1. 会議録本文
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000・会議録情報
平成十一年三月二十三日(火曜日)
午前十時開議
出席委員
委員長 村井 仁君
理事 井奥 貞雄君 理事 衛藤征士郎君
理事 鴨下 一郎君 理事 柳本 卓治君
理事 上田 清司君 理事 日野 市朗君
理事 石井 啓一君 理事 小池百合子君
大石 秀政君 大島 理森君
奥山 茂彦君 河野 太郎君
佐田玄一郎君 桜田 義孝君
菅 義偉君 砂田 圭佑君
中野 正志君 中村正三郎君
平沼 赳夫君 古屋 圭司君
村上誠一郎君 望月 義夫君
渡辺 具能君 渡辺 博道君
渡辺 喜美君 海江田万里君
末松 義規君 玉置 一弥君
中川 正春君 山本 孝史君
大口 善徳君 谷口 隆義君
並木 正芳君 西 博義君
若松 謙維君 鈴木 淑夫君
西野 陽君 米津 等史君
佐々木憲昭君 矢島 恒夫君
横光 克彦君
出席政府委員
金融監督庁監督
部長 乾 文男君
大蔵政務次官 谷垣 禎一君
大蔵大臣官房長 溝口善兵衛君
大蔵大臣官房審
議官 福田 進君
大蔵省主計局次
長 坂 篤郎君
大蔵省理財局長 中川 雅治君
大蔵省金融企画
局長 伏屋 和彦君
国税庁課税部長 森田 好則君
厚生省健康政策
局長 小林 秀資君
郵政省貯金局長 松井 浩君
郵政省簡易保険
局長 足立盛二郎君
委員外の出席者
議員 大原 一三君
議員 堀内 光雄君
議員 保岡 興治君
議員 小池百合子君
衆議院法制局第
二部長 窪田 勝弘君
法務大臣官房審
議官 吉戒 修一君
大蔵大臣官房参
事官 内藤 純一君
大蔵委員会専門
員 藤井 保憲君
委員の異動
三月二十三日
辞任 補欠選任
河井 克行君 奥山 茂彦君
栗本慎一郎君 望月 義夫君
桜井 新君 菅 義偉君
平沼 赳夫君 古屋 圭司君
綿貫 民輔君 佐田玄一郎君
谷口 隆義君 西 博義君
鈴木 淑夫君 西野 陽君
西田 猛君 米津 等史君
同日
辞任 補欠選任
奥山 茂彦君 河井 克行君
佐田玄一郎君 綿貫 民輔君
菅 義偉君 桜井 新君
古屋 圭司君 平沼 赳夫君
望月 義夫君 栗本慎一郎君
西 博義君 谷口 隆義君
西野 陽君 鈴木 淑夫君
米津 等史君 西田 猛君
本日の会議に付した案件
土地の再評価に関する法律の一部を改正する法律案(大原一三君外三名提出、衆法第九号)
午前十時開議
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504629X01019990323/0
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001・村井仁
○村井委員長 これより会議を開きます。
大原一三君外三名提出、土地の再評価に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。
趣旨の説明を聴取いたします。大原一三君。
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土地の再評価に関する法律の一部を改正する法律案
〔本号末尾に掲載〕
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504629X01019990323/1
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002・大原一三
○大原議員 土地の再評価に関する法律の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由及び内容の概要を御説明申し上げます。
昨年成立いたしました土地の再評価に関する法律は、法人が所有している不動産のうち長期に所有している事業用土地の帳簿価額と時価の乖離が著しい現状にかんがみ、これを是正し、資産の適正な評価を行うことができるようにすることにより、金融機関の自己資本比率の向上を通じて金融の円滑化及び企業経営の健全化に資するものでありました。
今般の土地の再評価に関する法律の一部を改正する法律案は、昨年の土地の再評価に関する法律の採決の際の附帯決議でも指摘されております税効果会計に係る会計基準が採用されることになったことから、現在貸借対照表の負債の部に計上されております土地の再評価差額から繰り延べ税金負債を控除した金額を再評価差額金として資本の部に計上するとともに、公開会社は、その金額の三分の二を限度に自社株の消却に充てることができることとしております。これらの措置により、法人の財務内容の健全化、経営体質の強化につながるものと期待されるところであります。
自社株の消却の手続につきましては、株式の消却の手続に関する商法の特例に関する法律と同様の手続によることとしております。
また、この法律により自社株の消却ができる期限が平成十三年三月三十一日までとされていることにかんがみ、事業用土地の再評価を行うことができる期限を一年延長することとしております。
以上が、この法律案の提案理由及び内容の概要であります。
何とぞ、御審議の上、速やかに御賛同くださいますようお願い申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504629X01019990323/2
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003・村井仁
○村井委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504629X01019990323/3
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004・村井仁
○村井委員長 これより質疑に入ります。
質疑の申し出がありますので、順次これを許します。玉置一弥君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504629X01019990323/4
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005・玉置一弥
○玉置委員 御苦労さまでございます。
土地の再評価ということで、今回時価を使おうということでございまして、一年延長して三年間に適用期間を延ばすということであります。
戦後何回か資産再評価ということで資本勘定への繰り入れという形で時価評価をされてきたことがあるわけであります。ずっと欧米の動きを見ておりまして、国際会計基準等の流れからいきますと、時価評価をかなり取り入れているところがあるわけでありますけれども、損益の処分をどうするかということが非常に問題になっているというふうにお聞きをいたしております。
我が国は、企業会計としましては、最近まで貸借対照表重視というような形でやってまいりました。アメリカなんかにおきますと、一九二九年、いわゆる金融大恐慌のときまでは貸借対照表というのが中心だったんですけれども、それ以降は、主に投資者保護、投資家保護のために、いわゆる収益性を重視した損益計算書を中心に市場に情報公開しているというようなことでございます。日本の場合には貸借対照表でございますが、これはあくまでも出資者、いわゆる債権者、銀行、金融機関、そういうところが、融資先がどれだけ信用を確保しているか、いわゆる支払い能力を基準に物事を考えてきた、こういう流れがあるということでございます。
私も会社におりましたときは、こういう企業分析も仕事の一つでございましたので、両方とかもっとほかの比率を重視して、それによってその企業をどうしていくかということをよくやってきたわけでありますが、実際に企業会計そのものが会社の実態をあらわしているかというと、なかなかそうではない。やはりある時期、期間をとらえるか時点をとらえるか、そして将来の再生産、継続性ですね、この辺をどうするかということによりましていろいろな比率をどんどん変えることができるということがございますので、本当にどの会計処理が一番正しいんだというのはなかなか正確に言えないと思うんです。
そういうふうに考えていきますと、そのときの目的によって政治的にも政策的にもいろいろな加工ができる、こういうことでございますので、企業会計の会計基準が今どのように変化しているか、それから、私ども、海外から見て日本の会計はわからぬという話をよく聞くわけですけれども、その辺についてどういうふうに感じておられるか、まずその点をお聞きしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504629X01019990323/5
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006・伏屋和彦
○伏屋政府委員 お答えいたします。
御指摘のように、財務諸表が企業の実態を適正に反映することは、ディスクロージャーの信頼性を高めるためにも、今先生が言われました投資者または債権者、それは国の内外を問わないわけでございますが、そういうために重要なことであると考えております。
企業会計審議会におきましては、国際的な動向も踏まえまして会計基準等の見直しを幅広く進めてきております。
その主な内容といたしまして、連結情報中心のディスクロージャーへの移行、その際の子会社、関連会社の範囲の拡大とか税効果会計の導入とか退職給付に係る会計基準の整備、またさらに、今先生が御質問の中でも言われました、いわゆる評価の意味で金融商品に係る時価評価を導入する、これら等でございまして、この結果、我が国の会計基準は国際的に遜色のないものになると考えておるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504629X01019990323/6
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007・玉置一弥
○玉置委員 現在、法務委員会でも商法改正の話をされておりますけれども、いろいろな債券、金融債券とか社債、株式、いろいろありますが、昨年は銀行の中で土地評価についての方法を変えるということで御提言がありまして、我々も賛成してきたわけであります。今の法律でございますけれども。
今度は、実際に取得の評価を会計基準に合わせてどう変えていくかということになるわけで、そのやり方が低価法、原価法、時価というふうに銀行の場合も乱れているわけですね。決算書には書かれていますけれども、横並びの評価をするということでは非常に難しいと思いますが、会計基準からいきまして、今までの基準がどうなっているのかということと、昨年この法律が実施をされたときにどういうふうに変化をしてきたのか。いわゆる対象は限られておりましたけれども、その中でこの提言どおり土地評価の時価を取り入れたのかどうか、その辺もちょっとお聞きしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504629X01019990323/7
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008・伏屋和彦
○伏屋政府委員 お答えいたします。
有価証券の評価につきましては、商法の各規定によりまして、現在原価法と低価法との選択が認められているわけでございます。また、土地につきましては、商法によりまして原価評価されるわけでございますが、今先生も御指摘ありました昨年の土地の再評価に関する法律におきましては、基本的には原価評価の考え方を維持しつつ、特例として期限を切って一回限り再評価できることとされているものと理解しております。
これらは金融機関についても一般事業会社と同様でございまして、金融機関の会計処理も原則の範囲内のものであるということから、整合性を持ってこれらがとられているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504629X01019990323/8
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009・玉置一弥
○玉置委員 連結決算という形でこれから推移していくわけでございますけれども、今のお話で、金融機関がすべて導入をしたということではなくて、一部従来どおりということもあるようでございます。
そういうふうな形で、今度例えば連結決算といいますと企業グループということになるわけであります。ある大企業グループ全体の総合評価という形にこれからなってまいりますけれども、そこで一つの統一会計基準的なものを強制力を持ってやらないと、グループ内がまた独自でそれぞれやられますと、グループ内評価というのはできなくなると思うのですね。この辺についてはどういうお考えでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504629X01019990323/9
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010・伏屋和彦
○伏屋政府委員 お答えいたします。
今先生が言われましたのは大事な御指摘でございまして、企業会計審議会の平成九年の「連結財務諸表制度の見直しに関する意見書」等を踏まえまして、証券取引法に基づきますディスクロージャー制度につきましては、本年四月以降開始する事業年度に係る有価証券報告書から、従来の個別情報中心から連結情報中心に転換を図るよう、現在、証券取引法に基づく大蔵省令の改正作業を鋭意進めているところでございます。
先生御存じのように、この連結財務諸表制度における子会社とか関連会社の範囲につきましても、従来からの持ち株基準から実質的な支配力基準、影響力基準を導入することによって、この点につきましては既に必要な省令作業を終えているわけでございますが、今進めている省令作業とあわせまして、これらの見直しによりまして、今先生言われました企業の集団の情報がより適切に開示されるようになるものと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504629X01019990323/10
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011・玉置一弥
○玉置委員 では、ちょっと土地評価についてお聞きをしていきたいと思います。
この土地の再評価についての法律がつくられますときに、昨年は貸し渋り対策だ、こういう話をお聞きしていたと思いますが、貸し渋り対策に対してはこの土地評価というのはどういう関係があって、どういう効果が出てきたか、それについて大原議員にお聞きしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504629X01019990323/11
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012・大原一三
○大原議員 お答えいたします。
そもそも、昨年でございますが、策定されましたのはおととしの暮れからであります。
我々、金融機関の自己資本比率を何とか上げることによって当面の貸し渋り対策に対応しようではないか。一方では公的資金の注入、十三兆円という金額が掲げられまして、私としては当時部内で申し上げたことでありますが、まず銀行としてやるべきことがあるのではないのかな。株は時価評価が認められているのに、世界で一番時価と原価の乖離の大きい土地については全く表示がされないというのはいかがなものだろうか。そういう考え方から、諸外国の例を見ますと、サッチャーさんを初め、サッチャー内閣の後に評価が行われたわけでありますが、ドイツ、フランス等々、我が国よりも乖離の少ないところにおいて時価評価をして、それを自己資本に入れておるという実態を見まして、我々もそれを参酌しながら同じようなことをやったらどうかという提案をさせていただいたわけでございます。
それで、金融機関に対してどれだけの評価が行われたかといいますと、約四兆円の含み益がこの再評価法によって出ております。これはどうもBIS規制の対象ではティア2にしかならないということだそうでございまして、その四五%、したがって、二兆円強のものが自己資本に算入されたという実態がございます。
現在、七兆数千億の公的資金を注入しようとしておるのでありますが、それに対して二兆円というものが数字上提示されたということは、やはり何がしかの貸し渋り対策に寄与したのではないのかな、こう判断しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504629X01019990323/12
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013・玉置一弥
○玉置委員 確かに、おっしゃるように含み益としては四・一兆円、大手十九行に出ているわけですね。これを自己資本比率八%の逆数の十二・五倍を掛けますと五十三・八兆円、それの四五%ということで二十四兆円。二十四兆円が貸し出しの財源ということになるわけですが、私どもが昨年もことしも聞いておりますのは、貸し渋りは全然おさまっていない。これは、自己資本比率はいかに八%を上回るか、もう今大体一〇%以上になってきていますが、そのことに金融機関が余りにも力を入れ過ぎた結果、不良債権の償却とか、逆に資本蓄積とかそちらの方を主体にしたのではないかと思うので、予測されたような貸し渋り対策になっていないと思うのですが、その辺を正確にお答えいただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504629X01019990323/13
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014・大原一三
○大原議員 さっき申しましたことは、我々が策定するときの考え方を主として申し上げたわけでございますけれども、おっしゃるように、自己資本比率の増加だけで貸し渋りが解消されたとは私も思っておりません。
貸し渋り対策には私も参画いたしたわけでありますが、信用保証協会の融資の保証枠の拡大、あるいはまた政府関係機関の二十兆円に及ぶ融資の拡大等々、各般の施策によって何がしかの貸し渋り対策に対する援護射撃ができたのではないのかなと思っております。
したがって、自己資本の増加が、今度の七兆四千億の注入にいたしましても、その程度で果たして現在の金融機関の貸し渋りが完全になくなるというふうには私も考えておりません。むしろ、自己資本の注入額が、これは私から申し上げることは多少口幅ったいかと思いますけれども、七兆円程度では少なかったのではないのかな。と申しますことは、貸し倒れに対する引き当て率がやはり今回の査定基準の中で低過ぎるという感じも持っておりまして、そういったことが十全に公的資金の注入ができたならば、私は貸し渋りもさらに是正されたのではないのかな、こう思っております。
先生おっしゃるとおり、五兆円ないし四兆円の評価益が出たことがストレートに貸し渋り対策にはならなかった、しかし、何がしかのプラスにはなったのではないのかな。その辺の数字の内訳は、これはなかなか難しい問題でございまして、私からお答えすることが現状ではわかりかねるというのが実際でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504629X01019990323/14
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015・玉置一弥
○玉置委員 この四・一兆円というのは、別にお金がふえたわけじゃなくて、評価が変わったということで、一番最初に申し上げましたように、企業会計基準のいわゆる政治的な部分、政策的な部分なのですね。そういう面からいきますと、今おっしゃいましたような引当金関係も、実際に、内部留保的に本来引当金を確保して、そこにどこまで積んでいくか。このどこまで積むかというのが政策的な部分だと思うのですね。
そういう状況からいきますと、今回は、何もかも身ぐるみはいで決算をよくしなければいけないというのが片方にあります。これは株価対策ですね。そしてもう一つは、大蔵省が従来から見ておられます内部監査。内部監査というのは健全性ということだと思いますが、その両方を確保するというのが非常に難しいのですね。
健全性を確保しようとすると、収益を落として、利益を落として配当を落とすということにもなるわけです。そうなると株価が落ちるということになってきます。だから、これは痛しかゆしで、昨年の三月末に株価が一万八千円を上回らないと橋本内閣がもうだめだというようなことを言われて、結局上回らなかったのですね。そういう状態で、株価評価が早速こういうところに使われてきた。今回は土地評価も使われてきた、こういうことになってまいります。
私どもは、果たしてそこに企業の健全性というのがあるかどうか、大変心配をしておりまして、実際にないお金をあたかもあるかのごとく評価を変えてしまう。大変心配なのは、これからずっと入っていきますが、時価ですね、時価というのは何だということなのですね。
よく考えてみますと、時価というのは自分が売買した実績が時価なのですけれども、ずっと今までの成り行きで見ていますと、いわゆる他人の取引なのですね、すべてが。実際にそこの企業が最近取引して、自分のところがこれだけで売れましたというのならいいのですが、例えば有価証券ならそういう実績である程度評価できると思うのです、相場がありますから。土地につきましては、土地市場というのはまずない。
これは大原先生の従来からの持論で、土地の市場をつくらなきゃいけないというのがあるのですけれども。特に、土地なんかは今までは持っているだけで上がるからというので買い手が殺到した。いわゆる投機的商品というふうになったわけですが、今は持っていても上がらない。だから、自分たちのその土地に対する利用価値、これによって上がる。そういうふうに便利なところは集中してまだ上がっていますけれども、そうでないところはどんどん下落している。こういうふうな状態で果たして正確な時価がつかめるか、こういうことになります。
逆に、時価というのは、簡単に考えれば、今買ったら幾らかというのが時価だと思うのですね。それは、それを把握できるという前提のもとに相場というのがあって、そういうことなのです。
では、これから、例えば銀行関係が不良債権をずっと償却していきました、ある程度めどがついた、今度は保有している土地、これはもう償却が終わっていますから、売ったら利益になるわけですね、こういうことで幾らで売ってもいい、こうなってきたときに、従来の取得価格をはるかに下回って売る可能性もあります。それから、担保物件になっているものも、買取機構が今どんどん買っていますけれども、なかなか売れない。しかし、それも、もう値段は幾らでもいい、こういうふうになってくると今度は売れ始めます。そうなりますと土地の価格がどんどんと下落していく。
では、この辺を今の基準で、例えば公示価格というのがございますが、公示価格、路線価とかそういうふうなもので評価するのか、あるいは売買実績で評価をするのか、あるいは将来、これは将来の話なのですね、会社を清算するときとかいざというときの切り売りをするとか、そういうときに実際の評価が出てくるわけですが、そのときの評価と今の例えば時価と定めたところとどういうふうに価格が変化すると想定されているのか。その時価というものについてのお考えをちょっと知りたいと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504629X01019990323/15
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016・大原一三
○大原議員 国土庁の公示価格というのがございますけれども、これも我々はいわゆる時価と言っております。我々が時価と言う場合に、一物に三価も四価もあるというのが今日の実態であります。固定資産税の評価も時価と書いてございますし、さらにまた地価税の課税も時価と書いてございますし、さらにまた相続税の課税も時価、こう言っているにかかわらず、それぞれ評価の基準が違っております。
一番合理的なのは公示価格だと思うのでございますが、これは売買実例を基準にして決めるのでありますけれども、正直に言って、全国六万点しか点数がありませんので、今回の土地の再評価に関して公示価格が使えるところというのは極めて限られております。
しかしながら、各企業の皆さん方は、例の地価税によって地価の評価をしていらっしゃいます。地価税の評価というのは、正直申しまして、いわゆる相続税の路線価を基準にしているわけでございますから、時価の大体八割相当額になるわけであります。売買実例があれば一〇〇%になれるのでありますが、しかしながら、大企業に至っては数万筆という筆数をお持ちでございまして、それを公示価格に準じた売買実例的価格に翻訳し直すというのは、極めて大きな作業が必要であります。したがって、金融機関で再評価をされたところの実態を聞きますと、一番手っ取り早い、去年まで課税されておりました地価税の評価を時価として採用いたしましたという例が圧倒的に多うございます。
玉置先生のおっしゃるとおりに、我が国の土地に関する時価というのが、株のように市場があってはっきり出てくるならば極めて評価しやすいのでございますけれども、申し上げたように、昨年の法律に基づく政令では五つの価格を基準にして、五つの中には不動産鑑定士の評価というのも入っておりまして、それらのものを基準にして、限りなくいわゆる売買実例の時価に近いものに調整していただく、それについては不動産鑑定士や公認会計士の方々とよく御相談していただく、こういうことに相なっているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504629X01019990323/16
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017・玉置一弥
○玉置委員 五つもあると、それぞれどれを使うか一応明記しなさいということですけれども、それ自身は横並びで数字の比較はできないということになるわけで、ちょっと大変だと思いますね。
しかし、これは今回の有価証券の方も同じでございまして、例えばその実勢価格がどんどんと下落をしていった場合、今時点の評価は一度きりでございますから、含み益として出したつもりが、ずっと残っていくと今度は含み損だということになってしまう、こういうことになります。
例えば株でもそうですが、今それぞれの持ち合い株といいますか、こういうものがありまして、例えば三井、三菱とかいわゆる昔の財閥系の企業グループがありますけれども、この企業グループがグループ間で持ち合いをしているというのが大体二二、三%と言われています。私どもが取引関係を含めてずっと調べて、いろいろな数字を見てみますと、大体六〇%ぐらいかあるいはそれ以上が相互持ち合いという形で、いわゆる株主安定化ということで流動株を抑えてしまうという動きがありまして、非常に流動株が少ない、こういうのがあります。
ところが、国際基準でいくとかあるいは関連会社も含めた連結決算となってきますと、どんどんと減らしていこうという動きが今出ていまして、それも株価に影響しているだろう。だから、今までは異常に高過ぎて、相互持ち合いで流動株が非常に少ないということで、そこへ機関投資家だけではなくて個人も集中した、そういうのがありました。だから、とんでもない値段がついたということですが、今や企業側も新たに株を買わないで放出をする側に回ってきているということで、お互いに自社株は上げたいけれどもよその株は持ちたくないというので売りに出ているわけですね。去年なんかは特にその最たるものでございまして、これは、去年売った人はまだいいのですが、去年の後半から今にかけて売っているところは大変なんですね、安くなっちゃって。
そういうことを考えていきますと、評価された時点で持っている保有株が、実際に何か事あるごとに売っていかなきゃいけない状態がずっと続いていくということになりますと、非常に評価損というのが出てくるということで、決して益ばかりじゃないと思うんですね。
今現在は、益があるからということで想定をされていますが、これから一年間というか、特に三月末から後の、また来年になるんですかね、来年の末までということでやりますとどういうふうになるか、その辺の予測をちょっとお聞きしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504629X01019990323/17
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018・伏屋和彦
○伏屋政府委員 お答えいたします。
今先生言われました内容で、資産の評価方法につきましては、従来は、利益を計上することに慎重な保守主義等の考え方から原価法とか低価法が広く行われてきたわけでございます。しかし、近年、企業会計の透明性を一層高めていくためには、マーケットのあるようなものは、特に時価による自由な換金が可能だという資産につきましては、時価評価をすることが適当であるとの考え方が支持されるようになってきておりまして、このような観点から、主として金融商品につきましては、国際的に時価評価が採用されてきているわけでございます。
我が国におきましても、企業会計審議会が本年一月に取りまとめました「金融商品に係る会計基準の設定に関する意見書」におきましては、時価による自由な換金、決済等が可能な金融資産につきましては、これを時価評価し、適切に財務諸表に反映することが必要であるとされているわけです。
今先生の御質問の有価証券につきましては、子会社とか関連会社株式は、相手の方が連結になっておりまして、相手の方がいわば資本なものですから、これは原価評価するということでございますが、その他の有価証券につきましては、この意見書の中で、時価評価はするが、まさに先生言われたように、まだこれは未実現、実現していないわけでございますので、評価差額を損益には計上せずに貸借対照表の資本の部に直接計上するということで、これは平成十二年四月以降に開始する事業年度から段階的に実施することとしているわけでございます。
ただ、おっしゃいましたように、そうやって計上いたしましても、その後の株価によってそのものは変動があり得るわけでございます。そういう点は否定できないと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504629X01019990323/18
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019・玉置一弥
○玉置委員 私どもが心配しますのは、会計処理によって後の影響が逆に出てくるんではないかということでございまして、その時価評価の差額ですね、差損、損益ですが、この処理をどうするか。
今お話にありました企業会計審議会等の答申といいますか意見書、あるいは論点整理とか、いろいろな形で今まで表現がなされております。これも、換金、決済等により評価差額の損益を確定することが可能な場合ということである程度限定されているわけでありまして、このときの財務諸表についてどういう形でするかということを十分認識してやりなさい、こういうようなことですね。
それで、私どもが考えているというよりも、むしろ大原先生が、とりあえず前回はこういうふうにした、今回はこういうふうにしたというお話がありました。前回は負債勘定にこの処理の差損、差益を入れたということですが、ことしは資本に計上して税金分を資産の部に計上する、こういうお話だということです。
ずっと各国を見ますと、アメリカ方式というのは、損益計算書に営業外収益で載せるということですね。それからもう一つ、貸借対照表に、昨年のように負債勘定に計上ということで、これは自己資本の増加というふうに見るわけでありますが、それをやる方法。それからイギリス方式で、純利益とは別の利益概念という形で、実現するまで配当に回せないわけですから、それを留保するような形で記載をする、こういう三つぐらいのやり方があるよということでございます。
ことしはどういうやり方で、それで毎年変わるものかどうかというのと、本当に何が正しいのか、よくわからないんですが、その辺をお教えいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504629X01019990323/19
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020・大原一三
○大原議員 私も、正直言ってその点は非常に悩んでいるところであります。
戦後、昭和二十五年でございますが、資産再評価法というのが初めてできました。それから、なかなかおやりにならないものですから、二十六年にさらにまた一年やりなさいということでやったんです。これも大して成績は上がらなかった。それで、二十八年にもう一回やりました。やりましたけれども、これもなかなか成績は上がらない。当時の企業にとっては、そういったことをやるよりも、とにかく当面の利益を何とかふやしたいということが実際でございまして、償却資産がふえますと、償却があって損金になるということで、なかなかおやりにならなかった実態があると思うんです。
そこで、二十九年に資本充実法という名前で、上場会社については償却資産を強制するという手続をとりました。その間、これは資本勘定に既に入っておったわけでありますが、一応それで再評価が終わりました三十年、並びに、三十年から始まって、再評価準備金、積立金という名前の極めてあいまいもことした評価差益を事後処理として資本勘定に繰り入れるという手続を踏んでおります。したがって、昭和四十二年までにだらだらと組み入れてきたのを、四十二年、新たに法律をつくりまして、残った金額を全額自己資本に算入しなさいという手続を踏んだ経緯がございます。
したがって、昨年私は、正直に申しまして、これは資本勘定に入れていいんじゃないかという議論をしたのでありますが、とにかく最近は初めてのことでありますし、したがって、法人税四五、六%というものを含んだ評価益をいきなり資本勘定に入れるというのは問題がある、こういうことでございまして、とりあえず負債勘定へ立てさせていただきました。負債勘定には立ちましたが、いわゆるBIS規制の対象ではティア2に入る、劣後債と同じでございまして、その基準であれば負債勘定でもいいではないかという議論がありましたので、私も一応納得をいたしました。
昨年の国会での議論の中で、資本勘定に繰り入れるべきであるという御議論が一部の先生方から提示されたことも事実でございます。したがって、いずれは資本勘定へ繰り入れなきゃならぬ項目であろうと思うのでありますから、この際、二年経過後には恐らくそういう措置をとらなければならなかったであろうと思いましたけれども、とにかく資本勘定に入れれば、当面非常に要請の強い自社株の消却に、たまたまこの法律と一緒に昨年成立した議員立法による商法の特例、いわゆる過剰株を消却しようという法律がございましたので、その有効期間中に繰り入れて、その法律も利用できるような仕組みにしてあげたらいかがかなということで、したがって、その法律に合わせて適用期間も、この三月三十一日で二年間の評価で終わるところでございましたが、その自社株消却の特例法の適用期間に合わせて一年間延長して、何とかこれを使って今の過剰なエクイティーファイナンスの消却に使っていただけたら、こういう要請から今回の改正にいたしたものであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504629X01019990323/20
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021・玉置一弥
○玉置委員 自社株買いは、自己資本を増加させるということで固めるためには非常にいいと思いますが、株価操作にもなるわけですね。その辺が、やはり昔から商法に規制されているところだと思うのですね。
それともう一つ、問題点は、いわゆる総資本回転率。資本が拡大しますと、総資本回転率が落ちてくる。我々、企業会計の勉強をしたときには、総資本回転率は一・〇を上回る方がいいのだ、こういう話で、それをはるかに上回っているところが最近たくさんあるのですけれども、実際に土地評価を変えたり異なことをやるとそれを割るところが出てくる。そういうところについては経営上の問題がないのか、あるいはあの数字はうそなのかということですね、我々にしてみれば。一生懸命勉強して、それを信じてやってきて、今度はそんなのはどうでもいいんだというような形になってくるのですね。その辺がおかしくなる。
それから、投資家の基準でありますROE、総資本利益率、これが当然、資本がふえると、利益は一定ですから一株当たりというか減ってくる。この投資に対する影響力はないのか、その辺をちょっとお答えいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504629X01019990323/21
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022・大原一三
○大原議員 お説のとおりだと思います。
金融機関は、やむにやまれず去年評価をされました。第一回目の評価でございますから、今回、さらにまた金融機関の皆さん方にも評価されるところが出てくると思うのです。
ただ、この法律は金融機関に限られてはいなかったのです。商法監査特例法人ということで、資本金五億円以上か負債が五百億以上の企業ということになりますと、八千社から九千社の企業でありまして、金融機関は約三千ぐらいでありますから、それは残りの企業もおやりになるものというふうに考えておったわけでありますが、どうもその辺の実態が把握されておりませんけれども、金融機関以外の企業で再評価をおやりになった企業が非常に少ないという印象を受けております。
例えば鉄鋼とか造船、石油精製、さらにまた化学関係の装置産業の方々は、かなりの再評価差益をお出しになれる企業だと私は思うのです。しかるに、そういった実態になりましたのは、正直申しまして、やはりさっきおっしゃった資本利益率の低下というような問題があったからではないのかな、こう推察をいたす次第であります。
しかしながら、自社株の消却をこれによって認めるということを新たに導入しますと、やはりそういった要請をお持ちの金融機関以外の企業がおありのようでございまして、そういった企業では、今回こういう措置を導入することによって、再評価をしたいという企業もあるようであります。
さらにまた、昨年の実態、土地の再評価とは一体何だ、やったって、うちは筆数が何十万筆もあるのに、手数ばかりかかってどういうメリットがあるのかなという、いわば徹底しない、PRの行き届かない面も多分にあったと思うのですね。ところが、最近、一部の企業団においては、これを再評価して自己資本をふやすことによって金融機関からの借り入れを容易にしようというような動きもあるように聞いております。
いずれにしましても、やってみなければわからぬ話を私今申し上げたわけでありますけれども、そういった要請が一部にあることも事実でございます。果たしてこれが自社株の消却にどの程度役立つか、まだ予測はつきませんけれども、そういった要請があれば、いずれにしても資本勘定に組み入れなきゃならぬお金でございますので、この際やらせていただきたい、これが本法律の改正の要旨でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504629X01019990323/22
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023・玉置一弥
○玉置委員 貸し渋り対策とか、今度は自社株対策とか、いろいろ変わってまいりますけれども、背に腹はかえられないで、決算の状況を若干でもよくするために、余っているものは何でも使え、こういうことでやられるのはやむを得ないことだと思います。
しかし、全般にいろいろな企業の借り入れ等を見ておりまして、実際にはもう既に土地の再評価は終わっているんだ。これはなぜかといいますと、借入金のときの担保とかそういうようなものの評価、特に担保付保率を見ていますと、都市銀行なんかは五〇%以下だ、三十数%ですね。地銀が大体五〇から六〇ぐらい、それから信用金庫になりますと九〇%以上という担保の付保率がある。この担保はほとんど不動産ですね。
そういう意味からいきますと、土地担保のところの評価というのは、小さくなるほどもう評価が終わってしまっている。逆に、実質的なメリットというのは何かというと、余力があるところは自社株買いができますから、あとは決算対策しかないのですね。見せかけの決算対策ということでございまして、その辺が、例えばことし一年で済むものかどうかという心配もあります。
だから、実質的に企業の中身がどう変わっていくのかという面で見て、確かに優良な会社ほど効果は非常に大きいですね。優良でないのはもう既に使い終わっていますから。では、負債の方の評価も時価でやったらどうなるかとか、そういうことを考えていきますと、メリットというのは出てこなくなる。だから、いいところにはいいけれども、悪いところには余りきかない、そういう心配もしているのですが、この辺についてはどういうふうに見ておられますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504629X01019990323/23
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024・大原一三
○大原議員 まさにおっしゃるとおりだと思うのです。
ただ、私考えますのは、株は会社がつぶれちゃったら紙切れになってしまうのですね。土地は、リアルエステートと言われるように、現実に残るわけであります。株を時価会計に入れて利益を出すという計算をしながら、一方でとにかく天と地の差ほどある原価と時価の差額を抱え込んでおる土地を、企業会計の上から全く我関せずという形にしておくのはいかがなものだろうか。
特に、ある一例を申しますと、東京駅の近くの都市銀行の地価が何と六百万円で、坪七千円ぐらいにしかなりません。その近く、東京駅の近くでありますが、国鉄本社の売買代金が坪一千八百万円だったと思うのです。隣は七千円で、一方は売っちゃったら千八百万円、こういう異常な日本の土地の原価と時価の乖離を、さっきからおっしゃいます企業会計の中で、時価会計、債務者やあるいは債権者に企業の実態を明らかにするという会計をどのように導入していったらいいのかなということについて、私、専門家でございませんで、非常に悩みを持っておる問題点の一つであります。
外国でもかなりバブルがありまして、土地の評価益が出たようでございますが、しかし、日本ほど、これだけ乖離の大きい土地というものを会計上どう把握していくのかな。連結をやりましても、時価会計を導入しても、税効果会計を導入しても、どうも土地だけは野放しになっているようでございまして、今後の企業会計のあり方として、日本の異常な地価というもの、たとえバブル期に千五百兆円膨れて、それが現在、七百五十兆縮まって、縮まった分が残り七百五十兆しか残ってはいないといいながら、先ほど申し上げたような一例にも見るような乖離をどう開示していくのかなというのは、やはりこれから日本の企業会計を国際的ベースで見る場合には考え直していかなければならぬ課題の一つではないのかな。
先ほどから玉置先生の会計に関するお話を聞きながら、そんなことをふと私感じた次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504629X01019990323/24
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025・玉置一弥
○玉置委員 あと三分しかございませんので、法務省にお聞きをしたいと思います。
今お聞きのように、企業会計というのが政策的な部分でいろいろあっちへ行ったりこっちへ行ったりということで揺れ動いているわけでありますが、これからの一つの流れとしての連結決算、それから国際会計基準、この辺を踏まえ、今のグループ内のいろいろな企業間の会計手法の違いとかあるいは外国との差とか、そういうものを見ていって、これからどういう方向に会計基準とか会計原則が変わっていかなければいけないのか。あるいは、法務省自身として、企業会計そのものについてはどういう目的でどういう方向に行くのですよというのがもし大体決まっていれば、お答えをいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504629X01019990323/25
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026・吉戒修一
○吉戒説明員 お答え申し上げます。
先ほどからも先生御指摘のとおり、企業会計の中で、商法の会計、これは原価主義を採用いたしております。しかしながら、ことし、国会にお出しいたしました商法の改正法案の中で、金融資産につきましては時価会計をとることを認めるというような改正法案をお出しいたしております。したがいまして、今後、商法上の会計の扱いでございますけれども、国際的な会計基準の動向でありますとかあるいは企業会計原則との整合性等々を考えながら考えてまいりたいと思います。
特に、おっしゃいましたように、連結決算の問題につきましては、これは大きな課題であるというふうに考えておりまして、今後真剣に取り組んでまいりたいというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504629X01019990323/26
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027・玉置一弥
○玉置委員 一つの流れは、ずっと全体がそういうことを感じてやってきているということで、大変大事だと思うので、ぜひ頑張っていただきたいと思います。
それから、今、国の借金は地方と合わせますと六百兆円というように言われておりますが、私どもは、借金ばかりではなくてやはり資産の評価もやるべきだと。
今、実際に、国有財産という目で見ますと、国有財産が大体百兆円ぐらいですけれども、時価でやると四百兆円ぐらいだ。それ以外に、郵政事業ばかり言うとまた怒られますけれども、例えばの話ですね、郵政のように事業として成り立つものもある。あるいは国の工業技術院とかいろいろなところで特許を持っていたり、ノウハウとしていろいろな技術を持っている。こういうことを考えていきますと、そういうものを民間に放出するといいますか、売却するとかあるいはロイヤルティーをもらうとか、いろいろなやり方があると思うのですが、活用していかなければいけないと思います。
時間がなくなったので言いっ放しになりますけれども、そういう面で、我々も財政再建から見て、民間が時価主義をとり、企業会計が変わっていくということであれば、当然国家財政も、フローは予算化に使う、ストックは新しく財源を稼ぎ出す方に使うというようなことを考えられないか、こういうふうに思うのですが、こういうことをぜひお考えをいただきたいと思います。
では、質問を終わります。ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504629X01019990323/27
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028・村井仁
○村井委員長 次に、若松謙維君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504629X01019990323/28
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029・若松謙維
○若松委員 若松謙維でございます。昨年も、谷口議員と一緒に、専門的な立場からこの法案に関する質問をさせていただきました。
まず初めに、私たちの意見では、本来、負債ではいけない、資本であるということで、大方その論理性は証明されて、けれども、結果的に資本に行かなかったということはどうしてなのか。特に、谷口議員もかなり心外だと言っておりますので、ぜひその経緯というものをこの際はっきりしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504629X01019990323/29
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030・大原一三
○大原議員 先ほど私、ある先生からと申し上げたのは若松先生のお話でございまして、昨年から資本勘定へ繰り入れるべきであるという御意見でありました。私も、立法の当初は、やはり資本勘定へ繰り入れるべきではないのかなという感じを持っておりました。
しかしながら、いろいろ法務当局とかあるいは主税局あるいは理財局関係等々と議論をすり合わせをしていく中で、やはりいきなり資本勘定というのはいかがなものかなという議論があったものですから、会計の余り専門家でない私は一応譲歩をいたしまして、法人税が当時では四五、六%入っておるというものを資本にいきなり全額入れるのはいかがかな。私は、これは貸し渋り対策でございましたので、ぜひ全額入れて、それの一〇〇%をBISの対象にしてもらえれば貸し渋り対策の有力なてこになるのだがなという考えでございましたけれども、一応、皆さん方の、税務当局等の御意見もありまして、負債勘定へ立てました。
しかし、資産再評価が終わればいずれは資本勘定へ繰り入れるべき性格のものである、かように私も考えておったわけでありますが、いずれにしても、自社株の消却等の要請もこれあり、一年間早めまして資本勘定へ繰り入れをしたい、こういう政策的な配慮から、今回、改正をお願いしたわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504629X01019990323/30
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031・若松謙維
○若松委員 大原先生、一生懸命こういう立法をされて、その努力は大変敬意を表するのですけれども、やはり本来の会計から逆行していることは免れないのですね。ですから、負債よりまずもって資本というべきで、まずそこの発想を訂正していただいて、本来は去年からやるべきだった、それを明言していただきたいのです。そうしないと、相変わらず日本の国会での議論というのはもうグローバルスタンダードに逆行した議論になるということになってしまいますので、それをぜひ明言していただきたいのですが、いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504629X01019990323/31
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032・大原一三
○大原議員 今の答弁で明言をしたつもりでありますけれども、正直言って、今後こういう事態が起きるのか起きないのかよくわかりませんが、やはり、昭和二十九年まで資産再評価をやって、その後整理として三十年に資本勘定へ組み入れたというような実態もこれありますので、今後は、でき得れば、もし仮に再評価するというようなことがありますれば、まあ、そんなにしょっちゅうこんなことをやっているわけにもまいりませんので、戦後も一回ぽっきりでありましたから、そう多くはないと思うのでありますが、資本勘定へ私は組み入れるべきである、こう今は考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504629X01019990323/32
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033・若松謙維
○若松委員 では、もっとそもそも論を言いますと、会計原則には実現主義という根本的な考え方があるのですね。これはあくまでも未実現利益なのですね。未実現利益を上げて、負債にするか資本にするかという去年の議論がありましたけれども、いわゆる税効果会計を適用しても、これだけの重要な未実現利益をまず帳簿に上げる、貸借対照表に上げるということ自体、やはりもう世界の動きからかなり逸脱しているのですね。
それは注記事項でやればいい話であって、あとはもう証券アナリストとかそういった人がそれぞれ評価のための糧とするというわけで、それを新たに入れなくちゃいけないということは、結局、もう一方、有価証券の原価法をやりましたね。だれが見ても、今、日本の決算書はいびつだ、そういう認識で、こういう手を加えれば加えるほど、かえって世界の投資家は日本の企業のディスクロージャーの信頼性に対して疑念を持たざるを得ないと思うのですね。そういう意味で、今回、一年延長ということは大変残念に思っております。
ですから、そういう観点から、やはりこういう法律は早急になくすべきだ、こういうものは延長しないで、確かに景気が今後どうなるかわかりません、であっても延長しないで、やるのだったら企業会計原則にゆだねるべきだ、ぜひそれを立法者としてこの場で明言していただきたいのですけれども。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504629X01019990323/33
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034・大原一三
○大原議員 先ほども申し上げましたが、日本の企業会計のありようというのは今非常に変動期にあると思うのですね。そういう意味で、私よくわからないのは、株式の評価に低価主義をとっておったのをBISの関係から時価をとり、さらにまた時価が原価を割りますと原価主義をとるというような、非常に便宜主義的な評価のやり方ということの方がはるかに日本の企業会計の原則を混迷化する要因だと思うのです。
土地の再評価につきましては、企業会計原則から出発したというよりは、いわゆる金融機関の貸し渋りを何とか回避するための一助にしたいという政策的な配慮から、したがって議員立法でお願いしたというのがこの土地再評価の経緯でございまして、こんなことを年がら年じゅう繰り返していくべきであるというような考え方は私も毛頭持っておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504629X01019990323/34
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035・若松謙維
○若松委員 では、再度確認しますけれども、基本的にこういうものは一回限りだと。結果的に一年延長しましたよね。実は、去年法務委員会で我が会派から、上田理事でしたけれども、当時は何かおつき合いみたいな形で法案に賛成しました。ところが、ことしになって大蔵委員会でやるということで、こんなのはおかしいのだということでかなり党内でももめたのですよ。参議院でも、民主党さんたちと連携をとって反対しようか、そんな話までしたぐらい、やはりこれは納得できないものなんですね。それをかつ一年延長したということは、今の答弁ではちょっと納得できないのですよ。またもう一年、先生の優しさでやってしまうのではないか。
明言してください。先生の人柄は信用しているのですけれども、この法案に関してはちょっと疑わざるを得ないのですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504629X01019990323/35
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036・大原一三
○大原議員 これは、一年延長した動機は先ほど申し上げたとおりでありまして、昨年の法務委員会で先生も御質問されましたが、株式の消却という法律がちょうど三年間になっていましたので、今回これを資本勘定に繰り入れて自己株の消却をやるなら、それと合わせて一年間延長してあげたら消却が進むなと。実際にあの法律で、株式の消却というのは想像した以上に非常にたくさんの企業がおやりになっているのですね。例えば九年と十年の株式消却のための定款変更を見ますと、上場会社、店頭を入れまして三千社の中の四百社がおやりになっているようであります。恐らく、今後さらにそういった動きが出てくるのではないのかなということで、せっかくの議員立法が、政策的な立法でありまして、それに順応してその法律の効果も上げたいなということで一年間の延長をやりましたわけでございまして、これ以上延長するということは、お説のとおり、やるつもりはございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504629X01019990323/36
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037・若松謙維
○若松委員 去年この法律ができて二年間の期間があったわけですね。この二年間に、こういう法律対応ではなくていわゆる企業会計原則、この方が公正な審議が行われるわけですので、そういった道もあろうかと思います、延長しないで。それをとられないで法律で一年間保障するようなやり方に対しては、どういう御認識ですか。本来、この二年間の時効、それでこの法律の効力は消滅する、その間に企業会計原則なりをつくってこの土地再評価に関する一つの会計処理をやるべき筋ではないかと思うのですけれども、そういった考え方に対しては委員はどういうお考えですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504629X01019990323/37
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038・大原一三
○大原議員 私も先ほど申しましたが、日本の地価というのは国際的に考えられないほどアブノーマルな原価との乖離を時価との間に持っておるという実態、これを先生は私よりはるかに、公認会計士でいらっしゃるし税理士でいらっしゃるわけで、専門家でありますから、今さら私から申し上げるまでもないのでありますが、先ほど私が申しましたような、土地の再評価について、株はおやりになっているのに、これだけ乖離した地価をどのように企業会計に今後反映していくかという、いわば日本的な会計上の課題だと思いますので、この辺については、今後検討されるであろう企業会計のあり方に一石を投じていただいて、先生のような専門家がぜひともこの問題を解決していただきたいな、かように私は思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504629X01019990323/38
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039・若松謙維
○若松委員 大変な大石を投じていただいて、ありがとうございます。
それでは、法務省の考え方なのですけれども、先ほど大原先生も、いわゆる有価証券のやり方にしろ、いろいろあっておかしいという問題提起もされましたけれども、私が少なくともイギリスなりああいう会計先進国に行きますと、有価証券にしろ何にしろ、ここで言う金融資産ですか、そういうものに対しては、短期運用というか毎年の運用の中でやるいわゆるディーリングですね、トレーディングといいますけれども、トレーディング資産についてはやはり時価主義評価で、長期の投資勘定とかそういうものについては原価法という、それなりの区分けがあるんですね。
ですから、先ほど提起されたような問題意識はちょっと当たらないのではないか、まずそういう私の意見を述べさせていただいた上で、それでは、今度は商法について法務省に聞きたいのです。
いわゆる評価の原則について、取得原価主義、これは会計の大原則の原則ですから、それはそれで、その中での文言はいいのですけれども、さらに今後のさまざまな評価の基準についてはその時代のグローバルスタンダードがあるわけで、日本だけがこういう方法がある、日本の事情がこうあるといいながらも、基本的には含み益も含み損も全部出すというのが、これは貸借対照表、損益計算書に計上するというよりも、いわゆる注記でディスクロージャーするというのが時代の流れですから、そういう意味での時価というのですか、時価情報という面ではもうグローバルスタンダードになりつつあると思うんですね。
そこに対して一つ一つ法律対応というのをやっていくと、もう日本の経済は間に合わないと思うし、そういう対応で今後商法でその評価に対して、会計原則に対していろいろと規定していくという考え方を今でも持ち続けるのであれば、私は、今回バブル崩壊で日本がかなり大打撃を受けた、それに対して欧米並みの時価会計をやっていけば、みずから厳しいディスクロージャーをして、その結果早い迅速な対応ができた、こういう反省点があるわけなんですね。ですから、商法への法務省の対応が、企業会計原則に対する対応が、認識が変わらなければ私は第二のバブルの処理の失敗というのが再来すると思いますよ。
そういうことを考えますと、やはり法務省としても、こういう評価や会計処理については会計慣行または会計原則にゆだねる、そういう商法三十四条の文言修正というものを早急にやってもらいたいのです。それについてはいかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504629X01019990323/39
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040・吉戒修一
○吉戒説明員 お答えを申し上げます。
非常に難しい企業会計のお話でございますけれども、先生よく御存じのとおり、商法の計算の規定は主として配当計算を念頭に置いたものでございます。すなわち、社内の資産がみだりに社外に出ないようにということで配当規制をかけるというのが商法の計算の大原則でございます。したがいまして、現在のところはいわゆる原価主義というものを採用させていただいておりまして、その中で各種の資産につきましての評価の方法を定めております。
御指摘のように、資産の評価をすべて企業会計の慣行にゆだねるということにいたしますと実はいろいろな問題が出てまいりまして、商法で、違法な配当をいたしますと当然取締役は損害賠償責任を負います。また、タコ配当というような刑事罰の問題も起きてまいりますので、資産の評価の規定につきましては、これをすべていわゆる公正な会計慣行にゆだねるということはなかなか難しかろうと思います。
ただ、資産の評価の問題につきましては、国際的な会計基準あるいは国際的な潮流というものにつきましてよくよく考えていかなきゃならないということは御指摘のとおりじゃないかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504629X01019990323/40
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041・若松謙維
○若松委員 配当可能利益というのは確かに重要な概念です。資本の充実とか債権者保護とか株主保護とか、そういう面では重要なんですけれども、そういう配当可能利益にしても、例えば実現利益は配当可能利益で、未実現は配当可能じゃない、そのくらいの大枠の区別だけで法律というのはいいんですよ、原則論だけ述べていただければ。こういう土地再評価益も、商法特例法でこれは配当可能利益を引きますとかそんなこそくなことをやらないで、会計原則に本当は任せちゃっていいぐらいなんですね。またこれから次々といろいろな会計原則出ますよ。その発想じゃ私は対応できないと思います。
ですから、本来の商法の趣旨、債権者保護とか資本充実とか、そういったところを害しないものであればもうすべて会計原則にゆだねる。その結果、商法三十四条の文言も、きつく縛らないで、まさにそういう流れに沿った文言修正、ぜひ早急にしていただきたいと思うんですけれども、再度答弁お願いできますか。いつごろまでにそういう検討をしていただけるのかも含めて御答弁願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504629X01019990323/41
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042・吉戒修一
○吉戒説明員 お答え申し上げます。
繰り返しになるかと思いますけれども、先ほど申し上げましたように、商法の計算規定は株主あるいは会社債権者の保護ということを念頭に置いてつくられたものでございまして、先ほど申し上げましたように、違法な配当をした場合に、タコ配当で刑事罰という問題がございまして、これはやはり構成要件が厳格に定められておらないと刑事罰もはっきりしないということもございますので、これをすべて企業会計の慣行にゆだねるということはなかなか難しい問題があるということはひとつ御理解をお願いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504629X01019990323/42
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043・若松謙維
○若松委員 当然、商法計算書類規則ですか、そういった形で公開会社も縛られる面があるわけですね。日本の会計制度、ディスクロージャーの制度として商法と会計原則がある。こういう形の結果、いわゆる日本の経済のバブルの処理はおくれましたね。それはお認めになると思うんですけれども、そういった実態に対して、事実に対して、結果に対して、法務省としてどういう認識でいらっしゃいますか。少なくとも責任は感じていますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504629X01019990323/43
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044・吉戒修一
○吉戒説明員 法務省の方といたしましては、商法という一つの民事の基本法のインフラを整備いたしておりまして、これをもとにいたしましてどのような会社運営がなされておるかということにつきましてはなかなか承知しがたいところがございます。
ただ、先ほどから先生おっしゃいますように、商法上の計算の規定の問題と証券取引法上の企業会計の問題、これはなるべく軌を一にして歩調をそろえていこうという方向で検討させていただいておりまして、国会にお出しいたしました今回の商法の改正法案の中でも、金融資産につきましては一定の限度で時価評価を認めるというような改正をいたそうとしているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504629X01019990323/44
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045・若松謙維
○若松委員 全然答えていないですね。
やはり会計原則がまず最優先なんですよ。その中で、例えば資本の充実とか債権者保護とか、そこで手当てすればいいんですけれども、今の御認識だとやはり物事の発想が全く逆なんですね。そういう主張をさせていただいて、では、大蔵省にお聞きしたいんですけれども、大蔵省いらっしゃいますね。
では、今の会計のあり方として、これは商法も関係しておりますけれども、例えば有価証券は原価法を適用していますよね。今回の土地再評価は、未実現利益、これを計上している。まさに世界の投資家の不信を買っているのは事実だと思うんですけれども、こういった事実に対して、確かに現下の経済情勢ということを考えればいいわけですけれども、それはまた注記等のディスクロージャー対応で十分なわけなんですね。でもこういう結果になったというのは、大蔵省としてどう考えているのか。早急にこのグローバルスタンダードに乖離したやり方はやはり改善すべきだと思うんですけれども、それについてはいかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504629X01019990323/45
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046・内藤純一
○内藤説明員 お答えいたします。
企業会計につきましては、現在、先ほど局長が答弁いたしましたように、時価会計の流れにつきまして企業会計審議会で鋭意検討中でございまして、例えば金融商品につきましても、企業会計の方向で既に方針というのは出されたところでございます。
今後につきましても、国際会計基準あるいは国際的な検討の流れに沿いまして時価会計の考え方を踏まえながら、さらに引き続いて企業会計審議会におきましてさまざまな問題について検討していくというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504629X01019990323/46
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047・若松謙維
○若松委員 今そういう大蔵省の説明ですけれども、企業会計を重視していくと。こういった動向に対して法務省は、少なくとも足を引っ張らない、そういう商法の本来の趣旨に沿う形で可能な限り企業会計については言わない、そういう認識で今後対応していくと思うんですけれども、それでよろしいですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504629X01019990323/47
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048・吉戒修一
○吉戒説明員 お答え申し上げます。
商法の計算関係の規定の検討につきましては、常に企業会計審議会の動向等にも十分今まで意を払っておりましたし、それを踏まえて今回の金融資産の時価会計の導入ということの改正案にもつながったわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504629X01019990323/48
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049・若松謙維
○若松委員 法務省の説明というのは、私の国語力がないからですか、全然かみ合わないですね。何か国会議員をばかにしていませんか。もう一度言ってください、もう一度。日本の将来のために法務省のプラスになるかマイナスになるか評価したいと思います。どうぞ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504629X01019990323/49
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050・吉戒修一
○吉戒説明員 御答弁申し上げます。
企業会計審議会の動向には十分に注意を払いながら商法の検討をしてまいりたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504629X01019990323/50
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051・若松謙維
○若松委員 大分大蔵省の答弁に近くなってきましたので、これ以上やりませんけれども、ぜひお願いします。
それで、ちょっと具体的な質問で、自己株式の消却財源にも使いたいというお話ですけれども、やはりここら辺は本当に難しいところだと思うのです。先ほど、日本の土地だけの特殊事情というところを配慮すれば何らか織り込めないかということもしかりだと思いますけれども、本当は別の方法もあるかと思うのです。
それは別として、今後、評価益なりを自己株式の消却財源だけじゃなくて、資本の組み入れ、いわゆる土地再評価差額というものを恐らく資本準備金と利益準備金の間に設けるような形になると思うのですね。これは商法計算書類規則で手当てするんですか。法務省、どうですか、この科目の表示の場所は。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504629X01019990323/51
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052・吉戒修一
○吉戒説明員 お答え申し上げます。
大変難しい問題でございますけれども、再評価差額金を資本金に組み入れるべきではないかというお尋ねだと思いますけれども、これは先ほど来から御質疑等がございますように、再評価差額金、これは未実現の利益でございまして、性質といたしましては利益剰余金としての性質を有するのではないかなというふうに考えております。したがいまして、そういう性質からいたしますと、資本金に組み入れるべきものではないであろうというふうに考えておるところでございます。
また、この再評価差額金でございますけれども、これは不確定な利益でございます。つまり、処分時において初めて確定した利益が出てくるというものでございますので、これを資本金に組み入れることを認めますと、再評価いたしました土地の価額がさらに下落いたしました場合には、資本の欠損という非常に大きな結果を生じる可能性がございます。したがいまして、こういうふうな結果を生じますと、先生御承知のとおり、商法上の資本維持の原則に反するということもございますので、適当ではないというふうに考えております。(若松委員「それで、評価は、商法計算書類規則、表示の場所」と呼ぶ)表示の場所でございますか。今回のものは、税金分は負債の部で、その余の分は資本の部というふうに……発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504629X01019990323/52
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053・若松謙維
○若松委員 資本の部のどこですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504629X01019990323/53
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054・吉戒修一
○吉戒説明員 失礼いたしました。利益剰余金ということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504629X01019990323/54
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055・若松謙維
○若松委員 それでは最後に、この土地再評価の法案につきましてちょっと私の意見を言わせていただきますけれども、いずれにしても、企業会計をいわゆるグローバルスタンダード化する状況にありまして、まず金融資産の評価につきましては、時価会計、これがグローバルスタンダードになりつつある現状を考えますと、やはりこうした会計慣行または会計基準にゆだねるべきである。さらに、土地を含むその他の資産についても、時価会計の流れに留意しながら、早急に現行の評価原則についての見直しを検討していただきたい、それを要望いたします。
もう一点は、先ほどの有価証券の原価法、そして今回の土地の再評価、こういったところは現下の経済状況に対応するための措置ということだと思うのです。ただ、これは拙速というか、やむを得ない会計慣行または会計基準に照らしての緊急的な措置だと思うのですけれども、今後の経済回復というものにも留意していただいて、早急に望ましい会計処理に移行するように努力することを求めます。
これについては、提案者の委員に答えていただいてもいいんですけれども、法務省に、一応、私の意見並びに要望についてのお答えを願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504629X01019990323/55
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056・吉戒修一
○吉戒説明員 お答え申し上げます。
今先生の御指摘のような方向性でこの法律案につきましての附帯決議の御検討がされておるというふうに聞いております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504629X01019990323/56
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057・若松謙維
○若松委員 では、ぜひ早急に再度お願いをして、時間が若干ありますので、やや関連すればするんですけれども、ほかの質問にちょっと移らせていただきたいと思います。
「政府関係金融機関の延滞債権の状況」という資料を皆様にお配りさせていただきました。今いろいろと評価に関しての議論をさせていただきましたけれども、まず、政府系金融機関の不良債権について、これは大蔵省にお伺いしたいんですけれども、例えば、輸銀、国民公庫、住宅公庫等の政府系金融機関が有する貸付金残高百二十三兆円。これには、新しい国際投資銀行でしたか、ちょっと含まれていないのですけれども、このうち、元金が六カ月以上延滞している場合の不良債権額は、平成十年三月時点で一兆五百八十億円と初めて一兆円を超えたという報道がなされました。
今、政府系金融機関の資産悪化も指摘されている中、せっかく民間金融機関の不良債権が現在早急に処理をされていて、そして気がついたら、今度は政府系金融機関が問題を抱えていた、こういうのではまた日本経済の立て直しがやり直しという形になると思うのですね。
ですから、政府系金融機関にも民間金融機関と同じ不良債権引き当て基準を採用させるべきである、これは二〇〇一年の四月のペイオフまでにやるべきではないかと思いますけれども、大蔵省の考えを聞きます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504629X01019990323/57
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058・溝口善兵衛
○溝口政府委員 御指摘のように、政府関係金融機関の延滞債権の数字はそのとおりでございます。これは、元金が六カ月以上延滞している債権ということでございまして、民間と比べると範囲がやや狭うございまして、その点につきましては、例えば開銀でございますとか輸銀でございますとか銀行に非常に近い業務をしているところにつきましては、自主的に民間の基準に沿いまして不良債権の額を計算いたしております。
それによりますと、六カ月以上の延滞債権ということでございますと、一兆五百八十億円相当あります中で、輸銀の比率が貸付債権に対しまして〇・九四%でございますが、民間並みの方法で計算しますと二・〇四%になります。開銀の場合は、六カ月以上の延滞債権ということでございますと〇・三一%でございますが、民間と全銀協の統一基準の考え方に基づいてやりますと〇・五二%になるわけでございます。
御指摘のように、政府関係金融機関におきましても、業務を的確に遂行し、政策ニーズに効率的、機動的に対応するためにも、みずからの保有資産につきまして正確なリスクを把握していくということは重要でございまして、私どもといたしましては、政府関係金融機関の業務の性格、金融機関の特性を勘案しながら、民間金融機関における動向も参照しながら、今後鋭意努力を続けてまいりたいと思いますし、なるべく早くそういうことが実現できるようにいたしたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504629X01019990323/58
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059・若松謙維
○若松委員 これは、政府系金融機関が全部適用というのは、やはり時間もかかるでしょうから無理でしょうけれども、いずれにしても、二〇〇一年四月というのは、日本の金融機関と預金者との関係というものは一変するわけでありまして、それを一つのめどとしてそれまでに適切な処置をしていただける、そういう理解でよろしいですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504629X01019990323/59
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060・溝口善兵衛
○溝口政府委員 政府関係機関は幾つかございまして、大蔵省ですべて所管しているわけでございませんで、住宅金融公庫でございますと建設省でございますとか、中小の機関でございますと通産省等もございますから、政府部内でもよく相談をしてまいらないといかぬと考えております。今この時点で、私の方から時期まで明定することは難しいかと思いますけれども、なるべく早く、民間金融機関並みの方法で不良債権等の把握をするように最大限努力をしてまいりたいというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504629X01019990323/60
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061・若松謙維
○若松委員 とにかくぜひ早急に、ことしの三月までと言わないまでも、本当は来年の三月までにやってほしいな、これが率直な気持ちです。ぜひ努力していただくように要請して、次の質問に移りたいんです。
では、今度は、郵便貯金と簡保資金、現在、その二つに二十三兆円の指定単があるんですね。いわゆる信託勘定ですね。これが、簡保事業団等を通じて信託銀行にその運用を委託しているわけですけれども、一方、民間金融機関もいよいよ時価会計が適用されるということで、これらの信託財産の評価も時価評価を早急にすべきである。これについてはやはり郵政省になるんですか。郵政省、お願いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504629X01019990323/61
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062・足立盛二郎
○足立政府委員 お答えさせていただきます。
現在、郵貯、簡保合わせまして二十三兆円ほどの指定単があるわけでありますが、これは、簡保本体と一体となって資金運用をやるという観点から国の原価法を採用いたしておりまして、時価評価損益については公表していないわけであります。
これは、基本的に、指定単という金融商品につきましては、長期保有を前提といたしておりまして、売買するものではございません。したがいまして、合理的な時価が形成される市場がそもそもないということ、また、信託銀行相互間でも顧客資産の統一的な評価基準が現在存在していないというようなこと、また、特定の時点におきます時価を公表いたしますと実現されない損益を公表することになりますので、いわば、郵貯、簡保資金の資金規模、大きさ、あるいは公的な性格からいたしまして市場への影響も大きいということで、現在慎重な対処をしているところであります。
しかしながら、この時価情報を開示すべきという流れの中にあることは事実でありまして、こういった中で、私どもといたしましては、保険業界の今後の取り組み、あるいは現在、郵貯、簡保の自主運用に関する研究会を大臣の諮問機関といたしまして進めておるところでありますが、そういったところでの研究会の意見を踏まえましてこの時価情報の開示の問題については対処してまいりたいというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504629X01019990323/62
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063・若松謙維
○若松委員 ぜひ、これから何か民間がまずやったのを数年おくれて政府がやるというやり方じゃなくて、もう御存じの、アメリカの例えば国の決算書も、さまざまな、いわゆる国と認められるところのものはすべて連結ベースで一つの貸借対照表、損益計算書になって、かつそれぞれの資産、負債の分析ができるようになっているわけですね。
そういうことを考えると、少なくとも生損保、それが一つの会計原則なり決まったときにあわせて、ぜひこの郵貯、簡保の指定単、これについても評価の適用を同時にやってもらいたいんですけれども、そういった観点からいかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504629X01019990323/63
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064・足立盛二郎
○足立政府委員 先ほども申し上げたわけでありますが、時価情報を開示していくというのが一つの時代の要請であるということを受けとめながら、周囲のいろいろなそういった動きなども判断してまいりたいと思います。
なお、大蔵省とか企業会計審議会における時価会計の導入が検討されておりますし、また、郵政事業につきましては、中央省庁の改革基本法におきまして、郵政公社になりました時点で、「予算及び決算は、企業会計原則に基づき処理する」ということが同法三十三条に規定されておりますので、こういったことなども踏まえまして適切な対処をしてまいりたいというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504629X01019990323/64
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065・若松謙維
○若松委員 また、これは引き続きウオッチしながら郵政省の対応というのを見ていきたいと思います。
いずれにしてもかなりの巨額なので、また、ふたをあけてみたらこれだけ含み損がありましたというようなことが絶対ないようにお願いしたいと思うんですね。絶対ないと言えますかというと言えないんですよ。それに対してはやはりディスクロージャーをするしかないんですね。それをぜひ改めて確認しておきたいと思います。
時間が詰まりましたので、最後の質問です。
これは大蔵省だと思うんですけれども、ちょっと税法に移らせていただいて、S法人、サブチャプター、Sという、これはアメリカの税制ですけれども、現在、アメリカのベンチャービジネスが活用しておりますこのS法人制度というのが米国のいわゆる経済活力を生む源泉になっている。
これは九八年一月以降なんですけれども、いろいろな訂正があります。最近はLLCという、リミテッド・ライアビリティー・コーポレーション制度、これが導入されて、ともに法人課税ではなくて、いわゆる所得通知書、これは英語ですとインフォメーションリターンと言うんですけれども、これの義務化のみで個人課税される。所得税課税みたいなものですね。ということで、税理士を雇わなくちゃいけないとかいろいろややこしい事務的な処理が省けるということで、これを活用して、余り経理の知識はないけれども、とにかくいい技術を持っている人、やる気のある人がどんどん会社をつくって、それで今アメリカの経済の活力に寄与している。
こういう事実があるわけですけれども、日本もこういうようなS法人的な、まさに中小零細のビジネス、ベンチャービジネスを促すような税制、一つの項目を設けてかなり簡素な税制を盛り込んでもいいのではないかと一つ提言する次第ですけれども、それについての大蔵省の考え方はいかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504629X01019990323/65
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066・福田進
○福田政府委員 お答え申し上げます。
御案内のように、我が国の法人税は、法人の規模にかかわらず、法人格に着目いたしましてその所得に課税することとしておりますが、先生今御紹介ございましたアメリカのSコーポレーション制度は、一定の条件に該当する小規模法人の場合、その選択によりまして、法人税ではなく、株主の所得として所得税の適用を受けることができるものと承知しております。
御指摘のようなこういったSコーポレーション制度につきましては、小規模企業税制のあり方、あるいは法人、個人の課税のバランスといった法人税、所得税のあり方として、私ども幅広い観点から議論すべきであると考えております。
なお、今景気対策の観点からのお話がございましたが、景気対策の観点から議論すべき問題ではないと考えております。なお、アメリカにおきましても、景気対策の観点から本制度が導入されたとは私ども承知しておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504629X01019990323/66
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067・若松謙維
○若松委員 時間が来ましたので、以上で終わります。ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504629X01019990323/67
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068・村井仁
○村井委員長 次に、佐々木憲昭君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504629X01019990323/68
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069・佐々木憲昭
○佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。
土地の再評価に関する法律は、昨年の法務委員会で審議され、三月三十一日に制定されております。その改正案の質疑を、ことしは法務委員会ではなく、この大蔵委員会でやるわけでありまして、手続の上で問題を感じておりますが、内容を見てもいろいろと疑問を覚えるものでございます。
そこで、きょうは、具体的に幾つか聞いてみたいと思います。
今回提案されている改正案の内容に入る前に、土地再評価法が制定されましてちょうど一年になりますので、それがどのような効果を上げたのかという点をまず確認したいと思います。
提案者の大原議員は、先ほどの答弁で、土地再評価の対象となり得る会社というのは八千から九千社あると言われました。そのうち、この一年間でこの制度を実際に利用して土地の再評価を実施した金融機関、これは何行あるか、金融監督庁にまず数字を伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504629X01019990323/69
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070・乾文男
○乾政府委員 お答え申し上げます。
昨年制定されました土地再評価法に基づきまして、昨年三月期決算におきまして、全国の銀行、百四十六行ございますけれども、そのうち八十一行が土地再評価を実施いたしました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504629X01019990323/70
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071・佐々木憲昭
○佐々木(憲)委員 それでは、事業会社は何社、この再評価を実施したでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504629X01019990323/71
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072・大原一三
○大原議員 先ほども申しましたが、事業会社の数は正確な数字を把握しておりません。しかしながら、一、二聞きますと、非常に限られた数しか事業会社さんは評価をしていないということを聞いております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504629X01019990323/72
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073・佐々木憲昭
○佐々木(憲)委員 それでは次に、時価で土地を再評価する場合、基準が問題になるわけですね。
本来ならば、統一した基準で対象となる会社が同時に行う、これがあるべき姿だというふうに私は思うわけであります。ところが、やるかどうかは任意だとされていますね。ですから、今御答弁がありましたように、銀行の場合には半分以上になりますが、全部やっているわけではございません。事業会社は極めて一部であります。
施行令第二条によりますと、基準となる方法として五つ挙げられておりますね。公示価格、標準価格、固定資産税評価額、路線価、鑑定評価、この五つでありますが、このどれを採用してもよいとされているわけであります。
金融監督庁に確かめたいのですが、昨年、土地再評価法を利用した銀行はどのような基準で土地の再評価を行ったか、再評価のこの五つの方法それぞれについて、採用した銀行の数をお知らせいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504629X01019990323/73
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074・乾文男
○乾政府委員 お答えいたします。
先ほど、再評価を実施したのが八十一行と申しましたけれども、今手元にありますのが主要十七行についての計数しかございませんので、御了解いただきたいわけでございますが、主要十七行のうち十一行が土地再評価を実施しております。
各行の評価方法について、各行が発表しております有価証券報告書によりまして調べたところを申し上げますと、まず、公示価格によったところが四行ございます。次に、路線価格によったところが五行ございます。第三に、公示価格ないし固定資産税評価額という表示をしているところが一行ございます。第四に、鑑定評価によるとしたところが一行ございまして、合計十一行ということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504629X01019990323/74
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075・佐々木憲昭
○佐々木(憲)委員 それからもう一つは、一つの銀行で複数の評価方法を採用してよいとされていますね。併用をしている銀行は何行あるか、また、そのうち、一番多い銀行は何種類の評価方法を採用しているか、お答えいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504629X01019990323/75
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076・乾文男
○乾政府委員 先ほど申し上げました主要行のうち十一行がやっているわけでございますけれども、そのうち、一つの方法をメーンにしまして他の方法を補助的に使っているものという表示がしてあるもの、いわば今御質問の複数の方法ということだろうと思いますけれども、その意味で複数の方法をやっておりますところは三行でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504629X01019990323/76
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077・佐々木憲昭
○佐々木(憲)委員 それで、一つの銀行で最高何種類採用していますか。採用している銀行は最高何種類採用していますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504629X01019990323/77
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078・乾文男
○乾政府委員 お答えいたします。
一つの銀行で複数と申しましても、見てみますと、組み合わせはいろいろでございますけれども、公示価格をベースにしてほかの方法を組み合わせたというところを中心にしまして、二つということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504629X01019990323/78
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079・佐々木憲昭
○佐々木(憲)委員 一つの銀行でも複数、二種類が最高ですね。
言うまでもなく、公示価格というのは実勢価格の七、八割程度だとも言われておりますね。それから、固定資産税評価額は公示価格の七割程度の水準だと言われております。路線価は公示価格の八割程度だと。場所によっても違うと思いますが、かなりの格差がございます。銀行の中でも、再評価を実行した銀行とそうでない銀行があります。そうしますと、銀行の中の格差というのは当然生まれるわけであります。再評価を実施した銀行同士でも、再評価方法がばらばらであります。それだけでなくて、同じ銀行の中でも再評価の方法が幾つも併用されている。今御答弁いただいたのはこういう実態だと思うわけです。
そこで、提案者にお伺いしたいわけですが、なぜこんなに違う方法を容認したのか。これでは、会計操作が勝手にできるということになって、極端に言いますと、利益操作、粉飾決算の可能性さえ生まれてくると言わざるを得ないわけであります。なぜ、こういうばらばらな方法を採用させるということをお認めになったのでしょうか。
〔委員長退席、鴨下委員長代理着席〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504629X01019990323/79
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080・大原一三
○大原議員 先ほどもちょっと申し上げましたが、日本の土地の時価というのは、正直言って、これを明確に株と同じようにしている市場がありません。したがって、国土庁あたりが時価と言う場合には売買実例を基準に時価を決める。ただ、売買実例というと今度は問題があります。ひょこっと隣のものの評価が、売買実例が、果たして時価以外のいろいろな取引要件を含んだ要素のものがあるのではないのかなという問題もございます。したがって、一番客観的な評価をしておりますのが、相続税の路線価がどちらかといいますと一番正確な評価になっておる。
日本の土地の評価は、あの地価税をつくるときに非常に問題になりまして、一物三価とか一物四価とか、固定資産税の評価基準も違うし、地価税の評価基準も違うし、公示価格の評価基準も違う、こういうまちまちなことでございますが、あくまでもすべての法律が言っておりますように時価でありまして、その時価の判定要素にいろいろな手法があるというわけでございますから、それらを入れて、金融機関等が評価をする場合に利便性を考慮してあげたというのが実態であります。したがって、この評価は、正直に言いましていいとこ食いができないわけですね。したがって、すべての資産を評価して評価損の出る企業というのは恐らく評価をしないでございましょう。
先ほど、任意であるかと言われたのでありますが、戦後の資産再評価もまさに任意でありましたが、二十九年だけ、やはり資本充実のために上場会社に償却資産だけ強制したという経緯もありますけれども、経済の現状を見ますと、バブルに踊ってやたら投資をしたところは評価損が出ます。そういったものに強制をするということもできませんし、そうでないところ、主として金融機関でありますが、余業禁止、他業禁止の規定がございますので、不動産を抱えてこれを転売したいというような企業は、銀行については原則としてない、したがって評価益が出るであろう、こういう想定からやったわけでございます。
正直に言いまして、不動産、土地の時価とは何ぞやということは、先ほどもるる企業会計の議論がございましたが、非常に難しい問題でございまして、商法監査特例法人ならば企業公認会計士が入っていって検査をするわけでございますので、いわゆる的確な第三者評価ができるシステムがありますから、それによって正確な評価をしてください、こういう規定でありました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504629X01019990323/80
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081・佐々木憲昭
○佐々木(憲)委員 今の御答弁でもちょっと私はまだ納得できないわけであります。相続税が一番客観的で正確だというならば、その路線価を基準にするというのが選択の方法だろうと思いますが、どうもそうはなっていないわけですね。利便性を考慮したと言いますが、利便性を考慮するということになりますと、選択の余地がたくさんあって、あるいは選択しなくてもよい、こうなりますから、統一基準、統一性、客観性というのが失われていく、そういう危険性があると私は思うんです。特に、銀行の場合には、投資家や関係者に正確な情報を開示しなければならないと思うんですね。統一した基準でなければ透明性のある情報開示にはならない。
この土地再評価制度のあり方は、先ほども議論がありましたが、会計処理の仕方として望ましいやり方なのかどうか、根本的な疑問を覚えるわけでございます。しかも、今回の改正案は、大手の事業会社の自社株消却に活用できるというのがねらいだとおっしゃっているわけですね。そうしますと、活用できる範囲を拡大するというふうになります。そうなると、この制度の今のような欠陥をそのままにしてさらに各方面にこれを広げるということになるのではないか。
我が国の商法では、土地など固定資産の評価方法というのは取得原価であります。そのために、土地を時価で再評価するというふうになりますと、商法の原則を根本的に変える特例をつくるということになるわけでありまして、昨年、実際にそうなってしまったわけですね。
本来なら、それを専門的に審議する法制審議会あるいは会計制度審議会で幅広い議論を行って、その議を経て実行していく性格のものだと思うわけですけれども、それがなされてなかった。なぜ正規の機関できちっとじっくりと議論をしなかったのか、この点についてお聞きをしたいと思います。
〔鴨下委員長代理退席、委員長着席〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504629X01019990323/81
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082・大原一三
○大原議員 そもそもこの法律が議員立法であったということは、当面のある限られた政策目的に沿って現実の課題を解決していこうという前提から出発をしたわけでございます。
先ほども申し上げましたが、正直に言って、金融機関の持っていらっしゃる土地はかなり古い土地が大部分であります。それに、時価が驚異的な乖離をしておる実態等を考えますと、公的資金を十三兆円入れて貸し渋り対策をしよう、自己資本の充実をしようというときに、やはり自力によって、持てるものを顕在化することによって、そういう公的資金、つまり国民の一般的負担になるであろう資金の補充をする前に、みずからの実力を開示されたらいかがですかという考え方から出発したわけでございまして、株式については、時価そのものがいわゆる評価の対象になっております。
そういった考え方から出発したあくまでも政策的な要請に基づいた立法でございまして、いつまでもこの問題を引きずっていくつもりはございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504629X01019990323/82
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083・佐々木憲昭
○佐々木(憲)委員 限られた政策目的に沿って行った、緊急対策で貸し渋り対策であった、こういうことでございますね。
では、本当に貸し渋り対策のためになったのかというのを検証したいと思うんです。
昨年の法務委員会で、提案者はこのように答弁されておられますね、貸し渋りを是正し、金融の円滑化に資することが最大のねらいであると。果たして効果を上げたかどうか。金融機関で約四兆円の評価益が生まれたというふうに先ほどおっしゃいました。そのうち四五%、一・八兆円がティア2に算入される。これで、一二・五倍ですから、二十二兆五千億円の貸し出し増にマキシマムではなるはずであった。
具体的にお伺いしますけれども、この再評価によりまして貸し出しは全体で幾らふえましたか。そのうち、中小企業への貸し出しは幾らふえましたでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504629X01019990323/83
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084・大原一三
○大原議員 大変難しい質問でございまして、正直に言ってこの四兆円が、自己資本の充実に二兆円弱が役に立ったわけでございまして、しなかったよりは、私はマイナスではなかったと思います。
それが幾らか出せと言われましても、貸し渋り幾らだという数字が世の中に出てないわけでありますから、ここだけ抽出して出せと言われましてもなかなか算定が難しいということを申し上げたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504629X01019990323/84
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085・佐々木憲昭
○佐々木(憲)委員 目的が貸し渋り対策である、それが中心だ、そのために土地再評価法をつくったのだと言われたわけですから、その目的がどの程度達成されたのか、実際に貸し渋り対策としてどのような効果を上げたのかというのをその数字によって把握するというのは、これは当然のことだと思うんですね、それが中心目的なんですから。目的が達成されたかどうかを把握するというのは当たり前のことですが、それがやられていない。
日銀の調査を見ましても、大手銀行の貸出残高はマイナス約七%程度になっております。
実際に再評価を実施した大手銀行、最近、経営健全化計画というのを各行が出しましたので、それで私、一覧表をつくってみました。それを見ますと、貸出残高を調べてみますと、昨年三月末の実績、ことし三月末の見込み、これを比較してみますと、例えば、三井信託銀行はマイナス九千三億円でマイナス三二・一%、これが一番多いんですけれども、そのほか、東海銀行マイナス七千七百六十二億円、さくら銀行マイナス五千六百六十三億円、第一勧銀マイナス四千六百六十九億円、住友銀行マイナス四千五百三十四億円、これは中小企業向け貸し出しの実績と計画を比較したものでございます。
これらの銀行は、土地再評価によって利益を受けた。それだけではなくて、昨年、一兆八千億円の公的資金の投入を受けた。にもかかわらず、中小企業に対する貸し渋りは全く是正されておりません。結局、昨年制定された土地再評価法の中心的なねらいであった貸し渋り対策、これが成果を上げることができなかった、私はこのように見ていいと思うわけであります。
このことは確認できますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504629X01019990323/85
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086・大原一三
○大原議員 現在の貸し渋りには、いろいろの要因があると思うんです。その全部を土地再評価のわずかの四兆円に責任を持たせるというのは多少過酷な議論でありまして、もしも評価をしなかったらさらに貸し渋りがふえたんではないのかなという議論もできるわけでございまして、全然しない方がよかったということにはならないと私は思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504629X01019990323/86
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087・佐々木憲昭
○佐々木(憲)委員 貸し渋りというのは、私は銀行の行動そのものに問題があると思うんです。国内から資金を引き揚げて海外にどんどん投資をしている、地域の中小企業がそれによって倒産に追い込まれる、そういう事態が次から次と出ているわけであります。それを是正するというのが本来の行政の役割で、貸し渋り対策というのはそれをやることなんです。それをやらないで野放しにしておいて、ともかくお金だけは入れる、そういうやり方では結論としては貸し渋り対策につながっていかない、この点、私は指摘をしたいわけです。中心的なねらいであった貸し渋り対策、貸し渋りの解消、これには実際につながっていかなかった。
先ほども、再評価の方法に五つの方法を認めたことによりまして、企業に意図的な、恣意的な会計処理を可能にし、異なる企業を比較する、そういう可能性を損なうという結果になっております。結局、この土地再評価法というのは、結果的に会計原則に非常に重大なゆがみをもたらし、それだけではなくて、金融機関そのものの正常な機能、地域の経済に積極的に貢献をするという機能、それを是正するという方向にもつながっていかない。そういう点で、私はこの土地再評価法そのもののあり方について根本的な疑問を覚えます。
今回の改正についても、その疑問が解消されないまま対象が拡大されるということでありまして、反対せざるを得ないということを最後につけ加えまして、質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504629X01019990323/87
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088・村井仁
○村井委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504629X01019990323/88
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089・村井仁
○村井委員長 これより討論に入るのでありますが、討論の申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。
大原一三君外三名提出、土地の再評価に関する法律の一部を改正する法律案について採決いたします。
本案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504629X01019990323/89
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090・村井仁
○村井委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504629X01019990323/90
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091・村井仁
○村井委員長 ただいま議決いたしました本案に対し、自由民主党、民主党、公明党・改革クラブ、自由党及び社会民主党・市民連合の共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。
提出者から趣旨の説明を求めます。横光克彦君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504629X01019990323/91
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092・横光克彦
○横光委員 ただいま議題となりました附帯決議案につきまして、提出者を代表いたしまして、案文を朗読し、趣旨の説明といたします。
土地の再評価に関する法律の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)
政府は、次の事項について、十分配慮すべきである。
一 金融資産の評価については、時価会計がグローバル・スタンダードになりつつある現状に鑑み、こうした会計慣行または会計基準に委ねるべきである。さらに土地を含むその他の資産についても時価会計の流れに留意しながら、平成十三年末を目途に現行の評価原則について見直しの是非を検討すること。
一 現下の経済状況に対応するため、一部に会計慣行または会計基準に照らし緊急的な処理がみられるが、経済の回復にも留意しつつ、望ましい会計処理に移行するよう努力すること。
以上であります。
何とぞ御賛成賜りますようよろしくお願い申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504629X01019990323/92
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093・村井仁
○村井委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。
採決いたします。
本動議に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504629X01019990323/93
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094・村井仁
○村井委員長 起立多数。よって、本案に対し附帯決議を付することに決しました。
本附帯決議に対し、政府から発言を求められておりますので、これを許します。大蔵政務次官谷垣禎一君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504629X01019990323/94
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095・谷垣禎一
○谷垣政府委員 ただいま御決議のありました事項につきましては、政府といたしましても、御趣旨を踏まえまして配意してまいりたいと存じます。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504629X01019990323/95
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096・村井仁
○村井委員長 お諮りいたします。
ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504629X01019990323/96
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097・村井仁
○村井委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
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〔報告書は附録に掲載〕
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504629X01019990323/97
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098・村井仁
○村井委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。
午後零時七分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504629X01019990323/98
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