1. 会議録本文
本文のテキストを表示します。発言の目次から移動することもできます。
-
000・会議録情報
平成十一年三月九日(火曜日)
—————————————
平成十一年三月九日
午後一時 本会議
—————————————
○本日の会議に付した案件
青少年問題の総合的な対策を確立するため委員三十五人よりなる青少年問題に関する特別委員会を設置するの件(議長発議)
中小企業経営革新支援法案(内閣提出)及び中小企業総合事業団法案(内閣提出)の趣旨説明及び質疑
国民年金法等の一部を改正する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)及び国民年金法等の一部を改正する法律及び厚生年金保険法等の一部を改正する法律の一部を改正する法律案(山本孝史君外四名提出)の趣旨説明及び質疑
午後一時二分開議発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505254X01219990309/0
-
001・伊藤宗一郎
○議長(伊藤宗一郎君) これより会議を開きます。
————◇—————
特別委員会設置の件発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505254X01219990309/1
-
002・伊藤宗一郎
○議長(伊藤宗一郎君) 特別委員会の設置につきお諮りいたします。
青少年問題の総合的な対策を確立するため委員三十五人よりなる青少年問題に関する特別委員会を設置いたしたいと存じます。これに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505254X01219990309/2
-
003・伊藤宗一郎
○議長(伊藤宗一郎君) 御異議なしと認めます。よって、そのとおり決まりました。
ただいま議決されました特別委員会の委員は追って指名いたします。
————◇—————
中小企業経営革新支援法案(内閣提出)及び中小企業総合事業団法案(内閣提出)の趣旨説明発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505254X01219990309/3
-
004・伊藤宗一郎
○議長(伊藤宗一郎君) この際、内閣提出、中小企業経営革新支援法案及び中小企業総合事業団法案について、趣旨の説明を求めます。通商産業大臣与謝野馨君。
〔国務大臣与謝野馨君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505254X01219990309/4
-
005・与謝野馨
○国務大臣(与謝野馨君) 中小企業経営革新支援法案につきまして、その趣旨を御説明いたします。
昨今の経済環境を見ますと、経済のグローバル化、消費構造の多様化、経済構造のサービス化、情報技術の進展等の大きな変化が見られております。その中で、中小企業においては、製品、サービスの高付加価値化、市場指向性の追求、企画提案型の経営戦略の追求等の今日的な経営課題に的確に対応することが極めて重要となっております。
こうした状況におきまして、昭和三十八年に施行された中小企業近代化促進法では、業種ぐるみの近代化のための施策が推進されてきており、また、中小企業新分野進出等円滑化法につきましても、その支援対象が生産額または取引額が相当程度減少している等の要件に該当するものに限定されていることから、経済的環境の変化の中で、中小企業の新たな経営課題への取り組みに対し的確な支援策を講ずるためには、大幅な見直しが必要となってきております。
このため、経済的環境の変化に柔軟に対応して、中小企業が創意工夫を生かした新商品、新サービスの開発や、新たな生産方式の導入などの新たな事業活動を通じて経営の相当程度の向上を図ることを経営革新としてとらえ、こうした経営革新を行おうとする個別の中小企業、グループ等への支援を強化するため、中小企業近代化促進法と中小新分野進出等円滑化法を発展的に統合し、本法律案を提案した次第であります。
次に、本法律案の要旨を御説明申し上げます。
第一に、通商産業大臣は、経済的環境の変化に即応して中小企業が行う経営革新に関する指針を、経営革新指針として定めることとしております。
第二に、経営革新指針に基づき、単独でまたは共同で行おうとする経営革新に関する計画を作成し、行政庁の承認を受けた中小企業者及び組合等に対し、中小企業信用保険法の特例、中小企業近代化資金等助成法の特例、中小企業投資育成株式会社法の特例、課税の特例等の措置を講ずることとしております。
第三に、経済的環境の著しい変化による影響を受け、生産額または取引額が相当程度減少している業種に属する事業を行う中小企業者を構成員とする組合等が、その中小企業者の将来の経営革新に寄与するための経営基盤の強化に関する計画を作成し、主務大臣の承認を受けた場合には、当該組合等及びその構成員に対し、中小企業信用保険法の特例、中小企業近代化資金等助成法の特例、課税の特例等の措置を講ずることとしております。
以上が、本法案の趣旨であります。
次に、中小企業総合事業団法案につきまして、その趣旨を御説明いたします。
この法案は、平成九年六月及び同年九月の閣議決定「特殊法人等の整理合理化について」に基づき、特殊法人等の整理合理化を推進し、あわせて中小企業施策の総合的かつ効率的な実施を図るため、中小企業信用保険公庫及び中小企業事業団を解散して中小企業総合事業団を設立するとともに、繊維産業構造改善事業協会を解散して、必要な業務を中小企業総合事業団に移管しようとするものであります。
次に、この法案の要旨を御説明申し上げます。
第一に、中小企業信用保険公庫、中小企業事業団及び繊維産業構造改善事業協会を解散し、中小企業総合事業団を設立することとしております。
第二に、中小企業総合事業団は、中小企業構造の高度化及び中小企業の新事業の開拓を促進するために必要な指導、資金の貸し付け、出資及び助成等の事業、中小企業に対する事業資金の融通を円滑にするための債務の保証等についての保険及び信用保証協会に対する資金の貸し付け、中小企業の経営管理の合理化及び技術の向上を図るために必要な研修、指導等の事業並びに小規模企業共済法及び中小企業倒産防止共済法の規定による共済制度の運営等の事業を行うこととしております。また、繊維産業構造改善事業協会が行ってきた必要な業務を当分の間、実施することとしております。
第三に、中小企業総合事業団の役員につきましては、特殊法人の統合の趣旨に即して、役員数の縮減を行うこととしております。
その他、財務及び会計に関する規定を整備するとともに、三機関の統合に伴う経過措置等を講ずることとしております。また、あわせて、税法その他関連法律について所要の改正を行うこととしております。
以上が、本法案の趣旨であります。(拍手)
————◇—————
中小企業経営革新支援法案(内閣提出)及び中小企業総合事業団法案(内閣提出)の趣旨説明に対する質疑発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505254X01219990309/5
-
006・伊藤宗一郎
○議長(伊藤宗一郎君) ただいまの趣旨の説明に対して質疑の通告があります。順次これを許します。奥田建君。
〔奥田建君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505254X01219990309/6
-
007・奥田建
○奥田建君 民主党の奥田建でございます。
私は、民主党を代表して、ただいま議題となりました中小企業関連二法案に対する質問に先立ち、昨日の中村法務大臣の辞任について、総理に質問いたします。
民主党は今国会冒頭より中村法務大臣の更迭を求めてきましたが、参議院での野党の強い辞職要求により進退きわまったものであり、時期を失した辞任と言わざるを得ません。総理は、大臣という重い公職を任命するに当たり、その職務に最もふさわしい見識、能力、品性を備えた人物を任命する義務を負っているのであります。
今回改めて明らかになったことは、中村氏のような人物を法務大臣にした上、更迭もしなかった小渕総理の任命権者としての不適格性について、改めて指摘したいと思います。小渕内閣発足以来、二人もの閣僚の辞任が出たことは、国民の政治への不信感を一層募らせる結果となり、総理の責任は極めて重いと思います。このことについて、総理のはっきりとした見解を伺いたいと思います。
初めての機会ですので、平成十一年度予算案についても、一点だけお尋ねいたします。
今、我が国は未曾有の不況に陥り、国民は不安な気持ちで毎日を送っています。右肩上がりの経済成長、官主導の経済システム、年功序列、終身雇用制度が揺らぎ、日本経済の仕組みそのものが瓦解しつつあります。政府が政策ミスを続け、経済危機を拡大したことは自明であり、政府の責任は極めて大きいと言わざるを得ません。
小渕内閣は、経済再生を第一の目標に掲げ、経済成長率実質〇・五%を公約とし、平成十一年度予算案を提示いたしました。しかしながら、大型予算案の提示にもかかわらず、早くも民間シンクタンクの多くはマイナス成長を予想しております。このような予想は外れてほしい、そう願うのはだれもが同じですが、IMF、世界銀行の九九年度予想もマイナスとなっております。行財政改革や抜本的な恒久減税を先送りした平成十一年度予算が成立しても、日本経済をプラス成長の軌道に乗せることは困難と考えます。
予算には三十一兆五百億もの公債発行が含まれております。効果的な薬も、副作用に注意して服用するのは当然のことであります。総理のおっしゃる未来へのかけ橋を渡るものが、大きな未来への負債とならぬように、大型国債発行に関するリスクに対する認識について、総理にお尋ねいたします。
現在の経済環境の中、中小企業は困難な状況に直面しております。生産、売り上げ、採算、資金繰り、どれをとってみても厳しいものです。ここ二年ほどの記録的な倒産、そういった環境の中で、自己の経営の苦労とともに、連鎖倒産の不安を抱える企業も多いかと思います。
昨年は貸し渋りといった言葉が生まれました。後半には貸し絞り、貸しはがしという悲鳴が上がっておりました。信用保証協会枠の拡大策などは、多くの中小企業の資金ショートを助けましたが、一部の金融機関のモラル低下による既存融資の差しかえ現象を発生させております。このような、法の精神をねじ曲げ、社会的使命を捨て去ったような金融機関への強い指導と監督を、政府にも要望いたします。
中小企業を中心に行ったことし一月の景況調査でも、一年前に比べ経営状態がよいという企業の比率から、悪いという企業の比率を差し引いた景況判断指数は、いまだにマイナス五八・九という結果が出ております。当然のことながら、設備投資についても、中小企業の落ち込みが顕著であります。
今般、政府が提出した中小企業経営革新支援法案は、中小企業政策の基本的理念を定める中小企業基本法と同じ年に制定された中小企業近代化促進法と、中小企業新分野進出等円滑化法を統合したものであり、従来の、組合を中心とした業種ぐるみだけではなく、個々の中小企業の経営革新を支援すること、あるいは外的要因によって業況が悪化した中小企業への支援を打ち出すなど、評価できる点もございます。
しかし、振興法の命は、企業にとって、いかに魅力的で使い勝手がよく、また多くの利用者に活用されるかという点にあるかと思います。この不景気を脱するに、今回提出の中小企業経営革新支援法だけでは力不足の感は否めません。まず、数ある中小企業振興法の中での中小企業経営革新支援法の位置づけ、そして予測する効果を、さらには、今後一層の制度の拡充を図るべきではないかといった点について、また、企業を取り巻く規制と税制についての、通産大臣の基本的な考え方をお伺いいたします。
次に、中小企業総合事業団の設立についてであります。
政府は、中小企業信用保険公庫、中小企業事業団、繊維産業構造改善事業協会を統合して、中小企業総合事業団を設立する予定でありますが、中央省庁の統廃合と同様、切った張ったの機構いじりとの印象が否めません。人員も資本もほとんど変わらず、異なる業務を行っている団体を統合し、その業務は当分の間引き継ぐ、そういった内容には方向性が見えません。
施策の総合的推進を目的とするとはいえ、組織統合の必要性とメリット、統合を機にどのような中小企業支援策やサービスが強化されるのか、そして中期的な組織規模、予算、業務に関する方向性といったものについて、さらには、行政改革に沿った統合であるのかどうか、通産大臣の御答弁を願います。
民間では血のにじむようなリストラ、合理化が行われています。そのことを政府は忘れてはなりません。通産省は、企業活動の効率化を常に指導している省庁でもあります。効率化は目に見える形で国民に示していただきたいと考えます。
続いて、新規事業、ベンチャーの育成についてであります。民主党は、新規事業、ベンチャー企業の創造を産業政策の最重点に位置づけています。政府提出の法案にも、昨年の国会で成立した新事業創出促進法に結びつけて、ベンチャーにかかわる助成金交付事業や組合出資事業が盛り込まれていますが、まだまだ不十分であります。
昨年、政府が創設した中途半端なものではなく、可能性調査、試作品作成、あるいは商業化と、順を追ってハイテク中小企業を支援する、本格的なSBIR制度を創設すべきであります。さらに、国立大学教員に民間企業の役員を兼務することを認めるなど、技術創生につながる可能性を生み出す施策を講じるべきであります。こうした提言にどうこたえるのか、通産大臣にお尋ねいたします。
民主党の提唱を退け、政府がエンゼル税制の拡充を見送ったことも納得できません。新規事業の創造が目覚ましいアメリカでは、エンゼルと呼ばれる資金の出し手が育っております。平成十一年度予算編成前にエンゼル税制の拡充を主張しておきながら、これを実現できなかった通産省の責任も重いと言わざるを得ません。大蔵省に抑え込まれたとおっしゃるおつもりでしょうか。エンゼル税制拡充について、通産大臣の御見解をお伺いいたします。
また、新聞による若者の意識調査よれば、出世などは望まず、平凡で苦労のない普通がよい、そういった意識傾向があらわれているそうです。ベンチャーやアントレプレナーといった起業を推進する政策の中で、資金支援策と並行して教育や啓蒙、そしてベンチャーキャピタル市場の形成といったものに対して、どのような対策を講じていくのか、通産大臣の御説明を求めます。
最後に、繊維産業対策についてであります。
今回政府が提出した二法案の枠組みでは、ことし六月をもって繊維産業構造改善臨時措置法が廃止され、構造改善事業は中小企業経営革新支援法、繊維産業構造改善事業協会は中小企業総合事業団法で扱われることとなり、これまで繊維産業に特化していた施策は、総合的な中小企業対策において講じられることとなります。もはや特定産業ごとに対策を講じる時代ではなく、こうした改正は当然のこととも考えます。
しかし、繊維産業は二百万人を超える雇用を吸収している地場産業であり、すそ野の広い多くの中小企業に支えられております。繊維産業が衰退することがいかに地域経済を疲弊させ、勤労者の生活を脅かすかという事実を、政府は重く受けとめるべきであります。
今繊維産業は、国内消費の冷え込み、アジア諸国からの輸出圧力の高まり、金融機関による貸し渋り、あるいは為替相場の変動、雇用調整など、さまざまな苦難にあえいでおります。繊維産業構造改善臨時措置法の廃止後も、繊維産業が十分な支援策を受けられるのか、通産大臣への答弁を求めまして、私の質問を終わらせていただきます。(拍手)
〔内閣総理大臣小渕恵三君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505254X01219990309/7
-
008・小渕恵三
○内閣総理大臣(小渕恵三君) 奥田建議員にお答え申し上げます。
冒頭、中村法務大臣の辞任についてのお尋ねがございました。
昨日午前、中村法務大臣から私あてに、自分の言動をめぐって国会運営に重大な支障を来しておる責任を痛感しておる、その責任をとって法務大臣を辞任いたしたいとして辞表の提出がありました。私といたしましては、国会審議の重要性を認識された中村大臣の決断を重く受けとめ、これを受理し、陣内氏に法務大臣を命じたところでございます。
奥田議員から、中小企業の貸し渋りの問題を初めとして、幅広い御質問がありました。後ほど与謝野大臣から御答弁申し上げることになりますが、私といたしましては、昨年七月の総理就任以降、中小企業の問題について、最重要課題の一つとして取り組んできていることを、ぜひ御理解いただきたいと思います。
そこで、私へのお尋ね、すなわち、多額の公債発行についてリスク認識を有しているかとのお尋ねでありました。
私も、三十一兆円の公債を発行し、残高が三百二十七兆円にも達すると見込まれるこの財政状況を、危機感を持って受けとめており、将来世代のことを考えるとき、財政構造改革という大変重い課題を背負っていると痛感いたしております。しかしながら、現在のようなマイナス成長が続き、税収が減少しておる状況では、財政再建は、なかなか簡単なことでこれを行うことは難しく、まずは景気回復に全力で取り組みたいと考えております。
その上で、財政構造改革につきましても、経済が回復軌道に乗った段階におきまして、財政、税制の諸課題につきまして、中長期的視点から幅広くしっかりとした検討を行わなければならないと考えておる次第でございます。
残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)
〔国務大臣与謝野馨君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505254X01219990309/8
-
009・与謝野馨
○国務大臣(与謝野馨君) 奥田議員にお答えいたします。
中小企業経営革新支援法の位置づけと予測する効果に関するお尋ねですが、中小企業経営革新支援法は、これまでの中小企業近代化促進法にかわる新たな中小企業振興策の中心的な法律として、製造業のみならず、商業、サービス業も含んだ全業種の中小企業者が、幅広い新たな事業活動を通じて経営の向上を図ることを支援するものであります。この結果、我が国経済の大宗を占める既存の中小企業を再活性化し、経済全体の健全な発展に資するものと考えます。
中小企業経営革新支援法の支援措置に関する御質問ですが、中小企業近代化促進法等と比較して、中小企業経営革新支援法に基づく承認中小企業者に対しては、融資制度、信用保険、税制、補助金などの面で支援措置の充実を図っております。今後とも、意欲ある中小企業の多様な経営革新に対する取り組みに対して、重点的に支援してまいりたいと考えております。
規制緩和と税制についてのお尋ねですが、規制緩和は経済構造改革の一環として位置づけ、中小企業を含めた企業や個人の活力が最大限発揮されるように、積極的に推進してまいります。また、税制については、懸命に努力する中小企業の企業活力の向上、経営の安定を図るため、法人税の軽減措置等を講じているところであり、平成十一年度税制改正においても、軽減税率の引き下げを含めた法人税の引き下げ等を提案しております。
中小企業総合事業団法に関するお尋ねですが、本法案は、融資、信用保険、指導、研修、共済等の事業を一体的に行わせることにより、特殊法人等の整理合理化を推進し、あわせて、これまで各法人が持っていた知見の相互活用を図ることにより、中小企業施策の総合的かつ効率的な実施を図るものであります。
中小企業総合事業団の組織等の方向性に関するお尋ねですが、組織、役職員数、予算及び業務について必要な見直しを行い、スリム化に最大限努めたところであり、行政改革の趣旨に沿ったものであります。
SBIR制度についてのお尋ねですが、SBIR制度においては、事業化に応じて適切な支援を講じていくことが重要と認識しております。このため、本制度では、可能性調査段階の事業、試作品作成段階の事業のいずれも支援することとしております。また、商業化段階の支援については、中小企業信用保険法の特例等の措置を講ずることとしております。
技術創生につながる可能性を生み出す施策についての御質問でありますが、先般決定された産業再生計画に基づき、産学官の連携を通じた研究開発のプロジェクトの推進、増加試験研究税制の充実、技術移転機関の整備等を通じ、創造的技術開発、普及に向けた投資に取り組んでいくこととしております。
御指摘の国立大学教官等の民間企業役員の兼業については、産業界や学識経験者等の意見も踏まえつつ、できるだけ早急に結論を得るべく、関係省庁に対し引き続き働きかけていく所存であります。
次に、エンゼル税制についてのお尋ねですが、通産省としては、エンゼルを輩出、育成するための税制面を含めた環境整備を図り、ベンチャー企業の成長を積極的に支援しております。エンゼル税制についてさらなる措置が必要な場合には、中小ベンチャー企業への資金供給の一層の円滑化を図るため、平成十三年三月末に予定されている、株式譲渡益に係る源泉分離課税の廃止を含む金融関連税制の改正をも踏まえつつ、そのあり方について検討していく考え方であります。
次に、起業を推進する政策についてのお尋ねですが、我が国の経済活力の維持、雇用機会の創出等のためには起業の推進が極めて重要であると考えております。このため、起業家精神にあふれる人材の育成等を積極的に推進するほか、新規開業、ベンチャー支援策について、セミナーの開催等を初め、広く周知徹底に努めているところであります。
ベンチャーキャピタルについては、広範な投資家からの資金供給の円滑化を図る投資事業組合法の施行等を通じて、その育成を図っているところであります。
最後に、繊維産業対策についてのお尋ねでありますが、厳しい不況の中、繊維産業、とりわけ繊維中小企業を取り巻く環境が極めて厳しいことを踏まえ、繊維産業構造改善臨時措置法が廃止された後も、繊維事業協会の業務のうち需要開拓等の必要なものを中小企業総合事業団に移管する等、適切な経過措置を講じることとしております。
また、地域における繊維産地の活性化を支援するため、繊維産地活性化基金の制度を創設するほか、一般中小企業対策等の枠組みの中でもしっかりとした対策を行ってまいります。(拍手)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505254X01219990309/9
-
010・伊藤宗一郎
○議長(伊藤宗一郎君) 中野清君。
〔中野清君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505254X01219990309/10
-
011・中野清
○中野清君 改革クラブの中野清であります。私は、公明党・改革クラブを代表し、このたび政府提出の中小企業経営革新支援法案、中小企業総合事業団法案につきまして、総理並びに関係閣僚に質問いたします。
現在、日本経済は深刻な不況、金融不安に見舞われております。昨年秋の二十兆円の金融安定化特別保証制度で、年末の中小企業の危機は一応乗り越えたように見えるものの、直近の個人消費や小売商業販売高などの消費関連の指標、生産関連指標は、依然として深刻な落ち込みを続けております。また、ことし三月期の決算も、軒並み大幅な減益になることは避けられない状況であります。とても回復の胎動などという経済にはなっていないのであります。
総理、我が国経済は中小企業でもっていると言っても過言ではありません。中小企業は、我が国全体の事業所数の九八・九%を占め、従業員の占める割合も七七%に達しております。まさに、中小企業は我が国経済の活力の源泉であります。当然、個々の中小企業はそれぞれ全力で不況と戦っておりますが、マクロ経済の悪化の影響は免れないのであります。景気がよくならなければ、中小企業の業績の好転や雇用問題は、根本的には解決しないと私は思います。
私は、政府の経済政策の失敗でもたらされた大不況のもとで、中小企業に多くの困難が押しつけられており、その状況を政府が放置することは許されない。総理は、貸し渋り、売り上げ減に悩む、激変する中小企業の現状を、我が国の最高責任者としてどう認識しているのか、まずお伺いをいたします。
また第二に、三月四日に、大手銀行十五行が政府に対し、総額七兆五千億円もの公的資金の資本注入を申請いたしました。この七兆五千億円の公的資金の投入で、確かに銀行経営の健全化は図られたとしても、中小企業に対する貸し渋りは本当になくなるのでしょうか。
銀行は、経営危機に陥ると、リストラも不十分なまま公的資金で救済され、中小企業は貸し渋りに苦しんでおります。貸し渋りは本来一切しないということを、公的資金投入の際の条件とすべきであります。総理の御見解をお伺いいたします。
第三に、政府は、一月二十九日に産業再生計画を閣議決定し、日本経済再生に向け、供給サイドの構造改革に取り組むことになりました。従来型の護送船団方式の産業支援から、意欲ある企業に対する支援に方向転換をしたと受けとめておりますが、産業再生計画を取りまとめた総理として、中小企業政策のあり方について、言いかえれば、今日の不況下からの日本経済再生に果たすべき中小企業の役割をどう認識しているのか、お伺いをいたします。
第四といたしまして、今日、中小企業政策のスタンスの転換が叫ばれております。一九六三年、中小企業基本法が制定されて三十六年たった今日、内外において抜本的見直しの必要性が言われております。その意味で、今回のような中小企業近代化促進法の廃止という大きな政策転換を行うのであれば、まず中小企業基本法から見直すべきであると考えますが、総理はどう認識しておられるのか。その基本法の見直しの際には、特に中小企業政策に光を求めている中小零細企業を忘れるべきではないと考えますが、総理の御見解をお伺いしたいと思います。
次に、中小企業経営革新支援法案について、通産大臣にお伺いをいたします。
二十一世紀の中小企業の担うべき役割としては、我が国経済のダイナミズムの源泉となることであると考えます。そのためには、既に事業を行っている大多数の中小企業について、一層の対策を講ずることが必要であります。そのために、経営革新法の制定と同時に廃止される近代化促進法は、基本法と同時に制定され、これまで中小企業近代化の根幹をなす法律として一定の評価はされてきましたが、全国団体による画一的な計画を個々の事業者に適用する等々に問題がありました。
その近促法の問題点を認識しつつ、政府はこれまで何度か改正をしたと言うが、なぜこの制度の本質的な改善が今日までできなかったのか、そして、今回改正するに至った理由をお伺いしたいと思います。また、平成五年に制定された新分野等円滑化法については、近促法に比して現実的と評価は高いが、わずか五年しかたっていないのになぜ今日見直しが必要なのか、お伺いをしたいと思います。
第二に、今日経営革新支援法が目指す新たな理念として、多様で活力ある独立した中小企業の育成を挙げておりますが、経営革新とは一体何を基準として、どのような活動について支援対象となるのか。経営革新の基準について、新商品、サービスの開発、生産や、新たな生産方式の導入には改善等は含まれないのか、また、個々に企業を支援する際、新システムの開発、生産や、事業者の意欲をだれが判定するのか、お伺いをしたいと思います。
設備投資や技術開発等のハード面の投資とともに、新商品やサービスの開発や営業を行う際には、アイデアの実現や人材への投資のような、ソフトな事業展開に対する支援が重要だと考えますが、こうした面についてどのように施策の充実をされようとしているのか、お伺いいたします。
第三として、二十一世紀に向けて、中小企業の重要課題は、公的規制の緩和に伴う中小企業への助成措置であります。
規制緩和が中小企業にとっていかなる意味を持つのか、政策課題は何か、明確にしなければなりません。規制緩和という環境の中で、中小企業の経営をどう考えていくかが重要な点であります。また、環境問題や安全性の問題など、小さな個々の企業が対応できない今日的な課題もあります。こういう経営環境激変に対する支援策として、経営革新支援法においてどのような政策的な配慮がなされているのか、お伺いをしたいと思います。
また、セーフティーネットとしての、輸入の急増、市況の暴落、市場競争環境の激変の対策は、具体的にどのように発動するのか。また、特にこのような場合、商工組合を多く活用することになりますが、非常に大事なことと考えます。商工組合等の果たすべき役割の重さを政府はどう認識しているのか、お伺いをしたいと思います。
第四として、中小企業近代化審議会のパブリックコメントにおいても多く見られるように、中小企業施策は複雑で、しかも多岐でわかりにくいとの声がよく聞かれます。経営革新支援法案は、これからの中小企業振興政策の中心的な法律であると位置づけられるだけに、その意味でも、なるべく多くの事業者に活用していただくように、簡素で使い勝手のよい制度とすることが重要であります。申請手続の簡素化や、統一の窓口で計画の受け付け、承認、相談ができるようにならないか、お伺いをしたいと思います。
次に、中小企業総合事業団法案についてお伺いいたします。
今回の中小企業関係特殊法人の統合は、平成九年に特殊法人の見直しの検討が政府において行われ、決定されたものと承知しておりますが、そのときに比べ、現在の中小企業をめぐる情勢は、これまで以上に極めて厳しいものになっております。したがって、統合に伴って、これまで中小企業信用保険公庫、中小企業事業団が行ってきた業務に停滞、混乱があってはならないことは当然でありますし、さらに、新法人において中小企業対策の充実を図っていくべきものと考えます。
第一に、それぞれ三つの性格の違うものを統合する理由は何か、また、これによって機能強化や人員削減がどう図られるのか、お伺いをしたいと思います。
第二に、現在、中小企業信用保険公庫においては、中小企業に対する貸し渋り対策のための金融安定化特別保証を実施中でありますが、今回の統合がこの保証事業に悪影響を与えることがないのか、政府の御見解をお伺いいたします。
次に、中小企業を取り巻く重要な課題として、三点についてお伺いいたします。
第一に、公正な競争条件の整備と適正取引条件の確保であります。
市場を活発化するためには、中小企業が新しく生まれて、事業を拡大させていくことが大切であります。そのために、公正な競争条件の整備が必要であります。資本、労働、情報、技術の円滑な支援は当然であります。しかし、今日まで不十分であった公正な取引条件の確保については、政府は今までとは違った対策を考えているのかどうか、お伺いをしたいと思います。
例えば、下請取引の適正化については、前々から言われておりますけれども、依然として下請企業の多くは、親、大企業の優越的地位による不利な取引条件に悩まされております。また、一部大型店の不当とも思える廉売に、中小小売店は苦しんでおります。具体的に、大企業による優越的地位の乱用に対してどう対策を進めようとしているのか、お伺いをいたします。また、公平な市場参入機会の確保について、どのような対策を持っておられるのか、お伺いいたします。
第二に、意欲ある中小企業者の育成についてであります。
創業のための支援も、ベンチャー支援ももちろん必要でありますが、業を起こす起業家、すなわちアントレプレナーの育成の重要さであります。どんなに立派な法律ができても、その趣旨を生かす人材に欠けたのでは何にもなりません。
これとの関係で、人材育成について、我が国は最も基本的なところでの認識が欠けているのではないのでしょうか。人材育成には、長期にわたる教育制度の確立が望まれます。今日までの職業教育、企業内教育だけでなく、それは我が国の学校教育に特に求められるべきと思いますが、文部大臣の御見解をお伺いいたします。
第三に、深刻化する中小企業の雇用について、労働大臣にお伺いいたします。
政府は、雇用維持から雇用創造へ、現在七十万雇用の実現を打ち出しております。本政策関連二法案が成立したとき、現在の労働省の施策、特に中小企業への雇用の創出はどのくらい達成できるのか、お伺いいたします。私は、現在の政府の雇用対策では、目標の中小企業の雇用創出は難しいと考えますが、改めてお伺いをいたします。
最後に、小渕総理にお尋ねいたします。
イギリスのサッチャー首相は、イギリス病を克服するために、一つ、強い自立した個人、二、起業家精神に富む中小企業の育成、三、小さな政府の三つの政策を掲げて、果敢に実行しました。その結果、ヨーロッパで最も飛躍するイギリス経済、その主役が中小企業となっております。このようなサッチャーライゼーションに学びながら、我が国経済の再建と地方経済の自立化は、その主役となるべき大多数の活力ある中小企業を育成する以外にはないと考えます。
小渕総理に、中小企業育成への強い決意を改めてお伺いいたしまして、私の質問を終わります。御清聴、ありがとうございました。(拍手)
〔内閣総理大臣小渕恵三君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505254X01219990309/11
-
012・小渕恵三
○内閣総理大臣(小渕恵三君) 中野清議員にお答え申し上げます。
冒頭、みずから中小企業経営者の一人でもございます中野議員から、我が国経済に占める中小企業の役割の大きさを指摘された上で、中小企業の現状についてのお尋ねがございました。
私は、我が国の景気低迷が長引く中で、中小企業の景況は、依然として低迷を続けており、極めて厳しい状況であると深く認識をいたしております。私は、昨年七月に総理大臣就任以来、中小企業の方々との直接の対話も踏まえまして、喫緊の課題である中小企業への貸し渋り対策を初めとして、各般の政策をスピーディーに実行してきたところでございます。中小企業が現下の厳しい状況に的確に対応し得るよう、今後とも中小企業対策を強力に推進いたしてまいりたいと考えております。
いわゆる貸し渋り対策についてのお尋ねでありましたが、貸し渋り対策につきましては、これまで、信用保証協会等の保証制度の拡充、政府系金融機関による中小、中堅企業に対する融資制度の拡充、早期健全化法による新たな資本増強制度の創設など、さまざまな措置を講じてきたところであります。
また、昨年末には、私みずから、借り手でございました中小企業団体等の皆さんや、また貸し手であります金融機関との懇談会を設けまして、融資の実態や意見等をお聞きするとともに、金融機関に対して、改めて、適切な対応を強くお願いしたところでございます。
早期健全化法におきまして、信用供与の円滑化のための方策を含む経営健全化計画の確実な実行が見込まれることが株式引き受け等の承認の要件となっているほか、当局が計画の履行状況をフォローアップし、公表することとされておるところでございます。こうした規定を踏まえ、政府といたしましては、信用供与の円滑化についても、金融機関の基本的な考え方や経営健全化計画の内容を十分審査することにいたしておりまして、今後とも、信用供与の円滑化に向け、万全を期してまいりたいと考えます。
経済再生の関連で、中小企業の役割について改めてお尋ねでございましたが、我が国経済の景気低迷が長引く中で、将来の発展基盤の整備のために、経済構造改革の一層の加速化、供給サイドの体質強化が必要となっております。こうした中で、中小企業は、経済のダイナミズムの源泉として、また地域経済の担い手として、また雇用の維持拡大の担い手として、ますます重要な役割を担うこととなると認識をいたしております。
中小企業基本法の見直しについてのお尋ねでありますが、近年の中小企業を取り巻くさまざまな構造の変化を踏まえ、中小企業を機動性、柔軟性を有する主体と位置づけ、その自助努力を積極的に支援することが重要と考え、所要の検討を進めておるところであります。この際には、中小零細企業に対しては、これまでどおり、適切な配慮を行ってまいりたいと考えております。
最後に、サッチャー元首相の政策や実績を指摘されました上で、中小企業育成のあり方についてのお尋ねがありました。
私は、中小企業を取り巻く環境変化や構造変化を踏まえ、多様で活力ある独立した中小企業の育成、発展を図ることがぜひとも必要と考えております。このため、中小企業の資金、技術、情報の確保の面での円滑化、創業、すなわち業を起こす、業をつくることでありますが、これを行おうとする意欲ある中小企業者への自助努力支援等を実施いたしまして、今後とも、中小企業対策を強力に推進してまいる所存でございます。
残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)
〔国務大臣与謝野馨君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505254X01219990309/12
-
013・与謝野馨
○国務大臣(与謝野馨君) 中野議員にお答えを申し上げます。
まず、中小企業近代化促進法を見直す理由についての御質問でありますが、中小企業近代化促進法は、昭和三十八年、大企業と中小企業の生産性格差の是正を目指し、業種ごとの中小企業の近代化を図るために制定され、その後、時代の変化に応じて、制度の見直しが行われてまいりました。
しかし、今日の経済におけるグローバル化、高度情報化の進展、技術レベルの上昇といった時代の変化に対応するためには、業種ごとの対策ではなく、個別企業、グループ等による製品、サービスの高付加価値化や、市場指向性の追求などの経営革新を支援することが必要であり、このため、今回、中小企業経営革新支援法を立案した次第でございます。
次に、中小企業新分野進出等円滑化法を見直す理由についてのお尋ねでございます。
本法は、対象業種が製造業等四業種に限定されており、かつ、支援を受けるためには生産額の大幅な落ち込みといった要件を満たす必要があることから、景気低迷が長期化する中で、幅広い業種における中小企業の経営革新を支援するには不十分であるといった問題点が顕在化してきたため、今回、見直しを行うこととしたものでございます。
次に、経営革新計画の内容についての御質問でありますが、新商品の開発や生産、商品の新たな生産の方式の導入等、新たな事業活動であって、経営の相当程度の向上が見込まれるものを経営革新と定義し、支援対象といたします。計画の承認については、地域性の高い事業については都道府県が、その他のものは国が承認することとしております。また、支援措置としては、新商品開発、人材育成、販路開拓等のソフトな経営資源に対する低利融資制度、中小企業信用保険法の特例、補助金等の支援措置を充実させてまいります。
次に、中小企業政策と地方分権との関係についてのお尋ねですが、中小企業は地域経済の重要な担い手であることから、地域の実情に合った政策を実施するため、地方ができるだけイニシアチブを持つことが重要であると考えております。この観点から、中小企業経営革新支援法においては、地域性の高い経営革新計画の承認は都道府県において行うこととしております。
次に、中小企業経営革新支援法におけるセーフティーネット対策についての御質問でありますが、中小企業経営革新支援法では、外的要因によって業況が悪化している業種に属する中小企業が、その経営基盤の強化を図る場合に、低利融資制度、信用保険の特例等の金融面を中心とした支援を講じることとしております。その際には、業界全体として事業に取り組むことが効率的であると考えられることから、商工組合等が計画作成主体となって事業を推進するなど、主体的役割を果たすことが期待されております。
次に、事業者の利便性に配慮した制度にすべきとの御指摘でございますが、中小企業近代化審議会の最終答申においても、計画の申請や助成措置に関する手続を簡略化する等、申請者の負担に関する軽減に配慮することが必要であると指摘されております。このような点を踏まえ、中小企業経営革新支援法の施行に当たっては、事業者の利便性を最大限に配慮し、計画の申請の手続についてはできる限り簡素化を図り、また計画承認が迅速に行われるよう、体制の整備に努めてまいります。
次に、中小企業総合事業団法に関するお尋ねですが、本法案は、融資、信用保険、指導、研修、共済等の事業を一体的に行わせることにより、特殊法人等の整理合理化を推進し、これまで各法人が持っていた知見の相互活用を図ることにより、中小企業施策の総合的かつ効率的な実施を図るものであります。
また、今回の統合を機に、高度化融資事業の抜本的な見直しや、中小企業、中小ベンチャー企業による新事業開拓の支援を強化してまいります。一方、統合を機に、中小企業に対するサービスの低下がないよう配慮しつつ、組織、役職員数、予算及び業務について必要な見直しを行い、スリム化に最大限努めてまいります。
次に、今回の統合が特別保証制度に悪影響を与えるのではないかとのお尋ねですが、今回の統合は、中小企業施策の中核的推進機関を創設し、中小企業施策をより総合的かつ効率的に推進することを目的とするものであります。現在中小企業信用保険公庫が行っている業務は新事業団が引き継ぐこととしており、信用保証協会が行う特別保証制度に係る業務に悪影響を与えることはございません。
次に、大企業の中小企業に対する優越的地位の乱用に関する御質問ですが、中小企業が公正かつ自由な取引環境のもとで健全な発展を遂げられるよう、従来から、下請代金の不当な減額等の不公正な下請取引の強要について、下請代金支払遅延等防止法に基づき厳正に対処するとともに、中小企業に対する相談、情報収集、指導の充実等に努めてきたところであります。今後とも、取引の適正化に努めてまいる所存であります。
最後に、中小企業の事業参入の機会の確保についてのお尋ねでございますが、中小企業が市場において新たな事業分野に参入する際には、大企業の場合と比べて、一定の困難が生ずることが多いと考えられます。このため、中小企業が資本、労働、情報、技術を獲得することを円滑化すること等を通じ、中小企業の公平な事業機会の確保を図ることとしているところであります。引き続き、その着実な推進を図ってまいります。(拍手)
〔国務大臣有馬朗人君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505254X01219990309/13
-
014・有馬朗人
○国務大臣(有馬朗人君) 中野議員の御質問にお答え申し上げます。
起業家育成のための学校教育のあり方についてのお尋ねでありますが、これからの経済社会の変化に柔軟に対応し、創造性に富み、新しいこと、困難なことに立ち向かっていく精神を持って主体的に生きていく人材の養成は、今日の重要課題と考えております。
そのためには、学校教育で、しっかりとした基礎、基本の土台の上に、個性や創造性を育てる教育を推進していくことが大切であります。新しい学習指導要領は、総合的な学習の時間の創設など、みずから学びみずから考える力などの生きる力の育成を重視して制定したところであり、今後とも、個性や創造性を育てる教育の一層の充実に努めてまいります。また大学でも、もっと特許を取り、新しい産業を起こす精神を育てるよう努力をいたしたいと思っております。(拍手)
〔国務大臣甘利明君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505254X01219990309/14
-
015・甘利明
○国務大臣(甘利明君) 中野先生のお尋ねは、この二法案が成立することによって、雇用の創出にどれくらい資するかというお尋ねであります。
この法案によって定量的に何万人雇用がふえると算定をするのは、なかなか難しいと思います。しかし、この二法案は、中小企業の異業種進出であるとかあるいは分社化を応援する法案でありますから、今の失業率が悪化している原因であります開廃業率の逆転現象に、歯どめを打ってくれる効果は非常に大きいと思っております。
あわせて、さきの国会で労働省と通産省の共管の法律であります中小労確法の改正を行いました。改正前の経験的数値からはじきますと、改正後は五万八千人くらいの雇用が認められると思います。これを加速することは間違いないと思っております。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505254X01219990309/15
-
016・伊藤宗一郎
○議長(伊藤宗一郎君) これにて質疑は終了いたしました。
〔議長退席、副議長着席〕
————◇—————
国民年金法等の一部を改正する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)及び国民年金法等の一部を改正する法律及び厚生年金保険法等の一部を改正する法律の一部を改正する法律案(山本孝史君外四名提出)の趣旨説明発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505254X01219990309/16
-
017・渡部恒三
○副議長(渡部恒三君) この際、内閣提出、国民年金法等の一部を改正する法律の一部を改正する法律案及び山本孝史君外四名提出、国民年金法等の一部を改正する法律及び厚生年金保険法等の一部を改正する法律の一部を改正する法律案について、趣旨の説明を順次求めます。厚生大臣宮下創平君。
〔国務大臣宮下創平君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505254X01219990309/17
-
018・宮下創平
○国務大臣(宮下創平君) 国民年金法等の一部を改正する法律の一部を改正する法律案について、その趣旨を御説明申し上げます。
国民年金の保険料の額につきましては、平成六年の国民年金法等の一部を改正する法律におきまして、毎年度、平成六年度価格で月額五百円ずつ引き上げるとともに、保険料の額について物価スライドを実施することとなっております。
この結果、平成十年度における保険料の額は月額一万三千三百円となっており、平成十一年度におきましては月額一万四千円となることとなっておりますが、現下の社会経済情勢にかんがみ、平成十一年度以後の保険料の額を平成十年度と同額とすることとし、この法律案を提出した次第であります。
以下、この法律案の内容につきまして御説明申し上げます。
平成十一年度以後の国民年金の保険料の額を、平成十年度の保険料の額と同額の月額一万三千三百円とすることとしております。
また、既に平成十一年度中の保険料を前納していた者に対しては、この法律による改正前後の保険料の額の差額を基準として政令で定める額を、平成十一年四月一日以後還付することとしております。
なお、この法律の施行期日は、公布の日からとしております。
以上が、国民年金法等の一部を改正する法律の一部を改正する法律案の趣旨でございます。(拍手)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505254X01219990309/18
-
019・渡部恒三
○副議長(渡部恒三君) 提出者山本孝史君。
〔山本孝史君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505254X01219990309/19
-
020・山本孝史
○山本孝史君 ただいま議題となりました民主党提出の国民年金法等の一部を改正する法律及び厚生年金保険法等の一部を改正する法律の一部を改正する法律案につきまして、その提案の理由及び内容の概要を御説明申し上げます。
我が党は、現下の社会経済情勢をかんがみるとき、今回の政府提出法案における年金保険料の凍結だけでは不十分であると考えます。基礎年金の国庫負担割合を引き上げるとともに、保険料を引き下げるべきであります。
特に国民年金については、対象者の約三割が未加入、未納、免除となっており、逆進性の強い定額保険料を今後とも続ければ、さらに空洞化が進むと懸念されております。また、先月に経済企画庁が発表した国民生活選好度調査によれば、老後の生活に対して不安を感じる人は二十歳代で既に半数を超えており、その原因は老後の生活費に関する不安であると分析されています。信頼できる年金制度への再構築は喫緊の課題です。
しかしながら、政府・自民党は年金制度改革案の取りまとめに時間を要したために、本来ならば、年金保険料凍結解除時期やその財源を明記した年金制度改正案全体を一括して提出すべきところを、年金保険料凍結法案を分離し、先行して提出しました。昨年末以降の政府・自民党内での議論が、国庫負担引き上げとその財源をめぐる表現の修正に終始したことからも明らかなように、今回の極めて変則的な法案提出は、政府の年金改正にかける姿勢が確固としたものでないことのあらわれであると断じざるを得ません。
よって、民主党は、今後政府が提出される予定の年金制度改正法案について対案を提出するとともに、年金保険料凍結を内容とする今回の政府提出法案に対しても、平成十一年度から保険料を引き下げるとともに、基礎年金の国庫負担割合を引き上げることを内容とする法案を、対案として提出する次第であります。
基礎年金の国庫負担割合の引き上げについては、平成六年の財政再計算に伴う法律改正に当たって検討条項が設けられ、衆参両院の附帯決議においても、二分の一を目途に引き上げることとされています。我が党においても、この要請にこたえ、平成十一年度に予定されている財政再計算に伴う制度の見直しの中で国庫負担の引き上げを行うこととしておりますが、今回提出の我が党法案は、その引き上げが行われるまでの間、平成十一年度から国庫負担率の二分の一への引き上げを暫定的に行おうとするものです。
以下、この法律案の主な内容につきまして御説明申し上げます。
第一は、基礎年金の国庫負担の割合の引き上げであります。平成十一年度以後、基礎年金の国庫負担の割合を引き上げることについて必要な措置が講ぜられるまでの間、基礎年金の国庫負担の割合を二分の一に引き上げることといたしております。
第二は、保険料の引き下げであります。国庫負担の割合の引き上げに伴って、国民年金の保険料を一万三百円に、また厚生年金の保険料率を一%引き下げることとしております。
以上が、この法律案の提案理由及びその内容の概要であります。
何とぞ、慎重に御審議の上、速やかに御可決あらんことをお願い申し上げます。(拍手)
————◇—————
国民年金法等の一部を改正する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)及び国民年金法等の一部を改正する法律及び厚生年金保険法等の一部を改正する法律の一部を改正する法律案(山本孝史君外四名提出)の趣旨説明に対する質疑発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505254X01219990309/20
-
021・渡部恒三
○副議長(渡部恒三君) ただいまの趣旨の説明に対して質疑の通告があります。これを許します。松崎公昭君。
〔松崎公昭君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505254X01219990309/21
-
022・松崎公昭
○松崎公昭君 私は、民主党を代表して、ただいま議題となりました内閣提出の年金改正案並びに山本孝史君外四名提出の年金改正案、この両案に対する質問をいたします。
現在、日本経済は未曾有の長期不況に陥っており、国民は不安な気持ちで生活しております。こうした状況をつくり出したのは、まさに政府・自民党が甘い経済見通しをし続け、景気対策を後手後手に回し、経済構造改革を後退させて、経済危機をいたずらに拡大してきたからにほかなりません。さらに、公的年金や医療制度改革に対する政府・自民党の中途半端な取り組みが、国民の不信、不安を増大させ、その結果、経済的マインドを冷え込ませ、不況をさらに悪化させるという悪循環になっているのであります。
このような閉塞状況から脱出するには、小手先の施策を積み重ねるだけでは不十分で、思い切った政策展開が必要となります。特に年金、医療など社会保障制度については、二十一世紀少子高齢時代に適合するシステムに改革し、だれもが安心して暮らせるセーフティーネットを築くことが重要ではないでしょうか。
今、年金や医療、介護など、老後生活に対する国民の不安は極めて大きなものとなっております。国民生活を安心して送るために国がなすべきことは、少子高齢時代における社会保障の全体像を明示し、それに向けた不断の改革を確実に進めていくことだと考えます。
来年度から介護保険が始まり、高齢者医療制度の再構築とあわせた高齢者の負担が将来どのようになるのかが全くわからない状況の中で、果たして年金だけを考えていいわけがありません。総理の施政方針演説の安心へのかけ橋の中にも、将来にわたる信頼できる安定した社会保障制度を確立すると述べられておられます。小渕総理のお考えになる社会保障のトータルビジョンを明確にお示しください。
また、関連して伺いますが、政府が何年間もずっと先送りし続けております医療制度及び医療保険制度の抜本改革については、果たして政府はやる気があるのでしょうか。国会が開かれるたびに、今国会でやるとずっと主張されていますが、一向にその気配がありません。これらは大変重要な課題であり、これ以上の先送りは許されません。関係法案の今国会提出を公約すべきと考えますが、総理の御決意を伺います。
ところで、小渕総理の諮問機関である経済戦略会議が、先般、最終答申を出されました。そこには、全身衰弱している日本経済を再生させるための具体的な提言がなされておりますが、果たして小渕総理は、この答申を今後どのように扱われるのでしょうか。
答申によれば、年金については、基礎年金部分を税方式に移行し、報酬比例部分は完全民営化を目指すとあります。それはそれで一つの考え方でありますが、政府・自民党の年金制度改正案大綱における考え方や、この間、厚生大臣が御答弁されているように、基礎年金の国庫負担は二分の一が限度であるし、報酬比例部分も将来とも維持するという考え方とは大きくかけ離れたものと思います。
総理直属の諮問機関と政府、厚生省の年金ビジョンがこうも違うと、国民の将来への不安は募るばかりですし、年金制度に対する不信感が増大するだけではないでしょうか。小渕総理は、将来の年金制度に対し、経済戦略会議と政府案大綱のどちらの考え方をとっていくお考えなのか、明確な御答弁をお願い申し上げます。
先月、経済企画庁から国民生活選好度調査が報告されました。調査結果によれば、社会人としてスタートしたばかりの二十代の若者でさえ、五四%の人が老後の不安を訴えております。堺屋長官は、こうした若年層の将来への不安をどのように受けとめておられるか、御見解をお伺いいたします。
また、経済企画庁の経済研究所が発表する調査研究では、基礎年金の税方式が提唱されてもいますが、そうした研究成果は、具体的施策にどのように生かされているのでしょうか。堺屋長官にお伺いをいたします。
次に、政府案について伺います。
本案は、毎年引き上げられる国民年金の保険料を来年度以降その引き上げを凍結するという、たったそれだけのものです。保険料の引き上げ凍結は、その解除時期やその後の保険料引き上げ計画、自自合意等で打ち出されている基礎年金国庫負担の引き上げと密接に絡む問題であり、今後提案されるであろう年金改革案と一体として提案すべきであると考えますが、なぜ凍結案のみを切り離して先行提案したのか、厚生大臣の見解をお伺いいたします。
そういった意味から、本案は年金制度全体の将来のあり方とどのような関連があるのか、全くわかりません。本案の位置づけについての説明もあわせて伺います。
先日、政府・自民党で合意されました年金制度改正案大綱について伺います。
大綱によれば、基礎年金は、二〇〇四年までの間に、安定した財源を確保し、別に法律で定めるところにより、国庫負担割合の二分の一への引き上げを図るものとするとあり、さらに、基礎年金の国庫負担割合の引き上げ及び保険料引き上げの凍結解除は同時とし、できるだけ速やかに実施するとあります。
厚生大臣に伺いますが、凍結解除の時期はいつでしょうか。また、どのような条件が整えば解除されるのか、お尋ねいたします。具体的に、消費税率が引き上げられない限り、国庫負担割合の引き上げは実現しないという考えなのか、答弁を求めます。さらに、結局、消費税率が引き上げられない限り、二〇〇四年以降も国庫負担割合は上がらず、保険料だけが引き上げられることもあり得るのかどうか、厚生大臣の明確な答弁を求めます。
基礎年金の財源問題については、九四年の前回改正時にも同様の議論があり、その結果、法律の附則に検討条項が盛り込まれ、また本院の附帯決議では、「所要財源の確保を図りつつ、二分の一を目途に引き上げることを検討すること。」と政府に対し注文をつけているわけです。一体、政府はこの五年間何をされてきたのでしょうか。結局、今回も財源を詰められずに、先送りでしょうか。
当面、二分の一への引き上げに必要な額は約二兆二千億円と言われております。思い切った行財政改革やむだな公共事業の見直しを行えば、ひねり出せない数字ではないと考えますが、いかがでしょうか。また、そういった真剣な検討がなされたのでしょうか。総理の答弁を求めます。
さて、民主党提出の年金改正法案についてお伺いいたします。
本改正案によれば、来年度から基礎年金の国庫負担割合を現在の三分の一から二分の一に引き上げ、その分保険料を引き下げるとあります。基礎年金の国庫負担割合を二分の一に引き上げればどのようなメリットがありますか、お尋ねいたします。
また、税か保険かという議論の中で、民主党はかねてから基礎年金の税方式化を主張しておられますが、なぜ税方式がよいのか、理由をお聞かせください。
また、民主党は今回の年金改正に対してどのような姿勢で臨んでおられるのか、この際お伺いをしておきます。
年金制度を運営するに当たって重要なことは、長期的視点に立って、年金財政を安定させることだと思います。ところが、政府案のように、将来の年金制度の方向性を示さないまま、場当たり的に保険料の引き上げを凍結するのでは、将来の年金財政に不安を与えるのみならず、国民の年金制度に対する不信感を増大させるだけではないでしょうか。
したがって、私は、安定した年金制度の確立が国民の老後生活への安心感を高め、我が国経済に好影響を与えるとの立場から、制度全般にわたる抜本改革、つまり年金制度の土台である基礎年金の抜本改革を速やかに行う必要があると考えます。
年金制度は、一人の個人にとっても、拠出と受給を含め、六十年間の長いかかわりを持つ超長期の制度であります。好況不況に関係なく、安心のもとに守り続けられる基本理念、原則を国民に示すことが今必要なのであります。そうすることによって年金制度に対する信頼が生まれ、国民が生き抜くことに安心感と希望が持てるのだということを申し上げ、私の質問を終わらせていただきます。(拍手)
〔内閣総理大臣小渕恵三君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505254X01219990309/22
-
023・小渕恵三
○内閣総理大臣(小渕恵三君) 松崎公昭議員にお答え申し上げます。
まず、社会保障のビジョンについてお尋ねでありました。
社会保障につきましては、国民が安心し、将来にわたって安定的に運営できる制度を構築していくことが必要でございます。今後、社会保障に係る給付と負担の増大が見込まれる中で、経済との調和を図りつつ、必要な給付は確保しながら、制度の効率化や合理化を進めるなど、社会保障制度全体の構造改革に引き続き取り組んでまいります。
医療制度の抜本改革についてお尋ねでありましたが、経済成長の伸びと医療費の伸びの不均衡が拡大していく中で、将来にわたって信頼のできる安定した医療保険制度を確立するため、総合的、抜本的な改革に取り組むことが必要であります。政府といたしましては、平成十二年度からの抜本改革の実施を目指し、関係者の合意が得られるよう最大限努力をいたしてまいります。
経済戦略会議の答申の取り扱いについてお尋ねがあります。
答申は、二十一世紀を展望した豊かな経済社会を切り開いていくため、中長期的な経済運営の基本方向や理念を示していただいたものでありまして、これを貴重な御提言としてしっかりと受けとめまして、今後の経済運営に取り組むとともに、可能なものから実施に移せるよう努力してまいりたいと考えており、各閣僚に対しましても、その検討を指示したところであります。
経済戦略会議の最終答申と政府・自民党の年金制度改正案大綱の取り扱いにつきましてお尋ねがありました。
経済戦略会議の最終答申におきまして、将来的な課題として御指摘のような提言をいただいているところでありますが、一方、基礎年金の税方式化につきましては、給付と負担の関係が明確な社会保険方式の長所が失われるのではないか、一定以上の所得や資産のある者に対しても、全額税負担により年金支給を行うことについての理解を得ることは難しいのではないかといった指摘も一方でございます。
厚生年金の報酬比例部分の完全民営化につきましては、企業年金のない中小企業などに勤めるサラリーマンの高齢期における所得保障が基礎年金のみになりかねない、また将来大きなインフレが発生した場合には対応がなかなか難しい、移行期に巨額の二重負担が発生するといった指摘もあります。
いずれにいたしましても、年金は国民生活にかかわる重要な制度でありますので、しっかりとした検討を行い、信頼のできる安定した制度を確立してまいりたいと考えます。
基礎年金の国庫負担割合の引き上げについてお尋ねでありましたが、国庫負担割合の二分の一への引き上げにつきましては、現在でも二・二兆円、将来は高齢化の進展に伴ってさらに巨額の財源を必要とすること、また、年金制度は長期的な制度であることから、その財源につきまして、国庫負担割合の引き上げに伴う所要財源を賄うに足るものであること、一時的、臨時的な財源でなく、安定した財源であることが必要でありまして、安定した財源確保のための具体的な方法と一体として検討していかなければならないと考えております。
いずれにいたしましても、財源確保の具体的な方策につきましては、国民的な議論によって真剣に検討されるべき課題であると考えております。
残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)
〔国務大臣宮下創平君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505254X01219990309/23
-
024・宮下創平
○国務大臣(宮下創平君) 松崎議員にお答え申し上げます。
まず、国民年金保険料の引き上げの凍結についてであります。
今回の国民年金保険料の凍結措置は、我が国経済の状況にかんがみ、緊急避難的な措置として講じるものでありますが、国民年金保険料は本年四月から引き上げられることが既に法定されているため、その凍結措置については、全体の年金制度改正の議論に先行して行う必要があったものであります。
今回の保険料の凍結措置を踏まえた平成十一年財政再計算に基づく年金制度改正の具体案については、今後、政府・与党内の合意を取りつけた上で、法案を作成し、速やかに国会に提出したいと考えております。
次に、凍結の解除の時期、条件等についてであります。
先ごろ公表いたしました年金制度改革案大綱におきましては、平成十六年、二〇〇四年までの間に、保険料の引き上げの凍結解除と国庫負担割合の二分の一への引き上げを図るものとしておりますが、その具体的時期につきましては、今後の景気回復の状況や安定した財源の確保など、総合的な事情を勘案しながら検討すべきものと考えております。
国庫負担割合の引き上げにつきましては、御指摘のように、改正案大綱におきまして、安定した財源を確保し、別に法律で定めるところにより、国庫負担割合の二分の一への引き上げを図るとしておるところであり、財源確保と一体として考える必要がございます。財源確保については、国の厳しい財政状況を踏まえながら検討する必要があると考えますが、その具体的な方策については、今後、国民的な議論によって検討されるべき課題であると考えております。
厚生省といたしましては、平成十六年、二〇〇四年までに、状況が整い、国庫負担割合の引き上げとそのための財源確保及び保険料の凍結解除が行われることを期待し、また、その方向で努力してまいらなければならないと考えている次第でございます。
以上でございます。(拍手)
〔国務大臣堺屋太一君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505254X01219990309/24
-
025・堺屋太一
○国務大臣(堺屋太一君) 松崎議員から、さきに行われました、発表いたしました国民生活選好度調査についての質問がございました。
青年層でさえも将来に対して不安を感じている者が非常に多いという調査結果が出ております。既に実際に老後を迎えつつある五十代、六十代の人々では八〇%以上が老後に不安を感じておりますが、二十歳代の人でも五四%が老後に不安を感じているという答えになっております。二十歳代の若者の過半数が老後に不安を感じるというのは、日本の過去の例から見ましても、諸外国の例に比べても、まことに異常でございます。ちなみに、八六年の調査では、二十歳代の方々が老後に不安を感じている割合は二七%でございました。
このようになりましたのは、少子高齢社会の到来や今日の社会慣習の変化が予想されることが大きく報道された結果、若年層に至るまで漠然とした老後に対する不安を抱くようになったためと思われます。
政府といたしましては、高齢化社会の到来に備えて、雇用の慣行、社会保障の制度等を検討するとともに、日本の将来について国民各層が夢と安心を持ち、祖国と人生に自信と誇りを持てるような社会文化全般を考える必要があるのではないかと考えております。
また、当庁の行いました基礎年金の研究成果についてのお尋ねがございました。
経済企画庁経済研究所では、広く政策論議に資すべく、いろいろなケースを想定して、幅広い研究を行っております。お尋ねのございました「新たな基礎年金制度の構築に向けて」という客員研究員の研究成果の発表もその一つでございます。基礎年金の財政のあり方については、税方式で行うべきか、社会保険制度で行うべきか、いろいろな議論がございますが、そういった議論をより深めていく、広い選択肢を求める一助として、こういうものも客員研究員によって研究していただき、発表したわけでございます。
今後とも、当庁の研究所においてはいろいろな研究をいたしまして、日本の政策的な議論の幅を広げていきたいと考えている次第でございます。(拍手)
〔石毛えい子君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505254X01219990309/25
-
026・石毛えい子
○石毛えい子君 松崎議員より、民主党提出の年金法案へ御質問をいただきました。提出者の一人として御答弁をさせていただきたいと存じます。
まず、基礎年金の国庫負担割合を二分の一に引き上げれば、どのようなメリットがあるかとの御質問でございますが、基礎年金の国庫負担割合の引き上げにつきましては、ほぼ全政党が一致して賛成しております。問題は、現下の社会経済情勢で、いつこの国庫負担引き上げを実施するかにあります。ただいまの政府御答弁を伺っておりますと、二〇〇四年までにそうした機が来ることを期待しというような御答弁もございましたので、より一層、いつこれをするかということを明確にしていくことが重要だというふうに考えるところでございます。
現在、先ほど山本議員の提案理由にもございましたように、国民年金は三割を超える未納、滞納者を出しております。こうした状況に対しまして、民主党が提案いたしましたように、平成十一年度、一九九九年度からということは、直ちに実施するということを含意していると思いますが、国庫負担を二分の一に引き上げてまいりますと、国民年金の保険料は、現行の一万三千三百円が一万三百円に下がります。
この保険料引き下げで、保険料を納めやすいという状況が生じ、無年金者の発生を減少させていくことに資する、こういうメリットがあると思います。また、厚生年金においても、保険料が一%下がる可能性がございます。そしてまた国庫負担割合の引き上げは、基礎年金制度の運営に対して国の責任を明確に示していくというふうに国民は受け取られると思います。そのことは、年金制度への国民の信頼を取り戻すことになります。
つまり、保険料を引き下げること、また年金制度への信頼を回復していくことから消費需要が活性化することになりまして、景気回復に資する効用もございます。老後の不安を持つということが、現在での消費需要の萎縮の大きな原因の一つでございますから、現下の経済情勢でこの国庫負担を引き上げることは、大きなメリットになると申し上げることができます。
次に、民主党が基礎年金を税方式にしていくという主張、その理由でございますが、まず、松崎議員が御指摘されましたように、年金制度を運営するに当たって重要なことは、長期的視点に立って年金財政を安定させること、その上で、だれもがひとしく老後の所得を保障されるよう、真のセーフティーネットとして基礎年金を位置づけ、基礎年金として最低限ここまで保障する、そういうセーフティーネットを国が用意し、国民に示していってこそ、国民が抱く将来への不安、年金制度に対する不信、不安が解消するものだと考えられます。
現行の社会保険方式による運営では、保険料の未納あるいは制度への未加入が避けられない現実を生み出しておりますし、また、収支の均衡を重視する現行の保険方式のままでいけば、二〇二〇年ごろには、国民年金の定額保険料が二万四千八百円になるという厚生省の試算もあり、ますます空洞化が進み、国民年金制度の基礎が破綻する不安が持たれるところでございます。
基礎年金を税方式に移行することによって空洞化が解消され、真の国民皆年金制度をつくることができます。同時に、税方式への移行は、いわゆるサラリーマンの妻と言われております国民年金における第三号被保険者の問題、あるいは障害者の無年金問題などを解消していく、そうしたメリットも税方式の中にございますことを申し添えさせていただきます。
最後に、今回の年金改正に対する民主党の姿勢についてお尋ねがございました。
繰り返すまでもございませんが、年金制度改正は、安定した制度、信頼される年金制度をつくり上げて、国民の老後の不安を解消することに目的がございます。今回の改正では、前回、松崎議員の御主張の中にもございましたが、九四年改正において検討課題とされました基礎年金のあり方、特に国庫負担引き上げの問題に解決の方向性を打ち出すことに重要な課題がございました。
しかし、先ほど来政府の御答弁にございますように、国庫負担問題は明確な方策を得るまでには至っておりません。また、年金審議会の議論でも、このことが正面から取り上げられてまいりませんでした。これまでの政府答弁では、社会保険方式を維持したい、あるいは基礎年金を全額税負担に変えていけば生活保護と同様の制度になるというようなお答えがあるのみで、将来への不安を解消できる年金制度はいかにあるべきかの答弁はございませんでした。
そしてまた、社会保障制度審議会ではこのような指摘をしてございます。今回のように将来の方向を示さないまま、年金財政の歳入にかかわる重要事項に特別の措置を講ずるのでは、将来の年金財政の均衡を損ないかねず、国民の年金制度に対する信頼を揺るがしかねない。したがって、安定した年金制度の確立が、国民の老後の制度への安心感を高め、我が国経済に好ましい影響を与えるとの視点に立って、制度全般にわたる改革を速やかに行うべきである。社会保障制度審議会の政府案に対する答申でございます。
民主党は、平成十六年度、二〇〇四年までに全額税方式への移行を提案しております。国庫負担割合二分の一への今回の我が党の提案を契機に、財源のあり方も含めて議論を深化し、老後の暮らしの安定に資する年金制度への信頼回復に、民主党提案に御賛同をいただきまして、政治の責任が果たされますことを期待して、私の答弁を終わらせていただきたいと思います。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505254X01219990309/26
-
027・渡部恒三
○副議長(渡部恒三君) これにて質疑は終了いたしました。
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505254X01219990309/27
-
028・渡部恒三
○副議長(渡部恒三君) 本日は、これにて散会いたします。
午後二時四十四分散会
————◇—————
出席国務大臣
内閣総理大臣 小渕 恵三君
文部大臣 有馬 朗人君
厚生大臣 宮下 創平君
通商産業大臣 与謝野 馨君
労働大臣 甘利 明君
国務大臣 堺屋 太一君
出席政府委員
厚生省年金局長 矢野 朝水君
通商産業省生活産業局長 近藤 隆彦君
中小企業庁長官 鴇田 勝彦君発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505254X01219990309/28
4. 会議録のPDFを表示
この会議録のPDFを表示します。このリンクからご利用ください。