1. 会議録本文
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000・会議録情報
平成十一年四月十五日(木曜日)
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議事日程 第十六号
平成十一年四月十五日
午後一時開議
第一 漁船損害等補償法の一部を改正する法律案(内閣提出)
第二 持続的養殖生産確保法案(内閣提出)
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○本日の会議に付した案件
永年在職の議員田邉國男君に対し、院議をもって功労を表彰することとし、表彰文は議長に一任するの件(議長発議)
日程第一 漁船損害等補償法の一部を改正する法律案(内閣提出)
日程第二 持続的養殖生産確保法案(内閣提出)
労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律等の一部を改正する法律案(第百四十三回国会、内閣提出)及び職業安定法等の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明及び質疑
午後一時四分開議発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505254X02319990415/0
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001・伊藤宗一郎
○議長(伊藤宗一郎君) これより会議を開きます。
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永年在職議員の表彰の件発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505254X02319990415/1
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002・伊藤宗一郎
○議長(伊藤宗一郎君) お諮りいたします。
本院議員として在職二十五年に達せられました田邉國男君に対し、先例により、院議をもってその功労を表彰いたしたいと存じます。(拍手)
表彰文は議長に一任されたいと存じます。これに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505254X02319990415/2
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003・伊藤宗一郎
○議長(伊藤宗一郎君) 御異議なしと認めます。よって、そのとおり決まりました。
表彰文を朗読いたします。
議員田邉國男君は衆議院議員に当選すること九回在職二十五年に及び常に憲政のために尽くし民意の伸張に努められた
よって衆議院は君が永年の功労を多とし特に院議をもってこれを表彰する
〔拍手〕
この贈呈方は議長において取り計らいます。
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004・伊藤宗一郎
○議長(伊藤宗一郎君) この際、田邉國男君から発言を求められております。これを許します。田邉國男君。
〔田邉國男君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505254X02319990415/4
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005・田邉國男
○田邉國男君 ただいま、永年勤続議員として、院議をもって表彰の御決議を賜りました。身に余る光栄でございます。(拍手)
この栄誉は、ひとえに諸先輩、同僚議員各位、さらには郷土山梨県の皆様の温かい御指導、御支援のたまものであります。ここに改めて厚く御礼を申し上げる次第であります。(拍手)
顧みますと、私が本院に議席を得ましたのは昭和三十三年であります。以来、山梨県知事も務めた十二年を含めて四十年、ひたすら政治一筋の道を歩み続けてまいりました。
当時の日本は、先進諸国とはおよそかけ離れて、経済力も国際的地位も極めて低いものでありました。
岸内閣の時代は、日米安保条約調印の是非で、連日、徹夜国会でありました。与野党若手議員は体を張っての攻防を繰り広げ、我々は国会の全学連とまでやゆされたのであります。
池田内閣が掲げた所得倍増論は、国民に経済発展の期待を抱かせました。一たび成長政策が軌道に乗るや、日本国民の英知と勤勉さは、全世界が目をみはるほどの急成長をなし遂げたのであります。政治も国民も、失っていた自信を取り戻し、経済大国日本への道をまっしぐらに上り詰めていきました。
昭和三十九年の東京オリンピックを挟んだわずか十年余りの短い年月で、日本の歴史を変える大事業をなし遂げた日本国民の優秀性を改めて誇りとするとともに、議会人として微力ながらその一翼を担い得たことに、深い感銘を覚えるのであります。
思うに、三十年代から四十年代にかけて、政治家は、与党、野党を問わず、個性あふれる独自の政策論をひっ提げて国政に取り組みました。おのおのの思想の違いはあっても、国家の再建を願う思い、国を愛する気持ちは同じだったと思います。
GDP世界第二位を達成した原動力は、国民の英知と旺盛なエネルギーであり、政治のリーダーシップでありました。同時に、すぐれた官僚組織でもありました。しかしながら、それ以降、政治家が官僚に過度に依存し、それが官僚支配の風潮を助長する結果にもなりました。これは、議会人として厳しく反省しなければなりません。
今、国民の政治離れが顕著であります。若い世代に政治無関心の傾向が強まっていることは、否定できない事実であります。しかし、政治離れ、政治不信は、実は政党不信であり、政治家不信であると受けとめざるを得ません。無論、私自身、そのそしりを受ける政治家の一人であり、みずからを厳しく反省するがゆえの述懐であります。
願わくは、真の政治改革の出発点として、政治家自身が、初心に立ち戻って、政治家像はどうあるべきか、改めて問い直すべきだと思うのであります。
今日、私たちの日本は、既に半世紀余りの長きにわたり、平和を享受してきました。この平和をいつまで享受し得るか、そのためには我々は何をなすべきか、国際社会への役割は何なのか。特に、国家を守る国民の強い意思と、事に当たり、毅然たる国家の対応なくしては、平和を守り、安寧を維持することはできません。
今、この重要な課題にいかに対応するか、政治家の真価を問われるときであります。あすの日本を、誇りある日本国と国民の久遠の安泰を願うがゆえに、あえて申し上げました。
長年にわたります皆様の御厚情に対し、衷心より感謝を申し上げまして、私のごあいさつとさせていただきます。ありがとうございました。(拍手)
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日程第一 漁船損害等補償法の一部を改正する法律案(内閣提出)
日程第二 持続的養殖生産確保法案(内閣提出)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505254X02319990415/5
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006・伊藤宗一郎
○議長(伊藤宗一郎君) 日程第一、漁船損害等補償法の一部を改正する法律案、日程第二、持続的養殖生産確保法案、右両案を一括して議題といたします。
委員長の報告を求めます。農林水産委員長穂積良行君。
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漁船損害等補償法の一部を改正する法律案及び同報告書
持続的養殖生産確保法案及び同報告書
〔本号末尾に掲載〕
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〔穂積良行君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505254X02319990415/6
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007・穂積良行
○穂積良行君 ただいま議題となりました両法律案につきまして、農林水産委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。
初めに、両法律案の主な内容について申し上げます。
まず、漁船損害等補償法の一部を改正する法律案について申し上げます。
本案は、最近における漁業事情等の推移にかんがみ、漁船保険組合及び漁船保険中央会による保険事業の効率化を推進し、あわせて、新たな保険需要への対応を図るため、政府または漁船保険中央会が行う再保険事業の範囲を見直すとともに、漁船以外の船舶で運搬中の漁獲物等の損害、及びスポーツ等の用に供する小型の船舶による漁船の損害を適切に保険する任意保険事業を実施する制度の整備等を行おうとするものであります。
次に、持続的養殖生産確保法案は、最近における養殖漁場の状況の変化にかんがみ、持続的な養殖生産の確保を図るため、漁業協同組合等による養殖漁場の改善を促進するための措置、及び特定の養殖水産動植物の伝染性疾病の蔓延の防止のための措置等を講じようとするものであります。
両法律案につきましては、三月十八日中川農林水産大臣から提案理由の説明を聴取し、昨十四日質疑を行いました。質疑を終局し、採決の結果、両法律案はいずれも全会一致をもって原案のとおり可決すべきものと議決した次第であります。
なお、持続的養殖生産確保法案に対し附帯決議が付されました。
以上、御報告申し上げます。(拍手)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505254X02319990415/7
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008・伊藤宗一郎
○議長(伊藤宗一郎君) 両案を一括して採決いたします。
両案は委員長報告のとおり決するに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505254X02319990415/8
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009・伊藤宗一郎
○議長(伊藤宗一郎君) 御異議なしと認めます。よって、両案とも委員長報告のとおり可決いたしました。
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労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律等の一部を改正する法律案(第百四十三回国会、内閣提出)及び職業安定法等の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505254X02319990415/9
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010・伊藤宗一郎
○議長(伊藤宗一郎君) この際、第百四十三回国会、内閣提出、労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律等の一部を改正する法律案及び内閣提出、職業安定法等の一部を改正する法律案について、趣旨の説明を求めます。労働大臣甘利明君。
〔国務大臣甘利明君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505254X02319990415/10
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011・甘利明
○国務大臣(甘利明君) 労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律等の一部を改正する法律案及び職業安定法等の一部を改正する法律案について、その趣旨を御説明申し上げます。
まず、労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律等の一部を改正する法律案について、その趣旨を御説明申し上げます。
近年における社会経済情勢の変化を背景として、労働者の就業形態や就業意識の多様化が進んでおり、労働力の多様なニーズに対応した需給の迅速かつ的確な結合を促進し、適正な就業の機会の拡大を図ることが必要であります。
また、一昨年六月のILO総会において、労働者派遣事業を含む民間の労働力需給調整事業の運営を認めること、及びこれを利用する労働者を保護することを目的とする第百八十一号条約が採択されたところであります。
このような状況のもとで、ILO第百八十一号条約の採択により、労働者派遣事業についての新たな国際基準が示されたことを踏まえるとともに、社会経済情勢の変化への対応、労働者の多様な選択肢の確保等の観点から、中央職業安定審議会において、労働者派遣事業制度の見直しについて検討が重ねられ、昨年五月に、臨時的、一時的な労働力の需給調整に関する対策としての労働者派遣事業制度の実施、及び派遣労働者の適切な就業条件の確保を図るための措置を講ずるべき旨の建議をいただいたところであります。
政府といたしましては、この建議を踏まえ、本法律案を作成し、中央職業安定審議会等の関係審議会の審議を経て、成案を取りまとめ、ここに提出した次第であります。
次に、この法律案の内容の概要を御説明申し上げます。
第一に、労働者派遣事業の対象業務の範囲について、港湾運送業務、建設業務、警備業務、その他中央職業安定審議会の意見を聞いて定める業務を除いた業務をその対象業務とすることとしております。
第二に、許可等の手続等について、許可の申請書等の記載事項及びその変更の際の手続を簡素化するとともに、許可等の欠格事由として、社会保険、労働保険等に係る法律の規定により罰金の刑に処せられ、一定の期間を経過しない者を追加することとしております。
第三に、労働者派遣の期間について、臨時的、一時的な労働力の需給調整に関する対策として労働者派遣事業制度を位置づける観点から、専門的な知識、技術または経験を必要とする業務等のうち、中央職業安定審議会の意見を聞いて定める業務等を除き、派遣先は、同一の業務について一年を超える期間継続して労働者派遣を受けてはならないこととしております。
また、労働大臣は、この労働者派遣の期間の制限に違反している者に対し、指導助言をした場合において、なおそれに違反し、または違反するおそれがあるときは、勧告、公表をすることができることとしております。
第四に、派遣先は、一年を超える期間継続して労働者派遣を受けてはならないこととしている業務に、継続して一年間労働者派遣を受けた場合において、引き続きその業務に従事させるため労働者を雇い入れようとするときは、当該派遣労働者を雇い入れるよう努めなければならないこととしております。
第五に、派遣先は、派遣就業が適正かつ円滑に行われるようにするため、適切な就業環境の維持、診療所、給食施設等の利用に関する便宜の供与等、必要な措置を講ずるよう努めなければならないこととしております。
第六に、派遣労働者の適正な就業条件の確保を図るため、派遣元事業主等のその業務上知り得た秘密の漏えいの禁止、労働大臣に対する申告を理由とした不利益取り扱いの禁止、労働者派遣事業適正運営協力員の委嘱等の措置を講ずることとしております。
なお、この法律は、平成十一年七月一日から施行することとしております。
次に、職業安定法等の一部を改正する法律案について、その趣旨を御説明申し上げます。
近年における急速な産業構造の変化や国際化、労働者の就業意識の変化等の社会経済の構造変化に伴い、労働力需給に係るニーズは大きく変化してきております。また、一昨年六月のILO総会において、職業紹介事業を含む民間の労働力需給調整事業に関する新たな国際基準として、これらの事業の運営を認めること及びこれを利用する労働者を保護することを目的とする第百八十一号条約が採択されたところであります。
このような状況及び現下の厳しい雇用失業情勢のもとで、労働者の雇用の安定を図っていくためには、労働力需給のミスマッチを解消し、失業期間の短縮が図られるよう、労働市場のルールの整備充実とその履行確保を図っていくことが重要であります。
このような観点に立って、中央職業安定審議会において、職業紹介事業等に関する法制度のあり方について検討が行われ、本年三月に、公共及び民間の各機関がその特性、活力等を生かし、労働力の需給調整を円滑、的確に行えるようにするとともに、労働者の保護が十分に確保されるよう、職業安定法等の改正を行う必要がある旨の建議をいただいたところであります。
政府といたしましては、この建議を踏まえ、本法律案を作成し、中央職業安定審議会の全会一致の答申をいただき、ここに提出した次第であります。
次に、この法律案の内容の概要を御説明申し上げます。
第一は、職業安定法の改正であります。
その一として、法律の目的の規定に、職業安定機関以外の者の行う職業紹介事業等が労働力の需要供給の適正かつ円滑な調整に果たすべき役割にかんがみ、その適正な運営を確保すること等を追加することとしております。
その二として、公共職業安定所及び職業紹介事業者等は、事業目的の達成に必要な範囲内で、求職者等の個人情報を収集、保管、使用し、これを適正に管理するために必要な措置を講じなければならないこととするとともに、賃金、労働時間といった基本的労働条件等の明示は文書により行わなければならないこととしております。
その三として、有料職業紹介事業について、港湾運送業務につく職業、建設業務につく職業、その他命令で定める職業を除き、労働大臣の許可を受けてこれを行うことができることとするとともに、許可の有効期間を、現行の一年を新規三年、更新五年に延長することとしております。また、無料職業紹介事業の許可の有効期間を現行の三年を五年に延長することとしております。
その四として、通勤圏外からの直接募集に係る届け出を廃止するとともに、委託募集従事者に対する報償金に係る許可制を見直し、認可制とすることとしております。
その五として、公共職業安定所の業務として、求職者への情報提供、地方公共団体、労使団体等の協力による求人または求職の開拓、公共職業能力開発施設等との連携及び職業体験機会の付与等の措置の実施について、新たに規定を設けることとしております。
その他、職業安定機関と職業紹介事業者等の協力、有料職業紹介事業に係る手数料制度の改正、職業紹介責任者の選任義務、有料職業紹介事業者等の秘密を守る義務、求職者等からの労働大臣に対する申告制度、罰則の整備等、所要の整備を行うこととしております。
第二は、労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律の改正であり、派遣元事業主による労働者の個人情報の取り扱いについて、職業安定法の改正内容に準じた規定を設けることとしております。
第三は、建設労働者の雇用の改善等に関する法律の改正であり、労働省令で定める区域に係る直接募集について、通勤圏の内外を問わず届け出を要することとする等、所要の整備を行うこととしております。
なお、この法律は、公布の日から起算して六月を超えない範囲内において政令で定める日から施行することとしております。
以上が、労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律等の一部を改正する法律案及び職業安定法等の一部を改正する法律案の趣旨でございます。(拍手)
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労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律等の一部を改正する法律案(第百四十三回国会、内閣提出)及び職業安定法等の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明に対する質疑発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505254X02319990415/11
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012・伊藤宗一郎
○議長(伊藤宗一郎君) ただいまの趣旨の説明に対して質疑の通告があります。順次これを許します。中桐伸五君。
〔中桐伸五君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505254X02319990415/12
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013・中桐伸五
○中桐伸五君 私は、民主党を代表して、ただいま説明のありました職業安定法改正案及び労働者派遣法改正案について、総理大臣及び労働大臣に質問いたします。
初めに、現下の厳しい雇用情勢についてお尋ねいたします。
二月の完全失業率は四・六%、完全失業者は三百十三万人を記録し、統計史上最悪の状態に陥っております。有効求人倍率は〇・四九倍、中高年層の求職者については、再就職がさらに厳しい状況となっております。政府が実施している場当たり的な景気対策では、本格的な景気回復は望めず、ますます雇用が縮小していくことが予想されます。産業構造転換によって生じている雇用のミスマッチを解消する対策も不十分であります。政府は、平成十一年度の完全失業率の見通しを四・三%程度と発表しておりますが、現状では、この水準を維持できるとは到底考えられません。
昨年十一月九日の政労使雇用対策会議において、政府は、労使による百万人雇用創出などの雇用景気対策の緊急要請について、政府施策としてこれを反映させる必要性に合意をいたしております。しかし、政府が、三月五日の産業構造転換・雇用対策本部において、緊急経済対策の実施により、ここ一両年のうちに期待される雇用創出効果は七十七万人であると発表いたしました。しかも、これは、産業連関指数をもとに計算した雇用創出期待値、つまり、これだけ雇用がふえてくれたらありがたいという数字にすぎません。その一方で、企業のリストラはますます進んでおります。
民主党は、福祉、環境、住宅、情報関連など、社会的ニーズが高く、経済波及効果、雇用創出効果の大きい事業にこそ公共投資を行うことにより、確実に雇用を創出できると考えております。さらに、民主党の起業家倍増プランの実施により、新規事業において十年間で四百万人の雇用創出を提唱しております。
政府として、責任を持って、百万人の雇用創出に取り組むべきだと考えておりますが、どのように実現していくのか、その具体策を総理にお伺いいたします。
次に、今後の雇用のあり方についてお尋ねいたします。
産業構造の転換によるリストラや雇用形態の多様化、そして長引く不景気が相まって、雇用の流動化の名のもとに、雇用調整をしやすい臨時的、一時的雇用の比率をふやそうとする動きがあります。短期的な視野で人的コストを削減しようとすれば、雇用の不安定化や労働条件の低下が助長されるおそれがあり、一方的な常用雇用の切り崩しに歯どめをかける必要があります。
他方、産業構造改革や新規事業への移行に伴う労働移動、あるいは勤労者がよりよい条件の職や自分の能力を発揮しやすい職を選択することによって生じる労働移動は、我が国の産業、経済の活性化にとって非常に必要であると考えます。
こうして、企業内部労働市場における雇用調整だけではなく、外部労働市場を経由した労働移動がふえている状況の中で問題なのは、労働移動において勤労者が不利益をこうむらないための労働市場の環境整備が不十分であり、雇用の不安定化、労働条件の低下が生じていることであります。
民主党は、労働市場の公正さを確保するルールや、労働移動に伴う勤労者の不利益を防止するためのセーフティーネットの確立が必要であると考えております。
すなわち、汎用性のある職業能力評価制度の確立、地域や民間の活力を生かした求職、求人、職業訓練、就職を一貫して支援する制度の確立、転職や雇用形態の違いによって、社会保険、労働保険など社会保険制度上の不利益の解消、労働契約明示の徹底と個別紛争処理機関の整備、雇用のあらゆるステージにおける年齢、性別、障害の有無による差別の撤廃、仕事と家庭生活の両立支援制度の強化などが必要であると考えております。
労働市場の自由化は、こうした社会的インフラを整備してこそ適正に機能すると考えます。政府は、職業紹介と労働者派遣事業の原則自由化の目的は労働力需給調整の円滑化であると説明しておりますが、社会的インフラが整備されていない状況では、労働力需給のミスマッチを根本的には解決できません。今後どのようなプログラムで労働市場の社会的インフラを整備していくのか、総理にお伺いいたします。
さて、職業安定法改正案及び労働者派遣法改正案について、具体的に伺ってまいります。
今回の派遣法改正は、昨年、ILO百八十一号条約で、民間の労働力需給調整事業の運営と労働者保護に関する新たな国際基準が示されたことを踏まえ、臨時的、一時的な労働力の需給調整に関する対策としての労働者派遣事業制度の実施と、派遣労働者の適切な就業条件の確保を図ることを目的にしているとの説明でございました。
しかし、中央職業安定審議会の答申に労働者代表委員が反対し、意見を付している経緯もあり、政府法案はそれらの趣旨を満たすものではありません。派遣労働を臨時的、一時的な労働力として限定すること、派遣元及び派遣先の責任を明確にすることなどの労働者保護措置が十分に整備されなければ、期待される労働需給機能は働きません。
まず、派遣労働の位置づけについて伺います。
今回の改正案により、労働者が派遣された職場では、現行の専門的業務二十六種と新たに解禁となる業務が混在することとなり、派遣期間の制限などについては別建ての規定が設けられることから、現場で混乱が生じることが予想されるとともに、常用雇用の代替防止措置の実効性が低くなることが懸念されます。
法案には、新たに解禁となる業務について、臨時的、一時的な労働力に限定するという規定はなく、派遣労働のコンセプトが欠如していると言わざるを得ません。派遣労働の位置づけについて、将来的には、臨時的、一時的な労働需要に対応するためのテンポラリーワーク型派遣として統一するべきであると考えますが、労働大臣の御所見を伺います。
次に、派遣労働者の派遣期間の制限について伺います。
派遣労働者の位置づけは、あくまで臨時的、一時的な労働力であって、常用労働者を恒常的に代替するものではありません。法案では、現行の二十六業務については契約の更新により最長三年ですが、新たな適用対象については一年に制限されております。しかし、派遣労働者が現行二十六業務と新たな対象業務の両方に従事することを排除しておらず、そうしたケースについて派遣期間をどのように制限するのか、明確ではありません。
また、同一業務について派遣期間を一年に制限するという規定の中で、同一業務をどのように定義するかで、派遣期間の制限の実効性が弱くなると考えられますが、同一業務の定義について労働大臣に見解を求めます。
さらに、法案では、一年を超えて派遣労働者を使用する場合には、派遣先に派遣労働者を優先雇用する努力義務を課しておりますが、実効性が乏しいことが懸念されます。派遣期間が一年を超えた場合であって、派遣労働者が派遣先に雇用されることを希望する場合には、派遣先が派遣労働者を直接常用雇用労働者として雇用するよう、必要な措置を法律に盛り込むべきであると考えます。
また、同一業務について、派遣労働者の使用が終了してから新たに派遣労働者の使用を開始できるまでの期間が定められておりませんが、最低三カ月間のクーリング期間を置くように定めるべきであると考えます。労働大臣の所見を伺います。
次に、派遣労働契約の中途解約について伺います。
ことし三月に発表された東京都労働経済局の調査では、派遣先による派遣契約の中途解除を経験したことのある派遣元は五七・一%に上っております。派遣労働者が派遣労働契約以外の仕事をするよう指示され、拒否した際、派遣先から使い勝手が悪いということで解雇されるというケースが多く報告されております。
現行では、指針において、派遣先の都合による契約の中途解約については、派遣元が派遣先と連携して派遣労働者の新たな就業機会の確保を図ることが定められておりますが、この実効性を強化するために、派遣労働契約の一方的な中途解約に対する保護措置として、指針に規定されている措置の抜本的強化を図り、派遣先の派遣元事業主に対する損害賠償責任を義務づけるとともに、さらに、派遣元事業主が派遣労働者に対し雇用主としての責任を果たすよう、労働基準法等の規定の厳格な履行を確保するべきであると考えます。労働大臣の見解を求めます。
次に、個人情報の保護について伺います。
ILO百八十一号条約第六条は、民間職業仲介事業所が個人情報を処理する際に、情報を保護し、プライバシーの尊重を確保するとともに、個人情報は、資格や職業経験に関連する事項など、直接雇用に関連する事項に限定することを規定しております。
改正案では派遣元に秘密漏えい禁止の義務を課しておりますが、履歴書が派遣先の職場の人にばらまかれていたなどの苦情が出ており、個人情報の受け手である派遣先にも同様の義務を課し、実効性を上げるための制裁措置が必要であると考えます。職安法改正案についても、職業紹介所から個人情報を得た紹介先に秘密漏えいを禁止させる措置が必要であると考えますが、労働大臣にお考えを伺います。
次に、派遣先の職権乱用の防止策について伺います。
派遣労働者が採用されるに当たり、容姿などを理由に採用の差別を受けたり、派遣先でセクシュアルハラスメントを受けても、派遣元に取り合ってもらえなかったというトラブルが発生しております。こうした問題を解消するために、個人情報保護措置のほかに、派遣先による事前面接等の禁止、派遣先におけるセクシュアルハラスメントに対する派遣先の責任の明示を法案に盛り込むべきであると考えますが、労働大臣の考えを伺います。
次に、派遣労働者の社会保険、労働保険の適用促進について伺います。
東京都の調査では、派遣労働者の健康保険加入率は六六%、雇用保険加入率は七三%となっております。雇用保険法では、一年以上の雇用継続の見込みがあることを一般被保険者及び短期雇用特例被保険者の資格を取得する要件としており、一年以内の登録型短期派遣労働者は雇用保険の一般被保険者の資格がないことが問題であります。短期派遣労働者に対して、雇用保険加入の要件の緩和について早急に検討すべきであります。
また、厚生年金制度や健康保険制度は長期安定的な雇用設計を大前提としており、雇用期間が切れ切れになる派遣労働者は手続だけでも煩雑であり、制度の改善について早急に検討すべきであると考えます。
さらに、労働保険、社会保険への加入を徹底させるために、派遣先が、業務の提供を受ける派遣労働者が労働保険、社会保険に加入しているかどうかの確認ができるよう、派遣元が派遣先に対し、社会・労働保険の加入状況を連絡するよう義務づけるとともに、派遣元及び派遣先による派遣労働者の社会・労働保険への加入を徹底させるために、必要な措置を法律に明記するべきであると考えます。
これらの点について労働大臣の見解を伺います。
私がここで取り上げた問題点は一部にすぎず、このほかにも、派遣労働者の職業能力の向上に資する教育訓練の機会の創出、出産、育児、介護等に係る支援体制の整備、労働者派遣事業と請負事業の区分の明確化、個別紛争処理機関の整備、職業紹介事業としてのアウトプレースメント事業の運営や、職業安定所の提供するサービスに対する手数料徴収の適正化に資する基準の整備、公共職業安定所と民間有料職業紹介所の協力体制の強化など、多くの課題が残っており、これらの措置が整備されなければ、改正法案が目的とする適正な労働需給調整機能は到底働かないと申し上げて、私の質問を終わります。(拍手)
〔内閣総理大臣小渕恵三君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505254X02319990415/13
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014・小渕恵三
○内閣総理大臣(小渕恵三君) 中桐伸五議員にお答え申し上げます。
雇用創出に向けての具体策についてお尋ねがございました。
まず、昨年十一月の緊急経済対策におきまして、百万人の雇用創出、安定を目指し、思い切った対策を決定いたしたところであります。さらに一層の具体的推進を図るべく、先月五日に開催されました産業構造転換・雇用対策本部におきまして、保健福祉、情報通信など四つの分野について、ここ一両年に期待される雇用創出の規模が七十七万人に上ることを明らかにしたところであります。今後とも、雇用の創出、安定に向けて全力で取り組んでまいります。
労働市場の社会的インフラ整備についてお尋ねですが、産業構造の変化や高齢化の進展、労働者の就業意識の変化等の経済社会の変化に対応し、労働法制や雇用対策について不断の見直しを行ってきたところであります。二十一世紀に向けて我が国経済社会の活力を維持していくためにも、今後とも労働市場の整備に適切に取り組んでまいります。
残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)
〔国務大臣甘利明君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505254X02319990415/14
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015・甘利明
○国務大臣(甘利明君) 中桐先生の御質問にお答えいたします。
まず、派遣労働の位置づけについて、テンポラリーワーク型派遣として統一すべきとのお尋ねでありますが、今回の改正法案は、労使の多様なニーズに対応をした臨時的、一時的な労働力需給の的確、迅速な結合を促進するための労働者派遣事業が行えるようにするとともに、労働者保護措置の拡充を図ろうとするものでありまして、基本的には、テンポラリーワーク型派遣として派遣労働を位置づけております。
専門的な知識、技術または経験を必要とする業務や特別の雇用管理を必要とする業務の取り扱いについては、派遣労働者の専門的な能力等を生かす観点から、引き続き現在の枠組みを維持すべきと考えておりますが、このような業務の範囲については、今後必要に応じて検討していきたいというふうに考えております。
次に、派遣労働者が現行二十六業務と新たな対象業務の両方に従事をする場合における派遣期間の制限についてのお尋ねでありますが、労働者派遣の一年の期間制限を適用することを考えております。
続きまして、同一業務の定義についてのお尋ねでありますが、同一業務とは、派遣労働者が就業する課よりも小さい、組織の最小単位であります係であるとかあるいは班において行われる業務として、解釈、運用することを考えております。
次に、派遣期間が一年を超えた場合の措置及びクーリング期間についてのお尋ねでありますが、改正法案では、派遣先は、同一の業務について、一年を超えて労働者派遣を受けてはならないこととしておりまして、同一の業務に同一の派遣労働者を一年を超えて受け入れた派遣先について、雇用の努力義務の規定を設けております。これは企業における労働者の採用の権限と、派遣労働者の雇用の安定等との調整で設けているものであります。
一年間の派遣の後に、同一業務についてどの程度の期間を経れば再び労働者派遣を受けることができるかにつきましては、関係審議会の御意見も伺いながら検討してまいります。
次に、労働者派遣契約の中途解除についてのお尋ねでありますが、派遣先による派遣契約の一方的な中途解除に対しましては、派遣元事業主及び派遣先が講ずべき措置に関する指針におきまして、派遣元事業主は、派遣先と連携して、派遣先の関連会社のあっせんを受ける等によりまして、派遣労働者の新たな就業機会の確保を図るべきものとするとともに、派遣先は、契約解除の事前申し入れや損害賠償等について、適切な善後処理方策を講ずることとしております。
労働省といたしましては、この指針に基づき、派遣先に対しまして損害賠償等の実施を含め必要な指導に一層努めるとともに、派遣元事業主が労働基準法等に基づく雇用主としての責任を全うするよう、法定労働条件の履行確保に引き続き努めてまいります。
次に、個人情報の保護について、派遣先や職業紹介先の事業主にも義務を課して、制裁措置を設けるべきではないかとのお尋ねであります。
今般の派遣法改正案及び職業安定法改正案における秘密漏えい禁止の義務は、ILO第百八十一号条約を踏まえまして、労働力の需給調整の事業を行う者を対象に規制を行うものであります。
労働者派遣事業における派遣先につきましては、条約の規制の対象外にあるとともに、今般の派遣法改正案におきましては、法律上は、派遣元事業主に秘密漏えいの禁止の義務が課されておりますから、派遣先には派遣労働者の秘密が伝わらないという仕組みになっておりますことから、派遣先に秘密漏えいの禁止の義務を課することは困難でありまして、現実的ではないと考えております。
また、職業紹介事業における紹介先については、以上のような事情に加えまして、職業紹介以外の方法で労働者を雇用する事業主との均衡を図るという観点からも、これに制裁措置を講ずることは困難かつ現実的ではないというふうに考えております。
次に、派遣先における事前面接、セクシュアルハラスメントについてのお尋ねでありますが、派遣先による事前面接については、それが労働者派遣事業の趣旨に反することでありますので、これまでも、業界団体等に対しまして、そのような行為を行わないよう要請しているところでありまして、そのような事案がある場合には、厳正な指導を行ってまいります。
派遣先におけるセクシュアルハラスメントにつきましては、現行法においても、派遣先の苦情処理に関する規定や、苦情の処理に関する事項等を扱う派遣先責任者の選任義務の規定を設けているところであります。また、今回の改正法案におきましては、派遣先は、派遣労働者の適切な就業環境の維持等の措置を講ずるように努めなければならない旨を規定したところであります。さらに、派遣先が講ずべき措置について労働大臣が定める指針におきまして、セクシュアルハラスメントの防止のために派遣先が講ずべき措置を明記することを検討しているところであります。
最後に、派遣労働者の労働保険、社会保険への加入についてのお尋ねであります。
派遣労働者に対する雇用保険等の適用のあり方につきましては、その短期雇用が繰り返されるという就業状態を踏まえまして、今後検討を行っていくべきものと考えております。
また、労働保険、社会保険の加入の促進につきましては、現在、派遣元事業主及び派遣先が講ずべき措置に関する指針におきまして、派遣元事業主は労働・社会保険の適用手続を適切に進めることとし、必要な指導を行ってきているところでありますが、今回の改正法案におきましては、社会保険の未適用を理由として処罰されたこと等を許可の欠格事由及び取り消し事由等へ追加したところでありまして、このような規定の厳正な適用によりまして、社会・労働保険の加入を一層促進してまいります。(拍手)
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〔議長退席、副議長着席〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505254X02319990415/15
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016・渡部恒三
○副議長(渡部恒三君) 大森猛君。
〔大森猛君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505254X02319990415/16
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017・大森猛
○大森猛君 私は、日本共産党を代表して、職業安定法並びに労働者派遣法の一部を改正する法律案に対して、総理並びに労働大臣に質問をいたします。
そもそも職業安定法は、一九四七年、新憲法のもとでの第一回国会で、国民の権利とされた憲法第二十二条、職業選択の自由、二十五条、生存権の保障、二十七条の勤労権保障を受けて制定されたものであります。
職安法制定の意義は、第一に、職業紹介における国の責務を明らかにし、戦前の日本社会に広く存在していた前近代的な金もうけのための職業あっせん業に対し、何人も有料の職業紹介を行ってはならないと、これをかたく禁止したことにあります。すなわち、職業紹介の原則は、国の機関である公共職業安定所による無料の職業紹介であるとされたのであります。
第二に、職業安定法は、タコ部屋労働などの原因であった人貸し業についても、その第四十四条で労働者供給事業を禁止し、我が国社会に根強く存在していた中間搾取を否定したことであります。
このような職業安定法の制定は、労働基準法や労働組合法の制定と相まって、我が国の労働者が長らく置かれていた半封建的な労働条件や労働慣行を大きく変え、戦後日本の民主的再建、労働関係の近代化に大きな役割を果たしてきたのであります。
ところが、十三年前の一九八六年、当時の自民党・中曽根内閣は、職安法では本来許されない労働者供給事業を容認する労働者派遣事業法を制定、施行し、職業安定法の一つの柱に大きな風穴をあけたのであります。
そして今回、政府が提出した職安法改正案は、有料職業あっせん事業を、建設と港湾運送を除くすべての職業に全面的に解禁し、さらに、派遣事業法改正案は、建設、港湾運送、警備を除き、原則としてすべての産業とあらゆる業務への労働者派遣を解禁しようというものであります。このような法改正は、憲法に基づいた職業安定法という基本法の立法理念、目的、性格を根底から変えてしまうものであります。
そこで、総理にお尋ねしたい。
一体、総理は、職業安定法のこうした基本原則はもはや不必要だとでも言うのですか。大体、総理、今日、あなたを含め歴代自民党政府の失政のもと、雇用失業情勢は、戦後の混乱期を除けば史上最悪、最大であります。大企業では、ブリヂストンの事件にも見られるように、労働者の人権を無視したリストラが荒れ狂い、ちまたにはホームレスがあふれています。歴史的に見ても、こうした労働情勢の悪化のもとで、いわゆる人入れ稼業、タコ部屋など、不法な事態が蔓延するのであります。
まさに、本法制定以来、今ほどこの職業安定法の原則の徹底が求められているときはありません。今回の改悪は、こうした悪徳業者の跳梁ばっこを許すものではありませんか。そうではないと言い切れますか。総理の明快な答弁を求めるものであります。(拍手)
労働大臣にお尋ねします。
十三年前に派遣業を公認して以来、正規に許可、認可を受けた派遣事業者以外には派遣は行われていないのか。派遣業法違反や職安法四十四条、労働者供給事業違反で摘発された業者はどれくらいいるのですか。ほとんど摘発されないまま、野放しとなっているのが実情ではありませんか。
職安法の例外として制定された労働者派遣法の弊害は、今や明白であります。私が直接調査したある大手の自動車メーカーの現場に派遣された労働者からは、手取り十数万円、年休はなし、出勤日が少ないと食べる金もない、作業着が破れたらガムテープで補修、余りつらくて夜逃げをした仲間もいるなど、昔のタコ部屋を思わせる声まで上がっています。この工場では、正規社員はどんどん減らされ続け、雇用の不安定な派遣社員が、実に工場全体の三分の一を占める状態にまでなっております。
弁護士などが行った派遣労働一一〇番に寄せられている声は、契約期間が残っているのに、あすから来なくてもいいと言われ、解雇予告手当も支払われない、仕事の内容や働く場所が契約と違う、有給休暇もなく、雇用保険などの社会保険にも入れないというものであります。
このような過酷で不法な実態は、五カ月前に労働省自身が発表した調査でも全く同様であります。契約期間中なのに突然解雇された、派遣元に社会保険への加入手続を依頼したら拒否された、有給休暇を請求したら、派遣労働者に有給休暇はないと断られたなどなど、これが実態なのであります。
労働大臣、このような苦情が一般の常用雇用労働者からも同じようにあるでしょうか。ないのなら、派遣労働という形態が、どれだけ労働者を無権利、不安定な状態に置くか、そのことをまさにこれは示しているのではありませんか。答弁を求めるものであります。
労働大臣、政府の統計でも、派遣労働者の数は八十六万人にも達しています。政府案のように現在の二十六業務の制限をすべて取っ払えば、一体、派遣労働者は何百万人にまで広がると考えているのですか。大手の派遣会社の経営者は、対象が雇用者総数の三分の二にまでも広がると公言しているのであります。今でさえ、無権利状態の改善が進まないのに、爆発的にふえるであろう派遣労働者の権利は、どうして守れるというのですか。明確にお答えください。
また、すべての業務に派遣労働を認めよというこのような要求は、一体、いつ、だれから、どんな団体から政府に出されたのですか。財界からの、低賃金労働者をつくり出すための規制緩和要求ではないのですか。それとも、労働団体から要望があったとでも言うのですか。はっきりとお答えください。
総理、国民の七割を占める労働者家庭の生活基盤が不安定雇用化されることは、社会の安定が失われることであり、二十一世紀の日本にとってもゆゆしきことであります。だからこそ、労働組合のナショナルセンターすべてが反対し、法曹界も、日弁連を初め反対の声を上げているのであります。これらの声に謙虚に耳を傾けるべきではありませんか。それとも、財界にしかかす耳はないとでも言うのですか。
政府、財界は、この法律によって、あたかも雇用機会が広がるかのように言います。しかし、それは全くの詭弁であります。経済協力開発機構、OECDの「政策フォーカス」、昨年十二月号では、雇用柔軟化について、雇用を拡大するという意欲は、どれだけ解雇しやすいかにかかっていると述べています。財界の求めているのは、まさに、いつでも解雇できる状態ならば雇ってもよいというものではありませんか。
先月、東京都労働経済局が公表した、派遣労働に関する調査結果では、今回の改正案に対し、経営者の側からさえ、専門性があいまいになり、派遣労働者の質が低下する、二三・五%、不安定雇用層が広がり、社会的に好ましくない、二〇・八%と、厳しい意見が出されています。また、同労働経済局は、現行法で派遣労働者は基本的に専門職と位置づけられており、現在の利用のされ方は法の趣旨に反している、労働条件の保護策充実が急務だと述べています。これらの意見や分析をどうお考えですか。はっきりとお答えください。
労働省の調査でも、派遣労働の弊害が最も鋭くあらわれているのが登録型派遣であります。八五年の法制定時にも、派遣元と派遣先が契約した期間だけ労働契約が結ばれるとする、登録型派遣の弊害が大きな問題となりました。そして、現在では、これが労働者派遣の典型となっております。間接雇用に加え、短期雇用の弊害が集中してあらわれており、社会保険、雇用保険の不適用や、年休、育休、産休の取得の困難さ、交通費の不支給、有料講習と派遣紹介の不履行などなどが横行しているのであります。
登録型派遣、その実態は、労働者を登録させているだけの有料職業あっせん事業であります。今回の改悪で、広範に有料職業あっせんが解禁されれば、その区別はつかず、その害悪が全産業、全業務に波及することになります。隣の韓国やヨーロッパの多くの国でも、この登録型派遣事業は禁止されております。経過措置をとった上で、登録型については禁止をすべきではありませんか。労働大臣の見解を求めるものであります。
総理、派遣労働者の団結権の問題についてお尋ねします。
登録型などは、極めて雇用保障が弱い労働者であります。しかも、派遣先では外部社員として、企業別労働組合にも加入できない状況があります。ILO条約では団結権の保障を掲げていますが、派遣労働者自身に憲法で保障された団結権を、どう具体的に、実体的に保障していくのか。派遣法を制定した国の責任として、明確な答弁を求めるものであります。
政府は、本法案の提出理由に、ILO百八十一号条約、民間職業仲介事業所に関する条約を批准するためとの大義名分を掲げています。しかし、この百八十一号条約が各国政府に求めたものは何だったのか。派遣事業や有料職業紹介事業から、いかにして労働者を例外なく保護するかでありました。それは、同条約を補完する百八十八号勧告において、民間職業紹介事業所による非倫理的な行為の防止、排除が、制裁を含め盛り込まれたことなどでも一層明確であります。
だからこそ、我が国の使用者代表は、ILOにおいて、同勧告には棄権の票を投じたのであります。それをあたかも規制緩和の義務づけであるかのように一方的に解釈し、強引に押しつけることは、到底許せません。百八十一号条約は、有料職業紹介事業所の解禁を義務づけたものなのですか。なぜ、条約及び勧告に示された労働者保護措置の完全履行を行わないのですか。労働大臣の明確な答弁を求めます。
総理、結局本法案は、大企業が、安上がりで、いつでも雇用調整できる労働者を、一層大量につくり出すための法改悪であり、日本共産党は、このような改悪案は断じて認めることはできません。本法案の撤回を強く求めるものであります。今労働行政に求められているのは、職安法の原則に立ち、派遣労働者保護を徹底する法改正であります。日本共産党は、この立場から、昨日、政府改正案に対する対案を提出いたしました。
その主な柱は、一、法律の性格及び題名を、派遣事業法から派遣労働者保護法に改める。二、派遣事業の対象業務の全面自由化を認めず、現行の二十六業務に限定する。三、派遣は常用型のみとし、登録型は三年間の経過措置を講じて禁止する。四、直接雇用の原則を明確にし、正規雇用との代替が進まないようにする。五、一般の労働者に保障されている権利を派遣労働者にも保障するために、派遣先労働者との均等待遇、団結権を保障する援助措置、違法派遣の厳正な取り締まりなど、派遣労働者の権利保護を抜本的に拡充するなどであります。
こうした方向こそが、今日、派遣労働にかかわる世界の流れであり、その立法化は、国際ルールを守り、労働者と世界の信頼を取り戻し、働く意欲をつくり出すものであり、すべての労働者の共感と支持を得るものだと確信をするものであります。
私は、この対案の成立に向け、全力を尽くすことを表明し、質問を終わるものであります。(拍手)
〔内閣総理大臣小渕恵三君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505254X02319990415/17
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018・小渕恵三
○内閣総理大臣(小渕恵三君) 大森猛議員にお答え申し上げます。
まず、職業安定法の基本原則に関するお尋ねでありましたが、現下の厳しい雇用失業情勢のもとで、ミスマッチを解消し、雇用の安定を図るためには、公共とあわせ民間の活力や創意を生かしていくことが重要でありまして、港湾運送業務につく職業等を除き、有料職業紹介事業の運営を認めることが適切と考えております。
労働者供給事業につきましては、中間搾取等の弊害防止の観点から、引き続き原則禁止とすることといたしております。
東京都が実施した調査への対応についてお尋ねでありましたが、今回の改正法案は、派遣労働者の実情等を十分踏まえ、常用雇用労働者の代替を防止するため、労働者派遣の厳格な期間制限を設けるとともに、労働者保護措置の充実を図るものでありまして、不安定雇用の増大や労働者保護の面での弊害が生じないよう措置をしておるところであります。
派遣労働者の団結権の保障についてのお尋ねでありますが、労働組合法により派遣労働者も労働者として団結権を保障されており、また、労働条件を決定する立場にある派遣元事業主が、使用者として団体交渉に応じる責任を負っていることから、労働者派遣法制定時より、派遣労働者の団結権は保障されております。
残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)
〔国務大臣甘利明君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505254X02319990415/18
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019・甘利明
○国務大臣(甘利明君) お答えいたします。
まず、労働者派遣法及び職業安定法違反についてのお尋ねでありますが、労働者派遣法違反に係る検察庁新規受理人員、こう呼ぶのだそうでありますが、平成五年に二百人と過去最高であった以降減少し、平成九年には再び増加に転じ、百二十六人となっております。また、職業安定法違反については、第四十四条以外の違反も含む違反事案全体に係る検察庁新規受理人員は、おおむね二百人台で推移をしており、平成九年は二百九件となっております。
次に、派遣労働者の苦情についてのお尋ねでありますが、派遣一一〇番の相談内容や、全国の公共職業安定所に派遣労働者等から寄せられた苦情相談の状況を見ますと、適用対象業務以外の業務の派遣に関するもの、労働者派遣契約の中途解除を含む解雇に関するもの、賃金に関するもの、就業条件の明示に関するものが比較的多く見られたところであります。このうち、適用対象業務以外の業務の派遣に関するもの、労働者派遣契約の中途解除を含む解雇に関するものにつきましては、派遣労働者特有のものと考えられます。
労働省といたしましては、適正な派遣就業を確保するために、指針の関係事業主への徹底を図るとともに、改正法案では、違反事案に係る申告制度の創設等、労働者保護措置の拡充を図ることとしているところでありまして、これらの措置により、派遣労働者の保護に万全を期してまいりたいと考えております。
次に、派遣労働者の増加についてのお尋ねであります。
現在、二十六業務に限定をされている対象業務について、建設や物の製造等の業務を除く広範な分野に拡大すること、また希望にかなった職場や日時に合わせて働きたいという労働者が増加をしてきていること等から、派遣労働者の数は相当程度増加するものと考えております。
派遣労働者の権利を保護するために、就業条件の明示、派遣元責任者、派遣先責任者の選任等の現行の措置に加えまして、改正法案では、派遣期間を超えた場合の派遣先の雇用の努力義務、派遣労働者による労働大臣への申告制度、派遣労働者の個人情報の保護等を新たに設けることとしております。今回の改正法案を成立させていただければ、これらの措置を厳正に運用していくことによりまして、派遣労働者の保護に十分な実効性が上がるものと考えております。
次に、すべての業務について派遣労働を認めるという要望についてのお尋ねであります。
平成九年三月から五月にかけて行われました今回の労働者派遣事業制度の見直しに係る中央職業安定審議会におけるヒアリング等におきまして、派遣元事業主の団体、経営者団体から、適用対象業務の拡大についての要望が出されております。具体的に申し上げますと、日本経営者団体連盟、経済団体連合会等の経営者団体、そして日本人材派遣協会等の派遣元事業主団体から要望が出されたところでございます。
次に、登録型派遣事業を廃止すべきとのお尋ねであります。
仮に登録型の労働者派遣事業を認めないこととしますと、自分の希望する職場や日時等に合わせて働きたいとする労働者や、派遣元に常時雇用されることを望まない労働者等の多様な就業ニーズにこたえることができなくなるなど、厳しい雇用失業情勢のもとでかえって就業の機会を狭めることになり、適当ではないと思っております。
最後に、ILO第百八十一号条約の趣旨及び同条約等の労働者保護措置の完全履行についてのお尋ねであります。
ILO第百八十一号条約につきましては、民間の労働力需給調整事業について、その事業の運営を認めること、及びこれを利用する労働者を保護することを目的とする条約でありまして、今国会に締結承認案件として提出をさせていただいているところでありますが、本日議題とされている両法案は、同条約の規定を実施する上で必要となる国内法の整備を含むものでありまして、両法案が成立をしますと、同条約に定める労働者保護措置は、すべて履行されることとなります。
第百八十八号勧告につきましては、加盟国に法的義務を課すものではございません。
以上です。(拍手)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505254X02319990415/19
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020・渡部恒三
○副議長(渡部恒三君) 濱田健一君。
〔濱田健一君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505254X02319990415/20
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021・濱田健一
○濱田健一君 私は、社会民主党・市民連合を代表いたしまして、ただいま議題となりました職業安定法の一部を改正する法律案及び労働者派遣法の一部を改正する法律案に対し、小渕総理並びに甘利労働大臣にお尋ねいたします。
職業安定法の一部を改正する法律案は、批准を予定しているILO百八十一号条約の内容を踏まえつつ、公的職業紹介機関と民間の職業紹介事業等について、労働力需給調整機能の強化と求職者の利益保護を図る観点から、必要な整備を行うこととしております。底割れ懸念さえある現在の雇用失業情勢を好転させるためにも、文字どおりこの目的を追求できるのなら問題はありません。しかしながら、求職者の利益保護の面で十分なものになっているのか、心配が残るのも事実でございます。
同条約は、その規定の枠組みにおいて、民間職業紹介事業所の運営を認め、そのサービスを利用する労働者を保護することにあると明確にうたっています。つまりは、民間と公的職業紹介の共存を前提に、派遣事業や多様な民間雇用サービスに適切な規制を加えて弊害を除去し、新たな状況に対応した労働者保護を定めることにこそ、力点が置かれていると言えます。
個人情報の保護については、罰則規定を含め、格段の前進が図られたものと評価するものですが、差別的待遇の禁止などに関し、どのように実効性が確保されているのか、甘利労働大臣にお伺いいたします。
次に、労働者派遣法の一部を改正する法律案についてお尋ねいたします。
直近のデータになる二月の完全失業率は四・六%となり、過去最悪の水準を更新したばかりではなく、完全失業者数も初めて三百万人を超えるなど、雇用情勢の厳しさが一段と鮮明になってきました。公共事業の追加や公的資金による貸し渋り対策等で、辛うじて支えられているとも言える現状の景気においてすら、この深刻さです。
十三日に発表された四年制大学生の就職内定率も、これまた初めて九割を下回りました。このままでは、経済対策の息切れと遅行性を持つ雇用情勢の一層の悪化が、最悪のタイミングでぶつかり合う事態すら想定しておかなくてはならない正念場を、我が国は迎えようとしていると言わざるを得ません。
このような雇用情勢の推移を展望するならば、派遣法の見直しを今強行することが果たして時宜を得ているのか、私自身は疑問を覚えざるを得ないのであります。
政府は、有料職業紹介や派遣労働の自由化によって、新たに六十万人程度の雇用創出効果が生まれると見込んでいるとも聞くところです。しかし、自由化による副作用も冷静に推しはかった上での数字となっているかどうか。以下の諸点も踏まえて、小渕総理にお伺いしたいと存じます。
第一に、派遣労働の自由化は正規雇用に取ってかわるものではないと、幾ら労働省が強調したところで、未曾有の長期不況下、企業の経営状態の深刻化の度合いに正比例する形で、正社員のリストラ誘因として働きかねないという問題です。とりわけ、デフレ経済の進行を伴う不況下においては、大胆なコスト削減策こそが至上命題となるために、少なくとも現局面における自由化は、正規雇用の代替機能としての側面を、不幸にして持たざるを得ないのではないでしょうか。
また、自由化は大きな経済効果を生むという確信を政府は持っておられるようですが、そのような大団円を本当に迎えることができると言い切れますか。現局面における自由化が正規雇用の代替として機能するならば、低賃金層の増大による消費停滞の一層の拡大すら懸念されると言わなくてはなりません。要するに、政府が講じてきた経済対策にとっては、自由化による規制緩和効果よりも、萎縮効果の方が大きくなりかねない点が第二の問題点となります。
当然、このような負の作用も比較考量しなければならないと思料するところですが、本見直しが時宜を得ているかも含めて、小渕総理の明快な答弁をお願いいたします。
以下、甘利労働大臣にお尋ねいたします。
日本経済の発展の支えとなってきた終身雇用制度等に代表される日本的雇用慣行を、どのように位置づけ、評価した上での派遣労働の自由化となっているのか、まず明らかにしていただきたいと思います。また、このような我が国固有の雇用慣行を評価し、堅持する立場をとるならば、見直しに当たっては、九六年改正の労働者保護ルールの検証も含めて、諸外国にまさる、より厳格な法規制こそが要請されているとも考えざるを得ないのですが、御見解をお示しください。
産業界等の規制緩和の大合唱の前に自由化を急ぎ過ぎた政府原案のままでは、肝心の労働者保護がなおざりにされ、使い勝手のいい労働力を確保したいという、企業のいいとこ取りに終わってしまうと、強く警鐘を鳴らさざるを得ないのであります。派遣法は、派遣事業のあり方のみを定めているのではありません。派遣で働く人々の雇用と労働条件を保障して、人間としての尊厳を守るための法律でもあります。
今回の見直しが期待する労働力の流動化が、労働力需給のミスマッチを解消するための重要な要素の一つとなることは、私も否定するものではありません。しかし、一方で労働市場は、物や金の市場とは全く違う性格を持つものであることも、明確に意識する必要があります。
労働力という商品は、人間の肉体と不可分であり、その肉体的、精神的諸能力の総体です。人間は二十四時間単位で生活している生き物ですから、その生活の範囲でしか労働の提供は行えません。また、労働力は継続的に売られる必要があります。例えば、職場の安全管理が悪くてけがをすれば、労働力商品の価値が失われます。したがって、労働者が、労働条件、職場の安全や衛生管理などについて発言するのは当然の権利となります。
さきに触れたILO百八十一号条約が求めている、求職者や派遣労働者の利益保護は、このような考えに立脚するものであることは論をまちません。今回の見直しが、この世界標準に合致する内容になっているのか、残念ながら私は、心もとなさを禁じ得ないのであります。
派遣労働の自由化とは、市場原理にゆだねること、つまりは、仕事の仕方も労働条件も、自己責任あるいは労使の自主的話し合いに任せるという点に、実質的な意味があります。ここで求められる自己責任とは、社会や職場にあるさまざまな矛盾までもを、みずからが引き取ることにほかなりません。
ところが、悲しいかな、派遣労働に係るトラブルを見ても、日本の企業は、その行儀の悪さを厳しく指摘されても仕方のないような実態レベルにある例も散見できます。例えば、特定業務派遣という法律の規制や契約を無視して、自社社員のように契約外の仕事を強いる違法行為が横行してきたのは、周知の事実であります。
このような違法実態の改善が、新たに採用される申告制度や、申告を行った者に対する不利益取り扱いの禁止等によって、どの程度図られるとお考えなのか、お答えください。
最大の問題は、新たな派遣は一年を限度とするが、これを超えて雇用を継続しようとする場合の派遣先の雇用責任がはっきりしないことであります。見直し案では、正社員として雇うようにという努力義務にとどまっています。その上で、履行を怠ったケースにおいては、雇い入れ勧告及び企業名の公表という措置を講じることになっています。
労働省は、フランスやドイツのように、期間制限を超えた場合の派遣先の雇い入れの義務化を行わなくても、同等の効力を有すると強調しておられます。その言に偽りなきを期すならば、なおのこと、労働側が求めている派遣先の雇い入れの義務化を、法律上明記した方がすっきりするのではないでしょうか。また、企業側の論理としても、そこまで囲い込みたいほどの有能な派遣スタッフならば、常識的には正社員として採用したいという意欲が強まることの方が自然です。
このような企業の行動原理を踏まえるならば、企業側が雇い入れの義務化に抵抗する論拠は、極めて薄いものになるのではないでしょうか。なぜ、義務化ではなく努力規定にとどめざるを得ないのか、その説得的な理由をお聞かせください。
プライバシー保護は、派遣労働者の権利擁護の根幹をなすと言えます。労働省においても異論のないところだと思われますが、そうであるからこそ、環境整備の充実にとどまらない罰則規定が求められているのではないでしょうか。しかし、一方で、他の労働法制との均衡上、個別法としての対応には無理があるという労働省の判断も、私自身は尊重したいと思っています。
ただ、それゆえにこそ、労働省が率先して包括的個人情報保護法の早期成立に取り組むべき責務を負うことになると考えますが、制定に向けた労働省の不退転の決意を明らかにしていただきたいと存じます。
日本経済発展の礎ともなってきた終身雇用制等のなし崩しにつながりかねない危険性も含めて、ことほどさように多くの課題を包含する派遣法の見直しです。いやしくも、日程優先の拙速審議は厳に慎まなければなりません。
派遣労働の原則自由化に係るすべての懸案、懸念が解決、解消するまで、つまりは、単なる見直しのレベルから、改正というにふさわしい内容にまで高められるように徹底審議を尽くすという方針を、小渕総理に自民党総裁の立場から明確にお示しいただくことをお願いして、質問の締めくくりといたします。(拍手)
〔内閣総理大臣小渕恵三君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505254X02319990415/21
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022・小渕恵三
○内閣総理大臣(小渕恵三君) 濱田健一議員にお答え申し上げます。
今回の派遣法改正は、時宜を得たものと考えるかとのお尋ねでありました。
本改正は、常用雇用労働者の代替等の弊害を防止するための措置を講じつつ、臨時的、一時的な労働力需給の的確、迅速な結合を促進しようとするものでありまして、職業安定法改正とともに、現下の厳しい雇用失業情勢のもとで、労使双方の多様なニーズに対応し、適切な就業機会の拡大に資するものと考えております。
次に、法案は徹底審議を尽くすべきとの御指摘でありますが、私といたしましても、みずからハローワークを訪問し、指示を行い、スピーディーに措置を講ずるなど、雇用問題を重要な課題と認識し、雇用対策の推進に全力で取り組んでおり、この法案は、労使の多様なニーズに対応した適切な就業機会の拡大に資するものと考えております。何とぞ、御審議の上、速やかに成立させていただきたいと考えております。
残余の質問につきましては、関係大臣から答弁いたさせます。(拍手)
〔国務大臣甘利明君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505254X02319990415/22
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023・甘利明
○国務大臣(甘利明君) 濱田先生の御質問にお答えをいたします。
まず、ILO第百八十一号条約に基づく求職者の保護措置に関するお尋ねでありますが、同条約は、民間による職業紹介事業等の運営を認めるとともに、そのサービスを利用する労働者を保護することを目的とし、個人情報の保護のほか、均等待遇の促進、苦情等の調査制度の維持等の措置を講ずることを加盟国に求めております。
このために、今回の改正法案においては、個人情報の保護、法違反に関する求職者による申告制度等についての規定を新たに設けております。また、差別的取り扱いの禁止につきましては、その旨現行法に規定をしておりますが、改正法案においては、職業紹介事業者が現行法の規定に適切に対処するための指針を労働大臣が示す旨を規定しております。これらの規定が厳正に遵守されるよう、指導に努めてまいります。
次に、日本的雇用慣行についてのお尋ねでありますが、我が国の雇用慣行は、一般的には長期雇用や年功賃金を特徴とするものと言われておりまして、長期的な観点からの能力開発を可能にするなど、企業の発展と労働者の雇用の安定に寄与してきたものと認識をしております。一方で、最近は、高齢化の進展、あるいは産業構造や労働者の就業意識の変化等の経済社会の変化の中で、能力、業績主義的な賃金制度が導入されるなど、変化の動きも見られるところであります。
今後につきましては、長期雇用のメリットを生かしつつ、産業構造等が変化する中で、活力ある経済社会を維持する観点から、どのような雇用システムが望ましいか、労使間の十分な話し合いで決定されることが重要ではないかと考えております。
こうした観点から、今回の改正法案は、長期雇用慣行などの雇用慣行を損なうことのないよう、労働者派遣の期間を原則一年に制限しまして、常用雇用労働者の派遣労働者への代替を防止するための措置を講じつつ、労使の多様なニーズに対応した、臨時的、一時的な労働力需給の的確、迅速な結合を促進するための労働者派遣事業を行えるようにするものであります。
次に、労働者派遣事業制度の見直しについては、厳格な法規制を行うべきとのお尋ねであります。
今回の見直しに当たりましては、前回改正によります適切な苦情処理のための措置や、不適正な労働者派遣の受け入れを是正するための措置等の労働者保護措置を一層充実させるために、違法事案があった場合における派遣労働者による労働大臣への申告制度、及び申告を理由とする不利益取り扱いの禁止や、派遣先での適切な就業環境の維持等の措置の実施に関する規定を新たに設けております。
さらに、今回の改正法案におきましては、労働者派遣の期間を原則一年に制限するなど、常用雇用労働者の派遣労働者への代替を防止するための厳格な措置を講じているところでありまして、この改正は、長期雇用慣行などの雇用慣行を損なうものではないというふうに考えております。
次に、労働者派遣事業の改善についてのお尋ねであります。
今回の改正法案におきましては、違法事案があった場合における派遣労働者による労働大臣への申告制度、及び申告を理由とする不利益取り扱いの禁止に関する規定を新たに設けております。派遣労働者から違法行為についての申告がなされた場合には、事実関係について調査を行いまして、必要に応じて是正指導を行います。悪質な法違反に対しましては、改善命令、事業停止命令、許可の取り消し等を含めた厳正な対処をしてまいりたいと考えております。このような措置によりまして、労働者派遣事業の適正な運営と、派遣労働者の保護が十分に図られるものと考えております。
次に、派遣期間の制限を超えた場合の派遣労働者の雇い入れについてのお尋ねであります。
この努力義務の規定は、企業の労働者採用の権限と派遣労働者の雇用の安定との調整の観点から設けたものでありますが、その運用に当たっては、派遣先の事業者に対する指導に努めることによりまして、派遣労働者の雇用の安定に効果が上がるようにしたいと考えております。
最後に、派遣労働者のプライバシー保護に関するお尋ねであります。
今回の改正法案におきましては、ILO第百八十一号条約の規定を踏まえまして、個人情報の保護に関する規定の整備を行っているところでありますが、御質問のような、一般の企業の雇用労働者を含めた包括的な個人情報の保護のあり方につきましては、社会的なコンセンサスを得る必要もありまして、労使等の関係者の御意見をお聞きしながら、慎重に検討することが必要であるというふうに考えております。
以上でございます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505254X02319990415/23
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024・渡部恒三
○副議長(渡部恒三君) これにて質疑は終了いたしました。
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025・渡部恒三
○副議長(渡部恒三君) 本日は、これにて散会いたします。
午後二時三十八分散会
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出席国務大臣
内閣総理大臣 小渕 恵三君
農林水産大臣 中川 昭一君
労働大臣 甘利 明君
出席政府委員
労働省職業安定局長 渡邊 信君発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505254X02319990415/25
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