1. 会議録本文
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000・会議録情報
平成十一年四月十五日(木曜日)
午前九時一分開議
出席委員
委員長 山崎 拓君
理事 赤城 徳彦君 理事 大野 功統君
理事 玉沢徳一郎君 理事 中谷 元君
理事 中山 利生君 理事 畑 英次郎君
理事 前原 誠司君 理事 遠藤 乙彦君
理事 西村 眞悟君
安倍 晋三君 相沢 英之君
浅野 勝人君 石川 要三君
大石 秀政君 大島 理森君
河井 克行君 瓦 力君
木村 隆秀君 小島 敏男君
阪上 善秀君 桜田 義孝君
田村 憲久君 滝 実君
西川 公也君 萩山 教嚴君
桧田 仁君 福田 康夫君
細田 博之君 宮腰 光寛君
宮本 一三君 八代 英太君
吉川 貴盛君 米田 建三君
伊藤 英成君 上原 康助君
岡田 克也君 桑原 豊君
玄葉光一郎君 土肥 隆一君
横路 孝弘君 市川 雄一君
太田 昭宏君 佐藤 茂樹君
山中あき子君 東 祥三君
井上 喜一君 達増 拓也君
木島日出夫君 児玉 健次君
佐々木陸海君 伊藤 茂君
辻元 清美君
出席国務大臣
外務大臣 高村 正彦君
厚生大臣 宮下 創平君
運輸大臣 川崎 二郎君
自治大臣
国務大臣
(国家公安委員
会委員長) 野田 毅君
国務大臣
(内閣官房長官
) 野中 広務君
国務大臣
(防衛庁長官) 野呂田芳成君
出席政府委員
内閣官房内閣安
全保障・危機管
理室長
兼内閣総理大臣
官房安全保障・
危機管理室長 伊藤 康成君
内閣官房内閣情
報調査室長 杉田 和博君
内閣法制局長官 大森 政輔君
内閣法制局第一
部長 秋山 收君
警察庁警備局長 金重 凱之君
防衛庁長官官房
長 守屋 武昌君
防衛庁防衛局長 佐藤 謙君
防衛庁運用局長 柳澤 協二君
防衛庁人事教育
局長 坂野 興君
防衛施設庁長官 大森 敬治君
防衛施設庁施設
部長 宝槻 吉昭君
外務省総合外交
政策局長 加藤 良三君
外務省アジア局
長 阿南 惟茂君
外務省北米局長 竹内 行夫君
外務省欧亜局長 西村 六善君
外務省経済局長 大島正太郎君
外務省条約局長 東郷 和彦君
厚生省健康政策
局長 小林 秀資君
厚生省保健医療
局長 伊藤 雅治君
通商産業省貿易
局長 佐野 忠克君
運輸省運輸政策
局長 羽生 次郎君
運輸省航空局長 岩村 敬君
海上保安庁長官 楠木 行雄君
自治大臣官房総
務審議官 香山 充弘君
委員外の出席者
衆議院調査局日
米防衛協力のた
めの指針に関す
る特別調査室長 田中 達郎君
委員の異動
四月十五日
辞任 補欠選任
河井 克行君 吉川 貴盛君
平林 鴻三君 木村 隆秀君
宮島 大典君 桧田 仁君
近藤 昭一君 玄葉光一郎君
鉢呂 吉雄君 土肥 隆一君
赤松 正雄君 太田 昭宏君
市川 雄一君 若松 謙維君
同日
辞任 補欠選任
木村 隆秀君 滝 実君
桧田 仁君 宮本 一三君
吉川 貴盛君 河井 克行君
太田 昭宏君 赤松 正雄君
同日
辞任 補欠選任
滝 実君 平林 鴻三君
宮本 一三君 宮島 大典君
四月十四日
周辺事態法案廃案に関する請願(木島日出夫君紹介)(第二四六五号)
同(佐々木陸海君紹介)(第二四六六号)
同(春名直章君紹介)(第二四六七号)
新ガイドラインに基づく周辺事態法などの制定反対に関する請願(石井郁子君紹介)(第二四六八号)
同(大森猛君紹介)(第二四六九号)
同(金子満広君紹介)(第二四七〇号)
同(木島日出夫君紹介)(第二四七一号)
同(児玉健次君紹介)(第二四七二号)
同(穀田恵二君紹介)(第二四七三号)
同(佐々木憲昭君紹介)(第二四七四号)
同(佐々木陸海君紹介)(第二四七五号)
同(志位和夫君紹介)(第二四七六号)
同(瀬古由起子君紹介)(第二四七七号)
同(辻第一君紹介)(第二四七八号)
同(寺前巖君紹介)(第二四七九号)
同(中路雅弘君紹介)(第二四八〇号)
同(中島武敏君紹介)(第二四八一号)
同(中林よし子君紹介)(第二四八二号)
同(春名直章君紹介)(第二四八三号)
同(東中光雄君紹介)(第二四八四号)
同(平賀高成君紹介)(第二四八五号)
同(不破哲三君紹介)(第二四八六号)
同(藤木洋子君紹介)(第二四八七号)
同(藤田スミ君紹介)(第二四八八号)
同(古堅実吉君紹介)(第二四八九号)
同(松本善明君紹介)(第二四九〇号)
同(矢島恒夫君紹介)(第二四九一号)
同(山原健二郎君紹介)(第二四九二号)
同(吉井英勝君紹介)(第二四九三号)
同(金子満広君紹介)(第二五五四号)
同(佐々木陸海君紹介)(第二五五五号)
同(春名直章君紹介)(第二五五六号)
同(東中光雄君紹介)(第二五五七号)
同(藤田スミ君紹介)(第二五五八号)
同(矢島恒夫君紹介)(第二五五九号)
同(山原健二郎君紹介)(第二五六〇号)
新ガイドライン関連法案の立法化反対に関する請願(横光克彦君紹介)(第二五六一号)
は本委員会に付託された。
本日の会議に付した案件
日本国の自衛隊とアメリカ合衆国軍隊との間における後方支援、物品又は役務の相互の提供に関する日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の協定を改正する協定の締結について承認を求めるの件(第百四十二回国会条約第二〇号)
周辺事態に際して我が国の平和及び安全を確保するための措置に関する法律案(内閣提出、第百四十二回国会閣法第一〇九号)
自衛隊法の一部を改正する法律案(内閣提出、第百四十二回国会閣法第一一〇号)
派遣委員からの報告聴取
午前九時一分開議
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/0
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001・山崎拓
○山崎委員長 これより会議を開きます。
第百四十二回国会、内閣提出、日本国の自衛隊とアメリカ合衆国軍隊との間における後方支援、物品又は役務の相互の提供に関する日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の協定を改正する協定の締結について承認を求めるの件、周辺事態に際して我が国の平和及び安全を確保するための措置に関する法律案及び自衛隊法の一部を改正する法律案の各案件を一括して議題といたします。
この際、昨十四日、各案件審査のため福岡県、福井県及び北海道に委員を派遣いたしましたので、派遣委員からそれぞれ報告を聴取いたします。第一班中谷元君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/1
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002・中谷元
○中谷委員 第一班、福岡班の派遣委員を代表いたしまして、団長にかわり私からその概要を御報告申し上げます。
派遣委員は、山崎拓委員長を団長として、西村眞悟君、小島敏男君、宮島大典君、伊藤英成君、上原康助君、赤松正雄君、佐々木陸海君、辻元清美君と私、中谷元の十名であります。
現地における会議は、ホテルニューオータニ博多において開催し、まず、団長から派遣委員及び意見陳述者の紹介並びに議事運営の順序などを含めてあいさつを行った後、意見陳述者より意見を聴取し、これに対し、各委員より熱心な質疑が行われました。
意見陳述者は、佐世保日米協会会長富永雄幸君、弁護士市川俊司君、九州大学大学院法学研究科教授薮野祐三君、久留米大学経済学部教授大矢野栄次君、弁護士諫山博君、前沖縄県教職員組合中央執行委員長石川元平君の六名でありました。
以下、その陳述内容につきまして簡単に御報告申し上げますと、日米安保条約の役割についての積極的評価及び現行法制では対応できない事態に対する法整備の必要性、周辺事態安全確保法が国際社会での名誉ある地位をうたった憲法前文の理念を達成する一歩であること、日米安保条約の改正について、国民的議論をした上で周辺事態安全確保法案を考えていくべきであったこと、周辺事態安全確保法案が憲法九条に反するものであること、シビリアンコントロールの確保上、国会への報告を承認事項とすべきであること、周辺事態の定義、武器使用の範囲、政令への委任等あいまいな点があること、後方と前方の一線を画することが困難であること、地方自治体の協力について、正当な理由なく拒否すれば違法状態になるとされることから事実上拒否できないこと、有事が起こらないための国際的経済交流、外交等総合的戦略の必要性、九州、沖縄における地元としての懸念及び不安、朝鮮戦争当時の状況などについて、それぞれの立場から意見が述べられました。
次いで、各委員から意見陳述者に対し、憲法九条との関係、平時における防衛努力の必要性、労働者や労働組合への影響、周辺事態安全確保法に日米安保条約の枠内を明記すること、集団的自衛権行使の必要性、周辺事態及び周辺地域の定義、周辺事態における米軍の行動の性格、自治体、民間の協力内容の政令委任、国会の関与のあり方、有事の際の邦人救出、難民対策等の我が国の対応などについて質疑が行われ、滞りなくすべての議事を終了いたしました。
以上が第一班の会議の概要でありますが、会議の内容は速記により記録いたしましたので、詳細はそれによって御承知願いたいと存じます。
なお、速記録ができましたら、本委員会議録に参考として掲載されますようにお取り計らいをお願いいたします。
以上をもって第一班の報告を終わりたいと思いますが、今回の会議の開催につきましては、地元の関係者を初め、多数の方々に多大の御協力をいただき、極めて円滑に行うことができました。ここに深く感謝の意を表する次第でございます。
以上、御報告申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/2
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003・山崎拓
○山崎委員長 次に、第二班中山利生君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/3
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004・中山利生
○中山(利)委員 第二班、福井班の派遣委員を代表いたしまして、その概要を御報告申し上げます。
派遣委員は、団長として私、中山利生と、玉沢徳一郎君、遠藤乙彦君、宮腰光寛君、桑原豊君、近藤昭一君、東祥三君、木島日出夫君の八名で、現地において辻一彦議員、北沢清功議員が参加されました。
現地における会議は、福井県国際交流会館において開催し、まず、私から派遣委員及び意見陳述者の紹介並びに議事運営の順序などを含めてあいさつを行った後、意見陳述者より意見を聴取し、これに対し、各委員より熱心な質疑が行われました。
意見陳述者は、京都産業大学外国語学部教授須藤眞志君、ジャーナリスト小林巌君、福井県立大学経済学部助教授島田洋一君、無職岡本弘君、金沢大学教育学部助教授岡田正則君、敦賀市原子力懇談会委員吉村清君の六名でありました。
以下、その陳述内容につきまして簡単に御報告申し上げますと、周辺事態の概念に関し地理的範囲を限定することは困難であること、船舶検査活動に関し実効性を確保するためには武器使用を認める必要があること、周辺事態に対する国会の関与に関し承認事項とすべきであること、国以外の者の協力に関し、国家の安全のため当然の義務であるとの意見がある一方、地方自治への危険性を有しているとの意見もあること、原子力発電所に関し、原発は有事の際確実に標的になるおそれがあり、我が国の半分が壊滅的な被害を受けること、北朝鮮の不審船問題に関し、日本海側に新たな危機意識が浮上したこと、逃走を許したことは危機管理システムの不備であること及び自衛隊法改正の必要性などについて、それぞれの立場から意見が述べられました。
次いで、各委員から意見陳述者に対し、法案に関する世論調査についての見解、船舶検査活動において国連安保理決議を要件とした場合の実効性、基本計画や自衛隊の出動に対する国会承認の必要性、有事法制整備の必要性、対北朝鮮外交における抑止と対話のバランスのあり方、非核条例と外交権との関係、外交努力の必要性、原子力発電所のミサイルに対する抗堪性などについて質疑が行われ、滞りなくすべての議事を終了いたしました。
以上が第二班の会議の概要でありますが、会議の内容は速記により記録いたしましたので、詳細はそれによって御承知願いたいと存じます。
なお、速記録ができましたら、本委員会会議録に参考として掲載されますようお取り計らいをお願いいたします。
以上をもって第二班の報告を終わりたいと思いますが、今回の会議の開催につきましては、地元の関係者を初め、多数の方々に多大の御協力をいただき、極めて円滑に行うことができました。ここに深く感謝の意を表する次第であります。
以上、御報告申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/4
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005・山崎拓
○山崎委員長 次に、第三班畑英次郎君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/5
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006・畑英次郎
○畑委員 第三班、函館班の派遣委員を代表いたしまして、その概要を御報告申し上げます。
派遣委員は、団長として私、畑英次郎と、赤城徳彦君、大野功統君、鉢呂吉雄君、山中あき子君、達増拓也君、児玉健次君、伊藤茂君の八名であります。
現地における会議は、函館国際ホテルにおいて開催し、まず、私から派遣委員及び意見陳述者の紹介並びに議事運営の順序などを含めてあいさつを行った後、意見陳述者より意見を聴取し、これに対し、各委員より熱心な質疑が行われました。
意見陳述者は、苫小牧駒澤大学教授室本弘道君、酪農学園大学教授太田一男君、元北海道西武代表取締役常務前多信雄君、日本大学薬学部専任講師小野健太郎君、函館平和委員会事務局長佐藤かの君、北海道教育大学函館校非常勤講師米倉正夫君の六名でありました。
以下、その陳述内容につきまして簡単に御報告申し上げますと、周辺事態安全確保法案が日米安保体制を有効に機能させ、アジア太平洋地域の平和と安定のために理にかなったものであること、基本計画全体を国会承認の対象とすることと周辺事態の概念の明確化の必要性、冷戦後のグローバル化の進展の中で、軍隊による領土防衛や紛争解決が無意味になってきていること、紛争防止努力の重要性と経済の安定により平和を維持する道を追求していく必要性、緊急事態のための法整備と実効性確保のための運用システムを構築する必要性、憲法の恒久平和の原則を守る必要性、日本とアジア諸国との関係が悪化することについての懸念、平和への願いから非核条例制定に取り組んだ経験などについて、それぞれの立場から意見、要望が述べられました。
次いで、各委員から意見陳述者に対し、地方公共団体の協力について、国と地方の役割及び協力内容のさらなる明確化の必要性、後方地域支援について不測の事態が発生した際の対処のあり方、周辺事態の地理的範囲と対中国外交政策のあり方、函館市の非核条例について、国の外交権との関係及び条例制定運動の経緯、冷戦後における米国の軍事戦略と我が国の持つべき主体性の重要性、紛争予防外交に取り組む必要性、日米安保体制の今日的意義と今後のあり方、国連の平和維持機能に関する見解、米国の軍事行動に我が国が関与することの是非、憲法における国の外交権と地方自治権との関係などについて質疑が行われ、滞りなくすべての議事を終了いたしました。
以上が第三班の会議の概要でありますが、会議の内容は速記により記録いたしましたので、詳細はそれによって御承知願いたいと存じます。
なお、速記録ができましたら、本委員会議事録に参考として掲載されますようにお取り計らいをお願いいたします。
以上をもって第三班の報告を終わりたいと思いますが、今回の会議の開催につきましては、地元の関係者を初め、多数の方々に多大の御協力をいただき、極めて円滑に行うことができました。ここに深く感謝の気持ちを表明しながら、以上、御報告を申し上げる次第でございます。
終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/6
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007・山崎拓
○山崎委員長 以上で派遣委員からの報告は終わりました。
お諮りいたします。
ただいま報告のありました第一班、第二班及び第三班の現地における会議の記録は、本日の会議録に参照掲載することに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/7
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008・山崎拓
○山崎委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
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〔会議の記録は本号(その二)に掲載〕
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/8
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009・山崎拓
○山崎委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。桜田義孝君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/9
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010・桜田義孝
○桜田委員 自由民主党の桜田義孝でございます。
我が国がさきの大戦に敗戦して以来、日本国家にこのような平和と繁栄をもたらしてくれたのは何よりも日米安全保障条約でありました。そして、その日米安全保障条約を各種の具体的取り決めによりさらに強化することに役立つ日米防衛協力指針に関する特別委員会の委員として、本日、このように御質問させていただく機会を得られましたことをまず先輩並びに同志諸兄に心から感謝申し上げ、具体的質問に入らせていただきたいと思います。
独立国家日本のあり方と、拿捕、臨検について、中心に質問させていただきたいと思います。
まず私は、先般、三月二十三日未明に発生しました不審船事件においてにわかに明らかになった我が国における拿捕、臨検能力の限界について、感ずるところを幾つか質問させていただきたいと思います。
私は、本件に関して、日本領海侵犯事件として日本沿岸警備担当者が当然拿捕、臨検すべきものと考えておりますが、実際の対応を見ると、政府にこのような確固たる意思があったのかどうか、大変疑問に感じているところであります。この点、本件は単なる作戦面での失敗であったのか、それとも、拿捕する勇気、意思、訓練が十分でなかったのかどうか、防衛庁長官にまずお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/10
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011・野呂田芳成
○野呂田国務大臣 拿捕する意思がなかったかどうかということは、当日一睡もしないで命がけで頑張っていただいた自衛官の名誉にかけても、そのようなことは決してないということを明確に申し上げて、委員の御理解を得たいと思います。
防衛庁としては、現行法の中で対応できる限りのことをやったつもりでありまして、海上警備行動発令後、停戦命令を行うとともに、警告射撃とか、警告のための爆弾の投下とか、あるいは網の投下など、なし得る限りの必要な措置を実施して、不審船を停船させ立入検査をしようと試みたわけでありますが、いずれにしましても、現行法で認められる武器の使用というのは警職法の七条の範囲内でありまして、相手が反撃してこない限り正当防衛、緊急避難行為が成り立たない。ですから、沈めることは簡単でも、沈めて中にいる人の命に危害を加えるということになれば、法律体系としてできないわけでありますから、そこに限界があったということもまた御理解いただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/11
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012・桜田義孝
○桜田委員 ウサギやシカは人間より走るのは速いわけであります。ですから、当然人間は、単に追いかけるだけではウサギやシカは捕まりません。しかし、私たちの祖先は、生きるためにウサギ狩りやシカ狩りをして、食料として狩猟してきました。これは、私たちの祖先は、いわゆるハンティング能力、すなわち、追いかけ回して無理なら先回りして追い込んで捕獲すればよいという知恵を持っていたように思われます。
昭和六十年四月二十五日、宮崎県日向灘沖で第三十一幸栄丸と表されたなぞの不審船を海上保安庁が臨検しようとして逃げられてしまい、その後不審船が北朝鮮に帰港したことが確認されるという極めて屈辱的な事件が発生しました。その際も政府は、スピードが速くて逃げられたと説明しておりますが、本件もまさに同じようなケースであるわけでありますが、今回の対応を見ていると、果たしてあのときの教訓は生かされているのか、大いに疑問を持つところであります。
当時の不審船のスピードは四十ノットであったと発表されております。今回のような三十ノットそこそこでしかないような巡視船しか建造、準備してこなかった、これはいかなる作戦を想定した対応であったのか、疑問に思うところであります。わざわざスピードを遅く、追尾するための燃料すらすぐなくなってしまうような巡視船のみの導入では、単なる税金のむだ遣いという批判も免れません。国民が理解できるような明快な説明を海上保安庁長官にお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/12
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013・楠木行雄
○楠木政府委員 海上保安庁長官の楠木でございます。
昭和六十年の四月二十五日に、先生御指摘の宮崎県の日向灘沖の不審船事案がございました。最初にちょっとお断りしておきますが、先生、北朝鮮とおっしゃいましたけれども、私どもの方は、中国側の方のレーダー映像に消えたということで、どこの国に入ったかは確認しておりません。
それで、この船の経緯でございますけれども、最初に宮崎県の漁業取り締まり船が、どうも変な船がいるということで立入検査を実施しようとしましたところ、突然二十二ノットないし二十三ノットの高速で逃走したということで、これはおかしいということで私どもの方に連絡がございまして、私どもの方の航空機が、その後約十ノットで北上中の不審船を発見いたしまして、追いかけました。
そして、停船命令を発して追跡をしたわけでございますが、不審船はこれを無視いたしまして、そのとき非常に速度をふやしたり減らしたりしてジグザグに西向きに航走した。そのとき、先生御指摘のように、最大四十ノットがちょっと出た、そういう感じでございます。それで、三日間にわたりまして約六百海里、一千キロぐらいになりますけれども追跡をいたしましたが、結局、今申し上げたようなことで、最終的にレーダー映像から消えた、こういうような経緯でございます。
それで、私どもも、こういったことを教訓にいたしまして、巡視船艇の性能向上を図るなど、ハード面の充実強化を進めているところでございまして、特に巡視船艇の高性能化につきましては、老朽化した巡視船艇の代替として、高速性能等を有する百八十トン型の巡視船、これは航続距離もかなりございます、そういうものを順次整備をしてきたわけでございます。今回の事案も、これがそばにいるとよかったのですけれども、ちょっと遠いところにおりまして、基地と現場との距離の関係から、最終的に不審船への対応の機会を得られなかったということでございます。
また、私どもの対応でございますが、今回、海上保安庁は、領海警備を警察権としてやるという官庁といたしまして、まず、日本漁船を標榜するものだということで、漁業法の違反であるということで取りかかりまして、警察権の行使を精いっぱいやって、捕捉するつもりでやったわけでございますけれども、先ほど来御議論が出ているようなことで、結局、残念ながら逃がしてしまった。ただ、その際に、私どもといたしましても精いっぱいこれはやったつもりでございますが、昭和二十八年以来行っていなかった威嚇射撃までも行うことで、停船措置をとるよう努力したわけでございます。
それで、ちょっと御指摘のような点もございますし、今回の事案を教訓といたしまして、現在、内閣官房を中心として、主として七つの項目の検討がなされております。それで、海上保安庁の対応能力の整備、それもその一つとして挙げられておりますので、そういった観点から、巡視船艇の捕捉機能の強化、あるいは高速不審船への対応のあり方などについて検討しているところでございます。今後とも、このような基本的考えのもとに、御指摘も踏まえて、今回のような不審船事案への対応体制を早急に強化できるよう、検討してまいりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/13
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014・桜田義孝
○桜田委員 御説明はよくわかりましたけれども、日向灘沖は北朝鮮としては認定していないと。しかし、今後の問題として、中国か北朝鮮、あの大陸から宮崎県に来て帰るだけの燃料を持っている工作船、あるいは北朝鮮から新潟に、佐渡島あたりまで来ても帰れるだけの燃料を工作船は積んでおりますので、それに対応できる程度の装備が今後とも必要ではないだろうか、そんなふうに考えております。
そして、私の最大の疑問は、なぜ今回の臨検にヘリコプターを使用しなかったかということであります。現在の臨検はヘリコプターの一体運用が当然というのが世界の常識になっておりますが、国民の間では、ヘリコプターが不審船の上を飛んでいるのを見て知っているわけでありますが、我々は、むしろあのヘリコプターからつりばしごをおろして臨検する姿を国民は待っていたのではないだろうか、そんなふうに思いますし、私自身もそう思います。
海上保安庁として、海上警察権として当然発生し得るような臨検の仕事はいささか荷が重過ぎるということで、早々と海上自衛隊に任せるというお考えなのか、あるいは、今回の反省に基づいて、保安庁でもヘリコプター等の使用で一体的な作戦運用を今後検討するつもりなのか、海上保安庁長官にお伺いしたい、そんなふうに思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/14
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015・楠木行雄
○楠木政府委員 私どもといたしましては、平素から、逃走する船舶への対応として、まず巡視船艇または航空機によりまして、繰り返し発光信号あるいは無線等によりまして停船命令を発するということにしております。
今回の件におきましても、第二大和丸につきましては私どもの固定翼の航空機から、そして、第一大西丸につきましては先生御指摘のヘリコプターの方から、無線とそれぞれランディングライト、下で光るものでございますが、こういったもので停船命令を発して、そして航空機と巡視船艇との連携ということを行っておるわけでございます。
そして、停船命令に応じない場合の停船措置といたしまして、巡視船艇の方からはいろいろやったわけでございますが、先生御指摘のような航空機につきましては、今回、その位置を特定するために、FIRの境界ぐらいまではそれを持っていくというふうなことをやりまして、かなり使ったわけでございますけれども、具体的には、停船措置といたしまして、音響または発光により警告意思を示す警告ボールの投下、発煙筒、マリンマーカー、これは炎を出すものでございますが、そういったものもございます。そのほかにも、一般にやっておりますのは、例えば尖閣列島なんかで漁船なんかにやります場合は、ヘリコプターの風圧によりまして逃走意欲の減衰をするとか、そういうのもございますし、その他の方法もいろいろあるわけでございます。
しかし、御指摘のように、今回、不審船を捕捉することができなかったことは事実でございますので、これを教訓といたしまして、これらの捕捉能力の強化につきまして、航空機の活用方策も含めまして、なお検討しているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/15
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016・桜田義孝
○桜田委員 航空機の活用ということでお答えがありましたので、大変私にとっては期待した答弁であります。
その後、高速ミサイル艇というものも予算化されておるそうでございますが、これもさらに強化するような方向でひとつお願いしたいということと、海上保安庁の装備では、機銃。テレビ、マスコミ等でもさんざん言われておるところですが、かじ等を射撃して、人をあやめない形で停船させることができる、そういうような能力が海上保安庁あるいは自衛隊の方では大き過ぎるということであったそうですが、今後、高速ミサイル艇に機銃等の準備も必要ではないだろうか、そういうふうに考えていますが、この件についていかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/16
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017・楠木行雄
○楠木政府委員 私どもの機銃につきましても、警職法七条に基づきまして、今回それぞれの二つの艇に対して、機銃または小銃でやりました。今後とも、そういう限界を考えながら行ってまいりたいと思います。
なお、ミサイル艇は私どもではなくて防衛庁の方でございますので、この点、お断り申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/17
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018・佐藤謙
○佐藤(謙)政府委員 ミサイル艇につきましては、私ども既に三隻のミサイル艇を整備し、また、十一年度予算におきまして二隻のミサイル艇を整備しようとしているところでございます。
先生も御高承のとおり、自衛隊の装備等につきましては、防衛力の役割あるいは自衛隊の任務、対処すべき事態、装備品の有効性というようなことを総合的に考えて、効率的な整備をしていく必要があろうか、こういうふうに考えております。そういう中で、今回のような事案にどういうふうに対応するかということで、私どもも、防衛庁長官の御指示をいただき、幅広くその検討をしている中でございます。
そういう中で、このミサイル艇を初めといたします艦艇の装備のあり方につきましても、どういう装備が有効なのかということも含めながら検討してまいりたい。そういう中で、今先生おっしゃったようなことも重要な検討課題であろう、こういうふうに思っているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/18
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019・桜田義孝
○桜田委員 ぜひ御期待したいところでございます。
私は、もう衆議院に当選させていただいて二年半、一九九六年の十月二十日に当選させていただきましたが、そのときの有権者への公約の第一に、日本の伝統、歴史、文化、価値観というものを大切にして個人と国家に尊厳のある文化大国日本の建設というものを掲げさせていただいたのですが、その考えは基本的に今でも変わっておりません。
今回の北朝鮮による領海侵犯行動は明らかであり、私としては、独立国家としての我が国の主権侵犯であると確信しているところであります。主権は侵されてはならないものであり、今回の一連のことにより、我が国の国家としての尊厳、民族としての誇りを大きく傷つけられました。私は、二度とこのような不手際はないと確信しておりますが、同時に、我が国はこれを機会に、独立主権国家として確固たる姿勢を世界各国に示すべきではないかと思います。
今後、多くの課題があると思いますが、防衛庁長官の決意のほどをちょっとお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/19
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020・野呂田芳成
○野呂田国務大臣 今般の不審船につきましては、我が国としては北朝鮮の工作船と判断しているところでありますが、この工作船の場合、日本国籍を偽装するなど我が国領海で不審な活動を行った上、海上保安庁及び自衛隊が繰り返し停船命令を行ったにもかかわらずこれを無視して逃走するなど、委員がおっしゃるとおり、我が国の平和、秩序、安全を害するという国際法違反の行為と考えられ、まことにもって許しがたい行為であると考えております。
我々としても、二度とこういうことが起こらないように外交上の努力を重ねることが第一でありますけれども、それでもできない場合には、さらに断固たる対応策を考えていかなければいけない、こう考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/20
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021・桜田義孝
○桜田委員 ありがとうございます。
今回の周辺事態法の中には、船舶検査という事項がありますが、公海上における船舶検査は、警察業務を中心とする海上保安庁では当然対応できませんので、自衛隊が対応するわけでありますが、現在の自衛隊に果たして臨検能力と呼べるようなものが存在するのか、どの程度の能力なのか、防衛庁長官にお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/21
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022・柳澤協二
○柳澤政府委員 お答えいたします。
私ども、海上警備行動のための訓練というのは日ごろ実施してきているところでありますけれども、今回のような不審船事案あるいは今先生が言われました周辺事態安全確保法案で予定されている船舶検査活動といったもの、やはりおのずと趣旨、目的が違う面がございますので、その手順や対応の違いが若干ございますので、それに合わせた訓練をさらに充実していく必要があるということは考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/22
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023・桜田義孝
○桜田委員 さきのボスニア紛争の際、日本の石油タンカーがアドリア海に行ったときに、不審船としてオランダの海兵隊に臨検を受けた、ヘリコプターによって降下してきたとされておりますが、日本の海上自衛隊はこのような行動をどのような受けとめ方をしているのかお伺いしたいと思います。
臨検というものをめぐる歴史的背景を見ますと、十七世紀、イギリスにまでさかのぼりまして、当時、海賊を取り締まる必要のあったイギリスでは、宝を載せている海賊船を撃沈させず、相手船に乗り込んで拿捕する能力を向上させてきたということであります。このため、現在、臨検能力が一番高いのはイギリスであるとされており、そこでは米軍やドイツ軍、オランダの軍事関係者が訓練を受けているということであります。
海上自衛隊の臨検能力確保のため、私としては、このような訓練センターへの自衛官の派遣が有効であると考えますが、いかがでございましょうか。防衛庁長官にお伺いしたいと思います。
なぜなら、カンボジアの、陸上自衛隊がおったPKOでありますが、今度は、日本周辺となりますと、海上自衛隊がPKO等何か問題なんかが出たときには主たる任務につくと思われますので、この辺の御見解をお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/23
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024・柳澤協二
○柳澤政府委員 先ほども申し上げましたように、日ごろ私どもも、海上警備行動のための教育訓練はやっておりますし、また、いろいろな各国の例についても、幹部学校等の知識としての習得は進めてきたところでございます。
先生が御指摘のように、実戦に向いたさらに具体的な任務を想定した訓練という面では、各国の進んだ例なんかを十分吸収しなければいけないと思っておりまして、そういう点も含めて、現在大臣のもとで今回のいろいろな教訓事項の整理をさせていただいておりますけれども、そういう中でもひとつ検討課題として扱っていきたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/24
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025・桜田義孝
○桜田委員 それでは、今後検討課題から一歩先んじて自衛官の訓練派遣、実戦訓練がなければいざというときには実力を発揮することができませんので、やはり平時の訓練が有事のときに役立つという防衛の基本をひとついま一度思い起こしていただきたいな、そんなふうに思っております。
臨検時のヘリコプターの運用についてでありますが、先ほどお答えをいただきました。
そして、日本の装備についてちょっとお伺いしたいのですけれども、けさほどNHKのテレビで、日本の自衛官の防弾チョッキというものは十メートル離れたら小銃が貫通してしまうというような防弾チョッキしかないというようなことをやっておりましたが、日本の国民はあのテレビを見てどう考えたか。私はちょっと驚きの念を持っておるのです。
臨検するときに、防衛庁関係におきましては、救命胴衣、防弾チョッキ、それが一体となったものが日本ではないのだ。ヨーロッパでは、防弾チョッキ兼用救命胴衣といって、海に落ちたときは沈まないように空気が出て助かるようになっておるそうですが、海に落ちてから船に上がったときなんかは水がつっと抜けて、着がえなくてすぐそのまま実戦に使えるような防弾チョッキの役割を果たす、そういう備品があるそうであります。日本にはそういうものがなくて、海から陸に上がったらそれを素早く脱ぐという訓練だけがなされておる、こんなことも聞いております。
今後、救命胴衣と防弾チョッキが一体となったものやサブマシンガンというような関連備品が不可欠であると考えております。今回、不審船の対応に当たった当局の一連の船舶にはそのような装備は一切なかったと聞いております。私としては、訓練同様、臨検関連装備の充実が急務と考えておりますが、いかがでありましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/25
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026・佐藤謙
○佐藤(謙)政府委員 まず、防衛庁が保有しております装備品の能力につきましては、具体的なその性能等を申し上げますことは自衛隊の実際の活動に支障がございますので、ここでは控えさせていただきますけれども、確かに、防弾チョッキといいましても、使うときの状況によりましていろいろな種類があることは事実でございます。
それからもう一つ、こういった船舶の検査等のときに普通の防弾チョッキでいいのか。先生がおっしゃいましたように、例えば重い防弾チョッキをつけたままであれば、仮に海上で活動をする場合に海に落下したような場合、その場合はどうなんだとか、こういう問題もございますので、そういったことも踏まえた、今先生がおっしゃいましたような救命胴着と両方の機能をあわせ持ったようなものが有効ではないかとか、そういったことも含めまして今鋭意検討しているところでございます。先生の今おっしゃいましたそういう点につきましても、十分検討したいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/26
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027・桜田義孝
○桜田委員 そのような、私が指摘したような防弾チョッキが世界の常識だと言われておりますので、ぜひ、防衛庁関係におかれましても、装備、備品の充実に努めていただきたいと思います。また、私どもは、その備品の充実のためには努力を惜しまないつもりでございます。
また、防衛装備に関連してあと一つお伺いしたいのですが、今回の不審船は原子力発電所が多い日本海沿岸で発見されたわけでありますが、工作員の侵入という点からも、ゲリラ、コマンドー等に対する対策が急務であると考えております。
一方、我が国では、このような場合、有効な短機関銃の関連装備や作戦、運用の検討自身も十分ではないという話がありますが、これを機会に、我が国においても米国のデルタフォースのような特殊部隊の導入が必要ではないかと考えておりますが、いかがなものでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/27
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028・柳澤協二
○柳澤政府委員 いわゆるゲリラ、コマンドー攻撃に対する対応については、新しいガイドラインの中でも特記されておりまして、非常に注目をしておりますし、また、橋本内閣以来の政府としての緊急事態対応策の検討の中でも、警察庁等との協力のあり方も含めて、今いろいろ検討しております。
その中で、これは主として陸上自衛隊の分野になると思いますが、いろいろな面での訓練は積ませていただいておりますけれども、さらに、現状、ミッションに合った訓練のあり方、実戦的な装備の面も含めて、私ども、さらに十分備えながら対処していきたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/28
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029・桜田義孝
○桜田委員 今回のような事件に必要不可欠な危機管理を担当する情報機関において、我が国の場合は極めて甘いと言われております。もちろん、日本にはスパイ防止法などないものですから特に指摘されるわけでありますが、今回のような場合、不審船の侵入予測からその後の警察、防衛対応等について、統合的に情報を分析する機関が有効であろうと私は考えておるのであります。
今後、我が国では、防衛庁、外務省、公安警察といった各機関の上に、一元的に情報収集に関する管理責任を負う日本版CIAのような総合情報機関をつくることが必要であると考えておりますが、どうでしょうか。内閣情報調査室長にお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/29
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030・杉田和博
○杉田政府委員 お答えをいたします。
国内外の極めて不透明な情勢のもとで国の安全を図る、そのためには、情報機能の強化、なかんずく委員御指摘のいわゆる情報の統合というものが極めて重要であるという認識を持っておりまして、昨年の十月、実はこれまでも定期的に情報関係省庁の局長が集まって、情報の交換さらにまた情報分析、評価の相互検証を行ってまいりましたけれども、その合同情報会議の上に、国の情報の重点というものを決定するなどの内閣情報会議を設置いたしました。
そのほか、臨機に情報関係の局長クラスが私を含めて集まって、そして情報の集約、評価を行う、こういう体制をこれまでもつくってきたところでございます。いわゆるインテリジェンスコミュニティーと申しますか、情報の集約統合、こういうものを実体的につくっていこうという考えのもとで進めてきたわけであります。
今後、こうしたことの中身、まさに実をいかに高めていくかということでございますので、そういう幾つかの経験等も踏まえて、国として情報の統合のありようというものはどういうのが一番いいかという点について、十分検討してまいりたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/30
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031・桜田義孝
○桜田委員 拿捕、臨検能力について伺っておりますが、私は、独立国家としての尊厳や民族の誇りが極めて大切であろうかと考えております。
そこで、外務大臣にお伺いしますが、我が国が独立国家として満たさなければならない条件とは、主としてどのようなことがあるのか。また、日本民族の誇りを保つため、対外的に、日本の外務大臣としてどのようなことに大きな注意を払っているか、お伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/31
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032・高村正彦
○高村国務大臣 突然の御質問で、それも極めて大きな課題でありますが、やはり、日本の平和と安全、独立というのを保つということが一番大切だと思っておりますので、まず外交努力、そして日米安全保障条約、そして防衛力の整備、そういったことで日本の平和と独立をきっちり守るとともに、委員が一番最初、選挙の公約として、日本の歴史、伝統、文化、こういったものを重要視するというような趣旨のことをおっしゃっておられましたけれども、そういった観点から、日本の主体性をきっちり持って、日本の文化交流等、世界にこういう日本の文化というものがあるんだということをきっちり示していくことも必要だと思っておりますし、また、そういう中から、経済的な問題にいたしましても主体性を持ってきっちりやってまいりたい。
極めて大きな質問でありますから、どういうふうにお答えしていいのかよくわかりませんが、そういったことを心がけてまいっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/32
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033・桜田義孝
○桜田委員 どうもありがとうございます。
どうしても私の質問というのはこういうことにこだわるものですから、大変恐縮しております。
最後になりますが、もう一問、外務大臣に一つお願いしたいのです。
現在、ヨーロッパでは、コソボ紛争において、米軍を中心としたNATO軍がユーゴを空爆しており、戦火が拡大の様相を示しておりますが、国際的な目が欧州にのみ向きがちであります。しかし、現在、世界で最も緊張があり、紛争の火種を火種として抱えているのは北朝鮮であります。私たちの日本の平和と安全に極めて重要なところであります。私どもは、何としてもこの日米防衛協力に関するガイドライン関連法案を早急に成立させ、有事に備えなければなりません。
本日は総理はおられませんが、今月訪米されると伺っております。総理には、クリントン大統領に対し、まず、北朝鮮をめぐる情勢打開のため力を注いでもらいたいということ、情勢打開のため我が国は果敢なる意思を持って対処し、その意思の一つのあかしとして、日米同盟を基軸に米国との協力関係を強化するガイドライン法案を速やかに成立させるつもりであるということを、ぜひお伝え願いたいと思うのであります。
外務大臣、よろしくお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/33
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034・高村正彦
○高村国務大臣 我が国の北朝鮮に対する基本方針というのは対話と抑止、こういうことでありまして、そして、北朝鮮に対処するには日米韓の緊密な連携が必要である、こういうことであります。
そして、北朝鮮に対するだけということではなくて、日本の平和と安全を守るために、先ほど申しましたように、その一つの柱として日米安全保障条約というのがあるわけでありますから、その日米安全保障条約の実効性、信頼性を高めるといったことをきっちりやっていく、そういった観点からも今提案している法案を御審議いただいている、そういった経緯を米国から評価されるような形で報告できればいいな、こういうような感じを政府としては持っているところでございますけれども、いずれにしても、日米、緊密に連絡して、そして韓国も含めて北朝鮮には対応していく、こういうことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/34
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035・桜田義孝
○桜田委員 どうもありがとうございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/35
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036・山崎拓
○山崎委員長 これにて桜田君の質疑は終了いたしました。
次に、伊藤英成君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/36
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037・伊藤英成
○伊藤(英)委員 民主党の伊藤英成でございます。
きょうの朝、冒頭に昨日の地方公聴会の報告がなされました。私は第一班の福岡に委員長ともども参加したわけでありますが、昨日の地方公聴会も踏まえながら、いろいろとお伺いをしたいと思います。
まず、昨日、地方公聴会で陳述人から「福岡県警察史」という資料について紹介がありましたので、概要といいましょうか要点だけちょっと申し上げたいと思うのです。実は、今私たちはこのガイドライン関連法案を審議しているわけでありますが、そうしたものを考える意味で非常に参考になるのではないか、こういうふうに思うものですからちょっと紹介をしたいのですが、これは、朝鮮戦争が勃発したときに福岡の地の辺でどういう状況だったかということについて記述されているわけであります。
ざっと、ここはというところだけ申し上げますと、まず朝鮮戦争が勃発したことについて、「昭和二十五年六月二十五日午前四時ごろ、突如、朝鮮を南と北に分割している北緯三十八度線の全線にわたって戦闘が開始された。 北朝鮮の軍隊は一一か所で三十八度線の境界を突破、南へ向って進撃した。」そして、さらに幾つか文章がありますが、「午後一時三〇分、韓国軍が夜中に三十八度線を越えて北朝鮮に侵入したと報道した。」そして「六月三十日、アメリカ政府は朝鮮への地上軍の派遣を決定し、在日アメリカ軍四個師団は次々に朝鮮へ移動したが、すでに二十八日には韓国の首都京城は陥落していた。」
そして「一方、中国政府はアメリカ軍を主力とする国連軍の三十八度線突破を、中国の安全に対する重大な脅威だと警告し、まもなく義勇軍を投入した。十一月二十五日反攻を開始、国連軍に大打撃を与え、やがて三十八度線に達した。」という記述がずっとありまして、そして最後のところに「かくて、ようやく二十八年七月二十七日休戦協定が調印された。」こういうふうに、まず概況が書いてあります。
そして、その前線基地の福岡の辺のことについて書いてあるのですが、板付空軍基地では二十九日午後十時十五分警戒警報が発せられて、灯火管制下に戦闘機が飛び立つなど基地は緊張に包まれた云々というのがあります。そしてまた、米軍当局は警報発令と同時に万一を考えて、数台の拡声器つきトラックを福岡市内に出動して、市民に警告を与えた。それから、国籍不明機が海岸に近づいたために、西日本の四都市、これは小倉、戸畑、八幡、門司の四都市に警戒警報が発令され、灯火管制が実施された。
それから、対馬、朝鮮海峡を隔てた一衣帯水の朝鮮半島で起こった朝鮮戦争は、さまざまな形で、最も近接した福岡に影響を与えた。そして、福岡市の中心部では、板付基地や博多港埠頭と荒戸町の米軍ホスピタルとの間を、昼間でも赤ランプをつけて戦場から送還されてきた戦傷病兵を運ぶトラック群を停戦の日まで連日欠かさず見ることになった。博多港が朝鮮半島への重要な輸送基地であったこともあって、極度の緊張に包まれた。博多港埠頭を基地とし、前線の増強兵員と多量の兵器弾薬が続々と発送され、ために埠頭一帯はたちまちにしてこれらが山をなし、倉庫は充満、兵員の波があふれるようであった。そして、埠頭は兵員輸送、兵器弾薬の運送、LST型輸送船、病院船の着岸乗降積載と、陸も海も芋を洗うがごとき状況を呈した。
そして、芦屋、福岡、小倉などはいわゆる基地の町と化したというようなことが、今、私はほんの一部を読ませていただいたのですが、これは「福岡県警察史」、こういうものでございますが、このように報告をされております。もちろんこれは朝鮮戦争のときの状況でありますが、いざ北朝鮮有事といいましょうか、そうしたときには、ある意味では似たようなといいましょうか、参考とすべき話はあるのかもしれない、こういうことを思うものですから申し上げました。
自治大臣、突然でございますが、今ざっとした記述を申し上げたのですが、何か感想を持たれますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/37
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038・野田毅
○野田(毅)国務大臣 当時の、朝鮮動乱という言葉がありましたが、大変な事態であったのだなということを改めて認識いたしたわけです。
ただ、当時は、言うなら超法規的な権力が日本国にはGHQをトップとして、そういう体制下にあって、そういう体制下においてさまざまな対応がとられたということは事実であって、今日における日本国の姿とはおのずから異なっている。
したがって、いわばなおさらのこと、今日の朝鮮半島情勢がどういう形で火を噴くのか噴かないのか、どういうようなことが想定されるのか、極めて流動的であり、そういったことにおいて、私たちとしては少なくとも備えあれば憂いなしということが一番大事なことであって、何らの対応もしていないでいきなり何かがあったときにあたふたと超法規的な対応をすることは避けなければならないということを、改めて痛感いたしておるところであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/38
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039・伊藤英成
○伊藤(英)委員 具体的にお伺いいたしますが、地方自治体や民間の協力の問題について伺うわけでありますが、政府が地位協定第二条四項(b)を活用するかはあらかじめ決めておくことはできない、活用する場合でも関係者と調整等が必要で直ちに使用可能となるわけではない、このように述べられております。
それでは、当該自治体との調整がうまくいかない場合に、施設等を地位協定第二条四項(b)に基づいて米軍に強制的に提供することはできるのでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/39
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040・野呂田芳成
○野呂田国務大臣 周辺事態に際しまして、我が国としていかなる措置を実施するかにつきましては、あくまでも事態の規模、態様等を総合的に勘案して判断することとなりますので、あらかじめ申し上げることは困難でございますけれども、仮に、日米地位協定第二条四項(b)の規定に基づいて、民公有地を施設・区域等として提供を行うことを想定した場合に、一般論としては、駐留軍用地特措法の規定が明文上排除されるものではないと考えられますけれども、実際上相手方の協力なくしては円滑な使用の確保は困難でありますので、議員御指摘のように、強制的に手続を進めることは考えていないところであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/40
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041・伊藤英成
○伊藤(英)委員 今、民有地の場合についても触れられましたでしょうか。民有地の場合はどうでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/41
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042・野呂田芳成
○野呂田国務大臣 公有地、民有地、同じ見解でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/42
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043・伊藤英成
○伊藤(英)委員 米軍が我が国の空港、港湾を使用するには、地位協定第五条一項に基づく一般的な使用を認める方法と、今申し上げた、地位協定二条四項(b)に基づいて、期間を区切って米軍の優先的、独占的な使用を認めるというやり方が考えられるわけでありますが、いずれの場合においても、施設・区域が自治体の管理下にあった場合には、管理自治体にその使用許可を要請せざるを得ない、こういうふうになるわけですね。
そこで伺うのですが、国が、地位協定二条四項(b)あるいは五条一項に基づいて、米軍に港湾、飛行場の使用を認める場合には、それを担保する国内法の根拠というのはあるのでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/43
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044・竹内行夫
○竹内政府委員 まず、二条四項(b)の関係で申し上げますが、自衛隊の施設以外の、民間とか自治体の管理の港湾の話でございますけれども、現状から申しますと、そのような施設で、いわゆる二4(b)に基づきまして共同使用されている施設というのは今のところ三件しかございません。それも港湾という施設については一件もないわけでございます、港湾施設という意味におきましては。
したがいまして、そのような実態からいたしますと、今後、いわゆる周辺事態におきましても、港湾についての二4(b)というのが一挙に大幅にふえるということはちょっと考えにくいかなというところがございます。すなわち、まず、米軍に提供されている施設・区域というものが活用される、利用されるということが第一義的だろうと思います。
それから、具体的な提供を行うということになる場合につきましても、現在まで日米間でそういう話し合いを周辺事態との関係で行ってきたということはございません。
しかし、理論的な可能性の問題としては、もちろん二4(b)を利用するということも総合的な判断の結果としてあるわけでございますけれども、これは条約の運用ということで、所要の手続を経まして、閣議の手続とか日米合同委員会の合意という手続を経て提供を行う、こういう条約の実施という形でそれが実現される。現実の運用につきましては、その合同委員会合意なり日米間の合意の運用という形で行われると思います。
それから、地位協定第五条につきましてでございますけれども、これは、五条は、一般的な出入の権利というのを米国の艦船、航空機に認めたものでございます。それで、このような米軍のいわゆる五条機とか五条艦船につきましては、地位協定上と申しますか国際法上、日本の国内法令については原則としてそのまま適用されることはない、もちろん国内法令の遵守義務というのはございません。(伊藤(英)委員「今何と言われましたか。よくわからなかった」と呼ぶ)
第五条の出入の権利でございますけれども、これは一般的な出入の権利でございます。したがいまして、それは五条機、五条の適用のある米国の艦船につきましては、一般的な原則の問題といたしまして、国内法はそのまま適用されるということはない。しかし、国内法の尊重義務というのはございます。
それから、しかし現実に入港するということになりますと、それはまさに港湾の通行秩序とかいうことの関係で、日本の国内法に従ったと申しますか、それに沿った手続がとられるということになると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/44
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045・伊藤英成
○伊藤(英)委員 今のお話は、二条四項(b)の場合には、条約に基づいて行うということで、それを担保する国内法はないと考えればいいのですか。そういう意味でしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/45
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046・竹内行夫
○竹内政府委員 二条四項(b)でございましても、条約上の権利として米国に港湾の使用を認めるということになりますと、使用の権利自体は、日米間の合意に基づきまして施設・区域が提供されているということから入港の権利が生ずる、こういうことでございます。
したがいまして、直接国内法を根拠とした入港の権利ということではなく、施設・区域への一時的な、期間を限った場合でございますけれども、根拠としてはそういう条約上の根拠、こういうことになるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/46
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047・伊藤英成
○伊藤(英)委員 条約上行っているだけで、根拠はない、根拠法、国内のその根拠とする法律はありませんという意味ですね。
それから、周辺事態において、地位協定二条四項(b)及び五条一項に基づいて米軍の港湾、飛行場使用を地方自治体に要請する場合、それは周辺事態法第九条の協力要請に基づくのかどうか。それから、その協力事項の範囲が不明確であるとする自治体の不安を和らげるためにも、この周辺事態法案に米軍の港湾、飛行場使用を地方自治体に要請する場合の手続、その辺を明記する、あるいは他の形で明確にするということが必要ではないか、こう思うのですが、その辺はどのように考えますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/47
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048・伊藤康成
○伊藤(康)政府委員 地方公共団体が管理しております港湾等を米軍が使うというような場合におきまして、日米間の条約上の根拠は、外務省から御説明がございましたように、地位協定の五条ということになろうかと存じます。その場合に、必要があれば、当然、この周辺事態安全確保法の九条第一項によって、行政機関の長、港湾でございますと運輸大臣ということになると存じますが、運輸大臣から管理する地方公共団体の長に対してお願いをする、協力を求めるということはあるわけでございます。
そういうケースもあるわけでございますが、今それらの手続ということでございますが、この周辺事態安全確保法案の四条におきまして、九条で地方公共団体に協力を求める場合の種類ですとか内容等につきましては明記をするということになっております。これは四条二項第七号でございます。それに従いまして、関係の行政機関から地方公共団体の長に協力を求める。いわばそういう意味での手続は法案上明確になっているというふうに私どもは存じております。
もちろん、具体的に、これまでも御答弁申し上げていますように、港湾等の地域でございますとかそういったものにつきましては、できる限り基本計画に明らかにするということを考えておりますし、またさらに、その詳細な部分につきましては、これはマニュアルというものができるのかどうかわかりませんけれども、できる限り明らかにしてまいるというふうに考えている次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/48
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049・伊藤英成
○伊藤(英)委員 この周辺事態安全確保法案の第九条の地方自治体に対する協力要請について、当該自治体が正当な理由があればそれを拒否できるが、その場合、その理由を開陳することが期待される、このように答弁をされておりますね。
そこで、当該自治体が理由の開陳を拒否した場合、これは、それだけで当該行為は違法となりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/49
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050・伊藤康成
○伊藤(康)政府委員 九条一項で地方公共団体の長に協力を求めるということは、地方公共団体の長が、他の法令、条例も含むわけでございますが、その持っている権限の行使についてお願いをするわけでございます。したがいまして、もちろん、正当な理由がある場合には拒むことができるというのは累次申し上げているとおりでございますが、その正当な理由というのは、当然のことながら、それぞれの権限を与えている法令の解釈によって決まってくることなのであろうと思います。そして、そうである以上、そういった拒否の場合に、なぜだめなのかということは通常は私は開示されるのであろうというふうに思っている次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/50
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051・伊藤英成
○伊藤(英)委員 だから、その開陳を拒否した場合、それはそういうふうに期待されるという話なんですが、それを拒否した場合には違法ということになるのでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/51
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052・伊藤康成
○伊藤(康)政府委員 先ほど申し上げましたように、権限の行使でございますので、地方公共団体の長といたしましても権限を行使するわけでございますので、その理由が全くわからないということはちょっと通常考えにくいわけでございます。また、国としても、もし仮にそのようなことがあれば、それはどうしてでしょうかとお聞きしないと判断に困るということになろうと思います。
では、どうしても拒んだ場合に、それは違法なのかどうかということでございますが、これもまた累次御答弁申し上げておりますように、この九条一項について何ら罰則等の規定がないわけでございまして、そういう意味で、違法という言葉をここで使うことが果たして適当なのかどうか、ちょっと疑問に思っている次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/52
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053・伊藤英成
○伊藤(英)委員 それでは、協力要請を拒否する理由、それの理由についての正当性についてはだれが認定するのでしょうか。あるいは、どういう機関が認定することになるのか。そのときの判断理由というのは開示をされることになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/53
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054・伊藤康成
○伊藤(康)政府委員 正当な理由があるかどうかということにつきましては、それぞれ個別具体の事案に即しまして、周辺事態に対応する措置の緊要性、あるいはほかに代替手段を求めることが困難であるといったような事情、そういうものを考慮しつつ、協力の求めがあったことを前提として、その権限について定められた根拠法令というのがあるわけでございますが、それに照らして客観的に判断されるというのが法律上の解釈になろうかと思います。
もちろん、第一義的には、こういったことを踏まえまして地方公共団体の長が判断するということになるわけでございますが、その判断が正当であったかどうかということにつきましては、先ほど申し上げましたように、それぞれその権限行使の根拠となっている法令の趣旨に照らして判断されるべきものである、だれかがこれを一義的に決めつけるというものではないと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/54
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055・伊藤英成
○伊藤(英)委員 だから、その理由が正当かどうかというのはだれが判断するのでしょうか。だれが、あるいは、ある機関が判断するということもあるのかもしれませんが、だれがその認定をするのだろうか。そしてそのときに、その判断する理由は開示されるのでしょうかということですが。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/55
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056・伊藤康成
○伊藤(康)政府委員 もう一度初めに立ち返って申しわけございませんが、九条一項と申しますのは、関係の行政機関の長から、それぞれ権限を持っている地方公共団体の長に協力を求めるわけでございます。そして、その地方公共団体の長は、求められた以上、当然法令上の根拠があるわけでございますので、その法令上の根拠に従って判断をする、こういうことでございます。それで、求めに対して拒否をする、そこに正当な理由があるかどうかということは、その法令に従っての解釈の問題でございますから、その法令上客観的に判断されるということでありまして、それほど中身において難しくなるということでは私はないんだろうというふうに思います。あくまで法令の趣旨とするところに従って行われるべきものであろうと。
では、先ほど来の御質問でございますと、地方公共団体がなぜ拒否したかわからない場合ということでございますが、その場合、先ほどもちょっと御答弁申し上げましたが、国としても当然その理由を確かめる、そういう上で意見を申し上げることはあろうと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/56
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057・伊藤英成
○伊藤(英)委員 だから、それはだれが判断するのかということですが。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/57
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058・野呂田芳成
○野呂田国務大臣 先ほど内閣の方から御答弁しているとおり、関係行政機関の長が判断することになると思います。
例えば、具体的に申し上げますと、港湾法は運輸省が管理しているわけでありますが、公共団体が正当な理由として拒否できる場合、これは、港湾管理者は当然港湾の適正管理運営をつかさどっているわけですから、正当な理由があればこれを拒否できるわけであります。
例えば、大変ふくそうしていて、アメリカ等の船を接岸させることが困難である場合は拒否できる正当な理由でありましょうし、あるいは、非常に船が長期に滞在して港湾の適正管理運営を欠く場合にも拒否できる事例になるでしょうし、あるいは、船が大きくて接岸施設からはみ出て大変邪魔になるような場合も、正当な拒否の理由になるかと思われます。
また、正当な理由として当たらない場合は、例えば、国籍を見て、国籍によって接岸させないような場合とか、あるいは、順番を狂わせて、ずっと待っているのに順番が来ても接岸させないような場合、こういう場合は正当な理由を欠くことになるかと思われますが、こういう場合は、関係行政機関の長である運輸省がそれを判断して、運輸大臣の判断によって是正命令が出せることになる、こういうことになるかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/58
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059・伊藤英成
○伊藤(英)委員 今の防衛庁長官のお話は、要するに、その管轄省庁の、例えば省庁の大臣が判断しますということでしょうかね。そういうことなのかどうかということと、その判断理由というのは開示されるのですか。されるのかされないのかということを、今伺っているのですが。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/59
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060・野呂田芳成
○野呂田国務大臣 関係行政機関の長が判断する場合に、正当な理由に当たらないというような事態があれば、これは、所管大臣として関係公共団体等に是正を命ずることができるというような法律になっていれば、その法律に従ってそういう手続をとるわけですから、理由の開示はなされるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/60
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061・伊藤英成
○伊藤(英)委員 理由の開示はされるということでありますね。
それで、今長官がちょっと触れたのでしょうか、理由なく拒否した場合について、当該自治体の行為が、違法というのは実体法に違反するという法的な評価をあらわす言葉であると一般的に言われているので、正当な理由なく協力義務の不履行状態にあるのを違法という言葉で評価することが適切であるか自信がないと、要するに、これは法制局長官が答えられたと思います。さっき伊藤室長もその類を言われたんだと思うんですね。
そこで、今度具体的に聞くんですが、地方自治法第百五十一条の二には、機関委任事務に対する職務執行命令訴訟による代執行制度が定められておりますね。協力事項が機関委任事務にかかわり、自治体が当該事務の執行を正当の理由なく拒否した場合でも、このような措置はとられないのかどうか、この辺はどうでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/61
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062・野田毅
○野田(毅)国務大臣 先ほど来、その前にやりとりの中で、一般論として申し上げれば、国は、必要があれば地方自治法第二百四十五条に基づいて助言もしくは勧告をすることができることになっておりますし、また法令違反の場合には、その権限の行使について停止または変更命令等の措置をとることができるという、港湾法の第四十七条のような規定もあるわけでありまして、そういう意味での是正措置がとられるということは論理としてあり得るということだと思います。
それから、今の御指摘、地方自治法の第百五十一条の二による代執行の問題でございますが、港湾や空港の使用というのは機関委任事務ということではございませんで、いわゆる自治事務、現在では団体事務というような形に分類をされておりまして、いわゆる代執行の対象にはならない、こういうことではございます。
その中で、まず、少し詳しく申し上げれば、地方自治法第百五十一条の二は機関委任事務についての規定でございます。国の機関として行う知事の職務執行が法令に違反する場合などにおいて、主務大臣がまず勧告、続いて命令、さらにこれに従わないときは高等裁判所へ出訴、その判決において定められた期限までに知事が事務をとり行わない場合に、主務大臣が知事にかわって事務を行うことができる旨を定めておるものでございます。
このように、代執行に至るまでには慎重な手続を踏み、したがって相当の時日を要するものであります。周辺事態というのは緊急に対応を要する事態でありまして、この規定によって代執行の手続をとるというほど時間的余裕はまず考えられないと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/62
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063・伊藤英成
○伊藤(英)委員 それでは同じ地方自治法の、今度は第二百四十六条の二には、内閣総理大臣の措置要求というところがありまして、地方自治体の違法または不当の事務処理に対して、内閣総理大臣が必要な措置を講ずべきことを求めることができる旨の条文がありますね。正当な理由なく自治体が協力要請を拒否した場合でも、かかる措置はとられないのかどうか、この辺はどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/63
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064・野田毅
○野田(毅)国務大臣 この法案の第九条第一項に基づき協力を求められた地方公共団体の長にあっては、適切な権限の行使が期待されるものであって、拒否するには正当な理由が必要であるということはたびたび申し上げておるところでございます。
正当な理由がない限り、地方公共団体は求めに応じていただけるものと考えておるわけですが、あえて、今法律論という形で御質問がございましたので法律論としてお答えを申し上げるということであれば、地方公共団体の長の対応が法令の規定に違反するような場合は、例えば、まず、地方自治法の第二百四十五条に基づく助言または勧告の対象になり得る。
さらに、個別法に基づく措置、例えば港湾法第十三条で不平等取り扱いが禁止されており、これに反するような場合は、先ほど述べましたが、同法の第四十七条に行為の停止または変更命令の措置ができる旨の規定があるわけであります。この規定による措置がとられることもあり得るものと考えておるわけです。
さらに、場合によっては、今御指摘の地方自治法第二百四十六条の二に基づく是正措置要求の対象となるということは法律上あり得るというふうに考えております。
もちろん、国として地方公共団体に対してこれらの規定を発動することを想定しているというものではございませんで、国としては、地方公共団体の実情も十分踏まえて協力の要請を行うものでありまして、また地方公共団体も、正当な理由がない限り、求めに応じて権限の行使をしていただけるものだと考えておるところであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/64
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065・伊藤英成
○伊藤(英)委員 いろいろ手続等々は行うし、地方自治体にも期待はするけれども、こういう、例えばこの二百四十六条の二によることもそれはあり得るよという意味ですね。わかりました。
それから、政府が作成をいたしました地方分権推進計画等で、新たに、国と地方公共団体の関係において生ずる係争を公平中立に処理する第三者機関を設置することが決まっておりますけれども、将来、正当な理由なく自治体が協力要請を拒否した場合、そのときに、この第三者機関に係争処理を申し出るということはあり得ますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/65
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066・野田毅
○野田(毅)国務大臣 地方分権一括法案で、これから御審議をいただき、ぜひ成立をさせていただきたいと思っておりますこの法案でございますけれども、そこで新たに導入を予定しております国と地方の間の紛争処理機関での調整というのは、まず国からの申し出によって審査が行われて調整が行われるという形はとっておりませんで、地方団体の長からの申し出によってこの調整が行われるという形をとっております。そういう点で、自治体の長が同意しない場合に、国の方からこの機関に審査の申し出をして調整をお願いするという形にはなり得ないというふうに考えております。
なお、この周辺事態確保法案の第九条というのは、法律的に申し上げれば、この法案による協力の求めというのは、地方公共団体がそれに従うべき命令とか指示とかというようなものではなくて、そういう意味では、国による地方公共団体に対する処分というものとは言えないということでありますので、この協力の求めを国が地方団体に対して行うという行為自体を、今度の新しい国と地方の間の紛争処理手続の対象にするということはないというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/66
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067・伊藤英成
○伊藤(英)委員 今のお話は、国からこの第三者機関に申し出るということはありませんよという話をされたと思うんですね。
ところが、この協力要請にかかわって、関連をして、地方公共団体からこの第三者機関に申し出るということはあり得ますでしょうかということなんです。この辺はどうでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/67
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068・野田毅
○野田(毅)国務大臣 今の御質問は、先ほど答弁申し上げました後段の部分において申し上げたので、もう一遍そこのところを申し上げますと、この第九条に基づく国から地方自治体に対する協力の求め、この求めという行為は、地方公共団体に対する命令とか指示とかいう意味での処分、国から地方公共団体に対する処分という行為ではございませんので、この協力の求め自体は今度の新しい国と地方の間の紛争処理機関の対象ということにはならないということを申し上げておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/68
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069・伊藤英成
○伊藤(英)委員 今のお話は、ちょっとくどいようですが、先ほど地方自治法の幾つかの条文についていろいろ議論もしたりしたわけですね。そういうことなんですが、地方自治体の方からこの協力要請にかかわって申し出ることができるのかどうか、地方自治体の方からこの場に申し出ることができますかというのはどうでしょうか。ちょっと先ほどのとはニュアンスの違う質問だと思っているんですが。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/69
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070・野田毅
○野田(毅)国務大臣 つまり、今度の九条に基づく国から地方自治体に対する協力の求めという行為自体は紛争処理機関の対象にならないということを申し上げておるということは、御指摘のとおり、紛争処理機関の対象にならぬということですから、おわかりいただけると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/70
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071・伊藤英成
○伊藤(英)委員 次に、新ガイドラインにおいて、例えばその第三項のところに、「平素から行う協力」というふうになっておりまして、その中に、「情報交換及び政策協議」の項で、情報交換及び政策協議は、あらゆる機会をとらえ、できる限り広範なレベル及び分野において行われるとか、あるいはその第四項のところでは、「指針の下で行われる効果的な防衛協力のための日米共同の取組み」の項で、自衛隊及び米軍のみならず、おのおのの政府のその他の関係機関が関与する包括的なメカニズムを構築するとか、こう規定されているんですね。
周辺事態法では、地方自治体も協力要請を受けて、場合によっては、今申し上げたいわゆる関係機関となり得るんだと思うんですね。したがって、その日本側の方の関係者の会議に関係機関として自治体の長が出席をしたり、あるいは発言する機会を設けるつもりですか、あるいはそういうふうにできますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/71
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072・野呂田芳成
○野呂田国務大臣 ガイドラインでは、日米両国政府が共同作戦計画についての検討及び相互協力計画についての検討を初めとする共同作業を行うこととされております。このような作業は、その成果の取りまとめにとどまらず、必要に応じて見直しを加えるとともに、その成果を円滑かつ効果的に生かし得る体制を整えておくべきものであります。
御指摘の点につきましては、このような考え方に基づき、共同作業を検証するとともに、自衛隊及び米軍を初めとする日米両国の関係機関等による円滑かつ効果的な対応を確保するため、共同演習・訓練を強化するとの考え方を示したものでありますが、ガイドラインの各項目は、日米両国政府がおのおのその具体的な政策や措置に適切な形で反映することが期待されているところであり、共同演習・訓練についても、自衛隊及び米軍のみならず、おのおのの政府のその他の関係機関の関与、協力をいかに確保していくかという観点から、今後さらに検討してまいりたいと考えております。
いずれにせよ、自衛隊の参加、公の施設の使用については、仮に地方公共団体に本演習・訓練に対する参加を要請する場合であっても、何らかの強制をすることは全く考えておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/72
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073・伊藤英成
○伊藤(英)委員 強制することは考えていない云々ということじゃなくて、要するに、関係機関として、あるいは関係者として地方自治体も入れていろいろ協議をすることになりますかどうかということを伺ったわけですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/73
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074・伊藤康成
○伊藤(康)政府委員 周辺事態に際しましては、法案九条でいろいろ地方公共団体の長への協力要請というような規定も設けております。したがいまして、こういったことに関しましては、あらかじめいろいろと、関係の地方公共団体との情報交換とか調整とかいったものはできる限り行っていき、その間共通の認識を持っておくということは非常に大事なことであろうというふうに思っております。
現在、国の中におきましては、内閣官房副長官を長といたします関係省庁の局長等による会議等を持っておるところでございますが、これにつきまして、これまで地方公共団体の方から直接その場で意見を聞くというようなことはなかったわけではございます。それは、法案の作成までという過程ではある意味で当然だっただろうと思います。今後、仮にそういった場等で必要があるのであれば、御参加をいただくというようなことも当然考え得ることでございますし、また、そういう要望があるのであれば、そういう場を設けることを検討していきたいというふうに思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/74
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075・伊藤英成
○伊藤(英)委員 それはぜひ検討してください。
それから、地位協定上の合同委員会、そこに、合同委員会は日本政府と合衆国政府の協議機関であり、法的にはこの合同委員会に関係自治体の長が参加するということにはなっていないと思いますね。そうなんですが、地位協定第二十五条第三項に、合同委員会だけで解決がつかない場合には委員会の裁量で適宜解決する方途を考慮できる条文になっておりますね。実際に条文を読んでみますと、「合同委員会は、問題を解決することができないときは、適当な経路を通じて、その問題をそれぞれの政府にさらに考慮されるように移すものとする。」こういうふうになっているんですが、この枠組みで自治体の意見を聞くということはあり得るんですか。あるいは、そういうことはできないものですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/75
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076・竹内行夫
○竹内政府委員 この地位協定第二十五条、御指摘の条項に基づきまして合同委員会が組織され運営されるわけでございます。
合同委員会におきましては、当然、御承知のとおり、主に施設・区域の決定等の任務を持っているわけでございますが、御指摘の第三項につきましては、合同委員会というのがいわば事務レベルの代表者の集まりでございますので、そういうところでこの合同委員会の任務の範囲内の問題について問題を解決することに至らなかったというような場合には、「適当な経路を通じて、」と申しますのは、それぞれの外交チャネルでございますとか、それから国内におきましてレベルをさらに上げまして、それぞれの政府にさらに考慮されるようなものに移すということでございますので、重要な問題でございますれば、合同委員会だけで決めてしまうということは困難なことがございますので、その場合には政府の内部においてレベルを上げるということが想定されている規定でございます。
したがいまして、この二十五条の三項というのは、先生が今御指摘をされましたような、地方自治体というものを合同委員会の中に呼び込んでと申しますか、組織として入れてやるということはそもそもは想定をしておらないということでございます。
ただ、一点補足させていただきますと、政府がそのような重要な問題についてさらに協議を重ねる必要があるというような性質の、重要度の高い問題であれば、しかも、それが地方自治体とか関係者の意見を十分聞いた上でなければ政府としての態度を決めることができないとか、そういう十分な意見を聞く必要があるというような問題については、政府内部の手続としていろいろな方々の御意見を伺うということは、それは現実にはあることだろうと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/76
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077・伊藤英成
○伊藤(英)委員 今の政府内で意見を聞くということはあり得るという話は、それはそれでしっかりやってもらうということですね。
それは、今の第三項のお話で今局長が説明をされて、ここで結論が出ない場合に、より上のレベルというように言われましたかしら、そこでその議論をするときに、改めて自治体の長の、あるいは自治体の意見を聞くということはまたあり得る話なんでしょうね、これは。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/77
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078・竹内行夫
○竹内政府委員 御質問の趣旨を必ずしも正確にとらえているかどうか自信ございませんけれども、基本的に、施設・区域の問題等、この合同委員会が対象といたします主題と申しますか議題ということにつきましては、当然のことだと思いますが、両政府を当事者として協議、話し合いが行われ、さらに決定をされるということでございますので、それの決定に至るための参考として、日本側が部内とか内部で参考としていろいろな情報を集めたり御相談もするということは事実上としてはございますけれども、両政府間の会議と申しますか正式の場において、地方自治体にしろ第三者の方を代表として含めるということは、この協定としてはもともと想定しているところではないということだろうと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/78
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079・伊藤英成
○伊藤(英)委員 政府部内で検討するときにはぜひ地方自治体の意見も入れて、当然の話ですが、検討していただきたいと思います。
それから、さっき防衛庁長官がちょっと言われたんでしょうか、共同訓練の話をちょっと言われたのかもしれないんですが、新ガイドラインには、平素から行う日米の共同の取り組みとして、「自衛隊及び米軍を始めとする日米両国の公的機関及び民間の機関による円滑かつ効果的な対応を可能とするため、共同演習・訓練を強化する。」ことが明記されております。
そこで伺うんですが、この日米両国による共同訓練に参加する義務は自治体にあるのかどうか。周辺事態に対応した訓練を想定した場合に、協力を要請される自治体が共同訓練に参加することが要請される場合は想定しておかなければならぬ、こういうふうに思うんですけれども、この辺はどうでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/79
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080・柳澤協二
○柳澤政府委員 今先生言われました新ガイドラインの記述は、まさにこのガイドラインに基づく防衛、日米協力の実効性を確保するためにできるだけ幅広い機関の関与を得たいということと、それから、平素からいろいろな、お互いに情報交換等しながら対応していくということの延長線上で、できればこういう共同の演習・訓練、これは日本防衛のための共同訓練は既に米軍と自衛隊との間で実績がございますが、こういうものもいろいろ考えていこうという趣旨の文言でございます。
そして、では、そういうところに自衛隊、米軍以外の政府その他の関係機関の関与、協力をどうしていくかということは、実はこれからさらに検討していかなければいけない課題であるというふうに私たちは考えております。
そして、それが強制されるものであるかどうかということは、先ほど大臣から御答弁申し上げたとおりでございまして、仮に地方自治体等に参加をお願いする必要がある場合でも、これは何らかの強制をするということは考えていないところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/80
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081・伊藤英成
○伊藤(英)委員 今の、共同演習訓練を自治体も含めてやることはこれから検討していくということですね。そうだけれども、それはお願いだけをする、こういう意味でしょうか。ちょっと再確認。その共同訓練のことは、今までは余り検討しておりませんということも含めているんでしょうかね、今の話は。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/81
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082・柳澤協二
○柳澤政府委員 新ガイドラインのときに、いろいろ幅広い議論を行った上で、こういうことも必要であるということで書き込んだという経緯であるというふうに承知しておりますが、申し上げましたように、米軍と自衛隊との間では共同訓練というのは実績がございますが、ただ、ほかの関係の機関ということになりますと、全く手続といいましょうか、手順その他ゼロからのスタートになるわけでありますので、どういう形でやっていくと実効性があるのかというようなことも含めて、今後さらにいろいろ勉強、検討しなければいけないところは残っているということであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/82
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083・伊藤英成
○伊藤(英)委員 自治体が道路とか上下水道、公立病院、公園等の公の施設を設置、管理しているわけですが、このような施設は住民がこれを平等に利用でき、自治体は正当な理由のない限り住民の利用を拒否できないわけですね。また、現行の地方自治法は、国の利用について規定がなされていないと思います。
周辺事態において、公の施設を住民でない米軍に利用させることができるのかどうか、現行の法制上の規定は明確ではないと思うんです。周辺事態法第九条の協力要請があった場合に、地方公共団体が公の施設を米軍の利用に供することが現行法制としてできるのかどうか、この辺はどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/83
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084・野田毅
○野田(毅)国務大臣 地方自治法におきましては、公の施設の設置や管理に関する基本原則を定めておりまして、具体的なその管理運営にかかわる事項は地方公共団体の条例で定めるということになっておるわけであります。したがって、国や米軍が公の施設を利用する場合は、その条例の定めるところに従って利用するということになるわけであります。
そこで、公の施設に関する条例におきまして、利用者の範囲があらかじめ定められるということはまれなことでありまして、一般的には、施設を使用しようとする者は云々、こういうような規定になっておるわけで、その際、施設を使用しようとする者、その者という中に国などが入るのは当然のことでありまして、排除規定がないわけであります。
したがって、今御指摘がありましたような、例えば国が利用する場合の規定が置かれていないということをもって、そのゆえをもって国が利用する根拠がないといったことにはならないというふうに考えております。むしろ、港湾とか交通機関などというものは、単に設置団体の住民だけが使用することを想定しているような施設ではありませんで、みずからの自治体の住民以外の方々も利用されるということが当然の前提としてつくられる施設であるというふうに認識をいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/84
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085・伊藤英成
○伊藤(英)委員 さらに、地方自治法第二百四十四条の二によりますと、重要な公の施設の廃止、または長期的かつ独占的な利用について、議会の特別多数、出席議員の三分の二以上の同意が必要、こう書いてありますが、その議決が必要とされております。周辺事態の際に米軍に重要な公の施設の利用を認める場合に、住民自治の観点から、このような場合に準じて地方議会の承認を必要とすべきではないかと思いますが、これはどのように考えますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/85
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086・野田毅
○野田(毅)国務大臣 御指摘の地方自治法の第二百四十四条の二の第二項というのは、今お触れになりましたが、「条例で定める重要な公の施設のうち条例で定める特に重要なものについて、」という、条例ということが幾つか前提要件としてございます。これについて、「これを廃止し、又は条例で定める長期かつ独占的な利用をさせようとするときは、議会において出席議員の三分の二以上の者の同意を得なければならない。」こういうことになっておるわけであります。
つまり、あらかじめ条例で定めた場合に議会の議決が必要であるということでございまして、そういうような条例の定めがない場合に、国などが利用するからといって、直ちに地方自治法第二百四十四条の二の第二項の規定による議会の議決が必要になるというものではないというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/86
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087・伊藤英成
○伊藤(英)委員 今のは、条例で定める重要な公の施設の場合にはこの条文に従って当然議会で承認を得なければならないでしょうということであるんですね、今の話は。
今大臣がおっしゃったように、この文章には、条例で定める重要な公の施設のうち条例で定める特に重要なものについて、これを廃止あるいは長期的かつ独占的な利用をさせるときには、議会において出席議員の三分の二以上の同意を得なければならない、こうなっているわけですから、当該施設が条例で定める施設の場合には、当然この条文に従って議会で承認を得ることが必要となるでしょうということになるんですね、これは。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/87
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088・野田毅
○野田(毅)国務大臣 ちょっとややこしいんですけれども、この法律の中に条例という部分が三カ所ございまして、したがって、ただ単に、ある日突然三分の二の特別多数の条例で決めればいいということではないのであって、その前提として、あらかじめ「条例で定める重要な公の施設のうち」さらに「条例で定める特に重要なものについて、」さらに「条例で定める長期かつ独占的な利用をさせようとするとき」という形で要件を決めておるということを申し上げておるわけで、単純に三分の二の議決がすぐ必要だということではないということを申し上げておるわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/88
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089・伊藤英成
○伊藤(英)委員 次に、先般も私はこの場で、民間に対する協力を依頼するとき、安全配慮義務を法案に明記したらどうかという話を申し上げました。そのときには、明記することについては拒否をされたわけでありますが、安全配慮義務というのをしっかりしておかないと、やはりこれは何となく政府の責任逃れになるんじゃないかという気さえするんですね。そういう意味で、ぜひこの辺のことについて、もう一回お伺いしたいと思うんです。
それに関連をして、かつて、昭和三十年代だと思うんですが、当時の日本電電公社の千代田丸事件というのがありました。これも実はきのうの地方公聴会の場で陳述人から紹介をされたんですが、簡単に申し上げますと、この事件はこんな内容なんですね。
朝鮮海峡のいわゆる李承晩ラインの韓国寄り内側にある海底電線が故障したので、電電公社がその修理作業を千代田丸に命じたところ、組合の本社支部が、同船の護衛や危険海面手当、外国旅費規定の適用などの問題について団体交渉を申し入れ、それが妥結しなかったので、組合は、千代田丸分会に船長の出航命令を拒否するよう指令を発した。その後二日間ほど出航がおくれたけれども、そのために組合本社支部三役が、公労法第十七条に言う争議行為を共謀し唆しあおったとして同法十八条によって解雇された、こういう事件がありました。これについて、一審と二審、そして最高裁の判断が変わったということがありました。
実はこれは、時間がありませんので余り丁寧に申し上げませんが、関係者にはこの資料を渡しておいたと私は思いますが、当時の状況ですけれども、李承晩ラインがあって云々という状況であります。それもまた韓国側に入って工事をする、修理をやる、それは非常に危険でもあるという状況である。しかも、これはアメリカの海軍の艦艇の護衛があっていろいろやるような事態の話だと思われます。要するにそういう状況なんですね。
それで、この事件を踏まえながら、どんなふうに思うんだろうか、この安全配慮義務の問題について。この事件を含めてお答えいただけますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/89
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090・伊藤康成
○伊藤(康)政府委員 先生十分御承知のことであろうと存じますが、たしか昭和四十三年の判決ではないかと思いますが、最高裁判決そのものは公労法上の解雇が妥当であったかどうかということについての判断でありまして、御指摘のような海底線の修理工事が危険であるかどうかといったようなことについての具体的な判断というものは、少なくとも最高裁では示されていないというふうに承知はしております。ただ、もちろん一般的な意味での安全配慮というのは、使用者としても当然のことと一般的には認識されておるわけでございます。
それで、この法案との関係でございますが、法案九条二項に基づきます民間業者に対する協力依頼というものは、これはあくまで義務でもなく、また基本的には当事者の合意によるものであるということは再々申し上げているとおりであります。かつまた、一般的に申しますと、これは我が国の領域内で行われるものでございまして、そういう意味で、周辺事態であるからといって特別に危険なことが起こるということはちょっと想定しにくい事態であろうと思います。
ただ……(伊藤(英)委員「公海もあり得ますよ」と呼ぶ)公海の場合も排除しないということも申し上げております。これも、公海に出る場合でありましても、およそ不測の事態が起こり得ない、危険性がないと考えられる状況において行うということもまたたびたび申し上げているとおりでございます。これは、本法案におきまして自衛隊が行う後方地域支援の輸送でありましても同様に、危険のない、戦闘地域とは一線を画された地域で行うということからも明確であるわけでございます。
したがいまして、そういう状況の中で民間業者にも依頼するし、また民間業者の側もそのような判断をした上で、恐らく、受けるのであれば受けるということになるのであろうと思います。
また、そういった事項につきまして、法案との関係で申しますれば、第四条で基本計画を定めることになっておりますが、その基本計画の中では、この安全配慮事項につきましても、重要な事項というようなことで、例えば最新の情報を提供すべきであるとかそういったようなことについて基本計画の中には書き込んでいくというふうに考えている次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/90
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091・伊藤英成
○伊藤(英)委員 地方公共団体や民間の協力の問題についてはそれまでにいたしまして、次に、今までこの場でも、いわゆる周辺事態という問題についていろいろと議論もしてまいりました。それで、この周辺事態をどういうふうに認識するかということをいろいろやってきたわけでありますが、国民に対して、やはりこの法案についての明確性とか信頼性といいましょうか、そういうものを持たせる意味においても、私はどうしてもこの部分は明確にしておかなきゃならぬ、こういうふうに思うんです。
それで、この周辺事態の定義について、前回もちょっと申し上げましたけれども、我が国周辺の地域における我が国の平和及び安全に重要な影響を与える事態で、そして、我が国に対する武力攻撃に発展するおそれのある事態、あるいは日本の有事に発展するおそれのある事態、こういう表現にやはり修正すべきではないかということを思うわけですね。そして、その辺を明確化を図っていくことが、やはりこの法律については、先ほど申し上げたように、国民に対する信頼性の上からも重要だ、こう思うわけですが、いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/91
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092・高村正彦
○高村国務大臣 今おっしゃられた、我が国有事に発展するおそれのある事態、これ自体も必ずしもいかなる場合なのかはっきりしないわけでありまして、具体的に論ずることは困難だと思いますが、いずれにいたしましても、周辺事態の定義については、法案第一条において、「我が国周辺の地域における我が国の平和及び安全に重要な影響を与える事態」、こう定めておりまして、これを御指摘のような定義に変更することは、政府としては考えていないということでございます。ぜひ現在の定義で御理解をいただきたい、こう思うわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/92
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093・伊藤英成
○伊藤(英)委員 今外務大臣は、日本有事に発展するおそれのある事態というふうに言ってもなかなかちょっとわかりにくいではないかという言い方をされたんですが、だから私は、もう一つの言い方として、我が国に対する武力攻撃に発展するおそれのある事態、こういうふうに言ったんですけれども、どうですか、それは。よりわかりやすくなるんじゃないですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/93
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094・高村正彦
○高村国務大臣 我が国の武力攻撃に発展するおそれがある事態と言っても、それは、直接的に明確にそういうふうにつながっていくということを狭く解しておられるのか、あるいは、安全保障環境を非常に悪くすることによってそういう蓋然性が出てくるというようなことも含まれるのか、いずれなのかもちょっとよくわかりませんし、そういったことも含まれるとするのであれば、今の、「我が国の平和及び安全に重要な影響を与える事態」という言葉の方が法律上の用語として適当ではないかと思いますし、おそれというのを狭く解して、直接的、明確にそういうおそれがあるというところに縛るとすると、これは少し狭過ぎるという感じを政府としては持っているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/94
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095・伊藤英成
○伊藤(英)委員 さらに御検討をいただきたいと思います。
それから、周辺事態の認定の際に、日米両国間において情報交換や政策協議が緊密に行われて、事態についての共通の認識に到達するための努力が払われるとのことでありますけれども、これはどういう場所でどういうことが起こるかにもよるんですけれども、例えば、いろいろ議論されているところを考えたときに、米国以外の国で、例えば韓国との間でも周辺事態に関する情報交換や政策協議は行われるんでしょうか、認定の際に。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/95
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096・高村正彦
○高村国務大臣 周辺事態は、その生起する地域をあらかじめ地理的に特定できないものであって、今韓国ということをちょっとおっしゃいましたが、特定の地域における周辺事態が生起したとの仮定に基づき議論することは適当でないと考えますが、その上で一般論として申し上げれば、日米両国政府は、周辺事態が発生することのないよう外交上のものを含むあらゆる努力を払うとともに、周辺事態が予想される場合、あるいは周辺事態が生起している場合、事態の拡大を抑制するため、関係諸国との情報交換や政策協議を含め、外交上のあらゆる努力を払うことになります。
政府といたしましては、従来から、例えばということで御指摘になった韓国を初めとして、指針に関する関心を有する諸国に対して透明性を確保することが重要と考えており、このような透明性の確保は、周辺事態が生起している場合でも重要であると認識しております。今後とも、必要に応じ、韓国を初め関心を有する諸国に応じ、しかるべく説明を行っていきたいと考えております。
それで、委員が今おっしゃった、認定に際して韓国と協議をするのかという話でありますが、際してという意味がまたよくわかりませんが、認定のために協議をしていくということは、やはりそれは日米の間でするということでありましょうが、そういうときに、幅広く韓国ともいろいろな話し合いは実際上行われているであろう、こういうことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/96
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097・伊藤英成
○伊藤(英)委員 次に、いわゆる国会報告、国会承認の問題について伺いたいんですが、実は、昨日の地方公聴会に行ったときでも、そこでもやはり陳述人の方から出た話は、要するに、立法府は行政府の上にあるんだ、国会は国権の最高機関である以上、内閣は国会の意思に従う必要があって、そのことによって自衛隊の文民統制も実現できるんですよ、だから当然事前承認にすべきだという意見も言われたりしておりました。
そういう意味で、私どもは、あくまでこれは基本計画を原則事前承認にし、緊急の場合には事後というふうに考えるわけですが、今、与党自民党も他党ともいろいろ協議もされたりしているわけですね。きょうの新聞にも一部報道もされたりしておりますが、今申し上げた、基本計画を原則事前、そして緊急の場合事後ということを、ぜひ私はそういうやり方にすべきだ、こう思うんですが、いかがですか。改めて伺います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/97
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098・野呂田芳成
○野呂田国務大臣 何度も繰り返して御答弁申し上げて恐縮でございますが、この法案に基づき自衛隊が実施する三つの活動はいずれも、武力の行使が伴うものではない、国民の権利義務に直接関係するものではない、迅速な決定を行う必要があるものである、こういうふうに申し上げてきたわけであります。
また、これらの活動は何ら強制力を持つものではないわけでありまして、例えば、自衛隊法に定められている海上警備行動や要請による治安出動は、警察官職務執行法の武器使用規定が準用されるような強制力を伴う活動であるにかかわらず、国会承認が必要とされておりません。
このように、政府の基本的な考え方は、御指摘の緊急性の観点のみならず、活動の性格、それから他の法律との均衡といった点を総合的に勘案したことによるものでありまして、これを踏まえれば、この法案のとおり、基本計画については必ずしも国会の承認を得る必要はなく、基本計画を遅滞なく国会に報告し、国会での御議論を踏まえつつ対応措置を実施していくことが適切であると考えているところであります。
いずれにしましても、いろいろな御議論があることは私どもも承知しておりますが、周辺事態に際して、国会の関与については、国会において十分御審議をいただき、その御議論を踏まえた上で政府としても誠実に対応していきたいと考えているところであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/98
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099・伊藤英成
○伊藤(英)委員 今幾つかの要因を言われましたけれども、例えば緊急を要する云々という話についても、これは緊急の場合は事後でもということもあり得ますよという話は私も申し上げたりしました。その点について言えば、これは原則事前、あるいは緊急の場合は事後ということであれば、十分にそれは対応できるんですね。
私は、実は、今の防衛庁長官のお話でもそうなんですが、政府は国会を信用していないのかなと。要するに、国会が国権の最高機関だよというふうになっている。そして、日本が本当に、どういうふうに定義づけるかは別にいたしましても、いわば有事になるかもしれない。そういうようなときに、みんな、日本を守るために、あるいは日本の国民の安全のために、どうすべきかということを真剣に考えるわけですよね。何となく、何度聞いてもそうですが、国会を信用していないんだろうか、あるいは、国会で承認されないような事態を勝手に何かやろうと考えているのかしらんというふうにさえ思えるんですね。そう思われませんか。どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/99
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100・野呂田芳成
○野呂田国務大臣 国会は我が国における唯一の立法機関で、最高機関でありまして、これを尊重していないなんというつもりは毛頭ございません。
先ほども申したとおり、国会において十分御審議をいただきまして、その御議論を踏まえた上で政府としてもこれに誠実に対応してまいりたい、こう申し上げている次第です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/100
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101・伊藤英成
○伊藤(英)委員 本日の新聞に、自衛隊の出動、この国会承認の問題について、自衛隊の活動に限って事前承認事項とするという考え方が、ここでは自民党、公明党との合意の方向というんでしょうか、というようなことで報道されていますが、こういう考え方についてはどう思われますか。
私は、先ほども冒頭いろいろ申し上げたように、地方公共団体や民間にとって、今回の問題についてどのくらい心配しているか、そういうことについてどのくらい本当に真剣に考えているのかなということを非常に思うんですよ。今回は、自衛隊の出動のみならず、何度も申し上げますが、地方自治体の協力もあるいは民間の協力も仰ごうというふうにしているわけですね。その辺のことについての認識はいかがかなと。私どもは、だからこそ、そういうものも含んだ基本計画全体で、こう申し上げているんですけれどもね。どうですか、このきょう報道されている内容については。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/101
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102・野呂田芳成
○野呂田国務大臣 日本の平和、安全、独立を守る、あるいは国民の生命財産をきちっと守る、これはもう我々に課せられた最高の使命だと思っております。いろいろ御議論があることは承知しておりますが、私どもとして正式にそれぞれの政党から御意見を伺ったわけでもございませんし、また、その議論の過程で、私どもがこれに対していろいろなことを言うということは差し支えがありますので、私の考え方を開陳することは遠慮したいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/102
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103・伊藤英成
○伊藤(英)委員 時間が余りありませんので、もう一つ別の視点から質問をしたいんですが、実は今私たちは、いわゆる周辺有事といいましょうか、そういうことについていろいろ議論をしたりしています。しかし本当は、日本国内、日本の領土領域内をどれだけ安全なものにしていくか、その対処をしておかなきゃならぬということがあるわけですね。ここでもいろいろ議論をされたりしていましたけれども、本当は、実は順序は逆くらいの状況だと思うんですね。そういうこともあるものですから、その一部だけをちょっとお伺いするわけです。
先般も二隻の不審船あるいは工作船の事件ということで、いろいろとここでも議論もいたしました。それに関連して言うんですが、過去何件も、いわゆる北朝鮮関係の諜報事件で検挙もしたりしていますね。そのときに、それぞれ判決もされる、しかし、そのときには執行猶予もついて、それで、証拠品、乱数表とかその他はいわばお返しをしてというやり方を我が日本はしたりしているんですね。
そのやり方を今いろいろ言うつもりじゃないんですが、いろいろ言われるんですが、日本には一体どのくらいの、いわゆる北朝鮮の工作員といいましょうか、はいるんでしょうか。そして、一体そういう人たちはどういう活動をしていらっしゃるんだろうか、この辺はどうでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/103
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104・金重凱之
○金重政府委員 お答えいたします。
我が国におきまして、戦後約五十件の北朝鮮関係の諜報事件が検挙されております。それで、現在も相当数の北朝鮮工作員が国内において活動しているものと推定されるところでありますけれども、事柄の性質上その数についてお答えするのは差し控えさせていただきたいというふうに思います。
それから、先生御質問ございました、どういう活動をしておるのかということでございますけれども、ただいま申し上げました約五十件の事例から、日本におきましては、対韓国工作の拠点としての活動が行われたり、あるいは我が国に対するさまざまな情報収集活動、あるいは在日米軍に関する情報収集活動、さらには日本人の北朝鮮への拉致を目的とする活動などが行われているというふうに見ております。
以上でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/104
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105・伊藤英成
○伊藤(英)委員 本当はもっといろいろおっしゃりたいでしょうが、それは、じゃ、逆の聞き方をいたしますと、今何人ぐらいとは言われなかったですよね。今、警備局長は言われなかったですね。何人くらいとは言わなかったよね。まあ、言わなかったんですが、かなりの人がいるんだそうです、私が伺いましたら。
そこで、じゃ、逆にまたこういうふうに聞くんですが、今日本に、何も北朝鮮の工作員のみならずほかのところもいらっしゃるのかもしれませんが、日本の国民あるいは領土領海内のと考えたときに、その安全という意味において、余り問題ないと思っているのか非常に問題だと思っているのか、一体、今どういう認識にあるんでしょうかね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/105
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106・野田毅
○野田(毅)国務大臣 明らかに友好的な行為ではないことは事実でありまして、少なくとも、これらの活動が我が国の国益を損ね、あるいは場合によっては国民の生命、身体の安全にも危険を及ぼしかねないことの可能性をも含んでいる、そういう意味で治安上重要な、重大な問題であると我々は認識をいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/106
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107・伊藤英成
○伊藤(英)委員 重大な認識をされていて、今後、どういうふうにその対応をしていこうと思っていらっしゃるのか。重大な認識を持っているわけですね。そうしたら、どのような対応策をとっていこうと考えていらっしゃいますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/107
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108・野田毅
○野田(毅)国務大臣 当然のことながら、沿岸における警戒態勢あるいは警備態勢、あるいは重要な施設に対する所要の警戒態勢等々、さまざまな情報の収集、治安上必要な諸活動を、万全の対応ができるように常々配慮いたしておるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/108
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109・伊藤英成
○伊藤(英)委員 最後に、一点だけ外務大臣にお伺いいたします。
今私がいろいろなことを議論もしてまいりましたけれども、先回のこの場でも申し上げましたけれども、こういういわゆるガイドライン関連法案等々で取り組んでいる問題は、日本の安全保障という意味からいたしますと、いわばやっておかなければいけないんだけれども、実はこれで云々という部分は少ない。もっと言えば、外交の部分が何よりも一番大きな役割を果たすはずです。
それで、いわゆる北朝鮮外交のことについて、私は先回もちょっと申し上げたんですが、我が日本は北朝鮮外交というのは本当にあるのかなと。もちろん、その対話と抑止云々、あるいはそのバランス云々と言ったりはするんですよ。するんですが、しかし、日本は、やはり外交的には孤立されている状況じゃないかとさえ私は思います。
この間もちょっと申し上げましたけれども、私なんかいろいろな人にいろいろなことを聞きますと、ああなるほどな、こう思いますのは、日本としては、拉致問題やらミサイルやら核問題やら、本当にいろいろな問題がある。しかし、向こうから、北朝鮮から見ますと、では、北朝鮮はいわゆる朝鮮戦争の休戦状態にある、そして日本には米軍の基地もある、そして日米安保条約もある、米韓安保もあるという格好で、いわば取り囲まれている状況、そして経済的には極めて厳しい状況にある。そういうときに、本当にどういうやり方をしていったら日朝関係は前に進んでいくんだろうか、改善していくんだろうかといったときに、私は、今のままで本当に進んでいくかなという気がするんですが、それだけお伺いして終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/109
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110・高村正彦
○高村国務大臣 今委員から御指摘がありましたように、政府といたしましては、北朝鮮に対しては、対話と抑止の双方により対応していくことが重要であると考えておりまして、安全保障の備えを確固たるものとすることと並行して、対話と交渉により北朝鮮との間に存在する諸問題を一つずつ解決していく方針でございます。
我が国は、昨年八月の北朝鮮によるミサイル発射を踏まえ、国交正常化交渉の再開や食糧等の支援を当面見合わせるなどの措置をとっており、現在もその方針を維持しておりますが、これまで繰り返し明らかにしているように、北朝鮮がミサイル問題などの国際的な懸念や拉致疑惑などの日朝間の懸案に建設的な対応を示すのであれば、対話の再開を通じ、関係改善を図る用意があります。
委員が今、日本が国際的に孤立しているというお話がありましたけれども、私は、国際社会が北朝鮮が孤立していると言ったのを聞いたことはありますが、日本が国際的に孤立しているというのは、国際社会からそういう声は聞いたことがございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/110
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111・伊藤英成
○伊藤(英)委員 終わります。ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/111
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112・山崎拓
○山崎委員長 これにて伊藤君の質疑は終了いたしました。
次に、横路孝弘君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/112
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113・横路孝弘
○横路委員 この新しいガイドラインの出発点は九六年四月の橋本・クリントン共同声明にあると言われているわけでありますが、あの共同声明の中で、いわば東西冷戦が終わりまして、日本に対する組織的、直接的な有事の発生の可能性というのは非常に低くなった、他方、アジア太平洋には不安定性や不確実性があるということで、日米安保の効用はアジア太平洋地域の平和と安全というように明記をされたわけであります。そして、このことにより、日本は、この地域でのいわば紛争抑止に応分の軍事的な役割分担を求められることになったんだと私は思うんです。
このガイドラインを見ますと、日米安保条約そのものとどの点で変わってきたかといいますと、一つは、周辺有事への共同対処ということで、領域が拡大をされた。アジア太平洋地域という言葉もあります。
同時に、片務的条約が、私は必ずしも片務的な条約とは思いません、基地を提供しているわけでありますし、世界に例のない思いやり予算を提供し、しかも在日米軍の役割というのは、日本防衛というよりも、むしろアメリカの世界的な戦略に対応する基地として存在しているわけでありまして、これに対して日本が至れり尽くせりのサービスをしているということは、必ずしも安保条約が片務的な条約だとは思いませんけれども、しかし、いずれにしても、この橋本・クリントン共同声明によって双務的な条約へ大きく変わっていく、そのスタートになったんだと思うんです。
ガイドラインを見ますと、今言いました二つの点、領域の拡大ということと双務性が非常に強くなったということだと思いますけれども、まず外務大臣に、ここら辺のところの認識、共同声明から今度のガイドラインへというところについての御認識をお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/113
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114・高村正彦
○高村国務大臣 日米安全保障条約の、いわゆるその条約の対象範囲という意味では広くなったということはないということは、これははっきりしているんだと思います。
それから、アジア太平洋というところにその効用が広がったということも、世界がだんだんグローバル化する中で、そういうことが全然ないかということは、そうではない、あるのかもしれませんが、やはり過去四十年間も日米安全保障条約が極東と我が国の平和と安全ということに的を絞っている中で、その効用とすれば、アジア太平洋の安定、平和にも役立ってきたということは言えるわけで、この共同宣言で急に一気に今までのものが変わってきたとか、そういうことではないんだろう、こういうふうな感じを持っております。
それから、日米安保条約は、全体的に見て、必ずしも片務的なものではない、双務的なものではないかという委員の御指摘は、私は、それはそのとおりだ、こういうふうに思っております。そういうふうに思っておりますが、やはりそういう中であっても、全体として双務的なものであっても、アメリカの一部の人たちに言わせれば、アメリカの方は日本のために血を流すのに日本は流さないではないかというような意見があることは、それは事実でありまして、そのバランスについては、それぞれの見方によっていろいろな考え方はあり得るんだ、こういうふうに思っております。
いずれにしても、我が国といたしましては、我が国の憲法というものがあるわけでありますから、その憲法の範囲内で、いわゆる集団的自衛権の行使はしない範囲内でこの日米安保条約の信頼性あるいは実効性を高めるための努力は我が国が主体的にもやっていかなければいけないことだ、こういうふうに思っております。
〔委員長退席、中山(利)委員長代理着席〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/114
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115・横路孝弘
○横路委員 もちろん、条約はいじっていないわけですから、条約の範囲そのほかは変わりないというのはそのとおりだと思いますが、しかし、今度の新しいガイドラインそのものは、やはり対応する範囲というのは非常に拡大をしたということだと思うんです。
現行の日米安保条約の場合、これは日米共同防衛の対象となる条約の区域は、日本の領域にある意味では限定をしているわけですね。ただ、アメリカの場合は、在日基地を使って、極東の平和と安全のためにその基地を使い得るということになっているわけで、この安保の枠の中からいえば、周辺事態であっても、米軍を支援するということは、いわばその施設の使用に伴うものに本来は限られるはずなわけですね。しかし、今アメリカが日本に求めているのはそうではないわけでありまして、ある意味では相互防衛体制への転換ということで、このガイドラインの中に、双務的、バイラテラルという言葉が実に何十カ所も出てくるというのは、まさにそのことを示しているんじゃないかというように思います。
双務条約的側面が非常に強くなってきていますから、いわば日本がアメリカの援助を受けるだけではなくて、日本も例えば周辺事態で米軍を支援するということに今度なっているわけでありますし、場合によっては自衛隊も一緒に戦うというような事態にもなるわけでありまして、当然そのことはアメリカが今度のガイドラインで期待をしていることじゃないんですか、違いますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/115
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116・高村正彦
○高村国務大臣 アメリカ側として、日本が日本国の憲法の範囲内で、まさにアメリカの軍隊、米軍が日本の平和と安全に役に立つようなことをやっているときに日本がそれなりの手伝いをしてほしいと期待していることは、それは事実だと思いますし、日本としても主体的にそういうことはやって、現実に日本の平和と安全に重大な影響を及ぼす事態が生じたような場合に、それが本当に日本の有事に発展するようなことがないように活動している米軍を手伝うということは、まさに日本が有事にならないように役に立つことであります。それは具体的な事態においてそうでありますし、それと同時に、日米安全保障条約、一般的な意味でその信頼性を向上させるものだ、こういうふうに考えて、主体的にこういうことをやっているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/116
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117・横路孝弘
○横路委員 今までの御答弁の中で、今回の周辺事態への後方地域支援活動などは現行の安保条約上の義務ではない、しかし、これは安保の精神によっているんだというような御答弁がありましたが、日米安保の再定義というのは、まさに私が今言いました点ではないか。二つの点、双務性ということと、それから、日本防衛から少しアジア太平洋地域全体への平和と安定ということが、いわゆる言われている日米安保の再定義ということじゃないんですか。外務大臣は、この安保の再定義ということをどのようにお考え、受けとめておられるんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/117
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118・高村正彦
○高村国務大臣 安保の再定義という言葉は、いろいろな人がいろいろな意味に使っておられるので、それぞれの人が、この人はこういう意味で言っているのかなという意味で、私自身、安保の再定義という言葉は使ったことがありませんので、特別に私がこういう意味だと受けとめているということはありませんが、いわゆる今御審議いただいている法案が安保の範囲を拡大する、地理的に拡大する、そういうようなことは全くない話だ、こういうふうに思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/118
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119・横路孝弘
○横路委員 では、今度のことで範囲を拡大したものではないという今の御答弁、確認をしておきたいというように思います。
それから、ちょっとこれに関連してお尋ねしたいんですけれども、このガイドラインの中で、本文の中にも、このガイドライン下の取り組みというのは、「いずれの政府にも、立法上、予算上又は行政上の措置をとることを義務づけるものではない。」ということで、あくまでもこれはガイドラインであって国際的な取り決めではないということで、随分従来から国会で議論のあったところでございますが、そういう御答弁を今まで政府はされてきたわけです。
しかし、国家間の文書による合意は条約でありますし、協定というような名称があっても、やはり、国際的な約束であれば憲法七十三条で国会の承認が必要だと思うんですね。その基準は、七四年の二月の政府の統一見解で、新たな立法や財政支出を要するものはやはり国会の承認が必要ということになっているわけなんです。
今回、このガイドラインに基づいて、周辺事態関連法、法律が何本か出ているわけでございますけれども、やはりある意味では明らかに新たな義務を負っていると思うんですね。明らかに義務を負っているわけです。したがって、本来ならば、堂々と外交交渉を行って条約の改定を行って、国会の承認を得るというのがやはり本当なんだろうというように思いますけれども、この点は、外務大臣、いかがお考えですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/119
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120・高村正彦
○高村国務大臣 これは何度も御答弁していることで、繰り返しになって大変恐縮でございますが、まさに法律的に立法、予算が義務づけられているものではありませんから、必ずしも国会の承認をガイドライン自体が得る必要はない、私たちとしてはそう考えているわけであります。主体的に法案を提出する場合には、まさにこの特別委員会でこうやって国会でこの法案自体について御審議いただいて、かなりの時間をかけて国会の意思をお諮りしているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/120
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121・横路孝弘
○横路委員 私は、ガイドラインそのものというよりも、現行の日米安保条約を改定して、はっきりさせた方がよかったんではないかということを申し上げているわけであります。
もし現行の日米安保条約の範囲内で実施できるというならば、これは行政府の責任で行政の取り決めを結べばいいわけで、その場合には、現行の法律の範囲の中で米軍の活動に対して協力すればいいわけですね。しかし、現行の法律の範囲の中で協力できないものがありますからこういう法律になったんでしょう。
ちょっとお尋ねしますが、この法案、周辺事態法が成立しなければ実施が基本的に無理だと思われるものはどういうものでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/121
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122・佐藤謙
○佐藤(謙)政府委員 端的に申しますと、今度の周辺事態安全確保法で新たに根拠づけられておりますのは、自衛隊によります後方地域支援、それから後方地域捜索救助活動、それから船舶検査活動、これが新たにこの法律でもって権限が付与されている、こういう内容でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/122
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123・横路孝弘
○横路委員 つまり、やはりガイドラインに基づいて新たな法律を制定しなければいけないということを考えますと、私は、条約の改定を行って、正面からやるべきであったんではないかというように思いますけれども、もう一度御答弁をいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/123
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124・高村正彦
○高村国務大臣 条約の改正を行うということは、アメリカに対して日本が条約というもので法的に義務づけられてでないと我が国がみずから主体的な法律をつくってはいけないということを前提としないと、そういう委員がおっしゃっているような議論は成らないんだろうと思います。
もちろん、条約を改正して、アメリカに対する義務が日本に生じましたよ、ですから法律をつくるんですという場合もあり得ましょうが、そうではなくて、日本の政治的意思として新たな法律をつくって、主体的に今までの条約が実効的に動くようにするということも、これは正面からじゃなくて裏口だということでは決してないので、これも正面だ、こういうふうに思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/124
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125・横路孝弘
○横路委員 私が申し上げているのは、現行の安保条約には書かれていないことをやろうとしているわけでございまして、そこにやはり大きな問題がある。本来ならば、条約改定の議論をすべきだったのではないかというように考えております。
次に、周辺事態についてお尋ねをしてまいりたいと思います。
周辺事態とは何かということで、今まで典型的に四つの例が紹介をされております。この四つのケースというのは日本政府が考えた周辺事態ということで例示されたわけでございますが、これは、アメリカと合意されているケースなんですか、それとも、日本政府は周辺事態をこう考えているよということで挙げられたケースなんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/125
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126・竹内行夫
○竹内政府委員 四つのケースにつきまして、アメリカと合意と申しますか、正式に合意をしたということではございません。
周辺事態については、その意味するところについて、米側と実態的な定義についての見解の一致があるわけでございますけれども、そういう考え方に基づきまして、お求めに応じて例示をした、こういうことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/126
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127・横路孝弘
○横路委員 私は、アメリカがどう考えているか、かなりそこに問題があるような気がいたしまして、だんだんに御質問をさせていただきたいと思います。
その四つのケースのほかに、皆さんの方で出されましたガイドラインについての解説がございます。「ザ・ニュー・ガイドラインズ」というものですが、その中に、武力紛争、それから武力紛争が差し迫っている場合及びその紛争後の秩序の維持・回復が求められている場合というのが挙げられているのですけれども、これはどういうことを想定されておられるのでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/127
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128・佐藤謙
○佐藤(謙)政府委員 例えば、今先生が言われました、紛争後の秩序の維持・回復が求められている場合ということでございますが、これ自体は、紛争そのものは終結しているわけでございますけれども、秩序の維持・回復が十分に図られておらず、再度の紛争が生起する可能性や、政治体制の混乱から大量の避難民が発生するとか、こういった可能性も否定できないわけでございます。
したがいまして、我が国としては種々の対応策を実施することが必要でございまして、そういう場合に、我が国の平和と安全に重要な影響を与えているということも想定されるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/128
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129・横路孝弘
○横路委員 これは、また改めて周辺事態として認定するという話なんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/129
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130・佐藤謙
○佐藤(謙)政府委員 それはその状況によると思いますけれども、今申し上げましたような事態も周辺事態に該当する場合もあるだろう、こういうことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/130
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131・横路孝弘
○横路委員 いや、一たん周辺事態として認定して、そして紛争が終結した、その場合をまたわざわざケースとして挙げているのは、ちょっとよく理解ができないのですけれども。一貫した流れの中の話ではないのですね。別に、これは特に一つのケースとして挙げておられるわけですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/131
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132・佐藤謙
○佐藤(謙)政府委員 それは、その状況によると思います。
例えば、その紛争が終結した後でもそういう状況でございますれば、それに対応する対応措置を講ずるわけでございます。したがいまして、そういう場合には周辺事態として該当する場合もあるだろう、こういうことを申し上げているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/132
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133・横路孝弘
○横路委員 周辺事態について、周辺事態というのは軍事的な観点を初めとする種々の観点から見て我が国の平和と安全に重要な影響を与える事態だというように今まで御答弁をされてきているわけですが、この軍事的観点というのは、我が国の平和と安全に影響を及ぼすということでございますから、我が国に向けての軍事的な観点ということでよろしいのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/133
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134・高村正彦
○高村国務大臣 我が国に向けてのという言葉がちょっと気になりますが、いずれにしても、我が国についてのということで結構でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/134
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135・横路孝弘
○横路委員 我が国に対する軍事的な観点ということでよろしいわけですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/135
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136・高村正彦
○高村国務大臣 平和と安全というのは、言葉の意味として軍事的観点が中心となると申し上げているわけでありますから、我が国の平和と安全ですから、我が国についてのということでありまして、その発生原因がいろいろなことがあって、それが直接我が国に向けられているかどうかということは直接関係があるとは思いませんけれども、ともかく結果として、我が国について軍事的な概念を中心とした意味での平和と安全に重要な影響を与える事態、こういうふうに解していただいて結構でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/136
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137・横路孝弘
○横路委員 その点は、また後で議論します。
もう一つ、この四つのケースの中に、「ある国が国連安保理決議に基づく経済制裁の対象となるような国際の平和と安全に対する脅威となる行動をとっている状況」というのが挙げられているわけなんですけれども、今まで経済制裁というのを国連においてとったケースというのは、どういうケースがございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/137
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138・高村正彦
○高村国務大臣 私は全体を余り知っているわけじゃありませんが、例えば典型的なケースとすれば、イラクに対してとったということはあると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/138
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139・横路孝弘
○横路委員 ちょっと調べてみましたら、最初が南アフリカなんですね。これはアパルトヘイトの関係で経済制裁を行っております。ただ、船舶検査などは行っていないようですが。あとは、南ローデシア、ソマリア、ハイチ、ボスニア・ヘルツェゴビナ、それからイラク、リビアということなんですが、イラクのケースを除くと、大体は中における内戦とかクーデターとか、あるいはアパルトヘイト体制、南アの場合はそういうケースでございますが、中における民族的な紛争とか、こういうものがほとんどなんですね。
ここで、この四つのケースとして挙げられているのはどういうことかということなんですが、イラクのようなケースですと、これは武力紛争ということでそっちに入るわけですね。そうすると、ここで挙げられたというのは、どんなことを想定されて挙げられているのか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/139
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140・高村正彦
○高村国務大臣 四つ挙げていますが、典型的な例としては最初の二つを挙げて、そのほかにもあと二つ、こういうようなことも例えば考えられますね、こういうことを申し上げたわけであります。
今、委員がおっしゃったように、イラクのような場合であれば軍事紛争というようなことであり得る、こういうようなことをおっしゃられましたが、場合によったら、経済制裁の対象となるような場合であって、まさに日本の平和と安全に重要な影響を与える。
一番大切なことは、日本の平和と安全に重要な影響を与えるかどうかということでありますから、だけれども、この審議の中でどうしても、そういうことに至るのはどんな場合があるか、例えばの場合でも示せということで、典型的な例二つと、そしてあと二つ、こういうことをお示ししたということで、余り具体的にこうこうこうということを想定したわけではございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/140
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141・横路孝弘
○横路委員 そのあとの二つを挙げられるから、どういう事態かなかなかわからなくなるのですよ。
そして、イラクのケース以外、今まで経済制裁をしているのは、どちらかというといわゆる人道的介入と言われているようなケースが多いのですね、実際問題としては。これは、何かそういうことを考えておられるのでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/141
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142・高村正彦
○高村国務大臣 どこかの国の全くの国内問題としてとどまっていることが我が国の平和と安全に重要な影響を与えるとはとても思えませんから、やはりそれは、国際的に拡大してきて、そして不測の事態が起こって我が国の平和と安全に重要な影響を与える、そういう場合もあり得べしとして、典型的な例二つとともに、その二つも、こういう場合もあり得ますねということで挙げさせていただいた、こういうことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/142
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143・横路孝弘
○横路委員 これもまた後ほどちょっとお尋ねします。
そこで、もう一つのケースですね。
ある国、地域における政治体制の混乱により大量の避難民が発生して、我が国に流入する蓋然性が非常に高まっているときということなんですが、ここでわざわざ、ある国ということのほかに地域というのを入れたのは、これはどういう意味でしょうか。この、地域ということの意味ですね。国における政治体制の混乱じゃなくて、ある国、地域における政治体制の混乱とわざわざ挙げられたというのは、どういう意味でございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/143
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144・高村正彦
○高村国務大臣 特別な意味はございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/144
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145・横路孝弘
○横路委員 これは意味があるんじゃないですか、わざわざ国のほかに地域というのを挙げたのは。意味は全くないんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/145
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146・高村正彦
○高村国務大臣 特別な意味はございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/146
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147・横路孝弘
○横路委員 台湾を想定しているんじゃないのですか。つまり、台湾問題というのは中国の国内問題であるということですから、まあある国の地域になるわけですよね。わざわざこれを言っているというのは、台湾を想定して挙げられているんじゃないのでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/147
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148・高村正彦
○高村国務大臣 そうではございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/148
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149・横路孝弘
○横路委員 今までのその御答弁は、大量の難民が出た場合に、警察力では対応できない事態だから周辺事態なんだという答弁がございましたが、この場合、いわゆる軍事的観点というのはどうなのかと御質問すると、いや、武装難民もいるというお話でした。武装難民というのは難民とは言わないわけで、これは武装兵ですからそういう対応をすればいいわけでございまして、やはり軍事的観点からいいますと、この挙げられている第三番目のケース、混乱によって大量の避難民が発生しているということが即、こういう事態が周辺事態と言うのは、軍事的観点を含むという観点からいってもおかしいのじゃないかというように思います。これは外すべきじゃないかと思いますが、いかがですか。
〔中山(利)委員長代理退席、委員長着席〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/149
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150・高村正彦
○高村国務大臣 典型的な例とすると、私が最初に挙げた例と二番目に挙げた例が典型的な例だ、こういうふうに思っております。
ただ、それだけ挙げておいてほかにないというふうにとられても困りますので、日本の平和と安全に重要な影響を及ぼす事態というのは、具体的にそうしょっちゅう想定できることではないにしても、その二つの典型的な例以外にもいろいろありますよという意味で二つ挙げさせていただいたので、そういう場合が特に多く想定されるということでは必ずしもない、こういうふうに思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/150
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151・横路孝弘
○横路委員 この場合、米軍の行動というのはどういう行動が考えられるのですか。政治的な混乱があって避難民が出てきたという場合に、米軍の行動がまずあるわけでしょう。それはどうなんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/151
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152・高村正彦
○高村国務大臣 避難民が出てきたから直ちに周辺事態というわけではないということで、まさに日本の平和と安全に重要な影響を及ぼすような事態ということであれば、それを阻止する意味の米軍の行動というのは、それはいろいろあるんだろうと思います。まずその中には、情報収集だとか警戒監視の活動、そういったものもありますし、その他もろもろあるだろう、こういうふうに思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/152
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153・横路孝弘
○横路委員 その原因が他国に対する武力行使ではないわけですね、ある国の中における政治的な混乱なわけですから。それに日本が介入しなければいけないというのは、どういうことが根拠になるのですか、どうして周辺事態になるのですか。それはその国の中の問題でしょう。国連憲章からいえば内政不干渉という原則もあるわけですね。
ですから、避難民が出てくるには何かの原因があるわけですけれども、その原因が、何か他国との間の戦争によって出てきたという事例ならばそれはわかりますが、そうじゃないわけでしょう。政治的な混乱によって内部に混乱があるという事態で、そこに自衛隊が介入していくということ。米軍は米軍で自分たちの判断でいろいろ行動してきていますから、それはアメリカはアメリカでやると思いますけれども、それを日本はどうして協力しなければいけないのかという問題ですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/153
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154・高村正彦
○高村国務大臣 これも何度も申し上げていることでございますが、政治的混乱が起こったからすぐ介入するということを申し上げているのではないので、政治的混乱が起こって例えば難民が出て、難民が出たからといって、それもまだ、すぐ周辺事態ではないわけでありまして、そのことによって何らかの経路をとって日本の平和と安全に重要な影響を及ぼすような事態には、それは日本国が何らかの行動を起こすというのは私は当然のことだと思います。よその国がめちゃくちゃに混乱しているから直ちにそこに日本の自衛隊が何かをするということを申し上げているわけではございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/154
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155・横路孝弘
○横路委員 ちょっと私の想像力が乏しいのかもしれませんが、わかりませんね。それはどういう状況で、どうして日本が日本防衛という観点に立って出ていかなければいけないのか。政治的な混乱があるわけでしょう。何らかの国内的な紛争の要因がある。それは、過去の世界的な例で言えば民族紛争とかいろいろありますよね。その中から避難民が出てきた。しかもそれは日本の周辺ですから、日本の周辺で出てきたときに、じゃ、それが政治的に混乱が起きてある国の国内が混乱しているときに、それがどうして日本の安全にすぐつながるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/155
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156・東郷和彦
○東郷政府委員 ただいま大臣から申し上げたことを補足して、一点御説明させていただきたいと思います。
ある国における政治体制の混乱等によりその国において大量の難民が発生した、それが我が国に大量に流入する可能性が高まっている、そういう状況におきましては、例えば国際的な緊張が高まる、その国際的な緊張が不測の事態に発展するようなこともあり得る、そのような場合に、このような事態が我が国の平和と安全に重要な影響を与える、そういう状況になり得るというのがここで考えられておる例でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/156
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157・横路孝弘
○横路委員 国内が政治混乱しているときに他国に侵略するというのは、どういうことなんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/157
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158・東郷和彦
○東郷政府委員 申し上げます。
他国に侵略するということは、私は申し上げませんでした。
そのような大量に難民が発生しているというような事態が国際的な緊張を惹起する、これが何らかの不測の事態に発展するようなことがあり得るかもしれない、そういう状況が我が国の平和と安全に重要な影響を与え得るのじゃないか、こういうことかと考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/158
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159・横路孝弘
○横路委員 避難民が出てくれば避難民に対する対応をすればいいわけでして、何も周辺事態として認定をして——私はそこで非常に感ずるのは、そのまさに国内の政治混乱に米軍が介入するということを非常に心配をいたします。
そこで、ちょっと配っていただけますか。米軍の行動というのは過去いろいろケースがあるわけですね、その米軍の行動というのを、どんなケースがあるかということをちょっと整理をしてみました。今までの議論はそれに関連してくるわけでございますが、ちょっと資料を渡してくれますか。
周辺事態における米軍の行動の場合というのを見ていただきたいと思いますが、一つは、ここにあります、第三国の行為が国連安保理によって侵略行為であると決定され、これは憲章の三十九条ですね、米軍が国際平和の回復に必要な国連の軍事的強制措置として行動する場合、憲章の四十二条で行動する場合ということで、これは朝鮮戦争のときの状況かなと思います。
それから二番目。第三国の行為が国連安保理事会によって侵略行為であると決定され、米軍が多国籍軍の一員として国連安保理決議の授権を受けて行動する場合。湾岸戦争のようなケースですね。
それから三番目。武力紛争の発生に際し、安保理が常任理事国の拒否権によって機能しない事態で、総会が平和のための結集決議というのを行って、それに基づいて加盟国に勧告をして、これを受けて米軍が行動する場合。これは国連のそういう授権に基づいてやるというケースですね。
それから四番目が、アメリカに対する武力攻撃が発生して、米軍が憲章上の自衛権に基づいて行動する場合。
それから五番目が、アメリカと密接な関係にある第三国が武力攻撃を受け、例えば米韓条約に基づいてというようなことですね、米軍が憲章上の集団的自衛権に基づいて行動する場合。
これらのケースは割と行動の根拠がはっきりとしているものだというように思います。
その次に、米国が自国民保護等を理由に伝統的国際法上の自衛権を主張して武力行使をする場合というのは、これはもうちょっと正確に本当は分けなきゃいけないわけなんですが、アメリカの過去の行動を見ていますと、リベリアとか中央アフリカ、アルバニアなんかのように、これは連邦議会に対する大統領の報告書では、軍の活動の目的はあくまでもアメリカの市民の救出なんだということで、紛争の現状に介入することではないというようにしているケースと、それから、ドミニカやグレナダやパナマの事例のように、自国民を救出するだけじゃなくて、一定期間軍を駐留させているんですね。それにはいろいろな理屈を挙げています。安全保障上だとか、この地域にアメリカと敵対的なイデオロギーを持つ政権が樹立されて、それが安全保障上の脅威となったというような理屈を挙げています。この場合は、五十一条で行動を行ったという説明をしています。この六番のところは、まあなかなか問題の一つではあるところであります。
それから七番ですね。これは、アメリカが過去の安保理決議の履行を確保するため、イラクのクルド人ですか、あの問題。安保理決議の履行になるかどうかという議論はありますが、一応そういうこと。それから、あるいは、人権侵害を抑圧する、いわゆる人道的な介入と言われているようなものであります。
それから八番目ですね。米国が武力紛争の関係者となり、安保理事会において拒否権を発動して、自国に向けられた決議を否決し、総会が米国非難決議をする中で、なお軍隊による行動を行う場合。これは、アメリカというよりも、例えばイスラエルがゴラン高原を併合したというようなケースがこの八番のケースに当たると思います。
それから九番のケースは、米国みずから明確な憲章違反の侵略行為を開始し、または第三国がそのような侵略行為を開始してアメリカがこれを支援する場合。これは、例えば、最近言われていることでは、ベトナム戦争のときのトンキン湾事件、おとりの船を出して、それを理由に北爆を行ったということで、こういうケースがあるわけでございます。
このケース、五番目まではかなりアメリカの行動というのははっきりしているわけでございますが、だんだんやはり中には怪しげな行為、行動もあるわけです。
そこで、一つお尋ねいたしたいのは、まず、先ほど言いました自国民保護を理由にして行う、あくまでもアメリカ市民の救出で、紛争の現状に介入するわけではないよ、こういった行動というのは、これは前にもう外務大臣から御答弁いただいていますけれども、そういうのはアメリカが自分の国益で行動したことであるから、こういう行動は、これは周辺事態と認定して日本が協力するような行動ではないというように思いますけれども、いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/159
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160・高村正彦
○高村国務大臣 アメリカが自国民保護のために米軍を動かしている、そのこと自体が当然に周辺事態に当たるとかいうことではないということでありますが、そういう場合が、同時にほかの状況で周辺事態に当たるような状況の中でそういうことをやっていて、そして、その自国民保護をやっていることと同時に日米安保の目的に寄与しているということはあり得ない話ではないと思います。
いずれにしても、自国民保護を米軍がやっているんだから、これは周辺事態であり、そして日本がそれに対してこの法案によって何らかのお手伝いをしようということではないということは、それははっきりしていることであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/160
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161・横路孝弘
○横路委員 アメリカは、軍隊を動かすに当たって幾つかの原則をはっきりさせて持っているわけですね、アメリカの国防報告によりますと。
これは九五年の報告でございますが、この中で見ていますと、一つは、アメリカの死活的な利益が脅かされるケースということで、イラクのクウェート侵略ですね、それから北朝鮮の核保有の計画といったようなことを、これはもう死活的な利益が脅かされるケースとして挙げています。
それからもう一つは、死活的ではないけれども米国の重要な利益がかかっているケースとして、ここで挙げているのはハイチのケースを挙げています。これはたしか、合法政権に対してクーデターを行って、そのクーデター政権をアメリカ——これは話し合いで解決したのですが、軍事政権がおりましたので。そういったケース、あるいはボスニアのケースなどを挙げています。
それから第三は、専ら人道上の問題に関する場合ということで、ルワンダなどのケースを挙げているわけですね。
アメリカは、自分でこういう原則を持っていますから、もう断固行動するときは行動するわけですよ。そのときに、ともかく日本に協力してほしいという話は常に来ると思うのですよね、この今回の法律が通れば。通ればですよ。この周辺で何かそういうケースがあって、アメリカの市民を救出するために米軍が行動する、だから、日本の自衛隊に協力しろという話が来るわけですよ。だから、そのときに日本は、いや、それはアメリカが自分の利益のためにやる行為なんだから自分でやってください、日本の自衛隊はその点は協力できませんよとやはりちゃんと言わないといけないわけですね。したがって、周辺事態と認定するのが一番大事なんですが、米軍の行動について、それをやはりちゃんとチェック、点検をしなければいけないわけですよ。
今ちょっと挙げたように、アメリカのずっとこの間の行動、他国に対して、他国の同意を得ないで軍事的に介入したケースというのはいろいろなケースがあります。その中には、今までも議論されていますが、国連総会の場で非難されるような行為、行動もあるわけですね。
ですから、やはり日本としては、そこをしっかり見ていくということがとても大事なことですから、今挙げたケースの、アメリカの市民を救出するためだけの、つまり自分たちの、アメリカの国益を守るためだけの行動というのは、やはり日本はその場合ノーと言うべきだと思いますけれども、いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/161
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162・高村正彦
○高村国務大臣 当然のことながら、この法案が成立しても、この法案で認めていないことを日本政府がやるはずはないわけであります。
その前提として、米国が国連憲章違反あるいは国際法違反のことをやるというようなことは想定しておりませんけれども、日本とすれば、いずれにしても、日本が主体的な判断でもって、周辺事態かどうかということ、そしてそれに対する基本計画等も決めていくわけでありますが、その中で、日本が法律でできないことを、今までもやってきていませんし、これからもやるつもりは毛頭ないということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/162
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163・横路孝弘
○横路委員 ですから、そのアメリカの市民をただ救出するためだけに行動するというようなことは対象とならないということをはっきり言ってくださいよ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/163
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164・高村正彦
○高村国務大臣 はっきり申し上げているつもりでございますが、周辺事態でないとか、あるいは日米安保条約の目的の達成に寄与するために行動している米軍でないとか、そういうときに日本がこの法案によってお手伝いすることはありません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/164
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165・横路孝弘
○横路委員 この周辺事態の認定なんですけれども、従来は、それぞれ主体的に判断するのだという御答弁をなさって、しかし、しかしと言って、しかしがつくのですね、しかし、いろいろと共通の認識に到達するように努力するので、実際上、両国の判断がそごする事態は全く想定されないという答弁を防衛庁長官はしているのですね。これは一体どういうことなんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/165
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166・野呂田芳成
○野呂田国務大臣 ある事態が周辺事態に該当するかどうか、周辺事態に対していかなる措置を実施するかについては、日米両国政府が、事態の態様、規模等を総合的に勘案しまして、また、かつ、今御指摘ありましたように、おのおの国益確保の見地から、その時点の状況を総合的に見た上で主体的に判断することとなります。我が国が主体的な判断ができなくなるということはないわけであります。
なお、従来から申し上げているのは、その際、日米両国間においては、随時密接に行われている情報交換、政策協議が一層緊密に行われ、このような事態について共通の認識に到達するための種々の努力が払われることになることは、言うまでもございません。
このように、ある事態が周辺事態に該当するか否かについては、日米両国政府はおのおの主体的に判断するものでありますけれども、実際の問題としては、日米間で密接な情報交換や協議が行われることにかんがみれば、日米両国間において周辺事態に係る共通の認識が成立しないということは考えられないという意味で申し上げたわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/166
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167・横路孝弘
○横路委員 それはどういう意味ですか。ノーとは言わないということですか、どんな事態でも。イエス、ノーが言えないのですか。主体的に判断するといいながら、しかし、協議するのだから結論は一緒なんだという話でしょう。そうすると、物すごいそれはおかしな話ですよ。主体的に判断するのだから、やはりイエスもあればノーもあるということじゃないのですか。それは、幾ら協議したって、ノーはノーですよ。だから、そこをどうもあいまいにされておられますから、結局、これはもうアメリカに一方的に日本の自衛隊が協力する話じゃないかということになるわけですね。どうですか。おかしいと思いますよ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/167
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168・野呂田芳成
○野呂田国務大臣 共通の認識に立つわけでありますから、ノーもあるしイエスもあるということであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/168
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169・横路孝弘
○横路委員 そうなんです。だから、イエスもあればノーもあるということなので、従来の答弁は訂正しておいてください。従来は、そういう事態、つまり両者の判断がそごする事態は全く想定されないという答弁を繰り返しているわけですから、そこは訂正をして、日本の国益から主体的に判断をして、イエスもあればノーもあるというように、答弁をちゃんと訂正しておいてください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/169
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170・野呂田芳成
○野呂田国務大臣 イエスもあるしノーもあるというので共通の認識に達し、そごすることがないという意味で申し上げているわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/170
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171・横路孝弘
○横路委員 いや、そのそごする事態がないというのは、どういうことですか。お互いに、それぞれの国がそれぞれの立場がありますでしょう。それから、軍隊を動かす原理だってアメリカと日本で違うわけですよ。ですから、アメリカが周辺事態と認定したって、日本はノーと言う場合だってあるでしょうし、周辺事態と認定したとしたって、軍隊を動かさない場合、アメリカは動かすけれども日本は協力できませんという場合だってあるわけでしょう。ですから、そごする事態が全く想定されないというのは、いつも結論は一緒だということでしょう、アメリカと日本が。そんなばかなことがありますか。そうじゃないのじゃないですか、主体的に判断するのですから。やはり、イエスもあればノーもある、お互い判断が違うこともあるということが前提にならなければおかしいじゃありませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/171
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172・野呂田芳成
○野呂田国務大臣 両国間でばらばらに周辺事態を認定するということは観念的にはあり得ても、実際上はイエスかノーかということで共通点に達するという意味で申し上げているわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/172
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173・横路孝弘
○横路委員 くどいようですけれども、アメリカはアメリカでもって、自分の軍隊を動かす、あるいはアメリカの国益を守るために行動する原理というのは持っているのですよ、アメリカという国は。だから、日本がイエスと言おうがノーと言おうが、行動するのです。日本がだめだからといって、アメリカがじゃやめましたなんということはあり得ないのですよ。
だから、その場合は、アメリカはアメリカの立場に立って行動するわけですから、日本は協力できませんよと言えばいいわけであって、イエスもノーも、協議するから結論の違うことはありませんというのが大体おかしいと思いますよ。そう思いませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/173
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174・野呂田芳成
○野呂田国務大臣 我が国の平和と安全に重要な影響を与えるような事態においてアメリカが勝手に行動するということはあり得ないという意味で申し上げているわけで、委員がおっしゃるとおり、観念的には、主体的に判断するわけですからあり得ても、そういう重要な周辺事態においてばらばらにやるということは実際上は起こり得ないということを申し上げているわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/174
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175・横路孝弘
○横路委員 つまり、問題は、日本の平和と安全に重大な影響を与えるかどうかという問題で、いや日本はそうは思いませんという場合だってあるわけでしょう、アメリカはアメリカで行動して。違いますか。
例えば、アメリカの場合ですと、今までの行動をずっと見ていると、自分たちのイデオロギーと反するからといって行動していることもあります、いろいろな理由で。特に中南米における行動というのはかなり自由にやっていますよ。
そういう場合、日本は全部つき合うのですか、それに。そうじゃないでしょう。日本は、日本の平和と安全に重大な影響ということ、つまり、それは、日本が直接侵略を受けるおそれ、その周辺のような事態なわけで、その場合は協力するけれども、今の防衛庁長官の答弁だったら、結局、この周辺地域のあらゆる紛争に米軍が介入した場合に、全部協力するということにしかならないのじゃないですか。
だから、ちゃんとそこを分けて、まず一つは、イエスもあればノーもある。日本としては、日本の国益を確保する観点から判断して、それはアメリカの国益を守るためのアメリカの行動なんだから、アメリカはどうぞ単独でやってください、日本は協力できませんというように、判断が違う場合も当然あるわけですよ。そのことをお答えいただきたい。そうでなければ、この法律をつくっちゃったら、通っちゃったら、アメリカがやる行動は何でもかんでも全部一緒に行動するということにしかならぬじゃないですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/175
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176・野呂田芳成
○野呂田国務大臣 従来から申し上げておりますとおり、軍事的な観点から日本の平和と安全に重要な影響を与える場合でありますから、その範囲が、今委員がおっしゃったように地球の遠くまで及ぶというふうには考えておらないわけで、私どもは、やはり、観念的にはあり得ても、実態上はそういうばらばらになることは考えていないというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/176
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177・横路孝弘
○横路委員 どうも余り理解していただけないのですが、アメリカの行動は、先ほどちょっとケースを挙げましたように、いろいろなケースがあります。アメリカが自国民を保護するということで介入しているケースというのはたくさんあります。
しかし、その場合、それが別に日本に何も軍事的に向けられているわけでもないし、中に若干の混乱があるからアメリカの国民を救出するということで、アメリカはその国の同意を得ないで海兵隊を送ったりすることがあるわけなんですよ。そのときに日本が、いやそれは日本の平和と安全に何の関係もありませんよということをやはり明確にちゃんと言って、ノーと言うケースというのはあるのじゃないのですか。それは何も観念的じゃなくて、実際問題として起こり得ると思いますよ、米軍の過去の行動を見ていますと。
だから、はっきりとそこを、いや、イエスとノーと立場は分かれて、アメリカはアメリカで行動するケースがある、ただ日本は協力はしませんというだけの話じゃないですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/177
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178・佐藤謙
○佐藤(謙)政府委員 日本としては、主体的に周辺事態かどうかということを判断し、それに基づいて行動をとるわけでございますけれども、ある事態が周辺事態に該当しているかどうかということについては、米側と緊密な協議をするということでございます。
そういう中で、例えば今先生御例示されたような、日本の平和と安全に重要な影響を与える事態でもなく、しかも日米安保条約の目的達成に寄与する活動でもないような行動を米軍がとる場合には、それはこの法律の対象外でございますので、我が国としてそれに対して後方地域支援を行うということはございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/178
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179・横路孝弘
○横路委員 何か局長の答弁を大臣に確認してもらうというのはおかしいですけれども、大臣、今の答弁、確認してください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/179
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180・野呂田芳成
○野呂田国務大臣 全く同じことを言っているわけでありまして、周辺事態というのは軍事的な観点から我が国の平和と安全に重要な影響を与える事態ですから、アメリカがどこか周辺事態じゃないところにおいて行動するのは周辺事態とするわけにいかぬのでありまして、そういう意味で、局長の答弁と全くそごしておらないと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/180
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181・横路孝弘
○横路委員 いや、やはり答弁は違ってきたと思いますよ。
今の局長の答弁は、日本は日本の立場で判断をして、日本の平和と安全に影響のない事態、米軍は米軍で行動することは幾らでもいろいろあるわけですから、それはアメリカがやりなさいということで、イエス、ノーを主体的に判断し、ケースによっては日本の判断とアメリカの判断が違う場合もあるという御答弁を確認されましたので、次の——答弁されない方がいいんじゃないですか、大丈夫ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/181
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182・野呂田芳成
○野呂田国務大臣 周辺事態じゃないものについては日本は周辺事態と認定しないのでありますから、あなたがおっしゃっているようなことが周辺事態でないものであれば、それは当然周辺事態としてどちらも認定しないと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/182
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183・横路孝弘
○横路委員 問題は、周辺事態と認定するところに日本の判断とアメリカの判断と違いがあるでしょう、違いがあって、違ったときにはノーとちゃんと答えるべきではないかということを申し上げているわけです。周辺事態であるかどうかというところが一番問題なんですよ、これは。周辺事態であるかどうかということが。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/183
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184・佐藤謙
○佐藤(謙)政府委員 ちょっと私の答弁があるいは舌足らずだったかもしれませんが、まさに日本は日本として主体的に判断をし、その結果、さっきの設例のような場合ですとそういう結論になるということでございます。
いずれにいたしましても、米側と日本側と協議をして、その事態が周辺事態ではない、日本の平和と安全に重要な影響を与える事態ではないという結論に達しますれば、それはまさに米側も同じような認識に立つことになります。そういった意味で、政策協議、情報交換をして、その結果としての周辺事態としての判断に日米両国でそごを来すことはないということになろうかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/184
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185・横路孝弘
○横路委員 だから、そごをもたらすことはないと言うと、じゃ結局は何かといったら、アメリカの行動に全部従うということにしかならぬじゃないですか。
問題は、周辺事態として認めるか認めないかというところにそもそも違いがあるわけですよ。日本は日本の国益を考え、アメリカはアメリカの国益を考えるわけでしょう。そもそも新しいガイドラインというのはそういうことだったんではないかと思いますが。
今、先ほど来の御答弁で、ともかく、例えばアメリカが自国民の保護というようなアメリカの国益だけを考えて行動するような場合には、それは周辺事態に当たらない、当たらないわけですから日本としては協力しないというところを確認をいたして、次に質問を進めたいと思います。
次に、日本の自衛隊というのは、これも従来から議論していますが、専守防衛であって、他の紛争に特に軍事的に介入はしないしできないという立場であろうかというように思います。
今までの答弁で、周辺事態は何かという御答弁の中に、日本の安全保障を脅かす事態だ、あるいは日本有事に及ばないように事態対応をしていくんだという御答弁がございました。私は、日本の自衛隊が、例えばAという国の国内問題や、あるいはAとBという国の紛争に介入することというのはやはり基本的にやるべきじゃない。日本の安全のために、日本の防衛のために活動する自衛隊であり、専守防衛というのはそのことをはっきりさせているわけです。現在の文言ではそこがどうもはっきりしないわけですね。したがって、もっとその趣旨を明らかにする必要があるというように思っております。先ほど伊藤議員からも御質問したとおりでございます。
そこで、周辺事態認定に当たって幾つかやはり考えなければならない点があるというように思います。これは従来から議論していることの整理をちょっとしたいと思うんですが、一つは、ガイドラインでも規定されていますけれども、周辺事態のおそれがあったときにまず何をやるかというと、やはり外交的な努力を行って周辺事態にならないようにするんだということがまず基本になっています。したがって、まず外交的な努力をするということを前提にして、その事態に対して、一つは国際社会はどう受けとめているのか、やはり大方の国際社会の理解ということが大変大事であります。できれば国連の安保理事会などの共通の理解が得られれば一番いいと思うわけでありますが、まず、国際社会の大方の同意が得られるかどうかということが日本が周辺事態と認定するときの一つのポイントになるのではないか、このように思いますが、いかがでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/185
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186・高村正彦
○高村国務大臣 周辺事態を認定するというのは、我が国の平和と安全に重要な影響があるかどうかということでありますから、周辺事態を認定することに国際的理解ということがよくわからないわけでありますが、基本計画をつくるに当たっては、やはり国際的に理解が得られないような基本計画はつくらないようにするということなんだろう、こうは思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/186
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187・横路孝弘
○横路委員 このガイドラインの中で前提にしているのは何かといいますと、外交的な努力、それから紛争を起こさないための努力ということなわけですね。その紛争を起こさないための努力ということ、それはやはり紛争防止に向けて国際社会が協力をしてくれるかどうかということだと思いますよ。そこは特に周辺事態でも大事な点じゃないんですか、違いますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/187
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188・高村正彦
○高村国務大臣 我が国有事にならないように周辺事態にどう対応するか、それで周辺事態にならないようにその前にどう外交努力するか、それは委員がおっしゃるとおり非常に大切なこと、非常にというか最も大切なことでありまして、我々はその努力をしているわけでありますし、それから、仮に周辺事態に至っちゃってからでも外交努力というのは続けていかなければいけない問題だ、こういうふうにも認識しておりますし、また、周辺事態に至ってしまった場合にどういう対応をとるかということについては、それは国際的透明性を確保して国際社会の理解も得ていかなければいけないということも、それはそのとおりだと思いますが、周辺事態という認定そのものが国際社会の理解という、まあ日本がそう認定する場合は大体において国際社会の理解は当然得られる場合だとは思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/188
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189・横路孝弘
○横路委員 先日予算委員会で、周辺事態のおそれが起きたときには、例えば国連安保理事会へ報告をして国際社会の協力を求めるべきだというお話を申し上げましたときに、外務大臣からは、いや、そういう努力を国連に対して日本としてはしっかりやっていきますという趣旨の御答弁があったと思うんです。国際社会が全くみんな反対している中で日本がアメリカと一緒に何か周辺事態と認定して行動するということは、これは私はやはりやるべき話ではないというように思います。
それからもう一つは、国際法の基本原則、国連憲章上問題がないかどうかです。これもちゃんとガイドラインに、それは守りますということを言っています。そうすると、そこで問題になるのは何かというと、内政干渉になっていない、内政不干渉という原則が守られているのかいないのか、あるいはその行動が憲章に反する行為ではないのかという点がやはり見なければいけない点だと思うんですね。これはいかがでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/189
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190・高村正彦
○高村国務大臣 国連憲章、一般国際法、そういったものはきっちり守っていかなければいけないというのは、そのとおりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/190
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191・横路孝弘
○横路委員 それから、先ほど申し上げました、それは単にアメリカの国益のための行動にすぎないのではないかということもチェックする点だろうというように思います。
それからもう一つは、日本の防衛ということに本当に必要な行為なのかどうなのかということがあろうかというように思います。
私は、周辺事態というのは、やはり武力紛争を伴う事態に限定すべきじゃないかというように思います。四つのケースを挙げているうちでいいますと、どういうケースが考えられるのか特によくわからないのが、政治的な混乱によって避難民が出た場合というケースでございます。これは、何か一国の内部の問題に介入する余地というのがどうしてもそこに見えてくるわけでございまして、周辺事態というのは、やはり武力紛争を伴う事態、それが典型的な例だというように先ほど来外務大臣御答弁されていますけれども、むしろそのように絞り込んだ方がいいのではないかと思いますが、いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/191
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192・高村正彦
○高村国務大臣 四つの例を申し上げたのは、周辺事態になるその発生原因といいますか、その原因をもとにして四つの例をこうしたのですが、原因はどうであろうとも、日本の平和と安全に重要な影響を及ぼすかどうかということ、それが周辺事態であるかどうかの決め手でございますから、日本の平和と安全に重要な影響を及ぼすような事態というのは、その発生というのはまさにどこかで武力行使が現実に行われているとかそれが差し迫っている場合というのが多いのだろうと思いますが、そういうことには必ずしも限定できない、こういうふうに思っております。必ずしも、何か原因があって、その原因に直接介入することだけが周辺事態においての米軍の対応ということではないということはよく御理解をいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/192
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193・横路孝弘
○横路委員 ちょっと一つだけ確認しますが、その原因に対して介入するということもあり得るのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/193
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194・高村正彦
○高村国務大臣 結果として、日本の平和と安全に重要な影響を及ぼす事態であって、そしてその原因に介入することが日本の平和と安全に重要な影響を及ぼす事態を取り去ることに非常に効果があって、そしてそれが国連憲章を初めとした国際法上許されるということの場合というふうに限られてあるのではないでしょうか。そうでない場合にはそれは、委員も何度も言っておられるように、できないということになると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/194
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195・横路孝弘
○横路委員 今、その三番目のケースといいますか、政治的な混乱があって避難民が発生したという場合の、その政治的な混乱の原因に介入して、その混乱をおさめるために米軍が関与するということも周辺事態としてあり得るという御答弁でございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/195
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196・高村正彦
○高村国務大臣 三番目の場合ということに限って言えば、余り積極的には想定できないのではないか。絶対にないかどうかということは、今あらゆるケースを検証できませんので、ちょっと断言できかねる面もありますけれども、余り積極的には想定できない、こういうふうに私は思っています。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/196
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197・横路孝弘
○横路委員 私は、むしろ、日本の周辺で武力紛争よりも、そういう米軍の行動の方があるいは可能性が強いのかなと思うものですから、心配をして聞いているわけでございます。
そこで、ちょっとこれは時間がないのでやめますが、マイケル・グリーンの「危機のシナリオ二〇〇一年 日米安保の将来を考察する」というケースがありまして、本当はこれについていろいろとお伺いをしたいと思いましたが、多分、彼がここで言っている想定、一番最初にある想定、これは今高村外務大臣がお話しになった想定になるんじゃないですか。これをその周辺事態と認定するのかしないのかということとか、そのほかのこのシナリオの行動というのは、今回の法律が成立したとして一体できるものかできないものかということをちょっとお尋ねをしたかったわけです。
お読みになられたと思いますので、どうですか、外務大臣。マイケル・グリーンのこの想定、今の法律が成立すると大体こういうことになるのですか。問題点ありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/197
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198・高村正彦
○高村国務大臣 いろいろ示唆に富んだ論文であるというふうに思っておりますが、非常に具体的なことに触れておりますので、これについて私一々コメントすることは、ちょっと差し支えもありますので差し控えさせていただきたい、こう思います。
この点について、周辺事態、今の法案がどう関係してくるか、これがなかったらどうかということは、必ずしも一概に言えないのではないか、こういうふうに思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/198
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199・横路孝弘
○横路委員 これはまた次の機会に譲ります。
法制局長官においでいただいて、大変恐縮でございました。ちょっと一つお尋ねしたいと思いますが、その前に、防衛庁長官、今回のこの新しいガイドラインで、特に周辺事態ということでアメリカが日本の自衛隊に期待しているものというのは、特にどんなことを期待しているとお考えですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/199
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200・野呂田芳成
○野呂田国務大臣 後方地域支援を初め三つの行動に対してだと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/200
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201・横路孝弘
○横路委員 そうなのですが、私は、後方地域支援というのはかなり民間協力に期待するところがきっと多いんだと思うのです、現実の問題としては。そして、米軍が一番期待しているのは、実はこの運用面における日米協力という日米共同作戦の部分、警戒監視活動、情報提供、機雷の掃海ということじゃないかと思います。
この間もお尋ねをしたわけでございますが、これはもう平時からいろいろやっているわけですね。だんだん周辺事態のおそれが出てくるということになりますと、いわばその活動をより活発化させていくか充実させていくということになると思うのです。そうすると、例えば対潜水艦ということでいいますと、P3Cや潜水艦が出ていく、護衛艦も出ていくことになるかもしれませんし、空ではAWACSの767とかE2Cが出ていく。場合によっては、掃海の関係も、掃海艇や掃海母艦なども出ていくというような状況になるんだろうと思うのです。
平時から米軍との間に交流があって、データリンクですぐリアルタイムで情報が伝わるという形になっているわけなんですが、これはやはり、周辺事態ということになりますと、平時の活動よりもさらに充実した、徹底した活動をするということにもちろん当然なるわけでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/201
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202・柳澤協二
○柳澤政府委員 私ども、先生御指摘のように、日ごろから警戒監視活動を行っております。そして、それが我が国の安全という観点で情勢が緊迫してまいりますれば、その頻度を上げるということは当然出てくるだろうと思っております。
ただ、先生最後にちょっと触れられました、確かに私ども米軍と共通のデータリンクシステムを持ってはおりますが、これはこの前も御答弁申し上げましたように、常時自動的に流れるというような形にはなっておりませんで、我が方がこういうシステムを持っている目的は、まずもって、海上自衛隊であれば自衛艦隊司令部でありますとか、それぞれの上級の司令部と、それは先生おっしゃるとおり、リアルタイムでつながっております。それをどんな形で、当然日本のため、自衛隊のためにも、米軍からの情報も必要でございますし、相互に情報交換は当然するわけでありますが、そこをどうしていくかというのは、またその時々に相互の必要性、国益を考えながら判断していくということだろうと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/202
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203・横路孝弘
○横路委員 日本有事の場合は共同作戦計画をつくってやるわけですね。もうそういう訓練もしているわけです。それから、周辺事態は相互協力計画ということですが、今までの日米の訓練を見ますと、対潜特別訓練とか、指揮所訓練とか、掃海特別訓練というのはもう相当古くからやってきていまして、ある意味では、海上自衛隊とアメリカとの関係というのは、陸海空の中で非常に訓練も積み重ねてきているということが言えるわけなんですが、ガイドラインの中で、この運用についてお互いに調整をしていくんだということがこの中に書かれています。
つまり、日本海なら日本海という地域、この地域の中で、アメリカの行動とそれから自衛隊の行動と、周辺事態の場合でも調整するわけでしょう、調整すると書いてありますから。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/203
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204・柳澤協二
○柳澤政府委員 まず、調整という言葉でございますが、特に、米軍と自衛隊というのはそれぞれの指揮系統に従って行動をしますので、したがって、緊密な調整というのは必要になってまいります。
それで、それは、相互の活動が活発化するにつれて、当然より緊密な調整というのは必要になるだろうと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/204
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205・横路孝弘
○横路委員 そうなんだと思うんですね。海域の分担だとかいろいろな調整を行うわけです。
それで、平時の場合の情報の交換と、米軍が戦闘行為中の情報というのは、同じに論ずることは私はできないというように思っています。
そこで、法制局長官ですが、今まで統一見解がありますが、この中で、例えば戦闘行動を米軍が行っているというところで、日米が調整をして、そして、例えば潜水艦を発見するということ、あるいは、飛んでくる飛行機について情報をキャッチして米軍にその情報を伝えるというような活動というのは、この平成九年四月十日の統一見解を見ますと、「特定の国の武力行使を直接支援するために、偵察行動を伴うような情報収集」ということになると思うんですね。
これはもう実態として、そういう行動を平時からずうっとやっていって、それが周辺事態のおそれ、さらに周辺事態と、やめるわけじゃなくてむしろグレードアップしていって、そして調整もやりながら活動が行われるということになりますから、これはもう完全に一体となった行動だというように思います。これは、まさにこの法制局長官の見解に該当するというか、触れるということだと思いますけれども、いかがでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/205
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206・大森政輔
○大森(政)政府委員 まず、先般も委員のお尋ねにお答え申し上げましたように、情報を、日米間で具体的にどのようなことがなされているかということを、具体的に承知しているわけじゃございません。
そこで、一般論として申し上げたわけでございますが、一般的な情報交換の一環として情報を提供するというものは、一般論としては実力の行使に当たらないから、憲法九条との関係では問題がないであろう。しかしながら、先般も申し上げましたように、特定の国の武力行使を直接支援するために、偵察行動を伴うような情報収集を行い、これを提供する場合のように、情報の提供に特定の行動が伴う場合には、例外的に他国の武力行使と一体となると判断される可能性があるというふうにお答え申し上げたことは、そのとおりでございます。
そこで、一体化するかどうかの判断の具体的な基準でございますけれども、これはやはり、その一体化論の性質上、我が国の行動の具体的な内容とか、あるいは提供する情報の具体的内容等を総合的に勘案して、個々の事案に即して判断すべきである。具体的な状況を離れて、委員が今挙げられましたような所与の条件だけで、今、当たるとか、一体化するとか、一体化しないと直ちに断定的にお答えすることは、やはり無理ではなかろうかと思いますので、一体化する、あるいは一体化しないという問いに対しては、直接お答えすることは困難であるということが言えようかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/206
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207・横路孝弘
○横路委員 あと、機雷の掃海などもこれに付随する活動になってくるわけなんですけれども、私が挙げたようなケース、例えば、P3Cが米国が敵対しているその敵国の、アメリカにとって敵国の潜水艦を発見して連絡をする、そして、アメリカの方はそれに対して攻撃を行うというようなケースというのは、十分考えられるケースだと思うんですね。また、一番アメリカが期待しているのは掃海と対潜作戦の部分だというのは、これはもう軍事的には常識だろうというように思います。
したがって、いろいろな条件によっては、今の法制局長官の話ですと、それは武力一体になって憲法上許されない、しかし条件によっては許されるかもしれないというお答えでございましたから、やはりここははっきりさせてもらわぬとだめだと思うんですね。
それで、これは、自衛隊の特に海上の行動ということ、それから、これからのアメリカの軍事行動というのはやはり空母を中心にしていろいろな戦闘行動が展開されるわけでございますから、なるかもしれないし、そうでないかもしらぬという答弁では困りますので、実際の活動に即して一体どうなのかということを、これは明確にしてもらわないと困ります。委員長。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/207
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208・山崎拓
○山崎委員長 横路委員に申し上げますが、自衛隊の米軍に対する情報提供と集団的自衛権の関係につきまして、先般の委員会において前原委員から御質疑がございまして、本件について、理事会において取り扱いを協議することになっておりまして、既に協議を開始しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/208
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209・横路孝弘
○横路委員 これは、法制局としても統一的にしっかり立場をはっきりさせていただきたいと思いますが、長官、よろしゅうございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/209
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210・大森政輔
○大森(政)政府委員 私どもの立場で、具体的な事案について一般的な基準への当てはめというのはどこまで関与すべきなのかということは、いろいろな考えがあり得るわけでございます。
私どものまず基本的な役割というのは、一般的な考え方、基準を示す、それで、それへの具体的に生ずる当てはめというのは、それぞれそのことに当たる所管省庁において有権的に判断するというのが基本的な枠組みでございますが、相談を受ければ、その際にはそれに応じて共同して考えるということは、もちろん否定するものではございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/210
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211・横路孝弘
○横路委員 これは、憲法上からいいますと、かなり問題の多いケースだというように思いますので、どういう行動をされているのか、実態を、理事会の方で中身をよく検討されまして、そこで間違いのない判断をしていただきたいと思います。
最後に、運輸大臣、どうも恐縮でございますが、このガイドラインの運用上の協力、共同作戦計画の中で、海空調整というのがあります。それで、問題は空の航空管制の観点でございますが、これについてはもう既に防衛庁との話ができているのかどうなのか、周辺事態の場合に航空交通管制はどういうことになるのか、その内容について、ひとつお答えをいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/211
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212・川崎二郎
○川崎国務大臣 米軍に対する空域調整につきましては、日米航空交通管制合意に基づきまして、空域の一時的な留保を、民間航空交通に支障が生じないよう十分調整の上、現在実施をいたしております。
周辺事態においてどのような空域調整の必要性が生ずるか、このことについては、まだ打ち合わせは全く行っておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/212
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213・横路孝弘
○横路委員 終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/213
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214・山崎拓
○山崎委員長 これにて横路君の質疑は終了いたしました。
この際、暫時休憩いたします。
午後零時五十分休憩
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午後二時四十三分開議発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/214
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215・山崎拓
○山崎委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
質疑を続行いたします。太田昭宏君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/215
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216・太田昭宏
○太田(昭)委員 公明党・改革クラブの太田昭宏です。
一月の予算委員会以来さまざまな論議を聞かせていただきました。まず私が最も気になっておりますのは、周辺事態といい基本計画といい、中身がもう一つよくわからない。わからないというよりも、私にとりましてはさわれないと言った方が、また説明がない、したがってイメージがわかない、こういうことが、どうも堂々めぐりのように議論が見えるということではないかというふうに思っております。
それはそれで非常に大事なことなんですが、ある新聞の社説では、周辺事態とは周辺事態だというような論議が多いとか、そう言われてみれば、平和と安全に重大な影響というのは一体何かといえば平和と安全に重大な影響である、安全なところというのは安全なところであるというような論議が行われているんではないかというふうに思います。
そこで私は、周辺事態が起きますと政府の責任で基本計画が出るわけですが、その参考資料としてあるのが日米相互協力計画、これには周辺事態の際の自衛隊、地方自治体、民間の役割が書いてあるわけなんですが、それをすり合わせをするということですが、この日米相互協力計画が検討される共同計画検討委員会、BPCはいつから始まったか、また何回これまで行われているか、今後どのような手順で進むのか、これについて冒頭お聞きしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/216
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217・野呂田芳成
○野呂田国務大臣 日米共同計画検討委員会は昨年三月に初めて開催されました。昨年は三回開催されているところであります。
検討委員会において実施されている作業でございますが、これは共同作戦計画についての検討及び相互計画についての検討並びに共通の基準及び実施要領等についての検討でございますが、これらの検討は、その性格にかんがみましていわばエンドレスに行われていくべきものでございますが、いずれにせよ、着実に進捗するよう努力してまいりたい、こういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/217
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218・太田昭宏
○太田(昭)委員 聞くところによりますと、もう既に三回やったということは、その三回だけというのは結果でしょうから、資料が一メートルあるというような話を聞いたりいたしますが、成案はできているのか。私は、ちょっと全体像が見えないけれども、もう少しここの議論というものが国民に開示されるということが大事ではないかというように思っておりますが、いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/218
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219・野呂田芳成
○野呂田国務大臣 計画検討作業等は、ただいま申し上げましたとおり、性格にかんがみましていわばエンドレスに行われていくべきものでございますが、いずれにせよ、着実に進捗するよう努力しているところであります。
今御指摘がありました、計画検討作業の具体的な内容についてもう少し発表するようにという御趣旨の御質問でありましたが、この具体的な内容につきましては、緊急事態における日米の対応ぶりにかかってくるものでありまして、事柄の性格上、対外的に明らかにすることは適当ではない、こういうふうに考えているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/219
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220・太田昭宏
○太田(昭)委員 私は、機密ということについては承知をしているつもりです。ところが、さまざまな論調の中でも、周辺事態法案は、周辺事態に際して政府が首相の指揮のもとで適切かつ迅速に措置をとるとしている、しかし、日米当局間では平素から周辺事態に備えた協力計画が用意され、これをもとに日本政府が対米協力の基本計画を策定し発動するというのが実際の姿であるということで、ここが実は一番大事なところであるという指摘もあるわけです。
これについて異論があれば、申していただければ結構なんですが、自治体が何をやるのか、国民に何をさせるのか、あるいは民間に何をさせるのか、それがよくわからない、イメージが共有されない、ここが私は非常に大きな問題だというふうに思っておりまして、機密というその性質は私はよくわかるつもりでありますけれども、決して機密ということだけではない、民間にかかわったり、さまざまなことがあるわけです。
例えば、二月三日に十項目が示されたわけなんですけれども、この十項目だけは見出しのようなもので、内容とかそういうことについても十分出されていないわけですから、もう少し具体的に説明する義務があるのではないか、私はこのように思いますが、いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/220
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221・野呂田芳成
○野呂田国務大臣 相互協力計画についての検討は、ガイドラインに明記された基本的な前提及び考え方に従って行われることは当然のことでありますが、周辺事態に際しての日米協力の考え方や協力の対象は、ガイドラインの見直しの過程でも御議論をいただき、指針に明記されたところであります。
今申し上げたとおり、その具体的な内容については、緊急事態における日米の対応ぶりにかかってくるものでありまして、その内容について対外的に明らかにすることは適当ではないと考えておりますけれども、例えば、周辺事態安全確保法九条により想定される計画の内容等については、地方公共団体の理解を得るためにできる限り具体的に今後とも説明を行っていくこととしており、御理解を賜りたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/221
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222・太田昭宏
○太田(昭)委員 今、できる限りという、理解を得たいという話がありましたが、先般もそうしたお話があって、またきょうは改めて確認をされたんだというふうに思いますけれども、その後、これからいつどんな形で説明をされるのかという予定がありましたら……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/222
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223・野呂田芳成
○野呂田国務大臣 まだ政府全体としてそういう結論に達したわけじゃありませんが、これは今私個人として、例えばこういう案があるかなと思っておりますことは、九条の協力の内容等について、例えば法律を施行するときに必ず通達というものを出しますが、そういう通達の中なんかで書くことができないかどうか、そういう問題について検討をしてみたい、こう思っているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/223
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224・太田昭宏
○太田(昭)委員 昨日の地方公聴会で、これは新聞報道ですが、私は行っておりませんでしたが、九州大学の薮野教授が、地方自治体、民間の具体的協力内容を政令で定めることに関し、政令を検討する協議機関を別途設けてはどうか、こういう提案をされたそうですが、これはいかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/224
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225・野呂田芳成
○野呂田国務大臣 そういうことも一つの案かもしれませんが、私どもとしては、関係省庁が衆知を絞って案をつくるべきが先決だと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/225
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226・太田昭宏
○太田(昭)委員 法案が通過してからというよりも、私はその論議自体の全貌というものをできるだけつかむ。機密は機密で結構、それは何も出せと言っているわけではない。しかし、論議自体を今詰めておくということが、実は、緊急事態あるいは周辺事態というものが起きた、そのときの論議自体が短時間で済んで結論が出せるというためには、既にこの法案審議の中でのイメージづくりというもの、あるいは具体的にできるものは資料としても出すものは出すという形をとっておくということが、そこで論議がされていくということが私は非常に大事なこの委員会の論議であらなくてはならないというふうに思っております。そういう意味では、どんな全貌、輪郭かがわからないということこそ私は今一番の問題で、この第九条に則して言えば、とても十項目では済まない。
例えば、運輸大臣はおりませんけれども、昨日の地方公聴会でも出ておりますけれども、福岡なら福岡で、港湾あるいは空港が使われるということについて、不安とか不満というものがさまざま発表されたという話を聞いております。具体的にどういう形で民間航空機が制限されるんだとか、働く人にどういう影響があるんだとか、私はそういうことがイメージが共有されて初めてこの委員会での論議というのが成り立って結論が出るということになるのではないかというふうに思っております。
例えばベトナム戦争とか朝鮮戦争では一体日本はどういう働きをしてどうであったのかというようなことも含めて一つ一つ考えてみると、例えばけが人が出ます。けが人が出て、そして日本に来る。まず、米軍の病院ということが最優先に使われる。その後には自衛隊の病院になろう。その次には国立病院ということになり、そして民間というような手順になるというふうに思いますけれども、そこの民間の病院を使うという場合のあり方とか、さまざまなことでのそうしたプロセスとか流れというものが共有されるということが私は非常に大事だと思います。
例えばこのけが人が出るというこの事態に対してどういうシミュレーションとかどういう検討事項が行われているかということについてお答えをいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/226
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227・柳澤協二
○柳澤政府委員 先生、シミュレーションということでございますので、今のBPC、共同計画検討委員会の作業を、ちょっと先ほどの大臣答弁に補足をさせていただきますと、日本側は自衛隊、統幕を中心にし、米側は在日米軍を中心にして作業をしております。この作業は、新ガイドラインの別表にございます協力項目それぞれについて、相互にどんな活動をし、どんな連携をし、どういう協力項目があるか、そういう観点で作業を詰めていく段取りにしております。
要は、そういう協力の一般的なあり方の段取りから始めておる段階でございまして、まだ先生御指摘のような、具体的にどんなシミュレーションというようなことに入っている状況ではございません。また今後、そういう協力項目を詰めていく中で、必要に応じて、いろいろな協力を詰めるための事態の想定ということはいろいろ考えていかなければいかぬと思っておりますが、現状はそういうことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/227
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228・太田昭宏
○太田(昭)委員 BPCで詰めるということもあるし、それから既に関係省庁局長等会議ということで詰められてきているということがあろうかと思いますが、そちらの関係省庁の局長等の会議では、例えばこの問題について、具体的にはどういう詰め方がされているのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/228
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229・伊藤康成
○伊藤(康)政府委員 御指摘の関係省庁局長等会議でございますが、平成九年の十月以降やっておるわけでございますが、現在までのところ、実はこの法案作成のいろいろな協議をしておったわけでございまして、法案を提出以後、実は、具体的な法案の中身をどう運用していくかといったようなことについての議論はまだいたしておりません。今後、法律が国会で御承認をいただいて成立するということになりますと、またそういう場での議論等も行っていく必要があろうかというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/229
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230・太田昭宏
○太田(昭)委員 避難民が例えば出て、これを受け入れるという場合、公民館を使用するとか、まずその公民館の前に地方自治体がやったり、あるいは国の施設を使うとかいうことになるのでしょうが、かなり民間のそうしたところまで、あるいは公共施設かどうかわからない中間の施設等が使われるということになろうかと思いますが、そういうことも実は具体的にはある程度、これは一般論としてですよ、詰められてきているのではないかと思います。どういう状況なんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/230
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231・伊藤康成
○伊藤(康)政府委員 避難民ということについて申し上げますと、これは必ずしもこの周辺事態確保法案との関係というわけではございませんで、一般的に危機管理と申しますか、緊急事態対応策ということで、平成八年以来、私ども内閣官房を中心に関係各省庁といろいろ議論をしております。そして、先生今御指摘のように、大量の避難民が出たというような場合に、それなりの一時的な収容施設といったようなものが必要であるということは、私どももそういう検討の過程で認識をしておるところでございまして、関係の省庁において、それぞれ適当なところがあるかどうかということも含めまして、鋭意勉強はしておりますが、これは、現実にどのくらいの量のものが発生するかということは、今の段階で具体的にだれもこれはわからないことでございます。したがいまして、個々具体的なところまで、どこどこの施設をどう使うというふうなところは当然まだ今後の検討ということになろうと思います。ただ、私どもとして、いろいろと検討しておりますし、さらにそれにつきましては、今後も引き続き勉強してまいっておるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/231
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232・太田昭宏
○太田(昭)委員 何も機密の話じゃないですから、勉強したものがここで開示されるというようなことが本当は必要なんじゃないでしょうか。いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/232
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233・伊藤康成
○伊藤(康)政府委員 手順等、いろいろございます。それから、大量避難民の場合も、必ずしもストレートに、直ちに上陸というようなことにはいかないわけでございまして、そういった手順等につきまして、いろいろなケースについて私どもも勉強しておりますが、まだここでその結論という段階には至っておりませんので、その点を御理解いただきたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/233
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234・太田昭宏
○太田(昭)委員 これがどこのあたりまでどう広がるかというのは、それは周辺事態の規模とか避難民の状況ということなんですけれども、私は、そういうことが何も機密事項ではない、これはまさに国民の権利義務にかかわることだから、そういうことを少しでも出して議論をするということが本委員会の一番大事なことではないかというふうに思っています。
同じようなことで、防衛庁長官、例えば、兵隊が増派されるという事態が起きると思います。そうすると、受け入れがどうなのかとか、基地として場所が使われる、だれが警備をするのか、治安は大丈夫なのか、当然警察がそこではふえるとか、基地従業員をふやさなくちゃいけない、治安の問題、さまざま出てくるというようなことの、ある程度のシミュレーション、そういう研究がされていると私は思うわけなんですが、いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/234
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235・柳澤協二
○柳澤政府委員 今先生が挙げられましたような項目については、実は新ガイドラインの別表でも掲げております。そういうことを念頭に置きながら、ガイドラインをつくりますとき以来の作業はしておるわけでありますが、具体的にどうかというところは、なかなか、膨大な作業も必要でございますし、今、私どものBPCの作業としては現実にそこまで詰まっておるわけではございません。
いずれにしましても、先生が先ほどお触れになりましたように、BPCのみならず、そこの作業も参考にしていただきながら、関係省庁局長会議等の枠組みなどを通じて、私どもとしてもできるだけ早くいろいろな協力のあり方についての大枠をつかみたいと思っておるところであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/235
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236・太田昭宏
○太田(昭)委員 私は、重ねて申し上げますが、論議のためにも、全貌をつかむためにも、国民の理解を得るためにも、例えばBPCの問題、議論状況、それから同時にこの第九条の、今十項目が出ているわけですが、これをさらに具体的に提示して、そして議論に供するということが非常に大事だと思います。その点、重ねて要求します。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/236
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237・野呂田芳成
○野呂田国務大臣 先ほど来御説明申し上げておるところでありますが、日米相互計画の内容は、国民の権利義務にかかわるかあるいはかかわらないかに関係なく、計画についての検討の具体的な内容については緊急事態における日米の対応ぶりにかかわってくるものでありまして、事柄の性格上、その内容について対外的に明らかにすることはやはり適当ではないのじゃないかと考えております。
ただし、これらの問題を含めて、周辺事態に対応して我が国が実施する措置は、具体的な事態に即して国益確保の観点から我が国が行う主体的な判断に基づき、周辺事態安全確保法案に従って実施されるものであり、その際、政府としては、基本計画を閣議決定し、その基本計画の中にさような問題も、重要なものは含まれてくるということで、それを国会に御報告し、御議論いただくという手順になってくると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/237
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238・太田昭宏
○太田(昭)委員 民間の協力についてお聞きをしたいと思います。
この周辺事態の際に、民間が協力をする。しかし、今回の法案で一番の問題は、協力する民間の安全あるいは協力規定というものが述べられていないということだと思います。周辺事態における民間の役割、これは周辺事態安全確保法案の第九条第二項に規定があるわけですが、そして十項目示されたわけなんですが、民間がどこまで行けるのか、その活動範囲の規定がないわけですね。どこまで行けるのか。自衛隊は後方地域に限られている。民間も同じということでよろしいですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/238
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239・伊藤康成
○伊藤(康)政府委員 今の先生の御指摘のとおり、第九条二項で、民間に協力を依頼することができるという規定がございます。
この規定に基づきまして、関係の行政機関から民間の方々に、ある意味では地方公共団体も含むわけでございますが、民間の方々にいろいろとお願いをする場合におきましては、当然のことながら、これは基本計画の中でその種類、内容、あるいはまた今先生御指摘の安全にかかわる事項につきましても、重要な事項として示すことを予定しております。このことは、これまでも何度か御答弁申し上げてきたところでございます。
当然のことながら、基本計画の中で示されたところに従いまして関係行政機関の長が行うわけでございますから、それは自衛隊がやらないようなこと、すなわち後方地域を超えるようなことをそこでやれるというようなことを基本計画に書くはずはないのでありまして、また、そのようなことはできないわけでございます。
したがいまして、一般的には領域の中というのが常識でございますが、ごく例外的に公海、公空に及ぶといたしましても、それは後方地域の範囲を超えてお願いをするようなことはないということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/239
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240・太田昭宏
○太田(昭)委員 安全なところでやるということなんですが、問題は、民間が米軍との直接契約、私的な契約になった場合、これが私は問題だと思うんです。ここの点で業者は非常に心配をしている。もちろん、法案上も規定はありません。直接契約の場合でも、公海より先は行くことがないのか、ここを大変心配しているわけですが、重ねて聞きます。いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/240
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241・伊藤康成
○伊藤(康)政府委員 民間の事業者、多分、先生御指摘の場合、運送事業者ということになるんであろうと思いますが、これらが我が国と外国の間の輸送を行っている場合というのは当然あるわけでございます。周辺事態に際しましても、今お願いをしております周辺事態安全確保法案とは関係なく、民間の業者が米軍と契約をするというようなことで、そういう事業を行うということは当然考えられるところでございます。
それを規制する法律は当然ないわけでございますし、また、今のお願いをしている法案もそういうことを規制するというものではございませんから、基本的には、そこの安全の問題というのは、契約を結ぶ運送事業者の問題であろうかと思います。
ただ、政府といたしましては、当然のことながら、そういう周辺事態という事態が起こっておるわけでございますから、安全の確保についての配慮ということを米側にも要請することは当然でございますし、また、必要に応じまして、政府は、民間の運送事業者に対しまして、安全にかかわる情報提供というのは行いたいというふうに考えているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/241
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242・太田昭宏
○太田(昭)委員 それは当たり前のことではなくて、私は、BPCとかSDCあるいは2プラス2、こういうところで明確に議題として出して、そういう要請をしてもらいたい、こう思います。いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/242
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243・柳澤協二
○柳澤政府委員 協力のあり方ということで幅広く議論すべきものだと思っております。特に御指摘のような点は、これは自衛隊と米軍の非常に現場的な議論というよりは、より政策的なといいましょうか、そういう側面も加えた場での御議論をいただくことになると思いますし、そのBPCの議論も、節目節目にはSDCあるいはSCCに上げて、必要な指示もいただくようになっております。そういう過程を通じて、今先生の挙げられた点等についても、必要に応じて米側も含めて議論されていくことになるだろうと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/243
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244・太田昭宏
○太田(昭)委員 当然そういう言い方になるんでしょうけれども、私は、議論をするところで、安全確保ということについてしっかり要請をし、また話し合いをしていただきたいと思います。
民間の中でも特に危険が伴うのは米軍の軍事物資輸送ということ、既にこれは日常的に行われているということが最近の報道でもさまざまされているところでありますけれども、この民間の軍事物資輸送がいかに危険であるか、政府の認識は、私はちょっと乏しいのではないかというように思います。
野呂田長官は答弁で、「民間に危害が加わるようなことは万々ないもの、こういうふうな前提で考えている」と、二月十五日、我が党の佐藤茂樹委員の質問に答えておりますが、この根拠は一体何でしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/244
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245・野呂田芳成
○野呂田国務大臣 累次お答えしているところでありますが、民間輸送事業者に対して輸送協力を依頼する際には、現に戦闘行為が行われている地域とか、あるいはそのおそれがある地域の輸送を依頼することは想定しておらないところであります。したがって、民間輸送業者の安全の確保について問題が生ずることは考えられないと申し上げているところであります。
危険があれば民間業者は協力をする義務はないのでありますから、そこは柔軟に対応することもあると思います。私どもは、そういう危険が想定されるところに依頼をするなんてことは全く考えていないところであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/245
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246・太田昭宏
○太田(昭)委員 私は、その思想を、政府が間に立ってやるということについて、長官は、安全が確保され、また安全が確保されないところには行く必要はないんだということを明言された。それは、直接契約ということにおいても使用者側にその思想性というものを明確に言っていく必要があると思いますが、この点は担保されるでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/246
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247・野呂田芳成
○野呂田国務大臣 民間輸送業者がみずからの判断で、またみずからの利益のために行う業務について、例えば外国まで輸送してはならないといった規制を行うことは考えていないところであります。
また他方、情報の提供ということであれば、政府が必要に応じて民間輸送業者に安全に係る情報提供を行うことは当然であります。
先ほど申したとおり、民間事業者は、みずからの判断でみずからの利益のために行う業務でありますから、したがって危険であると思えば断ることの自由は担保されていると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/247
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248・太田昭宏
○太田(昭)委員 民間の使われている方に聞いてみますと、安全だということを言ってもらうよりも、危険なら危険ということを明確に言ってもらった方がいい、こういうようなことを言っています。私は、それは正直な気持ちであろうというふうに思うんです。
それで、例えば事態が急変します、後方地域が狭まる、既に船は出ていた、急に帰ってこいと言われてもすぐには戻れない、そのうち戦闘に巻き込まれる、被害が出る、こういうことも当然あるのではないかということを思うわけです。特に湾岸戦争のときは、気象情報でさえも満足に受信できなかった、情報統制もある、こういう話があるわけなんですが、技術的な面も含めてですが、ある程度こういうことの担保というものを私はする必要があるというふうに思っております。それについて再度お答えをいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/248
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249・野呂田芳成
○野呂田国務大臣 民間運送事業者の安全の確保については、先ほどから申し上げておりますとおり、万全を期して行うつもりでありますが、法的な担保はないのかというお尋ねにお答えすれば、法案の第四条では、基本計画において「国以外の者に対して協力を求め又は協力を依頼する場合におけるその協力の種類及び内容並びにその協力に関する重要事項」を定めることとされており、この規定に基づき安全確保のための配慮事項を基本計画に盛り込んで閣議決定することを考えているわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/249
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250・太田昭宏
○太田(昭)委員 直接契約については、なかなかそれは規制するわけにはいかない、また手が届かないというわけですが、使用者の安全の責任ということも当然あるし、今言った、政府が間に入って米軍から受けて民間という、間に立つということについては危険性というのはないものだということにしっかりやりたいということになりますと、これは民間は、今度は民間の話になるわけですが。
そこで、運輸大臣、危険が生じないところへ輸送を依頼すること、まあそれはあり得るかもしれない、しかし安全確保のためのマニュアルを提示するということも含めて努めるというような答弁を先般されたような気がしますが、どんなマニュアルとか、どういうことをされようとしているのか、特に安全という、直接契約も含めて、そこを担保するということは私は非常に必要なことだと思いますが、いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/250
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251・川崎二郎
○川崎国務大臣 まず、基本計画に盛り込まれて、あっせんという形で米軍が使用する場合、また防衛施設庁が間に入って契約をする場合、この二つを基本的には想定いたしております。そのときには、基本計画に定め、その定める作業の策定中に基本的に民間事業者と話し合いを行い、最終的に行ってもらうときにはマニュアルを渡すということになります。
委員が御心配いただいております、当初不測の事態は起こり得ないという地域が、後で変化したらどうなるんだということであります。
そこで、当然、そういったものにも基本的に配意しなきゃならない。輸送中の適時適切な連絡体制の確保に関する事項、輸送中に危険の可能性ありと連絡を受けた際の行動に関する事項、輸送を実施する際の警備に関する事項、輸送物資の安全性の確認に関する事項、安全に関する事業者の判断により届けられなくなった、そうすると経済的不利益をこうむることになる、その場合は国が担保するよ、こんなことも決めておかなきゃならないだろう。
いずれにせよ、米軍との契約において留意すべき事項、こういうことをすべてマニュアルにして、お願いをする場合はきちっとしていきたい、こう思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/251
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252・太田昭宏
○太田(昭)委員 少し具体的にお話しをいただいたと思いますが、民間は、朝鮮半島の危機に際して、朝鮮半島まで行かされるのではないか、こういう懸念もあります。また、公海上の境界線で、いわゆるロングサイドが実際に行われるか、こういうことも心配をしています。聞くと、そんなことはあり得ないというようなこともありますが、一つ一つ、私はないならないということを答えてもらいたいのですが、周辺事態法の第四条第二項の七、「対応措置の実施について地方公共団体その他の国以外の者に対して協力を求め又は協力を依頼する場合におけるその協力の種類及び内容並びにその協力に関する重要事項」を基本計画に定めるということなんですが、ここに安全が確保されるということを私は記載するということが非常に大事だと思いますが、これを要求します。いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/252
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253・伊藤康成
○伊藤(康)政府委員 民間業者の輸送の安全の問題につきましては、防衛庁長官あるいは運輸大臣からも具体的に御答弁をいただいておるところでございまして、基本計画の中の重要事項というのは、まさに今御答弁がありましたようなところの基本的な部分、安全に関する基本的な部分についての指針を重要事項として書き込むというふうにいたす方針でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/253
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254・太田昭宏
○太田(昭)委員 書き込むということですね。そうですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/254
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255・伊藤康成
○伊藤(康)政府委員 はっきり申し上げなかったかと存じます。失礼いたしました。
書き込むということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/255
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256・太田昭宏
○太田(昭)委員 朝鮮戦争のときに、民間輸送業者が朝鮮半島に物資輸送をした。私は、ここの民間輸送業者の危険性の認識、安全性の確保を政府は真剣に考えないと、とても民間業者の抱く不安、危険性を払拭できない、協力ということを要請しても、これはなかなか協力できないということになってしまうのではないか。また、そこで、使用者側と働く者との間のぶつかり合いというようなものが非常に変な形で出るのではないかというふうに思います。
イラン・イラク戦争のさなか、一九八五年二月十八日の夕方に、コンテナ船アルマナック号が国籍不明の戦闘機から攻撃を受けて、その船には二十五人の日本人が運航していて、操機長の藤村憲一さんという方が、倒れたクレーンの破片を頭に受けて即死をしています。中立国船舶でありながら、死んでいる事実があるわけですね。今度は中立国ではありません。向こうからいきますと、当然、戦争当事国とみなされてくるということになりますから、もっと危険なことだと思います。
また、イラン・イラク戦争のときに、ペルシャ湾安全航行官民連絡会議という安全航行のための会議が適宜行われたと聞いております。危ないときには船はペルシャ湾には出なかった。それでも、今申し上げたように、死亡者が出た。しかし、日本のエネルギー補給を断つわけにはいかないという使命感で、船員の方々が危険を承知で航行を続けたという事例がございます。船が見つからないよう明かりを消して、そしてペルシャ湾を航行したときがあったと。あるいはまた、米国が一緒について守るということも検討されたそうですが、かえってねらわれるからやめておこうという、こういう経緯もあったと聞いております。
やはり私は、民間輸送業者の方々が安心できるような危機管理を法的に担保する方法が非常に大事だと思いますが、最後になりますが、重ねてこれを要求します。いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/256
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257・野呂田芳成
○野呂田国務大臣 今委員が例示的に挙げられた戦争というか動乱におきましては、ルールがなかったからいろいろな問題が起こったかと思います。私どもは、したがって、周辺事態が起こった場合にきちっとその安全が担保できるようなルールを考えたいということで、このガイドライン法案を提案して対処しようとしているわけでございます。
九条二項に基づき民間業者に対し協力を依頼する場合には、先ほどから申し上げているとおり、およそ不測の事態が起こり得ない、危険性がないという状況においてこれを行うものであり、安全確保のための配慮事項を基本計画に盛り込んで閣議決定をするとともに、事態の変化等について最新の情報提供を行うなど、安全について万全を期していきたいと考えております。
また、民間業者の安全確保の手段の一つとして、政府から米軍に対し安全の確保についての配慮を厳しく要請することも考えなければいけないと思っております。
なお、米軍としても、輸送契約に係る物資等が安全に輸送されることは当然必要でありますから、我が国の民間業者に支援を依頼する際には、安全の確保について当然配慮がなされて依頼するものと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/257
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258・太田昭宏
○太田(昭)委員 国連決議の問題について一問だけ確認をし、また、申し上げたいことがございます。
船舶検査のときに国連決議を外すという論議があります。答弁をいただいておりまして、旗国主義との関連からも国連安保理決議がある方がよい、こういう答弁が重ねてなされておりますが、私は、国連決議は外してはならない、こう思います。
むしろこれは、例えば朝鮮有事、そういう場合、これは日米韓というこの体制の方がはるかにそれは動きやすいかもしれない。しかし周辺事態、あるいはアジアの中の日本という観点に立ちますと、アジアの一員として理解を得ていく、そうしたアジア全体の合意形成というようなことが非常に大事だ。理解が得られないまま突っ走るということは、これは周辺事態で、日本有事ということではありませんから、そういう中ではかえって反発を買う。中国も含めて合意を形成することが、私は日本の、アジアの平和と安全には欠かせない、そういう意味ではこれを外してはならない、各国の十分な理解を得て行動する場合には国連決議は当然あった方がよい、緩めてはならない、重ねてこういうふうに思いますが、いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/258
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259・高村正彦
○高村国務大臣 周辺事態安全確保法案における船舶検査活動につきましては、周辺事態に際してこのような活動を実施する際に、船舶の検査を要請する国連安保理決議があれば、国連憲章第二十五条により国連加盟国は自国の船舶が検査を受けることを受認しなければならないことから、旗国の同意を改めて確認することなく公海上において他国の船舶を検査することができることとなります。このことから、周辺事態安全確保法案では、国連安保理決議の要請があることを前提としたわけであります。
また、周辺事態に際し、我が国は、我が国の平和と安全に影響を与えている事態の速やかな収拾に日米間の協力のもとで努めていくわけでありますが、その際には、我が国が行う船舶検査活動を初めとする種々の活動に対し周辺国の理解を得ていくことは極めて重要な課題であると考えております。国連安保理決議に基づく船舶検査活動であれば、議員御指摘のように、アジア諸国の理解もおのずと得られるものと考えられます。
念のために申し上げますと、仮に日米韓三カ国で合意して船舶検査をやろうじゃないかと言ったとしても、旗国主義との関係で中国の船を検査することはできないということは、これは念のために申し上げておきたいと思います。
いずれにいたしましても、政府としては、国会において十分な議論を尽くしていただいた上で、周辺事態安全確保法案等が国会での審議を経て早期に成立または承認されることを強く期待しているわけであります。どうかよろしくお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/259
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260・太田昭宏
○太田(昭)委員 この特別委員会の冒頭で、我が党の遠藤委員の質問に対しまして、周辺事態というものの例示として四つの例示がされました。そこで、この四つ、もう時間がありませんから申し上げませんが、一、二、三、四という四つは、これはアンドではなくてオアだと思いますが、オアで間違いないですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/260
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261・高村正彦
○高村国務大臣 もちろん、オアであります。オアというのはちょっと、「または」でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/261
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262・太田昭宏
○太田(昭)委員 これでまた、当然、それぞれが分断、四つ分かれた上でも自動的にいくわけではないということだと思いますが、例えば第一項目、武力紛争が発生してもイエスもあるしノーもある、発生したら周辺事態ということではなくて、当然イエスもあればノーもあるということを担保するメカニズムというか、そういうものが大事だと私は思いますが、この点はいかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/262
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263・高村正彦
○高村国務大臣 これは当然、武力紛争が発生している場合であっても、我が国の平和と安全に重要な影響を与える場合でなければなりませんし、そのことは我が国が主体的に判断をするわけでございます。
それで、周辺事態安全確保法案において、ある事態が周辺事態であると判断されて、法案に基づき特定の対応措置を実施する必要があると認められる場合には、内閣安全保障・危機管理室を中心として基本計画案を策定し、安全保障会議における審議を経て閣議の決定を求めることになる、そういうことをして、主体的に我が国の平和と安全に重要な影響を与える場合かどうかということもきっちり審査をするわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/263
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264・太田昭宏
○太田(昭)委員 この四つの例示ということの中で、一月の予算委員会の冒頭に、インドネシアは想定されないという発言をされて、総理が訂正されたという場面がありました、私はそれを聞いておりましたが。
逆に言うと、インド洋は想定されないがインドネシアは想定される、いや、想定されることもあり得るということかと思いますけれども、私は、想定されづらい、考えにくい、こういう答弁が常識的ではないかと思いますが。インドネシアです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/264
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265・高村正彦
○高村国務大臣 どこかで線を引いて、その中は想定されやすい、その後は想定されにくいということではなくて、だんだん遠くになれば少しずつ想定されにくくなっていく話なんだろうと思います。ですから、インドネシアの場合にどの程度想定されにくいかというのは、どこかと比較して、インド洋と比較すればそれは想定されやすいのかもしれませんし、もっと近くのところと比べると想定しやすいのかもしれませんし、もちろん距離的あれだけではなくていろいろな要素で決めるわけでありますから、かなり離れたところは想定されにくい、想定されないということはかなりはっきり申し上げられますけれども、インドネシアぐらいだと、想定されにくい、やすい、なかなか言いにくいところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/265
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266・太田昭宏
○太田(昭)委員 あのベトナム戦争というのは周辺事態、あのという言葉をつけておきますが、あのベトナム戦争は周辺事態と言えるのか言えないのかということについてはいかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/266
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267・高村正彦
○高村国務大臣 過去の事例について一々、これは周辺事態であったかなかったかと言うのは大変難しい話でありまして、それは、ある実際の場合に、我が国が対応をとるべきだというときに周辺事態というのを認定するという仕組みになっておりますので、そういうことを一々言うことは必ずしも適切ではない、こう思っているわけであります。
当時、日本政府はどういうふうに判断していたかということだと、明確な言葉はちょっと忘れましたけれども、当時、国会答弁で、たしか我が国の平和と安全に直ちに影響があるとは思えないというようなことを当時の政府が答弁しておりまして、それはそのとおりだろうな、こういうふうな感じが私もいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/267
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268・太田昭宏
○太田(昭)委員 それでよくわかります。
最後に一問だけ、事前承認という問題です。
承認は、シビリアンコントロールという面は当然あるわけですが、出ていったはいいが、まだいいのか悪いのかわからない、激論が国内でされているという中で、自衛隊が危険な行動に使命を持って命を賭すというわけにはいかない。行ってこいといって国民がお墨つきをつけるという権威づけ、エンドースという面が非常に大事だと私は思います。したがって、事前承認ということが極めて大事だと思いますが、この点はいかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/268
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269・野呂田芳成
○野呂田国務大臣 これもまた累次同じ答弁をいたしておって申しわけないところでありますが、この法案に基づき実施する活動は、武力の行使を含むものではない、国民の権利義務に直接関係するものではない、迅速な決定を行う必要がある、また、これらの活動は何ら強制力を伴うものではないが、例えば、自衛隊法に定められている海上警備行動や要請による治安出動は警職法の武器使用の規定が準用されているというようなことで、強制力を伴う活動であるにもかかわらず、国会承認が必要とされておりません。
このように、私どもは、活動の性格とか他の法律との均衡といった点を勘案しますれば、この法案における基本計画については、事前であれ事後であれ、必ずしも国会の承認を得る必要はないということで、基本計画を遅滞なく国会に報告して、国会の御議論を踏まえつつ対応措置を実施していくことが適切と考えて、この法案を出したところであります。
いずれにしましても、周辺事態に際しての国会の関与については、国会において十分御審議いただき、その御議論を踏まえた上で、政府としては誠実に対応してまいりたいと考えているところであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/269
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270・太田昭宏
○太田(昭)委員 最後に一つだけ、確認だけしておきますが、機動性、迅速性、そして武力行使を伴わないということから、承認は不要ということが政府の言い分だと思いますが、別に聞こえてくる話では、オペレーション上難しいという話をする方がいらっしゃいます。例えば、後方地域支援のこの部分はいいが、この部分はだめだというような、そんなことを決められたのでは困るんだということを言う方がいらっしゃるのです。
それはそうかもしれないけれども、そういうことならば、国会で議論するという余地など、全く最初から話にならないというわけになるのですが、この点のオペレーション上ということについては、どういう考え方を持っていらっしゃるのでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/270
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271・柳澤協二
○柳澤政府委員 この話が今、国会でもいろいろ御議論されておりますが、先生おっしゃいましたように、それに基づいて実際に自衛隊に任務が与えられましたときに、それは自衛隊という組織の特性からいきましても、できるだけその任務の内容、範囲が明確に決められていることがぜひとも必要であるということはそのとおりだと思っております。
したがいまして、それを自衛隊の活動といいましょうか、自衛隊が与えられた任務に基づく活動として見た場合に、ある命令の一部分に不確定な要素があったりすることはやはり大変ぐあいが悪いかと思いますので、そういう意味で、任務の範囲、内容は明確に与えられることはぜひとも必要であると思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/271
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272・太田昭宏
○太田(昭)委員 終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/272
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273・山崎拓
○山崎委員長 これにて太田昭宏君の質疑は終了いたしました。
次に、佐藤茂樹君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/273
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274・佐藤茂樹
○佐藤(茂)委員 私は、この特別委員会で三度目の質問に立たせていただくのですが、周辺事態法案の内容に入ります前に、最初に、コソボの難民支援策につきまして政府の見解をお伺いしたいと思います。
コソボの難民の状況につきまして、昨日だったと思うのですが、調査のために派遣されておられました外務省の秋元東欧課長を団長とする派遣団が帰国をされて、多分もう外務大臣も報告をお聞きになっていると思いますし、また、その前日だったと思うのですけれども、緒方貞子国連難民高等弁務官からも小渕総理に要請の電話があり、また報道によると、外務大臣にも何か電話があったというように報道で聞いておるのですが、そういうことも踏まえまして、特に昨日の派遣団、行ってきてどういう報告を外務大臣にされて、その上で、まだ具体的に結論は出ていないのかもわかりませんが、もし追加の支援策について今後政府として大体考えておられる方向性等が決まっているのであれば、この場をおかりして御答弁をいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/274
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275・高村正彦
○高村国務大臣 我が国は、コソボにおいてアルバニア系住民に対する攻撃が続いており、これまでに五十万人を超える難民が周辺諸国に流出していることを重大な懸念を持って受けとめているところでございます。
我が国としても、このような状況に迅速に対応することが国際社会の責務であると強く認識するものでありまして、このような観点から、コソボの難民、避難民に対して、支援策として、既に、食糧、医薬品、生活必需品を提供するために国連難民高等弁務官事務所、UNHCR等を通じた千五百万ドルの支援を決定し、またテント一千張りを同事務所に譲渡したわけであります。
以上に加え、昨日、マケドニア及びアルバニアの現地情勢、現地の難民の状況、現地のニーズ等の調査を終えて帰国した外務省の現地調査団の調査結果を踏まえ、我が国としてさらなる貢献の可能性を早急に検討してまいりたい、こういうふうに思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/275
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276・佐藤茂樹
○佐藤(茂)委員 今検討してまいりたいという意思表明なんですが、念のために、この件、あと確認したいのですが、やはり向こうの状況というのは、きのう秋元さんの記者会見の模様も出ておりましたが、危機的な状況は脱したけれども悲惨な状況は続いているということで、一刻の猶予も許さぬ状況は変わらないのだろう。ですから、早急というのを大体どのあたりをめどに考えておられるのか、もし御答弁できるのであれば、ちょっと聞かせていただきたいのですが。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/276
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277・高村正彦
○高村国務大臣 難民の状況、今委員が非常に的確にまとめられたような、危機的状況を脱したけれどもまだ悲惨な状況が続いていると。そして、難民だけでなくて、その難民が流出したマケドニア、アルバニア、この二国、この国自体がもともと豊かな国ではありませんので、それが大変なことになっている。こういう状況の中で、先ほど申し上げた日本の支援、国際機関のアピールがある前にしたわけでありますが、その後、アピールもありまして、そして、できるだけ早く状況を踏まえながら決めたいと思いますが、できれば四月から五月にかけての連休に、私自身がマケドニア、できればアルバニアも含めて足を運んできたいと思っておりますが、遅くともそれまでにはまとめられればいいな、こういう感じを持っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/277
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278・佐藤茂樹
○佐藤(茂)委員 今、外務大臣、ゴールデンウイークに行かれるという意思表明もされましたし、できればその前にまとめられればいいなということもいただきましたので、ぜひ手おくれにならないような形でお願いしたいなというように思います。
それで、きょうは、周辺事態法案に関してこれから何点かお聞きしたいんですが、この委員会の内外において修正ポイント等についていろいろなことが論議され始めまして、そのことがマスコミをにぎわしておるんですが、私の方からは、そういうことよりも、今まで余り議論されてなかった部分を中心に、大臣、何点かをお尋ねしたいと思います。
それで、最初に、今回三つの自衛隊の活動が周辺事態法案の中で定義をされているんですが、私は、この三つの全く角度の違う活動というものを一つにしたことが果たしてよかったのかどうかということも、いろいろ議論された上でこの周辺事態という枠の中に閉じ込められたんだとは思うのですけれども、しかし、逆に、その周辺事態法案の中に入れたことによって、国内法的には、日本が周辺事態と認識するような事態でなければ、この捜索救助また国連安保理の決議に基づく船舶検査活動、そういうものもできないという、そういう、逆に言うたら枠をはめたことになるわけです。
しかしながら、捜索救助とか船舶検査活動というのは、これはガイドラインの中でも我が国が主体的に行う活動の中にも入っているとおり、日本が、周辺事態という事態、そういう認定する事態が起こっている起こっていないにかかわらず、国際的な要請として、例えば、捜索救助であれば人道的見地から要請される場合もある。さらには、船舶検査活動であれば国際社会への貢献という観点から要請される場合もある。そういう場合にどう対応していくのかということがなかなか見えない部分があります。
特に、周辺事態と認定できない場合において、第三国またアメリカ、そういうものも含めて、日本にそういう二つの活動を求めてきたときに、日本は、今回この周辺事態法案が通ったとしても、そういう二つの活動を周辺事態でないときにできるのかどうかという、その問題が残っているかと思うのです。
そこで、一つ一つ確認の意味でお尋ねをしたいんですが、一つは捜索救助活動なんですけれども、これは平成十年、一年前ですけれども、四月十七日の安全保障委員会で、当時の久間防衛庁長官に何点かお尋ねをしたことがございます。要は、自衛隊法八十三条の災害派遣と今回の捜索救助とどう違うのかという部分をまず一点お聞きしました。
そのときに、周辺事態では、戦闘行為による遭難が頻発するようなときを想定しているので、戦闘行為に携わった遭難者を救助することを目的とするという、そこがもう全然目的が災害派遣とは違うんだ、そのことを改めてきちっと整理して、新たに明示的に根拠を設けようという趣旨なんだという答弁をそのとき政府側としてはされたわけですね。これが一点。
そのときにお尋ねしたのが、今質問した内容と同じなんですが、周辺事態で行うとされているこの捜索救難活動なんですけれども、この周辺事態以外の捜索救難はそうしたらどういう根拠法に基づいてやるのだ、そのことをお尋ねしたときに、防衛庁長官は、「八十三条及びとにかく自衛隊法で規定されている各条項に従ってしか自衛隊は行動できないわけでございますから、そういう枠内で行動するということでございます。」そういうように答弁をされているのですね。
そのとき、さらっとそういうふうに答弁されているのですけれども、周辺事態で戦闘行為のときに遭難が出た、そういう人たちを救うために、新たに明示的に設けようとして、今回、捜索救助活動というものを自衛隊の任務として、任務というか活動として付与したにもかかわらず、周辺事態以外で同じような行動を行うときにはもともとの災害派遣の自衛隊法八十三条を使うのです、そういう御答弁かと思うのですけれども、今も防衛庁としてはそういう見解であるというように認識してよろしいでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/278
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279・野呂田芳成
○野呂田国務大臣 隊法の八十三条の「天災地変その他の災害」とは、通常、自然災害のみならず火災、爆発、船舶の沈没、航空機の墜落等を含み、戦闘に係る遭難者の捜索救難についても、船舶の沈没、航空機の墜落といった現象そのものに着目して、同条に基づき行うことが一律に排除されているわけではないと考えます。
しかしながら、例えば、戦闘行為によって遭難した戦闘参加者を念頭に置いた活動として、戦闘行為によって遭難する戦闘参加者の発生を予期し、遭難の発生前にあらかじめ部隊を展開させておくようなことは同条の範囲を超えることから、周辺事態においてはかかる活動も行い得るよう、周辺事態安全確保法案により、新たな根拠規定を設けたところであります。
したがいまして、御質問の、周辺事態と認められない場合については、自衛隊法第八十三条に基づき、同条の範囲において捜索救助を実施することは可能であると思いますけれども、これを超えて、周辺事態安全確保法案に規定する後方地域捜索救助活動と同等の活動を行うことはできない、こういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/279
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280・佐藤茂樹
○佐藤(茂)委員 今可能ではあるけれども、これを超えてこの周辺事態法案の捜索救助活動と同等の活動を行うことはできないという。どこの部分が境目なんですか。同等の活動を行うこと——要するに、戦闘行為の遭難者が頻発するようなときには八十三条で何ぼ読もうと思っても読めない、そういう見解だというように聞いてよろしいですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/280
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281・野呂田芳成
○野呂田国務大臣 先ほども申し上げたところでありますが、例えば、戦闘行為によって遭難した戦闘参加者を念頭に置いた活動として、戦闘行為によって遭難する戦闘参加者の発生を予期し、遭難の発生前にあらかじめ部隊を展開させておくようなことはできない、こういうふうな例示を申し上げたわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/281
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282・佐藤茂樹
○佐藤(茂)委員 そうすると、日本が周辺事態として認識しなくても、例えば、これは仮定の話ですけれども、アメリカがかかわるそういう紛争で、日本がどう見ても周辺事態とは認定できない地域であるとか事態、そういうときにアメリカがかかわって遭難者が出た。それも、今の御答弁からいうと遭難者がもうあらかじめ出ることが予期された、そういうときには、日本は、何ぼ自衛隊法の八十三条があるといっても、そういうところには捜索救助の協力として行けないのだ、そういう見解だというようにとらえてよろしいですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/282
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283・野呂田芳成
○野呂田国務大臣 累次説明しておりますとおり、周辺事態は、我が国の平和と安全に重要な影響ある事態であります。また、周辺事態の認定は、我が国が主体的に国益確保の見地から判断するものでありますから、我が国が周辺事態と認定しないことについてやるということは考えられません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/283
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284・佐藤茂樹
○佐藤(茂)委員 続いてもう一つ、船舶検査活動についてお聞きをしたいんですけれども、同じように、日本が周辺事態として認定できない場合にもかかわらず、国連安保理で経済制裁が決議され、日本に船舶検査活動への参加の要請が来た、そういうものが国連としてされた場合に、国際社会に貢献するという見地から、日本は現行の国内法で果たしてその国際社会の要請に応じられるような、そういう船舶検査活動に参加することができるのかどうかということを確認の意味でお聞きしておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/284
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285・野呂田芳成
○野呂田国務大臣 この法案に基づき実施されます船舶検査活動は、我が国の平和と安全に重要な影響を与える周辺事態への対応措置として行われるものであり、ある事態が周辺事態に該当すると認められない場合には、本法案に基づいて船舶検査活動を実施することはできないと考えます。
一方、かかる事態において、国連安保理決議により船舶検査を行う旨の要請が我が国を含む国連加盟国に対して行われた場合については、経済制裁の実効性を確保するための活動として行う検査の目的が、自衛隊法第八十二条に規定する海上警備行動の海上における人命、財産の保護または治安の維持に合致するか否かについてはなお慎重な検討が必要と考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/285
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286・佐藤茂樹
○佐藤(茂)委員 今、国際的な要請等を中心に考えたんですけれども、もう一つ確認しておきたいのは、いろいろ議論されておりますが、ガイドラインでも言われている部分として、周辺事態が悪化して日本有事に発展した場合にどうなのか。
現行の自衛隊法では、当然自衛隊法の七十六条の防衛出動というのが発令される、これはもう間違いないんですが、そのときに、この周辺事態法に基づく、例えば米軍に対する後方地域支援活動あるいは後方地域捜索救助活動、船舶検査活動のいずれかを行っていた場合に、これは、一つは、日本有事の事態というのは周辺事態とは違うので、停止せざるを得ないというお考えなのか。それとも、この後方地域支援活動のごく一部は、例えば日米安保条約及び日米地位協定に基づいて、そういうところに規定されている部分についてはできるんだ、さらに、後方地域捜索救助活動は、先ほど来議論しておりますが、自衛隊法の八十三条でできるんだ、さらに、船舶検査活動は、これは国連決議にもともと基づいているんだから、検査活動をしていた場合は、日本有事に発展してもそのまま検査活動はできるんだ、そういう御見解なのか、改めて確認をしておきたいと思いますが、多分防衛庁と外務省と管轄が違うので、それぞれ御答弁をいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/286
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287・野呂田芳成
○野呂田国務大臣 この法案は、何度も申し上げているとおり、我が国周辺の地域における我が国の平和及び安全に重要な影響を与える周辺事態に際して我が国が実施する措置、その実施の手続その他の必要な事項を定めるものであります。我が国に対する武力攻撃に発展した場合には、この法案によりこれに対応することはできないと考えます。したがって、このような場合には、我が国に対する武力攻撃への対応として、当法案に基づく後方地域支援、後方地域捜索救助活動及び船舶検査活動を実施することはできないと考えます。
しかしながら、そのような場合であっても、現行制度がありますから、現行制度の要求を満たす限りにおいて、これに基づく米軍への支援等を実施することができることは当然であると考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/287
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288・佐藤茂樹
○佐藤(茂)委員 これは、有事法制の議論というのはしたくないのですけれども、現行制度でできる部分はやるんだというときに、切りかえというのは具体的にどうなるのかという問題なのですね。
先ほど言いましたけれども、自衛隊がそれぞれの活動を行っている、それを一たん終わってから新たに法に基づいて動き出すということなのか、それとも、具体的な現場の活動としては、もう周辺事態で行っている例えば三つの活動をそのままずっと続けるままである、ただ法理的に根拠法が変わったんだ、そういうとらえ方になるのか、その辺についてだけちょっと確認をしておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/288
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289・佐藤謙
○佐藤(謙)政府委員 大臣から御答弁しておりますように、この三つの活動は周辺事態に際しての活動でございますので、その周辺事態が有事に発展したという場合には、それを根拠にして行うことはできないということでございます。ただ、そういう事態でありましても、自衛隊法等によって根拠づけられるものはやり得るだろうというのは、これは当然でございます。
それから、今先生お話のございました、周辺事態に際して周辺事態安全確保法に基づいてやっている活動がそのまま横に推移するような、そういうイメージのお話があったかと思いますが、先ほどもこれも大臣から御答弁いたしましたように、例えば後方地域捜索救助活動にいたしましても、これは周辺事態安全確保法で考えているような活動が自衛隊法八十三条でできるわけではございませんので、それは違うものとして根拠づけられ、また違う対応のものとして行われるということになろうかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/289
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290・佐藤茂樹
○佐藤(茂)委員 それで、ちょっと後方地域捜索救助活動のことを最初にやりましたので、運輸大臣お見えですので、確認だけをしておきたいのですが、今回の周辺事態法案の例えば第六条を見ると、これは後方地域捜索救助活動の自衛隊の実施要領しか規定されていないのですね。しかしながら、平時では、もう皆さん御存じのとおり、広大な海で、捜索救助であるとか海難の救助、これを迅速的確にやっているのは海上保安庁でありますし、さらには、お聞きするところによると特殊救難隊であるとか潜水士、そういうものも派遣してまで、特殊で高度な技術を使って海難救助をされている、そういうノウハウであるとか実績を蓄積されている部分もあるわけです。
ですから、今回、周辺事態において活動する地域は後方地域でありますし、その後方地域というのは日本の領海も当然含むわけですし、活動の内容からしても、海上自衛隊の救難飛行艇だけではなくて、例えば海上保安庁の巡視船なども活用して捜索救助をするということは、特にそういう遭難者が頻発して出てくるような場合には、当然海上保安庁のそういうノウハウとか行動、活動というものが活用されてしかるべきではないのかな、そのように私は認識するのです。
そこで、運輸大臣にお聞きしたいのは、海上保安庁のそういう海難救助あるいは捜索救助の任務というのは、平時だけを想定されているのか、それとも周辺事態も含めて行い得るものであるという認識の上に立っておられるのかを含めて、この周辺事態において、特に海上保安庁、どういう働きをされようとされているのか、お尋ねをしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/290
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291・川崎二郎
○川崎国務大臣 海上保安庁の役割でありますけれども、多分消防、警察も同じであろうと思いますけれども、一般論として、海上保安庁が行う捜索救助活動は、救助対象を限定することなく行われるものであるため、通常の捜索救助活動等の結果として、戦闘行為によって遭難した戦闘参加者を人道的見地から救助することは排除されていないと考えております。
一方で、周辺事態に際して我が国が講じる措置、それは周辺事態安全確保法において定められる。関係行政機関においては、現行法令及び基本計画に基づき必要な措置を実施するものとされている。したがって、そういう想定があれば、そういう形で書かれれば、我々は分担をしてやるということもあり得ると思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/291
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292・佐藤茂樹
○佐藤(茂)委員 ですから、きょうは内閣安全保障・危機管理室にちょっと確認の意味でお聞きしておきたいんですが、今回の法案では、本当に自衛隊の三つの活動についてきちっと書かれていますが、今の海上保安庁の活用の部分については、多分、そういう第六条なんかには記載されていないけれども、第八条の「関係行政機関による対応措置の実施」の部分として周辺事態で基本計画に盛られて、それに従って実施されることもあり得る、そういうふうにとらえているんですが、確認の意味でお尋ねをしておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/292
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293・伊藤康成
○伊藤(康)政府委員 ただいま運輸大臣からも御答弁ございましたとおりでございまして、基本的には先生がおっしゃるとおりでございますが、法案の第二条の第四項に、関係行政機関の長は、前条、第一条でございますが、その目的を達成するため、対応措置の実施に関し、相互に協力するものとするという規定が置かれておるわけでございます。これを受けまして、いわば第八条で先生御指摘の条文がある、そして、必要であれば、海上保安庁についてもこの関係行政機関としてお願いをすることがあるということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/293
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294・佐藤茂樹
○佐藤(茂)委員 続いて、後方地域支援について何点かお尋ねをしたいんですが、今まで余り論議されていなかった部分で、第三条の三項の部分をお尋ねしたいんですが、特にその後半の部分です。
ちょっと読みますと、第三条というのは「後方地域捜索救助活動及び船舶検査活動は、自衛隊の部隊等が実施するものとする。この場合において、後方地域捜索救助活動又は船舶検査活動を行う自衛隊の部隊等において、その実施に伴い、それぞれ当該活動に相当する活動を行う合衆国軍隊の部隊に対して後方地域支援として行う自衛隊に属する物品の提供及び自衛隊による役務の提供は、別表第二に掲げるものとする。」
それで、特にこの後半の部分についてお聞きしたいんですが、具体的にどういうことが書いてあるかというと、要するに、米軍が自衛隊が行うような後方地域捜索救助活動であるとか船舶検査活動に相当するような活動をしていた場合に自衛隊は後方地域支援を行うんだ、それは別表第二に基づいて行うんだ、別表第二に掲げられていることを行うんだ、そういうことなんですが、別表第二の内容を見ると、言葉は同じ後方地域支援でも、別表第一と違いがあるわけですね。
その違いの大きな部分というのは、別表第一というのは備考三があるのに、別表第二には備考三がない。備考三というのは何かというと、「物品及び役務の提供は、公海及びその上空で行われる輸送を除き、我が国領域において行われるものとする。」これが通常の後方地域支援なんですね。
それが別表第二にないということは、米軍の後方地域捜索救助活動であるとか、さらに船舶検査活動に相当する活動に対して自衛隊が後方地域支援を行う場合には、輸送だけに限らず、別表第二に掲げられているすべての種類の活動、すなわち補給、輸送、修理及び整備、医療、通信、宿泊、消毒、こういうすべての活動が、我が国領域という地域的限定を超えて公海及びその上空で行われることがあり得る、逆に言うたらそういうように読めるかと思うんですけれども、そういう理解でいいのかどうか、御答弁をいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/294
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295・佐藤謙
○佐藤(謙)政府委員 基本的には、今先生がおっしゃったようなことだと思います。
若干御説明させていただきますと、この第三条の第三項の後段で書いてございますのは、これは、自衛隊が後方地域捜索救助活動なり船舶検査活動をしているときに、そのいわば現場におきまして米側もそれに相当するような活動をしている、そういう場合に、現場でのたまたま生じたいろいろな過不足をそこで融通し合う、こういう性格のものでございます。
したがいまして、当然のことながら、この別表二に挙げられておりますのは公海上で行われることが考えられるわけでございまして、そのためにこの備考の三が入っていない。もちろん、公海上と申しましても、後方地域支援でございますから、後方地域という、そういう範囲内で行われるものであるということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/295
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296・佐藤茂樹
○佐藤(茂)委員 そうしますと、公海上でお互いの過不足を補うためにやるんだということでございましたら、それに関連してお聞きしたいんですが、これは法案から少し離れて、新ガイドラインに基づいてお尋ねをしたいんですけれども、新ガイドラインでは、例えば今の二つの活動、捜索救難のことについては、「日米両国政府は、捜索・救難活動について協力する。」そういうことが書いてありますし、また、船舶検査活動についても、「日米両国政府は、各々の能力を勘案しつつ、適切に協力する。そのような協力には、情報交換、及び国際連合安全保障理事会決議に基づく船舶の検査に際しての協力が含まれる。」そういうようにあるわけですが、今の周辺事態法の第三条第三項後段のケースの逆のようなケース、それは想定されているのかどうかということが聞きたいわけです。
要するに、日本の自衛隊が後方地域捜索救助活動とか、さらには船舶検査活動を公海上でしている場合に、その部隊に対して、逆に米軍が後方支援として米軍に属する物品であるとか役務を提供する、そういうことは可能なのかどうなのか、そういうことをきちっと想定されているのか、逆のケースをお尋ねしたいと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/296
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297・佐藤謙
○佐藤(謙)政府委員 これは、今回一緒に提出しておりますACSA協定を改正する協定の中におきまして、米側から日本側に対しましてそういった過不足の融通をし合うということが定められているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/297
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298・佐藤茂樹
○佐藤(茂)委員 今、要するに、今回の改正ACSAに基づいて、当然、日本側がやっている二つの活動に対して米側が物品あるいは役務の提供を行うということはあり得る、そういう答弁だというように理解いたしました。
続いて、もとに戻りますが、別表第二のことでお尋ねをしたいんですが、この別表第二の備考二に、「物品及び役務の提供には、戦闘作戦行動のために発進準備中の航空機に対する給油及び整備を含まないものとする。」そういうように書いてあるんですが、私は、米軍が日本と同様のそういう捜索救助活動であるとか船舶検査活動をしているときには戦闘作戦行動ということはあり得ないのではないのかな、そういう感じがしていまして、ということは、この戦闘作戦行動のために発進準備中の航空機に対する給油及び整備は含まないものとするということを別表第二にあえて書く必要はないのではないのかな、そういうふうにとらえたわけですが、そういう戦闘作戦行動中ということが米軍が同じような二つの活動をしているときにあり得るのかどうか、確認の意味でお尋ねしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/298
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299・佐藤謙
○佐藤(謙)政府委員 第三条の第三項の後段でございますけれども、そこのところで、「この場合において、後方地域捜索救助活動又は船舶検査活動を行う自衛隊の部隊等において、その実施に伴い、それぞれ当該活動に相当する活動を行う合衆国軍隊の部隊」、こう書いてございます。
実は、例えば船舶検査活動にいたしましても、私どもは、その内容をこの法案におきまして非常にかっちり定めているわけでございます。それから、後方地域捜索救助活動もしかりでございます。
そういうことからいたしますと、基本的に、我が方のそういった活動に相当する活動でございますけれども、その内容が、我が方がこの法律できちっと規定しているようなそういうものと一致するのかどうかというのはまた明確でないところがございますので、念のためにこういった規定を置いてあるということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/299
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300・佐藤茂樹
○佐藤(茂)委員 念のために入れたということでございますが、私は、ここは米側と詰めた話をされていないと思うのです。米側が国際法にのっとったそういう船舶検査活動をやる場合であるとか捜索救助ということだけを本当に想定されているなら入れる必要はないのであろう、そのように思うわけでございますが、これ以上言っても変えられないでしょうから、次に行きます。
そこでもう一点、後方地域支援で、既に質問もあったわけですが、ちょっと確認をしておきたいことなんですけれども、戦闘作戦行動のために発進準備中の米軍の航空機に対する給油、整備は含まない、そういうように今回されているのですけれども、この前の答弁でも、戦闘作戦行動のために発進準備中の米軍の船舶というのは含まれている、そういう御見解でございました。
これについては、一月二十八日の衆議院の予算委員会で大森法制局長官が、戦闘作戦行動のために準備中の米軍航空機に対し自衛隊が給油や整備を行う物品役務の提供について、「憲法上慎重な検討を要する問題であるということまでの共同認識を得て、それ以上の、絶対クロだというところまでの断定はしてないわけでございますが、私どもの立場では、今もやはり憲法上の適否について慎重な検討を要する問題であるという認識には変わりございません。」そう答弁されて、合憲違憲の判断というのは非常に難しいんだと、航空機に対してはされていた。
それが、同じ戦闘作戦行動のために発進準備中であったとしても、航空機が艦船にかわったらこれは認められるんだという御判断なんですが、航空機が艦船にかわったら、武力行使の一体化等、合憲違憲のその判断、どこが変わるのかということを改めて確認の意味でお尋ねしておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/300
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301・大森政輔
○大森(政)政府委員 ただいま委員が指摘された答弁というのは、平成十一年一月二十八日の衆議院予算委員会の赤松正雄委員の質問に対する私の答弁部分であろうかと思います。手元の資料を見ておりましたら、大体正確にそのような発言をしていることは間違いございません。
そこで、飛行機について、航空機についてはそのように考え、船についてはそのように考えないのはなぜかということでございますが、これは、戦闘作戦行動に発進準備中の航空機に対する給油及び支援につきましては、個々の作戦行動のたびに必要なもののみを給油するという態様で行われるということであろうと思います。したがいまして、個々の戦闘行動との密接な関係があるのではないかということから慎重な検討を必要とするというふうに考えたわけでございますが、これも既に別の機会で述べていますように、アメリカの方ではそのような支援の要請がないということがはっきりいたしましたので、私どもとしてはそれ以上の検討を行うことはしなかったということでございます。
それに対して米軍の艦船に対する給油、整備につきましては、その態様が比較的長時間にわたる艦船の行動全体に対して行われる。すなわち、艦船の燃料等の積載量が一定水準を下回った場合等に行うものであって、個々の戦闘行動と密接な関係があるものとは考えられないので、その点で飛行機と艦船とは、個々の戦闘行動との関係という観点からは差があるのではなかろうかということで、航空機については先ほどのような考えを述べ、船についてはそのようなことを考えるには至らなかったということでございます。
〔委員長退席、中山(利)委員長代理着席〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/301
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302・佐藤茂樹
○佐藤(茂)委員 今のは一般論として理解できるわけでございますが、個々の戦闘行動との密接性という点で、例えばある船舶、艦船が地上部隊の上陸作戦の一環として武装した兵士、これだけを目的として積んでいく、そういう艦船も具体的には作戦上考えられると思うんですね。そういう場合に果たしてどうなのか。
というのは、これは事前協議の主題関連で、戦闘作戦行動というのはいかなるものかということを昭和四十七年に当時の高島条約局長が答弁されているんですが、その中の一つに、「ここに戦闘作戦行動とは何かということにつきまして、わがほうの見解を申し上げます。」と書いていまして、イのところに、
わが国の施設・区域を発進基地として使用するような戦闘作戦行動の典型的なものとして考えられるのは、航空部隊による爆撃、空挺部隊の戦場への降下、地上部隊の上陸作戦等であるが、このような典型的なもの以外の行動については、個々の行動の任務・態様の具体的内容を考慮して判断するよりほかない。
という形で書いていまして、確かに飛行機の場合は航空部隊による爆撃ですから、個々の戦闘行動がそのまま相手に武力行使に至る、そういうことも考えられる。その並列上で「地上部隊の上陸作戦等」ということで書いてあるわけですね。
当然、これは解釈として、事前協議の対象にもなる、そういうように言われているわけでございますが、その船舶が、地上部隊の上陸作戦の一環として武装した兵士を積んでいる、その目的のみにこの船舶の活動というものが使われる、そういう場合においても直前の給油、整備というのは認められるという御判断なのか、確認をしておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/302
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303・大森政輔
○大森(政)政府委員 先ほど述べましたように、艦船に対する給油、整備、これは我が国領域で行われるというものでございますが、これは、その態様が比較的長期間にわたる艦船の行動全体に対して行われるという特性を有するから、個々の戦闘作戦行動と密接な関係に立つというものではない。その理由は、ただいま委員が御指摘になりましたようなケースについても妥当するのであろう、だから、結論はそれによって変わりは生じないであろうというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/303
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304・佐藤茂樹
○佐藤(茂)委員 その比較的長期間にわたるというのは、極めて議論があるところであろう、そういうように私は思うわけですが、これ以上やっても詰まらないと思うのでやりません。
続いて、防衛庁長官がいらっしゃらなくなったのですが、そうしたら、改正ACSAについて先にお尋ねをしておきたいと思います。
既に今までのACSAで日米共同訓練、PKO、さらに人道的な国際救援活動についての物品または役務の提供が認められたものに対して、周辺事態に対応する活動にも適用し得るように改正されたというのが今回の趣旨だと思うんです。
そこで、今回、新たに改正として盛り込まれている、このACSA上で言う「周辺事態に対応する活動」というのは、具体的にどういう活動を指すのか。具体的に、自衛隊で今言われているような三つの活動だけを指すのか、それとも三つの活動に限らず、周辺事態にとられる対応措置として行われる自衛隊の活動全般を指すのか、そのことについてまず御答弁をいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/304
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305・高村正彦
○高村国務大臣 三つの活動を指しているものでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/305
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306・佐藤茂樹
○佐藤(茂)委員 そうすると、三つの活動ということは、具体的に言うと、ガイドラインにありますNEOですね、非戦闘員を退避させるための活動における協力については改正ACSAには特に明記されていないので、例えば在外邦人を救出するために、また輸送するための現地でのそういう物品とか役務の提供というのは全くできないんだ、そういう御判断だというように理解してよろしいでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/306
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307・竹内行夫
○竹内政府委員 お答え申し上げます。
改正されたACSAの第四条の第四項でございますけれども、その中におきまして、日本国の関連法律に従って自衛隊としましては後方支援、物品、役務を提供し、それから受け取る場合でございますけれども、当該法律によって認められた日本国の自衛隊の活動に関し後方支援、物品または役務を受領するものと了解されるということでございますので、自衛隊に関しましては、今大臣が答弁申し上げましたとおり、周辺事態安全確保法によって認められた三つの活動ということが対象になるわけでございます。
したがいまして、周辺事態安全確保法におきましては、いわゆる非戦闘員の退避活動というのが法律の中で新たに認められたということではございませんので、先生御指摘のとおりそれは対象にならないということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/307
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308・佐藤茂樹
○佐藤(茂)委員 これが多分最後の質問になるかと思うんですけれども、これは現行法上から決められていることなんですが、要するに、いろいろな議論がマスコミ等でも言われているのに、日米間で提供し合ったものを、役務も含めて、物品も含めて第三国、例えば米韓連合軍の韓国とか、仮定の話ですけれども、そういうものに使用される可能性があるのかないのかというところで、やはりACSAに基づいてちょっとお尋ねをしておきたいんです。
ACSAの第七条なんですけれども、この協定に基づいて提供される物品または役務については、提供当事国政府の書面による事前の同意を得ないで、一時的であれまたは永続的であれ、いかなる手段によっても受領当事国政府の部隊以外の者に移転してはならないこと、要するに、第三国にそれぞれの政府の書面による事前の同意を得ないで移転してはいけないんだ、そういうことがきちっと第七条に規定されているわけです。
しかし、逆から言うと、日米両国政府の書面による事前の同意があれば、日米以外の他国の部隊に提供された物品とか役務が移転されてもいい、そういうようにも読めるわけですね。そういう余地があるのかどうか、お尋ねをしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/308
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309・竹内行夫
○竹内政府委員 改正されましたACSA第七条に関するお尋ねでございますけれども、この改正協定に基づきます物品、役務の提供、これは、先ほど来先生が御指摘されましたとおり、自衛隊及び米軍の間での共同訓練、それからPKO活動、さらには人道的な国際救援活動、または周辺事態に対応する活動に必要な物品または役務を提供し合うものということとされております。
したがいまして、通常の場合におきましては、米軍が自衛隊から提供されました物品等を第三者に移転する、そういう必要が生ずることはなかなか想定しにくいというのが実態であろうかと思います。
他方、特別の事情によりまして米軍が第三者への移転を希望いたしまして、我が国に事前の同意を求めてくるというようなことが仮にございました場合に、政府としては、自衛隊と米軍との間の緊密な協力関係を促進し、さらには日米安保条約の円滑かつ効果的な運用とか、それから国際連合を中心とします国際平和のための努力を積極的に推進するということに寄与するかどうかというようなことを勘案いたしまして、それがこの協定のそもそもの趣旨でございますので、この協定の趣旨をも勘案いたしまして、具体的事例ごとに対応していくという考えでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/309
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310・佐藤茂樹
○佐藤(茂)委員 特別な事情がある場合は具体的事例ごとに勘案していく、あり得るという御答弁をいただきました。
以上で質問を終わります。ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/310
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311・中山利生
○中山(利)委員長代理 これにて佐藤君の質疑は終了いたしました。
次に、達増拓也君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/311
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312・達増拓也
○達増委員 達増拓也でございます。
予定した質問に入る前に基本的なところをまず確認しておきたいんですけれども、防衛庁長官だと思うんですけれども、この周辺事態安全確保法において、後方地域支援また後方地域捜索救助活動に自衛隊の艦船等が赴く場合に、後方地域というのは、そこで実施される活動の期間を通じて戦闘行為が行われることがないと認められるところですから、赴く艦船を護衛艦ですとかあるいは航空部隊で護衛するとか制空権を確保するとか、そういうことはしないで、輸送艦なら輸送艦が単独でその場に赴く、そういうぐあいになるわけでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/312
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313・柳澤協二
○柳澤政府委員 現に戦闘行為が行われておらず、またその活動の期間を通じて戦闘行為が行われると認められることのない地域を対象にしてございますので、基本的には護衛のための特段の部隊編成ということはないだろうと思っておりますが、ただ、その地域がどのようになるかということに対するケアといいますか、監視の手だては当然必要だと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/313
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314・達増拓也
○達増委員 最後のところ、若干含みのある答弁ではあったのですけれども、基本的に、この周辺事態安全確保法案においては、周辺事態というのは一種非常に安全で、武力の行使を日本側がしなければならないような事態には決してならないような、そういう世界でのことという前提でつくられているわけでありますけれども、果たして周辺事態というのがそんなに安全なことなのだろうかということをちょっと検証させていただきたいと思います。
そのために、日米新ガイドラインの方の文章に戻って検証させていただきたいのですが、新ガイドラインは、まず「平素から行う協力」という平時における協力、そして「日本に対する武力攻撃に際しての対処行動等」、これはまさに有事、日本に対する武力攻撃が起こったときですから、日本の固有の自衛権を発動するような事態における日米の協力、そして三番目に「周辺事態の協力」、そういう三段構えになっているわけであります。
ただ、その三者というのは明瞭に分かれているわけではなく、その協力のやり方を決める、段取りを決める際には明確に区別して決めているわけでありますが、実態としてその三つの事態が完全に分かれているかというと、そうでもないということがガイドラインの文章の中で既に指摘されているわけです。例えば、「日本に対する武力攻撃に際しての対処行動等」という見出しのもとで日本に対する武力攻撃が差し迫っている場合について書かれている文章の中で、「周辺事態の推移によっては日本に対する武力攻撃が差し迫ったものとなるような場合もあり得る」というふうに書いてあるわけであります。
まず最初の質問ですけれども、「周辺事態の推移によっては日本に対する武力攻撃が差し迫ったものとなるような場合」とはどういう場合なのでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/314
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315・野呂田芳成
○野呂田国務大臣 周辺事態は、現実の問題として、その推移いかんによっては我が国に対する武力攻撃が差し迫ったものとなるような場合もあり得るところであります。ガイドラインにおいては、我が国の防衛のための準備に際しては、このようなことを念頭に置き、周辺事態の対応等との密接な相互関係に留意すべきであることを記述しておるわけであります。
御質問の「周辺事態の推移によっては日本に対する武力攻撃が差し迫ったものとなるような場合」とは、このように、周辺事態がその推移によって我が国に対する武力攻撃が差し迫ったものとなり、日米両国が整合性のとれた共同対処行動を確保するために必要な準備を行うことが適当となるような事態となるような場合があり得ることを言っているものであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/315
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316・達増拓也
○達増委員 同じような文章が「指針の下で行われる効果的な防衛協力のための日米共同の取組み」という見出しの下で、次のような記述があります。「周辺事態が日本に対する武力攻撃に波及する可能性のある場合」云々に「適切に対応し得るようにする。」ここでは「周辺事態が日本に対する武力攻撃に波及する可能性のある場合」というのが出てくるんですけれども、これもまた、どういう場合なのかを説明していただきたいと思います。
さきに説明いただいた「武力攻撃が差し迫ったものとなるような場合」と同じことなのか。あるいは、「波及する可能性のある場合」というのは、もう既に差し迫った事態、差し迫っている場合になっていることを示しているようにも読めるんですけれども、この点、いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/316
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317・野呂田芳成
○野呂田国務大臣 御質問の「周辺事態が日本に対する武力攻撃に波及する可能性のある場合」と「周辺事態の推移によっては日本に対する武力攻撃が差し迫ったものとなるような場合」との関係についてでありますが、それぞれの記述されている文脈が異なることから、それぞれの包含関係について一概に述べることは適当ではないと思いますが、あえて申し上げれば、双方とも、周辺事態はその推移いかんによっては日本に対する武力攻撃に波及する可能性があることを念頭に置いた記述であると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/317
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318・達増拓也
○達増委員 新ガイドラインでは、日本に対する武力攻撃が差し迫っている場合にはそれに対して準備を行うということが書いてありまして、これは恐らく、平時とは異なる、日本側においても反撃力を持った部隊の動員であるとか展開とか、そういうことを言っているんだと思います。
もし、そういう武力攻撃が差し迫った場合、差し迫っている場合も周辺事態の中に含まれるようであれば、当然、そうした準備も周辺事態の中でやっていかなければならなくなると思われるわけですけれども、さらにわかりやすいケースが新ガイドラインの文章の中にはっきり書いてあります。
それは、今読んだ「指針の下で行われる効果的な防衛協力のための日米共同の取組み」について書かれた部分ですが、「周辺事態が日本に対する武力攻撃に波及する可能性のある場合」の後「又は両者が同時に生起する場合」と書いてありまして、つまり、周辺事態と日本に対する武力攻撃が同時に生起する場合とをここに書いていると思うんですけれども、そういう場合というのは、一体どういう場合を指しているんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/318
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319・野呂田芳成
○野呂田国務大臣 指針における「日本に対する武力攻撃が差し迫っている場合」とは、我が国に対する武力攻撃に対して、日米両国が整合性のとれた共同対処行動を確保するために必要な準備を行うことが適当であるような事態を指すものでありまして、このような事態と周辺事態が併存して、同時に生起することはあり得ると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/319
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320・達増拓也
○達増委員 差し迫った場合と同時に生起する場合もある。武力攻撃そのものが周辺事態と同時に生起する場合というのもあるんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/320
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321・佐藤謙
○佐藤(謙)政府委員 ある時点におきまして、一方において周辺事態に該当する状況が、また一方において我が国に対する武力攻撃が発生している状況と、それが併存しているという状況はあり得ると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/321
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322・達増拓也
○達増委員 そうしますと、我が国に対して武力攻撃が発生している状況で、それと、恐らく地域的にちょっと別のところというんでしょうか、周辺事態なるものがあって、そこに戦闘が行われないような後方地域というのが存在する、我が国に対する武力攻撃が行われている一方で、我が国の輸送艦なりが護衛なしで入っていけるような後方地域というのが同時に存在する、そういうケースというのもあり得ると考えられているのでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/322
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323・佐藤謙
○佐藤(謙)政府委員 後方地域の定義からいたしますと、我が国領域並びに現に戦闘行為が行われておらず、かつ、そこで実施される活動の期間を通じて戦闘行為が行われることがないと認められる我が国周辺の公海及びその上空の範囲ということでございますから、併存している場合であっても、今申しましたような定義に該当する地域があれば、まさに後方地域としてこの活動を実施し得る地域となるということだと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/323
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324・達増拓也
○達増委員 我が国に対する武力攻撃が行われ、我が国として自衛権を発動してその攻撃を排除する、反撃するようなことを一方で行うか、あるいは、もうそれをやろうとしているときに、この周辺事態安全確保法案に基づいて、いわば丸腰の自衛隊の艦船等を後方地域支援だといって送り出すというのは、かなり無理のあることなのではないかというふうに思います。
武力攻撃が実際発生していない、武力攻撃が差し迫っている場合というのが周辺事態と同時に発生する場合があり得ると防衛庁長官おっしゃいましたけれども、武力攻撃がいつあるかわからない、日本に対する武力攻撃がもう差し迫っている、すぐにでも起きるかもしれないという場合に、周辺事態だからということで、後方地域支援だからということで、そこに護衛とか制空権の確保とかしないままで輸送艦等を送り出すことになる、必ずそうしなきゃならない、今の周辺事態安全確保法案ではそうなっているわけですけれども、それは必ずそうしなきゃならないということなのでしょうか。武力攻撃が実際起こった場合に、反撃するのに必要な武装をさせていかなくていいのでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/324
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325・野呂田芳成
○野呂田国務大臣 周辺事態と日本に対する武力攻撃が差し迫っている場合が併存して同時に生起する場合には、一方で、周辺事態に対する対応措置を実施しながら、他方で、我が国に対する武力攻撃に備えて必要な準備を行うことがあり得ると考えております。
なお、このような場合において実施する準備の内容については、具体的な状況に応じて異なるものでありますから、一概に申し上げることは困難でありますけれども、武力攻撃の対処またはそのための準備に支障のない場合に、即応態勢を強化した部隊を一時的に周辺事態対応措置の実施に充てることはあり得ると考えております。
〔中山(利)委員長代理退席、委員長着席〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/325
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326・達増拓也
○達増委員 この周辺事態安全確保法案の審議の仕方全体に内在する問題だと思うのですけれども、あくまで周辺事態ということだけを考えて、新ガイドライン全体は、日本に武力攻撃があった場合、またそれが差し迫っている場合とともに周辺事態というのを考えているわけでありまして、まさに新ガイドラインを実効あらしめるための日米協力ということを考えていく場合には、周辺事態の中にこもって、武力行使にならない、九条に違反しないというところだけにこもって議論していると、その全体像を見失って、かえって実効ある日米協力ができなくなるのではないか。
この法案についてですけれども、そういう全体像が、ほかに、例えば武力行使があった場合についてのいろいろなことを決める法案ですとか、いわゆる有事立法ですね、そういう有事立法とか、あるいは準備の段階の動員とか、差し迫った場合に何をしなければならないかを定める法律、そうしたものもあって、それとの関連でこれであれば納得いくのかもしれませんが、そういうのがなしにこれだけがこういう形で出てくると、やはり不安を禁じ得ない。不安をなくすためには、やはりこの法案の修正というものを視野に入れた議論をしなければならないのではないかというふうに考えているわけであります。
さて、次に、新ガイドラインというのが周辺事態以外のところも視野に入れたそういう全体的な日米の安全保障協力なのだという観点からすれば、最近、周辺事態よりももっと、まさに差し迫ったといいますか、急いで対策を講じておかなければならない分野がこの新ガイドラインの中にあるのではないかと思うわけであります。
それは、「日本に対する武力攻撃がなされた場合」という見出しのもとに書かれている中で「その他の脅威への対応」として、ゲリラ、コマンドー攻撃等日本領域に軍事力を潜入させて行う不正規型の攻撃、いわゆるゲリコマと呼ばれているそういう脅威への対応。そしてもう一つ、弾道ミサイル攻撃への対応。このゲリコマ、不正規型の攻撃と弾道ミサイル攻撃への対応というのは、ガイドラインができたのは、実は平成九年九月のことでございますから、もう二年ぐらいたってしまっている。二年前はこの二つについてそれほど深刻な感じはしなかったのですが、今は非常に深刻な感じがするわけであります。
質問ですけれども、新ガイドラインでは、対応するぞと書いてあるわけですが、この対応は今すぐ実行できるような状況になっているのでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/326
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327・野呂田芳成
○野呂田国務大臣 御案内のとおり、日米間では日米安保条約の体制のもとで、平素からさまざまなレベルで安全保障に関する情報交換や意見交換を行うとともに、共同訓練を実施し、また共同作戦計画についての検討を行っているところであります。
ゲリラ、コマンドー攻撃や弾道ミサイル攻撃がされる場合には、日米間で関連の情報交換等の協力が想定されるところでありますが、これは平素から行っているところであります。特に、弾道ミサイルの発射に関する情報については、先般の北朝鮮によるミサイル発射の際においても米側からより速やかな情報提供が行われているところであります。
なお、我が国に対する武力攻撃に対しての日米共同対処につきましては、引き続き不断の検討を実施する必要がありますが、我が国に対する武力攻撃に対して適切な日米協力を実施し得るよう、今後とも各種の取り組みに遺漏なきを期してまいりたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/327
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328・達増拓也
○達増委員 今現在対応できないとはっきり言ってしまうと、それは今ならやれるぞと世界に向かって宣言するようなものですから、それは決して政府としては言ってはいけないことだと思うのです。ただ、完全に準備されているのかという不安はどうも残るわけでありまして、やらなければならないことを進めるためにはある程度自覚しておかなければならないと思うのですが。
我が国に対する武力攻撃がなされた場合の日米共同の作戦等については、まず調整メカニズムをつくり、共同計画を検討し、準備のための共通の基準というものをつくり、そして共通の実施要領をつくる、そういうことがこの新ガイドラインの中にきちっと書いてあるわけでありますけれども、これらはもう既にできているのか、あるいは今どういう状況になっているのか、伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/328
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329・野呂田芳成
○野呂田国務大臣 ガイドラインにおいては、計画についての検討を行うとともに共通の基準及び実施要領等を確立するために、御質問のとおり、包括的なメカニズムを構築することとされております。
これを受けまして、昨年一月二十日、コーエン米国防長官来日の際に開催された閣僚級会合におきまして、包括的なメカニズムの構築を了承するとともに、その包括的なメカニズムで共同作業を開始することが合意され、今その作業を開始しているところであります。
また、指針におきましては、緊急事態に対して日米おのおのが行う活動の具体的な調整を行うための調整メカニズムを平素から構築することとされており、現在、そのメンバー、具体的方法等について検討中であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/329
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330・達増拓也
○達増委員 このゲリラ、コマンドー等不正規型の攻撃については、今国民の間で不安が高まって、また、どのように日本として対処するのかという議論が沸き上がっているところだと思うので、もう少し伺います。
新ガイドラインでは、そうした攻撃に対して、事態に応じて米軍の適切な支援を得るということで、いざとなったら米軍と協力するということが書いてあるわけですけれども、日本国内に入り込んでの不正規型の攻撃に対し、米軍がどういう協力をし得るのか、それについて伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/330
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331・野呂田芳成
○野呂田国務大臣 まず最初に、ちょっとゲリラ、コマンドー攻撃についての国内の問題について整理したいと思いますが、我が国に対する武力攻撃に該当しない外部からの侵入者による不法行為につきましては、第一義的には、御高承のとおり、警察機関の任務であります。自衛隊は、警察機関では対処ができない場合に治安出動により対処することとされております。
また、ある事態が我が国に対する武力攻撃またはそのおそれがある場合に該当する場合には、自衛隊が防衛出動により対処することとなるわけであります。
ガイドラインにおけるゲリラ、コマンドー攻撃に係る記述は、日本に対する武力攻撃がなされた場合の作戦行動として記述されておるところでありますが、自衛隊が防衛出動により対処することを前提としているものであります。
米軍の支援が必要になるのはどのような場合かというお尋ねでありますが、指針においては、ゲリラ、コマンドー攻撃等に関して米軍の適切な支援を得ることとされておりますけれども、このゲリラ、コマンドー攻撃というのは、我が国に対する武力攻撃であって、我が国領域に軍事力を潜入させて不正規型の攻撃をすることを意味しており、通常、これらの攻撃は大規模ではなくて、自衛隊が実施する作戦により対処可能であると考えております。しかしながら、不正規型であるという攻撃の特性上、日米が共同して対処した方が効果的な結果を得られる場合もあり得ることから、一般的な意味での米軍の支援について記述しているところであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/331
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332・達増拓也
○達増委員 今の質問をもう少し明確にしたいので、さらに質問します。
わかりやすい例で、「宣戦布告」という小説がかなり国会議員にも読まれているのですけれども、あれでやはりまさにこういうゲリラ、コマンドー、不正規型の攻撃というのがあって、小説の中ですけれども、相手がどういう武装をしているかよくわからないわけですね。それで、最初は警察の特殊部隊を出すわけですけれども、実は相手が対戦車ミサイルのようなものを持っていて、警察官は吹き飛ばされたり、もう全然歯が立たない。普通の警察の取り締まりとして行う、また、自衛隊でも治安出動として行う、さらに自衛隊の防衛出動として行う、こうしたところの線の引き方、これはどのような形でやっていくことになるんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/332
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333・柳澤協二
○柳澤政府委員 一般的な考え方として申し上げますと、国内の治安の維持という事態であって一般警察力で対処できない場合には治安出動ということになろうと思いますけれども、これが例えば明らかに外国の非正規部隊による攻撃というものであれば、基本的には防衛出動をもって対処すべきものだと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/333
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334・達増拓也
○達増委員 一つ注文をしたいと思うのですけれども、警察で対応できるかどうかということについて、まず実際に警察官をかからせて、対応できなかったら自衛隊にするというやり方をすれば当然犠牲者が出てしまうので、そこは事前のいろいろな情報収集活動等、侵入者、それは不審船、船であったりあるいは不審人物であったり、いろいろな情報から総合的に判断して、警察ではかなわないということが最初の段階からわかっていれば、そのときはもう世論を気にせず、早い段階で治安出動なり防衛出動なり、日本側に犠牲者を出さない形で早期に事態を収束できるような形で対応していただきたいと思います。
もう一つ、ゲリラ、コマンドーと並んで新ガイドラインに書かれている弾道ミサイル攻撃についてですけれども、新ガイドラインを読むと、ゲリラ、コマンドーの方には自衛隊は主体的に対応云々と書いているのですが、弾道ミサイル攻撃については自衛隊が主体的に云々ということは書いていないのですね。一方で、米軍は「打撃力を有する部隊の使用を考慮する。」というふうに書いてありまして、今のところ、弾道ミサイル攻撃への対応については、結局、主体的に何かできるのは米国しかないのかと読めるような書きぶりになっているのですけれども、この点いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/334
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335・野呂田芳成
○野呂田国務大臣 お話のとおり、弾道ミサイル攻撃に関しては、日米はこれに効果的に対処するシステムを有していないところであります。また、現在の自衛隊は敵基地攻撃を目的とした装備体系になっておらず、これに適した装備品を有していない、こういう状況であります。かかる状況を踏まえつつ、新たな日米防衛協力のための指針では、弾道ミサイル攻撃に関して自衛隊及び米軍は密接に協力して調整する、また、米軍は日本に対し必要な情報を提供するとともに、必要に応じて打撃力を有する部隊の使用を考慮するとされているところであります。
他方、防衛庁としましては、弾道ミサイル発射に関して状況が緊迫した場合には、現在の体制に加え、情報収集活動を強化し、また、仮に我が国に向けた弾道ミサイルが発射された際には、関連情報の公表等に努め、落下状況及び被害の発生状況を速やかに確認するとともに、状況に応じて防衛出動等により適切に対処することとなります。
今申し上げたように、弾道ミサイル攻撃への対応がすべて米国頼みということではないということも御理解いただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/335
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336・達増拓也
○達増委員 私の質問は以上で終わりますけれども、新ガイドライン、おととしに既にできているものでありまして、それで周辺事態以外にもいろいろとやらなければならないこと、きちんとさせておかなければならないことはまだまだたくさんあるわけでありますので、周辺事態安全確保法、かなり審議も煮詰まってきていると思いますので、最終的な仕上げを急いで早期成立を期すべきということを申し上げ、終わりたいと思います。ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/336
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337・山崎拓
○山崎委員長 これにて達増君の質疑は終了いたしました。
次に、児玉健次君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/337
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338・児玉健次
○児玉委員 新ガイドラインの別表、「後方地域支援」、「衛生」とあります。この衛生というのは旧軍隊の用語だ、そう聞いておりますが、医療ですね。「日本国内における傷病者の治療」、「日本国内における傷病者の輸送」、「医薬品及び衛生機具の提供」、これらは国、自治体、民間と区別をせず、日本の医療機関、施設を総体的、全体的に対象にしている、こう私は思いますが、いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/338
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339・佐藤謙
○佐藤(謙)政府委員 このガイドラインの別表、協力項目例の中の衛生の分野についてでございますが、それにつきましては、それを担うものといたしまして、国それから地方あるいは民間、特にそれは限定して記載はございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/339
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340・児玉健次
○児玉委員 そのとおりと答えたらいいじゃないですか。
そこで、病院への戦傷病兵の受け入れですが、国、自治体、民間の順に実施するというよりは、まず自治体、民間病院が受け入れて、そして自衛隊病院等は、事態の拡大、急変に備えて病床を確保しておく可能性の方が強い、私たちはそう見ています。
湾岸戦争に例をとれば、例えば後送病院は四百床。集中治療が四十床、中間治療は百六十床、最小限治療が二百床。これは湾岸戦争における米国議会に対する最終報告からですが、別のケースでいえば五百床。日本の病院が病棟単位あるいは病院ごと米軍に提供されるということが当然あり得る。あいているベッドに入れてくれという程度では到底済まない。そのことをまず私は指摘しておきたいと思うのです。
そこで、自治大臣にお聞きしたいのだけれども、自治体が港湾、病院等の公の施設を設置、管理しているのは、広く住民の利用に供して福祉を増進させるためですね。市町村病院事業の設置等に関する条例、これは自治省がおつくりになったものだけれども、この準則の第一条にこう書いてある。「第一条 市(町村)民の健康保持に必要な医療を提供するため、病院事業を設置する。」とはっきり示していますね。住民の利用に支障が出るような独占的、優先的、長期的な使用、これは認められないと思うのですが、どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/340
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341・野田毅
○野田(毅)国務大臣 この問題は午前に伊藤英成委員の御質問にお答え申し上げたんですが、条例によって定められた内容のものについて長期独占的な利用をさせようという場合には議会において三分の二の特別多数を必要とするというのが、ちょっと今手元にありませんが、地方自治法上そういう規定がございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/341
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342・児玉健次
○児玉委員 今あなたが言ったのは地方自治法二百四十四条の二ですね。
肝心な点は何かと言えば、市民の健康保持のために設置された病院なんですから、病院の目的というのはそこにある。その病院を、例えば病棟単位とか病院単位で優先的、長期的に米軍の傷病兵が使うことになる。これは、およそ自治法が予想していない事態じゃないですか。どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/342
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343・野田毅
○野田(毅)国務大臣 ちょっと御質問の趣旨がよくわからないのですが、どうして米軍のために長期独占的に自治体の設置する病院を使用するということを前提とする議論になるのか、ちょっと理解に苦しむところでございます。
したがって、当然のことながら、公立病院、ここで患者受け入れにかかわる協力依頼があった場合、法律上何らの義務が生ずるものではありませんで、一般患者を排除してまで協力に応ずるような義務はないわけであります。にもかかわらず、今の御議論は、一般の住民を排除して、何か戦傷病兵を優先的に受け入れて、しかも独占的に利用させるがごとき、何かそれを前提にした御議論になっているような印象を受けたのであります。
問題は、地方公共団体の長が、協力の依頼に応ずるか否かということについて、事態の緊急性と住民の利用ということとを十分に考慮していただいて、みずからの判断によってお決めいただくということが基本であるということを申し上げておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/343
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344・児玉健次
○児玉委員 大臣が、言っている意味がよくわからないと言いますから、もう少し言いましょう。
防衛庁に聞きますけれども、去年の九月、釧路の市立総合病院、この病院にアメリカ軍の軍医大尉が防衛施設庁の職員を伴って訪れて、そして病院長からレクを受け、かつ集中治療室それから手術室等を視察し、そして実際の手術も見ていったという事実について御承知でしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/344
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345・野呂田芳成
○野呂田国務大臣 承知しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/345
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346・児玉健次
○児玉委員 矢臼別での米海兵隊による実弾射撃が行われる事前の段階で、九月九日の午前、海兵隊軍医のサイデンステッカー大尉が通訳一人と札幌防衛施設局職員を伴って訪れて、さっき述べたようなことがあった。
そこで、自治大臣に申したいのですが、私冒頭言いましたように、あいているベッドが二つあればそこを使わせてくれ、そういうふうな程度の医療協力は大体考えられないですね。
そして、例えば、昨年の七月十六日に、全国知事会が、港湾や医療についての協力の問題も含めて、その具体的内容いかんによっては住民生活や地域経済活動に少なからぬ影響を及ぼすものと懸念されると。まさにそうですよ。
私が言っているのは、この前の湾岸戦争の経験からすれば、後方病院における戦傷病兵の治療というのは、恐らく一般患者との混在という形ではできないでしょうね。日本のあの自治体病院の実態を考えてもらえばいい。例えば、けがをした米兵が、四つあるベッドの中で、二人米兵が入って日本の患者が二人なんということはあり得ないですね。病室が隣り合うということもないでしょう。
日本の病院の洗面所やトイレや風呂、浴場ですね、そういったものの構造などを考えると、恐らく、基地周辺の自治体病院が、あらかじめ何病床について、皆さんが言う周辺事態ということになると、そこのところが確保されて、そしてそこに後送されてきた米軍の戦傷病兵が入る、そういう形になるだろう。
そのとき、自衛隊病院が真っ先というのではないだろう。自治体病院や民間病院が先にあらかじめ引き受けておいて、そして、事態の拡大、急変に合わせて自衛隊病院その他が受け入れていく、こういうふうになる可能性が湾岸戦争の実例からも非常に高いですね。
そこで、自治大臣に私が言いたいのは、こういうとき、一昨日の議論でも、きょうの午前中の議論も聞いておりますけれども、あなたたちは正当な理由がなければという言葉をよく使うけれども、この正当な理由というのは、地方自治法二百四十四条、そこの二で「普通地方公共団体は、正当な理由がない限り、住民が公の施設を利用することを拒んではならない。」こう使われているんですよ。正当な理由がない限り、住民が例えば釧路の市立病院に入院することを拒んではならない、そういうふうに使われているので、正当の理由云々ということについてこの法案に一カ所でも出てきますか、どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/346
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347・野田毅
○野田(毅)国務大臣 この法案に関する、特に九条の適用に関連して、一項、二項ということについての議論があることは御承知のとおりでございまして、九条一項に基づく場合には、関係行政機関の長、国が、いわば地方公共団体の長の持っている権限の行使について協力を求めることができるという世界において、その際には、正当なる理由ということ、それは、その権限のもとになる根拠法令の適正なる運用という角度の中で正当であるか否かということが論議をされるわけでございます。
一方で、今御指摘の、自治体の持っている病院、この病院の開設者としての問題は、これはむしろ、民間の病院あるいは公立病院、似たような立場に立つのであって、そういう意味での権限の行使という世界ではない、私どもはそう考えております。したがって、今の論点というのはちょっと違うのではないかということを申し上げておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/347
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348・児玉健次
○児玉委員 今の議論は、二月の三日、内閣安全保障・危機管理室、防衛庁、外務省、その三者が出した協力項目例の中で2の方に位置づけているというところにあなたが言ったその根拠があるというのは、私もそういうふうに理解していますよ。
そこで、私は実態的な議論をしたいと思って言っているんだけれども、もし、ある地方自治体の病院で、開設者はこの場合地方自治体の長です、地方自治体の長が開設者である病院に数十名の米軍戦傷兵を受け入れるとする。そのとき、実態として、病室の中に混在をしたり、または病床が隣り合うという形で引き受けることがあるか。ないでしょう。病棟単位ということになるはずだ。
そして、アメリカのやり方というのは、先ほどの釧路の矢臼別演習の前に行われた事例でも明らかなように、何か事態が起きたとき、起きた戦傷病兵の数に応じて病床の確保を求めるなんて、そんなことはしないでしょうね。起こり得る事態に対して、日本の自治体病院で、特殊な治療ですから、銃弾創、火傷、そういったものを中心とした軍事医学ですよ、そういうことにたえ得る、しかも、場所が米軍基地や空港、港湾に隣接する、そういう自治体を選んでリストアップして、どの程度の治療能力があるかということはあらかじめ調べて、その上でいうところの基本計画の準備が進む、そうなるはずです。
自治大臣、私が言った、戦傷を負った米兵と日本の平和な市民とが同じ病室で治療するということがありますか、どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/348
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349・野田毅
○野田(毅)国務大臣 これは自治大臣としてお答えすべきテーマであるかどうかはちょっと疑問に思いますが、せっかくの御質問ですからあえて申し上げたいと思います。
先ほど来の御議論、自衛隊病院に収容するというのは一番最後であって、何か、いかにも民間やあるいは公立病院の方が先に、そっちの方から協力要請があるがごときお話、私はそのようには思いません。事柄は逆ではないか、私はそう考えております。
それから、実態論として、大体、言葉の問題もあるでしょうしね。ですから、一般の病棟の中で、外国の人と日本人と同じ部屋の中で治療するということは、実際問題、これは現場の医師なりなんなりの御判断があろうと思いますが、やはりそういう意味で、治療しやすい形のやり方をされるのではないか、私はそう思います。
そして、大事なことは、日本の住民の患者を排除して独占的に利用するということは、一体だれがそのようなことを大前提にしてやることになるのでしょうか。私は、そういうことはちょっと予想できないと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/349
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350・児玉健次
○児玉委員 あらかじめ立てられる作戦計画に応じてどのくらいの戦死者、戦傷病者が出るか、それに応じての医療システムの構築、それはこの後議論をしますので、その上で、私はもう一回自治大臣と議論をしたいと思いますが、今のお話の中で、当然そういうことがあってはならないというので私は理解するんだけれども、現に入院している人たちを排除したり、そういうふうなことは、もちろんこれはやってはならないことで、地方自治の本旨からしてもそういうことはあり得ない、このことは確認しておきましょう。いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/350
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351・野田毅
○野田(毅)国務大臣 それが地方自治の本旨からくるのか、人道上というか、人間として当然の考えであるということから出てくるのか、いずれにせよ、自治体の病院の開設者としての判断の中でそういうような行為が行われるということは私は想定できません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/351
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352・児玉健次
○児玉委員 次に、法案第八条における、関係行政機関の長は、法令及び基本計画に従い、対応を実施するものとするとありますが、まず予想されるのが、その際、国立病院ですね。米軍横田基地に近い国立病院東京災害医療センター、場所は立川市です。平常は三百九十床で、災害発生時九百床。それから、呉港の一角にある、その近くには米軍の秋月、広、川上弾薬庫がありますが、国立呉病院、七百床です。両方とも屋上にヘリポートが設置されて、地域の関係者の間には、周辺事態ということになれば、ガイドラインに従って米軍の戦傷病者受け入れに利用される可能性がある、こういう危惧が広がっていますが、この危惧に対して、厚生大臣はどう答えますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/352
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353・宮下創平
○宮下国務大臣 この病院の種類には、国立、今議論にありました公立、それから私立等がございますが、公立と私立は、病院の開設についてはそれぞれ地方公共団体の権限もございますが、運営等については権限がございません。ただし、国立の場合は、これは直轄でございますから、当然厚生大臣の傘下にあるわけでございます。
ところで、今申された防災の拠点病院でございますが、私どもは災害拠点病院等を全国的に定めておりますが、これは、災害時において重点的に対応し得るためのものでございまして、その中で特に今御指摘になったのは、広域災害医療の拠点としての二カ所を御指定になりました。つまり、東京災害医療センターと国立呉病院でございますが、その二つだけではございませんで、あと八つ追加して十カ所を整備しておりますが、これは、あくまで広域の災害時を想定して設けられたものでございまして、周辺事態に際しての後方支援ということを頭に置いて整備したものではございません。
したがって、いろいろ、御想定の懸念等が示されましたが、現時点で私どもはそのような対応を考えておるわけではございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/353
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354・児玉健次
○児玉委員 今の厚生省の性格ですが、大臣、厚生省の設置法の第四条で、憲法二十五条の文言をそのまま使って、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進を図ることが厚生省の任務であって、そして国立病院は、そういった厚生省の任務を達成するために医療を行い、あわせて医療の向上に寄与することを目的としている。ここからはいわゆる米軍の医療システムに国立病院が加わっていくということは出てこないという点を指摘した上で、先ほど言った問題に入っていきたいと思うんです。
そこで、防衛庁に伺いますが、今度の法案の別表第一、「後方地域支援として行う自衛隊に属する物品の提供及び自衛隊による役務の提供」、第三条の二に基づくものですね。そこで示されている米軍傷病者に対する医療、これは自衛隊に属する各種医療施設、とりわけ自衛隊病院、防衛医科大学などを含む、これらも一定の役割を担うことを予想していると思うんですが、どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/354
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355・佐藤謙
○佐藤(謙)政府委員 自衛隊としての医療活動でございますので、自衛隊病院等を念頭に置いているということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/355
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356・児玉健次
○児玉委員 箇所数とベッド数は幾らですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/356
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357・坂野興
○坂野政府委員 防衛庁の管理しております病院でございますが、自衛隊病院が、まず中央病院一カ所、地区病院十五カ所、計十六カ所でございます。そして、それ以外に防衛医科大学校病院がございます。
ベッド数で申しますと、自衛隊病院が二千十床、防衛医科大学校病院の病床数は八百床ということで、計二千八百十床になります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/357
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358・児玉健次
○児玉委員 別表第一、そして別表第二における「輸送」、この中には米軍戦傷者の後送も対象になっているのではないか。
そして、別表第一の備考三に「公海及びその上空で行われる輸送(傷病者の輸送中に行われる医療を含む。)」とありますが、この輸送には自衛隊のいかなる機材が使用されるのか、その医療に当たるスタッフはどのようなメンバーを予定しているか、お答え願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/358
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359・佐藤謙
○佐藤(謙)政府委員 別表一の備考の三にございますように、「公海及びその上空で行われる輸送(傷病者の輸送中に行われる医療を含む。)」こういうことになっているわけでございます。
また、その機材といたしましては、例えばヘリコプター等も考えられるのではないか、こういうふうに思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/359
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360・児玉健次
○児玉委員 補給艦を含む護衛艦、そして輸送機、今あなたが言ったヘリコプター、そういったものが想定されていませんか。どうですか。
もう一つ、医療スタッフはどうなのかということについて答えがない。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/360
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361・柳澤協二
○柳澤政府委員 ここの別表第一の備考三にございますように、傷病者の輸送中に行われる医療も含むということで、これは輸送の中で傷病者の輸送も想定しておりまして、それは医療機関に着くまで治療しないというわけではなくて、搬送中にも当然所要の措置をとるわけでありますので、それに適した輸送機等の航空機が考えられますし、またその際、それに必要な、これは私ども離島等の災害派遣でも行っておることでありますが、所要の医官等を同乗させて行うことになろうかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/361
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362・児玉健次
○児玉委員 先月の三日ですが、米海軍横須賀基地で、海上自衛隊と米海軍の合同衛生訓練が行われました。訓練統制官は、日本側が横須賀地方総監の坂部邦夫海将、米側が米海軍横須賀病院長ジャック・W・スミス海軍大佐。報道によれば、本番さながら、救急治療室には、英語、日本語が慌ただしく飛び交った、こうありますね。
訓練項目の冒頭に、現場における傷者選別時の連携要領とありますが、負傷のより重い者は米海軍病院に残されたのか、それとも自衛隊横須賀病院に搬送されたのか、どちらであったか明らかにしてください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/362
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363・野呂田芳成
○野呂田国務大臣 衛生特別訓練のお尋ねでありますが、衛生分野における日米間の連携要領を向上させるとともに、大量傷者発生時の衛生チームの運用等の米軍のノウハウを吸収することを目的としてこの訓練は実施しているものであります。例えば八年、十年、十一年と継続的に行っているものであります。
平成十年度における衛生特別訓練においては、米軍基地内で自然災害により大量の傷者が発生し、これを現場から米海軍横須賀病院へ後送し、同病院の能力を超える数の傷者を自衛隊横須賀病院に搬送する際の日米間の連携要領等を演練したものであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/363
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364・児玉健次
○児玉委員 私が聞きたいのは、そのときけがが重い方は海軍病院に残されたのか、自衛隊病院に残されたのか。どちらです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/364
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365・柳澤協二
○柳澤政府委員 今大臣からお答え申し上げたような訓練でございました。そして、全体でこの際けが人として想定されました人数がおよそ三十名ほどでございまして、その際に、先生おっしゃるように、まずその取り扱い、そのケアの程度に応じた選別、これは特に米軍サイドの方にノウハウがございます。我が方は、そのノウハウを吸収するということで大いなメリットがあるわけでありますが、その場合に、じゃ、どの部分を自衛隊の病院に搬送するかというのは、これは必ずしもけがの大小というか重さ軽さと申しますよりは、そのけが人をケアするための病床なりあるいは機材によって、オーバーフローといいましょうか、部分的に海軍病院で扱えない数が出たものを自衛隊横須賀病院に搬送したというものであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/365
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366・児玉健次
○児玉委員 災害時である、そういうふうに確かに皆さんが御説明をなさっている。そして、長官がおっしゃったように、大量の傷者が発生した時期における米側のノウハウを吸収するためだと。
それで、より重く、どちらがより軽くというその区分け方は確かに単純に過ぎるかもしれないけれども、例えばさっき言った銃弾創に類するもの、裂傷に類するもの。このとき現地で、報道された記事では、顔面に血液に類する塗料を塗ったり、それから切断された大腿部をくくりつけたりというふうな報道もあるわけですけれども、そういった種類の負傷についていえば、米側に残されたのか、日本に運ばれたのか。どちらです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/366
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367・柳澤協二
○柳澤政府委員 このときの訓練の想定は、一応台風による被害ということで考えておりまして、米軍は、できるだけそういう実際の環境に近いような形の、一種の演出等も含めて訓練する傾向にございますが、あるいはそういったこともあったんだろうと思います。
ちょっと細部、どの部分をというのは、今細かいデータは持っておりませんが、要すれば、全体が三十名でございますから、そのうちでもいろいろな、例えば縫合手術でありますとか、あるいはいろいろな検査でありますとかという手順が必要になった、そういうケアの種類ごとにオーバーフローしたものを、一定数、横須賀地区病院に運んだというふうに承知しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/367
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368・児玉健次
○児玉委員 そういった戦争医学についてノウハウを持っている米軍病院は、日本国内に何カ所、そしてベッド数はどのくらい持っているか、その点を示していただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/368
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369・竹内行夫
○竹内政府委員 外務省としてそういう数字を把握しているわけではございませんが、防衛施設庁によりますれば、提供施設整備によりまして日本側が整備した施設として、三沢飛行場及び横田飛行場内にそれぞれ病院施設があると承知しております。また、その整備に際しまして計画されたベッド数というのは、三沢の場合が二十五、横田飛行場の場合が三十五であったと承知しております。
なお、在日米軍のその他の病院施設に関する情報につきましては、現時点では承知いたしておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/369
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370・児玉健次
○児玉委員 皆さん方がこの法案について提出をなさる、私たちはこれは廃案以外にないと思っているけれども、そのとき、あなたたちの側に立っても、いうところの衛生、医療についてどういう形で協力をしていくかというときに、米側が日本国内にどのくらいの病院を持ち、そして何床のベッドを持っているか、そのこと抜きであなたたちが言う日米の協議が可能ですか。どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/370
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371・竹内行夫
○竹内政府委員 米側におきましては、この点につきましては米軍の運用にかかわる事項でありお示しできないという回答があったところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/371
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372・児玉健次
○児玉委員 非常に不当ですね。国会でこのことについて審議をするときに、そのくらい、基礎になる数字が示せないというのでは、国会の十分な論議はできませんよ。もう一回、ちゃんと出してほしい。どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/372
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373・野呂田芳成
○野呂田国務大臣 あなたはそうおっしゃいますが、そういう細かい数字についてきょうお尋ねがあるということは一切ないわけですから、今は持っていないだけでありまして、後日お届けしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/373
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374・児玉健次
○児玉委員 後日届けてもらいましょう。
そこで、この問題が非常に重要な問題だという点について、この前の湾岸戦争のときの、砂漠の盾及び砂漠のあらし、そのときの——ちょっと言っておきましょう。通告は先週からしていますよ。何回もしているんだ。そしてあなたたちが……(発言する者あり)何を言っているか。通告がなかったからなんていうような虚偽なことは言うんじゃない。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/374
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375・山崎拓
○山崎委員長 質問を続けてください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/375
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376・児玉健次
○児玉委員 そこで、この砂漠の盾及び砂漠のあらし。「ペルシャ湾岸戦争の遂行—米国議会への最終報告」、一九九二年四月ですが、その冒頭にこうあります。医療支援システムは、戦域の兵員数と、さまざまなタイプの戦闘行動をめぐる中央軍司令官の死傷者推定に基づく中央軍の必要に合わせて、それを満たすように組み立てられたと。ある事態が起きてからでなくて、ある戦闘作戦行動を組み立てようとするとき、あらかじめさまざまなタイプの戦闘行動をめぐる死傷者推定に基づいて医療支援システムはつくられた、こういうふうに議会への最終報告は明確に述べている。
四月一日の本特別委員会で、我が党の佐々木陸海議員に対し、政府は、法律上、各行政機関が行う措置については基本計画に明示するようになっていますと答えた。医療支援システムについて基本計画にどのように組み込まれようとしているのか、具体的に答えてほしい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/376
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377・伊藤康成
○伊藤(康)政府委員 周辺事態におきます医療ということで、いろいろなケースが考えられるわけでございます。周辺事態というのは、累次御説明申し上げていますように、ワンケースではないわけでございます。
そういう意味では、条文から申し上げますと、基本計画について定めました条文は第四条でございますが、そのうち、例えば後方地域支援として行う医療というのがあるわけでございます。先生、今いろいろと御指摘のアメリカ軍の傷病者に対する医療支援というものは、多分、後方地域支援ということになると思います。
これにつきましては、第四条の第二項第二号で定めます、自衛隊以外の機関が行います重要な事項として基本計画の中に示していくことになるんだろうと思います。かつ、国立病院の場合は関係行政機関の長がやるということで、そういう形で規定していくことになると思います。
それから、そうではなくて、例えば避難民ですとかその他のケースもあるわけでございますが、それにつきましては、同じく四条二項の第六号というようなことになろうと思います。
それから、民間あるいは公立の病院ということにつきましては、これは九条に関連するところでございますが、法案の中の四条二項第七号で定めるということになろうかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/377
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378・児玉健次
○児玉委員 今あなたが言ったそのメカニズムで、国立病院についてはどのくらい、自治体病院についてはどのくらい、民間病院についてはどのくらいと、態様に応じてどのように具体計画の中に入ろうとしていますか。そのことについて答えてほしい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/378
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379・伊藤康成
○伊藤(康)政府委員 周辺事態の態様というものにつきましては、これは、今ここであらかじめその態様、規模等を想定できるものではございません。したがいまして、今御指摘のような量というようなものについて現段階においてあらかじめ想定することはできないわけでございまして、これはそれぞれ事態ごとに基本計画はつくるわけでございます。そういったときに、量が示せるのであれば当然示すことになりますし、また性質で示す場合もあろうかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/379
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380・児玉健次
○児玉委員 防衛大学校の講師をなさっていた三木秀雄氏が、その論文の中でこう述べていますね。「戦闘間における衛生に関する諸元は状況により区区であるが、一般に師団級の部隊における傷病者の発生率は、堅固な敵陣地に対する攻撃の場合約一〇%、防御の場合約五%、又戦闘が行なわれていない場合においても非戦闘傷病者約〇・三%であると見られて居る。」まさに、状況は区々であるかもしれない。
そこで、その区々の状況について今予想される幾つかの事態を念頭に置いて、米側は医療システムについて、日本に対して何通りかのパターンで提起しているはずです。それを示してください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/380
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381・柳澤協二
○柳澤政府委員 今の日米で実務的な話を進めております一つの代表的な場でありますBPCの中での議論で申しますと、今先生御指摘のような形のデータを持った議論は現在しておりません。
ただ、もう一つ、今先生引用されましたように、負傷者等をどの程度見積もるかというのは、実は、仮に周辺事態で米軍が戦闘行為に従事するとしましたときに、戦い方にかかわってくるところでございまして、これはかなり米軍の作戦上の秘密という側面も当然含まれるわけでございまして、そういう面で、なかなかその辺を詰めていく面の難しさはあろうかと思っておりますが、現在そういう数字で私ども作業しているかというと、BPCにおいてはそういうことはやっていないということであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/381
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382・児玉健次
○児玉委員 こういう報道がありますね。九七年十二月一日、新ガイドラインができたのが九月ですからその二カ月後、米国が朝鮮半島有事の際の緒戦での米軍人、韓国軍人などの死傷者を約十二万人と想定して日本政府に伝えた上で、新たな日米防衛協力のための指針、ガイドラインの医療支援に基づき、重傷米兵約千人を日本の病院で手術や治療できるよう要求していることが十一月三十日わかった。例えば東京新聞や沖縄タイムス等、全国一斉に報道されました。
日本政府はこの米側からの求めにどのように対応しましたか。外務大臣、答えてください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/382
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383・高村正彦
○高村国務大臣 日米間におきましては、日米安保体制のもと、平素からさまざまなレベルで、緊急事態への対応も含めて安全保障上の情報交換や意見交換等を行ってきておりますが、御指摘のような要請が米側からなされたということはありません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/383
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384・児玉健次
○児玉委員 ないものがこのように極めて具体的に報道されるということは理解しにくいですね。
米国が日本に求めた約千人分の医療支援は、在日米軍の病院を使っても収容できない人数に相当する云々、重傷の米軍人に手術などの治療をし移動に耐えられるまで回復した後、米本土に移送する。これは、先ほどの湾岸戦争における議会への最終報告で、どのような仕組みで前線から後送、そして本土へ送られていったか、そのときの仕組みを非常によく重ねて描き出していますね。
外務省に続けてお聞きしたいんだけれども、湾岸戦争では、サウジアラビア、オマーン、バーレーン等は、受け入れ国支援として四千六百床を提供しました。ばらばらにでなくてまとめて四千六百床、その分のキャパシティーを確保して提供したんです。外務省はこの事実を知っていますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/384
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385・竹内行夫
○竹内政府委員 ただいま先生の御指摘の詳細な数字については、ただいま伺ったところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/385
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386・児玉健次
○児玉委員 この湾岸戦争の歴史的な経験に立って、アメリカが一九九五年四月二十六日、「ドクトリン・フォー・ヘルス・サービシーズ・サポート・イン・ジョイント・オペレーションズ」、多分、米統合本部の統合作戦における衛生役務支援教本とでも言えるでしょう、その中で、医療支援の任務は何か、目的は何か、目的について明確に、統合軍の戦闘能力の増強、「エンハンス・ザ・コンバット・ファイティング・アビリティー・オブ・ジョイント・フォーシズ」、こう明確に書いていますね。そして、任務は、戦傷、傷害、疾病のもたらす、部隊の効率性、即応性、そして士気、モラール、戦意でしょうね、それへの影響を最小限に抑えることである、こう述べて、実効性をはかる尺度は、傷病者を迅速に任務に復帰させ、かつ可能な限り戦域の前方に復帰させる能力である、それがこの医療支援システムをはかる尺度だ、こういうふうに述べています。
先ほどの、横須賀でやった二つの病院の傷者をどうするか、この教本の中では、現場における傷者選別、それが重要なシステムの課題になっており、傷病兵の後送、別表の中で、輸送に傷病者を含むということが明らかです。
ですから、これに日本の医療施設や医療機関を組み込ませるということは、戦傷兵の前線への速やかな復帰を促すことになりますから、湾岸戦争時、後藤田正晴氏は、医療支援について、医療といっても戦傷者の治療はだめだと言下に言い切りましたね。
そして、例の朝鮮核疑惑の緊張時、石原信雄前官房副長官は、毎日新聞、九七年五月十六日でこう語っています。
「米軍から極東有事に関する対日要求が来た際」として、「湾岸戦争の時には野戦病院で手伝えるかという議論があった。負傷兵を手当てして傷が治れば前線に出ていくから、戦力の補強になり、これは戦闘と一体的な行為になるんじゃないかという問題だ。」「朝鮮半島で事が起きて負傷兵を日本の自衛隊の医官が治療した場合は人道行為なのか、戦闘と一体行為なのか、という議論がすぐ出てくる。」「答えは出さなかったし、出せなかった。問題はそのまま今でも残っている。」
先日の参議院の決算委員会で、このときの四省庁の会議について、野中官房長官からのお答えがありました。私は、官房長官に伺いたいんだけれども、そのとき出せなかった答えについて、今、日本の医療機関、医療施設を明確に米軍の作戦戦闘行動の不可分の一部であるこの医療支援システムに組み込んでいく、そういう形で答えを出すのが許されるのかどうか、その点、官房長官の答えを聞きたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/386
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387・野中広務
○野中国務大臣 お答えいたします。
委員が御指摘の一九九三年ないし九四年当時の北朝鮮の核開発問題に関連いたしまして、国際社会が大変憂慮した事態が起きました。当時、政府といたしまして、仮に国連の安保理事会におきまして何らかの措置が決定をされる場合には、我が国といたしましても憲法の範囲内において責任ある対応をとる必要があると考えられたようでございます。そのため、政府におきまして、御指摘の四省庁間の会議を含め、関係省庁間で情報交換等を行ったほか、各省庁におきましても、それぞれの立場から所掌事務の範囲内においてあらかじめ必要な検討を行うこととされたようでございます。
しかしながら、その後、御承知のように情勢の好転等もございまして、各省庁が検討結果を取りまとめて内閣官房に報告するとか、内閣官房みずから何らかの取りまとめを行うとかいった状態には至らなかったわけでございまして、今御指摘のような状態、事実関係を把握しないで事が終わったということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/387
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388・児玉健次
○児玉委員 そのとき出せなかった答えがそのまま保留されているということは、今のお話でよくわかりました。
朝鮮戦争のとき、アメリカ駐日大使のロバート・マフィー氏は、こう語った。日本人は驚くべき速さで彼らの四つの島を一つの巨大な補給倉庫に変えてしまった、このことがなかったならば、朝鮮戦争は戦うことができなかったはずである。非常にあからさまな発言ですね。
その朝鮮戦争のときでさえ、日本の病院を米軍の戦傷病兵の治療のために提供するということはなかったんです。日本の医療機関、施設を米軍の医療支援システムに組み込む計画は、米軍戦闘力の増強を担う行為であって、戦闘作戦行動の不可欠の一部であって、明らかに憲法九条違反ですね。撤回を求めて、私の質問を終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/388
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389・山崎拓
○山崎委員長 これにて児玉君の質疑は終了いたしました。
次に、辻元清美君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/389
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390・辻元清美
○辻元委員 社会民主党、社民党の辻元清美です。本日も一番最後の質問になります。
さて、私は昨日地方公聴会に参りましたが、やはりそこでは自治体や民間への協力要請について不安の声がたくさん上がったのは、ほかの委員の方も御承知のとおりです。
さて、この九条の問題、ここは私は一番こだわっているんですけれども、この問題についてきょうも質問したいと思います。
まず、民間への協力要請について質問させていただきます。
この前私が質問いたしました折に、民間への協力要請について、船舶や航空機の協力、ここに、武器弾薬や武装した米兵の輸送も排除されないというように確認いたしましたが、それはそのとおりですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/390
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391・伊藤康成
○伊藤(康)政府委員 法案の九条第二項で民間にいろいろな協力依頼をすることができるようにされておりますが、その内容につきましては、当然事態ごとに異なるものでございまして、あらかじめ具体的に確定される性格のものではございませんが、民間輸送業者が海上において武器弾薬を輸送することも排除されるものではないということを、累次御答弁申し上げております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/391
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392・辻元清美
○辻元委員 それでは、先ほど別の委員の方が質問されたこととも関連するんですけれども、後方地域支援のために、今度は民間の船舶が武器弾薬や武装した米兵を輸送する際は、護衛艦をつけるのでしょうか。さっきは輸送艦についての質問があったんですけれども、民間の船舶の場合はいかがですか。
ちょっと時間がないので、速く歩いてきてほしいんですけれども。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/392
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393・山崎拓
○山崎委員長 柳澤運用局長。
迅速にやってください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/393
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394・柳澤協二
○柳澤政府委員 はい。失礼しました。
先ほども申し上げましたように、いわゆる後方地域で戦闘が行われず、また行われることがないと認められる地域でございますので、そういう必要が基本的にはないものというふうに思っております。(辻元委員「監視の船は」と呼ぶ)それは、その時々の状況あるいはどういう、まさに私どもと同じ、自衛隊が行いますのと同じ意味での、同じ意味でのというか、基本計画に従い、実施要項で防衛庁長官が定める実施区域というものとはまたちょっと違う、同じ戦闘行為が行われることがないといたしましても、そういう場所とはまたおのずと違った面があると思います。
もちろん、私どもは、安全確保ということを考えますと、必要があれば、もちろんそういう事態においては私ども日本周辺の警戒監視には当然万全を尽くしているわけでありますけれども、そういう個々の必要に応じて十分な情報収集はまた当然行うものと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/394
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395・辻元清美
○辻元委員 先ほどの御答弁も、短く言えば、監視の手だては考えるという同じ意味だったかと思うんですが、監視をするもしくは情報収集するということは、不測の事態があったときに困るからしっかりやっておこうねということですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/395
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396・柳澤協二
○柳澤政府委員 もちろん、周辺事態であるような状況でありますから、自衛隊は当然、本来の任務に従いますところの警戒監視を行うということであります。
それを、じゃ、どの程度どんな形でやるかというのは、個々の状況に応じて行うということでございまして、一般的に私どもがそういう時期に警戒監視をやるということと、それから、今先生言われたような形で、じゃそれは、絶えず何か不測の事態が必ずありそうだからということでやるかというと、それはまたおのずと違ったものであろうと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/396
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397・辻元清美
○辻元委員 ちょっと今の御答弁は変だと思うんです。
というのは、武装した米兵の輸送も排除しないと前の委員会で私の質問にお答えになっているんですけれども、民間の船舶で武装した米兵を、武器を持った米兵を輸送中、不測の事態が起こった場合、その場合に、これは米軍が指揮することになるんでしょうかね。私は、やはりそこまで考えとかなあかんと思うんですが、これは政府はどのようにお考えなんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/397
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398・柳澤協二
○柳澤政府委員 民間の輸送機関で米兵が輸送されるケースですと、いずれにいたしましても、契約に基づいて米軍がカスタマーとして利用するわけでありますから、いわゆる指揮関係というものが生じるということはないと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/398
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399・辻元清美
○辻元委員 いえ、私が質問しましたのは、不測の事態が一〇〇%起こらないとは言えないという答弁も今までありました。その中で、米兵を輸送している際に起こった場合は、これはどうなるんですかと。米軍の武器使用の基準で武器を使用するのかとか、そういうことを一切政府は考えていない、やらない、それとも、やるけれども、そのときになってみないとわからないと思っていらっしゃるんでしょうか、どっちでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/399
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400・野呂田芳成
○野呂田国務大臣 何回も申し上げているところでありますが、危険性がないと考えられる状況において協力を依頼することとなりますから、米軍に対する協力を行う民間事業者が攻撃を受けるような事態は基本的には想定していないということは、これまでも申し上げてきたところであります。
危険が起こったときどうするかということでありますが、一般論として申し上げれば、海上における人命、財産の保護は、第一義的には警察機関の任務であり、警察機関では対処が不可能または著しく困難な場合には、自衛隊が海上警備行動により対応することとされております。
なお、不測の事態の態様に応じ、自衛隊が治安出動や防衛出動により対応することも排除されない。
具体的な事態に対しては、こうした枠組みのもとで適切に対処することとなると考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/400
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401・辻元清美
○辻元委員 私が疑問に思っているのは、民間の船舶等が米軍によってチャーターされた場合に、これは米軍が言ってみればコントロールするということになった場合、どうなるのかということなんですね。
今船舶の話をしていますので、これはまた後で触れたいんですが、飛行機のことをちょっと今度は聞きたいと思います。輸送ということで申し上げれば、船舶と飛行機がありますので。
何回か、シカゴ条約との関係についての質疑がこの委員会の中でありました。さて、シカゴ条約の対象になるかどうかの政府の答弁は、飛行機の所有形態、使用形態、あるいは使用の目的等に照らして、個別のケースについて総合的に判断せざるを得ないというふうに答弁されているわけですね。そうすると、シカゴ条約に言うところの、じゃ明らかに条約の対象外となるような場合について、日本政府は具体的にどのような基準もしくはケースを考えていらっしゃるんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/401
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402・大島正太郎
○大島(正)政府委員 お答え申し上げます。
具体的にどのような場合がシカゴ条約の対象になるか対象外になるかということでございますけれども、先般来、いろいろな機会に答弁させていただいていますように、やはり、先ほど先生も引用されました個々具体的な形態によるということで、特に基準ということではなくて、個別に総合的に判断せざるを得ないというふうに理解しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/402
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403・辻元清美
○辻元委員 それでは、周辺事態が発生した場合、民間航空に協力要請をした場合、シカゴ条約の対象となる場合とそうでない場合があるということですね、個別のケースですから。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/403
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404・大島正太郎
○大島(正)政府委員 先ほど申し上げたとおり、個別のケースによるということでございますので、そうだということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/404
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405・辻元清美
○辻元委員 それでは、協力要請をする際に、政府はその航空会社に対して、個々の依頼の内容がそれぞれにつきシカゴ条約の対象となるか否かの判断を伝えて依頼するわけですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/405
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406・東郷和彦
○東郷政府委員 お答え申し上げます。
委員御指摘の協力依頼、これはいろいろな協力依頼があると思います。もちろん、その具体的な協力依頼を踏まえまして、当然、その協力依頼がシカゴ条約との関係でどういう関係になるかということも考えて対応することになると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/406
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407・辻元清美
○辻元委員 もちろんそれは考えてもらわなければ困るわけですけれども、それを航空会社に伝えて協力依頼をするかどうかというところがポイントなんですね。依頼を受ける側は、シカゴ条約が適用されるのかされないのかわからなく協力できないと思うのですけれども、それはどうですか。しっかり示されるわけですね、事前に。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/407
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408・東郷和彦
○東郷政府委員 委員御案内のように、シカゴ条約の対象になるかならないか、これは、シカゴ条約第三条の(a)項と(b)項に、まず(a)項の方に「この条約は、民間航空機のみに適用するものとし、国の航空機には適用しない。」(b)項に「軍、税関及び警察の業務に用いる航空機は、国の航空機とみなす。」ということがあるわけでございます。したがいまして、この第三条の(a)項と(b)項というものを踏まえまして、個々の民間にお願いする条項との関係でこの条項をどういうふうに考えるかということもあわせてお願いするということになるだろうと思います。
ただ、どういうケースで何をお願いするかということが今具体的にわかりませんので、その状況で当然判断するということになると思いますが、国際条約との関係は重要な一つのポイントであるというふうに心得ております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/408
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409・辻元清美
○辻元委員 ということは、このシカゴ条約の対象とならない場合に政府は依頼することはないですね、まさか。対象とならないのに、行け、行ってくださいとは言わないですよね。ということですね、今の御答弁は。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/409
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410・東郷和彦
○東郷政府委員 お答え申し上げます。
非常に抽象的なケースでございまして、一口に民間航空機でない、逆に言えば、国の航空機とみなされるということになったケースがどういうことになるか、そういうこともあわせて判断すると。一概に、民間航空機でなくなるからそのような協力形態というものがもはやなくなるということではないように思いますが、やはり具体的なケースに応じて考えるのが適当ではないかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/410
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411・辻元清美
○辻元委員 といいますのは、武器弾薬や武装した米兵を運ぶ際にこれが対象になるかどうか。これについてもそれぞれ政府はいろいろな答弁をされているのですけれども、非常にあいまいだと思うのですね。武器弾薬などを運んでいるときに、それがシカゴ条約の対象にされるのかどうか、ここはどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/411
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412・東郷和彦
○東郷政府委員 お答え申し上げます。
シカゴ条約は、三十五条におきまして、武器弾薬を民間航空機が輸送し得るという規定になっております。したがいまして、武器弾薬を民間の飛行機で輸送したから、したがって民間の航空機ではもはやなくなる、こういう関係にはございませんで、武器弾薬の輸送をお願いしながら民間航空機としてシカゴ条約の適用のもとにあり続けるという事態も当然あり得るというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/412
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413・辻元清美
○辻元委員 私もここに三十五条を持っているんですけれども、この三十五条には兵員の輸送ということは書いてありませんね。ということは、できないということですかね。
全く規定がないですよ。これは要するに、軍需品または軍用器材で、一部特殊に運べるケースについては書いてありますけれども、武装した米兵、これはどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/413
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414・東郷和彦
○東郷政府委員 委員御指摘のように、三十五条で規定されておりますのは、軍需品または軍用器材ということでございます。したがいまして、人間に着目して、ある種の人間を運べば民用機でなくなるというような規定はシカゴ条約にはございませんので、そのことを踏まえて判断するということになります。
しかし、武装した米兵をもし運ぶということになれば、その米兵は当然武器を持っているわけでございますから、その限りにおいては三十五条(a)項も関連がある規定になるということになるのではないかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/414
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415・辻元清美
○辻元委員 いや、それは関連があると言い切っていいんですかね。というのは、このシカゴ条約というのはもともと、四条で、要するにどういう趣旨かというと、軍事目的に民間の航空機は使わないということを約束しましょうという趣旨の条約じゃないですか。ですから、八十九条で戦争については除外しています。
かつ、この軍需品等の輸送についても、どちらかというと、これは航空関係者にも聞きましたが、オリンピック競技のときの銃とかいろいろなものを運ぶ場合があると。しかし、軍事目的には使わない、それに関連することには使わないことを国際的に約束しましょうということがシカゴ条約だと私は思っているんですが、間違いですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/415
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416・東郷和彦
○東郷政府委員 お答え申し上げます。
繰り返しになって恐縮でございますけれども、シカゴ条約第三条の(a)項において、民間航空機とそれから国の航空機というものの区別がございまして、その(b)項の中で「軍、税関及び警察の業務に用いる航空機は、国の航空機とみなす。」という規定になっているわけでございます。
そこで、軍需品もしくは武器というものを航空機で輸送した場合に、そのことのみをもって民間航空機でなくなることはないということがこの解釈としては確定しております。それ以降、じゃ、具体的な状況でどうなるかということは、累次、先般来御答弁申し上げておりますように、個々のケースにおいて判断されるということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/416
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417・辻元清美
○辻元委員 そうしますと、例えばこのケースは日本政府はシカゴ条約の対象となると決めても、解釈によっては他国から見たらそれはそうではないというような、結局グレーゾーンですね、そういうことを排除して、はっきりと民間航空機は軍事に使わぬという約束事だと私は考えていたんですが、運輸大臣、お越しいただいていますのでお伺いしたいんですけれども、武器弾薬や武装した米兵なども運ぶことを排除しないと。これは、日本がシカゴ条約を適用していますよと言うても、世界じゅうにそれをうちは適用していますよと知らせるわけにもいかないし、他国もしくは相手国から適用していないとみなされる可能性もあるようなことは私はやめた方がいいと思うんですが、いかがですかね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/417
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418・川崎二郎
○川崎国務大臣 先ほどのやりとりの中で、私、先ほど横路委員に御答弁申し上げましたので、改めて申し上げておきます。
マニュアルをつくる、その中で、その他米軍との契約において留意すべき事項、これはきちっと知らせることとするということでありますので、民間航空機にどういう形であなたは物を運んでいただくということはきちっとお伝えすることになるだろう、こういうふうに思っております。ただ、およそ不測の事態の起こり得ない地域にお願いをするということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/418
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419・辻元清美
○辻元委員 そうしますと、ちょっと違う観点から御質問申し上げたいんですけれども、この間、きょうも傍聴席に現場のパイロットの方がいらしています。これは、現場で働く人たちにとっては非常に切実な問題だと思います。それは、武器弾薬やその他の物を運ぶその飛行機がねらわれるというだけではなくて、日本の航空会社がそういう何らかの形で米軍なりに協力していく、してしまうということを決定するということは、今、日本の飛行機が世界じゅうにいっぱい飛んでいますね、世界じゅうのどんなところへ行っても日本の飛行機が飛んでいますが、その飛行機そのものがテロやハイジャックの対象にされてしまう可能性が非常に高くなるので心配だという声、皆さんももしかしたら聞いていらっしゃるかもしれないです。
航空機というのは特殊なものですね、もしも一たびこれがテロなどに遭ったら、空の上を飛んでいますので、もう救いようがないということで。その飛行機そのものがねらわれるという以外に、パンナムなんかよくねらわれるのはそうですよね、アメリカがあちこちに軍事介入しているということで、見せしめ的にと言うたら変ですけれども、ねらわれてしまう。日本の航空機もそのような対象にされかねないのではないかという現場の声があるんですが、まずこれは、最初に運輸大臣にお聞きしたいと思うんですが、そういう声をどのように受けとめられますでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/419
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420・川崎二郎
○川崎国務大臣 まず、これは協力を依頼するということでありますので強制ではない、これは基本であります。
一方で、例えば、今辻元委員のお話ですと、国内でそういう移送を、例えば沖縄と東京の間をした、それでもテロ活動があるからそれをおやめなさい、こういう御発言でございますけれども、余りにも飛躍した御発言ではなかろうかなと思っています。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/420
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421・辻元清美
○辻元委員 いえ、私は、国内の話ではなく、周辺事態が発生した際の協力について申し上げているんですけれども、それはいかがですか。周辺事態が発生して、日本の航空会社も協力を受けたということになると、そういう可能性が非常に高くなるのではないかという心配の声なんですよ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/421
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422・野呂田芳成
○野呂田国務大臣 御心配いただくことは大変ありがたいことでありますけれども、私たちは、まず、これは米軍と民間業者が契約する問題でありまして、民間業者は、そういうことがいささかでも懸念されるような場合には協力を拒否することは自由でありますから、拒否なさると思います。
私どもは、絶えずあらゆる情報を集めまして、米軍と民間業者が契約する場合に、その危険性については、絶えず安全性を確認した上でそういう情報をもたらして、事故、不測の事態が起こらないような状態で民間業者が米軍と契約していくというふうなことを担保してまいりたい、こう思っておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/422
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423・辻元清美
○辻元委員 ただ、現場からの声でということで申し上げますと、今、協力要請を断れるというようなお話でしたけれども、長官も以前、私の質問に、それは受けるのが常識やろうというような御発言も、私、直接伺いましたし、現場からの声としては、現場のパイロットの方の経営者とのやりとりで、それは、国から言うてきたら断りにくいし断られへんなというようなことを経営者の方がおっしゃったりして、そうすると、現場で働く人たちは本当にその前線で働いていらっしゃるわけですから、その意図と反するようなことが起こるのではないかという御心配をされているわけなんですが、それについては、長官、いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/423
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424・野呂田芳成
○野呂田国務大臣 私はいつか委員の御質問に答えて、協力するのは当然だろうというような意味のことを言ったのは、一般的に公共団体が一般協力義務を有していることからそう言ったんでありまして、民間業者が協力するのは当たり前だというふうに申し上げたつもりはございません。
ですから、何度も申し上げるわけですが、いささかでも危険があれば民間業者は米軍と契約しないのであって、私どももまた、一切不測の事態が起こらないように、あらゆる情報を駆使して、米軍と契約する民間業者に不測の事態が起こらないような、安全確保ができるような状態の情報を継続して伝達していきたい、こういうふうに考えているところであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/424
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425・辻元清美
○辻元委員 この船舶それから航空機の民間協力については、まだ来週も一般質疑がありますので、引き続きやらせていただきたいと思います。
さて、もう一つだけきょう確認しておきたいことがありましたので。それは、昨年の七月十六日に、米軍や自衛隊基地を抱える自治体首長で構成する全国基地協議会と防衛施設周辺整備全国協議会に対して、周辺事態法案で想定する具体的な要請内容を説明されたと思います。そのとき政府は、自治体へ協力を要請する際に、学校の体育館など、教育関連施設との関係なんですが、それは対象から除外すると発言されています。その理由としては、この九条で要請先を地方公共団体の長としていることから、首長から独立した教育委員会を対象とするのは困難と判断したためと報じられています。
さて、それで、この学校の体育館などの教育関連施設が除外されるという方針は、そこでの説明どおり変わっていないかどうかというのが一点。
それからもう一点が、国以外の者に対して必要な協力を依頼することができる、この項目もありますが、地方自治体の長を通さず直接教育委員会に依頼することはこの項を使ったら可能のように見えるんですけれども、政府が各自治体に説明したとおり、国以外の者に対する協力要請という、これを使って教育関連施設の利用を依頼するというようなこともないと理解してよろしいんですね。これはちょっときょう確認しておきたかったので、お願いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/425
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426・伊藤康成
○伊藤(康)政府委員 必要な協力の中身につきましては、事態ごとに異なるものでございますから、あらかじめ具体的に確定される性格のものではないということは累次申し上げてきているとおりでございます。
昨年の七月でございますか、確かに説明会をいたしております。学校の教育施設でございますが、これは確かに教育委員会の施設でございますけれども、施設の管理はそれぞれの自治体の長であるというふうに私は理解しております。したがいまして、法理的に九条一項の対象にならないということではないんだろうと思います。
ただ、一般的に申しまして、学校というものは、本来、その使用目的を考えますと、そこを何らかの形で独占的に使用するということはなかなか考えにくいということは申し上げられると思います。ただ、ごく例外的に、例えば夏休みの期間とか何か、そういうことでごく一時的に何かをお願いするということまで絶対ないとは申し上げられませんが、先ほども申し上げましたように、教育施設という性格、あるいはふだんほとんど一〇〇%使っているんだろうと思いますので、そういうところについて使用をお願いするということはまず考えにくいというふうに申し上げておきます。また、そのように昨年も御説明をしたところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/426
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427・辻元清美
○辻元委員 ということは、私の理解では、教育関連施設も完全に排除されているものではないという理解かと思います。
さて、官房長官に最後に二点お伺いしたいのですけれども、昨日、地方公聴会でも、今教育関連施設の話も聞きましたが、自治体や民間の不安という声が出ました。それをどのようにお受けとめになっているかというのが一点目。
それから、もう一点は、私がきょう民間の船舶や航空機に関してしつこいほど聞いたのは、やはり今までの議論の中で、安保条約があったから日本の平和が保たれたと主張される方もいらっしゃるわけなんですけれども、私は、日本国憲法があったからだとまず主張すべきであると考えているわけなんですね。
といいますのも、安保条約があっても、これは五条、六条で基地の提供と専守防衛のみに徹して、いかなる場合でも自衛隊などが外に出ていかなかった。この意味は大きかったと思うのです。例えば、ベトナム戦争のときに、日本ももっと深いコミットメントをしていたら、これはさらにアジアを不安定な状況につながらせる可能性も随分あったわけなんですね。ですから、私は、コミットしないということがアジアの安定に貢献してきた面が非常に強いのではないかというふうに考えているのですね。
というのは、前回も申し上げましたけれども、二十世紀に入って日本が関与した戦争というのは、一回も日本が攻められてからというのはないのですね。いつも邦人保護とか物資輸送と言って出ていって、そこから全面戦争に発展していっているという教訓もありますので、やはり出ていかないということが貢献した面も強いのではないか。
私は戦後の生まれです。官房長官は戦争も御体験されていると思いますけれども、この点についても御意見を伺いたいと思っています。
二点について、よろしくお願いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/427
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428・野中広務
○野中国務大臣 今回の御審議いただいている法案を通じまして、それぞれ国民の中にも、また協力のあり方を伴う地方公共団体にも、さまざまな御懸念があることはよく承知をいたしております。今日までも、御要望等に応じながら、具体的に御説明を申し上げてまいりましたし、これからも積極的に関係機関に説明をしてまいりたいと考えております。
一九〇〇年代を振り返りますときに、前半の五十年というのは、委員御指摘のように、非常に多くの戦争が行われてきたわけでございます。我々は、敗戦によって平和憲法を得ることができました。この憲法に従い、また日米安全保障条約がありましたために、今日この五十年、平和を享受することができたと私は考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/428
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429・辻元清美
○辻元委員 きょうは、時間が参りましたので、これで終了しますが、引き続き、また来週質問させていただきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/429
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430・山崎拓
○山崎委員長 これにて辻元清美君の質疑は終了いたしました。
次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。
午後六時十七分散会
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〔参照〕
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派遣委員の福岡県における意見聴取に関する記録
一、期日
平成十一年四月十四日(水)
二、場所
ホテルニューオータニ博多
三、意見を聴取した問題
日本国の自衛隊とアメリカ合衆国軍隊との間における後方支援、物品又は役務の相互の提供に関する日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の協定を改正する協定の締結について承認を求めるの件(第百四十二回国会、内閣提出)、周辺事態に際して我が国の平和及び安全を確保するための措置に関する法律案(第百四十二回国会、内閣提出)及び自衛隊法の一部を改正する法律案(第百四十二回国会、内閣提出)について
四、出席者
(1) 派遣委員
座長 山崎 拓君
小島 敏男君 中谷 元君
宮島 大典君 伊藤 英成君
上原 康助君 赤松 正雄君
西村 眞悟君 佐々木陸海君
辻元 清美君
(2) 政府側出席者
内閣官房内閣安全保障・危機管理室長兼内閣総理大臣官房安全保障・危機管理室長 伊藤 康成君
防衛庁長官官房防衛審議官 大古 和雄君
防衛庁防衛局長 佐藤 謙君
外務大臣官房外務参事官 林 景一君
(3) 意見陳述者
佐世保日米協会会長 富永 雄幸君
弁護士 市川 俊司君
九州大学大学院法学研究科教授 薮野 祐三君
久留米大学経済学部教授 大矢野栄次君
弁護士 諫山 博君
前沖縄県教職員組合中央執行委員長 石川 元平君
(4) その他の出席者
衆議院調査局日米防衛協力のための指針に関する特別調査室長 田中 達郎君
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午後一時一分開議発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/430
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431・山崎拓
○山崎座長 これより会議を開きます。
私は、衆議院日米防衛協力のための指針に関する特別委員長の山崎拓でございます。
私がこの会議の座長を務めさせていただきますので、よろしくお願い申し上げます。
当委員会におきましては、第百四十二回国会に内閣から提出された日本国の自衛隊とアメリカ合衆国軍隊との間における後方支援、物品又は役務の相互の提供に関する日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の協定を改正する協定の締結について承認を求めるの件、周辺事態に際して我が国の平和及び安全を確保するための措置に関する法律案及び自衛隊法の一部を改正する法律案の審査を行っているところでございます。
本日の会議を開催するに当たりまして、派遣委員団を代表いたしまして一言ごあいさつを申し上げます。
当委員会といたしましては、三議案審査に当たり、国民各界各層の皆様方から御意見を承るため、御当地におきましてこのような会議を開催させていただいているところでございます。
御意見をお述べいただく皆様には、大変御多用中にもかかわらず御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。ぜひ忌憚のない御意見をお述べいただければとお願いを申し上げる次第でございます。
それでは、まず、この会議の運営につきまして御説明申し上げます。
会議の議事は、すべて衆議院における委員会議事規則及び手続に準拠して行い、議事の整理、秩序の保持等は、座長であります私が行うことといたします。発言される方は、その都度座長の許可を得て発言していただきますようお願いいたします。
次に、議事の順序について申し上げます。
最初に、意見陳述者の皆様方から御意見をお一人十分程度お述べいただきました後、委員より質疑を行うことになっておりますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。
それでは、本日御出席の方々を御紹介いたします。
まず、派遣委員を御紹介いたします。
自由民主党の中谷元君、小島敏男君、宮島大典君、民主党の伊藤英成君、上原康助君、公明党・改革クラブの赤松正雄君、自由党の西村眞悟君、日本共産党の佐々木陸海君、社会民主党・市民連合の辻元清美君、以上でございます。
次に、各界を代表して本日御意見をお述べいただく方々を御紹介させていただきます。
佐世保日米協会会長富永雄幸君、弁護士市川俊司君、九州大学大学院法学研究科教授薮野祐三君、久留米大学経済学部教授大矢野栄次君、弁護士諫山博君、前沖縄県教職員組合中央執行委員長石川元平君、以上の方々でございます。
それでは、富永雄幸君から御意見をお述べいただきたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/431
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432・富永雄幸
○富永雄幸君 私は、佐世保日米協会の会長をしております富永雄幸と申します。昭和三十七年に理事に就任し、五十九年以来会長を務めて現在に至っております。本業は医師であり、医療法人の理事長をしております。また、海上自衛隊、陸上自衛隊、そして米海軍基地があります佐世保市の一市民としても、今回の日米防衛協力のための指針、新指針等関連法案、周辺事態安全確保法案、ACSA、日米物品役務相互提供協定改正案に強い関心と期待を寄せております。
私は、陳述人として、いわゆるガイドラインの必要性、またどういう期待を持っているかについて述べさせていただきたいと思います。
まず最初に触れておかなければならないのは、太平洋戦争、第二次世界大戦であります。
日本が焦土と化し、多くの生命財産が失われ、原爆投下という人類史上極めて悲惨な結果をもって終結した戦争は、今でも多くの人々の心に痛ましい傷跡を残しております。しかし、敗戦後の日本は、焼け野原から立ち上がり、持ち前の勤勉さと努力を重ね、米国の庇護のもととはいえ、国家を復興させ、国際社会への復帰をなし、独立国日本として民族の繁栄と誇りを取り戻したのでございます。
この際忘れてならないのは、日米安全保障条約の存在であります。私の感じるところ、片務的な条約ではございますが、日本は米国の核の傘のもとに、戦後、復興に向けて邁進できたのでございます。また、戦後、米ソ冷戦構造や中華人民共和国を含んだいわゆる超大国支配の時代には、極めて日本の安全保障に寄与した条約でございます。
しかし、時代は推移し、我が国は経済的に世界屈指の国家となりました。その技術、生産力は世界各国垂涎の的でございます。世界じゅうの耳目を引き寄せるまでになったのでございます。日米両国の関係もまた、時代とともに、かつ国際的情勢の変化とともに推移いたしておりますが、安保条約がいささか片務的とはいえ、その堅固な同盟関係は、世界史上、国際社会上、類を見ない二国間の強い信頼関係と認識するものでありまして、日米両国の努力のたまものと言えると思います。
先ほど触れました戦後冷戦構造の終結、超大国支配の終えんは、新たな世界体制の変化を生み、国際社会の問題は、民族問題、宗教問題、軍事国家及び暴力・テロ活動を平然と実行する国家群など、予測できない突発的事態の発生が十分考えられ、かつ旧ソ連の核兵器管理のあり方、核売却の疑い、核技術者の流出など、我が国周辺はもちろん、世界平和、国際秩序を脅かす不確定要素に満ちあふれています。中国と台湾の関係、テポドン・ミサイル、北朝鮮工作船など、まさに多くの問題が発生しているのでございます。このような我が国を取り巻く外的環境の中、これまでの現行法制では、法治国家日本国の諸法律が手かせ足かせの制約となり、その本来持つ機能が目的を達し得ないという現状がございます。
例を挙げますと、北朝鮮工作船は、海上警察権を持つ海上保安庁管轄であり、自衛隊は要請がないと出動はできません。船舶を停止させようとしても、攻撃は許されません。五十メートルほど前方に威嚇弾を発射するのが関の山で、それを熟知している他の国の船が何を恐れて停止するのでございましょうか。
少し過激な例になりますが、テポドン・ミサイルが飛んできても、迎撃はできますが、二発目が飛んでこない限り、発射元への攻撃はできないのでございます。一発目に細菌兵器や化学兵器が搭載されていない可能性はないのです。また、台湾には約十五万人の日本人が生活をしております。中台関係がもしこじれた場合には、これら邦人を救出するのに現行法ではその実効性は望めないのでございます。
日本海を米海軍艦艇と同行する自衛艦隊の艦艇は、同盟国艦船が砲撃を受けても、自分の船が標的でない限り、回れ右をして帰還せざるを得ないのでございます。これが日本周辺有事を未然に防衛している同盟国に対する行動と言ってよろしいのでしょうか。これで国際間の信頼関係の継続が望めるのでございましょうか。
また、朝鮮半島で大量の難民が発生したと仮定をいたしますと、日本を目がけて押し寄せてきたら。いろいろ問題は尽きないのでございます。
このように、いろいろな平素からの情報を分析し、その準備を行い、対策を講じておく必要があるのは当然でございます。
これまでの旧指針では、米軍艦船に燃料を補給するのに、米国の燃料を日本の輸送船が運ぶということは認められていましたが、これは日本の油を直接米艦艇に補給できないということでございます。このように、即効性、実効性が必要とされるものが法制度上矛盾を抱えており、それを今回の新指針、周辺事態安全確保法案、ACSA改正案は、その本来の目的を必要に応じて的確に遂行するよう改正していこうというものであると存じます。
我が国は、二度と絶対に起こしてはいけない戦争という強烈な教訓から、武器の保有、自衛権の確立、行使ということをあえて意識の中から外し、触れないで、できるだけ話題にしないようにしてきたのではないでしょうか。青少年の教育の現場でも、極めて特異的な平和教育が行われた嫌いも見聞されます。そういうものの集積が、国民の中で国防意識の急激な低下を招き、武器、武力、軍事がすべて罪悪という観念に結びつき、気がつけば国際社会の中で応分の義務を果たせず、世界の中での孤児と呼ばれ、国際社会の一員とみなされない事態も招き得るおそれもあると言えるのではないでしょうか。
しかし、幸いに、共同通信社の四月三、四日に行いました全国世論調査では、ガイドライン法案に関して、「賛成」二一%、「どちらかといえば賛成」四四・五%と、六五・五%の国民がこの法案に対しての理解を示しております。また、自治体協力要請や民間協力にも、四〇%以上がやむを得ないとの判断を示しています。
「国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思ふ。」とうたう日本国憲法前文の崇高な理念の達成のためにも、今回の法案はその第一歩でございます。今後広く国民に対する国の安全、危機管理、国益等について、政府の説得ある啓蒙と陸海空自衛隊の名誉ある確固たる地位の確立もあわせて強く希求するものでございます。
御清聴ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/432
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433・山崎拓
○山崎座長 ありがとうございました。
次に、市川俊司君にお願いをいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/433
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434・市川俊司
○市川俊司君 市川でございます。
私は、法律にかかわる者としての立場と一市民としての立場から、周辺事態法を中心に意見を申し述べたいと思っています。
まず、周辺事態法の基本的性格につきまして、二点申し上げたい点がございます。
第一点は、憲法九条とのかかわりで若干の心配があるということでございます。
御承知のとおり、憲法は、前文で平和主義をうたい、九条で戦争の放棄をうたっているところでございます。ところで、今回の周辺事態法案を拝見しますと、日本の国の外での紛争に自衛隊が出ていくという内容になっているわけでございます。拝見しますと、後方支援である、あるいは後方地域の支援であるというふうにはおっしゃっておられますけれども、前方と後方について一線を画することが果たして一義的に可能なのかどうか。かなり流動的な場合が出てくると思われますので、この点で歯どめが弱いのではないかということを心配いたします。
加えて、こちらの方で後方である、後方地域であると一線を画したとしても、相手があることでございますので、相手がそう見ない場合には巻き込まれる心配も出てくるということ等を考えますと、いずれにしても、憲法で言う専守防衛という考え方からすると一線を踏み越える心配があるという点を申し上げたいと思います。
基本論の第二点は、日米安保条約との関係でございます。
今回の法案は、日米防衛協力のための指針あるいは日米共同宣言を出発としたものでございますけれども、どうもその過程を拝見していますと、アジア太平洋地域での米軍の軍事行動に関して日本が支援をしていくということになっているわけであります。
内容を拝見しますと、新聞等でも議論されているとおり、従来の日米安保条約から見ると、実質的に見直しているという部分があると思われるわけであります。だとしますと、本来であれば条約改正という形でもって幅広く国民的議論をした上でこの法案についても考えていくべきではなかったのか、周辺諸国の安全保障とのかかわりも出てきますので、慎重な取り組みを考え、安保条約との整合性も十分吟味してもよかったのではないかという気がいたす次第でございます。
次に、周辺事態法の具体的な内容について、三点ほど申し上げたいと思っています。
第一点は、法案を拝見しますと、内容が抽象的なところが多い、かつ、あいまいなところが見られるという点が気になっております。
例えば、取りざたされていますように、周辺事態という言葉、法律用語としては極めて抽象的概念でございまして、また、日本の安全に重要な影響を云々という言葉もやはり抽象的である。また、武器使用についても議論されているようでありますが、その範囲、限界等について、あいまいな部分も見受けられるわけであります。
加えて、問題は、大部分の具体的なところが政令に委任されているという点でございます。
拝見しますと、具体的なところが政令となると、白紙委任に近いかのように見受けるところもありまして、法律自体中身が乏しい。これは、法律に基づく行政という原則に照らしますと、若干問題があるのではないかという気がいたします。
したがいまして、法案についても、より趣旨や内容を具体的かつ明確にする努力というのをしていただきたいと思うわけであります。例えば、周辺事態というものにつきましても、単なる周辺ではなくて、日本の国に武力攻撃が直接される危険がある場合、あるいは日本有事の場合というふうに限定的に絞り込んでいく。なおかつ、法律でなるべく具体化していく、法律のレベルで具体化していくということをお考えいただきたいと思います。
個別的な問題点の第二は、本件の法案では国会の関与が弱いという点でございます。
法案を拝見しますと、いわゆる基本計画につきましては、国会への報告ということになっております。しかし、やはり行政というのは国会のコントロールにおいて、国会が監視していくべき立場にあるわけですから、より国会のコントロール下に置くべく、基本計画全体について事前に国会の承認を得る、緊急やむを得ない場合は例外としましても、原則はそうすべきではないか。あるいは、国会が修正できる権限も与えるべきではないか。事後的にも定期的な見直しを考えていくということもぜひ考えていただきたいと思う次第であります。
三点目に指摘したいのは、この法案、国民の生活や権利に影響する部分があるかと思いますけれども、それへの配慮がいま一つ足りないのではないかという点でございます。
法案の九条は、自治体や民間が協力する趣旨の内容を規定しているところであります。これについては、幾つか問題があると思います。
まず、国民の生活や権利にどんな場面で影響が出てくるのか。その影響の具体的な内容が法案自体にもよく示されておらず、また、議論する中ででも必ずしもはっきりしてこない、国民によく見えてこないという点が問題としてあります。弁護士的な観点から申し上げれば、いざ何かあったときの補償はどうしてくれるのかという点についても、簡単な規定があるだけで、具体的にどういう場合にどういう補償をされるかについて、もう少し明確にする必要があるのではないかということであります。
さらに、ここ九州福岡の地を考えますと、いわゆる今回問題となります周辺諸国と一番近い。例えば、韓国の釜山であれば旅客機でもわずか四十分で行くし、対馬からはすぐ見えるという位置関係にありまして、地域レベルでも近隣諸国との友好的なつき合いは非常に長く続いているわけでありまして、こういう地理的条件から見ますと、いざ周辺事態ということになった場合、一番影響がかぶってくるおそれがあるということですので、そういう九州福岡の立場の人たちのことも十分配慮していただきたいと思います。
三点目としては、この第九条ですけれども、防衛協力への優先をどうも印象づけるような感じに見受けるわけであります。この場面というのは、日本においては、平時を前提といたしますと、国防の問題といってもほかの行政レベルのものと同列であって、国防に優先的地位はないというのをやはり原則として踏まえてほしいと思うわけであります。
御承知かと思いますけれども、米軍の横田基地公害訴訟というので、東京高裁が昭和六十二年に判決を出したことがございます。この判決で高裁は、たとえ国防の問題であっても、平時の場合には、他の行政機関との間で優先的な地位にはないのだということをはっきりうたっているわけでありまして、こういうことも踏まえて考えますと、今回の法案の中で、この第九条について、あえて持ち込む必要があるのかどうなのかということはもう少し慎重に考えていただいてもいいのではないかと思っている次第です。
以上、思った点をかいつまんで申し上げました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/434
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435・山崎拓
○山崎座長 ありがとうございました。
次に、薮野祐三君にお願いをいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/435
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436・薮野祐三
○薮野祐三君 九州大学の薮野です。
先ほど、事前に事務局の方に私の発言内容を一枚のレジュメとして、資料としてお渡ししていますので、皆さん方には配付されていると思いますので、それをもとにお話をしたいと思います。
私のきょうの話の内容といいますのは、一つの意見と三つの考えという形でまとめてみました。
一つの意見といいますのは、今回のガイドラインに関する法案について、各各論が十分多々論議されている中で、時間の制約上、一つに絞って意見を述べたいと思います。
その一つの意見といいますのは、当然、基本計画にある国会への報告という点です。周辺領域あるいは安保の範囲に入るかという論議も当然しなければなりませんが、繰り返しますが、時間の制約でこの問題にのみ私の意見を述べさせていただきたいと思います。
少なくとも、きょう前に御列席の委員の皆様方は衆議院、立法の委員でいらっしゃる。政党を超えて立法の委員であるということの基本的原則を共有していただければ、立法は必ず常に行政の上にあるべきだという原則を政党を超えた皆様方の立場として確認をしていただきたい。そのことを前提とすれば、あくまでも行政という内閣に一つの白紙委任的な状況を与えるということは、基本的に、前におられる皆様方の政党を超えた衆議院議員としての立場ということに対して私は極めて大きな疑義を感じます。
まず、衆議院議員であるという立場をどう考えるのか。立法府の一員であるということをどう考えるのか。その立法府の一員という立場からこの問題をどう運営するかということを、今回は衆議院の公聴会ですので、衆議院としての立場を政党を超えて明確にしていただきたい。
そういう意味では、当然、基本計画においては、憲法にあるように国の最高議決機関は国会であり、国会の意思を超えた、国会への報告のみで許されるという行為は断じてあり得ないという原則だけは貫いていただきたいというふうに思っています。
その他、いろいろな各論はあるのですが、時間の関係上、私の考えということで、三点お話をさせていただきたいと思います。
新聞その他で、今回のガイド法案については、かなり各論的、技術論的な論争が進んでいます。しかし、もう少し全体の状況、単に今回のガイド法案についてのみでなく、私たちの持っている外交政策ということについての基本的な話し合いということを常に続けていく必要があるだろうというふうに思います。
私の考えの第一点といいますのは、アメリカの外交政策と日本の外交政策は根本的に相反する原理に立っているのではないかということを確認しておく必要があるのではないか。私たちは、新聞を見ましても、ラジオ、テレビでも、内政不干渉、主権の絶対性ということを前提に外交政策を進めてきています。確かに、十九世紀以来、私の専門とします国際政治学上、ウェストファリア条約以降、主権の絶対性ということは前提とされ、それが国際社会の常識となっています。しかし、この常識に反する国家が一つ、アメリカであるということを十分我々は知っておく必要があるだろう。
アメリカは、建国以来、主権をほぼ侵されたことのない国である。逆に、アメリカは、いろいろな人種差別の中にあり、人権という問題に関しては極めて神経質な国である。日本は、戦前、隣国の朝鮮半島、中国の主権を侵して侵略をしたという経験を持っている以上、主権の意味に対しては極めて神経質に対応しているということは私自身も十分評価をします。しかし、アメリカは、主権という概念を超えて、人権という概念で外交を進めていく。しかし、日本は主権という名によって自衛隊を動かす。
実は、この主権外交と人権外交のあつれきは、一体政治目的をどこに置くのかということを常に念頭に置いておかない限り、単なる一時的な局地の紛争の対処ということを超えて、まさに軍事は政治の一手段であるということを確認すれば、どういう政治目的のためにこの防衛協力をするのか。単に紛争とだけ言われていることに関しては、極めて危機意識を持っています。
そういう意味では、与野党を超えて、私たちが持っているアメリカの近代の外交政策の基本的な原理、まさにカーター以来、人権外交ということがどうして成立するのか。まさに人種のるつぼである以上、他国の人権に介入しない限り自国が成立しないという外交政策を持っている。外交と内政は一枚岩である。
確かに、日本にもいろいろな形での差別はありますが、かなりの数の形において日本人ということで、外交と内政が極めて明確に区別できる国というのは先進国ではほぼ日本一国であるということを考えてみれば、主権と人権のあざなえる問題に対してどう対処していくのか。主権の絶対性を主張すれば、ODA、いわゆる発展途上国を援助したときの主権を尊重し過ぎる余り、独裁政権への援助はいいのかという内政問題が出てくる。しかし、内政問題に入っていけば、私たちはどういう形で主権を守るのか。この問題については、政治学的にも思想的にも、日本の根本のあり方、人類の根本のあり方として、二十一世紀、主権と人権という問題を中心に外交を考えていく必要があるだろう。そういう意味では、アメリカと日本というのは、必ずしもこの点について歩調を合わすことのできない国家群であるということを確認しておく必要があるだろう。
くどいようですが、なぜそれを言うのかというのは、まさに軍事は政治目的のためである。何が一体政治目的であるのか。紛争という概念に余りにも一般化しては極めて危険であるというふうに考えます。
第二点は、アジア、いわゆる周辺地域ということにおいて、例えば与党案においては、周辺というのは地理的概念でないと言われていますが、私たちが周辺ということで直接的にあるいは経験的に念頭に浮かび上がるのは、中国問題、台湾問題であり、朝鮮半島問題である。
話は迂遠になりますが、実は、戦後が終わったと言われていますが、戦後四つ分断された国家があります。一つは東西ドイツ、二つは南北ベトナム、三つ目は南北朝鮮、四つは中国、台湾。実は、四つの分断された国家のうち三つがアジアにあるということ、冷戦の前線であったということをもっと確認しておく必要があるだろう。冷戦イコールヨーロッパではない。その残滓の中で、朝鮮半島問題、台湾問題というのは、主権と人権、内政不干渉ということだけで済むのか、人権外交だけで済むのかという極めて大きな政治的目的を明確にしない限り対応できない問題群としてあらわれている。
例えば、確かに、一つの中国ということで、私たちは台湾問題は内政不干渉であるということによって態度を決めている。しかし、どの主権であれ、一定の政治的目的を達するために軍事行動をとったときに内政不干渉と言えるのかどうか。まさにそれは、与野党を超えて、果たしてこの問題が何を目的として起こるのか、人権なのか主権なのかというところについて極めて明確に論争していく必要があるだろう。私自身もそれに対しては明確な解答を持っているわけではありません。これは、日本の、戦後五十年、主権ということを中心にして考えてきた外交政策を、市民を含め、衆議院議員、党派を超えて考えていくべき問題であるだろうというふうに考えています。
三点目は、ガイドライン法案が焦点となっていますが、戦後五十年の間で極めて平和攻勢が弱い。実は、主権ということで、国防というもの、あるいは自衛隊というものが主権を先行として成立してきたわけですが、自治体は極めて先駆的に人権に取り組んできています。例えば川崎市の外国人の公務員としての採用の問題であったり、停留外国人をどういうふうに扱うのか。まさに人権という問題を中心に自治体が動いている。例えば、迂遠な話ですが、高齢者介護にしても、高齢者の人権ばかりが言われていますが、介護者の人権をどうするのかという問題。まさに自治体はこの人権問題を中心に動いている。そうであるならば、まさに自治体の人権問題を中心とした外交、自治体外交を進めていくべきではないか。
私たちは、余りにもオール・オア・ナッシング、すべてか無かという形で物を考え過ぎですが、確かに国際政治のリアリティーというのは、戦争をしていてもテーブルの下では手を結んでおく必要がある。パイプをつないでおく必要がある。テーブルの上では握手をしていても、下ではある程度の紛争をする必要がある。そういう意味では、ガイド法案を進めるに当たっても、それと同じだけの平和攻勢を進めておくべき必要がないのか。
もっと具体的に言いますと、この福岡の地において、福岡県、福岡市、北九州市、二政令指定市長、県知事あたりの三者を含めて、韓国統一問題を自治体にもっとイニシアチブをとらせる。国がガイド法案によってデッドロックにぶち当たっているということであれば、多面的外交政策を進めていくということをぜひいろいろな形で進めていただければというふうに思います。
以上、私の意見です。御清聴どうもありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/436
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437・山崎拓
○山崎座長 ありがとうございました。
次に、大矢野栄次君にお願いをいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/437
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438・大矢野栄次
○大矢野栄次君 私は、久留米大学経済学部の大矢野ですが、法律とか政治問題については専門外でして、必ずしもそちらの方向からは議論できないんですが、経済学者の立場で、この法案が通るということについて、ある程度、より総合的な戦略を考えるべきではないかということを中心に話をさせていただきます。
まず、日本は平和憲法のもとでいわゆる武力的な解決手段は放棄しているわけですから、戦争はないという前提に立ちますと、日本は何もしなくていいという議論になるんですが、日本以外の国々、紛争を解決するために戦争もその手段として認めているという周辺の国々に対して、日本だけがそれを放棄するということで今まで来られたのは、例えば日米安保条約であるように、何らかの形で外国から見れば日本は戦争を放棄していないという状態が続いてきたわけです。
もし本当の意味で放棄をするならば、もしいわゆる有事ということが日本周辺ないし日本国内で起こるときには、国民一人一人は自分を守るために武器を持たないといけないわけですし、国はそれを必ずしも認めないならば、そのときに何が起こるかということをもう少し議論するべき場所が必要だろうということが一つです。
そういう意味で、例えば自衛隊の位置づけというものは、国際紛争を解決するための手段としてあるのかないのかという問題以上に、国民一人一人が武器をとらなくて済むための一つの方法としてあり得るのかという議論が欠如しているだろうということです。
もう一つは、戦争というものがいわゆる有事の事後処理として位置づけられるならば、逆に有事が起こらないための対応というのが外交、経済でして、日本の経済政策、特に国内だけではなくて対外的な経済政策、援助あるいは技術移転等、国際的な関係の中で日本がやるべき経済的な政策あるいは外交も、すべてこれは有事を起こさないための政策でして、そこまで総合的な対応を考えて議論をされているかということがもう一つです。
もう一つ、議論の中に後方支援の問題がありますが、この後方支援は武力行使であるかどうかという議論につきましては、日本は単純に外国と違う文化を持っているということでして、例えば大東亜戦争を例に挙げますと、日本の海軍は物資を運んでいる船は原則として攻撃をしない。これは日本の武士道です。ところが、戦争になる前にできるだけ物資をたたけば戦争は有利に展開するというのがまさに日本以外の常識です。
そういう意味で、戦後五十数年たってもいまだにこの後方支援を武力行使であるかどうかを議論するのは、単純に日本と日本以外の文化的な違いを議論せずにそれだけを議論しているということでして、まさに日本が世界の孤児になった原因は、同じような文化を理解し得ないといいますか、あるいは違う文化をお互いに説明し得ないというもうちょっと別の大きな文化問題が背景にあるわけです。単純に、後方支援を武力とみなすかみなさないかということを議論すること自体も一つの大きな文化論でありまして、それをただ水かけ論で議論しても何にもならないということです。
三番目に、日本は武力を放棄しているということは、同時に日本には仮想敵国がないわけです。しかし、日本以外の国においては、日本を仮想敵国としておる国は幾つもあるわけでして、仮想敵国を持たない日本が仮想敵国とされていることにどう対応するかという議論も、必ずしも十分に行われていないんじゃないかということです。
そこで、日本を仮想敵国とする、あるいはそれに近い状態であるとみなしている国に対してどのような対応があるかということは、これは先ほども言いましたように、まさに有事が起こらないようにするための経済的な交流、外交努力、あるいは国際的な政治問題をどのようにうまく解決していくか、これも含めまして、いわゆるガイドラインを議論するときには、外交、国際的な経済交流等も一つの総合的な戦略として議論をしておくべきであろうということです。
その中で、このようなガイドライン等の議論が行われているマスコミ等も見まして一番欠けているものは、日本にとっての問題よりは、例えばアメリカにとって日本は仮想敵国ではないのか。仮想敵国ではないとしましても、アメリカにとって一番潜在的に脅威なのは日本の経済力でして、日本をどのように扱うかということにアメリカは百年以上議論をしておるわけですが、日本は、アメリカは敵ではないという前提ですべての議論を進めているとするならば、これは最初から議論の大前提が間違っているわけです。日本にとっては敵じゃないかもしれませんが、アメリカにとっては、決して日本は敵ではないことはないという大前提で議論されている国とどのようにガイドラインを結んでいくかということは一つの戦略です。
そういう意味で、日本は平和という意味でアメリカに常に認められている、認知されている、アメリカに向かっては経済的な何かを行使しない、特に武力は行使しないと思ってくれているという誤解が日本の知識人の中に特にあるわけでして、あくまでアメリカも含めて日本を何らかの形で敵がい視する可能性がある。特に日本の場合は武力ではなくて経済力、あるいは日本の東南アジアの国々に対する経済的影響力、これはほかの国から見ますと脅威でして、武力をもってしてもとめなければいけないぐらいの日本の経済力がかつてはあったわけですから、そこまで含めてガイドラインというものは対米に関してもちゃんと議論されておかなければいけないということだろうと思います。つまり、アメリカにとって潜在的な敵になり得る日本を日本は関係なく議論しているというところに、歴史的ナンセンスがあるんじゃないかということです。
こういう意味で、日本がやるべきことは、有事が起こったらどうするかという議論と同時に、有事が起こらないようにどうするかという議論が必要であるということと、その有事は、アメリカは常に味方であるというよりは、アメリカから見て日本は常に味方であるという議論から始めることにはかなりの危険があるんだということです。
四番目に、このようないわゆる防衛問題を議論するときに、日本の国民はどこまで防衛を意識しているか。いや、それよりも、日本という国をどれだけ愛しているか。日本を守ろうという大前提から議論ができないような国民をつくってきたのが過去五十数年間の日本の教育の内容でして、いわゆる愛国心という言葉すら恥ずかしい言葉になってしまったような教育の中で国防を議論することがいかにむだかというのが、多分最近の議論の方向だと思います。
つまり、戦後の日本の教育の幾つかの部分が間違っていた、日本人が日本を好きではないかのような振る舞いがあたかも知識人であるかのような今の状態をまず見直すことから、国防は議論されないといけないわけでして、一つは、先ほどから言っていますように、有事が起こらないようにするための国際的な経済、国内の経済問題、もう一つは、より重要なものは、武器をどれだけ備えるかよりは、日本を守ろうとする日本人がいないのではないかというような教育システムから考え直さなければ、ガイドラインがどのようなものであろうと、実効性がないということになってしまうのではないかという危惧です。
そういう意味で、より具体的にこのような防衛問題等を議論するときには、国内の経済、国内の教育問題等も同時に議論すべきでして、ただ日米安保の補足的な問題だけを議論しても、もし有事がなかったら何もなかったねという問題ではないんだということをもうちょっと理解するべきではないでしょうか。
例えば、福岡を例に挙げますと、福岡空港をどのように使うか、博多、北九州の港をどのように使うかという議論は、日常の経済活動をどれだけ妨げないかという話にはならないわけでして、有事が起こればそれをどのように代替的に使うかという問題よりは、その日常の経済活動を破壊しないようにどう利用するかという問題ですが、これを今度は地域から見ますと、九州には空港は各県にあります。佐賀にもできました。ならば、福岡空港だけが利用されるということは、まさに一番経済的に被害が大きい状態で利用しようということですが、ではなぜそれ以外の、例えば佐賀空港は一日に五便しか飛んでいません。あと百五十億円あれば、滑走路は二千メートル延ばせると言われているんですけれども、この一キロ、四キロ四方の余った土地は使わないで、二、三分に一本飛んでいる飛行場を使おうということは、地域開発、社会資本の整備、社会資本のバランス感覚からいってもまさに間違っておるわけでして、先ほど言いましたような防衛を考える以上に、その地域の経済開発が即先ほどのガイドラインに即した内容になるためには、国内の経済、地域の経済をもう少し考えながら全体像をイメージしていくべきであるという意味で、総合的な戦略として改めて位置づけるべきではないでしょうか。
最後に、今運輸省造船課の方ではメガフロート計画というものを、必ずしも沖縄の普天間基地ではなくて、防災基地対策として考えていらっしゃいます。ならば、このような地域開発にメガフロートを使う、あるいは国防として先ほどのガイドラインの中でも位置づけられるというような、日常は民間的な業務、有事にはそれなりの利用ができるというような開発計画も含めた、より総合的な戦略を持つべきではないでしょうかということで、私の意見は終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/438
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439・山崎拓
○山崎座長 ありがとうございました。
次に、諫山博君にお願いをいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/439
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440・諫山博
○諫山博君 委員部に資料をお渡ししていますから、配付してください。
私は、一九五一年から四十八年の間、福岡市で弁護士の仕事をしてきました。法律家として、この法案に賛成できない三つの問題を指摘したいと思います。
第一に、この法案が憲法第九条に違反していることです。
法案によると、アメリカが周辺地域で戦争を始めると、自衛隊が米軍を支援し、その戦争に参戦することになっています。陸海空軍その他の戦力は保持しない、国の交戦権は認めない、こういう日本国憲法のもとで、このようなことが許されるはずはありません。
政府は、日本は後方地域支援を受け持つだけだから憲法に違反しないと説明しています。しかし、戦闘している米軍に対する自衛隊の物品役務の提供は、国際的には兵たん活動と呼ばれており、戦争行為そのものであります。一九八六年に国際司法裁判所が、兵たん支援は武力行使の対象とみなし得る、こういう判決をしたのはそのためであります。憲法に違反する法律は、国会といえども絶対に制定してはならないはずであります。
第二に、法案の柱をなす周辺事態が何を指すのか明確でないことです。
周辺とはどこのことか、事態とは何のことか、幾ら読んでもわかりません。法案審議の経過を見ていると、周辺にしても事態にしても、わざと不明確な用語を使っているように思われます。政府のさじかげん一つで運用の幅を自由自在に伸縮できるようにしているとしか思われません。
法律の制定で大事なことは、何を許容し、何を禁止しているかを誤解の余地のないように厳密に規定することです。構成要件を明確にすることは、あらゆる法律の大原則であります。ところが、本法案では、周辺と事態が何を意味しているのか不明確のままです。法律制定のときから解釈が定まらないようなこの法案は、法律の最低限の要求である構成要件が明確にされていないと言わなければなりません。これは、まさに欠陥法案であります。
第三に、国と地方自治体との関係です。
福岡市民として憂慮せざるを得ないのは、いざ周辺事態という場合に、福岡空港と博多港が米軍のため全面的に使用されるおそれがあることです。五年前の北朝鮮核疑惑のとき、アメリカが突きつけた千五十九項目の要求は、福岡市民に衝撃を与えました。福岡空港と博多港が名指しで米軍から要求されているからであります。
福岡空港と博多港は、福岡市の都市機能にとって欠くことのできない心臓部です。福岡空港の乗降客は昨年、一千七百五十六万人を超えました。航空機の離着陸回数は十二万九千回で、羽田に次いで我が国第二位です。博多港の入港船舶数は年間四万一千六百隻に上っています。これが周辺事態ということで米軍によって占拠されようとしていることを私たちは黙って見ていることはできないのであります。
福岡空港と博多港は、かつて朝鮮戦争のとき、米軍の最前線基地として使用されました。あのころ、福岡市は戦場さながらの状態であったことを私は記憶しております。警戒警報まで福岡市で発せられたのであります。「福岡県警察史」は、当時のことについて、兵員輸送、兵器弾薬の輸送、上陸用舟艇などで、陸も海も芋を洗うがごとき状態であったと書き記しているのであります。
最近でも、米軍機の福岡空港使用回数は、長崎空港に次いで全国第二位です。大分県日出生台における日米共同演習のときに、米軍がハワイから福岡空港に飛来してきたことを私たちはまだ忘れてはいないのであります。
北朝鮮の核疑惑のときにアメリカの海軍は、博多港について、港湾施設の状況、将来の港湾開発計画などを詳細に調査したことがあります。米海軍の博多港入港が繰り返されており、ことしの二月にも核兵器積載可能の米イージス駆逐艦が博多港に入港しました。これらは、周辺事態措置法施行の先取りであったと私たちは考えています。
博多港を管理しているのは福岡市です。周辺事態措置法案で、政府は自治体に「必要な協力を求めることができる。」としており、これは命令ではないと説明されています。しかし、自治体は正当な理由がない限り拒否できないし、正当な理由なしに拒否すれば違法状態になるということも説明されております。これでは、自治体は政府の協力要請を事実上拒否できないではありませんか。
日本国憲法は、明治憲法と違って、地方自治の新しい章を設けています。地方自治に関することは地方自治の本旨に基づいて定めなければなりません。かつて、学力テストについて、教育委員会が文部省に指導された義務であると主張したのに対して、最高裁判所の大法廷はこれを退けました。義務ではないと判決したのであります。国と地方自治体の関係は、これほど厳格なものであります。本法案が、国が自治体に必要な協力を求めたとき、正当な理由がなく拒否するとすれば違法状態になる、こういう立場をとるのであれば、これは憲法が保障した地方自治権を不当に侵害するものと言わざるを得ません。
さらに、国会の一部にある修正の動きについても一言しないわけにはいきません。
安保条約の目的の枠内でという字句を入れたらどうかという修正案が報道されています。これは法案の危険性をごまかすものであります。周辺事態が今の安保条約で賄い切れないからこそ、新しい法律が必要になってきたのではありませんか。日本の領域が攻撃されていないのに、日本の領域の内外を問わず自衛隊を米軍の戦争に引き込む法律が、安保条約の枠内で処理できるものでないことは明らかであります。
なお、自衛隊の海外出動を国会の承認事項にするという修正案も報道されています。これも本法案の侵略性、危険性をなくするものではありません。
以上の立場から、私は、本法案は廃案以外にない、このことを申し上げて、陳述を終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/440
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441・山崎拓
○山崎座長 ありがとうございました。
次に、石川元平君にお願いをいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/441
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442・石川元平
○石川元平君 沖縄は普天間飛行場のある宜野湾市から参りました石川であります。
さて、私は、ガイドライン関連の周辺事態法案については、我が国の侵略戦争の教訓と反省から、徹底した平和主義の原則を貫いて、武力の行使や軍隊の保持と交戦権を否定した日本国憲法前文と第九条に明確に違反するとの認識に立ち、ガイドライン関連三法案の廃案を求めるものであります。
顧みて、私が一番残念で遺憾に思うのは、歴史的な東西冷戦崩壊の時期に、なぜ北方領土返還の確定や対北朝鮮政策の転換ができなかったかということです。仮想敵ソ連の崩壊は、日米安保見直しの絶好のチャンスでもあり、沖縄の基地問題解決の端緒を切り開くチャンスでもあったと思うのです。しかし、政府は外交努力を怠り、否、今日のような時期の到来を待っていたのでしょうか。
米国は、九五年二月のナイ・リポート、東アジア戦略構想に見られるように、冷戦後もアジア地域における米国の経済利益、国益擁護のために日米安保体制を再編強化し、米国の軍事的プレゼンスの確保をねらいました。米国のねらいは橋本・クリントン会談後の日米安保共同宣言となって、安保が再定義されました。ガイドライン関連法案は、共同宣言の延長線上で、米国主導で進められたと理解しています。周辺事態法案が、米国の戦争に日本が参戦する戦争協力法、ウオーマニュアルだと言われるゆえんだと思います。
沖縄の私たちは、かつて地上戦を体験し、敗戦後も在沖米軍の朝鮮戦争、ベトナム戦争を肌で感じ、復帰後も中東湾岸戦争への出撃など、痛苦の思いで見てまいりました。私は、戦争はだれが何の目的でやるのか、住民の視点に立って学んでまいりました。戦争と平和のメカニズムにメスを入れ、それをみずからの生き方に生かすことが、過去の戦争や平和を学ぶ意義だと信じたからであります。
ところで、戦争による犠牲が軍人にとどまらないことは常識化していますけれども、問題は、軍人と民間人の死者の比率です。第一次世界大戦では、軍人の九五%に対し民間人は五%、沖縄戦では、軍人五三%に対して民間人が四七%、朝鮮戦争になると、軍人の一五%に対して民間人が八五%、さらにベトナム戦争では、第一次大戦と完全に逆転をして、軍人はわずか五%、九五%が民間人、一般の非戦闘員となっています。これが現代の戦争の冷厳な実態であります。
このことからも、私たちは、戦争の世紀と言われた二十世紀の過去の過ちを謙虚に反省し、教訓化すべきで、殺されても殺してはいけません。被害者にも加害者にもなってはいけません。私たち人間には、生きる権利、平和的生存権があるのであります。
私たちウチナーンチュは、誤った国策による差別と犠牲を強いられてきました。沖縄は、かつて琉球王国の昔から、イチャリバチョウデー、ヌチドゥタカラ、換言をすれば、万国津梁、平和愛好の民を自認し、近隣諸国と共存共栄を図ってまいりました。ところが、沖縄は、去る大戦では皇土防衛の盾にされ、戦後は、一九五二年の日本の独立と引きかえに米国の占領下に置かれ、基地との共生を余儀なくされました。七二年の核も基地もない平和な沖縄と平和憲法体制への復帰という県民要求は、本土の沖縄化と軍拡に利用されました。九五年の米兵による不幸な少女暴行事件に端を発した米軍基地の整理、縮小、撤去を求める壮大な島ぐるみの要求に対する日米両首脳の答えが日米安保共同宣言であり、日米安保の再編強化でありました。
SACO、日米特別行動委員会の合意も、普天間飛行場の県内移設押しつけに代表されるように、基地機能の一層の強化がねらわれているのであります。大田前知事は、県内移設反対という県民意思を踏まえて海上基地反対を表明したのです。しかし、政府は、経済振興という名のバルブを閉め、兵糧攻めによる大田革新県政陥れをいたしました。
一昨年四月、米軍用地強制使用のための屈辱的な特措法大改悪が強行されました。その際は、さすがに大政翼賛会的の懸念も表明されましたけれども、しかし今また再改悪がもくろまれているのであります。
このように、沖縄とかかわる一連の動きもガイドライン関連法案と軌を一にするものであり、私は、我が国の民主主義と平和憲法体制の危機に当たり、警鐘を乱打せずにはいられない心境であります。
次に、法案で具体的に指摘しておきたいことは、周辺事態法の安保の枠、後方支援についてであります。
周辺事態法案のもとになっている日米安保共同宣言からも、周辺地域がアジア太平洋地域を含むのは当然であり、論議されている周辺地域が現行安保条約の条項をも逸脱するのは明白であります。
後方支援の「後方」についても、米軍の対イラクやユーゴへの巡航ミサイル攻撃の例からも、戦闘行動の行われている前線と兵たん活動を行う後方とが一体となって軍事行動をするのが現代の戦争であります。戦争の際、前線は絶えず流動します。ある時期は戦闘地域でなくても、いつ戦闘機やミサイルが飛んできて戦闘地域になるか全く不確定であります。戦闘地域と離れている地域での活動だからといっても、相手には通用しないのであります。その意味からも、七五%の米軍基地と自衛隊基地のある前方展開部隊の駐屯する沖縄は、一番危険な地域と言えるかもしれません。あるいは、先ほども出ましたけれども、第二次朝鮮戦争勃発の際は、ここ福岡、九州もいつ戦闘地域にさらされるか懸念されるところであります。私が強調したいことは、後方という言葉に惑わされて安心してはいけないということであります。
地方自治体、民間協力についても、地方自治体への何の説明もなされていないと聞き、私は、忍び寄る軍靴の音、新たなる戦前に大変な危機感を覚えているところであります。法案では、地方自治体や国民の反発をそらすために、罰則などの制裁措置は織り込まれていないものの、米軍特措法のように、一度立法化されれば改正は時間の問題だと思います。去る沖縄戦の折、軍部が適切な協力と言ったのは、住民を壕から追い出し、食糧を強奪することなどであったのであります。戦時における民間協力は、即広範な軍事活動への協力を強制される危険性が大であることを申し上げておきたいと思います。
最後になりますが、沖縄戦の経験からも、軍隊は民衆を守る存在ではないということと、「戦争を起こすのは人間です。しかし、戦争をやめさせることのできるのも私たち人間ではないでしょうか」という沖縄戦「展示のことば」を御紹介申し上げて、意見陳述を終わらせていただきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/442
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443・山崎拓
○山崎座長 ありがとうございました。
以上で意見陳述者からの御意見の開陳は終わりました。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/443
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444・山崎拓
○山崎座長 これより委員からの質疑を行います。
まず、各党を代表しての質疑を行います。
質疑の申し出がありますので、順次これを許します。中谷元君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/444
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445・中谷元
○中谷委員 自由民主党の中谷元でございます。
本日は、貴重なる御意見をいただきまして、まことにありがとうございました。皆さんの意見を心にとどめていくために、疑問点につきましてお伺いをさせていただきます。
まず、長らく日米協会会長として御尽力をいただいております富永さんにお伺いをさせていただきます。
お話の中で、現在未整備また放置されている問題を大変高い見識から御指摘いただきまして、まことにありがとうございます。今後の第一歩だということで、現在この法案が出されているわけでございますが、私も、いざとなった場合に自衛隊が何でもしてくれるんだ、またアメリカが必ず日本を守ってくれるというのは、日本人の錯覚と誤解だと思います。日本が何もしなくては、いざというときアメリカは守ってくれないというふうに考えております。
富永さんは、長らく日米協会の会長として、アメリカ人の方との交流もあろうかと思いますが、非常に複雑な日本の政治状況の中で、日本に駐留している米軍とか米将兵、この方との接触を通じて、日本有事、周辺有事また極東有事のときに米軍がどのような気持ちで仕事に携われるのか。アメリカの軍隊の命令によって彼らは行動するわけですけれども、私もアメリカの方と話をした場合に、いざというときは命があれば我々は日本のために汗を流すし血を流すという言葉がございましたけれども、その辺のアメリカの将兵の方の御認識について、何かお話がありましたらお聞かせいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/445
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446・富永雄幸
○富永雄幸君 富永でございます。今の中谷先生のお尋ねに私なりにお答えさせていただきたいと思います。
まず第一に、これはいろいろな議論の中においていつも食い違う点がございます。というのは、日本人が好戦的であるというようなことから出発をする議論がございます。私は、過去の日本の歴史を見てみても、決して日本が他外国に対して好戦的な民族ではないと確信をいたしております。
ただ、問題は、二十世紀の初頭、つまり第一次世界大戦の当時において、日本の知識者あるいはその当時の軍隊をコントロールする人たちの不勉強による錯覚が大きな結果をもたらした。つまり、明治時代のものが通る世界であるという大きな錯覚のもとに、架空のものが次第に出現をしてきて、子供が積み木を積んでいる、いいできばえである、それがいつの間にか日本人に対しては軍事知識の欠如、軍事知識というものが全く欠如した人種であると言ってもよかったんじゃないかと思うんです。そのために、大東亜共栄圏などという極めて空疎なるものの概念がそこへできてきて、それを利用した一集団によって、これは当時の陸海軍だと思うんですが、そういうもので非常に曲がったものができてきたと思うのであります。
私は長崎県の生まれでございますが、世界へ開港しておりました鎖国時代の長崎港におきましても、決して軍事的なものは先走っていない。坂本竜馬が長崎へ来て驚いたことは、この町の人は軍隊ということについてほとんど関心がないではないかと。長崎の庄屋に聞いてみたところが、あれは幕府の、あるいはそこでは代官と称しておりましたが、代官の皆さんがおやりになることで、私どもは関心ありませんと。このように、基本的なものが日本人にはあると存じます。
そういうものと、それから先ほども議論の中へ出ておりましたが、いわゆる人権を非常に主張するアメリカ人との新しい出会いが私は戦後の出会いだと思うのでございます。
日本人の平和愛好的な物の考え方というのは、いち早く占領直後にあらわれた事態でありまして、そういうものはアメリカの知識者は十分に理解をした。その中において、これは決して好戦的な人種ではない、ペリーが日本に来航して以来の日本の世界へ向けた歩み、経済へつながっていく歩み、そして戦後の長い間の日米安保条約のもとに積み重ね上げてきた大変大事な二国間の世界に誇るべき典型的な例として、日米関係の特に安全保障条約について自信を持っていると思います。
アメリカ人に頻々に伺うこと、これは、日本に事があればおれたちは汗を流すよ、血を流すよというのがアメリカの良識ある諸君の発言と私は受けとめて、常にそういうポイントで友好関係を維持しているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/446
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447・中谷元
○中谷委員 私も出身が坂本竜馬と同じ高知県でございまして、長崎の土地を竜馬がこよなく愛して、そこで商売もやって、また新しい発想もヒントを得たということで、現在もそういう形で日米安保ということを非常に御理解いただいて、非常に地元の方が努力をしていただいていることがわかりまして、うれしく思っております。
次に、市川さんにお伺いをいたしたいことがございます。
市川さんのお話の中で、この際安保条約を改定してもよかったのではないかと御指摘がございました。
そこで、現在の日本の安全保障体制は、御承知のとおり、自衛隊と憲法九条がありますから、足らざるところはアメリカの日米安保の力をかりておるわけでございます。しかしながら、その日米安保体制が崩壊をすれば、直ちに日本の危機、すなわち日本の防衛、安全保障が、国民を守る体制ができなくなっていくと私は思うんですけれども、現在、片務性で行われておりますこの日米安保体制、改正ということでございますが、いかなるようにするのが望ましいのか、その辺のところを御意見がございましたらお述べいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/447
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448・市川俊司
○市川俊司君 御指摘の点につきましては、まず国民的な議論をしっかりやるべきだということを私はベースとして申し上げたいと思っている次第です。
確かに日米安保条約、振り返ってみますと、いわゆる六〇年安保あるいは七〇年安保と言われるとおり、国民的な議論をしてきた経過があるわけでございます。それを踏まえますと、それから時代を経ていろいろな事象が起きましたから、日本の国民の防衛に対する認識も動いてきているというのは私も思っている次第です。したがいまして、ここで改めてしっかりとまず基礎として国民的な議論を十分した上で、では日本の防衛はどうあるべきか、近隣諸国を含めた安全保障はどうあるべきかというのを下から積み上げていって、そしてどういうふうな形が望ましいかというふうに積み上げていく方法が適切ではないかと思う次第であります。
私が先ほど申し上げたのは、日米共同宣言とかガイドラインとか、そういったもので日本とアメリカとの国の代表同士の間でまず基本方向が決まり、それがこういう形で法案として出てきた。国民的議論を十分しながらこういう法案提出まで展開してきたという形ではどうもなかったように思うわけでありまして、私が指摘したいのは、国民的議論が第一点でございます。
それと、もう一点申し上げてよろしければ、こういう国際関係については、対話と抑止ということが国会でもよく言われているわけでございますけれども、今回は抑止の側面が中心であろうかと思います。もう一方の対話という側面、これとのバランスが大事であろうと思うわけでありますが、この対話の側面について、私ども一般市民から見ますと、近隣諸外国との間での日本の外交努力というものについては、もう少し頑張っていただきたいという気持ちがあるわけでございます。
特に、周辺事態ということになりますと、近隣のアジア太平洋地域がかかわってくるわけでありますが、基本的にアメリカの立場と日本の立場で若干違うところがあるのは、今も御指摘のあった太平洋戦争を経てきて、朝鮮半島とか中国、台湾等を五十数年前支配してきたという歴史がありまして、最近の外交交渉の中でも、おわびをしたりという経過があります。これはアメリカとは全然違う立場でございまして、こういうことを踏まえると、日本独自にまた安全保障を考えていかなくてはいけない対話の側面もあると思うわけであります。こういった点も踏まえて、何とかいい方向を考えられればという気持ちを持っている次第です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/448
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449・中谷元
○中谷委員 そしてもう一点、お話の中で、平時において防衛努力とか軍事、国防を優先すべきではないという地位を確立する必要があるのではないかとありましたが、いざというときは、米軍の協力にしても、米軍の世話になるわけです。しかし、平時は知らないよ、それは関係ないよという発想では、訓練する必要もあるし、受け入れる必要もありますが、いささか自分勝手だというふうな気がするんです。いざというときに日米安保を機能させるために、平時にやはりある程度の使用権限が必要だと私は思いますけれども、この辺についてももう一回お聞かせいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/449
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450・市川俊司
○市川俊司君 先ほど私がお話ししました平時の場合はどうかというのは、米軍の横田基地の判決をもとにしてお話をした次第でございます。判決の要点を申し上げますと、国防は行政の一部であるから、平時における国防のみがひとり他の部門、例えば外交、経済、運輸、教育など、これらよりも優越的な公共性を有し重視されるものと解することは、憲法全体の精神に照らし許されないという言い方をしている次第でございます。
したがいまして、私が考えるのは、行政全体のバランス、民間及び国民の皆様方の権利との間の総合的バランスを図るべきだということがありまして、どうでもいいという趣旨ではございません。やはり裁判所が多くの場合一般的な基準として定立していますのは、社会通念に照らし合理的な必要判断という言葉をよく使うわけでありまして、社会通念ということが場面場面でもって一般の国民の感覚から出てくると思いますし、合理性というのも出てくると思います。全体のバランスをとって諸般の事情を総合し、合理的な判断をしていくべきだという趣旨で申し上げている次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/450
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451・中谷元
○中谷委員 ありがとうございました。
続きまして、薮野さんにお伺いをさせていただきます。
我々は、衆議院議員として、立法の立場で法律をつくっているわけでございますが、今回その法律の整備として、世の中何が起こるかわからないわけでありまして、そのときにすぐ対応するために、国の持っている力を迅速に発揮するために、この法律をつくっているわけでございます。
その中で、基本計画も国会承認にかけるべきだとお述べになられました。我々としては、そのときに対処する権限、機能を国会で自衛隊等に与えて、いざというときには国民が議論する前に自動的に安全装置としてスタートをして、結果的に国民の生命財産を守ってもらうという趣旨でございますけれども、やはりこの国会承認というものは必要なのでしょうか。
それともう一点は、憲法の人権という問題において、やはり今の学校なんかも、子供の人権、勉強する自由、しない自由、家庭の中でも親と子供は対等であるというような、そういう平等主義が非常に蔓延して、結局学級崩壊、家庭崩壊が起こっております。これで、地方が国と対等であって、国防に対しても我々は口出しをして言う権利があるのだというようになりますと、国の安全保障というものは、国がその責務を果たせなくなる、いわゆる国家崩壊というふうになると思われますけれども、この問題についてどうお考えなんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/451
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452・薮野祐三
○薮野祐三君 まず第一点ですけれども、シビリアンコントロールをどう守るかという意味で、まず私のお話をさせていただいた大枠が、日本が攻められるということ、有事といって日本に被害があるということを想定する。しかし、もっと具体的に言うと政治紛争になりますので言えませんが、近来、私は別に右翼でもありませんが、いわゆる日本建国以来といいますか、それ以来日本が攻められたのは元寇だけであって、あと日本は、攻めていったことがあっても、攻められたことは一度もない。にもかかわらず、攻められる話ばかりをしている。一体どういう形で攻められるのかということが私としてはわからない。
もう二点は、いわゆるドミノ理論。いわゆる人権外交と主権外交というのは、共産主義と資本主義というイデオロギー対立の中で隠れていた。ですから、いわゆる社会主義陣営、共産主義陣営を拡大するために朝鮮戦争は起きたということで、安保条約ということの発動の中で、日本の防衛、日本がいわゆるイデオロギー的に占領される可能性があるということでつくられたわけですけれども、一体日本を占領する国はどこがあるのか、日本を占領してどういうメリットがあるのか、そのことを政治目的をもっと議論すべきだろう。その議論を抜きにして、このときにはどうなるのか、ではどうなるかという論議を進めていけば、無限に出口は出てこない。
私は、国会議員として少なくとも、国民が、なるほどこういう状況であれば国会承認を経なくてもやったということを承認しようというぐらいの社会意識、社会契約ということを信じるべきだというふうに思うわけです。
いかに法律にのっとっても、常識を超えていればおかしい。しかし、いかに法律を超えても、常識というものを最終的に置くべきだろう。しかし、少なくとも立法機関としては、立法という立場をこの中でどう置いておくかということを明言していただきたいし、私におっしゃったように、可及的速やかに行動するということ、そのことがたとえ国会の承認を得なくても起きたとしても、事後に可及的速やかにシビリアンコントロールの中に戻されれば承認は得られるだろうというふうに国民の良識を期待しています。
二点目の、いわゆる国ががたがたになるんじゃないか。
私が申し上げたのは誤解を生んでいて、平和外交をどういう形で進めておられるか。ほかの陳述人もおっしゃいましたけれども、私たちは地域としての自治体外交であるとか姉妹都市交流であるとか——ヨーロッパが統一したときに、少なくとも皆さん方はすぐ、ヨーロッパは政治的に統一したと思われるんですが、その以前にいろいろなセクターが地道に交流していた後、最後に政治的統一が起きている。しかし、アジアで交流があるのは政治セクターと経済セクター。市民同士の交流もない。自治体交流もない。
もう一つ例を挙げますと、東西ドイツが統一したときに、何か東ドイツと西ドイツのトップのリーダーだけが統一したと思われますが、あの東ドイツを支えたのは、東ドイツと姉妹都市関係にある西ドイツの自治体職員が一挙に東ドイツに入って、市民自治を支えていったという現実を見ていけば、例えばこれは一つの例として、ある地域が崩壊したときに、軍事的にいくと同時に、保健、医療、治安、消防ということのノウハウは自治体しか持っていない。少なくとも、何らかの問題が起きたときには自治体の協力が要る。そういう意味では、私は、自治体に自由にやれというのではなくて、少なくともガイド法案という暴力的な分は国会が握るとすれば、平和戦略をもっと自治体を使ってやるという二元性を持てないのかということを申し上げたかったということです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/452
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453・中谷元
○中谷委員 ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/453
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454・山崎拓
○山崎座長 これにて中谷君の質疑は終了いたしました。
次に、伊藤英成君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/454
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455・伊藤英成
○伊藤(英)委員 民主党の伊藤英成でございます。
きょうは、意見陳述者のそれぞれの皆さん方、本当にいろいろとありがとうございました。今貴重ないろいろな意見を伺いながら、きょう私はここに参加をして本当によかった、こういう感じを持っております。
そこで、まず市川さんにお伺いをいたしますけれども、先ほどのお話の中で、国民生活や権利に対する配慮のお話がございました。そこで、ちょっとお伺いしたいのですが、この周辺事態において、地方公共団体への協力要請やら、あるいは民間への協力依頼の話があるんですね。そのときに、労働者や労働組合へどういう影響が考えられるのか、その辺について、法律家の視点としての御意見をまずお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/455
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456・市川俊司
○市川俊司君 私は、弁護士業務の中でも、いわゆる働く人たちにかかわる事件もこれまで手がけてまいった経過がございます。今回の法案を拝見してまず一つ感じたのは、かつて最高裁が、昭和四十三年十二月二十四日に、全電通千代田丸事件という事件で最高裁判断を下したケースがあります。これを思い出した次第でございます。
この事件はどういう事件かといいますと、昭和二十年代、例の朝鮮戦争の後ころ、今のNTTが海底ケーブルを敷こうということになったんですが、まだ李承晩ラインの内側、向こう側ということで砲弾が飛ぶような状況があったので、当時公社側から指示をされた従業員の方が、組合の指示、指令に基づいて、それは余りにも危険だから行かないと言った事件でございます。それに対して雇い主側、公社側が、組合の役員に対して公労法に基づく解雇ということで出てきたという事件でございました。
これについて最高裁判所はどういう判断をしたかといいますと、懲戒解雇は無効であるという判断をしたのが内容でございます。理由としては、労働義務のところには立ち入らなかったのですけれども、こういう状況下において業務上の指示を命ずることはやはり危険な問題がある、これに従わなかったことを理由として解雇するのは解雇権の乱用であるという判断だったわけでございます。
これなどをもとにして、今回、一般の民間協力あるいは自治体等について雇い主や自治体当局が協力をするということになった場合に、危険な業務が出てきた場合どうなるかというのが課題であろうかと思います。例えば、雇い主や自治体当局が、多少危険はあるけれども行きなさいというふうに業務上の指示をした場合、働く人の側として、それに従う場合と、いやこれはちょっと危ないから従わない、断りますと言った場合どうなるかという問題であります。
これについては、国会でも議論はされているようでありますけれども、私ども、労働契約、雇用契約の側面から拝見しますと、労働者は、雇用契約上、使用者側に安全配慮義務があるということで、これは判例で確立しているということを申し上げたいと思うわけであります。一般の労災をお考えになればおわかりのとおりですけれども、安心して安全に仕事ができるように配慮するのが雇い主の責任である、これは確立した判例ということでございます。
例えば、具体的に言えば、労働安全衛生法だってあるのは御承知のとおりでありまして、労働契約は、使用主が業務を命令し、それに対して賃金を払うという契約でございまして、それについては安全を確保せねばならぬということは基本的について回るということになっているわけであります。
これからしますと、今回のように危険がかかわる業務について、事態法の中で一般的な協力義務だとか、あるいは民間は協力依頼という形で、これに従おうということに使用者がなった場合に、従業員の側はどうかといいますと、雇用契約、労働契約のレベルで見ますと、安全配慮義務の範囲から見ますと、そこまで従う義務があるのかどうなのかということで、これは非常にややこしい問題になりかねない面があると思っておるわけであります。
したがいまして、先ほど申し上げたような最高裁の判例も出ているということですから、このような法案を検討される場合は、そういう労働者にかかわる雇用契約の側面までトータルにきちんと整理できるような形でできたらばしていただきたいなという感想を持っている次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/456
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457・伊藤英成
○伊藤(英)委員 次に、市川さんと薮野さんにお伺いしたいのですが、いわゆる国会承認の問題ですね。
私どもは、民主党としては、この問題については、一つは、自衛隊の今日まで置かれている立場といいましょうか位置づけ、これは日本国内あるいはアジア近隣諸国等の考え方、そういう問題もある。それから、今回の周辺事態法において、自衛隊が日本の領海あるいは領域外まで出る話もありますし、それから、今ちょっとお話をいたしました、地方公共団体やあるいは民間に対しても協力を要請したり依頼をする、こういう形になるものですから、そういう意味で、その全部を含んだ基本計画を原則事前承認、そして緊急の場合には事後に、こういう考え方を私たちはとっているんですが、そのことについて、市川さんは先ほど基本計画のことは言ってくださったんですけれども、今のような考え方、私が今申し上げたような考え方を踏まえてのお話と考えていいのかどうか。
それから、薮野さんは先ほど、立法府がまさに行政の上にあって、そのシビリアンコントロールの点でという言われ方を言われたのですが、それは、今申し上げたような基本計画、しかもそれは原則事前、緊急事後というふうに私は申し上げたけれども、そういうような考え方をとられるのかどうか、その辺のことについてお伺いできればと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/457
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458・市川俊司
○市川俊司君 今御質問のあった問題については、私も同意見ということでございます。
つけ加えて申し上げれば、そればかり言っていても、緊急な場合があったときには国会に諮って議論する時間がない、我が国の安全とかにかかわってという場合があるではないかという御指摘があろうと思います。こういう場合については、やはり緊急例外的なケースとして考えられてもいいだろうと思いますが、その場合も、大事なのは後からということであろうと思います。事後的に十分それを検討し、場合によっては修正したり停止したり見直したりということで、国民の信頼を得るように担保していくということがやはり大事なことではないか、それがセットになるのではないかと考えています。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/458
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459・薮野祐三
○薮野祐三君 おっしゃった基本的な線については、私も同感です。
二点あります。一つは、国会がというよりも、あるいは衆議院というよりも、個々に派遣委員の皆様方個人として、自分の立場として、自分の意思を超えて内閣が独自に行うということをどう考えられるのか、御自身としてどう思われるのかということをやはりまず問われるべきであろう。
実は、なぜこういう形で行政府の専行が進むかといいますと、自民党、与党の方には申しわけないが、やはり政権交代ということがあり得ないということが前提でないか。例えば、今内閣が専行して独自にできるという行為があれば、野党がそれを使う場合もある。実はもろ刃の剣を持っている。いわゆるフリーハンドを持ちたいという法令は、他の政党がそのフリーハンドを持つ危険性もある。やはり政権交代ということによって立法府の中である程度自制しておくということが、民主主義の基本的な原点ではないかというふうに思っています。
二点目は、法律ということに関して極めてリジッドに厳しく考えられている。法律には解釈権という大きな幅がある。私は法学部の教師ですけれども、いわゆる法律というのも、犯罪を犯してもそれが社会的に制裁可能であるかどうかを判定するということがあるわけですから、実際、承認ということがなくても、おっしゃったように、緊急事態があれば総理の責任において、進退をもって対応されるということによって対応されればいいのであって、それこそ政治的判断であって、それを法律という約束事を決める中で話されるというのは、法律をつくる専門家としては、やや議論が素人じみているのではないか。それこそ、そこに政治的判断があるのであって、決まりどおりにやるのであれば別に政治的判断は要らない。そういう意味では、おっしゃったように、緊急なときに内閣が独自にやるということも、内閣の責任においてやられ、その説明が社会的常識を全うすれば承認されるというふうに考えています。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/459
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460・伊藤英成
○伊藤(英)委員 薮野さんと大矢野さんにお伺いしたいと思うのですが、実は今までにいろいろ言われましたように、ここでも言われましたけれども、私たちも思いますのは、今回のこの法案の中を見ますと、やはり言葉といいましょうか、そういうものが非常にあいまいなものが多い。したがって、実は今委員会の中でも私たちも幾つかのことについて、そもそもこれの統一見解はどういうことかということで、その解釈など、いろいろ求めているのが今の状態でもあるんですね。
そこで、そのうちの一つがいわゆる周辺事態という問題の定義の問題なんですね。
周辺事態ということについても、政府も若干、四類型ということで説明したりするんですが、やはりよくわからないなということでもあるんですね。そういうことで、実は私たちとしては、あるいは民主党としては、この周辺事態ということについて、いわば日本の平和と安全に重要な影響を与える事態ということなんですが、そこで、いわゆる日本有事に発展するおそれのあるような事態、そういうものを周辺事態というふうにすべきであろうという考え方をとっているんですが、この辺のことについて、薮野さん、大矢野さんはどういうふうに考えられるでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/460
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461・大矢野栄次
○大矢野栄次君 まず、周辺事態というものを地理的にも、いろいろな対象国も含めて、具体的に定義すべきかどうかという話につきましては、先ほどもおっしゃったように、いわゆる拡大解釈というのは幾らでも可能なわけでして、今のユーゴスラビアの爆撃まで入れて周辺事態だと解釈することも可能なんだと私は思っているんです。あるいは、マラッカ海峡をどう考えるかということも周辺事態でして、問題は、そのような周辺事態に対応するために、武力なのか外交なのか経済なのか、あるいはそのような周辺事態にならないようにするための対策があり得るんじゃないかという意味で、先ほども言いましたように、総合的な戦略を持つべきだというのは、何か起こったらどうしようかという前に、何か起こらないためにどのような戦略として外交あるいは経済的な援助等を考えていくべきかというところまで含めたものが本来の国防であるべきだという意味です。
そういう意味では、どこまで国民に対して具体的に地理的な問題とか対応策を指し示すべきかということについては、実は私わかりません。いわゆる軍事的な問題に関してはそうです。しかし、それ以外については、できるだけ周辺事態というものを特定化せずに、すべてが周辺事態であるがゆえに、それを経済的に、外交的に対応できるというふうに絞り込みをしていけば、残ったものがまさに本来議論されるべき周辺事態でして、漠然と議論するよりは、すべてを対象にして、その対応策をちゃんと緻密に計画できる。それ以外の部分はもしかしたら事後的にしか国民にも説明できないことがあり得るというところまで議論を詰めないがゆえに、中途半端な議論が行われているのではないかと思っています。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/461
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462・薮野祐三
○薮野祐三君 私はなぜ国会承認ということにこだわるかといいますと、その解釈ということを、今おっしゃったような形で、日本に影響を及ぼすという文言を入れる。入れてもやはりそれは解釈であって、またどうなるかという問題が出てくる。
例えば、今マラッカ海峡で何か紛争が起きるということで自衛隊が出れば、国民はびっくりするわけで、しかし、政府はこれを周辺と言うことによっても、実は国民がもう一度それを解釈することによって、国民の大きな反対運動が起きるだろう。
実は、最終的に担保しておくべきことは、国会の承認ということによって、解釈の問題が無限に広がらないということを整備しておきたいということで、そのように焦点を絞ったわけで、私自身とすれば、おっしゃった問題、もう少し現実的に言えば、このスケジュールでいけばほぼ通るであろうこの法案に対して、一つの突破口、唯一私として一つの歯どめといいますか、余りにもフリーハンドが多過ぎると感じている。その余りにもフリーハンドが多い中で、唯一最後担保しておくべきことは、まさに立法府であり、皆さん方個人が立法府の一員として、自衛隊が行うことに関与したくないのかしたいのか、そこに尽きるという意味です。
そういう意味では、おっしゃった文言には、私自身としてはそれほど論議するつもりもないし、これは本当に水かけ論になってくるだろう。できれば、より言葉が多い方がいいだろうというふうには思っています。おっしゃった日本という言葉が入る方がよりベターではないかとは思っています。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/462
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463・伊藤英成
○伊藤(英)委員 最後にお伺いしたいのですが、今このガイドライン法案で一番議論されるのは、北朝鮮に万一何か起こったら、こういう形で言われるわけですね。そういう意味でも、朝鮮半島との地理的な関係からいたしましても、この北九州地域、あるいは沖縄も含んで、先ほど福岡空港の話もありましたけれども、こちらは最も敏感にいろいろなことを感じていらっしゃるんだと思うのです。
そういう意味で、地元の方々の率直な感覚といいましょうか、その辺のことについて、先ほども一部お話もされたりしておりますが、その辺のことについて、富永さん、市川さん、薮野さん、それぞれもう一度お伺いできればと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/463
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464・富永雄幸
○富永雄幸君 先ほどからお話をしておりませんでしたが、昭和二十五年です、つまり一九五〇年の六月に朝鮮戦争が勃発いたしました。私は佐世保の出身であります。当時私は医科大学の学生でありましたが、休暇あるいはその他に、生活のこともございますし、佐世保へ常に帰っておりました。これは、今回のガイドラインの問題について考えるときに、私に極めて大きな影響を与えているのも事実であります。
当時、突然のそういう事態の発生に、それは先ほどちょうだいいたしましたこの福岡県の警察史の中にも出ておりましたが、町の中じゅうひっくり返すような、というよりも、町の中が戦争に巻き込まれたような思いをいたしたのでございます。
まず代表的にあらわれましたものは、壊れた艦艇が、恐らく砲撃によって壊れた、あるいは座礁その他もあると思うのでございますが、艦艇の修理に帰ってまいります。それと同時に、幾多のいわゆる戦死した遺体の後送のための遺体処理の作業。これが戦争かというのを目の当たりに見ました。そして、食糧の補給その他のための弾薬、油、あらゆる戦争物資が佐世保から積み出されていきます。佐世保は、そういう意味におきまして、アメリカ海軍と申しましょうか国連軍の海軍と申しましょうか、その直接の後方基地そのものでございました。
佐世保港の入り口は、夕景八時から翌朝五時までは防潜網がおろされて、一般の漁船も交通ができなくなります。そのような管制下にございました朝鮮戦争当時のことを考えまして、一九五一年にいわゆる日米安保条約が発効いたしまして、その佐世保基地の使いよう、あり方、これが一転して変わってきたのを、安全保障条約の締結後の佐世保港の使用のあり方あるいは整備のあり方、そして粛々と進んでいく補給のあり方、こういうものが一変したのを私は目の前に見てまいりました。
いわゆる後方支援の体制その他ということが、今度のガイドラインの問題でも大変大きな問題となっておりますが、私にとっては、そういう意味においては、その当時の、一九五〇年あるいは五一年を境とする大きな変化のあったことを考えてみますと、しっかりとガイドラインのそこらのことを確認しておかなければいけない。
それと同時に、例えば、先ほども他の公述人から述べられたことでございますが、後方支援をどこがお引き受けをしたか、どこの責任においてやるかという責任の明確さその他も今後の問題として極めて重要なことになるであろうと、そういう私のいささかの体験なりから現在考えているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/464
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465・市川俊司
○市川俊司君 この問題につきましては、一般市民、自治体がどういう影響を受けるかについてどうも具体的に示されていないということは、先ほどから申し上げました。
どうもマスコミの新聞とか雑誌を拝見しますと、例えば九四年にアメリカ軍が、空港については九州では福岡、宮崎、鹿児島、沖縄である、あるいは港については九州では福岡であるなどというふうなこと、そんなものが載っていたりするので、実態としてどうかわからない。また、今回の法案ができると、一番影響がある八割は運送業者であるなどというふうな言い方もされているようでありまして、どうも外からいろいろ情報が入ってきて、政府や法案を考えている皆さん方から具体的提起がない。これがかえって不安をあおるのではないかと思っている次第です。
確かに十項目では提起されておられますけれども、より具体的に、実際の日常生活の中でどこがどう影響が出てくるのか、どんなことで、どんな場合どんなことをするのかについて、よりわかりやすく示していただければ、それでまた安心される場合も出てくるかもしれないわけであります。特に九州は、特に福岡は、自衛隊の基地もありますし、また港もあるし、その他いろいろ考えていきますと、やはり直接的な不安を持っていますので、ぜひともその辺、具体的に明らかにしてほしいというのが希望でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/465
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466・薮野祐三
○薮野祐三君 二点、手短に。
一点は、たとえガイドラインができて、いろいろな後方支援ということであっても、朝鮮半島で一時有事になった場合に自衛隊員が朝鮮半島に上陸するということがあれば、これは大変なことだと思います。内閣は吹っ飛ぶと思いますね、事実上の問題として。他国の領土に自衛隊が足を踏み入れた、まさに、いかにガイドラインをつくろうとも、言葉をつくろうとも、それをやった瞬間、国会論議、国民の運動というのは極めて常識の線に戻るだろう。ですから、余りその点を、ではどうなるという論議をしても意味がない。しかし、まさにここに何らかの脅威があって博多湾に来たとなれば、それに対して出ていくことをだれも市民は反対しないわけで、そのことを余りにも、ではどうなる論議、私が学生時代にやった安保論議と同じことをされているという気がします。
二点目は、そのためにこそもっと、例えば地域に根を持っている共産党、公明党あたりが地域の自治体あたりから平和攻勢をする。私が福岡市に何度言っても、北朝鮮と姉妹都市をつくれと言っても、姉妹都市を持っているのは境港市だけなんです。いかに民間レベルでのネットワークをつくるかという平和攻勢をだれもやらない。あるところで、福岡の国際化と自治体の国際化の文書の中に北朝鮮と書いただけで、削除しろと言われている。こういう自治体のあり方を、やはり平和攻勢として、国がガイドラインを言うのであれば、まさに地域に根差したところで平和攻勢をしていただきたいというふうに思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/466
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467・山崎拓
○山崎座長 これにて伊藤君の質疑は終了いたしました。
次に、赤松正雄君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/467
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468・赤松正雄
○赤松(正)委員 公明党の赤松正雄でございます。
六人の陳述人の皆さん、本当に貴重な御意見、ありがとうございました。
私の方は、主に薮野九州大学教授に御質問をさせていただきます。
先ほど、一つの意見ということで、周辺事態安全確保法案の中で、国会への報告を国会への事前承認に修正すべきであるという御意見を聞かせていただいて、お二方からもそれについての確認の質問がございました。私もこの点について全く同意見でございます。
この法案の中身に関しまして、先ほど来の薮野さんの御意見でおおよそそのお考えはわかるわけですが、念のために一点お聞きしたいのは、安保再定義が要するに冷戦後には不可避という格好で見直しが行われた。ただ、それを今回のようないわゆるガイドライン関連法案という格好で処理するのがいいのかどうか、私自身は極めて疑問だと思っておりまして、本来的には条約の修正というふうな格好で行うべきものであったのだろうと思うのですが、それがこういう形になってきた。
そこで、今、国会でも、日米安保条約の枠内、そういう文言を法案に入れるべきだというふうな議論が行われているわけですけれども、その点について先生の御意見をお聞かせ願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/468
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469・薮野祐三
○薮野祐三君 私の気持ちとすれば、極めてフリーハンドが多いという印象を持っています。そういう意味では、まず日米安保の範囲であるということがあれば、いわゆる形容する、定義する言葉が多ければ多いほど国民は安心するというふうに思っています。異議はありません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/469
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470・赤松正雄
○赤松(正)委員 先ほど、三つの考えの冒頭に、アメリカ外交と日本外交の基本的相違についてという非常に示唆に富んだお話がございました。一九九四年のあの北朝鮮核疑惑のときには、アメリカ・カーター元大統領が北朝鮮へ出かけていって、いわば事なきを得たという場面があったわけですけれども、アメリカのいわゆる人権外交というものが今後、これからのこの北東アジアの状況の中で、いわば米の人権外交が展開していく上で破綻をする可能性といいますか、どういう場合にアメリカの人権外交というものがそごを来すというか、うまくいかなくなるというふうに考えておられますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/470
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471・薮野祐三
○薮野祐三君 ヨーロッパの場合には、ドイツが統一したので逆に見やすいのですが、東アジア、極東アジアの場合は、先ほども申しましたように、冷戦構造というイデオロギー的対立と同時に、二重写しの意味で人権外交がある。
実は、例えばアメリカと台湾との関係、アメリカと韓国の関係というのも冷戦下に起きた関係であって、その中で中国を承認している。あくまでも、東アジアの枠組みというのは、冷戦構造の中でできた枠組みの中でアメリカが一つの利益を持っている。しかし、それに対してアメリカが人権外交を進めていこうとするならば、中国との対立、中国の少数民族の問題も出てくる。そういう意味では、アメリカ自身が、アジア戦略、人権外交と冷戦外交のいわゆる総決算を迫られる時期というのは早晩出てくるだろう。
例えば、皆さん方が簡単に、私は簡単にと思いますが、台湾海峡等でドンパチがということをおっしゃるのですが、もし起きればVISAカードは使えませんし、クレジットカードは使えませんし、航空機は飛びませんし、私たちの生活は一夜にして暗黒になるということを、どういう状態、余りにも戦争ということを五十年前の戦争で置きかえられる。今はピンポイントの戦争で、これだけ丸裸のコンピューター社会に来ているときにドンパチが起きればどういうことかということをもっと話し合うべきであって、その事態でいえば、私は基本的に、短期に何らかの政治目的のために何らかの軍事的アクションがあるかもしれませんが、一番最初も私のお話でも申し上げましたが、ある政治目的のためにアメリカは軍事行動を起こすわけで、私たちはどういう形で私たち自身もアジアの人権と主権を守っていくのかということの話し合いをもっとしていかない限り、この解答というのは出てこないだろう。
実は、ヨーロッパはEU統合という問題があってある程度話は簡単になったのですが、アジアは、二十世紀の問題である主権と二十一世紀の人権と、二つ同時に抱えてくる。これだけの問題をイデオロギー的に先導できるリーダーが日本にはいないというところに極めて私は、アメリカも危機になるだろうし、日本も追従していくと墓穴を掘るのではないかという気がしています。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/471
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472・赤松正雄
○赤松(正)委員 引き続いて、今アメリカの外交、そして日本の外交というお話があったわけですけれども、ひっくり返すというか、今度は中国の外交の基本姿勢、そして北朝鮮の外交のありようというものをどのように分析されているかということについて、お考えを聞かせていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/472
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473・薮野祐三
○薮野祐三君 中国の場合に、まさに中国の首相が訪米してクリントン大統領と会談しているように、一般的な原理として、いわゆる弱い国、発展途上国は、内政に干渉されたくないという意味で、常に主権ということを前提に置いてくる。中国を発展途上とは呼びませんが、少なくとも経済的に何らかのアクションを起こそうというところは、主権ということによって敷居、いわゆるボーダーを高くしようとする。しかし、日本のような、あるいはヨーロッパのように、国民が一千万人も外国に出ていく時代の中で主権ということを言っても、その主権を守る主体の国民がこれだけ動いているということになってくれば、人権という問題が先行してくるだろう。
そういう意味では、アメリカという国は、先ほども申しましたが、日本に対しても、私の言葉で言えば、かなり内政干渉に近い貿易問題を言ってくる。はっきり言って私は内政干渉だと思っています。しかし、それはアンフェアであるということで干渉してくる。まさに典型的なアメリカ外交のスタンスである。
それを中国に推し進めていこうとしたときにどうなるのか。まさに、ちょうど西アジアではトルコがイスラム文化圏でありながら唯一世俗化した国で、ヨーロッパとイスラムのパイプ役になっているように、日本という国は、まさに近代化しようというアジアの国々の主権外交と同時に、これだけ成長した人権外交を持ち得るというところのイデオロギー性ということをもっと積み重ねて、誘導していくべき時代に来ているのであろう。それをいまだにドンパチの話でしているということを私はとても悲しく思っています。(赤松(正)委員「北朝鮮についてはどうですか」と呼ぶ)
北朝鮮も同じだと思います。私は、その問題、いわゆる政治的意図をどう見ていくのかということを言えば、くどいようですが、戦争、紛争、政治というのは、テーブルの上で殴り合っていても、下で手を結ぶ必要があるわけで、これがマルチな外交であって、そのマルチな外交、とりわけ日本という国は、例えばアメリカと戦争をしたときに、鬼畜米英で英語も排斥しようとしたいわゆるゼロ・百の文化で、敵は全部敵だという。どういう形でチャンネルをつくるかということが問われている。
そういう意味では、当然北朝鮮にとってメリットのある部分については人権で来るだろうし、メリットのない部分は主権で来るだろう。これだけの飢えた国民をほっておいておまえたちは援助しないかというのは人権外交です。しかし、核査察をさせろと言うと反対だと言うのは主権外交です。まさに北朝鮮自身が主権外交と人権外交を使い分けているということを我々はもっと認識すべきだというふうに思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/473
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474・赤松正雄
○赤松(正)委員 先ほど来薮野陳述人は、ドンパチばかりに話が行くのは悲しいとか、あるいは今日本に攻められるという事態があるわけないじゃないかというお話をされましたが、そういう典型的な日本有事という形ではなくて、一つはアメリカが要するに例えばイラクあるいはまた今のコソボ、アメリカ単独ではないにせよ、そういった世界の情勢に対してかかわっていく行き方というものを見たときに、アメリカが例えば今北朝鮮に何らかの行動を起こすといったところで、要するに、非常にわかりやすく言えば、火の粉が日本に及んでくる、それをどう防ぐか、それに活躍する米軍にどう日本がサポートするか、そういう、第一義的には、ドンパチというよりも、それを後方からサポートしなくちゃいけないという政府の言い分、こういった点についてはどう思われますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/474
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475・薮野祐三
○薮野祐三君 極めて多義的に富んでいて、例えば国連のPKO法案であるとか、あるいはPKFをどうするかという問題と安保とが同列で語られていて、私たちは常に、自衛隊を海外に派遣するのか、後方支援をどうするのか、国民レベルでは、いわゆる自衛隊の軍事活動に近い問題をどうするのかということで、一枚岩に考えてしまっている。
しかし、国連外交を中心としたPKOの問題と、いわゆる日本独自の安保の問題という多義的な形の錯綜した問題が出てきている。その中で日本は後方支援をどうするか。例えば、何らかのミサイルが飛ぶ、そのときに後方支援をどうするか。それは、当然我々の常識の問題として、極論してしまいますと、今の安保条約の中で支援できない部分というのはあるのだろうか。
逆に、今の与党法案を読んでいて、朝鮮半島問題を事例にすればするほど、この法案というのは意味がなくなってきて、実はもう少し広いところを言わないと意味がないような気がしている。例えば、まさに朝鮮半島問題は、周辺有事じゃなくて日本有事で済むわけです。ですから、もう少し緻密に考えて言えば、今の自民党案というものを逆に突っ込んでいって、逆に朝鮮半島ということを言えば言うほど、私は与党案は墓穴を掘るというふうに考えています。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/475
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476・赤松正雄
○赤松(正)委員 いわゆる非核神戸方式をめぐって、高知県のように、外交、防衛については国と地方の関係が問われているわけですけれども、外交の一元化を危険と見る見方と、それから安保は自治体の枠外と見る見方、先ほど来、自治体における外交のありようというものはもっとあっていい、積極的な平和攻勢というのはあっていいというお話がありましたけれども、今一つ先鋭的に突きつけられている問題、それぞれ函館でも高知でも、それなりのいわゆる解決というか、一段落がついているようでありますけれども、そういう非核神戸方式、例えばそういう具体的なテーマをめぐってのそういう地域のそういう反応というかとらえ方についてはどういうふうに考えられますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/476
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477・薮野祐三
○薮野祐三君 基本的に、日本の核問題については、政権党あるいは政府、国会も含めて、極めてグレーに進めてきてしまっている。例えば、傍証の限りですが、沖縄返還のときに核抜き原則だと言われていたけれども、実は核があったのではないかという文書も出てくる。政府は、一体核原則に対して、本当に国民に信じるだけのアカウンタビリティーを提供しているのかという疑問が自治体にあるわけで、もし政府がアカウンタビリティーを持っていれば、自治体外交と政府の外交は全く何の矛盾もないわけです。
我々は、この問題の中で実は一番問題は、今回のこの法案の問題もそうですが、二十一世紀に向かって一番重要なのはやはり説明能力であって、アカウンタビリティーをどう高めていけるか。はっきり説明すれば国民は納得してくれるんだというスタンスをとるべきであって、そういう意味では、おっしゃった神戸方式、あるいはいろいろな方式というものはどうかというふうにおっしゃれば、形式的、論理的に言えば決して矛盾するものではない、矛盾するということ自身が、政府が非核三原則を自分で放棄していることだというふうに思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/477
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478・赤松正雄
○赤松(正)委員 終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/478
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479・山崎拓
○山崎座長 これにて赤松君の質疑は終了いたしました。
次に、西村眞悟君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/479
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480・西村眞悟
○西村(眞)委員 自由党の西村眞悟でございます。
まず、諫山公述人に、本件法案は憲法違反である、我々は憲法違反の法律をつくろうとしているという旨、法律家らしく断定されたので、その背後の結論部分二つぐらいお聞きしたいと思います。
まず、公述人は日米安保条約を合憲とお考えなのか違憲とお考えなのか、自衛隊は合憲とお考えなのか違憲とお考えなのか、結論だけお述べいただけますでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/480
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481・諫山博
○諫山博君 日米安保条約も日本の自衛隊も憲法違反だと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/481
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482・西村眞悟
○西村(眞)委員 ありがとうございました。それだけお聞きしたら十分でございます。
次に、石川公述人にお聞きいたします。
沖縄戦の体験を踏まえて、殺されても殺してはならないんですという旨おっしゃいました。個人の御信念としては私は立派だと思います。聖書にも同趣旨のことが書かれてございます。しかし、聖書には、カエサルのものはカエサルに返せという言葉も書かれておるのでございます。
したがって、石川公述人の御信念は、一億二千万の国民を擁する我が日本国が、国家の体制としてその御信念に基づく体制をとらねばならないという趣旨なのか、それともみずからの御信念にとどまって、国家の体制はまた別だというお考えのもとで発言されたのか、御確認したいのでお答えいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/482
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483・石川元平
○石川元平君 話の中でも、沖縄的な平和思想と絡めて、ヌチドゥタカラの話もいたしました。命こそが宝だというふうなことでありまして、これはみずからの命もそうです。そして、他の命も同様にその尊厳性を守るべきだというふうな趣旨で申し上げました。
去る沖縄戦の話、詳しくはできませんでしたけれども、軍人と民間人の比率も……発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/483
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484・西村眞悟
○西村(眞)委員 私のお聞きしているのは、国家の体制として我が国は、一億二千万国民が、殺されても殺してはいけないという体制をつくるべきなのか否かということについてお聞きしておるんです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/484
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485・石川元平
○石川元平君 そのこととかかわって申し上げますと、まさに憲法の精神に立ち返って平和外交を中心とする努力を重ねれば、今日のような論議もやらなくて済むというふうに考えています。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/485
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486・西村眞悟
○西村(眞)委員 我々は戦争か平和かという次元で議論しているのではございません。平和がいいに決まっておるわけです。我々はセキュリティーの次元で議論しておるのでございます。その意味で、平和な日本から日本人が拉致されたことを許すことはできないし、またミサイルで脅迫されることも許すことはできないのでございます。
沖縄は平和でありました。石川公述人に一点このことを御存じかどうかお伺いしたいんですが、一六四〇年代ですが、先島諸島西表島の少女一人がポルトガル船によって拉致されました。その報に接するや、薩摩藩は直ちに鉄砲隊百名をもって西表及び先島方面に駐屯せしめ、ポルトガル、スペインの船が村民を拉致するのを防いだわけでございます。そして、先島の平和が、セキュリティーがある程度確保されたわけでございますが、このことは御存じでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/486
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487・石川元平
○石川元平君 そのことは具体的に承知していません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/487
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488・西村眞悟
○西村(眞)委員 次に、富永公述人にお伺いいたします。
先ほど来のお話の中で、日米安保は片務的ではあるがという留保を三度つけられて語られました。そしてまた、アメリカ艦艇と併走する我が自衛艦が、アメリカ艦艇が攻撃されておっても、そのアメリカ艦艇を守るためにみずから行動をとることはできないんだという例を挙げられました。そして最後は、私も心にしみることでありますが、自衛隊の諸君に名誉ある地位をということを言われました。
これはすべて、同盟国が攻撃を受けているのにもかかわらず戦えない自衛隊、自衛官が名誉ある地位につけるはずがないのでございまして、自衛権の行使というものを我が国のように、一方は個別的はいいんだ、自分がやられたときはアメリカさんもやってくれるから、私どもはアメリカさんの補完勢力としてちょろちょろやるんだ、しかしアメリカさんがやられれば、隣に走っている船がやられても我々は助けることができませんよ、この我が国の防衛政策の基本理念のいびつ性を正さねばならないんではないかと私は確信を持って、これが私の政治的命題なんですが、その集団的自衛権は行使すべきであるということに関しては、御意見はいかがお持ちでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/488
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489・富永雄幸
○富永雄幸君 集団的自衛権を行使すべきであると私は信じているものでございます。
先ほど御指摘がございました名誉ある自衛隊という言葉については、時間的な関係から、そこらに対する細かい配慮を欠いております。この辺につきましてはお許しをいただきたいと思いますが、私は、何と申しましても、同盟関係にございますアメリカ軍と自衛隊の間に本当に信頼できる関係が確立されることを希望し、またそうなるであろうと信じているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/489
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490・西村眞悟
○西村(眞)委員 先ほど来、周辺事態の概念に関して、絞れば絞るほど国民は安心するという御意見が、たしか市川公述人からあったようにも思いますし、また諫山公述人からは、周辺事態が何を指すかわからない、構成要件がわからないんだということを言われました。
私の意見は、絞れば絞るほど国民は不安になると思うんです。つまり、これは危機対処の法なんですね。したがって、急迫不正の侵害に対し自己及び他人を守るために云々、この急迫不正の事態がどういう事態なのか、絞れば絞る。具体的に、金づちを持って襲ってきた場合とか、銃を持って襲ってきた場合とか、絞れば絞るんだ。そうすれば、緊急事態の本質として、何が起こるかわからないことが起こるわけですから、緊急事態においてとる手段が絞られてしまう。
また、それでは災害対策もこれはできないんですね、絞れば絞るほど。なぜか。地震であったらよろしい、災害対策基本法発動だ、一件の火事ではだめだとか、そういうことを絞っていたら、この法律の本来の性格として、何が起こるかわからない、予測できないことが起こることに対処する法律の本質的な部分をそぐことになるわけです。私は、絞れば絞るほど国民は不安になる。民主主義国家においては、国民は政府を信頼している、選挙があるわけですから。金正日の独裁政権ではないわけですからね。
だから、私の意見については、市川公述人、どのようにお考えですか。同じ弁護士ですからその点はお聞きするんですが。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/490
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491・市川俊司
○市川俊司君 私が申し上げたのは、要するに一つの法律でございますので、まず憲法の条項及び日米安保条約とかその他の法律とか条約とか、そういう法体系の中できちんと概念づけをする必要があるという意味での指摘がまず第一点でございます。要するに、上位にある法律、規範よりかははみ出るような形では問題があるということは、一般的に御理解いただけると思います。
それから二点目としては、御指摘のとおり、具体化のしようが難しい事案ではないかという御指摘があるのも、問題の性質からいって確かにそういう側面があると思います。ただし、周辺事態、今議論されているのは、抽象論は別として、具体化できるところは相当あると私は思っている次第です。
現実に、新聞報道等で拝見していますと、周辺事態について四つの例があるということでお話が出ているようであります。日本周辺地域で武力紛争が発生した場合とか、それが差し迫っている場合とか、それから大量難民のおそれとか国連の経済制裁云々、こういうような形で、法律というのはなるべく具体化された方がいいので、必死で考えていただいて、具体化できるところを絞りに絞って、知恵を絞ってという意味もありまして、具体化してほしいという趣旨でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/491
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492・西村眞悟
○西村(眞)委員 知恵を絞るという意味での絞るということでございますね。
私は、具体的な例示をすることについては想定がある。それこそオペレーションの世界ですから、何ら否定はしていないんですが、法律にそれを限定列挙のように書くということについては、危機対処法の本質上、私は反対しておるわけです。
それで、残された時間、薮野公述人にお聞きいたします。
国防も行政の範囲だと言われますが、オペレーションの段階になったときには、通常の例えば大蔵省、建設省がやっている行政の法律に基づく世界と全く違う世界がオペレーションの世界として開けてくるわけですね。
そのときに我が国の体制は、内閣総理大臣が最高指揮官でございます。この体制の中で、国会をどの部分にかからしめることが妥当なのか。危機対処、オペレーションの世界ですから、国会が足を引っ張ってはならない。むしろ私の観点は、国会が関与することによって、最高指揮官たる内閣総理大臣と、これは行政の長ではありません、総理府の長ではない内閣総理大臣と国会が、ともに国民に対してこの事態の対処における責任を負う体制をつくる。こういう観点から申し上げるならば、仮にかからしめる部分はどこかといえば、出動するか否かについて、事前もしくは事後にかからしめたらいかがであろうか、私はこのように思っておる。これはアメリカの戦争権限法でも議論の末ここに至ったことでございますが、薮野公述人はいかがお考えでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/492
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493・薮野祐三
○薮野祐三君 まず一点、未経験の領域であるときに、学習効果なく、まずアメリカのようにと言うことに関しては、私自身は極めて疑義を感じています。今おっしゃった中で、私は極めて大きな疑義を感じるんですが、私が事務局からいただいています書類には、公述人は派遣委員に質問ができないということになっていますので、私は逆にたくさん質問をしたいんですが、差し控えます。
まず、そういうことの全体として言えば、そういうフリーハンドを与えるということは、果たして九条の精神に合うものなのかどうか。日本の国策としてどうなのか。私が今の憲法、賛成する、反対するにしろ、今の憲法に従う義務が国民としてあるのであるならば、国会の最高意思決議ということに対する責任をどうとるのかということを国民に示してほしい。それをオペレーションという形で済ましてほしくないということの精神をお話ししたということです。もしそうであるならば、憲法を改正していただきたいというふうに思います。私自身質問はできませんので、今の御質問は、憲法九条を改正する意図がおありだというふうに理解させていただいていいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/493
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494・西村眞悟
○西村(眞)委員 これで終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/494
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495・山崎拓
○山崎座長 これにて西村君の質疑は終了いたしました。
次に、佐々木陸海君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/495
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496・佐々木陸海
○佐々木(陸)委員 日本共産党の佐々木陸海でございます。
六人の陳述者の皆さんには、大変貴重な意見をいただきまして、大変ありがとうございました。
私の質問時間は、お答えいただく時間も含めまして十分しかございませんので、とても六人全員にお聞きするわけにはまいりませんので、その点御了解を願いたいと思います。
法案について、大変抽象的である、特に民間協力や自治体の協力の点が全く不明瞭だという問題が出されたと思います。
しかし、この法案に至る経過をたどってみますと、出発点は極めて具体的でありまして、これも何人かからお話が出ましたが、一九九四年の北朝鮮の核疑惑の際にアメリカが日本に要求してきた一千五十九項目の要求というものがございました。私どもも当時の防衛庁の文書を入手しておりますが、それを国会の質問でも使いましたけれども、国内の民間港湾施設では、この地域では福岡港が挙がっており、そして民間飛行場という点では、全国八つの空港が挙がる中で、福岡、板付、宮崎、鹿児島、那覇と五つの空港が御当地にかかわるようなところでは挙がっているという状況があります。
そして、そういうものから出発して今日のような法案が出されるに至ってきているわけでありまして、その点にかかわって、先ほどお話もありましたけれども、具体的な姿ということになれば、あの朝鮮戦争のときに佐世保が、佐世保の市民がどうだったかということがお話がございました。それから諫山さんの方からは、福岡県での状況について若干のお話がありました。
これは、この法案の具体的な姿を考えていく上で、そのままそれが再現するとは私も考えているわけではありませんけれども、やはり大変大事な要素になると思いますので、諫山さんから福岡県と朝鮮戦争とのかかわりなどについて少しお話し願えたらと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/496
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497・諫山博
○諫山博君 朝鮮戦争のころの福岡県の米軍基地というのは、一つは福岡市の板付空港、もう一つは遠賀郡の芦屋の基地、もう一つは小倉の基地でした。このすべてがもう戦争状態と言っていいような非常な混乱時期になっております。
例えば福岡市を例にとります。朝鮮戦争が始まって四日目に福岡市には警戒警報が発せられました。灯火管制も命令されました。そして、米軍の自動車が拡声機をつけて、いろいろ航空警報についての指導をして回っています。福岡県では、防空訓練を行うかどうかということが本気で議論されています。灯火管制をやるかやらないか、これが県知事と警察との間で話し合われております。
博多港はどうだったか。皆さん方にお配りした「福岡県警察史」が非常に具体的に書いております。博多港は、兵員、兵器弾薬の輸送で芋を洗うがごとき状態であったと。そう言われれば、私も当時のことをはっきり覚えております。これが福岡市の問題です。
芦屋町、これはもっとひどい状態でした。武器弾薬、兵員の輸送基地として利用されております。そして「福岡県警察史」は、一瞬にして基地の町に変わった、こう書いています。あの芦屋の基地から兵隊が三百万人送られた、これは朝鮮に対してです。傷病兵が三十万人送り返されてきた。この中には米兵の死体がたくさんありました。警察史には書かれておりませんけれども、朝鮮戦争で死亡した米兵が芦屋に送られて、これが小倉で死体処理をされる。死体処理をしたのは日本人の労務者です。当時の話は、一人四千円の日当、破格の日当を払いながら米兵の死体処理をしたということがありました。
それから、芦屋町の状況をもっと詳しく言いますと、例えば、開戦から二カ月の間に、あの静かな芦屋町に二十四軒のキャバレーができた、女性のためのハウスが四百戸つくられた、あるいは間貸しのための住宅が三百十七戸、わずかの期間に建設された、こういう記録が残っております。そして、芦屋町だけで、佐賀県が一年間に使う木材を全部この施設のために使用したということも載っております。大変な状態です。
小倉市はどうか。当時は北九州市ではなくて小倉市でした。小倉市は、小倉市風紀取締条例をつくりました。そして、小倉の警察署の中に新たに風紀係を設けております。だから、本当に福岡県全体が米兵の町と言っていいような状態になっております。
あのころ、私は何回も佐世保に弁護士として出張しましたけれども、大体佐世保市も同じような状態だったと思います。これが朝鮮戦争のころです。
しかし、今状況は変わりました。当時は板付空港は専ら米軍が使っていました。現在は米軍と民間航空です。そして、さっき申し上げましたように、今の福岡空港の利用率というのは、羽田に次いで二番目です。成田と関西国際空港を抜いております。博多港も膨大な人と荷物が運び込まれております。だから、今ああいう状態が再び起きたとすれば福岡県は大変です。みんな、このことを本気で心配しております。
これは単なる杞憂ではなくて、博多港に何回もアメリカの軍艦が寄港した。一番新しくは、ことしの二月寄港したばかりです。私たちは博多の埠頭で反対行動をしましたけれども、そういう状態ですから、ああいう問題の再来は福岡県としては絶対にお断り、こういう法律はつくってもらいたくないというのが福岡県民のみんな共通の願いだと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/497
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498・佐々木陸海
○佐々木(陸)委員 ありがとうございました。
それでは、残された時間が少ないですが、富永陳述人にひとつお伺いしたいと思います。
今度の法案は、要するに、日本が武力攻撃を受けていないにもかかわらず、周辺事態ということで行動する米軍に自衛隊やあるいは民間が協力するということになるわけです。そういう軍事行動に自衛隊や民間が協力することが憲法上どうかという大問題が根本的にあって、私たちはそれは憲法違反で正しくないということを言っているわけですが、それはおくとしても、そのより前提の問題として、米軍の行動の性格という問題を私たちは常に問題にしてまいりました。
去年のイラクの空爆にしても、今のユーゴスラビアでの米軍が中心になったあの爆撃にしても、国連憲章というようなもの、あるいは国連の安全保障理事会というようなものの決定なしに、あるいはそれに反してやっている面もあるわけでありまして、米軍の行動が、今国際的に言えば国連憲章が一番の規範になると思いますけれども、いつもいつもそれに適合した正義の行動であるということは言えない状況が現実の問題としてあるのではなかろうかというふうに思うわけですね。
しかし、この法案では、そういう米軍の行動を、政府の答弁も見ましても、米軍が国連憲章に違反するようなことは絶対にあり得ないというような前提で考えられている。これは前提の問題として大変危険ではないだろうかということを私たちの党は主張しているわけですが、富永さんは日米協会というようなお仕事もやっていらっしゃるということなんですけれども、米軍のそういう今の世界での活動の評価についてどんなふうにお考えになっていらっしゃるか、お伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/498
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499・富永雄幸
○富永雄幸君 私の立場と先生のお立場との間にギャップがあることは私なりに承知をさせていただいてこのことを申し上げたいと思いますが、とにもかくにも本法案、きょう検討されております法案は日米安保条約に基づくものであるという最大の前提がございます。この問題におきまして、そのディテールについて一々ここで申し上げることの問題かなという問題もございます。
もちろん、それぞれアメリカ政府の立場についての問題あるいは本法案についての問題、いろいろ言うところ、考えるところは多いわけでございます。しかし、今私どもが生活をしておりますこの極東という地域に限って申しますと、今のところ余り間違ったことをやっているとは私は考えていないということで、お答えにさせていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/499
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500・佐々木陸海
○佐々木(陸)委員 ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/500
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501・山崎拓
○山崎座長 これにて佐々木君の質疑は終了いたしました。
次に、辻元清美君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/501
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502・辻元清美
○辻元委員 社会民主党、社民党の辻元清美です。
きょうは本当に皆さん、ありがとうございます。
それでは、私も質問させていただきたいのですが、まず石川さんにお聞きしたいと思います。
遠くから、沖縄からいらしていただきましたし、かつ米軍基地のお話、先ほどお伺いしました。そういう中で、この民間協力などにつきまして、沖縄の方は他府県にも増してさまざまな懸念や不安をお持ちではないかと思います。先ほども沖縄戦の話も引き合いに出されまして民間協力について触れられましたけれども、一点目はその点をもう少し詳しくお聞きしたいのと、現在の問題でいきますと、既に百五十五ミリりゅう弾砲撃演習の本土移転の際に、実際に民間機と民間船舶が使われて、移転についての協力をしたというような事例も最近ございます。
ということで、過去、現在に至ってどのようにお考えか、お話しいただければと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/502
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503・石川元平
○石川元平君 先ほど、日本軍の解釈では適切な協力をしたという記述が、食糧の強奪であったり壕追い出しであったりというようなことを申しましたけれども、そのほかにも、中部に上陸をしまして、南部へ軍隊と一緒に退避、避難をするその住民が持っている荷車、例えばそこに、私の友人もそうですけれども、おじいちゃんを乗せて南部へ退却をする。そのさなかに日本軍から、この荷車をよこせ、おじいちゃんのそういうことでこれはぜひ必要なんだ、ところが有無を言わさずその老人が惨殺をされる、そして荷車を奪われるということや、それから私の卑近な例では、住宅が、我々の母屋が兵舎になるわけです。我々は豚小屋に入れられる。こういうことは枚挙にいとまがありません。
ということなどで、有事とか、その言い方はいろいろありますけれども、私はやはり戦時というふうな言葉で今回の周辺事態法などの論議も国民の中で広くやってもらいませんと、これは言葉のマジックといいますか、大変なことを陰でやられてしまうなというふうなことを率直に感じている次第です。
それから、沖縄の県道一〇四号越えで、封鎖されて実弾砲撃演習、これは百五十五ミリりゅう弾砲でありますけれども、沖縄では中止されました。第三海兵師団によるそれですけれども、北海道の矢臼別から九州は日出生台まで、五カ所で移設という形でやられている。これは私などは新たな拡散だという非常な危機感も持っているわけです。
いわゆる民間協力とのかかわりで、これは社民党・護憲連合の照屋寛徳参議院議員の質問書への政府回答でありますけれども、この中で明らかにされていることは、九七年の山梨県北富士演習場の演習の場合、米軍の依頼で防衛施設庁が日本通運と契約している全日空機借り上げでもって、米海兵隊が百三十人、小銃七十丁、短銃二十丁、短銃用弾薬三十発を輸送した。それから、九州日出生台での演習の際でありますけれども、これも防衛施設庁が日本通運と契約をして、今度の場合これは民間船舶です。米海兵隊の百五十五ミリりゅう弾砲四門、りゅう弾砲を御存じでない方もおられるかもしれませんが、これは現在の地球上で最も恐ろしいといいますか性能を持つ重火器だ。核、非核両用です。一ないし二キロトンの核弾頭を装てんすることができると言われています。広島原爆が十一キロトンですから想像にかたくないと思いますが、そのりゅう弾砲の運搬に船舶が利用されて、さらに車両四十台などが那覇港から大分港まで運ばれた。これは現地の沖縄の新聞にも写真入りで紹介等をされました。
こういうことなどが既に周辺事態法等の成立以前に行われている実態等、これは明るみに出たからいいものの、類似したことが全国でどのように行われているかということを含めて、注意を喚起しておきたいと思っています。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/503
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504・辻元清美
○辻元委員 今お話を伺いましたように、いろいろなところで、米軍によります港湾の使用とか、先ほど福岡の例もお聞きしました。それから、既に民間機や民間船舶による武器弾薬を含めます輸送なども行われている中で、この民間、自治体への協力についてはこの法律の九条で規定されているわけなんですが、そこで、簡単に一言ずつ三名の方に、市川さんと薮野さんと石川さんにお伺いしたいのです。
その内容についても含めて、十二条で、政令によると出ているわけなんです。今、国会の一つの焦点になっておりますが、そうすると、具体的にどういう形でそれが運用されていくのかとか、どういう形での協力形態が来るのかというところが、はっきり政令の中身がわからないうちに、この法案を九条のあの数行のみで通してしまうようなことは、立法の府としても非常に無責任な状態になるのではないかと私は考えているのですね。
その中で、市川さんは先ほどちょっと政令のことに触れていただきましたし、薮野さんはちょっと違う観点から白紙委任ということをおっしゃいまして、今の沖縄の例もありますので、三名の方に御意見を伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/504
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505・市川俊司
○市川俊司君 この問題については、この法案以外でも、港湾法とかいろいろな法律で、協力関係について、順次といいますか、それぞれにどうも規定されたりしている方向が進んでいるようにも見受けます。したがいまして、まず私が先ほど申し上げたように、この法案の中であえて入れる必要があるのかどうか疑問があるという気がしています。
それともう一点は、地方分権法案の絡みもあると思っております。それができてきますと、地方分権とはいえ、中央省庁の関与がまた強くなるという側面がどうも出てきそうでありまして、それとの絡みでもちょっと心配になっておるというところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/505
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506・薮野祐三
○薮野祐三君 与党案とすれば、可能な限りフリーハンドが欲しいという意味では、政令ということで済まそうという政治的意図はよくわかります。それで、具体的に詰めるとなっても、多分、経験的にどういう事態かということはなかなか予測できないということで、極めてアバウトな表現になるだろう、各論に入ると我々もなかなか詰めにくい内容ですので。
しかし、今公述人もおっしゃったように、私とすれば、地方分権ということがある。少なくとも、住民の安全を守る自治体に対して、協議対象としての何らかのフィードバック機能を一緒に置いていく必要があるだろう。政令によるということはいいだろうけれども、何らかの協議対象機関というものが設けられるというふうな便法を設けておくことが今一番現実的であって、中身を個別的に決めるということは、逆に空論になっていく危険性があるのではないかというふうに思っています。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/506
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507・石川元平
○石川元平君 港湾の利用については、実はきのう大浜石垣市長の話をちょっと聞く機会がありましたけれども、この三月定例議会で、石垣平和港宣言なるものを議会決議いたしております。これがいわゆる非核の立場で、高知などでの例もありますけれども、やはり中央と地方は上下関係ではないんだというふうなことで、市民の生命財産を守るのが首長の任務だというふうなことなどのお話をお聞きすることができました。
したがって、やはり今度の周辺事態法案の中でも、そういう憲法、地方自治法、いわゆる国と地方自治体の関係を損なうようなことがあってはならないということは申し上げておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/507
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508・山崎拓
○山崎座長 これにて辻元君の質疑は終了いたしました。
以上で各党を代表しての質疑は終了いたします。
これより質疑を御希望される委員は、団長において指名いたしますので、挙手をお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/508
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509・小島敏男
○小島委員 自民党の小島敏男です。ちょっと選挙もあって声が聞きづらいと思うのですけれども、お許しをいただきたいと思います。
きょうは、陳述者の皆さん、本当に御苦労さまでございます。時間もありませんので、簡単に幾つか質問させてもらいます。
まず、大矢野さんに質問いたします。
今までのお話を聞いていますと、仮想敵国と日本は考えていないけれども、相手は仮想敵国と日本を考えているかもしれないとか、それから愛国心の問題に触れ、いずれにしても、教育だとか経済だとか、そういうものを絡めて進めていくべきだということなんですが、今の日本を取り巻く環境というのは、やはりこの五十年間ですっかり変わってきたということで、どちらかというと日本は平和ぼけと言われている中にあるわけです。そこに北朝鮮のテポドンが上空を飛び、不審船が来、それから拉致されているというようなこともありまして、日本の周辺がにわかに変わってきているということも事実なわけでありますけれども、今の時点で安保条約をもととした今度の法案を考える上において、今の大矢野さんの考え方というのは、今の時点ではどういう形で進めるべきかということです。私は基本的にはそういうものをくるめてということには賛成なんですけれども、今の時点はどうかということをちょっとお聞かせいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/509
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510・大矢野栄次
○大矢野栄次君 まず、日本は占領されたことはないという話がありましたけれども、日本は戦後占領されていたわけでして、マッカーサー元帥がいなくなったら占領が終わったわけではなくて、今度は文化的にもいろいろな意味で占領状態は続いていると私は考えています。それが戦後の教育といいますか、いろいろな意味での平和ぼけの原因であろうということと、日米関係は友好的に推移しているということを前提にして、仮想敵国あるかないかということを議論するよりは、日本というのはアメリカにとって、あるいはヨーロッパにとってあくまでかなりの脅威であって、それを日本人が認識していないこと自体が一番大きな問題であるという立場で、アメリカともう一回戦争をやろうかという意味で安保条約をやめようという態度ならば、それは無理である。
つまり、アメリカとどういうふうに対応していくかという議論の中で、私の結論は、安保条約は歴史的にやらざるを得なかった。あるいは、現状認識としまして、安保条約を破棄して日本の自衛隊がそれなりの軍備をより補強するということは、一番強敵はアメリカになるんだという意味で、周辺有事のときになぜアメリカを議論しないでこのようなガイドラインを話しているのかということが私にとっては不満である。
つまり、現状認識としまして、日本は決してアメリカからは独立していませんし、アメリカから独立するためのガイドラインを議論してもいない状態で周辺を考えることに若干ミスがある。対アメリカの潜在的問題も考えた上で、やむを得ずこのようなガイドラインの延長線上に日本は今あるのだろうという意味で、私はあえて反対意見は持たないということです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/510
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511・小島敏男
○小島委員 それでは、薮野さんにお聞きしたいのですけれども、有事の際という形の今度の法案なんですけれども、別に戦争をするしないということでなくて、やはり補完的に日本人が何を有事の場合にするかということなんですが、先ほど、韓国に自衛隊が行ったら内閣は全部パンクだというようなこともお話があったわけですよ。ところが、韓国とアメリカの方では、もし北朝鮮に何かがあった場合に、その難民に対してどうするかということまで話し合いを進めているわけですね。ですから、そういう危険性がないということは言えないと思うのですよ。
その場合に、もし何かがあったときに、韓国に日本人は相当いますから、その関係の邦人の救出なんかというときに、今のお話ですと、自衛隊も何も行ったらパンクだよというようなことで簡単に割り切れるのかどうかということを先ほどもお話の中で感じたものですから、有事の際にそういうことまで言い切るのかどうか、その辺ちょっとお聞かせいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/511
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512・薮野祐三
○薮野祐三君 二点ですが、私は政治的判断を言っているのであって、今のアメリカもそうですが、一人兵隊が戦闘行為で死ぬと急に厭戦気分がアメリカの中に蔓延する。人が死なないことによる戦闘行為であるという、二十一世紀型の戦争ということをもっと考えておく必要がある、紛争ということも考えておく必要がある。
救出ということもありますが、戦争あるいは紛争といったときに、商品であるとマーケットがある。ちょっと比喩が悪いんですが、やはり紛争でもマーケットがあって、たくさんアクターといいますか、いわゆる商売人がいる、国がいる中で、一つだけが一つの行為でできない。例えば、日本人を救出するという正当性の中で、自衛隊員が救出という名目で韓国に上陸したときに、対中国関係、対台湾関係、対ヨーロッパ関係に説明能力を全部持つかどうか。紛争だけを言われますが、すべてのマーケットがあるということを一つやはり前提として置いておく必要があるだろう。今の内閣の中に、それだけの説明能力を持っているだろうか、それだけのマルチなチャンネルを持っているだろうかということが一つ言えると思う。
もう一つは、難民が発生する。そうであるならば、政令で自治体に協力を要請するなんという命令的なことを言わずに、難民を受け入れるのは全部自治体なんですよ。政府が国会を開放して難民を受け入れられないんですよ。それであれば、もっと自治体にキャパシティー、自由な外交権を保障しておかない限り、例えば、難民が出てきますと、昔だと何とか収容所というところに入れていけばいいのですが、今の難民はどういう病気を持っているかしれない。厚生省のお役人は予算しか扱えないので、実際の難民の健康チェックをするのは自治体の保健所の職員なんです。
この関係の中で、まさに難民救済であっても、国会議員の皆さん方は国のレベルをおっしゃいますが、実際ノンキャリとして現場で働くのは自治体の職員である。そういうことを考えれば、もっと自治体との間の協力関係ということを進めて難民を言われるのであれば、まさに我が意を得たりですが、もっともっと自治体との関係、福岡との関係を言われないと、難民拒否と出てきますよ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/512
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513・小島敏男
○小島委員 今の難民の関係というのは、ユーゴとコソボの関係で、百万人を超えるとかと新聞に載っていますから、そういうことが現実問題として世界のあの地域で行われているということで、人ごとではないという気持ちを私は持っています。
それから、最後に石川さんにお聞きしたいのですけれども、この「県民へのアピール」というのを実は見させてもらいました。沖縄が第二次世界大戦で非常に厳しい状態に置かれたということ、これは私どもも知っています。私の家も実は戦争で焼けたという経験がありますので、戦争をしたくないという気持ちはやはり負けずに私も持っています。
ただ、こういうビラを見ると、今回の場合には戦争協力法案であるという形で一言で片づけるのと、今まで日本の平和が続いてきた、その根底は何かということを考えると、やはり安保条約の中で守られてきたということも事実なんですね。ですから、そういう形からすれば、戦争協力法案という形でなくて、今度の場合には戦争抑止法案である、戦争を起こさせないんだというぐらいの県民に対しての気持ちで、これを読んでいくと、何か戦争に巻き込まれて、五十年前にさかのぼってそういう目に皆さん遭ってしまいますよということをPRしているようなので、私は読んでいて非常に極端だなという気がいたしますので、その辺はいかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/513
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514・石川元平
○石川元平君 これは、平和憲法と言われる憲法の精神に立って、そして沖縄戦と今日まで及ぶ基地の重圧のもとでの生活を余儀なくされた県民の思いからそのような、これは私たちの心情といいますか、それを打ち出しているわけでございます。
先ほど、安保のおかげで今日がということがありましたけれども、沖縄の立場からは、日米安保のために犠牲にされている特殊な地域というふうなことでございまして、そこらの認識がこれはかなり違うな。
ですから、私は、そういう一定の地域を含めた弱者、それに対する思いがやはり国政の中で配慮されませんと、悲劇がまた繰り返されるのではないかという懸念を強く持っている次第です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/514
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515・小島敏男
○小島委員 どうもありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/515
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516・上原康助
○上原委員 民主党の上原です。
六名の公述人の方々、大変御苦労さまでございます。時間の都合がありますので、まず市川先生に一問お尋ねさせていただきたいと存じます。
憲法九条とのかかわりで疑問が持たれると、これまでの御意見でかなりの点お述べになったわけですが、弁護士というお立場もありますし、いろいろまた御研究なさっておるようでありますので、具体的に、特に市川さんとして、憲法九条とのかかわりで疑問点があるということがあればもう少しお示しをいただきたいということと、もう一つは、この法案で、日本の国の外でのいわゆる周辺事態ということで、周辺有事の際に自衛隊が出動していく内容になっている、果たして一線を画することができるのかという御意見、御指摘がありました。私たちもその点まだ十分解明されておりませんので、そのことについて御意見と補足をしていただきたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/516
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517・市川俊司
○市川俊司君 憲法につきましては、私ども、戦後、教育を受け、なおかつ大学で憲法を習い、いろいろな判例を見てきた者からしますと、先ほど申し上げたとおり、憲法の考え方というのは一応頭に入っているわけであります。ただ、御承知のとおり、時代とともに憲法の考え方、解釈及びそれにかかわる国民の意識というのも少しずつ動いてきているという経過があると思っております。
したがいまして、今回のこの法案について直ちに、憲法の九条で言うここはこうということを指摘するよりかは、先ほど申し上げたとおり、自衛隊が外国に出ていくということから、一線を画しても、それがはっきりしなかったり、巻き込まれるおそれがある。そういった方面から法案について具体的に絞り込み、限定化を図ってほしいというのが繰り返し述べているところであります。
一線を画するという問題については、これはかなり実践的なレベルの話になってきまして、私どももそういう場面に遭遇したことはあるわけではもちろんございませんので、これはむしろやはり実務にかかわる皆さん方がよく考えていただいてほしいと思っています。
私は、繰り返し国民の生活や権利の点について具体的に明らかにしていただいて、よくその辺について国民が理解できるように、よし協力しようというのであれば、そう思えるように提示していただきたいと思っているのでございまして、一線の問題についても、どうも観念論、抽象論にちょっとなっている傾向があると思いますので、それも具体的にやはり国会で十分議論していただきたいと思っている次第です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/517
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518・上原康助
○上原委員 石川さんにお尋ねさせていただきます。大変御苦労さまです。
先ほどの意見陳述、またこの「県民へのアピール」についても私もよく理解をしておるつもりであります。同時にまた、沖縄戦あるいは現在の沖縄の米軍基地の重圧等を考えると、やはり他府県と変わった受けとめ方、いろいろ疑問や不満や、またこの法案に反対するという立場もわかります。
そこで、御意見は御意見として受けとめて、どう国政の場で反映させていくか、努力をさせていただきたいと思うのですが、若干私見というか、私の意見も含めてお尋ねしたいわけです。
性格は違いますが、例えばPKO法のときに沖縄で公聴会をいたしました。私は当時は社会党の特別委員会の筆頭理事なんかもやって、廃案にするということで一生懸命それなりに努力をして、また一定の目的もあの時点では達成できたと自負をいたしております。
だが、今日振り返ってみて、この法案と国際平和協力法、いわゆるPKO法とは性格も内容も違うわけですが、当時も、国際協力であろうが自衛隊が海外に出ていくのはけしからぬ、いわゆる戦争への道だということで、大分国民の強い反発がありました。あれから七、八年経過をして、今日、国際的にも日本のPKO活動というのは大変評価をされ、また国民の支持というのも大変広まってきて、今では反対という意見はほとんどなくなっているように私は認識をいたしております。
この種の法案は、安保との関係あるいは憲法の関係において、確かに公述人の諸先生方が御指摘のように、いろいろな疑問点、解明しなければいかない点、また反対するお立場もわかるわけですが、国際的視野から日米関係あるいはアジアということを考えた場合に、一国の危機管理、総合的な危機管理の一環として、やはり何かの法制化、制度化あるいは手続面を決めておかないと、万一の場合に余計混乱が起きるのではないのかというのが多くの国民のまた認識でもないかと思うのですね。
したがって、沖縄の特殊な歴史経過なり現状ということは理解をいたしますが、やはり日本全体という面、また日米間という点、アジアということ等を考えると、沖縄の基地問題の整理縮小、これからのいろいろなことを考えると、もう少しこの種のことについても沖縄のリーダーの方々が柔軟に対応して、いろいろ多くの政党なり国民の理解と協力を求めるということも必要じゃないか、私はこうも思うのです。
最近の基地の整理縮小の方針等々、県内の動きを見ても若干変化があるように思いますが、その点については石川さんはどうお考えなのか、御意見があれば聞かせていただきたいし、また、もし私が今石川さんに尋ねたことで薮野先生の御意見があれば、お聞かせ願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/518
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519・石川元平
○石川元平君 柔軟な思考がもっとあっていいんじゃないのかということですけれども、実は私どもは、こだわりを持って護憲護憲と言う勢力が小さな地域であってもあるからこそ、現在の日本が今の状態まで半世紀以上保たれてきたのではないのかというふうな感じもいたします。
国際的な立場でも、実は私は昨年夏にワシントンに行きました。そこで、後方支援という言葉とのかかわりもありますけれども、私はアメリカ・ワシントンDCに立って、一八六一年から六五年までの南北戦争の分界線にワシントンDCはあるわけですね、改めて思いました。弾一発落ちていないきれいな町です。さっきどなたかもおっしゃいましたけれども、アメリカ合衆国は後方でずっと守られているのです。私は、守られているのはアメリカ合衆国だけではないのかと思っているのですね。沖縄を中心に、日本列島がアメリカを守るためのつい立ての役目、まさにこれは前線じゃないのか。
したがって、私は、アメリカとの接し方についてはちょっと意見の違いはありますが、やはりこの日米安保、一年前に通告すれば一年後は廃棄されるわけですから、ではその後何をするか。平和憲法を持っている日本にもっとふさわしい多面的な、多国的な安全保障を——私は冒頭に廃案を求めました。廃案を求めるだけで終わりと思っていません。これを契機にして真剣な安全保障論議を巻き起こされてはどうだろうか、こう思っています。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/519
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520・薮野祐三
○薮野祐三君 二点ですが、一つは、タジキスタンで亡くなった秋野さんというのは私の同業者で、必ずしも親しくはありませんが、二度飯を食った仲です。
今のPKOの問題と安保の問題は別に分けて考えないといけないと思いますが、これに関しては、やはり私は苦渋の意識を持っています。日本人として、物すごく玉虫色の問題、触れたくないが触れざるを得ないというのは、やはりみんな一般的な感情だというふうに思います。
しかし、逆に考えてみますと、陳述の中に何度かあったように、我々の国際認識にかなりギャップがある。パリに行ってもロンドンに行ってもこれだけ日本人が旅行しているときに、小さな国だなんて言っている国際認識にかなりギャップがある。そういう意味では、どういうふうに問題を落ちつけていくかというのは、やはり苦渋の選択、国民もこれから学習効果が必要だろうというふうに思っています。
他方、安保問題、今度のガイドラインの問題は、いわゆる国連の問題とは違って、日米の協力の問題である。この日米の協力の問題というのも、私が繰り返しているように、政治的目的が一つあって、その手段であるということ。これは、ドンパチが起きる、あるいは危機管理だと言うけれども、アメリカとのつき合いの関係ということも置いておかないといけない。そういう意味で、私は現実主義者ですので、廃案ということもいいけれども、つくらざるも得ないという苦渋の選択というのもどこかあるだろう。
しかし、だからといって全部やられる必要はないので、いわゆる国際交渉の技術としての問題をどうするのか。その中では、くどいようですが、人権外交、主権外交ということのイデオロギー操作をすることによって、日本がある程度イニシアチブをとっていく必要があるだろう。ずっとこのガイドライン法案の話を聞いているときに、政治目的というのが一つも語られない。まさに、日本の外交の貧しさということを感じているという気がしています。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/520
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521・宮島彰
○宮島委員 自民党の宮島大典でございます。
本日は、貴重な意見、ありがとうございました。時間もございませんので、お二人の先生に二点お伺いをしたいと思います。
一つは大矢野先生にお伺いをしたいのですが、大矢野先生は冒頭に、脅威のいわゆる回避ということをおっしゃったと思います。安全保障の基本的な考え方は、やはり有事を起こさないためにどうするかということ、あるいは起きたらいかにそれを最小限に食いとめるかということが私は基本的な考え方だと思います。
その点について、先ほど御意見の中で、後方論議のいわゆる無意味さということをおっしゃったと思うわけでありますけれども、その点について、先ほどお話も出たかと思いますが、いわゆる周辺事態に対する定義、これに対してのお考え、あるいは周辺地域というものを限定するということに対してのお考えをお聞かせいただきたいと思います。
それと、もう一点は市川先生にお尋ねをしたいと思います。
先ほど地方分権のお話が出ましたので、ひとつお伺いをいたしたいと思いますが、私も地方分権推進に対しては大賛成でございます。その地方分権をするに当たって分権論者がよくお話をされるのが、やはり国と地方のいわゆる役割分担をしましょうということがあろうかと思います。そうすれば、地方分権者の中にも、やはり国の仕事の大きな一つには、国防であるということが挙げられると思うのですね。そうすると、やはり一義的にというか、国防というものは国が専権的に考えていく問題ではないかなと思います。
そういう意味で、せんだってからの高知県なんかの問題についても、私はいかがかなというふうな考えを持っておりますけれども、その点についてのお考えをお聞かせいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/521
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522・大矢野栄次
○大矢野栄次君 まず、周辺地域をどのように定義するかということに関しては、あくまで地球上全部周辺地域になるべきでして、それをどれだけ予防できるかという意味で、先ほどから言っているように、経済関係あるいは外交関係が必要なわけですが、そのときに、経済だけ、外交だけという戦略ではなくて、ある程度以上の軍事あるいはいろいろな政治的な思惑というものをちゃんと、先ほどもおっしゃっているように、国際的な交流のときの一つの政策手段として持つべきでして、どれだけやれということではなくて、トータルで総合的な日本の政策というか思惑というか、そういうものを堅持していくべきである。
例えば、台湾、中国問題につきましては、日本から台湾に対しては何のメッセージもないわけですけれども、あくまで見守るということではなくて、台湾には台湾への経済的あるいはあるところでは軍事的なものも背景としたメッセージを送るべきでして、北京には台湾を通して送る場合もあるし、北京に対して直接経済的な交流で送るというような戦略を持てない日本というものが一番問題であろう。
そういう意味で、政治目的を明確にしろということ以上に、政治目的をいろいろな形で、経済、外交あるいは一部は軍事的な形で見せながらといいますか、そういう意味で周辺地域それぞれに対してその対応の仕方が違うわけですから、何をもって周辺地域と定義するかではなくて、外交をもって、経済をもって、あるいはある程度の軍事的な威圧をもってそれぞれの周辺地域に対してどのような対応をするかということを国民あるいは外国に対してメッセージとして送り続けるべきであるというのが私の立場です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/522
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523・市川俊司
○市川俊司君 地方自治体との関係では、問題は二つあると思っています。
第一点は、憲法で地方自治が保障されているということがありますので、それに対する配慮が必要であろうということが一つです。
もう一つは、今回提示された法案の第九条第一項がそれに該当すると思うのですけれども、どうも文面がいささか疑問がある。
といいますのは、「地方公共団体の長に対し、その有する権限の行使について必要な協力を求めることができる。」という文面、内容でございます。これを読んだだけですと、「協力を求めることができる。」という、お願いしますというふうに読めるわけでありまして、義務づけ規定ではないように見えるのですね。例えば一般的には、必要な協力をするものとするとか、せねばならないとか、何らかのいろいろなパターンの規定があると思うのですが、「協力」という言葉自体が自発的なもの、「できる」というのも任意的なものということで、幾つかそういうものがかんでいる。
そこで、これはどういうことなのかなというふうに見てみまして、国会での議論を拝見すると、どうも一般的な義務規定であるというふうなおっしゃり方をされている。そして、では従わなかったらどうなるかといったら、罰則はありません、制裁はありませんとおっしゃっておられる。僕らが今まで扱っている法律や規範から見ますと、どうもやはり非常にわかりにくい形になっている。この辺に非常にわかりにくさがあると考えている次第です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/523
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524・宮島彰
○宮島委員 ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/524
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525・山崎拓
○山崎座長 これにて委員からの質疑は終了いたしました。
この際、一言ごあいさつ申し上げます。
意見陳述者の方々におかれましては、長時間にわたりまして熱心に貴重な御意見をお述べいただき、まことにありがとうございました。
本日拝聴させていただいた御意見は、三議案の審査に資するところ極めて大なるものがあると存じます。ここに厚く御礼を申し上げます。
また、この会議開催のため格段の御協力をいただきました関係各位に対しまして心より感謝申し上げ、お礼の言葉といたします。
それでは、これにて散会いたします。
午後四時二分散会
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派遣委員の福井県における意見聴取に関する記録
一、期日
平成十一年四月十四日(水)
二、場所
福井県国際交流会館
三、意見を聴取した問題
日本国の自衛隊とアメリカ合衆国軍隊との間における後方支援、物品又は役務の相互の提供に関する日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の協定を改正する協定の締結について承認を求めるの件(第百四十二回国会、内閣提出)、周辺事態に際して我が国の平和及び安全を確保するための措置に関する法律案(第百四十二回国会、内閣提出)及び自衛隊法の一部を改正する法律案(第百四十二回国会、内閣提出)について
四、出席者
(1) 派遣委員
座長 中山 利生君
玉沢徳一郎君 宮腰 光寛君
桑原 豊君 近藤 昭一君
遠藤 乙彦君 東 祥三君
木島日出夫君
(2) 現地参加議員
辻 一彦君 北沢 清功君
(3) 政府側出席者
内閣審議官 高見澤將林君
防衛庁長官官房防衛審議官 河尻 融君
外務大臣官房審議官 田中 信明君
(4) 意見陳述者
京都産業大学外国語学部教授 須藤 眞志君
ジャーナリスト 小林 巌君
福井県立大学経済学部助教授 島田 洋一君
無職 岡本 弘君
金沢大学教育学部助教授 岡田 正則君
敦賀市原子力懇談会委員 吉村 清君
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正午開議発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/525
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526・中山寛治
○中山座長 これより会議を開きます。
私は、衆議院日米防衛協力のための指針に関する特別委員会派遣委員団団長の中山利生でございます。
私がこの会議の座長を務めさせていただきますので、よろしくお願いを申し上げます。
当委員会におきましては、第百四十二回国会に内閣から提出された日本国の自衛隊とアメリカ合衆国軍隊との間における後方支援、物品又は役務の相互の提供に関する日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の協定を改正する協定の締結について承認を求めるの件、周辺事態に際して我が国の平和及び安全を確保するための措置に関する法律案及び自衛隊法の一部を改正する法律案の審査を行っているところでございます。
本日の会議を開催するに当たりまして、派遣委員団を代表いたしまして一言ごあいさつを申し上げます。
当委員会といたしましては、三議案審査に当たり、国民各界各層の皆様方から御意見を承るため、御当地におきましてこのような会議を開催させていただいているところでございます。
御意見をお述べいただく皆様には、大変御多用中にもかかわらず御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。ぜひ忌憚のない御意見をお述べいただければとお願いを申し上げる次第でございます。
それでは、まず、この会議の運営につきまして御説明申し上げます。
会議の議事は、すべて衆議院における委員会議事規則及び手続に準拠して行い、議事の整理、秩序の保持等は、座長であります私が行うことといたします。発言される方は、その都度座長の許可を得て発言していただきますようお願いいたします。
次に、議事の順序について申し上げます。
最初に、意見陳述者の皆様方から御意見をお一人十分程度お述べいただきました後、委員より質疑を行うことになっておりますので、どうぞよろしくお願いを申し上げます。
それでは、本日御出席の方々を御紹介いたします。
まず、派遣委員を御紹介いたします。
自由民主党の玉沢徳一郎君、宮腰光寛君、民主党の桑原豊君、近藤昭一君、公明党・改革クラブの遠藤乙彦君、自由党の東祥三君、日本共産党の木島日出夫君、並びに現地参加議員として、社会民主党・市民連合の北沢清功君が出席をされております。
次に、各界を代表して本日御意見をお述べいただく方々を御紹介させていただきます。
京都産業大学外国語学部教授須藤眞志君、ジャーナリスト小林巌君、福井県立大学経済学部助教授島田洋一君、岡本弘君、金沢大学教育学部助教授岡田正則君、敦賀市原子力懇談会委員吉村清君、以上の方々でございます。
それでは、まず初めに、須藤眞志君から御意見をお述べいただきたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/526
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527・須藤眞志
○須藤眞志君 与えられた時間が十分ということですので、できるだけはしょってお話ししてみたいと思います。
私は、国際関係論及び日本外交史を専攻しており、そういう立場からきょうは陳述したいと思っております。
最初に、少し総論的なことから始めたいと思いますが、戦後、日本の外交というのは、戦前の反省もありまして、平和主義に徹してきた。戦後五十年間以上、日本は戦争に巻き込まれることなく来たということは大変幸いだったというふうに思っております。
また、戦後は、日米関係を主軸とする外交を展開してまいりました。ですから、東西冷戦が存在していた時代は、いわゆる西側の一員として行動してきたのであります。このことについても、冷戦時代、いろいろと議論はありましたけれども、結果としては、日本が西側の一員として行動してきたというのは事実であります。
また、安全保障については、日米安保条約と国連憲章をその中心に置いていたこともまた事実であります。しかしながら、日本には、他国にはちょっと見られない特殊な条項を持つ憲法がありまして、そのことが日本の安全保障にいろいろな枠組みをはめてきたこともまた事実でありまして、日本の安全保障のあり方を規制してきたというふうに考えられます。
例えば、国連憲章を読めばすぐわかることですけれども、集団安全保障ということが最初から書いてあります。しかしながら、日本は国連に加盟しながら、この集団安全保障に参加できるかどうかという議論をやっている。非常に不思議な議論だというふうに考えられます。
国連に加盟して、すべての条項を遵守するというふうに言いながら、集団安全保障には入るか入らないかというようなことは、国連に入るか入らないかという議論に等しい議論で、そういう意味のない議論も展開されてきていることも事実であります。
また、自衛権についても、日本には他国と同様に自衛権が存在していると考えるのが自然であろうというふうに思います。私は、個人であろうが国家であろうが、自衛権が存在していないということはあり得ないというふうに思います。ただ、自衛権の行使の仕方についてはそれぞれの国々であるでしょうけれども、自衛権そのものが存在していないというふうに考えることは非常に不自然であります。
ところが、日本では、この自衛権をめぐりまして、個別自衛権と集団自衛権と分けて議論しようというような議論が国会なんかでも行われているようであります。もともと、自衛権をこのように分化して考えるということは、国際社会ではほとんど意味のないことであるというふうに言っても過言ではありません。
例えば、もし日本が挑発によらざる侵略を受けたときには、安保条約は発動されるわけでしょうけれども、同時に、多分国連に提訴するという手段をとるのじゃないかというふうに私は思います。そのときに、国連の集団安全保障というのを認めないというような立場をとりながら、なおかつ国連に、日本は侵略されたから助けてくれというような提訴をするということは、大変な矛盾だというふうに考えます。それゆえ私は、国際連合の憲章に決められております集団安全保障というのは、速やかに日本はこれを認めるべきだというふうに思います。
また、自衛権に関しましても、個別的自衛権と集団的自衛権というのに分化して考えるというのも大変不自然なことだというふうに思っております。
次に、今回問題になっております日米防衛のガイドラインの各論的なことに入りたいと思います。
御存じのとおり、一九九七年九月二十三日にこれは締結されまして、公表されたわけでありますけれども、私は、全体として、旧ガイドラインよりも具体的になっておりますし、日米の協力関係の強化にもなっていると思いますので、大要においては賛成であります。
しかしながら、その中身をよく読んでみると、まだ言葉が非常に抽象的なために、解釈の違いでもって内容がいろいろと異なるというような側面がないわけではありません。
その中でも、特に問題になっておりますのは、周辺事態という言葉の定義及びその内容であろうかというふうに思います。
私は、日本文と英文と両方突き合わせてこれを読んでみました。この周辺事態という言葉は、だれが訳したか知りませんけれども、多分外務省の役人の方が訳したと思うのですが、シチュエーションズ・イン・エリアズ・サラウンディング・ジャパン、こういうふうになっております。これは、直訳すれば、日本を取り巻く地域の状況というのが正しい訳であります。これを非常に短くするために周辺事態という言葉にしてしまったというふうに思います。明らかに英文には、日本を取り巻く地域の状況というふうになっております。
政府側の方々は、テレビや新聞等で見ると、周辺事態というのは地域をあらわす概念ではない、こういうふうに言っておりますけれども、恐らくこの議論はアメリカ人には通用しないというふうに思います。明らかにこれは、日本を取り巻く地域の状況ということですから、この周辺事態という言葉には地域と状況という二つの意味が含まれているというふうに解釈せざるを得ません。
それでは、日本を取り巻く地域というのは何かということになりますと、これまた大変難しい論議でありますけれども、もし日米安保条約というのを発動するということを背景に持つのだとすれば、第六条にある極東というのがこれに相当するというふうに思われます。
それでは、極東とはどこかということになりますと、地図を広げてここからここまでというふうに線を引くのは大変難しいかもしれませんけれども、一九六〇年の政府答弁というのがありまして、少なくともフィリピン以北というようなことが決められております。しかしながら、実際上は、極東はここというふうに決めるのはなかなか難しい。しかしながら、安保条約には、少なくとも極東という言葉がきちんと明記されております。
次に、状況という言葉であります。これは、はっきりと日本の安全に脅威を及ぼすような軍事的有事というふうに解釈した方がわかりやすいと私は考えます。そういう軍事的有事を状況として考えれば、そのときに安保条約に従いまして米軍と自衛隊がどの程度協力できるか、その範囲を明確にしておく必要があるわけであります。
現在、たとえ法律で自衛隊の行動の範囲を規定していても、あるいは国会承認を求めるか求めないかということを決めていても、軍事的な状況というのは緊急を要することが非常に多いわけでして、もし夜に、ある有事が、緊急のことが起こったときに、国会議員の人たちを集めて国会を開いて、承認を求めるかどうかという論議を二日も三日もやっている、そういうばかなことはだれが考えたって通用するわけはないので、恐らく、国会承認というのを求めるというのは、何か非常に長期的な状況の場合であって、緊急を要する場合にはこの限りでないというのを入れるのが当然であろうというふうに私は思います。
となると、ほとんど多くの場合が、これも緊急これも緊急ということになってしまうおそれもないわけではありません。また、非常に細かく法律で決めていても、多分多くの例外が出るというふうになると思います。
また、もう一つ、自衛隊法の改正に関してでありますけれども、米軍への後方支援ということで、これを読んでみると、非常に細かく書いてありますが、武器や弾薬は除くというふうに書いてあります。
これは恐らく、日本の自衛隊が米軍と一緒に戦闘に参加しないということを明確にするためにそういうふうになっていると思うのですけれども、例えば米軍から、この箱を運んでほしい、こういうふうに言われたときに、その箱をあけて中を見て、一々、これは衣類だ、これは武器じゃないかとか、そういうことを言っている余裕が果たしてあるだろうかというふうに考えると、そういうことを決めていても、実際上の場合には、こん包された箱を持ってきて、これを自衛隊に運んでほしい、こういうふうに言われたら、自衛隊は、武器弾薬は除外するわけですから、開いて、これは武器じゃないか、弾薬じゃないかと一々やっているような余裕は多分ないだろうというふうに思います。
ですから、この規定に関しましては、アメリカ軍側との非常に強い信頼関係がなければ、実際上はとてもこれは実施することはできないだろうというふうに思います。そういう点では、自衛隊法の中の改正のその部分というのは、何か非常に気休め的な感じがしないわけではありません。
それから、自衛隊が、日本が武力攻撃されたとき以外は直接的な戦闘に参加できないということは、もうほとんどの人たちの間でコンセンサスがあるというふうに思います。しかしながら、もし、いわゆる周辺地域で邦人が危険となったような場合、例えば朝鮮半島で戦争が起こったというような場合に、韓国にいる邦人の旅行者とか在留邦人の方々の救援のために自衛隊機が出るということは可能であろうというふうには思います。
しかしながら、この場合にも相手方の承諾を必要とするのは当然であって、日本ではほとんど議論されておりませんけれども、韓国では、やはり日本の自衛隊、軍人が再び韓半島に入るということに対しては大変な反発があるというふうに聞いております。ですから、韓国政府の承諾がなければ、幾ら自衛隊機が行きたくとも実際上は行けないということになります。
ましてや、もし台湾海峡で事が起こるということになった場合には、日本は中華人民共和国というのを唯一合法な政府として認めているわけでして、もし米軍と中国軍との間でもって戦闘があったという場合には、日本の自衛隊が台湾にいる邦人を救出するために自衛隊機を飛ばすということは、法律的には可能かもしれません。しかし、実際上は、北京政府との間の非常に外交的に複雑な関係を処理しなければできないということになってくるのじゃないかというふうに思います。
最後に、結論的な話ですけれども、安全保障の論議というのは、多くの場合、というより、ほとんどの場合がいわゆる仮定の論議なんですね。もしこういうことがあったら、もしああなったらというようなことばかりが論議される。それは仕方ないわけであります。
ですから、私は、外交史を勉強しておりまして、戦前から戦後の外交史を勉強しまして非常に感ずることは、何か危機が起こったときに、いかにしてそれを戦争にしないで平和的に解決するかという外交的な努力をするということ、これが日本の安全保障には何よりも重要なことであろうというふうに考えます。
私は、例えばアメリカやNATOのように、交渉を行って、だめだ、すぐ爆撃だというような考え方は、日本の場合はとるべきでないのであって、あくまでも外交的な努力というのを一にも二にも優先させて、そのことによって、それは米軍をも説得して、要するに周辺事態というような状況が起こらないことをつくり出す、その外交的な努力こそが日本の安全保障にとって大変重要な行動になろうというふうに考えております。
大体時間が参りました。ここで失礼いたします。どうもありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/527
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528・中山寛治
○中山座長 ありがとうございました。
次に、小林巌君、お願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/528
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529・小林巌
○小林巌君 小林巌でございます。
今ほど須藤先生の方から、シチュエーションズ・イン・エリアズ・サラウンディング・ジャパンですね。ところが、ごく最近に至って、皆さん御存じの、国籍不明船の日本海出没といいますか、結局それは逃走しましたけれども、そういうことで、新たな危機感といいますか、そういったものが北陸の漁民その他に最近浮上してきているわけです。したがって、日本全体あるいは周辺のシチュエーションというよりは、私は北陸に住んでいますので、そのことについて意見を述べたいと思うのです。
新ガイドラインについての諸問題は、テレビ、新聞などでいろいろと報道されていますので聞いておりますけれども、まず第一に、そういった新たな危機意識というものが日本海で働く漁民などにあるという認識でございます。
それについては、ごく最近に至って、きょうその機会が来たわけですけれども、地方公聴会ということで、先ほど座長の方から説明がございましたが、各地で開いているそうですけれども、この地方公聴会を開くタイミング、これは遅きに失したのではないか。もう少し早目にいろいろな地方での意見を聞くべきであった。これは、この法案、協定だけではなくて、あるいはいろいろな問題で、まず地方から聞いていくということが大事ではないかということを一つ思います。
それからもう一つは、やはりポリティカルなシチュエーションというものが、報道なんかによりますと、自民党の修正提案というのが出る予定で、それを検討すべき段階に来ている、すなわち、法案の扱いについて最終段階に来ていると。国会の承認の問題その他いろいろありますけれども、各党内にいろいろ意見があると思いますが、この際、党内の異なる意見も取りまとめまして、そしてコンセンサスを得てもらいたい。そういう意味では、もう最終段階の地方公聴会というふうな認識をしています。
先ほど申しましたけれども、国籍不明船という、特に日本海沿岸各地の新たな危機意識というのが海岸地帯に住む地域住民にとってはありますので、そのことを、これからのいろいろな運用とか、そういった問題で生かしてもらいたいというふうに思います。
第一には、地方自治体の長ですね。国会の答弁を新聞なんかで見ていたところ、それについては相当強調はしていますけれども、実際問題として、何が起きても、地域住民を代表する自治体の長の意見を聞く、また地方自治体への情報の提供ということについては、いささか希薄ではないかというふうに思います。
そういうことでありまして、地方に住んでいる相当たくさんの人たちの意見をもう少し早目に聞いてもらいたいというふうに思います。政治的には修正提案という最終段階に至っていますので、そのことについて現実的な対応をお願いしたい。
それに関して、いろいろありますけれども、各党も、党内の意見の取りまとめのほか、自民党というところの政治日程といいますか、外交日程といいますか、小渕首相はもう既に大体訪米の日程的なことを詰めているわけですから、これも、最初に外交日程というものが決められて、その間のプロセスとして公聴会も含めていろいろな日程をこなすというのは、これはちょっと逆ではないかという感じがある。それは、大体のアポイントメントもとらなければいけませんから、外交の交渉というのはそういう日程の問題はありますけれども、しかし大事なことは、やはり国民のコンセンサスといいますか、大体のコンセンサスというものを考えていくべきではなかったか。
それから、いろいろありますけれども、原文の中にファシリティーズという言葉があります。諸施設ですね。福井県、石川県、富山県もですけれども、敦賀港を初め、今ちょっとがらあきらしいのですが福井港、あるいは小松空港、それから福井空港、これは今ジェット化を県は目指していますけれども、いずれにしても、これは諸施設にどういうふうに入るのか、入らないのか、ちょっとよくわからないわけですね。ですから、そういうことについても、この協定案提出については、もう少し早目にいろいろと地方自治体の意見を聞くべきであったというふうに思います。
何しろこれは非常に難しい問題ですから、自治体の長というものが、国の外交との関係が、高知県もいろいろ話題になっていましたけれども、やはり国の外交権というものと地方との大きな落差、これについては、やはり地方の意見を十分に聞いてもらいたいというふうに思います。
そのほか、いろいろありますけれども、大体根本だけ申し上げれば、そういうことになるかと思います。
修正提案のことをさっき申しましたけれども、修正提案については各党の考え方があるわけですから、それは、大体結論が最初にあるわけではなくて、修正提案を新鮮な気持ちで受け取り、そしてまた、時間的には限られていますけれども、やはりそこで、新たな視点でそれを見直すということが大事ではないかというふうに思います。
時間的にはちょっと過ぎましたので、これで終わることにいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/529
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530・中山寛治
○中山座長 ありがとうございました。
ただいま現地参加議員として民主党の辻一彦君が出席されておりますので、御紹介を申し上げます。
次に、島田洋一君、お願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/530
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531・島田洋一
○島田洋一君 島田です。
今、小林さんもちょっと触れられましたけれども、先日、新潟沖で不審な船が発見されて、それを日本側が追跡したものの、結局逃走を許したという事件があったわけです。後に日本政府は、これは北朝鮮の工作船であると断定して、北側に対して抗議も行いました。
工作船といえば、北による拉致であると判断せざるを得ないような、そう見るのが自然である日本人行方不明事件というのが、過去に、特に日本海側で相当数発生しておる。この福井県からも、少なくとも二人の方々が拉致された疑惑が大変濃厚である。そのときも、あるいは有名な横田めぐみさんのようなケースにおいても、恐らく今回のような工作船に連れ込まれて乗せられていったということなんでありましょう。
そういう福井や新潟等の拉致事件が起こったのは、もう二十年以上前であります。つまり、日本からの拉致を許して、被害者は捕らわれたまま、そういう極めて深刻な事態の発生から二十年以上たちながら、まだ、日本の領海を侵犯した工作船の逃走をみすみす許しておるというのが、残念ながら日本の現状である。
今回も、ひょっとしたら、だれかが、拉致された日本人が、あの船に乗せられて、助けを待っておったのかもしれないわけです。ところが、現状では、仮に我々が工作船に連れ込まれて、日本政府がその工作船を発見しても、そのまま我々は北朝鮮の港まで連れていかれてしまう、そういう現実が改めてはっきりした。したがって、追跡して警告射撃もやった、一歩前進であるかもしれませんが、一歩前進だなどと評価しておるような場合では全然ないということをまず述べたいと思うわけです。
現場の自衛官や海上保安庁の職員の方々などは、現行法の縛りの中で最大限の努力をされたようですが、それだけに、このシステム自体の欠陥、つまり、日本における安全保障体制、危機管理システムの著しい不備、おくれというものが非常に明確に示された象徴的な事件であった、単に海上警備の不備ということだけじゃなくて、全般的な欠陥を象徴する事件であったと思います。
今回の周辺事態法案ですが、これは急がれるに至った経緯を見ても、明らかに、何よりも朝鮮半島有事、第二次朝鮮戦争、起こってほしくありませんが、それに備えた措置として大変重要なものであります。
安全保障政策というのは、抽象論で議論していても意味ないですから、やはり我々が置かれた環境がどうなのか、つまり、どういう勢力と向き合っておるのかというところから、そこに立脚して考える必要があると思います。その点で、現在の北朝鮮政権、これがどういう性格の集団なのかということをはっきり押さえておくのが出発点になるだろう。
現在の北朝鮮政権、これは本当に言語に絶するような人権じゅうりんを一般民衆に対して続けておる。ちょっとでも政府批判などをやれば、即座に、連座制のもと家族全員が強制収容所送り、あるいは公開の場での処刑、公開処刑などもまだ行われておる。飢え死に寸前の民衆から徴発した財というものを大量破壊兵器の開発・蓄積あるいは個人崇拝行事、幹部専用別荘の建設とかにつぎ込み続けておる。他国民に対する拉致行為あるいはテロ、破壊活動なども繰り返してきておるわけです。
また、麻薬の製造、密輸、外貨の偽造等も組織的に行っておる疑いが濃厚である。北朝鮮における食糧危機の原因の一つが、実は優良な農地を麻薬用のケシ等の栽培に転用した結果である、理由の一つがそれであるということも最近明らかになってきておるわけです。そうして、麻薬の売買等でもうけた金は、また大量破壊兵器の開発・蓄積に回されておる。こういう集団と我々は直面しておるのだ。すなわち、日本も、今やはっきり危険地帯の内部に我々はおる、こういう現実を直視して、そこから安全保障政策を立てる必要があると考えるわけです。
そういう有事に備えた体制づくり、これは二つの側面があって、一つは、攻められたとき、あるいは工作活動をしかけられたときに防御する防御体制の整備強化ということであり、もう一つ、二番目には、侵略が起こった場合に、侵略した側の指令系統の中枢部や軍事基地、施設に対する反撃体制を整備強化する。そのことによって抑止力の強化にもなるわけですし、不幸にして侵略が起こった場合には、その侵略の拡大を阻止して戦争の早期終結につなげることもできるわけです。
そういう防御体制の整備、反撃体制の整備、両方が必要だと思うのですが、日本海側の福井に住む人間としては、特に防御面での不備というのを実感せざるを得ないわけです。それは、海上警備の不備もそうですし、また福井県は原発が集中的に立地しておる地域ですが、原子力発電所の警備も、まだまだというか、ほとんどろくな警備がなされていないという状態が続いている。
また、今回も、自治大臣あるいは官房長官あたりが、日本にかなりの北朝鮮の工作員が入っておる、今回の不審船問題も絡んで、かなり北の工作員が日本に入っておるということを認めておるわけです。ところが、そういう工作員等が次々摘発されているというようなニュースも聞かないわけです。そうした工作員あるいは国内の協力者を摘発するというような体制もまだまだ不備である。そういう防御面での不備を大変強く我々は感じるわけです。
したがって、今回の周辺事態法案のように、これは抑止力を高める反撃体制整備の一環としてのものですけれども、それとともに防御面での対策、テロ対策等、日本の場合、特に対テロ、対破壊工作ということになるわけですが、そういう防御面の対策も講じないといけない。
この周辺事態法案に限りますと、反撃体制の整備の一環である。反撃ということになりますと、能力的にも当然米軍が中心になって、韓国軍がそれと一体となって軍事的対応をとる。危険地帯の内部におる日本としては、どう米軍をサポートするのかという課題にこたえようとするものであります。
先ほど須藤さんも触れられましたけれども、侵略行為には、国際社会が協力して、必要とあれば軍事的手段も用いて対抗するんだという国連憲章の理念、集団安全保障の理念に基づくならば、日本も国連加盟国なんですから、当然、反撃あるいは侵略撃退行為に参加する。武力行使と一体となったというような表現がありますが、本来、そういう協力をするというのが筋であります。例えば、ヒトラーのような連中に対して中立を守るなどというのは、何ら倫理的に褒められた態度でも何でもないわけです。
しかし、ここに、先ほどから話も出ていますように、日本国憲法の制約というものがある。本来ならば、国連憲章に則した形で日本国憲法を修正する、すなわち、集団安全保障体制の一員として責任を果たすんだということを明記する、これが筋であると思いますけれども、政治的には、困難だという判断が政治家の方々の間ではあるようです。
便宜的ではありますが、憲法解釈の変更で対応しよう、集団的自衛権も実は認められていることがわかったんだというような、格好悪い話ですけれども、そういう憲法解釈の変更をすべきだという議論もありますが、それをやれば、もう少し筋の通った法案になったんじゃないかという気がいたします。
日本政府は、今回そういう憲法解釈の変更も行わずに、この法案は、あくまで集団的自衛権の発動は憲法違反なんだという従来の憲法解釈の枠内におさまるものとして構成したんだ、そう述べております。実際、そのために、これはいわゆる後方支援、つまり日本として兵たん活動を行うものですが、その兵たん活動として、かなり不十分、不安定な形になってしまった。その分、抑止力は減殺されたわけで、問題があると思うのです。
しかし、とにかく、大変危険な北朝鮮政権に対処する体制整備を急がないといけない。その必要にかんがみれば、修正を要する点はあると思いますけれども、速やかに成立させるべき趣旨の法案であると思うわけです。
前方だとか後方だとかは、戦争になれば実際相手は区別しないという議論は全くそのとおりであると思います。つまり、攻撃されかねないというのはそのとおりであります。しかし、全然リスクを負わずに抑止力だけ高めようというような、そういう虫のいい話は現実世界ではやはり存在しません。
特に、ここまで北朝鮮政権を危険な存在にさせるに当たっては、日本からのさまざまな物資の流れ、北朝鮮のハイテク兵器等は日本製品を部品として相当使っておるわけですが、そういう日本からの物資の流れを黙認してきた、ある種の勢力においては奨励さえしてきておった、そういう長年のツケは膨大であります。
したがって、今になって全くリスクなしに北朝鮮側を抑止しようというのは虫がよ過ぎるし、事を先送りしても軍事的なリスクは減らない。それは、昨年のミサイル発射が示したように、継戦能力は、戦争を継続する能力はどんどん落ちていくかもしれませんが、しかし、やはり瞬間的な破壊力は、時とともに向こうは増大していくと見ておく必要があると思うわけです。
最後に、修正が必要だと思われる点は、これは国会への報告となっておりますが、やはり承認ということに改める必要があるだろう。現実問題としては事後承認という形にならざるを得ないと思いますけれども、それは、すべての国会議員に明確な当事者意識を持って安全保障問題を考えてもらうという意味でも、やはり国会にきちんと関与してもらうということが必要である。また、我々一般国民も、選挙の際に、安全保障問題に関して見識のないような候補者には今後は入れては危ないという認識を持たないといけないわけですが、そういう有権者側の意識を高める意味でも国会の関与が必要であろう。
今後、いろいろな面で反撃体制、つまり抑止力につながる反撃体制や防御体制を強化すべく、踏み込んだ対応を、これは第一歩にすぎませんが、どんどん国会の場で進めていっていただきたいと思います。
以上です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/531
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532・中山寛治
○中山座長 ありがとうございました。
次に、岡本弘君、お願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/532
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533・岡本弘
○岡本弘君 岡本と申します。
本日は、ガイドライン見直しという大変重要な法案に関する公聴会に意見陳述の機会をいただきましたこと、光栄のきわみでありまして、厚くお礼を申し上げる次第であります。
私は、基地を持つ隣の石川県小松市の住民として、最近穏やかでない国際情勢を新聞やテレビで見ておりますうちに、国の守りは大丈夫であろうかと疑問を持つ者の一人であります。庶民としての気楽な立場と気楽な観点から、だれに気兼ねすることもなく、素朴に意見を陳述させていただきたいと思っておりますので、よろしくお願いをいたします。
戦後五十年、我が国が平和のうちに驚異的な経済発展を遂げられたのは、率直に言って、日米安全保障条約に基づくアメリカの庇護があったなればこそであります。もちろんアメリカもこの条約を締結することが国益にかなったからだとは思いますが、我が国の恩恵もまたアメリカにまさるとも劣らぬものであったはずであります。
今回のガイドライン見直しの問題は、我が国の生存確保に不可欠な安保を維持存続するために避けて通れない問題でありまして、憲法で許される最大限の協力を惜しんではならないと信ずるものであります。したがいまして、今回の関連法案は、諸先生方に国家百年の大計として大所高所から御判断をいただきまして、一日も早い成立をお願いするものであります。
以下、本法案に関しまして議論されております中から、二、三私見を述べさせていただきます。
まず、周辺事態の概念があいまいでわかりにくいという批判があります。また、地理的範囲を明確にしておくべきであるという御意見もあります。
周辺事態とは何をなすべきことなのかということですが、一つ目には、日米政府おのおのが主体的に行う活動における協力、二つ目として、米軍の活動に対する日本の支援、三つ目に、運用面における日米協力であると承知しております。どれ一つ考えましても、大変大きな問題であると同時に重要であります。
複雑に変化する世界情勢からしまして、事前に画一的な活動内容や地理的範囲を限定することは困難であろうと思います。したがいまして、ある事態が周辺事態に該当するか否かは、あくまでも事態の規模、態様、地理的条件等を総合的に勘案して判断されるべきかと思います。
地理的な問題につきましては、先に結論を申し上げてしまいましたが、変動する世界情勢の中にあって、いたずらに地理的な特定をいたしますと、かえって周辺諸国に無用な刺激を与えるおそれがあると思います。今ほど申し上げました周辺有事に該当するか否かと関連させながら、適宜判断するべきかと考えます。
実行面に関しましては、基本的な判断基準と対応計画をあらかじめ作成しておいて、迅速な対応をすべきであると思う次第であります。
国会承認につきましても、その是非やタイミングにつきまして物議を醸しているようでありますが、国会の承認は必要かと思います。ただ、その時期になりますと、必ず事前に得るべきものであるのか、事後承認でもよいかということになりますが、この問題は、国家の緊急事態対応と議会制民主主義との整合性の問題であります。
そして、これはまた日米安保条約下の問題でありますので、相手国に対応の遅きを非難されることのないように、国際社会の物笑いになることのないような速やかな対応をするために、国会に対しては事後承認でもよいものと考えます。
次に、船舶検査活動問題に移ります。
船舶検査活動実施に当たり、武器使用権限の問題があります。
まず、その前提として、我が自衛隊の艦船が船舶検査を実施するのは、我が領海または我が国周辺の公海において我が国が実施するということでありますので、公海上と領海内では武器使用権限の法的根拠が異なってまいります。
領海内であれば警察行動ともみなされるわけですから、警察官職務執行法第七条レベルの武器使用権限を最小限付与する立法措置でも対処できると思いますが、公海上での武器使用ということになりますと、現在は法的根拠がありませんので、目的を達成することは困難であろうと思います。検査を目的とする船舶に対して、同意を求め、あるいは進路変更等を要請し、目的を達成するためには何が必要であるのか、先般の北朝鮮工作船事件の失敗例を教訓とすれば得られる当然の帰結でありますので、細部については省略をいたします。
次に、地方自治体、民間の協力という問題につきましては、国家あっての地方であり、国民であります。独立国家の国民として主権が与えられていてこそ、現在のような自由があるのだと思うわけです。私ども庶民も、そこに感謝するとともに、国家安全のために果たすべき義務は、当然の義務として受け入れるべきだと考える次第であります。
また、国家の安全は国家レベルの問題だけではないということを認識して、中央と地方が協力し合って、しかも官民一体となった協力体制の確立が必要かと思います。最近の新聞によりますと、ある自治体は、地方の協力についてはこれを否定するとの議決をされたそうですが、いま少し時間をかけてでも同意を得られるよう御努力いただきたいと思います。
次に、今回の関連法案と有事対処につきまして、どこに線引きがあるのか、激変するそれらの情勢判断は、いつ、だれがするのか明確にする必要があるのではないかと考えます。そして、可能な範囲で、いかなる事態にも対応できる法案でなければならないと思います。
近年では、軍備のまことの目的は、自国の安全を確保し、世界の平和秩序維持のためであるというふうに解釈するのが世界の常識であると聞いております。我が国におきましても、我が国の安全を確保するとともに、世界平和に貢献すべき時期が来たと考えます。
今後、我が国が国際社会で責任ある役割を担っていくためにも、有事はもちろんでありますが、今回の関連法案での任務遂行の具現性のために、武器使用については、国際的常識に沿って、国民の理解が得られるよう諸先生方の御尽力をお願いいたします。
さらに、庶民が政治に期待するところは、わかりやすい政策をお示しいただくとともに、国家の大計を定めるに当たっては、まことに国家と国民の平和と安全に寄与するものであるとともに、国際社会の一員として恥ずかしくないものであってほしいと念願していることをつけ加えさせていただきますとともに、勉強不足をおわびいたしまして、さらに、発言の中に失礼の部分がございましたら、平に御容赦いただきますようお願いいたしまして、終わりといたします。
どうもありがとうございました。
〔座長退席、玉沢座長代理着席〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/533
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534・玉沢徳一郎
○玉沢座長代理 ありがとうございました。
次に、岡田正則君にお願いをいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/534
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535・岡田正則
○岡田正則君 金沢大学で憲法、行政法、地方自治などを担当しております岡田と申します。主に周辺事態法案について、法律学を専攻する立場から所見を述べます。
結論から申し上げますと、レジュメの最後に書いてありますように、この法案は、日本の安全と平和にとって有害無益であって、第二に、非常に欠陥の多い法案であって、二十一世紀において少なからぬ混乱と犠牲を招く、そのような法案だと考えられます。
次に、周辺諸国との関係から見た日本の安全と平和ということですが、御存じのように、日本海側の自治体やさまざまな団体は、この間、環日本海交流という立場から、積極的に東アジアの国々の人たちと交流を積み重ねてきたわけです。
私自身も学術面からこういった交流に携わってきましたが、そこで感じるのは、中国にしても韓国にしても、その他の国々の人たちにしても、表面的には友好な態度をとってくれるわけですが、本音の部分では、日本は大国だけれども信頼できない国だ、政治的な見識がない国だ、だからアジアのリーダーとしてはとても認められないというのが、こういった人たちの本音でありまして、特に若い世代の人たちほどそういった本音を持っているわけです。
大変悲しいことですが、東アジア以外の国々の若者たちと接しても、この日本の政治的な見識の低さというのがもう世界の常識のように語られている、そういう悲しい状況が現実にあるわけです。
思えば、日本は、明治以降の百三十年余りの間に、主権国家、法治国家としての体裁を整え、そして世界の人々から信頼される国づくりを進めてきたわけです。しかし、今回の法案を見ますと、主権国家の根幹部分を他国の軍事的判断にゆだねてしまうような、あるいはまた法治国家としての体裁を投げ捨ててしまうような、そういう非常に恥ずかしい法案です。ですから、こういうことからいっても、見直しをしてほしいというか、やめてほしいという感想を持っております。
周辺諸国の人たちは、この法案をちっとも歓迎していないのですね。韓国やアジアの友人たちからも、こういうことによって東アジアが安定するという評価はだれからも聞けない。むしろ、日本はアメリカのしり馬に乗ってまた自分たちの利益ばかりを考える、そういう行動をしている、そういう悲しい反応をしているわけなのです。
そして、こういうことによって、環日本海交流の妨げとなるし、ひいては世界の人々から見放されて、どうせ日本はアメリカの腰巾着なのだろうということで、世界の孤児になってしまうということを非常に憂えるものです。
次に、法案の問題点を具体的に述べます。
三点ほど指摘いたしますと、まず第一に、この法案が、主権国家としての根幹部分を大国にゆだねてしまう、近代国家の法律としてはおよそ考えられないような規定を定めようとしているわけなのです。
先ほど、お二人の先生から集団的安全保障と集団的自衛権というお話がありましたけれども、これは国際法を勉強せずとも、全く違う概念だということはおわかりいただけているかと思うのですが、国連憲章上の集団的安全保障というのは、非軍事的な手段と国連軍による抑止措置というもので実現されるのに対して、集団的自衛権というものは、軍事同盟ですね。一方への攻撃を他方への攻撃、侵略とみなすというような関係ですから、全く質的に違うわけなのです。
ですから、日本国憲法の立場からいえば、集団的安全保障自体を否定するとかということではなくて、それは各自の判断においてそれぞれ適切な手段をとる。しかし、集団的自衛権を否定するというのは、まさしく憲法の基本的な立場と言うことができるかと思うのです。
そのような憲法の立場からすると、この法案で定めようとしていることが、言ってみれば、交戦権とか武力による威嚇、武力の行使というところと、紙一重というか、ほとんど一体になるようなことを定めようとしているわけですね。紙一重だとか一線を引いているとかということはありますけれども、だれがその一線なりを判断するのか。国会の答弁では、ケース・バイ・ケースでそうならないように判断するというのですが、一体だれが判断するのか。総理大臣にすべて任せてしまうのか。
戦闘地域と後方地域の区別をだれがするのかというようなことは、あいまいにしておいた方が軍事上いいんだという問題ではなくて、国家全体を戦争に巻き込みかねないような重大問題でありますから、やはり法律のところで明確にされなければいけない問題だと考えます。
第二に、委任の問題です。
国会の審議でも、白紙委任ではないかというようなことを多くの委員の方が質問されていましたけれども、白紙委任でないというためには、通説、判例によれば、二つの条件が必要であるわけです。
一つは、委任の趣旨及び行政立法を行う際の基準が明確になっていなければいけない。それから、その規律対象を個別具体的に限定していなければいけない。何でも定めていいよということだと、それこそ、ヒトラーにすべて法律と同じようなものを何でもつくっていいよといった、あのナチス・ドイツの授権法と同じになってしまうわけです。
そこで、法案を見ますと、二条二項の武力の行使に関する認定基準といったものが定められておりませんし、第四条の基本計画では、内容についての基準がない。それから、三条一項五号の関係行政機関の範囲も、すべて対象にしている。あるいは、第九条の地方公共団体や民間に対して求める協力の内容、これも何ら法律で示されていないわけです。ですから、内閣総理大臣が交戦権を発動して、地方公共団体、民間人、すべて協力させることを可能にする法律なんだ。これは、やはり憲法が禁止している白紙委任に当たると言わざるを得ないと思います。
次に、2—2ですが、法案において規律対象の範囲が限定されているかというと、そうは考えられないわけです。
つまり、第一に、後方地域支援が憲法九条違反とならないようにするための歯どめが具体的に示されていない。第二に、関係行政機関の本務に支障が出ないようにするための歯どめが示されていない。第三に、法案の第九条一項に関して、地方自治の侵害にならないようにするための歯どめがないわけです。したがって、この点からも違憲の法案と言わざるを得ないと思います。私が属している金沢大学の教職員なども昨日反対のアピールを出しましたけれども、そういった国の職員や自治体の職員、運輸、港湾関係の職員は、こういった問題に大変な不安を感じております。
大きい第三に、法案の九条が、地方自治を破壊して、地方公共団体を国に従属させる危険性を有している。
自治体も国の一部なのだから協力しろということですけれども、果たしてそれで住民の生活が幸せになるのだろうかということから、憲法が地方自治というものを採用した、そこから考えなければいけないと思います。戦前は、地方自治はなかったわけで、すべて国家が地方を動員できる体制にあったわけですね。その結果、国、軍部の暴走があった。こういったところから見ても、やはり中央と地方でそれぞれ権力をチェックし合うというような仕組みは非常に重要であるわけです。
それから、この法案の第九条が、その有する権限について協力を求めるという規定をしているわけですが、私がいろいろ検索したところでは、国の機関から地方自治体の長に対して協力を求める規定というものは、非軍事的な事務について、書類を閲覧させなさいとか、そういうことについて具体的に例示して協力を求めているのであって、自治体の長が持っている権限そのものについて協力しろという規定は、これまで存在していないようなのです。そうなりますと、国の機関は地方自治体の長を通じて合法的に権限の踰越が可能になる、そういうことになってしまいますし、また自治体の業務についても、指揮系統の混乱が非常に危惧されるわけです。
次に、3—3ですが、では地方自治体側が協力要請を断れるかといいますと、どうも政府の見解は二つに分かれているようです。
一つは、地方自治体の一般的な協力義務を定めたものなんだというような見解と、もう一つは、求めに応じるかどうかは地方団体側の自由な判断にゆだねられているということのようですが、法律の解釈としては、例えば出入国管理法六十一条の八や自衛隊法百一条二項のように、ただし書きのようなもので、可能な限り応じなければいけない、特別の事情がない限り応じなければいけないというようなことでない限り、そういう規定がありませんので、強制ではない、任意の協力だというぐあいに考えられます。
最後に、地方公共団体の事務に本来含まれない防衛に関する事務がこの規定によって自治体の事務に導入されれば、自治体の事務が次第に軍事化されていく、住民の声や目が届かないところに自治体の事務が持っていかれてしまうという危惧を抱くものです。
結論は冒頭に述べましたとおりで、私の意見を終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/535
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536・玉沢徳一郎
○玉沢座長代理 ありがとうございました。
次に、吉村清君にお願いをいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/536
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537・吉村清
○吉村清君 吉村でございます。
原子力発電所の立地する地元から参りました。最近、日本海の波風が大変高くなってきておる、こういうぐあいに感じております。
敦賀市から高浜町まで直線で約六十キロでございますが、今この間に原子力発電所が十五基密集しておるわけです。その中でも、特に「もんじゅ」、これは敦賀市にあるのですが、「もんじゅ」は研究開発中の高速増殖炉でございます。これは三年前の火災事故で現在も運転をストップしたままであります。
この原子炉は、一言で言えば、プルトニウムを生産する原子炉であります。そして、あの炉の中には、燃料として一トンのプルトニウムが内包されております。生産されたプルトニウムは約九〇%を超える純度を持っておるわけです。これはまさに核兵器級のプルトニウムであります。純度の極めて高いプルトニウム。軽水炉から再処理をして取り出されるプルトニウムの純度は約六〇%であります。これと比較をすればわかるように、このような純度の高いプルトニウムが果たして必要なのかどうかという点をまず第一に私たちは疑問に思っております。
この高速増殖炉については、先進諸国はもう既に撤退をしつつあります。日本だけがこの開発を進めようとしておるわけであります。この点は、国会においても十分御論議をいただきたい。
一たん有事の際には、確実にこの高速増殖炉は標的になるのではないか、私はこのように思うわけであります。
私たちは「もんじゅ」の行政訴訟を起こしておりましたが、九二年の九月二十二日に、最高裁の判決で、原告適格という全面勝訴の判決を得ました。
その際に、最高裁判所から、炉心内において毒性の強いプルトニウムの増殖が行われておる、安全審査の誤り、欠落がある場合に起こり得る事故等による災害により直接的かつ重大な被害を受けるものと想定される地域内に居住する者である、したがって、法律上の利益を有するという全面勝訴の判決をいただきました。
このときの原告らの居住地域は、この「もんじゅ」から二十九キロから五十八キロに居住をしておる人たちであります。現実の問題として、先ほど申し上げました一トンのプルトニウムがもし仮に放出をされたとしますと、今、日本の半分の地域はこのプルトニウムの汚染で壊滅的な被害を受ける、こう言われておるわけであります。
次の問題は、憲法九条で、自衛隊は専守防衛で、不正の侵略に抵抗するのが自衛隊の任務である、こう私たちは認識をいたしております。
ところが、今回のこの不審船問題、これで初めて自衛隊法八十二条が発動されました。しかしながら、発動されたといっても、警職法の第七条がその行動に準用されるわけであります。そうなりますと、あの場合に、あれだけの行動をしたこと自体が果たして正当であったのかどうか。領海侵犯というものは許されるべきではありません。しかしながら、それを抑止する手段として、自衛隊法八十二条の発動そのもの、さらにまたあの行動そのものが、私は過剰防衛の感を否めないわけであります。
と同時に、野中官房長官も、事件に悪乗りをして日本が危険な道に走ってはならない、こういう発言をしておることも私たちはマスコミを通じて知っております。この点は、やはり今後の問題として十分考慮をしていただきたい。
次の問題は、周辺事態の判断基準でありますが、極めてあいまいであります。
後藤田元副総理は、安保の目的と範囲を超えて、在日米軍の行動範囲そのものが日本の支援する周辺事態となり、米国の世界戦略の一環として協力することになる、これは憲法違反ではないのか、さらに、安保の改正なしには進めることはできないだろう、こう明言されております。
これと関連をして、TMD、戦域ミサイル防衛構想でありますが、日米の共同研究は莫大な国民の負担を必要とします。その効果についても疑問であります。こういったところへ国民の税金が使われていくということになれば、歯どめのない軍拡競争の道へ進んでいくというおそれなしとはしない、私は、このように考えるわけであります。
後方支援の輸送協力、特に兵器や弾薬、それから物資の輸送を手伝うということは、当然これは、兵たん基地をたたくということで、攻撃の対象になるのは自明の理であります。第二次大戦中、日本の船員の六万人を超える犠牲者を出し、さらに港湾施設の攻撃で多数の港湾労働者が犠牲になっていることからも明らかであります。
最後に、日米安保条約によるこの新ガイドライン関連法案は、安保体制を根本的に変えるものではないか、そういう点から私は賛成をすることはいたしかねる。
日本海を平和の海にするため、韓国の金大中大統領が進めている太陽政策、さらに今準備が進められている、村山元総理大臣を中心とする訪朝団による外交努力等が最善の安全保障の道である、私はこのように考えるわけであります。
いたずらに軍事力を強化し、また日米の協力を強化していくような道はとるべきではない。原子力発電所が密集する地域に住む者として、一たん事が起これば、ミサイルの攻撃を受ければ壊滅的な損害を受けるという現実を前にして、私は声を大にして、平和と和解を求めるためには対話を進めていく道しかない、このことを強く要望いたしまして、この改正案には賛成できないということを申し上げ、ひとつ慎重に国会で御論議をいただくようお願いする次第です。
以上です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/537
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538・玉沢徳一郎
○玉沢座長代理 ありがとうございました。
以上で意見陳述者からの御意見の開陳は終わりました。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/538
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539・玉沢徳一郎
○玉沢座長代理 これより委員からの質疑を行います。
まず、各党を代表しての質疑を行います。
質疑の申し出がありますので、順次これを許します。宮腰光寛君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/539
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540・宮腰光寛
○宮腰委員 自由民主党の宮腰光寛でございます。
きょうは、この地方公聴会、日本海側で一カ所、福井県で開かれているということでございまして、陳述人の皆さん方には大変御苦労さまでございます。
この福井は、大戦末期に空襲を受けたところである、あるいは戦後しばらくして大地震があった、それから今回、工作船の問題などで原発の警備の問題が指摘されているということで、福井県の中でも、このガイドライン法案については相当関心が高まっているのではないかというふうに拝察をいたしております。
やはり、このガイドラインに関する議論におきましては、まず何よりも我が国の安全や国民の生命財産の安全の確保ということが議論の大前提であろうと思うわけでありますけれども、ガイドライン法案の実効性と対応の迅速性を最大限確保していく必要があろうというふうに思っておりまして、そのことにつきましては、国民の皆さん方の関心も高くなってきているのではないかというふうに考えております。
昨年の八月三十一日、北朝鮮のテポドン・ミサイルが日本列島を横断したこと、それから先日、北朝鮮の工作船が我が国の領海を侵犯したということで、共同通信の世論調査では、六割以上が、たしか六六%だったと思いますけれども、ガイドライン法案に賛成をしているという数字が出ております。この世論調査の数字についてどのように考えられるか、須藤先生、島田先生、お二人にお伺いをいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/540
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541・須藤眞志
○須藤眞志君 私は、基本的には、日米関係というのが日本の外交の基軸であるということを考えている人間であります。ですから、私は、もし今回の改正が日米関係を損なうような側面があるとすれば、これは反対であります。絶対にプラス的な側面でなければいけないと思います。
私も細かく読んでみたのですが、確かにまだ解釈上いろいろな問題点はあると思います。しかしながら、日米が今後ともいろいろな側面でもって日米安保条約を基準にして協力していくということに関しましては、これは先ほどの議員のお話のように、日本人の六割か六割五分ですか、その方々が賛成というのは、自然の成り行きであろうというふうに思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/541
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542・島田洋一
○島田洋一君 世論調査で賛成の方が多いというのは、やはり北朝鮮の脅威というものを強く感じておられる方が多い。
対話路線あるいはいろいろな援助を供与して、相手をなだめて改革・開放の方へ持っていこうというようなことは今までやってきたわけですが、全然相手の対応が変わらない。改革・開放に乗り出そうなどという姿勢は全く見えませんし、どんどん軍拡を続けておる。飢え死にする人が絶えないでいるのに、平気で軍拡を続け、また韓国に対する潜水艇の侵入事件とかを繰り返しておるわけです。
そういう北朝鮮政権の姿勢といいますか基本的な体質というものを見れば、これはかなり強い抑止力を持って対応しなければどうにもならない、普通の対話で軟化するような相手じゃないなと、やはり私も一般庶民の一人としてそう感じておりますけれども、そういう多くの人の感覚の結果、法案に賛成だというのが多数、そういうことになっておると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/542
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543・宮腰光寛
○宮腰委員 ありがとうございます。
今ほど多くの先生方から、周辺事態法案における国会の関与のあり方について、いろいろな御意見等を承りました。
須藤先生の方からは、長期にわたる周辺事態については国会の承認ということだろうと思うけれども、緊急の場合、事後報告もしくは事後承認が常識であるというようなお話がありました。そうでない御意見の方もありましたけれども、今回の場合は、基本計画をどうするのか、あるいは自衛隊の出動についてはどうするのかという二本の議論があると思います。
日本有事の場合、つまり日本が直接攻撃されるような事態における自衛隊の防衛出動については、基本的に国会の承認が必要であるというふうになっております。ただ、原則事前承認であって、緊急時は事後承認ということも認められているわけであります。
今回のガイドライン、周辺事態の場合における国会の関与の問題、自衛隊が後方地域において限定的に活動する際に、果たして日本有事の際の防衛出動と同じレベルで自衛隊の出動に国会の承認が必要かどうかというのは、私自身は、これは事後報告でいいのではないか、あるいは事後承認がぎりぎりのところではないかというふうに思っておりますが、基本計画と自衛隊の出動という二本に分けて考えたときに、須藤先生の御意見をお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/543
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544・須藤眞志
○須藤眞志君 まず、先ほどもお話ししましたけれども、この英文を読んだとき、周辺事態というのは、日本を取り巻く地域の状況というふうに書いてあるわけであります。もう少しこの状況というのを細かく見れば、間違いなく、これは何らかの軍事的な有事というふうに解釈しても構わないのじゃないかと思うのですが、時間的な余裕が十分あるというようなケースというのは非常に少ないのじゃないかというふうに考えるわけです。
ですから、もし事前に国会承認ということになりますと、国会議員の方々を集めて、やおら提案をして、それから何日も議論をするというようなことは安全保障上の問題としてとてもできるわけはないですから、緊急事態というのはこれにあらずというような条項を恐らく入れざるを得ないと思います。そうすると、ほとんどの場合が緊急事態ということで解釈されるのであるとすれば、そのような意味のないことを入れる必要はない。ですから、私は、閣議決定をして行動を起こしたというふうにして、後ほど国会に承認なり報告なりをする、それで十分であろうというふうに思います。
それからもう一つ、今回の基本計画でありますけれども、この基本計画に関しましても、例えば後方支援という問題をとったときに、自衛隊法の改正を見ても非常に複雑なんですね、この場合、このケース、このケースといって。そうすると、最終的には、結局、ケース・バイ・ケースあるいは例外的な側面というのがかなり出るんじゃないかというふうに思われますし、またそれは、武器や弾薬は運ばないと言っているのに、実は衣服と一緒に運んだんじゃないかとか、そういうような問題が起こってきて、それは果たして違反じゃないのかというような論議になってしまう感じがいたします。
ですから、やはりこの場合も、私は、安全保障に関しましては、長期的に、例えばPKOのような場合であれば国会で十分に論議するということもあり得るでしょうけれども、緊急事態のような場合には、当然、事後承認あるいは事後報告で十分だというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/544
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545・宮腰光寛
○宮腰委員 自治体の非核条例のことで須藤先生にお伺いしたいと思います。
最近、高知県の非核港湾条例案というのが話題になりました。そのほかに、先日、函館市においても、非核条例案が実は継続審議になったわけであります。今回の統一地方選挙で議会の構成が変わりますので、実質的には自動的に廃案となるということが確定をいたしました。そのほかに非核神戸方式というのもありますが、このいずれも非核証明書の提出を求めているということになっております。ただ、その対象がそれぞれ違うという形であります。
いわゆる非核神戸方式では外国艦船に対して非核証明書の提出を求める、函館市の条例案では外国政府に対して証明書の提出を求める、それから高知県の条例案の場合は我が国の外務省に対して証明書の提出を求めるというふうに、それぞれ対象が違っているわけでありますけれども、いずれも直接間接に我が国の外交権を侵害しているのではないかというふうに私自身は思います。
実際に、過去三カ年で米軍の艦船が日本の十五都道府県十八カ所の港湾に四十九回寄港をしておりますけれども、特定重要港湾である神戸港、非核神戸方式と言われる条例を制定している神戸港には、過去三カ年において米軍の艦船は一度も寄港していないということになっております。
そこでお伺いしたいのは、国際法上あるいは対外的に見て、このような非核港湾条例というのが法的な効力を果たして有しているのかどうか。また、外交権の侵害に当たるというふうに考えておりますけれども、その点についても須藤先生からお伺いをいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/545
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546・須藤眞志
○須藤眞志君 まず第一番目に、外国艦船が核兵器を有しているかどうかということについて。
御存じのとおり、米軍は、いずれの船も核兵器を有しているか有していないかを明確にしないということを原則にしているわけです。ですから、私たちは想像するわけですね。例えば、あの航空母艦には積んでいるんじゃないだろうかとか、あの原子力潜水艦は積んでいるんじゃないだろうかとかいうふうに言っていますけれども、アメリカ側は、積んでいるか積んでいないかということを明確にしないというのが安全保障上の自分たちの基本だというふうにしているわけですから、これは、もし問い合わせても米軍は絶対に答えない。これは外務省が問い合わせたって絶対に答えないわけですから、そもそも意味がないというふうに私は思います。
それから、日本政府は非核三原則を守るということも言っておるわけでして、そのこととも関係があると思います。
また、外交権との問題でありますけれども、地方自治体は外交権はございません。これはもう明らかであります。
例えば、福井市がどこかの国と外交条約を結ぶということは絶対にできないのです。外交権というのは国家しか持っていない。これはいずれの国家でもそうです。ですから、例えば福井市とロサンゼルスで友好姉妹都市提携というのがあったとしても、アメリカ政府と福井市が外交条約を結ぶということはあり得ないのであって、つまり、外交に関する権限というのが地方自治体にないというのは、これは常識であろうというふうに思っています。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/546
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547・宮腰光寛
○宮腰委員 これも須藤先生にお伺いしたいと思いますが、船舶検査の際の国連安全保障理事会の決議ということであります。
今、ユーゴスラビアのコソボ問題では、NATO軍が国連安保理の決議なしで実際には行動しているわけであります。ミロシェビッチ大統領を相手にして、ほかの方法ではなかなか問題の解決の方向が見出せないということからであろうというふうに思っておりますが、大国の利害が絡む地域紛争に対しまして必ずしも国連の調整機能が有効に働かないというケースであろうと思います。
一方、国連で拒否権を持つ中国は、ほぼはっきりと反対と言っているのはこの中国あるいは北朝鮮だと思いますけれども、この新ガイドライン法案に反対をしておりまして、仮に朝鮮半島で有事となった場合に、安保理で中国が拒否権を行使するということも考えられるわけであります。
今のガイドライン法案では、船舶検査を実施する前提として国連決議が要件とされております。もし拒否権が行使されて国連決議がなされなかった場合、旗国主義との関係で、この船舶検査ができなくなるということも実は考えられるわけでありまして、その国連決議を船舶検査の要件とすることについての御見解と、今いろいろな話が出ております、多国間の合意によって船舶検査を可能とする考え方についてどういうふうにお考えなのか、お聞きしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/547
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548・須藤眞志
○須藤眞志君 私は、原則としては、やはり国連決議が必要であろうというふうに考えます。しかしながら、御存じのとおり、国連というのは安全保障理事会の決定というのが最優先されるわけでして、しかも常任理事国五つは拒否権を有しているわけですから、例えば中国の船舶に対して検査を行うというようなことで国連決議を経るということは、ほとんど不可能に近いというふうになります。
あるいは、もっと過激な場合を申しますと、湾岸戦争の場合のように、国連軍はできないけれども、多国籍軍というのが例えば朝鮮半島に出かけるというような場合になったときに、この前の湾岸戦争のときには中国もついに拒否権は出さなかったわけですけれども、拒否権が出されると、これは国連のお墨つきがもらえないということになってしまう可能性もあるわけです。
そこで、私は、この船舶検査の問題に関しましては、日本の領海内であれば国連の決議に関係なく検査することができるというふうに決める、それで領海外の場合には、これはケース・バイ・ケースでしょうけれども、国連の決議というのは一応必要だというふうに思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/548
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549・宮腰光寛
○宮腰委員 現にできないこともあり得るということだと思います。今特別委員会でこの点も大きな問題の一つになっておりまして、国連決議のみを要件とした場合、公海上で船舶検査ができないこともあり得る。
ただし、それにプラスして、多国間の合意で、国家の組み合わせというのは、どういう組み合わせになるかは、これはそのときになってみないと、状況によってだろうと思いますが、多国間合意で船舶検査を可能とするということについては、どのように考えておられますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/549
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550・須藤眞志
○須藤眞志君 実は、大問題は、多国間の内容であろうかというふうに思います。例えば中国やロシアが反対をした、それゆえ国連決議ができなかった、しかしながら国連加盟国の三分の二近い国々がこれに賛成している、あるいは総会でこれが決議されたというような条件があれば、よしんば安全保障理事会が通らなかったとしても、船舶検査ができるというふうに決めておいて構わないのじゃないかというふうに思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/550
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551・宮腰光寛
○宮腰委員 最後ですけれども、先ほど須藤先生の方からも、島田先生の方からも、集団安保というのは決して憲法違反ではない、自衛権の行使ということで集団的自衛権の行使を認めるべきであるというお話がありました。
そのことについて、有事法制の整備の必要性については須藤先生はどういうふうに考えておいでになるのか、お願いいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/551
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552・須藤眞志
○須藤眞志君 私は、有事の内容にもよると思いますけれども、日本が武力攻撃を受けるというような場合には、それに対応する措置をとっておくということは当然であろうというふうに思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/552
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553・宮腰光寛
○宮腰委員 ありがとうございました。終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/553
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554・玉沢徳一郎
○玉沢座長代理 これにて宮腰君の質疑は終了いたしました。
次に、桑原豊君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/554
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555・桑原豊
○桑原委員 民主党の桑原でございます。
きょうは、それぞれのお立場で大変率直な、そしてまた、非常にいろいろとお考えになった上でのこの問題に対する考え方をお聞きいたしまして、本当にありがとうございました。感謝をいたしております。
私は、お隣の石川県の出身でございまして、やはり日本海が、非常に平和で、そしてまた繁栄の海としてあるということが、私ども日本海側に生活する者にとって、何よりも切実な、大事なことだ、こういうふうに思っておるわけでございますけれども、残念ながら、最近いろいろな問題が相次いでおります。
特に昨年のテポドンの発射、一部が日本海側に落ちるとか、あるいは最近の工作船の問題でございますとか、またそういった種類の問題ではなくても、一昨年の例の重油の流出事故というのもございました。また、漁船が不法に操業して漁民の皆さんが不安を覚えるというようなことで、海にまつわって本当に心配な事柄がたくさん起きておるわけでございまして、こういった事態にどう対応していくのかということで、政府もいろいろと腐心をして、いろいろな対応をいたしております。
特にこの周辺事態という問題に絡んで申し上げますと、やはりだれしも頭に浮かんでくるのは、北朝鮮が一体今後どんな対応をしてくるのか、我々のいろいろな呼びかけにもなかなかきちっとした対応がされないということの心配もございます。なかなか国情がよくわからない、そういう不安、そんなものもございまして、いろいろな思いが増幅をしてくるわけでございます。
須藤先生と小林先生、それから岡田先生にちょっとお聞きをしたいのですけれども、日本の政府は、北朝鮮外交の基本は抑止と対話だということで、周辺事態法なるものはその抑止の一部を構成する、そういう考え方でおるわけでございます。いろいろと対話を水面下で呼びかけると言いながらも、私どもの目には、政府の対応としては、どうも抑止に重点が置かれているのではないか。
例えばテポドンが発射をされますと、情報、偵察衛星だ、こういうように反応しますし、それから工作船の問題でも、自衛隊の海上警備行動だ、初めてのそういう発令が行われるとか、あるいは米国との間で、TMD、戦域ミサイル防衛、そういった研究開発に巨額を投じて着手をするというふうな、どうも抑止は目立つのですけれども、いろいろやっていると言いながらも、対話の問題、これをどうしていくのか。これは外交の基本的な問題だというふうに私は思います。
須藤先生も外交努力というのが一番大事なことなんだというふうに強調されましたし、また小林先生も岡田先生も外交の必要性というものを非常にお認めになられたというふうに思うのですけれども、北朝鮮と外交をやっていくのは大変難しい、いろいろ困難な壁がたくさんあるわけでございますけれども、やはり対話をどういうふうに進めていくのか。
私は、政治対話だけではなしに、経済的ないろいろなつながりをどうつくっていくのかという問題もあると思います。
例えば豆満江の問題なんかは、北朝鮮も一部かかわりながら話し合いがずっと行われてきておるわけでございます。そんなものなどにも積極的に日本がかかわるというやり方もあるだろうし、軍事以外の面でのいろいろな対応の仕方というのはあると思うのです。
私も北朝鮮へ三回ほど行っておりまして、その国民性といいますか、そういうものにじかに接すれば、海を隔てて我々が想像するような、そんなことだけではなしに、対話をしてつないでいくということに積極的にこたえ得る素地も決してないことはない、私はこういうふうに思っていますので、そこら辺を、今後北朝鮮外交というものをどんなふうに、対話を基本にしてやるときにどうしたらいいのかということについて、何かお考えがおありならば、お三方から一言ずつお聞きをしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/555
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556・須藤眞志
○須藤眞志君 それでは、簡単にお話ししてみたいと思います。
私は先ほど、結論的に、外交史を研究している上で、危機が起こったときに、いかにしてこれを外交的な努力で戦争にしないかということがいわゆる外交の使命であるということをお話ししました。その信念については変わっておりません。ですから、例えば北朝鮮についても、北朝鮮はけしからぬ国だ、先制攻撃して壊してしまえというような形での考え方は決してとりません。やはり対話が必要であろうというふうに思います。
また、先日、小渕総理大臣は、韓国に行きましたときに、金大中大統領の太陽政策を支持するというふうに明言いたしました。あれはやはり対話の一つだろうというふうに思います。
ただ、北朝鮮という国は、私も一週間ほどいたことがございます。かなり上の方の方々と話し合いもいたしました。それで感じましたことは、体制と国民というのをごちゃごちゃにしてはいけない、あるいは人民というのをごちゃごちゃにしてはいけないということを非常に感じました。
つまり、北朝鮮の政府が強腰でもっていろいろなことを言うわけですが、日本を火の海にしてやるというようなことを言ったりすると、それが北朝鮮全体を覆っている言葉だというふうに我々は思いますけれども、北朝鮮の人たちは、そのように考えていない人たちも大勢いるわけです。私は、対話の余地というのはあるというふうに思います。
ただ、問題は、きっかけがなかなかつかめないということが一つあると思います。それは、外交関係がないということ、もう一つは、やはり拉致問題とか先日の工作船のような、要するに挑発的な行為とか、つまり対話を阻害するような状態を北朝鮮側がつくり出しているということは否めない事実だというふうに思います。
しかしながら、そういう事実があっても、例えばKEDOに対して日本はやはり協力をしていくということも必要だろうし、また韓国の太陽政策についても日本のできることはやって、できたらば一日も早く日朝会談を再開して、日本と朝鮮との間の対話の路線をつくり出すべきだというふうに思います。これは、できたらば民間ではなくて、公的な、国会議員の方々とか政府というようなところでやるべきだろうというふうに思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/556
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557・小林巌
○小林巌君 私は、一昨年でしたか、ロシアのウラジオストクの要塞地帯に行きまして、これは向こうの話ですと、戦前戦後、最初のジャーナリストであるというふうに言っていましたけれども、実は、強襲揚陸艦ですか、そういう最新鋭の軍艦が島陰に二隻ありまして、そのほか、ディーゼル推進ですけれども、潜水艦に乗ったり、あるいは今なお、大正末ぐらいになりますか、そのころの大口径の要塞砲、そういうものが湾口にあったりしていまして、これは別に北朝鮮に限らず、どこの国も有事に備えているのではないかという感じをいたしました。
私は浄土真宗の信者の一人ですが、今から五百年ぐらい前に福井へ来ましたカリスマの蓮如という人物がいますが、この蓮如の語録の中に、対話をせよという言葉があるわけです。物を言え物を言えと仰せられ候と、しゃべれと。物言わぬは恐ろしきと仰せられ候という言葉があるのですね。物を言わなくては、心の中で何を考えているか、心の底がわからないというふうに言っているわけですね。
今、須藤さんもおっしゃったように、やはり何らかのチャンネルを持っているということが大事じゃないかと思うのですね。最近、訪朝団の話もあるようですけれども、この際、やはり意思の疎通というものをしなければ、これはさらに難しいことになってしまう。
私どもは、特に北陸は、我々の県も関係が深いのですけれども、私、事実を個人的に確かめているわけではありませんが、拉致したのは許せない、ミサイルはけしからぬ、あるいは工作船はけしからぬ、人権無視はけしからぬ、いろいろなことを言っていまして、我々もそれに共感するところが大きいわけですね。
しかし、あめとむちのむちの方ですが、むちのことばかり言っているのではなく、蓮如上人がおっしゃったように、五百年ぐらい前の話ですけれども、やはりそういう対話のチャンネルというものが、外交だけではなく、これは人間関係とかいろいろなことで共通すると思いますが、必要ではないか。許せない許せないでは事はなかなか進んでいかないのではないかというふうに思います。
確かに私も、ちょっと大分前になりますけれども、北朝鮮へ一回行ったことがありますけれども、それは人間同士ですから、通訳を間に置いても、何かしゃべっているうちに相手の気持ちというのは伝わってくるわけですね。先ほど御質問の桑原議員は北朝鮮に詳しい方ですから、できれば、ここには福井県選出の辻一彦さんもいらっしゃいますけれども、こういう難しい事態、対話が切られる事態といいますか、だからこそ対話のチャンネルを何らか残しておくべきではないかというふうに思います。
これは、今申しましたように、人間ですから、いかに体制の問題を強調しても、だんだんわかってくるわけですよね。しかし、それを変えられないというのには、政治のシステム、体制というものの大きな問題があるに違いないと私は思います。それをどうしようか、そういうことはわかりませんけれども、いずれにしろ、対話ということはあらゆることで必要であろう。
ユーゴスラビアにミサイルが撃ち込まれていますけれども、恐らくは、あれはどこかで対話があるはずです。全く対話がないわけではない。外交というものは、根本的にそういうものだと私は思います。
そういうことで、議員の御質問を受けましたけれども、やはり何らかの対話といいますか、そういうことについては、それに反対、対話するような相手ではないという言い方は、それは確かに言えると思います。それに共感を覚える人は多いと思います。しかし、国際関係というものは、それだけではなかなか解決しない。また、解決の糸口を引っ張り出すことはできない。
今に朝鮮半島のその国が自滅するのを待っているとか、あるいは食糧の配分といいますか、そういったものをストップすればきっと参るに違いないというふうな、それは正常な外交あるいは国と国との話し合いのルートではないと私は思います。
もしそういう機会がありましたら、もう一度、御質問の桑原議員、あるいは自民党の方も民主党の方もいろいろいらっしゃいますけれども、まとめて訪朝するのが私は結構ではないかと思います。
以上です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/557
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558・岡田正則
○岡田正則君 私、この間、毎年のように韓国に訪れる機会があるのですが、現実に分断国家として北と向かっている韓国の中では、非常に落ちついた議論でありまして、独裁者が何をやるかわからないというような世論ではない。そういうものに支えられて金大中政権の太陽政策というものがある。だから、私たちも、そういった韓国内における落ちついた世論、こういったところに学ぶべきであるし、バックアップすることが何よりも重要だろうと思うのですね。
そして、日本自身も、この南北の分断には責任があるわけですから、やはり積極的に、国連加盟しているわけですから、北との国交を回復する、外交関係を樹立するというようなことをやる。あるいは、戦後補償の問題、歴史の問題などについても、積極的に共通認識をつくるような、そういう呼びかけを北に対してもやっていくべきだし、民間のいろいろな交流についても積極的な便宜を図るべきだろうというぐあいに思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/558
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559・桑原豊
○桑原委員 どうもありがとうございました。
それでは、もう時間もなくなってまいりましたけれども、小林先生に一点だけお伺いいたします。
周辺事態に対する国会の関与ということが問題になっております。私どもは、緊急の事態であるというふうなことも想定できるわけでございますけれども、日本有事、直接日本に武力攻撃があるというような事態でもございません。そういう意味では、事前に想定できるいろいろな問題もあろうかと思います。
ですから、基本的には、この周辺事態の定義そのものが非常にあいまいであるということもございますし、これを受けての自治体の協力とかいろいろな措置、今までの議論の経緯の中では、非常にあいまいなものがたくさんあるわけでございまして、それらをきちっとシビリアンコントロールで確定をしていくといいますか、本当に責任を持ってそういった対応をしていくということになれば、やはり国会の承認が必要ではないか、原則的に事前の承認が必要ではないかというふうに思います。
そして、私どもは、さらに、この事態が経過をして、措置が開始をされて、例えば六十日とか一定の期間を経た後でもう一度この計画についての承認をとり直すということが必要ではないか、こういうふうに思っております。
それは、かつてのいろいろな事態を見たときに、いわゆる戦争の論理でだんだんエスカレートしていく、当初はそうでもなかったのにだんだんエスカレートしていく、なかなか見直しがきかない、こういった問題については、やはりこういうようなことが常に危険性としてつきまといますから、一定のときに必ず見直しをする、こういうようなことも必要ではないか。
承認のとり直し、そんなことも含めて私は考えておるのですけれども、この点について先生の御意見をお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/559
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560・小林巌
○小林巌君 きのう、武器について詳しい方にちょっとお会いしまして聞いたのですけれども、国籍不明船があらわれた場合、あのときに、小火器、ピストルに始まって、上は相当な、二十ミリ、旧海軍では機銃と言うそうで、機関砲とは言わないそうですが、もし向こうが自動小銃で撃ってきた場合、これはあかんというので、それに対して、十二・七ミリ機銃というのがあるそうですが、そういうものを撃つ。もしも向こうが、あの一見漁船風の中から、二十ミリあるいは三十五ミリ、あるいは四十ミリという機関砲があるそうですが、そういったものを撃ち出した場合にどうなるかということですね。
今、議員の御質問の中にありましたけれども、ミリタリーシチュエーションというのは常にエスカレートする可能性があるわけですから、そこのところのコントロールといいますか、それと、国会承認との関係ですけれども、ミリタリーなシチュエーションというものは緊急性を要するわけですね。ですから、国会でいろいろと話をしているうちに事がどんどん進んでしまうということになってはまずいわけで、私は、もちろん個人的な見解ですけれども、やはりこれは緊急性というものについて考えていかなければいかぬと思います。事後承認といいますか、そういったことについても、これは詳しい説明が必要ですから、事の性質からして事後承認というのが普通のあり方ではないか。
ただ、シビリアンコントロールのお言葉も先ほどありましたけれども、断固として、ユニホームを着た連中に独自の判断を与える、専門的な立場での話を聞くということはいいのですが、独自の判断を与えてそれに従うなどということはあってはいけない。
日本は、我々の体制は、あくまでもシビリアンコントロールである。かつて、その淵源からいえば、六十数年前にシビリアンコントロールを失って、そして肩章のついた連中に権力を譲り渡してしまったのですね。そのための悲劇もあったわけですね。
いずれにしろ、そういったこともありますので、シビリアンコントロールを守っていくという新たな決意といいますか、それは大事なことではないかと私は思います。
一言だけ、十秒ほどで言いますと、私、北朝鮮へ行きまして思ったことは、朝鮮半島の地において、もはや日本人は、日本人だけではありませんけれども、もちろんそこに住んでいる人たちや我々が一滴の血も流すべきではない、これは建前ですけれども、そこで血を流すわけにはいかない、かつての長い統治のことを考えれば、そう思いました。
以上です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/560
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561・桑原豊
○桑原委員 どうもありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/561
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562・玉沢徳一郎
○玉沢座長代理 これにて桑原君の質疑は終了いたしました。
次に、遠藤乙彦君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/562
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563・遠藤乙彦
○遠藤(乙)委員 私は、公明・改革の遠藤乙彦でございます。
きょうは、陳述人の皆様方におかれましては、大変御多忙の中お越しいただきまして、また大変貴重な御意見を賜りまして、感銘深く伺いました。心から感謝申し上げたいと思っております。
まず、私の率直な印象を申し上げさせていただきますと、私は東京に住んでいて、太平洋側なのですが、日本海側の方々は、今回のガイドラインの問題等を初め、やはり大変切実な受けとめ方をされておられるということを改めて強く認識した次第でございます。
特に、朝鮮半島に近い、そして拉致事件もあり、また原発も多数あり、日本海波高しという感じを皆さん共通に持っておられるということは、私もよく理解できました。
他方、そういった状態に対してどう対応するかということでは分かれているということもまた感じた次第でございまして、端的に言うと、抑止重視なのか、対話重視なのか、あるいはその中間なのか、そういう感じで私は受けとめております。
例えば、恐らく、島田先生、岡本先生などは抑止を重視すべきだというお考えだと思いますし、岡田先生、吉村先生は対話でいこうという考え方でございましょうし、須藤先生、小林先生は、対話と抑止だけれども、その中でやはり対話をより重視しよう、そういったお考えかなと、あえて独断と偏見で三グループに分けさせていただいたわけなのでございます。
そこで、現実問題、特に冷戦後、核開発が行われ、またミサイル技術が進んで、北朝鮮自体がどんどんミサイル開発を進めている。日本海という海で隔てられていたことによって、安全保障という点では今まで比較的楽観的な見方をしていたのだろうと思うのですけれども、こういった事態の進展で急遽状況が変わってきた、非常に切実な安全保障の状況下に置かれたということではないかと思っております。
そういった意味で、皆さんにお伺いしたいのは、まず、特に抑止を重視される島田先生、岡本先生については、抑止を強化していくということで果たして問題は解決できるのか、対話を重視する必要性はないのかという質問をぶつけたい思います。
逆に、岡田先生、吉村先生には、対話をするだけであの北朝鮮の問題を解決できるのか。拉致の問題あり、核開発、ミサイル開発、こういったことを対話で抑制できるのか。抑止の必要はないのか。金大中大統領のもとの太陽政策であっても、米韓安全保障条約のもと、また強大な軍事力のもと、抑止をしながら太陽政策を進めているわけであって、そういった意味で抑止の必要性というものはないのか。
この二つの違った質問をぶつけたいと思っておりますので、まずは、抑止派と目される島田先生、岡本先生の方からお願いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/563
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564・島田洋一
○島田洋一君 抑止派と単純に分類されると困る面もありますけれども、対話の必要があるというのは当然のことであって、お互い、誤解に基づいて戦争になるというような事態は避けないといけません。
したがって、例えば軍事演習をやるときには、相手が先制攻撃かと錯覚しないように、これは軍事演習なんだということを事前に伝えるとか、要するに情報交換のパイプを持っておくということが大事なのです。
しかし、さまざまな援助なり経済関係を北朝鮮と持ってどうなるのか。例えば韓国がやっておるいわゆる太陽政策ですか、あれは間違っておると思います。結局、ああいう形で行っておる資金というのは、もうほとんどすべてが金正日によって大量破壊兵器のさらなる開発・蓄積、あるいは人民弾圧装置の充実、あるいは対日工作のいろいろな装備の充実等に向けられておるわけです。また、そういうふうに軍備の充実に使われるということもありますし、いろいろな援助物資というのは、何よりも金正日周辺に配られて、周囲の不満が臨界点を超えないようにと、周囲の不満をなだめるために使われておる。そのことで、政権交代を迫るような圧力等も弱まってしまうわけです。
率直に言って、北朝鮮においては、やはり政権交代がなされることが一番いいと思うわけですけれども、そのためには、金正日周辺が今のままで満足だというような状況にならないように、やはり妙な経済援助とかはとめる必要がある、そういうふうに私は考えております。ただし、誤解に基づいて妙な紛争にならないように、対話のパイプというのはもちろん持っておかないといけない。
なお、国交回復ということについて一言言いますと、国交正常化するというのは、一見いいように聞こえます。しかし、世界じゅうの北朝鮮大使館というのが一体何をやっておるか。北朝鮮の外交官というのは、その大半が実際には工作員であります。
この間も、タイにおいて、逃げ出した大使館員の一人と息子を拉致して、タイ警察の間ともめたという事件がありました。その他、北朝鮮外交官が麻薬の不法所持で摘発された、国外追放になったというような例はいっぱいあるわけです。あるいは、にせ札の行使で捕まった。また、ヨーロッパ・ルートで拉致された日本人、これは当時のユーゴスラビアに駐在しておった北朝鮮大使館員、まあこれは工作員ですが、それが中心になってやったというようなことも明らかになっておる。
もし国交正常化して、現在の北朝鮮政権のまま日本に北朝鮮大使館や領事館を置いたりしたら、実質的に、現在日本に入っておる工作員に大使館員というような身分を与えて、外交官特権を与えて表へ出すというのは、これは本当に警察にとっては悪夢だと思うのです。したがって、国交正常化とか言うときれいに聞こえるのですが、北朝鮮外交官の実体というのがどういうものかということを考えるならば、今の北朝鮮政権が続く限りは、国交正常化してはならない。
また、向こうに何らかの形で賠償金を送れば、それはまた大量破壊兵器の開発・蓄積に使われることは決まっていますから、したがって、今の政権がかわって、あるいはひょっとして金正日が心を入れかえてくれたら結構なのですが、まあ期待できませんけれども、もう少しまともな政権が向こうで誕生してから早急に国交正常化交渉を進めるべきである、そういうふうに考えています。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/564
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565・岡本弘
○岡本弘君 ちょっと確認をさせていただきますが、抑止力を強化すれば事態は解決できるか、こういうふうにとらえてよろしゅうございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/565
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566・遠藤乙彦
○遠藤(乙)委員 問題の解決につながっていくのかということです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/566
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567・岡本弘
○岡本弘君 このことになりますと、私は抑止力だけを言っておるのではないのです。ただ、時間が十分でありましたので、外交上で解決できる問題あるいはその次の経済、まあいろいろな問題がありましょうが、そういったありとあらゆる方法を尽くした後に、それでも周辺有事を迎えたときにどうすればいいのかという観点できょうはお話しいたしました。したがいまして、先生がとらえていただいたところは、ちょっと修正をしていただきたいというふうに思います。
抑止力を強化することがどのようなことになるのかといえば、やはり守るべきものは守れる、最後はそうなるのではなかろうか。それから、自分の対応あるいは対処の可能の範囲が大きければ大きいほど、やはり抑止力としての効果は大きくなるのではなかろうか、そのように思います。
ただ、決して私は、好戦家、戦好きではありませんので、そこのところもあわせて御理解いただきたいと思います。
終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/567
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568・岡田正則
○岡田正則君 対話だけで抑止ができるのかという御質問でした。
まず、抑止の問題ですが、ここでも、拉致事件とか不審船問題とかテポドンとか、そういったことが挙げられていましたけれども、まず警察力で本当にできないことだったのか。吉村先生が、過剰防衛ではなかったかということでしたけれども、そういうところが本当に限界に来て初めて自衛とかかわる議論ということをすべきで、韓国でさえ騒いでいないのに、衛星のミサイルか何かわからないようなものが一つ飛んできたということで、やれ周辺事態措置法だというのは、やはり過剰反応というか、針小棒大に法案を扱う、そういうことであると思います。
そして、もう一つ、韓国内での人々の動きというものを冷静に見てみますと、やはりそれぞれの人たちが、北の家族とか親類と対話のルートがあるわけですね。ですから、それなりの意思疎通があるようにどうも感じられるわけです。
そういうことも含めて、島田先生によりますと、政権交代がまず必要だということですが、ドイツの経験から見ても、こちらの様子を積極的にいろいろな形で知らせる、向こうの様子も知って理解する、そういう意思疎通の努力によって政権交代が可能になるであろうというぐあいに思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/568
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569・吉村清
○吉村清君 私は、戦後日本の外交といいますか、冷戦時代、まさに日本海側は、各港を含めて冷え切った状態だったと思うのです。それが、ソ連の崩壊によって、ロシアとの交易が盛んになってきたのですね。韓国とも、今、敦賀とか新潟なども盛んにやられています。そういう点を考えますと、やはりお互いに交流をして意思の疎通を図っていくということによって相互理解は生まれる。戦後の冷戦時代を経験した私たちにとっては、やはりそれを解消していく。
日本の外交というものは、太平洋を間に挟んでアメリカの方だけを向いておったのではないか。今回のあの不審船の問題でも、速力の速い海上保安庁の巡視船は太平洋側に配置されておって、日本海側にはなかったではないか。だから、日本全体の警察行動をするにしても、その警備をきちっとするということになれば、やはりバランスをとってやっていくということでなければならぬと私は思うのです。
そういう点から、今必要なのは、やはり対話ではないか。そこで抑止、抑止とやりますと、お互いエスカレートするのですから、一つ間違うと、不幸な事態になったときに私たちは大変な目に遭う。それは、戦争中の経験からいって、大衆が大変な目に遭うということを私は思うのです。それがないようにしてほしいということを特にお願いしたいと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/569
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570・遠藤乙彦
○遠藤(乙)委員 須藤先生にお伺いします。
須藤先生の陳述の中で、今回の関連法案が日米協力関係にプラスであれば賛成、マイナスならば反対とおっしゃいましたが、今回の法案自体に対して先生がどう評価されているかということは、プラスかマイナスかということは、私、ちょっと聞き漏らしたのか、伺っていないと思っているのです。その点につきまして、どうなのでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/570
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571・須藤眞志
○須藤眞志君 私は、少なくとも九七年九月のガイドラインの見直しを細かく読みました。旧ガイドラインよりは前進しているというふうに考えておりますので、そういう点ではプラスだと思います。
ただ、さらに詳しく読むと、まだ、例えば先ほどの、今問題になっている周辺事態というような言葉の訳も、それでいいのかどうか、少し問題点もないわけではありません。しかし、全体的にプラスかマイナスかといえば、私はプラスだというふうに思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/571
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572・遠藤乙彦
○遠藤(乙)委員 小林先生にお伺いします。
先生が主張された地方分権の時代、これは全くそのとおりだと思います。私も、今回の法案は非常にわかりにくいし、また情報提供、アカウンタビリティーが非常に欠けているということを政府に強く言ってきたわけなのですけれども、そういった意味で、十分な情報提供ということでは、当然やるべきだと思っています。
ただ、地方分権の考え方なのですけれども、いわゆる生活に密着した、福祉とか教育とかごみ処理等々の問題はどんどん地方に移譲されますけれども、外交、防衛については中央が専管だという考え方もあるわけでございますね。
この地方分権の考え方に対して、地方としては、外交、防衛にも、意思決定といいますか、協議を受ける権利があると考えられるのか、あるいは情報提供がどんどん進めばいいのか、そこら辺についてはどう考えられるのか。さらに、地方にもっと情報を提供させるためにはどういう方策が考えられるか、御意見があればお聞かせ願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/572
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573・小林巌
○小林巌君 私としては、外交と地方の権限とは別のものである、そういうふうに思います。
したがって、外交に関して、例えば非核の証明とか幾つかあるとさっきおっしゃられましたけれども、やはり外交というのは国に一元化されているものであって、いささかの乱れがあってもまずいと思います。
ただ、地方分権の時代というのは、おっしゃられるような、教育とかいろいろありますけれども、それは、そういう時代なのにもかかわらず、地方にいろいろな問題が伝えられないということの問題点ですね。
例えば、さきの国籍不明船についても、自治体の長である石川県の知事には、その説明は、どういうふうに聞かれたのか聞かなかったのか知りませんけれども、恐らくはなかったと思います。今動いている最中であり、また巡視船と、これは運輸省ですが、それから自衛隊と、相互の情報交換すらも難しかった状態であって、それを地方の自治体と協議——方向を協議するというわけではありません。インフォメーションを提供する、それがなければ地域住民はまた非常に不安を感じるわけですね。
重油の流出のときのように、これくらいの重油がどちらの方向に流れていると、船体は分断して、一方は、東尋坊という景勝の地ですが、その近くに、座礁といいますか沈んでしまって、ひっかかりましたが、何かそういうインフォメーションというものを地方にも伝えてくれなければ、そこに住んでいるたくさんの、北陸三県だけでいっても二百万を超す人間が非常な不安を感じるわけですね。
ですから、外交権を地方に一部分けてくれという話では絶対にありません。これは近代国家の統治という意味でも、やはり外交権はれっきとして日本国政府にあるというふうに思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/573
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574・遠藤乙彦
○遠藤(乙)委員 ありがとうございました。
以上で私の質疑を終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/574
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575・玉沢徳一郎
○玉沢座長代理 これにて遠藤君の質疑は終了いたしました。
次に、東祥三君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/575
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576・東祥三
○東(祥)委員 自由党の東祥三でございます。
本日は、公述人の皆様方のいろいろ異なった御意見をいただきまして、本当にうれしく思います。また、傍聴人の方々がこのようにたくさんいらしていることを見ると、この問題に対しての関心の高さがうかがわれます。
意見陳述者の方々に質問をさせていただく前に、少しお話しさせていただきますが、今世界で何が起こっているか。とりわけコソボ自治州において、皆さん御案内のとおり、数十万規模のアルバニア系住民が難民と化して、そして地獄絵の様相が展開されています。
先ほど岡田さんの方からドイツのことが若干触れられましたけれども、昨年、政権交代が行われました。ドイツの外務大臣は今フィッシャーさんという、いわゆるグリーンパーティー出身の大臣でございます。この大臣が、NATOの空爆を始める前、ミロシェビッチ・ユーゴスラビア大統領を説得に行かれました。
フィッシャー外務大臣というのは、おのれの信念として、またドイツ国民を代表して、さきの第二次世界大戦における二つの教訓を身をもって信念として掲げてきた人でございます。一つの信念は何かというと、ネバーウオー。二度と戦争は繰り返さない。そしてもう一つは、ネバーアウシュビッツ。アウシュビッツを再びこの地球上にもたらしてはならない。しかし、ユーゴスラビアのコソボ自治州における状況を見ているときに、自分の信念における矛盾が露呈した。そこで彼は、ミロシェビッチ大統領を説得に行くわけでございます。
二時間数十分にわたって彼を一生懸命説得する。今ここで繰り広げられているアルバニア住民に対しての、まさに残酷悲惨なその政策を何とか変えられないのかと、説得に次ぐ説得をしました。ミロシェビッチ大統領は何と言ったか。たとえアメリカを含むNATO軍が我々を攻撃したとしても、ベトナム戦争以上の状況になっていく、泥沼になっていくという結論を下されたわけでございます。フィッシャー外務大臣はその席をけって後にし、そして今の、まさに地獄絵が展開されているわけです。
私は、議員になって九年を迎えます。その前までは国連難民高等弁務官事務所というところで、世界じゅうのいろいろな国々で難民救済活動を行ってまいりました。日本に来ると、本当に平和だなと。この日本の平和というものが世界に行き渡っているならば、これはすばらしいことです。百八十五カ国ある中で十九カ国が、まさに世界の情報が行き届かない。あるいはまた、多くの方々が毎日数千人の規模で亡くなっているわけです。
私も、日本の歴史を振り返り、二度と戦争を起こしてはならない、また同じ苦しみを味わってはならない、また今日の平和と安定をそのまま維持していかなければならない、深く思います。
しかし、第二次世界大戦後、本当の意味で日本の安全保障政策というものがついぞ設立されたことはない。先ほど須藤先生からもお話がありました。戦後五十数年間、改めて安全保障の問題というものを、イデオロギー的な観点ではなくて、国民の生命と財産を守る、また日本の領土、領海、領空というものを守る、当たり前のことです、これをどうしてなし得ることができなかったのか。それは、まさに政治家の怠慢であるというふうに私は思っているわけです。
具体的な方法論、これを一朝一夕につくり上げることはなかなか難しい。しかし、やっとそういう時代が来たのかもわからない。そういう意味において、今いい時が来ているのだろう。
日本には、二十四万人に上る自衛隊という唯一の武力組織がございます。何かあれば、日本の国民の生命と財産を守ってくれる人々、この人々に依存せざるを得ません。
日本は、どこかの国を攻撃しようなんて思っていない。また、米軍が他国を攻撃しようなんて思ってはいない。しかし、日本の周辺において武力紛争が起こり、その武力紛争の結果として日本の平和と安全に重大な影響を与えるような事態になったとき、日本として座して何もしなくていいのか。これがまさに今回の周辺事態確保法案の本旨なんだろうというふうに思うのです。しかし、それが今日まで何もなされてこなかった。
ある意味で、須藤先生、島田先生、岡本先生等は共有する部分が多いのかもしれません。きょうは傍聴人の方々もたくさんいらっしゃいます。そういう意味で、若干、質問する前に、そういう角度でこの問題を見ているということを、私自身の意見を開陳させていただきました。
先ほど岡本さんの方から、いわゆる船舶検査活動における武器使用の問題について、詳細は避けられて言及されました。あの法案を皆さん方も読んでくださったと思いますが、いわゆる国連決議を前提として、そして日米、ある意味で米軍に対しての協力、それをいかに行っていくのかという法案であるにもかかわらず、あそこにひょっこりと国連への協力というものが出てまいります。
本来、国連というのは、地域的に限定されたものではなくて、国際社会において平和が破壊されたときに、国際社会が一致団結して、その平和を脅かす国に対してどういう制裁措置をとったらいいのかという、グローバルなものです。そしてまた、そこに掲げられている種々の手続あるいはまた具体的な措置等は、これは日本が決めることではなくて、国際社会におけるいわゆるスタンダードな手続に基づいて行われることです。
しかし、そこにぽこっと国連決議というのが出てくる。それは、先ほど島田先生がおっしゃられたとおり、ある意味で、船舶検査活動を実効性あらしめるためには国連決議というものが必要であるということは、すべての人が知っているわけでございます。問題は、あそこに書かれているとおり、国連決議があったとしても、国連のインターナショナルスタンダードに基づく手続に基づいて船舶検査活動が行われるわけではありません。
御案内のとおり、不審な船が通りかかる、それに対して停船要請を出す、そして停船要請を出してもとまらない場合はどうすることもできない、威嚇射撃もできない、そういう条項があそこに盛り込まれており、国連決議に基づく、そういう船舶検査活動が行われたときに、本当に実効性を担保することができる内容になっているのかどうなのか。私は、極めて形だけ整えていて、実効性を担保されていないのではないか、こういうふうに思っているのですが、岡本さんの御意見を賜りたいと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/576
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577・岡本弘
○岡本弘君 船舶検査につきましては、恐らく国連の決議を得ることができないと私は考えております。この理論づけについては省略いたしますが、できなかった場合にどうするかを考えるというのが私の論旨であります。できない場合、やはりこちらに相当の力がない限り、相手の意思をして従わせることはできない、このように考えております。
以上であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/577
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578・東祥三
○東(祥)委員 岡本さんにさらに聞きますが、そうした場合、この法案それ自体は国連の決議が付されております。国連決議がありながら、国連決議が出ない。そうすると、国連決議が出ない限りにおいては、船舶検査活動の準備あるいはまた船舶検査活動に近いことをやろうと思ったとしても、これは全くできないわけですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/578
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579・岡本弘
○岡本弘君 できないあるいはできにくいという問題とやらねばならぬという問題は、別問題であります。ですから、そういった場合にも、やるべきことはやらねばいかぬというふうに考えております。
以上であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/579
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580・東祥三
○東(祥)委員 岡本さんに聞きますが、やらなければならないことをやる、しかしそれは、法律がない以上やってはいけないことであり、超法規的行動になってしまうんじゃないでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/580
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581・岡本弘
○岡本弘君 超法規的な問題ということになると、非常に解釈がややこしく、広くなってまいりますが、こういったときにこそ、やはり歯どめ、枠組み、かせというのが必要だと思います。
したがいまして、そういった国連の決議を得られない場合、我が国は一体どういったことができるのか。事態は何なのか、また地理的な距離とか経済的な効果だとか弊害だとか、そういったものを総合的に考えてみて、やむを得ぬことの法制化を今ぜひお願いをしたい。そこのあたりをはっきりとしていただきたいというふうに思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/581
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582・東祥三
○東(祥)委員 須藤先生にお伺いします。
先ほど須藤先生がおっしゃられているとおり、船舶検査活動を実効性あらしめるために、あるいはまた船舶検査活動というのは、いわゆる国連憲章四十一条に基づく経済制裁の実効性を担保するために行われる活動でございますが、基本的に、国連の決議が出ない場合、あそこの条項はある意味で死文化したものになってしまいます。
したがって、例えば、今議論されているとおり、朝鮮半島で有事が起こる、日本から北朝鮮にたくさんの送金が行われている、送金というのは、銀行間のみならず船でも運んでいくわけですから、少なくとも二国間、日本と米国、あるいはまたそこに韓国を抱き込みまして三国間における協定をつくって、それぞれの旗国に属する船がこれをちゃんと検査しよう、こういう取り決めが行われるならば十分できるはずだと思うのです。
しかし、国連決議を付していくことによって、この決議が出ない以上、そういう活動もできなくなるということになるのではないのかと私は思うのですが、この点について、須藤先生、いかがお考えですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/582
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583・須藤眞志
○須藤眞志君 先ほどもちょっと申し上げたと思うのですけれども、私は、日本領海内における船舶検査というのは、国連の決議を必要としないというふうにすべきだと考えております。
ただ、領海外で何か問題があって検査をするというような場合には、これは公海ですから一般的国際法が適用されるわけであります。ですから、それは、自国だけで検査をすると、極端なこと、日本はアフリカの沖であろうとアメリカの沖であろうと何でもできるのかということになってしまいます。
ですから、私は、今回の場合、日本の領海内の場合には、国連の決議はこの限りではないというような条項を入れたらいいんじゃないかというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/583
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584・東祥三
○東(祥)委員 いや、まだ私の質問に答えてくれていないのですが、問題は、周辺事態が起こったときに船舶検査活動ができるという条項を国連決議を付した上で入れているわけです。
あくまでも、領海でやる限りにおいては、それは問題ない。問題は、公海上で行うに当たっては、国連決議が出ない限りそれはできないわけです。しかし、周辺事態というのは起こっているわけですね。日本の平和と安全に重大な影響を及ぼす、そういう事態が起こっているわけです。そのときに、日本として、国民の生命と財産にかかわる問題になるかもしれません。それは、国際法上あるいは海洋法上、それにのっとった形で、国連決議が出ない範囲においても、二国間あるいはまた三国間における取り決めをつくることによってできる体制を整えておく必要があるのではないのか。その上で国連の決議ができれば、その国連の決議に基づいた形で行うことができる。
したがって、国連の決議を入れない方が、国民の生命と財産を守る上において機能させる方式をつくっておく方が、安全保障政策として一歩進んでいくことになるのではないのか。これが私の質問です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/584
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585・須藤眞志
○須藤眞志君 周辺事態という、要するに地理的にはっきりしない地域における船舶検査というような問題に対して、国連決議というようなことが果たして可能かどうか。先ほどお話ししましたとおり、国連決議というのは、安全保障理事会の承認を経るということが多分重要になろうかというふうに思います。そうしますと、この周辺事態を極東というふうに考えても、例えば中国船舶であるということになれば、これは絶対に国連決議などはあり得ないということになろうかと思います。
もう一つ、先ほど宮腰議員の御質問にもあったと思うのですけれども、国連決議にかわって、要するに多数の国家がこれを承認するというような場合、そういう決議を附帯しておいたらどうかということで、私は、多数の内容が、二国がいいか、三国以上なら多数というのか、問題ですけれども、例えば総会で決めておくとか、あるいは国連決議というのは安全保障理事会の決議を経なくてもいいというような場合もある。
また、もう一つ考えられることは、例えば日本海というのは、日本とロシアあるいは韓国とか周辺、そういう地域が隣接している地域であるわけですから、そういう国々の間で相互検査条約というようなものを結ぶ。不審な船があった場合には、お互いに、それを自分の自主権として検査することができるということを決めておくのも一つの方法だというふうに思います。
ただ、先ほどから再三申し上げているとおり、国連決議がなければ一切できないということになりますと、これは事実上不可能に等しいというふうにも思います。そういう点では、議員の御質問のとおり、もし、にもかかわらず日本がこれをやるとすると、明らかにこれは法律違反ということになって、これは超法規的も何もなくて、法治国家として大問題だということになろうというふうに思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/585
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586・玉沢徳一郎
○玉沢座長代理 これにて東君の質疑は終了いたしました。
次に、木島日出夫君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/586
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587・木島日出夫
○木島委員 日本共産党の木島日出夫でございます。
岡田先生にお聞きをいたしますが、私も北陸信越ブロック選出の衆議院議員として、先生の、環日本海交流のそういう経験から、この法案が平和的な交流の妨げになるという指摘、大変重要な観点からの指摘だと受けとめました。新潟も富山も石川県も、県を挙げて、また地域住民挙げて、経済界挙げて環日本海交流の努力が続いているわけであります。
詳しくお聞きしたいところではありますが、私の持ち時間、十分だけですので、先生の御専門の点について具体的にお聞きしたいと思うのです。
先ほど先生は、本法案の憲法違反、違憲立法性について述べられましたが、その中で、本法の規律対象の範囲が無限定だ、歯どめがないという点を三点挙げられましたが、その三点について、具体的な中身についても、ちょっと御説明を詳しくいただけませんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/587
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588・岡田正則
○岡田正則君 レジュメでいきますと2—2のところに当たるわけですが、三点といいますのは、一つは、後方地域支援ということの、何をやるのかということが、憲法九条との関係で、具体的な、武力の行使に当たらない、武力による威嚇に当たらないというようなその基準が、やはり立法権が行政にルールを定めろと委任するわけですから、そのアッパーリミットといいますか、そういうものがなければ本来は内閣総理大臣は受けられない、立法権からこんなルールを定めろと言っても受けられないことだ、そういう後方地域支援の内容。
それから二番目が、関係行政機関が政令によってすべて動員されるようなこともあり得るわけですけれども、例えば国立病院とか大学病院とかいった業務について、どんどん動員されて、支障がないようにするための歯どめというものもやはり本来なければいけない筋の問題であろう。本務をがたがたにしておいて、周辺事態だからというようなこと、これはあり得ないことだと思うのですね。
それから三番目に、法案の九条一項の地方自治の侵害ということです。自治体には地方自治法で定められた本来の仕事があるわけですけれども、この中に軍事的な仕事がどんどん入ってくる、あるいは港湾を使わせろ、飛行場を使わせろ、病院を使わせろというようなことで、患者さんが追い出される、民間の利用がシャットアウトされるというようなことがあるかもしれない。それから、自治体自身が、こういう協力をすることによって必然的に軍事紛争に巻き込まれかねないわけですね。
ですから、本来は、そういうほかの法律でやらなければいけない仕事を侵害しない範囲というものを、あくまでも協力ですから、そういうものを本法で、こういう周辺事態措置法というような法律でその歯どめはきちんと示しておかなければいけない、これが法律のつくり方の大原則だというぐあいに思われる。
そういうことでよろしいでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/588
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589・木島日出夫
○木島委員 ありがとうございます。
須藤先生にお伺いをしたいと思うのです。
先生の意見陳述の結論部分で、こうおっしゃられました。危機のときに、ユーゴの事態でのNATOのように、すぐに爆撃するのではなく、外交努力が最も重要だ、外交努力で有事にしないようにすることが重要だと。私、大変大事な観点だとお聞きをいたしました。
そういう立場でこの周辺事態法を見るとどうなのかという点でありますが、御案内のように、周辺事態法というのは、日本が侵略された場合ではない、日本に侵略の危機が迫っている場合ではない、日本の有事の場合ではない周辺の事態において、日本の平和と安全に重大な影響があるということはありますけれども、日本有事ではない周辺事態においてアメリカが軍事行動をしたときに、日本の自衛隊がこれに後方支援という名前のバックアップをする、民間がアメリカの軍事行動に協力する、そういう枠組みをつくるというものですね。
そうしますと、まさに先生のおっしゃられた、危機のときに、すぐ爆撃するのじゃなくて、
外交努力が必要だ。周辺事態法というのは、まさに外交努力が必要な時期の法案だと思うのですが、先ほどの結論部分の立場からいきますと、どうもこの周辺事態法というのは矛盾するのじゃないかなとお聞きをしたのですが、いかがなものでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/589
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590・須藤眞志
○須藤眞志君 私の外交史を勉強していく上での、危機のときに、危機をいかにして回避して戦争にしないか。これは、戦争になってしまったケースというのが戦前何回もあったわけですね。現在でも、危機が起こる、やがてそれが、外交的努力によって回避された場合と戦争になった場合とがございます。原則としては、戦争というのは絶対に避けるべきだということは私の信念でございます。
しかしながら、周辺事態という先ほどの言葉の定義の問題なんですが、私は、この事態というのは、まさに状況であって、この状況は、日本に危険が迫るような状況だというふうに解釈をしないと、これは大変なことになってしまうのではないかという気がいたします。つまり、ではアフリカの地帯ではどうだろうかとか、あるいは南アメリカの方ではどうだろうかと、いろいろなことになってしまうので。
ですから、英文で読んでみれば、明らかにこれは地域という言葉が入っているのであって、ある周辺といっても、日本からそう遠く離れた地域を意味しているとは考えられません。
もしユーゴの場合を例にとると、先ほど東議員ですか、ドイツのフィッシャー外相が努力をした、でもミロシェビッチは言うことを聞かなかったと。そのほか、実はキプロスの大統領も行って説得をしたというときに、NATOは、これはもう爆撃しか残っていないんだというふうにして爆撃を行いました。でも、それが果たして好結果を出しているのかどうかというと、これはまた大きな問題になっております。確かに多くの難民も出ていますし、それから、果たしてミロシェビッチはこれで後退していくのかどうか、現在のところではまだはっきりはわかりません。
ですから、私は、アメリカやNATOと日本は基本的に物の考え方が違っていても、これは少しもおかしくないというふうに思っております。
周辺事態という言葉がちょっと問題ではありますけれども、日本にもう明確な危険が迫っているんだということがはっきりしない限り、日本はこの事態措置法というものを発動するということはできないと思います。しかしながら、もし日本に危険が迫るということになれば、これは仕方がない、そのときには、ちゅうちょなく措置法が発動されるだろうというふうに思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/590
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591・木島日出夫
○木島委員 私どもは、実は、修正でこの法案に賛成するわけにはいかないという立場です。
今、先生大変重要なことをおっしゃられたと思うのですが、昨日、民主党さんの方から、周辺事態の定義に関する修正の意見が出たのですね。それがまさに今指摘されたところで、「我が国周辺の地域における我が国の平和及び安全に重要な影響を与える事態で、」さらに「我が国に対する武力攻撃に発展する怖れのある事態」、その後半をつけ加えろという案が出てきておりまして、大変重要な指摘だと思うのです。
最後に、その問題で、岡田先生の立場は、この法律がつくられることによって、逆にそういう有事につながっていくんじゃないかという考えだと思うのですが、それでよろしいでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/591
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592・岡田正則
○岡田正則君 はい。やはり周辺の人々がこういう法律をどのように評価するかということを抜きにして国会の議論もできないことだと思うのですけれども、ますます周辺の人たちに、余計な法律をつくるな、日本はやはり自分のことしか考えていない、そういった印象を持たれること、これはいろいろな意味で、日本の今後の外交にとっても支障になっていくのではないか。もっと日本は、やはり政治的な見識においても大国だと言われるような、そういういろいろな施策や法律を考えていただきたいというぐあいに思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/592
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593・木島日出夫
○木島委員 終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/593
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594・玉沢徳一郎
○玉沢座長代理 これにて木島君の質疑は終了いたしました。
次に、北沢清功君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/594
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595・北沢清功
○北沢委員 社会民主党の北沢でございます。
きょうは、大変貴重な御意見をありがとうございます。
私は、時間がないものですから、吉村さんにお尋ねをいたしたいと思います。
きょう、この席で、それぞれの御意見をお聞きする中で——日本人というのは、非常に肝の短い人種でございます。私は、この前の戦争をちょうど高校時代で体験していますから、いわゆる宣伝だとかそういうものは一概に余り信じない方で、やはり実証的な形で、着実に物事を確かめて科学的に見るということが非常に大事であります。そういう面では、この地方は環日本海という形で、それぞれこの日本海を中心に親交を深めながら発展を図ろうというその気持ちは、十二分に私は理解できるわけです。
今回のガイドラインを含めて、基本的な問題は法案に出てきております。しかし、細部については、いろいろな面でまだ確かめておりませんし、また、これからの日米の制服組等における協議にゆだねられている点がございますから、やはりこの際、日本が基本的な姿勢というものを明確にする必要があるのではないか。この前あのような戦争がされたけれども、再びまた戦前に戻りつつあるのではないかという印象を実は私は持っております。
日本は、御心配の北朝鮮等については、今、本当の意味で、外交はないし、当然人間的な交流もなければ、意思疎通がありません。やはり、そのことは、平和的な手段で日本の安全を守るという意味で、これからの私どもの努力目標でなければならないわけです。
この前、今と同じような騒ぎが、マスコミやテレビで、今にもミサイルが飛んでくるような騒ぎがされたことを皆さん御承知だと思います。そのとき、カーター大統領夫妻が北朝鮮に行ったら、その晩にぴたっとおさまってしまったのですね。これは何だろう。
そのことを考えてみるときに、やはり私どもは、この地域でも原子力発電所が十五基あり、なおかつ「もんじゅ」等がさらに再開をされようとしておるわけでありますから、そういう面で、緊張を深めていくことは——北朝鮮ばかりではなくて、近隣の中国や東南アジアでも、日本のこの法案の取り組みについては、緊張感を持って反対しているわけです。ですから、アメリカばかりではなくて、我々が被害を与えた東南アジア、中国、朝鮮半島を含めて、もっと視野を広げていかなければいけないわけです。
当然、私どもは、緊張が高じていくことは望まないわけでありますが、たまたまミサイルの問題が出ておりますから、もし不幸にしてミサイルが飛んできた場合におけるこの地域の原子力発電所、特に「もんじゅ」等の問題が最近出てきておりますから、そういうものの実態をどういうふうに理解されているか。
また、私は長野県ですから、その被害の範囲というものも心配するわけであります。私どもとしては、そのことは何としても無関心でおられないし、冷静に現実的に解決する手段というものは、やはり平和的手段以外にはない、そのことだけを私は信念として持っておりますが、専門家としての吉村さんに、その点についてお尋ねをいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/595
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596・吉村清
○吉村清君 前段の北沢先生のおっしゃったことは、全く同感でございます。
そこで、原子力発電所は果たしてミサイルに耐えられるのかという問題です。今の原子力発電所はミサイルに耐えるような施設ではない、私は、これはもうはっきり申し上げられると思います。
今の原子力発電所は、確かに原子炉の側壁は分厚いのです。しかし、だんだん上へ行くと薄くなってきます。天井の方は薄っぺらなものです。これは、すべてそうです。「もんじゅ」も例外ではありません。特に大飯一、二号機は、アイスコンデンサー方式ですから、非常に薄いのです。
そういう点からいうと、ミサイルが撃ち込まれるというような事態は絶対避けてもらわなければ、まさにミサイルが撃ち込まれて放射能が環境へ放出されれば、日本は沈没の事態に至る。周辺事態法も、いろいろなことを考えても、もう一切だめだということをぜひひとつ先生方は考えていただきたい。やはり平和的手段で日本海の平和を実現する、こういう立場でぜひやっていただきたい。
この辺は若干違うかもわかりませんが、不幸にして原子力発電所が破壊をされる、そういう事態が起これば、もう日本は沈没してしまうんだという認識だけはぜひ持っていただきたいということを強調したいのです。
それから、実は、かつて私どもは、白木で風船を飛ばしました。それは偏西風に乗って、岐阜県、長野県、遠いところは埼玉県まで飛んでおります。そういう点を考えると、その風向きによっては遠く関東地方まで放射能は行きますよということの証明だと思いますので、ぜひそのことも御認識をいただきたい、こう思います。
以上です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/596
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597・北沢清功
○北沢委員 もう一つだけ、私、意見として申し上げたいのです。
日本の今日までの繁栄というのは、先ほど、日米安全保障条約のおかげだというように言われたけれども、私、各政治家、保守党の皆さんともよく話しているのですが、これはやはり平和憲法のおかげです。
世界情勢も大きく変わっているのです。もうヨーロッパは国境を超えて、かつての戦争当事者を超えてEUができています。だから、大国であるアメリカが世界的に優勢を誇るというよりは、非常に多様な国際情勢の変化を見逃すことができないわけです。そういう観点で外交なりこれからの軍事政策というものを見ていかないと大変なことになる。アメリカのいわゆる太刀持ちといいますか、露払いといいますか、そういうことだけで日本の安全保障が守られるということはあり得ないのではないか。東西ヨーロッパの対立以後における世界的な大きな変化、その基本は平和である、そういうことだと思います。
また、日本はもっと平和的に貢献してもいいわけですね。この前アジアの人たちにどういう被害を与えたかということの反省なしに今また敵視をするということで物事が済むならば、日本の信頼はますますなくなってくる、そのことは決して日本にとって幸福ではない、私はそのことだけは申し上げたいと思います。
いろいろ申し上げたいことはございますが、もう一つ、後方支援というものは、軍事力に介入しなければ安全だというふうに思われているけれども、この前の大戦のときに一番——もう戦争そのものが変わってきているのです。それは、やはり補給路を断つということが戦争に勝つ大きな道なのです。だから、ドンチャンパラパラだけではなくて、補給路を断つということが主要であれば、後方支援というものは決して安全な道ではない、私はそう思うのです。日本の国民にとっても安全ではないということを、いかにも安全らしい言葉でつづられておるところにこの問題の本質があるということが言えると私は思います。
以上です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/597
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598・玉沢徳一郎
○玉沢座長代理 これにて北沢君の質疑は終了いたしました。
以上で各党を代表しての質疑は終了いたします。
これより質疑を御希望される委員は、団長において指名いたしますので、挙手をお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/598
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599・近藤昭一
○近藤委員 民主党の近藤昭一でございます。
きょうは、意見陳述人の皆さん、本当に御苦労さまでございます。
ここにお見えの皆さん、すべての皆さんが世界の平和と国民の安全を願っていると思うのですが、それをどう守っていくか、担保していくかという方法論だと思うのです。そういう中で、例えば一から十あれば、やはり一から九までは予防外交だ、いかに戦争を起こさないかということが大事だと思います。そして、最後の最後、自衛をすること、自衛はいたし方がないんだと思うのです。
ところで、その一から九までの予防外交、これはやはり対話だと思うのです。対話であり、また理解とお互いの信頼感、対話をしながら理解して、そしてお互いに信頼感を持っていかなくちゃいけないということだと思います。
そういう中で、例えば今回の日米ガイドライン、一つには中国、あるいは一つには北朝鮮がどういうふうに思うか。交渉というのは、我々がどう思うかということとともに、相手がどう思うかという観点が大変に重要だと思うのです。
中国から見た場合に、周辺事態というものを非常にあいまいにしつつ日本とアメリカがガイドラインをつくっていく、特に台湾とアメリカは軍事協定を結んでいる、そういうアメリカとこういうガイドラインをつくっていくこと、それに対して中国が理解をすることができるのか、どう思っているかということ。
それと、もう一つは北朝鮮。朝鮮半島は南北に分断されているわけであります。これは、やはり東西冷戦構造の結果として生まれた。そして、その東西冷戦構造の一方の雄であったアメリカとこういう日米ガイドラインを日本がつくっていくこと、それに対して北朝鮮はどう思っているか、理解を示すことができるのか。
このことを相手がどう思っているかということについて、島田先生と岡田先生に御意見をいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/599
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600・島田洋一
○島田洋一君 まず、中国、台湾絡みの問題ですけれども、中国の場合、もし仮に台湾が独立宣言するようなことがあれば、それは武力でもって阻止するというような、かなり脅迫めいた発言も繰り返しておるわけですが、今の中国の体制と台湾の体制を比べれば、明らかに台湾の体制の方が自由であり、民主的であるわけです。それを、かなり自由化され、民主化されてきたとはいえ、中国が強引に武力で強襲するというようなことは、我々は黙って見ているわけにはいかない。
私は、現在、中国においても、トップの人たちは武力で台湾をどうこうしようというようなばかなことは考えていないと思う。そういうまともな人たちがきちんと中国の政治を運営していってくれるためにも、妙な強硬派が台頭しないように、変に軍事的に台湾に手を出したら大変なことになりますよという、やはりそういう体制は抑止力としてつくっておく必要があるだろうというふうに考えるわけです。
一番望ましいのは、中国がさらに民主化され、自由化され、中国と台湾、ほとんど体制に差がなくなって自然に一緒になるというのが望ましいと思うのですが、そこに至るまでに、中国内の妙な強硬派が、やっても大丈夫だと誤解して台頭しないように、妙な軍事的な手を出すと大変なことになりますよと、やはりそういう体制というのはつくっておく必要がある。
だから、今回、台湾地域は外すんだというようなことを、日本側としてははっきり言うべきではないかと私は考えます。殊さら台湾が含まれておるんだと言う必要もありませんけれども。
北朝鮮に関しては、対話の中で信頼感を醸成していく必要があるんじゃないかというお話もありましたが、対話していく中でどんどん信頼がなくなってきたというのが実態であります。
北朝鮮側が、今回のガイドライン法案というのを脅威ととらえておる、脅威というかまずいなととらえておることは、それは連日の向こうの朝鮮中央放送なり平壌放送、労働新聞を見ていてもわかることであって、この法案を通すというのは宣戦布告に等しいんだというようなことも、なぜか知りませんが、最近は余り言いませんけれども、ちょっと前まで声高に言っておりました。
向こうがそれだけ気にしておるということは、やはりそれだけ抑止力としてきくということでもありますから、先ほども言ったように、何らリスクを負わずに抑止力だけ働かそうというような虫のいい話はこの世にはないんだ、ある程度やはり覚悟はせざるを得ない、基本的にそういうふうに考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/600
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601・岡田正則
○岡田正則君 今日、日本にはアジアからたくさんの留学生が来ていますけれども、中国からの留学生と台湾からの留学生が仲よく話をするというような光景もしばしば目にするわけですし、日本語で韓国や中国の留学生同士が対話するというような光景も珍しくないわけです。こういうことを見ますと、やはり東アジアなり東南アジアも含めて、日本がそういうネットワークの場をきちんとつくるような、そういうイニシアチブを発揮できるような、そういう基礎というのはあると思うのですね。
ですから、何か武力でもって黙らせないと、抑止しないと何をやり出すかわからないということではなくて、仮に北朝鮮からも留学生をたくさん受け入れるような施策を持ってもいいと思うのです。仮にそれができなくても、その周りの諸国が友好関係を築いていくこと、これがやはり何よりも重要な抑止力であって、そして、何かアメリカの後ろについて後方支援をやるということでは、やはり東アジア、東南アジアの国々から信頼を得られないし、本当の意味での抑止力というか、紛争を未然に防止するような施策にはならないと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/601
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602・辻一彦
○辻(一)委員 私、民主党の、地元の辻一彦でございます。
地元に関心のある問題で、福井県の県民が関心を持っていらっしゃる問題で、意見も申し上げて、一、二点お尋ねしたいと思います。
それは、先ほども桑原さん初めいろいろ御質問がありましたが、一つは、世界一原子力発電所が集中している、ここの安全問題、それからもう一つは、領海をしばしば侵犯する国籍不明船に対する対応等が福井県の県民としては非常に関心が深いと思いますが、前段だけ申し上げます。
御承知のとおりですが、私もチェルノブイリやスリーマイルというところをずっと見て回りましたが、福井県ほど、十五基、千二百万キロワットというように原子力発電が集中しているのは世界のどこにもない。そういう意味で、この安全と万が一に備えた防災体制の確立、この二点は非常に大事であると思います。
そこで、チェルノブイリのような事故は、日本は今いろいろな努力を随分しておりますし、だからなかなか考えられないのですが、アメリカのスリーマイルで最新鋭の百万の発電所が、営業して数年であれだけの事故を起こして、もうしばらく水が来ないと底が抜けるというところまでいきました。
したがって、機械の故障と人間のミスが重なった場合には、やはり最新鋭の発電所といえども、原子力発電では事故はあり得るという前提に立たなくてはならない。そういう意味で、今、国会において、私たちも原子力防災の特別措置法の制定等を目指してそれなりの努力をしております。
ところで、あってはならないわけでありますが、もしもミサイル攻撃を受けた場合に、先ほどもお話がありましたが、これに対応する道はなかなか容易ではない。恐らく、普通ならばあり得ないと思われるチェルノブイリ級の事故が、それを契機に起こる可能性が考えられると思います。そうなりますと、私は、抑止力を否定もしませんし、それも必要と思いますが、より起こさないための対話というか働きかけをどうしていくかということが非常に大事である、こう思います。
そこで、北の方から、金沢にお住まいの岡田先生、福井にお住まいの小林先生、それから敦賀にお住まいの吉村先生、京都の須藤先生に、全部の方にお尋ねする時間がないと思いますから、一点だけお尋ねしたい。
それは、対話をより強化して効果あらしめるには、どういうようにやったらいいか、考えたらいいかということで、御意見がありましたら、四名の方から、北から一言ずつお尋ねをいたしたい。時間の点で、それで終わりたいと思います。
以上です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/602
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603・吉村清
○吉村清君 辻先生、福井県で、原発の問題で大変熱心にやっておられて、私どもも敬意を表しておるわけです。
現実の問題として、原発と戦争の問題、これはやはり世界的に大きい問題だ、私はこう思うのです。
特に、安全の問題で考えた場合に、それではどの機関がということになると、やはり一つは国連です。国連で、戦争になっても原子力機関に対する攻撃はお互いにしないという取り決め、これがまずできるのかどうか。それから、もう一つは国際原子力機関、IAEA。これは北朝鮮も入っていますし、原子力を持った国、また持たない国を含めて、ほとんどの国が国際原子力機関には入っているわけですから、こういうところで今私の言ったようなことを普遍的に話をして合意をしていく、それが国連の決議として上がっていくというような体制をぜひ私はとってほしい。これがまだなされていないことが、やはり原発の近くで生活をしておる我々としては一番不安に思うところなんです。
ですから、今回のこのガイドライン、新ガイドラインの問題で、いたずらに不信と不安を増長させていくような体制だけはとってもらいたくない、私は、このことを特にお願いしたいと思うのです。
以上です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/603
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604・玉沢徳一郎
○玉沢座長代理 大変時間が限られておりますので、御発言は簡潔にお願い申し上げたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/604
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605・小林巌
○小林巌君 これは非常に難しい問題で、短い時間になかなかお話しすることはできませんけれども、やはり、対話といいますか、特定の政党あるいは議員というのではなくて、各界各層から、幅広い階層から成る訪朝団といいますか、私、そういうことは必要だと思います。
それから、ミサイルのことですが、ミサイルも、距離千メートル前後の、正確度を維持するためには千メートル程度ぐらいしかないという対戦車ミサイルですね、小さいミサイルでは。しかし、これが一発あれば、吉村さん先ほど御説明ありましたように、原発の施設は穴があいてしまうわけですよね。ですから、そのことの認識が周辺の諸国にもあると思います。
大きなのは大陸間弾道弾から、小さいのは対戦車ミサイルという、そういう小さいものまであるわけですから、そういったことも含めていろいろと検討をしていかなければいけませんけれども、これを防御する方法、特に大型のロケット、これを防御する方法はないに等しい。着弾地点では、ロケットは上空から降ってきますから、これはなかなか難しい。一発でいかれてしまうという感じがします。
北朝鮮にしても、自分の国で大量のプルトニウムあるいは核燃料が流れ出せば、それは、海流の関係で春は北へ流れますけれども、逆に、秋になりますと北から朝鮮半島の方へ流れる、還流してくるわけで、したがって、みずからの運命を、みずから壊滅的な状況をつくってしまうということになります。
これは、考え方によっては真剣に考えなきゃいかぬ点もありますけれども、反面、これは非常に戯画的、劇画的と言ってもいいかと思いますが、その点で認識を新たにする必要はあると思います。しかし、そういう事態はほとんどないと私は思います。
以上です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/605
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606・岡田正則
○岡田正則君 一言だけ。
私が初めて韓国に行って、向こうの学者、法律家と研究会をやったときに、日本と韓国の原子力政策、それから原発訴訟などを議論したわけですが、日本がこれほどまでに原子力にこだわるのは、やはり原発によって核兵器を準備しているからだろうというのが向こうの学者さんの開口一番の質問でありまして、普通の学者さんなんですが、かなり認識の違いを新たにしました。
そういう意味では、吉村先生おっしゃったように、それぞれ原子力開発のあり方について相互に理解し合う、あるいは点検し合うような、そして、こういうものに対する攻撃を国際条約で違法化するような、そういう取り組みというのが今後非常に重要かと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/606
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607・須藤眞志
○須藤眞志君 先ほどお話ししましたとおり、私は、そのような事態がないことを祈って、また、あらゆる外交努力をすべきだと思います。
でも、もしそういう事態が生じたならば、私は、こういうふうに決議しておくべきだと思います。
もし日本の原発をねらってミサイル攻撃をし、またそれに成功した場合には、日本を核攻撃したのと同じだと日本側はみなすというふうに決めておくべきだと思います。原子爆弾でなくとも、原発をねらって通常のミサイルを撃ち込んだ場合には、これは核攻撃を日本に向けてしたのと同じだというふうにみなし、当然のことながらこれは反撃を受けるということを抑止力として決めておくべきだ。
そういうことがないことを祈っておりますけれども、いよいよ最終的な手段としては、そういう抑止力を有するということが必要であろうかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/607
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608・辻一彦
○辻(一)委員 ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/608
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609・玉沢徳一郎
○玉沢座長代理 これにて委員からの質疑は終了いたしました。
この際、一言ごあいさつ申し上げます。
意見陳述者の方々におかれましては、長時間にわたりまして熱心に貴重な御意見をお述べいただき、まことにありがとうございました。
本日拝聴させていただいた御意見は、三議案の審査に資するところ極めて大なるものがあると存じます。ここに厚く御礼を申し上げます。
また、この会議開催のため格段の御協力をいただきました関係各位の皆様に対しまして、心より感謝申し上げ、御礼を申し上げます。
それでは、これにて散会いたします。
午後三時十四分散会
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派遣委員の北海道における意見聴取に関する記録
一、期日
平成十一年四月十四日(水)
二、場所
函館国際ホテル
三、意見を聴取した問題
日本国の自衛隊とアメリカ合衆国軍隊との間における後方支援、物品又は役務の相互の提供に関する日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の協定を改正する協定の締結について承認を求めるの件(第百四十二回国会、内閣提出)、周辺事態に際して我が国の平和及び安全を確保するための措置に関する法律案(第百四十二回国会、内閣提出)及び自衛隊法の一部を改正する法律案(第百四十二回国会、内閣提出)について
四、出席者
(1) 派遣委員
座長 畑 英次郎君
赤城 徳彦君 大野 功統君
鉢呂 吉雄君 山中あき子君
達増 拓也君 児玉 健次君
伊藤 茂君
(2) 政府側出席者
防衛庁長官官房長 守屋 武昌君
外務大臣官房審議官 今井 正君
(3) 意見陳述者
苫小牧駒澤大学教授 室本 弘道君
酪農学園大学教授 太田 一男君
元北海道西武代表取締役常務 前多 信雄君
日本大学薬学部専任講師 小野健太郎君
函館平和委員会事務局長 佐藤 かの君
北海道教育大学函館校非常勤講師 米倉 正夫君
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午後一時開議発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/609
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610・畑英次郎
○畑座長 これより会議を開きます。
私は、衆議院日米防衛協力のための指針に関する特別委員会派遣委員団団長の畑英次郎でございます。
私がこの会議の座長を務めさせていただきますので、よろしくお願いを申し上げます。
当委員会におきましては、第百四十二回国会に内閣から提出されました、日本国の自衛隊とアメリカ合衆国軍隊との間における後方支援、物品又は役務の相互の提供に関する日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の協定を改正する協定の締結について承認を求めるの件、周辺事態に際して我が国の平和及び安全を確保するための措置に関する法律案及び自衛隊法の一部を改正する法律案の審査を行っているところでございます。
本日の会議を開催するに当たりまして、派遣委員団を代表いたしまして一言ごあいさつを申し上げます。
当委員会といたしましては、三議案審査に当たり、国民各界各層の皆様方から御意見を承るため、御当地におきましてこのような会議を開催させていただいているところでございます。
御意見をお述べいただく皆様には、大変御多用中にもかかわりませず御出席を賜りまして、まことにありがとうございます。ぜひ忌憚のない御意見をお述べいただければとお願いを申し上げる次第でございます。
それでは、まず、この会議の運営につきまして御説明を申し上げます。
会議の議事は、すべて衆議院における委員会議事規則及び手続に準拠して行い、議事の整理、秩序の保持等は、座長であります私が行うことといたします。発言される方は、その都度座長の許可を得て発言していただきますようお願いを申し上げます。
次に、議事の順序について申し上げます。
最初に、意見陳述者の皆様方から御意見をお一方十分程度お述べいただきました後、委員より質疑を行うことになっておりますので、どうぞよろしくお願いを申し上げます。
それでは、本日御出席の方々を御紹介させていただきます。
まず、派遣委員を御紹介いたします。
自由民主党の赤城徳彦君、大野功統君、民主党の鉢呂吉雄君、公明党・改革クラブの山中あき子君、自由党の達増拓也君、日本共産党の児玉健次君、社会民主党・市民連合の伊藤茂君、以上でございます。
次に、各界を代表して本日御意見をお述べいただく方々を御紹介させていただきます。
苫小牧駒澤大学教授室本弘道君、酪農学園大学教授太田一男君、元北海道西武代表取締役常務前多信雄君、日本大学薬学部専任講師小野健太郎君、函館平和委員会事務局長佐藤かの君、北海道教育大学函館校非常勤講師米倉正夫君、以上の方々でございます。
それでは、室本弘道君から御意見をお述べいただきたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/610
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611・室本弘道
○室本弘道君 室本でございます。
私は、昨年新設をされました苫小牧駒澤大学におきまして昨年から教鞭をとらせていただいておりますが、日米安保を有効に機能させる大切な意義を持つ本法案の審議にお招きを賜り、意見を述べさせていただく機会を得ましたことを、大変ありがたく存じております。
二年前まで、自衛隊の現役として、直接自衛隊の運営あるいは調査研究、さらには私は米国の防衛駐在官というようなこともさせていただきまして、日米安保に直接かかわったというようなこともありましたので、今回御指名を受けたものと勝手に解釈をいたしておるわけでございます。
さて、大学教授をいたしておりますと、折に触れ、若い学生諸君と安全保障について話す機会も多いわけですが、戦後の民主主義の成果と申しましょうか、安保、防衛に関しまして、日本人独特のデリケートな感性に触れ、はっとすることがよくあります。このような場にて、このようなお話をいたしますことをお許しいただきたいと思います。
昨年の夏、突然、朝鮮民主主義人民共和国、以下北朝鮮と言わせていただきますが、そこから太平洋上に日本列島を横切ってテポドンと思われるミサイルが発射をされました。日ごろ安保に無関心な学生たちも、そのときは大いに関心を示したわけでございます。例えばの話ですけれども、今度はあのミサイルが仮に函館に命中をした、そういうことはないと思いますが、仮の話として聞いてください。運悪く多くの負傷者を生じ、中でも当たりどころの悪かった例えばおばあちゃんが亡くなられた、日本全国にその御家族の嘆き悲しむ様子が報道されたといたします。これを見て、在日米軍はもちろん、我が国国会でも、個別的自衛権に基づき、自衛隊に対しいわゆる策源をたたく出動を命じるかもしれませんね。
ところが、この事態に至っても、我が多くのデリケートな気持ちを持つ国民の中には、北朝鮮側にこのような函館のおばあちゃんの悲劇が繰り返されるということに対して、耐えられない気持ちになる人も決して少なくないと思うわけであります。このあたりが日本の特殊性ということかもしれません。
では、どうしたらよかったのでありましょうか。北朝鮮が最初の一発を自重してくれましたら、だれも死ななくてよかったわけであります。日本は、おどして、攻撃したら怖がって経済援助を幾らでもどんどんしてくれると相手が思えば、日本への攻撃というのはとめることはできないでしょう。日本を攻撃したら相当の反撃が予想されるとすれば、攻撃を自重するかもしれません。そして、不必要な誤解に基づく犠牲というものは避けられたのかもしれません。これは架空の話をいたしておるわけです。
目には目をではなくて、相手を初めからその気にさせない抑止の戦略、それが戦後の日本人がたどり着いた不戦の危機管理法であるのではないかと私は思っております。
話が長くなってしまいまして大変恐縮ですが、つまるところ、戦後の日本人は、極めて現実的にこの抑止の戦略を選択し、戦火を避けて、話し合いの場を持って、つまりは外交努力によって紛争を解決する道を今日まで選んだのだと思います。
国家の数だけ、いや民族の数だけ正義の存在する今日の世界であります。このような中にあって、ただお祈りをすれば相手がわかってくれるとは限りません。話せばわかるということでもないようです。昨今の紛争を見ても、紛争開始直前まで実に多くの国々が国連の内外に話し合いをしていますが、残念ながら、冷戦が終わってますます紛争が多発する世界が続いております。
このような紛争多発世紀末において、我が国みずからが紛争の対象国にならないようにするためには、適切な抑止力を機能させなければなりません。高度情報化の時代にその抑止力が機能するためには、実体的で、具体的かつ現実的でなければならず、危機管理の実態が正規の手続を経て内外に伝わるとともに、かつ国内におきましては、国民の多くが納得し、対処に当たる機関、部隊等は、それに基づき日ごろから実際に訓練を積み重ねておくことが大切だと思われます。
戦後我が国は、経済的相互依存性であるとか、自由、平等、人権等の価値観を共有する米国と日米安全保障条約体制を選択し、みずからは抑止力の一部のみを保有し、全体としてこの地域における戦略バランス、すなわち抑止力を保持し、日本が戦場になることなく冷戦期を乗り越えてまいりました。
冷戦後の日米安保の役割として、日本そのものが戦争に巻き込まれないという抑止の大きな役割を維持するとともに、多くのアジア太平洋諸国から、アジア太平洋の平和と安全を維持するものとしての機能も果たしているようであります。日本人がみずから選択したこの日米安保条約を、冷戦後の環境に適応させた新ガイドラインによって充実強化することは、理にかなったものと思います。
今回、周辺事態法案関連の御審議は、新ガイドラインに決められたもののうち、周辺有事事態が我が国に重大な影響をもたらす事態での、米軍への後方支援地域における支援協力の要領などについてであり、審議を尽くして、国民の納得の上にいっときも早く制定され、かつ、関係部署においては、具体的な対処の要領、すなわちROEを定めておくことは、抑止力の観点からも極めて意味のあることだと存じます。
今回の周辺有事が、安保条約第六条事態であり、我が国への直接の脅威を扱う第五条事態に比して、国民の関心が相対的に低くなりがちなのは否めません。特に地方自治体の協力については、なかなかその実態が五条事態に比してつかみにくいという内容になりがちだと思われます。
六条事態のすぐ裏には五条事態が待ち受けている場合も考えられ、今後は、速やかに五条事態の有事立法についても引き続き御審議を賜りたく存じます。五条事態での地方自治体の協力については、住民の安全を無視した環境問題や福祉問題もありませんから、より明確な御審議になるものと期待をいたしております。そして、日本へ直接の脅威をもたらす両事態対処への法的完整を急ぎ、我が国の抑止の戦略を完璧たらしめるようにお願い申し上げます。
以上です。ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/611
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612・畑英次郎
○畑座長 ありがとうございました。
次に、太田一男君にお願いを申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/612
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613・太田一男
○太田一男君 太田でございます。
私は、一人の政治学者といたしまして、この機会に、日本の政治の任に当たっておられます方々と日本の国民の皆様に、今の時代がどういう時代なのかという分析の視座を提供し、その視座に立って考えますときに、これまで考えてまいりました自衛隊という存在それ自体、軍隊の存在それ自体が必要でなくなってきている時代が来ているんだ、そして、日米安保条約のようなこういう軍事体制に依拠しなくても平和を維持することができる、そういう考えに立ちまして、本案の不必要性を申し上げたいと思います。
人々は、今の時代が変革の時代であり、新しい物の見方が必要であると言い、何がどう変わってきているのかを明らかにする努力をしております。そして、それを一般には冷戦体制の崩壊、冷戦後の時代と言い、国際化の時代というふうなことで表現しております。
冷戦体制の時代と言われた時代は、核兵器、科学兵器の発達と軍産複合体の拡大を、資本主義体制と全体主義的官僚統制経済体制、これを当時の人々は社会主義体制というふうに言っておったわけでございますけれども、この両体制の対立構造としてとらえ、冷たい対立構造と考えていたのでありますが、その実態は、戦争がないから安んじて軍拡経済を展開するという軍産複合体の支配期であったと考えます。
その間、おくれて近代の資本制商品生産社会関係に入ろうとした地域の人々が、民族独立運動を展開し、地域での武力紛争を伴いながら、軍と軍産複合体の働きの場を提供してきたと思いますが、ベトナム戦争の終結後は、そうした場も世界で少なくなってまいりまして、ソ連を中心とするいわゆる社会主義体制の側は、全体主義的な官僚支配体制のもたらした負の現実が、その創造的再生産能力を失って、ついに軍事力によらないで崩壊する、そういうことをもたらしたと考えます。
それで、第二次世界大戦からベトナム戦争の終結期にかけて生じてきた、そこに新しい文明現象があったと思います。
それは、高度に発達した科学技術を組織して、すべてのものを工業制商品として生産するという新しい生産の仕方でありまして、私は、これを高度科学技術工業制商品生産様式社会関係と言っております。それを英語で表現しますと、ハイリー・アドバンスト・サイエンティフィック・テクノロジカル・インダストリアル・コモディティー・プロダクションシステムと言いまして、頭をとりましてHASTIC生産社会関係と言っておりますが、この社会関係の一般化と世界化が、ソ連を初めとする社会主義体制を内側から崩壊させていった。そして、世界の政治、経済、文化、文明の諸関係をグローバル化した。これは地球化したということでありますけれども、グローバル化していったわけであります。
この関係の一般化と世界化を一般に人々は現代化と言っておりますが、これは明治維新のような現代化ではなくて、グローバル化を内容とする現代化であるわけであります。
この新しいHASTIC生産社会関係の世界化と一般化は、人々の生活、経済、文化、社会、あらゆる分野での関係をグローバル化し、一体化してきていますので、人々がこれまで経験してきました近代の主権国家による軍事独占や占領、侵略といった政治現象を無意味なものに変えてきておりまして、小さな国は別でありますけれども、主権国家間の戦争という形での問題の解決、その有意性を失わせてきている時代に入ってきているわけであります。ですから、そこではいわゆる地域紛争とか武力行使はございますけれども、侵略戦争、そして占領という現象は社会から生じない関係ができ上がってきているわけであります。
そこで、現代では、先進HASTIC生産社会関係に入った国々の間では、侵略戦争や占領という現象が生じなくなり、領土を武力で自衛するという課題が消えてきているわけであります。抑止力という考え方も出ておりますけれども、それは古い考え方に立って言うときのものでありまして、政治を国家の行為としてとらえるときには、少なくともこの武力自衛の課題はなくなってきているわけであります。日本の自衛隊を初めとして、多くの先進HASTIC生産社会関係に入った国の軍隊は、その役割が消えていく中で、その存在理由を探しあぐねているというのが今の世界の実情ではないでしょうか。
今の時代は、軍隊を用いて他国を侵略したり占領したりすることが意味を失っている時代であり、日本国憲法が示しているように、警察力を超える実力装置を国家が組織する必要のない、私はこれを権力非武装国家と言っておりますけれども、そういう新しいタイプの国家社会構造が必要となってきている時代に入ってきていると思うのであります。それは、日本国憲法がまさにつくり上げようとしている社会体制であります。
そして、人々に地球球体の有限性の認識が広がってきておりまして、浪費を前提とする商品経済とか市場経済の変革の必要性が次第に認識され、浪費を慎む文明の確立が人類共通の課題となってきている時代に入りつつあります。そこでは軍備は使われることのない商品であり、浪費経済体制の最たるものであると思います。そういう意味で、いかにして平和のうちにこの組織を解体するのかという課題が、実は人類の共通課題になってきているのではないかと思うわけであります。
もちろん、今日でも地域での紛争は生じていますし、軍隊が存在しておるところ、武器が入手され得るところにおいては、地域紛争や武力紛争は発生しております。宗教的対立や民族的対立を発端として発生する地域紛争や地域での武力紛争が、今日、侵略や占領がなく、先進資本主義HASTIC生産社会関係が戦争に関与することがなくなったとき、軍を保有し続ける正当化理由として用いられているのだと思います。しかし、これらの紛争は、軍が関与したり武器の供給体制がつくられない限り、現地の警察力を強化することだけで対応することができる性質のものであり、日本はそういう関係に積極的に世界をリードしていくべき立場にあると思うわけであります。
HASTIC生産社会化は、グローバル化を意味しますし、企業の世界企業化、すなわち多国籍企業化を意味しますので、人々の関係も日常的な関係がグローバル化し、人々が世界の中でさまざまな絡み合いの中で生きている社会関係へと転化しておって、どこの国の立場だけを一人の人が主張するという関係にはなくなってきております。
そして、HASTIC生産社会関係の世界化は、おくれた地域の人々の日常生活の中から、彼らがこれまで生きる手段として依存しておりましたさまざまな仕事を不必要なものとさせ、消してきております。そして、多くの人々から生存の基盤を取り上げていくようになり、貧困者層がふえており、そうした地域でどちらかというと紛争が発生する。この紛争を発生させないような努力をすることが、現代の平和を維持していく上で大変大事なことでありまして、軍事力で対応することではないと思うわけであります。
地域紛争が必ず武力行使を伴うものになるというものではありませんけれども、紛争発生地域の政治指導者がそこにある軍部を動かして何事かに取り組もうとするとき、往々にして内戦化という現象を起こすわけであります。私が久しく研究対象としてまいりましたユーゴスラビアのケースは、その代表的な例でありまして、国民一人一人が民族的に対立していたり宗教的に対立しているのでもないのですけれども、政治指導者がそれらの動きを利用することによって、今日のあの不幸な関係をもたらしたわけであります。そして結局、軍は国民を守ることをしませんでしたし、今回展開されておりますNATOの軍事行動も、この問題を解決することには至らないと思います。
そして、各種の世界企業やそれに関係して働いている人々や勢力は、そうしたところで問題が起こりますと、関係する諸国に軍の出動を要請するようになるでありましょう。アメリカは世界のすべての地域に関係しているということでありまして、結局、軍事同盟関係にある日本も、それを後方から支援することを求められるということになるのだと思います。
今回提出されております法案も、そのような事態に際し、日本の軍隊をどのように関係させるのかがテーマとなっているものでして、これまで外国の軍事侵略や占領、攻撃に対して、日本国土の武力自衛を課題としてその存在を正当化してきた日本自衛隊の存在理由と課題を、今度は日本国土以外の地域にも拡大するということに結果するのだと考えます。
日本国憲法は、武力自衛を含めて武力の行使を否定し、戦争を放棄したものであります。今、人類の文明的転換点に立って、日本国憲法の示す権力非武装社会に入る時期に、日本みずからがそれを崩す行動に出るということは、まさに愚かな行動だと思います。
このたびのこの法案は、起こりもしない日本への軍事侵略に備えるとしてつくられた自衛隊と在日米軍の役割を、極東有事から日本周辺有事に拡大し、後方支援という考えを用いることによって、日常的に日本とアメリカ軍とが一体となって、日本の社会を管理することを可能にする体制を整備する、そして、それに自治体や民間の諸機関も動員していこうとするものにつながると考えるわけであります。
これを軍の専門家集団がお考えになるというのは、私はその仕事に忠実であるという意味において理解できることでありますし、そういうことがされているからといって、そういう集団の営みは否定できないと思いますけれども、今私が申し上げたようなことを考える機関を日本の国が持っていないということが不幸だと思います。そして、政治家の皆さんが、そういう軍の職業集団が仮説として立てた事態に対して、客観的に分析されることなく、時代の変わり目だと片一方で言いながら古い主権国家の論理だけで対応されるということについては、問題があろうと思います。
私は、一番恐れますことは、だれも軍国主義社会をつくろうなどと考えて軍の強化をするわけではありませんけれども、軍が力を強めれば強めるだけ市民の権利は制限され、そして本当に軍をコントロールしなければならないときには、もうその力は国民の間にはなくなってしまう。シビリアンコントロールということをよく言われますけれども、国会がシビリアンコントロールをきかせるだけの力を国民が持っている間はいいわけですけれども、現に地域紛争が発生している地域の軍というのは、国会をも管理することのできる強大な力を押さえてしまう。そのときになって、そういうことを準備することは誤りであったと言ったのでは遅いわけであります。そういう意味では、日本国憲法が初めから、警察力を超える実力装置を持たない国家をつくる、そういうことをいかに実現するかという努力を私たちはしなければいけないと思うわけであります。
私は、この警察力のレベルをどの程度にするかということは時代の関係の中で規定されていくことでありまして、軍を、形を変えた形で、自衛隊のような形で国民を納得させようとするこの努力はやめなければならない、そのように考えておるわけでございます。
時間をとりましたが、一応これで終わらせていただきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/613
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614・畑英次郎
○畑座長 ありがとうございました。
次に、前多信雄君にお願いを申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/614
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615・前多信雄
○前多信雄君 前多でございます。よろしくお願いいたします。
私は、門外漢の一人という感覚でこのお仕事をお引き受けしたわけですが、市民の一人としてふだん余り接しないような、こういう大事な防衛関係のガイドラインというような課題に取り組むこと自体がなかなか至難な課題であったわけですけれども、市民の一人として、義務的なものという受けとめ方はちょっと言い過ぎかもしれませんけれども、私なりにいろいろ勉強させていただきました。今さらながら、大変難しい問題だなということを認識している一人でございます。一市民の声としてお聞きいただければ幸いに思います。
基本的に、新しいガイドラインというのは前のガイドラインを引き継ぐものであって、根本的に賛成の意見を持っておるものでございます。
新しいものの変化というのは、周辺事態というものの認識、そういうものが大きなポイントになっているように理解しておりますが、もともとこのガイドラインというのは、日本の平和憲法の中での日本の平和と安全を果たすために、不備な状態というものをアメリカとの防衛協力によって、保っていこうという発想であろうかと思います。当時は米ソの冷戦時代でございましたので、今とは状況が変わっております。最近の発表によりますと、周辺事態というふうに防衛の表現、範囲が変わってきたようなことを見ましても、当然のことだというふうに受けとめております。
日本の周辺事態、周辺有事とかというようなことについての解釈は、ラインがあるようで、枠があるようでないような、非常に複雑な表現であろうというふうに文面からすると受け取れることははっきりしておりますけれども、しかし、これ以上に具体的に制定することはできないんだろうなというふうに私も思っております。
そもそも、日本国の憲法は与えられた憲法であって、軍隊を持たない、自衛権だけの軍隊ということですから、当然、何かのときにお助けをいただかなければならぬというような発想はやむを得ざることであろうかと思いますが、それがさらに米ソ関係の変化によって、その内容が緩やかになるといいますか、日本周辺有事というような表現に変わってきているというようなことを見ましても、十分読み取ることができると思います。
これからこの新しいガイドラインというものによって考えられることは、やはり以前と同じ日本周辺の有事でしかありませんけれども、最近のアメリカの動きを見ましても、米朝の接近とかいうような行動を見ましても、そういう有事のことよりも以前に、次善の策として、そういう紛争が起きないようにするという努力を目の当たりに感ずることができまして、平和維持ということができれば、ガイドラインも何の働きをすることもなくて済むわけでございますから、市民の一人としては、これからは紛争が起きてからどうするかということではなくて、紛争が起きないようにすることの努力の方がむしろ大事ではないかというふうな受けとめ方をしております。
それには、私ども学生時代に習いましたけれども、やはり経済が政治に先行する。衣食足りて礼節を知る、そういう昔の言葉もありますけれども、やはり経済が安定し、国民が豊かに生活できるような体制がそれぞれの国の一番基本的な考え方であることは共通の課題だと思います。
そういう意味において、周辺有事、周辺はどこからどこまでがどうなんだというような複雑な問題を考えるよりは、むしろどうやったら平和が世界にもたらされるか、維持できるかという視点にもっと力を入れてほしいものだというふうに考えざるを得ないわけです。ガイドラインそのものについては何の異論もございませんけれども、基本的には、そういう姿勢を世界的に網羅することができれば一番理想的なものになるのじゃないかというふうに思っております。
二十世紀は、残念ながら戦争の世紀と言われるくらいに、長年、お互い各地にいろいろな形で争い、大きな犠牲を払ってきた経験を、二十一世紀には、平和な世紀という観点で何とか変えていけるのじゃないか。それには、まず意識改革から始まらなければならない、むしろそのような考え方を私は強く感じております。
新ガイドラインというのは至極もっともなもので、せいぜいこんなところかなというふうに理解しておりますし、難しい問題もいろいろありますけれども、これはそういう性格のものだとしか考えられない。周辺、どこからどこまでだというようなことを言っているやさきに、米朝ではそういう会談をしている。いい傾向だな、これも決してガイドラインに反するものではないというふうに受けとめておるわけです。
申し上げたいことがいろいろあるのですが、私は、経済学を専攻してきた者として、やはり世界が豊かに、安心して生活できる国々ができ上がるならば、戦争は絶対起きないし、何のトラブルを起こすものでもないという確信を持っておりますので、むしろこれからは、お互いの人権を尊重し合う、そういう意識改革を積極的に進めることによって、戦争、トラブル以前の問題にもっと世界的な努力と理解を深めていくべきではないかということを痛切に感じておるものでございます。
ガイドラインの中身については、諸先生方の御意見、全くそのとおりでございますので、そういうことよりも、むしろ前向きに行くべきであるということをあえてこの際に主張させていただきたいというふうに思っております。
以上でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/615
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616・畑英次郎
○畑座長 ありがとうございました。
次に、小野健太郎君にお願いを申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/616
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617・小野健太郎
○小野健太郎君 日本大学で専任講師をやっております小野健太郎と申します。国民、道民の立場から、若干の思いというものを今回述べさせていただきたいと思っております。
まず初めに、長期的な意味で、日本の安全と平和を確保するために本法案が作成されて、そして審議されているということに対して、私は国民の一人として、まず賛成であるという立場をとり、また、国会のこれからの十分な議論の上で法律案が法律として成立し、そして施行されることを強く望みたいと思っております。
ただし、もっとも国民の一人としては、私は、本ガイドラインが予想するような事態が発生しないで、そして一番いい方法としては、平和的な手段ですべての紛争が解決することをまずもって望んでおる国民であるということもまた付言したいと思っております。
ただ、現実問題としては、ガイドラインが予想されるような事態がやむを得ず発生する可能性はゼロとは言えません。そして、もし具体的にこのようなガイドラインが予想される事態が発生した場合に、何ら具体的な法律上の手だても用意されておらず、その場が発生した時点でもって、場当たり的な無責任な対応の仕方でもって私たち国民の生活が、あらゆる方向で無為無策のような形で対処されるというよりも、私は、最低レベルではあったとしても、立法や行政措置が議論され、その議論された中である程度の形が形づくられるということこそが、民主的な法治国家である私たち日本の最小限の責務であり、また、議会活動の最小限の責務であるというふうに考えております。
そういう意味で、本法案が十分に議論され、余り十分な議論がない形での成立というのではなくて、本質的な議論がこれから諸先生方の間でなされることを望む次第でございます。
さて、ガイドライン法案に関しての個々的な内容に関してでございますが、私自身も細かい内容に関してはよくわかりませんので、二、三の点だけ、私の個人的な思いというものをここでコメントさせていただければ幸いでございます。
まず一番最初に、ガイドライン関係法案の基本計画についての国会承認の問題に関してでございます。
法案に関しては、政府・与党側は、自衛隊が出動する場合の可否に限って国会承認を得ることとなっているような経過であるというふうに私は存じております。私の個人的な意見ですが、確かにそのような形での解決方法もあるかもしれませんが、私といたしましては、本法案が予定している基本計画全体に対して国会承認を必要とする、そういうような立場を、私は個人的な立場としては持っております。
これは、間接的ではあれ、私たち国民の権利義務に重大な影響を及ぼすような法案である以上は、国民の代表機関である国会の承認が必要である、しかも、その全体計画において国会承認が必要だというふうに私は理解しております。国民の代表機関である国会承認が不必要ということ自体、ナンセンスな議論のような気がいたします。
もっとも、かかるガイドライン法案というものは、事態の緊急性の確保がまずもって重要視されておりますので、その事態の緊急性を勘案するならば、内閣が基本計画を決定した日から二十日以内に国会に付議するというような形で、事後承認の形で国会承認というものを認める余地もあるような気もいたしております。これは私の個人的な見解でございます。
もう一つ、これはこのガイドライン法案に関しての若干の私の感想でございますが、やはり昨今よく新聞紙上で話題となっております周辺事態という概念が、私自身もまだもってよくわかっておりません。
事態という点に重要性があるということは私自身も認識しているわけでございますけれども、このガイドライン関係法案の中には、米軍の捜索とか救援活動あるいは船舶の検査活動というものが含まれておりまして、これらの活動というのは、自衛隊独自の自主的な活動であるというふうになっているわけです。つまり、米軍の活動を前提としないような活動がこの法案の中に盛り込まれている以上、その活動の地理的な概念というのはおのずから確定される必要があるのではないか。私は、そのような点が問題となるのではないかと少々疑問がございます。
さて、もう一つこの周辺事態という概念に関して、これも若干の私の疑問点としてつけ加えておきます。
先日の新聞報道によりますと、三月十八日に高村外務大臣が、この周辺事態の幾つかのパターンとしまして、ある国の行動が国連安保理によって平和への脅威、侵略行為と決定され、安保理決議に基づく経済制裁の対象となる場合を周辺事態のパターンの一つとして挙げられておりますけれども、本来、このガイドライン関係法案というのは、日米安保を土台として形づくられている法案でございますから、この周辺事態の概念に、国連安保理による経済制裁活動を事態の中に入れるということ、むしろ無理やりこの際押し込めてしまっているというようなこの解決の仕方自体が、私にはちょっと理解しがたいというような気がいたします。
このような国連安保理の経済制裁に基づく活動は、またぜひ国会で正面から議論していただければ幸いでございます。また、後の立法作業というものが必要なのではないか、私はこのように考えておる次第でございます。
さて、個々具体的な問題はこのぐらいにさせていただきまして、あと最後に、全体としての感想を若干一、二分だけ述べさせていただきたいというふうに思います。
少しガイドライン法案からずれるかもしれませんけれども、私は、この法案を見て一つ感想がございました。それは、戦争、いわゆる非常事態という形の対処方法としての法案の一つであろうというふうに思われますが、阪神・淡路の大震災のときの経験のように、ある程度法案という形が、危機管理という形がぽこぽこと点在はしておるのでございますけれども、法律ができたからといって、具体的にそれがうまく運用されているかどうか、これはまた別問題であろうというふうに思います。
今回、このガイドライン法案がガイドライン法として作成されたからといって、現実の非常事態、緊急事態に対する具体的な運用方法というものを生かすシステムがさらに用意されていなければ、絵にかいたもちをつくったにすぎないような気がいたします。
どうか諸先生方、形而上学上の議論だけにとどまらず、せっかくガイドライン法案を作成するのでございますから、その実効性をどのようにして担保していくか。具体的に申し上げるまでもないと思いますけれども、周辺事態法が成立したとしても、後方支援の活動で自衛隊の車両が走っていたとしたら、必ず赤信号で停止しなければいけないという道路交通法のような規定が国内法では覆いかぶさってくるわけです。しかし、阪神・淡路の大震災のようなときに赤信号をいつまでも守っていてそれでいいのか。
そういうような個々具体的な危機に際しまして、どのような具体的な運用をするかという観点から、私は国民の一人として、こういうような事態に対する総合的な、これは純有事立法という形では議論させていただきたくはないと思います。もう少し広い形での危機管理、災害対策を含めた総合基本法のような、すべての官庁をまたにかけるような形での問題の処理の仕方の基本法制定をあわせて御検討願えれば幸いでございます。
以上でございます。ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/617
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618・畑英次郎
○畑座長 ありがとうございました。
次に、佐藤かのさんにお願いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/618
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619・佐藤かの
○佐藤かの君 函館で市民として平和運動をしている佐藤かのです。
この法案が出されたとき、新聞や国会中継から目が離せなくなりました。それは、法案の先取りとして、一九九七年十月、函館に寄港したアメリカ第七艦隊旗艦ブルーリッジによって、既に私たちはその危険性を体験しています。今、多数の市民がふるさとの町を守るために非核平和条例の実現に取り組んでいて、この法案が、アメリカの起こす戦争に日本が自動的に参戦する体制づくりであることを実感しています。
周辺事態の地域についても、政府は、あらかじめ地理的に特定はできない、その事態の規模、態様を総合的に勘案して判断するなどと説明しています。これでは、政府はアメリカの求めるままにどんな判断でも勝手にできるのではないでしょうか。
私は子供のころ、太平洋戦争を体験しました。日本の侵略戦争は、アジアの人二千万人、日本人三百十万人の命を奪いました。愛する者を戦争で殺された肉親たちの悲しみ、被爆者の痛み、生き残っても生涯苦しみ続けている人々を見るにつけ、戦争ほど悪いものはない、二度と加害者にも被害者にもなりたくないと思い続けてきました。
だから、中学生のとき学んだ教科書「あたらしい憲法のはなし」が心の支えとなっています。きょう皆さんのところに資料としてお届けしています。この平和憲法を守り通すことが私の願いとなりました。この本は文部省発行ですけれども、国会議事堂が正義の殿堂として光り輝いていて、この十九ページの絵は戦争放棄の絵なのですが、いつも私はこの絵のことを思い出します。どうぞ議員の皆さんも、おうちに帰って読んでみてください。
このたびの法案は、憲法前文にある、政府の行為によって再び戦争の惨禍が起こることのないようにというところが、政府の行為によって再び戦争の惨禍を起こすに変えられてしまうほど恐ろしいものです。政府が国民の声に耳を傾けず、この法案を通せば、アジアと日本の関係は悪化します。既に法案に対して危険を感じたアジアの国々からは、非難の声が多数上がっています。
きょう、皆さん、函館においでになって感じられたと思いますが、函館は開港以来百四十年にわたる諸外国との交流があって、その歴史は市民の誇りでもあります。
資料二を用意していますけれども、函館市は、地球市民として世界の平和に貢献し、国際観光都市としての発展を目指しています。二十年の実績を持つ市民の国際交流運動は目覚ましいものがあり、諸外国との友情のきずなは網の目のように広がっています。私も台湾の方をホームステイしましたけれども、今でも函館のお母さんと言って手紙が来ます。戦後、平和憲法でうたう国際平和主義は生活にすっかり根づいていて、日常化していますから、市民は平和憲法のもとでこの幸せがあることを感じています。アメリカの戦争に協力して他国を敵視するなど、とてもできません。友達に銃口を向けるということなどはできません。
函館港は、民間港でありながら米艦の入港が多く、市民の心配の種となっていました。十五年前の八月六日、運動が実り、函館市は核兵器廃絶平和都市宣言をしました。入港軍艦に対しては、今までしていた歓迎もしなくなり、英文の宣言文を渡すだけになりました。毎年、この平和宣言を記念して、函館市は集会や無料の平和電車を走らせていますが、戦後五十年に市民運動が高まったときは、市議会も全会一致で、「日本国憲法の恒久平和の原則を守り、戦争を二度と繰り返さないことを求める決議」をしています。市民運動は市議会を動かし、世論の高まりの中でアメリカの軍艦の入港も少なくなってきました。
函館は津軽海峡に面し、軍事的にも重要なところです。今まで、海峡封鎖作戦などでアメリカ軍艦が漁網を切断したり、空母エンタープライズの艦載機が連絡船を標的に演習をしたり、米軍機が予告もなく空港に突然進入し、演習をしたために旅客機の出発がおくれたこともありました。特に北海道は日米共同演習が激しく行われ、矢臼別での住民無視の演習は目に余るものがあります。その矢臼別へ向けて、函館からもマル火印の火薬を積んだトラックが並んで国道を走ります。この法案が成立すれば、このようなことが日常的に激化し、市民は協力を強いられることになります。既に米軍は、函館の施設、港湾、病院など調査済みです。
一九九七年八月二十九日付の北海道新聞に、日本周辺有事の際、米軍が十数カ所の港や空港を要求というふうな記事が出ていまして、その中に函館も挙げられていました。市民はそれを見て大変驚き、不安に駆られていたやさき、その数日後の九月五日に小樽に米空母インディペンデンスが入り、次いで十月三日に、函館にブルーリッジが寄港しました。これは新ガイドラインの先取りだと感じた市民は、かつてない規模で反対に立ち上がりました。
米兵の上陸地点では、子供の親たちが、沖縄少女暴行事件のようなことが起きるのではないかと心配し、停泊地点の漁民は刺し網を引き揚げて、漁業ができなくなりました。市職員も交通規制や警備で動員されるなど、市民生活は支障を来しました。広範な市民が繰り広げたさまざまな反対運動で、ロバート艦隊司令官は、函館市民は我々を余り歓迎していないとがっかりしていたと十月四日の毎日新聞は報じ、市民が平和を必死に守ろうとした声が、司令官を通してアメリカ国民に届いてほしいと私は願いました。
ブルーリッジの寄港で、私たちはこの法案の危険性を先取りして体験しました。法案が通ったら危険が身近に迫ることを肌身に感じて、これでは観光都市函館にとって未来はない、とても平和は守れないと、地方自治体として平和憲法や非核三原則を守り、核兵器廃絶平和都市宣言を一層発展させるために非核平和条例をつくろうという運動が始まりました。安保条約に賛成する人も反対する人も、思想、信条、立場の違いを超えて結び合った力は大きなものでした。昨年十二月四日、発足総会を開き、暮れも正月もない運動が展開しました。ふるさとを自分たちの手で守る運動は、とても希望に満ちていました。
平和条例文には、入港するすべての外国艦船から非核証明の提示を求め、提示のないものは入港させない、市の施設は平和に反する目的のためには使用させないことなどが盛り込まれました。法学専門家の援助も受け、勉強や話し合いを続け、この条例には法的障害はないという確信を持って誕生した非核平和条例は、まさに函館市民の財産です。
署名も短期間で二万五千四十五筆集められ、十四議員の共同提案の非核・平和行政の推進に関する条例案とともに市議会に提出されました。結果は継続審議、廃案となりましたが、さらに選挙後の議会へ向け運動が続けられています。地方分権時代を迎え、住民の暮らしを守る自治体としての運動、平和都市宣言、平和行政、平和条例などが、軍事力にかわって平和を守るための平和力であることに確信を持つことができました。
議員の皆さん、国民の悲痛な声に耳を傾けてください。この法案に対して多くの地方自治体が意見書を上げ、著名文化人、憲法学者、運輸関係者などからも、日本国民の命と運命をアメリカにゆだね、再び戦争への道を歩むことは許されないと反対の声が上がっています。
ブルーリッジが来たとき、黙ってはおれないと反対運動に参加した高校生が、英語で米兵たちに、今度来るときは軍艦でなく観光船で来てと呼びかけていました。どこの国とも仲よくできるよう憲法第九条を世界に広めることこそが、日本の未来を明るく平和にする唯一の道です。
この法案は、部分的に修正などしてもその危険性が消えるものではなく、廃案しかありません。憲法に明記されている平和原則を堅持していただきたいと心から訴えて、発言を終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/619
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620・畑英次郎
○畑座長 ありがとうございました。
次に、米倉正夫君にお願いを申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/620
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621・米倉正夫
○米倉正夫君 米倉正夫でございます。
私は、一九二五年、大正十四年生まれでございます。二十歳のときに、北海道で軍隊におりましたけれども、そのときまではある意味では戦争の子でございました。戦争についての認識あるいは批判というものは、全然そのときにはしておりませんでした。
軍隊から帰ってまいりまして、この戦争は一体何だったかということをつくづく思いながら、日本国憲法が施行され、また教育基本法が施行され、そして教育に携わるようになりましたから、私はますます、日本国憲法、つまり平和憲法の大事さというものをしみじみと感ずるようになりまして、それが自分の思想として、生涯これを守るといいますか、これを貫いていかなければならないなというふうに思うようになったわけであります。
その後、時代はいろいろ変わりましたし、たくさんのいろいろな出来事がございましたけれども、そのたびに私はこの憲法、教育基本法の精神に立ち戻って、これを心に刻んで、そして日本を平和の道に進ませるといいますか、あるいは本当の意味で憲法、教育基本法の原点から教育を考えるということをしてまいったつもりでございます。
さて、きょうは、日米新ガイドラインと関連法案についての意見を申し述べるようにというふうに求められましたけれども、まず、私が立っている平和憲法の立場を申し上げて、その上でガイドラインについて申し上げたいというふうに思います。
これは私が申すまでもなく、皆さん十分に御存じだと思いますけれども、憲法中の憲法と言われる憲法の前文のところには、二つの決意が述べられております。
一つの決意は、「政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起ることのないやうに」という、短い言葉でありますけれども、十五年の戦争を背景にした大変意味深い決意が述べられております。もう一つの決意は、「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しよう」とした、そういう決意であります。強力な軍隊と同盟を結んでという意味ではなくて、平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼をして、我々の生存と安全を確保しようというふうに決意をしたという、この二つの決意は非常に重要な決意で、今日でもその立場に立つということが十分に必要だというふうに思います。
そして、その上で、「全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する。」という言葉がございます。皆さん御存じのように、有名な平和的生存権でございます。この平和的生存権の叙述の主語は、「日本国民が」ではなくて「全世界の国民が」というふうになっておりまして、これが日本国憲法が国際的に通用する重要な部分であろうというふうに思います。
どの国の国民もひとしく恐怖と欠乏から免れて、平和のうちに生存する権利があるのだ、そのことを常に私どもが心にとめて、そして戦争の問題についても平和の問題についても考えていくということが大事で、その上で、自分の国のことだけではなくて、ほかの国のことをも十分考慮しなければならない。それは、憲法のコンテクストから見ますと、平和的な国際交流とか国際貢献、それによって世界に貢献をする。大きく言いますと、それが私どもの憲法の基本でございまして、事あるごとにこのことに思いをいたしながら、今日の情勢が一体どうなっているかということを考えてみたいと思うわけであります。
これは大変崇高な理想であって、理想論にすぎないと言う人々がいますけれども、しかし、この理想は、二十一世紀に向けての大事な理想であり、しかもある意味ではハイレベルの理想といいますか、本当の現実ではないかというふうに思います。
これを達成するために第九条がございまして、国際紛争を解決する手段としては、戦争、武力による威嚇、武力の行使、これによらない。ただよらないというのではなくて、永久にこれを放棄するというふうに九条には書いておりまして、これは永久性、永遠性を持っておるのだということで、一時の国際情勢によって左右されるものではないということでございますね。この目的達成のために、陸海空軍その他の戦力はこれを保持しないという第九条でございます。
この前文と第九条を組み合わせてよく考えますと、二十世紀は戦争の世紀でございましたけれども、日本自身は二十世紀の後半は実際に戦争をしないで済みましたし、二十一世紀に向けて、この理想こそが世界の平和をつくっていくということではないかというふうに私は思うわけでございます。
そして、今、日本の教育云々というふうに言われていますけれども、日本の教育も、本当にこの憲法と、これらを実現するのが教育基本法、人間を教育する基本法でありますけれども、憲法と教育基本法にしっかりとのっとったならば、日本の教育のしっかりとした方向も、具体的な対処も定まるはずなのでございますけれども、憲法空洞化と申しまして、多くの人がこれを忘れているといいますか、あるいは横に置いている、そしてその場限りの教育に目を移しているというところに大変問題があろうかというふうに思います。
さて、以上のことをまず基本に踏まえまして、ガイドラインについても考えてみたいと思いますけれども、時間がありませんので、ガイドラインの細かいことについては触れることができません。
戦後、米ソ対立の冷戦構造の中で、日米安保条約のもとで、日本の自衛隊がこういう憲法があるにもかかわらずどんどん増強されて、今日では世界第何位という軍隊になっておりますし、五十年後の今日でも在日米軍と基地が依然として存続し続けているということは事実でございます。しかし、憲法は一遍も改定されたことはありませんし、空洞化と言われながらも、国民の中に、この平和憲法の精神といいますか願いといいますか、こういうものがしっかりと根づいているということを私はしみじみ思っておるわけであります。
冷戦が崩壊をしまして、平和に対する希望というものがだんだん見えかけてきたその時期に、一九九五年でありますけれども、アメリカの極東アジア戦略でこういうことが言われました。日本の在日米軍がペルシャ湾に至るアジア太平洋の最前線の防衛を担当しているということが言われまして、沖縄の大田知事は、もし在日米軍がこういう性格に変わったのであったら、これは沖縄の基地は永遠に返ってこないということで、彼はそのことをきっかけにしながら、基地の闘いに踏み切ったというふうに言われています。こういう状況の中で日米共同宣言が出され、そして今日の新ガイドライン、周辺事態法案というものが国会審議に至っている、少し大ざっぱな言い方でございますけれども、そういう経過があるということを私どもは肝に銘ずる必要がございます。
したがって、周辺事態、この周辺とは何かということで盛んに議論しておりますけれども、大きなそういう方向の中で新しくこういうものが出てきたということを、しっかりと私どもは見きわめる必要があるのではなかろうかというふうに思います。
そして、この周辺の事態に対処するために、今までなかったような、自衛隊も、それから時には日本の自治体、民間までも協力を要請される、そういう内容になっているということでございます。これは、今まで述べた憲法に対する重大な挑戦でありますし、それから、日本と日本国民を戦争に導くガイドラインとして、国民は重大な危機感といいますか、そういうものを感じているわけでございます。
それだけではなくて、いわゆる日本の周辺の国々に、世界の超軍事大国であるアメリカに対して日本の自衛隊までも協力するということになりますと、これは大変な脅威を与えるものでありまして、特に北朝鮮や中国、そういう国々が、そういう疑義といいますか、あるいは脅威といいますか、そういうものを大変危機感を感じて述べているという状況にございます。
これら国の内外、特に近隣のアジア諸国の疑義あるいは反対の動向を見ますときに、このガイドラインと諸法案というものが日本とアジアを本当に平和に導くものであるのか、あるいは戦争に導く緊張と危機を生み出す、そういうものであるかという岐路に今立っているというふうに思われるわけでございます。私は、内容については申しませんので、これは本当にそういうことを考えて慎重に対処をしていただきたいと思います。
時間が来ましたので、私は最後にお願いをいたしたいわけでありますけれども、この新ガイドラインと法案が、戦争に導くような新ガイドライン法案ではなくて、もし紛争や危機が周辺にありましたときには、日本はアメリカに従って行動するのではなくて、日本独自の、憲法の精神に従いまして、先ほどもどなたか申されましたように、徹底した平和外交でその危機を乗り切る、抑える、そういう努力をまず日本政府は自主的にすべきであるということが一点。
それからさらに、これは戦争に向けてのガイドラインではなくて、日本の平和憲法に基づいた、平和をつくり出す、これは私の用語ですけれども新平和ガイドラインとその関連法案、これだけのエネルギーを戦争に費やすのだったら、それだけのエネルギーを、新しく平和のガイドラインと平和をつくり出す諸法案、そういうものに注ぐ。これはもう与党、野党、皆さん一緒になって、こういうことをつくり出すような方向に従っていけたら大変ありがたいと私は思います。国民も非常に喜ぶし、それから周辺の国々も、それによって日本に対して尊敬といいますか、あるいは賛同の意を表するだろうというふうに思います。ぜひそういうことをするようにお願いをいたしまして、陳述といたします。
終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/621
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622・畑英次郎
○畑座長 ありがとうございました。
以上で意見陳述者からの御意見の開陳は終わりました。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/622
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623・畑英次郎
○畑座長 これより委員からの質疑を行わせていただきます。
まず、各党を代表しての質疑を行います。
質疑の申し出がありますので、順次これを許します。大野功統君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/623
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624・大野功統
○大野(功)委員 自由民主党の大野功統でございます。
きょうは、公述人の先生方には大変お忙しい中、御出席くださいまして、本当にありがとうございました。御意見には十分耳を傾けさせていただきました。御意見の中には、絶対平和主義の立場からの御意見もございました。この点はちょっとおかせていただきまして、私は、ガイドライン法案の現実的、具体的側面について、御質問を申し上げたいと思います。
まず、私ども、この公聴会に函館へ参りまして一番お伺いしたいと思いますのは、地方の協力の問題でございます。地方の協力の問題、このガイドライン法案の大変重要なポイントの一つでございますので、ぜひ室本先生、それから前多先生から御意見を伺いたいと思います。
この問題、二つに分けて考えたいと思いますが、地方公共団体の協力の問題を考えるに当たりまして、まず、何が国の仕事で、何が地方の仕事なんだということを考えさせていただきたいと思うのです。
例えば、佐藤さんから非核宣言の問題、非核証明条例の問題が出ました。非核の問題、これは私は国の仕事だと思っております。国として事前協議があって取り組んでいく問題である。地方公共団体の仕事というのは、例えば知事さんであれば空港の管理をする、あるいは市長さんであれば港湾の施設管理をやっていく、そういう法令のもとにいかに協力していくかということが問題ではなかろうか、これが第一点でございます。
実態が大変つかみにくいということを室本先生からも御指摘がございましたが、私もそういう感じはいたします。九条の一条だけでございますし、具体的にどういう問題があるのか、やはりこれはもう少し明確にしてもらいたい。我々も政府の方に依頼して、既に十ポイントばかりの具体的な案が出ております。私たちは、もっともっとこの点を国民の皆様にわかりやすく説明してもらうように政府に依頼中でございます。そういう前提で、まず第一の問題は、国の仕事と地方の仕事をきっちり分けた上で考えていくべきじゃないか。
第二点でございますけれども、法律は、民間と地方公共団体、両方の協力を想定しております。先ほど米倉先生から、民間の協力は憲法に対する挑戦じゃないかというような趣旨のお話もございましたけれども、私は、第二項以下で書いてある問題というのは、これは全く今の法律の権利義務関係に何ら影響を及ぼしていない。二項でお願いはしております。だけれども、お願いというのはお願いのメッセージだけであって、法律関係のメッセージにはなっておりません。したがいまして、民間の契約ベースで行われる問題でありますから、この点はきょうは取り上げません。全く問題ないと思いますので取り上げません。
ただ、地方公共団体の場合でありますけれども、一般的協力義務というような説明を政府がしておるわけでございます。一般的協力義務であるけれども強制力はないのだということでありますから、正当な理由のある場合には協力しなさい、不当な理由では拒否できませんよ、こういうふうな趣旨かと思いますけれども、ここのところは若干あいまいになっているのではないか。もっともっときちっと書くべきではないかと思うのであります。
と申しますのは、法律の専門家であれば、これは例えば港湾法、航空法に基づいてきちっとやるんだなということはわかるわけでありますけれども、一般になかなかわかりにくい。そこで、第一項につきましては、もう少しきちっと書いた方がわかりやすいのかな、私自身はこのように思っておるわけでありますが、その点について。
したがいまして、二点です。枠組みの問題と、地方公共団体の協力についてもう少し明確にすべきではないか、こういうことにつきまして、室本先生、前多先生にお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/624
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625・室本弘道
○室本弘道君 御指名でございますので、まず、私の方から意見を申し上げたいと思いますが、現在、地方分権の時代とか地方の時代ということで、国が総力を挙げてその方向に向かっておられるということは承知しておりますし、スリムな政府をつくる、小さな政府ということについては私も賛成でございますので、そういうことで向かっているということを感じる毎日でございます。
今御質問のありました、どこまでやるんだということで、最終的に私は、国が持つべき権限とすれば、いわゆる外交、安全保障問題、こういったものについては、個別の地方自治体のベースでこれを考えましても、また、そういった方向には世界の国々を見ましてもないような気がいたします。そういうことで、そういった部分については、いわゆる国家の最終的な任務として、国民というものが存在する限り、政府の最終的な仕事ということで担保されるべきものは外交権と安全保障問題であろう、このように思うわけでございます。
確かに、非核都市宣言とか、地方でおのおの平和都市宣言をするというようなことにつきましては、これは日本人が平和を愛する気持ちでそれぞれおやりになるということはいいわけでございますが、この対象は、日本政府がその地方自治体を攻めてくるわけでも何でもないわけでございまして、そういうものが実効を持つためには、核を持っている国が対象でございます。核を持っている国が非核宣言をした国に対しては攻撃するのはやめておこうかというような話は余り聞いたことがないわけでございます。
なおかつ、今回の問題は、他国がどう考えるかというのがこのガイドライン法案のそもそもの考え方で、我々が他国を攻めるための方策を考えているわけではないというのが大前提で先ほどからお話を伺っておったのです。他国がどう考えるか、いわゆる他国の意思が日本の周辺事態にどう影響するかということでございまして、地方の非核の問題についても、他国がどう思うかということが一番ポイントになろうかと思います。
そんなことから、結局は政府というものが外交あるいは安全保障を全体としてきちっとまとめる、最後の任務として持つべきものであろうということで、地方でお考えいただくということについては、大変矛盾が生じるのではなかろうかと思うわけでございます。
例えば非核都市宣言、他国を考えないで国内だけでこの問題を端的に考えますと、隣の都市は非核都市宣言しないから、では隣の都市に飛んでいってくれと言っているかというような、極端なことを言いますとそういうばかばかしい議論になるわけでございます。まさかそんなことを考えて、おれのところに飛んでこないようにやっているんだとは決して思っておられないと思うわけでございまして、私にはこの非核都市宣言と言われる意味がよくわからないというのが実態でございます。
それから二番目の御質問ですが、民間協力については、お願いをするんだからということでございました。地方公共団体の協力業務ということについて、もう少しきちっと書くべきであるということでございます。
もちろん、きちっと書かないと混乱が起こるかもしれません。地方公共団体において協力の差が生じるという意味で、ぜひとも必要なものについては書くべきだと思いますけれども、ではどういうことを実際に書くかということまで考えてみますと、これは大変難しくて、包括的な内容についてお書きになるしか方法はないような気もいたします。
ですから、私の結論は、確かにきちっと書くべきではあろうと思いますが、限界もあるのではなかろうかなというのが私の考え方でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/625
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626・大野功統
○大野(功)委員 私の持ち時間がなくなりましたので、もし簡単にできましたらよろしくお願いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/626
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627・前多信雄
○前多信雄君 地方分権の方向づけについては、いろいろ世論が高まりつつあります。私自身も、地方分権を推進していくということに大賛成の一人ですが、国との違いは、国は外交と防衛をするべきであるということと、実施に当たっては税制改革等、先行するべき条件が一つあるのではないか。したがって、これらが確立できれば、国と地方の仕事分担というものがより明確になるならば、初めてそこでこうするべきであるという結論が出されるような気がいたします。
現状においての地方公共団体の協力度合いというものは、今言ったものに全く関係なしには結論は出ないので、関連的な問題として初めて結論が出されるのじゃないかというふうな考え方を持っております。地方協力の問題というのは、そういうところにどうしても絡まってくる。基本的には地方分権を進めるべきであるということは私の考え方と同じであり、そして、国は外交と防衛についてはすべて責任を持ってやるというようなことを前提に考えております。
以上でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/627
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628・畑英次郎
○畑座長 これにて大野君の質疑は終了いたしました。
次に、赤城徳彦君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/628
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629・赤城徳彦
○赤城委員 自由民主党の赤城徳彦でございます。きょうはお忙しい中、ありがとうございました。私は、室本先生に、専門的なお立場から一点御意見を伺いたいと思います。
それは、後方地域支援活動をしていた場合に、もし不測の事態が起こったらどうするのかということについてであります。
法律では、我が国は武力行使ができないということで、その活動期間を通じて戦闘地域にならないような、そういう後方地域で、武力行使と一体化しないように、そしてもしそこが戦闘地域となった場合には、支援活動を中断したり区域変更したりというふうに、二重、三重にも限定的な活動をするわけであります。
しかし、もし万が一、こういうこともございますから、何か起こった場合には、自衛隊法九十五条で武器等防護の規定は適用されますから、その対処はできると思います。一方で、自己または自己とともに活動する者の生命、身体を守るというような意味での武器使用、これはこの法律の十一条で遭難救助活動とか船舶検査活動では認められていますけれども、後方地域支援では、今言いましたような一線を画した地域ですから、その規定は設けておりません。
先ほど室本先生から、ROE、交戦規定を設けるべきだ、こういうお話もございましたので、そういう不測の事態が起こった場合に、後方地域支援活動でどのように対処したらいいだろうか、あるいは今の法案ではそれで十分であろうか、そういう点について伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/629
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630・室本弘道
○室本弘道君 よくこの後方地域という言葉が使われているわけですけれども、私は、このようにこの後方地域を考えております。
確かに、戦闘地域、これに対する概念として後方地域というのがあるわけですけれども、後方地域といわゆる戦闘地域、前方の戦闘地域というものと区別がつかないよという議論がすぐ繰り返されます。私は、例えばこの周辺事態法が適用になる以前の状態で、その場合に、そこの部分については、では後方支援活動というのは行われていないかといいますと、民間の業者さんによって行われている地域が、実はここで言う後方支援の場所であるということを考えるべきだと思うのです。
つまり、実際の戦闘地域に付随をした後方地域ではなくて、この法案の定義にありますように、さらに後ろの部分を言っております。ですから、それは日本の領海及び公海を含むのだということを書いてございますので、後方地域のうちのさらに後方の部分、つまりその部分については、弾薬も含めて日本の業者が運んでいるかもしれない部分を、日本に脅威が及ぶかもしれないというこの法律の事態が起こったときには、自衛隊さんにやってくださいよというのが、ここで言う後方の意味だと私は思っております。
したがいまして、基本的には、そういう目に巻き込まれるというような状態を生じるような場合には、状況が変化したわけですから、この法にも書いてございますとおり、速やかにその後方地域について改めて指示をしなければ、自衛隊の方はたまらないのではないかと思うわけです。
ROEというのは、一つの決められた範囲内でやるわけでありまして、実際に攻撃を受けたときには、今言われました法律の範囲内ではこれはやっていいということになっていますから、当然ROEの中で、つくるべきだと思いますが、その地域がいわゆる作戦地域に近いような意味での後方になってきた場合には、これは最初から、もはやこの法の趣旨から外れてきているのではないかと私は考えるわけでございます。
ですから、そのときにどう対処しますかというのは、この法律に書いてあるとおりでございまして、やはり実際の部隊として、どうしましょうかというならば、結局お伺いを立てるしかなくなるのじゃないかなと私は思うわけでございます。そうならないようなところを予期しながら、こういう後方地域というのは最初から決められていると思いますので、そういうことは少ないとは思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/630
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631・赤城徳彦
○赤城委員 ありがとうございました。以上で終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/631
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632・畑英次郎
○畑座長 これにて赤城君の質疑は終了いたしました。
次に、鉢呂吉雄君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/632
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633・鉢呂吉雄
○鉢呂委員 民主党の鉢呂吉雄でございます。
きょうは、意見陳述者の皆さん、本当にありがとうございます。二十世紀の戦争の世紀から、次の世紀は平和の世紀ということで、皆さんの平和に対する大変強い思いが意見陳述という形であったと思っております。
まず最初に、太田さんにお聞きをいたします。
少し難解なお言葉であったのですけれども、私どもも、極東アジアの平和、それを進めていくという役割は政治の分野でも極めて大事だというふうに思っております。私どもの民主党も、村山元総理の訪朝団に対して加わるとか、また菅代表もこの連休に中国を訪問するとか、まさに政治の役割が問われておるというふうに思っております。
そこで、ユーゴの今度のケースも、その研究者としてそのことも踏まえて、いわゆる権力者なりあるいは軍部というものが、地域紛争であってもそういう方向にひとり歩きをするんだというような御指摘だったと思いますけれども、この極東アジア、とりわけ北朝鮮あるいはまた台湾、中国との関係、そういったものに対する日本の政府あるいは私ども政治家のかかわり方、このことについて御意見がございましたら、お願いいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/633
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634・太田一男
○太田一男君 それでは、考えているところを御説明したいと思います。
皆さん、地域紛争のケースとしてユーゴのケースをお挙げになるわけですけれども、あのユーゴの軍隊が民衆を守ったでしょうか。今度の紛争、実は私はずっとつき合いがありまして、ミロシェビッチ御夫妻とも知らないわけじゃありませんけれども、今、ユーゴスラビアのあの実態からして、民族解放武装集団がつくられたということ自体を私は疑問に思っています。
これは政治家が、あるいは軍部が何らかのことを考えて準備しないとやれないことで、よくテロのことをおっしゃる方がありますが、警察力がきちっと機能していれば、テロ集団が何か起こすというところまでいくことはないわけですね。そういう事態が準備されて紛争が起こるというふうに考えます。そういう意味では、そういう政治家を選んだ国民の悲劇はその国の国民が負わなければいけないことになると思います。
鉢呂さんの御質問の極東アジアというふうなことについてですけれども、よく出される例で、台湾への武力侵攻とかいうことが言われるのですけれども、本当に私たちはそれに関与するつもりなのか。中国はそうおっしゃっていないわけですね。小沢さんも向こうに行かれて、そのことについては関係しないとおっしゃったのですけれども、少なくとも日本の周辺有事というふうに考えるべきなのか。そのようなこと、自国内でやっていらっしゃる政治の問題に、外国が手を出すことではないはずなんですね。そういう意味で、朝鮮の場合でも、そういう事態が発生するというふうに仮説を立ててしまって、そのときに日本が手を出すべきだという考え方、そこに私は問題があると思います。
しかし、もし朝鮮動乱ということを考えられたときに、多数の難民が生まれてきたらどうするか。私は、これはお受けしたらいいと思うのですよ。戦前、日本がやったことを考えたら、一時的に日本に難を逃れてこられる方は、これは私たちは武力でもって追い返したり、それを何らかの形で抑えるというのではなくて、お受けして、一緒に生きていく道を探るべきだと思います。ですから、軍隊を用いて問題を抑え込もうとすること自体の中に、そしてそれを脅威とする考え方自体の中に、私は無理があるんだ、そういうふうに思っています。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/634
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635・鉢呂吉雄
○鉢呂委員 それでは続きまして、この函館市は、先ほどからもお話があったとおり、入港する外国艦船に対して非核証明書の提出を求める議員提案をされたということです。残念ながら審議未了、廃案という形でございますけれども、これに対して、政府は要約すれば三つの見解を述べております。
一つは、国是である非核三原則は堅持をされておるので、自治体にこういう形の非核証明書を提出することは必要がないという言い方でありますけれども、これについてどのように考えるか、佐藤かのさんからお答えをいただきたいのです。
私どもは、堅持をされておるのですけれども、政府は必ずしも国民に対して信頼される方法でこの疑念を解く段階になっておらない。アメリカ側から核持ち込み等について事前協議の申し出があった場合に限りこの形は証明されるということで、現行では、日米安保の事前協議の対象にはなっておりますけれども、この形はこれまで一切ないということで、国民の皆さんに、ある面では非核三原則がこれらの米軍の入港についてきちっと守られておるのかということに対する疑念があると私は思います。
したがって、政府が信頼される方法でこの疑念をきちんと解く必要がありますけれども、地方自治体が独自に非核チェックをやっても、それは国の方針に反するわけでないというふうな考え方をするわけでありますけれども、この点についてどのように考えるか、お答え願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/635
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636・佐藤かの
○佐藤かの君 私たちは、軍艦が入るたびに市役所に行きまして、核を積んでいるかどうかを確かめるようにということを言います。そうすると、市が外務省に問い合わせまして、事前協議がないから核は積んでいないんだというふうに言うのですけれども、大変疑わしいというか、不安を持ちます。
そして、国是である非核三原則のために例えば高知であのような運動をしているのに対して、政府がなぜあのようなことを言うのかというのは大変疑問であって、国が決めた三原則を守るために頑張っている地方に対して、国があのようなことを言うというのは、何かやはり陰に腹黒いところがあって、隠しているものがあるのではないかといつも思っております。
だから、例えば神戸のように、神戸はすごいたくさんそういう軍艦が入った町ですけれども、二十四年間も神戸方式の形でアメリカの軍艦を入れていないのですよ。だから、そういう点では、自分の町の港にああいう軍艦が入ってくることの恐怖というものを政府の人はわからないんだと思うのです。本当に軍艦が目の前にやってくるということは、私たちはもう動物的な反応で、それは防ぎたい、入ってもらいたくない、それは本当に自分の町を守り、子供を守り、二度と再び核戦争の危険な目に遭いたくないというその思いですよね。そういうことです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/636
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637・鉢呂吉雄
○鉢呂委員 同時に、寄港の同意、港に入港することの同意は外交関係を処理する国の事務だというふうに外務省は言っておるわけでありますけれども、この関係は、外交関係としては、いわゆる内閣は外交関係を処理するということでは政府に帰属いたします。ただし、国と自治体との関係ではまた別の権限配分が規定されていなければならないということでございまして、寄港の同意に関する事務は外務省でありますけれども、その寄港の事務の執行については、当然国内法の手続が必要であるということになります。
したがって、国内法ということになりますと、皆さんの非核条例は、港湾に関することで、艦艇の入港でありますから、当然関係国内法ということであれば、国の段階であれば港湾法、地方自治体においてはそれに基づく港湾管理条例の運用が必要になります。この港湾管理条例は、地方自治体の自主的な判断で決めることができるわけであります。したがって、入港する、日本に寄港するということの同意は外務省ができますけれども、どこの港に入港するか、それについては当然地方自治体の、具体的に例えば函館港に入港する場合は函館の条例に基づいて行うことになるわけであります。
そういった意味では、そこについて、函館市はこの条例に基づいて、非核、核を持っていないということが証明されなければ入港させないのだということは当然あり得ると私は判断しているのですけれども、その点についてはどのようにお考えになっておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/637
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638・佐藤かの
○佐藤かの君 私たちのつくった条例は、憲法にも港湾法にも、全部触れないようにつくってあります。だから、現在の港湾法であれば拒否できるというふうに思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/638
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639・鉢呂吉雄
○鉢呂委員 これとは少し違いますけれども、今回の周辺事態法の第九条、先ほど大野委員の方からもお話がありましたとおり、第一項では、地方公共団体の長に協力を求めることができるということで、これはあくまでも協力を求めることができるという条項です。したがいまして、政府はその後の国会答弁で、これらの協力事項は何ら義務を課すものではない、必ず入れなければならないというものではないと。したがって、協力要請に応じなかった場合の制裁措置は規定をされておりません。
しかしながら、周辺事態とは国の平和と安全にとって重大な事態であることにかんがみて、地方公共団体は正当な理由なくして拒否は認められないという政府答弁で終始をしておるわけであります。私どもは、この政府答弁だけでは、正当な理由というのは一体何なのか、だれがその正当な理由を判断するのか、あるいはどういう協力事項については、先ほどお話もあったとおり、港湾の使用ですとかあるいは空港の使用とか、そういう十項目程度の具体的なものも出てきておりますけれども、この正当な理由というのがなかなか明確に出てきません。
ですから、与党の皆さんも、これではちょっとまずいのではないのというような言い方をされておるわけでありまして、厳格な意味でいけば、あくまでも自治体の自主的な判断が必要になる。同様に、艦船の入港についても、同じ港湾条例に基づく自治体の自主的な判断があるというふうに私どもは思っておりますけれども、このガイドライン関連法案との関係でどのようにお考えなのか、そこもお聞かせ願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/639
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640・佐藤かの
○佐藤かの君 だから今、地方自治体の人たちがこのガイドライン法案をやめてほしいということで、議会で、何というのでしょうか、地方自治体というのは本当に住民の生活に密着しているわけです。だから、国が何ぼ協力するようにと言っても、住民の安全が守られないということでは自治体として同意できないわけです。だから、そういう点では、百五十を超える自治体から反対の決議が上がっているということはその悩みのあらわれだと思うのですよ。
昔のように、国がこうしろと言ったから、ははあと自治体がそれに従わなければならないという時代ではないわけですから、やはり地方自治体の人たちの声、その首長たちの悩みを政府は今回よく聞いて、そして私たちも、一緒に平和を守るという立場に立っていただきたいというふうに思うわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/640
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641・鉢呂吉雄
○鉢呂委員 今回、通常国会で地方分権の一括法案がこれから出てまいります。いわゆる国の機関委任事務、これも廃止の方向で、国と地方というのは対等、平等だと。何か問題があれば、地方から、第三者機関といいますか、この関係の紛争処理委員会のような形で、そこで行政的な中で、第三者的なところで処理をして、またそこで不服の場合は司法を使うという形をとるわけであります。
そういう点からいきましても、先ほどの、協力を求めることができるという形でありますが、しかしながら同時に、そういう紛争処理委員会というような形で、国が、政府が、協力を求めることを拒否された場合にはそこに提訴をして、自治体に義務的な形でやらせるということも一方では起きるのではないかというふうに私どもは考えておりまして、そこのところは大変大きな課題があるだろうというふうに考えております。
私の方からお話をするのではなくて、意見陳述でありますから太田さんにさらに御質問をしたいのですけれども、周辺事態の定義で、これはガイドライン法の個別の関係でありますけれども、非常にわかりにくい。全く地理的概念は入っておらないとは言いながら、その事態の性質に着目するんだといったようなことが言われておりまして、少し定かではない面があります。
我が党は、我が国の周辺の地域における平和と安全に重大な影響を及ぼす事態、同時に、我が国に対する直接武力攻撃に発展するおそれのある状態という形で、厳密な定義づけをする必要がある。同時にまた、日米安保条約の枠内というようなこともきちっと書き込む必要がある、修正する必要があるというふうに今修正の動きをしておるわけでありますけれども、この二つ、周辺事態あるいは日米安保の枠内ということについて、お答え願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/641
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642・太田一男
○太田一男君 非常に悲しいことを言うようにお聞きになるかもしれませんけれども、私は、それはないよりはあった方がいいと思いますので、法案が通るのなら、そのときにはそういう規定ができた方がいいと思いますけれども、実際は何の有効性もなくなるだろうと思いますね。
アメリカが軍事的な行動を起こして、あるいは起こす必然性が出てきて、そして日本をそれに協力させようということで、まだ今までの歴史から、政府が変われば別ですけれども、今までの流れの中でそれにノーと言える力を持った人たちが日本からなかなか出てきそうにないという状況の中では、法律があるからだめだというふうに抵抗するだろうかというと、既成事実の方が先に行くのじゃないか、そういう悲しい感じを持ちます。ないよりはあった方がいいという意味では、お書きになった方がいいと思いますので、むしろ国際的な影響力を考えて、これが通る限りは厳密にお書きになっておいた方がいいだろうと思います。
そして、特に中国との関係で、台湾との紛争、あるいは統一問題等でどういうことが起こるかということを考えると、いろいろなことが言われていますけれども、絶対に中台関係においては日本は関係しないのだということを宣言される必要があるんじゃないかと思います。
同じように、インドネシアについても、かつて日本が軍事的に関係した地域ということになればほとんど周辺有事になってしまうわけですけれども、それには後方支援を含めて協力するわけにはいかないということを鮮明にしないと、実はたくさんの日本の資本あるいは邦人が行っております。それは必ずしも日本の企業だけじゃなくて、外国企業に雇われた邦人という人たちも含めて今後ふえるわけですから、そういう邦人救出だとかいろいろな口実のもとに、結局は日本の、自衛隊と称する軍隊が間接的に関与してしまうということになれば、戦後培ってきたことがそこで消されてしまいます。
我々は、過去に犯したそういうことを考えれば、少なくともそういう関係においてはかかわるわけにいかないんだ、アメリカの政治政策とここでは違うんだということを、国際的信用を獲得する上で明言する必要があるのじゃないか、このように思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/642
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643・鉢呂吉雄
○鉢呂委員 終わります。ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/643
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644・畑英次郎
○畑座長 これにて鉢呂君の質疑は終了いたしました。
次に、山中あき子さん。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/644
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645・山中あき子
○山中(あ)委員 山中あき子でございます。
改革クラブでございますが、本日は、公明党・改革クラブを代表して質問させていただきます。意見陳述者の皆様からすばらしい意見を伺いました。たくさん御質問したいことがございますが、与えられた時間に制限がございますので、できるだけ簡潔にお答えいただければ幸いでございます。
まず第一点でございますが、室本先生にお伺いしたいのですけれども、最近、やはりまだ冷戦後であっても、アメリカの軍事依存という発想は冷戦後の時代に少し転換がおくれているのではないかというふうに思うのですが、事前協議などを通して、日本の意見をどのように反映させていくかということが非常に大事だと思いますが、その点について、簡単に御意見をいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/645
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646・室本弘道
○室本弘道君 米国が軍事依存大国であるという前半の部分でございますが、確かに我が国から見ればそういうふうに見えるかもしれませんが、世界にはいろいろな国がございまして、紛争の数はますますふえているわけでございます。
それに対して、先生も御案内と思いますが、現在はアメリカが世界の警察官であるということでいろいろやっているようでございますが、未解決な問題ばかりを残していきつつあるということで、ひいては我が国周辺においても、米軍が行っても役に立たないということで、結局は、我が国がやるのではなくてそういった火種が日本に降りかかってくることも考えられるということで、こういった法案を御審議になるのではないかなと私は思っているわけです。
事前協議云々の話なんですが、これについては、例えばアメリカが国連でとった政策を日本がとらなかったというのはたくさんございまして、必ずしもアメリカに追随しているとは私は全然思っておりません。たまたま日本国民が、まず日米安保条約というものを多くの人が選んで、その方がいろいろ問題が起こらないのじゃないかなという妥協の産物として日米安保があるんだということは事実であろうと思います。もしもそうでなければ、日本では民主主義政治が行われていないということになりますので。ただ、そのときに、ノーと言うことについて、これまで余り言ってないじゃないかという御質問だろうと思うのですが、幸いなことに、余りそういう事件が今まで起こらなかったからその必要がなかったのだと私は考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/646
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647・山中あき子
○山中(あ)委員 ありがとうございます。やはり日本の自主性をきちっと確立することは大事だということでは一致したと思います。
次に、太田先生、ユーゴスラビアの状況はよくわかりますし、今回のNATOの爆撃は少し安易であったというふうに私も思いますけれども、しかし、冷戦後に、昔からありました伝統的な、例えば民族とか宗教とか、あるいはさまざまな差別が、いろいろな形の紛争として世界じゅうに顕在化してきている。そういう点に関しまして、全く抑止としての力というものなしにやっていけるのだというふうに御認識でいらっしゃいますでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/647
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648・太田一男
○太田一男君 人間の歴史ですから、過去のいろいろな負の遺産を持っていることは確かだと思いますし、地域紛争が起こったときに、現地政府がどういう対応をとるかということ、そしてまた、それに世界のさまざまな勢力がどのようなかかわり方を持つかということが問題なわけです。
今起こっているのは、言うならば武器を提供する勢力、それから現地の政府が割れてしまう、そして武力行使になっているわけですね。そのことの例と、日本が絶対平和主義でいくというのとは矛盾しないわけです。そういうことが発生しそうになったときに何ができるかということを考える部局が日本にはないのですね。世界の平和のために、紛争をさせないために、できることの限界を非軍事的に追求していく、それをやらないでおいて、相手国に戦争が起こるから日本にもそういうケースが起こるというふうに立てることは問題ではないか。
少なくとも、私たちは絶対に武器も使わないし軍隊も使わない、そういうためにはどういうことをするんだという、まずその部局をつくるべきだったのですね。ところが、軍事自衛力ということを提起したところに私は戦後の誤りがあった、そういうふうに思っているわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/648
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649・山中あき子
○山中(あ)委員 日本のアイデンティティーがどういう哲学のもとにあるか、そこの論議が不足であったのではないかという御指摘だというふうに私は認識いたします。
続いて、小野さんにお願いいたしますが、先ほど基本計画を承認すべきであるということで、現在は、自衛隊の派遣だけを承認すればいいのではないかという考えもちらほら見えているわけですが、そこのところは基本計画でなければいけないとおっしゃった。その基本的な考え方をもう一度お願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/649
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650・小野健太郎
○小野健太郎君 基本計画全体にわたる国会承認が必要だという私の意見でございますけれども、先ほどお時間をちょうだいいたしたときに述べたことと同じでございますけれども、特に地方自治体との関係の問題にありましても、国民の権利義務に間接的に影響を及ぼす事項でありますから、やはり代表者である国会の承認をまず得てから、そのような基本計画の具体的な実行に移すというようなことは、まず前提、アプリオリな問題として、国会の承認が初めにあるということから私たちの権利義務に関する問題の発動をしていただきたいという基本的な発想でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/650
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651・山中あき子
○山中(あ)委員 前多さんにお伺いいたしますけれども、先ほどの御発言の中で、紛争が起きない努力が非常に大切であるということをおっしゃっておりました。例えば日本の場合、少しずつ努力はしているにいたしましても、紛争が起きる前に防止する努力、紛争が起きた場所に対しては拡大を防止する努力、それから紛争が終結したところでは再発を防止するというような、予防外交的な発想というのでもっと日本がイニシアチブをとれるのではないかというふうに思っております。
これは法案には書かれておりませんけれども、新しいガイドラインの平素の努力というところに明記されていることなんですが、その辺のところの発想について、御意見を伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/651
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652・前多信雄
○前多信雄君 私が申し上げましたのは甚だ理想的な発想であろうということは私自身も認識しておりますが、紛争の原因はどこにあるかということを見てまいりますと、比較的身近な問題が非常に多い。
以前のように領土問題であるとかいったようなことではなくて、民族が自分たちの思うように暮らしていきたいという念願が、一つの国で二つの民族の存在しているような国などでは特に事件の発端になっているということが一つ。それから、経済的な理由で、それを援助する、あるいは自分たちの思うような形になり得ないということに対する世界的な目の冷たさといいますか、そんなようなものを解決したいという期待が一つの発端になっているというふうに見えてならないわけです。
力と力で戦うのではなくして、世界の平和の根幹は、お互いの民族、人間を尊重し合う、そういう思想が先に出ていかなければならない。その辺の話し合いといいますか、そういうものが比較的後ろの方にあるように見えてならないわけです。
話せばわかるという昔の例えがありますが、極めて平準な言い方ではありますけれども、これだけの情報公開の可能な時代に、よりよくコミュニケーションを図ることによって、どこに問題があるか、どこに考え方の違いがあるかということで大方の問題は処理される。そうすると、後についてくるものはおのずから簡単に行動に起こせるというような、そういう基本的な考え方が私の根幹であります。
したがって、民族、思想を超えてという言い方もありましたけれども、要するに、経済が政治に先行するというようなことだけを考えると、それだけで大方の問題発生というものは抑えることができるのじゃないか。
北半球の時代から南半球の時代になりつつあるというようなことも、後開発の状態、生活状態の問題を抱えておる国々というのは、確かに南半球の未開発の、あるいは民族の統一性というようなものの成り立っていないような国、そういうことから問題が多く発生している。それで、ただ単に力と力で抑えつけるということから脱皮して、二十一世紀はその先導役的な、経済大国アメリカはもちろんですけれども、先進国の経済力を活用して、事前にそういうものの対応というのは、国連もありますからそういうものを中心にして、より積極的に問題解決に言挙げしてやっていくならば、大方の紛争というものはなくなるんじゃないか。
本当に南半球の民族の方々は、今まだ裸で生活しておるような状態というのは非常に多いわけです。裸そのものは、気温の関係、いろいろな風習の関係もありましょうけれども、要するに、食の問題で困っている国々が発端になっている場合が非常に多いということで、争いの原因も今や極めて身近な問題が多いんじゃないか。そんなことで経済というものを取り上げているわけです。
これからの世紀というのは、そういうことでいくということと、お互いに情報交換し合う。マスメディアがこれだけ発展しているのですから、的確にとらえられるはずですから、そういうものを国連を中心にして案を持つ、あるいはそういう機関を積極的に動かしていくというようなことが期待されるのじゃないかというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/652
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653・山中あき子
○山中(あ)委員 もう一点。先ほど意識の改革ということで、平和をどうやって築き、それを維持していくかということを世界に広めていくということをおっしゃったのですが、意識改革というのは非常に大事なことだと思いますけれども、前多さん、その辺はどういうふうなことを日本としてできるというふうにお思いでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/653
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654・前多信雄
○前多信雄君 それは御指摘のとおり非常に難しい問題ですが、言語の違いであるとか情報伝達の違いというようなものは一応さておきまして、世界的に、知識の発展といいますか、知恵の発展といいますか、そういうものは以前とは相当違っております。現在の情報手段を使いながら、例えば国連あたりが中心になると一番いいのですけれども、東南アジア等においても、日本あるいは中国等がそういう意識をまず求め合う。地域的な面でのまとまりといいますか、そんなものを土台にしながら輪を広げていくということであれば、哲学が通ずれば言葉を超越して問題解決ができる。
安易な言い方というふうに思われるかもしれませんけれども、誤解と、努力が足りないということが、そういう問題を乗り越えられないのじゃないかなというふうな受けとめ方を私はしておりますので、その方面での強化といいますか、努力が解決法の糸口をつかめるのじゃないかというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/654
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655・山中あき子
○山中(あ)委員 ただいま皆様のお話をずっと伺っておりまして、本当は理想的には軍備が全部なくなればよろしいのですけれども、今、過渡期の時代にありましてまだまだ抑止力として多少軍備の準備は必要であるとしても、右手のきき手の方は、きちっとした日本の平和思想に基づいた総合的な安全保障というものをどうやって地域に、あるいは世界に広げていくかという意味で、どの国も敵対するというような発想から、どの国も含めてお互いが抑止力にできるようなアジア太平洋の安全保障の対話からスタートしていくというような、そういった動きを、この法案を審議すると同時に、日本のアイデンティティーとしてやはり国会でもっと審議をする必要があるのではないかということを改めてきょうは感じさせていただきました。
意見陳述者の皆様、どうもありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/655
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656・畑英次郎
○畑座長 これにて山中君の質疑は終了いたしました。
次に、達増拓也君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/656
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657・達増拓也
○達増委員 達増拓也でございます。
小野健太郎さんに質問をさせていただきます。
地方公共団体の核非積載証明要求ですか、御当地函館を含め全国各地で問題になっているわけでありますけれども、そのことについてどのように考えるか、伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/657
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658・小野健太郎
○小野健太郎君 ただいま各先生から、特に先ほどお隣の佐藤先生からもいろいろ御指摘があったと思いますけれども、あるいは先ほど鉢呂先生からも今後の地方分権のあり方との関係で、機関委任事務が廃止され、地方と日本の国の関係が対等になっていくという流れの中にあって、核の搭載という問題を私たちがどういうふうにとらえるかということですけれども、私個人の意見といたしましては、心情的には佐藤さんがお隣で先ほどおっしゃっていたことに非常に共感を覚えております。
しかし、国と国との関係という外交に関する事項でございますから、政府答弁と同じような形になってまいりますけれども、事前協議において核搭載が認められていないというような形であるならば、私たちは、そのような形での相手方の言葉を信じるというような立場もまた必要ではないかなというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/658
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659・達増拓也
○達増委員 引き続き、小野さんに質問をいたします。
この周辺事態安全確保法案の中には、地方公共団体に対して国からいろいろ協力を求める、そういう協力規定がありまして、地方公共団体の方もいろいろなオペレーションに協力するのだということになっておりますけれども、その規定についてどのように評価するでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/659
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660・小野健太郎
○小野健太郎君 この問題に関しましても、先ほど来多くの先生方から御指摘がございまして、私も、非常に難しい条文だなというふうに感じております。特に、九条の一項に関しましては、「必要な協力を求めることができる。」というような条文の書き方になっておりまして、これも先ほど鉢呂先生から御指摘のあったような形で、違反者に対して制裁は加えられていないというような条文の形式でございます。
私としましては、基本的に、具体的ないろいろな事態を想定して、念頭に置いて考えてみますと、例えば、これは周辺事態のパターンの一つであります、政治状態の混乱によって多数の難民の方が日本に流入してくるという可能性は、特にどことは申しませんけれども、九州地方で発生するおそれがあるわけです。そのような場合に、私たち日本国民の立場として、地方公共団体が必要な行為というものに協力していただくというような形は、やはり必要ではないかなというふうに私は考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/660
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661・達増拓也
○達増委員 引き続き小野さんに質問ですけれども、このガイドライン関連法案、さらには新ガイドライン自体の前提としまして、この法案や新ガイドラインの背景には、冷戦後の世界においても日米安保体制というのは堅持していく、日米同盟という言葉もありますけれども、その重要性は今もって失われていないし、むしろ冷戦時代とは違った形でさらに重要になっているところもあるという考えが前提になっているわけであります。
こうした考えに対する意見も含めまして、日米安保体制あるいは日米同盟と呼ばれる関係の今日、さらにこれからのあり方について、どのように考えますでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/661
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662・小野健太郎
○小野健太郎君 今達増先生からお話があったように、私自身も、日本の外交関係の基軸は日米関係であるというふうな認識は変わっておりません。
ただ、私自身は、学生の時代にヨーロッパ、特にドイツに留学していた者ですので、日米関係も非常に大切であり、また一つの柱だということは確信しておりますけれども、世界のいろいろな力関係の中にあって、日本とアメリカというのは一つの基軸ではあるけれどもすべてではないという認識でございます。私は、ヨーロッパとの関係、あるいは一番近隣諸国であるアジアとの関係もなお一層発展させて、友好関係に努力すべきだという認識は変わりありません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/662
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663・達増拓也
○達増委員 では、次に佐藤かのさんに質問をいたします。
今の日米安保体制をどう考えるかというそもそも論に関連するのですけれども、先ほどの陳述の中で、周辺事態安全確保法案、今、国会に提出されている法案には、これはもう修正云々の問題ではなくとにかく反対ということですけれども、新ガイドラインの中には、この周辺事態関係部分のほかに、日本に直接武力攻撃があった場合の日米の協力という部分もあるわけであります。それは、今までの日米の安保体制、その協力の仕方についてさらに細かく決めておこうという内容なわけですけれども、その部分についてはどうお考えなんでしょう。やはり反対ということなんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/663
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664・佐藤かの
○佐藤かの君 安保条約のあるおかげで、私たちがどれほど苦しめられているかということを、具体的にすごく思うわけです。
例えば、沖縄の海兵隊が演習を矢臼別へ持ってきましたね。そうしたら、矢臼別へ持ってきたら、これで二年目になりますけれども、もう住民無視で、夜間演習はやる、やりたい放題のことを、あそこの演習場は日本一広いわけですから。実際には、住民がいろいろ言っても、もう本当に何一つ耳をかさない。そしてこれだけの、議員さんだからおわかりでしょうけれども、日本の地図を見たときに、あちこち全部、日本にアメリカの基地がある。基地のあるところに何があるか。幸せがあると思いますか。その中で、低空飛行で悩み、基地被害で悩み、沖縄の人たちのあの苦しみがある。
だから、安保があるおかげでどれだけ安全でなくて、苦しい思いの住民の人が日本にどれだけいるかということを考えたら、やはりアメリカ軍は帰ってもらわないとだめなのです。そしてアメリカの国内だって、アメリカ軍を自分の国に戻したいという人だってたくさんいるわけです。
だから、安保条約は通告すればちゃんとやめることができるわけですから、日本からアメリカの基地をなくして、そしてそこでもっと平和外交で、アメリカを嫌いだというんじゃないのです。アメリカと平和友好の条約を結んで、そして、今、戦争じゃなくて、九条の精神を世界に広めることがやはり私たちの生きる道だというふうに思うのです。安保条約は大変悪いからやめてほしいと私自身は思っています。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/664
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665・達増拓也
○達増委員 このテーマについては、室本弘道さんにも質問したいと思います。
日米安保体制あるいは日米同盟の今日的意義、またこれからのあり方について、どのようにお考えでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/665
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666・室本弘道
○室本弘道君 私は、日米安保は日本人の総意として、日本人の大多数が選んだ英知だと思っております。
なぜそういうことを申すかといいますと、この東アジアに生きていく日本です。日本の国は動くことはできません。ですから、これからも、将来もこの地域に生きていくわけです。そのときに、世界像について、これはいろいろな方がいろいろなことを言っておりますけれども、私は、これからずっと先のことはわかりませんけれども、日本の置かれた立場であるとか、少なくとも現在の国民が選んだ一つの選択というものは、そのほかの選択、例えば極端なことを言えば非武装中立を唱える方もいらっしゃいますけれども、そういったことを踏まえても、基地問題をいろいろ抱えたというお話が先ほどもありましたけれども、なおかつ私は、日本人が選んだこの選択はベストで、今のところはベストであったと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/666
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667・達増拓也
○達増委員 では、また小野健太郎さんに質問をいたしますけれども、先ほど陳述の中で、国連のもとでの経済制裁について周辺事態の中に入れるのはおかしいので、そういう国連のもとでの平和のための活動については別途立法をした方がいいということであります。
それはなるほど筋の通った御意見だと思うのですけれども、これは前提として、国連のもとでの平和のための活動については、自衛隊の参加も含めて日本も積極的に参加すべきということが前提としてあるわけでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/667
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668・小野健太郎
○小野健太郎君 いろいろな議論があると思いますけれども、私は、先ほど佐藤さんから配られた「あたらしい憲法のはなし」にも載っているように、憲法前文の平和的生存権の確立、その一端としての国際協調主義の中の行動の一部として、そのような活動も認められると解しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/668
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669・達増拓也
○達増委員 このテーマについては、太田一男さんにも質問をしたいと思います。
領土を武力で自衛しなくていい時代になっているということでありますけれども、それでは、各国が個別に自衛するという話ではなく、国際的に国連のもとでPKO、PKF、あるいは国連決議に基づいた多国籍軍といったものが実際行われているわけですけれども、これについてはどのようにお考えでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/669
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670・太田一男
○太田一男君 まず第一に、私たち日本という国は、この憲法を制定するときに軍事力によって安全を保障しないという国是を立てました。それは、私は、そういう政治体制がどういうものであるかということをもっとクリアにすべきだと思うのですね。
警察力の限界というものはありますけれども、警察力の限界の中でどこまでそれがやれるんだということ、そして現代の警察力はどうあるべきかということを含めてきちっとしていけば、今出されている課題の多くは答えが出ると思います。それで、そういう実例を世界に示すこと、そしてそういう環境を世界に広げていく役割を担っていけばいいと思うのですね。
今起こっている紛争は、少なくとも私が申し上げたような侵略とか占領ではありませんから、現実の政府の課題として国際的に対応すべきではないか、このように思っています。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/670
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671・達増拓也
○達増委員 そろそろ時間でありますので、どうもありがとうございました。
非常に根本的なところの考え方からいろいろな意見があるわけでありますけれども、実際アクションをとらなければならない、それを決定しなければならないという国会の方の立場として、御意見を踏まえて正しい決断が下せるように、この法案についても頑張っていきたいと思いますという決意を述べて、私の質問を終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/671
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672・畑英次郎
○畑座長 これにて達増君の質疑は終了いたしました。
次に、児玉健次君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/672
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673・児玉健次
○児玉委員 日本共産党の児玉健次です。
私は、最初にお三方に私のお聞きしたいことをお尋ねして、時間があればまたと思います。
最初に、太田先生に御質問をいたしますが、政治学者として先ほど、ロシアがその負の要素によって崩壊した、私も全く同感です。その結果、今アメリカが世界で唯一の超大国になっている。そして、ある国を一方的に、ローグステートといいますか、社会的な規範、世界の国際的規範からはみ出す国だ、ローグステート、そういうふうに名指しをして、ここ何年か累次にわたる先制的な攻撃を一方的にやっています。
この法案の特徴は、アメリカがそういう行為に出たときに日本がどのように行動するかということを法律で定めようとしている、そこに大きな問題点がございまして、その点、太田先生がどのようにお考えかということ。
そして、法律で定めようとする日本の行動の中に、後方地域支援、国会の論議の中ではロジスティックスといいますか、兵たんですね。これについて、先生は、今の国際情勢の特殊な状況の中でこのロジスティックスという戦闘行為をどういうふうにお考えになっているか。
次に、佐藤先生にお伺いしたいと思うのです。
先ほどのお話の中で、函館市で非核・平和行政の推進に関する条例案、これを広い層の方たちが参加して進められた。大変貴重なことだと思います。佐藤先生のお話の中で、安保条約に賛成の方も反対の方も、思想、信条、立場の違いを乗り越えて結び合ったというふうにお聞きしたわけですが、その結びつき、それがどのようにして可能だったのか。その点を、お感じになったままをお聞きしたい。
それから、函館のこの条例運動は、いわゆる非核証明を出さない艦船に対する対応、日本に例が随分ありますけれども、函館はそれだけでなく、第四条で「市は、市が保有し、または管理するすべての施設、用地を平和に反する目的のために使用しないものとし、また、市が行う業務についても平和に反する目的のために行わないものとする。」これは、国会で私たちが議論しているこの法案の九条一項、二項の核心に触れる問題ですね。そこに皆さんの運動がこういう第四条をつくり上げていく、そこに至る経過がどんな特徴を持っていたのか、その点をお聞きしたいと思います。
それから米倉先生には、先ほどのお話の中で、日本が今、新ガイドラインなどアジアを平和に導くものか否か岐路に立たされている、そういうふうにおっしゃって周辺事態法案についてのお考えをお述べいただきましたが、こういった状況が教育にどんな影響を及ぼしているか。教育大学で青年に対して教育をなさっているお立場で、その点をぜひお聞きしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/673
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674・太田一男
○太田一男君 今後アメリカがどう変わるかというのは期待したいと思うのですけれども、日本とアメリカの軍事同盟体制ができた過程の中で、日本がノーと言えなかったという事実は我々の悲しい現実だと思います。
今言う勇気があるかないかというのは、非常に大事なポイントだと思うのですね。今、言わなければならないときに来ているし、言うことによって、アメリカの正義が社会的に問われてくるだろう。それでもなおアメリカは軍事力でもって日本に無理難題を押しつけてくるのかどうか、そのことが今問われてくるだろうと思うのです。
私たちは、ノーと言うことによって、アメリカが世界的正義を主張して警察官的対応をしようとするときに言えなくなる現実を示せばよろしいかと思いますので、こういう法律を用意して唯々諾々と協力していくというふうなことはしない方がいいのではないか、そう思います。そういう意味で、私は、あくまでも警察力の限界を超えない範囲での日米関係というのを追求すべきではないか、そのように思います。
兵たん問題等を含めてですけれども、やはりいろいろな意味で日本の経済力は当てにされております。アメリカにとっても、軍人を養っていく、あるいは軍事行動にとって必要とする経費を、自国の予算ではなくて外国に分担させるということは、当然考えられることでして、それは今までの日本外交の流れの中では、やはり一番持っていきやすい場所として考えられているというふうに思います。
この点についても、私は、できないことはできないというふうに言って、そこから計算されるであろう負の現実はしょい込まなければ、平和主義を主張するわけにいかないんじゃないか。いいことばかりではいかないだろうと思いますので、アメリカがどのような制裁を日本にかけてくるかわかりませんけれども、それは甘んじて受けてでも、今はそういうことに耐えていく時期ではないかというふうに思っています。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/674
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675・佐藤かの
○佐藤かの君 安保条約に賛成の人も反対の人も、思想信条を超えて一つの力になったというのは、私も本当に、私自身がそのことに驚いているのです。
やはりブルーリッジが入ったということが、私たちがすごくそのことで学んでしまったというか、もしも法案が通ったときにどんなことをさせられるかというその危機感が、安保に賛成でも反対でも、町の平和と、国際観光都市として生きるしかない函館にそういう危険がやってきたら困るのだというその一点なんですね。もしこの法律を決めてしまったら、この町は成り立たなくなる。函館にはロシアの極東大学もあります。
それで、先ほど言いましたけれども、国際交流問題も、結局世界の国と仲よくする以外に生きる道がない、だから、いろいろな組合のしがらみとかもあるかもしれないのだけれども、何ぼ組合のしがらみがあっても、本当に自分の町を守るという点ではどんな人でも一つになれるという、私はそのことに大変感動するのです。それで、一緒に考えてやっていく中で話し合っていくと、そうだということになってくる。
だから、函館はそういう軍艦の入港がたびたびあったり、アメリカ軍が函館を調査して、そして使うだろう、そういうようなことがいろいろ出てくるものだから、そういう存在が私たちの意識を結び合うように変えていっている。反作用でしょうか、ガイドラインの反作用が私たちを固めていく、そのことなんです。
だから、地方自治体の人たちが反対の意見書を政府に上げるというのは、同じように、困るんですよ。この法案が決まったら絶対どの自治体でも困っていく。例えば、インディペンデンスが小樽に入ったときは、市役所の人が延べ人数でいえば千名も動員されているんですよ。そして、そのお金を市がいろいろ出さなければならないとか、軍艦が入ってきて一体何の利益があるのか。被害ばかりですよ。
だから、よく考えればだれもが反対することなんです。だから私は、特別のことじゃない、だから条例にも非常に自信を持っています。話せばわかるということで、協同ができるということで未来に希望を持っています。日本の人々の、平和憲法に生きている、この五十数年の平和憲法の地についた考え方というのが、安保があっても、やはり自分を守るためには頑張ろうということにつながるんですね。
済みません、それからもう一つは何でしたか。(児玉委員「第四条に至る論議の発展過程の特徴です」と呼ぶ)
結局それも関連しているのですけれども、やはり市の施設を戦争に使わせるということは、ただ寄港反対、反対ということじゃなくて、インディペンデンスもブルーリッジも、函館に来た後にどこに行っているかといえば、イラクの紛争のときにちゃんと出ていっているのです。
そういう意味からいっても、私たちのいろいろな施設を使いながら、そういう戦争に協力するということにつながっていくわけですから、戦争に手はかせないというその私たちの思いが、市のすべてのものは平和のためにしか使わせない、戦争には使わせない、そういうことにつながって、こういう形の文章ができたということです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/675
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676・米倉正夫
○米倉正夫君 教育大学で教育の問題についてどう考えるかということでございますけれども、こういう時代であればあるほど、教育基本法、それをどう実のあるものにしっかり学ぶかということが非常に大事だというふうに思います。
大体、教育の目的というものを見失っている人が圧倒的に多い中で、五十年間、日本には教育基本法で教育の目的というものがあるわけです。人格の完成を目指し、平和的な国家及び社会の形成者を育成する、そして真理と正義を愛し、個人の価値をたっとび、勤労と責任を重んじ、自主的精神に満ちた心身ともに健康な国民の育成を期する、そういうことの中にたくさんの深い思想や教育の理念が込められていますから、これをどう学生と一緒に学ぶかということが非常に大事で、私は社会科教育でございますけれども、どの教科でもこれをしっかりと学び合うということが重要だと思います。
学生のレポートなんかを夜読んでみますと、彼らはそれをしみじみ感ずるわけですよ。その前の小中高の教育がいかにそれから遠かったかということを、彼らは若くて感受性がいいですから、それをしっかり学ぶということが私にはよくわかります。そういう点で、今この時代であるからこそ、平和的な国家及び社会の形成者になるような、そういう教育をしっかりとやるということです。
このごろ、日の丸・君が代が言われておりますけれども、ああいうことで人間の育成なんというのはできやしないのであります。できやしないというよりも、むしろそういうことよりもこちらの方がずっと大事だということを私は文部大臣に言いたいくらいなんですよ。そういうことです。
それで、そういうことを積み重ねることによりまして、本当に今日の情勢、それから、平和をどうつくっていくかということも見出されてくると思います。私は、それを若い人たちと一緒に学んで、彼らは非常に感受性がいいので、それをしっかりと受けとめて、これから日本国憲法に基づいた、いい、平和な社会をつくっていってくれるだろうというふうに期待をしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/676
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677・畑英次郎
○畑座長 これにて児玉君の質疑は終了いたしました。
次に、伊藤茂君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/677
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678・伊藤茂
○伊藤(茂)委員 社会民主党の伊藤でございます。
意見陳述の皆様からそれぞれ大変貴重なお話をお伺いさせていただきまして、また、それぞれ何かお伺いしたいなと思う点もございますが、持ち時間が限られておりますので、恐縮ですが、お二人の方に、二問、同じ御質問をさせていただきたいというふうに思います。
お一人は米倉正夫さんに、もうお一人は太田一男先生にお願いをいたします。共通の御質問を二問申し上げます。それぞれのお立場でニュアンスの違いのあるお答えがちょうだいできるのではないかと思っております。
その一つは、憲法と外交権と自治権というものをどうとらえたらいいのかという問題でございます。
これは、憲法の立場を大事にしていくということは共通ですから、言うまでもございません。ただ、外交は国がやるのだということがどの場合でも何かえらく硬直して言われる、そういう懸念を私は持っているわけでございます。
理論的に言えば、ガルブレイスの著書、「ポスト資本主義社会」の冒頭部分でも、国だけが物差しの時代は終わったというところから始まっているということですし、現実、国連を中心にしたさまざまな国際活動でも、世界のNGOの活動抜きに効果ある運動はできない。開発の問題でも、環境の問題でも、女性の問題でもそうなっているというわけでございます。
それから、ローカル・ローカル、地域と地域との交流ということも非常に広がっておりまして、私どもの地元、神奈川なんですが、中国の遼寧省、それから韓国の京畿道と密接なローカル・ローカルのトライアングルをつくって、協力しようということでやっております。どんどんふえております。それから、もちろん国境を越えた市民運動ということも言うまでもございません。
ですから、何か外交権は国、地方の方はそれに従うか従わないかとまでは言わぬけれども、そのようなことではなくて、やはりこれからの時代というのは、国際的に見ても日本のあれから見ても、それぞれが伸び伸びと意見を言って、そして次の時代を構築していく。国だけが物差しの時代はもう終わったんだ、これは既に二十世紀じゅうに終わっているんだという理解が必要なんではないだろうか。
そういう意味で、核艦船の問題だとか各自治体での非核平和都市宣言の問題とかいうことは非常に大事なことだと思っておりますし、単に宣言するだけではなくて、そういう時代をどうつくるか、平和をつくる努力と思いますが、どうお考えでしょうか。外交権と自治権、憲法ということについての感想を伺いたい、これが第一点でございます。
第二点は、日米安保の現実と新ガイドライン。日米安保の現実をどう認識するのか。
私は、新ガイドラインの前提条件に、今安保はどう運用されているか、その白書を発行するぐらいの、そして、国民の皆さんみんなに知っていただいて議論をするというようなことが、非常に大事な前提ではないだろうかという気がいたしております。
六〇年安保からベトナム戦争、湾岸、その他いろいろなことがございまして、今日に至っております。私は六〇年安保時代から、若き時代からかかわりましたが、振り返りまして、その当時、重要な二つの歯どめがございました。一つは極東の範囲です。御案内のとおりの政府の統一見解がある。もう一つは事前協議。日本から直接出撃するとか、あるいは核武装軍隊とか重要な装備の変更とかいう場合には、事前に相談をする。そして当時の岸総理も、日本の国益に沿わない場合はノーと言いますということだったわけでありますが、何か非常にそれが変わっちゃった。
要するに、安保が二つの歯どめを含め変質をして、そのことが非常に重大だ、それにさらにどうなるのかという懸念を実は持っている次第でございます。安保の現実、私は変質と思いますが、それをどう見るか、どうするか。あるいは、原点から原理的に一体どう考えたらいいのかというのが、今置かれている状況ではないだろうかというふうに思います。
もっとほかの方の御意見も伺いたいのですが、恐縮ですが、お二人の先生から、二つにつきまして、時間が限られておりますので簡潔にお話を伺えますようにお願いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/678
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679・米倉正夫
○米倉正夫君 専門ではございませんので大変難しい課題でありますけれども、私が生きてきた印象から申し上げますと、憲法は、何といいましても日本の国の上位法ですね。それがすべての基本になるというふうに私は思っております。
そして、今度の非核平和条例に佐藤かのさんと一緒に携わってみまして、今までそういうことはしたことがありませんので気がついたことは、国の政府は一つありますが、しかし、函館市という地方自治体も、これは身近な我々の政府ではないかというふうに思います。そしてある意味では、それが身近な意味でなお基本ではないかというふうに思います。
自治体の中で、民間ではたくさんのいわゆる民間外交というものが行われていまして、聞いてみましたら二十五ぐらいの団体、たくさんの民間外交団体がありまして、いろいろな国際交流をやっているわけです。それを市が認めたり援助したりなんかしておって、それが行われておるということです。その上に函館市の外交があって、私は、函館市も一つの政府でありますから、そういう意味の自治体の外交権というのは持っているのだろうというふうに思います。
同時に、函館市は自治権、地方自治の本旨にのっとってというふうに言うように自治権がございまして、いずれもこれは住民が基本になっているということですね。国民が主権者でありますから、その基本になっている主権者である住民が行う外交の願いといいますか、あるいは外交権といいますか、そういうものは、自治体が十分に保障すべきだし、それを国の政府も基本的には保障していくべきではないか、そういうふうに思っています。
今回の場合でも、港湾についての権限が自治体にございますので、ぜひそれは、国に全部外交権があるんだというふうに言わないで、それはあるとしても、そういう自治体の外交権もなるべく認めていくというのが民主主義の筋ではないかというふうに私は思っております。
それから、日米安保の問題でいいますと、伊藤先生が今おっしゃったのですけれども、ちょうど同じぐらいの年で、私もおくれた安保の学生でございます。それで私は、この安保が必要だったかどうかと国論が二分されておりますけれども、できたのは、米ソ対立のあの厳しい状況の中で安保ができたのだというふうに思っております。それが六〇年で改定された。そしてソ連が崩壊して、冷戦が崩壊したからには、こういう意味の安保というものはだんだん解消されていくべきではないかというふうに思っております。
そして、この安保がいまだに、私は沖縄にも何度も行ってきましたけれども、沖縄の人たちに対する大変な重圧。沖縄はベトナム戦争で加害者になって、悪魔の島と言われて非常に悔しい思いをしたと言っていますけれども、そういう沖縄の住民の大変な重圧によって日米安保があって、まあ我々本土にいる者はそういう沖縄の人たちの苦しみを踏まえながら生きているということですけれども、これはやはり解放されなければならない。
そして、私どもの周辺国は、巨大なアメリカの軍事力が日本にあるわけですから、何といったってそれが一つの大きな脅威にならないというわけはないのですね。となりますと、そういう周辺のこともあるし、日本のそういう安保についてのマイナスもあり、そういう全部を含めますと、それが日本にとってもアジアにとってもプラスであるというふうには私には思えないわけです。
ですから、これを解消していく方向、そのことが日本にとってもアジアの人々にとっても重要な方向であろうというふうに思います。アメリカとけんかをするのではなくて、アメリカも、やはりいつまでたっても巨大な軍事プレゼンスでもって世界の平和を維持しようという方針を改めて、もっと平和友好の考え方で日本と友好を結ぶ。
ですから、軍事安保というものをだんだん解消しながら、日本とアメリカは平和友好条約の方向で進めていく、そのことが日本にもアジアにも本当の平和をもたらすものではないかというふうに思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/679
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680・太田一男
○太田一男君 伊藤先生から出されたテーマは、本当にみんなが一生懸命考えてみなければならない大問題だと思うのです。
先ほど、ちょっと提言のところで申させていただきましたけれども、皆さんが時代が変わっているということをおっしゃることは、基本的に、近代の主権国家の関係が構造的に変化を起こしつつあるということなわけですから、憲法原則も含めて、現代的な関係を考えなければいけないということじゃないでしょうか。その意味で、日本の憲法が、近代主権国家の不可分の権利と考えられた軍事権を否定した、警察力以上の暴力装置を持たない国家として機能するということを宣言した、それが今、可能になってきた時代が来ているということ、そこに新しい国家像が出てきているのではないかと思うのですね。
それは別の言い方をすると、人々がグローバルに関係を持って、国民性を主張する前に地球人として機能しなければならない関係が出てきている。そういう意味では、近代主権国家の論理だけでは処理できないテーマがいっぱい出てきている。そこで国家の安全とか主権ということを議論する前に、人々の安全、人々の命を大事にするという、そこからどのような社会機構を考えるべきかということを考え、その中で、日本国憲法をベースとして機能している日本がどうかかわり合うことができるかというテーマを追求していくならば、それはさまざまな見解が出てくると思いますけれども、過渡期の社会関係、国家関係が見出していけることになるのではないかと思うわけです。
その具体的なあらわれが民際外交であり、NGOであり、人々の拠出による支え方であったりしているのではないか。いわゆる生存保障のための国際的な連帯という形で出てきているのではないか。そして、軍事力を用いないで共生するためにどうしたらいいかというようなことが行われてきている。
それと同時に、まだ人々の口には上っていないけれども、もうしばらくすると、本当に軍隊は要るんだろうかというテーマは、私はこの三十年、五十年の中では必ず人類の課題になると思います。特に、環境問題が見えてき、資源の有限性や地球球体の有限性が見えてきて、こんなむちゃくちゃな浪費をやっていていいか、最大の浪費が軍隊だということがわかってくると、どうするんだというときに、これは民衆連帯しかなくなりますから、いわゆる国家の独占的な権限だなどということを言っていた近代の物の考え方が古くなる。近代が過去化する時代は必ず来ると思います。
その最先端を日本が行っているのではないかというふうに思いますので、そういう憲法を持っている日本が、古い国家論だけに立って政治をお進めになることをおやめいただきたい、あるいは少なくともそこを検討いただきたい。そういう社会のあり方は何なのだということを国会では準備いただけないかということをひとつお願いしておきたいと思います。
そして、その観点から見れば、安保をどう考えるか。これができたころと今とは違いますし、アメリカ自体も変わっているのではないか。あのとき日本がノーと言っても軍事的に出ていかなかったでしょうし、かなりの強圧的なことをやられたでしょう。今も、実際は日本はアメリカに軍事的には押さえられているはずですけれども、しかし、この程度の自由を保障しなければ日米関係が成り立たない関係になっている。沖縄のケースも含めて、もし我々の側がアメリカにもっとまともな関係をつくってほしい、我々の正常な関係をつくってほしいと言うならば、このような作戦計画とは違う、具体的な方策というものが出てくるのではないか。
アメリカも、今お困りになっていると思うのは、あの巨大な軍隊をどうなくしていくかというテーマ、これは内側からも出てきづらい。そして、至るところで軍隊が道をつけて政治をリードしているという事実を考えますと、そういう意味では、日本が歴史のあり方に対して一つの指針を出していくことは可能だし、この試みをすることは僕は意味があると思っております。その意味において、安保は破棄できる状態にあるはずなんです。ただ、我々が目を覚ましていない、私はそのように思っています。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/680
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681・畑英次郎
○畑座長 これにて伊藤君の質疑は終了いたしました。
以上で各党を代表しての質疑は終了したわけでございます。
これよりさらに質疑を特に希望される方がございましたら、希望される委員は、私の方において指名をいたしますので、手を挙げていただければ結構ではないかと考えます。
まず赤城さん、どうぞ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/681
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682・赤城徳彦
○赤城委員 それでは、お許しをいただいて、さらに太田先生に伺いたいと思います。
先ほどおっしゃられた、国際的な新たな連帯や共生の枠組みをつくれ、一つの大きな卓見だ、こういうふうに承りました。
一方で、現実のいろいろな危機に対してどう対処していくかということも、これは議論していかなければならない課題でございまして、先ほど鉢呂委員、また達増委員からもありましたけれども、周辺事態というのは、我が国周辺の、我が国の平和と安全に重要な影響の及ぶ事態、そしてその中には、我が国に対する武力攻撃に至るような、そういうものもあるでしょうし、また、これとはちょっと局面が違いますけれども、直接の日本有事、武力攻撃ということもあると思います。
よく議論の中に、アメリカの戦争に巻き込まれるから反対だというふうなお話も聞くのですけれども、その議論は、そういう前提である、周辺で我が国の平和と安全に重要な影響が及ぶ事態とか、我が国に対しての武力攻撃に至るような、あるいは直接の武力攻撃、そういうものがあったときにどうするのかという、その前提が抜けているのかな、そう思います。そういうような事態というのは、現実に昨年のテポドンミサイルとか、あるいは不審船の問題とか、いろいろな不安定という状態は増している、私はそう思います。
いずれにしても、なければないにこしたことはないですが、その万が一の事態に対してどういうふうに対処するか。
そこで、太田先生は、武力をもっての自衛、これは否定される、あるいは日米安保条約についても否定的なお考えだと思います。私は、自衛権の行使をするか、あるいはアメリカと安保条約に基づいて対処するかしかないと思いますけれども、そうではなくて警察力の強化で、こういうお話でございましたので、しからば、そういう軍事的な脅威に対してどういう警察力の強化が考えられるのか、そこら辺のイメージ。
それから、軍事力に対応できるような警察力の強化となりますと、これは自衛隊と変わらないようなものなのかな、こう思いますけれども、そこら辺のイメージを伺えればと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/682
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683・太田一男
○太田一男君 ありがとうございました。とても本質的な問いでございまして、私も非常にうれしく思います。
まず、軍事紛争というのは、政府の行為ですよね。それは日常的な政治の積み重ねの上にありますね。テポドンの話だとかこの間の不審船の話で、まるで北朝鮮が日本に攻め込む、軍事攻撃をかけてくるというのは、私は、政治家が口にしたり想定したりすることじゃないと思うのです。少なくとも、ここで考えていらっしゃる制服の方々は、仕事としてこれを考えられて、万一のケースをいろいろ考えられたので、あの程度のことじゃないだろうと思います。制服の人たちが考えられているような状態というのを起こさないようにするのが政治家の仕事ではないでしょうか。
どこがそういう攻撃をかけてくると今考えられるか。私はないと思います。北朝鮮との関係がまずいというのであるならば、例えば、もっともっとあの国の経済を立て直す方法だとか、民生を安定させる方法だとか、教育の質を高める方法だとか、交流の方法だとか、さまざまな、これは一日ではできません。今まで本当に敵視してやってきたわけですからできませんけれども、それをしていくことを考えなければいけない。
とりわけ私は、私たちが戦前、天皇陛下万歳と言って天皇陛下を神として扱ってきた。ああいう国を持っていた私たちは、今、北朝鮮、朝鮮民主主義人民共和国の金正日体制で起こっていることに対して、どう対応するならば人々が今の世界の現実に対応できるような認識状況に変わるかということも含めて研究して、対応していくということをやっていくならば、そういう仮説が成り立たなくなってくるだろうと思います。
そして、情報があったのを隠すようなことをやめて、情報を公開してほしいです。核疑惑のときには宇宙衛星船を使って物すごい情報を流していったのに、あの衛星船の打ち上げに対しては驚くような遅さで、しかも驚いたという表情をするという、これは情報の開示がなかったからではないかと思うのです。考えられないことです。
不審船のことだって、情報がキャッチできない程度の警察力になっているとするならば、それは問題ですし、わかっていて、今度、海上自衛隊を動かして、まるでショーをやるような形でやるような準備がもしされていたとするならば、これは恐ろしいことです。どっちかわかりませんけれども、しかし、少なくとも、その情報をキャッチしていなかったような情報網を警察に与えていたとするならば、これは政治のおくれです。
そしてそれは、ほかでもない海上自衛隊にその力を持たせようとする仕事にもなってくるのではないか。そういう政治の裏の意図も含めて、私たちはもっとオープンに検討して、そういうことをさせない国にしていかなきゃいけないんじゃないかと思うのですね。
それで、軍事力と警察力の違いは何かといえば、警察力は間違いなく最終的には行為者の個人責任になります。法律に従って行うわけですから。軍事力と警察力を一緒にするわけにいかない。
これは、例えばテロ行為者が持っているのがバズーカ砲なら、バズーカ砲程度のものを持たなきゃならぬでしょうけれども、バズーカ砲をこの島国の日本でテロ集団が持てる状態を日常的に保障するような警察でいいのかということになると、そうはいかないだろうと思うのです。そういう意味で、私はもっと具体的に考えるべきではないかと思うのです。
本当におもしろいと思うのは、この島国日本を戦車を連ねて攻めてくる国が現実にあるのでしょうか。それがないとするならば、あの戦車隊は要らないのじゃないでしょうか。その要らないということを、軍隊を必要とするということを言われる人たちが、要らないから、あるいはむだに使っているからやめろという政治主張をなぜされないのか。私は、ここに仮説に立った軍備を主張する人たちの意図があると思うのです。
その意味において、もう少し客観的に国民を納得させる軍事必要論を説いてもらわなければ、私のような立場の人間はわかるとは言えない。そしてそういう意味では、警察力の限界というのは相対的なものですから、私がこの席で申し上げることではないと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/683
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684・畑英次郎
○畑座長 それでは、時間があと七、八分しかありませんので、具体的な御質問だけに絞っていただきまして、大野さんと児玉さんでそれぞれ三、四分で、御返事も含めてうまくその時間内に。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/684
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685・大野功統
○大野(功)委員 国会の承認について、小野健太郎先生にお尋ねいたします。
いかなる場合に国会の承認が必要かという基本論。つまり、行政府の判断、行為というのは、法律に従ってやるものであります。緊急事態に、それが法律に反する、あるいは憲法に反する、こういう場合にコントロールするというのが国会の承認だと思います。
今回のガイドライン法案につきましては、国民の権利義務にも抵触しません。影響しません。そしてまた、武力の行使という憲法にも抵触いたしません。したがいまして、基本的には国会の承認は必要ないと思います。それが基本論です。
それから第二の問題点は、仮に、国民に安心してもらう、安心感を与えるという広い意味でのシビリアンコントロールという観点からすれば、最もわかりやすい国会承認の対象候補は三つあると思います。周辺事態の認定、基本計画、あるいは自衛隊にガイドライン法案に基づいて新しく付与される三分野、こう三つあると思いますけれども、一番わかりやすいのは、やはり自衛隊の行動、新しく付与される三分野における行動ではないか、これが国民に最もわかりやすい国会の承認ではないかと私考えておりますが、その点について御意見を賜りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/685
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686・小野健太郎
○小野健太郎君 時間がないということなので、先ほどのお答えと同じようなことになってしまいますけれども、先ほど来私が申し上げているのは、特に地方自治体に協力を求めるというような内容が入っておりますので、間接的にではあれ、私たちの財産権あるいは国民の権利義務に重大な影響を及ぼすような問題の処理の仕方であるならば、すべてその枠は国会承認とすべきであるという立場が私の個人的な意見でございます。
あと、先ほど申し上げたように、事態の緊急性に関しましては、国会の事後承認ということを認めれば、緊急事態の問題に関しては、基本計画自体に全部承認という枠をはめたとしても事後承認を否定するものではございませんので、私自体は、全体としてそうおかしくないのではないかという認識に立っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/686
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687・児玉健次
○児玉委員 では一言。
室本先生、もし私の聞き違いでなければ、先ほど、日米安保条約の六条の事態で、後方地域支援や後方地域捜索救助活動、船舶検査活動その他、今度のこの法案が提起している一連のものが可能だというふうにお話しになったと私は全体として伺いましたが、あなたが自衛隊の幹部として、そしてアメリカにもいらしていたそのときから、六条の範囲をそのように御理解になっていたかどうか、その点だけお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/687
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688・室本弘道
○室本弘道君 それは私の舌足らずでございまして、それは間違いでございます。結論だけ申しますと、間違いです。
六条事態というのは、あくまでも我が国に結びついた話をしておりまして、ただ、我が国が直接攻撃されるのだというものではないですよという意味で申し上げたというように御理解いただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/688
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689・児玉健次
○児玉委員 ただ、それは舌足らずという言葉にはならないと思いますね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/689
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690・畑英次郎
○畑座長 これにて委員からの質疑は終了させていただきます。
この際、一言ごあいさつを申し上げます。
意見陳述者の皆様方におかれましては、長時間にわたりまして熱心に貴重な御意見をお述べいただき、まことにありがとうございました。
本日拝聴させていただきました御意見は、三議案の審査に資するところ極めて大なるものがあると受けとめさせていただいております。ここに厚く御礼を申し上げます。
また、この会議開催のため格段の御協力をいただきました関係各位に対しまして、心より感謝を申し上げ、御礼を申し上げる次第でございます。ありがとうございました。
これにて散会いたします。
午後三時五十六分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504963X00819990415/690
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