1. 会議録本文
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000・会議録情報
平成十一年二月九日(火曜日)
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平成十一年二月九日
午後四時四十分 本会議
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○本日の会議に付した案件
野田自治大臣の平成十一年度地方財政計画についての発言並びに地方税法の一部を改正する法律案(内閣提出)、地方交付税法等の一部を改正する法律案(内閣提出)及び地方特例交付金等の地方財政の特別措置に関する法律案(内閣提出)の趣旨説明並びに質疑
午後四時四十四分開議
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出席国務大臣
内閣総理大臣 小渕 恵三君
大蔵大臣 宮澤 喜一君
文部大臣 有馬 朗人君
自治大臣 野田 毅君
出席政府委員
自治省財政局長 二橋 正弘君
自治省税務局長 成瀬 宣孝君発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505254X00619990209/0
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001・伊藤宗一郎
○議長(伊藤宗一郎君) これより会議を開きます。
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国務大臣の発言(平成十一年度地方財政計画について)並びに地方税法の一部を改正する法律案(内閣提出)、地方交付税法等の一部を改正する法律案(内閣提出)及び地方特例交付金等の地方財政の特別措置に関する法律案(内閣提出)の趣旨説明発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505254X00619990209/1
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002・伊藤宗一郎
○議長(伊藤宗一郎君) この際、平成十一年度地方財政計画についての発言並びに内閣提出、地方税法の一部を改正する法律案、地方交付税法等の一部を改正する法律案及び地方特例交付金等の地方財政の特別措置に関する法律案について、趣旨の説明を求めます。自治大臣野田毅君。
〔国務大臣野田毅君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505254X00619990209/2
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003・野田毅
○国務大臣(野田毅君) 平成十一年度の地方財政計画の概要並びに地方税法の一部を改正する法律案、地方交付税法等の一部を改正する法律案及び地方特例交付金等の地方財政の特別措置に関する法律案の趣旨について御説明申し上げます。
まず、平成十一年度の地方財政計画の策定方針について御説明申し上げます。
平成十一年度においては、現下の厳しい経済情勢等を踏まえ、景気に最大限配慮して実施される恒久的な減税に伴う影響を補てんするほか、歳出面においては、徹底した行政経費の抑制を基本とするとともに、経済再生への対応、地域福祉施策等の充実を図り、歳入面においては、地方税負担の公平適正化の推進と、地方交付税の所要額の確保を図ることを基本としております。
第一に、地方税については、個人住民税の最高税率の引き下げ及び定率減税の実施、並びに法人事業税の税率の引き下げ等の恒久的な減税を実施するほか、非課税等特別措置の整理合理化等の所要の措置を講じることとしております。
第二に、地方財政の運営に支障が生じることのないようにするため、恒久的な減税に伴う影響額について、国と地方のたばこ税の税率変更、法人税の地方交付税率の引き上げ、地方特例交付金の創設及び減税補てん債の発行等により補てんするとともに、それ以外の地方財源不足見込み額についても、地方交付税の増額及び建設地方債の発行等により補てんすることとしております。
第三に、地域経済の振興や雇用の安定を図りつつ、自主的、主体的な活力ある地域づくり、住民に身近な社会資本の整備、災害に強い安全な町づくり、総合的な地域福祉施策の充実、農山漁村地域の活性化等を図るため、地方単独事業費の確保等所要の措置を講じることとしております。
第四に、地方行財政運営の合理化と財政秩序の確立を図るため、定員管理の合理化及び一般行政経費等の抑制を行うとともに、国庫補助負担金について補助負担基準の改善を進めることとしております。
以上の方針のもとに、平成十一年度の地方財政計画を策定いたしました結果、歳入歳出の規模は八十八兆五千三百十六億円、前年度に比べ一兆四千三百五十二億円、一・六%の増となっております。
次に、地方税法の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明申し上げます。
平成十一年度の地方税制改正に当たりましては、最近における社会経済情勢等にかんがみ、地方税負担の軽減及び合理化等を図ることといたしております。
まず、地方税負担の軽減及び合理化を図るための措置といたしまして、個人住民税の最高税率の引き下げ及び定率減税の実施、法人事業税の税率の引き下げ、住宅及び住宅用土地に係る不動産取得税の課税標準等の特例措置に係る要件の緩和、低燃費自動車に係る自動車取得税の特例措置の創設等の措置を講じることといたしております。
また、固定資産税の価格等に係る審査申し出制度の見直し等を行うとともに、非課税等特別措置の整理合理化等を行う等、所要の改正を行うことといたしております。
次に、地方交付税法等の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明申し上げます。
恒久的な減税による減収額の一部を補てんするため、当分の間、法人税に係る地方交付税率を引き上げることとし、平成十一年度において百分の三十二・五、平成十二年度以降において百分の三十五・八とすることとしております。
この結果、恒久的な減税による減収額以外の地方財源不足見込み額に対する補てんもあわせて、平成十一年度分の地方交付税の総額につきましては、交付税特別会計における借り入れ等の特例措置を講ずることにより、二十兆八千六百四十二億円を確保しております。
また、単位費用につきまして、所要の改定を行うとともに、被災者生活再建支援法の施行に伴う地方団体の負担に対する財政措置を行うこととし、あわせて、地方分権推進計画に沿って、交付税の算定方法の簡明化の一環として、一部の経費について、新たに法律で定める単位費用として算定することとしております。
次に、地方特例交付金等の地方財政の特別措置に関する法律案につきまして、その趣旨を御説明申し上げます。
恒久的な減税に伴い地方税の収入が減少することにかんがみ、地方公共団体の財政の健全な運営に資するため、当分の間の措置として、地方特例交付金の交付その他の必要な措置を定めることとしております。
まず、地方特例交付金の総額は、恒久的な減税による減収総額の四分の三に相当する額から、地方のたばこ税の増収見込み額及び法人税に係る地方交付税率の引き上げによる地方交付税の増加見込み額を控除した額とし、毎年度、都道府県、市町村及び特別区に対して交付することとしております。
また、地方債の特例として、恒久的な減税による減収総額の四分の一に相当する額について、減税補てん債を起こすことができることとしております。
以上が、地方財政計画の概要並びに地方税法の一部を改正する法律案、地方交付税法等の一部を改正する法律案及び地方特例交付金等の地方財政の特別措置に関する法律案の趣旨であります。
何とぞよろしく御審議の上、よろしくお願いを申し上げます。(拍手)
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国務大臣の発言(平成十一年度地方財政計画について)並びに地方税法の一部を改正する法律案(内閣提出)、地方交付税法等の一部を改正する法律案(内閣提出)及び地方特例交付金等の地方財政の特別措置に関する法律案(内閣提出)の趣旨説明に対する質疑発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505254X00619990209/3
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004・伊藤宗一郎
○議長(伊藤宗一郎君) ただいまの地方財政計画についての発言及び三法律案の趣旨の説明に対して質疑の通告があります。順次これを許します。土肥隆一君。
〔土肥隆一君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505254X00619990209/4
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005・土肥隆一
○土肥隆一君 私は、民主党を代表しまして、ただいま議題となりました一九九九年度地方財政計画及び地方交付税法等の一部を改正する法律案、地方税法の一部を改正する法律案、地方特例交付金等の地方財政の特別措置に関する法律案に関しまして、総理及び関係大臣に質問いたします。
財政問題に入る前に、二、三、地方分権に関連してお尋ねいたします。
戦争と革命の世紀と言われたこの百年間は、国家が主役となって覇権を競い、国民に負託された以上の力を振るってきた時代でありました。一九〇〇年代の最後の年となった本年、欧州では、国家としての代表的な仕事であるはずの通貨発行が、国家を超えた共同体、すなわちヨーロッパ連合にゆだねられる事業が進んでいます。
他方、我が国においてはどうでしょうか。国の権限を縮小、再編し、地域住民の共同体である自治体に分権する改革が進められなければなりません。いずれも、ボーダーレス化する時代にあって、国家の役割と任務を再定義し、国民が平和で豊かな暮らしを実現するために、さまざまな権限の再配分を行うことは避けて通れないのであります。この重大な転換期に、国会に議席を置く私たちの任務は重く、まことに分権改革の名に値する制度として仕上げるために、その責任を共有したいと願っているところでございます。
さて、小渕総理、橋本前総理が意欲的に検討を指示された公共事業の権限移譲について、関係省庁は地方分権推進委員会のヒアリングにも応じないなど、非協力的であったと伝えられています。小渕政権になって、分権推進への総理のバックアップがなくなったからではないかと言われていますが、これは事実でしょうか。
総理は、地方分権に熱意を持っておられないのでしょうか。我が国の近現代史を画する改革案にできるかどうか、総理のリーダーシップにかかっていると思うのですが、総理の時代認識と地方分権への御決意をお聞かせいただきたいと思います。(拍手)
政府が準備している地方分権推進の整備法案について、事務の定義等が国の関与を強める内容になっているようでありますが、地方分権推進委員会の勧告や地方分権推進計画よりも後退することは許されません。地方への税財源移譲のように、勧告や計画で不十分なところは、それを超えた方策を打ち出すべきだと考えますが、間違っても中央省庁の裁量の余地を拡大するような法案にはしないことを、ここで確認しておきたいと思います。総理の明確な答弁を求めます。
さて、自由党を代表して入閣された野田自治大臣にお伺いいたします。
ほかならぬ自治大臣のポストにつかれた理由は何でしょうか。自由党は地方分権を政策の重要な柱に掲げており、地方分権整備法がいよいよ制定されるという局面で、自治大臣の役割は重大であると思いますが、御決意と覚悟をお聞かせいただきたいと思います。
続いて、地方財政及び税制についてお伺いいたします。
一九九九年度の地方財政の大きな特徴として、地方税の税収が前年に比べて八・三%も減少したことが挙げられます。これは、地方交付税制度始まって以来、最大の落ち込みであります。そこで、一般財源を確保するため、交付税で手当てをしているわけでありますが、その結果、自主財源の比率がますます低下して、財政のゆがみは限界に達しているのであります。
御承知のように、地方税の減収は、不況と減税対策によってもたらされたものであります。我が党はこれまで、緊急経済対策においても、構造改革につながる税制改正をすべきだと主張し、個人住民税の減税はすべきではないと訴えてまいりました。地方分権にふさわしい財政構造にするには、自主財源をふやすことが不可欠であり、地方税減税はこれに逆行するからです。
今回の地方税法改正案では、低公害車への優遇措置など環境に配慮した改正が盛り込まれるなど、評価できる面もありますが、個人住民税の最高税率引き下げを初めとした減税策は、地方財政の悪化に拍車をかけるもので、認めるわけにはいきません。
個人住民税と並んで自治体の基幹的な税である法人事業税については、外形標準課税が長年の懸案となっています。自治体が提供するサービスに応じて、利益のあるなしにかかわらず企業も応分の負担をしていただく、企業が社会の一員として必要なことではないかということであります。
もちろん、ベンチャー企業への優遇措置など新規の起業家への支援は、別途対策を講じるべきだと思います。今回の法人事業税の税率引き下げの機会に、外形標準課税に向けた将来の方向性は打ち出すべきではないでしょうか。総理のお考えをお聞きいたします。
景気の停滞は、国主導の社会的なセーフティーネットが極めて不十分で、国の制度に対する国民の不信が募っておって、人々が消費を控えている、将来への不安があるからであります。景気回復というなら、それこそ税財源を地方に移譲し、地域の生活に根差した、地域の責任で、もっと見える形で、地域が創意工夫を加えた、それこそ地域のセーフティーネットを張って、福祉、特に介護保険制度などを充実させ、医療や教育など、社会的サービスが地域でしっかり提供できるようにすべきだと思いますが、いかがでしょうか。(拍手)
今、基礎年金保険料を税方式にするなどの検討がなされておりますけれども、この年金に加えて、地域のセーフティーネットが機能するようになれば、例えば事業者の社会保障に対する負担が軽減され、さきに述べた法人事業税の外形標準課税にも理解が得られるのではないでしょうか。これらの点について、総理と自治大臣の見解をお伺いいたします。
陳情が要らない財政制度を、これは、私が地方への税財源移譲を主張するこの気持ちから出ているのであります。住民が選んだ首長や地方議員が、時間と金をかけて東京に出てきて、霞が関の官僚諸君や政治家に頭を下げなければならない現状は、どう考えても納得できません。小渕総理も、長い政治家生活の中で、それこそ膨大な量の地方の陳情を受けてこられたと思いますが、どのような感想をお持ちでしょうか。
自治体関係者が予算の陳情をするのは、自主財源が少ないからであり、中央省庁のあるいはさじかげんで左右されるような現状があるのではないですか。総理は、一月二十一日の本会議で同僚の横路孝弘議員の質問に答えて、地方税財源の充実確保は、地方分権を推進する中で極めて重大な課題と述べておられますが、今求められているのは、どのような税を、どのような配分方法に変えるのか、その具体策に踏み出すことではないでしょうか。
民主党は、現在、未来への投資として、自治体に約四兆円規模の財源を交付する法案を、そして税源移譲の法案を提出する準備をして進めております。地方自治体投資促進法案は、人口割で交付金の額を決め、すべての都道府県、市町村が、少子高齢化や情報化、環境などに対応した事業に自主的、主体的に取り組めるようにしたものであります。また、税源移譲法案は、当面、国と地方の税収割合を一対一にすることを目指し、国税である所得税の一部を地方に移譲しようというものであります。納税者の負担は変わりません。
地方分権にとって財源的な裏づけは不可欠であり、これがなければ分権も絵にかいたもちになってしまいます。地方の首長や議員、住民が創意工夫し成果も上げれば、また、失敗したら責任をとるという地方財政制度にすべきだと思うのですが、いかがでしょうか。総理の御意見をお伺いいたします。(拍手)
野田自治大臣、自由党は、公共事業補助金の地方への一括交付金化や、所得税、住民税の半減を掲げていますが、地方税財源の確保について、大臣としてどのような取り組みをなさるのか、お聞かせください。
次に、財源不足についてお尋ねいたします。
九九年度地方財政計画のもう一つの大きな特徴は、十三兆円にも上る巨額の財源不足であります。恒久的な減税の影響は、地方税が一兆七百億円、地方交付税の減少額が一兆五千億円で、これを補てんする措置として、たばこ税の地方への一部移譲、法人税の交付税率引き上げ、地方特例交付金の創設など、制度改正が図られています。
従来の減収補てん措置と比べて、財源の地方移転という点で改善は見られますが、わずかなものであり、十兆三千七百億円にもなる通常収支不足については、従来の手法によるつじつま合わせに終わっています。すなわち、交付税特別会計から、借入金、財源対策債の発行などで補てんをしているわけです。
通常収支不足は既に六年続いており、その額も昨年の二倍以上、交付税総額の五割という前代未聞の数値となっています。地方交付税法第六条の三第二項は、三年以上連続して交付税総額の一割以上の財源不足を生じた場合、地方行財政の制度改正か交付税率の引き上げを行うことと書かれておりますが、今回の措置は、また明らかにこの規定に違反した、改革なき惰性であり、後世へのツケ回しの延長にあります。この法律違反の状態をいつまで続けるのでしょうか。総理及び自治大臣の明快な説明を求めます。(拍手)
相次ぐ減税対策、公共事業への動員で、地方財政は破綻の危機に瀕し、東京や大阪、神奈川、愛知などと、比較的富裕な自治体が財政危機宣言を出すまでに至っております。交付税の不交付団体を含めて、地方税減収を補うための地方特例交付金六千四百億円を交付することにしておりますが、そのうち東京都に交付される額は一千億円と言われております。都道府県で唯一の不交付団体である東京都まで一種の財政支援を必要とし、政令指定都市もまた今年度、ついに不交付団体がゼロになりました。
三千三百もの自治体がある中で、たとえ厳しい経済情勢とはいえ、自前で賄えるところが全くないというのは異様なことであり、実質上の地方交付税制度の破綻と言えるのではないでしょうか。ここまで財政破綻を深刻化させた事態の責任をどう認識しているのか、総理にお伺いいたします。
最後に、地方債の問題について伺います。
先ほど述べましたように、政府の景気対策へのつき合いで地方負担を急増させ、借入金残高は九九年度末に百七十六兆円と見込まれています。減税と箱物重視の公共事業を中心にした景気対策は、功を奏することなく、自治体には国以上に過酷な重荷をもたらしています。
その極端なあらわれが、地方債の信認の低下という兆候です。地方財政に占める公債費負担が伸びている中、地方債の利回りが上昇すれば、財政圧迫をいよいよ強めることになります。今回の財政計画では、高金利時代に発行された地方債の繰り上げ償還や借りかえを認めよという、我が党の主張が一部取り入れられた公債費負担対策が盛り込まれており、この点は評価いたしますが、これはまさに応急措置にほかならないのであります。地方債の信認低下を防ぐ手だてを早急に講じる必要があると思うのですが、いかがでしょうか。
抜本的な対策は、やはり税財源を移譲して、自治体の自主財源を高めることしかありません。さらに、財政投融資改革の中で、資金運用部や公営企業金融公庫が引き受けてきた地方債を今後どうするのか、検討を急がなければなりません。総理及び自治大臣のお考えをお聞かせください。
以上、るる述べてまいりましたが、地方財政のどの課題を取り上げても、解決策のポイントは税財源の地方への移譲に行き着くのであります。小渕総理は、EU諸国のユーロ導入について、世界史に新しいページを刻む偉業、強固な政治的意志と厳しい構造改革の努力を通じてなし上げられたことにつき、感銘を受けたと述べておられます。
ぜひ、我が国の分権改革においても、この財源問題を看過することなく、強固な政治的意志を発揮して、人々に感銘を与える偉業をなし遂げていただきたいことを申し添えまして、私の質問を終わります。
ありがとうございました。(拍手)
〔内閣総理大臣小渕恵三君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505254X00619990209/5
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006・小渕恵三
○内閣総理大臣(小渕恵三君) 土肥隆一議員にお答え申し上げます。
土肥議員の御質問にお答えする前に一言申し上げます。
このたび、皇太子、同妃両殿下とともに、私は、この重要な国会のさなかではありましたが、各党各会派の御理解のもと、日本政府と国民を代表して、故フセイン・ジョルダン国王陛下の葬儀に参列し、先ほど帰国いたしました。
故フセイン国王は、中東和平プロセスの熱心な推進者であり、世界平和に重要な貢献をされました。また、大変な親日家としても知られ、その御逝去は、世界及び我が国にとって大きな損失であり、まことに残念のきわみであります。ここに改めて哀悼の意を表します。
このたび、弔問の機会に、私は、クリントン米大統領を初め数多くの各国首脳と、限られた時間ではありましたが、有意義な会談を行い、お互いの信頼関係を一層高めることができたと思います。
いずれにいたしましても、世界の重立った首脳が、まさに一堂に会する形で出席をしたこのたびの葬儀に、日本政府と国民を代表して私も出席できましたことは、極めて意義深いものがあったと考える次第であります。改めて各党各会派の御理解に深い感謝を申し上げます。(拍手)
さて、お尋ねでありますが、時代認識と地方分権への決意についてお尋ねがありました。
私は、しばしば申し上げておりますように、現在を明治維新、第二次世界大戦後に続く第三の改革の時期と位置づけております。地方分権は、まさにこの改革の一環として、二十一世紀にふさわしい我が国の基本的行政システムを構築するものであり、地方分権推進計画の内容を踏まえた関連法案を今国会に提出するなど、同計画を着実かつ速やかに実施し、いささかも熱意を衰えさせることなく、地方分権を積極的に推進してまいる決意であります。
検討中の地方分権推進のための一括法案についてお尋ねがありました。
この法案の立案に当たりましては、国と地方公共団体に対する関与のルールが明確になるよう、地方分権推進委員会の勧告を最大限に尊重して作成した地方分権推進計画に沿って、この内容の法案化を図ってまいりたいと考えております。
地方の自主財源についてのお尋ねであります。
今回の恒久的減税の実施につきましては、極めて厳しい地方財政の状況等を踏まえ、国、地方の負担割合を定めたものであり、減税による地方の減収分につきましては、当分の間の措置として、国と地方のたばこ税の税率変更による地方たばこ税の増収措置、法人税の地方交付税率の引き上げ、地方特例交付金の創設など、地方財政の運営に支障が生じないよう、できる限りの措置を講じることといたしたところであります。
また、法人事業税の外形標準の導入につきましては、都道府県の税収の安定化を通じて、地方分権の推進に資する等の意義を有するものであり、今後十分検討していかなければならない課題であると考えております。
セーフティーネットについてのお尋ねがありました。
国民に安心を与えるセーフティーネットの社会保障につきましては、年金、医療保険、生活保護等、国が全国的基準を定めて運営すべき制度もありますが、保健福祉等住民に身近なサービスについては、地方公共団体、とりわけ市町村の役割が重視されるべきものであります。また、教育につきましては、全国的な基準の設定や、地方に対する支援等の国の役割を明確にするとともに、地域に根差した教育行政が展開できるようにすることも重要であります。
国としても、全体的な制度づくりに取り組むとともに、市町村の取り組みを支援するなど、安心できる社会サービス等が提供できるよう努めてまいります。
次に、基礎年金の税方式への移行を行うべきとの御意見でありますが、基礎年金の税方式化につきましては、給付と負担の関係が明確な社会保険方式の長所が失われるのではないか、年金の性格が生活保護と類似のものに変質するのではないかといった指摘もあり、慎重な検討が必要であると考えております。
次に、陳情をどう受けとめているかというお尋ねでありました。
議員御指摘のような御批判も承知をいたしておりますが、しかし一方、私は、さまざまな方々からいろいろな機会に、種々実情の説明や御意見等をいただいてまいることも重要であると考えております。これらにつきましては、今後とも適切かつ的確な対応を行ってまいらなければならないと考えております。
地方税財源についてお尋ねがありました。
地方税財源の充実確保は、地方分権を推進する中で極めて重要な問題と考えております。今後とも、地方分権推進計画に沿って、国と地方公共団体との役割分担を踏まえ、地方税、地方交付税等の必要な地方一般財源の確保に努め、地方税財源の充実確保を図るべきと考えております。
次に、地方交付税法についてお尋ねがありました。
平成十一年度の地方財政対策におきまして、恒久的な減税に伴う減収に対しましては、国と地方のたばこ税の税率変更による地方たばこ税の増収措置、法人税の地方交付税率の引き上げ、地方特例交付金の創設などの制度改正で対処するとともに、単年度の財源不足につきましては、平成十年度に定めた、三カ年の制度改正を基本として対策を講じることとしたところであります。これらの措置により、地方交付税法の趣旨を踏まえつつ、地方財政の運営に支障が生じないよう対処できたものと考えております。
地方財政の深刻な状況についてお尋ねでありますが、現在の我が国経済の低迷等によりまして、地方財政は極めて厳しい状況にあります。したがいまして、このような地方財政の立て直しのためには、国と地方のたばこ税の税率変更による地方たばこ税の増収措置、法人税の地方交付税率の引き上げ、地方特例交付金の創設など、地方財政の運営に支障が生じないよう十分配慮しつつ、緊急経済対策を初めとする諸施策を実施することによりまして、まずは景気を回復軌道に乗せることが必要であると考えております。
地方債の資金調達についてのお尋ねがありました。
地方債は、地方公共団体が各種の社会資本整備を進めるための重要な財源であり、その信用を維持しつつ資金調達を安定的に行うことは、極めて重要であります。今後、財政投融資制度の改革の中で、財政力の弱い地方公共団体等におきましては、社会資本整備が安定的かつ着実に推進できますよう、これまで政府資金や公営企業金融公庫資金が果たしてきたような、長期かつ低利な資金の安定的確保を図るという考え方に沿って検討してまいりたいと考えております。
地方税財源についてお尋ねがありました。
地方税財源の充実確保は、地方分権を推進する中で極めて重要な課題だと考えております。地方分権の進展に伴い、国と地方公共団体との役割分担を踏まえつつ、中長期的に国と地方の税源配分のあり方につきましても検討しながら、地方税の充実確保を図るべきものと考えております。
以上、御答弁申し上げましたが、残余の質問につきましては、関係大臣から答弁いたさせます。(拍手)
〔国務大臣野田毅君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505254X00619990209/6
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007・野田毅
○国務大臣(野田毅君) 土肥議員にお答え申し上げます。
まず、地方分権を進める決意と覚悟についてのお尋ねでございます。
地方分権の推進は、明治以来形成されてきた中央集権型の行政システムを変革して、国、都道府県、市町村、この関係を対等、協力の関係にするものであるということは御案内のとおり。そして、二十一世紀の基本的行政システムを構築するものであるという認識のもとに、さらに力を入れてまいりたいと思います。
当面、この地方分権の推進に向けて、地方分権推進計画の内容を踏まえた関連法案を今国会に提出するなど、同計画を着実かつ速やかに実施するとともに、住民に身近な行政はできる限り住民に身近な地方公共団体が担っていくということを基本として、さらに、国から地方公共団体への権限移譲や地方税財源の充実確保に、強い決意で取り組んでまいりたいと考えております。
セーフティーネットについてのお尋ねでありますが、景気回復のためにも、税財源を地方に移譲し、地域の中にこそセーフティーネットを張って、福祉、特に介護、医療、教育などの社会サービスがしっかり提供できるようにすべきだという議員のお考えについては、まさに御指摘のとおりであると思います。住民に身近な行政は、できる限り住民に身近な地方公共団体が担っていくことを基本とすることが、将来に向けて住民に安心感を与える意味においても、大変重要であると考えております。
基礎年金の保険料を税方式に移行すべきではないのかというお尋ねであります。
高齢化社会において、社会保障制度に対する国民の信頼と制度の安定を確保するためには、安定した財源の確保が不可欠と考えております。税方式の方が、現在の社会保険方式の中で問題視されている保険料の未納、滞納問題や、制度間及び世代間の不公平について解決することができ、年金制度の信頼と安定に資するんだということを自由党は主張しているところであります。いずれにせよ、今後、自民、自由両党間でさらに協議が重ねられることとなっております。
なお、来年度予算総則で、消費税の使途を基礎年金、老人医療、介護に限定する旨が記されているところであります。
地方税財源の確保についてのお尋ねでありますが、地方分権の進展に応じて、地方公共団体がより自主的、自立的な行財政運営を行えるようにするためには、地方公共団体の財政基盤を充実強化していくことが極めて重要であります。今後、地方分権推進計画を踏まえ、所得、消費、資産等の間におけるバランスのとれた地方税体系や、税源の偏在性が少なく、税収の安定性を備えた地方税体系の構築などに努め、地方税源の充実確保を図ることが必要であると考えております。
また、公共事業等に係る補助金については、自由党としては包括交付金方式を提唱しておりますが、いずれにしても、地方公共団体が自主的、主体的に事業を実施できるよう、必要な財源措置のあり方について検討を進めていくことが重要と考えております。
地方交付税法第六条の三第二項についてのお尋ねでありますが、地方の財源不足を補てんし、地方交付税総額をどのように確保するかについては、その時々の国と地方の役割分担や財政状況等を踏まえて対処してきたところであります。
平成十一年度の地方財政対策においても、恒久的な減税に伴う減収に対しては、たばこ税の一定割合の地方への移譲、法人税の地方交付税率の引き上げ、地方特例交付金の創設等の制度改正で対処したところでありますが、単年度の財源不足については、平成十年度に定めた三カ年の制度改正、すなわち地方交付税対応分については国と地方が折半して、それぞれ補てん措置を講ずることを基本として対策を講ずることとしたところであります。
これらの措置により、地方交付税法第六条の三第二項の趣旨を踏まえつつ、地方財政の運営に支障が生じないよう対処できたものと考えております。
最後に、地方債の資金調達についてのお尋ねであります。
地方債は、学校等の社会資本整備の重要な財源であり、その信用を維持しつつ資金調達を安定的に行うことは、極めて重要であります。また、団体間には金融市場からの資金調達能力に大きな差が存在することや、施設の耐用年数等を勘案した長期の資金を確保することが必要なことから、政府資金及び公営企業金融公庫資金のような、長期かつ低利の資金を安定的に確保していくことが必要であります。
今後、財政投融資制度の改革にあっても、自治省としては、財政力の弱い地方公共団体等においても社会資本整備が安定的かつ着実に推進できるよう、長期かつ低利な資金の安定的確保を図るという基本的考え方に沿って検討してまいりたいと考えております。(拍手)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505254X00619990209/7
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008・伊藤宗一郎
○議長(伊藤宗一郎君) 白保台一君。
〔白保台一君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505254X00619990209/8
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009・白保台一
○白保台一君 私は、公明党・改革クラブを代表いたしまして、ただいま議題となりました平成十一年度地方財政計画及び地方税法の一部を改正する法律案、地方交付税法等の一部を改正する法律案、地方特例交付金等の地方財政の特別措置に関する法律案について、総理並びに関係大臣に質問をいたします。
まず、地方財政の厳しい現状の認識について伺います。
現在、地方自治体では、政府予算案を受け、厳しい財政事情の中、財政再建計画が作成されています。すなわち、政府の相次ぐ景気判断の誤りから来た経済失政が、地方財政に直接打撃を与えているのであります。平成十一年度の地方財政は、経済不況のあおりを受け、法人事業税等の大幅な減収により、昨年の二倍を超える約十兆四千億円もの財源不足額が生ずると見込まれています。
そのような状況下における地方の財政再建計画の中で出ている話は、福祉、教育、医療分野における予算の切り捨てであります。敬老祝い金の廃止、県立私立学校高校等の授業料の引き上げ、保健所の健康診断の廃止、学校教員の大幅削減、公営住宅建設戸数の大幅削減、特別養護老人ホームへの補助金カット、母子家庭に対する乳幼児医療費の有料化など、政府の失政によるツケがすべて庶民に回っているのであります。
このような実態を把握し、迅速かつ大胆な施策を打ち立てることが、総理の最優先課題ではないでしょうか。地方財政への厳しい現状に対して、今後総理はどのように対処されようとしているのか、その基本方針についてお伺いします。
また、切り捨ての代表的な事例として、文部大臣に伺います。
自治体における学校教員の大幅削減は、きめ細かな生徒指導の充実が必要な現状からすると、あってはならないことだと思います。今後の対応についてお伺いしたいのであります。
地方財源の充実及び繰り上げ償還について伺います。
庶民の生活と福祉を守るためには、より一層の地方財源の充実が必要です。そこで、私は、三つの提案をさせていただきます。
第一は、地方消費税の拡大です。現在、消費税五%のうち、地方消費税の割合が一%になっております。例えば、これを二%程度に拡大し、地方財政を充実させることを提案いたします。拡充した財源は、地方自治体の福祉関連分野に充当し、地方の福祉は断じて後退させないことであります。
自自連立の政策合意によって、予算総則に、消費税収の使途を基礎年金、老人医療及び介護に限るとの趣旨が明記されました。しかし、我が会派としては、福祉は地方の仕事であるとの観点から、国から財源を配るという方式ではなく、地方の自主財源を拡充させることが、現下の優先課題であると考えます。
第二は、地方自治体が高金利時代に政府資金等から借りた借金の繰り上げ償還を大幅に認めることであります。我が会派の同僚議員も、昨年の地方行政委員会で熱心に主張してまいりました。そして、昨年末、宮澤大蔵大臣と前西田自治大臣との協議で、政府資金の繰り上げ償還が一部認められました。初めて繰り上げ償還や借りかえ等が認められるという点は評価します。しかし、財政が極端に悪化している自治体に限定されています。対象自治体のさらなる拡大と、単年度のみの措置ではなく、最低二年間、適用期間を延長すべきであります。
三点目は、繰り上げ償還を行った自治体は政府資金の新規貸し付けを三年間停止されますが、この条件については即刻外すべきであります。経済学者レスター・サローは、日本における不況脱出のかなめは、織田信長型の決断力が大事であると指摘しております。素早い決断と実行が、地方自治体の景気回復と生活者の福祉を守ることは間違いありません。
以上三点の提案について、総理及び大蔵大臣の前向きな答弁を求めます。
次に、減税について伺います。
政府・与党が決定した恒久的減税は、減税総額四兆円という昨年と同一規模の枠内で、最高税率の大幅な引き下げという高額所得者への配慮を優先したために、勤労者の八割以上が負担増になると言われています。これでは国民の財布が緩むはずはありません。定率減税に切りかえ、低所得者層にも応分の負担を求めることは、将来の税制改革につなげるために必要だというのが小渕内閣の方針ですが、これは全く経済政策を無視した方針です。いまだに景気が低迷している状況から、消費性向が高い低所得者層への配慮が一番必要なのであります。
今回の減税案は、まさに経済無視の減税であり、断じて容認できません。前内閣は、景気が低迷しているときに九兆円の増税を行いました。失政を再び繰り返してはなりません。所得税の税率を各段階ごとにそれぞれ引き下げる本格的な恒久減税、さらには低中堅所得層の税負担増に対する激変緩和として二兆円規模の戻し税減税を、早急に実施すべきであります。総理及び大蔵大臣の御見解を伺います。
恒久的な減税に伴い生ずる地方税の減収に対する措置について伺います。
今回、新たに地方特例交付金を創設し、六千三百九十九億円を補てんするとあります。しかし、実際の地方税の減収額が見積額を上回った場合、この特例交付金は増額されるのかどうか、そのような弾力的な機能を持っているのかどうか、自治大臣にお伺いします。
次に、地方単独事業について伺います。
我が国の経済を回復軌道に乗せるためには、住民に身近な社会資本を機動的に整備し、地域経済を下支えする事業として、地方単独事業が重要な役割を果たしていることは言うまでもありません。今回の予算でも、前年度と同規模である約十九兆三千億円の地方単独事業を実施する方針です。
しかし、地方の声を聞くと、必ずしも歓迎とは言えません。約半数の知事が、地方単独事業は限界であるとの認識を示しているとの調査もあります。またさらに、自治体の借金体質を助長するのではないかとの指摘もあります。近年の地方単独事業の増加は、地方税及び地方交付税などの地方一般財源の充実によるものではありません。地方債に偏った拡大であり、地方の財政悪化の大きな要因となっているのであります。
地方単独事業について、現在の状況では、地方自治体の協力を得ることは困難ではないかと考えます。どのように協力を求めていくのか、その具体的な方策について、総理及び自治大臣のお考えを伺いたいと思います。
次に、地域活力創出プランについて伺います。
平成十一年度より、新たに、地域活力創出プランとして事業費一兆円を計上し、地域経済再生、人づくり等に対し総合的な取り組みができるよう重点的な財源措置を行い、地域を元気にするという施策であると伺っています。そして、このうちソフト事業分の二千五百億円については人口規模で配分するとの方針ですが、これでは元気が出ません。つまり、過疎地の活性化ほど創意が必要であり、お金がかかるのであります。いずれにしても、地域の実情に応じた配分に留意すべきであると考えます。
地域活力創出プランについての事業費の配分について、自治大臣の御見解をお伺いします。
最後に、地域振興券について伺います。
地域振興券の交付が、先月二十九日、島根県の浜田市を皮切りに、今月一日も千葉県野田市、愛媛県八幡浜市、北海道新冠町など、次々にスタートしました。関係者の皆様の御協力で、三月中には全国の約八割の自治体で交付できると伺っております。今まで、天下の愚策とさんざん批判されてきましたが、現実に交付が始まって、商店主や利用者の皆さんが喜んでいる姿を目の当たりにし、日本列島に景気回復という春一番を吹かせ、個人消費を喚起し、大きな波動を広げる世紀の快挙となると私は確信しております。
富山県の入善町では、地域振興券を一カ月以内に使用すれば、町独自で発行した千円分の商品券をプレゼントするなど、振興券の早期利用を進めて、消費拡大を図ろうとする工夫をしています。京都の網野町では、振興券の裏側に丹後ちりめんを張り、地場産業の振興に役立てております。
このように、自治体独自の創意工夫や努力に対し、決して国がブレーキをかけることのないよう、むしろ今回の地域活力創出プラン等も活用できるようにするなど、全面的なバックアップをしてほしいと思います。そして、まずは第一弾を大成功させてほしいと考えます。
この点について、総理並びに自治大臣の御所見を伺い、私の質問を終了いたします。(拍手)
〔内閣総理大臣小渕恵三君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505254X00619990209/9
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010・小渕恵三
○内閣総理大臣(小渕恵三君) 白保台一議員にお答え申し上げます。
まず、地方財政の厳しい現状にどのように対処するかというお尋ねでありました。
現在の我が国の経済の低迷等によりまして、地方財政が極めて厳しい状況にあることは、御指摘のとおりであります。したがいまして、このような地方財政の立て直しのためにも、地方交付税の増額措置、地方特例交付金の創設など、地方財政の運営に支障が生じないよう十分配慮しつつ、緊急経済対策を初めとする諸施策を実施することによりまして、まずは景気を回復軌道に乗せるとともに、住民福祉の向上を図っていくことが必要であると考えております。
地方消費税を二%に拡大し、地方財源の充実を図るべきとのお尋ねでありました。
地方税財源の充実確保は地方分権を推進する中で極めて重要な課題であり、今後とも、地方分権推進計画に沿って、国と地方公共団体との役割分担を踏まえ、地方税、地方交付税等の必要な地方一般財源の確保に努めるとともに、中長期的には、国と地方の税源配分のあり方についても検討しながら、地方税の充実確保を図るべきものと考えております。
政府資金の繰り上げ償還の対象団体の拡大、適用期間の延長との御意見でありますが、今回の繰り上げ償還は、公債費負担が著しく高い地方公共団体について、資金運用部資金法の、確実かつ有利な方法で運用するとの運用原則に沿って、一定の要件のもとに、早期にその貸付元本の回収を図るとともに、公債費対策の一環として、当該団体の公債費負担を軽減することとなるものであります。
また、資金運用部資金につきましては、貸付金利と預託金利を同一とし、利ざやを取らずに、長期固定の貸し付けを行いながら収支相償うように運用されていることから、一般的に、繰り上げ償還や低利借りかえを認めることはとり得ない仕組みとなっており、今回の措置は、平成十一年度の臨時特例措置としておるところでございます。
政府資金の繰り上げ償還を行った地方公共団体に対する政府資金の新規貸し付け停止についてお尋ねがありましたが、資金運用部資金の繰り上げ償還を行った地方公共団体は、公債費負担の著しく高い地方公共団体であり、資金運用部資金の確実かつ有利な運用原則にかんがみ、当該地方公共団体の公債費負担の改善が想定される期間として、三カ年、資金運用部資金の新規貸し付けを停止することといたしております。
ただし、新規貸し付け停止の例外として、災害復旧事業等、特に地方公共団体を支援する必要があると考えられる一定の事業につきましては、継続して貸し付けを行うこととしてまいりたいと思っております。
次に、今回の減税案は金持ち優遇税制であるというお考えを述べられました。この点につきましては、しばしば御答弁申し上げておりますけれども、累進税率の全面引き下げによる恒久減税をしたがって実施すべきでないかというお尋ねにお答えをいたしておるところでありますが、最高税率の引き下げは、我が国の将来を見据え、国民の意欲を引き出す観点から行うものでありまして、また、現下の厳しい経済情勢にかんがみ、早急に税負担の軽減を図る観点から、課税ベースや課税方式の抜本的見直しを伴わずに恒久的な減税を行う方式として、納税者ごとの税負担のバランスをゆがめない定率減税をとったところでございます。
なお、今回の見直しにおきまして、定率減税に頭打ちを設け、控除率をある程度大きくすることにより中堅所得者に配慮するとともに、一定の扶養控除額の加算を行うことにより、子育て、教育等の負担のかさむ世帯に配慮いたしておりまして、全体としては、高額所得者に偏ったものとなってはおりません。
いずれにしても、税率構造のあり方につきましては、課税ベースや課税方式のあり方とあわせて、今後の我が国の経済社会の構造的な変化、国際化の進展等に対応した抜本的改革へ向けて、腰を据えて検討を行っていく必要があると考えております。
また、戻し税減税等の問題につきまして御提案がありますが、昨年のような諸外国に比し突出して高い水準の課税最低限が継続し、納税者が構造的に大幅に減少することとなりかねず、基幹税たる個人所得課税のあり方としても適当でないと考えます。
次に、地方単独事業につきましてのお尋ねであります。
地方単独事業は、地方団体が地域の実情に即して、自主的、主体的に実施するものであり、住民に身近な社会資本の機動的な整備にあわせて、地域経済を下支えする事業として、我が国の公共投資において重要な役割を果たしておると認識をいたしております。
平成十一年度の地方財政計画におきましては、国の公共事業関係費の総額、経済対策の実施の必要性、地方財政の厳しい状況等を勘案いたしまして、地方単独事業を前年度と同規模、すなわち十九兆三千億円とし、地域の実情に即して、重点的、計画的な実施がされるよう、所要の財政措置を講ずることとしたところでございます。
最後に、地域振興券事業についてのお尋ねがありました。
事業主体であります市町村には、事務的に大変御苦労をいただいておるところでありますが、一月二十九日に島根県の浜田市で交付が開始され、その後、順調に動き始めておることを喜ばしく思っております。白保議員の御指摘のように、各地域におきましても積極的に推進しておりまして、このことを大変喜ばしく思っております。
地域振興券をめぐるテレビ、新聞等の報道を見ておりますと、さまざまな話題とともにメディアで大きく取り上げられるなど、社会的反響も大きく、全国の市町村や商店街で、地域おこしを熱心にお取り組みいただいていることに大きな意義も感じております。今後とも、市町村との連携を密にし、今回の事業が円滑に実施され、地域振興の効果が上がりますよう、国としても万全を尽くしてまいりたいと考えます。
残余の質問につきましては、関係大臣から答弁いたさせます。(拍手)
〔国務大臣野田毅君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505254X00619990209/10
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011・野田毅
○国務大臣(野田毅君) 地方税財源の充実についてのお尋ねでありますが、地方分権の進展に応じて、地方団体がより自主的、自立的な行財政運営を行えるようにするためには、地方税財源の充実強化を図っていくことが極めて重要であります。
今後、地方分権推進計画を踏まえ、国、地方を通ずる事務配分のあり方などをも勘案しながら、歳出規模と地方税収との乖離をできるだけ縮小するという観点に立って、地方税源の充実確保を図っていく必要があると考えておりまして、御指摘の地方消費税の配分割合の見直しなども含め、総合的に検討してまいりたいと考えております。
政府資金の繰り上げ償還等についてのお尋ねでありますが、今回の措置は、極めて厳しい地方財政の状況のもと、地方団体からの要望が非常に強く切実であることにかんがみて、長期、低利で安定した資金を地方団体へ供給するという、政府資金等の機能を損なうことなく対応が可能な方策として、起債制限比率が一五%以上等、公債費の負担が特に重い団体等に限って講じたものであり、平成十一年度の臨時特例措置としたものでございます。そのことをぜひ御理解願いたいと思います。
それから、地方特例交付金についてのお尋ねでありますが、今回の恒久的な減税による減収額は税収額そのものに比例するものであるため、実際の減収額が当初の見込み額を上回るという状況は、景気が好転をして税収全体が伸びる、そういう局面であると考えられるわけです。
また、当該交付金は、地方税の代替的性格を有する財源として基準財政収入額に算入され、最終的には、地方交付税制度の中で財源調整の対象となるものであるということから、御質問の場合であっても、地方財政の運営に支障が生ずるおそれはないものと考えられるわけでありまして、交付金の増額等は行わないこととしております。この点、御理解をいただきたいと思います。
それから、地方単独事業についてのお尋ねであります。
地方単独事業は、地方団体が地域の実情に即して自主的、主体的に実施するものであり、住民に身近な社会資本の機動的な整備にあわせ、地域経済を下支えする事業として、我が国の公共投資において重要な役割を果たしていると認識いたしております。
平成十一年度の地方財政計画において、地方単独事業については、地域の活性化や住民に身近な社会資本の整備の必要性、国の公共事業関係費の総額、経済対策の実施の必要性、地方財政の厳しい状況等を勘案して、景気対策分を含めて前年度と同規模、すなわち十九兆三千億円を確保することとしたところでございます。
特に景気対策分八千億円については、それぞれの地域経済の状況に即した機動的、弾力的な財政出動に対処できるよう、地方交付税、地方債により所要の財政措置を講ずることといたしておりまして、厳しい地域経済の状況にかんがみ、重点的、計画的な実施がされるよう要請してまいりたいと考えております。
それから、地域活力創出プラン関連ソフト事業についてのお尋ねでありますが、この経費につきましては、基本的には、人口に比例して基準財政需要額を算定することとしておりますが、市町村分の算定に当たり、人づくり事業につきましては若者の定住率を反映させることとし、また、地域経済の活性化については、地域活力の指標として、非労働力人口や完全失業者の割合を反映させることとするなど、地域の実情に応じた配分に努めてまいりたいと考えております。
最後に、地域振興券事業についてのお尋ねでございますが、市町村の大変な御努力の結果、準備期間が短かったにもかかわらず、順調に動き始めたことを大変喜ばしく思っております。この事業に関連して、市町村や地元商店街等において、さまざまな工夫を凝らした取り組みも見られるようになりまして、事業の盛り上がりを感じております。
地域活力創出プランによる財政措置を生かした地域経済活性化への取り組みとも呼応して、地域の振興という効果が広がっていくことを強く期待いたしておりまして、今後とも市町村との連携を密にして、事業が円滑に実施され、地域振興の効果が上がるよう、国としても万全を尽くしてまいります。
以上であります。(拍手)
〔国務大臣有馬朗人君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505254X00619990209/11
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012・有馬朗人
○国務大臣(有馬朗人君) 学校教員についてのお尋ねでございますが、児童生徒数の減少に伴い、全体として教職員定数が減少しているところでありますが、文部省といたしましては、現在、第六次公立義務教育諸学校教職員配置改善計画、並びに第五次公立高等学校学級編制及び教職員配置改善計画を実施しているところであります。その中で、きめ細かな生徒指導のための教職員配置についても、必要な措置を講じているところであります。
厳しい財政状況の中ではありますが、今後とも、現行の教職員配置改善計画を着実に実施し、教育条件の維持向上が図られるよう努めてまいります。(拍手)
〔国務大臣宮澤喜一君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505254X00619990209/12
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013・宮澤喜一
○国務大臣(宮澤喜一君) 御指摘のように、地方財政の現状は非常に厳しいものがございまして、平成十一年度予算の編成の中で一番やはり苦労いたしましたのは、この問題でございます。自治大臣と何度かお話し合いをいたしまして、国といたしましても、かなり思い切った異例の措置をとったつもりでございます。
それで、消費税を、地方分を拡大できないかというお話は、御承知のように、平成六年に地方消費税を創設いたしました。それから、消費税に係る交付税の交付税率を引き上げました。両方のことをいたしまして、現在、地方税の、総収入の中に占める地方の取り分は四三・六%でございます。非常に高い率になっておりますので、その点は御理解をいただけないだろうかと思っております。
それから、繰り上げ償還は、先ほど総理がお答えになられましたが、事柄は、結局、資金運用部はお金をお預かりしまして同じ率でお貸ししているものですから、その間に利ざやというものが一切ございません。それで、繰り上げ償還をいたしますと、みすみす、みすみすといいますか、そのままそれが損失になるようなことになる。そういう仕組みでございますものですから、一般的に、繰り上げ償還とか低利の借りかえを認めることが、会計上できなくなっております。
ただ、今度、大変に自治大臣の御主張がありまして、いかにも公債費負担のひどいところは一遍だけ特例を、じゃ、いたしましょうかということを申し上げたわけでございますので、そういう利ざやがございませんものですから、これをいつまでもやっていくというわけにまいりません。
それから、そういうことをいたしましたので、そういうところは公債費の負担が高いところでございますから、三年間は新規の貸し付けはひとつ御勘弁願えないかと言っておるわけでございますが、災害なんかがございましたら、それはまた別のことでございます。そういうかなり異例のことをいたしておりますことは、御理解をいただきたいと存じます。
それから、所得税の戻し税につきましては、先ほど総理が御答弁なされましたので、省略いたします。(拍手)
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〔議長退席、副議長着席〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505254X00619990209/13
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014・渡部恒三
○副議長(渡部恒三君) 春名直章君。
〔春名直章君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505254X00619990209/14
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015・春名直章
○春名直章君 私は、日本共産党を代表して、一九九九年度地方財政計画、地方税法改正案、地方交付税法改正案、地方特例交付金法案に関連して、総理並びに関係大臣に質問いたします。
今、地方財政は未曾有の厳しさの中にあります。一九九〇年度に六十七兆円だった全自治体の借金は、九〇年代に入って約百兆円もふえ、来年度末には百七十六兆円に達しようとしています。裕福と言われた大都市の都府県でも、赤字団体転落への危険性が現実問題となっています。財政の健全性をはかる指標の一つ、公債費負担比率が警戒ラインの一五%を超えている自治体も、全自治体の半数を超えるという異常事態であります。
重大なことは、この財政危機を口実に、各自治体で一斉に福祉、医療、教育の切り捨て、公共料金の相次ぐ値上げ、職員、教員の大幅削減など、住民犠牲の自治体リストラが強行されていることであります。そのことが、住民の消費マインドを冷え込ませ、消費不況に一層拍車をかけるという悪循環になっているのであります。今、政府に問われていることは、この悪循環をきっぱりと断ち切り、地方財政健全化の道にしっかり道筋をつけることであります。
以下、幾つかの問題に絞って質問をいたします。
第一は、地方財政危機の真の原因を自覚し、その解決に本気で取り組んでいるのかどうかという問題であります。
総理は、予算委員会で、我が党志位書記局長の質問に対し、地方財政危機の要因の一つに公共事業の膨張があることをお認めになりました。そして、地方団体が多額の赤字財政を抱えて厳しい状況にあることは承知しているともお答えになりました。そうであるならば、自治体の財政運営の指針となる今度の地方財政計画は、財政破綻の原因を取り除く一歩を踏み出すものでなければなりません。
ところが、四年連続で未執行分が生まれ、消化もできないほど積み増ししてきた地方単独事業は、前年同額の十九兆三千億円で、九八年度の水準を維持しています。地方に大きな負担を押しつける直轄補助事業も、二・六%増、十兆一千七百八十八億円と増大し、マイナス九・六%だった前年度と比較しても、突出しているではありませんか。
加えて、九九年度の国の予算は、景気対策ということで、公共事業関係費が五・〇%の増、マイナス七・九%であった九八年度と比べて大幅な増加であります。こうした国の姿勢に追随して、財政危機宣言を発している大都市部の自治体でも、今後もむだな大規模プロジェクトを推進しようとしています。
大阪府は、今後十年間で三兆七千六百億円ものゼネコン型公共事業が聖域化され、借金の利息だけで一日二千二百万円にも上るりんくうタウン、総工費七千五百億円をかける国際文化都市、公園都市などが計画をされています。神奈川県でも、巨大開発みなとみらい21が、企業進出のめどが立たず、破綻が明瞭になっているにもかかわらず、その三十三倍もの超巨大臨海部開発が進められようとしているのであります。
総理、今日の深刻な不況の現実を見るならば、公共事業積み増し路線が景気回復に役立たないことは、余りにも明瞭ではありませんか。地方財政をますます深刻化させ、むだと浪費を積み重ねるゼネコン型公共事業にメスを入れることこそ、政府が真っ先にやるべき仕事ではありませんか。総理の責任ある答弁をまず求めるものであります。(拍手)
第二に、住民犠牲の自治体リストラの国の指導を、この際きっぱり中止することであります。
財政危機宣言を出した自治体の解決対策は、住民サービス切り捨て一辺倒であります。東京都が十二月に発表した行政改革プランでも、すべての事業を徹底的に民営化と民間委託にふるい分け、残された事業も、シルバーパス取り上げや、老人、心身障害者への医療費助成の切り下げ、区市町村への補助金の縮小廃止などが計画されています。
どこでも住民の大きな不安と怒りが高まり、昨年十月十六日付の朝日新聞社説でも、歳出を減らすのは当然である、だが、そのことが弱い立場の人々へのしわ寄せとなっては、自治体の存在自体が問われようなどの、厳しい批判が沸き起こっているのであります。
重大なことは、こうした全国的に行われている自治体リストラ攻撃の旗振りを、国が推進しているということであります。九七年十一月の自治事務次官通達では、具体的で目に見える行政改革と、数値目標も明確にした行革を強制するとともに、その徹底のために、再度九八年八月には、ことし三月までの行革計画策定を厳しく指導しています。私は、こうした自治体行革を強要するような通達をこの際きっぱり廃止することを要求しますが、自治大臣の答弁を求めるものであります。
次に、今回の地方財政対策について質問をいたします。
計画規模八十八兆五千三百十六億円をもとにした九九年度の地方財政の通常収支の財源不足額は、十兆三千六百九十四億円と、過去最高の額であります。この途方もない財源不足に対し、実施しようとしているあなた方の対策は、相も変わらず、財源対策債の増発と交付税特別会計の借入金という、従来型の補てん方法の踏襲であります。
まず伺いたいのは、交付税率引き上げに対する政府の認識であります。
これまで政府は、地方財政に恒常的な財源不足が生じるような事態になった場合の、財源補てんの方法を規定した地方交付税法第六条の三、二項の解釈について、財源不足が普通交付税の額のおおむね一割程度以上で、それが二年連続して生じ、三年度以降も続くと見込まれる場合には、地方行財政制度の改正あるいは交付税率の変更を行うとしてきました。そして、交付税特別会計の借入金を中心とした補てん措置を、地方行財政制度の改正と強弁してきたのであります。
しかし、今日、財源不足額が普通交付税の八九・五%にも及ぶという事態は、これまでの政府解釈を大きく超える事態であることは確実であります。まず、その認識があるのかどうか、自治大臣の答弁を求めたいと思います。
制度の改正を行っても、財源不足が解消するどころか、その額は逆に増大している事態をどう思われるのでしょうか。六条の三、二項に言う制度改正とは、財源不足が解消されることを言うのではありませんか。恒常的な財源不足が制度改正によっても解消しないのであれば、交付税率の引き上げを行うというのが法の趣旨ではありませんか。自治大臣の明確な答弁を求めるものであります。(拍手)
次に、二兆二千五百億円の財源対策債の増発の問題であります。
十兆三千六百九十四億円の財源不足額が過去最高なら、二兆二千五百億円という財源対策債の増発も過去最高の額であります。政府の地方財政白書では、この財源不足の補てんのために発行される財源対策債の増発を、公債費高騰の理由の一つに挙げております。公債費の高騰は、おのおのの地方自治体の財政運営に直接影響を与えるものであります。自治省が、公債費負担比率一五%以上の団体数の増加を示して、財政状況の悪化を警告しているのもそのためであります。
そうであるならば、財源不足の全額を交付税特別会計の借入金で補てんし、おのおのの自治体の直接の負担を軽減する方法は考えなかったのでしょうか。厳しい地方財政と言うのであれば、このような補てん方法が当然検討されてしかるべきではありませんか。検討の俎上にも上らなかったというのか、自治大臣の御答弁を求めたいと思います。
三番目に、恒久的減税の財源補てんの問題についてであります。
恒久的減税に伴う地方財政の影響額は、二兆五千九百九十五億円であります。そのうち、何と一兆三百二十億円は地方が負担するというものになっております。この中には、赤字地方債である減税補てん債二千六百七十八億円も含まれています。経済対策というのは、基本的には国の責任と負担で行われるべきものであります。国が行う減税の穴埋めを地方に押しつけることは、許されることではありません。総理、一兆円を超える財政負担をなぜ地方に押しつけるのですか。
しかも、今回の減税は、恒久的減税で、一年限りのものではありません。専ら、国の政策判断による財政負担を恒久的に地方に押しつけることは、私は、地方自治の拡充にも真っ向から逆らうものであると考えますが、総理の答弁を求めるものであります。(拍手)
四つ目に、政府資金にかかわる高利の地方債の問題であります。
今回、地方団体からの強い要望で、その一部の繰り上げ償還が認められました。しかし、その規模は二千二百億円程度、金利七%以上の九六年度末起債残高五兆五千億円のわずか四%にすぎないのであります。現在残っている地方債の借り入れ平均利率は三・四%、地方債の借入先の六割近くが資金運用部資金、簡易保険資金、公営企業金融公庫などの政府系金融機関であります。
借りかえで全体の平均利率が一%下がるだけで一兆五千億円近くの財源を生み出すことができ、自治体への大きな支援となることは疑いありません。対象規模の拡大と、一年限りでない制度の恒久化を強く求めるものであります。大蔵大臣、自治大臣の答弁を求めるものであります。(拍手)
また、このわずかな適用を受けるための条件として、公債費負担適正化計画の策定が要件となっています。しかし、公債費が高騰した最大の理由は、七五年以降の地方財政の巨額の財源不足の補てんや、九二年以降の国の経済対策などによって大量の地方債が発行されたことによるものであります。
国の施策の結果が自治体の公債費の高騰をもたらしているのに、その国が、繰り上げ償還の要件に公債費負担適正化計画の策定を自治体に強要することは、到底納得できるものではありません。この条件は外すべきであります。自治大臣の答弁を求めるものであります。(拍手)
憲法で地方自治の本旨がうたわれて半世紀を過ぎました。地方自治体が、国の強い統制のもとから離れて、住民自治と団体自治の観点から、みずからの判断でその自治体の運営ができるような権限と財源を付与することこそ、地方分権の原点でなければなりません。
昨年五月の地方分権推進計画では、地方の歳出規模と地方税収との乖離を縮小する方向で税財源の充実確保を図るとされただけで、その実現のための具体的な提案は何もないのであります。逆に、地方分権一括法案が提案されるこの国会に提出されている地方税財政関係法案は、税財源の拡充どころか、地方の自主的な財源を削減する内容となっているのであります。その一方で、強制的な市町村合併や一層の自治体リストラの推進がうたわれ、これで財政危機を乗り切ろうという方向が示されております。これでは本末転倒ではありませんか。
総理、地方交付税の不交付団体が全自治体の一割にも満たないという自主財源の少ない現状をどう思われますか。国の補助金や交付税に頼らない、自主財源でみずからの財政運営が可能になるように、国から地方への税源移譲が今こそ行われるべきであります。総理の明快な答弁を求めて、質問を終わるものであります。(拍手)
〔内閣総理大臣小渕恵三君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505254X00619990209/15
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016・小渕恵三
○内閣総理大臣(小渕恵三君) 春名直章議員にお答え申し上げます。
まず、公共事業について御質問がありました。
公共事業につきましてはいろいろの御意見がありますが、ただ、予算につきましては、特に情報通信や都市、住宅、環境、教育、福祉など、我が国の経済の活性化に不可欠な分野、安全な国土の整備といった分野に、重点的に投資を行ってまいっておるところであります。また、公共事業の効率化を図る観点からも、再評価システムの導入等の徹底的な見直しも行ってまいりたいと考えております。
次に、恒久的減税に伴う財政負担についてお尋ねがありました。
今回の恒久的減税に伴う減収に対しましては、地方財政の円滑な運営に配慮する観点から、極めて厳しい地方財政の状況を踏まえ、極めて厳しいこの国の財政事情のもとではありますが、当分の間の措置として、国と地方のたばこ税の税率変更による地方たばこ税の増収措置、法人税の地方交付税率の引き上げ、地方特例交付金の創設などのできる限りの措置を講じることとしたところであり、御理解をいただきたいと思います。
地方公共団体の自主財源についてのお尋ねでありますが、少しでも多くの団体が、国からの財源に依存することなく、自主財源である地方税によって自立的に財政を営むことができるようにすることが、目指すべき方向と考えております。今後、地方分権の進展に伴い、国と地方公共団体との役割分担を踏まえつつ、中長期的に、国と地方の税源配分のあり方につきましても、これを検討しながら、地方税の充実確保を図るべきと考えます。
残余の質問につきましては、関係大臣から御答弁いたさせます。(拍手)
〔国務大臣野田毅君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505254X00619990209/16
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017・野田毅
○国務大臣(野田毅君) 地方行革の指針、通達についてのお尋ねでありますが、この指針は、地方分権推進委員会の勧告を踏まえ、地方行革の取り組みの視点を提供し、地域独自の工夫を生かした地方行革の積極的な取り組みを要請したものであります。地方団体の主体的な取り組みを尊重しつつ、国、地方を通じた行政改革を推進する観点から、要請すべきものについては要請していくことは当然のことだと考えております。
地方財政の財源不足についてのお尋ねでありますが、平成十一年度においては、地方税収入や地方交付税の原資となる国税五税の落ち込み、公債費の累増などにより、恒久的な減税に伴う減収額を除いても約十兆四千億円という巨額の財源不足を生じ、平成八年度以降、四年連続して地方交付税法第六条の三第二項の規定に該当することとなったところであります。
地方交付税法に基づく制度改正についてのお尋ねでありますが、地方の財源不足を補てんし、地方交付税総額をどのように確保するかについては、その時々の国と地方の役割分担や、財政状況などを踏まえて対処をしてきたところであります。
平成十一年度の地方財政対策においても、恒久的な減税に伴う減収に対しては、たばこ税の一定割合の地方への移譲、法人税の地方交付税率の引き上げ、地方特例交付金の創設等の制度改正で対処したところでありますが、単年度の財源不足については、平成十年度に定めた三カ年の制度改正、すなわち地方交付税対応分については国と地方が折半して、それぞれ補てん措置を講ずることを基本として対策を講じることとしたところであります。これらの措置により、地方交付税法第六条の三第二項の趣旨を踏まえつつ、地方財政運営に支障が生じないよう対処できたものと考えております。
財源対策債についてのお尋ねでありますが、御指摘のとおり、借り入れによる財源不足への対処の方法としては、大きく、交付税特別会計における借り入れと、それから個々の地方団体による財源対策債の発行、この二通りがあるところであります。
平成十一年度の地方財政対策においては、地方財政が全体としても、また個々の団体についても極めて厳しい状況にあることを踏まえ、地方債の発行を極力抑制し、交付税特別会計における所要の借り入れを行うことなどによって、地方交付税の大幅な増額を図り、必要な地方一般財源を確保したところであります。
それから、政府資金の繰り上げ償還等についてのお尋ねでありますが、今回の措置は、極めて厳しい地方財政の状況のもとで、地方団体からの要望が非常に強く切実であることにかんがみて、長期、低利で安定した資金を地方団体へ供給するという政府資金等の機能を損なうことなく対応が可能な方策として、起債制限比率が一五%以上等、公債費の負担が特に重い団体等について、平成十一年度の臨時特例措置として講じたものでありますことを御理解願いたいと思います。
最後に、公債費負担適正化計画についてのお尋ねでありますが、今回の措置は、公債費の負担が特に重い団体等について、国民から集められた郵便貯金、公的年金等を原資とする政府資金の繰り上げ償還を行おうとするものでありまして、対象となる団体については、みずからも、より一層徹底した行財政改革への取り組み等の、財政健全化方策を含む公債費の負担適正化計画を策定していただくこととしたものでありますので、御理解を願いたいと思います。
以上であります。(拍手)
〔国務大臣宮澤喜一君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505254X00619990209/17
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018・宮澤喜一
○国務大臣(宮澤喜一君) 先ほどもお答えをいたしましたが、地方団体が資金運用部から非常に高い金利の金を借りておるので、これはその繰り上げ償還を認めろ、こういうお話なわけです。
ところが、資金運用部は、お預かりした金利とお貸しした金利とに利ざやがないものですから、お貸しした方をおまけしますと、今度、お預かりしている方も値切らなきゃならぬ。そういうことはできないものでございますから、したがって、今年は、大変異例の措置として、非常に公債費負担の多いところに限って、それも一遍限りの、一年限りの措置として、自治大臣が非常に強く主張されまして、いたしましたが、そういう状況なものですから、これを非常にたくさん、あるいはまた、こういうことを恒久化するというわけには、どうもまいらない。さりとて、利ざやをとるということもどうも感心いたしませんので、そういうのが実情でございます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505254X00619990209/18
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019・渡部恒三
○副議長(渡部恒三君) これにて質疑は終了いたしました。
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020・渡部恒三
○副議長(渡部恒三君) 本日は、これにて散会いたします。
午後六時二十二分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505254X00619990209/20
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