1. 会議録本文
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000・会議録情報
平成十一年三月二十三日(火曜日)
午前九時十分開議
出席委員
委員長 杉浦 正健君
理事 橘 康太郎君 理事 八代 英太君
理事 山本 幸三君 理事 山本 有二君
理事 日野 市朗君 理事 上田 勇君
理事 達増 拓也君
奥野 誠亮君 加藤 卓二君
河村 建夫君 小杉 隆君
左藤 恵君 笹川 堯君
菅 義偉君 中谷 元君
西田 司君 松本 純君
望月 義夫君 保岡 興治君
渡辺 喜美君 枝野 幸男君
佐々木秀典君 島 聡君
福岡 宗也君 漆原 良夫君
安倍 基雄君 三沢 淳君
木島日出夫君 保坂 展人君
園田 博之君
出席国務大臣
法務大臣 陣内 孝雄君
出席政府委員
法務大臣官房長 但木 敬一君
法務大臣官房司
法法制調査部長
兼内閣審議官 房村 精一君
法務省刑事局長 松尾 邦弘君
法務省人権擁護
局長 橫山 匡輝君
委員外の出席者
警察庁長官官房
給与厚生課長 岡 弘文君
警察庁警備局公
安第一課長 飯島 久司君
最高裁判所事務
総局総務局長 浜野 惺君
最高裁判所事務
総局人事局長 金築 誠志君
最高裁判所事務
総局民事局長 千葉 勝美君
最高裁判所事務
総局刑事局長 白木 勇君
法務委員会専門
員 海老原良宗君
委員の異動
三月二十三日
辞任 補欠選任
加藤 紘一君 望月 義夫君
古賀 誠君 中谷 元君
渡辺 喜美君 松本 純君
枝野 幸男君 島 聡君
権藤 恒夫君 三沢 淳君
同日
辞任 補欠選任
中谷 元君 古賀 誠君
松本 純君 渡辺 喜美君
望月 義夫君 加藤 紘一君
島 聡君 枝野 幸男君
三沢 淳君 権藤 恒夫君
三月二十三日
司法制度改革審議会設置法案(内閣提出第二五号)
は本委員会に付託された。
本日の会議に付した案件
参考人出頭要求に関する件
裁判所職員定員法の一部を改正する法律案(内閣提出第三号)
司法制度改革審議会設置法案(内閣提出第二五号)
午前九時十分開議
――――◇―――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505206X00419990323/0
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001・杉浦正健
○杉浦委員長 これより会議を開きます。
この際、お諮りいたします。
本日、最高裁判所浜野総務局長、金築人事局長、千葉民事局長、白木刑事局長から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505206X00419990323/1
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002・杉浦正健
○杉浦委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
――――◇―――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505206X00419990323/2
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003・杉浦正健
○杉浦委員長 内閣提出、裁判所職員定員法の一部を改正する法律案を議題といたします。
これより質疑に入ります。
質疑の申し出がありますので、順次これを許します。佐々木秀典君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505206X00419990323/3
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004・佐々木秀典
○佐々木(秀)委員 おはようございます。民主党の佐々木秀典です。
本日は、定員法に関連して、あるいはそれを外れることもあるかもしれませんけれども、主として裁判所にお伺いをしたいと思います。
実は、当委員会の審議を経て新しい民事訴訟法が、一昨年でしたか、成立をいたしまして、昨年一月から施行されたわけです。ちょうど一年余が経過いたしました。この民事訴訟法のねらいは、一つは、何とか裁判を迅速に進めたいということが大きな眼目だったと思いますけれども、その実効性あらしめるためにということで幾つかの要綱が立てられたわけですね。
その一つは、裁判における争点あるいは証拠の整理手続を整備する。そのために、具体的には、準備的な口頭弁論とか弁論準備手続それから書面による準備手続などを新しく考えたい、こういうことだった。二つ目には、証拠の収集手続を拡充したい、こういうことだった。三番目は、少額訴訟についての訴訟手続を創設して、総額三十万円以下の訴訟については一回の審理でもうその日のうちに判決ができるようにしたい、こういうねらい。それからもう一つは、上告制度が少し濫用ぎみではないかということで、最高裁判所への上告についての整理をして、濫上告ぎみのものについては少なくしていく、そして最高裁判所の憲法に絡む訴訟だとかあるいは判例変更に及ぶような訴訟だとか、いわゆる重要訴訟についてしっかり審理をしてもらいたい、こういうねらい。要約すると、この四つあたりだったのではないかと思うわけです。
まだ一年余しかたっていませんから全体これでというわけにはいかないのかもしれないけれども、この法律ができて、今のような四つの点にわたって、裁判の実務においてどのような影響があらわれているのか、その実効性はどうなのか、それについてお聞かせをいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505206X00419990323/4
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005・千葉勝美
○千葉最高裁判所長官代理者 全般的なことでお答えいたしますが、新しい民事訴訟法は、当事者からできるだけ早期に主張や証拠を提出していただいてそれをもとに当事者と裁判所との間で事件の争点を明確にし、必要な証拠調べを争点に絞って集中的に行う、こういうことによって審理の充実と迅速な裁判を実現することを目指すものでございます。委員御指摘のとおりでございます。
新法施行から一年以上が経過いたしまして、おおむね順調なスタートを切ることができたというふうに考えております。この一年間の各裁判所の運用実績を見てみましても、当事者から提出される書面の内容が大変充実する傾向にございます。争点について当事者と裁判所とが共通の認識を持って充実した審理を進めておりまして、証拠調べにつきましても、昨年十二月の一カ月のサンプル調査でございますけれども、いわゆる集中証拠調べが実施された事件の割合が四八・二%に及んでいる、集中的に証拠調べを行う運用が多くなってきております。その結果として、当事者にとってわかりやすい裁判が実現しつつあるようでございます。
裁判の迅速化という面からも成果が出ておりまして、昨年一年間の全国の地方裁判所民事第一審通常訴訟の平均審理期間、これは概数でございますけれども、九・三カ月という数字が出ております。この数字は昭和三十年以降では最も短い数値ということでございます。
こうした成果は全体として弁護士の方の新法に対する理解が深まり協力が得られている結果である、そういう認識をしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505206X00419990323/5
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006・佐々木秀典
○佐々木(秀)委員 そのほかの点は。私それぞれ挙げたのだけれども。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505206X00419990323/6
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007・千葉勝美
○千葉最高裁判所長官代理者 個々的に御説明申し上げます。
少額訴訟の関係を御指摘いただきましたが、少額訴訟の事件数、これは順調に増加をしております。平成十年は全国で八千三百四十八件という件数に達しました。事件処理も円滑に行われておりまして、ほとんどが弁論期日一回以内でおさまっているということでございます。手続の利用者からもおおむねよい評価を受けておるということでございます。
それから、上告制度の状況でございます。最高裁におきます平成十年度中の民事及び行政訴訟の上告の新受件数でございますけれども、合計いたしますと、三千二百九十件でございまして、このうち上告事件が二千五百二十二件、それから新法で設けられました上告受理の事件、これが七百六十八件というふうになっております。一昨年の上告事件の合計は二千七百十八件でございまして、上告事件を比べると新法施行後の方が少なくなっている、上告受理事件と両方合わせますと一昨年より多い数値になっている、こういう数値でございます。
それから、原審却下というのもあろうかと思いますが、これはちょっと統計的な把握はしておりません。
以上でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505206X00419990323/7
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008・佐々木秀典
○佐々木(秀)委員 まだ一年ぐらいですから、これからどうなっていくかということもあるのだろうと思いますけれども、先ほどお話があったけれども、やはりこういうことについて効果を上げるためには、一つには、当事者本人というよりも、それに関与する弁護士さんの御理解と御協力がなければならない。そのために、裁判所としても、これを御理解いただくための御努力などというのはしているのだろうと思うけれども、そんなことで、特に裁判所として努力しているというような点がありますか。これをよく御理解いただくことについて、浸透させるためのPRというか、何か特に御努力していることがあったら。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505206X00419990323/8
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009・千葉勝美
○千葉最高裁判所長官代理者 新しい民事訴訟法の趣旨を徹底するという形での審理を実現するために、やはり弁護士の方、代理人の協力が不可欠でございます。
この新法は、新法制定以前から裁判所と弁護士会との間で個別に、あるいは非公式にと申しますか、運用改善の勉強会などを行ってきておりまして、新法施行後もそのような勉強会を続けるということで、お互いの意見の交換、それから新法の趣旨の徹底、その場として活用しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505206X00419990323/9
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010・佐々木秀典
○佐々木(秀)委員 とにかく、鳴り物入りでつくった民事訴訟法ですからね。それによって実が上がらなければ意味がないわけですから、これはもう訴訟のそれぞれ関係者が努力をしなければならないことは当然のことですけれども、しかしそのために、迅速さを強調する余り、その実質的な審理がおろそかになるということでもいけないわけですね。民事訴訟法の場合には、刑事訴訟法と違って、実体的真実の発見というよりも、事案の当事者の納得できるような解決を得て事を処理するというのが目的でありますから、お互いの関係者が十分に理解をし、納得するような結果を得なければならない。手続を急ぐ余り、納得するような点に欠けるようなことがあったらまた困るわけですけれども、両々相まって実が上がるように、関係者のさらに一層の努力が期待されるところですね。
そういう点で、裁判所も、これまた余りにも裁判官に負担がかかるようなことでは困るわけですけれども、そこのところも十分に配慮しながら事を進めていただければ、このように思うわけです。
そこで、この資料を見ますと、平成八年以降、地裁で扱う破産事件の件数、これが極端にずっと右肩上がりになって上昇しているように思われるのですね。これは恐らく、現在の社会の経済状況の反映だと私は思うわけですけれども、資料では、平成八、九年までの件数は出ているのですけれども、平成十年の新受の件数が出ておりません。
そこで、この件数がわかったらお伺いしたいことと、こうした破産事件の増加に対して、裁判所としてどのような対応をしているのか、その点についてお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505206X00419990323/10
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011・千葉勝美
○千葉最高裁判所長官代理者 平成十年度の破産事件の新受件数でございます。まだ概数でございますけれども、集計した数字で申し上げますと十一万一千六十七件ということでございます。ちょっと内訳を申し上げますが、個人に対するものが十万五千四百六十八件でございます。法人に対するものが五千五百九十九件ということでございます。
この破産事件の増加に対応する手当てといいますか、物的な対応について御説明いたします。
最高裁判所では、各裁判所での効率的な破産事件の事務処理を助力するために、破産事件全般にわたります文書の作成、それから事件の進行管理、こういったものなどができる、そういう機能を備えましたパソコンシステムを開発いたしまして、事件の増加状況等に応じて、全国の地裁本庁、それから事件の多い支部に配備してございます。
また、郵便発送事務の省力化を図る。この事務は大変労力を要するものでございますので、この省力化を図るために、破産宣告決定などの通知書を自動的に封筒に封入、封緘をする、こういう機器なども事件数の多いところには配付してございます。
さらに、東京、大阪など事件数の多い庁には、破産事件専用のファクシミリなども配付しているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505206X00419990323/11
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012・浜野惺
○浜野最高裁判所長官代理者 破産事件の増加に対する裁判所の人的な対応について御説明させていただきますが、裁判所といたしましては、急増しております破産事件が適切に処理されますように、大都市部の裁判所を中心に人員の手当てを行ってきたところでございます。
例えば東京地裁についていいますと、民事二十部の職員、ここが破産部でございますが、二十部の職員は、平成三年の四月には裁判官が四人、書記官等が十四人でございましたが、平成十年の四月には裁判官九人、書記官等が三十八人と大幅に増員されたわけでございます。
そこで、平成十一年度におきましては、判事補三十人、裁判所書記官二百四十六人の増員をお願いしているところでございますが、この増員は破産事件の増加をも加味したものでございます。これをお認めいただきますれば、さらなる人的手当てを破産部門についても振り向けることが可能になるというふうに期待しておるところでございます。今後とも、より一層適正迅速な事件処理を図るために、事件数の動向等を見ながら、必要な人員の確保に努めてまいりたいと考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505206X00419990323/12
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013・佐々木秀典
○佐々木(秀)委員 資料を見ますと、地方裁判所の破産事件の新受件数は、平成八年で六万二百九十一件、平成九年で七万六千三十二件だった。今お伺いしますと、去年、平成十年は十一万一千六十七件ということで極めてふえていますね。これはやはり経済が上向きにならないとこういう現象というのはなかなか下向きにはなってこないんだと思うのですね。
今お伺いしたところによると、そのうち個人破産が十万五千四百六十八件というので、圧倒的に多いわけですね。このことは、一つは、破産という手続、法的な手続に従って自分の負債整理をしようということだと思うので、これが大分普及してきているということなんでしょうね。このことは一見好ましいといえば好ましいかもしれない。
私の地元の北海道などでは、倒産したような場合あるいは個人的に借金で首が回らないという場合に、そういう法律手続にはよらないで行方をくらましてしまうというのが結構多いのですね。以前はそういうケースが全国的に多かったわけですけれども、そうではなくて、何にしてもこういう法的な手続に従ってというのは、一見好ましいことではあるけれども、しかしまた、これをやれば後は責任を負わなくて済むんだという風潮も一見なきにしもあらずのようにも思えて、この辺のところが、一体このままでいいのかなという思いもあるのです。
しかし、何はともあれ、申し立てがあれば裁判所としては適切に処理していかなければならないわけですから、ことしあたり経済が上向いてくれればいいけれども、なかなかそれが期待できないとすれば、さらに今年度もまたこういう破産の申し立ては、個人、法人を問わずふえてくるのではないかと思いますので、今裁判所の方で人的配置についても御工夫しているということですけれども、さらに一層その体制の強化をしていただくようにお願いしたいと思っております。
そこで、その次に、事前にお知らせ申し上げた質問の順序をちょっと変えたいと思うのですが、三番目の高裁の支部の問題は後にいたしまして、裁判所速記官の問題と、それから裁判速記録の問題、裁判記録、調書の作成の問題などについてお伺いしたいと思うのです。
今度の定員法の一部を改正するための裁判所の方でのお考えを見ますと、裁判官については今お話しのように三十名、それから書記官についても大幅に増員するというお話ですが、この速記官については、昨年百人減員しているわけですけれども、本年度もまた速記官については百人減員をするという計画になっているようですね。
ところが、御承知のように、裁判所法六十条の二では、各裁判所に速記官を置くということが、これは法律の上で決められているわけですね。お聞きをいたしますと、最高裁判所は、一昨年でしたでしょうか、これからは新しい速記官の養成はしない、それで、それによって支障を生ずることになる裁判の記録、調書の作成などについては、録音反訳方式、法廷で録音をとって、そのとった録音を外部の民間業者に委託をして反訳をさせて、そのでき上がった反訳したものを書記官が点検をして、それで調書にするのだ、こういう方式に改めていくということが最高裁判所で決められて、その方針にのっとってこの速記官の減員というのが行われてきたというようにお聞きをしているわけですけれども、その理由、もう一度改めて、どうしてそうするのかということについてお伺いしておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505206X00419990323/13
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014・浜野惺
○浜野最高裁判所長官代理者 裁判所は、現行の機械速記方式をめぐる社会状況等を踏まえまして、増大する逐語録の需要に的確にこたえていきますために、速記制度を見直して、録音反訳方式の導入と速記官の新規養成の停止を決定した上で、平成九年の四月から一部の庁に録音反訳方式を導入した次第でございます。その後、速記官の減少状況に応じまして、録音反訳方式の導入を拡大しているところでございます。このような録音反訳方式の導入に当たりましては、裁判事務に支障が生じないよう十分配慮していく必要がありますことから、当面、速記官制度と録音反訳方式を併存させながら、速記官の減少状況や逐語録需要等を見ながら、緩やかに録音反訳方式に移行していくことになると考えております。
在職する速記官につきましては、速記官として仕事をしていくことを希望する者については速記官として頑張ってもらえるよう執務の環境を整えますとともに、書記官として活躍したい、こういう希望をする者については書記官への転官をできる道も開いておるわけでございます。そういう速記官の希望を踏まえた上で、退職あるいは転官等により生じている欠員数等を見まして、速記官の定員を百名減員することにしたものでございます。この減員する百名の定員につきましては書記官の定員に振りかえることといたしまして、全体として裁判部の充実強化を図っていこう、こういう考えでおるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505206X00419990323/14
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015・佐々木秀典
○佐々木(秀)委員 私も長いこと弁護士の仕事をしてまいりまして、国会議員になってからはなかなか法廷にも行けないのですけれども、しかし、それまでの弁護士経験はこの国会議員の経験よりも倍ぐらい長いわけです。私の経験からいっても、裁判においては、この法廷での関係者の供述、これを正確に録取した調書がつくられるということが非常に重要であります。これは申し上げるまでもありません。できるだけ正確にその供述の内容が書面化されるということが大事なわけであります。
国会においては、こうして今も速記者の方々が速記をとって、これもまた非常に正確に、しかも迅速につくられているわけですけれども、裁判所の場合は、今のお話のように、従来は、いわゆるソクタイプと私どもは呼んでおりますけれども、機械による速記の方法がとられていたわけですね。これはなかなか、私の経験からいっても非常に正確にできておりまして、好評だったわけです。
しかし、今御答弁ありましたように、これを録音反訳方式にするということになってきた。その傾向というか、それが実施されてからのことも私も経験しているわけですけれども、どうも録音反訳方式というのは、法廷に立ち会っていない民間の業者のところに録音が届けられる、つまり、臨場感を持たない人が、テープに収録された音だけを聞いて、そしてそれを文章化していく、つまり、書体に改めていくというやり方ですから、その関係で私は、正確性に欠けることもあるだろうし、あるいは臨場感に乏しいというか、そういうこともあるのではないだろうか。
その調書の正確性などの重要性ということを考えた場合に、録音反訳方式と、養成を受けて、訓練を受けて、そして法廷という現場に臨んで、それを直接見聞きしながら機械を使って速記に残していくという速記官のつくったものと、どっちがより正確かというと、私は、やはり速記官による、このソクタイプによる記録作成の方が正確ではないかと思われるのです。また、実際に私も経験したことがあるし、私の仲間の弁護士さんたちにも聞きますけれども、録音反訳方式の場合には、時々やはり間違いがある、あるいは、語尾などが不明のままになっているとか、あるいは、異議の申し立てなどが省略されて記録されていないというようなこともある、いろいろと録音反訳方式については問題ありというような指摘を受けているわけです。
また、特に裁判当事者のプライバシーの点からいっても、これは外部の業者に委託をするわけですから、それがまた伝播しないとは限らない。そういう意味で、プライバシーの上でも問題があるんじゃないかということも言われているのですが、そういう点について、双方の比較を裁判所としてはどのように考えておられるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505206X00419990323/15
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016・浜野惺
○浜野最高裁判所長官代理者 まず、委員御指摘の最後の方の質問にお答えする前に、裁判所におきます機械速記方式でございますが、これに用いる、委員御指摘の速記タイプでございます。これは裁判所のみが発注する特注品でございまして、生産台数がごく少量であることから、製造会社がその製造を今後いつまで継続するか不明な状況にございます。実際に、製造を中止したい旨の申し出もあったわけでございます。
また、機械速記の習得のためには、研修所において二年間の非常に厳しい訓練が必要でございまして、健康面も含めまして、高い適性を要求されるものでございます。昨今の大学進学率等の増加の影響もございまして、なかなかこうした人材の確保が困難な状況にございます。
このような機械速記方式をめぐる社会的状況に加えまして、他方、社会経済情勢の複雑化、多岐化の進展によりまして、裁判所に提起される訴訟も争点が非常に複雑困難化してまいりまして、今、これに伴って増大する逐語調書の需要に的確かつ機動的に対応していく必要が迫られております。
以上のような状況を踏まえまして、速記制度を見直して、録音反訳方式の導入と速記官の新規養成停止を決定した次第でございます。
ところで、この録音反訳方式の導入に当たりましては、約半年間、二千件を超える証拠調べについて実験を行いまして、裁判での実用にたえられる正確な調書が迅速に作成できるかどうか実証したわけでございます。その結果、正確な調書が迅速に作成できて、速記方式に代替し得るという実証がされた上で採用したものでございます。
その後、平成九年度に導入後、平成九年が四千件余り、平成十年、これは十二月末現在で九千件余りでございますが、合計一万三千件余りの証拠調べについて録音反訳が利用されておりますが、法廷における供述の一語一語が極めて逐語的に録取されておりまして、反訳書の記載内容の正確についても問題は生じておらず、円滑に運用されておりまして、現場における評価も高いものでございます。現に、弁護士の方々を対象といたしましたアンケートでも、九五%が正確に作成されているという御回答をいただいておるところでございます。
また、委員御指摘の当事者のプライバシー等の秘密保持についてでございますが、裁判が原則として公開されているとはいえ、裁判所といたしましても十分な配慮をしていく必要があると思っております。民間業界では、秘密保持は企業の存立自体にかかわるところでございまして、そのモラルは相当高いものと考えておりますが、具体的な運用に当たりましては、守秘義務、情報管理等について信頼できる業者に委託して、契約書にも守秘義務条項を盛り込むなどしておりまして、これまでも問題が生じたことはございません。
今後とも、プライバシーの保護、秘密保持につきましても、運用上の工夫改善に努めてまいりたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505206X00419990323/16
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017・佐々木秀典
○佐々木(秀)委員 今のお話の中で、一つには、この録音反訳方式に移す理由として、いわゆるソクタイプの機械メーカーがその生産について消極になっているというようなお話も聞いたわけですけれども、しかし、これはメーカーの方が消極というよりも、結局裁判所での需要が減ってくれば、これはとても台数をつくったって商売にならないということになるんだろうと思うのです。裁判所の方針が変わって、さらにこのソクタイプをうんと用いて機械による速記の方を重視していくんだということになれば、メーカーだってそれに応じて商売になるような生産台数をつくっていけるんだろうと思うのですね。
だから、どうしてもこれがまた必要だということになると、場合によっては司法予算の中からこの企業に対する助成ということだって考えられていいんでしょう、実際にいろいろなところでこういうことはやられているわけですから。要はやはり裁判所の方針の問題だと思うんです。
今のお話だと、これは今のところは併用だけれども、次第に録音反訳方式をだんだんふやしていくというようにお聞きをするんだけれども、果たしてこのままでいいのかどうか、私は疑問に思います。
御承知のように、アメリカなどでは機械による速記の方法を維持しておりますね。そして、これについてさらにコンピューターを接続して、リアルタイムで文字化できるような、そういうような開発をしている。日本の場合にも、裁判所は一生懸命ではなかったようだけれども、速記官のグループの中での研究開発によって、ソクタイプとコンピューターを接続するというシステム、いわゆる速記反訳システムソフトですか、これの開発がなされて、何か「はやとくん」というような愛称がついているようだけれども、こういう努力がされているというように聞いているんですね。こういうことができれば、本当に私ども訴訟の関係者としても大変便利じゃないかと思うんです。私が拝見したところによると、アメリカの裁判所などでは、裁判官の席のところにちゃんとそういうコンピューターの機械があって、リアルタイムでばんとそれが見られるというようなことを実際にやっているというふうに聞いているんですね。
裁判所もこういうことにもう少し力を入れて、必要だったらそのための予算も獲得するような努力をされて、開発をしていくということをやったらどうなのかな。私ども、そういうことが有用だとすれば、幾らでも予算要求もして、つけていきたい、そんなふうに思うんですけれども、どうも裁判所は、今お聞きをいたしますと、民間の外部の業者に録音反訳を委託していくという方式だけを言っておられるようだけれども、これからの調書の作成、裁判記録などについてはどういう方針を持って臨もうとしているのか、さっぱりそこが見えてこない。どうなんですか、そこのところは。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505206X00419990323/17
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018・浜野惺
○浜野最高裁判所長官代理者 まず、委員御指摘のいわゆる「はやとくん」と呼ばれるシステムでございますが、そういうシステムがあることは承知しております。
このシステムは、速記符号を文字化するソフトを組み込んだパソコンに速記タイプを接続したものでございまして、速記タイプを打ちますと、パソコンに速記符号データと片仮名データが表示されまして、法廷終了後にそのデータを仮名漢字に変換し、誤変換等を修正して速記録を作成するシステムのようでございます。このソフトは速記官が個人的に研究開発したものと聞いております。
このシステムは、現行の速記タイプと速記技術を前提とするものでございまして、速記タイプの製造が今後いつまで継続されるか不明な状況にあることと、二年間の厳しい訓練が必要で、かつ高い適性も要求されるために、人材の確保が非常に困難な状況にあるという速記方式の抱える二つの根本的な問題を解決することが困難であるということでございます。
もう一つ、委員お尋ねの裁判記録の今後の方針でございますが、最高裁判所といたしましては、速記方式と録音反訳方式を併用しながら、緩やかに録音反訳方式へ移行していくことによりまして、速記官が減少していっても、裁判手続においてますます増大すると予測されます逐語録需要に的確に対応していくことができるものというふうに考えております。
委員御指摘のとおり、最近のアメリカ等のシステム等の進歩について私どもいろいろ承知しているところでございますが、我が国の現在の法廷で現実に用いるということになりますと、なおいろいろな検討の余地もあろうかと考えておりますので、現在のところは速記及び録音反訳方式が最も的確な逐語録作成方式というふうに考えておるところでございます。
ただ、今後の技術や機械の進歩を踏まえまして、将来における裁判記録のあり方についても研究模索してまいりたい、かように考えているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505206X00419990323/18
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019・佐々木秀典
○佐々木(秀)委員 どうも答弁を聞いていると、一つは、機械メーカーの方が利益が上がらないからやめたいと言っているとか、あるいは訓練が厳しいから速記官のなり手が少ないというようにうかがえるんだけれども、これはやはり使う方の意欲の問題で、裁判所がもっと速記でやっていくんだということになって、例えばそのための人員募集なども積極的にするとすれば、私は相当な人間が応募してくるんだろうと思うんですよ、聞くところによると、毎年の応募者が以前には千人ぐらいあったということなのだから。これはやはり裁判所が使わないということになり、そしてもうこれ以上養成しませんよと言うから、応募してこないのは当たり前のことなのです。
しかも、こうやって現に働いている人たちを去年は百人、ことしも百人減らしていくというのでは、ますますこの制度というものはなくなるのははっきりしていると思うのだけれども、果たして、ここで併用だと言うけれども、どっちがすぐれているかということについては、よく裁判に関係するような方々の意見も広く聞いて、それで決めていくということが私は筋じゃないかと思うんですね。
今もお話しのように、アメリカの方で開発したシステムということについても、御承知になっているとすれば、この辺についてもやはり調査をしたり、もっと積極的に取り組む姿勢を持ったらどうか。そういうところに調査団を派遣して、実際にどれだけ有効なのかということも勉強する必要もあるのじゃないかと思うけれども、裁判所にそういう意欲が見られないというのは私はまことに残念です。録音反訳方式は単純に問題がないといって、それに質量ともに頼っていっていいのかどうか、私は、これはもう首をかしげざるを得ません。
私どもとしても、さらにまたこの問題については検討していきたいと思っておりますけれども、裁判所においても、軽々に結論を出さないで、本当にあるべき調書の作成というのはどういう方向がいいのかということをもう少し真剣に研究してもらいたいと思いますね。そのことを特に注文しておきます。またいずれ機会を見て、この問題は時々やりたいと思っております。
それから、順序を変えましたけれども、高等裁判所の支部の問題についてお伺いをしたいと思います。
御承知のように、高等裁判所は、本庁が全国に八カ所、そのほかに支部が六つ設置されております。この本庁のほかに支部を六カ所置いたという沿革、理由を含めて、これをお尋ねしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505206X00419990323/19
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020・浜野惺
○浜野最高裁判所長官代理者 お答えいたします。
高等裁判所の本庁は、委員御指摘のとおり、東京、大阪、名古屋、広島、福岡、仙台、札幌、高松の八大都市に設けられておりまして、これらの本庁以外にも、御指摘のように高等裁判所の支部が設けられているわけでございます。
戦前の裁判所構成法の時代は、現在の高等裁判所に相当いたしますのは控訴院というものがございまして、控訴院は、東京、大阪、名古屋、広島、長崎、宮城、函館の七カ所でございまして、地方裁判所の裁判に対する不服申し立てを取り扱っておりましたが、一方、支部の制度はございませんでした。戦後、裁判所法が制定される際に、裁判所構成法の控訴院に相当するものとして高等裁判所が設けられました。
ところで、裁判所構成法のもとでは、区裁判所の事件に対する不服申し立てはすべて地方裁判所で、県単位ですべて賄われていたわけでございますが、裁判所法のもとでは、区裁判所に対応いたします簡易裁判所の刑事事件、これが高等裁判所が取り扱うということに一つなりました。
それからもう一つ、実は執行、破産事件は区裁判所でやっておりましたが、これが地方裁判所に権限が移譲されましたので、それに伴いまして、その地方裁判所の判断に対する不服抗告等が今度は高等裁判所に行くということになったわけでございます。
そんなことで、従前裁判所構成法で地方裁判所で取り扱われていた、区裁判所に対応する簡易裁判所の控訴とか、それから執行、破産に対する抗告事件、これが高等裁判所に行くことになりました。
こういうことで、高等裁判所の本庁の所在地から遠方の他県に在住している当事者、これは今までその関係では県単位の地方裁判所で済んでいたものを、本庁に出向かなければいけなくなるということがございましたので、本庁所在地以外の他県の高裁まで行かなければならなくなるという当事者の不便を考慮いたしまして、高等裁判所について、本庁のほかに特にその支部を設けることとして、当事者等の利便を図るということをしたものでございます。
それで、支部の具体的な設置場所でございますが、裁判所法が施行されました時点では、当時の交通事情とか経済事情等を考慮して、昭和二十三年から二十四年にかけまして、金沢それから岡山、松江、宮崎、秋田及び函館の六カ所に支部が設置されたわけでございます。
その後、札幌高等裁判所函館支部は、交通事情の好転とか事件数の減少ということで、昭和四十六年八月に廃止になりました。
またさらに、四十七年の五月の沖縄の復帰に際しまして、戦前那覇に地方裁判所があったということが考慮されて、那覇に地方裁判所及び家庭裁判所を設置することになりまして、そして、沖縄県に最も近接する高等裁判所が福岡高等裁判所であるという経緯から、福岡高等裁判所の管轄区域とされることになりまして、所要の法整備が行われたわけです。その際に、琉球政府の、沖縄の地理的な特殊事情によって高等裁判所を設置することという要望がございまして、これを受けまして、高等裁判所支部設置規則の一部が改正されて、高等裁判所那覇支部が設置されたわけでございます。
それで、現在の六つの支部ができたといういきさつでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505206X00419990323/20
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021・佐々木秀典
○佐々木(秀)委員 時間がなくなりましたので終わらなければなりませんけれども、こういうことをお尋ねするのは、実は、この間私は、内閣委員会で、行政情報公開法を、何とか政府提案を修正しようと思って努力をいたしまして、最終的には、不服申し立ての裁判所の管轄の問題について、高等裁判所本庁所在地まで拡張することについて与野党間の合意を得られたわけです。
そのときに、高裁には本庁以外に六つの支部があるので、ここまで何とか拡張したらどうか、その所在地の地裁に訴えを提起することにしようじゃないかという提案を実はしたのですが、なかなか自民党さんの御了解が得られなかった。しかし、沖縄の方が福岡まで出てこなければ訴訟をできないわけですね。そういうことで、せめて沖縄の方が那覇でできるようにしたいと思って、特例をと思っていたのですけれども、これなんかも難しい。
高等裁判所の支部が、沖縄の場合だとか、それから名古屋高裁の支部が金沢にあるというようなことはよくわかるのだけれども、広島高裁の支部が今もお話しのように岡山それから松江、この辺になると、どうも確かにどういう事情だったのかなという気もしないではないのです。
しかし、やはり行政裁判、一般についても私はそうだと思うのだけれども、もう少し裁判を受ける権利などということを考えると、できるだけ原告の住所地に近いところの裁判所に裁判を起こせるということが考えられていくのが本当ではないかと私は思っているわけですね。
そんなことで、この支部の問題についてもお伺いしたのですが、時間がなくなりました。残念ながら、この程度にしたいと思います。
きょうは、法務大臣にお伺いをすることができませんでした。また機会を改めてお伺いしたいと思います。よろしくお願いします。
ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505206X00419990323/21
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022・杉浦正健
○杉浦委員長 上田勇君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505206X00419990323/22
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023・上田勇
○上田(勇)委員 公明・改革の上田でございます。
今回提案されている法案、私どもも、裁判官の増員というのは、今、時代の要請、必要なことであるというふうに考えておりますので、法案につきましては当然賛成でございます。
ただ、最近のいろいろ事件の推移等を見てみますと、裁判官の増員の割合というのが、このペースというのはこれでいいのかどうかということを一つ疑問に思うわけでありまして、むしろもっとふやさなければいけないのじゃないかというふうに考えるわけであります。
法務省あるいは委員会の調査室等でつくっていただいた資料を見てみましても、最近五年間、平成四年から平成九年のデータがいろいろ載っておるのですが、民事の新受件数というのがこの五年間で三一%ふえている。地裁の民事執行事件が二三%、破産事件が六七%、知的財産権事件が三六%というふうに大変な割合で、この五年間、平成四年から九年度の間にふえているのですが、それに比べますと、それを処理する、担当いたします裁判官の数というのが同期間で七十一名、これは全体の定員の割合から見ますと数%であります。十一年度は三十名の増員ということで、これまで以上の定員増加ではありますが、それでもやはり仕事量の増加に比べれば少な過ぎるのではないかというのが率直な感想です。
資料によりますと、この期間の平均の審理日数というのは若干短縮されているということでは、これは評価できるというふうには思うんですが、それでもやはり三年、五年を超えるものがかなり多いというのもまた同じ資料に載っておるところでございます。
そういうことを考えれば、仕事量の増加の割合をそのまま定員の増加の割合というわけにはいかないんでしょう。必ずしもそう単純なことではないというのはよくわかりますけれども、これはやはり毎年二十名、三十名という増員ではなくて、今後こういう司法の需要がふえていくだろうということは、これは大方の人が認めているところでございますので、もっと増員のペースといったものを早く、大きく、思い切った増員を図っていくべきではないかというふうに考えますけれども、その辺の考え方についてまずお伺いしたいというふうに思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505206X00419990323/23
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024・浜野惺
○浜野最高裁判所長官代理者 このところの民事事件の新受件数を見てみますと、平成三年以降、いわゆるバブル経済の崩壊とその後の経済不況等の影響を受けまして急激な増加傾向を続けているのは、委員御指摘のとおりでございます。
裁判所といたしましては、このような事件動向に適切に対処するために、平成十年度までの十年間に、合計裁判官百六名の増員を図っていただいてきたわけでございます。さらに本十一年度において、現在御審議いただいているように、平成十年度を十人上回る三十人の増員をお願いしております。三十人と申しますのは、浦和地裁の本庁、これは三十数名の裁判官がおりますが、これを一つ新設するぐらいの増員の規模でございます。こういう増員の規模とともに、民事訴訟の運営改善を進め、新民事訴訟に沿った運用の定着も図ってきているところでございます。
このような成果もございまして、一時は東京地裁の民事部裁判官一人当たりの単独の民事訴訟事件の手持ちが二百七、八十件近くに及びまして、裁判官の負担も大変重くなっているという状況にございました。そういう東京地裁の民事部におきまして、最新のデータによりますと、単独の民事訴訟事件の手持ち件数が二百十件から二百二十件程度にまでようやく改善をされてきている状況にございます。今回の裁判官の増員をお認めいただければ、さらにこれを改善することができるものと期待しているところでございます。
とはいえ、委員御指摘のとおり、民事事件を中心にいたしまして今後とも事件の増加傾向が継続するというふうに予測されるところでございます。今後とも、このような事件動向を踏まえまして、より一層、適正迅速な裁判の実現を図るために必要な増員を図ってまいりたい、かように考えているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505206X00419990323/24
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025・上田勇
○上田(勇)委員 ぜひ引き続き、迅速な裁判を実現するためにも、適正な人員の確保、思い切った措置を講じていっていただきたいというふうにお願い申し上げます。
それで、次にちょっと弁護士任官制度についてお伺いをいたします。
裁判官の増員は今回判事補が三十名増加ということでありますが、判事補の場合、任官いたしまして五年以上在職しないと職権の制限を受けるということがございます。そういう意味で、増大する業務量に対して即応できる裁判官を養成していく、そういう制度としては、経験豊富な弁護士を判事に採用するという弁護士任官制度があるわけでありますが、これが、ずっとこのデータを見てみますと、毎年多いときでも十人に満たないわけでございます。
そこで、この弁護士任官制度を活用することが必要だというふうに思うんですが、このように任官者が少ない理由はどのようなところにあるというふうにお考えなのか、御見解をまず伺いたいというふうに思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505206X00419990323/25
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026・金築誠志
○金築最高裁判所長官代理者 弁護士任官についてお尋ねでございますが、経験豊富な弁護士さんが裁判官として裁判所へ入ってこられて裁判に当たられるということは、その裁判自体ということもありますし、その方がいろいろ裁判所の中で刺激を与えていただくあるいは戦力になる、こういうことで非常に裁判所としても歓迎すべきことだということで、弁護士任官を進めたいと思っておるわけでございます。
なかなか人数がふえない理由はどこにあるかということでございますが、実は、御承知かもしれませんが、最初は昭和六十三年に判事の選考要領というのを決めまして、経験十五年以上、年齢五十五歳未満の人を対象にして、日弁連の方にお願いをして任官していただくようにお勧めをお願いしておったわけでございますが、その後平成三年十月にはこの選考要領を改正いたしまして、その対象者を広げた、経験五年以上であればいい、五十五歳ぐらいまでというのは余り変わらないわけですが、少なくとも五年程度勤務していただければいい、任地や報酬についても柔軟に対応しよう、こういうことで少し任官しやすいように選考基準を改めたわけでございます。
その新しい選考要領に基づいて、平成四年から十年までの七年間で合計三十余名、年平均しますと五人ぐらいになりましょうか、そういう程度にとどまっているわけでございます。
それで、お尋ねの志願者が余り多くない事情ということでございますが、これは、推測が入りますけれども、やはり第一には、なられた方などにいろいろお話を伺いましても、ある程度の年月弁護士をやっておられますと、いろいろ依頼者との関係とか仕事の上での抜けられない事情がどんどん積み重なってくる、そういうことでなかなか任官に踏み切れないということがやはり非常に大きな理由のようでございます。ですから、こういう点では、弁護士事務所が共同化するとかそういうことが進めばまた違ってくるのかなという気もいたします。
それからもう一つは、これも推測でございますが、弁護士の仕事、裁判官の仕事は、法律家の仕事としては共通性はもちろんあるわけでございますけれども、やはり具体的な仕事の点では少し違う点もある。判決起案など大分しなきゃいけない。こういう起案などは、やはり弁護士さんの仕事の準備書面を書くのとはちょっと違う面もあるようでございまして、なかなかこういう仕事をやるのはしんどいというふうな面もどうもあるやに推測されるわけでございます。
そういうことで、なかなか一朝一夕で変えるということは難しいような点もございますけれども、いずれにいたしましても、多数の優秀な弁護士さんが裁判官に任官されるということは期待しておりますので、そういう点での環境づくりを今後も進めたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505206X00419990323/26
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027・上田勇
○上田(勇)委員 次に、ちょっと別の質問をさせていただきますが、先般、政府の方から少年法の改正案が国会に提出をされました。その背景としては、少年審判における事実認定が難しくなっている、あるいは少年事件に関する被害者対策の重要性が増加しているというようなことなどが挙げられておるんですが、それを考えますと、少年審判における家庭裁判所の調査官の役割というのが重要なんではないかと考えるわけであります。
家裁の調査官は、医学、心理学、教育学、社会学等の専門知識を活用して、審判事件についての事実の調査それから少年の観護や観察等の事務をつかさどるというふうになっておるわけでありますが、また、従来から調査官が被害者やその御家族に対するケアもある程度行ってきているというふうにも伺っているわけでございます。
先日、その家裁の調査官を経験した方からお話を伺う機会がございましたが、近年は調査官が事務作業等に忙し過ぎて、十分な調査や対応ができていないというようなことも伺いました。そういった背景を考えてみますと、家庭裁判所の調査官の増員、増強が必要になっているというふうに考えるところなんですが、平成十一年度は増員がゼロであります。それだけじゃなくて、昭和六十一年度以降、十五年近くにわたって増員がゼロのままであります。
少年審判が事実認定など難しくなっているということを言いながら、家庭裁判所の増員が行われていないというのはちょっと不思議に思うんですが、これでは少年審判の適正さに支障を来しているのではないのかなというふうに考えるのです。調査官の大幅な増員を図るべきではないかというふうに考えますけれども、裁判所としての御見解をお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505206X00419990323/27
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028・浜野惺
○浜野最高裁判所長官代理者 まず、少年事件の動向でございますが、平成八年から少年一般保護事件は増加傾向にあるわけでございますが、やや長い目で見ますと、ピークであった昭和五十八年度と比較しますと、平成十年度の少年一般保護事件の新受件数は昭和五十八年度の新受件数の約七割程度にとどまっております。また、平成十年度の家事、少年を合わせた家裁全体の事件数も、近年のピークでありました昭和五十九年の約七割という水準になっているところでございます。
ただ、委員御指摘のとおり、最近は、一見問題がないように見える少年の重大事件など、家族関係や生活環境等が複雑に絡み合って生じている複雑困難な少年事件が増加しておりますので、少年や保護者の心情等に配慮しながら、その背景にある事情を明らかにして少年の適正な処遇を図るためには、家裁調査官の役割が一層重要になっているものと思われます。
また、少年の事件数も、ただいま申し上げましたように、平成八年度からは増加傾向にございます。さらに、家事事件につきましても平成三年から増加傾向にございまして、事案の内容もやはり複雑困難化の内容となってきております。さらに成年後見制度等の改正等の動きも踏まえますと、やはりこれまで以上に家庭裁判所調査官の役割が重要になってきているというふうに認識しております。
家裁調査官は、これまでも人間諸科学の専門家として大きな機能を果たしてきたところでございますが、今後とも、事件数の動向を踏まえつつ、家事、少年事件の適正迅速な処理を行えるように体制の整備を図ってまいりたい、かように考えているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505206X00419990323/28
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029・上田勇
○上田(勇)委員 それで、ちょっとこの件に関して法務省の方にもお伺いしたいんですけれども、法務省としては少年法の改正案を提出しているわけであります。少年事件の事実認定が難しくなっているということがその背景であるのですが、今回のそうした少年法の改正で、審判への検察官の関与等の案を提出しているんですけれども、それについては、やはり家庭裁判所における非常に重要な役割を果たす調査官の定員あるいは能力の向上とかについてもあわせて行わなければ、どうも法改正というのは一部分だけをとらえたようなことになるのではないかというふうにも思われるんですが、少年法の改正案を法案として提出されている立場で、その辺の御見解を伺えればというふうに思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505206X00419990323/29
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030・房村精一
○房村政府委員 委員御指摘のように、少年事件におきまして、家庭裁判所調査官の果たす役割というのは非常に大きなものがございます。ただ、今回法務省で提案しております事実認定手続の適正化という観点に関しましては、これは少年事件の事実認定を適正化するという観点から種々の改正を行おうとするものでございまして、直接調査官の職務に関係するものではないというのが一つございます。
とは申しましても、当然、少年事件等、複雑困難化しておりますので、調査官等を含めた家庭裁判所の充実強化というのは必要なことと理解しておりますが、ただいま最高裁判所から御説明のありましたように、最高裁判所におきましても事件動向その他を踏まえて適切な対応をしたいということでございますので、法務省としても、それに今後も協力してまいりたいというぐあいに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505206X00419990323/30
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031・上田勇
○上田(勇)委員 ちょっとまた裁判所にお伺いいたします。
先ほどの御答弁で、調査官が、事実の認定についてもその調査で非常に重要な役割を果たしているということであったのですけれども、そうであれば、事実認定が難しくなっているということが言われている中で、今後の課題としては、今調査官の増員というようなことはあったのですが、もちろんこれは、政府と裁判所という立場で当然それは立て分けがあるんでしょうけれども、ただ一方では、そういう事実認定が非常に難しくなっているという話がある中で、調査官の増員とかは将来的な課題だというようなとらえ方というのはちょっと整合性に欠けるのではないかと思うんです。その辺はもっと早目に取り組んでいただかなければいけないと思うのですけれども、いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505206X00419990323/31
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032・浜野惺
○浜野最高裁判所長官代理者 委員御指摘のような状況で、要するに、少年の非行事実の認定との関係では、家裁調査官というものは役割を果たすという、そこにポイントがあるわけではなくて、生活環境が複雑である、あるいは非常に理解しがたい動機が背景にある、そういうような背景事情、あるいはその後の処遇を考える上での重要な事情について、少年の資質や保護環境について十分調査をして処遇を適正なものに考えていくという意味では、非常に重要な役割を現に果たしてきておりますし、今後も果たしていく必要があるということでございます。
そういうことでございますので、先ほど委員に御説明させていただきましたような事件の動向でございますので、さらにそういう動向を踏まえさせていただいて、さらに法改正後の事情も踏まえさせていただいて、体制の充実を検討させていただきたい、かように考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505206X00419990323/32
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033・上田勇
○上田(勇)委員 次に、今回の法案とは直接関係ございませんが、犯罪被害者に対する対策について、非常に重要な問題であると思いますので質問をさせていただきます。
先日、私ども公明党の法務部会では、少年犯罪被害者当事者の会の方々と意見交換をさせていただく機会を持ちました。私ども、さまざまな話を伺う中で、これは別に少年事件に限ったことではなくて、実は、押しなべて、刑事事件について犯罪の被害者への対応がいろいろと不十分な点が多いということを改めて感じたわけでございます。犯罪の結果、最も苦しむのは何の責任もない被害者とその家族であるわけでありまして、そういう対策というのは非常に重要かつ緊急だなということを感じた次第でございます。
そこでまず、犯罪被害者、犯罪に遭われた方々に対して社会が協力して経済的な支援を行う制度として、警察庁の犯罪被害者給付制度というのが制度としてございます。この制度は、私たち公明党の提唱も踏まえまして、昭和五十六年度に発足しておるのですが、この十八年間で四千人以上、約九十二億円の予算措置がなされているというふうに伺っておりますし、一定の評価を得ているというふうに考えております。
しかし、これは、この額を毎年の予算額で直してみますとわずか五億円、六億円という単位でございますし、一人当たりの支給額も平均しますと三百八十万円というふうに伺っております。しかも、この額というのは制度発足から余り大きく変わっていないというふうにも伺いました。犯罪によって亡くなられたり身体に重大な支障を負った場合ですらこの額にすぎないわけでございます。
そこで、まずちょっと警察庁の方にお伺いしたいのですけれども、この制度、制度としてはよく理解できますけれども、これでは甚だその内容は不十分であるというふうに思うのです。支給の対象、金額、こういったものを大幅に拡充すべきであるというふうに考えますけれども、そういうような方針でお考えかどうか、まずお伺いしたいというふうに思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505206X00419990323/33
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034・岡弘文
○岡説明員 犯罪被害者等給付金につきましては、委員御指摘のように、昭和五十六年に施行されました犯罪被害者等給付金支給法に基づきまして、不慮の犯罪被害に遭われ亡くなられた方の御遺族や重い障害が残った方に対しまして、社会の連帯共助の精神にのっとって、いわば見舞金的性格の給付金として支給されているものであります。このため、支給額につきましては損害補償とは異なる観点から定められておりまして、必ずしも被害者の方々の損失をすべて補うというものにはなっておりません。
しかしながら、他の公的給付との均衡あるいは物価水準の上昇等を参酌いたしまして、昭和五十七年、同じく六十二年、そして平成六年の三回にわたりまして所要の引き上げが行われております。また、支給対象となります重障害の範囲につきましても平成九年に見直しが行われておりまして、それまでの労働能力を喪失するほどの障害から日常生活が著しく制限を受ける障害へと拡大されたところであります。
今後、どのようなところまで支給対象としていくかにつきましては、犯罪被害者等給付金のほか、犯罪の被害に遭われた方々に対しまして国や地方公共団体がさらにどのような支援を行っていくべきかも含めまして、社会全体で議論が進められていくべきものというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505206X00419990323/34
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035・上田勇
○上田(勇)委員 それで、伺うところによりますと、その給付金の金額の算定も、被害に遭われた方のそれまでの所得を基本として算出されているということでございますが、例えば、先ほどちょっとお話をいたしましたが、少年事件なんかでは被害者も少年であるというようなケースも多いということから、こういう給付金の額も非常に少なくなっているというのが実態じゃないかというふうに思うのです。もちろん、これは全部そういう損失補償について国が面倒を見るんだというふうには私も考えておりませんけれども、やはり、被害者やその家族の方々の精神的な損失とか打撃とかについても十分考慮した上で、この金額の改定、引き上げといったことも考慮すべきではないかというふうに考えます。
その点についてもうちょっと、先ほど前向きなお考えではあるというようなことではございましたが、具体的にどういうような考え方でこれから進められていくのか、もしお考えがあればお聞かせいただければというふうに思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505206X00419990323/35
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036・岡弘文
○岡説明員 委員御質問の今後の支給額の引き上げでございますけれども、御指摘のように精神的な面も含めてということでございますけれども、この給付金の制度そのものが、当初、労働能力を喪失、死にも等しいような障害が残られた方に見舞金的性格のものでという議論で始まった経緯もございまして、今後ともいろいろ議論を尽くさなければいけない点は残っておりますけれども、先生御指摘のような点も重要な一つの要素として考えてまいりたいというふうに思っております。
平成九年に、先ほど申し上げましたように重障害の範囲が拡大されましたときには、単に身体的な障害のみならず、精神的な障害によりまして日常生活に著しく制限が加わるような場合につきましても重障害の範囲に加えるというように、先生御指摘のような要素につきましても既に考慮しておりますので、ひとつ御了解願いたいと思います。具体的には今後の議論かと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505206X00419990323/36
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037・上田勇
○上田(勇)委員 私は、非常に重要な、また貴重な制度だというふうに思いますので、もっと予算的にも拡充できるようにさらなる努力をぜひともお願いしたいというふうに思います。
また、今、犯罪に遭われた被害者の方並びに家族に対する経済的な支援について述べてまいりましたけれども、犯罪による被害に遭った方というのは、経済的な面だけじゃなくて、そのほかにも大きな打撃を受けているわけでございます。
実は、一九九七年に国連犯罪防止刑事司法委員会というところで国際被害者援助ハンドブックというのが出されているんですが、これは別に決議事項でも何でもない、素案のものでございますけれども、実に幅広い分野にわたって被害者対策の必要性について述べているわけでございます。事件の直接的な身体上あるいは経済的な被害の補償だけではなくて、精神的な打撃や、PTSDというんですか、心的外傷後ストレス障害というそうでありますけれども、それに対する治療など心理的なカウンセリングの必要性だとか、いろいろな司法手続、プロセスに関する情報提供のあるべき方法であるとか、また被害に遭われた方に対する社会全体の理解を向上していくためのいろいろな啓蒙活動など、本当に多岐にわたる総合的な被害者対策について論じられております。
数日前にテレビ等で拝見いたしまして、地下鉄サリン事件も四年目を迎えたということでありますが、その被害者の多くの方もこうした総合的な被害者に対する手当てといったものを望まれていた、その必要性を訴えていたというふうに拝見をいたしました。
こういうことを踏まえまして、先ほど申し上げました経済的な救済策についてはもちろん必要なことではございますが、それだけじゃなくて、こうした医療、心理あるいは社会啓発といった多岐にわたる総合的な被害者対策の確立が今は必要になってきているというふうに思いますけれども、その辺について御見解を伺えればというふうに思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505206X00419990323/37
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038・岡弘文
○岡説明員 委員御指摘のように、犯罪の被害に遭われた方々、特に殺人事件など凶悪事件や性犯罪の被害に遭われた方々は、身体、財産などの直接的な被害のみならず、精神的にも大きな打撃を受けておられまして、社会からの支援を必要としておられるというふうに認識しております。
このため、警察庁におきましては、平成八年の二月に全国の都道府県警察に対しまして、被害者の方々の精神的支援をも含んだ被害者対策の基本方針を示しまして、現在、全国警察を挙げて被害者対策に取り組んでおるところでございます。
具体的な施策といたしましては、性犯罪被害一一〇番などの相談窓口を設置いたしまして、被害者の方々の心情に配慮した相談業務を行うとともに、専門家の心理カウンセラーを配置するなどいたしまして、被害者のニーズに応じられるよう対応能力を強化いたしておるところでございます。また、被害に遭われた方々が直接最初に接する第一線の警察官に対しましても、被害者の方々の精神的ケアに必要な基本的知識を教育するように努めておるところでございます。
また、最近、犯罪の被害に遭われた方々の精神的なケア、支援を行う民間ボランティア団体の活動が各地で活発になってきております。こうした団体への支援につきましても、警察といたしまして取り組んでおるところでございます。
今後とも、被害者のニーズを踏まえ、きめ細かな対策に一層の努力をしてまいりたいというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505206X00419990323/38
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039・陣内孝雄
○陣内国務大臣 委員御指摘のとおり、現在、国民の間で犯罪の被害者やその親族に対し総合的な観点から救済を図るべきとの声が一段と高まっており、これに誠実にこたえることが求められておることは十分承知しております。
法務省といたしましても、犯罪被害者に関する対策が重要な課題であると考えており、犯罪被害者等への情報提供を充実させる観点から、本年の四月一日付で、全国の警察庁において、被害者等に事件の処理結果等に関する情報を提供するいわゆる被害者等通知制度を実施することといたしており、このほかにも犯罪被害者等の心情に十分配慮した捜査、公判の遂行、刑事手続における被害者の保護のあり方、犯罪により受けた損害の回復に資するための制度等、種々の観点から検討を進めてまいりたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505206X00419990323/39
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040・上田勇
○上田(勇)委員 私は、犯罪に遭われた被害者の方々、その家族に対する対策というのは今非常に重要な問題だというふうに思っております。いろいろとたくさんの省庁にまたがることでもあるかと思いますが、ぜひ法務大臣にリーダーシップをとっていただきまして、そういった早期充実に向けて御努力をお願いしたいというふうに考える次第でございます。
もう一つお伺いいたしますが、こうした犯罪に遭われた方が捜査や司法手続について必ずしも十分な情報が得られないというようなお話もありまして、それに対する情報を得るためには民事訴訟を起こすという方法が一つ手法としてあるわけであります。しかし、これを起こすには多額な弁護士費用もかかるわけでございますし、時間もお金もかかる、負担が非常に重たい、それでなかなかそこまで踏み切れないということもあるというふうに伺っております。
これは何も犯罪被害者に限ったことではないのですが、国民が自分の権利を守るためには、民事訴訟、民事裁判を起こし、それを受ける権利というのが平等にかつ十分に確保されていなければいけないというふうに思うのです。そのためには、資力のない人でも、必要があれば裁判に訴えることができるという意味での、法律扶助制度の充実が非常に重要だというふうに思うわけであります。
しかし、どうも法務省にいただいた資料を見てみましても、法律扶助制度というのが、諸外国、英国やフランス、ドイツ、アメリカ、韓国、スウェーデンなどがここに比較表が出ているのですが、いずれと比べましても、法律扶助の件数それから予算規模、対象になられる方の所得に係る制限あるいはその利用者の償還のあり方など、どうも日本がかなりおくれているというのが明らかでございます。
例えば、この中で最も進んでいるんではないかと思われるイギリスと比較してみますと、これは最新のデータではないので必ずしも今は違うのかもしれませんが、例えば裁判手続の扶助に、イギリスにおいては三十六万件なのに対して、日本ではわずか七千件だというふうになっておりますし、また事業規模についても、実に、イギリスにおいては国の国庫負担が一千億円を超えているのに対して、日本ではわずか二億七千万円だ、これは九六年度のデータというふうに出ておりますが、そういうことでございます。
まず、ちょっと法務省にお伺いしたいのですが、こうした諸外国との比較の中における我が国の法律扶助制度のあり方について、現状をどういうふうに評価されているのか、認識されているのか、まずその辺をお伺いしたいというふうに思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505206X00419990323/40
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041・横山匡輝
○横山政府委員 お答えいたします。
法律扶助制度は、憲法三十二条の裁判を受ける権利を実質的に保障するための制度でありまして、法務省としましては、本制度の果たす役割の重要性にかんがみまして、財団法人法律扶助協会が行っております民事に関する法律事業に対して昭和三十三年度から補助金の交付を開始し、特に近年では毎年補助金を増額するなど本制度の充実を図ってきたところであります。
御指摘の諸外国との比較に関しましては、その国の民事訴訟制度や訴訟事件数など制度を取り巻くいろいろな事情を考慮しなければならず、単純な、単に数字のみのということですけれども、比較はできないと思いますが、これらの点につきましては法務省に設けられておりました法律扶助制度研究会が平成十年三月に報告書を取りまとめておるところでありますけれども、その研究成果なども踏まえつつ、法制度化も含めて、関係機関とも協議、検討しながら、その充実発展に努めてまいりたい、そのように考えているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505206X00419990323/41
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042・上田勇
○上田(勇)委員 今研究会について言及されましたけれども、これは去年報告書が提出されておりますね。その中でもこの制度の抜本的な拡充が提案されておりますし、特に、今ちょっと言及がありましたが、法制化についても、法律に基づく法人が行うべきだというような提案もなされているのですが、その後、具体化に向けての取り組みというのはどのようにお考えなんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505206X00419990323/42
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043・横山匡輝
○横山政府委員 具体化についての取り組みということでございますけれども、私どもといたしましては、できる限り早期に法制度化を図るということも含めまして、現在関係機関とも協議、検討しておるというところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505206X00419990323/43
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044・上田勇
○上田(勇)委員 もう時間がなくなりましたのでこれで終わらせていただきますが、最後に、この報告書が出されて、今関係機関と協議をしているということでございました。同時に、先ほど諸外国と単純に数字は比較できないんだというような話もあったのですが、これは単純に数字を比較しちゃうともう話にならないということでありますので、私もそういうことを言っているのではないのです。ただ、当然国民として、そういう資力が仮になかったとしても、裁判を受ける権利というのは非常に重要な国としての公的な責任であるというふうに考えているわけでございまして、先ほど、今関係機関と検討中ということでございましたが、ぜひ法務大臣には、この制度の早期法制化それから拡充を実現させていただくように最大限の御努力をお願いをいたしますが、最後に何か御決意でもございましたら、ひとつお願いできればというふうに思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505206X00419990323/44
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045・陣内孝雄
○陣内国務大臣 法律扶助制度が、憲法に定める裁判を受ける権利を実質的に保障するというこの理念のもとに、法務省といたしましても、法律扶助制度研究会等の成果を踏まえながら十分取り組んでまいりたい、かように思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505206X00419990323/45
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046・上田勇
○上田(勇)委員 どうもありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505206X00419990323/46
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047・杉浦正健
○杉浦委員長 木島日出夫君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505206X00419990323/47
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048・木島日出夫
○木島委員 裁判所職員定員法一部改正法案は、日本共産党は賛成であります。
判事補三十人増、裁判官以外の職員十九人増、今司法は国民の基本的人権を守る、財産を守る、大変大きな期待がかけられているだけに、司法基盤を充実することは喫緊の課題だと思いまして、むしろこの四十九人では少な過ぎると考えておりますので、法案については、法務大臣、法務省また最高裁に対しては、より一層増員のために努力をしていただきたいという要望をいたしまして、きょうは裁判官の実質的な中身の問題についてお聞きしたいと思います。
裁判官の自由、とりわけ政治的表現の自由に関する問題であります。昨年十二月一日に、仙台地方裁判所の寺西和史判事補に対する戒告処分に関する最高裁の大法廷決定がありました。仙台高等裁判所による戒告処分を不服とする即時抗告を棄却したものであります。
最初に最高裁にお尋ねをいたしますが、懲戒の対象となった寺西判事補の行為は何であったのか、懲戒の理由は何であったのか、お答えいただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505206X00419990323/48
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049・金築誠志
○金築最高裁判所長官代理者 お答えいたします。
決定は公表されておりますので御承知かと思いますが、懲戒の原因となる事実は、寺西判事補が平成十年四月十八日に、東京都千代田区所在の社会文化会館で開かれた集会で、仙台地方裁判所判事補であることを明らかにした上で、当初この集会において、「盗聴法と令状主義」というテーマのシンポジウムにパネリストとして参加する予定であったが、事前に所長から、集会に参加すれば懲戒処分もあり得ると警告を受けたことから、パネリストとしての参加を取りやめて、自分としては、仮に法案に反対の立場で発言しても、裁判所法に定める積極的な政治運動に当たるとは考えないが、パネリストとしての発言を辞退するとの趣旨の発言をして、この集会の参加者に対して、本件法案、これは組織的犯罪の処罰等の、いわゆる盗聴法案とも言われる法案でございますが、この法案が裁判官の立場から見て、令状主義に照らして問題があるものであり、その廃案を求めることは正当であるという寺西判事補の意見を伝えることによって、本件集会の目的であるこの法案を廃案に追い込む運動を支援し、これを推進する役割を果たし、もって積極的に政治運動をして裁判官の職務上の義務に違反した。多少不正確な要約でございますが、そういうことでございます。
〔委員長退席、橘委員長代理着席〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505206X00419990323/49
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050・木島日出夫
○木島委員 私も、仙台高等裁判所の決定並びに最高裁の抗告審の決定、全文読んでいます。
現在の日本の裁判官に対する懲戒処分手続は、裁判という形をとって行われております。寺西判事補は仙台地方裁判所の判事補であります。彼に対する懲戒権者は仙台高等裁判所だと伺ってよろしいですか。仙台高等裁判所の五人の裁判官が裁判という形で寺西判事補に対する懲戒を行った、そう認識してよろしいですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505206X00419990323/50
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051・金築誠志
○金築最高裁判所長官代理者 地方裁判所の裁判官に対する懲戒は、まず高裁で五人の裁判官でやることになっておりますが、抗告がございまして、最高裁の大法廷で審理することになっている。これは性質上は続審ということになっておりますので、その辺は理論的に、厳密にどういう説が一番有力なのかということを私もちょっと自信を持って申し上げられませんけれども、続審という性質から考えると、最高裁の決定というのが最終的な懲戒の根拠である。原因事実も認定されておりますし、証拠も掲げられております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505206X00419990323/51
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052・木島日出夫
○木島委員 そうすると、地裁の裁判官に対する懲戒権者は、抗告されないで確定すれば基本的には高等裁判所の五人の裁判官である、そう伺ってよろしいですね。そして、それが不服で即時抗告があって、最高裁に係属して大法廷十五人の裁判官による審理、決定が行われたときは、最高裁の十五人の裁判官、大法廷が懲戒権者である、そういう法的構造になっている、こう伺ってよろしいのかな。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505206X00419990323/52
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053・金築誠志
○金築最高裁判所長官代理者 そういう御理解で大体よろしいのではないかと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505206X00419990323/53
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054・木島日出夫
○木島委員 非常に珍しい構造でありますが、そうすると、基本的に仙台高等裁判所の決定、また最高裁大法廷での決定、いずれも裁判という形をとっておりまして、司法作用のようにも見えますが、その実質は最高裁決定という形での司法行政処分である、こう聞いてよろしいですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505206X00419990323/54
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055・金築誠志
○金築最高裁判所長官代理者 これは、固有の意味での訴訟事件ではございませんで、裁判という手続はとっておりますけれども、公務員の懲戒手続でございますので、基本的には司法行政的なもの、性質上はそうだというふうに理解しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505206X00419990323/55
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056・木島日出夫
○木島委員 お認めになりました。
一般的に、国会は立法権でありますし、法務委員会もその一部分でありますから、司法作用としての裁判の内容について批判することは差し控えた方がよろしいと私も思う一人ではございますが、今お認めになったように、寺西判事補の懲戒事件に関する最高裁決定、仙台高裁の決定は、いずれも実質、司法行政処分としての性格を持っておりますから、当然、当国会、当委員会においても批判の対象にされていいものだと思いますので、私はこれからその内容についての批判をしたいと思いますので、答弁をいただきたいと思うのです。
最高裁決定には、十五人の裁判官のうち、弁護士、学者出身の五人の裁判官が懲戒処分を否とする反対意見を述べております。全文読みましたが、非常に説得力のある反対意見であります。この判決に対しては、また一般国民の間からも法曹界からも、寺西判事補の行為を、今答弁なさったように、積極的に政治運動をしたと認定して懲戒処分にした最高裁判所の決定に対して、多くの批判が噴出をしております。
特に、最高裁決定の中の河合伸一裁判官の反対意見、全部読むと時間がかかりますからはしょりますが、結論的には「このような限界例にまで懲戒権を発動することが、特に若年の裁判官が前述のような自主、独立、積極的な気概を持つ裁判官に育つのを阻害することを、私は危惧する。」と指摘しております。この指摘は多くの国民の共感を呼んでおります。最高裁事務当局はこの指摘をどう受けとめておるのか、まず答えていただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505206X00419990323/56
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057・金築誠志
○金築最高裁判所長官代理者 まず、委員が冒頭に御指摘になった点についてちょっと補足したいと思うのです。確かに、これは固有の意味の訴訟事件ではございません。行政的な性質のものではございますが、憲法七十八条によりましても、「裁判官の懲戒処分は、行政機関がこれを行ふことはできない。」ということで、その懲戒処分を分限手続という特別の手続で裁判所が行うことになっているわけでございます。これは司法権の独立を尊重するという建前からそういう制度がつくられているというふうに考えるわけでございまして、固有の意味の訴訟事件ではないから、ただいま委員がおっしゃったようなことがすぐ当てはまるということになるかどうかについては、そう言えるのかどうかということがあると存じます。
それから、お尋ねの少数意見の点などでございますが、この決定の内容の当否、少数意見を含めてでございますが、この当否等について、事務当局としていろいろコメントするということは適当でないと思いますので、差し控えたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505206X00419990323/57
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058・木島日出夫
○木島委員 実質上は、最高裁の司法行政を握っている事務当局が裁判官の転勤その他で支配しているわけですよ。そこが非常に大きな批判を受けているところでありまして、そうした今の日本の司法部にある支配構造の一つの象徴的な事件として今回の寺西判事補の懲戒事件があったわけであります。
逃げてしまっておりますので、私、河合伸一裁判官の意見をポイントだけ読んでみますよ。
問題は、裁判官の政治について見解等を表明する自由と、外見上中立・公正を保つことを要請されるという制約とを、いかにして調整し、調和させるかというところにある。
私は、これをするのはまず裁判官自身であり、かつ、制度としても、できる限り、各裁判官の自律と自制に期待すべきものと考える。
るる述べております。
私が右のようにいうのは、それが、裁判官及び司法のあるべき姿に添うと信じるからである。
裁判官の職務は、事実を確定し、憲法以下の法令を適用して裁判をすることであるが、現代の複雑かつ変化を続ける社会においてこれを適切に行うためには、単に法律や先例の文面を追うのみでは足りないのであって、裁判官は、裁判所の外の事象にも常に積極的な関心を絶やさず、広い視野をもってこれを理解し、高い識見を備える努力を続けなくてはならない。
このような、自主、独立して、積極的な気概を持つ裁判官を一つの理想像とするならば、司法行政上の監督権の行使、殊に懲戒権の発動はできる限り差し控え、だれの目にも当然と見えるほどの場合に限るとすることが、そのような裁判官を育て、あるいは守ることに資するものと信じるのである。
本件の内容は、私は知っていますからもう言いません。本件がどんなに限界ぎりぎりの事案であったか、裁判所も承知のとおり。
それは、いわばぎりぎりの解釈によってである。その意味で、本件はいわゆる限界事例であり、だれが見ても右事由に該当する
要するに、積極的に政治運動をすることという事由に該当する
ことが明らかで、懲戒権の発動は当然であると見えるということはできない。
このような限界例にまで懲戒権を発動することが、特に若年の裁判官が前述のような自主、独立、積極的な気概を持つ裁判官に育つのを阻害することを、私は危惧する。
ここまで書いているわけですよ。
これは、判決批判はいいですよ、あなたはしなくても。あなたはできないでしょう。最高裁の判決に批判できないでしょう。
ただ、司法行政として、今回の寺西事件、そしてこの判決は、これが執行されることによってどんなに裁判官を萎縮させるか。それを最高裁の判事である河合さんほかの少数意見を言った裁判官は危惧している。あなたの裁判観です、そういう効果を持つ。それに対してどう答えるのか。これは答えてくださいよ。
〔橘委員長代理退席、委員長着席〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505206X00419990323/58
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059・金築誠志
○金築最高裁判所長官代理者 決定の少数意見の内容は離れまして、一般的に、裁判官が自由濶達で生き生きと仕事をする、裁判所の中で自由に議論をする、その他法律の制約はございますけれども、いろいろ社会的にも関心を持って幅広い視野、識見を持って裁判に当たる、こういうことが必要であるわけでございます。
そういう点につきましては、これは各裁判官は、十分に法律上の制約については自重自戒しながらも、広くいろいろ勉強していい裁判をするように努めている。裁判所の中においても自由濶達に議論を交わしている。私は、こういうことについては心配ないものと思っております。現に、弁護士さんから裁判所に入られた方でも、裁判所の中では例えば合議等の場で自由に議論をしているということを話しております。
そういう観点から、萎縮というふうな点については心配しておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505206X00419990323/59
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060・木島日出夫
○木島委員 裁判所法五十二条で禁じているのは、「積極的に政治運動をすること。」であります。裁判所はこれをどう解釈しているのでしょうか。
本件事案は、寺西判事補がいわゆる通信傍受法に反対する集会において、パネラーとしての要請を受けたが、事前に仙台地方裁判所の所長から注意を受けたので、パネラーとしての発言はしなかった。そして、一般席から自分は発言できないということを言っただけでしょう。今答弁したように、仮に法案に反対の立場で発言しても裁判所法に定める積極的な政治活動に当たるとは考えないが、パネリストとしての発言は辞退する、こう発言した。これが何で「積極的に政治運動をすること。」なんでしょうか。
裁判所は、裁判所法五十二条の「積極的に政治運動をすること。」というのをどう解釈しているのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505206X00419990323/60
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061・金築誠志
○金築最高裁判所長官代理者 その点については、これも裁判で懲戒の手続をやるわけで、結局、法的な手続で、最終的には裁判所でその解釈は決まってくる。
今回、この事件がございまして、大法廷の決定が出たわけでございます。決定の中では、御承知のとおりでございますけれども、
「積極的に政治運動をすること」とは、組織的、計画的又は継続的な政治上の活動を能動的に行う行為であって、裁判官の独立及び中立・公正を害するおそれがあるものが、これに該当すると解され、具体的行為の該当性を判断するに当たっては、その行為の内容、その行為の行われるに至った経緯、行われた場所等の客観的な事情のほか、その行為をした裁判官の意図等の主観的な事情をも総合的に考慮して決するのが相当である。
というふうに、一般的な基準を立てております。
本件事案がこの基準に当てはまるということについては、決定を読んで判断していただくほかはないということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505206X00419990323/61
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062・木島日出夫
○木島委員 今述べたようなことが決定書に書いてありますが、私は、それを前提にしても、懲戒を是とする判断には到底立ち得ない、理由と結論とが矛盾していると思わざるを得ません。
ここに私は、最高裁が出した「裁判所法逐条解説(中)」の抜き書きを持ってきております。
裁判所法五十二条の「「積極的に政治運動をすること」とは、国会や各議会の議員となることを除いて、みずから進んで政治活動をすることである。」と書いてありまして、「単に特定の政党に加入して政党員になつたり、一般国民としての立場において政府や政党の政策を批判することも、これにふくまれないものと解すべきである。」政党に入ったっていいんだ、一般国民としての立場で政府や政党の政策を批判してもいいんだ、盗聴法、通信傍受法というのはいかに危険な法律かということを批判してもいいんだと言っていたじゃないですか、裁判所は。
私は、今度の最高裁の決定は、この裁判所がみずから出した裁判所法逐条解説をひっくり返すものだと考えざるを得ないのですが、そうなんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505206X00419990323/62
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063・金築誠志
○金築最高裁判所長官代理者 前に、少し古いものでございますが、最高裁の事務総局総務局で書きました逐条解説というのがございますが、これはそういう事務総局の一部局限りで一応の見解を述べたものでございます。それは、そういうふうに「まえがき」にも書いてございますので、そういうふうに理解しております。
その見解、そういうものでございますけれども、特にその後これを事務総局の方で否定するというふうな見解を公表したことはないことは事実でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505206X00419990323/63
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064・木島日出夫
○木島委員 最高裁決定の多数意見は、国民の司法に対する信頼は、外見的にも中立・公正な裁判官の態度によって支えられているとして、裁判官に対して外見上の中立・公正を要請しているわけであります。特に政治的中立を厳しく求めております。
しかし、裁判官に求められている中立というのは、裁判の両当事者の言い分を予断や偏見を持たずに公平に聞いて、法と証拠、法と事実に基づき良心に従い判断するということではないでしょうか。不明確、あいまいな外見上の中立・公正や政治的中立などではないんじゃないでしょうか。こうしたあいまいな概念を持ち込み、恣意的な解釈をして、裁判官の人間としてのあらゆる思想的、社会的、文化的自由を剥奪する、このことは裁判官を萎縮させてしまうだけではないでしょうか。
今、多くの国民から、司法は国民の基本的人権の最後のとりでだと言われています。今、大企業などで思想信条の自由がじゅうりんされる事件が相次いでいます。これを救済する裁判官みずからに思想信条の自由がなかったら、どうしてそういう国民の基本的自由を公正に審判する能力を持った裁判官になれるだろうか、そういう危惧が国民の中から出ているわけであります。裁判官を萎縮させるだけじゃないのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505206X00419990323/64
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065・金築誠志
○金築最高裁判所長官代理者 裁判官からあらゆる自由を奪ってというお言葉がございましたが、決してそういうことはないと思っております。事務総局といたしまして、裁判官の正当な自由の行使という点について、制約を課するというふうなことは全く考えておりません。やったこともございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505206X00419990323/65
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066・木島日出夫
○木島委員 話題を移しますが、最高裁判所は、一九七〇年以来、司法研修所を終了し裁判官を志望した者を、理由も示さず裁判官採用拒否を続けております。私、今日まで五十七名に上ると聞いておりますが、そのとおりでしょうか。
修習生に拒否理由を示さないで裁判官に採用させない、この萎縮効果は物すごく大きい。最近の修習生はおとなしくなる一方で、議論を恐れる体質になっている、こんな指摘さえされているわけであります。最高裁は、司法修習を終わった、裁判官にも検察官にも弁護士にもなる資格が正式に与えられた修習終了者で裁判官を志望した者に対して、理由も明らかにしないで採用を拒絶するという態度をとるのは何ででしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505206X00419990323/66
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067・金築誠志
○金築最高裁判所長官代理者 裁判官にどういう方を採用するかということは、非常に総合的な観点から考えなければいけない。人格、識見、能力、そういうことを総合的に判断して採否を決めるということになるわけでございます。したがいまして、この内容について公表することは適当でないということで、公表していないわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505206X00419990323/67
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068・木島日出夫
○木島委員 二年間の司法修習を終えて、試験も受かって法曹資格を獲得できたということは、人格、識見、能力ともに裁判官になり得る資格を得たことになるわけであります。それでもなお最高裁が、この者には人格、識見、能力が欠けているのだというのなら、欠けている理由を少なくとも拒絶された当該本人に伝えるのは当たり前じゃないですか。何で自分が裁判官になれなかったのかと聞く権利はあるのじゃないですか。どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505206X00419990323/68
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069・金築誠志
○金築最高裁判所長官代理者 重ねて申し上げますけれども、やはり、人事で、裁判官にどういう人が向いているか、適性というふうなこともございます。そういうことは非常に幅広い見地から検討するものでございますから、公表することは、本人に対しても適当でないというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505206X00419990323/69
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070・木島日出夫
○木島委員 本人に対して適当でないなどというのは、本当にとんでもない話だと思うのですよ。何で自分が裁判官になれなかったのかがきちっと伝えられる、それが不当だと思えば、争う道もあるわけでしょうから。理由もなしに任官できない、それがどんなに心の傷になるか、もう明らかですよね。私は、少なくともことしからは、本人に対して、任官を認めないというような処遇をしてはならぬと思いますが、仮にもそういう処遇をしたときには理由をきちっと伝えるという、当たり前の民主的な手続をとっていただきたいということを最高裁人事局長に強く要請しておきたいと思います。
きょう私は、最高裁の今回の決定が、現在のドイツやフランスなどの諸外国の裁判官の自由の状況と比較して、余りにもひど過ぎるということを感じておりまして、質問するに当たりまして、ドイツやイタリア、フランス等の裁判官の自由の状況について調べておくように言ったのですが、大したものは出てきておりません。
一つだけ、時間の関係で私の方から言います。ドイツの裁判官の自由の状況ですが、こんな例があるようです。
ドイツの裁判官、ミサイル配備問題で、二十人ほどの裁判官がミサイル配備反対のデモに参加した。週刊誌ツァイトというのがあるのですが、これに、五百五十四人の裁判官、検察官がこれを支持するという意見広告も堂々と出した。一部署名者が処分を受けたようでありますが、これが裁判で争いになり、それが覆される、そういう意見広告を出して結構だという判決が出ている。そういう状況にドイツがあるということを最高裁は知っていますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505206X00419990323/70
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071・金築誠志
○金築最高裁判所長官代理者 ドイツでいろいろ、そういう裁判官の政治的自由をめぐる議論があったり、あるいは判例があるということは、個々のものをここで御説明するほど詳しい資料は今持っておりませんけれども、そういうことは承知しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505206X00419990323/71
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072・木島日出夫
○木島委員 フランスのことは時間の関係で言いませんが、イタリア、スペインなどでも、裁判官がストライキやデモに参加するのは当然だという状況になっておるようであります。
一九八五年国連決議、司法の独立に関する基本原則という決議が上がりまして、裁判官には市民的自由が保障され、結社の自由や言論の自由が認められ、政治的意見で差別してはならないという国連決議がある。御存じだと思うのです。日本の裁判官、私が修習生のときでありますが、憲法を守ることを基本目的とする青年法律家協会に入っていたというだけで排除された。しかし、さっきの最高裁の逐条解説には、政党員になってもいいんだと書いてあるわけですね。
今、日本の最高裁は、裁判官が通信傍受法、盗聴法に反対するデモに行くこと、それで座り込みをやること、そして結社をつくること、これは拒絶するのですか。そういうことは国連決議に反しないですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505206X00419990323/72
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073・金築誠志
○金築最高裁判所長官代理者 今お尋ねの具体的事例というのは全く仮定のことでございますので、仮定のことについて、なる、ならないということを申し上げるのは適当でないと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505206X00419990323/73
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074・木島日出夫
○木島委員 時間ですから終わりますが、仮定のことと言って逃げているわけでありますが、現実に答弁では逃げて、実際には寺西判事補の懲戒という形で、だれが見ても積極的な政治運動とはとても見えないようなことまでそれに該当して、処分する。それがどんなに日本の裁判官を萎縮させ、それを通じて国民の基本的人権を守るという裁判所の任務から遠ざかっているかということを指摘して、このような司法行政のあり方を根本から変えていただきたいということを最後に私は強く要請して、質問を終わらせていただきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505206X00419990323/74
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075・杉浦正健
○杉浦委員長 保坂展人君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505206X00419990323/75
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076・保坂展人
○保坂委員 社会民主党の保坂展人です。
本日は、裁判所職員定員法に関する質疑で、いわゆる判検交流ということを中心にお聞きをしたいと思います。
まず、事務的なことを最高裁にお尋ねします。
現在の裁判官の定員並びに欠員の数、そして、事務総局あるいは高裁の事務局等でいわゆる司法事務に当たる裁判官、さらに、国の行政機関あるいは特殊法人などに出向する形になっている、つまり裁判をしない裁判官は一体何人いるのか。定員から欠員を引いて、欠員からさらに裁判をしない裁判官の方を引くと、裁判をしている裁判官は何人か。お願いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505206X00419990323/76
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077・金築誠志
○金築最高裁判所長官代理者 裁判官の現在の定員は、判事、判事補、簡裁判事合わせまして二千九百十九人でございまして、昨年十二月一日現在の現在員は二千八百五十八人でございます。したがいまして、欠員六十一名ということになります。
事務総局あるいは高裁の局長等になっておりまして裁判をしていない裁判官の数でございますが、最高裁の事務総局が五十一人、高裁の事務局長が八人、司法研修所等で教官をしておりますのが五十人、これも昨年十二月一日現在でございますが、合計百九人ということになっております。
それから、行政省庁等への出向者でございますが、百四十一人でございます。
出向者は、これは裁判所の定員とは関係ございませんので、裁判官として事務総局等に勤務する裁判官の数、百九人を現在員から差し引きますと、二千七百四十九人となります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505206X00419990323/77
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078・保坂展人
○保坂委員 これは大問題だと思うのですね。裁判官が足りない、倍増ぐらいの規模で本当はふやさなければならないということはたびたび指摘されているところですけれども、二百五十人、これは司法事務の部分でももう少し裁判実務に戻す努力が必要だと思いますし、特に、国の行政機関や特殊法人などに百四十一人、とりわけ法務省に百一人、訟務検事が五十七人というふうに聞いていますが、この実態は極めて早期の是正が必要ではありませんか。増員という提案も結構ですけれども、引き揚げてふやしたらどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505206X00419990323/78
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079・金築誠志
○金築最高裁判所長官代理者 まず、事務総局で裁判以外の仕事をしているという人たちでございますけれども、事務総局の中でもやはり裁判関係、例えば、事件局でございますね、民事局、刑事局、行政局、家庭局とございますが、そういうところは裁判の中身といろいろ、裁判手続などと非常に密接する法律的な仕事をやっているわけでございます。こういう仕事は、やはり裁判官として、そういう経験のある人がいないとなかなかできない。国会で裁判関係の法律ができますと、それに応じまして最高裁判所規則をつくるというふうなことがございます。そういうことで、どうしても裁判官がやらないとなかなかできないという仕事が多いわけでございます。そのほかの司法行政事務でもそうでございます。
ただ、これはなるべく少なくしたいということで、兼務で賄ったり、二つのポストを一人の人が兼務したりしていろいろやりくりしております。それから、事務官で、裁判官の経験のない人でも務まるポストというのは、できるだけそういうことで賄うようにしております。一々はちょっと時間の都合で申し上げませんけれども、かなりございます。
それからもう一つは、出向の関係でございますけれども、これも前から申し上げていることでございますけれども、裁判の経験、法律実務に詳しい、そういう法律家が各方面で求められておりますし、また、法務省そのほかのポストで、裁判官としての能力を生かすということが非常にふさわしいというポストがあるわけでございます。それから、そういうところで裁判官が裁判以外の仕事をして、外から裁判とか裁判所を見るということは、非常に裁判官の視野を広げるということで有益である、こういうことでやってきているわけでございまして、これをすぐになくすとかそういうことは難しい、できないことだというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505206X00419990323/79
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080・保坂展人
○保坂委員 それでは、今度は法務省、官房長に伺いますが、どうでしょう、法務省は百人を超える裁判官においでいただかないと成立しないのでしょうか。あるいは法務省の中からきちっとそういう実務家を育てていくというように改善していくというお気持ちはありませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505206X00419990323/80
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081・但木敬一
○但木政府委員 大変難しいお尋ねだと思います。
委員御案内のとおり、法務省では刑事、民事の基本法を扱っております。そうしますと、例えば民事訴訟が実務上どういう意味を持っているのかというようなことは、やはり現にその事務に携わった人から聞かざるを得ない、その人が立法するということがやはり適当であるという場合がもちろんございます。
それから刑事につきましても、もちろん検事はおるわけですが、裁判官から見て、果たしてその手続がうまく動くのかどうかということもやはり観点としては必要でございますので、裁判事務に精通した刑事の裁判官をその立法部門に置いておくということもまた必要な場合がございます。
訟務につきましては、もちろん現在の非常に複雑困難な訴訟の中にはそうした裁判に精通した裁判官の知識が必要だということもございますが、特に訟務については、単に一つの官庁の立場を代弁するわけではなくて、国民との間で適正な法的な解決ができるようにしていくために訟務検事が働かなければならないという面もございまして、やはり相当数の裁判官経験者は必要であろうと思っております。
ただ、人数で、先ほど指摘されました人数、これは今後とも永遠にこれだけの人数が必要なのかという点につきましては、もちろんもっと大きな、法律家全体の問題として考えていかなければならない面もあろうかと思います。逆に、例えば検事が裁判官の経験を持って、また検事あるいは法務省に戻ってくるということもあわせて考えていかなければならないでしょうし、また、弁護士の経験者をどういうふうに吸収して、その人たちの経験なりなんなりを法務行政の中に生かしていくかということも将来考えざるを得ない問題だろうと思っております。そうした大きな観点からこの問題は考えていかなくてはならないなというふうに思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505206X00419990323/81
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082・保坂展人
○保坂委員 今官房長、後半の方では今後の方向性を言っていただいたのですけれども、ちょっと資料を見てみますと、これは昭和二十三年、裁判所から法務省へ行った者はゼロですね。それから一けた台がずっと続いて、昭和四十五年、二人ですね。そして昭和四十六年、十一人、こうなってきまして、昭和六十年だと二十人、これがどんどんふえていっているわけですね。いわば急上昇を描いているわけです。となると、昭和四十五年以前の法務省はそれほどの裁判官を抱えていなかったわけで、著しい業務上の困難を抱えながら、非常に力量不足だったというふうに言えますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505206X00419990323/82
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083・但木敬一
○但木政府委員 民事、刑事の立法というものについて考えてみますと、昭和四十五年当時、もちろんそれぞれあったわけでありますが、現在の段階では、非常に大きな国の変革期を迎えておりまして、民事、刑事の基本法令についての改正あるいは新規立法というものが増加しているということは否定できないと思います。また、訟務事件につきましても、国民の権利意識の高揚を背景にして、非常に難しい事件がふえてきている、これもまた否定しがたいところであると思います。
一方、検察官の人員というのはある程度限られておりまして、検察の現場の陣容とそれとのバランスというものを考えますと、委員御指摘のとおり、現在の段階で検察官だけですべてを賄うというような陣容にはなっていないと言わざるを得ないと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505206X00419990323/83
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084・保坂展人
○保坂委員 では、ここで法務大臣に伺いたいと思います。
前回、所信の一端の中で、中村法務大臣が司法改革に見せた情熱、そういった姿勢は継承されるという意味の御発言があったというふうに受けとめているのですけれども、この問題について、中村法務大臣は、やはり法務大臣になられて、訟務局に裁判官がたくさんいるというような実態を見て、どうなっているのかなと、世間一般から見ると、今官房長がお答えになったようなことは押さえながらも、そういう実態はあるのだけれども、しかし、ある面から見るとちょっとおかしいというふうに答弁をしていまして、これも新聞記事にもなっています。
つまり、法務省側の事情ということはあるにしても、三権分立との関係、さまざま司法改革のテーマであるというような答弁をされているのですが、この点では大臣は中村大臣と同様の見解をお持ちでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505206X00419990323/84
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085・陣内孝雄
○陣内国務大臣 ただいま官房長が御説明申し上げましたけれども、法務省といたしましては、国に対して提起された複雑困難な訴訟を、法律による行政の理念のもとに適正に解決するためには、やはり民事裁判の実務経験を積んだ法曹の能力を活用することが必要であると考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505206X00419990323/85
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086・保坂展人
○保坂委員 そこは中村大臣も言われた上で、やはり一般的に考えてみるとおかしいな、司法改革のテーマだなというふうにおっしゃっているわけです。その点は継承されますか、どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505206X00419990323/86
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087・陣内孝雄
○陣内国務大臣 現状を踏まえ、これから将来の司法行政、法務行政のあり方を十分論議された上で、しかるべき方向へこれは向かわなければならない、そういう中で中村前法務大臣の御発言は受けとめていくべきじゃないか、このように思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505206X00419990323/87
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088・保坂展人
○保坂委員 意味がよくわからない答弁だったのですが、では、裁判所に続けて伺いますけれども、裁判所と政府の間の垣根が極めて低くて、ほとんどなくて、事実上ボーダーレスという気がいたします。つまり、国の事務、仕事全体の適正な遂行のためには、その仕事に協力するのは裁判所も国の機関として一つの責任であるというふうに答えておられますが、それでいいのですか。何らかの是正を、改善を求めるという姿勢は一ミリたりとてないというふうに確認してよろしいですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505206X00419990323/88
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089・金築誠志
○金築最高裁判所長官代理者 行政庁との間で人事の交流はあるわけでございますが、仕事の面では、裁判所と行政庁の仕事というのは画然として別のことをやっているわけでございます。そういう点で、一線は画してやっているわけでございます。
一ミリとも変えるつもりはないかというふうにおっしゃいますと、これはもうその時代の要請、いろいろな事情で変わっていくということだろうと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505206X00419990323/89
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090・保坂展人
○保坂委員 いろいろな問題が出てきているわけですよね。国鉄改革問題で、当時国鉄に出向していた裁判官がこのプロセスに深く関与をしておった。東京新聞の一面に、新聞記事にも出ています。「国鉄改革、出向判事が助言」と。それから、幾つかの事件で、例えば長良川水害訴訟等でも、最初住民側勝訴の判決だった、そして次に住民側の逆転敗訴の判決が出る。その裁判官は、やはり法務省に出向して、訟務検事としていわば国の顔として闘った経歴をお持ちの方だ、こういうことが多々指摘されているわけですが、この点について、裁判の独立という意識は裁判所にはありませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505206X00419990323/90
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091・金築誠志
○金築最高裁判所長官代理者 法律家はそれぞれ、どういう立場に立ちましても、裁判官をやっているときは裁判官として、弁護士としてどなたかの代理をするときはその代理人として、検察官として国の事務を行うときは検察官として、それぞれの立場において法律家としての最善を尽くすという責務がある、職責があるわけでございます。これが国民から負託された職責であろうと思います。
お尋ねの、国鉄などの問題も、そのポストで法律家として最善を尽くす、そういうことだろうと思いますが、裁判所へ戻りますときには、もちろんそういう訟務などの関係も含めまして、当事者的な立場でかかわった事件について、裁判官としてかかわるということはございません。これは、しかるべき訴訟法的な手続が用意されているわけでございます。
裁判の独立という点、この辺は少し意味が違ってくるのかなと、おっしゃっている意味と私が申し上げている意味とは違うのかなと思いますが、あくまでもそれは独立して判断するということと、前に職がどうであったかということとは直接の関係はないというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505206X00419990323/91
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092・保坂展人
○保坂委員 現在、犯罪被害者の側に立った情報開示等真剣な議論が各方面で始まっているのですが、裁判所はこの点に対して極めて鈍感だというふうに私は思います。
例えば、少し古い話になりますが、一九七五年にクロロキン薬害訴訟というのがありましたね。法務省で訟務検事として、国側のまさに被害者に相対して法廷に立っていた方が、人事異動によって東京地裁の同訴訟を担当する部に移ってきた。この判事さんは訴訟自体は外れたのですけれども、しかし、同じ部にちょっと前まで国の代理人をしていた人が移っている。これはやはり公正な裁判が行われるのかどうか、著しい疑念を招くものだと思うのですね。
かつて百里基地の訴訟でも、水戸地裁で訟務局長として国側代理人として訟務検事を指揮している立場にあった、当時の最高裁判事であった貞家最高裁判事が、これはみずから回避して合議から外れるということもあったと聞いています。
こういう同種の事件、例えば爆音訴訟だとか、公害、薬害だとか、次々と訴訟が起こってくるわけですけれども、同種の事件を、同じ事件は担当しなくても、同じ種類の、隣接した分野の事件を担当してしまうということはあるのじゃないですか。これらをやはりなくしていく必要があるというふうに思うのですが、いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505206X00419990323/92
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093・金築誠志
○金築最高裁判所長官代理者 同種の事件というのは非常に範囲が難しい問題であろうと思います。いずれにいたしましても、その具体的事件に関与するかどうかは、先ほど申しましたように、忌避などの訴訟手続上の中で解決されていく問題だろうと思いますが、同じ部屋にいるからというふうなお話もございましたけれども、同じ部でありましても、これはやはり担当しているか、担当していないかというところは決定的なことでございまして、それこそ裁判の独立ということで、担当していない裁判官はその裁判について容喙するということはないわけでございますから、その点は区別してお考えいただきたいものだと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505206X00419990323/93
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094・保坂展人
○保坂委員 例えば金融再生委員会の委員になった清水湛さんの場合ですと、裁判所に勤務したのが九年、法務省に勤務したのは二十九年なんです。こういうのは出向と言えるんですか。どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505206X00419990323/94
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095・金築誠志
○金築最高裁判所長官代理者 私もちょっと、今国語辞典で調べたわけでございませんので、出向という言葉が一体どういうことを正確に指すのかということはなかなかわかりませんけれども、確かにどの範囲までが出向という概念で普通言うのかということでいいますと、前に出向者の数を明らかにせよということでお尋ねがあったときに、フローの数でお答えしたわけでございます、毎年の行き来で。そういうことでお答えしているのは、実はそういう問題があって、どこまで出向に含めるかということがあるということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505206X00419990323/95
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096・保坂展人
○保坂委員 つまり、裁判所もわからなくなっちゃうぐらいこれは垣根がないんです。ですから、最初、法務省出向判事は五十七人だと答えて、九六年以前を加えれば百一人だと答えたわけでしょう。そのうちもう裁判所に戻ってこない人もいるかもしれないと答えているわけです。そのぐらい垣根が低いわけです。そういう意味では、これは根本的に変えるべきだということで、今後も改善を求めたいと思います。
きょうは、本委員会が開会されてから急に情報が入ってまいりまして、大変驚くべき情報なんで、警察の方はもう見えていますね。
実は、大臣の所信の一端の質疑のときに、グリーンピースという世界的な環境団体があります。これが、東京おもちゃショーで、巨大な垂れ幕を人がおもりになる形で下げた。これは撤去しようとしていろいろあったようですが、これをやったという現行犯で、オーストラリア人が二人とニュージーランド人が一人ということで、三人逮捕されていますね。これはアメリカで一件、そのことで身柄を拘束されて夕方帰されたというケースがあるんですが、オーストラリア、オランダその他の国では、世界的に塩ビのおもちゃをやめようと。塩ビというのをなめたりいろいろ、口の中へ入れたりすると、環境ホルモン、言われている今大変関心事のことに対するキャンペーンですから、これは早期に釈放してほしいということを求めましたし、また、極めて異例でもありましたが、私自身も身柄引受人になりました。
ところが、本日、グリーンピースの日本事務所に捜索がかけられている。これを聞いて、一体何を考えて、先週の指摘などを踏まえて、国際的な視野でこれはきちっとやってくださいよということも指摘したと思うんですが、警察は一体何を捜索しているんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505206X00419990323/96
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097・飯島久司
○飯島説明員 お答えいたします。
現在警視庁において捜査中の事件でございまして、個々の具体的な捜査の中身につきましては答弁を差し控えさせていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505206X00419990323/97
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098・保坂展人
○保坂委員 事件の中身じゃなくて、グリーンピースという世界的な環境団体があって、その環境団体が掲げているのは非暴力なんです。例えば垂れ幕を垂らすときに、その下に大勢の群衆がいて、ロープが切れたら大けがをするような状況にはなかったわけです。そしてまた、撤収をしようとしていたところで身柄を拘束されているわけです。非暴力という同種同様のキャンペーンを世界じゅうでやっている。ところが、言ってみれば、日本だけは扱いが違って、いわゆる捜索まで行って、洗い出しをしている。これは警察国家だと言われますよ。
一体警察は、世界じゅうの環境団体、これがどういうキャンペーンをしているのかという情報を持っているんですか。そこは答えられるでしょう。情報を持って判断しているのか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505206X00419990323/98
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099・飯島久司
○飯島説明員 一般論で申し上げまして、違法行為があれば、警察は、捜査をするのが私どもの責務でございますので、警視庁として現在適正に捜査を進めているものと承知しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505206X00419990323/99
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100・保坂展人
○保坂委員 聞いていることにまじめに答弁してください。情報を持っているんですかと聞いているんです。全然知らない、どういう団体かも何もかもわからないということでやっているのか、情報を持っているのか、どっちですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505206X00419990323/100
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101・飯島久司
○飯島説明員 捜査に必要ないろいろな情報等については、警察としても、必要により収集しているところでございます。(保坂委員「そうじゃなくて、グリーンピースの情報です」と呼ぶ)
事件の関係につながる問題でございますので、答弁を差し控えさせていただきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505206X00419990323/101
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102・保坂展人
○保坂委員 じゃ、刑事局長に伺いますけれども、私どもは、環境問題というのは大変重要で、特に国会の中でも、ダイオキシン問題あるいは環境ホルモンに取り組んでいく超党派の議員連盟等もでき上がって、今国会でも立法措置と。所沢のダイオキシン問題もありました。環境ホルモンというのは大変な問題で、これは原因が必ずしも特定されていませんけれども、世界じゅうでかなり関心が高まっているというのは局長御存じだと思います。
こういうことについて、非暴力、だれかがけがをしたり器物損壊があったといったら別ですけれども、こういうことに対して、国際世論ということをやはり検察当局も考えていただきたいというふうに思うんですが、いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505206X00419990323/102
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103・松尾邦弘
○松尾政府委員 お尋ねの事件は今警察において捜査中と承知しておりますので、答弁は控えたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505206X00419990323/103
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104・保坂展人
○保坂委員 それでは、裁判所にもう一回戻りますが、先ほど木島議員からのお話もありました寺西裁判官問題なんですが、一点だけ伺います。
これは、寺西裁判官の処分理由の中に「言外に」という表記がありますね。要するに、会場のフロアでいろいろ発言をした。つまり、自分はこういう事情で発言できないということを話した。しかし、言外に反対運動を勇気づけた、あるいは反対運動にくみした。正確に言うと「言外に同法案反対の意思を表明する発言をし、もって、同法案の廃案を目指している前記団体等の政治運動に積極的に加担した。」言外に発言するというのはどうやってやるんですか。言外にというのは言葉の外でしょう、その解釈を教えてください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505206X00419990323/104
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105・金築誠志
○金築最高裁判所長官代理者 確かに高裁の決定の中には、委員御指摘の、言外に法案反対の意思を表明する発言をしたという認定があるんですが、最高裁の方の決定にはそういう、言外にというふうな記載は、説示は見当たらないのでございます。
これは、先ほど木島委員からの御質問で、どれが処分した決定なのかということとちょっと関係するのかもしれませんが、少なくとも最終的には最高裁が事実を認定しておりますので、最高裁がどういう事実を認定して処分したかということは、最高裁の決定をごらんいただいて、それで判断していただくほかはないことかと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505206X00419990323/105
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106・保坂展人
○保坂委員 じゃ、一点だけ。
最高裁、「言外に」ということは取り消されるということですか。最高裁としては認定しないということですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505206X00419990323/106
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107・金築誠志
○金築最高裁判所長官代理者 これは、取り消すとか取り消さないとかということではなくて、その懲戒事由を認定するに際しての認定の中身、表現の問題だと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505206X00419990323/107
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108・保坂展人
○保坂委員 もう時間が来てしまいましたが、言外になんというのは大変なことで、言葉によらないんだったら、身ぶりとか目つきとか姿勢とかしぐさです。それ以外にない。
そうすると、人はどういうふうに物を思っているのかというのはいろいろ表情に出たりしますから、そういうことも処分理由になっているとしたら、一体裁判所当局がどこでそれを判断したのか。ビデオでも撮ってそれを専門家が解析して、この表情はおかしい、こんなことをやったのかと思いますけれども、大変な問題だということを指摘して、私の質疑を終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505206X00419990323/108
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109・杉浦正健
○杉浦委員長 達増拓也君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505206X00419990323/109
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110・達増拓也
○達増委員 自由党の達増拓也でございます。
私は、裁判所の広報体制について質問をしたいと思います。
これは、PR、パブリックリレーションズとしての広報についての質問でありまして、一方通行的な、単に知らしめるという形の広報ではなく、国民との間の双方向的なつながりについて質問をしたいと思います。
これは、裁判所というものが国の三権の一つとして国民主権のもとにあるわけでありますけれども、国民の結びつきの点、行政府や国会に比べて、いま一つ表に見えてこないところがあるのではないかという懸念を持っております。最高裁判事の信任、総選挙のときに行われるわけでありますけれども、そのときになって、ああ裁判所というものがあるんだと国民が驚くようなこともよく言われるわけであります。
きょうは裁判所職員定員法の改正法案ということで、裁判所の人事体制の問題について法案審議ということなので、その一環としての広報体制について質問させていただくわけでございます。
まず最高裁に伺いますが、裁判所の広報体制というのは基本的にどういうふうになっているのか。最高裁のみならず、地方裁判所についても伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505206X00419990323/110
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111・浜野惺
○浜野最高裁判所長官代理者 最高裁事務総局には広報課というものが置かれておりまして、ここでいわゆる広報対応の仕事をしております。広報課の体制としては、広報課長を初めとする十数人の専任のスタッフで構成されております。
また、このほかに事務総局の総務局、民事局、刑事局、行政局、家庭局の課長が広報課のスタッフを兼任しておりまして、必要に応じて広報関係の仕事を担当しております。
広報課におきましては、庁舎の見学事務や広報誌の発行を担当する一般広報、それから、報道機関からの照会に対する対応等を行っているところでございます。
また、下級裁の方の広報体制につきましては、各高等裁判所、地方裁判所、家庭裁判所の総務課が広報関係の事務を担当しております。特に広報関係の対応が多い高等裁判所や東京地方裁判所、大阪地方裁判所等の大規模庁では、総務課の中に広報係が置かれまして、専任体制をとっているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505206X00419990323/111
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112・達増拓也
○達増委員 裁判所でどういう広報をしているのか調べようと思って、取っかかりとして最高裁のホームページをのぞいてみました。
最高裁ホームページ、今回初めてのぞいてみたのですけれども、あけた途端に、「あなたは二十六万一千七百四十二人目の訪問者です。」ということで、かなりたくさんアクセスがあるのだなということがちょっと意外ではありました。ホームページの中には、「裁判所の案内」、広報、そして「裁判手続」、試験ガイドや「司法統計」「全国の裁判所」といったような、想像していた以上に幅広いことをカバーしておりまして、ホームページとしてはかなり立派なものをつくっているというふうに思います。
「全国の裁判所」というところは、各高裁、地裁も、その住所、所在地の地図、またその正面から撮った写真なども一つ一つ掲載されておりまして、私の地元の盛岡の地方裁判所は、裁判所前に石割桜という珍しい観光の名所があることで有名なんですが、その写真もちゃんと載っていて、そこは感心したところでございます。
また、このホームページには、最高裁の広報誌「司法の窓」という広報誌も紹介されておりまして、最新号と若干のバックナンバーも見られるようになっております。
そこで、第五十一号には、やはりここにもたまたま盛岡地方裁判所が特集されておりまして、さんさ踊りが盛岡地裁の前を通るとか、また石割桜の写真とか、そういうのがホームページを通じても見ることができ、こういう「司法の窓」という広報誌でも紹介されているということがわかりました。
ただ、「司法の窓」という広報誌は、春と秋、年に二回しか発行されておりませんで、これはもう少し頻繁に、できればやはり月一くらいの、そのくらいの広報活動をやった方がいいのではないかと思います。
ここ五年、十年ぐらいのところ、各省庁の広報誌というものが非常に発達を遂げておりまして、本当つまらないパンフレットだったようなものがどんどん発達して、外部の、役所の意見と違う意見を持った人を登場させて、いろいろ多角的な記事、分析等を書いたり、読者、それはすなわち国民でありますけれども、関心に応じて小まめに取材して誌面をつくっていくような、そういうことが裁判所の方にも期待されるのではないかというふうに思います。
予算などの面で難しいこともあるかもしれませんが、司法体制の充実というところには、そういう広報の充実も入るでしょうから、これは頑張っていただきたいと思いますし、国会としても、そういう観点からも取り組んでいかなければならないと思っております。
ホームページには、「下級裁判所裁判傍聴」の案内も載っておりまして、この下級裁の傍聴、これは司法の実態、裁判所の実態を一般国民が知るのに非常にいい機会だと思います。
私が高校時代、アメリカのある高校にホームステイしながら一カ月くらい通っていたとき、その高校には刑事司法、クリミナルジャスティスという授業がありまして、選択科目で必修ではないのですけれども、高校生からそういう刑事司法という授業があるわけです。その授業、先生の引率で近くの裁判所に行って、それは殺人事件の裁判でありましたけれども、これをみんなで傍聴する。こういう学校単位の傍聴というのは非常にいいなと思うわけでありますけれども、日本でそういう学校単位の地方裁判所の傍聴というのは行われているものでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505206X00419990323/112
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113・浜野惺
○浜野最高裁判所長官代理者 全国の各高等裁判所、地方裁判所、家庭裁判所で、小学生、中学生、高校生、大学生、それから一般の方々の見学を受け入れておりまして、広報ビデオの上映、庁舎の見学、それから法廷の傍聴等を各庁の実情に応じて適宜組み合わせまして、裁判所の紹介に努めているところでございます。
下級裁判所の見学につきましては、平成十年には合計約十万六千人の見学者を受け入れておりまして、そのうち約六万九千人が学生の方々となっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505206X00419990323/113
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114・達増拓也
○達増委員 かなり数値として、十万六千、うち学生が六万ということなんでありますけれども、基本的に自由に傍聴できるということでありますけれども、その受け入れの体制ですとか連絡、案内とか、さらに工夫することで、よりそういう傍聴がやりやすくなると思いますので、その点、頑張っていただきたいと思います。
最高裁の見学については、平成十年の場合、小学生、年に四百九十四件で四万三千三百二十八人、たくさんの小学生が最高裁の見学をしているというふうに聞いております。
子供たちを相手にいろいろ広報をやっていく場合、行政の方が中心になって行っている例として、環境ですとか、また科学技術といった分野について、特に児童相手のクラブをつくったりとかそういう広報活動が行われて、これはかなりうまくいっていると思うのですね。そういうことを既に試みているか、あるいはそれに近いことを何かやろうとしているかどうか、児童特に小学生向けの広報について伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505206X00419990323/114
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115・浜野惺
○浜野最高裁判所長官代理者 委員御指摘の、特に小学生を中心とする広報活動でございますが、裁判所としては、さきに御説明したような下級裁判所の傍聴のほかに、小学生向けと中学生、高校生向けに裁判所制度を紹介した広報ビデオを作成しておりまして、全国の小学校、中学校及び高等学校に配付し、これを社会科授業の時間に見ていただいたり、それから広報誌の「司法の窓」を委員御指摘のとおり発行しておりまして、これを全国の高等学校に配付して、図書室などで読んでもらうようにしております。
このように、裁判所としては青少年に裁判所制度を理解してもらうための工夫を行っているところでございますが、委員御指摘の趣旨を踏まえまして、今後とも一層の工夫、改善に努めてまいりたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505206X00419990323/115
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116・達増拓也
○達増委員 裁判そのものに対するニーズも高まっていくことが予想され、裁判そのものだけで裁判所は忙しくて、人も予算も間に合わない、そういう中であえて広報についても強化すべきと私が主張するには理由がございまして、それは、裁判所が持っている紛争解決の技法と申しますか、正義ですとか公平といった理念のあり方、そういうリーガルマインドのあり方、そして法の諸原則の実社会への適用の仕方、こういう場合はこういうふうに紛争を処理するものだといったようなセオリーですとか、さらには具体的なハウツー的な知識、そういったものを裁判所の中だけにとどめておくのではなく、広く社会に開放することによりまして、広い意味での司法改革、社会のニーズに合った司法改革ができるのではないかというふうに考えるわけであります。
自由党が理想としております社会というのは、責任ある個人が自己責任原則に立ちつつ自立して自由に活動する、そういう社会であります。それはいわゆる事前の規制よりも事後的なチェックの方が重要になってくるだろうということで、訴訟など、紛争解決に当たっての司法ニーズもそういう社会では高まってくるのではないかと予想されているわけでありますけれども、さらにそういう責任ある個人が自由に行動する社会というのが徹底してくると、今度は、裁判所にも依存しないで個人間で、自分たちで紛争を処理するようになっていく、紛争を解決するようになっていくのではないかと思うわけであります。そういう意味で、裁判所が持っている紛争解決の技法のようなものを社会全体に開放していくことが重要なのではないかと思うわけであります。
そのように、中央の、公の紛争機関に依存しないで、個々の主体が交渉や取引で紛争を解決していくシステムというのは実はありまして、それは国際社会の国家間関係でございます。国際社会には国際司法裁判所という裁判所はありますけれども、あれは紛争の両当事者が合意しなければ裁判にならないわけでありまして、そういう意味では、当事者同士の、まさに当事者主義の徹底された形、これを補う形での裁判という位置づけなわけであります。
こういう国際法秩序のあり方については、それは未成熟なのでよくない、やはり唯一の世界政府があって、唯一の世界裁判所があって、唯一の世界警察があって、そういうのがいいんだという考え方もあるわけでありますけれども、一方においては、二十一世紀、情報化がどんどん進んで、個人個人にもそれこそインターネットなどを通じていろいろな知識、情報、そういうものが提供される。非常に分権的で、個人主義的な形で物を決め、紛争も処理していく、そういう今の国際社会における紛争解決のモデルというのは実は国家の中においても有効になってくるのじゃないか、そういう自由主義的な考え方がありまして、私もそれにくみするものでございます。
そういう意味で、最高裁初め裁判所が一般向けに啓蒙活動、セミナーをやるとか書籍を発行するとか、司法修習所が使っているテキストなどを公にしていくことも非常に意義あることだと思います。そういった、一般向けに、最高裁が持っている、裁判所が持っている紛争解決の技法またそもそもの理念、そういったものを公開していく活動について、現状と今後のあり方を質問したいと思います。これも最高裁にお願いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505206X00419990323/116
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117・浜野惺
○浜野最高裁判所長官代理者 今、前段で委員が御指摘になられました、今後、社会経済情勢が変化していく中で、自己責任が確立されて、紛争の内容によっては裁判所の手続以外の紛争解決機能を高めていく必要があるではないかという御指摘と理解しておりますが、この点の問題は今後幅広くいろいろな観点から検討されるべき点ではないかと思いますし、裁判所といたしましても十分検討してまいりたい点だというふうに考えております。
委員の御指摘の、裁判所の持っておりますリーガルマインドあるいはそういう技法についての公開の点でございますが、まず一つ、裁判官の職責は、一つ一つの事件を法と良心に基づきまして的確に処理していくということでございます。このように一つ一つの事件に取り組む中で、裁判官は、法廷の審理や当事者等との意見交換を重ねていく準備手続等の場で公正で公平な姿勢で臨むことを通じまして、国民の方々に御指摘のような裁判官のリーガルマインドあるいは紛争処理のあり方というものを感じ取っていただいて、御理解していただく、これが裁判所あるいは裁判官の基本的な姿勢ではないかと考えております。
もとより、裁判所といたしましては、裁判所の活動を広く国民の皆様にも理解していただくために広報活動は重要だというふうに考えております。例えば、先ほど来委員御指摘の「司法の窓」という広報誌を作成して、広く学校等に配付しているわけでございますが、この中に裁判官の随想や座談会の記事を掲載するなどして、裁判官の物の見方や考え方なども紹介しているところでございます。
このような広報活動を超えまして、委員の御指摘されているような広報活動を裁判所が組織して、さらに裁判官等のいろいろな技法を積極的に公開していくというようなことは、今のところ現実には行っておりませんけれども、御指摘のような点を踏まえまして、今後の司法のありようという大きな視点から検討してまいりたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505206X00419990323/117
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118・達増拓也
○達増委員 裁判官の数を倍にしなければだめじゃないかというような民間、特にビジネスの世界からのニーズがあるときに、その裁判官、裁判所の体制自体を大規模に拡大していくというのが一つのあり方なんでしょうが、いろいろ事情もあってそうもいかないということでぐずぐずやっていますと、民間のビジネスの論理として、もう裁判所以外の紛争解決をやってしまおうということがふえていくと思うんですね。WTO、世界貿易機関のパネルのような、そういう調停機関のようなものを民間のビジネス界の有志でつくってしまって、公正性という点では正規の裁判所に比べてリスクは当然あるんでしょうけれども、裁判期間の短縮ですとかコストが全体として安上がりであれば、ビジネスの論理としてはそういう手段の方を選んでしまう。
そのようにして、公式じゃない、いわば民間裁判所のようなものが発達していくときに、やはりそこで公正性の問題とか社会正義の観点とか、問題が起こるかもしれない。そこまで先取りすれば、正規の裁判所というものがそういう流れをリードしていく形で、いい意味で指導、導いていきながらやっていかないと間に合わないんじゃないかと思うわけであります。もうこの辺まで来ると司法制度改革の話になってしまうので、これは今後の国会審議の中でまた議論していきたいと思います。
きょうの質問はこれで終わりにいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505206X00419990323/118
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119・杉浦正健
○杉浦委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。
―――――――――――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505206X00419990323/119
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120・杉浦正健
○杉浦委員長 これより討論に入るのでありますが、討論の申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。
内閣提出、裁判所職員定員法の一部を改正する法律案について採決いたします。
本案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505206X00419990323/120
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121・杉浦正健
○杉浦委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。
―――――――――――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505206X00419990323/121
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122・杉浦正健
○杉浦委員長 この際、本案に対し、八代英太君外六名から、自由民主党、民主党、公明党・改革クラブ、自由党、日本共産党、社会民主党・市民連合及びさきがけの共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。
提出者から趣旨の説明を聴取いたします。日野市朗君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505206X00419990323/122
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123・日野市朗
○日野委員 ただいま議題となりました附帯決議案について、提出者を代表いたしまして、案文を朗読し、趣旨の説明といたします。
裁判所職員定員法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)
近時における破産事件及び民事執行事件の大幅な増加並びに社会・経済事情等の著しい変化に伴う各種紛争事件の複雑多様化に対応して、適正・迅速な事件処理を図るため、政府及び最高裁判所は、裁判官及びその他の裁判所職員の増加、下級裁判所の施設の充実等裁判所の人的・物的拡充に努めること。
以上であります。
何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505206X00419990323/123
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124・杉浦正健
○杉浦委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。
採決いたします。
八代英太君外六名提出の動議に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505206X00419990323/124
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125・杉浦正健
○杉浦委員長 起立総員。よって、本動議のとおり附帯決議を付することに決しました。
この際、ただいまの附帯決議につきまして、法務大臣から発言を求められておりますので、これを許します。陣内法務大臣。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505206X00419990323/125
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126・陣内孝雄
○陣内国務大臣 ただいま可決されました附帯決議につきましては、その趣旨を踏まえ、適切に対処してまいりたいと存じます。
また、最高裁判所にも本附帯決議の趣旨を伝えたいと存じます。
ありがとうございました。
―――――――――――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505206X00419990323/126
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127・杉浦正健
○杉浦委員長 お諮りいたします。
ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505206X00419990323/127
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128・杉浦正健
○杉浦委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
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〔報告書は附録に掲載〕
―――――――――――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505206X00419990323/128
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129・杉浦正健
○杉浦委員長 この際、暫時休憩いたします。
午後零時三分休憩
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午後一時四十八分開議発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505206X00419990323/129
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130・杉浦正健
○杉浦委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
この際、本日付託になりました内閣提出、司法制度改革審議会設置法案を議題といたします。
趣旨の説明を聴取いたします。陣内法務大臣。
―――――――――――――
司法制度改革審議会設置法案
〔本号末尾に掲載〕
―――――――――――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505206X00419990323/130
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131・陣内孝雄
○陣内国務大臣 司法制度改革審議会設置法案について、その趣旨を御説明いたします。
二十一世紀の我が国社会においては、社会の複雑多様化、国際化等に加え、規制緩和等の改革により、社会が事前規制型から事後チェック型に移行するなど、社会のさまざまな変化に伴い、司法の役割はより一層重要なものになると考えられ、司法の機能を社会のニーズにこたえ得るように改革するとともに、その充実強化を図っていくことが不可欠であると考えられます。
そこで、政府といたしましては、このような観点から、二十一世紀の我が国社会において司法が果たすべき役割を明らかにし、司法制度の改革と基盤の整備に関し必要な基本的施策について調査審議する機関を内閣に置く必要があると考え、この法律案を提出することとしたものであります。
その要点は、次のとおりであります。
第一に、内閣に司法制度改革審議会を置くこととし、二十一世紀の我が国社会において司法が果たすべき役割を明らかにし、司法制度の改革と基盤の整備に関し必要な基本的施策について調査審議するとともに、調査審議した結果に基づき、内閣に意見を述べることをその所掌事務とすることとしております。
第二に、審議会は、委員十三人以内で組織し、委員は、学識経験のある者のうちから、両議院の同意を得て内閣が任命することとしております。
第三に、審議会の事務を処理させるため、審議会に事務局を置き、事務局に、事務局長のほか所要の職員を置くこととしております。
なお、この法律は、政令で定める施行の日から起算して二年を経過した日にその効力を失うこととしております。
以上が、この法律案の趣旨であります。
何とぞ、慎重に御審議の上、速やかに御可決くださいますようお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505206X00419990323/131
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132・杉浦正健
○杉浦委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。
本案に対する質疑は後日に譲ることといたします。
―――――――――――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505206X00419990323/132
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133・杉浦正健
○杉浦委員長 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。
本案審査のため、来る三十日午前十時から、参考人の出席を求め、意見を聴取することとし、その人選等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505206X00419990323/133
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134・杉浦正健
○杉浦委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
次回は、来る三十日火曜日午前九時五十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
午後一時五十一分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505206X00419990323/134
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