公正な議論をしながらこの問題に対処していくべきであるという考えを私は持つ者の一人でございます。
今回、スポーツ振興くじの実態を見ますと、十三試合のサッカーの試合の結果を予測するものであるようで、それがすべて当たる確率は宝くじ並みと言われております。しかも、サッカーの場合は会場や試合当日に販売するものではない。競輪、競馬等の場合は公設の競技場で一レース一レースごとに売って、その一レースというものの中での勝敗によって配当金を出していくという仕組みとは全く異なるようなものであると私たちは思っておるのでございます。
体協の会長として、サッカーくじのギャンブル性についてどういうような見解を持たれておるのか、お伺いをさせてもらいたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115077X00319971211/52
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053・安西孝之
○参考人(安西孝之君) お答えいたします。
スポーツ振興くじにつきましては、スポーツ議員連盟の先生方にいろいろな点から御検討いただきまして、ギャンブルの持つ、例えばのめり込むような点とか、そういう点を切り離して宝くじに近いもの、宝くじと同じようなものにして、明るく楽しく、寄附や夢を込めてのくじ、こういうことをお考えいただいておりますので、私どもとしても、これは射幸性とかそういうことに問題はないというふうに考えております。
先ほど池田さんからもおっしゃられましたけれども、ゲーム・オブ・チャンスということがあるかと思いますけれども、私どもとしては、何とか当てようと思って買うものと、当たったらラッキーだと思って買うものは本質的に違うんではないか、そして、スポーツ振興くじは後者である、こういうふうに理解しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115077X00319971211/53
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054・田沢智治
○田沢智治君 私もそういうような考えを持っておりますが、もし弊害があるとするならばその弊害をクリアしながら、やはり今スポーツ財源というものが日本の場合は乏しいという現実を見たときに、広く薄く、そういう形の中で財源を捻出することによってスポーツを盛んにし、世界の平和に貢献できるような道しるべをつくるということは決して間違った考えじゃないと私は思っております。
田中参考人にお伺いしますが、我が国にとって初めてのスポーツ振興くじ制度の導入でございますので、私たちも不安や懸念を抱いておるものでございますが、参考人から御意見をお伺いさせてもらったのでございますが、衆議院がことしの夏に文教委員会として超党派でヨーロッパ諸国のサッカーくじの状況を視察に行っております。
その報告書を私が見ると、どの国のサッカーくじの仕組みも今のスポーツ振興くじ構想と内容は大して変わっていないというような報告内容であると私は思います。そして、十三試合程度のサッカーの試合の勝敗を予想して、すべて当たった者などに当せん金を払い戻すという制度は同じだと。しかも、五十年あるいはそれ以上サッカーくじの歴史を持つ先進諸国の中で、青少年の非行や道徳上の問題が生じたというような報告はないと。むしろ、サッカーくじの収益で、青少年の体育を活発にしたり、非行や麻薬の問題から救う役割を一面において果たしているというような報告書があるんですが、御承知ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115077X00319971211/54
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055・田中里子
○参考人(田中里子君) そういう報告書を伺ったことはありますが、私、詳細に読んだことはございません。そういった御趣旨のことを漏れ承ったことはございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115077X00319971211/55
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056・田沢智治
○田沢智治君 実態を子細に読んでみますと、何かそういうような内容が報告されておるということでございますので、もし必要あらばお届けしても結構でございますので、ひとつ参考にされて、またいろいろな問題があれば御指摘されるということは結構だと私は思うのでございます。
もう一つお伺いしたいのでございますが、サッカーくじを実施することによってサッカーのスポーツとしての純粋性が失われると言われております。それならば、サッカーくじを実施しているイギリス、イタリア、ドイツ、フランスなどのヨーロッパ諸国やブラジルなどの南米諸国では、サッカーはスポーツとしての純粋さを失っているとお考えになられておるのか、そうじゃないのか、お聞かせをいただきたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115077X00319971211/56
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057・田中里子
○参考人(田中里子君) ワールドカップの試合などを私も大変サッカーファンの一人で一生懸命テレビでよく拝見します。皆さん随分すばらしい技術を持っておやりになっていらっしゃると感心いたします。
ただ、時々マスコミ報道でも、トラブルがあって死者が出たこともあり、いろいろそういった暴動が起こったりするということも聞いております。長い歴史を持っているそれぞれの国には、国民性の中でそういったことを乗り越えるものがおありになるのかもしれませんが、日本はまだまだそこまで行っていないというのが私どもみんなの意見でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115077X00319971211/57
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058・田沢智治
○田沢智治君 確かに、先進諸国はそれなりの歴史と伝統を持っていろいろ創意工夫されて、今日それを活用しながらスポーツの振興、そして強い国づくりに努力しているというような大きな成果を出しておるかと思いますが、今度のスポーツくじについては、購入禁止年齢を十九歳未満としたり、青少年への悪影響を避けるための一つの策として、くじの販売の場所等について、銀行など社会的公共性の高い場所を中心に、競争入札によって公正なルールのもとに決定していくというようないろいろの工夫を私たちも検討させてもらっております。そういうような一つの青少年に与える悪影響というものに対する手当てもある程度考えながら、そういう弊害がないように我々も努力をしているというような実態について、ひとつ御認識をいただきたいと。
安易に我々はこのスポーツ振興くじを導入するということではございません。日本国憲法第二十五条では、国民に対して健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を保障しております。スポーツ環境を含め、このような環境づくりをするということは、まず第一に国の責務であるという認識は私たちも持っておるのでございますが、現下の国の財政状況等を勘案したときに、その願いというものは非常に難しいということは国民の多くも理解できるのではないかと、こう思って、サッカーくじの導入等について弊害のないようないろいろの措置を講じながら進めていこうではないかというようなことでこの問題を提起したという経緯があることも御承知をしていただきたいと存じております。
次に、池田参考人にお伺いを申し上げたいと思います。
先進諸国はほとんどナショナルスポーツセンターというものを設置して、スポーツというものに対する科学的、医学的分野でそれぞれ研究を深くしながら、より速く、より効率的で、より競技技術の向上を目指して努力しているという環境づくり等もかなり進めておられると思うんです。残念ながら、日本にはそういうセンターすらできていないと。また、競技場一つを見ても、広く国民が活用する場というものの提供がおくれております。
そういう意味で、私は、競技スポーツは競技スポーツの領域の中でやはり手当てすべきものは手当てしながら、市民スポーツの振興、地域社会に根差した生涯スポーツの普及というものによって、少子化、高齢化と言われる日本の二十一世紀社会の大きな問題、こういうものを国民の多くの、各界各層の人たちがスポーツに親しむことによって健康を維持していくとすれば、少なくとも二十七兆円の医療費の問題とか、売薬を入れると大変大きな金が支出されております。そういうようなものは、運動しない人が糖尿病になったり血圧が高くなると。少し私も最近血圧が高くなったので、毎朝一時間、五時半ごろ起きて歩きますと、非常に血色もよくて体調もよくて体の回りもよくなってくるというようなことで、正常以上に強健になってきています。
そういう意味で、スポーツ活動をする機会を市民の多くに与えるということがやはり日本をよくしていく、財政構造に対してもプラスになる面もあるんじゃないだろうかと。だから、自分の体は自分で自助努力していくような環境づくりというものは、地域社会を含んで私は大いにやるべきであると。その一翼を担うという形の中で、こういう資金が国民に還元されていくような施策を具体的に推進していくことが重要ではないかというふうに思うんですが、先生はどんなようなお考えを持たれていますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115077X00319971211/58
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059・池田勝
○参考人(池田勝君) お答えになるかどうかわかりませんけれども、今、委員の御意見は、スポーツがいわゆる国の経済的な面でもプラスになるのではないかということではないかと思います。確かに、そのようなことがうかがえるデータが諸外国でも発表されておりますし、いわゆる健康づくりあるいはスポーツ活動の経済的効果といいますか、つまりスポーツや運動を取り込むこと、それにはお金がかかりますけれども、決してコストだけじゃない、必ずそれにリターンがある、見返りがあるというデータも、先ほど述べましたような国では積極的にそういう研究活動もやっております。フランスには国営のスポーツ経済研究所というものもございます。そういう活動を積極的に推進しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115077X00319971211/59
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060・田沢智治
○田沢智治君 田中参考人が大変御心配なさること、私もその心情については同様の気持ちを持っております。
ところで、フランスなどは非常にスポーツというものに対して財源も出しております。宝くじももちろんやっておるわけでございますが、フランスの導入時においては、何か青少年の問題とか社会的な大きなマイナス問題というものが生じたような形跡はあるかないか、先生おわかりになればお話しいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115077X00319971211/60
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061・池田勝
○参考人(池田勝君) 余り私フランスには詳しくはありませんが、知る限りについてお答えしたいと思います。
フランスがこういうスポーツに財政面で力を入れましたのはやはりモントリオール・オリンピック以降でございまして、一九七六年にある国会議員が、このままではフランスのスポーツ振興も隣のドイツとかイタリアに比べてますます衰退していくんじゃないかということで、当時の金で日本円にしまして百億円スポーツ振興策に必要じゃないかということを打ち出しました。その百億円をどういうふうに求めるのか、捻出するのかということをやはり国会等で論議いたしまして、先ほども申しました、利益がスポーツに還元される新方式のスポーツくじの開設という法案を一九八四年に可決したわけでございます。
新方式、あえてこういう言葉を使っておりますのは、先ほども申しましたように、向こうでは、競馬とかあるいは宝くじとか、そういうものも一応サッカーくじと同じような扱いをしておるわけでございます。ですから、フランスの場合は、従来はスポーツ財源は競馬とそれから各種のスポーツ大会、特に二十五フラン、つまり五百円以上のスポーツ大会では付加税を上乗せしまして、それをスポーツ振興に使うというようなことをやっていたわけですけれども、それだけでは十分ではないということで、新方式のスポーツくじをやろうと。
そのときに、サッカーがいいのかラグビーがいいのか、あるいはハンドボールがいいのか、そういう論議があったわけです。いろいろあるけれども、それではサッカーだけじゃなしに、例えばハンドボールと一緒にやってみようと、そういうことをやりまして最初は複数のスポーツで試みたんですけれども、どうも売り上げが伸びなかった、収益が伸びなかった。ということは余りにも難し過ぎると。ということで、一番国民に親しまれておりますサッカーの試合を、イタリアと同じなんですけれども、十三ゲームを当てるようないわゆる単純な方式でやった結果、非常に上がったというふうに伺っております。
問題があるのかどうかということでございますけれども、トップアスリートだけじゃなしに、今先生がおっしゃったような一般国民のスポーツの振興にも政府は非常に力を入れておりまして、そのために一九八五年にいわゆる国営のスポーツ振興基金というものを、財団ですが、それを導入いたしました。
その財団の中身ですけれども、サッカーくじと、サッカーくじは収益の三〇%が入るようになっています、それから全国宝くじと、それからPMUと称しましていわゆる競馬でございますが、この収益の約六六%、三分の二はいわゆる国民のスポーツ振興に使っております。そのほとんどがスポーツクラブヘの補助金ということでございます。トップアスリートの振興策には三〇%、残りの約五%が密集した住宅地域内のスポーツ施設の整備、大体こういう割合で現在も使っております。
したがいまして、自分たちが買ったいわゆる収益というものが自分たちのスポーツクラブに還元されてきているんだという意識が私は相当強いんじゃないかというふうに思っておりますし、また、それによって青少年に悪影響を及ぼしたというようなことは私は余り、私の勉強不足かもしれませんが、耳にしておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115077X00319971211/61
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062・田沢智治
○田沢智治君 時間も余りございませんが、最後に、プロサッカーリーグのチェアマンの川淵さんにお伺いをさせてもらいたいと思うんです。
今、池田さんが、サッカーの先進国と言われるイギリスやフランス、イタリアでは、サッカーくじを導入することによる大きな問題は余り聞いてないというようなことをお話しくださったんですが、スポーツとしてのサッカーの独立性や純粋性というものが、こういうものを導入するとやはり心配だという日本の世論はあるわけですよね。そういうものに対して、そういうものは余り心配はないんだと言えるのか言えないのか、大変難しい質問でございますけれども、その辺のところをどうお考えになられるか、お聞かせをいただきたいと思うんです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115077X00319971211/62
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063・川淵三郎
○参考人(川淵三郎君) 私も初めてなものですから何ともはっきりしたお答えはしにくいんですが、世界の例を見てみますと、そういうことについての心配は全くありません。
先ほど田中さんがおっしゃられましたような暴動その他については、フーリガンという一種独特の、世界じゅうを回って暴れるというふうな、こういうサッカーくじとは全く関係のないやからが、やからがと言ったら怒られますが、人たちが暴れ回っているわけです。今度のフランスの大会ではそういう人をイギリスから出さないようにしょうというようなことで今やっていますが、そういったことから選手もそれなりの、不安がゼロというわけではないんですが、世界を知っている人たちは全くそういうものについては何ら問題はないと。ふだんどおりにJリーグを運営していけばいいんだというふうな思いでいますので、私自身としてはそういう心配はないというふうに思っています。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115077X00319971211/63
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064・田沢智治
○田沢智治君 あと二、三分ありますので、安西参考人にお伺いします。
諸先生方のいろいろな意見がありますけれども、大勢の中では、サッカーくじを導入することによる大きな弊害はないのではないかというような意見も多うございます。このサッカーくじを導入することによって、収益のうちどのくらいになるかわかりませんが、例えば三百億ぐらいもしその収益がスポーツ振興に供されるということになりますと、体協等から見ると大変多くの仕事が中長期的視野に立って実現できるんじゃないかと私は思うんです。そういう場合、競技スポーツも大事だけれども、国民の生活視野あるいは生涯スポーツの中に還元していく、まあ施設をつくったりいろいろな方法があると思うんですが、そういうような分野にも心を砕いて還元していくような物の見方、考え方というものが考えられるのかどうなのか、最後にちょっとお聞かせいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115077X00319971211/64
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065・安西孝之
○参考人(安西孝之君) 先ほど、生涯スポーツの方の地域スポーツクラブとそれからナショナルトレーニングセンターと、こういうことを申し上げましたけれども、池田先生がおっしゃったように、ナショナルトレーニングセンターですら何もトップアスリートだけのものではないわけでございまして、基本的には生涯スポーツの振興と青少年の育成、そしてその中からまたトップアスリートが出てくるこういうことを考えておるわけでございます。
先ほどは申し上げなかったんですが、地域スポーツクラブとナショナルトレーニングセンターの間にもう一つ、県レベルの広域スポーツセンターというのが、これが両方の接点としてスポーツ振興に役に立つのではないか、その辺を通じて地域社会への還元と、こういうことを考えているわけでございます。ただ、大きな施設とかそういうものはやはり国とか地方自治体につくっていただかなければならないと、これは今までと同様でございます。
スポーツ振興くじは、それらの中から運営費を中心に活用させていただく、そして、スポーツをやる人みずからの費用は自分で負担する、こういうことで活性化をしていくのがよろしいのではないかと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115077X00319971211/65
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066・田沢智治
○田沢智治君 あと一分ありますので。
これを入れることによって、中長期的な次元に立って、安西会長、日本はやっぱりオリンピックでも相当いい成績を残したというような目玉としての成果をぜひ全力を挙げて上げてください。そうすると、導入してよかったんだなと国民自身がやっぱり納得すると思うんですよね。
ですからそういう意味で、こういう財源等については、もちろん大切にお使いになられると私は確信しておりますけれども、そういう成果をも含めて努力してくださいますことをお願い申し上げまして、私の質問を終わらせてもらいたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115077X00319971211/66
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067・安西孝之
○参考人(安西孝之君) よくわかりました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115077X00319971211/67
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068・日下部禧代子
○日下部禧代子君 スポーツの役割の重要性、あるいはまた諸外国との比較、そしてまたこれからの日本のスポーツ振興に何が必要か、そういう観点に立ちまして貴重な御意見をありがとうございました。
時間が限られておりますので単刀直入に御質問させていただきたいと思いますが、まず安西参考人にお尋ねいたします。
このスポーツ振興投票制度の導入につきましてさまざまな御意見がございます。その中の一つにきょうお見えいただきました田中参考人の御意見があると思うわけでございますが、田中参考人が四つの点についてお述べになりました。その最初に、国民的コンセンサスがつくられてないのではないかというふうな御疑問を田中参考人がおっしゃったわけでございますが、その点につきまして安西参考人はどのようにお考えでいらっしゃいましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115077X00319971211/68
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069・安西孝之
○参考人(安西孝之君) まず、いろいろな方のお話を伺いますと、確かにスポーツ振興くじは必ずしも賛成でないという方はおられますけれども、スポーツ振興は重要であって、もっともっと財源を豊富に使って振興をするんだということについては御異論がないんだというふうに私は思っております。したがいまして、その手段としてぜひスポーツ振興くじを御理解いただきたいと、こういうふうに思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115077X00319971211/69
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070・日下部禧代子
○日下部禧代子君 国民的合意というもの、あるいはまた社会的な理解というものは、このスポーツ振興投票というものの持つ意味、目的というものが有効に働くためにも、やはり国民的合意、社会の理解というのは必要ではないかなということを重ねて申し上げておきたいと思います。
それで、安西参考人に次のことをお聞きしたいと思いますが、スポーツ振興投票制度による収益金の配分についての体協のお考えをお聞きしたいわけでございます。大きな団体に配分が大きくなって、あるいはまたマイナーな競技に対しては配分が少なくなるというふうな、そういう危惧も耳にすることがございますけれども、その点いかがでございましょうか。
例えば海外で試合がございますときでも、大きな団体に所属している選手と、それからマイナーな競技の選手とでは差があるというふうなお話も聞きますけれども、その点も含めましていかがでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115077X00319971211/70
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071・安西孝之
○参考人(安西孝之君) 過去の話は私よくわかりませんけれども、このくじの配分につきましては日本体育・学校健康センターで取り扱っていただくことになっておりますが、やはり何よりも重要なことは、今先生おっしゃったように透明性、公平性の問題だというふうに思います。それを国民的に理解していただくのは情報の公開だというふうに感じておりますので、今後はそれを徹底していけば、今御心配のようなことはなくなるんだろうと私は思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115077X00319971211/71
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072・日下部禧代子
○日下部禧代子君 そのような運営上の透明性、情報公開というのは本当に必要だと思いますので、ぜひともその点は御考慮いただきたいというふうに思います。
次に、田中参考人にお伺いいたします。
このスポーツ振興投票制度導入についての反対の御意見をお述べになりました。しかし、日本のスポーツの現状というのは、他の先進国に比べましても、今、他の参考人からのお話もございましたけれども、上位にあるとは言えないのが現状だというふうに思います。これからの日本におけるスポーツのあり方、特に地域における、あるいはまた日常生活の中でどのようにスポーツを浸透させていくのか、その点につきましてどのようなことがこれから我が国において必要なのか、お考えを聞かせていただきたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115077X00319971211/72
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073・田中里子
○参考人(田中里子君) 地域というのは千差万別、いろいろな地域があります。一口に言えないと思います。その地域でどういうスポーツの振興のやり方がいいかということは、地域が判断していくということにあると思います。
私は、地域によって今随分スポーツ振興が行われていると思います。確かに、お金があればお金があるにこしたことはないかもしれませんが、先ほどからいろいろお答えがございますけれども、お金を得る手段をどうするかということを問題にするとすれば、やはり地域でその地域に合った、子供たちが校庭を使う場合もあり、企業の施設があれば企業の施設も使い、自治体も随分頑張って、スポーツのできるグラウンドを初めいろいろ施設をつくっているところもあります。
そして、こういうものが欲しいというときには、地域の者たちみんなが企業も住民も含めて考えていく、そこに国はお金を出していくということで、現状をスポーツ予算というものを増額していくことによって、おっしゃるようになかなか厳しい状況というのはわかりますが、たとえスポーツくじをお入れになっても、三百億円という数字が安西参考人からも出ていらっしゃいますが、三百億円というお金を獲得するのに、これだけの皆さんがここにいらっしゃるなら、その半分でも三分の一でも増額というのは可能じゃないかと思いますし、それによって地域の振興も自治体の予算とあわせてできるのではないかと思います。
財源の問題、どういう手段で財源を得るかを問題にしておりますので、乏しい予算かもしれませんけれども、私は地域は頑張れると思いますし、高齢者はジョギングとかスリーデーマーチとか、案外お金のかからないスポーツも選択しているのではないでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115077X00319971211/73
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074・日下部禧代子
○日下部禧代子君 池田参考人にお尋ねいたします。
日本は経済大国あるいは豊かな国と、こう言われてきたのでございますが、スポーツの観点から言いますと、どうも先生のお話を伺っておりますと、他の先進国に比べて非常におくれていると言わざるを得ないような現実が浮かび上がってくるわけでございます。例えば、地域社会あるいは日常生活に根づいていないし、あるいはまたナショナルセンターというものの設置もないというふうなことがございます。
先ほど川淵参考人は、スポーツ二流国ではないかというお言葉もございました。一体どうして日本は先進国の中でこういう状況に甘んじていたのでしょうか。これは何が原因だったのでしょうか。他のところでは日本は豊かな国だと言われているわけでございますけれども、先生のお考えを。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115077X00319971211/74
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075・池田勝
○参考人(池田勝君) 大変難しくて、私のような者がそういうことを言うのは甚だ僭越なんでございますけれども、日本の国民がスポーツをやる基盤と申しますか場所といいますか、場所と言うよりも場と言った方がいいんじゃないかと思いますが、四つ考えられるんじゃないかと思います。
それは、川淵チェアマンがおっしゃったような企業、これは実業団という形でやっていますし、それから一番大きい学校、そして最近民間のスポーツクラブが出てきました。民間のそういうスポーツクラブ、そして地域、この四つの基盤があったのではないか。
日本は、学校体育・スポーツ活動、これはもう世界のいろいろな国と比べても非常に進んでおりますし、指導要領等を見ましてもこれほど充実したカリキュラム等を組んでいる国は余りないんじゃないか。いわゆる学校体育活動あるいはスポーツ活動は整備されている。実業団も、これまでは日本のいわゆるトップアスリートの受け皿としてある大きな貢献を果たしてきたということが言えるんじゃないか。最近は民間のスポーツクラブが、特にいわゆるエアロビクスとかそういうことで御婦人方にも、最近は高齢者も大変加入しておりますし、そういうような受け皿になっております。さらに民間のスポーツクラブは、水泳選手であるとか体操競技の選手を輩出してきたという、この役割も大きかったのではないか。
地域のスポーツクラブ、これも日本にはたくさんあるわけでございます。きょう小野清子先生が御出席でございますが、小野清子先生が最初に手がけた日本の地域のスポーツクラブ、今現在三十何万と言われているわけですけれども、この地域のスポーツクラブのほとんどが、ママさんバレーあるいはソフトボール、そういう限られた種目の単一のスポーツクラブで、しかも、先ほど川淵チェアマンが言いましたような、いわゆるクラブハウスもない、場所もなくて学校の体育館を借りている、あるいは市民体育館を借りている、そういう現状で、数は多くても、みんなが一緒になってプレーをするだけじゃなしに、プレーの後でみんなでお茶を飲んだりあるいは話し合いの場所を持ったり、そういうようなクラブライフと申しますか、そういうものは日本にはなかったんじゃないか。
数の上では、国民の三分の二は年に一回何らかのスポーツをやっている。このデータは、データといいますか数字は外国と比べてそう変わらないんですけれども、週一回あるいは健康を維持するレベルということになりますと、先ほどデータでお示ししましたようにかなりの差が出ている。その差が、やはり身近な地域の場でスポーツ活動をやる場に欠けていたんじゃないかというふうに思えるわけでございます。
いわゆる一般国民のスポーツに関しては、私から見ましてそういうふうなことが指摘できるんじゃないかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115077X00319971211/75
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076・日下部禧代子
○日下部禧代子君 やはりライフスタイルの違いがあるかもわからないというふうにも思います。
日本の場合、労働時間が非常に長いわけでございます。そうすると、家に帰ってきてからのそういうスポーツの時間もないだろうし、そしてまた子供たちはお勉強ということで塾通いということもあるかもわかりません。そういう全般的なところからやはりスポーツのあり方もとらえねばならないというふうに思います。
時間がもう来てしまいましたので、もう一点、池田参考人にお尋ねいたします。
ヨーロッパのいわゆるサッカーくじと、それから今回のスポーツ振興投票制度との違いでございますが、例えば先ほど安西参考人も御指摘なさいました情報開示のシステム、あるいはまた関係省庁との関係、あるいは公的チェックシステム、そういった観点において、ヨーロッパの場合とスポーツ振興投票制度法案の違いというものを先生の御経験から、あるいはまた資料から御意見をいただければと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115077X00319971211/76
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077・池田勝
○参考人(池田勝君) 例えば、よく話題になりますイタリアのトトカルチョ、いわゆるサッカーくじでございますが、これを実施しているのはCONI、イタリア・オリンピック委員会でございます。すべてオリンピック委員会がやっているということで一つの話題性があるわけでございますけれども、しかし、そのCONIのイタリア・オリンピック委員会のそういうサッカーくじの収益金の使い方についてチェックしているのが、日本語に訳しますと観光大衆文化省というんですか、まあ私の訳は正しくないかもわかりませんが、そういう省がございまして、そこがすべてチェックしているというふうになっております。これはほかの国もそうでございまして、第三セクターなどでやっているところもありますけれども、やはり政府がきちんとした形でやっているというのが大半の国のケースではないかというふうに思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115077X00319971211/77
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078・阿部幸代
○阿部幸代君 初め、安西参考人に伺います。
私は、スポーツ振興というのは国民的な議論と合意で、国民の協力と支持を得て進めるのが一番よいのだと思います。そうしてこそ本当に層の厚いスポーツ風土といいますか、それができるんだと思うんですね。
ところが、サッカーくじについては、国会の動きを見ても、さきの国会で衆議院では委員会審議二時間四十分で、橋本総理を初め賛成派の各党党首がこぞって反対ないし棄権、欠席するもとで採決された上、参議院でも、実は今国会開会前から参考人の質疑の人選まで手がけてきたんですけれども、会期末のきょうやっと参考人質疑が実現したんですね。各党ともそれぞれ内部をまとめ切れなかったのです。もちろん、国会の外を見ますと、お隣に座っておられる地婦連の方やあるいは主婦連、スポーツ団体や教育団体、日弁連などなど、あるいは最近はJリーグのホームタウンのある自治体議会からも反対の声が上がってきているんですね。
それで、国民合意ということについてどうお考えになるか、伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115077X00319971211/78
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079・安西孝之
○参考人(安西孝之君) 先ほども申し上げましたように、スポーツを振興しなければならない、しょうということは非常に国民的合意があると思いますし、今、池田参考人からお話がありましたように、クラブライフとしてのスポーツ、これもやっていかなきゃいけないということもあります。
そこで問題は、手段の問題でございますけれども、国民的合意を得るために私どもぜひこういう機会を設けていただきたいと思いますし、これからもいろいろ私の考え方を申し上げる場があればぜひお話をしたい、こういうふうに思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115077X00319971211/79
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080・阿部幸代
○阿部幸代君 スポーツ振興の財源対策としてのサッカーくじに反対であるという根強い声があるわけです。しかし、スポーツ振興では一致するんですから、サッカーくじ以外の道をこぞって考えていったらいいというふうに私は思うんですね、それは私の意見ですが。
二番目は、池田参考人に伺います。
先生が翻訳なさった九二年第七回ヨーロッパ・スポーツ閣僚会議採択の新ヨーロッパ・スポーツ憲章、それからヨーロッパ・スポーツ倫理綱領というのを読んでみました。新ヨーロッパ・スポーツ憲章は「以下の協定で宣言された倫理的諸原則および政策指針を補完するものである。」として、「ドーピング禁止協定」と並んで「スポーツ大会、とくにサッカーの試合における無法・暴力行為に関する協定」を挙げています。
そこで伺いたいんですけれども、今までもそうでしたが、サッカーくじ導入を進める立場に立ちますと、既に導入しているヨーロッパなどでは特に問題がないということがよく言われるわけなんですが、サッカーの試合における無法や暴力行為の実態がどうなっているのか。ヨーロッパぐるみで協定をつくったりスポーツ憲章をつくったりするほどなんですから深刻な実態があるんだと思うんですが、お話ししていただけたらと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115077X00319971211/80
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081・池田勝
○参考人(池田勝君) これは私よりむしろ川淵チェアマンにお願いした方がいいんじゃないかと思います。先ほども川淵チェアマンがおっしゃっていましたように、フーリガンの問題とサッカーくじの導入というのはちょっと違う次元の問題ではないかと思います。
先ほど先生、私の翻訳を読んでいただいてありがとうございます。新ヨーロッパ憲章でそういうことが取り上げられているのは、やはりヨーロッパの国、ベルギーとイギリスが試合をして時々そういう暴動が起こる、そういうことが過去にあったわけです。したがって、施設あるいは運営の面でお互いに努力しようじゃないかということの発端がこの新ヨーロッパ・スポーツ憲章の中で織り込まれたことでございます。
それから、フーリガン対策、暴動の対策ですけれども、例えばイギリスではサッカーくじを昔からやっておるわけですけれども、そのサッカーくじの税率を、五%だったと思いますが引き下げて、いわゆるフーリガン対策、老朽化したスタジアムをもう一回リニューアルしよう、そういう事件が起こらないよう立ち見席をすべてなくしていすの席にするとか、いわゆるフットボール信託基金というようなものを設けてやったりしているということで、各国とも相当そういうことには真剣に取り組んでいるということが言えるんじゃないか、今申しましたように、施設の改善ということに一つ重点を置いて各国とも取り組んでいるということが言えるんじゃないかというふうに思います。
それからもう一つ、サッカーの暴動、暴力に関しましてですけれども、「ヨーロッパ・スポーツ倫理綱領」「フェアプレイー勝利への道」というものを先生から御指摘いただきましたけれども、それを設けたのは、そういう施設の改善だけじゃなしに、青少年にフェアプレーの大切さ、スポーツをフェアにやることが大切なんだと、そして国同士で試合するときもフェアでやるというこのことを植えつけようじゃないかということでフェアプレー倫理綱領というものを設けた。その辺の配慮というものも相当ヨーロッパの国で考えているんじゃないかというふうに思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115077X00319971211/81
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082・阿部幸代
○阿部幸代君 私も浦和レッズの試合を見たことがあるんです。ファンであります。大変な熱狂ですね。それで、サッカーくじが導入されますと、やはりあの試合というのは勝利至上主義の目で見る、そういうものが当然入ってくるわけですね。そういう目で見られるようになるわけです、試合そのものも。
そこでもう一つ、今度は質問なんですが、田中参考人は私と全く同じ立場に立っておられますので、今度は男の参考人に伺います。
午前中、実はスポーツ振興策についての参考人質疑が行われまして、柔道の山下泰裕さんがお話ししてくださったんですね。勝利至上主義を戒めて、スポーツマンシップ、フェアプレー精神、こういうものを体験に基づいて大変感動的に話してくださいました。
先ほど池田参考人がおっしゃったように、ヨーロッパ・スポーツ倫理綱領は別名「フェアプレイー勝利への道」というふうにも呼ばれています。これを読んでみたんですけれども、読んでみるとどうしてこういうものがつくられたのかがわかるんです。こう言っています。「フェアプレイ、スポーツマンシップ、ボランティア・ムーブメントに対し、これまで築いてきた伝統的なスポーツ基盤が浸食されている現代社会を鑑み、その切迫した状況を克服するための望ましい倫理的な枠組みを与えるもの」としてスポーツ倫理綱領はつくられたというんでね。
それで、その中心は何かというと、「スポーツに参加し、楽しむ青少年の権利と、フェアプレイを助長し、青少年の権利を尊重するための機関と成人の責任」、この二点だとして、スポーツ及びスポーツ関係団体の責任としてわざわざ次のようなことも挙げているんです。「低年齢層の子どもたちの特別なニーズに合わせて、ルールの変更を促し、勝利よりもフェアプレイに重点をおく。」と、こういうことも言っているんです。
ヨーロッパなどと比べますと、サッカーの歴史も、それを支える国民風土といいますか、人口規模も異なる日本で生まれて間もないJリーグを本当に国民スポーツとして育てていく立場に立ては、勝利至上主義を招くサッカーくじよりも、むしろこちらの方に、ヨーロッパ社会で問題提起しているこちらの方に着目をすべきではないでしょうか。この中でも言っていますが、「今日の青少年は、明日の成人としての参加者であり、スター選手でもありうる」のですから。この点について伺います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115077X00319971211/82
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083・池田勝
○参考人(池田勝君) こういう例を挙げれば、青少年に対するサッカーくじの影響というものがヨーロッパではこういうふうに出ていることを理解していただけるのではないかと思います。
先ほど御紹介しましたけれども、イギリスが国営宝くじを導入しまして新たなスポーツ財源を確保したわけです。従来のサッカーくじも並行してもちろん財源になっているわけですけれども、従来、イギリスのサッカーくじは年齢制限を設けておりまして、十八歳でございました。国営宝くじは十六歳未満は買えないと。したがいまして、サッカーくじもイギリスの場合十八歳から現在は十六歳に引き下げられております。ということは二歳若返っているわけですね。もし青少年に極めて悪影響を及ぼすならばこういうことはないと思うわけですね。二歳若返っている。
これは私の推察ですけれども、そういうことからしても、青少年に悪影響を与えているというようなことにはならないのではないかというふうに思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115077X00319971211/83
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084・安西孝之
○参考人(安西孝之君) 私、どんな場合でもフェアプレーというのがスポーツの基本であるというふうに考えておりますので、常にそのフェアプレー精神にのっとって、選手もそうですし指導者も努力していくべきであるというふうに考えております。
そこで、先ほどおっしゃっておりますスポーツ振興くじと勝利至上主義というのは必ずしも一致しないのではないかというふうに私は考えております。必ずしもというのは、やっぱり勝利至上主義というのはいろんなところにあるので、くじではないというふうに思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115077X00319971211/84
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085・川淵三郎
○参考人(川淵三郎君) フェアプレーはスポーツくじをやってもやらなくても基本的に全く変わるものじゃありません。
世の中の人はすごく誤解しているんです。勝利至上主義というのは、ルールに違反してどんな汚いことをしてでも勝つ、審判の目が届かなければどんな悪いことをしてもいいんだと、そういうふうな勝ち方が勝利至上主義で、勝ちたいという気持ちは小ちゃな子供たちから大きな大人に至るまでみんな持っているんです。勝ちたい気持ちというものは上達するための原点です。それと勝利至上主義とをごっちゃにする人が結構多いんです。
スポーツというのは、フェアプレーがあってルールを守ってスポーツです。まして、もしスポーツくじが行われるのであるならば、こういった意味ではもっと厳しく我々は糾弾することになると思います。
以上です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115077X00319971211/85
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086・江本孟紀
○江本孟紀君 よろしくお願いします。自由の会の江本です。
この委員会でやっと参考人の方に来ていただいて初めてサッカーくじを直接お話ができることになって、ほぼ四年近く私らはこの問題に取り組んできまして、早くこの審議をしたいしたいということで、なかなか機会がなかったんですが、やっとここまでこぎつけました。
そういうことで、私はサッカーくじはもともと大賛成の立場であります。この国会に参加をしてからすぐ、自分のやることは何かということから考えますと、これはやっぱりスポーツ振興しかないと。そこで一つの方法として出てきたのが、やはり財源がないことをどうするかということの問題だったわけです。そこで、サッカーくじというのはトトカルチョですね、私はもうトトカルチョとはっきり呼ばせていただきたいんですが、これを導入するのはすばらしいことだという発想から常に問題を考えてきました。
きょうはずっと朝から参考人の方も含めてこの委員会をやらせていただいているんですが、数字はちょっと池田先生には負けますけれども、私が聞かれて答えた方が早いなというような感じも相当実はあります。私はイタリアもヨーロッパも即視察に行きまして、国会議員の中で私が一番早かったと思いますが、いろんな事情も、少し年数がたっていますので変わってはいるかと思いますけれども、お聞きしておると、ああ、なるほどなるほどということであります。
それから、反対される方の御意見、田中さんももう以前にお目にかかりましたが、多分御意見もずっと変わっておられない。要するに、これが最初にできたときから今日まで賛成する方と反対する方は大体もうずっと平行線のまま来ておるんですね。
私は賛成の立場から言わせていただきますと、反対される方は、まずどっちかというと政治的なイデオロギーというか、そういったものでこれはだめだという人たち、それから子供の教育、青少年の教育に悪い、その理由としてスポーツにギャンブル、大体この三点なんですね、反対される人の多くの理由は。
そこで、ちょっと田中さんにまずお聞きしたいんです。私、朝の参考人質疑のときもお聞きしたんですけれども、スポーツにギャンブルという観点からいいますと、競輪とか競馬、競艇、それからオートレース、こういったものも私はスポーツだと思っておるんですが、その選手たちが大勢いるわけですね。自転車だって、子供のときに自転車に乗ってから競輪選手になる。私の野球をしていた高校時代の仲間も競輪選手になった選手がいっぱいいるんですよ。それを見ている後輩たちが、ああ野球がだめだったら競輪選手になれるんだと、これは一つの夢ですね。でも、競輪は明らかにギャンブルです。
ギャンブルという観点からいいますと、スポーツにギャンブルをと言われる方が時々いらっしゃいますけれども、田中さんは、競輪、競馬、競艇、こういったものはスポーツであるかどうかということと、選手はスポーツマンであるかどうか、その辺についての御認識をちょっとお聞かせいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115077X00319971211/86
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087・田中里子
○参考人(田中里子君) 選手はやはりスポーツマンと思います。競馬の騎手を見ても、競馬の馬ということが随分大きなウエートを占めておりますが、今挙げられたものは私はもちろんギャンブルと思っておりまして、これに対して過去に反対運動もした経過はございます。例えば東京ドームの競輪のときには反対いたしまして、これは反対が通りました。ということもあります。
ギャンブルであることは間違いないと思いますし、おっしゃるサッカーくじについても、これは宝くじとは違いまして、勝敗をかけるということは、確率が非常に低い百六十万分の一といえども、勝とうということでくじを買うということには変わりないと思っています。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115077X00319971211/87
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088・江本孟紀
○江本孟紀君 時間がありませんので余計なことは余りしゃべれないんですが、私はちょっと無理があると思いますね。サッカーくじは百何万分の一とかですね。ほかのギャンブルの場合はせいぜい三十六から八十分の一ぐらいですね。その百万とか百六十万とかというのをギャンブルというふうに認定するのは相当無理があると思いますね、私の意見ですけれども。
そういうことで、私はスポーツにギャンブルをという言い方は余り説得力がないと。それから、我々の仲間の野球界からも、スポーツをギャンブル化するのはそのスポーツを冒涜しておるというようなことをよく勉強されていないコミッショナーなんかが発言されております。私の立場がすごく悪くなりまして、きのうもけんかしたところですけれども。
安西参考人にお伺いしたいんですけれども、実は体協の要請で、我々も随分体協の各団体から早く推進してくれというような要望書もいただいて、やったんですけれども、個別の話をして申しわけないですけれども、日本野球連盟というのがあって、そこでは多分体協の中で一緒に入って早く推進してくれと言われたはずなんですが、先日、どういうわけか、何か反対らしいみたいなことをちょっと発言したんですね。もしそうだとしたら、体協に加盟しているそういう反対している団体は、これができ上がって、その配分のときとか補助金を出すとかそういうときに、その反対された団体には出さないようにいたすか、それか辞退をするか。
私は、共産党さんがやっぱりすばらしいのは、教員の主任手当の導入のときにこれを拒否しまして、その当時の共産党系の教員さんはこれをいまだにもらわないですね。そういう立派なところもあるわけです。
だからスポーツ界も、フェア精神でいえば、これは反対の意思を通したところにはやっぱり出さないようにした方がいいんじゃないか、今もうそれを明確にさせた方がいいんじゃないかと思いますが、いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115077X00319971211/88
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089・安西孝之
○参考人(安西孝之君) おっしゃるとおりかもわかりませんけれども、むしろ私、反対されるならばこちらに資金を出していただきたい、そのくらいに思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115077X00319971211/89
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090・江本孟紀
○江本孟紀君 川淵さんにお伺いしたいと思います。
ついでに野球の話で申しわけないですけれども、私もプロスポーツ出身です。もちろんアマチュアも経験しましたが、やっぱりスポーツというのは、せっかくプロスポーツができて、サッカーもできた。それからバスケットなんかも動きがありました。ちょっと立ち消えになっていますけれども、いろんなスポーツができていって、国民的娯楽スポーツということでいえば、プロスポーツが発展していくということはすばらしいことだと思うんですね。そこでやはり共存共栄を図りながらやっていかなければいけない。
どうも野球界が反対している理由が、野球界といってもプロ野球だけなんですけれども、自分のところがどうもサッカーにこのまま行ったら食われるんじゃないか、人気で食われて自分のところがもうからなくなるぞという個人の企業の単なる利益だけのために、子供の教育に悪いだとかわけのわからぬ理由をつけて反対をされるようなことを今言っているんですよ。それで、いや違うんじゃないですかと私はいつも説明に行って、こういうふうに勉強して理由をもっと明確に出したらどうですかということはちらちら言うんですが、聞く耳をほとんど今持っていないんですね。
だから、せっかく同じプロスポーツですから、共存共栄を図りながら、アメリカのフットボールや野球やバスケットのようにうまく回って国民にすばらしいプロスポーツを見せるという意味でいうと、これは野球界に少し説明に行って理解をしていただくというようなことも一つの方法じゃないかなと思いますが、その点についてはいかがでしょうか。要請が、そういうのがあったかどうかも含めて。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115077X00319971211/90
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091・川淵三郎
○参考人(川淵三郎君) プロ野球協会とは一切そういう話がありませんけれども、今、江本議員がおっしゃったようなことについては私は全く同感です。
日本のスポーツという意味からすると、野球だって日本の国民的スポーツですから、そこで上げた利益を地域社会に還元する、社会に貢献するというようなことで我々と歩調を一緒にしてもらえれば、何たって日本のトップのプロスポーツですから、そういう面での理解をぜひ示してほしいと心から願っています。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115077X00319971211/91
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092・江本孟紀
○江本孟紀君 プロ野球というか、野球だけが現在プロとアマがまだ断絶というか交流をしていなくて、そしてやっとプロ・アマ合同会議というのができたときに、プロ側の意見だけでコミッショナーから野球界は全会一致で決議したなんという、こういううその情報を流したりするような今の状況なんですよ。それで私は抵抗しているんですがね。
そういう意味では、理解をしていただかなければいけないいろんな団体がまだあると思いますので、ぜひ足を運んで一緒にやっていただきたいなと思って、これを最後に質問を終わります。
ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115077X00319971211/92
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093・堂本暁子
○堂本暁子君 これは池田参考人に伺うのが一番いいのかもしれませんけれども、ギャンブル性が非常に少ないと、百六十万分の一ですか。そういうことで、果たしてこのサッカーくじを導入してどのぐらいの収益が上がるというふうに思っていらっしゃいますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115077X00319971211/93
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094・池田勝
○参考人(池田勝君) 日本の場合は、私は全く見当つきません。
これは新聞等で発表されていますけれども、例えば千八百億円とか二千億円とかいうふうに言われておりますけれども、果たしてどういう根拠でもってそういう数字が出てきたのか私は存じません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115077X00319971211/94
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095・堂本暁子
○堂本暁子君 田中さんに伺いたいと思うんですけれども、反対していらっしゃる団体がだんだんふえてきました。特に女性の団体がふえてきましたけれども、もう少し具体的に、どういうようなお話の中で団体がふえてきたのか、その辺を教えていただけますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115077X00319971211/95
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096・田中里子
○参考人(田中里子君) 別に大きく呼びかけてやっているわけではありませんが、それぞれの団体から本当に自主的にサッカーくじの導入に反対したいと非常に熱心に声が上がってきておりますので、当初、もう我々だけでは大変強力なスポーツ界の皆さんがいらっしゃるので心細いと思っておりましたが、自発的にふえてきていると思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115077X00319971211/96
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097・堂本暁子
○堂本暁子君 その自発的の内容は、先ほど説明なさったことをもう少し具体的に伺うとどういうことでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115077X00319971211/97
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098・田中里子
○参考人(田中里子君) やはり私ども掲げておりますのにもうほぼ一致しているという。日弁連は、例えば十九歳未満の者には売らないといったときに、かえってこれは警察がかかわりやすくなってくるという懸念を弁護士さんらしく指摘しているという点がございますが、あとは何といっても、非常に確率は低くとも勝敗をかけるということについてはギャンブルで、一億円とか二億円の賞金というのを掲げられますと、確率が幾らかということよりも、買いやすい百円という価格で券を割に身近で売るということは、青少年にとっては特に買いやすい環境にあるということだと思います。
十九歳未満に売らないということは、やっぱり非常に問題があるんじゃないかということだと思います。むしろその点については、スポーツ議員連盟も一生懸命お考えになったんだなというふうに逆に思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115077X00319971211/98
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099・堂本暁子
○堂本暁子君 安西参考人に伺いたいんですけれども、先ほど出ました競馬、競輪、それから競艇、それからちょっと種類が違いますが赤い羽根、そういうところから体協は資金を寄附されていますか、今。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115077X00319971211/99
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100・安西孝之
○参考人(安西孝之君) もちろんいただいております。赤い羽根はございませんけれども、日本馬主連合とか日本自転車振興会、小型自動車振興会、日本船舶振興会、宝くじ協会等からいただいております。
先ほど申し上げたように、国庫からが大体二五%で、そういうものと、私ども直接に努力して寄附をいただいたりというほかにこういうものもございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115077X00319971211/100
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101・堂本暁子
○堂本暁子君 それが運営費の何%ですか、そういう寄附が。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115077X00319971211/101
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102・安西孝之
○参考人(安西孝之君) ちょっと細かい数字を今持ち合わせておりませんけれども、大体三五%くらいでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115077X00319971211/102
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103・堂本暁子
○堂本暁子君 恐らく、先にスポーツの財政の不足があって、そしてそのために競馬が始まったわけでも競艇が始まったわけでも競輪が始まったわけでもないと思うんですね。そこがサッカーくじと私は違うような気がします。
今、江本さんと川淵参考人の会話を聞いていて、なるほど共存共栄というようなこともあるのかなと思ったんですけれども、それは先に競馬や競輪があって、そしてそのことがまた今のような寄附に結果としてなっていった場合と、それから今回のように、本当に私は残念だと思うのは、やはり国の財政が足りないということです。
これは質問じゃなくて意見なんですけれども、東京オリンピックでそれこそ小野清子さんを取材する立場で、東京オリンピックのときはたくさんメダルも日本は取れたり、それからすばらしい選手の方がおられてとても今でも強く印象に残っております。ですけれども、以来、何かスポーツの本質も変わったと思うんです。きょうは一日ここにいますけれども、概算要求の数字を今は一番私たち見ているときです。その中で余りにもやはり、けさからずっとるるお話があるように、日本のスポーツ振興というスポーツに対しての考え方が、それはスポーツだけではないかもしれません、スポーツや文化に国の予算を十分に使うということをやってきていないということが一番の問題なのではないか。
だから、事がいい悪いということよりも逆なんじゃないかということを、何かこういう議論、それが賛成と反対に分かれるということの前に、もっと本当に子供だけではなくて高齢者に至るまでのスポーツ、そのスポーツがどんなに心身にとって大事なものか、文化がどんなにその国の豊かさに反映されていくものかということから、やはりそういった価値観で日本の予算が配分されていればと、本当に無念な気持ちできようはいます。何かとてもやりきれない気持ちなんですね。どういうふうに表現していいかわからないんですけれども、そこのところがやはり大きく間違っているんではないかという気がいたします。
今伺うと、どれだけ収益があるかわからないとおっしゃる。その収益があるかないかわからないことよりも、確実に北海道から沖縄までの子供も大人も女も男もみんなが楽しんだり、本当にわざを磨いたりできるようなそういった予算のつけ方を私は国会議員としては今後主張していきたい、そういう意見を言わせていただいて、終わらせていただきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115077X00319971211/103
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104・長谷川道郎
○長谷川道郎君 長谷川と申します。本日は、貴重なお話を承りましてまことにありがとうございました。
それでは、最初に安西参考人にお伺いをさせていただきます。
お伺いいたしたいのは、体協のスポーツ振興の基本的な姿勢は何かという点でございます。先ほどお話の中で、スポーツが高度化をしておる、今は献身的なボランティア精神だけではなかなか支え切れない、世界のレベルでは日本はおくれているというお話がございました。その後のお話でも、すぐれた選手を育てるには多くのスタッフが必要であるというお話がございました。
お話はもちろんそのとおりだと思うのであります。ということは、体協のスポーツ振興の基本的なポリシーというのはチャンピオンを育てようということであるのかどうか。ちょっと私の誤解かもわかりませんが、私は体協の御方針は、何といいますか、今は余り言いませんけれども、昔ステートアマと言われたような、そういうものを目指していらっしゃるのかなというような感じがいたしたわけであります。
私は、オリンピックで日本の日の丸が上がれば、それはもちろんうれしい気持ちがいたしますが、かといって、日本が中国や韓国にメダルの数で追い抜かれても別に悔しいと思いませんし、それで国威が落ちたというふうに考えるようなことは今もうないわけです。ですから、もちろん体協はいろんなことをおやりなんでしょうが、チャンピオンを育てることも大切でありますが、スポーツ人口というすそ野を広げることが私は今おやりになる最大の政策ではないかなと思うんです。
私はよくインドネシアという国に参るわけですが、インドネシアはバドミントンの世界チャンピオンの国であります。インドネシアという国は失礼ながら比較的貧しい国であります。小さな村に入りますと、バナナの葉っぱで屋根をふいたような家屋がずっと続いておる。その村のど真ん中に物すごく立派なバドミントンコートがある。カラーコンクリートづくりの、こんな貧しい村にどうしてこんな立派なバドミントンコートがあるのかと思うぐらい立派なコートがある。そういうことで人口のすそ野を広げていくことが今インドネシアが、ほかのスポーツはわかりませんが、少なくともバドミントンで世界一になったということでありますので、スポーツ人口を広げるということはこういうことなのかなというふうに考えたわけでありますが、その点いかがでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115077X00319971211/104
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105・安西孝之
○参考人(安西孝之君) きょうは出席しておりませんけれども、もう一つ、私どもと兄弟分といいますか、日本オリンピック委員会というのがございます。日本オリンピック委員会は、オリンピック選手の育成並びにオリンピックに選手を派遣することが主な仕事でございますが、私ども日本体育協会としては、先生おっしゃったように底辺を広げるといいますか、だれもがスポーツができるような環境づくり、それを通じて社会に貢献していく青年たちが育つんではないかという基本姿勢に立ちまして、地域スポーツクラブを先ほど申し上げましたように願わくは全国に一万カ所くらいつくりたいと。
その理由は、何と申しましても、今後、学校体育から地域スポーツの方にどうしても青少年のスポーツが移行していくと、こういう形にならざるを得ないわけです。これは、少子化の問題もございますけれども、それぞれの学校にさまざまなスポーツの指導者を置くということは現実問題として不可能なわけですから。そういうことと、それから青少年と壮年あるいは高齢者が一緒にクラブ活動ができる、一緒にスポーツをしようというんじゃないわけですから、同じクラブで語り合える、そういう交流を通じて明るく豊かな社会をつくっていく、これがスポーツに与えられた大きな課題であるという認識のもとに、その線に沿って努力していきたい、こういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115077X00319971211/105
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106・長谷川道郎
○長谷川道郎君 ありがとうございました。
地域スポーツについてはもうちょっとお伺いしたいんですが、時間でございますので、次に田中参考人にお伺いをいたします。
この法案での最大の議論の焦点はギャンブルかどうかということだと思います。きょうもいろんなの形でもってその議論があったわけでありますが、なぜギャンブルがいけないかというと、私は、射幸心を刺激することによって要するに中毒になる、反復せずにはいられない、そういう状態になる、要するにはまってしまう、それがギャンブルの害毒であって、ゆえにギャンブルはいけませんよということになっていると思うんです。
しかしながら、今例えば宝くじだと一億二、三千万ですか当たるくじがあるわけでありますが、宝くじを欲しいばかりに青少年が犯罪を犯すというような例は恐らく私は聞いたことがございません。お正月になりますとお年玉つき年賀状というのがあるんです。お年玉つき年賀状というのはあれは極めて配当率が高いんです。八〇%の投下資本が戻ってくるという非常にいいシステムになっている。しかしながら、お年玉年賀はがきをいっぱい買い集めてそれで蓄財をしようなんという人はいるとは思えないわけであります。サッカーくじが実施をされた場合、そのサッカーくじに中毒して反復せずにいられないというような人が出たとしたらよほどの変わり者ではないかと思うんですが、それでもなおかつ田中参考人はやはりギャンブルであり、かつそれは不健全なことだというふうにお考えでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115077X00319971211/106
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107・田中里子
○参考人(田中里子君) サッカーくじは、どこが勝つか負けるか、また別の選択とか、なかなか私聞いてもすぐわからないような細かいものもございます。特にサッカーの場合は若い人たちが非常に興味を持ってくじを買うということがあると思います。百円という値段もあり、買いやすいところが付近にあるということもあります。子供たちの中でも、十九歳未満というのはなかなかこれは大変区別が難しいというふうに思いますが、そういう形で買うのが広がっていきますと、やっぱり中毒に。
それで、非常に賞金は高いところに置いていると思います。そうすると、万が一当たればというような気持ちというのはだれも思います。私など、宝くじの場合もそんなに当たるものじゃないというふうに思っておりますが、それが勝ち負けにかけるということで非常に遊蕩するということもあります。百円で済むものではありません。これは何枚も買うということにもつながっていきます。確率をねらうんならそういうことにもつながります。そんなに確率が低いものなら、いっそのこともう少し違う方法で選択肢を考えるということの相談がどうしてできないのか、私は疑問に思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115077X00319971211/107
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108・長谷川道郎
○長谷川道郎君 それでは、時間がなくなりましたので、最後に一点だけ川淵参考人にお伺いいたします。
今回、どの程度の規模でのサッカーくじになるのかもちろんまだ不明であるわけでありますが、少なくとも千八百億とか二千億の新しい需要が創設をされるという点では私は歓迎をいたしたいものであります。
例えば今回のサッカーくじが運用された場合、その後の問題でありますが、どうも私はJリーグの運営といいますかルールといいますか、ちょっとよくわからない点がある。そもそもサッカーのルールも、例えば試合終了して終わったなと思ったら突然ロスタイムというようなことがあります。まだまだ私はサッカーのことをよく知らないわけでありますが、例えば、今、Jリーグの試合の運営も幾つかのステージがあるわけです。それで、そのJリーグの試合をやっている最中にまた何々カップというような試合があります。ナビスコカップというんですかね。それで、そのナビスコカップみたいな試合がありながら、また突然ワールドカップの試合がある。どれがどうなっているんだか、そう熱心なファンでない私にとってはJリーグの試合の運営が非常にわかりづらいんです。その点、プロ野球というのは四月に開幕をして十月に終わるまでどんどん勝率で決まっていって、その時点でどこのチームが一位かというのは一目瞭然なわけです。
ですので、今後サッカーくじが採用されて運用されるということになると、やはりJリーグの試合の運営というのももうちょっとわかりやすくしていただければなという感じがいたすわけでありますが、その点いかがでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115077X00319971211/108
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109・川淵三郎
○参考人(川淵三郎君) おっしゃるとおりです。
サッカーくじをやるから皆さんにわかりよくということでやるわけじゃなくて、Jリーグがある程度人気がなくなった部分は、そういった試合のやり方、いろんな制度に問題があったということで我々自身反省しております。
一九九九年から一、二部制をしいたときに、土曜日はJリーグ、水曜日はカップ戦というふうな、一般の皆さんにもわかりいい、そういうスケジュールでやっていきたいと思います。
しかし、一番の問題はアジアの中でのスケジュールなんです。ヨーロッパの場合には八月の中旬から始まって五月までというふうにシーズンが決まって、ヨーロッパじゅう一斉に国際試合が行われるんですが、日本は中央アジア、西アジアから東アジアまで、もういろんな国がいてその間のスケジュールがいつも毎年もめるんです。
そういったことで、ファンの皆様に御迷惑をかけていますが、できるだけわかりやすい方法でやるように、これはサッカーくじとは関係なくやりたいというふうに思っています。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115077X00319971211/109
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110・長谷川道郎
○長谷川道郎君 終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115077X00319971211/110
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111・大島慶久
○委員長(大島慶久君) 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。
この際、参考人の皆様に一言ごあいさつを申し上げます。
参考人の皆様におかれましては、極めて多忙な時期に本委員会に御出席をいただき、しかも貴重な御意見をちょうだいいたしまして、大変ありがとうございました。本委員会を代表いたしまして厚く御礼申し上げます。
本日はこれにて散会いたします。
午後三時二十五分散会
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115077X00319971211/111
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