1. 会議録本文
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000・会議録情報
平成十年五月二十日(水曜日)
午前九時三十分開議
出席委員
委員長 遠藤 乙彦君
理事 遠藤 利明君 理事 佐田玄一郎君
理事 田野瀬良太郎君 理事 谷畑 孝君
理事 鉢呂 吉雄君 理事 吉田 公一君
理事 井上 義久君 理事 青木 宏之君
安倍 晋三君 赤城 徳彦君
飯島 忠義君 小林 多門君
河野 太郎君 桜田 義孝君
田中 和徳君 田中 昭一君
高市 早苗君 西川 公也君
松本 和那君 目片 信君
山本 幸三君 石井 紘基君
樽床 伸二君 畑 英次郎君
平野 博文君 山本 譲司君
山本 孝史君 市川 雄一君
西野 陽君 辻 第一君
中島 武敏君 中西 績介君
出席国務大臣
建 設 大 臣 瓦 力君
出席政府委員
建設省道路局長 佐藤 信彦君
建設省住宅局長 小川 忠男君
委員外の出席者
参 考 人
(芝浦工業大学
教授) 岡田 恒男君
参 考 人
(弁護士) 新里 宏二君
参 考 人
(柏 市 長) 本多 晃君
参 考 人
(社団法人日本
建築士会連合会
制度委員会委員
長) 藤本 昌也君
建設委員会専門
員 白兼 保彦君
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委員の異動
五月二十日
辞任 補欠選任
飯島 忠義君 田中 昭一君
岩永 峯一君 桜田 義孝君
玉沢徳一郎君 河野 太郎君
樽床 伸二君 山本 孝史君
畑 英次郎君 石井 紘基君
同日
辞任 補欠選任
河野 太郎君 玉沢徳一郎君
桜田 義孝君 岩永 峯一君
田中 昭一君 飯島 忠義君
石井 紘基君 畑 英次郎君
山本 孝史君 樽床 伸二君
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五月十九日
高速自動車国道法等の一部を改正する法律案
(内閣提出第七〇号)(参議院送付)
は本委員会に付託された。
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本日の会議に付した案件
建築基準法の一部を改正する法律案(内閣提出
第九九号)
高速自動車国道法等の一部を改正する法律案
(内閣提出第七〇号)(参議院送付)
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114204149X01319980520/0
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001・遠藤乙彦
○遠藤委員長 これより会議を開きます。
内閣提出、建築基準法の一部を改正する法律案を議題といたします。
本日は、本案審査のため、参考人として芝浦工業大学教授岡田恒男君、弁護士新里宏二君、柏市長本多晃君及び社団法人日本建築士会連合会制度委員会委員長藤本昌也君、以上四名の方々に御出席をいただいております。
この際、参考人の方々に一言ごあいさつ申し上げます。
本日は、御多用中のところ本委員会に御出席いただきまして、まことにありがとうございます。本案につきまして、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。よろしくお願い申し上げます。
なお、議事の順序でございますが、岡田参考人、新里参考人、本多参考人、藤本参考人の順序で、御意見をそれぞれ十五分程度お述べいただき、その後、委員からの質疑にお答えいただきたいと存じます。
それでは、岡田参考人にお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114204149X01319980520/1
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002・岡田恒男
○岡田参考人 おはようございます。御紹介賜りました芝浦工業大学の岡田でございます。
私は、建築物の耐震工学に関する研究をやっておりますが、今回、建築審議会の委員として、今回の改正に向けました審議会の答申の作成に携わってまいりましたので、その立場から、今回の改正法案について意見を述べさせていただきたいと思います。
私が審議会の議論の中で担当いたしましたのは、建築物の構造などの基準と建築規制制度の枠組みに関する点でございました。これらにつきましては、御承知かと思いますけれども、四つのポイントがございます。
一番目は、建築設計の自由度を高めるための性能規定の導入ということでございました。
現在の基準法令関係の規定は、建築物に使用いたします材料の形とかあるいは寸法、この辺を細かく規定しておりまして、また、構造計算などに関しましてもかなり画一的な方法を定めておりまして、これを私どもは仕様規定というふうに呼んでおります。
このような仕様規定は、建築物にある一定レベル以上の性能を確保するという点では大変有効な方法、考え方でございますけれども、現在では、建築基準法が制定されました一九五〇年より、建築物の質も相当向上してまいりましたし、技術レベルも格段に進歩してきております。そのために幾つかの問題点が出てきております。
三つばかりポイントを申し上げますと、まず一番は、新しく開発された材料とか新しい技術、構造方法などを使うのに非常に大きな障害が出てきてまいっております。
具体的に申しますと、例えば、十分に性能が証明されたある材料あるいはそういう方法でございましても、仕様規定に合致しない場合は、すべて建設大臣の特別の認定を受けなければいけないということになっております。
それから二番目は、この性能規定化というのは今、国際的に実用化の検討が進みつつありまして、こういう性能規定を基本とした新しい設計法を採用することの一つの障害として現在の基準法が位置づけられるわけであります。
三番目は、現在の基準と申しますのは、いろいろな性能に関しまして考えていないわけではございませんけれども、最低限の性能を確保する、安全性などに関しましても最低限のものを確保するというために仕様を定めるということが主体となっておりますから、でき上がった建物の本当の性能がどうであるかということを把握しなくても建物がつくられてしまうという状況になっております。したがいまして、でき上がった建築物が、定められた基準に対しまして、あるいは基準が想定しております性能に対しましてどの程度すぐれているのか、どのような位置にあるのかということが、でき上がってみてもわからないという状況であります。
言いかえますと、設計をする側から見ますと、建築物の真の性能がどの辺にあるかということを把握しないままに設計が完了いたしますし、建物を建てる方あるいは購入する建築主の方々も、建築物の本当の性能がわからないまま建てたり購入したりするという状況が続いてきているわけでございます。
このような問題を解決するためには、建築物に求められる性能を最初に規定いたしまして、その性能がどの程度満足されているのかということが証明されればいろいろな設計ができるという、設計の多様化を図る必要があるのではないかということでございまして、こういうことによって、その建物のコストに見合った性能パフォーマンス、コストパフォーマンスと言っておりますが、これを考慮して建築物をつくったり買ったり建てたりということができるのではないか、こういう議論をいたしたわけであります。
二番目のポイントは、こういう性能規定化を進めまして、こういうものを通じて建築基準の国際的な調和を推進すべきではないかということであります。
御承知のように、我が国の建設市場は、投資額を見ますと、EU十五カ国全体のそれを上回るぐらいのポジションになっております。さらに今後は、海外との間で建築技術の交流あるいは建設資材等の流通というものが活発化することが予測されております。
このような建築関係の国際化に備えまして、建築基準の国際化を積極的に推進することによりまして、例えば海外規格の製品、材料あるいは建築技術の市場参入、並びに、その逆で、国内の製品、材料あるいは技術といったものが海外市場に出ていくことに対する円滑化を図るべきではないかということでございます。
建築基準の性能規定化に関しましては、既にイギリス、オーストラリアなどで実行に移されているところでございまして、その他の国でもその方向に向かっているところであります。私が専門といたしております耐震工学の分野でも、研究者の間での国際シンポジウムなども大変頻繁に行われているところでございます。
同時に、こういうことが進みますと、諸外国の認証、試験あるいは検査機関との相互認証ということを推進すること、あるいは諸外国で認証、試験、検査されたものの性能評価の結果を我が国でも積極的に受け入れる必要が今後出てくるのではないかと考えたわけであります。
三番目は、ちょうどこの審議をいたす直前に起こりました阪神・淡路大震災の件でございまして、この教訓を踏まえて安全性をどう確保していくかということでありまして、そのための検査制度等の充実という点でございました。
阪神・淡路大震災では、建物の倒壊等によりまして多数の死傷者が出るという事態になりました。これらによりまして提起された種々の問題がございますが、建築物を見てみますと、震災によりまして非常に大きな被害を受けた建築物の多数は、古い基準によるものだということが判明いたしました。この点につきましては、古い建物の対策、耐震診断、耐震改修という方策が今進められているところでございまして、三年ほど前におつくりいただいた耐震改修促進法がこの大きな力となっているわけであります。
一方、現在の基準によりつくられた建物について申し上げますと、倒壊するとかという非常に大きな、深刻な被害を出した建物の数はそんなに多くございませんでしたが、皆無ではございませんでした。この辺を調べてみますと、やはり、それぞれ個々の建物の設計に問題があったということもわかってきておりますし、設計の方法につきましては、部分的には設計指針が手直しされるとかという対処がされてきております。
しかしながら、これは新しい建物、古い建物通じてのことでございますけれども、もう一つ、施工の不良という問題が出てきております。これにつきましては、どのくらいの数の建物がということが十分にはつかめておりませんけれども、例えば、鉄骨構造では溶接部の破断、それからコンクリートの構造物では鉄筋の配筋の問題、コンクリートの打設の問題、木造建築ではジョイントの問題というようなところが指摘されてきております。
このような施工などの不備をなくして、建築物の品質確保を図るためにはどうすればいいかということでございまして、今後、的確な工事監理の確保と同時に、適切な検査の実施の実現に取り組む必要があると考えるわけであります。
さらに、先ほど申しましたように、建築基準の性能規定化を進めていきますとこの検査というものがますます重要になってまいります。このために完了検査というのを徹底して行って、さらに、特に構造安全性に関しますと、でき上がってしまいますとなかなか骨組みが見えませんので、中間検査というものを積極的に実施する必要がある。同時に、建物の概要とか検査の実施の情報を積極的に公開することによってまたそういう検査を受けるということを促進する必要があるのではないかということであります。
四番目は、このような検査をどうやって進めるかということでございますけれども、こういう検査あるいは建築確認等の行政事務を民間に開放してはどうかということでございます。
現在は、年間約百万件に上る建築確認とか検査というのは、全国のほぼ三百七十の特定行政庁で七千七百人ぐらいの建築行政の職員、その中の本当の専門の建築主事は千八百人ぐらいだと伺っておりますけれども、その職員が担当しております。しかしながら、この膨大な処理件数をこなすためには、検査等のために十分な実施体制を確保することが非常に困難な状況に今来ております。
例えば、人口当たりの建築行政職員の数を諸外国と比較したデータもございますけれども、アメリカのロサンゼルス市と日本の現状を比較いたしてみますと、端的に申しまして、日本では職員数が四分の一ぐらいしかないという状況が判明しております。さらに、オーストラリアとかイギリスでは、もう既に民間の検査機関を活用するところへ踏み込んでおります。
このために、建築行政の執行のあり方を今回抜本的に見直して、従来、行政のみが行ってきた建築確認とか検査等につきまして、必要な審査能力あるいは責任体制などを備えた企業、団体等が実施できるようにしてはどうだろうか、こういうことによって全体の建築行政の実施体制の強化を図ることがどうだろうかというのが提案の大きな骨子でございました。
民間の機関に移行いたしますと、迅速な審査の実施などのサービスの提供なども期待できますし、一方、行政の方は、今までそういうものに使ってきた時間、人手を、違反の是正とか処分、そのような監督の業務の方に移行していくことができるのではないか。このようにして全体の建築行政の実を上げてはどうだろうかということでございました。
こういう観点から、私、今回の改正の法案を拝見いたしますと、次のようなことが申し上げられるのではないかと思います。
今回の改正法案の実現によりまして、建築主、設計者、施工者、行政などの役割と責任が明確になりまして、設計あるいは施工する建設側の人間は専門家としての責任を果たし、建築主にも一定の責任を持っていただき、全体として建築物の品質の確保を図るような社会システムの構築が可能になるのではないかと考えているわけであります。
以上のように、今回の改正案と申しますのは、私どもが審議いたしてまいりました建築審議会の答申を踏まえまして、今申し上げました四つのポイントを盛り込んだものになっていると私は評価している次第でございます。したがいまして、できるだけ速やかにこれが実現できますことを私といたしましては願っておりますし、お願いいたしたいと考えます。
ただ、私が本当の専門にいたしております耐震設計などの技術的な基準とか、あるいは民間の機関、指定確認検査機関などの具体的なものにつきましては、今後、政令などによって施行の期間までに十分詰めていく必要がございます。
これらにつきましては、建設省の方で、ひとつ審議会答申の精神を十分御理解いただいて、実質的に建築行政の効果が上がり、また建築物の質が向上するように、専門家あるいは関係者の意見を十分聴取いただき、またユーザーのニーズ、建築主のニーズとか、あるいは供給側の技術レベルの現状なども把握いただきまして、鋭意今後検討されることを望みたいと思います。
このような検討に際しましては、結果的に建築物の性能のレベルが下がるということになってはいけないわけでございまして、これを踏まえつつ、かつ新しい設計の仕様とか設計方法とかというものを積極的に採用いただき、設計の多様化を図るというような体制、言ってみれば、建築行政、建築設計、施工の規制緩和と申していいかと思いますが、規制緩和あるいは国際調和という視点でそういう今後の政令等が十分整備されることを希望いたして、私の説明を終わらせていただきたいと思います。
どうもありがとうございました。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114204149X01319980520/2
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003・遠藤乙彦
○遠藤委員長 ありがとうございました。
次に、新里参考人にお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114204149X01319980520/3
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004・新里宏二
○新里参考人 弁護士の新里でございます。
参考人としての意見を述べさせていただきたいと思います。
私自身は、日本弁護士連合会、日弁連といいますけれども、そのうちの一つの委員会でございます消費者問題対策委員会の副委員長をしております。
担当は土地住宅部会と申しまして、まさしく欠陥住宅の被害防止、被害救済にどう立ち向かうかということの観点からできた部会でございます。この部会ができましたのも阪神・淡路大震災の後でございまして、阪神・淡路大震災による倒壊圧死事故を踏まえて欠陥住宅問題がクローズアップされたという中で、消費者問題として位置づけて取り組んだということでございます。
今回、建築基準法の改正ということの中で、私たちは、欠陥住宅の予防のシステムをどう確立していくかということの観点で意見をいろいろ述べさせていただいております。
この欠陥住宅問題は極めて深刻でございます。今、岡田参考人の方からも出ましたように、阪神・淡路大震災では、古い建物について倒壊が多かったと言われておりますけれども、比較的新しい建物についても、例えば筋交いの不足や取りつけ方の不備または基礎部分の接合不十分というふうな形での倒壊、いわゆる手抜き工事による倒壊ではないかと欠陥住宅が指摘されておるということでございます。
さらに、最近、皆様も御承知かもしれませんけれども、秋田県の第三セクターでございます秋住というところの千葉県でのいわゆる大量の欠陥住宅問題、これは極めて深刻でございます。
さらに、私たち日弁連が行いました二回の欠陥住宅一一〇番、それにつきましては、平成八年の実施では七百二件、平成九年では九百六十六件。ことしは六月の三、四、五日で実施予定でございますけれども、極めて多数の相談が寄せられております。私ども弁護士は、いろいろな形で一一〇番活動、被害の掘り起こしという意味でやっておりますけれども、このような多数の相談者が来る相談というのはこれが初めてではないかというほどの相談でございました。
その中で、日弁連としましては、昨年の十月、建築基準法の改正ということの意見書を建設大臣に出しております。皆様のお手元の資料の中に、一番目の資料でございますけれども、意見書がついております。内容は、いわゆる住宅検査官という新たな制度を導入することによって中間検査制度を導入すべきだという意見でございます。
住宅検査官というのはどういうものかというと、いわゆる建築主事の代行、補佐をして、住宅建築の幾つかの節目で、大体六段階を考えているわけですけれども、当該住宅建築が法令等に合致しているかどうかを現場に臨んで検査をする、そして問題のある工事については施工者に工事中止命令を発する、または改善命令を発するというような権限を住宅検査官に付与することによって欠陥住宅被害を未然に防止できるのではないかということでございます。
さらに、四月十日付で、衆参両院に対しまして、法案が上程された後に同様の申し入れをしている、これも皆様の資料についているものでございます。
そういう意味では、今回、私たちのサイドからということになりますけれども、この参考人の中で私が一番この法案についての問題点を指摘することになろうかと思っております。
こういう欠陥住宅被害を生む背景は何かということでございますけれども、私たちは、一つは、大きなことが言えるとすれば、いわゆる建築士による工事監理が機能していないのではないかということでございます。
建築士法十八条四項では、「建築士は、工事監理を行う場合において、工事が設計図書のとおりに実施されていないと認めるときは、直ちに、工事施工者に注意を与え、工事施工者がこれに従わないときは、その旨を建築主に報告しなければならない。」と定められております。いわゆる工事監理者たる建築士が施工業者と対峙関係にあるということを法は予定していると考えております。
しかし、実際は、建築確認の工事監理者の届け出について名義貸しが横行しております。さらには、建築士が施工業者の従業員であったり、施工業者と経済的なつながりがあって、経済的に従属的な地位にある。そのような中で、この十八条の四項が死文化しているところに問題があるのではないかと考えております。
例えば、建築の完成検査につきましては、現在、三割しか検査を受けていないという悲惨な状況でございます。これについても、建築主と工事監理をする建築士が署名して主事に届け出をすることによって検査がなされていくということになっているわけですが、それがなされていないということなのですね。
五十八年の建築基準法の改正で、七条の二ということで、いわゆる特例措置が認められております。例えば、建築士である工事監理者によって設計図書のとおりに実施されたものに対してはいわゆる単体規定に対する検査が省略をされている、そういう特例措置がなされているにもかかわらず、実際にはやられていない。そこに建築士の監理が十分機能していないことが端的にあらわれているのではないかと思います。
それから、皆様への資料の中でも新聞記事を挿入しておきましたけれども、監理する建築士が機能していないということで、弁護士の有志によって建築士に対する行政処分を申し立てをするというような記事であります。それまで深刻な事態になっているのだということは御認識いただきたいと思います。
それから、この法案の上程の関係でございますけれども、この法案自体が三月に開示されました。もともとは去年の八月に法案ができるだろうと言われていたわけですけれども、なかなか法案ができ上がらないということで、上程間際に一般に開示をされた。
今回の建築基準法の改正は戦後最大の改正であるという意味では、こんなに欠陥住宅問題が社会的関心を呼んでいる時代であれば、オープンな議論をした上でその予防のシステムをつくるべきではないのか。今回、手続的には極めて、一般の意見を聞く時間的な余裕がなかったという意味では、この手続がまさしく私どもからすると問題があるのではないかというふうに考えております。
さらに、法案の中で、きょうは中間検査の導入と指定確認検査機関の問題点に絞って私の方では意見を述べたいと思っております。
今回、岡田参考人からも出ましたように、確認・検査業務の民間開放ということの関連で、指定確認検査機関を指定をするというような法制が考えられております。例えばその中で、役員、職員等の構成が確認・検査業務の公正な実施に支障を及ぼすおそれがないこと、または確認・検査業務を行うにつき十分な適格性を有するものであることというような法律による限定がなされております。
これ自身は、イギリス等で行われておる民間検査機関を日本型に導入しようとする趣旨のようでございます。しかし、我々土地住宅部会の方で、三月でございますけれども、アメリカにこの件で視察に行った中では、この民間の検査制度は機能していないのではないかというような指摘がなされておりまして、それにつきましては後ほど報告書をまとめる予定でございます。
さらに、建設省の説明では、この民間機関については株式会社が排除されないということのようでございます。営利を追求する団体で公正な確認、検査が期待されるのかどうかという疑問が残ります。
さらに、現在でも、確認業務につきましては、行政訴訟が多数提起されております。今後は、指定確認機関の処分に不服がある場合については、建築審査会に審査請求をして、その裁決後には行政訴訟ではなく民事訴訟として行われるということのようでございますけれども、そのような裁判の場にさらされる危険性が極めてあるということで、「民間企業が参入するにはリスクが大き過ぎる」のではないかというふうなことが日経アーキテクチュア等で指摘されております。これも、皆様のお手元の資料の中で、資料の四ということになりますけれども、それの百十三ページ以下に記載されているところでございますので、見ていただければと思います。
そういう形でこの仕事がいわゆるクレーム産業化している現状を踏まえれば、特に利害関係がない限りはこのところに参入してくる業者がないのではないのか。そうすると、かえって、いわゆるハウスメーカー等が共同で出資をして、みずからの住宅の確認・検査機関をつくっていく、そういう危険性、危惧の念が払拭できない。いわゆる公正さが疑われる状況がないのかどうかということについて極めて疑問が残るところでございます。
私たちは、意見書等でも触れましたけれども、やはりこのような確認・検査業務というのは、薬の行政と同じように、官として責任を持ってやる分野ではないかというふうに考えております。
さらに、中間検査制度についてでございますけれども、私ども日弁連としましては、中間検査制度の導入は賛成でございます。ただし、今回の法案自体には問題があるのではないかというふうに考えております。
まず一つは、この法案の中で、いわゆる特定行政庁が特定工程として指定をしない限り、中間検査制度が導入されないということなのでございます。ですから、各自治体等で、うちでここまでやりますよと指定しない限りは進んでいかないということになります。
皆様に配付されております「建築基準法の一部を改正する法律案について」(調査室資料)も、二十五ページで、地域によってばらつきが出るのではないかというような論点整理がなされているようでございます。まさしくそのような事態が生ずるのではないか。先ほどの日経アーキテクチュアの記事の中でも、やるのは千代田区、現在やられているところでしかやられないのではないかというような指摘がなされているところでございます。それに対して、建設省としてどのようなビジョンを持って指定させていくかということについては全く見えていないというところが大きな問題点ではないかと思います。
それから、いわゆる特例の問題点だと思います。戸建て住宅、プレハブ住宅等で工事監理が適正に行われているものについては、特例として実地検査を省略するという、七条の五という特例措置の規定が定められております。実は、この特例については、調査室作成の「建築基準法の一部を改正する法律案について」では全く触れられておりません。私はこの特例のところが極めて問題ではないかというふうに考えております。
先ほど述べましたように、阪神‘淡路大震災での死者は六千五百名にも上るかと言われておるところでございまして、ほとんどが、八九%が倒壊による圧死者ということになります。それのほとんどが戸建て住宅の被害でございます。そこに中間検査が一番必要なのではないでしょうか。そこに特例措置を認めるのはいかがなものなのかということでございます。
そして、これまで述べてまいりましたように、いわゆる工事監理が極めて今ずさんに行われているところに欠陥住宅被害の原因があるのだということからすれば、監理が行われることを前提とした特例措置には反対をせざるを得ないというふうに思っております。アメリカ等でも、インスペクター制度、ロサンゼルスでは人口三百五十万、インスペクターは四百五十人いるそうです。官としての検査を行っております。そのようなことを考えれば、この特例というのはぜひ私はこの改正法案の中では外すべきだというふうに考えております。
いろいろ言いたいことはあるわけですけれども、今回の建築基準法の改正については、確認・検査業務の民間開放、それから中間検査の特例を設けるということについては私は反対の意見を述べさせていただきます。
欠陥住宅被害の予防の観点からは、建築士法二十三条、これは建築士が雇われても登録ができるという体制になっておりまして、そこが、施工主に雇われることによって監理が機能していないという一番の原因になっているわけですけれども、それをどう考えていくのか、または建築士の責任の厳格化をどうするのか。
それから、建設業法は、大きなゼネコンから住宅まで含まれた法規制になっておりますけれども、その中で、住宅部分だけを切り離した法制をつくっていくのかどうか、そのような建築三法を見据えた改正が私はぜひ必要だというふうに考えております。
以上でございます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114204149X01319980520/4
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005・遠藤乙彦
○遠藤委員長 ありがとうございました。
次に、本多参考人にお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114204149X01319980520/5
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006・本多晃
○本多参考人 おはようございます。千葉県の柏の市長の本多でございます。
柏市は、現在、一般特定行政庁として、市内のすべての建物につきまして、建築確認の業務及び検査の業務並びに特例許可等を取り扱っております。私は、建築行政の現場を担当しております自治体の立場から、また町づくりを進める立場から、今回の改正案に対する意見を申し上げます。
まず、建築行政の実態と今後の方向についてでございますが、柏市は現在、人口三十二万二千人でございます。これまで首都近郊の住宅商業都市として急速に発展してまいりました。建築確認の件数は、ここ五年間二千五百件を上回っております。しかし、平成九年度につきましては、景気の動向を反映したせいか、二千三百五十四件となっております。
なお、工事の完了届については、平成九年度に千八十五件を受け付けております。また、同年度には八百八十三件につき検査済み証を交付しているところです。すなわち、完了検査の実施数は、確認件数に対して四〇%前後の割合でございます。この割合は、ここ五年間ほぼ同率で推移しております。
本市では、確認・検査業務については、建築部の建築指導課というところが担当しております。建築計画の審査及び建築物の検査に直接従事する職員は十八名、このうち課長を含めまして五名を主事に任命しておるところです。したがって、勤務日で単純に割りますと、建築主事一人当たり一日約二件の確認業務を行っておるということになります。これらの業務に直接従事する職員は、市役所の中でも最も残業時間の多い部局の一つであるというような、大変忙しい、また厳しい状況の中で業務をこなしておるのが実情でございます。
次に、違反建築物の指導状況について申し上げます。悪質なものにつきましては、建築基準法第九条に基づく工事停止命令あるいは使用禁止の命令を発しております。その件数は、ここ五年間、毎年一、二件となっております。また口頭指導あるいは是正勧告書の添付などによります指導は、年二、三十件となっております。違反建築物の発見は、近隣住民の通報によるものが八、九割を占めております。市でも独自にパトロールを行っておりますが、これは八人の職員が、月二回、現地調査を行っております。しかし、これによります違反建築物の発見というのはまれでして、検査体制あるいはこのパトロール指導体制というのは十分でないと認識をしております。
さて、将来を展望してみますと、本市は都心部から通勤一時間圏内の大変恵まれた条件にあります。都市化の進展は依然として根強いものがございます。したがって、建築着工件数についても、今後とも同程度の件数で推移するものと予測をしております。
さて、ここで、本市の町づくりと建築行政の方向について一言申し上げます。
本市は東京近郊の人口急増都市でございます。このため、人口あるいは市街地の広がりに対しまして、道路、公園、下水道などの都市施設及び生活基盤は大きく不足をしております。一方では、幹線道路が交わること、あるいは常磐線沿線の商業地の中心であることなどから、住宅、商業施設、流通関連施設の新規立地が盛んでございます。このような状況に立って、本市の町づくりは、新規の住宅や商業施設あるいは大学、研究施設などの立地需要に対して前向きに取り組む中で、長期的に活力のある町をつくりたい、それが第一の課題でございます。
次には、現在残されておる緑地などの保全に努めまして、その中で着実に公共施設の整備を進め、暮らしやすい、よい環境の市街地をつくっていきたい、これが第二の課題でございます。
したがって、建築行政には、個々の建物の安全性あるいは快適性を確保するということに加えて、市街地環境の向上、福祉の町づくりに配慮した計画、あるいは都市景観の向上など、幅広い役割を期待しておるところでございます。
さて、今回の改正案は、国、地方を通じた行政改革の中で、民間と公共の担うべき役割の明確化を図ったこと、あるいは中間検査制度の導入によって建築物の基準適合性を確保する、またその中で地域の自主的な取り組みを生かすというものと受けとめております。
さて、個々の点について何点か御意見を申し上げます。
まず、確認・検査業務ですが、確認・検査業務は、建築計画が一定の基準に適合しているか否かを技術的に判断する作業でございます。行政的な判断あるいは裁量は伴わないものと考えております。したがって、資格を持った者であれば、民間の技術者でも公務員である技術者でも可能な作業と考えます。
本市においては、確認・検査業務にかかわる建築主事の負担は大変大きく、この結果、業務のおくれに対する市民あるいは建築主の不満また違反指導の不徹底、あるいは低い検査率などの諸問題が恒常的にあるところでございます。
それでは、担当職員を増員すれば済むかということになりますと、これにも大きな障害がございます。本市では、効率的なスリムな行政を目指しまして、行政改革に五年越しで取り組んでおります。このため、職員定数は五年間据え置きのままとし、経常経費の削減に努めておるところでございます。
しかし、このような中で、福祉、保健など職員が直接人の手で住民サービスしなければならない行政の分野は拡大の一途でございます。このため、首長としては、限られた職員定数の中で新しい行政需要にいかに対応していくか、その職員をいかに活用するかということが問われるところでございます。
本市の場合、建築職として入庁した職員は、現有の全職員二千六百二十五名のうち五十九名です。優秀な建築職、専門職を確保するということは、私どものような規模の自治体では大変容易なことではございません。この中で、建築の専門的な知識あるいは経験を有する職員には、公共建築物の企画とか監理あるいは都市計画あるいは福祉の町づくりといったような広い分野で活躍してもらいたい、このように考えております。
今回の改正は、行政の担うべき役割が問われる中で、確認・検査業務を民間に開放するということで、確認・検査業務の窓口を広くし、市民サービスの向上につながるのではないかと思料いたします。また、首長の立場としましては、現在の建築主事の負担を軽減し、建築担当職員が市の職員としてもっと取り組んでほしい違反建築物の是正指導あるいは幅広い町づくりにその力を集中することができる、可能にする制度と評価をいたしております。
なお、民間の機関に確認業務を任せることで、行政指導の機会あるいは権限を背景にした影響力が失われるのではないかと危惧する御意見もございます。しかし、確認の保留などを背景にした行政指導というものは、現場で担当していますと、行政あるいは事業主、関係する地域住民にとっても好ましいものとは思えません。また、実態からしても、その結果は必ずしもよいものではないと見受けられます。
本市においても、既に行政手続法に則した行政手続条例を施行しておりまして、これからは行政の透明性というのが厳しく求められているところでございます。このため、公共的な施設の整備基準あるいは近隣住民との紛争調整手続などについて、現在要綱で対応しているものについては、その基本的事項を順次条例化する必要があると感じておるところでございます。
さて、次に、中間検査のことでございますが、中間検査は、違反建築物の防止あるいは建築物の安全性の確保のために大変有効な手段と受けとめております。しかし問題は、この中間検査制度の確実な実施をいかに確保するかであります。一たんこれが定められたからには、私どもとしましては、この検査を受ける側もあるいは検査を実施する側もこれに確実に対応できるものでなければなりません。その点で、地域の実情に合わせて検査対象とする工事の工程を指定し得るという今回の改正案は、現実的な取り組みであると評価をいたします。
次に、建築物の確認、検査などに関する台帳の整備と図書の閲覧です。
これは、行政手続の透明性の観点から大変意義のある措置と考えます。現在、本市においては建築計画概要書の閲覧申込件数は年間約三百五十件ございます。本制度により閲覧の件数はさらに増加し、この結果としてユーザーの目がいわば肥えてくること、ひいては建築事業者側でも検査受検率の向上と建築物の質の向上がもたらされるものと期待をしております。
最後に、連担建築物設計制度、仮称について申し上げます。
本市の古い時代の宅地開発や土地区画整理事業の区域におきましては、道路幅員が狭く、土地の細分化が進んでおり、有効な利用が困難なところが多々ございます。本市では、駅周辺の商業地域あるいは近隣商業地域にそれぞれ八〇〇%から三〇〇%の容積率を指定しておりますが、実際の容積率の利用割合は二分の一以下となっております。
本市では、このような地域において街路事業あるいは土地区画整理事業などによって街路、駅前広場等の整備に鋭意取り組んでおりますが、今回の連担建築物設計制度は、このような基盤整備と相まって、まとまった大きな区画での土地の合理的な建築計画を可能にするものと考えます。このことにより、建築物の更新を促進するとともに、公共施設整備の効果をさらに生かせるものと期待をしておるところでございます。
以上でございます。ありがとうございました。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114204149X01319980520/6
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007・遠藤乙彦
○遠藤委員長 ありがとうございました。
次に、藤本参考人にお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114204149X01319980520/7
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008・藤本昌也
○藤本参考人 おはようございます。
私は、日本建築士会連合会制度委員長をやっていまして、また、その建築士の一人として設計等をやっている者なのですけれども、本日は、私の置かれている二つの立場から今回の基準法改正についての意見を申し上げさせていただきたいと思います。
その二つの立場というのは、今申し上げましたように、建築士として私は長年、建築の設計、工事監理の実務をやってきているわけですけれども、一つはその立場からです。それからもう一つは、建築士の一員として、多くの仲間と地域の環境づくりに貢献すべくさまざまな活動をしてきているわけですけれども、そうした団体といいますか、建築士会の活動の立場から、その二つの立場からこれから意見を申し上げたいと思います。
それで、まず、本題に入る前に、私は、二つの点を少し確認しておきたいというか、私の考え方を述べさせていただきたいと思います。
一つは、今の建築士の建築設計、工事監理の実態といいますか、そういうことについて若干触れたいと思います。それからもう一つは、今回の基準法改正といいますか、基準法という法的制度に対して私がどういうふうに基本的に考えているかということについて、この二点であります。
まず、建築士の活動の実態ですけれども、建築基準法には一つの相棒があります。建築士法というものがありまして、それが両輪をなしているわけです。その建築士法の第一条にも書いてあるわけですけれども、私たち建築士は、建築物の質というものをできるだけ向上させる、そういう役割を担って建築の設計とか工事監理の業務を遂行すべきだというふうに規定されているわけです。
そういうことで、私たちは、建築士の多くというふうに申し上げていますが、全部とは必ずしも言えないのですけれども、多くは、その質の向上のために、建築基準法が定めている質というのは、実はこれは最低基準、基礎的な質を規定しているものですけれども、それだけを満足すればいいということではなくて、クライアントといいますか建て主が望んでいる質というのは、当然基準法で指定している質よりももっと高いわけですから、それをも当然満足させなければならないし、ただそれだけではなくて、地域社会が求めている環境とか町並みとか、そういったレベルの質も当然満足させるように日々努力しているつもりであります。
ただ、先ほど全部と言わなかったわけですけれども、建築士の一部には、不心得者といいますか、残念ながらそういう人がいるということも事実であります。私などがいろいろ実際に実務をしている周りを見たり、あるいは士会のいろいろな各地域で活躍している建築士等のことを見ると、全体としては、日本の建築のそうしたものの実態を見ても、建築士はやはりそういう質の向上に努めて、社会的評価に値する仕事を行っているというふうに考えております。また、団体としてもそういう方向で町づくりとか建築士の資質の向上が図れるような研修等の活動もいろいろやっておりますので、それなりに評価していただけるのではないかというふうに考えております。
もう一つの前提となる議論ですけれども、私どもの法的制度に対する考え方なのですけれども、これまでの基準法というのは、先ほど申し上げたように、やはり建築物の基本的な性能を確保するための最低基準を定めている法律であります。例えば、構造の安全性とか居住性とかいった点で非常に反社会的な建築物をこの世の中に登場させないためのいわゆる下支えといいますか、下で、建築の質が落ちないように下支えをしている規制法だというふうに考えています。
ただ、これからの基準法も、そういった意味では基本的にはこの下支えの役割をするということなのでしょうけれども、その仕組み、いわゆる下支えの仕組みというのは、できるだけ対象物を基本的なものに限定していただいて、しかもそれは簡素で明快であることがやはり求められるのではないかと思います。特に私たち実務をしている者からすると、そういうものがやたらと煩雑になるということはぜひ避けていただきたいというふうに考えているわけです。
ただ、やはり反社会的な建築物を世の中に出したくないということで、完全に抹殺したいというふうに思うと、いたずらに過剰な規制を考えるということにもなりかねないわけですけれども、そういうふうなことをしていると、結果として社会全体の建築物の質を向上させたいという善意の建て主、それから私たち建築士のそうした努力が何となく阻害されていってしまうおそれがあるのではないかということで、そういうことはぜひ避けていただきたいというふうに考えるわけです。
また、そのときに大事なことは、いわゆる規制法といいますか、法的な仕組みだけを一生懸命つくればいいというのではなくて、これからは、例えば今回のことに関連すれば、住宅性能保証制度というふうな制度がありますけれども、そうした社会的な仕組み、そういうものをやはり補完的な仕組みとして効果的に導入するという、社会的な制度と法的な制度が非常にうまくバランスしていくというふうな、そうした社会が望まれているのではないかというふうに考えています。
一応、前置きとして今の二つの前提の議論を踏まえた上で私の基準法改正についての意見を申し上げたいわけですけれども、時間の関係もありますので、二つに絞ってお話ししたいと思います。一つは中間検査制度の問題と、もう一つは確認、検査の民間開放についてであります。
まず、中間検査制度の導入についてでありますけれども、私は、今回考えられている中間検査制度というものは、あくまでも工事監理を担保し、補完する制度というふうにとらえるべきだと考えております。私たち建築実務者の立場からしますと、建築物の適正な品質管理業務全体の中で、工事監理というのは必要不可欠な大変重要な業務だというふうにとらえております。工事監理を徹底させることによって初めて建築物の適正な施工が確保されるというふうに考えております。
確かに、建築基準法の実効性の問題として、一部にはこの重要な工事監理が、先ほども指摘されていましたように、事実上行われていない、名義貸しというふうなことによって形骸化されているということも全くこれは事実であります。しかし、このように法律で定められた工事監理が形骸化しているからといって、そのことはとりあえず置いておいて、そしてもう一つ別な規制をまた考えよう、それで施工の適正化を図ろうというのは、建築物の品質管理業務の筋論からいっても、恐らく法の筋論からいってもやはりおかしいのではないかというふうに考えます。
やはり必要なことは、ともかくも法的に定められている工事監理業務が適正に行われることが大事だということです。そのための合理的な補完制度をぜひ考えるべきではないかというふうに考えています。その制度もできるだけコストのかからない、少ない労力によって最大限の効果が上げられるような補完的制度を考えるべきだというふうに考えているわけです。
では、そういった補完制度というのは何かということになるわけですけれども、そのときに、そういうものを導き出す一つの方法として、私は、対象となる建築物を少なくとも二つに分ける、四号建物とその他の建築物というふうに分けて考えた方が合理的な手法が見つかるのではないかというふうに考えています。
まず、その場合に、四号建物については明らかに、その他の建物に比べて、工法的にも木造を中心にしたものでありますから、比較的容易であります。それから規模が小さいです。そういうことで、適正な工事監理を行わせるための補完的な制度というのは、次のようなことを考えればいいのかなというふうに考えています。
一つは、工事監理報告書というものの提出を中間の段階においても義務づける。それから、建築主と建築士との工事監理業務契約書の写しを提出させることはっきりと建築主が建築士に工事監理を頼んだということが大事だということですね。もう一つは、これもぜひお願いしたいわけですけれども、何よりも建築主事による抜き打ち的なパトロールを実施し、違反した場合は何となくで終わらせるのではなくてその処分を、もちろん建築士に対しては厳しく処分すると同時に、その背景にいる建築主にも何らかの罰則を与えるというふうな形でやっていただきたい。
この三つがうまく実際にできれば、少なくとも四号建物については、さらにその上に中間検査というふうな制度をプラスする必要は実質的にはないのではないか。屋上屋を重ね、いたずらに業務をふやすということになるのではないかというふうに考えています。
むしろ、中間検査を導入すると必要以上のコストの負担が建築主にかかりますし、工期が二、三カ月というようなことですから、実地検査の実施が工期に与える影響が非常に大きいということで、実際上、実務的に考えると、かなり社会経済上の問題が起きるのではないかというふうにも考えます。
そんなことで、今言ったような工事監理の補完的な仕組みとしては、三つの点をぜひ充実したらどうかということです。
そのほかの、では四号建物以外の建築物についてはどうかということですけれども、それも本当は今三つ挙げたようなことをきちっとやっていけば、中間検査の導入というのは全部、本来はやらなくてもいいのではないかというふうにも考えるわけです。
ただ、実際に、規模が大きいとか社会的な影響があるとか、あるいは、地方によってそれぞれ違うと思いますけれども、そうした違反の実態がやはりあるわけで、そういうことを踏まえて、各自治体ごとに、これは工事監理をちゃんとした方がいいというようなものを選んで中間検査をやるということは大変意義があると思っています。ただ、その中間検査というのは、私は、最初に申し上げたように、どちらかというと工事監理の監査というふうな形でとらえたらどうかというふうに考えています。
以上のようなことで、今回の改正の基本的な方向については妥当なものというふうに考えております。
それから、もう一つの確認、検査の民間開放についてですけれども、この問題は、まずは、確認、検査を利用するユーザーの立場から私たちは考えればいいということで考えています。
建築主にしろ、それの代行を担う建築士にしろ、確認検査機関の利用者、つまり私たちはユーザーの立場にあります。したがって、民間開放の是非というのも、まずは利用者として私的な立場から判断すればよいわけです。ユーザー側としては、建築主事主導の機関もあるし、民間機関もあって、いずれが有利なのかを判断して、自由に選択できればいいというふうに考えています。一般的に言えば、選択肢が多ければ多いほどいいというふうに考えるわけです。つまり、適正な民間機関が成立するのであれば、特に建築主事主導の機関に限定する必要はないというふうに考えています。
民間機関に対する期待としては、これもよく言われていますように、時間の短縮だとかサービスが向上するとかということが挙げられるし、これまでとかく私たちの間でもかなり不評だった不明確な行政指導だとか運用解釈上の不統一といったことがかなり解消されるのではないかということで、期待をしているわけです。
ただ、民間機関に対するこうした期待と同時に、一方では、本当に適正な民間機関というのができるのだろうか。経営的に成立するのかとか、あるいは建築業界の中での仲間内の機関となって、本当に公正で適正な業務が遂行できるのだろうかとか、役人OBのたまり場になってしまうのではないかといった指摘、そういった疑問も出ております。
ただ、これは私たち建築士の立場からすると、これらの疑問は杞憂だというふうに実は考えています。民間開放は官民の役割の適正化という、これは大きな時代の課題といいますか、要請だというふうに考えていますから、しっかりとこの要請にこたえようではないかという社会的使命に燃えた建築士は、地域地域に、これは職場とか職域に関係なく大変たくさんいます。そうした建築士によって構成される私たち建築士会という団体は、そういうわけで、現在、健全な民間機関を何とか地域地域に成立させようと、あらゆる観点からその可能性を実は検証しているところであります。
法定団体として地域ごとに全国にネットワーク化されている建築士会は、地域の環境を守り育てる団体として、日ごろさまざまな活動を展開しております。しかも、昨年からは地域貢献活動センターという、NPO的な組織を各建築士会で設立し始めております。もう九団体できております。ことしまた十団体ぐらいできる予定です。そういった建築士会の活動を考えれば、地域の建築士会こそが、このような問題を解決する最もふさわしい社会的使命を持った団体ではないかというふうに私は考えている次第です。
以上、建築基準法改正に対する私の意見を二点に絞って申し上げてきましたけれども、最後に、改正全般にかかわる問題として、次のことを指摘して終わりたいと思います。
性能規定化等に伴う選択の可能性の拡大等によって、今後私たち建築士の役割が大変大きくなり、また台帳の整備等の情報開示によって、一層建築士の責任も明確になるものと考えております。そして、全体としては私たち建築士のステータスが、社会的な地位が向上する方向に動く改正と非常に自覚をしている次第であります。
そういうわけで、今改正を機会に建築士の責任と役割の明確化を図り、今後とも的確に業務を進めていきたいというふうに考えております。
以上でございます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114204149X01319980520/8
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009・遠藤乙彦
○遠藤委員長 ありがとうございました。
以上で参考人の意見の開陳は終わりました。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114204149X01319980520/9
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010・遠藤乙彦
○遠藤委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。
質疑の申し出がありますので、順次これを許します。谷畑孝君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114204149X01319980520/10
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011・谷畑孝
○谷畑委員 自由民主党の谷畑孝でございます。
きょうは、参考人の先生方におかれましては、お忙しい中、当委員会に出席をしていただき、また貴重なる意見をいただきまして、心より感謝を申し上げるものでございます。
さて、建築基準法が昭和二十五年に制定をされて四十八年たってきたわけでございます。しかも、今回の改正は仕様規定から性能規定という非常に大転換の法案だと思います。また同時に、すべて行政が責任を持ってやっておりました建築基準法のいわゆる確認あるいは建築指導を含めて、これを民間に委託をする道をあけた、こういう法律でございますから、非常に大きな転換の法律である、このように思っているわけでございます。
私、きょういろいろと先生方のお話を聞いておりまして、やはり四十八年間たってきた中で、建築物そのもののいわゆる素材といいましょうか、あるいは技術力によって非常に大きく変化をしてきておるということ。それとまた、土地の活用といいましょうか、そういうことも含めて、今般さまざまな状況によって変化が起こってきておる。また同時に、自分たちの建物だけじゃなくて、社会的な環境権だとかあるいはまた災害に強い町ということで、町づくりの中においても、そういう観点もこの間の中で大きく発展をしてきたというように思うわけでございます。
つきましては、まず最初に、行政の第一線で活躍をされております本多晃柏市長さんにお伺いをしたいわけでございます。
四十八年間この建築基準法で行われて、頑張ってきた。今お話を聞きますと、例えば二千三百五十四件の確認申請があり、工事完了が千八十五件である、これが四〇%である、あるいは十八名の職員で五名の主事、一人当たり一日二件、市の中において残業で忙しいのは、ほとんどこの建築基準に携わっておる職員である、こういうお話でございました。
つきましては、これからこの法律案が通りまして、仕様規定からいわゆる性能規定へそれと民間委託。その中においては、とりわけやはり営利関係とのかかわりも、民間もございますし、今建築士さんの方からもお話がありましたように、さまざまないい面と悪い面との両面を持っている要素があるわけですけれども、民間開放後、実施面でどのような状況の変化が起こってくるのか、そしてまた市民が持っている不安、そういうことに対して少し行政側の立場から意見をいただきたい、このように思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114204149X01319980520/11
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012・本多晃
○本多参考人 今回の確認・検査業務の民間開放によって現場にどのような影響があるか、特に市民の立場から見た場合、どのような心配あるいは懸念があるかという御質問だと思います。
特に建築の中でも規模の大きな、私ども中高層建築物と言っておりますが、このような建築をやる場合、いわゆるマンション紛争が頻発をしております。これを指導するために本市では、中高層建築指導要綱といったようなもので、建築確認の申請前にその建築事業主が周辺の住民との話し合いをする、そして望めればその了解をもらうというようなことを指導しておるところでございます。
こういう機会、そして実際にその中で行政のかかわり、まあ行政のかかわりはあくまでその話し合いの場を設定する、あっせんをするということでございますけれども、そういう機会が失われるのではないか、またそういうことが無視されるのではないか、こういうことが大きな懸念としてある、このように認識をしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114204149X01319980520/12
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013・谷畑孝
○谷畑委員 わかりました。
時間の関係がありますので、先へ進んでまいりたいと思います。
次に、この建築基準法の改正の答申に当たりまして、そこに参画をされてこられました岡田先生に質問をしたいと思います。
先ほど新里弁護士さんの方からも、日弁連あるいは消費者の立場から、とりわけ欠陥住宅、しかもこれは手抜き工事の原因も大きいということであります。そうなりますと、民間委託となりますと、どうしても民間自身の利害関係、できる限り早く工事をしたいとか、あるいは個人からいえば、社会的な規範というのかそういうものじゃなくて、やはり少しでも広く建てたいとか、そういうようなことになろうかとも思うのですけれども、その点について岡田先生、今指摘されたような心配はどのようにとらえておられるのか、少し意見をお聞きしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114204149X01319980520/13
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014・岡田恒男
○岡田参考人 御質問は、民間機関へ検査、審査等を移行させて心配はないかという点であろうかと思います。
私どもも建築審議会でいろいろな議論をいたしてまいりました。現状は、先ほどから私申し上げましたように、本多市長からもお話ございましたように、とにかく確認、検査の人手が足りない。やらなければいけないということはもう間違いないのでございます。
それをどうするかということで私どもが考えましたのは、一番単純に、まず、そういうことのできる行政の職員を抜本的にふやしていただくというのが一つ。それから二番目は、人がふやせないなら予算をとっていただいて、委託という形ができないか。それから三番目は、今この提案に出ておりますような民間機関をつくって、そういうところに仕事をやってもらうようにできないか。二番目の委託する話は、ある機関に委託するということもございますし、資格のある個人に委託するということも議論になったわけであります。
やはり人をふやすのは大変難しいということも現実にはございますし、現実には民間のいろいろな技術力も上がってきておりますが、中には違反をするという人間がいるということで、これはもう、建築界の片隅に身を置く私としても大変恥じ入る話でございますけれども、総体としては技術力も上がってきております。
例えば私が今ちょっと関係しておりますのは、既存の建物の耐震改修というのが今全国的に行われておりますが、それにつきましても、例えば診断の結果とかあるいは改修の計画というのをどこかでちゃんとチェックしなければいけない。これは現在の主事さんにお願いするには、とても仕事量が膨大でございますので、各都道府県あたりの建築関係の団体の方で、そういう判定をする委員会といいますか審査会みたいなものを、これは全く自主的なものでございますが、今つくりまして、そういうところでチェックした結果を外にお出しするというようなことが、割合順調に今動き出しているというような状況もございます。
こういうところで、この際やはり民活ということを少し打ち出して、その方向にちゃんと動くべきではないかというふうに私ども決心して、そういうふうな提案をしたわけでございますけれども、これはやはり、お話しになったような御心配が多々ございまして、この辺については今後、資格審査をどういうふうに行政の方でおやりになるか、それから、任せたところに万一不都合が起こったとしたら、すぐ取り消しをするあるいはしかるべき処分をするとか、そういうことを厳格にやるという、両方の手を打っていただきたいと思います。
それから、初めてのことをやるわけでございますから、やり始めたとしても、一挙に全部それをやるというのではなくて、そういう状況をよくにらみながら順次ふやしていくとかということをやらなければいけないと思います。
藤本先生もおっしゃいましたけれども、そういうものを受ける側あるいは建築技術をやっている建築界の人間から違反が出るというのは、要するに私どもの建築グループが世の中から信頼されない最大の原因になるわけでございますから、これはちょっと大げさになりますが、今後一切そういうことはしないということをみんなで宣言するぐらいの覚悟が要るのではないか、こういうところではなんでございますが、この際申し上げておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114204149X01319980520/14
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015・谷畑孝
○谷畑委員 これからの時代は、ただ単に権利を主張するということだけじゃなくて、やはりそれぞれがこの社会に生きていくに当たって守るべきことというのか、風致権であったりあるいは環境権であったり、さまざまな状況の中で自分たちが生きているという、そういうことが非常に大事だと思うのです。
そういう意味では、施主もそうですし、建築士もそうだし、行政の立場もそういう立場の中で、私どもは、自己責任というのか、今はやりですけれども、そういう中でこの法律を育てていく必要があるのではないか、こういうように実は思うわけでございます。
そして、岡田先生のきょうのお話の中で、とりわけ、仕様規定から性能規定に変わっていくと国際的に調和をしていくのだという、これは非常に大事なことではないか。特に住宅輸入を含めて、それぞれの素材も含めて非常に輸入がしやすくなってまいりますし、しかも同時に、内外価格差というのか、いわゆるコストも、競争が入ってくる中で少し価格が適当な価格になっていくという、そういう要素もこの建築基準法の改正によってあるのかなと、お話を聞いておりながら感じたものでございます。
それでは、次に、藤本参考人に少しお伺いをいたします。
やはり建築士というのは、先ほどのお話の中でも、とりわけ工事の監理というものが非常に大事な仕事の一つだと思うのです。しかし、残念ながら現実は、きょう行政の市長さんの報告にもありましたけれども、完了報告が四〇%しかないという、中間の検査というものが非常に弱い、そういう面もあろうかと思うのです。
これは建築士さんの立場から見て、どういうところでそういうことになってしまうのか、きちっと最後までその建物に対する工事監理が正しく機能していないという点ほどこにあるのか。例えばそういうものが費用に含まれていないからなのか、あるいはそれ全体が建築についてのただ単に確認でもう終わりだという、そういう意識から脱却できないのか。そこらの点、少し意見がありましたら教えていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114204149X01319980520/15
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016・藤本昌也
○藤本参考人 そういう、先ほどの名義貸しのような実態が一部にあるということは否定できないわけで、非常に残念なことなのですけれども、私は、建築士としては工事監理をやりたいという思いはみんな持っていると思うのですね。それがやはり、おっしゃったように、経済的なことが背景になって、今は非常に構造的にそういう状態ができてしまっているというふうに私は理解しています。
一つは、私は、第一に建築主が、工事監理というものが法的に定められて、きちっとやるべきだということを知らない人がかなりいるのではないかと思います。施工者が確認申請を出すときに建築士の名前を、まあ設計は建築士がやっていますけれども、工事監理のところは名前を書いて出せば一応それでいくわけですから、結局、建築主の方はそんなにそのことが重要だというふうに考えないで進んでいってしまっている。
では、名前を書かれた建築士は当然やりたいと思っていても、実はそこのところがやはり経済的な理由で、建て主の方はそんなに大事なものだと思っていないわけですから、わざわざお金を出さなくても、第一義的に責任は施工者にありますから、施工者がちゃんとやってくれればいいのかなというぐらいの判断で、それがずっと流れてしまうということです。それで、名義貸しの建築士と、建築主の無理解、無知といいますか、そういうことでその二つが成立してしまっている。だから、建築士は登場できないのですね。舞台に上がらない状態でやっていますから、そこへのこのこ行ってやるわけにはいかないということになっている。
しかも、その状態は確かに今始まったばかりでは多分ないかもしれない。そういう状態が長く何となく続いていたわけで、それがどのぐらいあるかはちょっとわかりませんけれども、そういう事態を法を守る側の行政側が、やはりそうきちっと正してこなかった。行政と建て主と建築士のそれぞれがサボってきたことの結果が、結局こういう状態になっている。ですから、私が申し上げたように、やはり工事監理というのはこの三者の役割をきちっともう一遍立て直すということが一番肝要だというふうに考えているわけでございます。
以上です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114204149X01319980520/16
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017・谷畑孝
○谷畑委員 どうもありがとうございました。
最後に、新里弁護士さんに少しお聞きしたいと思います。
先ほどのお話で、欠陥住宅の問題だとかあるいは手抜き工事の問題だとか、本来、建築基準とか指導とかそういう問題はやはり行政の責任できちっとする方が、利害を持たないで、ちゃんと国民全体、市民全体の立場に立ってできるのだ、こういうお話であったと思うのです。
しかし、先ほど言いましたように、建築基準法が制定されて四十八年間の間に、いわゆる仕様規定から性能規定へという状況だとか、あるいは規制緩和あるいは行政改革と時代がさまざまな変遷をしていくわけですけれども、その中で、民間委託ということの中で、建築士さんあるいは行政そして施主、そしてまたその周辺の市民等を含めてさまざまな形の変化というのか、自分たちが自覚してという、性善説じゃございませんけれども、そういうものを信頼をしていく、徐々にそれは信頼が高まっていくのだ、こういうようにはとれないのかどうか。その点、ひとつお聞きをしておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114204149X01319980520/17
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018・新里宏二
○新里参考人 信頼が高まるかというところがあるわけですけれども、やはり大きなところからすると、昔は、町の中で建設が行われていた時代は、いわゆる棟梁がいてその集団で監視をする、変なことをしたら村八分になるという言い方はあれですけれども、そういう集団の中で監視機能が働いていた時代。ところが、今はもう大きなハウスメーカーが入ってくる、そして規格住宅というのが出てきている、そうすると、まさしく住宅問題が消費者問題になっているのだろうと思うのです。
大量販売の中でいわゆる専門家が情報をひとり占めをして、消費者はほとんどわからないという時代になっている。そうすると、やはりその中では自己責任原則というのはなかなか妥当しにくいということになってくるのではないか。そこで公正な第三者としてのプロの存在が必要ではないか、それを担われているのが行政ではないのかというふうに考えております。
また、民間開放という中で、では、すべての行政事務が民間開放になっていくのかというと必ずしもそうではないのだろう。そこに対しては、この部分では民間でやってほしい、この部分ではやはり官でやってほしいという国民の意識を見ていかなければならないのではないか。これだけ欠陥住宅被害というのが社会問題になってきた中では、まだまだこの部分のプロとして行政のいわゆる信頼というものがあるのだと私は理解をしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114204149X01319980520/18
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019・谷畑孝
○谷畑委員 どうもありがとうございました。
以上で終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114204149X01319980520/19
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020・遠藤乙彦
○遠藤委員長 石井紘基君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114204149X01319980520/20
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021・石井紘基
○石井(紘)委員 日弁連の新里さんは、かなり欠陥住宅の問題についても研究をされておられて、諸外国の制度についてもお詳しいというふうに聞いております。欠陥住宅の問題については、先ほども新里さんのお話の中で触れられておりましたが、ちょっと一点だけ具体的に、先ほども言われましたこの秋住の事件というのは、概要どんな問題なのでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114204149X01319980520/21
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022・新里宏二
○新里参考人 いわゆる秋住というのは、秋田県が中心になって設立されたいわゆる第三セクターがございます。実はそれが倒産をしたわけですけれども、その子会社の中に秋住というのがあって、秋田杉を使った良質な住宅を販売をする、いわゆる建て売り住宅の販売でございます。それが、例えば千葉県の極めて地盤の悪いところに造成工事をして、不等沈下が起こっている、または秋田杉だと言いながら、実際はぺらぺらの張り物であったということで、極めて大きな被害が出ております。
この問題については、いわゆる秋田県推奨という形になって、県がどういう形で責任をとるのかどうかというところまで発展しかねない状況でありまして、極めて深刻な被害だというふうに理解しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114204149X01319980520/22
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023・石井紘基
○石井(紘)委員 私もこの秋住の資料を持っておりますが、大変とんでもない、これはインチキな分譲住宅。こうした分譲販売というようなものの被害が大変膨大に上っているわけでありまして、今回のこの建築基準法の改正の中で、やはり欠陥住宅の問題というものの解決が最大の課題の一つになるべきだというふうに考えるわけでありますが、新里参考人にはこの点について、今回の改正がどのくらい欠陥住宅の解消に役立つのかという点について感想を述べていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114204149X01319980520/23
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024・新里宏二
○新里参考人 私自身とすると、四号建物について特例措置を認めたということで、いわゆる欠陥住宅被害というのはまさしく四号建物、戸建て住宅またはプレハブ住宅の被害がほとんど、まあマンションの被害もありますけれども、そこに対して適切な効果が期待できないのではないかという悲観的な見方を持っております。
先ほど来言われております監理が機能していればこんな被害は出ないのではないかというのは、もうきっと何十年来言い古されてきた問題ではないのでしょうか。監理が機能していれば本当に欠陥住宅はないのかもしれません。しかし、そこが機能できていない法制度上または社会的な、経済的な状況があるわけであって、今の状況をそのままにしたままでの特例措置というのでは被害の予防には資さないのではないか。
先ほど来述べましたように、やはり建築士が、建築士法二十三条という形で、いわゆる工務店に雇われているということで、それの社員になっているわけですね。例えば施工会社がやっていることがちょっとひどくても、そういうことを言うと会社に対して盾を突くことになってしまう。そういう法制度を是認したままでは、しかもそれについて手当てをしないで特例措置ということでは、私は機能しないのではないかと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114204149X01319980520/24
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025・石井紘基
○石井(紘)委員 私も全くそのとおりに思います。設計、施工、監理、こういうものが従来のまま、なれ合いになっておる。
しかも、先ほど新里さんから御指摘がありましたように、建築士の位置づけというものが、建築士法十八条におきましては、これはきちっと建築士の立場を定めているわけでありますが、しかし、実態は建築士は施工業者の従業員であったり、そこから給料をもらっておったりという従属的な立場にあるわけです。ただし、これについては主として大企業でありますね。大企業の社員になっている者が、設計、施工に絡んで同じ立場から関与しておるというのがまさに大きな問題であろうというふうに考えます。その点について今回の改正ではちっとも前進していないということがやはり大きな欠陥になるのではないかと思います。
この建築士のあり方、今申し上げましたように、建築士法の十八条にはきちっと規定されているわけですね。「建築士は、設計を行う場合においては、これを法令又は条例の定める建築物に関する基準に適合するようにしなければならない。」あるいは「建築士は、工事監理を行う場合において、工事が設計図書のとおりに実施されていないと認めるときは、直ちに、工事施工者に注意を与え、工事施工者がこれに従わないときは、その旨を建築主に報告しなければならない。」こういうふうになっているにもかかわらず、これがきちつと履行されていないというところに問題があるわけであります。それは、今の設計と施工、監理の分離の問題であったり、中間検査の制度の問題であったりということであるわけですね。
そこで、中間検査について、外国では、イギリスとかアメリカで、例えばインスペクターというような制度がある。しかし、こうした制度も必ずしも十分に機能しているとは言えないようであります。しかし、少なくとも第三者の公正な、中立なそうした機関における検査、確認というものが追求されているわけですね。
例えば、クライアントといいますか建てる方の人は、サーベイヤーというものに依頼して、そして業者との間の監視をあるいは監理をあるいは検査をやってもらうとか、あるいはイギリスの場合には、NHBCというような民間の検査機関があって、そして保険なども出す。この機関は、サーベイヤーに依頼したり、あるいはまた役所を通して検査を実行したり、そうしたシステムになっておる。あるいはRICSというようなサーベイヤーの組織といいますか、ここもインスペクションをするというような、さまざまな民間第三者の中立的な機能というものを活用して、そして検査というものをきちっとするという努力が少なくともなされているわけであります。
ここで、中間検査というものについても、これはまさに欠陥住宅をなくすためにも大変重要なものになってくるわけですが、今回この法案においてこうした概念というものが規定されたという点については一歩前進だと思うのですが、実際の実効性といいますか、そういう点についてまた改めて新里参考人の御見解を伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114204149X01319980520/25
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026・新里宏二
○新里参考人 実効性ということでございますけれども、先ほど来述べましたように、いわゆる四号建物以外、一、二、三号建物については、特定行政庁が指定をすることによって中間検査が始まり、その中で四号建物またはプレハブについては特例措置であるということでございます。
通常、いわゆる大型の建物、いわゆる特殊建物等につきましては、工事監理ということが、別個の監理契約が当然に結ばれて極めて監理が進んでいくだろう。そういう意味では、一番必要なのは四号建物またはプレハブだろうということですから、今回の法律は、欠陥住宅防止、特に戸建て住宅等のいわゆる住宅については絵にかいたもちになるのではないかということを極めて危惧をしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114204149X01319980520/26
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027・石井紘基
○石井(紘)委員 そこで、私は、今回のこの法案をずっといろいろ検討していきますと、どうもこれは主眼がどこにあるかという点で問題があるな、外国からのいろいろな建築資材を自由に入れられるというところに大きなねらいがあって、どうも偏っているような気がするのです。
先日の私の建設省に対する質問の中でも、将来に対するビジョン、例えば検査の指定団体あるいは確認の指定機関というものの制度を設けるのだけれども、これは民間にもやらせる、あるいは行政もやる、あるいは株式会社にもやらせると言うのです。じゃあ、これをやれば実際そういうものができるのかとか、あるいは、それがいつごろになったら、何年ぐらいたったらそうしたものでもって検査体制というものがそこそこ充実してくるのかというようなことは全くわからないというのが、これが要するに提案者の建設省の方の答弁でありますから、これは何のためにこの法律を出したのかということでいえば、どうもちょっと首をかしげざるを得ないということになってくるわけでございます。
そこで、今ちょっと申し上げました指定団体ということでありますが、この中に株式会社というのが入っている。こうした検査は中立的であり、そして公正でなければならない、そういうものを株式会社という営利企業でもってやらせるということが一体全体、現実的に可能なのかという問題と、それからまた、いいのか悪いのかという問題があると思うのですが、その点についてはいかがですか、新里参考人。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114204149X01319980520/27
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028・新里宏二
○新里参考人 私も、株式会社組織でやるということについては極めて疑問を持っておるということは、先ほど述べたとおりでございます。いわゆるサービス産業としてやるということでしかないのではないか。やはり苦言を呈する、検査をする、切っていくということからすれば、株式会社組織でやることについては極めて私は問題だと思っています。
それから、実際問題とすれば、先ほど述べましたように、いわゆるハウスメーカー等が共同で、建設省も、一社、二社ではだめだ、いろいろな、何社か、いわゆるグループが集まっていないと公正さは担保できないということのようでございますけれども、数社、三社、四社、ハウスメーカーが集まって、自己の確認、検査をするような株式会社が設立されるとすれば、極めて公正さを疑うことになって、それも問題だと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114204149X01319980520/28
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029・石井紘基
○石井(紘)委員 私がこの際、声を大にして申し上げたいことは、戸建て住宅とかプレハブ住宅についての中間検査あるいは確認というものを、今後、行政ではなくてそうした形で民間の機関等にやらせるということになってくると、中小零細の工務店などの負担というものが非常に大きくなってくる。
阪神・淡路の大震災の場合などでも、建築基準法にのっとってきちっとつくられた木造住宅は、これは問題がほとんどなかったという調査の結果も出ているわけでありますし、むしろ問題なのは、粗製乱造の建て売り住宅業者の一部ですね。何かどこから出てきたかわからないようなそうした業者が、大々的に大きな土地を造成して、そして安かろう悪かろうの住宅をどんどん売る。
そうなりますと、結局ここの間には、ユーザー、要するにそれを買ったクライアントとそれから施工者との関係というものは、買うまで全然ないわけですね。要するに、住宅メーカーといいますか、あるいはそういうプレハブやあるいは戸建て住宅の販売業者は客に売りつける。それで、メーカーと施工業者との間は、もちろんそういう形で関係があるけれども、お客さんとそれを実際に工事をした施工業者との関係というものは全然ないという形になっているわけです。
あるいは不動産屋さん、不動産業者が施工業者に売る。これは売買の関係がある。それで、施工業者がこれをつくって、そしてそれを客に売る。しかし、客はそれがどういうふうにつくられたか、どういう構造のものであるかというものは外見だけしかわからないで買う。買うのだけれども、これは不動産会社から買うわけですから、そうすると施工業者とのつながりというものは何もないというような形になっておる。ですから、そこで大きな欠陥住宅の問題が、例えばそういうところで主として出てくるわけです。
しかし、地域地域で長年、一級建築士さんなんかが中心になって工務店をつくって、大工さんや左官屋さん、あるいは水道屋さんや畳屋さん、そうしたいろいろな人たちと家族的な一体となったような形で、そして一つ一つ丹念に丁寧にうちをつくっていく。それで、あの業者がつくるうちだったらいいなという評判が立つ。あるいは、いや、あの業者はだめだという評判が立ってしまえばもうその業者には仕事が来ないということになるし、いい業者にはそうやって仕事が来るからやっていられるわけでして、そういうところでは問題は全然起こっていないわけですよ。
結局、つくる人だって直接の日常的な関係の中でそういうふうに、うちを建ててくれといって依頼をして注文をするわけです。そうすると、常に自分が見たければ見られるわけだし、あるいは建築士さんに頼んで、そして建築士さんに外からちょっと、あの工務店さんに頼んで、今つくっているところなんだけれども見てくださいよ、こういうふうに依頼をすることもできるわけです。だから、むしろそういうことを積極的に建設省なんかは進める、現行法でできるわけですから、そういうことを進める方が重要なのです。
ですから、私は、そうした問題がないにもかかわらず、きちっとやられているにもかかわらず、それに建設価格あるいは経費が上乗せされるということは、今日の経済情勢から見てもやはりこれは大変に余計なことをしてしまうという結果になるのじゃないかと思うわけでございますので、そうした悪質なといいますか、そういう戸建て分譲住宅業者というようなものと、それから地域地域のしっかりした工務店というものをやはり現実には分離して見る目が必要であろうというふうに思うわけでございます。
この点について、新里さん、御感想はございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114204149X01319980520/29
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030・新里宏二
○新里参考人 初めに指摘された建て売り住宅の問題については、極めて重要な指摘だと考えております。
いわゆる工事監理契約というものは、購入者との関係では全く想定できないということでありますので、いわゆるハウスメーカーで、自分の会社で全部やってしまうということになりかねませんので、その中には本当に特例措置を伴わない検査制度の充実というのが図られなければならないと思っております。
それから、日弁連の方では、実は住宅検査官制度の導入の中で、いわゆる公正な第三者との監理契約がある場合についてまで検査を導入すべきかどうかについてはいろいろ議論をしました。それについては実は私たち部会の中でも結論は出ておりません。それは極めて重要な指摘ではあると思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114204149X01319980520/30
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031・石井紘基
○石井(紘)委員 どうもありがとうございました。
時間が参りましたので終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114204149X01319980520/31
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032・遠藤乙彦
○遠藤委員長 井上義久君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114204149X01319980520/32
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033・井上義久
○井上(義)委員 平和・改革の井上義久でございます。
参考人の皆様におかれましては、多忙な中、当委員会に御出席を賜りまして、貴重な御意見を賜りまして、心から感謝申し上げる次第でございます。
そこで、まず最初に、岡田参考人にお伺いしたいと思います。
先ほどの御意見の中で、性能規定の導入について、設計の自由度を高めるということで積極的に評価をされているわけでございますけれども、これまでの仕様規定について、新しい材料や構造方法を使用することに大きな障壁となってきたということと、グローバルスタンダードという意味からもこれまでの仕様規定ではそれに対応できない、こういうお話がございました。
それで、もし、これまでは仕様規定だったのでこういうことができなかったとか、こういう問題があったとかということで、わかりやすい具体的な例がございましたら例示していただければ大変ありがたいというのが一点でございます。
それから二点目が、やはりこの性能規定導入に伴って性能をどう認証、検査をするかという、この認証試験、検査機関というものの公正とか中立性をどう担保するのかというのが一番大きな問題になると思うのですけれども、こういう認証試験あるいは検査機関について、例えば日本の国内で既にどういう機関があるのか、ないのか。また、どういう機関がこれから想定されるのか。そういう性能規定化に伴う認証試験、検査機関について岡田参考人の御意見を賜りたいということ。
それから、三点目は、性能規定化になりますと、どうしてもいわゆる技術力とかあるいは技術情報力のあるメーカーといいますか、企業に極めて有利ということで、中小の建設業者の皆さんの間には極めて心配があるわけでございます。そういう点からいいますと、例えば性能規定で認証されたものについてできるだけ早く情報開示して、それを一種の仕様規定として中小の建設業者が利用できる、こういうシステムをつくることが、日本の建設業界の現状を考えますと、中小の建設業者が大半を占めるというような状況を考えますと、そういうことが必要なのではないか、こう思うわけでございます。
以上三点について、ちょっとお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114204149X01319980520/33
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034・岡田恒男
○岡田参考人 お答えいたします。
最初の御質問は、仕様規定あるいは性能規定の何か例示をというお話でございます。いろいろな例が頭の中に今浮かんできておりましてあれでございますが、私どもが性能規定化という話をし始めたのは、最初のころはいつごろかと申しますと、大体一九七〇年ごろなのでございます。
特に私が専門としております耐震設計の分野では、大体どのくらいの性能があるということはわかっているのですが、本当に地震が来たときにどのくらい性能があるかというのが、地震が来るまでわからない。わからなくても家がつくれるという状況。それによって、あるものは壊れるし、大丈夫なものもある。
古い基準の建物の方がたくさん壊れたと申し上げましたけれども、全部壊れているわけじゃなくて、例えば八割ぐらいは古い基準のものでも大丈夫なわけですね。その仕分けができていないので、結局、お客さんに買っていただくとかお売りするとか設計するときには、みんな同じ値打ちのものにしか見られないのですね、大まかに言いますと。それはまずいのじゃないか、やはりいろいろなところの性能が見えるようにすべきではないかという議論をしてきたわけでございます。
その流れとしてもっと非常に具体的な、ちょっと間違っているかもしれないけれども申し上げますと、仕様規定の最たるものは何かというと、例えば木造で、この柱とこのはりをつけるときに、何番の規格を何センチ置きに何本打てといって決めて、もうそれ以外は一切認めません。これは非常に極端な例でありますけれども、こういうのが仕様規定になります。
ところが、何のためにくぎを打つのか、どういう性能がここのジョイント、継ぎ手のところにあれば地震が来たときにどのくらい大丈夫なのかというのがわかりませんから、幾ら性能のいいくぎを使っても、幾ら腕よく打っても、あるいは設計を上手にやっても、これは全く同じものにしか世の中として認められないし、それを認めるのは大変なことでございます。ですから、そういうのをやめて、まず性能というのを頭に出して、それに基づいて設計ができる体制にすべきだというのが私どもの主張だったわけです。
それで、ついでに三番の方の関連で申し上げますと、そういう過程になってまいりますと、それでは、今までの仕様みたいなのが一切なくなって全部性能規定になって、性能を証明しながらやらなければいけないのかとなりますと、これは全くの理想ではありますけれども、大変難しい世界に入ると思います。
ですから、三番目の御意見にございましたように、やはり間違いないところは、性能がはっきりする部分は部分的に仕様書の形にまとめ上げて、それで一般の技術者なら非常に自由にだれでも使えるというような、こういう仕掛けも当然並列していかないとうまくいかないのではないか。この辺をこれから政令とか、いろいろな告示、指針、そういうところで整備していくということが大変重要になってくると思います。
それから二番目の、そういうものをどう承認するかとか検査するかという機関の問題でございますね。
これは、私は直接行政に関係していないものであれでございますが、私が経験者ということで時々いろいろな機関に呼ばれて、頼まれて審査するということは今もいろいろなところでやっております。そういうのがいきなり株式会社になるのかというようなお話も先ほどからございましたけれども、実態としては、公的な建築関係の機関、試験機関みたいなところが母体になって順次大きくしていく。最終的に一切行政がこういうものをやらなくなるという世界は私には考えられなくて、やはり行政のある考えのもとに一定のところが、中立性が世の中で認知されるようなところがやり出していくというような段階的な実行、施行ということが不可欠ではないかなというふうに私は考えております。
そのための建築関係の団体も全国にたくさんございまして、私、先ほどちょっと申し上げましたように、かなりの技術レベルを持っているところもありますので、そういうところが中心になって、世の中の信頼をかち取りながら行政の監督のもとに進めていくというような体制かなと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114204149X01319980520/34
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035・井上義久
○井上(義)委員 次に、新里参考人にお伺いいたします。
私も阪神・淡路大震災直後に現地に参りまして、被害の状況をつぶさに見てまいりました。想定していない大きな地震が来て建物が壊れる、これはある程度やむを得ないのかな、こう思うのですけれども、我々政治にかかわる者の基本的な考え方としては、やはり建物は倒れても人命が損なわれないということが一番大事ではないか。コストをかければ倒れない、壊れない建物は幾らでもできるわけでありますけれども、それはやはり社会的なコストパフォーマンスをどう判断するかという、その見合いで建物の丈夫さというのが決まってくるだろうと思う。ただ、人命が損なわれないという意味で、非常にそういう点が大事なのだろう、こう思うわけです。
そういうことを考えますと、少なくとも欠陥住宅、これはもう許しがたい、とんでもないということだと思うのですね。先ほどから御指摘があるように、建物は、建ってしまってからではその構造に欠陥があるのかどうかよくわからないということ。それから、自己責任原則ということなのでしょうけれども、やはり自己責任を果たし得るといいますか、そういうバックアップの機能というものが社会になければ、素人でありますから自己責任は果たせない。そういう面で基本的な考え方はそのとおりだ、こう思うわけでございます。
そういう中で、先ほど藤本参考人の方から、いわゆる建築士の立場として、やはり必要なことは、ともかく法的に定められた工事監理業務、これが適正に行われることがまず大前提で、そのための合理的な補完制度を考えるべきだ。こういうことから、四号建物については、その補完的な制度の提案として、工事監理報告書の提出を中間段階においても義務づけるとか、あるいは建築主と建築士との工事監理業務契約書の写しを提出させるとか、それから建築主事による抜き打ち的なパトロール、こういうことを御提案されているわけでございまして、私も筋論からいうとそういうことなのかな、こんな感じがするわけでございます。
そのことについて、まず新里参考人、どういう御意見をお持ちかということ。
それからもう一つは、現実的な対応を考えますと、すぐに中間検査制度をすべての建物に導入するということはかなり難しいのではないか、こういうふうに思うわけでありますけれども、いわゆる住宅保証制度、これが少しずつ普及しているようであります。この住宅保証制度というものを積極的に活用するというようなことで、欠陥住宅というものを防ぐ一つの大きな手だてになり得るのではないか、こんなふうな考えもあるわけでございます。
その二点について、御意見賜れればと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114204149X01319980520/35
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036・新里宏二
○新里参考人 藤本参考人の方から、いわゆる四号建物については監理中心でやったらどうかということでお話が出たところでございまして、質問もそのことかなと思います。
これも先ほど述べたところでございますけれども、同じような特例措置が検査のところでも五十八年の改正でなされております。それですら三〇%の実施率です。それはなぜかというと、工事監理をしている建築士がサボっているからなわけでございます。それが現状なのだということの現状認識がなければならないのではないか。それが個人的な問題ではないのだということだと思います。建築士が単にサボりたくてやっているのではない。そういう経済的な状況の中でそうならざるを得ないのだ。その大枠のシステムを変えないで、藤本さんが言ったことだけでは改善にはならないのではないか。
先ほど言ったように、建築士法の二十三条の改正をどうするのかとか、それから十八条等のことに違反した場合に懲戒という十条の規定があるわけですけれども、それが積極的に機能して、責任を問うようなシステムにそれぞれ変わっていかないことには、今度の中間検査のところで監理中心ということにはならないのではないかというふうに思っています。
それから、性能保証制度につきましては、民事紛争解決ルールとして、性能を表示して一定の保証責任を負わすという制度のようでございますけれども、それについても私たち日弁連の中でも議論をしておりますけれども、どのような保証基準を定めるかによっては、今の欠陥住宅被害の解決レベルを極めて下げることになりかねないということだろうと思います。
ですから、どういう形で保証基準をきっちり定めていくか、それによって一定の欠陥住宅被害の予防に資するようなシステムになっていくかもしれません。これをどうっくつていくかというのは今からが正念場だろうと考えています。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114204149X01319980520/36
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037・井上義久
○井上(義)委員 次に、本多参考人にお伺いいたします。
中間検査の導入につきましては、特定行政庁が必要な工事の工程を指定して中間検査を導入する、こういうことで、自治体に具体的にはゆだねられているわけでございます。現実的な体制との見合いで、本来であればできるだけ幅広くこの工程を指定して中間検査を導入すべき、こう思うわけでありますけれども、具体的に例えばどういう建物についてどの程度というふうに頭の中で想定されているのか、また、そういう準備は具体的に進められているのかどうか、そのことについて確認しておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114204149X01319980520/37
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038・本多晃
○本多参考人 中間検査の対象にします建築物のイメージ、あるいはどういうものが頭の中にあるかというお話でございますが、これは当然、規模の大きいもの、あるいは利用者の多いもの、また構造的に複雑なもの等は対象にすべきだろうと考えております。そのほか、違反建築物の実態を見てこれを定めるということでございます。
私どものこれまでの市における実績を見ますと、軽微な違反は、やはり斜線制限ですとか、容積率の違反というのが多うございます。これらについて中間検査との関連で対象にできるかどうか、この辺はもう少し実態を見てから研究すべきあるいは検討すべきであろうというふうに考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114204149X01319980520/38
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039・井上義久
○井上(義)委員 それでは、最後に藤本参考人にお伺いいたします。
建築士の立場から、先ほども新里参考人に対する質問の中で触れましたけれども、いわゆる法的に定められた工事監理業務、これが適正に行われるようにするということが前提で、例えば四号建物については、その補完的な措置ということでの中間検査は必要ないのではないか。それから、四号建物以外についても、参考人の御意見では、これまでの実態から考えて、違反が行われることが予想されるような建物について中間検査で評価をする、こういうふうにかなり限定的におっしゃっているわけです。
一つは、そういう法的に定められた工事監理業務が適正に行われるようにするということ、現実はそうなっていない部分が非常にあるわけでございまして、この辺、一つは建築士法ですね、これの改正問題というのが一方でちょっとあると思うのですけれども、それに対する考え方と、それから、今回この法律が施行された場合の中間検査を適用するような建物について、具体的にどういう建物を想定されているのか。その二点についてお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114204149X01319980520/39
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040・藤本昌也
○藤本参考人 最初に中間検査で四号特例ということを申し上げたのですけれども、私は、実際に現場で実務をしている立場からしますと、こういういろいろな制度をやればうまくいくのだという感じが余りないのです。
結局、設計があって、工事監理があって、施工があるというのが三大主要業務なのですけれども、そのことがきちっといくことが大事で、それは、現場の実務家からすると、いわゆる直接業務なのです。それに対して、今回の中間検査とか補完制度というのは、それを補う間接業務なのですね。
ところが、その直接業務がうまくいかないから間接業務をどんどんふやしていけというのは、これはどういうことになるかというと、結局、汗を流している直接業務者の負担が非常に多くなるとか、あるいは建て主の負担が多くなる。例えば設計料とかさっき言っていた工事監理料はまけろとか、だんだんそういうことになって、実態として、そういう汗を流している人がちゃんと報われないようなことにならないかなという心配をしていて、一番いい状態というのは、やはり主業務の直接業務がきちっといくような最小限の効果的な間接業務の増というのを考えたいというのが基本であります。
それで、先ほどアメリカのロスのインスペクター制度という議論がありましたけれども、あれはこういうことになっているのですよ。戸建て住宅というのは非常に小さいし、そういうことで、建て主に負担をかけないということで公的機関が確かにやっているのです。ところが、あれは四段階で検査をしている。それは、中間検査というふうな呼び方で言うのが非常に問題なのです。私から見ると、あれは重点監理なのです。重点工事監理をやっている。
だから、もし工事監理業務をやらないのであれば、こちら側できちっとやらなければならないということで、バランスはとれているのですけれども、日本の場合には、工事監理をやると言っていて、それをやらないで、こっち側の中間検査という形で、間接業務が実際には、間接業務じゃなくて主業務みたいになってしまうというあたりが、非常に業務があいまいだ。中間検査というものの実態がよく見えない。そういうことで、むしろ、工事監理をきちっとやって、それを監査して、ちゃんとやっているかどうかを確かめるようなことを効果的にやればうまくいく。
今まで、確かに、新里さんがおっしゃったように、工事監理の議論というのはいろいろあって、うまくいっていないのですよ。結局、それは、違反をしても建築士は何も問われないし、自分の一生懸命取った建築士の免許証にも何も影響がない。こんな状態では確かにうまくいかないのです。だから、さっきの間接業務の中で、ちゃんとやらない建築士はきちっと何らかの形で厳しく処罰されるということを、法律は守るものだということを社会的に皆さんが言っていかないとうまくいかない。
だから、個人のその人の名前で建築士としてやるということになれば、その人は、企業の中にいようが外の個人であろうが、厳しく追及されるということで、何となく集団の中で個人の責任が不明確になるようなことはやはり避けていかないと、この建築士というのは成り立たない。
建築士法をどういうふうに改正するかという問題はいろいろありますけれども、少なくとも建築基準法がこういう形で変わっていくわけですから、それの両輪になっている、まあ兄弟分になっている建築士法も、建築士の責任がやはり明確になるような形で、もう少しはっきりとその責任とか、そういうことがもっと明確になっていっていただきたい。
そのためのいろいろな改正というのは、例えば建築士法の改正で、契約をちゃんとしなさい、それをちゃんとオープンにするという、これも一つの非常にいい仕掛け、仕組みだと思いますけれども、今度の基準法改正に伴って全体的にそういうことを見直していただきたい。我々もいろいろ研究しているところでございます。
以上でよろしいでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114204149X01319980520/40
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041・井上義久
○井上(義)委員 もう一点、中間検査を導入する建物のことについて。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114204149X01319980520/41
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042・藤本昌也
○藤本参考人 先ほどの四号建物以外のものですね。これは、地域によって、私も具体的にはそうはっきりわかりませんけれども、さっきの分譲住宅みたいな、面的にかなり大量に出てくるようなもので、その中で監理者とか設計者がよく見えないというふうなものについては、やはりしっかりと中間検査を入れていただく。
それから、市民が、第三者が社会的に使うような、非常に公共性の高いものは、ロスなんかでもやっているように、ダブルチェックをちゃんとかけましようと。これは、必ずしも工事監理者がいいかげんにやるからやるのではなくて、非常に重要なものだから、影響が大きいからダブルで見ましようと。これは、別に性悪説ではなくて、むしろ、人は間違いをすることがあるから、ダブルでやって、お互いに緊張感を持ってちゃんとやりましようということだと思うのです。
そういう社会的な影響のある、公益性の高い建物なんかは、場合によってはそういう対象に入れてもいいと思うのです。ただそれも、施工する側の体制とかそういうことも全部含めて判断をするものではないかというふうに考えています。
以上でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114204149X01319980520/42
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043・井上義久
○井上(義)委員 ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114204149X01319980520/43
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044・遠藤乙彦
○遠藤委員長 青木宏之君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114204149X01319980520/44
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045・青木宏之
○青木委員 自由党の青木宏之でございます。
各参考人の諸先生方には、先ほど来お説を拝聴させていただきまして、大変ありがとうございました。
お尋ねしたいこともたくさんあるわけでございますけれども、非常に時間が限られておりますので、端的にお尋ねをし、かつ、恐縮ですが、簡潔にお答えの方もお願いしたいと思います。
初めに、やはり、いろいろな立場立場でいろいろな御意見があるなということを改めて感じました。そこで、私どもこの建設委員会で、委員の一人としての重要な任務がこれありという立場からいたしましても、これからのお願いにもなりますけれども、我々に対して、平素から、いろいろなそういう立場立場での御意見、情報等々をぜひ積極的に御提供をいただきたい。
私、きょうまでいろいろ審議してまいりまして、私なりにも勉強しましたけれども、初めてお聞きするような感じの御意見等もございましたので、ぜひこれから積極的な情報提供をお願いをしたいと思います。
たまたまでありますけれども、私の兄が、長兄ですけれども、兄が一級建築士の事務所をやっておりました。もう他界しましたけれども、一緒に暮らしておった時代もありまして、設計業務をかいま見ながら、門前の小僧みたいな部分も私も若干ありまして、そういったところから、いろいろ現実というものを見させていただいた例もございます。
先ほど来お話がいろいろ出ておりましたけれども、例えば、私はまあいいかげんな男ですけれども、私の兄は、世にもまれなかちかちな人間でありまして、これ以上かちかちの人間はいないというぐらい、そういう人間でありました。もう設計、監理すべてにわたって法令どおり、一寸一分間違わないというのが徹底をしておりました。
私も聞いた話でありますけれども、建築主の方からの御依頼の中には、いわゆる違法建築承知で設計依頼をしてきた例もありました。かなりそういう例も多いようでありまして、その場合に私の兄貴は、それはできないと言って仕事を断る、だから非常に貧乏な設計事務所をずっと長くやっておりました。
いいかげんな私から見たら、そこまでやらなくても、もうちょっと上手にやっておけばもうかるのにな、こう思って接しておりましたけれども、兄は頑として譲らない。そうするとどうなるかといいますと、その建築主さんは、当然ですが、ほかの設計士さんへ依頼するわけでして、そしてその依頼が現実にまかり通っていってしまっておる、これは非常におかしなことであります。しかし、先ほど来お話が出ておりますように、現実にはそういうことだ。
それは一つには、今も出ておりましたが、設計、監理の建築士さんの問題。そして、確認業務さらには検査業務の問題。これが法令はそこそこ整備をされておるわけでありまして、従来の法令が、きちっとそれぞれの立場で自覚をして、そしてそれが守られておれば、手抜き工事とか違法建築とか、そういったものは現実にはないはずなのですね。現在の法令でもないはずなのです。しかし現実は、最初私が申し上げたように、そうではないというところにまず一つ根本的な問題はあるような気がします。
しかし、これは人間のなせるわざで、完全に防止というか、そういったものをすることはなかなか難しいので、いろいろなシステム、法令、制度等々をもって、そういったものを客観的に阻止する機能を持たせるような仕組みを、システムを、法律というような形でつくっていかざるを得ない、そういうふうに認識をしております。
いささか意見が長くなりました。そこでお尋ねを申し上げたいのでありますが、今回、大改正の一部分は、今まで行政オンリーでやっておった確認業務を民間機関にも開放するといいますか、お願いをする、こういうふうになった、この部分は一確かに大改正であります。
そこで、ちょっとまだわからない点がございますが、先ほど新里参考人から、弁護士の立場でお話がありました。これで問題が起こったときの訴訟は、行政訴訟ではなくて民事訴訟になりそうだというお話がございましたが、この行政訴訟と民事訴訟で何が現実、具体的に違いが出てくるのか、まずそれをお聞かせをいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114204149X01319980520/45
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046・新里宏二
○新里参考人 例えば行政庁の行政行為についての取り消し訴訟または無効確認等の裁判が行政訴訟と言われるものだろうと思います。その場合に、例えば出訴制限があったり、当事者適格という問題がかなり厳格に定められておる中で、行政訴訟の窓口が狭いのではないかという議論があるのかもしれません。
それに対して、一応、審査手続の中では、建築審査会の中での審査手続という形で、行政の紛争処理というのですか、裁判がそういう制度にのっかるようですけれども、最後の段階になれば、いわゆる違法な行為をしたという形での民事裁判になると言われておりますので、訴訟類型は異なつてくるのかなというふうに思っています。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114204149X01319980520/46
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047・青木宏之
○青木委員 これは前の委員会でもまだちょっと確認できていなかったのですが、この民間の指定確認機関、これは、確認業務というのは行政権限ですから、行政権限の委託といいますか、そういう格好になるので、確かに行為主体は民間ですけれども、その中身、質は行政権限行使ということになれば、それに対する訴訟ということになれば、むしろ行政訴訟であってしかるべきだという感じがするのですが、その辺はどんな整理をしたらよろしいでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114204149X01319980520/47
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048・新里宏二
○新里参考人 私自身も、必ずしもその部分で建設省の方と詰めているわけではございません。ただ、そういう形で、物の本に出たりしている中でそういうふうに御答弁させていただいたということで、まだここのところについては詰める余地があるのかもしれません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114204149X01319980520/48
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049・青木宏之
○青木委員 わかりました。
次に移りたいと思います。今度は本多参考人にお尋ねしたいのですが、いろいろと御指摘がありました中で、結局、特定工程として各自治体がほとんど指定しないというか、実績が上がらないのではないか、こんなお話もございましたが、その辺はどんなふうなお考えでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114204149X01319980520/49
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050・本多晃
○本多参考人 私どもの確認並びに検査の運営の実態としまして、一号から三号までの建物については、これはまさに行政指導でございますけれども、中間段階で検査をする、検査とは申しませんけれども、私ども見させてもらうということを実際にやっております。したがいまして、これは現行の中でも、一号から三号までにつきまして、中間検査をやるという体制にはあると思います。そして、それはできる、このように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114204149X01319980520/50
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051・青木宏之
○青木委員 ありがとうございます。
もう余り時間がございませんので、項目的にお尋ねしていきたいと思いますが、岡田参考人、例えば日本とロスとの比較で、四対一の建築行政職員数というお話、今までにもいろいろ聞いたことがあります。これは、ロスというのは都市ですから、都市と国ですね、日本との比較で四対一だとか、そのほかのところも日本が少ないというお話がありました。
日本では今、行革ということで、むしろ人減らしの方に行っているわけですけれども、たくさんの人間を行政が雇用をしているわけですね。これはどの辺に理由があるか。これはちょっと御専門じゃないかもしれませんが、もしおわかりの点等ございましたら、どうして建築行政でこんなに人の差があるのかということについて。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114204149X01319980520/51
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052・岡田恒男
○岡田参考人 本当に私、専門じゃないので、ちょっとあれでございますけれども、我が国で人が足りないことも、私が伺っている限りでは一つございますし、もう一つは、建築行政の仕事が非常に複雑になってきていて一本当の建築の性能にかかわる部分の審査なりをする、あるいは検査をするのになかなか時間が割けないというのが一方であるようでございます。
アメリカの場合になぜ人が多いのかというのを私、実は余り考えたことがなかったのでございますが、少なくとも、検査とか審査、そういうものを充実することによって品質、クオリティーがよくなるということに対して、建築主がそれであればその分の費用を負担しようとか、行政の人がふえれば当然これは税金の方にかぶってくるわけですが、そういう理解が日本よりはかなり浸透しているのかなという気はいたします。また、その一方、その効果といいますか、それに対してしっかりやっているなというのが私の印象であります。
何か変なお答えになって済みません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114204149X01319980520/52
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053・青木宏之
○青木委員 結構です。
本多参考人は、その点はどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114204149X01319980520/53
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054・本多晃
○本多参考人 アメリカの建築確認の実態というのは私、承知しておりませんので、なぜかということに関しましてはちょっとお答えをできかねます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114204149X01319980520/54
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055・青木宏之
○青木委員 済みません。
それでは、先ほど井上議員の最後の質問で藤本参考人からお答えがございまして、まあそうだな
という感じでお聞きをいたしておりました。そうだなというか、逆に言いますと、最初に申し上げたように、今日まで長い間、ちゃんとした法律がいろいろあるわけなのですけれども、現実にちゃんと機能していないという点がむしろ問題だなということを改めて感じます。しかし、これまた最初に申し上げたように、それでもやはりシステムというか制度というか、そういったものもできる限りは、考えられる限りはやっていかなきゃいかぬなということになるわけです。
そこで、どうも問題点は建築士の独立性、もちろん責任性の裏づけというものがなければなりませんが、システムとしての独立性というものをいかに確保していくかという点が現実、大事だなという感じがするわけですね。
だから、先ほど来お話が出ているように、建築士が雇用されておるとかあるいは顧問関係、常時そういう経済的な関係にある、要するに従属性があるというところにも問題が確かにあるなということからしますと、建築士法の改正問題、いろいろな改正問題が先ほども話が出ておりましたが、基本的にもっと建築士というものをどんと法的に完全に独立させてしまう、そんなようなことをむしろずばっとやった方が効果が出るのではないかな、そんな感じがするのですが、独立性の確保に対してのお考えをいま一度お聞かせをいただければと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114204149X01319980520/55
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056・藤本昌也
○藤本参考人 大変難しい御質問ですけれども、私はこういうふうに考えています。
建築士というのは、設計、工事監理ということももちろんやっていますけれども、施工の場面でも活躍している方もおられますし、教育の場とかあるいは行政の場とか、いろいろな方面で建築士は活躍しています。
いろいろな職域で活躍しているわけで、私は、建築士が、独立というのがどういうのかもちょっとまだわからないところがありますが、ある企業の中に入るとかそういうことではなくて、独立していればいいということではなくて、どういう領域にいようと、その建築士がきちっと自覚して業務ができるということが大事なのです。
先ほどおっしゃったように、お兄さんが独立されていたわけですよね。施工会社にいるわけでもなく、企業から直接仕事をもらっているという形の従属関係がなくても、その建築士が仕事がなくなると、やはり結局、非常に従属的な関係に結果的にはなっているというのもたくさんあるわけですね。だから、私は、どこにいるかということよりも、やはりその領域にいるときのその人の心がけというか、人によるのだと思うのです。
だから、これからは、恐らく社会のニーズではいろいろな領域でいろいろな形で建築士はやっていかなければならない。それだけ高度な技術社会になっていますから、余りこういうところだけというわけにいかないわけで、しかも、それは、企業の中なのか独立した形なのか、それもさまざまなニーズにこたえていかなければならない。
だから、やはり個人が個人の資格としてきちっと働けるような、そういう仕組みが要るので、それは、組織で責任をとるというよりも、やはり個人にある程度はきちっと責任が行くような、そういう社会。これは、徹底していくとアメリカみたいな社会になってしまいますけれども、ある程度日本もその辺のところを、職能者の、プロフェッショナルの責任の問い方というのは、やはりそういう意味ではきちっと独立的に問う、そういう仕組みをつくっていただかないとうまくいかないのかなというふうに考えています。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114204149X01319980520/56
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057・青木宏之
○青木委員 ありがとうございました。
もう時間が残りありませんが、せっかくの機会ですので、ちょっとだけ私からもお話をさせていただきたいのです。
要するに、今の建築基準法等々の問題は、もちろん建築基準法自体が安全性ということが基本問題になっておるわけでありますが、やはり時代の要請といいますか、これからはもっと積極的に、例えば環境問題、省エネということも絡んできまして、安全性はもちろん基本的に大事なことですから、基準法の本質にかかわることですけれども、やはり自由意思にお任せということではなくして、法的に誘導すれば一番いいのでしょうけれども、法規制の面でも省エネあるいは環境適応という方向へ強力に向けていくという、いろいろな法整備等々が必要なのではないかなとちょっと考えてはおるのです。
これの答えを求めていますと時間がかなり超過いたしますので、一応私の一方しゃべりということできようはとどめさせていただきたいと思いますが、それぞれ御専門の先生方におかれまして、私が申し上げたこと、あるいはちょっとおわかりにくかったかもしれませんが、これからその立場立場で御検討をひとつお願いできたらな、こんなふうに思います。
ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114204149X01319980520/57
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058・遠藤乙彦
○遠藤委員長 辻第一君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114204149X01319980520/58
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059・辻第一
○辻(第)委員 日本共産党の辻第一でございます。
きょうは、参考人の先生方、お忙しい中をこの委員会に御出席をいただき、また貴重な御意見を拝聴させていただきまして、ありがとうございました。
まず最初に、柏市長の本多参考人にお尋ねをいたします。
今回、中間検査制度が新設をされますが、先ほどの御発言の中で、中間検査制度を地域の実情に合わせて指定し得る方式は評価できる、このように申されました。本多市長は以前から都市計画行政などに長く携わってこられたお方でございますが、この中間検査制度が新設されたら、柏市としてはどのようなケースで中間検査制度を利用されるのでしょうか、そして、どのような建築物が対象になるとお考えなのでしょうか。できれば事例も示してお答えをいただければありがとうございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114204149X01319980520/59
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060・本多晃
○本多参考人 まず、建築基準法の六条でしたかにあります一項の一号から三号の建築物、これらの中から選ぶことになるのではないかと思います。そのほか、四号の住宅等につきましては、これは、先ほど申しましたように、その違反の実態をまだ私どももつまびらかにしておりません。しかし、この中で、先ほどから議論になっておりますような、地域によって建て売り住宅が非常に多い、あるいはそういう点で問題がある、違反の実態が多いというようなところにありましては、その地域なり期間を定めた上で工程を指定する、こんなことになるのではないかと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114204149X01319980520/60
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061・辻第一
○辻(第)委員 次に、新里先生にお伺いをいたします。
日本弁護士連合会では、かねてから欠陥住宅問題について本当に熱心にお取り組みをいただいて、欠陥住宅をなくす市民の運動に大きな役割を果たしていただきました。ありがとうございました。
日弁連では、かねてから欠陥住宅を根絶する上で中間検査制度が大きな役割を果たすとして、この制度を主張してこられました。欠陥住宅をなくす上で中間検査制度がどういう意味を持つのか、また今回の中間検査制度の問題についてお答えをいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114204149X01319980520/61
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062・新里宏二
○新里参考人 中間検査制度の重要性ということでございますけれども、やはり建物の被害というものは、建物がいろいろな工程の中でできていく中で、非常にわかりづらい。だんだんふさがれていく。各段階でいろいろな手抜きをされても、次の段階が進んでいく中で極めてわかりづらくなっている。そして、何年か後にいろいろなトラブルが出る中で調べていく.うちに、基礎の部分が悪かったとかいろいろ出てきてしまう。
そして、裁判の中ではその被害回復というのは、技術的なことがあって、裁判所の無理解もあり、また弁護士の取り組みも不足だということがあってなかなか立証がつかない。それで精神的に極めてストレスになるという訴訟になっております。
そういう意味では、建築のその場その場、その段階ごとに問題がないかをチェックするシステムが極めて重要だろうというふうに考えております。しかも、これまで述べてきましたように、建築監理が現在機能していないということからすれば、新たな制度としての中間検査、第三者による中間検査制度というのは極めてその被害防止に役立つだろうというふうに考えております。
ただ、今回の法案につきましては、もう何度も言っておるところでございますけれども、やはり私たちはそもそも欠陥住宅被害、特に戸建て住宅等の四号建物等についての被害ということで相談に乗ってきて、裁判もやってきた中からすれば、それに対してどう中間検査をきっちり導入させるかというのが大きな課題だろうというふうに考えております。ところが、今回出てきた特例措置については、やはり現在の機能していない監理制度を温存したままでの制度ではないかということで、極めて疑問だというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114204149X01319980520/62
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063・辻第一
○辻(第)委員 今、中間検査制度の問題についてお話を聞かせていただきましたが、もう少し具体的に、我が国ではどのような制度にすればいいのか、あるいは建築行政や建築士あるいは建設業の現状を踏まえてどのような制度を構築する必要があるとお考えになっていらっしゃるのか。
それともう一点、米国の制度など大変勉強されておるようでありまして、米国へ調査団も派遣をされたようであります。アメリカでは、シティーインスペクターとスペシャルインスペクターに工事内容を監査させ、必要な対応を行うシステムのようでございますが、一戸建ての住宅の場合はシティーインスペクターによる内容チェックだけなのでしょうか。
この二点にお答えをいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114204149X01319980520/63
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064・新里宏二
○新里参考人 委員の皆様のお手元に建築基準法改正に関する意見書というものが参考資料として配られておるところだと思います。これが日弁連としてまとめた中間検査制度というものでございます。
今問われているのは、どうしても検査をするのか、じゃ、その人員の確保をどうするのかというのが大きな課題でございます。それで、行政の簡素化の中でいわゆる建築主事、今一千八百人しかいないというのを大幅にふやすわけにはいかないだろうという中で、日弁連で提案しましたのは、建築主事の委託を受けるような建築士による検査制度を導入したらどうだろうかその地域地域で利害関係のない建築士を補助者として使う制度がどうだろうかという形で提案をしております。それはこの意見書で見ていただければと思います。
それから、実は私はロサンゼルスの方には行っておらないわけで、私たちの調査団が行った報告書を見ている範囲、または、実は昨年アメリカの建築士団体の元副会長であったトム・カメイという方に来ていただきまして、講演をいただいた範囲内でお答えをするということになります。
アメリカでは、主に、日本でいえば戸建て住宅等についてはインスペクターという形で、公務員とする資格での検査制度が導入されております。それから、日本でいえば大型建物、特殊建物ということになるのでしょうか、そのような建物についてはスペシャルインスペクターという形で、いわゆる公務員ではないわけですけれども、特別にその方を採用してやるという二本立てのシステムになっております。
それで、私たち日弁連で言っておりますのは、ロサンゼルスのそのインスペクター制度を日本流にアレンジして導入すべきではないかということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114204149X01319980520/64
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065・辻第一
○辻(第)委員 次に、藤本先生にお尋ねをいたします。
建築物の質の向上のために建築士の皆さんやまた建築士会の皆さんが大変御尽力をされているお話を先ほどお聞かせをいただきました。さて、建築士の皆さんは今回の改正をどのように見ておられるのか。特に、今回、建築確認、検査が民間開放されますが、これが建築士の皆さんの業務とのかかわりでどのように影響が出てくるのか。
あるいは、先ほど先生から、時代の要請としても健全な民間機関をつくるべくネットワークづくりなどさまざまな運動をされているというお話を聞かせていただいたのですが、一般的に建築士の皆さんの中で確認・検査業務に携わることをどのように考えておられるのか、お答えをいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114204149X01319980520/65
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066・藤本昌也
○藤本参考人 今度の基準法改正全般というので、私の意見の最後に申し上げたように、やはり建築士はかなり責任が問われるということで、何となく今までは多少ぬるま湯に入っていたような気分の人もいたかもしれないけれども、そういう感じにはならなくて、やはり社会あるいはクライアントに対してきちっと自分たちの業務をはっきりさせて、それに対して責任をちゃんととりましようという形で対応しなければいけないということで、全体としてはかなり緊張感を持って対応したいというふうに考えております。
私の方も、そういうことで、所員も含めて少しちゃんとしろということを言っているわけですけれども、そういう自覚を持ってやらなければならないというふうに考えております。
そのことが結果としてはやはり社会的な建築士の地位といいますか、これは欧米に比べて——欧米はアーキテクトという言い方をしますけれども、かなり歴史があるということもあって、建築家というのは、市民の共有財産といいますか、環境も含めてそういうものを守るという立場にいる人間として、また近代社会をつくる上で非常な役割を果たしたという意味で非常に尊敬をされているというか、権威のある立場で、かなり認められているということですけれども、日本の場合にはまだその辺が非常におくれていますので、今回のこういうことを機会に、責任をきちっととるということによってちゃんと社会的な地位を上げていきたいというふうに考えています。
それから、建築士会として、今度の民間機関については、これは心意気というか一肌脱がなければいけないのじゃないか。やはり今、建築士会で一番問題なのは、地域貢献ということを大テーマにしていまして、地域の生活者の環境を守り、つくり上げていくために、そこにいる、先ほども出ていました工務店の方とか行政の方とか、単なる設計者だけではなくて、そういう人たちがパートナーを組んで地域全体の環境の質を上げていく努力をしていくときに士会が中心になってやっていこうということで、事実そういう機関もつくっているわけですけれども、そういう意味で、その一環として今度の民間機関というものをとらえていこう。
ですから、政府案というのは、民間ということで、確かに株式会社というふうなことにまで幅を広げて、それが公正であるということのある程度の縛りをかけて、あとは縛らないということで、一応幅広い機関としてとらえていますけれども、私たちは、NPOというような言い方をしているように、やはり非営利な、かなり社会性を持った、民間機関と公的機関の中間、社会的機関みたいなものをこれからの社会はどうしても発明していかなければならないのではないかというふうに考えていまして、建築士会が主導する形でやっていけばそういうものが現実にできるのではないか、そういうものを担っていこうという志でいるというところであります。
以上でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114204149X01319980520/66
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067・辻第一
○辻(第)委員 もう一点、藤本先生にお尋ねをいたします。
今回の改正の一つであります性能規定化の問題でございますが、これまでの建築基準を大きく変えるものだと思います。このことが現実の問題として建築士の皆さんの業務にどのような影響を与えるのか、お聞かせをいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114204149X01319980520/67
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068・藤本昌也
○藤本参考人 性能規定化については、私たち建築士というか建築を設計する者というのは、やはりできるだけ技術を駆使して、そして皆さんに喜んでいただけるような空間をつくりたい、そういうことにいろいろ挑戦していきたいということを考えています。
今までのは、仕様規定というのは、どちらかというと、一応間違いはないけれどもこういう水準で、こう決めてしまうということですけれども、その上のふたをとって、頑張れる人はどんどん知恵を出してトライしなさいという仕組みに一応なったわけですから、日本の全体の建築技術なりデザインの技術というのは、そういうチャレンジ精神を持っている人たちがそういうことで上げていってくれると思うのですね。
それは、特殊なところで幾つか上がって特殊解として出てきますけれども、結果としてそれが建築界全体の中に一般解として、共有財産としてその技術が定着していけば全体が上がりますよね。そういう仕組みだというふうに我々は考えて、競争の中でそういうことを考えていけばいいなというふうに考えています。
ただ、そういうものが一遍にどんどんいくというわけではなくて、設計の一つの合理的なコストということからいけば、先ほど出ていましたように、仕様規定というものもきちっとうまく使いながらいくということで、最初からほとんどが性能規定で仕事をしていくというふうにはならない、徐々に発展していくことを期待しているということです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114204149X01319980520/68
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069・辻第一
○辻(第)委員 次に、岡田参考人にお尋ねをいたします。
きょうは御意見をお聞かせをいただきましたし、一昨日、建築学会の要望書もいただいたわけでございますが、性能規定化に関して、建築主事のほか技術者への周知徹底の問題を述べておられます。
技術者の能力レベルとの関係で、具体的にどのような対応が必要なのか。あわせて、建築基準の性能規定化が我が国の建築にどのような影響を与えるとお考えなのか。二点、お伺いをいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114204149X01319980520/69
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070・岡田恒男
○岡田参考人 お答えいたしたいと思います。
性能規定化になってまいりますと、これが本当に具体的に設計に使う手段とか設計法みたいなものを押さえていく指針とか基準がどうなるかというのはまだ固まっておりませんので、具体的にはちょっと申し上げにくいところがありますが、一般的に言いまして、建物の性能を、私の専門でいいますと、地震のときにどうなるかなということを、技術を駆使して、自分で考えて、それを建築主に示すというような技術力が要求されるようになります。
ですから、今までのように、条文に書いてあることにそのまま適合しているかどうかということを少し機械的に参照したり、あるいは、それ用にできているコンピュータープログラムをがらがらと回して終わりというふうにはいかないという世界だと思います。ですから、先ほどからお話になりますように、一挙にその世界に行けるかというと、なかなか難しい問題があります。
そのためにも、今御指摘のように、技術者の教育とか、行政に携わる、審査をする、検査をする人も含めて、やはりいろいろな形で再教育といいますか、講習会を開くとか、いろいろなテキストをつくるとか手引書をつくるとか、そういった全体の技術力アップを建築界全体を挙げてこれからやらなければいけない。そういう意味でも建築学会は非常に大きな役割をこれから担っていくことになるのではないかなと思っております。
そういうのがうまく機能し始めてきますと、当初に申し上げましたように、建物をつくるときにあるいは買うときに、この建物は——性能というのはたくさんあると思います。私は安全性というのが一番の専門でございますが、いろいろな性能がどのレベルにあるものを自分たちがつくろうとしているのか、また、つくってもらえると思っているのかというようなことがわかるような世界が出てくる。
それによって建物全体の質の向上も図れると思いますし、それから、場合によっては、この建物はこっちの性能に重点的にお金を投資して、この性能はしばらく我慢しておこうかとか、こういう選択ですね、そういったものが全部できるようになる世界を今夢見ているというか、目指しているわけでございます。
今はとにかく、性能と言われると、ああ、基準法に合格していますよと、十把一からげにしか言えないような状況ではないかと思っているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114204149X01319980520/70
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071・辻第一
○辻(第)委員 どうもありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114204149X01319980520/71
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072・遠藤乙彦
○遠藤委員長 中西績介君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114204149X01319980520/72
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073・中西績介
○中西(績)委員 大変多忙な中でこうして先生方においでいただきまして、御意見をお聞かせいただきました。拝聴いたしまして、今まで私たちが十分認識し得なかった点等がたくさんあったということを、今また改めて反省をいたしておるところです。
そこで、時間がございませんので、端的にお答えいただきたいと思いますが、この建築基準法改正問題というのは、これからの行政のあり方を、一定の方向性を決定づけるものになりはしないかということを私は感じるわけであります。今、欠陥住宅問題等が社会問題化され、そして、建築に当たって計画から許可までの間における、特に先ほどから言われておりました工事監理の重要性がますます問われるということになってきています。
現行法律は、欠陥はあるにいたしましても、時代の進展とともになぜこのようにいろいろな問題が形骸化していったのか、そしてまた何が問題であったかということを、それぞれのお立場からお答えいただければと思っています。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114204149X01319980520/73
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074・岡田恒男
○岡田参考人 余りふだんから深く考えていなかった部分なもので、適切にお答えできるかどうかわかりませんけれども、私が理解しておりますのは、建築の設計とか施工というのは、昔のすべて一体化したところから、設計施工は棟梁が全部というところから、だんだん設計というのが分離してまいって、その次に監理というのが分離していく。今でも、小さな住宅ですと、設計というのがあるいは監理というのが、まだまだ独立して認知されていない状況かと思いますけれども、それが、現在提案している中では、さらに検査という部分も独立させていこうという方向なのでございますが、全体としてはそう進むべきだと私、全くそのとおり考えているわけです。
今御指摘の、監理というものをまだまだ一方では建築士の方でしっかりやってこなかったという問題がございましたし、それも含めて、建て主の方、建築主の方々になかなか浸透してこなかった。実態は私よくわかりませんが、そういうことを浸透させる、御理解いただくという努力も、やはり建築界全体として、行政も含めて足りなかったのかなという気はいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114204149X01319980520/74
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075・新里宏二
○新里参考人 こういう問題が起こる大きな社会的な背景というか、やはり大手のハウスメーカーという形で、建築業界にそういう営業力を伴ったハウスメーカーがかなり参入してきている。そういう中で、いろいろなところで起こっているような消費者問題という形で、情報の格差の問題、在来工法だけではなくて、ツーバイフォーであるとかプレハブ住宅とかが出てきて、消費者はよくわからないということがあるのではないか。
では、それに対応する消費者救済のシステムというのができ上がっているのかということからすると、でき上がっていないのではないか。先ほどちょっとお話ししましたけれども、建設業法というのがありますけれども、これは一つの法律であって、住宅産業についての特別な法ではないということになっております。
私どもからすると、やはり住宅を供給する者の責任というのを明確化した別の法体系が必要ではないのか。最近では、大きなことからいえば、契約適正化法という法律が国生審の方で議論されているやに聞いておりますけれども、やはり専門家として、住宅を購入する消費者に対する、例えば、きっちりとした書面交付義務、その書面の中にどれほどの設計図書を盛り込むのかという問題、それから重要事項の説明、これは宅建業法では定められておるわけですが、そのような消費者法制を建築のところに持ち込んでいくというのが一つあろうかと思います。
それから、もう一つは、既存法の活用ということの中では、やはり建築士法の十八条、何度も話しておりますけれども、監理をしなければならないというところが、法律はあるけれども、これがないがしろにされている。それはやはり、これも何度も言いましたけれども、従属的地位にあるということの中で、いわゆる設計、施工、監理が一体になっている中で、監理が形骸化していないのかどうか。
その中で建築士法二十三条の改正をどうするのかというのが議論されていかなければならない。建築基準法だけではなくて、そういうグローバルな形で議論していかなければならない。それの議論がまだまだ緒についたばかりなのではないかというふうに思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114204149X01319980520/75
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076・本多晃
○本多参考人 建築行政の今のいろいろな形骸化というお話、私の、行政の立場から申しますと、完了検査の率が非常に低いということ、また違反建築物への摘発あるいは是正命令が率が少ないということになろうかと思います。
これは、一番の問題は、やはり建物に対して最終のユーザー、これを利用される方が、その質に関して余り厳しく判定されない。例えば完了検査を受けていなくても、それは十分に市場で評価される、あるいはユーザーがそれを使われる。そしてまた、安全性に問題があっても、安いものならいいだろうというような形で、今のところ、質に対して余り最終的な評価なり選択がないのじゃないかということが根本にあると思います。
そのほか、私どもの方に引きつけて申しますと、やはり、検査あるいは確認の体制あるいは違反建築物に対する指導の体制、これは人員ですけれども、その不足というのも実態的な問題としてはあると思います。
以上です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114204149X01319980520/76
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077・藤本昌也
○藤本参考人 建築を設計している立場なので、余りうまくお答えできるかどうかわかりませんけれども、非常にマクロ的に言いますと、私たちの実感としては、例えば工事監理が形骸化したということですけれども、やはり戦後のそういう住宅を支えていたのは大工、工務店さんですね。先ほど石井先生だったと思いますけれども、やはり地域社会がそういう人たちの仕事をちゃんと見ていたということで、工事監理のようなことがどのぐらい行われたか、確かにそういう意味では形骸化していたかもしれないけれども、工務店の人たちが、あるいは大工さんたちが、実はしっかり自分たちで実質的な工事監理もし、仕事に対して責任を持ってやっていた時代があったのだと思うのですね。
そういうのが日本の社会として非常にうまくいっていたのだけれども、要は、そういう一種の地方都市といいますか、あるいは田舎のシステムが、大都市化して過密の社会になったときに、そういうルールではいかなくなって、結局、工務店も大企業の中に組み込まれて、いわゆる棟梁型の工務店というのではなくて、実は木工事屋さんのような形に分業化していくという中で、全体を見るという形の人がだんだんいなくなってくるということで、生産システムが変わってくる。
しかも、そういう都市化の中で非常に大勢の人がそういうことを始めるわけですから、建て主の方も、そういうものをちゃんと、だれがどういうふうなことをやっているのかがだんだん見えなくなってくる。それと、また行政の方も、そういう過密社会の基本的な仕切り方といいますか、そういう仕組みがやはり合わなくなってきて、うまくいっていない。
だから、大きな課題としては、今度の基準法改正も、そういう意味では、都市化社会の中での社会システムをもう一遍再構築していこうという中で出てきている問題で、それは工事監理が形骸化しているというのが非常に象徴的にあらわれているということだというふうに見ています。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114204149X01319980520/77
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078・中西績介
○中西(績)委員 今お聞かせいただいたこととあわせ、さきにいろいろ御答弁いただいた状況の中から、もう一つ、私は、情報公開等も含みまして、これからのあり方が問われておると思います。そうした点で、今度のこの法案について、大方の皆さんが評価なさっている分野もございますし、厳しい御指摘もあるわけでありますけれども、この点についての評価はどのように私たちは受けとめたらいいのか。時間がありませんから十分ではありませんけれども、それぞれ簡単にお答えいただければと思っています。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114204149X01319980520/78
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079・岡田恒男
○岡田参考人 私は、先ほど申しましたように、このもとをつくりました審議会の答申をつくった側でございますが、全体的には、この答申の方針で日本の建築行政の方向を示していただいたと思っております。
ただ、具体に、実際に施行するに当たっては、御心配のような、あるいは検討しなければいけない問題もまだたくさんございますので、その精神が生かせるように、もしこの法案をお認めいただきましたら実行してもらいたいというのが現在の気持ちでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114204149X01319980520/79
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080・新里宏二
○新里参考人 これも話したところでございますけれども、私どもからすると、欠陥住宅被害をどう防止するのかという観点から意見を述べさせていただいているわけで、その中では、やはり、今の行政から民間に開放の問題と四号プレハブ建物についての特例の問題点は反対せざるを得ないというふうに思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114204149X01319980520/80
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081・本多晃
○本多参考人 確認・検査業務の窓口を広げたという点では、これは市民サービスの向上につながると考えております。また、市という立場、首長の立場といたしましては、市の建築行政での一種の負担を軽減していただくということですので、貴重な建築職、この人員を他のもっと必要な業務に振り向けられるという点で、非常にありがたいことだと思っております。
それから、中間検査に関しましては、これは、特定行政庁に大きな責任が課せられたわけですから、実際の運用なり実施が大変だな、こういうことでございます。制度としては結構なことだ、このように考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114204149X01319980520/81
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082・藤本昌也
○藤本参考人 結論的に言えば、基本的な骨格としての今度の基準法改正は評価できるというふうに考えています。
ただ問題は、この骨格の肉づけをしていく政省令とか、そういうサブシステムとしての運営がちゃんといくためのいろいろな制度がどうなっていくかというのが、一番我々としても関心のあるところで、ここをうまくやらないとまた形骸化する可能性もあります。そういうことで、我々建築士としても、また士会としても、ただ批判しているだけではなくて、積極的に建築界全体の問題としていろいろな知恵なり、そういう提案もしていきたいというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114204149X01319980520/82
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083・中西績介
○中西(績)委員 時間が限られておりますからあれなのですが、これから後、先ほど岡田先生が言われましたように、やはり具体化していく過程が大変重要だろうと私は思っています。したがって、反対の意見をお持ちの方も含めて、これから後、政省令をつくるに当たってどのようにしていくかというのが大きな課題だろうと思います。
したがって、最後に、私は、行政も来ていますから、局長にその点についてどういうふうに取り上げていくのか、これから数年間のあり方についてお答えいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114204149X01319980520/83
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084・小川忠男
○小川政府委員 これからの対応の仕方でございますが、いろいろな御意見にもございましたように、今回お願いいたしましたのは、二十一世紀に向けての大きな枠組みでございます。これがどういうふうな経済的、社会的機能を果たすか、あるいは果たし得るかというふうなことについては、政令、省令、規則等々のサブシステムとしての制度のつくり方、さらにはその運用というのが極めて大きな意味を持っているというふうに痛感いたしております。
特に、当面の話といたしまして、法案をお認めいただいた場合には直ちに政省令の作成に入るわけでございますが、きょうの参考人の御意見の中にも、いろいろな立場からするいろいろな御意見がございました。そういうふうなことを、いろいろなチャンネルを通じて御意見、御批判を繰り返しちょうだいしながら、最善の枠組みをつくり上げていきたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114204149X01319980520/84
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085・中西績介
○中西(績)委員 以上で終わりますけれども、先ほど市長さんもおっしゃいましたように、これから後の運用が大変だし、またあるいはそのための人員をどのようにするかということをお考えになると大変だろうと思うのですね。
したがって、やはりただ単に行政改革を人員削減、合理化ということを中心にしてやるということが一番問題なのです。必要なところをどのように国民合意の中で発展させていくかということが一番重要ですから、そうした視点等についても、特に岡田先生あたり、またこれから後いろいろ御意見を出される機会もおありと思いますし、行政の皆さんもそれぞれのお立場でこれからあると思いますので、ぜひ御協力をいただくようにお願いを申し上げまして、終わります。
ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114204149X01319980520/85
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086・遠藤乙彦
○遠藤委員長 これにて参考人に対する質疑は終了いたしました。
この際、参考人各位に一言御礼を申し上げます。
本日は、貴重な御意見をお述べいただき、まことにありがとうございました。それぞれの専門のお立場を踏まえ、まことに充実した審議ができたものと考えます。委員会を代表して、衷心より御礼申し上げます。
まことにありがとうございました。
これにて本案に対する質疑は終局いたしました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114204149X01319980520/86
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087・遠藤乙彦
○遠藤委員長 これより討論に入ります。
討論の申し出がありますので、これを許します。辻第一君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114204149X01319980520/87
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088・辻第一
○辻(第)委員 私は、日本共産党を代表して、建築基準法の一部を改正する法律案に反対の討論を行います。
反対する第一の理由は、改正案による建築確認、検査の民間開放が民間任せであり、行政のチェック体制が不十分で、その公正、中立性が確保されないことであります。
現在の建築主事による確認・検査体制は、完了検査が三、四割しか行われていないことに見られるように、極めて不十分であり、その拡充が必要です。その現実を直視するなら、建築主事の監督のもとに民間の力を活用することも否定されることではありません。しかし、行政の体制を強化せず、行政のチェックも不十分なまま検査を民間に任せることは、検査の公正を確保する上で問題であります。しかも、ゼネコンやハウスメーカーの集合体が検査機関になる可能性があるなど、公正、中立性の確保なしの民間開放は賛成できません。
また、中間検査制度の導入は一歩前進ですが、中間検査すべき工程は特定行政庁が指定するものに限られる上、工事監理者たる建築士の独自性がないなどのため、不良施工のチェックはできず、欠陥住宅問題の解決にはなりません。
反対する第二の理由は、今回導入された性能規定によって、大手建設業者、住宅メーカーが住宅市場を独占し、中小建設業者が淘汰されるおそれがあるばかりか、欠陥住宅を拡大再生産する可能性があるからであります。
建築の自由度の拡大や多様化につながる性能規定化の方向は否定されるものではありません。しかし、基準の内容やその算定根拠、型式認定に係る情報の公開が不可欠であります。今回の改正はその規定がなく、大手建設業者、住宅メーカーが一方的に有利となることは明らかであります。また、建築材料や建築物等の型式認定制度、製造業者認証制度は、型式認定を受けた建築物の検査の簡素化で不良施工を見逃すおそれがあり、欠陥住宅問題をさらに拡大するおそれがあります。
採光、日照、地下居室などの規定の廃止、緩和は、居室の環境を悪化させるおそれがあり、反対です。
反対する第三の理由は、一団の敷地の複数建物に対する制限の特例により、都心部における建築物の一層の過密を招き、環境を悪化させることにつながるからであります。
また、この制度により、新築の建物に既存の建物の余裕容積率を移転することが可能になり、容積率の売買が生じることになります。容積率規制は健全な都市を誘導する必要から定められており、それが売買の対象とされれば容積率の適切な制限に支障を来すおそれがあり、反対であります。
以上で討論を終わります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114204149X01319980520/88
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089・遠藤乙彦
○遠藤委員長 これにて討論は終局いたしました。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114204149X01319980520/89
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090・遠藤乙彦
○遠藤委員長 これより採決に入ります。
建築基準法の一部を改正する法律案について採決いたします。
本案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114204149X01319980520/90
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091・遠藤乙彦
○遠藤委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114204149X01319980520/91
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092・遠藤乙彦
○遠藤委員長 ただいま議決いたしました法律案に対し、佐田玄一郎君外四名より、自由民主党、民主党、平和・改革、自由党及び社会民主党・市民連合の五派共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。
提出者より趣旨の説明を聴取いたします。井上義久君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114204149X01319980520/92
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093・井上義久
○井上(義)委員 ただいま議題となりました建築基準法の一部を改正する法律案に対する附帯決議案につきまして、自由民主党、民主党、平和・改革、自由党及び社会民主党・市民連合を代表して、その趣旨を御説明申し上げます。
案文はお手元に配付してありますが、その内容につきましては、既に質疑の過程において十分御承知のところでありますので、この際、案文の朗読をもって趣旨の説明にかえることといたします。
建築基準法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)
政府は、本法の施行に当たっては、次の諸点に留意し、その運用について遺憾なきを期すべきである。
一 建築確認・検査を行う民間機関の指定に当たっては、その業務の公正・中立性の確保に特段の配慮をすることとし、建築物の安全性が低下することのないよう適切な指導をすること。
二 地方公共団体に対し、本法の施行に伴う建築行政の執行に適切な指導、支援を行うこと。また、建築行政の執行体制の充実と民間機関の育成により、建築工事の中間検査の導入、違反建築物に対する是正措置の強化等の建築規制の実効性の確保に積極的に取組むよう指導すること。さらに、中間検査制度については、できるだけ早期に、中間検査の実施状況を勘案して、その充実強化のために必要な措置を検討すること。
三 型式適合認定、型式部材等製造者の認証を行う認定機関、特定の仕様が性能基準に適合することの評価を行う評価機関及び建築基準適合判定資格者検定の実施事務を行う検定機関の指定、承認に当たっては、その業務の公正・中立性の確保に特段の配慮をすること。
四 今回の法改正の内容及び今後整備される関係基準の内容について、建築主事、建築士、建築業者等の関係者に対し、説明会の実施等により十分な周知徹底を図ること。
五 違反建築物の発生を未然に防止するため、建築士、建築業者等に対して適切な指導を行うこと。特に、住宅については、消費者保護の観点から、住宅の性能保証制度の普及の促進を図ること。
六 連担建築物設計制度については、その適用に当たり、採光、通風、開放性など市街地環境が的確に確保されるよう適切な指導をすること。
七 地球規模での環境問題に対処するため、建築・住宅行政において、省エネルギーに配慮した建築物や環境と共生する住宅の建設の推進に努めること。
八 性能規定化の措置により、従来の仕様規定によって建築する中小建設業者が不利にならないよう特段の配慮を行うこと。特に、性能規定に関する情報を速やかに開示するなどの必要な措置を講ずること。
以上であります。
委員各位の御賛同をよろしくお願い申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114204149X01319980520/93
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094・遠藤乙彦
○遠藤委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。
採決いたします。
本動議に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114204149X01319980520/94
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095・遠藤乙彦
○遠藤委員長 起立総員。よって、佐田玄一郎君外四名提出の動議のとおり附帯決議を付することに決しました。
この際、建設大臣から発言を求められておりますので、これを許します。瓦建設大臣。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114204149X01319980520/95
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096・瓦力
○瓦国務大臣 建築基準法の一部を改正する法律案につきましては、本委員会におかれまして熱心な御討議をいただき、ただいま可決されましたことを深く感謝申し上げます。
今後、審議中における委員各位の御高見や、ただいま議決になりました附帯決議の趣旨を十分に尊重してまいる所存でございます。
ここに、委員長初め委員各位の御指導、御協力に対し深く感謝の意を表し、ごあいさつといたします。
どうもありがとうございました。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114204149X01319980520/96
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097・遠藤乙彦
○遠藤委員長 お諮りいたします。
ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114204149X01319980520/97
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098・遠藤乙彦
○遠藤委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
—————————————
〔報告書は附録に掲載〕
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114204149X01319980520/98
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099・遠藤乙彦
○遠藤委員長 次に、内閣提出、参議院送付、高速自動車国道法等の一部を改正する法律案を議題といたします。
趣旨の説明を聴取いたします。瓦建設大臣。
—————————————
高速自動車国道法等の一部を改正する法律案
〔本号末尾に掲載〕
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114204149X01319980520/99
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100・瓦力
○瓦国務大臣 ただいま議題となりました高速自動車国道法等の一部を改正する法律案につきまして、提案理由及び要旨を御説明申し上げます。
高速自動車国道は、国土の骨格を形成する高規格の道路網として着実な整備が進展しているところでありますが、これに伴い、近年、高速自動車国道を活用し、また、通行者の利便の一層の向上につながる多様な民間事業の展開が求められております。現下の経済情勢にかんがみれば、このような高速自動車国道に対する新たな要請にこたえることは、経済対策の観点からも時宜を得たものであります。
この法律案は、民間事業者の活力の活用を基本として、このような高速自動車国道への新たな要請にこたえるため、高速自動車国道に関する抜本的な規制緩和を行うとともに、これらに関連する日本道路公団の業務に関する規定を改正する等の措置を講ずるものであります。
次に、その要旨を御説明申し上げます。
第一に、高速自動車国道法の連結制限を緩和し、連結許可対象施設に商業施設、レクリエーション施設などの高速自動車国道活用施設の通路等を追加するとともに、連結許可基準、連結料等に関する規定を設けることとしております。
第二に、道路法の占用許可基準を緩和し、高速自動車国道等のインターチェンジ周辺の土地において、通行者の利便の増進に資する施設の許可基準の特例を設けることとしております。
第三に、これらの制度改正に関連して、日本道路公団法の業務を定めた規定を改正し、高速自動車国道の適切かつ効率的な管理の観点等から、高速自動車国道活用施設の通路の建設及び管理の受託業務等を行えるようにすることとしております。
第四に、附則におきまして道路整備特別措置法を改正し、高速自動車国道活用施設の連結料を日本道路公団の収入とすること等の措置を講ずることとしております。
その他、これらに関連いたしまして、所要の規定の整備を行うこととしております。
以上が、この法律案の提案理由及びその要旨であります。
何とぞ、慎重御審議の上、速やかに御可決いただきますようお願い申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114204149X01319980520/100
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101・遠藤乙彦
○遠藤委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。
次回は、公報をもつてお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。
午後零時四十七分散会
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114204149X01319980520/101
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