1. 会議録本文
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000・会議録情報
平成十一年五月十九日(水曜日)
午前九時三十一分開議
出席委員
委員長 木村 義雄君
理事 佐藤 静雄君 理事 鈴木 俊一君
理事 田中眞紀子君 理事 長勢 甚遠君
理事 金田 誠一君 理事 山本 孝史君
理事 福島 豊君 理事 岡島 正之君
安倍 晋三君 伊吹 文明君
岩下 栄一君 衛藤 晟一君
桜井 郁三君 新藤 義孝君
砂田 圭佑君 田村 憲久君
戸井田 徹君 能勢 和子君
萩野 浩基君 桧田 仁君
堀之内久男君 松本 純君
宮路 和明君 吉川 貴盛君
家西 悟君 石毛えい子君
五島 正規君 土肥 隆一君
古川 元久君 松崎 公昭君
青山 二三君 久保 哲司君
桝屋 敬悟君 武山百合子君
吉田 幸弘君 児玉 健次君
瀬古由起子君 中川 智子君
笹木 竜三君
出席国務大臣
厚生大臣 宮下 創平君
出席政府委員
厚生省健康政策
局長 小林 秀資君
厚生省保健医療
局長 伊藤 雅治君
厚生省老人保健
福祉局長 近藤純五郎君
厚生省保険局長 羽毛田信吾君
建設省住宅局長 那珂 正君
委員外の出席者
厚生大臣官房障
害保健福祉部長 今田 寛睦君
参考人
(日本医師会常
任理事) 西島 英利君
参考人
(北海道立緑ヶ
丘病院長) 伊藤 哲寛君
参考人
(東京精神医療
人権センターコ
ーディネーター
) 小林 信子君
参考人
(全国精神障害
者社会復帰施設
協会専務理事・
事務局長) 新保 祐元君
参考人
(全国精神障害
者家族会連合会
常務理事・事務
局長) 荒井 元傳君
厚生委員会専門
員 杉谷 正秀君
委員の異動
五月十九日
辞任 補欠選任
大村 秀章君 吉川 貴盛君
戸井田 徹君 萩野 浩基君
同日
辞任 補欠選任
萩野 浩基君 戸井田 徹君
吉川 貴盛君 新藤 義孝君
同日
辞任 補欠選任
新藤 義孝君 大村 秀章君
本日の会議に付した案件
精神保健及び精神障害者福祉に関する法律等の一部を改正する法律案(内閣提出第八一号)(参議院送付)
午前九時三十一分開議
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504237X01019990519/0
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001・木村義雄
○木村委員長 これより会議を開きます。
内閣提出、参議院送付、精神保健及び精神障害者福祉に関する法律等の一部を改正する法律案を議題といたします。
これより質疑に入ります。
質疑の申し出がありますので、順次これを許します。能勢和子さん。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504237X01019990519/1
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002・能勢和子
○能勢委員 能勢でございます。おはようございます。
大臣も御案内のとおり、皆様も御案内のとおり、精神保健福祉法が生まれました昭和六十二年、この精神保健福祉法の一番のねらいは、精神障害者に対する人権、そして私たち国民に対する精神保健の向上、あわせて地域のそうした精神障害者を支えるネットワークといいますか、地域も支えていこう、大きな柱がその三つだったと思います。殊に、当時さまざまな問題があって、精神保健福祉法ができました当時は、国際舞台で日本の精神医療をたたいてきたということがあるわけでありますが、特に人権問題について大きく話題を呼んだところであります。最もそれが焦点であったわけであります。
今、その精神保健のねらいを考えますときに、医療法では、現在、精神、結核特例という形で、医師初め医療従事者の数が一般に対して低い形で定められているのが現状であります。私は、特に精神医療の現場にいた人間といたしまして、ハード面よりもソフトといいますか、まさに精神医療の治療の中心は人であります。その人の質と数、量、これがまさしく精神科医療の中での最も重要な部分だと思います。極端に表現するならば、保護室なんという数だって、治療する側の質と数を保障すれば随分少なくて済むというふうに思っているわけであります。殊に精神科の場合は、医師を初めとしますさまざまな医療スタッフの質と数が要るわけでありますが、現在の医療法に定められております数を見ますときに、一般科より少なくていい。
我々常に、精神医療がメジャーになりたいというふうに思っていたわけです。精神医療が一般科と同じくメジャーになりたい、そのためには当然、診療報酬等々の問題もかかわってくると思います。そういうような考えを持ちますものから、今の精神医療に対します一般医療との格差についてどのようにお考えになっていらっしゃるか、お聞きしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504237X01019990519/2
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003・今田寛睦
○今田説明員 御指摘のように、精神科の病院におきます人員配置につきましては、医療法の特例によりまして、医師につきましては、入院患者四十八人に一人、これは一般病床では十六人に一人になっております。それから看護婦につきましては、入院患者六人に一人、これは一般病床では四人に一人ということで、特例によって規定されているわけであります。この特例は昭和三十三年にできたわけでありますけれども、当時、精神病床の整備を急速に進める必要があったという点、そのためにはスタッフの確保が非常に困難だったという状況がございました。また、精神疾患が一般的に慢性疾患であるという疾病特性といったものも背景にあったのではないかと考えております。
今現在を見てみますと、病床の整備もある意味では非常に進んでまいりました。それから、精神疾患の中でも、非常に集中的な治療を行うべき人たち、患者層がいるということなどもありまして、今の特例を見直すべきではないかという委員の御意見が他にも多々あることは承知をいたしております。
今、医療法の見直しを議論されておりまして、一般病床の病床区分のあり方だとかあるいはその人員配置のあり方といったものも含めて検討されておりますけれども、これらの審議に合わせまして、公衆衛生審議会におきましても精神病床のあり方について今議論が行われているところでございます。この議論を踏まえながら必要な人的あり方というものについて検討をしていきたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504237X01019990519/3
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004・能勢和子
○能勢委員 ありがとうございます。
今、障害保健部長もおっしゃいましたように、看護も、一般が四対一に対して六対一でいいという数が出ておりますが、本当に精神医療で日本一いい病院を展開しようという取り組みにしますと、新看護体系の中でとても六対一の数ではできません。それで、今私たちにかかわります調査をしましても、三対一、二・五対一と、看護の数、いわゆる量、そして質も、最近私も教育の大切さを考えますときに、私の地元でも、広島大学も去年から博士課程もできました。修士、博士課程を出た看護婦さんたちが非常に患者さんとのかかわりがうまくいくために、興奮していた患者さんたちもそのかかわりを通して安定する、いわゆる人間関係のコミュニケーションができる技術とかいうのをどんどんと持ってくるようになってきました。そう考えますときに、本当に精神科医療の質がどんなに治療に直結するかということを私たちも身をもって体験しているわけであります。
ただ、六対一がまだ現在生きていますと、六対一でもやっている病院の底上げをするためには医療法が改正されなきゃいけない、特例が解除されなきゃいけない、そしてそれに値する評価もしなきゃならないというふうに考えていますので、これからもよろしくお願いしたいと思います。
次に、精神保健福祉法の三十六条の三項に、患者の隔離その他の行動の制限はいわゆる精神保健指定医が必要と。現在の法律でありますと、保護室への隔離とかあるいは抑制、いわゆる患者さんの人権にかかわる部分である抑制等々については精神保健指定医でなければならないという法律となっています。
そんなやさきに、あちこちの病院での不祥事も確かに起こりました。やはり非常に人権を重んずるがために精神保健指定医のみでなければならないということの意味合いはわかりますけれども、実際に医療の現場で二十四時間通して看護をします者が、本当に質が保障されるならばその判断ができないはずがないわけなんです。本当に今保護室に入っていただく患者さんなのか、あるいはもう少しかかわることによってといいますか、きちっとした看護面談といいますか、そうしたかかわりを通して落ちつく方、あるいは、今はそんな時期でない、とにかく一人で静かに保護室を使う方が患者さんにとっていいんだという判断は、まさしくきちっとした精神科看護婦であれば看護診断ができるわけであります。
今の法律であると、とにかく精神保健指定医のみということになっているわけですが、それでは、今、勉強いたしまして、精神科専門看護士というのがどんどん出てきております。修士を出た方たちあるいは博士課程を取った看護婦さんたち、そういう専門領域の人が出てきていますけれども、いわゆる精神保健指定医と同じく、看護婦もそうした臨床経験と理論武装がきちっとできる看護婦が出てきた場合に、精神科を目指してやろうという意欲のある人たちに道が全く閉ざされていると思うのです。
というのは、最初から申しますように、質はもちろん必要でありますが、この法律は、特に患者さんの人権を重んじてやった精神保健指定医でありますけれども、果たしてこのままでいいのか。将来、そうした道が開けて優良な医師、優良な看護婦にそうした判断ができないとお考えなんでしょうか。私はそれはたくさんの臨床の中でできるというふうに思うわけでありますが、いかがでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504237X01019990519/4
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005・今田寛睦
○今田説明員 精神病院の特性といたしまして隔離など行動の制限を行わざるを得ないということからいたしまして、病院の職員の皆さん方、医師、看護婦をも含めて職員の皆さん方が人権擁護の観点から専門的な配慮が必要だという点につきましては、御指摘のとおりだと思います。
現状を申し上げますと、そのための行動制限の判定については、精神保健指定医の制度を設けまして指定医の判断でこれを行う、つまり、一般の医師では行えないというような形で適正な処遇の確保を図ろう、このようにしているわけでございます。したがって、このような中で、一定の資格を有することを条件として行動の制限の判定を行う職種、これを医師以外に拡大していくということについては、何はともあれ十分な人権擁護の確保の観点からこれを考慮する必要があるという意味では、慎重な検討が必要ではないかと思っております。
精神科につきましては、高度な専門性を持つ看護婦さんだとか看護士さんについて精神医療の業務に当たっていただくということは大変大事だと思いますし、現在、精神科専門の看護資格制度の創設ということについて関係の皆さん方がいろいろ検討していらっしゃるということでもございます。したがって、これらの専門性というものについての一つのありようについて、検討の状況を眺めながら、精神科の看護の水準につきましてその向上には努めていかなければならない、このように思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504237X01019990519/5
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006・能勢和子
○能勢委員 ありがとうございました。
先ほど部長からも、今、医師の数、四十八人に対して一人ですか、二十四時間通してそういう数で患者さんを診ていく。今現在、看護婦は法的に六対一となっていますが、実際問題、三対一ということで、二十四時間通して患者さんの変化あるいは心の動きというのを見ていく中で、医師に、これは抑制が必要でないかということだって報告します。その報告します判断も、やはりここで看護婦が診るわけでありますから、間違った報告をすれば当然間違った判断をする材料を与えてしまう。だから、そこの看護の質が大変求められてきます。
そして、中には、いわゆる看護婦免許を持った看護婦のレベルと、そして本当に精神科をきわめていく中で患者の行動が判断できる能力というのはだんだん高まってまいりますし、それは常に研修もしなきゃいけませんし、あるいは、きちっとまとまった長期の、看護婦免許プラス修士に行く人もいますし、また、それに物足らず博士課程まで行く看護婦さんがどんどん出てきました。広島県におきましても、広島大学に修士、博士課程ができた関係で大変精神科を目指して入ってくるんです。
なぜならば、まさに自分の存在そのものが治療にかかわれる。看護は、常に側面的な看護といいましても、自分の存在、そこにいることが、患者と看護婦の関係、患者と医師の関係も同じですが、治療者と患者の関係というのは、まさに存在する、そこに立っている姿そのものが全人格と全人格とのかかわりであるわけですから、治療効果をプラスにもマイナスにもしていくという意味で非常にやりがいがあるということもあるわけでしょうし、そういう意味で、そうした専門看護士を目指す方がだんだんと若い人たちにふえてくるわけですね。
その人たちも、自分の専門領域、あるいは責任を持った行動、責任を持った判断、ぎりぎりの刃の上に立つときにどう看護診断するかということによってその一人の患者さんをよくも悪くもすると思います。そういう意味で大変大事な分野でありますし、ぜひとも検討課題に上げていただきたいと思っています。
そして、今出ました、精神科はかつて受診行動がおくれたときには慢性という形のイメージを与えていますけれども、今は、それが本当に分裂病なのかあるいは境界例かとさまざまな診断がある中で、むしろ、早期発見、早期治療が先手を決めるというほどに、大変大事なのは短期入院、社会復帰といいますか、本当にそういうことが可能になってきている。
それは、今問題になっているように、薬物が非常に進歩したといいますか、向精神薬の出現とその進歩によって、かつて長期慢性化といった患者さんたちが、そうでなくて、私たちの病院におきましても、国家公務員としてきちっと勤めている方、日常の受診を通して全く再発もなくて何年も来た方、さまざまな症例に出会っているわけです。
そのためにもぜひともお願いしたいのは、慢性期の病気というイメージから、必ず急性期でよくなる患者さんの群がいるんだということ、どうしても慢性期経過をたどる人もいるんだということの二つ。必ずしもみんなよくなるとは限りません。慢性期経過をたどる方もいらっしゃるし、急性期でよくなる方もいらっしゃる。初期の治療がよければ、当然ずっと外来治療だけで昔の考えでいけば定年まできちっと勤務できる方だっていらっしゃるわけでありますので、まさしく人が治療の中心になることを加えて申し上げて、医療法の改正なりあるいはそれに対する保障といいますか、それに必要な人材と診療報酬での評価も要るでしょう。そしてまた、看護がそうした形で大いにそうした方たちのために働ける、そうした責任と権限も与えられることが今後の精神医療に大きな効果をもたらすと確信いたしておりますので、よろしくお願いしたいと思います。
ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504237X01019990519/6
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007・木村義雄
○木村委員長 武山百合子さん。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504237X01019990519/7
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008・武山百合子
○武山委員 自由党の武山百合子でございます。
早速質問に入りたいと思います。
まず、精神障害者の実態についてですけれども、厚生省では国際的な比較を行っているのかどうか、世界的視野で精神障害者の実態について、日本と外国、特に先進諸国ですけれども、そういう意味で比較を行っているのかどうか、まず一点お伺いしたいと思います。それから、諸外国と比べて我が国特有の状況というのが指摘できるのかどうか、その辺の状況。そして三つ目ですけれども、一挙に三つお願いしたいと思いますが、歴史的に見て我が国の精神障害にどのような傾向が認められるのか。この三点についてお聞きしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504237X01019990519/8
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009・今田寛睦
○今田説明員 諸外国の状況の中で多くの指標で比較できる資料が、それぞれの国の状況も違いまして、持っているには限界があるわけでありますが、まず精神病床数につきましては、例えば人口千人当たりで見ますと、アメリカが〇・六床、ドイツが一・三床、フランスが一・三床でありますけれども、我が国は二・九床ということで、他国に比べましては精神病床は多いということが言えようかと思います。
これらにつきましては、外国で、ケネディ政権の当時に一つ象徴されるわけでありますけれども、脱病院化ということで、地域医療を進めようという観点から比較的早く地域精神医療への取り組みが進んだというふうに思います。そのことによって、ある意味では精神病院の入院期間というのが短縮され、あるいは精神病床そのものが縮小されてきております。
一方で、そうはいっても一定のケアが必要だということから、アメリカでは、イギリスにもありますけれどもナーシングホーム、あるいはデイホスピタル、あるいは福祉ホームといったような在宅におけるケアを行う施設が非常に充実してきているというのが諸外国の現状ではないかと思います。
翻って我が国においてどうかという御指摘でありますけれども、社会復帰施設の取り組みそのものがある意味ではおくれたということは否めないことかと思います。
と申しますのも、精神衛生法が精神保健福祉法へと今日に至る過程の中での歴史といいますと、他の福祉施策と比べれば明らかにおくれてスタートしてきているという点は十分認識しなければならないと思います。そういうことで、アメリカに比べますと依然として入院医療が中心となっておるということ。それから、社会の受け入れ態勢ということで、社会復帰施設がなお一万人程度のボリュームしかないという点で必ずしも十分ではないこと。また、地域におけるケアシステムという点についても十分に整備されているわけではない、あるいは、それらに対して国民の理解が十分であるかどうかという点についてもなお解決しなければならない課題がある。このように認識をいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504237X01019990519/9
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010・武山百合子
○武山委員 どうもありがとうございます。
それで、日本は今精神障害者の数が大変多くなってきているんですね。ふえつつあるんですね。なぜそういう数値が全国的に非常にふえてきているかという実態、原因、そういうところも把握していますでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504237X01019990519/10
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011・今田寛睦
○今田説明員 我が国の患者調査によります精神障害者の数というのが非常にふえている、六十万人ぐらいふえているんじゃないかという数字がございます。
それはなぜかという点でありますけれども、ベッド数はむしろ減少ぎみでありますから、入院患者そのものがふえているわけではない、ほとんどが外来患者であるということがまず第一点。その中には、大きく分けて精神分裂病が非常にふえているということ、第二点がうつ病のような感情障害が非常にふえてきている、こういった点が特徴でございます。
その理由でありますけれども、精神分裂病がふえているというのは、精神分裂病そのものは比較的人種に関係なく一定に発生すると言われておりますので、そういう点から見ますと、地域医療が非常に進んできた、つまり、外来で精神分裂病がケアできるようになったという意味において、必ずしもネガティブな評価をする必要はないのではないか。もう一つは、うつ病のような感情障害がふえているという点でありますが、これは、高齢化でありますとかあるいは社会の変化といったものが何らかの形で影響しているのではないかというふうに私どもは考えております。
いずれにしても、診療所も非常にふえてきてかかりやすくなっている点もありますので、外来患者が増加している理由というのはそのあたりを私どもとして認識しながら対策を考えなければならない、このように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504237X01019990519/11
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012・武山百合子
○武山委員 今の今田部長さんのお話を総合して厚生大臣にお伺いしたいと思いますけれども、そのような問題意識が今回の法律改正にどのように生かされているのかが一点。
それから、まず精神障害者に対する偏見を取り除く、心のバリアフリーなんという言葉を何か厚生省がおっしゃっておりましたけれども、確かにその偏見を取り除くということが不可欠だと思いますけれども、そのための具体的な方策というか対策、その辺についてお聞きしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504237X01019990519/12
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013・宮下創平
○宮下国務大臣 今回の改正でございますが、私どもの問題意識は、今お話のございましたように、社会復帰の促進を図るために地域で精神障害者を支える体制を大きく整備することが精神保健福祉施策の大きな課題となっておるものと認識しております。
この点につきまして、精神障害者の社会復帰とか自立の促進を図るためには、今障害者プランというのがございますが、そのプランに沿いまして社会復帰施設の整備等により、その量的充実を図ることといたしておるところでございます。
同時に、今回の改正におきまして特に特徴的な点は、市町村を中心として実施する在宅福祉施策を充実すること、つまり、ホームヘルプとかショートステイの施設を法定化することにいたしておりますし、それから、精神障害者の福祉サービスの利用に関する助言等を市町村で実施することができるように、より身近なところで相談、助言、あっせん、調整ができるようにしたこと。それからまた、精神障害者の地域生活支援センターというものを法定化いたしまして、地域で生活する精神障害者の日常生活の支援、日常的な相談への対応等々、障害者の自立と社会参加の促進を図るようにいたしました。
また、地域社会におきまして精神障害者を支えていくために、御指摘のような、精神障害者に対する国民一人一人の理解と認識を深めていくということも極めて重要でございまして、その普及啓発等も重要なものと考えております。さまざまな機会を通じまして啓発、広報等を展開いたしまして、府県及び市町村を中心に普及啓発活動を行っておるところでございます。
心のバリアフリーというお言葉もありましたが、ボランティア活動等を通じました障害者との交流とかさまざまな機会を通じた広報の展開等によりまして障害及び障害者に対する国民の理解の増進を図っていきたい、そして精神障害者についての社会的な誤解や偏見を是正していきたいというように考えておりまして、こうした視点で今回の改正も一つの大きな柱として考えておるわけでございます。
今後とも、これらの精神障害に関します普及啓発を通じまして、精神障害者の自立と社会参加ということの目的のために、一層その推進のために努力をしていきたい、このように思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504237X01019990519/13
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014・武山百合子
○武山委員 やはり、地域が支えるということによっていわゆる偏見というのが少しずつ取り除かれていくんだろうと思います。子供たちへの教育も学校教育の中で必要かと思いますので、心のバリアフリーというものは必要なことなわけですから、いろいろな角度から行っていただきたいと思います。
それから、設備を整えるという意味では、公共事業ということで予算をつけて施設をつくっていくことですけれども、いわゆる人的なもの、相談員というかケースワーカーというかそういうものも、片肺だけではなくて両肺になる、両方の部分でやっていかなければいけないんだと思うんですけれども、その人材育成についてはどうでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504237X01019990519/14
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015・今田寛睦
○今田説明員 精神障害者の自立支援に対応していただける人材といたしましては、現在であれば、保健所におきます精神衛生相談員を含めた保健婦さんでありますとかあるいは各病院にいらっしゃる職員の方々は、一つの大きな力として私は認識しておりますが、なお一層、精神病院と社会復帰施設というものをうまく連携させるように、社会復帰に関して相談、援助ができるものとして、このたび精神保健福祉士という国家資格を創設いたしました。三月には第一回目の国家試験の合格者が発表されたところでありますが、このような新しい職種も、そういった意味ではこれからの社会復帰の貴重な人材として活用していく必要があるというふうに思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504237X01019990519/15
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016・武山百合子
○武山委員 ぜひ、予算をつけていただいて、人材を多く育成していただいて対応していただきたいと思います。
それから、地域支援についてお伺いしたいと思います。
今回の法律改正において、在宅福祉を市町村を中心に進めていくということですけれども、精神障害者を地域で支える体制の整備を少し細かく、方向性としてどのように進めていくのか、お聞きしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504237X01019990519/16
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017・今田寛睦
○今田説明員 精神障害者の社会復帰のためには、やはり地域で、身近なところできめ細かな支援ができる体制が必要だということから、今回の法改正におきましては、少なくとも在宅福祉サービスについては市町村を中心として実施する、つまり、ホームヘルプサービスでありますとかショートステイサービスについては市町村において実施していただくように法定化させていただいております。
同時に、市町村は今まで精神障害者の社会復帰に対して十分な過去の経験がないということもございますので、広域的な調整については保健所を通じて支援いただくとともに、担当される方の研修等も保健所等を通して研修をしていきたいと考えております。
いずれにいたしましても、当面の目標は、やはり在宅福祉は市町村でやっていこう、しかし、将来的にどうかという点につきましては、今後、そういう体制の整備というものをにらみながら、できるだけ身近なところでケアが受けられるような方向というものを目指したいというふうには思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504237X01019990519/17
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018・武山百合子
○武山委員 どうもありがとうございました。
持ち時間が十五分なものですから、時間が来てしまいました。精神障害者の数が大変ふえておるわけですから、きめ細やかなサービス、また医療体制をぜひしていただきたいと思います。どうもありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504237X01019990519/18
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019・木村義雄
○木村委員長 土肥隆一君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504237X01019990519/19
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020・土肥隆一
○土肥委員 民主党の土肥隆一でございます。
昭和六十二年に精神保健法の改正があって、それから五年ごとに法律を見直してまいりまして、これからまた五年、精神保健福祉の分野でまだまだ立ちおくれている精神病の患者さんに対する医療、福祉、それを充実していかなければならない。そういう意味では、五年ごとのピッチを上げてきたということは大変よかったと私は思っております。このピッチを緩めてはならない。したがって、あと十年ぐらい、五年刻みでこの精神保健福祉法の充実に向けて頑張らなければならないと思っております。
それは、日本の精神病の世界が、あるいは精神病医療の世界が非常に不幸な出発をいたしまして、日本人の独特の偏見とか精神病に対する無理解から、医療の現場におきましても、あるいは病院におきましても、あるいは市民感情からいたしましても、大変たくさんの無理解や誤解、そして偏見に満ちた日本の社会における精神病の患者さんのケアを今後どうするかということは、まだまだたくさんの宿題が残っているというふうに考えるわけであります。
一方、行政の方も、私の勝手な言い方をさせていただければ、精神医療の世界を民間病院にゆだねまして、ほぼ民間に任せて、国、地方も含めて多くの関与をしなかった。そのことがまた逆に民間病院を生き残らせ、そしてまた入院患者も、社会的入院などと言われますけれども、病院の経営上、ベッド数を満たすような意味においても民間優先でやってきた。そして、民間優先はいいんだけれども、民間に大幅に、九〇%、九五%以上依存していますから、はっきりした物の言い方が行政の側からもできない。医療監督にいたしましても、さまざまな指導におきましても、まことに腰の引けた行政ではなかったかというふうに私は思うわけであります。そして、病院は自分の病院のベッドさえ埋まれば経営は成り立つわけでありますから、そうした動き、傾向がずっと続いてまいりました。
しかしながら、さすが今日に至りまして、患者さんの人権とかあるいは長期社会的入院をどう解消するかというときになりますと、やはり環境整備として、この福祉、長期入院の患者を受け入れることのできる地域、そして社会復帰施設などの必要が叫ばれるようになりまして、今日では、特に今回の改正法案ではかなりの部分見通しが立ってきた、めどがついてきた。だけれども、仕事をするのはこれからだということを痛切に思うわけでございます。
〔委員長退席、鈴木(俊)委員長代理着席〕
私は、大阪にありました安田系病院、精神病院でございますけれども、大和川病院の問題についてこの五、六年かかわってまいりました。そして今日では、この法人が持っております三つの病院が一気に崩壊していく、あるいは私の言い方を許していただければ、行政による強制的撤去といいましょうか撤退といいましょうか、そういう一種の荒療治、荒仕事をやってきたというふうに思う次第でございます。その辺は、今回質問をするに当たりまして詰めさせていただきます。
この大和川病院につきましては、実は私、平成五年にこの厚生委員会で大和川病院の問題を取り上げました。大和川病院に参りましてその余りのひどさにあきれ返りまして、約一時間にわたって厚生省に対して質問をいたしました。これが平成五年の六月の二日でございました。そして、今日、平成十年になりましてやっと、大和川病院を初めとする三病院の余りのひどさに厚生省も腰を上げまして、大阪府と協力して病院の閉鎖に及ぶわけでございます。その三病院が完全に閉鎖いたしましたのが平成十年の七月でございます。八月の五日には三病院の入院患者が転退院を完了しております。ですから、五年から十年まで、正式に言いますと約五年です。くしくもこの平成五年に精神保健法の改正があって、今回また再改正をやろうとしている。
実は、五年間、私はこの大和川病院の問題について訴え続け、何とかしなければいけないということを繰り返し申してまいりましたけれども、腰が上がりませんでした。例えば、平成五年には二回、四月と七月に実地指導をいたしました。平成六年は一回、平成七年も一回、平成八年も一回、平成九年になりまして急に動きが活発になりまして、立て続けに指導をいたしまして、八月にはこの病院を閉鎖するということでございました。
私はその間、実はこの病院から告発を受けておりました。この病院を私は訪問いたしました。それが平成五年の五月の八日のことでございました。そして、そこで院長に会いまして、もう少し患者さんを大事にするような病院にしてほしい、その年二月にこの大和川病院の入院患者が死亡いたしまして、その件について、どういうことだったのですかということを聞きに行ったわけであります。院長の部屋でまことに平穏な対談をいたしました。
ところが、それが建造物不法侵入、威力業務妨害、名誉毀損ということで、大阪地検に私は告発されたわけであります。裁判の用意もしておりました。それのみならず、ここの弁護士は、特定はできないのですけれども、私の選挙区に無署名の手紙をばらまきまして、自称衆議院議員土肥隆一というのがいるようですが、というふうに始まっているわけです。そして、こんな大阪地検に告発されているような人間が議員をしていいのでしょうかというような話で、県会議員でありますとか市会議員でありますとか、私の地元の神戸にばらまいたわけでございます。それも証拠書類として法廷闘争に用意しておったのでありますけれども、その間に病院はつぶれてしまったということでございます。
今回の大きな法改正は、言うまでもなく、病院の管理体制をきっちりしよう、精神病院に対する指導監督を強化しようということでございます。しかし、法律を変えまして何かいきなり強化しようというような、いかにも振りかざしたような法案になっておりまして、その辺の実態をはっきり理解し、問題点の一番行き着くところをしっかり吟味しないと、幾ら法律で縛っても、三十万からいる精神病院の患者さんの幸せはもたらされない、このように思うわけであります。
そうした中で、まず、指定医についてお尋ねしたいと思います。
指定医に関して、指定医の精神病院の管理者への報告というのがございます。三十七の二でございます。これを見ますと、指定医が非常に重要だということが繰り返し強調されております。なるほど、そうでございます。精神病院は、指定医によってよくも悪くも決定すると私は思っております。
ところが、指定医の仕事は、三十七条の二でございますけれども、指定医は、その勤務する精神病院に入院中の者の処遇が三十六条の規定に違反しているときは、当該精神病院の管理者にその旨を報告すること等により、当該管理者において当該精神病院に入院中の者の処遇の改善のために必要な措置がとられるよう努めなければならない、こうなっております。
大和川病院の例を言いますと、指定医がいるんです。だけれども、これは雇われ指定医でございます。当然、院長は指定医じゃございません、三つの病院を経営していますから。そして、この院長というか理事長が、現場にいないにもかかわらず、一々細かに指示するわけです。ですから、この次はどうしましょうかと電話で問い合わせして、私が訪問している間もそうでしたけれども、もう理事長、院長の言うままなんですね。
それで、どんなに良心的な指定医であっても、患者さんが不当な扱いを受けている、規定に違反しているから精神病院の管理者にその旨を報告して、そして管理者が入院中の者の処遇の改善のために必要な措置がとられるように努力しなさい、努めなさい、こうなっておるわけですが、こういうことが果たして実現可能なのか。何をもってこのような法案が出てきたのか。実態はそうじゃないんじゃないか。報告とはいかにも腰が引けた表現ではないでしょうか。私の表現を言わせていただければ、指摘して説得せねばならないぐらいの文言にすべきだと思うのであります。
この指定医の今回の大きな責任追加といいましょうか、今までの入院や治療やその他と違いまして、管理者に物を言わなきゃならないという法案でございますが、この背景、そしてこれが本当に実効性の伴うものであると判断するのかどうか、まずお聞きしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504237X01019990519/20
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021・今田寛睦
○今田説明員 三十七条の二の規定でございますけれども、これまでの指定医の責務につきましては、主に、自分の担当する患者さんに対してどういう行為を行ったか、身体的拘束を行ったか、それらを適切に行うという患者さんを対象とした中での規定であったわけでありますが、今回は、指定医が自分の担当する患者のことだけじゃなくて、病院全体の処遇の確保について適切なものとするよう努力義務を課したという点において、体制にも指定医としての役割を演じていただきたいというのが大きなねらいの一つでございます。
それで、その手段、方法といたしまして、報告するべく努力義務を課しているわけでありますが、これにつきましては、当然、指定医というものは、病院の中で信頼関係を前提に入院中の患者の処遇を確保するというお立場にあるわけでありますので、病院の管理者への報告に努めていただくことによって、その病院における処遇が、指定医であるという一つのお立場の中で必ずや有効に機能していただけるのではないか、このように私どもは考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504237X01019990519/21
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022・土肥隆一
○土肥委員 そうは思わないですよ。
もう少し詰めていきたいんですけれども、要するに、指定医という非常に重要な、精神病あるいは精神医療の世界で大事なドクター、その資格の付与あるいはその位置づけが何か社会的に余り重んじられていないんじゃないか。
もし指定医の役割を管理者への報告というのならば、むしろもう一条つけ加えて、管理者はしたがって指定医の報告に基づいて必要な措置をとらなければならないというくらい書かないと、どこにこんな勇気のある指定医がいるでしょうか。自分の首をかけて管理者に、いろいろな管理者がいますから、大和川病院の場合は即刻首でしょう。指定医が足りなければ、また、なかなか指定医が探せなければ置いておくかもしれませんけれども、ほとんど現場の統治能力がないわけです。そういう病院もあるだろう、また過去にあった。そうしたときにこんな腰の引けた表現でいいんですか。
今、指定医というのは一万人ぐらいいらっしゃるそうであります。参議院で行われました参考人招致で、日本精神病院協会の会長の河崎先生が、日精協に入っているのが千二百五病院で三十万ベッドを抱えている、指定医は四千人だ、こうおっしゃっています。設置基準や配置基準がありますから、それぞれ四千人の人が三十万ベッドを見ているわけです。しかし、指定医の地位について、その社会的な地位の向上についてはどこもうたっていないんですね。
ですから、やはり、指定医にこれだけの仕事をさせるならば、この仕事の裏打ちをしてあげなきゃいけない。そうしない限り、指定医は、本当の意味で自分の医者としての良心に従って病院の取り仕切りをしないだろう、このように思います。
したがって、どうでしょうか、この指定医の仕事を、管理者に対してこれだけの仕事をさせるぐらいならば、その裏打ちができるような条文を追加すべきだと思いますが、部長の御意見をお聞かせください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504237X01019990519/22
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023・今田寛睦
○今田説明員 三十七条の二に規定いたします指定医の報告の中で、当然、適当でない状況というものをもって報告することになるわけでありますが、その中身は、三十六条、つまり行動の制限に係ります規定に違反するような場合だとか、それから三十七条の第一項、これは処遇の基準でありますが、面会、通信の自由などのことに対しての侵害があったような場合、こういった場合に報告するというお立場をお願いしているわけであります。
この義務は、当然管理者は、指定医だからと申し上げておりますが、指定医じゃなくても、管理者そのものがこれを守らなきゃならないという義務は法定されているわけでありますので、ある意味では、指定医というお立場で管理者が果たすべき義務というものに対して一定の役割を演じていただきたいという観点から、今回の規定の整備をしたつもりでございます。
そうはいいながら、非常に重要な役割を演じていただいております指定医に対する一つの法的な裏づけというふうな御指摘でありますが、指定医につきましては、二つの面を持っております。
一つは、自分が勤めております病院の中で、あるいはその施設の中で、患者さんに対してどう役割を演じるかということにおける役割、それから、例えば措置入院の患者さんのために措置入院が適切かどうかということを判断したり、あるいは病院の中に指導に行くときに一緒に行っていただいて、その病院が適切な医療保護入院をやっていただけているか、そういう公的な役割、二つを演じることになっております。
少なくとも公的な役割につきましては、これは公務員としての一つの位置づけとして公的な役割を制度的には担保しているつもりでありますが、病院内における指定医としての役割についてどのような裏づけが適切であるかにつきましては、その病院の処遇の話にもかかわりますので、今後どうやるべきかについては考えてみたいと思います。
今回の制度では、そういう病院の中の体制に対して一定の役割を指定医も演じていただくんだという意味で、ある種の努力義務ではありますけれども、拡大をさせていただいたということで一定の評価をしているつもりでございます。
〔鈴木(俊)委員長代理退席、委員長着席〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504237X01019990519/23
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024・土肥隆一
○土肥委員 ですから、公務員としての役割も持っていると、ますます責任は大きいわけでございまして、多面的な働きをしていただかなければならない。
大和川病院の例がすべてではございません、最もあしき例だと思いますけれども、しかし、これが私が取り上げてから五年間放置されたということも含めて、あるいはその前からさまざまな問題があって、それも含めてないがしろにされてきた。指定医はほとんど機能していない。
これは大阪府がつくった報告書でございます。「安田系病院問題に対する大阪府の取り組み」、平成十年十一月、大阪府が発行したものでありまして、私が読む限り、かなりの改善とか、あるいは自分たちの仕事が不十分であったということを認めておりまして、大変正直には書かれているのですけれども、同時に、今度は患者さんサイドの裏づけをしなければならない、あるいは人権問題などを扱っている市民団体の意見も聞かなければいけないわけであります。
大和川病院の報告書だけでも、例えば、診察回数は月一回だったというのが三一・八%あるのです。月一回もなかったという人が四・六%いるのです。これは、大阪府が転退院をした後の患者さんのお一人お一人に会ってアンケート調査をしたのです。二百八十一例でございます。調査不能が六十四となっております。
お医者さんはきちんと診察してくれましたかというだけで、いいえというのが四五・二%もあるのです。薬の説明はしない、退院までずっと同じ薬を飲んでいたという人もいるわけですね。看護婦さんの態度は、何を言っても聞いてくれない、余り姿を見なかったとも出ております。
それから、冷暖房はない、ロビーのみ冷暖房があったとか。あるいは電話の使用。もう本当に精神病院の一番基本的に許されている電話をかけるという自由すら、詰所の中と外に移動できるようになっておりまして、一日に一、二時間だけ許可いたしまして、その後は全部詰所の中に入れてしまうわけであります。そして、全体で一回五百円分の十円玉しか用意しなくて、患者さんたちはその五百円分の十円玉の中で一枚、二枚と使っていく。ですから、電話の自由というのが許されていない。
それから、手紙も制限されている、検閲すらする。面会などは、日曜、祭日はだめだと表に堂々と張り紙がしてありまして、面会時間は十分から十五分程度で終わってください、そのように書いてあるわけですね。外出はもう本当に許されない状況であります。暴力や暴言があったり、あるいはやくざまがいの人が入院患者におってその人が取り仕切っていたり、とにかく、この病院は一体何なんだ、どうしてこういうことになったんだということを考えるときに、私はもう本当に途方に暮れてしまう思いがいたします。
そこで、指定医がこういう状況を見て、本当にこれは何とかしなきゃいけないと思ったのかどうかわかりません。それくらいの感じがいたします。先ほども言いましたように、すっかり病院管理者に牛耳られているということでございます。
ですから、この法案、三十七条の二ができたわけでありますから、今度はしっかりと調査をしていただきまして、本当にこの項が生きてくるのかどうか。そして、指定医の身分上あるいは地位上の保全もしてあげなきゃいけないし、公務員的な働きもするわけでありますから、処遇面というか、給料についてもやはり相当いいものを用意する。そのことによって初めて良心的な精神科医が生まれるであろうし、また大勢のお医者さんたちが精神科医を目指すということもあろうか、私はこう思うわけであります。
そういう現状とこの法文の、例えば大和川病院における例を挙げましたけれども、到底これは不可能な話だというふうに感じております。今回この法案でこれ以上のことを言っても仕方がないわけでありまして、ぜひともこれは今後の五年で検証させていただきたい、このように思う次第であります。
次に、私は、きょうは病院の関係の微妙な点だけを質問させていただいているわけでありますが、例えば、今度は患者さんの場合ですけれども、退院等の請求が三十八条の四に出てまいります。法文を読みますと、「精神病院に入院中の者又はその保護者は、厚生省令で定めるところにより、都道府県知事に対し、当該入院中の者を退院させ、又は精神病院の管理者に対し、その者を退院させることを命じ、若しくはその者の処遇の改善のために必要な措置を採ることを命じることを求めることができる。」と。これは大変な条文ですね。この一点だけで、退院を希望する患者さんがこんなにも自分の立場が認められているのかと思えば、それはもう喜ぶだろうと思うのです。だけれども、これも現実的に行われているのかどうか、行われるのかどうか、それを私は大変疑うわけであります。
法文上は大変立派です。だけれども、一たん入院しますともう出てこられないのじゃないか。任意入院は医療入院に切りかえられ、そして面会は許されず、外出も許されず、そのうちに社会的な適応が無理になってきますと病院にいるしかないというふうな患者さんが何万人といると私は感じます。
この条文は一体具体的にはどういうところに使われるのでしょうか、お答えいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504237X01019990519/24
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025・今田寛睦
○今田説明員 精神病院に入院していらっしゃる患者さんが退院請求をすることについての手続につきましては規則の方で決めておりますけれども、入院中の者あるいはその保護者が患者の住所、氏名等を都道府県知事に申し立てる、あるいは入院中の患者さんの病院の名前を言うということでこれがスタートするわけでありますが、その結果、精神医療審査会でこれを判断いたしまして、先ほどおっしゃっていただきました一定の退院命令等の措置を行う、こういう流れになっております。
一つは、退院を請求する患者さんがそれにアクセスできるかどうかという点がございます。これについては、まず入院時の告知でありますとか、今御指摘がありました公衆電話の設置、あるいはどこに連絡するかという電話番号を表示するといったことについては、制度的にこれを義務づけているわけでございます。
もう一つは、それを受けて実際に退院命令なり処遇改善命令というものを実行しているのかどうかという点につきましては、平成九年度のデータでございますけれども、退院請求が九百六十八件、それから処遇改善請求が五十件という実績はございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504237X01019990519/25
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026・土肥隆一
○土肥委員 まさに今部長がおっしゃったそのデータ、入院していらっしゃる三十万人以上の患者さんの中で、最近は任意入院が多いわけでありますけれども、年間でたった九百六十八人しか退院請求がなかったということ、そのうち不適当と認めたのが五十九人、それから待遇改善請求ではたった五十件しか請求がなくて、そのうち三件を不適当と認めたということがこの調査室がつくったデータに出ております。
これは何かやはり秘密が隠されている。患者さんたちはうめき声を上げながら暮らしているのに、ここまで、つまり都道府県なり審査会なりにアクセスできてないんじゃないでしょうか。あるいは逆に、病院がこれを抑えているんじゃないでしょうか、余り自分のうちの病院のことをがたがた言われると困ると。そういうことじゃないかと思わざるを得ないのであります。
細かいデータを挙げれば大和川病院でも出てまいりますけれども、私は、こういうデータを見ますときに、医療保護入院だけでも八万人からの人を審査している精神医療審査会の審査状況を見ますと、いかにも少ない。そうしたら、三十数万いらっしゃる精神病院の患者さんは、そのうちの千人だけ除いてあとはみんなハッピーで、退院もしたくない、あるいは一切の処遇改善の苦情もない、もうこれだったら日本の精神医療の世界は何の心配もないんじゃないかと思うくらいであります。そういう見方は誤っているんでしょうか、お答えいただきたいと思います。
〔委員長退席、鈴木(俊)委員長代理着席〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504237X01019990519/26
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027・今田寛睦
○今田説明員 現在の退院請求あるいは処遇改善請求が非常に少ないのではないかという御指摘でありますが、私どもも、必ずしもこれで十分問題が救われているというふうに言い切ることはできないかと思います。特にその制度が有効に活用されているのかどうか、この辺を検証する必要があろうかと思います、都道府県格差もその中にあるわけでありますが。
私どもとしては、都道府県に対しまして、患者からの訴えというものを正しく審査会にちゃんとつなぎなさい、それから、府県も精神病院に対しまして、そういった権利があるんだということを確実に告知してほしいといったような形での指導はしているところでございます。
したがいまして、この制度を入院されている患者さんあるいは保護者等の方々が十分承知していないという点については、十分そういう権利があるんだということが当事者も含めて伝わるような、もう少しそういうことについての努力をしなければということで、今がすべて百点満点の百点なのかという御指摘に対してのお答えにかえさせていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504237X01019990519/27
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028・土肥隆一
○土肥委員 きょうはもうこれで終わりますけれども、私は、意見を申させていただくならば、公的な機関、特に都道府県の精神病院の設置、そして政令指定都市も設置義務にして、もっと公的な病院が日本の精神医療の世界でリーダーにならなきゃいけない。せんだって国立病院でも事故が起きましたけれども、事故が皆無であるというような施設は一つもないわけであります。それは社会福祉施設から何から全部そうでありますけれども、やはり、公的な病院がもっとリーダーとなって精神保健の世界を引っ張っていただかなきゃならない、そういうことだろうというふうに思うのであります。
今、都道府県設置の精神病院は、四十七都道府県に全部設置されているんでしょうか。そして、その入院患者数は今、公立病院としては何名引き受けていらっしゃるんですか。最後にお聞きしまして、私の質問を終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504237X01019990519/28
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029・今田寛睦
○今田説明員 一つは、県立病院、法十九条の七で規定をしておりますけれども、都道府県の設置義務に対しましてこれを設置していない県は、鳥取県、佐賀県、大分県の三県だということでございます。また、都道府県の病床につきましては、一万七千三百九十二名というのが平成九年の病院報告等から得ているデータでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504237X01019990519/29
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030・土肥隆一
○土肥委員 ありがとうございました。
入院患者数が三十三万九千人のうち、一万七千三百九十二人が公立であるということから見るときに、精神病院というものは非常に開設がしにくい、そして地域の理解を得るのは難しい。もっと行政が積極的に精神医療の世界にも乗り出していって、医療のみならず、社会復帰施設、福祉の部分でももっと公立が担わないと、民間の病院だけに依存しているのでは日本の精神医療の世界はよくならないということをあえて申し上げさせていただきまして、終わります。ありがとうございました。
〔鈴木(俊)委員長代理退席、委員長着席〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504237X01019990519/30
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031・木村義雄
○木村委員長 山本孝史君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504237X01019990519/31
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032・山本孝史
○山本(孝)委員 民主党の山本孝史でございます。
今回の法律は参議院で先に審議がされておりまして、論点もかなり明確になっている部分があるかと思います。したがって、私の質問は、参議院での審議内容を踏まえて質問をさせていただきたいと思います。
今回の法律改正におきまして、厚生省としては、精神科の救急医療システムの整備を図っていきたい。それは、移送というものを法定化して、さらにはその移送先の病院の指定基準を見直しするというお考えのように承っておりますが、結果から申し上げて、今回のこの法律改正によって、例えば、今出ておりました大和川病院のような病院に救急患者が運び込まれることはなくなる、あるいは大和川病院のような病院が今回なくなるというふうに理解してよろしいのでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504237X01019990519/32
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033・今田寛睦
○今田説明員 当然、応急入院指定病院の基準には一定のレベルが必要であるというふうに考えておりますので、そのレベルに至らない医療機関が対象となることはないというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504237X01019990519/33
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034・山本孝史
○山本(孝)委員 応急入院の指定病院の指定基準を今度見直すとおっしゃっていますね。見直すということは、きつくするのか緩くするのかという話で、二次医療圏ごとに整備をしていこうというと、これは緩くしないと整備が進まないのだろう。
私が今聞きましたのは、応急入院の指定病院というか、一定の精神病院の基準というものを、搬送先の病院という形であるけれども今回つくる、そうすると、つくったときに、その病院の医療のレベルあるいは処遇のレベルというものは、今回指定をしていかれる中で、たとえそれが搬送先になろうがなるまいが、今申し上げている病院の処遇のレベルを厚生省としては全病院を対象に全面的に見直すということになるのでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504237X01019990519/34
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035・今田寛睦
○今田説明員 現在の応急入院指定病院につきましては、一つは、この制度そのものは、保護者の同意が得られない場合に応急に入院させることができる施設としてつくられた仕組みであります。したがって、結果的に非常に人数が少なかったという点、だから、それに対してそういう施設に手を挙げていただく医療機関が少なかったという点がございます。
実際にこれから新しくつくります移送制度につきましても、これは保護者の同意が当然前提となっておりますから、ということは、言いかえれば、保護者がいてもいなくても緊急入院が必要だという場合には当然医療機関へ搬送していくという視点に立つという観点からこの応急入院指定病院を利用しよう、つまりそれを活用していこうということで仕組みをつくらせていただきました。
したがいまして、この改正によりまして応急入院で受け入れる患者の数が増加をいたしますし、それに対しての処遇につきましては、当然、患者の状態でありますとか地域バランスを考慮する必要がありますが、例えば、基準から著しく逸脱している病院しかないような医療圏の場合に、そこをあえて指定するのかというようなことにならないように、そういう意味では、一定の圏域というものも考慮しながら、医療水準の今持っているレベルというものをできるだけ守れるような、そういう形でこの基準を変えるという視点に立って関係者の御意見をお聞きした上で対応したい、このように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504237X01019990519/35
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036・山本孝史
○山本(孝)委員 今田部長、今いみじくも御答弁されたように、一定の処遇レベルに達していない、あるいは処遇レベルが非常に劣悪である病院があるという認識をお持ちになって今そういう御答弁をされていると思うのですね。若干私の質問に対しての答えがずれていると思うのですけれども。
応急入院の指定病院は、保護者の同意云々の部分があって、それは応急入院だという範疇はあることはわかっておりますが、今回は移送する先の病院をふやそうというお考えでおられますよね。そうすると、その折に、要は移送される先の病院のレベルをどの程度に見るのか。とすると、今いみじくもおっしゃったように、移送してはいけないような病院は移送先にしないんだ。でも、移送してはいけないような病院があること自体が実は問題なんでしょう。
だからそこで、本当は全部の病院が移送先の指定病院になれるようなレベルでないといけない。それですら、応急入院の指定病院のレベルを低くして見直しをしていこうということなんだから、そこのところが、空きベッドを持っている持っていない、あるいは常に二十四時間オンコールでおられるかどうかというのは緊急の対応の問題としてはありますけれども、緊急であろうがなかろうが、搬送された先の病院が非常に劣悪な処遇をしているという認識をお持ちなのであれば、今回のこの指定制度を実際に運用していかれる上で、参議院での議論を聞いておりましても指定基準がいまいち明確にはされておられない。これから政省令の中で指定基準を考えていかれるんだと思いますが、その折に、その指定基準というのは、いわば日本の精神病院の最低レベルはここなんだという指定基準をお考えになるということでないと今回やっておられる意味がない。だから、ここは、そういう意味合いで指定基準をしっかりつくっていただくんだという大臣の御見解をいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504237X01019990519/36
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037・宮下創平
○宮下国務大臣 指定病院の数が非常に乏しいということで参議院でも議論がございました。やはり、指定病院の数をふやすということも必要でございますが、今委員のおっしゃられるように、精神科治療の病院としての水準を満たしておることも必要でございます。
したがって、私ども、指定病院はただ数さえふやせばいいという問題ではございませんで、基本的には、今おっしゃったように必ずしも一定の基準に該当しない病院もあろうかと存じますので、基準を定めて、そしてその水準に近づけるように努力させていただいて数をふやしていこうというように思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504237X01019990519/37
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038・山本孝史
○山本(孝)委員 全国で三百五十五の二次医療圏があって、参議院では二次医療圏ごとに一つないし二つの病院を指定していきたいという御答弁をされておられるのですね。三百五十五の医療圏の中で、一つも精神病院がない医療圏が二十あります。一つしかないというのが五十五あります。両方合わせて七十五、大体二割のところは一つないし一つもないという二次医療圏になっている。
そうしますと、今のお考えでいきますと、やはりどこかを指定しなければいけないということになってしまう。余り選択の余地はないのです。そういう意味で指定はなかなか難しいだろうと思いますし、それから、私も質問主意書を出させていただきましたけれども、国立療養所の犀潟病院のようないわば国の管理しておられる精神病院の中で、本人への十分な説明もなく拘束されておられるというような、大変にあってはならないような処遇をしておられる。したがって、単に搬送先の病院の指定基準というだけではなくて、病院全体の処遇レベルをどう考えるのか、そこをしっかりとつくっていただきたい、したがって、政省令をおつくりになる過程を国民にわかりやすいように説明をしていただきたいと思います。
それから、今回の御答弁の中で、医療保護入院と任意入院の明確な区分をしていきたいとおっしゃっておられる。これは今の問題と結局同じなんですけれども、そう考えておられる中で、今後基準があってもよいのではと考えるという御答弁がありましたので、それは一定のガイドラインをお示しになると理解してよろしいのでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504237X01019990519/38
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039・今田寛睦
○今田説明員 今回の改正は、医療保護入院そのものが本人の同意に基づかない強制入院の一形態だということから考えまして、その要件の明確化ということから、任意入院を行う状態にないと指定医が判定したことを要件といたしました。この改正によりまして、患者さんの同意能力の有無、こういったことが任意入院との間の一つの区別の要件になるというふうに考えております。
したがって、同意能力の有無につきまして御判断いただくわけでありますが、患者さんの状態の多様性ということから、客観的で一律な基準を設けることについては技術的に困難ではないかと考えておりますが、運用上の一つのありようというものについては検討しなければならないと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504237X01019990519/39
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040・山本孝史
○山本(孝)委員 運用上のあり方ということになるとガイドラインになりますので、運用指針として、例えばこういう場合は任意入院である、こういう場合は医療保護入院であるといういろいろな例示ができると思うのですけれども、そういう例示を含めたガイドラインをおつくりになる考えがあるかということです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504237X01019990519/40
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041・今田寛睦
○今田説明員 それも含めて、どのような形で整理すればいいかについても検討していきたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504237X01019990519/41
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042・山本孝史
○山本(孝)委員 本人の同意というところがこれまでの通達もあやふやになっている部分もありますし、今回きちっとしたガイドラインを示していただくことで患者の人権が守られる手だてになると思いますので、ガイドラインをおつくりいただきたいと思います。
次の質問ですけれども、精神病質という用語が法律で使われております。第五条の「「精神障害者」とは、」という定義の中に精神病質というのがございます。いろいろな議論があることは承知しておりますけれども、大臣、精神病質というのは精神医学用語ではありませんので定義から削除するべきだと考えておりますけれども、このお考えをお聞かせください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504237X01019990519/42
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043・今田寛睦
○今田説明員 精神病質につきましては、国際疾病分類、ICD10におきまして非社会性人格障害に含まれる概念ということで位置づけられているかと存じます。したがって、精神病質については医学概念ではないということから疑義を呈する御意見があるのも承知をいたしております。ただ、一方で、人格及び行動の障害としてそういったものは当然存在し、かつ、精神科医療の対象とすべきだという御意見もございます。
したがって、これらの取り扱いにつきましては、今回、法改正議論の中でも、あるいは審議会の中でもいろいろと御議論がなされたわけでありますが、審議会の意見といたしましては十分なまとめの意見が出なかったということから、結果的に今回これに手をつけなかったという結論に至ったことは御承知のとおりかと思います。
いずれにしても、この問題につきましては、現行法のまま、このあり方については引き続き検討すべきだという御指摘もいただいておりますので、私ども、これは先生御指摘のことも含めてきちっとした検討をすべきだというふうには認識いたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504237X01019990519/43
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044・山本孝史
○山本(孝)委員 部長の今の御答弁にありますように、国際疾病分類において精神病質というものはないわけですね。きのうコピーをいただいたばかりで原文に当たる時間がないので、これはもともとの原本に当たるべきだと思いますけれども、非社会性人格障害という国際疾病分類の区分の中に、非道徳的、反社会的、非社会的、精神病質は含むというふうに書いてある。
ここの前後の説明を読んでおりましても、非社会性人格障害とは、「通常、行動と一般的な社会的規範との間の不一致のために注意を惹く人格障害であり、」と書いてありますので、一般的な社会的規範といった場合は、まさに社会、文化を反映しているものですから、これは病気ではないわけですね。
その社会に住んでおられる平均的な人間の行動規範から著しく外れた場合には、これは問題があるだろう、人格障害として考えるというところはあるのでしょうけれども、非社会性人格障害の特徴として、以下によって特徴づけられるという特徴の一番最初は他人の感情への冷淡な無関心、二番目は社会的規範、規則、責務への著しい持続的な無責任と無視の態度とか、こういったもので非社会性人格障害、だからあなたは精神障害者なんだというこの仕組みはかなり危ういものを私は感じるのですね。その社会全体の考え方であなたは精神障害者だというふうにくくられてしまう。
日本精神神経学会は、精神病質は医学概念でないという議決をしておられますし、日本弁護士連合会も、わがままで衝動を我慢できない人物、あるいは冷酷で罪の意識が持てない、悪いのは自分でない、周りだと考える人物は、精神病質、成人のパーソナリティー及び行動障害として非自発入院の対象とされ得るという判定をしておりますから、事例として適切かどうか知りませんけれども、今の和歌山のカレー毒事件等を見ておりますと、あの容疑者は恐らく非社会性人格障害、精神障害者だという形に受け取られかねないという気がするのですね。
そういう意味合いで、精神病質という言葉は、今検討していくという御答弁がありましたけれども、この国際疾病分類の書き方を見ても、カンマの打ち方がちょっと違いますので、これはちょっと、精神病質がここに書いてあるからという、これはどなたが訳されたかにもよりましょうけれども、もう一度原本を確認していただいて、私も確認してみますけれども、ここは検討していただきたい。部長、そういう形で検討していただけますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504237X01019990519/44
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045・今田寛睦
○今田説明員 一つは、このICD10の日本語に訳した中での私どもの認識が原文とどうかという点については、私どもも確認させていただきます。
それから、いずれにしても、これについては非常に議論が多々あるということも十分に認識しておりますので、今後私どもも検討していきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504237X01019990519/45
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046・山本孝史
○山本(孝)委員 全く余談になって恐縮なのですけれども、余りこの国際疾病分類を金科玉条のごとくにおっしゃいますと、私、いつもたばこの問題で御質問させていただいておりますけれども、国際疾病分類の中でたばこは特異的精神作用物質と書いてありまして、ここには薬物としてきっちり規定されております。そういう意味でいけば、国際疾病分類を前面に出して日本の基準をそこへ合わせていくとするならば、もっとたばこに対しても厳しい対応をしていただかないと、何かバランスを欠いているような気がします。余り国際疾病分類を盾にとられるのはいかがかなという気がいたします。
次の質問ですけれども、精神保健福祉センターについてお尋ねをしたいと思います。
私が個人的にお聞きしました中でも、精神保健福祉センターは規模や活動状況などにおいてかなりばらつきがあるということは、厚生省もお認めになっておられます。今回は精神医療審査会がこの精神保健福祉センターに設置をされるということになるわけですけれども、いかにしてこのセンターの活動を充実させていくのか、その充実の方策をどのようにお考えになっておられるのか、お聞かせをいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504237X01019990519/46
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047・今田寛睦
○今田説明員 精神保健福祉センターは、各県で非常にばらつきがございます、活動の中にもばらつきがございます。これは、センターが制度として本来担わなければならない一つの義務的役割というものを今まで持っていなかったということも一つの原因ではないかと思いますが、今回、この精神保健福祉センターに対しまして、通院医療費の公費負担の判定でありますとか精神障害者の保健福祉手帳の判定、それから精神医療審査会の事務、こういったことを担っていただくことになります。したがって、当然、そのセンターにおける体制の充実は必要であるわけであります。
私どもとしては、今、精神保健福祉センターの運営要領というものを持っておりますが、これにつきまして見直しを行って必要な体制の確保について指導を図りたい、このように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504237X01019990519/47
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048・山本孝史
○山本(孝)委員 必要な体制の確保のために指導を行うというその指導の内容としては、あるいは厚生省としての支援の内容としては、どのようなものをお考えなのでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504237X01019990519/48
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049・今田寛睦
○今田説明員 基本的には、少なくとも通院医療費の公費負担等の業務については都道府県の業務として行っていただくわけでありますので、そもそも県がそれに対して必要な体制整備のための努力をいただくという意味で指導を行うというふうな形になろうかと思います。
精神保健福祉センターそのものの設置につきましては、都道府県の御判断による部分でありますので、その内容についてこういう要領でやってくれということを私ども申し上げるつもりでありますが、それに対して経済的に云々ということにつきましては都道府県の御判断にお任せせざるを得ないのではないかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504237X01019990519/49
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050・山本孝史
○山本(孝)委員 例えば、法律の中で今回必置にされて今まだ設置されていない七つの指定都市についても整備を進めていく、こうおっしゃっておられるわけですけれども、必置にするのは当然必要なことだと思いますので必置規定を盛り込まれたのはいいことだと思うのですけれども、あとは都道府県にお任せしますというのでは、今ありますこの保健センターのそれぞれの規模あるいは活動状況のばらつきというものは是正をされずにそのままになってしまうのではないか。予算措置はとらないのだ、地方分権の流れの中で、後でも御質問しますけれども、保健所の問題にしても何でも地方にやっていただくのだ、国はあとは存じ上げませんでは、必置をされた側はなかなか対応が難しい。やはり、我々からすれば、どの都道府県に住んでいてもこの規模の、あるいはこの活動内容を持っている、水準を持っている精神保健福祉センターが必ずあるのだということでないと、必置した意味がないと思うのですね。
そういう意味合いで、人口比等々によってもちろん違うと思いますけれども、最低、ばらつきを是正していく、このレベルまで精神保健福祉センターは上げていくのだということが具体的にわかるような、部署は運営要領で示しておられますけれども、こういった人員を配置するのだとかこういった活動をするのだとかということのお示しもあわせてないと、必置をした意味が余りないのではないかと思うのですけれども、いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504237X01019990519/50
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051・今田寛睦
○今田説明員 最初に御指摘ございましたように、指定都市にも全部これはつくっていただくということで当然お願いをするわけでありますが、一つは、運営に係ります人件費につきましては、交付税措置等によりましてこれを裏打っていただくという意味において対応させていただいております。施設整備等につきましては、一定の補助というものもございますので、そういったものも活用して安定的な運営ができるように、私どもも最大限の努力をしていきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504237X01019990519/51
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052・山本孝史
○山本(孝)委員 関連するので。質問の後の方に予定していました保健所の問題ですけれども、参議院での御答弁を見ておりましても、今後ともに精神保健福祉の推進には保健所が大きな役割を果たしていくのだということで、保健所にそういう役割を持たせるという御答弁をされておられます。
例えて言えば、精神保健相談員というお仕事がありますけれども、この精神保健相談員は全国の保健所の中ですべてに配置しておられるのか、配置しておられない保健所があるとすればどの程度なのか、あるいは、おられても兼任、専任の体制があると思いますから、そこの実態はどうなっているのでしょうか、教えてください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504237X01019990519/52
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053・今田寛睦
○今田説明員 精神保健福祉相談員につきましては、基本的に、各保健所にこれを置いてほしいということでお願いをしているわけでありますが、現在、千三百二十四人が配置されているという形になっております。この千三百二十四人につきましては、保健所ごとに精神保健福祉相談員として一定の任命行為等を行って配置しているという考え方に立っての数字でございます。そういった意味では、そういう任命行為を行った形で配置していない保健所については、大体四〇%がそういう状況にございます。
ただ、その四〇%のすべてが一切、精神保健福祉相談の行為をしていないのかというとそうではございませんで、そういった任命行為は行われていないけれども、精神保健福祉相談員としての研修を受けた保健婦さんであるとかあるいはケースワーカーの方々などが配置されて事実上の相談業務が行われているという意味においては、一定の役割を演じていただいているというふうに私どもは理解をいたしております。
なお、専任につきましては二五・九%、兼任については七四・一%という状況になっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504237X01019990519/53
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054・山本孝史
○山本(孝)委員 精神保健相談員という肩書は持っておられないけれどもほかの方たちが役割を分担しておられるという御答弁ですけれども、外から訪問する人間にとってみれば、そこに精神保健相談員という専門の方がおられるという方が安心できるわけです。
相談員がおられない保健所が四〇%ある。おられても専任の方は二五・九%しかいない。ほとんどの方が兼任で活動しておられる。そうしますと、必置したらどうかというふうに申し上げたら、地方分権の流れの中でそのようなことはいかがかと思うというのが御答弁でしたけれども、片一方で保健所が大きな機能を果たしていくように期待をしていると言いつつ、実態としてはそこに至るまでにも大分幅がある。
しかも、今後ともにどういう形でそこをもっと機能を充実させていくかということについても、各都道府県にお任せしているのですという形が続きますと、先ほどの精神保健福祉センターもそうですけれども、保健所における精神保健相談員の活動を見ましても、患者ないし患者を抱えた家族からすれば、病院に行くか、精神保健福祉センターに行くか、あるいは家族会に行くか、あるいは保健所に行くかというときに、割と保健所での御相談は行きやすい部分がある。
今後ともに、相談機能は地方分権の流れの中で児童相談等々も含めて一体化していこうという厚生省のお考えがあるわけですけれども、相談機能を充実させていく上でも、何でも地方でやりなさいという形では、私は、厚生省は何か責任を棚上げしているような感じがしてしまう。やはり、お金もつけます、少なくともこういう内容、基準でやってくださいというガイドラインをお示しをしていくという形で各都道府県を指導していかれるお仕事はどこまでも残るはずです。
そういう意味で、財政的な措置も含めて、今後政省令をつくっていかれる中で、精神障害者ないしその家族の皆さんへの支援体制をしっかりつくっていくというお考えをぜひ大臣からお聞かせいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504237X01019990519/54
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055・宮下創平
○宮下国務大臣 るる、この組織の運用のあり方について御質問をいただきました。
私もお伺いしておりまして、必ずしも強制力あるいは罰則の裏づけがないとかいろいろの点がございまして、その実効性について、多少疑問なしとしない点もあるのかなという感想を持たせていただきました。
精神保健福祉法等を通ずる行政は国の精神障害者に対する義務でもございますから、これが地方分権ということで、地方で勝手にやっていいというものではございません。基本は、国があくまで精神保健福祉法の精神にのっとって行われるということでなければならないと存じますから、そうした方向で制度の見直しその他もやっていく考えでありますし、また、必要な予算措置も、今現在も講ぜられておりますが、精神保健福祉法等の実効性を上げるための裏づけとして考えていくということは、地方分権の精神と相背馳するものではないというように思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504237X01019990519/55
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056・山本孝史
○山本(孝)委員 よろしくお取り組みをいただきたいと思います。
近藤老人保健福祉局長、来ていただいておりますので、精神病院病床と介護保険との関係についてどのような整理をしておられるのか、お聞かせをいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504237X01019990519/56
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057・近藤純五郎
○近藤(純)政府委員 介護保険では施設サービスがあるわけでございますけれども、その施設サービスの一つといたしまして、介護療養型医療施設というものがあるわけでございます。これは、一般病床でございます療養型病床群のほかに、いわゆる老人病院の中で老人性痴呆疾患療養病棟というのがございまして、これにつきまして一定の条件といいますか、看護体制、介護体制、それから施設の基準、こういったものを設けまして、精神病床の中でも一定の条件が合うものにつきましては介護保険の方に取り込む、こういう形で整理をいたしてございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504237X01019990519/57
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058・山本孝史
○山本(孝)委員 精神病床が今三十六万床程度あって、診療報酬上の痴呆性疾患療養病棟に該当するのは五千三百六十床という数字をいただきました。
そうすると、これは平成十年七月一日時点の数字ですから変わっていくのかもしれませんが、この病床については介護保険の適用対象にしてくれということになれば、それはできるのだと。その折に、介護保険の施設での適用については病棟単位で考えるんだ、あるいは病棟の中でも病室をしっかり区切って介護保険の対象とするんだという御答弁が介護保険の審議の中であったと思いますけれども、それは精神病院についても同じお考えでおられるのかということ。
それから、療養型病床群の数の多さが介護保険の保険料に反映をしてきているので、療養型病床群の二次医療圏ごとの数については、あるいは介護保険の事業計画上の数については一定の制限をするんだ、すべてを介護保険の対象に認めるわけではないという御答弁だったと思います。
そうしますと、その折に、既に一般病院の療養型病床群については介護保険適用だということでどんどん転換が進んでいるわけですけれども、精神病院の痴呆性の疾患療養病棟が、実際、介護保険の適用になっていくというのでしょうか。今から数がさらにふえていく、その中で上限の枠がある、あるいは病院の側の皆さんのお気持ちもあるんでしょう。そういった動向等、今後の見通しはどんなふうに受けとめておられるんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504237X01019990519/58
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059・近藤純五郎
○近藤(純)政府委員 老人性痴呆疾患療養病棟につきましては、恐らく病棟単位で移ってこられるんじゃないかと思っております。
どの程度受け入れるかというのは地方によって当然異なると思いますけれども、一応十九万床という形で私ども一応想定をいたしておりますけれども、この中に一応この五千数百床につきましては入っているというふうに理解をしているわけでございます。基本的には、手を挙げれば受けられるであろうというふうに思っておりますが、いずれにいたしましても、地方の実情によって若干のあれはあろうかと思っております。
基本的には、そういうふうな想定のもとで老人性痴呆疾患病棟については考えているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504237X01019990519/59
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060・山本孝史
○山本(孝)委員 介護保険のときに、一般病院の療養型病床群については念頭に置いて議論をしていたと思うんですけれども、精神病院の療養施設については少し議論から外れていたと思うんですね。その後の施行令等をお考えになる中で入ってきたというか、はっきり見えてきた部分だと思いますので、きょうは余り時間がありませんので、実際のところの介護施設としての施設基準等々の問題を含めて、またお聞かせをいただきたいというふうに思います。
時間がありませんので、最後にもう一問だけ大臣にぜひ御答弁をお願いしたいと思います。
障害者基本法においては、すべての障害者を対象としております。今後、障害者総合福祉法というようなものが制定されていくときには、ノーマライゼーションの理念からもすべての障害者を対象とした法律をつくるべきだ、福祉法をつくるべきだと私は思っております。保健、医療、福祉を一体的に提供するということが必要なのは、精神障害者にとどまらずに、すべての障害者に同じことが言えると思いますので、今後、障害者基本法を踏まえての福祉法全体の見直し、あるいは新しい障害者福祉法がつくられる折には、精神障害者もしっかり対象として組み込んだ、三つの障害者を組み込んだ福祉法をぜひつくっていただきたいという考えを持っておりますけれども、大臣のお考えをお聞かせいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504237X01019990519/60
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061・宮下創平
○宮下国務大臣 障害者の福祉政策につきましては、身体障害者あるいは知的障害者、精神障害者という三つの障害種別の体系で施策が講ぜられておりますけれども、例えば生活支援施設一つとりましても、末端に行きますと、非常に総合化されていいのではないかと感ぜられるような点がございます。したがって、今御指摘のように、これは検討して、相互の連関をよく見ながら障害者福祉の充実を図ることが必要だと思います。
ただ、今まで議論を聞いておりますと、検討すべき課題もありますし、総合法制の長所もあり、また短所もあるという点もございますので、当面は障害種別間で施策やサービスを充実して現行法体系のもとでこの充実を図っていくということで、中期的な課題として検討して、ひとつ体系化を検討してまいりたいというように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504237X01019990519/61
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062・山本孝史
○山本(孝)委員 厚生省としては、平成八年に障害保健福祉部をつくられまして、知的、身体、精神障害者、三つの障害者の総合的な施策の推進をしてこられている。体制はそういう体制をつくられているわけですね。障害者プランをつくる折にも、各市町村、なかなか精神障害者を含めた障害者プランをおつくりになっていないところもありますけれども、しかしながら、基本的には、障害者プランをつくる折には精神も含めたプランをつくれということで指導してこられておる。
したがって、今大臣もおっしゃいましたように、例えば地域生活支援センターのようなところ、あるいはいろいろな施設の中では、身体の人も知的の人も精神の人も一緒になって活動しておられる、それがお互いに非常にいい効果をもたらしているというお話も聞いておりますので、せっかく理念を持って体制もつくり、そういう施策も進めてきておられるわけですから、最後のところで、この障害者福祉法をつくる折に、精神障害者だけ違うんだ、医療が必要だから違うんだという形で枠の外に押し出されないようにぜひしていただきたいということを最後にお願いして、質問を終わります。ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504237X01019990519/62
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063・木村義雄
○木村委員長 青山二三さん。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504237X01019990519/63
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064・青山二三
○青山(二)委員 公明党・改革クラブの青山二三でございます。
法案の質疑に入ります前に建設省さんにお聞きしたいことがございますので、よろしくお願いいたします。
急速に高齢化が進展しております今日、年をとっても、また障害を持つ身となっても、生き生きと暮らしていける、バリアフリー化された社会の実現が求められております。近年は、国や地方自治体の施策も進んできておりまして、いろいろと頑張ってはいただいておりますけれども、欧米に比べますと、高齢者や障害者への対応はまだまだ立ちおくれている感が否めません。
高齢者が住みなれた家で自立して暮らすには、危険な障害を取り除くバリアフリー化した建物が必要でございまして、これを早急に進めていく必要があると思います。既に、公営や公団住宅におきましては高齢化対策を進めていると伺っておりますが、それは公営住宅の中でも新築のものに限られているようでございます。
そこで、問題となりますのが、既存の公営住宅の場合でございます。地方でも改築に至らない公営住宅がまだまだたくさんあるわけでございますが、高齢者や障害者にも少しでも使いやすいようにということで、一階の部分に住めるようにはやっていただいているわけでございます。しかしながら、既存の住宅には、一階部分であってもスロープがありませんので、ほんの数段しかない階段でありましても上りおりが大変だ、高齢者や障害者にとっては大変困っているという相談が今多く寄せられております。
既存の公営住宅でまだ建てかえがされていないものにつきましては、応急処置といたしまして、せめて一階部分をスロープにすることはできないか、スロープにしてほしいというような要望がございますが、こうした要望に対しまして国としてはどのように対応しているのか、お伺いしたいのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504237X01019990519/64
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065・那珂正
○那珂政府委員 お答えいたします。
ただいま先生御指摘の公営住宅のバリアフリー化でございますが、先生も御指摘いただきましたように、新規のものについては、すべてのものについて一定の基準に基づいてバリアフリー化をした上で順次供給しているところでございますが、既設の公営住宅につきましても、エレベーターの設置も含めてバリアフリー化のための改善を積極的に推進しているところでございます。
御指摘の玄関前の階段のスロープ化、その改善でございますけれども、実際問題、空間的な制約がある場合が多くて、通常の改善によってはなかなか困難な事例が多いと思います。そのような場合につきましては、スロープのある住戸への住みかえ、あるいは一階のバルコニーといいますか、ベランダ側にリフトを設けるとか、あるいはそちら側にスロープを設置するとか、そちら側から出入りをしていただくというような改善などが可能でございます。
いずれにいたしましても、住戸改善でございますので、個別の事情を踏まえた的確な対応を工夫するよう、事業主体に積極的に指導してまいりたいと思います。
〔委員長退席、佐藤(静)委員長代理着席〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504237X01019990519/65
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066・青山二三
○青山(二)委員 それでは、そんなふうによろしくお願いをいたします。
それでは、法案の質問に入らせていただきたいと思います。
今回の法律改正の趣旨は社会復帰ということに重点が置かれていると思いますので、まずこの点から順次伺ってまいりたいと思います。
昭和二十五年に精神障害者に対する適切な医療及び保護の提供とその発生予防を目的とする精神保健法が制定されまして以来、精神障害者に関する施策は、社会復帰の促進という観点から、数次にわたり法改正などの取り組みがなされてまいりました。
精神保健法で位置づけられている施設に限って、障害者プランにおける進捗状況を見てみますと、平成九年度末現在で、生活訓練施設、いわゆる援護寮でございますけれども、これが四九・七%、福祉ホームが三三%、通所授産施設が四二・三%、入所授産施設が一八%、福祉工場が一三・六%でございまして、この数字からも、平成十四年度に目標数を達成することは困難であることが容易にわかります。このような状況から、同時に、社会復帰施策の進展のおくれも危惧されるところであります。
精神障害者の社会復帰活動において極めて重要な役割を果たすことが期待されております社会復帰施設の整備がこのようにおくれているという現状についての御所見を伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504237X01019990519/66
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067・今田寛睦
○今田説明員 御指摘のように、現在の社会復帰施設に対する達成率が必ずしも十分でないという点でございますが、今回の障害者プランにつきましては、平成七年にこれをつくりまして十四年を目途に達成するという意味では、時期として今ちょうど真ん中に来ております。
しかも、身体障害者あるいは知的障害者については、これまで長く整備した歴史の中から新たな目標値を設定して達成を目指しておりますけれども、いかんせん、精神障害者に対する社会復帰というのは、平成五年の改正あるいは七年の改正によってスタートを切ったという意味において、急速な整備を図らなければならない、それでもなおかつ御指摘のようなパーセンテージになっているということであります。
いずれにしても、そのような背景の中で、非常に短い時間ではあるけれども、この達成はぜひやっていきたいというつもりで、今後も精いっぱいの努力をしていきたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504237X01019990519/67
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068・青山二三
○青山(二)委員 今、御決意をお聞きいたしましたけれども、この整備のおくれについて、その一因といたしましては、施設整備補助金あるいは運営補助金の補助水準が、身体障害者や知的障害者に比べまして二分の一から三分の二と著しく低いということが指摘をされております。このために、施設の設置者には過重な負担がかかっておりますとともに、施設従事者には犠牲的な労働が強いられている、そういう実態があるとも聞いております。
社会復帰施設を必要数確保するためには、運営を安定させるような財政的な支援が必要であると思っております。今回の法改正を機にいたしまして、国庫補助金の増額など、せめて同種の施設に対する補助額と同額に引き上げるべきであると思いますけれども、この点は大臣、いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504237X01019990519/68
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069・宮下創平
○宮下国務大臣 おっしゃるとおり、施設の面それから運営費、職員配置その他の面を見ましても、いろいろの施設におきまして精神障害者の面が非常に劣後しておるというように見られます。
いろいろ経過があったと存じますけれども、これからは、やはり精神障害者も知的障害者も身体障害者も同じようなレベルで物を考えていく必要があると存じますので、あとう限り努力をして、さっき一元化の話もございましたが、そうした方向で予算的な措置も努力してまいりたい、このように思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504237X01019990519/69
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070・青山二三
○青山(二)委員 大臣の御決意もお聞きいたしましたが、そんなふうによろしくお願いを申し上げます。
また、精神障害者の社会復帰施設の建設の問題につきましても、地域住民の精神障害者に対する偏見には根深いものがございます。それが精神障害者の自立促進の大きな妨げにもなっているのでございます。実際に、社会復帰施設の建設に当たりまして、受け入れ地域の一部に反対運動が起こりまして建設を断念するケースが目立つという報道もございます。このような偏見や差別を撤廃する施策として、国民の啓発活動の促進をぜひ図るべきであると考えております。こうした問題につきましては厚生省はどのように対応しているのか、お伺いをいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504237X01019990519/70
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071・今田寛睦
○今田説明員 精神障害者の社会復帰施設の整備が、反対運動によって、あるいは地域住民の理解が得られないことによって挫折してしまう場合があるという御指摘、このようなことが起こるというのは非常に残念なことだとまず思います。
地域社会で精神障害者の社会復帰あるいは自立といったものを促進する上では、どうしても地域住民の皆さん方の理解と認識を深めるということが最大限必要なことだと思います。したがって、こういった視点に立って、障害者プランにおいても、社会的な誤解や偏見の是正を図るという方向性で努力するようにという御指摘もいただいております。
ただ単に偏見というようなとらえ方もありましょうが、精神障害者の社会復帰施設で地域と本当にうまくやっていらっしゃる地域が現にあるわけですね。そういったところで本当に理解と協力を得ながら円滑に運営されている実績、その事例を通して、あるいはその事例を支えることそのものもいわば偏見の是正の一端だろうというふうに思っております。
したがって、私ども、既存の成功例、うまくやっていらっしゃるところを大いに応援もしなければなりませんし、そういった事例をほかの地域でも紹介していただいて、そういった形でうまくやっているのだということを絵姿できちっと見ていただけるようなことも一つの手段になるのではないかと思います。
いずれにしても、そういったものにつきましては、保健所あるいは精神保健福祉センターが一つの役割として偏見の除去等に対する努力もしていただくわけでありますので、そういったことも含めていろいろな情報を差し上げながら、あるいは各市町村が行っている障害者の明るいくらし促進事業の中でも同様の事業を行っておりますので、いろいろなデータを差し上げて、そのことを皆さんに理解いただけるというためにも、私どもも、そういった意味での努力は惜しまずにやらなければならないというふうに思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504237X01019990519/71
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072・青山二三
○青山(二)委員 こうした問題はなかなか難しいと思いますけれども、これからも努力していっていただきたいと思います。
それでは次に、長期入院患者の現状についてお伺いをしたいと思います。
社会復帰施設の整備のおくれや地域における生活支援の整備のおくれなど、社会的な受け皿不足が長期入院が一向に減らない要因の一つとして挙げられております。長期入院者の病状はさまざまであると思いますけれども、入院者総数三十三万人の約半数以上は、病気はおさまっているけれども帰る場所がないために退院ができないといういわゆる社会的入院であるとも言われております。
精神病院に入院している患者さんの平均在院日数を見てみますと、新しく入院される方は比較的短い期間で退院をされておりますけれども、五年以上という長期入院の場合は、昭和五十八年で四七・八%、平成八年で四六・五%と、ほぼ変わっておりません。こうした実態をどのように認識されているのでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504237X01019990519/72
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073・今田寛睦
○今田説明員 御指摘のように、特に長期の入院をされていらっしゃる患者さんの割合というのが余り変化をしていない。短期の方は比較的、どんどん入院期間が短くなっておりますけれども、長期の方々が、これだけ時代が推移したにもかかわらず、なぜそれだけいるのかという問題点でございますが、私たち、基本的には、現在の施設体系の中で病院から出ていくための社会復帰のための受け皿づくり、これがやはり必ずしも十分でなかったという点について意を配さなければならないというのが一つございます。
もう一つは、例えば米国におきますナーシングホームのようなある種の生活的な部分も視野に入れた施設類型、あるいは医療と福祉がうまく相乗りしたいわば中間的な施設、あるいは急性期において非常に濃度の高い医療サービスを提供しなければならないそういった人たち、そういったものを精神病院、精神病床という一くくりの中でこれまで支えてきていただいているという点にやはり一つの解決策を見出さなければならないのではないかと思います。
したがって、現在、今の精神病床における施設類型というものをもう少しきちっと見直して、適切なサービスと適切な人員、そういったものも含めて、ある程度その類型を見直した形で長期入院の問題を解決する必要がある。つまり、今二つ申し上げました、一つは受け皿の問題、一つは今の精神病院をどう考えていくかという問題、この二点について今後検討を進める必要があるというふうに認識をいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504237X01019990519/73
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074・青山二三
○青山(二)委員 それでは次に、精神障害者に関するホームヘルパーについてお伺いをしたいと思います。
精神障害者の在宅施策の充実を図り、在宅で介護している精神障害者の家族の負担を軽減するためには、市町村を主体としたホームヘルプサービス事業が今回法定化されることになりまして、その効果によるサービスの普及が今大いに期待をされているところでございます。しかし、今後、介護保険が始まることによりましてヘルパーの数も相当数必要になってくることが考えられますけれども、この精神障害者に関するヘルパーの人数は必要なだけ確保されるのか、また、ホームヘルパーの養成はさまざまな養成研修機関で行われておりますけれども、ヘルパーの経験や熟練度は要求されないのか、また、精神障害者に関する研修等を特別に行う必要があるのではないか、いろいろ心配される点がございます。
精神障害者に関するホームヘルパーの養成について、具体的な取り組み、どのように考えているのか、お伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504237X01019990519/74
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075・今田寛睦
○今田説明員 新たに法定化をされますホームヘルプサービスについては、十四年度をもって施行するということになっております。したがって、この間、どのような形で今御指摘のような問題を解決していくかという御質問かと思います。
まず一つは、ホームヘルパーの皆さん方がホームヘルプという事業の中で初めて精神障害の方々と接するわけでございます。しかも、一般の介護のように寝たきりの人に食事をつくってあげるとかおふろに入れてあげるということとは若干違った面があるという見方もあろうかと思います。つまり、どういうサービスをどのようにしていくかということも十分検証していかなきゃならないという観点に立ちまして、今年度から、精神障害者の訪問介護試行的事業、いわゆるホームヘルパーの試行事業を行うことといたしております。
その中で、今申し上げたホームヘルパーによります訪問のやり方あるいは回数の問題、幾つかのものを積み上げて、一定のルールといいますかありようというものを決めていく必要があろうかと思います。しかも、ホームヘルパーに対する講習というものもその中に盛り込んでございます。現在は九時間の講習を行うということでやっておりますが、これで十分かどうかは別といたしまして、そういったことを通しながら、どういうことが講習として適切な内容なのかということもその中から一つの答えを出していきたい。
いずれにいたしましても、十四年の法施行までにはこういった具体的な検討を詰めておく必要があるということで、私どももそういった体制の整備に努力していきたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504237X01019990519/75
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076・青山二三
○青山(二)委員 介護保険が導入されるということで、ホームヘルパーさんの数も本当にたくさん必要になってくるわけでございますから、今からしっかりと体制をつくっていただきたいと思います。
それでは次に、障害者プランの実現に向けてお話をお聞きしたいと思います。
平成七年に障害者プランが出されまして、身体障害と知的障害に加えて、精神障害を対象とする福祉施策につきまして数値目標が設定され、ようやく三障害合わせた目標が定められました。この障害者プランは精神障害者社会復帰施設の整備計画が盛り込まれたものでございまして、平成八年度から十四年度までの七年間に、精神障害者について、約二千カ所、二万五千人の社会復帰施設等の整備目標が示されたわけでございまして、これは大変大きく期待をされております。
しかし、社会復帰施設の整備は、地域の実情を考慮に入れても順調に進んでいるとは言いがたい厳しい状況がございます。今回の法整備に当たりましてその裏づけとなる重要な障害者プランでありますので、地域福祉の充実のためにも、今後の精神科医療において最も重要な課題の一つとして全力で取り組んでいただきたいと思っております。
この夏の予算の概算要求に向けて準備もされていることと思いますけれども、福祉関係予算の十分な確保とともに、障害者プラン実現への御決意について、大臣にお伺いをしたいと思います。
〔佐藤(静)委員長代理退席、鈴木(俊)委員長代理着席〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504237X01019990519/76
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077・宮下創平
○宮下国務大臣 障害者プランに基づきます社会復帰の施設対策でありますとか地域対策、社会復帰対策としては、生活訓練施設とか授産施設あるいは福祉ホーム、福祉工場等がございますが、今回生活支援センターも加えました。そして、地域対策としては、ホームヘルプサービスあるいはショートステイ等を従来ありますグループホームに加えまして整備することといたしております。
こういったことで着々体制はできておりますが、この箇所数の増加等につきましては、先ほどもお話がございましたように、十四年に完全に完成できるかどうか、多少進度等問題がございますから、私どもとしては、この障害者の自立等支援をするために、あとう限り予算要求もしてまいり、実効性のある体制をつくっていきたいと思っています。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504237X01019990519/77
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078・青山二三
○青山(二)委員 大臣もいろいろと福祉関係では御苦労があると思いますけれども、しっかりこの点もお願いをいたします。
それでは次に、改正案の趣旨の一つとなっております精神障害者の人権の配慮と適正な医療の促進についてお伺いをしてまいりたいと思います。
現在、精神病院の任意入院患者は全国に二十三万人おりますけれども、その半数近くが法的手続なしに閉鎖病棟に入れられておりまして、治療上の必要性がない場合も含めて閉鎖処遇が行われているという実態があると伺っております。人権確保の観点からも、こうした事態は、自分の意思で入っているはずの任意入院患者の人権に配慮しているとはとても思えません。
公衆衛生審議会の意見書におきましても、精神病院の任意入院患者の約半数近くが閉鎖処遇の実情にあるが、入院制度の趣旨を踏まえ、任意入院患者は開放処遇とすること、しかし、任意入院患者の病状が悪化したときなど、その治療上やむを得ない場合に限り、閉鎖処遇を行えることにすることとありますように、みずからの意思で入院した任意入院患者が意に反して拘束を受けることのないように、原則的には開放処遇を受けられるよう明確化する必要があるのではないでしょうか。任意入院患者の開放処遇について、明確な基準のもとに推進していくべきであると私は考えておりますけれども、大臣の御所見を伺いたいと思います。
さらに、精神病院における閉鎖処遇を第三十七条第一項に基づく処遇とすることが提言されておりますけれども、この閉鎖処遇の定義と内容についてはどのような方向で検討をしていくお考えなのか、伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504237X01019990519/78
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079・今田寛睦
○今田説明員 大臣のお答えの前に若干御説明申し上げますが、御指摘のように、任意入院の患者さんが基本的に開放処遇を受けるということはやはり大事なことだということを基本に思っております。それと同時に、開放処遇とは一体どういうことをもって言うのかということも実は問われることになりまして、開放処遇の基準については、少なくともこの施行に当たりますまでにはきちっとした定義を明確なものとして検討した結果をお示しする必要があろうかというふうに思います。
いずれにしても、今回の改正が、少なくとも任意入院をしていらっしゃる方は開放の中で、しかも、任意入院であってもやむを得ず拘束することがある場合には、それを担保できる、例えばカルテの記載等も含めたある担保する仕組みあるいは指定医のかかわり、いろいろなものをそこに付与することによって、むやみに人権上の侵害が起こらないような、そういう配慮をしなければならないというふうには考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504237X01019990519/79
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080・宮下創平
○宮下国務大臣 任意入院患者につきましては原則として開放処遇を行うべきであるというのは、御指摘のとおり当然であろうかと存じます。
しかし、今委員の御指摘のように、衛生審議会における審議の結論も示されまして、例外的に閉鎖処遇を行うこともあり得る旨の記述がございますが、私どもとしては、これらの閉鎖処遇を行うに際しての基準につきましては、隔離などと同様な行動制限の一種として位置づけまして、一定の要件、手続を明確化することによって不当な処遇がなされないようにして、人権に配慮してまいりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504237X01019990519/80
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081・青山二三
○青山(二)委員 人権の尊重ということで、これは大切な問題だと思いますので、よろしくお願いをいたします。
今回、患者の人権尊重の観点から問題の多かった仮入院制度が廃止されたということは当然でございますけれども、医療保護入院につきましては、本人の同意に基づかない強制入院の一種であることを考えますと、その運用は限定的になされるべきであると考えております。
改正案には、任意入院が行われる状態にないと判定された者と規定いたしておりまして、本人の判断能力が不十分である場合に限ることとされ、医療保護入院の要件が明確になったとしておりますけれども、この規定でその要件が明確になったと言えるのでしょうか。医療保護入院の対象者について入院の客観的な判断基準をどのように考えるのか、お伺いしたいわけでございます。また、それを具体的に示すべきであるとも考えておりますが、いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504237X01019990519/81
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082・今田寛睦
○今田説明員 先ほどの御質問にもございましたけれども、この医療保護入院の要件につきまして、従来は医療及び保護のために入院が必要な者、このように規定をされておりまして、概念上は同意能力がある精神障害者も含み得る、そのような規定になっておりました。
今回は、この医療保護入院が同意に基づかない強制入院の一形態だということから考えまして、任意入院を行う状態にないと指定医が判定したということを新たな要件に加えることによって、同意能力の有無によって任意入院との間の区別が明らかになるということから、結果として不適切な医療保護入院が行われなくなるということを期待しているわけであります。
この判断につきましては、症状等もございまして、一律な基準が適切につくれるというたぐいのものかということになりますとなかなか難しいとは思いますが、先ほども御答弁申し上げましたけれども、それをどのように運用すべきなのかという一つの運用の仕組みみたいなものについては、やはり検討しなければならないというふうに思っております。
そのような形で、いずれにしてもこの医療保護入院が適切に運営されますように努力はしていきたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504237X01019990519/82
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083・青山二三
○青山(二)委員 それでは、先ほど大和川病院の事例が質問の中で出ておりましたけれども、昨年は新潟県の国立療養所の犀潟病院の精神病棟に入院していた患者が拘束中に窒息死したこともありまして、不当な患者の処遇の実態が明らかになり、精神医療のあり方に大きな波紋を呼んでいるわけでございます。犀潟病院は、入院患者の社会復帰に力を入れまして、患者の家族との勉強会を開くなど良心的な病院として知られていただけに、このような問題があったことは、精神医療のあり方に重要な影響を与えるものとして大いに反省しなければならない点ではなかろうかと思います。
このような密室性が高い精神病院のあり方に対しまして情報公開を求める声が強まっているのも、やはり人権侵害の発生が後を絶たない現状があるからにほかなりません。これにつきましては、公衆衛生審議会の意見書でも早急に検討すべきであると指摘をされております。医療法上の情報公開を含めて検討すべきことは当然ですけれども、ここでは、精神医療に関する情報公開についてどうあるべきかにつきまして、大臣の御所見を伺っておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504237X01019990519/83
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084・宮下創平
○宮下国務大臣 今御指摘のように、公衆衛生審議会の意見具申でも情報公開の推進について御意見をいただいておりますが、この公開の問題は医療提供体制全体の問題でもございます。私どもとしては、今医療法の見直し、医療提供体制の見直しの中で、カルテ開示とかインフォームド・コンセントとか、いろいろな情報開示の問題につきまして検討を進めておりますので、その一環として、またあるいは精神医療の場合の特殊性をも加味しながら、そうした情報公開の方途について結論を得たいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504237X01019990519/84
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085・青山二三
○青山(二)委員 それでは、質のよい精神医療におきましては、やはり精神病院の経営の安定も必要であると考えております。人権侵害事件が後を絶たない背景には、精神病院の入院医療費が一般病院の半分以下という事実に象徴される安上がりの医療政策もあるとの指摘もございます。
これは、精神病院では医師や看護婦の定数が一般病院よりも少なくてもよいとする医療法上の特例がありまして、看護基準に応じて支払われる今の診療報酬の仕組みでは、こうした少ない職員配置に見合うように、精神科医療に対する健康保険の診療報酬は低く設定をされております。
現在の診療報酬体系では、精神医療の特殊性や必要とするマンパワーの時間や期間などが十分に考慮されてはおりません。たとえスタッフがグループ活動やあるいは相談事業などを行った場合も、医療点数の対象になっていないものが多く見られております。このような診療報酬に結びつかない治療時間や、時間が長くなる思春期患者やパーソナリティー障害の患者さんの治療を行えば行うほど赤字になるということもございまして、精神科専門技術料の評価も低いということが指摘されているわけでございます。
質のよい医療を提供するためには、精神科医療の診療報酬体系を適正なものに見直すとともに、医師や看護婦等の拡充に向けて早急に改善すべきであると思いますけれども、今後の対応について伺います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504237X01019990519/85
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086・宮下創平
○宮下国務大臣 精神科特例の話も今までの議論で出ております。医師あるいは看護婦の配置基準の問題、それから技術料の評価の問題等、一般的に医療問題として今検討中でございまして、薬価差益に基づく社会保険医療でなくて、技術尊重の医療体系にしたいというのが私どもの基本的な考え方でございまして、これは中医協で議論されてまいりますが、今御指摘のような精神医療に携わる先生方の技術評価あるいは医療関係者の評価というものも適切にその中で位置づけられるように、今後の検討課題の中で結論を出していきたい、このように思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504237X01019990519/86
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087・青山二三
○青山(二)委員 それでは、最後の質問になりますけれども、精神医療審査会について伺いたいと思います。
患者の人権擁護機関として都道府県には精神医療審査会が設置をされておりまして、患者はここに処遇改善や退院などを訴えることができることになっております。
しかし、現状は、措置入院の措置を行う都道府県等の監督部局がその事務を担っております。審査会の事務局が病院と関係が深い自治体の担当部局にあるために、患者が審査会に電話をしましても、事務局からすぐに病院にその事実が知らされまして問題なしと判断されていたというなれ合いがあったことや、人権擁護機関としての機能を十分果たしていなかったことが新聞報道などで指摘をされております。これも先ほどいろいろと質疑が行われておりましたけれども、こういう実態がございます。
さらに、国連で採択されました精神疾患を有する者の保護及びメンタルヘルスの改善のための諸原則におきましても、退院請求や不服審査に関する審査は独立した公正な機関で行うことが求められておりまして、精神障害者の人権にかかわる審査を行う審査会の機能強化のためには審査会の独立性を高めることが重要であると考えます。
今回、審査会委員の上限の撤廃とその権限の強化によって審査会の責任はさらに重くなっているわけですけれども、その委員の構成についても、PSW、いわゆる精神保健福祉士などの専門職を加えるなど、より充実したものにしていくべきであると考えております。そして、患者さんの人権を保障するためには、独立した第三者機関として審査会は機能していくべきであると考えております。今後の審査会のあり方について大臣の御見解を伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504237X01019990519/87
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088・宮下創平
○宮下国務大臣 今回お願いしております改正におきまして、精神医療審査会の独立性を高めるというのは人権擁護の点から主要なポイントと考えております。
そして、その独立性を確保するために、委員の数を、十五人以内というのを、これを五人単位で、この制限を取っ払うことによって実情に合わせたい。それからまた、審査会の独自の調査権限として、従来の意見聴取権限に加えまして、患者本人の同意を得た上での診察権限、診療録等の帳簿書類の提出命令及び関係者に出頭を命じて審問する権限を付与するというようなことどもも行うようにいたしております。また、今質問にもございましたように、審査会の事務を、専門性を有します、県の担当課から独立した職務執行が期待できる精神保健福祉センターにおいて実施すること、このようないろいろの諸措置を講じまして精神医療衛生の独立性が確保されまして、入院中の精神障害者の適正な処遇の確保と人権の擁護が図られるものと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504237X01019990519/88
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089・青山二三
○青山(二)委員 時間が参りましたので、この審査会に関しましてはぜひとも第三者機関をきちっと設置していただきたい、このことを要望いたしまして質問を終わらせていただきます。大変ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504237X01019990519/89
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090・鈴木俊一
○鈴木(俊)委員長代理 次に、児玉健次君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504237X01019990519/90
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091・児玉健次
○児玉委員 日本共産党の児玉健次です。
私は、日本の精神医療において、あしき典型の一つとして多くの国民の関心を集めた三重県多度病院の問題についてまず質問します。
この病院は、二百八十六床、医師六名、うち非常勤二名、精神科特例にも医師は一名不足しています。五十の病室のうち、開放病室は男子の八室のみです。女性の病室はすべて閉鎖病室です。病室の七割が畳またはビニールシートが敷かれた部屋であって、保護室は五つ、板の間で、五つとも常に患者が入っている状況でした。
この病院でことしの初めインフルエンザが流行し、インフルエンザによると考えられる方が八名、判断困難者七名、インフルエンザの関与とは考えられない方四名、計十九名が短期間のうちに亡くなられた。
皆さんに資料をお配りしておりますが、ちょっと見てください。女子の方は全部閉鎖病室ですから比較のしようがないんですが、男子の場合、ごらんのとおり、閉鎖病室で先行してインフルエンザが発症して、そして少しおくれて開放病室に移る。患者数の多少がありますから単純に比較はしにくいけれども、冬も窓が閉め切られている閉鎖病室をインフルエンザが文字どおり直撃したということはこの資料からもおわかりだろうと思います。
厚生省に伺いたい。多度病院の場合、この時期、任意入院、医療保護入院、措置入院はそれぞれ何人だったでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504237X01019990519/91
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092・今田寛睦
○今田説明員 厚生省の方からの問い合わせによりますと、平成十一年の二月の十五日に実施をしたものがございますが、これによりますと、三重県の多度病院におきます任意入院患者が百五十九名、医療保護入院患者が百十一名、措置入院患者が一名の計二百七十七名でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504237X01019990519/92
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093・児玉健次
○児玉委員 その二百七十七名の患者さんの入院期間はいかがでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504237X01019990519/93
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094・今田寛睦
○今田説明員 その時点での入院期間別の患者数でございますが、三カ月未満が二%、三から六カ月が六%、六から一年が六%、一番多いのが一年から五年未満というところで二九%、それから五年から十年で一七%、十年から二十年で二四%、二十年以上で一六%という状況になっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504237X01019990519/94
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095・児玉健次
○児玉委員 今、パーセンテージでお答えになったので余りぴんとこないのだけれども、事前に私が調べたのでは、十年から二十年未満が六十七名ですね。それから、二十年以上の入院者が四十三名です。そういう状況であった。
そこで、私は、大臣にこの点は率直に要望したいわけですが、精神障害者の社会復帰を主眼とする今回の法改正を契機にして、今の例からもわかるように、任意入院の多数が閉鎖病室に入っていたということは明らかですから、閉鎖病棟、閉鎖病室は基本的には廃止の方向で、そして当面、少なくとも任意入院の患者が閉鎖病棟、閉鎖病室に入るような状況は速やかに解消していく。そして、保護室についていえば、患者の人権に十分配慮して抜本的な改善をする。
それを、単なる方針とかなんとかでなく、法三十七条にこう書いてあります、「精神病院に入院中の者の処遇について必要な基準を定めることができる。」こうなっていますから、法三十七条に基づいて、病棟、病室の構造、設備を含めて処遇の改善を明確に定めていただきたい。今、青山議員が御質問になったことと重なりはしますけれども、三十七条との関係でお答えをいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504237X01019990519/95
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096・宮下創平
○宮下国務大臣 先ほどもお答え申し上げましたが、任意入院患者につきましては、原則として開放処遇を行うべきものと考えております。
そして、今、三十七条の第一項の御指摘がございましたが、精神病院入院中の処遇につきまして必要な基準を定めることができるという規定がございますので、閉鎖処遇を行う際の基準につきましては、隔離などと同様に行動制限の一種として位置づけまして、一定の要件及び手続を明確にすることにより、不適切な処遇がなされないように対応してまいりたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504237X01019990519/96
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097・児玉健次
○児玉委員 次の問題ですが、多度病院のことをいろいろ見ておりますと、朝日新聞の九九年の二月二十三日にこういう報道がありました。「死亡した患者の一人は病室で体調が急変し、助けを求めて自力で廊下に出た。しかし、力尽きて看護婦の詰め所の前で倒れていたところを、別の患者が発見した」。本当に痛ましいことですね。
先ほどお話があったように、入院患者四十八人に医師一名、入院患者六人に看護婦一名、精神科特例の問題がこのような事態の背景にあると私は考えます。
参議院に参考人としておいでになった日本精神病院協会長の河崎茂氏は、精神科特例に触れて次のようにおっしゃっている。「終戦までの日本の一つの考え方というのか国の考え方、それが精神障害者対策に影響しておったんではないか。」「格子を入れて社会から隔離して、医療というよりも隔離というようなことで来た、そのこと自身がやはりいまだに尾を引いておる。」私はこの御指摘に全く同感です。
実は、私自身がこの問題を最初に取り上げたのは、一九八七年九月の衆議院の社会労働委員会の場でした。それで、当時の厚生省の竹中浩治健康政策局長は私にこう答えました。「最近におきます精神医療をめぐる状況の変化あるいは現場におきます業務量、人員配置の実態等を十分踏まえまして、今後検討してまいりたい」。
それからもう十二年たっています。精神医療をめぐる状況の変化というのは、この審議以来、非常に今は日本の精神医療が大きく前進しつつあるという点で、かなり展望を持ってきているように私は思います。そういう中で、この法改正を契機にして精神科特例の抜本是正を行うことが避けて通れない課題だと考えます。この点についても大臣のお考えを聞きたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504237X01019990519/97
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098・宮下創平
○宮下国務大臣 精神科特例は昭和三十三年につくられました。当時のスタッフの充足状況とか慢性的な精神障害者が多かったこと等でこういうものがつくられたようにお聞きしておりますが、現在、一般医療につきましても、医療の基準の問題、医者の配置の人数、あるいは看護婦さんの問題等を検討中でございまして、そういった中の一環として精神科特例のあり方についても議論し、改善をしていきたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504237X01019990519/98
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099・児玉健次
○児玉委員 それはぜひそうしてもらいたい。まさか十二年たつようなことがあっては決してならない、極めて速やかにやっていただきたいと思います。
次に、精神医療における診療報酬についてでございます。
もちろん、これはこの法案の一部改正と直接結びつくものではありませんが、しかし、日本の精神医療の重要な土台、支えになっております。私はこういうふうに思うんですね。精神科における診療報酬の劣悪さと先ほどの精神科特例が相乗的に働き合って日本の精神医療を困難にしているんじゃないか、それが私の感じです。
そして、精神科の診療報酬は、低い水準に抑制されていることが問題であるだけでなく、その内容についても大きな問題を含んでいる。いろいろ例を挙げたいんですが、ほんの一例を挙げましょう。
入院精神療法、これが、入院三月以内は、週三回を限度に指定医が行う場合、三百六十点。この三百六十点が低きに過ぎるという点については、参議院の審議の中でも何人かの方が指摘されておりました。私もそう思う。
それで、この機会に言いたいのは、同じく指定医が入院精神療法を行う場合に、三月を超えたらどうなるかという問題です。三月を超えたら、週二回を限度に、三百六十点が一挙に百五十点に減じられてしまう。そして、六月を超えると八十点になる。三月、六月を経過したら入院精神療法の必要がなくなるのか。
私は、この点で何人かの精神医療の専門家の御意見を伺い、かつ、精神病院にも行ってまいりました。ある専門家は、病状が不安定で回復期にある患者に対して、急性期というところと慢性期との間に亜急性期を設定することが重要だ、こういうふうに述べられて、精神療法が百五十点、八十点と急減するのはまさしくその時期と重なっている、病状が不安定で回復期にある、適切な医療がそこで保障されたら確実に症状が軽減し、そして社会復帰に向けて、初発の段階に比べて若干おくればせではあるが、確実にその方向に向かうと。
私が訪問した病院の指定医のあるお医者さんは、この百五十点、八十点と急減される時期、しかも回数が制限されているわけだけれども、たとえ診療報酬の対象とならなくても週二回を超えて精神療法を行っている、効果が確かめられている、こういうふうにお話しになっているのですね。
これは全くの一例ですが、精神科の診療報酬を、点数と内容をあわせて精神医療の前進に寄与するよう改善していただきたいと思うのですが、いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504237X01019990519/99
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100・羽毛田信吾
○羽毛田政府委員 精神科の技術料の診療報酬上の評価についてのお尋ねでございますけれども、私ども、今日まで、入院精神療法あるいは通院精神療法、標準型精神分析療法等の精神科の技術料につきまして、逐次点数の引き上げを行うなど、段階的にその充実を図ってきたつもりでございます。
今日、十分かどうかということについての御議論、あるいは、今お話のございましたように、急性期についてはある程度集中的な医療を行うということを評価して高く設定をするというような形についての御議論、診療報酬をめぐりましては、精神領域のみならず、いろいろな議論もございますし、今、診療報酬上における技術評価のあり方ということにつきましては、現在の診療報酬の抜本改正の中におきましても議題として俎上に上がっている重要な課題でございます。
そうした中で、精神科の技術料につきましても、お話しのような視点も含めまして、どのような形で技術料評価をしていくのがいいかということにつきまして、中央社会保険医療協議会を中心に具体的に検討をお願いいたしておりますので、その結果を見まして、今のような技術料の問題を今後の一つの大きな課題として取り組んでまいりたいというふうに考えるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504237X01019990519/100
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101・児玉健次
○児玉委員 今羽毛田局長のお話のように、私が指摘した内容をも踏まえてこの点の是正の検討をする、そのようにしていただきたいのです。
そこで、次にもう一つ、長期入院の問題です。
先ほどの三重のケースを見ても、長期入院が大変な状況にある。そこで、その対策の焦点の一つは、長期在院重症者、急性増悪の再現の方も含めて、こういう方に対する適切な医療をどのように保障するか、ここが今問われていると思います。長期入院というのは症状の軽い患者であって、即社会的入院、こういう理解には問題があると私は考えます。長期在院重症者、そしてその方たちが苦しんでいる合併症の問題を含めて、国公立病院、とりわけ国立病院が果たすべき役割の大きさが今求められているし、問われているのではないか。こういった最も困難を抱える精神医療の領域において国立病院が指導的な役割を果たす、その点について厚生省のお考えを聞きたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504237X01019990519/101
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102・伊藤雅治
○伊藤(雅)政府委員 お答えいたします。
国立病院・療養所におきましては、平成八年の国立病院・療養所の再編成・合理化の基本方針、及びことしの一月十四日に公衆衛生審議会の意見書をいただいております。特に、この公衆衛生審議会の意見書におきましては、国立病院・療養所につきましては、再編成・合理化の基本方針に基づき、精神科救急への対応、薬物依存や合併症を有する患者への対応に重点を置くこと、こういう御意見をいただいております。
私どもといたしましても、国立病院・療養所におきましては、他の設立主体では対応が困難な精神科救急への対応、薬物依存と並びまして合併症を有する患者への対応など、その役割を真に国として担うべきものに特化していくという方針で対応しておりまして、先生御指摘の点を踏まえまして国立病院・療養所としての役割を果たしていきたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504237X01019990519/102
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103・児玉健次
○児玉委員 一言言っておかなければいけないのだけれども、国立病院・療養所が政策的医療に特化するという点については私たちは強い異論を持っておりますので、そのことは述べた上で、しかし、今言った点についてはその方向を強めていただきたい、私はこう思います。
次の問題ですが、昨年九月、精神保健福祉法に関する専門委員会報告書、これが出されました。読ませていただきました。その中で、精神科の病床を一般病床に倣って急性期と慢性期に区分することの検討が提起されています。初発の段階で必要な医療を十分に保障することの重要性はだれしも認めるところです。しかし、長期入院については、先ほど若干私が述べたことからも明らかなように、慢性というふうに一般化できるようなものはそう多くはありません。むしろそこに精神医療のあり方が問われている。
それで、専門委員会の報告書が出された後、ことしの一月に、精神病床等の在り方に関する検討部会報告書が出されて、その中でこういうふうに述べていらっしゃる。急性期や慢性期といった時間軸のみによる区分、これはどんなものかという指摘がそこでされていますね。まさにこれは重要な指摘だと私は思うのです。精神科の入院医療が、急性期に対応する部分と、そしてもう一つは、現在よりも医療のスタッフの配置をさらに手薄にする、現在の精神科特例の人員配置をさらに手薄にして、例えば入院患者百人に対して医師一人、そういった形で施設化する。急性期と施設の二極分化に向かいはしないか、そういう懸念を持つのですが、この点いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504237X01019990519/103
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104・今田寛睦
○今田説明員 御指摘のように、病床のあり方についてはこれまでさまざまな議論もございまして、例えば医療法の見直し議論の中で、急性期と慢性期をどう考えていくか、その中で精神医療というものをもう一度とらまえ直したときにどうあるべきかという意味において御意見も賜りましたし、今御指摘のように、それを単に期間だけで把握することが的確な対応になり得るのかどうか、こういった御意見もございました。
片や、一般医療におきましては、療養型病床群という制度もございます。あるいは老人保健施設もあります。いろいろな施設体系がそれぞれの制度の中で構築されている中で、精神医療が結局は精神病院という一くくりの中で位置づけられているという点について、これは何らかの形で見直さなければならないという視点に立った形でこういった御意見を伺ってまいったつもりでございます。
ただ、今言った幾つかの御指摘される問題点も含めて、今長期入院のあり方も含めた施設のあり方について、医療法の議論を念頭に置きながら公衆衛生審議会の方で鋭意御議論をいただいて、最もふさわしい施設類型というものについての結論をいただければというふうに思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504237X01019990519/104
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105・児玉健次
○児玉委員 時間ですから、最後に大臣にお伺いしたいのです。
宮下厚生大臣は、この法案の提案理由の中で、「より適正な精神医療の確保を図るための所要の措置を講ずる」、こういうふうにお述べになりました。まさに今それが必要だと思うのですね。これまでの日本のどっちかというと隔離を主体とした精神医療から、適切な、時には集中的、濃厚な治療もやって全体として社会復帰を図っていく、その方向での日本の精神医療の言ってみれば大きな改善を図るべき時期に来ていると思うのです。この点について大臣の考えを聞いて、終わりにしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504237X01019990519/105
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106・宮下創平
○宮下国務大臣 いろいろ貴重な意見を承りました。特に、適正な精神医療の確保ということが今回の法律改正の主眼でもございますから、御意見をよく留意いたしまして、今後運用を期してまいりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504237X01019990519/106
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107・児玉健次
○児玉委員 終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504237X01019990519/107
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108・鈴木俊一
○鈴木(俊)委員長代理 中川智子君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504237X01019990519/108
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109・中川智子
○中川(智)委員 社会民主党・市民連合の中川智子です。
まず、私、二年ほど、こころの電話というボランティアをしておりました。地域の中で心にいろいろ悩みを持っている人たちが、気楽にというか、病院に行く前に本当にすがるような気持ちで電話をしてくるこころの電話のボランティアをしておりましたときに、本当に心を病んでいる人たちがいる、しかし、社会の偏見の中でなかなか病院の戸をたたくことができない、そのつなぎとめがほとんどボランティアによってなされているという実態があります。
そこの経験などを踏まえましてきょう質問をしたいと思うのですけれども、今回の法改正、十年間でたびたびの見直しということがありまして、三度目の法改正になるわけですけれども、いわゆる根っこの部分、社会の偏見、またマスコミなども、事件を起こしたときにそのような精神疾患の病歴があるということを書かれること、それによって社会不安を生み出し、なかなか偏見が取り除かれない。ですから、基本的にこの日本の政策というのは、社会防衛に立ってきた、人権よりも社会を防衛するという形で進んできたことが大きな不幸を生み出してきたというふうに思っております。
そして、最近でも精神病院のスキャンダルというのは後を絶ちません。また、このように新聞に載るのは本当に氷山の一角ではないか、もっともっと実態は悲惨な状況がなおありつつ、新聞報道されるのは氷山の一角ではないかと思っております。
そこで、なぜこんなに精神病院のスキャンダル、事件というのがたびたび起こるのだろうか、この原因は一体どこにあるとお考えかということを、最初に大臣にお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504237X01019990519/109
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110・宮下創平
○宮下国務大臣 委員の御指摘のように、二十五年に法律がつくられて以来、たび重なる改正が行われておりますが、初期には確かに社会防衛的な色彩が強かったと思います。しかし、特に六十二年の改正を契機といたしまして、人権への配慮その他が強くにじみ出て、そういった視点の対策がとられるようになってきたように私は承知しております。
ただ、今いろいろの事件、人権侵害の事件とか精神病院をめぐる事件等が報道されているという実態が存在しておるわけでありますが、これは、人権侵害を防ぐための法制度の不備もあるのではないかということもございます。そのさらに基本には、身体障害者あるいは精神障害者、そういった障害者に対する人間としての尊厳性、価値観を認める社会全体の風潮が乏しいのではないかと私は思っておるのですが、こうしたことは直していかなければなりません。
しかし、直接的に法改正と関連いたしまして、病院が改善命令に従わない、さっきの大阪の病院の例もございましたし、また、精神保健指定医が必ずしも十分な機能を果たしていないという御指摘もございました。そしてまた、精神医療審査会も、これらの弱い者の人権を擁護する立場の機能が十分果たされていないというような問題もございました。
そういった視点を踏まえまして、改正の一々については申しませんが、審査会の権限強化を図るとか、精神保健指定医の役割を強化させていくとか、保護入院制度の要件を明確にするとか、改善命令に従わない場合の実効性については先ほどいろいろ疑問が提示されましたが、精神医療に対しての指揮監督を強化していくとか、万般の法律的な改正は今回そういう点に視点を置いて改正をいたすようにしておりますので、この点を踏まえまして、あとはこの改正によって実効性をいかに確保するかということではないかと思いますから、この改正の精神に基づいて、単なる法文上の修文ではなくして、実効性の上がるような指導監督なりをしていきたい、このように思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504237X01019990519/110
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111・中川智子
○中川(智)委員 それでは次に、私も今入院して、抜け出てきて質問しているわけですけれども、たった二週間の入院です。そして、入院中にいろいろな方とお友達になる機会がありましたけれども、一カ月も入院していればやはり社会に出ていくのが怖くなる。本当に一カ月でも社会に復帰していくというのが怖い。
なのに、五年も十年も、そうしたら病院の外の生活というのは怖い場所でしかない。長期入院というのは、精神的にも、生きる力、そして自分が出た後、社会の中でどれだけの受け入れがあるのかということで、本当に怖くなる。長期入院がそのように社会に出ていく本人の、そして家族の思いさえなくしていく、力さえそいでいくということがあると思います。ですから、やはり社会復帰の施策というのは物すごくきめ細かく、ありとあらゆる手段を使ってやっていくべきだと思っております。
私は、きょうは小規模作業所について一点質問したいと思うのです。私自身が議員になる前にやっていました仕事を、ちょっとした食品の袋詰めを小規模作業所にお願いしていました。そうしたら、小規模作業所では、割りばし一本を袋に入れるのに何銭という、一円ではないのです、本当に五十銭ぐらいの仕事。一生懸命一カ月間小規模作業所で仕事をしても、今までは五千円とか六千円のお給料を月の末にもらって、ああ、これでももらえてよかった、そんなふうなことでした。とても悲惨な状況でした。私の仕事をお願いしてから、お母さんが泣きながら、私の家に来て、中川さん、初めて一万円札が入っていたわ、一生懸命働いてやっと一万円札が入っていた。
そのときに、私は作業所に仕事で行くたびに職員の方のお話とかいろいろ聞きました。実際、国で小規模作業所の補助金というのは年間百十万円です。百十万円というのは一人の職員さえ雇えない。地方自治体で手当てをしているところもありますけれども、百十万円ではたった一人の職員さえ雇えません、国のお金だけでは。ですから、皆さん必死で、バザーをやったり、五銭でも十銭でもいいからいろいろな仕事をとってきて、そして一生懸命働いてそれを施設の運営に当てている。
私は、百十万の小規模作業所の補助金で地域の中で社会復帰を目指していくというのは、これは全く矛盾した話だと思います。大臣、年間百十万の補助金というのはどのようにお考えでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504237X01019990519/111
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112・宮下創平
○宮下国務大臣 ただいまの法制整備によりますと、社会福祉法人として認可された、あるいは二十人以上とかいろいろ外形標準を設けまして助成をやっておるわけでございまして、小規模作業所はその要件に該当しない、しかしながら、必要性に応じて百十万円という定額と地方財政措置を講じておるわけでございます。
しかし、今委員の御指摘のように、考えてみると、きめ細かなこういう障害者の対応というのは極めて重要であると存じます。したがって、今回私どもは、きめ細かな障害者対策を行うためにはもう少し基準を下げてもいいのではないか、社会福祉法人の基準も見直そうと考えております。そしてまた、二十人というような基準もずっと下げて、地域の実情に細かく対応できるようなものにしていきたい。
そういたしますと、百十万円の今の定額補助から、事情がそれぞれ異なるとはいえ、年間二千万円程度補助できるとか、いろいろそういったことになる可能性がありますので、そういったことを頭に置きながら、小規模作業所の位置づけとその改善。それから、私も私の選挙区でそういう事情を承知しております。そういう人たちが善意に満ちてやっているボランティアだけに頼っているような施設でございますから、ぜひともこの位置づけを明確にして助成も図っていきたい、このように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504237X01019990519/112
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113・中川智子
○中川(智)委員 先立つものがなければということと同時に、雇用の場が本当にありません。就職先が今は健常な人もない、このような景気不安の中で、特に精神障害の方たち、社会復帰しようとしても雇用の場がない、働く場がない中で、小規模作業所というのは、みんなの一つの大きな力になり、そこがまた生きがいになって、自分が必要とされている、その中でいろいろな人たちと交わって初めて社会復帰というのができていく、その原点だと思いますので、ぜひともお願いしたいと思います。
それと同時に、作業所とかをつくるときに、新聞報道なんかにも何回かありましたが、福祉摩擦というふうにマスコミでは書かれていますけれども、作業所なりグループホームなりをつくるときに、地域の方たちの反対、そこの地価が下がるとかそういう偏見がまだまだあるわけなんです。ですから施設がつくれない。そんなときにはその当事者と地域住民が敵対してしまうという状況になっております。このときに厚生省なりが、行政が、その中で理解を求めて施設がつくれるような働き方、手助けというのはできないものでしょうか。今やっているかやっていないか、今後していくおつもりがあるかどうか、それを最後にお伺いして、終わりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504237X01019990519/113
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114・今田寛睦
○今田説明員 先ほども偏見に対する対応ということで御質問がございましたが、やはり偏見というものが、単純に理屈だけで解決するということにうまくつながらない場合が多いというふうに思います。
私ども、先ほど申し上げましたように、結局は、うまくいっているケース、そういったものを御紹介して、そこでどういういい仕組みができ上がっているかということを、現地の困っていらっしゃる方々あるいは地元の保健所あるいは精神保健福祉センターにそういう情報を集めていただく、あるいは我々が知り得ればそれを流してさしあげるということで、現実を見ていただくことも一つの重要な役割ではないかというふうに思っております。
したがって、そういう意味での情報をバックアップしていくということについては、厚生省としても今後努力していかなければならない、このように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504237X01019990519/114
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115・中川智子
○中川(智)委員 時間になりました。大臣、社会復帰というのはきめ細かな施策が大事ですので、ぜひともよろしくお願いいたします。ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504237X01019990519/115
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116・鈴木俊一
○鈴木(俊)委員長代理 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。
午後零時三十四分休憩
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午後一時一分開議発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504237X01019990519/116
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117・木村義雄
○木村委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
本日の午後は、精神保健及び精神障害者福祉に関する法律等の一部を改正する法律案の審査のため、参考人として日本医師会常任理事西島英利君、北海道立緑ヶ丘病院長伊藤哲寛君、東京精神医療人権センターコーディネーター小林信子さん、全国精神障害者社会復帰施設協会専務理事・事務局長新保祐元君、全国精神障害者家族会連合会常務理事・事務局長荒井元傳君、以上五名の方々の御出席を願っております。
参考人の方々には、御多用中にもかかわらず御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。本案につきまして、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただき、審査の参考にいたしたいと存じます。
次に、議事の順序について申し上げます。
最初に、参考人の皆様方から御意見をそれぞれ十二分以内でお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答え願いたいと存じます。
なお、発言する際は委員長の許可を受けることになっております。また、参考人は委員に対して質疑することはできないことになっておりますので、あらかじめ御承知おき願いたいと存じます。
それでは、まず、西島参考人にお願い申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504237X01019990519/117
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118・西島英利
○西島参考人 本日は、意見を述べさせていただく時間をお与えいただきまして、ありがとうございました。
私は、先ほど御紹介いただきましたように、日本医師会の常任理事でございまして、実際には精神保健指定医でもございます。精神科の病院も経営をいたしております。そういう観点から、臨床の専門医としての立場から意見を述べさせていただきたいというふうに思っております。
レジュメに従いましてお話を進めさせていただきます。
今回の一部改正案についてでございます。
今回の法改正につきましては、精神障害者の人権の尊重を一歩推進するという形で、さらに、ここは非常に重要なところでございましたけれども、医師と患者さんの信頼関係を保たれるように考慮していただいたということが一点ございます。それから二点目が、ノーマライゼーションの理念のもとで、精神障害者社会復帰施設に精神障害者地域生活支援センターが追加されまして、患者さんたちや家族の方々が非常に相談をしやすくなったということでございます。こういうことで地域ケアの一層の推進体制がなされるようになったということで、全体的には私自身高く評価をさせていただいております。
参議院の議事録を読みますと、五年後の見直しということが言われておりますけれども、今後の見直しに当たりまして御検討いただきたいことを幾つか述べさせていただきたいと思います。
まず一点目でございますが、精神障害者の定義についてでございます。これは、資料一と二に従いましてお話をさせていただきたいと思います。
現行法の第五条におきまして、精神障害者は精神疾患を有する者と定義されておりまして、その例示として精神分裂症、中毒性精神病、知的障害、精神病質が挙げられております。今回、中毒性精神病が精神作用物質による急性中毒またはその依存症に改められましたことは非常に評価できるわけでございますが、この件は覚せい剤の問題だろうというふうに思います。
こういう例示を見ますと、社会的にも家族的にも問題とされる患者さんたちをこの精神障害というふうに見て、精神科病院に入院をという形ではないかというふうに私は考えるわけでございます。しかし、現実的に、精神科病院を運営いたしておりますと、最近はこのストレス社会の中でうつ病の患者さんが非常にふえてきております。
そういう形の中で、資料一の図でございますけれども、気分障害、躁うつ病を含むというのが実に外来で二一・三%もいらっしゃいます。それから入院に関しましても、六・七%の患者さんが躁うつ病として入院されております。さらに、ストレス関連障害等々を加えていきますと、外来では実に四五・六%、入院に関しましても九%近い患者さんたちが精神科に入院されている、こういう現状がございます。
資料二を読んでいただきますと、これは平成十年度の警察白書からとってきた資料でございますが、実に自殺の患者さんが二万四千三百九十一人、一年間にこれだけの自殺の方がいらっしゃるということでございます。この表の下の方を見ますとさまざまな原因が書いてございますが、私ども専門家から見ていきますと、これはかなりの部分がうつ病の患者さんであろうというふうに考えております。もしうつ病の患者さんであれば、きちんとした治療をすればうつ病はよくなるわけでございまして、自殺まで至らないということも十分に言えるかというふうに思います。
最近、さまざまな問題の中で自殺がよく社会問題化されておりますけれども、やはりこういう問題も含め、しかも、最近非常にふえてまいりました高齢社会の中での老年痴呆の問題、これも非常に増加をしております。入院の患者さんというのは非常にふえておりまして、私どもの病院でも重度痴呆の病棟を持っておりますけれども、かなりの患者さんが入ってこられます。しかも、この患者さんたちを面会にお孫さんたちまでおいでになるということでございまして、精神科病院に対する見方というのがかなり大きく変化をしてきているということでございます。
そういう意味で、この時代の変化に対応すべく、例示の方法についてぜひ見直しをしていただきたいと思います。この見直しをしていただくことによって、私は、なかなか進まない偏見という問題がかなり速いスピードで変わってくるのではないかというふうに思うわけでございます。
二番目に、長期入院の問題でございます。
これは資料三、四、五を見ていただければと思いますが、必ずしも長期入院の患者さんたちが社会的入院とは限らないと私どもは思っております。資料三によりますと、一年間に実に二十八万人の方が新しい入院として入院をされております。
そして、最近のこういう患者さんたちは、残留率といいまして、どのくらいの期間入院されるだろうかということでございますが、この残留率を見ますと、入院後一カ月で七六%、ですから、二四%の患者さんが退院をされているということでございます。三カ月で四七%、六カ月で三〇・二%、一年で一九・八%、一年六カ月で一五・六%というふうに、かなりの患者さんが早期に退院をされているという現状がございます。ぜひこれも御理解をいただきまして、長期入院されている患者さんたちは中等度以上の患者さんが非常に多いんだということも御理解をしていただきたいというふうに思います。
三番目に、任意入院における閉鎖処遇の問題でございます。
基本的には、開放的な処遇がなされるよう私どもは積極的に努力をすべきであるというふうには考えております。しかし、入院を必要とするほどの患者さんたちは、病状が不安定だったり、また一部重度の患者さんたちが入院されていることにより、建築構造上、開放的な処遇はしておりますけれども、閉鎖病棟に入院をということをとらざるを得ない場合もございます。今後、開放処遇を推進するためにも病床の機能分化というものが必要だと考えておりますし、また、少病床でも運営できるように、つまり十床、二十床の病棟でも運営できるように、財政面も含めた環境整備の支援策を御検討いただきたいと考えます。
四番目が、重大な犯罪を繰り返す精神障害者についてでございます。
非常に悲惨な事件がたくさん起きておりますが、これらの精神障害者の方々は数としてはまれだというふうに私は思っておりますけれども、しかし、こういう患者さんたちを民間病院で診るということは非常に対応困難でございます。ぜひ公的病院の責任であることを明確にしていただきまして、患者さんのQOLの面からも、そのための施設設備、職員配置を早急に御検討いただきたいというふうに思います。
資料六を見ていただきますと、平成五年から九年に措置入院をされた方が二千三百六名いらっしゃいます。殺人が五百四十五名いらっしゃるわけでございますが、こういう患者さんたちをどこで治療しているかといいますと、資料七に公的病院と民間病院の措置入院患者の比率が書いてございますが、実に公立病院はこれだけの患者さんしか診ていないということでございます。平成九年度に至りましては、百五十六病院の中で三百三十八名の措置入院しか診ていない、つまり一病院二名でございます。しかし、民間の指定病院では、千百二十二の病院数の中で措置患者数が三千九百五十四名、つまり一病院が四名近く患者さんを診ているという現状がございます。
しかし、指定病院というのは、本来は公的病院が足りない部分を補うというのが目的だろうというふうに私どもは思っておりまして、ぜひ公的病院がしっかりとした責任を持ってこういう患者さんたちを診ていただくよう、そういう義務を明確にしていただきたいと思うわけでございます。
さらに、警察庁、法務省、厚生省を含めまして、ぜひ幅広い視点から御検討をいただきたいというふうに思います。厚生省に聞きますと、警察庁、法務省はなかなかお話し合いに乗ってくれないというようなこともちらっと聞いておりますので、ぜひそのあたりもよろしくお願いをしたいと思います。
次が、公的病院と民間病院の機能分化の明確化でございます。
先ほどと同じようなことでございますが、重大な犯罪を繰り返すには至らなくても、民間病院では対応が非常に困難な粗暴な行動が顕著な患者さんを受け入れております。しかし、民間病院にはマンパワー等も限られておりますし、こういう患者さんたちをきちんと受け入れていただくよう、公的病院の後方支援体制の整備をぜひお願いしたいというふうに思います。
次が、社会復帰対策の推進でございます。
当然、これから先は地域ケアが中心になるだろうと私どもは考えております。そういう意味で、それぞれの病院も、地域ケアを進めていくためにグループホームをつくったり、さまざまな社会復帰施設をつくっているわけでございますが、なかなか運営も厳しいようでございます。法を見ますと、社会復帰施設をつくることができるというふうになっております。ぜひこれを義務規定というふうにしていただきまして、都道府県、市町村はつくらなければならないというふうに五年後の見直しでしていただきますと、社会復帰対策がかなりのスピードで進むようになるのではないかなというふうに思います。障害者基本法の中で、たしか平成七年だったと思いますが、精神障害者をようやく含めていただきまして、今その対策が進んでいるところだろうというふうに思っております。
次が、精神障害者に対する偏見についてでございます。
法三条で国民の義務として精神障害者等に対する理解を深めることが昭和六十二年の改正で加えられましたけれども、精神障害者の方々がトラブルを起こしますと、必ず精神病院入院歴があるとか、通院歴があるということがマスコミにより報道をされます。そうしますと、確実に外泊ができなくなります。家族の方が周囲の近所のことをお考えになり、ちょっと外泊はしばらくやめてくれというようなこともよくございます。ぜひこういう偏見を増長すると思われるような報道のあり方も、これは言論の自由等もございますけれども、何らかの形で解決をしていただくようにお考えいただけないだろうかと私どもは思うわけでございます。
最後でございますが、精神医療の適正なる診療報酬体系の確立についてでございます。
よりよい精神医療を提供するためには、当然のことでございますけれども、適正なる診療報酬体系の確立が不可欠でございます。
しかし、資料八を見ていただきますと、ちょうど網かけをいたしておりますけれども、公立病院と医療法人、ですから民間病院との比較をしております。これは平成九年九月の中央社会保険医療協議会の医療経済実態調査の資料でございますので、公的な資料でございます。給与を見ていきますと、一番右側でございますが、常勤一人当たり、実に公立は七十三万三千円、民間は四十四万二千九百円という形で、大きな格差がございます。三番目の医業収支差額を見ていただきますと、これは九月でございますからボーナスは入っておりませんけれども、公立は実に四千九百四十四万の赤字でございます。民間は赤字にしたら倒産いたしますので黒字にしなければいけません、三百十八万の黒字が出ているということでございます。これだけの公民の格差があるということでございます。
さらに、「国家公務員に係る俸給月額の調整について」というところがございますが、これによりますと、一件、危険手当と言われるような調整給がついております。三十五万五千円の俸給をもらっている新任の医師に関しましては、三万一千八百円の調整給がついているということでございます。また、民間にはこういうことがないというところで、やはりこういう格差も出てくるのかなというふうに思っております。
いろいろ述べてまいりましたが、時間も参りました。きょうは、本当にこういう意見を述べさせていただく機会をお与えいただきましてありがとうございました。
昭和五十九年に宇都宮病院の事件が起きまして、精神衛生法から精神保健法に変わったわけでございますが、そのときにさまざまな問題が分析をされております。しかし、その官の部分がほとんど解決をされないまま現行に至ってきたことが今回の大きな不祥事を招いたことにもなっているのではないかというふうに思っております。これを正すのは私は先生方の力しかないというふうに考えておりますので、どうぞ今後ともよろしく御検討いただきまして、患者さんたちが明るく療養生活を送られるようにしていただければというふうに思っております。
ありがとうございました。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504237X01019990519/118
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119・木村義雄
○木村委員長 どうもありがとうございました。
次に、伊藤参考人にお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504237X01019990519/119
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120・伊藤哲寛
○伊藤参考人 お招きいただきありがとうございます。
私は、北海道立緑ヶ丘病院の院長ということでありますが、同時に全国自治体病院協議会の精神病院特別部会の部会長をさせていただいております。また、昨年三月からは精神保健福祉法に関する専門委員会の委員として、ことしの二月からは公衆衛生審議会の委員として、この法改正についての論議に参加させていただいております。
本日は、精神病院で精神障害者の治療を担当している立場から、主として医療に関連した事項についてだけ意見を述べさせていただきます。
ほかの病気やほかの障害の対策に比較して、また国際的な基準に照らし合わせて、日本の精神障害者の医療、保健、福祉は貧しいと言われております。どのように貧しいかということは、ここで詳しく述べる時間がありませんので省略させていただきますが、お手元に配付した緑色の小冊子、「安心して利用できる精神科医療を実現するために」ということの中でさまざまな提言をさせていただいております。その中でも、特に精神保健福祉法の改正、そして医療法の改正というのが大切であると認識しております。
今回の法改正案は幾つかの課題を残しておりますが、日本における精神障害者処遇の歴史的、文化的背景を考慮しますと、あるべき姿に一歩近づいたものとして評価してよいのではないかと考えております。
次に、少し具体的な要項について私の意見を述べさせていただきます。
まず、人権を尊重した医療の確保についてです。
改正案では、精神医療審査会の機能強化と独立性の確保、強制入院の一つであります医療保護入院の対象要件を新たに規定すること、精神保健指定医の責務を明確にすること、自分の意思で入院した任意入院の患者さんは原則として開放的な処遇を受けるべきであること、精神病院への指導監督義務などが改正点として挙げられ、精神科に入院する患者さんの立場を考えますと、当然の改正だろうというふうに考えております。
この改正案に対して、厳し過ぎる、規制緩和の時代に精神科医の裁量権を狭める方向は望ましくないという意見もありますが、本人の同意なしで行う非自発的入院では、多くの場合病院の選択権の行使ができませんので、どこの病院に入院しても安心して医療が受けられるように、このような担保は必要なものと考えます。
また、このような規制とは別に、情報公開によって精神病院の透明性を高めることが、当事者の病院選択権を広げ、同時に精神病院に対する誤解を解消するために重要なことと思います。情報公開については公衆衛生審議会の答申でも触れられたところであります。
次に、今回の法改正で初めて提案されている、受診を拒否する患者さんの移送制度についてであります。
本人の同意がなくても受診させなければ病気が重くなる、そういう患者さんに対して何らかの手だてがなければならないわけですが、これまで法的な規定がありませんので、家族が病院に連れていきたくてもなかなか連れていけなかった、いかれなかった。あるいは逆に、本来ならきちっと診断、面接などをして指定医が判断した上で精神病院に移送すべき者を、この規定がないばかりに、安易に精神病院に収容するということもありました。この二つの課題がある中で、今回、移送制度が創設されるということは一歩前進になるだろうと期待しております。
しかし、移送すべき患者さんの状態の判定、それから、移送途中で行動制限をどの程度できるのか、あるいは注射など医学的処置をどの程度できるようにするのか、それから、運ばれた病院の医療の質をどういうふうに担保するのか、これらの点を十分検討しなければ、この制度が患者さんにとって信頼される制度として生かされない可能性もあります。
この制度を有効に生かすためには、精神病院あるいは精神科の医療機関が日常的に地域医療活動を行っていること、また、保健所や市町村の地域精神保健福祉活動が活発であること、それから、当事者自身で活動する自助活動が盛んであること、それから、ボランティアが地域の患者さんを支えるために活動していること、このように地域の中での精神医療保健福祉対策が十分なされて、その上でこういう移送制度が生きてくるということになると思います。そうでなければ、ただ、困った患者さんがいた、はい、入院という、安易にこの移送制度が使われる可能性もなきにしもあらずです。
次に、今改正の中で大きなポイントとなっております保護者の義務の軽減についてです。
これについては、私どももやはり保護者の義務は次第に軽減していくべきだと考えます。今回は自傷他害防止監督義務だけが外されましたけれども、家族の方あるいは兄弟の方が安心して身内の方を見守り、支援してあげるためには、法的な規制はできるだけない方がよろしい。自然な感情でもって助けていく、応援してあげるということが本当だろうと思います。将来は、治療を受けさせる義務、医師の指示に従う義務という過重な家族の義務は外すべきではないかと考えております。
次に、精神障害者の福祉の充実です。
今回、社会復帰施設は都道府県の業務として残りましたけれども、精神障害者地域生活援助事業とか居宅介護支援事業とか短期入所事業などの福祉サービスについては市町村で行うこととされました。精神障害者を身近な地域の人々が支える、そういうようなシステムをつくるということは非常に重要なことだと思います。地域の人々と精神障害者の間の交流がそのことによってふえ、精神障害者差別を解消し、精神障害者の自立を促進することにも役立つのではないかと期待しております。
次に医療の面について、この改正法案が通ったとしまして、そのときにどういう配慮が必要かということを、少し細かなことになりますが、お話しさせていただきたいと思います。
一つは人権に関してですが、政省令への委任事項の中には細かな規定をこれからしなければならないところがあります。
例えば、任意入院の要件は、昭和六十三年の通知で、患者がみずからの入院について積極的に拒んでいない状態をいうものであることと解釈されております。しかし、痴呆患者さんなど自分の意思の表明が困難な患者さんについては、渋々という形で同意する可能性が強いわけですから、任意入院という形で多くの場合閉鎖病棟に入院させられる可能性が出てきます。これは、患者さんの権利擁護という観点から好ましいことではありません。
任意入院する場合の本人の同意のあり方について厳密に規定し直し、同時に、任意入院の患者さんについては閉鎖処遇は原則として行わないという規定を設けるべきだと考えております。やむを得ず任意入院の方を閉鎖病棟に入院させる場合には、精神医療審査会に届けるなど、人権が適切に守られるようにすべきだと考えております。
次に、この法律が有効に生かされるためには、患者さんが最初に精神障害者として立ちあらわれてくる医療機関がどうあるべきかということが非常に重要な条件になってまいります。
まず、医療法の改正ということについてですが、今、医療法の改正が盛んに論議されておりますが、残念ながら精神科の医療についてはこれまでの医療法の改正の中でも取り残されて、医療法ができてから一度も精神科の医療のあり方というのが論議されていない。論議はあったのでしょうが、法として改正が行われていなかったというのが現実であります。特に、これまでも法改正のたびに問題になったのは、医療法の特例の問題であります。
精神科の患者さんのための救急医療、急性期医療、あるいは非自発的入院患者さんの医療、これは医療保護入院と措置入院ですが、あるいは子供の精神科の医療、薬物依存の医療、あるいは合併症の医療など、非常に高度なあるいは手のかかる医療があります。これらについては、ぜひ一般病床並みの人員配置をしていただきたいというふうに考えます。患者さんの人権を確保し適正な医療を提供するためには、ぜひ必要なことと考えます。
もう一つは、医療計画の問題であります。地域医療計画というのは二次医療圏ごとに立てられるはずになっておりますけれども、精神科医療については都道府県ごとになっております。やはり地域に適切な病床配置がされて初めてさまざまなサービスが有効にいくんだろうと考えております。
次に、重要なことですが、総合病院の精神科が日本では少ないということであります。外国では単科の精神病院を少しずつ縮小して、総合病院で精神科の患者さんを診るようになってきております。それは、かかりやすいということ、合併症が生じても適切な治療が受けられるということであります。私は単科の精神病院の院長でありますが、できたら総合病院の方に少しずつ力点を移していただきたいという願いを持っております。
それから、国公立病院の役割ですが、国立病院あるいは私どもの公立病院は、民間病院が担うことのできない難しい患者さんあるいは児童、あるいは薬物依存の患者さん、あるいは先ほど言いましたような身体的な合併症を持っている患者さんの医療、このような役割を今後ますます担うべきだと思っております。そのための国公立病院の機能の充実が患者さんの適正な医療を守るための一つの条件だろうというふうに考えておりますので、よろしくお願いいたします。
最後になりますけれども、最初に述べましたように、この法改正は一歩進んだものというふうに評価いたします。
しかし、私どもが長年お願いしてきたことの一つがまだ入っておりません。それは、法文の中に「すべての精神障害者は、個人の尊厳が重んじられ、障害をもって差別されることなく、その尊厳にふさわしい治療と保護を受ける権利を有する」、こういう条文を入れていただきたいということをお願いしてありました。しかし、今回は入りませんでした。いつか、今までの精神障害者施策が誤っていたということを謙虚に認めた上で、この法律を抜本的に見直す時期が来ていただきたい、そういうふうに願って、私の意見とさせていただきます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504237X01019990519/120
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121・木村義雄
○木村委員長 どうもありがとうございました。
次に、小林参考人にお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504237X01019990519/121
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122・小林信子
○小林参考人 初めまして、私は、御紹介にありましたように、東京精神医療人権センターの小林信子と申します。コーディネーターという役割を担っております。
本日は、患者の権利擁護者として、そして私たちに寄せられた相談の中から患者さんの声を皆様にお伝えする機会をいただきまして、大変感謝しております。ありがとうございました。
私たち東京精神医療人権センターは、一九八六年に、さきの西島先生がおっしゃった宇都宮病院の事件をきっかけとして、患者さんを守っていく、患者さんの権利を擁護する団体として発足いたしました。患者の権利擁護団体ですから、今のところは入院中の患者さんを中心に、こういうようなパンフレットを無料で配布しております。この中には、精神医療審査会の利用の仕方とかそういうことが書いてあります。
私たちの活動は、一九八八年から施行されました精神保健法に大いに恩恵を受けています。
というのは、精神衛生法の時代は、たとえ弁護士さんでも面会ができなかったというような、すごく閉鎖された空間が精神病院でした。ところが、八八年の精神保健法になってから、一応通信、面会の自由が保障されましたので、我々も患者さんへの訪問活動、面会活動ができるようになり、それが私たちの活動を広げていってくれたと思っています。そのことにより、法律が変わることの重要さというものを一番よく痛感している団体の一人だと私は思っております。
しかしながら、精神保健法になってから二度、三度の改正がありました。しかし、精神病院に関するスキャンダルは後を絶ちません。これはどうしてなのかと私たちはいつも考えております。やはり原因があるわけです。
それで、精神保健法の改革というのは、今までの保健法から随分変わったものだと評価はいたしますけれども、そこのところに人権擁護ということで精神医療審査会というものが創設されました。当時は何もなかった状態ですから、精神医療審査会の存在自身はもろ手を挙げて賛成したわけです。
ところが、我々がその後十年、十一年と実践を重ねる上において、やはりこれではだめなんじゃないかというような思いをしてまいりました。これは参議院の中でも論議されていたと思いますけれども、申し立て件数がどんどん低下しているわけです。例えば平成八年で、入院患者がその当時は多分三十五万人ぐらいいたと思いますけれども、退院請求なんかは八百六十二件、処遇改善請求に至っては四十八件という、本当にごくごくわずかな、針の穴を通すようなものとしてしか機能されていないわけです。
なぜこの精神医療審査会が機能していないのかということは、いろいろな原因がたくさんあると思います。皆さんによく知られているのは、精神医療審査会というものがあるということすら知らない患者さんが入院しているんじゃないか、入院のときの告知が不十分で、そういう権利のことが患者さんに十分わかっていないのじゃないかということが言われております。それはそのとおりです。それをだれも否定はいたしません。
今回の法改正におきましても、精神医療審査会の委員の制限、今までは十五人という上限がどういうわけか決められていたわけですから、東京都のような多数の人口を抱える県も人口の少ない県も上限が決められているという不思議な法文だったわけですけれども、それが廃止されました。それから、審査会に少し権限を持たせて、報告書の提出とか出頭命令の追加とかいうものが加わったことは大変プラスに評価してもいいことだと思います。
しかしながら、それはあくまでも審査を申請した人、審査会に届いた人が利用できる機能でありまして、実際には、例えば権利を知っている人、審査会があるのだといっても、そこに審査を申し立てられない雰囲気が実は精神病院にあるんだということが、私たちの活動からも多くの患者さんからも寄せられているわけです。
それはなぜかというと、お医者さんが思うほど精神科においては医者と患者は信頼関係にはありません。精神病の患者さんたちというのは人質だと思っています。もし自分が退院請求をするというようなことは、病院に対して盾を突くことです。盾を突いたらいじめられるのではないか、スタッフに虐待されるのじゃないか、薬がふやされるのじゃないか、保護室に入れられるのじゃないか、果ては電気ショックをやられるのじゃないかと、本当に考えている人が多いのです。ですから、権利があってもそれを行使できない環境をどうにか変える方策をしなければ、精神医療審査会への申し立て件数が決してふえるわけはないのです。
じゃ、どのように安全に申し立てをしていくのかといえば、いわゆる精神病院の外部から第三者を常駐させるなり定期的に訪問させて、大丈夫なんですよ、あなたが申し立てをしてください、そういうふうに申し立てをしても決してあなたに不利な状況をつくらないようにしますからというような、安全な環境をつくるような制度を創設しなければ、精神医療審査会自体は絵にかいたもちになったままだと思います。
そして、その第三者機関というのが何なのかといいますと、権利擁護者とか、私たちはペーシェントアドボケートと英語を使ってしまっているのですけれども、オンブズマンという形で導入されているわけです。その待っている審査会に比べて、これらのことは外国ではたくさん実践されておりますので、後で述べる機会を与えていただきたいと思います。
そして、患者さんの権利を守るには、先ほどもほかの先生からも出ました情報公開と、それからもう一つ監視機関の創設をぜひお願いしたいと思います。監視機関といっても、厚生省が提案しているような、お医者さん一人が出かけていくということではなくて、やはり国際的な基準を意識した、国際的な基準をクリアするようなものを創設していただきたいと思います。
ICJが、新法になってから、八八年の法律になってから、八八年と九二年と二回調査に参りました。そこではたくさんの提言が出ております。それから、九一年には国連原則も出ております。いろいろな国際的な基準があるわけですけれども、それと整合性を持った抜本的な精神保健法の改革をぜひしていただきたい。人権小国・後進国と言われている日本ですけれども、その汚名を晴らすためにも、ぜひ国際的な基準をクリアした、名前だけではない、実効性のある患者の権利擁護のシステムを創設していただきたいと思います。それを先生方にこの場をかりてお願いしたいと思います。
長くなりましたが、どうもありがとうございました。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504237X01019990519/122
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123・木村義雄
○木村委員長 どうもありがとうございました。
次に、新保参考人にお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504237X01019990519/123
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124・新保祐元
○新保参考人 精神保健福祉法一部改正の審議に際しまして、意見を述べさせていただく機会を与えていただき、感謝しております。
私は、全国精神障害者社会復帰施設協会の専務理事兼事務局長の職をお預かりしている立場から、公衆衛生審議会精神保健福祉部会に設置されました精神保健福祉法改正に関する専門委員として本日の議題にかかわらせていただきました。
既に御承知のことと存じますが、精神障害者問題を考えるとき、我が国における精神障害者の置かれた状況は、精神医療黎明期、すなわち明治初頭でございますが、呉秀三先生が、精神病になりたる不幸とともにこの国日本に生まれたる不幸をあわせ持つと言われた言葉を忘れることは片時もございません。こうした状況の改善を図るために、精神障害者施策にかかわる法制度の改正や見直しが行われることに関しまして、うれしく思っているところでございます。
その理由は、法が有する要素といたしまして、法の持つ物理的強制力が挙げられます。法は、究極におきまして、社会秩序を維持し発展させるものでなければならないということは私が申し上げるまでもないことでございます。したがいまして、法が何を理念とするとき、安定した社会となるのかということを考え続ける必要があります。
このことを精神障害者の立場で考えたときに、精神障害者が市民ないし他障害者との間で法に負の格差を持つ者であるとすれば、そうした法は人と人との間に差別を認める法律だということになります。この見方で現行法を見てまいりますと、精神障害者にかかわる法は、残念ながら市民と他障害者にかかわる法と対比して負の格差がございます。
このことは、まさに、市民と対比いたしまして精神障害者には欠格条項等があるなどといったことを自然に周知せしめる強制力になっておりますし、結果としてこういった事柄が偏見や差別を生じさせていると言えます。それは、ノーマライゼーション理念を達成することが困難になることはもちろんのことですが、我が国の法制度が精神障害者を含めた社会秩序の維持を行う法になり得ていないと言えるのではないかと思います。
言いかえれば、物理的強制力を持つ法が、精神障害者の人権や生活権を強固に示すものであるとすれば、精神障害者に対する偏見の解消や生活権の獲得に向けて市民社会も協力的に動き出すということは明らかだと思います。
法が誤解や偏見を助長してきた一例を挙げますと、精神衛生法時代の精神病院が担ってきた法制度上の役割といたしまして、医療と保護が結果として精神障害者を社会から隔離し、社会的入院の固定化によって市民に対し精神病は治らない危険な病気といった観念を助長し、誤解や偏見あるいは差別を拡大深化させ、市民の理解を得ることが困難な対象者とさせてしまっていることは明らかでございます。
このような社会状況がいかに精神障害者の社会復帰を阻害しているかについては、諸先生方には御理解いただけるところだというふうに思います。
したがいまして、今般提出されました改正法案の推進が、少しでも精神障害者の生活権や当たり前の医療受給権につながるであろうことを前段で強調させていただきたいというふうに思います。
次に、具体的な事柄についてでございますが、精神障害者問題の根幹が人権問題に触れることは、多くの識者が指摘しているとおりです。
こうした問題を解決する手だてといたしまして、一つは、医療機関による閉鎖、拘束性を是正し、なかなかなくならない宇都宮病院事件あるいは大和川病院のような患者さんに対する虐待による死亡等の不祥事を解決していくこと。
二つ目には、現在、全国の精神病院に入院しております三十四万人余りの患者さんのうち、社会的入院と目されている七ないし十万人の生活権を保障するため、社会復帰促進にかかわる受け皿づくりを進めていくこと。
三つ目には、在宅精神障害者が入院医療を必要とするときに、まさに速やかに医療を受給できる医療機関の受け入れ体制と機能を充実していくこと。
四番目に、家族、すなわち保護者責任の軽減ないし解消。
そして五番目に、他障害者と同様の福祉サービスを受けられるようにするため、市町村を中心にした障害者施策推進窓口の一本化が挙げられます。
今般提出されました改正法案は、これらの事柄を網羅した形で示されておりますことは、衆議院調査局の厚生調査室が作成いたしました本法案に関します参考資料六ないし十ページに「主な論点」として改正の趣旨が述べられているとおりでございます。
わかりやすくこのことを申し上げますと、精神障害者も他の傷病を有する人たちと同様に、一人の地域住民が精神病ないし精神障害という傷病を有しながら地域で生活しているわけでございますから、住民が生活を営む中で傷病によって医療を受ける、治れば退院してきてもとの生活に戻るといった構図は、精神病を有する人であっても当たり前のはずだということです。精神障害者に対してもこうした状況を形成することで、市民や他の障害者との負の格差を減らしていってもらいたいと思っております。
そのためには、医療が必要なときには当事者にとって必要な医療が提供されること、すなわち、救急医療の整備や医療機関の情報開示等を改善していくことが求められます。情報開示によって得られる適切な医療の受給は、施療機関の目安などによって社会的入院の形成を是正させるだけではなく、病状が安定したら退院しかつての生活の場に戻る、そういったことで、精神病は治らないといった誤解やその延長線上での偏見、差別等を解消できるものと思います。
精神障害者の社会復帰促進を図るためには、その前提としてあるいは車の両輪のように、社会生活を維持する上での傷病に対する社会的基盤としての精神医療の改善、整備拡充が不可欠だと言えます。並行いたしまして、生活権を保障するということは、障害者の種別を超えて法制度が一本化されることが望まれます。
加えて、地域社会が、どのような傷病を持とうとも、すべての人々との共生を可能にする社会にしていかなければなりません。共生といったかかわりの関係を構築していく上で市町村の役割は重要です。精神障害者福祉手帳の交付や通院医療費公費負担等の窓口を市町村に移行し、少しずつ市町村を中心とした精神障害者ケアシステムを実態化していってもらいたいと思います。このことによって、精神障害者の生活も当たり前のものにしていく必要があります。
これまで申し上げてまいりましたことは、精神障害者社会復帰施設の整備の進捗に欠かせない事柄でございます。
私は、全国精神障害者社会復帰施設協会の事務局長として、精神障害者施設が他の障害者施設並みに整備され、施設運営にかかわる貧しい補助金を他障害者施設並みにしてほしいと願っておりますが、それ以前に精神障害者も一人の人間であり、傷病を抱えながら生活を営む権利があることをみんなが理解し、そのことを可能にする状況をつくりたいということが第一の願いであります。
このことを抜きにいたしまして、精神障害者の生活を支援することはできません。とはいえ、社会復帰施策の充実を抜きにして今日の精神障害者問題は解決し得ないとの思いは大変強いものがございます。それは、私が精神障害者の社会復帰問題にかかわり続けるきっかけに由来いたします。
私が大学三年のときでございますが、ある精神病院に行って実習をさせていただいた折、多くの社会的入院と目される患者さんたちが、みずからの責任で犯罪を犯しても刑期があるからいつかは社会復帰できる、でも、私たちは病気という理由だけでその目安さえなく、多くが、がんばこ、すなわち棺おけ退院だとあきらめていると言うのです。すなわち、病気が改善しても死ぬまで病院にいるしかないというわけです。
人間の営みは希望によって生存の価値が生まれるものと言えますが、精神障害者と言われる人たちには希望すら与えられていないという実態をかいま見たとき、この人たちのことを考えずに人はともに生きるなどと言えるのだろうかというふうに思えました。
人は共生を図る上で、仲間のうちに最も弱い立場の人のことを忘れてしまったときに、あるいはその人たちを疎外したとき、決して差別の根はなくならないということを学んでいるときでもございましたので、私は、精神障害者の社会復帰問題から目をそらすことがそれ以降できなくなりました。
今日なお、このような状況にある社会的入院の患者さんの存在は皆無ではございません。こうした思いからも、精神障害者の社会復帰施策の充実を図っていただきたいと強く要望するものであります。
したがいまして、精神障害者地域生活支援事業を社会復帰施設体系に組み込み、在宅福祉事業を他障害と同列に位置づけようとしております本法案は、精神障害者の社会復帰促進のみならず、精神障害者の生活権保障に踏み出す一里塚と考えておりますことから、諸先生方には本法案に対する特段の御高配をお願いいたしまして、私の意見とさせていただきます。どうもありがとうございました。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504237X01019990519/124
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125・木村義雄
○木村委員長 どうもありがとうございました。
次に、荒井参考人にお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504237X01019990519/125
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126・荒井元傳
○荒井参考人 全国精神障害者家族会連合会の常務理事・事務局長の荒井でございます。
まず、六十二年の法改正以来、何と法改正四回ということで、積極的に精神障害者の社会復帰、それから医療の改善のために国会で取り組んでいただいていることに非常に感謝を申し上げます。感激でございます。非常に困難があるから何回もやるというのも重々感じております。そういう意味では、これからもぜひ現実に合わせた形で改善していっていただきたいと思います。
全家連は昭和四十二年に、ライシャワー事件で法務当局、警察当局が精神障害者を管理しようというような法改正から、当事者の声という形で生まれました。その後、現在全国で、精神病院や保健所、地域の作業所等に千四百の家族会があります。約十三万人の会員が活動しております。
私が飛び込んだ十七年前、昭和五十八年に、ほとんどの人の名前は出せませんでした。顔も出せませんでした。それほど役員の方々もまだまだ偏見の壁にさらされていたということであります。それから、我々はただ要求するだけじゃなくて、実践をして社会を啓発していこうということで、作業所づくりとかさまざまなことで外に出ていくような形をとりました。そんな形で今の全家連運動があります。
このたび、法改正について私どもはお配りしたレジュメのように意見を出させていただきました。ちょうど一年前にお配りした資料は一冊の本になっておりますけれども、我々が組織的に討論してまとめたものでございます。そのものを酌み取っていただきまして今回の法改正ができたということを非常に評価したいと思います。
それで意見書の中の、治療に結びつきにくい精神障害者に対して受診する機会を保障してください、保護者制度を廃止するかその義務を緩和してくださいという問題でございます。
資料の後ろの方に、これはちょっと恥ずかしいですね、恥ずかしいというのは、いつもいつも出して恥ずかしいということなんですけれども、十二年前に、新潟出身の本間長吾という私どもの元会長の訴えが載っております。じいさん、ばあさんが息子をよく面倒を見ているんだ、おれの死んだ後はどうしよう、これが一番心配ですと。
彼は、この法案が終わってからすぐ、夏に亡くなってしまいました。
その中で保護者制度を訴えております。高齢の親に、医療にかかる義務、自傷他害の防止義務、財産管理をする義務、医療に協力する義務、それは親として当然やりますよ、それを何で法律で強制するのですか、罰則を与えるのですかと訴えております。
これは朝日の全国版で非常にインパクトがありましたけれども、我々としては運動としては発言をしませんでした。親としての責任を自己放棄する、そういうのは忍びないということで、十二年前は法改正の要求には入れられませんでした。
次の資料は本人の訴えでございます。北海道で積極的に活動している横式さんの訴えで、保護義務者制度があるから、本人が自分で医療機関を決められるのに、全部の二百十七万人の精神障害者が何にもできないのですか、権利がありますよというような形で訴えております。
そういう意味で、保護者制度に今回手をつけていただいたということは非常に評価できると思います。
しかし、全廃ということではありません。これは先生方御存じのように、どこの国にもこういう基準がない、ほかの障害者のものにもないというようなことがありまして、全廃に向けてこれからも諸制度の整備ということを含めて御尽力いただきたいと思います。
もう一つ、治療に対して我々が一番困っているのは、やはり入院のときに子供たちが拒否をするという壮絶なる現場がございます。そのときに、パトカーが来なければ搬送できない、パトカーが来るということはそれだけの事故を起こすわけですので、そういうやむにやまれぬ状態の中で入院させるときもあります。そういうことを含めて、当事者の在宅の医療にかかわる苦労について、ぜひ行政機関も含めて責任を持って搬送なり入院に結びつけてほしいというのが親の願いでございます。そのことに関して、今回積極的にされたということを評価したいと思います。
たくさんありますけれども、時間の関係があるようですので……。
市町村の役割強化と訪問介護事業を実現してください。
我々は、身近な市町村からサービスを受けて、地域で当たり前の生活をしたいというのが願いです。今回の法改正の勇断は評価したいと思います。しかし、精神についてはまだまだ市町村は知識や技術がありません。その辺の指導と予算づけはよろしくお願いいたします。
精神病院における人権侵害の防止策を講じてください。
さまざまな事件を起こす、それがマスコミに出るということは非常に悲しい現実でございます。患者や家族もそういうところだったら入院させられない、入院しにくいということで、本当にどうしようもない状況になってから入院を考えます。そういう意味では、本当に明るい、オープンな、開放された精神病院の環境をつくっていただきたいと思います。
長期入院患者の退院促進のための制度を図ってください。
病院の中に新しい病棟変換という施設をつくってそこに移す、福祉施設と称した施設をつくって移す、これは反対でございます。我々もどんな重い障害者でも、地域で生活をし、地域で暮らしたいという願いはございます。そういう意味で、ヨーロッパ、アメリカのように民間団体を活用して、アパートや治療アパートを確保して、ケアも含めて民間活力でこういう問題をクリアする、先進諸国のものも含めてこういうものをぜひ考えていただきたい。
適切な医療を受ける権利を明文化してください。
これは書いてあるとおりでございます。精神病院管理者は何々することができるという表現ではなくて、資料にも書いてありますように、精神障害者はこういうことでこういう医療を受けることができる、治療を受けることができると、主語を精神障害者にしていただきたい。これは、先ほど話題になった、いわゆる伝染病予防法の中でも非常に話題になった主語の問題でございます。
七番は小規模作業所の運営について、これの安定のために法内事業化してくださいということであります。
時間の問題で残念ですけれども、ちょっと資料の四を見ていただきたいと思います。
これが家族会を中心に歴史的に取り組んでいる作業所の実態でございます。一番上が国庫補助金です。百十万円。平成十一年は八百十カ所がいただいております。二番目の黒棒が、これが全国の精神障害者の作業所の数です。六十二年は二百十カ所だったのが、何と毎年百カ所から百十カ所ぐらいふえて、千四百四十七カ所になっております。国庫補助は八百十ですから、約半分でございます。
そんな中で、右の表を見ていただきますと、平成十年の記録でございますけれども、国庫補助をいただいている七百四十八の作業所の中で、総予算が六十一億、一カ所が八百十万円、通っている人が一万三千九百九人でございます。
何を言いたいかといいますと、精神障害者の地域ケアでアクティブな活動をしている、月曜日から金曜日までやっているわけですから最大の勢力です、これが法外施設として大体八百万ぐらいの補助金で二十人ぐらいの入所生をケアしているということに関して、ぜひ行政、政府の光を当てていただきたい。これは家族会が今みずから身銭を切ってやっている制度でございます。法として位置づける、できたものの運営費を予算措置をするということはぜひよろしくお願いしたいと思います。
最後に、当事者団体の助成について。
在宅・地域ケア時代に一番重要なのは、当事者、家族、本人、そしてそれを支える人たち、それを行政の一つのパワーとしてどう活用していくか、社会資源として活用していくかでございます。今回の法改正ではこれは全然取り上げられませんでしたけれども、二十一世紀に向けて、当事者を支援し、それが行政サービスのパワーとしても役割を持つということで、団体や障害者団体の支援をよろしくお願いしたいと思います。我々も実践と運動を頑張っておりますので、よろしく御対策のほどをお願いいたします。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504237X01019990519/126
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127・木村義雄
○木村委員長 どうもありがとうございました。
以上で参考人の方々の御意見の開陳は終わりました。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504237X01019990519/127
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128・木村義雄
○木村委員長 これより参考人に対する質疑を行います。
質疑の申し出がありますので、順次これを許します。衛藤晟一君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504237X01019990519/128
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129・衛藤晟一
○衛藤(晟)委員 どうも皆様方ありがとうございました。
私どもも、いろいろな御指摘をいただく中で、精神保健福祉法に関しては、六十二年、平成五年、七年、またことし十一年というぐあいに改正をしながら一生懸命努力をしてきたところでもございます。特に平成七年の四年前の改正に、どうしても福祉のサイドに光がちゃんと入らないことにはこれ以上進まないだろうということで、改正に皆さんと一緒に努力をさせていただきました。
一番最初に結論を申し上げますが、今回全面改正をしたかったというのが正直なところなんです。しかし、幾つか御指摘をいただいたように相当残りました。どうしても間に合わなかったというのが実情でございます。そういう中で、ちょうど今西島先生が、官がちゃんとした役割を果たさなかったのではないのかという言葉を最後に一言言われて御意見の御開陳を終わりました。どういう気持ちなんでしょうか、まず、これを西島先生にお願いいたします。
〔委員長退席、鈴木(俊)委員長代理着席〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504237X01019990519/129
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130・西島英利
○西島参考人 昭和五十九年に宇都宮病院の事件が起こりまして、さまざまな問題がそこで議論をされたわけでございます。そのときに、例えば社会復帰の問題等も含めまして、社会復帰施設をつくることができるということから、つくらなければならないというふうにしますと、もっと早く地域ケアの推進ができてきたのではないかというふうに思っております。
それからもう一つの問題は、やはり国公立の病院が非常に対応困難な患者さんたちをきちんと見てこなかったというところがございます。そうしますと、見てくれる病院は行政にとりましてはある意味では非常に便利な病院であるということがありまして、となりますと、当然そこの病院に対しての行政監査とか指導というものがどうしても甘くなりがちである、そういうことが今回に来たのではないかというふうに私は考えております。
これは当然、私も入っておりますが、日本精神病院協会も盛んに指導してきたわけでございますけれども、しかし日本精神病院協会は何の権限もございません。そういう意味で、官がやはりしっかりとしたものを持っていればこれは解決してきた問題ではないかと思います。
特に、きょうはほとんど民間の病院の名前しか出ませんでしたが、国立犀潟病院、あれは非常に私どもでもあきれた対応をしていたわけでございますけれども、当然、それに対しましても新潟県が医療監査、それから実地指導等で入っていたはずでございますので、どうしてそれがきちんとできなかったのかな、官がしっかりしていれば私はこういうさまざまな問題は起きてこなかったのではないかというふうに思っております。
以上でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504237X01019990519/130
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131・衛藤晟一
○衛藤(晟)委員 どうもありがとうございました。
いろいろな御意見が精神病院長期入院だとかあるいは患者の人権の問題だとか保護者の問題だとかありますけれども、実はほとんど政治の問題なのでありまして、私どもはそれを官だとか民だとかに責任をなすりつけようなんという気は全く持っておりません。今、政治が果たすべき役割を果たそうと思っているわけでございます。
今先生からお話がございましたように、例えばいわゆる触法患者をほとんど民間の病院に押しつけておる、先ほどの実態もございましたように、そのことがより閉鎖性を強くしているというような問題もあると思うんです。また、いわゆる病気の程度、種別によってちゃんとした対応ができなくなっているところがあると思うのですが、まず触法患者対策について、西島先生、それから伊藤先生はどういうお考えをお持ちか、お聞かせをいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504237X01019990519/131
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132・西島英利
○西島参考人 触法患者の問題に関しましては、これはとても医療だけではできない状況だろうというふうに思っております。ですから、先ほど申し上げましたように、警察庁、それから法務省も含めまして、幅広い検討をしていかなければこれはなかなか解決しない問題であろうというふうに思います。
最初に申し上げましたように、宇都宮病院事件も、実は触法の患者さんたちがたくさん入っておられました。ですから、そういうことがまだまだ先送りにされながら来たことに問題があるのであって、私は、これを早急に御検討いただければというふうに思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504237X01019990519/132
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133・伊藤哲寛
○伊藤参考人 最初に、官と公の問題で、処遇の困難な方が官に余り入っていないんじゃないかという問題についてお話しさせていただきたいと思います。
私どもも、平成八年度に、国立も含めまして国公立病院の実態調査を行いました。そのときに、措置入院の患者さんをどのぐらいの割合で引き受けているかということを調べましたところ、先ほど西島参考人がおっしゃいましたように、確かに、現在入院している患者さんで措置入院の患者さんの率は官の方が余り高くありませんでした。ところが、新たに発生した患者さんについてどのぐらい受けているかということを調査しましたところ、病床の数の割合が国公立の病院は非常に少ない、全体で九・六%しか国公立の病院はありませんので、それを病床占有率といいましょうかそれで換算しましてどのぐらい引き受けるか見ますと、一病床当たり平均して三・四倍、民間より多く受けている。ということで、これはまだ少ないとは思いますが、少しずつふえているという実態があります。
それからもう一つ問題なのは、病床の地域偏在であります。このような処遇の難しい方は都会に多く発生いたします。ところが、都会には公的な病院の病床が少ないということが判明いたしました。
私のところは十勝という人口三十六万のところですが、道立病院と国立病院があるということもありますが、民間病院の方には、もう十年ぐらいになると思いますが、ほとんど措置入院の方はお願いしておりません。全部私どもが引き受けております。ですから、例えばそういう方が多い地域に関しては、やはり国公立の病院にある程度病床がなければ新規の方はなかなか受けられないという状況があります。そして、実際に公立病院の中でも、都会にある公立病院の夜間救急とかあるいは措置の患者さんとかは、特に東京都は、何%だったでしょうか、かなりの部分を都立病院が引き受けてきている、そういう体制を組んでいるということもあります。
次に、触法患者さんの問題ですが、まず医学的に私たち医療を提供する側から見ますと、我々としては、この触法という概念が我々のカテゴリーの中には入れられない領域ということがあります。
私どもは、医療をいかによく提供するか、そして早くよくして退院させてあげるということが私どもの役目であります。
例えば覚せい剤の方が私どもの病院にも入院してきます。幻覚や妄想があって、非常に急性な錯乱状態にあるときは、当然私どもの病院に入院させます。しかし、その時期が過ぎまして落ちつきますと、比較的早く落ちつくわけですが、私どもとしては、精神症状が消失あるいは軽減した段階では、それ以上入院をさせておくのは医療としては手だてがないといいましょうか、逆に人権侵害になります。
したがって、よくなった段階では、もう既に警察の方で本人の証拠が整っていれば、退院と同時にそのまま警察に戻っていただいて、司法の裁きを受けていただく。それから、もしそういうことで、覚せい剤はやっているのだけれども、警察の方で司法的な処遇ができないようなケースについては、本人に自首を勧めるということをしております。そういう形でやらざるを得ない。また、これ以上のことは、私ども医療者としては法的にはやり過ぎというふうに私は考えております。
実際、病気が重くて、殺人を犯すようなことで入院してきた患者さんには、よほど病気がよくならない限りなかなか退院させる勇気がないということは私ども実際にありますし、退院させても、地域でできるだけ支えていくというふうな工夫はしております。
以上です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504237X01019990519/133
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134・衛藤晟一
○衛藤(晟)委員 そのとおりだと思っております。
我々、今回結論を出せなかったというのは非常に残念でございまして、先ほどからお話がございましたように、これは早急に結論を出してやらなければいけない。ただ、こういうことを申すのはなんでございますが、ちょうど我々も党を挙げて成年後見制度の導入とかいろいろな大きな法務関係の改正に入っているものですからどうしてもおくれてしまったということは、逆に言えば申しわけなく思っておるところでございますが、これは早急に結論を出さなければいかぬなと思っております。
さて、二点目は長期入院の問題についてお伺いさせていただきたいと思います。
西島先生は、最近は長期入院は社会的にも少なくなったよと言いますが、これは世界との比較をやってみますと、やはり問題があるというように私ども思っています。それで、長期入院患者を処遇するためのいろいろな生活施設などの新しい施設体系が必要というぐあいに考えています。病院側の立場、あるいは社会復帰施設を運営する立場から、西島先生、そして新保先生に御意見をお伺いさせていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504237X01019990519/134
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135・西島英利
○西島参考人 先ほどの資料でも御説明をいたしましたように、長期入院になる患者さんの数そのものは、最近の十年間ではかなり変わってきているということでございます。
ただ、全体的な患者さんの数を見ますと、五年以上、十年以上の患者さんたちが三〇%近くおられることは事実でございますが、この方々がかなり高齢化されているという部分もございます。ですから、単なる作業所で作業をしてもらって云々というだけでは問題は解決しないだろうというふうに私は思っておりますので、この高齢化された方々をどうするのかというのも一つあるかというふうに思っています。
そしてもう一つは、実は資料でもお示しをしましたが、中等度以上の症状をお持ちの方々をどこでどうやっていくのかということもやはり考えなければいけない問題だと思います。日本精神病院協会は、病院の中に施設ケア的なものをつくろうというふうに考えておられるようでございますが、それも一つの方法かというふうに思いますけれども、病院の中だけでは、地域ケアという観点から見ますと少し問題も残しているかなというふうに思っているわけでございます。
以上でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504237X01019990519/135
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136・新保祐元
○新保参考人 社会復帰促進についてでございますが、先ほど西島先生の方からいわゆる残留率という数字が示されました。私どもは、どちらかというと退院率の方を見ているわけでございまして、退院率でいきますと、確かに西島先生がおっしゃるように、一年以内はおよそ八〇%という数値でございますので符合いたします。ただ、五年以上、十年以上という数値になりますと、実は退院率が五年ぐらいでおよそ一五%、十年以上になりますとそれよりも減るというのが現実でございます。
ということは、長期入院患者というか社会的入院患者というか、こういった人たちの現実は大方変化がないということでございます。病床がおよそ十年前から一万床減りました。三十五万から三十四万に減ったわけです。そして、それはわずかに一万人しか数が減っていないということでございまして、しかもその一万人の中には、先ほど西島先生もおっしゃられましたように、三カ月以内あるいは六カ月以内、一年以内で入退院を繰り返している人たちがふえてきてまいりましたので、そういった方々の数がかなりおられるということです。現実的には、長期在院の患者さんたちの数は減っていないというのが実態だというふうに思っております。
したがいまして、この人たちを受け入れる体制をきちんと進めていかなければいけない。そのためには、中重度の問題ももちろん重要ではございますが、要は、まずは社会的入院と目される患者さんたちの受け皿をどうするのか。
すなわち、先ほども申し上げましたように、退院の目安もない患者さんたちがいるのが現実でございます。そして、この人たちを社会的に入院させておくということは、御本人の生活権を阻害するだけではなくて、いわば財政上も極めてマイナスが大きいというふうに思っております。仮に、入院費用がおよそ三十万だとして、その方が生活保護を受給して地域で暮らすようになって外来医療を受けるようになったとしたって、恐らくその半分にも満たない金額で済むのです。こういったこともあわせ考えますと、在宅で精神障害者を支える施策の推進は不可欠だというふうに思っております。
なお、施設形態については、最も不足しているのはいわば受け皿としての住む場でございます。この国日本は、精神障害者にかかわらず、健常者である一般市民についても住宅政策がおくれているというふうに言われております。そのしわ寄せがまさに克明にあらわれているのが精神障害者に対する居住施策だというふうに思いますので、ぜひともその点を中心に広範な施策が推進するようお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504237X01019990519/136
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137・衛藤晟一
○衛藤(晟)委員 どうもありがとうございました。
しかし、今、現実にそういう住む場、あるいはいろいろな中間施設、あるいは社会復帰施設を入れて、これだけ頑張っているつもりなのですが、なかなかふえないというところに問題があるというふうに思っているのですね。
さてそこで、我々も今までのいろいろなお話の中で皆様方から御指摘いただきました、地元住民の反対などいろいろありますけれども、行政として、政治としてやらなきゃいけないことで足りないものは何だと思っていますか、新保先生と荒井先生にお聞かせいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504237X01019990519/137
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138・新保祐元
○新保参考人 私は、冒頭陳述で申し上げましたように、市民との負の格差があるという、まさに法体系そのものが、市民に対して精神障害者はいわば私たちと違うということを意識づけているというふうに思っています。
私も、実は、社会復帰施設を設置するときに物すごい反対運動を受けました。私を罵倒して、私がとちれば言葉じりをとらえて、私を痛めつけることによって施設づくりをさせないようにしようということで、周りは身勝手で勝手なことを言っていて、私をビデオで撮っているのですね。そして、私の不本意なというか怒りの上での発言だけを取り上げてさらに攻めるというような、まさにこれは精神障害者の人たちに対する罵倒を私にそのまま向けているのと同じでございます。
こういった誤解や差別、偏見の言葉というのは、まさに精神障害者の方々に対しての法制度がこれまで不備だったからだと思います。すなわち、隔離収容政策が主であったためにというか、そうせざるを得ない社会状況もあったということはよく理解できますが、そういった社会状況の中で精神障害者の方々の実態を見えなくしていることが一番大きなことです。
精神障害者の方々を理解していただくためには、精神障害者と市民の方々が接触できる場があることが一番大きなものです。その意味では、社会復帰施設、作業所も含めてですが、そういったものが地域の中にたくさんできることによって精神障害者の方々に対する市民の見る目が変わります。当然理解度も深まります。
こういったことを勘案しますと、当面は、精神障害者の方々が医療の枠の中だけではなくて、まさに地域でも生きられるのだという施策を推進していくことが極めて重要だというふうに思っておりますので、よろしくお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504237X01019990519/138
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139・荒井元傳
○荒井参考人 六十二年の法改正のときに、精神障害者の社会復帰施設という条文が初めてできました。目的のところに、精神障害者の福祉という項目が入りました。
そのころ、作業所が二百十カ所ありました。この病気は大変な難しい病気だから、素人なんぞ、ボランティアなんぞどうだというようなお怒りもありました。そんな中で、非常に精神障害者に共感を持って懸命に支える人がいれば、地域で再発も防ぎ、生活できるんだということが二百の実践が示されておりました。行政関係者の人たちは懸命で、先生方にも診ていただいて、医療施設ではない、医者が施設長ではない施設でも、精神障害者は地域で支えられるんだということで勇断していただいたと思います。
六十二年から十三年間に、知的障害の施設ですと作業所の予算を三年もらったら次は授産施設だ、こういう運動が今質問されている衛藤先生の大分とかいろいろなところにあるのですね。そういう運動で七百、八百と今法内施設がふえてくるのです。これが、十三年たって百五十ぐらいの授産施設しか今ありません。これは何かということは大きな問題だと思います。
私たちは、六十二年に、社会復帰、福祉ということで、本当に福祉法ということで、この法律に福祉を入れていただいたので、大いに全国を飛び回って福祉施設をつくろうというような運動をしました。しかし、家族会の作業所が授産施設になったのは多分十カ所、今は大分みんな元気になってきましたから十五、六カ所あるかもしれませんけれども、それが現実であります。
そのときに一番大きな問題は、今前の方が偏見ということをおっしゃいましたけれども、本当に偏見も大きな壁でございます。しかし、千五百の作業所が地域にできているということは、これは偏見で施設ができないということは私はあり得ないと確信しております、それではないというふうに思っています。
一つは、運営費の問題です。これは私が要望書につけた一番最後の資料を見ていただきたいのですけれども、五というところに書いてございます。知的障害者の法内施設が八百八カ所あります。精神障害者の通所施設が百二十七カ所。そのほか、手帳を持っている知的障害者は大体四十万人と言われています。精神障害者はその倍とも言われております。その中で、この施設の差の一番大きな原因の一つは、運営費が非常に低いということです。つくっても、その後も運営の地獄の苦しみに遭うというようなことが一つあるかと思います。
もう一つは、土地及びマンパワーの問題です。非常に偏見もありますけれども、やはり公的な土地、援助が必要です。そのときに、市町村の権限の問題があります。やはり市町村が責任を持って社会復帰施設、福祉施設をつくり、民間に委託をし運営をするという、市町村の権限委託、移譲の問題が大きな問題だと思っております。
そういう意味でも、今回の法改正はまだ全部が移っておりませんけれども、市町村の責務も強化されたということで、もう一つ運営費の問題もお考えいただければ、今精神保健関係者は燃えておりますので、どんどんふえていくかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504237X01019990519/139
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140・衛藤晟一
○衛藤(晟)委員 どうもありがとうございました。
質問をもっと準備していたのですが、どうしても時間が足りませんので、終わらせていただきたいと思います。
私どもも、自民党を代表して私は今質問させていただいたのですが、実は、前回の改正のときに今度全部やりたいということだったのですが、特に大きな長期の問題、触法の問題、また保護者義務の問題等について多くの課題を残しておると思います。しかし、非常に大きな法改正の一歩であったと思っておりますので、今後ともどうぞ皆様方の御協力をよろしくお願い申し上げます。
終わります。ありがとうございました。
〔鈴木(俊)委員長代理退席、委員長着席〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504237X01019990519/140
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141・木村義雄
○木村委員長 金田誠一君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504237X01019990519/141
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142・金田誠一
○金田(誠)委員 民主党の金田誠一でございます。
きょうは、参考人の先生方には、大変御多忙のところ、また遠いところからおいでをいただきまして、貴重な御意見をいただきまして、本当にありがたく思っているところでございます。
早速質問に入らせていただきますけれども、先ほど冒頭の陳述の中で、小林先生、諸外国の例ということで、後ほど時間があれば紹介をということでお話があったと思います。
患者の権利という観点から、欧米ではどういう状態なのか、日本と比較してどうなのか、その辺のところを少しく御説明いただければと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504237X01019990519/142
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143・小林信子
○小林参考人 少し説明させていただきます。
まず、アメリカ合衆国とか西ヨーロッパにおきましては、精神病院がどういうものなのかというとらえ方がやはりしっかりしていると思います。精神病院というのは人権侵害の温床なのだという発想があります。ですから、監視をしていかなければいけない、そういうことで監視チームもつくったり、そして患者さんたちの申し立てを受けているわけです。申し立てを受けるには、やはり精神病院の状況というのは国際的に同じです、患者さんたちの人質状況は変わりません、ですから、それらをサポートする体制として患者の権利擁護者というものが制度として導入されています。
アメリカ合衆国でも、もちろんアメリカ合衆国は州によっていろいろな差があるそうです。私たちの仲間はカリフォルニアに留学しまして、それを詳細に検討してきました。私はイギリスに行ってそういうことも調査をしてきましたけれども、大体は、アメリカの場合は連邦政府が各州に患者の権利擁護の予算を置きまして非営利団体をつくりまして、長は弁護士さんということで、やはり法律的な介入が主になっております。
弁護士さんがいつも行くというわけではなくて、パラリーガルという人たちを養成しまして、定期的に精神病院を訪問して患者さんの意見を聞く、苦情を聞いたりして、その中で弁護士の援助が必要であれば、そういうところに結びつけるということです。
それで、私たちがいつもモデルにしたいと思っていますのは、オランダの例です。
オランダは、いろいろ経過があるんですけれども、まず、国が公立病院にそういう患者権利擁護者を配備しました。それはどういう団体かというと、いわゆる非営利団体で、日本の社会福祉団体みたいなものだと思いますけれども、その中のスタッフの半分以上は病気の経験がある人ということが大変重要です。入院の経験があるということは、患者さんの訴えや苦しい状態が我々病気を経験していない人よりもよくわかるということで、ペーシェントアドボケートや、精神病院に入るオンブズマンにとって、病気を経験した人の資質というものは大変重要な資源となっております。
それで、オランダの場合ですけれども、公立の病院でやって、最初はやはり医療者たちの抵抗はかなり根強いものがあったそうですが、徐々に進展してきまして、今では、法律で保険点数にそういうものを上乗せして、全部の病院に患者さんの擁護団体というものが入って、患者さんたちが入って、患者さんの意見を聞いたりしていくわけです。そこでもちろん人権侵害が暴かれることもあるということで、幾らかは透明になっているということです。
先ほど申し忘れたんですけれども、実は、日本の審査会に戻りますけれども、福岡の弁護士会の人たちが一九九三年から精神保健当番弁護士制というものを行っております。これはあくまでもリクエストがあればなんですけれども、我々のようなアドボケートが行くということではなくて、弁護士さんみずからが患者さんのところに行って話を聞いて、そして代理人になったり、単にお話を聞くというような活動をしております。
外国の場合は、そのように公的な資金で非営利団体が、しかも、半数以上が病気の経験を持った人によって運営されているということが大変重要な点だと思います。
いろいろ制度の違い、法律の違いがあって、すぐそれを日本に適用するということは難しいかもしれませんけれども、こういうものがなければ精神医療審査会に幾ら機能を持たせたとしても絵にかいたもちです。ですから、ぜひその導入に向けての方向性を持った議論を今後お願いしたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504237X01019990519/143
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144・金田誠一
○金田(誠)委員 ありがとうございます。
特に、病気の経験がある方がこの人権擁護のチームに入っている、非常に興味深い事実を紹介をしていただきました。
まず、私のこの問題に対する問題意識でございます。
実は、去年は感染症予防法というのがこの場で大きなテーマになりました。伝染病予防法を全面改正して感染症予防法ということに改めたわけでございますけれども、そのときの感染症予防法の問題は、かつては社会防衛といいますか、隔離、収容、こういうことを基本にといいますか、そういう側面が非常に色濃い法律であったわけです。それを、人権の尊重あるいは良質かつ適切な医療、福祉の提供というところに軸足を移していくという、大きな世界的な流れの中での改正ということが試みられたわけでございますけれども、私などから見ますと、非常に不十分な形に今のところは終わっているなというのが感染症予防法に対する感想であったわけです。
それと同じように、今回の精神保健福祉法の改正も、一歩前進ではあるけれども、まだまだ不十分であるという感をぬぐい切れないわけでございます。隔離、収容、社会防衛というところから少しずつ離れて踏み出してはいるんですが、良質かつ適切な医療あるいは福祉の提供、人権の尊重、擁護という観点はまだまだ十分とは言えない、日暮れて道なお遠いという思いもするわけでございます。
そうしたときに、改善の方向を切り開く観点としては、この精神保健、精神医療の分野に公開とか参加とか当事者の自己決定という観点をもっと導入する必要があるのではないか、こんな思いをかねがね持っておりましたものですから、ただいまの小林先生のお話では、スタッフの半分が入院の経験のある方がチームを組んで人権擁護に当たっているという御紹介は極めて感慨深いものがあるわけでございます。
そういう観点から、諸先生、五名の方にそれぞれ端的にお答えいただきたいなと思うことがあるわけでございます。
それは、我が国の公衆衛生審議会、その中の精神保健福祉部会でございます、この名簿をいただいているわけなんですけれども、これを見た限りでは、精神保健福祉部会の中にその当事者の方あるいは家族の方が入っておられないということがかなり象徴的な事象になっているのではないかなというふうに思うわけでございます。
仄聞いたしますと、東京都あるいは大阪府では近年になって当事者が審議会に入るようになったということも伺っておるわけでございますけれども、残念ながら国の審議会の精神保健福祉部会には入っておらない。身体障害者とか知的障害の場合はそれぞれ当事者なり家族なりが入っているけれども、精神障害の場合はいまだ実現していないというふうに思っておるわけでございます。
その点について、私などは当然可能な限り入ってしかるべきと思うわけでございますが、西島先生、伊藤先生、小林先生、新保先生、荒井先生、それぞれ一言ずつお考えをお聞かせいただければありがたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504237X01019990519/144
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145・西島英利
○西島参考人 お答えさせていただきます。
まず、公衆衛生審議会の精神保健福祉部会には家族会の方は入っていらっしゃるというふうに私は認識をいたしております。(金田(誠)委員「お医者さんですから、御自身でそういう子供さんがいらっしゃるということではないようでございます」と呼ぶ)そうでございますか、大変申しわけございませんでした。
確かに、そういう御家族の方の意見、患者さんの意見を聞くのは非常に重要かというふうに私は思いますが、これまでの歴史の中で、精神神経学会というのがございまして、この学会の中に理事会から患者さんたちが入ってくるような体制があったわけでございますけれども、全く議事が進まないというような歴史的な経過もありまして、そのあたりが一歩踏み込めないところなのかなという気がしないでもございません。でも、長期的に考えますと、患者さんたちのこれからをどうするのかという問題でございますので、当然私は必要な問題かと思います。
もう一つは、これは私は臨床の立場で申し上げますけれども、病識の問題もございます。それともう一つ、先ほど申し上げましたように、必ずしも精神分裂病の患者さんだけの問題ではないということでございますので、これを幅広く検討した中で、この審議会の中でそういう患者さんたちの意見をいただくかどうかというのを考えなければいけない問題だろうというふうに思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504237X01019990519/145
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146・伊藤哲寛
○伊藤参考人 私は、公衆衛生審議会の委員に当事者の方が入っていただくのは望ましいことだと思っております。
実際、私ども、いろいろな活動をするときに、患者さん自身からいろいろな意見を聞いたり、あるいは地域の講演会で講演をしていただいたりして、ある意味では、我々専門家の狭い見方よりももっと啓発されるようなお話をしていただくことが何度かあります。そういうことです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504237X01019990519/146
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147・小林信子
○小林参考人 当然ながら、家族、当事者は入れるべきだと思います。
実は、私は、この精神保健福祉部会の傍聴を、いろいろなごたごたの後、やっと傍聴を認めていただくことになりました。そして思いました、サービスを利用する当事者がだれもいないところで、その関係者だけでプランを練っている、よくしようということがとても不思議だなと思いながら傍聴をしていた事実があります。
ですから、病識とか何かの問題ではなくて、今はそういうところに出る患者さんの団体もたくさんあって、それなりにそういう能力を備えている人がたくさんおりますので、患者さんも家族も、当事者をぜひ参加させていただきたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504237X01019990519/147
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148・新保祐元
○新保参考人 適切な医療を供給する、そして適切な医療を受給するという関係は対等な関係であることが当然ですし、したがいまして、インフォームド・コンセントが重要であるというふうに言われておるわけでございます。この意味におきまして、家族、当事者がそういった審議の機関に入って意見を述べることは重要だというふうに思います。
殊に、精神障害者につきましては、金田先生おっしゃられましたように、社会的防衛の要素が強い法律がようやくそこから脱皮しようとしている時期でございますので、なおさら人権尊重等を配慮する上で、そのような御配慮を願えればというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504237X01019990519/148
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149・荒井元傳
○荒井参考人 そのとおりでありますということなんですけれども。
ほかの専門委員会、研究会にも、大体半数以上、二十人のときは十一人というような形で必ず医師の委員が多くあります。
私も、先ほど申し上げた六十二年の法改正の中で、医療施設でなくても、地域でさまざまな精神障害者のノーマライゼーションを支えられるということで、精神障害者の対策が十年前に変わったのに、その意見をある意味では平等に吸い上げる必要が非常にあるような感じがいたします。
私自身も当事者であります。精神病院に三回も入院しております、薬物やアルコールでありますけれども。そういう意味でも、説得力のある資料をもってきちっと発言をする、そして訴える、これは場所がなければ、チャンスを与えられなければなりません。そういう意味では、病気の症状とか大騒ぎして騒ぐとかということじゃなくて、ぜひチャンスを与えていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504237X01019990519/149
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150・金田誠一
○金田(誠)委員 どうもありがとうございます。
次に、西島先生と伊藤先生、お二方にお伺いしたいと思います。
それは、民間と国公立の役割分担についてでございます。それに関連して、精神科特例の問題にも触れていただければなというふうに思うわけでございます。
実は、精神医療のみならず一般医療についても、私どもの党内でも、国公立と民間の役割分担はどうあるべきかということではいろいろ意見が分かれてございまして、現在、統一的にこうあるべきだというところまで至っていないというのが現状でございます。
私なりに思いますのは、これは全くの私見でございますけれども、経営主体が国公立であるとか民間であるとかということは、治療を受ける患者にとってはほとんど関係のないことではないかというのが原点として私なりにあるわけでございます。
民間であろうが国公立であろうが、そこで良質かつ適切な治療を受けることが患者にとっては一番必要なことであるという観点からしますと、西島先生の資料では国公立ではかなり予算的な措置がされている、経営主体、設置主体の違いによって予算的な措置にそう違いがあっていいものなんだろうか。患者という立場からいいますと、どこの病院に行っても、国公立が全国に満遍なくあるわけではないわけでございますから、どこに住んでいても良質かつ適切な医療を受けられるとすれば、経営主体にかかわりなく一定のレベルを保障するために一定の予算措置をするとか、あるいはもししないのであれば、診療報酬の上で、一定の要件を満たしたところには一定の診療報酬の措置をするとか、そういうことが本来あるべき姿ではないか。それが保障されれば、国公立の役割がこうだとか民間がこうだという関係ではなくて、民間、国公立の壁を超えて、初期的な医療をする、あるいは慢性的な医療をするところと非常に高度な救急の医療をするところ、こういう区分けの仕方が本来目指すべき方向なのかなという気が実は個人的にはいたすわけでございます。
その辺につきまして、お二方のそれぞれの御所見を賜りたいと思いますし、あわせて、西島先生の方からは精神科特例について余り言及がなかったようにお聞きをしたものですから、医師会としてのお立場なども御説明いただければありがたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504237X01019990519/150
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151・西島英利
○西島参考人 基本的には、先生のおっしゃることに私賛成でございます、がという、この「が」をつけさせていただきたいのでございます。
現状で考えますと、特に触法の患者さん、それから対応が困難な患者さんたちをどういうふうに今処遇をしているのかといいますと、例えば保護室を使ったり狭い空間の中で対応しているのが現状でございます。やはりこういう方々のQOLも十分に考えなければいけない。そうしますと、広い空間の中で、そして十分なマンパワーを置いて患者さんたちを診ていくということが、たとえこういう問題を起こした患者さんであってもQOLの向上につながるという意味で、私は公立がこういう問題をやるのがいいのではないかと思っておるわけでございます。
特に、もし公立がこういう役割をきちんとなさるのであれば、私は、たとえ赤字が出ても、それは政策的に納得できるものではないかというふうに思うわけでございます。ただ、そういう役割を果たさない中で、これだけの赤字を抱えてやっている。特に、先ほどの資料でいきますと、一般会計から六億から七億のお金を繰り入れているわけでございますね。そういう実態を考えたときに、役割を果たしていないのではないかということを私ども申し上げているだけのことでございます。
それから、精神科特例の問題でございますが、現状を考えますと、なかなか難しい問題がございます。しかし、私は、医師がある程度の数がいて、そして看護婦がそれなりの数がいて、そうすれば当然医療の質は上がるというふうに考えております。考えておりますけれども、全国の現状を見ますと、果たしてそれでやれるのか。今の精神科医の数、それから看護婦の数等々を考えていきますと、まずやれるものは、診療報酬の中でさまざまな施設基準をやりまして、その中に、例えば看護婦をたくさん投入していればそれなりの診療報酬で見るという形の中で一つずつ階段を上がっていくのが現実的かなというふうに思っております。
でも、将来的には先生がおっしゃったように、精神科特例は私は外すべきだと思いますが、現実的に考えますと、看護に関してはほとんどこの特例はきいておりません。と申しますのは、結構、新看護体系の中でかなりのマンパワーをそれぞれの病院が投入しているというのが現状でございます。
以上でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504237X01019990519/151
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152・伊藤哲寛
○伊藤参考人 まず、国公立の役割分担の話ですが、一般病床の場合は、国公立の占める病床の割合は、全病床に対して二六・六%が国公立であります。一方、精神科に関していえば、九・六%しか公的な病院が病床を占めておりません。私は、少なくとも非自発的な入院、強制入院の場合には非常に公共的な配慮が必要でありますので、この九・六%という数字を見ますと、役割を果たすためにはもう少し公的な病院があってもいいのではないか。
それからもう一つは、公的な病院の偏在であります。実は、北海道の場合も、道立の単科精神病院というのは私どもの十勝と網走にあります。この網走の道立病院を考えた場合には、これは地域医療を担うために建てられたものであります。民間病院は網走では設立しないわけです、経営的にも成り立たない。
ですから、公的な病院の役割というのは、当然、重い患者さん、重症な患者さんを診るということと同時に、過疎地域の医療を守るということもあるわけです。したがって、単に重症な患者さんをたくさん入れているかどうかということばかりでなく、過疎地域の医療を守るということでも非常に赤字を出しながらやっているという事実があります。この辺もぜひ考慮していただければというふうに思っております。
それからもう一つ、医療法の改正でございます。
私どもは医療法の改正をすべきだと。なぜならば、診療報酬制度の中で、確かに、いい医療をしたものについては、人員配置の多いところについては高い診療報酬を与えるということも大切でありますけれども、これはあくまでも経営によって誘導されることであります。したがって、経営が成り立てば、安い基準の病院運営をしても看護基準を下げても構わないわけです。
しかし、一般医療であれば、患者さんが高い医療水準の病院を選ぶという誘導といいましょうか、インセンティブが働くわけです。ところが、先ほどもお話ししましたように、自分の意思に反して入院させられるということを考えますと、医療法の中で最低基準をきちっと定める、非自発的入院の患者さんのためには医療法の中で定めるということがまず基本になければならないわけです。その上で、診療報酬制度でいい医療へと導くということです。ですから、一般医療の場合とは少し考え方は変えてもよろしいのではないかというふうに私は思っております。
それからもう一つ、将来の方向としての国公立病院と民間病院ということですが、先ほど言いましたように病床の数が非常に少ないわけですから、当然民間病院にも質の高い医療を保障するために診療報酬でそれを導くということはぜひやっていただくべきだと思います。特に、先ほど言いましたように、まだ措置入院の患者さんを民間病院の方に入院をお願いしているということがありますので、医療の質を高めるためにも、民間病院も含めて診療報酬制度上で保障していただきたい、そういうふうに思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504237X01019990519/152
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153・金田誠一
○金田(誠)委員 ありがとうございます。
時間がほとんどなくなってまいりましたが、荒井先生、一点だけお聞かせいただきたいと思います。
全家連の意見書を前にいただきまして、何度か読み返しました。その中で、保護者規定を廃止し入院制度の抜本的見直しということで、これが第一番目の意見ということになっておったわけでございます。今回、確かに保護者制度の見直しは一歩前進ということだと思うわけでございますが、全家連の主張どおりにはなかなかならなかったわけでございます。なぜそうなのか、どの辺に障害があったのか、どの辺の理解が得られなかったのかというあたりを、差し支えない範囲で結構でございますけれども、全家連としての御認識をお聞かせいただければなと思うわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504237X01019990519/153
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154・荒井元傳
○荒井参考人 私どもの運動では、平成五年に初めて入院制度等の代替制度を完備して保護者制度撤廃という要望をしました。そのときは、先生方も御存じのように保護義務という義務がついておりましたので、義務を撤廃して保護者制度ということに変えたというような形の中で、全家連及び各地の家族会を社会復帰促進センターということで指定して、さまざまな研究調査や相談事業、啓発事業を支援しようという形で、もちろん法ができてから指定をいたしました。
そんな中で、医療にかかわる緊急入院なり入院の手続の問題とか、その辺が大きな課題で、そのことに関しての制度というかそういうものが整っていないというようなことで、早急に検討していただくという形で、今回は将来なくす方向で改正という感触を得たので推進ということにしたということになります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504237X01019990519/154
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155・金田誠一
○金田(誠)委員 最後の質問になろうかと思いますが、移送制度の関係につきまして、西島先生、伊藤先生、それぞれ御所見を伺いたいと思うわけでございます。
現在、応急入院指定病院は平成九年度で全国五十八施設ということでございまして、それを三百五十五の二次医療圏すべてに移送に足る受け皿としての施設を設けなければならない、果たしてそれが可能なのかどうなのか。その場合、どういう留意点が必要なのか、その辺のところをお聞かせをいただければと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504237X01019990519/155
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156・西島英利
○西島参考人 移送制度につきましては、先ほど家族会の方もおっしゃいましたけれども、私もそういう意味で一歩前進かなというふうに思うのですが、ここにはさまざまな問題が含んでいるというふうに思っております。
特に、ある意味では非常に重度な患者さんたちを対象にしているだろうというふうに思いますし、実際に今精神科救急システムというのが各都道府県で行われているわけでございますが、これはすべての患者さんに対応するようにかなり整備が進んでいるところでございます。ですから、移送制度と同時に、やはり精神科救急システムを今後も整備していく必要性があるのではないかなというふうには思っております。
それから、応急入院指定病院の件でございますが、そもそも応急入院というのができました経緯は先生御存じだと思いますけれども、たしか外国人の方々が非常に精神障害で法の中で対応できない部分があって応急入院制度というのができたように記憶をいたしておりますが、それが非常に厳しい条件でございました。例えばCTスキャンを受けなければいけないとか、非常に厳しい条件の中で、なかなかいろいろな病院が応急入院の指定を受けられないという現状だったと思います。
ですから、そういう意味で、ある程度のマンパワーがあれば、つまり夜中でも対応できるようなマンパワーがあれば、それで指定を受けられるというふうにかなりの規制緩和が必要ではないかなというふうに私は思っております。そうしますと、かなりの数の指定病院ができるのではないかというふうに思います。
以上でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504237X01019990519/156
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157・伊藤哲寛
○伊藤参考人 移送制度については、最初のお話のときに幾つかの問題点を挙げましたけれども、やはり患者さんの人権が損なわれないような安易な移送が行われないということが大切で、そのための規定をするということ。
それからもう一つは、受け入れ先の病院をどのようにして決めていくのかということが大切だと思います。実は、特に二次医療圏ごとに、もう少し大きな医療圏ごとにこれを決めるとしましても、ある地域では病院そのものが存在しないということもあります。
それからもう一つは、医師の充足ができない地域もあります。例えば北海道あたりですと、過疎の地域になりますと病院はあっても医師確保ができないということなどがありまして、実際には患者さんに適切な医療を保障できるかどうかということで私も非常に心配しております。ですから、ある程度レベルの高い病院をいかにして選ぶか、あるいは低い場合でもそれを上げるような努力を一緒にしていくということが最低の条件だと思います。
それからもう一つは、地域で日常的に地域の精神保健活動が行われていて、救急のように強制的に病院に運ばれる状況がないようにふだんからいろいろな方が支援活動をしている、このことが大事だろうと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504237X01019990519/157
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158・金田誠一
○金田(誠)委員 どうもありがとうございました。
時間が参りましたので、終わらせていただきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504237X01019990519/158
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159・木村義雄
○木村委員長 福島豊君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504237X01019990519/159
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160・福島豊
○福島委員 参考人の皆様には、大変お忙しい中、本日は衆議院においでいただきまして本当にありがとうございます。先ほどから大変貴重な御意見をお伺いすることができまして、感謝を申し上げる次第でございます。
公明党・改革クラブを代表いたしまして、何点か御質問させていただきたいと思います。
まず初めに、医師と患者の信頼関係という話で、先ほど小林参考人からは、実際に申し立てをする患者さんというのは非常に少ない、それは例えば申し立てをすることによって不利益なことが入院中に起こるのではないかという懸念があるとか、それからまた、実際にそういうことができるということも告知をされていないというようなことがあるのだという御説明がございました。
そこで、西島参考人と伊藤参考人にお伺いしたいのですが、両先生のところは決してこういう状況ではないというふうに私は思います。ただ、一般論として、これは実際どういう状況なのか、先生方の御意見をまずお聞かせいただきたいと思います。西島先生の方から。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504237X01019990519/160
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161・西島英利
○西島参考人 医師と患者の信頼関係、精神医療というのはこの信頼関係がなければ成り立たないというふうに思います。導入の部分で、最初はなかなか信頼関係がつくれないわけでございますが、ある程度の期間の中で信頼関係ができ上がって、ようやく安定して患者さんたちが治療を受けることができるというふうに私は考えております。
そこで、先ほどの告知等々の問題でございますが、これに関しましては、実地指導等でかなり厳しく民間病院は指導を受けているわけでございます。カルテを持っていって、そういう告知をしているかどうかはかなり厳しくされております。ですから、こういう指導がきちんと効果を発すれば、私は何も法そのものをもっと厳しくする必要性はないのではないかというふうに考えております。
私どものところもいろいろと指摘を受けます。例えば、入院のときに告知を延期した、その告知を延期したということを何で書いていないのかというようなことも言われます。当然それは私どものミスでございますが、しかし、それほど厳しく実は指導を受けているという現状がございます。これをそれぞれの指導をされる方々がもう少し認識をされていけば、効果が上がるのではないかと私は思います。
ただ、病院にもいろいろございますし、医師にもいろいろな医師がございます。すべてがすべてそのとおりいくかどうかというのは疑問がございます。しかし、法で規制すればそれが成り立つものでもないというふうに私自身は考えておるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504237X01019990519/161
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162・伊藤哲寛
○伊藤参考人 病名の告知とかあるいは入院時のときの説明というのは、精神科の場合には非常に難しい時期はあります。しかし、原則としては、それを目指していくべきだと思います。
そのために医師がそれに割く時間というのは、恐らくほかの診療科におけるよりも精神科においては、きちっと説明と同意とかあるいは入院してからの治療計画を説明するのは非常に時間のかかる行為だというふうに思います。
しかし、診療報酬制度上、入院時の治療計画加算というのが何年か前にできましたが、残念ながら精神科では初めそれは不必要だということで診療報酬制度上認められませんでした。ところが、昨年だったと思いますけれども、ようやく治療計画加算というのが診療報酬制度上認められるようになりましたが、一方、他の診療科の場合はたしか三千五百円、ところが精神科に関しては二千五百円ということで、なぜ精神科の診療報酬が、しかも懇切丁寧にしなければならない入院時のときの説明への診療報酬が低いのか、私にはそれはいまだに納得できないところであります。
そういうようなことで、やはりまだまだ精神科の患者さんと職員との信頼関係を築くための基盤づくりは少ないのではないかということがそういうことからも言えるのではないかと思います。
それから、もし時間がありましたら後ほどお話ししたいと思いますが、病院の情報公開、病院の透明性を日常的にどのように築くかということも非常に重要なことだと思っております。そのことによって、患者さんと治療者側の信頼関係をより一層築くことができるのではないかというふうに思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504237X01019990519/162
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163・福島豊
○福島委員 そこで、小林参考人にお尋ねをしたいのです。
先ほどこの「東京精神病院事情 ありのまま」というのを大変興味深く拝見させていただきました。こういう形での外部評価というのはやはり必要だなというふうに私は思います。また、拝見しておりますと、経時的にどうも点数が改善しているところがほとんどだというふうに私は思うのです。こういう形で評価されるということが逆にその医療機関の側にとっては励みになるといいますか、もうちょっと努力しなければいかぬという話になると思うのですが、ずっとこのお仕事に携わってこられまして、そのあたりはどのようにお感じなのか、参考人にお聞きしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504237X01019990519/163
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164・小林信子
○小林参考人 「東京精神病院事情」をそのようにとらえていただきまして、大変ありがとうございます。
これは私たちセンターそのものがやっているわけではなくて、我々の仲間が、特に医療従事者を中心としましてずっとやってきているわけで、これは第三版目となっております。ただ、こういう厚い冊子です。それは情報公開の一つですけれども、これを一般の方々が、大変な患者さんを抱えている家族の方が簡単に利用できるのかというと、ある面では大変専門的な興味がないとできない問題で、そのことに関しては苦労しております。
ただ、やはり医療でも広告規制とかいろいろありまして、自分の病院のキャッチフレーズ、ここが売りなのだということを宣伝していただくのも、もちろんそれは結構です。と同時に、行政が行う定期監査とかそういうものの結果を簡単に見られるように、インターネットで流してもいいし、保健所に置いてもいいし、図書館に置いてもいい、もっともっと簡便な形で手にして病院を選べるように、悪い病院には行かないように、そして自分のニーズに合った地域と医療の質をもって病院を選べるようになれば、精神医療も精神病院も違ってくると思います。
というのは、とにかくこれほど精神病院の多い先進国はないんです。多過ぎます。私は精神病院があればそれは人権侵害になると何度も繰り返しましたけれども、とにかく病床を減らすことを絶対に考えなければいけないわけです。行政的に大変難しければ、精神医療を利用する人が本当の意味で消費者となって病院をこういうように評価して、悪い病院に行かなくすれば、それはある程度の淘汰はできると思います。でも、それでは十分ではなく、やはり行政的な、政治的な解決が必要だと思っています。
ともかく、患者さんの団体とかがもしこういうことをしたい——患者さんはたくさん情報を持っています。我々はこれをつくるときに患者さんからも情報をいただきました、全家連からも情報をいただきました。ですけれども、もっと何か手軽につくれる方法を。それから、これは余りケアの質がわかりません。数はいても、数が多ければよいケア、よい質の病院とは言えないことが精神医療にとって大変な問題なわけです。我々はそれをはかるメジャーを何とかして工夫しなければいけないとは思っているんですけれども、やはりこういうものは最低限必要だと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504237X01019990519/164
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165・福島豊
○福島委員 ぜひ今後も積極的に取り組んでいただきたいと私は思っております。
今回の法改正の中では社会復帰の充実ということが一つのポイントになっているわけでございますが、ただ、医療の場から社会復帰をしていくのに、その連携というかネットワークというんですか、それが非常に大切だろうというふうに私は思っております。
この点については、西島参考人も精神障害者地域生活支援センターが追加されたということについて評価しておられるわけですが、実際に精神科医療に携わっておられて、社会復帰ということで医療と福祉の連携というのが現実として今どうなっているのか、どこが改められるべきなのか、問題点はどこなのかということについての御見解をお聞きしたいと思います。この点については新保参考人にもぜひ御意見をお聞かせいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504237X01019990519/165
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166・西島英利
○西島参考人 社会復帰のネットワーク等々でございますけれども、医療と福祉の連携が言われてもうかなりの歴史があるわけでございますが、ほとんど連携がなされていなかったというのも現実かというふうに思っております。
特に、福祉の部分を行政が持っていたというところにも一つの問題があるかなというふうに私は思うんですね。それはどうしてかと申しますと、行政の担当の方はころころかわるんですね、要するに異動されるわけでございます。異動されますと、また一からのスタートでございますので、そういう意味でなかなか整備が進まないということも一つの原因かなというふうに私自身は思っているわけでございます。
それからもう一つは、地域の住民への理解の問題でございます。地域の住民との連携をきちんとすれば、それはいいことはわかっているわけでございますけれども、社会復帰施設をつくろうとするときに地域住民の意見を聞かなければならないようになっているわけでございますね。これは総論賛成、各論反対でございまして、幾ら意見を聞いても、それはノーと言われるのが私ども当たり前だと思っております。実際、私もグループホームを幾つか持っておりますが、はっきり申し上げまして、地域住民の意見を聞かずにつくりました。要は、実績の中で御理解をいただくしかないかなということでつくりました。そのかわり、私ども、非常に慎重にこの運営を進めております。何か事件があれば、これはすぐポシャってしまうことでございますので。
そういう意味では、このあたりもある意味では、理解を示さなければいけないの裏に地域住民の意見を聞かなければいけないというのは一つの差別かなというふうには考えております。
以上でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504237X01019990519/166
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167・新保祐元
○新保参考人 医療と福祉の連携がどうなっているのかと言われますと、当事者として戸惑います。
なぜかといいますと、本来は連携はきっちりあるべきだという建前でございますし、また、そのために私どもは一生懸命努力をしているつもりなんですが、なかなか実を結ばない現実があるということです。それは、いわば医療と福祉の役割の明確化というものが精神医療の中ではきちんとなされていないという部分があるんだろうというふうに思います。
これまで精神医療の枠の中で福祉を担ってきた精神科ソーシャルワーカー、今般国家資格として精神保健福祉士という資格が誕生いたしました。この人たちが福祉の役割を担う立場にありはするんですが、その方々が勤務する病院の院長先生のお考えで使われ方が違うとか役割が違うとかということが現実にあるわけです。そして、今日もまだそういったことが続いているというふうに思われます。したがいまして、なかなかきっちりといかないジレンマがある、こういうことでございます。
いずれにしましても、今般精神保健福祉士法という法律が成立いたしましたので、病院内福祉あるいは病院内医療の中での福祉のあり方について、当然のように、精神保健福祉士の業務のあり方を通してこれからはきちんとした連携が図られる体制ができるようになるだろうというふうに思いますし、そのことに大きな期待を込めております。
できることであれば、いわば精神保健福祉士の仕事を、ソーシャルワークというような言葉を使いますけれども、ソーシャルワーク・イン・ホスピタル、要するに病院の中における福祉ではなくて、いわばソーシャルワーク・オブ・ホスピタル、病院の福祉ということにきちんと位置づけられるようなことを今期待しているということだけお話し申し上げたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504237X01019990519/167
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168・福島豊
○福島委員 次に、西島参考人にお聞きしたいんですが、任意入院の場合に閉鎖病棟に入れるというのはやはり避けるべきだということが午前中の審議の中でも繰り返し指摘されまして、大臣を初めとしてなかなか歯切れの悪い答弁であったわけでございます。
この点は、実際に医療機関を経営しておられる立場として、構造的な問題もあるというふうにこちらに書かれておりますけれども、そういう物理的な問題をある程度変えていく、改める、そういうものが進めば今よりもはるかに状況はよくなるというふうに理解してよろしいのか。また、現行の厚生省の補助の制度もございますけれども、そういうものの対象にはなっていないというふうに理解していいのか、その点をちょっとお聞きしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504237X01019990519/168
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169・西島英利
○西島参考人 今回の、先生方のお手元に、厚生省といいますか事務局がつくられた資料の中で、任意入院でも四六・七%が閉鎖処遇を受けているというデータが出ておりますが、私どもは決してそうは思っていないわけでございまして、当然、基本的には開放処遇がいいことは間違いないことでございます。
ただ、私どもはそう思っていないというのはどういうことかと申しますと、患者さんが開放病棟に入っているか閉鎖病棟に入っているかという形でそれぞれの病院に聞いているように私は思うんですね。ですから、そうなりますと、閉鎖病棟に任意入院の患者さんが入っているというふうに当然答えるだろうというふうに私は思います。でも、実態はどうなのかと申しますと、任意入院の患者さんたちは出たいときには出られるようになっていると私は思います。ですから、実態は任意入院であるがゆえに完全に閉じ込めてしまっているということではないだろうというふうに私は思うんです。
ただ、もう一つの問題は、重度の患者さんが数人いらっしゃいますと、どうしても病棟全体を閉鎖的な対応をせざるを得ない。そういう意味で先ほど私は構造上の問題を言ったわけでございますが、そういう患者さんを診られるための、例えば十床、二十床でも経営ができるような財政的な措置、そういう補助があれば、その方々のための病棟をつくって、それ以外の方々は開放病棟で診ていく、これは私は理想的だろうというふうには考えております。
ですから、きょう私は資料の中で申し上げましたけれども、そういう対応が今後できるかどうかということにかかっているのかなというふうに思います。
以上でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504237X01019990519/169
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170・福島豊
○福島委員 荒井参考人にお聞きしたいんですが、保護者規定を今回部分的に廃止をするという形になったわけですが、同時に、単身の精神障害者の方も非常にふえているというふうにお聞きしておりますし、地域において生活を営んでいく、そしてまた病気が悪くなったときには時期を外さずにきちっと医療機関で治療を受ける、そういうことが具体的に可能となるためには、そのサポートシステムというのは極めてしっかりしたものがなければ将来的に動いていかないのではないかと、特に保護者の方も高齢化しておられるということもありますし、大変懸念をいたしております。
現実には、都道府県でそれなりの成年後見制度を目指しての制度もありますけれども、それほどきめの細かい対応ということでは恐らくないだろうというふうに思います。この点について政府として今後どういうふうに取り組んでいったらいいのか、また現状についてどのように御認識なのか、お聞かせいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504237X01019990519/170
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171・荒井元傳
○荒井参考人 私ども、先ほどお配りしました資料に、作業所とか地域の実践活動は千四百ですからすべての地区を網羅するわけにはいきませんけれども、大体十万ぐらいの都市なり単位には作業所ができつつあると思います。
厚生省は、今度の法改正の中で生活支援センターをいわゆる相談、援助事業という形で市町村に委託をし、市町村がまた法人に委託ができるというような制度をこれから立ち上げます。そういう意味では、今保健所が半数ぐらいに減ってしまいました。そうすると、市町村がそういう精神障害者に関する地域ケアの援助をせざるを得ないというのが非常に出てきておりますし、また、そういう手もふえてきております。
そういう意味では、生活支援センターの作業所が、非常に難しい条件がありますけれども、作業所等を事業として認知していただいて、そして相談、援助事業、それからモニタリング等が機能できれば非常に有効ではないかと思います。専門性とかそういうものには非常に問題があると思います。ただ、やはり保健所とか行政機関、医療機関の御指導があれば連携してできるのではないかなというふうに思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504237X01019990519/171
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172・福島豊
○福島委員 以上で持ち時間が終わりましたので、質問を終わりにしますが、本日は、大変皆様ありがとうございました。今後の審議、そしてまた見直しもございますので、皆様の御意見をしっかりと踏まえまして頑張ってまいりたいと思います。
ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504237X01019990519/172
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173・木村義雄
○木村委員長 児玉健次君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504237X01019990519/173
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174・児玉健次
○児玉委員 日本共産党の児玉健次です。きょうはありがとうございます。
私たちのこの間の審議の中で、精神医療が果たすべき社会的な役割の大きさという点でかなりはっきりしたコンセンサスが生まれつつある、こういうふうに思います。
私の時間は十五分ですので、恐縮ですけれども、五人の参考人の方に最初に伺いたいことを申し上げて、そして順次御意見をいただきたい、こう思います。
最初に、伊藤先生にお伺いしたいのですが、随分議論されたことではありますけれども、私は、日本において、精神科特例と精神科の診療報酬、点数の低さと内容の不適切さ、この二つが相乗的に働いて精神医療を非常に困難にしていると考えております。これをどうやって改善していくのか。その点で伊藤先生の御意見をできれば具体的にいただきたいと思いますし、その中で、今、精神医療のスタッフの配置と関連して、臨床心理士が果たす役割、貢献の可能性、持っている豊かな可能性、そういう点について伊藤先生はどうお考えか、それが私の質問でございます。
次に、西島参考人にお伺いしたいのですが、先ほどお配りくださったレジュメの中で、「五年以上は中等度以上の医療必要群が多く、これらの入院者の対策が重要である。」一枚目の一番下に書いてあります。つい午前中の質疑でも論議した点でございますが、長期在院重症者、急性増悪の再現された方も含めて、こういう方々に対する適切な医療、対応のあり方。高齢化されてもおるし、合併症の問題もある、そういう方々に対する精神医療の今後と、そしてこの領域で国立病院、あえて私は大学病院を入れたいと思うのですが、国立病院と大学病院がどのような役割を果たすべきだと先生はお考えか。
次に、小林さんにお伺いしたいのですが、任意入院の多数が閉鎖病棟に入っている現状をどうやって打開していくか。もちろん社会的な力が必要ですが、そして保護室、隔離室が今患者さんの人権を非常に抑えつけておりますけれども、保護室、隔離室の構造、設備を含めてどのように改善していくことが今必要だとお考えか。
それから、新保さんにはグループホームの問題で、今、グループホームは何らかの形で就労していることが条件になっています、これをそのまま放置しておいていいのかどうか、この点で御意見をいただきたいと思います。
最後に荒井さんですが、お配りくださった資料の横式さんとは、先週日曜日、私は札幌でゆっくりお会いしました。荒井さんにお伺いしたいのは、精神科病床の今後のあり方に関連して、一般病床に倣って急性期と慢性期に区分する、そういうことを検討する動きがあります。私は、初発の段階で必要な治療を大いにやるということは必要だし、だれしもそれは否定しないと思いますけれども、もしこれを十分な留意なしに進めていけば、日本の精神科の病床が急性期に対応する部分と、精神科特例をさらに手薄にする、医療機関というよりは施設に近いものに二分化していくのではないか、こういう懸念を持っておりますが、その点について荒井参考人の御意見をいただきたい。
以上でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504237X01019990519/174
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175・伊藤哲寛
○伊藤参考人 まず、診療報酬制度と職員配置の問題ですけれども、これは歴史的に不幸な歩みがありまして、精神病院に関しては多くの患者さんを病院に入れなきゃならないという時期がありまして、そのときに医師は少なくても構わない、それでも運営できる、しかも経営的にもそれでも十分やれるという時代が長く続きました。そういう背景がありまして、薄いサービスで、薄い利益で病院を経営するということがずっとやられてきたような気がします。それは、やはりこの辺で方向を変えるべきだというふうに思っております。
現在、一般病床の病床利用率は八〇%台だったというふうに記憶しております。一方、精神病床の病床利用率は九五%を超えているのじゃないかというふうに記憶しております。結局、できるだけ多くの患者さんを入院させなければ、例えば八〇%台での病床利用率では病院経営ができない。つまり、一人当たりの患者さんの収益が非常に少ないということで、どうしても数多くの方を入院させなければならぬ。現実に病床が非常にたくさんある。そういう事態の中で悪循環がなかなか断ち切れないということがありますので、やはり病床利用率がそれほど高くなくても経営できるような、回転していけるような施策をとるべきだと思います。
救急がうまく行かないのも、病床利用率が高いとなかなか動きが悪くて本当に必要な方が救急で入院できないということもあるわけです。
そういうことですから、私は、今の日本の精神病床の数は多過ぎますので、私どもの地域の経験からいえば、人口万対二十以下で十分地域の医療は保障できるというふうに考えております。現在、人口万対二十七の在院患者さんがおりますが、まず診療報酬制度の方もそういうことを加味しまして、急性期の患者さんを一生懸命やる病院には経営がやりやすいということでやっていただければと思います。そして、全体の病床数が減って、その分だけ最近入院した方に手厚い看護と医療をというふうにしていただければと思います。
それから、臨床心理士については非常に難しい問題があります。というのは、医師の果たす役割と臨床心理士が果たす役割はかなり重複しているところがありますので、そこの切り分けがなかなか今難しくて進まないということがあると思います。しかし、実際には、私どもは児童病棟を持っていますけれども、子供の病棟で子供の精神科的な治療あるいはケアをするには臨床心理士というのは非常に大切であります。ぜひ資格化を進めて、そういう領域でも活躍するような職種をつくっていただきたい、そういうふうに思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504237X01019990519/175
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176・西島英利
○西島参考人 先ほどの御質問にお答えさせていただきますが、当然、五年以上の医療必要群というのは、治療困難な患者さんたちがどうしてもいらっしゃいます、そういう患者さんたちをどうするかということでございまして、地域ケアでやれない患者さんたちがいるんだということでございますね。これは何も、先ほどのお話にありましたような触法の患者とか粗暴な患者とか、そういうことではございません。どうしても波が非常に多い患者さんたちがいらっしゃいます。こういう方々はやはり医療施設で対応すべきだろうというふうに私は思っております。長期の入院で、その入院医療そのものが悪という見方はぜひしていただきたくないというふうに思います。
ただ、そうなりましたときに、今一般病床でも問題になっておりますが、例えばがんの患者さんとか、ほかの病気で長期の医療が必要である患者さんをどうするのかという問題も含めてこれは検討すべきであろうというふうに思っております。
それから、国立と大学病院のあり方についてでございますが、国立は政策医療的なものをしていくべきではないかというふうに私は考えております。また、それなりの資金も投入して当然であろうというふうに思っております。それから、大学病院に関しましては、重度な患者さんを民間病院との連携の中でやりまして、ある程度の治療が済めばまた民間病院でさらに治療をして、そして地域へというような流れをつくる役割が大学病院にあるのではないかなというふうに私は思っておりますので、このあり方も一つございます。
以上でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504237X01019990519/176
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177・小林信子
○小林参考人 任意入院のことですけれども、実は任意入院というのは、精神保健福祉法の中で全くあいまいな法律の一つの典型だと思っております。みずからの意思を持って入院をするということだけで、ほかに何の規定もございません。これは非常にある面では人権侵害の温床になっているというのは事実です。その方たちの半数以上、六〇%近くが閉鎖で処遇されているというのも当然わかるような気がいたします。
というのは、みずから意思を持って入院したい、精神病院で休みたいという方だけが任意入院ではないわけです。ノーと言わない人を入れるとか、そういうふうに病院にとって大変逃げ道がある手段が任意入院なわけです。
これは、例えば精神医療審査会における定期審査のチェックから免れております。何もしないで構わないわけです。そして閉鎖に入れておく。ですから、先ほど閉鎖処遇に入っていても出たい人は出られるだろうという御意見が参考人の方からありましたけれども、精神病院というのは収容所ですから、大体個別処遇というのはほとんどありません。大体がグループとして、一団として処遇をすることがとても多いと思っています。もちろん個別処遇があるところがありますけれども、原則として開放処遇をするべきだと思っています。
ですから、任意入院で病院に入ってぐあいが悪くなったときには、それは大変でも手続をして、ちゃんと医療保護入院にして法律の網をかけるというか、審査会なりなんなりに不服申し立てができるようなものにしていかなければならないと思います。
私たちのところに相談に来るのは、任意入院だけれども精神医療審査会に申し立てたいという相談が随分あります。それは、自分たちが閉鎖処遇されているからです。ところが、今の法律では、任意入院の患者さんたちの訴えは精神医療審査会は受け付けないことになっております。ですから、何もできないということです。
もう一つ、保護室の問題ですけれども、保護室があればあるほど利用されるというのは事実です。それからもう一つ恐ろしいことに、私は医療者ではありませんから保護室がどういう役割をとってきたのかよくわかりませんが、確かに、暴れた患者さんを静めるという作用が精神医療の中において必要だとは思いますけれども、今余りにも保護室が安易に活用されています。自分が納得して入ったはずなのに医療保護入院にさせられて、注射を打たれてともかく保護室に入れられる。保護室を通過することが一つのルートになっている、一つの治療のルーチンになっているという病院が私たちの方には随分寄せられております。
保護室というのは本来そういう役割を持つべきものではないでしょうし、私はよくわかりませんが、保護室がない病院というのもあります。ですから、保護室の数とか何かを最低限にして、できるだけ保護室を使わない、そのためにはマンパワーとよい質の医療の提供が不可欠だと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504237X01019990519/177
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178・新保祐元
○新保参考人 先生から御指摘いただきましたのは、グループホームに何らかの形で就労条件が定められていることを放置していてよろしいのか、こういうことでございますが、放置しておいてよろしいのかと言われると撤廃せよということにもなりかねないわけですが、どうしてこういう御意見が出るかといえば、グループホームはいわば生活の場としてとらえられているわけですね。そして、その生活とは一体何かといえば、日々のなりわいでございまして、その日々のなりわいは人さまざまであってよろしいという前提に立てば、何も就労を義務づける必要はないじゃないかという御意見だというふうに思います。まさにそのとおりだというふうに思います。ただ、現行で撤廃をしてそれで済むかといえば、それだけの問題ではないというふうにも思っております。
精神障害者の方々の多くが働きたいと願っております。就労を希望している方々の数値はおよそ七五%と想定されます。この方々の願いをかなえるという一つの施策のあり方として、就労あるいは何らかの形で働くという条件をつけた居住形態があってもよろしいかというふうに思っています。
大事なことは、働きたいと思っても障害ゆえに働けない人たちがいるわけです。すなわち、人には働く権利と、障害ゆえに働かなくてもあるいは働けなくても、それでも生活ができる権利があるんだということを保障するための居住システムが必要だということです。そのための制度としては現況では不足だということが指摘されているというふうに思います。
この意味では、精神障害者に対する居住プログラムをもっともっと多様化していって、そして、一生懸命働きたくても傷病によって生じる働けない人たちに対する生活保障システムとしての居住形態をつくることによって、どんな障害を持っても自分たちが自分たちなりに生きられるんだという希望を与えてあげることが大事だというふうに思いますので、そういった居住プログラムの多様化について先生方にもよろしく御協力をお願いしたいというふうに思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504237X01019990519/178
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179・荒井元傳
○荒井参考人 大変難しい問題を投げかけられました。
高齢の親の子供ということでまた高齢であります。そういう意味では、ほうっておけば一生精神病院のある部屋で終わってしまう。それで、本当にふやしてほしいと思いつつ、十年運動しても、私どもだけがやったわけじゃないわけですけれども、非常に進まないという中でございます。
一つ参考までに皆さんに御紹介したいんですけれども、私ども十年前にやった調査の中で、どうして引き取れないのかというようなところがありました。一番高いのは、やはり病気が治っていない、再発するというようなところであります。家族の高齢化が著しい、特に保護者が六十一歳以上に達するというところです。入院期間がこの人たちで平均で大体十三年です、発病してから十五年になります。
そうすると、十年以上病気が治っていないから引き取れないということはどういうことかということは、我々は厳然たる事実として考えるべきだと思います。それは、私は福祉だというふうに思います。福祉的な対応をきちっとして、彼らが生活環境がいい中で障害者として暮らせるというような体制をつくるのが必要であると思います。
厚生省の大勇断で、精神障害も障害保健福祉部に入りました。障害者プランの対象であります。社会復帰のその部分だけが障害者プランの対象だというふうに言われていますけれども、私は、本当の重度の人たちも障害者であり、クオリティーライフを含めた障害者プランのサービスを受けるべきだというふうに思います。ここまでは一番理想なんですけれども。
そんな中で、やはり短期の精神的な対応というのは医療ですべきであるし、そういうケアなり、いい環境の中で福祉的な措置で生活できる環境というのは福祉のレベルでやるべきである。それから、医療関係者も福祉という形で経営を考えていただきたい、収益事業なり経営ということの福祉ではなくて。そういう意味では、本当に福祉事業という形で、ほかの福祉法人をつくってそういう環境をつくるということも含めてお考えいただきたいというふうに思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504237X01019990519/179
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180・児玉健次
○児玉委員 あと一分ぐらいあるようですから、伊藤先生に一問だけお願いしたいのです。
この精神科特例を私たちが乗り越えていくときに一番大きなネックの一つは、精神科の医師の養成だと思うんです。この点について御意見をいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504237X01019990519/180
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181・伊藤哲寛
○伊藤参考人 私も、差し当たりはそれが大きな障害になるだろうと考えております。
そこで、とりあえずは、先ほど言いましたように、非常に難しい症例を扱うような病棟についてだけ少しずつマンパワーを上げて、それに対して手当てをしていくという方策をとらざるを得ないと思います。そして、それを進めるうちに、次第に病床が必要でなくなることを期待しております。そうしますと、相対的には医師の数が足りるはずなんです。今は医師が足りないということもありますが、病床が多過ぎて相対的に少ないのじゃないかという問題もあります。そういうことを総合的に判断して施策に反映させるべきだと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504237X01019990519/181
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182・児玉健次
○児玉委員 ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504237X01019990519/182
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183・木村義雄
○木村委員長 中川智子さん。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504237X01019990519/183
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184・中川智子
○中川(智)委員 社会民主党・市民連合の中川智子です。着席のままでの質問をお許しいただきたいと思います。
きょうは、参考人の方々の御意見、本当に貴重なものとして重く受けとめさせていただいて、今後の審議にしっかりと生かしたいと思っております。
まず最初に、西島参考人にお伺いしたいのですが、今の伊藤参考人への児玉先生の質問と重なるのですが、地域の中で地域の人々とともに生きていくもう一つの要件としては、本当に身近なところに精神科のお医者様がいて、退院した後、その身近なところに通院してケアをしていくというふうなことです。私の町に暮らしていてもとても感じるのですが、精神科のお医者様が少ない。そして、割と相性が合えばびっくりするほど早く治癒していくわけですけれども、相性が合わなくてはしごしてしまうというか、結局遠いところまで通わざるを得ない、その間にまた悪化して再入院という友人たちを見ております。
それで、お医者様の中でいわゆる精神科に対する偏見のようなものが、実際本音で伺いたいのですけれども、医療機関の中で、お医者様の中で精神科のお医者さんが少ない。数的なものではそうではないと今おっしゃいましたけれども、やはり育つところが、私の目から見ましたら余りいらっしゃらない。
そこで、制度的なものやいわゆる大学などの教育の中で何か直していかなければいけない部分があるのではないかと思うんですけれども、西島先生、いかがでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504237X01019990519/184
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185・西島英利
○西島参考人 大変難しい問題でございます。
ただ、一時精神科医がブームになったことがございまして、百名の卒業生の中で十名が精神科の医局に入るというようなことが一時期的に起きたことがございます。最近、また少なくなったようでございますけれども。ですから、決して精神科になろうという数が少ないというわけではなかろうというふうには思っております。
ただ、ほかの科の医師との関係で申し上げますと、やはり精神科の医師に対しての、精神科の医師というよりは精神科に対する偏見というのがあって、そのあたりで病院内での連携もなかなかできない、そして、ある意味では精神科医師が一般医師とのかかわりが少ないという部分もあろうかというふうに思います。そういうところから、医師の資質というものが精神科医にも問われているのかなというふうに思っております。
先ほど先生がおっしゃいました、合う、合わないの問題は、その人の人間性にかなり大きく寄与するのかなというふうに思いますので、今そのお話を申し上げたわけでございます。
そして、地域の中で医師と出会って、その地域の中で済む、これは本当にそのとおりでございまして、そうするようにどうしたらいいのか考えなきゃいけないと思うんですが、やはり地域の身近なところになかなか行けない、これは、先ほどから何回も申し上げております偏見の問題なんですね。この偏見がなかなか直らない。きょうも御意見の中で申し上げたマスコミ報道のあり方、それから理解の問題。
例えばうつ病とか老人痴呆にかかわっていきますと、実はそういう患者さんたちは非常に身近なものになってこられます。この精神保健福祉法の審議も、ずっとお聞きしておりますと、精神分裂病の患者さんを中心にした対策をどうするのかというようなお話になっておりますので、そうなりますと、なかなかこの偏見というのは縮まらないのかなという気がいたしておりまして、今後、精神科病院がもっと幅広くいろいろな患者さんが診られるような精神保健福祉法にしていただくように、この定義の問題もぜひ御検討いただければというふうに思います。
以上でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504237X01019990519/185
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186・中川智子
○中川(智)委員 ありがとうございました。
続きまして、小林参考人に伺いたいのですけれども、この審議の中でも精神病院内のスキャンダルの問題が種々取り上げられました。小林参考人は、精神病院のスキャンダルの原因、日本で起きるスキャンダルの原因ということに対してどのような御見解、御意見をお持ちか、お伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504237X01019990519/186
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187・小林信子
○小林参考人 患者の権利擁護者という立場で、気楽な立場なんですけれども、言わせていただきますと、一言では言えませんけれども、一番はスタッフの質だと思います。
看護婦さんになるにしろお医者さんになるにしろ、まず人権教育というものが全くされていないわけですね。人権意識というのは生まれながらにして持ってくるわけではなくて、それは教育なわけです。教育をする機関というものが看護学校においてもないということがわかっておりまして、このごろ少し看護学校から講義をしてくれという呼びかけがあります。それから、精神科のお医者さんの場合には、指定医の講習の中で多分倫理とか人権という時間が設けられているとは思いますけれども、やはりそういうものがないわけです。
それと、あとは患者さんたちを取り巻く偏見です。一対一の市民であれば当然尊重すべき礼儀とかマナーがあると思いますけれども、例えば、長いこと家族にも友人にも見捨てられて病院にいる人はだれも助けてはくれないし、外へも情報が見えないわけですから、この人は、私たちが何をしても行くところがないんだというような患者さんたちに対する意識がスキャンダルを引き起こすことはあると思います。
その中で一番の問題は、そうはいいながらもスタッフのトレーニングが問題だと思います。余りにも経験がなくて、いきなり精神科に来たとか、ほかで働く場所がないから精神科に来たという看護婦さんたちもおります。そういう方が、確かに暴れたりすることはあるわけですけれども、経験がないし知識もないから、暴れたことに対して過剰に反応して患者さんにけがをさせたり殺しちゃったというような事件が、例えば、おととしですか、高知県の山本病院で起きております。
ですから、そういう病院で働く人たちのトレーニングと経験を積ませるようなしっかりとしたプログラムというものをぜひつくっていただきたい。そして、人権教育というものも、人権教育と医療というものは決して相反するものではなくて、相乗効果を持つものだと思っていますので、ぜひそのようなスタッフの質の確保というもののトレーニングを国を挙げてやっていただきたいと思っています。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504237X01019990519/187
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188・中川智子
○中川(智)委員 ありがとうございました。
続きまして新保参考人にお伺いしたいんですが、居住施策のことを先ほど意見陳述のところでおっしゃいました。私も午前中の質疑の中で、福祉摩擦といいますか、何か施設をつくるときに反対運動が起きましたら地域住民と当事者が対決せざるを得ない、こういうふうに当事者に任せておいて厚生省なり行政は外から見ているだけというのではいけないのではないか、地域の中でともに生きていくのならば、しっかりとそれに介入してもっとスムーズに地域の中に施設がつくれるような手だてはないものか、みんなで力を寄せ合っていける手だてはないものかということで質問いたしました。
これに対して、これまでの参考人の経験、先ほどビデオを撮られたとかいろいろおっしゃいましたけれども、そういうふうなほかのところの実態ですとか、そして、行政がやはりうまくこれにかんでいって、福祉摩擦のようなことが起きないようにするにはどうすればいいかという御意見を賜ればありがたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504237X01019990519/188
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189・新保祐元
○新保参考人 施設摩擦、コンフリクトというふうな言い方をいたしますが、施設摩擦の問題の根には偏見とか差別という目が当然のようにあるわけです。そして、この偏見や差別を解消していくためには、その前提になる誤解、大体誤解が差別とかというものを生じさせてまいりますので、誤解を解くことが最も重要だというふうに思います。
その誤解を解く大きな手だては、基本的には、精神病という病気が治るということを市民理解として得られるとすれば、これが一番です。すなわち、精神疾患に対する治癒の方法をできるだけ向上させていただきたい。
次は、病気が仮に十分に治らないとしても、他の慢性疾患と同様に、例えば難病等と同様に、病気を抱えながらもみずからの生活を十分に営んでいけるような体制をつくらなきゃいけない、こういうことになると思うんです。
この体制をつくっていくためには、現在、精神障害者が他障害と対比しましてなお誤解や偏見のまなざしがきついというのは、施策の中で市町村の施策になり得ていない、すなわち身近な施策になり得ていないということがあります。したがいまして、市町村職員でさえも精神障害者はおれたちの管轄ではないというぐらいのことを言うわけですし、精神障害者に対する対応のマニュアルを持っていないということも言います。ということは、精神保健福祉センターが全国に設置されて、市町村も社会復帰施設等と連携を図るようにというふうに法文で述べられておりますが、このことが実態化しないということであります。したがいまして、このことを実態化させていくためには、市町村の条例を改正する程度でもかなり大きく変わるんじゃないかというふうに私は思っています。
たまたま昨日、茨城のひたちなかというところで通所授産施設が開設いたしました。この施設に四分の一設置者負担という、その施設をつくるときに設置者が負担をする金額がございます、これをひたちなか市と東海村が負担したんですね。これは、実は他障害の場合は当該の市町村、地方自治体が負担をするような条例ができているんです。ところが、精神の場合は大概のところはありません、あれは私たちの仕事じゃないんだ、県の仕事だということで。障害者基本法ができて以降もそういった条例改正がなされておりません。
これがもし市町村で、障害者や老人等でもあれなんですが、福祉施設に対してそういった補助を他障害や老人と同じように行いますという条例改正さえ行われれば、市町村の担当者は、ああ、そうなのか、精神障害者も病者じゃなくて障害者だったんだという認識に簡単に変わっていくと思いますし、そういう条例があれば、地域の方々との話を進めるというか、理解を求めていくのにも求めやすい一つのバックボーンになります。したがいまして、市町村窓口に精神障害者を移行する今般の法改正は大変重要だというふうに思っております。
なお、コンフリクトの問題というのはもっともっとさまざまな要因が働いております。さまざまな要因が働いておりますが、基本的には、そういったところを解消しながら、そして、行政当事者がまさに地域で動けるようなシステムづくり、いわば法制度の整備づくりを進めていくのとあわせて理解を求めていくしかないんじゃないかと思っています。
日精協さん、日本精神病院協会さんが、昨年、コンフリクトに対してというか、精神障害者に対する意識に関して全国およそ八百幾つかの報道機関にアンケート調査をいたしました。その結果の数値からいきましても、報道機関の方々は、建前論では精神障害者の施設ができるときには反対だと言わないはずなのに、十数%の人たちが反対だと述べている数値がございます。まさに、我が国の国民の意識はそれ以上に反対だという意識であることの実証でございます。
それもこれも、先ほど申し上げましたように、精神障害者を隔離してきた法制度の中で起きるいわば反対というか精神障害者に対するわからなさというか、精神障害者ってどんな人か見えないという、形までも隔離してしまっていることが大きな要因だというふうに思いますので、ぜひとも地域で物事が進めていけるような施策づくりに御協力を願いたいというふうに思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504237X01019990519/189
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190・中川智子
○中川(智)委員 時間が来ました。児玉委員のように最初に質問を全部出しておけばよかったなと思いますが、失敗しました。
本当にきょうはありがとうございました。一生懸命頑張りますので、今後ともよろしくお願いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504237X01019990519/190
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191・木村義雄
○木村委員長 武山百合子さん。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504237X01019990519/191
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192・武山百合子
○武山委員 自由党の武山百合子でございます。きょうは、参考人の皆様、お忙しい中おいでいただきましてありがとうございます。
早速質問に入りたいと思います。
北海道からお見えになってくださいました伊藤参考人にお伺いしたいと思います。
まず最初に、伊藤参考人が、日本は精神障害者の医療、保健、福祉は貧しい水準にあるとおっしゃられたわけですが、私も事実は本当にそのとおりだと思います。先ほどのお話で、時間的になかったわけですけれども、ぜひその状態を話してください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504237X01019990519/192
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193・伊藤哲寛
○伊藤参考人 短い時間で述べるのは非常に難しい問題なんですが、私が配付いたしました資料の三、三枚つづりのものですが、見ていただければと思います。
まず、精神病床が外国と比べて非常に多いということがあります。そして、この精神病床が多いということは、本来なら病院の数が多くて、患者さんにいいサービスを差し上げているということで高く評価されるべきだと思うのですが、残念なことに、その三の一の下の表を見ていただけばわかりますように、平均在院日数が非常に長いということであります。
日本の場合は四百九十二・一、これは年度がちょっとずれて正確なデータではありませんけれども、アメリカの十二・七日、イギリスの二百十六・七日、ドイツの三十五日というのに比べて非常に長い期間患者さんが入院しているということがあります。
これは、必ずしも患者さんにとっては好ましいことではない。いわゆる社会的な入院が多いということですので、病院の数だけ多くて、患者さんが地域で生活するための支援が十分なされていないということの証拠になるのだろうと思います。
次の資料の三の二にもそのことが書いてありますが、いわゆる社会的入院と言われる方がどのぐらいいるのかというデータは、データのとり方によってまちまちですが、一番多いところで五六・九%、条件が整えば社会で生活できるという数が出ております。一番少ないところでは三三・〇%。あるいは、厚生科学研究班の統計では九万床、二五%が退院可能だろうという数字が出ています。
このデータのとり方によって少し差が出てきますが、私の経験からも、やはり二〇から三〇%は、貧しい精神保健福祉施策が少しでも改善されれば退院できる時代が来るのじゃないかなというふうに思っております。
それから、実際に私たちが医療をやっておりまして、本当にいい医療を提供できているのかどうか、日ごろ疑問に思いながらやっております。
医療法の特例で、四十八人の入院患者さんを一人の医師が診るということは、確かに慢性期の、長い、十年も入院している方であれば看護婦さんにかなりの部分をお任せできるのですが、だんだん急性期の患者さんを救急あたりで診ていかなければなりませんと、患者さんに十分に説明と同意、あるいは入院についての計画をきちっと説明する、あるいは人権についての告知をきちっと行いながら医療をする、そういうことを考えますと、今の医療法の特例の中では貧しい医療しか提供できませんと言わざるを得ない。そういうようなことを含めて貧しいという言葉。
もちろん、これは医療だけに限ってお話ししましたけれども、先ほどから出ておりますように、患者さんを地域で支える施策自体も貧しいということ、これは相乗的にこういう状況を招いているということだと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504237X01019990519/193
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194・武山百合子
○武山委員 このたびの大幅な改正によって、その第一歩かと思いますけれども、お話を聞いていると、日本の医療体制というのは本当に胸の痛くなるような実情だと私は思うのですよね。
それで、今回の法改正におきましてどのくらいのパーセンテージで、伊藤さんが病院経営をされてきた今までの自分の経験から見まして、法改正はどのくらい進歩したと思いますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504237X01019990519/194
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195・伊藤哲寛
○伊藤参考人 これは非常に難しい。
長い間の歴史を見ますと、私どもの意識自体は変わったことは事実です。
私は昭和四十六年から精神病院に勤めておりますけれども、私自身の意識は、当時と今とでは随分違います。当時は、私に任せておけという気持ちで医療をやっていました。ですから、一人でケースワーカーの仕事もやりましたし、それから、人権という意識は昔はありませんでした。病気が悪いんだからおれに任せておけという形で、医療をどんどんパターナリスティックといいましょうか、親みたいな感じでやってきました。
ですから、患者さんの方から見れば、子供扱いにされているという形で医療を受けているのだろうと思いますけれども、何度か精神保健福祉法が改正していく中で、やはり患者さんも一人の主張を持った方たちだというふうに、その主張を少しでも生かす形での医療を展開しなければならない、そういう意識が私自身でも随分変わってきたということはあります。
これは、やはり精神保健福祉法という法律の改正があったということもあります。もちろん、国民の医療を受ける権利意識というのも変わってきた、そういう背景も当然あるわけですが、私は、少しずつ進んできている、もっと進んでほしいというふうに評価はしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504237X01019990519/195
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196・武山百合子
○武山委員 何%なんて言ったら非常にお答えにくいかと思いますので、それ以上は追及しませんけれども、次に移りたいと思います。今後ともぜひ頑張っていただきたいと思います。
情報公開ですけれども、精神病院の透明性を高めるという意味で、情報公開は大事なことだと思うのですね。精神病院だけではなく、医療に対する情報公開は、日本の医療全般に言えると思いますけれども、ところで、先生の病院は情報公開を行っておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504237X01019990519/196
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197・伊藤哲寛
○伊藤参考人 情報公開にもいろいろな方法があると思いますが、私どもの病院では、まず、十年前から病院の年報というのをつくって、病院の職員、入院している患者さんの数、あるいは回転率。それから最近では、その年報には、電気けいれん療法、これは患者さんが非常に嫌がるといいますか、当然、できたらそういう治療はしてほしくない治療ですけれども、一部にせざるを得ない場合がありますが、年間何名そういう治療をしたか。それから、最近二、三年は、患者さんに対する投薬という行為がありますけれども、入院患者さんに薬を渡すときに、看護婦さんが間違って、誤投薬と言うわけですけれども、どのぐらいの件数、間違って患者さんに渡してしまったことがあるかというデータも年報の方には載せて公開しております。それが一つのやり方だと思います。
それからもう一つは、病院の中にできるだけ多くの方に入っていただきたいということで、ボランティアの方に、閉鎖病棟の患者さんあるいは開放病棟の患者さんにも、卓球を一定の時間おつき合いしていただく。これは市民といいますか、住民の方が週に一遍来て卓球をやっていただいたり、あるいは喫茶店の経営を一緒にやっていく、病院の中の喫茶店ですけれども。ということで、できるだけ多くの方が病院に入っていただくということ。
それから、昨年は、これは初めての試みですけれども、五人の方に一泊ずつ入院をしていただきました、閉鎖病棟も含めまして。これは地元の新聞記者、福祉関係の方、家族会の方、それから道庁の職員の方も含めて、とにかく病院の中身を知っていただきたいということで一泊体験入院をしていただきました。
これは、非常に私ども勇気のある、勇気というか心配しながらの企画だったのですけれども、非常に好評でした。病院を誤解していたというふうに言っていた方もおりました。そういう意味で、やはりまだまだやれることはあるのじゃないか、情報公開、病院の透明性を高めるということでは。
そういうことであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504237X01019990519/197
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198・武山百合子
○武山委員 どうもありがとうございました。
その情報公開の中の一つで、診療録の開示ということが言われておりますけれども、これは家族の方には詳しく説明も、開示もされているのでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504237X01019990519/198
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199・伊藤哲寛
○伊藤参考人 私の病院では、残念ですが、まだそこまで踏み切っておりません。これは、医者の教育も一つしなければならないのですが、自分の行為がすべて患者さんに公開されてしかるべきである、そういう前提で診療を進めるという、まだ習慣といいましょうか、患者さんとの関係といいましょうか、それがまだまだできていないということです。
確かに、精神科の特殊性で、一般科とは少し異なった例外規定は設けなければならぬとは思いますけれども、基本的には、一般診療科でやれることはカルテの開示も含めて精神科でも進めるのが原則だと思っております。どこまでやれるかはもう少し時間はかかるとは思いますけれども、将来、そういう時代は来るのではないかというふうに思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504237X01019990519/199
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200・武山百合子
○武山委員 家族の方がお見えになりましたら、説明は十分していただけるのですか。見せられないとしましても、説明は十分していただけるのでしょうか、診療録の内容。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504237X01019990519/200
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201・伊藤哲寛
○伊藤参考人 診療録そのものについて患者さんの方からどんな内容になっているか聞かれたことはありませんけれども、できるだけ家族の方には実際に診療に即した情報をお伝えするように努力しております。
それから、最近は、亡くなった患者さんの家族が、診療録の公開をしてほしいという方も出てき始めました。それについては、もし可能であれば、できるだけそのままお見せするように努力したいと思って、今検討中でありますが、実は、カルテがそういうふうになっていません。というのは、ほかの患者さんの情報が入っているのです、カルテの中に。ほかの患者さんとこういうトラブルが入院中にあったとか。
それを公開すると、別な患者さんのプライバシーの問題がどこかで起こってくるということもありまして、ちょっと頭が痛いのですけれども、公開されるべきだという前提でカルテをつくっていくということができてくれば、かなりの部分できるようになるのではないかと思っておりますけれども、実際にはまだちょっと自信がない段階であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504237X01019990519/201
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202・武山百合子
○武山委員 先生の病院は、先生のほかに何人いらっしゃるのか。それから、あと何年ぐらいで意識が変わって、実際に公開の青写真、予測で結構ですので、医師会の西島参考人に聞いた方がいいのかわかりませんけれども、お二人に同時の質問をしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504237X01019990519/202
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203・伊藤哲寛
○伊藤参考人 公開がどういうふうに進むか、カルテの開示も。これは、医者はもちろん努力しなければならぬのですが、医療を受ける当事者の方のそういう要求が強いかどうかによっても随分スピードが変わってくると思うのですね。
それで、私は、まだそれほどスピードは上がらないのではないか、十年ぐらいはかかるのではないかな、そのぐらい少しじっくり構えざるを得ないのではないかというふうには思っております。ほかの科よりはおくれる可能性の方が強いのではないでしょうか。それでよろしいでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504237X01019990519/203
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204・西島英利
○西島参考人 診療録の開示に関しましては、精神というのは非常に難しい場面がございますけれども、少なくとも、私どもは、カルテを患者さんと一緒に見ながら診療を進めていっております。
それはなぜかといいますと、それが信頼関係だろうというふうに私は思っておりますので、あなたの情報はこういう形でカルテに書かれているよという中で、お薬も含めて説明をし、家族にも説明をしております。そういう意味では、カルテの開示というのは十分にやっているつもりでございます。
ただ、昨今言われておりますカルテの開示の法制化に関しましては、ある意味では信頼関係を損なう面もあるというところで、臨床の立場から、診療録、カルテの開示をぜひ進めていきたいというところで、先日、日本医師会としましてもガイドラインをつくりまして、今、周知徹底させるため、全国医師会に対して研修と申しますか、それも含めてやり始めているところでございます。来年からそれを本格的にスタートしようとしております。
ただ、この中で問題なのは、医師会員以外はどうするのかというふうに言われておりますが、もしこの対応がうまくいけば、当然これがほかの医師にも波及していくだろうというふうに思いますし、そのときに法制化をどうしていけばいいのかということを私は考えればいいのではないかというふうには思っております。
以上でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504237X01019990519/204
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205・武山百合子
○武山委員 医師会の方から来られている西島参考人にもう一度お伺いしたいのですけれども、公的病院と私的病院がありますね。その中で、先ほど北海道の伊藤参考人がおっしゃられたような部分開示、それは、全体を一〇〇とした場合、どのくらい部分開示されているのでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504237X01019990519/205
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206・西島英利
○西島参考人 開示というのも、情報には非常に幅が広うございますから、どこの部分で考えるのかということでございますが、少なくとも医師が書く診療録に関しましては、ほとんど患者さんの横で診療録を書いておりますので、患者さんはそれを見ながら精神療法等を実は受けているわけでございます。
そういう意味では、一〇〇%とは申しませんが、九〇%近くは患者さんに対しては開示されているのではないかなというふうに思っております。精神療法のやり方というのは、結構カルテを書きながらその横で患者さんと話をしているというのが現状でございますので。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504237X01019990519/206
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207・武山百合子
○武山委員 私は、皆さんのお話を聞いておりまして、余り開示されていないのではなかろうかと思っておりましたけれども、医師会の方のお話ですと、結構開示されている。
そうしますと、カルテの方は今のお話でわかりましたけれども、施設の方の開示はどのくらい進んでおりますでしょうか。医師会の西島さん、お答えいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504237X01019990519/207
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208・西島英利
○西島参考人 施設の情報の開示というのも、これも幅広うございますが、どこまでということもあろうかと思います。
先ほど、国公立の病院に関しましては、結構年報をつくっていらっしゃいますね。これは、きちんとした事務方がいらっしゃいまして、そういう年報をつくらなければならないようになっているかなと私は思っているのでございますが、民間病院がなかなかそこまでは対応できないというふうに思っております。
ただ、これは、今、日本医療機能評価機構というところが日本全国の精神病院も含めまして評価をしておりますが、その中に日本精神病院協会も入っておりまして、その中でも議論のあるところでございますけれども、例えば治癒の、精神科の場合は治癒とは言わないわけでございますけれども、どれだけの治療成績を上げられているのか、そういうことも含めて評価をしていかなければ本来の評価にならないのではないかという議論が最近始まっております。
私も当然そう思いますので、今後、そういう方向も含めて開示というのは必要かなというふうに思いますが、どれだけ開示をしているかと言われますと、そのデータは持っておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504237X01019990519/208
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209・武山百合子
○武山委員 最後の質問になりますけれども、西島参考人にちょっと締めていただきたいのです。
そうしますと、あとどのくらいたちましたら情報公開というものが医師の間に意識として根づいて、それで患者にきちっと自信を持ってある程度知らせられるというのが、先ほど伊藤参考人から十年ぐらいとお聞きしましたけれども、医師会の方ではどのくらいの青写真を描いておりますでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504237X01019990519/209
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210・西島英利
○西島参考人 期間的なことを言われますと非常に難しゅうございますが、これは、これから先の医師に対する教育の問題もあろうかというふうに思います、カルテの書き方等も含めまして。そういう教育を大学も含めましてどういう形でやるのかというところから進めなければいけないと思うのです。
私自身は十年は長過ぎると思います。このスピード化の中で、人権が言われている中で、やはりもう少し短縮した形の中で早急にこの対応はしていかなければいけないというふうに思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504237X01019990519/210
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211・武山百合子
○武山委員 どうもありがとうございました。私たちは国政で頑張りますので、皆さんもぜひ頑張っていただきたいと思います。
どうもありがとうございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504237X01019990519/211
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212・木村義雄
○木村委員長 これにて参考人に対する質疑は終了いたしました。
この際、一言ごあいさつを申し上げます。
参考人の皆様方におかれましては、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。大変熱心な議論ゆえ、予定時刻を二十分もオーバーをしてしまいました。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。(拍手)
次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。
午後四時十九分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504237X01019990519/212
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