1. 会議録本文
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000・会議録情報
平成十一年四月十六日(金曜日)
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平成十一年四月十六日
午後一時 本会議
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○本日の会議に付した案件
核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明及び質疑
午後一時三分開議発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505254X02419990416/0
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001・伊藤宗一郎
○議長(伊藤宗一郎君) これより会議を開きます。
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核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505254X02419990416/1
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002・伊藤宗一郎
○議長(伊藤宗一郎君) この際、内閣提出、核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律の一部を改正する法律案について、趣旨の説明を求めます。国務大臣有馬朗人君。
〔国務大臣有馬朗人君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505254X02419990416/2
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003・有馬朗人
○国務大臣(有馬朗人君) 核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律の一部を改正する法律案について、その趣旨を御説明いたします。
この法律案は、保障措置の強化・効率化に関する規定の整備及び使用済み燃料の貯蔵の事業に関する規定の新設という二つの内容から成っております。
まず、保障措置の強化・効率化につきましては、昭和五十二年に国際原子力機関との間に締結いたしました保障措置協定に追加する議定書の的確かつ円滑な実施を確保するため、国際原子力機関に対して行う報告または説明に必要な措置等を講ずるとともに、今後想定される保障措置業務量の増大に対しても適切に保障措置を実施することができるよう、国内保障措置制度における民間能力の活用の拡大を図るための措置を講ずるものであります。
この追加議定書は、国際的な核不拡散体制の強化が急務との認識のもと、国際原子力機関において各国合意のもとに取りまとめられた方策を実施するためのものであります。原子力先進国であり、厳に平和目的に限り原子力開発利用を進めている我が国といたしましては、その透明性の一層の向上を図るとともに、国際的な核不拡散体制の強化に資する国際原子力機関の保障措置の強化・効率化方策に積極的に取り組んでいくことがその責務と認識しているところであります。
次に、使用済み燃料の貯蔵の事業につきましては、今後の使用済み燃料の発生量の増加や再処理施設の処理能力等を総合的に勘案し、原子力発電所から発生する使用済み燃料の適切な貯蔵を図るため、事業として、原子力発電所外において使用済み燃料を貯蔵することができるよう必要な措置を講ずるものであります。
エネルギー資源に乏しい我が国にとって、エネルギー源としての原子力の重要性は極めて大きなものがあります。昭和三十八年に我が国に原子力の灯がともって以来、三十数年が経過し、今や、原子力発電は、我が国の主要なエネルギー源として、確固たる地位を占めるに至っております。一方、原子力発電に伴って生ずる使用済み燃料をめぐる最近の情勢は、海外再処理への軽水炉使用済み燃料の搬出終了、六ケ所再処理施設の建設状況等により、原子力発電所内における使用済み燃料の貯蔵状況は逼迫傾向にあります。
この法律案におきましては、このような状況にかんがみ、安全の確保に万全を期するため、本法の他の事業と同様に、使用済み燃料の貯蔵の事業について許可制度を設けるとともに、使用済み燃料貯蔵施設に対して必要な規制を講ずるものであります。
次に、本法律案の要旨を御説明いたします。
第一は、保障措置の強化・効率化に関する規定の整備であります。
追加議定書に基づく保障措置を実施するため、国際原子力機関に対し行う報告または説明に必要な措置として、追加議定書附属書Iに掲げられた活動について内閣総理大臣への届け出制度を設けるとともに、内閣総理大臣は、追加議定書の定めるところにより国際原子力機関から要請された事項等について、関係者から報告を徴収することができることとしております。
また、我が国が追加議定書に基づき国際原子力機関に提供した情報の正確性の確認等を行うため、国際原子力機関の指定する者は、政府職員の立ち会いのもとに、国際原子力機関が指定する場所において立入検査等を行うことができることとするとともに、我が国としても、追加議定書の適切な実施を確保するとの観点より、立入検査等を行うことができることとしております。
さらに、これまで定期的に行っていた保障措置に係る検査業務のうち、既に定型化しており裁量の余地のないものについて、技術的能力等を有し、内閣総理大臣の指定する中立公正な民間機関に行わせることができるよう措置するとともに、当該機関に関する指定の基準、当該機関による保障措置検査の実施、当該機関に対する監督命令等につきまして、所要の規定を整備することとしております。
第二は、使用済み燃料の貯蔵の事業に関する規定の新設であります。
一定の貯蔵能力以上の貯蔵設備において使用済み燃料の貯蔵の事業を行おうとする者は、通商産業大臣の許可を受けなければならないこととしております。通商産業大臣は、その許可を行うに際しては、厳格な審査を行うとともに、原子力委員会及び原子力安全委員会の意見を聞き、これを十分に尊重して許可を行わなければならないこととしております。
また、貯蔵の事業の許可を受けた者に対しては、使用済み燃料貯蔵施設について、その建設に先立って設計及び工事の方法につき通商産業大臣の認可を受け、かつ、その使用前に通商産業大臣の検査に合格することを義務づける等の規制を行うこととしております。
以上が、核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律の一部を改正する法律案の趣旨でございます。(拍手)
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核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明に対する質疑発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505254X02419990416/3
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004・伊藤宗一郎
○議長(伊藤宗一郎君) ただいまの趣旨の説明に対して質疑の通告があります。順次これを許します。近藤昭一君。
〔近藤昭一君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505254X02419990416/4
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005・近藤昭一
○近藤昭一君 私は、ただいま議題となりました核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律の一部を改正する法律案に対して、民主党を代表いたしまして質問をさせていただきます。
行政、特に原子力行政につきましては、国民の合意の形成が最優先であると考えます。しかしながら、残念なことに、国民の皆さんの合意を得るにはほど遠い不祥事が続いております。例えば、一九九五年十二月、高速増殖炉原型炉「もんじゅ」ナトリウム漏れ火災事故、一九九八年十一月、動燃東海事業所火災事故、「ふげん」の重水漏れ、東海事業所廃棄物ずさん管理、人形峠残土問題など、これでもか、これでもかというほどの事故、事件が続きました。
また、一九九八年五月、動燃改革関連法が成立し、動燃から核燃料サイクル開発機構と改組した後も、民間企業によるものではありますが、使用済み核燃料の輸送器に使われる放射線遮へい材のデータ改ざんが明らかになるなど、国民を不安にさせる事態が続出いたしました。
国民が原子力に対して不安感を払拭できないこれらのことについて、総理は、どのように説明されるのでしょうか。
COP3において合意された京都議定書による地球温暖化防止のために原子力の果たす役割は大きいと政府は言っておられます。そして、その実現のため、二〇一〇年をめどに今後十五基ないし二十基の原子力発電所を建設するとも言っておられますが、このままの状態で、そんなことが本当に可能なのでしょうか。
我が国は資源を持たない技術立国であり、ごくわずかな資源もむだにできないのが実情であります。このことに異論を挟む人もいないでありましょう。そして、その解決のために日本は核燃料サイクルの開発、実用化に取り組んできたのだと思いますし、それは一つの方向性であったかもしれません。
しかしながら、高速増殖炉の実用化時期が、中長期事業計画を見直すたびに後方にずれていっている現実、あるいは、アメリカ、ドイツ、フランスなど原子力発電先進国が、相次いで核燃料サイクル開発路線から撤退あるいは大きく後退している現状を見ますと、確たる見通しが立っていないのが実情ではないかと思われます。
日本は、高速増殖炉実現のための実験、あるいは近い将来、高速増殖炉で燃やすために必要であるということで、使用済み核燃料を外国へ委託して再処理をしてきました。あるいは日本国内に再処理工場を建設してきたと思われます。しかしながら、その前提に当たる高速増殖炉の実用化のめどが立っていない。つまり、再処理した核燃料の使い道に、実は日本は困っているのではないでしょうか。
そうであるのならば、なぜもっと早くから中間貯蔵を始めなかったのでしょうか。アメリカ、フランス、ドイツなどでは、資源の有効活用との観点から、使用済み燃料を直ちに燃やすのではなく、科学技術の進展等を勘案して、五十年くらい様子を見て考えようと、早くから中間貯蔵処理を始めています。資源小国としての我が国が熟考しなければならないテーマであったと思いますが、なぜ今になってこうなったのか、総理のお考えをお伺いしたいと思います。
また、プルサーマル計画にいたしましても、かたくなに高速増殖炉実現にこだわり、また、見通しの甘さを認めたくないということから、見通しの立たない高速増殖炉であるにもかかわらず、そのために必要だと、使用済み核燃料の再処理を外国に委託してきましたが、その結果、使い道のない使用済み核燃料が出てきてしまった。そこで、これを大量に保管することは、高度な科学技術を有する我が国が、将来の軍事転用を考えているのではないかと疑念を持たれるおそれがある。それは困るということで、政府は、無理やりに使用済み燃料をMOX燃料にし、従来の原子力発電所で燃やそうとしているのではないでしょうか。
これは、燃料化にコストがかかるばかりでなく、その際に多量の放射性廃棄物を生む、あるいは燃焼によってより複雑な、取り扱いにくい新たな放射性廃棄物をつくり出す、そういうことになるのではないでしょうか。
このプルサーマル計画を総理はどのようにお考えでしょうか。処理等は大丈夫なのでしょうか。また、既存の発電所でMOX燃料を燃やすということについて、ウラン燃料だけを燃やす場合と比べ、炉に負担がかかるのではないでしょうか。安全性が懸念されますので、総理からお答えをいただきたいと思います。
私は、今、中間貯蔵を行うことも一つの方法かと思いますが、今回のやり方は、以上述べましたように、後追い行政のそしりを免れない原子力行政に対する不信を、ますます増大させる危険があると思います。つまり、繰り返しますが、見通しの立たない使用済み核燃料は原発サイトに置いておくしかない、しかしそれにも限度があるので、できる分は処理を施すため再処理工場へ持ち出すが、それにもやはり限度がある、そこで中間貯蔵に回すしかないということではないでしょうか。
私は、今こそきちんとした使用済み核燃料の処分方法、つまり最終処分のあり方も含めて検討し、そこへの道筋を政府は示すべきだと考えますが、総理、いかがでしょうか。
ところで、中間貯蔵施設は何カ所か設置することをお考えのようでありますが、具体的に何カ所ぐらい、どのあたりに設置されようとしておられるのか、また、それらの規模はどの程度のものなのかをお聞かせください。
我々日本国民は、広島、長崎の原爆被爆により、核、原子力に対するアレルギーが諸外国に比して強く、立地には相当な困難が予想されますが、成田の新東京国際空港開港の際の悪夢を繰り返さない確約ができるのでしょうか。立地予定地の周辺の住民の人々にどのように説明し、理解を求めるのでしょうか。総理にお伺いをいたします。
次に、中間貯蔵の方法についてお伺いをいたします。
その方法は、プール式でやられるのか、乾式なのか、そして、その貯蔵方式については、どちらの方が安全性が高いのかをお教えください。輸送容器の件でデータ改ざんが発覚したばかりであり、各原子力施設の周辺住民初め関係者は、大きな疑念を持っております。たとえコストで割高であろうと、より確実で安全な方法を採用することと思いますが、通産大臣からはっきりとお約束をいただきたいと思います。
保障措置の強化・効率化については、原子力の平和利用の観点から極めて重要であると思います。そこで、立入検査に関してお尋ねをいたします。
北朝鮮あるいはイラクの核兵器開発製造疑惑に対して、原子力施設や核燃料等の情報をガラス張りにすることは重要であることは、至極当然であります。そこで、国際原子力機関、IAEAの指定する者が、工場や事業所に立ち入り、検査やサンプリングなどができるわけですが、仮に、その指定する者が悪意を持って立ち入り、その検査などにより知り得た情報を他の業者等に提供されるおそれはないのでしょうか。具体的にどのように対処されるのかを、科学技術庁長官、お答えください。
次に、改正案第六十一条の二十三部分についてお伺いをいたします。
内閣総理大臣は、新たに指定する保障措置検査等実施機関、それは民法第三十四条の法人に、業務の全部または一部を行わせることができるとされていますが、これは、具体的にどの法人を想定されているのでしょうか。うがった見方をすれば、天下り先団体に新たな仕事を与える根拠になるのではないかとも考えられるのではないでしょうか。科学技術庁長官、いかがでしょうか。
最後にお尋ねをいたします。
我が国のエネルギー事情を現実的に考えれば、原子力発電を否定することはできません。しかしながら、多くの諸外国で原子力発電への依存度を減らすなどの施策がとられております。原子力発電にかわるエネルギーの開発に対して、地球温暖化防止や環境面ですぐれたエネルギーの実用化の見通しについて、例えば、太陽光、波力、風力、地熱、燃料電池、核融合など、さまざまある代替エネルギーの実用化の見通しについて、総理はどのようにお考えでしょうか。
とりわけ、地上の太陽と言われる核融合の研究開発については、将来のエネルギー源としては、私はその一日も早い実用化に大きな期待を持っていますが、今後どのくらいで実現できると総理はお考えでしょうか。
そして、これからは、省エネルギーの発想を国民すべてが共有していく時代であると考えますが、その考え方をいかにして広げていこうとお考えなのでしょうか。総理のお考えをお伺いいたしまして、私の質問を終了いたします。
ありがとうございました。(拍手)
〔内閣総理大臣小渕恵三君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505254X02419990416/5
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006・小渕恵三
○内閣総理大臣(小渕恵三君) 近藤昭一議員にお答え申し上げます。
原子力をめぐる厳しい状況に関する御質問でありましたが、一連の事故等は極めて遺憾であり、その再発防止に努め、情報公開の徹底、国民的議論の喚起等によりまして、原子力に対する国民の信頼と安心が得られるよう努力してまいっておるところであります。今後の原子力発電所の増設につきましては、安全性の確保に万全を期し、立地地域振興に努めるなど、着実に進展するよう取り組んでまいります。
もっと早く中間貯蔵に着手すべきではなかったかとのお尋ねでありますが、我が国では、使用済み燃料は再処理し、回収されるプルトニウムを有効利用するとともに、再処理能力を上回るものは適切に貯蔵管理することにいたしております。今回、今後の使用済み燃料発生量、再処理能力等を勘案いたしまして、中間貯蔵の具体化が必要であると判断し、法案を提出させていただいたものであります。
プルサーマル計画、すなわちプルトニウムの発電への利用につきましては、その安全性等に関するお尋ねでありましたが、本計画は、ウラン資源の節約と有効利用の観点から進めるものであります。我が国の関連する研究開発や、諸外国における多くの実績も踏まえ、ウラン燃料と同等の安全性等を確保できると考えておりまして、国民の理解を得てこれは推進してまいりたいと考えております。
使用済み燃料のきちんとした処分方法を示すべきとの御指摘でありました。
我が国といたしましては、エネルギーの安定確保や放射性廃棄物による環境負荷の低減の観点から、使用済み燃料を再処理し、回収されるプルトニウム等を有効利用する核燃料サイクルを原子力政策の基本といたしております。したがいまして、中間貯蔵後の使用済み燃料も当然再処理することといたしております。なお、放射性廃棄物の処分対策についても、着実にこれを推進してまいります。
中間貯蔵施設の具体的な立地と合意形成のお尋ねであります。
現時点におきましては、具体的な立地地点につきまして定まっておりませんが、早急に実現すべく最大限の努力を払うべきであると認識をいたしております。その際には、中間貯蔵施設の国外の実績や、貯蔵技術に関する情報等を積極的に公開し、その安全性等を幅広く説明していくことが重要と認識をいたしております。
新エネルギーの実用化の見通しについてお尋ねですが、太陽光発電等新エネルギーは、既に実用化段階にあるものの、経済性や安定性等の面に課題があります。今後とも、導入促進を積極的に図ることによりまして、二〇一〇年には現在の約三倍程度の導入が見込まれるところであります。
核融合に関しましては、着実に研究開発を進めていくことにより、二十一世紀の世界のエネルギー問題の解決に大きく貢献することができると期待いたしております。
最後に、省エネルギーについてのお尋ねがありました。
御指摘のとおり、国民一人一人の省エネルギー意識を徹底していくことは、極めて重要であります。このため、省エネに関する情報提供や普及啓発活動等を通じまして、国民の省エネに関する意識を喚起し、エネルギーと環境に配慮した新しいライフスタイルの実践を促してまいりたいと考えております。
残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)
〔国務大臣有馬朗人君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505254X02419990416/6
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007・有馬朗人
○国務大臣(有馬朗人君) 近藤昭一議員の御質問にお答え申し上げます。
情報漏えいについてのお尋ねがございましたが、今回の法改正におきましては、IAEAの施設等への立ち入りに際して、政府職員が同行し、御指摘のような情報を保護するため、適切な管理を確保するようになっており、また、追加議定書においては、IAEAにおける秘密情報保護のための厳重な制度について規定されております。このようなことから、我が国といたしましては、御懸念のような事態が生ずることはないよう万全を期してまいります。
指定法人制度の導入についてのお尋ねでございますが、本制度の導入は、今後増大する保障措置関連業務の効率化を図るため、既に定型化し裁量の余地のない業務について、民間機関を活用しようとするものであります。具体的な民間機関の指定に当たっては、この改正法の施行後の申請を待って行うものであり、法律に定められた基準との適合性等について厳格、厳正に審査してまいる所存でございます。(拍手)
〔国務大臣与謝野馨君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505254X02419990416/7
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008・与謝野馨
○国務大臣(与謝野馨君) 中間貯蔵の貯蔵方式と安全性についてのお尋ねでありますが、中間貯蔵は、当面は、プール貯蔵または金属キャスク乾式貯蔵により行うことを想定しております。双方の方式ともに、現在、我が国の原子力発電所において既に実績があり、高い安全性が確認されている貯蔵方式であります。いずれの方式にいたしましても、安全性の確保に関し、万全の対策を実施することとしております。(拍手)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505254X02419990416/8
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009・伊藤宗一郎
○議長(伊藤宗一郎君) 斉藤鉄夫君。
〔斉藤鉄夫君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505254X02419990416/9
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010・斉藤鉄夫
○斉藤鉄夫君 私は、公明党・改革クラブを代表して、核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律、いわゆる原子炉規制法の一部を改正する法律案について、小渕総理並びに関係大臣に質問いたします。
経済の発展と国の安全保障という観点から、我が国が他の国より真剣に取り組まなければならない問題の一つに、エネルギー問題があります。
御存じのとおり、エネルギー資源の乏しい我が国は、エネルギー供給の安定性を確保することが必要です。化石燃料を燃やして発電する火力発電は、技術的にも容易で、コスト的にもすぐれているため、現在、エネルギーの主流を占めていますが、原料を一〇〇%近く輸入に頼っています。いずれ枯渇する化石燃料に多くを頼るのは、供給の安定性という点で問題です。また、化石燃料の大量消費は、NOxやSOxによる大気汚染だけでなく、地球温暖化の原因である二酸化炭素を大量に排出します。
このように考えますと、これらの有害なガスを排出せず、また供給安定性にすぐれた原子力は、我が国にとって必要不可欠なエネルギー源であると言えますが、一方で、旧動燃の一連の不祥事や、使用済み燃料輸送容器のデータ改ざん問題などにより、国民が原子力に対して不安や不信感を増幅させていることは否めません。また、放射性廃棄物の処理の問題など、解決しなければならない問題も残っています。
このようなジレンマの中でエネルギー政策を定めるに当たっては、合意形成に向けた十分な国民的議論が必要であると考えますが、小渕総理の御所見をお伺いします。
また、省エネルギーはもちろんのこと、太陽光発電を初めとする新エネルギーの開発にも力を入れ、将来は火力、原子力と並んで、新エネルギーも一つの柱となるように国が努力をすることも必要ではないかと考えますが、小渕総理のエネルギー政策に対する基本的考え方を伺いたいと思います。
さて、法案の中身に入らせていただきます。
今回の改正案のポイントは二つ。一つは、イラクや北朝鮮の核兵器開発疑惑に端を発した国際的な核不拡散体制の強化が国際的合意となっておりますが、その国内法の整備という点。そして、二つ目は、原子力発電所で燃やされた使用済み核燃料を発電所敷地外に貯蔵する中間貯蔵という概念、方法が初めて導入されたという点であります。
まず、初めの核不拡散体制の保障措置の強化について質問いたします。
核不拡散条約、NPT加盟国で、国際原子力機関、IAEAの保障措置を受け入れていたイラクの核開発計画の発覚、また北朝鮮のIAEA特別査察拒否など、核の拡散に対する不安が世界的に広がっております。このような状況下において、IAEAは、追加議定書を作成し、保障措置の強化、査察の強化を打ち出しました。しかし、ことし二月一日現在で、日本を含めて三十五カ国しか署名しておりません。
政府は、我が国のみならず、アジア太平洋地域の安全及び世界的な核不拡散体制の強化の観点から、IAEAの保障措置の強化がより実効性のあるものとなるよう、関係各国及びIAEAに働きかけるべきではないかと思いますが、外務大臣のお考えはいかがでしょうか。また、保障措置強化の発端となった、イラクや北朝鮮の核開発疑惑に対する対応についてもお伺いします。
我が国は、IAEAの査察強化にいち早く賛同し、今回の法改正でも核物質を用いない活動をまで査察の対象とするなど、積極的にIAEAをサポートしていますが、その裏腹に、非核保有国としては他に例を見ない多量の余剰プルトニウムを抱えている我が国が、将来決して核兵器開発を行わないことを国際社会にどのように理解させるのか、小渕総理のお考えを具体的にお聞かせください。
一方で、この保障措置の強化が、我が国の原子力技術の発展の阻害要因になるのではないかとの懸念もあります。つまり、原子力関連メーカーの企業秘密ノウハウと査察との関係です。科学技術庁長官は、この関係をどのようにお考えになっているのか、お聞かせください。
また、このように保障措置の重要性が高まる中、これまで国が行ってきた保障措置にかかわる検査を民間機関で行わせようとする内容になっています。これは、追加議定書そして法改正の趣旨に逆行するのではないかと考えられますが、科学技術庁長官の御見解を伺います。
さて、次に、第二のポイントである使用済み核燃料の中間貯蔵について質問いたします。
使用済み核燃料の発電所敷地外における中間貯蔵という考え方、概念は、これまで存在しませんでした。使用済みの核燃料は、発電所敷地内の施設に一時的に保管され、その後、再処理施設に輸送されて再処理、プルトニウムと高レベル放射性廃棄物とに分かれ、それぞれの道を歩んでいくというのがこれまでの概念でした。発電所と再処理施設の間に中間貯蔵が入るというのは、当初全く想定していなかったものです。
再処理施設建設やプルトニウム利用の計画など、核燃料サイクル全体の整合性をとりつつ政策を推進していれば、中間貯蔵という考え方は必要とはならなかったはずであります。これは、まさしく政府の核燃料サイクル政策の破綻と見ることもできるわけですが、小渕総理の御見解をお伺いします。
また、この中間貯蔵という考え方、原子力委員会がつくる原子力長期計画にも全くあらわれていません。本来であれば、長期計画にのせ、その位置づけを明確にしてから、法律案として国会に提出すべきと考えます。手続的にも行き当たりばったりの感が否めませんが、科学技術庁長官、この点についてはいかがでしょうか。
また、使用済み核燃料の中間貯蔵施設をつくらなければならない一つの要因として、使用済み核燃料の発生量が六ケ所村の再処理工場の処理能力を上回っているということがあります。第二再処理工場の見通しも立っていません。そのような状況の中で中間貯蔵を進めると、恒久貯蔵になりかねません。中間貯蔵した後の使用済み核燃料はどうするのか、恒久貯蔵とならない保障はあるのか、通産大臣にお聞きします。
次に、立地の問題ですが、先ごろ、北海道経済部長が、三月四日の道議会予算特別委員会で、放射性廃棄物を受け入れる意思はなく、使用済み核燃料についても同様に対処したいと答弁しました。青森県の県議会予算特別委員会では、むつ小川原開発・エネルギー対策室長が、三月十一日に、再処理が前提でない使用済み燃料の中間貯蔵施設の立地を受け入れる考えはないと答弁しています。
中間貯蔵施設を初め、原発に関する施設の建設には、地盤の調査や地元住民との交渉などを行うために、最低十年から十五年くらいかかることを考えますと、早急な対応が必要ではないかと思われます。政府は、二〇一〇年には中間貯蔵施設の操業開始を目指していますが、このままでは、候補地の選定の段階でかなりの難航が予想されます。このような状況下で、使用済み核燃料の中間貯蔵施設の立地について、今後、国民、地元の合意をどのように得るのか、通産大臣にお伺いします。
次に、中間貯蔵された使用済み核燃料は、恒久貯蔵にならないのであれば、いずれ再処理されてプルトニウムが抽出されます。そのプルトニウムが本来使われるはずだった高速増殖炉について伺います。
高速増殖炉の原型炉「もんじゅ」については、平成七年十二月の事故の発生以来、運転を停止しており、現在、その再開のめどが立っておりません。高速増殖炉開発の先進国であるフランスにおいてもスーパーフェニックスの放棄を決定するなど、世界的にも積極的に推進する状況にありません。
そこで、科学技術庁長官に伺います。
「もんじゅ」は、運転再開の見通しが得られていませんが、今後の我が国における高速増殖炉開発の進め方について、どのようにお考えになっているのか。また、高速増殖炉路線が破綻したのであれば、使用済み核燃料を再処理してプルトニウムをつくってもしようがない。だから、使用済み燃料を長期に貯蔵しておく方がいい。今回の中間貯蔵施設は、実はそのための施設だという見方もありますが、科学技術庁長官の所感をお伺いします。
また、プルトニウムを、本来の使用先である高速増殖炉ではなく、現在運転されている軽水炉で燃やす、いわゆるプルサーマル計画は、高速増殖炉開発路線の挫折と受け取る向きもありますが、その実施の意義について、通産大臣のお考えを伺いたいと思います。
最後に、小渕総理にお伺いいたします。
冒頭で述べましたように、エネルギー政策が我が国の経済的繁栄そして安全保障にとって今後ますます重要になっていく中で、ばらばらに整合性なくつくられたもろもろのエネルギーに関する法律を、総合的にとらえ直していくべきだと考えます。
我が党がかねてより主張している環境への影響、安定供給、コスト等を総合的に判断し、多様なエネルギー源の最適な組み合わせを実現するために、総合エネルギー政策基本法を制定する必要がある時期に来ていると考えますが、小渕総理の所見を伺い、私の質問を終わります。(拍手)
〔内閣総理大臣小渕恵三君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505254X02419990416/10
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011・小渕恵三
○内閣総理大臣(小渕恵三君) 斉藤鉄夫議員にお答え申し上げます。
まず、エネルギー政策に関する国民的議論についてお尋ねがありました。
エネルギー政策の立案、実施に当たりましては、従来より、総合エネルギー調査会における審議や各種の広報活動等を通じまして、国民各層の御意見を十分に踏まえつつ、政府一体となって取り組んできているところでございます。
エネルギー政策に対する基本的考え方についてお尋ねでありました。
我が国のエネルギー政策の基本的目標、三つのEでありますが、エネルギーセキュリティーの確保、環境保全及び経済成長の三者の同時達成であります。このため、省エネルギーや原子力や新エネルギーの開発利用等を推進するとともに、エネルギーコストの低減を図るべく、必要な対策を講じてまいります。
プルトニウム利用について、各国の理解をどのように得るかとのお尋ねでありますが、我が国は、原子力開発利用について、厳に平和目的に限り進めるとともに、IAEA保障措置の受け入れ等、核不拡散条約上の義務を誠実に履行いたしております。また、現在保有しているプルトニウムは、全量、発電などの利用に供されるためのものでありまして、御指摘のような余剰プルトニウムは保有いたしておりません。今後とも、この姿勢を堅持し、国内外の理解を得てまいりたいと存じます。
中間貯蔵について、核燃料サイクル政策との関連で厳しい御指摘がございました。
我が国といたしましては、将来にわたるエネルギーの安定確保と、放射性廃棄物による環境負荷の低減の観点に立ちまして、使用済み燃料を再処理し、回収されるプルトニウム等を有効利用する核燃料サイクルを推進いたしております。中間貯蔵は、今後、使用済み燃料の発生量と再処理能力を勘案し、使用済み燃料を再処理するまでの間、適切に貯蔵管理するため必要なものと判断し、今回、所要の法案を提出いたしたものでございます。
エネルギー政策に関する基本法の制定についてお尋ねがありました。
従来より、国会での御議論、国民各層の御意見を踏まえつつ、総合エネルギー対策推進閣僚会議等を通じ、政府一体となりまして、エネルギー政策の実施に取り組んできておるところであります。今後とも、国会での御議論を十分踏まえ、総合的なエネルギー政策を推進してまいります。
残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)
〔国務大臣有馬朗人君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505254X02419990416/11
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012・有馬朗人
○国務大臣(有馬朗人君) 斉藤鉄夫議員の御質問にお答え申し上げます。
まず、企業秘密との関係についてのお尋ねがございましたが、今回の法改正におきましては、IAEAの施設等への立ち入りに際して、政府職員が同行し、御指摘のような情報を保護するため適切な管理を確保することとなっており、また、追加議定書においては、IAEAにおける秘密情報保護のための厳重な制度について規定されております。このようなことから、我が国といたしましては、御懸念のような事態が生じることのないよう万全を期してまいります。
保障措置に係る民間機関による検査についてのお尋ねがありましたが、今後、保障措置の強化等への対応により保障措置関連業務が増大することが予想されております。このような状況に我が国として適切に対処するため、既に定型化し、裁量の余地のない業務につきましては、技術的能力等を有する民間機関を活用することとし、国としては、国でなければ行えない業務に重点化を図ることにより、保障措置の実施を効率的に行おうとするものであります。
中間貯蔵の位置づけを原子力長期計画で明確にすべきとの御指摘でありますが、現行の原子力長期計画、平成六年六月、においても、再処理能力を上回る使用済み燃料については、エネルギー資源の備蓄として、再処理するまでの間、適切に貯蔵管理することとされております。この考え方のもと、現在の諸情勢を踏まえて具体化いたしましたものが中間貯蔵であり、このような方針は平成九年一月の原子力委員会決定で明確にしており、従来からの基本政策にのっとったものであります。
高速増殖炉開発の進め方についてのお尋ねでございますが、政府といたしましては、高速増殖炉を将来の非化石エネルギー源の一つの有力な選択肢として、実用化の可能性を追求するために研究開発を進めることといたしております。「もんじゅ」については、この研究開発のための重要な場であると考えており、事故以来、安全面及び政策面での検討を鋭意進めてまいりました。今後とも、安全確保を大前提に、地元の理解と協力を得つつ、「もんじゅ」の運転再開に向けて環境づくりに努めてまいります。
プルトニウムが必要ないので中間貯蔵をするのではないかとのお尋ねでありましたが、資源の乏しい我が国といたしましては、使用済み燃料を再処理し、回収されるプルトニウムを、貴重なエネルギー資源として、プルサーマル等に計画的に利用していくことといたしております。当面、我が国においては、使用済み燃料の発生量が再処理の能力を上回ることなどから、再処理するまでの間、適切に貯蔵管理するための中間貯蔵施設が必要となるものであります。(拍手)
〔国務大臣与謝野馨君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505254X02419990416/12
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013・与謝野馨
○国務大臣(与謝野馨君) お答え申し上げます。
まず第一に、使用済み燃料の中間貯蔵後の取り扱いについてのお尋ねですが、エネルギー資源の大宗を輸入に依存する我が国は、長期的なエネルギーの安定供給の確保の観点から、使用済み燃料を再処理し、回収されるプルトニウムを利用する核燃料サイクル政策を推進しております。本方針のもと、中間貯蔵した後の使用済み燃料についても、適切に再処理することとしております。
次に、中間貯蔵施設の立地に関する合意形成についてのお尋ねですが、立地に当たって、国、電気事業者及び中間貯蔵事業者は、その必要性、安全性、政策上の位置づけについて、積極的に国民の理解を得る努力を行う必要があります。その際、国外の実績や安全性に関する情報等を積極的に公開し、立地地域のみならず、電力消費地を含め、幅広く説明していくことが重要だと認識をしております。
次に、プルサーマルの意義についてのお尋ねですが、プルサーマルは、発電設備への追加投資をほとんど伴うことなく、ウランの利用効率を数割程度高めるものであり、現在最も確実なプルトニウム利用方法であります。エネルギー資源の大宗を輸入に依存する我が国にとり、プルサーマル等核燃料サイクルの確立は、エネルギー安定供給等の観点から、大きな意義を持つものと認識をしております。
以上です。(拍手)
〔国務大臣高村正彦君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505254X02419990416/13
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014・高村正彦
○国務大臣(高村正彦君) IAEAの保障措置強化についてのお尋ねでありますが、保障措置の強化は、核不拡散体制の実効性を高めるために極めて重要と考えており、かかる観点から、我が国としても追加議定書に署名し、その締結について国会の審議、御承認をお願いしているところでございます。
我が国としては、種々の機会を通じ、本件追加議定書未締結国に対しその締結を働きかけてきており、今後とも各国に締結を働きかけることによって、我が国及び地域の安全に寄与していくよう努力いたします。
イラク及び北朝鮮の核開発計画に関するお尋ねでありますが、イラクについては、現在、イラクの武装解除及び監視体制の問題に関するパネルによる報告書をもとに、安保理において議論されており、我が国としても注視しております。いずれにせよ、我が国は、関係諸国とも協議しつつ、引き続きイラク側の真摯な対応を求めていく所存でございます。
北朝鮮につきましては、平成六年十月に署名された米朝間の合意された枠組みによって、北朝鮮は、KEDOから軽水炉の重要な原子力部品の供与を受ける前に、IAEAが必要と考えるすべての措置をとることを含め、IAEAとの保障措置協定を完全に履行することを受け入れました。我が国といたしましては、北朝鮮の核兵器開発を封ずるための、最も現実的かつ効果的な枠組みであるKEDOを引き続き支援していく考えでございます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505254X02419990416/14
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015・伊藤宗一郎
○議長(伊藤宗一郎君) これにて質疑は終了いたしました。
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016・伊藤宗一郎
○議長(伊藤宗一郎君) 本日は、これにて散会いたします。
午後一時五十四分散会
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出席国務大臣
内閣総理大臣 小渕 恵三君
外務大臣 高村 正彦君
通商産業大臣 与謝野 馨君
国務大臣 有馬 朗人君
出席政府委員
科学技術庁原子力局長 青江 茂君
資源エネルギー庁長官 稲川 泰弘君発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505254X02419990416/16
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