1. 会議録本文
本文のテキストを表示します。発言の目次から移動することもできます。
-
000・会議録情報
平成九年十一月二十五日(火曜日)
午前十時開会
—————————————
委員の異動
十一月十八日
辞任 補欠選任
長尾 立子君 中曽根弘文君
十一月十九日
辞任 補欠選任
中曽根弘文君 長尾 立子君
十一月二十日
辞任 補欠選任
志村 哲良君 上杉 光弘君
十一月二十一日
辞任 補欠選任
上杉 光弘君 林 芳正君
—————————————
出席者は左のとおり。
委員長 風間 昶君
理 事
釜本 邦茂君
清水嘉与子君
大森 礼子君
橋本 敦君
委 員
遠藤 要君
岡部 三郎君
長尾 立子君
林 芳正君
林田悠紀夫君
松浦 功君
魚住裕一郎君
円 より子君
菅野 久光君
千葉 景子君
菅野 壽君
照屋 寛徳君
国務大臣
法 務 大 臣 下稲葉耕吉君
政府委員
法務大臣官房司
法法制調査部長 山崎 潮君
法務省民事局長 森脇 勝君
法務省刑事局長 原田 明夫君
最高裁判所事務
総局総務局長 涌井 紀夫君
最高裁判所事務
総局民事局長
兼最高裁判所事
務総局行政局長 石垣 君雄君
事務局側
常任委員会専門
員 吉岡 恒男君
説明員
警察庁刑事局捜
査第二課長 縄田 修君
警察庁刑事局暴
力団対策部暴力
団対策第一課長 和田 康敬君
警察庁刑事局暴
力団対策部暴力
団対策第二課長 宮本 和夫君
大蔵大臣官房金
融検査部審査課
長 内村 広志君
大蔵省証券局企
業財務課長 三國谷勝範君
大蔵省証券局証
券業務課長 小手川大助君
大蔵省銀行局銀
行課長 内藤 純一君
大蔵省証券取引
等監視委員会事
務局総務検査課
長 滝本 豊水君
労働省職業安定
局業務調整課長 浅野 賢司君
—————————————
本日の会議に付した案件
○参考人の出席要求に関する件
○商法及び株式会社の監査等に関する商法の特例
に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提
出、衆議院送付)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115206X00519971125/0
-
001・風間昶
○委員長(風間昶君) ただいまから法務委員会を開会いたします。
まず、委員の異動について御報告いたします。
去る二十日、志村哲良君が委員を辞任され、その補欠として上杉光弘君が選任されました。
また、去る二十一日、上杉光弘君が委員を辞任され、その補欠として林芳正君が選任されました。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115206X00519971125/1
-
002・風間昶
○委員長(風間昶君) 参考人の出席要求に関する件についてお諮りいたします。
商法及び株式会社の監査等に関する商法の特例に関する法律の一部を改正する法律案の審査のため、来る二十七日の委員会に参考人の出席を求め、その意見を聴取することにいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115206X00519971125/2
-
003・風間昶
○委員長(風間昶君) 御異議ないと認めます。
なお、その人選等につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115206X00519971125/3
-
004・風間昶
○委員長(風間昶君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115206X00519971125/4
-
005・風間昶
○委員長(風間昶君) 商法及び株式会社の監査等に関する商法の特例に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。
本案の趣旨説明は既に聴取いたしておりますので、これより質疑に入ります。
質疑のある方は順次御発言願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115206X00519971125/5
-
006・清水嘉与子
○清水嘉与子君 おはようございます。
山一証券が二千六百四十八億円もの簿外債務が表面化して本日自主廃業に向けて営業を休止するということが報道されております。山一証券の前経営陣は総会屋小池被告に約一億円もの利益供与をしたということで既に逮捕されているわけでございまして、シンガポールの国際金融取引所を舞台に利益のつけかえをしたと言われるのが九四年の十二月とか九五年の一月というふうに報道されていることを考えますと、恐らく会社の資金繰りも苦しくなっている、にもかかわらず不正な利益を提供し続けていたということを考えますと、総会屋の存在というのは何なんだろうかと、ますます不可解に思ってしまうわけでございます。
こうした総会屋に対する利益供与等で客離れが進んだということもこの経営破綻に当然つながってきているわけでございます。山一以外の証券会社、あるいは松坂屋、三菱電機、東芝といった我が国の一流企業と言われていたところが軒並み総会屋にいろいろな形で利益供与を行っていたという事実が明らかになって、そしてまたトップが次々に責任を問われていると。
この総会屋というのを日本社会から締め出すために既に五十六年に商法改正をしたわけでございますけれども、依然としてこの企業と癒着した総会屋の姿というのがなくなっていない。今回この罰則強化によりまして本当にこの総会屋がどれだけ締め出せるんだろうかという問題でございますけれども、少なくともその企業との癒着を断ち切ることにプラスになるのであれば、早く法改正をすべきだというふうに私は思っているわけでございます。
そこで、幾つかの点について、この法案の中身について伺いたいわけでございます。
私も今一般に総会屋という言葉を使いましたけれども、ここで対象にして締め出そうとしている総会屋というのは一体何なんだろうかということなんです。総会屋というのは一体どんなふうに、定義というのがあるんだったら教えていただきたい。まず法務省にお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115206X00519971125/6
-
007・森脇勝
○政府委員(森脇勝君) ただいま委員御指摘のとおり、昨今の新聞等で総会屋という言葉が日常語のように使われておるわけでございます。ただ、これは法律上の用語ではございませんし、それからこの総会屋についてはっきりとこういうものであるという定義をしたものは見当たらないところでございます。
ただ、学説の中には、その行為態様に着目しまして説明を試みた学説がございます。それによりますと、会社の株式を取得して会社に金品を強要し、その供与を受けると総会において一般株主の発言を抑えて会社側の議事進行に協力する、また会社から金品の供与を拒まれると総会において議事の進行を妨害して議場を混乱させると、こういった行為をする者を一般的に総会屋というというように言っておるようでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115206X00519971125/7
-
008・清水嘉与子
○清水嘉与子君 そこで、昭和五十六年に改正されました商法、これによりまして株主の権利行使に関する利益供与禁止の罪が新設されたわけでございますけれども、それによって一体今言われたいわゆる総会屋の活動にどのような変化があったのか、商法改正のこの効果とあわせて、その総会屋の実態というのを、これは警察の方ですね、どうぞ教えていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115206X00519971125/8
-
009・宮本和夫
○説明員(宮本和夫君) 警察では、この総会屋につきまして、株主の権利の行使に関し企業から不正に利益を得るなどの活動を行う者を、必ずしも暴力団ではないわけでございますけれども、これに準ずるものとして取り締まりの対象としております。
この総会屋の勢力は、改正商法が施行されました直後の昭和五十八年には約一千七百人を把握しておりましたが、以後減少傾向にございまして、平成八年末では約一千人を把握しておるところでございます。
また、最近の総会屋の動向、手口ということでございますが、これまでの検挙事例などから見ますと、情報誌の講読要求を初めといたしまして、広告掲載要求、下請参入要求、融資要求など、さまざまな名目で経済取引を装いつつ不当な要求を執拗に行っている実態にありまして、総会屋がその生き残りを図って企業に対し巧妙に食い込もうとしている状況がうかがえるところであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115206X00519971125/9
-
010・清水嘉与子
○清水嘉与子君 警察庁の方にもう一回、次に伺いたいわけなんですが、企業が総会屋を恐れているというこの背景には、企業の幹部に対する殺傷事件が相次いでいる、そしてそれがなかなか全容がはっきりしない、犯人も捕まらない、こういった実態もあるのではないか。いろいろ報道を拝見しますと、随分本当に御自分も家族も含めて恐ろしい目に遭っているようでございますけれども、そうした殺傷事件の実態といいましょうか、少し伺わせていただきたいことと、それから現在警察が身辺警護をしているような企業の幹部等についてその様子を伺わせていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115206X00519971125/10
-
011・宮本和夫
○説明員(宮本和夫君) 企業のトップやそれに準ずる者に対するけん銃や刃物を使用した襲撃事件につきましては、主なものとして、阪和銀行副頭取射殺事件とか富士写真フィルム専務刺殺事件、住友銀行名古屋支店長射殺事件などがありますが、これらのうち富士写真フィルム専務刺殺事件につきましては、平成六年十月に実行犯二名、平成八年十月に主犯格の男一名を検挙いたしております。
警察におきましては、他の未解決事件につきましても、企業関係者の不安感を払拭するために、これら事件を検挙することが極めて重要であるという認識に立ちまして、事件解決に向けて全力で捜査を推進しているところであります。
また、警察におきましては、企業の役職員等に対する暴力団、総会屋等からの不法行為の未然防止を図るため、各都道府県警察本部に保護対策官を置いて、またその統括下に各警察署で指定されました保護対策責任者が具体的な保護対策の任に当たるなどの体制をとっております。
その保護対策の内容といたしましては、これらの企業の役職員等を保護対象者に指定して、連絡を密にし、自主警戒の指導を行うとともに、状況に応じ身辺の警戒、パトロールの強化、監視カメラ、緊急通報装置の設置等、所要の措置を講じているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115206X00519971125/11
-
012・清水嘉与子
○清水嘉与子君 今、その対象になっている方というのはどのくらいいらっしゃるんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115206X00519971125/12
-
013・宮本和夫
○説明員(宮本和夫君) この保護対策の実施状況についてでございますが、保護対象企業数が約八十企業、保護対象者数が約三百七十名となっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115206X00519971125/13
-
014・清水嘉与子
○清水嘉与子君 大変多くの方がこういった状況に置かれていることは大変な事態だと思います。警察の方も恐らく命がけの作業だと思いますけれども、ぜひ犯人検挙に一層の努力をしていただきたいというふうにお願いしておきたいと思います。
次に、法務省にお伺いしたいわけですが、この商法第四百九十七条違反、つまり利益供与の違反で摘発された例を見ますと、企業側にいたしましても、あるいは総会屋側にいたしましても、懲役刑を受けた人のほとんどに執行猶予がついているわけでございまして、余り実刑がない。こういう実態から見ますと、今度の刑罰の強化というのが必ずしも犯罪の抑止力にならないんじゃないかなというふうにも思うんですが、この辺はいかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115206X00519971125/14
-
015・原田明夫
○政府委員(原田明夫君) お答え申し上げます。
ただいま委員御指摘のとおり、確かにこれまで利益供与罪、また受供与罪で起訴され懲役刑を言い渡されました被告人の多くにつきまして執行猶予が付されていることはそのとおりでございます。
有罪判決がありました場合に執行猶予を付するか否かにつきましては、最終的には裁判所におきまして犯罪のさまざまな情状を総合的に考慮いたしまして、一般予防、また当該被告人に係る更生等の見地から判断されるものでございますので、これについて一般的にも法務当局として論評することは差し控えさせていただきたいのでございますけれども、従来六カ月以下の懲役とされておりましたものにつきまして、立法者がこの法定刑を引き上げまして、この種の行為が強い違法性を有している、そして重い刑罰に値するものであるということを示すことが行われましたならば、そのような立法趣旨を踏まえまして法の運用が行われることとなり、相当の一般予防的な効果も期待できるものというふうに考えている次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115206X00519971125/15
-
016・清水嘉与子
○清水嘉与子君 もう一つの罰金の方なんですが、先ほど警察の方からも伺いましたように、総会屋に対する利益供与の仕方というのは非常に巧妙になってきて、なかなかわからなくなってきているような実態でもあるようでございますけれども、いずれにいたしましても、この利益供与された額というのが世の常識を随分超えているんじゃないかというふうに思われるわけですね。しかし、今回引き上げられることになっております罰金の額というのがどうも低いんじゃないかなと思えてならないわけです。素人から考えますと、こういった経済犯罪にかかわる罰金の額というのは、不当に得た利益を全部没収してしまうくらいの額に設定できないんだろうかと。
この商法の第二百九十四条ノ二で、利益供与を受けた者が会社に利益を返還できるようにはなっておりますけれども、もともと違反とわかっていて会社が利益供与したお金を会社にまた返還する仕組みというのも何かおかしいんじゃないだろうかというふうにも思えるわけですね。しかも、今度新設されます利益供与要求罪だとか、威迫を伴う要求罪等が出てくるわけでございますが、それでもさらに利益供与しているような事態が出てさましたら、これを会社に返すというのもどうなのかなと。むしろ、この罰金刑の方できっちりと回収するという方がいいのではないかというふうに思いますが、この辺はいかがでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115206X00519971125/16
-
017・原田明夫
○政府委員(原田明夫君) 今回の改正案における罰金額につきましては、罰金刑が懲役刑と相まって発揮する抑止的な効果や、これまでの経済変動または刑法上の罰金額との均衡などを考慮いたしまして、現在の刑罰法体系全体の中でのできるだけ最大限の額という見地から決められたものでございますが、実際問題といたしましては、利益供与を要求したり、あるいはこれを受け取ったりした、いわゆる総会屋といいますか受け取る側に対しましては、その事案の軽重にもよるのでございますけれども、最近の運用におきましては罰金刑よりもむしろ懲役刑が科される場合が多くなっており、また、先ほど御指摘の中でございましたように、受け取る側といいますか要求する側につきましては実刑の例もかなり出てまいっている実情でございます。
また、いわゆる総会屋に対しましては、今回の改正で御審議いただいていることが実現いたしますれば、懲役刑とあわせて罰金刑も科することが可能となるわけでございます。このようなことからいたしますと、個人に対する三百万円以下、これは会社に対する、御指摘にもございましたように威迫行為があった場合には五百万円以下ということになるわけでございますが、その罰金刑が不当に低過ぎるものと言えず適切なものであるというふうに考えている次第でございます。
次に、委員御指摘の、不当に得た利益でございますから、その利益の回収とか剥奪の可能性もあるのではないかという御指摘でございます。
確かに、ただいまも御指摘いただきましたように、総会屋等が供与を受けました利益に関しましては、御指摘の商法上の規定によりまして会社に返還すべき第一義的な義務が課せられているわけでございます。これは、この利益供与、受供与が、守ろうとしている法益が、会社の株主との関係における会社の財産の保全ということが入っているわけでございますので、そういう点からいたしますと、会社のいわば真の所有者といいますか株主の立場からいいますと、流出した利益はもとへ返させるというのが第一義的であろうという立法上の考え方であるわけでございます。
なお、そういうことで実際返されなかった場合は、刑法の規定に従いまして没収、追徴も可能となるのでございまして、これらの規定によりその目的を達し得るものと考えているわけでございます。
しかしながら、御指摘の点も御論議されるわけでございまして、罰金刑の今後の抑止的な効果等につきましては、今回の法改正後もその運用につきまして慎重に見守ってまいりたいというふうに考えている次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115206X00519971125/17
-
018・清水嘉与子
○清水嘉与子君 ぜひよろしくお願いをしたいと思います。
それから、この商法違反で処罰を受けた総会屋、この総会屋という仕事が何か非常にうまい商売といったら商売なんでしょうか、ほとぼりが冷めたらまた再び総会屋として動き出すというようなことが考えられるんじゃないかというような気がしてならないわけでございます。こうした場合に、例えば一定期間株主としての権利を凍結するようなことができないんだろうか、これもぜひお教えいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115206X00519971125/18
-
019・森脇勝
○政府委員(森脇勝君) 現在の法制上は、総会屋対策として、まず第一は総会屋に対して刑罰を科する方法、それから第二には利益を得た総会屋からその利益を返還させるという二つの方法を構えておるわけですが、これらによっても総会屋の根絶ということができていないという観点からいたしますと、何らかの第三の制裁を科することによって総会屋の根絶に結びつけることができないのかという御意見は十分に理解できるところでございます。
ただ、先ほども申し上げましたとおり、総会屋というものをどういうふうに規定するかというような点で、これを法律上過不足なく定義するということは非常に難しい点があるだろうということを考えております。したがいまして、例えばこの利益受供与罪で有罪判決を受けた者といったような観点から、今委員御指摘の株主権の行使を制限するといったような方法はどうかということも考えられるところでございますが、この株主権の行使に対する制限というのはいわば株主の非常に重要な権利を制約するということでございますので、慎重な検討を要するだろうというふうに考えておるところでございます。
ただ、こうした規定を仮につくりましたとしても、総会屋としては自分の配下の者の名義で株式を取得する、そしてその者にいわゆる総会屋としての活動といいますか会社に対する交渉をさせる等の行為を行わせるといったようなことがすぐ連想されるわけでございまして、そういった意味からは、その実効性はどうなんだろうかという点も考えなければならない点だろうというふうに思っておるところでございます。
いずれにいたしましても、今申しました困難な点はございますけれども、これらを総合して何らかの決め手になる方法はないのかということは、今後とも私ども模索していかなければならない問題点であろうというふうに認識しておるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115206X00519971125/19
-
020・清水嘉与子
○清水嘉与子君 今、いわゆる総会屋側の問題を少しお話し申し上げましたけれども、総会屋へ多額な利益供与がされているということを会社の中でチェックできないということに関しては、やっぱり会社の中の内部監査のあり方でありますとか、何かチェックの仕方というところに大きな問題があるのではないか、つまり会社側の責任というのが非常にあるんじゃないかというふうに思うわけでございます。
事件が起きますと、幹部の方々は下の方の責任だというようなことでなかなかお認めにならない。最後にはこういった刑罰を受けていくわけでございますので、どうしてその前にそういうことができないんだろうかと非常に不思議に思うわけでございますけれども、この辺について何か御意見がございましたらお教えいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115206X00519971125/20
-
021・森脇勝
○政府委員(森脇勝君) こうした不正行為が行われる中には、まず取締役の側での行為というものが絡んでおるわけでございまして、こうしたものをチェックする方法としては、株主の権利の拡張、あるいは取締役の業務監査のチェックというものもございますし、一番重要なものとしては監査役の会計監査及び取締役の業務執行監査というものが用意されておるわけでございます。
監査役の権限としては、取締役であるとか使用人に対して営業報告をさせる、あるいは業務・財産状況の調査権を有する、取締役から著しい損害を生ずるおそれがある事象を発見したときには報告を受ける権限を有する、あるいは取締役会への出席権、意見陳述権、それからこれらに基づく取締役会の招集請求権、さらにこれに基づく招集が行われない場合には、みずから招集権限を有する、監査役の任免に対する意見を述べる権限を有するといったように、種々の監査役の権限をこれまで拡張してきているところでございます。
したがいまして、法の規制としてはかなり充実したものになっているのではないかというふうに私ども考えておるところでございますが、今般このように大企業の多くでこうした不祥事が出てくるということにかんがみますと、これでも足りないのかという感じがするわけでございます。
最近の問題では、企業トップがいわば違法であることを承知の上でやっておるという実態があるように見受けられるところでございまして、仮にそうした事態といたしますと、これは今度は監査役に対する発覚をもできるだけ発見されないように隠ぺいするという形で行われているのかなというようなことも考えられるところでございます。そうなってみると、監査役がみずからの権限における監査権限の中でその不正を発見するということがだんだん困難になってきているのではないかということも危惧されるところでございまして、今後ともこの点に関しましてはどういう有効な方法があるのか、十分に検討していかなければならない問題であるというふうに認識しておるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115206X00519971125/21
-
022・清水嘉与子
○清水嘉与子君 大臣にお伺いしたいんですが、総会屋対策のために関係閣僚会議が総会屋対策要綱を策定して行動を開始したというふうに報ぜられておりますけれども、具体的にどのような対策が実施されているのか、お伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115206X00519971125/22
-
023・下稲葉耕吉
○国務大臣(下稲葉耕吉君) 総会屋根絶のための政府全体による施策といたしましては、ここにおられます松浦先生が法務大臣のときでございますが、九月五日に、関係閣僚会議におきまして御指摘の総会屋対策要綱というものが制定されました。さらに、去る十月二十八日には、業界団体における企業経営者の意識改革を要請するなどの諸対策を一層推進していくということの合意がなされております。
その内容はいろいろございますが、関係各省庁がそれに対応する業界のトップに対しまして面接等によって直接要請するとか、あるいは警察による支援をどういうふうな形でやっていくとか、あるいは銀行、証券会社に対する実効性のある厳正な検査等を確保しようとか、いろいろございます。各省庁はそういうような立場で所要の施策を推進されているというふうに聞いております。
法務省といたしましては、今お願いしているわけでございますけれども、商法の罰則の強化でございますとか、さらには組織的な犯罪に対処するための刑事法の整備というような法律的な面の整備が一つございます。実務的に申し上げますと、検察当局における総会屋等の犯罪に対する厳正な処置という法執行の面があろうかと思いますが、そういうふうな面から適切にやっていこうと。
もう一つは、日本弁護士連合会に対しまして、総会屋問題について一層積極的に協力してもらいたいという要請を行いました。これは事務次官名で日弁連の会長さんあてに九月八日にお願いいたしまして、日弁連からは九月二十四日に日弁連の会長さんから私どもの方へ御回答をいただいております。その内容は、総会屋の根絶につきまして弁護士会としても積極的に対応しようというふうな内容でございまして、それを日弁連傘下の各都道府県の弁護士会でございますか、そういうふうなところに協力依頼の文書を出していただいておりますし、あるいは日弁連自体の中における委員会でもその問題を協議していこうというふうな内容の御返事でございました。
そういうふうなことを実施いたしておりますが、今月の六日には、私自身も官房長官及び関係閣僚とともに、経団連初め十二団体の責任者の方々にお集まりいただきまして、今度のこの機会をひとつ契機にして総会屋との関係をもう断ち切りましょう、お互いに一緒になってやりましょうというふうな御要請もいたしております。
あらゆる機会をとらえまして、今申し上げましたような総会屋根絶に向けて努力してまいりたい、このようにやっているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115206X00519971125/23
-
024・清水嘉与子
○清水嘉与子君 ありがとうございます。
今審議しておりますこの法律、総会屋に対する罰則の強化ということでございますが、今までお話を伺いました中でも、総会屋の一掃には罰則の強化だけではとても限度があるんじゃないかという感想を持ちます。事なかれ主義の株主総会のあり方、あるいは多額な不正支出のチェックができない企業の内部監査のあり方、これは今お話を伺いますと、監査役の権限も強化されているというのは、仕組みだけはうまくいっているようでございますが、実態が動いていない。これは非常に大きな問題ではないかというふうに思うんです。
今回新設されます利益供与要求罪、あるいは威迫を伴う利益供与要求罪及び利益受供与罪、こういったものにつきましても、それを実効あるものにするのには、会社側がそれをどう利用するか、本当にそれによって警察に訴えていくかどうかというようなことにかかわってくるんだろうと思うんです。そこを内々にしてしまったらまた同じことになってしまうと思いますし、先ほど法律が施行されて七百人ほど総会屋がいなくなったといいますけれども、まだ千人もいる状況でございます。
考えますと、やっぱり総会屋をつくっている方の意識改革を大きくしなきゃいけないんじゃないかなということを実感として思うわけでございます。いろいろ思いますけれども、まず、その総会屋撲滅に対します、法務大臣今お話しくださいましたけれども、さらにこの法律だけではできないんじゃないかということで御見解をちょうだいしたいと思います。最後にお願いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115206X00519971125/24
-
025・下稲葉耕吉
○国務大臣(下稲葉耕吉君) 今、委員御指摘のとおりに、幾ら法律を整備し、そしてまた罰則を強化しましても、要はやはり人の問題に返ってくると思います。組織的な体制の問題につきましては民事局長からお話があったとおりでございますが、今回の一連の事件に関して感じますことは、総会屋と癒着し利益供与を行う会社の側、特に経営者の意識に大きな問題がある、これが基本的な問題じゃないだろうか。その経営者の早急な意識改革の必要がある、これは基本ではなかろうか、そのように思います。
それから、罰則の強化の面につきましても、今回新たに要求罪を入れていただいたとか、あるいは罰則を強化していただいたとか、あるいは新たに威迫に基づく要求罪等々を新設していただいたとかいうふうなこともございますし、側面から、こういうふうな罰則の強化というものが大変機能するのではなかろうか、このように思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115206X00519971125/25
-
026・清水嘉与子
○清水嘉与子君 ありがとうございました。終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115206X00519971125/26
-
027・林芳正
○林芳正君 自民党の林でございます。先輩の清水議員に引き続きまして、法律について質問させていただきたいと思います。
今、清水先生からもございましたように、罰則の強化だけではなかなか限界があるのではないか、大臣に今お答えいただきました。私も全く同じような感じを持っておりまして、いろんな対策を何回にもわたってやっておるわけでございまして、その都度徐々には成果が上がっておるというふうに思うわけでございますけれども、なかなか根絶というところまでいかないというところには、今御指摘ありましたトップの意識改革ですとか、社会性、国民性、広くいえばそういうところまでかかわってくるのではないかと思います。
そこで、もうずっと警察行政のトップをやられた方が今法務大臣をやっておられるということで、大変我々も心強く思っておるわけでございますが、大臣からごらんになりまして、なぜ総会屋という英語がないのかということでございます。まさに日本語でしか総会屋はないということでございまして、ほかの国には株主総会に出ていってわあわあ言う状況というのは余り聞いたことがないわけでございますが、なぜ我が国固有のものなのかということについて、まず御見解を賜りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115206X00519971125/27
-
028・下稲葉耕吉
○国務大臣(下稲葉耕吉君) なかなか難しい御質問でございますけれども、欧米に日本みたいないわゆる総会屋がないということは事実でございます。法律で株主の買い取り権に対する罰則をつくっているようなのは、そういうようなところは国によってはございますけれども、我が国みたいな総会屋がない。
なぜそうだろうかと。これはやはり先ほど申し上げましたように、私は会社側に基本的な問題があると思うのでございます。結局、株主総会を一分でも一秒でも早く終わらせたい、どだいそういうような考え方自身が私は間違いだと思います。これを克服しなければだめなんですが、そういうふうなことから、年一回の総会も短時間で終わらせて、早く済ませたいという会社側の、特にトップの気持ち、そういうふうなところに総会屋がつけ入る余地がある。会社は会社の体面を保って何とか株主総会を平穏無事に、しかも短時間で終わらせたい、そこで総会屋が入り込んでくる。
私は、ざっくばらんに申し上げますと、総会屋対策というのは会社の総務部の人たちが担当しているわけですけれども、総務部の人たちの問題ではないと思う。それはトップの問題だと思うんですね。トップがやはりそういうふうなことを意識しているのを直接指示を受けるか、あるいは肌で感ずるかわかりませんけれども、そういうふうな形で総会も早く運営し、終わらせたいと、そこで癒着ができてくる。だから、そこを絶たなければ基本的に解決することはできない。
ですから、なぜ我が国固有のものかというふうな御質問に対しましては、やはり日本の企業の土壌の中にそのようなものを受け入れる余地があるんじゃなかろうか、そういうふうに思いますし、また、そういうふうなものを克服することができなければ総会屋というのはずっと残る。今が時期だというふうな感じがいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115206X00519971125/28
-
029・林芳正
○林芳正君 大臣、ありがとうございました。
まさに我が意を得たりというような御答弁をいただいたわけでございまして、後ほどコーポレートガバナンス等についても御質問をいたしたい、こういうふうに思っておりますが、まず、今回の法案の中身について若干御質問差し上げたい、こういうふうに思います。
今回の目玉は何といってもこの利益供与要求罪の新設だというふうに考えておるわけでございます。四百九十七条の三項ということで、実際に利益を要求したということだけで罪を、新しい構成要件をつけたということであります。これにつきまして、細かいことかもしれませんが、「会社ノ計算ニ於テ」ということになっておりますが、具体的にはどこまでが会社の計算の範囲の中に入って、ここから先はポケットマネーであるとか会社の計算ではないということをお聞きしたいわけでございます。
難しいところがございまして、余りここではっきりとここまでですよと言いますと、そこをまた新しい総会屋がついてくるのではないかという懸念も持ちながら、一方で、やはり透明性といいますか、きちっとした構成要件というのは、これは罪刑法定主義の基本でございますから、その辺についてお聞きをいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115206X00519971125/29
-
030・原田明夫
○政府委員(原田明夫君) 現行の商法四百九十七条に規定されております「会社ノ計算ニ於テ」という要件に連なる御質問でございますが、この要件は、財産上の利益の供与による計算上の効果が名目とか資金調達方法のいかんを問わず実質的に会社に帰属することを意味しているというふうに解せられておりまして、新たに設けることを御提案させていただいております利益供与要求罪におきます会社の計算においても同様でございます。
そこで、表面上は会社以外から利益が供与されたように見える場合でございましても、その利益相当額が何らかの方法で会社から表面上の供与者に補てんされることとなっているような場合には、実質的に会社の計算において利益が供与されたものと認められておりまして、利益供与罪等の成立要件を満たすものと解されておりまして、幾つかの判例上もそのように解されているわけでございます。
その点、あらかじめ、こういう場合は当たる、当たらないということをまさに委員御指摘のとおり詳細にこの段階で申し上げますことはいろいろな問題も出てまいりますが、一面において、この点も御指摘のとおり罪刑法定主義の立場から明確になっていなければならない。その基本的な基準はだだいま申し上げましたようなことでございまして、一番典型的な形で、会社の役職員がいわばポケットマネーで供与するという場合にはこの場合に当たらないということでございます。
ですから、表面上は供与者が支出したような形になっておりましても、その裏面でそのことが補てんされるとかいうような約束がなされている、あるいはそのことが合意されているという場合は、包括的に会社の計算においてなされたものと認める余地があるというふうに御理解いただければと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115206X00519971125/30
-
031・林芳正
○林芳正君 大変大事な御答弁をいただきました。まさに、その点をある程度明らかにしておくことが、総会屋に対しまして、また先ほど大臣から御答弁いただきましたように会社のトップ、経営者側の意識改革につながっていくんではないか、こういうふうに思うわけです。
もう一つ同じような観点でございますけれども、構成要件の中で「株主ノ権利ノ行使ニ関シ」というところがございます。これも今と全く同じように、四百九十七条のもともとありました一項、二項にあるものでありますが、改めまして、これも同じような問題で、余り細かくやりますとそこの裏をかかれるということはございますけれども、どこまでが「株主ノ権利ノ行使ニ関シ」ということになるのか、御見解を賜りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115206X00519971125/31
-
032・原田明夫
○政府委員(原田明夫君) この点も大変重要な点でございますが、商法四百九十七条に規定されております「株主ノ権利ノ行使ニ関シ」という要件は、株主の権利の行使またはそれを行使しないことに対する対価の趣旨、例えば株主総会で会社に有利な発言をしたり、あるいは不利な発言をしないようにする、そういうことの見返りの趣旨を意味するものと解されているわけでございます。
したがいまして、そのような対価、見返りの趣旨が認められる限りは、利益の授受や要求がさまざまな商取引の名目でなされた場合でございましても犯罪の構成要件を満たすことになると解されております。これに対しまして、通常の形態の商取引行為や株主の正当な利益配当要求等は、このような趣旨のものではないことにおきまして犯罪行為とは明確に区別されるというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115206X00519971125/32
-
033・林芳正
○林芳正君 この利益供与要求罪ということが非常に大きな、いい意味でのプレッシャーになって総会屋がだんだん減っていくということを大変期待するわけでございます。
我が党のことで恐縮でございますけれども、ことしの八月に金融不正再発防止対策特別調査会というところで報告書をまとめさせていただきました。それにもこの要求罪の新設についてお願いをしておるわけでございまして、早急にこれにこたえていただきまして大変にありがたく思っておるわけでございます。この中で、実は供与を要求したときの告発といいますか、要求された側がこれを通報する義務を設けてはどうかということもあわせて提言をしておるわけでございますが、この点につきましては今回の改正案には盛り込まれておらないわけでございますが、いろいろと御議論されたと思いますけれども、どういった理由で今回は入らなかったのかということについてお聞かせ願えればと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115206X00519971125/33
-
034・原田明夫
○政府委員(原田明夫君) お答え申し上げます。
確かに、ただいま委員御指摘の利益供与要求罪まで設けるのでございますから、その要求を受けた段階でそのことも犯罪を構成するわけでございますので、告発するなりあるいは通報するなりの義務を課したらどうかという御提言がございまして、そのような観点から種々の議論があったことはそのとおりでございます。
ただ、最終的に今回の御提案の中に含ませていただけなかった理由でございますが、我が国の現行法上、私人、一般の方々に対しまして、犯罪があった場合、それを認知した場合に告発する義務を課した規定はなく、また通報義務等を課したものといたしましては、例えば爆発物取締罰則でございますとか、最近の例でございますとサリン等による人身被害の防止に関する法律でございますとか、その他各種法令によって、災害等を発見した場合の通報義務などがあるわけでございますが、そのいずれも不特定多数人の生命、身体を直接害するおそれがある危険物、毒物、災害等に係る公共の危険に関するものでございまして、いわゆる総会屋の根絶が現下の大変重要な課題であることを考慮いたしましても、これらとは直ちに同列に論じられないのではないかということが一つあったわけでございます。
また現在、いわゆる総会屋対策に関する関係閣僚会議が設置されるなどいたしまして、官民が一体となって総会屋排除運動が展開されているところでございまして、要求罪の新設に加えて、かかる一般的な動きがあることによりまして、あえて通報等の義務を法定しなくてもいわゆる総会屋による犯罪を有効に摘発し得ると考えられたことがあるわけでございます。
さらに、要求罪新設とこのような官民一体の運動によりまして、いわゆる総会屋と絶縁する決意のある会社関係者といたしましては、仮に義務を課されなくとも要求を受けた段階で捜査当局への通報を行うものと思われますが、逆にその決意のない、いろいろな事情によってそのことが通報できない関係者にとっては、訓示規定が設けられましてもこれを履行するとは思われません。
結局、通報等義務づけは、規定を設けたといたしましても、この要求罪を新設すること以上にいわゆる総会屋対策を実効あらしめる効果は期待できないのではないかという指摘があって、そこらあたりを総合的に勘案させていただいたという背景があるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115206X00519971125/34
-
035・林芳正
○林芳正君 北風と太陽ということだと思いますけれども、まさに守ろうとする意思のないところに余り訓示規定をということは大変よくわかるわけでございます。爆発物が爆発したりとか火が広がるということとは確かに事の性格上違うということはよくわかるわけでございますが、今回これをやってみて、官民挙げて取り組んで、その結果なかなかうまくいかないというときはまた我々もこれを考えていかなければならないと思っておりますので、その辺はまたよろしく御検討をお願いしたい、こういうふうに思っております。
不作為の罪というのは大変に構成要件上難しいということはよくわかっておるわけでございますが、先ほど大臣の冒頭の御答弁にもありましたように、トップの意識というものをいろんな面から改革をしていかなければいけないということであれば、これも手段の一つかなというふうに我々も考えておるところでございまして、また様子を見て考えていかなければならない問題だと、こういうふうに思っておるところでございます。
そこで、先ほど来繰り返し、トップの決断、社長をどうやってチェックをしていくかということに関して話をしてまいりましたけれども、今回はいわゆる両罰規定ですとか連座制ということも入っておらないわけでございますが、我々の報告書の中にはそういうことも検討してみてはどうかということも入っておるわけでございますけれども、これにつきまして今回導入を見送られたということにつきまして、どういう経過があったのか、御説明願えればと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115206X00519971125/35
-
036・下稲葉耕吉
○国務大臣(下稲葉耕吉君) 答弁の前に、前の御質問で、報告義務を課さなかったかという議論、これも私もそういうふうな議論をしたことがございまして、今度の法案はそういうふうな形になっておりますが、今おっしゃいましたように、状況を見て検討すべき一つのテーマじゃないかなというふうな感じがいたしております。
御質問にお答えいたしますが、トップの決断、チェックが重要と考える、しかし、両罰規定あるいは連座制を導入しなかったのはどういうことかということでございました。一つの私は理屈だろうと思います。
ただ、現在の商法所定の会社をめぐる会社役員等の犯罪につきましては、平たく申し上げますと、会社の財産を保全するというふうな趣旨からいろいろな立法がなされておるわけでございます。
会社はだれのものかというふうな議論ともかかわり合いが出てくると思いますけれども、要するに、会社の健全な運営をし、会社財産を保全し、その株主さんの御期待にこたえようという形からいいますと、利益供与を企業のトップがやったということは、会社に対して被害を与えている、損害を与えたと。本来は会社を守らなくちゃならない立場の人が会社に被害を与えている、損害を与えている。その会社に連座制の適用で、会社から罰金を取るのがいいかどうかと、簡単に言いますとそういうふうな議論になってくるわけでございます。
いろいろな御議論がございますけれども、今の商法の立場からいいますと会社を守ろうという立場でございますので、そういうようなことからいいますと、会社に両罰規定で罰金刑を科すということはちょっとなじまないのではなかろうかなというのが私どもの考え方でございます。
それから、連座制の問題になります。
今の刑法の立て方は、やはり責任主義といいますか、犯罪を犯した人が責任を負うというふうな立場になっておるわけでございまして、そこで連座だというふうなことになりますと、今の刑事法の大原則でございます責任主義と必ずしも合わないのじゃないかと。例外がないわけじゃございませんよ、公職選挙法における今度の組織的選挙運動管理者についての連座制の適用とか、あれは大変に厳しい国民の世論なりなんなりを背景にしてできたんですが、あれぐらいのものじゃないでしょうか。
というふうなことで、会社のトップの知らないうちにそういう利益供与をやったというふうなことがはっきりすれば、今の刑事法の大原則からいえばトップまで責任を問うのは難しいんじゃないだろうかと。しかし、事情を知っていて云々とかすれば共犯の関係になるというふうな形で、それは会社のトップの責任も追及できるというふうなことで、今お話しの連座制の問題だとかそれから両罰規定の問題は挿入しなかったというふうに理解いたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115206X00519971125/36
-
037・林芳正
○林芳正君 大臣御答弁本当にありがとうございました。
まさにおっしゃられたように、共犯と連座というものがずっとつながっているということだろうと思います。我々も、公職選挙法で大変に例外的に連座になったわけでございまして、そういう意味では厳しさというものを身にしみて感じておるところでございますから、この共犯と連座というもののつながりの中でこれは運用上ぜひ厳しくやっていただきたい、こういうふうに思うわけでございます。
また、今回いろんな議論の中で、これはこの法律だけではなくて日本の司法制度全体にかかわる問題だと思いますけれども、いわゆる司法取引といいますか、捜査に協力してもらえればいろんな刑を軽くするとか、そういうことをやっている国もあるようでございますが、これを今回導入しなかった理由、また、一般論としていわゆる刑事免責制度ということも提案の中には入っておるわけでございますが、これについてどういう御見解があるか、ちょっとお聞きをしておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115206X00519971125/37
-
038・原田明夫
○政府委員(原田明夫君) ただいま委員御指摘の司法取引的な制度、それが捜査に適用されるとどういう問題があるだろうかとか、あるいはまさに御指摘の一般的な刑事免責制度についてどうであろうかという観点、特に米国等を中心にいたしましてそのような捜査手法がいわば日常茶飯事的に行われているところからいたしますと、そういう手法が余りにも欠けているといいますか、我が国では行われていないという観点から、犯罪のいわば根源をえぐる意味で、より深い捜査を含めるためにそういうことが必要ではないかという御議論がございました。
それについて、私どもも基本的にはさまざまな観点から考えていかなきゃならない論点だろうと思います。いわゆる総会屋との間の癒着関係を根絶するために、会社の経営者が捜査当局に対して勇気を持ってその関係を届け出ることが必要であるわけで、そのような観点からもただいまの御議論はなされる場合があろうかと思います。
ただ、会社関係者による総会屋に対する過去の利益供与を一律に不問に付するような措置というものは、これまで同様の行為により起訴された者との公平さの観点が一つございます。また、利益供与の動機とか態様にはさまざまなことがあるのでございまして、例えば専ら会社の経営者の自己保身のために総会屋を利用したり、あるいは長期間にわたり多額の利益を供与するなど悪質な行為をこの際不問にしてしまうということについてはいろいろ問題もあろうかと思います。さらには、利益供与の背景にはそのような要求を生むさまざまな事情があって、実際上の取引によるいわば届け出あるいは証拠の提出の実効性があるだろうかという点については疑問も指摘されているところでございます。
ただ、検察当局におきましては、かねてから犯罪の嫌疑の有無のみならず犯罪の動機、犯人の置かれていた立場、犯罪の軽重、犯罪後の状況等さまざまな事情を総合的に考慮いたしまして、その事件ごとに適正な処理を行ってきたところでございまして、会社の関係者が総会屋との関係を断つことを強く決意してみずからの利益供与行為を届け出た場合、その際、まだ官に発覚する前に届け出た場合は自首に該当するのでございますが、それらの事情も当然考慮されるべき事情の一つとなることはもちろんでございます。
また、今国会に提案されております商法等の改正法におきましては、利益供与要求罪の新設によりまして、先ほども御議論ございましたように、会社関係者がいわゆる総会屋から要求を受けた段階でそのことを届け出て厳正な対処を求めることを可能とすることといたしておりまして、それらによりまして会社関係者のいわゆる総会屋に対する毅然とした対応は容易になるものというふうに考えている次第でございます。
また、一般的な刑事免責制度ということでございますが、社会の変化や市民の意識の変化等によりまして、実際問題として供述証拠、特に事案の背景と申しますか、見えないところで共謀、共同の形で行われるような事犯の立証上欠くことのできない供述証拠を確保することを初め、捜査活動が全般的に困難化しているという御指摘がございますし、第一線の警察官、また検事の中からもそのような意見があることは承知しているわけでございます。そういう場合に、供述を得るために刑事責任を一部免責するような手法を導入してはどうか、それが証拠収集上有効な面を有するものであるという観点からの御指摘は十分検討に値するものという面があろうかと思います。
ただ、一方でその刑事免責を付与されなかった者と免責を受けた者との間に処分上の差が生じることは事実でございますので、免責を与えるのが適当な者をどのように選択するか、またその場合に供述の信用性をどのように確保していったらいいだろうか、またさらには、我が国の法制度全体の中でそのような制度をどう調和させていったらいいかなど、国民一般の意識、受けとめ方をも十分に踏まえつつ今後検討させていただかなければならない問題の一つであろうというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115206X00519971125/38
-
039・林芳正
○林芳正君 これはすぐにすっと入ってくるようなものではない、こういうふうに思うわけでございます。
今政府の方で六大改革ということを推進していただいているわけでございますけれども、キーワードといたしましては、やはり自己責任ということを今から二十一世紀に向けて我々は考えていかなければならないということであれば、この司法の分野におきましても、やはり自分で選択をしたり自分の責任においていろんなことをやっていくという社会になれば、それ相応の対応というものが必要になってくるんではないかと思っておるわけでございまして、また今後の御検討をお願いいたしたい、こういうふうに思うわけでございます。
もう一つ法案についてお尋ねしたいわけでございますが、新しく罰をつくったり罰を強化したりするという中で、この罰の多寡に応じまして時効というものもそれに基づいて変わってくるということでございます。特にこの総会屋関係の犯罪につきましてはほかの犯罪に比べまして見つけにくいところがございまして、バランスというのは非常によくわかるわけでございますけれども、少しそこを曲げても長いスパンで時効をとった方がいいんではないか、こういうふうな気もいたすわけでございます。
ほかの刑、先ほど来、不作為とか通報義務とかいろんなことに関しましてやはり刑法全体の、法律制度全体のバランスというのがあるということでございますが、ある程度めり張りをつけていただいて、例えば殺人罪であればある程度の証拠というか、物的なことをするわけですから残るわけですが、こういう帳簿上といいますか、書類上といいますか、お金も振り込めば終わりということもあるわけでございまして、なかなか物理的な形跡が残らない。しかも非常に悪質な事件につきまして、少し時効のバランスをめり張りをつけて長くしてもらうというわけにはいかないものなのか。その辺についてお尋ねしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115206X00519971125/39
-
040・原田明夫
○政府委員(原田明夫君) ただいま委員御指摘のとおり、利益供与・受供与罪等につきましては、関係者相互間に癒着の構造があって現実問題としてなかなか発覚しづらい、発覚いたしましても時間を要することが多いという事情があることはそのとおりでございまして、そういう場合にかんがみて公訴時効期間が短過ぎるのではないかと。そういう場合に特別の措置として公訴時効期間を延ばしてもいいんではないかという御議論、御指摘があることは一面もっともな点があるだろうと存じます。
しかしながら、このような事情を伴う犯罪は、刑法所定のもの、またその他特別法を含めましてさまざまでございます。結局は、公訴時効期間というものは刑事法全体の枠組みの中でそれぞれの犯罪の法定刑、すなわち罪質の重さがそれにあらわれるわけですが、その罪質の重さの評価に応じて定められるという原則でございます。法定刑以外の個別の罪種にかかわる事情を区々に考慮いたしまして、それぞれについて公訴時効期間を定めていくということになりますと、他の刑罰法規との均衡上、刑罰体系全体の問題が生じてこようかと思うわけでございます。
したがいまして、ある犯罪の公訴時効期間がやはりその罪質に比較して短過ぎるというふうに最終的に認められる場合には、その法定刑の引き上げによって対処するのが相当であるのではないかという考え方が現在はとられているというふうに考えるわけでございます。
ただ、委員御指摘のように、そうは言っても、ホワイトカラー犯罪を含めまして関係者で密室で行われる犯罪については、法定刑が仮にそれほど重いものでなくても実際問題としてなかなか発覚しにくいんだから、個別に考えてはどうだろうかという御指摘があることは十分わかるのでございますが、その点を考慮いたしましても、個別にそれを定めていくということになりますとさまざまな問題も出てこようかと思います。問題は、どうしたらそのような事犯を的確に取り上げていくかという点にかかってくると思います。
今回の罰則強化によりまして、利益供与を受ける総会屋が威迫を手段とした場合には、時効期間は一般の受供与罪についての三年より長い五年になるわけでございます。また、先ほど来御説明させていただいておりますように、今回の改正でいわゆる利益供与要求罪を新たに処罰の対象とすることによりまして、その違法行為の早期の摘発が可能となると考えます。
そういう点でいわゆる時効の壁という問題を生じることなく総会屋の摘発、排除の実を上げることが期待されると考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115206X00519971125/40
-
041・林芳正
○林芳正君 バランスを失していくと次から次へいろんな要求が出てきて、一体だれがそのバランスをとるんだという御議論は大変よくわかるわけでございますが、犯罪の構成要件からこの時効の方へ持っていくというのは確かに大変に難しい判断で、じゃ一体どこがどうやって統一的な判断をするのかということにもなろうかと、こういうふうに思います。一方で刑を重くしないと時効が延びないということについて、仕組みとして何かそういう判断をするところを置いて、刑はやはり人権にかかわる問題でございますから、公訴の時効を延ばすために刑を重くするというのでなくて、やはり捜査の難しかったりやさしかったり、また構成要件に書かれております罪の性質といいますか、それに着目をして時効を考えていくということもぜひ御検討賜ればと、こういうふうに思うわけでございます。
その点におきましては、先ほど大臣の御答弁もいただきましたけれども、実際に捜査に当たられる警察また検察との連携というのをぜひ考えていただきたい、こういうふうに思うわけでございます。
いろいろと法案についても御質問させていただいたわけでございますが、先ほど来、会社は一体だれのものかという議論があるわけでございまして、いわゆるコーポレートガバナンスということについていろんな議論がなされておるわけでございます。
我が党の法務部会の商法に関する小委員会というところでも、ことしの九月に「コーポレート・ガバナンスに関する商法等改正試案骨子」というのをまとめさせていただいたわけでございまして、いわゆるいろんな問題についてここである程度明確にお示しをしたわけでございます。やはり先ほど刑事局長のお話にもありましたように、真の所有者というお話がございましたけれども、会社は一体だれのものか、だれのためにやっているのかということについていろんな議論があるわけでございます。
各国いろいろと異なっておるようでございますが、私が党がこのたびまとめましたのは、社外取締役を置くとか、それから社外監査役を置くとかいろんなことを書いてございますが、各国どういうような形態で会社の経営をチェックする体制をつくっているのかということにつきまして、お調べになった範囲で結構でございますが、まずお聞かせ願えればと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115206X00519971125/41
-
042・森脇勝
○政府委員(森脇勝君) 会社の基本的システムがどうあるのかということでの各国の状況ということでございますが、まず、アメリカ、イギリス等におきましては、株主総会が取締役を選任する、その選任された取締役が取締役会を構成いたしまして、その中から執行役員を選任する、また取締役会において会社の重要事項を決定していく、さらに選任しました執行役員の執行を監督していくと、こういうシステムになっております。
取締役会が執行役員の業務執行を監督するということになるわけですが、通常は取締役会がその中で監査委員会を選任いたしまして、そこに業務執行の監督を委任するという形をとりますので、監査委員会が執行役員の業務執行を監督すると、こういう形になるようでございます。
現在、アメリカの大規模の会社では取締役の過半数が社外取締役でありますので、この監査委員会は社外取締役によって構成されるのが普通であるというふうにされておるわけですが、社外取締役を置くかどうかという点は、実は会社法上は任意でございまして、これを規制した規定はないわけでございます。
ただ、ニューヨークの証券取引所での上場要件といたしまして、ここでは社外取締役のみによる監査委員会の設置ということが上場要件にされておるということでございますので、会社法以外の規制が事実上働いているという面はあるようでございます。アメリカ、イギリスにおいては、監査役という制度はございません。
それから次にドイツでございますが、ドイツは株主総会におきまして監査役を選任いたします。監査役によって構成される監査役会が外部の者の中から取締役を選任する、その取締役の業務執行を監査役会が監督する、こういうシステムになっておりまして、一定規模以上の大会社におきましては、従業員の代表者がこの監査役会の構成員になるということにされております。法制上、社外取締役あるいは社外監査役というものが義務づけられているわけではないということでございます。
次にフランスでございますが、ここにおきましては取締役会が業務の執行面それから監督面、両方を兼ねるといういわばアメリカ型の制度と、それから言ってみればドイツ型でしょうか、株主総会で監査役を選任して監査役会が執行委員を選任する、それを監督する、こういう二つの制度が認められておるわけでございます。いずれの場合におきましても、社外取締役及び社外監査役ということが法制上義務づけられているわけではございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115206X00519971125/42
-
043・林芳正
○林芳正君 フランスは両方選べるということでございますが、一般には、大変ラフに分けますと、いわゆる株主主義、株主主権といいますか、シェアホルダーリズムということになるかと思うんですけれども、それが英米ですね。それから、ステークホルダーリズム、いわゆる株主以外の利害関係人、例えば今お話がありましたように従業員ですか、その団体としての組合、またそれ以外にも企業が立地しております地域とか顧客、いろいろな会社には利害関係人が株主以外にもいらっしゃるわけでございまして、その人たちの利益も同じように入れていくのか、それを入れていくというのがステークホルダーリズムとでも言うものだと、こういうふうに思うわけでございますが、大きく分けてこの二つの潮流があるような印象を私は持っておるわけでございます。
今回の我が党の商法等改正試案骨子では、明確にこの株主主権、「株式会社は株主のものであって、株式会社の主権者は株主とする。」ということを書いてありまして、我が党が決めたものではありますが、私は今の日本の現状にすぐなじむのかなという思いも若干いたしながらこれをお聞きするわけでございますけれども、先ほど来いろいろトップをチェックするとかというお話をいたしましたけれども、今の現状、また将来どういう方向に向かっていくべきかということについて、この二つの流れについてもし御見解があれば法務省にお伺いをしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115206X00519971125/43
-
044・森脇勝
○政府委員(森脇勝君) 委員御指摘のコーポレートガバナンスは、株主、経営者、従業員、債権者、取引先、その他の企業の利害関係人あるいは地域の方々といったものの間で会社の基本システムはどうあるべきか、こういうことだと思われますが、その会社の基本的なシステムというのは、先ほど御紹介したとおり複数の選択肢があり得るのだろうというふうに思っております。
先ほど御紹介しましたとおり、ドイツにおいては一定の大規模会社について従業員の代表が監査役会の構成員になるということにされておりまして、そこでは当然のことながら取締役は株主のみならず従業員であるとかその他の公衆に対する利益、こういったものを考慮して行動しなければならないということにされてくるわけでございます。ただ、どちらかといいますと、この会社制度はドイツの固有の経緯に基づくものではないかというふうに考えられるところでございまして、他の諸外国では見られない制度でございます。
このように諸外国の制度はそれぞれ異なっておりますけれども、これはそれぞれの国の実情であるとか企業風土に基づきまして長年にわたって形成されてきたものであろうというふうに考えられるところでございまして、それぞれの制度がその国の実情に適合して機能しているのではないかというふうに思っておるところでございます。
我が国の株式会社は、申し上げるまでもなく株主総会におきまして取締役及び監査役を選任する、選任された取締役が取締役会を構成して、その中で代表取締役を選任する、重要事項を決定するとともに代表取締役の業務執行を監督していく、監査役は監査役で会計監査及び業務執行の監査を行う、こういうシステムになっているわけでございまして、我が国の制度は長年にわたって我が国の経済社会に根づいてきているのではないかと考えておるところでございまして、経営陣に対する複数のチェックシステムがあるという点で合理性を有するのではないかというふうに考えておるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115206X00519971125/44
-
045・林芳正
○林芳正君 今の我が国のシステムの一番根幹にありますのが株主総会であるわけでありまして、そこがなかなか機能しておらないというところに今回の商法の改正の問題があるわけでございますから、現状を是と、一〇〇%よろしいということではなくて、やはり株主の利益がどこかで侵されているということでありますが、その侵している人がじゃ株主だった場合はどうするかというのは、これは極めて難しい問題だ、こういうふうに思うわけでございます。
我が党がまとめたことに関しまして、法務省の中でも法制審議会商法部会の会社法小委員会というのがあるわけでございまして、そこで正式にお話があるかどうか私は存じておりませんけれども、その小委員会で一般論としてこの件についてどういう御意見を皆さんお持ちになっているのか、また今局長から御見解をいただきましたけれども、それを含めて法務省全体としてどういうお考えなのか。
また、これを考えていくときに、いわゆる商法学者の方とかいろんな学者の方の御意見とともに、現場でやはり経営をしておられる方、また会社の経営に参画しておられる方や一般のいろんな、先ほどステークホルダーというお話をしましたけれども、利害関係で現場で動いておられる方の意見もこれは大変に大事だ、こういうふうに思うわけでございます。そういう方々の意見をどうやって吸い上げていくのかということも大変に大事なことだと思いますが、こういうことをあわせまして、大臣もし御見解があればいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115206X00519971125/45
-
046・下稲葉耕吉
○国務大臣(下稲葉耕吉君) コーポレートガバナンスという言葉が最近はやっておるわけでございますが、どういうふうな中身だろうか。今、林委員からいろいろ詳しくお話があったわけでございますが、一般的にいいますと、会社はだれのものかというふうなことで、企業と株主の関係、特に企業による株主への利害関係の問題をあらわす言葉として使われている、これは一番狭い意味の。二番目には、これより多少広くなりまして、企業を健全に運営するためには会社の基本システムはいかにあるべきかというような意味で使われている、この辺が一般的だろうと思います。
より広い意味では、今おっしゃいましたようなステークホルダーという考え方で、株主、経営陣あるいは従業員、債権者、取引先等の企業のさまざまな利害関係者の間でどのように権限や責任を分担し、また企業が生み出す付加価値を配分していけばよいかというふうな意味で用いられる場合がある、こういうふうに理解いたしておりますが、一般的には、今申し上げました中では二番目の意味で広く使われているんではないか、こういうふうに思います。
そこで、会社制度でございますが、我が国の経済の根幹を支える制度でございますので、会社の運営の健全化を図るためには監視体制の整備は重要な問題だと思います。
そこで、商法におきましてそのような面が今までどういうふうに行われてきたかといいますと、昭和四十九年からもう三回監査制度の改正について当委員会で御議論いただいて成立しているわけでございまして、監査制度の充実ということで監査役の任期を一年から二年へ、あるいは商法の特例法の制定ということで大会社につき会計監査人制度を導入すると。あるいは資本金五億円以上等々の大会社、約九千社国内にあるわけでございますが、複数監査役あるいは常勤監査役の導入、あるいはまた監査役の任期の延長、さらにはまた平成五年には監査役の員数の増加、監査役会の創設、社外監査役の創設、これは大改正でございますけれども、いろいろ商法の改正をやってきて今日まで来ているわけでございます。
先ほど民事局長の答弁にもございましたが、この商法の規定というものをそれぞれの会社がフルに活用して使い切っているかどうか、活用しているかどうか、こういうふうな点についてはいささか問題もあるんじゃないだろうか。例えば、大会社については九千社あるわけですが、そういうふうな意味で、監査役、特に社外監査役に適任な人が少なくとも九千人必要なんですが、そういうふうな適任者の方々がおられるかどうか。しかも、優秀な方はお一人でもう何社かお引き受けなさっていると思うんですけれども、まずその辺の実態から、それから将来の方向をどういうふうにするか、そういうふうな問題等々も含めて、現在の商法の規定というふうなものが特に監視体制の整備という面でフルに活用されているかどうかという点から一つはフォローしなくちゃならない面があるんじゃないかと思います。
それと同時に、法務省といたしましては、現在これでいいのかどうか、今、林委員からお話がございましたような点も踏まえて、制度のより一層の改善というふうなことにもやはり踏み込んで積極的に検討をすべきではなかろうかということでございます。具体的には今お話がありましたようなことで、政府の法制審のそれぞれの部会で検討するとかいうふうなことを進めておりまして、新しい国際的な時代の流れの中でこの会社監視制度、体制というふうなものをどうしてやっていくか、これはもう常に真剣に取り組んでいかなければならない課題でございますし、そのように心がけてまいりたいと、このように思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115206X00519971125/46
-
047・林芳正
○林芳正君 御答弁ありがとうございました。
まさに、大臣御答弁の中でおっしゃられましたように、商法の規定を本当に使い切っているんだろうかということは我々も常々思うわけでございます。これはこのコーポレートガバナンスの問題に限らず一般的に言えることでございまして、大変にいい規定や制度をつくっても実際にそれを活用していけるかどうかということはなかなか難しい問題でありまして、そこの乖離をどうやって埋めていくのか、またその現状に合わせるということが果たして本当にいいことなのかということも含めまして、将来にわたって御検討をお願いしてまいりたいし、我々も考えてまいらなければいけない、こういうふうに思っておるところでございます。
それでは次に、これに関連しまして、株主代表訴訟というものを何年か前にやりやすくして、これで余りにも乱訴という面も出てきておるんではないかという議論もあるわけでございます。これも非常に総会屋の問題といろんなところで密接に関連をしてくるんではないか、こういうふうに思うわけでございますが、新しいコーポレートガバナンスを考えていく上でも避けては通れない問題だ、こういうふうに思っておるわけでございまして、幾つか残りの時間でお聞きをしたいわけでございます。
先ほど大臣の御答弁でも、なかなかこの商法の規定が生かされ切っていないということでありましたが、それはさておきまして、監査役会に訴訟判断権といったものを認めてもいいんではないかという議論があるわけでございます。そのために監査役会というのがそもそもあるんではないか、こういうふうに思うわけでございますけれども、この点についてはいかがでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115206X00519971125/47
-
048・森脇勝
○政府委員(森脇勝君) 現行法上、取締役が会社に対して責任を負う場合、会社は当然当該取締役に対して訴訟提起をすることができるわけですが、その訴訟判断権はだれが持つかということでございますが、現行法では監査役がこれを判断するということにされておるわけでございます。
したがいまして、取締役の責任を追及しようとする株主は、まず監査役に対して取締役責任追及の訴えを提起すべきことを請求するという規定になっておりまして、この請求を受けました監査役は、この請求がされた日から三十日以内に訴えを提起するかどうかを判断して、みずから訴えを提起すべしという場合には、会社の名で監査役が代表者となって当該取締役に訴訟提起をする。訴えを提起しないという場合には、株主は訴えを提起するわけでございますが、この場合も会社に対して監査役を代表者として訴えを提起する、こういう形になるわけでございまして、言ってみれば監査役に取締役の責任を追及する訴えの訴訟判断権が認められているというのが現行法の規定ではないかというふうに考えておるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115206X00519971125/48
-
049・林芳正
○林芳正君 それ以外にもいろんなことがあるわけでございますが、時間の都合上まとめてお聞きをしたいと思います。
この訴訟の原因となった行為、これがない場合に、後から株主になってそのことについて訴訟をやるぞ、こういうふうに言うケースというのが、これはもうほとんどいわゆる総会屋に近いのではないかと私は思うわけでございますが、そういった観点から、たしか空港の判決だったと思いますけれども、危険接近の法理というのをたしか判例で私昔習った記憶があるわけでございますが、後から空港の近くに行く、騒音があるということを知りつつ移住した人については原告適格についてどうだという議論がたしかあったような気がするんです。
これと同じようなことで、その原因があったときにその時点で株主でなかった人については、そのことについてはやはり株主訴訟の原告適格を認めるべきでないのではないか、その主たる原因があったときの株主に原告適格を限定すべきではないか、こう思うわけですが、それについていかがかということ。それから取締役が訴えられたときに、やはり会社の訴訟に対する補助参加を認めてやるべきではないか、こういうふうに昨今の状況を見ると思うわけですが、最後にこの二問をお聞きしまして私の質問を終わりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115206X00519971125/49
-
050・森脇勝
○政府委員(森脇勝君) 第一点目の、株主代表訴訟についての原告適格について制約をするべきではないかという点でございまして、今、議員御指摘のような事例を考えますと、会社に損害が生じていることを知りつつ株主になってくるわけですから、その者に対しては制限してもいいんじゃないかという御議論は十分理由のあるところであろうというふうに考えております。
ただ、考え方といたしましては、会社が現に損害をこうむっている、しかもその回復が図られていないという時点では、その時点での株主全員に代表訴訟を認めてよいのではないかという考え方も一方にはございます。
それから、今、委員御指摘の事例でもわかるんですが、取締役が行為をしたときによって切っていいのかどうか、それ以前の株主という規定の仕方をしていいのかどうかという点も実は問題がございまして、例えば違法行為が長期間継続している、その継続中に取得した株主はどうなのか、あるいは行為は終わっているけれども損害が発生していない時点で新しい株主になった人はどうするか、あるいは行為は行われ損害も生じているけれどもそのことが公になっていないという時点で取得した者はどうするのかといったもろもろの問題がございまして、この点については私どもももう少し緻密に検討していかなければならない問題ではないかというふうに考えております。
次に、会社が代表訴訟について取締役等の補助参加ができるようにすべきではないかという点でございますが、これは委員御承知のとおり、民事訴訟法上訴訟の結果について利害関係を有する第三者は補助参加できるということになっておりますので、この規定によって訴訟の結果について利害関係を有すると言えるかどうかという当てはめの問題で解決できるのではないかというふうに考えておりまして、現に代表訴訟について会社が取締役側に補助参加することを認めた実例もあるようでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115206X00519971125/50
-
051・林芳正
○林芳正君 ありがとうございました。以上で終わらせていただきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115206X00519971125/51
-
052・円より子
○円より子君 平成会の円より子です。
きょう午前十時から東京地裁で、今回の一連の利益供与事件のトップを切る事件の初公判が開かれておりますけれども、これは野村証券から総会屋の小池隆一被告に対する計約三億七千万円の利益供与が過去に前例のない額に上った点に加えまして、総会屋への利益供与の手法に初めて株取引市場を悪用したことを重視してこの事件の特異性、悪質性を際立たせることと、また検察側はこの株取引という本業を悪用して総会屋に巨額の利益を供与し証券業界の信頼を損なわせた責任を厳しく追及するものだと思っております。
今回のような野村、山一、日興、大和の四大証券と第一勧業銀行による総会屋への利益供与事件、こういったものを見ておりますと、この事件が日本経済を揺さぶり続けているわけですけれども、まず、なぜこういったトップと言われる企業がたった一人の総会屋にそこまでむしばまれるようなことが起きたのか、もしこの件について見解をお持ちでしたら法務大臣にお聞きしたいと思うんです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115206X00519971125/52
-
053・下稲葉耕吉
○国務大臣(下稲葉耕吉君) 御指摘のように、野村証券に対する第一回公判がきょう行われているようでございますが、今入りましたメモによりますと、被告人の方は事実を認めているというふうに伺っております。
それはそれといたしまして、いわゆる会社側をめぐる事案につきましては、昭和五十六年、施行は翌年でございましたが、御承知のように商法を改正いたしましてから現在まで利益供与・受供与罪によりまして二百名以上が起訴されております。
それから一方、総会屋の数は先ほど警察庁からお話がございましたように五十六年以降減少いたしておるわけでございまして、そういうふうな意味ではある程度の抑止効果はあったんじゃないかというふうに思われます。
しかしながら、今回の一連の事件に見られますように、今なお総会屋の活動が非常に活発であり、根絶されていないということは事実でございまして、やはりこの機会に何としてでもあらゆる努力をしてこの根絶を図らなければならない、このように思っております。そこで今回、罰則強化というふうなことで、抑止力を強化いたしたいというようなことでいろいろ法案をお願いいたしているわけでございます。
しかしながら、効果がなかったんじゃないかと。ある程度の私は抑止力的な効果はあったと思いますが、十分でなかったと。その原因は、先ほど来申し上げておりますように、やはり企業の体質にあるんじゃなかろうか、基本的な体質にあるんじゃなかろうか。昨日の山一証券の社長の記者会見を私ずっと聞いていたんですが、公の席ですからコメントはやめますけれども、私自身としては、やはりああいうふうな御認識だったらああいうふうな事案が起きるのもしようがないなという個人的な認識を持ったぐらいに、なかなか認識としては甘いところがあったんじゃないだろうかというふうなこともこれは個人的に感じざるを得ません。
そういうふうなことで、何とか体質を改善せぬといかぬということで、会社幹部の意識改革、これはどうしても必要である。私どもあらゆる点でこの問題を取り上げ訴えてまいりたい。片や法律の改正、罰則の強化についてはぜひひとつお願いいたしたいということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115206X00519971125/53
-
054・円より子
○円より子君 確かに大臣がおっしゃったように、抑止力というのは多分改正で、罰則強化であるのかもしれませんけれども、総会屋というのはこれまでも法の網をすり抜けるさまざまな金もうけの手段を考え出すことにはたけておりまして、摘発する捜査当局とのイタチごっこを続けてきたと思うんです。
今後、この罰則の強化によって逆に総会屋の手口がさらに悪質に巧妙化していくということはないんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115206X00519971125/54
-
055・下稲葉耕吉
○国務大臣(下稲葉耕吉君) 御指摘のように、知恵の戦いになるかもしれません。しかし、それからいろいろな話を伺っておるわけでございますけれども、いわゆる会社側の人たちに対する警察あるいは治安当局のガードが要るんじゃないだろうかというふうなことで、結果として総会屋との癒着が続くんだというふうな御指摘も私どもの耳に入ります。警察もお話がございましたように総力を挙げて体制をしいているわけでございますし、だからといって総会屋が根絶されなくてもいいというわけには決していかないだろうと思います。
私は、こういうふうな問題を解決しなければ、国際化がどんどん進んでおりますこの世界の中において日本は立ち行っていけるのか、あすの日本があるのかどうかということすら危惧しているぐらいなことでございますので、その辺のところを十分訴えながらも、私どもは私どもの仕事を最善を尽くしてやっていく、総力を挙げてやっていくということではなかろうかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115206X00519971125/55
-
056・円より子
○円より子君 大臣が総力を挙げて総会屋の根絶に力を尽くしていただくという御決意を伺いましたけれども、確かに罰則強化は一つの大きな抑止力になると思います。しかし、この不法の根を断ち切るためには別の要件が必要なのではないかと思うんです。
大蔵省にお聞きしたいんですけれども、大蔵省は今回の証券会社や銀行等の監督官庁であるわけですけれども、この一連の総会屋への利益供与についての事件についてどのように考えていらっしゃるか、どうすれば根絶ができるのか、また監督官庁として行政責任等があったのではないかという件について伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115206X00519971125/56
-
057・小手川大助
○説明員(小手川大助君) 最初に、今回の一連の事件の原因ということですが、私どもも基本的に大きな点としては二つあるんではないかと思っております。
第一には、やはり企業のトップも含めましたところの法令遵守の意識、これが不徹底ではなかったかということが第一でございます。それから第二には、会社の内部におきましてそのような問題が生じたことについての管理体制、これがやはり不徹底ではなかったかと思っております。
それらの認識のもとに、先般、野村証券、それから第一勧業銀行に対しまして厳正な行政処分を行ったところでございますが、今後、基本的には、不正があればその報いを受けるといいますか、非常に厳正な処分をやっていくということで、いわゆるグローバル化していく中で、日本も各国と同様に事前予防的な行政から事後監視的な行政に移っていく必要があるんではないかというふうに思っておりまして、その観点からも、今回の罰則の強化についてはよろしくお願いしたいと思っているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115206X00519971125/57
-
058・円より子
○円より子君 確かにこういった利益供与事件等を起こしますと顧客離れに拍車がかかりまして、罰則や罰金、懲役、そういったことじゃなくても、今回の山一のように、これだけが原因ではありませんけれども、自主廃業に追い込まれるということもあり得るわけで、不祥事件を起こすことはやっぱり割に合わないというふうにだんだん会社がなっていけば企業の体質も変わっていくのかなと思います。
今二番目に企業内の監視体制のことを大蔵省はおっしゃいましたけれども、上場会社というのは証券会社を通じて株を売買し、また有価証券報告書を大蔵省に提出しておりますね。これには公認会計士による監査、社外監査役による監査、通常の常勤監査役による監査がありますけれども、こういったものが有効に機能していなかったのではないかと思いますが、いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115206X00519971125/58
-
059・三國谷勝範
○説明員(三國谷勝範君) 先生御指摘のとおり、ディスクロージャーは大変重要な課題と認識しております。
私どもといたしましては、証券取引法の規定に基づきまして開示手続や開示内容に不備な点がなかったか、あるいは新たに作成したディスクロージャーの基準と合致した開示が行われているかなどにつきまして確認し、開示水準の維持向上を図ることを基本とした審査を行っているところでございます。
有価証券報告書等におきます財務諸表につきましては、まずはやはり企業の責任、そしてまた企業の内部チェック、こういったもとに作成されるという要素もございますが、また一方で、公認会計士または監査法人が公正、妥当と認められております会計基準に基づき適正に会計処理されているかどうかについて監査を行っているところでございます。また、犯則事件等にかかわる問題がございますれば証券取引等監視委員会の犯則調査の対象となっているところでございますが、いずれにいたしましても、関係者一体となりまして、開示行政上の目的から開示水準の維持向上を図っていくことが重要なことと認識しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115206X00519971125/59
-
060・円より子
○円より子君 今回の総会屋への利益供与のことだけじゃなくて、山一が自主廃業に追い込まれた背景に簿外債務が発覚しておりますけれども、有価証券報告書等ではこういった簿外債務のことはわからなかったんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115206X00519971125/60
-
061・三國谷勝範
○説明員(三國谷勝範君) 今回の事案につきましては、これから実態がいろいろ解明されていく事柄でございます。有価証券報告書に記載されてなかったところがございますが、本日、臨時報告書が提出されておりまして、新たな債務の内容等が開示されているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115206X00519971125/61
-
062・円より子
○円より子君 簿外債務の発生時期というのはいつごろなんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115206X00519971125/62
-
063・小手川大助
○説明員(小手川大助君) 会社側の発表によりますところによれば、平成三年というように聞いております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115206X00519971125/63
-
064・円より子
○円より子君 かなり以前から簿外債務で飛ばしをやっているというようなことがうわさされておりましたけれども、大蔵省は調べなかったんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115206X00519971125/64
-
065・内村広志
○説明員(内村広志君) 山一証券に対します検査は、最近で見ますと、平成五年二月、平成七年十一月というふうにやっておるところでございます。
検査におきましては、対象金融機関等から提出された資料等に基づき金融機関の財務、経営の健全性について実態把握を行ってきているところでございますが、本件につきましては、このような提出された資料等に基づくチェックでは把握できなかったものでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115206X00519971125/65
-
066・円より子
○円より子君 それでは、今までの大蔵省の検査や日銀考査では全く簿外取引を把握できなかったということですと、考査、検査に何か問題があるんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115206X00519971125/66
-
067・内村広志
○説明員(内村広志君) 金融機関の検査に当たりましては、最近の金融機関の経営状況等を踏まえ、より厳正で実効性のある検査を実施すべく、法令遵守体制等にも重点を置きつつ効果的、適切な実態把握に努めていきたいというふうに思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115206X00519971125/67
-
068・円より子
○円より子君 何か全く効果的ではない検査しかなさっていないと思えるんですが、この考査体制の見直しは考えていらっしゃるんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115206X00519971125/68
-
069・内村広志
○説明員(内村広志君) 今申しましたように、効果的、適切な実態把握に努めてまいる所存でございますが、その具体的な方策といたしまして、検査官に対しましては、法令遵守体制の実態把握をする上で具体的な留意点を指示いたしましたり、また問題を見つけ出しました場合は告発を含め厳正な対応を図ることを徹底しております。さらに、検査対象となります金融機関等の選定におきましては、機械的な検査周期、間隔のみに必ずしもとらわれることなく、抜き打ち検査等としての実効性の確保に留意して、機動的、重点的に対処しております。さらに、主任検査官に対する研修も抜本的に見直しておりまして、従来の研修期間を大幅に拡充しておるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115206X00519971125/69
-
070・円より子
○円より子君 大変ずさんな検査しかやっていらっしゃらなかったとしか思えないんですが、もしちゃんと検査していらしたなら知っていたということになりますけれども、知っていて隠されたということはないんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115206X00519971125/70
-
071・内村広志
○説明員(内村広志君) 証券会社に対します検査につきましては、私ども官房金融検査部におきましては、主に財務の健全性の観点から経営の健全性を見てまいっておるところでございます。一方、証券等監視委員会につきましては、証券取引法に基づきますルールの違反等がないかというところから検査が行われているところでございます。このような両輪相まって検査の中身をきちっとしているというふうに御理解いただければというふうに思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115206X00519971125/71
-
072・円より子
○円より子君 知っていらしたのか隠されたのかという点についてはいかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115206X00519971125/72
-
073・内村広志
○説明員(内村広志君) 先ほど申しましたように、私どもの金融検査部の検査におきましては、提出された資料等から簿外債務の発見はできなかったということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115206X00519971125/73
-
074・円より子
○円より子君 法務省にお尋ねします。
この簿外債務ができた理由というのは飛ばしというふうに言われておりますが、飛ばしというのは犯罪になるんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115206X00519971125/74
-
075・原田明夫
○政府委員(原田明夫君) 具体的な事実関係によってさまざまな事態が考慮されると思いますが、現在、いわゆる飛ばしということも報ぜられ、また簿外の負債の問題も報ぜられております。それらにつきまして、大蔵当局においてこれから厳正にその実態調査を行いまして、その経過、現在のような状況に至った背景について真剣に調査したいというふうに私ども承っております。そういう状況に照らしまして、具体的に犯罪が成立するのかどうかということにつきまして今後検討が進められるものというふうに考えております。
具体的に、ただいまの状況でこういう場合にあったらこういう罪は成立するということにつきまして詳細をお答えいたしますことは、これまた調査それ自体に影響を与えることになりますので、大変恐縮でございますが差し控えさせていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115206X00519971125/75
-
076・円より子
○円より子君 一般論でいいんですけれども、有価証券報告書等に簿外で隠してしまって大蔵省にきちんと提出していないというようなことは犯罪にならないのか、罪にならないのか。それから、その飛ばしというのも、一般論でいいんですが、合法的なものなのかお答えいただけますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115206X00519971125/76
-
077・原田明夫
○政府委員(原田明夫君) ただいま御指摘の、有価証券報告書に虚偽記載が行われたという場合には証券取引法所定の犯罪が成立するということは、一般論として申し上げることはできると思います。また、飛ばしということに、これは実態はどういうことかということにかかわってくるわけでございますが、それぞれ商法あるいは証券取引業の関連条項に違反する行為が認められればそれぞれの罪が成立するということになるだろうと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115206X00519971125/77
-
078・円より子
○円より子君 飛ばしというのは、九一年の証券スキャンダルの前は本当にいろんなところで行われていたということなんです。それで、右肩上がりの経済のときには何とかそれが外に出ないで済んだということですけれども、その証券スキャンダルのときに、飛ばしは犯罪であってそれはしてはいけないことだという法律をつくられた、そのときの大蔵大臣というのは、大蔵省の方にお聞きしますが、どなたでしたか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115206X00519971125/78
-
079・小手川大助
○説明員(小手川大助君) これはまさに平成四年の一月一日にいわゆる損失補てんに関する法制度の整備が行われました。そのときの大蔵大臣は、現橋本総理大臣でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115206X00519971125/79
-
080・円より子
○円より子君 その橋本総理が当時大蔵大臣を務めていらして、この飛ばしというものを損失補てんという形の一つとして犯罪として法律をつくられたわけですけれども、今回の山一証券の簿外債務等があって自主廃業するという話を、総理は何か行政省庁の数合わせをしていらして御存じなかったということなんですけれども、大蔵省はこういった大事なことは総理にはお知らせにならないんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115206X00519971125/80
-
081・小手川大助
○説明員(小手川大助君) ただいま御指摘のございました総理の御発言について、私ども具体的にどのような場面でおっしゃられたかは承知しておりませんが、重要な案件につきましては適時適切に私どもの方から総理には連絡しているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115206X00519971125/81
-
082・円より子
○円より子君 としましたら、きちんと報告が行っていたということなんですね。それだったら、まだ危機管理ができていらっしゃるのかとは思いますけれども。
そうすると、なぜ聞いていないとかというふうに逃げられるのか、国民はちょっと理解できないなという気がするんです。今カナダの方に行っていらっしゃいますけれども、やはり山一のことについても話題に上ると思うんですけれども、私たちはどういう事情かわかりませんけれども、総理が知らなかったということは大変国民としては皆さん理解できかねることではないかと思います。
それで、大蔵省が、そういった金融のことといいますのは日々の情勢を知らなければ危機管理というか危機意識が鈍くなってしまうものですから当然日々刻々知らせていらっしゃるかと思うんですけれども、この簿外債務について当日知ったということのようです。証券局長が言っていらっしゃいますけれども、富士銀行は十月六日から知っていたということなんですけれども、本当に大蔵省は、十月六日の富士銀行が知っていた時点、またその以前に御存じなかったんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115206X00519971125/82
-
083・小手川大助
○説明員(小手川大助君) 昨日の記者会見におきまして、大蔵省の方に山一証券から報告がございましたのは十一月十七日ということで大臣の方から答弁されているところでございます。
十月六日の件については、私ども全く承知しておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115206X00519971125/83
-
084・円より子
○円より子君 大和銀行のときに情報開示が大変おくれて国際的な信用を失ったことは、もう皆様周知のとおりでございますけれども、今回ももし大蔵省が情報開示を怠っていたとしたら、それが逆に投資家の不安をあおったのではないかとも言われておりますけれども、この責任はどうとられるんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115206X00519971125/84
-
085・小手川大助
○説明員(小手川大助君) 十一月十七日には口頭で会社側から報告を受けましたが、いわゆる数字等につきまして会社側の方でもまだこれから精査する必要があるということでございました。
それから、その同日に私どものほかに証券取引等監視委員会の方にも報告が行われております。
今後につきましては、関係当局において、本件について厳正な検査、それからそれに対応するところの処分が行われていくのではないかというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115206X00519971125/85
-
086・円より子
○円より子君 監査、検査のことなんですけれども、大蔵省のOBが、例えばこの間やはりつぶれました北海道拓殖銀行の方にも、またさまざまな銀行や証券会社に天下っていらっしゃいますけれども、検査される側とする側とがなれ合いになってしまっているのではないかという気がするんです。それが一番のもしかしたら今回の大もとの原因ではないかという気がします。
天下りについてはやめた方がいいかと思うんですが、そういった議論はないんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115206X00519971125/86
-
087・内藤純一
○説明員(内藤純一君) お答えいたします。
大蔵省の場合は、金融機関等、予算、経理、金融等の知識、経験を必要とする職場に請われて就職するというケースが比較的多うございますが、これは、大蔵省にそうした専門的な知識、経験を有する者がいるということであろうというふうに考えております。
いずれにいたしましても、大蔵省に在籍した者が就職することによって行政がゆがめられてはならないということは当然のことでございまして、大蔵省といたしましては常に厳正かつ公正な行政を行っているというところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115206X00519971125/87
-
088・円より子
○円より子君 しかし、この間、たしかこれは七月二十九日でしたか、第一勧銀から接待を受けた当時の検査官二人を戒告処分に大蔵省がしていらっしゃいますけれども、総会屋の利益供与の延長線上にも、大蔵省の検査担当幹部や同省OBの日本道路公団理事らが複数の証券会社、銀行から接待を受けたことが判明しておりますし、やはり天下りを受け入れる側も、検査や考査で少し目こぼしをしてもらいたいという意識が働いてそうなっているような気がするんです。
いっそ天下りはやめられた方がいいかと思うんですが、いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115206X00519971125/88
-
089・内藤純一
○説明員(内藤純一君) 先ほどお答えいたしましたことと若干重複いたしますが、金融機関への再就職につきましては、従前より国家公務員法の規定等に従いまして適正に行われてきているものでございます。
もとより、大蔵省に在籍した者が金融機関に再就職することによりまして、金融行政そのものがゆがめられてしまうというようなことはあってはならないということでございまして、そのようなことは絶対ないというふうに私ども確信をしております。
いずれにいたしましても、金融機関への再就職につきましては、公務の公正な執行の確保という国家公務員法上の要請と憲法上の職業選択の自由といった基本的人権との調和を図りながら、定年年齢のあり方を含めた公務員制度全体の議論の中で考えていかれるべき問題であろうというふうに考えておるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115206X00519971125/89
-
090・円より子
○円より子君 確かに職業選択の自由というのがありますけれども、企業の体質もさることながら、そういった天下り体制をまず考えていくべきではないかということを指摘しておきます。
それから、第一勧銀問題では銀行法適用による告発が初めて行われましたけれども、銀行法二十七条の業務停止処分も初めてで、実は今までもこういったことはしなきゃいけないことが随分あったのではないかと思います。大蔵省が告発義務を怠ってきたのではないかと思うんですが、監督当局に任務の過怠があったときは取り締まる法改正も今回やるべきではなかったかと思うんですが、法務省、いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115206X00519971125/90
-
091・原田明夫
○政府委員(原田明夫君) 告発の一般的なあり方ということでございますが、法律違反の事実を知った場合に一般的には公務員には告発する義務がございます。その中で、実際問題として行政目的を達するためにどのような措置をとっていく必要があるかという件に関しましては、それぞれの行政を取り扱う公務所といいますか、官庁におきまして勘案しながらやるべきものというふうに考えられますので、一般的に犯罪があったから直ちに告発することによってすべておしまいというわけには恐らくまいらない面もあろうかと思います。
ただ、一般的にただいまの御質問について考えますと、先ほど御答弁がございましたように、従来はさまざまなたくさん行政法規がある中でそういう法律違反が行われないようにさまざまな形で事前にチェックしていくと申しますか、場合によってはそういう行政指導的なことによって行政目的を達していくという手法がとられてきた面が確かに多かっただろうと思います。
しかしながら、そういう面は多分に別の観点から見ますと規制ということになっていくわけでございまして、今後そういうことをできるだけ廃止して規制を緩和していく、そして物事についてはそれぞれの責任原理で行っていこうということが意識されるようになりました。そのことが、現在行われております行政改革なり、あるいは市場原理に基づく物事の処理の仕方ということにつながっていくものだろうと。そして、そのことが広くは国際的な、世界的な水準に基づくさまざまな処理ということにつながっていくものだというふうに思います。これは私ども法執行に当たる立場の行政を所管する法務当局といたしましても同じような感を持ちます。
そういうことからいたしますと、今後はそのような行政指導的なあるいは事前の規制というものを、法違反があった場合にはきちんと対応させていただくと。そのことが透明性のある、そして国民一般から支持が得られるような物事の解決につながっていく、またそれが逆に言えばそれぞれの業種の仕事をやっておられる方々、一般国民の立場から見てもやはり自覚につながり、そして全体としての透明性のある行政、そしてそれぞれの業務運営につながっていくものだろうというふうに考えます。
そういうことからいたしますと、事後の規制と言ったらおかしいんですが、法執行の可能性をきちんと追求して処理をしていくということの重要性をまさに実感させられているというのが、ただいまの御論議を聞かせていただいた私どもの立場だろうと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115206X00519971125/91
-
092・円より子
○円より子君 今回の山一の自主廃業、これはまだ債務超過かどうかもわかりませんし、もっとたくさんの簿外債務が出てくる可能性もありますから自主廃業すらできなくなる可能性もあるかと思うんですけれども、いずれにしても飛ばしや総会屋への利益供与事件など、言ってみれば自業自得と言える側面があるかと思います。しかし、七千五百人もの社員の方たちのこれからの将来、雇用が本当に大変な厳しいときにどういう生活になるのかということ等を考えますと、ただ山一だけを責めるわけにもいかないという気もしますし、それよりもこの飛ばしや総会屋の背景にあるのは、私はやっぱり不良債権問題を放置したからではないかと思うんです。
金融機関の体力が落ちているときに特別減税の廃止をしたり、それから公共事業の削減もしておりますし、また早期是正措置やさまざまなことが緊縮財政に走ったことで景気回復にとどめを刺してしまったということがあると思うんです。大蔵省や政府の責任は大変重大だと思いますけれども、今回山一に対して日銀特融が発動されましたが、一九六五年にも山一特融というのがございました。このときは、その後イザナギ景気がありまして四年ぐらいのところで日銀特融を返却できたわけですけれども、今回のような不況の状況の中で、また全く右肩上がりの経済がもう期待できないような状況で、この日銀特融が返済されるという確約があるんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115206X00519971125/92
-
093・小手川大助
○説明員(小手川大助君) 私ども、日銀特融につきましてはここの場でお答えする立場にはないと思っておりますが、一点だけ御指摘申し上げたいのは、今回山一証券の方で自主廃業という判断をするに立ち至った一つの大きな理由としまして、先ほど先生の御指摘のあった簿外債務があったというふうに私ども認識しておりますが、その時期については、先ほど申し上げましたように、会社側の発表によれば平成三年ということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115206X00519971125/93
-
094・円より子
○円より子君 日銀特融は一種の広い意味での公的資金の導入ですけれども、今、日銀が来ていらっしゃらないので私の意見として述べさせていただきますけれども、この日本の市場は、日本の株を売り円を売って日銀の信用力と大蔵省の市場対応能力に疑問を投げかけているというふうに評されています。日銀の資本金というのは名前だけの過小資本の株式会社でして、日銀株も市場で最近大変暴落しております。配当も名前だけで、資本剰余金の蓄積も許されず、バブル期の好収益時に大蔵省に巨額の税として徴収されて、九七年の三期は利益もなく納税もできない現状となっているわけです。
現在、日銀の外貨準備は二千億ドル、二十兆円ですけれども、既に円高評価損が十兆円、これは対大蔵の公債として生じておりまして、信用力を約三十兆円程度とみなしましても、民間の不良債権が三十から百兆円、政府の不良債権が約百兆円と対比しますと、日本の金融ストックの劣化が甚だしくて、海外から円売りの投機が韓国、香港、タイなどのように襲ってきかねないと言わざるを得ない状況です。
現在の大蔵省主計局を中心とする発想で、とかく財政バランスと健全財政で政策不況の緊縮を貫くというこの方針は、戦前の理財局が台湾銀行や朝鮮銀行、満州銀行をつくって各国の通貨と信用創造に腐心したのと全く著しく離れてきていて、通貨や金融ストックへの理解と、金融市場が海外投機の暴力を秘めた危険なグローバル自由市場であることへの認識がどうも十分ではないように見受けられるわけです。
山一証券への日銀特融で、銀行の中の銀行である日銀が短期資金の調整という本来の日銀の役割を踏み出して、銀行でない証券会社に返ってこないお金を長期に貸すという日銀特融をもし歯どめなく乱発するとすれば、日銀の経営体質に海外が疑念を持つことは明らかですし、円通貨に対する国際的投機を呼んで、金融システム危機と同時発生的に円売りを招くことが懸念されるのですけれども、今後大蔵、日銀、政府も即刻抜本的な政策決意を内外に解明する必要があると考えられるんです。
きょうは商法の改正ですけれども、その奥にある日本の厳しい経済状況を兼ねて、ぜひとも政府も大蔵省も日銀も発想の転換をして、日本が高齢・少子社会をきちんと維持していけるような状況にいち早く持っていってほしいと思うと同時に、それにはやはり企業の情報開示ももちろん大事なんですけれども、行政そのものが情報開示をしなくては企業もやはり情報開示などしないのではないかということが考えられます。
公的資金の導入に当たっては、責任の追及とそれから情報開示というのがもう絶対的に必要なものですので、このあたりをぜひとも法務省としてもしっかりチェックしていっていただきたいと思いますが、最後に大臣の決意をお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115206X00519971125/94
-
095・下稲葉耕吉
○国務大臣(下稲葉耕吉君) 円委員からいろいろ御教示いただきました。大変厳しい情勢でございます。
実はきょうの閣議でもその問題を議論いたしまして、七千五百名の山一の方々のお話も出ましたが、それに関連する中小企業の方々もたくさんいらっしゃるのじゃないかと思います。政府としては、総力を挙げてあらゆる分野でこの問題に対処しようというふうなことを先ほど申し合わせたばかりでございまして、私どももそのような立場からひとつ最大の努力を法務省は法務省としてやってまいりたいと、このように思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115206X00519971125/95
-
096・円より子
○円より子君 ありがとうございました。終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115206X00519971125/96
-
097・風間昶
○委員長(風間昶君) 午前の質疑はこの程度にとどめ、午後一時十分まで休憩いたします。
午後零時十二分休憩
—————・—————
午後一時十分開会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115206X00519971125/97
-
098・風間昶
○委員長(風間昶君) ただいまから法務委員会を再開いたします。
休憩前に引き続き、商法及び株式会社の監査等に関する商法の特例に関する法律の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を行います。
質疑のある方は順次御発言願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115206X00519971125/98
-
099・大森礼子
○大森礼子君 平成会の大森礼子です。質問させていただきます。
ことしの三月に味の素がいわゆる総会屋事件で摘発されてから次々と四大証券を含んで一流企業の摘発が続いたわけなんですけれども、十一月二十四日までに摘発されたケースとして検察庁の方が摘発したものは、企業関係者、逮捕者が三十六名、そのうち二十九名が起訴されているとされています。総会屋側、逮捕者三人で起訴は一人、小池被告人ですね。それから、警視庁の方が摘発したものは三菱自工など三社で、逮捕者が企業側が六名、そのうち三名が起訴されている。それから、総会屋は四名逮捕されて起訴が二人と、こういう状況であるというふうに新聞報道に書いてありました。
そこでお尋ねするのですが、既に起訴された部分についてこの起訴罪名というのはどういうふうな内訳になっておりますでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115206X00519971125/99
-
100・原田明夫
○政府委員(原田明夫君) 起訴罪名でございますが、いずれも商法四百九十七条の利益供与あるいは受供与罪と、それから利益の補てんに関する証券取引法違反が含まれているものもございます。件数ごとについてただいますぐ計算して、後ほどお答えしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115206X00519971125/100
-
101・大森礼子
○大森礼子君 商法違反、証券取引法違反ということで、いわゆる商法の特別背任罪では起訴されていないということになると思うんです。
それで、新聞などでもいろんな方が意見を言っておられるんですが、その中に、利益を供与した会社側は特別背任、これは懲役七年以下なんですが、これで摘発できたのではないかと、刑事罰の軽い利益供与、現行法ですと六月以下になりますので、これで処理しようとする当局の態度は理解しがたい、こういう批判もあるわけなんです。
もちろんどのような事案につきましても証拠との関係でその構成要件に該当するかどうか判断して、いかなる罪名で起訴するかということを決定するわけなんですけれども、ただ商法四百八十六条の特別背任の構成要件を見ましても、「取締役等」ですが、こういう人が「自己若ハ第三者ヲ利シ」と、あるいは「会社ヲ害センコトヲ図リテ其ノ任務ニ背キ」と、そして「会社ニ財産上ノ損害ヲ加ヘタルトキハ」成立すると、こういう構成要件になっております。それで、総会屋に利益を与えたわけだから、「第三者ヲ利シ」には当たるんじゃないか。あるいはこの利益供与ということが法律で禁止されているわけだから、その任務に違反しとなるんではないか。そうすると、当然会社にも財産上の損害を与えているんじゃないかというふうに思われるんです。
そこで、これらの一連の事件について特別背任罪で起訴できなかったということは、これは証拠上どういうところに難点があったのか教えていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115206X00519971125/101
-
102・原田明夫
○政府委員(原田明夫君) 御指摘のいわゆる総会屋をめぐる事件につきまして、商法違反あるいは証券取引法違反以外に、より基本的に特別背任罪で立件処理できなかったのかとお尋ねで、確かにその面は重要な問題であろうと思います。
私どもといたしましては、検察官といたしましては、与えられた状況の中で最善を尽くして事実関係を確定した上で適条を図っていくということで、できるだけその実態に即した処理をしようと努力したのだと思いますが、ただいま御指摘のように結果的に特別背任罪での立件ができなかったということは、その具体的な証拠の中身に関しますので、それ自体について直接御答弁申し上げることは私どもとして差し控えさせていただきたいのですが、一般論ということでただいまの御指摘の点についてお答え申し上げることをお許しいただけますれば、ただいまも委員御指摘のとおり、特別背任罪の構成要件中、会社の役員が会社に財産上の損害を加えるということでそれが要件の一つになるわけです。
それ以外に、自己もしくは第三者を利する、または会社を害することを図るといういわば目的犯の構造をとっていることから、その当該関与者の意図と申しますかその意思を証拠上確定していくということにさまざまな難しい点があるということが一つ。
それから、その行為の背景としてその任務に背いた、これは背任罪の構成要件の核心に触れるところでございますが、その任務に背いたというところをどう解釈し、それを当該役職員または従業員を含めて会社との関係でその任務に背いたのだということを証拠上立証することはなかなか難しい面があると一般的には考えられますが、証拠上そのような事実を認定するに足りる確定ができなかったというふうに考えられると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115206X00519971125/102
-
103・大森礼子
○大森礼子君 今回の法改正によって法定刑を引き上げてもまだ罰則として軽いんじゃないか、こういう批判もあるわけです。
その場合に、いやいやこういうほかの新しい犯罪も新設しましたよと、それから場合によったら特別背任罪にもなりますよ、場合によったら恐喝罪になる場合もありますよ、こういう御説明がされるわけなんですが、ただ、一般論としても結構なんですが、こういう利益供与事件、今回は証拠上のことで特別背任罪では起訴できなかったけれども、一般論として見た場合、こういう利益供与、受供与の事案が特別背任罪の成立に結びつくということも十分あるというふうに考えてよろしいわけですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115206X00519971125/103
-
104・原田明夫
○政府委員(原田明夫君) その点は委員御指摘のとおりお考えくださってよろしいと私ども考えます。
構成要件の立証上いろいろ問題点がございますけれども、いわゆる総会屋等に対しまして会社の計算において利益供与をしたような場合に、商法上の利益供与罪とそれから特別背任罪がともに成立するという場合はあり得るというふうに考えておりまして、そこはやはり証拠収集上の問題点、擬律の問題点でございますので、検察官としては最終的に証拠の収集に当たりましても、またそれの適条に当たりましても、最善の努力をこれから尽くしていかなければならないというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115206X00519971125/104
-
105・大森礼子
○大森礼子君 はい、わかりました。
それから、きょう午前中の質問で清水委員の方から法定刑の罰金刑にしてもやっぱり軽過ぎるんじゃないかという御指摘がございました。その中で、商法の、会社に対してその利益を返還しなくてはいけない、こういう規定もありますという御説明とともに、刑法上場合によったら没収とか追徴とかいう方途もあります、こういうお答えだったと思うんです。
それで、これも具体的に通告していなかったんですけれども、この質問でちょっと次の質問を思い立ったわけなんです。これまでの摘発事例、裁判事例の中で付加刑の没収、追徴がつけられたような事案がたくさんございますでしょうか。御記憶にあればお答えいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115206X00519971125/105
-
106・原田明夫
○政府委員(原田明夫君) 私の記憶によりますると、これまでの適条、摘発した事例関係で少なくとも数件はあったことを記憶しております。
なお、具体的な状況について後ほど精査いたしまして、私の掌握できる限り御報告申し上げたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115206X00519971125/106
-
107・大森礼子
○大森礼子君 私も、途中までの資料しかなかったもので、何件ございますねという質問の仕方が今実はできなかった次第なんです。
ただ、一九九六年二月二日付の資料というのがありまして、これには平成五年十一月まで検挙した事案についてその裁判結果等をカバーしてあるんです。それによると、これはちょっと私きちっと把握していないかもしれませんが、平成六年三月に大阪の裁判所の方で一つ、追徴四百五十万円というのがあったという、これは途中までですのでその後出ているかもしれないんですね。
それで、数件ということであれば、これが多いのか少ないのかという問題になると思うんですけれども、先ほど没収とか追徴とかという方法がありますよというお答えであれば、そういう方法が十分行為者の得た利益を剥奪するという意味で効果を持たなくてはいけないんだろうと思うんです。そうしてみると、数件というのをどういうふうに評価するかなんですが、余り実効性があるとは言えないんじゃないかなという気もするわけなんです。
それで、没収とか追徴とかする場合に一つの大きな難点といいますか、そういうものがもしあれば簡単に教えていただけたらと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115206X00519971125/107
-
108・原田明夫
○政府委員(原田明夫君) 正直申し上げまして、数件というのは全体の中から見ると少ないと思います。その点は、一つは、難点と申しますか問題点としては、捜査の過程で、犯罪の利得と申しますか、犯罪がどのように利得され、それがどのようにたまっているかという点の捜査が十分に尽くされなかったと。これはいろいろな難点もあったろうと思いますが、そのようなことが影響しているんではないだろうかと思います。
実際に受け取った利益そのものを没収するということについては、それは変形している可能性がございますから難しいと思いますが、それがどのような形でどのような場所にその後移されていったかということを精査いたしませんと、追徴ということはできないわけでございまして、その間のいわば事実関係の十分な解明ができていないという場合が恐らく多いんではないだろうかと思います。
それから、一つ問題になりますのは、刑法上の没収はいわば有体物に限られるわけでございまして、例えば銀行預金のような形で直接振り込まれたという場合には、これを追いかけていけないという問題点がございます。
いずれにいたしましても、先ほどから私どもが答弁させていただいていることにつきまして、従来の状況に比べて、いわば犯罪をペイさせないという観点からの司法上の取り組み方が正直申し上げまして十分ではなかったような感を受けております。これは、犯罪が最近における状況の中でさまざまな形で組織性を帯びているという点もございまして、いわば組織的な犯罪対策の中でもそのことを取り上げて、さらに有効に対応していくということも考えなきゃならないということの一環としても今後取り組んでまいりたいと考えているわけでございます。
そのようなことで、罰則とあわせて、いずれの犯罪についてもそうでございますが、特にこのような犯罪につきましては犯罪による利得がそのままにならない、商法上の利益供与罪の場合は会社に戻していく、それが第一義的でございますが、それができない場合にはそのものを取り上げていく。そして行為者、いわば利得者のところに残さないというために、刑事司法の面からも十分対応していかなきゃならないという点は、まさに御指摘のとおりだろうと考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115206X00519971125/108
-
109・大森礼子
○大森礼子君 次に、警察庁の方にお伺いしたいと思います。
三菱自工が摘発されたわけですけれども、国民の多くが驚いたのは、この事例というのが野村証券等が摘発されたころの一番騒がしい時期、ことしの六月の利益供与事案だということであります。これに対しては、本当に三菱自工の場合には、ほかが次々摘発されているのに三菱自工は他人事と思っていたのだろうかといってみんながあきれたようなところがあるわけなんですね。それで、ことし三月の味の素の摘発後に、警察の方でも総会屋事案について厳正に臨むとの方針を出して、そして関連団体とも連携し、主要企業約二千百社に関係遮断を求める一方で、企業要人の身辺警護を強化した、こういうふうに聞いております。
味の素の摘発以後、警察としては総会屋摘発について一体となって臨んだわけですけれども、ここまでの経緯について、どのように対応してこられたかということを、簡単で結構ですから、警察の対応について御説明いただけたらと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115206X00519971125/109
-
110・和田康敬
○説明員(和田康敬君) お答えをいたします。
警察といたしましては、これまでにも、以前から暴力団あるいは総会屋などに対する徹底した取り締まりとあわせまして、各種の経済団体の会合とか、あるいは各都道府県の方に企業防衛協議会というのが設置をされておりますが、こういったあらゆる機会を利用いたしまして、企業トップに暴力団あるいは総会屋等への毅然とした対応を促すよう指導に努めてきたところでございます。
また、今般、関係閣僚会議において申し合わせの行われました、いわゆる総会屋対策要綱、これにのっとりまして、各都道府県警察に設置をいたしました企業対象暴力特別対策本部、これを中心といたしまして、企業と暴力団あるいは総会屋などとの関係遮断に向け、取り締まりの徹底を図るとともに、企業あるいは業界団体等と連携を密にいたしまして、あらゆる機会を通じて暴力団あるいは総会屋等に対する寄附金あるいは賛助金などの提供の中止でありますとか、あるいは暴力団、総会屋等からの違法、不当な要求があった場合には警察に速やかに通報してほしいというようなことで指導を徹底してまいったところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115206X00519971125/110
-
111・大森礼子
○大森礼子君 企業が新たに総会屋から初めてそういう要求を受けた場合には警察の方に相談しやすいと思うんです。ただ、癒着を断ち切るために警察に相談しようとした場合に非常に難しい問題があるんではないかと思うんです。
何でもかんでもいいですよ、もう全部話してください、相談してください、癒着を断ち切りましょうと呼びかけたところで、過去にそのような利益供与等の事案がありましたら、企業の方もそれを話さなくてはいけない。これは、別の見方をしますと、自己の犯罪事実をみずから申告するということになりまして、警察の方に正直に言おうと思えばそれを話さなくてはいけないと、こういう非常に難しい点があるんだろうと思うんです。
ですから、企業に呼びかけておりますという、これは大事なことなんですけれども、既にそういう癒着関係にある企業がみずから申告するということを考えた場合に、そこで警察との信頼関係というのも必要になってくるんだろうというふうに思います。
それを前提としてなんですけれども、警視庁では十月一日に主要産業の総務担当役員千三百名を集め研修会を開いたと。それで企業側が総会屋との癒着の清算を望むなら大人の対応をするとその担当者が強調した、これも新聞記事がございました。
大人の対応、これはすごく意味が深いんだろうなと思うんですけれども、こういう大人の対応という言葉が出たのかどうか。もし出たとすれば、その大人の対応というのは具体的にどういうことになるのか、おっしゃりにくいところもあると思うんですけれども、教えていただければと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115206X00519971125/111
-
112・宮本和夫
○説明員(宮本和夫君) 警察におきましては、暴力団、総会屋等への対策として、企業がこれら反社会的勢力との関係を将来にわたって遮断することが重要であると考えておりまして、その点から、企業が暴力団、総会屋等との関係遮断に向け真摯に努力している場合には積極的にこれを支援しているところでありまして、また、そのような努力の見られない企業や、警察の捜査により暴力団、総会屋等への不正な利益供与が判明した企業に対しましては厳正な態度で臨むこと、これは当然のことと考えております。大人の対応といった発言も、こういった趣旨でなされたものと理解をいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115206X00519971125/112
-
113・大森礼子
○大森礼子君 そこなんですね。真摯でなかったところとして三菱自工が挙げられるんだろうと思います。
これも新聞記事ですが、総会屋グループ、中本総合企画への送金口座を一年以上前に警察が察知していたと。警視庁が企業のそれまでの癒着を申告した場合には摘発しないと事実上約束して総会屋との絶縁を迫る一方、行動を監視していたと。ことし六月の総会前後に三菱自工は送金していた。これが本当に真摯でないということで摘発されたのだろうと思います。もしこの新聞記事の内容に誤りがあれば、そういうふうにおっしゃってください。
そして、このように警察がそういう相談に乗ると言ったにもかかわらず、懲りずにまた送金していた、こういう企業が摘発されるのは私は当然であろうと思うんです。
ただ、私が先ほどの質問でも言いたかったことは、今のお答えでも、真摯に努力する企業に対しては積極的に支援する、言葉で言うと簡単なんですけれども、また質問の繰り返しになりますが、実は過去にこういうことがあったんです。利益供与しちゃったんです、時効がまだ経過していない、三年以内の事案と思ってください、そうした場合に非常に対応が難しいのではないかと。じゃ君のところは摘発しないから全部言いなさいといっても、やっぱり企業の側は心配になるんじゃないかなというふうに思うんです。
こういう難しい場面に接したときに警察としてはどういう態度をとられるのか、こういうことをちょっとお聞きしたいわけなんです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115206X00519971125/113
-
114・宮本和夫
○説明員(宮本和夫君) 警察といたしましては、企業に対しいろいろな総会屋などからの要求に対して前広に幅広い相談を呼びかけておりまして、その具体的な相談内容に応じ、個別個別適正な処理をしてまいる所存でありますけれども、基本的には総会屋を企業から排除する、総会屋排除の趣旨から適切な処理を行ってまいりたい、このように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115206X00519971125/114
-
115・大森礼子
○大森礼子君 なかなか質問にストレートに答えていただけないようで、答えにくいことがあるということは私もわかるんですけれども。
要するに申し上げたいのは、やはり本当に総会屋というものを根絶しようというのであれば、どんどん摘発していくのが一番だろうと思うんです。その場合には企業から、実はこういうこともあったんです、こういう申告を受けることもあるだろうと思うんですね。ところが、受供与で総会屋を摘発するのに会社側も供与という罪で挙げなくてはいけない、こういう関係があるので、実際、企業からとことん相談を受けるのは難しい状況にあるんだろうと思うんです。
そこで、こういう難しい状況がありますので、きょうの午前中の質問でも林委員の方だったでしょうか、刑事免責ということがあったわけなんですけれども、本当に総会屋の動態を探るとか摘発するためには、進んで申告した場合には処罰しない、こういう約束が場合によっては必要ではなかろうかなというふうに私は思うんです。それで、それは事実上の免責を与えることでいいではないかといっても、やはりそこのところはほかとの扱いの不平等とか、そういうことも起きてくるんだろうと思うんです。
それで、これはむしろ法務大臣にお尋ねしたいんですけれども、日本ではいわゆる司法取引とか刑事免責というものが認められておりません。ただ、その事案によりましては、法によって達成しようとする目的との関係によりましては、一定の場合には刑事免責とかそういうことを認める必要があるのではないかと私は思うんです。特に思うのは薬物事犯の場合なんですね、上部被疑者について。売人あるいは薬物の使用者が入手先について話した場合には多少免責を与えるとか、こういうことがないと捜査はなかなか上の方まで伸びないのではないかというふうに思うわけなんです。
そこで、日本の法体系上、司法取引とか刑事免責を一定の場合に、政策的な目的でもいいんですけれども、与えるということが絶対に不可能なのかどうか、法務大臣、この点いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115206X00519971125/115
-
116・下稲葉耕吉
○国務大臣(下稲葉耕吉君) 刑事免責ということは、刑事免責を与えることによりまして、結局自分が罪を負うということに対する、それを消滅させることですね。もうやりません、罪を問いませんということになるかわりに供述の義務を与えるわけですね。司法取引というのは、これは刑事事件において被告人と検察官が交渉いたしまして事件処理について合意するわけですね。それで、被告人による有罪の答弁や共犯者等に対する事件における証言等と引きかえに検察官が寛大な処置をとりましょうと。ですから刑事免責と司法取引とは違うと思います。
そこで、一般的に申し上げますと、犯罪につきましては、今お話しのとおりに、自首減軽という制度があることは、これは刑法上ございます、御承知のとおりです。そういうふうなことを頭に入れて一連の総会屋の問題をぶつけてみますと、まず、総会屋がある企業に取り入ろうとした場合に、初めての場合は企業が決然と決断してそれを断る、現実に断って大変苦労しながらもそれからは総会屋との関係は私の企業は切れましたということをおっしゃっていただく企業の責任者も何人か私知っております。
ところが、今、先生お話しのように、自分が今度責任者になってみた、そうしたら前から癒着が続いていた、これをどうしようかと、これはやはり企業のトップがどういうふうな決断をなさるかなさらないかだと思います。そういうふうな中でも敢然として切られた方もおられます。しかし、切り切れないで今日までに至って検挙されているというのが今度の事例の中で見えることなんですね。
そうしますと、そういうふうな過程の中で、警察は守ってくれないじゃないか、だからしょうがないんだという話が企業側からも出てくるんですね。ところが、具体的に詰めてみますと、どれだけそういうふうなことを警察の方にお話しになって、そして相談なさってやっているかどうかということについては、やっているところもあれば、一般的、抽象的に怖いからということで、自分たちが継続するための理屈にしておっしゃっている企業の方もないわけじゃない。
それで、そこまで踏み切ってやろうという方がいらっしゃるわけです。今警察の方から、何十団体、何百人かの人たちについては私どもやっております。こういうふうな企業は私は本気で一生懸命だろうと思うんですね。そして、そういうふうな形を繰り返していくことによって私は完全に脱却できる、こういうふうに思います。
そこで、司法取引の問題ですけれども、やはり刑事免責の問題も含めて、これだけ犯罪が大変組織化し、巧妙化し、難しくなっていますから、捜査の手法もなかなか困難になっている。だから、言われるようなことも私どもの検討の視野に入れておかなくてはならないということは私も認識いたします。
しかし他面、刑事免責があるからとかいうふうな形で、例えば総会屋なりなんなりというふうなものについてのお話をされる。ところが、実際は総会屋と企業とのかかわり合いというのは窓口であって、もっと大きな犯罪が後ろに潜んでいないと言い切れるかどうかということについては、これはまた大変問題のあるところでございまして、そういうふうなところも踏まえて検討しなくてはならない。だから、一般的に言って、司法取引で安易に相談に乗る、これはやはり利益誘導型といいますか、そういうふうな面も司法取引の中でないわけでもないだろうと思うんです。そういうふうにいろいろな問題がございますので、そういうふうなことを十分踏まえながら対策を検討していかなくてはならぬ。
しかし、総会屋を根絶するというために、個々の問題についてはどういうふうな手法がいいかどうかということは、個々具体的に検討して対応を決めていくべきだ、そういうふうな過程の中で大人の対応だとか何だかんだというふうな話が出たと思うんですが、それは自首の問題もございますし、検察官が起訴するか起訴しないかという一つの判断の問題等とも絡んでくることだろうと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115206X00519971125/116
-
117・大森礼子
○大森礼子君 自首減軽というのはたしかあるんですけれども、これは、現場でやっておりますとなかなかその要件が難しいということは私実感したところです。
それから、きっかけが総会屋事件にあったんですけれども、司法取引とか刑事免責とか、私が現場で仕事をしておりましても、確かに人によったらアンフェアなやり方であると言うんですけれども、やはり薬物事犯についてはこういうことがあってもいいのかなという気がするわけなんですね。
やはり上部被疑者ということはなかなかしゃべらないわけですね。その動機は、しゃべったところで何を得するのか、特に求刑を一年ほど下げてくれるわけでもないしと、こういう現実的な問題があるわけなんです。特に最近、薬物汚染が青少年の方にも広まっているとしますと、やはり薬物が広まることを阻止することは、これは国の大きな課題であろうと思うわけです。こういう場合にあくまで限定して、こういう目的達成のためというのであれば、国民も理解してくれるのではないかなというふうに思うわけなんです。
それで、今の質問は、法務大臣にたくさん答えていただいたんですけれども、そういう司法取引、刑事免責、厳密には分かれるにせよ、制度の趣旨としては同じなわけなんですけれども、こういう制度を日本で取り入れることは、日本の法体系上絶対できないことではないというふうに理解してよろしいわけですね、これは先ほどの質問であったんですが。刑事局長でも結構です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115206X00519971125/117
-
118・原田明夫
○政府委員(原田明夫君) その点、大臣もただいま御答弁申し上げました中で、そういうことも視野に入れながら検討をしたいということでお答え申し上げた趣旨は、まさに日本の刑事法体系の中で確かにそういう側面は今までございませんでした。むしろ、大臣が御答弁申し上げた中で、利益誘導的な捜査手法に当たる可能性があるという御指摘で、その点は場合によっては適正手続という観点から問題視されるという面はあろうかと思います。
しかし他面、委員からるる御質問の中でお述べいただきましたように、現在の犯罪の状況ということを考えてみますと、確かに従来の手法では及ばないと。むしろ胸に届く解決をするためには、犯罪の根源に迫る捜査をやらないと結局物事の真の解決にならないという事態が、徐々に徐々にでございますけれども、意識されつつあるような感が私どももいたしております。
そういう中で、ただいま御指摘のような手法が、全く憲法上も体系上も問題にならないということは私どもとしてはないと思っております。しかしながら、それに伴いまして、適正手続を図っていくという観点と、そして社会の安全と平和を守るために法執行の面で相当な手続的ないわば手法を用いないと物事がうまくいかないというところは、むしろ英米含めまして、特にアメリカはそういう点では大変発達しているわけでございますが、さまざまな手法を取り入れております。その手法上の必要性と適正手続のバランスの問題に最終的には帰着すると思います。その中でさまざまな御議論をいただくべきものでございまして、私どもといたしましては、かなり真剣に検討しなきやならない問題というふうにとらえて、これから努力してまいりたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115206X00519971125/118
-
119・大森礼子
○大森礼子君 いろいろ犯罪態様も変化しまして、それに見合う捜査手法というのも変化せざるを得ないだろうということはよく理解できるわけです。ただ、今申し上げたことは、あくまで薬物事犯に限定してという趣旨でございますので、これを決して広く広げるという趣旨は含んでおりませんので、この点だけ御理解いただきたいと思います。
次に、これは法務大臣にお尋ねいたします。
いわゆる総会屋対策についての閣僚会議の申し合わせ事項というのがあるわけなんですけれども、この項目4の「銀行、証券会社に対するより実効性のある厳正な検査等の確保」のところで、「証券取引等監視委員会は、体制整備等を図り、引き続き厳正な市場監視に努める。」、こういう項目がございます。このときにはまだ山一の破綻とかはなかったわけなんですけれども、今回のこの一連の総会屋事件の中で、証券取引等監視委員会はどのように機能したのかどうかということを非常に疑問に思うわけなんです。
それで、これも大臣の管轄ではないかもしれないですが、閣僚会議で、この証券取引等監視委員会が十分機能しなかったのではないかと、こういうことは問題にならなかったのかどうかお尋ねいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115206X00519971125/119
-
120・下稲葉耕吉
○国務大臣(下稲葉耕吉君) 証券監視委員会のことでございますが、余り表に出ておりませんけれども、検察で一連の総会屋の事件をやりました背景には、証券取引等監視委員会の告発なりなんなりを得てやっているということでございまして、機能していなかったということでは私はないと思います。
今回の山一証券の問題につきましても、大蔵省と証券取引等監視委員会がその実態究明にまず当たるというふうな方針を固めて、既にそのような活動が始まったというふうに私承知いたしておりますが、そういうふうな意味で、私は、総会屋対策要綱に盛られておりますこの事項についても十分機能しているんじゃないか、もっともっとそういうふうな意味では連携をとりながらやっていかなければならない問題だと、このように思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115206X00519971125/120
-
121・大森礼子
○大森礼子君 同じくこの申し合わせ事項の中で、きょう午前中、清水委員の方からも質問が出たんですけれども、「法務省による日弁連への協力申し入れ」とか、こういう事項がございます。それで、大きな企業でしたら大抵顧問弁護士さん等がいて、きちっと対応しているんじゃないかなという気もするわけなんですけれども、どういうふうに具体的な申し入れをされたのかということを質問しようと思いましたら、これは午前中の御答弁の中にあったのかなという気がいたします。
こういう事案につきましては、やはり法務省だけですべて業界を見る、監視するということは不可能なことでありまして、どうしても民間の、そして法律知識を備えた弁護士さんたちの協力が要るだろうと思うんですね。
それで、これまで、こんなことを言っていいかどうかわかりませんが、法務省と弁護士会、日弁連とは対立しやすい関係にあるわけなんですけれども、総会屋根絶については例えば弁護士会の協力が必要であると、そうすると、法務省との関係で例えば定期的に連絡協議会等、話し合うとか、こういう具体的な方策も必要ではないのかなという気がするのですけれども、法務大臣、いかがお考えでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115206X00519971125/121
-
122・下稲葉耕吉
○国務大臣(下稲葉耕吉君) 日弁連との関係でございますが、先ほども清水委員の御質問に答えまして、九月五日に総会屋対策についての要綱が決定されまして、法務省といたしましては、それを受けまして九月八日に、日弁連の会長に総会屋対策に関する協力方の要請をいたしております。
そして、二十五日に日弁連の会長から御返事をいただいているわけでございまして、総会屋対策に関する協力方の要請にということで、日弁連の会長から弁護士会長各位に協力するようにという趣旨の文書が流されました。そして、先般も申し上げましたように、日弁連の民事介入暴力対策委員会では総会屋問題について積極的に検討いたしますということまでつけ加わっているわけでございます。
そのほかにも、私何回か実は日弁連の会長さんと、あるいは事務総長さんとおっしゃるんですか、お会いいたしまして、この問題等々についてお話を進めておりまして、日弁連の意欲も私は肌で感じております、この問題については一生懸命やりましょうというふうなことで。ですから、都道府県の現場の企業からいろいろな御相談なりなんなりを積極的に受けるようにして、そして相談に応ずるような仕組みを日弁連の中でもおやりいただくというふうな形で御返事を承っておりますし、そういうふうに進んでいるものだと思います。
ですから、総力戦だ、一体としてやらなくちゃだめだと申し上げましたけれども、企業はもちろんのことでございますが、日弁連の方もそういうような体制で御協力いただけているものだと、このように認識いたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115206X00519971125/122
-
123・大森礼子
○大森礼子君 次に、この総会屋事件の今後の摘発体制等についてお尋ねしたいと思います。
これは警察庁と検察庁の両方にかかわることだと思うんですけれども、総会屋の口座を見ればいろんな企業から送金がされている、これがまた一つの事件の端緒となって次の摘発へ続いていくんだろうと思います。
私は、十一月十四日、この趣旨説明に対する代表質問でも、ともかく精力的にもう最後の一社に至るまで摘発を続けていただきたい、これによってまた国民の信頼というものも返ってくるというふうに考えたわけなんです。
まず、警察庁の方にお尋ねしますけれども、今後も引き続き端緒を得たものについては次から次へ摘発していく、こういう体制であるというふうに理解してよろしいでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115206X00519971125/123
-
124・宮本和夫
○説明員(宮本和夫君) 警察におきましては、いわゆる総会屋対策のための関係閣僚会議におけるいわゆる総会屋対策要綱、これの申し合わせにあるとおり「不正な利益供与等の商法違反事件、いわゆる総会屋等との関係遮断に起因する企業に対する恐喝事案等に対する取締り」、これについて徹底をしてまいる所存であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115206X00519971125/124
-
125・大森礼子
○大森礼子君 それから、これも代表質問で述べたんですけれども、捜査機関が精力的に摘発をしていく、そんなに摘発がどんどん続いていくと企業がダメージを受けて、そして株価を下げて景気回復を遠ざけるんだから、もういいかげんに終えたらどうかなんという声が、業界の一部というふうに聞いておりますが、上がっているなんということも耳にしたことがあるわけなんですね。このことについて本会議場では、そんなのはたわ言と聞き流して頑張ってくださいと法務大臣にお願いした次第なんです。
また、山一証券の破綻とか、こういう大きな出来事が起きまして金融システムはどうなるんだろうか、こういう不安な状況にございます。このことと、山一がこれだけダメージを受けたのは利益供与事件で摘発を受けた、やはりこれもその大きな原因になっているだろうなどとも言われているわけです。こうした状況にありますと、金融システムの不安とかそういうことの中で、捜査の動きというんですか姿勢というか、これが変わりはしないかなという気がしてちょっと心配になるんです。
そこで、法務大臣にお尋ねするんですけれども、あくまで違法な行為を犯したものについては次々摘発して処罰していくのかどうか、そこら辺の御決意を改めてお伺いしたいというふうに思います。また、言いかえれば、九月五日の関係閣僚会議の申し合わせ事項で「取締りの徹底」ということが挙げられているわけですけれども、この方針というものは変わるはずがないものかどうかお尋ねしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115206X00519971125/125
-
126・下稲葉耕吉
○国務大臣(下稲葉耕吉君) 個々の事件についてやるかやらぬかという答弁は差し控えさせていただきますが、一般的に申し上げますと、例えば利益供与事件、やったというふうなことで社会的にいろいろ影響のあることは私も十分承知いたしております。
山一証券の問題についてもそうだろうと思いますけれども、一般的に申し上げまして、じゃそういうようなことをいろいろな事情があって見逃したらどうかという御議論みたいな意見があるとするならば、それを見逃せばもっともっと大きな癒着が生じ、もっともっと大きな犯罪が起こると私は思うんです。その段階まで推移を見守るというようなことになったら、事件が大きくなりますし社会的な反響ももっともっと大きくなると思うんです。
ですから、おっしゃったようにいろいろ事件、やったことが今大変困難である景気の問題なりなんなりにそれは全然影響を与えないかどうかということについては、私は確信はございません。私もいろいろな方々の意見を聞いておりますけれども、しかし大方の意見は、それは仮にそうだとしてもその問題を克服できなければあすの日本はないんです、あすの日本の経済界はないんですと、経済界の責任者ですら、私どもが総会屋対策を訴えるときにそういうふうな返事がはね返ってくるんですね。
こういうふうな状態でございますし、私どもは、それこそ決まり文句でお笑いになるかもしれませんが、法と証拠に基づいて着実に厳正にやっていくということに尽きると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115206X00519971125/126
-
127・大森礼子
○大森礼子君 法務大臣の御決意を伺って安心いたしました。国民の間でも、いいことはいい悪いことは悪い、法に違反したら処罰する、だから法を守らなくてはいけないんだ、こういう意識が社会に充満することが必要であろうと思うわけです。
今までも、住専処理のときにも特別背任とか問題になりましたけれども、時効とかの関係で本当にどこまで処罰できたのか、非常にあいまいな点が残っていると思います。今、日本は本当にルール違反の国、法による正義からはほど遠い国だというふうな評価を内外ともに得ておりますので、厳正な捜査を続けていただいて、とことん法に違反したところは処罰するという姿勢を見せていただきたいと思います。
次の質問ですが、きょうまたこれも林委員の方から午前中出たんですが、時効期間についてちょっとお尋ねいたします。
利益供与、受供与、法定刑を上げましても刑事訴訟法二百五十条の規定によりますと時効期間は三年となるわけなんですね。これはやっぱり法務大臣も、もし経験されたらこういう事案については非常に短い期間だということは御理解いただけると思うんです。
それで、きょうの午前中の刑事局長の御答弁によりますと、時効というのは法定刑の評価に応じて定められるものであって、個別に考えていくと他の処罰との均衡を失することになる、もし時効期間が短過ぎるとすれば法定刑を引き上げるしかないと、こういう御答弁をされたわけなんですね。
それを聞きまして、そしたら供与、受供与、これが三年以下に引き上げられたけれども、じゃ五年以下まで持っていっちゃえば時効も五年になっていいのかなと短絡的に考えてみたところ、そういうわけにもいかない。なぜならば、刑法百九十七条、これは収賄罪の規定ですが、これが収受、要求、約束、こういう事案については五年以下の懲役ですから、不可買収性というものを法益とする公務員の犯罪に対して五年以下の懲役でしかないのに利益供与の場合五年以下と、これもできないことなんだろうというふうに思った次第なんですね。じゃ、法定刑も引き上げることができない。
ただ、やはり法定刑が比較的軽いから捜査も簡単だということには決してならないと思うんですね。
それから、公訴時効の趣旨といいますか、これは一般に言われておりますのは、時の経過によりまして証拠が散逸して真実の発見が困難になるということと、それから時の経過によりまして国民の処罰感情も鎮静化するんだということが根拠として挙げられているわけなんですね。
そうしますと、今回のこういう総会屋事件なんかによりますと、例えば今回のいろんな事件の端緒が、総会屋の口座にいろんな企業からの入金があった、こういうのはずっと記録としてある一定年度は残ることだと思うんですね。それから、国民の処罰感情というものも決してすぐには鎮静化するような場合ではないというふうに考えるわけなんです。
そうすると、特別な事案につきましては個別的に特別法で時効期間を多少長くするとかはあってもいいような気がするんですが、これはやはり日本の法体系上絶対不可能なことなんでしょうか。これは刑事局長の方にお尋ねいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115206X00519971125/127
-
128・原田明夫
○政府委員(原田明夫君) 大森委員は、先ほど収賄罪との均衡というものまで即座に念頭に置かれて法定刑という点から物を考えるとなかなか難しいという点を御理解いただきました上での問いでございまして、なかなかこれはお答えするのは難しい御質問でございますが、一般的に申し上げますと、やはり公訴時効というものに対して、我が国の場合伝統的に罪刑法定主義との関係で、法定刑を主眼に考えてそれといわばリンクした形で処罰の可能性を定めている。ですから、そこのところは例えばアメリカなんかはもう少し違うようでございます。いわば検察官の訴追を制限する事由というふうに考えられておりまして、個別に、例えばかつて住専等の問題があったときに公訴時効をある特定の犯罪について延ばしたというようなことが報ぜられて、どうもそのようなことがあったようであります。
ましてや、例えば戦争犯罪人というような場合には公訴時効を適用しないとか、場合によっては公訴時効が一般的には完成しているものももう一度復活させるということもやられている法体系の国は私どもも承知しております。しかしながら、我が国の場合、この問題が罪刑法定主義に密接にかかわる問題ということで、いわば憲法問題にもなり得るという意識を持っておりまして、法によって個別の罪について特別に公訴時効期間を延長するということにつきましては非常に慎重な検討を要すると思います。
しかし、これは私どもの判断で、だから絶対にいけませんということを申し上げるつもりは、つもりはと申しますかそういうことはできない。まさに立法者の意思の問題でございますから、仮に将来そういうことがどうしても必要だという場合にはそのような検討がなされても私はしかるべきだと思います。しかし、それは必ず憲法上の罪刑法定主義との関係を十分御考慮に入れた御検討をなされるべきではないかなというのが現時点でのとらえ方でございます。
なお先ほど、三年をもう少し重くしてやろうかというお話でございましたが、これまたやはり法定刑の均衡という点がございまして、そういう点を考えて、例えば威迫を伴うような場合、これは恐喝罪にならないような場合でも相手方に困惑させるような形で要求した場合にはそのこと自体を新たな法定刑でもって五年ということで今回お願いしているような事態でございますし、また一般的に要求した段階でこれを罪としてとらえようということで、いわばその要求を受けた企業側といたしましてはその気にさえなるなら既に要求ということで罪は成立するわけでございますから、そのことを各捜査官憲にお伝えいただいて、そして御相談をいただきながらそれに対応するということができるものと考えます。実態的には相当程度対応できるものではないだろうかというふうに考えておりますので、御理解を賜りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115206X00519971125/128
-
129・大森礼子
○大森礼子君 確かに憲法問題にかかわってくるということで、日本でも住専処理のときに同じような議論があったと思います。ただ、あの場合には明確に事後法の禁止に当たりますのでそれは到底できないものだと思ったんですが、これからの総会屋対策を考える場合には、時効を多少個別的に考えることもあり得るのかなと思って質問させていただきました。
それから、刑事局長、要求罪もできましたからその時点で通報していただければということですけれども、これは本当にそんなに実効性があるのか疑問に思うんです。
例えば、やくざなんかですと恐喝罪でも何々出せとは余り普通言いませんよね。暗に要求して、何を出すかはそちらで誠意を示せとか、よく考えろと言うのが普通でありまして、多分この総会屋の事案でも、私が総会屋でしたら、おたくの何々の問題について次の総会で質問させてもらいますからよろしいですねと、ここまでしか多分言わないだろうと思います。それで向こうが困ったら向こうの対応を待つ、こういう形になるだろうと思うんですね。こうなると要求罪の構成要件に該当するかどうか非常に難しいものがあるんじゃないかなということをちょっと私は思います。いずれにしてもその摘発の事例を要求罪については待ちたいというふうに思います。
それから、きょうまた清水委員の質問のところで刑事局長が答えられているんですけれども、法定刑が引き上げられたということで、利益供与、受供与が非常に違法性が重いものだということが立法府によって判断されたというふうにお答えになりました。六月以下が三年以下ですから一挙に六倍の重さになったわけなんです。こうしますと、これまでの利益供与六月以下で、そして大抵ほとんどの場合執行猶予がついてしまいますね。これだとやはり抑止力の点で余り期待できなかったわけなんですけれども、今回法定刑の引き上げで六倍の重さになった。違法性が重いんだということが立法府によって評価されたと。
そうしますと、実際の事案でも実刑判決とかがどんどん出ていくだろうというふうに、こういうことは期待できるんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115206X00519971125/129
-
130・原田明夫
○政府委員(原田明夫君) これも、実務の状況について大変御経験のある委員のお尋ねですから、大変難しいことを御承知の上でのお尋ねだと思って私も緊張するわけでございますが、午前中お答え申し上げましたように、やはり六月以下というふうに定められた罪と三年以下の罪とではこれはおのずからその罪の罪質に対する立法府の考え方というのは明確に違うということは認識されると思います。
しかも、これらの御審議の過程でまさに今交わされているような御論議の中で、いわば提案者側の考え方が示されつつ、また質問の形で立法府の物の考え方というのがさまざまな形で明らかになってまいります。そのことは法の執行に当たる警察官または検察官のみならず、やはり司法全体としてもとらえられていくべきものと私は考えております。
そのような中で、反社会的な意義ということが了解されていきますと、法執行の現場、さらには裁判の中にそのことは反映されていくものというふうに私は考えます。それはあくまで実刑にするかあるいは執行猶予をつけるかという点は個々の事案によって裁判官が決すべきものでございますので、それにつきまして、例えば他の国にあるような一定の量刑基準を定めるということについてはいろんな問題もあろうかと思います。しかし、少なくとも、これは最初に戻るわけでございますが、立法府の意思としてこの罪についてはこのように引き上げる、これがこの罪についての考え方でありますということが示されることは十分私は意識されてまいると思います。
それから、なおこれはこの問題だけではございませんが、確かに我が国の裁判の実情の中で、ある特定の面をとりますと量刑が一般的に軽いのではないか。特にホワイトカラー犯罪と申しますか、いわばそういう財政、経済的な事犯については量刑が軽いのではないか、なかなか実刑ということにはいかないのではないかという指摘がよくなされます。私はそういう点当たっている面もあるような気がしております。
しかしながら、これらの点もその時々の社会的な状況、それに対する一般的な受け取り方ということを反映して、裁判例は徐々にある特定のものについてなるほどと思われるような裁判をしつつございます。これは既に委員も御承知と思いますが、例えて言えば、脱税事件等についてはかって執行猶予刑というのがほとんどでございましたが、最近では状況によって続々と実刑が言い渡されており、脱税というものが、いわば形式的なそういう財政事犯にとどまらず、国民の立場から見て重大な事犯であるという認識が深まっているような気がするわけでございまして、これはやはり立法府の意思とこれをとらえる国民一般の考え方でもって司法は反応していく、そういうふうに私は考えさせていただきたいと思うわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115206X00519971125/130
-
131・大森礼子
○大森礼子君 ありがとうございました。
今回の総会屋事件で、新聞等ではいろんな意見がなされておりますけれども、目立つのが日本の司法が余りにも貧弱ではないかということなんですね。なぜ裏の世界で企業と総会屋とのそういう癒着ができるか、あるいは暴力団なんかに食い込まれるかといったことについて、トラブルがあっても表の訴訟に持ち込めば時間と金がかかる、裏で話をつければ早く済む、こういうことから暴力団との癒着ができるとか、こういうことも指摘されているわけです。
幾ら法治国家といいましても、一様に皆さんおっしゃるのは、司法というものが余りにも身近でないということなんですね。早く大きな司法というものを実現しなくてはいけないという意見が多いんですけれども、果たして最高裁に、例えば二十一世紀の日本の司法のビジョンとかこういうものがおありなのかということは大変に失礼ですけれども、こういう具体的なビジョンを描いておられるのかどうか、あるいは、なければというと失礼ですけれども、もし具体的なそういうプランがないのであればつくる必要があるのではないかということについて、最高裁の方にお尋ねいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115206X00519971125/131
-
132・涌井紀夫
○最高裁判所長官代理者(涌井紀夫君) 確かに、このところの社会状況を背景にいたしまして、いろんな法律関係が非常に複雑、高度化してきております。その一方で、やはりこういういろんな法的な紛争を解決する場として裁判という手続を使いたいという国民の側からの要望が非常に強くなってきております。恐らくこれからますますこういう司法に対する国民の期待というのは強くなってくるだろうと私どもの方も考えております。
したがいまして、二十一世紀に向けた司法のあり方をどう考えるかということになりますと、非常に大きい言い方をしますと、こういった国民の司法に対する要望にきっちりとこたえていけるような、そういう司法をつくっていくということがまず肝要であろうと思っております。
いろいろ司法に対する御不満な点があろうかと思いますが、やはり今一番言われておりますのは、特に民事の裁判が非常に時間がかかり過ぎるということでございまして、これからもっともつと国民の利用しやすい裁判をつくっていくということになりますと、何といいましても民事の裁判をもっと短期間で処理できるような体制をつくっていく必要があるだろうと思います。
実は、裁判の迅速化というのは、これは裁判所限りでは何ともできない面がございまして、やはりこれは訴訟の当事者になられます弁護士さんの方と裁判所がむしろ共同してといいますか、そして一体となって迅速な裁判をやっていこうという取り組みが必要になってくるわけでございます。来年の一月から施行が予定されております新しい民事訴訟法というのは、まさにそういう課題をひとつ解決しようという目的で改正された法律でございますので、裁判所としましては、この新しい法律の趣旨を十分踏まえながら、もっともっと裁判の運営の改善という方向で努力をしていかないといけないだろうと思っております。
もちろん訴訟の運営の方法だけではございませんで、やはり事件を処理いたします裁判所の方の人的、物的な体制という点につきましても必要な整備を図っていく必要があるだろうと思います。そういうふうな方策をできるだけ多角的に講じまして、もっともっと国民に利用しやすい司法をこれから実現していく必要があるだろうというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115206X00519971125/132
-
133・大森礼子
○大森礼子君 物的な設備も問題になると思うんですけれども、例えば何年ぐらいまでに裁判官の人数をこれぐらいにします、こうなりますと、例えば、現行のもとでは民事事件はこういう事案がこれだけ期間がかかっているのがこのぐらいになってスピードアップしますとか、何かそういうビジョンを示していただくことができないものかなというふうに常に思うんですね。この点については、また改めて質問させていただきたいと思います。
代表訴訟について法務省にお尋ねする予定でしたが、時間の関係でまた次の機会に譲りたいと思います。
今回の一連の総会屋事件で問題となるのは、企業のトップのモラルです。いつも企業のトップのモラル、モラルと言われるんですけれども、果たして政治家の方のモラルは大丈夫なんでしょうかというふうに代表質問でも述べさせていただきました。
一つ事例なんですけれども、平成九年十月二十日の毎日新聞の夕刊に、昨年の総選挙で当選された東京の議員さんが寄附を百件以上していたと。盆踊り、敬老会とかですか、五千円から一万円の金を出していたと。本人は会費のつもりと言うんですけれども、会費と袋に書いたら寄附でなくなるのかといったら、そうでもないと思うんですけれども。それで、この方は元警察官僚であったわけであります。県警本部長も務められた方であります。
企業の法令の遵守意識が低いというのであれば果たして議員はどうかということであえて挙げさせていただくわけなんですけれども、この方はこういうことをおっしゃっておる。「一万円までで、選挙前三カ月までなら社会通念上許されると、警察現役時代も運用していた」、それから「警察出身の議員も含め、みんなやってる。」と。その方のおっしゃったとおりそのまま記事にされたかどうかわかりませんけれども、一応これを前提として質問いたします。
まずは元警察官僚であった法務大臣、警察出身の議員も含めみんなやっていると言われているんですが、法務大臣もやられておられるんでしょうか。それから次に警察庁にお尋ねしますけれども、一万円までであれば選挙前三カ月ぐらいまでなら社会通念上その寄附行為も許されるんでしょうか。続けての質問になりますが、お答えいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115206X00519971125/133
-
134・下稲葉耕吉
○国務大臣(下稲葉耕吉君) とんでもないことだと思います。そのようなことはよくございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115206X00519971125/134
-
135・縄田修
○説明員(縄田修君) お答え申し上げます。
公職の候補者等が選挙区内にある者に対しまして寄附をした場合には、金額あるいは期間のいかんを問わず、若干の例外はございますけれども、それなりの処罰の規定があるものと承知をいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115206X00519971125/135
-
136・大森礼子
○大森礼子君 そうしますと、もちろん事案を調べてみないとあれなんですが、この新聞報道に関する限りではこれは違反行為になると思うんですが、警察の方では、これは新聞記事も一つの捜査の端緒になるわけでありますから、これについて捜査は開始されておられるのでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115206X00519971125/136
-
137・縄田修
○説明員(縄田修君) 御指摘のような報道があったことは委員御指摘のとおり承知いたしておりますけれども、個別具体的な事案につきましては、警察において捜査を行っているとか、今後捜査を開始するとか、こういった問題につきましては、委員御案内のとおり捜査の具体的な中身にもかかわりますし、関係者の人権等もございますので、この場での答弁は差し控えさせていただきたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115206X00519971125/137
-
138・大森礼子
○大森礼子君 今、現に捜査しているかどうか、捜査上の秘密であるのであれば、一定の期間がたったときに、私があのとき申しました事案について捜査はなされましたかと、時の経過を経て改めてお尋ねしたいと思います。
この点につきまして、法務大臣はそんなことはとんでもありませんということです。そうであろうと思います。それから後藤田正晴元副総理も、「会費名目でも十分違法だ。政治家がそういうことをするから政治改革が進まない。きちんと襟を正すべきだ」と。こういうふうにきちっとした姿勢をとっておられる方もいらっしゃるわけなんです。
なぜこういうことをあえて言うかというと、まず政治家が襟を正すべきだ、政治家がまずモラルというものをきちっと国民に示すべきだということが一点と、要するに企業にいろいろ、警察を信頼して総会屋とかそういう事案についてお話ししてくださいねと言っても、何か、理由はどうかわかりませんけれども、結構新聞報道を見ますと、現場の企業の人は警察をどこまで信頼していいのかわからないという意見も多々出てくるわけなんです。この方はもう既に警察の方ではございませんので今の現場の方に申し上げるのはちょっと失礼かもわかりませんけれども、警察というものはきちっとした毅然とした態度を持っているんだということをやっぱり示していかなくてはいけないんだろうと思います。
最後に述べるだけになりますけれども、同じ日の別の新聞には、やはりこの元警察出身の議員の方がパチンコ関連企業の方と朝食会を開いていたという記事もございました。このこと自体が法に違反することではないと思うんです。ただ、やはり私なんかも戒めておりますけれども、かつて摘発する側と摘発される側の関係にあった者というのは、その後の接触の仕方というものをおのずから気をつけていかなければならないんだろうというふうに思います。この議員さんは、この朝食会は友情に基づく勉強会であるというふうにおっしゃっておられますけれども、摘発する側、される側、この親密さというのは友情というよりも私はむしろ不倫関係であるというふうに考えております。こういうことも政治家としては気をつけていくべきだろうというふうに思います。
いずれにしましても、対象がだれであれ違法な行為であればきちっと捜査、処罰するという姿勢を警察の方にも示していただきたいと、こう申し上げまして、質問を終わります。
以上です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115206X00519971125/138
-
139・千葉景子
○千葉景子君 午前から質問がそれぞれ続いておりますので多少重なり合う部分もあろうかというふうに思いますけれども、この連休を挟みまして大変状況もいろいろ大きく変化をしてきております。そんなことも頭に置きながら質問させていただきたいというふうに思います。
まず、今回の商法の改正ですが、その趣旨を拝見いたしますと、「最近の社会経済情勢及び株式会社の運営の実態にかんがみ、」、そういうことを頭に置いて、「いわゆる総会屋の根絶を図るとともに株式会社の運営の健全性を確保する」と、こういうための改正であるということがその趣旨に述べられているわけです。
これはそのまま読ませていただきますと確かにもっともなことであろうというふうに思うんですけれども、よくよく今のそれこそ社会経済情勢というのを考えたときには、この法改正を検討する過程からさらにその情勢というのは非常に大きく変わっている部分もあり、あるいはさらに複雑になっている部分もあり、いろいろ問題を含んでいるところだというふうに思います。
そこで、この改正に当たるときにこの趣旨というのは考えられたことかと思いますけれども、最近の情勢も含めてこの社会経済情勢、そしてその中にある株式会社の運営の実態、これをどのように認識され、そしてその認識の上に立って今回の改正があるのか、その御認識をまずお聞かせいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115206X00519971125/139
-
140・下稲葉耕吉
○国務大臣(下稲葉耕吉君) 委員御承知のとおりに、昭和五十六年に商法改正で初めて利益供与、受供与等が罰則として設けられたわけでございます。そのときの罰則は、御承知のとおりに刑が大変軽うございました。軽かったんですが、新設したものですから社会的には抑止力が相当あるだろうということを期待された。なるほどある程度の抑止力はあったと思いますし、暴力団そのものの数も減ってきている。それでうまくいくかなというふうな感じも我々の中にはなかったわけじゃないんですけれども、世の中が非常に変わってきております。経済関係もなかなか複雑に入り込んできておりますし、しかも国際化が進んでいるというふうなことでございます。
そういうふうな中で、総会屋がいわゆる金融機関の最高幹部まで入り込んでその辺のところから新しく癒着が進み、新しい犯罪というものが進んできている。だから、世の中のそういうふうな進展につれて複雑になればなるほど巧妙に総会屋というのが企業の最高幹部のところまで入り込んできて、しかも悪質重大な犯罪を犯している、そういうふうなのが実態でございまして、これに対する商法のいわゆる五十六年改正の罰則規定の抑止力というものが必ずしも十分じゃなかったんじゃないかなというふうな反省が我々のところにあるわけでございます。
そういうふうな情勢を踏まえまして、「最近の社会経済情勢及び株式会社の運営の実態にかんがみ、」というふうな表現をいたしたわけでございまして、どうしても今御説明申し上げましたようなことで株式会社の権利の行使に関する利益供与等に関する罰則の強化が緊急の課題であると、そういうようなことで今回の法律の改正をお願いしたということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115206X00519971125/140
-
141・千葉景子
○千葉景子君 私は、今の大臣のお考え、そのとおりであろうというふうに思うんですが、ただ事は何かもっと根本的な大きなところまで掘り下げていかないと今の日本の経済あるいは社会、そういうものがにっちもさっちもいかなくなってきていると、こういう事態があるのではないかというふうに思うんです。その中で、まずは少なくとも総会屋の関与のようなものは根絶しなければならないと、これはもう当然のことでございます。
ただ、それをもう少し大きな視点で考えてみますと、やはり今、日本のこれまでの経済運営あるいは会社の企業運営のあり方、こういうものが根本的に問われている。ちょうど時あたかも、つい先般、北海道拓殖銀行の破綻があり、そして山一証券の問題が噴出をしているわけです。
こういう一連の動きを見ておりますと、総会屋が入り込んでいくというその一番根底には、やはり日本の企業経営とかあるいは証券市場、こういうところがいかにも不透明である、そしてきちっとした社会的なあるいは国際的なルールにのっとっていない、目に見えないものが根底にあるがためにそこに総会屋がつけ入っていく、そういう問題も出てくる、こういう大きな構造があるように思います。
そういう意味では、この法改正を私は評価しないという意味では決してないんですけれども、そういう大きな視点も持ちながら、これを第一歩としながらさらに次の段階へ、あるいは本当にここで言われているような株式会社の運営の健全性、こういうものにも考えをめぐらしていかなければいけない、こういうふうに思っているところでございます。
そこできょうは、そういう意味では、一法務省のみならず、これはむしろ政府全体の取り組みの問題でもあろうかというふうに思いますが、せっかくの機会ですので大蔵省にも多少の御質問をさせていただきたいというふうに思っております。
今御指摘をさせていただきましたように、この拓殖銀行の問題、そして山一証券の問題、これまで銀行はつぶれないのだと、大手銀行はつぶれない、私たちも、大蔵省なり政府もそういう体制でいるんだからつぶれないものだと、多くの人がある意味ではこういう甘い認識に夢を託しながら来た部分もあろうかというふうに思っております。しかし、あに図らんや、銀行が倒産をし、そして一夜のうちに大手の証券会社が破綻をしていくと、こういう状況でもございます。
そこで、ここのところの一連の動きについて大蔵省全体としてはどう受けとめているのか、まずそこをちょっと前提としてお聞きしたいというふうに思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115206X00519971125/141
-
142・内藤純一
○説明員(内藤純一君) お答えいたします。
まず、先生お尋ねの大手銀行はつぶさないことを原則としていたのに拓銀が破綻したというふうな点でございますけれども、大蔵省といたしましては、国際的に活発に活動している銀行につきましては、その破綻により国内のみならず国際的にも非常に大きな問題が生ずるという懸念がございますことから、その金融機能が損なわれ内外の金融システムに大きな動揺が生ずることのないよう対処するという旨を述べてきたところでございます。
拓銀でございますけれども、海外の営業拠点は既にこの四月に廃止をするという旨、発表いたしておりまして、既に海外業務から事実上の撤退をしております。したがいまして、もはや国際的に活動しているというような銀行ではございませんけれども、我が国、とりわけ北海道におきましては重要な金融機能を果たしてきているということも事実でございます。こうした状況を踏まえまして、受け皿銀行を確保し、引き続き預金者や健全な融資先の取引に支障が生じないよう政府としても最大限配慮することとしているところでございます。
具体的に申し上げますと、北海道の機能については、北洋銀行が受け皿銀行としてこれを引き継ぐというようなことを既に発表しているわけでございます。こうした対応によりまして、拓銀が果たしてきた金融機能は今後も維持されまして金融市場の安定性は十分確保されていくものと考えております。
いずれにいたしましても、大蔵省といたしましては、我が国金融システムへの内外の信頼を維持していくため、今後とも適切に対処してまいりたいというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115206X00519971125/142
-
143・千葉景子
○千葉景子君 今お話がございましたけれども、これまでは、その波及効果などの大きさも考えながらでき得る限り金融破綻をさせない、そして秩序を維持していく、こういう体制を大蔵省もとってこられたわけです。いわば、よく言われるように護送船団方式とも称せられてまいりました。しかし、今回の動きというのは、拓殖銀行についても検査を継続していた、しかしその過程を乗り越えて破綻が明るみに出ていく。山一の場合も、やはりその衝撃の大きさ、そういうことを考えながら対処していく途中にもう市場の方がそれを受け付けない、こういう状況が生まれてきているわけです。
そういう意味では、これらの一連の動きを見たときには、やはり今、これまでの日本の金融行政、あるいは企業に対する行政の対応のあり方、これがある意味では破綻を来した、市場から明確にそういうやり方がノーと言われたと言ってもいいのではないかという気がいたします。
しかしながら、これは日本の経済、金融にとってもこれから大変大きな不安を増す事件でもございますので、いろいろな対処をしていかれるというのは当然かというふうに思います。それに先立っても、実態がどうなのか、どういう企業実態にあるのか、不良債権が、簿外債務があると山一などは言われておりますけれども。あるいは拓銀の場合でも、検査結果で結局どういうことがわかったのか、こういうことをまずきちっと明らかにしていただきませんと、市場の不安とか、あるいはこれから本当にそれこそ健全な市場をつくり企業経営を確立していくという意味でも、何にも実態がわからないのではそれに対応のしょうがないということになるんです。
まず、大蔵省としてはこのような実態、検査を続けてこられたその結果をきちっと明らかにして、その上でいろいろな対応策というのを提供、あるいは提起をすべきではないかというふうに思いますけれども、これまでなかなかこの検査結果というのは公表いただけなかったというのが実情でございます。それについてはいかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115206X00519971125/143
-
144・内村広志
○説明員(内村広志君) お答えいたします。
個別の金融機関等の検査結果につきましては、それを公表した場合は、検査時といういわば特定の時期における生の情報を公開し、場合によっては信用不安を惹起し、預金の流出等不測の事態を招きかねず、信用秩序等に重大な影響を及ぼすおそれがございますこと、さらには、金融機関の取引先などに不測の損害を与えるおそれがあるほか、プライバシーの侵害の問題を生ずることなどの点からこれまでも公表を差し控えさせていただいているところでございまして、御理解いただきたいというふうに思っております。
金融機関の経営状況の情報の開示につきましては、ディスクロージャー制度の中で金融機関みずからがより適切に反映させていくべきものというふうに考えております。
なお、金融機関に対する検査につきましては、業務の健全かつ適切な運営を確保する観点から実態把握に努めておりますが、問題点等がありますれば当該金融機関にその旨を伝えますとともに改善を求めているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115206X00519971125/144
-
145・千葉景子
○千葉景子君 しかし、今おっしゃったことは今の状況の中で本当に通用する話でしょうか。既に公的資金も使ってこれからの信用不安を防止していこうというような話も出ております。むしろ今回の破綻によっていろいろな意味での不安やら混乱が出てきているわけです。検査結果を発表すると改めていろんな混乱が起こるからできないんだという段階ではもうないんではないか。少なくとも、これから公的資金をつぎ込んででも不安を解消し、新しいこれからのルールづくりに向かっていこうというときに、検査結果すら発表できないというのは非常に国民にとっても信頼を持って大蔵省の対応に期待できないということになるのではないかというふうに思います。
そういう意味では、きちっと検査の結果あるいはその実態を明らかにした上で次の対応をとっていただきたい。ディスクロージャーの話が出ましたけれども、これも当然今後の問題であろうというふうに思いますけれども、改めてその点については指摘をさせていただきたいというふうに思っております。
ところで、今ディスクローズの話も出ましたけれども、今後公的資金を投入してこの問題を解決していくというお話がございますけれども、私はやっぱりその前提には幾つかの条件がなければならないというふうに思います。その点について、大蔵省としてはどう考えておられるのかお聞きをしておきたいというふうに思うんです。
今お話がありました金融機関などのディスクロージャー、それによって実態を明らかにしていくことが必要だとおっしゃいましたね。しかし、これまでなかなかこれについてのきちっとした明確なルールはございません。そういう意味での金融機関等のディスクロージャーの徹底、こういうことについてどう取り組んでいくのか。あるいは、公的資金というのがこれまでも非常にルーズに使われてまいりました。個別対応で一体どういうケースでどういう事態に対してどの程度の公的資金を使うのか、こういう問題も日銀特融の問題と同時に非常に不明確になっていたというふうに言わざるを得ないと思うんです。あるいは、今申し上げたように検査という機能がございましたけれども、結果的にはその検査機能というのが十分に能力あるいは効果を発揮してこなかった、こういうこともあるかというふうに思うんです。
こういう幾つかの点、気になる点でございますけれども、今後どう取り組んでいくおつもりがあるのか、これまでの反省あるいはこれまでのことを改めて見直す中でどう考えておられるのかお聞きしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115206X00519971125/145
-
146・内藤純一
○説明員(内藤純一君) お答え申し上げます。
まず、今後の金融行政というもののあり方でございますが、大蔵省といたしましては、まず一方で金融システムの安定性の確保ということに万全を期すということ、それを踏まえまして、今後の金融行政のあり方につきましては自己責任原則の徹底と市場規律の十分な発揮を基軸とする透明性の高い行政を行っていくことが重要であるというふうに考えております。
当局といたしましては、このような考え方に立ちまして市場のチェック機能の活用を図るという観点から、金融機関のディスクロージャーの一層の拡充を促していくということとともに、このようなディスクロージャーを通じた市場規律というものを一層補完していくというような考え方で、自己資本比率という客観的指標に基づく新しい監督手法とされております早期是正措置の導入やその前提としての金融機関における資産の自己査定、あるいは外部監査の活用といった方法、そしてまたリスク管理体制等に対する私どもの検査によりましてこれをチェックしていくというざまざまな手法を用いまして、適切な監督に努めてまいりたいというふうに考えております。
それから、日銀の資金という問題に言及なさいましたけれども、この日銀の特融につきましては、例えば拓銀の場合に日銀特融が発動されておりますが、これは今後基本的に預金保険機構によりまして、預金保険機構の発動等を通じまして資産の買い取り等拓銀の資産処分が行われまして、その資金をもって原資としてこれに返済されていくというふうなことでございます。また、拓銀の資産が自己資本、現在約三千億ございますけれども、仮にこれを超えてロス化したというような場合、すなわち債務超過になった場合でございますけれども、この場合には預金保険機構がこのロス埋めのための金銭贈与を行うという制度がございます。したがいまして、そうした資金によりまして特融の返済はきちっと確保されているというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115206X00519971125/146
-
147・千葉景子
○千葉景子君 きょうは法務委員会ということで関連して大蔵省にお聞きをいたしておりますので、大臣もおいでではございませんので最終的な大蔵省としての考え方、あるいはこれからとるべき態度のようなことについてはなかなかお聞きしにくいところではございますけれども、経済がグローバル化をし、世界が一体となって金融が営まれ、そして企業活動が行われている、その中で日本でもそれに合わせて日本版の金融ビッグバンという改革が進められてきた。そういう中で、今お答えがございましたような問題というのは既に指摘され続けてきている。ディスクロージャーが必要である、あるいは検査体制が十分であったかどうか、あるいは公的資金あるいは特融のあり方をどうすべきか、これまでどおりでいいのかと。今、多分その返済はできるだろうというお話でしたけれども、山一などは二度目の特融を受けるということの中で、本当にそれが返済されるのかどうかというのもまだまだ疑問視されているわけです。
こういういろんな問題点が指摘をされながらも、個別救済、あるいはその場しのぎと言っては言い過ぎかもしれませんけれども、そういう対応をしてきた行政のあり方というのはやはり厳しく今責任を問われなければならないというふうに思うわけです。そういう意味で、ぜひ大蔵省に対して、これは政府全体かもしれませんけれども、改めてその点について反省も促し、そしてできる対処をとっていただきたい。私どもも、それについては今後も引き続きいろいろな問題を指摘させていただきたいというふうに思っているところです。
そして、もう一点お聞きをいたしますけれども、今後、結果としてこういう事態が起こらない、そして投資家やあるいは消費者と言われる我々一般の国民を保護していくためにはやっぱり新しいルールづくりというのが必要ではないかというふうに思います。そういう意味で、大蔵省の方でも検討はされているやにお聞きをしておりますが、こういう金融取引全体をルール化するような法律、金融サービス法と仮称されるのかもしれませんけれども、そういう法律などの整備が早急に必要なのではないかというふうに思われますが、その点についてはいかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115206X00519971125/147
-
148・内藤純一
○説明員(内藤純一君) お答え申し上げます。
今後、金融システム改革の進展に伴いまして、業態にとらわれない自由な市場への参入や、多種多様な金融商品、そしてまたサービスの提供が一層進んでいくことが予想されるところでございます。そこで、そのような状況のもとでは、従来のいわば縦割りといいますか、業法中心の枠組みといったものでは対応できないのではないかということでこれの見直しをいたしまして、むしろ金融サービスの利用者の視点に立ちまして、市場参加者に共通に適用される横断的かつ公正なルールの確立について考えていく必要があるという認識をいたしております。この点につきましては、委員の御指摘のとおりだというふうに私ども考えております。
そこで、ことしの六月でございますが、金融制度調査会において答申が出されておりまして、この答申の中にも、幅広い金融サービスに対して整合的な規制を行う新しい法的な枠組み、いわゆる金融サービス法を検討すべきであるという基本的な方向性については、おおむね意見の一致が見られたところであり、今後幅広く検討を進めていく必要があるというような指摘がございます。
こういった考え方を踏まえまして、私どもにおきましては、七月から新しい金融の流れに関する懇談会といったものを発足いたしまして、このような問題意識に基づきまして、今後の金融システム改革の進展状況を踏まえつつ、幅広い金融サービスに対する整合的なルール、いわゆる金融サービス法といったものを確立する新しい法的な枠組み等を視野に入れまして、中期的な視点で幅広くかつ理論的な検討を現在鋭意やっているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115206X00519971125/148
-
149・千葉景子
○千葉景子君 そこで今、今回の改正に絡みながら大蔵省からもお話を伺ったんですが、今回の改正がそういう大きな今の金融市場の変化、あるいは行政のあり方に対する再検討が求められるようなそういう情勢の中で行われるわけです。この法改正、罰則を強化する、あるいは一定の新設の規定をつくる、そういうことによって総会屋の根絶と株式会社の運営の健全性を図ろうというんです。
やらないよりはできるところから手をつけて、あるいは違法行為はきちっと厳しい処罰をしていくという体制自体はわかるんですけれども、これだけ大きな流れの中で、そしてこういう背景を持ちながら総会屋なるものが企業に食い込んでいく、こういう状況で今回の改正、どれだけ効果が上がるでしょうか。その辺の御認識、大臣はどのようにお持ちでございましょうか。マイナスになるということは私もあるとは思いませんけれども、これが本当に大きな効果を上げていくのかどうか、その辺についてはどの程度の御認識をお持ちでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115206X00519971125/149
-
150・下稲葉耕吉
○国務大臣(下稲葉耕吉君) 千葉委員からの最初の質問で、最近の社会経済情勢及び株式会社の運営の実態にかんがみという御質問がございまして、私はその点、商法の改正の面に限定しましてお答えいたしましたけれども、これはやはり基本的な問題だろうと思います。
今回の改正でどの程度のメリットがあるか、それは、私自身最初に申し上げましたように、今まで二百件もこの問題で起訴し、そして総会屋自体の数も減っている、だから、それなりのメリットはあったんじゃないかということを申し上げております。しかし、それで総会屋が根絶できるとは思いません。これは、もう基本的には先ほど来申し上げておりますように企業の、なかんずくそのトップの心構えの問題だろうと申し上げておりますけれども、さらに深めていきますと、委員お話のありましたように国際化の問題、グローバル化の問題、そういうふうな中で、日本の株式会社がいかにあるべきかどうかという問題に帰着してくるだろうと思います。
午前中、林委員のお話にもございましたけれども、会社はだれのものかというふうな立場からする見直しというものも総合的に進めていかなくちゃいけない。そういうふうな中で、やはり会社の健全な運営というものがそれぞれの立場で私は追求されていかなければならない、こういうふうに思うわけでございます。
ですから、そういうふうな立場からいいますと、今回の改正もぜひよろしくお願いいたしたいという思いと同時に、もっともっと問題は大きいんだと、そういうふうな問題を一つ一つどういうふうな形で取り上げていくか、これやっぱり言うだけじゃだめでございますから、一つ一つ具体化して今日的な問題にしていかなくちゃならない、このように思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115206X00519971125/150
-
151・千葉景子
○千葉景子君 そういう意味では、これも改革の一歩としてぜひ効果が上がるように考えていきたいものだというふうに思います。
ところで、今回の改正に至るまでには、たび重ねて商法の改正そして総会屋の対策というのも行われております。今回の改正の前が昭和五十六年の改正でございます。そこでもやはり総会屋に対する関与を排除しよう、根絶を図っていこうという趣旨もあり改正が行われたわけですけれども、結局、現在に至るまで考えてみますと、その対応も異なってきたとはいえ総会屋の根絶というのはなかなかできていない、今でも相当多数の企業が総会屋との関連を持ち続けていると、こういう状況がございます。そして、このところも総会屋絡みの事件が摘発をされてくる、こういうことになります。
どうでしょうか、五十六年に改正したにもかかわらず根絶もできない、また今回改正になる。この間でどういう問題点があったのか、あるいはそれを踏まえて今回はこういう点で根絶に向けた一歩がさらに進むんだと、具体的にはどういう点についてそういうことが言えるのでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115206X00519971125/151
-
152・下稲葉耕吉
○国務大臣(下稲葉耕吉君) 繰り返して御答弁する点もあろうかと思いますけれども、五十六年に改正されましたときには利益供与・受供与罪が初めて設定されたわけでございます。初めて設定された当時も日本の企業は、大変な問題だ、今までなかった新しい規定が入ったというふうなことで大変関心を持たれたのは事実でございます。罰則は軽うございました。
しかし、新しくそういうふうなことが犯罪として取り上げられてきたということで今日まで来ているわけでございますが、そういうふうな中にもかかわりませず、具体的に申し上げますと、伊勢丹事件を初めといたしまして総会屋の関係というのがいろいろ出てきた、まことに残念なことでございます。
そういうふうな中で、社会構造がいろいろ複雑に入り組んできているというふうなことに取り入りまして、とにかく株主総会というのを一分でも秒でも早く終わらせたいという会社側の安易な気持ちにつけ込まれて総会屋がどんどん浸透してきている、しかもそれが企業のトップまで入ってきている、これが一つの特徴だろうと思うのでございます。そのようなことからいたしますと、一定の効果はございましたけれども必ずしも抑止力が十分でなかったという点は言えると思います。
そういうふうな観点から、今回の改正では、既に御承知のとおりに利益供与を要求する罪を新しく設けたわけでございます。供与、受供与というのは贈収賄罪と同じように共犯の関係に立つわけですけれども、利益供与を要求するという罪は要求された方は犯罪にはならないわけでございます。したがいまして、企業のサイドから、こういうふうな要求がありましたということを警察当局なり司法当局に申し入れることが供与、受供与の関係よりも易しくなります。そういうふうなことで積極的に協力していただきたい。
今までは供与、受供与でしたから相被疑者になります。ところが、今度は要求された段階で、向こうは犯罪者だけれども、こっちは言うなれば被害者といったらなんでございますけれども、受けた方でございますから。その辺のところが今度の新しい法律で一つの大きなメリットになるんじゃないだろうか。いろいろ御意見がございまして、その受けた方も申告する義務を付したらどうかというふうな議論もございましたが、その答弁は略します。
さらに、もう少し厳しくしようというふうなことで、脅迫にまでは至らないけれども威迫を用いて要求をする、そういうふうな罪を新設して、五年の刑期にして時効を五年にするというふうなところまで踏み込んできているわけでございます。ですから、私はこういうふうな形で御協力をいただきまして法案が成立する、できるということになれば、時効の問題等々もいろいろ御議論をいただきましたけれども、相当前進した形になりますし、相当な効果を実質的に上げることができるんじゃなかろうか、そういうふうに思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115206X00519971125/152
-
153・千葉景子
○千葉景子君 ぜひそう期待したいところなんですけれども、実際のところを見ますと、なかなか根深いものがあるような気がいたします。
きょうは、ちょっと警察庁にもおいでいただいているんですけれども、あるアンケートによりますと、企業のうち千二百社が総会屋との絶縁を宣言したということが言われております。千二百社が絶縁を宣言したということは、当然のことながらそれ以上の数が関連を持っていたということになるのではないか。それから、百社でしょうか、情報誌の定期講読を停止している。百社停止したというわけですから百社は定期講読をしていた、さらにそれ以上のものがあることを推測させるわけです。
こういう実態から見ますと、一体総会屋というのは今企業とどんな関係を持っているのかということをちょっと警察庁の方にお聞きをしたいんです。これは警察庁の方で統計をとるというお話ではありませんのでわかりにくいかもしれませんけれども、これまでのいろいろな検挙事例などを踏まえてということで結構でございます。
例えば企業と総会屋とはどういうことがきっかけで関係を持つことになるのか。あるいは、総会屋の手口というんでしょうか、これまではどちらかというと総会を荒らす、そういう形態もよく指摘をされましたけれども、最近はむしろ企業与党のような言い方をされたりする、一体実情はどうなっているんだろうか。あるいは、総会屋がどういう形で利益を受け、あるいは企業が総会屋に利益を供与しているんだろうか。普通は現金であるとか株の利益というようなこともあるんですけれども、どういう結びつき方をしているのか。その辺、検挙の事例等も含めて、警察庁の方で実態、知っている状況がございましたらお教えいただきたいというふうに思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115206X00519971125/153
-
154・宮本和夫
○説明員(宮本和夫君) 総会屋と企業との関係、特に五十六年当時に商法が改正されまして、これまでの検挙事例から見ますと、一たんはそこで遮断をしたような企業でありましても、いわゆるその後の長時間の株主総会であるとか、そういったことからまた総会屋との関係を復活させたような例が大変多いように理解をいたしております。
それから、その利益供与の手口と申しますか手段と申しますか、こういったものもだんだん複雑、巧妙化をいたしてきておりまして、つき合いと称して情報誌の講読名下に全員を受け取るとか、また下請参入名下に全員を受け取るとか、自己が出版する機関紙等への広告料掲載名下に全員を受け取るとか、いろいろな名目で経済取引を装いつつ不当な要求を行っている、こういったような実態であろうかと理解しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115206X00519971125/154
-
155・千葉景子
○千葉景子君 どうも私もわかりませんけれども、企業の方も、ある意味では総会を、後ろめたいことがあるばかりではなくとも、要するに日本の企業自体がどこに顔が向いているのか、どうもやっぱり株主にきちっとした説明をするということではなくて、できるだけしゃんしゃんと総会が滞りなく短時間で終わる、そのためには総会屋に一定の利益を提供したりすることも一つのコストというんでしょうか、そんなふうにこれまで思ってきた節もあるんではないか、そんな感じがいたします。そういう意味では、こういう実態を根絶していくというのはなかなか容易なことではないのかな、そういう気もいたしますけれども、これが大きなきっかけになっていくようにぜひ期待をしたいというふうに思うんです。
それからもう一点ですが、こういう状況の中で、今申し上げましたようにどうも株主総会というのも、企業の健全性からいうと、必ずしも健全な株主総会が行われているようには思えないわけですね。これも警察庁の警備などの実態からしかわからないかと思いますけれども、株主総会というのはほぼ短時間で、あるいは開催日もかなり集中的に行われている、こういう実態があると私も認識をしているんですけれども、その点についてはどうでしょうか。わかる範囲でお教えいただきたいと思います、発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115206X00519971125/155
-
156・宮本和夫
○説明員(宮本和夫君) 株主総会につきましては、最近は、平成六年以後、特に違法事案もなく平穏に推移しているというのが実情のようでございまして、その集中日の傾向というのは、全体としてここ数年一つの日に集中される傾向があるというふうには承知をいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115206X00519971125/156
-
157・千葉景子
○千葉景子君 これも統計という話にはなりませんけれども、株主総会の開催の記事とか報道とかあるいは広告、こういうのを見ますと、かなりの部分が一定の日時に集中をして行われる、そしてそれによって総会屋の介入を分散しようというようなこともあるんでしょう。それから、先ほど言いましたように、短時間で終わったというケースなどを私もいろいろな者から聞いておるわけですけれども、このようなこれまでの悪弊というかシステムというか、こういうものをこれから解消していくためにぜひいろいろな努力をしていただきたいものだというふうに思います。これは、先ほどから出ております企業の側のモラルということもあろうかというふうに思うんです。
こういう実態のもとで今回の改正の内容についてお尋ねをしていきたいというふうに思うんです。
まず、今回は罰則の強化ということが一点、それから新たに新設される規定、それからこれまでの罰則を、一律というのはおかしいんですけれども、刑の均衡上というんでしょうか幾つか引き上げると、こういうのが基本的な内容かというふうに思います。
そこでまず、一番大きな、先ほどから出ております利益供与の罪ですね、これが法定刑が六月から三年に引き上げられ、そして罰金が三十万から三百万に引き上げられる、こういう改正になります。
罰金の額の考え方、これをまず基本的にお聞きしたいんですけれども、罰金刑というのは、三百万あるいは五百万と言われると、一方ではなかなかの額だな、私が何かあれして三百万、五百万科せられたら、これは結構きついものがあるなというふうに思うんですけれども、こういう経済事犯などを考えますと、一方では非常に低いんじゃないか。例えば保釈保証金などを考えると、数億という保釈保証金でも、どこから出てくるのかよくわかりませんけれども、それによって保釈がされるというようなケースなどもある。
そういうことを考えると、やはり罰金というのはなかなか難しいなという気がするんですけれども、まず前提として罰金刑のあり方というんでしょうか、それについては基本的にはどういう基準あるいは考え方に基づいて規定がされるものでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115206X00519971125/157
-
158・原田明夫
○政府委員(原田明夫君) 御質問の趣旨からいたしまして、若干抽象的になってしまって恐縮なのでございますが、一般的に、犯罪に対する法定刑ということになりますと、その犯罪の重大さと申しますかその犯罪の悪質さ等に応じまして、一つにはそのような犯罪を犯さないようにという特別の抑止効果という点、また一方では法益を保護して社会秩序を維持するためにはどういう刑罰が相当かという観点からこれまで定められてきたと考えております。
具体的には、その犯罪が社会や個人にもたらす害悪または危険の内容や程度、その犯罪の動機として類型的に考えられる各種の事由、その犯罪から得られるべき利益の有無とその大きさ、それと他の犯罪の法定刑との均衡等を総合的に定められるべきものというふうにこれまで考えられてきたと存じます。その上で、罰金刑の額そのものにつきましては、そのような一般的な考え方に加えまして、特に罰金刑が懲役刑と相まって発揮される抑止効果や、その額そのものにつきましては経済情勢、貨幣価値の変化等を考慮の上定められると。
特に、懲役刑のほか罰金刑が選択刑として定められるという場合には、懲役刑の場合はあくまでこれは自由刑でございますので、自由刑に付するまでもない事犯について、ある一定の形態のものについては罰金刑で賄うと言ったら語弊がございますが、それで当該犯罪についての評価がし切れるという場合には、罰金刑を選択刑として定めておくというのがやり方でございます。
ただ、一般的に考えますと、我が国の刑法もそうでございますが、その基本法たる刑法、その他の犯罪につきましても、従来、ともすると犯罪を犯す人については個人的な犯罪としてとらえる基本的な考えのもとにあったろうと思います。そういたしますと、基本的には自由を束縛し一定の定役を科す懲役刑か、あるいは定役を科さない禁錮刑か、あるいはそれまでに至らない罰金刑かというふうな観点から定められており、なおかつこれは個人が対象でございますので、罰金刑そのものもいわば何といいますか、法外な金額というのは刑法の建前からいってもそれほどございません。
ただ、最近の状況を考えていきますと、犯罪が組織をもって行われるというような状況になってきますと、むしろ懲役刑よりも、いわばその犯罪をペイさせないという観点から罰金刑を多額にした方がいいのではないかという考え方もございまして、中には、例えば経済犯罪の多くは罰金刑について何億という罰金刑を科することができるようにされている動きも最近は出てまいりました。
それから、そういう場合のほかに、今度は犯罪による利益でございますね、犯罪によって得られる利益をそのまま放置しては犯罪の抑止効果にならないという観点から、没収あるいは追徴制度を充実していこうという考え方が出てまいりました。
そのあたりの考え方からいたしますと、罰金刑そのものにつきましては、やはり一般の個人ということから考えますとある一定の限度がおのずからあろう、それについては従来の法体系の中で同種のものについて定められたものを一つの根拠としながら、個別にその範囲と申しますか引き上げるべき限度が考えられてきたのが従来の改正の経過であろうというふうに考えるわけであります。
これは一般論ということでお答え申し上げました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115206X00519971125/158
-
159・千葉景子
○千葉景子君 時間になりましたので、残余はまた別の機会にさせていただきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115206X00519971125/159
-
160・照屋寛徳
○照屋寛徳君 社会民主党・護憲連合の照屋寛徳でございます。
何点か私の方からも質問をさせていただきたいと思います。
まず、本法律案は、いわゆる総会屋の根絶を図るとともに株式会社の運営の健全性を確保することを目的としており、その改正要点も株主の権利行使に関する利益供与罪及び利益受供与罪の法定刑を引き上げるとともに、利益供与要求罪並びに威迫を伴う利益受供与罪及び利益供与要求罪の新設などであり、基本的に賛成であります。そして、一日も早い成立を強く望んでおることを冒頭申し上げておきたいというふうに思います。
ところで、昭和五十六年に商法等の一部を改正する法律案の審議が第九十四回国会で行われました。同年六月二日の参議院法務委員会では商法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議を行いまして、その附帯決議の中で、「株主総会の形骸化を防止し、その適正な運営を図るため、いわゆる総会屋の絶滅に一層の努力をすること。」と、こういうことが付されたわけでございますが、昭和五十六年以降、今日の経過に照らしますと、必ずしも総会屋の絶滅がうまくいかなかった。
多くの関係者の御努力があったことは私は多とするものでありますし、法務大臣からお話がありましたように、総会屋そのものの数が減ってきているんだと、こういう取り締まり効果等もございました。しかし、残念ながら昨今の四大証券会社の、しかも企業のトップがやみの世界と言われる総会屋と深い癒着をして想像を絶するような犯罪が行われておった。こういうことを知るにつけ、まさに驚きでありまして、本法律案が早急に成立をして、総会屋の絶滅へ向けた効果ある対策がとられることを強く望んでおるということを重ねて申し上げておきたいと思います。
さて、本法案の目的であります総会屋の根絶、絶滅との関係で、きょうは当委員会でも朝から総会屋についてのさまざまな議論が尽くされているわけでありますが、議論の中でありましたように、総会屋はまさに日本独特の企業風土に根差した存在である、決して法律用語でも経済用語でもない概念であるわけであります。
そこで、この総会屋というのを法務省はどのような概念でくくっておられるのか、まず改めて見解を求めたいというふうに思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115206X00519971125/160
-
161・森脇勝
○政府委員(森脇勝君) 午前中にもお答え申し上げましたけれども、この総会屋の定義というのは、そもそも存在しないわけでございますのでこれを御説明するのは大変難しいところだろうと思います。
そういった観点から、午前中御紹介いたしましたとおり、学説の中には行為態様に着目してこれを説明しておるというところから、会社の株式を取得して会社に金品を強要し、その供与を受けると総会において一般株主の発言を抑えて会社側の議事進行に協力する、会社からこれを拒まれると、逆に総会において議事の進行を妨害して議事を混乱させる、こういったような者を総会屋と言うという考え方が示されておりまして、私どももこういう者を総会屋と言うのであろうということで観念しておるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115206X00519971125/161
-
162・照屋寛徳
○照屋寛徳君 おっしゃるとおり、なかなかこれが総会屋だという概念がないわけでありますが、しかしながら本法律案の目的は、そもそも総会屋を根絶すると、こう言っているわけですから、例えば昭和四十八年九月三日の東京地裁の判決で、その判決文の中で、総会屋の概念というか総会屋というのはこういうものだというふうにお触れになっているのもあるわけでございます。
ところで、きょうは警察庁もおいででございますので、しからば総会屋の現下の実態というか人数等を含めて、なるたけわかりやすいように詳細にお教え願いたいというふうに思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115206X00519971125/162
-
163・宮本和夫
○説明員(宮本和夫君) 警察では、株主の権利の行使に関し企業から不正に利益を得るなどの活動を行う者を総会屋として把握いたしまして、必ずしも暴力団そのものではありませんけれども、これに準ずる脅威を与える者として取り締まりの対象といたしております。
この総会屋の勢力につきましては、改正商法が施行された直後の昭和五十八年には約一千七百人を把握しておりましたが、以後減少傾向にありまして、平成八年末では約一千人を把握しているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115206X00519971125/163
-
164・照屋寛徳
○照屋寛徳君 総会屋と関連いたしまして、よく会社ゴロだとかあるいは新聞ゴロだとかという、概念というんでしょうか、呼ばれ方をするわけであります。
警察庁、この会社ゴロだとか新聞ゴロ、これと総会屋をひっくるめて総会屋等というふうに呼称する場合もあるようでございますが、総会屋と会社ゴロ、新聞ゴロというのはどこがどのように違うんでしょうか、お教え願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115206X00519971125/164
-
165・宮本和夫
○説明員(宮本和夫君) 総会屋、会社ゴロ、新聞ゴロ、いろいろ言われておりまして、いずれも警察といたしましては企業活動から威力を用いて不正に利益を得ることを目的とする反社会的な勢力ということで取り締まりの対象にしておるわけでございます。
彼らの手口といたしまして、株主権の行使に関しいろいろ不正な利益を得るという者が総会屋というグループでくくられますけれども、その他、自己の発行する雑誌などについて、例えば企業内部のスキャンダルでありますとか、内部の情報でありますとか、こういったものを公表するといったようなことをおどしの材料に使うとか、こういった者が新聞ゴロとか会社ゴロとか俗に言われております。
総会屋とは株主権の行使ということで株主総会の出席ということを一つの大きな基準とすることができようかと思いますけれども、企業から不正な利益を得ようとするその手段に違いはあるけれども、いずれも警察として取り締まるべき対象であるということで把握をいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115206X00519971125/165
-
166・照屋寛徳
○照屋寛徳君 企業から不正な利益を得ようとする点では総会屋も会社ゴロ、新聞ゴロも同一だと。ただ、言われている会社ゴロとか新聞ゴロというのは、株券は所有していなくて、要するに株主総会に出席をして不正行為を働く、こういうところはないんですね。
それをまずお聞かせ願いたいということと、それから、例えば今言われました会社ゴロや新聞ゴロと呼ばれる不正集団以外に、総会屋類似の暴力団というんでしょうか、そういった存在はどういうふうに認定をし確知をしておられるんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115206X00519971125/166
-
167・宮本和夫
○説明員(宮本和夫君) 初めの御質問でございます株主権の行使に関しということを通常企業から不正の利益を得る手段としておる者に対しては総会屋という形でくくっております。
それから、暴力団との関係でございますけれども、先ほどお答えいたしました約一千名という総会屋のうち暴力団勢力、これは約九十人、そのうち構成員が約五十人ということで把握をいたしておりますが、それ以外の者につきましてもかなりの者が暴力団と何らかのつながりを有する者と見られるところであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115206X00519971125/167
-
168・照屋寛徳
○照屋寛徳君 それでは次に、警察庁にお伺いいたしますが、総会屋の不正行為の手段、方法、形態、いわゆる犯罪手口のようなもの、どういう特徴や形態があるのか。さらには、ゴルフコンペだとかセミナーだとか海外視察旅行、観劇会、あるいは各種パーティーなどを開催して祝儀などの名目で収入の増大を図る活動も認知をされておる、こういうふうに書いてある文献もあるわけでありますが、警察庁として今申し上げました総会屋あるいは総会屋類似の不法集団の手口、形態などについての認識をお教えいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115206X00519971125/168
-
169・宮本和夫
○説明員(宮本和夫君) 最近の検挙事例などから見た総会屋等の恐喝と申しますか、不当な要求の際のおどしでありますとか威力の誇示の手段、方法といたしましては、例えば株主総会へ出席した上でささいな問題について殊さら質問するなど議事の円滑な進行の妨害を図るとか、また自己が総会屋であることまたは暴力団とつながりがあると、こういったことを強調するなどいたしまして、その威力を利用して相手方の身体に何らかの害を加えることを告知したりほのめかしたりとか、また入手した企業の内部情報でありますとかスキャンダルとかいったものを公表するとか、またすると告知したりほのめかすとか、こういったような手段、方法で企業をおどすのが主なものであります。
また、おどすことにより利益を得ようとするその利益の得方でございますけれども、ゴルフコンペであるとか観劇とかいろいろ言われてございますけれども、これまでの検挙の例から見ますと、情報誌の購読でありますとか広告の掲載要求でありますとか、下請であるとか元請への参入要求、さらには融資の要求とか、実にさまざまな名目で経済取引の形を装って不当な要求をいたしておるのが実態であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115206X00519971125/169
-
170・照屋寛徳
○照屋寛徳君 今の答弁との関連でございますが、株主総会に直接出席をするわけじゃないけれども、総会屋もしくは総会屋類似の不法集団がいわゆる情報誌を発行してそれの広告料名下あるいは購読料名下でお金を巻き上げる、巻き上げると言った方がいいんでしょうね、そういうやり方があるやに聞いておるわけであります。
警察庁として、総会屋と思われる者あるいは総会屋類似の不法集団が発行している情報誌というのはどの程度認定をしておるのか、その数をお教えいただきたいということと、おわかりであれば発行部数など、全体で結構でございますから、そのことについてもお教え願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115206X00519971125/170
-
171・和田康敬
○説明員(和田康敬君) 総会屋などが企業に対して情報誌等の購読要求を行いまして、その購読料名下で資金を獲得しておる状況というのは広くうかがわれるところでございますが、購読誌すべてあるいは幾らぐらいその企業が購読しているかということにつきましては、必ずしもその詳細な実態については明らかではございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115206X00519971125/171
-
172・照屋寛徳
○照屋寛徳君 私は、この情報誌の実態究明というのは総会屋を根絶していく上で非常に大事なことだと思うんです。警察庁は、今回の四大証券会社の摘発を契機に、この情報誌の購読をやめるように、こういう行政指導もしたやに聞いておりますけれども、詳細な実態をやっぱり把握するところから具体的な総会屋根絶、総会屋対策が有効に取り組まれるのではないか、こういうふうに思っておりますので、引き続いてその実態の把握への努力の決意をお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115206X00519971125/172
-
173・和田康敬
○説明員(和田康敬君) 企業等に対しまして、総会屋等の発行する情報誌等の購読要求についてそれを断るようにということで要請をいたしておりまして、その関係を切ったところにつきまして、具体的にどのような講読誌をとっておられたのかということについても企業側から情報提供をいただきまして、現在約九十社で、これは延べでございますけれども、一万一千誌が打ち切られておりまして、その講読誌につきまして現在関係当局において分析をいたしておるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115206X00519971125/173
-
174・照屋寛徳
○照屋寛徳君 それでは、このような総会屋に対する従来の法制面での対策と、それから企業に対して総会屋対策をどのように具体的に指導してこられたのか、警察庁にお伺いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115206X00519971125/174
-
175・和田康敬
○説明員(和田康敬君) 警察といたしましては、従前から企業と暴力団あるいは総会屋等との関係遮断に向けまして、これらに対する取り締まりの徹底とあわせまして、企業あるいはその業界団体等の会合において、あるいは各都道府県警察に企業防衛の協議会というのがもう全国の都道府県単位で設置をされておりますが、そういった協議会の場において幾度となく関係遮断に向けての指導を行っております。
その内容といたしましては、暴力団、総会屋等に対する寄附金ですとか賛助金を提供することの中止でございますとか、あるいはそういった情報誌等の講読の中止、暴力団、総会屋等こういったものを利用しないこと、それから違法、不当な要求には一切応じない、さらに違法、不当な要求があった場合には速やかに警察の方に通報していただくようにというような形で指導を行ってきたところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115206X00519971125/175
-
176・照屋寛徳
○照屋寛徳君 次に、総会屋と暴力団とのつながりの実態について何点か質問をさせていただきたいと思います。
先ほど、総会屋の中で暴力団が約九十人ぐらいというふうにおっしゃいましたでしょうか。これは、平成八年現在で約一千人おる総会屋に占める暴力団の割合としては少ないなという印象を抱いておるわけであります。別の資料によりますと、現在総会屋の五人に一人は暴力団ではないか、こういうふうに指摘する資料もあるわけでありますが、警察庁が認知をしております総会屋の中で暴力団員が占める割合、それは人数でも結構でございますから、もう一度御答弁いただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115206X00519971125/176
-
177・宮本和夫
○説明員(宮本和夫君) 現在把握している総会屋は約一千人でございまして、これのうち暴力団勢力は約九十人と把握しておりますけれども、これ以外の総会屋であってもかなりの者が暴力団と何らかのつながりを有しているものと見ているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115206X00519971125/177
-
178・照屋寛徳
○照屋寛徳君 暴力団と何らかのつながりのある者というのは、いわゆる準構成員みたいな認定なんでしょうか、あるいは企業舎弟のような認定なのか。さらに、その約九十人というのは正式に暴力団の構成員、組員というふうに認知された数でしょうか、もう一度。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115206X00519971125/178
-
179・宮本和夫
○説明員(宮本和夫君) 約九十人のうち、正式な構成員が約五十名、準構成員が約四十名ということでございます。
それから、いろいろな関係、つながりを有するという者につきましては、この関係につきましてはいろいろ深い、浅いがあろうかと思いますけれども、いろいろな彼らの世界でのトラブルなり問題なりの処理の際に暴力団とのつながりを誇示していろいろな問題の解決を図ろう、こういうことのために深い関係を有しているものと思われます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115206X00519971125/179
-
180・照屋寛徳
○照屋寛徳君 ところで、その総会屋でありますが、昨今、総会屋がグループ化をする、グループを結成するという傾向にあるんだというふうなことが言われております。
今、御答弁いただきました約一千名の総会屋、大体幾つぐらいのグループを警察庁は認知しておられるのか、またそのグループに属しない単独の総会屋との区分けはどういうふうになっておるのか、警察庁の新しい資料等がありましたら、なるたけ詳細にお教え願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115206X00519971125/180
-
181・宮本和夫
○説明員(宮本和夫君) 総会屋の団体、グループは暴力団の場合ほど固定的なかたい組織というものではないようでございますけれども、団体を構成しておる者が全体のうち約二百五十名でございまして、把握しておる団体数は三十五グループになります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115206X00519971125/181
-
182・照屋寛徳
○照屋寛徳君 そうすると、三十五グループ、約二百人の総会屋以外は単独の総会屋と、こういうふうに考えてよろしいんですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115206X00519971125/182
-
183・宮本和夫
○説明員(宮本和夫君) グループを構成している者は約二百五十名ということで把握をいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115206X00519971125/183
-
184・照屋寛徳
○照屋寛徳君 この総会屋というのは、私どものイメージだと、何となく今回逮捕された小池みたいに一匹オオカミというか、そういうふうな存在のような気もするわけでありますが、総会屋がグループ化する現象、この背景等について警察はどのように考えておられるんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115206X00519971125/184
-
185・宮本和夫
○説明員(宮本和夫君) いろいろな理由があろうかと思いますけれども、やはり昭和五十六年の商法改正をきっかけとして企業と一たん手を切られた者が企業に対してその悪質性を示すためにグループ化して威力を増すことを考えたのではないか、こういったことが一つの大きな理由ではないかというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115206X00519971125/185
-
186・照屋寛徳
○照屋寛徳君 ところで、昨今、また総会屋が政治団体を結成して政治献金を受ける者もあらわれたと、こういうふうな記述をしている文献、資料等もあるんですが、警察の方では総会屋の政治団体の結成というのを認知しておられるんでしょうか。もしあれば、どれぐらいの数があるのか、そこら辺もお教えいただければ大変ありがたいなと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115206X00519971125/186
-
187・宮本和夫
○説明員(宮本和夫君) 検挙した事例の中から、総会屋が総会屋である旨を名乗ったり、政治活動に従事していることを申し向けたり、そういった事案は把握しておりますけれども、全体としてどのくらいの数字かというのはちょっと把握をいたしておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115206X00519971125/187
-
188・照屋寛徳
○照屋寛徳君 いろいろ詳細に御答弁願ってありがとうございました。
ところで、総会屋根絶の困難性、これは午前中からの議論の中でいろんな角度から浮き彫りになってきたわけでありますが、企業そのものの総会屋に対する認識が甘いというか、企業人としての自覚を欠いておって、安易に総会屋を利用してきた。むしろ、企業の側から総会屋に頼み事をしたり利用するというふうな実態もあったのではないかというふうに思うわけであります。
よく与党総会屋とか野党総会屋という呼ばれ方がございます。取り締まる対象としては、与党総会屋も野党総会屋も同じではないかと私は思うわけでありますが、総会屋から企業を標的にする、不正な手段を行使してお金をもらおう、こういう働きかけがあります。同時に、今申し上げました企業が総会屋を利用するというふうな形態あるいは摘発事案もあるのじゃないかと思いますが、そこら辺は警察はどういうふうにお考えでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115206X00519971125/188
-
189・宮本和夫
○説明員(宮本和夫君) 総会屋の活動といたしまして、企業の依頼に応じて他の総会屋の株主総会への出席であるとか発言を差し控えさせるなどして株主総会の議事の平穏な進行に協力する、そういうことで報酬として金品等の獲得を図るような者をいわゆる与党総会屋と言っておるようでございます。また、株主総会に臨んで企業幹部のささいな経営上の問題点やスキャンダルをとらえて殊さら質問するなど議事の進行を妨害したり議事を混乱させるなど、企業と対立関係に立つものであることを企業に認識させて威迫を用いて財産上の利益を得る、こういうことを図っておる者を野党総会屋と一般に呼んでおるようでございます。
いずれにいたしましても、企業から不正に利益を獲得することを企図しているものであることは変わりございませんので、警察といたしましてはこれらの取り締まりと排除の徹底を図っているところでございます。
これまでの過去数年の利益供与事件の検挙事例におきましては、企業の側から総会屋や暴力団に対し、株主総会において攻撃的な発言をすることを控えてもらうことはもとより、陰の進行役となって他の総会屋に出席させなかったりとか発言を差し控えさせるなどして、株主総会の議事が平穏かつ円滑に進行するよう協力する、こういったことを持ちかけたり、または総会屋側のそういう持ちかけ、申し入れに対して積極的に応ずるなどして利用した、こういった事例がほとんどでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115206X00519971125/189
-
190・照屋寛徳
○照屋寛徳君 けさの朝日新聞にも、編集委員の村山治の署名入りの記事の中で、総会屋と関連をいたしまして次のような指摘がございました。「警視庁のベテラン捜査員らによると、大企業の中には、総会屋らを利用してライバル企業のスキャンダル情報を収集したり、攻撃してくる別の総会屋、暴力団を抑え込んだりしてきたところもあった。」、こういう指摘でございます。
なるほど、総会屋という不正、不法集団、これの根絶をするために、現在審議をしております商法等の改正によって法定刑を引き上げる、あるいは利益供与要求罪を新設するとか、威迫という手段を行使しての利益受供与罪の新しい罰則規定を設けるということも大事でしょうけれども、企業みずからが今指摘されるような形でライバル企業を陥れるために利用するとかそういうふうなことがあってはいかぬわけでありまして、その点、今後も警察庁におかれましては、企業に対しても適切な指導をするということを怠りなくやっていただきたいということを申し上げておきたいと思います。
それでは、これは法務省でしょうか、最近の総会屋をめぐる利益供与及び利益受供与事件の受理件数と起訴件数及びその概要等についてお教え願いたいと思います。
〔委員長退席、理事大森礼子君着席〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115206X00519971125/190
-
191・原田明夫
○政府委員(原田明夫君) お答え申し上げます。
昭和五十六年の商法改正でこの利益供与・受供与罪が新設されたのでございますが、その後検察当局におきまして受理いたしました事件について、刑事局で把握している限りにおいてお答え申し上げます。
受理した事件数は件数にして三十件で、そのうち二十八件については既に起訴がなされており、残りの二件は現在捜査中というところでございます。これらの事件で起訴された被告人の延べ人数は、十一月二十一日現在二百七名に上りました。
これらの事件の公訴事実の概要はそれぞれ異なるのでございますが、基本的には会社関係者が総会屋等に対して株主総会における議事の円滑な進行に対する協力への謝礼等の趣旨で現金、商品券、有価証券取引上の利益、金融の利益等の各種の利益を供与したというものがほとんどでございます。
概要について申し上げました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115206X00519971125/191
-
192・照屋寛徳
○照屋寛徳君 それでは最高裁にお伺いいたしますが、昭和五十六年の商法改正後、利益供与・受供与事件で裁きを受けた者の判決結果、そういうことについてお教え願いたいと思います。これは法務省になりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115206X00519971125/192
-
193・原田明夫
○政府委員(原田明夫君) 判決の概要を法務省で掌握しておりますので、私の方でとりあえず御答弁させていただきます。
昭和五十六年の商法改正以後、先ほど申し上げましたような形で検察庁は処理させていただいたのでございますが、これらの罪によりまして平成九年十一月二十一日までに公判請求された者は百四十三名で、公判請求と申しますのは公判で審理するべきものとして起訴されたものですが、それが百四十三名、罰金を求刑するということで、いわゆる略式請求された者の数は六十四名でございます。
〔理事大森礼子君退席、委員長着席〕
これらの者に対する判決状況を見てみますと、有罪の言い渡し人員は百六十一名でございまして、そのうち九十四名が懲役刑に処せられ、六十七名が罰金刑に処せられております。懲役刑の刑期は他の罪と併合して審理したものを除きまして三月ないし九月の範囲内でございまして、罰金刑は十万円ないし三十万円の範囲内でございます。
最近の判決結果を見ますと、罰金刑の言い渡しはまれになってまいりまして、懲役刑の刑期は法定刑の上限に近い四カ月から六カ月までの間に集中いたしております。例えば高島屋事件におきましては、同社の代表取締役専務であった被告人に対しまして、併合罪の加重がなされました処断刑の上限であります懲役九月の言い渡しがなされております。
以上でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115206X00519971125/193
-
194・照屋寛徳
○照屋寛徳君 さて、総会屋そのものは日本独特の企業風土に根差した存在であるということはよくわかりましたが、今法案で審議をしております利益供与・受供与罪、その類似の諸外国の法制度は一体どうなっているのか、そのことについてお教えください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115206X00519971125/194
-
195・森脇勝
○政府委員(森脇勝君) 今、委員御指摘のとおり諸外国には総会屋はないということでございますので、その実体がないものですから、これと対応するというか、いわゆる総会屋処罰のための法制というものはないわけでございます。
ただ、ドイツ及びフランスについてでございますが、議決権の買収行為に対する制裁規定というものがあるようでございます。例えばドイツの場合ですと、株主総会における投票に際して議決権を行使せず、または特定の趣旨で議決権を行使することへの対価として特別の利益を要求し、約束し、受領した者は五万マルク以下の科料に処すると。それから、これの供与側も同じ五万マルク、日本円にすると約三百五十万円弱でしょうか、その程度の科料の処罰規定があるということのようでございます。同様の規定がフランスにもあるということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115206X00519971125/195
-
196・照屋寛徳
○照屋寛徳君 さて、この利益供与事件が発生した場合の企業側の民事上、刑事上の責任、どういう責任をとらなければならないのか、予想されるのか、それを詳しく説明をいただきたいことと、その場合、株主代表訴訟との関係はどうなるのか、以上の点についてお教えいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115206X00519971125/196
-
197・森脇勝
○政府委員(森脇勝君) お答えいたします。
まず、利益供与を行った取締役でございますが、これは会社に対して供与した利益の価格について賠償する責任があるという規定がございます。それから、みずからは利益供与を行っていない取締役あるいは監査役につきましても、その監視義務違反等の善管注意義務違反がございますと、会社について生じた損害を賠償する責任があるということでございます。また、会社の金額が結局利益供与という形でいわゆる総会屋等の側に出るわけでございますので、会社自身としても当該流出した金額についての返還請求権がある、こういうことになるのが民事の責任であろうというふうに考えております。
刑事の方でございますが、これにつきましては、御審議いただいております利益供与罪あるいは四百九十四条二項の会社荒らし等に関する贈賄罪あるいは特別背任罪ということで当該役員等が処罰の対象になる、こういうことでございます。
次に、代表訴訟との関係でございますが、取締役等に会社に対する損害賠償請求権がございますと、これは代表訴訟の対象になります。したがいまして、監査役に請求をして訴訟の提起がない場合には、みずから当該取締役等に対して訴訟を提起して会社にその損害額を返還させる、こういう訴訟が可能になるわけでございます。
それから、供与を受けた側、いわゆる総会屋側でございますが、これにつきましても会社に対する返還義務があるということは先ほど御説明したとおりでございます。この部分につきましても株主代表訴訟の規定の準用があるということになっております。したがいまして、これも株主代表訴訟の対象になるということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115206X00519971125/197
-
198・照屋寛徳
○照屋寛徳君 総会屋の根絶が叫ばれる一方で、株主代表訴訟のあり方について今さまざまな議論が沸き起こっております。詳細触れることはできないわけでありますが、特にこの株主代表訴訟における原告適格の制限のあり方をめぐっていろんな提起があり、議論がなされていることを私もよく承知をいたしております。きょうはその是非について触れるわけにはまいりませんけれども、私は、株主代表訴訟の原告適格の制限というのは慎重に検討さるべき重要な課題だというふうに考えております。
そこでお伺いいたしますけれども、ここ二、三年あるいは五年ぐらいの範囲でも結構でございますから、最近の株主代表訴訟の件数、それから訴訟の概要、これは全般に触れると大変でしょうから、利益供与事件、受供与事件との関連でも結構でございますから、最高裁にお教えをいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115206X00519971125/198
-
199・石垣君雄
○最高裁判所長官代理者(石垣君雄君) それでは、最近の株主代表訴訟の係属件数の概要を申し上げたいと思いますが、この係属件数の調査は平成五年から始めたものですから、最近の数字ということになりますが、数字を一連で申し上げます。
平成五年末の係属件数、高裁が十件、地裁が七十四件、合計八十四件でございます。平成六年末の係属件数で、高裁十二件、地裁百三十三件、合計百四十五件。平成七年末、係属件数、高裁十六件、地裁百五十八件、合計百七十四件。そして平成八年末の係属件数が高裁十四件、地裁百七十四件、合計百八十八件というふうに年々累増している状況でございます。
そこで、その訴訟の内容といいますか、特に今話題になっております利益供与に係るような代表訴訟がどんな状況かということでございますが、大変恐縮ですが、最近の報道等によるものも含めて若干申し上げたいと思います。
例えば、先ほど法務省の刑事局長の方からお話のありました、大阪地裁にかかっておりましたのですが、高島屋の関係の事件。これは百貨店の幹部らが平成六年と七年の株主総会を平穏に進めるために暴力団組長に対して一億六千万円を支払っていたというようなもの、この賠償を求めるものでございますが、その会社の株主が役員九名と組長に対してその賠償を求めた訴訟でございました。これは、この四月に和解で成立をしたようです。実質的にはこの経営上の責任を認めると同時に、役員らがその一億六千万円の金額を支払うというような内容のようでございます。
それから、最近では、先ほど話題になりました小池氏の関係の事件というのが幾つかあるようでございます。これは証券会社が二つに分かれておりますが、例えば野村証券関係の事件が三件あるようでございますし、山一証券関係のものが一件あるようでございますけれども、いずれも東京地裁に係属中というようなことでございます。
大まかに申し上げますとそのようなことで、ほかに銀行の事件もございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115206X00519971125/199
-
200・照屋寛徳
○照屋寛徳君 私は質問の最後に、法務大臣にお礼を申し上げまして質問を終わらせていただきたいと思います。
と申し上げますのは、十一月十三日の当委員会で、琉球の琉の字が人名漢字として使えるようにという県民の強い要望があるので、大臣におかれましてはぜひ特段の御高配をいただきたいということを申し上げました。その際、おおむね大臣からは、どうして琉の字が人名漢字表から落ちたか私自身も疑問に思う、県民の方が歴史的に長いおつき合いをしており、日常生活でも親しみのある漢字であり、その心境は理解できるという旨の御答弁がございました。
十一月十八日には、那覇の家庭裁判所で、琉の名の出生届を受理するよう那覇市長に命ずる決定が下されました。私も、翌十九日に、琉の文字を人名漢字表に速やかに追加できるよう要望する大臣あての文書を民事局長にお届けいたしたところでございます。
去る十一月二十一日に開催された政府主催の復帰二十五周年式典のレセプションで、橋本総理は、沖縄が琉球王国だったことは多くの方が御存じですが、その琉球の琉の字を使うことが許されていなかったのです、こうしたところにも私たちの思いやりが欠けていました、できるだけ早く、堂々と子供たちに琉の字をつけていただくよう努力したい、このように語っておられます。
そこで、大臣にこれまでの御努力に感謝するとともに、百二十八万沖縄県民が熱望いたしております琉の字の人名漢字表への追加について、いつごろまでに必要な手続をとられるのか、お考えをお伺いして、私の質問を終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115206X00519971125/200
-
201・下稲葉耕吉
○国務大臣(下稲葉耕吉君) いろいろ検討させていただきまして、私のところの仕事は終わりました。十二月早々に官報に掲載する手続をとるようにいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115206X00519971125/201
-
202・照屋寛徳
○照屋寛徳君 終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115206X00519971125/202
-
203・橋本敦
○橋本敦君 きょうも同僚委員からたくさん質問が出ましたが、山一証券問題が我が国経済、政治を揺るがす大問題になってまいりまして、まずこの問題から質問をしたいと思うわけであります。
山一証券自身が総会屋に対する利益供与ということで起訴されているわけでありますが、まず刑事局長に、この山一証券関係で総会屋への利益供与で起訴された人員、そして役職、さらに公訴事実の概要についてまず御説明をお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115206X00519971125/203
-
204・原田明夫
○政府委員(原田明夫君) お答え申し上げます。
山一証券をめぐる事件につきましては、いわゆる総会屋である小池隆一に対する利益供与及び損失補てん事件と、昭和リース株式会社に対する損失補てん事件の二つございます。
小池隆一をめぐる事件につきましては、東京地方検察庁におきまして、平成九年十月八日から十月二十二日までの間に、山一証券を損失補てん、すなわち証券取引法違反の事実で、同社の元代表取締役社長、元代表取締役副社長、元専務取締役ら七名を証券取引法違反、これは損失補てんでございますが、それと商法違反、利益供与の事実で、また小池隆一を証券取引法違反、これは顧客が要求により損失補てんを受ける行為の禁止違反でございますが、その証券取引法違反及び商法上の利益の受供与の事実で、それぞれ東京地方裁判所に起訴いたしております。
その公訴事実の要旨でございますが、山一証券の元代表取締役社長ら七名は、共謀の上、その株主でかつ顧客であるいわゆる総会屋の小池隆一に対し、平成六年十二月から平成七年一月までの間、前後三十二回にわたり有価証券取引上の利益のいわゆるつけかえによる合計約一億七百万円相当の財産上の利益を損失補てん及び株主の権利の行使に関する利益供与の趣旨で提供、供与し、小池はこれらを受けたというものでございます。
次に、昭和リースをめぐる事件につきましては、東京地方検察庁におきまして、平成九年十一月二十二日、山一証券及び同社の元代表取締役社長、元代表取締役副社長、元専務取締役ら七名を証券取引法違反、これは損失補てんでございますが、その事実で東京地方裁判所に起訴いたしております。
その公訴事実の要旨は、山一証券の元代表取締役社長ら七名は、共謀の上、その顧客である昭和リースに対して、平成六年十一月から平成七年三月までの間、前後七十六回にわたり合計約三億一千六百万円相当の財産上の利益を損失補てんの趣旨で提供したというものでございます。
以上でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115206X00519971125/204
-
205・橋本敦
○橋本敦君 今の公訴事実から具体的にわかりますように、利益供与の回数が三十二回とかあるいはまた数十回に及ぶということで繰り返されているわけです。私は、そういう意味では極めて悪質な事犯だと、こう思うわけです。
この金額の合計もかなりのものになりますが、今、公訴事実で起訴されただけで、利益供与の金額は、昭和リース及び山一合わせて合計幾らになっていますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115206X00519971125/205
-
206・原田明夫
○政府委員(原田明夫君) 四億二千三百万円でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115206X00519971125/206
-
207・橋本敦
○橋本敦君 まさに庶民から見れば大変な金であります。
もう一つ刑事局長に伺いたいのは、この四億余りの金は、これは簿外で処理されていますか。それともちゃんと決算に出てきておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115206X00519971125/207
-
208・原田明夫
○政府委員(原田明夫君) 利益供与に使われた金銭の処理上の点につきましては、いずれ裁判の中で検察官が証拠として立証すべき事項の中で証明されていくだろうと思いますので、現段階ではお答えを差し控えさせていただきたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115206X00519971125/208
-
209・橋本敦
○橋本敦君 莫大な簿外債務が出てきているわけですから、今さらここでおっしゃっても特に問題がないと思うんですけれども。
こういった金は簿外債務を膨らませる要因の一つになっているという状況があり得るということは容易に想像できるわけです。だから、いわゆる簿外債務の中にこういった利益供与の金銭も会社によっては当然入ってくるという可能性があるということは当然じゃありませんか。どうお考えですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115206X00519971125/209
-
210・原田明夫
○政府委員(原田明夫君) 簿外資産というものがどういうふうに処理されていくかというのはそれぞれの会計帳簿上の観点であらわれてくるのだと思いますが、一面、把握されたものにつきましては証券取引法上把握された事案でございますので、その部分についてはあるいは帳簿上出されている面もあるやと思います。
ただ、それの処理の仕方は恐らくいろいろな形で処理されてまいると思いますので、その詳しい状況については検察官が証拠により法廷で立証すべきことでございますので、大変恐縮でございますが、私の立場でここで明らかにすることは差し控えさせていただきたいという趣旨で申し上げた次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115206X00519971125/210
-
211・橋本敦
○橋本敦君 それじゃいずれ公判の立証を待ちましょう。
この山一証券関係の公判期日の指定はもうありましたか。まだですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115206X00519971125/211
-
212・原田明夫
○政府委員(原田明夫君) 現在、公判請求したばかりでございまして、公判期日はいずれ指定されるものと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115206X00519971125/212
-
213・橋本敦
○橋本敦君 きょうは初公判が野村証券関係でございました。この野村証券関係の初公判で起訴されたのは、九五年一月から六月の間、いわゆる小甚ビル口座に株、ワラントの自己売買益約四千九百七十万円をつけかえたとか、あるいは三月にも現金三億二千万を提供するなど、計三億七千万を供与したということで起訴された事案であることは間違いありませんね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115206X00519971125/213
-
214・原田明夫
○政府委員(原田明夫君) そのように承知しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115206X00519971125/214
-
215・橋本敦
○橋本敦君 先ほど大臣もちょっとおっしゃったんですが、私も報道には接しておりますが、被告人はこの事実を基本的に裁判所で認めたという報道ですが、お聞きになっていらっしゃいますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115206X00519971125/215
-
216・原田明夫
○政府委員(原田明夫君) 本件公訴事実につきましては、会社本人と申しますか、会社自体とそれから各被告人いずれとも、公訴事実については事実はそのとおりであり争わないということを冒頭に申し述べた模様でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115206X00519971125/216
-
217・橋本敦
○橋本敦君 捜査も起訴も私はそういう意味では正確であったというようにも思います。
ところで、問題は、この野村証券の関係で総会屋小池氏に対する利益のつけかえ等一任勘定を含んでの損失補てんというのはこれだけでなかったということが東京地検特捜部と証券取引等監視委員会の調べで明らかになったと報道されているわけです。
それによりますと、小甚ビル口座での取引は九三年から始まって九六年に至るんですけれども、その総回数が四百四十回、一任勘定でやり、それに対してつけた利益が一億四千五百万になっているということで、これは起訴された期間とは別に、こういった利益供与もあったということが明らかにされているんですが、これは事実ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115206X00519971125/217
-
218・原田明夫
○政府委員(原田明夫君) 報道について、幾つか報ぜられた事由があることは私存じておりますけれども、検察官といたしましては、証拠により証明できる事実ということを確定いたしまして、それにつきまして起訴をしたということでございますので、それ以外の事実につきまして、どのような事実があったかどうかという点については、私の立場で申し上げることは差し控えさせていただきたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115206X00519971125/218
-
219・橋本敦
○橋本敦君 証券取引委員会、大蔵省お越しですか。
あなたの方に聞きますが、いろいろ調査をなさって、野村証券関係は起訴された事実以外に利益供与の事実があったというのは事実じゃないですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115206X00519971125/219
-
220・滝本豊水
○説明員(滝本豊水君) 野村証券の補てん事件につきましては、証券取引等監視委員会が告発を行い、それを受けて起訴されたものと承知しておりますけれども、起訴された事実以外についてこの場で答弁するのは差し控えさせていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115206X00519971125/220
-
221・橋本敦
○橋本敦君 国会でこの問題を明らかにするのに、起訴された事実以外どういう状況であったかということを明らかにするのは当然なんで、これについて一切物は言わない、言えないなんというのはおかしいと思いますよ。国会の調査権に対してどう誠実に対応するつもりですか。
私が指摘するのは、起訴されたのは時効その他いろんな証拠の関係があって一部だけれども、しかし実際には利益供与というのは起訴された公訴事実以外にもあるということについて、本当に積極的に調べてもらわにゃならぬ、また調べておられると私は信じたいんだよ。
そういう意味で、起訴されたのは一部であって、まだまだ調べなきゃならぬということで現に調査を続行しているか、あるいはこういう問題について調査するという方針を持っているのか、もう一遍大蔵省答えてください。
物を言えないということで終わるなら国会は要らないよ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115206X00519971125/221
-
222・滝本豊水
○説明員(滝本豊水君) 本件補てん事件につきまして、証券取引等監視委員会が告発した事実及び東京地検におきまして起訴された事実以外の、例えば時効になりました事項について、この場で答弁することは今後の調査あるいは公判の維持等に支障が生ずるということから、答弁を差し控えさせていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115206X00519971125/222
-
223・橋本敦
○橋本敦君 詳しく全部言えと言うんじゃありません。起訴された事実以外にも総会屋に対する利益供与と見られる事案があるということで調査はしているのかしていないのか、それはどうなんですか。それぐらいは言えるでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115206X00519971125/223
-
224・滝本豊水
○説明員(滝本豊水君) 繰り返しになって恐縮でございますけれども、あくまで告発した事実につきましてはある程度御説明申し上げておりますけれども、告発に至らなかった事実についてどのような調査を行ったかということを詳細に述べることは、今後の調査等に支障が生ずるおそれがあるということから、答弁を差し控えさせていただきたいということを御理解いただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115206X00519971125/224
-
225・橋本敦
○橋本敦君 そんなことは聞いていないよ。利益供与と見られる事案は総会屋に対してはこれだけなのか、ほかにもあるということで調査をやっているのかやっていないのか、そう聞いているんだよ。それぐらい答えられないとおかしいよ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115206X00519971125/225
-
226・滝本豊水
○説明員(滝本豊水君) 繰り返しになって申しわけありませんけれども、あくまでも証券取引等監視委員会は告発した事実について御説明申し上げます。それ以外の事実については御説明を御容赦していただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115206X00519971125/226
-
227・橋本敦
○橋本敦君 容赦できないな。
それでは今の総会屋問題の実態について解明するということについて全く協力しないということに等しいよ。そういうことで政府はいいのか。国会の調査に対して協力しないというようなことは、私は誠実さが余りにも欠けると思いますよ。大変な問題なんだから、この問題は。だから商法改正まで行って総会屋の暗躍を禁圧しようということで、まさに今重大なときになっているわけじゃないですか。
それじゃ次に伺いますけれども、この問題はそれとして、いわゆる山一証券は、とんでもない話ですが、二千六百億円余と言われる簿外債務をつくったという問題であります。この問題については、これは今に始まったことでなくて、九一年に発覚した証券不祥事件、このときから山一は六十六の法人や個人に総額四百五十六億円の損失補てんをしたということで大問題になりました。最大の補てん先は阪和興業グループであったということも言われておるわけであります。こういうことを重ねてきて今日この莫大な簿外債務をつくったということですが、九一年ごろからこういう簿外債務の操作をやっておったという状況は大蔵省は把握していたのではありませんか。どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115206X00519971125/227
-
228・内村広志
○説明員(内村広志君) 山一証券に対します検査につきましては、最近では平成五年二月、平成七年十一月に証券等監視委員会と金融検査部と合同で検査を実施したところでございます。
金融検査部におきましては、証券会社の財務を中心とする経営の健全性について検査を行っておりますし、今、委員御指摘のようないわゆる証券取引ルール違反に対する検査につきましては、証券取引等監視委員会の所管でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115206X00519971125/228
-
229・橋本敦
○橋本敦君 簡単に言えば大蔵省は今日まで全然知らなかったと、こう言ったわけ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115206X00519971125/229
-
230・内村広志
○説明員(内村広志君) お答えいたします。
金融検査部の所管として財務の健全性という観点からは把握していなかったということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115206X00519971125/230
-
231・滝本豊水
○説明員(滝本豊水君) 証券取引等監視委員会は、今御説明がありましたように、大臣官房検査部と合同で過去二回同じときに検査をしておりまして、今御指摘のような証券取引法違反のルール違反がなかったかどうか等について念頭に置きまして事実解明に努めたところでございますけれども、残念ながらそのような取引はその段階では把握されませんでした。
なお、一般的に付言しますと、そのような一般的な簿外であるような取引につきましては、いわゆる簿外ということから、会社の正式の帳簿には記載されていないというもの、それから基本的にそういう検査というのは相手方の協力をもとに事実解明を行うということを基本にしておりまして、そういうことは発見するのは極めて困難な面があったということは御理解いただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115206X00519971125/231
-
232・橋本敦
○橋本敦君 残念ながら検査では発見できなかったと。だから、わからなかったということがわかりましたが、それで大蔵省と証券取引委員会の責任は済むのだろうかという問題が次にあるんですね。
一体、この簿外債務というのはどういうふうにして行われたか。先ほど私は、商法違反の利益供与、こういったことの原資も簿外債務になっている可能性があることを刑事局長に指摘したんですが、これはいずれ公判で明らかにするということであります。しかし、この簿外債務のほとんどがいわゆる飛ばしという行為によって特定の法人顧客優遇の一つとしてやられたということは、これは明白だと思うんですね。
そこで、証券局に聞きますが、この飛ばし行為を中心に簿外債務が膨らんでいったというのは事実と思いますが、どう把握していますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115206X00519971125/232
-
233・小手川大助
○説明員(小手川大助君) 個別の案件の中身につきましては、今後この山一証券の件に関しまして検査等に入りまして、それで解明されていくべき事案だと思っておりまして、現時点において私どもとしては個別の取引の内容について把握しておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115206X00519971125/233
-
234・橋本敦
○橋本敦君 把握していないんですか。新聞でこれだけ出て、どの新聞を見ても、あなたもお読みでしょう、いわゆる飛ばしという行為がやられてそれが簿外債務を膨らましていったとどこにも書いてあるじゃないですか。本当に大蔵省は、この簿外債務が膨らんでいった原因に飛ばしという行為があったかどうかさえ全然知らないと今言えるんですか。
驚くべき答弁だと私は思いますが、どなたでもいいです、答えてください。そんな無責任な政府は私は許せぬと思うよ。どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115206X00519971125/234
-
235・滝本豊水
○説明員(滝本豊水君) 本日午後、大臣官房金融検査部と証券取引等監視委員会が合同で山一証券に対しまして特別検査に着手いたしました。
今御指摘の、二千六百億の簿外債務が生じた、その簿外債務が生ずる過程でいわゆる飛ばし等の取引があったというような報道等がなされていることは十分承知しておりまして、証券取引等監視委員会といたしましては、この特別検査におきまして、証取法上法令に違反する行為がないかどうか、さらなる事実解明に努めていきたいと思っております。
それから、いわゆる飛ばしと申しますのは、顧客が保有しております評価損を抱えた有価証券につきまして簿外で転々売買されるということから、証券会社の帳簿に全く痕跡が残っていないということで解明が極めて困難な問題であるということを御理解いただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115206X00519971125/235
-
236・橋本敦
○橋本敦君 解明を困難にするために会社は簿外にするんだよ。だから、それを徹底的に解明しなきゃ本当に特別検査の意味がない。大蔵省は、今お話しのように、証券取引委員会と合同して本件について特別の監査、調査に入ったというのはきょうからですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115206X00519971125/236
-
237・滝本豊水
○説明員(滝本豊水君) 本日の午後から、大臣官房金融検査部と証券取引等監視委員会が合同で特別検査に着手いたしました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115206X00519971125/237
-
238・橋本敦
○橋本敦君 そこで、いわゆる飛ばし行為について聞きますが、この飛ばし行為というのがあったかどうかを聞きましょう、一般論で結構です。いわゆるこの飛ばし行為というのは、今あなたが説明されましたが、それは適法な行為なんですか、違法な行為なんですか、どうなんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115206X00519971125/238
-
239・滝本豊水
○説明員(滝本豊水君) いわゆる飛ばしは、今御説明しましたように、顧客企業が保有する有価証券に評価損が生じた場合に、その評価損が表面化するのを避けるために決算期の前に決算期の違う他の顧客企業に対しまして条件つきで転売をして、転々と売買を行っていくということで、証券会社がこれを仲介する際に買い手の顧客に一定期間後に当該有価証券を一定の条件で他の顧客に転売するというような約束を行うことになりまして、こうした行為は、一般論として申し上げまして、証券取引法上いわゆる健全性省令違反、いわゆる特別の利益を提供することを約して勧誘する行為に当たるという問題であるというふうに承知しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115206X00519971125/239
-
240・橋本敦
○橋本敦君 今の違反について、罰則規定はありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115206X00519971125/240
-
241・滝本豊水
○説明員(滝本豊水君) この健全性省令違反の場合は、罰則規定はございませんで、もし違反がありますと行政処分の対象になるということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115206X00519971125/241
-
242・橋本敦
○橋本敦君 大蔵省の証券局長は、この特別の監査、調査を通じて違法行為が発覚したならば自主廃業ではなくて免許停止、そういった処分もあり得るということを会見でおっしゃっておりますが、そういう違法行為が今おっしゃった問題だけでなくその他に出てくれば、検察庁への証券委員会からの告発なり、当然そういったことについて厳正な対処をされると思いますが、間違いありませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115206X00519971125/242
-
243・滝本豊水
○説明員(滝本豊水君) 今御説明しました特別検査等の過程で証券取引法違反の行為がありました場合には、証券取引等監視委員会といたしまして法に従い厳正に対処していきたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115206X00519971125/243
-
244・橋本敦
○橋本敦君 その飛ばしが、特定の顧客の会社の決算の損益を隠すということでそういう利益を付与する行為になるということになれば、これは商法の二百九十四条ノ二の利益供与、実質的には損失の補てんに近い行為になると、そういう考え方も私はあると思うんですね。証券取引法百九十七条違反という問題も出てくる。
こういう問題は、証券取引委員会として把握してこの問題に対応するつもりがありますか、どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115206X00519971125/244
-
245・滝本豊水
○説明員(滝本豊水君) 証券取引等監視委員会の所掌事務といたしましては、あくまで、証券取引法に違反する、取引の公正を害するような証券取引がなかったかどうかということにつきまして調査または検査をする権限を有しているところでございまして、もしそのような取引の公正を害するような取引が把握された場合には、証券取引等監視委員会といたしまして法に従い厳正に対処していく所存でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115206X00519971125/245
-
246・橋本敦
○橋本敦君 わかりました。だから、私は、証券取引法百九十七条違反は頭に置いておられるかどうか、その点についての調査をされるか、こう聞いたんですが、どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115206X00519971125/246
-
247・滝本豊水
○説明員(滝本豊水君) 今御指摘の点も含めまして、証券取引法に違反する行為があれば証券取引等監視委員会といたしまして厳正に対処する所存でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115206X00519971125/247
-
248・橋本敦
○橋本敦君 刑事局長に伺いますけれども、今私が指摘した商法二百九十四条ノ二の利益供与に当たるというその範囲との関係で言えば、こういった飛ばし行為による損失隠しはどういうように考えられますか、法律論として。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115206X00519971125/248
-
249・原田明夫
○政府委員(原田明夫君) ただいまの一連の委員のお尋ねでございますが、現在、この山一証券の廃業に関しまして証券取引等監視委員会や大蔵省大臣官房金融検査部がまさに実態解明を図ろうとしております。その点につきましては、私どもも関心を持って見守りたいと存じます。
そして一その過程で、実際問題として何が起こったのかということをやはり詳細に確定していくことがまず必要だろうと思います。そういう中で、場合によっては犯罪を構成する、あるいは罰則に違反するという行為が見つかってくる場合も当然考えられるわけでございますけれども、もしそういうような事案が考えられますれば、それにつきましては適正な措置がとられるだろうというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115206X00519971125/249
-
250・橋本敦
○橋本敦君 大体、簿外債務ということで、数百万どころじゃないんですよ、三千億近い金を簿外債務で処理して、正規の決算に計上しない、あるいは資産報告に計上しない。会社経営としてもってのほかですよ。
こういう行為は、これはまさに有価証券報告書の虚偽記載そのものにずばり当たるという疑いが極めて濃厚だと思うんですが、その点について証取委員会はどう考えていますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115206X00519971125/250
-
251・滝本豊水
○説明員(滝本豊水君) 有価証券報告書の虚偽記載と申しますと、証券取引法に定めるところによりますと、重要な事項について虚偽の記載のある有価証券報告書を提出するということは証券取引法違反ということで、これは証券取引等監視委員会の所掌する犯則事件の調査の対象となるということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115206X00519971125/251
-
252・橋本敦
○橋本敦君 つまり、三千億円近い簿外債務をつくったということは、まさに会社経営について重要な事項について報告を回避したということにぴたりと当たるじゃありませんか。見解いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115206X00519971125/252
-
253・滝本豊水
○説明員(滝本豊水君) 重要な事項について虚偽の記載のある有価証券報告書の提出という観点から問題があるかどうか、委員会としても法に基づき厳正に対処していきたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115206X00519971125/253
-
254・橋本敦
○橋本敦君 厳正に対処するのは結構ですが、まさに重大な問題として現に浮かび上がってきておるはずですね。こんなことが証券取引法百九十七条の違反にならない、重要事項の虚偽記載にならないなんと言ったら、それはもう会社の経理の公正は担保できませんよ。もってのほかですよ。だから、そういう意味で、簿外債務問題というこの莫大な問題は、会社の運営上の倫理の問題にとどまらず、まさに違法な行為ということの重大な問題を含んでいるものとして今後の対応を厳しくやってもらわなきゃならぬ。国民から見れば、何の関係もないのに公的資金導入なんという話が先走るなんてもってのほかだ、徹底的に経営者側の責任を追及する必要がある、それは当たり前じゃありませんか。大臣、どうお考えでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115206X00519971125/254
-
255・下稲葉耕吉
○国務大臣(下稲葉耕吉君) 同感でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115206X00519971125/255
-
256・橋本敦
○橋本敦君 新聞の報道によりますと、山一の現経営陣はきのう会見をいたしましたが、同日、こういった問題について一連の経過を踏まえて前経営陣の刑事告訴も検討しているということも明らかにした、こう報道されております。そして、証券局は今お話しのように重大な関心を持ってこれから調査をなさると、こういうことであります。だから、そういったことで、これから出てくる事案について、この莫大な簿外債務を含む山一証券のこれまでの経営について、犯罪として当然対処すべき重要な事実が出てくれば厳正に対処するのはもちろんだと思いますが、重ねて刑事局長の御見解を伺っておきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115206X00519971125/256
-
257・原田明夫
○政府委員(原田明夫君) 検察当局におきましては、この一連の件につきましても刑罰法令に触れる行為が認められる場合には、証拠に基づきまして法に照らして厳正に対処してまいるものと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115206X00519971125/257
-
258・橋本敦
○橋本敦君 したがって、この問題についても今後の証券取引委員会、大蔵省の調査と、それからさらには犯罪の嫌疑があれば積極的に告発をして徹底的に明らかにする、そういう決意で証券取引委員会も大蔵省も調査されることは間違いないですね。確認しておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115206X00519971125/258
-
259・滝本豊水
○説明員(滝本豊水君) 証券取引等監視委員会は取引の公正を害するような証券取引法違反の検査、調査を行うことを所掌としておりまして、そのような証券取引法違反の取引がありますれば、法に従って厳正に対処していきたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115206X00519971125/259
-
260・内村広志
○説明員(内村広志君) 官房金融検査部におきましても、法令違反等仮に検査の結果ありましたら、告発も含め厳正に対処する所存でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115206X00519971125/260
-
261・橋本敦
○橋本敦君 この問題は、金融秩序の維持とか金融不安の解消とかいうその根底にある問題として、私はこういう問題についての違法性というのは徹底的にはっきりさせなきゃならぬと思いますね。
先ほどからディスクロージャー、いろいろお話がありました。経営の倫理に関するというだけじゃなくて、日本の経済の根幹にかかわるまさに信用システムの中にこういう違法性を隠しておいたままじゃならぬということですね。国際的信用にもかかわるわけでしょう。だから、今度の山一事件について私はそういう意味で徹底的な捜査を求める、今さら言うまでもありませんが。このことを徹底的にやらずに公的資金の導入などを論ずるなんというのは論外だと私は思います。
もう一つの問題は、北海道拓殖銀行もそうですが、私は、まじめに働いてきた山一証券の七千五百名を超える従業員の皆さん、その家族の皆さんも含めてあすへの不安というのは大変でしょう。この預金者やあるいは預託者の保護ということに政府は意を用いるのは当然ですが、この問題について本当に政府は真剣に考える必要があると思うんですね。この点は労働省の関係になると思うので、労働省、わざわざ来ていただいたんですが、この事態に対応してどういう方針で対処されるかお話しいただけますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115206X00519971125/261
-
262・浅野賢司
○説明員(浅野賢司君) 最近、北海道拓殖銀行、山一証券など金融機関の破綻が相次いでいるわけでございますが、労働省としましては、各社に対し従業員の雇用動向の見通しについてヒアリングを行いつつ、必要な従業員の再就職対策などをまず各社に要請するとともに、労働省としても、大蔵省、関係地方公共団体、それからその他関係者と十分な連携を図りながら、従業員の雇用問題に適切に対応してまいりたいというふうに考えております。
また、当該金融機関の関連企業における雇用につきましても、関連中小企業主の状況を把握した上で雇用調整助成金などの施策の適用の検討をいたしておるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115206X00519971125/262
-
263・橋本敦
○橋本敦君 大臣、この問題は私は多面的に今日の重要なやっぱり国民的課題になってきたと思うんですね。だから、大蔵省はこの問題を契機にして金融秩序の維持、信用をどう確保していくかという問題がある。そして、この裏にある違法な行為については徹底的に明らかにして、これまでの経営体制の責任を国民の前に明らかにするという責任がこれまた法務省を中心にある。そして同時に、このことが波及していく中小企業や労働者に対して今の不況の深刻な中でその影響を最小限に食いとめると同時に、まじめに働いてきた職員の新しい労働環境の整備をどう進めるかという政府の責任がある。
こういう意味で、この山一問題は政府を挙げて重大な問題になってきたと思うんですが、総会屋対策で関係閣僚会議が開かれたことは結構ですが、この山一問題についても関係閣僚で十分論議をしていただいて、万全を期していただくような方策を検討していただきたいと私は思うんですが、大臣、いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115206X00519971125/263
-
264・下稲葉耕吉
○国務大臣(下稲葉耕吉君) きょう実は閣議がございまして、閣議の後の閣僚懇談会はもうほとんどこの問題でございました。
今、委員御指摘のとおりに、事件の実態解明ということももちろんこれはやらなきゃいけない問題でございます。特に、七千五百名ということでございますが、会社がなくなるわけでございますから、やはり直接雇用の問題が出てまいります。三井三池炭鉱のときもやはり同じような経験をした閣僚の発言もございましたけれども、大変だと思います。のみならず、やはり関連企業の方々、特に中小企業に従事している方々もおられるわけでございますし、そういうようなことについては関連の各閣僚から、労働、通産等々いろいろ発言がございまして、内閣としても総力を挙げてそれぞれの分野でこの問題を深く掘り下げて細かく対処しようという申し合わせを実はいたしたところでございますので、一生懸命進めてまいりたいと、このように思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115206X00519971125/264
-
265・橋本敦
○橋本敦君 大臣の趣旨はよくわかりました。
私は、この問題が起こった背景の一つに、大蔵省のこれまでの検査・監査体制の不備を含めて今日までこういったことを野放しにしてきた責任は重大だと思いますし、そしてまた同時に、国民の前に今日ここに至った事態の背景について徹底的な調査と違法行為の捜査を含めて問題を明らかにする責任が政府にも国会にも私はあると思います。
その上で今後どう対応していくかということについて、今大臣がおっしゃったように政府を挙げてやってほしいんですが、今言ったように私はすぐ公的資金の導入などというのは論外であって、基本的にはこれまでの会社の経営実態を明確に責任を追及する中でどう解決するか、まさに自己責任に応じた正しい解決をやっていくことが、住専で大きな国民の批判を受けた教訓をも生かす道だと、こう思っております。
きょうは時間が参りましたのでこれで終わりますが、今度の商法の改正について、構成要件、法律論その他、次回にお尋ねさせていただくことにして、きょうはこれで終わります。ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115206X00519971125/265
-
266・風間昶
○委員長(風間昶君) 本案に対する本日の質疑はこの程度にとどめます。
本日はこれにて散会いたします。
午後四時四十分散会
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115206X00519971125/266
4. 会議録のPDFを表示
この会議録のPDFを表示します。このリンクからご利用ください。