1. 会議録本文
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000・会議録情報
平成十一年五月六日(木曜日)
午前九時三十分開議
出席委員
委員長 坂井 隆憲君
理事 谷 洋一君 理事 平林 鴻三君
理事 宮路 和明君 理事 山本 公一君
理事 古賀 一成君 理事 土肥 隆一君
理事 桝屋 敬悟君 理事 鰐淵 俊之君
小島 敏男君 佐田玄一郎君
滝 実君 中野 正志君
平沢 勝栄君 藤本 孝雄君
宮島 大典君 持永 和見君
保岡 興治君 吉川 貴盛君
桑原 豊君 葉山 峻君
細川 律夫君 松崎 公昭君
白保 台一君 富田 茂之君
西村 章三君 穀田 恵二君
春名 直章君 知久馬二三子君
出席政府委員
自治省行政局長
兼内閣審議官 鈴木 正明君
委員外の出席者
参考人
(東京工業大学
工学部附属像情
報工学研究施設
教授) 大山 永昭君
参考人
(日本弁護士連
合会元副会長) 峯田 勝次君
参考人
(読売新聞社論
説副委員長) 朝倉 敏夫君
参考人
(朝日大学法学
部教授) 石村 耕治君
参考人
(中央大学法学
部教授) 堀部 政男君
参考人
(フリージャー
ナリスト) 斎藤 貴男君
参考人
(兵庫県五色町
長) 砂尾 治君
参考人
(岐阜県知事) 梶原 拓君
地方行政委員会
専門員 蓼沼 朗寿君
委員の異動
五月六日
辞任 補欠選任
西川 公也君 吉川 貴盛君
藤井 孝男君 佐田玄一郎君
同日
辞任 補欠選任
佐田玄一郎君 藤井 孝男君
吉川 貴盛君 西川 公也君
本日の会議に付した案件
住民基本台帳法の一部を改正する法律案(内閣提出、第百四十二回国会閣法第七九号)
午前九時三十分開議
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504720X01419990506/0
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001・坂井隆憲
○坂井委員長 これより会議を開きます。
第百四十二回国会、内閣提出、住民基本台帳法の一部を改正する法律案を議題といたします。
本日は、本案審査のため、参考人の皆様方から御意見を聴取することといたしております。
まず、午前中の参考人として、東京工業大学工学部附属像情報工学研究施設教授大山永昭君、日本弁護士連合会元副会長峯田勝次君、読売新聞社論説副委員長朝倉敏夫君、朝日大学法学部教授石村耕治君、以上四名の方々の御出席をいただいております。
この際、一言ごあいさつを申し上げます。
参考人の皆様方には、御多用中のところ当委員会に御出席いただきまして、まことにありがとうございます。本案につきまして、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。
なお、議事の順序は、初めに参考人の皆様方からそれぞれ十五分程度御意見をお述べいただき、次に、委員からの質疑に対し御答弁をお願いいたしたいと存じます。
それでは、まず大山参考人にお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504720X01419990506/1
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002・大山永昭
○大山参考人 おはようございます。
紹介いただきました東京工業大学の大山でございます。私は工学部の人間でございますので、言うまでもなくおわかりのとおり、情報システムの構築に関してを専門としております。
私の方からお話をさせていただく内容でございますが、内容を詳しく説明する前に全体像を申し上げます。
お手元の資料にありますように、最初に情報化社会の将来像ということを申し上げます。これは、高度情報通信社会推進本部の方で既にいろいろと基本方針等で書かれている内容と一致するものでございます。それから次に、ネットワークシステムの構成につきまして、現状のシステムについての説明を申し上げます。それから三番目に、ICカードの種類とそれから特徴について御説明申し上げます。四番目には、今度はカードのシステム、先ほどの三番目はカードそのものでありますが、カードを使った情報システムとしての特徴についてその次に申し上げます。それから、海外の状況につきまして御説明申し上げた後、住民基本台帳、今回のシステムに関するICカードの利用について私の個人的な意見を述べさせていただきたいと思います。
なお、資料の途中に図の一番、二番、三番、四番と書いてございますが、これは、後ろに添付されております資料の図の右下に番号が入っております。これはウィンドウズのパワーポイントというものでつくったもので右下に一番、二番、三番、四番と入っておりますが、これが各図の番号でございます。
それでは、今の順番に従いまして御説明申し上げます。
最初に、情報化社会の将来像なんでございますが、きょうこうやって我々が集まっているのと同じように、現在我々が社会活動をしている場は、こういうリアルな空間、物理的な空間で行っております。これが情報化された社会では、サイバー空間と呼ばれる電子的な空間にまで我々の社会活動は広がるというのが一般的な考え方でございます。このサイバー空間の概念図が図の一にございます。
従来ですと、例えばこの図の一をごらんいただきますと、我々は徒歩で、ショッピングに行ったり学校へ行ったり銀行へ行ったりということをしております。それが電子空間でネットワークが広がりましてでき上がりますと、コンピューターの前から、我々は電子的に自分の代理という言い方が正確かどうかわかりませんが、自分のかわりとなるものをこの電子空間に送って、例えばショッピングに行ったり、それから教育のために学校へ行ったり、銀行へ行ったりする、こういう考え方でございます。
そこで、このサイバー空間と現実の空間との大きな違いは、ここの左下にありますが、海外との間で国境がなくなっているということでございます。したがいまして、サイバー空間で我々が社会活動をしようといたしますと、我々は自分がだれであるか、あるいは自分の国籍がどうか、どこに住んでいるか、もっと簡単に言いますと、個人として自分がだれであるかというのを確認する手段が一般的になくなってしまいます。そのために、個人の本人確認のシステムが必要というのがサイバー空間での一般論でございます。
もちろん、これは将来像でありますので、そこへ到達するまでに、リアル空間においての情報システムを使った業務の効率化やサービスの質の向上といったことが当然その手前にございます。
それで、このオープンなネットワーク、インターネットに代表されるネットワークでありますが、現在の技術ではこのオープンなネットワークでも十分な安全性が確保できる技術が既に開発、実用化されております。これは御存じのように、エレクトロニックコマース、ECと呼ばれる、あるいは電子商取引と呼ばれている世界でありますが、ここで十分に既に使われつつあるものでございます。住基のこの今回のシステムは、聞くところによりますと完全にクローズなシステムというふうになっておりますので、このオープンネットワークでも十分な安全性を確保する技術を使ってクローズなシステムに適用するのであれば、その安全性はより高いものということが言えるかと思います。
それで、この住基システムといいますのは、電子的な空間における本人確認を実現するための基盤でありまして、決してこのシステムそのもので確認ができるわけではございません。これは四情報プラス一となっておりますが、その情報は本人を確認するために使う一つの基礎的な情報であるという意味でございます。本人確認をするためには、このほかにもシステムが必要です。
例えば、海外へ我々が行くときにパスポートを持っていきますが、あれは住民票をとりますけれども、パスポートという別のものの形で持っていくわけでありまして、住民票がパスポートになっているわけではないということからも、電子空間における本人確認がこの住基システムそのもので本人確認ができるわけではなくて、この住基システムに何らかの新しい情報システムを付加して初めて確認ができるということになるかと思います。
次に、ネットワークシステムの構成について申し上げます。
ネットワークシステムの構成といいますのは、基本的には、ホスト、通信回線、それから端末の組み合わせになります。これは図の二に書いてございます。ホストコンピューターと端末と通信回線の三つ、これが一番単純な例でありますが、この形でつくられます。
具体的な例としては、例えば金融機関のATMのシステムは、この安全性を確保するために管理された専用端末を使っております。それから通信線も専用回線になっております。ただ、顧客が持っているキャッシュカードのようなものは現在磁気カードになっているということでございます。
電話によるチケットの予約システムのようなものが最近普及しておりますが、これは通信回線は公衆線を、端末は一般でございます。これは電話機でございますので、それぞれのユーザーが持っているもので、決して管理されているものではないということでございます。それから、パスワードと会員番号の組み合わせで行われているということでございます。
ここで大事なことは、通信線の安全性というのは、一般的に、インターネット、オープンな回線ですね、次にダイヤルアップの電話回線、これは公衆回線の中のものでございます、それから専用線という順番で高くなってまいります。したがって、専用線が最もこの中では今は安全性が高いということになります。
さらに、今回の住基のシステムのように専用回線、それから相互の認証システム、これは相手を電子的に確認をするということでございますが、それからさらに、そこに流される情報を暗号化するというこの三つを組み合わせて用いる手法というのは、現在ある技術の中から見ますと最も高いセキュリティーということが言えるかと思います。高い安全性を持っているということでございます。
ちなみに、米国の国防総省等がお持ちのシステムもこれと同じような考え方になっていると思います。
今のネットワークシステムの話をさせていただいた上で、カードの状況について御説明申し上げます。
ICカードには、接点のついた接触式と、それから接点がない非接触とがございます。さらに、CPUが入っているものとCPUがないものがございます。さらに、メモリーの容量が大きいものもあれば小さいものもございます。一般的にICカードで使われているという中には、CPUつきのものとそうでないのがあると申し上げましたが、CPUつきのものをスマートICカードと呼んでいます。これは、コンピューターがあるという意味で電脳という言葉を使うときがありますが、ある程度判断をして何か作業をすることができるという意味でスマートなカードという言い方をしております。それで、カードの偽造や変造、それから改ざんの防止に対してはICカードは極めて有効でございます。
これはなぜかといいますと、この図の三のところを見ていただくとおわかりいただけるかと思いますが、カードはパッケージとしてコンパクトに完全に密封されたものになっております。この中には、メモリーがあってコンピューターが入っていてプログラムがついているということでございます。それで、このようなものは外から入ってこようとすると、このコンピューターの制御によって使われるようになっていて、「物理的な保護(タンパー・プルーフ)」と書いてございますが、これはメモリーを外から別の、コンピューターを介さずに中を読み出そう、あるいは中を変えようとすると、自動的に破壊されてしまうとかいろいろな技術がこの中に盛り込まれているということでございます。
CPUつきが高機能、高セキュリティーとなるのは、今申し上げましたように高機能性というのがプログラムによって実現されるからです。ただし、このプログラムは書きかえのできないメモリーに記録されているために、改変は不可能になっております。そのために、ウイルスがたとえカードの中に侵入しても、プログラムとしてはコンピューターが動きませんので、一般的にはウイルスはコンピューターで実行されたときに初めて破壊を始めます。これがICカードではないために、ウイルスが混入あるいは侵入しても中身が壊れることはございません。
それから、高セキュリティーというのは、タンパープルーフであること、それから各ファイルにはかぎがかけられて全く独立しているというようなことがございます。ここのところにつきましては最後の図をごらんいただくとおわかりいただけるかと思いますが、ICカードの中には、A、B、Cと書いてあるように、それぞれデータをしまうための箱がつくられます。それぞれの箱には独自の異なったかぎを設定することができます。外から中にアクセスしようとする場合には、このかぎが一致して初めて動く、中に対してアクセスができるようになっています。外の情報を読み出すこともなく使うようなやり方、一般的に暗号を使う場合には、それも行えるようになっているということでございます。
したがって、氏名、性別、現住所それから生年月日、住民票コードという形で今回の案が出ておりますが、これは他のファイルとは完全に独立させた上で、すなわち違う箱の中にしまって、そこへのアクセスは相手すなわちアクセスしてくるところが正当かどうかを確認した上で初めて可能になるようにすることができます。もちろん、これはカードの設計あるいは設定の仕方、ファイルの中はどうつくるか、そのやり方に関係してまいりますが、それが技術的には今十分できるようになっているということでございます。
スマートICカードには、さらに個人識別用のパスワードを記録することも可能になっています。このパスワードは、今の銀行のキャッシュカードですと、あのカードの上に磁気ストライプの形で書かれておりますので暗号化していても何でも外から読むことはできてしまいます。しかし、ICカードの場合には、チップは中に入っていますので読むこともできないようになっているということでございます。ここは大きな違いでございます。ですから、最近は偽造、変造に対して強いICカードが注目されているということでございます。
今の流れからいいますと、安全なデータキャリ、すなわちデータをしまって運ぶという意味と、それから相手を確認するためのものとしてのデバイスとして利用されることが現在行われています。
今はICカードそのものの特徴でありますが、今度はカードシステムとしての特徴について御説明いたします。
現在あります磁気カードを使ったシステムと基本的には同じでありまして、違いは磁気カードがスマートICカードにかわっているということでございます。ほかのシステム、すなわち端末、通信線、ホスト、これはすべて同じというふうにお考えいただいてよろしいかと思います。スマートICカードにする場合には、先ほど申し上げましたように、偽造ができないあるいは変造ができないということから磁気カードをスマートICカードにかえる流れができてきております。
さらに、複数のアプリケーションが一つのカードに乗っても、これは完全にそれぞれがアクセスのコントロールをかけることができますので、独立させることが可能になっています。これももちろん設定の仕方、つくり方になりますが、今のカードはそういうことができるようになっているということでございます。したがって、相乗りしても完全に独立していますので、そこは十分な安全性が確保できるというふうに技術的には考えられます。
海外の動向について簡単に申し上げますと、保健医療のカードでは、国際協力プロジェクトとして、ブラッセルで閣僚会合があったときにスタートしたものだったと思いますが、九四年か九五年かちょっと記憶が定かでありませんが、申しわけございません。その中の十一プロジェクトの中の八番目にグローバル・ヘルスケア・アプリケーションというのがございました。この中にサブプロジェクトがございまして、その六番目に保健医療カードを国際的に流通させるための技術の話がございます。米国はまだなんですが、ヨーロッパではこの保健医療カードを使うというのが、ICカードを使った状況ですが、かなり一般化してきております。
フランスの例では、医療従事者の方にアクセス用のスマートICカードを配付しております。これは正当な権限者かどうかを確認するための手段でございます。
それから、ドイツでは、マルチメディア法というのができておりますが、その中では個人の秘密かぎ、これは電子署名という、日本のシステムの現状になぞらえれば印鑑を電子化したようなものでございます。その中のかぎをカードの中にしまって配付するというのがドイツの動きでございます。
それから、既に民間の分野ではVISAやマスターカードというのは、偽造、変造の問題も含めまして、スマートICカードの利用になっているという状況でございます。
最後に、私の意見を申し上げさせていただきます。
住民基本台帳システムにおけるICカードの利用に関してでございますが、まず、高い安全性を有するスマートICカード、ICカードでも種類がいろいろあると申し上げました、スマートなICカードを使うべきだというふうに考えます。現状の八ビット、八キロバイトがございますが、それ以上のものが安全性を高めるのであれば望まれるということもございます。
それから、四プラス一情報というのは、独立したファイル、これはDFという言葉を時々使いますが、これに記録して、相互認証用の暗号かぎを組み込むことで安全性を十分に確保すべきである。これでほかの情報と相乗りしてもこの部分の安全性は確実に守られると考えます。
三番目は、カードそのものの正当性。これはパスポートの正当性というのが紙の質や印刷の仕方あるいはインクでつくられているのと同じでありまして、情報そのものではなくて、カードそのものの正当性を確認する手法をさらに導入すれば安全性はより向上するということが言えるかと思います。
それから、スマートICカードの利用によって、先ほど申し上げましたように、公的分野における本人確認手段の基盤ができます。このシステムそのものが、本人確認ではなくて基盤になるということでございます。これは既に本部で決定しております電子政府あるいはワンストップ行政サービスといったものの実現へ大きく貢献できるものであるというふうに考えます。
スマートICカードの利用は、印鑑の電子化、先ほど電子署名ということはちょっと申し上げましたが、この実現に極めて有効だと思います。今年度中にアクションプランの中に通産省、郵政省、法務省の三省の協力で電子署名の法的効力に関する検討をするというふうに伺っておりますが、これが実現しますと、スマートICカードの利用というのはここの分野でも非常に有効であるというのが一般的でございます。
それから、最後に、スマートICカードはGPKI、これは公的な機関の公印に当たります、これの実現、ですから公印を電子的に出すということでございますが、これにも極めて重要な技術で、既に欧米の諸外国ではこの辺の議論が行われているということでございます。
私の意見は以上でございます。ありがとうございました。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504720X01419990506/2
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003・坂井隆憲
○坂井委員長 ありがとうございました。
次に、峯田参考人にお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504720X01419990506/3
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004・峯田勝次
○峯田参考人 紹介いただきました弁護士の峯田と申します。
私は平成九年度の日本弁護士連合会の副会長をいたしておりまして、その際に、お手元に配付いただいております日弁連の平成十年三月十九日付の意見書を発表したときの責任者でございます。調査室資料のナンバー平成十年の六号に掲載をされております。あわせて、個人情報保護法についての大綱も参考資料として本日お配りいただいております。私の意見は、そうした日弁連でまとめました意見をベースにいたしまして、若干私の意見も入るかと思いますが、申し上げることになります。
結論を申しまして、日弁連はこの今回の住民基本台帳法の一部改正案について反対の意見を述べております。理由は、今回の改正法がプライバシーの権利を侵害し、監視国家を招来するというその両面での危険性が高いということでございます。すべてを申し上げるわけにはまいりませんので、要点だけ申し上げたいというふうに思っております。
最初に、プライバシーの権利でございますが、プライバシーの権利につきましてはいろいろな定義がございます。一人でほっておいてもらう権利あるいは私生活をみだりに公開されない権利、最近では自己に関する情報をコントロールする権利というふうに、さまざまに定義されておりますが、私どもは、このすべてを含んでいるものだというふうに理解すべきだろうというふうに思っております。憲法十三条に、個人の尊厳、幸福追求の権利というものを規定しておりますが、それに由来するものだと思料いたします。
このプライバシーの権利をガードするためにOECDの八原則等が定められているわけでありますが、かつて、一九八五年になりますが、西ドイツの憲法裁判所が、全人格的に管理することにつながる住民基本台帳番号制度は憲法に違反するという憲法判断を示したことがございます。
そこでも議論になったところでありますが、行政機関が収集し、利用している個人情報というのは大変たくさんございます。犯罪情報はもちろん、税務情報、医療情報、年金福祉情報、家族情報あるいは教育情報、実にさまざまでございます。これらがオンラインで結合されるという事態になった場合に、国民は国家に対して丸裸にされる、そして自己情報のコントロール権も失うということが招来することは明らかであろうというふうに思います。
データマッチングといっておりますが、果たして、今回の改正法はそれについて十分なガードをしているだろうかという問題がございます。本来、行政は、行政目的の範囲内で個人情報を集め、利用できるだけであります。私どもが日常に関与しております犯罪に関する情報といえども、ちゃんと令状をとりまして、特定の目的の範囲内でしか情報を集められないというふうになっております。
ところが、今回の改正法の目玉は、一人一人に基本的に終生変わらぬ十けたの住民票コードをつけるというところにございます。このコードというのがすべての行政機関、民間の機関の保有する情報にアクセスするためのマスターキーにもなり、また、すべての行政情報、民間情報を結合するためのマスターキーにもなる、そのところが非常に重要なポイントだろうというふうに思っております。
さて、今回の改正法で、このデータマッチング、データ結合は防げるというふうに考えることができるだろうかということでございますが、私どもは、大変それは難しいのではなかろうかというふうに考えております。
と申しますのは、この改正法は、提供を受けました行政機関が住民票コードを含む本人確認情報を使用し終わった後、これを消去するということを全く規定しておりません。例えば、不動産鑑定士の登録のときに住所、氏名等が要るわけでありますが、その確認する作業に今回のデータを使う。そこで用事が一たん済むわけでありますが、済んだ確認情報をその場ですぐ消去するという規定はどこにもございません。参考までに、神奈川県の個人情報保護条例の中には、必要でなくなった個人情報は廃棄する、消去するという規定を持っております。つまり、行政機関が一たん提供を受けました住民票コードをマスターキーとしてそれをデータベース化するということを認めているわけでございます。
それでは次に、各行政機関が保有するデータベース相互間を結合することはできないのだろうかということでございます。
この改正法では、目的外利用、データの結合もこれに当たるわけでありますが、これについては禁止するという規定を持っております。しかし、受領者である省庁がこの結合をすることについての刑罰規定はございません。また、そういった違法な利用について、国民の側から中止請求権というような不服申し立ての手続を保障しているわけでもありません。
また、国民の側からしましても、例えば国民健康保険でありますと、利用したごとにどこの医療機関でどんな医療費を使ったかというのはちゃんと後から報告が参りますけれども、今回のシステムでまいりますと、こういった個人確認情報に対するアクセスの記録というのは本人に通知されることは全くございません。したがいまして、国民から見ますと、自己情報がどこにどう流れているのかということを把握することは極めて難しいようなシステムになっております。
他方、行政機関相互間における個人情報の利用につきましては、大変長い名前の法律ですが、行政機関の保有する電子計算機処理に係る個人情報の保護に関する法律が、少し前の法律ですが、施行されております。略して保護法と申し上げますが、保護法では、一応個人情報の目的外利用、外部提供ということを禁止しているわけでありますが、これについての違反に対する刑罰規定はございません。そしてまた、一応原則的には禁止になっておりますが、行政機関内部あるいは行政機関相互間においては大変幅広い例外規定が置かれておりまして、実質上無制限に近い利用、提供を認めているというのが実情であろうかというふうに考えております。
今回の改正法のベースになりました研究会報告も、オンライン結合の禁止の廃止ないし緩和ということを求めていることは既に御案内のとおりでございます。これでは、私どもは、データ結合は防ぎようがないのではなかろうかというふうに考えた次第であります。
アメリカでは、一九八八年にこういったデータ結合の危険性ということにかんがみまして、コンピューターマッチング・プライバシー保護法というのが制定をされまして、データマッチングプログラムそのものを公示する、そして提供機関と受領機関相互間での書面による取り決めをさせまして、これを議会に報告させる、国民がそれを見ることができるというふうなシステムがございます。データ保護委員会の設置なども保護措置としてうたわれておりますが、日本にはこのような制度は全くございません。
次に、安全性の問題でございます。これもOECD八原則の中ではかなり重要な問題でございます。
今日、コンピューター入力された個人情報が不正にアクセスされた場合、大変被害が大きいというのは民間における取り扱い事例で明らかでございます。既に、大体が数十万人単位の個人情報が一瞬の間にフロッピーディスクにおさめられて、次から次に流通するというのが現実の姿になっております。
ただいまの東京工業大学の先生のお話だと、大変安全性が高いというお話でございますが、私どもは技術者ではありませんのでその点につきまして深いコメントをする立場にはございませんが、いわゆる最高のセキュリティーを持っているであろうと思われるアメリカの国防総省に対するアクセスすら起こっているという、社会的事実を一つ申し上げたいというふうに思います。
研究委員会報告は、専用回線の利用であるとかパスワード等によるチェックその他の安全装置を挙げておられますが、果たしてこれだけで安全が確保できるのかということにつきましては、私どもの弁護士の中でこういった技術的問題に詳しい者の話によりましても、それで安全ということを本当に保障できるということにはならないということを申しております。
安全性の要点は、極力回線上にデータを流さないということだろうというふうに思いますが、今回は、専用回線にデータが流れることになっております。また、データベースの置いてあるところがなるたけ少ない方が不正なアクセスを防ぐ道にはなるわけですが、今回の法改正の中では、市町村のほか、都道府県、指定情報処理機関の三カ所でデータベースを置くことになっております。下請機関に個人情報の処理を任せるということもうたわれております。しかし、現実に民間機関で起きている個人情報の不正利用というのは、下請機関の中から流出していることが大変多うございます。
次に、民間における本人確認情報の利用の問題でございますが、民間における個人情報のはんらんというのは大変目に余るものがございます。現在、この分野につきましては、一部の地方自治体で緩やかな条例上の規制があるほか、中央の通産省等による行政指導、通達があるだけでございます。
果たして今回の改正法に基づいて民間がどう反応するかということがございますが、確かに法律上、住民票コードの告知要求そのものは禁止をされておりますし、住民票コードを用いた民間におけるデータベースの構築は一応禁止をされています。
しかし、任意に、例えば金融機関があなたの住民票コード番号を教えてください、あるいはICカードを持っている人にそれを見せてくださいと言った場合に、見せてくださいよということは告知要求になりますから言いにくいですが、任意にお見せいただけるのであれば拝見しますよということになった場合に、これは任意の提供ですから拒否できないわけですね。恐らくお金を借りに行った人は、提供を求める側がこれは任意ですよと言った上でいかがですかと言われて、嫌ですと断われる立場にはないんじゃなかろうかというふうに思っております。
また、データベースそのものも、自社用のデータベースをつくることは許している法律になっております。外部に提供する目的でのデータベースは禁止されておりますが、自社用のデータベースはつくっていいことになっておりますし、刑罰も科せられないという仕組みになっております。私どもは、民間における今回の住民票コードの流通は防げないというふうに考えております。
そのほか、国民の権利保障と救済手続の不備ということを申し上げたいというふうに思います。
今回の法改正を通じまして、本人確認情報は全国の国、地方の行政機関、法人に提供されることになっておりますが、自治体にまいりますと、利用目的は条例で定める事務のために提供できるというふうになって、大変利用範囲が広くなっております。ほとんど無限定と言っていいと思います。
しかも、国民一人一人というのは全国の自治体の条例を知り得る立場にはございませんので、国民は、果たして自分のコードを含んだ本人確認情報がどこにどう利用されているのか、全く知る由がないというのが実情であろうかというふうに思います。したがって、不正使用そのものをチェックするチャンネルを国民は持っていないということでございます。
今まででございますと、本人確認のために住民票を下さいと言えば、この官庁が住民票を欲しいんだなということがそこでわかります。何で必要ですかということを聞くこともできます。しかし、これからはそれもできないということになります。
そしてまた、利用制限違反、目的外利用とかということでございますが、これについて禁止する文章がたくさんございますが、国民の側からこれに対する中止請求をし、その処置に不服がある場合に行政不服審査法に基づく不服申し立てをする、あるいは場合によっては行政訴訟を提起する、こういった不服申し立ての手段もないわけでございます。こういったことを考えますと、個人情報保護法の現在の到達点から考えますと、大変個人の救済手続が不十分であるということを申し上げざるを得ないというふうに思います。
最後になりますが、私どもは、法改正をする前に、民間を含めまして個人情報保護法をつくることがまず先決じゃなかろうか、それから、その実態を踏まえて、今回のような法律改正が必要かどうかということを改めて議論するというのが手順ではなかろうかというふうに思います。それを差しおいて、とりあえずこういったコードを全国民につけるというようなシステムをつくるとすれば、先々、納税者番号制度の将来を展望するというような行政上のプログラムがなければ、恐らく考えにくいような法改正ではなかろうかというふうに思っております。
国民の側から見ますと、お考えいただいたらいいと思うんですが、住民票を必要とする場面というのは果たして一年に一遍あるでしょうか。私ども弁護士の仕事をしていますと、まず印鑑証明書というのを年に何回かとりますけれども、これはそういう職業を持っているからでございますが、一般の人にとってみればほとんどない。住民票をとるというのは非常に簡単に郵便でもとれますので、国民の側にそれだけのメリット、バックペイがあるのかというと、リスクを冒してまでやるだけのメリットがあるのか、そのことについて大変疑問を持っているところでございます。
時間でございますので、以上で私の意見陳述を終わらせていただきます。ありがとうございました。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504720X01419990506/4
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005・坂井隆憲
○坂井委員長 ありがとうございました。
次に、朝倉参考人にお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504720X01419990506/5
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006・朝倉敏夫
○朝倉参考人 読売新聞論説副委員長の朝倉でございます。
私どもにとりましても、もちろん新聞という立場から、プライバシーの保護という、つまりプライバシーにかかわる問題が最大の関心ということであります。
御存じかもしれませんが、読売新聞は九四年の十一月に実は憲法改正試案というものを発表しておりまして、この中で、人格権、プライバシーに関する条項を新たに盛り込んでおります。これは、二年間にわたる社内の勉強会といいますか検討会といいますか、その結果なのでありますが、その分、多分普通のマスコミよりもと言うとおかしいですが、プライバシーの問題には極めて強い関心を抱いてきたという経緯がございまして、それで、翌九五年の三月に自治省の研究会が中間発表をしました際、その内容を見まして、どうもちょっとこれはプライバシーの問題に関して甘いなといいますか、まだまだ議論すべき点があるなということで、この研究会の後半の議論に参加させていただきました。
研究会後半の議論については、読売だけではなくて、主要全国紙の論説委員、OB、それからテレビの解説委員等も参加しておりましたが、マスコミ関係は当然ほとんどプライバシーの問題に関心を集中したような印象もありましたが、そうした議論の積み重ねの結果として、一年間議論して九六年三月に最終報告を出した、こういう経緯でございます。
その後、労働界を含む有識者懇談会などという議論の場がありましたり、いろいろな動きを受けて各政党の中で議論がありましたし、国会でも議論がありました。さらに、この間さまざまなマスコミが膨大な量の報道及び評論を出しております。
私としては、こういう経緯、これだけの議論、それからこれだけの報道という流れの中では、国民もかなりの程度、あるいは十分と言えますかどうか、これは見方によるところですが、国民にも十分この問題は知られている、そのように考えております。ちなみに、読売新聞も、一面トップの記事を初め社説だけでも四回、この問題を取り上げております。
そういう経緯でできた最終報告、それからその後のいろいろな議論の中で、手直し、整備されてきた結果としてのこの法案ですが、私としましては、我々の関心のあったプライバシーにかかわる民間の利用禁止とか、法の目的に限定する、あるいは法の目的外に利用するためのデータマッチングをしてはいけないとか、あるいは罰則の設定等々で国際的な水準の歯どめはできたのであろう、そのように受けとめております。
ただし、国際的水準といいましても、これは国により非常に多様で、制度も多様であれば、例えばプライバシーに関する感覚も多様であるということは、皆様方よく御存じだろうと思います。
もう一度、この法案の性格について私どもがどのように考えておりますかといいますと、まず大きな基本としては、とにかくこの情報化時代の進展というのは、歴史的なといいますか、そういう現象でございますから、例えば民間の方ではすさまじい勢いで日々情報処理革命が進んでいるわけであります。こういう時代の流れに沿って行政の方も効率化に努めるというのは当然のことでありまして、むしろそれが行政の責任でありましょう。逆に、もし行政がそれをしなければ、これは職務怠慢であります。
職務怠慢ということは現実にはありませんで、例えば個別の分野ではさまざまな個別の番号化が進んでいるわけでありますけれども、このたびの住民票コードシステムを構築する法律といいますのは、先ほど申し上げましたように法律に定める目的外でのデータマッチングは禁止する、こういう性格の法律であるわけであります。比喩的に言いますれば、行政番号規制制限法と言ったって構わないわけでありまして、これをもとに全部自由自在に使えるという法律ではないことは改めて説明するまでもないと思います。
基本的に、プライバシーの問題と対比的に、一方で監視国家という言葉が使われるわけですが、私は、この監視国家という言葉を使いながら議論するときには、しばしば議論が混乱ぎみかなと感じます。
例えば、先ほど外国の制度と言いましたが、住民票を使うという意味で一番似ているのは、スウェーデンやデンマークの北欧諸国であります。北欧諸国では、御存じのとおりこれをもとに一元的にいろいろな情報をファイルアップする、こういう運用をしております。しかしながら、どうでしょう、一般的に北欧諸国を監視国家だとか全体主義国家だとか、そのように言う人は普通いないんじゃないでしょうか。これはなぜかと申しますと、つまり北欧諸国は、自由と民主主義という価値観を基盤として構成されている国家だということをみんな知っているからであります。
例えば、同じようにドイツでは、十六歳以上の国民は全員身分証明書を常時携帯する義務があります。しかし、だからといってドイツは、オイコラ警察国家であるなどとはだれも思わないわけであります。これも、今現在のドイツは、自由と民主主義を基盤とした国家であるということをみんなが知っているからであります。
つまり、そういう国ではそのようには運用されません。こういう共通番号やらコンピューターシステムやらが監視体制、思想統制に結びつき得るというのは、旧ソ連やあるいは近隣の社会主義国のような一党独裁の国家においてであります。そこのところがちょっと混乱しているのではなかろうかと。
言うまでもなく、日本は、自由と民主主義あるいは基本的人権の尊重という原理が、十二分にとは言いませんけれども、十分に定着した議会政治の、議会民主政治といいますか、そういう国であります。現在、ここでこうして開かれた国会審議をしているという事実それ自体が、それを証明していると私は考えます。
ただ、もう一つ個別分野の番号について言いたいんですが、基礎年金番号というものがあります。もし住民票コードというものを国民総背番号と言うのであれば、この基礎年金番号というものは成人総背番号制度であります。しかも、御存じのとおりこの基礎年金番号のもとには、四情報だけではなくて婚姻関係やら扶養者の問題とか、収入、勤務先、こういったものも全部ファイルアップされます。しかしながら、この成人総背番号制度については、何の法的歯どめもありません。この番号のもとに民間がいろいろな情報をファイルアップすることも、もしくはデータベースを構築することについても、何の法的措置もありません。
そこで、この法案の問題点についていろいろ懸念する、心配するという議論があるのはそれなりに意味があって、そういう議論があるからこそ、この法案が練り上げられてきたという側面があるのでありますけれども、ただ、考えてみてください。そうした心配の一つ一つについて、では基礎年金番号はどうなんだということになると、およそナンセンスな議論ということになりかねないわけであります。将来、年金制度の運用自体も、これは住民票コードをうまく使えば官民ともに便益があるであろうと可能性としては思われますけれども、この基礎年金番号の運用、実用については、何らかの歯どめが要るんであろうと思います。
他方で、納税者番号という問題、これもまた一つこの法案との絡みでよく言及されますが、これについては、言うなれば、この法案はこれで一つ完結しておりますが、納税者番号ということになりますと、官と官、官と民の関係ではなくて、民と民との関係がいろいろ対象になるわけです。例えば取引にしてもそうですね、極端に言えば送金でも預金でも。
したがって、この場合は、民間を含む個人情報保護法といいますか、いわゆる包括的個人情報保護措置が大前提となると考えます。したがって、その問題とこの住民票コードの法案における包括的個人情報保護の問題とを一緒にして議論するのは、これは問題の混乱だと思います。
時間が参りましたが、この問題をめぐる問題点がいろいろある中で、反対の理由は何があるのか、一つ一つの問題がきちっと区別されているのかというところがしばしば疑問になるのでありますが、確かに背番号がついていると思えばいい気持ちのするものではありませんが、早い話が、私が住んでいる市役所は私のプライバシーを丸裸にして持っておるわけでございまして、感情的にならず冷静な議論をしていただきたいと申し上げて、私の意見を終わります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504720X01419990506/6
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007・坂井隆憲
○坂井委員長 ありがとうございました。
次に、石村参考人にお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504720X01419990506/7
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008・石村耕治
○石村参考人 先ほど峯田先生の方から、法律的な面はかなり詳しく説明がございまして、私も全くそれと同じような考えを持っております。
お手元の方に一応レジュメをお配りしております。私は、この住基法の改正法案には十点ぐらいの問題点があるということで、先生方の方に詳しくレジュメをお配りしておりますので、大体これに従ってお話をさせていただきます。
まず、問題の第一点でありますけれども、先ほど朝倉参考人がちょっと言いましたけれども、国民背番号と限定番号とどう違うのかという点がちょっとはっきりしておりませんので、その辺をまず第一点として。
高度情報化社会というのは、これは番号化社会でございます。ですから、現代社会ではさまざまな番号が使われており、ある意味では番号というものは不可欠であるというふうに言えます。それから、高度情報化社会はまたデータベース化社会と言われまして、データベースも不可欠な要素であります。これを否定する気持ちは毛頭ございません。
ただ、問題は、運転免許証番号とかパスポート番号とか、それぞれ行政目的に固有な番号が使われていますけれども、こうした番号というのもまた重複しないようにそれぞれ対象者につけられております。こういうふうに、特定の行政目的に使われる番号が、ここで言う限定番号であります。これに対して、汎用、つまり多目的に使うことを予定しているのが共通番号、すなわち国民背番号であります。ナショナルIDナンバーとかいいます。
私たちは、運転免許証を身元確認に使ったりします。しかしながら、相手はその免許証番号を余り重要視しません。なぜかといいますと、その番号は専ら運転免許の目的にだけ使われているからであります。つまり、限定番号であることから、この番号を知っても、それを頼りにその人の他の個人情報を芋づる式に手に入れることは難しいからであります。
これに対して、多目的利用を前提とした国民背番号の場合、その番号を入手できれば芋づる式にその人の個人情報を入手できる可能性が高まります。国民背番号は、いわゆるマスターキーのようなものです。一たん国民背番号制を導入すると、番号の悪用や乱用があった場合にはプライバシーを保護するのは非常に難しいわけであります。他人のプライバシーをのぞき見たいという者は、何としてでもこのマスターキーを手に入れようとするに違いありません。
自治省の想定している住民票コードは多目的利用を前提としています。国民背番号に当たるものです。平成十一年四月二十日の衆議院地方行政委員会での野田自治大臣の答弁でも、このコードを導入できればコード利用をどんどん拡大していく旨を明らかにしています。まさにマスターキーと言われる背番号コードです。汎用の国民背番号制では、自分の情報を自分でコントロールできる権利、つまり情報プライバシー権は風前のともしびとなってしまいます。
一方、納税者番号とは本来課税目的に絞って使われる限定番号を指します。パスポート番号などと同じ種類のものです。衆議院地方行政委員会の質疑を見ていますと、国民背番号である共通番号があたかも当然であるような形で話が進んでいるように見えます。しかし、住民票コードという共通番号をつくること自体が問題なわけであります。争点がすりかえられないように、論点を見据えた議論をしなければいけないと思います。
次に、問題の二点であります。
自治省や政府税調は、住民票コードは納税者番号にも使えると言っていますけれども、本来、納税者番号とは限定番号を指します。また、こういうふうに住民票コードを納税者番号に使ったら、コードは民間に垂れ流しになってしまいます。こういうことではプライバシーが守れなくなってしまうんですね。オーストラリアの納税者番号に見られるように、本来、納税者番号は課税専用の限定番号を指します。したがって、現在税務署が使っている納税者整理番号を整備して使えば済むことであります。住民票コードなどは要りません。
むしろ問題は、政府税調など、本来の納税者番号と国民背番号を混同させて、区別をあいまいにさせている点にあるということです。住民票コードを納税者番号として使った途端に、源泉税の事務を通じてコードは民間に垂れ流しになってしまいます。これは住民票コードを新たに導入される介護保険番号などに使った場合も同じであります。介護保険の対象業務には広く民間企業の参入が予定されています。このことを考えれば明らかであります。
自治省は、住民票コードが民間に垂れ流しにならないように、専用回線を使い、守秘義務を強化するなど厳正なセーフガードを設けるので大丈夫だと言っていますが、しかし、この点は全く意味不明な対策としか言いようがありません。民間に垂れ流しになってしまう以上は、この対策は全く問題にならないと思います。
我が国では、先ほど弁護士会の峯田先生の方から御指摘があったように、民間をカバーするような包括的な個人情報保護法もありません。一たん民間に流れた住民票コードの二次利用、地下利用をとめることは、至難のわざであることは明らかであります。
もっとも、民間をカバーする個人情報保護法ができたとしても、国民総背番号である住民票コードの地下利用、裏口利用を規制することは極めて困難と思われます。比較的自治省構想に柔軟に見える連合ですら、民間をカバーする包括的な個人情報保護法が先行して制定されない限り、自治省構想は認められないとしています。これは、将来を見据えて住民票コードの利用拡大に伴うプライバシー侵害を危惧しての発言と思われます。
ともあれ、住民票コードを導入することはもちろんのこと、住民票コードを納税者番号に転用することは極めて危険と言わざるを得ません。納税者番号は、その必要性にコンセンサスが得られたとしても、プライバシーを保護するためには限定番号として構成される必要があるわけであります。
次に、問題点の三、運転免許証番号、パスポート番号と、複数の限定番号が並列しているのは非効率、不経済に見えるという考えがありますが、監視社会にしないための最低限のコストだというふうに考える必要があります。確かに、幾つもの限定番号があるのは非効率、不経済のように見えます。しかし、こうした最小限の非効率は、国民のプライバシーを守るためのコストと考えてはどうでしょうか。
参議院など非効率、無用だと言う人がいます。しかし、二院制によるある意味での非効率が、民主主義を守り、国民の利益につながっているのではないでしょうか。
自治省の想定している多目的の国民背番号、住民票コードは、行政内部では経済的になるように見えるかもしれません。しかし、国民の側では、限定番号の場合に比べプライバシーへの危険が格段に高まります。国民の側のプライバシーを守るため、有形、無形のコストがかさみ、いわゆる外部不経済となる点も十分考える必要があります。
インターネットの世界でも常にパスワードを変えることが求められます。他人による盗用、悪用を防ぐため、国民背番号をいろいろな目的に一生涯にわたり共通番号として使うというアイデアは、危険性が明らかであります。自治省の構想は許してはならないというふうに考えます。
それから、問題の第四点でありますけれども、アメリカでは社会保障番号、カナダでは社会保険番号を使っていますが、プライバシーの問題が多発しています。多目的番号をつくらないことが最強のプライバシー保護措置と言えます。
まず、アメリカのSSN、カナダのSINは、本人申請で番号が付与される仕組みであります。これに対して、自治省の想定している住民票コードでは、おぎゃあと生まれたときに役所が強制的に付番する仕組みであります。
SSNやSINは、本来、社会保障目的で限定目的で利用されているものが、歯どめがかからなかったことから多目的に拡大利用されて今日に至っているものであります。SSN、SINの乱用は後を絶たず、民間での垂れ流し、地下利用はもちろんのこと、政敵の追い落としやリベラルいじめなどでも大問題となっています。最近封切られたアメリカ映画「エネミー・オブ・アメリカ」、原題が「エネミー・オブ・ザ・ステート」は、SSNの乱用の危険性をドラマチックにあらわしたものと言えます。
かつて、カナダの政府はSINの利用制限を試みました。しかし、一たん多目的利用に供された番号の利用を効果的に制限するのは非常に難しいわけであります。アメリカの議会でもSSNのコントロールがしばしば議論になっています。しかし、民間まで使っているSSNの利用制限は困難なのが実情です。
アメリカ、カナダの実情から学ぶことは、どのような限定番号でも、歯どめをかけずにほっておくと、事実上の国民背番号にエスカレートしてしまうということです。ましてや、自治省が考える住民票コードは当初から多目的利用が想定されており、将来的には民間からのプレッシャーにより際限なく利用が拡大することが危惧されます。
また、自治省構想では、住民票コードを使ったデータ照合、コンピューターマッチングは認められないとしています。しかし、多目的の共通番号を導入することそのもののねらいがデータ照合の効率化にあるわけであります。共通番号を導入している国では、法的にデータ照合規制を行っているのが常識です。にもかかわらず、委員会では全くこの点について議論されておりません。
こうした意味でも、自治省構想については、将来を見据えた議論が必要なのはもちろんのこと、現時点でもプライバシー保護体制は全くなっていないと言えます。やはりマスターキーになるような番号をつくらないことが国民のプライバシーを守る上で最強のセーフガードになるように思われます。
第五点。自治省は、コードとカードは行政の高度情報化、効率化のツール、道具になると説明しています。しかし、パイロット事業をやっている島根県出雲市では逆に、非効率、不経済を理由に最近、カード行政の収れんを決めました。
出雲市では、いずも市民カードシステムを構築し、行政の高度情報化、効率化を図ろうとしました。出雲市の構想では、八千文字、新聞一面の情報を入力できるICカードに市民一人一人の個人基本情報、保健情報、救急情報を入力し、各人に持ち歩かせようというものであります。ほとんど自治省の構想と同じであります。
出雲市のカード導入は九一年四月の、現代のお守り札をうたい文句とした高齢者対策の福祉カードに始まりました。九三年度には健康管理と救急支援をねらいとした児童カードを追加しました。しかし、福祉カードは、対象としているお年寄りが携行しないなどの理由で失敗、九七年一月に廃止されました。この失敗を受けて九七年一月に、付加価値を高めた市民カードの発行を開始しました。
市民カードの発行で、同市のカード行政は再起につながるように見えました。しかし、税金が湯水のごとく使われたあげくの果て、その効果は全く思わしくなかったわけであります。昨年末、九八年十二月八日、西尾現市長はついに市議会で英断を表明、児童カードは新規発行打ち切り、段階的に廃止、市民カードは大幅見直し、機能縮小となったわけであります。ここに表がございます。出雲市のカード構想の行き詰まりは、見方を変えると、自治省のコードとカードで国民総データ監視構想の結末が見えてくるような感じがいたします。
出雲市でのカード行政の行き詰まりの経験は、ICカードが不要であるということを教えてくれています。
出雲市長は、児童カードの発行率は全対象者の四一%である現状を説明し、小中学校では養護事務を電算化し、カードに入力する健康管理などの情報は、カードを持っていない児童生徒を含めてデータベース化され、集計処理の事務効率化につながるなど、システムとしては役立っているが、カード自体は利用されていないということを指摘しました。出雲市長は、これ以上児童カードを発行することはむだな投資、収れん策を考えなくてはならないとして、カードの新規発行打ち切り、段階的に廃止する方針を表明しました。
また西尾市長は、市民カードは発行率が全対象者の九・二%である現状を示し、市民課や税務課での利用件数も二千件程度と低調さを強調、利用度の低いサービスはメニューから除外し、収れんしていく方針を明らかにしました。
加入率が低調である点について、西尾市長は、カードが多機能であるために逆に目的が不明瞭、カードを持っていない市民が行政サービスを受けられないことがあってはならないため、逆にカードが絶対必要な生活場面がないということを指摘しました。
また西尾市長は、カードで救急の際に身元確認に役立ったケースはこれまでたった一件のみ、実用性がなく、既に救急車の携帯用カード読み取り機の搭載を九八年八月から中止している旨を明らかにしました。
西尾市長は、こうした一連のカード開発と関連費に六億円をつぎ込んでいること、しかも費用対効果を考えると収れん策を考える方がよいというふうな形で英断を下したわけであります。
こうした出雲市の経験から見えてくることは、ICカードは金食い虫で、不要ということがはっきりしております。ICカード特需で棚ぼた利益の期待できる企業も出てきます。しかし国会議員の先生方には、役所や企業が主役ではなく、生活者が主役という基準に基づいた公正な判断と行動が求められていると言えます。
次に七点目。自治省構想では、全国センターで管理するのは各人の住民票コードと四基本情報だけだと言っていますが、エスカレートするのは目に見えています。
なぜかといいますと、これはスウェーデンの全国センターで管理している情報の多さを考えればいいと思います。
この表で見ますと、スウェーデンの中央センター、SPAR、スウェーディッシュ・ポピュレーション・アドレス・レジスターというのですが、SPARのところで管理しているのは、各人の国民背番号、PIN、氏名、住所、管理教区、本籍地、出生地、国籍、婚姻関係、婚姻関係を最後に変更した日、認知関係、所得税の賦課額、本人及び家族の所得額、本人及び家族の課税対象資産、居住用として保有する不動産、不動産所在地の県の地域番号、建物の種類、不動産の評価額、ダイレクトメール送付の是非、このファイルを最後に変更した日という形であります。
我が国でも、自治省構想を一たん認めると、全国センターで管理する個人の情報は見る見るエスカレートしていくことが危惧されます。記憶媒体自体は大変に容量が大きくなり、かつ低廉になってきています。各人の一生涯の個人情報を全国センターで管理するのも不可能ではないと言えます。四基本情報だけだから大丈夫だなどと考えるのは甘いと言えます。将来を見据えて考える必要があります。
これに八千文字、新聞一面分の情報が入るICカードが加わると、これだけで広範な個人情報が公的管理に移るわけであります。考えただけでぞっといたします。コードとカードで国民をデータ監視する国家が、国民が望んでいる国家だと思いますか。生活者が主役の国家だと言えるのでしょうか。
次に、八点目でありますが、スウェーデンでは背番号コードは採用していますが、カードは発行していません。これに対して自治省の構想では、住民票コードに加えICカードを発行するとしています。カードには信じられないぐらいの広範な個人情報の入力が予定されております。自治省構想を許すと広範なプライバシーが公有化されてしまいます。世界でもまれに見る個人情報公有国になってしまいます。
自治省構想では新聞一枚分の情報が入るICカードを発行するとしています。カードに入力する情報は各自治体が条例で決めるとしています。それでは、どのような情報が入るのか。自治省構想を先取りした出雲市の市民カードを見ればわかると思います。
このカードの内容を見れば、まず個人基本情報、図書貸し出し情報、それから救急情報。救急情報には、かかりつけの医者とか医薬品とかアレルギー歴、血清使用歴、発病年齢、経過、特記事項とか、こういうものが全部入っております。それから、いわゆる健康管理情報については個人の基本的な健康診査結果、事業場での健康診断結果などが入っています。
以上の、市民カードに入力されているような情報からわかりますように、個人基本情報に加え行政窓口情報、救急情報や健康診断情報と、入力情報は極めて広範にわたることが予定されています。ちなみに、出雲市のカード加入者は対象者の九・二%と非常に低調でした。出雲市民が、行政を含め、他人に自分のプライバシーを知られたくないということでカードをつくることに消極的になったとしても不思議ではありません。あるマスコミの方が、出雲市内で出会った多くの市民に市民カードについて聞いても、そんなものは知らないし、要らないのではという人がほとんどだったと聞き及んでいます。
それから、日本図書館協会の貸出業務へのコンピューター導入に伴う個人情報保護基準では、図書貸出番号に住民票コードを使用しないように求めています。読書内容の秘密を守るためです。また刑法百三十四条の秘密漏示罪では、医師が患者の秘密を守るように求めています。いずも市民カードの入力内容を見ると、こうした点でも大いに問題です。出雲市の医師会が救急情報の提供協力に難色を示していることは当たり前のことです。同じことが自治省構想でも言えるはずです。プライバシーを大切にしたいと思う人ならだれでも、自分の病歴をカードに入力し、持ち歩きたいなどとは思わないのではないでしょうか。
自治省構想では、公有化される個人の情報は全国センターとICカードで分散管理されることになるわけです。したがって、この構想を許せば、我が国は、本来個人の財産であるはずのプライバシーの広範な部分を公的主体が管理する、世界でも類を見ない国となります。プライバシーは個人が管理するのが常識と言えます。しかし、自治省構想ではプライバシーは役所が管理するという考え方になるわけで、国の政策を百八十度転換することにもなります。
隣の韓国ですら、ICカードの発行計画を最終的に破棄し、その施行法案を廃案としました。公権力による個人の全人格的な監視につながるICカードの導入は、人間の尊厳や自由に深くかかわってくると議会が考えたからであります。極めて賢明な選択と言えるもので、我が国も見習うべきでしょう。
ICカードの発行など、必要だとしても、本来、本人の同意を得て民間がやるべきことを公的主体が口出しすべきではないと言えます。行政はスモール・イズ・ビューティフルの時代に逆らうことはやめるべきでしょう。
次に、九点。自治省構想では、カードの取得は任意とされています。しかし、いずれ携帯が義務化され、国内版パスポートとなるのは目に見えています。自治省構想を許すと、移動の自由を公権力が監視する国民皆登録証携帯制度が実現してしまいます。
自治省構想では、カードの取得は強制ではなく、本人の希望で行うことになっています。しかし、選挙の際に有権者名簿の確認に使うことが検討されており、実際にはカードなしに投票することが難しくなるのではないかと思います。
ちなみに、電子投票とは、よほどしっかりしたセーフガードをしないと、有権者がどの候補に投票したか、裏口で知られる危険性も出てきます。投票に住民票コードを使うのは絶対に避けなければなりません。
また、カードは絶対に必要という日常の生活場面がない限り普及しないわけです。カードがなかったとしても行政サービスが受けられるとすれば、薄気味悪いほど自分の個人情報が詰まったICカードなど紛失したら大変なわけで、だれも持ち歩きたいとは思わないはずです。一たんカード導入を許せば、行政は、陰ひなたにカードの携帯を奨励する策を練ることでしょう。
しまいには、お隣の韓国のように、初めは取得は任意でも、後でカードの定着をねらいに法律を改正し、携行を義務づける方向に進むことは当然予想されます。そうなると、カードは、任意どころか、もう一歩進んで国内版パスポートと化してしまいます。いわば現行の外国人登録証携帯制度をすべての国民に拡大するのと等しいわけです。カードを持たずに出歩けなくなったり、あるいは、携帯していないのは外国人かスパイかといった警察国家の構図が見えてくるようです。国民皆登録証携帯制度など本当に国民の望むところなのでしょうか。まさに、コードとカードは、将来を見据えてその是非を考える必要があります。
匿名で行動を許されない社会あるいは日常的な移動の自由を広く公権力の管理にゆだねる社会が、まさに自治省の目指す究極のところと見てよいわけです。生活者が主役の考えとは相入れない構想のはずです。こうした構想の実現を許してはなりません。
最後に、十点目であります。
自治省の考えている構想を単に行政の簡素効率化の次元で検討しては、問題の本質を見誤ることになります。
かつてドイツでも、先ほど弁護士会の峯田先生が指摘されたように、番号制が議論されましたが、裁判所は、個人を全人格的に管理することにつながる住民基本台帳番号制は人格権を侵害し憲法違反というふうな判断を下しております。このため、連邦内務省は制度導入を撤回し、今日に至っています。同じような憲法判断はハンガリーでも行われております。
それからオーストラリアでは、八五年に多目的利用を……(発言する者あり)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504720X01419990506/8
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009・坂井隆憲
○坂井委員長 石村参考人に申し上げます。
意見陳述時間が過ぎておりますので、御協力願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504720X01419990506/9
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010・石村耕治
○石村参考人 そうですか。それでは一分ぐらいで。
それで、オーストラリア、ニュージーランド、イギリスでも、それからアイスランドでも、スマートカードのようなものは全部停止されております。それからフィリピンのラモス政権でもこういうことを停止しております。
それでは、最後の問題点を申し上げておきます。
自治省構想には光と影があるなどと言う人がいます。しかし、コードとカードは必ずしも行政の効率化に役立たず、金ばかりかかるツールのようです。このことは、出雲市のICカード行政の行き詰まりの経験から自明のところです。
コードとカードは、むしろ匿名で行動することが許されない社会づくりあるいは日常の移動の自由を広く公権力の管理にゆだねる社会づくりのためのツールと見てよいでしょう。とすれば、自治省構想は、役所には光、国民には影となる構想と見ていいと思います。
多くの国民はいまだ自治省の構想を十分に理解しておりません。この点については、資料の四号で大橋巨泉氏が書いておりますので、その点を読んでください。多くの国民はそういうことを理解していないと思います。調査してみてはどうでしょうか。国民に十分周知しないまま、国会の委員会審議を拙速に進めるやり方は大いに問題であると言えます。生活者が主役の考えに全く反します。
国民総背番号制、国民皆登録証携帯制につながる自治省の住民基本台帳ネットワークシステム構想の実現を目指す住民基本台帳法改正法案は、生活者が主役の考え方に真っ向から挑戦するものと言えます。私は、将来に負の遺産を残さないためにも、廃案が最善と考えます。
以上です。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504720X01419990506/10
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011・坂井隆憲
○坂井委員長 ありがとうございました。
以上で参考人の意見の開陳は終わりました。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504720X01419990506/11
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012・坂井隆憲
○坂井委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。
なお、参考人の皆様に念のため申し上げますが、発言の際にはその都度委員長の許可を得ることになっております。また、委員に対し質疑をすることができないことになっておりますので、御了承願います。
質疑の申し出がありますので、順次これを許します。宮路和明君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504720X01419990506/12
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013・宮路和明
○宮路委員 自由民主党の宮路和明でございます。
まず最初に、御多忙の中、四人の参考人の先生方に御出席をいただき、それぞれのお立場で貴重な御意見を賜りまして、まことにありがとうございました。厚くお礼を申し上げるところでございます。
そこでまず最初に、朝倉参考人にお尋ねをいたしたいと思います。
朝倉参考人、先ほどの御意見の中で、高度情報化社会が物すごいスピードで進む中にあって、民間でもそれに対応して物すごい努力をしている、そこで役所としても、行政機関としても、それにしっかりと対応していかないと、それは行政の怠慢になる、そういうお話でございました。
そこで、我々もまさにそういう思いに立って、今回の住民基本台帳法の一部改正案、自治省が当初の案づくりに入ったわけでありますが、我々政権与党である自民党としても、この問題、大変なエネルギーと時間を投入して、そして政府・与党一緒になってこの法律案をつくり上げて、そして国会へ去年三月に提案させていただいた、こういうことでございます。
現実のところを見てみますと、現在、市町村と国との関係では、市町村が各省、各局あるいは各課単位で住民の移動報告を行ったり、あるいはまた国民の住民票の写しをいろいろなレベル、いろいろなケースにおいて持ってこさせて、確認を行っているというのが現実の姿なのですけれども、これは、先ほど御指摘のあった高度情報化社会からするといかにも時代おくれであることは、これはだれしも認めることだと思うのです。
また、そもそも市町村は、現在、住民票について既にそれぞれ番号を持っているというところもあるわけでありまして、それを共通化して、そして国、地方が相連携して、高度情報化社会に対応して行政の効率化あるいは円滑化を図っていこうということ、そして同時にまた、住民の利便の向上を図っていこう、これが今回の法律の大きなねらいであるわけであります。
そこで、何とか今改正案においては十六省庁九十二の事務についてこれを法定して、それの事務については住民票のコードというものを共通の情報としてみんなが持ち合って共同利用して、そして行政の効率化、円滑化を図っていく、国民の利便の向上を図る、こういうことにしたわけであります。
我が国の行政の大きな欠陥として縦割り行政が盛んにこれまでも言われてきている。それで今回、省庁再編の法案が今国会にようやく提出されたわけでありますが、これも一つはやはり縦割り行政を大いに是正していこうというねらいもあるわけでありますし、また地方分権の一括法案が今国会に提出をされました。
そういうことで、行政も中央省庁の再編やあるいは地方分権等大きな変革期の中で、そうした今までになかった画期的な改革をやっていく、その一つにこの今回の住民基本台帳法の改正も位置づけられていいんじゃないか、こう私は思うわけでありまして、まさに縦割り行政の弊害を是正していく、そういう意味でもこれは大きな意義を持っていると思うんですね。
したがって、先ほど基礎年金番号のことが朝倉参考人のお話の中にございましたが、これからそういったことも住民票コードとリンクさせていくということだってあってもいい話だと思いますし、先ほど申し上げたように、何とか十六省庁九十二事務ということに今回なったわけでありますが、それをもっとやはり広げていくべきであるという議論も盛んになされておるわけでありまして、私もそうだというふうに思います。
そういった点から見て、この点、どういうぐあいに考えていらっしゃるか、このことをまず朝倉参考人にお尋ねしたいと思います。
次に、ずっと通してお尋ねさせていただきたいと思いますが、大山参考人にお尋ねをいたしたいと思います。
大山参考人、情報化社会がこれからどんどん進展する中で、サイバー空間、その中にあって本人の確認情報、それが非常に重要だということをるる力説されました。そして、それと同時に、御専門のネットワークシステムという分野について、そのセキュリティーの問題、これが非常に重要であるということも御指摘をされました。まさに我々もそのとおりだというふうに思っておるところであります。
そして、今回のこの法案においては、これまで既に実施されております各国のネットワークシステム、あるいは国内で既に稼働しておりますシステム、あるいはカードシステムもそうなんですが、そういったものをいろいろ検証させていただき、勉強させていただいて、そして、今日の段階でベストと言ってもいいようなものを念頭に置いて今回の改正に取り組むというふうなつもりで、我々政権与党として思っておるわけであります。
先生の御指摘の中で、最後の六番で、住民基本台帳システムにおけるICカードの利用についてこうあるべきであるという提言が幾つかなされておるわけでありますが、今我々がこの法案の中で想定しておりますこのシステムは、セキュリティーという面で、我々は先ほど申し上げたような評価に立っているんですが、先生のお立場としてこれをどういうぐあいに評価されていらっしゃるか、その点をお聞かせいただければというふうに思っております。これが大山参考人に対する私の質問であります。
先ほどの六番目に書いてあります提言、今度の我々の法案の中身とそれからこの提言との関連も踏まえて、ひとつお話を賜れればというふうに思っております。
それから次に、峯田参考人にお尋ねをいたしたいと思います。
日弁連とされてお取りまとめになった住民基本台帳法の一部改正法案についての意見、これも今よく読ませていただきましたし、またお話も賜りました。それから、参考資料の個人情報保護法大綱、これもぱらぱらと拝見もさせていただきました。じっくりとというほどじゃないわけでありますが、主なところは見せていただいたわけでございます。
そこで、お尋ねということなんでありますが、私ども、先ほど申し上げたように、自民党の政務調査会、政調の中に地方行政部会というのがあるわけでありますが、そこでも今回の法案の提出に当たっては、物すごい時間、それからエネルギーを投入して政府と一緒になって大変な議論もさせていただいたし、また、政府が当初考えておったものに対して、我々与党としての意見の反映というのも相当、随所にさせていただいたところでございます。
具体的にはどういったことをやらせていただいたかといいますと、特にプライバシーの保護という観点から大変な議論をして、そして自治省が当初考えておったものに物すごいプラスを、プラスというか追加をいたしたわけであります。
一つは、民間の人たちが、業としてと申しますか、継続反復して、データを集めて、そして一つのデータベースをつくって、そして外に出す、提供するというふうなことについてそれを禁止しておるわけでありますが、その違反に対して都道府県知事が中止命令やあるいは勧告を出す。それにとどまらず、その中止命令に従わなかった者に対して罰則をもって対応すべきであるというふうなことにさせていただいた。
そして、その罰則も一年以下の懲役または五十万円以下の罰金ということで、御案内のとおり、通常の公務員の守秘義務違反は一年以下の懲役または三万円以下の罰金となっておるわけでありますが、ここでは一年以下の懲役または五十万円以下の罰金というふうに中止命令違反に対してはするということにしたり、それからさらに、民間の電算業務の受託者に対する措置という面におきましても、守秘義務をかける、そしてその守秘義務違反に対して、先ほど申し上げたように通常の公務員の守秘義務違反は——ごめんなさい。ちょっと時間を間違っておりました。
そこで、それに対してそういった非常に厳正な措置を望むということにしたわけでありますが、一方、この個人情報保護法大綱においては、そうした違反行為に対する措置も非常に我々のものからすると軽くなっている、一年以下の懲役または十万円以下の罰金、こうなっておるわけでありまして、我々のそうした努力をいかに評価していただいているか、そこをちょっとお聞きしたいと思います。
それから、石村参考人にお尋ねしようと思っておるのは、ちょっと私が時間を取り違えておりまして、質問の時間がそうかと思っておりまして、失礼いたしました。
それで最後に、これは石村参考人にですが、石村参考人のお話はすべて自治省構想、自治省構想といって、何でもかんでもとにかく役人が物事をやっているというふうなことで、議会制民主主義でありますから、我々立法府が物事は最終的にすべて裁いていくわけでありますけれども、全部官僚がこの世の中をつくられているということで、先ほど参議院の存在感というものをお認めになったのですが、我々衆議院の方の存在感もこれはあるわけでありまして、そういう意味では我が国は、立法府が先ほど申し上げたように、与党においても議論していろいろやってきた、その辺もあるということでありますけれども、そこはどういうふうにお考えになっておられるか、そこを最後にお聞きしたいと思います。
以上、ちょっと時間が長くなってしまいましたから、ひとつ手短に。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504720X01419990506/13
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014・坂井隆憲
○坂井委員長 それでは、答弁を簡潔にお願いいたしたいと思います。最初に大山参考人から、順番に。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504720X01419990506/14
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015・大山永昭
○大山参考人 それでは、簡単に回答を申し上げます。
質問の内容はセキュリティーに関してでございますが、私がお示ししたサイバースペースの絵は、あれはオープンな世界で、これは今回の住基の案と考えますと、住民基本台帳のシステムができた後の利用の形でございます。ですから、情報化された将来、近未来だと思いますが、そちらの姿でありまして、その流れの中でサイバースペースの中で本人確認が必要になってくるというのがポイントでございます。
セキュリティーの面からいいますと、今回の話はどちらかというと、端末、それから通信回線、ホストという三つの組み合わせでいえば、ホスト側のシステムになります。銀行でいうと、銀行のATMの端末、通信回線、それからそれを管理するシステムがございますが、その管理側のシステムのお話になるかと思います。その管理がしっかりしなければならないのは、ICカードの問題ではなくて当然の話でありまして、その流れから見ると、今回の案では専用回線、それからその中に、暗号化を含めて暗号照合を使って相互認証も行う、それから操作者の認証も行うという形になっておりますので、現在ある技術から見ると、最も高いセキュリティーが維持できるというふうに考えます。
ただ、つくり方を間違えればこれはもちろん穴だらけなつくり方もございますので、ここは今後しっかりと検討いただく必要があるかと思います。
以上でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504720X01419990506/15
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016・峯田勝次
○峯田参考人 峯田でございます。お読みになり、ありがとうございます。
民間データベースの問題について、十分なカバーができているのじゃなかろうかという御指摘かと思うのですが、例えば、現在一番民間で組織的に個人情報を持っているのは金融機関、サラ金とかクレジットを含めまして、大方四系統の情報組織を持ってやっております。仮に、一つの例で、銀行協会が任意に個人からそれぞれコード番号の提供を受けるということがあったとする。ICカードを持っていて、その場合は表面にコードが書いてありますのでそれでわかるというふうなカードを発行した場合、そうすると当然銀行員の方はコード番号はわかるわけであります。そういったものが、銀行協会という組織では各銀行が入っているわけですね、そういったもののデータベースの構築というのは私はこの法律では防げないだろうと思うのですね。銀行協会というのには各銀行が入っているわけです。
ですから、自社のための、自前のデータベースをつくっているのですよと言われたら、いやそれは、他人に提供する、各銀行が使うため、あるいはクレジット会社が使うためのデータベースじゃないですかと言っても、それは自分たちの協会のデータベースですよ、それは禁止していないでしょうということになりますと、民間でそういうデータベースの中を通しましてICカードが汎用されるという事態は防げないだろうというふうに思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504720X01419990506/16
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017・朝倉敏夫
○朝倉参考人 私も手短に申し上げます。縦割り行政の是正に役立つのではないかとおっしゃる点は、最初に申し上げませんでしたけれども、まことに私もそのとおりだと思っております。
例えば、いろいろなケースがあると思いますけれども、パスポートの問題を考えましても、今五年物、十年物とありますが、十年物を取って翌年死んじゃったとしてもこれは確認のしようがないということになるわけでありますね。これが、本人確認がこれでリンクされるとたちまちわかる。これは仮定の話ではなくて、例えば死亡者のパスポートが東南アジアなんかで取引されているという話がよくあるわけであります。
そのほか、十六省庁九十二事務ということですが、これもまだまだふやしていける分野はたくさんあると思います。何も、ふやしていっても、それを全部張り合わせて一元化して監視国家にするという話じゃございませんので、例えば先ほどの基礎年金番号についても、これは仮定の話として、住民票コードでもって生存確認が容易になれば、これは極めて官の方にとっても、民の方にとっても便利なものになると思います。ただし、私の認識としては、その年金基礎番号システム自体に問題があるということは先ほど申し上げたとおりであります。
いずれにしても、いろいろな個別分野をふやしていくのは当然であろうと思いますし、それが監視国家にならないように官庁を国会がよく監視すればいい、そのように私は思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504720X01419990506/17
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018・石村耕治
○石村参考人 先ほど宮地先生の方から、ちょっと何か本当に答えるべきことかどうかわからない質問をされたのですが、一応私も大学で法律学を教えておりまして、そこでは、国会は唯一の立法機関であるというふうには教員として教えております。ただ、この法案に関しては、多分自治省の方々が極めて構想を綿密に練ってここまで持ってこられたのではないか、そういうことで自治省構想と申し上げたわけであって、私自身、議員立法、政府立法、双方とも憲法上認められているということは重々承知した上での考えをお話ししたことでございます。
したがいまして、先生方が一生懸命法律をつくっておられるということについては、全くそのとおりではないかということでございます。
以上でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504720X01419990506/18
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019・坂井隆憲
○坂井委員長 次に、古賀一成君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504720X01419990506/19
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020・古賀一成
○古賀(一)委員 各参考人の皆様方、きょうは、連休明け早々本当に御苦労さまです。あわせまして、各委員の皆様方にも、連休明け早々で大変御精励いただきましてと、申し上げます。
私も、この連休中、参考人の先生方に御質問をするということでいろいろ考えました。今まで大分勉強もさせていただきましたけれども、質問に入る前に、私自身のこれまでのこの法案の中身を見た中で、悩みも多い部分がございます。先ほど石村先生の方から、光と影という議論があって国民には影しかないという話がありましたけれども、私自身はやはり光と影の部分があって、本当にどうしたらベストの道があるのだろうかと今でも考えておるわけです。
その中で、やはり基本的に言いまして、これは、きょう余り議論が前半は出ないのだと思いますが、僕の一つの強烈な印象を申し上げますと、自治事務ですね。自治体の基本の業務である、自治事務である住民基本台帳業務について、市町村に入力をさせて、それを都道府県をとりあえず経て全国センターにやって、いわゆる九十二事務、国の事務に、本人確認に、とりあえず問題のないところから使っていく。でも将来はこれは納番に発展させる、そういう含みが当然ある。
そうなってくると、これは機関委任事務とか自治事務とかいう議論はあるけれども、何か下手をすると、地方分権という流れに逆らってというか地方自治の本旨にそぐわずに、何か市町村が入力の端末化されるような感じすら実は一部私はあるんですね。そういう法制度論もございます。
あるいは、ほかの制度論も法律論もいろいろあるんですが、きょうはせっかく専門家の皆さんに来ていただきましたので、この中でとりわけ技術的な分野について、大山先生を中心にお聞きしたいと思うんですね。
まず、法律論、立法論、制度論というのは、我々もこういう仕事をやっておりますので想像はつきます。ところが、国会議員大半は、ネットワークあるいはサイバー、そういう世界には疎いわけでありまして、でも、ほかの法律とは違って、これがこの制度の本当の信頼性を決める、そういう、極めて技術的だけれども極めてこれはこの制度のコアをなす部分じゃないかと思いますので、私は簡単に質問しますが、これは詳しく御答弁をいただきたいと思うんですね。
まず第一点でありますけれども、大変素朴な質問を申し上げますが、政府側の答弁では、いわゆる自治体と都道府県センターと全国センターは全部専用回線で結びます、専用回線は大丈夫です、こういう話になっておるんですが、我々素人からいえば、専用回線といえども延々とファイバーを通じていくわけで、そこには交換機もあるだろうし何もかんもいろいろあると思うんですね。一億二千五百万人のこれだけの膨大なデータを日本の一カ所に集める、こういったときの専用回線というのは本当に大丈夫なんだろうかというところに私は素朴な疑問を持つんですね。これがやばいということになるならば、それは一つ前提というものが大きく崩れてくるんじゃないかと思うので、この点、非常に技術的な話でありますけれども、本当に専用回線なら安全なのかというのが第一点であります。
もう一点は、将来これはいやが応にも、大臣答弁にもございましたけれども、いろいろな用途に拡大されていくと思うんですね。私はそう見ておくべきだと思うんです。それでなければ、これだけ巨大なシステムを四情報プラスで、単に年に一遍行くかもしれない、住民票をもらう、それが一回で済むという理屈でつくるはずがない。我々国会議員はやはりそう考えるべきだと思う。
そうした場合に、広がっていくとなると、まず当然、医療に使う、金融に使うということになれば、納番に使うなら金融機関、そこに読み取り機、入力機というのが恐らく設置されざるを得ないと思うんですね。ところが、その読み取り機、入力機というものが病院なり銀行に置いていかれるということになると、それは当然、読み取り機の製造者もおるわけで、そのカードが落ちていたらとか、そういうのを結局読み取れる機械も必ずできると私は思うんです。それは製造者がおるわけですから。幾らスマートICであろうと、それを読み取る機械というのができると私は思う。
そうしたときに一般国民は、これは落としたらば八千字もの私の情報が読み取られるという懸念、絶対大丈夫だということじゃなしに、落としたらこれは読み取られるよという懸念が実はまだ国民の心に残ると思うんですね。そうしたら、この制度はまた非常に、光の部分もあるだろうけれども影の部分で普及をしないんじゃないかという期待を持つ。そういう読み取り機ということを通じて、ICというチップは十分かもしれないけれども、もっと広く考えていくと、そこまで実は検証しなきゃならぬと思うので、その点はいかがかということでございます。
もう一点は、きょうは午後が自治体関係者でございますので、日弁連の峯田先生にちょっと感想をお伺いしたいんですが、この制度は、やはりこれを支える、一言で言えば社会的インフラといいますか、例えばこの制度ができたとすると、市役所の職員、町役場の職員の人はこのカードを持ってきたおばあさんから、要するにだれでもいいけれども、もらったその情報を都道府県センターに入力をする。ところが、今の現場での実態からいうと、自分のID番号なんかを忘れないようにコンピューターにぺたっと附せんを張っておる、番号を振っているとか、結局、そういう人間の意識、モラルもあるんですね。
それでもう一つは、八十歳のおばあちゃんが医療関係で必要だということで、このICカードをもらおうともらった。恐らくパスワードという言葉も知らない人たちが持つ。これに何の意味があるんだろうかという、つまり社会的、国民意識の理解というか必要性というか、そういうのがまだ全然伝わっていないと私は思うのですね。
実はそういう問題点、国民意識から見て、一言で言うと社会的インフラというのか、そういう職員のモラルあるいは国民のこういうカードそのものに対する理解、自治省構想とそういう社会的インフラには物すごいギャップがまだあって、まだまだ時間をかけて検証をしなきゃならぬじゃないかと私は思うのですが、そういう面でどう評価されるかを一点お聞きしたい。
もう一点、また大山先生に戻りますが、今法案で予定された中では九十二の事務がありますから、これは当然全国センターと中央官庁と結びますよね。私は、これは公衆回線を使えばまず漏れると考えなければならぬと思うのですね。ところが、自治省にまだはっきり公式には聞いていませんが、専用回線になるんじゃないかと思うんですが、その場合、当然各役所のLANと結ぶことになると私は思うのですね。そうした場合、全国センター、省庁と役所のコンピューターがつながってきたときに、これは当然、つなげば漏れるというのがコンピューターの世界の常識だと私も聞いていますが、漏れるのではないかと私は思っておるんです。
これが漏れるとなると、例えば建築士の試験がある、建設省が今度応募した三千人の名簿をつくる、当然それは名前と住民票コードの一覧表をつくる、一覧表をつくればこれは必ず漏れていく、こう見ておかなきゃならぬと私は思うのです。その問題もありますけれども、各省庁のコンピューターとLANが結ばれたときのセキュリティーというのは極めて問題で、実際のところ、この法案で説明を受けたように大丈夫ですということは、あちこちで漏れる、どこで漏れたかわからないうちにどんどん情報が一覧表示の形で世間に回る、そのうちに名寄せ屋さん、名簿屋さんがばっこするというような事態に容易になっていくんじゃないかと思うのです。
その点、本当に技術的な評価をお聞かせ願いたいと思います。まず、今申し上げた方によろしくお願いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504720X01419990506/20
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021・大山永昭
○大山参考人 三点質問をいただいたというふうに理解しておりますので、その順番に回答申し上げます。
まず、専用回線についての安全性はどうかということでございますが、一般的には、公衆回線の場合には電話線と考えていただくとわかりやすいですけれども、例えば電話番号を知ればいろいろな人がそこへアクセスすることができてまいります。専用回線の場合には接続が既に決まっておりますので、そういう意味では、番号を知って接続するという意味ではなくて、その点からは、必要な情報を専用回線で結んでいるところに対して外の人がアクセスするチャンスは当然減ります。ですから、専用回線は安全というふうに一般的に言っているわけであります。
ハッカーのような、コンピューターの中身を見て盗み出す、あるいは中を破壊するというようなことが時々、破壊するのはクラッカーという言葉がございますが、そういうのがございますけれども、それは、一般的にはインターネットや公衆回線のように不特定多数の人がアクセスできる場合にそういうことが起きやすいということでございます。
ただ、内部から、すなわちその情報を本来管理している側、内部で働いている人あるいはそこを管理している人が内部からその情報を流すようなことをやってしまえば、これは専用回線であれ何であれ、例えばフロッピーに記録して持っていくというようなことは当然できてしまいます。ただ、言うまでもないことですが、これは技術的な方策ではなくて、管理、運用のやり方ですので、人間系に対する教育が当然必要ということかと思います。
したがって、専用回線についての質問に対する答えをまとめますと、専用回線は、先ほど言ったように外からの脅威に対しては大幅に減らすことができますので、一般的には安全性が高いというのは最初の意見でも申し上げたことです。
今回の住民基本台帳の話では、先ほども申し上げましたが、さらに暗号化をする、それから専用回線でつながっていながらも、相手を、端末を確認する、あるいは操作者を確認するというところまでやるというふうに伺っております。その意味では、暗号化は、公衆回線あるいはインターネットの世界でも安全性を十分保つために一般的にやられている手法でございまして、暗号のアルゴリズムをどれを選ぶかでもちろん強度は変わりますが、あるいはそれにかかる費用も変わってしまいますけれども、その辺をバランスをうまく見て、最も高いセキュリティーのものが必要であれば、専用回線プラス最も高い安全性を持つ暗号手法を使う、相互認証手法を使うということでやれば、かなりの、現状考えられる技術の中では最高の安全性の確保ができるというふうに考えるわけでございます。
それから、二番目に移りますが、医療とか金融機関への応用が当然広がってきて、その中には、例えばカードが落ちていたら読まれてしまうのではないかという話についてでございます。
現在の磁気カード、銀行のキャッシュカードをお考えいただくとわかりやすいかと思いますが、三回立て続けに間違えると、例えばカードを没収されるようになっています。ただし、二回でやめてほかの端末へ行ってもう一回やると、ゼロに戻っていますので、もう一回、三回やらない限りはできちゃうということでありますが、ICカードの場合には、パスワードというものはカードの中のチップに入っています。そのチップの中には積算ができる仕掛けがございまして、電源を切ってもその積算はクリアしません。ですので、何回に設定すべきかというのはその人その人で、あるいは安全性とのバランスに当然なるんですが、例えば十回ぐらいかけておくと、三回、三回でやっていっても、銀行の場合は一回抜いて次へかければゼロへ戻るんですが、戻らないでいきますので、そのまま、完全にロックしてしまうようになります。
これをほどく方法をつくるべきかどうかというのは、これは技術的にはどちらも可能です。すなわち、一回ロックしたらもうカードは絶対に使えないようにしてしまうこともできます。そういう意味で、いろいろな方法があり得ますので、どれを必要とするのかは今後の検討だろうというふうに、私、技術側から見ると思います。
カードを落とした場合にどうかというのは、今言ったようにパスワードの照合の回数で死ぬ方法もありますが、もう一つは、落としたということを知った場合、自分がなくしたというときに、その中身が読まれる可能性は今言ったようなことで防ぐことができるんですが、不正に利用するということがまだ考えられます。
それに対する対策は、クレジットカードの場合も同じですが、無効にしていただく方法が一般的にございます。それは救済措置としてやはり完備すべきものだと思います。そのやり方としては、カードでやる方法もありますし、あるいはどこかしかるべきところに連絡をする、あるいは出頭する、いろいろな方法がまた考えられるんだろうと思います。
そういう意味では、今のようなものについて答えをまとめますと、カードが読み取られる可能性については、積算される照合の回数でストップすることでカードを無効にしてしまう方法が一つあるということでございます。これがヒットする可能性はかなり少ないというふうに、すなわちたまたまパスワードが当たるということはかなり少ないというふうに思います。
それから、救済措置については、技術的な面でももちろんあり得ますが、いろいろなことをやはり考えておく必要があるというのが答えかと思います。落としたのを気づいたときにどう対応するかということでございます。
それから、三番目の質問は、各省あるいは十六省庁九十二の事務へ渡すということについてでございます。
ここについては、本人の確認ができているという意味が、すなわちそれぞれの事務の本質的な立場に戻って考える必要があるんだと思います。何を申し上げたいかというと、何のために住民基本台帳をもととした情報を必要としていたのか、すなわち、例えば存在の確認なのか、生年月日なのか、あるいは現住所なのか、いろいろな場合が、それぞれの事務によって違うんだと思います。
コードとして必要かどうかということは、もちろんこれはこれからこの法案を含めて国会で議論いただく話だと思いますが、コードというのは十けたのコードの話でございますが、これがなくても、例えば既に四情報で、それをそのままコードという言い方も技術的には可能です。それをコンパクトにしたのが単に十けたのコードという意味でありますので、この違いを際立てて何か議論しても私は無意味だと。
すなわち、コンピューターの効率化のためにある十けたの話であって、本人の確認がもし四情報で十分できるとすればでございますが、足りなければほかの情報を付加する必要がありますけれども、私は、その例はないというふうに今まで伺っているんです。すなわち、生年月日、氏名、それから住所、それから性別、すべてが一致する人は日本の中にはいないというふうに今まで伺った記憶がありますが、だとすると、その四情報で、十分に既に個人は識別されているわけでございます。それもコンピューターの中身で見ますと、すべてコードに、文字コードでありますけれども、コードの意味が数字ではなくて文字のコードでありますが、それでつくられておりますので、その意味では、それを楽に扱うためが、十けたのコードという意味かと思います。
したがって、四情報を九十二の事務に渡すことがどうかという話と、それから十けたの、プラス一の情報を渡すことで漏れるのか漏れないのかという話は、これはもともと四情報で渡すことをどう扱うかの話かと思います。これは言い方を変えますと、技術論で言えば、相手に渡すところまでの安全性は十分確保できます。渡った後がどうであるかは、これは人間系の話に戻りますので、そこについては技術の話ではないというふうに考えます。
したがって、公衆回線でどうかというのは、先ほどの専用線と公衆回線の議論でありますので、公衆回線の方が当然普通は安全性は下がりますが、発信者の番号通知のようなものが最近ございますし、いろいろな仕掛けがありますが、相手を特定して受け付けるような仕掛けを使うこと、専用回線より公衆回線の方が維持費あるいは通信費が安いものも、通信する量に従って専用線が安くなったり公衆回線が安くなったりしますが、そういう面で最適なものを選ぶのも、これからの流される情報の量等を十分調べた上で判断すべきものであるというふうに考えます。
技術的には、公衆回線を使っても、発信者特定、接続の相手を特定すること、それから暗号化を十分かけることで、通信線上を流れる情報に関する安全性は十分確保できると思います。ただ、渡った後の話は人間系ですので、技術ではございませんというふうに考えます。
以上でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504720X01419990506/21
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022・峯田勝次
○峯田参考人 峯田でございます。
ただいま先生のお話は、高齢者を含めた社会の中で果たして定着し得るだろうかというようなお話かと思うんです。
恐らく高齢者の人たちがこの四情報プラス住民票コードを活用しようと思えば、頭の中に記憶しておくことはほとんど不可能だろうと思いますので、多分、保険証などと併用するような形でのICカードにして、おじいちゃん、持っておきなさいよという形で使われるんじゃなかろうかと思うんですね。
カードにはいろいろなバージョンが用意されていますが、四情報プラス住民票コードを全部表に出したカードも研究会の中では予定をされているわけですから、さらにそれに暗証番号が必要だということになると、家族としては、じゃ、病院へ行ってきなさいよというふうにカードをおじいちゃんに渡すときに、全部表に出ているカードプラスおじいちゃんの暗証番号は一二三四ですよというようなことをカードの後ろに書くか何かして渡さないと、なかなか使えないんじゃないのか。現実に私自身も銀行へ行って、いろいろな暗証番号をつくったせいもありますけれども、何番やったかなということがわからなくなるということは決して少ないことじゃないというふうに思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504720X01419990506/22
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023・古賀一成
○古賀(一)委員 これで終わりますが、私も実は暗証番号を、モバイルだコンピューターだ何だかんだで、やはりしょっちゅう忘れるんですね。いや、本当にこれは、だから八十歳のおばあちゃんにこういうことをさせるということは事実上私は不可能だと思って、今後、こういう実態論を踏まえて国会論議を深めていきたいと思います。
きょうは大変参考になりました。ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504720X01419990506/23
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024・坂井隆憲
○坂井委員長 次に、富田茂之君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504720X01419990506/24
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025・富田茂之
○富田委員 公明党・改革クラブの富田茂之でございます。四人の先生方、きょうは貴重な御意見、本当にありがとうございました。
私の方から、まず朝倉参考人にお尋ねしたいと思いますが、読売新聞が憲法改正案を出されて、その中にプライバシー権をきちんと明記したというお話でございました。そこの改正案についても朝倉参考人は大分かかわりを持たれたと思うんですが、プライバシー権をきちんと憲法に書き込むという、またそれは大事なことだと思うんですが、その議論の中で、多分、プライバシー権というのは自己の情報をコントロールする権利だというところに学説が行き着いていますが、そういう感覚の中で、読売新聞としても憲法改正案に出されたと思うんですね。先日の委員会でも、プライバシー権について私質問しましたら、そちらにいらっしゃる鈴木行政局長もそのような答弁をされていました。
そういう定義に立った場合に、今回のこの住民基本台帳法の改正案、この改正案は、プライバシー権にきちんと配慮が行き届いた法案というふうに朝倉参考人のお立場から見られたら考えられますか。その点、ちょっと御意見をいただきたいと思うんです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504720X01419990506/25
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026・朝倉敏夫
○朝倉参考人 読売新聞の条項について申しますと、プライバシーについては、いわゆる静穏権それからコントロール権、両面からいろいろ議論いたしましたけれども、したがって、そのコントロール権という言葉も当然頭にあります。
ですが、この法案の場合に、コントロール権というのは、これは非常に難しい概念でございまして、では、これがどこまでのコントロールを意味するのかということになると、ちょっとなかなか、そう議論は簡単じゃないんだと思います。
ただ、問題は、法案とプライバシーとの関係でいいますと、行政機関にあるいはこの番号のもとに関連する情報が外へ漏れてしまう、それを防ぐためのものとしてのプライバシー論、そういうことで論じるべきなんだと思います。
コントロール権ということからいえば、訂正申し立て権というのはあるわけでございますけれども、一般的に言えば、それはいわゆる漏えい、流通をどう防ぐか、こういう観点なんだろうと思います。その限りにおいては、できるだけの、あるいは一定以上の水準になっているんじゃないだろうかという感じを持っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504720X01419990506/26
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027・富田茂之
○富田委員 今の点ですけれども、先ほど峯田先生の方が、日弁連の意見書に基づきまして、情報コントロールという点から見たらやはりこの法案では不十分ではないかという点を何点か挙げられていましたけれども、今の朝倉参考人のお考え方だと、漏えいしないというある程度の措置がされているんだから十分だというふうに考えているというふうに伺ってよろしいですか。そこは、私はちょっと峯田先生の考え方の方が正しいと思うんですが、参考人の御意見として伺っておきます。
次に、大山参考人に何点かお尋ねしたいんですが、海外の動向ということで、いろいろなプロジェクトとかスマートICカードの利用が始まっているという御指摘がございました。今回の改正案で予定しているようなICカードを海外の方で実施している国があるのか、また実施しようとしている国があるか、先生の守備範囲で御存じでしたら教えていただきたいと思います。
それが一点と、こういうふうにICカードをいろいろな形で利用する場合に、特に海外の場合はプライバシーの保護というところがいろいろな法律できちんと整備されていると思うんです。先生の御専門じゃありませんのでちょっとあれですが、法整備がなされた上で先生が論文等でいろいろ書かれているスマートICカードをどんどん取り入れるべきだというふうに私は思うんですが、その法整備との関係で、技術を専門にされている先生のお立場から見て、法整備がされたらこういうふうにすべきだと考えるか、まず技術できちんとやれるべきものをやって、その後法整備した方がいいというふうに考えるか。海外の動向も踏まえて、ぜひその点、二点目、教えていただきたい。
三点目は、自治省の方から「住民基本台帳ネットワークシステムの構築に要する経費(試算)」というのをちょっとペーパーとしていただきました。その経費を見ますと、システムの基本的な導入経費として、基本設計費が四億、工事費四十四億、システムテスト費百一億、データ移行作業費百九十七億、ソフトウエア開発費四十億、その他九億ということで、総額三百九十五億、あと、稼働後、毎年要する経常的経費として、ハードウエアのリース料が九十三億、ソフトウエアの保守料が六十二億、通信回線料が四十三億ということで、トータルで百九十八億という数字をいただきました。
御専門の立場から見て、最初の立ち上げと通常の運用時、このぐらいの経費で済むものなのかどうか、この点三点目、お尋ねしたいと思います。よろしくお願いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504720X01419990506/27
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028・大山永昭
○大山参考人 最初の質問でございますが、もともと住民基本台帳のような、ようなという言い方はいけないかもしれませんが、住民基本台帳のシステムを導入しているというか、使っている国自体が海外に余りないものですから、そういう意味では、ここの今回の話と同じところがあるかと言われると、答えは、ないというふうになるのかと思います。
ただ、それはもともとの考え方、つくり方が違う、先ほどのアメリカの例ではソーシャルセキュリティーの番号の話が出ておりますし、それからフランスなどでは、生まれたときにたしか、生まれた月、それから場所のコード、それから男性、女性の登録された何番目かというようなコードで、その本人の一生つく番号が決まっていたかと思います。変更がない番号だったと思います。今回そこはまた違うかと思うんですが。
フランスの場合に、今のことにちょっと関係して御説明申し上げますが、先ほど私、資料の方にも医療従事者の方にという話を書きましたが、フランスでは、健康管理、あるいはその方のアレルギーとか使ってはいけない薬、禁忌という言葉を時々使っておりますが、そういったものを使うということが国レベルでいろいろと検討がなされていて、ただ、情報を扱うときに正当な人かどうかを確認するための話として、アクセスカードと呼んでおりますが、そちらの方の導入が既に決定されているというのを紹介申し上げたわけです。
アクセスカードが導入されるということを紹介するということは、当然希望者は、もちろんボランタリーベースですので本人の希望によってですが、健康関係それから医療関係のカードを持つことができるようになっています。そのカードの中には、当然のことながら、ソーシャルセキュリティーでは、この場合番号がちょっと言い方が違うかもしれません、ナショナルIDの方がいいのかもしれませんが、その本人の番号が入ったものが出てくるというふうに伺っています。
ICカードの例としてそのようなことを申し上げたわけで、したがって答えは、住民基本台帳の場合には、この制度に基づくところがほかにはないので、現在そういうのは伺っておりません。ただ、そうでないやり方、すなわち、総背番号という議論が、時々言葉が使われていますが、そちらに近い仕掛けを持っているところでは、行政サービスを含めて使うのに、フランスの例もそうですし、それからオランダ等もあるというふうに伺っています。ただ、どこまでの状況かというのは、きょう資料を持っておりませんので、申しわけございませんが、そこについての回答は控えさせていただきます。
それから、二番目の質問でありますが、法整備と技術の云々のどちらがということでございますけれども、これは、私が、実は電子商取引等検討部会本部で昨年度開かれたものがございますが、そちらの座長を務めた経緯がございます。そのときに同じ議論をかなりしたことがございます。
すなわち、プライバシー保護とそれから法整備の云々の話でございますが、言うまでもなく、EUの場合には、ディレクティブに書かれた内容から、十五カ国において既に包括的なプライバシー保護の話がかけられております。ただし、国レベルで内容のレベルの違いはもちろんございます。それから米国では、連邦政府のレベルではまだありませんが、州レベルでの状況は、州の中にはプライバシー保護の法律を持っているところもございます。日本は、御存じのように、言うまでもなく包括法では今ないわけであります。
それで、技術と法整備の話の点からいうと、これは本来、目的のプライバシーを保護するということについては、だれも異論がないことだと思います。もちろんコントロール権の話か、それとも知られたくない情報を知られなければ済むのか、この辺の議論はまだそれぞれの分野によっても違うと思いますし、考え方は個人によってもまだ違いがあるかと思いますが、ただ、プライバシーの情報は保護すべきであるということに対して異論を投げる方はいないと思いますし、私もそれは当然だと思います。
その観点から見ると、技術は、もともとプライバシーを保護できる環境に対しての一つの手段でございます。言い方を変えますと、プライバシーを保護するためには技術的なものも必要ですし、それから管理運用の、要するに情報システムであれば、そのシステムを扱う人の教育も当然必要ですし、管理も必要。すなわち、先ほどの例で言うと、内部から個人の情報を投げてしまうようなことが、持ち出すようなことがあれば、外からの攻撃を幾ら防いでも結局内部でやられますから、それはだめなわけでありまして、この内部の話は人間系になると思います。
したがって、技術と内部でやる人の話と、さらにもう一つあるのが、ここで言う法整備、法律の話だと思います。すなわち、この三つを適切に組み合わせることで我々が望むプライバシーの保護が図られるべきでありまして、その観点からは、法整備と技術のどちらが先かという議論は、状況によって違うのだと思います。あるいは、目的ごとにその選び方が違うと思います。
EUの場合には、そこを法制度が先に進みました。しかし、法律でたとえ縛ったところで、行政罰になるのか、いろいろなやり方があると思いますけれども、そのレベルがもし低ければ、言葉は悪いですが、もっともうかる状況があった場合には、プライバシー情報を結局売ってしまうんだと思うのですね。ですから、そういうことは法律か運用か技術かという、そのどれかの択一、選ぶような議論ではなくて、常にバランスをとってすべき議論だと思います。
その観点からは、今回の話については技術的には十分な対応はできます。法律面についてはまさしくこちらで、国会でやっていただく話だというふうに思っておりますし、私もそれについては大いに期待しているものです。
あとは運用の仕方については、これはしかるべきところがガイドラインを出したり、それについての監査機構をつくる等の話をお考えいただく、これは一般論でありますが、そういうことだと思いますので、私から見れば、技術か法整備かどちらが先かではなくて、全体のバランスをとる話かと思います。
それから、三番目の経費についてですが、これは申しわけないのですが、きょう答えは出せません。というのは、十分に中身をシステムの規模も見ておりませんので、これについては今私が持っている今までの知識からどうかということについては、申しわけございませんが、必要であれば、十分中を見させていただいた上で回答させていただきたいと思います。
以上でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504720X01419990506/28
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029・富田茂之
○富田委員 ありがとうございました。
システム経費等についても、また先生の御意見を伺える機会があればと思います。どうもありがとうございます。
次に、峯田参考人にお尋ねいたします。
日弁連の意見書を何度か読ませていただきました。私も弁護士出身ですので、この意見書は本当によくできている、このとおりだと思うのですね、自治省さんはそう思わないと思うのですが。
この意見書をきちんと読み込めば、どういうところに問題点があるかはよくわかるのですが、ただ、これだけの意見書をなかなか一般の方は読まない。この委員会で審議するから読んだというのもありますし、日弁連の運動論として、ここまできっちりした議論をして意見書を出されているのに、なかなかこれが一般国民には知られないというような状況があると思うのですが、ここまで明確に反対意見を出されている以上、運動論として今後どういうことを考えられているのか、ぜひ教えていただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504720X01419990506/29
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030・峯田勝次
○峯田参考人 申しわけございませんが、私、平成九年度の担当副会長をさせていただいたのですが、ちょうど任期の一番最後のあたりに、三月に意見書を発表させていただきましたので、すぐ終わってしまいまして、その後、実は日弁連の中に、こういう個人情報の保護に関する委員会組織がございまして、いろいろな宣伝物はもちろん出しているわけでありますが、その後の国会も、昨年度は全く動きがなかったように承知しておりますし、現在、日弁連が具体的に社会でどのような運動を展開する予定なのかというのは、現役の副会長ではございませんので、申しわけございませんが、ちょっと的確なお答えができませんので御容赦いただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504720X01419990506/30
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031・富田茂之
○富田委員 ありがとうございます。
なぜこういう質問をさせていただいたかというと、実はそちらにいらっしゃる石村参考人と一緒に韓国に視察に行きまして、先ごろ韓国でICカードをやらないようにというふうになったのは、弁護士さんを中心に国民運動が起きて、それが議会に反映して廃止しようという法案が議員立法で成立したという経緯がございます。そういう意味で、日本でも弁護士会の果たす役割はかなり大きいのじゃないかと私は思いますので、ぜひまた日弁連の方でも御検討いただきたいと思います。
次に、石村参考人にお尋ねいたしますが、この法案の委員会審議をずっと聞いておりますと、この改正案で保護措置がきちんとしているんだというような答弁がずっと自治省の方からされております。この法案が予定しているいろいろな保護措置というもので、先ほど大山先生の方からも技術的にはこれがベストだとありましたけれども、法律的に見た場合、これだけの保護措置で本当に十分なのか。そこの点が、やはり国民から見ると一番心配だと思うのですね。
プライバシーの保護というのもそうですし、情報の漏えいという面についてもいろいろな制度を準備していますよと自治省の方は言われるのですが、本当にこれで十分なのかどうか。その点について、御専門の立場からぜひ御意見を。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504720X01419990506/31
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032・石村耕治
○石村参考人 今、富田先生の方からちょっとお話がございましたけれども、とにかく一番の保護措置というのは、こういう番号制度をつくらないということが最大の保護措置なんですね。
なぜかというと、これは、きょう出しましたレジュメの最後の資料五号、「個人情報保護に関する埼玉提言」というのが平成八年三月、資料が出ております。これは、平成八年一月二十四日に「プライバシー保護国際フォーラム・イン・彩の国」を埼玉県が主催したところに、スウェーデンのデータ保護をしているデータ検査院というところの長官を呼んで、その長官が言ったところをまとめているのですね。
それで、この五の三、二十七ページのところに書いておりますけれども、「たとえば、データ検査院は他国に先んじて、個人認識番号(PIN)を記録する機会を制限する規則を発効させました。ここで、スウェーデンのいわゆるPINシステムについて、簡単に取り上げたいと思います。まず最初に、このシステムを日本で導入することはお勧めしない、というところから始めます。」データ検査院の長官が、こういうものを入れてはいけないのだと。なぜかというと、「このシステムは、事実上全ての他国の国民とスウェーデン人を区別することになりました。世界のどの国よりも早く導入した技術であり、多くの国民が後悔しているのですが、気づかないうちに、私達を次第に腐敗させる影響を持ち、多くの人々にとってプライバシーに対する脅威のシンボルとなった技術なのです。 スウェーデン人であれば誕生と同時に十数字からなるPINが与えられます。今日のスウェーデンでは、人は個人ではなく、まず第一に、そして何よりもまず番号なのです。名前と住所、そしてその他いくつかのだいたい正確なデータがついたPINなのです。個人としては、人はまったく無名です。」「PINは危険です。」こういうふうに、データ検査院の長官が、こういうものを日本では導入してはならないということを日本に来てはっきり言っているのですね。
ですから、この事実というのは非常に重いのであって、やはりプライバシーを保護するためには、データ検査院を設けたからとか、データ照合規制をしたからというのじゃなくて、こういう共通番号そのものをつくってはいけないのだということ。先ほどどなたかが、スウェーデンでは何も問題はない、あそこは民主的な国だと言うけれども、スウェーデンでこういう事実が起こって、とんでもない状況になっているのです。ですから、先生が言われる問題点、いろいろな問題があるのですが、まずPINをつくらないということが一番だということがスウェーデンの方から言われていることですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504720X01419990506/32
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033・富田茂之
○富田委員 時間が参りましたので、これで終わりますが、最後に一問だけ、石村先生に。
私と先生は、韓国のモデル事業をやっていた果川市に行った数少ない日本人だと思うのですが、果川市でこのデータを見せてもらいました。ICカードからデータ読み取り機でどういうふうにデータを読み取るかという実験までしていただきました。あの画面を見たときに私は非常に驚いたのですが、石村先生もその場に立ち会われていましたけれども、果川で実際にモデル事業の現場を見て、今どういうふうに思われているか、その点だけ簡潔にお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504720X01419990506/33
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034・石村耕治
○石村参考人 簡潔に申し上げます。
富田先生と一緒に果川市の方に行って、とにかくICカードを入れますと、コンピューターのところに何でもみんな出てきてしまうのですね。これはどういうことなのかなというふうにいろいろ質問したのですが、その扱っている人も民間から来た人で、民間から来た人がそれをぱっぱっぱとやって出して、やっているわけで、これは大変なものだなと。
逆に言うと、保護措置があればいいとかなんとかいうのですけれども、読み取る機械というのはあらゆるところに設置されるわけですから、今の問題というのは一生懸命住民票コードを隠そうとするから逆におかしいので、オープンのシステムにすれば逆にこういう問題が起きないのかなという意識もするのですね。それを隠そう隠そうと、専用回線だ何だかんだというのですが、韓国の場合もそうですね、民間にこれを使わせようということでその実験をしていたということをはっきり言っていましたから。
私は、ああいう形で見ていくと、やはり、ICカードもそうですし、番号そのものもそうですけれども、一たんそういうものをやって、それを何とかプライバシーを保護するとかということを一生懸命やったとしても、結果としてはいいものが残らないのじゃないかというのが、あそこで見た実感でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504720X01419990506/34
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035・富田茂之
○富田委員 終わります。どうもありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504720X01419990506/35
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036・坂井隆憲
○坂井委員長 次に、鰐淵俊之君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504720X01419990506/36
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037・鰐淵俊之
○鰐淵委員 参考人の皆様方、大変御苦労さまでございます。それぞれ皆様方の御意見を伺いまして、この問題についていろいろ疑義のある方、進めてもいいのじゃないかという方おられまして、私どもも、これからの審議に大変参考になったわけでございます。
私は、まず冒頭、この問題について、直接この住民基本台帳にかかわらない問題からちょっと入りたいと思います。
私は、基本的に、人間の古来の歴史、人間社会の歴史の発展と道具の発展というのは、表裏一体であったと思うのですね。ですから、道具というものは、やはり非常に便利なときもあるし、時にはまたそれが害になることもある。しかし、そういった害を少しでも克服しながらその道具をやはり使いこなしてきた、それによって利便性も追求してきた。しかし、時にはまたそれがいたずらをして、逆にまた人間を苦しめたということもある歴史が繰り返されてきているわけであります。
したがって、私は、コンピューターとか情報社会というもののいわゆるハードな部面、これはまさに道具が進歩したものであろう、こういうぐあいに思うのでございます。したがって、この道具に何か欠陥がある、問題がある、だからこの道具は使えないんだ、こういうことにはならぬではないか。
というのは、私どもが日常使っている自動車などは、ちょっときょう、今、すぐ調べてもらったら、一年間に死亡者が九千二百十一、あるいはまた事件の発生が八十万件、負傷者は九十九万。平成十年だけで、これだけの方が死んだり負傷したり事故を起こしている。それでは危険だからといって自動車を使わないか、こういうことにはならないわけで、大いに使っているわけであります。いかにして交通事故を少なくしていこうかとやはり考えるわけです。
飛行機だって同じですね。やはり飛行機だって便利ですから。私は北海道ですから、ほとんど飛行機です。これが墜落するということもやはりあるわけでありますが、しかし、そういったことを超えて飛行機を使わなければ、やはり国会の仕事もできない。こういうことで利用させていただいています。
そこで、それぞれの参考人の皆様方に簡単にお聞きしたいのです。
こういったコンピューター、高度情報社会になりまして、今、住民基本台帳という中で、私の考え方は、あくまでもこれは国家の管理とか、あるいは国家がこれをコントロールするとかいうのではなくて、むしろ国民がこういった情報をやはり活用していく、国民に便利である、利便がある、こういう観点からやはり考えていくべきである。そのために、いろいろな問題があればそれを是正し、あるいは法的措置も講じ、あるいはまたセキュリティーの面もプライバシーも、こういったことも大いに人間の知恵で考えていくべきであるというのが私の考え方でございます。
しかしながら、そういったことを言っても、これから将来、こういった住民基本台帳のようないわゆる住民番号をつくるということが問題なんだということなのか、そういったことをセーフティーにすることによって、やはり活用していってもいいのではないかという考え方があろうかと思いますが、その点について、簡単で結構でございますから、それぞれ所感をお願いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504720X01419990506/37
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038・大山永昭
○大山参考人 私の方から簡単に申し上げれば、先ほど申し上げましたように、本人確認という意味を何度か強調させていただいておりますが、情報システムは、あくまでも、今先生が言われたとおり道具でありまして、その道具が世の中を変化させつつ、あるいは変えていきつつある。情報革命という言葉もあるかと思います。それに対してどう対応するかというのも私にとっては自分の専門というか、それをしっかり考えなければならないというふうに思って、今までずっとこの関係の仕事をやってきているのでございますが、それは、技術的に対応できるもの、そうでないものがあるというのも先ほど申し上げたとおりでございます。
道具であることは、それでよろしいのでありますが、本人確認をするというときに、サイバースペースという電子空間では、国籍も、それから人の成り済ましも可能な世界になってまいります。ただ、このネットワーク、インターネットに代表されるサイバー空間というのは、いろいろな意味での利便性も与えていることも事実でございます。電子商取引の大きな変化をごらんいただければ、これは明らかかと思います。
したがって、その中における利便性を我々国民が享受しながら、なおかつ、その危険性に対する、あるいは脅威に対してどう対応するかの話をしているのかと思いますが、その一つの脅威としては成り済ましがございます。本人の確認を逆にできないということが、いろいろな方法はあるのですが、非常に高いレベルで本人確認を必要とする場合には、今のやり方ではできないということになります。
クレジットカードのような場合には、例えば相手がお金を持っているか、支払い能力があるかどうかが電子的に物を買うときに大事なことでありまして、その人がだれであるかをしっかり確認している例はないと思います。すなわち、住民票を持ってこいというのは、デパートへ行って買い物をするとか何かのときに要求されることはないわけでありますので、当然それは違う。本人確認といっても、そのカードが正当であって、その本人が支払い能力を持っているかどうかが大事なポイントだというふうに思います。
ただ、公的な機関においては住民票を必要とする場合がよくございます。これは、クレジットカードを持っていってもやはりだめな話でありまして、それはしかるべき意味があるからこそ住民票を要求しているのだと思います。
そうすると、その要求している内容が、その本人がどこに住んでいる、あるいは生年月日がいつかという、いろいろなことに対しての要求があって住民票を要求しているのだと思いますが、それを証明できるのは、あるいはそれに対して確認できるのはだれかといえば、当然のことながら、今の制度である住民基本台帳の流れからいえば、その台帳を管理しているところ、すなわち大もとを持っているところがそこと照合して、初めてこの人は確かにこういうふうに登録されていますというのを証明できるのだと思います。これは印鑑証明も同じだと思います。
したがって、電子空間において本人確認がなかなか今できないと申し上げましたが、その中で、公的機関が証明する必要のあるものについては今回のこのやり方がやはり必要なのであって、民間のやり方でできるわけではないというふうに、銀行やあるいはクレジットカードでできるわけではないというふうに考えます。
以上でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504720X01419990506/38
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039・峯田勝次
○峯田参考人 かなり難しい質問でございますのでなんですが、現在の法律そのものではないという前提、もう少し利用範囲が広がっていくであろうという見通しのもとに話をさせていただくと、例えばマスターキーだというふうに申し上げましたが、例えば社会保障事務の関係は社会保障事務所がデータを持っております。その中には、例えば私であれば、私はそこも御厄介になっておりますが、例えば私に妻がいるか、障害者がいるかどうか、離婚したことがあるかどうか、家庭環境は円満かどうか、親からの仕送りがあるかどうかということが全部社会保障関係の事務所にはデータがございます。法務局の関係でいきますと、もちろん、不動産が処分されたか、どこで担保がついたか、いろいろな情報が全部あります。こういったことは国民の側が知るシステムじゃないのですね。行政側が全部それを一つの包括的なデータマッチングを通じて知り得るということ、そのことが国民の幸福なんでしょうか。
だから、そういうことに道を開く道具がいわゆる住民票コードという道具なんだということを私どもは危惧している。それは、現在の憲法が予定しているような国家からの自由を含めた個人の尊厳というところからは離れた世界ではなかろうかという認識を持っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504720X01419990506/39
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040・朝倉敏夫
○朝倉参考人 道具や技術というものと人間の知恵との関係というのは先生がおっしゃったとおりだろうと思います。私は全面的に同感するところであります。
ただ、その上で、現在の技術及びシステムをどう使っていくのか、欠陥があるとすればどうその欠陥を修正しながらコントロールしていくのかということが大事なんだろうと思いまして、私はこの法案のあり方についても先ほどからそういうことを申し上げてきているつもりであります。
例えば、将来行政によるデータマッチングがないとは言えないからこれは危険であるという言い方は、日本が法治国家であるということを無視する言い方でございますね。これは、国会がうんと言わなければそういうことはあり得ないわけであります。明らかにそういうことを行政が勝手にやってはいけないという法律であります。さっき先生がおっしゃるように、飛行機は落ちるかもしれないから乗るな、こう例え話をされましたけれども、そう言いますと、この場合余り正確な比喩ではないかと思いますが、技術及びハード、ソフトも含めまして、そのように考えていくべき課題であろう、そのように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504720X01419990506/40
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041・石村耕治
○石村参考人 必要なツールかどうかという議論でございますけれども、まず、自治体がこんなものを望んで自治省にやってもらったのかどうなのかということが大きな問題点だと思いますね。全部の自治体が自治省さんやってくださいと言うので、自治省さんが、では私たちやりましょうという形で来たものなのかどうなのか。そうすると、そのツールというのは、自治体から見た場合に、本当にどういうシステムなのかということがまずはっきりしていないということですね。
それから、先ほど朝倉参考人の方で、随分新聞とかいろいろなところで報道されて、国民はよく知っているんだという議論をされましたけれども、ただ、私はこれの四号のところの資料で、大橋巨泉氏が、この人は全くノンポリティカルな方だと思うのですが、たまたま「エネミー・オブ・アメリカ」を見に行って、それを見ているうちにどうも、国民背番号なんて僕は大嫌いだ、日本でもこんなことがあったけれども、とにかくこういうことは絶対にいけない、とにかく個人の自由の方が大切だというふうに書いているのですね。本人は、まさかこんなことを国会で今議論しているとは思っていないのですよ。ということは、知らないで本人がこういうことを書いているのですね。本人にこれを知らせたら、何やこれという形に今度なると思うのです。
そこのところ、本当に国民から望まれてこのツールをまず導入しているのかどうなのか、お調べになっておりますか。国民に対する周知という問題では、全く知らないのじゃないか。私も学生とかいろいろな人に言うのですが、まさか、こんな番号をつけてというふうな話をして、十分、二十分話して、なるほどそういうことをやっているのかという状況なんですね。それをこうやって拙速にどんどん進めていくわけで、国民不在というのははっきりしているので、そういう国民不在のツールを必要だ何だといったって、必要は、国民が本当に必要で初めてこういうものの必要性というのは出てくるわけだから、そこの部分についてもう少し慎重にやっていかなければいけないのじゃないか。
先ほどから私申し上げておるように、この社会はデータベース化社会ですし、番号も何らかの形でいろいろな限定番号があって、番号なしで例えばパスポートなんかも管理できません。ですから、番号がいけないと言っているわけじゃないのですね。この自治省が考えるような国民背番号、つまり共通番号はやめておいた方がいいのじゃないかということです。
ツールとして必要ならば、そういう限定番号として、いろいろなものがありますけれども、そういう形の構成を考えていくべきであって、少なくともこういったものをつくってはいけないということは、先ほど言ったスウェーデンの例からも、スウェーデンのデータ検査院の長官がやめなさいと言っているんだから、やはり経験があるのですから、やはり我々もちゃんと聞いた方がいいのじゃないかなという感じがするわけですね。
ですから、ツールの問題でいえば、今言ったような、国民が本当に必要としているツールかどうかということをもう一度お考えになっていただきたいということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504720X01419990506/41
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042・鰐淵俊之
○鰐淵委員 もう時間が五分しかございませんので、ちょっと質問の時間は短いのですが、いろいろ各参考人の皆様方の御意見はわかりました。
今、住民基本台帳の審議というのは国民総背番号制の審議をしているわけじゃございません。住民基本台帳をいかに国民のために活用でき得るか、あるいはまたどうしたらより高い、高度な行政というものが国民と国との間に交換できるか、あるいは住民がどう望んでいるか。
私も長い間、地方行政の長を二十年ほどやっておりまして、事実上、不現住処理には一番悩まされました。今はもう昔のように転入転出なんというのは完全にやっていかないのですね、ちゃんとしたサラリーマンはやっていきますけれども。一般の学生だとか普通の人はもう、昔、食糧がないときは、食糧の通帳が必ずそれで出ますから、学生でも持っていかざるを得なかったんだが、今はもう学生はほとんど持っていかないのが多いですね。したがって、どこでも、国勢調査と悉皆調査と住民基本台帳の乖離は二十万くらいの市で約八千くらいあります。それはもう全国、特に東京などは大変なものだと思います。そういうことを考えますと、非常にそういう状況にあるということ。
それから、一つは、スウェーデンのケースが先ほど石村先生からお話がございましたが、そういう好ましくない状況ということであれば、恐らくスウェーデンでも制度改正をもう既にそれぞれ検討されておる、私はそのように思うわけでございます。
いずれにいたしましても、日弁連の方からもお話がございましたが、言ってみると、個人を全人格的に管理することにつながる住民基本台帳番号制度は、人格権を侵害し憲法違反という判決が出ておる、こういうお話を伺いました。したがって、私もいろいろそういった研究者の論文を調べてもらったり、そういった判決文等も調べていただきましたが、これにぴちっと合うようなのがちょっと見つからないわけです。そこで、一九六九年の判決か、あるいはまた八三年の判決かと思うわけでございますが、できればこういった引用の箇所を原文でお示しいただければ私大変幸いと思いますが、もし可能であれば、委員会の方に原文でひとつお願いしたい、このように思うわけでございます。回答は結構でございます。
それから、峯田参考人の方に一つお伺いしたいと思います。
言ってみれば、日弁連の個人情報保護法大綱、これにつきましては、個人情報保護委員会というような独立した機関が目的外利用等について処理をするという考えをとっておられるわけでございますが、今回の住民基本台帳は、国民から直接選ばれた国会において、いわゆる法律をもってできるだけコントロールしよう、こういうことになっておるわけでございます。したがって、国会自体でコントロールする方式よりも国会で任命された機関にゆだねるのがよいのかどうか、その点についてどのようにお考えになっているのかお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504720X01419990506/42
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043・峯田勝次
○峯田参考人 ちょっと質問の趣旨を十分理解していないんじゃないかなという心配をしているんですが、私どもの個人情報保護法の大綱の中でも、いわゆる行政機関が集めました資料を当該行政機関の持っている行政目的と違うところに使う、あるいはほかの省庁、官庁に提供する、これもいわゆる目的外利用あるいは外部提供というふうに申し上げておりまして、それにつきまして、法律上の要件がある場合は除くというふうな要件にしております。
したがいまして、その法律は、きちっと定めたものであれば、その都度国会の議決が要るとかそういった種類のものではなかろうというふうには考えていますが、私どもの意見書の背景になっておりますのは、現在の電子計算機に関する国レベルでの保護法は、ほとんど要件らしいものを定めないまま外部提供をし、目的外利用をするという道を開いている包括委任立法のような形の法律になっております。
また、今回の法律につきましては、いわゆるデータマッチングそのものを禁止するという条文は少しもないんですね。もちろん、当該職員が秘密を漏らしてはならないということは刑罰規定も含めまして立法措置がされているわけですが、じゃ、その四情報プラスコードを抜いた分、これをコード、要するに図書館の整理番号のように、それでもってもとのデータを出してもらって、そのデータそのものを、マニュアルであろうがコンピューターであろうがドッキングすること自身は何ら制限がない、こういうような仕組みになっているんですね。
だから、そのところについては、私は、法律の要件がまだ定まっていない状況が今の立法状況ではなかろうか、もう少し中身の制限されたものをおつくりいただきたい、そういう意味では、保護法そのものも検討し直すという措置を政権党の皆さん方にもぜひお願いしたいというふうに思っています。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504720X01419990506/43
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044・鰐淵俊之
○鰐淵委員 どうもありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504720X01419990506/44
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045・坂井隆憲
○坂井委員長 次に、春名直章君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504720X01419990506/45
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046・春名直章
○春名委員 日本共産党の春名直章です。四人の参考人の皆さん、きょうはありがとうございます。
まず、峯田参考人に二点お伺いします。
意見書を私もつぶさに読ませていただきました。住民票コードが行政機関が保有する情報にアクセスするためのマスターキーになる、あるいは情報を結合するマスターキーの役割を果たすことになり、それぞれの行政機関が保有している個人の情報を、好きなときに、しかも瞬時に把握できるようになる、そういう状況というのは、次からなんですが、漏えい云々の以前の問題で、こういう事態そのものがプライバシーの侵害になるということで、憲法はこのようなシステムを許容していない、こういう御説明をされています。
つまり、憲法論の立場から、このシステムが許容の範囲を超えているんじゃないかという問題提起がされていると思います。今度の住民票コードの導入というのは、そのような根源的な問題をはらんでいるというふうに私は読み取ったわけですけれども、その点について、憲法論との関係で簡潔に御説明いただけたらと思います。
二番目は、個人情報保護法大綱ですけれども、これを私も読ませていただきました。この大綱の中に、現行の行政機関の個人情報保護の法律は、制定時から、行政側の運用を重視する余り個人情報の保護という観点が大きく後退した、このことを考慮されて、対象を電算処理情報に限定しないこととか、オンライン結合の制限とか、個人情報の訂正の請求権、利用の中止を要求する権利の創設、現行法にはない積極的な規定が数多く設けられていると読み取りました。
逆に言えば、こういう新たな規定を導入しないと、しっかりした個人情報の保護ができないというのが今の現状だという御認識ではないかと思います。
この中で、個人情報を全国的にオンラインで結ぶということをどのように評価されるのか。自治省の説明では、かなりいろいろな努力をされて、万全だ、個人情報の保護という点ではかなりの措置をとっているということは説明されているんですが、それを認めたとしても、その点だけで個人のプライバシーが守れるのかどうか、この個人情報保護法がないもとでやっていいのかどうか、その点についてお考えをお聞かせいただきたい。二点、お願いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504720X01419990506/46
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047・峯田勝次
○峯田参考人 峯田でございます。
その憲法論につきましては、先ほど鰐淵先生の方から質問がありましたときに、国家からの自由を含めまして、私生活全般、生活全般について把握をされるというような事態は憲法が想定していない状況だということを申し上げたというふうに思います。そういうことが、すなわち、人間のアイデンティティーなり、個々の人間の個としての幸福追求権の一部をなしているんだということを申し上げたい、つけ加えたいというふうに思っております。
それから、私どもの提案しました大綱のようなシステムがない現在は、先ほど申しました、行政機関の保有する電子計算機処理に係る個人情報の保護に関する法律、これが唯一の国のレベルの法律でございますが、これの例えば第九条のところを見ますと、冒頭に申しましたけれども、国の機関内部あるいは国機関相互間で利用する分につきましては、こういうふうに書いてあります。
保有機関というのは集めた機関ですが、法律の定める所掌事務の遂行に必要な限度で処理情報を内部で利用する場合であって、当該処理情報を利用することについて相当な理由がある場合は提供してもよろしい、その次に、保有機関以外の行政機関につきましても、これは特殊法人も含んでいるわけでありますが、法律の定める事務または業務の遂行に必要な限度で処理情報を使用し、かつ、処理情報を使用することについて相当の理由があるときはよそに出してもよろしいという規定になっております。
この規定は非常に包括的でございまして、必要性があればどんどん出してもいいよという、平たく言いますと、必要性があればそれがすべてのオーケーサインになりますよ、こういうような規定になっております。
実際の行政の場においても、恐らく行政というのは大変資料を欲しがるところです。どんなところでも資料が欲しいんだと思うんですね。欲しいから、くださいと言えばまず通っていくというシステムが現行法のシステムなわけです。それでは大変困るというところで、私どもはこの大綱を提案したわけであります。
先ほど、個人の保護措置がないということも申し上げた中に、例えば差しとめ請求、そういう目的外利用がされる場合に、それについて差しとめ請求するというような規定は現行法にはありませんし、今回の改正法にも、もちろんそういうものは規定がないわけであります。したがいまして、行政不服審査あるいは行政訴訟で争う方法もございません。
また、独立の第三者委員会が是正命令権を行使すべきじゃなかろうかというのを大綱で提案しておりますが、そういった第三者機関におけるチェック機能というのもないというようなことが実際だ、こう思いますね。それがあってもだめですよというのがスウェーデンの経験だそうでございますが、私、そこは詳しく知りませんが、それすらないというのは大変ゆゆしき事態だろうということで申し上げたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504720X01419990506/47
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048・春名直章
○春名委員 どうもありがとうございました。
続いて石村参考人にお伺いします。
先ほどスウェーデンの例とかを御紹介いただきましたけれども、外国の番号制度に非常にお詳しいということで、今回のように番号制度を導入しようとしてそれができなかった外国の事例、または導入できなかった理由を教えていただきたいのと、それから、番号制度が導入されている国、例えばアメリカでは社会保障番号がいろいろな分野に活用されていますけれども、そういう国、今スウェーデンのお話が出ましたが、それ以外の国でプライバシー保護の実態が実際どうなっているのか、その現状について、二、三の例を紹介していただければありがたいなと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504720X01419990506/48
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049・石村耕治
○石村参考人 どういう状況かということについては、先ほどちょっと時間がなくて、レジュメの方の問題点十の、十三ページのところに書いておりますように、まず、ドイツではこの案が、共通番号制が没になっております。それから、ハンガリーでも九一年の四月に没になっております。それから、オーストラリアでも、オーストラリア・カードというのが八五年に、これも国民の反対で廃案となっております。九一年にはニュージーランドで、キウィ・カードという形で名づけられた番号とカードの問題ですが、これも廃案になっております。
それから、イギリスでも、内務省がスマート・カードという形で提案をしたんですが、ブレア首相が一応これは、こういうことはやらないという形で撤回をいたしました。アイスランドでも、同じスマート・カードの導入計画が出ましたが、同国の情報保護コミッショナー、つまりプライバシーオンブズマンですけれども、その長官が反対しまして、撤回されました。それから、フィリピンのラモス前政権が掲げた国民背番号制及び国民登録証制のIDカード制も、同国の最高裁判所が国民のプライバシーを侵害することになるということで、憲法違反という形でこれが廃案になりました。
そういう形で、各国の状況は今言ったような状況でございます。
それから、各国どういう法律をつくって対応をしているのかについては、これは先ほど弁護士会の参考人の方でちょっとお話をされていますので、余り私の方でお話をする必要がないかもしれませんが、若干つけ加えておきますと、例えば、番号を入れているスウェーデンでは先ほど言ったようなデータ検査院、データ・インスペクション・ボードと言いますが、そこが一応この問題について対応しております。
それから、カナダはプライバシーコミッショナーという形で、これも議会直属のオンブズマンを導入しております。オーストラリアもプライバシーコミッショナーという形で、これも議会直属のオンブズマンを導入しております。アメリカはそういうオンブズマンはありません。州単位ではいろいろなデータ管理のためのものはありますけれども、ないという状況であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504720X01419990506/49
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050・春名直章
○春名委員 どうもありがとうございました。
続いて朝倉参考人にお伺いしたいと思います。
参考人はネットワーク研究会のメンバーとして御活躍をされているわけですけれども、この研究会の報告書を私も読ませていただきました。そして、この研究会の報告書を受けて、基本的にはこの中身に沿って今度の法案がつくられているというふうに承知をしております。そして、その報告の中には、当委員会でも議論が大分されていますけれども、二十二ページに「納税者番号制度への活用」について書かれております。「将来的に納税者番号制度が導入されることとなる場合においては、このネットワークシステムを活用することが可能となる。」こういう表現になっています。
当時の議論として、この制度は、将来的には納税者番号制度に活用されるということを前提にこの制度がつくられている、そういうふうに考えていいのかどうか、また、そうなった場合、国の機関との回線の接続、これが必要となると思うんですけれども、その点について、御認識、御意見を伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504720X01419990506/50
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051・朝倉敏夫
○朝倉参考人 当時の研究会の議論では、あくまでも可能という範囲のいわば中立的な議論でございまして、これを将来導入すべきだとか、いや、だめだとか、そういう形で議論したものではありません。
そこで、私としてはといいますか、私は論説委員でございますからある程度社を代表してということになりますけれども、冒頭ちょっと触れましたように、この納税者番号ということになりますと、これは包括的、つまり民間での取引その他が前提になりますから、包括的な個人情報保護法が大前提にならなくてはならないと思います。逆に言いますと、それ抜きで納税者番号を導入するというのは好ましくない、そのように思います。
ただ、この納税者番号の問題と、それに伴う包括的個人情報保護法の必要性とそれからこの法案における情報保護の問題は全く別の話だと思っております。
以上です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504720X01419990506/51
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052・春名直章
○春名委員 次に、大山参考人にお伺いしていきたいと思いますが、プライバシーの保護措置として、先ほどの質問でもありましたけれども、クローズな専用回線を使うということになっております。私も委員会で質問したんですけれども、素人なもので申しわけないんですけれども、各市町村の電算システムがありますね、九十数%もう普及していますけれども、それと専用回線を結ぶときにコミュニケーションサーバーというので結ぶということになっているんです。
その際の方法として、フロッピーディスク、磁気媒体でデータ交換を行う方法、それからファイアウオール的な機能を施して回線の接続を間接的に行うという方法、この二つの方法がある、こういうふうに行政局長さんも御説明されているんです。その方法は法案成立後に構築する、よく検討して決めていきたい、こういう御答弁をいただいております。それから、端末に携わる人数、これが非常にふえるということはもういたし方がないことですけれども、膨大になるということにもなっています。
私は、これで国民のプライバシー権を守れるのかどうか、個人情報の漏えいがきちんと防げるのかどうかやはり非常に不安を持っている者の一人であります。専門家の目から見て、先ほど、法律、技術、人間と運用、三要素が大事だという御説明だったと思うんですね、両面全部が大事であって、技術だけではだめだし、トータルなものだという御説明で、なるほどなというふうに私も思ったわけですけれども。
技術という面で見ますと、各市町村のこの電算システムから専用回線に結んでいく、これがもう何百万回、何千万回、三千三百自治体がこれから相互にやっていくわけですね。そういうことが導入されて、本当に、技術面から見て、十分、一〇〇%大丈夫だと言えるのだろうかというのが率直な私の疑問です。その点についての御意見をぜひ伺っておきたいというように思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504720X01419990506/52
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053・大山永昭
○大山参考人 答えからストレートに申し上げれば、先ほど申し上げているように、技術だけではもちろんないのでありまして、当然、そこに関与する人との運用の関係が大事ということになるかと思います。
ただ、最初にお話があったフロッピーディスクによる受け渡しの話、それからファイアウオールという話が二つほど出ておりますが、実は、これはもう一つ方法がございます、これについてはまだこれから出てくる新しい技術になりますが。私もこういう関係の仕事をずっとやってきて、最近、仕事といいますか研究を一緒にやっている仲間と議論して気づいたことなのでございますが、これは先ほどの質問に関係しますのでちょっと簡単に例で申し上げます。
例えば、コンピューターのシステムを導入したときに管理者というのを置きます。一例として自治体のコンピューターシステムというふうに考えていただきたいと思います。そこの管理責任者にもし自分がなったといたします。そうすると、その内部の人に対して教育あるいは監視を、監視というのは言葉は悪いですけれども、ちゃんとコンピューターを正しく使っているかどうかというのを監督する、そういう形での責任は十分果たせるかと思うんでありますが、外部と接続してしまったら、自分がどうやって見ていようとも、わからない形で何らかの外からの脅威を受ける、外から接続されて云々、先ほどの言葉で言えばハッカーあるいはクラッカーと呼ばれるような脅威が存在するわけでありますので、外と接続したら怖いというのは僕は当然の考え方だと思います。
もし私がそういう状況で、そのコンピューターシステムに対して、法律では、例えば不正アクセス防止法という案が出ておりますが、そういった制度的な対応をしていただいても、私がその責任者であったら、責任は果たせないとやはり申し上げるんじゃないかと思います。というのは、自分では見えない世界で、何をやられるかわからないからということでございます。
そこに対して、では接続することが悪いのかという話を考えますと、それは必ずしもそうではなくて、情報をだれが取り扱ったか、あるいはどういう考えのもとでその情報を外へ出した、あるいは外からもらったかという、その人の行為に対する責任を明確にすることが、これは情報システムの世界じゃなくて人間の世界も同じだと思います、そういうことが大事でありまして、その観点から見ると、先ほど言った、外から接続されてわからないところでやられると、自分では責任の果たしようがない。
それがもし、絶対に外からは入ってこられないけれども、あるところまでは情報が来ていて、その情報の中を確認して自分が受け取るのか受け取らないのかという判断をできるとすれば、これはやはり責任が果たせるんだろうと思います。
すなわち、簡単に申し上げると、例えば申請書、申告書を今、紙で窓口へ持っていきます。窓口で出したときに、そこに置いていけばいいわけじゃなくて、相手は中を見て受け取るか受け取らないかを判断しているはずです。必ず、そこに積まれていることはありますが、中を見て初めて次のプロセスに入るはずです。ですから、持っていく側はそこへ提出をしたいのであって、その提出した内容が不備かどうかは、その本人の判断ではなくて受け取り側の判断が当然そこに入るから、出す側の責任の範囲と受け取る側の責任の範囲が明確になっているというふうに考えるわけです。
これは情報システムも全く同じはずでありまして、出す側の責任の範囲と受け取る側の範囲がわからないようにつくってしまうと、当然これは受け取る側の方も、外からの話が正当だったのかそうじゃないのかわからなくなりますから、これは怖くなる。それが先ほど申し上げた、私がもし情報システムの管理責任者だとしてもやれない場合がありますというふうに申し上げたわけです。
ここは、フロッピーディスクで受け渡しをするというのは、情報システムはコミュニケーションサーバーまで来ています、そこからその次のところへ渡すかどうかは、中身の情報を確認して必ず渡しているはずです。ですから、だれがやっているか、その行為がどうかというのは、責任の所在が明確になっていると思います。
ファイアウオールについては、ファイアウオールという言葉は技術的にはいろいろな意味を持っています。レベルの違いがございます。したがって、ファイアウオールをつくればいいというのは、例えば内部の人が外へ出たときに、よくあるのは、ある研究機関で働いている人が、外へ出たときに自分の情報を扱いたい、外から扱いたい、だけれどもほかの人には一切外から中へは入れないようにしたいというときにファイアウオールという言葉を使う例もありますし、いろいろな意味がございます。ですから、ここでのファイアウオールを一概にどうだということは言えないんでございますが、どちらにしろ、これも責任の範囲を明確にする手段として位置づけられるのであれば、その価値は明確だと思います。
ただ、もう一つ申し上げた最後の、新しい技術もあるということですが、これについてはまた少し形が見えたときに皆さん方にもお話しできるのではないかと思いますが、そういった意味で、責任の範囲を明確にすることは大事というふうに思います。(発言する者あり)一年以内に。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504720X01419990506/53
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054・春名直章
○春名委員 どうもありがとうございました。
以上で終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504720X01419990506/54
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055・坂井隆憲
○坂井委員長 次に、知久馬二三子君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504720X01419990506/55
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056・知久馬二三子
○知久馬委員 私は、社会民主党・市民連合の知久馬二三子でございます。
本日は、参考人の先生方には、本当に貴重な御意見をいただきまして、まことにありがとうございました。私は、最後になりましたけれども、皆様方の御意見を聞きながら、このことを聞けば聞くほどに、今回の法改正が本当に必要なものだろうかという疑問をまた深くしたような気がいたします。
そこで、本日は日本弁護士会の峯田先生の方に二点お尋ねしたいと思います。まず最初にお願いしたいと思います。それで、重複したりする点があるとは思いますけれども、復習みたいな感じで、最後になりましたので、ひとつお答えよろしくお願いしたいと思います。
まず、今回の法改正が実現しようとしている住民基本台帳ネットワークシステムが、そもそも住民基本台帳法から逸脱しているのではないかという根本問題からお伺いしたいと思います。
私も自治体職員として窓口の業務に携わっておりましたけれども、現在の住民基本台帳制度がいかに個人情報の保護に関して無防備であるかということを痛感しておるものでございます。そして今回、全く異質な住民基本台帳ネットワークシステムを、情報の正確性や導入コストの面から見てこれが最も適しているから導入しようとしている点に問題の根本的な原因があると思うのでございます。この委員会でも、自治省は、基本は現行どおり、住民の利便増進に必要と繰り返しておられるばかりでして、私は本当に納得のいく答弁とは言えないのではないかと思っているものでございます。
まず、法の第一条の正確かつ統一的な記録を把握するという意味は、あくまでも住民と当該市町村との関係においてであり、他の市町村との連動や全国単位での本人確認を行うことなど全く予定していないと考えます。日弁連の意見書では、このネットワークシステムの実現は、単に住民基本台帳法の改正だけでは不可能であると述べておられます。現行法を逸脱しているという点について先生の御意見をお聞かせいただきたいと思いますのが一点でございます。
もう一点につきましては、住民基本台帳ネットワークシステムは、住民コードを各省庁共通の個人認識番号として使用することにより将来すべての行政機関をオンラインで結ぶことなどにより、データマッチングの危険性を持っています。住民票コードはすべての行政機関にアクセスするためのマスターキーであり、これらの情報を結合するマスターキーの役割を果たすことになるのではないでしょうか。
私は、この辺、先がたもそういうことはないと言われますけれども、将来的にはこれらのことがないと、この利便性というか、これを変えていくことの必要性というのは認められないと思うのです。この点で、今回の法改正では私たちが最も危惧するところであるということを強調したいと思います。
そこで、峯田先生にお伺いいたします。自治省は今回の法改正で、目的外利用の禁止、民間利用の禁止を盛り込んでいるから問題なしと説明をされました。包括的個人情報保護の法規制を持たない我が国で、今回のネットワークシステムの導入は、国民のプライバシーの保護の観点から見ても、大げさな言い方かもしらぬですけれども、まさに憲法違反ではないかということを感じますので、そこの二点につきまして峯田先生の御意見をお伺いしたいと思います。よろしくお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504720X01419990506/56
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057・峯田勝次
○峯田参考人 峯田でございます。先生大分熱心に私どもの意見書を御参照いただきまして、本当にありがたいと思います。
本日、冒頭には意見の中で申し上げませんでしたけれども、住民基本台帳制度そのものは、こういった全国単位での情報提供を前提にしてつくられている法律じゃないということを日弁連の意見書の冒頭に書いてございます。したがって、その点につきましては先生と私の認識は共通でございます。
それから、マスターキーとしての利用がどうかという点でございますが、確かに行政機関が提供を受けた四情報プラス住民票コードをほかの目的に使うことを許さないという規定が三十条の三十四の中に入っております。しかし、これには、受領者というのは行政機関ですが、それについては刑事的な処罰規定はございません。
したがって、私が脱法行為を教えるというわけにもちろんいかぬわけですけれども、先ほどもちょっと申し上げましたけれども、現在まだ限られた省庁でしか提供を受けられないシステムになっていますが、どんどん受け手の省庁が広がっていく、受ける業務が広がっていくというふうになった場合に、それぞれのデータを照合したいというのは、現在の霞が関の全部のネットワークを進めているという行政府そのものの全体的なシステム化の動向からしますと、当然、マッチングをしたいというのが要求でございます。それがいわゆる情報の高度化社会というものではなかろうかというふうに思うわけですね。
ところが、現行では、それは表面上はしていけないというシステムになっておるわけですが、では、こういうことは許せないのかということになりますね。例えば、先ほども申しましたけれども、現在、開示を受けるコードを持っている各省庁、例えば総務庁であるとか建設省がそれをベースにデータベースをつくること自身はこの法律は禁止していないんですね。だから、そこでデータベースができる。
そうすると、例えば建設省なら建設省が、この方のおたくの省庁で持っているこれこれのデータを下さいといった場合に、兵隊の認識番号ではありませんが、この番号のこの方ですよといって、言われた方が、その四情報プラス住民票コードそのものは提供できませんが、それで検索したデータを、ではこれがそうですよというふうに提供することは何ら禁止されていないわけですね。だから、索引になるようなものはお互いにわかっているから、それはもう要らないよ、中身がお互いに欲しいんですといった場合に、中身の交換はできるようなシステムになっているんですね。それは全く禁止も何もされていないわけですから、そういう形でのデータマッチングは当然可能だというふうに考えております。
それがいいということを申し上げているんじゃないんですが、今回の改正法は、そういうことについての制御装置はないんだということを申し上げます。
以上です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504720X01419990506/57
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058・知久馬二三子
○知久馬委員 ありがとうございました。
そこで、ちょっと関係ないかもしらないんですけれども、技術的なことがわからないもので、大山参考人にお願いしたいんです。
例えば、先がた、このシステムについてはそんなにプライバシーの問題には関係ないんだというようなこともあったんですけれども、例えばコンピューター等を使うときの健康管理というか、全く違った質問になるんですけれども、そういうものというのはどうなんですか。例えば、画面を見ておれば目が悪くなるとか、健康の方に対して影響というのはありませんか。その辺、関係ないようなことなんですけれども、人間形成の問題の中で、ちょっとあれしたものですから。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504720X01419990506/58
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059・大山永昭
○大山参考人 私の専門外なものですから、回答はできないんですが、御存じのようにといいますか、医療関係の仕事もやってきた関係があるので、ちょっとだけ申し上げると、CRTのようなものについては、何時間就労するとどうかというのが労働省の基準であるかと思います。私も、コンピューターだけずっと使っていると、やはりたまには外に行った方がいいよというふうによく申し上げるのでありますが、サイバー空間だけで遊んでいるというのも余りいいことではないというふうに思います。
申しわけないのですけれども、それ以上のことについては、私の専門外でございますので、御容赦願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504720X01419990506/59
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060・知久馬二三子
○知久馬委員 大変申しわけございませんでした。何かちょっと変なことを聞いたんですけれども。
では、続きまして、今度は石村先生に対してお願いしたいんですけれども、これもまた重複するかもしれませんけれども、よろしくお願いします。
今、全国の自治体で個人情報保護条例を持っている団体というのが千四百七団体ありまして、中央官庁とのオンライン禁止を定めている自治体も五百六十団体あります。自治体の行政現場では、部落差別や民族差別など個人のプライバシーをめぐる問題が日常的に起きてまいりました。このことは常に日常的に本当に起こっていることなんです。福山市のように、法律を超えた対応とも言われている事務取扱の要領で台帳の原則非公開を貫いているところもありますし、関西の方でも、閲覧手数料などを高くして閲覧がしにくいような状況のところもございます。
石村先生もあるところで書いておられますが、そもそも各自治体は、それぞれの自治体事務に利用するということで住民の情報を収集している。一方、住民の側も、こうした前提を信頼した上で、自治体が住民情報を収集、利用することに同意している。したがって、住民情報がそれぞれの自治体事務以外に目的外利用されたり外部提供されたりすると、この信頼関係は崩れてしまう。また、プライバシーを守れなくなるおそれが出てくる。オンライン禁止は、まさにこうした問題が起きないように設けられているのであると。
自治省の今回のネットワークシステムづくりは、そうした自治体の経験と努力を全く無視するものであり、実質的に地方自治を侵害するものと考えますが、この点について先生の御意見をお聞かせいただきたいと思います。
もう一点ですけれども、共通番号、つまり一つの行政番号の多目的利用とは、まさにマスターキーに相当する仕組みであります。これを認めることは危険である。行政番号はむしろ、税務、年金など行政分野ごとに固有の限定番号を使うべきである。むしろ、現在ある行政番号の汎用を防ぎ、所管事務の範囲を超えては利用できないように、行政番号利用規制法を制定すべきだと石村先生は強調されております。私も全くそのとおりだと思っております。
また先生は、データ保護策については、あくまで住民票コードを管理する自治体や各センター内部での情報保護措置にすぎず、これらの外部で実際に使われる高度情報のセキュリティーには一切役に立たないと述べておられます。職員に守秘義務を課すとか専用回線を使うとか民間利用を禁止するとか、自治省はるる述べられておりますけれども、先生はこれはコンピューター技術屋の空論でしかないと言われている点について、改めてお聞きしたいと思います。よろしくお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504720X01419990506/60
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061・石村耕治
○石村参考人 非常によく読まれているので、私があえてこれ以上説明する必要はないかもしれないんですが、もちろんオンライン禁止については、本来オンライン禁止というのは自治体のその権限の中でそれぞれつくってきたものであります。今回の新たなる自治省の構想を実現するという意味でそれをほごにしていくということは、これは自治権の侵害であり、非常に大きな問題であるというふうに考えております。したがって、自治体はもっと強烈に抵抗すべきであると思います。自治省というところが自治権をそういうふうな形で侵害するのに対して、自治体の抵抗というものはもっと強くなければならないというふうに考えております。
したがって、オンライン禁止条項というものは、自治体が勝手につくったものではなくて、先ほど申し上げたように自治体がよく考えてつくったものでありますので、それを外さなければならないような新たなるそういう構想というものは、自治権の保障ということから憲法上も非常に大きな問題があるというふうに考えております。
それからもう一つは、今、いわゆる番号をクローズした形で使おうとしているんですね。だけれども、これはアイデアそのものがどだい無理なんですね。
今、例えばスウェーデンを見てもアメリカを見ても、そんなにクローズドのシステムになっておりません。ですから、もともとこの構想そのものに問題があるのであって、例えば納税者番号に使うとかそういう形で、民間利用というのが当然どろどろ垂れ流しになるのに、一生懸命技術屋的にクローズドのシステムで、それにどういうセーフガードをかけたらいいかという議論をしているのですけれども、これは本当に机上の空論ではないかな。どこの国を見ても、韓国を見てもそうですし、アメリカを見てもそうですし、スウェーデンも、私は全部の国に行っています、行ってもそうなんですけれども、全部クローズでやるというのは非常に難しい、そういう現実があるわけです。
ですから、初めからそれをオープンで使われるんだという前提に立って、そのためのセーフガードをどういうふうにするかという議論をしていかなきゃいけない。ですから、全くこの辺は本末転倒の議論をしているのじゃないかなというふうに考えております。
いろいろな問題点があるのですけれども、今言ったように今回の構想そのものがちぐはぐな議論をしている。ですから、私がここに並んで、一生懸命番号を隠す隠すという形で議論をしているのは何か非常にこっけいに見えているような感じがいたします。どうせこれはどろどろと垂れ流しになります。
以上です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504720X01419990506/61
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062・知久馬二三子
○知久馬委員 大変ありがとうございました。
私も、今回お話を聞きながら、本当にメリットの面よりかデメリットの面の方が多いような気がいたします。やはりまだまだ地方というか行政の話をどんどん聞くべきだと思うのです。確かに、市町村長さんとか議会の方では推進されるかもしれませんけれども、末端ではそういうことがまだまだ浸透していないという点がありますので、十分に討論すべきだなということを感じました。
きょうは本当にありがとうございました。これで終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504720X01419990506/62
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063・坂井隆憲
○坂井委員長 以上で午前中の参考人に対する質疑は終了いたしました。
参考人の方々には、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして、心から厚く御礼を申し上げます。
午後二時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。
午後零時五十二分休憩
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午後二時開議発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504720X01419990506/63
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064・坂井隆憲
○坂井委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
午後の参考人として、中央大学法学部教授堀部政男君、フリージャーナリスト斎藤貴男君、兵庫県五色町長砂尾治君、岐阜県知事梶原拓君、以上四名の方々に御出席を願っております。
この際、一言ごあいさつを申し上げます。
参考人の皆様方には、御多用中のところ当委員会に御出席いただきまして、まことにありがとうございます。本案につきまして、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。
なお、議事の順序は、初めに参考人の皆様方からそれぞれ十五分程度御意見をお述べいただき、次に委員からの質疑に対し御答弁をお願いいたしたいと存じます。
それでは、まず堀部参考人にお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504720X01419990506/64
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065・堀部政男
○堀部参考人 中央大学の堀部政男です。
地方行政委員会におきまして住民基本台帳法の一部を改正する法律案について意見を述べる機会を与えられましたことを大変光栄に存じます。
この改正案で構築することが考えられております住民基本台帳ネットワークシステムにかかわる諸問題につきましては、これまでにもさまざまな機会に議論してまいりました。
まず、一九九五年、平成七年三月に発表されました自治省の住民記録システムのネットワークの構築等に関する調査研究委員会中間報告につきましては、幾つかの疑問点を指摘いたしました。その翌年の本報告になりますと、それらの疑問点をかなり解消するものとなりました。昨年三月十日に閣議決定されました改正法案を見まして、これ以上要望を出しても、日本の現行法制度の枠内における対応は不可能であると思うようになりました。
中間報告について論じたことをまず述べることにいたします。
中間報告が発表されるということで、全国紙のほとんど、通信社、放送局からコメントを求められました。メディアによって取り上げ方はさまざまでしたが、私が論じたことは次のようにまとめることができます。
第一に、住民基本台帳制度は、情報テクノロジーの飛躍的発展に伴い行政情報の電子化が急速に進んできている中で、その一つの応用例であるということであります。
第二に、住民基本台帳制度は、一九七〇年代前半に議論が頂点に達しました国民総背番号制を連想させますが、総背番号制問題は日本では必ずしも決着がついていない問題であり、中間報告で提案されている番号制度導入に当たっては、国民のコンセンサスを得る必要があるということであります。
第三に、番号制度とプライバシーは世界的にも多くの関心を集めてきた問題でありまして、今回のような番号制度導入に際しては、プライバシー保護の法的整備がなされなければならないということであります。
第四に、そのプライバシー保護を法的に整備する必要があるわけでありますが、情報流通のボーダーレス化が進んでいる中で、日本的感覚のみでは対処することができないような状況になってきておりまして、国際的感覚で国内法の整備に取り組まなければならないということであります。
次に、それぞれにつきまして改正案でどのようになっているかを見ることにします。
まず、改正法案で考えられております住民基本台帳ネットワークシステムは、第一に指摘いたしました情報テクノロジーの飛躍的発展がもたらす一つの応用例であると見ることができます。情報テクノロジーの高度利用は、地球上の多くのところで進められているところでありまして、社会的条件が満たされるならば、我が国としても積極的に推進していくべきであると考えます。
第二の国民背番号制論ですが、中間報告の住民基本台帳制度ですと、国民総背番号制を連想させてもやむを得なかったと考えます。中間報告に対するメディアの批判といたしまして、この点を問題視するものがかなりありました。この批判を受けてであると思いますが、改正法案は、住民票の記録項目として住民票コードを加えることとしまして、その記載の変更請求権を規定するとともに、目的外利用を制限しております。
中間報告で、住民基本台帳に記載されている者について、生涯を通じて一つの全国的に重複しない番号を付与されるものであることとなっていました。これに対しまして改正法案では変更請求権を創設いたしましたが、このことは本人の情報についてのコントロール権を認めるものですし、また、利用を特定の目的にのみ厳しく限定しまして、権限のない者、例えば民間企業者の利用を禁止していますので、国民総背番号という言葉を公的部門、民間部門の双方において無限定的に利用するという意味で使うといたしますと、改正法案で言う住民票コードは、国民総背番号制というよりは、行政サービス向上のためのコードという色彩を強めていると言えます。
コンピューターがまだ発明されていなかった一九三〇年代中葉にアメリカで導入されました社会保障番号に代表されますように、行政サービスや本人確認のためには番号というのは一応有効なものでありまして、そのために、多くの行政分野や民間部門で、本人が意識すると否とにかかわらず使われています。
第三のプライバシー保護の法的整備については、中間報告では何をどうするのか明らかではありませんでしたが、改正法案では法的措置が講じられています。
プライバシーないし個人情報を保護する法的対応の方式としましては、世界的に見まして幾つかのものがあります。欧米諸国では、一九七〇年代初めから個人データないしプライバシーを保護することを目的とする法律が制定されるようになりまして、現在に至っています。それらは三つのパターンに分けることができます。
第一に、一つの法律で国、地方公共団体等の公的部門、パブリックセクターと民間企業等の民間部門、プライベートセクターの双方を対象とするものがあります。これをオムニバス方式、統合方式などと呼んでおります。
第二は、公的部門と民間部門とをそれぞれ別の法律で対象とするセグメント方式、分離方式と言うことができます。
そして第三に、それぞれ公的部門、民間部門につきまして、特定の分野で保護措置を講ずるセクトラル方式、個別分野別方式があります。
オムニバス方式の立法例はヨーロッパ諸国に多く、特にセクトラル方式の立法例はアメリカに見られます。
日本では国レベルで、一九八八年、昭和六十三年に行政機関の保有する電子計算機処理に係る個人情報の保護に関する法律が制定されましたが、日本の個人情報保護法は、公的部門、しかも国の行政機関のみを対象といたしますセグメント方式、分離方式のものとなっています。アメリカには、民間部門を対象とするセクトラル、個別分野別の法律が多数あります。最近もアメリカでは、一九九八年、昨年十月二十一日に子供オンラインプライバシー保護法が成立いたしまして、世界的に注目されています。これも、セクトラルアプローチ、分野別のアプローチの法律であります。
我が国でも、地方公共団体ではオムニバス方式の個人情報保護条例が制定されるようになっています。例えば、神奈川県の個人情報保護条例がそれであります。しかし、条例には法律と異なりまして法的に限界がありますので、実効性が法律のようには上がらないのが難点であります。
日本でも、一九八二年、昭和五十七年に、私もそのメンバーでした、当時の行政管理庁で開かれましたプライバシー保護研究会でオムニバス方式の個人情報保護法を提唱いたしましたが、臨時行政調査会ではむしろセグメント方式を提言しまして、昭和六十三年の個人情報保護法が制定されるに至りました。当時の内閣委員会では、附帯決議で、民間部門の個人情報保護についても検討するようにという趣旨の項目がありましたが、その後の状況はむしろ、民間部門について包括的な個人情報保護というよりも、分野別に個別に対応するということになってきております。
最近でも、大蔵省と通商産業省が合同で懇談会を開きまして、個人信用情報の保護、利用のあり方について検討いたしました。その結果、法的措置を講ずるべきであるということを明らかにいたしまして、その後も引き続き検討をしているところであります。
今回の住民基本台帳改正法案の個人情報保護にかかわる規定は、公的部門を中心に置きつつも、民間部門にも関係するものでありまして、これはセグメント方式のものであるということになります。
第四のプライバシー保護に関する国際的感覚による国内法の整備につきましては、一九八〇年の経済協力開発機構、OECDプライバシーガイドラインや、一九九五年に採択されまして、九八年、昨年発効いたしました欧州連合、EUの個人情報保護指令が重要な意味を持っています。
OECDでは、一九八〇年にプライバシー保護と個人データの国際流通についてのガイドラインに関する理事会勧告が採択されました。この理事会勧告は、一方で情報の自由な流れをいかにして確保するかに腐心しまして、他方でプライバシーを保護するためにはどうすべきかに配慮し、その調和を図ろうとしたものであります。
この勧告附属文書の中に、日本でも大変有名になりました八原則が定められております。原則だけ申し上げますと、第一が収集制限の原則、第二がデータ内容の原則、第三が目的明確化の原則、第四が利用制限の原則、第五が安全保護の原則、第六が公開の原則、第七が個人参加の原則、そして第八が責任の原則であります。
上記の諸原則を日本国内でもどのように取り入れるのかということは、国における法律の制定に当たりましても、また地方公共団体における条例制定に当たりましても、かなり検討をしてきたところであります。
今回の改正案を見まして、かなり詳細に個人情報保護について規定していることがわかります。
個別の細かい条文につきましては後ほど御質問いただければお答えいたしますが、それらは、このOECD八原則という国際水準をほぼ満たすものであるというふうに私は考えております。また、改正法案の第三十条の九に都道府県の審議会の設置、第三十条の十五に本人確認情報保護委員会の設置が規定されております。権限などは限定的ですが、監視機関を重視いたします欧州連合の指令の趣旨にのっとっていると言うことができると思います。
日本の現行制度でどのようなことが可能なのか、個人的にも考えてみましたが、どうも日本の場合には、独立した行政機関を設けるというのはなかなか難しいところがありまして、現行法制度の枠内で対応するとなると、これでもやむを得ないのではないかというふうに思っております。
以上で、私の意見表明を終わらせていただきます。どうもありがとうございました。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504720X01419990506/65
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066・坂井隆憲
○坂井委員長 ありがとうございました。
次に、斎藤参考人にお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504720X01419990506/66
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067・斎藤貴男
○斎藤参考人 斎藤といいます。
本日は、この重大な問題に対して意見を表明させていただく機会をいただきまして、ありがとうございます。
事前にお手元に配られている資料には私の学歴と著書しか書いていないようですので、どこの馬の骨かもわからないというのでは困りますので、簡単に略歴を申し上げます。
私は、大学を出ましてから、産経新聞系列の日本工業新聞というところで鉄鋼担当の記者をしておりました。その後、「プレジデント」というビジネス月刊誌の編集部、それから文芸春秋の「週刊文春」の記者などを経まして、九一年からフリージャーナリストとして活動しております。
この問題につきましては、数年前、講談社の「Views」という月刊誌に依頼をされたのがきっかけで取り組むことになりました。その後、ほぼ同じ趣旨で、文芸春秋の月刊「文芸春秋」、それから岩波書店の月刊「世界」、また日本経済新聞社系の雑誌社で出しております「日経トレンディ」などで発表してきております。特に偏った党派性があるわけでなく、幅広くこの問題に取り組んでおるということをおわかりいただければ幸いです。
そうした成果を、この一月に、文芸春秋で出しております文春新書の一冊として、「プライバシー・クライシス」という題名で発表いたしました。そういった私の履歴を承知した上で、意見を聞いていただければありがたいと思います。
この住民基本台帳改正法案についてでありますが、私は断固として反対いたします。
その理由ですが、この法案は、私の過去数年間の取材の結果、ほぼ間違いなく国民総背番号制度につながり、我々日本人の自由それから人間としての尊厳、そういったものを確実に侵すことになる危険性を持つ法案である、このような結論に私は至ったからであります。
以下、その理由を申し述べます。
まず、自治省の言われる、氏名、住所、生年月日に性別、この基本四情報と住民票コードだけをICカードに載せるという話なのですけれども、これはすべてうそであると私は断言いたします。
まず、午前中のこの委員会におきましても、東京工業大学の大山先生あるいは読売新聞の朝倉論説副委員長のお話などで既に明らかなような気もするのですが、この法案に基づくICカードには、その基本四情報だけでなく、あらゆる個人情報が載っていく可能性が非常に強いということです。
まず、大山先生御自身、一つのICカードに多様なアプリケーションを載せるという発言をされておりましたが、既に三月三日、四日、東京ビッグサイトで行われたICカードに関する国際シンポジウムの席上でも、先生は同様の発言をしておられました。
その席上、配られた資料がお手元のものであります。ホチキスでとめた最後のページ、「次世代ICカードシステム その必要性と将来展望」という資料なんですが、その中で「広域・多目的カードの実証実験」として岐阜県のケースを取り上げた中で、ここで注目されるべきは公的サービスと民間サービスの相乗りである、このようなことを述べられた後、最後の一枚の一番左下、データベースとしては住民基本台帳が将来は来るんだ、このように指摘されておられます。
参考人に呼ばれたことでも明らかなように、大山先生はこの分野における理論的支柱の一人でもありまして、その方の考えていらっしゃることというのは相当程度日本政府の考えに近いのではないか。こういうことからも、住民基本台帳が将来のICカードの基本的なデータベースになる、このような点が明らかだと思われます。
また、そのほか、私のレジュメにありますが、過去数年間の取材の中で、今回の住民基本台帳改正法案が国民総背番号につながる証拠というのを幾つか挙げたいと思います。
まず最初の、税務等行政分野における共通番号制度に関する関係省庁連絡検討会議という組織が内閣内政審議室内に八九年より発足しております。これはちょうどその前年の暮れに政府税制調査会が納税者番号制の必要性というのを打ち出した答申を発表しまして、それを受けた形で発足しております。この会議には、大蔵省の主計局長、主税局長あるいは警察庁の交通局長、こういった方々を初め十三省庁の幹部が参加し、もちろん自治省の行政局長も参加しております。そして今日に至っております。
そもそも、番号を共通化して国民総背番号をやる気がないというのならば、このような組織の必要性が全くないと思います。このような組織があること自体、国民総背番号を導入する予定が八〇年代当時からあった、このような証拠であることは明らかであります。
次に、ICカードの特性ですが、これの最大の特徴は、従来の磁気ストライプカードの何百倍という記憶容量、あるいは多目的、多機能に使えることという点にあります。仮に基本四情報だけを盛り込むのであれば、ICカードの必要は全くありません。もったいなさ過ぎるということになります。
次に、国民総背番号の導入を前提とした各種のプロジェクトが、今では政府、各省庁の外郭団体を中心にたくさん繰り広げられております。
レジュメの二枚目に添付しました、国内におけるICカード検討・委員会マップというのをごらんください。各省庁の外郭団体がいろいろなICカード関連のプロジェクトをやっておる現状がよくあらわれております。
例えば左下の、運輸省の外郭である汎用電子乗車券技術研究組合、略称TRAMETといいますが、ここでは、鉄道の自動改札機を通る、JRでいうイオカード、ああいったカードを全国あらゆる鉄道で共通化する計画を推進しております。
また左上、通産省の外郭であるニューメディア開発協会、こちらでは、例えば北海道の滝川市のような過疎の都市で商店街のポイントカードにICカードを導入する、そういったプロジェクトを補助金を出して進めさせております。
あるいは右下、建設省の外郭、日本建設機械化協会、こういったところでは、土木作業の現場の建設作業員にICカードを持たせ、その人たちの免許歴、事故歴あるいは作業歴、フォークリフトが運転できるとか、以前どこそこの現場で左腕を折ったとか、そういったことをすべてICカードに入力させて管理する、それでもって要員の適正配置を図るという計画です。
これらはもちろん、それぞれの分野だけで終わっていれば、それはそれで非常に合理的なことなのかもしれません。しかし、それなら、こういったマップがつくられる必要もまたないわけです。
この委員会マップというのは、中央にあるICカードシステム利用促進協議会、JICSAPという、通産省の傘下にあるメーカーの任意団体がつくったものですが、そういったプロジェクトに使われるICカードを、この組織でスペックを一まとめにしようという、このための団体です。
ここにはなぜか、警察庁が進めております免許証のICカード化計画であったり、大蔵省の納税者番号制度、こういったものがどういうわけか外されておりますが、それらはすべていずれ連動する、そのためにカードのスペックを共通化する必要がある、こういう説明をしております。
また、資料の最後のもう一つですが、AID付番・登録方法検討会名簿というのがあります。これは工業技術院で設けられているチームでありまして、ここでは、一枚のICカードにたくさんのアプリケーションを盛り込む結果、それをカードの読み取り機で間違った運用をしないように、そのための企画づくりを進めている組織です。ここにはトップに、午前中、参考人をされていた大山先生がおられますが、そのほか、各省庁あるいはさまざまなICカード関連団体の代表の方が集まってきております。もちろん、自治省の情報政策室の課長補佐の方も参加しておられますが、これもまた、将来国民総背番号を導入する気がないのなら、こんな組織の必要性もまたないということが言えると思います。
そしてその次、岐阜県知事の証言とありますが、次に参考人で御意見をおっしゃると思うのです。
これは、私が一昨年、知事の梶原先生にお会いしたときに伺ったことですけれども、先生は、自治省の住民基本台帳改正法案のための懇談会のメンバーでいらっしゃいまして、その場で余りにも国民総背番号でプライバシーがどうのこうの、こういう意見が多いのに業を煮やして、そんなことを言うなら私のところで実験をする、実験をして悪いところがあれば後から直せばいいというふうにおっしゃって、自治省の国民総背番号の県レベルのシミュレーションを進めるやに至ったというふうに伺いました。
ところが、ここの岐阜県で今進められておることは、ICカードをあらゆる行政分野に適用する。また、ICカードを強制的に持たせられませんから、魅力あるカードにするために、例えば商店街のポイントカード、あるいは駐車場のカード、それからキャッシュカード、そういった民間のアプリケーションも盛り込んで、できるだけ持ってもらう、こういうような計画が進んでおります。これがまことに国のプロジェクトの県レベルのミニチュアなのだとすれば、これはまさに国民総背番号にほかならない、やはりこのような結論になるわけです。
五番、六番目は少しはしょりますが、私が取材している限り、ICカード関連メーカー、あるいはエレクトロニクス関連メーカーのほぼあらゆる技術者あるいは担当役員さんたちは、この住民基本台帳改正法案を近い将来の国民総背番号であるというふうに認識しておりました。そのためにカードの生産計画を立て、将来の事業計画を立てておる、このようにおっしゃっておりました。そういった話をしながら、必ず別れ際に、斎藤さん、でも私は本当は怖いんですよ、会社の仕事だからやっているけれども、個人的には非常に怖いというようなことを必ずと言っていいほど言っておられたのが印象的です。
最後に、韓国のICカード化計画との関連ですが、韓国の話については午前中かなり議論をされておったので省略しますけれども、私が取材したとき、韓国行政自治部の職員さんはこう言っておられました。日本の自治省とはかねがね情報を交換しながらこの計画を進めています、自治省の次官に頼まれてこちらのICカードの資料もお送りいたしましたと。ところが、日本の自治省では、アメリカとか北欧の話はされますが、韓国の話を一度としてされたことを私は承知しておりません。韓国の事情がわかってしまってはいけない理由でもあったのかというふうに考えられます。
最後、ではなぜ私がそれほどまでに国民総背番号というものを恐れるのかということですけれども、この話題が出るとき、よく社会全体の生産性が必要なんだということが言われます。企業活動であるとか経済活動において生産性というのは非常に重要だと思いますけれども、社会全体の生産性というところにはにわかに同調するわけにもまいりません。といいますのは、そんなことが大前提になるのならば、働くことのできないお年寄りなど一人もいなくなればいい、あるいは指導者層以外の人間、我々などはすべて物を言わぬロボットになってしまえばいい、こういう発想に安易に結びつきかねないからであります。住民基本台帳改正法案、すなわち国民総背番号制度が仮に多少の行政コストの削減に通じたとしても、その代償として我々一人一人の人間が失うものが余りにも大きいということが問題なんだと思います。
今までの議論で、特に午前中大山先生などのお話を聞いていますと、国民総背番号というのはほぼ自明であるわけですが、ただ、ICカードのセキュリティー機能だけが安全の担保なのだ、あるいは法律で縛るからいいんだ、このことだけが強調されておるようですが、技術というのは暴走するものです。また法律というのも、仮に今の先生方がそれを守るつもりでいらしても、次の選挙で新しく政治家になる方、あるいは次の世代の官僚の方々がまたどう考えどう動くかというのは全くわからないわけです。そういった未知のものが、全部そうかもしれませんが、ただ、ほかのものとはこれは明らかに違う、この制度を一たん入れてしまったらもう取り返しがつかないものになるというのが私の結論です。
また、ICカードということだけが言われておりますが、皆さんどこまで御存じか知りませんが、それに関する新たな技術というのも今産業界では次々に研究されております。代表的なものにバイオメトリックス、生体による個人識別という技術があります。例えば、指紋あるいは目の奥の網膜、ひとみの周りの虹彩、こういったものを使って個人を識別する技術が発達しておる。また、それらの中のきわめつけの中に顔による識別というのがあります。例えば、監視カメラをどこかに置いておく、監視カメラを運営する側は、一枚の写真を持っていれば、その監視カメラで隠し撮りをして、その人間がどこのだれであるかを即座に突きとめる。これは、眼鏡をかけたり髪の毛を伸ばしたりあるいは年をとって顔の形が多少変わっても、これはそのまま認識できるのであります。
そういった技術が既に次々に実用化されておって、それらのメーカーにも私は取材しましたが、ことごとくこの国民総背番号にそれを乗っけていきたい、このような意向をおっしゃっておりました。顔による認識技術については、幾つかのメーカーは日本の法務省及び警察庁と既に事前の研究を進めておる、こういうような事実もございます。
こういった事実を総合して考えていけば、いずれ、一人一人につけられた背番号をもとに一人一人の行動はすべて逐一把握されることになる。それはまた政府による把握とだけは限りません。民間に流出すれば企業にも把握されるし、あるいはどこか悪質な人間にハッキングされればその人にも行くだろうし、あるいは万が一外国に把握されてしまえば、日本人一人一人の行動がすべて外国に流れてしまい、そのときはもはや日本などは属国になるわけです。
それはあくまでも可能性にすぎませんし、そんなこと言ったらみんなそうだと言われるかもしれませんが、そういった可能性があることを一つ一つ考え、また、私が今申し上げたことは単に思いつきで言っているんではありません。何年かの取材を積み重ね、資料を集め、余り学者の先生方が行かないようなメーカーや団体の現場に足を運び、たどり着いた結論であります。
そういった合理的な見通しが既にあるにもかかわらず、そのことを無視して法律論だけで解釈していくのであれば、それでは何のための政治なのかというふうに思います。そういった国民に対する危険、国民がこうむるかもしれない危険というのを十分事前に考えた上でぜひ議論を進めていただきたいと思います。
我々は番号でもなければ奴隷でもありません。私は、この取材を進めながら、途中、家内と考えておりました第二子をつくる予定をやめました。と申しますのは、生まれたときから番号だというふうに扱われ、将来は政府や企業の監督、監視下に置かれた奴隷にしかなれない人間を私の子供として産み落とすことが罪悪のように感じられたからであります。私はそれほどの危機感を持って今この場におります。
最後に、各政党の皆さんに申し上げます。推進派あるいは明確に反対されておられない政党の方々に申し上げます。
自民党及び自由党の方々に対して、企業や政府の自由を尊重する余り、個人の自由を余りにも軽んじてはおられないでしょうか。人間は断じてそうした大きなものの奴隷として生きているのではありません。
それから、公明党の皆さん、信教の自由との考えをぜひ考えていただきたいと思います。この背番号でもって情報がすべて把握された場合、どの宗教を信じておるか、どういう活動をしておるかというのはすべて筒抜けになります。
また、民主党の皆さん、市民が主役ということだと思うのですが、この法案はまさにその理念に完全に逆行するものであります。逆行というより挑戦と言っていいかもしれません。この法案が通って実現するのは政府が主役の社会であり、市民はその場合奴隷あるいは単なる番号となるだけの運命であることを私はこの際申し述べたいと思います。(発言する者あり)そういうことを言っているんじゃありません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504720X01419990506/67
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068・坂井隆憲
○坂井委員長 意見陳述の時間が過ぎておりますので、簡潔に。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504720X01419990506/68
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069・斎藤貴男
○斎藤参考人 私はあくまで招かれたから意見を申し述べているのであって、そのようなことを言うために来たのではありません。
最後に、この法案は白紙に戻す以外の結論はあり得ないと考えております。でなければ完全に国民に対する挑戦であるというふうに私は受けとめております。
以上です。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504720X01419990506/69
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070・坂井隆憲
○坂井委員長 ありがとうございました。
次に、砂尾参考人にお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504720X01419990506/70
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071・砂尾治
○砂尾参考人 兵庫県津名郡五色町の町長をしております砂尾と申します。
ICカードを町としまして導入、運営いたしましてから既に十年が経過をいたしております。町民の皆さんも非常に喜んでおられますし、行政の方の効率性も高まりました。そういった関係で、今回の改正案をぜひ通していただき、より広く国民がこういった共有といいますか、利便性、いろいろな面を共有できるような方向性へ持っていっていただきたいなと思います。
まず初めに、私たちの町の概要から簡単に説明させていただきます。
私たちの五色町は、兵庫県の南部、神戸淡路鳴門自動車道によって明石海峡大橋を渡った淡路島南西部に位置し、播磨灘に面した、世帯数三千五百三十三戸、人口一万一千三百六十三人、面積五十八・一四平方キロメートルの過疎の町です。町内には瀬戸内海国立公園五色浜を有し、北方領土の開拓者である高田屋嘉兵衛翁の出生地としても知られています。
町は、健康文化都市を標榜し、町づくりのテーマとして、二十一世紀に羽ばたく「定住と交流のまち五色」を掲げ、ゆとりと安らぎが感じられる快適な環境や、自然と調和し未来に羽ばたく社会基盤づくり、ともに生きる新しい健康の町づくりに努めております。
昭和四十五年、初めての過疎法ができましてもう既に三十年になるわけですが、私たちの町は、健康福祉を町政のテーマとしてとらえまして、その後ICカード等の導入によりましていろいろ町のイメージアップが図られまして、悲願の過疎脱却ができる見込みでございます。
まず、五色町におけるICカード導入の目的と経緯につきましてお話しさせていただきます。
五色町の高齢化率は現在二六%で、四人に一人が六十五歳以上の高齢者で占められており、超高齢社会が現実のものとして、保健医療・福祉サービスのあり方が大きな課題となっております。健康に対する考え方も、単に病気でないという考え方から、心の問題や地域の問題までを幅広くとらえ、質の高い生活を指向する時代へと移り変わっています。
このため、病気の有無にかかわらず質の高い保健医療・福祉サービスをだれもが公平かつ安心して受けたいという住民の願いを具体化するために、総合ケアの推進体制づくりの一つとしてICカードシステムを平成元年三月に導入しました。
このシステムは、個人の保健医療・福祉情報をICカードに記録、蓄積し、それを診療や健康相談、指導に役立てようとする初めての試みでした。そして同時に、初めにカードありきではなくして、情報化の時代を先取りし、住民の自主的な健康管理の意識改革をカードを持つことによって促すことを間接的に誘導するものです。そして、平成七年の阪神・淡路大震災を契機として、平常時にはもちろん、災害時にも対応できるようシステムを更新し、他地域でも利用可能となるよう標準化に努めました。
なお、ICカード導入に当たり、住民の代表、医師、保健福祉関係者、学識経験者によるICカード開発検討委員会を設置いたしました。その中で、入力する項目を住民、行政など幅広い視点から検討し、入力する情報についても個人の意思にゆだねられるようにしており、プライバシー保護に特に気を配りました。
次に、ICカードの利用状況と町民の意識についてお話しさせていただきます。
五色町ICカードにつきましては、平成元年三月から発行を開始し、十年が経過しました。その間、平成九年に、震災を教訓にシステムを改善し、災害時にも対応できるシステムとして再構築しました。
現在のカードの発行数につきましては、四千六百枚で、四一%の発行率です。対象者は住民の希望者としておりまして、二十歳以上の住民はやすらぎカード、未成年者はすこやかカードの二種類としております。
利用につきましては、町内のすべての医療機関はもとより、保健センターや救急車なども利用できます。そのほか、役場窓口に設置しています自動交付機による住民票の写しの交付や、金融機関のキャッシュカードとしても使用できます。また、災害時には、避難場所を中心に使用し、住民の救援活動を支援できるようにしております。
五色町のICカードシステムに対して住民がどのように評価をしているのか、意識調査をアンケート方式で、平成元年六月、平成二年一月、平成五年八月の計三回にわたって実施いたしました。その結果、カードの所持形態としては、保険証と同じように家に保管している者が多数見られました。カードの有用性については、一、検査の重複が避けられる、二、画面で診療が受けられる、三、持っていると安心するの順で、行政側の期待どおりの結果となり、特に心配されましたプライバシーの面でも、住民の違和感がなくスムーズに受け入れられたことが確認されました。カード利用頻度は、成人で四二%、小児で六九%、やや予想を下回る結果となりました。ICカードシステムの普及については、九五%以上の住民が期待しているという結果となっております。
三番目に、ICカード導入についての全体評価につきましてお話しさせていただきます。
ICカード導入の評価として、七つのことが挙げられます。まず一番に、自分の病態の推移について関心が高まり、自分の体に対する健康管理意識が向上してきているという副産物的効果が見られること。二つ目は、いわゆる医療機関のはしごと言われる不必要な多受診が低下傾向を示し、医療の効率化が図られたこと。三つ目は、自分の健康情報はすべて医師に把握してもらっているという安心感が患者に見られ、かかりつけの医師を家庭医的にとらえる傾向が見られるようになったこと。四番目に、住民票、印鑑証明書の自動交付や金融機関等のATM利用など、付加価値を特に持たせることにより利便性を増したこと。五番目は、カードは標準化対応、CAMソフトを導入しています。しかしながら、広域利用を行うには医療機関、他町の協力支援体制が必要であること。六番、ICカードにより、災害時における安否確認、避難所における要援護者の把握、必要救援物資の把握を迅速に行うことができること。
最後に、安心はなかなかお金で買えません。老後の不安は現実的な社会問題となっております。ICカードを含めた施策は、総合的、有機的に関連づけられて展開することで住民の福祉の向上につながるものと考えます。
四番目に、住民基本台帳ネットワークシステムに対する考え方につきまして意見を述べさせていただきます。
住民の利便性も高まり、煩雑な役場の窓口手続を簡素化できる広域情報ネットワーク化を図るという点については、基本的によいことだと思います。今後、市町村での創意工夫により幅広いサービスを展開していく上で、智恵の出しどころでもあり、地方分権の上からも、おくれている情報化を進めていくべきだと思います。
住民基本台帳ネットワークシステムにおけるICカードには、基本情報以外に、市町村が条例を設けて保健、医療、福祉などの使途を限定した付随情報も入れられると聞き及んでおります。現在五色町で実施しておりますICカードシステムが今後全国的に普及し、全国どこの医療機関に行ってもカードによる効率的な受診が可能となり、住民福祉の向上につながるよう期待いたします。
一部で、国主導であり地方分権の流れに逆行するものというような御意見があるそうですが、私は、一町の首長といたしまして意見を述べさせていただきます。
住民基本台帳制度は、これまで市町村が団体事務として主体的に行ってきております。しかし、これからの時代は広域的あるいは全国的な行政の対応が必要でありまして、今までのように三千三百の市町村がばらばらに対応していくにはやはり限界があると思います。
今回の住民基本台帳ネットワークシステムは、国ではなく、市町村と都道府県がスクラムを組んでつくるものと理解しております。地方分権の主役である市町村と都道府県がスクラムを組むこと自体がまさに地方分権の推進に当たるものであり、逆行するとの御指摘は当たらないと考えます。
以上で意見を終わらせていただきます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504720X01419990506/71
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072・坂井隆憲
○坂井委員長 ありがとうございました。
次に、梶原参考人にお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504720X01419990506/72
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073・梶原拓
○梶原参考人 私は、自治体の立場、とりわけ都道府県の立場で御意見を申し上げたいと思いますが、私の個人的な意見も入っておりますので、あらかじめ御理解を賜りたいというふうに思います。
最初に一点だけ申し上げたいんですが、この制度を使うか使わないかということを一体だれが決めるか、それから、使い方をだれが決めるか、その議論が余りされていないように思うわけでございますが、私は、この制度を使うか使わないか、どう使うかということは、最終的には住民お一人お一人が決定権を持つ、また、そうならなければいけない、こんなふうに思っております。
岐阜県は情報化政策をいろいろ進めておりますが、この住民基本台帳ネットワークの問題は、行政にいわゆるマルチメディア技術をどう導入するかということの一つの例ではないかというふうに思うんです。岐阜県の場合は、全国に先駆けまして、行政の情報化、教育の情報化、生活の情報化、さらには情報産業の育成、そういったことに取り組んできて、かなりの経験を積んでおるわけでございますが、そうした経験を通じて考えますと、この新しい先端的技術のいわゆるマルチメディア機能というものを行政がどう考えるかということが大切ではないかと思うんです。
このマルチメディア機能というのはいろいろございますが、リアルタイムでコミュニケーションができる、リアルイメージ、実物と同じだ、双方向のインタラクティブである、有能な助手としてコンピューターを駆使できる、さらに、お互いにネットワークで組んで知恵を出し合うことができる、いろいろな機能がございますが、行政といたしましては、機会均等化作用というものに着目すべきだというふうに思います。
要すれば、金があるかないか、肩書があるかどうか、権力があるかどうか、組織力があるかどうか、そういうことを乗り越えて、地域的、時間的、経済的、いろいろな意味でバリアを越えられるというバリアフリーの効果が大変大きい、これが機会均等化作用でございまして、これがいわゆる社会的弱者に大きく有利に作用する、そういうことではないかというふうに思います。
一般的には、女性が最近はマルチメディアを駆使して男性と対等に仕事ができるようになりました。若い人も、ビル・ゲイツなんかが典型的でございますけれども、この世界で若くても世界的に活躍できる、それから高齢者、独居老人、障害者の方、過疎地の方々、そういういろいろなバリアがある方にイコールフッティング、機会均等化作用を与えるということが行政の役割である、こんなふうに私どもは思っております。商売は商売でいろいろな使い方がございますが、行政という公共の立場では、このバリアフリー効果、機会均等化作用、そういうものに着目すべきであろう、こんなふうに思っておりまして、そのような施策を進めておるわけでございます。
一例を申し上げますと、私どもが進めております大垣市のソフトピア・ジャパンに福祉メディアステーションというのがございまして、そこで上村さんという方が、この方は交通事故で首から下が麻痺した方ですが、自分の呼吸の仕方を調節してパソコンを動かしてイラストをかいておる方がいます。我々の機関誌にも活用させていただいておりますが、その方がリーダーで、障害者の方々がパソコンを駆使して仕事ができる、こういう研修センターを設けております。
最近は、バーチャル工房といいまして、複数の障害者、特に重度障害者の方が力を合わせてパソコンを使って仕事ができる、こういうこともやっておりまして、最近、六人のグループが誕生いたしました。これは大変うれしいことでございます。従来の、コンピューターのない時代であれば仕事ができなかった方が仕事ができるようになるということは、本当にすばらしいことである、こんなふうに思っております。これが行政としての先端技術を使う立場であろう、こんなふうに思っております。
そこで、住民基本台帳ネットワークもマルチメディア技術の一つであろうかと思いますが、岐阜県の場合、既に御案内のとおりでございますが、全県的には、平成八年度に産学官のICカード導入研究会というのを設けまして専門的に研究しておりまして、一部の地域で試験的に実施いたしております。南飛騨地域では、去年の十月から、住民票の交付とかそういうことに使っておりますが、もう今、二千ぐらいカードが出ておるようでございます。それから、多治見市というところでも実験を始めることにいたしております。
それから別途、平成四年から中津川市というところで元気カードというものをやっておりまして、人口五万程度でございますが、もう三万人の方がカードを使っておられる。そして、その方の健康、医療情報というものをカードに入れまして、先ほど五色町の町長がおっしゃいましたように、大変住民に安心感を与えている、好評であるということでございます。
住民基本台帳ネットワークにつきまして、一般的に申し上げますと、これは住民自治システムのインフラである、住民サービスのインフラである、こういう理解をいたしております。したがって、国の制度とは全く別個のものである、こういうふうに理解をしております。ただし、居住移動が広域化しているということから、どうしても広域的に考えなきゃいけない。一方で、病人だとか高齢者は移動の自由を失っております。そういう方のためにも、広域的に利用できる住民サービスシステムというものが不可欠ではないかというふうに思っております。
そして、本人の認証がかぎでございますが、これは行政側の都合で本人認証をするということではなくて、個人個人が認証してもらいたい、本人として認証してもらいたい、そのニーズにこたえるというスタンスでなきゃいけない、かように思います。行政の都合で勝手に本人認証というものを利用してはいけない。
等々ございますが、要約して申し上げますと、基本的に、自治性、自主性、主体性、任意性、選択性、そして人間性、こういう考え方で徹底すべきである。制度をつくる場合も利用する場合も同じでございます。
そこで、いろいろな原則がございますが、市町村自治原則である。国が勝手にこの制度を利用しちゃいけないと思うわけでございまして、納税のためにこれを使うということになりますと、本来、福祉とか医療とか、住民サービスのためによかれかしと思って進めているこの制度がそのために阻害されてしまって、福祉とか医療水準が落ちる、こういう弊害がございます。したがって、論ずる場合は全く別の土俵で論じていただきたい、ごちゃまぜにして論議されると、これは住民側としてはまことに迷惑な話である、かように思います。
それから、住民自治の原則ということで、選択の自由、応用の自由がなきゃいけない。これを使うか使わないかという選択の自由。そして、障害者の方々にお聞きしますと、いろいろな付加機能をつけてくれということでございます。
ザウルスと携帯電話を持ってまいりましたが、これを使いますと、耳の不自由な方が、いざ地震などの災害のときに、これで役所側とコミュニケーションができて、そして救済をされ得るということでございます。耳が不自由ですと何ぼラジオを聞いていても全然わからないのです。したがって、私どもは、この二、三年、耳の不自由な方々の研修、このザウルス等の研修をやっております。
そういう耳の不自由な方々の御要請は、ただ住民登録だけじゃなくて、我々の要求するいろいろな機能を付加してくれ、こういう御要望でございます。このことは、非一律性の原則とか非強制の原則ということでもございますが。
それから、三番目に申し上げたいことは、弱者優先の原則ということでございまして、費用対効果論が出ておりますけれども、弱者を救うためにはお金をかけてもやるべきだというふうに思います。しかし、結果として、これは人件費の節約等で行政効果は大きいと思います。しかし、それが主たる目的で論議すべきではない。社会的に弱い立場にある方々、そして皆様方も、いざ地震のときにもう途端に弱者になるわけです。そういうケースを想定して、そしてこの制度を考えていただきたい。金が何ぼ浮くかというようなことは副次的な問題でございまして、まず生活の現場から、そして弱者の立場からこの制度の論議をしていただきたい。党利党略で議論されているわけじゃないでしょうけれども、生活の現場で、弱者の立場で御議論をいただきたい、かように思います。
この制度は、先ほど申し上げましたように、一体だれが決定権を持つかということでございます。国民総背番号制とか納税番号とか言っておりますけれども、これは自治体が協力しなければそんなものはできるはずないのです。我々は、これは住民自治の制度である、かように思っておりまして、自治省がどう考えておられるか私は知りませんけれども、我々自治体は、もう断固としてその精神を守ってまいります。自治体の協力なくして乱用はあり得ない、かように思います。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504720X01419990506/73
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074・坂井隆憲
○坂井委員長 ありがとうございました。
以上で参考人の意見の開陳は終わりました。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504720X01419990506/74
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075・坂井隆憲
○坂井委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。
なお、参考人の皆様に念のため申し上げますが、発言の際にはその都度委員長の許可を得ることになっております。また、委員に対し質疑をすることができないことになっておりますので、御了承願います。
質疑の申し出がありますので、順次これを許します。中野正志君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504720X01419990506/75
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076・中野正志
○中野(正)委員 自由民主党の中野正志でございます。
お忙しい中、四人の参考人の皆様には大変にありがとうございました。
とりわけ、私どもの立場で申し上げますと、首長さんという立場であられます砂尾参考人、梶原参考人、お話をお伺いしながら、その先見性といいますか、勇気と情熱、また気概、それが感じられまして、ぜひこれからもますます御健闘あられたい、心からそんな期待を持たせていただくのであります。
そこで、まず、砂尾参考人にお伺いをいたしたいと思います。
出雲市民カード、今民主党に所属されておられます岩國哲人さん、まさに情報化社会先取りのアイデア、私は当時、大変すごいことを考えるものだな、その発想、行動に実は大感銘を受けた一人であります。ただ、なれるまでやはりなかなかにして時間がかかるな、正直な感じ方でありますし、出雲市民カードで今の市長さんも大変御苦労いただいておるようでありますけれども、やはりいろいろなプラス効果が出てこなかった部分もある、それを改善、改革しながら、いい意味で高めて、それを砂尾参考人のところではICカード、すばらしい形でつくり上げられたな、今率直に見せていただき、また読ませていただいたわけでありまして、私は大きな評価を惜しまないものであります。
いろいろお伺いいたしますと、砂尾さんは阪神・淡路大震災という大災害を受けて、役場も被災あるいは住民の皆さんも大変な被害を受けて、ほかの市町村に住民の方々は避難をされる、そんな状況を目の当たりにされてこられたということをお伺いをいたしておるわけであります。
そういう意味で、今度この住民基本台帳がネットワーク化されますと、役場の住民基本台帳システムが万が一のとき機能しなくなったとしても、県あるいは隣接の市町村はオーケーでありますから、当面の住民情報をほかの市町村で取り出すこともそういう意味では当然可能になってくる、あるいはカードを使っての本人の確認も隣町でできる、そういうことになると思いますけれども、こういうような使い方はネットワークを構築することによってしっかりと可能となるのだ、私たちはそういった点からも今回のネットワークシステムは何としても必要だ、こう思っておるのでありますけれども、改めて御見解をお伺いをいたしたいと思いますのが、一点。
それから、二点目ですけれども、さっきのお話によりますと、プライバシーの関連で、住民も違和感なくスムーズに受け入れられている、こんな表現がございました。そういう意味で、町民側、住民側からのプライバシー関連についてのクレームというのは全くないのかどうか、そのこともあわせお聞きをいたしておきたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504720X01419990506/76
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077・砂尾治
○砂尾参考人 ICカードの効果につきまして先生にお答えしたいと思うのですが、一町が一万人あたりの町でやるのと、人口が十万、十五万あるいは百万とか、やはり大都市になればなるほどメリットは大なるものがあると思います。これは、ぜひ大都市の国会議員の皆さんは賛成していただきたい。例えば一万人の町ですと、本人確認に来ましても、カードと両方やっておるわけですが、あの人はどこの人であるというのを大体課長とか助役は知っておるわけですね、小さい町でしたら。ところが、東京都とか大きいところになりますと、あそこはだれの長男でとかそういうことは絶対わかりませんからね。そういう面では、費用対効果といいますか、そういう波及効果というのは私はネットワークを組むことによりましてはかり知れないんじゃないかなと思います。
出雲市の場合は、よそさんのことですし、広域的に伸ばせなかったのでちょっと伸び悩んでおるのじゃないのかなとは思うのですけれども、よその町のことはちょっとお話しできません。
それから、プライバシーのことにつきましてですが、十年間一切クレームはございません。絶対ありません。そして、セキュリティーもしっかりやっております。大丈夫です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504720X01419990506/77
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078・中野正志
○中野(正)委員 ありがとうございました。セキュリティーもしっかりして、プライバシーの関連でクレームも十年間一切ない。これからもますますひとつ頑張っていただきたいと思います。
次に、梶原参考人にお伺いいたしますけれども、いろいろ岐阜県の情報化政策をお伺いしながら、すぐれて本当に進んでいるな、そんな気持ちを強く持たせていただいておりました。とりわけ、このシステム構築についても、弱者の立場で皆さん御判断されたしと、なるほどな、むべなるかなという思いをいたしたのであります。
私たちの認識でも、梶原知事は全国に先駆けて、市町村がその区域を越えて連携して、ICカードを利用した住民基本台帳システムを試行された。まさに私ども国会議員のみならず、私は仙台なんでありますけれども、仙台市議会とか市役所のメンバーから、知事さんの問題について大変高い評価をよくお伺いをいたしております。そういう意味で、今回の構想はまさに地方からの発想だ、地方分権の趣旨に合致したものだと私も率直に評価をしたいのであります。
ただ、今お話がありましたプライバシー保護など、さまざまな議論も他方であることも事実であります。午前に東工大の大山教授から、ICカード、十分な安全性があるという発言も実はございました。今回のこのネットワークシステムにおいては、やはりICカード化がどうしたって不可欠だと私は思っておりますが、知事さんの方の益田郡五町村で試行されているこの問題で、ICカードの意義、またこれからの発展性について、知事さんとしての重ねての御見解をお伺いしておきたい。あと、さっきさらっと斎藤参考人の陳述に反論を加えられましたけれども、もっと踏み込んだ反論をひとつ御披瀝いただけないかな、そんな気持ちで御質問申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504720X01419990506/78
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079・梶原拓
○梶原参考人 まず、広域性のことについてお答えしたいと思うんですが、私ども岐阜県は中部圏で七つの県に囲まれておりまして、県境の市町村、お互いに連携して既にいろいろ仕事をやっていまして、例の世界遺産になりました白川村の方々はお隣の富山県の病院でお世話になっているということでございます。それから、今御指摘の南飛騨の益田郡のICカードネットワーク、これは下呂温泉というのがございまして、そこに周辺の町村からたくさん働きに行かれる。だから、今カードは二千枚ぐらいですが、最近急速に伸びまして、近々六千枚ぐらいになると思うんですが、声を聞いてみますと、下呂に働きに行く、そこで住民票がとれるということで、働く人にとっても大変ありがたい、そういうお話がございます。
先ほど申し上げましたように、移動とか定住が広域化していきます。また一方、独居老人のように移動の自由のない方がおられるとかいうことですから、やはり市町村という境界を越えなきゃだめだ、もう生活の実態がそうなっておるわけです。それで、そのつなぎ役がだれになるかというと、まずはやはり都道府県だろうというふうに思うんです。
しかし、先ほど白川村のお話をしましたように、県境を越えて医療も広域になっているということですから、同じ都道府県の中だけではだめなんで、県境を越えた広域にしなきゃいけない。そうなると、全国知事会でやるというのも一つの手ですけれども、自治省にお願いする、そういうことでございまして、言葉は悪いんですけれども、都道府県の下請を自治省がやってもらうということ。下請も部分下請でございまして、要するにネットワークのつなぎだけをやってもらいたい。要するに接続屋ですね、中身まで立ち入ってもらっちゃ困るわけです。ただつなぎ屋で、下請をやってもらいたい。最近の行革の法定受託の事務と逆の発想でございますが、今や国も自治体も対等でございますから、そういう言い方をしても決して失礼ではなかろう、このように思うわけでございます。
以上で……(中野(正)委員「あと斎藤参考人に何か御反論は」と呼ぶ)いろいろな御意見が世の中にございますから、結構でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504720X01419990506/79
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080・中野正志
○中野(正)委員 さすが知事さんでございまして、ぜひその気概で頑張っていただきたいと思います。
時間もありませんから、斎藤参考人に今度お伺いをさせていただきたいと思います。
さっき、国民総背番号制度へと展開される危険が不可避だ、言ってみれば、税務等行政分野における共通番号制度に関する関係省庁連絡検討会議と納番制との関連、あるいは国民総背番号制度を前提とした各種プロジェクト、これらで明らかだ、こういうことであります。
お互いに協議をするのは私は全く問題ないと思うんでありますね。まして今回の改正案は、あくまでも住民票コード、そして四基本情報のみ。斎藤参考人は、うそだ、こう言っておりましたけれども、うそではない。別表に規定されている項目だけでほかに利用してはならないとちゃんと法律で規定されておりますし、システムに対する漏えい罪、あるいはかかわる方、職務関連でありますけれども、守秘義務、あるいは違反者への重科罰、こういうことでセキュリティーもしっかりと確保されている、私たちはそう理解をいたしておるわけであります。
先ほどの砂尾参考人の話のように、これからは、市町村での創意工夫により、幅広いサービスを展開していく上で知恵の出しどころでもあるのだと。市町村は言ってみればカードの中身をいろいろ工夫する、あとどんな形であるか住民が選べばいいんだ、選択すればいいのだ、そういうことだろうと思うんでありまして、私は、どうも斎藤さんの論理は余りにも飛躍し過ぎではないかな、失礼な言い方をすれば被害妄想なのではないかな。いろいろ企業関係の方々のお話もありましたけれども、企業関係は企業関係で、それは総背番号制度を勝手に理解して、勝手に自分たちが政府としてはこうするだろうと予測をしてやられる分には、我々はそんなのは関知することではない。今回の法案はあくまでも今回の法案で、しかも納番制度とも全く別次元の話なんですね、法案の中身については。
やはり、そういう意味で、私は、どうも斎藤参考人の話は、ゴルフの世界でいうと、たらればショットとよく言うんでありますけれども、OBがなければ、あそこでOBを打たなければ私は優勝したとか、そういう、たらればという表現があるんであります。
それで思い出すのは、実は私たちが学生時代のころ、日米安保論議がかまびすしかったのでありますけれども、日米安保条約が改定をされれば、結ばれれば戦争に巻き込まれるとか、徴兵制が施行されるとか、子供たちが戦場に駆り出されるとか、そういう議論がまかり通った一時期もあったんであります。もちろん、一度も巻き込まれたことはない。日米協調で、今経済低迷はしていますけれども、それなりの経済発展も遂げた我が国だと思うんであります。
そういう意味で、斎藤参考人に率直に申し上げますけれども、申されたような総背番号とかあるいは納税者番号制度とか、こういうものは別なジャンルですよ。もし出てくれば、今回は法律で規定してしっかり限定されているわけですから、それはそれでまた我々のこの議会で審議していけばいい話でして、何かいかにも国民代表である我々国会議員は要らない、議会制民主主義否定のようなお話がされた。敷衍して言えば、国家権力は悪玉だ、そんな雰囲気にもとれるような、政府無用論のような感じを実は持った私であります。
そういう意味で、ぜひ立法府を信用していただいて、何もするなということでなくして、議論は大いに尽くすべし、そして、決まったことはそのままやるべし、改善の要があればまたその段階で改善すべし、今回の議論は、とにかく最低限のところで、そんな飛躍した考え方を持たないで理解するというわけにはまいりませんか。改めて御質問申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504720X01419990506/80
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081・斎藤貴男
○斎藤参考人 政府無用論とおっしゃいましたが、そのまま被害妄想ではなかろうかとお返事しておきます。また、安保云々のその評価についても、それもまた今回の議題ではないと思いますので、意見は差し控えさせていただきます。
要するに、今回は四情報、その法案についてだけ議論すべしというお話なんですが、そこの点で、私は、過去の取材で、余りにもそれだけではおさまらないことが明らかであるということを承知しているから申し上げておるわけです。
納番制につきましては、大蔵省の主税局の課長さん、及びグリーンカード以来この問題に深く関係しておられる元財務官の内海孚さん、こういった方々が、将来は住民票に載せるんだとはっきりおっしゃっております。私の取材の場だけでなく、大蔵省の納番制のパンフレットにもそのことがはっきり書かれております。であるならば、導入すればいずれそのことが議論になることが明らかである以上、そのわかっていることは今のうちから議論をしておくのが、これは当然ではないでしょうか。
また、さっきの共通番号制度の連絡検討会議などにつきましても、今のお話では全くその組織の説明にもなっていないと思います。そういうつもりがないのならば、そんな機関は要らないわけであります。
こちらでぜひお願いしたいのは、先生方がもしも御存じなければ、政府に知らないうちに存在しているいろいろな機関あるいはプロジェクト、そういったものをこの際よく調査されて、どういう関係が将来考えられるのか、そういったことに議論を及ばせることが政治の仕事ではないのかと思います。
その意味では、だれよりも政治を信頼し、また期待しているのは私でもあります。無用論なんということはとんでもありません。ただ、行政の言いなりになるのなら政治は要らないと言っているだけでありまして、この際、この場でよく議論を尽くしていただきたいなと考えております。
以上です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504720X01419990506/81
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082・中野正志
○中野(正)委員 時間ですので、どうもありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504720X01419990506/82
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083・坂井隆憲
○坂井委員長 次に、桑原豊君。
〔委員長退席、山本(公)委員長代理着席〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504720X01419990506/83
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084・桑原豊
○桑原委員 民主党の桑原でございます。
きょうは、四人の参考人の先生方、大変貴重なお話を賜りまして、本当にありがとうございます。
この問題というのは、ある意味では国民の生活が将来大きな影響を受ける大変重大な課題だろうというふうに私は思っております。しかし、その議論は今始まったばかりでございまして、これからいろいろな意味での、光と影という話もございましたけれども、そういったことなども含めて、将来にわたってこの制度が本当に国民のプラスになっていくのかどうか、そのことを十分見きわめて、しっかりした議論をしていく必要があるだろう、こういうふうに思っております。
そこでまず、今度の住民の個人情報のネットワークシステムといいますか、これが確立をいたしますと、一極集中といいますか、大変な国民の情報が一つのところに集中をしていく。これまでも、コンピューター化されたプロセスの中で、この住民情報というものがいろいろ漏れて、あるいは不正にそういった情報が奪われるといいますか、そういったことでいろいろな事件が起きておりますけれども、今度のシステムができ上がりますと、そういった従来のものに比して、比較にならないほどに大きな量の情報というものが漏えいをする可能性が出てくるというふうに思うわけでございます。
もちろん、さまざまなセキュリティーが、あるいは安全のためのそういった措置というものが講ぜられるわけでございますけれども、しかし、その裏をかいて、またいろいろなことが行われるということも、今までの歴史がそういうことを物語っているわけでございます。そういったことになりますと、非常に大きな問題になるわけでございます。
私は、先ほど堀部先生がおっしゃいました、いろいろと国では、例えば行政機関の保有する電子計算機処理に係る個人情報の保護に関する法律というようなことで、国の行政機関の個人情報についてはそういった一定の保護措置が行われている、法定されている。あるいは自治体では、約七割ぐらいになるでしょうか、自治体が条例や規則でそういった保護対策を講じている。
民間のレベルでは、残念ながら法的なそういった措置というのはございませんで、関係業界に対する通達でありますとかガイドラインであるとか、あるいは民間団体の自主的な対応ということで、民間の部分での、ある意味ではそういった意味での保護措置というのが非常に弱いという意味では、私は大きな穴があいているというふうに思うわけです。
そういった状態の中でこのような制度が行われていくということになりますと、やはり大変大きな不安といいますか問題が生じる可能性が出てくるのではないか、こういうふうに思うわけです。
そういう意味で、それぞれの先生方にお伺いしたいわけですけれども、まず、この状態でこういった制度を施行していいのかどうか。まず大前提として、そういった個人情報の保護を包括的に行うような法の制定というものがどうしても必要ではないかというふうに私は思うわけですけれども、その点について、それぞれの参考人の皆さん方はどのようにお考えになるかということをお聞かせ願いたいと思います。
それから、五色町の町長さん、カードシステムが非常にうまくいっている、そしてカードの情報等についても、プライバシーの問題についてはほとんど全くない、苦情もないということで言われておられるわけですけれども、そういった特に個人情報の保護について、特段いろいろな工夫を重ねられているんだと思うのですけれども、そのこともあわせて、ひとつお答えの中で入れていただきたい、こういうふうに思います。
〔山本(公)委員長代理退席、委員長着席〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504720X01419990506/84
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085・堀部政男
○堀部参考人 今先生御指摘されました包括的個人情報保護、これは民間を対象にしたものというふうに受けとめますが、これにつきましては、先ほど最初の意見陳述の中でも申し上げましたように、私個人は、一九八二年、昭和五十七年の当時の行政管理庁のプライバシー保護研究会の報告書の中でそのことを考えました。
その後、日本では、公的部門に国の行政機関の保有する個人情報保護について、これはまた事前通知等の関係もありまして電子計算機処理に限定されましたが、それが制定される。この基本になりましたのが、当時の臨時行政調査会が行政改革の問題として、個人情報の保護をすることによって国民の信頼を得る、こういうところから、公的部門、行政機関の個人情報保護法をつくる、こういうことを提唱したその結果であります。
民間につきましては、当時の行革大綱の中でも、関係省庁がそれぞれ連絡調整を図りつつ保護措置を講ずるものとするという趣旨のものが設けられていたにとどまりました。私個人としましては、多くの機会に、包括的な個人情報保護法も必要であるということを研究者としては言ってきておりますけれども、実態としますと、なかなかそういう方向に日本では進んでおりません。
各国の状況を先ほど申し上げましたが、現在アメリカでは、包括的な民間の個人情報保護法はありませんで、各分野別に対応するということをしております。そういうセグメント方式の個人情報保護、こういうことでも一つのきっかけにして進めていきませんと個人情報の保護は図れないというふうに私は考えまして、それに関する議論もこれまでしてきております。
今回の住民基本台帳法改正法案では、民間での利用を禁止しています。これに対して、すぐに罰則を科するという直罰主義の考え方もあり得ると思うのですが、どうも日本の場合には、公務員が秘密を侵したりした場合には直罰主義で、例えば国家公務員法で国家公務員は守秘義務を負っておりますが、それに対する処罰規定があるのに対しまして、民間につきましてはなかなかそういう発想がありません。今回の改正法案では、都道府県知事が一定の命令などを出して、それに違反した場合に処罰するというやり方をしております。
今回の住民基本台帳に関する限りではこの規定で対応できるのではないかというふうに私は考えておりまして、この問題だけでいえば、包括的個人情報保護法は必要ないと思います。この住民基本台帳法がいわばセクトラル、分野別の個人情報保護法の一側面を備えている、そのように理解しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504720X01419990506/85
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086・斎藤貴男
○斎藤参考人 個人情報保護の制定が前提ではないかというお話ですが、全くそのとおりだと思います。まず、その議論が十全になされて初めてこういった番号の話を持ち出す資格というか、持ち出すことができるのではないかというふうに考えます。
現状では、堀部先生もおっしゃいましたが、民間の人間が個人情報を流してしまっても、特にそのための処罰というのはありません。単なる窃盗で訴えることができるという程度でして、それも、結局は個人情報を漏えいされた当人は何をどう使われたかということもわからないままですので、物すごく一方的に、使う側のいいようになっているのが現状です。
また、その一方で、民間企業がダイレクトマーケティングのために、それこそデータベースとして使っております住民基本台帳、これは現在、公開が原則でありますから、多くの民間企業はその下請の名簿屋などを使って、世論調査であるとかアンケートであるというような建前でもって大量に閲覧をし、そこに自分たちのデータベースとマッチングさせて、その人間の属性を調べてダイレクトメールを送りつける、その過程でさまざまな部落差別あるいは朝鮮人差別、そういったことも起こってきているわけです。そういうことをよく承知しておられるから、例えば広島県の福山市のように、住民票は公開しないんだと、法律とはちょっと違う対応をとっているところもあるわけでして、そういったことも十分考えなければならないんだと思います。
このまま、こういった個人情報の保護に関する議論がなしに番号の話だけが進んでいった場合に、将来、さっき申し上げたようなさまざまな差別というのはより深刻化していくのではないかというふうに考えます。新しい高度情報社会をつくるハイテクの技術が、かえって封建時代に逆戻りさせるというようなパラドックスも十分に考えられるというふうに申し上げます。
以上です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504720X01419990506/86
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087・砂尾治
○砂尾参考人 個人情報の保護につきましては、本町におきましては、データを利用する者のチェックとしまして、各種職種ごとに見ることのできるデータを制限しております。あらかじめセキュリティーカードというものを渡しております。また、運用面におきましては、ICカードに関する条例を整備しておりまして、データ管理に万全を期しております。
それから、カードシステムの開発につきましては外部へ委託しておりますが、カードの発行や情報の更新につきましては、またシステム運用につきましては町で行っております。
個人情報の保護のチェック体制につきましては、情報入力を複数の職員で行い、またシステム開発委託業者にはデータ内容を参照させないようにしております。
住基のネットワークシステムにつきましては、今現在でも九九%近い電算化がなされておりますし、また年金の番号問題等も考えますときに、四項目とコード番号だけでそれが拡大解釈してひとり歩きするというようなことはちょっと考えられないと思います。
以上で終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504720X01419990506/87
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088・梶原拓
○梶原参考人 セキュリティーの問題は、まずは技術的な課題があろうかと思うのですが、私ども南飛騨、益田郡でそのセキュリティーに重点を置いて今試行しておりまして、お金が非常にかかるので、通産省の方の補助をいただいております。これは、研究の結果、かなりセキュリティーは高まっている、大丈夫じゃないか。
それから、制度的な問題がございますが、私どもの県では個人情報保護条例というのを制定いたしておりまして、基本的にはこの仕事は団体事務ですから、自治体が個人情報保護条例というようなものを制定してどんどん補強していく、こういうことが必要でございますが、どうしても法律事項というものがございますれば、このたびの法案のような規定、制度が必要であろうかというふうに思います。
どんな制度でも、失礼ですが、国会議員という間接民主主義の制度でもプラスとマイナスがあるわけでして、プラスばかりのシステム、制度というのはあり得ないわけです。問題は、プラスかマイナスか、それを比較考量する、マイナスももちろん小さくしていくということは大事でございますが、プラスマイナスを比較考量して、プラスが大きければ採用していく、これが世間の常識であろうと思うわけでございます。
仮に、この法案の成立がおくれる、あるいは法案が廃案になるということになりますと、全国各地で自主的にこの種の制度をどんどん実行していくという傾向になると思うのですね。私どもの身体障害者協会副会長の松井さんがおっしゃっていましたけれども、このシステムは健常者よりも我々障害者の方にメリットが大きい、こういうふうに言っておられました。そういうニーズがございますから、国の制度ができないと、似たようなものがどんどん全国各地で展開されていく。
しかも、それを将来つなぐことになりますと、ハード、ソフトの問題がございまして共用性がない。莫大な日本全体の損失を生むということになると思いますので、このプラスマイナス、早く比較考量して決断をしていただきたい、かように念願する次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504720X01419990506/88
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089・桑原豊
○桑原委員 もう時間も余りございませんので、最後に、梶原参考人とそれから五色町長さんにちょっとお伺いしたいんですけれども、私は、梶原知事が県内の一郡の五町村を束ねて一つの仕組みをつくられて、試みをされているというのは、この情報化社会を先取りして非常に創意工夫に富んだやり方だというふうに思います。そういう意味で、私は、その域内でやられること、あるいは五色町の町長さんが自分の町でやられること、そしてカードを十分活用されて、セキュリティーも工夫されてやられるということについては非常に先進的な試みだというふうに思うわけです。評価もするわけです。
ただ、それを全国的に一つのネットワークにしていったときに、また別個の質の違う問題が起きてくるんではないか、それをどうしていくのかというのがいま一つの問題点だろうというふうに思うんです。
私は、知事が言われたように、いわゆるバリアフリー効果といいますか、機会均等といいますか、そういった面では行政情報ですね、そういうふうな形で広く共有していくというのは大変大事なことだろうと思うんですけれども、逆に、個人情報というのは、できるだけプライバシーというものを勘案しながら、クローズドとは言いませんけれども、できるだけそういったことが漏れないような仕組みをどうしていくのかというのがやはり一方では必要だろうというふうに思います。行政情報一般と個人情報というものとはそれなりに分けて考えていく必要があるんではないかと思うんですが、その点をどういうふうにお考えかということ。
それから、町長さんには、いわゆるカードを持つ人と持たない人が出てくるわけですけれども、私どもの議論の中でも、この制度を取り入れますと、カードは任意だと言いながらも、なかなかそうはならなくて、結局強制になっていくのではないかというようなことが心配をされているわけですけれども、そういった持つ持たないでサービスの差別、区別がないのかどうか、そういったことについての苦情がないのかどうか、強制に及んでいないのかどうか、そこら辺、簡単にひとつお聞きをしたいと思いますので、よろしくお願いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504720X01419990506/89
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090・梶原拓
○梶原参考人 まず第一に、全国化した場合どうかということですが、この四つの情報に関する限りは大きな問題でないと思います。
私どもとしては、これは、先ほど申し上げましたように、全国共通の住民サービスのインフラですから、これは将来の共有化を考えますと、早く規格を統一していった方がいいという面がございます。そういうことで急いでほしいと思います。
ただし、これにどういう機能を付加するかということになりますと、おっしゃるように個人情報なんかの問題がございます。そのことは、健康だ、医療だ、いろいろ付加的な機能がございますが、それはその地域、地域の住民の方の選択、自治体の判断というものにお任せいただきたい、全国一律に論じていただくよりもその方が現実的ではなかろうか、かように思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504720X01419990506/90
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091・砂尾治
○砂尾参考人 お答えしたいと思います。
カードを持つ人、持たない人のお話が出ました。本町の事例を申しますと、ICカードは希望者だけに交付しております。住民票等の自動交付も本人からの希望により、強制というのは一切いたしておりません。ICカードを持っている方でも、窓口で出さなければ持っていない方と同じ扱いになりますので、現在、窓口では、カード交付者、不交付者のどちらの方がいらっしゃっても対応できるような体制をしております。ICカードの有無による取り扱いの差別は一切ございません。
なお、本町のICカードは、住民サービスの向上をねらったものでございまして、行政の事務効率化をねらったものではありません。自動交付機による住民票等の写しの交付につきましては、都市部の多忙な窓口業務の緩和に役立ち、効率化が図れるんじゃないかな、このように考えます。
個人的な見解ですが、特に医療なんかの部門でしたら、基本的な部門、血液とか、本当に単純な基本的な部分でも、現在の医療では出来高払いという形になっておりまして、病院をかわるごとに全部検査をしております。これは広域的に図ることによりまして、そういう基本的なことだけでもそれが外れるということで、医療費の軽減にも相当役に立つんじゃないかなと。小さな単位よりも、大きく持っていかないとメリットは薄い、かように考える次第です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504720X01419990506/91
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092・桑原豊
○桑原委員 どうもありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504720X01419990506/92
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093・坂井隆憲
○坂井委員長 次に、白保台一君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504720X01419990506/93
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094・白保台一
○白保委員 公明党・改革クラブの白保でございます。
きょうは、午前中も四人の先生方に御意見を伺いました。そしてまた、きょう、お昼からまた先生方、大変お忙しい中をおいでいただきまして、貴重な御意見を聞かせていただきまして、大変大きな勉強になりました。それで、限られた時間でございますが、その間に御意見を承りたい、こう思います。
実は、堀部先生、先ほどお話ございましたが、中間報告が出された時点で、多くの新聞社やマスコミの方から御意見を求められて、随分とお話をされました。そしてまた、ジュリストやなんかにも書かれておりますので、しっかりと読まさせていただいたわけでございますが、その中間報告の中の一つでございますけれども、「すべての住民を対象として、生涯を通じて一つの番号を付すものであり、その導入が及ぼす社会的影響は、極めて大きいものがあると考えられる。したがって、導入に当たっては、住民の理解を得る必要がある。」こういうところが結論部分で大変強調されているように私の印象では残っているわけでございますが、この件について、「導入が及ぼす社会的影響は、極めて大きい」、こういう、中間報告のこの部分をどういうふうにお考えになっていらっしゃるのか。同時にまた、その「住民の理解を得る必要がある。」という、この部分については、先ほど、改正法案を見る限りにおいては大体満たされているんじゃないのかというようなお話もございましたけれども、その辺の感じについて、まず堀部先生にお伺いをしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504720X01419990506/94
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095・堀部政男
○堀部参考人 ただいまの先生の御質問のうち、中間報告の時点でありますが、中間報告で述べられていましたことは、今、先生御指摘の点で言いますと、私はやはり国民総背番号制的なものとして受けとめました。
この問題は、日本では一九七〇年代に非常に大きな問題になりまして、一九七二年に国民総背番号制に反対しプライバシーを守る中央会議というのが結成されまして、国民総背番号制に対する反対運動を展開してまいりました。ほぼ同じ時期に、当時の行政管理庁長官が、事務処理用統一コードという言葉を使っていたかと思いますが、世界の大勢、国民のコンセンサスを見て導入すべきものである、こういうふうに国会で答弁しています。その議論がその後日本では余りなされなかったように思います。その後のグリーンカードのときもある程度なされたかと思うのですが、何か、正面切って国の方で国民の理解を求めるというふうにはなっていなかったように私は理解をしております。
中間報告が平成七年、一九九五年に出ましたときまず念頭に置かれましたのは、かつての国民総背番号制の議論でありました。これはやはり、国民の側で当時非常に大きな反対運動も起こったことを考えますと、この問題につきまして、国民の理解、今度の場合には住民基本台帳にかかわりますので住民の理解を得る必要がある。そうでないと、こういう制度をつくりましても十分機能しない。そういう意味で、社会的影響は大きいというふうに言いました。
そういう批判を加えてきたわけでありますが、本報告それから今度の改正法案を見ますと、私が当時念頭に置いていました国民総背番号制というのとは今度のは異なるのではないか。それは、生涯を通じて変わらない番号を付するということではなくて、本人に変更請求権を認めるというようなこともしておりますし、また、これの目的外利用を非常に厳しく制限している。先ほども申し上げました民間につきましても、今までの法律からしますと、これだけ民間の利用を制限しているものはほかにないわけでありまして、そういう点からしますと、この住民票コードの利用につきましては、民間では利用できない、法的な意味ですが利用できないということになりますので、そういう点で中間報告とは大きく変わっているというふうに私は理解したわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504720X01419990506/95
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096・白保台一
○白保委員 当時のマスメディアの論調は、それぞれ若干の違いはあったとしても、一貫して一致しているものはやはりプライバシーの保護の問題だっただろうな、こういうふうに思うわけであります。生涯不変の住民基本台帳を整備しようということであるならば、プライバシー保護の具体的な措置を明示すべきじゃないかというようなことが一致した考え方だったのじゃないのかな、こう思っておりますが、そこで、堀部先生に重ねてお伺いいたしますけれども、法改正に必要なプライバシー保護の環境は、先ほどの話等もございますので、これはもう整った、こういうような御理解なんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504720X01419990506/96
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097・堀部政男
○堀部参考人 先ほど包括的個人情報保護法の質疑がございましたが、個人情報保護法の包括的なものがある方が望ましいというふうに私は個人的には思っています。しかし、日本のこれまでの議論の経過を見ますと、それができる状況というのがありませんで、随分議論をというか主張をしてまいりましたけれども、そういう主張が受け入れられるような社会的基盤はどうもないのではないかというふうに見ております。
先ほど申し上げる時間がございませんでしたが、現在、欧州連合とアメリカとで個人情報保護のあり方をめぐって非常に大きな議論をしております。欧州連合は、いわば包括的な個人情報保護法が必要である。実際に加盟十五カ国におきましてそういう措置をとるべきだという指令が一九九五年に採択されまして、昨年、九八年に発効いたしました。まだ十五カ国のうち五カ国ぐらいしか対応ができていないところでありますが、アメリカの側からしますと、むしろ民間については民間が自主的に保護措置を講ずればいい、こういう判断を非常に強く持っておりまして、これが欧州連合とアメリカ政府との間のいろいろな議論になっております。
近く決着がつくのではないかというふうにも見られておりますが、アメリカ側は自主規制でいくべきだということを言っておりまして、世界の保護の方式から見ますと、そういった面もあります。日本でも、なかなかそこのところが法的措置という点では進まないものですから、自主規制をとにかくやるべきではないかということで、その議論は私、随分してまいりました。
今回の住民基本台帳法改正案の場合には、住民票コードを民間で使うということにつきまして、それを禁止する明文の規定を置いた。それによりまして、この住民票コードの民間利用はできませんので、その点では、住民基本台帳法そのものでそこの部分については法的手当てをしているというふうに理解しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504720X01419990506/97
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098・白保台一
○白保委員 それでは、斎藤参考人にもお聞きしたいと思いますが、あなたの力作を読ませていただきました。先ほどからお話がございますように、大変足で稼いで一生懸命頑張られたようでございますが、今堀部参考人にお聞きしたことなんですけれども、現状を、住民理解が得られている、こういうような認識をお持ちになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504720X01419990506/98
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099・斎藤貴男
○斎藤参考人 何と申しましょうか、理解を得られているというよりは、ほとんどの住民は何も知らされていないというのが最も正確なところだと思います。
確かに、午前中の朝倉参考人のお話にもありましたが、新聞等には時々出るのですけれども、基本的に、これは私自身で取材して思ったのですけれども、この話は物すごく難しくて複雑なんですね。ですから、とりあえず興味のない人に幾ら、時々メディアが報道をしても、まず全く考えもしないというのが、これが現実です。よほどいろいろ興味を持って調べて初めて理解できるという性格のものですから、現実、現状をもって理解が得られているというのは、全くこれは詭弁だと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504720X01419990506/99
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100・白保台一
○白保委員 五色町長にお伺いしたいと思いますが、先ほどから、十年前から実施をされて非常に大きなメリットを出されておられるということでございました。それで、デメリットの部分、こういうものは全くありませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504720X01419990506/100
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101・砂尾治
○砂尾参考人 デメリットにつきましては一切ないと思います。苦情も聞いたことはありません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504720X01419990506/101
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102・白保台一
○白保委員 それで、先ほどもお話がございましたように、要するにメリットの話で、一万人単位でこれだけ大きなメリットがあるのだから、大都会になったらもっと大きなメリットになっていくだろうというお話なんですけれども、これは逆もまた考えられまして、小さくまとめてきちっとやっているから非常にメリットもあるのじゃないか。しかし、大きくなったときにそのデメリット部分というのが出てくるのじゃないのかということもあり得るわけですね。ですからデメリットの部分についてお伺いしたのですけれども。
そこで、梶原知事の講演も読ませていただいて、大変ユニークな発想でいろいろと頑張っておられるということも読ませていただいているわけですが、先ほど知事のお話の中で、自治体が一生懸命頑張る、自治省はこの問題についてはつなぎ役だ、こういうお話がございました。我々としては、つなぎ役が必要なのかな、自治体が横にそっとつながって、お互いに情報交換をすればいいわけで、県や自治省という、そういう形のつなぎ役がどうしても必要だというお話をお伺いしたいと思いますが、いかがでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504720X01419990506/102
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103・梶原拓
○梶原参考人 我々都道府県サイドとしては、全国のつなぎ役は自治省が最も適当であろうということで了解しておりますし、また、その気で自治省の方も推進していただきたいと思います。
ただし、付加的な機能については介入をしていただきたくない。私ども、先ほど申し上げましたように、広域性あるいは広域化ということがございまして、これは、住民サービスのインフラですが、道路でもそうですが、市町村とか都道府県の境に行くと道が行きどまりになっているということも困りますし、あるいは境界を越えていくと道が狭くなったり規格が不統一でも困る。したがって、全国共通のインフラである道をやはりつくるということ、これは自治省がむしろやるべきことであろうと思うんです。
ただし、車を利用して、車を運転していく、どこへ行くかということもこれは運転者の自由でございますし、その車に現金を載せるのかあるいは恋人を乗せるかホウレンソウを載せるか、そういうことはそれぞれの地域の自由にお任せをいただきたい、こういうふうに思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504720X01419990506/103
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104・白保台一
○白保委員 時間も余りありませんから最後になるかと思いますが、もう一度堀部参考人にお伺いしたいと思いますが、念には念を入れてということでお伺いしますけれども、九五年六月十五日のジュリストで「住民基本台帳番号制と社会的条件整備」という論文、この終わりの方に、プライバシー保護制度の確立という問題で、先ほども答弁いただいたんですが、私、プライバシーの問題については慎重にし過ぎて過ぎるということはないだろうという考え方に立っているわけで、そういう意味では、そこに書かれておるのが、プライバシー保護制度の確立をなおざりにしたまま導入することになれば危険きわまりないことになる、テクノロジーの利用と社会的条件の整備はパートナーであるというふうに書かれておるわけです。
これは私はいたくそのとおりだ、そういうふうに感じておりまして、そのことに対して、現状の認識について、もう一度お話をいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504720X01419990506/104
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105・堀部政男
○堀部参考人 今白保先生言われた点ですが、先ほど桑原先生からも出ましたように、包括的個人情報保護法ができて全体として個人情報を保護するんだという社会的ルールを確立する必要はあるというふうに、私は個人的には考えています。
その方法は包括的なものを待たなければすべてだめなのかということになりますと、この住民基本台帳法で言う住民票コードに限定して言いますと、この場合には住民票コードの民間利用につきましては禁止をしていますので、これによって、個人情報保護は民間との関係では一つ成り立っているというふうに見ております。
今度の改正法案では、他の点につきましても、先ほど個別的には申し上げませんでしたが、OECDプライバシー保護ガイドラインの八原則にのっとるような形をとっていまして、これまでの日本の立法例の中でこれだけ細かく一つの規定の中で保護措置を講じたもの、これは全般的な行政機関の保有する電子計算機処理に係る個人情報保護に関する法律は別といたしまして、他の分野で、これだけ包括的に住民票に関する情報、住民票コードについて保護措置を講じたものはないというふうに私は考えております。
現行法体系の中で今、行政といいましょうか自治省に対してこれ以上のものをつくれといっても、今のところは恐らく無理ではないか。これは全体として包括的な個人情報保護法ができるなりそういう条件整備ができればまた別かもしれませんけれども、現在のところ、ここでやむを得ないのではないか、このように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504720X01419990506/105
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106・白保台一
○白保委員 時間が来ましたので終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504720X01419990506/106
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107・坂井隆憲
○坂井委員長 次に、西村章三君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504720X01419990506/107
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108・西村章三
○西村(章)委員 自由党の西村でございます。
参考人の皆様方には本日御多忙中御出席をいただきまして、かつまた貴重な御意見を賜り、まことにありがとうございます。
私は、今回の住民基本台帳法の改正には個人の立場としても賛成であります。また、自由党の政策であります「電子化促進で行政サービスの充実」、こういう項目があるのでございますが、この党の立場からも賛成でございます。つきましては、各参考人に、問題とされておることに対し率直な御意見を伺えれば幸いだと思っております。
まず、砂尾町長にお聞きをいたしたいと思うのでありますが、ICカードはコンパクトで高い安全性を有した高機能なメモリーとして、情報化社会の中で幅広く利用、活用されておりまして、大きな関心を今後も集められるであろう、こう思うのであります。御町では既にICカードを導入されておられまして、保健医療・福祉サービスに活用されておられます。まさに、今回予定をしておりますICカードを先駆けて導入をされたというわけで、非常に敬意を表しておるわけでありますが、この十年間に及ぶ経過と実際的な運用について、次の諸点につきましてお尋ねをさせていただきたいと思うのです。
まず第一は、対人口比のカード発行比率でございます。次に、町民のこのカードに対する反応、三つ目は、カード導入による行政効率アップの度合い、加えて、個人情報の保護に対して何らかの対策を講じられておられるのか、また、この十年間に何らかの問題が発生したことが全くなかったのか等々についてお話を伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504720X01419990506/108
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109・砂尾治
○砂尾参考人 お答えしたいと思います。ICカードの対人口比の比率等につきましてお答えしたいと思います。
ICカードの発行数につきましては、平成十一年四月一日現在で、男二千二十人、女二千五百九十人、合計四千六百十人。比率にしまして、男三五%、女四四・一%、全体で四一・二%で、全住民の約四割が保有しております。
町民の反応につきましてですが、別に違和感とかいろいろな制約とか苦情というのは今まで聞いたことがございません。むしろ安心といいますか、持っておることにつきまして非常に安心感がある。先ほどの陳述でもちょっとお話しさせていただきましたので、また御参考にしていただきたいと思います。
行政効率のお話が出たんですが、五色町の一万人ぐらいの町ですと、転出転入あるいはキャッシュカードとか医療とかそういうのに使っていますけれども、人口が小さい単位ではメリットはやはりちょっと少ないのではないかな、むしろ効率よりも行政サービスの方に比重を置いておるというようなことです。やはり広げていくことによって、大都市では特に大きな利益といいますか、メリットが持たれるのではないかな、小さな町からはそんなような感じがいたします。
それから、セキュリティーにつきましては、二重三重のいろいろなことをかけておりますので、専門的なことにつきましては、かかり方はまたお答えさせていただきたいと思うのですが、医療につきましても、医者の見る部分、看護婦の見れる部分とか事務屋の部分とか、二重の安全チェックもやっておりますので、今までございません。
今までに、十年間、導入して問題なかったかという質問ですが、全くなかったと思います。取るに足らないようなことでありまして、全くないのと同じことでございます。
以上でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504720X01419990506/109
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110・西村章三
○西村(章)委員 さらにお伺いしたいのですが、四年前の阪神・淡路大震災、この教訓にかんがみて、カードをJIS規格にお変えになった、それに伴いまして、災害時の本人確認、あるいは救命救援活動にシステムを拡充された、こう伺っております。町としては非常にいいことでございますが、あの大震災というのは近畿一円に及んだわけでございまして、そういう意味で、このカードの有効活用ということになりますと、今後、広域化あるいは共通化、このことが非常に大事になってくるわけでございますが、この点について、町長のお考えを聞きたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504720X01419990506/110
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111・砂尾治
○砂尾参考人 全く先生の御質問のとおりでございまして、より効果を上げようと思えば、広域的に広めていくということによりまして、非常に効果が大なるものがあると思います。小さな単位ではどうしても限界があるように思います。
以上でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504720X01419990506/111
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112・西村章三
○西村(章)委員 さらに砂尾町長に、恐縮でございますが、お尋ねをしたいと思うのです。
今回の改正で、カードは希望する者だけに交付することとされております。御町におきましても、ただいま御答弁をいただきましたように、四四・一%、これはあくまでも町民の意思による申請によって交付をされた、こう理解をしているのでありますが、このカード交付につきまして、事実上の交付の強制が起こるのではないかという危惧が現在なされておるわけでございますし、また、先般のこの委員会の中にもそういう質問が相次ぎました。
カード交付を希望しない者に対しては従前どおりの対応がなされる、こういう基本があると思いますし、カード所持者にはより迅速な対応がなされるものだと私は考えるのでありますが、これをもって、カード交付を希望しない者に対する差別的な取り扱い、これがなされたり、無言のうちにカード交付をするようにとの圧力がかかるのではないかという危惧からそういう意見が出ておるわけでございますが、この点についての町長の率直な感想を伺いたい。
私は、むしろ、カード交付者に対する事務量がいわゆる行政効率によって軽減することによって、かえって不交付者に対する対応に余裕が生じるのではないか、こう考えておるのでありますが、この点に関して、現場におられる立場から率直な御意見を承りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504720X01419990506/112
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113・砂尾治
○砂尾参考人 カードの申込者というのは、自分自身が、持つか持たないかはまさに個人が決めておりまして、両方とで対応しておりまして、強制は一切いたしておりません。
ただ、これも、人口の小さいところ、大きいところでは大分違うと思うのですが、やはり利便性ということから、大きく広げることによってカードが普及されていくのではないかな。それから、基本項目以外のことについては条例でいろいろとつくって、その市町村で入れるということになっておりますので、そういう付加価値をつけることによりまして、非常に大きな効果が上がってくると思います。
重ねてですが、都市部の多忙な窓口業務の緩和等には非常に役立つのではないかな、効率的にも非常に役立つような感じがいたしますし、かえってその方が、そういうことを導入することによって、大量閲覧とかそういう問題も防げますし、逆にプライバシーの保護になるのではないかな、かように考える次第です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504720X01419990506/113
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114・西村章三
○西村(章)委員 ありがとうございました。
次いで、梶原知事にお尋ねをさせていただきますが、知事は、二十一世紀に向けたコンピューター時代、カード時代、国際的対応時代に即応した高度情報社会に行政がいかに対応するか、こういうことにつきましての御見識が非常に高いわけでございまして、先ほど来、意見陳述で出されました中にもそのところが随所にあらわれておりまして、私どもも非常に共鳴をいたしておるわけでございます。今回のこの住民基本台帳法の改正は、まさにそういう意味で高度情報化社会に対応すべく導入しようとするものだ、こう私どもは信じておるのであります。
ちなみに、全国の市長会、あるいは町村会、全国知事会からの要望、意見というものが寄せられておりまして、市長会からは二度、二年度にわたって、全国町村会からも二年度にわたって、また知事会からも、いわゆる今後の情報化、高齢化、地方分権の流れに対応して、住民サービスの向上、行政の効率化、高度化に資するものだと考えておる、したがって早期にこの法案の改正を要望したい、もちろん、これには個人情報の保護、あるいは導入経費の財政措置等の条件がついておりますが、こうした地方団体がすべてこぞって要望をなされておるわけでございます。
実際的に、直接的には、窓口であります市町村に関係するこの条例改正でありますが、県レベルにおきましても、いかなるメリットが今後考えられるのか。先ほど来、益田郡あるいは多治見市の御意見等も引用されて御報告がございましたので、それなりに理解をしておるのでありまするけれども、もう一度、県として、今後の有効利用あるいはシステムの拡充の方向、こういうものについて知事の御見解を承れば非常に幸いでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504720X01419990506/114
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115・梶原拓
○梶原参考人 御指摘のとおり、このネットワークは情報社会のインフラであると思います。あたかもNTTの電話線に相当する。そして、この四つの情報が電話番号に相当する。その電話番号を回せばそのネットワークを使えるということでございまして、その電話番号を回してどういう情報コミュニケーションをしていくかということは、地域地域、個人個人の問題であろうということでございまして、どんどんこの広域化が進んでまいりまして、もう介護保険も待ったなしでございまして、一市町村では対応できませんので、岐阜県の中でも、一部事務組合だとか広域連合で、郡単位で一緒になってやろうということになっています。
そうなりますと、福祉サービスを受ける人と福祉サービスをする場所が離れていくということでございまして、こういう情報インフラというものが、独居老人とかあるいは障害者の方々には不可欠になってくる、そんなふうに思うわけでございます。県のメリットといいますのは、市町村を越えてそういう広域行政のサービスを受ける住民の方々の要望が高まっておりますので、そういう方々の要望にこたえるということが私どものメリットである、行政そのもののメリットというよりも、住民サービスの面で、住民の方々御自身が広域的なサービスを受けられる、それが県のメリットである、そういうふうに理解をいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504720X01419990506/115
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116・西村章三
○西村(章)委員 確かにおっしゃるとおりでございまして、この広域化というのは不可欠の問題でもございますし、また、ただいま強調されましたように、この使用者というものはあくまでも地域であり、個人一人一人の問題だ、こういう認識の上に立って、今後の運用という面に留意をしていかなきゃならぬのじゃないか。とりわけ、先ほど知事さんが指摘をされました、市町村における自治原則、住民自治による選択、応用、あるいは弱者優先の原則、これらは、我々としても今後大いに、このことを常に頭の中に置きながら、これらの検討を進めていかなきゃならぬと思うわけでございます。
ただ、今回導入を計画しておるシステムは、一部に、地方分権に逆行する、あるいは行政改革、なかんずく規制緩和に逆行するとの批判がございます。しかしながら、今回の改正は、今も申し上げましたとおり、いわば各自治体のシステムの横の連携の結集体としての性質のものでありまして、何ら中央政府が集中管理を行う、国家管理を行う、いわゆる中央集権的なものではないと考えておるのであります。
自治体の現場の立場から、この件に対して、地方分権、規制緩和と今回の法改正の方向は逆行するのか、あるいは合致するのか、この辺について、知事さんの御見解を承りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504720X01419990506/116
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117・梶原拓
○梶原参考人 これから地方分権の時代になってまいりますが、その基本原則は自立と協調でございます。それぞれの市町村が自立していくということも大事でございますが、同時に、各市町村あるいは都道府県が水平の立場で、対等の立場で水平ネットワークを構成して協調していくということでございまして、まさに地方の時代がこれから現実のものになる、その場合に、こうした協調のインフラというものは不可欠であると私は思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504720X01419990506/117
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118・西村章三
○西村(章)委員 堀部先生にお伺いをさせていただきます。
先ほど来の議論からもおわかりのとおり、この法律の最も大きな課題というのは、いわゆるプライバシーの保護でございます。個人情報流出の完全防止だと考えるのでありますが、今回の改正におきまして、その保護措置は、それぞれ、法制面あるいは技術的な措置、運用等々で、それなりに明文化されたり規制がされたりしておるわけでございます。
先生も、この懇談会のメンバーとして高い見地から幅広い御意見をお述べになった、先生のお書きになったものも拝見をさせていただきましたが、今回の法案をごらんになって、これ以上の規制の方法はないんだ、こう先ほどもおっしゃられたわけでございますが、この点について、この法案は一定の評価を与えることができるものだとお考えなのかどうか、先生の御感想を承りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504720X01419990506/118
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119・堀部政男
○堀部参考人 先ほど申し上げたことでありますが、それぞれの行政機関あるいは地方公共団体が持っています個人情報について、日本の場合にはどのような保護措置を講ずるかということを議論してまいりまして、住民基本台帳に記載される情報につきましては、これは条例によるよりも、住民基本台帳法という法律がありますので、それによって保護措置を講ずるという方法をとってきております。
今度新たに導入しようと計画しているシステムにつきまして、先生御指摘のように、プライバシー侵害があってはならないわけですから、その点について、大臣主宰の懇談会でも、プライバシー保護、個人情報保護の必要性を強調してまいりました。
私は、自治省としては、私などのそういった主張を受け入れて、この住民基本台帳法の改正で対応しようとしたわけでありまして、国際的基準に照らして法案を検討してみましたが、現状ではこれ以上のものを望むのは無理ではないか、そのように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504720X01419990506/119
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120・西村章三
○西村(章)委員 この法案に対しては、総背番号制の導入でありますとか、あるいは納税者番号制度の導入だとか言われておりますが、先ほどの先生のお話では、住民票コードというのはあくまでもみずからの変更権も含めて、自分のコントロール権も含めてできるものだ、これはあくまでも、そういうものと直結するのではなくして、行政サービスの向上にのみ使われる可能性が高い、こうおっしゃったのでありまするけれども、そのことについて、もう一度先生のお考えをお聞きしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504720X01419990506/120
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121・堀部政男
○堀部参考人 住民票コードが利用できる場合、それから住所、氏名、生年月日、性別の四情報が利用できる場合が法定化されるということの意味は大変大きいと思います。
納税者番号制として使われるであろうということも多くの方が言っておられまして、そういう場合もあり得るかと思います。そういう場合には、この法律を改正しなければそういうことはできないわけでありまして、これまでのさまざまな番号が法的な根拠を持たずにつけられてきた、あるいは利用されてきたということを考えますと、この法律で極めて厳しい制限を課したということは、法的な見地からしますと、大変重要な意味を持っていると考えています。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504720X01419990506/121
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122・西村章三
○西村(章)委員 時間が参りましたので、斎藤参考人にもお話を伺いたいと思ったのでありますが、既に質問者が隣に来ておられます。
確かに、強調されましたように、プライバシーの保護の観点はなおざりにできないものだということは、私どもも同様でございます。しかし、斎藤参考人がお書きになったものを幾つか拝見させていただきまして、非常に我々は違和感を覚えたわけでございます。
と申しますのは、今回の改正におきまして、都道府県知事や指定情報処理機関が保有するのは、四情報と住民票コード、付随情報のみでありまして、しかも、これらの使途も法定されておる。加えて、データマッチングが起きないよう、徹底したガードシステム及び罰則も定めておるということでございます。すなわち、斎藤参考人が危惧なさるような無制限な個人情報の収集、あるいは拡張利用、これは法律の改正なしにはなし得ないわけでありまして、これ以上の担保が果たして必要なのかどうか、甚だ私は疑問に思います。
そういう意味で、いたずらに恐怖心をあおったり過剰反応したりして、事実を正確にお伝えにならないその論旨は、私はどうしても理解ができない。最後にこのことを申し上げまして、私の質問を終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504720X01419990506/122
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123・坂井隆憲
○坂井委員長 次に、春名直章君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504720X01419990506/123
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124・春名直章
○春名委員 日本共産党の春名直章です。
四名の参考人の皆さんには、本当にありがとうございます。
まず、堀部参考人にお伺いしたいと思います。
先ほどの答弁といいますかお話を聞いておりまして、一つ、社会的条件整備が車の両輪で必要なんだけれども、その意味では包括的なプライバシー保護法がある方が望ましい、しかし、それができる基盤がないということに気がついたというふうにおっしゃられたんですけれども、それができる基盤がないというのはどういうことでしょうか。そして、その障害というのはどういうものなのでしょうか。そのことをお聞かせください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504720X01419990506/124
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125・堀部政男
○堀部参考人 包括的個人情報保護法が日本で制定される基盤がないと気がついたといいましょうか、これは、ずっと長い間この問題について議論をしていまして、私、一研究者として主張してきたことに対してなかなか賛同が得られないということもあるわけであります。
それとともに、日本の場合には、これは今度の住民基本台帳法ということではなくて、一般の民間が保有しています個人情報につきまして、一方では表現の自由とのかかわりもありまして、情報をできるだけ有効に利用し、それをまた表現する、これは特に報道機関の中に強いわけでありますが、そういうこととのバランスも考えていかなければならない。
これも大臣懇談会のときなども申し上げたのですが、EUはむしろ、包括的な法律をつくりまして、表現の自由につきましては一部除外をするというようなつくり方もしております。そういうことも可能ではないかということを随分言ってきたのでありますが、これもまた賛同を得られるに至っておりません。むしろ国会でそういう議論を大いに進めていただいて、包括的な個人情報保護法ができるのであればそれはぜひつくっていただきたいと思いますが、今の私が接触している限りでの行政あるいは民間からしますと、なかなかそういうものに賛同をするというところまでは至っておりません。
また、このところ、先ほど少し触れましたが、欧州連合とアメリカとの個人情報保護をめぐる論争がありまして、ここでアメリカ側は、民間につきましては自主規制を中心にしたものを非常に強く主張しております。これとの関係もありまして、日本でも、私がふだん議論している人たちからしますと、アメリカもそういうやり方で対応すると言っているではないか、日本でもそれでできるはずであるということもありまして、全体として、包括的な個人情報保護法をつくるという状況には至っていないというふうに私は認識しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504720X01419990506/125
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126・春名直章
○春名委員 やはり事件が大分多発していますので、これが先だと思うので、賛同が得られれば一番いいのですけれども。
それから、今のお話に続いてですけれども、先日新聞で報道されていたのですが、個人情報に関する基準のアメリカとEUとの合意、いろいろ考え方は違いがあるということなんですけれども、合意しているという内容を私が拝見したところによりますと、例えば、第三者へのデータ提供などの可否を選ぶ、そういう機会を本人に与えること、あるいは本人からの不服を受けた際の調査、救済、制裁に仕組みをつくること、こういうかなり進んだ内容の合意もあるんじゃないかと私は思っております。これは、企業や団体、つまり民間に対する指針の合意している議論の到達点ということで私は理解しています。
だから、それを行政機関にそのまま当てはめることはもちろんできませんけれども、今回の法案の中では、プライバシー保護に関する国際的な水準の規定が基本的には取り入れられているという御説明を自治省はされているのですけれども、こういう報道を読みますと、本当に国際水準の規制、保護のシステムが法案に取り入れられていると言えるのかどうか、参考人の評価、私は必ずしもそうは言えない面があるのじゃないかという気がするのですけれども、その辺はどうでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504720X01419990506/126
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127・堀部政男
○堀部参考人 今の先生の御質問でありますが、私は、結論的には、現在の日本における保護水準の考え方からすれば、今度の改正法案の内容でやむを得ないのではないかというふうに考えております。
EUとアメリカの議論でありますが、きょう参考資料として配らせていただいたものにもEUの考え方を書いておきましたけれども、EU加盟十五カ国以外の第三国、日本、アメリカ等が十分なレベルの保護措置を講じていない場合には、そこに個人情報を移転してはならない、こういう禁止措置を各国の法律に設けるように、こういうのがEUの指令の内容であります。各国はそれに応じてそういう措置を講ずるようになってきております。これに対しまして、アメリカが大変反発をいたしまして、それはEU内であればそれでいいかもしれないけれども、EUで決めたことは域外適用ではないか、そういうことをEUだけで決められるはずはないというようなことで、アメリカがかなりEUと交渉をしてきております。
そういう中で、これはEU指令の二十五条で、今の、十分なレベルの保護措置を講じていない場合には移転を禁止することができる、そういう規定を設けなければならないということになっております。ただ、これはいろいろな制度につきまして原則に対して例外がありまして、本人が同意している場合ですとか、あるいは契約の履行に伴って個人情報を移転しなければならないような場合、そういう場合には例外になっております。
EUの側も、私個人もEUの関係者とはこれまで何回も議論をしてまいりましたし、また、現在、経済協力開発機構の情報セキュリティー・プライバシー作業部会の副議長を務めておりまして、そういう場でも議論をしてきておりますが、完全に各国同じ法律を要求するわけでなくて、それぞれの法文化、歴史のもとで保護措置を講じてほしい、そのためには、問題があったときにそれに対して救済が得られるような方向を何か考えてほしい、こういうのが一つの点でありまして、今先生御指摘の点は、アメリカとしてもそういうことをやってみようということで、EUの一定の理解を得ている、こういうふうにアメリカ側は言っております。
そういう状況になっておるのかどうか、EU側も現在、EU委員会自体が解散するとかいろいろな事情がありまして、どういうふうになるのか、もう少し状況を見ないとわかりませんが、日本の場合にそれがどういうふうになっていくのか。救済につきましては、アメリカと違いまして法律で決めますので、それ相応の救済措置はとれるというふうに私は見ております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504720X01419990506/127
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128・春名直章
○春名委員 どうもありがとうございました。
続きまして、斎藤参考人にお聞きしたいと思いますけれども、先ほどの意見陳述の中では、法案の持っている危険性については非常によくわかったのですけれども、この法案自身が持っている欠陥と言ったらいいんでしょうか、法案自身についての評価ですね、その先はこういうふうになるというお話は大分いただいたのですけれども、法案自身はどうでしょうかということが一点。
それから、各省庁連絡検討会議、それからAID付番・登録方法検討会、こういうものがつくられていることが総背番号制への道につながっているという御指摘、私自身もさらに勉強しなければいけないのですけれども、この本も読ませていただいたのですけれども、この本の中には、取材されて、そういうところの審議内容とかが余り書いていないもので、例えばこういうことも議論されているというようなことがもしわかるのであれば、よろしければ教えていただきたい、わかることがありましたら、その二点をまずお聞かせいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504720X01419990506/128
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129・斎藤貴男
○斎藤参考人 まず、法案自身についての意見ということですが、これは午前中の審議で日弁連の先生方がおっしゃったのとほぼ考え方は同じであります。
例えば外に漏れた場合、その漏らした公務員の罰則規定、あるいは漏らしたんだと認定されるまでの期間あるいは手続、そういったものが極端なまでに甘過ぎるというふうに考えております。
甘過ぎるといいますのは、現実に、あと皆さん方、法律でこんなに縛っているのにそれは飛躍し過ぎだという御指摘がさっきから何度かあるのですけれども、それは我々が過去の週刊誌記者の経験などを踏まえて言っていることでして、現実には、東京の都心で指導者として活躍なさっている方々には到底わからぬことというのが全国津々浦々の末端の住民の生活にはあるわけです。知らないうちに戸籍が抜かれていたり、知らないうちに結婚させられていたりということもあります。
また、例えば引っ越しをしますと、警察官が見回りに来て、巡回カードというのを書いてくれというふうに言ってきます。これを一度でも拒否しますと、恐らくその人あるいはその人の子弟の就職その他非常に難しくなるという現実があります。(発言する者あり)あります。これは私、公安警察官にも聞きました。オーバーではありません。本当にあるから言っているので、私は、あなた方の仲間ではなくて、参考人として招かれたから申し上げているので、そのような反論のされ方をする筋合いはございません。二十年も記者を続けて、足で稼いでわかっていることです。少なくとも、そのようなことを言われる筋合いはございません。
そういうことがあるわけです。だけれども、その警察官は別に処罰されるわけでもない。企業に警察から天下りで行っている人は、そういうことを仕事の一つとして行っている現実がある。だけれども、企業も警察官も処罰されるわけではない。
では、これを実際にどこまで処罰すべきか、できるものかというのは、確かに難しいことがありますが、これもまたそうなのです。法律で縛っているから絶対そういうことが起こらないかといったら、起こらない保証は全くない。起こっても、その本人もわからないし、処罰も恐らくされない、というより、だれもわからないうちに終わってしまうでしょう。そういうことがあるので申し上げているわけです。
したがって、法案自身については余り、ほとんど評価はできないというふうに考えております。そもそも、こういった法案が浮上すること自体、人間存在に対する不遜な考え方であると思います。
また、次の、検討会議及びAID付番の会合ですが、これらについては残念ながらその審議内容というのは明らかになっておりません。取材は不可能です、はっきり言って。下手な取材のかけ方をしたら恐らく本も出なかったでしょうしというのが現実です。AIDの方は、やや取材もしておりますので、先ほどお配りした資料の中に名簿もあるわけです。そういったところで、たしか、去年の暮れからことしの初めにかけて付番内容を正確に決定するというお話を昨年夏ごろに聞いております。
以上です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504720X01419990506/129
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130・春名直章
○春名委員 どうもありがとうございました。
梶原参考人にお聞かせいただきたいと思いますけれども、県のICカードは行政サービスのほぼ全体を対象にしていきたいということなのですけれども、民間部門への活用の計画はどういうふうにお考えになりまた計画されているか。
それと、この間議論もあるのですけれども、こういうものを導入すれば、やはりいろいろなものに範囲を広げていくというのが人情というものといいますか、そうなるものだと思うのです。しかし、自治省の今回の案は、民間部門への提供はプライバシーの問題があって禁止しています。そうすると、梶原参考人の立場からいいますと、こういうシステムの効果が半減するようなことになるのではないかというように私たちは思ってしまうわけです。
その点で、今回の法案について、中途半端というのですか、そういう御認識はないかという点を、皆さんがやられている岐阜の経験との関係で見たときにどのような御評価をされているのか、その辺をまずお聞かせいただけますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504720X01419990506/130
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131・梶原拓
○梶原参考人 インフラに何を乗せるかということは地域地域の自主的な判断の問題だと思います。私ども産学官のICカード研究会を開催しておりますが、それはこの制度をどうするかということよりも、ICカードというシステムがどう利用されるか、その際セキュリティーをどう確保できるか、そういうことが中心でございまして、何をこれに乗せるということを県自体が考えたことはございません。
市町村は実験的に、益田郡あたりはワンポイントの付加機能をつけたりしております。それはそれぞれ市町村で自主的に住民の方々と御相談して決めていくことであろうというふうに思います。
ただ、先ほどもお話ししましたけれども、身体障害者の方々などは、最低の機能よりもそれにいろいろ付加してもらった方が障害者としてはありがたい、こういうお話がございます。
そういうことはこれから決めることであって、まず、この法案としては、全国共通のインフラをつくっていただくということ、NTTの電話網を利用する場合に電話番号をダイヤルするとつながるというのが私はこの法案のインフラ機能であろうと思います。四つの要素だけで十分個人の本人確認ができます。その上、体重がどうだ身長がどうだとかそういう余分なことはやってもらいたくないというのが私ども自治体の立場でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504720X01419990506/131
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132・春名直章
○春名委員 どうもありがとうございました。
それでは、堀部参考人と斎藤参考人に最後に一問ずつお聞きして、終わりたいと思います。
一つは、堀部参考人に、中間報告が出されたときに、先ほど白保委員の質問にもありましたけれども、番号制度の導入に当たっては国民のコンセンサスが必要というくだりが出てまいります。私はそのとおりだと思います。番号制度の導入ということがまさに議論されているわけですが、今、国民的な現状をどのようにお考えになっているのか、これをお聞かせいただきたい。
それから、斎藤参考人には、今回の法案の下敷きになっている研究会の報告書の中に納税者番号制度に活用できるということがはっきりうたわれているわけです。この納税者番号制度の問題点について参考人はどのような御見解を持たれているのか、この点についてお聞かせいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504720X01419990506/132
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133・堀部政男
○堀部参考人 ただいまの春名先生の御指摘のうち、番号制につきましては中間報告について批判いたしました。今度の住民票コードといいますのは、私が理解しています、先ほど申し上げました国民総背番号制とは異なるものであるというふうに考えております。これは、生まれたときに一方的につけられて一生変わらないというものではなくて、本人が自分でこの番号は変えたいと言えば、変更請求権を明確に法律改正案で入れたということはそういうことでありまして、むしろ、行政サービスのためのコードであるというふうに理解しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504720X01419990506/133
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134・斎藤貴男
○斎藤参考人 納税者番号制の問題点ですが、まずこの報告にもありましたように、今回も住民基本台帳法改正法案との関連が明白であるにもかかわらず、そのことを糊塗しようとされる方々がいらっしゃることがまず大問題だと思います。
また、納番制だけについてあえて今度申しますが、まずこれによって期待されているような脱税防止といいますか、そういった所得の把握というのは無理であるということがまず挙げられます。これは私自身が言っておるのではなくて、政府税調の加藤寛会長、この方は私にそうはっきりおっしゃいましたし、また税金の専門誌などでも述べられておられます。また、グリーンカードをやっておられた内海元財務官、やはりこの方も、「ジス・イズ読売」などの雑誌で、一〇〇%捕捉するには納税者一人に対して一人の税務官をつけなければ無理である、こういうこともおっしゃっておりました。いや、それでもだめだというふうにおっしゃっておりました。
次に、まず大蔵省の資料などによりますと、納税者番号制については、カードを配付して取引のたびに番号を提示させるのだというのですが、この取引の範囲というのが非常にあいまいです。パンフレットなどによりますと、不動産取引であるとか銀行への定期預金であるとか、大きなものだけという印象なのですけれども、もし仮にこれで本当に所得なり経費を全部捕捉しようと思えば、これでは全く意味をなさない道理です。
例えば、喫茶店でお茶を飲んだりスーパーやデパートで何か買い物をしたり、その都度提示しなければならないわけでして、となると、これはまさにさっきの住民基本台帳と連動するわけですから、そういったものまでもすべて把握される。また、コンビニエンスストアなどの現場で用いられている、POS、販売時点管理ですか、これで本社の方に何を買ったかというデータも行くわけですから、これもすべて、しかも個々の人間が特定されてしまう。何の本を買ったのか、何の週刊誌を買ったのか、何のたばこの銘柄を買ったのかまで把握されかねないわけです。これも問題。
それから、まず、不公平税制の是正という題目があるわけですけれども、まずこういったものを持ち出す前に、現実にどこまでそういった脱税というものが公平に取り締まられているか。例えば、以前大蔵省の主計局次長だった中島義雄さんは、七千万円近い追徴課税を受けましたが、特に脱税で告発されたわけでもない。その一方で、同じころ、プロ野球選手たちが、高校を出て一、二年目の選手たちが五百万円か一千万円の契約金を脱税して、これはもうはっきり脱税犯として告発され、法廷に出され、中には選手生命を奪われた者もいる。もちろん選手たちを擁護する気持ちはありませんが、だったらば、その官僚たちにも厳正な運用をするのが当然ではないでしょうか。
こういった現状、つまり権力を持つ者は何をやってもいい、そうでない者はちょっとしたことでも取り締まる、こういった現状をそのままにしておいて、これ以上細かい捕捉をするということは、より不公平が拡大するだけだというふうに考えております。
また、最後に、よく国際基準とかグローバリゼーションの文脈の中でこれも語られるのですけれども、だとするならば、では、源泉徴収と年末調整を柱とするサラリーマン税制の現状はどうなのか。あんなものをずっとやっているのは日本だけであります。それはそのままにしておいて、一方でアメリカや欧米の納税者番号制のいいとこ取りだけをするというのは、これはやはり国民を欺くものではないでしょうか。
もしも仮に、百歩譲って納税者番号制を導入するという議論が行われるとすれば、これは源泉徴収と年末調整の廃止を伴うものでなければ、グローバリゼーションの文脈には合わないというふうに考えております。
以上のように、納税者番号制には問題がたくさんあり、それがまたこの住民基本台帳改正法案と結びつくのだとすれば、その問題点はさらに拡充されることになるというふうに思います。
以上です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504720X01419990506/134
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135・春名直章
○春名委員 どうもありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504720X01419990506/135
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136・坂井隆憲
○坂井委員長 次に、知久馬二三子君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504720X01419990506/136
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137・知久馬二三子
○知久馬委員 私は、社会民主党・市民連合の知久馬二三子でございます。本日は、大変貴重な御意見を先生方にお伺いしました。まことにありがとうございました。
まず最初に、堀部先生にお尋ねいたします。
私は、先般の地方行政委員会に通産省の機械情報産業局長さんをお呼びして、EUの個人データ保護指令の発効を受けて我が国とEUとの交渉の進展状況をお尋ねいたしましたところ、EU側が何をもって個人データ保護について十分なレベルだとする権原が不明であり、四月九日にブラッセルで協議を始めたばかりとのお答えがありました。私の印象では、本当に、どうも通産省という役所は民間企業の営利活動の円滑な促進を図るのが主目的ではないかというぐあいにしか思えなかったのです。それと、政府部内でもどこで個人情報の全般的な保護策を検討しているのか不明でありました。
そこで、堀部先生にお聞きしたいのですが、このEU指令が九五年に採択された当初から、我が国の民間部門における個人データの保護措置について警鐘を鳴らされました。通産省なども、どうもガイドラインやJISのプライバシーマークで済むのではないかと考えているようですが、先生は、民間部門でも何らかの法的措置が必要とお考えでしょうか。また、EUの目から見て日本の個人データ保護の水準はどの程度のものとお考えになるのか、御紹介いただければ幸いと思います。
それともう一点でございますが、今回の住民基本台帳ネットワークシステムの導入については、個人情報保護措置について自治省は、OECD八原則を、先がたもあったのですけれども、踏まえた措置を講じたし、技術上も万全だとしています。しかし、私は、法律で禁ずるとか罰則を科するというだけでは実効性確保の点で多くの疑問があるのではないかと思っております。EUの指令でも、一番重要なのは個人データ保護についての実効性の担保だと思います。本人から不服を受けた際の調査、救済、制裁の仕組みをつくる、この点が重要だと思いますが、いかがでしょうか。
そこで、もう一つお伺いいたしますが、この今回の住民基本台帳ネットワークシステムの個人データ保護措置は、OECDの八原則のみならず、EU指令という国際標準にかなったレベルにあるかどうかということをお伺いしたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504720X01419990506/137
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138・堀部政男
○堀部参考人 ただいまの知久馬先生の御質問、多岐にわたりますが、まず、EUとの関係について申し上げますと、当時はECでしたが、一九九〇年の七月に最初の指令提案を出しました。私、これはいろいろなところに書いておりますが、いち早くそれを知りまして、第三国への移転を禁止するという案がありますので、その問題を日本国内ばかりでなくて国際的にも、第三国の人たちと議論する中で、これに対応するにはどうすればいいかということを議論してまいりました。
通産省は確かに産業振興を目的としている行政機関ではありますが、一方で個人情報保護につきましても大変関心が高く、一九八五年、昭和六十年に私、通産省から依頼されまして、個人情報保護のあり方について検討をいたしました。当時、民間の方に集まっていただいて、個人情報保護、プライバシー保護について何らかの措置を講ずるということを言いましたところ、当時の民間の人たちの反応は、なぜそんなことをする必要があるのかというようなことで、私自身、OECDの一九八〇年のガイドライン等を検討した立場からしますと、いかに意識の落差が大きいかということがわかりました。
そういう中で、通産省では、一九八九年、平成元年にガイドラインを出しまして、民間で対応するようにということをいたしました。その翌年に今度はEUの指令提案が出ましたので、またこれをもとに日本国内で随分議論をしてまいりました。通産省では、むしろ、いち早くと言ってもいいかと思いますが、他の行政機関に先駆けて、私のそういう意見を取り入れましてガイドラインの改定に当たるということになったわけであります。
通産省でも、将来法的措置が講ぜられる場合には、ガイドラインで民間事業者に対してこういうふうに個人情報保護を図るべきであるということを明らかにしていれば、それがかなり役立つのではないだろうか、それで、通産省ばかりではなくて、他の関係した省庁、いろいろな事業者がそれぞれの行政機関によって監督を受けていますので、通産省のは比較的範囲は広いわけでありますけれども、他の部分、例えば航空機の予約をするというような場合などですとこれは運輸省の所管ですし、それぞれ所管官庁があります。そういうことが政府全体として何らかの形で検討される、今後高度情報通信社会推進本部で何か検討されるというアクションプランが出たようでありますが、今のところはそういうところにとどまっております。
EUの側からしますと、日本の対応につきまして、先ほど春名先生の質問にもお答えいたしましたが、それぞれ各国、法律、文化、歴史の違いがあるので、それは踏まえる、全く同じように法律をつくれということではないというふうに私は聞いております。
しかし、EUが求めているものは、例えば本人が自分の情報を見たいというときにはそれを見せるようにというようなこともありますので、そういう措置を法的にとれれば一番いいんですが、今のところは民間につきまして各種ガイドラインで必ずそれに応ずるようにというふうにしております。その関係では、既に個人信用情報機関などではそういう措置は講じております。EU側では、それらを見て、ある程度日本でもそういうことは実行されていると見ているというふうに理解しております。
そういう中で、今回の改正法案でありますが、本人の開示請求権、それから訂正の場合には、請求権にはなっておりませんが、これを認める、これは行政機関の保有する電子計算機処理に係る個人情報の保護に関する法律の方が訂正につきましては権利としておりませんので、それとの関係でこうなったものと思います。
先ほど来申し上げておりますように、そういう現行法制度との関係では、今度の改正法案で講じられている個人情報保護というのはやむを得ないレベルといいましょうか、国際的レベルに照らしても、日本の現在の状況からすれば、こういう形にならざるを得ないのではないか、そのように理解しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504720X01419990506/138
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139・知久馬二三子
○知久馬委員 ありがとうございました。何か少し理解はできたような気がいたします。
次に、斎藤先生にお願いしたいんですけれども、私も斎藤先生の著作の「プライバシー・クライシス」を読ませていただきました。この本では、今回の住民基本台帳ネットワークの導入の背景とか納税者番号との関係、統一番号による個人情報の管理が、アメリカに見るようなデータマッチングの個人情報の民間利用の道を開いていくことになるか、実によくとても取材されておりましたし、私のような学のない者でも本当にわかりやすく書かれていまして、読ませていただきました。
私は本会議でも小渕首相に、政府は、これからの行政システムの中で個別番号制をとるのか、総合的な番号制をとるのか、将来構想についてをお尋ねいたしましたが、小渕総理は明確な回答は避けておられたように思います。
ちょっと単刀直入過ぎたかもしれませんけれども、この住民基本台帳法改正の背景について詳しい斎藤先生には、これが実現したら、本当に日本の社会または日本の行政システムはどのようになっていくと思われますでしょうか。まず、それは先がたるるお話しだったと思いますが、お伺いしたいと思います。それが一点。
それと、実は今中央省庁再編法案というのがありまして、法案が通れば、二〇〇一年から自治省は今度総務省という内閣のより管理機能の強い役所にかわっていくと思われます。また、この住民基本台帳法改正案の別表で定める事務も省庁再編で一つの省庁の中の事務となり、まさにマッチングもやりやすくなるのではないかという危惧を持っております。
もう一点ですが、斎藤先生は本の中で、かりそめにもグローバリゼーションの文脈で納税者番号制を持ち出すなら、アメリカには存在しない年末調整の廃止を伴うものでなければ絶対におかしいと述べておられます。別の箇所では、源泉徴収と年末調整制度のシステムは究極の愚民政策と言われています。全くそのとおりだと思います。日本のサラリーマンが初めから納税者の権利を放棄させられているのに対し、アメリカやヨーロッパの主な国々では、納税者の権利を明記しており、納税者の権利憲章がつくられています。私どもと親しい税理士さんたちの中で、何とか納税者の権利を少しでも確立するために国税通則法の改正を目指しておられる方々がいますが、厚い壁にぶつかっておられるという現状のようです。
そこで、斎藤先生は、サラリーマン税制を解体し申告納税本来のあり方に近づける一方、国民総背番号制に通じるアメリカ方式や北欧方式の納税者番号制は導入しない、民主主義を標榜し自由社会を維持しようとする限り、この結論以外はあり得ないはずと断言されています。
それで、最後になりますが、今回の住民基本台帳法の改正、統一コードの導入ネットワークシステムづくりがもたらすものについて、もう一度、改めてここでお聞かせ願いたいと思います。
この二点を斎藤先生にお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504720X01419990506/139
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140・斎藤貴男
○斎藤参考人 まず、住民基本台帳法改正が日本の社会と行政システムに何をもたらすかということですが、まず間違いなく言えると思いますのは、日本人個々が政府なりそれを使う大企業の監視下に置かれるということ、監視下に置かれた人間がどのように行動することになるかといえば、結局何も言えなくなるということです。お上に逆らったら、あすから何をされるかわからぬという村八分のような状況が大都会にも訪れるというふうに考えております。
また、それでもって、さっきから言われる光と影の光の部分ですが、それで行政効率が上がるのか、この点についても非常に疑問を持っております。といいますのは、私が言うまでもなく……(発言する者あり)ちょっと静かにしてください。反論は後で質問してください。私は参考人として意見を述べているんですから……。
いろいろなプライバシーにかかわる問題が次々と出てくるはずです。また、技術的にもどれほどセキュリティーをかけたところで、それをまた上回るハッカーというのも当然出てくる。そうしたら、それをほっておくわけにはいきませんから、またそれを上回る技術を次々につくっていかなければならない。ですから、効率が果たしてそれでよくなるのかどうかということも疑問です。それ以上の経費がひょっとしたらかかってくるのではないかと思います。
また、大方の方がこの法案の成立に伴って期待されていると思われる経済面、コンピューター関連業界が潤うだろうという見通しですけれども、一時的にはそういうこともあるかもしれませんが、近い将来、こういう管理社会になれさせられた人間が果たして新しい創造力というものを持つことができるのか、イマジネーションだけでなくクリエーティビティーを持つことができるように育っていくのかどうかということにも非常に疑問があります。
生まれたときから番号扱いされて、全部抑圧された人たちが果たして将来どういう大人になっていくのか、また、人間というのは恐らくそれほど鈍感なものではありませんから、そういう社会でたまりにたまったストレスがどのように爆発していくのか、だれもわからないと思います。
言ってみれば、国民総背番号は国民全体を容疑者扱いする法律ですから、確かに何か事件があったときに捕まえやすくはなるとは思います。だけれども、それを上回る残虐な犯罪だとかが今以上に出てこないとは限らないのではないでしょうか。
総務省になってマッチングがやりやすくなる危惧ということですが、これもそのとおりだと思います。また、年末調整に関しても、あそこで書きましたとおり、これを解体し選択制にする一方で、国民総背番号につながる納番制などというものはとても容認できない、これもまたそのとおりです。
以上、したがって、さっきから軽く笑ってくださいますが、少なくとも皆さん方より私この件については勉強も取材もしております。また、実際にやられるのは我々です。我々ですから、それでもって過剰なように思われるかもしれませんが、そういったあらゆる危険性というのを想定して意見を述べるのは当然だと思います。
また、我々一般国民に選ばれた政治家の先生方には、そういった予測可能な、予測できる危険性というものについては、たとえ法案の中に書いていなくても、考えて議論されるのがまたお仕事ではないかというふうに考えております。
以上です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504720X01419990506/140
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141・知久馬二三子
○知久馬委員 ありがとうございました。
最後に砂尾先生にお聞きしたいんですけれども、私、実は数年前に五色町の視察に行かせていただきました。それで、それはなぜかといえば、やはり住民の健康管理ということでコンピューターを導入するからということで行ったんですけれども、それで今はっきりしたのが、やはり自治省が非常にこのことに力を入れられたというのは、やはりこれらがあったからこそそうしていち早くされたんだなというようなことをちょっと申しましたんですけれども、その中で、先がた町長さんはおっしゃったのですけれども、四一%の加入率、強制はしないということなんです。それで、先がたでは、事務の効率化は考えないで、弱者の対応とか住民の利便性とか言われますけれども、やはり地方行政を考えるときには、事務の効率化というのも当然考えられるべきだと思うんです。
そうした中で、この四一%の中で、強制はしないんだけれども、本当にこのシステムがいいものであれば、やはりある程度の強制はしながらされてもいいのではないかという思いもありました。それで私は、これを市町村につなぐとか県につなぐということに対しては必要ないような気がするんです。そのメリットというのはないと思うんです。確かに言われましたけれども、実際に仕事をしていく中では、保健婦や実際の現場の仕事をしている人たちと住民とのつながりというものを大切にしていく、非常にそこらあたりを大切にしていくべきだと思います。
だから、強制しないんだ、四一%の中でデメリットはないと言われましたけれども、先がたの説明の中では確かにそうしたものはあるんだということを言われましたので、その辺についてちょっと最後お聞かせください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504720X01419990506/141
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142・砂尾治
○砂尾参考人 ちょっと済みません。もうちょっと簡潔に言うてくれへんかったら、わかりにくいんで。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504720X01419990506/142
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143・知久馬二三子
○知久馬委員 この制度を入れてデメリットはないと言われましたけれども、先がたの中では、事務の効率化だけを考えるわけじゃないと言われましたね。だけれども、やはりそこには費用、財政面でのデメリットというものがあるということを、その辺のことをどう考えられますかということです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504720X01419990506/143
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144・砂尾治
○砂尾参考人 財政の面につきましては、当初の導入の時期が早かったものですから、今はちょっと、今の段階でどのあたりの金額になるのかわかりません。
それで、四一%といいますのは、例えば健康とか福祉の場合、町村では第一次医療ですね、だから、これが共通カードになることによりまして、国立のがんセンターであるとかどこであるとか、そこへ基本的なことが、何といいますか、それだけ個人の利便性が図れたり広域化ができるんであれば、もっとふえるということです。
ただ、若い人たちにおきましては、このぐらいのものであったら持たなくてもいいな、それから、転出とか転入とかいうのは人口一万人では本当に知れております。そういった面で、大都市と町村、小さな町とで比較対照できないように思います。私は、大都市であれば物すごいメリットがあると思います。効率化も大いに図れると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504720X01419990506/144
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145・知久馬二三子
○知久馬委員 時間が来ましたので終わります。ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504720X01419990506/145
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146・坂井隆憲
○坂井委員長 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。
参考人の方々には、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして心から厚く御礼を申し上げます。
次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。
午後五時十五分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504720X01419990506/146
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