1. 会議録本文
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000・会議録情報
平成十一年七月二十八日(水曜日)
午前十時開議
出席委員
委員長 穂積 良行君
理事 赤城 徳彦君 理事 増田 敏男君
理事 松岡 利勝君 理事 横内 正明君
理事 小平 忠正君 理事 木幡 弘道君
理事 宮地 正介君 理事 一川 保夫君
今村 雅弘君 小野寺五典君
大石 秀政君 金子 一義君
金田 英行君 木部 佳昭君
熊谷 市雄君 熊代 昭彦君
塩谷 立君 下村 博文君
鈴木 俊一君 園田 修光君
中野 正志君 萩山 教嚴君
御法川英文君 宮腰 光寛君
宮本 一三君 持永 和見君
矢上 雅義君 安住 淳君
神田 厚君 鉢呂 吉雄君
堀込 征雄君 上田 勇君
漆原 良夫君 大口 善徳君
木村 太郎君 井上 喜一君
佐々木洋平君 菅原喜重郎君
中林よし子君 藤田 スミ君
知久馬二三子君 前島 秀行君
出席国務大臣
農林水産大臣 中川 昭一君
出席政府委員
法務省刑事局長 松尾 邦弘君
農林水産省経済
局長 竹中 美晴君
農林水産省構造
改善局長 渡辺 好明君
委員外の出席者
農林水産委員会
専門員 外山 文雄君
委員の異動
七月二十八日
辞任 補欠選任
金田 英行君 中野 正志君
岸本 光造君 大石 秀政君
中山 成彬君 下村 博文君
丹羽 雄哉君 持永 和見君
漆原 良夫君 大口 善徳君
前島 秀行君 知久馬二三子君
同日
辞任 補欠選任
大石 秀政君 岸本 光造君
下村 博文君 中山 成彬君
中野 正志君 金田 英行君
持永 和見君 丹羽 雄哉君
大口 善徳君 漆原 良夫君
知久馬二三子君 前島 秀行君
七月二十二日
農業振興対策に関する陳情書(第二八二号)
農産物の安全性の確保に関する陳情書(第二八三号)
中山間地域活性化対策の充実強化に関する陳情書(第二八四号)
宇和海における真珠養殖業・魚類養殖業の振興対策に関する陳情書(第二八五号)
農業・農村の持続的な発展を図るための政策の着実な推進に関する陳情書(第三二六号)
農林水産業振興対策の充実強化に関する陳情書(第三二七号)
林業・木材産業振興のための木材需要拡大の充実強化及び木材の秩序ある輸入に関する陳情書(第三二八号)
食料・農業・農村政策に関する陳情書外二十七件(第三七二号)
農作物及び栽培環境におけるダイオキシン濃度の実態調査等のダイオキシン対策実施に関する陳情書(第三七三号)
地方競馬の安定的運営のための諸制度見直しに関する陳情書(第三七四号)
中山間地域振興対策の充実・強化に関する陳情書外一件(第三七五号)
国土保全奨励制度に関連する施策の充実に関する陳情書(第三七六号)
は本委員会に参考送付された。
本日の会議に付した案件
農業者年金基金法の一部を改正する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第八九号)
午前十時開議
――――◇―――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X02519990728/0
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001・穂積良行
○穂積委員長 これより会議を開きます。
内閣提出、農業者年金基金法の一部を改正する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。
これより質疑に入ります。
質疑の申し出がありますので、順次これを許します。熊谷市雄君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X02519990728/1
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002・熊谷市雄
○熊谷(市)委員 自由民主党の熊谷でございます。よろしくお願いします。
本委員会に提案されている農業者年金基金法の一部を改正する法律案についてでありますが、これは現行の十一年度の保険料の水準を十三年まで据え置く、そういう内容であります。これは厚生年金自体が凍結をするという方針に伴って同列に扱う、そういうことであります。加入者の方々もほっとしたということで大変喜んでいるわけであります。当然このことについては何も異論はありませんので、一応賛成であるという意思を表明しておきたいと思います。
そこできょうは、現在農業者年金というものが窮地に立たされている、加入者あるいは受給者、こういう関係する人たちが大変心配をしておりますので、そういった現状の中から幾つかの問題点というものを取り上げながら質問をしてまいりたい、このように思います。
まず最初に、農業者年金制度は創設以来約三十年経過をしたわけでありますが、創設当時はやっと農業者にも人並みの老後の保障制度というものができたということで大変歓迎をされ、将来に大きな期待と希望を与えてスタートしたわけでありました。今日まで幾多の変遷というものをたどってまいりましたが、それなりに老後の生活安定なりあるいは農業の近代化という面で役割を果たしてきたと思います。
しかし、ここへ来て、加入者に対する受給者の割合、いわゆる成熟度が二五〇%を超える状況になった。それに伴って財政事情が極めて憂慮すべき事態となって、制度の維持というものをしていく上において非常に困難な状況に立ち至っているわけであります。この事態というものが今農政上の大きな課題になっておりますし、これは避けて通れない問題になっているわけであります。
そこで、この制度をつかさどってきた政府の立場から、今の状況というものをどのように受けとめておられるか、まず大臣にお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X02519990728/2
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003・中川昭一
○中川国務大臣 おはようございます。
農民にも恩給をということで昭和四十五年にスタートしました農業者年金制度でございますが、現在までに九十六万人に対して三兆六千億円の支給をしております。これは、農業者の老後の生活の安定に重要な役割を果たしてきたと理解をしております。
また、これは構造政策の一環といたしまして、農業経営の近代化あるいは農地保有の合理化という観点から、若返り、あるいは後継者移譲により農地が細分化されないようなシステムにしておる、あるいはまた、規模拡大したい経営第三者に対して規模拡大のメリットという役割も果たしてきたところでございます。
後継者の平均年齢は三十五歳、それから、約七十七万件の後継者移譲により百五十四万ヘクタールが細分化というか分散されずに後継者に移譲されてきたということで、特に新しい基本法のもとでの理念という観点から、今申し上げたような役割というのは今後ますます重要になっていくというふうに理解をしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X02519990728/3
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004・熊谷市雄
○熊谷(市)委員 それでは次に、少しく内容に踏み込んだ質問をさせていただきたいと思います。
いわゆる加入者が少なくなり、逆に受給者が多くなっているというこの状況、これは急激に変化をしてきたというふうになるわけであります。いわゆる加入者の方は右肩下がり、こういう傾向になり、一方、受給者の方は右肩上がり、こういう経過をたどってきたわけであります。今までの経過の中では当然これが交差をした、いわゆる成熟度一〇〇%というものを迎えた時点があったわけでありまして、昭和六十三年から平成元年、そのころにかけて成熟度一〇〇%の状況になったわけであります。当然、この時点で今日のことというのは十分に予測されたのではなかろうか。いや、もっとさかのぼれば、右肩下がり、右肩上がりという傾向が定着をした昭和五十年代、このころにも十分にこの予測ができたのではなかろうかと思います。
当然、政府としても、そうした状況というものの経過に合わせて何回となく制度の見直しをやってこられて、その努力の跡というものはうかがえるわけでありますが、今までの経緯というものを振り返ってみて、この制度の運用という面についていろいろ分析されておられると思いますが、そうした分析の上に立ってどのように評価をされ反省されているのか、お伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X02519990728/4
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005・渡辺好明
○渡辺(好)政府委員 制度の発足以来三十年が経過をしたわけでございますけれども、その中で農業自身も、また社会経済構造自身も大きく変わってまいりました。農業者年金制度につきましても、そういう状況の中で制度や運用の面で相当な改善を加えてきております。
二、三、例を申し上げますと、昭和六十年には、経営移譲年金の中で、加算額と基本額の導入をするということで、言ってみれば年金のタイプを三つぐらいにインセンティブを強めるような工夫をいたしまして、専業的な担い手へ農地等を一層集積する、これを促進する観点からの改正も行いました。
それから、これは平成二年の改正になりますけれども、六十歳までの経営移譲を画一的に誘導する政策から六十五歳までということで、経営移譲の体系につきましても変更いたしました。
それから、平成七年の再計算におきましては、家族協定を結んだ配偶者の方々の年金加入というふうなことも工夫をしてきたところでございます。ただ、そのプロセスを経まして、今日、関係者の中には制度が非常に複雑でわかりにくいというふうな批判もあるところでございます。
それから、先生が御指摘をされましたように、現在、加入者と受給者のバランスが成熟度二五五%ということで、言ってみれば一人の方が二・五人を支えているというふうな状況にございます。財政的には大変厳しい状況だと言って差し支えないと思います。
こういう状況を踏まえまして、制度の簡素化につきましても、また財政のバランスの問題につきましても、現在、農業者年金制度研究会におきまして御議論を賜っているところでございます。次期財政再計算が来年になっておりますので、それまでの間にこの制度の抜本的な見直しを行いたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X02519990728/5
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006・熊谷市雄
○熊谷(市)委員 経過は経過として、今加入者なりあるいは受給者がどのような考え方でこの農業者年金制度というものを受けとめておられるかということについて、お話をさせていただきたいと思います。
先週地元に帰って、約十五人ぐらいのメンバーでありますが、受給者、加入者の生の声を聞いてまいりました。
要約しますと、保険料は毎年千円前後ぐらい上がっていく、逆に農業所得というものは下がっている、それなのに、掛金の値上がりというものが一体どこまで続いていくのかという不安を強く持っているようであります。しかし、そうはいっても、私たちはこの制度にしがみついていくしかない、あるいは、ほかの人たちと同じような老後の保障が欲しいんです、この制度がなくなったら大変だということも心配をされているわけで、ぜひこの制度というものを続けてほしいという声が非常に多かったわけであります。
また、受給者でありますが、これはもらい始めてから年数の浅い人であります。先輩たちのお話を聞いて、これぐらいの額をいただいているんだということで、私もそれぐらいはもらえるだろうと思っておりましたが、もらってみると意外に少なかった、同じ制度なのにどうしてこうなんだろうか、しかも年々支給の額というものが少なくなっていくのを見て先々が不安でたまらないんだというお話。
さらには、これは農業委員をやっている人でありますが、同じ集落に未加入者がいるわけですけれども、そういう人に勧めようと思っても、自分自身が不安で自信がないのに、他人様を勧誘するということにも遠慮がちだということも話されておりました。
また、入るときはこれはよい年金だと思って入った、その当時は、スライド制であるとかあるいは賦課方式であるとかそういった説明は聞いたが、金額がこのように変わるとは思わなかった、うかつな面もあったかもしれないが政府がやることだからと信じて今日までついてまいりました、まさか政府は私たちを見捨てるようなことはしないでしょうねという切々たるお話を伺ってまいりました。
これ以外にもたくさんお話は聞いてまいりましたが、時間の関係で省きますけれども、今までの経過の中でもっとそういった加入者、受給者の不安というものを除去するための適切な手はなかったんだろうか、先ほどいろいろ努力されたという政府側の答弁も聞いたわけでありますが、果たしてそれが十分なものであったかどうかということについては謙虚に反省をする必要もあるであろう、このように思います。
見直しの経緯というものを眺めてみても、確かに、制度上の問題として財政の健全化といった面では、保険料を引き上げたり、あるいは支給単価というものを段階的に引き下げるという道が講じられてきたわけであります。それはそれとしてわかりますが、反面、そうした手法が該当者の加入の門戸というものを狭めるものにならなかったのか、もう少し魅力ある年金としてのメニューづくりというものに配慮と工夫を積み重ねるべきではなかったかな、こんな思いをいたしているわけであります。
これからいろいろ新しい制度の見直しというものに取り組まれるわけでありますから、過去の経緯を十分に踏まえられて今後の運用に最善を尽くしていただきたい、このようなことを御要望申し上げておきたいと思います。
次に、農業者年金制度というのは、これは政策年金でありますから、公的年金として位置づけをされてきたわけであります。したがって、基礎年金の上に上積みされるいわゆる二階部分に当たりますが、この二階部分に国庫の助成を受けているのは農業者年金だけだと言われております。そして、この点が他の年金制度とのバランスという観点から問題だという指摘もあるようであります。
いわゆる公的年金としての妥当性ということについて、今までと同じような考え方でこれからも位置づけをされるのかどうか、確認の意味で大臣にお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X02519990728/6
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007・中川昭一
○中川国務大臣 御指摘のとおり、公的年金のうちこの農業者年金はいわゆる政策年金ということになっておりまして、国庫からもお金が入ってきているわけでありますが、発足以来の役割というものは大きいものがあったというふうに考えております。
しかし近年、先ほど成熟度二五〇%という話がございましたが、受給権者に対する経営移譲者の割合が低下するなどの問題が出てきておりまして、特に受給者あるいは加入者の皆さんからの御要望等々もございますので、今後のことにつきましては、平成十二年の財政再計算と合わせまして、新しい基本法の趣旨のもと、望ましい農業構造の確立、農業経営の展開も念頭に置きながら、抜本的に制度の見直しをしていかなければならないと考えております。
制度の目的あるいは年金財政の見通し、給付と負担のあり方等につきまして、今、学識経験者等から成ります農業者年金制度研究会というところで抜本的な農業者年金の今後につきまして検討をしていただいておるところでございます。また、いろいろな御意見を聞きながら、今後の年金のあり方について御議論をいただき、そして方向性を出していきたいというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X02519990728/7
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008・熊谷市雄
○熊谷(市)委員 政策年金という位置づけだけはどうしても死守をしていくという考え方に立たなければならないというふうに思いますので、政府としてもそういう一つの姿勢を確立するようにお願い申し上げておきたいと思います。
次に、これはこれからの問題に多少関係してくるわけでありますが、特にこの農業者年金制度に女性の加入というものを促進させるべきである、そういう必要性というものについてであります。
これは、既に平成七年度に制度改正を行って、配偶者の加入の道は講じられてまいりました。しかし、成績、現状は決して芳しいものではないわけでありますが、これなどは、タイミングとしては少し遅きに失したなというふうに言わざるを得ないと思います。
農業経営に果たす女性の役割とかあるいは重要性、こういった問題については、とうに若い後継者が不足をしているという時代、あるいは三ちゃん農業なんというふうに言われた時代に既に始まっているわけでありますから、加入者が減少傾向を始めた、先ほど申し上げましたが、いわゆる昭和五十年代にこういった門戸を開くべきではなかったかな、こんな思いをしているわけであります。
平成八年から農業者年金の中に配偶者を加えるというふうにしたわけでありますが、そのころは、もう既に農業者年金制度そのものが色あせて魅力を失いかけておったというか、失っておったというふうに申し上げてもいいわけでありますが、そういうときに加入の道を講じても、入る人というのはごく限られてしまうのではないか。該当者に対して五%ぐらいの加入率だということなども、そういう結果を如実にあらわしているのではなかろうかなというふうに思うわけであります。
しかし、これは遅きに失したとはいっても、女性層に対して、男女共同参画社会というものの到来であるとか、あるいは農業従事者の過半数を占めるという現状から見て、積極的に勧誘を促進していくべきだというふうに思います。
そのためには、特別な手だてというか工夫を講じていく必要もあろうかなというふうに思うわけでありますが、どのような方策として女性の加入というものをお考えになっておられるか、お伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X02519990728/8
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009・渡辺好明
○渡辺(好)政府委員 日本の農業生産の六割は女性が支えているという現状を踏まえますと、やはり年金制度の中でも女性をきちんと位置づけし、そのシェアを高くしていくということが必要だろうと思っております。
現況、二十九万人の加入者に対して、女性の加入は一万六千人という状況でございます。これは、農地の名義等を持たれて経営者として加入されている方が大半であります。今先生から御指摘がありましたように、平成八年度から、家族協定において、経営者として、共同のパートナーとして、配偶者が入る道を開きました。その中で、八年度に千六百二十三人が加入され、現在まで合計で三千三百三十人の配偶者の方々が新規に加入をされているわけであります。
この数字は、私自身も大きい数字だとは思っておりません。今後、この実施機関であります農業者年金基金やJA、農業委員会とも一緒になりまして、家族協定自身が普及をしませんと年金加入ということになりませんので、そういう点で各種のPR、加入促進をしたいと思っております。
それから、現場からたくさんの声が今出ております。こういう声も研究会の中に紹介をしながら、次の財政再計算のときにどういったことが女性に関連をして手当てができるかということを研究していきたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X02519990728/9
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010・熊谷市雄
○熊谷(市)委員 時間も少なくなってまいりましたので、最後に、大臣にもう一つお尋ねいたしたいと思います。
今、政府としても、先ほど大臣がお話しになられましたように、農業者年金制度の現状見直しのために、研究会というものを立ち上げて検討が加えられております。この秋口ごろまでには検討の結果を取りまとめられる計画のようでありますが、既に我が党としても、農業者年金問題小委員会というものを設置して検討に入っております。
けさほども今までの論点整理というものを行ったところでありますが、事この農業者年金制度は難問、難題が山積しております。二十一世紀に向けて、食料、農業、農村のあるべき方向というものを基本法によって示し、国会において決定を見、新たな認識と決意を持って理念と目標を達成すべく、政策の展開というものをスタートさせるという方針を内外に表明したわけであります。
そのためにも、農業の現場にしっかりした担い手を定着させるということが基本的な要件であると思いますし、農業者年金制度というものは、さらに新しい時代に適応したものとして一層充実を図っていかなければならない、このように考えるわけでありますが、農業者年金制度の見直しに向けた大臣の決意のほどをお聞かせいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X02519990728/10
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011・中川昭一
○中川国務大臣 農業者年金制度の目的といいましょうか、老後の安定した生活、あるいはまた構造政策としての位置づけというものは、新しい基本法がスタートした後の農政の中でもやはり重要な問題、ポイントであるというふうに考えております。
政策年金という位置づけをどうするかということも含めまして、抜本的な制度のあり方等につきまして今改革をしていかなければならないという認識のもとで、当委員会での御議論もきょう承りまして、そして、先ほど申し上げました農業者年金制度研究会で今年の十一月中をめどに取りまとめをいたしまして、次期通常国会に提出をしたいというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X02519990728/11
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012・熊谷市雄
○熊谷(市)委員 今、大臣の考え方、決意というものを伺わせていただきましたが、ぜひひとつ前向きの姿勢というか、受け身の姿勢じゃなくて、政府がこの農業者年金制度というものをつくり上げていく主導的な役割というか、そういう形で積極的に取り組まれるように御要望申し上げたいと思います。
言うならば、農業者年金制度そのものが今日の事態を迎えたということは、農業そのものがそれだけ追い詰められた結果によるものである、その縮図として農業者年金制度の問題も内蔵している、そういうふうに理解をしなければならないわけであります。要は、農業者に所得があって、そして将来いろいろ魅力ある農業としての要件が備われば、年金制度も自然にいい方向に、本質的な解決というものに向かっていくことができるのではなかろうかな、こんな思いがするわけであります。
今、大臣が申されたように、新しい一つの基本法の理念に従って見直しの抜本的な案を提案するというお話のようでありますから、この制度というものが本当に農業者のために歓迎されるような、そして将来の展望につながるような、そういう制度になるようにぜひ取り組んでいただきたい。
我々も自分の問題として真剣にこの問題と取り組んでいく、そういう考えなども披瀝をさせていただいて、時間になりましたので質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X02519990728/12
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013・穂積良行
○穂積委員長 次に、堀込征雄君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X02519990728/13
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014・堀込征雄
○堀込委員 農業者年金基金法の法律に入る前に、若干の質問をさせていただきます。
と申しますのは、農業構造改善事業に関する調査委員会の調査結果の中間報告というものが出ておりますので、法案に入る前にこの問題に触れさせていただきます。
この問題は、構造改善事業、そして山村振興事業の実施をめぐって、担当職員が事前に情報を漏らしたとか、あるいは意図的な事業採択を行っている、こういう投書が寄せられ、設置をされて調査を行ったということでございますが、この調査委員会設置の経過、問題意識等について、構造改善局長、責任者のようでございますので、答弁をお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X02519990728/14
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015・渡辺好明
○渡辺(好)政府委員 構造改善事業をめぐりまして、近年、構造改善事業の箇所づけを職員が事前に市町村に知らせコンサルタントをあっせんしているといった投書などがございました。こうした事実関係につきまして確認を行うとともに、事業の執行体制の適正化を図るために、本年の一月、農林水産省訓令に基づきまして、農業構造改善事業に関する調査委員会を設けたところでございます。
委員会におきましては関係者延べ三十五人のヒアリングを行いまして、その結果を去る二月十九日に中間報告として取りまとめをしたところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X02519990728/15
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016・堀込征雄
○堀込委員 投書が発端になって調査委員会を設置していろいろ調べた。あり得べしと思ったから調査委員会を設置したのか、あるいは、まあそんなことはないだろうけれども調査してみようということで調査をしたのか、両方あるのだろうと思いますが、これは二月十九日に中間報告がなされているのですが、公表が七月五日まで延ばされている理由は何ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X02519990728/16
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017・中川昭一
○中川国務大臣 調査委員会で調べるため訓令が出たわけでありますけれども、それについては、別に公開をしないということではなくて、公開扱いにいたしました。しかし、こちらから積極的に公開をしたということでなくて、聞かれればお答えをするという程度のものでございました。しかし、現代におきましては、情報公開という趣旨はそういうものではないでしょうということで、しかも一部マスコミの報道で公の知るところになったわけでございますので、公開を前提にした一つの行政措置でございますから、公開を決めた以上はこちらからもう積極的にやるべきではないかということで、今後はこういう事例があった場合には、この事例に当てはめますならば、二月十九日に中間報告を決定した時点で公にするというやり方に変えさせることにいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X02519990728/17
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018・堀込征雄
○堀込委員 その点は了解をいたします。
それで、調査委員会の調査結果を見ますと、例えば地区認定の予算決定前の事前連絡の問題についてでありますが、聞き取り調査の結果では、事実を主張したのは一名のみである、それ以外、大多数は、そういう事実はなかった、こういうふうに結論づけて調査結果には書いてあるわけです。事実は結局あったんですか、なかったんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X02519990728/18
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019・渡辺好明
○渡辺(好)政府委員 関係者の聞き取り調査を行った範囲内では、そのような行為を行っていた者がいるという事実を主張した方が一名おりましたけれども、それ以外の大多数の者はこの事実を否定しておりまして、地区認定について予算決定前に事前連絡を行ったという事実は確認できませんでした。
しかし、委員会の調査の結果、事業の地区認定についての基準が不透明であるということなど、見直しをすべき点があるということから、今後の構造改善事業の実施については、地区認定や事業費配分の基準の明確化、第三者委員会の設置等によって適切かつ円滑な事業の実施を図ることとしたところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X02519990728/19
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020・堀込征雄
○堀込委員 この調査結果を見ますと、なかなか役所の中のことでわかりにくいことが多いのですけれども、恣意的な新規採択及び予算配分の問題、これについては特定の者の意向が強く働いていた、こういう証言もあった。また、班長行政と言われるように、担当課長補佐の意向が強く働いていたという指摘があるのですね。これはどういうことなのか。班長行政、つまり、今日まで構造改善事業の新規採択や予算配分は大体課長補佐の意向と裁量で行われた、こういうふうに読めるのですが、これはそういうことなんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X02519990728/20
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021・渡辺好明
○渡辺(好)政府委員 いわゆる班長行政につきましては、農業構造改善事業の執行に当たりまして事業に関する専門的な知識や経験が必要とされておりますが、他方で事業地区の認定や事業費の配分について基準が不透明な点があったということから、いわば専門的知識と経験を備えた担当補佐の裁量によって事業の執行が行われ得る余地があったということを示しているのではないかと考えております。
こういうふうな状況の中で、職員が二手に分かれて中傷を行ったりしたということで円滑な事務の執行が妨げられるようになったということは、極めて遺憾なことと言わざるを得ません。
こういう状況を踏まえまして、農業構造改善事業という極めて限定をされた分野で長期にわたって専門的な知識や経験に着目した人事を行うことが、専門家を育成するという点でのメリットはありますけれども、他方で人事の固定や職員同士の反目、事業の円滑な執行の阻害の懸念、そういう反省に立ちまして、公正で円滑な事業の推進と組織の活性化を図るために他の専門分野との大幅な人事交流を実施したところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X02519990728/21
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022・堀込征雄
○堀込委員 それから、コンサルタントのあっせんの問題も書かれているのです。あるいはさらには公益法人のコンサルタント活動についても指摘をされておりまして、ぜひ透明、公正な行政を行ってほしいと思うわけであります。
もう一点、執行体制の問題に触れておりまして、構造改善事業に携わる職員が二手に分かれて対立し、互いに中傷し合ってきた、したがって円滑な事務の執行が妨げられてきた、こうあるのですが、これはどういうことなんでしょうか。今まで構造改善局内部では職員が二手に分かれて派閥争いをやっていて、県や市町村や国民に迷惑をかけてきた事実があった、これはこういうことなんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X02519990728/22
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023・渡辺好明
○渡辺(好)政府委員 先ほどお話し申し上げましたように、専門的な知識や経験に着目をして専門家を育成するということにこれまでどちらかといえば努めてきたわけでございますけれども、その人事の固定化が内部での確執を呼んだということでございまして、構造改善事業にかかわる職員間の対立、中傷等について、今回のケースでいえば職員が二つのグループに分かれて事業の進め方について対立をした、あるいは民間団体等外部に対して相手方についての中傷を行ったということが組織の活性化と事務の円滑な遂行を妨げられるようになったというふうに感じられるわけでございまして、その点については極めて遺憾なことだと考えております。
そういう点に立ちまして、先ほど申し上げましたように、他の専門分野との大幅な人事交流を実施したところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X02519990728/23
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024・堀込征雄
○堀込委員 まあ、そういう問題が起こる素地が今までの中にはあった、したがって人事交流をしたりいろいろな対応を講じたところである、こういうことであります。
先ほども、大臣から行政の公開について決意といいますかそういう姿勢が述べられて安心はしているわけでありますが、この調査委員会の今後の対応、例えば服務関係について見ますと、組織の中で仕事を推進するに当たり、感情のもつれ等から相手方を徹底的に批判することや外部に対してざん言する等の行為は行政組織としての機能を十分果たせなくなり混乱を招くことになる、こう言っているのですね。だから、ちょっと私はこの点は心配するんですが、やはり開かれた透明な行政であるべきだ、しかし、これから問題が起こっても外部へ漏らしちゃいけませんよみたいな報告とも読み取れるのですが、そこのところはいかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X02519990728/24
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025・渡辺好明
○渡辺(好)政府委員 事業の執行体制全体の問題でございまして、私どもは、今回の委員会の中間報告を経まして、予算の執行につきましても、コンサルのあっせんにつきましても、また公益法人の受注の問題につきましても、もろもろ改善を行っております。とりわけ事業の実施に当たっては、その透明性、公開性を高めるということで第三者の委員会も設定をいたしますし、それから、採択や地区名の公表、配分、手続等につきましても、速やかに公開、透明性を持った体制で進めるというふうにいたしております。
個別の事象もさることながら、執行体制全般がそういうふうに国民の前に開かれた形になるということが、今回の反省の上に立って、必ずや事業実施にいい影響を及ぼすというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X02519990728/25
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026・堀込征雄
○堀込委員 この問題ばかり触れているわけにいきませんが、最後に大臣にちょっと伺っておきたいのですが、私は、意外と根っこの深い根本的な問題を含んでいるんだろうと思うわけです。
と申しますのは、よく政官業の癒着とかいろいろ言われますけれども、今、この調査委員会の中間報告にあるように、何か派閥争いがあるとか人事争いの話じゃなくて、日本の行政システム全体が、そういう起こり得る素地というか、起こり得る仕組みといいますか、そういうものがなきにしもあらずだったのだろう。やはりそういう仕組みも変えながら全体の行政のシステムを変えていく、あるいは細かな箇所づけを中央省庁でやる必要があるのかどうかというような議論を含めて、地方分権推進法も成立をしたわけでありますけれども、大きな流れの中でやはり変えていくという問題意識が必要なのじゃないか。あくまでこの中間報告は、この事象に限っての問題でありますが、私は底流にはそういう問題があるのだろう、こういうふうに思いますので、ぜひそういう意味合いにおいて、これからの行政システムの改革について大臣の見解を伺っておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X02519990728/26
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027・中川昭一
○中川国務大臣 これは主に市町村がやる事業でございまして、ニーズもまた効果も非常に大きいものでございますが、こういう出来事があった後でございますので、その後、第三者委員会で、事業の地区認定についての基準の設定、公表等、事業手続の改善につき意見を聞きまして、四月以降、適正化、透明化の措置を講じております。
また、新しい基本法の趣旨も受けまして、抜本的に見直しを行い、担い手となる経営体育成を目的とした新たな対策を講じていきたいと考えております。そのために現在、新たな経営構造対策研究会で、学識経験者などの方々の御意見を聞きながら、地区認定、配分基準の設定、個別地区の計画等についての情報公開、それからその策定と達成状況の評価といった手続を重点にして事業の適正を期していきたいと考えております。
なお、省内におきましては、やはりプロの技術者の人々でございますから、優秀で、一生懸命やっておりますけれども、やはりそのプロ集団がずっと長い間同じところで同じようなことをやっていると、どうしてもなれとか、あるいは緊張感がなくなるということもございますので、人事交流、あるいはまた省内での外部からのチェックといったことも含めて、省内体制もこの際、刺激的、緊張感のあるものにしていかなければならないということで、私自身そのことを強く認識しながら、この問題に当たっていきたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X02519990728/27
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028・堀込征雄
○堀込委員 ぜひひとつそういう方向で努力をいただきたいと思います。
本論の法案の方の、農業者年金基金法の質問に入らせていただきます。
今回の法案は、平成十二、十三年度の保険料を平成十一年度の保険料に据え置く、同額とするものでありまして、これにつきましては、厚生年金等の保険料が凍結される、その横並びだ、その措置をとるんだということであります。
そこで問題は、いよいよ厚生年金を初め共済年金の年金制度改正の関連法案が閣議決定をされまして、国会審議の俎上にのぼろうとしている。この中身を見ますと、厚生年金の報酬比例部分、この支給開始年齢を、二〇一三年から二〇二五年にかけて三年に一歳ずつ引き上げて六十五歳にする。また、給付の水準につきましても、二〇〇四年支給以降の人は五%下げる。あるいは二〇〇三年から、保険料はボーナスを含めて、今も一部入っているんですが、総報酬制にするというような内容も入っていますし、その後、基礎年金の、税にするのか、国庫補助を二分の一にするのかというような議論もまだあるようでありまして、そういう意味で、非常に大きな改革法案が今閣議決定をされて国会審議の俎上にのぼろうとしている。
当然、農業者年金も、これにあわせて制度研究会をつくって議論をされているようでありますけれども、今回の厚生年金、共済年金の改正関連法案、これは農業者年金にどういうような影響を与えてくるのでしょうか。当然、支給開始年齢や保険料の水準について影響されてくるのだろう、こういうふうに思いますが、今の段階でどういう見通しをされておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X02519990728/28
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029・渡辺好明
○渡辺(好)政府委員 今回、法律案を提出させていただきました趣旨はよく御承知のことと思いますけれども、保険料といいますか、負担の面においてある種の公的年金間のバランス感といいますか、それに配慮をした改正ということでございます。
一方、制度の抜本的な見直しという問題につきましては、御案内のとおり、農業者年金は、御指摘の国民年金や厚生年金とちょうど財政再計算に一年おくれてスタートすることになっております。従来も一年おくれで財政再計算をし、制度改正を行っているという実情でございます。
また、農業者年金の目的といいますか趣旨といいますか、そういう事柄につきましては、先ほどの熊谷先生の御質疑にもございましたけれども、政策年金として行われている部分がかなり大きな部分を占めております。年金の支給要件であるとか成熟度であるとか国庫助成の仕組みも、他の年金と大きく異なっておりますので、年金単価の設定等におきましては厚生年金等の改正状況を踏まえて、参考にしながら見直しを行う部分もあるとは思いますけれども、制度全体が国民年金や厚生年金の改革にすべて引っ張られるということでは必ずしもないと思っております。
いずれにいたしましても、平成十二年が財政再計算の年でございますので、抜本的な制度の見直しを行うべく現在研究会で御議論を賜っているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X02519990728/29
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030・堀込征雄
○堀込委員 そういうことなんでしょうが、私ども、あるいは加入者もそうでありましょうが、農業者年金というのは本当に維持していけるんだろうかという不安を持っていることは事実であります。日本の社会保障制度は、今年金の話もありますが、医療制度を含めて抜本改革を迫られておりますし、世代間の公平性を確保しながら、年金についてなら、例えば基礎年金について税方式の導入論まであるわけでありまして、さらには来年四月からの介護保険の導入もある。まさに大きな曲がり角、大きな変革期にある、大きな変革を遂げなければ制度自体が存続しない、そういう事態に直面していると思うわけであります。
農業者年金につきましては、制度発足の当初から、社会保障制度としてのあり方としては疑念が持たれておったわけでありまして、後で触れますけれども、政策年金といいますか、農業政策上の有効性、そして、年金制度としての社会的妥当性だとか財政的な健全性については未解明である、ちゃんとはっきりしなさいよということは、実は、社会保障制度審議会で再三厳しい指摘がなされてきたところであります。
例えば、平成七年の二月二十四日に、社会保障制度審議会の答申で農業者年金については触れているわけでありますが、「近い将来年金財政上ゆゆしい事態が生ずることは必至とみられる」「その農業政策上の有効性、年金制度としての社会的妥当性、財政的健全性について繰り返し再検討を求めてきたが、いまだこれらの諸点に関して何ら解明されていない。他の公的年金制度と比べ異例といえる多額の国庫負担の投入により収支の均衡を図らざるを得ない状態となっていることにもかんがみ、制度の根本的な検討を行うことを再度強く要望しておきたい。」こういう社会保障制度審議会の指摘があるわけであります。
こうした厳しい見直しの流れの中で、農業者年金というのは、社会の同意や賛同を得てこのままこの制度を維持していけるんだろうかという不安を実は持つわけでありまして、こうした制度全体について、今のような流れの中で、例えば厚生年金基金との統合とか、いろいろな議論も出てくるんじゃないかということを私は心配するわけであります。
そういう意味で、この制度の将来的な維持について、大臣の所見を伺っておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X02519990728/30
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031・中川昭一
○中川国務大臣 先生もちょっとお触れになりましたけれども、この年金制度というのは、農業者の老後、リタイアした後の生活を守るための金銭的な支援措置であると同時に、構造政策として、若返り、特にこの新しい基本法のもとでは、意欲ある経営体というものを一つのポイントに置いておりますけれども、そういう意味、さらには、農地が無秩序に分散、細分化されていくということを防ぐ、むしろ経営拡大のための誘導施策という位置づけもあるわけでございますから、文字どおり、そういう意味で農業政策上の構造政策を進める上の一つの方策であるという位置づけであり、その意義は果たしてまいりましたし、これからも必要であろうというふうに考えております。
しかし、御指摘のとおり、財政上の問題もございますし、また、年金制度としてはという御指摘もあるわけでございますし、何よりも、受給者の方はふえていくけれども加入者の方が減少傾向にあるという成熟度の問題等々ございます。そういうことで、この問題等々、抜本的な問題を含めましていろいろ問題があると思います。
そういう意味で、先ほどから何回も申し上げて恐縮でございますが、今村先生を座長とする農業者年金制度研究会で、抜本的な面からひとつこのあり方について研究をして、成果を出していただきたいというふうに今お願いをして、検討していただいているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X02519990728/31
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032・堀込征雄
○堀込委員 私が申し上げましたのは、この我が国の農業者年金制度導入のときに、実は、ドイツやフランスの農業者基金制度が参考とされた。
例えば、八九年、九二年、相前後して、フランスの農業者年金制度では、農業構造改善や農産物の過剰対策を目的として、無拠出で全額国庫補助の政策年金制度を設けられた。ドイツでも、当時のECの農産物の過剰状況を反映して、経営移譲とともに、植林や景観作物の植栽を含む、休耕による生産中止を目的とした生産中止年金というのが時限立法として設けられた経過があると聞いております。
しかし、これも、八九年に設けられたが、九六年の申請で廃止されている。フランスでも、九二年に設けられ、十分にその役割を果たしたということで九七年に廃止されているというふうに伺っておるわけでありまして、我が国が農業者年金導入のときに参考にした諸国で、実は、もうその役割は終わったんだということで廃止の動きもあるというようなことであります。
そういう状況を考えまして、ドイツ、フランスの制度の変遷を見ますと、何か我が国もそうなってくるのじゃないかなということを危惧するわけでありまして、この辺は、どうでしょうか、参考にされたりして影響が出てくるとお考えでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X02519990728/32
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033・渡辺好明
○渡辺(好)政府委員 御指摘がございましたとおり、フランスやドイツでは、農業者に対する年金としては二重の制度がとられてきたいきさつがございます。拠出制の農業者年金制度と、無拠出制の構造政策年金、こういう形になっております。
それで、このうち、老後保障を目的とする拠出制の農業者年金制度につきましては、両国とも、財政の安定化措置等々について見直しが行われてきておりますけれども、現在でも存続をしております。
御指摘ありましたように、無拠出の構造政策年金につきましては、時限措置ということで、財政上の理由等もございまして現在はいずれも廃止という状況でありますけれども、では同じ道を日本も歩むのかということと、それから、いや、まだ日本の構造政策の進展は十分ではないという考え方もあるわけでございます。
とりわけ、日本では、例えば規模拡大の成熟度がまだまだフランス、ドイツに比べれば一定のレベルに達していないというふうな例に見られますように、農業構造自身が大きく異なっておりますので、ドイツやフランスにおける措置をそのまま日本の制度に反映させるということは難しいと思っております。
ただ、加入者が減少してきているというふうな類似点もございますので、制度改正全般の中で、参考にできる点につきましては十分にそれをしんしゃくするということで臨みたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X02519990728/33
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034・堀込征雄
○堀込委員 農業者年金制度は、再三答弁ございましたように、農業経営の若返りだとか、農地等の細分化の防止だとか、経営規模の拡大、優秀な農業経営者の確保という構造政策の推進に資するための政策年金の側面があるんだ、そして二つ目には農業者に対する社会保障年金という、二つの目的を持った制度である、これはもう先ほど来繰り返し議論されて、答弁されているところであります。
しかし、このことをよく考えますと、つまり制度自体が、年金財政の面から見ると、そもそもの矛盾を抱えている。
離農を促進して規模拡大と経営の近代化を図る、こういうプロセスが一つある。これは、同時に、保険料の支払い者の減少を促進する過程になるわけでありまして、そういう意味では、効率的で安定的な経営体の創出、新規就農者の確保のための構造政策が実を結んでいく。そして、被保険者と受給権者のバランスがとれてくるまでの間、これはやはり、成熟度がどんどん上昇しますから、年金財政上、何らかの措置も必要になってくるんだろう。そういうものを本来この制度は持っているものなんだろう、こういうふうに思うんです。
それにしても、平成七年の財政再計算、前回の再計算ですね、この見通しでは、平成三十七年度、二〇二五年にようやく成熟度が六〇%だ、平成四十二年度、二〇三〇年度に四〇%になってくるんだろうという計算を立てているわけであります。
この財政再計算の見通しでは、平成十七年度以降は、そういう意味で、今申し上げましたような二つの側面を掲げながらも単年度収支は均衡してくるのだ、そして、平成三十一年ごろ単年度収支でも黒字の見通しになってくるのですよ、こういう見通しを立てているわけですね。これは、今、平成七年の財政再計算の見通しよりも、成熟度が二五五%になっちゃって、少し計算が狂っているのだろうと思いますが。この見通しは今日どうなんでしょうか、まだ有効性を持っている、このまま多分いけるだろう、こういう確信を持っていますか、いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X02519990728/34
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035・渡辺好明
○渡辺(好)政府委員 その点につきましては、率直に申し上げまして、見通しの実現は相当困難であるというふうに私は思います。
御指摘ありましたように、平成十七年度単年度収支均衡、平成三十一年度黒字ということでございますけれども、現在の実績を見ますと、新規加入者数、保険料納付率、経営移譲率、運用利回りといったそれぞれの分野におきまして、大きく見通しと実績が乖離をしております。新規加入者一万二千人と見ましたものが二千六百人、保険料納付率も八九%が実際には七七%でございます。そして運用利回りも、五・五%と見ましたけれども現状二・五%ということでございまして、万般いろいろな促進策を講じてはおりますけれども、乖離は年々拡大をする傾向にございます。
将来の財政状況の改善が予定どおり行われるということは相当困難な状況と言わざるを得ません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X02519990728/35
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036・堀込征雄
○堀込委員 そういうわけで、平成七年の再計算の見通しがもうほとんど難しくなっている、こういう答弁があったわけであります。
そこで、財政問題、少し今回の法改正を含めてただしておきたいわけであります。
後継者の減少によって被保険者数が減少している、あるいは、高齢化の進展によって受給権者が拡大している。平成元年以降、受給権者が被保険者を上回るという状態が続いている。しかもその格差が徐々に拡大をして、平成十年度末の成熟度が二五五%になっている。今や加入者一人で二・五人を農業者年金というのは支えている、こういう状況になっているわけであります。
そして、財政も、昭和六十一年以降単年度赤字に陥ったのですかね、多分そうだと思うのですが。平成二年の法改正で保険料の引き上げ、そして追加国庫補助が行われてきましたけれども、平成八年度以降、また実は単年度収支の赤字が拡大をしている。平成十年度は三百九十四億円の赤字、こうなっているわけでありまして、基金の資産を大幅に取り崩さなければならぬ、こういう事態になっている。
そこで、今回の法案で平成十三年度まで保険料を据え置くわけですが、これはどういう影響を与えるのでしょうか。再計算見通しにさらに大きな影響になるのかという点が一つ。
それから、今もちょっと答弁がありましたが、運用利回りの問題ですね。農業者年金の運用利回り、前回再計算、平成七年でありますが、五・五%だ。しかし、平成七年の運用利回り実績が三・八六九%ですか、平成十年度が二・四九〇%。今回、国民年金の財政再計算の前提としての運用利回りが四%でありますから、これも、まあ今ちょっと答弁で触れられましたけれども、見直さなければならぬという非常に大きな要素になっている。
そのほか、ちょっと、農業者年金にとっては事情のよくない悪条件が幾つか重なっていると思うのですけれども、そういう中で、年金財政の見通し、特に、今申し上げた点などについての考え方をちょっと聞かせてください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X02519990728/36
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037・渡辺好明
○渡辺(好)政府委員 それぞれ、今先生から御指摘がありました数字は、すべて、私どもも、この財政再計算のときの財政バランスという点では非常に大きな負担になる問題でございます。
そういう状況も踏まえまして、現況では、老齢年金部分以外に、経営移譲に係る部分については、相当多額の国庫の負担をいたしております。国庫の負担をどうするか、それから収支バランスをどう見通すか、さらにはこの年金のタイプ自身をどういう型のものに持っていくかという点も含めまして、とにかく抜本的な見直しを秋までにはやって、次の財政再計算のときには、それを皆さん方から御意見をちょうだいしながら再構築をするという方向で臨まざるを得ない、そこまで事態は来ていると考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X02519990728/37
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038・堀込征雄
○堀込委員 非常に大変な事態になっているという認識が示されたわけでありまして、抜本的な対応が必要だということであります。
そこで、政策年金としての農業者年金、つまり経営移譲年金という制度があるわけでありまして、この評価は、今までの答弁では、ちゃんとした役割を果たしてきたんだ、こういうふうに評価をされているわけでありますが、この農業者年金制度のうち、経営移譲年金につきましては実は二分の一相当額について国の助成がある。さらに、平成七年の法改正で、平成八年から平成十二年までの間は追加国庫補助が行われているわけであります。この結果、経営移譲年金はほぼ全額が国庫補助で行われている、こういう実態になっているわけですね。平成十年度は、千四百四十億円収入があって、八百二十五億円が実は国庫補助、こういう実態になっているわけです。
この国庫補助という問題は、経営移譲を通じて、農業の近代化だとか農地保有の合理化が図られる、そして農業構造の改善に資する、こういう観点から実は行われているわけでありまして、今まで、構造政策を推進する政策年金としての役割を果たしてきた、こういう答弁があったわけであります。
しかし、例えば、農地の細分化防止、規模拡大について言うならば、北海道を別にしまして、都府県では依然として零細性は解消されていない、こういうデータがあるわけでありまして、昭和三十五年、戸当たり〇・八ヘクタールですか、平成九年でも一・二ヘクタールだ、こういう実態があるわけであります。それから、経営移譲率につきましても年々低下、減少をたどっている。平成十年度の経営移譲率が六九・二%ですか、こういう状態になっている。それから、経営主体の若返りは実現できたか。これは、農業労働力が急速に高齢化しているせいもありますけれども、基幹的農業従事者のうち、実は六十五歳以上が全体の四割を占めている。三十九歳以下の新規就農者は九万七千人、こういう実態にあるわけであります。
私は、これはいろいろな研究会だとか、あるいは先ほどの社会保障制度審議会の答申ではありませんけれども、もっと外からの議論にさらされた場合、本当に政策的な効果を上げてきたのかどうか、一体どこに問題があったのか、もう少しやはりはっきりしておく、議論立てといいますか、論陣を張る必要があるのではないか、こういうふうに思いますが、今の経営移譲年金の政策年金としての評価、そしてこれからの対応について、考え方があったら聞かせてください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X02519990728/38
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039・渡辺好明
○渡辺(好)政府委員 数点御質問があったわけでございます。ちょっとその前に、数字にわたることにつきまして実績が出ておりますので。
平成十年度でありますが、国庫助成は七百六十九億円、それに対しまして経営移譲年金として支出をされましたのが七百六十七億円でございますので、先生がおっしゃったとおり、実質的には全額国庫ということでございます。
これまでの評価について言えば、経営移譲年金の給付が始まりました五十一年以降、八十五万件、百六十九万ヘクタールの経営移譲が行われているわけでございますので、その中で、後継者の平均年齢は三十五歳、それから、七十七万件の後継者移譲がございまして、その結果、百五十四万ヘクタールの農地が細分化をされずに済んだ。ですから、これは細分化をするのを防いできた役割がある。さらに、第三者移譲と離農給付金を合わせますと、現在動いております農地の権利移動の一〇%はこの年金制度を通じて行われているという実績もあるわけでございます。
ただ、他方で、今先生がおっしゃいましたように、高齢化も進みますし担い手も不足をしている、それから、規模拡大は平均的に見れば進んでいない。確かに、三ヘクタール以上層が二十数%の農地を所有するというふうに一定の進展は見せておりますけれども、平均すればそのような状況でございます。
今回新しい基本法も成立、公布をいたしましたので、その基本法の趣旨にのっとりまして、望ましい農業構造をどのような形で実現していくか、その一助としての、その一要素としての農業者年金という立場からこの年金制度全般について抜本的な見直しをしたいと思っているわけでございます。とりわけ、現在の農業者年金というのが経営主体にとりまして生涯所得の一部分を形成しているという重要なものでございますので、この部分が弱くなりますと、経営の承継という点で、次の世代に円滑に経営を渡していくという点でやはりマイナスの影響が生ずるおそれもございますので、新しい基本法のもとでこの制度全般につきまして抜本的な見直しをしたいと考えている次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X02519990728/39
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040・堀込征雄
○堀込委員 いろいろ検討しなきゃならぬことはあるんですが、今の経営移譲率の低下の問題ですね。私は、経営移譲が円滑に行われる、そして、日本の農業構造がさらに改革をされて後継者にきちんと渡されていく、規模拡大が図られていく、そういう政策があって、農業者年金の果たす役割が果たされて初めて国庫補助というものが理解をされていくんだろう、国民的な同意を得られていくんだろうと思うんです。
経営移譲率が低下しているというのは、そういう意味で農業者年金にとっては非常にやはり問題になることなんだろうというふうに思うわけでありますが、この要因、ただいま説明もありましたけれども、どういうふうに考えておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X02519990728/40
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041・渡辺好明
○渡辺(好)政府委員 二つあろうかと思うわけでございます。大きく二つというのは、一つは、相手先が見つからないということなんだろうと思います。それからもう一つは、元気でまだまだ働きたいという、社会全般が高齢化をしてきたということとの関連なんだろうと思います。
相手先が見つからないというのは、私たちの農業者年金制度の方の、ある意味で言えば、制度の運用なりPRに多少欠ける点もございます。つまり、相手先をどういうふうにして見つけていくか、相手先は特定の者だけに限られるのか、いろいろなところがあるのではないかというふうなことをもう少し浸透させればそれが進むということも考えられますので、今回見直し作業をしているわけでございますけれども、どのように円滑に経営を移譲していくか、また、そのことをどのように農業者の方々におわかりいただけるかというふうな、わかりやすい制度に仕組み直しを考えたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X02519990728/41
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042・堀込征雄
○堀込委員 実態はそうだと思うんですね。相手先がなかったり、まだ働きたい、こういう意欲があるために経営移譲がなかなか進まない、こういう実態がある、そのとおりだと思います。
それから、経営移譲の相手方を見ますと、サラリーマン後継者への移譲が過半数を超えているわけですね。これもやむを得ない側面があることは私も百も承知しているんです。しかし、果たしてサラリーマン後継者への経営移譲が、国庫助成で農業者年金をそこまでやる必要があるのかどうかという議論が起こる可能性なしとはしないと思うんです。
ですから、そういう議論が当然起こってくるというふうに考えられるわけでして、それに対して、いや将来農業を担うサラリーマン、こうですよという理論的な説明がきちんとできるようにしておく必要がやはりあるんだろうと思いますが、その辺はどういう論拠立て、説明をしておるんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X02519990728/42
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043・渡辺好明
○渡辺(好)政府委員 いわゆるサラリーマン後継者というのは、国民年金第一号被保険者以外の者ということをわかりやすく言いかえるために言っておるわけでございます。
もちろん、今先生おっしゃいましたように、サラリーマン後継者の中には意欲ある農業者と言いがたい者もおりますけれども、経営移譲を契機として農業に専業的に従事をしていくということを予定している方もいらっしゃいますし、収入のどちらが多いかということとの兼ね合いでございますので、必ずしも意欲や能力がないともまた言いがたいわけでございます。
全体的な背景としては、担い手不足をバックグラウンドにしてサラリーマン後継者への移譲が多いわけでございますけれども、今回の制度では、サラリーマン後継者がいる場合であっても、例えば分割移譲というふうな制度もございます。つまり、半分以上を第三者に移譲すれば高い経営移譲年金を受けられるというふうな制度もございますので、そういったことにつきましても十分御説明をして、できるだけ望ましい農業経営構造になっていくような、そういう誘導を図りたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X02519990728/43
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044・堀込征雄
○堀込委員 要するに、経営移譲をして国庫補助を行っていかなきゃこの制度はもたない、その国庫補助を行う場合に、国民的な同意、賛同を得ていかなければならない。要するに、私は、政策年金としての農業者年金、政策目的というものをきちんと国民に理解されるように立てなきゃならぬというふうに思うわけであります。そういう意味で、政策目的として、一体どういう農家をどういうふうに育てるのか、どういう数を育てるのか明確にしないと、なかなか財政支出に対する国民の理解が得られない、こう思うんです。
新基本法とか農政プログラムでその辺はさまざま書いているんですけれども、長い文章の中の何かじゃなくて、要するに、政策目標として、日本の農家の経営体をこういう規模の農家をこういうふうにやるんですよ、これはもう農業者年金でやっていかないと育たないんですよ、これは国家にとって大切なことなんですよということをきちんと、もう少しわかりやすくする必要があるんだろうと思います。要するに、政策目標をきちんと置く、だれを対象に、どういう層を対象にこの制度を維持しようとするかということをきちんとしておく必要があるんだろうというふうに思います。
基本法でもあったりプログラムでもあったり、いろいろなところでいろいろ書いているんですけれども、もうちょっときちんと打ち出す必要があると思うんです。政策目標とかいろいろ明確にして、農業者年金はそのために必要ですよということをする必要があると思いますが、いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X02519990728/44
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045・中川昭一
○中川国務大臣 受給する側から見れば、先ほどから申し上げていますように、リタイア後の生活の糧となる資金、そしてまた生涯所得として他産業並みにするための一つの政策であり、そしてまたそれが、農地の受け手側からすれば、細分化されずにまとまった農地が入ることによりまして規模拡大という農家のメリットにこたえられていくということで、まさに構造政策上もこれは極めて重要だということ。あるいは、農地の有効利用あるいはまた農地の集積さらには意欲ある担い手の育成という面からも、この制度というのは、年金という手法を使った新基本法のもとでの一つのポイントであろうというふうに考えております。
御指摘のとおり、もう少し政策目的を明確にすべきではないかということについては、趣旨としては文字どおりそういう趣旨で合致しておるというふうに理解をしておりますけれども、先生御指摘のような問題点といいましょうか、明確にする必要性があると思っておりますので、先ほどから申し上げております農業者年金制度研究会におきまして、年金制度のあり方そのものも、あるいはまた新基本法のもとでの今後の農業政策面から見たインセンティブといいましょうか、役割というものもきちっと検討していただいて、それが明確に出せるようにひとつ御議論をいただきたいというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X02519990728/45
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046・堀込征雄
○堀込委員 ちょっとここで、制度の見直しに関連して、補完事業のことについても伺っておきたいわけであります。
いろいろ農業者年金も補完事業をやっているわけでありますが、耕作目的の農地の権利移動に占める農業者年金関連の割合ですか、これは、第三者経営移譲と離農給付金による経営移譲を合わせて、この制度発足以来約一〇%とお聞きしているわけであります。一方で、平成九年には権利移動の七〇%以上が貸借による、こういう実態になっております。
また、補完事業で農地等の貸借事業をやっているわけでありますが、経営移譲の相手方が不足しているという実態がある。特に、離島や中山間地域ではそういう実態があるわけでありまして、借り受けとか保全管理がそういうところでは増加傾向にあるわけでありまして、こうした枠組みもやはり実態に合わせて少し見直さないと、いつまでも制度発足からの仕組みでやっておってはいろいろな矛盾が出てくるだろう。
あるいは、基金の補完事業のうちに農地等の買い入れ売り渡し事業あるいは農地等の買い入れ資金の融資事業というのがあるんですけれども、これも、農地保有合理化事業とかスーパーL資金が整備されて、ほとんど実績が最近はないんだというようなことを伺っておるわけでありまして、あれやこれやいろいろあるんですけれども、補完事業全体を見直して実態に合わせていくべき改革を必要としているときに来ているのではないか、こう思いますが、いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X02519990728/46
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047・渡辺好明
○渡辺(好)政府委員 私は、御指摘のとおりだろうと思います。
構造政策年金と銘打っているわけでございますので、これまで構造政策の進展を補完すべき事業を担わせてまいりました。そういう状況の中で、ほかの制度もだんだんに充実をしてきたとか、実績がないとか、あるいは非常に好まれる事業があるとか、状況は大変変わっているわけでございます。
お話ございましたような売買事業などにつきましては、近年は実績がございませんし、逆に貸借関係の事業は、経営移譲の受け手が不足をしている中山間地域等を中心に件数が増加をしているわけでございます。離農給付金につきましても、年間五億円程度の給付で推移というふうな状況にございます。
これらもろもろにつきまして、制度の骨格が変わりますと補完事業についても当然変わってくるというのが私どもの考えでございまして、財政再計算とあわせて行う抜本的な見直しの中では、補完事業の部分も含めて御検討をお願いしているという状況にございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X02519990728/47
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048・堀込征雄
○堀込委員 次に、加入者とか新規加入者が減少しているわけでありまして、この問題について質問したいと思います。
新規加入者は、昭和五十九年を境に一貫して減少傾向が続いているわけであります。これも実は、前回の財政再計算の前年に総務庁が行政監察に基づく勧告を行っているわけでありまして、財政再計算に当たっては、実態に即して新規加入者の推計を行うよう求めている勧告があるわけですね。
総務庁の平成六年七月の勧告では、平成四年に公表された新政策において、十年程度後の予想される農業労働力は平成二年現在の約三分の二程度に減少するとされている、このような状況を踏まえれば、実際の被保険者数は平成二年の財政再計算における推計よりも低く見込まれる、したがって、次期財政再計算に当たっては、実態に即して新規加入者等の推計を行い、その結果を踏まえた保険料等の見直しを行うこと、こういう監察結果がありましたけれども、やはり財政再計算時における見通しと実績の乖離がその後も起こっているわけですね。監察においてこういう勧告が行われたんですけれども。
財政再計算時、平成七年ですが、新規加入者数が平成七年は六千人、八年が八千人、九年度は一万人、平成十二年以降一万六千人が継続的に加入する、こういう前提で再計算されているわけでありますが、実績は、平成七年は三千九百八十三人ですか、平成八年が三千九百六十七人、平成九年度三千四百八十一人。実は、再計算時の見通しとは大幅に狂ってきておる。
これも今研究会をやっているようでありますが、この議事録を見ますと、実は平成二年に新政策を打ち出したんだ、このときは他産業と均衡する中核的な経営体を三十五万とか四十万つくると計算していた、他方で、農業者の年齢構成を考えると年間十万人ずつぐらいリタイアしていくんだろう、そういう期間が十年か十五年続くので、中核になる三十五万ないし四十万の効率的、安定的な経営体が回転していくためには一年間に一万五千人とか二万人の新規参入がなければならない、多分そうなるだろうと思って始めたけれども、どうもそうもいかなかったということを実は、研究会の議事録を読むと、多分農水省でしょうね、事務局が言っているわけでありまして、十年近いタイムラグが生じているんだ、こういうふうに言っているわけであります。
これはどういうふうに見たらいいんでしょうかね。実態が大幅に、平成七年の再計算時からも普通の狂い方ではない狂い方で来ている、こういう実態があるわけでありまして、余り、新政策とかなんとかがあってこういうものを立てなければだめだからということで年金の推計をやると、どうもこういう現象が生じるんじゃないか。やはり年金の再計算というのは、一方で政策があるんだけれども、財政が伴う話というのはもうちょっとシビアにやる必要もあるんじゃないかという印象も持つんですが、この加入者数あるいは新規加入者の減少についてどういう見解をお持ちか、ここでちょっと伺っておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X02519990728/48
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049・渡辺好明
○渡辺(好)政府委員 数字は、先生が御指摘ございましたそのとおりでございます。
平成七年の財政再計算のときに直近の新規加入者数が七千人強あった、それから新規就農者数がやや増加する傾向にあったということも頭にございまして、言ってみると、トレンドの一側面を意欲的に見込んだというのが一番大きい原因だと思います。
それから、農業構造全般の問題として、年間十万人のリタイア、十年で百万人。そして、望ましい農業構造を実現するためには年間一万五千人ぐらいの新規参入者が必要だし、これは可能であるということが根底にあったのも事実だと思っております。そういう点で、現状はそうなっていないということから、相当、新規就農者の数もそうでありますし、新規加入者の数もそうであるということで、大変な乖離が起きているわけでございます。
ただ、それでは、少なくとも新規に加入する方々だけでもしっかり押さえたらどうかということになるわけでございますけれども、その点につきましては、私どもも、農業委員会を通してアンケート調査を行いました。その中で、では何で加入をしないんだということについて、農業者年金に魅力がないという方が四分の一ぐらいいらっしゃる。それから、農業者年金のみならず年金制度全般にわたりまして将来に不安があるというのが二割、それから、保険料の負担が苦しいという方が約一九%、二十年以上加入できるかどうか不安だという方が一六%。こういうところを一つ一つクリアしていかなければならないわけでございますけれども、現状といたしましては、加入促進について、農業委員会やJAを通じながら、その率を引き上げるというふうな努力をいたしております。
さらに、制度全般について、負担の問題、魅力の問題、そういうことにつきましては、次の抜本的な見直しの中で、農業者が、この制度あってこそと思うようなものにするべく再構築をしたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X02519990728/49
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050・堀込征雄
○堀込委員 なかなか深刻な事態だということがわかるわけであります。
それで、これはどうなんでしょうか、そういう努力はする、そして研究会の結果を含めて制度も手直しをしていくということがあるんですが、そうはいっても、今後の加入見通しなり政策の目標というのは一体どういうことになっていくんだろうか。
構造改善事業課が新たな経営構造対策研究会に資料を出していますが、ここでも、やはり年間一万三千ないし五千人の新規就農青年を確保する必要がある、こういう記述をしているわけでありまして、これはやはり、政策年金として農業者年金があるので、どうもこの数字というのは譲れないんだみたいな印象を受けるわけであります。
そういう意味で、効率的、安定的な経営体の目標として、個別経営体、個人で三十五ないし四十万、組織経営体で四、五万を確保するために、どうしても年間一万三千ないし五千人の新規就農者が必要なんだ、こういうことは、もう農水省の考え方として、あるいは願望としてよくわかるんですが、今までの実績を見ると、どうもそうもいかないし、これからもいきそうもないねというような感じを実は持たざるを得ないんですね。
そういう意味で、今後の加入者の見通しというのは、一体これはどういうふうに見たらいいんでしょうか。その辺を一つお聞きしたい。
それから、農地の流動化とか経営規模の拡大を目的として、昭和六十一年にいろいろな制度をいじってきているんですね。加算つき経営移譲年金制度を創設した。それから、特定譲り受け者への移譲と被用者年金被保険者であるサラリーマン後継者への移譲の場合に格差を設けたり、いろいろなことをしてきている。にもかかわらず、新規加入者のうち、九割が任意加入者である、後継者だと。平成十年では、そのうちサラリーマン後継者が六一・四%だ、こうなっているわけでありまして、農業経営の近代化、中核的経営体による効率的、安定的な経営体を確保しよう、それは、個別経営体で三十五万ないし四十万だよ、組織経営体で四、五万だよ、したがって、毎年一万三千ないし五千人は要るんだよ。これは、政策的にはよくわかるんですけれども、なかなか実態として確保していくのは大変なんじゃないかという感じがしますが、どう見ていますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X02519990728/50
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051・渡辺好明
○渡辺(好)政府委員 確かに、計算の上で、必要な新規就農青年が一万三千とか一万五千ということをこれまで私ども申し上げた経緯がございます。また、そのぐらいの方がいらっしゃらないと、日本の農業構造が望ましい状態になっていかないということも考えられるところでございますけれども、一方、青年農業者の就農動向について見ますと、これは明らかに、最近右肩上がりになってきております。御案内と思いますけれども、三十九歳以下の新規就農青年の数は、平成二年を底にいたしまして平成九年まで次第次第に上がって、平成九年では九千七百人という状況にございますし、それから、他産業から、他の分野から農業に就業される方々も大変ふえてきております。新しい基本法のもとで多様な担い手を育成するということを大きな柱にいたしておりまして、多様なルートから幅広く、こういった農業に着業する方々の数はこれからもふえていくだろう、また、そのための施策も強化をしなければいけないと思っております。
そういうふうな全体としてのパイがふえる中で初めて農業者年金に加入をする新規加入者の方々も数がふえ、安定をするということだと私は思いますので、日本の農業構造全体としての新規就農者の確保と、その中で、どれだけ高い歩どまりで農業者年金に入ってもらえるような農業者を支援していくかということに努めなければならない、そういうふうに思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X02519990728/51
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052・堀込征雄
○堀込委員 次に、未加入者の問題でありますが、さっきもちょっと、農業団体等にも努力してもらいながら加入促進してまいりたいという答弁があったんですが、実は、加入資格者三十六万四千人のうち七万人ぐらいが未加入だ。これも、平成八年に会計検査院の決算監査で、長期未加入者が相当数あることを指摘されているんですね。この検査報告では、二十六道府県二百十三市町村のうち、三年以上長期未加入者は二百市町村、二千八百七十人、未徴収保険料相当額は約十一億八千二百三十二万円、こういう指摘がされております。
そのほか、平成六年の総務庁の行政監察に基づく勧告だとか、その後会計検査院からも改善処置要求が出ている。
やはり、この加入促進業務の充実というのは大変大事なことで、いろいろな社会的な批判を浴びないためにも、ちゃんとやる必要があるんだろうと思います。
未加入者の対策はなかなか難しいんだろうということもよくわかります。認定農業者で未加入者のアンケート結果を農水省で出していますが、要するに、保険料負担に比べて余り魅力がないんだという農家の大きな声が一つある。それから、自分が将来二十年以上もこれを掛けていけるかどうか、資格を得るまでやっていけるかどうかという不安などが大きな要因に出ているわけであります。つまり、農業の中核的担い手として位置づけている中核農家ですらそういう感じを持っている。
これはどうなんでしょうか。掛金も二万四百四十円ですか、国民年金の掛金が実は今一万三千三百円ですね。これを夫婦で合わせますと二万六千六百円になるわけでありますから、国民年金と農業者年金の掛金を合わせると年間四十一万程度、保険料をそのぐらい納める必要がある、こういう実態になっている。
農協などの窓口に聞いてみると、なかなかそれを納め切れない人が出てきている。口座落としができないような事態の人すら実は出ているということもお聞きをしているわけでありまして、サラリーマン年金、厚生年金なんかと違って、企業から差し引く制度と違いますからなかなかこれは集めにくい、加入しにくいというのはよくわかるのです。
そういう意味では、これからこの対策をしっかりやると同時に、農業者年金が魅力ある制度、農家にとって入っていてよかったねという制度にするために、今度の改正では抜本的な仕組みを、例えば、これは何年掛けて幾らもらえるかわからぬものだからなかなか入りにくいということがあると思うのですね。
例えば、今民間では、六十歳なり六十五歳まで掛ければ、あと生涯、月額三万円の定額年金があるとか、いろいろな商品、これは農協なんかでも持っているわけですね。そういうのだと非常にわかりやすいわけでして、なかなか農業者年金がわかりにくいがゆえに、あるいは掛金が高いがゆえに入りにくい、農家に魅力がない、こういうような指摘がされているわけですが、この対策、何か考えておるでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X02519990728/52
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053・渡辺好明
○渡辺(好)政府委員 幾つかの御指摘があったわけでございます。とりわけ、中核的農業者も含めまして、農業者御自身が農業者年金に対してどういう思いを抱いているかというアンケートの結果は重く受けとめなければならないと思っております。
その中で、農業者年金に魅力がないという問題、それから保険料負担が苦しい、そして二十年以上加入できるかどうか不安といった事柄は、この制度自身の再構築をするときの非常に大きな検討のポイントだろうと思っております。
それから、わかりにくいという点につきましても、確かに、現在のような物価スライドや所得スライドをするというふうな中で幾らもらえるのかがわからないということと同時に、制度自身の運用が非常に複雑であるということも含めまして、外側からどうもすきっとしないという点はあるわけでございます。
先生御指摘ありましたように、例えば民間の商品ですと給付が確定をしているというふうな商品、これは非常にわかりやすいわけですけれども、では年金の収支バランスを考えたときにそういうやり方ができるのかどうか、あるいは積み立てた分だけでも戻してもらいたいというふうなやり方をとるのか。つまり、積立型をするのか、それとも物価や所得に合わせて、現役の世代がリタイアをした世代の全般にわたっての負担をしていくというふうな仕組みをとるのか。
非常に年金制度全体が高齢化社会の中で、また金利が低いような時代の中で大きな問題点をたくさん抱えておりますので、そういうことの全般にわたりましてこれから深く検討したいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X02519990728/53
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054・堀込征雄
○堀込委員 それで、そういう問題があるわけでありますから、一つは、加入者をふやすために、例えば加入要件の緩和というようなことが検討できないのだろうか。
例えば経営移譲要件、幾つかあるわけでありますが、こういうことを緩和して少し入れる要件を広げる。あるいは二十年という受給期間、これは少し無理かもしれぬ。資格期間、こういうものも検討したり、それから空期間というのがあるのですけれども、これが最高五年まで認められているという実態がありますが、こういうものについて少し、どうせ勤め人になったりまた戻ったりという、こういう時代ですからいろいろあると思いますが、例えばそういうような制度をいじってもう少し入りやすくする、加入要件を緩和する、それでまあまあ入っていこうみたいな制度にする必要があるのではないか、こういうふうに思うのですが、この緩和の問題についてはいかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X02519990728/54
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055・渡辺好明
○渡辺(好)政府委員 これまでも随分いろいろな工夫をしてまいりました。ただ、資格期間として二十年を縮めるということになりますと、それはまた逆に言いますと給付水準の確保のところに行き着いてしまうわけでございます。
そこで、二十年という期間を持ちながら、二十年を達成するために、今先生がおっしゃられた空期間制度、これは、その期間は空ということではなくて、空期間を通算して二十年間というふうに、資格を付与する期間というふうにお考えいただいたらいいと思うのです。
農業者年金に加入をした後被用者年金に移ったときに、その期間をどういうふうに扱うかということで、今の先生の五年という事例もあるわけですけれども、それ以外に、例えば農林漁業団体の役員になっている期間とか、農業生産法人の構成員の期間とか、こういったものについては無制限に空期間として通算をできるような制度をこれまで平成二年あるいは六十年改正でやってきたわけでございまして、この制度全体を魅力あるものにするために資格を緩める、資格を緩めると今度は給付される額が減るというふうな循環の中にもあるわけでございますので、そのバランスをどうするか、そのバランスの中でどういう魅力をつくり上げていくかということのすべてにわたりまして、やはり検討しなければならない時期だと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X02519990728/55
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056・堀込征雄
○堀込委員 もう一つ、支給停止要件というのが幾つかあるわけでありまして、この問題について、実は支給停止者が年々増加をしている。今、九万二千人ぐらいですかに達しているわけでありまして、受給権者の一三・七%に上っているという実態があるわけであります。
実は、この支給停止要件の緩和については、昭和五十一年の改正以来五回も法改正をして緩和の措置が講じられてきているわけであります。しかし、にもかかわらず、実際には支給停止者数が増加をしている、こういう実態がございます。
その事由で最も大きなものが後継者移譲した農地の返還によるもので八割を超えている、こういうふうにお聞きをしているわけであります。私も実態を聞いてみますと、大概が住所変更、つまりサラリーマンが転勤したりいろいろしてしまって条件が合わなくなった。転職、転勤という問題があるわけであります。
せっかく途中まで掛けてきたものが支給停止になるわけでありますから、今日の農業、農村のすさまじい情勢の変化を考えると、五回もやってきたのですが、さらにこの見直し、緩和策を検討すべきではないか、こういうふうに思いますが、いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X02519990728/56
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057・渡辺好明
○渡辺(好)政府委員 現場からの声の中では、支給停止という制度が加入促進の阻害要因となっているという指摘も非常に強いわけでございまして、私どももこういう方々の御意見を研究会等の場で伺っております。
ただ、ここのところは、結局のところ農業構造を好ましい形に持っていくというのが年金制度の究極な目的なものですから、ある意味で、二つの条件が相反する一番接点になっているところでございます。それを緩和するために、今おっしゃいましたような連年にわたる支給停止除外理由の追加、こういうことになるわけでございますけれども、それをやってなおかつ現在支給停止率が年々増加をして、平成十年度では一四・二%の方が支給停止。さらにそのうちの大半の理由が、後継者に貸して経営移譲した農地が戻ってくる。そのまた理由がサラリーマン後継者であって転勤に伴うもの、こういう状況にあるわけでございます。
さて、望ましい農業構造に持っていくための措置と支給停止という加入促進の阻害要因とどう調和をさせていくかということはなかなか難しい問題でありまして、もう少し時間をいただきまして、どこまで緩和できるか、またどういう状況のときにそれがいいのかというふうなことを勉強したいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X02519990728/57
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058・堀込征雄
○堀込委員 確かに、加入者数をふやさなければいけない、しかし一方では、政策年金として社会的に理解の得られるものにしなければならぬということで、難しいことはよくわかりますが、ぜひ検討をいただきたいと思うわけであります。
女性加入者の問題、先ほども質問があったようでありますが、平成七年改正で配偶者の加入に道が開かれたわけでありまして、平成八年に千六百二十三人、平成九年に千二十四人が加入しているのですね。女性の加入者は今一万六千人ぐらいいるのですか。
今、女性が農業従事者の五七・三%、二百三十七万人を占めている。そして、経営構造の対策研究会でも女性による経営の開始ということが高らかにうたわれているわけでありまして、そういう意味では、女性に年金制度に加入してもらう、そして年金制度による女性の老後保障を考えていかなければならぬわけでありますが、実は現在、一ヘクタール以上という条件がございます。これは農業団体等からもお聞きになっていると思いますが、緩和できないものかという話があるわけであります。
そういう意味で、この一ヘクタールの問題を含めて、女性加入者がさらに加入しやすい制度改正、これは何か検討の道はあるでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X02519990728/58
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059・渡辺好明
○渡辺(好)政府委員 緩和ということになるのか、それとも男女平等、同資格ということになりますと、お二人で一ヘクタールの配偶者同士ということになりますと、これは五十アールと五十アールでございますので、それをどちらかに割引をするということは果たして男女平等、同資格という点からいいのかどうかという問題もあるわけでございます。女性も一人前の経営者という観点で私どもは制度の道を開きましたので、家族協定の中では、収入の帰属それから経営についての両者の参画、そして移譲するときも両者で考えるということで、御夫婦一人一人がそれぞれ一人前の経営者であるということを要件に配偶者加入の道を開いたわけでございます。ちょっとこの一ヘクタールというのを緩めるということになれば、それはもとに戻って五十アールというところも手がけなければならないということになりますので、難しい点がございます。
ただ、一方で女性の加入、とりわけ配偶者の加入をふやさなければいけないというのは現実の問題として重要でありますので、この点につきましても、今後、家族経営協定の普及と同時にいろいろなPRをする、さらには制度全般の中で女性をどう位置づけるかという研究をしたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X02519990728/59
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060・堀込征雄
○堀込委員 保険料の収納率の低下の問題でありますが、収納率が非常に低下していて、平成十年度、単年度収納率が七七・四%、累積収納率が八八%に落ち込んでいるわけであります。
これは、平成八年の会計検査院決算検査報告で、二十六道府県二百八十八農協のうち、二百七十一農協で長期未納者五千六百六人、八年度末で保険料約十四億四千六百六十六万円が時効のため徴収不可能となった、こういう指摘もなされているわけでありまして、収納対策、そういう指摘も検査報告でされていますが、どういう対応を考えておるのでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X02519990728/60
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061・渡辺好明
○渡辺(好)政府委員 これは大変頭の痛い問題でありまして、とりわけ最近、収納率が連年下がっているというところに大きな問題がございます。昭和五十二年当時は九一%ぐらいであった収納率が、現在は七七%というところまで来ております。
これにつきましてアンケート調査を実施いたしましたら、なぜ納付できないのかという点は、大きな点は二つでございます。農業収入の低下によって保険料納付の余裕がない、これが四分の一。それから、保険料が年々高くなり、負担が過重である。いずれもお金の負担の面からこのことが生じているということでございます。
保険料の収納促進については、農業者年金基金と農業委員会とが相協力をして、きめ細かい作業をしているわけでございます。前納制度は割引による恩典が受けられますし、それから自動振替方式等もございますし、長期未収納者に対しては戸別訪問をするというふうなこともありますけれども、なかなか決め手はない。それは年金の設計全体にかかわる問題でありますので、そういう中で例えば罰則を強化すれば済むというふうな話でもございませんから、制度全体の設計の中でこの問題は解決策を模索するしかないと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X02519990728/61
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062・堀込征雄
○堀込委員 農業者年金、法案の質問は以上にさせていただきます。
経済局長、お見えですね。
ちょっと法案とは離れますが、今、年金改正法案が閣議決定され、国会審議の段階になろうとしているわけでありまして、農林年金の方の法改正の問題、当然これと並んで提案をされる、こういうことになるのだろうと思います。
もう一つ、厚生年金との統合問題の状況はどうなっているのか。その際、農林年金の職域年金部分、これの対応策をどう考えておりますか。御説明をいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X02519990728/62
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063・竹中美晴
○竹中(美)政府委員 いわゆる農林年金でございますが、農林漁業団体に勤務する職員についての共済年金制度でございます。最近の農協系統組織の再編などに伴います組合員の減少等を踏まえまして、農林漁業団体としましては、厚生年金との統合を要望しているところでございます。
この農林年金の扱いにつきましては、平成八年の閣議決定というのがございまして、そこで、構成団体の組織整備の進展が制度基盤に与える影響を踏まえつつ、財政再計算時ごとに将来の財政見通し等について分析を行い、被用者年金制度全体の中における制度の位置づけについて検討を行うということにされております。また、被用者年金の再編成を進めるに当たりましては、社会保障制度審議会におきまして、財政再計算時ごとに財政状況の検証を行うということにされているところでございます。ことしがその財政再計算の年に当たるわけでございますが、お話にございましたように、農林年金法につきましては、厚生年金法の改正案とともに、昨日、国会に提出されたところでございます。
今後の農林年金のあり方につきましても、まず、この制度改正の実現を踏まえまして、その上で財政再計算を行いますとともに、お話がございました職域年金部分の問題も含めまして、今後、関係省庁と連携を図りながら具体的な検討を詰めていきたいというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X02519990728/63
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064・堀込征雄
○堀込委員 終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X02519990728/64
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065・穂積良行
○穂積委員長 午後一時から再開することとし、この際、休憩いたします。
午前十一時五十九分休憩
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午後一時一分開議発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X02519990728/65
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066・穂積良行
○穂積委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
質疑を続行いたします。木村太郎君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X02519990728/66
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067・木村太郎
○木村(太)委員 大臣初め皆様方、朝から御苦労さまです。既に午前中お二方が質問に立たれておりまして、重複する点もあろうかと思いますが、よろしくお願いしたいと思います。
今回、農業者年金制度一部改正ということでありますが、午前中の議論にもありましたとおり、大事なことは今後の抜本的改正ということになっていくわけであります。また、既に農林水産省、厚生省と一緒になって研究会を設けて、ことしの秋ごろまでには意見をまとめて、来年の通常国会での抜本的な改正に向けて議論を進めていきたいという考え方をお持ちのようでありますし、二〇〇一年度の実施を目指していきたいというふうにもお伺いしております。しかし、一九七〇年、この制度が発足して以来、それこそ本格的に、抜本的に議論していくことは今回が初めてと思いますし、そういった点を踏まえて御質問してまいりたいと思います。
まず、今の農業者年金制度の状況というか現状というものをどのようにとらえているのか、お伺いしたいと思います。
もう既に現在は三十万人の加入者で、しかも平成十年度でも二千六百三十人しか新規加入がされていない、加えて未納者も増加している。なぜこういう状況になったのか、その要因をどのように分析しているのか。また、単純に、率直に考えた場合に、なぜこういう状況に至ってから見直しに入ろうとしているのか。これは農業者年金に限った話でありませんけれども、もっと前に抜本的な改正というか、取り組むようなことが必要であったのではないかなというふうに思いますが、お答えをいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X02519990728/67
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068・中川昭一
○中川国務大臣 農業者年金制度は、これまで何回かにわたりまして、財政再計算時に、年金財政の長期安定化を図ることを基本とするために、保険料の引き上げ、あるいは国庫補助の追加等により年金財政の安定を図ってきたところでございます。しかし、財政は、新規加入者の大幅な減少、保険料の納付率及び運用利回りの低下等から、必ずしも財政再計算のスキームどおりには運営されておりませんで、極めて厳しい状況になっているというのは、先生ただいま御指摘のとおりでございます。
今までなぜやらなかったかということでございますが、一つは、財政再計算、五年ごとにやるということが一つの大きな節目である、それが来年行われるということでございまして、そういうときに抜本改正をやるということ。そしてまた、しかし今回の改正は、基本法のスタートということでございまして、基本法の精神といいましょうか、目指すべき方向に向かってスタートを切った時期でございますので、それとの関係において、こういう形の改正といいましょうか、据え置きをとりあえずさせていただきまして、抜本改正に向かっていきたいと考えております。
そのために、国会での御審議、そしてまた農業者年金制度研究会で検討をしていただいておりまして、抜本的な改正に向けての準備作業を今やっておるという状況でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X02519990728/68
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069・木村太郎
○木村(太)委員 これは農業者年金に限った話でありませんけれども、年金制度というのは世代を超える、ある面では息の長い政策だとも思っておりますし、農業者年金もまたその考え方が基本にあろうかと思います。しかも、公的制度としての継続性確保ということ、これはやはり今までも基本にあっただろうし、またこれからもあるべきと思いますが、仮に抜本的見直しに向けてのこういった基本的な思いをどのように大臣は考えているのか、お聞かせいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X02519990728/69
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070・中川昭一
○中川国務大臣 年金制度は、世代間の非常に長いタームの安定性、継続性というものを確保しなければならないという制度でございます。
しかし、農業をめぐる情勢、例えば担い手の減少、高齢化、あるいはまた先ほど申し上げたような農業者の年金をめぐる直接的な状況等制度創設時から大きく変化をしております。このような状況の変化は、現役世代が引退世代を扶養するという年金制度においては保険料の上昇につながり、給付と負担というバランスが悪化をしていくということになります。
したがいまして、何としてもこの趣旨を踏まえた年金制度を健全なものにしていくために、年金財政上の問題もございますけれども、制度上の抜本的な改正は不可避であるというふうに考えておりまして、継続性確保も含めまして抜本的な検討、そして改正を、先ほど申し上げた研究会で今御議論いただいておるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X02519990728/70
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071・木村太郎
○木村(太)委員 基本的なことをお伺いしたわけですが、今大臣の答弁にも何度か繰り返して出てきた、制度上の抜本的な検討をしていくということであります。
今研究会の方でも検討に入って、先ほど私が言ったように、ことしの十一月、秋ごろまでに意見をまとめていくということでありますので、もちろん、現段階でこうなります、ああなります、こうしたいというふうに断言するような言い方はなかなかできないかと思います。ただ、既に検討にも入っているということも踏まえて、ぜひ方向性ということも少し確認していきたいと思います。
よって、幾つか私自身の思うことを具体的に聞いてまいりますので、お答えをいただきたいと思います。
まず、二十年以上の加入継続が受給要件になっていますが、農業者に広がっているのは、やはり農業の先行き不透明感ということが大変大きく今現在もあろうかと思います。もちろん、先般我々が議論した新農業基本法、これをまた土台にそういったことを払拭するためにも努力していくのは当然でありますけれども、例えば仮の話ですが、加入期間を十年間と短くしても、その期間に見合った年金を受給できる仕組み、つまり受給資格期間の改善というものもやはり大きく議論してしかりではないかな、こう思いますが、いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X02519990728/71
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072・渡辺好明
○渡辺(好)政府委員 受給資格期間二十年ということに関しまして、二つお答えをしたいと思います。
一つは、やはりこの年金は構造政策を進める政策年金でありますので、言ってみれば農業者らしい農業者というものを対象にするということが大前提でございます。したがって、農業者らしい農業者といった場合に十年という期間でいいのかどうかという問題が一つございます。
それからもう一つは、財政バランスとの関係で、加入期間を短くすればその分だけやはり給付水準の低下ということになりかねないわけでございますので、単独の年金としてある程度の給付水準を確保するという必要性があるわけでございます。
ですから、ここら辺をよくよく勘案して、農業者年金そして年金、この両方の側面から検討しなければならない問題だろうと思っております。
ただ、現況でも、二十年というのは、完全に二十年連続してということではなくて、空期間というものを設けて、一度中断をしたけれども、再加入の場合にはそれを期間として通算するというふうな措置もとられているところでございます。
この問題も、まだ検討項目を整理した段階ではございますけれども、この研究会のテーマの一つとして今後検討の対象にしていきたいと思っております。その場合であっても、やはり制度の根源である構造政策としての目的、効果というものを外さないような方向で議論したいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X02519990728/72
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073・木村太郎
○木村(太)委員 もちろん、払う立場というか加入者の立場、納付の責任もあろうかと思いますので、私、今仮に十年だとすれば、その十年に見合ったお金が将来返ってくるということは、単に時間だけを短くすればいいという意味でなくて、やはりそういうことも踏まえてぜひこの研究会等でも議論する大きなテーマにしていただければなというふうに思っております。
次に、また具体的に聞いてまいりますが、やはり加入している方々の声を聞きますと、将来とも受給できる、いわゆる年金水準というものが本当に維持されていくのかどうかという不安が大きいようであります。国民年金と他の年金部分の議論も続いている中で、何となく年金水準そのものもだんだん小さくなっていくような不安がありまして、この農業者年金についてもそのことを心配する方が多いように私自身は受けとめております。
ですので、ある面では、こういった不安に対応するためには、やはり財政基盤のいわゆる長期安定というものも必要になってくるだろうし、あるいはまた、農業者が適切に受給できる、安心して加入できる制度というものを抜本的なこの見直しにおいて構築できるかどうかということが大事になってくると思います。
実際、今でも八百億円の国庫負担があるにもかかわらず、収支ということからいくと三百億円の赤字になっているのが現状の姿だ、こう考えても大変きついというか厳しい状況だと思いますし、これをどのように打開していくのか、本当に大きなところだと思っております。
財政基盤の安定性確保ということでお伺いした場合に、どういった思いを今現在お持ちか、お答えいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X02519990728/73
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074・渡辺好明
○渡辺(好)政府委員 今御指摘のありましたとおり、農業者年金につきましては、最近の数字でいえば、国庫負担七百六十九億円という大変な額に上っているわけでございます。いわゆる一階の基礎年金部分は別にいたしまして、二階の部分の年金に国庫の助成があるのはこの農業者年金だけでございます。それは、とりもなおさず、この年金が構造政策を進めるための年金ということで支出をされている、負担をされているということなわけでございます。それによって、経営移譲部分について、言ってみれば老齢年金よりもずっと高い年金水準を保障しているという状況にあるわけでございます。
ただ一方、老齢年金部分だけを見ましても、相当に成熟度の上昇、二五五%という中で、財政計算上は現状の仕掛けのままでは到底バランスしないというふうなところまで到達をしております。これから先、制度の安定性というものを考えていく上では、政策目的を一体どこに置いてどういうシステムができるかということがはっきりいたしませんと、現況のままで安心をしなさい、国庫の助成がふえますよということでは、制度としての目的もなかなか完遂できないわけでございますので、そこら辺を頭に置きながら、どうしたら政策目的にそぐう年金制度となり、どういうシステムであるならば安定性が高まるかということを勉強したいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X02519990728/74
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075・木村太郎
○木村(太)委員 安定性ということを考えた場合、最近新聞等にも出ておりますが、また私自身もよく声として聞きます。特に農業者団体、団体という組織の方からも聞くわけですけれども、いわゆる積立方式にすべきでないかという声が団体等から最近急速に大きくなっている感を持っております。それは、加入者の掛金安定を求める意見というふうにも思うわけであります。もちろん、先ほど来言っているとおり、今検討している最中でありますけれども、いわゆる積立方式にすべきというような今現在大きくなってきている意見に対して、何か農水省として印象というかあるいは何らかの考え方があるのかどうか、お伺いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X02519990728/75
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076・渡辺好明
○渡辺(好)政府委員 農業者年金を現行の賦課方式にかえて積立方式にすべきだという御指摘が農業者の間からも出ていることは承知をいたしております。これは一つの考え方だろうと思います。
といいますのは、御自分の将来のために御自分が、言ってみると今から貯金をしておく、そして、それに利子、運用を加えて、その分だけは少なくとも将来手にすることができる、こういう方式でありますので、そういう点では一つの考え方だろうと思います。
ただ一方、現況は賦課方式をとっておりますので、この賦課方式を積立方式に切りかえるということになりますと、賦課方式というのは、現在の加入者がリタイアをした方たちを支えているわけですので、その分の負担をまずしなければいけない、加えて、御自分の将来の分をさらに保険料の形で拠出をしなければいけない、俗に言う二重の負担というのが生ずる可能性が大であります。ここが最大の問題でありまして、これを乗り越えてなおかつ積立方式をとるのかどうかというのは、もっとよく勉強し、多くの方々の御意見を聞いた上でやらないと、負担は当面二重の負担になるということでございますので、その点をもう少し勉強する必要があろうと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X02519990728/76
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077・木村太郎
○木村(太)委員 そこで、今度は保険料ということにちょっと思いをしてお伺いします。
農業者年金の保険料は、平成元年のときには一万三十円であったのが、平成十一年で二万四百四十円だ。国民年金で見た場合には、平成元年のとき八千円であったのが、平成十一年では一万三千三百円だ。国民年金と比べた場合、保険料が同じ時間的な経過の中で大幅に上昇している印象をやはりだれもが持っていると思います。それがある面では負担感を強くしたことにもなっているのかもわかりませんし、それがまた未納者の増加につながる要因の一つにもなっているかとも思われますが、八千円が一万三千三百円になった、一方では一万三十円が二万四百四十円になった、なぜこういう姿になったのか、ちょっと御説明いただけないでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X02519990728/77
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078・渡辺好明
○渡辺(好)政府委員 年金の基本的な保険料の額の計算というのは、将来にわたって財政が均衡するというのが大原則でありますけれども、それに加えまして、他の公的年金とのバランスというのも考慮しながら決めているわけでございます。
現在の月額二万四百四十円、これを据え置きたいということで御提案申し上げているわけでございますけれども、アンケート調査によりますと、やはり月額二万円を超える保険料はやや過重だという声が加入者から出てきております。
単独で農業者年金の保険料二万四百四十円が高いということと同時に、農業者というのは自営業者の扱いになっておりますので、御自分の国民年金を払い、配偶者の国民年金を払い、その上に農業者年金が乗っかる、そういうふうなことになっておりますので、世帯全体としての負担感が非常に大きいということも影響しているんだろうと思います。
一方、サラリーマン世帯の場合ですと、事業主の保険料の半額負担ということもございますので、そういう点も影響しているかなと思いますが、根っこにありますのは、やはり冒頭申し上げた、成熟度二五五%という中で財政計算がなかなかうまくいかないというところから、どうしてもこういった保険料が出てきてしまうということでございます。
この保険料の水準をどうするかということも、次の財政計算の中で大きな課題でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X02519990728/78
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079・木村太郎
○木村(太)委員 国民年金も、未納者というか保険料を納めない人がふえてきているわけでありますが、それ以上に、一番最初に言った、農業者年金の姿も、加入していた人の数も減ったし、また新規加入者も減ってきているし、また未納者もふえてきている。単純に考えても、国民年金以上に農業者年金の姿が、悪循環が顕著になってきたからこそまたそういう姿になってきただろうし、また、それを少しでもカバーするために、保険料も、国民年金に比べて、同じ時間の中で比べても大幅に上昇してきたのかなという印象を持っているのですが、いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X02519990728/79
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080・渡辺好明
○渡辺(好)政府委員 悪循環という御指摘ですけれども、結局、そういった加入者数とそれから受給者数との大変なギャップですね。国民年金でいえば、恐らく成熟度というのは二五%ぐらいでしょうし、我々が入っている国家公務員の共済でも成熟度は五〇%ぐらい。つまり、二人が一人を支えているという状況なんですけれども、この農業者年金の場合には一人が二・五人を支えるというふうな状況でございます。そういう点から、ますます財政計算の仕方が難しくなってきているというのは事実であります。
保険料がやや過重に思われるという中で、農業経営との兼ね合いもありますけれども、なかなか保険料が払い切れないという悪循環をもたらしているという側面は否めないと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X02519990728/80
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081・木村太郎
○木村(太)委員 そこで、今後の保険料の姿をどう考えているかということをお聞きしたいわけであります。
例えば、現場では、いわゆる経営移譲しない老齢年金を考えた場合に、払い込んだ保険料の最低で六割から七割しか受給者に戻らないという声も聞いております。せめて掛金が戻る仕組みをつくるべきでないかというような声がこれまた大きくなってきているような感があります。さきに触れた積立方式ということとも関連してまいりますけれども、現時点でその辺の考え方があればお聞かせください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X02519990728/81
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082・渡辺好明
○渡辺(好)政府委員 今、先生、前提を置いて御指摘がありました。
我々の方でも、こういった種類の計算をしますときにはいろいろな前提を置くわけです。例えば、物価スライドは今後しないんだ、所得スライドもしないんだ、ゼロ%と置くんだ、そして経営移譲部分は受け取らないんだ、老齢年金部分だけ受け取ってというふうな設計になりますと、今の財政バランスでの計算でいえば、先生のおっしゃったような事態も想定されないわけではないわけです。一方、物価や所得のスライドがあって、しかも経営移譲の年金を受け取るということになれば、現在の見通しでも、掛金に比べて相当に高い水準の年金を受け取ることがこれまた可能なわけでございます。
いずれにしても、この問題は、現状の仕組み、つまり賦課方式ということとかかわってまいります。先生がおっしゃったように積立方式でやれば、大変な物価スライド、所得スライドはないけれども、少なくとも掛けた分だけは保障される。そのどちらを選ぶのかということをもう少しじっくり考えなければならないわけです。
それに加えまして、先ほど申し上げましたように、移行するということになれば、賦課方式のもとでの負担と、積立方式に伴う負担と、二重の負担になるということは十分留意してかかる必要があると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X02519990728/82
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083・木村太郎
○木村(太)委員 ぜひ検討をしていってほしいと思います。
次に、男女別でちょっと考えてみたいと思います。
男女別の加入状況を見ますと、もちろん、平成八年の制度改正によって加入資格を取得して加入した方というふうになっておりますが、平成十一年、ことしの三月末で、全体で二十九万三千八百六十七人が加入しているようでありますが、そのうち、女性の加入者は三千二百九十一人にすぎないというふうにも聞いております。
しかし、実際、女性の農業生産にかかわる姿というのが労働力の視点から見ても大変大きなウエートを占めているのは、これはだれもが認めているところだと思います。よって、女性の加入要件の緩和、あるいはまた、例えば遺族年金の創設など、女性に一層思いをした制度の充実の要請がこれまた高まってきておるものと思っております。
ある声として、例えば夫婦加入したときに、国民年金と農業者年金の合計保険料というのが年額約八十万円ぐらいになる、家計的にも決して小さい額とは言えないで、大変負担の重さというのを感じているという声を聞きます。一個人というよりも、その世帯全体での負担が大きくなって未納者もふえてきているのではないかというような先ほどの答弁もありました。
よって、こういうことに対しても、割引等の優遇措置というようなことも、ある面では制度拡充という視点から必要になってくるのではないかなというふうに思いますが、いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X02519990728/83
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084・渡辺好明
○渡辺(好)政府委員 女性の加入の問題と、それから家庭全体としての負担の問題と、この二つあるわけでございます。
女性の加入の問題につきましては、先生から御指摘がありましたように、七年度の改正で配偶者の加入の道が開かれたわけですが、この配偶者の加入の前提となっておりますのが、家族経営協定の締結でございます。
この部分は、やはり年金の方から制度をそういうふうにつくったので家族経営協定をということもさることながら、日本の農業経営自身の中において女性が六割の地位を占めているにもかかわらず、経営内においてそれだけの地位を占めるにまだ至っていないというそちらの方をもう少し、時間はかかるかもしれませんけれども、改善をしていきませんと、家族経営協定というものが広範に定着するまでにならないんだろうと私は思います。
もちろん、年金のサイドからもそういう浸透PRをいたしまして、配偶者にも大いに入っていただきたい、また、そのためにどういうふうな仕組みが今後とり得るかということは研究をしたいと思っております。
それから、家庭全体としての負担、確かに、夫の国民年金の月負担が一万三千七百円、妻が一万三千三百円、それに夫の農業者年金二万四百四十円を入れて四万七千四百四十円、そこに配偶者が乗れば、月の支払いが七万円近くなるわけでございます。そうなりますと、ちょっと二の足をということもあるかもしれませんが、その場合には、今度は配偶者が、世帯主といいましょうか、夫と同様に農業者年金を、例えば経営を移譲すれば加算つき経営移譲年金というのを受け取れるわけでございますので、当座の掛金の問題と将来の問題と、どういうふうに浸透、定着ができるか、これも勉強したいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X02519990728/84
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085・木村太郎
○木村(太)委員 大いに検討していただきたいと思います。
関連して聞きますが、実は私、質問いたしますと地元の例を引き出すことが多いわけでありますが、ちょっと地元の例を紹介したいと思います。
私の方に金木町という町があります。ここは、太宰治のふるさとでもありますし、最近では吉幾三さんのふるさとでもあるのですが、実は、この金木町で、青森県では初めて、全国では九番目になる、女性による農業者年金協会というものを発足したのであります。ファーミングレディースさくらという名前をつけてその協会をスタートさせたようであります。ちょっと新聞の記事から読み取ったのですが、経営者としての地位、役割の明確化、老後の生活安定と福祉向上、あるいはまた、加入者相互の交流を目的にして、そして具体的な活動としては、例えば研修視察あるいはまた家族経営協定の研修会、あるいは、農業者年金に対しての加入促進のためのPR資料の作成、それをまた配布、戸別訪問する、あるいはまた、交流会等を通じて、農業者年金制度、特に女性の加入に思いをしての普及と加入促進に取り組もうなどなどを具体的な活動として、また目的としてスタートしたようであります。
私の地元青森県の例でいいますと、女性の農業者数というのが今現在三千二百三十六人いまして、そのうち、農業者年金に入っている女性の数が四十七名のみであります。しかし、全県的に四十七人いるうち二十七人が今回協会を発足させたこの金木町の方だということであります。
こういうことからしても、自発的にこのように努力している姿に何らかの支援というものが必要ではないかな、また、あって当然ではないかなというふうに私は思います。みずからのことをみずからが、みんなで協力し合って立ち上がる、こういった努力をしている者に温かい手を差し伸べるような思いを皆さんからもぜひお願いしたいなというふうに思うわけであります。
そしてまた、先ほど冒頭言ったように、こういった事例が、県内では初めてで、全国でも九番目ということでありますから、全国的に次々発足、スタートできるような環境をつくっていくという国としての役割があるのではないかな、こう思いますが、いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X02519990728/85
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086・渡辺好明
○渡辺(好)政府委員 今先生から金木町の例を御指摘がありました。地域の女性の方々が大変な御努力をされてこういう状況にまで持っていかれたというのはもちろんなのですけれども、私は、この金木町では、農業委員会であるとかJA、地域全体が頭を切りかえて、女性の位置づけをきちんとし、女性を支援していく体制ができたというところに意義があるのだろうと思います。
全国でこうした女性の農業者年金加入者の協会というのは十ぐらいしかまだできておりません。私たちも、ささやかではありますけれども、平成七年あるいは平成八年から、優良事例を全国に御紹介をし、普及をするということで、農林水産大臣あるいは構造改善局長表彰を行うということにいたしまして、平成七年度からは加入推進及び保険料収納部門、さらに平成八年度には女性加入推進部門というのをつくりまして、そういった活発な活動をされている方々を表彰し、そしてそれが全国に広がるような応援をしているところでございますけれども、今後どういうふうな具体的な支援ができるか、さらに検討させていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X02519990728/86
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087・木村太郎
○木村(太)委員 表彰をする前に、表彰が受けられるような環境をつくるべきでないかなという趣旨で、具体的な国としてお手伝いできること、あるいはまた、そういったことが全国的にも生まれるような環境をつくっていくことも大事ではないかなというふうに指摘したわけでありますが、もう一度お答えいただけませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X02519990728/87
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088・渡辺好明
○渡辺(好)政府委員 現状やっていることを申し上げましたけれども、もちろん、今の先生の御指摘を踏まえまして、具体的な支援として何ができるか、我々も中で実際検討したいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X02519990728/88
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089・木村太郎
○木村(太)委員 次にお伺いしますが、この農業者年金制度というのは、構造政策にも大変大きく貢献してきたことは事実だと思います。それはこれまでの制度によっても、一つのいい点であったことは間違いないことだと思います。しかし、お金ということを考えれば、抜本的に見直しをしていかなければならないということでありますので、これまでの制度において実績があった面、それは構造政策の役割ということになっていくわけですが、抽象的に言えば、これを含んでの抜本的な制度の見直しができるかどうか、こういうふうに単純に思うわけですが、この点、どのように考えておられるでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X02519990728/89
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090・渡辺好明
○渡辺(好)政府委員 午前中にも大臣からお答え申し上げたのですけれども、新しい基本法ができて、そしてその中で日本の農業構造自身を望ましい方向に持っていくということで、幾つかの施策の柱を立てております。
農業者年金制度というのも、構造政策を推進する上で非常に重要な柱の一つだろうと思っております。特に、経営が円滑に次の世代に継承されていくというところを大きなポイントにしておりますので、望ましい経営体の育成と、その経営体の各般の資本やら技術やら経営やらというものが円滑に継承されていくような方向で本格的な見直しをしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X02519990728/90
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091・木村太郎
○木村(太)委員 あと二点ほど具体的なことを聞きますが、例えば、今回の一部改正というのは、今年度に予定されていた国民年金や厚生年金等の保険料引き上げが凍結される方向に即して農業者年金における今回の一部改正の考え方になったと思います。
ですので、こういう動きを見た場合に、例えば国民年金の二階部分でもあるこの農業者年金制度、これを抜本的に見直しをしていこうとする場合に、国民年金や厚生年金等の年金制度も抜本的に見直しをするための取り組みが続いているわけであります。そうしますと、二階部分でありますので、仮に、国民年金の抜本的な見直しの動きが、この農業者年金の抜本的見直しに影響というか左右していくこともあり得るのかどうか。
一番最初に言いましたが、農業者年金でいいますと、二〇〇一年度の実施を目指したいという皆さんの考え方があるようでありますが、こういった時期的なことも踏まえて、二階部分の農業者年金の抜本的見直しというのが、一階部分の国民年金やあるいはまたほかの厚生年金等の抜本的な見直しの動向に左右されていく可能性もあるのかどうか、確認をさせていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X02519990728/91
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092・渡辺好明
○渡辺(好)政府委員 時期の問題と中身の問題と二つあろうと思います。
時期の問題についていえば、農業者年金の財政再計算というのは、国民年金、厚生年金のちょうど一年おくれ、一年後ということになっておりますので、明年が財政再計算の年に当たっております。したがって、その財政再計算の年に、やはりこれまでの農業者年金の果たしてきた役割と各種の批判、そういうものを全部総括して基本的な見直しをすべきだろうと思っております。
農政上も財政上も大きな課題を抱えておりますので、これらを一つ一つクリアしていくということになりますけれども、やはり農業者年金は農業構造政策を推進するための年金として位置づけられております。それから、年金自身も、いろいろ要件がほかとは違っておりますし、成熟度その他も相当な差があるわけでございますので、もちろんほかの年金のことを勉強しないというわけではありませんけれども、それに影響されて中身もそれと同じような方向に持っていくということには必ずしもならないと私は思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X02519990728/92
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093・木村太郎
○木村(太)委員 必ずしもならないというふうに最後に御答弁がありました。やはり農業者年金は農業者年金として、この研究会等を通じて抜本的な見直しについて答えが、方向性が出たとすれば、もちろん我々もこの国会の場で議論していくことになると思いますので、しっかり議論していきたいなというふうに、今この時点でも、今の答弁からも確認をさせていただきたいと思います。
いま一つ、これも仮にというような話になるかもわかりませんが、少し確認したいと思います。
農業者年金制度の抜本的見直しに向けた方向性を今まで幾つか尋ねてまいりましたけれども、先ほども述べたとおり、今現在でも八百億円の国費が投入されている。しかし三百億円の赤字だということであります。これまでの制度のいい面、それは構造政策的な役割において貢献があった部分を仮に残しながらも、しかし制度の見直しをしていく際に、この八百億円という国から投入されているお金がさらにふえていくことも考えられるのかどうか、ちょっと確認させていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X02519990728/93
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094・渡辺好明
○渡辺(好)政府委員 今日の財政事情から考えますと、七百六十九億円をさらに増額するというのは相当に難しいというふうに言わざるを得ません。
といいますのは、先生御承知のとおり、年金の二階建て部分について国庫助成があるのは農業者年金だけでございます。そして、その農業者年金の中でも、この国庫助成部分は、いわば経営移譲という構造政策を進めていくところに充当すべきものとして支出をいただいておりますので、これから先の国庫の負担をどうするかというのは、この経営移譲なり農業構造政策を進めていく意義がどうであり、どの程度のことをやるのかということとリンクをしてまいりますので、どれだけ国庫負担をするかということはにわかにはお答えできないのですけれども、財政事情からいいますと、これを増額するというのはなかなか難しいなという印象を持っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X02519990728/94
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095・木村太郎
○木村(太)委員 私の趣旨は、増額しなさいという思いでなくて、今現在でもこれだけ出しても赤字だ、しかし、構造政策的ないい面を仮に残していこうとしながらも制度そのものの見直しをしていくとすれば、大変困難というか、どういう抜本的な見直し、そして制度にしたらいいかというのを、皆様方の立場というか、もちろん我々政治あるいは国会の場でも議論していかなければならないわけですが、大変困難というか難しい問題ではないかなという思いから、今少し確認させてもらったわけであります。
しかし、今御答弁にあったとおり、これ以上ということでありますから、これ以上の国の負担は考えられない中で制度の見直しをしていかなければならない。ですので、この研究会等を通じて、また十二分に具体性を持った検討が必要だろうし、また、秋に意見をまとめていただければなというふうに期待も申し上げたいと思います。
次に、ちょっと視点を変えましてお聞きしますが、例えば、民間の保険会社によるいわゆる年金型商品というものもありますし、あるいはまたJA共済による年金型商品というものもあろうかと思いますが、これらと農業者年金との今後の整合性や役割分担というのをどのように考えているのか、お聞かせいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X02519990728/95
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096・渡辺好明
○渡辺(好)政府委員 何度か御答弁申し上げておりますけれども、農業者年金は、一階部分の国民年金、その上に二階部分を構成し、農業構造の改善に資するという政策年金の性格を持っているわけでございます。
一方、先生から御指摘があった民間の保険あるいはJA共済等の年金型商品というのは、多様化する老後のニーズにこたえて、より豊かな老後生活を保障する、そういう役割を担っております。ですから、そういう意味で、先ほどのJA共済などは確定給付型というふうになっておりまして、何歳になったら幾らもらえるというふうなことがはっきりしているわけでございます。
いずれにしても、この一階と二階と、まあ三階という言葉がいいのかどうかわかりませんけれども、それがそれぞれすみ分けをし、役割分担をして、農業構造がいい方向に向き、かつ農業者の老後の生活が豊かになるような分担関係になるというふうに思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X02519990728/96
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097・木村太郎
○木村(太)委員 もちろん、農業者年金というのが、先ほど来議論してきたとおり、構造政策的な役割を持っているというのは確かなことだと思います。
ただ、一農家あるいは加入者ということを考えた場合に、老後のための判断、民間の保険会社を利用するか、あるいはまたJA共済におけるそういった商品に加入するか、あるいはまた農業者年金に入るかというと、全部に入ってそして全部の保険に相当の保険料を払っているという姿は実際のところまず余りないと思うのですよ。制度的には農業者年金は構造政策的な役割を持っているとしても、農家の立場からいくと、やはり自分の老後を考えた場合に、仮にこの三つだとすれば、どれを一番重要視するかで入っているのが現状ではないかな、こう思うわけであります。
ですので、今そういったことでお聞きしたわけであります。そういう思いからも、農業者年金も、先ほど来議論してきたとおり、もちろん、制度としては構造政策的な役割はあるし、効果も今までもあったわけでありますが、やはり民間の保険会社あるいはまたJA共済におけるそういった商品と比べた場合にも、老後の農家の保障というか、安心感を与え得る抜本的な制度というか、そういうふうになっていくかどうか、大変重要視されていくのではないかなというふうにも思っておりますので、ぜひこういう視点においても検討をお願いしたいと思います。
次に、もう少しまた視点を変えますが、今の農業者の経済的姿をどのようにとらえているのか、ちょっとお伺いしたいと思います。
もちろん、生涯収入あるいはまた支出、貯蓄、借入金、また老後の保障ということも含めて、また、専業、第一種兼業、第二種兼業等々、あるいはまた耕作面積、あるいは経営体によっても違いがさまざまあろうかと思いますが、きょうの農業新聞には、昨日農林水産省が発表した農業経営動向という記事が出ておりますが、どのようにとらえているのか、概要で結構ですのでお答えいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X02519990728/97
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098・渡辺好明
○渡辺(好)政府委員 農業経営動向調査で、全国販売農家とそれから主業農家という数字が出ておりますけれども、全国販売農家の農家経済の状況は、一戸当たり農業所得、平成十年ですけれども、野菜、果樹、花卉収入等の増加によりまして三・六%農業所得が増という結果が出ております。
農業が主業、つまり農業所得が農外所得を上回って、かつ六十五歳未満の農業就業者がいるという主業農家というベースで平成十年の経営収支状況を見ますと、農業経営費は若干の増加ということになっておりますが、農業粗収益が野菜、果樹、花卉、稲作等の収入増によって増加をいたしまして、農業所得は対前年比七・一%増の五百三十九万円という状況でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X02519990728/98
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099・木村太郎
○木村(太)委員 私は、具体的に聞きたいのは、もちろん先ほど言われたように、専業、第一種、第二種とか耕作面積なんかでも全然違ってくると思いますが、今の農家の姿が生活として苦しいのかどうかということを、生活の姿がいい状況にあるのかどうかということを、そういう点を確認したかったわけでありますが、もう一度お答えいただけないでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X02519990728/99
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100・渡辺好明
○渡辺(好)政府委員 農業者の生活程度というのを判断するのは数字だけではなかなか難しいんですけれども、今私たちは認定農業者という形で十四万の認定農業者から経営改善計画をとっておりますけれども、非常に大まかに言いまして、そこでの農業所得の水準というのは、地域にもよりますけれども、大体六、七百万円というところでございます。
それから、新政策を出しましたときの地域における他産業従事者と遜色のない生涯所得という点では、生涯所得のレベルを二億ないし二億五千万というふうに置きました。それを各地域でブレークダウンした数字が大体農業所得で六、七百万円というところだろうというふうに私自身は、これは非常に大ざっぱな言い方ですけれども、見ております。
それに比較いたしまして今の主業農家の農業所得が五百三十数万円、このあたりをどう見るかということになるんではないかなと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X02519990728/100
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101・木村太郎
○木村(太)委員 時間が来ましたので、最後にお尋ねして終わります。
先ほど、午前中の大臣からの答弁でも他産業並みの所得という言葉がありました。また、今までもその言葉は議論としてもあったわけであります。なぜこういうことを聞くかというと、きょうの農業新聞に出ている、昨日農水省が発表したこれは今の現実の姿なわけでありますけれども、農業者が農業経営を営む判断のためにも、またその参考にしてもらうためにも、家計的にあるいはまた経済的な、それはもちろん老後も含めたことも入れてある程度の指針というものを示しておく必要があるんではないかな。
もちろんそれは、先ほど言った、第一種、第二種、専業あるいはまた経営体の規模なんかによっても違いがあると思いますが、モデル的に、このぐらいの経営をしている人たちはこういう収入があって、また老後も含めて一生涯経済的にはこういう姿があるべきだとか、こういうことを示しておくことも大事ではないかな。また、そういう中での農業者年金の役割を見出していくことも大事ではないかな。また、それを見出すことによって農業者が農業者年金に加入するのか入らないのかという判断材料にもしてもらえることになっていくのではないかな、こう思いますが、最後にこの点を聞いて終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X02519990728/101
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102・中川昭一
○中川国務大臣 個々の農家が少なくとも現役中にどういう経営をやっていくか、何をどのぐらいつくるかということについて国が指針をつくるというのはなかなか難しい話ではないかと思います。しかし、基本法の中で、農家の経営あるいは農地の利用のあり方、さらには自給率向上といったような幾つかのポイントがあるわけでございますので、そういうことを含めまして、農業活動に従事している時期、それからまたリタイアされた後を含めた生涯の労働時間あるいは生涯賃金といったものが大体どのぐらいになるか、何としても他産業並みにしていかなければならない、これは定性的にはそういう目標を持っておるわけであります。
そういう中で、年金の位置づけというものについては、生涯賃金を大体二億から二億五千万というふうな他産業並みというものに設定するとしますならば、一割強を年金で老後を楽しんでいただきたいというような一つの仮定みたいなものを想定したことはございます。
いずれにしても、そういう指針、大ざっぱかもしれませんけれども、一つの目標となるような指針も含めまして研究会の方で御議論をいただくべき課題ではないかと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X02519990728/102
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103・穂積良行
○穂積委員長 次に、一川保夫君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X02519990728/103
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104・一川保夫
○一川委員 自由党の一川でございます。
今回のこの法案の改正の中身そのものについてはやむを得ないというふうに判断いたしておりますけれども、きょういろいろな議論がありましたように、農業者年金制度そのものの今後のいろいろな課題ということを考えた場合には、大変深刻な問題が幾つかあるんではないかなという感じがいたしておりますので、若干質問が重複する面があるかもしれませんけれども、ちょっと整理をするという意味で質問をさせていただきたい、そのように思っております。
農業者年金制度、きょうも説明がいろいろとあったと思いますが、国民年金の給付に加えまして農業者の老後の生活の安定に資するということと、あわせて、政策年金というふうにも言われていますように、経営移譲を円滑に行うという中で農業者の若返りを図っていきたいとか、あるいはまた相続時の農地の細分化を防止しつつ農業経営の拡大を行っていきたい、そもそもそういった政策上のねらいがあったというふうに私は思いますし、当時の農業基本法というものをしっかりと政策的にフォローするという面でこういう制度が昭和四十六年にスタートしたというふうに思います。
ただ、その後のいろいろな農業情勢の変化というものを見てきた場合に、先ほどちょっと大臣もこの制度の評価をされたと思いますけれども、この制度があったからこそ、いろいろな農業構造の変化にある程度歯どめをかけながら今日の状態に持ってきたというその評価は私はあるというふうに思いますし、考え方には同感でございますけれども、それ以上に我が国の農業の抱える深刻な問題が今日あるわけでございます。特に年金制度を取り巻く情勢といいますか、今まで言いましたような農業のいろいろな情勢変化、構造変化というものとあわせまして、年金の財政基盤そのものが悪化してしまったということになるわけです。本来年金制度が最も注意すべきといいますか、関心を持つべき事項の中で、整理しますと特に四点ぐらいの指標が相当悪化してきていることは間違いないわけでございます。
それは、要するに、基本的に新規加入者が減少してきているということです。それから、保険料を納める方の比率がだんだん下がってきている、収納率が低下してきているというふうに言われております。それから三点目には、本来これがねらっていた経営移譲率が低下してきているというふうにも言われています。それからまた、年金の運用という面では、残念ながら運用の利回りが非常に低下してきておりますので、そういう面の深刻さが一方であるわけです。こういった四つの要素を取り上げただけでも、年金の制度を維持していくだけでも大変だなという感じがするわけです。
そういうことで、ちょっと二、三お聞きしたいと思うんですけれども、新規加入者というものが最近では、平成十年では三千人を割ってきておるわけですけれども、こういう深刻な状態になった理由をどういうふうにお考えですか。もう一度お願いしたいと思うんです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X02519990728/104
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105・渡辺好明
○渡辺(好)政府委員 新規加入者が年々減少をしている、しかもその中で、当然加入者に至るまでなかなか入っていただけないというふうな状況でございます。
農業委員会を通じて行いました調査によりますと、未加入の理由として一番大きいのは、農業者年金に魅力がない、これが四分の一。それから、いわゆる年金制度全般について将来的に不安があるというのが二〇%。そして、保険料負担が苦しいというのが一九%。二十年以上加入できるか不安だというのが一六%といった状況でございます。
こういうものが複合いたしまして新規加入が減少しているというふうに私どもは分析をいたしておりますが、加入促進に、農協あるいは農業委員会ともども力を入れているところでございます。
〔委員長退席、増田委員長代理着席〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X02519990728/105
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106・一川保夫
○一川委員 今答弁された理由というものを聞いておりますと、まさしく非常に寂しい思いがするわけです。
では、それに対する改善措置、対策ということもこれまた非常に大変なことなんですけれども、そうかといって放置するわけにはいかないということで、当然ながらねばり強い対策が必要であるわけです。当然ながら、またこれからの制度の改正に向けてそういうものをしっかりと反省しつつ、これからその結論を出していただきたいというふうに思うわけです。
今、新規加入のお話をしましたけれども、それとあわせまして、先ほど言いましたように、保険料そのものの収納率が非常に悪化してきておる。こういうことも恐らく先ほどの理由とほぼ近いものであるというふうに私は思います。それとあわせまして、この制度そのものは政策年金だというふうに言われていますように、経営移譲を通じて農業の構造政策を誘導するという本来の目的があったというふうに思いますけれども、経営移譲そのものも、最近では、平成十年では六九%台になってしまったというふうに聞いております。
この理由をどういうふうに整理しておられますか。そのあたり説明していただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X02519990728/106
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107・渡辺好明
○渡辺(好)政府委員 収納率の話と経営移譲の話に分けてお答えを申し上げたいと思います。
収納率の低下、平成十年で七七・四%でありますが、この大きな理由は二つございまして、JAを通して行った調査でありますけれども、農業収入の低下によって保険料納付の余裕がないというのが二五%でございます。それから、保険料が年々高くなり負担過重となっているというのが二四%といった事情にございます。
それから、経営移譲の割合が下がってきている。逆に言いますと、老齢年金受給者の割合が高まってきているということでございますけれども、これも全国農業会議所が行った調査によりますと、経営移譲を行わなかった理由につきましては、後継者がいない、あるいは外に出ている、第三者には移譲したくない、こういった後継者の問題、それから、第三者移譲を希望したけれども受け手がなかったというふうな事情が挙げられております。
やはり、ポイントは、受け手をどういうふうに見つけていくかというところにあろうかと思いますので、その点に努力をいたしたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X02519990728/107
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108・一川保夫
○一川委員 こういった経営移譲ということがだんだん円滑にいかなくなってきたということは、大変この制度にとっても深刻な状況であるわけでございます。
この農業者年金制度というのは、制度的に一方では政策を誘導する効果を担保するために、経営移譲を行った者が農業を再開した場合などに経営移譲年金の支給停止措置というものを設けておりますけれども、逆にこの割合はだんだんふえてきているわけです。平成十年では一四%台だというふうに聞いておりますけれども、こういった現象というものをどのように認識し、分析されておりますか。そのあたり御説明をお願いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X02519990728/108
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109・渡辺好明
○渡辺(好)政府委員 今御指摘の点につきましては、経営の移譲先、相手方との関係が非常に深いわけでございます。例えば、サラリーマン後継者等に移譲いたしますと、その方がサラリーマンの転勤でほかの都市に行ってしまうというふうなことになりますと農地が返ってまいりますので、そういうことから支給停止というふうなことも起こってくるわけでございます。
今先生数字を挙げられましたように、支給停止率、平成十年度で一四・二%であります。その事由としては、後継者に貸して経営移譲した農地等が戻ってきたというのが八三%と大半を占めております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X02519990728/109
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110・一川保夫
○一川委員 先ほどちょっと冒頭に私が触れましたように、本来こういった年金制度で、最もそういう面では注目すべき事項といいますか、いろいろな尺度となるべきものは、新規加入者の比率が非常に減少してきているという問題なり、また保険料の収納率がだんだん低下してきているということ。それから、この制度がねらっていた経営移譲率も低下してきている。それから、逆にまた、先ほど言いましたように、経営移譲年金の支給停止をする比率がだんだんふえてきている、そういった面では非常に深刻な傾向をあらわしてきているわけです。
当然ながら、農水省の方もこういう今日の傾向を十分認識されているというふうに思います。そういう中で、今いろいろな研究会で次期の改正に向けて鋭意検討を始めたというふうに聞いておりますけれども、これは農政全般にも影響するような、物によっては農政の基本にかかわるようなことにもなろうかと思うわけです。
そういうことで、ちょっとお伺いしたいのは、こういった農業者年金の制度を、創設当時といろいろな面で農業の情勢が変化してきているわけでございますけれども、今後とも、基本的には今までのような、経営移譲を促進していく考え方を基本にしたような、この制度の骨組みみたいなものは一応残す方向で検討されるというふうに理解してよろしいのかどうか、そのあたりをお聞きしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X02519990728/110
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111・渡辺好明
○渡辺(好)政府委員 新しい基本法ができまして、その中で日本の農業経営構造を望ましい状態に持っていくということが大きな柱になっております。効率的かつ安定的な経営体、それも意欲のある方々に日本の農業生産の相当部分を担ってもらうということになっておりますので、そういう構造をつくり上げるのにこの年金制度がどういう貢献ができるかという視点で検討しております。
したがいまして、その検討の中で今のようにやはり若返りをさせる、あるいは経営移譲という形を通ずるということが是であればそれを採用いたしますし、そうでない場合にはこれにかわる方法はないかということを、制度の目的あるいは年金財政の見通しや給付や負担のあり方、そういうこととの兼ね合いも含めまして検討会で御議論をちょうだいしているところでございます。
〔増田委員長代理退席、委員長着席〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X02519990728/111
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112・一川保夫
○一川委員 そういういろいろなことを踏まえての検討、研究にもう入っているわけでございますけれども、大臣に、最後の段階でございますけれども、決意も含めてお話をお伺いしたいと思います。
こういった農業者年金制度を取り巻くいろいろな農業情勢の変化というものが大変深刻な状況の中で、先般食料・農業・農村基本法というこれからの農政の基本になるべき法律が制定されたわけでございまして、またこの法律に関連するいろいろな法律の改正なり、また制度の見直し等が当然行われていくというふうに思うわけです。
この農業者年金制度もそういう範疇の中で抜本的な見直しに入るというふうにお聞きしておりますけれども、先ほどのお話のように、他の公的な年金とのいろいろなバランスの問題とか、他の農政のいろいろな制度との絡み、そういうものもこの年金制度の見直しの中で出てくるのは当然だというふうに思います。特に、政策年金と従来言われてきたわけでございますけれども、こういった農政の政策を遂行する手段として、こういう農業者年金という手法を活用していくのがいいのかどうかということも含めて、本当に抜本的な基本的な点検をしながら見直しをかけていく一つの大きな転換期だというふうにも思うわけです。
そういう面で、大臣自身も恐らく、この制度そのものについての問題意識を十分お持ちだろうというふうに思いますけれども、次期の制度の改正に向けて、農水大臣の考え方をここでお伺いしておきたい、そのように思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X02519990728/112
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113・中川昭一
○中川国務大臣 従来から、老後の生活と同時に政策年金として構造政策の役割を果たしてきたわけでありますが、このたびの基本法の施行に伴いまして、まさに人づくりそれから経営体づくり、そして土地の集約化、高度利用といったような観点、そしてまた世代間の円滑な経営の移譲という目的はますます重要な基本法上の位置づけになってくるというふうに理解をしております。
一方、現状は非常に厳しいわけでございますが、公的年金そのものを抜本的に見直そうという大きな議論の中で、農業者年金につきましても、制度のあり方を、農政の前進に向かってどういうふうにやっていけるかという面から抜本的に見直していかなければならない、検討していかなければならないというふうに考えておりますし、また、もう少し個別的に年金に着目しますならば、年金財政のあり方あるいは給付と負担のあり方といったさまざまな観点から、農政上あるいはまた年金政策上の両面から抜本的に検討していかなければいけない課題だというふうに理解をしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X02519990728/113
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114・一川保夫
○一川委員 今まで御答弁がありましたように、年金制度そのものは他の公的年金も含めて基本的に見直す、今そういう大きな転換期に来ておりますし、また農政そのものも、先ほど触れましたように、そういう面では二十一世紀に向けての大きな転換期にあるわけでございますので、農業者年金制度についてもそういう方向に即してしっかりとした見直しをかけていただきたい、そのようにお願いを申し上げまして、質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X02519990728/114
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115・穂積良行
○穂積委員長 次に、中林よし子君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X02519990728/115
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116・中林よし子
○中林委員 私は、まず農業者年金制度の問題について質問をいたします。
今までもるる質問がありましたけれども、この制度は二十八年前に、農業者の老後の生活安定、福祉の向上、それから経営移譲を通じての農業経営者の若返り、相続時の農地の細分化防止、経営規模の拡大、これを目的として発足しました。しかし、今日では、構造政策そのものも実はうまくいっていない、わずか老後の生活安定に寄与している部分があるという状況だと思うんですね。
ところが、その老後の生活安定にもちょっと先行き不安感が出てきております。それは、今日の加入者と受給者の間の数字が非常に広がってきているというところに端的にあらわれております。全国で加入者が三十万で受給者が七十五万ということですから、二・五倍の開き。私の地元の島根県はもっとその格差が広がって、加入者は千七百人、受給者が一万人で六倍の開きがあるという状況になっております。これは全国一律で計算しますから、各都道府県の格差が問題ではありません。しかし、こういう開きが出てきて、加入者がどんどん減ってきているという状況、その原因をどのようにお考えでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X02519990728/116
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117・渡辺好明
○渡辺(好)政府委員 これまでの議論の中でも御紹介申し上げましたけれども、加入者の減少、未加入者が七万人いるということも一つ原因でありますけれども、農業者年金は、一定面積以上の農地等の権原を有する専業的農家というのが加入対象者であります。年金には加入の優先順位というのがございますので、そういう状況の中で、今先生おっしゃいましたように、農業構造の変化、つまり加入対象者自体が大きく減ってきているというのがその最大の原因であると思います。
センサスで見ましても、基幹の男子農業専従者、これは昭和五十年には百四十万人おられましたけれども、今は、平成七年の数字で四万七千人というふうな状況でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X02519990728/117
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118・中林よし子
○中林委員 要するに、農業では生活できない状況がこの間進行したと思います。だからこそ、専業で農業をやる人自体がこんなに激減する。まさに、そこには政府の農業政策そのものに原因があったということを指摘せざるを得ませんし、その反省なしには、農業者年金制度そのものを今研究会において見直し検討されているということでも、的を得ない状況になるのではないかというふうに思います。
そこで、私どもはこの間、さまざまな改正などが行われてきたときに女性の加入の問題も言ってまいりました。しかし、制度が発足して実際に始まった平成八年、一九九六年から配偶者加入の道を開いたとはいえ、平成八年には千六百二十三人の加入がありましたけれども、九年、十年と大体四割減という状況なんですね。本来ならば待たれていたはずにもかかわらず、こういう配偶者の加入が予測よりも大幅に減って、今三千三百三十人ですか、加入しているというのが先ほどから数として挙がっておりますけれども、本来、農水省とすれば、配偶者の加入というのはもっとあると予測されていたんじゃないかと私は思うのですけれども、配偶者が思うように加入しない要件は何だとお考えでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X02519990728/118
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119・渡辺好明
○渡辺(好)政府委員 ちょっと、答弁に入ります前におわびを申し上げます。
先ほど、私一けた数字を読み違えまして、基幹男子専従者四十七万人でございます。
それから、今先生が配偶者加入の数字をるるおっしゃられました。私自身も、この配偶者加入というのは数字として多いとは思っておりません。もちろん、農業が低調だとかそれから負担が大変だとかというアンケートに見られますように、今農業者年金に加入しておられる方御自身が負担に対して非常に重荷を感じておられるということもございまして、それに加えて、遠い将来のことよりも今の負担ということで配偶者の方々がお入りにならないということも背景にはあろうかと思います。
ただ、この制度、平成八年に導入されたばかりでありますし、この制度の前提になっておりますのが家族経営協定の締結でございます。これは、年金の方から追っかけるだけではなくて、農業経営内部において男子と女子が同等の立場に立ってその経営を担っていく、そういう環境が生まれないと、家族経営協定、つまり収入の帰属を二人で決める、経営のあり方について二人で決める、経営の移譲について二人で決めるというふうな状況にまでなかなかなりませんので、その普及こそ、ちょっと遠回りのようでありますけれども、年金加入をふやす道であろうと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X02519990728/119
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120・中林よし子
○中林委員 家族協定の問題は藤田議員が新農基法の審議の中で、それが進まない原因として、女性の土地の権利がなかなかちゃんとできない、税制上も実は阻害されているという問題を大臣に提起して、一肌脱いでほしいという話があったわけで、それはそれとして努力をしていただきたいということを重ねて申し上げておきたいと思うんですが、直接的に、一つはやはり負担感、この問題だろうというふうに私は思うんですね。
せっかく配偶者が入れる条件を示したけれども、配偶者が入って夫と妻二人が農業者年金に入ったとすると、一カ月大体どのくらい払わなければいけないのかということで、現在の年金の掛金で計算してみると、一人が、農業者年金が二万四百四十円、これに国民年金が一万三千三百円プラス付加年金。これはどうしても四百円プラスしなければなりません。そうすると、農業者年金と国民年金だけで一人三万四千百四十円。これは夫婦になりますと、倍の六万八千二百八十円です。
これで終わるかといえば、決してそうではありません。国保料金、国保税、これが当然毎月かかってまいります。それから、来年四月からは介護保険がかかってまいりますね。そうすると、今大体三千円弱、こういう試算がされています。そうなると、夫婦で六千円弱。
となると、六万八千二百八十円、それにプラスの国保そして介護保険をやると、どう見積もっても八万ないしは十万円ぐらいになるのではないか。毎月々強制的にこれだけ払わなければならない。老後の安定とはいえ、これはもう負担の限界に来ているのではないかというふうに思えてなりません。
同時に、配偶者加入の要件として、妻に土地の権利がなくても夫婦で一ヘクタール以上権利があれば適用できるというふうになっているわけですが、施設園芸をやっていらっしゃるところは、一ヘクタールというのはなかなか大変な要件なんですね。だから、配偶者が加入できる面積要件をぜひ見直してほしい、引き下げてほしい、こういう要望が出ているわけです。
一つは大臣に、負担感、こういうことで、今後、本当にもう限界ではないかという問題、そして、配偶者要件の緩和の問題は局長でも結構でございますけれども、この点についてお答えいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X02519990728/120
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121・中川昭一
○中川国務大臣 先ほどから申し上げていますように、この政策年金制度は、農政上の意味もあり、役割も果たしてきたところでございますし、今後もやはりそういう観点から制度を充実していかなければならないというふうに考えております。
負担感があるということは、特に夫婦で入る場合の負担というのは決して小さいものではないと私も思いますけれども、やはり人生八十年、あるいは夫婦そろって元気で老後を楽しむということのためにこの制度を利用しようとする魅力があれば、それに対しての加入をしようとするインセンティブというのはより高まっていくだろうと私は思っております。
そのためにも、公的年金全体、そしてまた農業者年金制度の抜本的な見直しを現在検討しておるわけでございまして、これは、一人というか、夫婦の人生設計の問題であると同時に、農政上の一つのいい方向を推し進める制度であろうというふうに思っておりますので、抜本的な、魅力のある制度にもう一度つくり直していこうということで今研究会で御検討いただき、また応急的な措置として、毎年毎年の約八百円前後の保険料の値上げを凍結するというのが今法律の改正のポイントでもございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X02519990728/121
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122・渡辺好明
○渡辺(好)政府委員 面積要件の点について御質問がございました。
この制度は、そもそもスタートが農地保有の合理化というところに発しているために、面積要件が非常に大事な要件になっているわけでございます。新しい基本法のもとで、この農地保有の合理化ということ以外に、これに加えてどのような政策目的をこの農業者年金に付与することができるかというのがポイントだろうと思います。
確かに、施設園芸だけで夫婦で一ヘクタールというのは、それは私たちが考えても相当すごい面積になるなという感じはいたします。現況は、施設園芸プラス他の種目の複合で三十アールなり五十アールというのをクリアしているのだろうと思いますけれども、今後、複合経営をどうするか、あるいは農地をそんなに使わない施設園芸だとか畜産、そういったものについての年金の適用をどうするかということについて検討したいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X02519990728/122
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123・中林よし子
○中林委員 研究会で検討検討ということで確約がいただけないのが大変残念ですが、私どもは今回の改正というのは、長引く消費不況に加えて、農産物の輸入の増大だとか農産物価格が低迷しているということで、凍結というのは当然のことだというふうに思っております。
しかし、不安なのは、その凍結が解除されたときに農家へどっと負担が来るのではないか、この懸念なんですね。これも研究会で今検討し、それから平成十四年に財政再計算をするから、そのときに決まるから今は言われないとおっしゃるのかもわかりませんけれども、少なくとももう農家は、保険料は限界に来ている。先ほど数字を示しましたけれども、この点を含んでいただいて、解除後、農民負担がこれ以上多くならないような措置をぜひ考えていただきたいと思いますけれども、一言だけお願いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X02519990728/123
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124・渡辺好明
○渡辺(好)政府委員 農業者のアンケートを拝見いたしましても、非常に負担感が強いということは十分承知をいたしておりますので、次期財政再計算の際には、新しい制度をどう構築するかということと関連をいたしまして、負担可能な保険料ということを勉強したいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X02519990728/124
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125・中林よし子
○中林委員 今、農業者年金の負担感の問題を言いました。だから、本来は農水省が、農家経営が成り立っていくようにこの分野に対する予算措置も十分やっていただきたいというふうに言うわけですけれども、なかなか、検討するとか研究会でということで逃げられて、財政事情を理由に前向きの回答がないわけです。
しかし、一方、きょう午前中にも問題になりました、構造改善局の予算執行についての恣意的な予算配分や業者との癒着の疑惑が明るみに出た問題、これはとてもほっておくことはできないと私は思います。農民が苦しんでいるときに、農林水産予算を食い物にして甘い汁を吸う者があるということはあってはならないことだというふうに思うからです。
今回の事態の解明に対する大臣の基本的スタンスについてお聞きするわけですが、大臣は、記者会見で、今後は進んで公表する、こういう決意を述べられて、午前中のときにもおっしゃっておりました。こういう問題が明らかになった場合は、そのことは当然のことで、速やかに全容を公表して国民の批判を仰ぐことが、再発を防止していく上でも、政治家として非常に重要なことだというふうに思います。
ただ、私が大変残念に思うのは、二月十九日にこういうペーパーが出ているわけですね、中間報告ということで。そうであるならば、少なくとも当委員会にこの報告書は提出されるべきものであったのではないかと思いますので、公表の問題、あるいはこの委員会に対する農水省としての対応を明らかにしてください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X02519990728/125
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126・中川昭一
○中川国務大臣 今回の出来事、そして処分といいましょうか、一連のことにつきましては、省内できちっとした調査を行い、中間報告を出して、そして口頭注意五人という決定をしたわけでございます。
それにつきましては公表扱いということでございますが、当時、公表扱いということが、私自身が、それは実質的には公表扱いといっても、聞かれたらお答えするということで、みずから進んで公表しないということはいかがなものかということで、実はマスコミの報道を通じてというのがきっかけでございましたけれども、以後、訓令を含めて、きちっと公表扱いすべきものにつきましては、積極的にこちらからいろいろな手段で公表をさせていただくということを命じ、今後そのようにしていくわけでございます。
なお、公表扱いとしたときに国会に提出すればいいのではないかということでありますが、一々国会に提出すべきかどうかということにつきましては、それぞれの事案の問題がありまして、もちろん国会の方から出せと言われればお出しするのが原則であろうと思いますが、この件については、一々出すべき筋合いのものではないと私自身は考えております。
なお、調査をした結果、甘い汁を吸っているとか、あるいは農家を食い物にしている、そういう事実はなかったことだけははっきり申し上げたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X02519990728/126
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127・中林よし子
○中林委員 当委員会にこういうものを出せと言われれば出すというような姿勢では、やはり進んで公表する立場にないと思います。疑惑が晴れたと大臣はおっしゃるわけですが、私は、これを読む限りでは、とても疑惑は晴れていないというふうに思うのです。
だから、そういうものは予算執行の問題です。事は国民の税金ですから、当然この委員会でも十分論議をする必要があるということだと思います。
それでは、農業構造改善事業に関する調査委員会の調査結果の中間報告、この中身についてお伺いするわけですけれども、いろいろな疑惑があって、これらについての事実関係を把握するために、三週間にわたり、外部者を含め延べ三十五人から約三十一時間の聞き取り調査及び書面調査を実施した。その調査結果として、地区認定の予算決定前における事前連絡の問題については、「関係者の聞き取り調査を行った範囲内では、その事実を主張した者は一名のみであり、大多数はこれを否定した。」こういう報告になっております。
また、恣意的な新規採択及び予算配分の問題でも、関係者に聞き取り調査をした範囲では、その事実を明確に主張した者は一名のみであるが、予算配分に特定の者の意思が強く働いていたのではないかとの証言もあったとの報告をしております。
そこで、具体的に聞きますけれども、事前連絡の事実について主張した一名、それと、恣意的な新規採択及び予算配分の事実を主張した一名、これは同一人物でしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X02519990728/127
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128・渡辺好明
○渡辺(好)政府委員 別人であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X02519990728/128
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129・中林よし子
○中林委員 私は今、別人だということは、それぞれ一名ずつですから、二名の者がそういうことを指摘したということだと思うのですね。たとえ一名であっても、事実を明確に主張した者がいたということは極めて重大な問題だというふうに思います。
高木事務次官の七月五日の記者会見で、たくさんの関係者のヒアリングを行った限りにおいては風評のようなことはなかったと。今大臣もなかったと言っているわけですが、これは今引用した中間報告自体の内容とも大きくかけ離れているというふうに私は思うのですね。大多数の者が否定したからといって、疑惑がなかった、こう断定して扱うのは、私は、これはその一名の者にふたをすることになるのだろうというふうに思います。
問題は、この事実関係の調査は構造改善局自身がおやりになったことです。さらに調査をする必要があるのではないかと思いますけれども、いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X02519990728/129
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130・渡辺好明
○渡辺(好)政府委員 この委員会では、事実の確認と事業の執行の適正化、この二つの目的を持って調査をいたしました。その限りで、私どもはその任にふさわしい人物を配置いたしまして、でき得る限りの調査をいたしました。その結果、そういった事実を確認するに至りませんでしたので、その種の中間報告をさせていただいたわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X02519990728/130
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131・中林よし子
○中林委員 あったと言った者が、予算決定の問題と、それからもう一点の調査でそれぞれ一名ずつはありましたといっても、ほかの大部分が否定したから、それで、言ったということに対する裏づけのものが出なかったというだけでなかったと言うのは、やはり余りにもこれは調査不十分だというふうに思います。
そこで、さらに聞きますけれども、この報告の中で、関係公益法人の独占受注の問題について、関係者から、採択してもらうための通行手形のような仕組みであるとの現場から批判があり、競争のない世界でのコンサルであったとの発言があったというふうに述べているわけです。これは大変重要な指摘だと思うのですけれども、この関係者というのは農水省構造改善局内部の人物なのか。内部だとしたら、どういう役職の人物だったのでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X02519990728/131
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132・渡辺好明
○渡辺(好)政府委員 農林水産省の職員であり、担当の肩書といいますか、課長補佐でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X02519990728/132
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133・中林よし子
○中林委員 それは本当に重要な問題だというふうに思います。
そこで、私は次に、一括再委託の問題、これも非常に重要な問題だと思うのですね。中間報告で、平成八年までは通達が生きていて、「基本計画作成主体は、基本計画の作成を全国農業構造改善協会、日本農村情報システム協会、農林漁業体験協会等適当と認められる者に委託して行うことができるものとする。」ということで、そこにしか頼めないじゃないかというような受けとめ方をされるような通達があったので、それをやめたということになっているわけです。
その証拠に、この中間報告で、一括再委託の問題では、新山村振興事業が始まったとき、ふるさと情報センターが窓口になり、データ整理を行って一部再委託してコンサル会社に発注していたという発言があって、例えば、ふるさと情報センターの平成六年度の山村等活性化ビジョン策定に係る市町村からの受託事業については、約四億二千四百万円のうち、データ処理、発注事務等の管理費としてセンターが受け取る約四千九百万円を除く約三億七千五百万円を民間コンサルタントに再委託。平成九年度では百八十四件、約七億八千百万円のうち、センターの管理費は約一億六千万円としているわけですが、調査の結果、これがすべてでしょうか。ここのふるさと情報センターが管理費として受け取ったのは合計一億八千四百万円になるのですけれども、ほかにはもうなかったのでしょうか。もしあったとすれば、これは非常に重要な問題です。
つまり、ふるさと情報センターがトンネル会社みたいになって市町村から委託を受けて、それをまた、ほぼ丸投げですよ、一二%ぐらいの管理費は取ったというのだけれども、その他は全部投げているわけですから。そういう意味では、税金を、こういう公益法人をトンネルにして再委託していくというやり方は丸投げ同然だというふうに思うので、これが全部なのか。それとも、全部でなかったら、私は、全部調査をして、やはり報告していただきたいということを要求します。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X02519990728/133
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134・渡辺好明
○渡辺(好)政府委員 御指摘の新山振、山村等活性化ビジョン策定事業実績額調べ、数字を全部当たってみましたけれども、過去五カ年間さかのぼりまして、数字はこれがすべてでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X02519990728/134
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135・中林よし子
○中林委員 今局長はすべてだというふうにおっしゃいましたけれども、もし新たにこの問題で、いや、そうではなかったというのが出た場合はどうされますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X02519990728/135
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136・中川昭一
○中川国務大臣 この件につきましては、風評といいましょうか、もっと言えば中傷合戦みたいなところからスタートした、話が伝わってきたわけでございまして、事実であるとするならば問題でございますから、私が各局担当に調査を命じたわけでございます。その調査の委員長が今答弁しております構造改善局長でございまして、それによって聞き取り調査等を徹底的にやった結果、ああいう結果が出たわけでございます。
この後出るということが全くないということを私は信じておるわけでございまして、仮に新たな事実が出るとするならば、そのときに私の責任においてまた徹底的にやるということでございますが、現段階では、徹底的にやった結果を公表し、処分を行ったところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X02519990728/136
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137・中林よし子
○中林委員 法務省にも来ていただいているわけですけれども、今回の報告書で、事業の採択やコンサルのあっせん等に伴い便宜供与が行われ、その一部は公務員としてあるまじき行為に該当するのではないかという指摘があったが、それは確認できなかったということになっているわけですけれども、会食があって、昼御飯を食べ、そしてそれは負担したんだというようなことをおっしゃっているわけです。しかし、ここに「現代産業情報」があって、あるジャーナリストが、かなりこういう飲食供応あるいはかけマージャンだとかそういうものもあったのじゃないかというようなことがあるわけですけれども、そうなれば、贈収賄につながっていくという可能性も出てくるわけです。
この報告書を受けて、農水省は否定しているわけですが、一般論で法務省に聞きますけれども、農水省内部の職員からも指摘されているわけですが、贈収賄等の犯罪に触れる可能性があれば厳正に捜査をすべきだというふうに思いますけれども、いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X02519990728/137
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138・松尾邦弘
○松尾政府委員 お尋ねは、一定の状況を想定して犯罪の成否を問われるものでございます。
具体的な事案において何らかの犯罪が成立するかどうかということにつきましては、捜査機関が収集した証拠に基づいて判断すべき事項ということでございます。一般論として申し上げれば、刑事事件に該当するものであるという場合には、法と証拠に照らして、検察当局において適正に対処するものと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X02519990728/138
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139・中林よし子
○中林委員 最後に大臣にお伺いしますけれども、今回問題に上がっております公益法人、全国農業構造改善協会、日本農村情報システム協会、農林漁業体験協会、ふるさと情報センター、ここに農水省からどのくらいの天下りがあるかということで事前に資料をいただきました。きょう御答弁いただこうと思いましたけれども、時間が迫っておりますので、私の方から言います。
全国農業構造改善協会には昭和三十八年の設立以来今日まで二十名、日本農村情報システム協会には昭和五十年から今日まで八名、農林漁業体験協会には昭和五十九年から今日まで四名、ふるさと情報センターには昭和六十年の設立以来今日まで八名、農水省の幹部が天下りしているわけです。
私は、こういうものがやはり今回のような癒着を生み、予算執行あるいは地域指定などに恣意的なものがあったのではないかという疑惑を生んだ温床になっているのではないかというふうに思うわけです。
かつて、農水省への天下り幹部を我が党の筆坂参議院議員が指摘したとき、当時の橋本総理が、これはやはり異常だということをおっしゃっていたわけです。その点で、大臣として、天下り問題、私どもは厳正に禁止をすべきではないかと思うわけですけれども、いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X02519990728/139
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140・中川昭一
○中川国務大臣 農林省への天下りと今先生はおっしゃいましたが、農林省からの天下りですね。
公益法人へといいますのは、営利を目的としないで、公益的な事業をより積極的にやっていくということを目的としたわけでございまして、先ほど先生御指摘のような、恣意的なあるいはまた疑惑を招くようなことをやってはならないということは大前提でございます。一方、長い行政経験を踏まえて、やはり専門性あるいはまたいろいろな広範囲な知識といったものを有効に生かすという意味で意味があるわけでございます。
農林省関係では、今先生御指摘のような幾つかの公益法人に農林省を退職した者が職を得ておるわけでございますが、それについては、そういう目的とそれから一定の倫理的な限界の中できちっとした仕事をやっているものというふうに理解をしております。
また、数につきましては、我が省の関係する公益法人につきましては、理事のうち、農林水産省出身者は三分の一以下にするように、ルール上そういうルールにしておりまして、現にそうなっております。いずれの公益法人もこの要件を満たしておりまして、業務の公正さあるいは効率性について特に問題はないというふうに理解をしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X02519990728/140
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141・中林よし子
○中林委員 済みません、一点だけ。
実は、新聞報道で、構造改善事業が来年度から中止というのが出たのですけれども、大臣、事実関係はいかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X02519990728/141
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142・中川昭一
○中川国務大臣 中止ではなくて、検討をして、さらに中身を充実したものにしていくということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X02519990728/142
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143・中林よし子
○中林委員 ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X02519990728/143
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144・穂積良行
○穂積委員長 農林水産大臣、参議院本会議出席のため、暫時休憩をいたします。
午後二時四十六分休憩
――――◇―――――
午後三時十三分開議発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X02519990728/144
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145・穂積良行
○穂積委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
質疑を続行いたします。知久馬二三子君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X02519990728/145
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146・知久馬二三子
○知久馬委員 社会民主党・市民連合の知久馬でございます。
私は、最初に、今回の農業者年金基金法の改正に当たって、私の地元であります鳥取県は三朝町でございますけれども、そこの状況を聞いてまいりました。少しお話ししてみたいと思います。
私の町三朝町は、人口が八千三百人で世帯数が二千六百七十七戸です。そして、六十五歳以上の人口が二千二百二十六ということで、高齢者率が二六・八%という状況でございます。そうした中で、面積も非常に大きいというか、町の面積が二百三十三・四六平方キロメートルあります。その中に、谷間谷間に六十四の集落が点在しているという町でございまして、本当に鳥取県の中部の山間地の町だということでございます。
そうした中で、農家数が千二十二戸、そして耕作面積が九百七十一ヘクタールという状況でございまして、農業者年金については三十名の被保険者がいますが、一番の問題は、新規に加入する人がなくて困っているという状態でございます。また、現在加入資格がある人が二十名ありますけれども、次の理由から、四つ理由がございますけれども、一番大きな理由としては、加入しても将来本当に給付が受けられるかどうかという心配、不安があるということでした。
それから、保険料が高くて支払いができない。やはり先がたもありましたように、国民年金と合わせると月額が三万三千円以上かかるというようなことがございまして、本当に零細農家が多いものですから大変だということでございます。
それから、若い加入者の対象者がいないということです。結局これは後継者がないということです。それと女性の加入者がない。これも、女性の農業専従者がいないということでございます。さらに、この三十名の被保険者は、年々受給者となり、将来被保険者がいない状態が来るものと想定されます。このために、現在の制度を改革し、会社勤めの人等についても、農業をしていれば加入できるようなことにしてほしいという声もございました。
それともう一つは、受給の手続についてもう少し簡素化してほしいというような要望も出ております。
このように、私の町の状況をお話ししましたけれども、農業者年金が置かれている現状というのを端的に示しておりまして、本当に縮図とも言えるのじゃないかなと思うのでございます。
質問に入りますけれども、農業者年金制度の抜本的改革については、本年の四月に農業者年金制度研究会が設置されて十一月に最終の取りまとめが行われるということでございますが、私、各論について少しお聞きしたいと思います。
まず最初に、女性の加入促進についてでございますけれども、一九九六年の法改正までは、農業経営者は一農家につき一人であるという考え方や、農地の権利名義人でない者は加入者にはなれないといった制度の制約から、女性の多くは農業者年金に加入できませんでした。この九六年の法改正により、夫とともに農業に専従する女性の加入資格が与えられたわけでございまして、九七年には千七百八十三人と、新規加入者の四四・九%に達したということでしたし、明くる年には、少なくなっておりますが千二百七人であったということで、三四・七%を占めるということです。しかしながら、加入者全体では三十一万人中一万五千人余りであって、女性の加入者の割合というのはまだまだ五%程度にしかすぎません。
そこでお伺いしたいと思いますのが、農業者全体のおよそ六割は女性が占めていると言われていますが、女性農業者の老後の安定のために加入拡大に向けてどのような施策をお考えか、大臣にその見解をお聞きしたいと思います。よろしくお願いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X02519990728/146
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147・中川昭一
○中川国務大臣 まず冒頭、委員長を初め委員の皆様方、お待たせいたしましたことをおわび申し上げます。
今先生御指摘の、配偶者が夫婦二人で入れるというこの年金でございますが、先生御指摘のように三年の間に少しずつ減ってきているというのがちょっと気になるところでございます。ぜひ趣旨を御理解いただいて加入していただきたいと思いますが、そのために農業者年金基金や農業委員会等におきまして戸別訪問等を実施し、家族経営協定の締結促進とあわせて制度の理解をいただき、普及啓発、加入促進に努めているところでございます。
また、将来にわたる農業あるいはまた農業を営む家族のあり方、農村等々につきましてこの制度を抜本的に見直し検討するという作業を、先生御指摘の研究会で進めているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X02519990728/147
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148・知久馬二三子
○知久馬委員 国民の皆さんの声を十分に考慮していただきたいと思います。
次に、女性の加入促進については、七月の十六日に福岡県の県議会が意見書を採択されております。具体的な要望、検討項目が挙げられていますが、その一つには、夫婦で一ヘクタール以上の農地という加入要件は施設園芸農家にとっては厳し過ぎるという声が強い、それから、耕作面積などの要件の緩和を求めるもの、もう一つは、後継者がいない場合、一定要件のもとで配偶者が営農を継続するときは移譲相手として認めるなど、経営移譲の範囲を拡大することです。さらに、女性農業者が経済的に自立できるよう、遺族年金制度も検討項目に挙げられております。
また、さきにこの法律改正を行った平成七年五月三十一日の本委員会の附帯決議の中でも、第三項に、農地の権利名義を有しない女性への加入資格の付与については、我が国農業における女性の位置づけを踏まえ、農業経営における女性の役割の明確化と個の確立に資するものとなるよう十分配慮すること、それと第五項めでは、承継加入配偶者への死亡一時金にかかわる将来の経営移譲年金額の加算、遺族年金の検討が盛り込まれていました。
女性の加入要件の緩和について具体的にどうお考えか。先がたもあったと思うのですけれども、確認のためにお聞かせ願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X02519990728/148
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149・渡辺好明
○渡辺(好)政府委員 女性、特に配偶者加入の問題について、一ヘクタール以上という要件があるわけでございますけれども、これはそもそも、農地にかかわる経営の合理化というのがこの制度発足の当時からの趣旨でございますので、農地の一定の面積、これを御夫婦でやれば二人分ということでございますので、実質的かつ同等な経営主、経営主体ということで、五十アールプラス五十アールで一ヘクタール、こういうことで決められてきたわけです。
今先生から御指摘ありましたように、では、施設園芸などの場合に、一ヘクタールという非常に大きな面積が確保できるのかどうかという問題はございます。先ほどお話し申し上げましたように、農地に着目をして、特に土地利用型農業に着目をしてできた制度でありますけれども、今後の多様な日本農業の発展の中で、施設園芸あるいは畜産、さらには複合経営といったものにどういうふうな形でこの制度の適用をするか、その場合の要件はどうするかということを今後しっかりと勉強したいと思っております。
それから、御指摘がございました配偶者への経営移譲ということでございますけれども、これもまた、この制度の主とした目的が経営の若返りということでございますので、夫婦間での農地のやりとりということになりますと、それはやはり経営の移譲ということには当たらない、農業者年金本来のねらいではないということで、適格な経営移譲とは認めていないわけでございます。
なお、遺族年金の扱い、それから死亡一時金の扱いにつきましては、かねてからいろいろの方々から多様な御意見がございます。こういう点も研究会の課題として提示をさせていただき、議論をしたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X02519990728/149
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150・知久馬二三子
○知久馬委員 本当に、女性の加入と担い手の問題というのは重要だと思います。
次に、改善を求める要望についてでございますが、さきに本委員会で審議、成立した食料・農業・農村基本法、すなわち新基本法では、効率的かつ安定的な経営が生産の相当部分を占める農業構造を目指すとされ、農業経営の合理化とともに、円滑な経営の継承、農地利用の集積、農地の効率的な利用、人材の育成などが掲げられています。私は、こうした担い手、経営対策の新しい課題が、農業者年金の政策目的を考える上でポイントとなると思うものでございます。
農業者年金は、農家の老後の生活設計に組み込まれており、農業者の長期にわたる信頼を基礎に成り立っています。この信頼感を継続するためには、年金財政基盤の長期安定化が必要であろうと思います。そのためには、保険料、給付水準、国庫補助を含めたそのあり方について総合的に見直す必要があると研究会でも検討されていることと思います。
農業者年金の保険料は、九〇年から九年間で六九%も引き上げられたために、国民年金と合わせて年額四十一万円にもなり、被保険者は負担に限界を感じています。一方、給付水準については、モデル的な算定では、厚生年金に比べて保険料が高い割に受給額が低いという実態があります。
そこで、農村の現場から農業者年金の改善を求める声が上がっております。短期の加入でも実質的に年金給付に結びつくような受給資格期間あるいは空期間の改善、国民年金と同等の保険料の免除措置と、夫婦加入などについての何らかの軽減措置、それと経営移譲の要件について、例えば農地の権利設定などに匹敵する政策効果のある基幹的な作業受託も対象とする、あるいは中山間地域などでは六十五歳以降の経営移譲に救済措置を設けるなど、研究会で検討中であるとのお答えが多かったのですけれども、こうした声に具体的にどうこたえていかれるのか、その見解をお聞きしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X02519990728/150
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151・渡辺好明
○渡辺(好)政府委員 御質問が幾つかにわたっておりますので、順次整理をしてお答えしたいと思います。
受給資格期間の問題がまず第一点でございます。
今先生から、二十年は長過ぎる、あるいは空期間の改善は図られないかということでございました。
この制度は、農業者らしい農業者を対象とする制度であるという前提に立ちますと、やはり相当期間農業に従事をしていただくということが大前提でございます。それから、期間が短くなれば、当然のことながらそれだけ給付水準も下がるわけでございますので、年金としての魅力がどうかという問題も起こってまいります。
ただ、空期間の問題は、この農業者年金の順位がほかのものに比べれば後順位になっておりますので、空期間が、つまりこれから一時脱退ということが起こり得ますので、その期間はできるだけ期間通算をするということで、これまでもかなり制度の改善を重ねてきたところでございます。
それから、保険料の免除措置の問題でありますが、これはこの年金が言ってみれば二階部分でございますので、一階部分についてはやはり国民皆年金の中でそういう制度がとられておりますが、厚生年金等につきましても上乗せ部分については免除の措置がないわけでございますので、そこは非常に難しい問題であるというふうに思っております。
夫婦加入の場合の割引の問題は、先ほどの農地所有の問題に戻りますけれども、同一、同等の資格、共同の経営ということになりますと、さて割引制度がなじむのかどうかという問題がございます。もちろん、保険料を前納すればその利子分を割り引いてというふうな制度があるわけでございますけれども、ここはもう少し勉強しなければならないというふうに思っております。
それからもう一つ、貸借、それから所有権の移転のほかに、農作業の受委託のようなものも経営移譲として認めてはどうかという御指摘なんですが、これは経営に着目した制度でございますので、作業の委託の場合には、危険負担も含めて経営権というものが所有者に残りますので、制度設計としてはなかなかとりづらいというところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X02519990728/151
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152・知久馬二三子
○知久馬委員 この年金の問題というのは大変難しいというのはとてもよくわかるんですけれども、本当に農業者の方が安心して老後が送れるような制度にならなければならないと思うものでございます。
あと、ちょっと総論としてお伺いしたいのですけれども、一九七〇年に制定されましたこの農業者年金制度は、制定当初論議されたように、国民年金水準をカバーする老後保障年金というよりも、農業経営移譲を促進するための政策年金という制度の特徴が、十次にわたる改正を経ながら続いているということでございます。
今回、厚生年金などの保険料の引き上げが凍結されると同様に、農業者年金の保険料が凍結されるわけですが、これも多分質問があったと思うのですけれども、将来、この農業者年金制度を農業者にとって本当に魅力あるものにするためには、抜本的な改革が必要と考えますが、この点についてお伺いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X02519990728/152
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153・渡辺好明
○渡辺(好)政府委員 それはもう先生の御指摘のとおりであります。
今回の保険料の凍結というのは、これは、公的年金の言ってみればバランスの中で行うものでありますので、抜本的な改革そのものとは直接結びつきません。ただ、この年金が持っている、構造政策を進めるという政策の側面と、そうであるがゆえに国庫から八百億円近い金を投じているという実情、これを十分に踏まえて、この年金が新しい基本法のもとでの構造政策誘導のための年金になるような、そんな仕組みをこれから検討して構築したいと思っております。
先生から御指摘のありました事柄について、やや否定的なお答えもいたしましたけれども、それらのこともすべていろいろな方々から出ておりますので、それは御披露した上で、議論は当然されるということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X02519990728/153
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154・知久馬二三子
○知久馬委員 これもちょっと無理なお願いになると思いますけれども、農業者年金制度を魅力あるものにするには、まず、経営移譲せずに六十五歳になったときに支給される農業者老齢年金水準を大幅に引き上げることではないでしょうか。(発言する者あり)長期間にわたって高額な保険料を支払い、六十五歳になって経営移譲せずに老齢年金を支給されるときには……発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X02519990728/154
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155・穂積良行
○穂積委員長 知久馬委員の発言中ですが、私語はなるべく控え目に、小さい声でお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X02519990728/155
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156・知久馬二三子
○知久馬委員 保険料を支払って、六十五歳になって経営移譲せずに老齢年金を支給されるときには経営移譲年金水準の二分の一では、余りにも格差が大きいのではないかと思うのでございます。
それで、農村社会における年金の二階建て部分の実施を図るべきだと考えます。先がたも説明がありましたように、ちょっとこれはなかなか難しい問題だろうとは思いますけれども、本当に、長年にわたって汗を流してこつこつと働いた中での保険料を支払った農業者にとって、老後の楽しみの年金の充実を図るべきだと考えるものでございます。
最後にこれをお聞きして終わりたいと思いますので、よろしくお願いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X02519990728/156
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157・渡辺好明
○渡辺(好)政府委員 そこのところは本当に難しいと思います。
といいますのは、経営移譲年金が高目に設定をされているのは、これは、国庫からの助成があるから、それを充当して高く誘導ができるわけですが、老齢年金の部分については、掛金と保険料との間で計算をした上で水準を出していきますので、もしこれを引き上げようとすると、今の世代の加入者の保険料を引き上げざるを得ないという問題が出てきます。
午前中以来の質疑に対するお答えの中で、積立型にするのか、賦課方式にするのかということも含めて幅広く検討するというふうに申し上げている趣旨も、年金の魅力を増そうとすると保険料にはね返るというシステムだけでいいんだろうかという問題があるわけですから、これは前広に議論をしたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X02519990728/157
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158・知久馬二三子
○知久馬委員 終わります。ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X02519990728/158
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159・穂積良行
○穂積委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。
―――――――――――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X02519990728/159
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160・穂積良行
○穂積委員長 これより討論に入るのでありますが、その申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。
本案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X02519990728/160
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161・穂積良行
○穂積委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。
お諮りいたします。
ただいま議決いたしました法律案の委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X02519990728/161
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162・穂積良行
○穂積委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
―――――――――――――
〔報告書は附録に掲載〕
―――――――――――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X02519990728/162
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163・穂積良行
○穂積委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。
午後三時三十五分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X02519990728/163
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