1. 会議録本文
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000・会議録情報
平成十一年三月三十日(火曜日)
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平成十一年三月三十日
午後一時 本会議
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○本日の会議に付した案件
電気事業法及びガス事業法の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明及び質疑
特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律案(内閣提出)の趣旨説明及び質疑
午後一時二分開議発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505254X02019990330/0
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001・伊藤宗一郎
○議長(伊藤宗一郎君) これより会議を開きます。
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電気事業法及びガス事業法の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505254X02019990330/1
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002・伊藤宗一郎
○議長(伊藤宗一郎君) この際、内閣提出、電気事業法及びガス事業法の一部を改正する法律案について、趣旨の説明を求めます。通商産業大臣与謝野馨君。
〔国務大臣与謝野馨君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505254X02019990330/2
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003・与謝野馨
○国務大臣(与謝野馨君) 電気事業法及びガス事業法の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明いたします。
我が国経済の体質を強化し、より一層の活性化を図っていくためには、我が国経済全体の構造改革を進めていくことが不可欠であります。電気事業及びガス事業におきましては、これまでの制度改正により、競争原理の導入等を図るため、規制緩和等の措置を講じてきたところであります。
しかしながら、我が国の経済構造改革を進める上で、産業活動の基盤である電気及びガスの供給については、安定供給等公益的課題の確保を前提とした上で、一層の事業の効率化が要請されているところであります。
こうしたことから、政府といたしましては、さらなる参入規制や料金規制等の見直しを行い、両事業の一層の効率化、電気及びガスの使用者の利益の一層の増進、ひいては、強靱で活力に満ちた日本経済の実現を図ることを主な目的として、本法律案を提出した次第であります。
次に、本法律案の要旨を御説明申し上げます。
第一に、電気事業法の改正であります。
その改正の第一点は、電力会社による独占供給が認められている電気の小売供給について、大口の需要家に対しては、電力会社以外の供給者による電気の小売を可能とするものであります。その際、電力会社と新規参入者との競争を有効に働かせるために、電力会社が保有する送電ネットワークを新規参入者が利用するための、公正かつ公平なルールを整備いたします。
第二点は、自由化の対象とならない部門の料金規制について、現行の認可制から、料金の引き下げなど需要家の利益になるような場合には、届け出制による変更を可能とするものであります。また、料金メニューを多様化し、需要家の選択肢が拡大されるよう、選択メニューの設定が可能な要件を拡充いたします。
第三点は、電力会社が電気事業以外の事業を行う際の許可制を廃止し、電気事業に必要な設備を譲渡する際の許可制を届け出制とするものであります。
第二に、ガス事業法の改正であります。
その改正の第一点は、平成六年の法改正により自由化された大口の需要家に対するガスの小売供給における競争を一層有効に働かせるため、通商産業大臣が指定する一般ガス事業者が保有する導管ネットワークを新規参入者が利用するための、公正かつ公平なルールを整備するものであります。また、簡易ガス事業者が一般ガス事業者の供給区域内において事業を開始する際に意見を聞いていた地方ガス事業調整協議会を廃止いたします。
第二点は、現在認可制となっている一般ガス事業者及び簡易ガス事業者のガス料金につき、電気事業と同様に、料金引き下げなど需要家の利益となるような場合には、届け出制による変更を可能とするものであります。また、選択メニューの設定が届け出により可能となるよう、選択約款制度を創設いたします。さらに、簡易ガス事業において、業務用等の大口需要家に対する料金を、当事者間の交渉が可能な料金といたします。
第三点は、電気事業と同様に、ガス会社がガス事業以外の事業を行う際の許可制を廃止することとし、ガス工作物の変更を行う際の許可制を届け出制に変更するものであります。
以上が、本法律案の趣旨であります。(拍手)
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電気事業法及びガス事業法の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明に対する質疑発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505254X02019990330/3
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004・伊藤宗一郎
○議長(伊藤宗一郎君) ただいまの趣旨の説明に対して質疑の通告があります。これを許します。島津尚純君。
〔島津尚純君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505254X02019990330/4
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005・島津尚純
○島津尚純君 民主党の島津尚純でございます。
党を代表させていただき、ただいま議題となりました電気事業法及びガス事業法の一部を改正する法律案について、総理及び関係大臣に質問をさせていただきたいと存じます。
まず初めに、電気事業法の改正についてお尋ねをいたします。
人類は早くから電気の存在に気づいていましたが、実用化までには長い年月を要したのであります。紀元前六〇〇年ごろ、ギリシャのターレスは、こはくを布でこすると糸くずや紙を吸い寄せる働きを発見しました。これが電気の最初の発見と言われているのであります。米国のフランクリンが、雷が電気であることを証明したのは一七五二年、平賀源内がエレキテルを発明したのが一七七六年であります。
しかし、電気が我が国に本格的に普及したのは百年ほど前のことであります。五日前の三月二十五日は電気記念日に当たります。明治十一年のこの日、工部大学校の講堂で行われた電信中央局開業祝賀会で、電池を使ったアーク灯が会場を照らし、会場は万雷の拍手に包まれたのであります。以来、電気の普及は急速に広まり、現代は電気なくしては成り立たない時代となっているのであります。
その意味で、エネルギー供給の根幹をなす電力分野の改革は、国民生活に重要な影響を及ぼすものであります。私たちは、経済的規制は原則撤廃すべきですが、雇用や国民の安全にかかわるセーフティーネットは、今以上に充実させる必要があると考えています。
今回の改正案は、小売自由化の対象を、受電電圧二万ボルト、契約電力二千キロワット以上の大口需要家に限定したものであり、完全自由化ではなく部分自由化の内容となっているのであります。政府としては、将来的には大胆な競争自由化を進める意向だが、当面は部分的なものにとどめただけであるのか、それとも、競争促進とユニバーサルサービス、エネルギーセキュリティー、環境保全などの公益的な課題とを両立させようとする哲学、理念に基づいてこのような改正としたのか、総理及び通産大臣に明らかにしていただきたいと思うのであります。
法案には、施行後三年を経過した後、法律の実施状況を踏まえて検討を加え、必要な措置を講じると記されています。政府は、法律施行後三年間に、電気事業の持つ公益的役割が大きく変わること、あるいは政府自身の基本認識を変えることを想定しているのでしょうか。
経済社会の高齢化、情報化、国際化の進展に応じて、国民はより快適で豊かな生活を求めていますが、こうしたニーズにもこたえるべき電力供給体制のあり方をいかに考えておられるのか。さらには、OECDの規制緩和報告書にあるように、発電、送電、配電をばらばらにして、英国のようにプール制度を最終的に導入する意向があるのか。以上の諸点につきまして、総理及び通産大臣の明快なる御所見を求めるものであります。
電気事業の自由化につきましては、諸外国の事例も十分検討しなければならないと考えます。
昨年の二月になりますが、ニュージーランドのオークランド市の中心部において、二カ月にもわたる大停電が発生をしました。時期を同じくして、オーストラリアのクイーンズランド州においても、発電所がほぼ同時に四カ所事故を起こして、輪番停電を余儀なくさせるという事態に陥ったのであります。
特にオークランド市の事故は、我が国でいうならば、東京のビジネスの中心地である大手町が全域停電する事故に匹敵しました。長期にわたる停電であったために、オフィスは郊外に避難をし、日本の領事館もホテルを利用せざるを得なかったのであります。この事故は、国家財政にも多大な負担を強いるものになったのであります。
昨年十月、私は、機会あって、民主党の同僚議員とニュージーランド、オーストラリアを訪問いたしました。現地の消費者団体の方々、大学の教授、事故現場で復旧作業に当たった労働者の方々にお話を伺ってまいりました。ニュージーランドは、労働党政権が着手した大胆な経済改革をきっかけに経済活力を取り戻した国であり、この点は高く評価できるわけでありますが、部門によっては、雇用喪失、労働条件の悪化や、社会不安の増大も生じていることが明確になったのであります。
オークランドの停電事故については、自由化による競争促進で、保守要員も整理をされ、設備投資も十分でなかった結果、起こるべくして起こったと現地の関係者は述べていました。この事故は、オーストラリアの電力会社に要員、機材ともに応援を頼まざるを得なかったと聞いております。
以上の事例が示すように、電気事業の自由化を進めていくと、雇用確保や事故への対処などで、デメリットも生じる可能性が高いと言えるのであります。政府は、こうした事態を十分想定して、しかるべき対策を講じるのか、それとも、後は野となれ山となれといった姿勢をとっていかれるのか、総理及び通産大臣の答弁を求めるものであります。
さて、我が国の電力の品質は極めて高い水準を保っています。家庭にまで、世界がうらやむほどの安定した電気が供給されていることは紛れもない事実であります。電気事業の自由化を推し進めていくことは、安かろう悪かろうの電気をつくる土壌を確立することにも通じるのであります。
高い品質の電気に支えられた産業も多くありますし、一般の消費者も、電気は質がよくて当たり前、停電しなくて当たり前との認識を持っていると考えますが、電気事業の自由化は、利用者にもそれなりの覚悟や不便さを強いることになることを、政府は正直に説明すべきではないでしょうか。この点について、政府はいかにお考えなのか、通産大臣の御所見を承りたいと存じます。
次に、ガス事業法の改正についてお尋ねをいたします。
ガス事業におきましても、今般、大口小売の自由化を一層促進するため、大口の範囲を二百万立方メートルから百万立方メートルに拡大するとともに、電気事業と並んで料金引き下げ時の届け出制を導入するなどの規制緩和策が盛り込まれております。こうした改革によって、安全性追求、安定供給確保など、公益性が大きく損なわれることはないのか、雇用不安を拡大させることはないのか、総理及び通産大臣にお伺いをいたしたいと存じます。
他方で、クリーンなエネルギー源としての天然ガスを普及させる努力が求められているのであります。欧州では、幹線のパイプラインが八十万キロ、米国では四十四万キロがありますが、我が国を初めとするアジアは、国際パイプライン網が発達をしていません。本格的な天然ガスの普及を目指すならば、国内幹線パイプラインの実現が不可欠でありますが、民間の活力をできるだけ生かして事業を推進するための施策を講じるべきであると考えますが、政府の取り組みについて、通産大臣の御見解を求めるものであります。
最後に、エネルギー政策にかかわる政府の基本姿勢について、質問をいたしたいと存じます。
我が国は、七〇年代の石油危機に際して、パニックに陥り、狂乱物価、深刻かつ長期にわたる不況を経験しました。官民ともに、必死で産業構造の転換、省エネルギーなどに取り組み、危機を脱したのであります。しかし、今や、原油はだぶつき、価格も下落傾向にあることも関係してか、エネルギーについての国民の危機感は、年月を経るにつれて希薄になってきているのであります。
今、三十代の後半よりも若い世代は、石油危機という言葉を知らないようであります。我が党の羽田幹事長が夏になると着る半そでの背広が省エネルックであることも、若い人は御存じないようであります。
石油危機当時、大きな課題として指摘された石油の中東依存からの脱却は、達成されないばかりか、今や石油危機直前よりも依存度は高くなっており、依然として我が国のエネルギー基盤は極めて脆弱なものになっています。何か事あれば、我が国が再び重大な危機に直面する可能性が高いにもかかわらず、政府は明確な戦略を持ってエネルギー問題に取り組んでいる印象が伝わってこないのであります。
他方で、地球環境保全の点からも、エネルギー問題は重要な意味を持つようになりました。地球温暖化防止京都会議の、温室効果ガス排出量の削減目標を達成するためには、我が国は相当な努力をしなければならないはずであります。日本で排出される二酸化炭素の約九割は、エネルギー利用によるものであります。エネルギー需給両面にわたる抜本的な対策が求められます。
地球温暖化防止、経済成長、エネルギー需給安定化の確保の三つの課題を同時に達成する、バランスのとれた総合的な対策が不可欠であり、内閣が一体となって取り組むべき課題であると存ずるのであります。政府は、いかなる基本姿勢を持ってこのエネルギー政策を遂行するのか、最後に総理にお尋ねして、私の質問を終わらせていただく次第であります。(拍手)
〔内閣総理大臣小渕恵三君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505254X02019990330/5
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006・小渕恵三
○内閣総理大臣(小渕恵三君) 島津尚純議員にお答え申し上げます。
島津議員から、エネルギー問題につきまして、深い御見識と、ニュージーランドやオーストラリアでの現地視察を踏まえまして、御質問をいただきました。
そこで、まず、今回の電気事業法改正案の哲学、理念についてお尋ねでありましたが、今回の電気事業の制度の改革は、質量両面にわたる安定供給の実現や、環境保全などの公益的課題の確保を前提とした上で、競争の導入によって電気事業の一層の効率化を進めることを目的とするものでございます。
三年後の検討についてお尋ねがありましたが、今回の制度改革は、産業活動や国民生活に大きな影響のあるものであることから、電気事業の公益的な役割を前提に、国民のニーズにこたえる電力の供給体制を構築するという視点に立って、制度実施後三年を目途に客観的に見直しを行うことといたしております。その際、公益的な課題への影響や、海外の自由化の動向を十分に評価し、これを踏まえ、いわゆるプール市場の創設等につきましても検討することといたしております。
ニュージーランドの停電を一つの教訓として、電気事業の自由化に伴うデメリットについてのお尋ねがありました。
この点につきましては、電力会社がネットワークの維持や管理に必要なコストの適正な回収を認めることや、新規の参入者が電力会社の一定の指示に従うことなどの対応によりまして、ネットワークにかかわる事故の防止を図るなど、安定供給の確保を図ることといたしております。
今回のガス事業の改革による公益性や雇用の安定性への影響についてお尋ねですが、今回の制度の改正におきましても、ガスの安全性や安定供給の確保を前提といたしておりまして、また、このために必要な人員の確保や、新たな事業機会の活用等によりまして、雇用不安を拡大させることにはならないと考えております。
最後に、エネルギー政策の基本姿勢についてお尋ねがありました。
御指摘のとおり、我が国のエネルギー政策の基本的な視点は、経済成長、エネルギーセキュリティーの確保及び環境保全の三者の同時達成であります。このため、制度の改革によるエネルギーコストの低減を図るとともに、省エネルギーや原子力や新エネルギーの開発利用等を推進すべく、総合エネルギー対策推進閣僚会議等を通じまして、政府一体となった対策を講じてまいる所存でございます。
残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)
〔国務大臣与謝野馨君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505254X02019990330/6
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007・与謝野馨
○国務大臣(与謝野馨君) 島津議員にお答え申し上げます。
今回の電気事業法改正案の全体の考え方についての御質問でございますが、電気は、産業、経済活動の基盤的な財であることから、電気事業に対しては、低廉な供給のための効率化という常に変わらない要請に加えて、ユニバーサルサービスの達成、供給信頼度の維持、エネルギーセキュリティーの確保や環境保全などの公益的課題への対応が要請されております。今回の制度設計に当たっても、このような公益的課題の確保を図りつつ、一層の効率化の要請にこたえることを基本的な考え方としております。
次に、三年後の検討についての御質問でございますが、電気事業の公益的役割が大きく変わるかという御質問については、三年後の検証の時点においても、電気事業の持つ公益的役割は変わらないものと考えており、公益的課題への影響の有無は、三年後の検証においても重要な視点であると考えます。
国民のニーズにこたえるべき電力供給体制のあり方をどう考えるかという御質問については、今回の部分自由化が国民のニーズにどのように応じているかを見きわめることも、三年後の検証における重要な視点であると考えます。
いわゆるプール市場の創設については、電気事業審議会において十分に御検討いただいた結果、将来の検討課題とすることとし、三年後の検証において、海外の自由化動向や公益的課題への影響を見きわめた上で、客観的に検討することとしております。
次に、ニュージーランドの停電を例とした対策についての御質問でございますが、制度改革後においても電力の安定供給を確保すべきことはもちろんのことであり、その観点から、特にネットワークにかかわる事故をいかに防止するかが重要であると考えております。
具体的には、新規参入者が電力会社のネットワークを利用するに当たっての託送料金について、電力会社が、ネットワークの維持管理に必要な保守要員、設備投資等のコストを適正に回収すべきこととしております。また、新規参入者が電力会社のネットワークを利用する際に、系統安定のための電力会社による一定の指示に、新規参入者が従うこととしております。
次に、電気事業の自由化が、電気の品質等の点で、利用者に覚悟や不便さを強いることになるのではないかという御指摘でございますが、今申し上げたとおり、利用者のニーズにこたえつつ、電気事業の効率化を図ることが可能であると考えております。
ただし、電気は、産業活動、国民生活に密接にかかわる財であり、今回の制度改革実施後も、その成果を入念に見きわめる必要があることから、供給信頼度の維持を初めとして、公益的な課題への影響を含めて、制度実施後三年を目途にレビューを行いたいと考えております。
次に、今回のガス事業改革により、安全性追求、安定供給確保など、公益性や雇用の安定性が損なわれることはないのかとの御質問ですが、今回の制度改正の趣旨は、需要家利益の増進であり、安全性や安定供給の確保を図りつつ、一層の効率化の要請にこたえることとしております。
また、こうした公益性を実現するため、必要な人員が確保されるとともに、今回の制度改正を契機として、需要家ニーズに対応した新たな事業機会が創出され、事業者がこれを活用し、前向きな経営を行うことにより、雇用不安を拡大させることはないと考えております。
なお、ガス事業改革についても、安全性や安定供給等、さまざまな課題への影響を含め、制度実施後三年を目途にレビューを行いたいと考えております。
次に、国内幹線パイプラインの実現についての御質問ですが、国内の天然ガスパイプラインの整備は、LNG基地の立地制約の克服や、天然ガスの地域間の需給ギャップの解消を図る有力な手段の一つと認識しております。
当省といたしましては、パイプライン等の天然ガスの供給基盤の整備に当たっては、原料ガスの供給者、需要家等の関係事業者によるコンセンサスの形成が、まずもって必要不可欠であると認識しており、関係事業者による、経済性、広域利用可能性、供給安定性等の幅広い観点での検討がなされることを期待しております。
以上です。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505254X02019990330/7
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008・伊藤宗一郎
○議長(伊藤宗一郎君) これにて質疑は終了いたしました。
〔議長退席、副議長着席〕
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特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律案(内閣提出)の趣旨説明発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505254X02019990330/8
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009・渡部恒三
○副議長(渡部恒三君) この際、内閣提出、特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律案について、趣旨の説明を求めます。通商産業大臣与謝野馨君。
〔国務大臣与謝野馨君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505254X02019990330/9
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010・与謝野馨
○国務大臣(与謝野馨君) 特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律案につきまして、その趣旨を御説明申し上げます。
現代では、日常生活や経済活動に用いられている化学物質が数万種類に及ぶと言われており、近年では、毎年約三百種類の新規の化学物質が開発、販売されております。一方、化学物質の中には、人の健康や動植物の生息などに有害な性状のあるものもあり、特に近年、テトラクロロエチレン、ダイオキシン類等の環境への排出に関する社会的な関心が高まっており、化学物質への対策の強化が政府の急務となっております。
こうした現下の状況に対応するためには、有害性がある化学物質について、環境への排出規制や製造、使用規制を中心とする従来の対策に加え、化学物質の管理の改善を促進するとともに、環境保全の一層の推進を図るための新たな制度の導入が必要であります。
このように、化学物質の管理の改善を促進し、環境保全上の支障を未然に防止するという考え方は、平成八年のOECD勧告等に見られるように、国際的にも共通の認識となり、主要先進国で実施され始めていることから、我が国としても、国際的協調の動向に配慮しつつ、施策を進めることが必要となっております。
そのため、特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進を図ることを内容とする本法律案を提案した次第であります。
次に、法律案の要旨を御説明申し上げます。
第一に、この法律は、事業者による化学物質の自主的な管理の改善を促進し、環境の保全上の支障の未然防止を図ることを目的とするとともに、国が定める化学物質管理指針に留意して、特定の化学物質の取り扱い等に係る管理を行うこと等を事業者の責務とし、国及び地方公共団体は、事業者に対する技術的助言、必要な人材の育成等の措置を講ずることとしております。
第二に、事業者にその事業活動に伴う特定の化学物質の排出量の把握等及び国への届け出を義務づけるとともに、国は、その届け出られた事項について集計し、集計結果を公表することとしております。さらに、個別事業所の排出量等の情報につきましても、営業秘密を確保しつつ、国民の請求に応じて開示することとしております。
また、届け出義務を課されない中小の事業者、家庭等からの排出量につきましては、国が当該排出量を算出、集計し、その集計結果を事業者から届け出られた排出量等とあわせて公表することとしております。
第三に、事業者は、特定の化学物質等を譲渡し、または提供する場合、その相手方に対して、当該化学物質等の性状及び取り扱いに関する情報を提供しなければならないこととしております。
このほか、国による調査の実施、必要な罰則等に関し、所要の規定を設けることとしております。
以上が、本法律案の趣旨であります。(拍手)
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特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律案(内閣提出)の趣旨説明に対する質疑発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505254X02019990330/10
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011・渡部恒三
○副議長(渡部恒三君) ただいまの趣旨の説明に対して質疑の通告があります。順次これを許します。佐藤謙一郎君。
〔佐藤謙一郎君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505254X02019990330/11
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012・佐藤謙一郎
○佐藤謙一郎君 民主党の佐藤謙一郎でございます。
私は、民主党を代表して、ただいま議題となりました特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律案に対して、総理並びに環境庁長官に質問をさせていただきます。
私がPRTR制度を知ったのは、今から数年前、インターネットを習いたてのころでした。インターネットの画面をクリックしていたずらしていた私の目の前に、アメリカ全土の地図が映し出されました。そして、アリゾナ州、アトランダムに選び出した人口わずか数千人の町。しかし、その町にある化学工場や事業所で、どれだけの化学物質が製造され、保管され、廃棄されているか、一目で見ることができたのです。
そして、環境を汚染する物質が大気や水質、土壌にどれだけ影響を及ぼしているか、何の障害もなく遠く離れた日本の画面に映し出されていたのです。全世界どこからでも、情報がだれかれの隔てなく手にできる。どの工場からどんな化学物質がどれだけ排出されているか、直ちに知ることができる。その情報をもとに住民、自治体、国、事業者、NGOのリスクコミュニケーションが可能になる。私はそのとき、さわやかな興奮を覚えたものでした。
もともとPRTR制度は、今から二十五年前、オランダで、企業が有害化学物質について自主報告を始めたのがスタートでした。その後、一九八六年にアメリカで発展し、EPCRAという法律によって規定された、住民の知る権利を確保するTRI制度として導入されました。そして、英国、カナダ、オランダ、フランス、韓国が後に続いたのです。
さらに、一九九二年のリオ・サミット、アジェンダ21を経て、翌九三年、国連からの要請を受けたOECDが取り組みを開始しました。このOECDで、PRTR制度は次のように定義されました。さまざまな排出源から環境中に排出または移動される潜在的に有害な汚染物質を登録する制度と。
その後、九六年、OECDは、国民各層が情報を共有してリスク削減を行うとした公開原則を柱に、各国に最も適した形で導入が図られるべきとの理事会勧告を発表し、一九九九年、すなわち、ことしの二月までに加盟各国に導入状況を報告すべきとの認識を示したのです。
このように、PRTR制度は、紛れもなく、環境における情報公開法といった趣の法律制度なのです。
私は、このたびの法律を一べつして、唖然としました。行政の欺瞞と思い上がりに満ち満ちていたからです。まさに通産省主導のこの法案は、我々国民の健康と安全を犠牲にしても企業秘密を守ろうとする、およそ世界の流れに逆行する古典的なものだったからです。PRTR後発国にかかわらず、最も世界でおくれた内容に成り下がっていたのです。
私が最初の疑念を感じたのは、昨年末、通産省がこの問題を既存の法律、化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律、いわゆる化審法の一部改正でお茶を濁そうとしたときでした。
国と企業が情報を管理し、国民や自治体への情報は二の次にする。行政が常に企業の側に立って、不都合なものは官僚の裁量によって非開示にする。隠そうとするのは、行政の今までの体質としてわかりますが、それを拒絶、否定するのが政治の役割ではないでしょうか。
総理にまず問います。情報はだれのものかということです。
昨年九月、東京で行われたOECD国際会議でも、住民の知る権利の構築が強調されました。果たしてこのPRTR制度が、企業の側の管理対策としてつくられるのか、国民と生態系の安全、健康、環境対策としてつくられるのか、どちらなのかを質問させていただきます。
次に、この法案がOECDの勧告や原則をいかに無視しているかを中心に、論を進めていきたいと思います。
まず、法案制定過程の不透明さです。
OECDの勧告によれば、PRTRシステムを構築する際、その実施や運営のみならず、構築の段階、それも、全過程で透明かつ客観的であるべきであるとされております。ところが、本法案は、極めて不透明な省庁間交渉を通じて策定されてきました。政府は、審議会で国民の意見を聞き、透明性を確保したと答えるでしょうが、昨年十一月に中央環境審議会が中間答申を取りまとめた以降は、閣議決定されるまで全く非公開の状態でした。
総理は、この法案策定過程が、OECDの勧告どおり、全過程において透明かつ客観的であるとお考えでおられますか。私は不透明きわまりないと思うのですが、少しでも透明性を確保するために、昨年十一月から法案が閣議決定に至るまでの過程を、今からでもすべて公開するべきであると考えていますが、いかがでしょうか。明確にお答えください。
さらに、この法案について各省庁間で覚書が交わされているのでしたら、もし覚書のようなものがあるのであれば、速やかに公開するべきであると考えますが、いかがでしょうか。総理の明快な答弁を求めます。
また、OECDの原則では、目標、目的の必要性を最もよく満足するメカニズムについて、関係関連団体と合意するべきであるとされています。利害関係者とは、産業界、地方自治体、市民団体、政府が保有する設備などの関係者等を指すわけですが、今回の法案作成の際に、利害関係者と合意がなされたという認識をお持ちでしょうか。
この点についても、審議会で取りまとめが行われたことをもって合意がなされたと言い逃れるつもりなのでしょうが、その後の市民団体等のコメントを見る限り、それは通用しません。
例えば、広範かつ各方面で活動中の市民や市民団体から構成されているPRTR市民会議は、国会はこのような案は廃案とすべきだとまでコメントしております。また、地方自治体職員の労働組合である自治労も、幾つかの問題点を指摘し、意見反映に努めてきました、しかしながら、内容的には、それらがほとんど盛り込まれていないとのコメントを発表しています。
それでも、もし合意したというのであれば、いつ、どの利害関係者と、どのような合意を得たのか、具体的にお答えください。また、私が指摘させていただいた市民や労働組合の声について、どのように考えておられるのか、あわせてお答えください。
次に、情報公開のシステムについての疑問であります。
この法案では有料による請求開示方式となっているのですが、OECDの原則によれば、PRTRの結果を、すべての関係関連団体が、適切な時期に、かつ定期的に入手できるようにすべきであるとされています。情報を公開し、社会的モニタリングに任せる、すなわち、より多くの市民がそれぞれ情報をチェックし合うことがPRTR制度の意義であり、それをしなければ、単に報告義務というコストだけを企業に負わせ、実益を生まない制度になりかねません。
OECDのガイダンスマニュアルによれば、PRTRの結果をすべての閲覧者に入手、利用可能にし、かつ入手にかかる費用をすべての人が払える額にすることとされています。この点に配慮しない制度では、PRTR制度の目的を達成できません。請求の煩雑さやコストをどのように考えているのか、特に全対象事業者のデータを請求した場合にそのコストはどの程度になると予想されるのか、明確にお答えください。
ちなみに、請求ベースで有料化を図らず、インターネットでも入手可能なアメリカの連邦政府で、八百万ドル等、データベースで一人当たりアメリカで〇・〇三ドルから〇・〇七ドルと、極めて安価な数字が出ているのです。
次に、OECD原則によれば、すべてのPRTRシステムは、実施途中の評価を可能にし、必要性の変化に応じて関係関連団体による変更が可能な柔軟性を持つべきであるとされているにもかかわらず、本法案の検討条項は、ほとんどすべての法案に便宜的に置かれている検討条項と全く同じであり、実施途中の評価や変更への柔軟性が感じられないという疑問であります。
OECDがわざわざ原則として指摘している以上、法案の中で、評価や柔軟な対応についての規定を設けるべきであると考えますが、なぜ特別な規定を置いていないのか、明快に答弁いただきたいと思います。
総理に対する最後の質問は、相も変わらぬ縦割り行政の弊害、すなわち業所管省庁が規制官庁となることのおかしさについてであります。
化学物質の排出量等の届け出先も業所管大臣、企業秘密に該当するかどうかの判定も業所管大臣が行うこととなっています。業所管省庁がいかに都合の悪いことを隠ぺいするか、その実例を一つだけ指摘します。
現在、ダイオキシン類による環境汚染が問題になっており、特に廃棄物処理施設からの排出が全国各地で深刻さを増しています。我が党も、ダイオキシン類汚染対策緊急措置法を提案し、住民参加と情報公開によって、一日も早く住民の健康と安全が確保されるよう努力しているところですが、日本におけるダイオキシン類環境放出量の大部分が、PCPやCNPといった水田除草剤であることが近年明らかになりました。
横浜国立大学環境科学研究センターの益永氏の研究によれば、一九五五年から九五年までのPCPとCNPによるダイオキシン類環境放出量は、全体の七五%程度を占めると推測され、実に都市ごみ焼却や産業廃棄物焼却の五倍に当たるということです。しかも、九四年までは、CNPに毒性のあるダイオキシンは含まれていないということで製造され、水田に散布され続けていました。
これも、業所管省庁と規制官庁が同じであることから起こった悲劇です。このような過去の過ちを反省することなく、お手盛り行政を続ける理由は何なのでしょうか。欧米先進国におけるPRTRは、環境所管省庁が一元的に行うのが常識であると言われています。それでは一体何が問題なのか、明確にお答えをお願いいたします。
次に、環境庁長官に、数点にわたってお伺いをいたします。
環境庁が行ったPRTRパイロット事業から得た成果が、この法案では全く生かされていないという点です。
パイロット事業は、新しい制度をスムーズに導入すべく、全国に先駆けて愛知県と神奈川県で千八百企業を対象に行ったOECD勧告に基づく事業で、多くの事業者がこれら自治体にさまざまな問い合わせをしたと聞きます。それに対して自治体がきめ細かな指導や助言などを行った結果、ある程度の報告を得ることができたというものです。この事実から、化学物質についての知識や技術が乏しい非製造業や中小製造業者等については、適切なPRTRの報告の仕方や、有害化学物質管理ができるよう配慮が必要であると思われます。
国がデータを集めても、きめ細かな指導ができず、報告される数値の正確性が担保されない危険性があります。そうなれば、せっかくの法律が、単に業所管庁が権限を広げ、大企業だけが環境配慮をしたという、PRTRならぬ大企業PRに終わり、制度そのものの意味が失われてしまう可能性が高いと考えられます。
環境庁のパイロット事業では、排出情報の報告先は各県市の長とされており、地方自治体の重要性が認識されたと思われますが、どうして今回の法案では、提出先は国となったのでしょうか。パイロット事業で地方自治体を提出先にして、何か不都合があったのでしょうか。不都合があったのであれば、具体的にそれをお示しください。
また、このような報告先の変更を行うことは、パイロット事業を実施した神奈川県や愛知県などの自治体に対して大変失礼であると思いますが、いかがでしょうか。環境庁長官の明確な答弁をお願いいたします。
さらに、パイロット事業の評価結果においては、生殖毒性には内分泌攪乱作用も加えて検討することが適当であるとされております。科学的知見が明らかになってからでは手おくれであり、この法律は登録した化学物質を規制するための法律ではないのですから、登録をしておいて、人体や生態系に影響がないとわかった時点で、登録から外すことができるわけであります。積極的にできるだけ多くの物質を入れ込んでいくべきだと思いますが、環境庁長官、いかがでしょうか。
また、オゾン層破壊物質は対象に含めておきながら、温室効果ガスを対象から除外するなど、恣意的とも思われる除外が行われようとしているのはなぜなのかを、あわせてお伺いいたします。
さらに、PRTR制度はデータの正確さが命です。それが担保されなければ意味がないにもかかわらず、中小事業所等への助言、指導、悪質な者への勧告、立ち入りなどを行う権限の規定がないので、報告しなかったり、誤った報告が行われても、何も対処できないという指摘が専門家からなされております。これでは、虚偽報告に対する罰則が設けられていても、虚偽かどうかを確かめることができないのではないでしょうか。報告主体が提出した数値が正確であるかどうかをどう確認しようとしているのか、お答えをいただきたいと思います。
さらに、農薬や自動車の排ガスなど、非点源での化学物質の排出量や移動量は行政が推計をすることになっておりますが、推計に必要な情報を関係業界や所管官庁が提供する義務が明記されておりません。これでは、信頼できる推計を行うことができず、制度そのものの意味が失われてしまう可能性があると考えられますが、どのようにして数値の正確性を担保しようとしているのか、お答えください。
このように、OECDの勧告、原則を無視し、環境庁が行ったパイロット事業の貴重な成果をむだにした今回の法案は、PRTR制度と呼ぶのも恥ずかしい内容であり、今後の審議を通じて、さらなる問題点を浮き彫りにしていきたいと思います。
日本は七〇年代の公害国会で、汚染への規制を厳しくし、環境技術を磨きました。我々は、今公害国会を環境国会として再起させ、二十一世紀にふさわしい法律群を整備していく必要があります。企業と市民がリスクを共有し、そのために地域から一緒に立ち上がる時代、そんな時代にふさわしい市民の側に立ったPRTR制度の実現に向けて、党内、各党との議論を深めていくことをここにお誓いして、私の質問を終わります。
どうもありがとうございました。(拍手)
〔内閣総理大臣小渕恵三君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505254X02019990330/12
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013・小渕恵三
○内閣総理大臣(小渕恵三君) 佐藤謙一郎議員にお答え申し上げます。
佐藤議員から、本法案の作成過程、法案の内容につきまして厳しい御指摘がございました。そこで、まず、本制度で把握され、提供される情報についてお尋ねでありますが、国民、事業者、地方公共団体、国が、それぞれの立場で利用できるものと考えております。
また、PRTR制度の趣旨、目的についてのお尋ねですが、化学物質の問題につきましては、国民の健康や生態系への影響を防止する観点から、重要な問題と認識いたしております。このため、有害な化学物質の環境への排出量等の把握、集計、公表等により、事業者による化学物質の自主的な管理の改善を促進し、環境の保全上の支障を未然に防止することを目的とし、本法案を提案いたしたものであります。
法案の作成過程の透明性、客観性の確保についてお尋ねですが、本法案の作成に先立つ審議会の審議を公開するとともに、国民意見を募集し、透明性、客観性の確保を図りました。これらを踏まえて、政府部内で法制化の作業を行ってまいりましたが、今後、国会審議を尽くしていただく中で、法案の考え方等について、国民の皆様に十分御理解をいただきたいと考えております。なお、各省間の覚書の開示につきましては、各省庁間において検討させたいと思います。
市民団体を含む利害関係者との合意についてでありますが、法案の作成に当たりまして、審議会への労働組合等を含めた幅広い分野から審議会委員に参加いただき、市民団体を初め参考人から意見を聴取するなど、各方面のさまざまな御意見を踏まえているものと認識いたしております。今後とも、関係方面の御理解をいただけるよう努めてまいりたいと思います。
次に、開示請求のコスト等についてお尋ねでありましたが、本法案では、個別事業所のデータを電子情報のファイルとすることにより、請求に応じた開示の迅速化及びコストの低減化を図るとともに、請求の手続も簡便にいたしております。手数料の額につきましては、全事業者のデータを請求した場合を含めて、現時点では具体的に申し上げることは困難でありますが、実費の範囲内で、可能な限り請求者の利便を勘案して定めたいと考えております。
PRTR制度の評価や柔軟な対応についての特別な規定に関するお尋ねでありますが、本法案では、OECDの勧告を踏まえ、また我が国の他法令における例を参考にしながら、附則第三条において御指摘の趣旨を明記することとしたものであります。
PRTR制度を担当する省庁の体制についてのお尋ねがありました。
PRTRに関する制度は国により異なりますが、本法案では、事業者による化学物質の自主的な管理の改善を促進し、環境の保全上の支障を未然に防止することを目指しており、その考え方に基づき、政府全体で取り組む体制といたしたところでございます。
残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)
〔国務大臣真鍋賢二君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505254X02019990330/13
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014・真鍋賢二
○国務大臣(真鍋賢二君) 佐藤謙一郎先生にお答えを申し上げたいと存じます。
PRTRの届け出先についてのお尋ねでございますけれども、本法案において届け出先を国としているのは、事業者の排出量の届け出を全国統一的なルールで行い、集計の迅速かつ効率的な実施を確保し、無理なく継続的に実施できるようにするためであり、パイロット事業に問題があるというものではありません。
また、国が個別事業所ごとの排出量等のデータを電子情報とした上で、都道府県に提供し、地域のニーズに応じて活用しやすくしておるところであります。このようなことから、PRTRのパイロット事業の実施に協力いただいた地方自治体の御理解もいただけるものと考えております。
次に、対象物質について、できるだけ多くの物質を入れるべきでないかとのお尋ねでございますけれども、環境庁としては、化学物質の安全性の評価に関する国際的動向に十分配慮しつつ、化学物質の性状についての科学的知見の充実に努めるとともに、化学物質の安全性の評価に関する技術的手法の開発に努め、関係の審議会の意見を聞くことなどにより、対象物質の選定の段階から万全を期す所存であります。
次に、温室効果ガスをPRTRの対象化学物質にしない理由についてのお尋ねでございます。
温室効果ガスについては、地球温暖化対策推進法において、政府が我が国の総排出量を算出する制度、事業者が排出抑制計画等を策定し、その実施状況を公表するよう努める旨を規定しているところでございます。このように、地球温暖化物質については、その排出を把握し、それを抑制する体制が整備されているので、重ねてこれをPRTRの対象とする必要はないと考えておるところでございます。
最後に、PRTRの制度により届け出られた数値の正確性についてのお尋ねでございます。
排出量の算出方法を明確に定めること、事業者にわかりやすいマニュアルを作成すること等により、届け出義務者の排出量の算出を支援してまいります。また、個別事業所のデータが開示され、他の事業者のデータと比較されることがあり得ることから、事業者においても、可能な限り算出の精度を上げる努力を行うものと考えております。
次に、届け出される排出量以外の排出量の推計の正確性の担保についてのお尋ねでございますけれども、統計資料などにより、可能な限り精度を高める努力をすることとしており、そのために必要な知見を有する関係行政機関の協力を得ることを明記しており、御指摘のような義務づけを行わなくても協力は得られるものと考えております。
以上でございます。(拍手)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505254X02019990330/14
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015・渡部恒三
○副議長(渡部恒三君) 田端正広君。
〔田端正広君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505254X02019990330/15
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016・田端正広
○田端正広君 公明党の田端正広でございます。
私は、公明党・改革クラブを代表して、ただいま議題となりました特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律案、いわゆるPRTR法案について、小渕総理並びに関係大臣に質問いたします。
近年、化学物質による環境汚染問題は、かつてないほど大きな社会的関心を呼んでおります。ごみ焼却施設から排出されるダイオキシン問題、電気電子工場から出るトリクロロエチレンなど有機溶剤による地下水の汚染や土壌汚染問題、生殖機能障害や悪性腫瘍等の疑いのある内分泌攪乱化学物質、いわゆる環境ホルモン問題などが次々と顕在化してまいりました。
日本には五万種類、世界には十万種類の化学物質があると言われていますが、これら化学物質による環境汚染を未然に防止するため、我々、公明党・改革クラブも、昨年来、PRTR法制度を政府に求めてきたところであります。
公害問題や環境被害では、日本には過去に幾多の苦い経験があります。水銀による水俣病を初め、カドミウムによるイタイイタイ病、PCBによるカネミ油症事件、さらには森永砒素ミルク事件など、多くの犠牲を伴いました。私たちは、これまでの教訓を踏まえ、今こそ、人類みずからがつくり出した化学物質で人類が犠牲になるという、この悪循環を断ち切る必要があります。
小渕総理、あなたは今国会冒頭の施政方針演説の中で、「ダイオキシンの排出削減、いわゆる環境ホルモン問題への取り組み、化学物質の管理の促進と環境保全のための新たな法的枠組みの整備を行います。自然を慈しみ、資源を大切にする社会を築き、かけがえのない地球を守るため、我が国がその先頭に立って取り組んでまいらなければならないと考えております。」と決意を述べられましたが、それだけに、このPRTR制度を、二十一世紀の環境行政の中核に据え、環境省の設置に伴って、国民の健康と自然の生態系を第一義として、公正に運用されるべきと考えますが、まず総理の御決意を伺います。
そこで、今、化学物質の中で一番健康被害が心配されている猛毒ダイオキシンについて伺います。
本日、政府においても、ダイオキシン対策推進基本指針を決定されたところでありますが、果たしてそれで安全が保てるのか、国民は大きな疑問を投げかけています。
総理も御承知のとおり、集中的に高濃度汚染の状況にある埼玉県所沢市周辺の人々の不安がそれで解決するでしょうか。同じく、大阪・能勢町の豊能美化センターの元従業員の血液からは、脂肪一グラム中、最高八百五ピコグラムという、一般人の四十倍の高濃度ダイオキシンが検出され、元従業員の二人が、ダイオキシン汚染が原因で労災を申請いたしました。
この一連のダイオキシン汚染問題は、緊急を要する課題であります。総理、ダイオキシンは、極微量でも長期間摂取を続けると大変有害であり、一度体内に入れば、その量が半分になるのに七年半かかると言われています。この根本的な解決には、環境庁、厚生省の垣根を越えて、一日耐容摂取量、TDIを、WHOの提案では、体重一キロ当たり一ないし四ピコグラムとなっていますが、最も厳しい基準一ピコグラムにしてはどうかと思いますが、所見を伺います。
次に、法案の中身について、関係大臣に質問いたします。
現在、膨大な種類の化学物質が世の中にはんらんしています。生態系や人間にとって有害性が判明している化学物質は、その数は限られていますが、潜在的な危険性を持ちつつ、世の中で使われている状況にあると言えます。それだけに、化学物質の環境への排出量、移動量をしっかりと把握し、届け出て、それを国が公表することは、第一義的には、自然界に存在しなかった化学物質をつくり出し、流通させた事業者が国民に対して負うべき義務だと考えます。
そこで、通産大臣に伺います。
企業が排出情報を報告する先が、業界を所管する省庁となっています。つまり、通産、厚生、農水省などであり、環境庁は、これらの情報をまとめ、公表する権限を与えられているにすぎませんが、これでは、業界寄り、企業寄りの制度と批判されても当然と言えます。まして、この法案では、国は営業秘密を確保しつつ、個別事業所の情報を開示するとあり、企業秘密の拡大が懸念されるところであります。業界を指導監督する立場にある省庁は、逆に言えば、企業を保護育成する側面を持っているわけで、それだけに公正さが要求されます。
したがって、企業秘密に当たるかどうかについては、行政の裁量に頼るだけでなく、NGOや民間の専門家等を加えて、独立した審査機関を設置すべきとの意見も強くありますが、通産大臣の見解を伺います。特に、企業秘密に当たる化学物質は、どの程度の数で、どういう基準で、どういう物質を想定しているのか、お答えいただきたい。
また、この法案には、事業者が対象化学物質の譲渡等を行うに際し、相手方に対して、当該化学物質の性状及び取り扱いに関する情報、いわゆる化学物質安全データシート、MSDSの交付を義務づけていますが、PRTR制度、MSDS制度のいずれの制度も、その対象事業者の指定の基準はどうなっているのか。また、流通段階で、間違って取り扱われたり、万一事故が起きたときの対応はどうするのか。通産大臣の見解を求めます。
次に、環境庁長官に質問いたします。
私は、このPRTR制度がより効果を発揮するには、化学物質審査法や大気汚染防止法、水質汚濁防止法、廃棄物処理法、農薬取締法など、既存の法律と本法案との連携をどう強化するかが重要だと思いますが、長官の見解を求めます。
次に、地方自治体の役割について質問いたします。
神奈川県と愛知県の一部で平成九年六月から行われたPRTRのパイロット事業では、地方公共団体を中心として円滑に実施されましたが、この法案では、そうした経験が生かされていません。自治体の役割が四つに限定されています。つまり、一、国から提供を受けた事業者ごとの情報をもとに地域のニーズに応じて集計、公表する、二、国が行う環境モニタリング調査等について意見を述べる、三、事業者に対して技術的に助言する、四、広報活動等を通じて国民の理解増進を支援する等、これら四つに限られています。
地域の実情を熟知し、環境問題や住民の健康対策に直接かかわっている地方自治体を排出量報告の窓口にしなかったその理由は何でしょうか。さらに、地域の特性に合わせた対策が打てるように、地方自治体の役割を明確にすべきだと考えますが、環境庁長官の見解を求めます。
実は、私が大変に心配している点がもう一点あります。それは、この法案を、環境委員会ではなく、商工委員会に付託しようとする動きが強いということであります。本来、この法案の趣旨からいえば、環境保全と国民の健康を守るという角度から、環境委員会で議論されるのが筋だと思いますが、そうした意味でも、国会それ自体が、国民から強い政治不信の目で見られているということであります。
例えば、欧米諸国のPRTR制度を見ると、どの国でも、環境行政機関が制度の運営に取り組んでいます。我が国のこの法案では、業界を所管している省庁が排出情報の窓口になっていて、環境庁のリーダーシップが問われています。
そこで、環境庁長官にお尋ねします。
今日の社会は複雑多様化していて、幾つかの省庁にまたがって横断的な対応が求められる状況にあります。この法案も環境庁と通産省の共管であり、両省庁の役割分担を明確にし、特に企業秘密の判断や情報管理等、運用面で環境庁が実際にどうかかわるのか、環境庁長官の強い決意を促したいと思います。
次に、この法案では、届け出対象以外の、家庭や農地や自動車等からの排出量を推計して、公表することとなっていますが、この結果を具体的に総排出量の減量化や資源循環型社会の構築にどうつなげていくのか、また、最終的にごみ焼却施設から出る有害物質の排出をどう抑制していくのか、今後の法整備のあり方も含めて、長官の見解を求めます。
また、このようなPRTR制度は、省庁や産業界からの視点だけではなく、被害を受ける可能性があるという意味においては、OECDの勧告にあるように、最大の利害関係者である国民の参加のもとに形成されるべきだと考えます。そこで、対象物質の選定や評価に当たり、住民の意見を聴取できるよう配慮すべきであると考えますが、環境庁長官の見解を求めます。
また、対象物質については、米国では約六百種類、英国でも約五百種類が対象とされていますが、我が国もこれと同様に、疑わしきものはすべて管理するとの強い立場で、人の健康や生態系を損なうおそれのある物質の選定を厳しく行うべきであると考えますが、環境庁はどう考えていますか。
また、今回の対象物質には、有害性が指摘されている環境ホルモンは当然入れるべきだと思います。そして、この環境ホルモンは、十年、二十年前には想定できなかった危険性が最近に至って問題となったわけであり、このように後になって健康被害の疑念が生じたときにはどう対応するのか、環境庁長官の見解を伺います。
最後に、重ねて総理にお尋ねします。
我が国のPRTRの法制化は、欧米諸国に比べ、おくれをとりましたが、それだけに、先進国だけでなく、開発途上国も高い関心を持って見ています。また、化学物質汚染は全世界の問題でもあります。例えば、近隣諸国から風に乗って有害な物質が運ばれてくることも考えられますし、国際取引による情報把握も必要になります。したがって、国際的な共同研究や情報交換などでも、積極的に日本がリーダーシップをとっていくことが重要であると考えます。
地球全体の環境保全なくして、人類の未来はありません。今こそ我が国は環境先進国への脱皮を図るべきであり、そのためにも、この法案の公正な運用を期し、事業者、国民、行政のそれぞれが、役割と責任を自覚し、そして、全世界に向けて、化学物質のリスク管理の必要性を発信していくべきだと考えますが、総理の所見を伺い、私の質問を終わります。(拍手)
〔内閣総理大臣小渕恵三君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505254X02019990330/16
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017・小渕恵三
○内閣総理大臣(小渕恵三君) 田端正広議員にお答え申し上げます。
冒頭、田端議員から、私の施政方針演説を引用された上で、PRTR制度の公正な運用への決意についてお尋ねがございました。
化学物質の問題につきましては、国民の健康や生態系への影響を防止する観点から、極めて重要な問題と認識しております。このため、有害な化学物質の環境への排出量等の把握、集計、公表等によりまして、事業者による化学物質の自主的な管理の改善を促進し、環境の保全上の支障を未然に防止するよう、本法案を適正に運用してまいりたいと存じます。
ダイオキシンについてお尋ねでありましたが、本日、関係閣僚会議におきまして、ダイオキシン対策推進基本指針を取りまとめたところであります。その中で、対策の基本となる耐容一日摂取量につきまして、WHOの専門家会議の結果を踏まえて、環境庁及び厚生省の審議会が合同で、専門家による検討を進め、三カ月以内に結論を得ることといたしておるところでございます。
本法案の運用に関し、事業者、国民、行政、それぞれの役割と責任についてお尋ねがありました。
本法案におきまして、政府がその適正な運用を図ることはもとより、事業者が化学物質の自主的な管理の改善を促進することといたしております。また、政府及び事業者から化学物質に関する情報の提供を受けること等により、化学物質の管理と環境保全について国民が理解を深めることを、強く期待いたしております。
最後に、化学物質のリスク管理の必要性についての発信についてのお尋ねがありました。
OECDなどにおける国際的な連携のもと、科学的知見の集積に努めるとともに、これを踏まえて取り組んでいくことが重要と考えております。今後とも、研究成果の情報交換などを通じ、国際的な連携に努めてまいります。御指摘をいただきました点、十分真剣に検討し、そして、努力をいたしてまいりたいと考えております。
残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)
〔国務大臣与謝野馨君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505254X02019990330/17
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018・与謝野馨
○国務大臣(与謝野馨君) 田端議員にお答え申し上げます。
まず第一に、企業秘密の判断を行う独立した審査機関を設置すべきとの御指摘でございました。
企業から報告された情報が営業上の秘密に当たるかどうかは、企業を取り巻く競争環境、技術状況等を熟知している事業所管大臣が判断することが適当であると考えております。また、その際の判断基準は、諸外国と同様の客観的なものであり、基準を厳格に適用して、独立した審査機関を設けずとも、公正な判断を行う考えであります。
次に、企業秘密に当たる化学物質についての御質問がありました。
営業上の秘密の判断は、秘密の取り扱いを求める企業からの請求を受けて、不正競争防止法と同様の判断基準である秘密性、有用性、非公知性の三要件に照らして、個別事案ごとに厳格に行うこととしております。
営業秘密に当たる化学物質がどの程度の数か、あるいはどういう物質となるかを現時点で具体的に想定することは困難でありますが、我が国と同様の判断基準を採用している米国では、一九九五年の届け出数七万三千件のうち、営業秘密に限定されたものはわずか十三件、すなわち〇・〇一八%にすぎず、我が国においても、営業秘密の件数が極端に多くなることはないと考えております。
次に、PRTR制度及びMSDS制度の対象事業者についての御質問がありました。
PRTR制度では、欧米と同様に、対象物質を一定量以上取り扱っている一定規模以上の事業者を対象とすることを考えております。また、MSDS制度においては、PRTR制度に比べて対象物質数は多くなりますが、当該物質及び当該物質を含有する一定の製品を他の事業者に譲渡または提供する事業者が対象となります。
また、MSDSの流通段階における対応についてお尋ねがありました。
MSDS対象事業者は適正に情報を提供する義務がありますが、情報を受け取った側がMSDSの読み違え等により化学物質を間違って取り扱ったり、万一事故が生じた場合、関係する法律に抵触すれば、その法律により処理されるほか、民事上の問題として対応がなされるものと考えております。(拍手)
〔国務大臣真鍋賢二君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505254X02019990330/18
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019・真鍋賢二
○国務大臣(真鍋賢二君) 田端正広先生にお答えを申し上げます。
PRTR制度と既存法との連携強化についてのお尋ねでございます。
PRTR制度の実施は、多数の化学物質について、事業者による化学物質の自主的な管理の改善を促進し、環境保全上の支障の未然防止につながるものと考えております。また、PRTRによって得られた排出量等の情報は、環境保全施策の企画立案のために、重要な基礎的な情報として、大気汚染防止法など既存の各種法令に基づく規制等にも適切かつ効果的に活用できるよう実施してまいる所存でございます。
次に、地方自治体を排出量の届け出先としなかった理由と、本法案における地方自治体の役割に関するお尋ねでございます。
本法案においては、届け出を全国統一的なルールで行い、集計の迅速かつ効率的な実施を確保し、無理なく継続的に実施できるようにするため、国を届け出先とすることとしているものであります。また、本法案においては、国が個別事業所ごとの排出量等のデータを電子情報とした上で、都道府県に提供し、地域のニーズに応じて活用しやすくしています。さらに、国が行う調査に対する意見を述べること、事業者に対する技術的助言及び国民の理解の増進並びにそれらに必要な人材育成に努めることという、地方公共団体の役割も明確にしているところでございます。
次に、本法案における環境庁の役割及び通産省との分担についてのお尋ねでございます。
本法案においては、PRTR制度全体について、環境庁及び通商産業省が共同で運用することとしております。事業者の届け出る排出量等のデータが営業秘密に当たるか否かの判断は、事業者の届け出を受ける業所管大臣によって行われますが、環境庁長官は、必要であれば、営業秘密とされた情報について業所管大臣に説明を求めることができることとしております。環境庁としては、PRTR制度の運用全般にわたる主管省庁として、適切な運用に努めてまいる所存でございます。
次に、事業者から届け出られるもの以外の排出量の推計結果の活用について、法整備のあり方も含めてのお尋ねでございます。
その推計結果と届け出データとをあわせて対象化学物質の排出量の全貌を把握し、その結果を見て、必要であれば、環境モニタリング調査や、人の健康等への影響の調査を総合的かつ効果的に行い、その成果を公表することといたしております。また、届け出義務者以外の事業者も対象とした化学物質管理指針を定め、事業者による自主的な管理活動の改善の促進を図ることとしております。環境庁としては、関係各省庁とも連携しつつ、化学物質の排出源についての対策や、循環資源型社会の構築に向けても、取り組みを進めてまいりたいと考えております。
次に、対象物質の選定等に当たり、住民の意見を聴取できるよう配慮すべきではないかとのお尋ねでございます。
本法案においては、PRTRの対象物質を政令で定めることとしており、この際には、政令で定める審議会の意見を聞くことといたしております。また、規制の設定または改廃に係る意見提出手続、いわゆるパブリックコメントの手続でございますけれども、これに関する閣議決定が三月二十三日になされ、規制の設定または改廃に当たり、広く国民等の意見を把握し、これを考慮して意思決定を行う手続が定められましたので、対象物質を政令で定める際には、この閣議決定に従って対応する必要があると考えております。
次に、対象物質の選定を厳しく行うべきではないかとのお尋ねでございますが、本法案の対象物質は、人の健康を損なうおそれまたは動植物の生息もしくは生育に支障を及ぼすおそれがある化学物質について、環境における存在状況等を勘案して政令で定めることとしております。
対象物質の選定は、化学物質の性状についての科学的知見及び化学物質の安全性の評価についての技術上の基準に関する内外の動向に十分配慮し、我が国における製造、輸入、使用、生成の状況等から見て、広く環境に存在すると認められるものについて的確に行ってまいる所存であります。
最後に、対象物質の選定に関連して、後になって健康被害の疑念が生じたらどう対応するかとのお尋ねでありました。
環境庁としては、化学物質の安全性の評価に関する国際的動向に十分配慮しつつ、化学物質の性状についての科学的知見の充実に努めるとともに、化学物質の安全性の評価に関する技術手法の開発に努め、関係の審議会の意見を聞くことなどにより、対象物質の選定の段階から万全を期す所存であります。
なお、いわゆる環境ホルモンについては、現在、関係省庁が連携して科学的知見の充実を図っておりますので、これを踏まえて、必要な対応を検討する所存でございます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505254X02019990330/19
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020・渡部恒三
○副議長(渡部恒三君) これにて質疑は終了いたしました。
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505254X02019990330/20
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021・渡部恒三
○副議長(渡部恒三君) 本日は、これにて散会いたします。
午後二時三十分散会
————◇—————
出席国務大臣
内閣総理大臣 小渕 恵三君
通商産業大臣 与謝野 馨君
国務大臣 真鍋 賢二君
出席政府委員
環境庁企画調整局長 岡田 康彦君
通商産業省基礎産業局長 河野 博文君
資源エネルギー庁長官 稲川 泰弘君発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505254X02019990330/21
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