1. 会議録本文
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000・会議録情報
平成十年二月十六日(月曜日)
午前十時一分開議
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○議事日程 第七号
平成十年二月十六日
午前十時開議
第一 預金保険法の一部を改正する法律案(内
閣提出、衆議院送付)
第二 金融機能の安定化のための緊急措置に関
する法律案(内閣提出、衆議院送付)
第三 国務大臣の演説に関する件
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○本日の会議に付した案件
一、日程第一より第三まで
一、国家公務員等の任命に関する件
─────・─────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114215254X00719980216/0
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001・斎藤十朗
○議長(斎藤十朗君) これより会議を開きます。
日程第一 預金保険法の一部を改正する法律案
日程第二 金融機能の安定化のための緊急措置に関する法律案
(いずれも内閣提出、衆議院送付)
以上両案を一括して議題といたします。
まず、委員長の報告を求めます。財政・金融委員長石川弘君。
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〔審査報告書及び議案は本号末尾に掲載〕
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〔石川弘君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114215254X00719980216/1
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002・石川弘
○石川弘君 ただいま議題となりました両法律案につきまして、委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。
まず、預金保険法の一部を改正する法律案は、最近における金融環境の変化に対応し、破綻金融機関の処理を図るため、預金保険機構の業務の円滑な運営を確保するための基金の設置、預金保険機構による借り入れ等に対する政府保証の拡充、預金保険機構に対する債券発行権限の付与等を行うとともに、協定銀行が信用協同組合以外の金融機関についても整理回収業務を行えることとする等所要の措置を講じようとするものであります。
次に、金融機能の安定化のための緊急措置に関する法律案は、金融機関等の自己資本の充実を図ることにより、我が国における金融の機能の安定化を図るため、緊急の特例措置として預金保険機構に、金融機関が発行する優先株式の引き受け等を行うことを協定銀行に委託し、必要となる財政上の支援を行う業務を行わせるとともに、預金保険機構がその業務を実施するために必要な国の財政上の措置等を講じようとするものであります。
委員会におきましては、両法律案を一括して議題とし、内閣総理大臣の出席を求めるとともに、参考人からの意見を聴取し、公的資金投入のあり方、金融機関の貸し渋りの現状と解消策、金融機関の経営合理化問題等各般にわたる熱心な質疑が行われましたが、その詳細は会議録に譲ります。
質疑を終了し、討論に入りましたところ、民友連を代表して今泉昭委員より両法律案に反対、自由民主党、社会民主党・護憲連合を代表して岡利定理事より両法律案に賛成、公明を代表して牛嶋正委員より預金保険法改正案に賛成、金融機能安定化緊急措置法案に反対、日本共産党を代表して笠井亮委員より両法律案に反対、自由党を代表して星野朋市委員より預金保険法改正案に賛成、金融機能安定化緊急措置法案に反対する旨の意見がそれぞれ述べられました。
討論を終了し、順次採決の結果、両法律案はいずれも多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
以上、御報告申し上げます。(拍手)
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114215254X00719980216/2
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003・斎藤十朗
○議長(斎藤十朗君) 両案に対し、討論の通告がございます。順次発言を許します。円より子君。
〔円より子君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114215254X00719980216/3
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004・円より子
○円より子君 民政党の円より子です。
私は、民友連を代表し、ただいま議題となりました預金保険法の一部を改正する法律案及び金融機能の安定化のための緊急措置に関する法律案につきまして、法案に反対の立場から討論を行います。
去る一月二十六日、大蔵省の現職金融検査官二名が複数の大手銀行から過剰接待を受け、東京地検特捜部に逮捕されたことは、国民に大きなショックを与え、大蔵省に対する不信はさらに増大しました。このような大蔵行政と金融機関の癒着、腐敗を断ち切ることなく、三十兆円という巨額な公的資金を導入することについて国民の理解を得ることができるのでしょうか。二度とこのような汚職事件を起こさせないよう腐敗のシステムを徹底糾明し、関係者の責任を明確にしなければ、金融システムの健全化、安定化など図れないのではないか。そのことをこの際強く指摘しておきたいと思います。
次に、両法律案に対する反対理由を順次申し上げます。
第一に、公的資金による優先株の引き受けについてです。
法案では、金融機能の安定化のための緊急措置として、公的資金による優先株の引き受けにより金融機関の自己資本の増強を図ることとしております。これらの措置は、市場原理に基づくビッグバンの理念に逆行する金融機関の救済措置であり、問題の先送りではありませんか。
金融機関の自己資本増強は、金融機関みずからが市場を通じて行うべきではないでしょうか。預金者保護に万全を期しつつ、早期是正措置の厳格な実施により、二〇〇〇年度末までに不良金融機関の淘汰と整理を大胆かつ集中的に実行することが必要であると考えます。
第二に、預金保険機構へ公的資金を投入する前提となる責任追及についてであります。
政府の公的資金投入策は、放漫経営を続けた金融機関経営者や、裁量行政で問題を隠ぺい、先送りし続けた大蔵省の行政責任を問うことなく、安易に国民に責任を転嫁するものと言わざるを得ません。
金融機関の情報開示が不十分な現在では、金融機関経営者や行政の責任追及をまずしっかりとし、預金者保護に限定して公的資金の投入を可能とすべきであり、金融機関自体の救済のためには一切用いないことが金融機関の倫理観の欠如、すなわちモラルハザードを防ぐ唯一の手段であります。
政府案による整理回収銀行の機能強化は不十分であり、関係金融機関を初めとする関与者の責任追及のためには、債権回収機関に罰則つきの告発義務を付与することが不可欠であります。
第三に、預金保険料の負担についてです。
米国は金融機関の破綻が相次いだ九〇年代前半には〇・二五%近くにまで預金保険料の水準を上げており、我が国の預金保険料率〇・〇八四%はその三分の一程度にすぎず、これ以上負担ができないほどの高い水準ではありません。金融機関はいつもこれがぎりぎりだと言いつつ、住専処理の決着段階でも強い要請を受けて九百億円を超える追加負担を行っております。
預金保険の効率的運営に金融機関自身が責任を持つためにも、預金保険機構の損失について金融機関に負担を求めるのは当然ではないでしょうか。この点について、政府案は損失を公的資金、すなわち納税者のみが負担することとなっており、まことに不適切であります。
また、現在、預金者保護という本来の預金保険法の趣旨から、金融債、外貨預金等は保険対象商品ではなく、保険料を支払っておりません。これらの商品についても、政府は、二〇〇〇年度末までの特例期間中、受け皿金融機関がある限り全額保護されるという形に昨年秋から急に解釈を変えております。公的資金の導入が提案されるほど逼迫した預金保険機構の財政にかんがみ、これら金融債、外貨預金の扱いを法的に明確化する必要があるのではないでしょうか。
金融機関の窓口においても、取扱商品が預金保険の本来の対象商品であるかどうかの表示すらありません。これで特例期間終了後には急に預金者に自己責任を問える環境と言えるのでしょうか。
第四に、預金保険機構の資金贈与の透明性の向上についてであります。
預金保険機構には、政府から五十一億五千万円、日銀から一億五千万円、民間金融機関から一億五千五百万円が出資されております。また、運営委員十二人のうち八名が民間金融機関の代表、残り四名が大蔵省、日銀、検察、警察のOBとなっております。
預金保険機構からの資金贈与が一兆円を超えた木津信用組合の場合には、子会社が販売した抵当証券の買い戻し額が含まれていましたし、阪和銀行の退職金は預金保険機構の負担で総額八十五億円も加算されました。こうしたことが、裁判所の和解を盾に公的資金を負担する納税者への説明が全くないまま行われております。これでは、破綻処理に当たって最もコストの低い方法を選択すべきという米国で既に確立されている最小費用原則とはほど遠いものと言わざるを得ません。
この際、新設される金融危機管理審査委員会だけでなく、破綻金融機関の贈与額の確定等、重要な決定を行っている預金保険機構の運営委員会もその透明性を高める必要があるのではないでしょうか。このため、少なくとも運営委員を国会同意人事とすること、会議録を速やかに公表することが不可欠であります。
第五に、金融と財政の分離を徹底することの必要性であります。
現在の金融不安の最大の原因は、従来の大蔵省による裁量型、密室行政への不信であり、金融行政への深刻な反省が必要であります。金融監督庁設立後も金融行政の企画立案権限を大蔵省が持つのではなく、金融と財政の分離を徹底するために独立した金融庁の設立が必要であります。
二信組事件、住専問題の例を見るまでもなく、数々の疑惑を指摘されながら反省のない大蔵省の存在そのものが今回の大蔵不祥事の背景にあります。国税庁の持つ徴税権を初めとした諸権限の集中、裁量的で身内や業界に甘い権限行使を断ち切らない限り、民主主義国家としての日本の経済の再生はあり得ません。
以上述べた諸点からも、政府の金融二法案は預金者保護と信用秩序の維持をにしきの御旗にして、実態は金融機関に対する裁量的な保護策を維持しようとするものにほかなりません。
そもそも橋本内閣が無理な財政再建に固執した結果が現下の経済不況と金融不安をさらに悪化させたのであり、財政赤字は減るどころかふえてしまいました。このことを潔く国民に謝罪し、責任をとることこそが政治家に課せられたものではないでしょうか。私は、橋本内閣は即刻退陣し、総選挙で国民に信を問うべきであることを強く要望して、民友連の反対討論を終わります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114215254X00719980216/4
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005・斎藤十朗
○議長(斎藤十朗君) 野村五男君。
〔野村五男君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114215254X00719980216/5
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006・野村五男
○野村五男君 私は、自由民主党、社会民主党・護憲連合、新党さきがけを代表いたしまして、ただいま議題となりました預金保険法の一部を改正する法律案及び金融機能の安定化のための緊急措置に関する法律案について、賛成の立場から討論を行います。
両法案は、我が国の金融環境の変化に対応して、破綻金融機関について的確な処理を行うとともに、金融機関の自己資本充実のための措置を講ずることにより、預金者の保護と信用秩序の維持を図ることを目的とするものであります。
最近の金融機関の破綻の経過を見ると、金融市場における債務不履行に対する強い懸念から金融機関に対する信用供与を収縮させ、もって資金調達が困難となった結果、破綻に至ったものであります。また、本年四月からの早期是正措置の実施に備え、主として中小企業に対する貸し出しの抑制、さらに貸出金の圧縮を進めており、その結果、貸し渋りと言われる現象が発生し、国民の間には雇用や経済の先行きに対する不安が急速に拡大しています。
したがって、経済・金融システムに関する内外の不信感を可能な限り払拭し、我が国の金融システムの安定を早期に図ることは、立法府として最も重要な責務になっているのであります。
以下、両案に対する賛成の理由を申し上げます。
以上述べた状況のもと、金融機関の破綻及び金融危機に対し、円滑かつ迅速に対処するため預金保険機構に総額十兆円の国債を発行するとともに、借入金等に対し、政府保証を付すこととなっております。
そこで、第一には、この措置により、預金保険機構の財務基盤を確固たるものとし、金融システムと預金者を保護する体制が強化されたことであります。
第二には、破綻処理の受け皿となる協定銀行の機能拡充に加え、不良債権の回収体制を強化する措置として預金保険機構に罰則つきの立入調査権を付与したことは公平かつ適正な措置であります。
賛成の理由の第三は、金融危機の際の対応として、金融機関の自己資本を充実させる制度を設けた点であります。
これは、預金保険機構に金融機関の優先株式等を引き受ける権能を付与するものでありますが、この措置の導入により、信用秩序の維持のみならず、金融機関の業務地域及び業務分野の経済活動を円滑化せしめるものと期待されます。
また、その措置の内容は、安易な自己資本の充実につながらぬよう経営の健全性確保のための計画を策定する義務を課すという、まことに厳格な規定となっております。
さらに、優先株式の引き受けに係る審査に関しても、民間の有識者を含めた公式かつ厳格な審査機関の設置や、全員一致による議決、審査機関の議事録の公表及び閣議による了承も要件として法律に盛り込まれており、破綻金融機関の救済や経営規律の低下を引き起こせしめぬよう、最大限配慮されたものであります。
以上、賛成の理由を申し述べましたが、最後に、政府におかれましては、預金保険の発動及び優先株式等の引き受け等に際し、金融機関の経営規律の低下の防止に考慮しながら、適時適切に預金者保護を図ること及び金融システムの健全化を図るための資金注入に当たり透明性のある基準を設けること、さらに破綻金融機関の経営者の責任追及や経営合理化の実効性の確保に最大限の配慮を行うことを強く要望いたしまして、私の討論を終わります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114215254X00719980216/6
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007・斎藤十朗
○議長(斎藤十朗君) 益田洋介君。
〔益田洋介君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114215254X00719980216/7
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008・益田洋介
○益田洋介君 私は、公明を代表し、ただいま議題となりました法律案に反対する立場から討論を行うものでございます。
まず、三十兆円という巨額の公的資金の導入をせざるを得なくなった古今東西に類例を見ない重大な失政に対する橋本内閣の行政責任が明確にされていないという事実でございます。今回の金融不安の直接的な原因は、昨年、政府が景気判断を誤り、体力の弱っている我が国経済に消費税率の二%アップ、特別減税の打ち切りに加え、医療費の値上げなど実にGDPの約二%に相当する九兆円に及ぶ実質増税を強行したために景気が著しく悪化し、株価が暴落、政府が金融機関の自己資本比率が著しく低下してしまうに任せてしまったからにほかならないわけでございます。
もし、この政府による九兆円に及ぶ実質増税という愚挙がなされなかったなら、景気はこれほど悪化するはずはなかったわけです。日産生命、北海道拓殖銀行に続いて山一証券と大型倒産が続発するなどの金融不安もこれほどは深刻化しなかったわけでございます。当然、三十兆円に上る公的資金の投入の必要性も生じなかったでしょうし、製造業など中小企業を苦しめている金融機関による貸し渋りもこれほど深刻にはならなかった。こうして二年余に及ぶ政府の浅薄な財政均衡路線の強行により、九兆円の増税に続いて今回はその三・五倍の三十兆円がひとり国民の負担増として重くのしかかってきているわけでございます。
三十兆円といえば、我が国の社会保障費の約二倍、平成九年度国家予算の一般歳出の実に七割を占める額でございます。政府の政策判断の失敗の結果として、これほど巨額な公的資金を投入せざるを得なくなってしまった橋本総理は、その財政運営上の失政の責任をとるべきであると考える次第でございます。そうでなければ、国民は到底納得できるはずはございません。
次に指摘しておかなければならないことは、今回の大蔵省大臣官房金融検査官二名による不祥事であります。昨今、一般投資家にとり重要である金融機関の経営状況の実態に関する情報の閉鎖性と、その信憑性に対する疑問が国内外から強く指摘されてきました。一般投資家保護の観点から、銀行、証券、保険などに対し一層の経営情報の透明性を指導、促進すべき立場にある大蔵省みずからが、事もあろうに強大な権力をバックに検査日や検査項目、果ては他金融機関の検査結果などの情報を漏らし、不正融資を見逃すなど便宜を図っていたおぞましい出来事が発覚したわけでございます。
まして、逮捕された検査官の一人、宮川宏一容疑者は、昨年七月、第一勧業銀行から検査期間中に接待を受け、問題として取り上げられながら国家公務員法で最も軽い訓戒処分になっていた当人でございます。このとき一緒に処分を受けた上級検査官であった日下部元雄氏は、現在、世界銀行の顧問としてニューヨークに駐在中でありますが、同氏についても政府みずからが調査をすべきであると、私は一月三十日の当院本会議における代表質問で促したわけでございますが、いまだ回答も報告も一切受けておらず、ここに改めて政府に要請をする次第でございます。
さらには、最近に至り、松野允彦元証券局長は在任中の一九九一年十二月、山一証券の当時の三木副社長から局長室において相談を受け、海外のペーパーカンパニーを通じるなどして不良債権の飛ばしにより粉飾をするよう指導したと伝えられている。こうした権力を背景とした大蔵省のおごり、綱紀の緩みは、ここにきわまったと言わざるを得ない。
さらには、大手都市銀行などを初め、大蔵省の金融機関への大量の天下りあるいは特殊法人への天下りも目に余るものであり、この諸悪の根源とも言うべき悪習の早期廃止を強く要求するものでございます。
次に、法案の問題点について、二点に絞り見解を申し上げたいと思います。
まず第一に、優良株の引き受け条件などが一切法律に明記されておらず、経営状況が良好とは言えない金融機関を温存し、旧来の政府、大蔵省主導によるいわゆる護送船団的裁量行政が継続されることになるのが必至であるという点でございます。
金融安定化策の基本は、自己責任原則の徹底と情報開示の確立にございます。今回の一連の金融不祥事で明らかになったのは、こうした原則が今や我が国においては完全に地に落ちたということでございます。こうした体質を温存したまま公的資金を導入すれば、結果的には効率の悪い金融機関の延命策にしかならないのでございます。
事実上破綻している金融機関は救済することなく早急に整理すべきであります。これがアメリカにおけるSアンドLの問題発覚後、RTCが果敢に出動し早期解決に実効をもたらした要諦でもありました。こうした根本的な解決策を講ぜずに一時的なびほう策を講じ続けては国民の血税をむだ遣いし続けるにほかならないものでございます。本来、市場から撤退すべき金融機関は自然淘汰させる政策こそ金融システムの安定化につながるものと考えます。
また、金融機関の優先株を引き受ける場合、リストラ計画を審査機関に提出しなければならなくなっておりますが、リストラや経営責任をどの程度要求するのか。金融機関の経営責任と監督官庁の行政責任を厳しく追求せずして、公的資金の名をかりた国民の血税の投入はあってはならないと主張するものでございます。
第二に、リストラ、合理化が大幅におくれている金融機関の発行する優先株を引き受けることについてでございます。バブル崩壊後約七年がたちますが、金融機関の不良債権の処理は大幅におくれております。また、徹底したリストラも行われてはおらず、製造業と比べ高い給与水準の改善もほとんど進んでおりません。役員数、役員報酬、多数の相談役などにもメスが入っておりません。この間、強力な不良債権の回収も行わず、放漫経営を続け、超低金利で利益を上げてきたのが我が国の金融機関でございます。このため、年金生活者や預金者は受取利息の著しい減少で甚大な被害を受けてまいりました。
さらに、こうした金融機関は、行政当局に対する過剰な接待や総会屋に対する利益供与など目に余る不祥事を相次いで引き起こしており、自己改革に対する真剣な姿勢は全く見られないのであります。こうした金融機関に対し公的資金を投入することを、国民が納得し容認することは全く考えられないではありませんか。
我が国における現在の金融不安も貸し渋りも、景気の悪化が原因で深刻化しているのでございます。政府は、土地の再評価や株式の評価法の変更を一時的に実施しようとしておりますが、こうした御都合主義、一時しのぎの対策では金融機関の健全性は確保できないと考えるわけでございます。三十兆円に及ぶ公的資金を投入する前に、有効需要をふやし、景気を好転させる対策を講じることこそ優先課題であると考えます。
こうした観点から、私は、まず減税策にこそ着手すべきであると考えます。我が党は、今般、六兆円規模の所得税、住民税、法人税の恒久的な減税要求に加え、底割れ寸前の景気を回復するためには、さらにすべての国民を対象に四兆円の特別戻し金を実施し、合計で十兆円の減税が必要とされると考えております。この特別戻し金は、一人三万円、四人家族で十二万円の支給となります。これらを商品券等で交付するならば、一層の景気振興になるのではないかと考える次第でございます。
以上申し述べました理由から、当面する財政金融運営の能力を持ち合わせないことが明らかになった橋本総理の一刻も早い退陣を強く要求いたし、私の反対討論といたします。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114215254X00719980216/8
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009・斎藤十朗
○議長(斎藤十朗君) 笠井亮君。
〔笠井亮君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114215254X00719980216/9
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010・笠井亮
○笠井亮君 私は、日本共産党を代表して、預金保険法一部改正案及び金融機能安定化緊急措置法案に対して反対の討論を行います。
両法案は、北海道拓殖銀行、山一証券の破綻を引き金にした金融システム不安なるものへの対策だとして、三十兆円の公的資金、つまり国民の税金を投入しようとするものであります。今まさに、これらの破綻に大蔵省が関与していた重大事実が次々と明るみに出ている中、汚職、腐敗まみれの大蔵省、銀行、証券など金融業界から巨額の政治献金を受け取る自民党が共同でつくった三十兆円の銀行支援策など、論外だと言わなければなりません。
金融証券検査官の逮捕で明確になった大蔵省の金融検査は、粉飾検査そのものであります。拓銀が立ち直れるかどうか重大事態に直面していた時期に、検査官が収賄、接待を受け、検査期日の漏えいばかりか、乱脈経営と不良債権の隠ぺいに加担していた事実が判明しました。山一証券の巨額の簿外債務についても、当時の証券局長自身が脱法行為を指南していた疑いはますます濃厚です。大蔵省は破綻の共犯ではないかという指摘は当然であります。
本来、これら金融機関の乱脈経営や危機的状況を検査で摘発し改善指導すべき大蔵省が見逃し、傷を広げておいて、破綻したら税金で穴埋めするとは大蔵省と銀行の癒着のツケを国民に押しつけるものであり、絶対に許すことはできません。
大蔵省の金融検査がどんなものだったのか、粉飾検査の責任はどこにあるのか、これらを徹底解明することは法案審議の不可欠の前提であります。また、改めて浮き彫りになった銀行のMOF担や天下り、政治献金の異常な実態など、金融行政をめぐる政官財の癒着構造にメスを入れることは急務です。
しかるに、その解明に最低限必要だとして野党が共同して要求した大蔵検査や天下りにかかわる資料さえ提出されないまま、両法案の審議を打ち切って採決を強行することは暴挙と言うほかなく、我が党は断じて容認できません。
今回の二法案の道理のなさは、極めて短時間の質疑を通じてもいよいよ明らかになってきました。
まず、預金保険法改正案についてであります。
この法案は、預金の全額保護を建前にして、破綻金融機関の債務超過分及び買い取り不良債権から生じた二次ロスをすべて預金保険機構で損失補てんし、そのために十七兆円の公的資金を充てようとするものであります。これは、金融機関の破綻処理のための費用は金融システム内で賄うという、これまでの政府の方針を大転換させるものであり、国民に対する重大な公約違反にほかなりません。
預金者保護のために資金不足が生じるのであれば、預金保険料率の引き上げや特別保険料の延長を図るなどして、バブル以来の事態に責任を持つ銀行業界全体として対応するのが当然のルールであります。しかも、政府も全銀協も銀行業界全体としては体力があることを認めているのですから、それは十分に可能であります。にもかかわらず、こうした努力を真剣にしようともせず国民に転嫁しようとするなど、一体どこまで銀行を擁護するのか、政府の姿勢の根本が厳しく問われているのであります。この点で、特に、負債全体の中で普通預金など預金保険の対象となる預金比率が大銀行は非常に少ないため、現行の一律の保険料率のもとで負担額が極端に低くなっており、負担増を求めるべきは当然であります。
次に、金融機能安定化緊急措置法案についてであります。
この法案は第一に、金融機能の安定化の名のもと、銀行が発行する優先株等を引き受け、資本注入することで自己資本をさらに大きくしてやろうというものであります。そもそも政府が進める日本版ビッグバンなるものは、地球的規模での金融大競争を促進するものであり、その中で、我が国の大銀行が優位に立つよう、国民の血税で力のある大銀行にさらに体力をつけてやるものにほかなりません。
しかし、大銀行に国際競争力をつけるためになぜ国民の税金を投入しなければならないのか、全く道理がありません。しかも、これが進めば我が国の金融機関の間で弱肉強食の大競争が展開され、巨大金融機関中心の再編、そして多くの中小地域金融機関の整理淘汰が進行することは疑いありません。三十兆円の銀行支援策は、これを後押しするものであります。
第二に、政官との底深い癒着や総会屋問題、経営情報の開示のおくれなどについて、銀行の公共性と社会的責任に立った自己改革がない限り、公的資金に依存して自己資本の増強を図っても、我が国金融に対する内外の信用を真に回復することにならないことは明白であります。また現在、大銀行がビッグバンを控え、不当な資金回収を強め、中小企業を苦しめているのに、大蔵省が厳正な行政指導もせず、これを放置したまま、資本注入をしさえすれば貸し渋りがなくなるかのようにすりかえることも言語道断であります。
第三に、三十兆円の公的資金は、交付国債の現金化や政府保証の実行の段階で巨額の財政支出となることが審議を通じて明らかになりました。これは未曾有の破綻状態にある我が国財政を一層悪化させ、政府自身が決めた財政健全化の目標とも矛盾するものであります。そのツケは結局国民に回されることになり、まさに何の責任もない国民に負担を強いる悪法と言わなければなりません。国民には九兆円という史上例のない負担増を求めた上、今回の法案で銀行には想像を絶する巨額の支援を行おうとすることが大きな怒りを呼び、公的支援をするなら、銀行ではなく阪神・淡路大震災の被災者にという声が広がっているのは当然です。
以上の理由から、二法案に対して断固反対であることを表明し、三十兆円の銀行支援策を取りやめるとともに、改めて消費税率を三%に引き下げ、医療費連続カットを中止し、国民本位の景気対策に転換することを強く求めて、討論を終わるものであります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114215254X00719980216/10
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011・斎藤十朗
○議長(斎藤十朗君) 星野朋市君。
〔星野朋市君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114215254X00719980216/11
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012・星野朋市
○星野朋市君 私は、自由党を代表して、政府提出の預金保険法の一部を改正する法律案に賛成し、金融機能の安定化のための緊急措置に関する法律案に反対する立場から討論をいたします。
総理は、預金を取り扱わない住専の処理に六千八百五十億円の血税を投じた後、我が国の金融機関の不良債権処理は順調に進んでおり、今後公的資金は信用組合の破綻処理以外には使わないと言い続けてきたのであります。
しかるに、今、三十兆円に及ぶ公的資金の投入を用意する二法案が提出されております。総理の不良債権処理の見通しの誤りが今、日本経済と国民にツケとして重くのしかかってきているのであります。
また、続発する大蔵省関連の不祥事は、まさに政官業癒着の典型であり、護送船団行政のなれの果てであります。今や、金融行政、銀行業界への国民の信頼など一かけらもありません。金融システムへの不安を解消するための第一歩は、事前指導型の裁量行政から事後チェック型のルール行政へと明確に転換し、行政の透明性を高めて市場の信頼を取り戻すことであります。
さて、私ども自由党が今回の預金保険法改正案に賛成いたしますのは、二年間もおくれたとはいえ、住専処理の際、私ども旧新進党が主張してまいりました日本版RTCの設立にようやく政府・与党が重い腰を上げたからであります。
私たちは、会社更生法を前提とする法的処理によって破綻金融機関の経営者の民事上、刑事上の責任を追及し、また、強力に不良債権を回収する機構を設立した上で、預金保証の不足資金に限り公的資金を投入する不良債権処理公社案を主張してまいりました。今回の預金保険法改正案は、基本的には二年前から今日に至るまで私どもが一貫して主張していた線に沿っており、それゆえ、極めて遅きに失したとはいえ、賛成するものであります。
ただし、公的資金を大規模に投入する前提として、特定合併を含め金融機関救済には使用せず、預金者保護に限定することを明確にしなければなりません。そのためには、破綻金融機関の整理に際し、解散するか、受け皿銀行に継承させるかの決定は、厳格なコストテストにより社会的コストの小さい方を選ぶ必要があります。受け皿銀行は大蔵省が強制的に名乗りを上げさせ、経営者は辞任して終わりでは、公的資金の導入に対する国民の理解は得られません。
次に、金融安定化法案に反対する理由を申し上げます。
優先株等の公的資金による引き受けは、護送船団行政を強化して金融機関の経営を救済するものであり、真っ向から金融ビッグバンの原理に逆行をいたします。健全な金融機関であればマーケットから資本を調達できるので、経営内容を政府に干渉されてまで公的資金の投入を望まないのは当然であります。不健全な金融機関は公的資金の投入を望んでおりますが、それでは不良行のレッテルを張られるのに等しく、信用は著しく失墜いたします。
その結果、密室の行政指導が行われ、健全な金融機関には優先株などを強制的に発行させて公的資金を注入することになるのは目に見えております。これこそ官が民を指導、誘導する護送船団型の裁量行政への逆戻りであり、政官業癒着による不祥事の温床を再生産するものであります。
このような公的な資本注入は、自主的な経営努力によって八%ないしは四%の自己資本比率をクリアしたまじめな金融機関との間に著しい不公平を生み出します。また、資本不足に陥って倒産していく一般企業に比べて余りにも不公平な金融機関優遇であります。モラルハザードは日本全土に蔓延するに違いありません。さらに、国際的に見ても、公的資金の注入によって競争力を取り戻す日本の銀行に対して批判が集中し、その信用を失墜するに違いありません。
公的な資本注入は、システミックリスクを回避するために、受け皿銀行となった銀行が市場では資本調達ができなくなった場合に限らなければなりません。本来、預金者保護に限定されなければならない公的資金が、いつの間にか貸し渋り対策と混同され、金融機関の経営救済のために用意されようとしております。
以上、政府提出の預金保険法の一部を改正する法律案に賛成し、金融機能の安定化のための緊急措置に関する法律案に反対する理由を申し述べ、私の討論を終わります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114215254X00719980216/12
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013・斎藤十朗
○議長(斎藤十朗君) これにて討論は終局いたしました。
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114215254X00719980216/13
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014・斎藤十朗
○議長(斎藤十朗君) これより採決をいたします。
表決は押しボタン式投票をもって行います。
まず、預金保険法の一部を改正する法律案の採決をいたします。
ただいまより投票を開始いたします。
〔投票開始〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114215254X00719980216/14
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015・斎藤十朗
○議長(斎藤十朗君) 本案に賛成の諸君は賛成のボタンを、反対の諸君は反対のボタンをお押し願います。──投票を終了してよろしゅうございますか。
これにて投票を終了いたします。
〔投票終了〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114215254X00719980216/15
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016・斎藤十朗
○議長(斎藤十朗君) 投票の結果を報告いたします。
投票総数 二百二十四
賛成 百七十三
反対 五十一
よって、本案は可決されました。(拍手)
─────────────
〔投票者氏名は本号末尾に掲載〕
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114215254X00719980216/16
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017・斎藤十朗
○議長(斎藤十朗君) 次に、金融機能の安定化のための緊急措置に関する法律案の採決をいたします。
ただいまより投票を開始いたします。
〔投票開始〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114215254X00719980216/17
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018・斎藤十朗
○議長(斎藤十朗君) 本案に賛成の諸君は賛成のボタンを、反対の諸君は反対のボタンをお押し願います。──投票を終了してよろしゅうございますか。
これにて投票を終了いたします。
〔投票終了〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114215254X00719980216/18
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019・斎藤十朗
○議長(斎藤十朗君) 投票の結果を報告いたします。
投票総数 二百二十四
賛成 百三十一
反対 九十三
よって、本案は可決されました。(拍手)
─────────────
〔投票者氏名は本号末尾に掲載〕
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114215254X00719980216/19
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020・斎藤十朗
○議長(斎藤十朗君) これにて休憩いたします。
午前十時五十三分休憩
─────・─────
午後三時一分開議発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114215254X00719980216/20
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021・斎藤十朗
○議長(斎藤十朗君) 休憩前に引き続き、会議を開きます。
日程第三 国務大臣の演説に関する件
内閣総理大臣から施政方針に関し、外務大臣から外交に関し、大蔵大臣から財政に関し、尾身国務大臣から経済に関し、それぞれ発言を求められております。これより順次発言を許します。橋本内閣総理大臣。
〔国務大臣橋本龍太郎君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114215254X00719980216/21
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022・橋本龍太郎
○国務大臣(橋本龍太郎君) 私は、将来の我が国を展望した上で現在をいかなる時代と認識し、何を優先課題とすべきかを考え、冷戦後の国際社会に対応した外交、沖縄が抱える問題の解決、行政改革を初めとする六つの改革に全力を傾けてまいりました。内閣総理大臣就任以来の二年余を顧み、我が国の進むべき方向を見据え、今何をなすべきか、改めて率直に申し上げたいと思います。
まず第一は、この十年来の経済面の困難を克服し、また、制度疲労を起こしている我が国のシステム全体を改革することであります。
経済のボーダーレス化、人口の少子・高齢化など内外情勢が大きく変化する中で、我が国がより安定した発展を続けていくために、改革を先送りすることは許されません。私は、自立した個人が夢を実現するために創造性とチャレンジ精神を存分に発揮できる国、また、内外のさまざまな変動に機敏にかつ柔軟に対応できる国を築きたい、年長者を敬い、親から子へと心の大切さや生活の知恵を伝えていくことのできる社会、そして豊かな自然や伝統、文化を大切に守り、伸ばしていけるような社会をつくり上げたい、心からそう思っております。私が進めている改革は、こうした認識に基づくものであり、内閣の総力を挙げ、どのような困難があってもやり抜く決意です。
第二は、この国の将来を担う子供たちのことであります。
明治以来、教育は、親や地域だけではなく、国が積極的に関与すべき課題とされ、今や我が国の学校教育は平均的には世界最高の水準にあると言われます。しかしながら、暮らしが豊かになり、家庭の役割が変化し、進学率が上昇する中で、受験戦争やいじめ、登校拒否、さらには青少年の非行問題が極めて深刻になっております。今、子供たちは本当に悩み、救いを求めていると思います。家庭にも学校にも居場所を見つけられず、進学や就職のこと、友達づき合いや男女交際のことで悩んでも、相談相手が得られない、解決を見出せないというのが厳しい現実でありましょう。しかし、この問題を放置すれば将来に禍根を残すことは間違いありません。大変難しい課題でありますが、子供たちのために何をすればよいのか、皆様とともに考え、真正面から取り組んでまいります。
第三は、冷戦後の国際秩序を模索する世界の動きに的確に対応した外交であります。
第二次世界大戦後の世界を分断した東西対立は過去のものとなり、日ロ関係の抜本的な改善を初め、我が国の外交が広がりを持つとともに、アジア太平洋地域の平和と安定がますます重要になっている今日、こうした認識に立って主体的な外交を進めます。
この三点を念頭に置いて施政の方針を明らかにし、国民の皆様の御理解と御協力をいただきたいと思います。
我が国は、一九八〇年代半ば以降、急激な円高、その後のバブルの発生と崩壊という経済の大きな変動を経験しました。特に、バブル崩壊の過程では、地価の下落、土地の需給の不均衡、不良債権問題の深刻化、企業の財務状況の悪化が進み、さらに昨年の夏以降、アジア各国においては通貨・金融面の混乱、国内においては金融機関の破綻などが相次ぎました。
これらの問題を克服し、経済の停滞から一日も早く抜け出し、力強い日本経済を再建しなければなりません。そのためには、まず金融システムの安定と景気の回復が必要であり、同時に経済構造改革を初めとする構造改革が不可欠であります。財政構造改革の必要性も何ら変わっておりません。そして経済金融情勢の変化に応じて臨機応変の措置を講じ、景気の回復を図ることもまた当然であります。
今国会においては、金融システムの安定を図るとともに、一日も早く景気を回復するため、九年度補正予算と関連法案の成立に全力を挙げてまいりました。議員各位の御協力にお礼を申し上げるとともに、既に実施している緊急経済対策、二兆円規模の特別減税、九年度補正予算に加え、金融システム安定化対策の迅速かつ的確な執行に努めます。
十年度予算においては、社会保障、環境、科学技術、情報通信など、国民生活の安定と経済構造改革に資する予算を確保するとともに、公共投資を重点化、効率化し、過去最大の五千七百五億円、一・三%の一般歳出の減額と一兆千五百億円の公債減額を行っております。また、国鉄長期債務の処理、国有林野事業の債務の処理を含めた抜本的改革の実現を図ることとしております。景気回復を確実なものにするためにも、十年度予算の一日も早い成立に御協力をお願いいたします。
金融システムの信頼は、行政、金融機関、金融資本市場の参加者が責任を全うすることによって得られます。
行政の責任は、金融システム安定化対策を速やかに実施し、また、透明かつ公正な金融行政を遂行することであります。この重大な時期に、大蔵省職員、大蔵省出身の特殊法人役員が不祥事を起こし、金融行政のみならず、行政全体に対する信頼を著しく損ないました。事態を厳粛に受けとめ、大蔵大臣のもと、徹底した内部調査と関係者の厳正な処分を行い、綱紀を正し、不祥事を繰り返す土壌を根本から改めます。さらに、いわゆる公務員倫理法の制定を期します。
金融行政に関しては、客観的かつ公正なルールに基づく透明な行政に転換するとともに、民間専門家の登用、外部監査の活用などにより、厳正で実効性のある金融検査を確立します。金融機関に対しては、経営の徹底した合理化を強く要請するとともに、国際的に通用する水準の経営情報の開示を求めてまいります。また、破綻した金融機関の経営者の責任が厳しく問われることは当然であります。
こうした取り組みを進めながら、働いて蓄えた資産を有利に運用することができ、また、事業のリスクに見合ったコストで必要な資金を調達することができる公正かつ効率的な金融システムを目指し、株式売買の委託手数料の完全自由化と証券デリバティブの全面解禁、公正な証券取引ルールの整備などを行います。
金融システムの改革の進展に合わせ、金融関係税制については、十年度に有価証券取引税の税率の半減などを行うとともに、十一年末までに見直し、株式等譲渡益課税の適正化とあわせて有価証券取引税を廃止することとしております。
次に、経済構造改革について申し上げます。
私が目指す力強い日本経済は、透明性の高い市場における活発な競争を通じて人と技術が磨かれ、資金が循環し、これら三つが将来性のある分野におのずと集まる経済、個人消費と民間投資が主役となって成長し、質の高い雇用の場をつくり出す経済であります。これからの日本は、福祉、情報通信、環境などへのニーズがますます高まり、産業はこうした需要にこたえていかなければなりません。
また、企業活動の場としての我が国の魅力を高めるために、物流、運輸や、電力、石油などのエネルギー、情報通信などの分野で、コストを含めたサービス水準が二〇〇一年までに国際的に遜色のないものとなるよう、徹底した規制の撤廃と緩和を行います。
十年度税制改正においては、法人税及び法人事業税の基本税率などを引き下げ、新規産業の創出を促し、国際競争力を持つ企業が活動しやすい環境の整備に踏み出しました。法人課税の水準を国際水準に近づけていくことが重要であり、このような観点も踏まえ、法人事業税における外形標準課税の問題についても検討を進めます。
産業構造が変化し、終身雇用と年功序列を基礎とした雇用慣行が見直される中で、労働形態の多様化を進めることは、人々が生きがいを持って働くためにも、国全体の生産性を高めていくためにも重要な課題であり、転職をより容易にし、転職に伴う不利をなくすための制度改革、労働基準法の改正、能力開発のため主体的に努力する方々への支援、高齢者の雇用促進に力を入れます。また、企業倒産により生じる雇用問題には機動的に対策を講じます。
技術の面では、産学官の連携による研究開発とその成果の活用、適切な知的財産権の保護により新規事業の創出を図るとともに、我が国の競争力の源泉である物づくりを支える技術と技能、中小企業の人材の育成に努めます。
農林水産業と農山漁村の発展は、経済構造を改革する上でも、食糧の安定供給、自然環境や国土の保全のためにも極めて重要であります。昨年取りまとめた新たな米政策を推進するとともに、新しい農政の基本法の制定に向けた検討を進めるなど、農政の抜本的改革に取り組んでまいります。
冒頭申し上げましたように、ナイフを使用した殺傷事件、薬物の乱用、学校でのいじめ、性をめぐる問題など、子供たちが直面する問題は極めて深刻であり、現象面にのみ目を奪われることなく、根底にある問題を真剣に考えなければなりません。
子供たちには、この世に生を受けて本当によかったと思ってほしい、みずからの目標に向かって邁進してほしい、成長してから社会が抱える問題に積極的にかかわってほしい、心からそう思います。家庭と学校がお互いの責任を強調しても問題を解決することはできません。子供たちがなぜこうした行動に走るのか、家庭、学校、地域、さらにはマスメディアなどを含め、皆が手を携えて取り組むためにどうすればよいのか、それぞれの経験、意見を持ち寄り、幅広い観点から議論し、今こそ大人の責任で対策を考え、実行しなければなりません。
常識、知恵、知識を身につけるための教育が、いつの日からか、皆が同じようによい学校に入り、よい仕事につくための手段になり、私たちは、いわゆるよい子の型に子供たちをはめようとする親と教師になっていないでしょうか。偏差値より個性を大切にする教育、心の教育、現場の自主性を尊重した学校づくり、中高一貫教育など選択肢のある学校制度、子供の悩みを受けとめられる教師の養成など、教育改革を進める上でも、このような問題意識を十分反映させていかなければなりません。
六つの改革が前提とする個人は自立した個人です。社会を明るくし、未来を切り開く源はそうした個人の夢と希望であり、それをかなえるために努力する姿は本当にすばらしいものです。開催中の長野冬季オリンピックと引き続き行われるパラリンピック、そして六月のワールドカップサッカー大会における日本選手の活躍を心から期待いたします。そして子供たちがこうしたすばらしい活躍に胸を躍らせ、それぞれの地域で、スポーツ、文化、ボランティアなど好きなことに打ち込み、個性と能力を伸ばしていく、そのような社会をつくりたいと考えております。
個人の幸福と社会の活力をともにかなえるためには、個人が相互に支え合い、助け合う社会の連帯を大切にし、人権が守られ、差別のない公正な社会の実現に努力しなければなりません。中でも、男は仕事、家事と育児は女性といった男女の固定的な役割意識を改め、女性と男性がともに参画し、喜びも責任も分かち合える社会を実現することは極めて重要であり、そのための基本となる法律案を来年の通常国会に提出いたします。労使の方々にも、働く女性が性により差別されることなく、その能力を十分に発揮することができるよう、御理解と御協力をいただきたいと思います。
社会保障、福祉政策はこれまで大きな役割を果たし、我が国は世界一の長寿国となりました。社会保障に係る負担の増大が見込まれる中で、国民皆年金・皆保険制度を守り、安心して給付を受けられる制度を維持していくためには、少子・高齢化や経済成長率の低下という環境の変化などに対応し、改革を進めなければなりません。
年金については、来年の財政再計算に向けて、世代間の公平、公私の年金の適切な組み合わせを考えながら、将来にわたって安定した制度づくりを行います。
医療については、いつでも安心して医療を受けられるよう、医療費の適正化と負担の公平の観点から、薬価、診療報酬の見直しを初め、抜本的な改革を段階的に行います。こうした改革を進める上では、国民の皆様の声を政策の立案過程から十分に伺い、議論を尽くし、結論を出します。
また、子育てや介護を担う方への支援を充実するとともに、介護保険制度の円滑な施行に向けて施設の整備、人材の確保に努めます。ハンディキャップを克服し、自立した生活を送ろうと努力する障害者の方々など、真に手を差し伸べるべき弱い立場にある方を支援することは当然であります。
かけがえのない環境、国土、伝統、文化を大切に守り、暮らしの安全と安心を確保することは、国の果たすべき責務であり、中でも、地球環境を守り子孫に引き継ぐことは最も重い責任の一つです。
昨年の十二月、世界は地球温暖化の防止に向けて大きな合意をいたしました。その合意を実現するために、省エネルギー法の強化などによる省エネルギーの徹底、原子力、新エネルギーの開発・利用の促進、革新的な技術開発、途上国の支援などに取り組んでまいります。国民の皆様にもライフスタイルの見直しを初め、できる限りの御協力をお願いいたします。
また、限られた資源を有効に活用し、廃棄物を減量するため、家電製品などの再商品化に関する法整備を初め、廃棄物処理対策とリサイクルを一層強力に推進いたします。
さらに、ダイオキシン類の排出抑制、いわゆる環境ホルモンの問題への対応、新型インフルエンザなどの感染症対策など、人の健康と自然環境を脅かす新たな問題や、科学技術の進歩に伴う生命倫理の問題に精力的に取り組みます。
二十一世紀は、時間や距離の制約なく、だれもが大量の情報をやりとりすることができる高度情報通信社会であり、その到来に向けた戦略的な対応が必要です。政府としては、電子商取引の本格的な普及、西暦二〇〇〇年問題、いわゆるハイテク犯罪など、情報化をめぐる諸問題に適切に対応するとともに、ネットワークインフラの整備、教育、医療など公共分野の情報化、利用者本位の行政の情報化を推進いたします。
これからの国土政策の基本は、多軸型の国土構造を形成していくことであり、新しい全国総合開発計画を策定し、首都機能移転問題への取り組みも含め実施してまいります。あわせて、ゆとりある国土空間と恵まれた自然環境を生かした北海道の総合開発計画を推進します。
社会資本整備については、国が関与する事業を重点化、効率化するとともに、民間の参加を期待することができる分野に新たな手法を導入してまいります。
土地税制の見直し、不動産の証券化、大都市における容積率の見直しなどにより、民間部門の建てかえや再開発、そして不良債権の処理、経済の活性化にも資する土地の有効利用を促進し、職と住の両面における都市の利便性、快適性を高めます。
中心市街地の活性化対策、大型店と地域社会がともに栄えるために実効性のある政策を行い、地域コミュニティーの発展を支援します。
さらに、国民共通のよりどころ、豊かな心をはぐくむ源である伝統、文化、芸術、工芸を大切に守り、育ててまいります。
危機管理、災害対策に関しては、在ペルー日本国大使公邸占拠事件、ナホトカ号重油流出事故などの教訓を踏まえ、初動体制の整備、内閣の体制の強化などを行い、万全を期します。阪神・淡路大震災の被災地の復興にも最大限の努力を続けます。
また、市民生活を脅かす銃器犯罪や薬物の乱用、組織犯罪、さらには公正な金融経済秩序の信頼を損なう行為に厳正に対処するとともに、暴力団やいわゆる総会屋などの反社会的勢力を根絶するよう断固として対応します。また、発生件数が五年連続して増加している交通事故の防止対策を推進します。
次に、外交であります。
まず、焦眉の急となっているイラクの大量破壊兵器の廃棄をめぐる問題に関しては、関連する国連安保理決議に基づき、国連特別委員会の査察が即時、無条件に実施されることが必要であります。外交努力を続けながら、米国を初め関係国と協調して対処する方針であります。
アジア太平洋地域の平和と安定は、我が国外交の最大の課題でありますが、昨年夏以来のアジア各国の通貨金融市場の混乱は、この地域の経済に深刻な影響を及ぼしているだけでなく、世界経済に不安定感を与えております。アジア各国が潜在的な力を発揮し、再び力強い経済成長を続けるためには、透明な市場原理に基づいてみずから富を生み出すことのできる、すそ野の広い経済を目指した経済・産業構造改革を進めることが重要であり、IMFを中心とする国際的な枠組みを基本として、関係国、関係国際機関と連携しながら対応してまいります。
アジア太平洋地域の平和と安定のためには、日本、米国、中国、ロシアの四カ国が、信頼と協調に基づく関係を構築していくことが重要であります。
そのような中で、私がまずもって重視するのは、ロシアとの関係の抜本的改善であります。四月にはエリツィン大統領の訪日が予定されています。大統領との間に生まれた信頼関係を一層強固なものとし、橋本・エリツィンプランを含め、昨年十一月のクラスノヤルスク首脳会談の成果を着実に具体化しながら、二〇〇〇年までに東京宣言に基づいて平和条約を締結し、両国関係を完全に正常化するよう最大限努力いたします。
また、日中平和友好条約締結二十周年を迎え、江沢民国家主席の来日が予定されている中国との間では、さまざまなレベルにおいて対話を深め、日中友好関係をさらに発展させるとともに、中国と国際社会との一層の協調を促してまいります。
韓国との間では、漁業協定締結交渉など懸案を抱えておりますが、より広い視点から金大中次期大統領との信頼関係を確立し、さまざまな分野での交流、協力を進めてまいります。
北朝鮮に関しては、朝鮮半島の平和と安定に向け、韓国などと緊密に連携しながら、拉致疑惑や日本人配偶者の故郷訪問、国交正常化交渉の再開、KEDOの問題などに真剣に取り組みます。
アジア太平洋地域の平和と安定のためにも、ユーラシア外交を進めていくためにも、基軸となるのは日米関係であり、安全保障、政治、経済にわたる幅広い関係をさらに発展させてまいります。特に、日米安保体制の信頼性の向上は我が国の安全にとって不可欠であるとともに、アジア太平洋地域全体の平和と安定につながるものであり、新たな日米防衛協力のための指針の実効性を確保するための作業を着実に進めてまいります。
アジア太平洋地域における米軍のプレゼンスが、地域の平和と安定に不可欠である状況のもとで、沖縄の方々が長年背負ってこられた負担に思いをいたし、沖縄が抱える問題の解決に全力を傾けたい、中でも普天間飛行場は市街地にあり、この危険な状況を放ってはおけない、だからこそ私は、SACO最終報告を取りまとめ、普天間飛行場の返還を可能にする最良の選択肢として代替ヘリポートの建設を提案いたしました。今でもそのような私の思いは同じです。
米軍の施設・区域の整理、統合、縮小に引き続き全力を挙げ、代替ヘリポート建設に地元の御理解と御協力をいただけるよう粘り強く取り組みます。北部地域を含めた沖縄の振興にも最大限努力する決意であり、特別自由貿易地域制度の創設などを内容とする法案の成立を期します。
我が国の防衛については、日本国憲法のもと、専守防衛に徹し、他国に脅威を与えるような軍事大国にならないとの基本理念に従い、文民統制を確保し、非核三原則を守るとともに、防衛大綱及び昨年末に見直した中期防衛力整備計画に基づき、節度ある防衛力の整備に努めます。また、ASEAN地域フォーラムなどの安全保障対話や防衛交流などにより、周辺諸国との信頼の醸成に努力してまいります。
また、人口が増大する中で、食糧、エネルギー、環境などの問題を克服し、持続可能な開発を実現していくことは極めて重要であります。我が国としては、これらの課題に積極的に取り組むとともに、途上国の自助努力を支援するため、貧困対策と社会開発、環境保全、人づくりなどを重点として、質の高い援助を効果的に実施してまいります。
地域紛争、軍縮・不拡散、難民、テロなどの問題についても、国連平和維持活動への参加などにより積極的な役割を果たすとともに、我が国の安保理常任理事国入りの問題を含め、この分野において大きな役割を果たす国連が、全体として均衡のとれた形で改革されるよう努力いたします。
行政改革の目的は、国の権限と仕事を減量し、簡素で効率的な行政、機動的で効果的な政策遂行を実現すること、国民の皆様から信頼される開かれた行政を実現することであります。これは同時に、住民に身近な行政をできる限り身近な地方公共団体が担えるようにすることであります。
地方分権に関しては、今国会中に政府の推進計画を作成し、確実に実施するとともに、市町村へのさらなる権限などの移譲、市町村の自主的な合併の積極的な支援、国と地方の役割分担に応じた地方税財源の充実確保、地方の課税自主権の拡大を図ります。地方公共団体に対しては、徹底した行財政改革に取り組むよう強く求めてまいります。また、新たな規制緩和推進三カ年計画を作成し、一層の規制の撤廃と緩和を進めます。
これらの取り組みにより、国の権限と仕事を絞り込み、二〇〇一年一月には一府十二省庁体制への移行を開始することを目指し、内閣機能の強化と中央省庁改革のための基本法案の成立を期します。
新体制に移行する過程においては、現業の改革、独立行政法人制度の導入、郵便貯金などの預託の廃止を含めた財政投融資制度の抜本的な改革などにより、公務員の定員を含め、行政を大幅にスリム化するとともに、公務員制度のあり方を検討し、必要な改革を行います。
今国会に提出する情報公開法案は、主権者である国民の皆様に、政策を評価、吟味し、御意見をいただき、政治と行政への関心を高めていただくために極めて重要であり、法案の早期成立をお願いいたします。また、開かれた行政への取り組みとして、動力炉・核燃料開発事業団の改革を行います。
最後に、行政改革によって不透明な規制を廃し、社会が事後監視・救済型へと転換していく中で、国家の基礎を支える司法の機能が充実することは欠くことのできない課題であり、内閣としても積極的に協力してまいります。
以上、私の所信を申し述べてまいりました。
本年は、バブル崩壊後の最終局面を乗り越え、改革に向けて力強い歩みを進める年、すなわち明日への自信を持つ年であります。私はこの国と国民の力を信じます。私たちは、敗戦後の廃墟から立ち上がり、石油危機、円高などの国際情勢の激変や公害問題など、その時々の困難を乗り越えてきました。その熱意と知恵と努力があれば、解決できない問題はありません。
我が国の将来像、進むべき方向を示し、それを実現するために政策を実行するのは政治の使命であります。政治が国民の信頼を回復し、国民の期待にこたえていくために、与党三党は、政治腐敗の防止のための方策、議員の兼職禁止に係る行為規範の見直しなど、政治倫理などに関する協議を精力的に進めており、その結論に従い、清潔で活力ある政治の実現を図ります。私自身、政策を真剣に議論する政治を率先し、与党三党の協力関係を基本として、政策によっては各党各会派の御協力をいただき、国民の皆様のために全力を尽くします。
御臨席の各党各会派の議員各位、国民の皆様の御支援と御協力を心からお願い申し上げます。(拍手)
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114215254X00719980216/22
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023・斎藤十朗
○議長(斎藤十朗君) 小渕外務大臣。
〔国務大臣小渕恵三君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114215254X00719980216/23
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024・小渕恵三
○国務大臣(小渕恵三君) 第百四十二回国会に当たり、我が国外交の基本方針につき所信を申し述べます。
まず私は、緊張の高まっているイラク情勢につき、一言申し上げたいと思います。
大量破壊兵器の廃棄をめぐる、重ねての国連安保理決議を無視し続けるイラク政府当局のかたくなな姿勢は、平和を願う国際社会全体への重大な挑戦であると言わざるを得ません。イラクが保有しているとされるサリンやVXガス等の恐ろしさは、私たち日本人自身がわずか数年前に体験したばかりであります。このような大量破壊兵器の拡散が生じないよう、イラクが国連の全面的査察を直ちに無条件に受け入れることが重要であります。我が国としては、外交努力を続けながら、関係国と協調して対処する方針であります。
二十一世紀まであとわずか三年を残すのみとなった現在、我が国を取り巻く国際情勢はいかなるものでありましょうか。冷戦終結後、一時期の混乱を経て、民主主義と自由市場経済を大切にする基本的考え方は広く世界に根づいたように思われます。さまざまな地域紛争も、今、解決へ向けての進展が見られます。我が国が位置するアジア太平洋地域では、日米両国に中国、ロシアを加えた四カ国の間で活発な外交が展開され、新たな枠組みづくりの動きが芽生えております。しかしその一方で、東アジア諸国が現在直面している経済問題のように、大胆な対応が緊急に必要とされる事態が生じております。
このような情勢の中で、我が国外交が目指すべき方向をしっかり考えなければなりません。その際重要なのは、冷静な歴史的視点と将来に対する的確な見通しであると思われます。私は、国際情勢の現状と変化を正しく見きわめ、二十一世紀の日本の姿を念頭に置きながら我が国の外交に果断かつ積極的に取り組む決意であります。
さて、我が国が位置するアジア太平洋地域を見ると、地域の平和と安定の枠組みづくりを目指した日米中ロ四カ国間の協力を確保することが枢要であります。そのため、我が国としては、日本外交の基軸である日米関係の一層の強化に努めながら、日中関係の発展と日ロ関係の前進に向けて努力してまいります。また、このような四カ国の関係進展に伴い、将来四カ国が一堂に会して種々の議論を行うことも視野に入れておく必要があると考えます。
良好な日米関係は、日米両国のためだけでなく、アジア太平洋地域、ひいては世界全体の安定と繁栄のために極めて重要であります。
この日米関係の根幹をなす日米安保体制は、我が国の安全保障政策の重要な柱であるとともに、アジア太平洋地域の平和と繁栄を支える役割を果たしております。このため、その一層円滑で効果的な運用に努めていく必要があり、特に、新たな日米防衛協力のための指針の実効性を確保するための施策に精力的に取り組んでいくことが重要であります。
また、普天間飛行場の返還、海上ヘリポートの建設を含め、SACO最終報告の着実な実施が沖縄県の方々の御負担を軽減するための最も確実な道であるとの考えに変わりはありません。今後ともこの最終報告の実施に向け、地元の方々の御理解と御協力を得るべく努力してまいります。
もちろん、日米関係は、安全保障関係のみならず、経済、社会、文化等広範な分野にわたる包括的な協力関係であり、これを全体としてさらに進展させるべく努めてまいります。
中国との間では、昨年の両国総理による相互訪問に続き、日中平和友好条約締結二十周年に当たる本年は江沢民国家主席の訪日が予定されております。今後とも活発な要人往来や安全保障を含むさまざまな対話を通じて相互理解と協力の一層の増進に努めてまいります。そして中国のWTO早期加盟の支持や経済協力等を通じて改革・開放政策を引き続き支援し、また、遺棄化学兵器処理問題等の日中間に存在する諸懸案の解決に努力いたします。
ロシアとの間では、クラスノヤルスクでの日ロ首脳会談において、東京宣言に基づき二〇〇〇年までに平和条約を締結するよう全力を尽くすことに合意いたしました。さらに、経済分野や安全保障等各分野で均衡のとれた成果が達成され、両国関係はこれまでにない展開を見せております。昨年十一月のプリマコフ外相との会談では、両外務大臣を責任者として平和条約交渉を行うことで一致し、先般、平和条約締結問題日ロ合同委員会が設置されました。また、北方四島周辺水域における操業枠組み交渉は、昨年末実質的妥結に達しました。
近く予定される私のロシア訪問や四月に予定されるエリツィン大統領の訪日等の機会を通じ、さまざまな分野での協力を進めるとともに、領土問題を解決して平和条約を締結し、日ロ関係の完全な正常化を達成するため、今世紀に起こったことは今世紀中に解決するとの姿勢で橋本総理とともに努力を尽くす決意であります。
次に、朝鮮半島情勢は極めて重要な問題であり、韓国との友好協力関係は我が国外交の最も重要な柱の一つであります。
韓国では、経済的困難の克服が喫緊の課題となっており、金大中次期大統領もこの問題に全力で取り組んでおられます。両国間のさまざまな問題に適切に対処するとともに、国際社会においても緊密に協力し、友好協力関係をさらに発展させなくてはなりません。私は、昨年末、金大中次期大統領に対してこのような考え方をお伝えし、積極的な反応を得ました。
なお、漁業協定につきましては、まことに残念ながら最終的に意見の一致に至らず、先般、現行協定に従いこれを終了させる意思を通告しました。政府としては、今後とも、国連海洋法条約の趣旨を踏まえた新たな漁業秩序を早期に確立するとの決意のもと、新たな協定を早期に締結すべく交渉を続けてまいります。
北朝鮮につきましては、その情勢を鋭意注視しつつ、また拉致疑惑や日本人配偶者の故郷訪問などの諸懸案の解決に取り組みます。そして朝鮮半島の平和と安定に資する形で、日朝間の不正常な関係を正すべく韓国等と緊密に連携しながら対処いたします。また、四者会合本会談の開始を歓迎するとともに、引き続きKEDOの活動に積極的に取り組んでまいります。
昨年来、東アジア諸国が直面している経済困難への適切な対処は、この地域共通の枢要な課題であります。この問題は、近年地球的規模で相互依存が進展する中で発生したものであり、世界経済全体に不安定感を与えておりますが、国際社会が保護主義の台頭を抑え、一体となって対応することが急務となっております。我が国に対する期待も高まっており、これまで関係各国、国際機関とも連携して、タイ、インドネシア、韓国に対する支援を行ってまいりました。東アジア各国が現在直面する困難の解消に協力し、相互の関係を一層強固にすることが重要であります。
我が国は、世界第二の経済大国、そして地域における最大の経済主体として、今後とも、主要国首脳会議等の場を通じ、リーダーシップを発揮してまいります。この地域の経済は、健全なマクロ経済運営及び構造改革によりさらなる成長が可能であり、我が国自身、厳しい国内経済情勢ではありますが、国際社会からの期待にできる限りこたえていく決意であります。
広く世界に目を転ずれば、新たな国際秩序の構築過程において、欧州統合の進展は国際社会全体に重要な影響を及ぼすものであり、欧州との協力関係はさらに重要となります。各種外交日程、文化行事などを通じ、日欧関係の一層の強化のため努力してまいります。
中南米諸国については、民主化と経済発展を重視し、貧困、環境等の問題解決のために支援を強化します。
中東におきましては、中東和平プロセスの支援等を通じ、地域の平和と安定に貢献してまいります。
アフリカ諸国との関係では、開発と安定の両面からアフリカ諸国の自助努力を支援することが重要であり、本年十月には我が国で第二回アフリカ開発会議を主催いたします。
シルクロード地域に対しては、政治対話の強化や経済協力を通じて国づくりの努力を支援してまいります。
このように、私はさまざまな諸国との関係強化にきめ細かく努め、外交の幅を広げてまいります。
二国間関係の強化と並行して、アジア太平洋での地域協力の推進も重要であります。経済面では、APECが現下の東アジア経済情勢のもとでも、貿易・投資の自由化、円滑化を推進するなど重要な役割を果たしております。安全保障面では、ASEAN地域フォーラムが、信頼醸成に加え予防外交について政府レベルでの検討開始を確認するなど着実な成果を上げております。また、本年四月には、アジアと欧州間の相互理解と協力のために大きな意義を持つ第二回アジア欧州会合が開催されます。
次に、グローバルな視点から世界を見ると、地域紛争、軍縮・不拡散、開発、環境、民主化、人権、国際組織犯罪、テロなどの課題が今まで以上に重要となっております。我が国は、これらをみずからの課題としてとらえ、平和な世界、繁栄した世界の構築のため、積極的に役割を果たしてまいります。
グローバルな問題への対処に当たり重要な枠組みは国連であります。この国連が時代の要請に適合した役割を一層効果的に果たすよう、全体として均衡のとれた形での改革を早期に実現すべく最大限の努力を行います。我が国としては、このような国連改革が実現される中で、憲法が禁ずる武力の行使は行わないという基本的な考え方のもとで、多くの国々の賛同を得て、安保理常任理事国として責任を果たす用意があることは、これまで表明してきたところであります。
先般、我が国が主催した紛争予防戦略に関する国際会議でも明らかにいたしましたとおり、我が国は地域紛争の予防から紛争後の国づくりまでを視野に入れて、国際社会の平和と安定のため、国連平和維持活動等に協力してまいります。この関連で我が国が和平成立に向けて努力してきましたカンボジアについては、本年七月の自由、公正な選挙の実施のため支援を行います。また、地域紛争に伴う難民問題についての支援を引き続き積極的に行う方針であり、政府予算案におきましても特に重点を置いております。
世界の平和のためには大量破壊兵器の軍縮と不拡散は重要な課題であり、包括的核実験禁止条約の早期発効等に向け、真剣に取り組みます。
私は、昨年十二月、対人地雷全面禁止条約に署名いたしましたが、政府としては、今後、条約の早期批准を目指す所存であります。また、政府は、地雷除去や犠牲者支援のため、今後五年をめどに百億円程度の支援の実施を決定いたしました。さらに、人道的な対人地雷除去活動に必要な機材等の輸出については、これを武器輸出三原則等の例外とし、その輸出を可能といたしました。今後、小火器を含む通常兵器の移転と過剰な蓄積の問題にも率先して取り組んでまいります。
世界経済の発展に関しては、国際社会がグローバリゼーションの恩恵を最大限に享受するよう、WTOを中心とする多角的貿易体制の強化が重要であります。 同時に、開発途上国の発展を促すことが必要であります。政府開発援助は、そのために我が国が行う貢献の最も重要な柱であります。来年度政府予算案の中でODA予算は一〇・四%削減となっておりますが、政府としては、総合調整により予算の重点配分を行うとともに、国別の援助政策の充実、実施体制の改善、国民参加のODAの推進等、改革に大胆に取り組み、限られた財源で最大限の効果を発揮するよう努めます。そしてこの改革の中で国民の皆さんとともにODAのあり方を考え、御理解を得ていきたいと思います。
また、世界経済にとり中長期にわたるエネルギー政策も不可欠であり、資源開発に対する支援などを通じ、安定的なエネルギー供給に向けた取り組みに参画してまいります。
一方、持続可能な発展のためには、環境問題に各国が協力して取り組まなくてはなりません。我が国は、先般の地球温暖化防止京都会議におきまして議長国として最大限の努力をしたところでありますが、地球全体の将来のために、今後とも積極的な役割を果たしてまいります。
ますます多くの日本人が広く海外を旅行し、外国に在住されて、国際交流や国際貢献に大きな役割を果たされることを願ってやみません。しかし、日本と治安状況も異なる海外で邦人が犠牲者となる痛ましい事故や事件が発生していることも記憶に新しいところであります。邦人の方々にこのような危険に御留意いただく中で、政府としても海外における邦人の安全対策の強化に努めてまいります。
以上、外交の基本方針について詳細に述べてまいりました。
今日の厳しい国内経済状況を前にして、我々はとかく内向きとなり、対外関係よりも国内の問題に目が向きがちであります。しかし現在、平和にして豊かな我々の国民生活は、世界全体の平和や繁栄を度外視して維持することは不可能であります。
外交は政府だけの力で行うものではありません。日露戦争後の我が国外交の方向を危惧したエール大学の朝河貫一教授は、九十年前に日本の危機を論じたその著書の中で、我が国と外国との関係を決定するのは、究極のところ外交に対する日本国民の理解いかんにかかるとの趣旨を述べました。これはそのまま今日の外交にも当てはまると思います。
平和で豊かな日本を、そして世界を次の世代へ引き継ぐために、日本の外交をどのように進めていくべきか、私は責任者の一人として、また一人の国民として皆様とともに考えていきたいと存じます。国民とともに歩む外交推進のため、皆様の英知ある温かい御支援、御協力を切にお願い申し上げるものであります。(拍手)
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114215254X00719980216/24
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025・斎藤十朗
○議長(斎藤十朗君) 松永大蔵大臣。
〔国務大臣松永光君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114215254X00719980216/25
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026・松永光
○国務大臣(松永光君) 平成十年度予算の御審議をお願いするに当たり、財政及び金融行政の運営の基本的考え方と予算の大要を御説明いたしたいと思いますが、その前に、このたびの金融検査をめぐる不祥事について申し述べます。
先般、大蔵省の金融検査部に所属する職員が収賄の容疑により逮捕されたことは大蔵省に対する信頼を著しく損なうものであり、ざんきにたえません。ここに改めて国民の皆様におわび申し上げます。
今回の事態への対応については、これまでの国会審議の過程などで申し上げているところでありますが、まず、綱紀の保持を徹底するため、新たに金融服務監査官を大臣官房に設置いたしました。金融服務監査官は、民間金融機関等の検査・監督に従事する職員について、綱紀の保持状況の監視・調査を行うものであり、その際、弁護士に助言を求めることとしております。今後ともこの制度を活用し、綱紀の保持の一層の徹底を図ってまいります。
また、現在、金融行政に関連する部局の職員と金融機関等の関係について大蔵省の内部調査を実施しておりますが、その結果を速やかに取りまとめ、問題がある場合には厳正に処分いたします。
さらに、金融行政に対する信頼を回復するため、検査体制、行政手法等に関し抜本的な改革を進めてまいります。
金融検査については、厳正で実効性ある検査体制、手法を確立するため、検査の基本的あり方を転換いたします。
具体的には、早期是正措置の導入を契機として、金融機関による自己査定を前提としつつ、事後的なルール遵守状況等の把握に重点を置くほか、予告検査の導入等の新たな金融検査の手法を構築いたします。さらに、民間専門家の登用、研修の強化充実、主要国監督当局との人材交流等を進めることとし、早急に具体策を取りまとめ、実施してまいります。
また、金融行政については、明確なルールに沿った透明性の高い手法に移行しつつありますが、こうした中で、さらに金融機関から意見を聴取したり行政の考え方を説明するため、定例の金融連絡会を新たに設置いたします。これは、いわゆるMOF担の存在を必要としない行政に転換するとともに、行政の透明性を確保するための措置であります。
私は、国民の皆様に信頼される新しい大蔵省をつくり上げるため、以上申し述べました措置を初めとする大蔵省の改革に全力を挙げて取り組んでまいる決意であります。
次に、財政及び金融行政の運営の基本的な考え方について所信を申し述べます。
最近の経済金融情勢を概観しますと、個人消費が低調な動きとなるなど、家計や企業の景況感の厳しさが実体経済に影響を及ぼしており、景気はこのところ停滞している状況にあります。また、アジア地域の通貨金融市場の混乱のほか、昨年秋以来、複数の金融機関の経営問題の表面化等を契機に我が国の金融システムの安定性が大きく揺らぎかねない事態が生じました。
こうした危機的な事態に機動的に対応するため提案いたしました平成九年度補正予算並びに特別減税及び金融システム安定化に関する法律について御賛同いただきましたことに感謝申し上げます。
同補正予算に計上されました災害復旧事業等の公共事業や一般公共事業に係る国庫債務負担行為などについては、現在、鋭意執行に努めております。
二兆円規模の特別減税については、給与所得者等に対して、今月の源泉徴収時から減税を実施しております。
預金者保護と金融危機時における金融機関の自己資本充実を柱とする金融システム安定化のための措置については、国会における御審議を踏まえ、厳正かつ透明性の高い運用に努めてまいります。とりわけ、多くの御議論がありました金融機関の発行する優先株等の引き受けについて、その審査を公正中立に行うため金融危機管理審査委員会を可及的速やかに設置し、金融機関からの審査要請に直ちに応じられるよう体制を整備することにより、金融機関の自己資本の充実に向けた取り組みを進めてまいります。
また、年度末に向けては、政府系金融機関の資金量を十分に確保するとともに、早期是正措置の弾力的運用などの方策を講ずることとし、資金供給の円滑化に努めてまいります。
政府としては、金融システムの安定化と経済の回復軌道への復帰に向けてこれらの施策を適切に実行してまいります。
経済金融情勢に対して機動的な対応を行うことと並行して、中期的な目標に向けた構造改革を着実に推進することも重要な課題であります。
新世紀まであと三年となった現在、我が国経済社会は、本格的な高齢社会への移行、国際化、情報化の進展など、時代の大きな潮流変化の中にあります。経済社会を支えてきた旧来の制度をこうした変化に対応した新たなものとし、豊かで活力のある経済社会を構築していくために全力を挙げて財政構造改革、金融システム改革等の構造改革を推進していかなければなりません。
まず、現在の危機的な財政状況から脱却し、さまざまな政策要請に十分対応できる財政構造を構築していくことが必要であります。私としては、財政構造改革法に規定された最終的な目標達成に向けて全力を尽くしてまいる所存であります。
また、財政投融資については、財政政策の中で有償資金を適切な分野に活用するという基本的な役割を踏まえつつ、その抜本的改革を進めてまいります。
さらに、税制については、平成十年度改正において、時代の潮流変化と各般の構造改革にあわせ、広範かつ思い切った措置を講ずることとしております。
主要な措置を申し述べますと、法人税制については、基本税率や中小法人に対する軽減税率等を引き下げるとともに、課税ベースを拡大・適正化いたします。これにより、法人税の基本税率は、シャウプ税制以降最も低く、米国の連邦法人税率を下回る水準となります。こうした改革は、経済活動に対する税の中立性を高め、経済構造改革の推進にも寄与するものと考えております。
金融関係税制については、金融システム改革に対応した措置を講じます。その中で、有価証券取引税及び取引所税について、その税率を本年四月から半減し、さらに、平成十一年末までに、金融システム改革の進展状況、市場の動向等を勘案して見直し、株式等譲渡益課税の適正化とあわせて廃止することとしております。
土地住宅税制については、土地をめぐる状況の変化等を踏まえ、地価税を当分の間課税しないこととするほか、個人、法人の土地譲渡益課税の大幅な軽減措置等を講じます。
また、所得課税においては、中堅所得者層の税負担等に配慮したきめ細かい措置を講じます。
我が国の金融システムに対する内外の信認を確固たるものとしていくためには、金融システム安定化のための措置を実施していくとともに、新世紀に向けて金融システム改革を進め、自由かつ公正で国際的な金融システムを形成していくことが不可欠であります。
政府としては、このために、投資信託の整備、株式売買委託手数料の完全自由化、証券会社の原則登録制への移行等を図るとともに、公正取引ルール、金融機関のディスクロージャーに関する制度及び破綻の際の証券投資家、保険契約者の保護のための制度の整備を行います。また、不動産等の資産の流動化を促進するための制度整備等を行ってまいります。こうした措置を実施するため、今国会に金融関連の所要の法律案を提出することとしております。
このような政府の取り組みにあわせて、金融機関において、その社会的責任と高い公共性にかんがみ、国際的に通用するディスクロージャーの実現、責任ある経営体制の整備及び経営の合理化、効率化に向けたさらなる取り組みが行われることを強く期待いたします。
目を外に転じますと、世界経済は米国を中心に拡大基調を続けておりますが、昨年夏以降、タイに端を発し、インドネシア、韓国などのアジア地域に広がった通貨金融市場の混乱の影響が懸念されております。世界経済の持続的発展にとってアジア経済の安定が不可欠であります。そのために、我が国としては、IMFを中心とする国際的な支援体制の中で、関係各国中最大の支援を実施してまいりました。
さらに、アジアの通貨、金融の安定に向けた域内協力を強化するため、我が国の積極的な取り組み等により、昨年十一月、マニラにおいてアジア地域を中心とした新たな支援の枠組みが合意され、APEC首脳宣言でも支持されたところであります。今後とも、アジア地域の動向を注視していくとともに、関係各国及びIMF、世界銀行、アジア開発銀行等の国際機関とも密接に連携しながら適切に対処してまいる所存であります。
為替相場については、今後とも、主要国との政策協調及び為替市場における協力を通じ、その安定を図ってまいります。
また、我が国は、WTO、APEC等を通じ、多角的自由貿易体制の維持強化及び貿易円滑化に積極的に取り組んでおり、平成十年度関税改正においても、特定品目の関税率の引き下げ等、所要の改正を行うこととしております。
次に、今国会に提出しております平成十年度予算の大要について御説明いたします。
平成十年度予算は、財政構造改革法に従い、歳出全般について聖域を設けることなく徹底した見直しを行いつつ、限られた財源を重点的、効率的に配分したものとなっております。また、長年の懸案である国鉄長期債務及び国有林野累積債務についても具体的な処理策をまとめたところであります。
歳出面については、一般歳出の規模は四十四兆五千三百六十二億円となり、前年度当初予算に対して五千七百五億円、一・三%の縮減を達成いたしました。
国家公務員の定員については、第九次定員削減計画を着実に実施するとともに、増員は厳に抑制し、三千七百人に上る行政機関職員の定員の縮減を図っております。補助金等についても、地方行政の自主性の尊重及び財政資金の効率的使用の観点から、その整理合理化を積極的に推進しております。
これらの結果、一般会計予算規模は七十七兆六千六百九十二億円となり、前年度当初予算に対し〇・四%の増加となっております。
歳入の基幹たる税制については、さきに申し述べましたとおり、法人税制、金融関係税制、土地住宅税制等に関して適切な措置を講ずるほか、たばこ特別税を創設することといたします。
税の執行については、今後とも国民の信頼と協力を得て、適正公平な実施に一層努めてまいります。
以上の措置を受け、公債発行予定額については、前年度当初予算より一兆千五百億円減額し、十五兆五千五百七十億円としております。その減額の内訳は、建設公債について八千百億円、特例公債について三千四百億円となっております。この結果、公債依存度は二〇%となり、前年度当初予算の二一・六%より一・六ポイント低下しております。特例公債の発行等については、既に関係の法律案を提出しており、御審議をお願いすることとしております。
財政投融資計画については、財政投融資の抜本的改革を推進するとの基本方針のもとで、民業補完や償還確実性の原則を徹底するとともに、景気に配慮しながら、資金の重点的、効率的な配分を図り、その規模のスリム化を図ったところであります。この結果、一般財政投融資の規模は三十六兆六千五百九十二億円となり、前年度当初計画に対し六・八%の縮減となっております。また、資金運用事業を加えた財政投融資計画の総額は四十九兆九千五百九十二億円となり、前年度当初計画に対し二・七%の縮減となっております。
次に、主要な経費について申し述べます。
社会保障関係費については、少子・高齢化が急速に進む中で安定的な社会保障制度を構築する観点から、医療分野において薬価の大幅引き下げや老人医療費の負担の公平化を図るための制度改革を行うほか、雇用保険制度に係る国庫負担のあり方を見直すなどの措置を講じております。
文教及び科学振興費については、創造的で活力に富んだ国家を目指して、教育環境の整備、高等教育、学術研究の充実、創造的・基礎的研究に重点を置いた科学技術の振興等の施策の推進に努めております。
公共事業関係費については、物流の効率化対策に資するものを中心とした経済構造改革関連の社会資本及び生活関連の社会資本について重点的に整備することとしております。公共事業の実施に当たっては、費用対効果分析の活用や長期にわたる事業等を対象とした再評価システムの導入などを通じて公共事業の効率化、透明化に努めることとしております。
中小企業対策費については、厳しい経営環境に配慮し、中心市街地活性化、金融対策等に重点を置いて施策の充実を図っております。
農林水産関係予算については、自主流通米価格の急落等、米をめぐる厳しい状況に対処するため新たな米政策を構築するなど、担い手への施策の集中及び市場原理、競争条件の一層の導入を図りつつ、施策の着実な推進に努めております。
経済協力費については、事前調査、事後評価の拡充等を図りつつ、環境、社会開発、人道、人づくり等の分野に重点化を図り、所管の枠を超えた総合調整を行うなど、援助の量から質への転換を徹底しております。
防衛関係費については、先般見直しが行われた中期防衛力整備計画のもと、効率的で節度ある防衛力の整備を図ることとしております。
エネルギー対策費については、地球温暖化問題への対応の重要性等も踏まえ、総合的なエネルギー対策の着実な推進に努めております。
地方財政については、国と地方がバランスのとれた財政運営を行う必要があるという基本的考え方を踏まえつつ、所要の地方交付税総額を確保するなど、地方財政の運営に支障を生ずることのないよう適切な措置を講ずることとしております。地方公共団体におかれましても、財政の自主的かつ自立的な健全化に鋭意努力されるよう要請するものであります。
以上、平成十年度予算の大要について御説明いたしました。
何とぞ、関係の法律案とともに、御審議の上、速やかに御賛同いただきますようお願い申し上げます。
私は、これまで申し述べました諸施策を実施し、経済を回復軌道に復帰させるとともに、諸改革を通じ、将来世代のために豊かで活力ある経済社会を築いていくことに全力を尽くしてまいります。そして大蔵省に対する国民の皆様の信頼を回復するよう、財政及び金融行政を適正に運営してまいる決意であります。
国民各位の一層の御理解と御協力を切にお願い申し上げる次第であります。(拍手)
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114215254X00719980216/26
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027・斎藤十朗
○議長(斎藤十朗君) 尾身国務大臣。
〔国務大臣尾身幸次君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114215254X00719980216/27
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028・尾身幸次
○国務大臣(尾身幸次君) 我が国経済の当面する課題と経済運営の基本的考え方について、所信を申し述べます。
我が国経済は、最近の株価等の動きに見られるように、市場心理には一部好転の兆しが見られるものの、金融機関の経営破綻、アジア地域における通貨金融市場の混乱等を背景に、家計や企業の景況感の厳しさが個人消費や設備投資に影響を及ぼしているなど、景気はこのところ停滞しております。このような現状の背景には、我が国経済が直面している次のような構造的な問題があり、これらを早急に解決する必要があると考えます。
第一に、金融機関や企業の不良債権問題であります。バブルの後遺症である不良債権処理のおくれと金融システムの安定性に対する信頼感の低下が景気回復の足かせとなっており、これらの問題の解決が急務であります。
第二に、日本的な経済システムの制度疲労の問題であります。グローバル化の進展、少子・高齢社会への移行、情報通信の高度化といった内外の環境変化の中で、我が国経済のさまざまな制度や慣行の変革が求められております。過剰な規制の存在は、民間企業の事業機会をそぎ、高コスト構造を通じて経済の活力を低下させるなど、規制緩和を初めとする経済構造改革の推進が重要課題となっております。
第三に、産業の空洞化の問題が挙げられます。経済のグローバル化が進展し、企業が最適な事業環境を求めて国際展開を進める中で、海外に生産拠点を移す動きが見られるなど、産業の空洞化が懸念されています。企業が国を選ぶ時代において、我が国が事業活動の拠点として選ばれる国になるためには、国際的に魅力ある事業環境を整備する必要があります。
以上のような諸課題に対応し、私は、民間需要を中心として経済を順調な回復軌道に乗せ、自律的な安定成長を持続させ、もって豊かな国民生活の実現を図っていくことを経済運営の基本として取り組んでまいります。このため、政府として経済の体質を改善強化し、民間の活力を十分に生かせる体制を整備するなどの観点から、次の五つの点を中心とした諸施策に取り組んでまいります。
第一に、金融システムの安定性確保と不良債権問題の早期解決であります。
金融システムは経済の根幹であり、その安定性確保が経済活性化の大前提であります。このため、預金者保護と金融システムの安定を図る観点から、合わせて三十兆円の資金を活用できるよう、九年度補正予算及び関連法律において措置されたところであります。
他方、バブルの後遺症として、担保不動産の処分が滞っていることが不良債権処理の障害となっており、土地の有効利用の促進や土地取引の活性化が必要と考えられます。このような状況にかんがみ、地価税を凍結し、また、法人の土地譲渡益追加課税の適用停止等、バブル期に導入された措置を停止する等の土地税制の改正を行うこととしております。
さらに、いわゆる貸し渋りの問題があります。
本年四月の早期是正措置の実施を控え、民間金融機関において貸し出しに慎重さが見られる中、中小企業を初めとして経済を支える健全な企業に対する必要な資金供給が妨げられることがないよう適切な措置を講じてまいります。
このため、前述の金融システム安定化策に加えて、中小企業金融公庫等の政府系金融機関に新たな融資制度を創設するなどにより、信用保証分を含めて総額約二十五兆円の資金を用意し、その積極的な活用を促進してまいります。
第二に、規制緩和を初めとする経済構造改革の推進と新たな発展基盤の整備に努めてまいります。
規制緩和は、企業の自由な創意工夫を引き出すことによって新規事業、ベンチャー企業の創出を実現するなど、経済全体の体質強化につながるものであり、我が国が目指すべき民間活力中心の経済構造を構築する上で不可欠であります。
政府は、昨年十一月に規制緩和を中心とする経済構造改革等を柱とした「二十一世紀を切りひらく緊急経済対策」を取りまとめました。一例を挙げれば、情報通信分野について思い切った規制緩和を行うこととしたところであり、これが料金の低廉化、サービスの多様化等を通じて電気通信分野の国際競争力の向上につながるほか、情報通信の高度化は、さまざまな分野における生産性の向上と新規事業の創出を通じ、経済構造改革を推進する原動力となるものと考えております。
また、土地の有効利用に関連して、都心の商業地域等における容積率の抜本的緩和、農地転用の円滑化、市街化調整区域における開発許可の弾力化などの措置を講ずることとしたところであります。
さらに、介護サービスへの民間参入の促進、労働者派遣事業の対象業務の拡大、活力ある証券市場を目指した金融システム改革の推進など、広範な措置を講ずることとしたところであります。
政府としては、これらの経済対策の確実な実施に努めるとともに、経済構造の変革と創造のための行動計画の推進及び新たな規制緩和推進計画の策定を含め、今後とも、さらに経済活性化のための具体的方策について検討を続け、より一層強力に規制緩和を中心とする経済構造改革を推進してまいります。
また、我が国産業の革新的な展開を図り、二十一世紀の新しい経済社会の発展を実現するためには、独創的で幅広い産業のフロンティアを開拓する環境を整備することが必要と考えます。科学技術は新たな成長のフロンティアを生み出す源泉であります。創造的な研究開発を推進するため、産学官連携による研究開発環境の整備を進めるなど、科学技術創造立国を目指して科学技術の発展に重点的に取り組んでまいります。
さらに、研究開発力を有する将来有望なべンチャー企業を初めとする新規産業の創出は、良質な雇用機会の確保、本格的な高齢社会における我が国経済の活力維持の観点からも重要であります。このため、規制緩和の強力な推進に加えて、リスクマネーの供給、人材の育成と移動の円滑化、適切な知的財産権の保護の強化等に力を注いでまいります。
なお、経済構造改革とともに、財政構造改革も車の両輪として推進していく必要があります。財政構造改革を進めていくためにも経済の活性化が重要であり、また、財政構造改革は、中長期的には国民負担率の上昇の抑制、公的部門の簡素化等により、経済の活性化に資するものと考えます。
こうした構造改革後の我が国経済社会の将来展望につきましては、現在、経済審議会において審議を進めておりますが、透明で公正な市場経済システムのもとに環境に調和した社会を構築し、プラスの蓄積を未来に発展、継承していくとの方向で、本年六月を目途に取りまとめを行う予定であります。
第三に、企業にとって魅力ある事業環境を整備し、産業の空洞化に対応してまいります。
法人課税については、その水準を国際水準に近づけていくことが重要であり、十年度税制改正においては、企業の活力を高め、国際競争力を引き続き維持していくため、国、地方を合わせた法人課税の実効税率を約三・六%引き下げることとしております。また、金融のグローバル化等に対応し、東京をニューヨーク、ロンドンに匹敵する国際金融市場として発展させていくなどの観点から、有価証券取引税の税率を当面二分の一に引き下げるなど、金融・証券関係税制を改正することにしております。
さらに、我が国の制度や仕組みをより国際的に調和のとれたものとするため、政府の苦情処理機能を活用しながら諸外国からの要望にこたえていくなど、貿易・投資環境の整備に努めてまいります。
第四に、豊かで安心できる国民生活の実現であります。
我が国は、戦後の目覚ましい発展を経て、国民一人当たり国内総生産は平成九年度で三万三千ドル程度とOECD加盟国中のトップクラスとなっておりますが、国民が真に豊かさを実感できる経済社会の形成に向けて、なお一層の努力が必要であります。少子・高齢化の進展、日本的雇用システムの変貌などにより、国民生活の将来に不安の生ずることのないよう、社会保障制度の整備や雇用の確保に努め、経済活性化の成果が生活に反映される豊かで安心できる経済社会の構築を着実に進めていく必要があります。
我が国は、都市における地上過密、空中過疎の問題、都市と地方の間の過密過疎の問題を抱えております。これに対し、長期的な視野に立って、ゆとりある居住スペースやオフィススペースの実現、国民の行動範囲の拡大など、スペース拡大を図ることは、豊かな国民生活の実現とともに経済の活性化にも資するものと考えます。このような観点を踏まえ、昨年十一月の経済対策においては、土地の有効利用に資する規制緩和や郊外型住宅の取得促進等の措置を講ずることとしたところであり、今後ともその一層の推進を図ってまいります。
また、消費者の自立を支援し、消費者と企業が自己責任に基づいて行動できるような市場ルールを整備することが不可欠であります。現在急増している契約をめぐるトラブルに対応して、消費者利益の擁護・増進を図るため、消費者と事業者の間のあらゆる契約に関する具体的なルールの早期立法化に向けて努力してまいります。
さらに、国際化や高齢化の進展などの環境変化の中で、民間非営利団体、いわゆるNPOによる社会貢献活動が活発化しており、今後、活力ある豊かで安心できる社会を築いていく上で重要な役割を果たすものと考えられます。このため、NPOの活動を促進するための環境整備を積極的に図ってまいります。
第五に、我が国が世界とともに繁栄していくため、世界経済の持続的発展に貢献してまいります。
アジア諸国については、その長期的な成長力は依然として力強いと考えられますが、幾つかの国は通貨金融市場に不安定性が見られるなど困難に直面しております。
政府としては、IMFを中心とする枠組みの中でできる限りの支援を行うとともに、経済協力につきましても、アジア地域に重点を置き、経済インフラの整備、人材育成、中小企業、すそ野産業育成等を重視した支援を行い、この地域の発展を一層促進するよう努めてまいります。
また、地球温暖化防止京都会議の結果を踏まえ、経済の活性化の要請にも配慮しつつ、総合的な地球温暖化防止対策を講ずるなど、地球環境問題への対応に貢献してまいります。
平成九年度の我が国経済は、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動、金融機関の経営破綻、アジア地域における通貨金融市場の混乱等を背景とする企業や消費者の我が国経済の先行きに対する信頼感の低下等から大幅に減速いたしました。この結果、平成九年度の実質経済成長率は〇・一%程度となるものと見込んでおります。
このような状況に対し、政府としては、以上申し上げた金融システム安定化措置、規制緩和等の経済構造改革の推進、土地の取引活性化と有効利用、法人課税、有価証券取引税の引き下げなどの政策対応に加え、二兆円規模の特別減税を行うこととしております。
平成十年度経済は、駆け込み需要の反動等の要因がなくなるとともに、これらの政策対応の効果が徐々に本格化し、また、平成十年度予算及び関連法案を早期に成立させていただくことにより、企業や消費者の我が国経済の先行きに対する信頼感の回復が期待されることから、次第に順調な回復軌道に復帰してくると考えております。こうした考え方のもと、平成十年度の実質経済成長率は一・九%程度と見通しております。
もとより政府としては、今後とも内外の経済、金融の実情に応じて、経済活性化に向けて適時適切な経済運営に努めていくことは言うまでもありません。
以上、我が国が当面する主な経済運営の課題と基本的考え方について所信を申し述べました。
我が国経済は、二十一世紀に向けた新たな発展のために、従来の発想を抜本的に転換し、民間部門中心の強靱で活力に満ちた経済へとその体質を変えていくべき極めて重要な段階にあります。そして政府の果たすべき役割は、規制緩和等を通じて民間部門がその活力を最大限に発揮できるよう、経済の体質を改善強化し、競争を促進し、弱者の保護にも配慮しつつ自己責任の原則を貫徹する条件を整えるなど、発展のための基盤を整備することにあると考えます。
我が国は、これまでに蓄積してきた八千億ドルの対外資産、二千億ドルを超える世界一の外貨準備、千二百兆円の個人金融資産等の資本、教育水準の高い人的資源、高度な技術基盤やそれを支える文化的基盤など、二十一世紀における新たな発展を実現するための高い潜在的能力を有しております。構造的諸問題を克服し、将来世代のために、これらのプラスの蓄積を未来に向けて発展、継承していかなければなりません。歴史の転換点にあって、一時的に足踏みを経験しつつも、経済構造改革の必要性については国民的コンセンサスがあります。
我が国経済は、一時的に霧に覆われた状況にありますが、経済の実情に応じた各種の施策の総合的推進により明るい展望が開かれ、一たん回復軌道に乗れば徐々に力強い足取りの景気拡大につながっていくものと考えます。改革と展望が生み出す活力ある二十一世紀を目指して、国民の皆様が元気を出して仕事に取り組んでいただけるよう、私は微力ながら精いっぱい努力してまいります。
国民の皆様の御理解と御協力を切にお願い申し上げます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114215254X00719980216/28
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029・斎藤十朗
○議長(斎藤十朗君) ただいまの演説に対する質疑は後日に譲りたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114215254X00719980216/29
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030・斎藤十朗
○議長(斎藤十朗君) 御異議ないと認めます。
─────・─────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114215254X00719980216/30
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031・斎藤十朗
○議長(斎藤十朗君) この際、国家公務員等の任命に関する件についてお諮りいたします。
内閣から、
中央社会保険医療協議会委員に井原哲夫君及び森嶌昭夫君を、
航空事故調査委員会委員長に相原康彦君を、同委員に勝野良平君、加藤晋君、水町守志君及び山根皓三郎君を、
また、労働保険審査会委員に飯田康夫君及び千葉省三君を
任命することについて、それぞれ本院の同意を求めてまいりました。
これより採決をいたします。
表決は押しボタン式投票をもって行います。
まず、中央社会保険医療協議会委員、航空事故調査委員会委員長並びに同委員のうち水町守志君及び山根皓三郎君の任命について採決をいたします。
ただいまより投票を開始いたします。
〔投票開始〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114215254X00719980216/31
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032・斎藤十朗
○議長(斎藤十朗君) 内閣申し出のとおり、いずれも同意することに賛成の諸君は賛成のボタンを、反対の諸君は反対のボタンをお押し願います。──投票を終了してよろしゅうございますか。
これにて投票を終了いたします。
〔投票終了〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114215254X00719980216/32
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033・斎藤十朗
○議長(斎藤十朗君) 投票の結果を報告いたします。
投票総数 百九十二
賛成 百九十二
反対 〇
よって、全会一致をもっていずれも同意することに決しました。
─────────────
〔投票者氏名は本号末尾に掲載〕
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114215254X00719980216/33
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034・斎藤十朗
○議長(斎藤十朗君) 次に、航空事故調査委員会委員のうち勝野良平君の任命について採決をいたします。
ただいまより投票を開始いたします。
〔投票開始〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114215254X00719980216/34
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035・斎藤十朗
○議長(斎藤十朗君) 内閣申し出のとおり、これに同意することに賛成の諸君は賛成のボタンを、反対の諸君は反対のボタンをお押し願います。──投票を終了してよろしゅうございますか。
これにて投票を終了いたします。
〔投票終了〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114215254X00719980216/35
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036・斎藤十朗
○議長(斎藤十朗君) 投票の結果を報告いたします。
投票総数 百九十一
賛成 百七十六
反対 十五
よって、これに同意することに決しました。
─────────────
〔投票者氏名は本号末尾に掲載〕
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114215254X00719980216/36
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037・斎藤十朗
○議長(斎藤十朗君) 次に、航空事故調査委員会委員のうち加藤晋君の任命について採決をいたします。
ただいまより投票を開始いたします。
〔投票開始〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114215254X00719980216/37
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038・斎藤十朗
○議長(斎藤十朗君) 内閣申し出のとおり、これに同意することに賛成の諸君は賛成のボタンを、反対の諸君は反対のボタンをお押し願います。──投票を終了してよろしゅうございますか。
これにて投票を終了いたします。
〔投票終了〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114215254X00719980216/38
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039・斎藤十朗
○議長(斎藤十朗君) 投票の結果を報告いたします。
投票総数 百九十一
賛成 百五十
反対 四十一
よって、これに同意することに決しました。
─────────────
〔投票者氏名は本号末尾に掲載〕
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114215254X00719980216/39
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040・斎藤十朗
○議長(斎藤十朗君) 次に、労働保険審査会委員の任命について採決をいたします。
ただいまより投票を開始いたします。
〔投票開始〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114215254X00719980216/40
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041・斎藤十朗
○議長(斎藤十朗君) 内閣申し出のとおり、これに同意することに賛成の諸君は賛成のボタンを、反対の諸君は反対のボタンをお押し願います。──投票を終了してよろしゅうございますか。
これにて投票を終了いたします。
〔投票終了〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114215254X00719980216/41
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042・斎藤十朗
○議長(斎藤十朗君) 投票の結果を報告いたします。
投票総数 百九十二
賛成 百六十三
反対 二十九
よって、これに同意することに決しました。
─────────────
〔投票者氏名は本号末尾に掲載〕
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114215254X00719980216/42
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043・斎藤十朗
○議長(斎藤十朗君) 本日はこれにて散会いたします。
午後四時三十五分散会
─────・─────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114215254X00719980216/43
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