1. 会議録本文
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000・会議録情報
平成九年十一月十四日(金曜日)
午後零時一分開議
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○議事日程 第五号
平成九年十一月十四日
正午開議
第一 許可等の有効期間の延長に関する法律案
(内閣提出、衆議院送付)
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○本日の会議に付した案件
一、商法及び株式会社の監査等に関する商法の
特例に関する法律の一部を改正する法律案
(趣旨説明)
以下議事日程のとおり
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115254X00519971114/0
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001・斎藤十朗
○議長(斎藤十朗君) これより会議を開きます。
この際、日程に追加して、
商法及び株式会社の監査等に関する商法の特例に関する法律の一部を改正する法律案について、提出者の趣旨説明を求めたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115254X00519971114/1
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002・斎藤十朗
○議長(斎藤十朗君) 御異議ないと認めます。下稲葉法務大臣。
〔国務大臣下稲葉耕吉君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115254X00519971114/2
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003・下稲葉耕吉
○国務大臣(下稲葉耕吉君) 商法及び株式会社の監査等に関する商法の特例に関する法律の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明いたします。
この法律案は、最近の社会経済情勢及び株式会社の運営の実態にかんがみ、いわゆる総会屋の根絶を図るとともに株式会社の運営の健全性を確保するため、商法及び株式会社の監査等に関する商法の特例に関する法律の一部を改正しようとするものでありまして、その改正の要点は次のとおりであります。
まず、商法につきましては、第一に、株主の権利の行使に関して利益を供与する罪及びこれを受ける罪の法定刑を引き上げるとともに、利益供与を要求する罪と威迫を用いて利益供与を要求したり、これを受ける罪を新設し、また、利益供与を要求したり、これを受けたりした者に対しては、懲役刑と罰金刑の併科を可能とすることとしております。
第二に、会社荒らし等に関する贈収賄罪、取締役等の特別背任罪及び取締役等の汚職の罪の法定刑を引き上げることとしております。
第三に、その他の罪の罰金刑の上限を引き上げることとしております。
次に、株式会社の監査等に関する商法の特例に関する法律につきましては、会計監査人の汚職の罪の法定刑を引き上げることとしております。
以上が、商法及び株式会社の監査等に関する商法の特例に関する法律の一部を改正する法律案の趣旨であります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115254X00519971114/3
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004・斎藤十朗
○議長(斎藤十朗君) ただいまの趣旨説明に対し、質疑の通告がございます。発言を許します。大森礼子君。
〔大森礼子君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115254X00519971114/4
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005・大森礼子
○大森礼子君 私は、平成会を代表して、ただいま議題となりました商法及び株式会社の監査等に関する商法の特例に関する法律の一部を改正する法律案について、総理並びに関係各大臣に質問いたします。
ことしに入り、味の素から始まった総会屋に対する利益供与事件は、第一勧銀、四大証券、三菱電機、東芝等々、日本を代表する一流と言われる企業が名を連ね、総会屋汚染のとどまるところを知らぬ様相に、国民は大きな衝撃を受けております。総会屋に対する利益供与を禁止した昭和五十六年の商法改正後、総会屋の数そのものは減少し、一応の効果は上げたかに見えましたが、今回の一連の摘発により、企業と総会屋との癒着は絶えることなく続き、手口はより巧妙となり、供与の額も億単位のものまであったことが判明したのであります。
こうした企業の行為は、国内にとどまらず、日本に対する国際的不信を増大させる極めてゆゆしき事態であります。これでは、国際社会にあって、日本はおよそ法による正義からほど遠い国だと思われても仕方がないのであります。総会屋スキャンダルにまみれた現在の状況を総理はどう受けとめておられるのでしょうか。また、総会屋の根絶に対する総理の御決意を伺いたいと思います。
今回の一連の不祥事に四大証券が含まれていたことで、多くの国民は懲りない面々との思いを深くしたに違いありません。
平成三年に発覚した大口顧客への損失補てんを内容とする第一次証券不祥事は、平成元年十二月に出された損失補てんを禁止する大蔵省通達の二年後に摘発されたものであります。大蔵省は、事件摘発を受け、証券会社の行動規範七原則の周知徹底の通達、取引一任勘定の原則禁止の通達、証券取引での暴力団介入排除の通達等々、矢継ぎ早に通達を出して業界を指導しました。その年の臨時国会は証券スキャンダル国会とも称され、当時の橋本大蔵大臣が責任をとって辞任されたことはいまだ記憶に新しいところであります。
十分過ぎるほどの通達を出し、証券会社に営業取引停止の行政処分を下し、再発防止のために証券取引法を改正し、大蔵大臣が辞職にまで追いやられたにもかかわらず、その結果が今回の第二次証券不祥事であります。彼らに対して懲りない面々と最も怒りを感じているのがほかならぬ橋本総理に違いないと思うのですが、総理の御心情をお聞かせいただきたいと思います。
ところで、最も緊張感を持って事に処した人間が最も正しく事の本質を見抜くと言われますが、第一次証券スキャンダルの中でその腐敗の構造を最も深く知り得る立場にあり、それを克服する対策を立てる責任者でもあった当時の大蔵大臣、現橋本総理大臣にぜひお尋ねしたいことがあります。今回の第二次証券不祥事を招いたその最も大きな原因は何であるとお考えでしょうか。まず何を思い当たられたでしょうか。正しく事の本質を教えていただきたいのであります。
大蔵大臣にもお尋ねします。
四大証券が同じ性質の不祥事を繰り返した原因について、金融行政の責任者である大蔵大臣はどのように認識しておられるのでしょうか。平成三年以降、四大証券に対する大蔵省の監督指導に果たして落ち度はなかったのでありましょうか。あったとすればどういう点なのでしょうか。正しい認識なくして正しい方策、行政指導は生まれないと思いますので質問する次第です。
それでは、商法等の改正案に関して質問いたします。
改正案では、株主の権利行使に関する利益供与・受供与罪の法定刑を引き上げ「三年以下ノ懲役又ハ三百万円以下ノ罰金」としておりますが、億単位の利益供与事件が続出する中で、この罰金額は十分な抑止力を持つものでしょうか。罰金額が低過ぎるという批判に対し、法務大臣の御見解をお伺いします。
次に、今回の改正案提出に至る過程において、総会屋の利益要求罪の新設に加えて、要求を受けた取締役らが捜査機関へ通報、告発する義務を規定すべきだという意見がありました。
通報義務があれば、対応に苦しんでいる企業側が法の規定を盾として総会屋からの要求を断りやすくなるのであって、訓示規定でもよいから盛り込むべきであるという意見は、企業側に有効な防衛手段を提供する実務感覚に裏づけられたものであると私は思います。
ところが、刑法の脅迫罪や強要罪には告発義務の規定がなく、整合性がつかないとの理由から見送られたと聞いております。保護法益は必ずしも重なり合わず、改正商法案では総会屋の根絶を強く打ち出しているのですから、告発義務の法定は法の目的達成に極めて有効な手段であると思われるのですが、このような規定が今回の改正案に盛り込まれなかった経過、理由について法務大臣に答弁を求めます。
また、同様の観点から、時効期間についても法務大臣にお尋ねします。
総会屋への利益供与は当然極秘裏に行われるため、捜査の端緒をつかみにくく、摘発までに時間がかかる犯罪であると認識されております。基本的犯罪と言える利益の供与・受供与罪については、これまで刑罰そのものが軽過ぎるという批判とともに、公訴時効の期間が三年であり、苦労して捜査の端緒を得て捜査を開始しても時効の壁にぶつかりやすいという批判もありました。この現実が時として総会屋摘発に挑む捜査官の士気に影響したかもしれません。時効の壁により、三年より前の犯罪行為については処罰できないという不都合も生じます。今回の改正案で罰則が強化され、法定刑は三年以下の懲役と引き上げられるものの、公訴時効の関係ではやはり従前どおり三年となります。法務大臣にお尋ねしますが、従前どおりの時効期間で悪質事犯の摘発に支障はないのでしょうか。
次に、会社の正しい運営のあり方に関して質問いたします。
十一月八日付の新聞は、「敗訴に備え財産隠し?」の見出しで、総会屋への利益供与事件で株主代表訴訟を起こされた銀行の元役員三人が提訴直前に自宅の土地や建物の名義を親族に移していたことを報道しました。そのうち二人は、商法違反の事実については時効で逮捕を免れた元常務とのことです。遵法精神を欠き、規範意識が極めて鈍い役員も、自分の財産を守ることについては実に素早い反応をすることがよくわかりました。この報道は、株主代表訴訟こそ企業役員に利益供与を思いとどまらせる最も有効な手段であるとのヒントを私たちに与えるものであります。
平成五年の商法改正により要件が緩和された株主代表訴訟が、総会屋へ利益供与をした取締役等の責任追及の手段として広く定着すれば、大きな抑止効果を発揮するはずです。総会屋への利益供与の額だけ自分が会社に対して弁済しなくてはならないのですから、億単位の利益供与など全く割に合わない話になってしまうからです。
しかるに、業界団体は去る九月、原告の適格性について、訴訟原因となる行為時に株式を所有していた者に限るなど、株主による企業の不祥事チェック機能を骨抜きにしかねない見直し案を発表しました。自民党の中にもそのような改正への動きがあるやに聞いております。これは、総会屋との癒着を絶つことによって会社経営を健全化しようとする今回の改正の流れにも逆行する考えであると思うのですが、代表訴訟の資格制限の動きについて総理はどのようにお考えになるのか、お尋ねいたします。
次に、株主総会のあり方について総理にお尋ねします。
総会屋がいるから株主総会を形骸化させざるを得ないのか、株主総会を形骸化したがるから総会屋につけ込まれるのか。いずれにせよ、株主の権利を無視した株主総会は単なる儀式でしかありません。ことし開かれた上場企業千九百二十七社の株主総会の平均所要時間はわずか二十九分だったそうです。これが会社法の予定した正常な株主総会と言えるのでしょうか。
昭和五十六年の商法改正のとき、参議院法務委員会が、「株主総会の形骸化を防止し、その適正な運営を図るため、いわゆる総会屋の絶滅に一層の努力をすること。」と附帯決議をしたにもかかわらず、あれから十五年、株主総会は何ら変わっておりません。果たしてここに行政の怠慢はなかったのでありましょうか。長年にわたり株主総会の形骸化を放置していたことが今日の一連の不祥事の温床ともなったと考えられるのですが、行政の最高責任者である総理の御見解を求めます。
次に、総会屋に対する利益供与事件の捜査体制について法務大臣にお尋ねいたします。
冒頭に申しましたように、ことしに入り次々と一流企業が摘発され、また現在もなお捜査の端緒を得たものについては次の摘発の準備が進められているものと信ずるものであります。
捜査機関のこの精力的な活動に対して、摘発による企業ダメージは株価を下げ、景気回復を遠ざけるものであるから、そろそろ一連の捜査を終結すべきなどの不穏な声も業界の中で上がっているやに聞いております。そのような声は身に危険を感じる者のたわ言と聞き流して、徹底的に最後の企業に至るまで摘発を続けていただきたいのであります。株価を下げ、景気回復を遠ざけているのはひとえに橋本政権の景気対策の不備に負うものであり、その因果関係は国民が十分認めるところであります。
徹底的な捜査、摘発は、モラルの低下した企業人の規範意識を覚せいさせ、日本が法治国家であることを国内外に宣言し、あの住専処理の不透明さにより失墜したに違いない国際的な信用をむしろ回復させるものであると私は信じます。総会屋事件について警察、検察による粘り強い捜査を期待するものでありますが、警視総監もやられた下稲葉法務大臣の御決意をお聞かせ願いたいと思います。
さて、今回の商法改正は総会屋の根絶を目指すものでありますが、総会屋が成り立つのは企業が金を渡すからであり、言ってみれば総会屋は企業がこれを養っていたと言うこともできると思います。株主総会で、株主の質問をすべて正面から受けて立つという毅然とした姿勢が企業側にあれば、しゃんしゃん株主総会のための利益供与はなくなるとも言われております。要は、企業トップが意識革命をすることであります。
経団連は、前回の証券不祥事後に策定し、昨年の高島屋事件後に改定した企業行動憲章で、すべての法律、国際ルールを遵守すること、市民社会の秩序と安全に脅威を与える反社会的勢力及び団体とは断固として対決することなどをうたい、企業に毅然とした対応を求めたのでありますが、その経団連の副会長を出していた企業が法律に違反していたわけであります。真実、総会屋との関係を清算しようとしている企業に対しては、警察による要人の保護等、積極的かつ効果的なフォローをすべきはもちろんですが、遵法精神を欠く企業に対しては政府は毅然とした対応をするべきでありましょう。
しかしながら、この臨時国会が政治倫理国会としてスタートしたように、永田町のモラルの程度も国民の非難の的になっていることを私たちは忘れてはならないのです。民間企業のモラルの欠如を非難する前に、まず政治家が範を示す必要があるのではないでしょうか。例えば、泉井氏証人喚問、早急に実施すべきです。なぜこんなにおくれているのでしょうか。その中で泉井氏から不正に献金を受けた政治家の名前と事実が出れば、今国会中直ちにその人物の証人喚問を実施すべきであります。また、泉井問題に限らず、報道等により疑惑を指摘された政治家は、みずから進んで国民に事実関係を説明するべきであります。
他者を非難しようとする者は、まずみずからの姿勢を正さねばなりません。まず政治家がその範を示すことこそ、企業に対する、そして社会に対する最良のモラル教育、モラル指導であると私は考えるのですが、この点、総理の御見解をお伺いしたいと思います。
以上で私の質問を終わります。(拍手)
〔国務大臣橋本龍太郎君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115254X00519971114/5
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006・橋本龍太郎
○国務大臣(橋本龍太郎君) 大森議員にお答えを申し上げます。
まず第一点は、総会屋対策についてのお尋ねでありました。
御指摘のような状況はまことに残念でありますし、遺憾と言わざるを得ません。この際、総会屋等と企業との関係を完全に断ち切らなければならないと考え、政府としては、関係閣僚会議を開催し、商法改正等所要の対策を取りまとめたいわゆる総会屋対策要綱を申し合わせたところでありまして、これに基づき、政府を挙げて総会屋などの排除を徹底してまいります。
次に、平成三年の証券不祥事について振り返ってのお尋ねがございました。
平成三年の証券不祥事を契機に、損失補てんを法律によって禁止し、当時多くの通達によって行われておりました行政を、一部は法律の中そのものに取り込み、また多くを民間団体の自主規制のルールにゆだねる、こうした措置をとって業界全体の反省を促してまいりましたのに、その後も一部の証券会社におきまして損失補てんが行われていた。私は本当に残念でありますし、何ともやるせない思いであります。また、今回、総会屋との関係で商法違反もありました。この点も重大な問題だと思います。
そして、この問題の背景ということについてのお尋ねがございましたが、会社の上層部に至るまでの法令遵守意識の欠如という根本的な問題があると考えますが、それ以上に、自分たちの行為が結果として自分自身、自分の所属する企業の信頼を大きく傷つけるだけではなく、そうした行為が市場から一般国民、一般の投資家を離してしまうということのおそれになぜ気づかないのか、これが私の今一番感じていることであります。
第一次と言われました平成三年の事態と今回の事態に共通いたしますのは、一般の投資家は外に置かれ、一部の人間にのみ利益を提供し、しかもそれが反社会的な法に反する行為であることを知りつつ一般の投資家の目には隠されて行われていたということでありまして、私は、当時に戻って感想を言えとおっしゃるなら、これが一番の問題点だ、そして不公平という言葉は何のためにあるのかという思いを当時もいたしたこと、そしてそれが市場から多くの顧客を遠ざける結果になったことをもう一度彼らに思い出してもらいたいものだ、そのような思いを持っております。
また、次に株主代表訴訟についてお尋ねがございました。
株主代表訴訟のあり方につきましては、その原告適格の問題も含めましてさまざまな議論が今あることは承知をいたしております。この訴訟には、取締役の業務執行が法令に基づき適正に行われることを確保する機能がございます。その機能が損なわれないよう、いずれにしても配慮していくことが必要なことだと、そのように考えております。
次に、株主総会のあり方についての御意見をいただきました。
株主総会は、いわば会社の最高の意思決定機関でありますから、その活性化を図るため、法務委員会の決議も含め、かねてから商法改正などによりそれを活性化させるように努めてまいりました。しかし、依然として総会を短時間で終了させることがその会社のいわば健全性を示すような感覚があるとでも申しましょうか、依然として短時間に終了させようとする、運用面で必ずしも法の趣旨が生かされていないのではないかと考えており、今回の罰則強化が経営陣の意識改革の一助になることを心から期待いたしております。
最後に、政治倫理、モラルという問題についてのお尋ねがありました。
政治家は常にみずからを見詰めながら襟を正していかなければならないと考えておりますし、その意味で、明らかにしなければならないこと、それは適切な場で政治家みずからの判断で明らかにされるべきものだと考えます。
残余の質問につきましては、関係大臣からお答えを申し上げます。(拍手)
〔国務大臣下稲葉耕吉君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115254X00519971114/6
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007・下稲葉耕吉
○国務大臣(下稲葉耕吉君) 大森議員にお答え申し上げます。
まず、利益供与の罪や利益供与を受ける罪の罰金の額が低いじゃないかという御質問がございます。
一般的に申し上げますと、多額の利益を供与したり受け取ったりした会社関係者や、いわゆる総会屋に対しましては、事案の内容にもよりまずけれども、運用上は、罰金刑よりも懲役刑が科される場合が多くなっているものと考えます。
また、会社から利益の供与を受けた総会屋等に対しては、商法の規定によって、供与を受けた利益を会社に返還すべき義務が課されております。また、その利益を刑法の規定によって没収、追徴することも可能であります。その上に、総会屋に対しましては、本改正により、懲役刑とあわせて罰金刑を併科することも可能となります。このようなことからいたしますと、個人に対する三百万円以下という罰金額は不当に低過ぎるものとは言えないと考えております。
なお、その抑止効果等につきましては、今回の法改正後も、その運用を見守ってまいりたいと思います。
次に、利益供与の要求を受けた会社側の役職員に対し、これを捜査機関に通報または告発する義務を課する規定を設けなかった理由についての御質問がございました。
会社側に告発義務を課すべきであるという議論があったことは事実でございますが、我が国の現行法上、私人に犯罪の告発義務を課した規定はなく、通報義務等を課した規定は、いずれも不特定多数の人の生命、身体にかかわる公共の危険に関連するものでありまして、これらと同列に論ずることは難しいと言わざるを得ません。
今回、新たに要求罪を設けることによって、会社側が総会屋から不当な要求を受けた段階で、早期に犯罪を捜査当局に届け出てその処罰を求めることができるようにすることとしており、これによって会社側が総会屋に対して毅然たる対応をとることが容易になるものと考えます。
なお、刑法の脅迫罪や強要罪との整合性を考慮して通報等を義務づける規定の新設を見送ったのかというお尋ねがございましたが、特にこれらの罪に限って整合性を考慮したというわけではなく、法体系全体における整合性という観点から検討を加えたものであります。
次に、利益供与・受供与罪について、公訴時効期間が短過ぎるのではないかとの御質問がありました。
利益供与・受供与罪においては、関係者相互間に癒着構造があり、発覚までに時間を要することが多いという事情がありますので、御指摘にも一面もっともな点があると思います。しかしながら、公訴時効期間は個別的な事情を考慮して区々に定められるべきものではなくて、刑事法全体の枠組みの中で各犯罪の法定刑、すなわち罪質の重さの評価に応じて定められるべきものであります。
なお、本改正案におきましては、利益供与を受けたり要求した総会屋が威迫を手段とした場合には刑を加重しており、懲役刑の上限を五年とすることとしておりますが、この場合には時効期間は五年となっております。会社荒らし等に関する贈収賄罪につきましても、法定刑の引き上げに伴い、時効期間が三年から五年に延長されることとなっております。したがって、いわゆる時効の壁という問題を生ずることなく、総会屋の摘発、排除の実を上げることが期待できるものと考えております。
最後に、総会屋をめぐる事件の徹底的な捜査に関する決意についてのお尋ねがございました。
一連の総会屋をめぐる不正事件につきましては、まことに憂慮にたえません。検察当局においては、本改正の趣旨を踏まえ、この種事件の根絶を目指し、法と証拠に基づき、厳正に対処するものと考えております。(拍手)
〔国務大臣三塚博君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115254X00519971114/7
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008・三塚博
○国務大臣(三塚博君) お答え申し上げます。
四大証券の不祥事についてのお尋ねでありますが、今回の一連の問題につきましては極めて遺憾な出来事であります。
今般の証券会社をめぐる一連の問題の背景には、法令遵守意識の不徹底、内部監査体制の不備等の問題点があると考えております。先般、野村証券に対し厳正な行政処分を実施いたしますとともに、十分な再発防止策の策定を求めたところでございます。
次に、四大証券の監督指導についてのお尋ねでございますが、証券行政については、既に事前指導的監督行政から事後的監視行政への転換を図ってきておるところでございます。
今後とも、不正があれば、これに対し法令に基づき厳正に対処していくとともに、より公正な透明な市場を実現するため、金融システム改革に全力を尽くして取り組んでまいりたいと考えております。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115254X00519971114/8
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009・斎藤十朗
○議長(斎藤十朗君) これにて質疑は終了いたしました。
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115254X00519971114/9
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010・斎藤十朗
○議長(斎藤十朗君) 日程第一 許可等の有効期間の延長に関する法律案(内閣提出、衆議院送付)を議題といたします。
まず、委員長の報告を求めます。内閣委員長竹山裕君。
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〔審査報告書及び議案は本号末尾に掲載〕
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〔竹山裕君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115254X00519971114/10
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011・竹山裕
○竹山裕君 ただいま議題となりました法律案につきまして、御報告申し上げます。
本法律案は、行政改革の一環として、許可等の申請に係る国民の負担軽減を図るため、十六法律、四十九事項にわたる許可等の有効期間の延長を一括して行おうとするものであります。
内閣委員会におきましては、許可等の有効期間を延長する際の期間設定の基準、今回の措置による具体的な負担軽減の効果、規制緩和が消費者保護に及ぼす影響等について質疑が行われましたが、その詳細は会議録によって御承知願います。
質疑を終わり、採決の結果、本法律案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
以上、御報告申し上げます。(拍手)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115254X00519971114/11
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012・斎藤十朗
○議長(斎藤十朗君) これより採決をいたします。
本案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115254X00519971114/12
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013・斎藤十朗
○議長(斎藤十朗君) 総員起立と認めます。
よって、本案は全会一致をもって可決されました。
本日はこれにて散会いたします。
午後零時三十五分散会
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114115254X00519971114/13
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