1. 会議録本文
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000・会議録情報
平成十一年七月一日(木曜日)
午前九時一分開会
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委員の異動
六月三十日
辞任 補欠選任
水島 裕君 佐藤 昭郎君
加藤 修一君 魚住裕一郎君
松 あきら君 渡辺 孝男君
七月一日
辞任 補欠選任
阿南 一成君 森山 裕君
斉藤 滋宣君 日出 英輔君
寺崎 昭久君 福山 哲郎君
小池 晃君 吉川 春子君
山本 正和君 大脇 雅子君
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出席者は左のとおり。
委員長 吉川 芳男君
理 事
石渡 清元君
大島 慶久君
田村 公平君
吉村剛太郎君
朝日 俊弘君
伊藤 基隆君
弘友 和夫君
富樫 練三君
日下部禧代子君
委 員
海老原義彦君
太田 豊秋君
狩野 安君
久野 恒一君
佐藤 昭郎君
斉藤 滋宣君
清水嘉与子君
田浦 直君
長峯 基君
日出 英輔君
森山 裕君
脇 雅史君
江田 五月君
岡崎トミ子君
川橋 幸子君
輿石 東君
高嶋 良充君
寺崎 昭久君
藤井 俊男君
山下八洲夫君
魚住裕一郎君
益田 洋介君
渡辺 孝男君
池田 幹幸君
八田ひろ子君
吉川 春子君
大脇 雅子君
照屋 寛徳君
山本 正和君
入澤 肇君
星野 朋市君
奥村 展三君
菅川 健二君
石井 一二君
事務局側
常任委員会専門
員 志村 昌俊君
常任委員会専門
員 入内島 修君
参考人
地方分権推進委
員会委員長 諸井 虔君
東京・生活者ネ
ットワーク分権
プロジェクト座
長 池田 敦子君
関西学院大学経
済学部教授 林 宜嗣君
名古屋大学大学
院法学研究科教
授 市橋 克哉君
日本大学法学部
教授 八木 俊道君
北海道大学法学
部教授 山口 二郎君
獨協大学法学部
教授 右崎 正博君
慶應義塾大学商
学部教授 中条 潮君
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本日の会議に付した案件
〇内閣法の一部を改正する法律案(内閣提出、衆
議院送付)
〇内閣府設置法案(内閣提出、衆議院送付)
〇国家行政組織法の一部を改正する法律案(内閣
提出、衆議院送付)
〇総務省設置法案(内閣提出、衆議院送付)
〇郵政事業庁設置法案(内閣提出、衆議院送付)
〇法務省設置法案(内閣提出、衆議院送付)
〇外務省設置法案(内閣提出、衆議院送付)
〇財務省設置法案(内閣提出、衆議院送付)
〇文部科学省設置法案(内閣提出、衆議院送付)
〇厚生労働省設置法案(内閣提出、衆議院送付)
〇農林水産省設置法案(内閣提出、衆議院送付)
〇経済産業省設置法案(内閣提出、衆議院送付)
〇国土交通省設置法案(内閣提出、衆議院送付)
〇環境省設置法案(内閣提出、衆議院送付)
〇中央省庁等改革のための国の行政組織関係法律
の整備等に関する法律案(内閣提出、衆議院送
付)
〇独立行政法人通則法案(内閣提出、衆議院送付
)
〇独立行政法人通則法の施行に伴う関係法律の整
備に関する法律案(内閣提出、衆議院送付)
〇地方分権の推進を図るための関係法律の整備等
に関する法律案(内閣提出、衆議院送付)
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X00819990701/0
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001・吉川芳男
○委員長(吉川芳男君) ただいまから行財政改革・税制等に関する特別委員会を開会いたします。
内閣法の一部を改正する法律案、内閣府設置法案、国家行政組織法の一部を改正する法律案、総務省設置法案、郵政事業庁設置法案、法務省設置法案、外務省設置法案、財務省設置法案、文部科学省設置法案、厚生労働省設置法案、農林水産省設置法案、経済産業省設置法案、国土交通省設置法案、環境省設置法案、中央省庁等改革のための国の行政組織関係法律の整備等に関する法律案、独立行政法人通則法案及び独立行政法人通則法の施行に伴う関係法律の整備に関する法律案並びに地方分権の推進を図るための関係法律の整備等に関する法律案の各案を一括して議題といたします。
本日、午前は、地方分権の推進を図るための関係法律の整備等に関する法律案の審査に関し、参考人の方々から御意見を承ることといたしております。
午前中は四名の参考人の方々に御出席をいただいております。
地方分権推進委員会委員長諸井虔君、東京・生活者ネットワーク分権プロジェクト座長池田敦子君、関西学院大学経済学部教授林宜嗣君、名古屋大学大学院法学研究科教授市橋克哉君、以上四名の方々でございます。
参考人の皆様に一言ごあいさつ申し上げます。
本日は、御多忙中のところ当委員会に御出席をいただき、まことにありがとうございます。皆様の忌憚のない御意見を承り、法案の審査に反映させてまいりたいと存じますので、よろしくお願いいたします。
本日の議事の進め方でございますが、まず参考人の皆様からそれぞれ十五分程度御意見をお述べいただき、その後、委員の質疑にお答え願いたいと存じます。
それでは、まず諸井参考人にお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X00819990701/1
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002・諸井虔
○参考人(諸井虔君) 地方分権推進委員長の諸井でございます。議員の皆様には常日ごろから地方分権の推進につきまして格別の御支援を賜り、まことにありがとうございます。また、本日は、地方分権の推進を図るための関係法律の整備等に関する法律案、すなわち地方分権推進一括法案の国会における審議に当たりまして陳述の機会を与えていただき、まことにありがとうございます。
本日は、私の方から地方分権推進委員会のこれまでの活動及び勧告の基本的な考え方について御説明するとともに、あわせて地方分権推進一括法案についての評価を述べ、最後に若干の要望をさせていただきたいと存じます。よろしくお願いをいたします。
地方分権推進委員会は、地方分権推進法に基づき、政府による地方分権推進計画作成のための具体的な指針を内閣総理大臣に勧告する機関として、またこの地方分権推進計画に基づく施策の実施状況を監視する機関として平成七年七月三日に発足いたしました。
我々に与えられた責務を果たすべく、今日に至るまで、延べ五百回にも及ぶ委員会、部会及び検討グループの会議を開催し、地方公共団体、関係省庁、有識者などからの意見聴取も進めつつ、精力的にかつ慎重に調査審議を重ねてきたところでございます。
平成八年三月二十九日に中間報告を出した後、同年十二月二十日に第一次勧告を内閣総理大臣に提出し、また平成九年に入り、七月八日に第二次勧告を、九月二日に第三次勧告を、そして十月九日に第四次勧告を順次内閣総理大臣に提出いたしました。また、昨年十一月十九日に第五次勧告を内閣総理大臣に提出いたしました。
このうち、第一次から第四次までの勧告に対応するものとして、昨年五月二十九日に地方分権推進計画が閣議決定され、この計画の内容を踏まえ、今回御審議いただいております地方分権推進一括法案が取りまとめられたところでございます。
なお、第五次勧告につきましても、政府において最大限尊重することとされ、第二次地方分権推進計画が去る三月二十六日に閣議決定されております。
それでは、第一次から第四次までの勧告に当たっての基本的な考え方とそのアウトラインを述べさせていただきます。
地方分権推進委員会は、中間報告において、地方分権は身の回りの課題に関する地域住民の自己決定権の拡充を図り、あらゆる階層の住民の共同参画による民主主義の活性化を目指すものであること、また地方分権の推進は、明治以来続いていた中央集権型行政システムを変革しようとするものであり、行政改革の推進に当たって規制緩和と並んで車の両輪であり、この双方の推進によって初めて明治維新、戦後改革に次ぐ第三の改革が実現する旨の認識を示しました。
このような認識のもとに、我が国の地方自治の拡充にとっての最大の課題は、国と地方公共団体とを上下主従の関係に置いてきた中央集権型行政システムを是正し、国と地方公共団体とを対等、協力の新しい関係に転換させることであると判断いたしました。
そこで、まずこの明治以来の我が国の中央集権型行政システムの中核的部分をなしてきた機関委任事務制度につきましては、住民による選挙で選ばれた知事や市町村長を国の下部機関と見て国の事務を委任し執行させる仕組みであり、第一に、国と地方公共団体とを上下主従の関係に置いている、第二に、知事、市町村長に地方公共団体の代表者と国の地方行政機関としての二重の役割を負わせているため、知事、市町村長が地方公共団体の代表者としての役割に徹し切れていない、第三に、国と地方公共団体との間の行政責任の所在が不明確になり、地域の行政に住民の意向を十分反映させることができないなどの弊害が生じていることから、この機関委任事務制度を廃止することを勧告したところであり、この結果、同制度のもとでの国による包括的かつ権力的な指揮監督はなくなることとなったところでございます。
これに伴い、自治事務及び法定受託事務という新たな事務区分を設けるとともに、従前の機関委任事務について、事務自体を廃止するもの及び国の直接執行とするものを除き、原則自治事務、例外法定受託事務とする方針で整理をいたしました。
なお、機関委任事務制度を前提として成り立ってきた地方事務官制度は廃止することとし、これまで地方事務官が従事することとされていた社会保険関係事務及び職業安定関係事務は国の直接執行事務とすることとし、職員はそれぞれ厚生事務官、労働事務官とすることを勧告いたしました。
また、国と地方の新しい関係を確立するため、地方公共団体に対する国の関与について、法定主義の原則、一般法主義の原則及び公正、透明の原則の三つの一般原則を定めました。その上で、国と地方公共団体の新たな関係の具体的あり方として、第一に、自治事務と法定受託事務の区分に応じて国が行うことができる関与の基本類型とその手続等を示し、第二に、地方公共団体の意見申し出とこれに対する国の応答について所要の措置を講ずることを、第三に、国と地方公共団体との間の係争処理の仕組みを創設すべきことを勧告いたしております。
権限移譲につきましては、国から都道府県へ移譲すべきもののほか、基礎的な地方公共団体である市町村に対して、その規模などに応じて移譲すべきものを具体的に示しましたが、これとあわせて、二十万人以上など一定の人口規模を有する市を当該市の申し出に基づき指定し、権限をまとめて移譲する法制上の措置を講ずることについても勧告いたしております。
また、国が地方公共団体に対し、職員、行政機関等を設置しなければならないと義務づけている必置規制につきましては、地方公共団体の自主組織権を制約すると同時に、行政の総合化と効率化を阻害する要因となっているとの認識に立って、その見直しの考え方を整理するとともに、廃止または緩和すべきものを個別具体に示したところでございます。
こうした機関委任事務の廃止等と並んで国と地方公共団体の財政関係につきましても、地方公共団体の自主性、自立性を高める観点から基本的な見直しを行う必要があることを踏まえ、第一に国庫補助負担金の整理合理化、第二に存続する国庫補助負担金の運用や関与の改革、第三には地方税、地方交付税等の地方一般財源の充実確保の三つの視点から、財政面における自己決定、自己責任の拡充に向けた改革案を取りまとめました。
さらに、都道府県と市町村についても、国と地方の関係と同じく、対等、協力の新しい関係が築かれるよう、都道府県、市町村間の事務の配分の考え方を整理するとともに、市町村に対する都道府県及び国の関与の考え方と関与のルールを整理いたしました。
また、地方分権の担い手となる地方公共団体の行政体制の整備確立を図るため、地方公共団体における行政改革、市町村の自主的合併や広域行政の推進、地方議会の活性化、住民参加の拡大・多様化、公正の確保と透明性の向上等について具体的方策を取りまとめるとともに、この実現のための地方公共団体の自主的な努力を支援、促進するために国がとるべき措置を示したところでございます。
地方分権推進委員会としては、こうした勧告により地方分権を推進し、国と地方公共団体との間の新たな関係を確立するための確固たる道筋を示すことができたものと考えております。その道をさらに切り開き、歩みを進めていくためには、政府において地方分権の推進に関する施策をさらに総合的に実施していくとともに、また地方公共団体の関係者みずからが分権型社会の担い手として公正、透明で開かれた行政を展開し、国民の期待と信頼に一層こたえていくことが必要でございます。そして、何よりも、国民の皆様が住民自治を基礎とした活力ある創造性豊かな分権型社会の実現に向けて地域の行政に引き続き積極的に参画していかれることを心から期待するものでございます。
政府における地方分権推進計画及び地方分権推進一括法案の作成に当たっては、地方分権推進委員会として、勧告の提出と並んで重要な任務である監視活動の一環として、政府の検討状況を聴取しつつ意見交換を行ってまいりました。
政府においてはこれに誠実に対応していただいたところであり、またその計画及び法律案の内容も地方分権推進委員会の勧告の趣旨に沿ったものと評価しております。膨大な計画及び法律案の作成に当たってこられた関係者の御努力を多とするものでございます。
平成五年六月に衆参両院において、二十一世紀に向けた現代にふさわしい地方自治を確立するため、地方分権を積極的に推進し、抜本的な施策を総力を挙げて断行していくべきことを決議されて、ちょうど六年が経過いたしました。この間の地方分権推進法の制定、地方分権推進委員会の数次にわたる勧告の内閣総理大臣への提出、政府における地方分権推進計画の作成という一連の取り組みが地方分権推進一括法案という具体的な法律案として結実をし、今まさに国会の審議にゆだねられているところでございます。
地方分権推進委員会といたしましては、これまでの勧告を通じて明らかにした各般の措置が着実に実施に移されることが、将来にわたって地方分権を進めていくことの出発点となり、真の意味での分権型社会を確立していく基盤になるものと考えております。また、今回の法律案が成立した後、国及び地方公共団体において法施行に向けて関係の政省令や条例の整備などに万全を尽くされることが不可欠でございます。
これまでの勧告は、地方分権推進委員会が約四年の間心血を注いで提出いたしたものでございますので、私ども地方分権推進委員会としましては、地方分権推進一括法案に対して並々ならぬ思い入れがございます。地方分権推進一括法案が国会において地方分権推進の観点から審議を尽くされた上で、一日も早く成立させていただくようにお願いをいたしたいと存じます。そして、自己決定と自己責任の原則に基づく分権型社会の構築が速やかに図られていくように念願をしてやみません。
以上、私の陳述を終わらせていただきますが、地方分権推進委員会といたしましても、残された期間において与えられた任務の遂行に全力を傾注していく決意であります。私どもの活動に対しまして、引き続き議員各位の御理解と御支援を切にお願いする次第でございます。
どうもありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X00819990701/2
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003・吉川芳男
○委員長(吉川芳男君) ありがとうございました。
次に、池田参考人にお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X00819990701/3
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004・池田敦子
○参考人(池田敦子君) 私は、東京・生活者ネットワークの池田敦子と申します。
本日は、行政改革に関する特別委員会に参考人として意見を述べる機会をいただき、ありがとうございます。
私は、生活者という立場から、分権、自治の社会が実現することを希望しております。それは、生活の現場にこそ分権がもたらす豊かな自治があらわれなければならないからです。そして、それは住民の自発的活動を促したり、市民の事業を生み出したり、生活の利便性であったりすると思いますが、今日の日本の行き詰まった社会構造を変える、そういうものにならなければいけないと思っております。
一つの例を申し上げますと、ちょうど十年前になりますが、五十五万筆の都民の署名で東京都知事あてに食品安全条例の制定を求める直接請求が提出されました。私は当時、都議会議員をしておりましたので、議案の審査をする立場にありましたが、この直接請求は分権という視点から大変印象的な問題提起がたくさんございました。
御承知のとおり、直接請求は地方自治法に位置づけられた市民の条例提案権です。しかし、提案された行政側は、食品の安全の確保は国、厚生大臣の権限にかかわることであり、食品衛生監視などは機関委任事務であるから、自治体で食品安全条例を制定することはできない。そしてまた、行政に対して直接請求で条例を突きつけるということは、生意気な市民であるというような見解が示されました。
直接請求をした市民たちは、食品衛生法では厚生大臣が食品安全のボタンを握っていることを知っております。しかしなお、食べる側に安全な食べ物を確保するためのボタン、つまり権限を握りたいと考えました。この権利は知る権利であり、選ぶ権利であり、健康を維持する権利です。これは食べ物に関する自己決定の主張であり、分権、自治の主張でありました。
また、食品行政は幾つもの縦割りの中でばらばらに行われており、行政がお互いを牽制し合い、食品に関するまとまった見解を持っていなかったことが明らかになりました。審議の過程で行政連絡会議が設置されることになりました。また、お互い突出したことをしないように行政間で抑制し合っているような状況もございました。
同時期に、この食品安全条例は、十三の区市に制定を求める請願が提出されました。区市から東京都への問い合わせが殺到し、食品安全は地方自治体の仕事ではないとの結論を出しました。しかし、この議論の中から、より安全な農産物を推奨するという動きが生まれ、現在、有機農法あるいは有機農産物の基準や流通のガイドラインなどが地方自治体から国へ問題提起をされ、それが実現されるというような事態が実際には起こっております。そして、地方から中央へという流れが生まれたわけです。
このように、生活の現場にいる市民は、生活のあらゆる場面での安全が確保されることが大切なことであり、そのことが実現される分権を望んでいるのです。生活の課題の解決は、身近な自治体で行われることが大切です。
ついでに申し上げれば、直接請求は、もっと簡便な市民の条例提案制度に変える条件整備が必要であります。
分権推進委員会の議論の経過で私が期待いたしましたのは、市民が自治体をつくる、地域が自己決定していくという原理が貫かれることでした。こうした視点での課題は、自治体と自治体、自治体と国が対等な関係に整理され、国の権限が制限されることにあります。中央集権型のシステムの根幹でありました機関委任事務制度を廃止し、その大半を自治事務とした分権推進委員会の勧告は大きく評価できるものでした。
ところが、そのような分権推進委員会の精力的な議論の結果が法案化される過程で変節し、問題点が多くなってきていると私は思います。そのうちの幾つかについてここでは取り上げさせていただきます。
最大の問題は、自治体と国は対等であるはずなのに、自治事務になぜ国が口を出していくのでしょうか。その一つが自治事務に対する各大臣の是正要求に改善義務が付されたことです。
さらに、自治事務の処理が法令に違反していると認めるとき、または著しく適正を欠きかつ明らかに公益を害していると認めるとき、各大臣は知事に対して是正を求めることができるとして、都道府県の知事を通して市町村長に是正を求めることができる規定になっております。
地域の市民による自己責任で行われる自己決定であるはずの自治事務への是正要求は、国の関与を強め、結果的に分権の理念に反する内容ではないでしょうか。是正を求めることができる大臣が総理大臣だけではなく各大臣に広がったことは、現行法より後退してしまったのではないでしょうか。
東京都では、法律の定めのないお豆腐、中華めんなどについて、消費生活条例に基づく製造年月日の併記表示を義務づけてきました。それは消費者の要望に基づく東京都独自の上乗せ・横出し表示でしたけれども、貿易の国際基準、WTOの絡みで、国の関与により、ことしの三月でその表示は断念せざるを得ない事態になりました。
このような国の関与は、この法案では分権後も容易に想像できるものであります。その上、都道府県の関与が区市町村にまで及ぶ事態が予想されるこの状況は改善されるべきであると私は考えます。
もう一つ、都議会に籍を置いた経験から、自治体議会に関する本法案の制約を緩和する必要を感じます。
自治体議会の議員定数は条例で定めることで十分だと思います。人口に応じた定数の上限を設けたり法定定数を超えた場合の減員の取り決めなどは、地域の有権者である住民が責任を持って決めていけばいいものと考えます。
自治体議会は二元代表制をとっていることから、首長の権限と議員の権限を対等にすることを法に位置づける必要があります。議長の議会招集権や議会の予算提案権、さらに議会の調査能力を高めるための仕組みなども必要です。むしろ、現行制度が国会の議院内閣制をモデルにしている矛盾を解決すべきです。
私たちが議員提案で都議会議員の資産公開条例を提案したとき、議会が自治省のモデル条例を国に求めるという事態が起こりました。議会の問題も大きいのですが、一方では、このような親切が自治決定を弱め、国の関与を強める結果になるのではないでしょうか。議会の独立性を高める制度にする必要があります。
最後に、都市計画審議会への国の関与を抑える必要があることを申し上げたいと思います。
都市計画決定の手続の中には、現行法でも住民への説明会や公聴会は位置づけられております。しかし、ほとんどの住民は測量とか工事の段階で、つまり計画が決定された後に知ることが多いわけなんです。このことから、最近では住民が計画段階から参加する制度に変えるという要望が強く出ております。都市計画法の改正により、自治体の都市マスタープラン策定におきましては市民の意見の反映を位置づける、そういったことが法的に位置づけられております。
しかし、今回のこの法案では、都市計画審議会の組織、運営に必要な事項を政令の基準に従った委任条例として規定しています。これは、各自治体が主体的に市民参加による町づくりを進める審議会にしていくことを阻害するおそれがあります。
市町村都市計画審議会が法的に位置づけられるようになったこの段階で、組織及び運営に関する政令は定める必要はないのではないでしょうか。各自治体で決めることができるのではないでしょうか。
分権は、役所同士の仕事の割り振りを変えることにとどまっては意味がありません。そういう意味では、分権の実現はスタートについたばかりです。国から都道府県へ、都道府県から区市町村への権限移譲に終わらせず、最終的には一人一人の市民が自己決定権を持ち、政策決定の場にこれまで余り登場することのなかった市民や女性や生活者の姿が見える、そういう分権が必要ではないでしょうか。
多様な人々の多様な生活の豊かさを住民の共同参画によって実現するには、今後も市民までの分権が実現するまで議論を重ね、努力を続けていただきたいと要望をいたします。
これで私の意見を終わらせていただきます。どうもありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X00819990701/4
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005・吉川芳男
○委員長(吉川芳男君) ありがとうございました。
次に、林参考人にお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X00819990701/5
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006・林宜嗣
○参考人(林宜嗣君) 関西学院大学の林でございます。
本日は、参考人といたしまして意見を述べさせていただく機会を与えてくださいましたことに感謝いたしております。
まず、これまで私たちが研究をしておる中で懸案だというぐあいに感じておりました機関委任事務の廃止、地方債発行の事前協議制への移行、それから標準税率未満団体の地方債発行の許可制導入、こういった点を含めまして、今回の一括法案を評価したいと思っております。
ただ、今回の法案に一定の評価を与えてはおりますけれども、まだまだ課題が残っているというぐあいに感じております。この課題につきまして私なりの考えを述べさせていただきたいと思いますが、地方分権に何を期待するかによりまして抽出される課題は異なってまいります。
地方分権というのは、言うまでもなく地域が自主的にかつ責任を持って個性豊かな地域づくりを行う環境を整えることでございます。こうした目標の中で地方分権の課題をとらえることはもちろん重要ではありますけれども、私は財政を専門にしておりますので、本日は、地方あるいは国の財政構造改革という視点から地方分権をとらえていきたいと思っております。
一言で申しますと、財政責任の強化につながる地方分権の実現と言えようかと思います。少し大きな話になることをお許しいただきたいと思います。
地方自治体の行動原理は、地方自治法に規定されておりますように、最少の経費で最大の効果を上げることであります。しかしながら、これまでの中央集権のシステムの中で実態は、最少の地元負担で最大の事業費を獲得する、こういうような実態になっているのではないかと思われるような面もございます。私は、地方分権というのは、財政システムの中に受益と負担が連動する仕組みを組み込むことでなければならない、このように考えております。
最近、アカウンタビリティーという言葉がよく使われます。説明責任あるいは会計責任あるいは財政責任というように訳されますけれども、行政が行っていることを単に説明できるだけではだめでありまして、受益と負担が連動すること、つまり、住民負担が高ければ受益が大きく、逆に受益が小さければ住民負担も小さい、こういったシステムを構築することが、私はアカウンタビリティーを強化するということではないかというぐあいに思っております。これは、今から約二十年前にイギリスで地方財政改革の折に提出されましたレイフィールド・レポートで強調されている点でございます。
こうした点から、地方のアカウンタビリティーを強化する地方分権システムを構築する上で、今後御検討いただきたい点を四点に絞ってお話を申し上げたいというぐあいに思っております。
まず、第一は地方税源の拡充でございます。
現在、税収面では国が六五、地方が三五、この比率を支出面の比率にできるだけ近づけていくべきである、このような意見が出されております。話はそれほど単純ではないと思いますけれども、しかしながら、地方税源の拡充は私はぜひとも必要だと思っております。
都道府県レベルでは東京だけが、そして市町村レベルでは三千を超える市町村のうち地方交付税の不交付団体が百五十に満たないという実態というのは、これはやはりどう考えても異常ではないかというぐあいにとらえております。地方税源を拡充して、私は不交付団体の数を減らす必要があるのではないかというぐあいに思っております。ただ問題は、ではどのレベルで財政調整を行うのかという点でございます。この点につきましてはまた後ほどお話をさせていただきたいと思います。
地方税源を拡充いたしましても、十分な税収が得られない自治体は少なくないと思われますので、私はやはり財政調整の必要性は残るだろうというぐあいに感じております。
先ほど申し上げましたように、その場合に重要なのは、どの行政水準を基準にして財政調整を行うのか、言いかえれば、どの行政水準までを国が財源保障する責任を負うのかということでございます。つまりナショナルミニマムをどのように考えるかということではないかと思っております。ナショナルミニマムの再検討、これが第二点目でございます。
一九七〇年度の人口一人当たり基準財政需要額を一といたしますと、九六年度時点で、都道府県分は基準財政需要額は約六・八倍に、市町村分は約九・七倍に伸びております。この期間中に人口一人当たりGDPは約五・五倍の伸びでございます。基準財政需要額を、標準的な行政水準を達成するのに必要な一般財源の金額である、このように理解をいたしますと、これまでは標準行政が経済の成長を上回る速度で伸びてきたことを示しております。
八〇年代に入りまして、基準財政需要額の伸びは抑えられてきてはおりますけれども、これは経済が低成長期に入って税収が抑えられたということに大きな原因があるわけでありまして、バブル期のように税収が順調に入ってまいりますと再び基準財政需要額の伸びが大きくなる、こういう実態は変わっておりません。つまり、このままでは懐さえ許せばナショナルミニマムはどんどん大きくなっていくということが予想されるわけでございます。
このような状態では、地方税源を幾ら拡充いたしましても、財政調整に必要な額はますます膨らんでまいりますし、交付団体の数は減らないだろうというぐあいに思っております。
ナショナルミニマムとしてどの水準が適正なのかということに答えを出すのは非常に難しいわけでありますけれども、現在の地方分権の動きはこのナショナルミニマムの適正化という課題をどうも避けて通っているのではないかというような気がいたしております。ナショナルミニマムについての考え方がある程度煮詰まらないことには財政調整のあり方、ナショナルミニマムを上回る部分における受益と負担の連動という地方分権時代にふさわしい財政システムを構築することはできないのではないか、このように私は思っております。
日本におきましては財政調整をめぐって、東京や大阪といった大都市は負担超過である、このように不満を持ちます。一方、地方はナショナルミニマムの達成はまだまだで財政調整は不十分である、このように不満を申します。
日本でも地方交付税の算定等につきまして地方財政審議会の議に付されることになっておりますし、今回の改正では地方団体の意見提出権が認められました。しかし、どこまでを財政調整の対象にするかという根本問題にまだ手がつけられていないのは非常に残念なことだというぐあいに私は思っております。
財政責任を伴った地方分権を実現するための第三の重要なポイントは、地方における課税自主権の強化でございます。
一括法案では、法定外普通税の事前協議制への移行、法定外目的税の創設が取り上げられ、また標準税率未満団体の地方債の許可制も図られるなど、かなり前進をしていると私は思っております。しかしながら、課税自主権の強化という点ではまだ不十分ではないかというぐあいにとらえているわけでございます。地方税はもちろん財源調達の手段ではございますけれども、地方の行財政運営のあり方あるいは実態を住民に伝える最もわかりやすい情報伝達手段の一つでございます。
御案内のように、アメリカでは地方税率は行政サービスの水準に連動する仕組みになっておりまして、サービス水準が高ければ税率が高く、サービス水準が低ければ税率が低くなります。また、行政水準がそれほど高くなくても地方行政の運営が非効率である場合には税率が高くならざるを得ません。そして、納税者の不満は高まってまいります。アメリカで起こりました納税者の反乱は、地方税がプライスとして働いていることで起こった事件でございます。
現在、地方税は地方税法で主要な課税要件が定められておりますけれども、税率の自由決定権を含めた課税自主権の強化もぜひ検討しなければならない課題ではないかと思っております。
税率を自由に決定する権限を地方に与えた場合に、住民税などの個人にかかる税の税率引き下げ競争が起こる可能性がございます。現在は一定ですからサービス水準の引き上げ競争になりますけれども、税率が自由に変えられると引き下げ競争が起こる可能性がある。自治体関係者の中には、税率が画一的であるからこそ地方税を徴収しやすいと言う方もおられます。また、税率の引き下げ競争を避けたいという思いもあるかもしれません。
しかしながら、私は税率の引き下げ競争はどんどんやるべきだ、このように考えております。余りにも税率が下がって行政サービスの水準が低下いたしますと住民生活に当然支障を来すようになりますから、その時点で住民はこれ以上の税率引き下げは行わないでほしい、このように申してくるはずでございます。それがこの地域にとっての望ましい地方税率であり、そして望ましい地方財政の規模ではないか、このように考えております。
私は、標準税率の考え方というのは地方交付税の算定等に使う程度のものにした上で、地方税法の規定からできれば外してしまってはどうかというぐあいに考えているわけでございます。しかし、課税自主権の強化が財政構造改革につながるためには、地方税が応益課税の要素を備えていなくてはなりません。これが第四点目でございます。
現在、都道府県レベルでは法人事業税、住民税の法人税割、この二つの法人所得課税で九六年度決算ベースで約四割の税収を占めております。バブル経済期の昭和六十三年度では実に五〇%がこの二つの税目で調達されているという実態でございました。
法人所得課税と申しますのは、その大部分が大企業によって納められます。また、法人所得課税は、最終的にだれがどのような形で税を負担するのかということが非常にわかりにくい税でございます。しかも、景気がよければ税収は大量に入ってくる。現在のように景気が悪くなった場合は別といたしまして、法人所得課税はこれまで国民にとりましても、また財政当局にとりましても、税収調達という点では非常に都合のよい税金でございました。
ところが、住民にとって負担感の小さな法人所得課税に余りにも多くを依存いたしますと、受益と負担の連動が断ち切られ、住民から自治体に対して過大な要求が出てくる可能性を生んでまいります。
また、現在、超過課税は、都道府県の場合に住民税の法人税割あるいは法人事業税、これに偏っておりまして、それ以外は行われておりません。市町村レベルでも住民税の法人税割が約千五百団体弱で行われ、個人住民税の所得割の超過課税を行っているところはゼロであります。また、法定外普通税も、道府県レベルでの核燃料税など、個人以外のところで行われているにすぎません。
このように、課税自主権が強化されたといたしましても、実際には法人関係税に大きく依存するような地方税体系では、受益と負担の連動を強化し、そして地方財政の構造改革にはつながらないのではないかというぐあいに思っております。また、住民税を初めといたしました個人税に関しましても、できる限り応益的な要素を取り入れていくべきではないかと思っております。
課税自主権を強化することで地方財政における受益と負担の連動を強化し、地方の財政責任を強化するためには、やはり課税自主権の強化と同時に、地方税の構造改革、つまり地方税における応益的な要素を高めていくということもこれからの検討課題ではないかというぐあいに思っております。みずからの責任と負担で地域づくりを行っていくことが地方分権の目的でございます。しかしながら、このことが同時に財政構造改革にもつながるような、そういう地方分権の実現を期待したいと思っております。
今回の地方分権一括法は、地方の自由度を大きくするという面では私は大いに評価をいたしたいというぐあいに思っておりますけれども、財政責任を強化するにはどのような地方財政システムを構築すればいいのかという面では少し物足りなかったのではないかというように思っております。
今回の一括法に続く第二弾を期待いたしまして、私の意見陳述を終わらせていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X00819990701/6
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007・吉川芳男
○委員長(吉川芳男君) ありがとうございました。
最後に、市橋参考人にお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X00819990701/7
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008・市橋克哉
○参考人(市橋克哉君) 名古屋大学の市橋です。よろしくお願いします。
現在、この国会に提出されております地方分権一括法案について、大学で行政法を担当している者として少しお話をさせていただきたいと思います。
まず、この地方分権一括法案の中で最も大きな改正点は、既に三人の参考人の方々からお話がありますように、機関委任事務制度が廃止されたということです。これは地方自治の発展を願う人々の長年の要求でした。私もこの点で画期的なことだと考えています。特に、ここにおられる諸井委員長を初めとする分権推進委員会の皆様の苦労のたまものだというふうに考えています。
しかし、機関委任事務の制度を廃止した後に地方分権一括法案が新しくつくろうとしている仕組みについて見ると、幾つかの点で私は危惧の念を持っています。それは、今回の地方分権の目標でありました、先ほどからも出ていますが、国と地方公共団体との関係をこれまでの上下主従の関係から対等、協力の関係へと変える、そのために従来の国による地方公共団体への関与の仕組みを改めて、これを縮減するという点でして、果たして地方分権一括法は本当にそのようなものになっているのだろうかという問題です。
ここでは、この国による関与という問題に絞りまして、少し意見を述べさせていただきます。
専門が行政法ということで、これからお話しすることは少し細かい話になるかと思いますが、お聞き願えればと思います。
第一に、地方分権一括法で掲げられた関与の法定主義に基づいて挙げられている多数のそして多様な関与の中で最も大きな問題は、先ほども池田参考人の方から指摘がありましたが、自治事務に関して行われる是正の要求だと思っています。
地方自治法改正案を見ると、国から是正の要求が来ると地方公共団体は、これは改正案の二百四十五条の五第五項ですが、「違反の是正又は改善のための必要な措置を講じなければならない。」とされておりまして、地方公共団体には違反是正と改善措置の義務が課せられることになりました。
新たに設けられた地方公共団体が国の関与を訴える紛争処理の仕組みにおいても、この是正の要求は、許可の拒否その他の処分と並んで公権力の行使に当たる関与、これは地方自治法改正案の二百五十条の十三の第一項ですが、とされまして、明確に権力的な関与の一つとなっています。
この結果、是正の要求に不服がある場合には地方公共団体は必ず紛争処理手続を使って争わなければならず、争った訴えが入れられなかった場合にはもちろん、争わない場合にも違反是正、改善措置をとらないことは違法となるため、その是正の要求には従わなければならないということになりました。
是正の要求は、現行の地方自治法二百四十六条の二第一項が定める内閣総理大臣の措置要求に倣ったものとされていますが、現在の措置要求については非権力的な関与の一態様と解されています。この点は長野士郎氏のコンメンタール等でもそのように言っています。これは、代執行のような強制措置をとることができないのはもちろんですが、是正の要求のように、違反是正、改善措置義務を課す規定や、これを公権力の行使として訴える仕組みもありません。
したがって、地方公共団体は、みずからがとった、またはとらない事務処理が正しいと考えるときは、自己の責任において措置要求に従わないという対応をとる道も確保されていたと思います。そして、そのように対応したからといって、それが直ちに違法となるものでもなかったと考えます。
地方公共団体の自治事務の処理について国が権力的な関与をなし得る場合、これは現在の法律では、いずれも個別の法律の中に命令あるいは指示などのそういう権力的関与ができる旨を定めた根拠規定が置かれているときに限られています。例えば港湾法の四十七条で、港湾管理者が差別的取り扱いをした場合、運輸大臣が命令を出せるといったような、こういうものです。
地方自治法の改正案でも、権力的関与である指示の方を見ると、「国民の生命、身体又は財産の保護のため緊急に自治事務の的確な処理を確保する必要がある場合等特に必要と認められる場合」に限って、個別の法律にその根拠規定が置かれているときになし得るものです。これは、権力的関与を用いるときには必ず個別の法律の具体的な根拠が必要であるとする法治主義の考え方からすると当然の法的な規律だと思います。
したがって、もし是正の要求を権力的関与として国が行えるようにするのであれば、やはりこれまでの命令や指示の場合と同じように、個別法に具体的な根拠規定を設けることが必要だと思います。地方自治法に是正の要求に関する一般的な根拠規定を置くだけでは足りないと考えています。また、是正の要求をなし得る場合を定める要件についても、指示の場合の要件である「国民の生命、身体又は財産の保護」といったこととのつり合いを考慮して、例えば、国民の生命、身体、財産または環境上の利益の保護といった具体的な要件を少し広げて設けて、その行使を厳しく限定することが必要だと考えます。
もし、是正の要求について、個別法に具体的な根拠規定を設けることなく、地方自治法改正案が定めた一般的根拠規定だけでその関与を許すのであれば、この場合の是正の要求は、法治主義の考え方にのっとって、実体的にはあくまで非権力的な関与であって、紛争処理の手続上、処分として扱う必要があるため権力的関与として構成したにすぎないと考えるべきだと思います。この場合、地方公共団体が負う違法是正・改善措置義務も、法的拘束力がある本来の義務ではなくて、事実上の尊重義務というふうに解すべきだと思います。
次に、地方自治法改正案に置かれた一般的根拠規定ではなく、個別法の根拠規定に基づいて行われている地方公共団体に対する権力的関与の中にも見過ごせない問題があります。それは、国の直接執行と呼ばれているものです。
地方分権推進委員会第二次勧告や地方分権推進計画を見ますと、国民の利益を保護する緊急の必要がある場合に、本来、自治事務として地方公共団体が処理する事項を国が直接執行すると述べられています。この考え方を受けて、例えば、国民の健康を守るため緊急の必要があると厚生大臣が認める場合にあっては、都道府県知事等の権限に属する事務を厚生大臣が行うといった規定が設けられています。
しかし、衆議院の審議においてたびたび問題にされていましたが、例えば建築基準法十七条一項及び七項のように、建設大臣が、国の利害に重大な関係がある建築物に関し必要があると認めるときは都道府県知事に指示をし、都道府県知事がその指示に従わないときは、審議会の確認を受けてみずから直接執行ができるといった規定が置かれています。ここでは、国民の生命、健康といった最も重要な法益に対する直接差し迫った具体的危険が存在しなくても、国が抽象的、一般的な国の利害に重大な関係があると判断すれば、広く直接執行ができる道が開かれていると思います。
国の直接執行には、この建築基準法十七条一項及び七項のように、まず指示によって地方公共団体を義務づける。それから、その義務履行がない場合にみずからかわって執行するという仕組みを持つ点で、代執行のタイプのものがあります。しかし、これは法定受託事務や現在の機関委任事務にあるような裁判を経て行われる執行ではありません。
それから、水道法の四十条一項及び三項のように、災害その他非常の場合に当たると国が判断すると、地方公共団体に対する指示等の義務づけを行うことなく、その事実だけをもって直ちに国が直接執行してしまう仕組みまであります。これは、直接的な実力行使をしていませんけれども、形の上では即時強制タイプのものではないかというふうに考えます。
こうした直接執行は、地方公共団体にとっては、単に法的拘束力を持つだけではなく強制力を持つという点で、指示等の通常の権力的関与よりさらに権力性の強いものになっていると言えます。したがって、これらのタイプの直接執行については、指示の場合の要件よりもさらに狭めて、国民の生命、健康がまさに侵されようとしているという緊急の場合にのみ厳しく限定して、先ほどから自己決定が強調されていますが、住民自身による対応では間に合わないという事態において発動すべきものと考えます。その限りで、裁判の道を排除するという、適正な手続を横に置くということも緊急避難的に許されるというふうに考えています。
しかし、もし、この種の直接執行について、個別法の幾つかの規定に見られるように、広い要件のもとで用いることを認めると、もう一つ裁判との関係で次のような問題があることも看過できないと思います。
それは地方自治法改正案の二百五十一条の五第八項を見てもらうとわかりますが、一方で行政事件訴訟法の八条二項及び二十五条から二十九条までの準用を認めていません。これは何を言っているかというと、不服申し立て前置があっても緊急の必要がある場合には不服申し立てを経ないで裁判所に行けるというのが八条二項です。それから、二十五条以下は御存じのように執行停止の仕組みです。これが準用から排除されています。それからもう一つ、四十四条に公権力の行使は仮処分ができないという規定があります。したがって、民事の争いもできません。
そうなってくると、新しい紛争処理の手続をつくっていただいたわけなんですが、この裁判は裁判をやったとしても直接執行が目前に迫っているという状況において、地方自治法改正案が認める紛争処理の仕組みを利用して争訟を提起したとしても、仮処分も執行停止の仕組みも結局使えないということになります。争訟係属中に直接執行をとめる道がありません。この間に直接執行されてしまえば訴えの利益がなくなりますから、裁判は維持できないということになります。この点で、ぜひ行政事件訴訟法の準用に関する規定に着目をしていただいて、見直しをしていただけないかというふうに思っています。執行停止の仕組みを盛り込む必要があると思います。
また、執行停止の仕組みを欠いた紛争処理の仕組みにもし手をつけないとするならば、地方公共団体は確実な救済の道として、もう一度原則に立ち返って、みずからの自治権が侵害されたというふうに主張し、みずから原告となり、今度の仕組みは機関訴訟という特別の仕組みを使っていますけれども、これでは救済の道が確保できませんから、通常の裁判、つまり通常の行政訴訟の道が開かれているということを改めて確認しておく必要があります。今度の仕組みがあるからもう普通のものは使わなくていいんだとか、そういう議論がもしあるとすれば、大変問題な状況が起こる可能性があると思います。
最後に、国による地方公共団体に対する関与の問題について、特に問題が大きいと考えています点について意見を述べさせていただきましたけれども、この間の衆議院での審議を拝見していまして、ほかの問題もそういうものが多々あるということは既に参考人の方々からも言われていますが、この関与の問題についても議論はまだまだ始まったばかりであるという印象を持っています。
したがいまして、地方自治法改正案はもちろん、四百七十五本という膨大な数の個別法の規定にも十分目を配り、さらには行政事件訴訟法等にも目を配っていただいて、きめ細かい審議をぜひお願いしたいというふうに思います。
どうもありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X00819990701/8
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009・吉川芳男
○委員長(吉川芳男君) 以上で参考人の方々の意見の陳述は終わりました。
これより質疑に入ります。
質疑のある方は順次御発言願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X00819990701/9
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010・脇雅史
○脇雅史君 自由民主党の脇雅史でございます。
参考人の先生方、本日は早朝からおいでいただきまして貴重な御意見を賜りまして、本当にありがとうございました。私からも御礼を申し上げます。
さて、かねてから検討されてまいりました地方分権の一括推進法案、衆議院を終わりまして、参議院も大分審議を尽くしてまいったわけでございます。ただいま四人の先生方から御指摘をいただきました件も既に両院において話題に上っているところでございます。
総括的に振り返ってみますと、今回の一連の動きは大いに評価ができるものだと。しかし、人によりまして少し物足りなさがある、疑問があるといったような意見なんですが、その中で機関委任事務廃止、これは極めて大きな出来事であるという評価があるようですが、先ほど来お話がありますように、それに伴って地方事務官の制度が廃止になりましたり、あるいは国の関与の仕方が必然的に変化をしてくる。
その変化の行方について、これは私はおもしろいなと思うんですが、まさに正反対の評価であります。賛成の方は、これまで総理大臣が関与することになっていたものを、個別に今回行くわけですから当然各担任大臣がおやりになるということで、極めて真っ当な姿だ、しかも、のべつ幕なしに国が関与するわけではもちろんなくて、違法行為等がある場合等に限定的に行われるものだということで、当然ではないかというような趣旨でございますし、反対される方の意見からすれば、もしこれが乱用されれば地方の自治権が完全に阻害されるんだということで、むしろ今より悪くなるという評価でございます。
私自身は、これは実際にやってみなければわからない部分もかなりあって実績を待つという行き方もあるのかなというふうに思っておりますが、そんなことが大きな論点であります。
そしてまた、もう一つ大きな論点が、どうせやるならお金も一緒にやらなければ意味がない、財源、税源の問題でございます。これは本日も林先生から大分お話がありましたが、それをやらなければ地方分権は意味がないと。これはかねて衆参各場面でお話がありまして、今すぐにはできないけれども遠い将来の姿としては賛成だという御意見が大勢のようであります。
そして、きょうはお話が出ませんでしたが、地方に大きな権限を持っていくに当たって、首長さんの権限が非常に大きなものになるだろう、知事さん、市町村長さんの権力が肥大化しないだろうかという心配がありまして、多選禁止ということが多くの方から言われております。そこに何らかの歯どめをつけないと、いろいろな弊害が出るのではないかといったようなことであります。
そんなさまざまな大枠の意見がございましたが、おおむねこれを契機に一生懸命頑張ろうということであります。
私、一つ気になりますことは、今あります法律、これは国が定めたものであります、当然でありますが。これはすべて国の立場、国の立場ということが必ずしも地方と相対するものではないわけであります、地方の福祉、住民の福祉向上を考慮した上での国の立場でありますが、そういう立場から制定されているものでありますから、全国一律なんですね。法律の思想はまさに全国一律。法律を国会で定めて、全国に一律に適用するという意味では、この法律が存在する以上、法律の運用に当たってその実施の部分を国、大臣から知事に移す、知事から市町村長に移すと読みかえてみたところで本質は変わらない。
結局、課税自主権のこともお話になりましたが、法律を条例化していくといいましょうか、国でやらなくてもいい法律というのが少しあるのではないか。そういう意味での法律の整備が、要らないものといいましょうか、国がやらなくてもいい、地方で独自にやってもいいというものを将来は少しふやしていかないといけないのではないかな。しかし、これは課税自主権もその一つかもしれませんが、非常に大きな問題を生じる可能性もあるわけで、まさに将来に向けてどこまで地方に任せるかという非常に大きな問題を生むのではないかなと思っております。
そんな中で、非常に大変な話ではありますが、やはり個別の課題について、例えば道路なら道路をどうするんだと。国の立場で国のネットワークということを考えますと、これは地方に任せられない部分は当然残るわけです。だからといって道路は全部国がやらなければいけないわけではなくて、市町村の立場で見た、住民の立場で見た身近な道路のネットワークというのはあるはずでございまして、それをまた全国一律にやる必要はないかもしれません。
大くくりには全国一律の規定があっても、それぞれの細かい規定については、例えば自転車道の幅員をどれだけにするかとか通学路をどうするかとか、いろいろな住民の要望にこたえたり環境に応じてさまざまな幅員構成にしてみたり、いろいろ決めようがあるわけであります。そういう個別の検討をしていかなければ、地方分権の問題は本質的な解決を見ないのではないかな。
まさに、これは今回の諸井参考人の大変な御努力によりましてここまで来たわけでありますが、この一連の推進法案も、地方分権、長い歴史ではありますが、本格的な分権時代へのまさに幕あけではないかなというふうに感じるわけであります。これは本当に大きな問題でありまして、国にとりましても地方公共団体にとりましても、とりわけ住民の皆様方の意識という意味で大事だ、大変なことだというふうに思うわけであります。
そこで、諸井参考人にお聞きをしたいわけでありますが、今までいろいろさまざまな議論がおありだったと思います。ここまでやっとたどりついたという感慨もお持ちではないかというふうに思うわけでありますが、今ここに座られて、振り返られて本当に印象的なこと、そして将来これだけは何としてもやらなければいけないこと。特にお聞きしたいことは、今後何が一番大事なのか、残されたことで政府にとって何が大事か、そして地方公共団体にとって何が大事か、住民にとって何を考えるべきかといったことでお考えをお聞かせいただければと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X00819990701/10
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011・諸井虔
○参考人(諸井虔君) ありがとうございました。
おっしゃるように、四年間、五百回に及ぶ会議を重ねてようやくここまでたどりついたわけでございまして、そういう意味ではまことに感無量でございます。
ただ、私どもは、この地方分権というのは、今、先生がおっしゃいましたように、やはり身の回りのこととか地域のこととか、そういう問題についてはなるべく地域の住民の方々の意向で決定できるような、いわゆる住民自治の体制に持っていくというのが最終的な目的ではないかと思っております。そういう観点からすると、私どもがこの四年間にやってまいりましたこと、そしてまたそれを法律にしていただきました今回の一括法につきましても、いわば出発点を築いた、あるいはとにかく扉を開いたというような位置づけなのではないか。これをもって到達点と言うにはまことにほど遠いわけでございまして、ただ、やはり出発点を築いて、扉を開かないことには先へ進めないわけでございます。
これから先のことというのは、やはり国民の世論がどれだけ住民自治に対して盛り上がってくるかということに結局帰するわけでございまして、それが自治体も動かすでしょうし、政治も動かすでしょうし、そして国会において必要があればやはり次々に法律、制度等を改正していかれるものではないか、こういうふうに考えております。出発点をつくっただけでございまして、まだこれからやるべきことは多々あると存じております。
ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X00819990701/11
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012・脇雅史
○脇雅史君 諸井先生からそのようにお伺いをいたしまして、大変に長い間御苦労されて、さまざまな方々の御議論をお耳にされた上での結論でございますから、私の印象もあながち間違いではなかったかなということで、これから今回の国会審議が終わって無事法案が成立いたしましたら、国民全体が力を合わせてあるべき方向を見つけていかなければいけないというふうに私自身も決意を新たにする次第でございます。
次に、池田参考人にお聞きをしたいと思います。
生活者の立場ということで、さまざまな経験をお持ちでございます。食品の安全ということで、いろいろ行政の壁にぶち当たったり、さまざまな困難なことがあったというふうなお話でありましたが、その中で、政府をも少しは動かすことができたということのようでありました。
私は、住民の方々がさまざまな場面でさまざまな意見を述べる、非常に大事なことだと思うわけでありますが、住民としてやらなければいけないことというのは、必ずしも住民の関心の高いことばかりではなくて、嫌なことも取り上げていかなければいけない。いろんな人がそんなものはほっておきたいというようなことが数多くあるわけでありますから、分権をきっちり進めていくためには、やはり嫌なことも何らかの格好で議題にのせていくというような仕掛けが要るのではないか。これはむしろ、あるいは住民の問題ではなくて地方公共団体の問題かもしれませんが、その辺で何か工夫がないかということが一つ。
それから、現在でもさまざまな場所で住民投票とかいろいろ言われておりますが、住民の意見と地方政府あるいは国の政府との意見が異なる、そのときに現在の議会制民主主義の決定の仕方と住民の直接関与する、したいという方向と必ずしもうまくかみ合わないというのが現状だと思うんですけれども、その辺の意見調整のルールといいましょうか、それをうまくつくっていかなければいけないというのが現在の我が国の状況だと思うわけでありますが、その辺につきまして、池田先生のこれまでのさまざまな経験からして御意見をお伺いしたいと思うわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X00819990701/12
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013・池田敦子
○参考人(池田敦子君) 二つ御質問をいただいたと思っておりますが、初めの、住民も余りやりたくないことなどにどのような工夫をすることができるかというような御質問だったんですけれども、私は、いろんな場面で徹底的に情報を差し上げるというか、住民自身が得ることができれば、それはこういうわけで必要なのかというふうな納得があると思うんです。先ほど林先生の方もアカウンタビリティーというようなお話をされておりましたけれども、やはり情報公開あるいは知りたいことを知らせていく、そういった努力があれば、私は、自己責任ということがみずからわかってすべてに反対というようなことはないのではないかと思っております。
それからあと、議会の決定の仕組みと住民投票の矛盾といいますか、そういうことだと思いますが、私は、議会は間接的な民主主義だと思いますけれども、住民投票は直接民主主義に属することだと思います。それは、ある場面では必ず必要なことだと思いますが、今現在はある町にある事態を忌避したいというようなことに多く使われているのがある意味では残念だと私も思っているわけなんです。
できれば欧米にもございますような、アメリカでしょうか、レファレンダムとかイニシアチブとかいう制度なんですけれども、条例を提案したり修正ですね、そういったことを一つの提案に結びつける住民投票というんでしょうか、そういったことができるようになる。それは住民の成熟、自治の成熟の度合いとかそういったものにもよるかもしれませんが、私はそういうところまで、いろんな、最初は住民投票も起こるかもしれませんけれども、そういったところまで実際やってみることによって、それこそ自分たちの投票の持つ責任といいますか、そういったことが住民に納得され、制度は成熟していくというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X00819990701/13
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014・脇雅史
○脇雅史君 私が最初に申し上げたのは、賛成であるか反対であるかということではなくて、賛成でも反対でも、一般に住民の方々の俎上にのりにくい問題だけれども本質的に大事な問題というのが世の中にはたくさんあるわけで、そういったことをいかにうまく住民の方々の意見を吸い上げていけるのかなということがちょっと気になったということでございます。
住民の方々が多く声を発するというのは、極めて行政といいましょうか地方自治体であれ国であれ大事なことですから、それをうまく取り上げていくという仕掛けが本当に必要だと思っておりますが、私は、声の大きい人だけが物を言うということではなくて、住民の間の声をうまく取り上げていくにはやはり仕掛けが要るのであって、昔の隣組ではありませんが、それなりの住民のネットワークというのをこれからつくっていかなければいけないのではないかなと思います。
そのときに、いかに多くの方に参加いただけるそういうネットワーク、これは市民の義務としてそういったものをつくっていかないと分権の受け皿として最終的に落ちついたものにならないのではないかなと。今回の分権は国と地方公共団体のやりとりでありますが、最終的には住民の参加意識というところにいかないと分権は完結しないと思うものですから、その辺が大事なのではないかなということを感じているわけであります。
それから、次に林参考人にお伺いしたいのでありますが、きょうは特に財源、税源ということでお話しになられて極めて興味深かったわけでありますが、実はきのうも宮澤大蔵大臣もこの話をされていました。国全体の所得の再配分、再分配、地域的な配分といったような観点から、国がどうしても関与しなければいけない部分があるということと、それから地方が独自に課税自主権を持って変えていく、税金を形づくっていくということになりますと、あるところでは税金があったりなかったり、あるいは税率が違ったり、そうすると一物多価、一つの物がいろいろな値段で存在するといったようなこと、サービスから物の値段までさまざまになって、そういう状態に今の日本では余りにも情報と移動が容易なものですから国民全体がなれていません。
将来そういった、ガソリンなんかは大阪と東京ではえらい違いがあって私はびっくりしたこともあるんですが、地方によって物の値段が大きく変わってくるといったようなこと、そしてサービスの水準も変わってくるといったことについて、国民の側の、住民の側の覚悟があるのかという常識論みたいな部分から始めて、そういう意識革命というか意識の改革がなければ最終的にはいかないのではないか。
これはまた非常に大きな問題ですから、全部一発で革命的にやるのではなくて、例えば何らかの税について一つ外して様子を見るといったようなやり方もあるのではないかと思うんですが、将来のことはともかくとして、現在はこれだけ地方も国もだめだから少しもやれないというような状態にあるわけですが、遠い将来を見越して何からやっていくのか、少し手順について住民の意識等の問題もひっくるめてお話を伺えればと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X00819990701/14
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015・林宜嗣
○参考人(林宜嗣君) どうもありがとうございました。
私がお話をさせていただきましたことは非常に長期の問題ではありますけれども、やはり今から少しずつそういう目標に向かって前進していかなければいけない。ただ、私がお話をしましたようなことが国民の議論の中に大きな課題としてこれから植わっていかなければならないのではないかというぐあいに考えております。
住民の責任かどうかというのはまた別にいたしまして、先ほど池田参考人の方からもお話がございましたように、情報の提供の仕方が非常にまずい。例えば広報なんかでも、固定資産税の納期はいつまでですという情報は出ますけれども、固定資産税という税金が一体どのように使われているか、これもいわゆるマクロで、教育費が何%といったような形でしか情報が提供されない。あなたたちが納めた税金がどのような形で使われているかということをわかりやすく情報として流そうと思いますと、行政サービスにどれだけのコストがかかっていて、その行政サービスをどの程度の人たちが利用しているのか、受益者はどの程度あるのかといったようなことまで含めて情報を流していかなければいけない。
私はその情報を流すことで住民参加というものが随分変わってくるんだろうと思います。そのことがひいては税のあり方、今はかなり地方税の部分でも法人税が多いとかあるいは住民税も応能課税的になっているとかといったようなことに対する疑問をまず感じていただくためには、そういうコスト情報あるいは受益情報、こういったようなものを明確に流していくということからまず始まっていかなければならないのではないかというぐあいに思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X00819990701/15
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016・脇雅史
○脇雅史君 どうもありがとうございました。
林参考人の御意見は、受益と負担ということを常に念頭に置かれているようで、私はこれは極めて大事なことだというふうに申し上げたいと思うんです。
税金をどれだけ払ってどれだけの受益を得ているかというのは、一人一人そういう意識が要るだろうと思いますし、国がやれ地方がやれと言っても、だれかの税金ですから、勝手に金が降ってくるわけではなくて、だれかの懐から出たお金をそこに回すんだということですから、だれが負担しているのか、そういうことをしっかり意識していかないと、自分が何ぼ払ってどれだけ還元されているかという意識は非常に大事なことだというふうに共感した次第であります。
それから、市橋参考人は、先ほど私冒頭でも申し上げたんですが、国の関与の仕方ということで、余りいい悪いというルール上の問題にのめり込まずに、少しやってみて悪ければ変えていくという柔軟な発想が、特に今回の一連の分権の動きが、諸井参考人のお話ではございませんが、まさに幕あけということでありますから、そういう態度が必要なのではないかというふうに感じるんですが、いかがでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X00819990701/16
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017・市橋克哉
○参考人(市橋克哉君) 御指摘のとおり、現在のこの関与の問題をめぐっては、関与に関して国が一定の状況においては当然することが責任上必要であるという意見と、それから現在の自治事務との関係で見ながら、あるいは先ほど最初に述べましたように、主従の関係から対等、協力の関係にするのだという観点から見ると、どうもそういう対等のものではないんではないか、あるいは自治体の方を信頼していないんではないかという意見と二つに割れている、客観的な状況としてはそういうことだと私も思っています。
それで、少しやってみて、それでおかしければ変えたらどうかという御意見なんですが、私の意見としましては、最初にこれは諸井委員長の方も言われましたように、原則として従来の主従の関係から対等、協力の関係に変える第一歩をつくるのだというふうに考えるとするならば、やはりそれを推し進めるような、それにブレーキをかけるようなものではなくてそれにアクセルをかけるような、そういう法律の仕組みをできる限りつくっていただきたいという気持ちでいます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X00819990701/17
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018・脇雅史
○脇雅史君 私つくづく感じるのですけれども、分権を考えていくときでも何でもそうなんですが、国でさまざまな不祥事があったりいたしまして、国に対する信頼感というのが非常に今薄らいでいる。私は実質以上に虚像として語られている部分が多過ぎやしないかなというふうに懸念しているんです。
特に、マスコミを中心として悪かった人のことばかり言っていますので、全体の意識として国全員が悪いように思われがちでありますが、決してそうではなくて、大多数の国の役人、県の役人というものは本当に世のため人のためと申していいほど一生懸命働いているのが実態だと思うわけで、国に任せること、国に関与させることが悪であるという前提ではなしに、善ではあるけれども間違うことがあるという、そういう感じ方の方がよろしいのではないかというふうに思うわけです。悪かった場合、間違えた場合には徹底的にそれを裁き評価をしていくということが大事なんであって、それをすぐ全体の否定につなげるというのは、どうも国全体の進み方として非常にうまくないのではないかといったことを私自身は感じております。
さて、そろそろ時間がなくなってまいりましたので、あと二分という表示、今一分になりましたが、一人十五秒ぐらいで首長多選について簡単に、諸井先生から御意見を承れればと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X00819990701/18
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019・諸井虔
○参考人(諸井虔君) 委員会の中でも首長多選についていろいろ議論いたしました。何かやはりこれについて言うべきではないかという議論もありましたのですが、やっぱり最終的にはこれは自治体で自主的にお決めになるべきことではないかという、そういう形で結論を出しました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X00819990701/19
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020・池田敦子
○参考人(池田敦子君) 私も基本的に地域で決めることだと思いますが、私個人は多選は反対です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X00819990701/20
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021・林宜嗣
○参考人(林宜嗣君) 私は、地方議会がもう少し積極的に働くことによってその問題は解決されるのではないかというぐあいに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X00819990701/21
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022・市橋克哉
○参考人(市橋克哉君) 私の意見は、多選に関しては法的に規制するということについては反対です。ただ、皆さんと同じでして、住民のやはり自己決定、自治に任せて、住民の中からそういうものに対する批判が世論になることを期待しています。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X00819990701/22
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023・脇雅史
○脇雅史君 どうもありがとうございました。終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X00819990701/23
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024・朝日俊弘
○朝日俊弘君 民主党・新緑風会の朝日でございます。
冒頭に、四人の参考人の皆さん、多分それぞれに急なお願いだったと思いますが、御出席をいただきましてありがとうございました。私からも御礼を申し上げたいと思います。
いろんなことをお尋ねしたいんですが、限られた時間ですので、幾つかの問題に絞って御意見をお聞かせいただきたいと思います。
その前に、私調べてみましたら、この法案審議にかかわっての参考人あるいは公聴会で女性の方が出席されたのは初めてなんだそうであります。こんなことではいけないなと思いつつ、そんなこともありましたので、きょうはレディーファーストで池田参考人からお話を伺いたいと思います。
実は、多くの方がおっしゃっていますように、今回の地方分権の一括法案、機関委任事務というところに着目をして扉をあけた、大きな意味ではステップを踏み出しつつある、こういう理解だと思うんです。ただ、地方分権の話は機関委任事務を廃止して自治事務と法定受託事務に新たに分けて、こういう話になるものですから、さて、そこからもうわからなくなっちゃうというか、何のことかなと。機関委任事務という言葉というのは随分専門用語ですね。それから、新たに出された法定受託事務という言葉も、お隣で諸井委員長がうなずいておられますけれども、非常に難解な言葉から始まる。せっかくの地方分権推進の第一歩というか大きなステップである地方分権推進一括法案の議論が、どうも市民というか住民の立場から見るとわかりにくいというか、取っつきにくいというか、受けとめにくい。
私もいろんな方といろいろお話しするんですが、そういう行政用語ではなくて、例えば先ほど池田参考人がお話しになりましたけれども、食品安全条例をつくろうということで動いたときに機関委任事務という問題にぶつかって、国と都がどうなのかということになってくる。つまり、具体例でもっと説明をしていかないと、あるいは訴えていかないとなかなか市民の皆さん、住民の皆さんには受けとめていただけないのではないかという心配を持っているわけです。
生活者の立場でいろいろ市民活動に携わってきておられる池田さんの方から、どうしたらこの問題をもっと市民の皆さんに受けとめていただけるのか、あるいはどんな議論の仕方を国会でしたらいいのか、政府はどうしたらいいのか、注文も含めて御意見をいただければありがたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X00819990701/24
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025・池田敦子
○参考人(池田敦子君) 大変難しいといいますか、大きな御質問をいただいて恐縮でございます。
私がきょう意見を述べさせていただく中に幾つか具体的な例を挿入しましたのは、やはり分権が進んだらどんなことが変わり、また生活のどこの部分がよくなるのかということを実際イメージとして説明できるというふうにならなければ、この分権はお役所がやっていることじゃないかというふうになってしまうのではないかと思っているわけなんです。
ですから、そういう意味では、ある法律のこの部分の機関委任事務が外れたら、先ほどの食品の例で言えば、機関委任事務で食品の監視をするということが外れたら、もしかしたらその地域で生産される食べ物については安全ですよということを自治体がお墨つきを出せるとか、あるいはこの農法のものはどういう基準によってつくられているからより安全ではないのかということがその自治体の議論の中で位置づけられていくというような、その具体的なことを説明していく仕事が特に国会議員の皆様にはおありなのではないか、議論をされている皆様にはおありなのではないかというふうに私は感じるところです。
ですから、委員会でもさまざま、例えば機関委任事務と法定受託事務がどうとかという中にも、今のようなことを一つ例にして説明していただければ、食品の安全の基準は自治体ではつくれなくて法に基づいてつくるとか、だけれども先ほど言った地域の生産物についてはどうできるとかというような、一つのそれも例ですけれども、分権についてそんなふうな御説明をぜひしていただけたらありがたいと思います。
ちょっと十分なお答えにならないかもしれませんが、思いです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X00819990701/25
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026・朝日俊弘
○朝日俊弘君 むしろ私たちが考えなきゃいけない課題なのかもしれないと思いながら、四百七十五本ありまして、一つ一つ個別法をやっていこうとすると気が遠くなるような時間が必要だ。かといって、地方自治法の中での全体的な、機関委任事務をどうする、法定受託事務をどうする、自治事務をどうするという議論だけではなかなか具体論が見えない。そういう点ではぜひこれからも可能な限り、個別にどうなっていくのか、そのことを具体的にイメージしながら、あるいは具体的に語りながら市民の皆さんに問題を提起していくことが必要だなというふうに思っています。ぜひお知恵があれば今後も引き続きいただきたいなと思っております。
そこでもう一つ、池田さんは、生活者ネットワークという活動とあわせて東京都会議員を何期かされて、自治体議員という経験をお持ちなわけですね。自治体議員の皆さんのこの法改正に関する問題意識も、相当強く持っておいでの方から意外とそうではない議員さんもおいでになって、ちょっとどうなのかなと思うときが時々あるんです。それは多分、今回の中心的なテーマは国と地方、特に都道府県と市町村という二層構造を前提として地方分権をどう進めるかというところにあるものですから、これがもっと都道府県と市町村というところに具体的な議論が進んでいくと、かなり激烈な議論が起こるのではないかと思っているわけです。
そういう意味では次の課題なのかもしれませんが、都道府県と市町村との関係について何をどう切り込んだらいいのか。東京都というのはちょっとまた全体的なところとは違うところがあるかもしれませんが、市区町村というふうに考えれば二層構造なわけですから、そこのところで課題が何かということを御意見があればお聞かせください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X00819990701/26
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027・池田敦子
○参考人(池田敦子君) 今のことにお答えする前に、先ほどの分権が進んだらどうなるのかという最大のキーポイントは、私は、自己決定できる、自分で決められるということが本当に保証されることではないかというふうに端的には思うということをつけ加えさせてください。
それから、都道府県から区市町村へということはやはり住民だと私は思うんです。都にももちろん住民はいるわけですけれども、自分の所属している自治体というのは、基礎自治体、区だったり市だったり町村だったりすると思いますが、そこに住民が存在しているということだと思うんです。ですから、一番都は、都道府県事務という広域なことを調整したり、あるいはある場合には援助をしたり、そういうことになってくると思いますけれども、そういう点でいえば、分権の社会になれば都道府県は非常に力が弱まるというんでしょうか、やはり国は法律を決めますけれども、都道府県は中間の存在になって、自治体がある意味では非常に重い決定権を持った重要な行政政府になってくると思います。そのことは結果的に言えば、住民が存在して、その住民が決定権を持ちながら自治を進めていくという、そういう構造に持っていかなければならないからではないかと思っているわけです。
ですから、私は、都と市町村の関係ということを分権型に進めていくには、先ほど申し上げましたように、国の関与が都道府県を通して市町村に及ぶというようなことはやっぱりなしにしてほしい、そういう法令はつくっていただきたくない。できるだけ自分の自治体で、特に政省令に当たるような細かいことが決められるようにするという、そういう意味では自治も、基本法があったり基本条例があったりするということが必要なのではないかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X00819990701/27
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028・朝日俊弘
○朝日俊弘君 ありがとうございました。
もうあと九分になりましたので、ぜひ諸井参考人に一、二伺っておきたい点がございます。
先ほどもちょっと触れられましたけれども、今回の法改正は第四次勧告までの分を踏まえて一括法案として法改正する、そういう意味では、第五次勧告について第二次の推進計画の中に盛り込まれて、さあ、これからどうするかということが政府に求められている。それから、先ほどの話とちょっと関係するんですが、都道府県と市町村との関係について第六次勧告でというお話もあるやに伺っているわけで、お尋ねしたい点は、一つは地方分権推進委員会の残された期間なすべき課題が何で、どんなふうにされようとしているのか、まずそこの点を。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X00819990701/28
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029・諸井虔
○参考人(諸井虔君) 私ども、法律でもってまず政府が地方分権推進計画をつくるための具体的な勧告を出せということと、それと並んでもう一つは、それが実際に法律になり、あるいは政省令になり、具体的に実施ができるような形になっていくことを監視するという業務を帯びているわけですね。
勧告は五次勧告まで済ましております。それでもう一つ、六次をやるかどうかという問題が残っておりますが、これは、実は私ども、まず今の一括法案の御審議が終わって、その後委員会内部でいろいろ検討したいと思っております。同時に、自治体の御意見あるいは中央省庁の御意見あるいは有識者の方の御意見等を伺った上で、委員会内部で決定したいと思っております。
それはそれとして、法律ができたとして、その後政省令とか、場合によっては条例なんかも出てくるのかもしれません。そういうものがどういうふうにでき上がっていくのかというのはしっかり監視をしていかなくちゃいけないと思いますし、それから、これから新たにできる法律がやはりこの分権の考え方に沿って整理をされていくかというような点もチェックしていかなくちゃならないというふうなことで、この法律がもし成立いたしましたら、ぜひ成立させていただきたいわけでございますが、あと一年間違いなく実施されていくような、そういうような体制をつくることをまず第一にやっていかなくちゃならないというふうに考えております。
ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X00819990701/29
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030・朝日俊弘
○朝日俊弘君 そこで、地方分権推進法に基づいて、来年の七月ですか、地方分権推進委員会は時限的に設置されているというふうに理解をしているんですが、実は、この地方分権とは別途に中央省庁再編の話もありまして、新しく巨大な総務省に地方行政関係も一括して所掌するというような、そんな提案がされているわけです。多分今からお尋ねしようとする問題は、政府なり国会できちんと考えてほしいというお答えが返ってくるんじゃないかとは思いつつ、この地方分権推進委員会が来年の夏にここで終わりました、さてそのままでいいのかなと。
多くの方がおっしゃっていますように、今回の地方分権一括法は機関委任事務に着目して、もちろん権限移譲の問題もありますけれども、一つ扉を開いて大きなステップを踏み出した、しかしある意味ではこれがスタートなんだ、こういうことでありますから、さらにその次のステップをどう描いていくのか、それをどうプロモートしていくのかという課題は引き続き残る。そういう意味では、地方分権推進、一つの大きなステップを踏まえた上で次に何をどうしていくかという新たな推進機構というか何らかの仕組みがぜひ要るのではないかと私は思っているわけです。ただ、難しいのは、この地方分権推進というのは中央先導型でやればやるほど自己矛盾を起こすというところがあるわけで、そのことを考えるとさてどうしたらいいのか、ちょっと私自身も考えを取りまとめかねているわけです。
一年先の話をお尋ねするのも変な話ですけれども、あと一年、先ほどお話があったように、この法改正を受けての作業がちゃんとできるように監視していくんだということを前提とした上で、さてその次の仕組みをどんなふうにしたらいいのかお考えがあれば、アドバイスがあればぜひいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X00819990701/30
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031・諸井虔
○参考人(諸井虔君) お察しのように、これは政府がお決めになる、あるいは国会がお決めになることという結論になるんだと思うんですが、 私ども五年という時限立法であったというのは非常に意味があったと思っております。
というのは、この期限があったらばこそ我々も本当に一週間に何遍も会合を開いているんです。問題を詰めていくという努力をいたしましたし、相手になる各省庁あるいは自治体もそれに対応して非常に多くの時間を割いていただいたと思います。だからこそ、この今の法律がこの段階でここまで来たということが言えるのではないかと思うんです。
こうやって期限を限ってその間に仕事を一つ仕上げるということでございますから、その後、じゃ、おまえたちどうするんだ、どうしたらいいんだということについては、私どもは今の法律、推進法に基づいて、そこに書いてある例えば機関委任事務の問題、必置規制の問題、権限移譲の問題、あるいは国の関与の問題とか補助金、税財源の問題、あるいは地方の行政体制の問題、この問題については一通りのことは私どもの力の及ぶ範囲でやったつもりでございます。もちろん、さっき申し上げたように、それぞれが出発点ということではないかと思います。
ですから、この先をどういうふうに進めていかれるかというのは、これは国会あるいは政府で御検討願って、あるいは本来国会でどんどん法律改正なりなんなりそういう国民の世論があるのならば進めていかれるのが一番適当なのではないかというふうに私は考えております。これは個人的な見解でございます。委員会としては特にその後どうという考えを申し上げるつもりはございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X00819990701/31
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032・朝日俊弘
○朝日俊弘君 ありがとうございました。
多分そう言われるだろうなと思いつつ、しかしぜひ一言御意見をいただきたかったということでありますので御理解をいただきたいと思います。
残念ながら、あとお二方の参考人に質問をする時間がなくなりました。
終わります。ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X00819990701/32
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033・魚住裕一郎
○魚住裕一郎君 公明党の魚住裕一郎でございます。
四人の先生方には、本当にきょうは貴重な意見をちょうだいいたしましてありがとうございます。
時間が私の場合は十五分しかありませんので、早速質問に入らせていただきます。
まず、諸井参考人にお尋ねをしたいんですが、確かに平成七年から五百回を超えるようなずっと議論をされてこられまして、その努力には心から敬意を表する次第であります。本当に明治以来あるいは戦後改革以来の大きな改革であろうということで、また力も入っていろんな議論を展開されてきたというふうに拝察をするものであります。
ただ、特に国と地方の関係、先ほど来からも話が出ていると思いますが、この勧告と法案との差といいますか、随分勧告から後退をしてしまったんではないか。それを進めてきた委員長の立場からしてみると、単純に先ほどは評価できるというお話でございましたけれども、ちょっとそうはいかない部分もあるんではないだろうかというふうに思うわけであります。
特に、せっかく機関委任事務を廃止して法定受託事務と自治事務にしていくぞ、そもそもその中で、大体例えば自治法だけで五百六十一項目あって八割方が自治事務になるぞというようなお考えだったと思うんですね。法案ではそれが五五%ぐらいになってしまって大幅に後退をしてしまった。これをどう評価できるのか。
また、この法定受託事務の定義というか考え方ですね。これも、勧告では国民の利便性、効率性から法定受託事務を残すんだ、こんなような勧告だったと思うんですが、法案では国が適正処理する必要から法定受託事務をするんだと。人によっては勧告とは随分後退した形で法案がつくられているなというふうに思うわけであります。
また、先ほどから議論が出ておりましたけれども、各大臣の是正の要求、しかも、これについては各自治体の是正改善義務というものも、勧告にも載っていないようなものが突然、国と地方は対等、協力の関係にあるというふうにありながら、このようなものも突然ぼこっと出てくるというようなことでございまして、本当に今、参考人の御努力がありながら、単純に評価していいんだろうかというふうに思う次第でございまして、その点に関しまして、諸井参考人の御意見をちょうだいしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X00819990701/33
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034・諸井虔
○参考人(諸井虔君) 私ども、一括法を政府がつくっていかれる経過について、ことしに入ってからも何遍も委員会を開きまして、その経緯を各省あるいは内政審議室とかそういうところから聞いてまいりました。大体私どもの勧告、そしてまた政府の推進計画というものをかなり忠実に写していただいているんではないかなと。
ただ、法律につくるときに法制化の作業というのがあるわけでございます。やはり法律用語としてこれはどうも余り適当じゃないから法律として整理したときに問題だというような点で、私どもの勧告あるいは計画と文言が多少違ったところがあろうかと思いますが、これはしかし実質的には余り大きな違いではないというふうに私どもは評価しておるわけでございます。
さっきのおっしゃいました法定受託事務の定義なんかも、やはりいろいろ聞いてみますと、法制上の整理として効率性とか利便性とかというものでこれを規定するということが非常に困難である、あるいはおかしくなってしまうというふうな説明でございまして、これは多少しようがないのかなというふうに私ども考えましたし、それから是正要求の問題も、勧告でももちろんこれは書いてございます。書いてございますが、皆さんがおっしゃっていますのは、今までよりもっときつくなったじゃないかというふうなことじゃないかと思うんです。
ただ、我々の考え方は、そもそも従来の制度というのは、機関委任事務制度というものによって、知事さんなり市町村長さんを政府の下請機関として各省庁が包括的な指揮監督権限を持って一々指図ができるような、そういう体制のもとで事務が処理されていた、その制度そのものが根底からなくなってしまったということでございまして、それがなくなった上で、今度は、法律にやはりこれは明らかに違っている、あるいは国民にとって甚だどうもふぐあいなことが生じているとかいうようなことが起こったときに、政府として何にもできないということではかえってバランスがとれなくなるということで、我々も勧告の中でも是正の要求というものは一応うたっているわけでございます。
法律上の形の対比とは別にして、トータルとして実質的に見た場合には、私は、これは必要なバランスであって、機関委任事務制度そのものを残していることに比べれば、はるかに地方分権の方向に前進しているのではないかというふうに評価しているわけでございます。
ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X00819990701/34
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035・魚住裕一郎
○魚住裕一郎君 先ほど諸井参考人は、今回が出発点だというお話でございましたので、出発点だからこそこういう定義づけというものも大事かなと思ってお聞きをした次第であります。
さて、今回の分権法では、財源問題について、本当にお金の裏づけがない分権というような感じでございまして、先ほどの林参考人からの意見陳述を大変興味深く聞かせていただきました。
そこで、林参考人の著作等も拝見いたしましたけれども、地方公共団体の行政サービスの生産者というような位置づけ、これは非常に大事な視点で、私もそういうふうに思うわけでありまして、民間企業と同じようなアナロジーで考えていくべきである、あるいは先ほどもお話がございましたが、最少経費で最大の効果をというような視点、あるいはアカウンタビリティーを受益と負担との連動を持った形でわかりやすくしていくということかというふうに思いますが、そうなりますと、やはり住民の皆さんに説明するに際して、各地方公共団体が行っている行政についての評価、この行政評価というのが非常に大事になってくるのではないか。
中央省庁に関連しては、まだ不足の部分がたくさんございますけれども、一応何か省内的にもあるいは政府全体としても評価システムをつくるというような形になっていきます。また、地方の県レベルにおいても、バランスシート等を含めたそういう評価システムというか、そういうあり方、係数のシステムをとって努力しているところもあるわけですが、この行政評価システムということについて林参考人はどのようにお考えいただいているでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X00819990701/35
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036・林宜嗣
○参考人(林宜嗣君) 今、自治体でいろいろなところが事業評価の委員会なり研究会をつくって議論している真っ最中だと思います。ただ、行政サービスというのは、そもそも受益がだれに帰着しているかがわからないからこそ行政サービスでありまして、それを数量的に便益を評価するというのは至難のわざでございます。
したがいまして、わかりやすく住民に提示できるというのは、いわゆるコストベネフィット分析のようなものを使って、今建設省が道路、BバイCが一・五以上だったらというような話をしますけれども、ベネフィットというのは幾らでも計算の仕方によっては変わってまいります。したがいまして、それをもとにして住民に提示するということではなくて、むしろ行政サービスは本来このようなものでなければいけない、つまり全市民が公平に使う、あるいはあるサービスが特定の個人の利用者であったとしても、その利益が他の住民にまで及んでいくといったような公共性があるというようなことに立ち返ってみて、現在の行政サービスというのは一体どの程度のコストをかけて、だれが、どの程度の住民が利益を受けているかということがわかれば、私は、それに対して住民は適正な判断を下すことができるだろうと思うんです。
ですから、余りバランスシートだとか、あるいはコストベネフィット分析だとか、そういったようなことで事業評価をしていくよりは、むしろ同じ目的をどのように安いコストでそのサービスが提供できるかということが、いわゆる他自治体との比較ができるような、そういう評価システムをつくっていく、これが私はまず出発点ではないのかなというぐあいに思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X00819990701/36
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037・魚住裕一郎
○魚住裕一郎君 確かにそういうこともあろうかと思いますけれども、アメリカ等でもかなり個々の行政サービス分野ごとのサービスの分析というようなこともやっているようでございまして、どんどん進めていってもらいたいなと思う次第であります。
また、財源の問題でございますけれども、引き続き林先生にお聞きしたいと思いますが、税源の移譲が非常に大事になってくるんだろうと思うんです。課税自主権ももちろん大事なんですけれども、一応国としてパイは決まっている、国全体としてはパイが決まっていて、宮澤さん等、今景気悪いからお渡しするような財源がないんだというようなことを言っておられますけれども、やはり事務量に見合ったそういう税源をきっちり国の方からも移譲していくということが大事になっていくというふうに思うわけでございます。
先ほど来先生は課税自主権あるいは応益課税ということを中心に論述されておりますけれども、税源移譲ということについてはどのようにお考えなのでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X00819990701/37
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038・林宜嗣
○参考人(林宜嗣君) 私は、現在の六五対三五を三五対六五に変えるとかいったような話では決してないんだろうというぐあいに思っております。
と申しますのも、意見陳述のところで申し上げましたように、例えば国の財源で保障しなければならない水準というものが決まらなければ、国がどれだけの税収を集めるべきなのかということが決まらないわけであります。
今回の法案でも、例えば自治事務に対しても国が財源保障をする場合がある、あるいは地方債の発行に対して同意が得られたものに関しては公的資金を投入し、そして後ほど基準財政需要額に参入して財源保障を行う。このあたりが、私は、問題が解決しない限り、国と地方の税源配分をどのようにするかということの答えを見つけ出すのが非常に難しいと思っているんです。
ですから、本当に同意が得られた地方債の負担を国が基準財政需要額にすべて参入する必要があるのかどうかという検討が私はこれから必要になってきて、そして初めてその税源の配分の問題が出てくるのではないかというぐあいに理解しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X00819990701/38
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039・魚住裕一郎
○魚住裕一郎君 今も話の中に出ましたけれども、先ほど交付税の関係で、不交付団体百五十以下というお話が出ましたけれども、昨年、平成十年は百二十なんです、三千三百の中で。そういう状況になっておりまして、私ども財源保障機能というよりは、財源の均衡化というか、格差是正というか、そういう機能を交付税については、機能重視というか、重点を移行していくべきであるというふうに考える次第でございます。
今、地方債の話がちょっと出ましたけれども、先生の冒頭の意見陳述の中で、事前協議制云々という言葉も出たわけですが、これは事前協議で同意があれば低利で長期の政府資金も借りられるという形になっているんですが、同意がなければだめなんです、使えないわけですね、地方債計画の中に入れませんので。そうすると、事前協議制とは言いながら、実質は許可制と変わらないのじゃないのかという点があるわけでございまして、一歩前進といえば一歩前進なんだけれども、当分の間、五十四年間やってきて、一歩前進のように見えるけれども、実質変わっていないというように思うわけでございますが、先生、御意見ありましたらよろしくお願いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X00819990701/39
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040・林宜嗣
○参考人(林宜嗣君) 恐らく実質同意が得られるという部分は従来と変わらないんだろうというぐあいに思います。
ただ、それ以外に道が開けるということは、これは議会に報告をする義務があってというようなことを考えますと、やはり議会の責任といいますか、そういうものも強化されましょうし、あるいは自由に借りられるということになりますと地方の財政力等の問題が出てまいりますので、これは私はいい効果を生むと期待しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X00819990701/40
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041・魚住裕一郎
○魚住裕一郎君 あと、そのほかの先生、ちょっと時間がなくなって大変失礼いたしました。
ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X00819990701/41
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042・八田ひろ子
○八田ひろ子君 日本共産党の八田ひろ子でございます。
参考人の皆様には、お忙しい中、早朝からお出かけいただきまして、御意見をありがとうございます。私、すべての皆さんにお伺いしたいというふうに思っておりますが、時間の制約もございまして、御無礼がありましたらお許しくださいませ。
まず、市橋参考人にお伺いをしたいというふうに思います。
先ほど、一般ルールとしての地方自治法でも個別法でも、今回の改正で国の権力的関与が強まる部分についてお示しをいただき、また積極的な規定もあるという御見解のようでありますけれども、私どもも今回の改正が憲法が掲げる地方自治のさらなる前進に資するものでなければならないと考えております。先ほど諸井参考人の方からも、上下主従の関係を改める、身の回りのことはその地域住民が決定をする住民自治の前進というのが基本的な分権推進委員会のお考えという御意見がありまして、私も本当にそのとおりだというふうに思っております。
基本的に行政というのは身近な自治体で行うことが憲法と地方自治の本来の出発点であり、行政というのは、今回書かれております福祉の増進は無論ですが、教育や警察とか消防や公衆衛生、治山や治水を初め、住民の身の回りのことはその地域住民が決定する、そういう分権であるべきだと思います。
今回の地方自治法改正が、この憲法の掲げる地方自治というもののあり方についてどういうふうな方向に行っているというふうにお考えか、まずお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X00819990701/42
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043・市橋克哉
○参考人(市橋克哉君) 今御質問がありましたように、私も今度の分権一括法を読みまして、そこには憲法が保障する地方自治の観点から見て非常に大事な地方自治の本旨をより豊かに具体化するという側面を持っている部分も幾つかあるというふうに考えています。それと同時に、先ほどお話ししたような、かなり問題ではないかというものもたくさんあるというふうに思っています。この点で、地方自治の本旨を充実するというところで私の意見も皆さんと同じですが、やはり基本的には住民の自治というところをどれだけ充実するかということが中心にならなければいけないというふうに考えています。
この点では、確かに機関委任事務を廃止しまして、国による包括的な、しかも閉鎖的な、同一の行政機関の中にあるかのようなそういう指揮監督が壊れたということは画期的なことなんですけれども、そのかわりに、その後、では自治体にさまざまな問題があるかもしれない、そういうときどのようにこれを是正するのかという話に来るときに、どうも今度の法案というのは、国がこれを統制するんだ、国が関与することによって是正するんだというところに力点が行き過ぎたというふうに思っています。
地方自治の本旨を住民自治で考えるということであれば、住民のところにやはり顔を向けて、住民の目線のところで住民にパワーを与えるというか、そういう仕組みをこの中にたくさん盛り込むことによって是正を図るということが本来の筋だろうというふうに思っています。
そういう面で非常に象徴的なことは、今度の法案は地方自治法の第十一章のところが非常に細かく丁寧に、国民からすると先ほどから出ているようにわかりにくく書かれているわけでして、やはり私たちの考えは十一章ではなくて第二章の住民のところです。ここに、先ほどからも出ていますが、直接請求の仕組みだとかいろいろ入っています。これを豊かにしてより利用しやすいものにしていくということがやはりもう一つあわせて必要だったんではないか。どっちから行くのかという話もあると思いますけれども、やはりそちらの方もやっていただきたかったし、今後ぜひそれは追求していただきたい。
特に国会の皆さんには、法令をつくる際には地方自治の本旨をいつも考えてつくりなさいという規定が入りましたので、いつでも法案を審議されるときにはそういうことを念頭に置いて法律もつくっていただければというふうに思っています。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X00819990701/43
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044・八田ひろ子
○八田ひろ子君 先ほどのお話の中にも国民の生命、健康という言葉が出てきましたけれども、今回の一括法案には米軍用地の特別措置法まで含められておりまして、地方公共団体に対しても米軍への後方地域支援の協力まで盛り込まれました周辺事態法とのかかわりについて心配やまた地方自治体での大きな疑念があるわけですけれども、その関係についてはどのようにお考えでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X00819990701/44
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045・市橋克哉
○参考人(市橋克哉君) お答えします。
私たちは日ごろ行政法をやっておりまして、この点では身の回りの生活にかかわる行政との関係での法を考えています。その身の回りの生活というのは、日常的な生活を念頭に置いて日々の営みの中での行政のあり方を考えるというのを常日ごろやってきたわけなんですが、どうもこのところ、私たちのような行政法をやっている者からも、そういう安全保障だとか平和の問題というのが非常に重要な問題として提起されてきているというふうに見える事態になっているという感想を持っています。特に、周辺事態法の際には九条の一項と二項で自治体の協力ということが問題になりました。
今度の分権法案の中で明示的に非常にわかりやすいのは、今お話があった駐留軍用地の特別措置法がそうだと思うわけなんですが、それ以外のところを見ていても、個別法の中でこれはどうなんだろうかというふうに少し危惧せざるを得ないようなものが幾つか見られるというふうに思っています。ここでは建築基準法の問題などが既に国会では議論になっているというふうに伺っていますが、それ以外にもあります。
先ほど少しお話ししていました直接執行のところにかかわってですが、私たちは国民の生命や健康に重大な影響があって、しかも緊急な場合に限ってこういう直接執行を考えようというふうに言っていたわけなんですが、それを広げている。そういうふうに緊急な場合に限って規定を置いているところもたくさんあるんですが、なぜかあるところへ来るとそれがそうはなっていないという気になるものが幾つかあります。これが、周辺事態に際して政府が自治体に協力を求めている部分と、まあ偶然なのかよく考えられているのかわかりませんが、合っているところがあります。
例を挙げますと、医療法という法律がありますが、この医療法では、並行権限と呼ばれている機関委任事務にかかわる厚生大臣、都道府県知事は従来同様の要件で同様の効果のことができるという規定がたくさんありました。これを全部変えまして、自治事務化して都道府県知事はとしたわけです。どうしても厚生大臣がかかわらざるを得ないところは、国民の生命や健康に重大な影響があるときは厚生大臣もやれますよというのを置きました。これは直接執行で、この部分はいいと思うんです。
ところが、例えば公的医療機関にそこの職員ではない者を派遣してそこの施設を使わせることを命令する規定というのがあります。これは周辺事態に際しての米軍へのそういう施設の供与と関係している部分ですが、こういうところになるとなぜか従来の医療法の規定がそのまま残っています。医療法はほとんど、ほとんどというかたくさんそういう規定があったんですが、そこだけなぜかさわっていないというのが気になります。
それから、先ほどお話しした水道法がありますが、水道法で、非常事態に際して都道府県知事が、例えばある市で水道が供給できなくなると、ほかの市に対して、自分の町ではないのだけれども水道を供給しなさいという規定が置かれています。これについて、都道府県知事がやらないときに、国民の生命、健康にかかわる場合は厚生大臣は指示を出すと書いてあるんです。ここは指示どまりなんです。ところが、四十条の三項で、今度は一項を受けてしまって、非常事態の場合には指示も出さないで厚生大臣は直接、協力的な市町村から水を回すことができるという規定を置いています。
こういう規定を見ていると非常にやはり危惧されるわけでして、今お話しした医療法にしろ水道法にしろ、周辺事態法の中では九条の二項の問題で、これは全部契約でやっている事柄であって、政府の説明でも、これは任意の依頼であって拒否できるんだという説明をしていた部分です。ところが、個別法の中で、今度の並行権限の整理のところを今みたいな広い形で整理することによって、結局自治体にとって義務づけるような形でこれが動く可能性があるということを危惧します。
もう一つですが、これも国会の議論の中で、平時においては分権を進めるが、非常時においては中央集権、中央が責任を持って事柄を処理するというようなことが盛んに強調されています。
そうすると、非常時の場合に自治権が制約されるということを前提に考えておられるのかということがやはり非常に気になるわけでして、そういうふうに考えれば、一貫した規定の仕方というふうにも見えるわけなんですが、本来日本国憲法が考えている平和主義を前提とすれば、戦前は別ですが、従来私たちの分野ではほとんど考えてもいなかったような事柄が、考えざるを得ないという事態になっているという感想を持っています。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X00819990701/45
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046・八田ひろ子
○八田ひろ子君 日本国憲法が想定していないことがあるのではないかという御意見でありましたが、平時に、平時にというか普通のときに国民が安心して暮らせるというので、基本的な問題を国が責任を持つという中身で必置規制というものが今あるわけなんですけれども、この必置規制の縮小、廃止について、ちょっとテーマが変わりますけれども、幾つかの分野で今回の法案の中に縮小、廃止の方向が打ち出されております。
この必置規制の縮小、廃止についてはどのようにお考えでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X00819990701/46
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047・市橋克哉
○参考人(市橋克哉君) 必置規制の縮小、廃止は、非常にさまざまな行政領域で今回提案されています。
中身を見まして、私の立場からすると非常に懸念される事柄は、国民生活の非常に身の回りの生活にかかわるような行政サービスのところにかなり集中的にそういう問題が出てきているというふうに思います。この点では、一定の行政水準を北は北海道から南は沖縄まで確保するというのが国の責務であり、どのような自治体に住んでいても、もちろんそこにおいて自主性や競争は必要なんですけれども、ある一定の下支えのところは同じようなサービスがあるということを前提にして考えないと権利は実現できないというふうに私は思っています。その点で、そういう国民の身近な権利にかかわるところでかなり安易な必置規制の緩和がなされているというふうに思っています。
もう一つは、公務員の専門性という事柄について非常に軽視というのが見られるんではないかというふうに思います。この点では、住民が積極的にそういう施設づくりであるとか町づくりであるとか、そういうものに参加をすることがまずは前提なんですが、同時に専門的な職員を置いて共同してそういうものをつくっていくということがやはり必要だというふうに考えています。そういう専門性のない図書館とか専門性のない福祉施設というのは、これは住民が参加するということを考えても、共同していく上で非常に困難が予想されるというふうに思っています。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X00819990701/47
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048・八田ひろ子
○八田ひろ子君 これで私の持ち時間が終わりますので、ほかの先生に御質問できませんでしたが、どうもありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X00819990701/48
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049・照屋寛徳
○照屋寛徳君 社会民主党・護憲連合の照屋寛徳でございます。
参考人の皆様方には早朝からお出まし願いまして、また貴重な意見をお聞かせいただき、心から敬意を表したいと思います。特に、諸井参考人におかれましては、五百回に及ぶ会議や、あるいはまた調査検討を経て、五次にわたる勧告をまとめるために御苦労いただいたことに心から敬意を表したいというふうに思っております。
参考人の皆様方からもさまざまな角度から地方分権の必要性が語られました。そして、分権を進める理念、哲学として、国と地方の従来の上下主従の関係から対等、協力の関係へと変えていく、こういうこともよく理解をするわけであります。
私はもう一つ、地方分権を推進する上で忘れてはならない、そして大事な理念として、私たちが位置づけをしなければいけないものに、地方自治体を中央政府に対する地方政府として位置づけることが大事ではないかな、こういうふうに思っているわけであります。
もとより、現行の地方自治法や、あるいは憲法で言う地方自治の本旨の中には、自治体というのは地方政府だ、こういうふうな理念が本来はあって、そういうふうに国と地方の関係あるいは分権に対する考え方を私たちはとるべきではないかな、こういうふうに思っております。
そういう考え方に基づいて参考人に御意見をお聞かせいただきたいと思います。
先ほど朝日委員から、この分権問題、中央省庁等改革で女性の参考人は初めてだということでございましたが、私もこれはとてもすばらしいことだというふうに思っております。大体女性の声を大事にしないで分権を語るというのもこれは間違っておるし、私の住んでいる沖縄では女性はウナイと呼んで、ウナイ神なんです。ウナイの神様なんです。君が代の君よりも非常に影響力の大きいウナイの神様であります。
それで、ウナイ神である池田参考人に最初にお伺いをいたしますが、先ほどは都議会議員の経験、それから食品安全条例制定運動のかかわりとの関係で、私も大変感銘を受けて聞いておりましたが、やはり住民に、市民に最も近い意思決定機関として自治体議会を活性化していく、これが地方分権の大事なテーマの一つではないかなというふうに考えるわけです。
池田参考人、食品安全条例の制定運動の経験に照らして、生活の課題は身近な自治体でつくっていくというふうな趣旨のことをおっしゃっておりました。いわば自治体議会というのは地域の立法府であるわけです。
そういう視点から、今度の地方分権一括法案の中身で自治体議会の活性化というのは十分に考慮されているのかどうなのか。あるいは、先ほど意見陳述の際に述べられなかった、触れられなかった点でこういうところが問題があるのではないかということを御指摘をいただければありがたいなと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X00819990701/49
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050・池田敦子
○参考人(池田敦子君) ありがとうございます。今、意見陳述の中で申し上げました、議長と首長の権限の対等な立場を保証するという意味で、議会の招集権が首長の側にあるということを是正すべきだということは先ほど申し上げました。
それと同時に、食品安全条例などの経験でいいますと、つまり食品安全条例だけではないんです。条例制定、つまり立法府として、地方政府として立法ができる議会ということでいいますと、調査機関が非常に貧弱なわけなんです。議会事務局というものがほかの人事としょっちゅう入れかわるということがありまして、専門性が低い。ですから、そこに対して調査を依頼しますと、原局の方にその調査がまた行ってしまうというようなことで、住民の代表者である議員が十分な調査をするには非常に今現在お粗末なシステムになっているのではないかと思いまして、そのことを変えなければいけないのではないかと思います。
それからもう一つ、私たちは都議会議員の資産公開条例というのを議員提案いたしました。そのときに、市民が議員の資産をチェックする仕組みとして新たな行政委員会、つまり首長の下につくのではなく、横並びの行政委員会をつくりたいと思いました。しかし、それは結局、今現在、自治法で行政委員会は幾つかに絞られた規定がございまして、諮問機関としてだけ機能するというようなチェック機関しかつくれないことがわかったんです。そういう意味では、オンブズマンなどの制度もそうですけれども、そういったものを議会そのものが客観的につくり出すことができるようなシステムをつくっていかなければいけないと思います。
それから、議員提案権ですけれども、これはあるんですが、今、八分の一の人数で提案するということになっておりまして、都道府県の議会では十人以上のメンバーがそのことに賛成しなければ提案できないということがございます。そういう意味では、もっとそこに対しても小さな緩和策というものがあってもいいのではないかというようなことを感じております。
以上です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X00819990701/50
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051・照屋寛徳
○照屋寛徳君 市橋参考人にお伺いをいたします。
私も、今度の地方分権推進一括法案の中で、従来、自治事務に対して総理大臣の非権力的な関与が、今度は二百四十五条の五でしたか、各大臣による権力的な関与が強まる。すなわち、自治事務に対する是正要求と自治体の是正改善義務の関係、これは到底承服できないという思いがありまして、当該条項は削除すべきだというのが私の考え方であります。
ところで、地方自治法改正における一般的なというか包括的な国の関与と同時に、個別法による国の関与が強まっているというものが幾つもあるわけです。
先ほど先生は建築基準法の問題等に触れられました。そのほかにも水道法の四十条の問題とか、それから消防法十六条の八の二の追加の問題、あるいは港湾法もそうでございますし、たくさんの問題が、従来なかった個別法による自治事務への関与がこういう形であるわけです。先日も当委員会でそれぞれ質問しましたけれども、とても限られた時間で論ずることができないぐらいたくさんの難しい問題をはらんでおるというふうに思います。
しかも、私はこれがさきに成立した周辺事態法九条の二との関係で非常に重大な問題をはらんでいるということを言い続けておるのでありますが、わけても米軍用地収用特措法の再改正問題というのがございます。
米軍用地収用特措法はさきに改正されたわけでありますが、今度は代理署名や公告縦覧を国の直接執行事務にする、こういう形になりました。それから、総理大臣による代行裁決ができるようになったわけです。そうすると、憲法二十九条の財産権の保障の問題、憲法三十一条の適正手続の問題、それから各県に収用委員会を設置して、そして地方自治の本旨を生かすというか、具体的に実現する手だてとして収用委員会制度というのがあるわけですけれども、これがもうことごとく形骸化される。
私は、米軍用地については既に収用、使用されているもの、それから新たに強制収用、使用される分についても、もう総理の言うがままに、地権者の合法的な異議申し立てや基地が所在する当該自治体の関与を排除して可能にする、そういうもので、これはもう分権の名に値しない。むしろ、地方分権一括法の中にそういう米軍用地収用特措法のような個別法の国の関与を強めるような法律があって、これはもう分権ではなくして中央集権の強化としか言えない、このように考えておるわけであります。
市橋参考人は、行政法学者としてこの米軍用地収用特措法の再改正の問題についてはどういうふうに考えておられるんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X00819990701/51
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052・市橋克哉
○参考人(市橋克哉君) 私の基本的な考え方も御質問されました照屋議員と同じであります。
従来の特措法の仕組みの中には、一応土地収用法をそのまま適用する形で、今御指摘があったように地方公共団体が責任を持ってこれに対処する、その際にはその地域の住民の基本的な重要な権利である財産権を守り、そして適正な手続を確保する中で問題を解決するという考え方がしっかりと込められていました。確かに手続の中には収用の認定だとか国がやるものもあるわけなんですけれども、基本的なところを地方自治との関係で分担した仕組みだったというふうに思うわけです。これが今回の改正によってすべてなくなってしまうということになりますので、この点では、そういう住民の基本的な権利を国が保障すると同時に自治体も保障する、この二重の保障の仕組みがこの問題に関しては全く消えてしまったという認識でいます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X00819990701/52
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053・照屋寛徳
○照屋寛徳君 諸井参考人に一点だけお伺いをいたします。
先ほど林参考人から、地方税源の拡充それから地方における課税自主権の強化の課題が今度の分権推進一括法案の中では不十分ではないかというふうな趣旨の指摘がございました。
もう時間が少なくなりましたので、税財源の地方への移譲の問題と、それから国、自治体を通しての税制改革とのかかわり、それから、ある雑誌で参考人が消費税を自治体に配分するのが一番よかろうという趣旨のことをおっしゃっておりますが、そこら辺について御意見をお聞かせください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X00819990701/53
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054・諸井虔
○参考人(諸井虔君) 私どもの勧告の中では、先ほど来出ております国と地方の税源とそれから歳出の乖離の問題、これをやはり縮めていかなくてはいけない、そして地方の財源を拡充していかなくてはいけない、その場合になるべく偏在性が少なくて安定性のある財源にしていってもらいたい、言うなれば消費税とか所得税のような種類のものをむしろ地方につけるべきだというような考え方を述べております。
ただ、この問題については、やはり政府税調において国、地方の税制の全体について相当な突っ込んだ議論をして結論を出さなくてはならない問題ではないかと思います。私どもが分権委員会で一方的にこうすべきだというようなことを言っても、これはなかなか簡単に実現できる問題ではございません。方向としては、私もそういうような方向を個人的には考えておりますが、今度の勧告の中ではそういう抽象的な方向性を示すにとどめたわけでございます。
ただ、今回の地方分権において税源を要するようなものというのはそれほどないわけでございまして、もしそれがある場合にはきちんと対処するということは約束をしてもらっておるわけでございます。結局、今まで関与していたものを引っ込めるわけですから、仕事そのものは地方でやっておったということではないかと思います。
以上でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X00819990701/54
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055・照屋寛徳
○照屋寛徳君 どうもありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X00819990701/55
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056・星野朋市
○星野朋市君 自由党の星野でございます。本日は大変御苦労さまでございます。
私は、ちょっと違った観点から問題を取り上げまして、参考人の先生、皆様の御意見を伺いたいと思います。
我が党はかねてから自治体の数を今の三千二百余から約三百に縮めよう、こういう考えを持っております。大体、三百といいますと、平均が四十万人ぐらいですから、財源規模それから事業規模はまことに適正なものになると思うんですけれども、一挙に三百というのは無理ですから、とりあえず千ぐらい、今までの約三分の一ぐらい。それでやがて三百にしようと。
とはいうものの、実際問題として合併というのはなかなか難しい。それで、野田自治大臣も、合併促進に関しては何らかのメリットを与える、インセンティブを与えるという考えをお持ちのようでございますが、こういう我が党の考え方について、諸井参考人以下諸先生、皆様、どういうふうに御感想をお持ちなのか、また御意見があったらお聞かせ願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X00819990701/56
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057・諸井虔
○参考人(諸井虔君) 私どもの委員会では、市町村の合併の問題につきまして相当いろいろ議論をいたしました。一方では、こういう問題は自主的に市町村が決められるべき問題で、委員会がいわば中央からああせい、こうせいと言うのはおかしいんじゃないかというような議論もありました。
ただ、これから市町村の役割がどんどん重大になっていく中で、今の体制のままではどうも問題があるのではないか、できるだけ市町村の行政体制を強化していってもらわなくちゃいけないんではないか。そういう意味で、合併を進めていく、あるいは広域行政を進めていくということはぜひやっていただきたい。ただ、これは法律とか強制によってやるということではなくて、ぜひ自主的に進められるようにいろんなインセンティブを与えていく、そういう方向で委員会としては結論を出したわけでございます。
以上です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X00819990701/57
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058・池田敦子
○参考人(池田敦子君) 私は、自治体をまず合併ありきというような形で再編していくのは、その自治体の財政事情や政策実現のためにやっていくのはある意味では余り賛成できないと思っているわけなんです。それで、そのことを解決するには、先ほどお話も出ましたが、広域連合とかそういった手法もございますし、自治体の自主的な自治権を尊重すべきだというふうに基本的に考えます。
しかし、合併に際して、今回の法案では取り上げられておりませんが、住民投票などを十分に活用して、その住民の意思というものを確かめて、その合意があればそのことは反対すべきことではないと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X00819990701/58
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059・林宜嗣
○参考人(林宜嗣君) 私は今後の行政の中で広域的に取り組まなきゃならないものはますますふえてくるだろうとは思っております。
従来の行政というのはどうしても内向きの行政区域の中の行政に目が行っていて、広域にわたるようなものは例えば県に任せようではないかといったような動きが中心だっただろうというぐあいに思います。ただ、では合併でいくのかという話になりますと、私は合併するかどうかというのは地域が決めることであって、法律等でそれを合併の方向に持っていくべきではないというぐあいに思っております。
ただ、地方分権が進んでまいりますと、私は今のままの財政力では到底やっていけないところというのは随分出てくるだろうと思います。つまり、地方税のウエートが五%にも満たないような自治体がかなりの数あるわけでありまして、そういった場合にはやはり広域的な取り組みをやらざるを得ないような環境に恐らく置かれていくんだろうというぐあいに思いますので、あえてインセンティブをつけるといったようなことをしなくてもひょっとすると合併というのは進んでいくかもしれない。ただし、それは高コストであっても住民選好をもっと重視して、そして狭域的にやりたいというところがあれば、それはそれで私は構わないだろうというぐあいに思っております。
ただ単に経済効率の面だけで自治体を三百の数に減らすとかいったようなことは、一方で地方分権という住民に合った行政をしようということの中で考えていきますと、効率重視過ぎるのではないか。やはり住民選好と効率性のバランスというものを考えていかなきゃいけない。そのバランスを考えるのは地域の住民ではないかというぐあいに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X00819990701/59
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060・市橋克哉
○参考人(市橋克哉君) 私も法律を使って上から一定数の自治体に合併を持っていくというやり方あるいは誘導していくというやり方については反対です。
広域行政の必要性はいろんな問題に関してこれから多々出てくると思いますが、これは基本的には総合的な行政を担うという市町村を前提にして、できないものを連合なり一部事務組合なりを使いながら、そこにどう住民自治を反映させるかという難しい問題も解決しながらやっていくことが必要だというふうに思っていますし、広域と同時に、狭域というふうに言っていますが、コミュニティーであるとか、新しいタイプ、古いタイプ、町内会から住民運動までいろいろあると思いますが、そういうものと連携しながら町づくりをしていく最適規模というものを考えていく必要があるというふうに常々思っていまして、その点では、先ほどお話があったような四十万という規模というのはとてもそういう住民自治を担う単位としては適切ではないというふうに思っています。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X00819990701/60
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061・星野朋市
○星野朋市君 皆様の御意見は参考にさせていただきます。
それからもう一つ、諸井参考人にちょっとお尋ねをしたいんですが、こういう議論をなされている中に道州制の問題が比較的出てこない。もう廃藩置県から百年以上たちまして、そのままでいろんな議論がなされておる。その根本の問題にある道州制の問題というのが比較的論議として少ないという点に私はちょっと疑問を持っておるんですが、いかがなものでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X00819990701/61
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062・諸井虔
○参考人(諸井虔君) 委員会の中でも多少そういう問題について議論したことはあるのでございますが、ただ私ども任期が五年と限られておりまして、その中でかなり多数の問題について中央省庁とかけ合って結論をどんどん出していかなくちゃいけない。そういう中で、道州制あるいは今の都道府県、市町村の二層性の問題にかかわるようなことについて踏み込んでまいりますと恐らく収拾がつかないことになってしまうんではないか、限られた期間の中で法律にして、制度にしてきちんと分権の出発点をつくるというそういう肝心な役割を果たせなくなってしまうんではないかということで、この問題についてはやはり少し中期的な問題ということでまた国民の皆さんがいろいろ議論をされていかれることが望ましいんではないかというふうに考えております。
ただ、これは私の個人的な見解でございますけれども、現在の県の規模というのは、いろいろございますけれども、やはり大分小さ過ぎるようなところもあるような気がします。そういう意味では県の合併のようなこともだんだん進んでいくといいんじゃないかと個人的に考えております。
ただ、道州制の中には、いわゆる連邦制の考え方、地方に主権があって地方の州が中央政府に外交とか国防を委託するというような、この考え方はなかなか日本では難しいといいますか、必ずしも適当ではないんじゃないかと。これは個人的な見解でございます。
ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X00819990701/62
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063・星野朋市
○星野朋市君 若干残しておりますけれども、これで質問するとオーバーしてしまいますので、終わります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X00819990701/63
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064・奥村展三
○奥村展三君 諸井参考人初め各参考人の皆さん、御苦労さまでございます。
今、道州制の話、連邦国家の話が出たんですが、特に諸井参考人にお聞きをいたしたいんですが、四年間五百回以上にわたる御審議をいただいたわけでありますけれども、地方の自治体というのは全部これは大統領制でございますね。国会とちょっと異なってくるわけですが、どうも地方分権になりますと知事だとか市町村長さんに権限が余りにも大きくなり過ぎてしまうのではないかなという懸念の声も聞かぬことはないわけでございます。特にそういう流れを考えますと、そういう議論といいますか、先ほどの林参考人からもありまして、後ほどお伺いいたしますが、財源と税といういろんな確保の問題も出てくるわけでございますが、権限が市町村長や知事にのしかかっていくということで、そういう議論は余りなかったでしょうか、あったでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X00819990701/64
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065・諸井虔
○参考人(諸井虔君) その点につきまして委員会の考え方は、その権限なりが都道府県なり市町村に移譲されて、そこで首長さんの権限が非常に強くなって思いのままにやれるようになる、そういう体制が地方分権だとは我々は全く考えておらぬわけでございます。やはり住民の多数の方の御意見が行政に反映される、住民の多数の方の選択によって行政の方向が決まっていく、これが本来のあり方だと思うんです。
地方へ権限が移ってまいりますと、身近に権限が来るわけですから、住民の方がいろんな意見を市庁舎へ行くなり県庁へ行くなりしてどんどん言えることになるわけです。ですから、いわゆる住民の参加とか住民の監視とか住民の協力というものが強くなっていく。そうでないと本当に意味がない、ただ権限を首長さんに移すだけでは意味がない。そうでなくて、やはり住民の皆さんの意見がそこに反映していくということが一番大事ではないか、そういう方向に行くべきじゃないかというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X00819990701/65
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066・奥村展三
○奥村展三君 ありがとうございました。
そういう今のお話のような形で、私もそこを期待したいと思っているんです。
第五次までいろいろ御苦労いただいたわけですが、市町村あるいは地方にいろいろ聞きますと、どうもこの受け皿といいますか、意識改革を私は委員会でも申し上げたのですけれども、なかなかこれを徹底していくのは難しいなというようなことで、やはり住民の方々の意識改革、池田参考人のようにいろんなお立場で御活躍をされているわけですけれども、どういうふうに受けとめ方といいますか、国あるいは県、市町村、そして住民という流れの中に、意識改革をしっかりとしていかないと地方分権はなかなか私は進んでいかないと思うんですが、池田参考人はどのようにお思いでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X00819990701/66
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067・池田敦子
○参考人(池田敦子君) また大変卑近な例で申しわけないんですけれども、私が住んでおります国分寺市の高木町というところは防災のことで総理大臣賞か何かをいただいたようなんです。それはどういうことかといいますと、自分たちの町をどのようにしたら防災が行き届くというか、心配のない町にできるかということを、町会なんですけれども、そこでさまざま見学をしたり意見を闘わせたりして高木町の防災町づくり宣言というものをつくったんです。それは、今あります畑を残すとか、ブロック塀を生け垣にするとか、近隣のコミュニケーションを大切にするとか、本当にすごく簡単なことなんですけれども、そういったことを一つの憲章として町の中に張り出しているわけなんです。
それで、いろんな訓練などもございますけれども、そういったことを日常的に活動として続けるというようなことがありまして、それは私は自治という意味では本当に自然に行われているすぐれたものだろうというふうに、自分の町ながら感じているところです。そこにはリーダーシップが必ずありまして、女性の町会長さんなんですけれども、そういったことがこれからは住民の中でも求められていくのかなと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X00819990701/67
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068・奥村展三
○奥村展三君 そのように全国各地で意識をお持ちいただいていけば危機管理のこともしっかりとできると思いますが、なかなかそこのところが難しい。
星野先生からも御質問がありましたが、御意見を賜ったんですが、広域連合といいますか、やっぱり広域的に物を進めないと、三千二百三十二、本当に小さな町があるわけですけれども、そこの体力が非常に弱い。そうなると自分のところだけでどうしてもいけないというようなこともありますから、私はそこの意識改革なり危機管理等、連携がしっかりとれるといいなというように思っています。
ちょっと池田参考人にもう一度お聞きしたいんですが、都会議員をされて、地方議員といいますか大都市の議員もなされたようです。私も地方議員をやらせてもらってきましたが、最近、住民投票住民投票ということが非常に、先ほどもおっしゃったんですが、これと地方議会、ここの関係はどのようにお思いですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X00819990701/68
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069・池田敦子
○参考人(池田敦子君) 私も都議会の中で住民投票条例を制定する議員提案をしたことがございます。そのとき知事の意見は、議会というか知事は公選制で選ばれていて、選挙でその政策を支持されていると。一方、選挙では政策はあるんですけれども、ある住民投票にかけなければならない内容については時間の経過の中で早く結論を出さなければならない、あるいは公約の中に含まれていなかったというような事態もあると思うんです。ですから、やはり二元代表制という、議会の間接民主制で決めていくという一つの立派なルールはございますが、もう一つ直接民主制をそこに加えて、より住民の意見が反映するという制度は私は必要だと思います。
それで、ある首長さんというか、それは都知事の場合でしたが、大体住民投票というのは不信任につながることが多いので余りやりたくないと。ですけれども、私はその見解はやはり間違っているのではないかと思いますので、制度を整備すべきだというふうには考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X00819990701/69
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070・奥村展三
○奥村展三君 一つの参考意見としてお聞かせをいただきました。
しかし、地方議会として、公選で選ばれた議員がしっかりとしておればそういう住民の声もしっかり伝わっていくと思うんですが、私は、余りにも住民投票住民投票ということがひとり歩きして地方議会がおろそかになされていくようなことになっては相ならないというように、個人的な考えですが、思っております。
林参考人に一つお伺いをいたしたいと思うんです。
先ほど、合併論でいろいろお話がありました。参考人と同じ関西学院大学に小西砂千夫先生がおられると思うんですが、私の地方までわざわざおいでをいただいて、青年会議所等で地方分権等のお話を聞かせていただきました。
合併についてはあれですが、特にその中でもおっしゃったのは、やっぱり財源の話を非常に数多くしていただいたんですが、財源、税ですね、これは仕組みを変えていかないと、今までの国税あるいは地方税の仕組みでいけば、これはなかなか一方で地方分権だと言っていてもうまくいかないのではないかな、この仕組みそのものを私は変えるべきだと思うんですが、どのような御意見をお持ちでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X00819990701/70
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071・林宜嗣
○参考人(林宜嗣君) 例えば、税について申し上げますと、私はやはりこれから地方の役割が大きくなってまいりますと、所得だとか消費だとかといったような大きなタックスベースに係る基幹税目を国と地方がバランスよく両方で持つということを続けることは非常に難しいだろうというぐあいに感じております。
と申しますのも、例えば連邦制をとっておる国だとかあるいはスウェーデンだとかといったように、州を含めた地方のウエートが大きくなるようなところでは、国と地方の間で税源をバランスよく持っておりますと、どうしても増税のときには両方増税しましょうと、減税のときには両方減税しましょうというような話になりまして、なかなかウエートを高めていくことができなくなる。したがって、例えばスウェーデンが所得税は地方が主に持っているといったような形で、基幹税目のどれかを地方に重点的に配分をするといったようなことが税に関しては必要になってくるだろうと思います。
もう一つは、応益課税というのはなかなか実現が難しいものでございますから、もう一ついわゆる受益者負担の考え方、直接個人に利益が帰着するようなものに対してやはりそれなりの使用料、手数料という形できっちりと徴収をしていくというようなこともこれからは私はもっと積極的に財源調達の方法として考えていくことも必要なのではないか、それによって恐らくまた地方住民の自治意識も高まっていくのではないかというぐあいに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X00819990701/71
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072・奥村展三
○奥村展三君 ありがとうございました。
市橋参考人にお聞きをしようと思いましたが、時間がございません。どうもありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X00819990701/72
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073・石井一二
○石井一二君 石井一二でございます。
各議員が謝辞を述べて質問いたしておりますが、私はあえて謝辞は申しませんが、気持ちはそれを数倍上回るものである、そのように御理解をいただきたいと思います。
権限、財源、人間をどんどん移譲して地方分権をするということに反対する人は少ないと思います。私は、諸井さんの顔を見ていて、恐らく心の中は夕張り迫りて道なお遠しと、そういうお言葉を心に持っておられて、これが完全なものではない、まだやるべきことは多くある、そのようにお思いだと私は勝手に推測をいたしております。
私は先般この場から、そのあたりに座っておられた総理初め全大臣に申したわけでありますが、今これよりさらに進んだ地方分権を推進していこうと思うと次の四つのことが大事だと。一つは、先ほど来出ております首長の多選禁止をやらずしてうまくいかないということ。もう一つは、各自治体におられるボス議員や首長のエゴに対する自浄能力の培養ということをしなきゃ自治体はがたがたになるということ。また、いろいろ仕事がふえて内容的にも難しいですから、自治体職員の資質の向上、こういったことが大事であるということと、四番目が、地方自治体の合併の促進をもっともっとしなきゃならぬ。これは先ほど来同僚議員も指摘をしておったところでございます。
それで、諸井参考人に申し上げますが、どんどん住民が知事や市長に会いに行ってと言われますが、実際そういうアポはなかなかとれない。現実はそういうことになっておると私は思います。
それから、強制的にやるよりも自主的に合併は進めるべきだと言われましたけれども、廃藩置県もあれはばちっとやったから一遍にできたわけで、議員や首長が自分の首が飛ぶ合併の話になかなか応じないから遅々として進まないという現状を御認識いただきたい。黄河の清なるを待つがごとき論理というものは私は無意味である、そのように思うわけであります。
次に、池田参考人に若干申し上げたいと思いますが、私は直接請求と住民投票には反対論者であります。と申しますのは、直接投票によって議員が選ばれて、その議員が代表として物をしゃべる、そういう大事な議員を選ぶのでもたかだか三〇パー、四〇パー台の投票しか行かない中で、特定の一つの問題を取り上げて一々住民投票をやっていたら経費も大変だし、特定の集団が一生懸命、何でもいいからおばあちゃんほれほれというようなことで駆り出して、ゆがんだ結果というものが行政を動かす可能性がある、そのように思っております。
今、琵琶湖だとか河口堰だとか空港だとかで要求のためのいろいろサインをとったり、そういうことは大いにいいと思います。サイコロジカルなエフェクトというものがあると思いますが、私はそういう面で、最後の直接住民投票については慎重に考える余地があるのではないかというように考えるわけであります。
それから、池田さんは先ほど誇らしげに議員の個人資産を公開したということを言われましたけれども、私はこれは大きな間違いだと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X00819990701/73
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074・池田敦子
○参考人(池田敦子君) 条例を提案しました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X00819990701/74
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075・石井一二
○石井一二君 条例を提案したと言うけれども、それは私は大きな間違いであると私は個人で考えております。といいますのは、これをやることによっていい人が議員になりたがらないんです。あんな人が議員になってやってくれたらいいなと思うけれども、なぜ私が資産まで公開して全然少ない預金を人に見せて恥をかかなきゃいけないのと、そういうことでいい人が出なくなる。
むしろ、臭い物にふたをするように避けて通っております首長の資産の公開を積極的にやるべきだと。それは、個人の資産のみならず、資産管理団体の資産と、そこが出資している公益法人、こういったところへ絶大なる発注権、指名権、予算の配分の原案をつくる権限を持っておる首長のそういう実態にメスを入れるという一番大事なところを私は抜かした話ではないか、そのように思うわけであります。
それから三番目に、林参考人に私は申し上げたいんですが、あなたのおっしゃった課税自主権の強化という面ですが、私はこれは同意しかねます。
なぜならば、あなたもいみじくもおっしゃったように、こういうことをやると税率の引き下げ競争になるかもわからぬと言われましたけれども、選挙の恐ろしさというものは、特に首長なんかそういうことでおどおどしている連中が多いんです。それで、国のルールでこれはできないんだというもののヘッジをつくっておかないと、おまえがよう言うたらそれでできるんじゃないか、こういうことになるとどんどん、言葉は不適当ですが緩ふんになってくる。
例えば、介護保険のグレードを決めますが、そういうもののグレードアップをせよとか、乳幼児に対する手当を出せとか、昔我々が苦い経験をした老人の医療費を普通の年齢よりももっと上に上げた条例をつくるとかいうようなことで、一定の裁量権を与え過ぎるということはいろいろ問題を生じておるというように私は感じておりますので、私見として申し上げておきたいと思います。
それから、市橋参考人に申し上げますが、私は心の片隅であなたは不親切な人だなと思っております。
その理由は、私は行政学の専門だとおっしゃるのはいいですが、二十何ぼもだらだら第何条の第五項とかいうような理論づけの裏づけをしていろいろ自分の論陣を張られますが、あれだけ多くの法案のことを言われるのであったら事前にそれを一遍配っておいてもらいたい。そうすると我々も理解度が追いつくと思うわけであります。
特に、私はあなたの発言の中で、二百四十五条の五第五項で、違反是正に対して、これは根拠規定というものがないから単なる尊重義務でしかないということを言われたと思うんです。私は、衆議院とか参議院の法制局がそういう解釈をとっていない、これはあくまで遵守されなければならない条項だと思うんですが、もし、あなたが実際そこまで今後もそういう言動をやられるのであれば、専門家間で徹底した論議をしてあなたが勝ってくださいよ。そうすればそういう解釈で我々も今後進んでいく。そうなると、実際自治体というものは私は動かないと思いますよ、単なる尊重義務ということでこの条項を見逃していくならば。私はそういう意味でもう一度あなたのお考えを聞きたいと思います。
若干荒っぽい面もございますが、論議というものはホットなほど味があるということもありまして、残された四分で、一分ずつもし文句があれば私は承りたいと思います。よろしくお願いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X00819990701/75
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076・諸井虔
○参考人(諸井虔君) 大変厳しいお話でございまして、恐縮しておりますけれども、ただ、今物事が大きく変わっていく場合に、じゃ一体何が力になっていくかといえば、やはり国民のほうはいたる世論ではないかと思うんです。国民の六割なり七割の方々がある方向に考えをまとめていかれた場合には、これは首長であろうと地方の議員であろうと、あるいは国会だろうと結局それに従わざるを得ない。今、日本はそういう体制になってきておるんではないかと思うんです。
これはいいか悪いかということはいろいろあろうかと思いますけれども、地方分権をやっていって、それで住民が全く地方の行政に対してあるいは地方の政治に対して無関心であって今までと何も変わりないというふうな行動であったら、これは私はやっぱり成功できないんだろうと思います。ですから、地方に権限がないからこそなかなか住民も地方の政治に対して熱心になれないんではないか。中央が全部指図して、地方に決定権がないからそういうことになっているんではないか。地方の方に決定権がおりてくれば、やはり次第にそのことを住民も自覚して議会なり首長に対してどんどん物を言っていく、あるいは選挙行動自体でそれを反映していく、こういうふうになっていかないと私は先に進まないんではないかというふうに思います。
どうも議員に反論申し上げるようなことで申しわけございませんが、以上でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X00819990701/76
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077・池田敦子
○参考人(池田敦子君) 私も、住民投票などについて今御意見いただきまして、こだわるようですけれども、やはり一人一人が決めるということをどのように、選挙以外にも必要な場面があると。それは乱発したり、何かの非難かどうかわかりませんが、そういうことのためだけに使うのではなく、先ほどもちょっと申し上げましたけれども、レファレンダムとかイニシアチブとかいうような提案型の住民投票もあるわけですから、その制度は本当に市民が成熟をするということも含めて必要な制度だというふうに思っていることを反論させていただきたいと思います。
それからもう一つ、先ほどちょっとボス的な存在の長老、長老とおっしゃるかどうかわかりませんが、議員の方々を排するようなことも必要ではないかというふうに承ったんですけれども、私どもの生活者ネットワークは、三期ローテーション制度というのを持っておりまして、それはある意味でだれでもが議員として、市民の代表として参加できる議会というものをつくっていくためにそういった一つの試みをしておりますことを参考に述べさせていただきます。
ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X00819990701/77
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078・林宜嗣
○参考人(林宜嗣君) 課税自主権の強化には反対だと、このようにおっしゃったかと思いますが、住民税の課税自主権を強化すると、私は税率を自由に設定できれば住民は引き下げの要求を出してくるだろうと。現在はそれが固定的になっておりますから要するに受益の方の要求につながってくるわけですね。
それに対して、増税で賄えばよろしいわけですけれども、財源が補助金であるとかあるいは交付税だとかあるいは地方債だとか、こういったような負担感を感じないようなもので賄われているということになっていることが、いわゆる税は一定のままでどんどんどんどん歳出だけが膨れていくと。むしろ、税率を自由に変えられることによって税率を下げるという要求を出してくるようになれば、私はこれはもっと財政というのはスリムになっていくだろうしというような意味で、住民の要求の選択肢の一つとして税率を下げることをふやすというのは非常に重要な意味があるのではないかというぐあいに申し上げました。
それからもう一つは、どうも石井先生、やっぱり地方に対する不信と、それから国民とか住民に対する不信というのがおありなのかなというぐあいに思うんですが、これもやはり今まで住民に対して責任を与えなかった、あるいは地方に対して責任を与えなかったということの結果としてこういったようなことが生まれてきているので、鶏と卵の関係だと思いますけれども、私はこの際、地方分権を進めて、そして住民にも自業自得のような考え方もある程度認識させることの中でいろいろいいことが起こってくるのではないかなというぐあいに思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X00819990701/78
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079・市橋克哉
○参考人(市橋克哉君) どうも不親切な報告をしまして申しわけありませんでした。すぐお読みになりたいということであればすぐお渡ししますが、言いたかったことは一点でして、権力的な関与をする場合、法治主義の原則にのっとるときは必ず個別具体的な法律の根拠が必要である、このことをせずに地方自治法という一般法だけを根拠に権力的関与をすることは法治主義に反する、これだけです。
したがいまして、一般法だけを置いているということであれば、これは後に置かれている争訟のところが権力的な手段で争うという仕組みにしてしまっていますから手続的にそうなっているんだと。これを刑事的行政処分と私たちは言っているんですが、こういう考え方をとる解釈は結構多いというふうに思っていますので、私も頑張りますし、石井議員もそういう解釈をとっていただければありがたいというふうに思っています。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X00819990701/79
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080・石井一二
○石井一二君 終わります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X00819990701/80
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081・吉川芳男
○委員長(吉川芳男君) 以上で午前中の参考人の方々に対する質疑は終了いたしました。
この際、参考人の方々に一言御礼を申し上げます。
本日は、長時間にわたり有益な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして心から御礼申し上げます。(拍手)
午後一時まで休憩いたします。
午後零時七分休憩
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午後一時一分開会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X00819990701/81
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082・吉川芳男
○委員長(吉川芳男君) ただいまから行財政改革・税制等に関する特別委員会を再開いたします。
休憩前に引き続き、内閣法の一部を改正する法律案外十七案を一括して議題といたします。
本日、午後は、内閣法の一部を改正する法律案等中央省庁等改革関連十七法案について参考人の方々から御意見を承ることといたしております。
御出席いただいております参考人は、日本大学法学部教授八木俊道君、北海道大学法学部教授山口二郎君、獨協大学法学部教授右崎正博君、以上の方々でございます。なお、慶應義塾大学商学部教授中条潮君はおくれて御出席されます。
参考人の皆様に一言ごあいさつ申し上げます。
本日は、御多忙中のところ当委員会に御出席をいただき、まことにありがとうございます。皆様の忌憚のない御意見を承り、法案の審査に反映させてまいりたいと存じますので、よろしくお願いいたします。
本日の議事の進め方でございますが、まず参考人の皆様からそれぞれ十五分程度御意見をお述べいただき、その後、委員の質疑にお答え願いたいと存じます。
それでは、まず八木参考人にお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X00819990701/82
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083・八木俊道
○参考人(八木俊道君) 八木でございます。
今国会における重要な議案であります行革関係法案を審議されておられる当委員会におきまして、発言の機会をちょうだいいたしましたことを感謝申し上げたいと存じます。
私は、現在、日本大学法学部におきまして教育と研究に従事し、かねてから我が国行政のあり方について若干の改革意見を持っているものでありますが、あわせて、平成八年十一月以降一年余りの間、政府の行革会議の事務局の仕事にございまして、かつ行革会議報告の実務的な取りまとめを担当させていただいたものでございます。また、かつて政府機関において勤務した間の知見等を踏まえまして、率直に意見を申し上げさせていただきたいと存じます。
今回議題とされました十七件の中央省庁等の改革関連法案につきましては、激動の時期を迎えた近年の時代状況に即応して我が国行政の組織体制を抜本的に刷新、改革し、二十一世紀の我が国の新たな発展のための礎を築くための措置として、まことに歴史的な意義を持つ適切妥当なものであると存じます。かつまた、過般の行革会議報告の趣旨にも基本的に合致するものであると考え、これに賛同いたしますとともに、その速やかな成立と、これに基づく一連の改革措置の実現、具体化を強く期待いたしますものであります。
我が国は、目下、厳しい内外激動の局面にございまして、近代国家として出発した百三十年前の明治維新、五十年前の戦後改革に次いで、いわば第三の改革とも言うべき段階、すなわち二十一世紀時代への我が国の新たな離陸と発進のために不可欠な基本的な構造改革に取り組むべき時期に直面していると考えるものであります。
近代日本を形成し、その発展を支えた我が国の内閣及び省庁制度は、明治十八年の総理初め外務、内務、大蔵、陸海軍、司法、文部、農商務、逓信、この十大臣九省のコンパクトな政治指導体制によってスタートしたわけでありますが、その後、大正年間におきましては逓信省から鉄道省の分離新設、農商務省の分割、昭和に入ってからは内務省から厚生省の分離新設、拓務省の新設等がございまして、大臣の数は十三人に拡大し、その分散型の傾向が当時から問題とされていたわけでありまして、政治の現実の運営におきましては、五相会議等のインナーキャビネット方式の活用等の経過も戦前戦中においてあったところでございます。
現行憲法の制定時点における内閣は、御案内のとおり、吉田総理以下憲法公布署名大臣のリストに見られますように、十五人で編成されたのでありますが、その中には、無任所の閣僚として、前総理の幣原男爵、また憲法改正担当の金森徳次郎氏等が含まれており、戦後改革は昭和二十二年ごろにおきましては十二程度の行政ユニット、これでスタートをいたしたわけであります。
戦後復興を経て、高度成長とそのひずみの深刻化等の経過の中で、各分野の行政需要が拡大、複雑化し、これに対応して、昭和三十年代以降四十年代にかけまして、科学技術庁、沖縄開発庁、環境庁、国土庁等総理府外局の大臣庁を中心といたしまして、組織の継ぎ足し的な新設を初め、各省庁内の組織や公共事業、社会政策、政策金融等を担う公団、事業団等の拡充整備も進んでまいりました。内閣レベルにおいては、閣僚の数も総理のほか二十人規模にまで拡大をいたしたのであります。
その後、安定成長への移行と財政硬直化の是正、総定員法の運用や第二次臨調を中心とする行政改革の中で、行政実務部門の合理化、効率化の取り組みは一定の成果がありましたが、省庁編成そのものの全般的な見直しは諸般の事情から見送られてきたところでありまして、今回の改革課題はまさに年来の懸案というべき課題であったと考える次第であります。
今回の改革案においては、二十一世紀の日本を構築する上で注目に値する幾つかの重要点が含まれているものと考えます。
以下、若干の事項につきまして所見を申し述べたいと存じます。
その第一は、内閣機能の強化のための本格的な対策が講じられているということであります。
今回の改革構想は、日本行政において従来から問題とされてきた重要政策の決定過程においてともすれば生じがちなボトムアップ的体質から脱却し、国政全般の見地からの内閣及び内閣総理大臣の重要政策に関する政策指導力を高める、そのための内閣法の改正により内閣総理大臣の発議権を明確に打ち出しておりますが、これはかつて昭和十二年の企画院官制においていわゆる起案上申権が導入されたことに類する措置でありまして、内閣におけるリーダーシップ強化のための重要な制度的保障となり得るものと考える次第であります。
また、内閣官房の事務に重要政策に関する企画立案事務を明記したことは、昭和三十九年の第一次臨調が提起し、そしてまた昭和四十七年の行政監理委員会答申の改革の処方せんを今日の段階において再吟味の上採用されたものでありまして、他方における経済財政諮問会議、総合科学技術会議の設置等とあわせ、内閣機能の強化に関する有力な処方せんであると考えます。
さらに、基本的に重要な点は、省庁編成を一府二十一省庁体制から一府十二省庁体制に大くくりに再編成することなどに伴い、閣僚の数も現状の二十人から十四人ないし十七人に減ずることとされていることであります。このことは、行政部の中枢としての合議体たる内閣の編成をより機動性に富むコンパクトなものに改め、その質的な指導性を高め、個々の閣僚に対しても広い視点に立った政策指導機能を求め、内閣全体として少数精鋭の体制による強力な機能発揮を期待させ得るものであります。
第二点は、新たな省庁体制についてであります。
二十一世紀日本の政治、行政を支えるためには、すぐれて政策志向型の新たな行政の制度、施策の枠組みに移行する大きな可能性が与えられたわけであります。
例えば、厚生労働省でございますが、今日、六十歳以上の高齢者層は、主として年金等の社会保障制度や福祉政策等、厚生行政の行政対象としてとらえられておりますが、今や、年金財政一つをとってみても、保険財政上の危機は真に深刻なものとなってきております。高齢化の急速な進行は、もはや厚生行政の範囲における従来型の対応が困難となっている状況であります。
これに対し、厚生、労働を統合する新省は、新たな展望のもとにおける雇用政策等の見地から、高齢者に適合する新たな軽勤務、軽処遇等の多様な雇用機会の開発により、高齢者の豊かな経験と専門的知識・技術を引き出し、彼らの生きがいと社会参加の機会の付与に、その創造的な展開のためによりよき行政基盤を与えることになると存じます。新たな段階における総合的な社会政策、社会計画への展望を新省において期待いたしたいと考えるところであります。
次に、国土交通省については、建設省の担当してきた道路行政と運輸省の担当してきた自動車、鉄道、航空、海運、港湾等の交通行政を一本化し、財源等の資源配分の最適化、施設計画や技術手段の共用化等、各種の手段を効果的に組み合わせ、利便性に富み、効率的でまた環境にも優しい交通ネットワークの構築を図るなど、いわば総合交通政策の推進の行政的基盤を用意することが期待されるものであります。
また、各種の地域開発政策を統合し、総合的な都市づくり、総合的な土地利用計画と土地利用規制等、従来、日本行政における一つの弱点と目されてきた多様な内容を持つ総合的な都市政策の確立に向けた制度的基盤を構築するとともに、そのための多様な技術的手段を総合的に提供する等の機能が期待されるところであります。
さらに、文部科学省については、我が国の科学政策と科学研究が、一方におきまして大学を中心としたアカデミズムの城にこもる基礎部門と、他方において、いわば短射程の実用にアクセントの置かれやすい科学技術庁を初め各省の応用開発部門とに分かれ、その間の連携も不十分であり、また全体としての戦略的総合性、各分野の研究開発の中期的展望性に弱点を持っていたことをこの際見詰め直し、これを積極的に克服し、我が国の科学政策と科学研究に新たな飛躍と発展の可能性をもたらし、二十一世紀の我が国の目指すべき科学立国の基礎を強固なものとすることに資することとなると考えるのであります。
また、環境省につきましては、近年における地球規模の環境問題の深刻化にかんがみ、今後の我が国行政のうちでも、その質的強化についてはとりわけ深い配慮が払われるべき行政分野でありまして、今日の環境問題は、例えばオゾンホールや熱帯雨林、酸性雨の問題等に見られますように、すぐれて国境を越えた国際的な課題となっております。行政的にも技術的にも、各種の先進的な経験とノウハウを持つ我が国の国際的な寄与が強く求められている重要な行政分野であります。同時に、その現実の施策の展開は、各省の制度、施策との厳しい調整を経て初めて実現するものであります。
政府案において、今回環境庁を省に格上げし、またこれに関連して、各省施策との間において実務的、実際的な調整ルールを用意しつつあることは、今回の省庁改革における未来志向性を明確に示すものであり、心から賛意を表したいと存じます。
第三に、今回の改革構想を貫く一つの柱として、企画と実施の分離という考え方をとられた点が注目されるところであります。
その基本理念は、今日の段階における行政の担うべき役割として、一方における政策企画機能の純化、高度化の要請、他方における行政実務実施部門の運営の効率性と合理性、合目的性、この両面を調和させることにあると考えます。
全体としての企画部門と実施部門との間においては、適切な連携関係の維持とあわせて両者間に一定の距離を保ち相互の建設的な緊張関係を維持し得るとすれば、行政における公正の確保、透明化の推進の角度からも望ましい効果を期待できるものと考えるのであります。
政策企画機能の整備の一環として、省庁の大くくり再編や内部部局の統合スリム化とも連動する内部部局の機能純化は当然の課題であります。もっとも、内局、外局間の機能分化問題は、若干の省の個別の適用に問題があり、行政改革会議段階においてもなお明確な具体的な組織論としての成案を得るに至っていないところでありますが、この面における明確な解決は、企画と実施の分離という観点では、結局のところ、今回の行政改革におきましては主として独立行政法人制度の導入の問題に帰着すると考えられるのであります。
独立行政法人通則法案及び同法の施行に伴う関係法律の整備に関する法律案の提案、各省の八十九事務事業を独立行政法人事業に移行するとの基本方針を定め得たことは、行政改革会議報告の線を政府、行革本部において一層具体化されたものであり、関係方面の御努力に敬意を表する次第であります。
なお、今後に残された課題の一つは、国立大学の法人化問題でありますが、これにつきましては、結局のところ、新しい時代における大学のあり方ないし大学改革の課題に深くかかわっております。
もともとこの問題については、かつて一九六〇年代の後半におきまして欧米及び日本において大学の閉鎖性やその機能不全が問われ、いわゆるスチューデントパワーが吹き荒れた時期に、我が国国立大学に自立的な運営責任体制の確立を求める見地から、いわゆる中教審の四六答申におきまして国立大学の法人化等の改革構想が打ち出されたことが想起されるわけであります。
同構想は、筑波大学等の新構想大学に形を変え、結局のところ、この段階では実現に至らなかったのでありますが、現時点においては、こうした経緯にさかのぼって点検を加えるとともに、現代的な見地から、二十一世紀の社会の要請にこたえ得る新たな自立した大学像の確立の一環として、その制度化に向けた取り組みが今後加速されることを期待いたしたいところであります。
また、郵政三事業の扱いについては、国直営事業として残された巨大事業体であり、既に五年後における公社形態への移行に関する基本方針が定められているところでありますが、今後は、同種ないし隣接の分野において、既に高度に発達し、その経済的、技術的蓄積を高めつつある民間セクターとの間の関係調整、当該事業に公的役割を維持する場合のその役割の明確化、事業経営効率の向上等、多角的な検討を急ぐべきものと考える次第であります。
最後に、いわゆる行政評価制度の本格的導入について一言申し述べたいと考えます。
現代行政は、先進諸国においてそれぞれ巨大な規模に達し、市民生活にも多大の影響を生じさせるに至っており、その運営は合理性、有効性が高く、効率的なレベルに維持され、その実情は不断に公正に点検され、その結果が公表されなければならないと考えます。とりわけ、かつてのPPBシステム試行の教訓、その後における行政計画技術の適用の限界等にかんがみますと、現代行政においては、いわゆるリザルトオリエンテッドな行政管理手段の積極活用が行政におけるコストパフォーマンスを高める上で特に重要であります。
その意味におきまして、今回の改革の一環として、当面、行政評価制度の総務省及び各省等行政部内における早期の立ち上げが重要であり、具体的な評価基準の設定、評価手法の安定的確立等、政策評価についての一定の経験、蓄積を経て、米連邦政府に見られるような制度法制の導入を志向すべきであると考えます。
以上、今回の行政改革案のうち特に注目される若干の重要点に絞り申し上げましたが、今回の政府案の改革構想は大変広範にわたり、我が国の行政にとり重要な改革措置はこれにとどまるものではありません。
国会及び政府におかれましては、行政改革会議最終報告の趣旨及び既に制定された中央省庁等改革基本法の定める改革理念、改革の基本方針等に基づく改革の実現、具体化に取り組まれ、さらにまた同様に、改革の途上にある経済、税財政、地方制度、社会保障制度その他各分野の制度改革、構造改革との整合性、改革プロジェクト相互間の時系列配置等にも十分留意され、中長期の展望に立って二十一世紀の我が国の姿を真に強固な基礎の上に築かれることを心から期待いたしまして、意見表明とさせていただきます。
ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X00819990701/83
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084・吉川芳男
○委員長(吉川芳男君) ありがとうございました。
次に、山口参考人にお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X00819990701/84
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085・山口二郎
○参考人(山口二郎君) 山口でございます。
私は、大学で行政学という科目を勉強しております関係で、本日は行革について意見を申し上げたいと思います。
内閣制度の改革やあるいは政策評価、パブリックコメント制度など、今回の行革関連法案の中には時代の変化に対応した重要な改革の第一歩が含まれているという点では評価したいと思いますが、しかし、本来の行政改革の課題という観点から照らしますと不十分な点も多いと思います。
そこで、短い時間でありますので、行政改革の基本的な理念及び今後の課題について私は意見を申し上げたいと思います。
まず最初に、今回の行政改革の問題設定における問題点を指摘したいと思います。
言うまでもなく、今回の行革は小さい政府を目指すということが出発点であります。せんだって、行革会議で中心的な役割を果たされた高名な法学者が私の大学に来られて、行革会議のときの話をしていただいたんですけれども、ともかく行政の減量化を目指すという議論をしたということです。私は、いかなる意味で減量化が必要なのか、見方を変えれば、日本の行政というのはいかなる意味で大きいのかという質問をその先生にしましたが、その先生は、行政の減量化は所与の前提である、いかなる意味で日本の行政が大きいかというような議論をする暇はなかったというふうにおっしゃいました。そこに私は今回の行革の最も大きな欠陥があると思います。
皆さん方も御承知のとおり、公務員の数の人口比、あるいはGDPに占める租税・社会保険料負担率などで見ますと、日本は先進国中最も小さい部類の政府であります。公務員の数は一千人中大体四十人弱、租税・社会保険料負担率は大体三八から九%。これはいわゆるサミット参加国の中でもかなり、アメリカと並んで、あるいはアメリカよりも若干小さいぐらいであります。
では、そういう意味で日本はかなり小さな政府なんですけれども、なぜ大きな政府という不満が出るのか。私は国民が大きな政府だという不満を持つことには幾つか理由があると思います。
私は四つほど考えたんですけれども、一つは、公共投資の対GDP比が先進国中最大である。大体六%台の半ばでありまして、英国、米国の三倍以上ということであります。つまり、日本人は、日本の政府というのは常に道路や箱物、何かつくっているという印象を持っているということが政府の大きさを感じさせる原因だろうと。
二つ目は、政策における需要と供給のミスマッチという問題を指摘できるだろうと思います。すなわち、特定の政策を挙げて論じるのは不穏当かもしれませんが、農業分野の公共事業などを中心に、明らかに不必要なと思われる公共施設に多額の税金が投入されているという現実が近年マスコミを通して報道されております。
さらに、政策の失敗や破綻に対する検証や反省というものが欠如している。私が住んでいる北海道には、例えば苫小牧東部工業基地といったように、明らかに破綻をしてもなおかつ根本的な対策を打つことなく、いたずらに十年時間を経過して借金の債務ばかりが膨張していくというような公共政策の事例がございます。
こういう事例に対して、政策を立案、担当した人間は、きちんと実態の解明や責任の所在を明らかにする、さらには納税者に対して謝罪をするといったようなことはないわけであります。その意味で、態度がでかいという意味では日本の政府は非常に大きな政府であるというふうに思います。
三つ目の理由は、行政の裁量が非常に大きいということであります。
裁量行政の問題は、後ほど多分中条先生がお触れになると思いますが、権限を持つ担当者の裁量で民の側が非常に大きな利害関係の影響を受ける。このことは政府の大きさを感じさせる一つの要因になっているだろうと思います。
第四の理由、これは形にあらわれないさまざまな行政に付着するコストがかかっているという問題であります。
例えば、各種の公共事業などを発注しようという場合、特定の公益法人にコンサルティングを発注しなければ事実上受注できないといったようなことがさまざまな分野で行われており、多くの場合、そのような公益法人がいわゆる天下り官僚の受け皿になっているという現実があるわけであります。
こういった事柄は、表向きの許認可件数とか公務員の数とか予算の規模といったものにあらわれにくいわけですが、こういうさまざまなコストというものが政府の大きさを感じさせる一つの原因になっているというふうに私は思います。
以上の四点に照らして、私は、日本の政府を小さい政府にする必要があるだろうと思います。
そこで、何を変えるべきかということについて少し私見を申し上げ、その中で今回の行革法案についての所見も申し上げたいと思います。
第一に、国家公務員の単なる量的削減という目標設定は私は余り意味がないと思います。
昭和四十年代の総定員法施行以来、累次にわたって定員削減計画を実施してまいりまして、少なくとも国家公務員に関しては日本は相当スリム化していると言うことができます。この上量的削減をしようと思えば、エージェンシー制度を導入して、要するに従来国家公務員であった者の身分を形式上エージェンシーに移すといったようなことで数字を合わせるしかない。しかし、そのことに一体どういう意味があるのか、私は大変疑問であります。
次に、先ほど挙げた四つの点に関して、大きな政府の是正方策をいかに考えるべきかということについて触れたいと思います。
第一に、公共事業の改革についてであります。
もちろん、社会資本の整備、あるいは防災や豊かな生活基盤をつくるという点で公共事業を適切に実施することは二十一世紀も必要でありますが、それについて、今回構想されている国土交通省というものが本当に対応できるのか。特に、地方整備局、要するにブロックごとに置いた支分部局において、かなり大きな権限を与えて公共事業を企画立案、実施していくという構想でありますが、ブロックの支分部局に対していかにして民主的な統制を加えていくのかということは全く議論されていないと思われます。
その意味で、国土交通省というものが非常に巨大な予算を持った公共事業官庁として、かえって従来よりも国民あるいは議会によるコントロールが及ばないものになっていくという危険性があると思います。
それから第二の、政策における需要と供給のミスマッチという問題についてであります。
大ぐくりの再編成というものによって行政需要の変化に対応した政策の供給システムをつくるということであれば、これは大変結構なことだと思いますが、今回の省庁再編は基本的に省と省の足し算であります。需要と供給のミスマッチという観点からすれば、例えば現在の国家公務員の採用における職種別の割り当て、つまり、土木とか農業工学とか、そういった専門分野について旧態依然として同じ人数をとって供給システムの側を固定化していくという点には非常に大きな問題があるだろうと思います。
それから、国民の観点から政策評価を行って需給のミスマッチを改めるということについては、私は大変大きな意味があると思います。しかし、その具体的な方法、そして政策評価を行うことによって従来見られていたような非常にむだの多い公共事業を中心とした政策をきちんと途中でストップできるのか、あるいはそういうものを未然に防ぐことができるのかといった点について、まだ具体的な詰めが足りないだろうと思います。
それから、三つ目の裁量の大きさという問題については、やはり規制緩和と行政の透明化を進めていくということが必要であります。
それから四つ目、形にあらわれない、目に見えにくい政府の大きさという点に関していえば、特殊法人あるいは公益法人等の実態について徹底的な情報公開を行うと同時に、いわゆる官僚の天下りのためにそのような認可法人を使うという実態について、この際新たな制度的な歯どめを検討する必要があるだろうというふうに思います。
最後に、内閣機能の強化について一言申し上げておきたいと思います。
私も、今回の行革関連法案で示された総理のリーダーシップを強化する、あるいは内閣の総合調整能力や危機管理能力を強化するということについては基本的に賛成でありますし、そのようなリーダーシップを支えるための補佐制度の充実等については時代の要請にこたえたものであろうと評価いたします。
しかしながら、内閣制度の改革については一つの限界がございます。なぜ従来日本の内閣というものが総合調整能力を持たない、あるいは弱体なものであったのかということについて原因を考えてみますと、これは内閣法その他の制度の欠陥の問題ではないわけであります。特に、同じような内閣制度をとっているイギリスと比較してみますとそのことは明らかであります。
イギリスの場合は、シャドーキャビネットも含めれば、要するに与党の中枢部、指導的な政治家がすべて内閣の主要ポストを占め、それが二年、三年と仕事を続けていくことが常識であります。その意味で、内閣というのは与党のオールスターのチームでありまして、そこにおける議論、決定というものが与党自体の方針となり、さらには国政の基本的な方針となるという仕組みが存在いたします。
しかし、日本においては恒例のように一年に一度内閣改造が行われ、衆議院であれば与党の当選五回くらいの代議士が大臣になる、そして一年たったらまた入れかわるということが慣習のように行われてまいりまして、そのような意味で残念ながら日本の内閣というものは与党のオールスターチームではないと思われます。あるいは一年ごとに大臣が交代するという内閣において、特に規制緩和や地方分権等といった官僚の既得権に反対するような重要な政策決定を推進する政治的な力を持てるかという問題があるわけであります。
したがいまして、この内閣機能の強化については、もちろん今回提案された制度の改革というものも必要でありますが、これを担う政党の側の責任が非常に大きいということをここで申し上げておきたいと思います。すなわち、内閣というものに与党の指導力を結集する、内閣の意思決定が即与党の意思決定であり、また国会多数の意思決定になるというイギリスのような仕組みを日本においてつくることが必要であるということであります。
最後に、今回提案された一連の行政改革について、私も、基本的に時代の要請にこたえる部分も大きいし、この際省庁を一度再編成してみるという経験をすることは大きな意味があると思います。しかし、行政改革の課題はそれで終わりなのではないわけでありまして、二十一世紀に入っても引き続きさらなる行政改革の課題について追求し、さまざまな制度改革を続けていく必要があるということを申し上げて、私の意見陳述を終わりとさせていただきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X00819990701/85
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086・吉川芳男
○委員長(吉川芳男君) ありがとうございました。
次に、右崎参考人にお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X00819990701/86
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087・右崎正博
○参考人(右崎正博君) 獨協大学の右崎といいます。よろしくお願い申し上げます。
中央省庁等の改革に関する論議をするこの委員会において私見を申し述べる機会を与えていただきまして、大変光栄に存じます。
私は、大学で憲法を担当していますので、その立場から若干の私見を申し述べさせていただきます。
近代以降の諸憲法は、国家権力の組織原理として権力分立制を採用してきました。その趣旨は、権力の集中を防ぐことが権力の乱用を防止するために必要不可欠であって、天賦の人権を保全するために最も適合的な国家の組織原理であると考えられたからにほかなりません。
そして、その権力分立の原理のもとにあって、行政のあり方の基本原則として法治主義が採用されてきました。法治主義といいますのは、行政がすべて法律に根拠を持ち、法律に従って行われなければならないということを意味するものでありまして、法による行政の統制という観念をあらわすものであります。
そして、その法律は、権力分立制により、国民の代表機関であり唯一の立法機関である議会だけが制定する権限を認められる。つまり、法治主義とは、行政に対する民主的統制の原理にほかならないわけでありまして、それを通して人権保障を確保するための装置にほかなりません。
日本国憲法も近代憲法の所産を正当に継受しているわけでして、権力分立制と法治主義原則を採用しているということについては疑問の余地はありません。
しかしながら、現代の諸国家に共通して見られる現象でありますが、現代における国家機能の拡大と行政の複雑多様化は、国家の制度と機能の両面において行政権の強化を生み、権力分立制に動揺をもたらし、法治主義原則を後退させてきています。
日本におきましても、例えば内閣提出法案の増大は立法機能の実質を国会から内閣へと移行させてきていると思われますし、法律の内容の点におきましても、基本法や委任立法の増大に見られますように、法律は一般的な基準を定めるにとどまり、施策の細部は行政の裁量にゆだね、結果として行政に対する厳しい統制を次第に後退させてきている傾向にあると思います。
このような内閣と国会の間の権力の関係の変化による行政権の強大化と法治主義の後退に対していかに対処すべきかということが憲法の課題として問われてきています。このような認識が憲法学の共通の認識であると見てよいと思います。
そのような点から見て、中央省庁等改革法案は憲法上の原理や原則にかかわる重大な問題を含んでおり、憲法の原理原則を踏まえた十分な審議をしていただくことを要望したいと思います。
そのような立場から、以下、若干の私見を述べさせていただきます。
まず第一は、内閣機能の強化と内閣総理大臣の権限強化についての問題です。
この法案は、内閣法の一部を改正し、内閣府を設置することにより、内閣総理大臣の指導性を確立するとともに内閣機能の強化を図ることを目的としているわけですが、それによってもたらされるものは、行政権の一層の強化、相対的に国会の役割の一層の低下ではないかと思われます。権力分立制や法治主義という憲法上の原理原則をさらに後退させるものではないかと思われる点で重大な危惧があります。
内閣総理大臣を長とする内閣府には膨大な権限が集中するように構想されているわけです。例えば、内閣府に置かれる経済財政諮問会議というのを見てみますと、経済全般の運営の基本方針、財政運営の基本、予算編成の基本方針、その他の経済財政政策に関する重要事項について審議することとされており、経済財政に関する重要事項をすべて管轄することになると思われます。それだけではなく、その権限が内閣総理大臣と内閣官房長官、経済財政政策担当大臣、その他内閣総理大臣が指名する大臣、委員会や庁の長、有識者という極めて少数の者に集中する仕組みを持つことになります。
このことは、恐らく経済運営、財政運営、予算編成の実質をこの会議が掌握するということを意味することになると思います。形式的には、この会議で出された結果を受けて閣議の決定がなされ、法案等については国会の議決なり承認なりを得るということになるわけですが、実質的な決定はこの会議でなされることになりますから、憲法六十五条によって行政権の担い手であるとされている合議体としての内閣の役割はむしろ形骸化してくるのではないか、また実質的な立法機能も国会から簒奪されることになるのではないか、唯一の立法機関である国会の役割も低下せざるを得ないことになってしまうのではないかと危惧されます。
このようなあり方が、憲法の原理や原則に照らして進むべき方向であるかどうかについては、かなり大きな疑問を持っています。
第二は、中央省庁の改革についてですが、確かに行政改革は今日的な国民的課題の一つであると言ってよいと思います。しかしながら、議論の焦点が省庁の統廃合や大臣のポストの数ばかりに集約され過ぎているのではないかと思います。
一府十二省庁への改編は、国務大臣の数を十四ないし十七に減少させ、局や官房の数も百以下に減るということですが、省庁の権限がそれほど縮小されるわけではありませんから、例えば総務省や国土交通省などのような巨大な官庁が誕生することになります。しかも、大臣や官僚のポストの減少によって、より少数の者の手に権限が集中することになります。
加えて、副大臣の制度が導入されることになっていますから、国会議員が行政に対して責任を負う機会と範囲がより拡大することになります。一方で、議員定数の削減などが議論されておりますから、仮に議員定数が削減されるということになりますと、国会が担う行政の比重は一層増大するということになります。
国会と内閣との関係のこのようなあり方は、国民の代表機関としての国会の行政監視機能を損なうだけではなくて、唯一の立法機関としての国会の役割をも実質的に形骸化させてしまうのではないか。結果として、国権の最高機関としての国会の役割を低下させるおそれがあると思われます。権力分立制や法治主義といった憲法の原理原則に照らした十分な検討が要望されるゆえんです。
第三に、独立行政法人の問題についてですが、独立行政法人通則法案によれば、国民生活及び社会経済の安定等の公共上の見地から確実に実施されることが必要な事務及び事業であって、民間の主体にゆだねた場合に必ずしも実施されないおそれがあるもの、または一の主体に独占して行わせる必要のあるものを効率的かつ効果的に行わせるために独立行政法人の制度を設けるとされています。そして、政府の出資によって運営し、独立行政法人の長や監事は主務大臣の指名によるものとされています。
しかしながら、独立行政法人化の対象とされている機関を見ますと、その大半は基礎研究に従事している研究所等の機関でありまして、国民生活や社会経済にとって必要不可欠な役割を担ってきた諸機関であります。これらの機関を独立させて効率の向上を図るということは、行革という観点から見れば前進のように見えるかもしれませんけれども、それらの機関が担っている研究分野の特性からいえば、国民生活などの安定のためには欠くことができないものでありながら、しかし独立して採算をとり得るような事業にはなりにくいものが多いと思われます。もしも独立行政法人化の結果、採算のとれない部門、分野から撤退するということになりますと、かえって国民生活等の安定が脅かされることになりかねないと思われます。
したがいまして、それぞれの機関が担っている事業の性質に即して個別に検討をし、またこの法案が目指している目的は、例えば各大学で行われるようになっていますが、自己点検や外部評価制度の導入などの代替的な措置によっては達成できないのか、そのあたりをぜひ慎重に検討していただきたいというふうに考えます。
以上、三点を申し上げましたが、総じて中央省庁改革法案は、国民の人権や権利に大きな影響を及ぼすものであって、そうであればこそ、この法案が人権を保全するための最善の仕組みとして先人たちが生み出した権力分立制や法治主義の原理に対して及ぼす影響、そのメリット・デメリットを十分に検討されて、後世に悔いを残さないような選択をしていただきたいとお願いして、私の意見陳述を終わらせていただきます。
どうもありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X00819990701/87
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088・吉川芳男
○委員長(吉川芳男君) ありがとうございました。
最後に、中条参考人にお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X00819990701/88
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089・中条潮
○参考人(中条潮君) 慶應義塾大学の中条と申します。
皆さんお疲れかと思いますけれども、学者の退屈な意見陳述はあと一人で終わりですので、もう少しだけ我慢をしていただきたいと思います。
この法案のこの段階で余り基本的なことを申し上げるのはどうかなと思いますけれども、しかし、法案が通ってしまった後どの点に留意すべきかということについては私も一応ある程度の考え方を持っておりますが、やはり審議段階でありますので、きょうは基本的な私の疑問点というのを皆さんにぶつけさせていただきたいと思います。
四点申し上げたいと思います。
まず第一点でありますけれども、私は、省庁再編には当然賛成ではありますが、分野別に統合する方式には反対であります。むしろ私は細分化すべきだという考えであります。
今、日本にとって必要な構造改革、これの一番の重要な概念は分権化という概念であります。個々の消費者、個々の生産者、個々の国民、あるいは個々の自治体、これが自分の責任でもって明確にコストを負担していく、それによって効率化を果たしていく、こういう改革が求められているわけであります。そういった分権化の観点からしますと、むしろ分野別には統合をするよりも私は細分化をするべきではないか。
もう少し具体的に理由を幾つか申し上げたいと思います。
細分化することによって各組織の政策が、考え方が明らかになります。鮮明になります。各組織がいかに有効で合理的な政策案を提案するかという政策競争を行わせることができます。各組織がそれぞれの政策を国民あるいは政治家の皆さんの前に提示して、そしてそこで議論をして、政治家の皆さんがそれを調整していくというのが民主主義ではないでしょうか。細分化して各組織の考え方が鮮明になればなるほど責任も明確になります。いいかげんな裁量行政も当然表に出されるということになります。省庁エゴをむき出しにすれば批判にさらされやすくなります。
ところが、統合してしまいますと政策提案の責任が不明確になってしまいます。不明確に調整された後の妥協の産物が政治家の皆さんや国民の前に示されてしまうことになります。現在でさえ各省庁の間の調整というのは不透明でありますけれども、統合すればもっとひどいことになってしまいます。少なくとも現在の状態であるならば、例えば建設省と運輸省の考え方の違いはわかります。しかし、この二つを統合すればその間でわけのわからない調整がなされてしまうという可能性が十分にあります。
細分化すべきであって統合すべきでないという理由の二番目はグレシャムの法則であります。統合すると良貨は悪貨に駆逐されてしまいます。腐ったリンゴをまともなリンゴと一緒にしますとよいリンゴまで腐ってしまいます。ましなリンゴと腐ったリンゴと言った方がいいかもしれません。どこの省庁がよいリンゴで、どこが腐ったリンゴかということはここではあえて申し上げません。
三番目の理由でありますけれども、細分化することによって国が直接やっていなくてもいい仕事ということが明確になってまいります。統合してしまうと不必要な部分がますます隠れてしまいます。まさに山口先生がおっしゃいましたように、今必要なのは山口先生がおっしゃった意味での小さな政府ということになります。国が直接運営する必要のない組織、これを廃止あるいは独立行政法人化し、あるいは民営化してスリム化を図っていかなければいけないわけであります。細分化することによって国が直接やる必要のない部分ということが世間の目にさらされることになります。
例えば、運輸省を細分化しますと、航空局の安全担当の監督の部局、このようにルーチン的な業務をやっている部局はエージェンシー化すればよいということがわかってまいります。独立行政法人の形であります。既にオーストラリアやイギリスやカナダやニュージーランドでは、これは独立行政法人、エージェンシーの形になっております。あるいは空港の管制業務は民営化すればよいということがわかってまいります。空港も民営化すればよいということが明確になってまいります。空港の管制業務は、既にニュージーランド、オーストラリア、カナダ、イギリス、ドイツでは会社によって行われております。
ところが、統合してしまいますと不明確な部分が隠れてしまうということになります。運輸省の例だけを一例として申し上げておりますけれども、運輸省の中の業務ということで、国が直接やらなくてもよい部分が隠されてしまう。統合すればさらにそのわからない部分がますますわからなくなってしまうということになります。
理由の四番目でありますが、統合して省庁の数を減らすという点だけに力点が置かれ過ぎますと、独立性の必要な部局、中立性の必要な部局、これを無理に統合してしまうという結果になります。独立性の必要な部局の独立性を喪失させてしまうという結果になります。
私は、数がふえることを恐れてはならないと考えます。こういった再編成をやっていく中では新しい組織も必要になってまいります。必要な組織であれば数がふえてもよいと考えます。
例えば、これからの競争社会の運用に当たってはエッセンシャルファシリティーの配分ということが重要になってまいります。これは各産業において生産を行うに当たって主要な生産施設という意味です。例えば、航空のサービスの場合であれば空港の発着枠であります。電気通信であれば地域回線へのアクセス権であります。
こういったものについての配分のルールをつくっていく、そしてそれを運用していくといった第三者的な組織が必要になってまいります。こういった組織は従来の伝統的な規制当局から切り離して設置されるべきです。その理由はまさに裁量行政にあります。この点について詳しいことは今は申し上げませんけれども、そういった形で新しい組織をつくっていくということも当然考えに入れるべきではないかということであります。その点では今回の改革は大変部分的な形に終わっていると私は考えます。
このようなことを申し上げますと、統合しないと縦割りの弊害がもっとひどくなるのではないかという疑問が必ず出てくると思います。しかし、統合したら縦割りはなくなるんでしょうか。省益あって国益なしという言葉が言われますが、局益あって省益なしという言葉もございます。果たして、新幹線と空港の整備の間で合理的な調整というのは行われているのでありましょうか。私は、調整役は政治家の皆さんの役割であると考えます。官庁間で不透明な調整がなされるのは望ましくないと考えます。統合すれば不透明さはより大きくなります。
縦割りの弊害を最も感じているのは、恐らく地方政府の段階であろうかと思います。地方政府に中央省庁の縦割りの弊害が持ち込まれる、これが大きな弊害をもたらしていると考えます。これに対しては強力な地方分権化で対応すべき問題であります。
また、統合して大臣の数を減らす、細分化すると大臣の数がふえるではないかということが言われるかもしれませんが、これは私は大した問題ではないと思います。大臣の給料の分がふえるというのであるならば、副大臣を置くのと私は変わらないと思います。むしろ、大臣のポストというのはたくさんあった方がよいのではないでしょうか。
さて、申し上げたい第二の点でありますが、私はしかし、今統合という点について批判を申し上げましたけれども、すべてに反対なわけではございません。分野別には細分化すべきでありますけれども、機能的には統合をした方がよい場合があります。言いかえれば、統合は分野別ではなく機能別にという形であります。
今回の改革の中にもそのような形での統合という部分もあります。その点について私は評価をしたいと思います。しかし、それは徹底的にはなされていない。
例えば、運輸省には交通安全関係の部局がたくさんございます。散在しております。ほかの省庁にも交通安全関係の部局はたくさんございます。こういった交通安全の部局を統合して新しい官庁をつくり、情報を共有化して効率的な安全対策を推進していくということが、そういった形の統合が本来必要とされるはずであります。
あるいは事業者の監督という部分は、これは規制緩和が進み、需給調整規制撤廃宣言もなされたわけでありますから、そういったことを運輸省がやっている必要はもうないわけであります。公正取引委員会に移すか独立の監督組織をつくる、そして政策担当部局は内閣のもとに置くという形の機能別の統合をすればいいわけです。
私は、もともと交通の分野について研究をしておりましたので事例として運輸省の話を出しておりますけれども、これはすべての省庁に共通する話であるかと思います。つまり、細分化して機能別に再統合できるところは統合するべきではないかということです。こういう機能別の統合によってもとの省への帰属意識を薄めることができます。分野別では統合してももとの省への帰属意識というのは残ってしまいます。
申し上げたい第三の点でありますけれども、不必要な組織、政府が直接やっている必要のない組織の整理が不徹底であるということがあります。
省庁部局の中に独立行政法人にしてよいもの、民営化してよいものがまだたくさん残っております。ところが、民営化すべきもの、独立行政法人にすべきもので今回の法案リストには挙げられていないものがかなりございます。むしろ、力の弱いところだけが独立行政法人の形になったり民営化の対象になっている、そういう印象を受けかねません。言うまでもなく、郵便サービス、気象サービス、管制業務、空港といったような部分は十分民営化で対応することが可能でありますし、先ほど申し上げたように、民間航空庁のようにルーチン的な役割をする政府の部局は独立行政法人の形にすることが可能であります。
そういう点で、今回の改革は、さらにもう何歩も進んだ形での改革を後に続けていかなければ大きな改革にはつながらないというのが私の意見でございます。
ほかにまだ申し上げたいことはございますけれども、時間でございますので、とりあえず私の陳述はこれで終わりにさせていただきます。
ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X00819990701/89
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090・吉川芳男
○委員長(吉川芳男君) 以上で参考人の方々の御意見の陳述は終わりました。
これより質疑に入ります。
質疑のある方は順次御発言願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X00819990701/90
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091・脇雅史
○脇雅史君 自由民主党の脇雅史でございます。
本日は、四人の先生方、大変お忙しい中、貴重な御意見を伺いまして、本当にありがとうございました。
今回、中央省庁の再編ということが衆議院の審議を経て参議院にまで来ているわけで、私自身も行政経験がある者としてある種の感慨を覚えるわけでありますが、絶対にできないだろうというふうに内心思っていたところもありまして、ここまで来ていることに驚いているわけであります。ここに至るまでに大変な決意と熱意と努力があったということで、関連された方々の御労苦に対しまして、心から敬意を表する次第でございますが、できないと思っていたものがここまで来た以上、ちょっと考え方を変えて、これから先は余り肩ひじを張らない方がいいのではないかというふうに思っております。
これは変な言い方でありますが、これだけ大変な知恵と情熱を込めてつくったものだから、今度の改革は大変なものだ、もうこれは変えられないというようなことを現職の諸君に思ってもらってもいけませんし、行政なんというものはしょせん国の状況、社会の状況に応じてその形態はさまざまに変わるべきである、変えなければいけないという常識に戻らなければいけないという意味で、これから先は少し軽く考えた方がよろしかろうという意味でございます。いわば、背広や着物のように暑ければ脱ぐし、ある時期につくった着物を一生着るわけにもいきませんし、ボタンをかえたり寸法を直したり、いろんなやり方はあるんでしょうが、さまざまに要請に応じて変えるということが大事なわけであります。
私が思うところ、現在の国家行政組織の最大の問題点といいましょうか、現在ある組織、制度、そういったものをダイナミックに変えていいんだ、変えるという常識が欠如していることではないか。今ある組織は永久に続いていくという、戦後、昭和三十年代ぐらいまではそうでもなかったんでしょうが、一連の法律がどんどんできていった後で、もう組織なり制度なりはこのまま続くものだという常識が支配をしていたのではないかなというふうに感じます。
そういう意味で、それを変えるということに大変なエネルギーが要ったわけでありますが、それだけに、今回の改革は中身もさることながら、先生方の御意見にも幾つかありましたけれども、変えることに意義があると、そんな気持ちでいていいのではないか。少し軽い気持ちで、中身はどうしてもこれでなくてはいけないとか、いい方がいいんですけれども、余りこだわらずに進めていくという姿勢も大事なのではないかなというふうなことを感じております。
そして、今回、省庁の再編ということが大きいわけでありますが、現在さまざまな法制度ができていますね、税制にしても何にしても。それはかつては、法律をおつくりになったときには非常にその時代にマッチした最善の法律をつくったはずなんですけれども、先ほどの洋服の話ではありませんが、時代がこれだけ変わってきますとどんどん変えなければいけない、そういうことがいっぱいあるわけです。
今回、省庁については済んだわけでありますが、行政の実質的中身を規定しております法律はほとんど変わっていないわけですね。どこの役所が担当が変わるということを今回膨大な資料の中で言っているにすぎないわけであって、本質的なことは変わっていないわけでありますから、そこの部分を引き続いて改革していく努力をしなければいけないんだというふうに感じるものであります。
そこで、まず八木参考人にお伺いしたいわけでありますが、今回の省庁再編の中で大きな柱として内閣機能の強化ということを挙げられております。私は今でも総理大臣は大変な権限と権力をお持ちになっているというふうに思うわけで、これは私自身の行政経験の中でもそれを強く感じたことがございます。今回の一連のこの省庁再編、行政改革も、橋本前総理の非常な熱意とお力でここまで来たわけです。それに続いて小渕総理の御努力があってここまで来たわけで、総理がちょっとでもやらないと言ったら終わる話ですから、総理がやると言うことはいかに大きなことかと、大変な力をお持ちになっている。
ですから、今、内閣総理大臣を中心として機能を強化するとおっしゃいますが、もともと大変な機能はお持ちなんで、何が問題かというと、今でも大変な機能、権限を持っているので、それがひとり歩きをして間違ったリーダーシップを発揮してほしくない。国民として、機能の強化という意味は、首相が一人で夜考えて御決断されるんではなくて、きっちりと内閣の総意としてそれを形づくられるような、そういう意味での機能強化ではないかなというふうに思うわけでありますが、その辺につきまして八木参考人の御意見はいかがでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X00819990701/91
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092・八木俊道
○参考人(八木俊道君) おっしゃるとおりかなと存じます。
恐らく問題は、現在の政府、与党に支えられた政府ということになるわけでありますが、必要な政策決定を必要なタイミングで大胆かつ積極的に講じ得るかどうか、そういう体制になっているかどうかという点であろうと思います。これは多分に政治及び行政の運営上の問題であろうと思います。
おっしゃるとおり、日本国憲法あるいは内閣法の体制は総理大臣権限を大変強いものとしておるわけでありまして、ただ現在の憲法制度のもとにおける内閣の首長としての総理の立場が重要政策決定の筋に全面的に乗っているかどうか、この実態についてはいろんな議論があるわけであります。
今日の内外情勢のもとでは政策の選択肢が大変広がっている。これを誤りなく決定し得るようなサポートをするシステムをどうつくるか、これは政党の問題であると同時にまた政府部内の問題でもある。総理が仮にリーダーシップを強くお出しになるとすれば、そのための適切なマシンを用意するということであろうと思います。
〔委員長退席、理事石渡清元君着席〕
同時にまた、政策決定過程における情報公開、あるいはまた国会の民主的なチェックと政党の積極的な参画ということをまちまして、日本の政策決定が機動的、実際的なタイミングで行われるような仕組みに持っていく。運営上の問題ではございますけれども、先ほど申し上げた内閣機能強化に関する重要点は、総理がそうした権能をお使いになるとすれば、これを適切にサポートする、機能しやすくする、こういう工夫であり、制度上の枠組みとしてそうした工夫を用意してさしあげる、これが改革のポイントかなと考える次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X00819990701/92
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093・脇雅史
○脇雅史君 そこで、内閣府という非常に強大な権限を持つ可能性のある役所が誕生することになりつつあるわけでございますが、もちろんいろいろ各省にまたがっている問題が多いわけですから、それを的確に解決していくために内閣府といったところがお働きになる、極めて大事なことだと思うわけでありますが、事務局の運用によってはそこに十年二十年ずっと枢要なポストをお占めになるということになりますと、これは非常にまた弊害も出てくるのではないか。言いかえますと、人事管理上極めて注意深い運用をしないと、内閣府が、非常に問題の多いという言い方は変ですけれども、弊害が出る可能性があるというふうに危惧するわけでありますが、いかがでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X00819990701/93
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094・八木俊道
○参考人(八木俊道君) これは、各国制度におきましてもいわば共通の悩みでございます。内閣及びそのトップにあられるトップリーダーが、真にその政策運営に指導力を強化して強いリーダーシップを発揮させる、こういうシステムの例としては、やはり何といっても大統領制が究極の姿でございます。
ただ、これもアメリカの例などをいろいろと検討いただきますと、例えばベトナム戦争の悲劇であるとかウォーターゲート事件の悲劇であるとか、こうしたことも過去にあったわけでございます。
極めて中央集権的なと申しますか、トップリーダーに権限の集中した統治機構をとるか、あるいはいろんな国民の中の価値観、多様な政策、価値をじっくり合議の上選択するやや重心の低い政策運営システムをとるか、そのいずれかということについて検討をいたしましたところ、結局のところ、日本においてはややボトムアップ型の体質が強い、こういうことで今回の改革案になったのかなと思う次第であります。
一方におきまして、権限あるいはまた政治権力の集中、これが必然的に伴うところのリスクもまた無視できないところでありまして、結局のところ、この辺の問題は例えば既に院において御可決をいただきました行政情報公開法あるいはまた行政手続法、その他行政の意思決定におけるシステムの改良によりましてそうした弊害が起きないように、そしてまた不断に国政の全般をごらんなさいます両院におきまして国政調査の実を上げ、政府に対して適切なチェック、監視の目、そしてまた政策論議を活発にいただきまして、国政に関する現実の運営におきまして政府との適切な緊張関係を確立していかれることが問題の本質であり、他方また情報公開に伴う言論機関その他の各種の批判というものも大いに活発に行っていかれる、そうした全体的な国のシステムが大変重要かなということを感ずる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X00819990701/94
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095・脇雅史
○脇雅史君 どうもありがとうございました。
八木参考人がお話しされました中で、あと二つほど感想といいますか述べさせていただきたいわけであります。
企画計画部門と実施部門の分離ということが今回の改革のまた一つの大きな柱であるわけでありますが、やや危ういかなという感じを持つわけであります。余りそれを強調され過ぎますと、物によっては分離ができないもの、あるいは分離してはいけないものというのがあるはずなんです。ですから、個別のいろいろな分野において分離をすべきか、できるかということを検討しませんと、分離することが正義だ、いいことなんだというふうになってしまいますと、これは禍根を残すのかなと。
これから実際に行政がさまざまな実務分野でなされるわけでありますが、現場で起きたこと、それを的確に上げていくということが不可欠でありますから、特に、例えば医学とか臨床部門の情報が上がらずにいろいろな制度ができるわけありませんし、また土木分野なんかでも現場の情報というものなしに計画論なんかできないわけで、非常にさまざまな情報が行ったり来たりしないと、あるいは相まってやらないとできない分野もあるということをどこかで言っておかないと危ないのかなという感じを私は持っております。余り標語的に企画と実施を分離することはいいことだというふうに言ってしまうのはいかがかなという印象を持っております。
それから、評価制度でございます。これは過日のこの委員会でもお話がありましたが、行政分野が計画を策定する際に自己評価をしないケースはないですね。いろいろな案を立ててそして初めて企画立案をするわけですから、必ず評価はしているわけであります。ですから、新たに評価をするということではなくて、評価制度という格好で自分でやる部分、あるいは他機関でやる部分ということを、いろいろな場面ですることをつくったというふうに理解をしているわけであります。
それにしても、大事なことは、評価をもともとしているわけで、その評価の過程、過程はなかなか難しゅうございますが、過程でありますとかその結果を的確に公表することこそが大事なのであって、評価制度はやることよりも出すこと、出すことによってその評価の中身が洗練されていく、そういう繰り返しを経ていくものではないかなというふうに私自身は感じております。これは御答弁は結構でございます。
それから、次に山口参考人にお伺いをしたいと思います。
先ほどなかなか感心して聞いておったわけであります。と申しますのは、何ゆえに行政改革をやるのか、行政機構をスリムアップしていくんだという、スリム化ということが本当に必要なのか。今回の行政改革のいわばこれまた標語で大方針になっております小さな政府ということについて疑いの眼差しで見られて、どうも怪しいなと。私はそういう目がいろんな分野で特に大事だと思うんです。
山口参考人がその後に言われました、なぜ疑われているか、国民が大きいと思い込んでいるんだということを言われまして、四つ理由を挙げられました。公共事業の比率が大き過ぎるんじゃないか、需要と供給のミスマッチがあるのではないか、裁量行政が過ぎるのではないか、行政コストが高過ぎるのではないかという四点を挙げられた。一々なるほどなと思うところでありますが、そこでまた、私は、山口参考人に疑いの眼差しを向けて欲しい。
これはみんなそれぞれ納得するような話なんですが、よくよく中身を見るとかなり怪しい部分がある。日本においては公共事業は、言われていましたけれども、必要なものはたくさんあって、では要らないものは何なのかと具体的にきっちり挙げていかなければいけません。要らないものがあればやめればいいんです。それは全部が必要なわけないし、重要性はみんな変わりますからね。
それから、需要と供給のミスマッチということも言われておりましたが、役人の態度が大きいというのは、これは余り疑わなくてもいいかもしれませんが、なかなかそこのところ、学者さんですから、本当にきっちりと実態を見て、要るもの、要らないもの、そして要らないものの比率がどれだけあるのかということは大事なんですね。一つ要らなければ全部要らないというふうに短絡するのは、これは学者の世界では許されないことです。政治の世界では許されるのかもしれませんが、これは申し上げておきたい。
そういう意味で、かなりきっちりとそういうことについて今後さらに御検討していただいて、正しい情報、実際に資料に裏打ちされた情報を情緒的でなく出していただく努力を学者の先生方にもお願いをしたい。
特に天下りとか、これも一面で見てはいけないので、役人を早くやめさせるということは、ある意味ではそのかわりに新しい人を入れれば非常に新陳代謝にも役立ちますし、年をとって高い給料を払うより若い人を雇う方がいいということもあります。
だから、そういうことが、欠点をなくしていい点をとって、制度としてシステムとして再構築していくということは大事なことでありますから、余り風評に惑わされたようなことで判断をされるのは、ちょっと失礼な言い方でありますが、いかがかな。
そして、国土交通省は巨大化するから悪いんだという説も先ほどから何人かの口から漏れておりますが、私は大きくなることと悪いこととは全く別問題だというふうに思うわけです。むしろ、大きい方が世間の目にさらされて余り変なことはできないということがあり得るわけで、隠れてこっそり、清く貧しく美しくではありませんが、小さく悪いことをするというケースもかなりあるわけで、それはやはり次元が違う話でありますから、きっちりとそこは中を見て評価をすべきではないか。
そんな感想を持ったわけでありますが、失礼はお許しいただきたいんですが、それに対して一言どうぞ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X00819990701/95
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096・山口二郎
○参考人(山口二郎君) 学者としての信頼にかかわるような御指摘があったので、強く反論しておきたいと思います。
公共事業について何が問題かということをきちんと根拠を挙げろという御指摘がございました。これについては二十でも三十でもございます。
例えば、私の住んでおります北海道において、一昨年から時のアセスメントという制度によって不必要になった公共事業について見直しをかけ、撤退をするということが決定された件数が七件あります。一つの都道府県について探せばそれぐらいあるわけでありまして、私は全国津々浦々の公共事業を全部知っているわけではありませんから、北海道の件だけ申し上げますと、林道、ダム、工業用水の供給等を中心としていっぱいあるわけです。
ですから、公共事業全体の中でむだなものが何%あるかという話になれば、これは何がむだかという定義によって異なってまいると思いますけれども、少なくともかなりの件数の不必要な公共事業があるということ、これは質問なさった方もお認めいただけるだろうと思います。
需要供給のミスマッチについても同様、ちゃんと根拠を挙げろということでございました。
私も研究室で本を読んでいるばかりではございません。北海道の市町村を歩きまして、農林水産省の補助金がどう使われているかということについて調査をしております。ウルグアイ・ラウンド対策費が一体どう使われているか、市町村において全く引き受け手がないような基盤整備事業をどのように執行しているか、こういう事業について根拠を示せと言われれば、いつでもお出しいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X00819990701/96
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097・脇雅史
○脇雅史君 どうもありがとうございました。
要するに、私が申し上げたいことは、公共事業の中でもそれぞれ需要の大きいもの小さいものさまざまあるわけで、それをどういうふうにやっていくかということがまさに政治の仕事なのかもしれませんが、もちろんさまざまな批判をお聞きしながら、やめるべきものはやめる、やるべきものはやるということで、要らないものがあるから公共事業は要らないという言い方に対して申し上げたわけで、山口参考人の判断がおかしいということを申し上げたわけではないので、付言をさせていただきたいと思います。
次に、右崎参考人にお伺いしたいと思います。
憲法という立場から今回の行政改革の位置づけをお示しになって、むしろ行政の肥大化を助けるのではないか、相対的に国会の地位を下げるのではないかというお話がございました。
法治主義を弱めるのではないかという非常にうんちくに富んだお話だったというふうにお聞きしたんですが、それでは今回の一連の行政改革の中で何が欠けておって、何が一番大事なのかという点についてお伺いをしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X00819990701/97
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098・右崎正博
○参考人(右崎正博君) 私は、先ほどの意見でも述べましたが、権限の集中が追求され過ぎているということだろうと思います。集中すればするほど、能率的、効率的に行政が推進されるということになるでありましょうけれども、その分だけ行政に対する民主的統制が後退するという結果を招くのではないかというふうに心配しているわけです。
行政がこれだけ大がかりなつくりかえをされるということですから、本来であれば、国会の方がそれにどう対応するか、そういう議論もあわせて行われるべきではないかというふうに思っていますが、むしろ国会の機能強化、そういう課題にぜひ取り組んでいただきたいというふうに思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X00819990701/98
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099・脇雅史
○脇雅史君 どうもありがとうございました。
それでは中条参考人にお伺いをしたいわけでありますが、現在の省庁再編統合の方向が間違いではないか、分野別はだめで機能別がいいんだというふうなお話でありましたが、ちょっと私伺っておりまして分野と機能というのが若干よく理解できなかったので、そこのところについて補足をお願いできればと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X00819990701/99
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100・中条潮
○参考人(中条潮君) 分野という意味は、行政の対象とする例えば運輸であるとか建設であるとか農業であるとか、そういった形での分野という意味です。機能という意味は、その中での例えば安全に関する部分であるとかあるいは政策立案に関する部分であるとか、そういった分け方であります。
ですから、それは分け方としては安全分野のという意味でありますから、言い方としては少し明確さを欠いたかと思いますけれども、意味としてはそういう意味であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X00819990701/100
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101・脇雅史
○脇雅史君 どうもありがとうございました。
大変参考になる御意見をお伺いいたしまして、ありがとうございました。御礼を申し上げて、終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X00819990701/101
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102・寺崎昭久
○寺崎昭久君 民主党・新緑風会の寺崎昭久でございます。
本日は、参考人の皆様方には大変貴重な御意見を拝聴させていただき、御礼を申し上げる次第でございます。
限られた時間でございますので、早速質問に入らせていただきます。
まず、八木参考人にお尋ねいたしますが、先ほど御意見の中で、今回の改革の特徴として内閣機能の強化を挙げられ、その中で総理の発議権を明確にされたということをおっしゃられました。たしか行革会議の最終報告には、これとあわせて内閣の閣議の議決を多数決で決めるということも提言されていたのではないかと思います。内閣をどう運営するかは総理のリーダーシップにかかっているところが多いように聞いておりますので、あえて多数決を云々する必要があるのかどうか、あるいは憲法との整合性というのもあったのかもしれませんけれども、私は期待いたしました。
期待した理由というのは、聞くところによりますと、閣議にかかる案件というのは前日かその前の事務次官会議で全会一致で決まったことしか上げられないというようなことが伝わっておりますものですから、もし閣議が多数決制を採用するということになれば事務次官会議の持ち方も変わるのではないか、そういう意味で期待していたわけであります。
八木参考人は行政改革会議の実質的な取りまとめにも御尽力いただいたと承知しておりますので、この多数決制の採用というのはどういう経緯で提起されたのか、その辺をお聞かせいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X00819990701/102
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103・八木俊道
○参考人(八木俊道君) 御指摘のように、最終報告におきましては、閣議の議決方法について、「合意形成のプロセスとして多数決の採用も考慮すべきである。」という問題提起が確かにございます。
議論のポイントは、内閣の一体性という角度からは、内閣の決定というものが全員一致で行われるという従来の慣行、これをどう見るかということであったと思います。政策立案のプロセスにおいて意見が合わない、特に省庁間調整がつかないものについては閣議に上がっていかない、それはまずいではないかという御議論については、確かに御議論の根拠となる問題はあるだろうと思います。
一方において、政府、内閣は国会に対して、あるいはまた、ひいて言えば国民全体に対して一体として責任を負うという点からは合議機関の本質として意思決定がしっかり行われなければいけない。とにかくそこは、人間いろんな考え方あるいはまた政策路線によっていろんな考え方の違いはあるわけでありますが、それを消化した上での一体化がなされなければ政治指導にならないではないかということも事実でありますので、その間の調整ということでありますが、この点につきましては結局のところ総理の指導性と、それから例えば関係閣僚会議の活発な運用、それから内閣府、そのもとにおける政策スタッフの充実、これらによって極力政府としての意思決定を、閣議の形式的な多数決云々ではなくて、実質的に厳しい議論の中から、議論を交わして練り上げていって、その結果として一つの強固な結論に至る、こうでなければやはり政府の指導力は出てこないということであります。したがって、この問題はプロセスの面における解決ということなのかなと私は理解したところでございます。
〔理事石渡清元君退席、委員長着席〕
国会に対して連帯して責任を負う内閣の一体性、それは制度上は守られなければならない。しかしながら、合議体としての内閣の、あるいはまたそれに至る政府部内のプロセスにおいては極力活発な政策調整がまさに行われなければいけない、この両面をどう調和するかはいわば運営上の問題として解決をするということではなかろうか。内閣法に書き込むような形の答えを出すという性格のものではないんではなかろうかということを考えた次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X00819990701/103
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104・寺崎昭久
○寺崎昭久君 内閣機能の強化に関して先ほど山口参考人も触れられましたけれども、内閣機能に総合調整能力がないのは制度的な欠陥ではなくて運用の問題であるというようなことからイギリスの例をお話しいただきましたけれども、実は、別のところで山口先生の対談されている記事を読んだことがございます。
その中に、日本には英国のような政治と行政ののりがはっきりしていない、そのことがいろいろ問題だ、行革の問題が提案されたとしても実際にはここののりがはっきりしていないから実効が上がらないんだという趣旨の御発言をされていたと記憶しておりますけれども、のりというのはどういう意味なのか、それから日本においてもしそういうのりをつくる、いいことだ、つくるということになりますと、そのために政治は何をするべきだとお考えなのか、御教示願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X00819990701/104
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105・山口二郎
○参考人(山口二郎君) 政治と行政ののりということは、政治と行政の役割分担ということなのでありますが、英語で公務員のことはパブリックサーバントと申します。日本国憲法でも全体の奉仕者というふうに規定されておりますが、サーバントという言葉は要するに主人がいるからサーバントでありまして、主人が政治であり行政はサーバントであるというのが基本的な関係であります。
したがって、行政改革を行う、組織を再編成する、権限を少なくする、予算を削減するといった官僚機構自身が持っているさまざまな既得権に対してマイナスの方向で変化を加えるというときには、行政機構、官僚は受動的に政治の指示に従うということがのりというか、政治と行政のあるべき関係ということでありまして、日本の場合は、橋本行革の議論の中でも、要するに郵政事業とか公共事業官庁の再編とかという問題が出てきますと、新聞報道によれば、官僚自身がさまざまな手段を使ってそういった論議に対して影響力を行使してきたということが言われておりました。そういうふうに、いわば改革されるべき対象である官僚組織自体がそのような政策に対していわば省益追求の観点から影響力を行使する、それが政治と行政ののりを越える行いであるということでございます。
政治がそういう意味で何をなすべきかという御質問ですが、英語で政策という言葉、ポリシーと申しますが、もう一つ、ウイッシュリストという言葉があります。要するに、政治の側が何でも国民に対してサービスを広げていくということを公約するのをウイッシュリストというわけです。
ウイッシュリストばかりを並べておりますと、結局、行政を肥大化させていく、官僚の権限をふやしていく、既得権をつくり出すということになるわけでありまして、政治家自身が、どこで削減をするか、権限をそぐか、そういったマイナスの方向についてのきちんとした政策、ポリシーを明らかにするということが、何といってもそういう意味での政治の主導性を確立するための条件であろうと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X00819990701/105
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106・寺崎昭久
○寺崎昭久君 山口参考人にもう一点御質問させていただきます。
先ほど行政改革に関して、政府の減量化、小さな政府づくりが目的ではないはずだという視点から御意見を述べられたと思います。
行政改革に関して、これは昨年の二月ごろ、武村正義さんと対談された記事を拝見したわけでありますけれども、その中で、行政改革の関心は最初から省庁半減になってしまっていた、これまでやってきた行政や事業をいかに切り捨てるかといった改革の中身の議論がどこかへ行ってしまった、中央省庁の再編にどういう意味があるのか最後まで理解できなかったと、本日よりはちょっと激しい言葉で御意見を述べられていらっしゃると思います。
実は、きのう、この委員会で国と地方の事務配分と税源規模の乖離に関する議論がございまして、その質問の中で宮澤大蔵大臣が、税源の再配分の必要については感じているけれども、それに着手するのは、日本経済が異常な状態を脱し、安定軌道に乗ったところでやるんだというお答えでございました。私はそれを拝聴しておりまして、余り関係ないんじゃないかなと、やっぱりやらなければいけないことは、いつからやるということは別にしても、検討だとか合意づくりというのはすぐにでもやらなければいけないんじゃないかなということで、少し食い足りないものを感じたわけでございます。
それで、先ほど山口参考人の御意見を聞きながら、国民の不満になぜこたえないのかということで四つのポイントを挙げられましたけれども、それを伺っていて、私の不満と共通点があるとすれば、既得権益を縮減すること、廃止することの困難、族議員の抵抗であるとかあるいは官僚の抵抗であるとか省益追求体質をどう打破するかとか、そういう大変なことがあったので、とりあえずやれそうなものからやるということにとどまったので私は不満を持ったし、山口参考人も不十分な面があったという御指摘をされたのかなということを思いながら伺っておりました。
参考人は、なぜ改革が組織の再編にとどまり、不十分な面を残したとお考えなのか、その辺の分析といいましょうか御意見を伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X00819990701/106
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107・山口二郎
○参考人(山口二郎君) 大変難しい質問です。
改革案自体の検討作業のプロセスを振り返ってみますと、行政改革会議というのは、必ずしも行政の専門家ではない人がたくさん入って、かなり理念的な話を一方で行い、他方で省庁再編の大枠をあそこでつくったわけでありまして、やはり各論レベルで実際に仕事をしている官僚と拮抗するような知識や批判的な観点からの知恵を持った人間がもう少し作業自体に入っていかないと、中身の改革はできないだろうというふうに思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X00819990701/107
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108・寺崎昭久
○寺崎昭久君 八木参考人にお尋ねいたします。
先ほど大学の独立行政法人化というような問題に触れられましたけれども、恐らく検討の過程では、民営化すべきもの、廃止すべきもの、政府の事業あるいは特殊法人に関していろいろ議論が出たのであろうと思います。最終答申にはそれなりの方向が出されているわけでありますけれども、これはやり残したと思われるものがありましたら明示的にお示しいただけませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X00819990701/108
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109・八木俊道
○参考人(八木俊道君) そのお尋ねの趣旨で、実を申しますと十分中身及びそのテンポを詰め切れなかったかなという例として、国立大学の問題と郵政三事業の問題を申し上げたわけでございます。
より広く言えば、例えば官と民との役割分担、これは規制行政改革でございます。それから、国、地方の関係、いわば分権改革でございます。あるいはまた、財政構造、税制構造の問題でありますとか社会保障制度その他の各分野の重要制度改革、これらと機構改革とがうまく連動いたしませんと、実は機構改革の本当の価値と申しますか中身が出てこないということが一つあると存じます。
その点につきましては、たまたま私は行革会議の関係をいわばサポートしたにとどまったわけでございますが、折に触れてそうしたことを申し上げた次第でありまして、いわば構造改革、日米構造協議などでも時々出てまいります。かなり、一つ一つのテーマ、いわば規制緩和の玉はある程度中身がある、しかしそれが全部一挙にそろわないとなかなか国際社会で評価してくれないというような問題がございます、これはたまたま外国からの視点ということでございますが。
改革の内側におりまして改革を進める側でありましても、先ほど申し上げた総合交通の問題などは、やはり事業体系とか財源配分とか、全体のシステムづくりの問題とうまく連動いたしませんと本当の効果が出てこない。
そうした問題は多々あるわけでありまして、どうか二十一世紀の日本、このための構造改革ということであれば、関連する隣接領域の改革問題もぜひ世の中一般の論議で深めていただきたいな、そんな感じを持っているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X00819990701/109
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110・寺崎昭久
○寺崎昭久君 そうしたやり残した部分と行政改革会議の関係というのは、今後どうなるんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X00819990701/110
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111・八木俊道
○参考人(八木俊道君) 行政改革会議は、設置根拠が昨年の六月三十日という政令でございました。その後に中央省庁等改革基本法、こういうことでございまして、これを受けて十七本の法案が現在御審議をいただいていると承っておりますので、これはむしろ政府全体の責任として取り組んでいく。
これについて、国会やまた各党がどのような御見解を提起されるか。むしろ、情報公開の中で国民一般の、あるいは社会経済全体のこの問題についての御理解と、また意見がどのように整理されていくか、いわば日本の全体的な取り組みの中で解決されるべき課題ではないのか、そうした認識を持ちまして息を詰めて御論議の帰趨を拝見しているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X00819990701/111
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112・寺崎昭久
○寺崎昭久君 中条参考人にお尋ねいたします。
先ほど、行政改革はこれから何歩も進めなければいけないという御意見でございましたが、幾つか具体的な例を挙げて御説明いただいた中にエージェンシー化の問題がございました。不必要な組織、民営化すべきもの、独立法人にするべきもの、いろいろあるんだけれども、どうも弱いところに目が向いてしまったのではないかというような御意見でございました。
運輸関係で結構でございますので、もう一度具体的にこれとこれとこれはエージェンシー化できるのではないかという御意見を承れればありがたいのですが。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X00819990701/112
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113・中条潮
○参考人(中条潮君) エージェンシー化という問題といいますか、エージェンシー化の対象とすべき部分というのはマーケットで収入を得ることができない分野、これはエージェンシー化でとどめるしか仕方がない、これは民営化することができない分野であります。
そういうことで言いますと、先ほど挙げました例、例えば民間航空の安全のいろんな検査をしたりします。そういった分野については検査をしたり、それをコントロールしたり、あるいは航空会社を監督したり、安全上の点から監督する、そういうルーチンの部分というのはこれはエージェンシーという形でやることができる。先ほど申し上げましたように、これはイギリスやオーストラリアやニュージーランド等では既にもうエージェンシーの形になっております。そのほかに民営化が十分可能な分野、例えば管制の業務ですね。それから空港であります。それから港湾であります。それから道路公団を含めた高速道路の関係の組織、これは十分にマーケットから収入を確保することができる分野でありますから民営化が可能である。もちろん、郵政三事業は当然であります。そのほかにも国立大学、これも当然そうであります。
ただし、申し上げておきたいことは、民営化というのはすべて高島屋や三越のようになるということでは決してないということであります。民間組織であっても何らかの形での市場の介入ということは当然これは課せられる場合もあり得る、そういう範囲での民営化という意味でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X00819990701/113
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114・寺崎昭久
○寺崎昭久君 ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X00819990701/114
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115・弘友和夫
○弘友和夫君 公明党の弘友でございます。
参考人の諸先生には、本当にお忙しい中、また急な御連絡で無理やり日程もとっていただきまして、ありがとうございました。
私は、持ち時間が十五分でございますので、簡潔にお尋ねしたいと思うんです。
きょう午前中は地方分権、今から中央省庁ということで、衆議院、参議院でこの論議もずっと積み重ねてきたんですけれども、これはここ数年来といいますか、もっと前から日本のシステム、政治も行政もあらゆるシステムを変えないと制度疲労を起こしているというような観点から行政も大幅に変えていこうということでされたと思うんです。ただ、この中央省庁の再編にしても大変大きな改革だ、明治十六年以来のこれだけの改革だという部分も確かにあります。
ところが、では中身は本当にそんなに変わるんだろうかと、そういうものもあるわけです。地方分権の方は機関委任事務の廃止だとか多少見える部分がありますけれども、果たして中央省庁の再編によって本当に変わるんだろうかなという危惧もあります。
いずれにいたしましても、これが大きな何というか改革への第一歩だという認識はほとんどの方がお持ちじゃないかなと。そしてまた、組織に揺さぶりをかけるという議論がありますけれども、そういう意味では確かに、今回大きな改革だろうというふうに思いますので、そういう観点からお一人お一人、八木参考人に行革会議で意見をずっと取りまとめられた御苦労というか、本当に敬意を表するわけでございますけれども、取りまとめられたわけでございますので非常に評価を先ほど来されております。
最後に、行政評価制度の本格的導入というのが今後必要だという御意見がございましたけれども、そういうことも含めて、私、やはり行政評価制度というのはきちっとした形で法律もつくってやらなければならないと思っておりますけれども、そういう点が一つと、それから今もお話がありましたけれども、いろいろ不十分な面があったと思われていると思いますが、ポイントとして、今後この法律が例えば通って、その後どういうことを重点的にやった方がいいかということ、これはそれぞれの参考人に後でお伺いしますけれども、まず八木参考人にお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X00819990701/115
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116・八木俊道
○参考人(八木俊道君) 行政評価制度の問題は、実を申しますと、今回の改革構想の中ではかなり重要なものではないかなと考えております。
と申しますのは、一九六〇年代以降の欧米の行政動向も、かつてマクナマラ国防長官のPPBの問題提起が米連邦政府であった、これがどうももう一つうまくいかなかったというようなことがございます。あるいはまた、その後、目標による管理、特に計画技術の高度化といったことでいろんな取り組みが日本とかフランスとかあったわけでございますが、これももう一つ決め手がつかみ得ない。
価値観が多様化し、社会経済が複雑化した今日の段階においては、結果の評価から改善方策を探っていくということが結局かなり実際的なアプローチではなかろうか。院におかれましても決算審査重視といった御議論があることは承っておりますが、行政サイドにおきましてもそうした問題意識がかなり強い状況になってきておる、その反映であると。
ただ問題は、やはり評価の技術手段とか評価の手続とか評価の主体とか、これがどうももう一つまだ決め手がつかみ切れていないわけでありまして、しばらく試行的にいろいろな経験を積み上げていって指標とか基準を積み重ねていくというプロセスを経て、そして一つのしっかりとした行政評価に関する基本的な手順、方式を決めた法制の企画を行うべきではないか、そんな感じがいたしております。
大変重要な問題であり、行政のパフォーマンスをチェックする意味でのまさにキーポイントであるというふうに考えます。
とりあえず、行政評価について申し上げました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X00819990701/116
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117・弘友和夫
○弘友和夫君 ありがとうございました。
行政評価をもっと論議したい、お話もお聞きしたいんですけれども、ちょっと時間がございませんので、次に移らせていただきたいと思います。
山口参考人にお尋ねしますけれども、先ほど来、要するに今回の行革、中央省庁再編にしても問題設定が間違っていると。要するに、行政のスリム化だとか小さな政府をつくる、それを目指していくこと自体が間違いだという御意見でございました。私自身もそのように思うんです。
日本の場合は、焦点になりがちなのは機構だとかそれから体制論だとか、そういうものに重点が置かれて、確かにそれも変えていかないといけないかもしれないけれども、何のためにやるのかという部分に考えがなかなか及ばない。だから、統合しても一緒じゃないかということにもなる。だから、何のためにやるのかという、むしろアメリカなんかでは、その実質的な行政のサービスの成果がどうなるのか、成果志向だとか、それから顧客志向というんですか、サービスする、そういう意識があると思うんです。山口参考人には、政治改革のときからいろいろと御意見もお伺いしながらやりました。政治改革のときも、選挙制度を変えて、今何かそれだけ変えて政治改革は何となくムードが、実際は次が大事なんですけれどもという部分がございます。
そういう意味で、今回の改正がそういう点に行っていないんじゃないか。今回、これが通りまして、次の段階で何が必要なのかと。今の問題もいろいろあるかもしれない、これは審査の過程ですけれども多分成立すると思いますので、では次に何の手を打っていったらいいかということをお尋ねしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X00819990701/117
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118・山口二郎
○参考人(山口二郎君) 政策の中身に関する改革ということになると思いますが、結局、国民、納税者の取捨選択というものがどういう手続なりどういう政治の舞台で可能になるかということを考えてみますと、欧米でも最近は、行政改革なり行政の能率化ということについては分権化の流れと一体になっているというふうに私は見ております。要するに、エージェンシーというのもあれは一種の分権化でありまして、中央行政省庁からある種の業務部門をいわば自立、分権化させていくという話でありますし、もちろん地方分権を進めて、自治体というもう少し住民にとって見えやすい政治の単位の中で政策を選択、あるいは行政サービスの結果を評価するということが必要になっていくんだろうと思います。
とりわけ、私は参議院という院は、そういうような意味で行政に対する監視機能、チェック機能というものを衆議院以上に発揮していただいて、まさに財政面での分権化、あるいはエージェンシーを通した中央省庁からの業務の分権化といったようなことについてさらに議論をしていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X00819990701/118
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119・弘友和夫
○弘友和夫君 ありがとうございました。
では、右崎参考人に伺います。
今の山口参考人、また中条参考人にしても、分権化、エージェンシー化、民間に移せるものは移そうという御意見でございますけれども、先ほどの御意見では、内閣総理大臣に膨大な権限が与えられている。これは、我々の認識としては、今までは行政が日本の国の将来を決める政策まで決定してやってきたということに弊害があるのであり、その方向性というのは政治家が決めるべきだということで内閣機能の強化ということになったと思うんです。
それともう一つは、独立行政法人化についても反対だ、民主化という御意見でしたけれども、ではどういう形がいいのか。
簡単で結構ですので、ちょっと御意見をお聞かせください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X00819990701/119
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120・右崎正博
○参考人(右崎正博君) 非常に抽象的な形で申し上げたので十分に御理解いただけなかったと思いますが、私が考えているのは、このような法律が導入されることによって、国会と内閣との関係を初めとする三権の均衡が大きく崩れてしまう可能性がある、チェックとバランスの関係がうまく働かなくなってしまうおそれがあるのではないかという点です。ですから、その均衡を失わせることによって一番大きなしわ寄せを受けるのは、多分国民の権利保障という点になるであろうというふうに考えています。
確かに今、制度上問題があるからこういう改革の課題が出てくるということなんですが、今でも総理大臣には相当な権限が与えられているわけですから、むしろ、その運用の見直しというような点を十分に評価、検討されたのかどうか、その点でなお疑問が残らざるを得ないというふうに考えます。
それから、独立行政法人の件ですが、すべてがだめだと言っているつもりはありません。もう少し、一つ一つの機関について、それが担っている役割とか事業の分野に即したきめ細かな議論がなされる必要があるのではないかということです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X00819990701/120
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121・弘友和夫
○弘友和夫君 どうもありがとうございました。
中条参考人にお尋ねしたいんですけれども、先ほど来、統合じゃなくて細分化だと言われる。お聞きして、まさしくそうかなという部分、それは先ほど来お話ししております、何のために行政改革をするかということに照らし合わせると、やはり機能別というか、また見えやすいというか、そういう部分が必要なんじゃないか。
中条参考人は、規制緩和についてずっと各役所とも闘っておられた部分もございましょうし、私は、この行政改革の一方で情報公開と規制緩和というのは全く両輪で必要になってくると思いますけれども、まず、規制緩和、また行政評価のことについてどうとらえられているかをお尋ねしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X00819990701/121
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122・中条潮
○参考人(中条潮君) 規制緩和については話したいことがたくさんありますけれども、時間の関係がございますので、今、一つだけ申し上げておきますと、まさに規制の改革、規制緩和と言うよりも規制改革と言った方がいいと思いますが、規制改革ということと行政改革、これは大きな構造改革の中の両輪であると私は考えます。
ただ、残念ながら、規制緩和は私の判断では全然進んでおりません。三千項目の規制緩和推進計画というものが政府から出されておりますけれども、その内容というのは、規制緩和について書いてあるだけでありまして、いつどういう形でこの規制を撤廃するということについて書いてあるものは非常に少ない状態にあります。
しかも、それぞれの規制官庁は、裁量行政のもとで規制緩和が行われた後もさまざまな形で事業者をコントロールしようということを考えております。そういう中では、むしろ政府による規制緩和と規制改革ということには私はもう限界があると感じております。
先ほど来、総理のリーダーシップということについていろいろ議論が出ておりますけれども、私は、総理のリーダーシップということについて、皆さんがそれぞれ考えているリーダーシップ、その果たしてほしい方向というのは全然違うのではないか。明らかに、私が総理に果たしていただきたいリーダーシップと、それから運輸省が総理に果たしていただきたいと思っているリーダーシップは正反対の方向にあります。皆さんは、玉虫色にリーダーシップを発揮していただきたいと考えておられるのではないだろうか。私は、むしろ今、総理が発揮しておられる力こそがリーダーシップだと思っております。それが政治の中の民主制度の中で発揮しておられるところのリーダーシップなんであろうと思います。でありますから、それは限界があります。
私は、もうそういったことには期待せずに、それぞれの国民あるいはそれぞれの事業者がみずから規制に挑戦していく、まさに新規航空会社のスカイマーク航空のように、既存の概念あるいは既存の制度に対して挑戦していって、それを変えていく、壊していく、そういう力の方に期待したいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X00819990701/122
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123・弘友和夫
○弘友和夫君 行政の評価は。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X00819990701/123
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124・中条潮
○参考人(中条潮君) 行政の評価という点では、これも先ほど来御意見がありますように、行政評価というのは大変難しいわけでありまして、そういうことをなるべくしないで済むシステムにしていくべきだというのが私の考えです。だから、そういう点で、行政評価をやらなくてもマーケットで評価ができるものについてはなるべくマーケットに任せていく、それが私が民営化ということを主張する理由の一つであります。
個々のどれについてなぜ民営化しなければいけないかということについては、時間がありませんので申し上げませんけれども、幾らでもお話をする知識はございます。
以上です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X00819990701/124
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125・弘友和夫
○弘友和夫君 どうもありがとうございました。
終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X00819990701/125
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126・吉川春子
○吉川春子君 日本共産党の吉川春子と申します。
四人の参考人の皆様には大変貴重な御意見を伺いまして、本当にありがとうございます。
まず、右崎参考人にお伺いいたします。
三権分立の原則は、基本的人権の保障のための制度で、近代憲法の大原則である、我が国の憲法も例外ではない、こういう御指摘がありまして、行政機能の強化は、法治主義の後退、あるいは相対的に国会の機能の低下につながる、こういうおそれがあるというふうに言われまして、私もその危惧を持っているわけでございます。
それで、経済財政諮問会議について言及されましたけれども、これは民間人四人を含む十人の少数者に、日本の経済財政計画、それから予算編成の原則の決定をゆだねてしまうものですけれども、私はこれは、閣議を形骸化することにもつながり、内閣が連帯して国会に責任を負う、この原則、憲法に抵触するおそれはないのかということを考えるのですが、まず内閣自身の中に総理大臣の権限が余りにも肥大化することに対するチェックということも必要なのではなかろうか、私はそのように思うのですが、どのようにお考えでしょうか。
また、首相がある意味では恣意的に選ぶことができる民間人、有識者は、官僚のような政治的中立性を必ずしも要請されませんし、また選挙で国民の審判を受けるということもありません。こうした人物に重要な国の基本政策を左右するそのポストを与えるような制度は、国民主権の原則からいっていかがなものかと思いますが、この点について参考人の御意見を伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X00819990701/126
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127・右崎正博
○参考人(右崎正博君) 現行の憲法の上では、行政権は内閣に属しています。そして、その内閣は内閣総理大臣とその他の国務大臣によって組織される合議体です。合議体である内閣が行政の運営について最終的に責任を負うという、こういう仕組みになっているわけですね。その内閣が行政権の行使について国会に対して連帯して責任を負う、国会に対する責任を通して国民に責任を負うという、こういう形をとるわけです。
例えば、経済財政諮問会議のように、閣議にかける前に恐らく実質的な決定はそこでなされるということになるであろうと思います。そうなりますと、閣議での決定というのは非常に形骸化されるということになりますから、閣議で形式的な決定権が留保されている以上、憲法に直ちに違反するということになるとは思われませんが、憲法の趣旨を生かしていくという方向にはならないのではないかというふうに思います。
その経済財政諮問会議が民間人の有識者を含めた関係大臣とごく少数の者によって決定される。確かに、意思決定のシステムとしては非常に集中されているわけですから、能率的に行うことができると思いますが、民主的なコントロールという点では多分に問題が残るのではないか。
国会が恐らく事後的にチェックをするということになろうかと思いますが、私の考えでは、国会がもう少し機能を強化して、政策形成そのものの役割を分担し合えるような形になっていくべきではないかというふうに考えてはいるんですが、どうもこの法律全体が目指しているところはそういう方向とは違うように思われます。
例えば、この法律案ができてくる過程一つとってみましても、行政改革会議という諮問機関で議論されて、法律案が内閣の手によって作成されて提出されて、国会の役割はそれについてチェックすることだけしか期待されない。
行政評価制度の話も先ほどから問題になっていますが、行政評価制度を導入するについて、官庁である行政機関の側がそれを工夫するというのは、もともと評価の制度にはなり得ないのではないかと思うんです。ですから、むしろ国会が主導権を発揮してそういう制度をつくっていくようなことをぜひお考えいただきたいというふうに思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X00819990701/127
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128・吉川春子
○吉川春子君 先ほど、財政諮問会議の問題に触れて右崎参考人は、国会は国権の最高機関であり唯一の立法機関であると、この憲法四十一条に非常に触れることになりかねないというお話をされまして、国会の機能の低下ということに触れながら国会の機能の強化ということをお述べになったと思うんです。
今の答弁の中でも一部述べられましたが、今、現実には、この中央省庁と地方分権の法案を除いても百二十本以上の閣法がこの通常国会に出てきておりまして、あっという間に審議して通されちゃう。議員立法の方はなかなか審議の俎上にのらない、私も何本か出しているんですけれども。そういう国会が、立法府の意味なんですけれども、やっぱり閣法、内閣がつくる法律を通してやる機関になっちゃって、みずからが提案する機関というには余りにも実態はかけ離れているという現状があるわけです。
そして、今度のこういう形で、さらに立法府としての機能が低下するおそれを指摘されるんですが、それでは、国会の機能を国権の最高機関にふさわしいように強化するという点でいえば、何か御意見がありましたらお聞かせいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X00819990701/128
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129・右崎正博
○参考人(右崎正博君) 本日の委員会での審議は行政改革を課題とする中央省庁等の改革関連法の問題ですので、国会改革の問題が直接の課題にはなっていないと思いますが、実は先ごろ、学術会議の公法学研究連絡委員会というところが福島大学でシンポジウムを開きまして、国会改革というテーマを掲げてシンポジウムを行いました。
さまざまな課題が取り上げられましたが、一つには代表制のあり方、選挙制度との関係、それから国会の立法過程の実質を検討してみる、あるいは国会の情報公開のあり方を検討してみる、このようなテーマでシンポジウムが行われました。議論の到達点は、国会の役割がもっともっと改善されて強化される必要があるのではないか、そうされることによって民主主義がより拡充されるし、国民の人権保障、権利保障の点でもより確実な目標が達成できるということなんです。
時間がありませんから非常に大ざっぱに申し上げれば、例えば、行政府の役割を三分の一ぐらいに減らして、その三分の一ぐらいを国会の権限として持つ。スタッフを拡充すること、それから予算をふやすこと。さまざまな改革の施策があり得ると思いますが、今日のような権力間の均衡を前提に置きますと、国会に大きな役割を期待しない限り現状を打開できないのではないかというふうに痛切に考えています。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X00819990701/129
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130・吉川春子
○吉川春子君 山口参考人に内閣機能の強化について続いて質問したいんですけれども、この「生活経済政策」の中で内閣機能強化論は全く的外れだったとおっしゃって、現在でも総理大臣が大臣を任免する権限があるじゃないかと。さっきもおっしゃいましたけれども、定期人事異動のごとく閣僚の入れかえをするということで、内閣の運用自体が内閣の弱体を生んでいる、こういう御指摘がありましたけれども、今回の内閣機能の強化のねらいはどこにあるというふうに参考人はごらんになっておられるでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X00819990701/130
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131・山口二郎
○参考人(山口二郎君) 行革会議の議論を振り返っておりますと、やはり政治主導ということが第一の理念として掲げられておりましたので、やはり総理大臣を中心とする選ばれた、要するに国会議員で国政を指導する指導者たちのリーダーシップを強化する、そのためのスタッフの強化。現状でも内閣の内政審議室、外政審議室等スタッフがありますが、これは大蔵省その他出向の方々が枢要な地位を占めて、内政審議室長は大蔵省の次官に次ぐポストといったような運用がされている。それではやっぱり余り意味がないということで、真に与党といいましょうか、政府のリーダーの手足になれるようなスタッフをつくるということだろうと理解しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X00819990701/131
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132・吉川春子
○吉川春子君 もう一つ山口参考人にお伺いしたいのですが、先ほどお述べになりました中で、日本は決して大きな政府ではないんだとおっしゃいました。租税、社会保険料の負担率も欧米に比べて低いし、日本は重税国家と言っているけれどもそういうことはないんだと。それから、公務員の数も千人中何人かという数は日本は決して多くなくて、むしろ少ないという御指摘があったと思います。
同時に、今回の行革で公務員を二五%減らすんだということがもう繰り返し国会の議論の中で言われているわけですけれども、諸外国に比べても公務員の数が少ない日本においてこれがもし本当に実行されてしまったら、私は国民生活に重大な影響があると思うのですが、その点について参考人の御意見を伺わせていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X00819990701/132
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133・山口二郎
○参考人(山口二郎君) その点は先生と全く同じ危惧を持っておりまして、やみくもに公務員の数を減らすということによって国民にどういう不便が及ぶかということをきちんと検証する必要があるというふうに思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X00819990701/133
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134・吉川春子
○吉川春子君 八木参考人にお伺いいたします。
今回の行政機関の再編は、戦後期行政制度の全般的な見直しの一環で、その端緒としての意義を持つものだとお述べになっておられまして、これは「法学教室」から引用しておりますけれども、なぜ一府十二省庁なのか。中央省庁の数を減らすことが国民生活をどのように改善していくのか。その点について、もう時間が少なくなりましたけれども、恐縮ですけれども、どういう改革につながるのかということを端的にお述べいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X00819990701/134
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135・八木俊道
○参考人(八木俊道君) 現代組織論の立場で申しますと、合議体機関というものは、十人を超えるとサイレントメンバーがふえてしまう、真のリーダーシップをその合議機関は果たし得ないのではないか、この辺が一つの原点でございます。
昔、陪審制度を撮ったアメリカ映画がございましたが、ヘンリー・フォンダという大変立派な役者さんがおやりになった。あの辺が現代組織論の示唆するところかなと。大きな価値の選択を政治サイドで打ち出す場合にはコンパクトな合議機関でなければならないということでございます。国の命運を総合的に判断する合議体のマシンというものはせいぜい十人ちょっとかなということでございます。そのことによって政治指導が総合的な目配りのもとで行われる、この辺に着目したのが行革会議報告の趣旨でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X00819990701/135
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136・吉川春子
○吉川春子君 終わります。
どうもありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X00819990701/136
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137・日下部禧代子
○日下部禧代子君 社会民主党・護憲連合の日下部禧代子でございます。
きょうは四人の参考人の皆様、本当に大変示唆に富む御意見をいただきまして、ありがとうございました。
さて、四人の参考人の御意見をいただいている中で一つ私が再確認させていただきましたのは、行政改革というのは、キーワードは行政のスリム化ということが言われておりますけれども、ただ単に省庁あるいは公務員の数を減らすということにとどまってはいけないということ、これを再確認させていただいたわけでございます。
ところで、中央省庁の改革というのは、中央とのパイプ、そういう言葉に象徴されるいわゆる利権と制度の構造、ストラクチャーを変えるというところに大きな目的が一つ存在しているのではないかというふうに私は理解しております。それは当然、国と地方との新たな責任、事務、それから権限、機能、再分配のシステムをいかに構築するか、そのことの展望なしに中央省庁の改革をするのであってはほとんど意味がないのではないかというぐらいに私は思っております。したがいまして、当然、中央省庁の改革ということは、地方分権改革、そしてさらには政治改革ということにつながっていくべきものではないかというふうに思います。
そこで、まず山口参考人にお聞きしたいのでございますが、いわゆる裁量行政あるいは補助金行政、さらに縦割り行政というのを入れてもよろしいかと思いますが、そういう今の行政システムのいわゆる問題点と言われているもの、そしてそれは同時にまた現状の行政システムの根幹でもある。そのことが政官の癒着、そしてまたいわゆる汚職スキャンダルの温床というものにも十分になり得ている。そこにメスを加えていく、そのための改革にもなるべきだと私は思っております。
そういう観点で、今、行政と政治とのあり方でさまざまな問題点がございます。短い時間ではございますけれども、その問題点を指摘いただきながら、あるべき姿というもののイメージを私たちはしたいと思いますので、御意見を賜りたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X00819990701/137
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138・山口二郎
○参考人(山口二郎君) 本来、行政改革と地方分権は不可分一体のものだというふうに思います。
私は先ほど政策における需要供給のミスマッチということを申し上げましたが、実は補助金制度というものがその根源にあるわけであります。言うまでもなく、補助金適正化法その他によって補助金の使途やその手続について極めて厳格な縛りがあって、地域の政策に対するニーズというものと、それから予算のサプライの側に非常に大きなずれがある。これはさまざまな例がございます。
したがって、効率的な行政あるいは国民の需要に見合った行政を実現していくためには、補助金の整理統合あるいは一般財源化、地方分権推進委員会五次勧告で検討されかかったような課題を本来さらに強力に推進していくことこそ行政改革に直結する課題であろうと思われます。さらに踏み込んで申しますと、要するに、さまざまな陳情が来る、あるいは国会議員の先生方が農水や建設その他に行って地元のために奔走する、それは現状の仕組みを前提とすればしようがない現実ではありますが、本来、国会議員の先生方が国政全体のことを考えて長期的に政策を論じるという意味からいっても、中央と地方の役割分担ということをさらに徹底していかないと、二十一世紀の国政のシステムというものが十分能力を発揮できないというふうに思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X00819990701/138
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139・日下部禧代子
○日下部禧代子君 今の問題につきまして、政治、行政のあるべき姿というものをもう少し突っ込んで御意見いただきたいのでございますが。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X00819990701/139
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140・山口二郎
○参考人(山口二郎君) 結局、今回行政改革で言われております政策の評価ですとか、あるいは透明化ということについても、現に都道府県あるいは市町村のレベルに行けば既に実践をしている事例がたくさんあるわけでございまして、要するに首都における巨大な中央省庁の中で参加とか公開といっても、それには当然限度があるということであります。
さらに、国民自身の取捨選択によって能率的に政策を実施していくという面からいっても、なるべく身近な自治体政府において政策を決定することが望ましいことは言うまでもないわけでありまして、いわばそのためのお金の裏づけについて踏み込んだ改革を行うことが、私は行財政改革の中の中心的課題になるというふうに思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X00819990701/140
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141・日下部禧代子
○日下部禧代子君 今のいわゆる政治と行政のシステムの問題につきまして、八木先生、いかがでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X00819990701/141
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142・八木俊道
○参考人(八木俊道君) この最終報告におきましては、実を申しますと公務員制度の問題は余り触れておりません。そしてまた、予算編成その他、税財政関係の問題、あるいはまた国と地方との関係につきましても十分触れていないわけでございますけれども、そうした全体的な改革が今後進んでまいりますと、おのずからあるべき政治と行政との関係というものが浮かび上がってくると存じます。
先ほど来お尋ねのございます内閣機能の強化によって政治が担うべき基本的な重要政策決定というものの範囲は何か。他方、制定法のもとにおける明確な基準と手続によるいわば公正公平な行政実務執行の世界は、これは専門行政官の主として担うべき世界であろうと思います。
問題は、一番の難しいところは、霞が関に集中いたします各種の情報を積み上げて、政策選択のプログラムをつくっていく、選択肢をつくっていくという作業のあたりであります。このあたりが、実を申しますと政治と行政とのぎりぎりの接点かなという感じがいたします。
これについては各国いろんな工夫がございますけれども、かなり個性的な取り組みがございまして、例えばフランスのごときは大変官僚の力が強い。イギリスの場合はロイヤルコミッティーと申しまして、諮問機関の活用がかなり活発である。それに対しまして、アメリカの場合は、政治任用職をかなり活用する。幹部公務員九千人のうちで大体一〇ないし一五%程度は政治任用職でいこうではないか、これがカーター政権の時代のアメリカの公務員制度改革でございましたけれども、各国それぞれ個性がございます。
日本の場合はたまたま明治以来の国の運営におきまして、追いつき型近代化という志向性でありましたがゆえに、かなり官僚機構、終身雇用の公務員サイドの影響力が強かったということが目下論ぜられているわけでありまして、一面における真実ではなかろうか。ただ、他面におきましては、現代行政は大変高度、複雑でございます。高度な専門的知識と経験、あるいはまた技術的なノウハウを持って現代の行政を運営していくという観点からは、生涯雇用職である専門行政官の活用もまた十分に御留意をいただくべきものではなかろうか。問題は、そのプロセスのどのような局面においてどのようなパワーがリーダーシップをとるか、あるいはまた主たる担い手となるか、こういうことであろうかと。内閣機能の強化はそのための大いなる実験ではなかろうかということでございます。
企画と実施ということでその一つの整理をいたそうとしたわけでございますが、例えて申しますと主税局と国税庁、年金局、保険局と社会保険庁と、物差しのはっきりしている世界では割合にこの企画と実施の分離がうまくいくし、またそうでなければならないわけでございますが、物差しが必ずしも明確でない、かつ内外環境、経済社会構造の変転によってその物差しのあり方が動いていくという世界、ここはなかなか難しいところでございまして、衆知を集めてこの辺を御議論いただくことが日本の将来の国づくりの礎になるのではなかろうか。
答えにならないことを申し上げて恐縮でございますが、考えていることを申し上げた次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X00819990701/142
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143・日下部禧代子
○日下部禧代子君 今、八木先生は内閣機能の強化ということについてお触れになったわけでございますが、山口先生はイギリスに御滞在なさっていらっしゃいましたし、ブレア政権誕生のときにもいらっしゃったと思いますけれども、そういう御経験を通されましても、今回の省庁再編はかなりイギリスの内閣制度を参考にしたようなところがあるように私は見受けております。その点も含めまして、政治家のリーダーシップのあり方、そして内閣機能の強化を含めました今回の内閣システムの改革についての御意見を承りたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X00819990701/143
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144・山口二郎
○参考人(山口二郎君) 内閣制度の強化と連動して、今度の副大臣制や政府委員の廃止等も含めて、全体として統治システムをイギリス型の要素を取り入れるということだろうと理解をしております。
特に、イギリスと対比して感じますことは、先ほども申しましたように、政党の側の運用する責任能力というものがここで改めて問われていくということだろうと思います。結局、今ブレア労働党政権が大きなリーダーシップを発揮できているのも、選挙の際に非常に明確な公約、マニフェストというものを示し、国民がそれを選んだという正当性があるからこそ、政権発足早々から次々と与党の政治家主導の立法作業が可能になっていくということであります。また、先ほども申しましたように、内閣というものが与党のオールスターによる構成であって、与党の意思決定イコール内閣の意思決定という体制が整っているということも重要であります。
そういう意味で、今後は、制度を運用する各政党において国民に明確な選択肢を示し、英語でマンデートと申しますが、国民の委任を受ける、その上で与党の総力を結集して内閣を構成する、さらには内閣のスタッフには官僚の出向ではなくて適材適所の民間人等を配置するということで国政を運営していくことが必要だろうと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X00819990701/144
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145・日下部禧代子
○日下部禧代子君 大変失礼な質問になるかもわかりませんが、右崎先生、中条先生、時間がございませんのでこういう質問になってしまいますが、大学の先生でいらっしゃいますので、本法案の採点をなさいますと何点ぐらいをくださるのでございましょうか。そして、その理由をもしお述べいただけましたら、今までの御意見の中でその理由を私は理解はしておりますけれども、新たにつけ加えるといたしましたらどういうことでございましょうか。中条先生から。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X00819990701/145
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146・中条潮
○参考人(中条潮君) 前期試験でありまして、三十点をつけておきます。後期で頑張っていただきたいというのが私の意見であります。
申し上げたいことは先ほど先生のおっしゃったことと同じでありまして、私は利権の構造というのは、そういった利権を生むような体質になっているからであると思います。政府が決めるから利権は発生するのであります。政府が決めないでマーケットが決めれば利権は発生しません。ですから、そういう点でなるべくマーケットに任せていくということが構造を改革していく一番の重要な点であります。
以上です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X00819990701/146
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147・右崎正博
○参考人(右崎正博君) 私は、点数は非常につけがたいのでその点は留保させていただきたいのですが、要するにこの改革が目指しているのはだれのためなんだろうかという、そのことを痛切に感じます。この改革が全体として国民にとってプラスになるというふうには評価しがたいというふうに思います。
それと、腐敗防止ということであれば腐敗行為防止法が制定されるべきですし、公務員倫理法がきちっと整備されるべきだと思います。ですから、腐敗防止がこの省庁再編成の主たる目的であるというふうには理解できません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X00819990701/147
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148・日下部禧代子
○日下部禧代子君 ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X00819990701/148
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149・星野朋市
○星野朋市君 自由党の星野でございます。
参考人の先生方、大変御苦労さまでございます。
私は、きょうの議論を聞いておりまして、今、山口先生がちょっと触れられましたけれども、いわゆる副大臣制度、この問題について余りきょう御議論がなかったように思っておるんです。これはまだ法案が提出されておりませんけれども、自民党、民主党、公明党、自由党によって近々出される予定でございます。
中央省庁がこういう形で再編され、ただ内容から言うと決してスリム化されていない、統合されたという形だけなんです。だけれども、この副大臣制の導入というのは、今までの日本の歴史の中で明治以来初めて導入されようとしている制度でありまして、特に今度画期的なところは、いわゆる党首間のディベート、クエスチョンタイムというのが設けられたこと、それから副大臣、政務官、それから政府委員は決して廃止されるわけではございませんで、これまた政府委員だけのそういう場を別に設けようということでございますから、そこではまた細かい数字的なものを入れて議論されるというようなことになるかと思われます。
私は、きょう参考人の先生方皆様にお聞きしたいんですけれども、この副大臣制度についてやや、やゆ的な見方がされておるんです。お役所それから役人は初めいろいろな抵抗を示すんだけれども、どこか何かうまくいくとすると、みんな我先にとそちらの方に向く傾向があるやに私は聞いております。
そういう形で今度副大臣制度というのをとると、非常に意欲的な能力のある副大臣というのが行った省庁が非常にうまく回転を始めると、ほかの省庁は一斉にそういう方に向くのではないか、ここで政治家の優劣というのははっきり出てくるわけですから、そう思っております。
そういうことを含めまして、八木先生から順次、今度の問題についてどうお考えになっているか、それからこの先これはうまくいくのかどうか、御見解がありましたら述べていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X00819990701/149
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150・八木俊道
○参考人(八木俊道君) 二つほどございます。
第一点は、政治の機能というものが今後質的にもまた現実の政策運営においても強まるべき、そういう環境にあるということはこれは事実であると思います。
国際情勢はなかなか難しい段階でございます。国内的にも諸懸案があり、制度、政策の基本にわたって論議が深められなければならない、この局面にあることは間違いないところでございまして、その意味では、政治の指導性がより質的に高い、強いものであるべきだという動向については理解できるところでございますが、問題は、そうした政治あるいはまた恐縮でございますが政党というものの質的な力がどうであるのかということであろうと思います。
各国いろんな苦労をされておられる。独自にシンクタンクをつくる、あるいはまた政治家の資質を高める、いろんな努力があるわけでございますが、翻って、我が国の状態というのはどういうことであるかということで、まさにこれからの問題である。世上よく言われる霞が関依存ということも、実は一面においては政党サイドにおける政策立案機能のエアポケットに生じた一つの現象でもあるのではないかという感じを個人的には持っているということを申し上げさせていただきたいと思います。政策立案についてはそうした印象を持つわけでございます。
第二に、今度は具体的な行政の実務的執行、こういうことになりますと、これは議会で制定された法律の公正公平な執行、しかもこれは高いレベルの専門能力の裏づけを持った執行、こういうことでなければならないと思うわけでありまして、この点につきましては、専門的な行政官を育て、その力を十分に引き出すことによって、法律のもとの行政でありますからその機能発揮を期待したい。政と官の役割分担と相互の責任の明確化、こういうことの中に日本の新しい時代の真のあり方があるのではないか、個人的にはそんなことを考えている次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X00819990701/150
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151・山口二郎
○参考人(山口二郎君) 私も、副大臣制度は大変意義のある改革だというふうに思っております。やはり政策立案における政治主導というものを確保するためには大臣一人ではなかなか指導力を発揮できないわけでありまして、大臣の手足になって動く政治的なリーダー層がふえるということは、とりわけ再編されて大きくなった省庁においては必要なことだと思います。
幾つかその成功のための条件があると思いますが、何より重要なことは、いわゆる裁量行政というものをなくして、政治主導というものが正しい意味で政策の多極的な方向づけの面で発揮されるような舞台を整えるということがこの制度の成功の条件だと思います。
それからもう一つ、要するに政府委員なしの与野党間のディベートということになってまいりますと、これは政治家個人個人の力量が問われていくという場面になりますので、そういう面から日本の政党においても政治家を厳しく評価し、また政策能力の研さんに励むというような方向での改革を期待できるだろうというふうに思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X00819990701/151
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152・右崎正博
○参考人(右崎正博君) 私は、ちょっと違った角度から物を見ているんですが、副大臣制度が導入されることになりますと、国会議員の先生方の中から副大臣が任命されることになります。そうしますと、その先生方は行政の執行について一定の責任を負うということになります。そうなりますと議会と政府、内閣との関係が非常に近いものになる。チェックの仕組みがうまく働かなくなってしまうのではないか、そういう点を心配しています。
あるべき方向は、むしろ内閣と国会との相互の独立性をもっと強めるという方向で考えていくというアイデアは生かせないものだろうかというふうに思っているんです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X00819990701/152
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153・中条潮
○参考人(中条潮君) ということになりますと、私だけが多分違う意見ということになるかと思うんですが、私の考え方は皆さんと同じであります、右崎先生とはちょっと違うんですが。
政治家の皆さんにも責任を当然とっていただくということが必要になります。私は先ほど、省庁を細分化して、それぞれの省庁が、細分化されたところがそれぞれ責任を明確にすべきだということを申し上げました。同時に、政治家の皆さんにもそれぞれ担当の分野について責任を持ってもらうということからいきますと、私はむしろ副大臣制には賛成なわけであります。それぞれの分野においてそれぞれ自分の担当を明確に持たされるということが、失礼ながら政治家の先生方に勉強をもっとしていただくという点についても大きな責任感を与えることになると思います。
であるならば、なぜ副大臣でなくてはいけないんでしょうか。なぜ大臣じゃいけないんでしょうか。多分、法制度上、例えば厚生労働省に大臣は一人ということになっているのであると思います。冒頭でこの法案が通った後の意見ということは今回は差し控えますと申し上げましたが、この法案が通った後、私は、副大臣ではなくて、大臣は労働大臣と厚生大臣が二人いていいと思います。建設大臣と運輸大臣は二人いていいと思います。
そういう形によって、省庁は統合されたけれども、中での細分化はまだ残るという形になります。むしろ、もっと申し上げれば、さらにもっとたくさん大臣がいてもいい。それぞれ責任をとれる体制というものをつくっていくことが大事だと考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X00819990701/153
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154・星野朋市
○星野朋市君 ちょうど時間ですから、終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X00819990701/154
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155・菅川健二
○菅川健二君 参議院の会の菅川健二です。
長時間、参考人の皆さん、大変御苦労さまでございます。貴重な御意見をいただきまして、ありがとうございました。
私は、長い間、中央官庁と地方自治体と両方を行ったり来たりしておったのでございますけれども、今回の中央省庁改革がこういう短時日の間にでき上がってきつつあるということについては、大変時代の変わり目を感じますとともに、期待とあわせて懸念もいろいろ持っておるわけでございます。
そこで、とりわけ行政のスリム化の問題と地方分権の視点についてお聞きいたしたいと思います。
まず、八木先生には、行政のスリム化の観点について全然お触れになられませんでしたけれども、この点についてはどういうお考えでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X00819990701/155
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156・八木俊道
○参考人(八木俊道君) スリム化と申しますのは人員と組織の問題でございます。
端的に申しますと、総定員法以来、シーリングナンバー、両院における極めて白熱した議論の中で制定された四十三年の総定員法、これが国際的には極めて注目される日本の定員管理制度のすぐれた財産ということになっておりまして、総体的に言えば、費用対効果の比較的高い部類に日本の公務員制度、官僚組織はあるのではないか。
具体的にはいろんな問題点はございますけれども、マクロに言えば、地方公務員あるいはまた公団、事業団等を含めまして、千人当たりの人口比では我が国の場合四十人ちょっとでございます。それに対して、フランスは百二十人前後、アメリカ、イギリス等は八十人前後、こういうことで、行政運営におきましては、日本の場合は極めて狭い国土に高密度な人口がまさに行政対象としてあるわけでありまして、行政能率を上げやすいということがありますが、なかなかいいところへ来ているなと。
今回、二五%という新たな課題設定があったわけであります。独立行政法人制度への移行分を含めてということでありますが、これから行政部内ではこの目標を消化するのに大変苦労されるのではなかろうか。しかしながら、何とか行政水準を落とさないように頑張ってほしいなという感じがいたしております。
局とか課の問題も、それぞれ上限を設定した中でのスリム化を前提にした再編成ということで、一応軌道に乗っているのかなということであえて具体的なコメントは避けた次第でございますが、既定の枠組みでひとつ十分な行政効果を発揮してもらえるように、こんな期待を持っているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X00819990701/156
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157・菅川健二
○菅川健二君 私も国家公務員であったときがあるわけでございまして、国家公務員が大変仕事をしておるということについてはまことにそのとおりと思うわけでございますが、地方団体のサイドから見ますと、内政にかかわる事務につきましてはいろいろな形で、補助金事務もそうでございますけれども、通達等もいろいろ出てまいりまして、過保護、過干渉といいますか、そういった事務がどんどんふえてまいってきて、往復、ダブルでそれの人員が必要になっておるわけでございます。
民間に対することにつきましても、規制緩和によりましてかなりそういった面では人員が浮いてくるのではないかと思うわけでございまして、その点につきましてはやはり私は規制緩和と地方分権を進めることによって中央省庁はスリム化できるんじゃないかと思っておるわけでございます。
この点、山口先生も、先ほどは非常に国家公務員はよくやっているということでございますが、私のような観点はいかがでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X00819990701/157
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158・山口二郎
○参考人(山口二郎君) 私も同感でございまして、内政分野についてはかなりの部分がもはや都道府県等に任せてできる事務だろうというふうに思いますので、真に中央省庁においてなすべきことは何なのかということを吟味することがやはり必要だろうというふうに思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X00819990701/158
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159・菅川健二
○菅川健二君 それから、省庁改革におきます地方分権の視点でございますが、この点につきまして、地方分権については午前中の地方分権推進委員会の諸井委員長も、出発点に立ったところだということでございまして、これから転がして長い道のりの頂上を目指すんだということでございます。
そういった中で、地方分権といいますか、地方自治体を束ねるといったらおかしいですが、地方自治体の利害の総和としての自治省という役所があって、自治大臣という閣僚がおったわけでございますが、今度総務省という、これはまことに数合わせの中の一番犠牲になった省ではないかと思うわけでございますが、何が省益かがはっきりしない、庶務省ではないかと私は思うわけでございます。そういった中で、地方分権を推進する立場の閣僚がいなくなるというのは、そういった面では今後の地方分権を推進する上でやや問題ではないかなと思っておるわけでございますが、八木参考人、いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X00819990701/159
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160・八木俊道
○参考人(八木俊道君) 地方分権の問題あるいはまた規制緩和の問題は、いわば行政責任の各行政主体への割りつけの問題。その基本はもちろん国政の場で、議会でお決めいただく、こういうことでございますけれども、国の責任はこうである、県の責任はこれである、市町村の責任はこれであるということを明確にし、必ずしも必要のない往復と申しますか、これは避けて、それぞれがその責任の場をしっかり守ることによって任務を果たしてもらうということではなかろうか。
分権は大きな時代の要請でございますが、各地域の自主性、主体性を尊重する上でこれはもう地方にお任せをするという仕組みをつくっていく、そのことによって国の負担も、場合によっては中間団体的な意味を持ちます県の負担も軽くなっていく、これが行政合理化の効果を生むということでもあるであろう、そんなふうに考えるわけでございまして、規制緩和は官と民との関係の関係整序でありますが、分権については国、県、市町村、この三者の行政主体相互間の関係の抜本的な整序による合理化条件の創出、このことによって最小の経費による最大の行政効果を発揮できるような行政体制を目指す、こういう方向を目指すべきではないか。その意味では、行政改革とあわせて分権と規制緩和、これによって行政改革の実質的な条件もまたしっかり整ってくるんではなかろうか、そんなふうに考えているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X00819990701/160
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161・菅川健二
○菅川健二君 今申されましたように、システム改革ができ上がった上におきましては必要はなくなるんじゃないかと思うわけでございますが、今途上でございますのでそういった懸念を持っておるわけでございます。
それから、先ほど山口先生には地方支分部局、とりわけ地方整備局の問題を御指摘になったわけでございますが、私は全くそのとおりでございまして、いわゆる地方出先機関というのは民主的なコントロール機能がないんです。態度がでかいと言われましたけれども、地方支分部局ほど態度がでかいところはないんです。知事が行っても県会議員が行っても市町村長が行っても市町村の議員が行っても、あるいはいわんや住民が行っても全くほとんど歯牙にもかけないといいますか、大変横柄な対応になってくるわけでございまして、私は、したがいまして地方出先機関については、現業の問題はありますけれども、それ以外の権限を持つ地方出先機関は要らないというふうに思うわけでございますが、その点はいかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X00819990701/161
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162・山口二郎
○参考人(山口二郎君) 私もその点は同感でありまして、分権するならすっきり都道府県に権限、財源をゆだねるべきでありまして、国の支分部局についてはまさに政策実施業務だけを担うという形が最も望ましいというふうに思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X00819990701/162
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163・菅川健二
○菅川健二君 右崎先生、中条先生にはもう時間がなくなりましたので、いろいろ御示唆いただきましてありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X00819990701/163
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164・吉川芳男
○委員長(吉川芳男君) 以上で参考人の方々に対する質疑は終了いたしました。
この際、参考人の方々に一言御礼を申し上げます。
本日は、長時間にわたり有益な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして心から御礼申し上げます。(拍手)
次回は明二日午前九時から開会することとし、本日はこれにて散会いたします。
午後三時五十八分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X00819990701/164
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