1. 会議録本文
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000・会議録情報
平成十一年七月二十八日(水曜日)
午前九時一分開議
出席委員
委員長 古賀 正浩君
理事 伊藤 達也君 理事 小此木八郎君
理事 小野 晋也君 理事 岸田 文雄君
理事 大畠 章宏君 理事 松本 龍君
理事 大口 善徳君 理事 西川太一郎君
逢沢 一郎君 江渡 聡徳君
遠藤 武彦君 小野寺五典君
奥田 幹生君 奥谷 通君
木村 隆秀君 小坂 憲次君
小島 敏男君 佐田玄一郎君
新藤 義孝君 竹本 直一君
武部 勤君 中山 太郎君
桧田 仁君 古屋 圭司君
牧野 隆守君 村田敬次郎君
茂木 敏充君 山口 泰明君
山本 幸三君 吉川 貴盛君
渡辺 喜美君 家西 悟君
上田 清司君 奥田 建君
川内 博史君 島 聡君
島津 尚純君 中桐 伸五君
中山 義活君 日野 市朗君
藤村 修君 渡辺 周君
白保 台一君 中野 清君
福留 泰蔵君 青山 丘君
小池百合子君 二階 俊博君
金子 満広君 中島 武敏君
春名 直章君 吉井 英勝君
前島 秀行君
出席国務大臣
通商産業大臣 与謝野 馨君
労働大臣 甘利 明君
出席政府委員
公正取引委員会
事務総局経済取
引局長 山田 昭雄君
金融再生委員会
事務局長 森 昭治君
大蔵大臣官房審
議官 福田 進君
大蔵省金融企画
局長 福田 誠君
通商産業大臣官
房審議官 林 洋和君
通商産業省貿易
局長 佐野 忠克君
通商産業省産業
政策局長 江崎 格君
通商産業省基礎
産業局長 河野 博文君
通商産業省機械
情報産業局長 広瀬 勝貞君
資源エネルギー
庁長官 稲川 泰弘君
中小企業庁長官 鴇田 勝彦君
中小企業庁次長 殿岡 茂樹君
労働省労政局長 澤田陽太郎君
労働省労働基準
局長 野寺 康幸君
労働省職業安定
局長 渡邊 信君
委員外の出席者
議員 上田 清司君
議員 松沢 成文君
議員 島 聡君
議員 島津 尚純君
参考人
(社団法人経済
団体連合会会長
) 今井 敬君
参考人
(全国中小企業
団体中央会常任
理事
宮城県中小企業
団体中央会会長
) 佐伯 昭雄君
参考人
(日本労働組合
総連合会副事務
局長) 野口 敞也君
参考人
(北海道大学経
済学部教授) 濱田 康行君
参考人
(株式会社日本
総合研究所調査
部長) 高橋 進君
商工委員会専門
員 酒井 喜隆君
委員の異動
七月二十八日
辞任 補欠選任
岡部 英男君 小野寺五典君
奥田 幹生君 逢沢 一郎君
奥谷 通君 小島 敏男君
河本 三郎君 江渡 聡徳君
竹本 直一君 吉川 貴盛君
中尾 栄一君 小坂 憲次君
林 義郎君 佐田玄一郎君
山口 泰明君 桧田 仁君
山本 幸三君 渡辺 喜美君
樽床 伸二君 藤村 修君
中山 義活君 上田 清司君
渡辺 周君 日野 市朗君
遠藤 乙彦君 白保 台一君
金子 満広君 春名 直章君
同日
辞任 補欠選任
逢沢 一郎君 奥田 幹生君
江渡 聡徳君 古屋 圭司君
小野寺五典君 岡部 英男君
小坂 憲次君 中尾 栄一君
小島 敏男君 奥谷 通君
佐田玄一郎君 林 義郎君
桧田 仁君 山口 泰明君
吉川 貴盛君 竹本 直一君
渡辺 喜美君 山本 幸三君
上田 清司君 中山 義活君
日野 市朗君 渡辺 周君
藤村 修君 島 聡君
白保 台一君 遠藤 乙彦君
春名 直章君 中島 武敏君
同日
辞任 補欠選任
古屋 圭司君 河本 三郎君
島 聡君 中桐 伸五君
中島 武敏君 金子 満広君
同日
辞任 補欠選任
中桐 伸五君 家西 悟君
同日
辞任 補欠選任
家西 悟君 川内 博史君
同日
辞任 補欠選任
川内 博史君 樽床 伸二君
本日の会議に付した案件
産業活力再生特別措置法案(内閣提出第一一六号)
起業家支援のための新事業創出促進法等の一部を改正する法律案(中野寛成君外四名提出、衆法第三〇号)
午前九時一分開議
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/0
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001・古賀正浩
○古賀委員長 これより会議を開きます。
内閣提出、産業活力再生特別措置法案及び中野寛成君外四名提出、起業家支援のための新事業創出促進法等の一部を改正する法律案の両案を一括して議題といたします。
本日は、参考人として、社団法人経済団体連合会会長今井敬君、全国中小企業団体中央会常任理事・宮城県中小企業団体中央会会長佐伯昭雄君、日本労働組合総連合会副事務局長野口敞也君、北海道大学経済学部教授濱田康行君、株式会社日本総合研究所調査部長高橋進君、以上五名の方々に御出席をいただいております。
この際、参考人各位に一言ごあいさつ申し上げます。
本日は、御多用のところ本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。参考人各位におかれましては、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。
次に、議事の順序について申し上げます。
まず、参考人各位からお一人十二分以内で御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答え願いたいと存じます。
なお、念のため申し上げますが、御発言の際は、その都度委員長の許可を得て御発言くださるようお願いいたします。また、参考人から委員に対して質疑することはできないことになっておりますので、御了承願います。
それでは、まず今井参考人にお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/1
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002・今井敬
○今井参考人 経済団体連合会会長の今井でございます。
私からは、政府提案の産業活力再生特別措置法案に賛成の立場から意見を申し述べます。
私は、昨年五月に経団連会長に就任いたしました。この一年余りを振り返ってみますと、まさに最悪の経済情勢から脱却しつつある過程であると思います。
昨年来、まず、金融システム安定化にめどがつけられまして、さらに、追加的な財政出動及び所得税、法人税の大幅な減税を中心とする切れ目のない総需要喚起策の実施によりまして、ようやく景気は底を打ち、一—三月のGDPが高い数字を示すなど、久々に明るい兆しがあらわれております。
景気回復を本格的なものとし、我が国経済を安定的な成長軌道に戻すためにも、一連の経済対策の効果があらわれつつある間に、民間の主体的な努力によって経済構造の改革を進めていかなければならないと思います。
問題は、大きな需給ギャップの存在のもとで、民間設備投資の回復がおくれていることでございます。需要面からは打つべき手はほぼ打たれた状態でございますので、今必要なことは、供給面からの施策を行うことでございます。そこで今、サプライサイドの改革、すなわち産業競争力の強化が不可欠となっているのでございます。
振り返りますと、現在の米国経済の活況は、一九八五年一月に、レーガン大統領のもとでいわゆるヤング・レポートが公表されまして、これをベースにさまざまな施策が官民挙げて取り組まれたことにより経済を回復させていったことにあるわけでございます。
一方、日本の場合は、同じ一九八五年九月のプラザ合意以降、急激に円高が進みまして、八五年当時は一ドル二百五十円前後でございましたが、一年後には百五、六十円程度になりまして、さらに十年後の一九九五年には八十円を切るというような状態まで一時ございました。現在は百二十円前後で推移いたしておりますが、八五年当時に比べますと少なくとも二倍以上円の価値が高まったことになるわけでございまして、この円高によりまして、輸出企業の円による収入は半分になる一方、外国と競争する日本の企業は、同じ賃金であっても、円高によるドルベースのコスト高によりまして国際競争力が落ちてまいっているのでございます。日本企業にとっては大変厳しい状況が続いております。
こうした中で、貿易産業を中心にいたしまして、多くの産業で血の出るような合理化努力を行ってまいりましたが、日本の高コスト構造のもと、まだ競争力を回復するには至っておりません。国際競争力をいかに回復するかが大きな課題となっているわけでございます。
本年三月に発足いたしました産業競争力会議は、供給面の改革に向けて、過剰設備の処理の問題や、より重要な雇用の問題をどうすべきか、二十一世紀をリードするリーディングインダストリーをいかに育成するか、また、新しい産業、新しい事業をどうつくっていくか、さらには、グローバルコンペティションの中で経営をどう改革するか、こうした問題を議論していくものでございます。
この会議の最初の成果が、去る六月十一日に政府が取りまとめられました緊急雇用対策及び産業競争力強化対策でございまして、このうち、産業競争力強化対策の中から、特に対応を急ぐべき政策課題といたしまして、第一に事業再構築の円滑化、第二に創業及び中小企業者による新事業開拓の支援、第三に研究活動の活性化といった三つの課題を取り上げまして、総理の御決断によって急ぎ具体的施策として取りまとめられたものが、今回の産業活力再生特別措置法案であると認識しているわけでございます。
もちろん、こうした改革は、企業がみずから主体的に取り組んでいかなければなりません。政府の役割は、そのための環境整備でございます。すなわち、まず、企業がその事業の再構築を進めていく上で障害や制約となっている法制や税制を速やかに改正すること、また、創業者や中小企業への金融上の支援を行うこと、さらには、将来の我が国産業がよって立つべき科学技術の開発に官民の力を結集させることでございます。この法案は、まさにそのための緊急かつ不可欠な対策を実施すべく、経済界の強い要望を踏まえて立案されたものであると評価いたしております。
しかしながら一方において、残念ながら、この法案が企業の事業再構築を円滑に進めるための支援を含んでいることから、企業リストラ、イコール、雇用削減を推進するものであるかのような誤解があることでございます。
事業の再構築は、ますます熾烈化する国際競争の中で、我が国産業が生き残り、将来へ向けての発展基盤を固めるための一連の取り組みでございまして、このことは、とりもなおさず、先々にわたる雇用機会を維持、創出する基礎づくりでもあるわけでございます。このような事業再構築を進めるに当たって、雇用の創出、安定に企業が最大限の責任を果たすべきことは当然でございまして、個々の企業が現在の雇用を維持しながら事業再構築を進めていくことが望まれるわけでございます。
しかしながら他方、個々の企業としては、企業の体力が十分でなかったり、あるいはその事業分野の需要動向などから見て、どうしても当該企業の中では活用し切れない人員の問題が出てくる場合が予想されますので、社会全体としても雇用機会の創出を図ることが必要でございます。
この意味におきまして、当商工委員会におかれまして、ベンチャー企業を含む中小企業や個人創業者による新事業創出を支援するための累次の法律を制定し、さらに、この法案においても、創業及び中小企業者による新事業開拓の支援を二番目の柱としておられますことは、極めて意義深いものであると考えております。また、産業構造の変化に対応した労働移動の円滑化と求職者の再教育訓練の拡充を柱とする緊急雇用対策が先般来着実に実施されつつあることも、大変意義のあることと評価いたしております。
また、雇用の安定への配慮につきまして、この法案の具体的規定ぶりを拝見いたしますと、事業再構築計画の認定基準の一つとして、第三条六項六号に「当該事業再構築計画が従業員の地位を不当に害するものでないこと。」が明記されております。しかも、第十八条にありますように、実際に事業再構築計画をつくって遂行するに当たっては、労働組合との十分な話し合いと協力がその前提となるとの趣旨が規定されております。私どもといたしましても、これらの規定の趣旨を十分尊重して対応していくべきだと考えております。
続きまして、産業活力再生特別措置法案の各項目につきまして、経済界の評価を申し上げます。
まず、一番目の柱であります事業再構築の円滑化にかかわる施策でございます。この中身は、主として商法と税制の特例にかかわる問題でございます。
グローバルコンペティションの中で事業環境の変化に柔軟かつ迅速に対応していかねば、企業はその存続さえも危うくなってしまいます。つまり、過剰設備の処理などのハード面の調整だけではなくて、マネジメントそのものの改革を行わなければならないのでございます。アメリカでは、分社化、会社分割、特定事業分野の外部への切り出しなど、こういうことによる企業組織の柔軟な変更が行われております。GEがその最もいい例でございます。我々もこういうことをやらなければ競争に負けてしまうのでございまして、企業組織の柔軟な改革が可能となるよう、法制面での対応が不可欠でございます。
また、税制の対応も大切でございます。例えば分社化や合併、持ち株会社をつくるなど、会社組織の変更にかかわる税負担は最小限にすべきでございます。経済界としては、これらは時限的な特例措置ではなくて、本来、税制の国際的なイコールフッティングの課題として必要なものと考えておるわけでございます。今回の産業活力再生特別法案の関連税制といたしまして、早期に実現できることは重要であると考えますが、今回の措置を、いずれ欧米と同じく恒久的な税制改正の問題としてもぜひ取り上げてもらいたいと考えております。
なお、今回の法案には含まれておりませんが、本格的なグループ経営の時代を迎えて、連結納税制度の早期導入は極めて重要でございます。自民党の税調で、二〇〇一年をめどに導入を目指すということになっておりますが、今から準備しておかなければならないと思います。
次に、今回、事業再構築の円滑化への支援措置といたしまして用意されているものは、すべて事業再構築計画が主務大臣によって認定されることを前提といたしております。また、受け皿となる企業につきましても、活用事業計画が主務大臣によって認定されることを前提といたしております。こうした点で、今回の法案につきまして、事業革新法や円滑化法など従来の特別法との類似性を指摘する意見がございますが、私はそれらとは大きく異なっていると思います。
例えば、今回は業種指定ではございませんで、広範な業界、企業が対象となっております。また、事業再構築計画は、あくまでも企業が自主的につくるものであることなどが書き込まれております。経済界としては、この主務大臣による認定が、役所の恣意的な裁量の余地を排して、透明、公正な基準のもとで迅速に行われるものとなることを期待いたしております。
また、二番目の柱である創業及び中小企業者による新事業開拓の支援、三番目の柱である研究活動の活性化等につきましても、今までの産業競争力会議の議論の中で、中小企業あるいは第三次産業を代表される方々を含めまして、経済界代表の各委員から具体的に提言してまいりましたものを、早速施策に反映していただいたものと評価しているものでございます。この点からも、この産業活力再生特別措置法案が、我が国産業の競争力強化、活力再生のために経済界が今最も必要と考えておりますものを幅広く取り入れたものであると高く評価いたしております。
いずれの項目も経済界として賛成するところでございまして、ぜひとも本法案の早期成立をお願い申し上げたいと存じます。
御清聴ありがとうございました。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/2
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003・古賀正浩
○古賀委員長 どうもありがとうございました。
次に、佐伯参考人にお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/3
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004・佐伯昭雄
○佐伯参考人 宮城県中小企業団体中央会の会長で、全国中小企業団体中央会の常任理事の佐伯でございます。私自身は、昭和四十三年、現在の東北電子産業株式会社を創業しまして、各種の電子応用の計測器あるいは分析器の製造と販売を行っております研究開発型の中小企業でございます。
本日は、産業活力再生特別措置法案及び起業家支援のための新事業創出促進法等の一部改正法案の衆議院商工委員会における審議に関しまして、中小企業の立場から、また今までの経験を加味しまして、一言意見を述べさせていただきたい、かように思っております。
まず、現下の経済情勢というのは、皆さんも御存じのとおり、長期化する不況のもとで我々中小企業は非常に厳しい状態に置かれております。このような景気の状況を打破するために、我々中小企業は一生懸命、汗を出し知恵を出しながら頑張っているわけでございますけれども、政府の適切な経済運営のもとで、一日も早く、二十一世紀に向かって新しい発展の基盤をつくることが必要かというふうに思っております。
しかしながら、バブル崩壊後、この長期低迷というのが単なる景気循環じゃなくて、金融システムの不安や少子化の問題、またもう一つ大きなのは国際的な大競争時代、これは中小企業にまですごく及んでおります、そういうふうな時代の到来と国民の価値観の多様化ということの中で、なかなか将来に対する展望が持てないということで、若干弱気あるいは慎重になり過ぎているんじゃないのかなというふうな感じもいたしております。
確かに、最近ここ二、三カ月、景気は公共事業の堅調さに支えられて若干下げどまりになっているんじゃないかという感じは持っております。しかし、民間の設備投資あるいは個人消費というものが、本当の景気を振興するといいますか、不況を脱却するにはまだまだちょっと足りないのかなというふうな感じを持っております。
このような状況のもとで、この不況を脱するために内需振興策としていろいろ手は打たれておりますけれども、それと同時に、いろいろな意味の供給面における改善も必要だろうというふうに思っております。
まず、慎重になっている事業家やあるいは国民のマインドを、新しい創業とか前向きな事業の革新ということにチャレンジする方向に転換していく必要がある。そういうための支援策とか環境整備を図る必要があるんじゃないか。それからもう一つは、長引くバブル不況の中で、やはり企業の経営としては、大企業、中小企業を問わず、事業の再編とか再構築、これは避けて通れない一つの道であろうというふうにも思っておりますけれども、制度面からもこういうことに取り組みやすくする必要があるんじゃないか。
以上のような緊急な課題があるわけでございますけれども、このような認識のもとで、この産業活力再生特別措置法案、基本的には、我が国の経済の再生に大変効果的なものになるんじゃないかと、評価をしたいというふうに考えております。
産業活力再生特別措置法案の内容というのは、皆さんも御存じかもしれませんけれども、大別すると三つになると思うんですね。事業の再構築の円滑化、これが第一番に書いてある。その次に、創業及び中小企業者による新事業開拓の支援。それから第三番目は、研究活動の活性化に対する支援というふうなことだろう。この三つの柱で構成されているというふうに私は理解しておりますけれども、中小企業者という立場から考えまして、現在の閉塞状況を打開する、あるいは経済のフロンティアを開くというふうなことから、特に二番と三番、創業及び中小企業者による新事業の開拓支援と研究活動の活性化、こういうふうなことについて主に意見を述べさせていただきたいというふうに思っております。
私の創業時代の経験からかんがみますと、技術力はあるけれども、結局必要なのは市場の開拓でございまして、メーカーが物をつくっても売れなければどうしようもないので、やはり市場開拓というふうなことが非常に必要なわけでございます。それにはやはり時間と資金が非常に必要である。もちろん、研究開発にも非常に時間と金がかかる。そういう中におきまして、なかなか、民間の金融機関というのは不動産担保ということが第一義でございまして、特許とか知的財産、そういうことを余り活用していただけなかった、そういうふうな苦い経験がございます。
この法案では、創業予定者を含む創業者及び新事業を開拓する中小企業者に対する支援措置として、無担保保険の特別保証枠として一千万の枠を創設して、合計二千万円まで無担保で保証する。それから、経営資源活用新事業計画の認定を受けた中小企業の各種信用保証の別枠化というふうなこと。それから、設備近代化資金の無利子貸付対象に創業者を追加する、計画の認定を受けた中小企業者への貸し付け条件を緩和するというふうなことが盛り込まれております。
私の経験から照らしましても、こういう金融の支援策ということは極めて有効なものであろうというふうに思っております。とりわけ、一昨年以来の御存じのようないろいろな金融の貸し渋りというふうな中で、これから創業にチャレンジをし、経営の革新あるいは向上に真剣に取り組もうと、中小企業は一生懸命そういうふうに考えておるわけでございますけれども、そういうふうなときに所要資金が円滑に流れるということは非常に意義が深い、あるいは非常に役に立つものだというふうに思っております。
それからもう一つ、次に評価したい点は、経営資源活用新事業計画の認定に際しまして、創造法とか経営革新支援法、あるいは日本版SBIR、中小企業総合事業団の新事業開拓助成金、こういう適用を受けている中小企業は、改めてまた知事の認定を受けなくてもよいというふうな規定があります。
これは、従来ですと、ある省に出したら次はまた別のところへと、いろいろな手続があったわけでございますけれども、そういうことはそれぞれの中小企業者にとって非常に手続の負担になるわけでございます。御存じのとおり、大企業と違って、中小企業はそういう特別の部門を持つような余裕もございませんし、非常に煩雑な事務手続をこういう方向で解決できるということは非常にいいものだと、評価したいというふうに思っております。
なお、法案の中を見せていただきますと、新事業の開拓の成果を有する中小企業者に対する官公需面での配慮というふうなことが盛られております。
先ほども申しましたように、ベンチャー企業というのは、新しいものをつくっても実績がないわけです、最初のうちは。実績がないからだめだということで、官公庁あるいは大企業に入札もできない、参加ができないというのが昔の現実であったわけですけれども、今回、官公庁が率先して、官公需の実績を上げよう、これはSBIRの基本的な考え方として非常に評価をすべきものであるというふうに考えております。
当然ですけれども、我々中小企業者としましては、中央会という組織の中で、各組合を通しまして、いろいろな施策、あるいは情報の提供とかそういうことを行っておりまして、これからもこれは充実しようというふうに思っております。
時間が大分たちますので、少し早口になりますけれども、創業時の研究開発のリスクマネーということで、幸い私の場合は、通産省の昔の技術改善費補助、それから科学技術振興事業団の委託研究というふうな助成で、非常に研究開発費は助かったというふうな記憶がございます。そういう中で、やはり今国会でこれからSBIRの制度、日本の各省庁は今百十億ですけれども、アメリカ並みに千四百億とは言わないまでもかなりの額の増額ということ、あるいは技術予算を有する各省庁の積極的な参加をお願い申し上げたいというふうに思っております。
それから、研究活動の活性化、これは当然でございますけれども、米国のバイ・ドール法に倣って、国の委託研究により生じた特許権の一部を委託者に保有させるということは、基本的に歓迎をしたいというふうに思っております。
私どもも、地元の東北大学と産学協同で、最先端の計測器とか分析器というものを開発しまして、できたわけでございますけれども、これから、こういう意味でのTLO関連の特許料の軽減とか、中小企業者にとっては特許料の負担というのは非常に大きいものでございますから、そこら辺も御考慮をしていただければというふうに思っております。
また、直接は関係ないのですけれども、中小企業、大企業を問わず、これからは日本の産業を活性化するための産業教育の充実というふうなことを、間接的ですけれども、充実を図っていただきたいというふうに思っております。
現在、景気の低迷を脱却するために、事業の再構築ということについても、一日も早く大も小も不景気を脱却して、日本の経済の二十一世紀に向かって発展したいというふうに思っております。ただ、若干危惧いたすところは、事業再構築ということに関して、地元といいますか、地方の中小企業者とかあるいは当該事業の従業員、あるいは事業立地地域の経済に影響を及ぼしかねないという影響はございますので、そこら辺は十分な配慮をなされていただくことをお願い申し上げる次第でございます。
以上、最後になりましたけれども、このような政府提出案について、できるだけ早く正確に実行できるようにしていただきたいということをお願い申し上げまして、ぜひ一日も早く成立をさせていただきますようにお願いいたしまして、私の参考人としての意見とさせていただきたいと思います。
どうもありがとうございました。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/4
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005・古賀正浩
○古賀委員長 どうもありがとうございました。
次に、野口参考人にお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/5
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006・野口敞也
○野口参考人 政府提案の産業活力再生特別措置法案並びに民主党提案の起業家支援のための新事業創出促進法等の一部を改正する法律案につきまして、日本労働組合総連合会、略称連合を代表し、また、働く者の立場から意見を申し述べたいと思います。
まず、政府案について意見を申し上げます。
この法案は、我が国企業の生産性の向上を図るために、企業の中核的事業を強化する事業構造変更また事業革新活動につきまして、これを事業再構築活動として、商法上の手続の簡素化、税法上、金融上の特例等の支援措置を行うこと、また一方、創業者の事業及び中小企業者の新事業開拓に対しまして無利子の設備資金貸し付けや信用保証の付与、拡大、これらの施策を行おうとしております。
経済状況が大変低迷している折から、企業の新製品開発あるいは新たな生産方式、販売方式の導入等につきましてこれを振興し支援していくこと、またとりわけ中小企業者に対する振興策を強めていく、こういうような政策につきましては大変重要なことであるというように考えております。また、これらの施策は、既に新事業創出促進法などによって実施されてきているというふうに考えております。
しかし、私どもの今回の法案に対します問題意識は、この法案が新たに追加した施策の部分でございます。すなわち、事業再構築策におきまして、企業が施設の撤去、あるいは設備を廃棄する、さらに営業資産を譲渡する、こういうような措置について税制上あるいは金融上の支援措置を適用している点であります。私どもは、この点につきまして、次に申し述べます四つの問題点があるだろうと考えます。
すなわち、第一点は、この法律が、雇用削減が企業によって促進される、こういう可能性があることを当然予定していながら、これを促進しようということでございます。
政府の経済政策の基本、同時に国民生活の安定、雇用の維持安定ということは、現在、この国におきます最重要な施策であると考えます。しかし、法案の中を見ますと、第一に、「目的」においては、雇用安定等に配慮しつつ施策を講ずるというように、「配慮」という大変あいまいな用語が使われております。また、法案の第十八条では、「その雇用する労働者の理解と協力を得るとともに、当該労働者について、失業の予防その他雇用の安定を図るため必要な措置を講ずるよう努めなければならない。」と、単に努力義務を定めているにすぎません。いわゆる企業のリストラ策について政府が支援をするわけでございますが、失業発生を安易に促すということにつながってまいります。このことは、雇用について緊急対策を決定いたしました政府の方針にも反するものではないかというふうに考えます。
第二の問題点は、この産業活力再生法案が不況をさらに悪化させるおそれがあるのではないかということでございます。
ただいま申し上げたとおりでありますが、片一方では新たな事業拡大というものを想定しておりますが、一方では事業の縮小あるいは設備廃棄等をこの法案は予定しているわけであります。しかし、事業の認定に当たりましては、事業拡大が大であるということについては特に定めがございません。そして、事業あるいは資産の縮小、これが中心になった事業についても当然認定をするよう考えられているわけであります。この結果、雇用の縮小を招き、地域経済の再生の条件を奪う、こういうような事態が発生することが十分に予想されるところでございます。
この法案によってさらに失業の増大が招かれ、そして国民の雇用不安が大きくなり、ひいては景気回復をおくらせるという事態につながることを大変危惧しております。
第三の問題点は、事業再構築計画の認定基準が抽象的であるということでございます。
例えば生産性目標については、「生産性を相当程度向上させることが明確であること。」相当程度というような言葉がございます。あるいは「内外の市場の状況に照らして、」「事業分野における生産性の向上を妨げるものでないこと。」いずれも抽象的な言葉で、行政当局の判断にゆだねております。とりわけ、雇用安定にかかわる認定基準につきましても、「計画が従業員の地位を不当に害するものでないこと。」というように示されておりますが、従業員の地位を不当に害するとは一体何であるか、大変議論のあるところでございます。これらについては、可能な限り明確な基準を設定すべきであるというふうに考えます。
第四の点は、設備廃棄あるいは債務の株式化等について政府が支援するということでございますが、経営者の経営責任を軽くするいわゆるモラルハザードを生み出すおそれがあるというように考えます。
今回の設備過剰は、バブル期あるいはバブルが崩壊した後の九六、七年ごろにもございましたが、投機的な投資によって生じたものでございます。既に経営者自身の努力によってこれらを解消している企業はたくさんございますが、これから中身を十分詰めていただいて、モラルハザードが生ずることのないよう十分な御配慮をお願いしたいというふうに考えます。
以上のような大きな問題点があると考えますけれども、これから国会の審議におきまして、これらについて十分必要な修正をお願い申し上げるところでございます。
特に雇用の安定については、次のような修正が必要と考えます。
第一条の「目的」におきます「雇用の安定等に配慮しつつ」という表現は、「雇用の安定を確保しつつ」というように明確に修文をしていただきたいというふうに考えます。また、計画の認定要件につきましては、雇用や労働条件に影響を与える場合には、労働組合、また労働組合がない場合には従業員の過半数を代表する者との協議を必ず行うこと、そしてその内容について合意を取りつけること、これを前提とすべきであると考えます。
いやしくも、政府の施策によりまして、それも多大な支援を行うことにより企業のリストラを促進するわけでございます。これにより雇用が失われたり、あるいは労働条件が悪化することを避けるため、労働者代表との協議、さらに合意を必要とさせることが大前提であると考えます。先ほどの今井経団連会長もこの重要性を指摘されたというふうに受けとめております。
それから、もう一つ新たな問題提起をさせていただきたいと思いますが、今回の産業再生法案にかかわらず、現在、法制審議会では新型再建手続法の取りまとめに入っております。企業の資産、負債を複数会社に分割する商法の改正も現在進められております。これらの法案は、企業の分社化、分割、合併あるいは営業資産の譲渡等、企業組織の変更を促すものでございます。
これらの企業組織の変更は、一般的には企業の経営者の一方的な意思によって行われておりますが、大変多くの労働関係の雇用上の紛争を生じております。このような問題につきましては、労働者、労働組合の権利を最大限尊重することが必要であるというふうに考えます。そういう意味で、企業組織の変更に当たっては、従前の雇用契約、さらに労働条件、そしてまた労働者代表の地位を包括的に新しい組織に移転させる、そのような法律が必要であるというふうに考えます。この点について、国会での御配慮をぜひお願いしたいというふうに考えます。
最後に、民主党提出の改正案について意見を述べさせていただきます。
この法案は、とりわけ女性による創業についてのポジティブアクションを提案いたしております。また、中小企業者によります技術成果の活用と、さらに創業者のいわゆるエンゼル税制の強化をうたっております。また、国立大学の教員等について、その研究成果の活用を目的に、民間事業への兼職を提案しているものでございます。いずれも、新たに雇用を起こす、産業を起こす上で大変重要な施策であるというふうに考えまして、基本的に賛成をいたします。
以上、労働組合、働く者の立場から意見を申し上げさせていただきました。御清聴どうもありがとうございました。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/6
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007・古賀正浩
○古賀委員長 どうもありがとうございました。
次に、濱田参考人にお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/7
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008・濱田康行
○濱田参考人 北海道大学の濱田でございます。
今回、経済再生を目指して二つの法案が提出されたわけでございますけれども、私は、こういう法案が提出されるという状況をまず歓迎したいと思います。
私は、きょう資料を用意してまいりました。それを皆様に御説明しながら、ちょっと大枠の話というのをしてみたいと思っております。
お手元に四枚つづりの資料がございます。それの一番最後の絵をまず見ていただきたいと思います。
この絵で私が申し上げたいことは、今回の経済再生という話は不況からの脱出ということなんだと思いますけれども、そのためには私たちは結構狭いところを通っていかなければいけない、そんなに選択肢は多くないのだということを示したかった、そのためにかいた図でございます。
これは、縦にGDPがかかれておりまして、横に壮大な時間軸を組んであるのですが、資本主義の線を青い線で、社会主義の線を赤い線でかいてございます。
どちらの体制も成功したケースと失敗したケースというふうにして線が二本に分かれるのですけれども、一番最後のところを見ていただきたいのですが、社会主義は、既存の社会主義国ですけれども、御承知のような状態になりました。かといって、資本主義、自由経済がうまくいったかというと、日本のつまずきに象徴されるように、これも青い線が途中で、ソ連崩壊、バブル崩壊というところで屈折しております。
その中を、例えば日本はオレンジのライン、アメリカは茶色のラインというふうにして動いた。これは私の勝手な作図でありますけれども。さらにその上に、環境制約線といって、人間がこれ以上生産活動を好き勝手にやったら地球が壊れるという環境制約線が上からのしかかってきている。ですから、この上にはもう出られないということになりますと、せいぜいのところ、そこの最後のところにxとかyとかと書いてありますけれども、その間を抜けていかなければいけない。
資本主義の3というラインもあるのですけれども、このあたりは貧困ラインでありまして、こういうラインに落ち込んではならない。かなり上の方で、しかも狭いところを抜けていかなければいけない、こういう認識なのだろうと思います。
そこで今回のような法案が出てくるのだろうというふうに私は思っておりますけれども、本法案の第二章、いわゆる設備過剰問題、それに対する事業再構築問題、もちろんこういうことがこの狭い道を抜けていく一つの手段になるのでしょうけれども、それだけでは多分抜けられないだろうということで、三章以下が本法案に盛り込まれたのだろうというふうに思っております。第三章のいわゆるベンチャー企業支援、それから第四章の大学等の科学技術の活用、こういうことが相まってその狭いところを抜けていくのだ、こういう構成になった。これは、私は、法案の構成として大いに評価されるべき点だろうというふうに思っております。
そこで、三章のベンチャー企業支援というところに焦点が移るわけですけれども、これについては、その今ごらんいただいている図の一枚前、三つの円がかいてございますけれども、それをごらんください。
この円で私が申し上げたいのは、既に今まで、ベンチャー企業支援、創業支援というのは非常に法律がいっぱいございます。私もここに出てくるに当たってインターネットで拾った部分もあるのですけれども、かなりの冊子になるぐらい法律ができ上がっております。これから新たにベンチャー支援の法案をつくるということになりますと、効率性、いかにやったらそのベンチャー支援策が効率的であるかということを考えざるを得ない。そのためにつくった絵がこれでございます。
よくベンチャー企業支援というふうに言うのですけれども、実は三つの要素に分かれております。新技術とか新事業を支援するという左の丸であります。これは既存企業が進出したって一向に構わない部分であります。それから、右側の方の創業というのは、これは企業が新しくできる、そういう部分であります。そういうところを支援する。さらに、地方、地域に行けば地域支援、地域振興ということが非常に大きな課題になって、それがベンチャー支援の絡みで展開するというのが地方の実情であります。こういう三つの円が、それぞれ中心点を異なって存在している。
私が申し上げたいのは、効率性ということを考えるなら、この三つの円が重なったところから展開する方がよろしいだろう。これは、財政的に潤沢で何でもできるということであれば話は別なんでしょうけれども、そういう焦点を決めていかざるを得ないのではないかというのが私の論点でございます。
それから、最後の図表、もう一枚もとに戻っていただきますと、今度は白黒の、中小企業政策のトレンドというものがございます。この表で申し上げたいのは、ベンチャー支援、ベンチャー企業支援をやることにはもちろん賛成なんですけれども、それは戦後の中小企業政策の中に位置づけられているものだということを忘れてはいけないのではないか。やはり日本の産業の基礎は、その数からいっても圧倒的に中小企業であります。その活性化なくして日本経済の再生ということはないという認識であります。
この表が意味するところは、日本の中小企業政策というのは第一次大戦ごろから既にあったのですよ、七一年ごろにベンチャー企業という言葉が生まれてそれの支援策がぼちぼち出てきました、九〇年代のちょっと手前から創業支援運動というのが出てきました。恐らく今回の法案の第三章というのは、この九〇年代のさまざまな法律の総決算という位置を占めるのであろうというふうに思っております。
以上、ちょっと外側の、大枠の話をいたしましたけれども、あと残された時間で、法案の中身についてお話ししたいと思います。
今まで各委員がおっしゃったように、法案は三つの柱から成っています。第二章はいわゆる事業再構築の問題、三章はベンチャー支援、四章は大学等の科学技術の利用でございます。それぞれ別の内容といいますか、ちょっと性格の違うものが産業再生という思想で統一されている。
こういうところで例え話をするのはなんですけれども、ちょっと前にだんご三兄弟という歌がはやったのですが、言ってみれば、ちょっと色合いの違う、大きさの違うだんごを産業再生というくしで刺して統一したということだろうというふうに思っております。この私のイメージが正しいかどうかわかりませんけれども、正しいとすれば、次のようなことが焦点になるだろう。
経済効果。二章、三章、四章のそれぞれの経済効果ということで申し上げますと、最初の第二章、事業再構築のところが非常に大きくなっています。長男だんごが一番大きい。次男だんごは、実は幾つか目新しい部分はあるのですけれども、今までの法律に書かれていることの総括が中心になっていて、それほど新しいものは入っていない。三つ目の部分につきましては、質的には非常に新しい部分があるのですけれども、経済効果的にはさほど大きくない。そこで、ちょっと異質のものが三つ突き刺さっていることが、整合的にでき上がっているのかどうかというところが法案の審議としては焦点になるのではないかというふうに思っております。
以下、細かい点について申し上げます。
よく新聞等々で、主務大臣の認定に関して、行政の裁量が問題になるというふうに書かれていますけれども、私は、行政というものはそれなりの責任があって、一定の判断があってもよいのではないかというふうに考えております。すべてを法律に書くことはできません。特に産業に関しては、各産業で状況はまちまちですので、行政の判断が入らざるを得ないという部分があるのだろうと思っております。ただ、その判断とか裁量をした結果がどうであったかという評価はなされなければならないというふうに思っております。
今回は、形の上では事業革新法という法律が廃止されてこの新法ができるということになっておりますけれども、廃止されるその法律は一体どの程度の効果を持ったのだろうか。それから、一九九五年の創造法でいわゆる認定ということをやって、全国で今五千社ほどの認定企業があるというふうに聞いていますけれども、それだけの認定をやって一体どういう効果があったのだろうか。そういうことが問われ続ければ、私は、裁量問題というのはさして大きな問題ではないというふうに考えております。
残った時間で、もう一つの法案について、簡単にコメント申し上げたいと思います。
新事業創出促進法の一部を改正する法案についてということでございますけれども、この法案の冒頭に書かれている女性の起業家を促進するという部分なんですが、企業を起こす際に女性であることが一般的に不利になっているかどうか、ここが議論の焦点になると思われます。
私の見るところでは、現状では特に女性が不利だということではなくて、企業を起こす人全体に不利益が及んでいるというのが現在の日本の状況であります。もちろん、女性が結婚し、子供を持っても働き続けられる環境づくりは必要であります。しかし、それはこの法案にかかわってというよりも、もっと大きな問題であろうというふうに考えております。
最後に、国立大学の教員の兼職問題、私自身の問題でもございますので、これに触れたいと思います。
既に前向きの検討が行われているやに新聞等々で伺っております。来年の四月には、TLO、いわゆる特許オフィスですけれども、それに向けては兼職解禁がなされるということを聞いております。これを一歩として、ぜひ解禁の方向に持っていっていただければありがたい、大学も活性化するのではないかというふうに考えております。
以上でございます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/8
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009・古賀正浩
○古賀委員長 どうもありがとうございました。
次に、高橋参考人にお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/9
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010・高橋進
○高橋参考人 日本総合研究所調査部の高橋でございます。私からは、我が国の産業再生につきまして、民間の研究者の立場から一言意見を申し上げさせていただきます。
まず、我が国経済の現状評価でございますけれども、バブル崩壊後ほぼ十年を経ておりますけれども、いまだに低迷状態から脱出しておりません。その根本的な原因は、我が国の産業の活力が低下していること、私はここにあると存じます。
これを国民経済の観点から見てみますと、新規産業あるいはニュービジネス、こういったものの創出が遅々として進まない、これに加えまして、資本ですとか労働、こういった生産要素が成熟分野に固定されてしまっている、そして新成長分野へ効率的に配分されていない、これに原因があるというふうに思います。
また、我が国の産業の活力の低下を企業経営という観点から見てみますと、バブルの負の遺産の清算がおくれていること、加えまして、足元の不況で企業体力が大幅に低下していること、あるいは、国際会計基準への移行が近々迫られているわけでございまして、企業の投資行動が慎重化していること、こういったところに原因があるかと思います。
したがいまして、我が国の経済が活力を取り戻すためには産業再生が不可欠でありますが、産業を再生するためには、企業自身がリストラをなし遂げて、生産性の回復と収益力の強化、これを目指すと同時に、新規産業あるいはニュービジネスの開拓に取り組むことが必要だというふうに存じます。
こうしたもとでの政府の責務ということにつきましては、企業の新規分野、高収益分野への進出を促す、そして、資本、労働など生産要素の成熟分野から新成長分野へのシフト、これを早期に実現する、そのための環境を整備すること、これが根本的な責務だというふうに存じます。この意味で、政府が産業再生を旗印に供給サイドの強化を中心とする政策を打ち出し始めたということにつきましては、極めて正しい方向というふうに存じ上げます。
ただし、依然として諸規制によって新分野進出の障害が残っておるという現状では、民間企業が事業再編を進めていけば経済全体が縮小均衡に陥るという可能性は非常に大きいというふうに存じます。実際、足元の経済情勢を見てみますと、政策効果によって景気は下げどまりつつあるという状況ではございますけれども、いまだに民間部門の自律的な回復の展望は開けておりません。こういう中で、政策の景気押し上げ効果、これがもし徐々に剥落していくということになりますと、景気の再失速さえ懸念される状況だというふうに考えております。
このもとで、企業リストラに伴う縮小均衡を回避していくためには、一刻も早く民間企業部門の前向きな投資意欲を引き出してくる、これによって民間の自律的な回復の展望を開くこと、これが肝要だというふうに存じます。具体的に申し上げますと、企業リストラの機運が盛り上がっている現在のこの機をとらえて、産業再生のための政策をパッケージとして打ち出していくということが必要なのではないかと私は思います。
産業再生のためのパッケージということにつきまして、私自身の考えを申し述べさせていただければ、四本の柱が必要だというふうに考えております。
第一の柱は、雇用の流動化、再配置を支援するための政策、これが第一でございます。第二は、企業経営の自由度を広げまして、事業構造の再編を支援していく制度面での環境整備、これが第二でございます。第三は、新産業を創出していくための税制改革でございます。第四は、新産業を創出するための官民を挙げたプロジェクトの実施ということではないかと思います。
この四点につきまして、まず第一の雇用の流動化につきましては、政府は既に今国会で、十分かどうかは別としましても、具体策に踏み出しておられると理解しております。それから、今回の産業活力再生特別措置法は、私が今申し上げました第二、第三の柱に該当するものであり、正しい方向性の立法措置というふうに思います。法案中の具体的な措置につきましても、民間の要望を取り入れつつも、企業の自助努力を基本として、政策措置を事業再編の環境整備に限定する、こういう思想があるかと存じますので、基本的には妥当だというふうに思います。
ただし、私見ではございますが、法案につきまして、産業再生を実際に促進するという観点から、幾つかの留意点を申し上げたいと思います。申し上げたい留意点は三点でございます。
第一は、本法律が認定制となっていることでございます。第二は、税制改革についてさらに思い切った措置が必要なのではないかという点でございます。第三は、企業の前向きな努力を引き出す、これが最大の景気対策というふうになるかと思いますが、このためには、さらに踏み込んだ施策が必要ではないかというふうに考えております。
まず、第一の認定制についてでございますけれども、なぜ認定制がとられるのかということにつきまして、税制面あるいは商法上で必要な措置をできるだけ早く実施するという観点から、特例措置として立法され、認定制になったというふうに私は理解しております。しかし、やはり国民としては認定制ということについては抵抗が残ります。制度自体の運用につきましては、ネガティブチェックにとどめるということは当然のことと思います。加えまして、本法律は期限立法となっておりますけれども、期限までの間に一刻も早く抜本的な税制あるいは商法の改正にこぎつけて、今回の措置を恒久化し、それをもって認可制というものも不要ということにしていただきたいというふうに思います。
八〇年代のアメリカの経験を見ましても、企業部門がリストラをなし遂げ、成長部門にコアコンピタンスを見出していくまでに十年余りを要しております。我が国企業の事業再構築、これは今始まったばかりでございまして、長いプロセスになるだろうということが予想されるわけでございます。そういう意味では、抜本的な法改正を通じて措置の恒久化を図っていくことがぜひとも必要だと思います。
第二の税制改革につきましては、事業構造の変更は企業の自助努力を基本とするものでありますから、税制上の優遇はグローバルスタンダード程度にとどめることが妥当というふうに考えます。ただし、事業革新あるいは新産業創造にかかわる部分につきましては、新産業分野への資本のシフトを促すという観点から、もっと思い切った減税を実施していただいてもよろしいのではないかというふうに考えております。
具体的には、本法案の中に新規設備投資の特別償却の対象は不況業種というふうに書かれておりますが、私の理解が間違っていなければそう書かれていると存じますが、むしろこれは新産業にこそ適用すべきことではないかというふうに思います。そういうことも含めまして、減価償却制度そのものの見直しも含めて、新規投資を促進するための減税措置というものをとっていただくべきではないかと思います。加えまして、税制改革という観点からは、連結納税制度につきましても、一刻も早い実施をお願いしたいというふうに存じます。
三番目の、この両法案を含めまして、これ以外の必要な措置ということで、四つの点を申し上げたいと思います。
まず第一は、本法案の視野の外かもしれませんけれども、やはり新産業再生という観点に立ちますと、企業の新分野進出を阻害している規制、これを撤廃していくということだと存じます。
経団連は、産業競争力強化のための第二次提言の中で、情報通信ですとか医療、バイオ、環境、こういった分野につきまして、いわゆる戦略的な取り組みが必要だということで産官学の共同プロジェクトの実施を主張しておられますけれども、私は、こういうような分野につきまして、特に集中的に規制緩和を行っていただくという必要があるのではないかというふうに思います。
第二は、中小企業、ベンチャー支援の強化でございます。
今回、中小企業とかベンチャーに対する政府による資金支援の強化ということが打ち出されておりますけれども、私は、政府による中小企業、ベンチャー支援、特に資金的な支援ということにつきましては、ある程度限定的なものにとどめておいて、むしろこういった企業に対する市場を通じた資金供給ルートの拡充、これを図っていくことこそが必要ではないかというふうに存じます。
具体的に申し上げますと、税制面で起業を促進するためのエンゼル税制の条件緩和、あるいはストックオプションにかかわるキャピタルゲイン課税の軽減。あるいは、個人のリスクマネー供給を促進するために、個人所得税あるいは地方税、この累進構造を一段と緩和していただくといったような措置も必要なのではないかというふうに考えております。
第三は、研究活動の活性化ということでございます。
製造業だけでなく、我が国の立ちおくれた、例えば金融を初めとしますサービス業、これを活性化していくためには、やはり国立大学教官の兼業規制の見直しですとか、研究活動支援の強化を通じた産学共同研究体制の強化、これが必要だというふうに存じます。
第四、最後の点は、新産業創出のための産官学共同プロジェクトの実施ということでございます。
今、企業のリストラの機運が盛り上がっておりますけれども、加えまして、新産業創出の機運というものが日本の社会全体に盛り上がってまいりますれば、企業の新規設備投資意欲、投資需要に火をつけまして、企業リストラに伴います経済の縮小均衡というものを回避することが可能になるかと存じます。こういったプロジェクトを実施することが最大の需要喚起策になるというふうに私は考えておる次第でございます。
以上申し上げましたように、産業再生のためには、今回提出されております両法案、これは非常に重要だと思いますが、この法案も含めまして、より広範な措置をパッケージとして打ち出していく、このことが、日本の産業の再生、ひいては経済の再生にとって必要なのではないかというふうに私は考えておる次第でございます。
御清聴ありがとうございました。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/10
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011・古賀正浩
○古賀委員長 どうもありがとうございました。
以上で参考人の意見の開陳は終わりました。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/11
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012・古賀正浩
○古賀委員長 これより参考人に対する質疑を行います。
質疑の申し出がありますので、順次これを許します。伊藤達也君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/12
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013・伊藤達也
○伊藤(達)委員 おはようございます。伊藤達也でございます。きょう初めての質問者でありますが、どうかよろしくお願い申し上げます。
五人の参考人の先生方に今大変貴重なお話を賜りました。今後の審議を進めていくに当たっても、さらには残された課題を国会としてどういう形で立法していかなければいけないのか、そういうことを考えるに当たっても、大変すばらしいお話をいただきまして、心から感謝を申し上げたいと思います。
私は、特に参考人の先生方に、やはりこれからの日本の産業構造を大きく改革をして、そして新しい産業や事業、雇用を創造していくためにはどうしたらいいのか、その点を中心に御質問をさせていただきたいと思います。今国会では、民主党から起業家を支援していくための法律も提出をされました。実は昨日、約八時間にわたって与野党いろいろな議論がなされたわけでありますが、その議論が十分かみ合っていない点も含めて、参考人の先生方にお伺いをさせていただきたいと思います。
まず第一に、経団連会長の今井参考人にお伺いをさせていただきたいと思います。
日本の経済を活性化していく、産業の再生を実現していく、そのためにはやはり二つの大きな課題があるだろう。まず第一は、これは今井会長も言われていたように、バブル崩壊の傷跡というものをやはり一日も早く清算をする。そして、世界的な経営技術というものを日本も取り入れて、事業の再構築を速やかに実現していくための企業法制の改革と税制の改革に取り組んでいかなければいけない、これが重要な柱の一つだと思います。
しかし、もう一つ大きな柱は、これも高橋参考人から特に今お話がございましたが、やはり供給サイドの改革の一番大きな柱は、理念ある規制改革だと私は思います。これからの日本の産業構造やあるいは経済のあり方というものをどうやってつくっていくのか、その上での規制の改革をどう実現していくのか、その絵をやはりしっかりと描き出していかなければいけない。
ヤング・レポートについても会長からお話がございましたが、ここについてはアメリカは極めて大きな戦略があったわけですね。いわゆる知的所有権というものを世界的に確立をして、そして、情報ソフト、情報技術を持ってアメリカの競争力を強化していくのだ。私は、それに類似した大きな戦略というものを日本は築き上げていかなければいけないと思います。
この点について、今井参考人の御意見をぜひともお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/13
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014・今井敬
○今井参考人 ただいま大変に貴重な御指摘をいただきました。私、過去の清算の問題も極めて大事だと思いますけれども、新しい産業社会を築くということもより重要だというふうに考えておりまして、これは経団連でも今までも提言しているところでございますが、今御指摘のございましたまず第一の規制の撤廃、緩和、規制制度の改革、これは、一つは、新しい産業を起こすということに関しまして極めて重要なポイントだと思っております。
それからもう一つは、日本の高コスト構造の原因は、大体四〇%ぐらいに当たる産業が規制の保護で今まで何らかの市場経済の制約を受けていた、こういうことがございますので、高コスト構造是正のため、そして産業の活性化のためにも、規制の撤廃、緩和は極めて重要だというふうに認識しておりまして、私ども経団連といたしましても、毎回、規制制度の改革問題につきまして提言を行い、フォローアップを行い、また委員も出し、それに最大限の努力をしているところでございます。
それからもう一つ、ヤング・レポートに関連いたしまして、新しい総合的な産業といいますか研究開発、産業を起こすという問題でございますが、これは私ども産業競争力会議で御提案を申し上げたのでございますが、日本の今までの予算というのは非常に省庁ごとに分かれておりまして、しかも単年度ということになっておりまして、大きなプロジェクトを進めるに当たって余り適していない。ヤング・レポートというよりも、例えばアメリカの科学技術予算というのは、アメリカの大統領のもとに非常に大きなスタッフを抱えまして、そのスタッフが優先順位をつけて研究開発の最も重点的に取り組むべき分野を決めているわけでございまして、日本はそういうことがない。
したがいまして、この前成立いたしました今度の省庁等の改革によりまして、内閣府の機能強化がうたわれまして、内閣府の中に、経済財政諮問会議と並びまして総合科学技術会議が置かれました。こういうところに、大きなプロジェクトを進める予算を総理の手元に置きまして、そしてそれを実行するような体制をぜひとっていただきたいというふうに、私どもは行革の顧問会議でも申し上げておりますし、また産業競争力会議でもこれを強く主張しているところでございます。
今回、総理からミレニアムプロジェクトというようなお話もございました。これも、例えば情報通信とか、あるいは遺伝子解析等のバイオだとか、そういった分野につきましてはアメリカにかなりおくれをとっておりますので、もう二〇〇〇年度の予算からそういうことをぜひやっていただきたいということで、これはひとつ先生方の御支援もお願いいたしたいと思っている次第でございます。
私の見解は以上でございます。ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/14
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015・伊藤達也
○伊藤(達)委員 今までの規制緩和というのは、業界の要望を集めて中央官庁ができることをやっていくということで、そこには理念がなかったのですね。ですから、今、会長が言われたように、これから日本はどういう分野で飯を食っていくのか、どういう産業構造にしていくのか、その方向性を明確にしていく、それが産業競争力会議の中でも非常に強く求められていることだと私は思いますし、また、個々の競争力を強化していく具体的な努力、これは企業や市場がやっていかなきゃいけないことだ。
しかし、大きな分野において、今お話があったように、どういう形で比較優位の分野を見定めて、そこに日本のあらゆる資源を集中させていくのか。これはやはり、これから産業政策の中で私どもが真剣に考えていかなければいけない点だと思いますので、ここについても、さらに会議でいろいろな提言をぜひ出していただきたいというふうに思います。
次に、新しい産業や新しい雇用を創出していくには具体的にどうしたらいいかということについて質問をさせていただきたいと思います。
大変私ごとではありますが、私は、今から十二年前、実はアメリカで二年間ほど生活をしたことがございました。そのときにいろいろなベンチャー起業家にも出会うことがありましたし、そして、アメリカの企業風土というか、社会の風土にも接することができました。実は、この後質問をされる自由党の小池百合子代議士とも、一時期、あるベンチャーキャピタリストと一緒にベンチャービジネスを支援していく、そういう活動を一緒にさせていただいたこともございました。その経験からいうと、私は、日本で本当にベンチャービジネスを育てていくには、五つの大きな課題があるというふうに思っております。
一つは、今議論になった政府の大きな戦略と理念ある規制改革をしっかりやり抜くということ。それから二つ目は、ベンチャーに対する支援税制と、そしてもう一つ大きいのはリスクマネーの市場をしっかり整備していくということだろうと思います。それから三つ目は、日本版SBIR制度を使ってハイテクベンチャーを育てていくということもありますけれども、やはり大学のあり方というものを大きく見直していく必要があるのではないか。
そして四つ目に、これは労働界としても非常に悩ましい点でありますが、雇用の流動化と労働力の価値を強化していくためにどうしたらいいかという点。そして五番目に、アメリカの場合には、フリーダム・ツー・フェールという言葉がありますが、失敗する自由、失敗してもさらにチャレンジをしていく、そういうことを非常に評価していくという社会風土がある。そういうものを日本でもやはりしっかり乗り越えていかなければいけないのではないかというふうに思っております。
そこで、高橋参考人にお伺いをさせていただきたいわけでありますが、日本においてベンチャー企業をスタートアップさせて、アーリーステージで資金調達をしていく。先ほど佐伯参考人も、ここの点の資金調達が非常に難しいんだというお話がございましたが、資金調達をしていくためには、政府系金融機関からお金を出すということよりも、やはり私は、リスクマネーの市場をしっかり整備していくことが非常に重要だと。
さらには、アメリカのエンゼルのように、アメリカのエンゼルは百万人もいるわけですね。個人の投資家が自分の身近なところで将来有望な企業に次々リスクを恐れずにお金を出している、個人が市場に参加をして新しい産業をつくっていくという流れがしっかりでき上がっているわけであります。
そういう意味からも、民主党さんからもエンゼル税制の強化について少しお話がありましたが、私は、ポイントは、エンゼル税制を強化していく、ストックオプションの限度額を引き上げていくだけではなくて、アメリカでエンゼルが生まれたのは、しっかりとしたリスクマネーの市場があって、そこに出ていけば極めて短い期間で企業が大きく成長をしていく。つまり、投資をしてから出口、エグジットまでの時間が非常に短い。それと、大学の機能が非常に充実をしていて、たしかアメリカは十幾つ、ベンチャー企業と出会えるようなコンピューターのネットワークシステムというのが非常にしっかりしている。したがって、それを使えば投資する先をたくさん見出すことができる。
そういった工夫をしなければ、単にベンチャー税制を強化しただけでは、日本でどんどんエンゼルを輩出していくことにはならないのではないかというふうに私は思っております。この点について、参考人の御意見をお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/15
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016・高橋進
○高橋参考人 ベンチャー育成につきましては、先生のおっしゃるとおりかと思います。
日本の企業の場合には、創業してから店頭公開へこぎつけるまでに二十年かかっているというふうに言われます。アメリカは四年半というふうに言われます。そういう意味で、初期の段階で立ち上がっていくことが非常に難しいと言えるのではないかと思います。そういう意味で、私は、企業が資金調達をできる場をさらに強化していくこと、と同時に資金の供給、サプライサイドを強化していくこと、この両面が必要だと思います。
そういう意味で、民主党さんが出されておりますエンゼル税制の強化、あるいはストックオプションに係る税負担の軽減、こういった措置は非常に望ましい方向だというふうに思いますが、加えましてやはり、日本の中で今、中小企業なりベンチャーが直接間接を問わず市場を通じて資金調達できる場がないということが大きなネックかと存じます。
日本の今の流れを見てみますと、例えば、地方の証券取引所がむしろ廃止されて、中央に統合されていく。これは統合というよりは救済合併でございまして、そういうことがどんどん進んでいけば、例えば地方で実際に中小企業、ベンチャーが資金調達できる場がどんどんなくなっていくということで、日本の現状はむしろ逆に動いているというふうに思います。
そういう意味で、特に地方におきまして産官学が一緒になって研究体制を整えると同時に、資金調達についても、どういう形でやるか専門家ではないので私にはわかりませんが、各地方でそれぞれ独自の資金調達ができるようなシステムというものをつくっていく、そういう努力が必要なのではないかという気がいたします。
それから、資金の供給サイドということにつきましては、私先ほど申し上げましたけれども、例えば今、個人の金融資産の中身を見てみますと、よく御承知のように、千二百兆円の約五六%余りが預金で占められておりまして、個人はリスクをとりたがっておりません。やはり、これをある程度リスクをとれるようにしてあげるためには、先ほども申し上げましたけれども、所得税の累進構造の緩和であるとか、こういったことを通じて個人にリスクマネーを供給したいという気持ちを起こさせることが必要なのではないかと私は思います。
日本人はリスクをとりたがらないとかいいますけれども、しかし、これからビッグバンを通じて五年、十年先、日本人の投資行動も変わっていく、金融資産蓄積行動も変わっていくかと思います。フローではふえないわけですから、リターンをふやしていかないといけないという行動をどうしてもとらないといけなくなってまいりますので、そういう意味では、皆さんの個人の投資行動、運用行動というのも変わっていくと思います。それを促すような税制というものが必要なのではないかと私は考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/16
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017・伊藤達也
○伊藤(達)委員 大変貴重なお話をいただきました。特に、個人が市場に参加をして、投資家としてみずからも一緒に産業を起こしていこう、そういう気持ちを起こさせる、インセンティブを起こさせるような税制というものをやはりしっかり組み立てていかなければいけない。そのためには、エンゼル税制だけではなくて、これは今井会長がたしか競争力会議でも指摘をされておられましたように、LLCやLLP、あるいはアメリカではSコーポレーションという仕組みもあります。そういうものを、もっともっと知恵を出せば、個人のインセンティブを発揮させていく知恵というのは幾らでもあると思いますので、これをしっかりやっていかなければいけないと思います。
さらには、社債の問題も非常に大きいのじゃないかと私は思うのですね。やはり、中小企業にとって資金調達というのは非常に難しい。アメリカの場合には、ジャンクボンド市場というものがあって、金融のチャネルというのは複数あるのですね。そういう複数のチャネルをやはりつくっていく。日本ではたしか、百三十万社近い株式会社があっても、三千二百社ぐらいしか株式以外から資金を調達していくことができない。こういうお寒い金融のチャンネルの事情というものを大きく変えていく必要があるのではないかと私は思っております。
次に、日本版SBIRと大学のあり方について質問をさせていただきたいと思います。
私は、民主党の方も非常にすばらしい問題意識を持ってこの点について取り組まれていると思うのですが、日本版SBIRについては、政府の方で、民主党が提案された問題についてはほとんど実施あるいは最終的に実施される方向で調整をされていると思います。日本版SBIRの一番の問題点は、佐伯参考人が言われたように、やはり運用の部分なのですよね。アメリカでは、これはもう釈迦に説法でありますが、イノベーションの大体半分以上が中小ベンチャー企業から起きてくる。そして、博士やあるいは修士を持っている人たちも中小企業に三分の一いるのですね。いわゆるベンチャー企業群がそこにあった。そこにSBIR制度というものを実施したら、これが非常にうまくいった。
日本の場合にはそうではなくて、この制度を使ってハイテクベンチャー企業を育てていく、ならば運用に相当知恵を使わなければいけない。しかし、調達をする主要な官庁が、全官庁がこれに参加をしているかといえば、これが非常にお寒いところであります。
アメリカでいえば、国防省あるいはNASA、そして教育庁、こういったところがSBIRに積極的に参加をしている。しかし日本は、防衛庁も参加をしていない、宇宙開発事業団も参加をしていない。恐らく中小企業を信用していないのだと私は思います。あるいは機密が漏れるということを心配しているのだと思います。これを政治の世界で乗り越えていく、これがSBIR制度を本格的に機能させていく重要なポイントではないかというふうに私は思いますが、この点について、佐伯参考人の御意見をお伺いしたいと思います。
それから、残り時間がわずかになりましたので、あともう一点、濱田参考人に続けてお伺いしたいのは、やはり大学のあり方であります。
TLO法案を審議したこの商工委員会でも、大学等の教員がみずから開発した技術で会社をつくったときにはその役員になれるようにしなければならないという附帯決議をつけました。私は、それを実現するだけで本当にできるのかな、本当にアメリカのように大学が新しい業や新しい産業を起こしていく中心になれるのかな、その点を非常に心配しております。
なぜならば、特に国立大学の価値観というのは、教授になることだ。教授になるために皆さんが一生懸命やっておられる。自分が開発した技術を外に持ち出して、それでビジネスを成功させて、そのことが評価されて、もう一度国立大学に戻って教授のポジションが与えられるというような仕組みにどうもなっていないのですね。
それが今の国家公務員のいろいろな法律でできないのであれば、独立行政法人化することも視野に入れていくべきではないか、さらにその先へ進んで、国立大学を民営化していく、そのことも議論していくべきではないかというぐらい私は危機感を持っております。
その点について、大変お伺いしにくいことではあるのですが、濱田参考人から御意見をいただくことができればと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/17
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018・佐伯昭雄
○佐伯参考人 今の伊藤委員からの御意見、私も大変賛成でございます。
現在、SBIRといいますか、我々の製品の話をしますと、具体的にはエレクトロニクスの製品ですけれども、アプリケーションというのは農林であり食品であり医療であり、あるいは血液の検査というのは厚生。ですから、各省庁にまたがる、技術もみんなまたがっているのですね。
そういう意味で、各省庁が、融合化といいますか横断的な組織でこのSBIRにみんなで参加してもらえば、もっともっとすばらしい製品とすばらしい発展ができるものというふうに思っております。
余り時間がないのでこのくらいにしたいと思うのですが、ぜひこれからは大いに期待を、そういうふうに各省庁の御協力をお願い申し上げたいと思います。ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/18
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019・濱田康行
○濱田参考人 伊藤委員にお答えいたします。
時間がありませんので簡単にお話をしますけれども、まず、TLOに我々が参加できそうだということは、非常に大きな期待を持って私たちは見守っております。
それから、大学がそれにしても役に立っていないのではないかという話がございますけれども、私どもの北海道における調査では、理系の研究者の約四割は産学協同をやってみたいというふうに答えております。可能性はあると思います。やっているという人は十分の一ぐらいしかいません。どうしていいかわからないというのがその原因であります。そこら辺を除去すれば大学は一歩前に出れるというふうに私は思っております。
ただ、一つ申し上げておきたいのは、大学の中には、静の部分、静かな部分と動の部分がありまして、基礎研究とか人文科学の多くの分野というのは静の部分であります。余りそういうところに日が当たらないのですけれども、今注目されているのはいわゆる産学協同で、動く部分ですけれども、大学には両方あって、だから、外から見ていると、産学協同をやれやれと言っているのになかなか動かないというふうに見えるということになるのだろう。そこら辺のところは御理解をいただきたいと思っております。
以上です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/19
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020・伊藤達也
○伊藤(達)委員 以上で質問を終わります。どうもありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/20
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021・古賀正浩
○古賀委員長 次に、奥田建君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/21
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022・奥田建
○奥田(建)委員 民主党の奥田建でございます。
あらゆる法律がそうなのかもしれませんけれども、二面性といいますか、二律背反といいますか、相対する部分を持つものでございます。こういった産業構造の変革、産業再構築という中で活力を生み出したいというのは、だれもが望むことかと思います。
また、伊藤達也議員の新産業に対する質疑におきましても、ぜひきのうのうちにそういった答弁を政府側からいただければなと思うほど、非常に革新的、先進的な御意見が与党の方にもあるんだなということを改めて考えさせられました。
私の方からは、党としましてこの法の中で懸念を持っている部分、危惧を持っている部分、雇用の問題という点につきまして、今井参考人そして野口参考人に、その後もう一つ、主務大臣の認定という部分について高橋参考人に。そして、できれば皆様に、民主党案、新産業創造の方での支援策といった民主党案への評価。そしてその後、佐伯参考人、濱田参考人の方に、中小企業あるいは地方の方から見た中での、今の法案にこだわることなく、一番望まれる施策、あるいはそれは政府であれ、税制であれ、そういったものをお尋ねしたいと思う次第でございます。
まず、今井参考人、野口参考人に雇用の確保という点でお尋ねをいたします。
昨日も長時間いろいろと審議をしておりましたけれども、やはりこういった産業再生の中で前向きなもの、そして前向きなものを含んだ中での後ろ向きなものを特例として、税制あるいは商法的に認めていくという中で、特に、今の中においては雇用がどう確保されるのであるか。競争力会議の中でも、雇用の責任という言葉を、東レの会長さんあるいはトヨタの社長さんの方からそういった御意見も出ております。
私どもとしても、再構築の計画、こういった中で、労働組合、あるいは労働側と経営者側との計画作成段階での協議、あるいは計画実行においての合意、そういったものが認定という中で必要な措置である、要件である、あるいは義務であるということをはっきりとうたっていただきたい、それが一つの要望でございます。
いろいろな法律の中で、努めることという努力法が多くありますけれども、その努力法のむなしさというものも私たちは多く見ております。努力規定、努力義務というのではなく、はっきりとした認定の要件であるということを担保してほしいという意見が私どもの中でも多いのでございますけれども、その点について、今井参考人、野口参考人に御意見をいただければと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/22
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023・今井敬
○今井参考人 今御指摘ございましたように、雇用問題に関して、これの維持安定を図るということは企業としての非常に重要な責務であるということは、経営側は全部共通認識を持っておると私は思います。
ただ、先ほどから申し上げましたように、非常に激しい、厳しいグローバルコンペティションの中で企業が生き残っていくためには、構造調整を図らなきゃいけないということも事実でございまして、また先ほど高橋参考人から御説明がございましたように、やはり従来型の企業から新しい企業へ、人の資源あるいは土地の資源といったものが流動化して移っていくということも考えなきゃいけない。したがいまして、そういう体制を整えながら、各企業とも十分に労働問題に配慮しながら構造改革を進めていく、こういうことに相なろうかと存じます。
それで、円高以来、私どもも今まで生き残りのためにいろいろなことをやってまいりましたが、計画立案の段階では、もちろんこれはいろいろ対外的な秘密の問題もございまして、恐らく労務担当が労働組合幹部との間で打診等はやると思いますけれども、計画立案の段階では会社側がやりますが、実行段階では当然労働組合あるいは個々の勤労者との合意がなければ実行できないわけでございまして、この法律のいかんにかかわらず、私どもは労働側との協力ということを極めて重視してこういう計画を進めてきておりますし、今後も私どもはそういうつもりでやっていくつもりでございます。
ただ、法律に書くということはなじまないのではないか、あくまでも労使の合意でやるべきではないか、私はかように思っております。
以上でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/23
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024・野口敞也
○野口参考人 奥田先生の御指摘のとおり、この法律は前向きな部分と後ろ向きの部分を両方持っていると思います。
私どもはこの法律に全面的に反対という立場ではございません。一番警戒しているのは、後ろ向きな部分の方向へ全体が流れてしまって、結果的に人材が、失業してしまう、あるいはむしろ低生産部門へ移動してしまう、こういうことを大変恐れるものでございます。
特に、雇用の問題については、これまでの歴史の中で、さまざまな産業構造の転換を支援する法律、こういうものがございます。例えば、石炭の構造転換を進めた。この場合の法律につきましては、御案内のように、雇用の移動について政府が大変強力な支援を与えてきたわけであります。
それからまた、昭和五十三年、一九七八年に、特定不況産業安定臨時措置法というのがございました。五年間施行されまして、鉄鋼あるいは合繊、紡績、さらに船舶、アルミニウムの製錬等の産業に適用されたものでございます。このときは、産業レベルの法律でございましたけれども、安定基本計画というものをそれぞれの産業について立てる。その場合に、労働組合あるいは労働者の意見を聞かなければならないということが法律で明記をされましたし、また、それぞれの雇用問題については企業の中で十分に労使の協議がなされたわけでございます。
その当時、私も繊維産業に属しておりまして、設備の廃棄計画を計画し実施したわけでありますが、まさに公労使、その当時は通産省それから業界、それと労働組合、ゼンセン同盟でございましたが、この三者が廃棄の量を決定する、こういうような完全な労使の合意の中で進められまして、また同時に、雇用についてはとりわけ各企業が、企業の多角化、労使合意の中でこれを強力に進めたわけでございます。現在、繊維産業がよく生き残っているといろいろなところで言われますけれども、この当時進められた経営の多角化の結果によるものでございます。
私は、政府がこの法律を支援するに当たって、ぜひそのような点を経営者に対し強力に進めていただきたいというふうに考えます。
また、本四架橋の場合につきましても、雇用問題につきましては労働組合の合意を前提としております。このように、産業立法においても、労働組合との協議、合意ということについて排除してきたわけではございません。とりわけ現在は雇用状況が極めて危険水域に達しているわけでございますから、特別な配慮をお願いするわけでございます。
以上です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/24
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025・奥田建
○奥田(建)委員 次に、主務大臣の認定というものがどこまで必要かということについて、高橋参考人に御意見を伺えればと思います。
私どもの中でやはり議論がありました部分も、今井会長からもお話がありましたように、法の恒久性あるいは法の普遍性、それは、税負担の重さ、そういったものを解いてほしい、あるいは商法の複雑さをもっと簡素化あるいは現実的なものにしていただきたい、そういった意味での改正であるならば前向きに取り組むところはあるけれども、時限つきの特例措置にならなければいけない理由は何なのか、そういった点で多くの議論をしてきたつもりでございます。
今認定の中で、税制上の措置ということになりますけれども、新分野への進出、あるいは営業譲渡、譲り受け、あるいは設備廃棄、共同出資会社の設立、合併、債務の株式化と、多くのところで租税措置の特例というものがあるのでございます。
これは私見でございますけれども、会社の合併あるいは分割、分社化、営業譲渡、そういった部分では、認定というものが今の状況ではあって当然と思う部分はございます。ただ、こういった租税の中で、設備廃棄や新分野進出での特別償却あるいは買いかえ特例といったものが、認定が要る、あるいは認定がなければ認められないという法であるべきなのか。すべての人に、すべての産業に対してあってもいい法律ではないかと私は思います。
そういった部分で、産業再生という中での適用の中で、認定が必要な部分もあると思いますし、外していい部分も今の法の中ではあると私は思うのですけれども、できれば高橋参考人にその辺の御意見を伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/25
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026・高橋進
○高橋参考人 私としましては、今回打ち出されているような措置につきましては一刻も早く恒久的な措置にしていただいて、その時点で認定制を外してしまうということがよろしいかと思います。一番ベストなのは、最初から恒久化して認定制もとらないということだと思います。
しかしながら、私が伺っていますところでは、やはり税制の改正にしても、法改正についても、時間がかかるということだと思います。今リストラを早くやらないといけない、この一、二年が勝負だと言われている中で、法改正に二年も三年もかかっておりましては私は法改正の意味がないというふうに思いますので、認定制を設けることでこういう措置が早く動き出すということであれば、そのことは評価させていただきたいと思います。
しかしながら、申し上げましたように、あくまでも時限的なもので、これを二、三年にとどめるということであれば、それはむしろおかしい。そうではなくて、恒久措置が間に合わないからとりあえず今動くのだということで、この時限立法の間にここで打ち出されております措置を恒久化していく、そのための法改正をしていくということが必要なのではないかというふうに思います。
それから、もう一つ申し上げれば、私は、商法改正よりも、むしろ税制につきましては認定制にするのであればもっと優遇していただいてもいいのではないか。特に事業の核心にかかわる部分については、もっと思い切ってやっていただいてもいいのではないかというふうに思います。
以上でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/26
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027・奥田建
○奥田(建)委員 少し時間の方が心配になってまいりましたので、佐伯参考人、そして濱田参考人の方に、二つずつお聞きしたいと思います。
先ほど言いましたように、中小企業あるいは地方の立場という中で、本当に有効な施策、私どもも中小企業の場合であれば、長い間、相続税の問題、承継という問題が、今の金融支援策もありがたい施策ではあると思いますけれども、それ以上に、多くの事業者が苦しんで、何とか整理してほしい、そういった分野ではないかと思います。
そういった中で、お二人の参考人の立場から、本当に政府にこの部分を変えてほしい、この部分で何とかできないかといったお訴えをいただきたいということ、そして民主党案の方のベンチャーへの御意見。
高橋参考人の方からは、こういった投資家の租税措置というのは有効であるけれども、市場形成というものが一番最初になされるべきではないのかといった御意見など伺いましたけれども、民主党の方では、ベンチャーの創出ということでベンチャー支援税制の拡充、あるいは中小企業者の創業支援、そしてその中でも特に女性への支援をはっきりと大きくうたっております。また、政府案にも一部重なる部分はありますけれども、大学の研究成果の民間移転という中で教授の民間への、役員兼務といったものなんかもうたっております。そういった民主党案についての御評価というものもいただければと思う次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/27
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028・佐伯昭雄
○佐伯参考人 地方における中小企業の現実ということに関連しまして一言申し上げますと、中小企業で今一番おくれているのは情報化の問題であろうと思うんです。これはちょっと法案とは直接関係ないんですけれども、やはり我々、国際化の時代に、情報化の問題ということが避けて通れない問題だろうというふうに思っております。
先ほど先生おっしゃったような中小企業、地方での商店街とかそこら辺を見ていますと、承継税制、これは本当にやはり改善しないと、事業承継ができなくなるといいますか、これが大変な問題になっているということは事実でございまして、ここら辺については産業競争力会議でも私が申し上げたところでございます。
民主党の御意見、それなりにといいますか、私どもとしましても、創業とか新技術の起業化、新しい事業を創出する、そういうことについては私も基本的にはそういう方向を理解しております。
具体的な施策ということについては、何も反対するということではございませんけれども、法制化が本当に必要なのか、あるいはそういう税制とか何かについての問題の詳しいことについては、私必ずしもつまびらかに知っているわけではございませんので、むしろ行政とか立法府の皆様で今後も積極的に御検討をしていただきたいというふうに思っております。
以上です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/28
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029・濱田康行
○濱田参考人 奥田委員にお答えいたします。
地方の立場から本当に望んでいることは何かという御質問が一つあったと思います。
それで、私がお配りした資料の三枚目の、円が三つ重なっているものをちょっと見ていただきたいのです。先ほど、ベンチャー支援策というのは地域振興策として展開されている面が非常に大きいのだというふうに申し上げました。私の認識では、現在ベンチャー企業支援ということを最も一生懸命やっているのは地方自治体だと思います。どこの都道府県にも必ずこれに相当する支援部局がございます。しかし、なかなかうまくいっていないというのも現状であります。
どうして地方が熱心かというと、答えは簡単でありまして、八〇年代に日本の大企業がアジア等々に出ていった、地方の立地ということが不活発になったということが一つございます。それから、委員おっしゃったように事業承継の時期に重なって、承継がうまくいかないということが地方で起きた。そのことによって地方経済の沈没現象というのがあって、それに対する対応として行われているということでございます。
それで、今一番必要なものは何かというお尋ねでございましたけれども、地方でベンチャー支援とかベンチャー企業を起こすという場合に、最大の問題は人材であります。起業する人材が十分でない、ないしはそれが地方で育てられない、そういう問題があります。資金ももちろん重要ですけれども、今後はこの方面に御支援をいただかなければいけないというふうに思っております。
それからもう一つ、先ほどからSBIRの話がございましたけれども、ベンチャー企業が新しく立ち上がって一番苦しむのは、注文がないということなんですね。その段階で、政府調達それから政府からの研究開発補助金等々は、初期の企業、地方に立地する企業には非常に有効でございます。いつまでも下さいと言っているわけではございません。非常に有効な時期にそれを支援していただければ大変助かるということでございます。
それから民主党案に対する評価でございますけれども、私は冒頭の発言の機会で若干申し上げましたので、それに重複しない部分について申し上げます。
先ほどからエンゼル税制ということが問題になっておりますけれども、民主党案では、損が出た場合にこれを他の所得と通算してよいというようなことになっているんだろうと思います。減税をするというのに反対するのは、なかなか反対しづらいんですが、私は、現在ではいわゆる分離課税というものがございまして、得したときには申告分離課税ができる、損したときには通算できるということになると、税金の体系といいましょうか哲学といいましょうか、そこで若干問題があるのではないかというふうに思っております。
もとより私は税法学者ではございませんので、この程度のことしか申し上げられませんけれども、この点をよく御審議いただければと思います。
以上でございます。
〔委員長退席、岸田委員長代理着席〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/29
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030・奥田建
○奥田(建)委員 ありがとうございました。以上で質問を終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/30
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031・岸田文雄
○岸田委員長代理 大口善徳君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/31
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032・大口善徳
○大口委員 公明・改革の大口でございます。
本日は、五人の参考人、お忙しいところを来ていただきまして、非常に貴重な御意見をいただきました。大変勉強になりました。この御意見をこれからの施策にしっかりと組み込んでいきたい、こう思っておるわけでございます。
そこでまず、現在の景気の状況というのは、確かに一—三月期一・九%、年率七・九%ということで成長率はいい数字が出ておりますが、四—六の時期において果たしてどうなるのか。私どもは、これに加えて失業率についても心配でございますし、また雇用不安というのも高まっておりますので、消費に対するマイナスの影響もあるということで、中途半端な景気対策というのはだめだ、次から次へとやっていかないといけない。振り返ってみて、今までやはり中途半端であったがゆえに、よくなっては落ち、よくなっては落ち、こういうことがこの十年間繰り返されてきた、こう思うわけでございます。
そういう点で、今井経団連会長の方から、需要面における手は終わった、いよいよサプライサイドの取り組みだ、こういうお話がございました。私は、需要面と供給面、この手当てについて両方必要だ、そうしないと、いい状況に来ているかどうかわかりませんけれども、この景気を乗り越えていくにはそれが非常に大事じゃないか、こう思っております。需要か供給か、この関係について、今井会長のお話を。
そしてまた、高橋参考人は、四—六の数字について厳しい見方もされております。失業率の問題、消費の問題、設備投資の問題等でいろいろ懸念もされております。そういう点で、高橋参考人にもその点についてお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/32
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033・今井敬
○今井参考人 私、需要面が終わったとまだ申し上げては——打つべき手が打たれた、そして、その効果が続いている間に供給面の構造改革を早くやらなければいけないという趣旨で申し上げました。
今大口委員御指摘のように、私どもは必ずしも景気について手放しで楽観はいたしておりません。今おっしゃいましたような四—六月のQEがどう出るかということで大変心配しておりますし、それからまた、公共事業が特に来年の一—三月ごろ息切れがするというような懸念も大変に持っております。したがいまして、少なくとも二〇〇〇年度ぐらいまでは引き続き需要面からの手当てが必要だという認識を私どもは持っております。
それからもう一つ、消費の回復を確かなものにするためには、やはり私は社会保障改革ということが必要だと思っております。前に六大改革ということが言われまして、その中の財政構造改革は今しばらく棚上げにしなければやむを得ませんが、社会保障改革というのは休みなく続けなきゃいけないと思いますが、どうも非常に意見が分かれておりまして、まだ国民に納得がいくような案が出ておりません。この点はひとつ、私どももどんどん提言してまいりますが、皆様方の方でもぜひよろしくお願いしたいという点でございます。
以上でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/33
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034・高橋進
○高橋参考人 当面の景気情勢でございますけれども、四—六月につきましては、これはあくまでも私どもの予測でございますけれども、またマイナスになるだろうと思います。一—三が余りにも強過ぎましたので、その反動が出ると思います。
ただ、問題は、四—六のマイナスではございませんで、七—九、十—十二以降どうなっていくか。公共事業の押し上げ効果、政策効果が弱くなってくれば、民間の自律的な回復の展望が開けておりませんので、また景気が弱くなってしまうということを民間ではまだ心配しております。政府は、そうではなくて政府の対策の効果がまだ続くとおっしゃっていますが、いつまで続くのかということが一つのポイントだと思います。
それから、そういう場合の対策でございますけれども、需要対策を打ち続けるということにつきましては、もう限界だと私は思います。特に、大きな規模を打つとなりますと、財政赤字、これが長期金利にはね上がっていくということもございますので、私はやはりもう供給サイドに重点を置いた政策を打ち出すべきだというふうに思います。
しかしながら、では、供給サイドの対策というのは需要サイドに全く配慮をしなくていいのかということであれば、そうではなくて、供給サイドを基本としつつも短期的な需要サイドにも貢献する、そういう施策が必要なのではないかと思います。
具体的に申し上げれば、例えば次の補正で公共事業の拡大というものがもし打ち出されるのであれば、私はもう従来型の公共事業はやめていただきたい。できれば、産業再生のために必要と思われる分野、ここだけに絞って重点配分をする。あるいは、そのやり方につきましても、PFI等を使って、同じ資金を使ってもできるだけ効率性が上がるようにしていただく。
こういう公共事業の中身の変革を通じて、民間企業の投資意欲というものが引き出されてくれば、私はそれが最大の需要対策にもなっていくというふうに考えますので、そういう意味では、需要と供給サイドの政策というのを全く分けて考える必要はないのではないかというふうに考えます。
それから、蛇足ながらつけ加えさせていただきますと、これから企業リストラが続いていきますと、どうしても縮小均衡のおそれがございます。御心配のように失業率が高まっていくという懸念はあるかと思います。実際に、企業の中で潜在的に失業されている方、余っている方の数というのは、あくまでも試算でございますが、数百万人いると思われるわけですので、これは潜在的な失業予備軍でございますから、少々景気が回復したところで、失業率が高まっていくということは恐らく不可避だと思います。
そういう意味で、これを回避するためには、いかに企業が新分野で雇用を生み出すかということが基本かと思いますので、新分野への投資を生み出すような政策面での誘導、これをやっていただきたいというふうに思います。
以上でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/34
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035・大口善徳
○大口委員 今回の法案で、特に労働組合の皆さんの御懸念というのは、まさしく失業の不安であります。この雇用不安について、昨日も大臣が、雇用面における配慮ということの中で、日本型の雇用関係を大事にしなきゃいけない、緩やかな雇用環境、ソフトランディングということ、日本はそういう立場であるという答弁でございました。
確かに、世界との競争、その中で生産性も上げていかなきゃいけない。そうなってきますと、まず金融の再編ということがあります。金融と産業とは裏表でございますので、産業の再編、こういうことも推し進めていかなければならないわけであります。しかしながら、他方で、まだまだ景気が厳しい状況の中で雇用不安というものが発生してしまったら、それこそもう日本の経済の立ち直りは難しい、こう思うわけでございます。
そういう点で、今井会長が、雇用関係について十分配慮していくということ、それから、この認定の問題におきましても労組と十分な話し合いをしていきます、こういうお話でございました。そこで、与謝野大臣のそういうソフトランディングという日本型の雇用について、今井会長、どういうようにお考えなのか。
そして、きょうは連合から野口参考人が見えておられます。連合におきまして、特にこれから再編ということで組織の変更が行われる、その組織の変更によって、従来の雇用契約の関係、労働条件の関係、あるいは労組の代表者の地位等について、やはりヨーロッパ並みの政策を講ずるべきだ、こういう御意見でございました。その点につきまして、もう少し御説明をいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/35
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036・今井敬
○今井参考人 私どもは、先ほども申し上げましたように、個々の企業といたしましては、やはり雇用をしっかり守っていくということが責務であると考えて努力しておりまして、先ほど御指摘の日本型雇用慣行ということは、これは恐らく終身雇用というようなことを意味すると思いますが、このことについて全く否定しておりませんで、それを守りたいということでやっております。
ただ、先ほど来申し上げておりますように、それだけで守っておりますと企業そのものが破綻してしまうという問題もございますし、それからもう一つは、やはり日本の将来の発展のためには、マクロ的に見ますと生産性の高い分野に労働が移動するということも必要だというふうに思っておりますので、そういったような政策手段を打ちながら、個々の企業が雇用の維持に努力しながら、しかし、それでも守り切れないものについてはマクロ的なセーフティーネットでこれをしっかりと支えていく、こういうことをお願い申し上げたいということでございます。
以上でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/36
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037・野口敞也
○野口参考人 大口委員の御指摘のとおり、日本型の雇用慣行というのは、やはり極めて重要であるというふうに考えます。この点については、今、今井会長のお話にもありましたとおり、労使のマクロでの意見というのは変わらないだろうと思います。
ただし、最近の雇用調整助成金にかかわります議論にもありますように、従来型のものではいかぬということで、むしろアメリカ流にさっぱりとやれ、こういうような声が極めて高まっております。しかし、日本の産業、企業の力というのは、やはり長期の雇用をベースにして、そこに技術力あるいは品質改善力というのが備わってくる、人材の能力が発揮される、そういう仕組みにあるだろうというふうに考えます。
また、先ほど規制緩和改革のお話がありましたけれども、規制改革はやはり市場に全く任せるということではなく、一定の公正なルール、そしてセーフティーネット、さらに情報の開示、三つが相まって初めて有効に機能し得るだろうというふうに思います。雇用の制度もその中のセーフティーネットでありますし、公正なルールでございます。既に、ヨーロッパではさまざまな仕組みが法律化をされております。私どもは、そういうものの導入を提案するわけであります。
規制改革と同時に、どういうようなルールが海外に現実にあるのか、あるいはどういうようなシステムが築かれて、無秩序な行動がチェックされているのか、こういうものをあわせて立法に際しては調査研究をされて、同時施行をしていただきたい、こういうように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/37
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038・大口善徳
○大口委員 次に、中小ベンチャー企業政策についてお伺いをします。
日本の競争力、これをアップするためには中小企業に元気になっていただかなければいけない。そしてまた、ベンチャー企業にどんどん出てきていただかなければいけない。そういう点で、前向きの話として中小企業対策、ベンチャー企業対策、非常に大事だと思います。
濱田先生が、わかりやすく中小企業政策のトレンドという形で年表にしていただいたわけでございます。特に最近、ベンチャー企業運動支援、そして創業支援という形でさまざまな法律ができております。それこそ濱田先生は、インターネットであれしましたら冊子ができるぐらいだ、こういうふうに言われております。確かに、ベンチャー企業の政策について解説する方からすれば、複雑な方が仕事があるかもしれませんが、使う側にとってみますと、非常にこれは複雑なわけでございます。次から次へと積み重ねていくということがございます。
創業支援ということで、開業率を高めるためにどんどんそういう事業をふやしていく、こういうことも必要でありましょうけれども、さらに大きなビッグビジネスにつながるような、そういう種を育てていくということも大事でございます。そういう点で、濱田先生の方で、三つの輪、その中の重なった部分を重点的に力を入れていくべきだというお考えも非常に興味深く聞かせていただきました。
そこで、やはり中小企業政策、そしてベンチャー企業政策、創業支援政策、もう一度見直しをしなければならないのではないか。そして、そういう中でレビューをして、効果をきちっとチェックして、そして使いやすいものにしていかなければいけないな、こう思うわけでございますが、この点について濱田先生にお伺いしたいと思います。
それと、きょうは佐伯参考人も来ていただいております。中小企業、ベンチャー企業といえば、資金調達というのが一番大変なことだと私は思います。私の身近にも、ベンチャー企業として一生懸命やっておられる方、従来型ではありますけれども、その中で工夫を凝らして一生懸命やっておられる方を見るわけですけれども、融資また投資という点におきまして、非常にまだまだ不十分である、こう思うわけであります。
特に、アーリーステージにおける資金の調達、これはやはり投資ということが非常に大事になってくる。ベンチャーキャピタル、ジャフコ初め、あるいは公的な形のものも、投資事業組合における公的な機関の出資ということも行われておるわけでございますが、まだまだ不十分である。やはりベンチャー企業家が安心して研究に没頭できるように、SBIR等の制度もできたわけでございますけれども、そこの部分でもっともっとこれは予算においても拡充していかなければいけないな、こういうふうに思うわけです。それについての御意見。
それと、すぐれた技術をもう持っておられて、これから事業拡大をしていく。この場合、ベンチャーキャピタルからの出資ということになりますと、経営権、経営支配権に関して心配があるということで、なかなか、ベンチャーキャピタル等の出資を受けたいのだけれども、金は必要なのだけれども、むしろ融資でやっていただきたいということで、先端関係ですとか、政府系金融機関からの貸し付けが六億とか四億とか、いろいろ新しい措置ができております。
しかし、これも担保の免除が非常に範囲が狭いものですから、大体八千万円ぐらいの限度ということなものですから、そういう点では非常に足りない。担保主義は、銀行はいまだ担保主義でありますけれども、やはり政府系は目ききというのをしっかりして、将来性のあるものについてはどんと貸し出しをすべきではないか、そういうふうに考えております。この点について御意見をいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/38
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039・濱田康行
○濱田参考人 大口委員にお答えいたします。
御質問は何点かあったと思いますけれども、使いやすい法律、法体系が望ましいのではないかという点は、おっしゃるとおりでございます。そういう試みは、新事業創出促進法でも部分的になされており、今回の法案も、そういうさまざまなベンチャー法案の包括的な法律というような位置づけを与え得るのかというふうに思っております。使う側から見ると、これはどこに行ったらいいのかというようなことで、縦割りの問題というのは依然としてまだ残っておりますので、そこら辺は改善していただければというふうに思っております。
それから、アーリーステージの投資でございますけれども、これはもうベンチャーキャピタルの議論をするときにはずっと前から言われていることで、日本のベンチャーキャピタルというのは公開直前投資がほとんど多いのだと。状況は若干改善はしてきたのですけれども、依然としてアーリーステージの投資は少ないのが現状でございます。
さらに、私の目に心配なのは、日本の投資資金のかなりの部分が海外に流出しているという事実でございます。投資する側からすれば、効率のよいところを求めてどこにでも行くというのは当然でございますけれども、国内のベンチャー企業を育成するという点ではこれは問題がある。いかに日本国内に資金をつなぎとめるかというインセンティブが考えられなければならないというふうに思っております。投資事業組合の法律の改正でありますとか、そういう努力が一層展開されるべきであろうというふうに思っております。
それから、日本には技術はあって、しかしベンチャーキャピタルとの折り合いが悪いとかという問題があるというのはおっしゃるとおりでございます。この点で私が申し上げたいのは、よく企業は、人、物、金、そういう組み合わせだというふうに言います。日本にはどれ一つとして決定的に不足しているものがあるというわけではございません。要は、その組み合わせが成立しないというところが問題なのだろうというふうに思っております。
技術に関しては、先ほどから御指摘がございますように、大学が一歩出て、技術提供ということを積極的にやろうということで、何とか前に進もうという状況になってきております。資金については、日本は資金不足ということは決してございません。資金はあります。ただ、それが、リスクのあるところ、企業の初期段階に出てこれないという問題があるだけであります。そうすると、残るのはやはりベンチャー企業をする人間、経営ということだろうと思います。それで、私は先ほど、人材育成が非常に重要なのだというふうに申し上げました。
以上でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/39
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040・佐伯昭雄
○佐伯参考人 今、大口委員から、中小企業の資金の調達ということで、特に創業時の資金ということは、私の経験からいいましても非常に大変なことです。現在でもまだまだ十分ではないというふうには思っております。
ただ、昔から比べれば、今の政府の諸施策あるいは政府系金融機関というふうな諸制度についてはかなり改善されてきていますし、この法案の中におきましても、無担保枠の拡大、本当はもっともっと拡大して、資金の需要、最近の設備というのは相当金がかかって、いいものをつくらないと中途半端ではだめだという意味では、もっともっと必要なんだろうとは思っております。これからも諸先生方の御検討の上で将来的にもっともっと拡大をしていただきたいなというのが、中小企業としての実感とお願いでございます。
簡単ですが、以上です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/40
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041・大口善徳
○大口委員 どうもありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/41
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042・岸田文雄
○岸田委員長代理 小池百合子君。
〔岸田委員長代理退席、委員長着席〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/42
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043・小池百合子
○小池委員 自由党の小池百合子でございます。
本日は、お暑い中、五人の参考人の皆様方におかれましては、御足労をおかけし、また貴重な御意見をお聞きかせいただきまして、本当にありがとうございます。
考えてみますれば、八月目前でございますが、大体この時期というのは国会はふだんはやっておりませんで、去年からそうでございますが、このように夏の盛りに国会が開会されてこういった問題を取り扱っているということ自体が、現在の我が国が置かれている状況を象徴しているのではないかと思っております。また、先ほどどなたか参考人がおっしゃいましたけれども、こういった事態において、何年もかけて議論していては間に合わない。経済は生きておりますので、このスピードをいかに大切にするかということ、これは私どもも重々承知した上でこの法案を進めさせていただいていることを、一つ加えさせていただきたいと思います。
今回のこの法案でございますが、これを考えるに、私は、まさに産業の盛衰と申しましょうか、時代の大きな変遷と申しましょうか、鳥の目で見ますと、ちょうど鳴門の渦潮の中に我々は位置しているのだな、それを新しい潮流のところにきっちりと導いていく。そして、そこでどういう泳ぎ方をするのかは、それぞれ経営者、起業家の役目であろうと思っております。その意味で、今後の大きな流れを決めるものとして、今回の法案を重要なものと考えてもおります。
一方で、こうやって渦潮の中で優勝劣敗を市場の原理で決めるということも本来必要かと思いますが、その意味では、構造改革がむしろ先延ばしになるのか、もしくは積極的にこの法案を活用することで本当の意味の構造改革が進むのか、これこそまさに、この法案を活用しての起業家の優勝劣敗が決まるのではないかと私は考えているところでございます。
そしてまた、時代の盛衰ということで申しますと、かつて昭和二十年代、テレビが出現する。当時は花形産業でありました映画産業が、電気紙芝居ということで嘲笑して、手をつけなかった。そして、かわりに手をつけたのが、日本では新聞業界でございました。そして今度はテレビの時代が始まって、アメリカなどでは、まさに第四の権力と申しましょうか、ハルバースタムなども言っておりますけれども、そういった中でテレビの花形の時代が続いたわけでございます。
三大ネットワークの一つのNBCというテレビ局はせんだって、AOL、アメリカンオンラインというヤフーのような新しい産業でございますが、これに買収されたのでございます。私はそれを読んでいまして、逆かなと。NBCがAOLを買収したのかなと思いましたらその逆で、AOLという数年前に出てきたベンチャー企業が、かつてのといいますか、ネットワークの中の雄でありますNBCを買っちゃった。これは本当に私自身、時代そして産業の激変が起こっているなということを痛感させられたわけでございます。
まず、佐伯参考人に伺わせていただきたいと思います。
そういった時代認識の中で、また日本経済の大黒柱、私はこれは中小企業だと思っております。そして、この中小企業も金融危機の中で大変あえいでおられて、そこで昨年の暮れから信用保証の特別枠の拡大をさせていただいたところでございますけれども、今回のこの法案を生かすということもございますが、この信用保証の特別枠拡大がどのような効果を現在までもたらし、また今後どのようなことを御要望なさるのか、お聞かせいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/43
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044・佐伯昭雄
○佐伯参考人 今、小池委員がおっしゃいましたように、去年の特別保証制度、これは二十兆円ということで、現在まで、おおよその数字ですけれども、八十八万件くらいですか、十六兆円くらいの使用になっている。私ども中小企業の実感としましては、特に去年の暮れ、この制度があるために非常に助かった。各中小企業は本当にこれがよかったなということで、非常に効果があったというふうに、逆に御礼を申し上げたいところでございます。
ただ、四月以降は若干実績が落ちついてきているということでありますけれども、要するに、これからまた産業活力再生法案ということで、いろいろな保証制度とかこういうふうなことが盛り込まれておりまして、これは非常に有効な手段になるだろう。
ただ、今後の問題としますと、あと四兆円あるじゃないかという意見があるかもしれませんけれども、これから年末、まだちょっと年末には早いのですけれども、年度末にかけまして、やはり資金の需要というのは、景気が今はちょっと落ちついていますけれども、これからのことを考えると、秋にかけて少し早目にぜひ枠を追加する必要があるのじゃないかなと私は考えております。ぜひそこら辺を、しかるべきタイミングで二十兆円の枠の拡大というふうなことを御配慮いただければ、中小企業にとっては非常にありがたいと思っております。
以上でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/44
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045・小池百合子
○小池委員 ありがとうございました。
また、その期間の延長なども効果的ではないかなということを考えております。
さて、先ほども私指摘させていただいたのですけれども、今回の構造改革に使うか、もしくは単に生き残りに使うのかというのは、経営者の器量の問題。そして、それによる優勝劣敗は最終的には市場が決めると思うわけでございますが、第三条、第四条で、事業の再構築の円滑化ということで、事業の再構築計画を提出する、そして主務官庁からの認定を受けるということになっているわけでございます。
私は、主務官庁からの認定ということに対しては最後まで抵抗した一人でございます。結局また、いわゆる裁量行政を復活させるのではないだろうか。また、役所の考えていることに体の寸法を合わせてアプライをして認定をもらうというのは、自由経済、そしてこれから活力あるベンチャーを育てようという中で、どうもちょっと違うのではないか、ベンチャーとこれとは違いますけれども。というので、どうも私は肌が合わないなということで、この辺、なかなか納得はしなかったわけでございます。
しかしながら、必要な手続は幾つかございます。そして、その中でのネガチェックだけでいいというふうに私も思っているわけでございますけれども、これが裁量行政に結局つながると企業としてもやりにくくないかというふうに率直に思うのでございますが、経団連の今井会長、この辺はいかがでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/45
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046・今井敬
○今井参考人 今回、このお暑い中、会期延長して御審議いただいているということを大変に感謝いたしておりますが、まさにそれだけ事態が逼迫しているわけでございまして、待てないという状況があろうかと存じます。
私は、この法案の中に規定されましたいろいろな措置につきましては、やはり一般的な制度あるいは一般的な税制として進めていただきたいと思っているわけでございますが、限られた大変急ぐ時間の中でやるためには、どうしても商法あるいは税制、税法の特例としてやらざるを得ないということはやむを得ないというふうに考えておりまして、そのためにこの事業再構築計画や活用事業計画が主務大臣の認定という仕組みになったというふうに了解しております。ただ、従来のように業種指定ではなく、広くどの企業も普遍的に使えるという意味では、私は業種指定よりもよかったというふうに思っております。
それから、ただいま小池委員がおっしゃいましたように、裁量行政の復活ということは、私どももそういうことはあってはならないと思っておりまして、先ほども、できるだけ客観的、透明的な手続、基準をつくってもらいたいということで、できれば数値基準、そしてそれも専門家の意見を入れてつくってもらって、それを公表し、場合によってはパブリックコメントにかけてしっかりとみんなに認知してもらう。それから、認可した計画も、できればすべて内容も公表して、そういう裁量の余地を、疑念をなくすようにしていただきたい、かように考えている次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/46
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047・小池百合子
○小池委員 先ほど私、どうも肌が合わないということを申し上げました。今考えてみますと、銀行、金融機関が破綻をし、そしてそれが国有化され、再生委員会のチェックのもとで、いろいろなガイダンスの中で金融機関が今また再生しようとしている。結果的に生きるべきものを殺す必要はないわけでございますから、緊急ということで申し上げるならばそれは必要かもしれない、百歩譲ってのことでございます。そしてまた、こういう形で、主務官庁の認定を受けるという形での産業活力再生というのも、これも緊急ということで百歩認めざるを得ないのかなと思っております。
いずれにいたしましても、組織、産業、企業、あらゆるものは、政党もそうでございますけれども、人、物、金、情報という四元素があるわけで、今回の制度が物の部分かもしれません。そして税制がお金、そして情報、これはまた別。結局最後に残るのは人材ということになってくるかと思います。
先ほども人材の育成ということが指摘されていたわけでございますが、経営者としての人材、そしてそこでの従業員としての人材、この両方が求められてくるのではないかと思っております。勤める方の人間とすれば、これまで終身雇用という、日本的慣行といいましょうか、それがベースにあった、そこに浸ってきたわけでございますから、私はいつも、日本人というのは非武装で忠実だ、会社に忠実だけれども実は何も個人的には武装されていないと。
最近も、ある破綻した銀行の支店長さんをやっておられた方がハローワークに行って、あなたは何ができるかと聞かれて、支店長ができると答えたそうでございます。そして、少なくとも一千万は欲しいと言ったら、そういうのはありませんといって断られたなどということを聞いたりもいたしました。
ですから、これまでの日本の雇用のマーケットでは非武装忠実、会社に忠実でありさえすればいいというようなことであった。それが今はもう武装自立の社会に変わってくるんだということを、現実が知らせてくれているのではないかと思います。その意味でも、ミスマッチなども起こり、再教育の必要性もあるかと思いますけれども、一方で経営者の意識改革というのも大幅に行わなくてはならないと思っております。
今回、この人、物、金、情報で、最後の人の部分でございますけれども、これだけの法案の中にあります制度、魔法のつえではございませんけれども、いろいろな土壌、そして土俵が整ったとなると、あとそこで踊る方の問題になってくるわけで、そうしたら、GEのウェルチさんのような人がこれで本当にぼんぼん手腕を発揮できるようになるのか。
その辺のところ、人の問題。どなたに伺えばいいのかちょっと難しいところはございますが、私は経営者の意識改革ということも重要ではないかと思います。今井会長、お願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/47
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048・今井敬
○今井参考人 ただいまの御指摘、極めて重要だと思っております。私ども、今度の法律ができましたら、これを活用いたしまして、できるだけ企業の選択と集中を行いまして、そして生産性を高め、収益性を高めていきたいと思いますが、そういうことをやることがマクロ的に見ましてもやはり日本の経済再生につながるというふうに思っているわけでございます。
ただ、個人個人の人の問題につきましては、必ずしも一つの企業にずっとということが守られないかもわかりません。そのためのセーフティーネットワークというものをぜひお願いしたいということで、先般の緊急雇用対策は私どもが望んでおりますことがかなり入っておりまして、補正予算もつけていただいて、私は、その点は心配はしておりますけれども、それほど大きな社会的な不安はなく大きな改革が実行できるのではないか。
先ほど小池委員おっしゃいました、大きな渦の中で新しい方向に踏み出していくということが大体制度的にも整っているのではないか。私どもは、その中で個々の企業として全力を尽くすつもりでおります。どうもありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/48
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049・小池百合子
○小池委員 ありがとうございました。
私、きのう夜たまたま電通総研から送られてきた本を読んでいましたら、経済界の方から、私が言っているのではなくて経済界の方が、いわゆる勲章制度、叙勲の制度をもうやめていいのではないかというような提言があって、おおっと思ったのですけれども、これについては経団連では何か話はあるのでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/49
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050・今井敬
○今井参考人 これは経済同友会で議論してやったようでございます。経団連としては議論をしておりません。私は個人的な考え方を持っておりますが、ここでは差し控えさせていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/50
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051・小池百合子
○小池委員 先ほど裁量行政の問題を取り上げさせていただきましたけれども、私はこの問題も今後大きな課題として考える必要もあるのではないかと思っております。
最後に、もう時間がございませんので言いっ放しになるかもしれませんけれども、ベンチャー支援のところで、実は民主党の方から女性のベンチャーの支援ということが出ております。
おもんぱかってくださってありがとうと言いたいところではございますけれども、私は、女性だけを取り上げるというのはかえって女性に失礼ではないかと思っております。そして、起業家たるものは男性でも女性でもやはりそこではっきりと結果が出るわけでございます。かつてアメリカに、ファースト・ウィメンズ・バンクというのがございました。なかなか女性は、同じベンチャーでも女性だからというので融資を受けにくいということで始めた銀行でございましたけれども、そもそもその銀行自身がつぶれてしまった。
ですから、女性のアイデアを生かすビジネスを女性がやろうが男性がやろうがいいわけでございまして、そして、その結果は等しく出てくるということで、私は、むしろ女性起業家ということに的を絞る必然性はさらさらないのではないかなと思っておりますが、最後にこの点について、高橋さん、いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/51
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052・高橋進
○高橋参考人 私も、最初これを拝見しましたときに、おやっと思いました。それは事実でございます。しかしながら、確かに日本の社会、建前では男女を区別する必要はないと思いますが、実際の女性の地位、特に社会における地位、それから働きやすさということを考えますと、私は、女性をターゲットに絞った立案というのをしてもよろしいのではないかと思います。
ただ、こういう形で上げるのがいいのか、それとも、例えば女性の就業をもっとしやすくする、あるいは起業をしやすくするという観点から、もう既にいろいろ措置がとられていますけれども、例えば保育園制度の拡充であるとか、あるいはコミュニティーで子供を世話するようなシステムをつくるとか、そういった女性への配慮というのはもっと法律上されてしかるべきだというふうに私は思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/52
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053・小池百合子
○小池委員 ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/53
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054・古賀正浩
○古賀委員長 吉井英勝君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/54
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055・吉井英勝
○吉井委員 日本共産党の吉井英勝でございます。
きょうは五人の参考人の皆さんに御苦労をいただきまして、私はまず、そのことに対して、御苦労さまですということを申し上げたいと思います。その上で、時間が限られておりますから、せっかく五人の方に来ていただきながら、お一人お一人にという、ちょっとそこはなかなかまいりませんので、質問できない方についてはひとつ御容赦いただきたいと思います。
私は、きょうは、この法律に一番かかわりのある労働界の参考人の方と、それから産業競争力会議の参考人の方に質問をいたしたい、こういうふうに思います。
最初に野口参考人に伺いたいわけですが、法案第三条六項六号「従業員の地位を不当に害するものでないこと。」という、ここの部分にかかわってですが、昨日の政府答弁などの中では、要するに、労働組合と協議をしておれば合意をしていなくても事業再構築計画を承認する、そういう立場の答弁でありました。そういう点で、政府は、要するに労使の協議だけはやってもらうが、しかし雇用契約、労働条件、労働協約の継承などは必要としない、そういう立場だというふうに私は理解しているんですが、この点についての、労働組合に身を置いていらっしゃる方としてのお考えというものをまず伺いたいというふうに思います。
〔委員長退席、岸田委員長代理着席〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/55
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056・野口敞也
○野口参考人 先ほども述べさせていただいたように、私どもとしては、やはりあくまで事前の労使協議があって、しかも雇用や労働条件に影響するような場合は、その中身について合意が必要である、このように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/56
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057・吉井英勝
○吉井委員 政府の答弁の中では、要するに、解雇を伴うリストラ計画に労働組合として反対ということを決めたとしても承認を与える、そういうスタンスです。
引き続いて野口参考人に伺っておきたいんですが、産業再生の名で国が事業再構築計画、いわゆるリストラ計画を出させる、これに承認を与えてリストラ支援を行う、この点では、実は金融機関の営業譲渡などでは金融再生委員会がリストラ計画を出させて、そして合併の承認や公的資金援助を行うということが既に始まっております。つまり、大量解雇を伴うリストラ計画を出させて、法律によってその大量解雇を促進するというやり方が今日既に始まっている。
そうなりますと、労働法制に違反する大量解雇が、こういう別の法律によってその違反が合法化されてしまう。これは私は非常に大問題じゃないかなというふうに思うんですが、この点についての労働組合としてのお考えというものを伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/57
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058・野口敞也
○野口参考人 御指摘のとおり、産業の構造改革に伴って、当然のことながら、雇用問題というのがあわせて生ずるわけであります。しかし、残念ながら、我が国の今までの法制の実例を見ますと、そういうような産業の構造改善と労働とは全く別に切り離されて議論されているわけです。これは大変不当な問題であり、やはりこれまでのいろいろの立法の議論が大変偏ったものである。
とりわけ、こういう議論というのは、ここでございますように商工委員会だけでやる、労働委員会ではこの問題についてなかなか触れないという問題がありますが、私は、これからのいろいろな構造改善というのは、さまざまな局面について議論しなきゃならない問題がたくさんあると思います。そういう意味で、国会も、縦割りの議論ではなく、総合的な議論を幅広くしていただきたい、こういうように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/58
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059・吉井英勝
○吉井委員 野口参考人には後ほど時間があればもう一問お聞きしたいことがございますが、次に今井参考人に伺いたいというふうに思います。
九二年六月十一日の日経連タイムスの「主張」では、多くの企業が景気の先行きを過大に評価して大幅な設備投資の拡大に走った、バブルの発生と崩壊というおまけのついた日本経済自作自演の不況であるということを書いておりました。
実は、経団連の五月の第一次提言を見せていただきましたけれども、あの提言の後、五月二十日付の日経の社説では、過剰設備の廃棄と過剰債務の削減を結びつけた債務の株式化や、それに対する税制上の支援、工場跡地などの流動化について、バブル時代の失敗のツケ回し的な発想は好ましくないと、「特定産業の延命策に偏っていないか」という表題をつけて書いておりました。
私は、ツケ回しの発想ではモラルハザードを来す、これがマスコミなどで共通した厳しい批判の大きな一つだと思いますが、この点についてどのようにお考えかを伺いたいと思います。
〔岸田委員長代理退席、委員長着席〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/59
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060・今井敬
○今井参考人 現在の過剰設備というのは、必ずしもバブルの崩壊だけではなくて、円高による空洞化とかあるいは東南アジアの経済の縮小というようなことに起因して起こっておる点も多々あるわけでございますが、私は、過剰設備の廃棄というのは、これは企業の責任でやるべきだというふうに思っております。
ただ、企業の中では、もう資産が全くなくなって、そして廃業しようにも例えば退職金が払えないというようなところもございまして、しかし、そういうところは土地を持っておりますから、その土地の流動化を促進することによって、市場から、マーケットから、生き残れない人たちが社会的な問題を起こさないようにして退場するというようなことは考えてもいいんではないか、こういうふうに思っております。過剰設備の問題は、あくまでも企業の責任をもってやることだと思っております。
それから、今回いろいろここで法制とか税制の特例措置がございますが、これは、先ほどから私申し上げておりますように、特例措置としてではなくて、やはりグローバルスタンダードとして、よその国がやっていることを日本でも実行してもらいたい、ただ時間がないので特例措置で今回はおやりいただいている、こういうふうに了解しておりまして、特別の恩典をこれによって受けるという考え方を私は持っておりません。
それから、デット・エクイティー・スワップの問題につきましては、これはあくまでも企業と金融機関との話し合いでやるべき問題でありまして、そういったような、つまり債権の証券化というようなことが行われました場合には、当然のことながら、その企業の株主は減資によって、あるいはその企業の経営者は退陣によって、責任をとるべきであるというふうに私は考えております。
以上でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/60
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061・吉井英勝
○吉井委員 今、過剰設備の問題でおっしゃった中で、確かにバブルのときの過剰な設備投資の問題、それから需要の落ち込みによる、物が売れないために生産活動ができませんから過剰となっているもの、それから今おっしゃったもう一つの円高要因の問題ですね、そこはもう少し本当はよく切り込んで考える必要がお互いあるのじゃないかと私は思っているのです。
実は、かつて野村総研の方で、トヨタ自動車の研究という中で、これは有名な言葉ですが、悪魔のサイクル、悪魔の循環という、コストダウンをうんと図る、そのためにリストラをやって人減らしをやって、過密労働と、下請にはうんと安い賃金を求めて、これで輸出競争力をどんとつけて輸出を伸ばして、その結果、円高に走っていく。円高でもやれるようにということで、私がかつてトヨタに調査に行ったときには、スーパーコストダウンという言葉まで使われておりました。
そういう悪魔の循環を繰り返す中で、どんどん円高になってきて、そしてそれが、いわゆる為替レートで見た人件費のコスト高の問題も招いているし、今井さんが今おっしゃった円高要因による過剰設備というお話にしても、円高というところにはそこがあるということは、私は非常に大事な点として見ておかなければいけないのじゃないかなというふうに思っております。
引き続いて今井参考人に伺いたいのですが、せんだって、新日鉄広報センターの発表資料を見せていただきました。その中で、国内LSI事業からの撤退に伴う損失千百五十二億円ということになっておりました。
これは、バブル期に多角経営、複合経営ということをたしかおっしゃっておられて、それで、半導体、エレクトロニクスなどの新規産業を進められたわけですが、その投資が失敗して財務体質を悪くしてしまった、これはもちろん海外投資の分もありますが。そこで、子会社としてつくった日鉄セミコンダクターという半導体部門もうまくいかない、失敗だということで、事実上ただ同然に近い売却をして、千二百億円近い特別損失をお出しになったものです。
これは別の話に移りますが、五月二十日付の日経新聞の「産業再生を聞く」という中で、今井参考人が、失業者を一律に手厚く保護することは反対だと言っておられました。一方ではそうおっしゃるのだが、労働者や一般国民には自助努力を求めながら、自分は経営責任を不問にして、産業競争力の強化を理由づけにして過剰設備の処理などを国に支援を求めるということになれば、これは少し筋が違っているんじゃないか。
ウシオ電機の牛尾さんなども、重厚長大型の製造業に、自己責任原則を言いながら国に支援を求めるのはおかしいという指摘をしておられるものもありますし、このほかにも経済界の幹部の多くの批判の声が出ているのは御存じのところと思います。
そこで、産業競争力強化を理由に挙げれば経営の失敗による過剰設備や債務の処理を国に支援してもらえる、責任をとらなくてよいということになれば、私はやはりモラルハザードを来すということになると思うのですね。これはマスコミも、経済界からもそういう批判は随分ありますが、この点について、モラルハザードという問題、それを来さないためにも、労働その他のリストラを求めるだけじゃなしに、そこをどうするのかということについてのお考えを改めて伺いたいというふうに思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/61
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062・今井敬
○今井参考人 大変厳しい御指摘でございます。
まず、私が失業者の一律の保護と言ったかどうかということ、今、記事に出ていたということでございますが、失業の中には自発的失業と非自発的失業があって、非自発的な失業で扶養家族を抱えた高齢者に手厚くということをかねがね申し上げているわけでございまして、そういったようなことが恐らく記事になったというふうに思っております。
それから、今回のこの産業再生は、先ほどから申し上げておりますように、私は国の支援を求めているという意識はございません。あくまでもグローバルスタンダードに基づいた法制並びに税制を国において整備してもらいたいということを申し上げているわけでございまして、国から手厚い支援を受けるというような意識を全く持っておりません。
それからもう一つ、半導体の問題につきましては確かに大きな失敗をやりまして、株主に多大な損害をかけているわけでございます。これはしかし、先ほど失敗の自由というお話もございました。やはり企業経営をやっていく中では思い切ってリスクをとるような場面もございます。特に私ども、八五年の円高で大変な企業の合理化をやらなければいけない、その中で、私どもの勤労者に仕事を与えるということで、ありとあらゆることに手を出しました。この中で、成功した例の方が少ないのでございますけれども、そういった中の一環として半導体にも出たわけでございます。
しかし、御承知のように、半導体というのは市場が全く急激に変化いたしまして、私どものような小さな半導体企業ではなくて、ほかの、日本を代表する半導体企業も、大変大きな、私どもの損失に数倍するような損失を出している中での事業撤退でございまして、私は、撤退したということについては、むしろそういう決断をして株主に御迷惑をおかけするのを少なくすることができたというふうに考えている次第でございます。
以上でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/62
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063・吉井英勝
○吉井委員 そこで、私は、野口参考人にはグローバルスタンダードということについて伺っておきたいと思うのです。
日本は、グローバルスタンダードというよりも、本当はアメリカンスタンダードを盛んに考えているのじゃないか。むしろ、ヨーロピアンスタンダードの方こそグローバルスタンダードと言うべきものじゃないかと思います。その点では、EUの方の解雇規制にかかわる指令、あるいは営業譲渡についての解雇規制などを定めた既得権指令、そういうものこそ、実は本来、グローバルスタンダードとして日本はもっと受けとめて考えていかなければいけないと思うのですが、この点についての野口参考人のお考えを伺いたい。
グローバルスタンダードということを今井参考人がおっしゃったのですが、今井参考人にもう一つお聞きしておきたいのは、銀行や企業の不良債権を国に移しかえて、国はその不良債権を国民一人一人に移しかえるというやり方で、最後は国民に背負わせるというやり方になると、これは金融危機の解決だとか産業競争力の強化だとかを振り回しても、甘えの構造じゃないかという識者の指摘があります。そういう論文等も出ております。
やはり甘えの構造じゃないかという指摘で、今井参考人は、みずからの企業についてはそうじゃないんだと胸を張って今おっしゃったわけですが、今度の産業再生法の仕組みそのものについて、国に一次提言を出してそのことを求められた代表としての立場から、御見解というものをお聞きしておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/63
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064・今井敬
○今井参考人 金融の不良債権というのが、企業の不良資産なり不稼働設備であるという関係にあることは事実でございます。それで、不良債権を早急に処理するために、日本発の金融恐慌を起こさないために、その金融に公的資金が注入されたということも事実でございますが、この公的資金というのは、私は税金そのものであるというふうに認識しておりません。既に破綻した金融機関については、これは税金になるわけでございますが、その他はいずれ返済するものというふうに考えております。
それから、企業につきましては、これはあくまでも自力でやるべきことであるというふうに思っております。デット・エクイティー・スワップの問題などにつきましても、金融機関と企業との話し合いですべて解決するべき問題でございまして、私どもは、デット・エクイティー・スワップをやることによって銀行に注入した公的資金が企業に注入されるというような考え方を持ってこれを推し進めているということは全くございません。あくまでも金融機関と企業との話し合いでデット・エクイティー・スワップというものがなされるはずである、かように思っております。
以上でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/64
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065・野口敞也
○野口参考人 グローバル化のお話がありましたけれども、コーポレートガバナンスの議論の中でもさまざまな進むべき道が議論されております。私どもも、アングロサクソン型でなく、しかしまた、必ずしも大陸型がいいとも考えておりません。やはり日本の実態に合ったものをさらに追求していくべきだろうと思います。
とりわけ、雇用の場におきましては、御案内のように、大手、中堅企業は非常に新規学卒者の青田刈りを促進させておりまして、中高年の人材を雇うというようなシステムがございません。そういう中で、雇用の流動化というのを一時に進めていくことには大変問題があると思います。
それから、ヨーロッパのシステムでございます。先ほど大口委員からの御質問にもございましたし、あるいは社民党さん、まだ御質問されていませんですが、その辺についてもあるのではないかと思います。
実は、ヨーロッパにおきましては、一般的には企業譲渡指令、こう呼ばれておりますEU指令がございます。一九七七年に既に確立されておりまして、その後、欧州の司法裁判所の判例の積み重ねによってさらに内容が充実されまして、昨年、九八年にこれを改正しております。どんなものかと申しますと、企業の譲渡あるいは企業の事業の全部または一部の譲渡につきまして、さまざまな労働者への保護を与えておるものでございます。
例えば、雇用契約がそのまま、あるいは雇用契約に伴う権利義務がそのまま移転先に動いていく、包括的に動いていくというようなものでございます。あるいはまた、合併や分割、こういうものを理由とした解雇というものは認めないというような中身、さらに、譲り受けた事業が同一性を有する場合には労働者の代表者の地位はそのまま維持されるというような中身でありますし、また四つ目は、そういうふうな事業の構造改革に当たっては労働者代表へ事前に協議をしなければならない、こういうものでございまして、これは単なる中途半端な指令ではございませんですし、すべての国において遵守を要請されているものでございます。
私どもは、こういうようなものもグローバルスタンダードの一つであり、同時に、日本もこれを導入すべきだというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/65
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066・吉井英勝
○吉井委員 時間が参りましたので終わります。どうもありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/66
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067・古賀正浩
○古賀委員長 次に、前島秀行君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/67
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068・前島秀行
○前島委員 五人の参考人の方々、御苦労さんでございます。最後でありますので、おつき合いのほどをお願いしたいと思います。
最初に、野口参考人に伺います。
いわゆる産業再生、本法の事業再構築、これは当然、企業の組織の変更を伴うことが予想されるわけでありますから、当然、労働者の地位、身分にかかわることが出てくる。したがって、雇用の不安がある、こういうことだろうと思います。
そこで、参考人の御意見、出されました資料等々を拝見させていただきますと、まず、政府、行政に向かって最低求めていることは何だろうかなというふうな感じがしますね。それは、再構築事業を推進するに当たって、いわゆる雇用の変動といいましょうか、従業員数の変動が生じるか生じないかを認定の計画書の中に明確に出してほしい、ここが大きな一つのポイントなのかな。これが一つ。
それと、いわゆる産業再編成等々に伴って生ずることが避けられない雇用の問題についてのさまざまなシステムとか、あるいはセーフティーネットというものがまだ十分整っていない。そのときに、リストラだけが先行しやしないのか、こういう不安というのが労働者、勤労者の中につきまとうんだろうと私は思いますね。したがって、長期的にはこの雇用不安を安心させるためのセーフティーネットを初めとするさまざまな仕組み、制度が整う、このギャップをどうするのかということが政府の方に求められているような気がします。
そういう面で、労働者側として行政、政府にこの法案を具体的に実施するに当たって求めている点、それから、長期的に求めている、その辺はぎりぎり何なのかという点をお聞かせいただきたい。これが一つ。
それからもう一つ。御意見、資料を伺って、本法に基づく再構築の事業を進めるに当たっては、絶対的要件として、労働側は企業に向かって協議と合意を求めている、こういうふうに私は思います。ここをちゃんと制度的にどう担保するのかということが大事、そのことを一番、連合として、働く者の組織として、ここに求めているのかな、こんな認識を持つわけでありますが、いわゆる本法の実施に当たっての行政に求める点、それから経営側に求める点を、御意見を伺いたい、こういうふうに思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/68
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069・野口敞也
○野口参考人 この法律の中に「従業員の地位を不当に害するものでない」と書かれてあります。どういうふうに解釈するかでありますが、いずれにしても、雇用労働条件に関するものについて従業員あるいは労働組合は相談にあずかり、これについて合意ができるものでなければ、国の施策としてやるべきではない、こういうように考えます。
そういう意味で、最後からお答えいたしますけれども、やはり協議なり合意を計画の中で確認する手段が必要であるというふうに考えます。これは、現実には労働関係の法律には、例えば三六協定でありますとか、あるいは先ほど触れました雇用の助成金についての制度もあるわけでございます。
雇用の変更あるいは人員の増減員について、計画の中で載せるべきではないか。私どもも全く賛成をいたします。同時に、計画がどういうように実行されているのかという途中の経過、あるいは最終的な結果について、これは政府も責任を持って確認をすべきだ、こういうように考えます。私どもとしましては、この法律がどういうように雇用に影響を及ぼしていくか、大変不安でございますが、そういう意味で、途中での経過確認というものができるようなシステムをつくっていただきたいというふうに思います。
それから最後に、リストラだけ先行をする、安心できるようなセーフティーネットをどう構築するかというお話でございますが、残念ながら、今の政府のシステムについて、私どもは安心できるようなセーフティーネットがあるとは思いませんし、また、政府だけでなくて、企業の制度、仕組みそのものが、失業した人たちを円滑に受け入れられるようなシステムにもなっていない。ですから、社会的、法制度的なシステムの改革というのと相まってやっていかなければいけない。これについては、もう少し中長期的な努力が必要であるというふうに考えます。
以上でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/69
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070・前島秀行
○前島委員 今井参考人に伺いたいと思いますが、今、この事業あるいはこの法律に基づくさまざまな産業再編あるいは事業再構築を進めるに当たっての労使の協議というのは、私、これはある意味でいったら当然だろうと思いますし、これを否定する者はだれもいないだろうと思います。今どき、この種の問題で労使の相談なくして一方的にやるなんてことは、あり得ない世界だろうと思いますね。ですから私は、相談をしてやる、お互いに協議をして進めるというのは当然で、一番今大事なのは合意というところではないだろうかな、こういうふうに思います。
先ほど言っていましたように、私たちの政治の責任、あるいは政府の責任等々、社会的な責任でセーフティーネット等々がまだ不十分と言わざるを得ない状況の中で、労働者の地位、身分の変更にかかわるようなことを法律的にさまざまな支援をして実行しようとするときに、労働者の側から見ると、それは協議と合意がなければ大変だよということは、働く側の者として当然要求として出てきてしかるべきだろうと私は思いますね。それが憲法二十七条で保障しているものだろう、こういうふうに思います。
そこで、我々政府なり行政なり政治の責任は我々の問題として置いたとして、いわゆる直接のかかわりある労使という関係の中で、この合意ということをどう経営の側も労働者に向かって保障するか、担保するかということが非常に大事ではないだろうか、こういうふうに私は思います。したがって、願わくば、私たち働く側といいましょうか、労働者の側から見れば、合意がない限りは絶対進めてもらいたくない、進めるべきではない。ここが私は、働く側から見れば、労働者から見れば、経営者に向かって最低の要求であるし、ぜひそこは守ってもらいたいという形に今日なってきているだろうな、こういうふうに私は思います。
そこで、今井参考人は、相談するのは当たり前だよ、当然だよ、やっていくよ、こう言いますけれども、問題は、合意というものを大事にする、合意を今後前提にしていくのか、そういう意味で、経団連の立場から産業界にもそういう指導をするということをどうとらえていらっしゃるのか、ぜひお考えをお聞かせいただきたい、こういうふうに思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/70
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071・今井敬
○今井参考人 先ほどから申し上げておりますように、私どもは当然、いろいろな事業の再構築をやるときに、これは計画が実行段階に入りましたら労働組合と協議して、そして合意されるもの、それから、個々の勤労者の身分の異動にかかわる問題についても一人一人の合意を取りつけるべきもの、かように私ども考えて今まで行動してきておりまして、これはどの経営者も同じだと思います。
ただ、会社が本当に生きるか死ぬかというときの選択になりますと、この合意というのがかなり対立的になる可能性は、それはございますね。これは、やはりある程度そういう事態も考えておかなければいけないというふうなことで、セーフティーネットの整備ということを別途お願いしているわけでございまして、また私は、その点につきましては見解がいろいろあるかと思いますが、かなりいろいろな点で整備されてきているというふうに思っております。
それで、新しい雇用の場を社会全体で創出するという意味からいえば、いろいろな面での規制の撤廃、緩和が進んできておりますし、それからまた、ミスマッチを解消するという意味では、職業紹介とか労働者派遣の自由が認められましたので、民間がハローワークのお手伝いをするということができてきておりますし、また個々の企業の中でも雇用者の再雇用のための教育訓練制度というものも随分進んできておりますし、そういったようなことをやりながら、個々の企業はとにかく雇用維持に最善を尽くしてやるということが大原則ではないか、かように考えているわけでございます。
それから、経団連といたしましては、この六月十一日に政府の対策が発表されましたときに、これは連合も一緒に呼ばれまして、官邸で総理、通産大臣、それから労働大臣ともお話をしたのでございますが、私ども直ちに各会員企業に通達を出しまして、新しい雇用の創出、それから例えば中途採用の拡大あるいは年齢制限の撤廃、あるいは学卒の未就業者の採用等につきまして、できるだけの配慮をするようにという通達を全会員に出しております。
そういったようなことで、あらゆることで雇用の安定に努力してやってきているわけでございますし、これからも努力していきたい、かように思っておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/71
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072・前島秀行
○前島委員 その合意ということを双方お互いに大事にするということが大切だろうと思います。ぜひ全体の御指導も、その点はお願いをしたいな、こういうふうに思います。
それから、高橋参考人に伺いたいと思います。
一つは、失業の今後の見通し、それとこの法案に伴う影響という点ですね。六月末公表で〇・二ポイント失業率が落ちて、若干いい方向かなと思うけれども、中身を見てみるとパート等々のあれでもって、中身的には必ずしもいいものではない。一般論としても、まだまだ雇用不安、失業率の上昇ということは考えられる。それに、本法が与える影響等も、正直言って心配しなくはない。その辺のところの認識はどう受けとめていいのかということが一つ。
それからもう一つは、先ほど、産業の再生に当たって四つのパッケージで進めていくことが大切だ、こう言われました。
そこで、最初の労働力の流動化の推進、それと二以降とのギャップ。私は、労働力を、労働市場を流動化でき得る先ほど言いましたようなさまざまな条件が今整っているのかな、ここはまだ不十分だ、こういうふうに見ざるを得ないではないだろうか、こう思います。
セーフティーネットにしても、さまざまな社会的な仕組みについても、また日本的習慣等々の点においても、労働力を積極的に流動化させるための条件というのは、まだないではないか。そのないときに、二以降の産業の再生、産業の再構築というところだけが先行をしていきますと、そこにギャップが生じて、混乱といいましょうか、社会的問題、労働者の側から見れば失業雇用不安というものが出てくるんだろうな。積極的に労働力を流動化するための条件は、まだ整備されていないと見るべきではないだろうか。
そこのギャップをどう埋めていくかということと、この新しい再生あるいは産業再構築に伴う雇用の不安との調整というところが私は工夫の余地であり、そこをうまくやっていくというところが課題だろうな、こういうふうに思いますが、その辺の認識についてどう受けとめるべきなのか、御意見を伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/72
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073・高橋進
○高橋参考人 お答えいたします。
これはあくまでも私どもの試算にすぎませんが、例えば二〇〇一年三月、二〇〇〇年度末でございますが、もしゼロ成長が続きますと、二〇〇〇年度末で失業率は六%を超えるというふうに私どもは試算しております。逆に、二%を超える成長が可能であれば、失業率は落ちていくというふうに思います。ですから、当たり前でございますが、当面の景気情勢が極めて大きく影響を与えるということで、低い成長であれば、当然これから失業率が上がっていくことは短期的に覚悟しないといけないということだと思います。
ただ、私は、失業につきましては、短期的に見た失業率の上昇も当然でございますが、もう少し中長期的に見ましたときに、日本経済はやはり失業が構造的に高まっていくという危機にあると存じます。
例えば、製造業などはかなり効率化が進んでおりますけれども、金融ですとか建設ですとか、こういったサービス業で極めて効率化がおくれているところ、これはこれから効率化が進んでいけば当然雇用があふれ出てくるという形になってまいります。そこで、そういう非常に効率性の低い産業から、これからどのぐらい雇用があふれ出てくるかということを勘案して計算しますと、例えば二〇〇五年とかそのぐらいのときには、失業率で見まして八%とか九%とか、そういう姿になっていても不思議ではないというふうに思います。
そうしますと、日本の問題は、短期的な雇用の維持ということもさることながら、中長期的に見て失業率を高めないための措置というものが必要だと思います。そのためには、足元で個々の企業が雇用の維持努力をすること、これは当然必要でございますけれども、その一方で、やはり日本の産業構造を高度化していって新産業、新企業を起こしてくるということをしませんと、従来型の成熟産業だけを維持していっても雇用は失われる一方だと思います。ですから今、足元で新産業、新企業を育成するための努力というのをとにかく早く進めるということが必要だと思います。
そうは申し上げても、私はギャップは生じると思います。それで、そのギャップは、正直申し上げてやはりある程度は出てくると思います。それにつきまして私は、今の政府の雇用対策で十分かという意味では、直接的な雇用維持ということよりも、やはり、人材を再教育していく、職業訓練していくという観点で流動化対策をもっと強化していく必要があるのではないかというふうに思います。
具体的には、例えば私どもとしては、アメリカにありますが、コミュニティーカレッジのような、要するに大学がもっと人材を再教育していくようなシステムを強化していくというようなことも含めまして、再教育システム、職業訓練のシステムというのを、今までは企業が担っていましたけれども、これからは企業は担えないという前提に立って、制度として拡充していくということが必要だというふうに考えております。
そういう意味で、雇用対策は十分かと言われれば、それは決して十分ではない。流動化を促進するための対策はさらに打っていかないといけない。しかしながら、足元で摩擦的な失業が高まることを恐れ過ぎると今度は産業の再生そのものが進まない。そういうジレンマにあるというふうに私は存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/73
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074・前島秀行
○前島委員 ギャップが存在する、そこを埋めながら進めていくというところが最大のポイントだろうなと。現に私も、今先生の認識と同じようにギャップが生じていると。そこで、労働者の側から、働く者の側から見れば、心配する問題が出てくるわけですね。
そういう中で、この法案が出てくるならば、こういう産業再編が必要という客観的情勢であることは間違いないというのは私も認識する。だとするなら、セーフティーネットを初めとする社会的システムのギャップが生じないという前提が必要だろう。しかし、現実に生じている。だとすると今、連合から資料で出てきている企業組織変更に伴う労働者保護法というものが必要になってくるのではないだろうか。それが相伴ってこのことが進められることが大事だろうというふうに私は認識するわけであります。
そこで、最後に野口参考人にお聞きしたいと思います。
この資料の中で提示いただいておりますこの労働者保護法という観点を連合としては今後どういうふうに位置づけていくのか。あるいは、政治の場にこの法案の制定というものを求めていく、そういう位置づけにあるのか。その辺の考え方を聞かせていただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/74
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075・野口敞也
○野口参考人 企業の組織変更に伴います労働者の保護法につきましては、私どもとしても新たな法案づくりについて検討を進めたいと思いますし、また、さまざまな支援あるいは御協力をいただいている政党の応援も得たい、その上で早期に法案を国会の方へ提案をしていただきたい、このように考えております。
この法案だけでなく、例えば、企業が倒産したような場合に労働者の労働債権がどういう順位で法律上守られるか、このような問題につきましても、先ほど申し述べたと同じように、国際的なグローバルスタンダードというのがございます。
あわせて、これからのさまざまな変化に対応するものにつきまして、私どももこれから一段と勉強を積み重ねたいと思いますし、また、先生方の御指導をお願いするところでございます。
以上でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/75
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076・前島秀行
○前島委員 どうもありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/76
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077・古賀正浩
○古賀委員長 これにて参考人に対する質疑は終わりました。
参考人の皆様には、長時間にわたりまして貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。
午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。
午後零時二十六分休憩
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午後一時三分開議発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/77
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078・古賀正浩
○古賀委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
質疑の申し出がありますので、順次これを許します。岸田文雄君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/78
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079・岸田文雄
○岸田委員 自由民主党、岸田文雄でございます。
昨日、八時間の質疑を行い、そしてきょう午前中、参考人の質疑を行い、またこれから引き続きまして質疑を続行いたします産業活力再生の議論でありますが、この議論を振り返ってみますと、ことしの随分早い時期から大変大きな議論が続いてきたわけであります。
日本の厳しい経済の状況、こういったものを前にしまして、昨年、金融の問題が大きな議論になったわけであります。また、引き続きまして、昨年の末から平成十年度の第三次補正予算、そして平成十一年度本予算等で需要サイドの対策というものが議論され、そしてそれに加えて、金融、需要、こうしたサイドでの対策に加えまして、供給サイドの対策ということから、産業活力再生というものが大変大きな議論になってきたところであります。
バブルの責任論ですとか、雇用に対する不安ですとか、さまざまな角度からこの問題に対する議論が続いてきたわけであります。例えば、今審議されておりますこの法案につきましても、一部には、バブルの責任を棚上げにして公的資金のお手盛りにあずかろうという法律ではないか、こんな見方をする方もおられるわけであります。こうしたバブルの責任論というもの、我々は謙虚にこうした批判にも耳を傾けなければいけないわけでありますが、しかし、具体的にだれに責任があるのかということを論ずること、これは大変難しいわけであります。
昨日、当委員会の質疑の中でも、通産大臣がおっしゃっておられました。バブルの時代、経営者のみならず、官僚もあるいは銀行もすべてが判断を誤った、そういった御発言もあったわけであります。私自身も同じ思いであります。しかし、一歩譲ったとして、仮に、経営責任を負わなければいけない企業や人がおり、そして一方、全く責任のない人がいるということを認めたとしても、どこで線を引くのか、具体的にだれがどこまで責任を負うのか、これは大変難しい議論になってしまうわけであります。
よく比較の対象として金融の問題が挙げられるわけでありますが、金融の場合、公的資金が導入されて、その経営責任というものが厳しく追及されている。こういったものを引き合いに出して、いろいろな議論をされる方もおられるわけですが、金融の場合は、公的資金を導入して、国が株主という立場に立って、その株主という立場から経営者の責任を追及する。それぞれの立場が明確になっていて、それぞれの役割のもとに責任を追及するということになっているわけですから、この産業活力再生の議論において、事業再構築等を支援していくという当法案のような形において、同じく責任論を云々するということ、これは大変おかしなことになりかねない、そんなことも思うわけであります。この辺をよく整理して、こうした議論もしていかなければいけないのではないか。
けしからぬという感情論に振り回されて、結局何にもできないということになってしまっては、みんなで泥舟に乗って沈んでしまうということになるのでありましょう。謙虚にこうした責任論にも耳を傾けながら、一体何ができるのか、一体何をなすべきなのか、具体的に、そして現実的に我々は対応を考えなければいけないのではないか、そんなことを強く感じております。
さらに、いろいろな議論の中で、雇用の問題、引き続き当委員会でも大変大きな議論が続いているわけであります。この事業再構築の円滑化等において、それに伴ってリストラが促進されるのではないか、あるいは雇用に影響が出るのではないか、こんな議論が出ているわけでありますが、もちろんそういった面がないとは言えないわけです。そのために、この法律においても、三条六項六号等において、認定基準の厳しいチェックを行うというような内容が盛り込まれているわけですし、またこの法律以外にもセーフティーネット等を考えなければいけない、これは当然のことであります。
しかし、その部分にとらわれて、この全体の議論、この法律全体を否定してしまっては、木を見て森を見ずというか、極めて視野の狭い議論になってしまうのではないか、そんなことを感じます。なぜならば、企業というのは国内だけで活動しているものばかりではないからであります。国際社会、あるいは市場原理にさらされつつ、大きな大競争の中で企業が企業活動をしている。こういった大競争に打ちかつために、生き残っていくためには、いやが応でもこの法律の中に盛り込んでいるような事業再構築、これはしていかなければいけないわけであります。それ以外にも研究開発等、前向きな努力を進めていかなければいけないわけであります。
この政府が提出した法律の中身を見ましても、その施策は、決してほかの国において行われているような施策を飛び越える中身にはなっていない。あくまでもグローバルスタンダードの範囲内で行われているということを考えますときに、これさえ準備できないようであるならば、やる気のある企業あるいは優秀な企業は、日本では事業再構築は難しいということで海外に出ていってしまう。
そうなってしまうと、まず基本的に、日本の国の中から良質な、そして大きな雇用の場自体がそもそもなくなってしまうということにもつながりかねないわけでありますから、雇用の問題を考えるにしましても、確かに目先の具体的な問題についてしっかりとした対応を考えなければいけないわけですけれども、大きな流れを見た上で、日本の国の中にどのようなしっかりとした雇用の場を設けていかなければいけないか、そういった目で、大きな視野でこの問題をとらえないと、木を見て森を見ず、本当に小さな視野に議論が終始してしまうのではないか、そんなことも感じてならないわけであります。
それに加えまして、法律の中を見てみますと、中小企業対策、あるいはベンチャー企業支援、さらには研究開発に対する支援等が含まれている等々を考えますと、私自身、政府が提出しておりますこの法案は評価に値すると強く感じています。そして逆に、先ほど申しましたように、グローバルスタンダードから考えて、最低限これぐらいの中身はやはりやらなければいけないのではないかというような思いすらしております。
そういった思いから、ぜひ一日も早くこの法案を成立させて、広く国民に対して、そして世界に対して、日本の産業再生を目指す明確なメッセージを早く発することがぜひ必要なのではないか。そういったことから、この法律の成立に努めなければいけないと私自身強く感じているところであります。
そうした基本的な思いを持ちながら、幾つか、この法律の中身について御質問をさせていただきたいと思います。
まずは、この法律の中の研究開発の活性化と言われる部分について、ひとつお伺いさせていただきたいと思います。
国の委託研究開発に係る特許権等を受託者に一〇〇%保有させることを可能にするための措置、いわゆる日本版バイ・ドール法と言われている部分でありますが、この部分は、研究をする側に立った場合、非常にやる気を引き出す等、大きな成果を期待できるわけでありますし、また、特許の中身にしましても、数だけではなくして、価値の高いもの、そして魅力的なものがこれによって次々と出てくるのではないか、そういった意味から大きな期待を持っています。
しかし、この研究開発成果の活性化の目的は、決して、こうした特許権等を研究者、受託者側に保有させるということにはとどまらないわけであります。目的はあくまでも、そうした形をつくることによって、研究者側にやる気を出して魅力的な成果を出してもらって、それを活用するというところに結びつけなければいけない。その活用するというところが目的でなければならないわけであります。
そういった意味から、民主党さんの方で出されておりますこの法案の中で、受託者に通常実施権を与えるという形になっている。政府案は特許権の所有権を与えるという形になっている。その点について、きのう同僚の大口委員の方から質問が出て、それについて松沢提出人の方から、その部分に関しては政府案の方がすぐれていると素直にお認めになられるという部分がありました。その素直さには大変敬意を表し申し上げる次第でありますけれども、通常実施権を与えるか、所有権を与えるか、これは活用するという部分を考えた場合、大変大きな問題ではないかという気がしております。
要は、研究成果を活用する場合、特許権等を売却して活用するという形、こういったところを大切にしなければいけないというふうに思うわけです。研究開発をして特許権を得ても、たちまちはその企業では商品化等に結びつかない、たちまちは使わないというケースもあるわけです。しかし、その特許権はほかの企業にとっては大変魅力的だ、すぐ使いたいということもあるでしょう。それから、開発能力等が低い中小企業を考えた場合、なかなか自分ではそれを開発することはできない、その特許権をぜひ使わせてもらいたいというような要望もあるわけであります。
こうした要望にこたえて特許権を売却するということ。これは、通常実施権にとどまっていたのでは売却ということはできない。やはり政府案にあるように、特許権の所有権を移転するというところまでいかなければいけないのではないか、そんなように思うわけであります。
この特許権等の知的財産の売却というもの、これはアメリカ等の例を見ておりますと、まさに金のなる木だというような言い方をする方もおられるわけであります。何か聞きますと、IBMという会社は、昨年の数字でありますけれども、この知的財産権の部門におきまして、十一億ドルですから、一千三百億円の経常利益を上げている。みずからの経常利益の一九%、二〇%近くはこの知的財産部門で経常利益を上げているというような状況でありますから、この知的財産権をいかに活用するか、売却等のやりとりを活性化させるか、大変大きな部分ではないかという気がいたします。
そういったことから、通常実施権と特許権の所有権の問題、大変大きな関心を持っていたのですが、先日、大口委員の方から民主党さんの方には質問がありましたので、それは納得したところであります。
しかし、いずれにしましても、この法律において特許権等の権利の所有権を移転するということは第一歩でありますけれども、これにとどまってはならない、これを活用することを考えなければいけないわけであります。
そこで、ひとつ政府にお伺いしたいのですが、この活用という意味で、さきに成立したTLO等を活用する法律、あるいはTLOそのものの活用、あるいはデータベース化をして公開する制度とか、知的財産を活用するいろいろな仕組みが考えられるわけでありますが、それについての認識とそして現状をひとつ御説明いただけますでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/79
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080・林洋和
○林(洋)政府委員 お答え申し上げます。
私どものいわゆる日本版バイ・ドール条項の原型となりましたアメリカのバイ・ドール法、これは、政府資金による研究開発から生じました特許権を民間企業などに帰属させることによって、まさに委員御指摘のとおり、産業における研究成果の活用を図り、これがひいては米国産業の技術力の向上あるいは現在の米国産業の再生につながったと評価されております。
そういう意味で、日本版バイ・ドール条項、条文で申し上げますと第三十条でございますが、この三十条においても、特許権を得た受託者が、その特許権を十分実施化し得る以上の長期間を経たにもかかわらず、他人の実施を単に妨害するためにのみその特許権を所有するような場合においては、国が通常実施権を第三者に許諾することを求めることができることとしております。それによって、特許権者のみならず第三者における研究成果の活用が図られるよう工夫をしておるところでございます。
また、TLOのお話がございましたが、特に受託者が大学である場合については、大学に帰属した特許権にかかわる研究成果の民間における活用が図られるよう、大学等技術移転促進法に基づきまして引き続きTLOへの支援措置を講ずるとともに、今回、特許料等の減免措置を盛り込むこととしております。
また、未利用特許の活用ということも含めて、開放の意思のある特許提供者の特許情報や、その特許の導入希望情報をインターネットで提供するなど、特許流通データベースの構築と情報の提供、あるいは、中小ベンチャー企業などに対して特許導入についての指導、相談を行う特許流通アドバイザーの派遣等々を行っております。これは平成九年十月からやっておりますけれども、その間、約一年半ぐらいで全国の特許流通アドバイザーに六千件の相談が寄せられております。
特定技術のライセンス成約の件数はまだ三十三件でございますけれども、こういったものも含めて、技術情報の有効利用のための政策を一生懸命やってまいりたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/80
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081・岸田文雄
○岸田委員 次に、これもまた大変大きな議論になりましたが、大臣認定の透明化、明確化の問題についてお伺いしたいと思います。
この認定の透明化、明確化。要するに、行政の恣意、裁量が入るのではないか、本当に判断能力があるのか、いろいろ議論が出たところであります。どのように透明化、明確化を実現するかということで、何回も答弁をいただきました。基準をつくる、あるいはパブリックコメントを行う、あるいは数量化を行う、あるいは認定の決定期間を一カ月以内で行う等々さまざまな方策を講じる、そういったお答えがありました。
きょうは時間がないですから、それをまた繰り返していただくことはもう省略させていただきますが、答弁の中にあった透明化を実現するさまざまな努力、ぜひしっかりとやっていただきたいということをお願い申し上げますとともに、一つ思うこととして申し上げるのですが、まず最大限そうした透明化、明確化を行って認定を行った、そして認定を行ったその結果を事後的に公開するということ、これがやはり大切なのではないかなという気がいたします。
質問の最初で、バブルの責任論というものの難しさを申し上げたわけであります。しかし、モラルハザードを生じるのではないかという一部の批判にこたえるためにも、こうした心配にこたえるためにも、この法律を適用した、認定を行ったその結果をできるだけ公開する工夫をしていく必要があるのではないか、そんなことを感じるのです。その点について、例えば法律の中で三条七項において公開するというような内容も含まれておりますが、それも含めて、公開するということについてどのように考えておられるか、お答えいただけますでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/81
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082・江崎格
○江崎政府委員 認定を受けた計画の公表の問題でございますけれども、今委員御指摘のように、法律の三条七項におきまして、認定を受けた計画を公表するということを明記しております。これによりまして、国民の皆様に透明性をより一層確保するという措置をしたいと思っております。
それから、計画の実施状況につきましても把握をしたいということで、法律の第三十五条に基づきまして報告徴収なども受けるようにしておりまして、こうした措置を通じまして施策の実施状況についても十分フォローしたい、このように思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/82
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083・岸田文雄
○岸田委員 次にお伺いさせていただきますのは、産業活力再生の議論で、雇用に影響があるというようなことが盛んに議論の中に出ておりました。ただ、一方に新規あるいは成長産業の振興という内容も含んでいるわけですから、新しい雇用創出ということにおいて期待も持てるわけであります。しかし、残念ながら新規・成長産業の振興に時間がかかるということは否定できないと思うのです。
加えて、そもそも日本の国の現状が大変厳しい雇用の状況にある、こういったことを考えますときに、今回、産業活力再生のために法律を提出すると同時に、緊急雇用対策、補正予算等がセットとして出されているということ、これは大変大きな意義を感じますし、あるべき姿として評価しなければいけないのではないか、そんなことを感じます。要は、産業活力再生と雇用対策、この両者が相補って、現実の経済社会に立ち向かっていかなければいけないのではないか、そんなことを感じます。
そして、雇用対策の方の中身を見ておりますと、柱としまして、例えば新規・成長分野雇用創出特別奨励金、これは補正予算の中で九百億計上されておるわけであります。さらには緊急地域雇用特別交付金、これは補正予算の中で二千億計上されているわけです。こうした二つの柱を見てみたときに、新規・成長分野雇用創出特別奨励金は平成十四年三月三十一日までという期限つきであります。そして一方、緊急地域雇用特別交付金、これはおおむね二年間でこの予算を消化するという中身になっているわけであります。
そうすると、雇用の方の対策の大きな柱がここ二、三年の期限つきで盛り込まれていることを考えますと、産業再生と雇用の対策、両方が相補って進まなければいけないということを考えるときに、この産業活力再生の方も、時間がかかるとはいいながら、二、三年の間にひとつ成果を出さないと、この二つの車、両輪がうまく回転していかないのではないか、そんなことを考えます。企業の再構築でも、新規産業の創出でも、研究活動の活性化においても、ここ二、三年で成果を上げなければいけないのではないか。
この法律を見ますと、附則において、平成十五年三月三十一日で見直しをするということになっておりますが、そこまで待たずに、雇用対策との関係で二、三年のうちには成果を出さなければいけないのではないか、そんなことを思うわけですが、この産業活力再生に向けての成果ということについて、見通しとか決意、御所見を通産大臣にお伺いできませんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/83
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084・与謝野馨
○与謝野国務大臣 先生御指摘のとおり、本法案に基づく施策の実効性を上げるためには、雇用対策のスケジュールも踏まえ、両者の間の十分な連携を確保することが重要でございます。とりわけ、我が国経済の生産性の伸びが著しく低下していること、加えて、今後二、三年の間に我が国企業を取り巻く環境が一層厳しくなることを踏まえると、企業による事業再構築並びに創業及び中小企業者による新事業開拓を一刻も早く進め、産業再生を図ることが不可欠でございます。
こうした観点から、本法案では、事業再構築の円滑化並びに創業及び中小企業者による新事業開拓については、およそ三年半程度のうちに実施されることを念頭に置いて、関連する計画の提出期限を平成十四年度末までに限定しているところでございます。そのためにも、本法の施行はできる限り急ぐこととしており、中小企業部分は九月一日から、その他の部分についても十月早々からの施行を念頭に置いております。
また、これと並行して、各通商産業局、都道府県、関係機関、団体等とも連携し、本法関連施策について積極的な周知徹底を図る所存でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/84
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085・岸田文雄
○岸田委員 ありがとうございました。
時間もなくなってまいりましたので、最後に一つお伺いさせていただきたいと思いますのは、先ほども申しましたこの法律の中身は、緊急性の高いもの、あるいは、これだけは最低限やっておかなければいけないのではないか、そういった中身であると感じております。それだけに評価はするわけでありますが、しかし一方で、これですべて済んだというわけにはいかないわけであります。本格的な産業活力再生のためには、この法律をまずしっかりと実施していくというのはもちろんでありますが、それに加えて、まだまだやらなければならないことがたくさんあるのではないかなという気がいたします。
午前中の参考人質疑の中でも、連結納税制度の話もたびたび出ておりましたし、またそれ以外にも、いろいろ取りざたされている法律として、きょうの企業の倒産法についてどうかというような議論、あるいは、基本的に敗者復活を可能とするような制度、仕組みをつくっていかなければいけないのではないか、あるいは税制の議論等々、まだまだやらなければいけないことがたくさんあるのではないかなということを感じております。
最後に通産大臣に、この法律を早く実施にこぎつけていただくと同時に、これからの産業活力再生に向けての方向性あるいは決意等について、ひとつ御所見を承らせていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/85
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086・与謝野馨
○与謝野国務大臣 この法案をぜひ国会で早く御承認をいただきたいと存じますけれども、これは我が国経済の中長期的な活力基盤を形成するための第一歩であると私は思っております。
その後、私どもがやらなければならないのは、第一には、中小企業等の事業再建手続法制の導入、再建型倒産法制と呼ばれているものですが、これは法務省の方で相当準備が進んでおりますので、秋にはきちんとした条文ができてくると思っております。第二は、会社分割制度の創設。第三は、先生がお触れになられました連結納税制度の導入。第四は、企業会計制度の変更を円滑に行うための環境整備、これはたくさんの難しい問題を含んでおります。それから、一般論として、規制緩和の一層の推進。こういうおおむね五つのことに日本全体として取り組んでいく必要があると私は思っております。
加えまして、ベンチャー企業、中小企業をさらに守り立てるための資金面、制度面での対応や、日本がこれから二十一世紀を生きていくための長期的なリーディング産業を創出していくための国家産業技術戦略の策定など、技術革新政策についても抜本的に力を入れていくべきものだと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/86
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087・岸田文雄
○岸田委員 ありがとうございました。質問を終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/87
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088・古賀正浩
○古賀委員長 中桐伸五君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/88
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089・中桐伸五
○中桐委員 民主党の中桐伸五でございます。
私は、きょうは政府提案の産業活力再生特別措置法案について、雇用の問題を中心に、そしてまた労働者の保護という立場から質問をさせていただきます。
民主党は、産業活力再生のために今最も必要なことは起業家精神を発揚することでありまして、そしてまた、そういった新しい起業家精神を持った国民の一人一人の皆さんに新しい事業に挑戦するチャンスを公平に開く、そういう意味で既に対案を出しております。
民主党案については、きょうは私は質問をすることにいたしません。政府提案の法律案について質問するわけでありますけれども、民主党の基本的な姿勢は、先ほど申し上げましたように、起業家精神を発揚する、公平なチャンスを国民に提供するということが最重要の課題であり、これこそまさにポジティブな産業活力再生の最重要な問題であるというふうに認識しております。
したがいまして、私はこれから政府提案の法律案について質問いたしますが、これは百歩譲って、今の政府案の内容についていろいろ疑義がございますので、その点についてこれから質問をさせていただきたい、そのように考えておるところであります。
さて、政府提案の、産業再生法というふうに呼ばせていただきますが、これがもし仮に制定されたといたしまして、この産業再生法に一体どういう企業や部門がアクセスをすると想定されるのか。この法律の提案をされた担当省である通産省の方から、簡単で結構ですから、要点をお答えいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/89
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090・江崎格
○江崎政府委員 この法案というのは、特定の業種などを指定しておりません。ですから、事業者の種類とか規模を問わずに、生産性の向上を目指した取り組みをしたいという事業者がすべて対象になり得るわけでございまして、したがいまして、現在の段階で、この段階で、どの業種あるいはどういった企業ということを明確に申し上げることはできないわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/90
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091・中桐伸五
○中桐委員 業種ではなくて、私はどのような企業、部門というふうに申し上げたのですが、では、どういう条件のある企業や部門がアクセスをするとお考えですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/91
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092・江崎格
○江崎政府委員 それぞれの企業にあります生産性の低い部門から生産性の高い部門に経営資源を移す、それについて一定の環境整備をするというのがこの法案のねらいでございますので、それぞれの企業の経営者の判断でございますけれども、自社の中に生産性の低い部門があってそれを高い部門に移したいという、チャレンジをしたいという企業は、そういう部門を抱えている企業は申請をしてくる可能性があるというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/92
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093・中桐伸五
○中桐委員 生産性が低い部門が生産性の高い部門に移行するということですが、そこで、生産性が低い部門がどのような過剰を抱えておるかということが雇用の問題でも大変重要なところでございます。
そこで次にお聞きいたしますけれども、そういう状況にある企業が、雇用の問題におきまして、事業の再構築という点について、この法案では施設の相当程度の撤去もしくは設備の相当程度の廃棄ということが含まれているわけでありますが、この施設の撤去あるいは設備の廃棄によって、この法律にアクセスして計画を実施した場合、現実の問題としてどのように失業という問題が生じるか。私は、生産性の低い部門から高い部門にかえるといっても、その過程で過剰な雇用という問題がもしあったとすれば、新しい再構築に当たって失業が生じることは避けられないというふうに考えているのですが、その点についてどうお考えでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/93
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094・与謝野馨
○与謝野国務大臣 大変簡単な話で、工場がなくなれば職場がなくなるという簡単な図式だと私は思いますけれども、そういう簡単な物事の解決の仕方はしていただきたくないというのが今回の法律だと思います。企業が事業再構築を行うに当たって、安易に人員削減をするのではなく、労働者の雇用の安定に最大限配慮することが企業の社会的責務であることは言うまでもないと思います。
我が国の企業はこれまでも、設備処理を行う場合に、その設備処理を行った部門の雇用の減少は招くことがあっても、新事業部門への配置転換、関係会社への出向等を行うことにより、雇用者が職場を持ち、また雇用者の有効活用に努める、そしてそのようなことで雇用の安定を図ってきたところでございまして、今後ともこのような企業の努力がまず求められるものであると考えております。したがって、設備の処理をもって直ちに失業者を生むというわけではないと考えております。
この法律案においても、雇用にしわ寄せをしない事業再構築を推進するとの観点から、雇用の安定に十分な配慮を行うこととしており、六月十一日に決定した緊急雇用対策で講じられた措置も含め、企業内配置転換や人材移動の円滑化のための支援措置を最大限活用して、政府としても雇用の安定等に万全を尽くしてまいりたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/94
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095・中桐伸五
○中桐委員 私の質問の意味は、この再生法が意図している拡大部分と、そしてもう一つは施設を撤去あるいは設備を廃棄する、このバランスの問題でありまして、長期的に、例えばベンチャー企業が育ってくる、これは比較的長いスパンの中で起こってくる過程だと思うのでありますけれども、たちまちこの産業再生法が成立をして、アクセスをしてくる企業の雇用計画というものが、短期間で、例えば一年間ということを見た場合に、実際に失業者が生まれる可能性というのはあるのかないのか。
その点について、簡単で結構ですから、あるかないかをお答えいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/95
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096・与謝野馨
○与謝野国務大臣 過渡的な現象としてはそういうことも考えられるだろうと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/96
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097・中桐伸五
○中桐委員 過渡的にはそういう現象が考えられる、そういうお答えであったわけです。したがいまして、過渡的に失業者が生まれるということと認識をして、次の質問に移りたいと思います。
この事業再構築というものは、施設の撤去や設備の廃棄を行う場合にも、中核的部分の拡大とセットでなければならないというふうにされていると理解をしております。では、法制定後アクセスをした企業が、認定を申請した企業が、認定をされるかどうかという条件の問題をお伺いしたいのですが、雇用面から見まして、拡大部分と撤去あるいは廃棄の部分、これのバランスについて、この法律では認定にかかわって何らかの制約を設けるのかどうか、この点についてお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/97
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098・江崎格
○江崎政府委員 雇用の問題でございますけれども、具体的にどういう事業再構築をするかというのは、それぞれの企業の判断で拡大部分あるいは縮小部分をどのように組み合わせるかという具体的な事業の再構築計画をつくるわけでございまして、そうした事業の再構築の実施に伴います雇用者の増減の問題について、一律に基準を設けて認定の基準に導入するというのは非常に難しいというふうに思っております。
したがいまして、認定に当たりまして、雇用の影響ということの問題につきましては、私どもの提案しております法案では、従業員の地位を不当に害することがないものという観点で、その計画を見まして、労使間で十分話し合いを行ったかどうか、あるいは労働者に対する配慮を十分に行う計画であるかといったようなことを確認するということにしているわけでございます。
それから、仮に雇用者数が変動する場合でありましても、これも、労使間で十分話し合いをしている、あるいは企業内の配置転換や関係会社への出向などをもちまして雇用の安定に十分配慮を払っているということであれば、それによって雇用の部分については認定要件を満たすということになれば、認定の対象になることもあるというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/98
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099・中桐伸五
○中桐委員 労働者にとって不当という、この点については後ほど質問で明らかにしていきたいと思いますが、先ほど私が質問した内容についてさらに突っ込んでお聞きをいたします。
事業再構築計画という項のところに、労務に関する事項ということがございまして、計画実施前後の従業員数を記入するようになっているということでありますけれども、これは、申請が出されて認定をする際に、認定基準とどう関係をしているのか。私がこういう質問をさせてもらうのは、全体として雇用者数が大幅に減少する場合も認定を受けられるのかどうかということが大変気にかかるものですから、そういう質問をさせていただいているわけであります。
具体的に例を挙げてお答えいただく方がわかりやすいと思いますので、例えば、中核的部分の拡大が全体の一割程度で、撤去や廃棄が九割を占めるというふうな場合にも申請をされるということもあろうかと思います。そういった場合、認定というのは受けられるのかどうか。
つまり、認定基準というものを、先ほどの、一律に基準を設けることは難しいということになりますと、まさに裁量行政そのものになるではないかという危惧もございますから、具体的な例を挙げてお示しをしたわけでございまして、この認定基準の運用というものについて、そしてまた、私の挙げました一割、九割というふうなものがあった場合にどうされるのか、お聞きしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/99
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100・江崎格
○江崎政府委員 労務に関することということでございますけれども、これは、計画の記載事項としまして、従業員数の事業再構築を始める前と後とでの数を把握するということにしているわけでございます。
その上で、雇用への影響があるということになった場合には、法案の第三条六項六号の認定基準にございます「従業員の地位を不当に害するものでないこと。」この具体的な判断の仕方としましては、労使間で十分な話し合いを行うかどうか、あるいは労働者に対する配慮を十分に行って計画を実施しようとしているのかどうかということでございまして、こういったことはかなり外形的にはっきり判断できる問題でございまして、裁量行政に当たるという御懸念は当たらないというふうに思います。
それから、雇用数が減る場合の扱いでございますけれども、これも今申し上げました第六項六号の認定基準に照らしまして、労使間で十分話し合いをしているとか、あるいは企業内の配置転換等で雇用の安定に十分配慮しているという条件を満たしておれば、雇用数が減る場合であっても認定の対象になることがあり得るということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/100
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101・中桐伸五
○中桐委員 と申しますと、昨日の質疑でも、聞いておりますと、協議をしたという事実があればいいので、協議の後の結果は認定を決定的に左右するものではないというお答えをされているというふうに私はお聞きをしたわけです。
この点については、労使の話し合いということについてはまた後ほどの質疑でやらせていただきますが、先ほどの答弁ですと、廃棄、撤去が九割で一割が拡大という場合も認めることがあるというふうに認識をしてよろしいですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/101
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102・江崎格
○江崎政府委員 委員の設定された九対一という比率のときどうだということでございますが、これはすべてのケースが、ほかの要件も含めまして具体的に判断する必要があるわけでございまして、そのことのみを取り上げて認定になる場合があるかないかというのは、ここでお答えすることはできないと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/102
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103・中桐伸五
○中桐委員 いや、よく聞いてください。仮に、ほかの条件は認定の範囲に入っているとしましょう。問題は、拡大部分が一割で撤去や廃棄が九割という場合に、認めるのですか、どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/103
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104・江崎格
○江崎政府委員 あくまでもこの法案の三条六項六号の認定基準、つまり従業員の地位を不当に害しているかいないかという観点から判断するということでございまして、その具体的な判断の基準としては、労使間で十分話し合いをしているかどうか、それから労働者に対する配慮を十分行う計画かどうか、こういうことから判断するということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/104
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105・中桐伸五
○中桐委員 委員長、お聞きになってわかるように、答えになっていないと思うのですね。
つまり、話し合いをしているということも前提なんです。その上で、一割と九割の問題のお答えを求めているわけですから、そういうふうに答えてください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/105
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106・江崎格
○江崎政府委員 先ほどから申し上げておりますように、雇用数が減少する場合であっても、先ほど御紹介した三条六項六号の認定基準に適合している場合には、認定の対象になることがあり得るということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/106
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107・中桐伸五
○中桐委員 それでは、私の認識として、先ほど私が提示した例の場合でも、そういう申請が出た場合でも、話し合いとかそういった条件が整っていれば認めるというふうに認識をさせていただきます。
それでは次に、この計画というのは、申請の段階においてつくった計画というのが実は絵にかいたもちになって、実施段階で人員整理を行うということも、ケースとしては、可能性としては考えられると私は思います。計画提出段階で雇用者数が増加することになっていたという場合においても、計画実施後に人員整理が行われるということもあると思いますが、そういう場合は、認定というものについて、既にした認定を取り消すということがあるのかどうか、お聞きいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/107
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108・江崎格
○江崎政府委員 御提案しております法案におきましては、計画の作成段階だけではなくて、事業再構築計画の実施の段階におきましても、雇用者の理解と協力を得て事業の再構築を行うということを事業者の責務にしているわけでございまして、その具体的な責務として、労使間で十分話し合っているかどうかとか、あるいは雇用の安定に必要な措置を講じているかどうかということでございます。
それで、今御指摘の当初の計画と違った人員削減をやるということでございますけれども、単に当初の計画を外れて人員を削減した、数が少し違うということだけではなくて、労働組合等との必要な協議を行っていないとか、あるいは雇用の安定に十分な配慮を行わないというようなことで、つまり、従業員の地位を不当に害するものでないという認定の要件に適合しなくなったというふうに認められる場合には、その計画の変更を指示するとか、あるいは認定を取り消すということはもちろんあるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/108
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109・中桐伸五
○中桐委員 だんだんとこの法律の中身がわかってまいりまして、途中で計画が変更され、人員の整理が行われるという場合にも、非常に重要なのは、申請当初の労働者との話し合いということだけではなくて、その実施後の話し合いというのも重要だという意味として理解してよろしいですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/109
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110・江崎格
○江崎政府委員 そのとおりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/110
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111・中桐伸五
○中桐委員 わかりました。労働者との話し合いというのが、認定を取り消すかどうかという点についても大変重要な条件になっているというふうに理解をいたします。
しかし問題は、では、実際にそういう運用をするとして、その経過ですね、申請を受け認定をした、その後の雇用の計画がどういうふうになっていっているのか、その状況把握というのが大変重要になってまいります。当然それは労働者との話し合いということが行われているのかどうかも含めて大変重要になってくると思うのですが、この法案では報告を徴収することができるということになっているだけでありまして、これは義務づけられていないのではないのか。また、そういう法文の条文で状況把握が十分にできるのかどうか。
私は、より実効性を求めるという意味でいえば、定期的に、例えば半年ごとに状況報告をさせるとかそういったことも含めて、もう一歩踏み込んだ措置が必要なのではないかと思いますが、実際にどのような形でこれをお考えなのか、この点についてお伺いをしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/111
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112・江崎格
○江崎政府委員 この法案第三十五条の運用でございますけれども、当初の計画に従って適切に事業の再構築を実施しているかどうかということにつきまして、主務大臣として定期的に毎年一回報告の徴収を求めるように運用したい、このように思っております。それから、もちろん、必要があった場合にはそれにかかわらずいつでも報告の徴収を求める、こういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/112
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113・中桐伸五
○中桐委員 私は、一年という期間が適切なのかどうか、これは議論のあるところだと思うのですが、ちょっと長過ぎるのではないかという気がするのですね。実際には、計画では雇用数の計画というのは出したけれども、出した後、通過して認定された後に計画を変えるということが起こり得ると思うのです。その点、一年というものを設定したことによる状況把握が本当にできるのかどうか、私は非常に疑問に思うのですが、いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/113
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114・江崎格
○江崎政府委員 私ども、まだこれは運用を始めておりませんので、どのくらいの期間がいいのかというのは実は必ずしも正確には申し上げにくいのですけれども、とりあえず一年に一回ぐらいということを想定しておりますが、運用の状況を見まして必要があれば、これをさらに長くするとか、あるいは逆に縮めるということも検討したいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/114
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115・中桐伸五
○中桐委員 私は企業を信頼していないという前提で議論をしているわけではありませんが、これは貴重な税を使う計画ですから、実効性のあるものにしてもらうために、そこのところはもうこれ以上議論をしませんが、私は、一年というのは余りにも長過ぎる、そのように考えますので、その点は検討を願いたい。そのように申し上げて、次の質問に移りたいと思います。
さて、先ほどから答弁をしていただいております中で、非常に重要なキーワードは、この計画の認定というところにかかわって「従業員の地位を不当に害するものでないこと。」ということがあり、この点が非常に重要な認定に際しての条件になっているということは、先ほどの答弁でわかってまいりました。したがいまして、では、その「従業員の地位を不当に害するものでないこと。」とは、簡潔にお願いしたいのですが、具体的なその内容を説明してもらいたいというふうに思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/115
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116・江崎格
○江崎政府委員 これは、認定の基準でこういうことを見るということでございますけれども、具体的にその運用に当たりまして何をその認定の基準で見るかということなんですが、一つが、事業再構築に係る事業所におきまして、労働組合などと必要な協議を行うなど、労使間で十分な話し合いを行うことになっているかどうかということ。それから、労働者に対する配慮、例えば自社内における配置転換の問題ですとか、あるいは関連会社への出向とか、あるいは労働者の再訓練、こういったような各種の労働者に対する配慮を十分行う計画であるかどうかというようなことをチェックするための規定だというふうに私どもは考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/116
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117・中桐伸五
○中桐委員 それでは、またここで協議や話し合いというのが大変重要なキーワードであるということが確認できると思うのですが、しかし、例えば、日本は終身雇用というふうな特徴があって、また先ほど大臣も、企業が安易に解雇とかあるいは失業状態に労働者が陥るようなことのないように努力をしてきたということなので、そういうことから考えて、働いている人にとって、自分が解雇されるとか失業するというのは、これは非常に不当に労働者の地位を害するということになるのではないかと思いますが、この点についてはどうお考えですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/117
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118・与謝野馨
○与謝野国務大臣 事業の再構築は、それ自体が、人材の有効活用、新たな産業と雇用の創出に向けた前向きな取り組みでございまして、整理解雇という事態を念頭に置いたものではありません。いかなる事業者も、仮に整理解雇を行う場合には、既に判例で確立されている整理解雇の四条件を遵守していくことは当然であり、改めて本法に基づき確認するまでもないことと思われます。
なお、整理解雇四条件は、整理解雇が具体的に行われる段階で遵守すべきルールであって、あらかじめ認定段階でこれを確認することはできません。また、当該条件を満たしたものであるかどうかは、個々のケースに即して司法が判断することでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/118
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119・中桐伸五
○中桐委員 解雇四要件のところの答弁を先にいただいてしまいましたが、解雇というものは労働者にとって大変重いものである。そのときに、これは事後的な問題なんだというふうな形で最終的にはお答えになったように思うんです。
さて、解雇が生じるということは、実は先ほどの仮にということでの例示でありますけれども、設備の撤去、廃棄に伴って、失業、解雇が伴う可能性が大きいわけでありますけれども、それが九割で拡大部分が一割でも認めることがあるということをお答えになっているわけです。そうなると、解雇が生じるということは容易に想定できるわけです。そのときに従業員の意見を聞くというのは当然だと思うんですが、しかし、解雇の、つまり雇用計画、この産業再生法に伴う雇用計画を認定するに当たって、従業員の意見を聞くだけということでは余りにも問題が多い。既に判例では整理解雇の四要件というのが確立をしておって、これが実際に基準の一つになっている、そういう問題があると思うんです。
そこで、労働省に来ていただいておりますのでお伺いしますけれども、非常に厳しい状況の中で、労働者を解雇しなければいけない、あるいは施設の撤去や設備の廃棄に伴って解雇せざるを得ない、そういう状況にあるときに、労働省は、解雇四要件について企業や労働者に対して周知徹底をどのように図っているのか。労働者の解雇というものが安易に行われないようにするための対応というのはどのようにしているのか。その点について、労働省にお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/119
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120・野寺康幸
○野寺政府委員 お尋ねの件でございますけれども、解雇の際に守るべき法理、判例等はいっぱいございます。もちろん、整理解雇の四要件もそうでございますが、それらにつきましては、日ごろより、労働省の出先機関を通じます事業主あるいは労働者に対します御説明等々の機会に、広くパンフレット等を用意いたしまして御説明しております。
特に、この整理解雇四要件等につきましては、本年度も五十万部程度のリーフレットを作成いたしまして配付いたしておりますし、なおさらに今後二十数万部、同じようなリーフレットをつくって配付をいたしたいというふうに考えております。
なお、こういった個別紛争につきましては、特に紛争当事者から援助を求められました場合には、こういったものを中心に、労働基準法百五条の三という規定に基づきまして、労働基準局長が適切な助言指導を行っているという状態でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/120
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121・中桐伸五
○中桐委員 さて、今労働省の方からは、解雇四要件も含めてさまざまな指導をして、安易に解雇が行われないようにという指導はしている、こういうことなんですね。その解雇四要件というもの、時間がありませんので詳しくこの点を議論するつもりはございませんが、これは人員削減ということに対する一定の要件を定めているものでありまして、つまりこの産業再生法で、施設の撤去や設備の廃棄に伴う雇用の削減が行われるということと関連をした要件が、重要な要件の二つを構成しているわけであります。
したがいまして、この法律に基づいて申請をしてきた企業の認定をする際には、雇用数の単なる変化ということだけではなくて、また、先ほど大臣がお答えになった、これは司法の問題になるから事後的な問題だという話にならないのではないですか。この点について、大臣でも政府委員の方でも結構ですが、お答えをいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/121
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122・江崎格
○江崎政府委員 誤解のないように申し上げておきますけれども、この産業活力再生法案で考えておりますことは、従来の労働法制、あるいはこれまでの労使慣行ですとか、あるいは判例などによって確立されております労働者と使用者との関係について変更を加えるということは考えておりませんでして、認定について申請をしてくるという事業者については、そういったものを遵守した上で申請をしてくるというのが当然の前提だというふうに私どもは考えております。
その上で、先ほど来申し上げておりますように、雇用の問題への配慮ということで、認定の基準としては、従業員の地位を不当に害するものではないということを申し上げておりますし、それからさらに、事業の実施段階におきましても、労働者の理解と協力を得るということで、外形的にそういう問題をチェックするということを申し上げているわけでございまして、これらによって、従来の労働法制などを中心にした解雇の問題についても、何か変更を加えるということは全くないというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/122
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123・中桐伸五
○中桐委員 そうしますと、従来の労働者の解雇をする場合の要件、四要件というふうに言っておりますが、この要件は、申請を受けた雇用計画を認定する主務大臣のところで、認定をする際に、ルールといったらあれですが、基本的なこれまでの経験則として当然考慮に入っているというふうに理解をしますけれども、よろしいですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/123
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124・江崎格
○江崎政府委員 労働法制を守った上で申請をしてくるというのは、私どもは当然の前提として想定をしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/124
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125・中桐伸五
○中桐委員 これはもう大臣にさらなる確認をするのはやめますので、大臣、この点はぜひ確認をお互いにしたいというふうに思います。
さて、先ほどもいろいろな答弁の中で、どうも一番重要なキーワードは労働者の理解と協力、特に理解、あるいは話し合い、協議、いろいろ言葉が出てまいりました。しかし、基本的には、この法文の中に書かれてある「労働者の理解と協力」という、法文に明記されたこの問題が非常に大きな条件になっているというふうに理解をいたします。
しかし、その「労働者の理解と協力」という内容が、残念ながら法案の十八条に書かれてある内容が極めて抽象的でありまして、その内容が明らかになっていないと私は考えております。
そこで、労働者の理解ということと、協力という、二つに分けてこれから質問をさせていただきます。
労働者の理解ということを得る環境整備といいますか、これが私は問題になると思うのです。
そこで、この労働者の理解、そして協力にも関係してまいりますけれども、この理解を得る方法として、あるいは環境整備として、かつて、特定不況産業安定臨時措置法、これはもう既に実効性を失っている時限の法律ですね、そしてまた産業構造転換円滑化臨時措置法、これも既に実効を失っております臨時的な一時的な法律でございましたが、この法律の中では、設備の処理などを行うに当たっては労働組合もしくは労働者代表との協議をすることを義務づけているわけであります。さらに、本州四国連絡橋の建設に関する特別措置法にも同様の規定があるわけであります。
しかるに、今回の法案というのは、中核的部分の拡大という新しい要素が当然入っていることは今回の法案の特徴の一つでありますけれども、しかし、これまでの法律と同じように、施設の撤去や設備の廃棄、そういうものもあるわけであります。その際、施設の撤去や設備の廃棄、この問題についてに限っての話ですが、なぜ労使協議が、前例のある法律の中に書かれてあった内容が書かれていないのですか。この点についてお伺いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/125
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126・与謝野馨
○与謝野国務大臣 本法律案は、事業再構築の円滑化、中小企業の新事業開拓支援、技術開発の活性化により、我が国産業の生産性を高め、将来における経済発展の基盤を構築するとともに、新しい産業や雇用を生み出すためのものであり、不況法や産構法のように、設備の廃棄を直接の目的とする法律とは本質的に異なるものであります。
また、本法律案においては、まず第一に、事業再構築には企業買収や債務の株式化等経営権に属する事項も含まれていること、第二に、雇用や労働条件に全く影響を与えない場合についてまで協議や合意を求めるのは妥当でないこと、第三に、どのような事項をどのような性格の協議の対象とするかは、労使の合意により自主的に定められるものであり、労使自治にゆだねられるべきものであることなどから、一律に労働者に協議を行うことは適切ではないと判断したものであります。
もちろん、事業再構築を労働者の理解と協力を得て進めるべきことは言うまでもないことであり、本法案においては、その旨を明示するとともに、事業再構築計画の認定要件の一つとして従業員の権利を不当に害するものでないことを設け、事業主が労働者に対する配慮を十分に行って計画を作成し実行しようというものであるかどうかを確認した上で認定することとしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/126
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127・中桐伸五
○中桐委員 非常にたくさんの、三点にわたって答弁いただいたのですが、それでは、産業構造転換円滑化臨時措置法という法律の中には、こういう文言があるわけです。
計画というものをつくるということなんですが、この「計画に従つて特定設備の処理」、これは廃棄をするとか撤去とかいろいろなものが入るのでしょう、そういった「処理若しくは事業転換等又は事業提携を行うに当たつては、」ということがあるわけであります。そして、そこで明確に、労働組合がある場合は労働組合、そういうものがない場合には労働者の過半数を代表する者と協議してと、こうなっておるわけです。ですから、先ほどの理由は根拠にならない。
また、私が申し上げているのは、施設の撤去か設備の廃棄についてはというふうに申し上げているので、この法律の拡大部分のところまで、あるいは新しい事業の計画を経営者がつくるときの経営権まで問題にしているわけではありません。その点については誤解のないようにしていただきたい。
つまり、この法律の中で「労働者の理解と協力」という極めて抽象的な規定で終わっているところを——施設の撤去や設備の廃棄、この問題については雇用に直接的に影響があると私は思います。そして、既にこれまでの質問でもお答えいただいたように、雇用削減、失業が短期的には起こる可能性がある、大臣もそういうことをお認めになっている。この問題を、ただ「労働者の理解と協力」という文言だけで処理することには、私は断じて、これまでの法律においても前例があるごとく、この点については条件を明確に設定して、設備の廃棄あるいは施設の撤去というものについてはという条件つきで、労働者の、労使の協議というものを法律に盛り込まなければならないというふうに思いますが、いかがお考えですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/127
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128・与謝野馨
○与謝野国務大臣 日本には、既にきちんと確立された労働法規があり、また、憲法と労働法規に基づいて、労使の間での一定の慣行もございますし、また、労働問題に関しましては積み重ねられた裁判所の判例もあって、この法律ではその状況を変えるものでもありませんし、新たに何かつけ加えるということもしておりません。
これは、従来の労使の枠組みの中で話し合えばいいことであって、この法律によって新たな枠組みをつくろう、そういう意図は全く持っておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/128
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129・中桐伸五
○中桐委員 私は、意図を聞いているのではありません。これまでの前例と照らし合わせても、この法律は極めて問題があると言っているのです。これまでの労使慣行という一般を論じているわけでもありません。その次に私は議論をさせていただきますが、これは税を投入して国が関与してやる新しい特別立法なんです。そういうときに、しかも前例のある労使協議制というもの、既に法律で、前例主義の日本の中で既にある法律を、なぜそんなことを導入できないのですか。その点についてお聞きしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/129
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130・江崎格
○江崎政府委員 労働組合との協議の問題でございますけれども、この「労働者の理解と協力を得る」ということの具体的なあり方の問題としまして、既に、例えば労働組合とこうこうこういう事項については協議をしなければいけない、あるいはこうこうこういう事項については労働組合の合意を得なければいけないというようなことが、それぞれの会社の中で、事業者の中で決まっているという場合には、そういうものを、必要な協議あるいは必要な合意を取りつけるということは当然の前提に考えておりまして、これは告示などではっきりさせていきたいというふうに思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/130
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131・中桐伸五
○中桐委員 私は、告示で明らかにするのではなくて、先ほど法律を挙げたのは、法律の条文の中に明記されているということを取り上げているわけですから、その点は誤解のないようにしていただきたい。
つまり、この産業活力再生法の法文の中に、施設の撤去や設備の廃棄については労使の協議を法文に明記すべきだと言っているのです。よろしいですか。その点について明快な答弁をお願いしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/131
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132・江崎格
○江崎政府委員 その点は、先ほど大臣からもお答えいたしましたように、この法案の包含している分野というのは非常に広うございまして、したがいまして、この法律で一律すべて労働組合との協議というようなことを義務づけるのは適当でないというふうに考えておりますが、協議すべきこととか合意を取りつけるべきことというふうに労使間で合意ができているものについては、合意を取りつけるように、あるいは協議をするようにということを告示ではっきりさせるということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/132
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133・中桐伸五
○中桐委員 これは先ほどから言っているように、税を投入して国が関与してやる法律なんですよ。そのときに、公平ではないではないですかと言っているわけです。つまり、労働者の理解と協力を得る、その環境整備をしなさいと言っているわけであって、しかも前例があるわけじゃないですか。なぜ前例を踏襲しなかったんですか。おかしいじゃないですか。先ほど来の議論は私の質問に全然答えていないじゃないですか。前例はなぜやめたんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/133
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134・江崎格
○江崎政府委員 先ほど委員の挙げられました産構法などの例は、必ず設備廃棄を伴っているものでございます。この法案で想定をしております事業の再構築計画というのは、必ずしもそういう場合だけではないわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/134
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135・中桐伸五
○中桐委員 私の言っていることは、条件をつけた上でと言っているんです。設備の廃棄や施設の撤去についてはと言っているんです。何を言っているんですか。全く違うところから答えているじゃないですか。
委員長、これ以上この質問をすることはできませんよ、同じことばかり返ってくるんだったら。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/135
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136・与謝野馨
○与謝野国務大臣 この法律が対象にしておりますのは、何も設備と施設の撤去だけではなくて広範な範囲を包含しているわけでございますので、先生が、その特定の事例だけについての条件をこうしろということは、質問として私どもよく理解できないのは残念でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/136
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137・中桐伸五
○中桐委員 これは見解の相違というふうなものではありませんよ、今大臣がお答えになったような。つまり、私の今まで続けた質問の中で、施設の撤去や設備の廃棄は雇用削減につながることが当然あり得るということを確認した上で私はやっているんですから。そのときに、設備の廃棄や施設の撤去という条件つきでなぜ法文化しないんですか。私は一般論で言っているわけじゃないですよ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/137
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138・与謝野馨
○与謝野国務大臣 これは仮定の話でございますが、例えばある一つの会社が、ある販売部門から大幅に撤退した、完全に撤退したというような場合は、やはりそこで働いている方々は、その会社は去らなくともいわば働く場所を失うわけでございまして、施設あるいは設備の撤去のみを取り上げて問題提起されるということは、なぜそういう質問になるのかということが実はよくわからないわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/138
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139・中桐伸五
○中桐委員 いや、わからないでは困るんです。私、わかるように言っているつもりなんです。設備の廃棄や施設の撤去が一〇〇%雇用削減につながると私は言っているんじゃない。しかし、その場合には雇用削減を伴うことが十分あり得るから、そのときに、労働者保護の観点から法律にこのことが、前例にもある条文が何で書けないんですか。どうなんですか。条件つきで言っているわけだから書けるのじゃないでしょうか。
委員長、このままこの答弁を繰り返していると先の質問に進めませんので。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/139
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140・江崎格
○江崎政府委員 私どもは法文にすることも含めてもちろん検討したんですが、仮に、今委員御指摘のように設備廃棄を伴う場合には例えば協議するとかいうようなことを書きますと、そうでない場合には逆に一切協議しなくていいとかそういう解釈も生まれるわけでございまして、その意味で、協議が必要な場合とかあるいは合意を必要としているような場合には告示でもってそれを義務づければ十分実質的に担保できる、このように考えたわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/140
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141・中桐伸五
○中桐委員 設備と施設の問題について労使協議を義務づけるということと、それ以外の場合に労使の話し合いをしないというふうに私は提案しているわけじゃありません。したがって、買収とかそういった問題のことも含めてあるのならば、それは政省令で書いてもいいでしょうよ、書けばいいじゃないですか。だけれども、施設の撤去と設備の廃棄に関することについては労使協議を義務づけるということは、何も排除しないじゃないですか。あなた、それは詭弁じゃないですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/141
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142・江崎格
○江崎政府委員 私どもとしては、先ほどのような検討を経た上で、法文ではこのような表現にしておきまして、告示等におきまして先ほど申し上げましたような手当てをすることによって十分委員の御主張になっていることも担保できるというふうに理解しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/142
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143・中桐伸五
○中桐委員 告示で書くということでは私は不十分だと言っているんです。前例があるから、そのとおり書いたらどうですかと言っているんです。
では、設備の廃棄と施設の撤去だけ労使協議をするというふうにそれを書いたらなるんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/143
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144・与謝野馨
○与謝野国務大臣 労働者の理解と協力を得るということ自体が、一般的な広い概念として、例えば当該企業の労使が話し合うということも含まれているわけですから、現在の表現で、現在まで確立された労働法規に対する解釈、判例から照らして私は十分であると考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/144
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145・中桐伸五
○中桐委員 これ以上やると平行線ですが、私は、「労働者の理解と協力を得る」という条文を変えて「協議」としなさいと言っているんじゃない。その条文をそのまま当然残した上で、施設の撤去と設備の廃棄について労使協議を義務づけなさいと言っているんです。その意味が全然伝わってないじゃないですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/145
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146・林洋和
○林(洋)政府委員 委員御指摘の点でございますけれども、労働組合と協議をするというようなことが書かれておりますのは、例えば八八年六月に廃止されました産業構造転換円滑化臨時措置法の場合ですと、第十二条第一項ということで書かれておりまして、「労働組合と協議して、その雇用する労働者について、失業の予防その他雇用の安定を図るため必要な措置を講ずるよう努めなければならない。」という条文でございます。あるいはその前のいわゆる特安法というものでは、やはり同様でございまして、「労働組合と協議して、その雇用する労働者について、失業の予防その他雇用の安定を図るため必要な措置を講ずるよう努めなければならない。」
ある意味では努力規定といいますか訓示規定のところでございまして、過去の先例は、設備の廃棄あるいは施設の撤去をやるときの認定基準としてどういうものがいいかということとは別の問題としてあるのではないかと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/146
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147・中桐伸五
○中桐委員 認定基準の問題で私は言っているんじゃない。十分労働者の理解と協力を得られるという、これは認定基準にも関係していることは当然だと思いますが、その理解と協力を得るための環境整備をしろと言っているわけであって、もうこの点についてはこれ以上議論すると私、次の質問に移れませんので、十八時から労働大臣がこの委員会にも参加するというふうに聞いておりますので、そこで改めて問題として取り上げるようにしたいと思います。
さて、十分労使が話し合いをして労働者の理解を得られるようにするということですが、先ほど言いましたように環境整備が不十分だという点を指摘させていただいて、では次に、この法律案は国の税金を使って計画を実行する法律なんですね。それが、国の税金を使って失業者を生み出す可能性があるわけです。そして生まれた失業者を、さらに国の財源を使って、税金を使って生活支援や訓練をする。
生活支援は、これまでいろいろ雇用保険制度等を通じて行っているわけであります。そしてまた、職業訓練等も鋭意今整備をしているわけです。しかし、わざわざ国の税金を使って失業者を出す可能性がある法律を執行して、そしてまた、その税で執行した法律から出てくる問題をまた税を使ってやろうという、屋上屋を重ねたとんでもない法律なんですよ。大臣、こういう税の使い方でいいんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/147
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148・与謝野馨
○与謝野国務大臣 税の仕組みというのは、税というのはいろいろな効果がございますけれども、税で政策誘導をするという場合はあって、それを先生は税金を使うというふうに表現された。税金を使うというのは、一度国に入った税金を補助金的に使うことを税を使うというんですが、この場合は税制を使ってというふうに御表現をいただければより正確になるのではないかと思っておりまして、今回の場合はむしろ、税制を使った政策誘導であるというふうに私は考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/148
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149・中桐伸五
○中桐委員 税制であろうが何であろうが、私は、税を使って、それは税制でもいいですよ、税制を使ってでもいいですよ、わざわざ国が関与して失業者を出して、その失業者をまた国が税でわざわざ手当てをする。
民主党が出しているような、公平なチャンスを起業家精神を発揚してやるというのじゃないじゃないですか、これは。どういうことなんですか。こういうことをやれば起業家精神はなえてしまうんじゃないですか。税で起業家精神をなえさせて、しかも失業を出して、しかもその出した失業をまた税で手当てする。何をやっているんですか、通産大臣。どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/149
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150・与謝野馨
○与謝野国務大臣 起業家精神を養うというのは民主党の法律でできるのかといえば、そんなに簡単なものではなくて、業を起こすという気持ちというのは、やはり教育の問題もありますし、また社会的な雰囲気とか背景とかもございますし、国民全体の意思の問題にもかかわってくるわけでございます。
我々の今回の法律も、やはり、業を起こそうという方になるべく環境整備をするということは、他の法律と相まってその精神は貫かれているわけでございます。業を起こそうというのは、一つは人の意思の問題、あるいは技術の問題、あるいは他の人と仲間をつくる問題、また資金の問題等々、もろもろございます。
我々としては、そういう業を起こすという精神を持った方がその精神、志を生かせるようなことは、この法律の中でも貫かれておりますし、今までつくりました他の税制、法制度の中でも、そういうものはここ数年の傾向としてずっと貫いているわけでございまして、民主党の法律だけがそれを目指しているわけではないということはおわかりをいただきたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/150
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151・中桐伸五
○中桐委員 民主党が出した対案が体系的なものではないということを指摘されようとされているんですが、これはちょっと私の質問から外れていきますので、これ以上言いません。
私は、起業家精神というものを育てるには、国が関与していくというやり方は決してそのことを育成していくことにならないと思いますし、さらに問題は、景気が今やや上向きかけようとしているというふうな状況が言われているんですけれども、わざわざ税を使って、これはもう大臣もお答えになったように、一時的には失業者が出るということを認めているようなものを、つまり雇用不安が起こるんですよ、これで。雇用不安が起こって、この雇用不安が拡大するような法律を、わざわざ国が税を使って、しかもその出てくる失業者にまた税を使う。税のある種むだ遣いじゃないですか。
そういう景気にも悪影響を及ぼすような、しかも、景気に悪影響を及ぼすのはすべてやっちゃいけないと私は言いませんが、そういう起業家精神が発揚されるような点から見ても非常に問題のある法律を、通産大臣、あなたが出すとすれば、もし景気がこれで冷え込むようなことが起こった場合には、あなたの責任は極めて重大ですよ。それをどうお考えですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/151
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152・与謝野馨
○与謝野国務大臣 先生に御指摘されるまでもなく、責任はいつも感じております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/152
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153・中桐伸五
○中桐委員 わかりました。では、その言葉は非常に重要な答弁としてお聞きしておきましょう。
さて、先ほど大臣がお答えになりましたように、この法律制定で短期的に見て失業が生まれるということははっきりしてきたのではないかと思う。その場合に、今このような法律が出される背景、つまり、企業組織の変更ということがこれから二十一世紀に向かって頻度が高まってくるだろうと考えられます。そういったときに、企業の経営形態が変わったときに、従業員、つまり働いている人の地位や労働協約などがどうなっていくのか。日本では、残念ながら法的なきちんとした整備ができていないと思います。
そういう新しい事態が起こってくる、そういう中で、企業の過剰資産あるいは過剰設備、そういったものの支援だけと言ってもいいようなこんな法律を出す。そして、雇用確保や労働協約について何のルールもない、そういった中で出してくる。私は非常に問題だと思いますよ。大臣の見解はいかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/153
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154・与謝野馨
○与謝野国務大臣 私の答弁とは先生の理解が若干違っておりますので。この法律によって短期的には失業が生まれるなどということは、私は答えていないわけでございます。過渡的な現象として失業ということもあり得るということを申し上げたのであって、その失業も、企業内失業もありますし、また外に出ざるを得ない、あるいは子会社に行く、分社化されたところに移る、そういうものを含めて、全体、過渡的な問題としてはということを申し上げたので、この法律によって失業が短期的に生じるなどという答弁は、私はしておりませんので。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/154
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155・中桐伸五
○中桐委員 いや、それは議事録を見ればわかりますよ。だから、それはもう水かけ論をしてもしようがない。はっきり言ったと思いますよ。
先ほどの私の後半の質問にお答えになっていないので、こういう、企業の組織形態が変わってくるということが、頻度が高まってくるということを私は想定しているんですが、それ自体が日本の活力を生み出していくだろうということも私は否定しているわけではないんですが、しかしもう一方で、労働者の保護のルール、労働関係、そういったものがまだ十分にそういう時代に合ったものになっていないというふうに思うんですが、これは大臣、お答えになっていないんだけれども、どうなんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/155
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156・与謝野馨
○与謝野国務大臣 先生の御質問は、多分、企業組織の変更が今まで以上に頻繁に起こると思われる将来、新しい労使関係をルール化する必要があるのではないかという御質問だと思いますが、労働関係の承継や労働者の権利保護などについては、まず労使間でよく話し合われるべきものと考えており、企業組織の変更に際しての新しい労使間のルールについては、一律な規制を設けることは適切でないと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/156
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157・中桐伸五
○中桐委員 一律な規制をしろというふうに私は言っているのではなくて、ルールは新たに検討する必要があるのではないかということについてはいかがですか。一律ということを私は言っているわけではなくて、こういう問題についてのルールを決めるということについては必要なのじゃないでしょうかと言っているのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/157
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158・与謝野馨
○与謝野国務大臣 ルールというのは、もともと一律なものでございますのでルールと言われていると思っています。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/158
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159・中桐伸五
○中桐委員 では、企業の組織の変更に伴うルールというものは、今までの慣行でいいというのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/159
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160・与謝野馨
○与謝野国務大臣 労働関係法規もありますし、それぞれの企業の中で積み上げられた労使の関係というものがあり、また裁判所の判断等も今まで積み重ねられてきておりますから、そういうすべてのことを勘案して物を決めていくべきものと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/160
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161・中桐伸五
○中桐委員 そういうお答えが来るのではないかと思って、実はEUというところでは、これまでも何人かの質問があったと思いますが、企業や事業の一部の移転に対して、雇用契約や雇用関係から生じる権利や義務の承継の問題や、あるいは労働協約の承継の問題や、あるいは移転それ自体は解雇の理由にならないというふうなもの、あるいは労働者代表の地位の継続など、EU指令というのがあります。これはもう何人も議論をしたと思います。
このEU指令を日本に直ちに取り込めというふうに私は言っているわけではありませんが、こういったことをやらなきゃいけない状況があると私は思うのですね。大臣が今お答えになった認識では、とてもこれからの企業組織の変更に対応できないと私は思っている。
さて、そのEUの指令が出されなきゃいけなかったような背景というのはこれからあると思うのだけれども、企業の組織変更に伴う労働関係の承継や労働者保護などについて、何らかの新しい条件整備というものを含めた検討が必要だと思うのですけれども、労働省はどのようにお考えですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/161
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162・野寺康幸
○野寺政府委員 お尋ねの点でございますけれども、企業の譲渡あるいは営業形態の変更等が労使関係にいかなる影響を及ぼすのか、それはさまざまでございます。
例えば企業の営業譲渡の場合に、譲り受ける側に果たして賃金の支払い義務があるのか、あるいは譲り渡し側に賃金の支払い義務が存するのか、それは譲り渡しの条件等でかなり違ってくるわけでございます。そういう意味で、一律な規制というのは我が国の場合には不適当ではないかというふうに思うわけでございます。
なお、先生先ほど来強調しておられますように、こういった問題につきまして労使間で十分協議をなさるということは極めて重要なことであるというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/162
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163・中桐伸五
○中桐委員 一律なルールというのは、どうも労働省も通産省も口裏を合わせていらっしゃるのかどうかわかりませんが、非常に及び腰のようであります。
私は、この機会だけがこの問題を議論する場ではございませんので、しつこくやりますが、もう時間がありませんので最後ですけれども、ちょっとこれは質問通告をしていない問題ですから申しわけありませんが、ただ、EU指令の問題については質問事項として出しておりますので。
さて問題は、先ほど経営権の問題が、たしか大臣がお答えになった中にあったか、あるいは政府委員の方の中にあったと思うのですが、実は企業組織の変更に伴う問題というのは、事業計画をつくるにしても、経営権という問題がどうしても絡んでくる。したがって、私は口を酸っぱくして、施設の撤去か設備の廃棄ということについては少なくとも労使協議は義務づけてくださいよ、法律の中に明記してくださいよ、それ以外のところは「労働者の理解と協力」という表現でいいということを申し上げているのです。しかし問題は、先ほどの経営権の問題にかかわって、労使協議ということになると経営権まで侵害する話になるじゃないかという問題がある。
そこで最後にお聞きしますけれども、先ほどから労働省にお聞きしたり通産大臣にお聞きしたりいろいろしているけれども、きょうは総理が来られないので総理に質問できなかったのですが、どうもこれは省庁の今までの慣行だけの問題ではなくて、こういった企業組織の変更に伴う労働関係の問題については新たに正面から議論した方がいいと思います。
その具体例としては、ドイツでは民法の問題になっているわけです、経営権の問題が絡んでくるから。そこで、民法の問題として取り扱うということも含めて、今後これはどこの所管になっていくのか。こういう問題、企業組織の変更に伴う労働関係の問題、これは労働省がやるのか、通産大臣が企業の再編の問題としてやるのか、あるいはそのほか民法とかそういった問題になるのか、こういう問題があると思うのですが、もう直観的なお答えで結構ですから、通産大臣に最後にお答えいただいて、私の質問を終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/163
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164・与謝野馨
○与謝野国務大臣 会社の組織の問題は法務省の問題であろうと思います。当然、労働問題は労働省の所管でございます。通産省も、企業の組織というものが実態に合っているかどうか、時代の要請に合っているかどうかということは当然常に意見を申し上げますけれども、もともとの企業の組織の問題は、会社法、すなわち商法あるいは株式会社法、有限会社法等々、法務省の所管であるというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/164
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165・中桐伸五
○中桐委員 時間が参りましたので、またこれは今後の課題と残させていただきまして、終わります。どうもありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/165
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166・古賀正浩
○古賀委員長 日野市朗君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/166
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167・日野市朗
○日野委員 この間、私はある有識者の感想を聞く機会がございまして、この方はいろいろ政府の審議会なんかにも顔を出しているすぐれた方であります。その方が慨嘆しておられたのですね。政府の審議会なんかに出てみると、天下国家のためにみんないろいろなことを言っているかと思うが、ところが実際は、財界の連中は自分たちの産業のこと、そしてさらには自分たちの商売のこと、それに行ってしまうんだよね、こう言っておりました。私も大体それはわかるような気がいたします。私としては非常に残念なことだと思っております。
それで、この法律案についてもいろいろなことがありました。もう一応金融の問題も一段落ついたから、今度は産業の問題だななんて大臣もおっしゃったことがあります。これはもうかなり広く語られている大臣の発言でありますが、そんなこともありました。
私、この法律案を見まして、これは、政治全体が産業構造を変革しなければならない、各党がみんな産業構造の変革を言ったわけです。特に野党。自民党が政権から離れて、細川内閣が成立をするというようなことがあったわけですが、それからずっと今日まで、産業構造の変革をしなければならないというのは、これは政治家に課せられた大きなテーマであったわけですね。これは何も産業構造ばかりじゃありませんよ、財政構造やら何やらずっとあります。しかし、その中で、産業構造の変革をしなくちゃいかぬなということでありました。
そこでのキーワード、それは、政官財のトライアングル、これを崩していかなくちゃいけない。これはその当時の特に野党は強く言った。その方々は今ここにそれぞれの党派に属しておられる方々でありますが、公明さんもそうだし、自由さんもそうだし、みんなそう言っていた。もちろん我々の民主党もそう、それから社民党、共産党までずうっとこう言っていたんでありますが、私、この法案を見まして、政官財のトライアングルがこれはちゃんと復活したのかなと。高い志、つまり産業構造を転換していこうという高い志が、一部捨てられ始めたのではないかなという感想を実は抱くのであります。
善意に私考えてみて、これは、現状の不況というものを見ながら一種の緊急避難を図っておられるのかなという見方も、これは私としてそんなことをふっと考えるんでありますが、やはり、高い志を実現していくためには、それを貫いていく強い意思というものが必要なんだろうと私は思います。それで、その点についてはぜひ大臣のお考えも聞きたいと思いますね。
私はこの産業構造だけではないと思いますよ。例えば、今これだけ日本の財政が深刻な状態になっている。財政再建法案なんというものを一たんつくって、それをどんどんなし崩しにして、やがてはそれをもう休眠状態に追い込む、そして、景気対策と称しては財政資金をどんどん投入して補正予算などを組んでいったという歴史なんかも、非常に近い歴史でありますが、私なんかもう見ております。そういう強い意思を持って貫いていくところに初めて改革というものは成るんだろうと思うんですね。
私たちは、やはり、五五年体制の中で機能してきた政官財のトライアングルなんというもの、これはやめましょうよと、そして、公平な、透明なルールに従った市場原理、これに基づいて産業構造を変革しようとこう思ってきたのでありますが、この法案、今その審議をやっているわけであります。
私が今お話ししたことについて大臣いかにお考えになるか、感想をお聞かせください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/167
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168・与謝野馨
○与謝野国務大臣 政官財癒着という言葉は余りにも日本の社会を図式的に見過ぎている見方だと思って、到底私の理解力では追いつけない物の考え方でございまして、私はもっと具体的にしか物を理解できない男でございますから、何の感想も実はございません。
ただ、この法案は高い志がないのかと言えば、これは、日本の経済、また産業の体質を二十一世紀にも耐え得るものに転換していこう、こういう高い志に基づいているわけでございまして、我々、二十一世紀を目前にした日本は、やはり二十一世紀においてもまた豊かな社会を実現したいというのが我々の願いでございまして、そういう豊かさの中で我々が直面するであろう少子高齢化社会等にも対応できる、そういう政策が実現できるものと思っております。
もう一つの点は、先生は政治にストイシズムを求めておられますが、その点は、私はストイシズムというのは大事なことだろうと思っております。ただ、我々政治が対面するのは毎日毎日生きている人間、国民でございまして、ストイシズムだけで対応できるか。そうではなくて、そういう中でのやはり具体的妥当性を持った愛情のある政策を展開していくということもまた一方では必要だろう。私はいつもそのように思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/168
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169・日野市朗
○日野委員 何か余り深入りして神学論争みたいになってもまずいと思うんだが、これはおもしろい議論だから、もうちょっとやらせてもらいましょう。
では、このように日本の産業構造がどんどん劣勢に立たされている、世界とのコンペティションの中で劣勢に立たされている、それの分析については多くの人たちは既に一致しているではないですか。正しい競争がなかったんだ、公平な競争がなかったんだ。政治は財界が提供する資金と票におぼれ、そして財界は政治の力をかりて自分たちの商売をし、官僚はそれらのちゃんと三角形の中で政治家を動かし、財界を動かし、この三角形、これが正常な競争力を失わせて、そして日本は現状のこの苦しい中に落ち込んでいる。これはほぼ一致した見方であろうと思いますよ。あなたはそういうふうな実感は持っていないとおっしゃるが、余りにそれは自民党政治の中にどっぷりつかり込んでしまって、染まってしまったんじゃないのかな。
それから、あなたは政治にストイシズムを求めちゃいかぬとこう言うが、私は別にストイックになっているわけではないんです。ストイックになっているわけではなくて、やはり改革をするためには痛みは伴うんだ、しかしその痛みにちゃんと耐えていこうではないか、そういった意味ではストイックになっているかもしれない。その痛みを耐えながら産業構造の改革をちゃんとやっていこう、こう私どもは考えながら、非常にそれはつらいですよ、目の前で今企業が倒産をする、競争力を失って倒産をしていく姿を見る、また労働者が失業をしていくのを見る、こういうのもつらいことです。しかし、そういうつらさに耐えながらもきちんとした改革をやっていく、これが先を見越した政治のあり方ではないか。
この法案によってその先に黄金の夢が見られるようなことを今あなたはおっしゃったが、それならば何でこれ時限立法にしているんですか、特別措置法にしているんですか。まあ、それなんかは答えなくたっていいですよ、私としてはそう思います。
この点については、そこに民主党の諸君も並んでおられますから、どなたでも結構、言いたいことがあったらおっしゃってください。
まず大臣、いかがです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/169
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170・与謝野馨
○与謝野国務大臣 企業にはいっぱいお金もうけをしてもらって、従業員に高い給料を払っていただいて、株主にも配当していただいて、雇用を維持していただいて、税金もいっぱい払っていただくというのが当然のことでして、それを否定するような前提からの議論というのは、私は議論にはならないと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/170
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171・上田清司
○上田(清)議員 日野議員の質問にお答えします。
今、与謝野通産大臣も言われましたが、大臣のお立場ではそういうお話もあるかもしれませんが、きのうからずっと大臣のお話を聞いていますと、行政裁量というのが行政に必要だと。必要だというよりは、法のすき間を縫ったときに行政裁量の部分があるのではないかと私は思っております。立法府の務めは、行政裁量権が生じないようにきちっと法律をつくっていく、こういうことではないかと思いますので、私はその辺をちょっと改めて申し上げたいと思います。
そこで、日野議員の質問でございますが、政府のこの法案は、御指摘のとおり、ある意味ではこれからの時代にふさわしいものではなくて、これまでの、よく言われるところのいわゆる護送船団方式ではなかろうかというような、時計の針を逆に戻すような、そういう意味を持つ法案にもつながっているのではないかというふうに考えるところであります。
この法案の一番の欠点は、文字どおり、これから雇用をどのようにしてふやしていくか、あるいは新規産業をどのようにしてつくっていくかという、そういうセーフティーネットをつくった後に、きちっとした再生のための、あるいは革新だとかベンチャーだとかいろいろなものをつなぎ合わせながら、弱い部分を切りながら強く再生していく、そういう仕組みをつくるべきだというふうに考えておりますが、逆になっている。むしろ、中小零細、ベンチャーの育成とか、あるいは雇用の保護だとか、そんなことを十分まだ準備できないままにそういう再生のための仕組みを考えておられるところに、私は若干疑念が、若干どころじゃないです、大いに疑念があります。
政策効果としての部分が四十億、あるいはけさの大蔵委員会での租特のお話の中で三百億というようなお話も出ております。そういうものが結果として政官癒着の中に成っていくというのは、場合によってはあり得るかもしれない。そういうことを否定するために今さまざまな形で議論がなされているわけですから、この点についてもまだまだ考慮をする余地があるのではないかというふうに考えるところであります。
七月十一日に民放の番組で自由党の小沢党首が、構造改革の話がないなら賛成できない、事業再構築のための税制措置は事実上の補助金だ、こんなお話も、これも前後の文脈の中でどこまで真意だというふうにとらえるのは難しいところでありますが、一面、的確に問題の本質をとらえておられるというふうに私は理解しております。
民主党の法案もあわせて、ぜひ採決の中で賛成を投じていただきまして、そして、むしろ政府案については、今回は、もう少しセーフティーネットの部分をしっかりつくった後に改めて出していただきたい。認定の基準もわからないままに、あるいはそうした基準を後でつくるというようなやり方じゃなくて、国会にあらかじめそういう認定の基準を出していただいて、その議論を踏まえた上で、ぜひ、政府案のいいところをしっかり全会一致で通していくような仕組みをつくればいいんじゃないかというふうに考えております。
以上であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/171
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172・日野市朗
○日野委員 大臣の答弁は余り意欲的じゃなかったですね。企業がもうけて税金を払うのは当たり前でして、そんなことはだれも聞いてやしないんですよ。その利益がどのようにして生じてくるのか、そしてそれをどのようにして健全な利益にしていくのか、競争力を持った企業を育てていくのか、これが大事なんで。まあよろしいでしょう。
それと、民主党の上田提案者からは非常に意欲的な答弁をいただきました。私は、だれが言ったって正しいことは正しいと思うんですよね。小沢一郎さんが言ったってそれは正しいんだろうと思っていますが。
この問題はこれでいいでしょう、これ以上やりますと時間がどんどんたってしまいますので。
それで、この法案によると、別に、どの産業、どの企業なんてことはもちろん書いてありませんね。主務大臣が認定、こう書いてあるんですな。認定は主務大臣にぱらっとばらまいてある。しかし、私はこれでいいのかしらねと思うんですよ。
今、その国の経済をどんどん引っ張っていっているのはどんな産業なんだろう、こう考えてみるわけですね。これは、アメリカなんかでは大体情報通信関係ですね。大体、産業の中の六%、企業の六%ぐらいが情報通信関係。これがどんどん伸びているんですね。そして、これがアメリカのあの現在の経済的な成長を引っ張っていると私は思うんですけれども。
日本の場合は残念ながら、今どのくらいになっていますか、正確な数字、私はわかりませんが。しかし、日本でもやはり情報通信関係というのは元気なんですよ、すごく。みんなこれはよくやっています。私は、これとか、あとは環境の問題、それから高齢者についてのビジネス、こういったいろいろな、経済を成長させるために展開すべきビジネスというのはあると思うんです。
ところが、石油関係だとかゼネコンだとか、そういうところまで幅広く主務大臣の認定でございますというような形になっていくと、これは場合によってはえらく日本の経済の足を引っ張る可能性が出てくる。やはり、非常に業績が悪い、先の見通しがないところを国がてこ入れをして延命を図るべきじゃないんですな。ちゃんと、そこは整理すべき点は整理しなければならない。
そして、私は、この法案、まるっきり悪いなんて言っていませんからね。まるっきり悪いなんて絶対に言いません。いいところもあるんだ。特に、二つ大きく分かれますが、ベンチャーに関する部分なんていうのは私は非常にいいと思っているんです。我が党の案に比べても遜色がないくらいではないかな、こう思っています。
そういうように、やはり、こういう法律をつくるときは目的意識というのはあると思うんですな、政策の目的意識。さあ、それは何ですか、通産大臣。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/172
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173・与謝野馨
○与謝野国務大臣 私、今後どういう分野で雇用が発生するかという問題、まずそれからお答えをいたしますけれども、実は、新しい分野でも雇用が発生しますけれども、従来日本が力強くやってまいった分野でも雇用を減らさないように努力をしなければならないと思っております。
例えば、繊維産業といいますと、日本は大変劣勢に立っているというふうに考えがちでございますけれども、繊維だけでも恐らく二百万を優に超える、二百五十万近い雇用を維持しているわけでございまして、従来型の産業というものを決しておろそかにしてはいけない、そこが雇用を維持している。新しいもの、新しいものといって飛びつくのは結構でございますけれども、新しいものだけでは日本の基礎的な財、富というものは得られないと思っております。
それから、認定がいけないとか裁量行政はけしからぬとかといいますけれども、まず、国がなぜ認定するかという問題は、今回は商法と税法の例外規定を使うということになりますから、例外規定を使うものはそれなりの認定をする必要があるということは、国民の側からむしろ当然のことだろうと私は思っております。それぞれの役所がよく知っている分野については、そこの役所が実情に応じて認定をするかどうかということを判断すればいいことだろうと思います。
一方では、認定に関して裁量行政だという意見がございますけれども、もともと行政というのはある一定の裁量権を持ったものでないと動かないわけでございますから、その裁量権ももちろん法律によって付与された裁量権であって、先ほどの答弁の一部にありました法律のすき間とすき間の間の裁量権だというようなことは、やや法律を皮相的にとらえ過ぎているんだろう、あるいは行政の判断を皮相的にとらえ過ぎているんだろうと私は思っております。
ただ、認定のときに、それでもやはり客観性と透明性と公平性をきちんと維持しなければなりませんので、繰り返し答弁をしておりますけれども、きちんとしたそういう条件は決めて天下に公表するということを申し上げてきているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/173
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174・日野市朗
○日野委員 皆さんお疲れでしょう。大臣もお疲れなんですな、こっちがこれから聞こうと思うところの答弁を先回りしておやりになった。まあ結構でございますよ。
それで、どうですか。私が聞きたかったのは、政府の意思として、日本の国の政府の意思として、この法律を使ったリーディング産業を育成しようという意図があるのかどうかということが一点。それから、認定いかんでは、特定の業界、それからその業界の中の特定の企業、これだけが強力になっていくおそれがあるのではないかという、この二点です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/174
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175・与謝野馨
○与謝野国務大臣 この分野では世界のどこに行っても日本は負けないという意味でのリーディング産業というのは、やはりつくる必要が私はあるのではないかと思います。これは産業ばかりでなく学問の領域でも、例えば医学の領域でも、この分野は日本がリーダーだよというのをつくるということは大変大事なことだと思います。
それから、特定の業種だけが何かいい目に会うというようなことを先生が質問されているのだとすれば、それはそうではなくて、不況業種を取り扱うという考え方ではなくて、これは、個別の企業が自主的に判断することについていろいろな面で環境整備をしようという法律でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/175
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176・日野市朗
○日野委員 私の結論をお話ししておきましょう。要望と聞かれようと何しようと構いません。やはり、ある業種、ある企業、これが世界で立派に通用し、そして日本のリーディング産業になり得る、リーディング企業になり得るというものが生まれてくるとすれば、これは政府のてこ入れによって生まれるものではない、自分たちの力によってそこにのし上がっていくんだ、そういうことを私は申し上げておきます。決して、この認定という手段を使って、いろいろ、企業とか業界、これに過度の介入をされないようにということを、私は強く要望をしておきたいというふうに思います。何しろ通産省というのはいろいろ介入するのが好きなところだったですからね、今まで。そういう癖がずっと残っていたりなんかしたら、決して日本の企業やなんかは健全にはならないということを私はお話をしておきたいと思います。
実は、私は法務の方からバッターということでここに立ちましたので、ちょっといろいろな法務の関連について二、三お伺いをしておきます。
商法の改正案が法務委員会でこの間衆議院を通過しました。これは一〇〇%の親子会社をつくろうということで、株式交換、株式移転という手法を導入したわけですね。私は、この分社化やなんかも、やはり商法改正という一つの筋道の中でこの問題というものは処理されるべきだったと思うのですが、これを切り離してしまった。これはなぜですか。
そしてもう一つ、商法の改正で株式交換とか株式の移転、そういう手段でいろいろな企業のこれからの合併等が進みます。それについて、この再生特別措置法、これはどういう位置づけになるのでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/176
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177・林洋和
○林(洋)政府委員 まず第一点の、商法の特例という特別法ではなくて、商法一般でやるべきではないかということだろうと思います。
この法案の分社化、営業譲渡等の事務手続を軽減する緊急の必要性というものと商法の保護法益のバランスの問題で、私どもは、商法一般則として将来できれば、それはそれで一案ではないかなと思っております。
それから二点目の、株式交換、株式移転制度とこの事業再構築計画との関係でございます。
この株式交換あるいは株式移転制度は、ある意味では各企業が新しい事業に進出をする際などに円滑化に資するものでございます。したがいまして、私どもの法案においても、この株式交換、株式移転によって企業の組織を改革することが中核的事業の強化に資するものであれば、私どもの法案にのってくるというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/177
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178・日野市朗
○日野委員 それで、この産業活力再生特別措置法案、この法案も商法の会社法の原則に対して特別な措置を定めているわけですね。ところが、私は、商法の原則からいって、会社法の原則からいって、特に会社の資本的な基礎という観点に立って物事を見るときに、これは非常に問題ありと言わざるを得ない、こう思うのです。
まず、分社化のことです。分社化するときは、これは現物出資が行われるわけですね。もう言うまでもなく、現物出資の場合は、検査役を裁判所が選任する。その検査役は弁護士を大体選任して、その弁護士が公認会計士等に協力させて、現物出資がきちんとしたものであるかどうかを検討するわけですね。この基本的な原則に対して、今度は、裁判所に検査役の選任を申請しないで、検査役を自分の会社で選んで、そしてその検査役、これは弁護士、公認会計士等なわけですけれども、その人たちに調査をさせて報告書を出させる、こういうことでしょう。私は、これでいいのだろうかなと思います。
というのは、何で裁判所が検査役を選んで、ちょっと面倒な手続をとって時間もかけてやるかというと、これはやはり客観性を担保しているのだと思うのです。制度的な担保ですな、客観性の制度的担保。一つの会社が成り立つときは、その資本的な基礎というのは非常に重要なものです。だから私は、その客観的な担保がなければならない、この原則は貫かれなければならないと思いますが、どうでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/178
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179・林洋和
○林(洋)政府委員 お答え申し上げます。
商法上の大原則でございます資本充実原則との関係の御質問だと思います。私どももその点は十分考えて、法務省とも相談をしてまいりました。
まず、現行商法に基づいて裁判所から選任される検査役、これは原則として弁護士あるいは公認会計士であるという実情を踏まえて、検査役にかわる調査主体を弁護士などの有資格者に限定をしておるというのが第一点でございます。さらに第二点は、現物出資を行った対象財産の会社成立当時における時価が予定した価額より低い場合には、現物出資を行った会社及び会社成立当時の取締役が無過失のてん補責任を負う等、民事上の責任に関する規定を整備しております。第三点は、虚偽の証明を故意に行った弁護士などについては、刑事上の責任を問うことといたしております。
以上三点によって、商法上の大原則の資本充実原則を回避する、あるいはそれを損なうということはないものと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/179
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180・日野市朗
○日野委員 私も条文にそう書いてあることは十分知っていながら、やはり客観的な信頼性というものの大事さということを今指摘しているわけであります。
ではここで、実務的なこと。そういう原則があることはわかりますよ、取締役の責任、それから調査に当たった者の責任、これはわかります。しかし、きちんとそこを正していくための手段が用意されていなければならない、私はこう思うんですな。
それで、現物出資された財産、これは企業そのままの譲渡ということもあります、営業の譲渡ということもあります。でありますから、私は特にここで問題にしておきたいのは、その評価、これはどのように行われますか。企業の帳簿というものは、御承知のように取得財産であったり時価であったり、会計原則がまだ統一されていないという状況の中で、これは近いうちに統一されますが、どれを一体使ってやるということになりますか。
それからもう一つ。弁護士等は報告を上げることになりますね。まず主文が書いてあるんだと思うんですよね。これはきちんと現物出資として満たされておりますということを書くんだろうと思うんです。それに添付されていく資料がありますね、どこまでを出すんですか。それをちょっと教えてください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/180
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181・林洋和
○林(洋)政府委員 お答え申し上げます。
資本充実の原則にかんがみれば、現物出資される財産の時価が子会社の資産として計上される額を上回ることが必要でございます。したがいまして、一部の財産の時価を評価しただけでこのような資本充実が確認できる場合には、必ずしもすべての出資財産の時価を個別に評価する必要はないものと思っております。
このような場合、主務大臣への報告では、出資の対象となる各資産の項目名、実際に調査をした資産の時価、その時価の合計額が受け入れ価額の合計額を上回っていることの証明、こういったものを添付することになろうと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/181
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182・日野市朗
○日野委員 評価するに当たっては時価主義を貫くべき、こう私は強くこの場で主張をさせていただきたいと思います。
そして、そんなに手軽なものではないんだよということを、きちんと原則として立てておかなくちゃいけませんね。何か、私も仄聞するところによりますと、なに、あんな調査は二月もあればできるのさということをうそぶいているような会社の顧問弁護士とか公認会計士がいるように報道もされた。私はそんな手軽なものではないだろうというふうに思っておりますから、ここのところは強く私の方から要求をしておきたいと思います。
そのほかいろいろ聞きたいことがあるんですが、時間がなくなってきました。
私は、先ほども言ったように、この法律全部が全部悪いとは思っておりません。特に、ベンチャーの育成だとか何かについてはいいところがあるんですね。私は、惜しむらくはこの法律は、特に業界の再編成なんというのは、あれは大きな企業以外はできないようになっている。中小企業をどうしてくれるんだ。これからの日本の発展の苗床になっているのは中小企業なんです。それに対する言及がないということはこの法律の大きな欠陥だというふうに思っておりますが、時間がありませんから、ちょっと別の質問にいたします。
私は、民主党の出された法案は非常によくできていると思うんです。特に、女性に非常に大きな役割を負ってもらおう、女性起業家を支援していこうというような点は、私は非常にいいと思うんです。男性社会と言われる日本の中で、女性の感性というのは今まで埋もれてきました。女性の能力というものも埋もれてきた。しかし、これを今我々は引っ張り出していかないと、これからの日本のエネルギーが花咲きません。
その点で私は、女性起業家の支援というのは非常にいいと思うんですな。少し、女性起業家というものに対してこういうことを打ち出した背景、これをちょっと説明してください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/182
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183・松沢成文
○松沢議員 日野委員の質問にお答えいたします。
実は、私たちのこの法案を作成したプロジェクトチームでは、勉強会を開いておりまして、その中で米国の女性起業家に詳しい方のお話を伺いました。
それによりますと、アメリカでは、女性が起業した会社が一九九六年の時点で八百万社に達していて、全米の会社の三六%を占めている、こういうことでありました。米国は、連邦政府調達の五%を女性起業家に与えることを目標に定めた連邦取得合理化法という法律ができていて、女性ビジネス・オーナーシップ法などの法制度も確立している。これらを背景に、体系的な女性起業家支援のプログラムがアメリカではできているんですね。
私たちの法案も米国の施策を参考にしたところがあるんですが、通産大臣は、民主党の考え方は米国流の自由放任に過ぎているという趣旨をちょっと述べておられましたけれども、しかしアメリカは、市場における自由競争を徹底する一方で、連邦政府や州政府が調達制度などで社会的な弱者、女性を初め不利な立場にある人たちを思い切って配慮する、こういう施策も講じていて、とても参考になるんです。そこで、私たちの法案は、国や公庫に対して、物品等または役務の調達のための契約を締結する際には女性起業家に配慮して受注の機会の増大を図るようにすべきという責務を課した、ここが大きな特徴でございます。
また、通産大臣は、女性起業家の比率は数%にすぎないというふうにこの前述べておりましたけれども、これは統計のとり方にもよりますけれども、国民金融公庫の実態調査などでは、女性の新規開業は一三・六%に日本もなってきたという結果も出ています。女性による新規開業が一割を超えているということは注目されることだと思います。
この女性起業家支援の趣旨については何度も示しておりますから、ここでは省略しますけれども、こうして女性起業家育成の機運が盛り上がっている現在、民主党案を成立させる意義は極めて大きいと考えております。
以上です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/183
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184・日野市朗
○日野委員 野党が提出した議員立法というと、ややもすれば軽く見る風潮がある。これは私は非常に残念なんです。珠玉のような、ぴかっと光るものがあるので、各党とも民主党の案には注目をいただきたいものだというふうに思っています。
今ここで、もう時間がなくなりましたから、答弁の時間を合わせても三分ぐらいしかありませんから、私の考えをちょっと言わせていただくと、これはできるだけ、自民党さんも含めてだが、自民党さんにはいろいろ事情もありましょう、公明党さんだってかなりベンチャーには熱心だった、自由党さんもそうだ、社民党さんもそうだ。こういう人たちに積極的に働きかけて、御理解を得て、ぜひともこれは通してもらいたいものだと思いますが、見通しはどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/184
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185・島聡
○島議員 本会議でも申しましたとおり、各党が政策の一致ということを非常に重視する姿勢である政党であるならば、これは成立をいたします。そうじゃなくて、政策の一致じゃなくて、政局とかそういうものだけ、あるいはほかの要素だけを考えるようであるならば、これは残念な結果に終わるのかなというふうに思っておる次第でございます。
私ども、相当の期間、ここでいろいろな御質問を賜ったり、あるいは通産大臣の御答弁を伺いましたけれども、何というんですか、例えば私どもの案に対しまして、新しいものに飛びつくだけではというような話がありましたけれども、現在の産業再生法案というのは、どちらかというと古い行政体質を守るだけになっているような気がしてなりません。もちろん行政というのは裁量の枠があるわけでございますけれども、それもやはり、透明性と言葉では言うけれども本当にそうなっているのか、何かまた逆行するような法案でございます。
何度も申しますが、各党各会派の、社民党さんも含めてでございますけれども、各党各会派、将来の、先ほど委員がおっしゃいました、高い志で日本を再生していく、そういう思い、政策の一致があるならば、この法案は通るという見通しを持っております。
以上でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/185
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186・日野市朗
○日野委員 まだ一分あります。最後に私の主張を述べておきたいと思います。
特に通産省の官僚の諸君、まあこれは通産省ばかりじゃありませんけれども、財界だの、場合によっては政治家だの、そういったところの圧力に屈してはいかぬ。債務の株式化なんというのがありますな。これなんというのは、こんなもの一体どこで使えるんだと私は思いますよ。それも、宮澤さんが全銀連の会長なんかといろいろ、宮澤さんの方から話をした、向こうからも電話が来た、何かそういうやりとりの中からこういうものが生まれてきたと仄聞しています。こんなもの、だれも使えるものだと思ってはいない。
これを使っていこうとしたら、これは大変なことですよ。不良な債務、これをどんどん株式に置きかえて、そしてそれを償却もしないで、そんな形で残していったら一体どうなるんだ。百害あって一利なし、私はそう思う。
それから、さっきから雇用の問題が出ていますが、ちゃんと自分の経営哲学を持った人はきちんとやっているんです。こういうふうに言っていますな。ある人、ちょっと特定の人の名前はやめておきますが。
何のためのグローバル化かということだ。利益のためというなら、人件費、材料などコスト面で海外生産が有利なことは間違いない。私は、経営者の使命は雇用維持が一番で利益は二番という考えだ。雇用を維持し研究開発をするため、一定の利益を確保する必要がある。利益のため国内雇用を犠牲にするというのは企業目的がおかしいのではないか。これはある立派な一流企業の社長さんです。
きちんとやる人はやる。甘えの構造を断たなければならない、それがきょうの私のテーマであります。
終わります。ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/186
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187・古賀正浩
○古賀委員長 福留泰蔵君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/187
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188・福留泰蔵
○福留委員 公明党・改革クラブの福留泰蔵でございます。今議題となっております産業活力再生特別措置法案に関連いたしまして、質問をさせていただきます。
この法案については、昨日八時間の審議が行われまして、そしてさらに本日、午前中三時間の参考人質疑が行われ、また、午後から八時間の質疑ということで承知しているわけでございまして、これまでも数多くの質疑が行われ、議論が行われてきたところでございます。私は、かなり論点が出尽くしている感じがしておりますので、特に中小企業ベンチャーへの支援という観点から若干の質問をさせていただいて、あわせて、産業再生という観点から、私は関連があると思っておりますけれども、コンピューターの二〇〇〇年問題について質疑を行わせていただきたいと思っております。
我が国経済の状況を見てみますときに、生産性の伸び率の低下が憂慮すべき状況になっているわけでございます。その最大の要因といたしまして、過剰設備、過剰雇用、過剰債務の三つの過剰ストックが指摘されているわけでありまして、これはある試算、統計計算を使ったようでありますけれども、我が国の過剰雇用が三百三十万人、過剰設備が七十兆円、過剰債務が百兆円という試算もあるようでございます。そのために、経営資源の発掘と有効利用が必要である、そういった認識のもと、我が国産業の活力の速やかな再生を実現するために本法案が提出されているというふうに承知をしております。
この法案は三つの柱から成っていて、一つが事業再構築への支援、また二つ目として、創業者、中小ベンチャー企業の支援、三つ目が技術開発活性化のための措置という三つの柱から成っているわけでございます。しかしながら、私の感じとしては、どちらかというと事業再構築に偏っている感が否めない感じがするわけでございまして、この対策は、そういった面では若干画竜点睛を欠くというような感じがしてなりません。
私の感じとしては、最も重要なのは、何といっても中小ベンチャー企業の育成ではないかと思っております。それはアメリカの例を見てみれば明らかでありまして、アメリカでは、過去不況に陥っていた経済が八〇年代以降大きく飛躍したわけでございますけれども、その要因は中小ベンチャーが伸びたことにあるということはよく知られていることでございます。
例えば、新規企業の勃興という角度で見ますと、インテル、マイクロソフト、オラクル、シスコを合わせた株価時価総額は八千七百億ドル。そしてその総額は、ATT、IBM、GM、モトローラ、フォード、ダイムラー、クライスラー、ウォルト・ディズニー、フィリップ・モリスの合計に匹敵するということであります。また一方、開業率のデータを見てみますと、最近のデータでありますけれども、日本が三・七%であるのに対して、アメリカは一三・七%であるということであります。アメリカが非常に活性化された社会であるということが、これらの数字から如実にわかると思っております。
従業員数も、八〇年代に大企業が三百七十万人削減したのに対して、アメリカでは中小ベンチャー企業がその雇用を創出したと言われているわけでございまして、九〇年代の米国経済の活況はまさしくいわゆるデジタル革命によるものだというふうに私は理解をしております。
例えば、我が国のように成長十五分野を横並びで考えるというふうな発想がアメリカにはなかったのではないかと思っておりますし、例えばゴア副大統領の情報ハイウエー構想みたいな国家戦略を持って情報通信分野に重点投資を行うような施策があったんだろうと思いますし、そういった意味で、日本は今世界のスピードに完全に取り残されている感じがしてなりません。そういった観点から日本の産業再生というものを考えていかなければならないのではないかと私は思っているわけでございます。
今求められている経済政策というのは、経済成長力を強化するための政策、つまり、この法案でも言われているわけでございますけれども、生産性向上に向けた供給面の体質強化というのが必要であるということは認識をしているところでございます。
しかし、先ほども申し上げましたけれども、今回の産業活力再生法案は、債務の株式化とか廃棄設備への税制措置とか、ある意味で非常に後ろ向きの政策に見えるわけでございます。これは本来のサプライサイドの政策とは違うんではないかという感じがしてなりません。過剰設備、過剰債務、過剰雇用の問題は確かにあると思います。しかし、問題は、バブル期から生じている構造的な過剰と、景気の落ち込みによって生じた循環的な過剰が、混同されてしまっていることではないかと私は思っております。
過剰設備について、ニッセイ基礎研究所というところの調査によりますと、景気要因による過剰設備が四十兆円、構造要因による過剰設備が三十兆円という試算もあります。それから、過剰債務の問題について申し上げますと、三和総研の調査でありますけれども、景気要因による過剰債務は六十七兆円、構造要因による過剰債務は二十五兆円と分析しているところであります。
ここで注目すべき点は、構造要因による過剰設備は一九九六年に一度解消されようとしたことであります。しかし、その後再びふえ続けているという事実でありまして、また、構造要因による過剰債務は、バブル崩壊後の九一年をピークに解消に向かっているわけであります。つまり、構造要因による過剰設備と過剰債務は、バブル崩壊が直接の原因ではなくて、その後の景気悪化に起因するものであるということをこの数字は示しているんではないかと私は思っているところでございます。
政府は、今回の法案でもそうでありますけれども、本来、景気要因による過剰と構造要因による過剰を立て分けて論ずべきところを、一緒くたにして論じているとしたら、私は随分乱暴な話ではないかと思っているわけでございまして、そういった意味から、基本的に景気要因で生じた過剰は景気回復で対策する、構造要因で生じた過剰は原則企業の責任で解決するべきではないかという意見もあるわけであります。
そういった観点から、今回の法案の提出に当たって、大臣から、その立て分けについてどのように考えていらっしゃるのか、御答弁を求めたいと思います。
〔委員長退席、小野委員長代理着席〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/188
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189・与謝野馨
○与謝野国務大臣 日本の株価は、平成二年の十二月にピークを打ちまして、平成三年からいわゆるバブル崩壊の過程をたどったわけでございます。バブルが崩壊したということをなかなか我々気がつかなかったわけでして、これはもう循環的な要因で景気が悪いんだというふうにずっと信じて、その後の経済運営、政策判断をしてきたわけでございます。その結果、補正予算、相当大がかりなものを何回か続けていきましたが、どうも循環的な要因ではないということが論じられるようになりまして、一時は、やはり構造的なことを考えなきゃいけないという議論が優勢になってまいりまして、そのときは多分、複合不況という言葉が使われていた時代もあるわけでございます。
先生おっしゃるように、景気の要因、循環的な要因もありますけれども、やはり構造的な要因もあるんだろうと私は思います。その構造的な要因を分析していきますと、一つは、技術のレベルの側面でまいりますと、どうも発展途上国とアメリカなどの先端的な技術を持った国の間の挟み打ちに遭ってしまっているという側面があります。したがいまして、そういう意味では、生産要素のコストの低い、例えば発展途上国などに既存の分野ではどんどん負けてしまうという構造的なことが出てまいりました。
それから、それに拍車をかけますのは為替レートでございまして、円高に振れますとそれだけ日本の競争力が落ちていくという、これはどうも企業の経営者の力ではどうにもならない、いわば一つの構造的な要因だろうと私は思っております。
それと同時に、関税をなくし、人、物、お金、こういうのが自由に行き来をするようになりますと、過剰設備というものを日本の国内の問題だけで論じられるのかといえば、そういうことはなくて、例えば日本で一連の設備をつくって、これが適正な規模だと思いましたら、よその国で一連の設備をつくった。これは途端に日本も海外の要因で設備過剰になってくるわけでございまして、そういう意味では、昔の経済とは違って、非常にたくさんの要因で日本の経済の動向が左右されるというふうになっております。
ただ、この法案が目指しておりますのは、やはりバブル以降やっておりませんでした、確かに多少は進んできましたが、バブルの時代に生産性の低い分野に多く投資をされた、その分野に資本と労働が張りついたままになっている、これを生産性の高い分野に円滑に移動させようという、過去の清算をきちんとしようという思想が一つ。それからもう一つは、中小企業とかベンチャーとか新しい技術とかという、過去に向かっての清算のほかに、やはり将来に向かっての新しいスタートを切る。この二つの思想でこの法律は成り立っていると私は考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/189
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190・福留泰蔵
○福留委員 今大臣の方からは、構造的要因と景気循環型の要因というのは明確に区別がつけにくいというか、さまざまいろいろな要素で今の状況というのがあるというふうなお話だったろうと思っておりますし、今の御説明によりますと、特に過去の清算をきちんとやろうということで、今回の第一項目めの事業再構築というのはそういう意図でこれがつくられているというふうなお話だったんだろうと思います。それが、私が感じた若干後ろ向きではないかという心情につながるものなのかなという感じで、今聞いていたところでございます。
これは後でもう一回、経営責任ということでお尋ねいたしますけれども、過去の清算をきちんとやるということについて私が立て分けて申し上げたのは、恐らく、今大臣の方からもお話がありましたけれども、経営者ではどうにもならない要素もあったんだろう、だから経営責任は問えないだろうということだろうと思いますけれども、その中で、複合的な要因があった中でそれを立て分けるという発想になったときに、それはある意味で、例えば景気循環型の要因による過剰設備、過剰債務等については経営責任というものが出てくるんじゃないかなという思いもあるものですから、今大臣のそういった観点からの見解をお尋ねしたところでございまして、見解はわかりました。
それで、一九九五年と九六年の経済白書によりますと、バブル期に形成された資本設備の過剰が、その後の設備投資の圧縮期を経て、おおむね調整完了となったというふうに表現されているんですね。つまり、バブル期に形成された資本設備の過剰は、既に九六年の段階で調整完了となったというふうに経済白書に書いてあるんです。
しかし、現在の生産設備の過剰はなぜ生じたかというと、そうすると、それ以降の経済の急激な悪化によって生じたことになるわけですね。これはバブルと関係ない話になってきているわけであります。冷静に見ると、転用不能な設備が存在しているというよりも、需要の急速な冷え込みによりまして使用可能な資本ストックが遊休化してしまっているという見方の方が正しいのではないかということだろうと思います。
今回の議論のようにサプライサイドを重視すべきであるという主張は正しいと思いますけれども、それは必ずしも需要水準に合わせて供給力を重視することではない。経済の供給力が有効に生かされるように需要水準を適切に誘導することも、ある意味ではサプライサイド重視の政策だとも言えるんじゃないかと思っているわけでございまして、先ほど後ろ向きだというお話ありましたけれども、本来手を打つべき需要水準の回復策というのが今回の中で視点がないわけでありますけれども、その点についての大臣の見解をお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/190
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191・与謝野馨
○与謝野国務大臣 日本の経済がどう成り立っているか、数字で見ればはっきりしているわけですが、日本経済全体の六割以上を個人消費が占めておりまして、政府あるいは地方公共団体の支出いたします公的資本形成というのは、一割を切って八%ぐらいなわけでございます。
そこで、需要の面から経済を引っ張るというときに、我々に残された手段というのは一体何なんだろうかといいますと、個人の場合ですと、やはり可処分所得をふやすという意味で減税を既にやりました。それから、企業の設備投資意欲をということもありますし、また、外国の法人税と水準を合わせるという意味で法人税の減税もやりました。これは、将来の期待収益率を上げるということで設備投資に意欲を持っていただく。
あるいは、住宅部門では、住宅減税、あるいは住宅金融公庫のローンを下げるということによって、マンションあるいは持ち家の購入にある種の刺激策を与えました。また、公的な資本形成の分野では、昨年十二月、ことしの当初予算と、二度にわたって意思を持って財政支出をしたわけでございます。ほぼ我々が持っている需要サイドの対策というのは、手は尽くしてしまったという感じが実はございます。
そこで結局は、私どもとしては、個人個人が日本の将来に対して信頼を持てるかどうかという、マインドと一言で言っていいかどうか、やはり実際に個人が冷静に判断して日本の将来にいわば信頼と安心を持てるかどうかという部分が非常に大事なわけでございます。
そういう意味では、これからどんどん財政支出という薬を使っていくことがいいのか、あるいは、経済の体質そのものを直して本当に力強い経済をつくるということを通じて国民の将来に対する信頼を回復するのかといえば、当面は財政支出を続けざるを得ないにしても、やはり日本の経済の体質を本当に力強いものにするということは避けて通ってはいけないことだし、やはり正面からそういうものと直面をしていくということが必要だというふうに考え、今回の法律を提出したわけでございます。
この後も、今法務省で準備しております倒産法制等々、あるいは連結納税制度とか、いろいろな環境整備をする必要がございます。ございますが、やはり、日本の経済の将来に対して国民一人一人、消費者一人一人が信頼と展望を持てるかどうかという状況をつくることが、日本の経済にとって私は一番大事なことだろうと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/191
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192・福留泰蔵
○福留委員 今大臣の方から、まさしく体質を改善して強化していくことが必要であるということのお話がありました。その点については私も同じ考え方を持っておりまして、それはまさしく今やらなければならないことだろうと思っております。
個別の名前を挙げていいのかどうかあれですけれども、新聞によると、日立製作所とかNECとか東芝といった日本の製造業を代表するような会社でありますけれども、こういった会社が、この三月期、創業以来の巨額赤字に転落をしたとかという報道があったようでもありますし、また、新日鉄は昨年、合併以来初めて粗鋼生産量世界一の座を韓国のメーカーに奪われたというふうなことも報道されているわけでありまして、これはまさしく今の日本の産業界の現状を象徴しているんだろうと思っております。その上で、今大臣の方からお話があった、体質を強化していくということ、日本の産業を再度活性化して力強いものにしていくということは、まことに重要なことだろうと思っております。
そこで、今回の法案の事業再構築関係の中で、事業再構築計画が認定された企業は、特別償却、買いかえ特例、譲渡益課税の繰り延べ、欠損金の繰り越し、繰り戻し、登録免許税、不動産取得税の軽減等の税制上の恩典を受けることになっているわけであります。この税制措置によって企業が受ける減税額について、本会議で大臣は答弁なさいまして、三百億というふうな想定で御答弁があり、そしてその内訳も含めて答弁がありました。欠損金の取り扱いを二十社と想定して百億円とか、共同出資子会社への現物出資と買いかえ特例が二十社で百億円等々の具体的な想定でお答えがあったわけでございます。
私、ここでちょっと確認をして教えていただきたいのは、こういった、二十社、百億円というふうに具体的に想定をされているわけでありますけれども、この想定をされた根拠、どうして二十社というふうに想定されているのか、どうして百億円と想定されているのか、それをちょっと教えていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/192
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193・林洋和
○林(洋)政府委員 お答え申し上げます。
この利用件数の根拠でございますが、税制改正要望を行う際に無記名のサンプル調査を行いまして、これをもとに推計をしております。したがいまして、個別の企業等を想定しているとかそういうことではございません。むしろ、正直申し上げると、やってみなければわからないという部分も当然ございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/193
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194・福留泰蔵
○福留委員 今の答弁は少しわかりにくいんですよ。二十社、百億円という形で本当に本会議で答弁をされているわけでありますから、それを何か、やってみないとわからないという数字を本会議で答弁されたということになりますと、そんな心もとないことでこういう法律をつくっていらっしゃるのかなという気になるんですよ。もう少し何かあるんだと思いますけれども。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/194
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195・林洋和
○林(洋)政府委員 お答え申し上げます。
先ほどの答弁で最後の部分は大変失礼をいたしましたが、私どもは、税制改正要望を行う際に、各企業に対してサンプル調査を行います。どういうようなことをやるか、それをやるとすればどのぐらいなのかというようなことをサンプル調査をやりまして、それは当然母数が少のうございますから、それを全体に推計をするということで、例えば欠損金であれば二十件で百億というような推計をしているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/195
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196・福留泰蔵
○福留委員 余りここで議論はしたくないんです。逆に言うと、二十社で百億円で、まあ税制改正の要望から推計をしてというふうなお話ですけれども、そうすると、そのことでこの法律の目的である日本の産業の活力が再生できるというふうにお考えなんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/196
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197・林洋和
○林(洋)政府委員 お答え申し上げます。
私どもの、この法律で目的としております、生産性の低い分野から高い分野に、資本、労働力あるいは土地といった経営資源を移していくというやり方といたしまして、共同出資会社というやり方もございましょうし、あるいは設備廃棄というやり方もございましょうし、合併というやり方も、いろいろあろうと思います。
そういう中で、この税制が二十件、百億で果たして十分かどうかというのは、ほかの手段との関係もございますから、一概にこの二十件、百億で十分か不十分かという議論はなかなかしにくいのではないかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/197
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198・福留泰蔵
○福留委員 これ以上お尋ねしても今以上の答弁はできないようでありますから、次へ行きます。
経営者責任の問題でありますけれども、本会議で総理も、今回の措置は、生産性の向上に向けて、既存の中核的事業の拡大や新たな商品や生産方式の導入など、将来へ向けた経営上の努力を行う事業者に対して行うものであるので、責任を問うことは適当ではないと答弁をされているわけでございまして、当委員会で通産大臣からも同じ見解が述べられているところでございます。
他方、例えば、自力で競争力をつけた企業より過剰設備の処理を政府に頼って進めようという企業を優遇したら、公正な競争と自己責任の原則をゆがめるのではないかというふうな意見もあるわけであります。
先ほど私が申し上げたとおり、過剰設備、過剰債務の問題にしても、複合的な要因があって、経営者責任があるものとないものと分けることもできるんじゃないかという感じも私はしているわけでございます。そういった角度から、経営者責任を問うことは適当でないという見解を、同じ見解だと思いますけれども、確認させていただくとともに、今申し上げた企業経営のモラルハザードを生じかねないとの懸念に対する大臣の見解をお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/198
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199・与謝野馨
○与謝野国務大臣 総理と同じ答弁の繰り返しになって恐縮でございますが、通産省としては、供給サイドの構造改革を進め、生産性の向上を図っていくに当たっては、民間の自主性を尊重すること及び市場原理に立脚することが特に重要であると考えております。本法律案においても、このような考え方に基づきまして、事業者自身の手による企業の事業再構築を円滑に進めるための環境を整備するということであります。
また、具体的な措置の内容も、欧米諸国でも広く取り入れられている会社組織の見直し手続や税制措置であり、基本的にはグローバルスタンダードの範囲内であると考えております。
このような本法案の基本的考え方及び措置内容にかんがみても、法律案がモラルハザードを招くようなことはないものと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/199
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200・福留泰蔵
○福留委員 わかりました。
さて、この法案に関して、私が一番関心のあります中小企業の、またベンチャーの問題についての質問に移らせていただきたいと思います。
午前中の参考人質疑におきまして、濱田参考人から、私も伺っていて大変おもしろい例えだなと思ったのですけれども、今回の法案をだんご三兄弟に例えてお話がありました。
事業再構築と、創業者、中小ベンチャー企業支援、技術開発の問題、この三つをだんご三兄弟に例えて説明があって、その中で長男だけが大変大きいというような趣旨の話がありましたけれども、経済効果という観点から、事業構築の経済効果が最も大きくて、中小ベンチャー支援については、戦後の中小企業政策の総括的なものであり、目新しいものはないというふうに意見表明がありました。そして、三つ目の技術開発については、質的には新しいが経済効果は大きくないというふうな意見陳述があったところでありまして、私の先ほど来の質問も同じような意識で質問させていただいているわけであります。
濱田参考人の本も私は読ませていただきました。戦後の中小企業政策というのは、一九四八年の中小企業庁設置以来一貫した流れがあるわけでございますけれども、先ほど参考人の意見陳述の際にも資料を配付していただいて、その資料の中にもあるわけでありますけれども、三つの波があるというふうな説でありまして、一九七〇年代においてベンチャー企業運動の第二の波が起きて、そして一九八九年の新規事業法施行以来、創業支援運動というものが起きているということで濱田参考人は述べられているところであります。
今の濱田参考人の意見から、もう一つ、主務大臣の認定の件についてお話がありまして、濱田参考人は行政の裁量判断をお認めになりました。それは必要なことだと。ただ、その上で、認定結果に対しては、結果は厳しく総括をしていかなければならないだろうという御意見でありました。私はもっともだなというふうに聞いていたところでございます。
実は、今紹介申し上げました濱田参考人の意見をもとにちょっとお伺いしたいのですけれども、今回の中小ベンチャー支援について、総括的なものであり目新しいものはないというこの意見に対して、大臣の見解と、それからさまざまな過去の大きな中小企業政策の中で、今回の本法案はどのような位置づけになっているのかという点についてお伺いしたいと思います。
あわせて、ベンチャー支援それから創業者支援については、先ほど紹介したとおり、ベンチャー支援というのは七〇年代以降いろいろ取り組みが行われている、九〇年代以降もいろいろな取り組みが行われているわけでありまして、過去のこういった支援に対する総括はどのようにされているのか、この点について通産省の見解をお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/200
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201・江崎格
○江崎政府委員 委員がたびたび御指摘になっておりますように、我が国の経済の活力の維持、あるいは良質な雇用機会の創出、確保ということを考えますと、中小ベンチャーの育成というのは大変重要な政策課題というふうに私どもは思っております。
通産省としましてこれまで、資金、人材、それから技術、こういった各分野にわたります各種のベンチャー支援策というのを講じてまいりました。これまで講じた主なものを幾つか御紹介しますと、例えばことしの二月から新事業創出促進法というのが施行されておりまして、個人による開業、あるいはそれに対する支援、それからSBIR制度といったようなものを導入しております。
それから、先般の六月十一日に産業構造転換・雇用対策本部で決定されました産業競争力対策におきましても、中小ベンチャー企業の立ち上がり、成長支援策としまして、ベンチャーキャピタルファンドへの出資、あるいは人材ネットワークの整備など必要な施策を盛り込んでおります。
加えまして、今般、今御審議をいただいております産業活力再生法案の中で、中小ベンチャー企業に対します設備資金の無利子融資ですとか、あるいは信用保証制度の特例を盛り込むことによりまして、資金調達の多様化あるいは円滑化の観点からのベンチャー企業の支援策の一層の充実を図ってきております。
こうしたことでも私どもかねてから資金、人材、技術、各分野にわたります施策をやってきておりますけれども、こうした施策の現在一番私どもとして欠けております点として、創業段階における資金に対して今回の法案をもちまして対応しようということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/201
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202・福留泰蔵
○福留委員 今さまざまこれまでの中小企業、ベンチャー支援策について御説明がありました。確かにそのとおりなのですね。さまざまなことをやってこられているわけであります。
しかし問題なのは、どうして、これほどベンチャー支援についてもこれまでの取り組みをやってきながら、日本はなぜベンチャーが結果として育っていないのかというところが私の問題意識であって、なぜ中小企業は元気が出てこないのか、ベンチャーは元気が出てこないのか、これがポイントだろうと私は思っているわけであります。
基本的には、日本の社会全体がベンチャーを育てる社会になっていないという根本問題にぶち当たっているんだろうと思っております。今回の新しい目玉として創業者支援というものを盛り込まれたというふうに今説明がありましたけれども、これすらも十分ではないと私は思っておりますし、もっと発想を変えた中小企業またベンチャー、創業者に対する支援というものをやっていかなければいけないのではないかというふうな意識を持っております。
特に、私が最も大事な問題だと思っているのは、一つは創業者への出資の問題だと思っております。ベンチャーというのはリスクマネーなわけでありますから、そのリスクを国みずからがリスクテーカーとなるということが必要であって、そうでなければ日本にベンチャーが育つことは不可能じゃないかなというふうに思っております。
ここで、今回のこの法案の中に実は信用保証協会の特別保証枠を使うというふうな話があるわけでございまして、これは私は大変前向きに評価しておりますし、またできるだけ早くそれが利用できるようにしてもらいたいと思いますし、当然無担保でということで利用できるんだろうと思いますけれども、この点についての確認をさせていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/202
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203・鴇田勝彦
○鴇田政府委員 今回の法案におきまして、できるだけ早期の成立を期待しておるわけですが、法案が成立いたしましたときには、委員御承知のように、附則におきまして、ベンチャー支援、創業者支援の関係の特例保証につきましては九月一日から法律が施行されることになっております。この時点から実際に中小企業の方々に使っていただけるように、事務的な準備をしていきたいと考えております。
さらに、確認ということでございましたが、今回の特例保証につきましては、創業者についての二千万円、あるいは中小企業者、ベンチャーに対する無担保保証五千万円、これはいずれも無担保で実施される予定になっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/203
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204・福留泰蔵
○福留委員 それで、もう一点確認しておきたいことは、国の財源措置だと思います。
昨年末に成立しました新事業創出促進法でも創業者に対しての信用保証があったわけでありますけれども、一千万円を保証対象にしておりますが、うまくいっていないようであります。なぜかというと、国の財源措置がないからというふうに言われておりまして、保証協会自体が踏み切れないというふうな話もあるわけでございますけれども、国の財源措置に対しての見解を伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/204
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205・鴇田勝彦
○鴇田政府委員 先生御指摘のように、本年二月から一千万円の特枠の保証制度というのが実施されておりますが、各協会の実施状況を見ますと、余りはかばかしくございません。私のところも各自治体から陳情がございまして、具体的な財源措置の裏づけがないがゆえに、なかなか保証の窓口が流れがよくないという御指摘もいただいております。
今回実施をいたします二千万円についての無担保特例保証につきましては、二十兆円の特別保証の枠の中で活用させていただきます。これは財源的な面でいえば、既に各県の保証協会に二千億円の財源が配付済みでございます。その前提で、本制度は活用が進むのではないかと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/205
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206・福留泰蔵
○福留委員 ベンチャー支援について、私、第二の大きな問題と考えるのは、金融市場の問題だと思っているわけでございます。
金融市場の問題についてはこの委員会でもさまざま議論があって、日本は完全におくれているという指摘があるわけであります。株式市場や社債市場が整備されていないわけでありまして、リスクマネーがとれないという状況があります。
そこで今、ナスダック・ジャパンというのが注目されているわけでございまして、あるエコノミストによりますと、市場に爆弾が落ちたような衝撃だと言っているようでございますけれども、この構想はいまだ不明な部分があるわけでございます。しかし、不明な部分はありますけれども、アメリカの株式市場のすそ野が広く、日本は極めて薄い、こうした状況の中で、より多層的な証券市場の形成に一陣の風を吹き込もうとしているのは事実でありまして、このナスダック問題、そしてその意味するものにどのように対処をしようとしておられるのか、見解を伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/206
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207・江崎格
○江崎政府委員 ナスダック・ジャパンに対する対応の問題でございます。
このナスダック・ジャパンですが、これは、全米証券業協会とソフトバンクが協力をしまして、二〇〇〇年末を目標にして設立を予定している新たな証券市場の動きだというふうに認識をしております。私ども、こうした新しい証券市場の設立の問題につきましては、店頭市場などの既存の市場との市場間競争をつくり出すということで、証券市場の活性化に大変役に立つものというふうに見ております。
私ども通産省としましては、市場からの資金調達を行うベンチャー企業などの立場に立ちまして、我が国の店頭市場の活性化のためにマーケットメーク制度を電子取引化するということを早く実現すべきだというふうに思っておりまして、関係省庁に対しまして積極的に今働きかけを行っております。こうしたことを通じまして、中小ベンチャー企業の資金調達の円滑化のための環境整備により一層努めていきたいというふうに思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/207
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208・福留泰蔵
○福留委員 まさしく今御説明があったとおり、金融市場の活性化というものがベンチャー支援に当たって大事なことだろうと思います。
そういった観点から、一つは店頭市場の改革ということも必要だろうと思っておりますし、あわせて、証券取引所の規制緩和ということも一つのテーマではないかと私は思っております。
この店頭市場改革、そして証券取引所の規制緩和ということについての見解を、通産省と、大蔵省に関係する部分については大蔵省から答弁をお願いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/208
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209・江崎格
○江崎政府委員 店頭市場改革の問題でございますけれども、私どもも、店頭市場を活性化させるということは魅力ある市場をつくるということで不可欠と考えております。
私どもが考えておりますことは、一つはベンチャー企業にも配慮した登録基準、これをまず抜本的に見直す必要があるだろうというふうに思っております。それから第二に、証券会社がみずから気配値を提示しまして売買を成立させるという、いわゆるマーケットメーク制度でございますが、これを導入すべきだというふうに思っております。それから第三番目に、公開前の企業の第三者割り当てなどに関する資金調達を今阻害していると言われております公開前規制、これを緩和すべきだというふうに考えております。
こういったことを中心にしまして、店頭市場の活性化の実現に向けまして、現在、関係省庁に働きかけをしております。
先般の六月十一日の産業構造転換・雇用対策本部におきまして決定されました産業競争力強化対策におきましても、一つはマーケットメーク制度を電子商取引化するということがうたわれておりますし、それから公開企業に対する一層の情報開示の徹底というような施策も盛り込まれております。私ども通産省としましては、これからも中小ベンチャー企業の育成のために店頭市場の活性化をより一層働きかけていきたいというふうに思っております。
それから第二点目の証券市場の規制緩和の問題でございますが、私ども、これはぜひ必要だというふうに思っております。平成十年の十二月から金融システム改革法というものが施行され、各種の規制緩和が実施されておりまして、各取引所におかれましても活性化に向けた取り組みが始まっております。
特に、中小ベンチャー企業の資金調達を円滑にするという観点から見ますと、昨年の十二月に大阪証券取引所におきましてベンチャー向けの新市場が創設されました。それから、東京証券取引所におきましてもベンチャー企業を主な対象とした市場創設の動きがございまして、こうした動きが各地で見られるということでございます。私ども通産省としましても、こうした東証、大証さんの取り組みは市場間の競争を促進するということで、大変いいことで、結果的に中小ベンチャーに対しましても一層魅力ある資本市場というものをつくり出すのではないかというふうに期待をしております。
これからも、中小ベンチャー企業の資金調達の円滑化を図りますために、必要な環境整備に私どもとしても取り組んでいきたい、このように思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/209
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210・福田誠
○福田(誠)政府委員 ただいまの通産省の御答弁とかなり重複いたしますが、まず、店頭登録市場につきましては、我が国の将来を担うベンチャー企業等の資金調達の場として重要な役割を果たすものと私どもも考えております。
こうした観点から、店頭登録市場の整備は重要な課題と認識しておりまして、まず、政府におきましては、昨年十二月に施行されました金融システム改革法におきまして、店頭登録市場を従来の取引所市場と同等の存在として法律上明確に位置づける等の措置を講じております。
それから、実際に店頭登録市場を開設、運営しております日本証券業協会におきましては、先ほどの御答弁と重複いたしますが、店頭登録市場の活性化を図るために、昨年十二月以来、既にベンチャー企業向けの登録基準の創設を初めとする登録基準の見直しを行っておりますし、公開前規制の大幅な緩和もいたしております。さらに、店頭登録銘柄の流動性を高めるためのマーケットメーカー制度の導入も行っております。
また、今般取りまとめられました雇用創出、産業競争力強化のための規制改革に基づきまして、さらに協会におきましては、マーケットメーカー制度のもとで小口注文を自動執行するための電子取引システムを開発し、早期に稼働させるとともに、店頭登録企業のタイムリーディスクロージャーの一層の充実を図ることといたしております。
それから、第二点の取引所の活性化につきましても、先般の金融システム改革法におきまして、取引所市場における取引システムの見直し、改善としまして、取引所内における複数市場の創設、設立を解禁いたしております。また、御案内のとおり、取引所への集中義務を撤廃いたしまして、さらに取引所外取引に係る公正取引ルールの整備を行っております。
こうした流れの中で、各取引所におきましても、みずからの市場を活性化していく観点から、昨年十二月以来、中堅・中小企業の上場を促進するための上場基準の見直しなり、大阪、名古屋の取引所におきましては、投資家及び会員同士がネットワーク上で価格等の交渉を行うことができるような電子システム市場の創設、さらに立ち会い場の廃止によるシステム売買への移行などの改革に主体的に取り組んでおりまして、大蔵省といたしましても、今後とも各取引所が独自性を発揮しながら創意工夫を持って効率的なサービスを提供できるように、もって証券市場全体の効率化、機能強化が図られるように期待しているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/210
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211・福留泰蔵
○福留委員 証券取引所の規制緩和の関係でいえば、伺うところによると、地方の、広島でしたか、あともう一カ所、何か撤退をされている。きょう午前中の参考人の意見の中でも、地方の証券取引所の撤退は救済合併であって、かえって地方の資金調達の場をなくしていくことになるというような指摘もあり、何らかのシステムをさらにつくる努力が必要であるというような指摘もあったところであります。
こういった今御説明をいただいたような金融市場の改革というのは、政府が金をかけてやるというものではないわけでありまして、財政出動は要らないわけであります。制度設計をいかにするかという問題でありますので、ベンチャー政策の残された政策領域として、ここはぜひとも思い切って取り組んでいただきたいというふうに要望を申し上げる次第でございます。
さて、ちょっと時間がなくなりましたので、続きまして私は、産業再生に関連するのだろうと思っておりますけれども、コンピューターの西暦二〇〇〇年問題、いわゆるY2K問題について質問をさせていただきたいと思います。
Y2K問題が何であるかということは、ここであえて申し上げるまでもないかと思います。コンピューターが西暦二〇〇〇年を迎えるとトラブルを起こすものがあるというふうな指摘があるわけでございます。もう既に私どもの社会というのはコンピューターなしでは考えられない状況になっているわけでございまして、コンピューターのトラブルというものは社会経済生活への多大な影響を与えて混乱を生ずる可能性が指摘されているわけでございまして、各国政府また民間レベルにおいても、その対策を講じている最中でございます。
しかし、もうあと半年を切っているわけでございまして、既に、全く何のトラブルも起きないようにするということは不可能であるという状況であります。私はそういった認識をしているわけでございまして、また、特に日本の政府の取り組みというのは諸外国に比べて大変おくれているというふうな認識をしております。
これはアメリカの例でありますけれども、アメリカのゼネラル・アカウンティング・オフィス、GAOが、本年の四月二十八日、アメリカの議会へ米国の主要二十四機関のY2K問題の対策総コストを報告しております。
Y2K問題は、対策の作業を進めれば進むほど問題の困難さというものがわかってきて、その深刻さが増してきているという状況があって、そしてそこに予算がどんどん追加されているという性質のものであります。最終的には、アメリカの政府としては百億ドルを超えるだろうというふうに言われております。日本政府の予算はどうなっているかと見てみますと、九八年度で九十八億、九九年度で二百四十八億円です。片や百億ドル、日本は九九年度で二百四十八億円、二けたぐらい違うわけであります。
ある人に言わせると、こんなに対策予算が少ないというのは、よほど日本はコンピューターシステムが少ないのかという指摘もありますし、また、よほどその対策が進んでいて、もうお金は必要としていないのかという指摘もあります。あるいは、全然調べていないのではないかという指摘もありますし、ほとんど作業していないのではないか、日本人というのは楽観的なのかというような話もありますし、あるいは、厳しい言葉ですけれども、日本人というのは無知なのではないかとか、あるいは検査体制がないのではないかとか、そういう指摘もあるわけでございます。
あわせて、今のY2K問題に対する認識と、そして今の日本政府の取り組みについて、大臣の方から見解をお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/211
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212・与謝野馨
○与謝野国務大臣 福留委員が心配されているとおりに、私も、二〇〇〇年問題は大変に世界的な問題であり、また日本の問題としても深刻にとらえております。特に、この問題に対する対応を誤れば、国民生活や企業活動に支障が生じまして、日本の高度情報通信社会の構築に向けた信任を揺るがしかねない重大な問題であると認識をしております。
二〇〇〇年問題の重要性、緊急性にかんがみまして、昨年九月、小渕総理大臣のもとで、高度情報通信社会推進本部において、コンピューター西暦二〇〇〇年問題に関する行動計画を決定し、二〇〇〇年問題の対応についての周知徹底、中央省庁や民間重要五分野等における模擬テストを含む総点検の実施、さらに不測の事態に備える危機管理計画の策定を重点に、官民挙げて強力に対応を推進してきたところでございます。
政府行動計画の決定及びその推進状況に関する四半期ごとの報告により、各業種において対応が進展してきているところでございますが、先生御指摘のとおり、二〇〇〇年まで百五十日余りとなり、今後は特に危機管理面の重要性が一層増大するものと考えており、通産省としても、国民が安心して二〇〇〇年を迎えられるよう万全の対策を講じてまいりたいと思います。
予算の問題につきましては、政府全体で、平成十一年度予算及び平成十年度第三次補正予算、合計で、平成十年度予算と比較して倍増となる百九十三億円を計上しておりますが、今後、私どもとしては、各種の点検あるいは危機管理体制が進捗するように万全の注意を払ってまいりたいと考えております。
〔小野委員長代理退席、委員長着席〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/212
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213・福留泰蔵
○福留委員 実は、今いろいろ御説明がありましたけれども、日本は大変お粗末な状況であります。特に、きょうはこの法案に関連してということでありますので、私は、中小企業の問題というのは大変深刻だと思っているわけでございます。特に日本で対策がおくれているもの、幾つかあるのですけれども、中でもやはり中小企業、これは大変おくれているというふうな状況があります。
これは、いろいろな調査、通産省の方でも中小企業庁で多分中小企業の対策状況については把握していらっしゃると思いますけれども、さまざまなアンケートなどを見てみましても、中小企業のY2K対策というのは、ほとんどというか、かなりの部分で対応ができていないというふうな状況と私は理解をしているわけでございます。
そこで、Y2K問題というのは、実はパソコン、オフコンなどの事務処理用のコンピューターだけではなくして、マイクロチップによって制御されている機械設備でもトラブルが発生するわけでございます。これはつまり、事務処理、工場、流通過程での混乱が起きるということであります。また、企業は、どんな企業であってもお互いに多くの関連会社を持っていたり取引先を持って情報のやりとりをしているわけでございまして、取引先の工場が停止して生産調整に追い込まれますと、部品や資材の調達ができないといった事態も起きないとは言えないわけでございます。こうした事態が起きたときに被害をこうむるのはやはり経営体力のない中小企業でありまして、企業の存続に直結する深刻なものとなるおそれがあるわけでございます。
今回、産業活力再生法案は、我が国経済を自律的成長軌道に乗せるための施策でありますけれども、この努力が、Y2K問題によって自律的成長軌道から失速しかねない要因もあるのじゃないかというふうな意識を私は持っているわけでございます。大臣の方から、このY2K問題の、特に今、中小企業に対する影響というものをどの程度と見ておられるのか、御見解を伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/213
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214・与謝野馨
○与謝野国務大臣 全国の中小企業五百万社は、我が国経済社会の隅々に至るまであらゆる事業分野にわたって経済活動を展開しておりまして、経済活動のネットワーク化の進展に伴い、大企業と中小企業、あるいは中小企業同士でも、さまざまな形での取引上の連携が展開されているところでございます。
こうした中、二〇〇〇年問題が中小企業を含め我が国産業に現実に与える影響について、現段階で予測することは容易ではございませんけれども、企業規模が相対的に小さい個々の中小企業の経営者にとって、この問題についての十分な問題意識を持って具体的な対応をとることについて、相応の時間とコストがかかるものであることから、通産省といたしましては、中小企業に対してきめ細かな対応を図る必要がある重要な問題と認識をしております。
このため、政府としては、中小企業に対して可能な限りの支援策を講じ、二〇〇〇年問題に起因した混乱が発生することのないよう事前の対応のための措置を講ずると同時に、企業等による危機管理計画の策定を促進しているところでございます。今後とも、中小企業への支援、民間部門における努力等により、中小企業の対応状況が着実に進捗するように努力してまいりたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/214
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215・福留泰蔵
○福留委員 万全の支援を行っていただいているというふうなことでありますけれども、現実は、中小企業の対策というのはほとんどやられていないわけですね。これはもう確実に何らかの障害が出てくるわけでありまして、今大臣の答弁の中でも、一生懸命中小企業に対して支援をやるといっても、お金だけの問題ではなくして人の問題もありますし、そういったエンジニアがいるかいないかという問題もあるわけであります。
私は、もうこの段階に来たら、問題は起きるんだ、中小企業の工場はとまるんだということを想定した上で、工場が停止する、流通が混乱する、そうしたときには今度は通産省としてどんな支援ができるかという、大臣の答弁の中にもありましたけれども、そういった危機管理体制というものをしっかりつくっていかなければ間に合わない状況に来ているのだろうと思います。実態的には中小企業の対策というのはほとんど手つかずでありますから。
これは先ほど大臣からもお話ありましたけれども、日本のさまざまなネットワーク社会の中で、相互に情報をやりとりして、また物流も相互に行われているわけでありますので、一カ所でもだめになると大変な混乱になっていくわけであります。私は、ひょっとしたら経済活動にも大変大きな影響を与えていくのだろうというふうな思いがありますので、ぜひとも、起きるのだということを前提に準備をしていかなければならない。そのことも、もう遅過ぎる段階ではないのかなという意識があります。
時間が残り少なくなりましたので、最後に、Y2K問題の関係で実は一番我々が最大限死守しなければならないのは、ライフラインの確保であります。そういった観点から、電力、ガスの供給体制について、恐らく通産省の方でもこれを掌握していらっしゃると思いますけれども、二〇〇〇年の一月一日は、このライフラインの確保ということでは本当に私たちは安心して迎えられるのでしょうか。見解をお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/215
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216・稲川泰弘
○稲川政府委員 ライフラインであります電力、ガスにつきましては、昨年の九月に、全関係企業に対しまして模擬テストを含む総点検の実施を指示いたしました。また、この総点検結果を四半期ごとに報告を求めてございます。加えて、第三者専門委員会を設けまして、事業者の取り組み手法が妥当であるかどうか、現場立ち会いを含めて確認を行ってまいりました。また、すべての事業者が同じような手法を用いて対策を実施しているということの確認も行ってまいっております。
こうしたことの結果として、本年六月末時点の総点検結果の報告によりますと、電力会社の重要システムに関しては九八・八%、大手ガスに関しましても九八・九%と、重要システムにつきまして模擬テストを含めた対策の完了を見ております。残る部分につきましても、定検に合わせまして、十一月までにすべて対策が完了するという報告を受けてございます。こうしたことから、限りなくゼロに近い確率のところにまでこの対策を続けてまいりたいと考えてございます。
なお、原子力につきましては、特段の委員会を置きまして、その内容につきまして安全委員会にも御報告をし、また一般にも各種の情報公開をしておるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/216
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217・福留泰蔵
○福留委員 実は、今の答弁、若干の問題がありまして、それがY2K問題の本質を理解していない政府の対応だろうと私は思っているのです。
ライフラインの問題についても、限りなくゼロに近づける万全の体制をしくというふうな答弁でありました。それはぜひやってもらいたいのですけれども、Y2K問題の本質は、万全の体制なんかとれないんだというところから始まらなくちゃいけないんだと私は思っているのです。ですから、今の発言はひょっとしたらこれは大変な問題でありまして、国民に、何の問題もないのだ、あるいは年内に完全な対応が完了すると発表することは、実はうそなんです。実態は掌握していないのですよ。その上で、そういうことを政府が言うということは、国家賠償法の問題を惹起するのです。
ですから、そういった問題の認識を持って、もう起きるのだということで、これは構造的に無理なんです、対策を打つというのは。模擬テストをやっても、三百億から五百億ぐらいのチップが世界じゅうにばらまかれていて、どこでどういう問題が起きるかわからないんですね。ですから、電力会社などが一生懸命やっていただいているのは承知していますけれども、それでも人知を超えたところの、手の届かないところの問題というのがあるという認識をY2K問題ではしないと、対応を過つのじゃないかなと私は思っております。
それで、最後の質問をさせていただいて、また同じ答弁をされるかもしれませんが、あわせて答えていただいていいですけれども、もう一つ重要な問題というのは、我々は資源を輸入に頼っている国でありますので、そういった観点からもY2K問題というものは大変重要な問題だと思っております。
日本の石油海外依存率は九九・七%、そのうちUAE、サウジアラビア二カ国で半分を供給しているわけであります。中東のY2K対応というのは大変心配をされているわけでありまして、彼らにとってはこれだけが飯の種だからしっかりやっているというふうな話も一部あるようでありますけれども、逆に言うと私は違う意味で心配しております。
七三年の石油ショックがあって石油産業が国有化されたわけであります。そのときにメジャーが残した生産設備をそっくり引き継いだわけでありますけれども、実は技術は現地化されていないのであります。そして、その中東にはソフトウエアだとか埋め込みチップへの対応能力がないわけでありまして、そして、その技術を持っている技術者はフィリピンの技術者で、フィリピンの技術者は全部Y2K問題対応でアメリカに集められているわけであります。
また、ある意味で言えば、イスラム原理主義者というのが、Y2K問題は西欧社会からの挑戦課題としてとらえているような、そういうふうな向きもありまして、大変対応というのはおくれているというふうな意見もあるわけであります。
ですから、ここは、私たち日本にとって大変資源を依存しているところのY2K問題についてはもっと積極的にかかわりを持って、あるいは調査団を派遣するなり、また生産、輸出維持のための技術資金援助の申し出を行うようなことも必要ではないかというふうに思っているわけでございますけれども、この点についての答弁をお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/217
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218・稲川泰弘
○稲川政府委員 御指摘の産油国の問題につきましては、外交ルートを通じ、あるいはメジャーとの情報交換等々を通じまして、我が国に輸出をされている各国の中でどれだけの対応が進んでいるかということの情報を集めてございます。その結果では九六%という数字が出ておりますが、各社それぞれ年内に二〇〇〇年問題の対応を終えるという内容となってございます。また、加えて、大臣が先般中東を訪問いたしましたが、そういう機会にも相手国に確認をとっているところでございます。
ただ、委員御指摘のように、万一何事かが起きたときの対応をどうするかという、いわば危機管理計画というのが必要であることはおっしゃるとおりでございまして、現在、電力会社十二社、都市ガス会社四社は、六月から七月にかけて危機管理計画を策定し、公表をいたしました。この危機管理計画の内容は各社によって若干の相違はございますが、対応組織の設置、システムのふぐあいへの対応、あるいは外部の要因による影響への対応、そういったものが記載をされております。
我々資源エネルギー庁として、この事業者の危機管理計画について、外部の有識者の意見も聴取しつつ詳細に検討を行いまして、この危機管理計画がさらに実効性の高い内容になるように努力をしているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/218
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219・福留泰蔵
○福留委員 時間が来ましたので、終わります。
いずれにしても、この問題というのは、もう対応ができないということを前提に、危機管理計画をどうつくるのか、あわせて、正確な情報を国民に公開するということが大事だと思います。楽観主義で大丈夫だ、大丈夫だと言うことは、かえって大変な混乱を生ずるということだと思います。
もう残された時間はわずかであります、ぜひともこれは今後とも精力的な取り組みをお願い申し上げまして、私の質問を終わります。どうもありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/219
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220・古賀正浩
○古賀委員長 青山丘君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/220
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221・青山丘
○青山(丘)委員 相当長時間の質疑が続いておりまして、なおまだ相当な時間が質疑に費やされていくわけで、大臣もお疲れでしょうが、しかし、本法案について、積極的に取り組まなければならない数点について、整理してお尋ねを改めていたしますという点があるかもしれませんが、整理してぜひ答えていただきたいと思います。
通常は、企業経営者の立場で、どんなことに留意して、そのことについて、いわば胃の中でやすりでこすられるような思いで苦しみながら企業を経営し進めているかといいますと、当然、過剰な設備があればこれを廃棄して設備の更新をしていきたい、あるいは企業の組織を改めて再編をする、改編をしていく、そういうところで経営効率を高めていきたい、これは実は当たり前のことですが通常取り組んでいることでして、さりとて、これだけかというと実は本当はそうではなくて、通常の資金確保をどうしていこうかといって苦しんでいるのが実情でありますが、そちらの方はかなり具体的に、とりわけ中小企業対策などでは進めていただいてきております。
通常、経営者の立場で、設備の改変、設備の更新をしていくためには、過剰な設備は何とかして廃棄をしていきたい、会社の組織も改編をすることによって少しでも経営効率を高めていきたい、こういう努力をやっておるわけですから、この努力に対して、今回はそれに特別に公的な支援対策を講じていこう、こういうことですと、これまで通産大臣も、そうなってくると経営倫理の欠如の問題が必ず出てくる、モラルハザードの問題とどういう整合性を持った形で事業の再構築を進めていくことができるかということで話し合いを進めてこられたことだろうと思いますので、きょうはまず最初に、どのような考え方で、今のような経営倫理の欠如についての懸念が出てきたときに、客観的に合理的にこの説明ができるし、だれも正しく理解できるという考え方が必要だということについて、まず冒頭、大臣からお考えを示していただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/221
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222・与謝野馨
○与謝野国務大臣 生産性の低い分野にある経営資源を、より生産性の高い分野に移動させることによりまして、日本全体の経済の生産性を向上させるということは、日本の産業活力の再生を図る上で必要であると考えております。
このような基本的な考え方に基づきまして、この法案の事業再構築計画に係る認定事業者への措置も、生産性のより高い分野への経営資源の移動を図り、既存の中核的事業の拡大、効率化や、新たな商品や生産方式の導入など、将来に向けた経営上の努力を行う事業者に対して行うものでございます。また、具体的な措置の内容も、欧米諸国でも広く取り入れられている会社組織の見直し手続や税制措置であり、基本的にはグローバルスタンダードの範囲内であると考えております。
このような本法案の基本的な考え方、支援対象及び措置内容にかんがみまして、本法案によるモラルハザードを招くようなことはないものと考えております。これは、経営者がみずからの責任で行うことを、いわば環境整備することによって支援をするというのが基本的な思想でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/222
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223・青山丘
○青山(丘)委員 モラルハザードを招くことがないように、客観的な例えば数値基準、認定基準というものが恐らくこれから非常に重要な問題になってくると思いますが、グローバルスタンダードという意味では、例えば今回とられる、設備の廃棄に伴う欠損金の繰越控除の年限を現行五年から二年延長されていくということでは、新聞の社説等の評価は、妥当ではないか、妥当であろうというような評価がありまして、私もこれまでそういう意味での見方をしてきておりますから、その意味で、問題は、事業再構築の認定を受ける基準というものを明確にしていく努力がなされなければならない、これが非常に重要であろうと思っております。
そこで、事業再構築の認定に当たって、行政の過度の介入があってはならないとか、行政の恣意性を排除するための観点が必要だという意味で、可能な限り認定基準は具体的なものが提示される必要があると思います。
新聞報道によりますと、通産省が、九月中旬までには、生産性本部から意見も聞いたりして、明確な数値基準をしっかり示してそれを明らかにしていく、公表をしていくのだということが伝えられておりますが、現在の段階でどのような作業状況か御説明いただければと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/223
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224・江崎格
○江崎政府委員 認定の問題でございますけれども、今委員御指摘のように、主務大臣の認定に当たりまして、客観的な基準を設けることによりまして極力恣意性のない透明な運用を行うということは大変大事だというふうに思っておりまして、具体的には、事業再構築の具体的な要件、それから計画を認定する際の運用基準につきまして、今後告示によりまして明確にしていきたいというふうに思います。
その際、数値化した方がいいものにつきましては極力数値化の目標をつくるということでございまして、どの水準に設定するかということにつきましては、経済、産業の実態ですとか、あるいは専門家の意見を踏まえながら、また関係省庁とも十分協議をいたしまして、さらにはパブリックコメントを聴取するという手続も経た上でこれをつくりまして公表したい。このような認定基準につきまして、法案が成立した後速やかに策定作業をしたいと思っておりますけれども、目標としては九月のなるべく早い時期というふうに考えております。
社会生産性本部のことを引用されましたが、この団体はそうした知見を大変持っているというふうに私どもも認識しておりまして、専門性のある意見の一つとして、ぜひその御意見も伺っていきたいというふうに思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/224
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225・青山丘
○青山(丘)委員 今回の事業再構築の支援の対象になっていくのが、特定の業界とか事業者とかという特定がありませんので、それはすなわち、もちろん大企業でも事業再構築にしっかり取り組んでいかなければならないところもありますが、今回は、たしか十九条で、中小企業も事業再構築に対して支援対象になっていくのだというふうになっております。
広く我が国経済全体を見てまいりますと、何としてもやはり中小企業に対する施策を特段に進めていかなければ、我が国経済全体の浮揚にはなかなかつながらない。ということを考えますと、中小企業に対して特段の施策が、具体的な対策が私は必要だと思いますので、今考えられている具体的な内容についてこの機会に御説明をいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/225
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226・江崎格
○江崎政府委員 我が国全体の生産性の向上というときに、中小企業の生産性の向上というのは大変重要でございまして、その意味で、提案しております法案につきましても、中小企業に大いに活用していただきたいというふうに思っております。
それで、今般の産業再生特別措置法案でございますが、自由党のお考えも十分踏まえさせていただいておりまして、特に中小企業の方々への施策の適用ぶりにつきましては、先生の今の御指摘も踏まえまして、法案上、施策の総合的かつ効果的な推進を図る旨、十九条に明示をさせていただいております。
具体的にその内容でございますが、一つは、中小企業に限りまして、税制上の支援措置として、購入する機械などに対する特別償却でございますが、三〇%まで拡大する、あるいは七%の税額控除という措置がございますが、これはどちらでも選択できるようにするというようにしております。それから買いかえ特例の適用もございますが、これにつきましても、中小企業性の高い業種には特に配慮をするというようなことも考えております。
また、他のいろいろな中小企業立法などによる支援措置もあるわけでございますけれども、そういったものにつきまして、本法案に基づく計画認定を受けた中小企業につきましては、融資とか保証とか、税制上の面で最大限有利な支援策が受けられるように配慮をしたいというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/226
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227・青山丘
○青山(丘)委員 ぜひ具体的に進めていただきたいと思います。
それから、これは報道でございますが、事業再構築に対する支援の対象として、日本は国家的庇護を進めることによって製鉄会社の国際競争力を高めようとしているのではないかとアメリカあたりでは見ているかのような報道を私は見ました。事実関係については、本当はこの辺は通産大臣が一番よく御存じかもしれませんが、今回の法改正が国内の企業の保護を特にもくろんでいて、そして国際競争力をつけていくんだ、こういうふうな見方をされているかどうかについての新聞報道がありましたが、その辺の事実関係はいかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/227
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228・与謝野馨
○与謝野国務大臣 これは、国内の企業を保護するというのではなくて、やはり国際的に通用するような競争力を持った企業体質を今再び持ちたいという願いからやっているわけでございます。
先ほどもモラルハザードの御質問の中にもございましたけれども、いわば今回適用される商法上の例外措置あるいは税制上の例外措置というのは、国際的に見まして決して過度なものではなくて、常識的な、あるいは合理的に説明できる範囲内のことでございます。
例えば、設備を廃棄した場合の欠損金の繰越期間を五年から七年にする、繰り戻しも一年ということにいたしましたが、アメリカの税法上これがどう取り扱われているかといいますと、七年に対応する部分が二十年、それから繰り戻しが一年ではなくて二年ということですから、そういうものと比べましても合理的な範囲の特例措置だということは十分言えると考えておりますし、私どもは、企業を保護するためにやるのではなく、むしろ、企業はこれから荒波をくぐっていくという中で、その荒波をくぐるために我々がどう環境を整備できるかというところがポイントだろうと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/228
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229・青山丘
○青山(丘)委員 鉄鋼のときには通産大臣よく頑張ってやっていただいたと私は思っておりますし、グローバルスタンダードに合致したものとして、本法案をぜひしっかり進めていただきたいという立場で私はおります。
次に、この法律案は企業組織の改編を通じた事業再構築を積極的に支援しようというものでありますが、問題は、過剰設備の廃棄に企業組織の改編、こうなってきますと、急激な合理化を企業が進めていく、そこに、先ほどからも議論があったように、雇用維持に大きな不安が出てくるのではないか。
雇用維持の問題は実は労働者一人一人にとっては人生を決める重要な問題でございまして、その問題はどうなっていくのかということが今大きな不安として出てきますと、例えば現下の雇用失業情勢は、恐らくまたあしたかあさって失業率や失業者数や有効求人倍率が出てきますけれども、戦後一番よくないとき。先々月は四・八%の失業率、先月は四・六%の失業率。しかし、全体の流れとしては少しずつ失業率が上がりつつある。三百万人を超える多くの失業者が今実際に出ている。有効求人倍率も極めて低い。
こういう状況で、産業が競争力を高めていくための事業再構築の取り組みで労働者にしわ寄せが来るのではないかという問題は極めて重要な問題で、そのあたりをきちっと外堀も内堀も埋めて物事を進めていかないと、実際の効力といいますか、力を発揮することができない。
そういう意味で、例えば企業組織を改革していく、改編していく、過剰の設備の廃棄をしていくというようなことになれば、余剰の労働力が出てくるのではないか。その余剰の労働力は、一つには、同一企業における新たな設備投資によって吸収することができるのか、あるいは分社や営業譲渡や合併を通じた企業再編によって、企業の効率を高めていくことによって吸収することができるかどうか。
先ほどから話が出ておりました、ベンチャー、新規産業の振興によって新しい雇用を創出することができるのではないか。ある意味ではダイナミックな労働移動も期待できないことはないのでありますが、しかし、問題は働く人たちにとっては極めて重要な問題。そういう意味で、企業の事業再構築に当たって、失業防止というものがこれから一番大きな課題になっていくのではないかと私は思います。
その意味で大臣、失業防止が非常に重要な問題、これについての考え方。実は私は労働委員会において労働大臣と、今回のこの問題ではありませんが、長い間の議論の積み上げの中でいろいろな話し合いをしてきたのですが、通産大臣として、この法案を進めていく上で失業防止についてどのような見解を持っておられるのか、聞かせていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/229
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230・与謝野馨
○与謝野国務大臣 たびたびお答えをしておりますが、雇用安定にとって第一義的に重要なのは民間企業による事業拡大や新事業創出であります。政府としては、これまでも適切な経済運営に努めるとともに、既存企業の活性化や新事業の創出に向けた民間企業の努力を促進する対策を講じてきたところでございます。
これに加えまして、先般作成をいたしました緊急雇用対策及び産業競争力強化対策において、規制緩和等による雇用機会の創出、新規開業支援等民間企業の取り組みを促進するとともに、失業を経ることなく円滑な労働移動を図るため、人材移動特別助成金の創設等の施策を講じたところでございます。また、常勤雇用者を含めた我が国の貴重な人材資源の活性化を図るため、教育訓練給付の大幅な対象拡大等、能力開発への取り組みの支援を充実しております。
なお、この法律案においては、認定事業者が事業再構築を進める際には、当該事業者が失業の予防など雇用の安定に努めることとあわせて、国等も必要な支援措置を講ずることをその責務として規定しているところでございまして、雇用調整助成金などの各種助成制度の活用も可能でございます。
〔委員長退席、岸田委員長代理着席〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/230
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231・青山丘
○青山(丘)委員 基本的には私も同じような考え方を持っておりまして、今、景気が悪いために、四・六%のうちの一・五%、約百万人ちょっとは需要不足失業であろうと思いますが、実は、本当はもっと多くの構造的な失業、いわゆるミスマッチによる失業が多くありまして、これが二百万人をはるかに超えていると私は見ています。そういう意味では、今大臣がお答えになったように、職業能力の開発が現下の非常に重要な課題だというふうに私も実は思っております。
問題は、この法案を進めていく上で、事業再構築計画を認定するときに、今申し上げたような企業の雇用安定に向けた取り組み、企業みずからが雇用安定に向けた取り組みをしていくべきだというようなことが、認定の段階では一定の担保がされていく必要があると私は思うのですが、そのあたりはいかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/231
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232・江崎格
○江崎政府委員 事業再構築を進めていく場合に雇用の問題は非常に重要な課題だというのは、私どもも全くそういう認識に立っておりまして、そのために、この法案におきまして、雇用にしわ寄せをすることなく事業の再構築を進めるという観点で、まず第一には法目的、二番目に事業再構築計画の認定の要件、それから第三番目に、事業の実施に関連してですが、認定事業者あるいは国などの責務においてそれぞれ雇用への配慮を、その内容を規定しております。
特に、今御指摘の認定に際しての問題でございますけれども、「従業員の地位を不当に害するものでないこと。」という法文になっておりますけれども、具体的な要件としまして、労働者あるいは労働組合と十分な話し合いを持って、労働者に十分な配慮を行っているかどうかということを確認したいというふうに思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/232
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233・青山丘
○青山(丘)委員 今回の第十八条では、各企業は「雇用する労働者の理解と協力を得る」ということになっておりますが、事業再構築計画を認定する場合に、事前に労働組合あるいは従業員の代表者にきちっと情報を提供していく、あるいは話し合いをきちっとやっていく、意見をきちっと聞いていく、こういうようなことが認定の条件になるべきではないかと私は思うのですが、そのあたりはいかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/233
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234・江崎格
○江崎政府委員 認定の申請書に記載させる事項に、労務に関することというのがございます。これらによりまして、雇用に影響があるという場合には、労働組合などに必要な協議を行うかどうかといったようなことを中心にしました、要するに労働者と十分に話し合いをしているかどうかということ、そうしたことを確認したいということで認定要件を定めたいというふうに思っておりますし、また認定事業者の責務としまして、計画の実施に際しまして、同様な労働組合との十分な話し合いなどといったようなことを確認したいというふうに思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/234
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235・青山丘
○青山(丘)委員 日本では、今回の産業再生法だけではなくて、純粋持ち株会社などの問題、これまでは想定できなかったようなさまざまな問題が出てくることが予想されます。企業の組織変更に伴う労働関係の承継、組織が変わってくることによって身分がどのように変わっていくのかという不安は働く一人一人にとって極めて重要な問題でありまして、この際日本でも労働者の保護について何らかの法整備を検討すべきではないかと私は思いますが、いかがでしょうか。
これは私の質問の最後になります。大臣、お考えを示していただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/235
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236・与謝野馨
○与謝野国務大臣 我が国は、これまでも労使協調により生産性の向上や経済危機の克服を図ってきたというよき伝統があります。したがいまして、企業の組織変更に伴う労働関係の承継や労働者の権利の保護などについても、まず何よりも労使が協調して話し合うことが必要であると考えており、一律な法的規制を設けることは適切でないと考えております。
本法案においても、雇用にしわ寄せをしない事業再構築を進めることを通じて、我が国経済の真の経済再生を図り、景気、雇用情勢の改善に向けた動きを力強いものとしたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/236
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237・青山丘
○青山(丘)委員 時間が来ました。終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/237
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238・岸田文雄
○岸田委員長代理 上田清司君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/238
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239・上田清司
○上田(清)委員 民主党の上田でございます。
それでは、ちょっと大臣が席を外しておられますので、順序を少し変えまして、私は朝の大蔵委員会で租税特別措置の法案の中でも一部お聞きをした経緯がございますが、やはり、この産業活力再生法案の基本的な問題点というのは認定の部分だというふうに思っております。意欲的にスピードアップして法案を出されたことは高く評価するものでもありますが、余りにもやはり準備不足だという嫌いがございます。
大臣の認定の問題については同僚議員がたくさん質疑をさせていただきましたので、いわゆる中小企業の部分の知事の認定の部分についてお伺いをしていきたいと思います。
まず最初にお聞きしますが、知事が認定をする部門についての基準というのは、文字どおり四十七都道府県それぞれに中身が変わってくる可能性というのはあるんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/239
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240・鴇田勝彦
○鴇田政府委員 法三章の新事業計画についての認定基準でございますが、認定権者は、もう委員御承知のように、都道府県知事の認定になってございます。
法文上求められておりますそういった基準に従って、各都道府県で認定作業が進むことと思いますが、私どもは、この法の解釈についていろいろ参考意見なりそういうものが求められれば、適宜、協議といいますか、御指導申し上げたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/240
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241・上田清司
○上田(清)委員 ということは、それぞれの都道府県で基準が異なるというふうになり得るということを前提にされているんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/241
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242・鴇田勝彦
○鴇田政府委員 私ども、自治事務ということで、都道府県知事に認定権限をお渡ししてございます。各都道府県におかれた地域の経済の事情あるいは中小企業の事情、そういうものを踏まえた、結果的にそういった運用について地域の実態に応じた影響、結果が出てくるということは前提にしてございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/242
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243・上田清司
○上田(清)委員 わかりました。基本的に、確かに地域の実態等々、経済事情も異なっております。例えば拓銀が破綻しました北海道の経済と、あるいは大東京の経済と、また違うでしょう。
しかし、業種別あるいは資本別だとか、そういう枠内においてはかなり共通した部分もあります。そういう共通した認定基準というものがある程度ガイドラインとして出せないと、この条文だけ読んでいても、「経営資源活用新事業計画に係る経営資源活用新事業が、当該中小企業者の能力を有効かつ適切に発揮させるものであり、かつ、国民経済の健全な発達を阻害するものでないこと。」何のことかわからないわけですよ。何をもって認定する基準なのか。
いや知事さんにお願いしますと言っても、もちろん各県の商工部あたりでそういったものを探っていくんでしょうけれども、しかし、これは自治事務ですからといっても、なかなか条文だけではわからない。勝手につくってくださいというふうに言うには余りにも無責任、この法案を徹底させようという意向がないともとられかねない、こんなふうに私には理解できます。
その二についても、とにかく、「事業を円滑かつ確実に遂行するために適切なものであること」と。では聞きますけれども、適切なものとは一体何なんですか。なかなか言えないと思いますよ。ずばり適切なものとは何なんですかと聞かれれば、これは言えませんよ。本当の話、これは大臣だって言えませんよ。
だから、今回の法案の一番の問題点は、そういうガイドラインというものを出さないまま、ここの委員会で審議をさせていただいているというところに私は大変不満があります。ここの部分を事務的にある程度検討されているはずだと私は思うんですけれども、その部分も含めて、答弁というよりも感想になるかもしれませんが、お答えしていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/243
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244・鴇田勝彦
○鴇田政府委員 委員御指摘のようでございますが、法律上、経営資源活用新事業の定義がございます。これは、「現に有する経営資源を新たな方法で有効に活用し、又は新たな経営資源を有効に活用することにより、新商品、新技術又は新たな役務の開発、企業化、需要の開拓その他の新たな事業の開拓を行うこと」、これが事業の中身でございます。
これにつきましては、今通常国会でも御審議をいただいた経営革新法等におきましても、ある種の中小企業政策分野で、新商品、新技術あるいは新サービスについての運用、これは各県にゆだねる形でそれなりの実績がございます。ただ、先ほど御答弁申し上げましたように、各地域の中小企業の現状というものも踏まえて、それなりの地方自治の裁量性はあってしかるべきだと私も考えております。
ただ、委員御指摘ございましたように、ある程度の今までの蓄積がございますので、各都道府県の運用に当たってその用に供せるものがあれば、我々としてはそういった基準について蓄積を前提にいろいろ情報提供等はさせていただきたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/244
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245・上田清司
○上田(清)委員 そこで、認定不要の分野がございますね。認定不要の分野と言ったら語弊があるかもしれませんが、幾つか、以下の制度の適用を受けている団体については受けている部分に関しては認定不要という、まさにこの部分なんかがこの法案で予定されているような、認定されるような中小企業者だという理解でよろしいのかどうか、その辺について御答弁をお願いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/245
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246・鴇田勝彦
○鴇田政府委員 認定不要の中小企業者、二種類のパターンがございますが、一種類目が創業者でございます。これにつきましては、個人で今後開業される方、会社をつくられる方、あるいは開業されてから五年未満の方について認定不要ということにいたしてございます。それからもう一つのパターンが、今先生も御指摘のありました、これまでの各種の中小企業支援法あるいは特殊法人等から助成を受けている、公的な意味でのオーソライゼーションを既に受けている者。こういったものについては認定不要ということで、できるだけ簡便、円滑に本制度が活用できるようにと。
したがいまして、数字的に、結果的にどういうことになるかわかりませんが、いわゆる創業者についてできるだけ活力を持って開業していただきたいという観点、及び既に経営革新等の諸制度を活用されている方については本制度のかなり重立った利用者であるということを頭に置いてございます。ただ、それ以外に新たに、本制度を受けまして知事に対して計画を提出され、認定される方々についても、当然のことながら道が開かれているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/246
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247・上田清司
○上田(清)委員 そこで、関連するところになりますが、例えば「経営資源活用新事業計画の変更等」の法律案の部分でありますが、途中から変更をされていく場合があって、きちんとそれを届けられればいいんですが、そうじゃないようなケース。こういう認定を受けながら、さまざまな恩典を受けながら、実は途中でそれが中断されているような場合。このような場合についての基本的な政府側としての考え方というのはあるのかどうか、そういうことも想定されているのかどうか、この点についてはいかがでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/247
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248・鴇田勝彦
○鴇田政府委員 経営資源活用新事業計画につきましては、当然のことながら、私どもとしましては、所期の成果を上げるべく円滑に事業が実施されるということが大変期待をしている点でございます。
ただ、場合によりましては、経済環境あるいは経営の状況でいろいろなことが起こり得ることだと思いますが、法律上、報告徴収で事業の進捗状況について報告を求めることができますし、全くその初期の認定された計画と違った中身になっておられる場合には、ある種の不幸なことではございますが、二十三条の二項で取り消しという事態もあり得ることになります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/248
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249・上田清司
○上田(清)委員 取り消しはわかるんですが、具体的に追跡可能な状態というのが用意されているのかどうか、このことを聞きたかったんです。余り追跡ができないんじゃないか。
要するに、事業が計画されて認定がされる、そしてさまざまな恩典を受ける。しかし、途中で経済環境が変わったり、あるいはまた事業がうまく進まなくて実際的にはそのような状態になっていない。そういうことを判断する材料というものが都道府県にあったり、あるいはこれは大臣認定の分もそうだと思いますけれども、具体的に追跡するようなことが、まあ報告書を出すことができるということですがペーパーでしょう。ペーパーは何でも書けるということですから、そういう意味での追跡可能な状態というのは具体的にあるのかどうか。あるいはペーパーだけだったらペーパーだけです、ペーパーで十分可能な仕組みができています、そういうことをお聞きしたいんです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/249
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250・鴇田勝彦
○鴇田政府委員 法律上は、先ほど申し上げましたように、こちらから能動的に報告徴収をするという形で後づけをするということになろうかと思いますが、実際にこの経営資源活用新事業計画を提出された場合のメリットでございます保証なりあるいは設備近代化資金の貸し付けなりにつきましては、その後、保証ないしは融資に伴いましてその返済の状況とかそういったものについての情報が入ってまいりますので、そういった意味においては、我々としても後づけが可能であると考えております。
〔岸田委員長代理退席、委員長着席〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/250
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251・上田清司
○上田(清)委員 ありがとうございます。ある程度適切な今の答弁だと思います。
ただ、少し懸念されるのは、昨年の十月一日から始まりました保証協会の特別枠の制度融資に関しても、御承知のとおり、銀行の方が先に押さえてしまうというような必ずしも法の趣旨にのっとらない状況が生まれた事実もあります。テレビなんかでも報道されましたように、まさに銀行などが、千載一遇のチャンスだ、そういう形で行われたこともございますので、そうした点についても、まだまだ事務方の方で準備不足ではなかろうかというふうに私は理解をしております。そういう意味での防御策もしていかないとまずいのではないか。残念ながら、多数党でありますから、この法案が通ることを前提にしていますから、そういう意味において、老婆心ながらそのことを申し上げたいと思います。
大臣がお戻りになりましたので、ちょっとまた目先を変えさせていただきますが、実は経済戦略会議の答申でございます。大変これも矢継ぎ早に、総理の意欲を私も個人的にはそれ相応に評価するものであります。
なおかつ、政府において、その二百三十四項目の中でA、B、Cと三つに分けて早々と検討をされて、結論をそれなりに出されておられます。御承知のとおり、Aというのは実現する方向で検討するもの、そしてBというのは内容についてよく検討した上で結論を出すもの、Cは、実現のために乗り越える問題が多いと考えているということで、検討課題。このようにA、B、Cに、これから日本の経済を活性化するためにいろいろなことをやらなければいかぬという項目が二百三十四項目あって、それも、なおかつ政府で矢継ぎ早に、まさしく検討結果についての判断をA、B、Cランクでつけられた。これも大変評価できることだというふうに私は思っております。
ただ、この法案との関連でいうと、必ずしも満足できない部分があります。このことを、閣内においてまさしく日本の経済を引っ張る通産大臣というお立場の中でどのような感想を持たれたか、一、二お聞きしたいと思っております。必ずしも通告にはなかったと思いますが、今までの法案の審査の状況からしても、また与謝野大臣であればこういうことは大丈夫だと私は思っておりまして、あえてお伺いします。
先ほどから答弁者の立場の中でも私は申し上げましたように、こういうことで日本の経済を再生させようという政府の意欲、それなりに大変評価させていただきたいと思っております。しかし、一番大事なのは、過剰設備のいわば切り捨て、整理などという過程の中で、雇用問題をやはり抜きにして語れない部分があると私は思っております。過剰設備だけ廃棄して人だけは残っていますなんということはあり得ない。残念ながらあり得ない。当然そこに、雇用の受け皿をどうしていくのか、こういう問題が法案の中に用意をされなければなりませんが、法案の中においては抽象的であります。雇用に配慮をしながらとかという、極めて抽象的で、正直言いましてそのための受け皿づくりみたいなことは余り出ておりません。
そこで民主党は、いわば起業家支援の、起業家が新しく事業を展開しやすいような非常に広範囲にわたる仕組みをつくることが実は雇用の受け皿になって、その雇用の受け皿が、まさしく大どころの過剰設備を廃棄していくとかという、いわば企業再生、産業再生の基礎になっていくんだというふうに考えているわけであります。
そこで、前置きが長くなって申しわけありません、実はこの中にも、幾つかの項目の中で、例えばこれは項目で百五十七というところでありますが、ベンチャービジネス支援税制等起業に対する税制面からの支援という項目においては、政府においてBという判断をしておられます。いろいろA、B、Cがあるんですが、まさしくこれなどは雇用の受け皿、セーフティーネットワークにつながる大きな意味を持つものではなかろうかというふうに思っております。SBIRの推進などはAという評価をされて、具体的に予算も講じておられます。これは私も評価するところであります、金額が少し少ないということを申し上げておりますけれども。
このベンチャービジネスという分野だけでももう少し、Aという評価をすることによって税制の制度的な仕組みを急いで政府において仕組んでいくという姿勢こそが、この再生法案のいわばカバーをする部分ではなかろうかというふうに思っておりますが、これがBという判断をされたときに、与謝野通産大臣は、Bでよかったというような御判断をされておられたのか、あるいはこのときに何らかの形で御意見を言われたのか、この辺の判断について、いや現在において私はこう思うということでも結構でございますので、御判断をお聞きしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/251
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252・与謝野馨
○与謝野国務大臣 手元にその部分の正確な文書がございませんので、的確な答えになるかどうかわかりません。
ベンチャーを支援するというのは日本の将来にとって大変大事なことですし、民主党の言われる業を起こす方を支援するというのは、私は一般論としては全面的に賛成でございますし、どのようなことがそこで可能かということは判断をしなければなりません。どう判断するかという問題は、例えばエンゼル税制というのはしょせんは所得税の世界の話に帰するわけでございますので、所得税の世界で例えば損益を完全に通算するということが他の所得を得ている方々の税制と比較して社会的に容認できるかどうかという、いわば判断をしなければならないわけでございます。そういう意味では、例えばエンゼル税制などを判断する場合も、所得税の体系全体の中で、いわば合理的に説明のつく範囲内でやる必要があるんだろうと私は思っております。
その他の起業家支援、業を起こす方の支援に関しましては、まず金融の問題がございます。金融の問題に関しましては、今般の法律の中にも、いわば信用保証制度の特別枠を新しく業を起こす方に適用するということを含めさせていただきましたので、そういう面では保証制度を活用することも一つ。あるいは、国民金融公庫、中小金融公庫、商工中金等のそれぞれの政府系金融機関の、いわば政策金融のあり方としてベンチャーをどうするかということも、今後充実していかなければならないわけでございます。
それから、先ほども質問の中にも一部出てきておりましたが、日本の店頭市場の充実という趣旨の質疑のやりとりがございましたが、やはり、そういう意味での日本でのベンチャーキャピタルを直接資本市場から取り出すということがなかなか今の日本の店頭市場では難しいわけでございまして、投資家のリスクと情報開示との関係とか、いろいろな問題を整理した上で、資本を直接取り込めるような方式というのを今後日本ではやっていかなければならないと思っております。
いずれにしても、ベンチャーを始めるときに必要なのは、資金、それから人、そして技術でございますが、そこに、ベンチャーをやろうという方のやろうとされている内容を客観的に評価できるような仕組みというのがやはり必要なんだろうと思いますし、国全体としての技術の進歩、科学の進歩というものが、ベンチャー企業が起きるときの大きな背景としてはぜひ必要なんだろうと私は思っております。
経済戦略会議の皆様方は、本当に一生懸命日本の経済の将来について考えてくださいました。ありとあらゆる知恵とアイデアがその報告書の中に結集されているわけでございますが、その後、小渕総理からの御指示で、各省で具体的に取り組めといって、各省で検討した結果答えを出しましたのがそのA、B、Cランクでございます。Cの中には先生がごらんになってもかなり難しい問題も入っておりますので、なかなかの難しさもあって、きょう、あした直ちに実現できないものもたくさん含まれているということもまた事実でありますが、全体としては、非常に一生懸命勉強し、研究し、報告してくださったものだと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/252
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253・上田清司
○上田(清)委員 大臣の基本的な認識について大変感銘を受ける部分もございます。しかしながらやはり、この法案の一番の問題点というのは、雇用に配慮をしながらというのが第一条の文案の中にもありますが、具体的にそういう部分がない。むしろその部分に関しては別途考えていくというようなニュアンスが何となくこの法案全体に流れている。もちろん、中小企業の問題だとかに関して新しい制度の枠組みをつくったりしておりますが、しかし、まさしく、経済戦略会議でBという判定をしているところに、この受け皿づくりについて取り組みがおくれている、私はこんなふうに率直に思うものであります。
今、大臣の認識の部分で、このBの評価ということについて大臣は率直にどんなふうに思われたかということを私は実は聞きたかったのでありまして、なかなかお立場の中で言えないということであれば、あえて深追いはしません。
この中に、内容については税制上、実務上の問題を含め、必要に応じ、政府及び与党の税制調査会等において専門的かつ幅広い見地から検討。こんなふうに備考欄にいわばコンパクトに問題点をまとめてあるわけです。
しかし、これはずっと前から言われてきたことでありまして、ある意味ではスピーディーに対応されておられるこの再生法の、やや拙速でまだ基準もはっきりしない、いろいろまだ問題点はありますねと言いながらも骨格をばっと出してきたところは、これはスピーディーに対応するというところでは私は評価しておりますけれども、それと同じぐらいこれはスピーディーに対応してもよかったんじゃないか。そうすれば、セーフティーネットというんでしょうか、別建ての雇用の受け皿というのを政府で頑張ってやっていますよ、そういう中身になったのではなかろうかということを含めて、いま一度大臣の感想を承れればありがたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/253
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254・与謝野馨
○与謝野国務大臣 実は、民主党の案も、よく考えてみますと労働力の移動ということを前提にしているわけです。これは、受け皿と言った以上、こちらの企業から受け皿の方に移動するということですから、労働力の移動を前提にしております。一度寒い風に当たってから次の受け皿に行くのか、あるいは渡り廊下を渡っていくのかという違いは多分あるんだろうと私は思っております。
この法律の基本的な考え方というのは、仮に、一つの特定の企業の中で過剰労働が発生した、現に工場がなくなってしまったというような場合に、その抱えている労働力を一体どうするのかという問題。いきなり寒風に立たせるのか、あるいはその企業自身の努力によって、こういう分野に進みましょう、あるいはこの有望な分野を拡大しましょうといって雇用を企業の中で内部吸収していただくのがいいのか。
私自身は、内部吸収していただくことがベストだと思っております。次善は、仮にそこの企業が、企業としてグループ企業を持っておられるのでしたら、そのグループの中で吸収していただくというのも、一つ、割にソフトランディングの路線だろうと私は思っております。
そのほか、我々がかねてから持っております雇用保険、これは、いわゆる失業に対する給付もありますし、雇用調整助成金という企業に給付するものもございますが、そういうものも、労働大臣が後で参りますから聞いていただきたいのですが、今回は相当充実させながら運用していこうということ。
そういう意味では、まず我々は、この法律をつくりますときには、やはり雇用ということについては、企業内で吸収できるものは吸収していただく、それからセーフティーネットも十分きちんとしておく。それから、先生言われるように受け皿づくりということもこれは熱心に取り組まなければならないわけでして、受け皿をつくるというのは一晩にしてできるものではありません。税制とか金融とか技術とか、あらゆるものを動員しなければなりませんし、民主党が言われているように、業を起こすという志を持った人が出てこないと業は起きないわけでございます。
志を持った人の、その志が達成できるような社会的、経済的な、あるいは法律的な環境を整備するというのは、今後とも国会に属する我々すべての責任でもある、そのように認識をしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/254
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255・上田清司
○上田(清)委員 通産大臣は、事実関係、問題点について正しく、お話の中でも大変的確に御判断をされているというふうに思っております。ただ、Bという評価についてはどうしてもお答えになりにくいのか、したくないのかわかりませんが、もうあえて問いません。
先ほど、エンゼル税制についても少しお話が出ました。所得税体系の中で、きちっと全体の中で把握しなければならない、こういうお話もいたしました。もちろん私も午前中、大蔵委員会で租特の措置法の問題として質疑もさせていただきました。同じような答弁が実は返ってきたところであります。
しかし、文字どおり踏み込む力というのが世の中を変える、しかもスピーディーに。再生法の骨格の部分はスピーディーなんですが、この起業家支援のところは必ずしもスピーディーでないというところに私どもが最大の不満を持つところでございますので、その辺について、大臣ほどこういう問題についてわかっておられる方はございませんので、今後、閣内においても、あるいはまた省内においても、こういう研究についてスピーディーに上げていただくことを、ぜひこの場でお約束していただければ大変ありがたいと思っております。
もし、後ろの方で少し事務方との打ち合わせもありましたので、Bについての御感想も含めてありましたら、よろしく御答弁をお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/255
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256・与謝野馨
○与謝野国務大臣 先生御承知のように、今回は準備期間も限られておりまして、何から何まで我々の考えていることを全部この法律に盛り込めたわけではございません。まだ検討すべき分野は、税制、金融、あるいは技術開発、あるいはその他の会社組織に関するいろいろな法律、いろいろな分野で残っている仕事はあると思っております。これは国会の皆様方の御意見をお伺いしながら、今回の法律案は企業再生に関する第一歩として位置づけて、必要なものは次から次へと国会審議をお願いすることになると考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/256
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257・上田清司
○上田(清)委員 大変前向きな御答弁をいただきましたので、それをよしとして、政府案が通ることが、ある意味では数の上で……(発言する者あり)賛成ではありません。当然、セーフティーネットに欠けた法案を我々は賛成するわけにはいきませんが、それでもなお、一歩進められる部分については進めていただきたいという御要請をしたいと思います。
それで、ちょっとこの法案とは関係がありませんが、極めて今日的な課題でありますし、大臣の所轄の部分のところでもありますので、御感想だけでも結構でございます。
既に参議院の方で有志の方々が、これは多分に特定の国を挙げたりするのも余りよくないのかもしれませんが、いわばふらちな行いをする可能性を持った隣国を意識して、外国為替、いわば送金を、もう簡単に申し上げますが、送金をストップすることができる法案であるとか、あるいは安全保障上これは問題であるという技術あるいは部品、こういうものをとめることができる、こういう法案を議員立法で研究をしておられます。場合によっては今国会にでも上げたいというぐらいの思いを持ったグループがあります。
この辺についてはお聞きしておられるかどうか、まずお聞きしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/257
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258・与謝野馨
○与謝野国務大臣 まず、物でございますけれども、物は、世界で幾つも条約がございます。一番典型的なのは核兵器でございまして、核防条約というのがあって、物の移転というのは厳重に管理されているわけでございます。
そのほか、昔はココムというのがあって、ココム禁制品というのがございましたが、今はワッセナー合意というのがあります。これはジュネーブでの合意とかいろいろなものがありますが、手元に資料がないのであれですが、一つは化学兵器、それから生物兵器、こういう典型的なものもございます。それから、機微な、兵器転用とか兵器に応用できる技術の世界も、これも国際的な合意がございます。
それから、今問題になっておりますのは汎用品。例えば船のレーダー。漁船のレーダーというのは潜水艦のレーダーにも使えますし、また、例えば魚群探知機は海の深さをはかるためにも使えるわけでございます。これを、汎用品をどうするかという問題で、日本には貿管令、外為法の下にあります貿易管理令というのがありまして、これでとめることは法理論上は可能であるわけですが、三角貿易をされたとき一体どうするかという問題も実はあって、実際に効力のあるような方法でこういう兵器転用を防いでいくということは、各国と連絡をとりながら、各国と連携をしなければできない世界でございます。
そういうものを輸出禁止しようという気概はわかりますが、実効性のある法律をつくるというのは技術的には相当苦労が要るのではないかと私は思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/258
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259・上田清司
○上田(清)委員 参議院の有志の皆さんが、議員立法の形の中で近々提出をされる可能性が高いわけであります。
通産大臣もこの問題についてもよく熟知されておられると思いますが、隣国からの一種の脅威というようなものも含めて考えれば、私どもに対しては極めて限られた範囲内での対処策しかないというふうに思っておりますので、これも文字どおりスピーディーに、むしろ政府の方から研究をされて、しっかりと我々の方にも提示していただければ大変ありがたいということを申し上げ、文字どおりこれは入り口中の入り口でございますので、きょう議論するつもりはありません。基本的に通産大臣がそのような認識を持っておられるということを確認することで終わらせていただきます。
質疑はこれで終わります。ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/259
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260・古賀正浩
○古賀委員長 島津尚純君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/260
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261・島津尚純
○島津委員 民主党の島津尚純でございます。
午前中まではというか、先ほどまでは提出者席に座らせていただいておったのですが、これからは質問席に戻らせていただきまして、政府提案の法案につきまして質問をさせていただきたいというふうに存じます。
きのうからの議論を聞かせていただいておりまして、質問者それぞれいろいろな問題を取り上げておられたわけでありますが、この問題についてお触れになっている方がおられなかったのではないかというふうに思いますので、今回の法案に盛り込まれております債務の株式化という問題につきまして、まずお伺いをさせていただきたいというふうに思います。
今回の法案には、債務の株式化を行う際の優先株発行限度枠の拡大ということが盛り込まれているわけでありますが、まずこの点について大蔵省にお伺いをしたいわけであります。
まず、現在の銀行法におきまして、金融機関、銀行は五%以上の株式を保有することができないというようなことになっておるわけでありますが、この五%の中には果たして優先株は含まれているのか、そうではないのかということについてお尋ねをしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/261
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262・古賀正浩
○古賀委員長 大蔵省は来ていますか。——島津委員、ちょっと後回しにして、ほかの質問に移っていただけますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/262
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263・島津尚純
○島津委員 答弁者がおくれているそうです。では、大蔵省の方が見えてからまた同じ質問を繰り返させていただくということで、次の質問から入らせていただきたいというふうに——ただいま来られたそうでございます。ようございますか。
ではもう一回、最初の質問からやり直させていただきたいというふうに思います。
今回の政府提案の中に、債務の株式化ということが盛り込まれているわけでありますが、今回、その債務の株式化を行う際の優先株の発行限度枠の拡大ということが盛り込まれているわけであります。
ここでお尋ねをしたいわけでありますが、銀行法におきましては、金融機関、銀行が五%以上の株式を取得することはできないということが盛り込まれているわけでありますけれども、この五%の中に優先株が含まれているかどうかということを、まずお尋ねをいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/263
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264・福田誠
○福田(誠)政府委員 その辺、ちょっと質問の御通告をいただいていなかったのですが、五%超の株式の保有の制限につきまして、これは議決権のある株式を対象としていると存じます。
ちょっと今、それだけしかお答えの用意をしてまいりませんでした。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/264
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265・島津尚純
○島津委員 ただいまのお答えによりますと、この五%制限という規定の中には優先株は入っていない、議決権のある株だけであるというようなお答えがあったわけであります。
それで、債務の株式化ということになってきますと、これは優先株でありまして、議決権がない株になってくるわけであります。そうなってきますと、今回、法律がもし通った場合、銀行法の改正はすることなしにこれを実施することができるというふうに考えてよろしいでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/265
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266・福田誠
○福田(誠)政府委員 お答えいたします。
実は、ただいまの債務の株式化につきましては、今般の産業競争力強化対策との兼ね合いで、今後具体的に対応を検討してまいるつもりでございまして、議決権のあるなしというようなことまで含めた検討はまだしておりません。
しかしながら、一般的な考え方を申し上げますと、債務の株式化のための環境整備の取り組みといたしましては、債権者、債務者のモラルハザードの回避という点もございますし、それから債務の株式化によりまして結果的な貸付金の回収可能性が向上するかどうかという点もございます。それから、金融機関、御指摘のように他業禁止の趣旨がございますから、これによる他業禁止の潜脱防止という点もございますので、その辺に留意しながら具体的に検討していきたいというふうに思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/266
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267・島津尚純
○島津委員 私がこの銀行法における五%の中に優先株が含まれるかどうかというような御質問をさせていただいた趣旨は、実は次のところにあるわけであります。
きょうここに公正取引委員会の方からも御出席をいただいておるというふうに思うわけでありますが、私どもが事前にいろいろ勉強させていただいたり調査をさせていただいたりしました中におきまして、公正取引委員会では、いわゆる銀行の必要以上の事業支配を認めないというような立場から、独禁法の中にも金融機関の五%制限条項というのがあるわけでありますが、この独禁法における五%条項の解釈において、公正取引委員会は、優先株もこの五%の中に含まれるというような見解をおとりになっておられるというふうに私たちは承知しております。
となってきますと、大蔵省が今申されたことと、公正取引委員会が考えておられることと、全く背馳するということになってくるのですが、公正取引委員会の方の御答弁をお願いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/267
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268・山田昭雄
○山田政府委員 お答えいたします。
まず、独占禁止法の十一条におきましては、金融会社の事業支配力の過度集中を防止するために、金融会社が他の国内会社の株式を五%を超えて保有することを禁止しております。
今、それではこの五%の中に優先株も含まれて五%を考えておるのかどうかという御指摘、御質問かと思いますが、これは、議決権の有無を問わず五%で規制しているということでございます。
なぜそのように考えているかと申しますと、議決権のない優先株式でありましても、優先配当がなされない場合には、商法の規定に基づきまして議決権の行使が可能になるわけでございまして、優先株式でありましても、株式保有を通じて密接な関係を形成し、そうした関係のある会社の利益を図ったり、競争関係にある会社を不利にするような行為を行うということによりまして、我が国市場における公正な競争をゆがめるおそれがあるという観点からこのように考えているわけでございまして、独占禁止法と銀行法、それぞれ法の趣旨、目的が異なりますから、私どもとしては優先株を含めて考えておるということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/268
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269・島津尚純
○島津委員 ただいまの公正取引委員会の方の御答弁を大蔵省の方はお聞きになったというふうに思います。独禁法の方では、五%の中に議決権のない株も入れる、含めるということであります。
となりますと、私が前段で御質問申し上げましたように、この法が成立をして実施される場合、やはり銀行法の改正は必要になってくるのじゃないでしょうか、というふうにお尋ねしたいのですが。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/269
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270・福田誠
○福田(誠)政府委員 独占禁止法につきましては今御答弁がありましたが、銀行法の方の五%の制限につきましては、銀行経営の健全性確保の観点から、銀行に他業禁止が課されている趣旨の徹底を図るということと、銀行の子会社の範囲制限が容易に逸脱されることを回避するために措置されているものでございまして、先ほどの独占禁止法とはその法益がおのずから異なるというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/270
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271・島津尚純
○島津委員 同じ政府の中にあって同じ五%条項が全く性質が違うというのは、これは、お聞きになっている皆さん方もほとんど理解できない範囲ではないかというふうに思います。
私たちは、債務の株式化、これはモラルハザードと大きな関係を持つ問題でありますので今後も追及させていただきたいと思うのですが、公正取引委員会、せっかく来ておられますのでもう一度御質問を申し上げたいのは、この事業再構築について、今回の債務株式化の問題、必要性に配慮した上で認可を判断するということになっているのですが、どうも必要性に配慮という言葉がよく理解できないのです。どのようなことを指していらっしゃるのか、御質問を申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/271
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272・山田昭雄
○山田政府委員 債務の株式化によりまして、金融会社が五%を超えて保有するということがあり得るわけでございまして、どういう場合にこれを認めるかということにつきましては、現在御審議いただいております法案の規定の趣旨、それと十一条の趣旨というものを踏まえましてこれを明確にしていきたい、このように考えているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/272
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273・島津尚純
○島津委員 先ほど申し上げましたように、この債務の株式化という問題はモラルハザードにも関係する問題でありますので、今後私たちはさらに議論をさせていただきたい、このように存ずるわけであります。
続きまして、時間がありますので先に行かせてもらうわけでありますが、今回の問題でやはり私たちが最も重大に考えておりますのは、だれが考えても、普通に考えても、過剰設備を抱えておる中で再構築計画を出すということになれば、どんなに、百万語言葉を尽くしても、その裏には過剰雇用というものを何らかの形で整理していくことを連想しても全く不思議ではないということの中に、特に働く皆様方が大変関心を持ち、心配をなさっていらっしゃるということになるわけでありまして、その方面のことにつきまして質問をさせていただきたいと思います。
午前中、労働界を代表しての参考人の方が、今回の法案というものは、過剰雇用をリストラすることを政府が税制面あるいは金融面で支援をしていくというような性質を持っておる法案だ、このようなことを言っておられたわけであります。
今まで我が国は、幾たびも経済危機というようなときを迎えながら、何とか乗り越えてきた。そのときには、歯を食いしばって雇用を守り、そして乗り切る中で、働く人たちがその企業に対してやる気を起こし、そして危機を乗り越えてきたというような歴史があるわけであります。
現在でも、日本の多くの企業の中にこのようなことをやっていらっしゃる企業が、それは大手の企業の中にもあるわけです。どんなことがあってもリストラはしない、さらには六十歳の定年を過ぎても、愛情があって元気で働きたい方は、どうぞ八十になるまでもいてください。もちろん、労働条件というのは変わってきますよ。そういうふうな人間を大事にした経営をなさっている会社が、この不況下にもあるわけであります。
それで、専門家のお話を聞く中で、こういうことをおっしゃっている方がいらっしゃいました。
今度の例えば政府の雇用対策等々は、どう見ても早急に新しい雇用の受け皿になるようなものは見当たらない。それから、新事業に対する支援策を見ても、急速に雇用を確保できる、受け皿になるような施策というものは見当たらない。であるならば、雇用を守るという立場、それがすなわち景気回復につながってくるのだという立場からするならば、雇用調整助成金というのが労働省にあるわけでありますが、現在六百億ぐらいの予算を組んでいらっしゃると思いますけれども、つまらないところにお金を使うぐらいだったら、この雇調金をさらに数倍にも拡大する中で雇用を守ることの方が大事ではないか。こういうようなお話をされる方もいらっしゃるわけであります。
労働大臣、せっかく御出席を賜りましたので、まず、この辺につきましてどのようにお考えになられるか、お話をお聞きしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/273
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274・甘利明
○甘利国務大臣 労働大臣として初めて商工委員会に呼んでいただきました。光栄に思います。
経営者の責務として雇用の安定に対して最大限の配慮をすべきだということは、私が常々申し上げていることでありまして、日本の経営者はかなり健全だと思いますが、雇用に対する責任、これはいわば社会的な責務であるということを自覚していらっしゃる方が非常に多いと思います。
雇用の受け皿につきましては、実は、政労使雇用対策会議等で使用者側、組合側からいろいろ建設的な意見をいただきました。その中で実現可能なものはかなり取り入れたつもりでありまして、これは一定の評価をいただいていると思いますが、いかんせん、日本は自由主義、市場経済の国でありますから、雇用の受け皿をぽんぽん政府の指示であっという間に実現するということは非常に難しいところであります。基本的には、民間事業者が元気になって、雇用の場が拡大するように環境整備をするという、言ってみれば間接話法に頼るわけでありますから、なかなか明確に御満足をいただける回答が用意できなかったかもしれませんけれども、精いっぱいやったつもりでございます。
そこで、雇調金の話であります。雇調金は、御案内のとおり、基本的な姿勢というのは、今は景気変動要因を受けて雇用を維持するのに厳しいけれども、やがて景気がよくなる、あるいは体力が回復された後にはその雇用は必要になるであろう、そのときに備えて、今国が、あるいは雇用保険制度が支援をしますから、景気変動を解雇とか採用というダイレクトな手法によらないで、一定の安定効果を与えるためにある制度であります。
御案内のとおりの金額でやっておるわけでありますけれども、これも、いわゆる雇用保険の三事業、つまり事業者側の拠出の中で運営をしているわけでありまして、幾らでも潤沢にあるというわけではありませんので、許された範囲内で景気変動のショックアブソーバー機能を果たすということを中心にとっている制度であります。でありますから、いろいろと御意見をいただいているのは承知しておりますけれども、現制度の中で精いっぱい取り組んでいるというつもりであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/274
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275・島津尚純
○島津委員 やはり、雇用を大事にするという立場から、このような考えもあるんだということをぜひひとつ大臣におかれましては御認識をいただきまして、今後御検討いただきたい、このようにお願いを申し上げる次第であります。
通産大臣がおられませんので、引き続き労働大臣に若干お尋ねをさせていただきたいと思うんですが、今回の法律の第十八条に雇用の安定という規定がございまして、そこで「労働者の理解と協力」という文言が入っておるわけであります。しかし、例えば特定不況産業安定臨時措置法や産業構造転換円滑化臨時措置法、こういったかつての法律におきましては、設備の処理などを行うに当たっては労働組合あるいは労働者の代表と協議をするということが義務づけられていたわけであります。
今回の法案も、設備の撤去というようなことが想定をされるわけでありますから、当然ながら、理解と協力なんて言ってないで、労使の協議を前提に行っていくというような、かつての法律のようなものが明記されてしかるべきではないか、私どもはこのように思うんですが、労働大臣におかれましてはどうお考えでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/275
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276・甘利明
○甘利国務大臣 この法律の正面に、まず、雇用の安定等に配慮せよということが書いてありまして、産業の競争力を強化する、だから雇用は何でも犠牲にしていいんだということはうたっていない、これは日本の経営者の雇用に対する社会的責務を自覚して立ててある項目だと思います。そして、計画段階、実施段階において労働者側との真摯な話し合いをどう担保をしていくか。これは、大臣告示等によりまして、きちんと話し合いが行われたのかどうかを担保していくという方向でやっていただけるというふうに理解をいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/276
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277・島津尚純
○島津委員 さらには、労働大臣にもう少しお伺いさせていただきたいわけでありますが、第十八条に労働者の協力という趣旨のことが盛り込まれているわけでありますが、労働者の皆様方の協力が得られるためには、やはりそこに一定の合意がなければなかなか協力というものは得られないというふうに思うわけであります。
ということは、協議の上で合意を受ける、そして実施するというような考えが労働者雇用という立場から見たらやはり大事なのではないかというふうに私どもは考えるわけでありますけれども、労働大臣におかれましてはどのようにお考えになられるでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/277
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278・甘利明
○甘利国務大臣 まず、計画段階できちんと労使の話し合いがあったのか。話し合いもしないで勝手に計画をつくるとしたならば、その計画自体が無効になるという可能性が高いわけであります。これを実施する際に果たしてちゃんと理解を得たかどうか、これは、一律に法的にコンクリートするということについて、なかなか難しい面があると思います。
ただし、実施する段階で話し合いはしたけれども、話がまとまらなかった、しかも、まとまらない理由として労働条件の大幅な変更があった、そんなものがまとまるはずがないじゃないかというケースがあるんだと思います。それは当然、労組法による団交権の対象になるわけでありますから、労組法の団体交渉権の権利というものをしっかり駆使をして、使用者側ときちっと話し合ってもらうということであろうと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/278
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279・島津尚純
○島津委員 ただいまの問題に関連をいたしましてもう一問お伺いさせていただきたいわけでありますが、これまでいろいろ質疑をしてまいったわけでありますが、従来の社会の中にありましては、持ち株会社とかあるいは会社の分割であるとか分社化であるとか譲渡というような状況というものは余り想定をしていなかったわけであります。したがって、これらの社会的な変化に対応して、雇用面からの法的な整備が行われる必要があるのではないかというふうに私どもは考えるわけでありますが、労働省といたしましてはその辺についてはどのようにお考えでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/279
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280・野寺康幸
○野寺政府委員 事業再構築の一方法としていろいろな形態があるわけでございますが、例えば営業譲渡といったような形態もございます。そういった際の、お話しの解雇、労働条件あるいは労働者の代表の地位の承継といったような労働関係の諸問題につきましては、いろいろな譲渡の形態の中で権利がどの程度移っているか、そういった態様がかなり異なってまいります。したがいまして、一律にこれを法律で規制するということは、本問題の場合、適当ではないというふうに考えております。
ただ、このような問題につきまして、労使間で十分な協議がなされるということは極めて重要ではないかというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/280
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281・島津尚純
○島津委員 次は、通産大臣お戻りでございますので、御質問をさせていただきたいと思うのです。
今回の再生法、普通に考えまして、やはり過剰設備を廃棄する等々の話になってきますと、当然その裏に、過剰雇用についての整理とかリストラというようなことを想定することは自然だろうというふうに思います。きょうの大臣のいろいろな答弁を聞かせていただいておったわけでありますが、その中にも、過渡的にはやはりこういうふうな失業の問題も生まれてくるかもしれないというような御答弁をなさっていたわけであります。
きょう午前中の参考人質疑の中で、労働界を代表して連合の方が、このような法律を通すということは新たな不況につながってくる、事業縮小といったような意味から新たな不況をつくるのではないかとおっしゃった。
橋本内閣のときに、やっと景気回復の兆しが多少見えたかなというときに、三%の消費税を五%に引き上げた。あのときに、風邪を引いている患者が治りそうになってきている、そこにバケツで水をかぶせるようなものだ、このようなことを私たちは議論をしてきたわけであります。
そんなことはないというふうにおっしゃったんだけれども、結果的にはそれが、回復しかけた景気にまさに水を差して、そして今まで以上の景気の悪さになって、ついには三百四十万を超すような失業者、戦後最悪の状況まで来ておる。そのことによってまた、戦後最高と言われるような悲しい自殺者が続出していくというような状況になってきていると思うのですね。
今、いろいろな業況指数というものが多少好転し始めているということも言われております。私たちは、それはそうではないんじゃないかな、現在の景気は官に支えられた、つくられた景気であって、痛みどめが切れたときにはまた大変なことになってくるのじゃないか、自律的な回復ではないのだというようなことを主張させていただいているわけでありますが、数字を見ますと、多少そういうふうな業況指数の回復ということが見られるわけであります。
そうしますと、私たちは、ついこの前経験したような、同じような轍というものを二度と繰り返してはならない、そのように思うわけでありますが、このような意見について与謝野通産大臣はどのようにお考えになられるでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/281
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282・与謝野馨
○与謝野国務大臣 消費税が三%から五%になったのが不況に寄与していないかといえば、多分若干の影響はあったと思いますが、その当時のことを考えていただきますと、消費税を二%上げることに先立ちまして制度減税と特別減税を所得税において行って、そのときは、国の財布と納税者の財布を比べてみますと納税者の方が取り分が多かったという状況で、消費税の二%引き上げが直接不況の引き金を引いたということは正しい理論ではないのではないかと私は個人的に思っております。
ただ、デフレスパイラルに突入する直前まで参りましたし、また金融システムも大変不安定になったということは事実でございますし、平成九年に起こりました一連の出来事、特に十一月に起きました三洋証券のデフォルト、あるいは北拓の破綻、あるいは山一証券の破綻等が大きな影響を消費者のマインドに与えたことは事実でございまして、個人的には、年末に起きました二つの大きな破綻というものが日本の経済が下降線をたどり始めた心理的な大きな曲がり角ではなかったかと思います。
私は揚げ足をとるつもりではありませんけれども、民主党の法案も明らかに瞬間的には、失業というふうに表現したかどうかわかりませんが、職場を新規の場に移すという、瞬間タッチでよそに移るという思想が色濃く出ておりますので、そういう意味では政府の考え方と余り変わらないんじゃないかと私は思っております。
セーフティーネットはもう既に労働省で随分用意をしておりますし、これはリストラでそう大量の失業者が出る法案というふうに考えるということはできないのだろうと私は思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/282
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283・島津尚純
○島津委員 今のお答えの中で、この法案によって、危惧するようなリストラというもの、失業というものは起こり得ないのではないかというような御答弁がございましたが、私どもはそれを重く受けとめさせていただきたい、そして見詰めさせていただきたいというふうに思うわけであります。
また、民主党案と余り変わらないのじゃないかというようなことにつきましては、また後段、それを含めた御質問をさせていただきたいと思います。
それで、先ほど労働省の方からお答えをいただきました中で、持ち株会社であるとか、あるいは分割であるとか分社化であるとか、こういうふうな社会変化の中で、労働面から見た法的整備というものが必要ではないかというような御質問を私はさせていただいたわけでありますが、労働省の方からのお答えによりますと、法的対応というものは余り必要ないんじゃないかというような意味の御答弁をいただいたわけであります。これについては、雇用の安定というものを中心に据えられた労働省の回答とはとても思えないわけであります。
私どもは、新しい時代、激変する社会変化に対応するような法的整備というものを、やはり雇用面から何らかの整備をしていくということは時代の要請ではないかというふうに考えているわけでありますが、もう一度お願いをしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/283
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284・野寺康幸
○野寺政府委員 先ほど、委員の御質問に対する御答弁の中で、法的対応が要らないというようなことを申し上げたつもりはございません。
現在の、例えば労働基準法を初め、男女雇用機会均等法等におきましても、法律上、例えば解雇が禁止される場合というのは罰則つきで列挙されておりますし、例えば本件に若干似通ったケースとして、一般的に整理解雇といったようなことに仮に該当するような場合にも、これは判例で確立された法理として整理解雇の四要件といったようなものがございます。
私どもは、こういう労働関係の法制、判例等を着実に実施していただくように、こういった関係のリーフレットを作成いたしまして、労働省関係の第一線機関を通じましていろいろな周知徹底を図っておりますし、万一こういった労働者の権利の侵害がございますれば、必要な法的措置をとるということは当然であろうというふうに思っております。
〔委員長退席、伊藤(達)委員長代理着席〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/284
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285・島津尚純
○島津委員 ただいまの御答弁の後段にございました、必要となればそのような法的な措置をとるというような御答弁がありましたけれども、私どもが求めましたような、社会変化に対する雇用面からの法整備を今後検討していくというような趣旨におとりして結構でございますね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/285
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286・野寺康幸
○野寺政府委員 現在ございます法律あるいは確立された裁判例等におきます法理というものは徹底する必要があるというふうに申し上げたわけでございまして、現在話題となっております産業再生法に絡んで、あるいはそれに近い状態を想定いたしまして、新たな立法措置というものは必要ないというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/286
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287・島津尚純
○島津委員 時間もあと五分少々になってまいりましたので次の質問に移らせていただくわけでありますが、これもできましたら与謝野通産大臣にお尋ねをしたいというふうに思います。
私ども民主党が今回提出をさせていただいております法案の中で、特に新事業、起業における女性起業家の問題について、私どもは中心的な問題に据えてやらせていただいております。それにつきましては、きのうからきょうにかけての私どもの質疑の中で、なぜ私どもがそこに非常に熱心にやっているかという理由はお聞きになっていらっしゃると思います。
現在、アメリカに八百万社の女性の起業家がおられて、それが全米の会社の三六%を占めるという大変元気のいい状況があるわけですが、こういう状況といいますのは何も偶然に生まれたことではなくて、これに至る過程ではなかなかアメリカといえども女性が不利な立場ということは日本と同じだったわけでありますが、まさにそういう女性が経済の世界、ビジネスの世界に少しでも進出できるような、そういうふうな、言うならば手厚い法整備を続けてきたということ。
一つだけ例をとりますと、例えば、連邦政府が調達するものについて五%を目標に女性起業家から買い付けるというような、連邦取得合理化法というような本当にすばらしい法律の整備というものが結果して、今日このような三六%あるいは八百万社というような状況、そして、きのうも申し上げましたように、一千八百五十万人の雇用を支えているというような状態になってきておるわけであります。
我が国は、やっと今国会で男女共同参画社会基本法なんというのができるぐらいでありまして、相当おくれているわけでありますから、そういう意味から、私たちはぜひこのような法を整備していきたい、このようなものが私たちの気持ちの中にあるわけであります。
ここでお尋ねをしたいんですが、我が国においても、先ほど申し上げましたような、政府の調達についてこのような何か特例というものはございますでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/287
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288・与謝野馨
○与謝野国務大臣 近年、独立して事業を営む女性の方が徐々にふえておりますけれども、創業者に占める女性の割合は、百人当たり三・五人でございます。いまだ低い状況と言わざるを得ません。経済の活性化を図るためには、先生御指摘のとおり、女性の視点からも事業が積極的に展開されることは大変重要でございます。
他方、アンケート調査をやってみますと、事業経営の際、女性であるがゆえに不利であると感じたことは何かというアンケートを出しますと、女性であるがゆえに不利と感じた方の割合は半分弱、四四・五%の方は自分が女性であるがゆえに不利だというふうに感じておられるということがわかりました。それで、その中で、その理由は一体どういうことですかということを伺いますと、金融機関の借り入れ困難等、融資に関することが最も自分たちとしては不利になるということをお答えになっておられます。
したがいまして、通産省では、業を起こす意欲のある女性のための貸付制度を、本年度より中小企業金融公庫、国民金融公庫に創設をいたしました。その融資制度については、優遇金利を適用しているところでございます。
通産省としても、今後とも、今御説明申し上げました新しい制度を活用して、女性を含めた起業家の育成に取り組んでいきたいと考えております。女性は大歓迎でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/288
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289・島津尚純
○島津委員 女性は大歓迎ということで、常に自分の御意見を持たれて非常に明確にお話しになる大臣に常日ごろひそかに敬意を持って接しさせていただいていたわけでありますが、そういう通産大臣に最後に提案をさせていただいて、質問を終わりたいと思うんです。
先ほど申し上げた、アメリカの非常に女性起業家を後押しした政府の調達における割り当て制度、そういうものを、五%とは言わないまでも、幾らかのそういう調達に対する割り当てをつくるとか、あるいは通産省の中に女性起業家支援の促進室みたいな、女性大歓迎とおっしゃったので、そういう促進室みたいなものを近い将来おつくりになって大いに応援をしていこうというようなお気持ちはないだろうかということをお尋ねをして、質問を終わらせていただきたいと思うんです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/289
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290・与謝野馨
○与謝野国務大臣 促進室は多分できないと思いますが、心の中ではみんな、そういうことに熱心に取り組みたいと考えている者も多いわけですから、先生の言われる方向の政策努力は必ずいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/290
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291・島津尚純
○島津委員 では、これで私の持ち時間が終わりましたので、質問を終わらせていただきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/291
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292・伊藤達也
○伊藤(達)委員長代理 吉井英勝君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/292
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293・吉井英勝
○吉井委員 日本共産党の吉井英勝でございます。
私は、昨日に続きまして、最初に、今度の産業競争力会議について、朝日の五月十二日付の「不良債権の実相」というところでは、「「競争力回復」という大テーマを掲げたはずの産業競争力会議の論議のまん中に、なぜか「設備、雇用、債務」の三つの過剰処理という課題が座った。」こういうことになっておりますが、そこで、このいわゆる設備や債務の過剰という問題などから質問に入っていきたいというふうに思います。
それで、法案の第十三条では、初めて、銀行の企業債権と株式を交換して企業の債務を救済する債務の株式化について定義をしております。
実は午前中、今井参考人は、過剰資産、不良債務などバブルの負の遺産などは経営者の責任が問われる問題だということを言っておられましたが、それでは、債務救済される認定企業は、どんな認定基準で、どんな経営責任を問われることになるのか、まずこのことから伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/293
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294・林洋和
○林(洋)政府委員 お答え申し上げます。
御質問の御趣旨は、債務の株式化をした場合に経営責任はどうなるのか、こういう御質問でよろしゅうございましょうか。
私ども、法文の十三条でございますが、「当該株式の発行について債権者との間に合意を有することその他の主務省令で定める要件に該当する」ということを書いておりますが、当然、債権者、債務者との合意が前提であるということ、それに加えまして、既存株主の責任という意味で、減資を主務省令で定めようと思っております。減資ということは、既存株主の責任が問われるわけでございますから、既存株主は当然、経営者の責任を問うことになるものと理解しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/294
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295・吉井英勝
○吉井委員 与謝野通産大臣は、既に御紹介したこともありますが、日経新聞の四月十九日のインタビューで、「公的資金による資本注入で金融機関が助かり、今度は金融機関が企業の面倒をみる番だ」と語っておられます。
実際、債務の株式化構想が急浮上したのは銀行への公的資金投入と無関係ではないものと思われますが、マスコミも、「公的資金が入ったことで銀行に償却余力ができ、企業がそのおすそ分けにあずかろうと動き出した面を否定できない」と、これは日経の四月十一日の社説でも指摘していることです。
与謝野通産大臣に伺っておきたいんですが、企業が七兆四千五百億円のこれまでの、これまではもっとふえますが、銀行への公的資金のおすそ分けにあずかって、それで当然だというふうにお考えになりますか。その点はどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/295
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296・与謝野馨
○与謝野国務大臣 結局、そのインタビューをした時期は、銀行が本来の貸出業務というものに関しまして萎縮をしていた時期でございまして、資本注入を受けた以上は、従来と同じように必要な融資活動を的確に行う、そういう意味での面倒を見るという意味でございまして、おすそ分けなどという下品なことを申し上げたわけではございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/296
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297・吉井英勝
○吉井委員 いや、大臣が言われたんじゃなくて、おすそ分けの話は日経が社説で書いているわけですから。問題は、今度のこの仕組みが、全体としての債務の過剰をどうするか、こういうところからもともと出ているものであって、そしてこの債務の株式化ということが議論されてできてきたということ、これは多くのマスコミその他も伝えているところであります。
私は、この点で、経済評論家の内橋克人さんが最近のものに書かれた中で、これまでは規制緩和だ、官から民へだという議論がうんとあったわけですが、実は「銀行をはじめ企業の抱える借金は右から左へ、すなわち民間企業から国へと移し替えられ、国の借金、すなわち国債や借入金の総額五百兆円超へと姿を変えた。この間、わずか数年で、国の借金は二百兆円以上も急膨張し、結果、国の債務総額はGDPの規模さえ上回る異常事態となった。」この「銀行、企業の負債を、公的資金の強制注入、ゼロ金利、国債大量発行などを通じて国の負債へと置き換えることで、」置きかえる方向へ行って、「近い将来、企業から国へと移された天文学的規模の借金は、今度は国から個人・家計へと移し替えられる。経済戦略会議をリードした経済学者の一人は、遠からず、消費税一四パーセントは避けがたい、と明言している。」と一連の動きを紹介しているわけであります。
私は、今回のこの問題を見ておって、内橋さんの指摘していらっしゃる、六十兆円の銀行救済の公的資金があって、その公的資金の投入と、そのことで償却余力ができた銀行が、今度は企業の債務の方を一部棒引きするという、形としては債務の株式化などでやっていくわけですが、実質的には債務の一部棒引きという形が生まれてくる。そうすると、それはどこかへ行くわけですが、結局それらは民から国の方へと、そして面倒を見た国の方は、もちろんそこには税金での支援とかさまざまな形はありますが、結局それは国民にツケが回ってくる。
つまり、こういうふうな、企業の負の負債を国へ、そして国民へと、こういう移しかえというものでいいのかということが私は問われてくると思うんですが、これについては大臣の見解を伺っておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/297
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298・与謝野馨
○与謝野国務大臣 債務の株式化というのは大変わかりづらい概念でございますが、例えば、先生が銀行の経営者であって、ある会社に融資をしていた、このままほっておけば相手の企業は倒産をする、自分の銀行は清算配当しか受けられないという状況がいいのか、あるいは、貸してあるお金を株式化して、資本化して、将来取り立てるということがいいのか、その選択の幅が広がったということだろうと思います。
これは、債権を株式にして預かっておくということは、直接的な債権放棄ではなくて、株主の権利を留保したわけでございますから、当然、仮に清算価値というものに対する持ち分は持っているわけですから、その辺をバランスよく考えていただかないと、何か、債務の株式化をやった途端に国民にツケが回るんだということは、私は、因果関係としては薄いことを大変濃く御説明になっているのではないかとさっきから思っているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/298
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299・吉井英勝
○吉井委員 これは、銀行の破綻であれ企業の破綻であれ、結局それらは国民にツケ回しがされてくることになる。負の遺産の移しかえということ、このことはまず指摘をしておかなきゃならぬことだと思います。
引き続いて、そういう中で問題は、さらに設備廃棄等への税金優遇の問題ということがありますが、そこで、最初に確認しておきたいことは、税の減免などですね。大蔵の計算と通産の計算は少し違うということはありましたが、昨日、三百億円というのは、これは十七条の五項関係で二十社で百億、そして共同出資会社の方の十七条四項で二十社で百億、その他百億ということであったと思うわけでありますが、まず、十七条五項関係、四項関係と、それからその数字に見合う、これは一体どの企業がこれに当たるのか、それを伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/299
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300・林洋和
○林(洋)政府委員 お答え申し上げます。
具体的に、どの企業がそれを予定しているかとかいうことの積み上げではございません。サンプリング調査をやりまして、そこから推計をしたものでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/300
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301・吉井英勝
○吉井委員 どの企業という固有名詞が挙げにくいとすれば、それはどういう事業分野ですか。例えば鉄鋼であるとか、それは言えると思うんですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/301
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302・林洋和
○林(洋)政府委員 今御答弁申し上げましたように、無作為の、無記名のサンプリング調査をやりまして、それをマクロ的に推計したものでございます。したがいまして、個別企業名あるいは特定業種名ということはわかっておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/302
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303・吉井英勝
○吉井委員 いや、それは、規模からしても二十社で百億でしょう、小さいところじゃそうはいかないわけですよ。これは鉄鋼、電炉、石油、石油化学、この四つの業種になるんでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/303
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304・林洋和
○林(洋)政府委員 先ほど御答弁申し上げましたように、どの業種ということは特定できておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/304
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305・吉井英勝
○吉井委員 そうしたら逆に、本当に設備で非常に巨大なものを持っている、広大なものを持っているところを考えていった場合に、この四業種、その他に全くないわけじゃありませんが、それ以外に何か挙げられるものがあったら挙げてください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/305
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306・林洋和
○林(洋)政府委員 一般論として、どういう業種が大きな規模かということでございますが、常識的に考えますと、電子、電機、自動車、石油精製、石油化学、鉄鋼、それから、これはサービス業も対象にしておりますから、流通等々が大きな設備を持っているんではないかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/306
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307・吉井英勝
○吉井委員 設備廃棄の支援だけでなくて、経団連の一次提言の中では、廃棄後の跡地の利用促進や売却の支援策まで要求を出しております。今回の税制優遇策の買いかえ特例に土地を加えることとしておりますが、これによって最大の恩恵を受けるのは、これは結局、広大な敷地を持つ鉄鋼、石油コンビナートなど、基礎素材産業の大企業になってくるということは言うまでもないと思うんです。つまりそれは鉄鋼、電炉、石油、石油化学ということになるかと思うわけです。
ちなみに、ちょっと見てみると、日本最大の土地を持っているのは新日鉄ですが、その新日鉄八幡の敷地で約千七百ヘクタールですね。東京ディズニーランドが約八十ヘクタールですから、これと比べてみても、ディズニーランドの二十倍ぐらいですね。千代田区の総面積、千百五十ヘクタールに比べてみても、はるかに上回るものであります。八幡東田総合開発ですか、これも新日鉄の中には入ってくるかと思いますが、今、こういう設備の廃棄、あるいはそれに対する税金優遇策の買いかえ特例に土地を加えるということになりますと、これらは優遇の支援の対象になりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/307
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308・林洋和
○林(洋)政府委員 お答え申し上げます。
従来、買いかえ特例は土地も対象にしておりまして、従来の前例を踏襲したということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/308
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309・吉井英勝
○吉井委員 ですから、支援の対象になるということであります。
ところで、NKKや日石三菱、昭和電工、東芝などが集中立地する神奈川県の京浜臨海部、四千ヘクタールを超えますが、先日、見に行ってまいりました。NKKなど大企業主導の再編整備が今ここでは進められておりますが、ここでも最大の大地主はNKKであり、その所有地は七百ヘクタールを超えております。
既に、このNKKの遊休地百六十五ヘクタールのうち六十五ヘクタールが処分済みで、そのうち十七ヘクタールは川崎市が買い上げ、また環境庁の方の環境事業団が百二十四億円を投じて跡地の買収を進めております。ここでは、市と一体となった新しい整備事業というものをやっているわけです。それから、同じ川崎の東芝系の日本電線電纜は、十二ヘクタールの跡地のうち三分の一を住都公団が購入しております。これらのこの地域の大企業の遊休地は、既に国家資金など公的資金による買い上げが進行している。
こういうふうに、税の面もそうですが、現実には、遊休地の買い上げ等の支援というのが既に進んでいるのではありませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/309
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310・林洋和
○林(洋)政府委員 手元に詳細な資料がございませんが、一般論として申し上げれば、それぞれの法律なりあるいはそれぞれの地方自治体なりの考え方でおやりになっているものであると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/310
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311・吉井英勝
○吉井委員 本法案によるリストラと税制優遇の措置というのは、その他の支援策とともに連動してこれがきいてくるわけですが、NKK初め臨海部の大企業の遊休地の売却を大いに促進していくということは間違いないと思います。新日鉄の今井氏も、バブル経営に走ったことはきょうの午前中認めておられましたが、こうした企業責任を免罪して、リストラ企業に対して公的資金の投入とか税金の優遇による救済を行う、それでさらにリストラをどんどん進めていく。その一方では、大量の解雇が進んでいく。
中小企業の方にはそういうことはほとんどないわけですから、中小企業問題は後ほど触れますが、私は、こういうふうな不公平なあり方というものが許されていいものだろうか、そのことに疑問を呈するわけですが、通産省の方は、これはもう当然のことだ、仕方がないんだというお考えですか。
〔伊藤(達)委員長代理退席、委員長着席〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/311
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312・江崎格
○江崎政府委員 事業の再構築というものは、委員が先ほどから問題にしておられるように、一部の設備の廃棄とかそういうことを伴う場合はあると思いますけれども、全体として見れば前向きの取り組み、生産性の高い部門に経営資源を移そうというものを含んだ非常に前向きの概念でございます。
したがいまして、この法案による事業の再構築が進んだ場合に、それに伴って大量の解雇あるいは大量の失業が生まれるということは想定していないわけでございます。もちろん、個々の企業の具体的な事業再構築計画で人が一人も減らないということはなくて、場合によっては減るものも中にはあるかもしれませんけれども、全体として見れば、むしろこれによって将来的には日本のきちっとした雇用が確保されるというふうに私どもは認識をしております。
それから、税の適用の問題がございましたが、これは決して大企業のものだけではなくて、中小企業向けの税の適用ぶりについては業種指定などについてむしろ配慮をするというようなことを考えておりまして、決して不公平なものとは思っておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/312
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313・吉井英勝
○吉井委員 私は昨日も取り上げましたが、一九八七年に制定された産業構造転換円滑化臨時措置法、これはちょうど八七年という鉄鋼不況の時期のものですが、まさに鉄鋼大企業救済のための法律であったと言っても言い過ぎでないぐらいのものでありました。当時、新日鉄は沈没寸前のようなことを言っておりましたが、鉄鋼大手六社は、やはり過剰設備の処理に税金の減免の優遇を受け、遊休地活用の支援も受けたわけです。
だから、これから前向きのというお話を今おっしゃるんだが、私は、一つ一つの問題は、これは何も後ろ向きの議論をしているんじゃないんです。過去においてどういうことをやってきたのか。これから先のことというのは幾らでも言えるわけですが、実績に基づいて、やはり根拠のある見方をしてきちっと見ていくということが必要だと思うわけです。
そういう点では、税の優遇を受け、遊休地活用の支援を受けて、同時に多角化経営、複合経営という名のもとにバブル投資に走り、新分野開拓といって半導体、エレクトロニクス、新素材、不動産、エンジニアリングなど新規事業に次々手を広げて、通産省の方もその後押しをしてこられました。その結果どうだったのか。新事業や海外投資は大半が失敗し、今経営上も大きな負担になっております。財務体質を悪化させたのも事実です。
新日鉄は、千葉・館山の子会社日鉄セミコンダクターをただ同然で売却して、約千二百億円の特別損失を計上しました。これはきょうの午前中、今井会長も認められたことです。この点ではNKKも、過大投資で破綻した系列電炉大手のトーア・スチールの清算に伴う債務超過で六百億円、電子デバイス事業の失敗などでも多額の損失を出しております。
この千二百億とか六百億という数字を、私たち、余りにも大き過ぎるからぴんときにくいんですが、例えば千二百億円といたしますと、年間賃金の総額六百万円の労働者であれば二万人分なんですね。二万人分の労働者の賃金が経営の失敗で消えてしまうわけですよ。NKKの電炉大手のトーア・スチールの清算に伴う六百億というのであれば、これは一万人ですね。一万人の賃金が、まさに経営の失敗によって、バブルに踊ったそのやり方で実は消えてしまっているんですよ。
産業競争力会議の筆頭メンバーの会社も含めて、みずからの経営責任については口をつぐんでしまったままで、それで実際にこの一万人分、二万人分という年間の総賃金をそういうバブルの後始末に使っておいて、今度は前向きの産業競争力強化だからと言って、大量解雇を伴う、あるいは労働条件の非常に厳しい切り下げを伴うリストラが当たり前だと。私は、それはないんじゃないかというのが多くの働く皆さんの声だと思いますよ。
そして、そういうことを許しておったのでは、モラルハザードを招いてしまうのは明らかだと思うのですが、このやり方で経営者のモラルハザードを招くとは考えませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/313
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314・与謝野馨
○与謝野国務大臣 申しわけないんですが、先生の御質問を聞いていると、ほとんど何もするなという話に聞こえるわけでございまして、私どもとしては、やはりこういう状況を打開して、新しい経済をつくろう、体質を強化しようということを目指しているわけでございます。
経営責任、経営責任とおっしゃいますが、恐らくそれぞれの会社の経営者、日本の会社はほとんどでございますが今は所有と経営が分離をされておりまして、昔流の経営者というよりは、ある社長が自嘲的に私に言っておりましたが、社長というのはサラリーマンのなれの果てよというぐらい所有と経営は分離されておりまして、そういういわば良心的な経営者が、その当時持ち合わせたベストの判断で物事をやってきたわけですから。神様ではないんですから、経営判断が間違ったことについて、株主から経営責任を問われることがあっても、日本共産党から経営責任を問われることは恐らく理論的にはないんだろうと思っています。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/314
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315・吉井英勝
○吉井委員 私は、それはおかしいと思いますよ。実際、中小企業家の皆さん方、本当にまじめに一生懸命経営をやってきて、しかし、大企業の方から仕事が回ってこなくなったとか、単価を切り下げられたとか、さまざまな事情はあるにしても、その借金を返すためにということでみずから命を絶って生命保険でもって、友人や親戚には迷惑をかけられないと、そこまで庶民は責任をとっているんですよ。私は何も、大企業の経営者の方だからそんなことをやれと言っているんじゃないんです。やはり、責任をしっかりとっていくということ、それはそれぐらい重いものだということを申し上げているわけです。
それから、今日、ではどうするのかという問題についても、これは私たちは提起をいたしております。
まず需要の拡大をすることによって、それはGDPの六割を占める個人消費を拡大することによって、そのためには所得をふやすことによって、これで内需を拡大すれば物が売れるわけですから、生産活動が進んでいく。今、労働者が余っているんじゃなくて、働きたいんだけれども、生産活動が停滞しているために、働き手が働く力を持ちながらうまく活用できないという状況にあるわけでありますし、新しい分野を開くということについては、特定の分野だけじゃなしに、これは基本的には日本の自然科学の分野を中心として科学技術の基礎研究の分野でもっと研究投資をしていくということ、その中から当然、応用の面で企業化していかれるところもありますし。
私たちはそういうことを言っているのであって、何も後ろ向きの議論をしているわけじゃないんです。問題は、経営責任をあいまいにして、しかし働く皆さんには責任を求めていく、そのやり方はおかしいんじゃないかということを言っているわけであります。
さて次に、分社化をしやすくするという問題です。
これはリストラを進める上でのやり方なんですが、この点でも、実は私は川崎へ行きまして驚きました。例えばNKKの分社化の実態ですが、きのうまで働いていたところと全く同じ職場なんです。ヘルメット、プレート、作業服に書いてある会社の名前だけが変わるわけですよ。働く場所は同じ、会社だけ変わる。分社化というのはこういうものだと理解していいですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/315
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316・林洋和
○林(洋)政府委員 お答え申し上げます。
いろいろな業種、業態、企業で、いろいろな形の分社化というのがあろうと思います。したがいまして、そういう例があるのかどうかというのは私はたまたま存じませんけれども、一概に分社化とはこういうものだというのはなかなか申し上げられないのではないかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/316
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317・吉井英勝
○吉井委員 分社化の実際の姿というのを私は見てまいりまして、事業再構築、分社化の実態としては、この七月から、NKKの京浜製鉄所、これは従業員百八十名の方たちが働いている表面処理鋼板事業の分社化というのを見てまいりました。新会社はエヌケーケー鋼板というのですが、資本金十七億、NKKが一〇〇%出資です。社長は現在のNKKの取締役の方なんです。
この会社を設立したわけですが、その結果どうなったかということを見ておきますと、NKKがエヌケーケー鋼板、表面処理の会社に変わったことによって、常勤の人たちの昼間の勤務ですが、労働時間が、千九百十六時間が千九百七十四時間へ五十八時間ふえ、交代勤務のときで千八百九十九時間が千九百五十二時間、五十三時間延長となりました。つまり、労働時間はふえたわけですね。賃金の方は、三十一万一千八百円が二十一万八千二百六十円へと、九万三千五百四十円減収になりました。
つまり、分社化というふうなやり方で、まず、分社化した会社へ出向。最初は出向の賃金差をある程度会社は持つわけですが、しかし、一年すると今度は転籍、その会社へ移す。さらに、若い年齢で今度は肩たたきでやめてもらう。こういうふうなやり方が現に行われて、なるほど、分社化するという企業にとってのメリットは、固定費を流動費に移すんだということで企業としてはメリットがあるのでしょうが、しかし、こういうふうなやり方で、現に働く人たちが労働時間が長くなる、賃金が下がる、これが分社化の一つの実態であります。
労働大臣は、こういうふうな実態をつかんでいらっしゃいますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/317
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318・甘利明
○甘利国務大臣 質問通告を全然いただいていませんので個別案件について調べてはおりませんが、分社化というのは、当然、企業がその企業の戦略の中で、ほっておいたらもうこのまま競争に立ち行かなくなるという場合に、分社化という形態を通じてたくましくその部分を育てていくということであろうと思います。
御指摘の事例について詳細承知いたしておりませんが、基本的に、分社化は、その企業が国内戦略あるいは国際戦略の中で勝ち抜いていくための前向きなものだというふうに理解をいたしております。
それから、出向それから転籍というお話もありました。転籍となりますと前の会社を退職するわけでありますから、当然、従業員、転籍させられる方に全く無断でそういうことが行われるということはあり得ないものだというふうに思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/318
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319・吉井英勝
○吉井委員 だから私、個別案件はともかくとして、しかし、個々の実態というものをぜひ労働大臣につかんでいただきたいと思うのは、おっしゃるとおり、本来ならあり得ないはずのことが、一人一人部屋に呼び出して、君はもう出向の次、もう一年たったから今度は転籍だとか、そういうふうなやり方で身分の変更がどんどんやられていっているのが現実の姿なんです。そういう実態というものをぜひよくとらえて見ていただきたいと思います。
実は、鉄鋼新聞のことし六月二十一日付ですが、NKKの下垣内社長は、NKKではうみを一気に出し、そのかわり九九年度は絶対に黒字にするんだ。どういうやり方でやるか。一つは人員削減などによる固定費の削減効果、二つ目は不採算事業からの撤退効果、三つ目が鉄鋼や総合エンジニアリング両部門の収益力の強化だということを挙げた上で、京浜の表面処理鋼板事業の分社化など四事業の分社で約九百人を減らす、さらに出向促進、早期退職制度、転籍制度などに基づく削減計画を進めるんだ、これによって合計八百八十億円の収益改善をやり、四百七十七億円の経常黒字を出すんだ。
この社長の、鉄鋼新聞に載っているものによると、「労務費、協力会社含め大幅圧縮」。前期は赤字だったが、一転して今期は黒字だ、経常収益二百億円を出すんだ、こういうふうに言っているわけです。
結局、NKKの三月期のこの特別損失の計上等で、最終損失五百三億の赤字だったものが、今期は早速もう経常益で二百億円の黒字転換を見込んでいる。それは、分社化と五十五歳以上の者の退職強要で、三千九百人の人減らし等による労務費の削減及びアウトソーシング費用の削減によるのだということを言っているわけであります。
私は、こういうふうなやり方で、なるほど企業の収益は上がるかもしれない。しかし、そういうふうな形で働く皆さんが雇用の場を失う、それが果たしていいのだろうか。そして、雇用の場を失うということは、これは通産大臣もおっしゃって、何度も議論してきたように、なるほど個々の企業のその企業収益という点だけ見れば黒に転ずるかもしれないが、しかし、全部の企業がそういうことをやったときに、これは本当に解雇大運動をやっているみたいなもので、それは国民所得の落ち込みですから、不況をさらに加速させる。文字どおりこれは不況大運動になっていくのじゃないでしょうか。
私は、そういう点では、労働大臣、やはり労働省にこういうときにこそ本当に頑張ってもらう、分社化によって、それで人を減らすんだ、こういうふうなことでやってもらってはいかぬのだ、労働省のトップたる方はやはりそういう立場で取り組んでもらう必要があると思うのですが、大臣、どうでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/319
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320・甘利明
○甘利国務大臣 私は、機会あるごとに、経営者の責務の一つに、雇用に対して責任を持つ、それは言ってみれば社会的責務の一つとも言えるものではないだろうかという発言をいたしておりますし、日本の企業経営者は、とにかく雇用に対して責任を持つということについて、大変に前向きに取り組んでいるというふうに思います。
分社化について先ほどから取り上げられていますけれども、今なぜこういう問題が出てきたかと申し上げますと、日本の経済全般が、バブルの後遺症等もありますけれども、なかなか立ち上がっていかない。このままほっておいて世界の大競争に勝ち抜いていけるのであるならば別にそんなことをする必要はないのだと思います。しかし、このままほっておいたらやはり相当なダメージを受けて、そしてその後には本体の雇用まで失われてしまう危険性もあるのではないか。
だから、雇用を守るためには、既存の企業が元気になること、それから、新しい職場が生まれるための新事業の創造のための環境整備も必要でありますし、あるいは、本来、事業の中では余り元気が出ない部門を分社化して切り離して、独立採算にして責任を持たせて、そして元気になって、それがやがて雇用の受け皿になる。いろいろなことを考えて現在前向きに取り組んでいるわけでありまして、何もしないで雇用が守れるのであるならばそんなに苦労はしないんだと思いますけれども、前向きにとらえるか、あるいは懸念される部分をそこだけに焦点を当ててとらえるかの違いであるというふうに思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/320
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321・吉井英勝
○吉井委員 それは、今おっしゃった点については既に昨日も議論をいたしておりますが、第一生命経済研究所のレポートでは、九八年七—九月期の企業の過剰設備ストックの四分の三が需要要因、つまり景気低迷による総需要不足によるものだ、残る四分の一がバブル期の過剰投資による構造的要因だということを指摘しておりまして、ここの結論は、現局面では総需要刺激の継続はより重要だ。
つまり、今日、国民所得が落ち込んでしまう、失業者がどんどんふえる、ますます落ち込む。だから、GDPの六割を占める個人消費が落ち込んできているわけですから、物が売れないんだから生産活動は停滞する。働いている人たちが働きたくとも、機械がとまるんだから、当然その活力が生かされない。こういう状況にあるわけですから、本来まずそこに力を入れるべきだというのは、これは第一生命経済研究所の結論でもありますし、アジア開発銀行研究所の、経企庁出身の吉富所長も、過剰設備はマクロ的には過大投資の結果ではなく、需要不足が原因だと。
だからやはり私は、今おっしゃった点については、何もしないということじゃなくて、本当に国民の所得を伸ばす方向、二年前の消費税増税以来、その他もありましたが、九兆円の負担増等で可処分所得が落ち込んでこういうふうになっているわけですから、これは、所得を伸ばす、需要を伸ばすということに本来もっと力を入れるべきだということを申し上げておきたいと思います。
次に、生産性向上のリストラだと言って、今の分社化など含めて、なるほどそれをやれば企業の利益はふえるわけですが、法案の中で言っていることに関連して伺いたいんですが、設備廃棄などの税制優遇などを活用したいなら一層のリストラをやるということ、それをいわば迫っていく法律の仕掛けというものになっている。何しろ、事業再構築計画というのを出して承認を受けてということになりますから。ですから、この法案の中で事業再構築の目標が企業の生産性を相当程度向上させることにあるとしているわけでありますから、相当程度生産性を向上させるということでますますリストラに走る。
そのリストラのやり方はもちろん問題なんですが、そうすると、では、そこで言っている「相当程度」というのは、〇・何%のことなのか、あるいは何%のことなのか、何十%のことなのか。生産性を相当向上させると言いながら、そこが全く見えてこない。これが今度の法案審議の中でもよくわからないところなんですね。これは何を「相当程度」というふうにしているわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/321
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322・林洋和
○林(洋)政府委員 お答え申し上げます。
法律の第二条第二項に事業再構築の定義がございます。先生の御質問、設備の廃棄、撤去というような後ろ向きなことのみを言っておられますけれども、この定義の中では大きく二つに分かれております。事業の構造変更、それから事業革新。それで、事業の構造変更の中でさらに合併とか営業の譲り受け、他の会社の株式の取得。選択と集中によって得意な分野を拡大するというものと、それからもう一方が設備の廃棄とか営業の譲渡でございます。したがいまして、一概にこの事業再構築計画が縮小の方向だというのは果たしていかがなものかと思います。
それから、御質問の「生産性の相当程度の向上」というところでございます。この生産性の相当程度の向上をはかる基準として、私ども、できるだけ明確なものを出したいと思っております。例えばROEの上昇率、あるいは一人当たりの付加価値額がどういうふうに変化するか等々を考えております。
ただ、これは、業種業態あるいは個別企業によってもどういう指標、メルクマールがいいのかというのは違いますし、専門家の意見なども踏まえ、かつパブリックコメントなどに付した上で、具体的な数値をメルクマールとして決めていきたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/322
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323・吉井英勝
○吉井委員 私、法案をちゃんと読んで聞いていますから、後ろ向きとかそんなことだけを言っているんじゃないんですよ。昨日も、アンド、オアの問題を取り上げましたが、中核的事業の開始などと、事業の廃止または縮小というのは、アンドでなくてオアなんですよね。
そういう中での事業の相当程度の向上というのは、要するに〇・何%なのか、あるいは何%なのか、あるいは何十%なのか、そういうことをやはりきちっと示さないと、法案を審議していながら、一体何がこの再構築の目標として掲げているものなのか、さっぱり見えてこないわけですよ。だから聞いているんですが、少なくとも、オーダー的に、いやそれは〇・数%とか、あるいは数十%ですとか、オーダーで二けた違うわけですからね。そういうことも示せないんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/323
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324・林洋和
○林(洋)政府委員 お答え申し上げます。
先ほども御答弁申し上げましたけれども、業種業態、例えば設備集約的な産業なのか、あるいは労働集約的なものなのか等々によりまして、先ほど申し上げましたROEにしても、一人当たりの付加価値額にしても、随分変わってくるのではないかと思います。そういう意味で、専門家の意見などを聞きながら、今後、九月の中旬を目途に告示で明らかにしていきたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/324
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325・吉井英勝
○吉井委員 さっぱり明らかになりません。
次に、事業再構築計画の認定申請があったときに認定するというわけですが、では、その認定基準は何なのか。これは、その中の第三条六項の六号、七号等について聞いておきたいんです。
三条の六項に関連して、実はけさも連合の野口参考人に伺いました。三条六項六号の「従業員の地位を不当に害するものでないこと。」という、ここについて伺って、野口参考人は、事前の労使協議が前提であり、雇用労働条件に影響する場合はその中身についての合意が必要だと考えているというお話でした。
それからまた、労働組合が反対と決めても事業再構築計画を承認するというのが政府のスタンスだということを昨日伺っておりましたが、大量解雇を伴うリストラ計画を出させて、それを国が認定する、つまり労働法制に反するような法律の仕組みをつくって解雇を合法化することになるのではないかという質問に対して、御指摘のとおりだというお話もありました。
私は、この三条六項六号に関連して労働大臣に伺っておきたいと思うんですが、これは連合の皆さんであれ、あるいは全労連の皆さんであれ、日本のあらゆる労働組合の皆さん方ほとんど同じだと私は思いますが、こういうときに事前の労使協議が前提であるのは当然のこととして、雇用や労働条件ですね、労働協約などももちろん入ってくると思いますが、それに影響する場合、その中身についての合意が必要だ、これは私は当たり前の話だと思うんですよね。
労働大臣としては、この三条六項六号「従業員の地位を不当に害するものでないこと。」これについては事前の労使協議が前提であるとともに中身についての合意が必要だ、その合意が得られていないものについては承認をするべきでないと、やはりそういう立場ではっきり物をおっしゃるべきだと私は思いますが、労働大臣の考えを伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/325
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326・甘利明
○甘利国務大臣 御指摘の三条六項六号「従業員の地位を不当に害するものでないこと。」とあるわけでありますが、要するに、事業の再構築計画が従業員の地位を不当に害するものであるかどうか。これはまず協議がちゃんと行われたかどうかということでありまして、ちゃんと行われたかということは、労使間で十分に話し合いを行ったかどうかを確認するということであります。その中身につきましては、労使間で話し合う、労使自治にかかわることでありますので、一概にそれを一くくりにはできないんだというふうに思っております。
そして、基本的に、労働者の権利、地位に関しまして、憲法二十八条そして労組法できちんと取り組みが決められているわけでありますから、そうしたものを後ろ盾といいますか、土台、基礎として真摯に話し合いが行われ、そして合意にたどり着くということを期待しているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/326
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327・吉井英勝
○吉井委員 合意を期待される、これはそうだろうと思うんです。
この、従業員の地位を不当に害するものでないということについて協議をする。協議をずっとやっていて、協議が調わないからということで解雇。あるいは、転籍というのは結局そこは解雇される形になりますが。そういうふうな解雇ということになってくると、これは明らかに従業員の地位を不当に害することになるわけですね。
そのことについて合意が得られていない、しかし解雇が行われる、計画は出されるとなれば、これは当然のことながら、労働大臣としては、そういう事業再構築計画については承認しないようにしてもらいたい、受け付けをしないようにしてもらいたいと、認定を拒否するように求めるというのが私は労働大臣としては当たり前の話じゃないかと思うんですが、大臣のお考えを聞きたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/327
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328・甘利明
○甘利国務大臣 先ほど来事務方からも答弁をさせていただいておりますが、解雇については整理解雇の四要件というのが御案内のとおりあるわけであります。その解雇の必要性、その当事者であることの必要性、あるいは手続の正当性とか、他に代替案がないことの理由とか、そういうのがあるわけでありまして、それは最高裁判例で確立をしているところであります。
そして、先ほど憲法二十八条あるいは労組法の話を引き合いに出しましたけれども、労働者側にとって不当であると思われることについて、ちゃんと交渉をする権利を持っているわけでありますし、そして、本当に不当なこととお感じになることについては、主務大臣にその旨の意思表示をされることも必要かというふうに思っておるところであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/328
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329・吉井英勝
○吉井委員 これは昨日も議論をいたしましたが、今度の産業再生法は、経営危機に陥った企業を救済するための法律じゃないんですよね。まさに、産業競争力をつけてもらおう、元気になってもらおうという企業についての法律でしょう。今大臣おっしゃった整理解雇四要件というのは、これは経営の危機に陥った場合のことなんですよ。その場合は解雇四要件での話ということになるんですが、この場合には、もともと元気になってもらおうというものになりますから、解雇四要件のすべてがクリアされた場合に解雇が認められるというような、そういう最高裁判例などでも示されているようなものとは全く違うものなんですね。
ですから、経営の危機に陥っている場合じゃないんだから、この場合については従業員の地位を不当に害するものでないということは、よく協議をする、これは当然のことだと思うんですね。二回、三回、四回、十回と繰り返したが、しかし協議が調わないということで、つまり、労働組合の皆さんが、あるいは組合のない場合はそこの代表の方が合意していない、働く皆さんは合意に至っていない、しかし事業再構築計画を出すんだということで出してきたときには、それは受け付けないようにしてもらいたい、そういうものは認定しないようにしてもらいたい、そういうふうに労働大臣としてははっきり物をおっしゃるのが普通のことじゃないかと私は思うんですが、大臣のお考えをもう一度きちんと伺っておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/329
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330・渡邊信
○渡邊(信)政府委員 この事業再構築計画は、基本的には、企業の形態をどうする、あるいはこれからの企業の運営をどうするかという、いわゆる企業の経営権に属する事柄であろうと思います。ほとんどはそういった計画であろうと思いますから、これについて計画自体労働者との合意が要るというふうなことは、なかなかこれはとりにくいと思います。
ただ、先ほど来労働大臣が御答弁を申し上げておりますように、それが労働者の労働条件に直接に影響する、例えば解雇があるというようなことは、これはまた別個労組法上等の権利に基づいて交渉が行われるということは当然だろうと思いますが、この計画の認定そのものについて合意が要るということは、現行の法体系のもとではなかなか難しいのではないかというふうに理解をしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/330
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331・吉井英勝
○吉井委員 この事業再構築というのは、競争力を強化することがねらいであって、破綻寸前の企業の経営危機を打開する手段じゃない、実はこれをきのう確認したわけです。そして、整理解雇四要件というのは経営の危機に陥った場合の話なんですよ。つまり、今度のように、競争力を強化するという企業ですから、経営危機に陥った企業とは全然違うわけですね。
ですから、そういう企業については、これははっきり企業の中で労使間の合意が得られるように協議をされるのは当然だと思うんですが、しかし、その結果として合意が得られていない、その間にリストラ計画を出してくる。それは、労働大臣としてはそんなことをやられちゃ困るんだ、労働省は労働者の暮らしや権利をきちっと守る立場の省なんだ、大臣としてはそういうことは困るんだと、私はそういうことをおっしゃるのが大臣として普通のことじゃないかと思うんですが、もう一遍大臣に伺っておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/331
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332・甘利明
○甘利国務大臣 整理解雇の四要件は経済的な苦境に陥ったときのものだからこの法律に関しては該当しないということは、それは当たらないと思うんでありますけれども。だから、この法律によって自由に解雇ができるとは私は思っておりません。いずれにいたしましても、とにかく真摯な話し合いがなされたのかどうかを、これは見届けるということがちゃんとうたってあるわけであります。
中身について、これは労使間で話し合ってもらうことでありますし、先ほど来申し上げていますように、労組法の中に、労働条件が大幅に変わる等について交渉ができるということになっているわけでありますから、それらの法体系を通じて合意が形成されるということに至ることを期待しているところであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/332
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333・吉井英勝
○吉井委員 大臣、これは昨日既に議論済みなんですが、労働省の方からも、経営危機に陥った場合が整理解雇四要件の問題だと。それは、実際に人員削減になる場合であっても、まず役員報酬の減給は当然として、自然減の不補充とかいろいろなことをやるというのは、これは経営危機に陥った場合に、そういうあらゆることを尽くして、そして四要件すべてクリアしたときにというのが、いわゆる整理解雇四要件なんです。
この場合は経営危機じゃないんです。競争力強化のための事業再構築なんですよ。そのときに労働大臣としては、それはまず、企業が元気になろう、より競争力を強化しようというときに、経営危機に陥ったときの要件を持ち出してリストラ計画、解雇だ、そういう計画を出してもらっちゃ困るんだと、労働大臣ははっきりそれをおっしゃるのが普通だと私は思うんですよ。大臣の口からは、働く皆さんの立場を守ると。これは、まだ合意に達しない段階で、大臣がおっしゃったように協議を尽くして合意に達した場合は別ですよ、合意に達していないのに解雇の計画を含む事業再構築計画案を出してきたら、それは受け付けたりそういうもので認定してもらっちゃ困るんだと、それは大臣としてはっきりおっしゃるのがあなたの立場じゃありませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/333
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334・渡邊信
○渡邊(信)政府委員 初めに、裁判例について私の方から答えさせていただきたいと思いますが、裁判例は必ずしも一般論を述べるものではありませんので、裁判でいろいろ問題になったときは、それは、企業の景気が悪い、それで解雇になったというようなケースについての判示が今まで重ねられてきたものと思いますが、労働者側にとって恣意的な解雇がなされていいという理屈はもちろんございませんから、解雇一般について、やはり今まで裁判例で積み重ねられてきた法理というのが当てはまるのではないかというふうに考えております。
今般の産業再生につきましても、十分な労使間の話し合いが行われるということは、それは当然必要なことであろうというふうに思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/334
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335・吉井英勝
○吉井委員 だから、積み重ねてきたのは、経営の危機に陥った場合の整理解雇四要件しかないんですよ。これが積み重ねてきたもので固まっているから、きのうもそう答弁されたわけだ。今度は経営の危機に陥った企業じゃなくて、競争力を強化しようという元気な企業の事業再構築計画の中で、しかし解雇を含む事業再構築計画が出されるというものですから、私は、合意が得られないままに出すべきじゃない、出してきたらそれは受け付けるべきじゃないし、認定すべきじゃないと。
労働大臣としては、私はほかの大臣のことを言っているんじゃないですよ、労働省のトップにある方だから、合意が必要だと、そのことをとことん主張されて、合意の得られていないものについては拒否をするようにと求められるのが私は普通の筋だと思うんですよ。これは大臣にちゃんと聞いておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/335
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336・甘利明
○甘利国務大臣 先ほど来、解雇の件につきましては、私からも、あるいは事務方からも答弁をさせていただきました。それは、この法律にのっとってやることだから解雇が認められる、何の制約もなしに認められるということではないというふうに思っております。
そして、今回の産業の再生を図る、企業の再生を図るための法律というのは、経営権に属することもありますし、あるいはもちろん従業員の地位に関することも入ってきているでしょう。ですから、労使が真摯に話し合うということが必要であって、そういう話し合いが持たれていなかったということについては認められないということになっているわけであります。
ただ、その中身について、真摯に話し合ったにもかかわらず、すべて一から十まで話がまとまって合意に至っていないから全部だめだということはなかなか認められないのだと思います。どうしても重大な案件については、憲法上あるいは労組法上、その次の手だてがあるわけでありますから、どうしてもこれは不当であるというものについては現行法の中で対処をしていく道があるということを申し上げているわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/336
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337・吉井英勝
○吉井委員 法律というものには両側があるのですね。この法律の場合、リストラをする側の法律なんですね。リストラされる側の問題について一番やはり本来考えてもらわなきゃいけないのは労働省であり、労働大臣だと思うのですよ。
そうしたら逆に伺っておきたいのですが、話し合いは当然尽くすとして、話し合いの合意が得られていないのに、しかしそれが強行されるということになると、歯どめがなくなりますから、そうすると、三条六項六号の場合についてきちっと合意が得られるまでは認めない、あるいは解雇を規制する、そういう法律を労働大臣としてはお考えですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/337
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338・甘利明
○甘利国務大臣 これに関して新法を云々ということは考えておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/338
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339・吉井英勝
○吉井委員 次に、三条六項の七号について伺っておきたいと思うのです。
これは中小企業、下請企業にかかわってくる問題ですが、二社以上のカルテルの場合についての話であって、一社で行われるときには、これは「関連事業者の利益を不当に害するおそれがあるものでないこと。」ということではありますが、実際にはこれでは中小企業、下請企業の利益は守られないことになるんじゃありませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/339
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340・江崎格
○江崎政府委員 下請企業の問題でございますけれども、この法案は、各企業が選択と集中を具体化すべく、生産性の低い分野から生産性の高い分野に人材などを中心とした経営資源をシフトする自助努力を支援しようというものでございまして、これが実現することによりまして国全体としての生産性の向上が図られるわけでございまして、そのことが、下請の中小企業者あるいは地域の事業者を含めて、幅広い事業者にとっての新しい成長の機会が創出されるというふうに思っております。
下請企業の問題でございますけれども、下請事業者を含む関連中小企業者に一時的に影響が及ぶことも全くないわけではないというふうに思いますけれども、そのような場合にはこの法律の第十八条の五項というのがございまして、「その新たな経済的環境への適応の円滑化に資するため必要な措置を講ずる」ということを規定しておりまして、この条文に基づきまして、創業支援策とかあるいは中小企業の施策などを活用しまして対処していきたいというふうに思っております。
それから、加えまして、通産省としまして、下請中小企業振興法などに基づきます下請中小企業対策の振興策がございますし、また、地域の産業などにつきましても各種の支援策がございまして、これらをあわせて講じますことによりまして、下請事業者に対する悪影響を及ぼすことがないように万全の対策を講じたいというふうに思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/340
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341・吉井英勝
○吉井委員 今のお話を聞いていますと本当に心配のない感じになるのですが、現実には、これは例えば北九州市の八幡に行かれたらよくわかると私は思うんですよ。八幡もそうですし、その他全国各地に企業城下町がいっぱいありますよ。そこで実際にリストラ計画を進められ、労働者の皆さんがどんと人が減ってしまう、これによって商店街の売り上げが落ちるというだけじゃなしに、下請中小企業なんかがどんどん仕事を失って寂れていった、私はそういうたくさんの地域の問題を見てまいりました。
あわせて伺っておきますが、この三条六項の中には地域経済への影響というのは全くありませんね。これはどうしてなんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/341
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342・江崎格
○江崎政府委員 地域経済の問題でございますけれども、これも先ほど申し上げましたように、この法案でねらいとしております生産性の向上というのが国全体で図られれば、そのこと自身が、地域の事業者を含めまして、新しい成長の機会がつくり出されるという効果がまずあると思っております。
それから、地域の活性化につきましては、かねてから、地域産業集積活性化対策ですとか、あるいは中心市街地活性化対策、さらには昨年成立いたしました新事業創出促進法に基づきます地域プラットホーム創設支援事業というのがございますが、こういった一連の対策を講じまして、地域に対する対策も講ずるということを考えておりますので、認定の基準に特に入れる必要はないというふうに判断したものでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/342
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343・吉井英勝
○吉井委員 私は、ここでお話を聞いていると、本当にバラ色の夢を見ているようなお話なんですが、現実はそんな甘いものじゃないですね。
それで、例えば判例の上では、営業譲渡というのはさまざまな形があっても、営業譲渡の場合の雇用継続については譲り受け企業に承継されることが多いという判例が普通なんですが、これは労働省の方もそういうことで御説明をいただいておりますが、実際にはこれがなかなかそうはいかない。
営業譲渡の際に、あるいは営業譲渡に類する形をとった際に、雇用が継続されなくてさまざまな問題が出ている一つの実例として、大阪弘容信用組合に見る問題を、これは大阪庶民信用に、本当は大阪弘容の方がずっと大きい会社なんですが、大きいところが小さいところに吸収されるという妙なやり方ですが、そこで一体何が起こっているか。
中小企業というのは、信用組合の場合ですから出資金を出して運営するわけですが、この大阪弘容信用組合に出資していた中小企業家の皆さん方は、出資金が戻ってこない。借り入れたお金は、これは本当に驚いたんですが、けさも金融再生委員会のレクによると、清算検査するときの貸出債権額二千三百億円のうち、RCC送りが二千億円だと。ほとんど全部RCC送りだということですが、その結果、RCCから取り立ては受ける、新規融資は受けられない。
その結果、今心配されているのは、これまでそういう大阪弘容なんかから融資を受けたりしてやってきた地元の中小企業の倒産、解雇で、地域経済の落ち込みが加速されるんじゃないか。今、業者の皆さんからすると三重苦、あるいは地域からするといわば四重苦ともいうべきもの、そういう問題が現に生まれてきております。
私は、こういうときに、これは大阪弘容の問題ですが、やはり今度の基準の中でなぜ地域経済への影響というものをきちっと挙げないのか。なるほど、リストラをやって個々の企業の、その企業の経営状況、収支はよくなるかもしれないけれども、しかし、地域全体が落ち込んでしまったときには別なマイナスの要因がうんと出てくると思うんですね。
中小企業庁は、この大阪弘容に見られるような問題については、この地域は中小企業白書の中でも、東の大田区、西の東大阪市というぐらいに、基盤的技術の集積地として地域指定もして、非常に日本の技術集積地として大事なところと見ているわけですね。そういうところでありながら、現にそういう問題が出てくる。
こういうときに、拓銀のときであれば借り手保護をやったわけですが、信用組合だからということで借り手保護は行われない。借り手保護がないだけじゃなしに、出資したお金まで返ってこない。本当に大変な問題が地域で起こってきております。
私は、こういう問題について、中小企業庁としては、中小企業庁というより通産大臣ですね、ぜひよく御研究いただいて、本当になぜ私がこれを挙げたかといいますと、金融ビッグバンの中で、信用組合、信用金庫など地域金融を担ってきたところが今どんどんつぶれていっているというのが全国的な状況です。東京が約半分にという動きにあることは大臣もよく御存じのところと思います。
そういうふうな中で、地域に密着して、なるほど物的担保というところでは担保力はないけれども、しかし信用金庫や組合の営業マンの方がずっと毎日歩いていらっしゃって、親方の腕をよく知っている。その人の技術能力や、あるいは独創性とか、ベンチャーの議論がけさほど来ありましたけれども、まさにそういうところに着目して、仮にガレージ工場でろくに建物はなくても、しかしそこに着目をして融資をしてきたからこそ中小企業が支えられてきたと思うんですよ。今それが大変なことになってきている。
私は、こういう状況は放置できないということで、ぜひこれは通産大臣によく御研究いただいて、こうした大阪弘容信用組合などに見られるような、全国で今これが広がろうとしているときですから、よく研究してきちっと、借り手保護が崩されるような、借り手が大変な思いをするような、そういうことのないようにまず号令をかけて取り組んでいただきたいと思うんですが。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/343
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344・与謝野馨
○与謝野国務大臣 特に御指摘にありました大阪府における信用組合再編に伴う地元中小企業の資金環境への影響につきましては、金融再生委員会、大蔵省、地元自治体において所要の対応が図られるものと理解をしております。
通産省としましても、そうした関係当局の対応及び当該地域の実情をよく見きわめつつ、信用保証制度の的確な運用等を通じ、中小企業の資金繰り対策に万全を期してまいりたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/344
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345・吉井英勝
○吉井委員 それで、私は、ぜひ大臣に本当によく御研究いただいて取り組んでいただきたいということとともに、もう一つの問題は、実はせんだって参議院の方でも議論がありまして、柳沢大臣からも宮澤大蔵大臣からも、これはいろいろ研究しなきゃいけない分野があるということで、今御研究もいただいております。
一つの問題は、こういう、金融機関と金融機関がいろいろな問題があって吸収合併なりなんなりというときに、金融再生委員会の方からは、リストラ計画を出しなさい、こういうことになるわけです。それからまた、例えば健全銀行であっても、早期健全化法に基づく公的資金投入を申請すると、まず再生委員会の承認を得なきゃいけませんから、承認を得て、富士銀行なんかも一兆円の公的資金投入を受けたわけですが、そのときには必ず合理化計画は出さなきゃいけないことになるわけですね。
その中では人員削減が明記されるわけです。富士銀行の例で挙げますと、三年間で千七百人、五年間で二千人を削減するというリストラ計画が明記されております。子会社の安田信託では、現在の四千七百十六人体制から二千人体制、その後さらに五百人削減する、こういうふうなリストラ計画を出さないと公的資金の投入が受けられない。
つまり、今度の産業再生法もそうなんですが、その他の金融機関の関係の法律も、国に対して事業再構築計画なりあるいは合理化計画なりを出す。その中では必ず、何名リストラしなさい、それを出してこないと支援しませんよと。つまり、別な法律によって労働法制には明らかに違反するようなことが今進んでいこうとしている。これは私、けさ連合の野口さんにお聞きして、野口さんの方もこれは大問題だということを言っておられましたが、まさにそういうふうな問題が今出てきているときなんですね。それだけに、今度の三条六項六号の問題についても、私は、労働法制が別の法律によって崩されていく、こういうことは絶対あっちゃならぬと思うんです。
最後に、この金融の問題、もう時間がなくなりましたから、本当はこれで大分時間をかけてやりたかったんですが、もう終わりにして締めくくっていきたいと思います。
私は、こういうふうな問題について、これはまさに今度出てきた産業再生法の方で、別な法律によって解雇などが当たり前のように進められる。解雇を盛り込んだ計画を出されてきたときに、それが通ってしまう。むしろその計画を出すことによってリストラが支援される。そういうことになってしまったのでは、労働省としては、本当に労働者の暮らしや権利を守る、その立場が貫けないんだ、そういうことは困るんだということを、これはこの問題についてもそうだし、これからのいろいろな法律を組み立てていく上でも、大体ほかの法律で労働省分野が侵されたりすると本当に大変ですから、私は労働大臣にこの点ではきちんとした対応をして臨んでいただきたいと思うわけですが、これは大臣の方に伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/345
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346・甘利明
○甘利国務大臣 先ほどから、この法律が通れば解雇を自由自在にできるような印象を与えるようなお話でありますけれども、整理解雇四要件というのは、昭和五十四年の東京高裁判決で具体的な四項目が示されておりますけれども、一般的に、解雇に対して解雇権の乱用は禁止されるということについては、既にそれ以前に昭和五十年の最高裁判決で出ているわけでありますね。合理的な理由を欠く解雇はいかぬ、社会通念上相当と認められる理由がないものはだめということが前提としてあるわけでありますから、先生の御主張のようにこの法律が通れば解雇権の乱用ができるなんというのは、全くないわけでございます。
この法律に関して労働大臣と通産大臣が連携をとるという部分は多々あるわけでありますから、この法律によって懸念されるような不安が極力ないように、いろいろと連絡をとり合っていきたいというふうに思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/346
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347・澤田陽太郎
○澤田政府委員 政府委員として、大臣の答弁以外について若干敷衍させていただきたいと思います。
今先生御指摘の点は、本法案の第三条第六項第六号に絡んでのお話でございますが、それにつきましては、大臣が今答弁されたとおりであります。
もう少し広く考えますと、先ほど島津先生からも、企業組織の変更、営業譲渡を含め、商法上、企業分割というものも今議論されておりますが、こういうものも広く考えた場合に、そうした企業変更等に伴う労働関係上の問題につきましては、現行法では、法令上明文の規定のあるもの、あるいは判例等において解釈が確立しているものがございます。それにつきましてはこれまで御答弁申し上げたようなことで個々具体的に対応し、適切な処理がなされていると考えておりますが、例えば企業分割等につきましては新しい概念でございまして、こうした場合に労働関係上の問題にどう対応するかという点は、新たな課題が幾つかあると私ども認識しております。
そうした場合に、適切な労働者保護を図ることが非常に重要であるという認識を持っておりますので、そうした認識のもとでどういうような必要な対応があるかということについては十分検討してまいりたい、こう考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/347
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348・吉井英勝
○吉井委員 私、これで終わりたいと思いますが、大阪弘容の場合、現に大量の解雇が今進みつつあるときなんですよ、もう日にちは決まっておりますけれども。ですから、労働大臣おっしゃったように、建前がそのとおりでうまくいっておるならば私は申し上げないんですよ。しかし、現実には日本の各地でたくさんの労働者が不当に解雇されている、あるいはされようとしている。その現実をしっかり見ていただいて、とりわけ、せっかくおっしゃったんですから、大阪弘容の問題については少なくともそういう不当な解雇をさせないということで、労働大臣としてきちっとよく研究し対応していただきたい。
時間が参りましたので、そのことを申し上げまして、質問を終わりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/348
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349・古賀正浩
○古賀委員長 前島秀行君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/349
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350・前島秀行
○前島委員 時間もたってきましたし、また、この法案の重要性も非常にありますので、最後にひとつ端的な質問をし、また最終的に確認したい点も多々ありますので、その辺のところを含めてひとつ御答弁をお願いしたい、こういうふうに思っています。
まず第一に、この種の構造政策あるいは構造改革の問題への対応というのは、従来は、業界単位といいましょうか、そういう単位で対応してきた。古くは繊維だとか石炭等々があったんだろうと思いますが、この業界単位、そこを中心とした対応から、最近はいわゆる企業単位という形になってきた。
過日この委員会でも議論し成立した中小企業革新支援法も、従来は業界単位でもってやってきたものを、今度は企業単位で、いわばばらけてという形でもってなっているわけですね。この今度の法案も、いわゆる企業単位を中心にして構造変革をさせよう、企業の再構築をしよう、こういうことなんだろうと思うのでありますけれども、ここの手法の変化といいましょうか、ある意味だったら基本的な対応の変化によって、さまざまな事態が起こってくるのではないだろうかな、私はこういうふうに思います。
とりわけ、強いところが強い者を吸収していくだとか、あるいは弱い者が弱い形の中で切り捨てられていくという事態が、従来は業界、産業界全体でもって対処していこうという動きに対して、個別の企業、個別単位でもってこの構造変化等々に対応していくと、結果的に強い者が強い者を結集していく、弱い者が切り捨てられていくという事態が起こりやすい。これを業界、産業界全体でいくと、全体のバランスというものの中でさまざまな対応がされてきますから、雇用の側から見ても、一定の条件というものを整備される中でこの構造変化というものが進められていくだろう、私はこういうふうに思っています。
今回、中小企業支援法においても今度の法案においても、従来の、産業界全体を見ながら、業界全体を見ながら雇用を含めたバランスの中でこういう調整をしていこうということから、企業単位、個別企業の判断、条件でやっていくということに対する不安というのは、雇用の側から見ると非常に伴ってくる、そのことがまたさまざまな社会現象にはね返ってくる心配があるのではないだろうか、私はこういう思いがしてならないわけであります。
したがいまして、業界単位から個別企業単位にこの種の対応を変えてきたことのねらいみたいなもの、あるいはそこで何を求めているのか、あるいはそういう方法の対応によって生ずるさまざまな課題、配慮すべき点というものが当然出てくるだろうと私たちは認識しているわけでありますが、そういうことに対する通産大臣の認識をまずお聞きしておきたい、こういうふうに思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/350
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351・与謝野馨
○与謝野国務大臣 お答えします。
この法案は、経営資源をより生産性の高い分野に移動させることにより、我が国経済全体の生産性の向上を図るものでございます。したがいまして、業種の別にかかわらず、事業の生産性の向上を図る取り組みを円滑化するものであります。
事業者が事業再構築により経営資源を有効活用する中で、業種の枠を超えた取り組みをすることも考えられるところであり、個別事業者に着目した本法案は、このような実態にも適合するものであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/351
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352・前島秀行
○前島委員 今までの対応は、業種、業界で調整し合うということですね。ここに雇用の側面から見ても非常に意味があった。今度は、企業別に、あるいは業種を超えてこの種の対応をするとなると、いわゆる雇用の側面から見ても、あるいは公正な競争という側面から見ても、いろいろな課題が出てくるのではないだろうか。
これに対する配慮というものは当然あってしかるべきでありますし、それに対する手だてみたいなものも当然なさるべきものだろうと私は思っておりますけれども、そういう意味での配慮といいましょうか、観点というのは非常に大事だろうと思います。後でもって労働省側の対応も当然聞きたいと思いますけれども、そういう視点が今度の法案の中に、あるいはこの質疑を通じての中に全然ない。
要するに、強いところが、あるいは国際競争力を強めるために再構築するんだ、そのことだけが目的になって、それに伴うさまざまな課題というのは後になってきている。いわゆる企業中心の方向に流れていくという心配が私たちは募るわけであります。そういう面でのさまざまな配慮というものを私たちは進める側に求めたい、こういうふうに思うんですけれども、大臣、その認識は間違っていますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/352
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353・与謝野馨
○与謝野国務大臣 私は、この法案を提出するに当たりまして、やはり働く方々の立場というものを十分に考慮しなければなりませんし、それに対して最大限の配慮をするというのは当然のことであろうと思っております。
これは、欧米先進国型のいわゆるレイオフとか、そういう考え方には基づいておりませんで、私としては、例えば日本の終身雇用というような制度は大変重要な役割を果たしてまいりましたし、そういう中での作業でございますから、ある分野からある企業が撤退をしたというような場合にも、その労働力を会社の外に出すのではなく、やはり第一に考えるべきことは、内部で、また別の分野で吸収するということを考えることが大事であるというふうに思っております。
そういう意味では、雇用ということには政府を挙げて最大限の努力をしていくということは、この法案の背景には当然なければならないことだと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/353
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354・前島秀行
○前島委員 労働大臣に今の問題で認識を伺いたいんですけれども、いわゆる業界単位で物事に対処してきた。さまざまな配慮というものがお互いにあって、いわば言葉で言えばソフトランディング的な対応もあるだろうし、あるいは全体的にどう調整していくかという意味での相互の協力の体制というのがあった。そのことがまた、雇用の側からも一定の安心感みたいなものもあったことも事実だろうと思うんですね。それが、こういう個別対応になってきた。そこを中心にして構造調整が進むということによる新たな事態が生ずるという認識は、労働大臣、受けとめていらっしゃいますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/354
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355・甘利明
○甘利国務大臣 産業競争力を強化するということは、最終的に結果としては雇用の受け皿になると思います。ほっておくよりも企業が元気になる、あるいは事業部が分社化してそれが大きくなる、そうすると雇用吸収力が起こる。あるいは、今回の法律に関しましても、新規事業についての措置もあるようでありますし、最終的には雇用の受け皿になると思います。産業の力をつけていく、新規事業を生んでいくということはその抜本策であります。
ただ、そうしていく過程に、雇用への影響、どう工夫してもゼロではないわけでありますから、そこの短期的な問題として雇用への影響を最小限にしていかなければならないと思うわけであります。
この産業再生法と先般成立をさせていただきました雇用対策の予算には、その両案が浮上してきた時系列的にいいますと、若干のタイムラグがございます。日本の経済活力をつけるために産業再生は必須の課題である。しかし、進めていくうちに、これは一時的には雇用に影響が出るのではないか。そうすると、その短期的な受け皿をしなければならないということに配慮をして、若干のタイムラグがあって、緊急雇用対策というのが浮上してきたという経緯があるわけであります。
もちろん、緊急に雇用の機会をつくる。これは労働政策の中でも、初めて雇用機会をつくるということを重点的に補正を組ませていただいたわけでありますが、そこの点は十分に配慮をして、産業の再生とそれから雇用の機会をつくるということ、両々相まって、短期的にできるだけ痛みを少なく和らげて、そして抜本解決策に資するというようなことへつなげていくという配慮がしてあるこの二つの仕組みであるというふうに理解はいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/355
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356・前島秀行
○前島委員 これからのさまざまな対応、あるいは特に雇用面からの対策を考えていく上で、今の雇用を取り巻く状況といいましょうか、とりわけこれからさまざまな形で起こり得るであろう雇用不安あるいは失業という問題に対応していくために、私たちの今日的な労働条件あるいは労働市場を取り巻く状況をどういう認識としてとらえるかということが今後の対策の上で非常に重要であろう、私はこういうふうに思います。
そういう面で労働大臣に伺いたいんですが、一つは、今、失業率四・六%、〇・二ほど下がって多少いい方向だ、こう言うけれども、中身を見ると、そんなに安心するものではないということは間違いないわけですね。そういう状況の中で、さらに失業というものがふえていくということはだれしも一致した予測であろうと思います。
片や、今度の法案等々の中で産業の再生力をつけていく、再構築をしていく、さまざまな対応が企業の強化あるいは経済を活性化する上で求められている。それを、法律をもって、さまざまな形でしやすいように支援しようではないかというのが今回の法案ですね。そうすると、片や経済力あるいは活性化を求めるための手だてと、そこに出てくる、そこから生ずる雇用不安を吸収する制度との間に基本的に今ギャップが存在するのかしないのかという、ここの認識が非常に大事だろうと私は思っているわけであります。
今日まで、労働状況を取り巻いているさまざまな制度が、この短期間の中で、産業再生という形の中で、産業構造の再構築という中で、非常に速いテンポでもってそこが改革されていく、さまざまな制度が崩れていく。しかし、それに生ずる雇用の不安だとか失業というものを吸収する手だてというのがまだまだ整っていない、整備されていない。このギャップが存在するのかしないのかという認識。そして、この法案をやることによってそのギャップがさらに拡大すると見るか見ないかによって、これからの対応ということは非常に違ってくるだろうというふうに私は基本的に思っているわけであります。
そこで私は、経済の活性化あるいは競争力をつけるために、この法案等々に見られるような構造変革に対応するだけの、そこから生ずる雇用不安を解消するための社会的なさまざまなシステムというのはまだ整備されていない、こういう認識に立つわけでありますけれども、労働大臣、その辺のところの認識について。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/356
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357・甘利明
○甘利国務大臣 正確にお答えできているかどうか自信がありませんが、雇用の場がきちんと用意をされて、準備万端整って、そして産業再生に向けてのメスが入る。その結果、多少なりとも雇用に対する不安が起きる、それを完璧に吸収をする。そういう手順で、全くタイムラグがなく、ギャップがなくできるかと言われると、それはなかなかそうはいかない部分はあろうかと思います。
ただ、雇用の場をつくるというのはそんなに簡単なことではありませんで、日本が計画経済の国でありますならば、あるいは日本にある企業が全部国営企業であるならば、具体的にこの企業を再生させていくために、一時的にこの企業に、では来年は何人多く採るように割り振ろうというふうなことができるかもしれませんけれども、自由主義、市場経済でありますから、民間経済が日本の経済社会を担っていくわけでありますから、民間経済が活力を持って雇用の受け皿になるように周辺整備は当然やっていくわけであります、やっているわけであります。
ただし、これは間接話法でありますから、直接話法ではありませんから、タイムラグなしに完璧に一人の落ちこぼれもなくというぐあいにはいかないのは、正直受けとめなければならないというふうに思っております。ただし、各種施策を通じて、できるだけショックが少ないように、あるいはタイムラグが短いようには努力をしているつもりであります。
日本の労働雇用政策が、言ってみれば、今までの一企業に固定をする政策から、先ほど通産大臣からもお話がありましたように、経営資源を生産性の低いところから生産性の高いところに移していく、あるいは、成熟産業、もう手いっぱいになった産業から、成長産業、伸び行く産業に経営資源を移していく、移動政策にかなり踏み込んでいるわけであります。経営資源というのは資本と労働でありますから、その資本と労働が、より生産性の高いところ、より発展可能性のあるところに適宜適切に移動する政策も、従来の固定政策と両々相まって初めて、経済社会が活力を持って、そして安定的に推移をしていくのであろうと思います。
タイムラグをゼロに、あるいは衝撃波をゼロにということが理想でありますけれども、それに近づくように精いっぱいやらせていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/357
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358・前島秀行
○前島委員 通産大臣にも、これからこの法律に基づいて推進していく上で、今私が労働大臣に聞いたように、やはり産業構造を変えていく、あるいは競争力をつけていくさまざまな手だてで生ずる雇用の不安、失業というものを十分吸収するだけの仕組み、これが、セーフティーネットを含めてさまざまな日本的な制度、雇用を取り巻く制度だけではないものが変化していかない限り、このスピードとが合わない限りは、そこに必ず労働者の側から見れば不安が生ずることは間違いないだろう、こういうふうに私は思っているわけであります。
そういう面で、そこの産業再生あるいは経済競争力を強めるための構造変革と、セーフティーネットを含めた雇用を吸収するだけの仕組みというものが変わっていない、追いついていない。このギャップの存在は、通産大臣としてどう認識しますか、認めますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/358
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359・与謝野馨
○与謝野国務大臣 自分自身、本件をわかりやすくするために、自分で次のように本件を理解しております。
去年からやってまいりました一連の小渕内閣の経済政策は、何といっても財政支出、そして所得税、法人税の減税、あるいは住宅関連税制の改正といういわば需要を刺激するような政策をとってまいりましたけれども、やはり将来の日本の経済を本当に力強いものにする、世界のどこに出しても恥ずかしくないものにするためには、競争力と言ってもいいですし生産性と言ってもいいのですが、そういう面で世界のどこの国にも劣らないような体質の経済をつくる必要がある。
しかし、そのために乗り越えなければならないのは何といっても過去の清算でございまして、過去の遺物を引きずったまま将来の展望があるかといえば、やはり過去の清算をきちんとするということが一つ。それからもう一つ大事なのは、やはり雇用にも直接かかわるわけですが、将来への展望を大きく開いていくということでございます。
ただ、この一連の作業をやってまいります過程で、雇用不安の問題が出てくる、これは当然の懸念でございまして、それに対して抜かりなく万全の体制で臨む。これは、経営者側にもそういうことを要望いたしたいと思いますし、政府が用意をいたしますセーフティーネット等を含めまして、雇用対策には万全を期すというのがこの法案を出した背景の一つでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/359
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360・前島秀行
○前島委員 私はぜひ、この法案に基づいてこれを具体的に実施していけば雇用不安が生ずるのは当然でありまして、そしてそれの受け皿としてのさまざまなセーフティーネットを初めとする制度、仕組みというのはまだ対応し切れていない、ここの認識はちゃんと持ってほしい。そして、その認識の中で、片方で産業の再生、競争力をつけることも必要だ。しかし、そのギャップを埋めながらどうやっていくか、こういうことの視点というのを、進める側の通産大臣にも私はぜひ持ってほしいということなんですね。
同時に今度は労働大臣の側から見れば、このギャップが生じない、今大臣も言われましたように雇用なんというのはそう簡単になかなかできるものでもないし、また役所的にいえば一役所だけでもってできるものじゃないし、政府全体でさまざまやらないと、本当に雇用不安を解消していく、さらに進むであろうこの失業をカバーしていくということは単純ではないな。
だとするなら、進める側にとっても、あるいはその対応を考えざるを得ない労働大臣の側も、そこの双方の配慮をお互いにやり合っていかないと社会的混乱ということが生ずるんだ。この認識を、通産大臣の側、進める側も、それから雇用という立場に立つ労働省、労働大臣の側も、共通な認識をぜひ持ってもらいたい。私は、この法案が成立して進む過程に当たっては、ぜひそこを共通の認識として持ってほしい、こういうふうに思っているわけなので、その点は恐らくこの場で確認できることだろう、こういうふうに思います。
そこで、雇用、これから起こるであろうリストラを含めて、雇用が十分に、それの受け皿として産業を起こすんだなんということは、私はそう簡単ではないと思うので、当面緊急に、労働者側、労働大臣の側から見ると、セーフティーネットの整備というものに政治の側としては責任があるのではないだろうか。後でさまざまな緊急の雇用対策について伺いますけれども、やはり労働省の側、労働大臣の側からは、政治の責任におけるセーフティーネットの整備ということは声を大にして叫ぶべきであるし、またそれを具体的にやっていくべき立場にあるのではないだろうか。
こういう認識が私は必要だろうというふうに思っているんですが、そういう認識に立っている、こういうふうに確認してよろしゅうございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/360
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361・甘利明
○甘利国務大臣 おっしゃるように、一つの政策、それが全体としてはいい政策であっても短期的にいろいろな影響が出ることがありますから、それから生ずる不安を解消するために対処をするというのは当然のことでありまして、そういう認識を持って、雇用不安を短期的にもそして長期的にも解消するための施策を全力を挙げてとっていくという心構えでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/361
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362・前島秀行
○前島委員 二、三具体的な雇用対策を伺いたいと思うのでありますけれども、補正予算で五千億立てた、これはこれとしていいのでありますけれども、これで十分対応できるものじゃないと言わざるを得ないことは当然であります。
そこで私は、具体的に雇用対策として充実してほしいものとして、一つは未払い賃金立てかえ制度の充実の問題、上限をもっとアップさせる。今私たちが求めているのは、二百万程度の上限を上げるべきではないかという点と、もう一つは内職者等に対する見舞金制度の創設ということです。
この法案等々に連動して新たに緊急に起こり得るだろう雇用不安、失業等々の対応から、この未払い賃金立てかえ制度の充実、上限をアップするということと、今非常にふえている内職者等々の皆さんの緊急な対応としてこの制度の確立ということを私たちは常に要求しているんですが、この二点の対策について、労働大臣、見解を承りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/362
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363・甘利明
○甘利国務大臣 御指摘の点、未払い賃金立てかえ払い制度、これは言ってみればセーフティーネットの一つでありますし、先般、一部対処をしたところであります。
具体的に申し上げますと、立てかえ払いの対象となります未払い賃金総額の限度額についてでありますけれども、これは賃金額の上昇等を考慮いたしまして改定をいたしまして、昨年度からは、三十歳以上四十五歳未満の労働者につきましては百二十万円から百三十万円に、それから四十五歳以上の労働者につきましては百五十万円から百七十万円に、それぞれ引き上げたところであります。今後とも、制度の趣旨に即しまして、上限額の適時適切な引き上げ等を行いますほか、制度の適正な運営に努めてまいりたいというふうに思っております。
もう一点の、内職に従事をされる方々に工賃の不払いが生じた場合に云々ということでありますけれども、国民全体の負担に基づく金銭給付を行うことにつきましては、請負形態にあるその他の方々、つまり内職者についても請負形態の一つでありますが、それ以外の事業者も同様な形態があるわけでありまして、それらの方々であるとかあるいは自営業者の方々とのバランスを欠くという観点から、こちらの方はちょっと難しいのではないかというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/363
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364・前島秀行
○前島委員 未払い制度の問題も、やはりもっと短時間で上げていくという努力が今の状況の中で求められている。それから、内職者等々の問題についても、やはり地域の実態というのはここのウエートが非常に大きいわけでありますし、また、先ほど言いましたように雇用の状況の変化の中ではこの部分がふえていましたから、多少雇用状況が変化したというのは統計的に出されているわけでありまして、この辺の充実ということは私はぜひ前向きに検討をお願いしておきたい、こういうふうに思います。
それから、二つ目の制度として、インターンシップ制度の問題です。
これは一部実施されているわけでありますけれども、制度としてはまだまだ不十分だろうし、あるいは今の雇用の実態、求人倍率等々の実態、あるいは大学を中心とした今の就職状況から見ると、やはりインターンシップ制度の充実というのは緊急の課題として考えていい施策ではないか、こういうふうに思っていますけれども、これに対する考え方をお聞かせください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/364
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365・甘利明
○甘利国務大臣 新卒者の雇用がどれくらい継続しているか、つまり卒業したときに就職した企業にどれくらい定着しているかという比率に関して、七・五・三という言葉がございまして、大卒者の三割が三年以内にやめてしまう、それから高卒者の五割が三年以内にやめる、中卒者の七割が三年以内に最初に就職した先をやめてしまうということが言われております。
これはもちろん、自分が思い描いていた就職と現場との乖離、ミスマッチが多くの理由であるわけでありますが、実体験をいかにしてもらって働くということを実感として意識し体験をしてもらうか、そのことで本当に自分がやりたいことにつけるという意味でミスマッチをなくすということでありますから、このインターンシップ制度というのは、御指摘のように大変重要な制度だと思います。
大学生につきましては十年度から始めておりまして、もうその対象校、受け入れ先もかなり広がっているところでありますし、本年度から高校生につきましても試行的にスタートさせたところであります。この制度につきましては、御指摘のようにいろいろな効果を期待しているところでありますから、引き続き充実して取り組めるようにしていきたいというふうに思っております。
それから、今御指摘の有給のインターンシップ制度の導入についてでありますけれども、未就職の卒業者の多くは安定した雇用を望んでいることでありますから、この点は慎重に対処をすべきであるというふうに思っております。
また、学卒の未就職者、これがことしの四月一日時点で八%、前年度に比べますと一・三ポイント悪化をいたしております。そこで、今期から学卒の未就職者に関しましては学生就職センターに登録制度というのを設けた次第でございまして、登録をいただいた未就職者の方々に適宜適切に情報を職安から流していく、あるいは就職面接会を設定し御案内をしていくというようなことに取り組んでいるわけであります。
さらに、同じように今期からは学卒未就職者に対する職業訓練というようなものも始めさせていただきました。三カ月程度の短いものでありますけれども、従来は雇用保険の対象者に対して行ってきたわけでありますけれども、まだ職についた経験がない方に対しましても、新しい制度として前向きに取り組むということでスタートしたところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/365
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366・前島秀行
○前島委員 今の雇用状況、就職状況あるいは求人状況から見ると、やはり私は、緊急の対応としてこのインターンシップの充実、有給でしかも一年程度の充実ということを、ぜひここは労働省の対策として考えていただきたいということを重ねてお願いしておきたいと思います。
それから、ワークシェアリングについての考え方をちょっと伺いたいと思っています。
遠回りのようでも、失業を生じさせない、あるいは失業をつくらないためには不可欠の要素となっているのが、労働時間の短縮によるワークシェアリング効果を通じた雇用の創出、こういうことだ。このことが非常に大切だということを私たちは言い続けてきているわけであります。
雇用不安の克服こそが景気回復の何よりの良薬になり得るとの考えに基づくなら、この手法、ワークシェアリングの充実によって雇用をつくっていくということは、この産業再生にも当然活用すべき一つの対策だろう、こういうふうに私は思っているわけであります。不況産業の抱えている荷物、悪く言えば、バブル時代の負の遺産の処理に、後追い処理的な意味で税制で対応するということよりも、ワークシェアリング等々の促進で前向きに、先を見通した中長期的な対策に対する税制上の配慮ということも非常に大切な側面ではないだろうか、私はこういうふうに思っています。
本日、この法案に関連する、大蔵委員会で、我が党の横光議員が大蔵大臣に向かって、ワークシェアリングの対応についてどうか、こういうふうに質問したら、大蔵大臣は非常に前向きに答弁されているわけであります。ぜひ検討してみたい、こういうふうに言っているわけでありまして、大蔵がそういう面で、大臣が前向きに受けとめてみたい、検討してみたい、こういうふうに言っているわけでありますから、労働省の側もこのことを積極的に受けとめて、来年度の税制改正の中で、ワークシェアリングを具体的に可能にするための税制改革を要求していくべきではないだろうか、こういうふうに私は思っています。
一般論としては、これは労使の現場問題だ、こういうふうに言うけれども、私は、労働者側というのはこのごろは積極的に受けとめる条件というのもあるわけでありまして、そこを制度的に労働省が税制改革の中でもってつくり出していく、考え出していくということが重なっていくならば、ワークシェアリングの充実、ワークシェアリングによる新たな雇用の創出ということは非常に見通しの立ってくる一つの方法ではないだろうか、こういうふうに思っているわけであります。
労働大臣、ワークシェアリングを通じての雇用創出という考え方について、見解を伺っておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/366
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367・甘利明
○甘利国務大臣 ワークシェアリングについては、いろいろな委員から御指摘を今までもいただいてきました。時短を進める上、あるいは失業率を下げる上では確かに有用であると思いますけれども、所得が減るわけでありますから、それぞれ雇用者の生活設計にかかわってくることであります。ですから、私の方からこれを何らの合意もない中で進めなさいと言うのは、ちょっと行き過ぎな行為かなというふうに思っております。
よく御指摘をされますいわゆるサービス残業というものを私ども確認したならば、それは違法な行為でありますから是正をさせるわけでありまして、その時間もどうしても労働力が必要であるならば、それは新たな雇用を起こしなさいということになるわけでありますが、いわゆる残業を全部なくして、その分人を雇えということになりますと、その残業分の所得がその労働者にとっては減るわけでありますから、それは、先生も前段に申されましたけれども、やはり労使での合意ということが前提でありまして、合意の上に進めることについては何ら私は異議がありませんけれども、その労使の合意なしに、行政の方から所得が減る行為に関して進めろと言うことについては、ちょっと難しいんではないかというふうに思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/367
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368・前島秀行
○前島委員 私は、労働者の側には、このワークシェアリングの導入ということについては非常に前向きに来ている、こういうふうに受けとめているわけであります。また、それを税制上の側面からフォローすることによって受け入れやすいような状況をつくっていく、大蔵大臣は、そこのところは前向きに検討してみたい、こう言うんでありますから、労働大臣の方が何でそこのところを、ある意味だったらつらまえて積極的にやっていかないかということになるのでありまして、来年度の税制改正の一つの目玉として、労働省は、このワークシェアリングの充実、導入に伴う税制改正の点ということは要求してしかるべきだろう、こういうふうに私は思います。ぜひこの辺のところは前向きに検討してもらいたいということはお願いをしておきたい、私はこういうふうに思います。
それから、最後になりましたので、二、三点、雇用問題に絡んで確認をしておきたい。私がこの法案の衆議院における質疑の最後になりますもので、雇用に絡む問題でどうしても二、三点、通産大臣あるいは労働大臣の認識をお願いしたい、こういうふうに思うんです。
いわゆる産業再構築を進める上での労使の協議と合意という、この問題なんですよ。この産業再構築の一連の作業に当たって、すべて労使の協議と合意を必要とするとは私は言いません。しかし、三条六項六号の「従業員の地位を不当に害するもの」の中で、雇用契約の維持、あるいは労働条件の維持、あるいは労働協約の継続というものは、やはり最低の要件として、労使の協議、合意というものがなければだめなんだよというところぐらいは、私はあってしかるべき最低の条件ではないだろうかな、要件ではないだろうかな。
要するに、企業分割だとか企業の分離だとか出てくるわけでありまして、そこにかかわっている労働者が、いわゆる自動的にその辺のところは保証されるというものがない限り、雇用不安というものはつきまとうわけでありまして、事業再構築を法律でしやすいように支援しようという以上は、雇用の側に向かって、この最低の条件は保証しますよ、担保しますよ、このことの合意なければ実行させませんよ、具体的には認証計画の中で承認しませんよというところは、何らかの形でもって明確にしてもらわないと、私は、大変な事態、労働者側から見れば不安というものは永久に解決しないものだろう、こういうふうに思っているんです。
まずその辺のところ、通産大臣、認識はどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/368
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369・与謝野馨
○与謝野国務大臣 今我々が考えておりますのは、やはり雇用に関しては政府が最大限の配慮を払いながら物事を進めていく必要があるということでございます。これは、法律には、働く方々の理解と協力を得て物事を進めるということになっておりますが、やはりこれは精神規定だけではなく実際の問題として、十分な理解と協力を得ながら物事を進めていくということが必要ですし、また、経営者側にぜひこの席から御要望申し上げたいのは、事業再構築を行う場合には、やはり雇用不安を起こさないような事業再構築をまず目指すべきであって、先進諸国で行われているようないわゆるレイオフ的な物事では日本の雇用問題は解決しないと私は前から思っております。
そういう意味では、先生の御趣旨はよくわかりましたし、私どもとしては、この法案が国会で仮に御承認をいただければ、そういう点には十分配慮をしながら物事を進めていかなければならないと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/369
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370・前島秀行
○前島委員 大臣、大臣の側から見れば、雇用契約の維持、労働条件の維持、労働協約の継続というのは必ず担保される、担保されなければ困るんだ、こういう認識だというふうに受けとめてよろしゅうございますね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/370
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371・甘利明
○甘利国務大臣 この法律の一条に、雇用の安定等に配慮をせよということがまず書いてあるわけでありまして、そして、労使で十分に、真摯に話し合いを持たなければいけないということもきちっと規定をされているわけであります。そして、労働省と通産省の話し合いの中で、真摯にちゃんと労使で話し合うということについては、大臣告示でも盛り込むように話はできておりますから、両省で最大の配慮を払っていきたいというふうに思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/371
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372・前島秀行
○前島委員 この法案の具体的な執行に当たっては、ぜひ労働省の側がその点を強く求めてほしいということをお願いしておきたいと思います。
最後に、大臣に要望をいたします。
十八条に、国の責任、都道府県の責任等々がうたわれているわけでもあります。この法案の成立と執行に当たってのさまざまな不安を、やはり国は政治の責任においてちゃんとやっていくんだということは、単に法案でうたっているだけで終わらないように、ぜひ執行する側の通産大臣の方にそのことを強く求めまして、私の質問を終わりたいと思います。
ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/372
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373・古賀正浩
○古賀委員長 これにて両案に対する質疑は終局いたしました。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/373
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374・古賀正浩
○古賀委員長 この際、中野寛成君外四名提出、起業家支援のための新事業創出促進法等の一部を改正する法律案について、国会法第五十七条の三の規定により、内閣の意見を聴取いたします。与謝野通商産業大臣。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/374
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375・与謝野馨
○与謝野国務大臣 起業家支援のための新事業創出促進法等の一部を改正する法律案につきまして、政府といたしましては反対であります。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/375
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376・古賀正浩
○古賀委員長 これより両案を一括して討論に入ります。
討論の申し出がありますので、順次これを許します。渡辺周君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/376
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377・渡辺周
○渡辺(周)委員 私は、民主党を代表して、ただいま議題となっております民主党提出の起業家支援のための新事業創出促進法等の一部を改正する法律案に賛成、政府提出の産業活力再生特別措置法案に反対の立場から討論を行います。
景気はやや改善の動きを見せておりますが、本物の景気回復と言えるものではなく、雇用情勢も厳しく、好転する兆しは見えておりません。
民主党が、第一段階として、起業家支援のためのパッケージ法案を提出したことは時宜にかなったものであり、新しい雇用の受け皿をつくり、日本経済を本格的な回復軌道に乗せるためにも、早期に成立させるべきものと考えます。
第一の柱である女性起業家支援策は、資金調達などで不利な状況にある女性に機会均等を保障し、政府調達で女性中心の企業の受注機会を増大させるという画期的な内容を盛り込んでおります。女性の社会進出、女性の感性を生かしたビジネスの発展を促し、日本経済の活性化につながるものと確信をしております。
第二の柱である本格的なSBIR制度の確立は、ハイテク技術を持った中小企業を育成し、科学技術立国の建設を促進するものであります。
また、第三の柱である国立大学等の教官の民間企業等の役員兼務解禁は、大学で開発された技術を新規事業、ベンチャー企業の発展に結びつけるものであります。
第四の柱であるベンチャー支援税制の抜本的強化は、起業家やベンチャー企業に勤める人の限りない報酬の獲得に道を開き、投資家のリスク軽減に資するものであり、大きな経済効果があると考えます。
続きまして、政府提出の産業活力再生特別措置法案に対する反対理由を述べます。
国の委託研究開発に係る特許権の扱いの特例、創業及び中小企業者支援策などについては、我々の提言に沿うものであり、妥当なものと評価します。
しかし、事業再構築計画を事業者に策定させ、主務大臣が認定すれば事業者に支援措置を講じるという法案のかなめの部分については、容認することはできません。政府がお墨つきを与えた事業者にのみ支援措置を講じるというのは、官庁の権益を増大させ、官民の癒着を温存させ、規制緩和や自由競争の流れに逆行するものであります。
さらに、経営責任も明確にせずに企業による労働者のリストラを促進する内容となっていることも問題であります。事業再構築計画の実施に当たっては、雇用や労働条件に影響を与える場合には労働組合等との協議を行わせることなどの担保もありません。
また、債務の株式化が経営のモラルハザードにつながる可能性が高く、株式取得による一連の事業継続への支援、分社化の特例等が勤労者いじめの企業整理に利用されないための歯どめは不十分と言わざるを得ません。
以上が、民主党案に賛成し、政府案に反対すべき理由であります。
私たちは、企業の組織変更に対応し、従業員の権利義務関係等を明確にする必要があると考えます。企業の組織変更に伴う労働関係上の承継責任等に関する法的な整備の検討を直ちに行い、具体化すべきであることを指摘して、私の討論を終わります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/377
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378・古賀正浩
○古賀委員長 吉井英勝君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/378
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379・吉井英勝
○吉井委員 私は、日本共産党を代表して、産業活力再生特別措置法案に対する反対討論を行います。
反対理由の第一は、本法案が、労働者、中小企業を排除した少数の財界トップと総理らによる産業競争力会議の論議を受け、経団連、大企業の要求を丸のみにして法案化されたものであり、そのやり方も内容も異常なものだからであります。
第二に、大企業の事業再構築、リストラ計画を認定することによって、過剰雇用を口実とした大企業の大量人減らしと人権侵害に国のお墨つきを与えるとともに、文字どおり全産業にわたる大企業のリストラ、人減らしを推進する法案であるからであります。
事業再構築計画の認定基準に「従業員の地位を不当に害するものでないこと。」とありますが、産業構造転換円滑化法や今日のリストラの実態を見れば、この条項によって労働者の地位と権利が守られる保証は全くありません。本法案は、専ら大企業が要求するリストラ支援ばかりに偏重し、雇用を守るという政府の役割を放棄した本末転倒のものであります。
また、本法案は、持ち株会社を展望して大企業が実行する企業組織の自由な再編成のための合併、買収や、分社化、企業の切り売りを支援し、容易に行えるようにするものであり、こうしたリストラの横行は、一層の大量失業と雇用不安、下請・中小企業の倒産、廃業と地域経済の疲弊をもたらし、大不況運動を加速させることになります。
第三に、バブル期及びその後の大企業の過剰設備、過剰債務を生んだ経営の失敗の責任を不問に付したまま、そのツケを国民に押しつけるものだからであります。
本法案は、認定大企業に対しては、債務の株式化によって銀行への公的資金注入の分け前を与えて債務を救済するとともに、工場閉鎖や設備廃棄等に対して金融、税制上の優遇を与え、国民の税金で大企業の救済を図り、リストラを支援するものです。これは、大多数の中小企業を初め国民と大企業との不公平、企業体力の格差を一層拡大し、企業経営のモラルハザードを蔓延させるものであります。
第四に、国の委託研究成果は国に帰属するという当然の大原則を根本的にひっくり返し、国民の知的財産、国有財産である国有特許権等を民間大企業に開放するものであり、認めることはできません。
民主党提案の起業家支援のための新事業創出促進法等の一部改正案については、大学等の技術移転事業は大学等の学術研究の本来の役割をゆがめるものであり、またストックオプション制度に対しては見解を異にするものであり、賛成いたしかねます。
なお、会期末直前にこのような重大な法案を提出し、十分な審議日程も保障せずに採決を強行することは断じて認められません。このような横暴に厳しく抗議して、討論を終わります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/379
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380・古賀正浩
○古賀委員長 前島秀行君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/380
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381・前島秀行
○前島委員 私は、社会民主党・市民連合を代表いたしまして、政府が提案している産業活力再生特別措置法案に対し、反対の討論を行います。
反対の大きな理由は、雇用の安定の確保が明記されていないことであります。
本法案第一条の「目的」には、「雇用の安定等に配慮しつつ」となっています。これでは極めてあいまいであり、労働者の不安を払拭することはできません。
また、本法第十八条の「雇用の安定等」についても、政府案では「その雇用する労働者の理解と協力を得る」こととなっています。「理解と協力を得る」との規定も、極めてあいまいであると言わざるを得ません。最低でも、労使間の協議、労使の合意とすることを法案に明記すべきであります。
また、第三条第六項六号の「従業員の地位を不当に害する」の規定においても、その範囲、内容は極めて不明確であると言わざるを得ません。雇用契約の維持、労働条件の維持、労働協約の継続の三点は、事業再構築計画承認に当たって担保、保障されるべきものでなければならないと思っています。
さらに、第三条第三項四号の「事業再構築に伴う労務に関する事項」の中に雇用人員数を具体的に明示する必要があるにもかかわらず、この点も極めて不明確になっています。
これらの条項を見ただけでも、現在の経済状況を考慮するならば、本法案は労働者の雇用不安をますます高めるばかりであります。
以上により、労働者の不安と犠牲の上に成り立つとも言わざるを得ない産業活力再生特別措置法案について反対であることを表明します。
なお、民主党提出の起業家支援のための新事業創出促進法等の一部を改正する法律案についても反対であることを申し述べておきたいと思います。
以上です。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/381
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382・古賀正浩
○古賀委員長 これにて討論は終局いたしました。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/382
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383・古賀正浩
○古賀委員長 これより採決に入ります。
まず、中野寛成君外四名提出、起業家支援のための新事業創出促進法等の一部を改正する法律案について採決いたします。
本案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/383
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384・古賀正浩
○古賀委員長 起立少数。よって、本案は否決すべきものと決しました。
次に、内閣提出、産業活力再生特別措置法案について採決いたします。
本案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/384
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385・古賀正浩
○古賀委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/385
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386・古賀正浩
○古賀委員長 ただいま議決いたしました本案に対し、伊藤達也君外二名から、自由民主党、公明党・革新クラブ及び自由党の三派共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。
提出者から趣旨の説明を求めます。大口善徳君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/386
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387・大口善徳
○大口委員 ただいま議題となりました附帯決議案につきまして、提出者を代表し、その趣旨を御説明申し上げます。
まず、案文を朗読いたします。
産業活力再生特別措置法案に対する附帯決議(案)
政府は、引き続き景気対策に万全を期しつつ、本法施行に当たり、産業活力の再生が急務であることにかんがみ、供給側の構造改革及び新たな雇用機会の創出等に向けた施策の総合的推進を図るとともに、特に次の諸点につき適切な措置を講ずべきである。
一 事業再構築計画等の認定に当たっては、事業者の主体的な取組みを尊重し、行政の過度の介入や恣意性を排除する観点から、可能な限り認定基準を具体的に提示する等、手続の透明性確保を図るとともに、事業再構築に対する支援については、経営倫理の欠如を惹起することのないよう十分留意すること。
二 中小企業者が取り組む事業再構築については、計画の認定及び施策の適用につき特段の配慮を払うとともに、事業革新に向けた中小企業者の取組みを積極的に支援するため、事業再構築に伴う新規投資に係る支援措置の拡充に努めること。
三 事業再構築に伴う失業の予防等雇用の安定に万全を期するため、事業者による事業再構築計画の作成及びその実施に当たり、当該計画が雇用に影響を及ぼす場合には関係労働組合等との必要な協議を行う等、雇用労働者の意見を十分聴取し、関連中小企業等の労働者を含めた雇用の安定に最大限の考慮を払い、その理解と協力を得つつ当該計画が推進されるよう適切な指導を行うこと。
また、事業再構築の実施が雇用不安を助長することのないよう、事業者が雇用労働者の雇用機会の確保、能力開発に努めるよう適切な指導を行い、また、これら事業者の取組みに対する支援措置の適切な実施を図るとともに、規制緩和や新産業の育成・振興のための施策を強力に推進することにより、新たな雇用機会の創出に全力を挙げて取り組むこと。
四 企業の組織変更が円滑に実施され、かつ、実効あるものとなるためには、従業員の権利義務関係等を明確にする必要があることにかんがみ、労使の意見等も踏まえつつ、企業の組織変更に伴う労働関係上の問題への対応について、法的措置も含め検討を行うこと。
五 今後の企業法制のあり方については、企業組織の変更等を通じた事業再構築の有効性に照らし、独占禁止法の運用を含む関係法制全般の見直しを不断に行うこと。
六 創業者及び成長期の中小ベンチャー企業の資金需要に的確に対応するため、本法に基づく信用保証制度の適切な運用に努めるとともに、政府系金融機関の貸付及び中小企業支援機関の出資による資金供給の円滑化、未公開株式市場や店頭市場の整備・活性化等中小ベンチャー企業等への支援策の一層の充実を図ること。その際、特に女性起業家に対する支援の一層の充実に努めること。
七 民間事業者への研究開発の委託の実施に当たっては、各省庁等の連携の下、受託者が特許権等を取得できるよう最大限努めるとともに、技術力を有する中小企業者の機会確保に十分配慮すること。
また、委託研究開発の成果としての特許権等については、受託者等においてその活用が促進されるよう指導するとともに、既存の国有特許権等についても、民間事業者において一層の活用が図られるよう、その体制整備に努めること。
八 国立大学等における研究開発の成果の民間事業者への移転を促進するため、TLOの設立・事業運営に対する一層の支援を行うとともに、国立大学等から生じた国有特許権等がTLOへ円滑に移転されるよう環境整備に積極的に取り組むこと。
また、研究開発分野における国立大学教官等の役員兼任規制の緩和について速やかに結論を得ること。
九 本法に基づく各般の施策の実効を確保するため、必要な財政、税制上の措置等の充実を図るとともに、今後とも産業活力の再生に向けて施策の積極的な展開を図ること。
以上であります。
附帯決議案の内容につきましては、審査の経過及び案文によって御理解いただけるものと存じますので、詳細な説明は省略させていただきます。
何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/387
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388・古賀正浩
○古賀委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。
この際、申し上げます。
先ほど公明党・革新クラブと申し上げましたのは、公明党・改革クラブが正確でありますので、訂正して、おわび申し上げます。
採決いたします。
本動議に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/388
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389・古賀正浩
○古賀委員長 起立多数。よって、本案に対し附帯決議を付することに決しました。
この際、与謝野通商産業大臣から発言を求められておりますので、これを許します。与謝野通商産業大臣。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/389
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390・与謝野馨
○与謝野国務大臣 ただいま御決議のありました附帯決議につきましては、その趣旨を尊重し、本法律案の実施に努めてまいりたいと考えております。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/390
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391・古賀正浩
○古賀委員長 お諮りいたします。
ただいま議決いたしました両法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/391
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392・古賀正浩
○古賀委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
—————————————
〔報告書は附録に掲載〕
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/392
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393・古賀正浩
○古賀委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。
午後九時十一分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504461X02219990728/393
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