1. 会議録本文
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000・会議録情報
平成十年五月十八日(月曜日)
午後零時四分開議
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○議事日程 第二十七号
平成十年五月十八日
正午開議
第一 地方公共団体の議会の議員及び長の選挙
期日等の臨時特例に関する法律案(内閣提出
、衆議院送付)
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○本日の会議に付した案件
一、金融システム改革のための関係法律の整備
等に関する法律案、特定目的会社による特定
資産の流動化に関する法律案、特定目的会社
による特定資産の流動化に関する法律の施行
に伴う関係法律の整備等に関する法律案及び
金融機関等が行う特定金融取引の一括清算に
関する法律案(趣旨説明)
以下 議事日程のとおり
─────・─────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114215254X02719980518/0
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001・斎藤十朗
○議長(斎藤十朗君) これより会議を開きます。
この際、日程に追加して、
金融システム改革のための関係法律の整備等に関する法律案、特定目的会社による特定資産の流動化に関する法律案、特定目的会社による特定資産の流動化に関する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案及び金融機関等が行う特定金融取引の一括清算に関する法律案、以上四案について、提出者の趣旨説明を求めたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114215254X02719980518/1
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002・斎藤十朗
○議長(斎藤十朗君) 御異議ないと認めます。松永大蔵大臣。
〔国務大臣松永光君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114215254X02719980518/2
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003・松永光
○国務大臣(松永光君) ただいま議題となりました金融システム改革のための関係法律の整備等に関する法律案、特定目的会社による特定資産の流動化に関する法律案、特定目的会社による特定資産の流動化に関する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案及び金融機関等が行う特定金融取引の一括清算に関する法律案の趣旨を御説明申し上げます。
まず、金融システム改革のための関係法律の整備等に関する法律案につきまして御説明申し上げます。
本法律案は、我が国内外の社会経済情勢の変化に即応し、諸外国との調和を図りつつ、自由かつ公正で内外の利用者に資する金融システムを構築するため、証券取引法、証券投資信託法、銀行法、保険業法等関係法律の整備等を行うものであります。
以下、その大要を申し上げます。
第一に、投資者の多様化するニーズにこたえ、国民のよりよい資産運用を可能とするため、証券投資法人制度の創設や私募投資信託の導入のほか、金融機関に証券投資信託の受益証券の募集の取り扱い等を可能とする等の措置を講ずることとしております。
第二に、活力ある仲介活動を通じた魅力あるサービスの提供を可能とするため、証券業について現行の免許制を原則登録制に改めるとともに、その専業義務を見直し、幅広い業務を行うことを可能とするほか、株式売買委託手数料の完全自由化、保険会社と銀行及び証券会社との間の相互参入の促進等の措置を講ずることとしております。
第三に、投資者や資金調達者にとって多様な市場や取引の枠組みの利用が可能となるように、証券業協会が開設する市場を店頭売買有価証券市場と定義し、店頭登録市場の機能強化を図るほか、いわゆる私設取引システムを証券業として整理する等の規定整備を行うこととしております。
第四に、利用者が安心して取引を行えるように、企業内容の開示を連結主体に移行することや金融機関及び証券会社に説明書類の公衆縦覧を義務づけること等のディスクロージャーの充実、公正取引ルールの整備や銀行及び保険会社の子会社の範囲の明確化並びに破綻の際の備えとしての投資者保護基金及び保険契約者保護機構の創設等の措置を講ずることとしております。
次に、特定目的会社による特定資産の流動化に関する法律案及び特定目的会社による特定資産の流動化に関する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案につきまして御説明申し上げます。
これらの法律案は、証券の発行による資産の流動化が、資産保有者の資金調達の円滑化、投資商品の多様化等に資することにかんがみ、特定目的会社が業として特定資産の流動化を行う制度を確立するとともに、発行される証券の購入者等の保護を図ることにより、一般投資者の投資を容易にするものであります。
以下、その大要を申し上げます。
第一に、特定目的会社による特定資産の流動化に関する法律案につきましては、特定資産の流動化をその業務とする特定目的会社を、新たな法人として創設し、特定資産を裏づけとした有価証券を発行する仕組みを創設するとともに、投資者等の保護を図るため、コーポレートガバナンス機能を活用した措置等を講ずることとしております。
第二に、特定目的会社による特定資産の流動化に関する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案につきましては、特定目的会社が発行する優先出資証券及び特定社債券を証券取引法上の有価証券に位置づけるとともに、これらの取り扱いを証券会社のほか銀行、保険会社等の金融機関にも認める等の措置を講ずることとしております。
次に、金融機関等が行う特定金融取引の一括清算に関する法律案につきまして御説明申し上げます。
本法律案は、特定金融取引の決済の安定性の確保と取引の活性化を図ることにより、我が国の金融の機能に対する内外の信頼の向上等に資するためのものであります。
具体的には、銀行、証券会社等の金融機関を一方の当事者とするデリバティブ取引等について、当事者の一方が倒産した場合、当該取引に関する多数の債権債務を一括して清算した後の一本の債権を、破産手続または会社更正手続上の債権として取り扱う旨を規定することにより、いわゆる一括清算ネッティング契約の法的有効性を明確化することとしております。
これらの法律案は、金融システム改革の一環として、金融の基本的枠組みの整備を図るものであります。
以上、四法律案につきまして、その趣旨を御説明申し上げた次第であります。(拍手)
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114215254X02719980518/3
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004・斎藤十朗
○議長(斎藤十朗君) ただいまの趣旨説明に対し、質疑の通告がございます。順次発言を許します。笹野貞子君。
〔笹野貞子君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114215254X02719980518/4
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005・笹野貞子
○笹野貞子君 私は、民主党・新緑風会を代表いたしまして、ただいま趣旨説明のありました金融システム改革のための関係法律の整備等に関する法律案外三案に対し、橋本総理並びに松永大蔵大臣に対して質問を申し上げます。
まず、我が国経済の現状認識についてであります。
戦後最悪とも言われる今回の政策不況は泥沼化の様相を呈しており、まさにデフレスパイラルに陥った感じがあります。本年四月の卸売物価は前年比二・三%の下落と実に十年九カ月ぶりの下げ幅となり、消費者物価の上昇率も急速に低下しております。また、広義のマネーサプライも収縮しており、これが企業収益を圧迫し、失業率は過去最悪の水準となっています。このような戦後最悪の経済環境下において金融ビッグバンを強行することは少なからぬ混乱を生じかねませんが、そのような懸念はないのでしょうか。とりわけ、雇用面に大きな影響を与えかねないと考えますが、経済の現状認識と金融ビッグバンが与える経済への悪影響について、総理の見解を求めたいと思います。
次に、金融不祥事についてであります。
二度にわたる証券スキャンダルの発覚等、昨年来、金融関係に絡む不祥事が絶えません。大蔵省の現職の金融検査官が、複数の大手銀行から検査に絡んで過剰接待を受けたとして東京地検特捜部に逮捕され、また、五十年ぶりとも言われる大蔵省キャリアの逮捕に至っております。九五年に発覚した元東京協和信組理事長による過剰接待に絡んで田谷元東京税関長、中島元財政金融研究所長が大蔵省を辞任したのを初めとして、大蔵省OBである井坂道路公団理事の政府保証外債をめぐる不祥事の発覚等々、金融機関からの接待を当然視してきた大蔵省の構造的腐敗と言っても過言ではありません。まさに言語道断であります。
そればかりか、前代未聞とも言うべき日本銀行幹部職員の汚職事件が摘発され、日銀総裁、副総裁が辞任に追い込まれ、我が国の金融システムそのものに対する内外の信用を大きく失墜させたのであります。
大蔵省、日銀は過剰接待問題に関して先般関係者の処分を発表しましたが、内部調査自体が徹底を欠き、極めてあいまいな処分だと言わざるを得ません。それ以上に問題なのは、これらの事態を放置してきた政府の政治責任が極めて重大だということであります。
総理は、一連の大蔵省、日銀の不祥事に対してどのように責任をとり、また、今後、大蔵省、日銀当局と金融機関との癒着関係をどのように断ち切っていこうとするのか、また、内外で失われた金融システムに対する不信感をどのように払拭していこうとするのか、あわせて御見解を伺っておきたいと思います。
金融ビッグバンを遂行するに際しては、取引の自由化と並んで公正取引ルールの確立がなされなければなりません。とりわけ、日銀の幹部職員がインサイダー取引まがいの容疑をかけられたことは極めて重大であり、このようなインサイダー体質を根絶しない限り、公正な市場競争を期待することは到底不可能なのであります。今回の法案でもインサイダー取引の罰則規定を強化する措置が一応はとられていますが、アメリカの強力な制裁措置と比べれば、まだまだ手ぬるいものだと言わざるを得ません。
例えば、アメリカではインサイダー取引に対しては、十年以下の禁固刑に加えて、不当利益の三倍もの民事制裁金が科せられると規定されています。しかし、我が国では三年以下の懲役刑にとどまっております。さらに、監督庁への虚偽報告違反についても、一年の懲役刑がようやくのことで導入されましたが、アメリカでは三十年以下の禁固刑が規定されています。金融自由化の先進国アメリカでは、自由な金融取引を認めていますが、法律違反に対しては非常に厳しい罰則が規定されていることを我が国も大いに参考とすべきではないでしょうか。ビッグバンを遂行するにはアンフェアな市場であってはならず、公正取引ルールを守らない金融犯罪に対しては、一層の罰則強化が肝要なのであります。総理、大蔵大臣、この点について御見解をお伺いします。
次に、東南アジアを中心とした今回の金融危機が今後の我が国経済、さらには世界経済に大きな影響をもたらしてくるのではないかということであります。とりわけ、邦銀の新たな不良債権の発生ということが懸念されますが、どうでしょうか。
我が国の株式市場では、景気の失速とあわせ、今回の通貨危機で銀行等のアジア向け投資が、多額の不良債権化することの不安から、日経平均株価は低迷した状態が続いています。邦銀のアジア向け債権の残高は約二千七百億ドル、約三十五兆円にも達しようとしておりますが、これらの融資や投資が焦げつき、金融システス不安が再燃することが心配されますが、どのような見通しを持っているのでしょうか。
また、アジアの通貨危機に対して我が国はどのように対応していくのか、総理の御見解を伺いたいと思います。
次に、ビッグバンを成功に導いていくためには、金融・証券税制の抜本的な見直しが不可欠であります。金融取引のグローバル化にあわせて、いわゆるグローバルスタンダードと整合性のとれた税制に改革しなければ、資金が海外へシフトして我が国市場の空洞化が生ずる懸念があり、現にロンドン市場における日本株の売買高は東京市場の二割前後にまで急増しているのであります。
私は、有価証券取引税、取引所税の即時撤廃等とあわせて、個人投資家を証券市場に回帰させるような税制上のインセンティブ、すなわち、欧米諸国のようにキャピタルゲインの少額非課税制度を設け、個人投資家を株式市場に呼び戻す税制が必要だと考えますが、大蔵大臣の見解を求めたいと思います。
次に、損害保険料率の自由化問題についてであります。
政府案によりますと、本年七月より、自動車保険や火災保険等について損害保険料率算定会の保険料率の使用義務が廃止され、年齢別、地域別に異なる保険料率を設定した新しい保険が販売されるようになります。しかし、自由化も時とすれば消費者の利益に直結しない場合もあります。現に保険料が自由化されているアメリカにおいては、若年層の保険料率が高騰し、さらには保険契約の引き受け拒否も加わって無保険車が急増し、大きな社会問題になっていると聞いております。無保険車の数は実に一千七百万台にも及んでおり、イギリスでも同様のケースが報告されています。これでは相互扶助という保険システムそのものを形骸化させ、国民生活に大きな不安要因を植えつけかねないと懸念いたしますが、大蔵大臣の所見を伺っておきたいと思います。
次に、円の国際化の問題であります。
橋本総理は、金融システム改革の必要性についてこう発言されております。私が金融システム改革を皆様方にお願い申し上げている最大の理由の一つは、欧州で新通貨ユーロが誕生しようとしている、国際基軸通貨が二本立てになる、そうした中において円をローカルカレンシーにしたくないという思いがございますと。私もこの点については同感でありますが、政府はこれまで円の国際化に努力してきたとはとても言えないと思います。
円が一つの国際通貨として内外でもっと活用されるよう、短期金融資産の市場拡大など円の国際性を高める工夫が足りないのは問題であり、とりわけ、政府短期証券の全額日銀引き受けの問題は早急に是正すべきではないかと考えております。
我が国におきましては、戦時中に国債の乱発でインフレになった苦い経験を生かすために、戦後は財政法で国債の日銀引き受けが禁止されることとなりました。しかしながら、政府短期証券につきましては明確な規定が設けられていません。とりわけ、外国為替資金証券については国債と同様に借りかえが行われており、平成八年度決算ではその残高は約三十兆円にも達しているのであります。
円の供給をふやす手段として現在行われている政府短期証券の日銀引き受けを改め、市中消化方式に変えていくことを検討すべきではないでしょうか。さらには、投資対象として円資産の魅力を高めるために、非居住者が保有する国債の利子源泉課税のあり方についても見直すべきだと考えますが、いかがでしょうか。総理の御見解をお伺いします。
次に、ビッグバンが真に利用者サービスの向上につながっていくのかという点であります。
ビッグバンは金融機関同士の競争を結果として要請することにつながり、弱肉強食の世界に足を踏み入れることとなりますが、金持ち優遇政策へのシフトが懸念されるところでもあります。
外資系の金融機関においては、一定額以上の預金をしなければ年に一万円程度の口座管理料がかかっており、大口の顧客のみが優遇されたサービスを受け、小口の顧客はかえってコスト増につながることも考えられます。株式売買手数料の自由化措置についても、大口顧客の手数料は引き下げられるものの、逆に小口取引の手数料は引き上げられかねません。ビッグバンによる自由競争の結果として、老人や若年層、零細企業など預金弱者とも言うべき人々には金融サービスがかえってコストのかかるものになりかねませんが、総理の御所見をお伺いしたいと思います。
最後に、金融ビッグバンに伴う消費者保護方策の必要性について伺います。
ビッグバンの進展により、今後続々と登場してくるであろう新しい金融商品に対しては、多くの国民が戸惑いを感じることと思います。イギリスのビッグバンの場合には、その後爆発的に金融商品が増加し、現在実に三万種類に及ぶ金融商品があるとさえ言われております。しかし、我が国においては、変額保険やワラントを代表とする新しい金融商品の不当勧誘によって、広範な消費者被害が生じていることを見逃せません。
現行制度のまま、リスクの高い新しい金融商品の洪水の中に消費者が置かれた場合、従来とは比較にならないくらいの重大な被害が生ずることが大いに懸念されるのであります。これを自己責任の名のもとに、生じた損害を一方的に消費者にしわ寄せすることは絶対に許されません。今回のビッグバン関連法案において、金融サービス法の制定が棚上げされたままの状態にあることは納得できないのであり、政府は直ちに金融サービス法の制定を行うべきなのであります。
国民は、もはや政府の発言を信頼していません。日産生命が突然の経営破綻に陥ったとき、当時の三塚大蔵大臣は、契約者は全面的に保証されますと発言されました。ところが、実際は、多くの契約者が減額され、中には七二%も年金額が減額されたケースが報告されています。こうしたこともあり、日産生命の経営破綻以降、保険契約の解約が急増しているのは周知のとおりであります。ビッグバンを遂行すると同時に、経営情報の徹底した公開と、国民に信頼されるセーフティーネットの構築が求められているのであります。この観点から見ると、契約者保護基金の創設も十分とは言えず、ソルベンシーマージン比率の公開も法律上義務づけられていないのは問題であります。
最後に、金融サービス法の早期制定と生命保険会社のセーフティーネットの信頼性の確保、ディスクロージャーの徹底について、総理の御見解を求めまして、私の質問を終わります。(拍手)
〔国務大臣橋本龍太郎君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114215254X02719980518/5
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006・橋本龍太郎
○国務大臣(橋本龍太郎君) 笹野議員の御質問にお答えを申し上げます。
まず、経済の現状認識についてお尋ねがございました。
我が国経済の現状を見ますと、昨年末以来の経済の先行きに対する著しい不透明感には落ちつく兆しも見られるものの、最終需要の停滞の影響が生産や雇用等の実体経済にまで及んでおり、景気は停滞し、一層厳しさを増している、そう考えております。
こうした中で決定いたしました今回の総合経済対策は、既に実施している財政・金融両面からの諸施策等と相まって、我が国経済を次第に順調な回復軌道に乗せていく、そう見込んでおりまして、我が国経済がデフレスパイラルに落ち込んでいくとは考えておりません。
また、現在の経済環境のもとにおいては、金融システム改革を強行すべきでないという御指摘をいただきました。
我が国の金融市場は空洞化が懸念されており、欧米市場の革新やユーロの誕生を踏まえれば、これ以上改革をおくらせることはできないと思います。金融システム改革は、個人金融資産のより有利な運用や成長産業への円滑な資金供給を図るための金融市場の抜本的改革であり、市場の活性化を通じて、我が国経済の活性化、ひいては雇用の安定に資するものだ、そのように考えております。
また、一連の不祥事と金融システムに対する不信感に関して、おしかりの言葉がありました。
今般の不祥事の発生につきましては、内外からの金融システムに対する信頼を損なうものとして極めて遺憾であり、これを厳粛に受けとめ、十分に反省しなければならないと考えております。現在、客観的かつ公正なルールに基づく透明性と信頼性の高い金融システムを構築すべく、その改革に取り組んでおります。
罰則についてもお尋ねがございました。
金融システム改革においては、公正かつ透明な市場を構築することが何より重要という観点から、さきの臨時国会における金融関係全般にわたる罰則強化に加え、今回の法案におきましても、不公正取引に対する厳格なペナルティーを整備いたしております。
また、アジアの金融危機による邦銀の不良債権の現状と今後の見通しについてのお尋ねがございました。
邦銀のアジア向け債権は総資産の約三%程度でありまして、また、信用リスク等に配慮した融資を行っていることを踏まえますと、今般のアジアの問題が邦銀の経営に直ちに重大な影響を与えたり、金融システム不安の再燃につながるとは現時点考えておりません。
また、アジア通貨危機に対する我が国の対応についてもお尋ねがございました。
我が国は、これまでも世界最大規模の約四百二十億ドルの支援を行っております。また、IMFを中心とした国際的支援の枠組みであるマニラ・フレームワークの策定におきましても積極的な役割を果たしてまいりました。今後とも、関係各国や国際機関と密接に連携しながらアジアの通貨の安定に十分貢献していく考えであります。
また、円の国際化についてのお尋ねもございました。
円資産の運用、調達の場としての東京市場の利便性を高めることが、円の国際性を高めるために必要との考えから、短期金融市場の整備等に努めてまいりました。
また、政府短期証券につきましては、日銀引き受けが財政法上で許容されておりまして、現状で具体的な支障が生じているとは考えておりません。いずれにしても、政府短期証券のあり方は、短期金融市場、国庫制度、財政制度等の総合的な観点から検討されるべき問題だと思っております。
なお、国債に係る非居住者の利子源泉徴収の問題でありますが、現在の原則を変えることは慎重でなければならないと思いますが、いずれにせよ、金融課税につきましては、市場環境整備を含めた適正課税担保のための措置とあわせて検討を行っていく必要があると考えております。
また、金融システム改革後の金融サービスについてもお尋ねをいただきました。
この改革の実施によりまして、個人利用者サイドに立ったきめの細かいサービスなど、多様な金融サービスが提供されるようになりますことから、利用者である国民は、みずからのニーズにより適合したものを選ぶことが可能になると考えております。
最後に、金融サービス法と消費者保護についてのお尋ねがございました。
今般の金融システム改革法案では、利用者保護や取引の公正性確保に十分な配慮が行われていると考えております。いわゆる金融サービス法につきましては、中期的な視点に立って幅広く理論的な検討を行っております。
また、生保のセーフティーネットにつきましては、保険契約者保護機構を創設し契約者保護の充実を図り、ディスクロージャーについては、罰則によりその義務づけを担保し、経営の透明性を高めることとしております。
残余の質問につきましては、関係大臣から御答弁を申し上げます。(拍手)
〔国務大臣松永光君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114215254X02719980518/6
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007・松永光
○国務大臣(松永光君) 笹野議員にお答えいたします。
まず、法令違反に対する罰則の点でございますが、総理から御答弁がありました。
一点だけ追加させていただきますと、今回の法律案においては、インサイダー取引や相場操縦等の不公正取引により得た財産をすべて没収・追徴することができる等の措置を講じておるところでございます。
株式譲渡益に関する課税のあり方についてのお尋ねでございましたが、現行の株式等譲渡益課税は、源泉分離選択課税方式が採用されておりまして、十分に優遇されたものとなっております。こうした中で、株式投資に新たな少額非課税制度を設けることは、税負担の公平の観点から問題が大きい、こう考えているところであります。
次に、損害保険料率の自由化に関するお尋ねですが、大蔵省としては、算定会制度改革による料率の自由化後においても、保険商品や料率に関し、法令に基づく審査などを通じ必要最小限の監督を継続し、保険の安定供給等に支障が生じないよう、適切に対応してまいる所存であります。(拍手)
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114215254X02719980518/7
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008・斎藤十朗
○議長(斎藤十朗君) 牛嶋正君。
〔牛嶋正君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114215254X02719980518/8
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009・牛嶋正
○牛嶋正君 私は、公明を代表して、ただいま議題となりました金融システム改革のための関係法律の整備等に関する法律案外三法案について、総理並びに関係大臣に質問するものであります。
四月一日より新日銀法及び改正外為法が施行され、我が国は大きく国際化へ向けて第一歩を踏み出しました。しかし、国内金融は今もって金融不安は払拭されず、これが我が国経済の低迷の一因になっております。
金融システムの安定化を進めるに当たって、大きく分けて三つの目標が想定されます。
その一は、金融機関の連鎖的破綻を回避し、我が国の金融市場が危機的状態に陥ることを何としても防ぐという短期的目標であります。
その二は、金融機関の本来の役割である融資機能をできるだけ強化し、地域経済に十分に寄与するだけの体力を個々の金融機関が身につけるといった中期的目標であります。
そして、第三の目標は、二十一世紀に展開される経済運営に適合した安定した金融システムの構築を目指し、健全な財政構造の確立と相まって、二十一世紀における経済、財政の安定運営に寄与するという長期的目標であります。
住専問題から始まって、本年二月の金融システムの安定化のための緊急対策までの一連の金融安定化策は、このうちの短期及び中期に対する対策が中心でありました。それによって、昨年の秋の大手金融機関の相次ぐ破綻を通して、我が国の金融市場を襲った危機的状態からようやく脱したと言えますが、中期的目標については、三十兆円の公的資金の導入にもかかわらず、依然として貸し渋りは続いており、十分な成果が得られているとは言いがたいのであります。総理は貸し渋りの是正に努めると言ってこられましたが、貸し渋りはどう是正されているのか、お尋ねいたします。
今、金融システムの安定化を着実に進め、もって、融資機能を十分に備えた金融システムの構築に当たって、その基本が、個々の金融機関が思い切ったリストラに努め、不良債権の処理に当たり、もって経営基盤の強化に努めることにあるとすれば、行政が進めるべき安定化策はあくまでリストラ型安定化策に徹するべきであります。
しかるに、三十兆円の公的資金の導入を伴う今回の緊急措置も含めて、これまでの我が国の金融行政は、個々の金融機関に手を差し伸べ過ぎてきたと言わざるを得ません。すなわち、いまだに護送船団方式とか、救済型と呼ばれる安定化策の域を出ていないのであります。そのため、自己資本比率は少しは改善されてきたが、個々の金融機関の経営基盤は、不良債権の処理がおくれていることもあり、着実に強化されているとは言いがたいのであります。
今後、ビッグバンの進展に対して、経営基盤の弱さが目立つ我が国金融機関は、果たしてそれに対応できるのでしょうか。総理の御所見をお伺いします。
さて、二十一世紀まであと二年足らずとなった今の時点を考えるとき、金融システムの安定化策を進めるに当たって、当然長期的目標を視野に入れておかなければなりませんが、これまでの安定化策では、この点が欠けていたため、中期的目標のための安定化策を進める中で、長期的目標から見て問題を残すという結果が幾つか指摘されるのであります。
例えば、金融機関の貸し渋りに対して、政府関係機関を通して中小企業への融資枠の拡大がなされていますが、民間金融と公的金融のバランスを考えた場合、後に問題を残すことも懸念されます。すなわち、政府関係機関の融資枠の拡大によって、公的金融の民間金融に対する補完という地位が崩れるとき、我が国の金融システムはグローバルスタンダードから一層乖離することになるのではないかと考えますが、この点に関する総理の御見解をお尋ねします。
二十一世紀に展開される経済運営に適合した安定的な金融システムの構築に当たって重要なことは、我が国の現在の金融システムの特徴をある程度残しながら、グローバルスタンダードに適合したシステムをどのように構築していくかにあると考えます。
現在の我が国の金融システムは、やや間接金融に偏りがあり、また、公的金融のウエートが諸外国に比べて高くなっていることは明らかであります。そのことが長期資金及び短期資金の融資に当たって資金の流れをかなり悪くしており、そのため、金融システムは資源の効率的利用の実現に必ずしも寄与してこなかったのであります。我が国の金融市場における直接金融と間接金融及び長期金融と短期金融のあり方について、大蔵大臣に今後の方向づけをお尋ねします。
まさに、今回の金融システムの改革法は、長期的目標の実現を目指して立案されたプランではありますが、この改革案を実行することだけで、二十一世紀の経済運営を支えることのできる金融システムの構築が可能かについては、若干の疑問が残ります。
一般的に見れば、短期金融は間接金融によって、また、長期金融は直接金融によってその資金の流れが調整されるものでありますが、我が国では直接金融が十分に育っていないため、長期金融のかなりの部分を間接金融が受け持つという形をとっております。さらに、そこに公的金融が割り込むという形をとっているため、公的金融はもはや民間金融の補完という役割を超えております。そして資金が金融市場全体で供給過剰の状態が続くとき、民間金融と公的金融の競争関係が強まり、これが金融不安定の一要因となっていることは確かであります。
このことを考慮するとき、今回の金融システム改革関連法案において、公的金融に対する改革案ないしは見直し案が含まれていないことは、二十一世紀の経済運営に適合した金融システムの構築を目指すに当たって、最も重要な部分が脱落していると言わざるを得ないのであります。なぜ、公的金融の見直しが欠落したのか、大蔵大臣にお伺いします。
このように、金融システム全体の基本的枠組みについての確たるビジョンが欠ける場合、金融システム改革法では証券取引法、証券投資信託法、銀行法、保険業法等の改正を通じて、金融システムの分野ごとの改革はある程度進むかもしれませんが、それによって、かえって金融システムの基本的枠組みでの偏りがさらに強化され、結果的に、一層バランスを失った不安定な金融システムができ上がってしまうのではないかと懸念します。この点についての総理の御所見をお伺いします。
例えば、直接金融の立て直しを図るために、証券取引法や証券投資信託法の改正によって、公正で信頼の持てる市場の整備を進めることも必要ではありますが、それ以上に、個人の株式保有率をもっと高めていくことが重要であって、だれもが魅力を感じる投資対象を用意していくとともに、イギリスがビッグバンに対応し、預金者や大衆投資家を保護するために制定してきた、不利益情報の開示義務やディスクロージャー制度等を内容とする金融サービス法を我が国でも準備すべきであると思いますが、総理の見解をお伺いします。
このように、個々の分野におけるシステムの改革や市場の整備だけにとどまらず、公的金融や農水産業の信用事業も含めたより総合的な改革案を作成し、二十一世紀に目指す金融システムのビジョンの実現に努めなければ、千二百兆円にも上る個人金融資産の有効な運用はおぼつかなく、海外への資金の流出を食いとめることはできないものと考えます。最後に、この点についての総理の見解を求めて、私の質問を終わります。(拍手)
〔国務大臣橋本龍太郎君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114215254X02719980518/9
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010・橋本龍太郎
○国務大臣(橋本龍太郎君) 牛嶋議員にお答えを申し上げます。
まず、今般の金融システム安定化策により、貸し渋りが是正されたかとのお尋ねがございました。
残念ながら、なお問題を残しております。今般の対策等により、金融システム不安が遠のいたこともありまして、貸し渋りの状況が緩和していくことを期待しておりますが、いずれにせよ、金融機関の融資動向につきましては、引き続き注視してまいります。
次に、ビッグバンへの我が国金融機関の対応についてのお尋ねがございました。
不良債権問題の早期処理を図りながら、金融システム改革を推進することは緊要な課題でありまして、この改革の実施による商品、業務等の自由化などを通じまして、各金融機関がみずからの経営判断に基づき、得意分野への重点化など、おのおのの努力を払うことによりまして、適切に対応していくものと期待をいたしております。
次に、政府系金融機関について御意見をいただきました。
政府系金融機関は、新たな政策課題に対応する一方におきまして、民業補完という観点から民間で対応可能なものは対象から除外する等の見直しを行ってまいりました。こうした流れの中、平成九年の特殊法人の見直しにおきましては、機関そのものの統廃合等、抜本的な見直しを行うこととしたところでございます。
次に、金融システム全体の基本的枠組みについてのビジョンが欠けているのではないか、そういう御指摘をいただきました。
今回の改革は、フリー、フェア、グローバルというその統一的な理念のもとに、我が国の金融システム全般を総合的に改革しようとするものでありまして、改革の遂行により、バランスのとれた安定した金融システムが実現するものと考えております。
また、情報開示や金融サービス法についてお尋ねをいただきました。
今般の金融システム改革法案では、ディスクロージャーの充実や公正取引ルールの整備拡充等によりまして、利用者保護や取引の公正性確保について十分な配慮が行われているものと考えております。また、いわゆる金融サービス法につきましては、中期的な視点に立って幅広く理論的な検討を行っているところであります。
最後に、より総合的な改革案を立案すべきではないかというお尋ねをいただきました。
今回の改革は、我が国の金融システム全般を可能な限り総合的に改革しようとするものでありまして、改革の実現により、国民によりよい資産の運用と資金調達の道を開き、我が国の金融資本市場を活性化させることになると考えております。
残余の質問につきましては、関係大臣から御答弁を申し上げます。(拍手)
〔国務大臣松永光君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114215254X02719980518/10
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011・松永光
○国務大臣(松永光君) 牛嶋議員の御質問にお答えいたします。
今後の直接金融と間接金融及び長期金融と短期金融のあり方についてのお尋ねがございました。
国民によりよい資産運用の道を開くことを目指す今回の改革により、直接金融の役割が大きくなることを通じて、長期、短期を含む我が国の金融全体が、効率的な資源配分を実現するよりバランスのとれたものになると考えております。
次に、公的金融についての、また長期金融についてのお尋ねがございましたが、政府系金融機関は、民間金融では対応困難な長期金融等を中心に対応することとし、同時に民業補完の観点から民間で対応可能なものは対象から除外する、こういった見直しを行ってきたところであります。
こうした流れの中で、昨年、特殊法人の見直しにおいては、機関の統廃合等根本的な見直しを行うこととしておるところでございます。(拍手)
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114215254X02719980518/11
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012・斎藤十朗
○議長(斎藤十朗君) 星野朋市君。
〔星野朋市君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114215254X02719980518/12
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013・星野朋市
○星野朋市君 私は、自由党を代表して、ただいま議題となりました金融システム改革のための関係法律の整備等に関する法律案外三法案について、総理並びに関係大臣に質問をいたします。
四月一日より改正外為法が施行され、我が国の金融状況が一変しようとしています。金融業界は、外国金融機関との間で真の国際競争力が問われようとしております。もう既にビッグバンは始動したのであります。しかし、それに対し、橋本内閣のビッグバンに対する政策は積極的な戦略性が全くありません。
まず第一に、バブル崩壊により、我が国経済がこうむった痛手はまだいえておりません。加えて、橋本内閣のとった九兆円国民負担増加が深刻なダメージをもたらしております。
公的資金による資本注入を行ってビッグバンを乗り切ろうなどというのは、フリー、フェア、グローバルのいずれにも該当しない護送船団行政の復活であり、何の解決にもならないびほう策であります。不良債権問題は早期に顕在化させ、一刻も早く処理しなくてはなりません。隠ぺいしていては内外からの信用回復などできるわけがないのであります。
まず、不良債権問題を解決し、次にビッグバンを成功させ、その上で財政再建を実現するという手順を踏むことなく、不良債権問題も未解決のまま、財政デフレ政策と早期是正措置を強行し、我が国経済を先行き見通しの立たない深刻な状態に陥らせています。
去る財政・金融委員会におきまして、私が総理に、あなたはビッグバンを高らかに唱えられた、そういう質問をいたしましたが、総理は、私は高らかに唱えていない、おずおずと言い出したと、こういうふうに言っておりますが、この総理にビッグバンを行う資格などありません。総理の御所見をお伺いいたします。
以下、順次お伺いいたします。
金融システム改革法では、保険業に早期是正措置を導入しようとしております。異常な超低金利が既に三年目に入っております。超低金利政策もせいぜい一年ぐらいであればカンフル剤としての効果がありますが、もはや深刻な弊害をもたらすのみであり、金利や年金に頼る人たちを圧迫し、年金基金を破綻させ、税収をも落ち込ませ、経済をゆがめているのであります。
中でも、民間生命保険業の経営が圧迫されていることは論をまちません。政府は、銀行の過ちを保険でも繰り返すおつもりでしょうか。株価も低迷する中、早期是正がもたらす影響をどのように考えておられるのか。
また、透明性、公平性を確保する観点から、政令事項である早期是正発令基準、ソルベンシーマージン算定基準を法案審議に先立って明らかにするべきであります。これらの基準を国会で審議することが重要であります。
以上について、大蔵大臣の答弁を求めます。
次に、昨年来、金融機関の破綻が相次ぐ中、保険契約者が不安感、不信感を持つのは当然のことであります。保険契約者の保護に対するスキームが未整備であったことが、それを助長している感は否めません。しかしながら、既に金融ビッグバンの第一波が始まっている現時点において、保険会社が保険契約者保護機構の負担金に果たして耐え得るでしょうか。
また、金融システム不安がいまだ払拭されない中、十年間に四千六百億円の資金は果たして十分な額と言えるのか。基金の不足分については二〇〇一年三月までの間、政府保証と日銀借り入れによるとしておりますが、これも財政負担につながりかねません。
また、保険業は直接決済システムにリンクしてはいないものの、今後、直接金融市場が拡大していく中、保険業の破綻は金融全体にどのような影響を与えると考えておられるのか。大蔵大臣の答弁を求めます。
次に、三洋証券、山一証券の破綻に見られるよう、証券会社が多額の負債を抱えて倒産するのは異常な事態であります。本来、証券会社の業務は顧客の注文の執行であり、証券会社の資産はリスク負担内にとどめておけば巨額の負債を抱えることなどありません。破綻した証券会社は本業でなく、ノンバンク等の子会社や簿外債務がその原因であります。
今回、連結ベースにディスクロージャー制度を見直すこととすると同時に、証券会社の自己資本比率規制を見直すこととしておりますが、証券会社の自己資本比率のみで、早期是正効果はあるのでしょうか。大蔵大臣の答弁を求めます。
次に、SPCについてお伺いいたします。
不動産の証券化については、かねてより我々も主張していたことであり、橋本内閣の対応は遅過ぎると言わざるを得ません。
しかしながら、与党自民党の総合経済対策基本方針によれば、特別目的会社が発行する証券の流通市場育成のために郵貯・簡保など公的資金を使用するとしており、これは言語道断であります。
SPCは不動産その他の証券化、流動化に資するものではありますが、しかし、公的資金でSPCの証券を買い上げるのであれば、公正な市場育成の観点からまさにへんぱな対応と言わざるを得ません。マーケットはその参加者が魅力を感じて初めて投資を行い、成立します。公的資金により無理やり需要を創出して、それが果たして市場育成になるとお考えなのでしょうか。橋本総理の明確な答弁を求めます。
ビッグバンを迎える政策順序。今行うべきは不良債権の一掃、金融システム不安につながらないようセーフティーネットの強化、改革の痛みを吸収するための経済対策と構造改革であり、これがビッグバンを迎える正しい順序であります。
口先介入と公的資金による市場操作でビッグバンをスタートさせた橋本内閣には、これらの視点が一切なく、全く支離滅裂であり、悔いを千載に残すことは間違いありません。
総理の御所見をお伺いして、私の質問を終わります。(拍手)
〔国務大臣橋本龍太郎君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114215254X02719980518/13
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014・橋本龍太郎
○国務大臣(橋本龍太郎君) 星野議員にお答えを申し上げます。
まず第一に、不良債権問題が未解決のままで、金融システム改革を強行すべきではないという御意見をいただきました。
しかし、金融システム改革につきましては、我が国金融市場の空洞化が懸念されており、欧米市場の革新あるいはユーロの誕生など、国際金融市場が大きく変貌している状況を考えれば、これ以上我が国の金融システムの改革をおくらせることはできないと思います。
また、不良債権問題につきましては、さきの総合経済対策におきまして、不良債権問題を本質的に処理するための総合的な施策を決定しているところであります。これは、さきに述べました金融システム改革と相まって経済の活性化に貢献する金融システムを構築するものであります。
なお、財政構造改革の推進等のさまざまな施策、これは少子・高齢化の進展という我が国の構造変化や危機的な財政状況等にかんがみれば必要な措置であり、適切なものと考えております。
また、公的資金のABSへの運用のお尋ねがございました。
政府の総合経済対策では、郵貯・簡保資金の運用対象を多様化して、預金者、加入者の利益に資するために、安全確実なABSに対する運用について平成十一年度に向けて検討することといたしております。郵貯・簡保が資金運用対象としてABSを購入することは、市場育成に反するものではないと考えております。
また、現在行うべき経済政策についての御指摘がございました。
今般、政府が行おうとする総合経済対策は、当面の景気回復のための内需拡大と、景気回復の足かせとなっております不良債権問題の本質的な処理を目指すものであります。同時に、私自身がやり遂げようと強く決意をしている構造改革を見据えて、それに沿う内容といたしております。
また、金融システム安定化対策は既に講じてきているところでありますが、こうした施策を実施することによって我が国の潜在的な力を発揮させて、個人と企業が主役となる力強い経済を取り戻すべく努力をしてまいります。
最後に、ビッグバンを迎える政策順序等についての御意見をいただきました。
先ほどもお答えをいたしたことでありますけれども、第一に、構造改革に沿う社会資本の整備と減税によって内需をつくり出す。第二に、この十年、我が国経済に重くのしかかってきた不良債権問題の根本的な処理を進めるためにさまざまな仕組みをつくっていく、第三に、企業や個人の活力や創意工夫が生かされるような力強い我が国経済とするために、金融システム改革を初めとする構造改革を実行する、こうした基本的な考え方に基づいて政策運営を行っておるつもりでありまして、御批判は必ずしも当たっておらないと私は思っております。
残余の質問につきましては、関係大臣からお答えをいたします。(拍手)
〔国務大臣松永光君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114215254X02719980518/14
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015・松永光
○国務大臣(松永光君) 星野議員の御質問にお答えいたします。
まず、保険業に対する早期是正措置等に関するお尋ねでありますが、この措置は、よく御存じのことでありますけれども、客観的な指標に基づき早目早目に経営改善を求めていくものでありまして、これによって保険会社の経営の安定性に資すると、こう考えているところであります。また、その発動の基準については、今後、透明性等にも留意しながら検討を進めてまいりたいと考えております。
なお、ソルベンシーマージン算定基準については、平成八年度から施行されておる現行保険業法の関係省令等で既に明らかにされておると考えておるものでございます。
次に、保険契約者保護についてのお尋ねでありますが、保険契約者保護機構の必要資金額、保険会社の負担額については、新たな制度に対する保険契約者の信認の確保という側面とともに、保険会社の経営の健全性の確保という側面、この双方を考慮した上で提示させていただいているものであります。
また、保険会社は金融機関の一角を占めるものでありまして、保険会社の破綻が金融システムに及ぼす影響は必ずしも小さくないと考えており、特に経過期間について、機構による資金調達の円滑化に限り公的支援を行うこととしておるところであります。
最後に、証券会社の自己資本規制についてお尋ねですが、証券会社の抱えるさまざまなリスクを、これまで以上に自己資本規制比率に適切に反映させることによって、今後とも自己資本規制制度が早期是正として十分に機能するものと考えておるところでございます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114215254X02719980518/15
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016・斎藤十朗
○議長(斎藤十朗君) これにて質疑は終了いたしました。
─────・─────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114215254X02719980518/16
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017・斎藤十朗
○議長(斎藤十朗君) 日程第一 地方公共団体の議会の議員及び長の選挙期日等の臨時特例に関する法律案(内閣提出、衆議院送付)を議題といたします。
まず、委員長の報告を求めます。地方行政・警察委員長藁科滿治君。
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〔審査報告書及び議案は本号末尾に掲載〕
─────────────
〔藁科滿治君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114215254X02719980518/17
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018・藁科滿治
○藁科滿治君 ただいま議題となりました法律案につきまして、地方行政・警察委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。
本法律案は、平成十一年三月から五月までの間に任期が満了することとなる、全国多数の地方公共団体の議会の議員及び長の選挙につきまして、その選挙の期日を統一することにより、国民の地方選挙に対する関心を高めるとともに、選挙の円滑な執行と執行経費の節減を図ろうとするものでありまして、都道府県及び指定都市の議会の議員及び長の選挙については平成十一年四月十一日、指定都市以外の市、町村及び特別区の議会の議員及び長の選挙については四月二十五日をその選挙の期日とすること等を内容とするものであります。
委員会におきましては、統一地方選挙の実施の趣旨及び投票率向上への影響、選挙期日の統一と任期との関係等について質疑が行われましたが、その詳細は会議録に譲ります。
質疑を終局し、採決の結果、本法律案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
以上、御報告申し上げます。(拍手)
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114215254X02719980518/18
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019・斎藤十朗
○議長(斎藤十朗君) これより採決をいたします。
本案の賛否について、投票ボタンをお押し願います。
〔投票開始〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114215254X02719980518/19
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020・斎藤十朗
○議長(斎藤十朗君) 間もなく投票を終了いたします。──これにて投票を終了いたします。
〔投票終了〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114215254X02719980518/20
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021・斎藤十朗
○議長(斎藤十朗君) 投票の結果を報告いたします。
投票総数 百七十七
賛成 百七十七
反対 〇
よって、本案は全会一致をもって可決されました。(拍手)
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〔投票者氏名は本号末尾に掲載〕
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114215254X02719980518/21
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022・斎藤十朗
○議長(斎藤十朗君) 本日はこれにて散会いたします。
午後一時七分散会
─────・─────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114215254X02719980518/22
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