1. 会議録本文
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000・会議録情報
平成十年四月二十八日(火曜日)
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議事日程 第二十一号
平成十年四月二十八日
午後一時開議
第一 大西洋のまぐろ類の保存のための国際条約第十条2を改正する議定書の締結について承認を求めるの件(参議院送付)
第二 車両並びに車両への取付け又は車両における使用が可能な装置及び部品に係る統一的な技術上の要件の採択並びにこれらの要件に基づいて行われる認定の相互承認のための条件に関する協定の締結について承認を求めるの件
第三 千九百七十二年十一月十日、千九百七十八年十月二十三日及び千九百九十一年三月十九日にジュネーヴで改正された千九百六十一年十二月二日の植物の新品種の保護に関する国際条約の締結について承認を求めるの件
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○本日の会議に付した案件
議員請暇の件
日程第一 大西洋のまぐろ類の保存のための国際条約第十条2を改正する議定書の締結について承認を求めるの件(参議院送付)
日程第二 車両並びに車両への取付け又は車両における使用が可能な装置及び部品に係る統一的な技術上の要件の採択並びにこれらの要件に基づいて行われる認定の相互承認のための条件に関する協定の締結について承認を求めるの件
日程第三 千九百七十二年十一月十日、千九百七十八年十月二十三日及び千九百九十一年三月十九日にジュネーヴで改正された千九百六十一年十二月二日の植物の新品種の保護に関する国際条約の締結について承認を求めるの件
航空法の一部を改正する法律案(内閣提出)
行政機関の保有する情報の公開に関する法律案(内閣提出)及び行政機関の保有する情報の公開に関する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案(内閣提出)並びに行政情報の公開に関する法律案(北村哲男君外五名提出)の趣旨説明及び質疑
午後一時四分開議発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114205254X03319980428/0
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001・伊藤宗一郎
○議長(伊藤宗一郎君) これより会議を開きます。
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議員請暇の件発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114205254X03319980428/1
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002・伊藤宗一郎
○議長(伊藤宗一郎君) 議員請暇の件につきお諮りいたします。
小池百合子君から、四月二十九日から五月八日まで十日間、請暇の申し出があります。これを許可するに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114205254X03319980428/2
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003・伊藤宗一郎
○議長(伊藤宗一郎君) 御異議なしと認めます。よって、許可することに決まりました。
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日程第一 大西洋のまぐろ類の保存のための国際条約第十条2を改正する議定書の締結について承認を求めるの件(参議院送付)
日程第二 車両並びに車両への取付け又は車両における使用が可能な装置及び部品に係る統一的な技術上の要件の採択並びにこれらの要件に基づいて行われる認定の相互承認のための条件に関する協定の締結について承認を求めるの件
日程第三 千九百七十二年十一月十日、千九百七十八年十月二十三日及び千九百九十一年三月十九日にジュネーヴで改正された千九百六十一年十二月二日の植物の新品種の保護に関する国際条約の締結について承認を求めるの件発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114205254X03319980428/3
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004・伊藤宗一郎
○議長(伊藤宗一郎君) 日程第一、大西洋のまぐろ類の保存のための国際条約第十条2を改正する議定書の締結について承認を求めるの件、日程第二、車両並びに車両への取付け又は車両における使用が可能な装置及び部品に係る統一的な技術上の要件の採択並びにこれらの要件に基づいて行われる認定の相互承認のための条件に関する協定の締結について承認を求めるの件、日程第三、千九百七十二年十一月十日、千九百七十八年十月二十三日及び千九百九十一年三月十九日にジュネーヴで改正された千九百六十一年十二月二日の植物の新品種の保護に関する国際条約の締結について承認を求めるの件、右三件を一括して議題といたします。
委員長の報告を求めます。外務委員長中馬弘毅君。
〔中馬弘毅君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114205254X03319980428/4
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005・中馬弘毅
○中馬弘毅君 ただいま議題となりました三件につきまして、外務委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。
まず、大西洋まぐろ類保存条約改正議定書について申し上げます。
大西洋のマグロ類の資源を最大の持続的漁獲が可能な水準に維持するため、大西洋まぐろ類保存条約に基づき設立された大西洋まぐろ類保存国際委員会の財政事情が開発途上国の分担金滞納により悪化したため、平成四年六月にマドリードで開催された締約国の全権委員会議において、委員会に係る分担金の算出基準を改正する本議定書が作成されました。
本議定書の主な内容は、委員会は、締約国が毎年拠出する分担金の算定方式を採択するに当たり、大西洋におけるマグロ類の漁獲量及びこれらの魚類の缶詰製品の純重量の合計量並びに経済的発展の度合いを考慮すること等であります。
次に、車両等の型式認定相互承認協定について申し上げます。
本協定は、各国における車両・部品等の型式認定についての国際的に統一された要件を定め、型式認定の相互承認を実現することが貿易の促進に資するとの見地から、昭和三十三年三月に国際連合の欧州経済委員会の主催によりジュネーブで開催された国際会議において採択されたものであります。
本協定の主な内容は、すべての締約国で構成する運営委員会において、車両・部品等に関する統一的な技術上の要件を定める規則を作成すること、締約国は規則に定める車両・部品等の型式認定及び認定証の交付を行うこと等であります。
最後に、千九百九十一年植物新品種保護条約について申し上げます。
本条約は、近年の植物の新品種の育成や利用をめぐる状況の変化に対応するため、植物の新品種の育成者の権利についてその保護を強化すること等が必要であるとの認識のもと、従前の条約の見直しが行われた結果、平成三年三月十九日にジュネーブにおいて作成されたものであります。
本条約の主な内容は、締約国は育成者権を与え保護すること、条約の規定はすべての植物の種類に適用されること、保護される品種の種苗に関し、生産、販売、輸出入等の行為には育成者の許諾を必要とすること等であります。
大西洋まぐろ類保存条約改正議定書は、去る三月三十一日参議院より送付され、四月十七日外務員会に付託されたものであり、車両等の型式認定相互承認協定及び千九百九十一年植物新品種保護条約は、四月十七日外務委員会に付託されたものであります。
外務委員会におきましては、以上三件について、同日小渕外務大臣から提案理由の説明を聴取し、二十四日質疑を行い、引き続き採決を行いました結果、三件はいずれも全会一致をもって承認すべきものと議決した次第であります。
以上、御報告申し上げます。(拍手)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114205254X03319980428/5
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006・伊藤宗一郎
○議長(伊藤宗一郎君) 三件を一括して採決いたします。
三件は委員長報告のとおり承認するに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114205254X03319980428/6
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007・伊藤宗一郎
○議長(伊藤宗一郎君) 御異議なしと認めます。よって、三件とも委員長報告のとおり承認することに決まりました。
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008・田野瀬良太郎
○田野瀬良太郎君 議事日程追加の緊急動議を提出いたします。
内閣提出、航空法の一部を改正する法律案を議題とし、委員長の報告を求め、その審議を進められることを望みます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114205254X03319980428/8
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009・伊藤宗一郎
○議長(伊藤宗一郎君) 田野瀬良太郎君の動議に御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114205254X03319980428/9
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010・伊藤宗一郎
○議長(伊藤宗一郎君) 御異議なしと認めます。よって、日程は追加されました。
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航空法の一部を改正する法律案(内閣提出)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114205254X03319980428/10
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011・伊藤宗一郎
○議長(伊藤宗一郎君) 航空法の一部を改正する法律案を議題といたします。
委員長の報告を求めます。運輸委員長大野功統君。
〔大野功統君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114205254X03319980428/11
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012・大野功統
○大野功統君 ただいま議題となりました航空法の一部を改正する法律案について、運輸委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。
本案は、国際民間航空条約改正議定書の批准に合わせ、航空機の登録国が行った耐空証明等に加え、同議定書により締結された協定に基づき航空機の運航国が行った耐空証明等についても、我が国の航空法上の耐空証明等とみなすこととするための措置を講じようとするものであります。
本案は、三月三日本院に提出され、四月二十三日本委員会に付託されました。
本委員会においては、四月二十四日藤井運輸大臣から提案理由の説明を聴取し、本日質疑を行い、質疑終了後、採決の結果、本案は全会一致をもって原案のとおり可決すべきものと議決した次第であります。
以上、御報告申し上げます。(拍手)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114205254X03319980428/12
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013・伊藤宗一郎
○議長(伊藤宗一郎君) 採決いたします。
本案は委員長報告のとおり決するに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114205254X03319980428/13
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014・伊藤宗一郎
○議長(伊藤宗一郎君) 御異議なしと認めます。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。
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行政機関の保有する情報の公開に関する法律案(内閣提出)及び行政機関の保有する情報の公開に関する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案(内閣提出)並びに行政情報の公開に関する法律案(北村哲男君外五名提出)の趣旨説明発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114205254X03319980428/14
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015・伊藤宗一郎
○議長(伊藤宗一郎君) この際、内閣提出、行政機関の保有する情報の公開に関する法律案及び行政機関の保有する情報の公開に関する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案並びに北村哲男君外五名提出、行政情報の公開に関する法律案について、趣旨の説明を順次求めます。国務大臣小里貞利君。
〔国務大臣小里貞利君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114205254X03319980428/15
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016・小里貞利
○国務大臣(小里貞利君) ただいま議題となりました二つの法案について御説明申し上げます。
初めに、行政機関の保有する情報の公開に関する法律案について、その趣旨を御説明申し上げます。
さて、御承知のとおり、我が国においては、情報公開法制を確立することが国政上の重要課題となっていたところであります。このため、行政改革委員会において、行政機関の保有する情報を公開するための法律の制定等に関する事項について、二年間にわたり専門的かつ広範な調査審議を重ねていただき、その結果、平成八年十二月に、内閣総理大臣に対し、情報公開法制の確立に関する意見を提出されたところであります。これを受けて、政府は、同意見に沿って、このたび行政機関の保有する情報の公開に関する法律案を取りまとめ、御提案することとなったものであります。
次に、法律案の内容について、その概要を御説明いたします。
この法律案は、国民主権の理念にのっとり、行政文書の開示を請求することができる権利につき定めること等により、行政機関の保有する情報の一層の公開を図り、もって政府が有しておりますその諸活動を国民に説明する責務が全うされるようにするとともに、国民の的確な理解と批判のもとにある公正で民主的な行政の推進に資することを目的とするものであります。
この法律案の要点は、第一に、何人も国の行政機関の長に対し行政文書の開示を請求することができるものとするとともに、開示請求があったときは、行政機関の長は、不開示情報が記録されている場合を除き、行政文書を開示しなければならないこととするものであります。不開示情報については、個人に関する情報、法人等に関する情報、国の安全等に関する情報、公共の安全と秩序の維持に関する情報、審議、検討等に関する情報、行政機関等の事務または事業に関する情報の六つの類型に分けるとともに、各類型ごとにその範囲を明確かつ合理的に定めております。
第二に、行政機関の長が行った開示決定等について不服申し立てがあった場合に、行政機関の長の諮問に応じ不服申し立てについて調査審議する機関として、総理府に情報公開審査会を置くこととするものであります。これは、行政機関が保有する行政文書を開示するかどうかの判断を当事者である行政機関の長の自己評価のみに任せるのではなく、第三者的立場からの評価を踏まえた判断を加味することによって、より客観的で合理的な解決を図ろうとするものであります。このため、情報公開審査会には、行政文書の提示を求める権限等、調査審議のために必要な権限を付与することとしております。
以上が、行政機関の保有する情報の公開に関する法律案の趣旨でございます。
引き続きまして、行政機関の保有する情報の公開に関する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案について、その趣旨を御説明申し上げます。
この法律案は、行政機関の保有する情報の公開に関する法律(以下「情報公開法」と言います。)が施行されるのに伴いまして、関係法律二十四件について必要な規定の整備等を行おうとするものであります。
次に、法律案の内容について、その概要を御説明いたします。
第一に、会計検査院長の諮問に応じ不服申し立てについて調査審議するため、会計検査院に会計検査院情報公開審査会を置くこととし、その組織、委員等について所要の規定を整備したことであります。
第二に、情報公開法または情報公開条例の規定により行政機関の長または地方公共団体の機関が著作物等を公衆に提供し、または提示する場合におけるその著作者等の権利の取り扱いについて所要の規定の整備等をしたことであります。
第三に、登記簿、特許原簿、訴訟に関する書類等、謄本もしくは抄本の交付または閲覧について独自の手続が定められているものについて、情報公開法の規定の適用を除外することとしたことであります。
第四に、その他関係規定の所要の整備を行うこととしたことであります。
以上が、行政機関の保有する情報の公開に関する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案の趣旨でございます。(拍手)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114205254X03319980428/16
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017・伊藤宗一郎
○議長(伊藤宗一郎君) 提出者北村哲男君。
〔北村哲男君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114205254X03319980428/17
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018・北村哲男
○北村哲男君 ただいま議題となりました民主党、平和・改革及び自由党に所属する議員が共同で提案し、無所属の会を加えた四会派の議員が賛成者となっております行政情報の公開に関する法律案につきまして、提案者を代表して、その提案理由及び法律案の概要を説明いたします。
まず、本法律案の提案理由について説明いたします。
明治以来、行政は専ら官が独占し、国民はそれに従っておればよいという考え方が支配しておりました。しかし、そのような行政姿勢が行政の密室性や情報隠しとなり、薬害エイズ問題を初め、厚生省や大蔵省、日銀の汚職事件を生み出し、現在の深刻な政治不信を招いているのであります。この政治不信を解消するためにも、抜本的な行政改革、政治改革が求められているわけですが、まさにこの情報公開法の制定こそ、明治以来の日本の政治、行政を根本から改革するものと言っても過言ではないでしょう。
情報公開法の目的はただ一つ、国民に開かれた行政を実現することにあります。行政を常に国民の目に見えるようにし、国民が行政を監視し、また行政に参加できる道を開くものでなければなりません。
政府・自民党は、長い間、情報公開法の制定に反対し続けてきました。野党側は十八年も前から情報公開法案を提案してきましたが、自民党と官僚の反対により、日の目を見ることはありませんでした。この間に、地方自治体では、一九八二年を皮切りに、国に先駆けて次々と情報公開条例が制定されております。政府・自民党が当然なすべき法制化の検討を怠ってきた責任は、厳しく糾弾されてしかるべきであります。
今回提出された政府案は、国民の知る権利を法律に明記せず、特殊法人を公開対象から外し、また不開示の範囲を広げるなど、多くの問題点を抱えております。これに対し、本法律案は、市民の立場に立ち、市民にとって使いやすく、そして行政の執行に支障を来さない限度で可能な限り行政情報の全面公開を求めるものであります。
次に、本法律案の内容について、その概要を説明いたします。
第一に、法律の目的に国民の知る権利を明記しております。そして、政府の諸活動を国民に説明する責務が全うされるようにし、国民の行政に対する監視及び参加の充実に資することを目的として掲げております。
第二に、公開対象となる行政機関には、実質的な行政主体である特殊法人も含めております。さらに、公開対象となる情報には、行政機関の職員が職務上作成、取得したものであるならば、その行政機関の職員が組織的に用いるものでないものも含めております。このことにより、薬害エイズ問題の解明のために決定的とされた郡司ファイルなどが公開の対象となります。
第三に、行政機関が公開を拒否できる情報、いわゆる不開示情報の範囲を極力制限し、かつ規定を明確にして、行政の裁量の余地を狭めております。
すなわち、不開示情報の範囲については、一、個人に関する情報で、特定の個人を識別でき、かつ一般に他人に知られたくないと望むことが正当であると認められる情報、二、法人等に関する情報または個人の事業に関する情報で、その正当な利益を害することが明らかである情報、三、国の安全や外交関係を害することが明らかである情報で、かつ二十年を経過していない情報、四、公共の安全と秩序の維持に支障を及ぼすことが明らかである情報、五、行政機関の事務または事業に関する情報で、開示すると当該事務または事業の目的を達成することができないことが明らかである情報、以上の五つに明確に限定しております。
また、政府案では不開示とされているいわゆる意思形成過程情報や法人の非公開特約情報については、本法律案ではあえて規定を置かないことによって開示の対象とするなど、情報開示の範囲を極力広げております。
第四に、不開示とされた場合の救済措置を手厚くしております。具体的には、総理府のもとに行政情報開示不服審査会を設置することと、同審査会への諮問手続及び裁判所への抗告訴訟について定めております。また、それぞれの審理に際して必要と判断されるときは、ボーン・インデックス手続及びインカメラ制度を導入することにより、より公正な判断ができるよう配慮もしております。
なお、裁判管轄については、原告となる住民の住所地の裁判所にも訴訟の提起を認めることとし、より実効性を高めております。
第五に、開示請求の手数料については、請求時や閲覧時には徴収せず、写しの交付を受ける場合にのみ実費の範囲内に限り徴収することができることとし、その場合でも、経済的困難や公益上の理由がある場合には減免することにしております。
第六に、行政情報の公開の総合的な推進として、国会への報告、検索ファイルの作成、サービスセンターの設置、情報管理専門官の設置等の規定を置くとともに、行政機関の制定する行政資料の管理に関する定めの主要内容に関する基準等を別に法律で定めることにしております。
第七に、この法律は、平成十一年四月一日から施行することにしております。
以上が、この法律案の提案理由及びその内容の概要であります。
慎重に御審議の上、党派を超えて御賛同賜りますようお願い申し上げます。(拍手)
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行政機関の保有する情報の公開に関する法律案(内閣提出)及び行政機関の保有する情報の公開に関する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案(内閣提出)並びに行政情報の公開に関する法律案(北村哲男君外五名提出)の趣旨説明に対する質疑発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114205254X03319980428/18
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019・伊藤宗一郎
○議長(伊藤宗一郎君) ただいまの趣旨の説明に対して質疑の通告があります。順次これを許します。佐々木秀典君。
〔佐々木秀典君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114205254X03319980428/19
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020・佐々木秀典
○佐々木秀典君 私は、昨日誕生した新しい政党、民主党を代表して、政府提案の行政機関の保有する情報の公開に関する法律案並びに同僚議員提案の行政情報の公開に関する法律案について、政府と提案者に質問いたします。
初めに、私は、時期遅きに過ぎたとは言えるものの、我が国の長年の政治課題とされ、良識ある多くの国民が渇望していたいわゆる情報公開法が政府から提案され、こうして審議されるに至ったことに大きな感慨を覚えております。
今から二百九年前、フランスの人権宣言は、社会はすべての公の職員に対し、その施政につき報告を求める権利を有するとうたい、アメリカは、三十二年前の一九六六年、情報自由法を制定、お隣の国韓国も、一昨年、公共機関の情報公開に関する法律を制定しております。
アメリカの情報公開法施行の際、時の司法長官ラムゼイ・クラークの発した有名な言葉があります。「もし政府が真に人民の、人民による、人民のためのものであるならば、人民は政府の活動の詳細を知らなければならない。秘密ほど民主主義を減じるものはない。国家事項への市民の最大限の参加は、公衆に情報が与えられて初めて意味のあるものになる」というのがそれであります。
思うに、行政情報の公開制度は、私たちが民主主義社会を標榜する以上、そのために必要不可欠なインフラストラクチャーなのであり、政府及び行政機関の情報の公開をみずからの基本的義務と認識しない国家は民主主義国家の看板を掲げる資格を有しないものと考えるのですが、まず総理に、この法案提出に当たってのステートメントを求めたいと存じます。
私は、我が国が今ここにようやく情報公開先進国の仲間入りができることに喜びを覚えつつ、しかし、これがもう少し早くに行われていたなら、数多くの不祥事や社会的損失を防ぎ得たとの思いを禁じ得ないのであります。
例えば、一昨年、私も委員を務めました本院の予算委員会において住宅金融専門会社の破綻処理が審議される中で、一九九三年二月三日付の大蔵省銀行局長と農林水産省経済局長の内密の覚書、それは後の住専処理の決定的方向を方向づけるものでありましたが、それが明るみに出て、論議の的になりました。もしも、その当時公開制度があったならば、こうした官僚同士の越権的密約が結ばれることもなかったのではないかと思われるのであります。
また、エイズウイルスに汚染された非加熱製剤が長期間患者に投与され続けたHIV事件でも、八三年から八四年当時、いわゆる郡司ファイルが公開されていたならば、その危険性が公にされ、多数の患者への新たな投与は避けられ、犠牲者をふやすことは避けられたはずだったと思うのです。国民から喝采を浴びた菅直人厚生大臣の決断にまつことなく、本来これらの資料は開示されるべきものでありました。
こうした事例から得られる教訓は、行政が国民のためのものである以上、行政の有する文書は、諮問機関や審議会の情報を含めて徹底的に開示さるべきだということでありますが、これについての総理の御見解を伺います。
次いで、私は、市民団体の実践的な情報公開活動などを御紹介しながら、政府のこれに対する認識や評価についてお尋ねをしたいと存じます。
我が国の情報公開制度は、一九八二年、山形県金山町の文書公開条例をもって嚆矢とし、その後、先進的な学者や弁護士により研究が進められてまいりました。しかし、今日のように情報公開の大切さが身近に認識されるようになったのは、九五年四月、全国市民オンブズマン連絡会議が全国の都道府県に対して、その条例に基づき、いわゆる食糧費の公開請求を始めてからであります。
彼らは、それまでの自治体の慣行や公費支出の仕方に疑問を持ち、役所内部では公然の慣行として容認されてきた事柄を指摘して、情報公開請求書を出したことから、いわゆる官官接待、空出張などの事実が白日のもとにさらされたのであります。不正事実を指摘された多くの自治体は、やむなく内部調査に踏み切り、二十三都道府県で総額四百二億円の不適正支出の事実を認め、そのうち二百八十三億円余りが関係職員から弁済されております。
かくして、その後、官官接待はほぼなくなり、また、都道府県の食糧費の予算も九七年以降では従前の約六割、金額にして約百八十億円が削減され、出張旅費も年間百数十億円削減されるに至ったと言われています。いわば情報公開制度の活用によって、行政とこれを監視する住民との間によい緊張関係が生まれ、その効果が上がったことを端的に示したものと言えるでしょう。
このように、行政機関の内部監査機構では必ずしも有効に摘発できない行政の怠慢や不正の摘発を情報公開制度を駆使して住民などが行うこと、とりわけさきのような実績を積み上げてきた市民団体の活動について、その御認識と評価を総務庁の長官に伺いたく存じます。
ここで、今回提案されました法案の内容についてお尋ねをしてまいりたいと思います。
私は、政府が長い時間とエネルギーを費やし、さまざまな抵抗を排して、国として初めて行政情報原則開示の法体制整備を決断して、ここに成案を示されたことに対して敬意を表するにやぶさかでありません。そして、法案が、外国人を含む何人に対しても行政文書の開示請求権を認め、政府の諸活動を国民に説明する責務をうたい、その根拠を憲法の理念に置いていることにも評価を惜しむものではありません。しかしながら、政府案には、次のような問題点や使い勝手の悪さがあり、画竜点睛を欠くの思いを禁じ得ないのであります。
その第一は、情報開示請求権の根拠として憲法の理念をうたいながら、国民の知る権利の明記を避けていることです。
知る権利は、憲法第二十一条の表現の自由の内容であり、その権利は単に表現する自由だけでなく、他から発せられた思想、意見や情報を知り、これを受領する自由であって、その保障は請求権的意味を含むものと言わねばなりません。世界人権宣言十九条や国際人権B規約十九条も、すべての人は情報を求め、受け、伝える自由を持つと規定し、ドイツ基本法第五条も、各人は一般に近づくことのできる情報源から妨げられることなく知る権利を有すると規定しています。
そこで、政府案が知る権利の明記を避けた理由を総務庁長官に、あわせてこれを明記した意義につき議員立法の提案者に、それぞれ御答弁を求めます。
次に、対象機関の問題であります。
政府案は、いわゆる特殊法人については開示請求の対象機関とはせず、第四十一条において別途の措置を講ずることとしております。
しかし、総務庁設置法第四条第十一号に規定する総務庁の審査に服する法人のうち、例えば国民生活センターや日本道路公団などは資本金が全額政府及び自治体の出資によって設立されており、その他の法人もほとんどが公的資金や交付金によって設立あるいは運営され、その業務も本来行政各省庁に属してきたものを遂行し、その主要な役職の人事は官庁からの天下りで占められているのが実情であります。このように、大半の特殊法人について情報公開の必要性は、官庁自身と基本的に変わるものではありません。
特に、先年来、動力炉・核燃料開発事業団が、高速増殖原型炉「もんじゅ」のナトリウム漏れ事故や東海村事業所のアスファルト固化処理施設の火災爆発事故などの都度、関係資料を隠したり改ざんして国会に対しても作為的虚偽の報告を繰り返したことなどを見れば、特殊法人を対象機関とすることは国民ひとしく求めるところと考えるのであります。この点につき、総務庁長官と議員立法の措置につき提案者の答弁を求めます。
次に、不開示情報の定め方についてお尋ねをいたします。
政府案は、第五条に、広範囲にわたって不開示とすることのできる情報の種類を列挙し、不開示の理由として、何々を害するおそれというような抽象的な概念規定を置き、加えて、その判断を当該行政官庁にゆだねているのであります。これでは多くの開示請求が第一次的に閉ざされるおそれがあり、まさに換骨奪胎の感じを否めないのであります。総務庁長官はこれにつき修正のお考えをお持ちでないか、このことをお尋ねを申し上げます。また議員立法はこの懸念をクリアできるものとなっているのか、提案者の答弁を求めます。
また、個人情報に関する開示の基準について、政府案は、個人が識別される情報は原則としてすべて非公開とするいわゆる個人識別型を採用していますが、これには大きな疑問があります。
最高裁判所は、平成六年二月八日の判決で、行政庁内部の事務打ち合わせ懇談会などの情報は公開すべきものと判示いたしました。そしてこれまでの公費支出関係の処分取り消し訴訟において、裁判所は、下級審ながら、公務員の氏名は個人情報に当たらないとして、その開示を命じております。昨今、公務員の不祥事が相次ぎ、その倫理性が問題とされているとき、公務員の氏名を隠すなど明らかに時代錯誤と言わなければなりません。この点の修正の是非についても総務庁長官の所見を求めます。
次は、手数料の問題であります。
政府案は、第十六条で開示請求者に手数料の納付を規定し、閲覧についても除外してはおりません。
ところで、北海道では、かの道庁の不適正支出事案などに対して、市民からの情報公開請求件数は、一九九五年度で実に四十四万一百件に上ったのであります。北海道庁ではこの閲覧については無料としておりますが、仮に東京都並みに閲覧手数料を一件につき二百円といたしますと、この場合、実に八千八百二万円が支払われる計算になります。これにコピー代が加わるということになれば、その金額はまことに膨大なものになり、権利の行使に重大な支障を生ずることになりかねません。
橋本総理大臣の御実弟である橋本大二郎高知県知事は、手数料を取るような制度は悪い制度だと言ってこれを廃止いたしました。総務庁長官、この点の見直しはいかがなものでしょうか。それとも、非営利的な利用にも一律に閲覧手数料を徴収することを社会的妥当性を有するものとお考えなのでしょうか。このことについてもお答えをいただきたいと存じます。
以上のほかにも、政府案には、処分取り消し訴訟の管轄を東京に限るなど不合理な点が多々あり、これが成立しても、果たして本来の目的に即してこの法律が運用できるものか懸念せざるを得ないのであります。これらについては、内閣委員会での質疑や公聴会を通じてさらに明らかにされるものと考えます。しかし、我が国が民主主義国家であることのあかしとして、今つくろうとする行政情報公開法制を本当に魂の入ったものとするために、私は政府に対し、議員立法や私たちの提案に率直に耳を傾け、必要な修正にも対応される決断を求めたいと思うのです。
今議論されている行政改革、省庁の再編も、地方分権とこの情報公開制度の確立が伴わなければ実効的な意味を持ち得ません。金融財政措置を初め、このところ橋本内閣の失政が強く指弾されていますが、橋本総理がその責任を自覚されて退陣される前に、この情報公開法を、私どもの意見を入れて修正し、実のあるものとするならば、少なくともその点で橋本総理は歴史に名をとどめることになるであろうことを特に進言して、私の質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。(拍手)
〔内閣総理大臣橋本龍太郎君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114205254X03319980428/20
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021・橋本龍太郎
○内閣総理大臣(橋本龍太郎君) 佐々木議員にお答えを申し上げます。
まず、法案提出に当たっての見解とのお尋ねがありました。
情報公開法案は、申し上げるまでもなく、主権者である国民の皆さんに、政策を評価、吟味し、御意見をいただき、政治と行政への関心を高めていただくために極めて重要なものだと考えております。その一日も早い制定は国民が切望しておられるところでもあり、早期成立を心からお願いしたいと考えております。
次に、過去の幾つかの事例を引き、行政文書の開示についてのお尋ねがありました。
これまで必ずしも公開が十分ではなかったケースもあると思います。本法案では、不開示とすべき合理的な理由がある情報を除いて、原則として開示が義務づけられることになります。
なお、審議会等については、会議や議事録などの公開にも努めているところでありますが、これらにより、一層の公開が図られることになると考えております。
残余の質問につきましては、関係大臣から御答弁を申し上げます。(拍手)
〔国務大臣小里貞利君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114205254X03319980428/21
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022・小里貞利
○国務大臣(小里貞利君) お答え申し上げます。
市民団体の活動に対する認識と評価についてお尋ねでございますが、地方公共団体の情報公開制度は、市民団体等により積極的に活用され、公正な行政等を推進する上で効果を上げてきていると考えております。国においても、情報公開法の制定により、一層公正で民主的な行政運営が推進されるものと考えております。
次に、知る権利の明記についてお尋ねでございますが、知る権利については、憲法学上さまざまな見解があり、また最高裁判所の判例において、政府情報の開示を請求する権利として認知されていません。このように、知る権利の概念については多くの理解の仕方がされているため、知る権利という言葉を情報公開法に用いることは適当でないとしたところであります。
次に、特殊法人を本法案の対象とすることについてのお尋ねでございますが、特殊法人の情報公開法の制定は、国民から要望が強い緊要の課題と認識いたしております。このため、本法案においては、政府に対し特殊法人の情報公開に関する法制上の措置等を講ずべき旨を明記しております。また与党三党の合意によりまして、本法制定後二年以内に所要の法案を国会に提出することとされており、政府としては、国会でのこの御審議を踏まえ誠実に対応してまいりたいと考えております。
次に、不開示情報の規定について修正の考えはないかとのお尋ねでありますが、不開示情報の規定については、政府案におきまして、できる限り明確かつ合理的に定められているところであります。例えば、御指摘の何々を害するおそれという規定ぶりについては、行政改革委員会意見でも指摘されているように、そのおそれは法的に保護に値する蓋然性が要求されるものであります。また、開示、不開示の決定判断は行政処分として行われるものであり、行政機関の長が第一次的に判断することとなります。ただし、不服があれば、当然、事後的に情報公開審査会や裁判所の評価、判断に服することになります。
次に、公務員の氏名の開示についてお尋ねでございますが、法案では、公務員の職名と職務遂行の内容は個人情報としては不開示とせず、また氏名については、慣行として公にされている場合等は開示することとしているところであります。公務員の氏名は、公務員個人としての私生活においても用いられているものであり、これを開示すると私生活に影響を及ぼすことがあり得、公務員個人の権利も一般の国民と同様に保護する必要があると考えます。
最後に、手数料についてのお尋ねでございますが、開示請求権制度は、開示請求の理由を問わず、また開示された情報の利用に制約を課するものではないことから、請求の理由または利用の目的による手数料の減免を一般的に認める規定は設けておりません。(拍手)
〔倉田栄喜君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114205254X03319980428/22
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023・倉田栄喜
○倉田栄喜君 佐々木議員にお答えいたします。
民主党、平和・改革、自由党三会派の共同提出案に対しまして、議員からは、目的に知る権利を明記した意義、情報公開と特殊法人、さらに不開示情報の規定のあり方、この三点についてお尋ねがありましたので、私からお答えしたいと思います。
まず、私たちの案が第一条の目的に知る権利を明記した点であります。
先ほど、政府案が知る権利を明記しなかったことについて総務庁長官からお答えがありました。私たちは、知る権利が法律の目的の中に明記されるかどうかは、情報公開法が本当に国民主権の理念にのっとり、実際上、国民本位の法律であるかどうかを判断する重要なメルクマールであると考えています。
議員が引用されたラムゼイ・クラークの言葉をまつまでもなく、国民主権、民主主義の基本理念から考えるならば、そして政府が国民のものであるならば、行政情報を国民が知るのは当然であると考えております。そして議員の御指摘のとおり、憲法二十一条表現の自由の前提として、行政情報に対する国民のアクセス権が保障されなくては、確かな判断としての意見の表明もできなくなるわけであります。
最高裁の判例が請求権としての知る権利まで言及したものでないとしても、その概念が抽象的で定まっていないとしても、国民主権という憲法の基本原則を受けて、立法府たる国会が法律の中に知る権利を明記しその中身を具体化することは、憲法を具体化して法律をつくるという、まさに国会自身の責務であると考えます。また、知る権利が権利として保障されているかどうかは、法律の運用そして司法における解釈において、国民、利用者サイドに立つのか、行政サイドに立つのか、大きな違いが生じると考えますので、知る権利を明記することの意義はまことに重大であると考えます。
次に、特殊法人についてお答えいたします。
議員御指摘のとおり、動力炉・核燃料開発事業団の例を指摘するまでもなく、特殊法人の不透明さに対する国民の強い不満を考えても、そして特殊法人が国民の血税で運営され、公的支配が及ぶ準行政機関であることを考えれば、この法律の中で原則的に対象にすることを明記すべきであって、その解決を先送りすべきではありません。このような理由で、私たちの案は、特殊法人の情報開示について政令等に委任するのではなく、この法律自身で基準を設けて特殊法人を対象にするよう明記しているわけであります。
最後に、不開示情報の定め方についての懸念についてお答えいたします。
政府案は、私たちの立場から見ても、議員御指摘のとおりあいまいな言葉が多用されています。原則公開の趣旨を貫徹するならば、例外規定そのものの範囲が明確にされるべきであり、おそれというあいまいな文言は原則削除されるべきであり、明確に規定すべきであると考えます。
さらに、裁量行政の問題を指摘されています。開示請求が行政裁量によって逆に閉ざされて、換骨奪胎されるのではないかという御指摘であります。
私たちは、行政のあり方そのものが事前調整型行政から事後チェック型行政に転換しなければならないと考えます。そうである以上、行政裁量の幅はできる限り極小化されなければならず、公開するかどうか自体が行政の裁量権で左右されることがあってはならないと考えます。私たちの案は、議員の御指摘を踏まえてつくられていると考えております。
以上でございます。(拍手)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114205254X03319980428/23
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024・伊藤宗一郎
○議長(伊藤宗一郎君) 大口善徳君。
〔大口善徳君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114205254X03319980428/24
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025・大口善徳
○大口善徳君 私は、平和・改革を代表して、内閣提出の行政機関の保有する情報の公開に関する法律案等並びに民主党、平和・改革、自由党野党三会派提出の行政情報の公開に関する法律案に対し、総理及び関係大臣並びに野党提出者に対し質問を行います。
その前に、まず、昨日、金融機関から接待を受けた大蔵官僚の処分が発表になりました。金融関連部局に在籍した幹部職員五百五十名のうち百十二人の職員が関係業界の接待にまみれていたことに強い憤りを感じます。官僚と業界の癒着は大蔵省の金融部門だけにとどまりません。今こそ公務員倫理を確立しなければ、行政への国民の信頼は回復いたしません。公務員の公正中立を確保し、国民の信頼を回復するために、我々野党四会派は国家公務員の倫理の保持に関する法律案を既に国会に提出しております。国家公務員倫理法を今国会で成立させるべきであると私は考えますが、総理のお考えをお伺いいたします。
民主政治は、主権者たる国民が正確な情報を豊富に得られる環境が存在して初めて有効に機能します。アメリカ合衆国の憲法起草者の一人、ジェームス・マディソンは、「人民が情報を持たず、情報を入手する手段を持たないような人民の政府というものは、喜劇への序章か悲劇への序章か、あるいは恐らく双方への序章にすぎない」と語っています。アメリカ合衆国では、既に三十年以上も前に情報自由法が制定されております。
昨今のバブル経済の発生と崩壊、住専問題、そして大蔵官僚や日銀エリート幹部のこっけいなまでの接待漬け、恐るべき額の不良債権問題などの金融危機、その実態が明らかになるにつれ、日本政府はまさに喜劇と悲劇を同時に演じているのであります。カレル・ヴァン・ウォルフレン氏は、その著書で、「日本の官僚は支配階級に属している。そして彼らが権力を振るえる理由の一部は、普通の人の知らないことを知っているという事実に由来する。」と述べています。今こそ国民が正しい情報を手に入れ、行き詰まった官主導の統治システムに対し、変革を求める時代が到来いたしました。
このようなときに、遅きに失したとはいえ、政府において情報公開法案が提出されました。地方においては、要綱等を含めればすべての都道府県と三百四十八の市町村において情報公開制度が先行して実施され、市民オンブズマンは、これを武器に官官接待や空出張の追及で実績を上げ、一方、国会におきましても十数年前から野党は議員立法として法案を提出し、昨年の時点で、当時の新進、民主、太陽の野党三党が議員立法によって法案を提出し、これに後押しされる形で、政府もこのたびようやく法律案提出にこぎつけたのが実態でございます。
そこで、野党案と政府案について、それぞれの基本的立場はどうか検証をいたします。
第一に、この法律を主権者たる国民の立場から利用者本位でつくるのか、官主導の立場から行政本位でつくるかによって、内容も運用も異なってまいります。国民主権の立場に徹すれば、国民が税の使い道や配分、政策決定のあり方がゆがめられていないか行政を監視し参加することは当然の権利であり、原則公開を徹底し、利用者本位の制度とすべきであります。他方、この制度を行政本位という立場で考えれば、原則公開が過ぎると副作用が大きく、利用者本位では行政の円滑な遂行が阻害されるという考えになります。
第二に、行政が保有する情報をだれのものと考えるかによって、公開の範囲も異なります。行政が保有する情報は、どのような情報であっても税金を使用して収集した国民の共有財産だとすれば、国民が知るのも見るのも当然であります。他方、行政情報は行政機関のものであって、行政の円滑な遂行のために集めたものであるという立場では、行政が円滑に行われるか否か、それが公開の重要な判断基準となります。
第三に、冒頭で述べた大蔵省金融関連部局の一連の不祥事にも見られるように、肥大化した行政の裁量権をどう考えるかということであります。行政改革の論議で指摘されるように、行政が事前管理型から事後チェックルール型、管理からルールへと変わらなければならないとしたら、裁量の幅はできるだけ小さくする必要があります。当然、行政情報の公開にあっても行政裁量の極小化が実現されなければなりません。
以上三つの基本的立場で、野党案はいずれも情報開示に積極的であるのに対し、政府案はいかなる立場に立つのか、総理の明快なる答弁を求めます。
次に、法案の個々の論点について、総理及び関係大臣並びに野党提出者に明確な答弁を求めます。
第一に、情報公開法の目的規定に知る権利を明記するか否かであります。
政府案は、知る権利は多くの見解があり、まだその概念が定まっておらず、請求権的権利ではないとして明記しておりません。しかし、知る権利は、抽象的な権利であるとしても、法律の制度化によって具体的な権利となるものであり、国会が憲法の趣旨を生かして権利の中身を具体化するのは、まさに立法府たる国会自身の役割であります。よって、情報公開を求める権利は、国民主権原理とともに、憲法上の権利である知る権利に基づくものであることを明記すべきであると考えますが、この点について総理及び野党提出者の答弁を求めます。
第二は、公開の対象機関に特殊法人を加えるか否かであります。
動燃の事故隠しや道路公団理事の不祥事、天下り問題を見ても、情報開示の必要性は極めて高く、私は特殊法人も対象とすべきであると考えます。百歩譲っても、特殊法人の情報公開は情報公開法と同時に実施すべきと考えますが、この点について総理及び野党提出者の答弁を求めます。
第三に、不開示情報は明確であるべきです。
政府案には六分野の不開示情報の規定がありますが、おそれとか相当の理由など、語句自体が不明確あいまいであるため、行政機関の長の裁量の幅が大きく、乱用の危険があります。明白性の原則によって修正されるべきであると考えますが、この点について総理の答弁を求めます。
第四に、情報公開制度では、個人のプライバシーがどう守られるべきかということも議論する必要があります。
行政固有の情報、法人等の民間情報、個人情報が混在して議論されてはならないし、基本的人権が侵害されてはならないと考えますが、総理及び野党提出者の見解をお伺いいたします。
第五は、政策形成過程に関する情報の開示の問題です。
政府案では、行政の内部または相互間における審議、検討、協議に関する情報について、率直な意見の交換もしくは意思決定の中立性が不当に損なわれるおそれがあるということで、不開示としています。しかし、国民は、政策意思決定の過程を知らなければ、必要な批判ができなくなります。この規定は密室行政の現状を是認するものであって、行政の透明化に逆行するものであり、削除されるべきであると考えますが、この点について総理の答弁を求めます。
第六は、手数料や公開実務のあり方の問題です。
国民主権の立場、利用者本位の考えに立てば、開示請求自体及び閲覧については無償とすべきであります。写しの交付に係る手数料についても、実費の範囲内ででき得る限り低廉でなければならないし、経済的困難や公益上の理由による減免も認める必要があります。
開示方法や開示場所等も、利用者の利便を考慮し、整備されるべきであります。開示の担当者がお上意識で、見せてやるのだから不便は我慢しろ的態度で臨まれたら、国民主権と知る権利は不毛となると考えますが、これらの点につき総理及び野党提出者の答弁を求めます。
第七は、文書の管理、分類、保存の問題についてであります。
文書管理と情報公開は車の両輪、管理なくして公開なしと言われております。文書及び電磁的記録の情報管理のあり方について情報公開法自体に基本ルールを明記するとともに、情報文書管理の前提として、公務員が職務について必要かつ十分な説明ができる程度の情報文書の作成義務を負わせる必要があると考えます。開示請求された当該文書は既に廃棄されたというのではどうしようもないし、文書の特定も簡単にできるように、縦割りでなく統一的な文書管理、分類と保存のルールが示されなくてはならないと思います。この点について総理及び野党提出者に答弁を求めます。
第八は、裁判管轄に関する問題です。
政府案は、現行行政事件訴訟法の体系にこだわり、被告住所地の裁判管轄しか認めていません。しかし、費用の点を考えれば、不開示決定等に係る抗告訴訟については原告住所地で提起できるよう、現行法の特則としての規定を置く必要があると考えます。ある市民団体の試算では、沖縄県那覇市在住の人が厚生省を相手に裁判を起こして最高裁まで争った場合、原告本人の交通費だけで百万円かかるということであります。地方在住者が旅費や宿泊費等の費用負担のゆえに抗告訴訟を断念することのないようにすべきと考えますが、この点につき総理及び野党提出者の答弁を求めます。
第九に、情報公開制度を電子情報化時代にいかに対応させるべきかであります。
アメリカ合衆国においては、連邦政府が公費で収集した膨大な情報をインターネット上で開示し、情報の電子化に積極的に取り組んでおります。アジア地域で初めての情報公開法施行国である韓国においても、電子メールによる請求が認められております。我が国においても、情報開示の制度を実効あらしめるため、行政情報の電子化やシステム化されたレコードマネジメント、検索の容易化・公開手段の迅速化に直結するインターネットその他の電子手段による情報提供に取り組むべきと考えますが、この点について総務庁長官の答弁を求めます。
第十に、野党案では平成十一年四月一日施行でありますが、政府案では公布後施行までの期間を二年を超えない範囲としております。私は、期間はなるべく置かないで速やかに施行すべきと考えますが、この点について総理の答弁を求めます。
最後に、私どもとして最も気にかかるのは、一部に、わざわざ譲歩してまで成立させる法案ではないという声が早くも飛び交っておることでございます。しかし、これは情報公開法を久しく待望してきた国民の期待を完全に裏切る言葉であると考えます。ここで法案がとんざした場合、内心最も喜ぶのはどこのだれでしょうか。行政情報を独占し、そのことによって裁量行政や権限を振りかざす官僚諸君ではないかと私は考えるのであります。
ここは、各党ともお互いに、民主政治のため、国民の知る権利の確保のために真剣なる審議を行い、ぜひとも今国会中に成立させるべきだと考えますが、総理並びに野党提出者に法成立への決意を伺い、私の質問とさせていただきます。ありがとうございました。(拍手)
〔内閣総理大臣橋本龍太郎君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114205254X03319980428/25
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026・橋本龍太郎
○内閣総理大臣(橋本龍太郎君) 大口議員にお答えを申し上げます。
まず冒頭、いわゆる公務員倫理法についてのお尋ねがありました。
政府としては、公務員倫理法の制定を期して、与党と密接な連携を図り、鋭意検討を進めてきたところでありますが、先般、与党において国家公務員倫理法案の大綱が取りまとめられました。今後はできるだけ速やかに法案化作業を進め、今国会において早期に成立されるよう万全を期したいと考えております。
なお、これまでの検討経緯、また、この法律が公務員である行政府を縛るものであることを踏まえましたとき、与党の提案とすることの方が国民の信を得る意味でも最も適切な選択ではないかと考えております。
次に、情報公開法は国民の立場で作成されるのかというお尋ねがありました。
情報公開法案は、目的規定において、「公正で民主的な行政の推進に資する」と明記しておるところでありまして、国民の立場に立った行政を一層推進するものと考えております。
次に、行政が保有する情報をだれのものと考えるかというお尋ねがございました。
行政情報は、申し上げるまでもなく国民のための行政を遂行するために保有しているものでありますが、行政情報には個人に関する情報、法人などに関する情報が多く含まれることから明らかなように、法律的な意味で共有財産と理解することは適当ではないと考えております。
次に、行政の裁量権についてお尋ねがありました。
情報公開法案における不開示とすべき情報の範囲については、行政改革委員会意見に沿って、できるだけ明確かつ合理的に定めたところであります。また情報公開法による請求があった場合の審査基準を策定、公表し、行政機関による恣意的な運用を排することとしたいと考えております。
次に、国民主権原理と知る権利の明記についてのお尋ねがありました。
行政改革委員会の意見におきましては、項目的に国民主権の理念を明記するほか、いわゆる知る権利という概念については、憲法学上さまざまな理解の仕方があることなどから、知る権利という言葉を用いないとされました。政府としては、この意見に沿って法案を立案したところであります。
次に、特殊法人の情報公開についてお尋ねがありました。
特殊法人の情報公開法の制定は、国民から御要望の強い緊急の課題であり、本法案では、政府に対し法制上の措置等を講ずべき旨を明記いたしております。また与党三党の合意により、本法制定後二年以内に所要の法案を国会に提出することとされており、国会での御審議を踏まえて誠実に対応してまいります。
次に、不開示情報の規定ぶりについてお尋ねがございました。
いずれも既に法律用語として用いられている言葉であり、例えば、おそれの程度は、法的保護に値する蓋然性が要求されるとされているところであります。いずれにしても、不開示情報該当性の判断は、事後的に司法審査に服することとなることから、乱用されるとは考えておりません。
次に、個人のプライバシーの保護等についてのお尋ねもございました。
個人のプライバシーなど、個人の基本的人権は十分に保護すべきであると考えております。このため、本法案において、特定の個人が識別され得る情報を原則的に不開示とした上で、不開示とする必要のないもの等を例外的に除くこと等により、基本的人権の的確な保護を図っております。
次に、審議、検討等に関する情報の規定についてもお尋ねがありました。
この規定は、政府がそのさまざまな活動を説明する責務を全うする観点から、事項的に意思決定前の情報をすべて不開示とするのではなく、適正な意見の交換を不当に損なうおそれがある情報等に限って不開示とする、そうした観点に立って立案を行っているものでありまして、この規定は必要な規定であると考えております。
それから、手数料と開示方法についてのお尋ねがありました。
本法案では、利用者に公平な負担を求める観点から、開示請求及び開示の実施に係る手数料を徴収することとしておりますが、減免措置も規定いたしております。開示はあるがままの行政情報を提供するものであり、場所や方法については、利用者の利便も考慮していくこととしております。
次に、文書管理についてお尋ねがありました。
本法案では、統一的な文書管理の基準を政令で定めることとし、その内容として、行政文書の分類、作成、保存及び廃棄に関する基準を規定することとしております。
また、訴訟管轄についての御指摘がありました。
この問題については、一般の行政訴訟と比べた情報公開訴訟の特色と意義、訴訟遂行上の費用負担のあり方等についてさまざまな考え方があるところです。したがって、訴訟制度全般との関連に留意し、実情を把握しつつ検討すべきものだと考えております。
次に、施行時期についてもお尋ねがありました。
情報公開法が施行されるまでの間、政府におきましては、窓口の整備や文書管理の徹底等大量の事務作業が見込まれます。できるだけ早期に施行したい、私もそう思いますけれども、政府及び各行政機関における準備作業を勘案すると、的確かつ円滑に法を執行するために二年程度の期間は不可欠であろうと考えております。
最後に、今国会中の成立についてお尋ねがありました。
情報公開法の制定につきましては、行政改革を推進する上での極めて重要な課題でありまして、また国民各位からの強い御要望があることも踏まえ、今国会中の成立を心からお願いをいたします。
残余の質問につきましては、関係大臣から御答弁をいたさせます。(拍手)
〔国務大臣小里貞利君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114205254X03319980428/26
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027・小里貞利
○国務大臣(小里貞利君) お答え申し上げます。
電子的手段による情報提供についてのお尋ねでございますが、行政情報の公開を総合的に推進する観点からは、開示請求権制度の整備とともに、積極的な情報提供も重要と認識いたしております。特に、近年の情報通信技術を活用した電子的な情報提供は、その主要な手段であります。
政府は、現在、昨年十二月に閣議決定いたしました行政情報化推進基本計画に基づき、総合的な文書管理システムの整備やインターネット・ホームページを活用した提供の推進とその内容の充実等を進めておるところでございます。(拍手)
〔福岡宗也君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114205254X03319980428/27
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028・福岡宗也
○福岡宗也君 大口議員の御質問に対しまして、野党三会派を代表いたしまして、提案者の一人として御答弁をいたします。
第一の御質問は、目的に知る権利を明記すべきであるということであります。
野党三会派の法案は、知る権利を明記いたしているわけであります。その基本的考え方につきましては、倉田議員の説明と同旨でありますので、これを補足するという形で御説明を申し上げます。
この知る権利を目的規定の中になぜ入れなければならないかというその意義でございますけれども、法の目的規定というのは、どの法案でもそうでありますけれども、各条文の解釈基準となるものでございます。したがいまして、憲法上の権利として知る権利を明記することになれば、これを制約する不開示事由の有無の判断というものについては厳格な基準をもってしなければならないということになるわけでありまして、国民の情報公開請求権をより強力にするという効果があると考えるものであります。このことは、既に地方自治体の条例において、これを明記した場合としない場合とにおいて裁判所の判断に大きな相違が存することによって明白であります。
それから次に、第二に、政府は目的にこういう規定をしております。「国民の的確な理解と批判の下にある公正で民主的な行政の推進に資することを目的とする。」こういうふうに書かれているわけでございます。しかしながら、情報公開制度の目的は、単に国民による行政監視ということにとどまるというものではありません。思想、信条の自由、表現の自由等の基本的人権を守るとともに、生命、身体、財産、環境などの被害の予防と、それから個別的な被害救済をするという目的を有するものでございます。
行政情報は、行政機関が多額な金をかけて、いわゆる公的資金でもって収集をしたものでありまして、これは国民の有力な財産であるとも言えるわけであります。国民がこれを用いて権利実現のために利用できる、このような情報公開制度を確立することが必要であるわけであります。薬害エイズの発生直後において情報公開がなされていれば、被害者は相当に激減をしたということが言われているわけであります。
それから次に、第三に、知る権利は講学上確立された概念であります。多くの学者が表現の自由を基礎にして多くの学説を展開して、これはもう確立していると見て十分であります。
また、最高裁判所はこういうような判断を一九六九年に既にしております。すなわち、報道機関による報道についての判断でありますけれども、それが民主主義社会において国民が国政に関与するにつき重要な判断を提供するような、いわば国民の知る権利に奉仕するものである、したがって報道の自由を守らなければならないという形で、国民の知る権利というものについては、直接的な請求権ではありませんけれども、概念的にはかなりの構築をしております。それからまた、多くの自治体の情報公開条例におきましても知る権利は明記されています。
したがいまして、既に現在、知る権利として盛り込むことについては、先ほどの倉田議員の説明にもありましたように、何の支障もないというふうに考えております。
それから次に、情報公開の対象機関に特殊法人を加えるべきではないかという質問についてお答えをいたします。
野党三会派案は、原則として特殊法人を対象機関といたしております。
その理由とするところは、第一に、特殊法人の業務の公共的な性格にあります。特殊法人は、国の事業を行うために特別の法律によって設立されておるものであります。行政庁の業務を分担し、行政機関の一部とも考えられる部分があるからであります。当然、国民の行政監視の対象にさるべき性質を持っているわけであります。それから第二に、設立から事業資金や経常経費まで、多大な公的資金によって賄われているわけであります。さらに第三に、特殊法人の役員には高級官僚が多数天下りをしておるのが実情でございます。その実態を国民に公開し、これに対する批判の対象とすることも極めて重要であります。
このような特殊法人を対象外にするということは、情報公開制度の意義を半減するということにもなりかねないわけであります。二年間待つというのではなくて、直ちに特殊法人も対象にすべきものと考えるわけであります。
それから次に、行政庁の不開示決定処分についてでございますけれども、裁判管轄を住所地における裁判所に認めるということであります。
理由は、行政情報公開制度というものの内容がいかによくても、実際の不服申し立て方法について道を閉ざしてしまうようなことがあれば、それはもう実際には行政庁の長の恣意的な判断ということを容認し、実質的にこれは形骸化してしまうおそれがあるということであります。先ほどの御質問者の中にもありましたように、多額な過重な負担を与えるということは地方の請求者に対する権利を実質的に奪うことになるわけでありまして、憲法上の平等原則にも反するものだ、かように考えるわけでございます。そういうわけで、ぜひとも管轄を認めていただきたい。(発言する者あり)
それから最後に、結論でございますから、もうちょっと御静聴ください。
いわゆる決意ということでございますけれども、やはり地方それから国際的な流れとして、行政情報公開制度の流れというものはとどまるところを知らないわけでありまして、この早期成立は焦眉の急であるわけでございます。しかしながら、中身は、やはり完全な国民のための知る権利、それから人権を擁護するに足るような内容でなければならぬわけであります。そのようなわけで、実際に適用をして動いていくような制度を実現しない場合には、逆の、これを拒絶する作用のみが表に出てしまうという危険すらもあるわけでございます。
そういう意味で、この情報公開制度の策定というのは、党利党略によるのではなくて、与野党こぞって、よりよき制度がどういうところにあるかということを検討して、正すところは正して、真に国民の行政監視に役立つような制度にしていただきたい。そういう意味では、与野党を問わず、全員でもって、よりよき制度を模索をしていい制度を実現していただきたい、これが最後の結論であります。どうもありがとうございました。(拍手)
〔達増拓也君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114205254X03319980428/28
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029・達増拓也
○達増拓也君 引き続き大口議員の質問にお答え申し上げます。
まず、情報公開制度では個人のプライバシーはどう守られるべきかという質問にお答えいたします。
プライバシーの権利は、独立した自由な人格を有する個人が、自己の存在にかかわる情報を開示する範囲を選択できる権利として、日本国憲法が保障する基本的人権の一つとして理解されております。このようなプライバシーの権利は、情報公開制度においても当然保護されるべきであり、公開によってプライバシーの侵害が行われるような行政情報は行政側が開示しないことができる、いわゆる不開示情報とすべきです。
そこで、我々の法案では、具体例を示しつつ、個人に関する情報であって、特定の個人が識別されるもののうち、一般に他人に知られたくないと望むことが正当であると認められるものについて、不開示情報の一つと定めています。
なお、実質的にプライバシーの保護が担保されるのであれば、行政情報はできるだけ広く開示されるべきでありますから、単に個人が識別されれば直ちに不開示情報とするのではなく、いわゆる個人識別情報のうち、一般に他人に知られたくないと望むことが正当であると認められるもののみを不開示情報としています。
次に、手数料や開示方法等公開実務のあり方についてお答えいたします。
手数料について、大口議員から、国民主権の立場、利用者本位の考えに立てば、開示請求自体及び閲覧については無償とすべき等の御指摘がありましたが、情報公開制度の趣旨にかんがみ、非常に重要な点であると思います。我々の法案では、閲覧による行政情報の開示は無償とすることを定め、写しの交付についても、実費の範囲内において政令で定める額の手数料を納付することとしています。またこの手数料についても、開示請求者に経済的困難その他特別の理由がある場合及び開示請求に公益上の理由があるときには、政令で定めるところにより手数料の免除や減額ができることとしています。
開示方法については、我々の法案は、大口議員御指摘の原本確認原則にのっとり、開示請求された行政情報が記録されている行政資料そのものの閲覧または複写を原則とし、原本の閲覧もしくは複写が適切でないと明らかに認められるときは、その理由を示した上で、また開示請求者が希望するときは、当該行政資料の写しの交付をもってこれにかえることができると定めています。
なお、行政資料の写しについては、開示請求者の利便を考え、政令で定めるところにより、郵送料を納付すれば写しの送付が受けられるように規定しております。
最後に、文書の管理、分類、保存についてお答えいたします。
大口議員御指摘のとおり、文書管理と情報公開は車の両輪、また管理なくして公開なしです。行政情報の開示を請求する国民の権利を実質的に保障し、政府の説明義務を十分に果たすためには、その前提として、政府の保有する情報が適正に管理されていることが不可欠であります。
そこで、我々の法案では、行政機関が行政資料の管理に関する定めを制定し、これを公にするとともに、当該定めに従い行政資料の適切な管理を行うものとしています。また行政資料の管理の基本ルールについて、それぞれの行政機関にゆだねるのではなく、法律によって統一的に規定すべきとの考えから、「行政資料の分類、収受、作成、決裁、供覧、公表、整理保管、保存及び廃棄に関する基準並びにその基準を遵守する義務及びその基準に違反した場合における罰則その他必要な事項については、別に法律で定める。」としています。質問いただいた、公務員が職責について必要かつ十分な説明ができる程度の情報文書の作成義務についても、この行政資料管理に関する法律で規定することが検討に値すると考えます。
さらに、行政機関に行政資料の管理に関する事務を適正に行うための情報管理専門官を置くこととし、文書管理の徹底を図っております。(拍手)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114205254X03319980428/29
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030・伊藤宗一郎
○議長(伊藤宗一郎君) 石垣一夫君。
〔石垣一夫君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114205254X03319980428/30
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031・石垣一夫
○石垣一夫君 自由党の石垣一夫でございます。
私は、自由党を代表して、ただいま議題となりました政府提出、行政機関の保有する情報の公開に関する法律案並びに民主党、平和・改革、自由党、無所属の会提出、行政情報の公開に関する法律案について質問いたします。
私たちは、二十一世紀を目前に迎え、準備を急がなければなりません。それは、日本再構築を目指しての準備であります。とりわけ日本の構造改革は、政治、経済、社会全般にわたる待ったなしの改革であります。しかし、改革の手法に誤りがあれば、この国の将来に重大な禍根を残すことになります。
ただいま審議しております中央省庁等改革基本法案の根底に流れるものこそ、情報公開であると信じます。情報は国民国家の財産であります。この財産をはぐくんできたのは、人間の本能である知欲、知性であります。政府は、知る権利を国民主権の理念ととらえておりますが、私は、人間の本能である知欲、知性の進展は、知る権利として法に位置づけられる生存権の一つであると考えております。
政府の提出法案は、こうした人間哲学にかかわる視点の論議と法の位置づけを不明確にしたまま、アカウンタビリティーに必要な情報を出せばよいという狭い概念の公開に押し込め、しかも歴史的文書を法の対象から外すことにしたのであります。
本来、アカウンタビリティーの持つ意味は、ニュージーランドの情報公開法、カナダの非公開不服申し立て機関の年次報告、米国の情報自由法の基本に照らしても、国政における公開性オープンネスと責任性アカウンタビリティー、この二つが基本となっております。しかし、我が国においては、この責任性のみ強調され、しかも責任性の概念の中に説明を加えた日本版アカウンタビリティーとして翻訳されたのであります。この概念を変えない限り、我が国には民主主義はありません。
一九六六年、米国の情報自由法が施行されるとき、演説した当時のラムゼイ・クラーク司法長官は、「もし政府が真に人民の、人民による、人民のためのものであるならば、人民は政府の活動の細部にわたって知らなければならない。民主主義を縮減するものとして秘密以上のものは存在しない」と述べ、情報公開法は民主主義の規範をなすものであると力説しております。行政に公開する広範囲な裁量権を与え、その一分野を説明責任としてこたえるだけでは、官から民へ、官民癒着の行政を根本から変えるべき情報公開法が求めてやまない国民の要請に背くものであると言わざるを得ません。
そこで、政府提出法案について総理大臣にお伺いいたします。
第一は、知る権利の法的位置づけについてであります。
行政情報公開部会長角田礼次郎氏は、内閣法制局長官在任中、一九八一年三月十日、参議院予算委員会で「いわゆる知る自由ないし知る権利につきましては、これらの判決あるいは決定において」「必ずしもそこで明確にされているわけではございませんけれども、」「いずれにせよ憲法のよって立つ基盤である民主主義社会のあり方、あるいは憲法第二十一条の保障しております表現の自由にかかわりのあるものとして当然尊重されるべきものであると考えます。」と、極めて表現の自由に限定した答弁をしております。
当然、この憲法二十一条表現の自由の具体化として、知る権利を表現の自由に位置づけるべき法制度の環境は醸成しているのに、なぜ国民主権の理念に置きかえたのか、その理由を明確にされたいのであります。
第二は、その見解から、いかなる理由をもって知る権利を情報公開法に盛り込まなかったのか、明らかにしていただきたいのであります。
第三は、情報公開法と同時に、なぜ国家機密法案、個人情報保護法案を提出できなかったのか、その理由を説明していただきたい。
第四は、野党提出法案は、訴訟手続にインカメラを導入することを法案に規定しておりますが、政府案はいかなる理由からインカメラを導入されないのか、その根拠を国民の前に明らかにしていただきたいのであります。
次に、総務庁長官にお伺いいたします。
第一は、不開示決定に関する訴訟の問題であります。
政府案では、何人にも開示請求権を認めると規定しているものの、現実には不開示決定に対する訴訟は東京地方裁判所に限られてしまう状況下にあります。これは国民の利便性を無視した考えであります。
例えば、行政情報は、何も霞が関だけに集中しているわけではありません。地方分権に伴い、行政の権限は地方部局に委譲され、今後、行政情報はますます増大されます。地方部局に権限が委譲、委任されるのに伴い、公開決定権限を中央省庁から地方部局に委任するなど、事案処理によっては、わざわざ東京に来なくて請求者の所在地において訴訟を起こせることは当然国民の権利であります。なぜわざわざ東京地方裁判所まで莫大な費用をかけて来なければならないのか、素朴な疑問についてお伺いいたします。
第二は、特殊法人の情報開示についてであります。
米国、デンマーク、フランス、韓国等の情報公開法を見ても、政府関係法人、いわゆる政府投資機関の法人はすべて対象になっております。なぜ我が国の特殊法人はこの対象から除外されたのか、その理由を明確にしていただきたいと思います。
第三は、ただいま審議しております中央省庁等改革基本法案で課題になっております独立行政法人についてであります。この独立行政法人は、情報開示の対象とすべきだと考えますが、答弁を求めます。
次に、民主党、平和・改革、自由党、無所属の会提出、行政情報の公開に関する法律案についてお伺いいたします。
野党提出法案と政府案との最大の違いは、知る権利の保障が法律の目的に規定されているか否かであります。国民の大半は、野党案に知る権利を盛り込んだことを高く評価しております。
また、高い評価はこれだけではありません。私は、野党案による情報公開は、国を相手に訴訟を起こす場合、開示請求者の所在地に提起できるとしているほか、手数料についても、経済的に困難な人の場合、また公益上の理由が認められる場合には減免が措置されておりますことなど、国民により使いやすい制度であることを評価するものであります。
第二の相違点は、野党案は特殊法人を公開の対象にしたことであります。
現在、特殊法人の職員数は国家公務員非現業職員と同じくらいの規模になっております。特殊法人は、行政権能を持ち、行政を補完する業務が多く、特殊法人を情報公開の対象としなければ本法の趣旨は生かされないと考えるものであります。特殊法人を情報公開の対象とした趣旨について、提案者の答弁を求めます。
第三の相違点は、文書管理の公開は別法に定めるということであります。そのためには、情報管理専門官を設置し、文書管理を徹底することは当然であります。
情報公開が制度として整備されても、ありませんとか、なくしました、捨てましたでは機能が発揮できません。政府案では、行政資料の系統的分類、作成の責務、作成、保管、保存、廃棄については政令にゆだねておりますが、野党案では、別法をもって定めるとしております。そこで、お伺いしたいことは、行政資料の分類、保存、廃棄並びに情報専門官の設置は、政令ではなく、法律事項とした趣旨について提案者の答弁を求めます。
さらに、米国においては、一九九六年に情報自由法が三十年ぶりに改正され、電子情報自由法が制定されました。情報の対象は全連邦の官庁とし、請求に応じて二十日以内に提出を義務づけ、媒体も、書籍、光ディスク、磁気ディスクのほか、インターネット経由でも提供するようになっております。高度情報通信社会にあっては、情報の媒体も開示請求者の要求に応じて提供すべきだと考えますが、答弁を求めます。
次に、大蔵大臣にお伺いいたします。
このたびの大蔵省職員百十二名の処分は、一体何たるありさまでありますか。国家運営の中枢となる大蔵省は一体どうなったのか。歴代大蔵大臣は、事件を起こすたびに、二度とこのような不始末を起こさないと言い切ってきた教訓はどこに生かされているのですか。ここまで腐敗し切った大蔵省の体質を考えるとき、大蔵大臣の指揮権は地に落ちたと言わざるを得ません。
大蔵省の蔵の語源は、もともと人目を避けるという意味で、品物を人目のつかないところに置くところから蔵としたのであります。大蔵省は、まさしく人目を避けても歩けない状況にあります。今回の不祥事は、まさに国家存亡に値するものであり、大蔵大臣の責任を問うものであります。
情報はまさに権力の源であります。政府内の官僚や政治家の一部に行政情報が握られ、額に汗して努力した人よりも裏で手を回して働きかけた人が得をするという社会から、自立した個人が自己責任を持って、正々堂々とだれもが差別なく胸を張って生きる社会へ土台からつくりかえようと考えているのが我々自由党であります。
そのためには、長年にわたって行政情報を独占してきた自民党政治の官僚依存型の政策と利益誘導型政治システムを構造から改めない限り、政治家と官僚にまつわる不祥事は今後もなくなりません。この利権政治の情報開示なくして改革はありません。自民党は襟を正すべきであります。今こそ私たち自由党が目指すフリー、フェア、オープンな自己責任型社会をつくることが、腐敗、汚職をなくす第一歩であり、行政改革の始まりであると強く主張するものであります。
今や橋本内閣は末期症状であります。最近のマスコミ各紙の世論調査によれば、内閣支持率は二十数%という低迷ぶりであります。その最大の理由は、今日の経済危機の本質を全く理解していない経済政策の失政であります。国民生活を路頭に迷わす橋本内閣は即刻に退陣すべきだと強く申し上げて、私の質問を終わります。ありがとうございました。(拍手)
〔内閣総理大臣橋本龍太郎君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114205254X03319980428/31
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032・橋本龍太郎
○内閣総理大臣(橋本龍太郎君) 石垣議員にお答えをいたします。
まず、いわゆる知る権利についてお尋ねがございました。
従来、最高裁判所の判例等におきまして、いわゆる知る権利が憲法第二十一条から導き出されるものとして説明をされることがございましたが、これはおおむね国家によって侵害されてはならない自由権として言及されているものと承知をいたしております。これに対しまして、本法案では、国民に対し、行政文書の開示を請求できる積極的な権利を定めようとしておりますことから、「憲法の理念である国民主権にのっとり」とすることがふさわしいと考え、この考え方を採用いたしました。
また、国家機密法案、個人情報保護法案を情報公開法と一緒に提出すべきであるという御趣旨の御質問がありました。
しかし、これらの法制は、私は、それぞれ別途の観点から制定が論ぜられるべきものだと思います。また、本法案におきましては、国の安全、プライバシー等保護すべき情報はきちんと保護した上で公開をすることといたしております。
次に、インカメラ審理についてお尋ねがございました。
インカメラ審理につきましては、裁判の公開の原則との関係をめぐってさまざまな考え方が存在をいたします上、相手側当事者に吟味、弾劾の機会を与えない証拠によって裁判をする手続を認めることは、行政訴訟、民事訴訟制度の基本にもかかわることなどから、採用をいたしませんでした。
残余の質問につきましては、関係大臣から御答弁を申し上げます。
〔国務大臣小里貞利君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114205254X03319980428/32
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033・小里貞利
○国務大臣(小里貞利君) お答え申し上げます。
訴訟管轄についてのお尋ねでございますが、これについては、一般の行政訴訟と比べた情報公開訴訟の特色や意義、訴訟遂行上の費用等の公平な負担のあり方などにつき、さまざまな考え方があるところであります。また、地方支分部局に対する権限委任の状況等によっては、現行法によっても地方において訴訟を提起できる場合が広がることなどから、今後、情報公開法の運用の実情等を勘案し、行政訴訟一般の問題にも留意しつつ、専門的な観点から総合的に検討すべきものと考えております。
第二点でございますが、特殊法人を本法案の対象としなかった理由についてのお尋ねであります。
特殊法人の情報公開法の制定は、国民から要望が強い緊要の課題と認識いたしております。このため、本法案においては、政府に対し特殊法人の情報公開に関する法制上の措置等を講ずべき旨を明記いたしたところであります。本法案を特殊法人に直接適用することについては、特殊法人は国とは別の法人格を有するものであり、それぞれ法的性格、業務内容、国との関係がさまざまであることから、一律に適用することは不適当と考えております。また与党三党の合意により、本法制定後二年以内に所要の法案を国会に提出することとされており、政府としては、国会での御審議を踏まえ誠実に対応してまいりたいと存じております。
最後に、独立行政法人を本法案の対象とすることについてのお尋ねですが、独立行政法人については、与党三党の合意事項において、特殊法人の情報公開法の検討の際に両者の関係を整理することとされたところであります。今後の検討に当たっては、中央省庁等改革基本法案が成立した後、同法に基づき中央省庁等改革推進本部において行われることとされている独立行政法人の制度設計の具体化の検討状況も十分勘案しつつ、検討していく必要があると考えております。
〔北村哲男君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114205254X03319980428/33
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034・北村哲男
○北村哲男君 石垣議員の三点にわたる御質問にお答えいたします。
一点目の、特殊法人も公開の対象機関とした趣旨については、既に同僚の倉田、福岡両議員が回答いたしましたのと同様でありますが、まずは、特殊法人は政府の業務を分担するために特別の法律によって設立した法人であり、その多くは実質的に行政機関としての機能を持っていることです。
そしてまた、特殊法人の持つ情報には、これまでたびたび指摘されましたように、公開の必要性の高いものも多くあります。特殊法人の一つである国民生活センターというものがございます。一〇〇%の政府出資でございますが、事故情報や製品に関する苦情や問い合わせを最も多く収集している機関ですが、ここに収集された情報や処理結果は、被害者救済とかあるいは被害拡大防止のために不可欠な情報であって、これらの情報が国民に最大限公開される必要は大きいものと考えます。
二点目の、行政資料の管理基準及び情報管理専門官の設置を法律で定めた趣旨についてでございますが、現状では、行政資料の作成、分類から廃棄に至るまで、その基準は各省庁ばらばらでございます。一部の自治体で問題になっておりますように、行政資料の不法廃棄や改ざんも行われたことがございます。行政資料の管理を政令にゆだねるということは、これまでのずさんな管理をそのまま容認することにもなりかねません。したがって、政令にゆだねるのではなくて、行政の恣意を許さないためにも、法律によって情報管理の最低限のルールや責任の所在を明確に定める必要がございます。
現在の我が国で情報の管理に関して法律によって明確にすべき事項は、行政資料を作成し保存すべき義務であると言われております。すなわち、行政資料の収受、作成から系統的な分類方法、保管方法、保存期間、そして管理状況の管理、そして廃棄に至るまで、行政資料が生まれてから死ぬまでの全過程の事項についての枠組みを法律によって規定することが必要です。このことによって、適正で公平な情報の公開が担保されると考えます。また、この一貫した情報管理のシステムが適切に運用されているか否か、この管理状況を監視する情報管理専門官を置くことにより、国民に対する公開制度が適正に行われることを保障しようとするのが趣旨でございます。
最後に、アメリカの電子情報自由法に倣って、我が国でも電子情報の記録媒体も請求者の要求に応じて提供すべきであるとの御意見でございますが、まず、私どもの法律案では、これらの電子情報記録媒体、すなわち光ディスクとかあるいは磁気ディスク、磁気テープなども行政資料の範囲に含めておりまして、視聴、見る聞くを含む閲覧または複写による開示の対象となっております。
例えばフロッピーディスクの場合は、フロッピーディスクに記録されている情報を他のフロッピーディスクにコピーして、そのコピーされたフロッピーを、すなわち情報記録媒体を交付するということができるようになっております。また情報記録媒体の形で交付を受けるか、あるいは可視的な文書に打ち出したものの形で交付を受けるかは、請求者が指定できる制度になっております。
なお、アメリカの電子情報自由法は、政府に一般の情報をできる限り電子情報化することを義務づけたり、インターネットでアクセスできるようにすることによって、行政機関も公開に伴う作業量を減らすシステムをとるようになっておりますが、今後、我が国においても、文書管理に関する法律をつくる過程の中で思い切った電子情報化を検討することも重要な課題であると考えております。
以上をもって石垣議員の御質問に対する答弁とさせていただきます。(拍手)
〔国務大臣松永光君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114205254X03319980428/34
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035・松永光
○国務大臣(松永光君) 石垣議員にお答えいたします。
私の責任についてのお尋ねですが、このたび、大蔵省において金融関連部局に在籍した職員を中心に調査を行った結果、多数の職員について民間金融機関等との間に行き過ぎた関係があったことが判明しましたので、厳正な処分を行ったところであります。まことに遺憾であり、深くおわびを申し上げます。今回の不祥事について深く反省するとともに、綱紀の厳正な保持を図り、信頼回復に向けて職務に邁進する決意であります。
大蔵省職員一同、これを契機に、綱紀の厳正な確保を図るとともに、新しい時代の要請を踏まえて、真に国民の負託にこたえられるよう全力を尽くしていく決意であることを申し添えます。(拍手)
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〔議長退席、副議長着席〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114205254X03319980428/35
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036・渡部恒三
○副議長(渡部恒三君) 瀬古由起子君。
〔瀬古由起子君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114205254X03319980428/36
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037・瀬古由起子
○瀬古由起子君 私は、日本共産党を代表して、ただいま議題となりました政府提出、行政機関の保有する情報の公開に関する法律案並びに議員提出、行政情報の公開に関する法律案について、総理並びに提出者に質問いたします。
公正で民主的な行政、透明な行政運営を実現するためには、行政情報を広く国民に公開することが求められております。既に情報公開法を制定している欧米諸国では、行政というのはほっておけば腐敗する、絶えず国民の目にさらして初めて腐敗が防止できるということからつくられたと言われております。とりわけ行政の腐敗と不祥事、政官財の癒着の根絶が国民的な要求になっている現在、真に国民に役立つ情報公開法をつくるかどうかは、政官財の癒着構造を真剣に断ち切る上での重要な試金石の一つです。
日本共産党は、ロッキード事件を受けて一九八一年に情報公開法案を国会に提出し、その実現に一貫して努力をしてまいりました。国民の監視のもとで初めて公正で透明な行政が実現できるし、そのために情報公開は不可欠の課題であるとの立場から、以下、政府案に対して具体的に質問をいたします。
第一に、情報公開法と国民の知る権利についてです。
個人の基本的な権利として必要な行政情報を的確に入手できるということは、国民主権に基づく国民の基本的な権利です。ところが、政府案では、知る権利を明記しないばかりか、要綱案にはあった国民の「監視・参加」の目的までも削除してしまい、情報公開制度が国民の権利であることをさらに薄めてしまいました。国民こそが主権者であり、行政情報は国民の共有財産であるとの根本的な立場に立って、国民の情報公開請求権の性格を明確にするために、本法案に知る権利を明記すべきではないでしょうか。答弁を求めます。
第二に、汚職、腐敗と乱脈経営が次々と明るみに出され、国民の監視が今こそ必要になっている特殊法人の情報公開が本法案では対象から外されていることです。
特殊法人は国が行うべき仕事を効率化の名のもとにつくられ、多額の国費も投入されており、その情報は国民主権に基づき公開されなければならないことは当然です。アメリカ、フランスなどでも政府関係法人は対象になっているんです。動燃の情報隠しやうそ報告、道路公団の汚職事件などが頻発している今、天下りの全面規制、情報の徹底公開こそ国民が求める行政改革の真の方向でもあります。特殊法人の情報公開制度をいつまでにどのような手順でつくるつもりか、答弁を求めます。
第三に、政府が保有する情報は国民に最大限に公開されるようにすることが、情報公開法制定の本来の目的です。公開請求に対する不開示は、国民の権利を制限するものとして例外的、限定的に扱われるべきです。ところが、政府案では、不開示情報が行政機関の裁量によって不当に広げられる危険性があります。
まず、個人情報の取り扱いについてです。
個人情報の不開示は、開示されることでプライバシーが不当に侵害される場合に限定されるべきですが、政府案では不開示の範囲が不当に広げられています。とりわけ、公務員の職務遂行にかかわる情報公開請求に対して開示されることになっているのは職名と職務内容だけで、氏名が含まれておりません。これでは、今日重大な社会問題となっている官官接待を根絶するための情報公開も制約を受けることになります。公務員の情報公開については、家族や住居などプライバシーにかかわるもの以外は公開するようにすべきです。答弁を求めます。
次に、企業情報の公開についてです。
住専、山一、拓銀など一連の金融不祥事で明らかなように、その原因究明と責任を明確にする上でも、当該企業の情報と資料を広く国民に開示することは極めて重要な課題です。ところが、政府案では、企業の営業上の利益を守るための非開示規定だけにとどまらず、公開しないことを前提に資料提供を受ける非公開特約制度まで導入しています。これまで政府は、大蔵省の金融行政に見られるように、行政と業界との癒着の構造を明らかにするための資料を出し渋ってきましたが、非公開特約制度が導入されれば企業の情報公開は一層困難になります。
しかも、要綱案では「公にしないとの約束」のあったものは不開示としていたものを、本法案では「公にしないとの条件」があるものは不開示にできることにしてしまいました。条件ということになれば、企業が非公開の要求を一方的につければよいわけであり、情報公開の大きな後退になります。この条文は削除すべきではないでしょうか。答弁を願います。
次に、不開示の理由に「国の安全が害されるおそれ」など、いわゆる防衛、外交、捜査情報については、すべて行政によるおそれという主観的な判断で公開を阻むことができるようになっています。しかも、そのおそれは、「行政機関の長が認めることにつき相当の理由」があればよいことにしてしまい、行政の第一次判断が優先されて国民の情報公開請求が不当に制約され、行政機関の裁量を大きく拡大しております。なぜ防衛、外交、捜査情報だけを特別に行政の判断を優先させるのか、答弁を願います。
アメリカ本国やヨーロッパ諸国では公表されている米軍の超低空飛行訓練の訓練区域を、政府は、「国の安全が害されるおそれ」を口実にあくまで公開しないつもりなのでしょうか。
さらに、情報の存否すら答えない応答拒否の権利を行政機関の長に何の限定もなく認めていますが、これは乱用の危険が極めて大きい規定であり、削除すべきです。
また、政策形成過程の情報を非開示としていることも問題です。今、中央省庁等改革基本法案の審議中ですが、法案の大前提となっている行革会議の議事録は、公開要求にもかかわらず、議事概要が提出されたのみで、いまだに実現しておりません。この条文を理由に、法案や政府の基本政策がその形成過程で行政部内でどのように審議されたのか、今後も明らかにされないことになってしまいます。今なお、墨で黒塗りにされた薬害エイズ資料にも見られるように、このような不開示条項は削除すべきではないでしょうか。
なお、情報公開を言うなら、今試されているのは、昨日発表された大蔵省の接待不祥事件調査報告の問題についてです。今回の調査報告では、接待が何の目的で行われたのか、その結果大蔵行政がどのようにゆがめられたのかは一切明らかにされておりません。内部調査の全容公表を速やかに実施することを求めます。(拍手)
第四に、手数料についてです。
開示請求に係る手数料と開示の実施に係る手数料を規定し、文書の検索や可否判断に係る手数料も徴収するとしています。ところが、この情報公開法を先取りしたという動力炉・核燃料開発事業団、いわゆる動燃では情報公開指針を制定していますが、文書の検索や可否判断に係る手数料を公開手数料として、コピー代金とは別に一枚当たり二百円を徴収しています。ある市民団体が動燃に対して情報公開を求めたところ、資料内容検討費と称して、五十九万七千円の手数料の支払いを要求されるということが起きているのです。
そもそも、文書の検索や可否判断などは行政事務そのものです。開示請求者に不当な負担をさせるべきではありません。現に、地方自治体の条例で開示請求に係る手数料を徴収しているところはほとんどありません。利用しやすい金額としなければならないことは、政府案のもとになりました「要綱案の考え方」でさえ指摘されていたのです。開示請求に係る手数料は、国民の利用の障害になるものであり、徴収すべきではないと考えます。答弁を求めます。
第五に、本法案では、裁判管轄の規定がないため、不開示とされた請求者は裁判を東京でしか起こすことができないようになっています。情報公開法が真に国民のために役立つようになるためには、行政が不開示にした情報を裁判で公開を求めることになります。しかし、東京でしか裁判が起こせないということになると、地方在住者にとっては交通費の負担だけでも大変な金額になり、事実上、裁判を断念せざるを得ない事態も起こり得ます。情報公開の実効性を本当に高めるためには、行政による恣意的な不開示決定に対して、司法によるチェックを受けやすくすることが極めて重要です。請求者が居住地で裁判を受けられるよう是正すべきではないでしょうか。
最後に、議員提出の行政情報の公開に関する法律案について質問いたします。
日本共産党は、既に昨年十月に情報公開法案を再提出しております。その趣旨は、行政情報の公開は国民の知る権利にその基礎を置くことを明記し、不開示とする情報の範囲を厳密に規定するなどの措置によって、国民が利用しやすい、真に役に立つ情報公開制度の創設を目指したものです。議員提出の情報公開法案も、基本的には同様の内容であると認識しております。
今日求められているものは、行政と官僚による情報隠しや情報操作の根絶を目指し、国民の知る権利にこたえる内容の情報公開法をつくることです。まさに立法府、国会の役割が期待されているのではないでしょうか。情報公開法の本来の趣旨に照らしても、超党派の協力によって、よりよい情報公開法をつくることが求められていると考えるものですが、提案者の所見を求めて、私の質問を終わります。(拍手)
〔内閣総理大臣橋本龍太郎君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114205254X03319980428/37
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038・橋本龍太郎
○内閣総理大臣(橋本龍太郎君) 瀬古議員にお答えを申し上げます。
まず、国民の知る権利の明記についてお尋ねがございました。
行政改革委員会の意見におきましては、いわゆる知る権利という概念につきましては、憲法学上さまざまな理解の仕方があることから、知る権利という言葉は用いないとされたものであり、政府としては、この意見に沿って法案を立案いたしたところであります。
次に、特殊法人の情報公開についてお尋ねがありました。
特殊法人の情報公開法の制定は、国民から要望の強い喫緊の課題であり、本法案では、政府に対し法制上の措置を講ずべき旨を明記しております。また与党三党の合意により、本法制定後二年以内に所要の法案を国会に提出することを附則に明記することとされており、国会での御審議を踏まえ誠実に対応してまいります。
次に、個人情報の公開に関連し、公務員の氏名の公開というお尋ねがありました。
公務員の氏名は、公務員個人としての私生活においても用いられており、これを開示すると、私生活などに影響を及ぼすことがあり得ます。そこで、公務員の職名と職務遂行の内容は個人情報として不開示とせず、また氏名については、慣行として公にされている場合等は開示することといたしました。
非公開特約の企業情報の取り扱いについてもお尋ねがありました。
法人等から非公開を前提として行政機関に提供されるという情報の流通の形態や、提供者の非公開扱いに対する期待と信頼は保護に値するものであり、このような規定は必要と考えます。なお、この非公開の約束は合理的であることを要することとし、乱用を招かないよう配慮しております。
次に、防衛、外交、捜査関係情報についてお尋ねをいただきました。
国家の安全、公共の安全と秩序の維持などに係る情報については、その性質上、開示、不開示の判断が高度の政策的判断を伴ったり、専門的、技術的判断を要することなどから、司法審査などの場において、行政機関の長の第一次判断権が尊重されるとしたところであります。
次に、米軍の超低空飛行訓練についてお尋ねがありましたが、従来から申し上げておりますとおり、在日米軍の飛行訓練の詳細は米軍の運用にかかわる問題であり承知しておらず、したがいまして、情報公開法の対象となり得る文書がございません。
それから、応答拒否処分の規定についてもお尋ねがございました。
開示、不開示の決定判断は行政処分として行われるものであり、行政機関の長が第一次的に判断することとなります。このような存否を明らかにせず請求を拒否する処分も、不服があれば、当然事後的に情報公開審査会や裁判所の評価、判断に服することになり、行政機関による乱用を許すことにはならないと考えております。
それから、審議、検討等に関する情報の規定についてもお尋ねがありました。
この規定は、政府がその諸活動を説明する責務を全うする観点から、事項的に意思決定前の情報をすべて不開示とするのではなく、適正な意見の交換を不当に損なうおそれがある情報等に限り不開示とするとの観点に立って立案を行っているものであり、こうした規定は必要であると考えております。
大蔵省不祥事に関する調査結果の全容を報告すべきではないかというお尋ねもありました。
調査結果については、行き過ぎがなかったか調べ処分を行うという今回の調査の目的に沿い、倫理規程制定時期との関係、職務上の関係者との関係、会食等の反復継続度合いを踏まえ、全体の姿がわかるような形で大蔵省において発表したと承知をしております。
次に、手数料についてのお尋ねがありました。
開示請求権制度の運用には相当の費用を要することから、制度の利用者にその公平な負担をしていただくことは必要であると考えます。手数料の金額については、実費の範囲内において利用しやすい金額となるよう政令で規定することとしております。
最後に、訴訟管轄についての御指摘がありました。
この問題については、一般の行政訴訟と比べた情報公開訴訟の特色と意義、訴訟遂行上の費用負担のあり方等につきさまざまな考え方があります。したがって、訴訟制度全般との関連に留意し、実情を把握しつつ検討すべきものと考えております。(拍手)
〔倉田栄喜君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114205254X03319980428/38
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039・倉田栄喜
○倉田栄喜君 瀬古議員からは、今後のよりよい情報公開法制定のために各会派で協力すべきではないかという御質問をいただきました。
日本共産党からも情報公開法が既に提出されておりますけれども、一部を除けば、私たちの案と同じ方向であると認識いたしております。したがいまして、本当に国民本位の、利用者のためのできるだけよい法律ができますよう、各会派で協力できればと思います。
何より、この法律は行政の情報開示を求める法律であって、本来的に政府案という閣法ではなく、議員立法として、衆法という形で成立させるべきものではないでしょうか。行政みずからが行政情報についての法律をつくることは、よく指摘されますように、みずからの身をみずから料理することであって、見事な料理ができると思う国民は少ないのではないでしょうか。まないたの上のコイがみずから包丁を握ることによる弊害を許してはならないと思います。
その意味で、党派を超えて、各会派共同していい法律にする、国会としての責務があると思います。このことを特に与党の議員の皆様方にお願いをいたしまして、お答えとしたいと思います。(拍手)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114205254X03319980428/39
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040・渡部恒三
○副議長(渡部恒三君) 辻元清美君。
〔辻元清美君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114205254X03319980428/40
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041・辻元清美
○辻元清美君 私は、社会民主党・市民連合、自由民主党及び新党さきがけを代表しまして、行政機関の保有する情報の公開に関する法律案及び行政機関の保有する情報の公開に関する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案、いわゆる情報公開法について質問いたします。
まず初めに、十七年前、一九八一年に情報公開法を求める市民運動が発表した情報公開権利宣言の一説を紹介したいと思います。「国民の目と耳が覆われ、基本的な国政情報から隔離される時、いかなる惨禍に見舞われるかは、過去の戦争をとおして私たちが痛切に体験したところである。 すでに周知のように、公害・薬害等により国民の生命、健康、安全は脅かされ傷つけられてきたが、政府省庁による情報の不当な操作や秘匿がなければ、それらの原因は速やかに究明され被害も最小限にくいとめられていたはずである。さらに、ロッキード事件をはじめ頻発する高官汚職や公費の乱費も、密室政治を原因とするものであり、いまなお真相は濃い霧のなかにある。これが国民を主権者とする国政と呼べる状況であろうか。」これは十七年前に書かれたものです。しかし、果たして現在、この状況がよくなっていると私たちが胸を張って言えるでしょうか。国民を真の主権者とする国政と呼べる状況をつくり出すためには、情報公開法制定は私たちにとって急務であると言わざるを得ません。
情報公開法制定は、村山政権のときに道筋がはっきりとつけられ、その結果、政府原案が今国会に提出の運びとなった経過を踏まえ、十分審議を尽くし、早期制定を目指すという立場で、政府原案について橋本総理に質問させていただきます。
まず、法の目的に、「行政機関の保有する情報の一層の公開を図り、もって政府の有するその諸活動を国民に説明する責務が全うされるようにする」として、説明責任、すなわちアカウンタビリティーの観点が貫かれています。行政の責任を明らかにしているわけですが、他方、市民の一人一人の知る権利が明記されていないのはなぜでしょうか。
また、行政改革委員会が一九九六年十二月に出した意見によると、「国民による行政の監視・参加の充実に資することを目的とする」となっていましたが、今回の法案では監視・参加という言葉が抜けていますが、なぜでしょうか。
次に、対象となる機関についてお伺いいたします。
たび重なる不祥事が続く特殊法人が今回の情報公開法の対象から除かれているのは指摘のとおりであります。アメリカ、デンマーク、フランス、オランダでは政府関係法人が、韓国でも政府が納入資本金の五割以上を出資した銀行、公社などが対象となっています。イギリスの白書でも、エージェンシーなど政府関係法人を対象とすることが提案されています。与党三党間で協議の上、国会審議を通じ、本法案制定後二年以内に所要の法案を国会提出する旨附則に明記することを合意したところでありますけれども、政府としての御見解はいかがでしょうか。
さて、情報公開というからには、あらゆる情報が原則として公開されなければなりません。法案には、不開示情報や、あるともないとも言えないという存否応答拒否の規定があります。外交や防衛にかかわる情報を初め、原則公開を徹底する必要があります。また、結果だけを知らせるのではなく、決定に至るプロセスを国民が知ることは、よりよい行政にするために重要なことだと思われます。そのためには意思形成過程情報の公開の徹底も必要だと思います。不開示情報については、むやみにその範囲を広げることのないような運用が必要だとも考えられます。また、法の運用に当たっては、行政機関が恣意的に判断し運用することのないよう、適正な運用が図られるべきだと考えます。さらに、適用除外となる法律について、情報公開法の趣旨に基づき、改正も含めた所要の措置が必要であると考えますが、総理の御見解をお伺いいたします。
総理、せっかく制度をつくっても、知りたい情報をいつどこにいても簡単に入手できるようにしなければ、行政が説明責任を果たしたとは言えません。そのため、情報を手に入れるために膨大な費用がかかるようでは問題です。手数料は、制度の利用者が利用しやすい額の実費の範囲内とすべきと考えますが、総理の御見解をお伺いいたします。
次に、市民が利用しやすい制度、運営を確保する観点から幾つか御質問させていただきます。
まず、不服審査会の果たす役割は非常に重要だと考えられます。なぜなら、こういう情報が知りたい、それは不開示情報で出せません、いやそれはおかしい、何で隠すんやという事態は必ず起こるからです。現実に、地方自治体を相手取った訴訟が起こされています。そのため、不服審査会の審査に当たっては、委員が地方に出向いて意見を聞く仕組みを活用すべきですし、不服審査会での審理や訴訟においては、インカメラ審理、ボーン・インデックスの作成を義務づけるなどの措置をとるべきです。また、不服審査会及び訴訟において、行政機関などは不開示理由の立証責任を負うべきだと考えますが、総理はいかがでしょうか。
次に、開示請求した情報が不開示処分となった場合、請求者にはその処分に対して裁判によって救済が担保されなければならないと思います。政府案には訴訟管轄について特に規定されていませんが、その処分の取り消しを求める訴訟の多くは、東京地裁、高裁で行われるのではないでしょうか。とすると、東京以外の地方在住者にとっては、取り消しを求める権利救済が実際上狭められることにはならないでしょうか。
例えば、埼玉県浦和市に住んでいる人と、総理のふるさと岡山県に住む人がそれぞれ訴訟を起こしたとしましょう。その場合の東京までの往復交通費を、仮に一審十回、二審五回として、原告一名、代理人二名として算出してみました。すると、浦和市からの場合は四万五千円ですけれども、岡山からですと約百六十万円になってしまいます。これでは、地方在住者の知る権利や裁判を受ける権利を事実上制限するものになってしまうと思いませんか。原告の居住地でも裁判できることについてどのようにお考えでしょうか、総理の御見解をお伺いしたいと思います。
また、アメリカも韓国も電子メールによる情報公開請求を認めるなど、インターネット時代に対応した情報公開法になっております。日本もその方向で進めるべきであると考えますが、いかがでしょうか。
最後に、先ほど紹介しました情報公開権利宣言の締めくくりの部分を紹介して、私の質問を終わります。
「アメリカ合衆国憲法制定者の一人ジェームス・マディソンは、民主主義保障の条件として、政府の行為に参加する自由を指摘するにあたり、「人民が情報を持たず、またそれを獲得する手段を持たぬ人民の政治は、道化芝居の序幕か悲劇の序幕であり、あるいはその双方以外の何ものでもない」と述べた。また、一九七九年わが国も批准した国際人権規約は、表現の自由の権利は「国境とのかかわりなく、あらゆる種類の情報及び考えを求め、受け及び伝える自由を含む」と規定している。 私たちは、知る権利を具体的に保障する制度が人権と民主主義に不可欠であることを確信し、すべての公的情報を自由に請求し利用する権利を持つことをここに厳粛に宣言する。」
以上で、私の代表質問を終わります。(拍手)
〔内閣総理大臣橋本龍太郎君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114205254X03319980428/41
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042・橋本龍太郎
○内閣総理大臣(橋本龍太郎君) 辻元議員にお答えを申し上げます。
まず、国民の知る権利の明記についてお尋ねがありました。
行政改革委員会の意見におきましては、いわゆる知る権利という概念について、憲法学上さまざまな理解の仕方があることなどから、知る権利という言葉は用いないとされたものであり、政府としては、この意見に沿って法案を立案したところであります。
次に、いわゆる行政の監視・参加の文言を用いていないという点についてお尋ねがありました。
行政改革委員会の意見の趣旨を的確に表現するために、実際に法律に用いられている監視・参加の使い方や意味を調べた上で、「国民の的確な理解と批判の下にある公正で民主的な行政の推進に資する」としたものであります。
次に、特殊法人の情報公開についてお尋ねがありました。
特殊法人につきましては、それぞれ法的性格、業務内容などがさまざまであることから、本法案を直接適用せず、政府に対し法制上の措置等を講ずべきことを明らかにしております。また与党三党の合意により、本法制定後二年以内に所要の法律案を国会に提出することを附則に明記することとされております。国会での御審議を踏まえ誠実に対応してまいります。
また、行政文書の原則公開の徹底についてもお尋ねがありました。
法案におきましては、審議、検討などに支障がある情報など、一定の合理的な理由に基づき不開示とする必要がある情報が記録された行政文書以外の行政文書について行政機関の長は開示しなければならないとしており、不開示とされる場合は限定されたものになっていると考えています。また、適用除外文書は登記簿など独自の体系的な開示制度として確立しているものに限定し、整備法案により所要の改正措置を講じてまいります。
それから、手数料についての御指摘がありました。
開示請求権制度の運用には相当の費用を要することから、制度の利用者にその公平な負担をしていただくことが必要だと考えますが、手数料の金額については、実費の範囲内において利用しやすい金額となるよう政令で規定することといたしております。
次に、不服審査会の制度等についてのお尋ねがありました。
審査会については、審査会の判断でインカメラ審理等を求めるなど、適切な審理が行われる制度としております。訴訟制度上のインカメラ等の課題につきましては、与党三党の合意を踏まえ、実情を把握しつつ検討を行うこととしております。また立証責任については、情報公開に関する裁判例では、一般的に被告行政庁が負うこととされております。
それから、訴訟管轄について御指摘がありました。
この問題につきましては、一般の行政訴訟と比べた情報公開訴訟の特色と意義、訴訟遂行上の費用負担のあり方等につきさまざまな考え方があります。したがって、訴訟制度全般との関連に留意し、実情を把握しつつ検討すべきものだと考えております。
最後に、インターネット時代に対応した情報公開のお尋ねがありました。
この法案では、開示請求の対象にいわゆる電子情報も含めたほか、電子的な方法による開示についても検討していくことといたしております。請求手続については、法律上の権利義務関係に係るものであることから書面の提出といたしましたが、電子申請も将来的な課題と考えております。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114205254X03319980428/42
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043・渡部恒三
○副議長(渡部恒三君) これにて質疑は終了いたしました。
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114205254X03319980428/43
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044・渡部恒三
○副議長(渡部恒三君) 本日は、これにて散会いたします。
午後三時三十六分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114205254X03319980428/44
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