1. 会議録本文
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000・会議録情報
平成十一年七月七日(水曜日)
午前九時開会
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委員の異動
七月五日
辞任 補欠選任
寺崎 昭久君 福山 哲郎君
益田 洋介君 松 あきら君
七月六日
辞任 補欠選任
海老原義彦君 山内 俊夫君
水島 裕君 木村 仁君
川橋 幸子君 堀 利和君
福山 哲郎君 寺崎 昭久君
松 あきら君 森本 晃司君
池田 幹幸君 宮本 岳志君
入澤 肇君 田村 秀昭君
七月七日
辞任 補欠選任
堀 利和君 川橋 幸子君
吉川 春子君 林 紀子君
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出席者は左のとおり。
委員長 吉川 芳男君
理 事
石渡 清元君
大島 慶久君
田村 公平君
吉村剛太郎君
朝日 俊弘君
伊藤 基隆君
弘友 和夫君
富樫 練三君
日下部禧代子君
委 員
阿南 一成君
岩永 浩美君
太田 豊秋君
狩野 安君
亀井 郁夫君
木村 仁君
久野 恒一君
佐藤 昭郎君
清水嘉与子君
田浦 直君
長峯 基君
畑 恵君
山内 俊夫君
脇 雅史君
江田 五月君
岡崎トミ子君
川橋 幸子君
輿石 東君
高嶋 良充君
寺崎 昭久君
藤井 俊男君
堀 利和君
山下八洲夫君
魚住裕一郎君
森本 晃司君
山下 栄一君
八田ひろ子君
林 紀子君
宮本 岳志君
吉川 春子君
大脇 雅子君
照屋 寛徳君
田村 秀昭君
星野 朋市君
奥村 展三君
菅川 健二君
石井 一二君
国務大臣
内閣総理大臣 小渕 恵三君
法務大臣 陣内 孝雄君
外務大臣 高村 正彦君
大蔵大臣 宮澤 喜一君
文部大臣
国務大臣
(科学技術庁長
官) 有馬 朗人君
厚生大臣 宮下 創平君
農林水産大臣 中川 昭一君
通商産業大臣 与謝野 馨君
運輸大臣
国務大臣
(北海道開発庁
長官) 川崎 二郎君
郵政大臣 野田 聖子君
労働大臣 甘利 明君
建設大臣
国務大臣
(国土庁長官) 関谷 勝嗣君
自治大臣
国務大臣
(国家公安委員
会委員長) 野田 毅君
国務大臣
(内閣官房長官)
(沖縄開発庁長
官) 野中 広務君
国務大臣
(金融再生委員
会委員長) 柳沢 伯夫君
国務大臣
(総務庁長官) 太田 誠一君
国務大臣
(防衛庁長官) 野呂田芳成君
国務大臣
(経済企画庁長
官) 堺屋 太一君
国務大臣
(環境庁長官) 真鍋 賢二君
政府委員
内閣審議官
兼中央省庁等改
革推進本部事務
局長 河野 昭君
内閣審議官
兼中央省庁等改
革推進本部事務
局次長 松田 隆利君
内閣官房内閣内
政審議室長
兼内閣総理大臣
官房内政審議室
長 竹島 一彦君
内閣法制局長官 大森 政輔君
人事院総裁 中島 忠能君
人事院事務総局
任用局長 森田 衞君
公正取引委員会
委員長 根來 泰周君
公正取引委員会
事務総局審査局
長 平林 英勝君
総務庁長官官房
審議官 大坪 正彦君
総務庁人事局長 中川 良一君
総務庁行政管理
局長 瀧上 信光君
防衛施設庁総務
部長 山中 昭栄君
経済企画庁国民
生活局長 金子 孝文君
経済企画庁総合
計画局長 中名生 隆君
科学技術庁原子
力局長 興 直孝君
科学技術庁原子
力安全局長 間宮 馨君
環境庁長官官房
長 太田 義武君
法務省人権擁護
局長 横山 匡輝君
外務省アジア局
長 阿南 惟茂君
外務省経済協力
局長事務代理 荒木喜代志君
外務省条約局長 東郷 和彦君
大蔵省主計局次
長 坂 篤郎君
文部大臣官房長 小野 元之君
文部省生涯学習
局長 富岡 賢治君
文部省初等中等
教育局長 御手洗 康君
文部省教育助成
局長 矢野 重典君
文部省高等教育
局長 佐々木正峰君
厚生大臣官房総
務審議官 真野 章君
厚生省児童家庭
局長 横田 吉男君
厚生省年金局長 矢野 朝水君
社会保険庁次長 宮島 彰君
郵政大臣官房長 松井 浩君
郵政省郵務局長 濱田 弘二君
労働大臣官房長 野寺 康幸君
労働省労政局長 澤田陽太郎君
労働省女性局長 藤井 龍子君
労働省職業安定
局長 渡邊 信君
建設大臣官房長 小野 邦久君
建設大臣官房総
務審議官 小川 忠男君
自治大臣官房長 嶋津 昭君
自治省行政局長
兼内閣審議官 鈴木 正明君
自治省税務局長 成瀬 宣孝君
事務局側
常任委員会専門
員 志村 昌俊君
常任委員会専門
員 入内島 修君
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本日の会議に付した案件
○派遣委員の報告
〇内閣法の一部を改正する法律案(内閣提出、衆
議院送付)
〇内閣府設置法案(内閣提出、衆議院送付)
〇国家行政組織法の一部を改正する法律案(内閣
提出、衆議院送付)
〇総務省設置法案(内閣提出、衆議院送付)
〇郵政事業庁設置法案(内閣提出、衆議院送付)
〇法務省設置法案(内閣提出、衆議院送付)
〇外務省設置法案(内閣提出、衆議院送付)
〇財務省設置法案(内閣提出、衆議院送付)
〇文部科学省設置法案(内閣提出、衆議院送付)
〇厚生労働省設置法案(内閣提出、衆議院送付)
〇農林水産省設置法案(内閣提出、衆議院送付)
〇経済産業省設置法案(内閣提出、衆議院送付)
〇国土交通省設置法案(内閣提出、衆議院送付)
〇環境省設置法案(内閣提出、衆議院送付)
〇中央省庁等改革のための国の行政組織関係法律
の整備等に関する法律案(内閣提出、衆議院送
付)
〇独立行政法人通則法案(内閣提出、衆議院送付
)
〇独立行政法人通則法の施行に伴う関係法律の整
備に関する法律案(内閣提出、衆議院送付)
〇地方分権の推進を図るための関係法律の整備等
に関する法律案(内閣提出、衆議院送付)
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/0
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001・吉川芳男
○委員長(吉川芳男君) ただいまから行財政改革・税制等に関する特別委員会を開会いたします。
内閣法の一部を改正する法律案、内閣府設置法案、国家行政組織法の一部を改正する法律案、総務省設置法案、郵政事業庁設置法案、法務省設置法案、外務省設置法案、財務省設置法案、文部科学省設置法案、厚生労働省設置法案、農林水産省設置法案、経済産業省設置法案、国土交通省設置法案、環境省設置法案、中央省庁等改革のための国の行政組織関係法律の整備等に関する法律案、独立行政法人通則法案及び独立行政法人通則法の施行に伴う関係法律の整備に関する法律案並びに地方分権の推進を図るための関係法律の整備等に関する法律案の各案を一括して議題といたします。
まず、昨日、当委員会が行いました各案の審査に資するための委員派遣について、派遣委員の報告を聴取いたします。
まず、第一班の報告を願います。吉村剛太郎君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/1
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002・吉村剛太郎
○吉村剛太郎君 第一班、神奈川班につきまして、団長にかわりまして私から御報告いたします。
派遣委員は、吉川芳男委員長を団長として、田村公平理事、富樫練三理事、日下部禧代子理事、清水嘉与子委員、川橋幸子委員、藤井俊男委員、松あきら委員、星野朋市委員、奥村展三委員及び私、吉村剛太郎の十一名で、昨六日、神奈川県において地方公聴会を開催し、午前は地方分権の推進を図るための関係法律の整備等に関する法律案、午後は内閣法の一部を改正する法律案等中央省庁等改革関連十七法律案につきまして、それぞれ四名の公述人から意見を聴取した後、各委員から質疑が行われました。
まず、地方分権一括法案につきましては、神奈川県知事岡崎洋君、神奈川大学法学部教授後藤仁君、横浜市立大学商学部教授島田茂君、神奈川県職員労働組合賃金行財政対策部長角田英昭君の四名の公述人から意見を聴取いたしました。
以下、意見の要旨を簡単に御報告申し上げますと、地方税財源の充実強化に向けた国、地方の財源配分の早急な見直し、行政改革プログラムに示された行政関与のあり方に関する基準と本法律案との整合性、地方自治体の条例制定権に対する法律による制約の懸念、自治事務に対する国の関与、是正改善義務、国による代執行の削除などについて、それぞれの立場から意見が述べられました。
公述人の意見に対し、各委員から、今後の地方分権推進における政令指定都市の位置づけと都道府県のあり方、地方分権一括法の実施に当たっての地方公共団体の体制整備状況、地方分権を一層推進するための具体的方策、機関委任事務制度廃止後の国の関与のあり方、自治体の政策責任と住民参加システム、自治体の適正規模と合併促進、地域の独自性発揮と地方議会の強化などについて質疑が行われました。
次に、中央省庁等改革関連十七法律案につきましては、社団法人神奈川経済同友会副代表幹事山上晃君、慶應義塾大学総合政策学部教授・構想日本代表加藤秀樹君、宇都宮大学名誉教授藤原信君、全日本国立医療労働組合委員長遠山亨君の四名の公述人から意見を聴取いたしました。
以下、意見の要旨を簡単に御報告申し上げますと、政府における政策評価と運用上の配意点、各省設置法から権限規定を削除したことの意義、環境庁から環境省への昇格に伴う組織の拡充整備の必要性、国立病院・療養所の独立行政法人化の持つ問題点などについて、それぞれの立場から意見が述べられました。
公述人の意見に対し、各委員から、縦割り行政の弊害解消のための諸方策、経済財政諮問会議等内閣府に置かれる四つの会議の実効性の確保、諸外国並みの環境行政の一元化の必要性、国立病院再編計画と独立行政法人化との関係、内閣官房及び内閣府への民間人登用の促進策、副大臣制の創設、政府委員制度の廃止等を踏まえた政治行政改革への評価などについて質疑が行われました。
なお、会議の内容は速記により記録いたしましたので、詳細はこれにより御承知願いたいと存じます。
以上、第一班、神奈川班の報告を終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/2
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003・吉川芳男
○委員長(吉川芳男君) 次に、第二班の報告を願います。石渡清元君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/3
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004・石渡清元
○石渡清元君 第二班、大阪班につきまして御報告いたします。
派遣委員は、大島慶久理事、海老原義彦委員、狩野安委員、高嶋良充委員、福山哲郎委員、山下栄一委員、八田ひろ子委員、大脇雅子委員、入澤肇委員、菅川健二委員及び団長として私、石渡清元の十一名で、昨六日大阪府において地方公聴会を開催し、午前は地方分権の推進を図るための関係法律の整備等に関する法律案につきまして三名の公述人から、午後は内閣法の一部を改正する法律案等中央省庁等改革関連十七法律案につきまして四名の公述人から、それぞれ意見を聴取した後、各委員から質疑が行われました。
まず、地方分権一括法案につきましては、大阪市長磯村隆文君、神戸大学法学部教授阿部泰隆君、大阪自治体労働組合総連合執行委員長徳畑勇君の三名の公述人から意見を聴取いたしました。
以下、意見の要旨を簡単に御報告申し上げますと、大都市の権限の拡充強化と税源移譲による地方税源の充実確保、法案における法的概念の明確性の欠如、国の地方公共団体に対する関与、統制の強化の不当性などについてそれぞれの立場から意見が述べられました。
公述人の意見に対し、各委員より、地方分権一括法案に対する評価、市町村合併及び都道府県合併についての課題、是正の要求が乱発される懸念、税財源の地方への移譲の重要性、住民参加の機会の拡充のための方策、自治体職員の企画立案能力の養成の必要性、市町村間及び中央省庁との人材交流、国庫補助金に係る国の関与の縮減などについて質疑が行われました。
次に、中央省庁等改革関連十七法案につきましては、社団法人関西経済連合会行政制度委員長井上義國君、大阪市立大学法学部教授真渕勝君、岡山大学経済学部教授山本清君、国家公務員労働組合大阪地区連合会執行委員長滝口敬介君の四名の公述人から意見を聴取いたしました。
以下、意見の要旨を簡単に御報告申し上げますと、行政組織スリム化と地方分権、規制緩和の連動の必要性、中央省庁改革後の見通し欠如への疑念、政策評価の機能がアカウンタビリティー確保の色彩が強いことへの疑問、国立病院・療養所の独立行政法人化による国民生活への影響などについて、それぞれの立場から意見が述べられました。
公述人の意見に対し、各委員より、独立行政法人のアカウンタビリティーの内容、巨大化した国土交通省に対する政策評価のあり方、政策評価重視と会計検査院のあり方、中央省庁改革と憲法の民主的諸原則との関係、民営化の観点から見た中央省庁改革の評価、専門家への外部委託による政策評価導入の必要性などについて質疑が行われました。
なお、会議の内容は速記により記録をいたしましたので、詳細はこれにより御承知願いたいと存じます。
以上、第二班、大阪班の報告を終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/4
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005・吉川芳男
○委員長(吉川芳男君) 以上で派遣委員の報告は終了いたしました。
なお、地方公聴会速記録につきましては、これを本日の会議録の末尾に掲載することといたします。
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/5
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006・吉川芳男
○委員長(吉川芳男君) 内閣法の一部を改正する法律案外十七案について質疑を行います。
質疑のある方は順次御発言願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/6
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007・清水嘉与子
○清水嘉与子君 おはようございます。
締めくくり総括質疑に当たりまして、私は、これまでの論議を踏まえ、さらに前回伺えなかった部分につきまして、中央省庁改革法案を中心に若干の御質問をさせていただきたいと存じます。
これまでの行政システムというのは、限られた資源を中央に集中して、これを産業、地域別に重点的に配分することによって世界に例を見ないスピードで我が国の近代化を実現し、そしてまた驚異的な経済成長を実現させてきたわけでございます。しかし、超大国による冷戦構造が終結し、経済活動のボーダーレス化が急に進む中で国際社会の枠組みが大きく変動し、こうした国際情勢のもと、国にしか担い得ないような国際的課題への対応能力を高めていくためにも、中央省庁再編によって業務のスリム化、効率化を通じて国内問題の処理に係る負担を軽減し、そして国の役割を純化、強化していくことが不可欠であるというふうに認識しているわけでございます。
行政改革につきましては、従来からも政府が何度となく取り上げてこられたわけでございまして、しかしそれはやっぱり局部的な改革にとどまってきた嫌いがございます。二十一世紀からの我が国の経済社会全般にわたるシステムの再構築のために、それらと密接に関係する行政システムをまず抜本的に見直そうという今回の改革法案、昨日の地方公聴会におきましても強く支持する御意見も多うございまして、大変意を強くしたわけでございます。
特に、この改革によりまして、今までのお上にすべてお任せといったところから国民に開かれた行政、そして国民が参加できるような、こういったシステムに変わってくるということによって国民の意識も相当変わるんじゃないか、変えなきゃいけないというような強い御意見も伺いまして、私もそう思った次第でございます。
そこで、まず総理にお伺いしたいのでございますけれども、我が国の置かれております国際・国内情勢の今後の展望の中で、今回の中央省庁の再編法案あるいは地方分権の改革関連法案をどのように位置づけておられるのか、また、これによりましていかに我が国の経済社会の活力を取り戻し活路を開いていくのか、改めて御所見を伺いたいと思います。よろしくお願いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/7
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008・小渕恵三
○国務大臣(小渕恵三君) 今回の中央省庁等改革は、行政における政治主導を確立し、内外の主要課題や諸情勢に機敏に対応できるよう行政システムを抜本的に改めるとともに、透明な政府の実現や行政のスリム化、効率化を目指すものであることは清水委員御指摘のとおりでございます。
また、地方分権は、国、都道府県、市町村といった縦の関係であります中央集権型行政システムを改革し、対等、協力の横の関係とするとともに、地域の行政は地域の住民が自分たちで決定し、その責任も自分たちで背負う自己決定、自己責任の行政システムを構築するものでございます。
私といたしましては、国政の再重要課題として、また二十一世紀に向けた我が国経済社会の繁栄のかけ橋として、両改革に今後とも積極的に取り組み、その推進のため全力を尽くしてまいりたいと思っております。
委員御指摘のように、過去もこの中央省庁の改革等、また地方分権につきましてもそれなりの改革を企図いたしてまいりましたが、なかなか戦後における一つのあり方として大きくこれを抜本的に改革するというチャンスがなかなか生まれてまいりませんでした。今回、先ほど公聴会でもお示しあったかということでありますが、国民の側からも大きくこれを変革しなければならないという、そうした認識も大変深くなってきておるわけでありまして、この機会をとらえてぜひ抜本的な改革をいたすべき絶好の機会と、こう考えておる次第でございます。
政府といたしましては、成立をいただければ、その責任を十分果たすことによりまして国民に対する責務を果たしていきたい、こう考えておるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/8
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009・清水嘉与子
○清水嘉与子君 ありがとうございました。
次に、これは経企庁長官にお願いしたいんですけれども、一昨日、経済審議会から総理に対して「経済社会のあるべき姿と経済新生の政策方針」が答申されたということでございます。
総理からの御諮問というのは、「二十一世紀初頭の我が国経済社会のあるべき姿を描き、国民が自信と誇りを持って未来に臨めるよう、平成十一年から二十一世紀初頭までの十年間程度にとるべき政策の基本方針の策定を求める」という御諮問だったというふうに伺っておりますけれども、その答申の中で、二十一世紀初頭の我が国のあるべき姿、特に国民のサイドから見てどのようなものが描かれているんでしょうか。長官のお口から御説明いただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/9
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010・堺屋太一
○国務大臣(堺屋太一君) 御指摘いただきました「経済社会のあるべき姿と経済新生の政策方針」というものは、御指摘のように本年一月、総理大臣よりの諮問にこたえまして、経済審議会が半年間にわたりましてまことに精力的な調査研究をしていただきまして、一昨日答申いただいたものでございます。
この答申は、二〇一〇年ごろの日本を想定いたしまして、この日本の社会経済のあるべき姿とそれに至るまでの政策活動を描いたものでございます。そこでは、経済構造や経済活動だけではなくして、新しい経済社会の根底をなす条件、目的あるいはコンセプト、概念、それに価値観等についても明示されております。
答申では、私たちが二十一世紀に築いていくべき経済社会は、自由を正義の一つに加えた世の中であり、少子高齢化、グローバル化、環境問題に対応することが必要だとされております。また、そこでは、政府、つまり官、ガバメントでございますが、の役割は、自由競争のルールを守り、人権を守る安全ネットの構築などに限られる一方、人々の合意による公、パブリックの概念が重要になるだろうとも指摘されております。
このような経済社会のあるべき姿に向けて実施していくべき重要な政策方針といたしまして、第一に、透明で公正な市場と消費者主権の確立、魅力ある事業環境の整備等、多様な知恵の時代にふさわしい社会の形成。第二に、安心でき、効率的な社会保障、年齢にとらわれない経済社会の形成、少子化への対応、少子高齢化、人口減少への備え。第三に、循環型経済社会の構築、地球環境問題に対応した環境との調和した世の中。第四に、世界の主要な経済プレーヤーとして世界経済の発展に貢献していくこと、そして第五に、さらに行政の効率化、財政の再建、地方分権の推進などが挙げられております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/10
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011・清水嘉与子
○清水嘉与子君 大変多角的にいろんな御指摘がちょうだいできております。
さっと私も拝見したところでございますけれども、今、長官が最初に言われた自由を正義の一つにしてとらえるんだということ、そしてそれだけではなくて、自己責任を基調とした多様な知恵の社会である、そして個人個人が夢に挑戦できる性別とか年齢にとらわれない社会。今までどちらかというと、高齢社会というと何となく灰色のイメージがどうしても上にかぶさってきてしまうのに対して、大変これは国民にとっても共感を呼ぶような新しい理念ではないかなというふうに考えているところでございます。
しかし、こうした社会を本当に構築するために、今御指摘の施策を実行しなければ、そして本当に日本のあるべき姿を形づくらなければ意味がないなと思います。
総理にお伺いしたいんですが、今の答申を受けられた政策方針につきまして、これからどんなふうに政策を実現していかれるのかということをお伺いしたいわけなんです。
ただ、そのときにあわせてお伺いしたいのは、ことしの二月にも総理が大変熱を入れました経済戦略会議が総理に大変な内容の提言をされております。こういういろんなところから本当にすばらしい提言がなされるわけでございますけれども、こういったものを実現するに当たりまして、それの具体化にあわせて、そういった提言がどういうふうに整合性を持って実現されるのかという点についてもあわせてお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/11
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012・小渕恵三
○国務大臣(小渕恵三君) 経済戦略会議の答申におきましては、我が国経済の再生を主な目的として、活力ある新しい日本型システムを構築するための具体的政策が提言されております。
また、経済審議会より答申をいただきました「経済社会のあるべき姿と経済新生の政策方針」は、経済戦略会議の答申をも踏まえ、さらに長期的な観点からまず二十一世紀初頭の経済社会のあるべき姿が描かれた上で、それを実現するため必要な政策を包括的に取りまとめていると承知いたしております。
政府といたしましては、経済審議会答申を速やかに閣議決定いたしまして、本答申で示された施策に直ちに積極的に取り組み、内閣を挙げて全力で実施していく決意であります。
これによりまして、二十一世紀の初頭に、自由で、少子高齢化と人口減少に備えた仕組みを持ち、環境と調和した我が国経済社会のあるべき姿が実現するものと考えておりまして、冒頭申し上げましたように、経済戦略会議は経済再生内閣としてこの内閣を位置づけておりまして、まず当面の課題につきましてお考えをおまとめいただきました。
したがいまして、戦略会議の答申を得る過程におきましても、中間的に金融システムの安定というようなことでかなり多額の公的資金を導入する等の提案もいただき、刻々とそうした政策をできるものから打ち出してくるという形の答申に対しての政府の考え方でございましたが、今般の経済審議会の答申は、かなりスパンといたしましては二十一世紀初頭というものをにらみながらあるべき姿というものをおまとめいただきましたわけでございますので、申し上げましたように、政府としてはできる限り早く閣議としてこれを定めて、政府としての責任において実行いたしていく手だてを講じていきたい、このように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/12
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013・清水嘉与子
○清水嘉与子君 ありがとうございました。
経済審議会のお出しになりました政策方針について少し的を絞ってしばらくお話を伺いたいんですけれども、いろんな御提言がございましたけれども、特に、私は今回は、少子問題、人口減少社会への備えということで、この辺に絞ってお話を伺いたいと思うんです。
これが大きな問題として取り上げられておりますし、今、総理の問題意識の中にも大きな点として取り上げられたわけでございますけれども、二〇一〇年といいますと、人口問題研究所の試算ではちょうど今の人口が少しピークを下がったところですよね。そして、老齢人口はこれからまたふえていく、年少人口はもっと減っていくというようなことで、二〇一〇年よりもう少し幅広くといいますか長期的展望に立って、この人口問題あるいはこれに伴う社会保障の問題、これはもっと深刻な問題になってくるわけでございますけれども、もう少し人口問題に関しては少し長いスパンで何か検討した方がよかったんじゃないかという実は指摘もあるわけでございますが、それに対して長官、いかがでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/13
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014・堺屋太一
○国務大臣(堺屋太一君) 御指摘の点、そのとおりでございますが、今回の経済審議会におきましては、最近の経済計画が大体五年程度を計画期間としておりますのを、さらに延ばしまして十年ということを総理より御諮問いただきました。
人口減少等の大きなトレンドを考慮いたしますと、まず長期の期間を視野に入れて検討に努めたわけでございますけれども、二十一世紀初頭の十年程度ということになりますと、ちょうど委員御指摘のように人口が急に減りかける入り口ということになります。この答申のあるべき姿におきましては、我が国の人口が今後十年程度たちますとだんだんと減少の速度を速くしてくる。これもこれから生まれる方がどうかということの問題はありますが、今のところではその可能性が高いわけでございます。したがって、少子高齢化、人口減少への備えという仕組みがこの十年後にはできていなければいけないということを指摘しております。
二〇一〇年以降、日本で人口減少のテンポが速まりまして経済規模が縮小するというようなことになりますと、経済活力の低下と新しい投資や事業の縮小、そしてまた人口の流出、減少という悪循環が起こることが恐れられます。こうした危険を回避するためには、子育てのしやすい世の中をつくって人口減少に歯どめをかけるということも必要でございますし、経済の成長を維持していくために、常に革新的な自由競争の社会を築きましてどんどんと新しいものを取り入れられるようにしていかなければならないと思います。
特に、少子化に対応して人口減少に歯どめをかけるということになりますと、二十年、三十年後の長い将来を考えなければならないわけでございますが、今すぐ始めましても、ことし、来年お生まれになった方でも二十年後に二十歳でございますし、もう二十年、三十年という長いスパンを考えて、今すぐこの人口の減少に歯どめをかけるような子供の育てやすい環境をつくる政策には着手すべきではないかと指摘されております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/14
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015・清水嘉与子
○清水嘉与子君 ありがとうございました。
総理は、殊のほかこの少子化問題に強い御関心、そして大変憂慮されているということで、もう内閣全体でこの少子化対策に取り組んでおられるというふうに伺っております。今、どのような検討を具体的に進めていらっしゃるのか、その辺について総理、よろしくお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/15
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016・小渕恵三
○国務大臣(小渕恵三君) 現在、我が国は諸外国に例を見ない速さで少子高齢化が進行いたしておりまして、この高齢化に伴いまして社会保障の給付と負担の増大が見込まれる一方、少子化によるさまざまな社会的、経済的影響が懸念されておるところでございます。
このような少子高齢化に適切に対応するため、私自身、施政方針演説におきましても、安心へのかけ橋の整備の必要性を述べたところでありまして、国民が安心のできる社会を築くため、国民に信頼され、将来にわたって安定的に運営できる社会保障制度を構築すべく、年金、医療、介護などの社会保障制度について構造改革を進めておるところでございます。
特に、少子化への対応につきましては、昨年十二月に私が主宰する少子化への対応を考える有識者会議の提言を受けたところであり、この問題に適切に対応すべく、先般、少子化対策推進関係閣僚会議や少子化への対応を推進する国民会議を設け、国民的な広がりのある取り組みを進めております。今後とも、少子高齢化に総合的に対応し、二十一世紀においても明るく活力のある社会を築き上げるよう努力してまいりたいと思っております。
問題意識といたしましては大変強いものを持っておるわけでございますが、たまたま先般のこの国民会議を設けることの機会に関係者の皆さんともいろいろと意見交換をいたしましたが、私自身も実は先般、ケルン・サミットと同時に北欧サミットに日本も参加いたしまして、第二回の会合を開いてまいりました。その折、この少子化問題についてもいろいろと話をいたしたわけでございます。
非常に関心を持ちましたのは、いわゆる日本の合計特殊出生率が今日なお低くなってきておりまして、一・三八というような数字が示されておりますが、かつて私どもはこうした少子化の傾向というのは、言ってみると、この北欧諸国がその典型的な例ではないかという認識をいたしておったわけでございます。世界に先駆けてこうした国々が大変出生率が低くなってきておることに対して、我々もそうした認識をいたしておったわけでございますが、最近の数字を見ますると、スウェーデン、ノルウェー、デンマーク等は一九八〇年代にそれぞれ一・六八、一・七三、一・五四、この辺を最低限といたしまして、現在は実は出生率が上がってまいりまして、それぞれ一・七四、一・八七、一・八というような数字になってきております。
私どもの従来の概念からいいますと、北欧諸国というものは女性の勤労に対する進出が非常に大きい。また、税負担もいわゆる付加価値税というようなものが二〇%から二五%という高率に対して、やはり社会保障を完備するためには男女とも勤労の機会が大きいということで、それが出生率にも非常に影響するんじゃないかという認識をいたしておりましたが、今申し上げたような数字になってきております。
私も実は、アイスランドでそれが行われましたので、たまたま大統領にいろいろお話をする機会がありました。北欧諸国で少子化傾向に歯どめがかかったのは、三十代後半あるいは四十代の夫婦が子供をつくるようになったことが大きく影響していると。社会全体で経済的に潤い、余裕が出てきたことが一般的な背景として、特にこの世代が家計的にも社会的にも安定し、若いときほどあくせく働く必要を感じなくなったとき、物質的な豊かさに加えて、家庭という精神的な豊かさを求めるようになったあかしであるというのがグリムソン・アイスランド大統領の私に対するお答えでございました。世界の国々の趨勢の中でいろいろとこうした出生率の問題、いわゆる少子化からどうこれから変化していくかということについての何らかの答えも含まれているんではないかという感じがいたしております。
そういった意味で、先ほど申し上げましたようないろいろの会議あるいは閣僚会議等を通じまして、日本における少子化がなぜ起こってきているかというような原因もさらにさらに究明しつつ、やはり将来日本としても再生産可能なような形のものができていく姿というものを求めていかなければならないのではないか、そうした感じをいたしてきておるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/16
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017・清水嘉与子
○清水嘉与子君 大変ありがとうございました。
ところで、今、総理がおっしゃいました関係閣僚会議、これが十八の省庁の大臣が御出席というふうに伺っております。そこでいろいろ御討議されていらっしゃると思いますけれども、特に関係の深い厚生省、文部省、労働省、建設省それぞれの大臣から、それぞれのところで今検討していらっしゃる少子対策、主なもので結構でございます、ちょっとお話をいただきたいと思います。
厚生大臣からどうぞよろしくお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/17
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018・宮下創平
○国務大臣(宮下創平君) ただいま総理から御答弁がございましたように、少子化問題については、有識者会議の提言を受けまして、これはかなり具体的な各省所管の役割分担まで定めたものでございます。かなり網羅的になっておりまして、その中で関係各省のものがまとめられております。これを受けまして、少子化対策の関係閣僚会議、今お話しになったとおりでございまして、五月にこれを実施しております。
そして同時に、今、総理からも御答弁がございましたように、これを国民的な広がりで理解を求め運動を推進していく必要があるというので、先般、国民会議を総理御出席のもとに、私が司会いたしまして、三十人弱の各界の代表者による意見開陳等を求めたところでございます。
私の方といたしましては、そういった多様性に富んだ各種の施策のうち、特に安心して子供を産み育てる、ゆとりを持って健やかに育てるための家庭や地域環境づくりということが大変重要だと思っておりまして、具体的ないろいろな施策をやっておりますけれども、これらをさらに進めていく、あるいは利用者の多様な需要に応じました保育サービスの整備等も行っていかなければならないと存じております。
今度予定されております補正予算におきましても、こうしたものをもっともっと現実に即したといいますか、その必要度に応じた対策が講ぜられるように、例えば駅前保育をやるとか、いろいろの施策を交付金制度をもってやろうということで今検討中でございます。
各般の政策を強力に進めまして、少子高齢化というのは御指摘のように、高齢化の問題もかなり深刻な問題であって我々はいろいろ対応しておりますが、少子化問題はそれに劣らないだけに、二十一世紀における姿を考えた場合に、今日的な最大の課題であるという認識を持って対応してまいりたいと思っています。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/18
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019・有馬朗人
○国務大臣(有馬朗人君) 私もこの少子化の問題というのは極めて重要だと思っております。特に、少子化が進行することに伴いまして子供たちの教育面への影響が非常に大きくなっておりまして、少子化対策が教育行政においても極めて重大な課題と考えているところでございます。
文部省としましては、具体的にこれまでも、まず安心して子供が産み育てられるような環境をつくっていかなければならない。そのためには、学習指導要領の改訂などを使いましてゆとりのある学校教育の推進をする、そして子供たちが喜んで学校に行けるようにしていく、これが第一でございます。
第二に、全国子どもプランの実施など、学校外の活動が充実できるようにしていきたい。
三番目に、子育て減税等によります経済的負担の軽減を図りたい。
四番目に、乳幼児や小中学校の生徒たちの子供を持っておられますすべての親を対象にいたしまして、子育ての仕方等々について、家庭教育手帳それからノートを配布するなど、家庭教育の支援などに大いに努めているところでございます。
また、若い世代の力、子育ての大切さを学ぶようにしなければならないということで、平成十一年度には新たに、学校教育においては、中学校や高等学校の生徒諸君が保育のような体験を地域ぐるみで取り組むような体制を確立しているところでございます。そして、乳幼児等との交流や触れ合いの実践活動を促進するための実践研究を行うとともに、社会教育においては、子育ての意義や楽しさを啓発するリーフレットを作成いたしまして、成人式の機会などを活用いたしまして、これから親となっていく若い男女に配布することといたしております。
今後においても、関係閣僚会議や中央教育審議会の少子化と教育に関する小委員会での御議論等を踏まえながら、一層少子化に対応した適切な教育施策を推進してまいりたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/19
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020・甘利明
○国務大臣(甘利明君) 職業生活と家庭生活をいかに両立させていくかということが私どもの課題でありまして、つまり子供を産んで育てていくということと仕事をしていくということが両立をしていくように環境整備を図る。
まず第一に、育児休業制度というのがありますが、これはその制度を導入している企業、していない企業にかかわらず、労働者がひとしく持っている権利でありますから、子供が一歳になるまで権利として休むことができるし、その間は四分の一の給与を受けることができる、これを周知徹底させていくということがまず基本だと思っております。
それから、働きながら、仕事を続けながら子育てをしたいという人も当然いらっしゃいますから、そういう人たちの環境整備という意味では、例えばその事業所内に保育所施設をつくる、その際に設置費を中心に支援していくという制度を持っております。あるいは地域によって育児の相互援助活動というのを自治体が行っておりますが、その際に自治体に対して県を通じて支援する、いわゆるファミリー・サポート・センター事業と呼んでおりますけれども、そういうものを行う。そして、基本的なこととしては、時間短縮を進めていくということがその前提にあります。
あるいはことしからでありますけれども、職業生活と家庭生活の両立に向けて企業に積極的な取り組みをしていただいていますけれども、そういうところはどんどん表彰していこうということでファミリー・フレンドリー企業の大臣表彰というのをことしから始めました。
啓蒙活動と具体的な政策、予算執行とあわせて、家庭生活と職業生活の両立に積極的に取り組んでいきたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/20
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021・関谷勝嗣
○国務大臣(関谷勝嗣君) 建設省でございますが、建設省といいますれば何といいましても住宅の問題でございまして、特定優良賃貸住宅等の公的賃貸住宅の供給とか、あるいは公庫融資、それから税制によります広くてゆとりのある良質なファミリー向け住宅の供給ということが第一でございます。
二番目に、都市居住を促進するための住宅市街地整備総合支援事業、あるいは保育所等を一体的に整備する市街地再開発事業の推進などによる働く女性の子育てを支援する生活環境の整備、あるいはまた近くの公園などの身近な遊び場所や通学路など、安全な生活環境の整備などを実施しておるところでございます。
こういうことで申しますと、なかなかぴんとこないのでございますが、こういうようなことでお答えすると非常に御理解がいただきやすいと思うんです。例えば公営住宅とか特定優良賃貸住宅において十八歳未満の子供さんが三人以上いる世帯に対する入居、抽せんでございますが、その優先を図るというようなことを行っておりますし、あるいはまた基準金利の融資額を一千万円増額するというようなことをいたしまして、子育てのできるスペースの広い住宅、そしてまた保育所などが近くにあるような環境の整備、また遊び場も近くにつくっていこうということで建設省としての立場で鋭意努力をいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/21
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022・清水嘉与子
○清水嘉与子君 ありがとうございました。
子育ての問題につきましては、既にエンゼルプランがつくられておりまして、計画的に進められているわけでございますけれども、エンゼルプランというのは率直に申し上げて各省の施策がただ並んでいるだけだという感じがしておりました。今、大臣たちのお話を伺ってみて、その中身が随分濃くなってきているというふうに私も感心しているところございます。
従来の少子対策というと、ともすれば人口が減って労働力が不足して女性に働いてもらわなきゃいけない、そうすると働く女性の就労と家庭生活をどうやって支えるかという視点がどうしても多くなります。先ほどの駅前保育所の問題でありますとか事業所の保育所でありますとか、私の関係していましたところでは病院の中の保育所でありますとか、そういうところでもできないところはベビーホテルに預けられたり、あるいは仕事の都合では夜間保育だとか休日保育だとかというふうに、子供を育てるには環境の悪いところにどんどん政策が広がっていくというような、子供の面から見たらですね、確かにお母さんの面から見ればそういうことは必要なんですけれども、子供の面から見ていただきたいというふうな思いがしておりました。
特に、乳児期から小学校に入るまでの大切な時期、一体日本の国民をどう育てていくのかという視点がどうしても大事ではないかというふうに思うんです。もっと地域で、両親の愛情に守られ、そして地域の人たちに守られながら子供が育てられていくようにするということがやっぱり大きな問題じゃないかと思います。
施策はとにかくいろいろされていることも事実です。お金もたくさん投入されている。税金も安くしてもらっている。いろんな面で保育所だとか幼稚園の補助ももらっている。しかし、それが本当に有効に使われているのかというあたりをぜひ見ていただきたいと思います。今までは余りにも一つの世界の中で特別な人だけに特別な税金が使われていたというようなことがありますけれども、先ほどの政策方針の中でも全く個人の自由だ、個人の選択だというようなことがありますので、ぜひそういった面でよろしくお願いをしたいと思います。
働きたい人もいれば専業で子育てをしたいという人もいるわけでございます。ただ、専業主婦の場合には、そればかりやっていると社会に復帰できにくいとか、あるいは年金なんかで非常に不利になるということもありますので、そういった面もぜひこれから広く御検討をいただきたいというふうに思う次第でございます。
ところで、この少子化問題というのは非常に大きな国の施策で今まで具体的になされているわけでございますけれども、新しい中央省庁の改編が行われますとこれはどのように取り扱われていくのでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/22
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023・太田誠一
○国務大臣(太田誠一君) お答えいたします。
厚生労働省の設置法、そうしてまたもっと淵源をたどりますと中央省庁等の改革基本法におきまして少子高齢社会への総合的な対応について関係府省の間における調整の中核としての機能を、その法律では労働福祉省でございますが、今の案で言いますと厚生労働省がその役割、機能を担うということになっております。それを受けて、厚生労働省の設置法において厚生労働省がその調整の役割を担うということにいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/23
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024・清水嘉与子
○清水嘉与子君 新しいところでは厚生労働省が担うということでございますけれども、今の関係閣僚会議におきましても十八省庁の大臣が加わるというくらいにこの問題は非常に横断的に大きな問題でございます。厚生省の取り仕切りで、例えば私たちが非常に問題にしております幼稚園と保育所の問題、この壁をもっと低くしてほしいというようなことも本当にできるのかどうかということを大変心配しておりますので、その辺もぜひやっていただかなきゃいけないんだろうと思いますけれども、ぜひその辺をお願いしたいというふうに思うわけなんです。
その関係で申し上げますと、今回の改正で政策の評価という点が取り入れられることになった、これは大変にすばらしい改革ではないかというふうに思っているわけでございます。ただ、身内の評価で本当に大丈夫かというようなこともございますけれども、まず自己評価、自分たちがやった政策が本当に必要なものであったのかどうか。予算をとるときには本当にみんな一生懸命努力をして知恵を出して予算をとりますけれども、それが本当にどう使われているのかというところについては本当にわからないのが実態じゃないかと思うんです。そんなことで、ぜひ政策評価をきちんとしていただきたい。
実は、平成七年のときに、参議院の国民生活調査会という調査会がございまして、ここで三年間研究をいたしまして、高齢社会対策基本法という法律を出させていただきまして成立させていただきました。今回の改正で高齢社会対策がどこに位置づけられるのか心配しておりましたところ、内閣府に残るということでございます。
私たち発議した趣旨としては、大きな問題はやっぱり厚生省にあるんだと思いますけれども、そこに行ってしまうと横の調整というのが非常に問題、特に高齢社会ですのでどこの省もみんな高齢者に向かっていろいろやっているんです。しかし、何かもうちょっとうまく使えばいいのじゃないか。例えば建設省の中に高齢者の住宅を入れてもらうようなことも必要じゃないかとか、あるいはさっき子供のことを言いましたけれども、老人は老人、子供は子供、障害者は障害者というふうにまとめてしまうのではなくて、地域の中でお年寄りも子供も一緒に生活できるような仕組みとかをぜひつくることも必要ではないかというふうに思ったわけなんです。そういうわけで、内閣府に置かれて調整機能を持つということは大変私はよかったことだと思うのです。
しかし、平成七年に法律ができてずっとこの経過を見ておりますと、やはり各省の何といいましょうか総括とかまとめ役になっておりまして、調整機能はもちろん、白書を出したりいろんなことをやっていただいていますけれども、予算はもちろんないわけです。現業の課、省がそれぞれ予算を持っているわけでして、今総務庁に高齢社会対策室というのがあるわけですが、そこには予算もないわけでして、それほど政策評価みたいなこともできない、権能もないわけです。
私は、こういった横断的な政策をやるときの政策評価をどこがするのか、どこが権能を持つのか。まず、自己評価をするにいたしましても、各省がそれぞれやったら恐らくこれはよくやっているというふうになっちゃって進まないんじゃないかと思うんです。しかし、横断的に見れば、この点は抜けている、この予算の使い方はこうだというようなことがもっと出てくると思いますし、地域の中で本当に子育てがしやすくなるようなことを一つの基準にすればもっと評価もできてくるんじゃないかとも思いますけれども、そんなことが今どうなんだろうかということが気になっているわけでございます。
特に少子化の問題、今は総理の強いリーダーシップでこうして本当にすばらしい検討がされておるわけでございますけれども、私たちは、これは根拠を持たなきゃいけないんじゃないかということで、超党派の議連で少子化対策の基本法をつくろうということで中山太郎先生を長にして今一生懸命勉強しているところでございます。ほとんどの方は御賛成なのでございますけれども、しかし、確かに一つの法律をつくれば当然また担当するところができ、予算ができるということで、スリム化とは逆の方向に行くわけでございます。ですから、これはやっぱり慎重にしなきゃならないということもわかるわけでございます。
こういった各省にまたがる政策、しかもこんな重要な法案についてはそういったきちんとした土台を持って政策を進める必要があるんじゃないか。そのときに、その政策の評価をどういうふうに位置づけるかということが大きなこれからの課題になると思いますので、その辺について総務庁長官、御見解をいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/24
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025・太田誠一
○国務大臣(太田誠一君) 先ほどから清水委員の御指摘の点は、一つの省、従来でいういわゆる省の狭い所掌範囲の中で議論をされていくことに対する懸念というものを御指摘でございまして、それはまさにそのとおりでございます。
今回御提案を申し上げております中央省庁改革では、その役割は、政策評価につきましては総務省が担う、総務省に設けられます政策評価、そしてまた独立行政法人の監視、評価のための第三者委員会が総務大臣に対しまして提言をし、そして総務大臣がその責任でもって決断をして進めていくことになっております。
総務省というものはそれだけの役割を果たせるのかということでございますが、今回の省庁改革のまさに大きな柱が省庁間の調整をできる権限、特に総務省や環境省については勧告権を与え、そしてまた勧告に沿った改善がなされない場合には総理大臣に対する意見具申権というものを明示いたしまして、総理大臣はその意見具申を受けて、まさに行政各部に対する指揮権を行使してその省庁を指導するということになりますので、調整の権限は今までよりもはるかに強いものになると思います。そういう体制でございます。
なお、少子高齢化問題につきましては、もちろん厚生労働省が第一義的には責任を負うわけでございますけれども、男女共同参画会議あるいは参画局もその方面からの取り組みは当然しなければなりませんし、また閣僚会議としては既に今、少子化対策推進関係閣僚会議もございますので、全内閣的な取り組みができる体制はできておるというふうに申せると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/25
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026・清水嘉与子
○清水嘉与子君 ぜひよろしくお願いを申し上げたいと思います。
ところで、中央省庁の再編が行われましても、実際にそこでどんな仕事が行われるか、仕事の中身が本当に変わっていくのかどうかということが一番の問題だと思うわけでございます。そして、それを本当に変えられるのは働く人々の意識の変革ではないかというふうに思うわけでございます。
今、少子化への対応を考える有識者会議あるいは「経済社会のあるべき姿と経済新生の政策方針」、この中に触れられている少子化対策、この辺も見ますと本当にすばらしいことが書いてあるわけでございまして、これをぜひ実現していただきたいわけでございますけれども、省庁が変わって、そこに働いている中央省庁の役人が実を言うとこういった提言を一番守りにくい職種なのかな、そういう働き方をしているのかなという感じもしないでもないわけでございます。
本当に子供を育てる男性がどのくらい参加していらっしゃるのか。やっとかどうか、厚生省で育児休業をとる男性がいたなんということが話題になるくらいのまだ時代でございます。先ほど総理が北欧のお話をされまして、合計特殊出生率がだんだん上がってきたという背景で家庭が非常に豊かになってきたというふうにおっしゃいましたけれども、男性が育児や家庭に参加している割合というのが恐らく大分違うんじゃないかというふうに思うわけでございまして、その辺の意識改革をしないとこれは大変難しいんじゃないかというふうに思います。
現に、中央省庁で働いている女性がどんなふうに育児をしているのか、お調べになればすぐおわかりになることだと思います。そしてまた、キャリアを捨てることが心配で子供を産まない女性あるいは男性もそうでございます。そんなことで、中央省庁の中にも子育て、少子化の政策に反している人たちがたくさんいると思いますので、まず中央省庁の職員から意識を改革するということが必要じゃないかというふうに思うんです。
それにはやっぱり国会の仕事のやり方というのも大きな問題があるわけでございまして、私自身、昨日も公聴会から帰ってから質問通告などしたので大変夜遅くまで申しわけなかったと思うんですけれども、そういった全体の、国会の中の改革も含めてそういうことが本当に実現できるようにしなければ問題じゃないかというふうに思うんです。
週労働時間四十時間も早くできたし、育児休業あるいは介護休業、いろいろな面で早く手が打たれている公務員でございますので、そういった面でもぜひ少し意識改革をしていただかなきゃいけないと思いますけれども、この辺はどういうふうになりますでしょうか。総務庁長官でしょうか、どなたかお答えいただけますでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/26
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027・太田誠一
○国務大臣(太田誠一君) まことに耳の痛いお話でございまして、今の中央省庁における職員の皆様の勤務の問題はしばしば指摘をされることでありますし、実は我々国会の方が一番その原因になっておるということも何となくわかっているわけでございます。
いずれ、このことにつきましてはきちんとした調査をいたさなければいけないというふうに思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/27
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028・清水嘉与子
○清水嘉与子君 明るい職場にしていただきますように、そして女性も本当に働き続けられる職場にぜひしていただきたいというふうに思う次第でございます。
ところで、この中央省庁改革法によりまして経済審議会は廃止されるというふうに伺っております。そして、その任務は経済財政諮問会議の任務の一部として行われるというふうに伺っているわけでございます。
ところが、この経済財政諮問会議についてもいろいろ議論されておりますけれども、なかなか理解してもらいにくい点がございます。内閣の国会に対する連帯責任の原則をゆがめるのではないかだとか、あるいは現実の問題として、本当に理想とするような機能が果たせるのだろうかというような疑問も聞かれるわけでございますけれども、この経済財政諮問会議の性格をもう少しはっきりと教えていただきたいというふうに思うんです。
私の理解では、この経済財政諮問会議というのは内閣総理大臣と民間の有識者の方々が大局的な見地からじっくりと審議をする、そして我が国の経済運営の大方針をまとめられて、そしてこれを閣議にかける、そしてそれが閣議決定を経て内閣の方針になる。いわば総理大臣の知恵の場としての役割を果たすのかなというふうに思うわけでございます。
特に、これまでのように大蔵省主導の予算編成ではなくて、省庁改革後は経済財政諮問会議の審議を経て閣議決定された予算編成の基本方針に基づきまして、財務省あるいは各省が具体的な予算編成作業を行うということで、内閣総理大臣の政治的なリーダーシップが非常に発揮された予算編成ができるようになるんじゃないかというふうに期待をするわけでございますけれども、改めて、新しい組織でございます経済財政諮問会議の性格、それから民間から構成員がいらっしゃるということでございますが、そういう方々が果たす役割をもう少し国民にわかりやすくお教えいただきたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/28
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029・太田誠一
○国務大臣(太田誠一君) お答え申し上げます。
今回の中央省庁改革でまず第一の柱は何かということを聞かれれば、私どもは内閣総理大臣のリーダーシップということを申し上げるわけでございます。
具体的な言葉で言いますと、閣議における内閣総理大臣の発議権を明記したということでございます。それでは、その発議の中身はだれがつくるのであるかといえば、それは文字どおり総理のリーダーシップで中身を決める、自分が発議するんですから。その中身をつくる、あるいはそれを助ける中心になる場所が内閣府の四つの会議でございまして、わけても経済財政諮問会議はその中心になるものと考えております。
経済財政諮問会議は、まさに総理の発議の内容づくりを助ける機関でございます。そして、そこに書いてありますように、経済全般の運営の基本方針、財政運営の基本、予算編成の基本方針など経済財政政策に関する重要な事項はここで審議をすると。それからさらに、経済全般の見地からあらゆる省庁の政策の一貫性、整合性をここで確保しなければなりませんので、いわゆる全国総合開発計画のような計画、「その他」と書いてありますけれども、そのほかにはいわゆる社会福祉や医療や年金制度という長期的に財政が深くコミットします大きな事業についてはその視野の中に入れて検討するということになっております。
国政の一番基本的なところを、ここで総理が議長になって、そして関係閣僚が入って、関係閣僚と、総理がみずから責任を持って任命する有識者十名以内でもって詰めた議論をするということになるということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/29
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030・清水嘉与子
○清水嘉与子君 ありがとうございます。
まだいろいろな質問を用意しましたけれども、時間も少なくなってまいりました。あと一問だけ私の方からお願いしたいと思います。
実は政府委員制度の廃止の問題と決算審査の関係なんでございます。参議院が決算を重視するということで、私どもいろいろと検討してまいったわけでございまして、先回、大島委員の方からも、大蔵大臣にもお願いいたしまして御質問いたしましたけれども、もっと決算を早く出していただいて、決算審査したものを予算に反映できるような仕組みをつくらなきゃいけないということで考えているわけでございます。
それはそれとして、予算だとか法律とか国の基本政策に関しては国会議員がもっとしっかりと討議してやらなきゃいけないという方針はもちろん賛成でございまして、副大臣の導入でありますとかそういうことは大賛成なんでありますけれども、決算審査というのは国会が議決した予算とか関連法案が政府において適正に執行されたかどうかということを審査するわけでございまして、今後の政策だとか方向を議論するわけじゃないわけでございます。
そこで、国会の決算審査に当たりましては、予算の執行に当たった政府が責任を持って説明すべきではないかというのが私ども参議院の中でいろいろ議論されているところでございます。そういった決算審査を重視する参議院といたしまして、政府委員制度の廃止というものが本院の決算審査の基盤を揺るがすことのないようにしていただきたいというふうに思うのでございますけれども、この辺についてはいかがでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/30
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031・野田毅
○国務大臣(野田毅君) 政府委員制度の廃止に伴って国会における審議がより充実されるということが大変大事なことでございます。そういうことを念頭に置いて、現在、御承知のとおり、与野党においてそれぞれ政府委員制度の廃止、副大臣制度の導入に伴う法案を準備していただいております。内容は御案内のとおりと存じます。
その中で、政府委員制度はなくなりますけれども、政府参考人という形で、過去の行政の具体的な経緯なりあるいは技術的な説明なり、そういったことに関して国会の審議がおろそかになることのないような仕組みを別途導入するということで今御指摘のような弊害が発生することは除去する、そしてより国会審議を充実するという形での改正がなされておるものと承知をいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/31
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032・清水嘉与子
○清水嘉与子君 少し時間が早うございますけれども、これで終わります。
どうもありがとうございました。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/32
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033・吉村剛太郎
○吉村剛太郎君 おはようございます。
清水委員の質問に関連いたしまして、また中央省庁、地方分権、それぞれに関連する質疑をさせていただきたい、このように思っております。
明治維新、そして戦後の大改革に匹敵する第三の改革に関連する中央省庁関連法案、地方分権関連法案、いよいよ大詰めになってきた感がするわけでございます。
つらつら思いますに、明治維新というのはまさに三百年続きました幕藩体制を大きく変える、いわゆる廃藩置県というような大変大きな改革をやりました。それに伴う明治維新では、その当時の我が国の若者たちの多数が血を流したという経緯を持っております。と同時に、その当時のアジアの状況といいますのは、列強が進出してき、植民地政策を蛮行しておったというような中で、まさにせっぱ詰まった中での改革をせざるを得なかった、このように思います。また、戦後はもう御存じのように戦争、敗戦という中で、もう選択の余地がないという形であった、このように思っております。
今回の改革といいますものは、そういう面ではまことに平和な環境の中で断行していかなければならない、このような感じがするわけでございます。したがいまして、明治維新、戦後の大改革に匹敵する大改革を断行しなければならないわけではありますが、しかし先送りしようと思えば何ぼでも先送りできる、そういう理由づけができるという感じもするわけでございます。これはまさに政治が決断をしなければならないのが今回の大改革であろうかと、このように思う次第でございます。
いよいよこの関連法案が大詰めになってきました今日、この時点で改めて総理の決意をお聞かせいただきたい、このように思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/33
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034・小渕恵三
○国務大臣(小渕恵三君) 現在御審議いただいております法律案による中央省庁等改革や地方分権は、行政改革の大きな枠組みの重要な一部として位置づけられるものであり、これらの改革を速やかに具体化させるため、法律案の一刻も早い成立をお願いいたしたいところでございます。
私といたしましては、国政の最重要課題として、また二十一世紀に向けた我が国経済社会の繁栄のかけ橋として、両改革に今後とも積極的に取り組み、その推進のため全力を尽くしてまいりたいと考えております。
今、吉村委員御指摘でございますし、しばしば本委員会でもお話がありましたが、いわゆる明治維新の大改革、そしてまた戦後の改革、そして今日のこうした改革ということでございまして、前二者はある意味では外国からのプレッシャーといいますか、開国を余儀なくされた中での近代日本の建設という意味での明治維新の改革があったわけでありますし、また戦後は、戦いに敗れ、そしてマッカーサー総司令官のもと、占領軍下における改革ということでありました。しかし今回も、考えてみますると、ある意味では、グローバルスタンダードという名のもとの世界の大きな潮に乗ってこの改革を行わなければ我が国も世界におくれをとるというある種の危機感は、これは政府のみならず国民の間にふつふつと存在したがゆえではなかろうか。
したがって、今、吉村委員は、これをおくらせればおくらせるということかなということをおっしゃられましたが、そうしたもちろん大改革をするということは大きなエネルギーも必要といたしますし、また将来に対する必ずしもすべてバラ色の世を描けるかという危機感もある意味では国民の間に存しております。ならば、改革なしでということもあるのかもしれませんが、私は、恐らくこれは国民の中にぜひこれをしなければ二十一世紀に向けて我が国の存立はあり得ないという考え方が深く根差しておるものだという認識をいたしております。
特に今回の改革は、いわば戦後の改革と言われますけれども、昭和十五年すなわち一九四〇年代において大きな戦争を前提としての中央集権的な体制をより強固にしてきたという形が実は戦後の改革の中にも連綿として残ってきたという事実もあり、そのことの効果的な意味が日本の戦後の発展にも益してきたこともまた事実であったんだろうと思いますが、そうしたことのもろもろがいよいよ限界に達してきておるという認識のもとに、こうした改革を行わなきゃならぬということで前内閣がこれを強く提起いたしたということでございました。
まさに今回の改革というものは新しい世紀に向けて日本としては何としてもなさなければならない改革である、こういう認識のもとに、これは国民的理解を得ながらぜひ実行していくべき歴史的大きな責務になっておるのではないか、このように考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/34
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035・吉村剛太郎
○吉村剛太郎君 ただいま総理の大変強い決意を拝聴いたしまして、私自身大変心強く思っておる次第でございます。まさに大変な大改革を断行していくためには、政治のリーダーシップなかんずくその頂点に立っておられます総理の決意とリーダーシップが欠かせないことだ、このように思うわけでございます。
そういう中におきまして、今回の中央省庁の改革につきまして私は幾つかの目玉がある、このように思っております。その中の一つがいわゆる内閣の機能強化ということでございます。そういう中で、内閣法に「国民主権の理念にのつとり」という文言をあえてといいますか、つけ加えてあるわけでございます。国民が主権者であることはこれは当然のことでございまして、改めてということもあるわけでございますが、しかしここであえてこの文言を内閣法のトップにつけ加えているということはこれは大変大きな意味を持っておる、このように思っております。
内閣の機能なかんずく総理の権限といいますものを強化する、そしてリーダーシップとして今おっしゃられましたような改革を断行していくということとまた逆に、内閣の機能が、総理大臣の権限が巨大化するということは、国民があるということを決して忘れてはならない、むしろここで国民と密着した形で内閣がこれからの政治を断行していくということではないか、このように思っております。
総理に改めて「国民主権の理念にのつとり」という文言の含む意義についてお尋ねしたい。それと同時に、担当の総務庁長官の御所見もあわせてお聞きしたい、このように思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/35
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036・小渕恵三
○国務大臣(小渕恵三君) 本改正は、現行内閣法では必ずしも明定はされておらない内閣総理大臣と主権者である国民及びその代表者から成る国会との関係を規定上明らかにするものでありまして、内閣の重要政策に関する基本的な方針にかかわる内閣総理大臣の発議権の明確化と相まって、内閣総理大臣の国政運営上の指導性の発揮に十分資するものであると考えております。
本件につきましては、これから御答弁いただきますが、太田総務庁長官も本問題についての認識を極めて深くいたしておるところでございまして、その思いもあろうかと思いますので、これから御答弁をいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/36
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037・太田誠一
○国務大臣(太田誠一君) 恐縮でございます。
今、総理が申されたとおり、まず、この国は国民主権の国であるということは憲法に書いてあるだけでありまして、そのほかの法律にはこの間の情報公開法で初めて登場したわけでございます。ですから、この内閣法であえて国民主権について触れることは大変意義があるというふうに考えております。
それは、まず、この国は主権者が国民であるということは、絵で言えば一番上にそれを置かなければいけない。そして、国民が選んだ国会がその次に来るんだと。国会が指名する内閣総理大臣がその次に来るんだと。そして、内閣総理大臣が指名する内閣の、今であれば十七人の国務大臣がそのもとにあるんだと。そこに憲法で言う行政権がゆだねられている、属するということさえ認識しておれば、およそ国家公務員というものは、これは国民に奉仕するためにいるのである、国民の方から物を見なければならないということになるわけでございます。さらに、憲法十五条に定めております公務員というものは一部の国民のためではなくて国民全体のために奉仕する、尽くすという考え方もまたそこで生きてくるわけでございます。
いわゆる行政権というのは、大変大きな権限を国民からゆだねられているということを、常に国民を念頭に置きながら、総理は考え、内閣の閣僚は考え、またそのもとにある国家公務員は考え続けるということをあえてこの内閣法を定めるときに盛り込むべきであるという、そのような考え方でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/37
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038・吉村剛太郎
○吉村剛太郎君 総理になったお気持ちで御答弁をいただいた感じがいたしますが、ありがとうございました。
そういう中で、今回新たに内閣府を設置する運びになっておるわけでございます。これが一つのいわゆる内閣の強化ということにつながってくるわけでございますが、内容的にはなかなか国民にはわかりにくい面が多々ございます。
そういう中で、これも何度も質問も出てきたわけですが、ちょっと御説明をいただきたいと思いますのは、「内閣府の内部部局については、その所掌事務を的確に処理できるよう、一、内閣府の所掌事務のうち経済財政、科学技術、防災等の企画立案及び総合調整に関する事務を担当する組織については、局長級分掌職七人を置くことについて政令で定め、その事務の分担については、その時々の政策課題に応じ、機動的・弾力的に内閣総理大臣が定めるものとする」、こうなっておりまして、二は、今の分掌職並びに「一以外の事務を担当する内部部局の組織については、大臣官房及び四局を置く」、一官房四局と。そのほかにこの七人の分掌職があるということでございまして、ある意味ではこの七人の分掌職の方々の動きといいますものが一つ大きな目玉になってくるであろう、このように思っておるわけでございます。
この七人については行政組織の内外から人選するということであろうか、このように思うわけでございますが、大体今の理解でいいわけでしょうか、総務庁長官に。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/38
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039・太田誠一
○国務大臣(太田誠一君) お答えいたします。
内閣府内部部局の企画立案、総合調整部門につきましては、必要に応じて行政組織の外部から人材を登用することができるようにするために、新たに導入される予定の任期つき任用制度の活用について検討し、外部からの専門的知識を有する人材の登用を図るための措置を講ずることといたしております。このため、内閣府に置かれる局長級分掌職がこの制度により任用されるかどうかについては、今後の内閣総理大臣の運用の問題となるわけでございます。
いずれにいたしましても、内閣府に置かれる局長級分掌職については、その職務の内容に応じ、行政の内外を問わず最も適切な人材が登用されるものと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/39
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040・吉村剛太郎
○吉村剛太郎君 そして、例えば経済財政諮問会議を所掌するという分掌職の局長が、何人か、一人か二人かわかりませんが、できるという形になるわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/40
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041・河野昭
○政府委員(河野昭君) 今、先生おっしゃいました経済財政諮問会議等の庶務は内閣府の分掌官のところでやることになっておりますので、まさにおっしゃいましたように、その局長級分掌官のところが庶務機能を負うということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/41
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042・吉村剛太郎
○吉村剛太郎君 庶務機能を行うと同時に、企画調整、総合調整の仕事もやるというふうに解釈していいわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/42
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043・河野昭
○政府委員(河野昭君) 内閣府の任務は主として二種類ございまして、一つは、まさにおっしゃいますような内閣を助けての企画立案、総合調整でございます。それから、さっき先生おっしゃいましたように別途局が置かれますが、それはむしろ栄典でありますとか定型的なものを行う。今、これも先生おっしゃったとおりでございますが、局長級分掌官のところはまさに企画調整、総合調整も行いますし、別途置かれている重要な会議の庶務機能も負うということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/43
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044・吉村剛太郎
○吉村剛太郎君 そして、政令で定めるわけですが、七人なり何人かは別といたしまして、これは行政の内外から任用するということですね。
そして、それの下部事務部門というのが当然あると思うんですが、これはどういう関係になるんですか。ここも内外から人材を任用するという形になるんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/44
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045・河野昭
○政府委員(河野昭君) 局長級分掌官のもとには例えば課長級分掌官あるいは一般職員が置かれることになりますが、それらをすべて含めて人材は広く登用するという方針でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/45
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046・吉村剛太郎
○吉村剛太郎君 この部分も任期つきということになるんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/46
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047・河野昭
○政府委員(河野昭君) 一般的に民間の方あるいは学者の方を行政部内に任用しますと、例えば一定期間後帰るときのポスト等難しい問題があります。したがって、そういうことを踏まえて、特に民間の方からレベルは問わず任用するときにはこの任期つき任用制度を活用していこう、そういう考え方でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/47
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048・吉村剛太郎
○吉村剛太郎君 非常に画期的で今までない制度を今度採用するわけでございまして、これがある意味では、内閣府の長として総理が縦横無尽にここを活用するかしないかが今回の改革の一つの大きなポイントではないかなと、このように私は解釈するんですが、そういう解釈でいいでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/48
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049・太田誠一
○国務大臣(太田誠一君) 今おっしゃいますように、人事、特に内閣官房、内閣府の人事について総理大臣が従来にも増して強いリーダーシップを発揮できる、またフリーハンドを持てるということが、いわゆる第一の柱である総理のリーダーシップというものを裏づけるものであると思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/49
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050・吉村剛太郎
○吉村剛太郎君 まさに内閣機能の強化、そしてその強化を実際的に具現化していくところの一つの大きなポイントがここにあるであろう、このように思うだけに、この部門が形骸化しないように、また時には行き過ぎないように、また例えば行政内部から任用した場合に、その古巣の行政のひもつきみたいなことにならないように、ここが常に柔軟に意欲を持ってそして総理の指揮のもとに活動するということが大変大きなポイントであろう、このように思います。
この総合調整といいますのは、例えば予算の編成なら編成について各省と総合調整というような、こういうことも想定されているわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/50
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051・河野昭
○政府委員(河野昭君) 内閣府というのは、まさに内閣の各省統括機能というものを助けるわけでございますので、内閣府が各省の共通的な、横断的な施策について直接調整するということは考えられます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/51
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052・吉村剛太郎
○吉村剛太郎君 従来の内閣官房との関係はどうなるんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/52
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053・河野昭
○政府委員(河野昭君) 若干法律的に言いますと、内閣官房というのは内閣を直接補佐するという立場でございます。それに対して、今回内閣府の設置法案では、内閣府といいますのは要するに内閣あるいは内閣官房を助けるということでございます。
したがいまして、大変行革会議あたり、平たく申しますと、内閣官房というのはいわゆる総合戦略機能を持つ。それに対して、若干、内閣は知恵の輪とも言われておりますが、それについて具体的に肉づけをしていく。それを通じて内閣を助けるというのが内閣府の機能である、そのように規定されております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/53
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054・吉村剛太郎
○吉村剛太郎君 何となくわかったようなわからないような感じもしますが、そこはやっぱり組織が、いずれにしましても人間がやることですから、人によってはと思いますが、しかし何といいましても内閣機能の強化、そしてその一つのポイントとなります局長級の人たちのこれからの活動といいますものは大変重要な意義を持っておる、このように思っております。
この問題は終わることにいたしまして、地方分権の方に質問を移らさせていただきますが、参考人、それから昨日私は公聴会で神奈川の方にも参ったんですが、私はやはり分権ということは、必然的に今の三千三百ございます地方自治体を大くくりで合併させていかなければなかなか受け皿として力を発揮できないのではないかな、こう感じております。
といいますのは、やっぱりこれからは自治体間の競争にもなるわけでございます。当然、自治体として一定レベルの行政サービスは断行していかなければならない。そのためには、力が弱ければできないから合併をしていくということが非常に大切なことではないかな、そうしないと落ちこぼれが出てくる。
したがって、この合併問題については私は一気呵成に、数年のうちにできればやっていった方がいいのではないかなと。これが先送り先送りになってしまうと大きな格差が出てくる。そうすると、今度は合併しようにもなかなか相手が見つからないというようなことで、いつまでも弱体自治体として残っていく。それが一つの日本の社会のお荷物になってくる。国からいつも援助なり補助をしていかなければならない。これじゃ本当の地方分権といいますものの理想にはマッチしないのではないか。そう思いますときに、私はある意味では自治体の合併といいますものは一気呵成にやった方がいいのではないかなという意見を私は個人的に持っております。
ところが、先般の参考人とかきのうの公聴会で、割とのんびりしておる。やっぱりそこは住民の意思がなければできないとか、そういう学者の方とかが非常に多いように感じたわけなんですが、私は逆に、この点こそ政治がリーダーシップを持って一気呵成にやっていく、これがこの地方分権を成功させるかどうかの一つの大きなポイントではないかなと、こんな感じがしておるわけでございますが、自治大臣のお考えをお聞かせいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/54
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055・野田毅
○国務大臣(野田毅君) 特に市町村の合併問題について、まず住民自身が合併をすることのメリットなり必要性ということを十分認識していただいて、言うなら地元主導の中で、住民主導の中で行われるということが一番望ましいことであるということは私どももそのように考えております。
しかし、それだけで事柄がうまくいくんだろうかということになりますと、ややそういう百年河清を待つという状況で本当にいいのか。特に自治体の行います仕事そのものが相当変遷があると思っています。明治初期のころにおける地方自治体の行うべき事務の範囲、それから戦後になり、今日非常に福祉に関する行政事務がどんどんふえてまいりました。そういう点で、自治体の仕事そのものが、期待される仕事というものがどんどん広がってきておる、内容も高度化してきているということにおいて、包括的、一体的な形として行政主体としてどれだけの物事が処理できるのか。そういったことを考えますと、これからさらに高まってきているニーズに十分こたえていくための行政主体としての組織力、財政力、そういった基盤を強化するということが極めて必要である。
特に、とりわけ今回この法案をお願い申し上げておりますが、従来以上に国がなすべきであると言われてきた仕事をさらに地方自治体自身の仕事としてやっていただく、地方分権をさらに推進していこうということになればなるほど、その自己決定あるいは自己責任、こういった世界の中で、自治体自身の言うなら体力を強化するといいますか、対応力を高めていくということがもう一方でどうしても必要な事柄でありまして、そういう点で、ある程度の期間の中に一気呵成に進めるべきであるというのは私もそのように認識は一致をしておるつもりでございます。そういう点で、既に合併特例法が今日まで国会で成立しておりますけれども、今回の一括法の中で、それだけではなくて、さらにいろんな形での支援策を盛り込んだわけでございます。
そういう点で、いつまでもいいということではなくて、ある程度の期間を定めた中でアクセルを踏んでいきたいということもございまして、合併特例法の期限であります平成十七年三月までに十分な成果が上げられるように積極的な努力をしてまいりたいと考えております。
そこで、せっかくですから、どういうところを今回の中でより従来以上にアクセルを踏んでおるかということを若干申し上げますと、それは合併に伴って取り残されるんではないかという懸念がございます。そういったコミュニティーにどういう意思を反映させるか。そういう意味で地域審議会を設置して、そのコミュニティーとしてもとの町村単位の地域審議会の意思を反映するような仕組みを今回新たにつくった。それから、財政支援の中で、合併特例債、これは現在過疎債で認められているようなかなり手厚い財政的な裏づけをそれに準ずる形で設けよう。それから、どうしても都道府県自身がある程度その県内の実情をよく知っておられるわけですから、都道府県の協力も必要ですし、そのリーダーシップをも期待したいということで都道府県知事の合併協議会設置の勧告ということも位置づけをし、そして住民が主導してやっていただけるということで住民が発議をしてそういう合併協議会をつくってくれという場合に、少し専門的になりますが、一定の場合にその合併協議会の設置を義務づけるというようなことも入れたわけです。
今回この法案の中には入っておりませんが、私は、さらにいろいろ検討しておりますが、法案ではなくても、例えば都道府県が、統合補助金の話もありますが、県内の市町村に対する都道府県の補助金をできればそういう合併に際して統合して運用していくような手法というものも開発できるのではないか。あるいは事務権限の配分について、都道府県が持っている権限を合併ということに関連してその市町村に対する権限移譲ということも条例においてできるような仕組みでもあるわけですから、そういったことをも含めて、国だけがやるというのではなくて、ぜひひとつ都道府県の御協力、そして何よりもやっぱり住民自身の合併に対する熱意ということをぜひ高めてまいりたい。
長くなって恐縮でございましたが、冒頭、三大時期の改革のお話がございましたが、明治のころあるいは終戦直後、いずれもおおむね市町村の数が約三分の一程度ということになっているというのは一つの参考数字であるかもしれませんし、あるいは総理の諮問機関でございました経済戦略会議においてもそれなりの数字も出ておるわけでございます。これは一つの参考資料だと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/55
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056・吉村剛太郎
○吉村剛太郎君 官房長官、先般は自治大臣に御質問いたしましたが、政令指定都市の位置づけということ、もう質問の内容は官房長官の方がよくおわかりじゃないかと思いますが、私も政令市で県会議員をやりましてそれなりの悩みがございました。長官も副知事と府議もされたわけですが、特に京都市といいますのは人口においても五十数%、予算規模においても京都府を上回っておるというように聞き及んでおります。
そういう中で、政令指定都市というのが全国に十二ございますが、人口からするともうこれで二千万あるんですね。これがどうもまだ今のところ中途半端という感じがして仕方ありません。それについて長官の体験の中から御所見をお聞かせいただきたい、このように思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/56
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057・野中広務
○国務大臣(野中広務君) 体験の中から話をせいということでございますので、政府側の答弁にならないことをあらかじめお断りを申し上げておきたいと思うわけでございます。
今、お話ございましたように、昭和二十八年から三十年にかけて第二の改革と言われる大合併が行われましたときに軌を一にいたしまして、大阪、神戸、京都、名古屋、横浜、こういう五つの府県庁所在地の大都市が府県から独立をして、そして自分たちはその行政監督下に置かれないでやっていこうというお考えが強うございまして、政令指定都市制度が昭和三十一年にスタートをしてこの五つが政令指定都市になり、その後、北九州が三十八年、福岡が四十七年ですか、それぞれ十二の政令指定都市になってきたわけでございます。
取り残してきた問題は、私は大きく分けて二つあると思います。
一つは財政制度のあり方、府県と政令指定都市、権限は社会福祉や保健衛生あるいは都市計画や土木というような身近なものは政令指定都市に府県から移しましたし、今度も都市計画などを移しましたけれども、財政制度というのを、府県のままに税等を残しまして、地方道路譲与税ぐらいがその後政令指定都市に行ったぐらいで、当時としては政令指定都市が財源も余裕がありましたから、金より実をとりたい、名をとりたいということで府県の支配下に置かれたくないという気持ちが強うございまして、結局は財政のあり方を十分議論しないまま今日に来た。だから、今日もなお取り残された問題だと。
もう一つは、私は、都道府県会議員の政令指定都市内における議員の数の問題が残されてきたままで、今日これから本当に地方自治を政令指定都市と府県間が切磋琢磨してやっていけるために、そして政令指定都市が政令指定都市として真の地方公共団体としての歩みを健全に続けていくためには、一つは現在の府県の持つ財政をどのように政令指定都市の中にきちっと位置づけていくか、もう一つは、この都道府県会議員のありようというものについて徹底した議論を行わなければ政令指定都市と府県の問題というのは解決がつかないんじゃないかと。残された大きな課題だと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/57
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058・吉村剛太郎
○吉村剛太郎君 若干時間は早うございますが、総理の御予定もあるということでございます。自治事務に対する関与の問題その他質問もしたかったわけでございますが、同僚の脇議員に後を譲りたい、このように思います。
ありがとうございました。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/58
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059・脇雅史
○脇雅史君 自由民主党の脇雅史でございます。
地方分権、中央省庁再編に関します一連の法案もいよいよ審議が大詰めになってまいりました。本当にこれまで大変な御努力をされてきた方々のおかげだということで、心から敬意と感謝の気持ちを表したいというふうに思います。
また、これもこの審議を通じまして多くの方々が言及されたことでありますが、これはまさに地方分権、行革の第一歩である、幕あけである、決して終わりではなくてこれからだということで、まさに私ども国会そして行政府の方々、国民の皆様、力を合わせて進めていかなければならない問題だというふうに感じているものであります。
実際、これから進めていくに当たっていかに有効に進めていくかということにつきまして、これまた多くの方々から言われたことでありますが、組織をどういじってもしょせん人間の問題であるということでございます。これは当たり前の話でありまして、今さら例えを引き合いに出して言うほどのことでもないんですが、例えばサッカーであるとか野球であるとか、いいチームをつくろうと思いますと、戦術とか戦略とかいろんなことを考えてみましても、しょせんいい選手を集めてきて採用して、そしてそのいい選手を育てていく、やる気を出させるという仕掛けがなければいいチームにはなり得ないわけでありまして、まさに行政もそれに漏れないというふうに思うわけであります。
そこで、私は国家公務員の人事運用、人事管理といったことについて、きょうは主として質問をさせていただきたいわけであります。
さすがに行政改革会議もその当初から国家公務員制度の改革ということを念頭に置かれておりまして、随分さまざまな検討がされてきたように思います。そして、ただいまの最終的な政府の方針といいますのが、「中央省庁等改革の推進に関する方針」についてというこの四月の閣議決定でございますか、そこに端的にあらわれていると思うわけでありますが、私は、この閣議決定の中身を見ますと、本当に感心をいたします。
実は、この方針は項目が八つほどありまして、八その他の第四「国家公務員制度改革」ということで、位置づけがずっと書いてある最後ですからやや弱いのかなと。しかし、それは単に格好だけであって、中身を見ますとこれは本当にすばらしいことが書いてあります。まさに今後の人事運用、人事管理の基本が述べられておりまして、このとおりやれば、私は間違いなく日本の行政というのは最高のものになるというふうに思うわけであります。
そこで、私はこれを実際にこの精神にのっとって進めていくという立場で、幾つかの点について御提案を交えながらお話をお伺いしたいと思うわけであります。
まずその第一が、よい人材をいかに確保するかということでございます。
これは、何年か前に人材確保について、いわゆる高級公務員と言われる方々が不祥事を起こしまして、余りひどいので、ならば少し採用を減らしてやれというような決定があったかに記憶しておりますが、私はあれを聞きまして少し唖然といたしました。今悪い人がいるから、それではこれから先はもっといい人をいっぱい採らなければいけないわけです。
そのためにはどうしたらいいか。それは、枠を狭めることではなくて、広げて多く採って、その中からいい人を選別するという仕掛けこそが重要だというふうに思ったわけでありますが、いっぱい採ると、またそれなりにいろんな問題があるから面倒くさいと思われたかどうかはわかりませんが、とにかく減らしてしまえ、減らせばいいんだ、減らせば日本の国はよくなると、あのときの新聞論調もそんなことでございました。
Ⅰ種、Ⅱ種、Ⅲ種ひっくるめて、採る人間が同じ千人なら千人と一定規模の人間を採るといたしますと、Ⅰ種の数をやたら多くするわけにはいきませんが、むしろ比率をふやした方がいい人材が採れるのは、これまた自明の理だと思うわけであります。
ですから、来年、二十一世紀を目指して新しい国を築いていこうという中で、あの方針はおやめになって、ぜひとも多くの人材を採ろう、来年の夏からそういったことを実行してみてはいかがかというふうに私は思うわけでありますが、まずその点について、総務庁長官からお願いをいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/59
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060・太田誠一
○国務大臣(太田誠一君) お答えいたします。
後ほどまた事務局の方からお答えをさせたいと思いますけれども、今度の中央省庁改革の中で、人事のあり方について大変努力をして方針の中に盛り込んでおることを評価いただきまして、本当にありがとうございます。
そして、まさに中央省庁改革法案そのものは機構や組織ということを中心にしておりますので順番がそうなりましたけれども、今御指摘のように、その重要性については、幾ら強調しても強調し過ぎることはないと考えております。
あとは事務局の方に答えさせます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/60
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061・中川良一
○政府委員(中川良一君) ただいまの先生の御指摘についてでございますが、優秀な幹部職員を確保するための方策として、ただいま御指摘のありましたような考え方を初めいろいろな考え方があろうかと思います。
現在、政府といたしましては、行政の中核を担う職員の採用縮減によって従来の行政運営のあり方の見直しが進むという、いわば行政の質的な改革という観点から、平成八年七月に閣議決定いたしましてⅠ種試験採用職員の採用者数の三割縮減というものを推進しているところでございまして、これはいわゆる不祥事の問題とは直接関連はしておらない、むしろ行政のあり方を変えていくという発想からそういうことを進めておるということでございます。
なお、Ⅰ種試験採用職員の能力、実績に基づくスクリーニングにつきましては、私どもも人事管理運営方針の中で、昇進と採用年次との結びつきを緩和した成績と能力に基づく適正な人事運用を推進する、それからそれを支えるため、職員一人一人の能力、実績を的確に把握し得る客観性、公正性の高い人事評価システムを整備するというふうに定めておりまして、今後、幹部職員に登用する際の評価のあり方を含めまして、人事評価システムの整備について検討を進めてまいりたいというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/61
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062・脇雅史
○脇雅史君 お話の向きはわかりましたが、それではこれから必要となります幹部職員の採用数、例えば将来のことを考えて百人なら百人要ると。百人必要ならば、若干事故があったりいろんなことがあるでしょうから二割か三割は余分に採ろうというのが常識でありますから、百人必要なら百二十人採ろうということになるんだと思うんですが、私はぜひその枠を広げていただきたいと思います。
今言われた仕事の中身を変えるということはもうこれで済んだわけでありますから、来年欲しいと思う幹部職員候補、おありだと思いますが、ぜひともそれに何割か増していただきたい。そして、増したらどうなるかというと、今スクリーニングという横文字を使われましたが、必ず選別制度が必要になるということでございます。
私はここで一つ選別制度の提案をしたいわけであります。
役所へⅠ種試験に通っていわゆるキャリアということで入ってそのまま役人を終えるまでキャリアだということは、ある意味では不思議なわけで、まさに入るときにある種の能力があったというだけでありますから、その後その人材がどう育つかによって全く変わってくるわけであります。ですから、ぜひとも中途で、十年か十五年の間が私は適当だと思うわけでありますが、そこでもう一回Ⅰ種職員全員についてある種の試験をしていただきたい。
私は、筆記試験は必要ないんであって、本省といいましょうか、中央省庁の幹部職員、課長でありますとか審議官でありますとか、そういった方を四、五人集めてグループをつくって、そのグループで各人一時間ほど面接をさせればいいと思うんです。いろいろな専門的知識、あるいはその人のやる気でありますとか人格でありますとか、一時間ほど話をすれば幹部職員として今後任用していくのに適当であるかどうかという判断ができると思いますので、これは単に思いつきみたいな提案でありますが、そういう中間段階における選別をしてほしい。そこには、ある意味ではキャリアをふるい落とすという仕掛けがあるわけでありますが、Ⅱ種、Ⅲ種を登用するという意味もあるわけです。
私は、Ⅰ種のキャリアは全員にその試験を受けさせるべきだと思うのでありますが、Ⅱ種、Ⅲ種で入った人の希望者もその試験を受けていただけばいい。受けて、立派な方であれば登用すればいいという仕掛けが、今は最初の任用試験だけでありますから、我が国の制度に欠けていると思うので、ここで非常に立派な人事運用の大方針を立てられたわけであります。
いろいろな改革が進んでいるんですから、検討します検討しますではなくて、来年の任用に間に合わせようと思ったらもうすぐにでも決断しなければいけないんですから、人事運用ということについても的確な決断をお願いしたいと思います。ぜひひとつよろしくお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/62
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063・太田誠一
○国務大臣(太田誠一君) まさに、今おっしゃったように、いわゆる実績あるいは成績に基づいて幹部が選任されていくというプロセスを導入したいというのが、今回の中央省庁改革と同時に私どもの方針として掲げたものでございます。
今の具体的な一人一時間のインタビューでもって選別可能であるという御提案は、まことに積極的な示唆に富む内容でございますので、ぜひ検討させていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/63
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064・脇雅史
○脇雅史君 総理、ずっとお聞きをいただいて恐縮でありますが、最後にまとめて御意見をお伺いしたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
次の質問でございますが、先ほどの方針の中でも書かれています女性の問題でございます。
女性を積極的に登用していこう、男女共同参画の推進ということがうたわれておりますが、私は、日本の女性は世で言われるほど地位は低くない、世界の中で悪いようなことを言う人もいますが、多分世界に冠たる女性王国ではないかなという気がいたしております。
それは、どこの家庭にお戻りになっても、男と女のどっちが威張っているかというと、まず間違いなく奥様の方が実権を持っているわけでして、要するに日本の場合は家庭の中で女性が実権を持ってしまっている。男は家庭からほとんど出てしまう。その分、社会の中で男が実権を握っている。社会と家庭が明らかに分化して、それぞれが生きる道を持っている。これは非常にまずいわけで、ある意味で男性を家庭に帰したい、女性に社会に出ていただきたい、その方策を進める必要があるというふうに認識をするわけであります。さらに、社会的に非常に立派な女性が多いわけですから、二十一世紀にはぜひとも女性が重要な地位につかれるような、そういう社会にしたい。まさにこれもそうなっていると思うんです。
私、そういうことを進めるのに一番いい方策は何かということを考えまして、これは中央省庁のⅠ種試験、ここで登用することではないかというふうに思うんです。これは、ただほっておいてできるわけじゃないんです。ある意味で、女性の方には失礼ですが、余計なことをするな、実力で勝負できるんだと言われる方もたくさんおられると思います。まさに、能力で一緒に勝負すればいいんですが、悪い言い方ですが、いろいろ社会的、歴史的に女性というのはハンディキャップがあるんです、今。ですから、そのハンディキャップをカバーしてあげる施策が私は必要だと思うんです。ですから、二十一世紀に本当に女性に参画してもらう社会をつくろうと思えば、まずⅠ種の中に採用枠として、全体で百人いるのなら三割、三十人は女性を採る。(「五割」と呼ぶ者あり)五割でもいいんですが、そういうことをやる必要がある。
なぜ今できないかといいますと、これは、実際に任用の任に当たった方はわかると思うんですが、キャリアは、来年例えば外務省で二十人採るときに、では五人なり十人なり二十人のうち女性を採れるかというと、やっぱり女性の方は途中でやめるかもしれないとか、いろんな不安があって現実にできないんですね、やりたくても。ですから、その一定の枠の外にその枠をとる。しかも、入ってもらったからそのままⅠ種キャリアになるわけではありません。先ほど申し上げたように、途中のスクリーニングは受けてもらう。もともと男百人で競争するところを女性も入れて百三十人で競争してもらって、しかるべき人間まで絞ってもらえばいい。
強制的にというと言い方は悪いですけれども、女性の任用枠を採用すれば、私は二十一世紀の半ばには本当にキャリアを積んだすばらしい女性が社会にいっぱい出る世の中になる。これを実現するためには、そういった思い切った施策こそが必要なのではないかなと。これまた思いつきでまことに恐縮でありますが、太田総務庁長官の英断をいただいて、来年度から、この行革をやっていくという本当の初年度からやることがこれは大事なんです。途中はだめなんです。ですから、今一連の改革をやっているんですから、ぜひとも御決断をいただきたいというふうに思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/64
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065・太田誠一
○国務大臣(太田誠一君) お答えをいたします。
これは平成八年の閣議決定でございますので、そのいわゆる枠を余分にとること、そして女性の採用についても同じ内容であったかと思うんですけれども、これはぜひ総理の方に、総理を初め閣議で決めなければいけないということで、総務庁長官の一存ではできないということです。
ただ、そういうことで大いに啓発される御意見でございますし、私も時々、女性のⅠ種の職員の方々が持っておられる潜在的な女性の力からすれば、やや少ないなという感じを持っております。その理由はさまざまであろうかと思いますけれども、人生設計の中であるいは勤務の状態で、先ほども清水委員から御質問ありましたように、勤務の状態でこれはちょっとたえられないというふうに判断をされる若い女性が多いのではないか。そこはまた別の意味で改善の必要がある点だと思っております。
御指摘の点についてはよく考えさせていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/65
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066・脇雅史
○脇雅史君 今の条件では、女性の方も国家公務員としていこうかということに二の足を踏まれることがあると思うんです。やっぱりいろんなハンディがあるんです。だけれども、女性が多くなることによってそれは自然に解消していくんです。鶏と卵みたいな話ですけれども、ぜひとも最初に鶏になってもらわないと卵は産まれませんので、よろしくお願いします。
それから次に、技術と事務というそういった長年の問題でありますが、私はこれを読みまして、技術屋の一人としてまことにすばらしい、よくぞここまで書いたなというふうに感心しているんです。
先輩で宮本武之輔さんという、これは内務官僚でありますが、土木屋なんですけれども、戦前そういう問題で技術屋といいましょうか技術家の処遇を上げていくということに大変お力を尽くされた方があるわけです。御本人は最後に内閣の企画院次長という、いわば今で言う中央省庁の非常に大変な省庁の事務次官というポストだと思うんですけれども、そこまで上り詰められた方でありますが、その宮本武之輔さんがこれを読んだら、本当に涙を流すんじゃないかと思うくらい大変すばらしい書きぶりであります。まさにどこの門から入ったかとか、どこの学校を出たかとかそういうことは関係ない、その人がどういうキャリアを積んでどんな能力を持っているかということに着目してやるんだという非常にすばらしい、本当に私は感心しているんです。
その感心した目でちょっと内閣官房の条文を読ませていただきますと、これはちょっと目を疑ったといいますかあれっと思ったんですけれども、内閣官房は事務官しか書いていないんです。こんな精神がありますからまさか技術屋を雇わないというようなことは当然ないでしょうし、内閣官房にはこれから先ますます技術的な素養を持った人間が必要だと思いますから、どういうことかなというふうにちょっと疑問を持ったんですが、この点について御説明いただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/66
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067・太田誠一
○国務大臣(太田誠一君) 内閣法の改正におきまして技官を置く旨の明文の規定はありませんが、内閣官房に内閣事務官以外の職員を置くことももちろん可能でございます。もとより、技官を置く旨の明文の規定がないということをもって技術系の職員が内閣官房の事務につくことを排除しているのではありません。実際、これまでも各省の技官を内閣官房の事務に従事させているところであります。
なお、去る四月に中央省庁等改革推進本部において決定されました「中央省庁等改革の推進に関する方針」で、今触れていただきましたが、「技官について、キャリアパスの柔軟化を検討し、事務官と技官の別によるポストの固定化をできるだけ排し、適材適所の人事運用を推進する。」等とされているところでありまして、このような点も踏まえつつ、今後とも引き続き適切に対処してまいりたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/67
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068・脇雅史
○脇雅史君 お答えを聞いて安心いたしましたが、字面だけ見ますとちょっとあれっと首をかしげることもありますし、これから先、法律はそのまま生きていくわけでありますから、運用について間違いのないように、将来に向けて今答弁されたことを、事務局といいましょうか、しっかりと受け継がれていくようにお願いをしたいというふうに思います。
それから次に、定年延長の話であります。
いろいろな世の中の動きの中で公務員も余り早くやめさせずに少し定年を延長しようかというお話がありまして、それは私はもっともなことだというふうに思うわけであります。Ⅰ種に限りまして私は申し上げたいんですが、先ほど申し上げた、Ⅰ種で入ってスクリーニングされて本当の幹部職員として登用されてきた人間も、やはり最後は本省の課長になり審議官になりという段階で選別をされて、ポストが減ってきますから最後の五年ないし十年というのはふさわしいポストがなくなるわけです。トップを走っていく者とそうでない者と明らかに分かれてくる。
そのⅠ種職員について定年延長するとどうなるかというと、例えば課長になった人がその上へ行かないと、もういつまででも、六十まで課長だ、そうすると若い人は課長になれないしどうするんだと。Ⅰ種の運用上非常にいびつな社会が生まれますし、それはまた新たなポストをつくろうということで、窓際族と言っては失礼ですが、何とか官何とか官みたいなものをたくさんつくりますと、これは私は職員の士気向上にならないと思います。我が国の行政組織、Ⅰ種公務員だけが別に国を背負っているわけでも何でもない、皆さんで背負っているわけですけれども、Ⅰ種のあり方として、幹部職員のあり方として、やはり新たな道を見つけておやめになっていただいた方が全体はいい組織になると私は思うんです。
やや乱暴なところや失礼なところはあるんですが、そのやめていく職員を天下りとかなんとかと言うのはまことに妙な言い方で、これは首切り職員です。天下りどころか首切り職員。その人たちは生きていかなければなりませんから、それは余り手厚い、役所にいるよりもいい給料をもらっているというのは妙な話ですからその辺はいろいろあるんでしょうが、やはり再就職という格好できちっと、そういう受け皿はあると思うんですね、そういう人たちに向いた仕事もたくさん世の中にはあるはずです。そこを全体の定年延長と切り離して、Ⅰ種試験合格者といいましょうか、最後の幹部登用者については早くやめさせられることもあるという覚悟を持って仕事をしていただいた方がいいのではないか、それだけ厳しい競争もしていただく、私は幹部職員はそういったポストであると思うんです。ですから、天下りどころか首切りでどんどん首にしていい人だけ残す、いい人というか最後に適した人間を残す、そういう厳しい世界だということを世に知らしめるということも大事だろうと思うわけです。
これは人事院総裁と総務庁長官にお聞きしたいんですけれども、またぶしつけな提案で恐縮でありますが、よろしくお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/68
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069・中島忠能
○政府委員(中島忠能君) いろいろな御意見があろうと思います。
ただ、私たちの推計によりますと、現在Ⅰ種で採用された職員の半分程度の方が五十三歳以下で退職して民間企業とか特殊法人等に再就職している。そういう実態というのは、やはり今の世の中では受け入れられていないんじゃないかというふうに認識することが私は物事の出発点だというふうに思います。
ただ、今、先生がおっしゃいますように、能力のある方あるいはまた民間からぜひとも来てほしいというふうに言われる方がそれぞれの能力、適性に応じて民間企業等に再就職されるということは、人材を有効に使う面からいきましてこれは奨励すべきことだというふうに思います。そういう観点から私たちはこの問題を解決していかなきゃならないといいますか、考えていかなきゃならないというふうに思います。
したがいまして、Ⅰ種の職員につきましては、何といいましても現在の早期退職慣行というものを改めていただくということが物事の出発点だろう、その上で今、先生がおっしゃいますようなことを考えていく、そういう順序じゃないだろうかというふうに思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/69
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070・中川良一
○政府委員(中川良一君) この方針にも書いてあるわけでございますが、基本的には高齢社会の到来に伴いまして高齢者の知識、経験をなるべく活用していこうということで、公務部門におきましても六十五歳までの雇用に積極的に取り組んでいこうという考えがあるわけでございます。
それからまた、ただいまもございましたが、いわゆる天下りにつながるとして批判のあります早期退職慣行を是正して国民の信頼確保に努めるということも必要でありますし、一方、個人の能力を生かした早期の転身というものは、これは認められていくべきだろうと思います。
そういうことで、今回の方針におきましても、複線型の人事管理を推進することなどによりまして公務の活性化にも配慮しながら在職期間の長期化を進めるとともに、早期の転身の円滑化などの退職パターンの多様化を進めるといったような改革方策を盛り込んでおりまして、今後この方針に沿って私ども関係省庁と相談してまいりたいというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/70
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071・脇雅史
○脇雅史君 この問題につきましては全く意見が対立したわけでありますが、私は、なるほど若くしてやめていった方々の再就職の仕方について批判すべき点がなかったとは申しません、いろいろあったんでしょう。それは正すべきなんですが、それと最後まで残せばいいというのとは全く次元が違う話だと思うんです。組織の活性化、国民のためになる組織はどっちか、いい行政組織を国民のために残すわけですから、それが第一なんです。定年までいるのが第一というのは、人事院総裁には失礼ですが、私は間違いだと思います。若年をやめるのがいいことではないんです。
さっき太田長官が言われた国民が上にあってと、そういう絵をかいて、幹部職員のあるべき姿は何だ、国民のために一番いい組織は何だということになったときには、やはり私は早期退職はあった方がいいと思うんです。ただ、早期退職をした後、国民の皆さんに後ろ指を指されることなく、しっかりとした制度できちっと再就職の世話をすればいいんです。そういう制度を用意することこそが仕事なのであって、前提が私は違うと思います。
国家公務員、みんなはいいです、Ⅱ種、Ⅲ種はいいですから、Ⅰ種だけ変な特権意識で言っているわけじゃないんですが、国民のための組織という意味で私はそう考えます。
いろいろ御意見があるわけですから構いませんが、こういう意見もあるということをよく御理解いただいて、その辺は内部でさらに詰めていただきたいというふうにお願いをしておきます。
それからその次に、公務員の倫理法の問題であります。
これも、一連の不祥事がありまして、いろんな検討がなされて、議員立法で現在法案が国会に出ているわけでありますが、なかなか審議が進んでいないという状態であります。公務員に悪いことをする人間がいる、どこにでも悪いことをする人はいるわけでありますが、それをどうしたらいいか。不祥事をなくすために最大限の努力をしなければいけない、まさに私はそのとおりだと思うわけです。
こういう言葉があるんですね。熱い思い、冷静な判断、毅然とした行動、その三つそろわないと世の中はうまくいかないと。熱い気持ちが熱い判断になっちゃうことがあるんです。これをやりますと、ろくなことにならない。私は、今出ている法案の悪口を言うわけではありませんが、非常に熱い気持ちに動かされて、熱い判断の部分があるのではないかなと。
また、例え話で恐縮ですが、交通事故がたくさんある、交通事故を減らさなければいけない、どうしたらいいか。個人的に考えれば、そうだ、家にいて一歩も出なけりゃいいんだ、絶対交通事故は起こらない、どうだと。しかし、それはどうだにはならないんです。
ですから、国家公務員に不祥事をさせないためにはどうしたらいいか。隔絶しちゃえ、一般の世の中から隔離すればいいんだ、不祥事は起きないじゃないか、どうだと言ったところで何にもならない。要は、公務員の士気を確保した上でいかに立派な仕事をしていただくか。
どうしてもリスクはあるんです。リスクを全部減らそうというのは、これまた私は間違いだと思うんです。悪いことをした人は徹底的に罰すればいいんです。そういうことで対処する中で、悪いことを起こさないように倫理面の教育をする。いろんな活動をするのは結構です。
だけれども、リスクはゼロにはならないんです。リスクをゼロにする方向は、先ほどの話じゃありませんが、私は国民のためにならない組織になると思いますので、これは議員立法で出ておりますが、その辺は今後十分に審議を尽くしていかなければいけないというふうに思います。
政府側としても白書を出されたりいろいろお考えだと思いますが、現時点での御意見を承りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/71
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072・太田誠一
○国務大臣(太田誠一君) お答えいたします。
今おっしゃることは、これまた十分我々踏まえて考えていきたいと思います。
しかし、今のところでは、公務員倫理規程を平成八年の事務次官会議などの申し合わせに基づいて訓令として各省に設け、制定しておるわけでございまして、また公務員倫理法案は多分この国会で提出をされるということであろうと承知いたしております。
そういう中で、いわゆるガラス張りのルールを設けて、そしてそのガラス張りのルールに違反したことをもって厳正な対処をしていくということであって、立派な方々をあらかじめ予想して、手とり足とり、はしの上げおろしに介入するということは本来は望ましくないわけでございますが、そういうガラス張りのルールでやるということはおっしゃるとおりであろうかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/72
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073・中島忠能
○政府委員(中島忠能君) 三つのことを申し上げて、御理解を賜りたいと思います。
一つは、今回の不祥事を通じまして私たちがいろいろ検討した結果、人事行政施策のみならず、一般行政施策も含む総合的な対応というものをしていかなければならないだろうというふうに思います。
現在、二つの法案が国会に提出されておりますけれども、その二つの法案とも、政府に対して総合的な対策を立てなさいということを促しておるんだというふうに思います。私たちは、そういう認識に立ちまして、去る六月二十五日、白書で一応の私たちの考え方を公表いたしました。それが第一点でございます。
第二点は、事業者と公務員との接触の仕方について、現在、公務員の中においても、また政治の世界においてもあるいは国民の世界においても、一つの合意が成立していないということがあるだろうと思います。
先生も心配されておりますけれども、やはり少し厳し過ぎるんじゃないか、実態に合わな過ぎるんじゃないかという御意見もございます。私たちは、国会でその点は十分御議論いただき、そしてまた政令あるいは省令でそういう基準というものを定めさせていただく、そのことによりまして公務員に一つの行動基準というものが示されるだろうというのが第二番目でございます。
そして第三番目に、そういうふうに決めましたものをいかに確保していくか、担保していくかというシステムをつくっていただくということじゃないかと思います。
そういうことを合わせまして、公務員の不祥事が防止できるように私たちも最大限の努力をしてまいりたいというふうに思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/73
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074・脇雅史
○脇雅史君 どうもありがとうございました。
この問題については、やはり熱い気持ちと冷静な判断ということで、間違いのない方向性を出せるように努力をしていきたいと私も思います。
それから、先ほど来申し上げておりますように、人事管理、人事任用といった問題について非常に大きな変換点にあるといいましょうか、非常に立派な方針も出ていますし、これまでも人事院はさまざまな御苦労をされてきたわけであります。いろいろな人事院規則とか、本当に細かい大変な御努力をされてきたわけでありますが、これからそういったものを見直して新しい社会に見合ったものにしていかなければいけない、そういう努力がやはり必要なんだろうと。いろいろな改革がなされておりますが、人事院の改革ということについてもやはりあるんだろうと思うんです。
そういった今までのいろいろな規則、制度等をひっくるめまして、人事院として今後どのようにされていこうとしているのか、抱負の一端をお聞かせいただければと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/74
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075・中島忠能
○政府委員(中島忠能君) かねがねいろいろな場面を通じて御指導いただいておりますが、社会が変われば当然行政に対する期待も変わってくる、それに対して行政組織を変え、また人事行政も変えていくということが必要だということでございます。そうなりますと、人事院の組織と人事院の体制というものも整備し直さなきゃならないという御指摘だと思います。
私たちは、そういう認識に立ちまして、中央省庁の改革に合わせまして人事院の組織というものも再編成いたしたい、そして時代の要請に応ずる政策を適時適切に提言できる体制というものを整えていきたい、そしてそういう覚悟で努めてまいりたいというふうに思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/75
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076・脇雅史
○脇雅史君 総裁から大変力強いお言葉をいただきまして、心強く思っております。
冒頭から申し上げておりますように、いろいろな一連の改革と人事運用の問題というのは車の両輪でありますから、今後とも頑張っていただきたいというふうにお願いを申し上げます。
やや提案も込めまして幾つか述べさせていただきました。いい人事管理の制度があって、良質な人材を採ってそれをうまく育てていく、士気の高い公務員をつくっていくという観点だと思うわけでありますが、これまでのやりとりをお聞きいただきまして、総理大臣の御決意といいましょうか、お考えがございましたらお願いをしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/76
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077・小渕恵三
○国務大臣(小渕恵三君) 行政を支える公務員制度の改革は、中央省庁等改革の一環として極めて重要な課題であり、「中央省庁等改革の推進に関する方針」において、国家公務員制度の具体的改革方策を国家公務員制度改革として盛り込んでおるところでございます。今後は、国民の信頼にこたえ得る公務員制度を構築すべく、同方針に基づき、公務員の人材確保から退職管理にわたる全般的な改革に速やかに着手し、政府全体として積極的かつ着実に推進してまいりたいと思っております。
ただいま、脇委員の御提案も含めましてお考えを承りました。みずから行政の場におりましての経験があるわけでございますので、そうした意味でお聞きをいたしておりまして、種々検討をいたしていかなけりゃならない課題が多く存するというふうに思っております。
私ごとでございますが、私、大学を出て直ちに国会議員になっておりまして、役所の経験というのは皆無でありますが、その後、議院内閣制でございますので、しばしば行政の場にも立たせていただいておりまして、日本の公務員が持つモラール、士気と、そしてモラル、規律、こういうものがしっかりと存するところに日本の行政が円滑に進むゆえんのものがあるという認識を深くいたしておるところでございます。
今般のこの国家公務員制度改革につきましての「中央省庁等改革の推進に関する方針」につきまして、今、脇委員にはそれなりの評価をいただいておるものと思っておりますが、しかし実態に触れましては、いろいろスクリーニングの問題あるいは女性職員の採用問題等々いろいろと御経験に基づきまして御提言もありました。
こうした点も含めまして、今後実行いたしていきます段階におきましては十分留意を払い、もって、公務員の皆さんがその高い倫理性のもとに国民に信頼される行政の担い手としてさらに大きな役割を果たしていただくことのできるように諸問題について対処してまいりたい、このように考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/77
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078・脇雅史
○脇雅史君 大変にありがとうございました。
時間が参ったようでございますので、大蔵大臣と建設大臣にお聞きしたいことがあったわけですが、失礼をさせていただきます。
これで終わります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/78
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079・吉川芳男
○委員長(吉川芳男君) 午前の質疑はこの程度にとどめ、午後二時まで休憩いたします。
午前十一時二十六分休憩
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午後二時開会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/79
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080・吉川芳男
○委員長(吉川芳男君) ただいまから行財政改革・税制等に関する特別委員会を再開いたします。
休憩前に引き続き、内閣法の一部を改正する法律案外十七案を一括して議題とし、質疑を行います。
質疑のある方は順次御発言願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/80
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081・江田五月
○江田五月君 御苦労さまでございます。
いよいよ長丁場の委員会も締めくくり総括ということになってまいりました。私は、これまで二時間質疑をさせていただいておりまして、ちょっと長くやり過ぎたなと思っておるんですが、最後にもうあと一時間ということでよろしくお願いいたします。
今回の中央省庁改革法案についての衆参の特別委員会の質疑の中で、まだ非常に多くの議論が積み残されておりますが、きょうは各論の一つとして特に原子力安全行政、それからプルトニウムの問題について質問をいたします。
私は、実は恥ずかしながら、平成五年から六年にかけて細川内閣のもとで科学技術庁長官として原子力行政を担当したことがございます。そのため、この問題については特に関心も強いわけですが、まず総務庁長官にお伺いします。今回の省庁改革で原子力安全行政は一体どういうことになるのか、説明してください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/81
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082・河野昭
○政府委員(河野昭君) 原子力安全行政でございますが、基本的に申しますと我が国は原子力安全に二重のチェック体制をとっております。
したがいまして、一次的なチェックについては、特にエネルギーの利用に関する安全行政というところで経済産業省が所管する。それからもう一方、内閣府にいわゆる原子力安全委員会という独自の事務局を置きましてそこで二次チェックするというのが基本的な形でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/82
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083・江田五月
○江田五月君 従来は、まず現場といいますか、原子力については科学技術庁が担当している部分があった。それからもう一つ通産省が担当している部分があった、今もあるわけですけれども。両省に分かれてそれぞれ安全というものをしっかり見て、それについてダブルチェックで原子力安全委員会がチェックしておった、こういう体制。
それが今度は、文部科学省が見るところと経済産業省が見るところ、そしてそれについて原子力安全委員会というものがダブルチェックしている、そういうことですね。そこで、内閣府の中に独立の事務局を持つ原子力安全委員会というのが置かれると。
総務庁長官、原子力安全行政の主務大臣というのは、内閣府に置かれるわけですから、したがって内閣府の最高責任者というのは、あるいは主務大臣というのは内閣総理大臣ということになる、これはそれでいいんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/83
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084・河野昭
○政府委員(河野昭君) 内閣府の主任の大臣は内閣総理大臣でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/84
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085・江田五月
○江田五月君 ということは、原子力安全委員会の機能は内閣府のもとで今まで以上に充実強化されていくと期待をしたいところですが、そう期待してよろしいですか、大臣。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/85
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086・太田誠一
○国務大臣(太田誠一君) お答えいたします。
すべての重要課題については、ここで衆議院も参議院も御質問を受けるたびに、重要だから内閣府に置けという御意見が多かったわけでございますが、そういう気持ちもあろうかと思いますし、またダブルチェックと言う以上、異なったところに置く方が本当のダブルチェックになろうかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/86
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087・江田五月
○江田五月君 内閣総理大臣が主務大臣でこの原子力安全委員会というものを管理しておる、したがって国会を通じて国民に説明をする責任をとっていくその主務大臣は内閣総理大臣である、こういうことになるわけです。
実は、現在の原子力安全委員長の佐藤一男さんが、私ここに持っておるのですが、「行政改革を通じての原子力安全委員会のあり方について(要請)」、こういう文書を持ってみずから各方面を回られたということだそうであります。私ども民主党にも来られました。住専機構の社長のときの中坊さんのような、異例ですが、熱情あふれる行動であると思います。
この文書では、「当委員会」、すなわち原子力安全委員会は、「私ども」というのは委員長、「私ども五人の委員の下に、二百人に及ぶ審査委員等の専門家を擁しておりますが、その能力を有効に発揮するためには充実した事務局の運営管理能力が必要です。」「現在、科学技術庁原子力安全局が局を挙げて事務局としての役割を果たしていますが、当委員会が内閣府においてこのような機能を継続するに当たって、高度な行政手腕を有する局長級の事務局長と、その下に六十ないし七十人の事務局体制が是非必要です。」「当委員会の機能を十分に発揮できるようにするため、何とぞ、事務局体制の整備についてご高配のほどお願い申し上げます。」、こう書かれております。
官房長官、内閣府の事務局体制の整備、これは官房長官の任務ということになると思うんですが、この安全委員会委員長の、事務局体制をきっちりやってくれ、従来は科学技術庁の安全局百五十人からの体制でやってもらっておったが、そこから離れるということになるのでというこの要請について、この事務局体制を整えていく責任をお持ちの官房長官として、どういう御見解でしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/87
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088・野中広務
○国務大臣(野中広務君) 御指摘のように、従来と異なりまして、内閣府に原子力委員会として単独の事務局を持つわけでございますので、その機能が充実をされるように目下検討しておるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/88
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089・江田五月
○江田五月君 これはぜひ万遺漏なきようお願いをしなきゃいかぬと思います。
さて、小渕総理、原子力安全行政の主務大臣、最高責任者は総理大臣。二〇〇一年の一月の時点で固有名詞がだれかというのはわかりませんが、総理大臣であることは間違いない。少なくとも二〇〇一年一月を含む来年度予算の概算要求はこの夏から始まるので、原子力安全行政の主務大臣、最高責任者として、国民の重大関心事である原子力安全行政の充実強化について、総理大臣としての決意と方針をお伺いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/89
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090・小渕恵三
○国務大臣(小渕恵三君) 現在の行政機構の現状であれ、また将来この内閣府におきまして原子力委員会並びに原子力安全委員会が機能を発揮するにいたしましても、原子力の持つ安全性にかかわる問題につきましては国民も極めて厳しい感じを持っておることと思いますし、いやしくも諸外国で残念ながら起こりましたような事故を絶滅していくためには完全なコントロールをしていかなきゃならぬと思っております。
そうした意味におきましての予算並びに機構その他につきましては、向後、万全を期していく体制を整えてまいりたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/90
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091・江田五月
○江田五月君 総理大臣という立場、内閣全体を総理する立場ということもありますが、原子力安全委員会という委員会のことについて、国会を通じて国民に責任を負う主管の大臣は総理大臣になるわけですから、この点は従来とは変わってくるわけで、ひとつ気持ちを新たにしてやっていただきたいとお願いいたします。
科学技術庁長官にも伺いますが、新たに設置される文部科学省では原子力安全行政というのはどういう位置づけになるのでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/91
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092・有馬朗人
○国務大臣(有馬朗人君) 科学技術庁長官の先輩にお答えを申し上げる次第でございますけれども、行革が行われたときにどうなるかという御質問でございますが、一つ、文部省といたしましては、文部科学省設置法案の中に、「国際約束に基づく保障措置の実施のための規制その他の原子力の平和的利用の確保のための規制に関すること。」を所掌することとなっております。したがいまして、文部科学省といたしましては、我が国の原子力開発利用を厳に平和利用に限るというふうにしていくことが重要な役割でございます。
それから、その成果、実績を国際社会に発信いたしまして、国際的な核不拡散体制の維持強化へ貢献していくことが重要と考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/92
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093・江田五月
○江田五月君 どうもやりにくいんですが、大先生に向かって余り批判的なことも慎みたいと思うんですけれども、私は、安全行政について文部科学省でどうなるかということを聞いたんです。今のお答えは全然違うんですね。今のお答えは平和利用についての規制のことをお答えになったんですが、二つあるんです。安全規制の方は。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/93
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094・有馬朗人
○国務大臣(有馬朗人君) まず、我々の認識を申しますと、原子力安全委員会は原子力安全確保におけるかなめである、こういう重要な役割を担う機関だと思っております。今般の行政改革においては、原子力安全委員会は特に内閣府に独立の事務局が置かれることになる。これは先ほど先生の御指摘のとおりです。この事務局は、安全委員会の活動を支える極めて重要なものであると考えております。行政改革後もこのような安全委員会の機能がより一層発揮できるよう事務局体制をつくっていかなきゃなりませんが、文部科学省としても、これに対してふさわしい事務局体制ができるよう大いに努力をさせていただきたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/94
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095・江田五月
○江田五月君 それもちょっと違うんだろうと思うんですね。原子力安全委員会というのは独立の委員会で、内閣府の中に置かれて、そして事務局は独立にそこにつくられるんで、もちろんそれは固有名詞で言えば文部科学省から送られる人はおられるでしょうが、文部科学省が原子力の安全についてどういう役割を果たすかということとは違うんです。
私の方で言います。
試験研究用の原子炉施設、それから核燃料等の使用施設の安全規制というものを文部科学省は行うと。それでよろしいですよね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/95
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096・有馬朗人
○国務大臣(有馬朗人君) はい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/96
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097・江田五月
○江田五月君 さて、ちょっと具体的なところへ入りますが、例えば核燃料サイクル開発機構、これは文部科学省と経済産業省とが共管をする。共管をするんですが、例のFBRですね、「もんじゅ」、これは一体どちらが所管をすることになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/97
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098・有馬朗人
○国務大臣(有馬朗人君) 「もんじゅ」の研究開発は、これはサイクル機構が行います。そして、その一次的な安全に関しては経済産業省になると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/98
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099・江田五月
○江田五月君 サイクル機構は共管ですが、「もんじゅ」は、発電の用に供する研究開発段階炉の安全規制ということで、その安全規制は経済産業省に移る。「もんじゅ」というのはまだ原型炉、しかしまだまだ試験研究段階で、現にああいう事故が起きたりして今ストップしているわけです。まだまだこれからどうなっていくかわからないという技術開発が経済産業省の所管というのは非常に危ういものを感ずるんですが、いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/99
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100・有馬朗人
○国務大臣(有馬朗人君) 先生もう非常に詳しく御存じのように、「もんじゅ」はおっしゃられるように研究開発部門、原型炉としての部分がある。同時に発電はいたします。もう既に発電をする。そういうところで、発電をする、エネルギーが取り出せるという、電力が取り出せるという意味で、経済産業省がそこのところはチェックする、こういうことになるわけでございます。
そういう意味で、中央省庁等改革基本法を踏まえまして、エネルギーの利用に関する原子力の安全確保については経済産業省が、科学技術の原子力の安全確保については文部科学省がそれぞれ所管することになりました。そういう意味から、「もんじゅ」の中で、再処理工場の安全規制とかそれから発電の部分ということに関しては経済産業省が検査をしていくことになると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/100
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101・江田五月
○江田五月君 まだ高速増殖炉というのは本当に研究開発段階の危うい技術なんです。経済産業省というのは、やっぱりどんどん進めていくという志向性を持っているんだろうと思うんですけれども、幾ら発電をするといっても、発電をしてみたらどうなるだろうというのでナトリウムを回しているわけですね。それが経済産業省というのは、やはりこれは非常に危ない、原子力安全・保安院というものをつくってそこで安全規制を行うということになるんでしょうが。
それでは、「もんじゅ」はプルトニウムを使うわけですが、その「もんじゅ」の平和利用についての規制、これはどこが行うんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/101
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102・間宮馨
○政府委員(間宮馨君) お答え申し上げます。
いわゆる核燃料サイクル機構そのものの機構法におきまして、平和の目的以外の活動をしてはならないという条項がございまして、そこを基本といたしまして平和利用は担保されているというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/102
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103・江田五月
○江田五月君 いいですか。「もんじゅ」というものの施設は経済産業省が担当する、しかしその平和利用の観点からの規制は文部科学省がこれを担当すると。入り組んでいるんですね。
ちょっと総理大臣にお伺いしておくんですが、原子力の利用というものは、原子力基本法で平和目的に厳密に限定するんだ、間違っても高濃縮ウランやプルトニウムを核兵器に転用することは絶対ないんだと。それは意思も持たないし、そういう制度もないし、そういう技術開発もしないんだと。これは我が国の最高の国是であると私は理解をしておるんですが、同じ理解と考えてよろしいですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/103
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104・小渕恵三
○国務大臣(小渕恵三君) 我が国は非核三原則を遵守しておることでございますので、今お話しの点につきましてもその線上にあるものと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/104
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105・江田五月
○江田五月君 今私は、そういう意思も持たないし、そんなことができるような制度にもしないし、そうした核兵器をつくるような技術開発もしないということを言いました。そして、これは総理、国際社会からもそういう疑いを持たれないように、そうした核兵器転用可能性のある物質の扱いについては、もういやが上にも透明性を増していく、IAEAの査察も厳重に受けていく。きょうも参議院の本会議で先ほど核不拡散条約の追加議定書の締結の承認、承諾がされました。こういう厳重な国際社会の中での透明性確保のもとにやっていくんだ、これも我が国の重要な国是と考えたいと思いますが、いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/105
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106・小渕恵三
○国務大臣(小渕恵三君) そのとおりと心得ております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/106
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107・江田五月
○江田五月君 そこで、ちょっと細かなことに入って申しわけないんですが、高濃縮ウランというのはウランの濃縮技術の関係、それから通常我が国で用いているプルトニウムというのは、239の濃度といいますか、含有の割合が低いから簡単に核兵器になるものではない、そういうことでやっておるわけですが、これは有馬先生おわかりですよね、「もんじゅ」のブランケット燃料というのは、ウラン238という非核分裂性のものをプルトニウムの燃料の外側にずっと置いて、そこへ中性子が当たってこれが239のプルトニウムになって核分裂性のものになるから、発電をしながら燃料ができる、こういうことですよね。
この「もんじゅ」のブランケット燃料の再処理によって得られるプルトニウムは、そういう次第ですから239の度合いが非常に高い、核兵器級のプルトニウムがそこでできる。ここをどういうふうに透明性を保っておくかというのは、これは日本の原子力平和利用行政の言ってみればかなめのところであろうと思うんですが、このブランケット燃料再処理施設、RETF、リサイクル・エクイップメント・テスト・ファシリティー、これはどこの所管になりますか、大臣。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/107
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108・興直孝
○政府委員(興直孝君) お答え申し上げます。
ただいま先生の方から御照会がございました「もんじゅ」の使用済み燃料の再処理について、それを行う予定でございますサイクル機構のリサイクル機器試験施設、RETFにつきましては、これは所管は文部科学省、このように考えてございます。
他方また、これにつきましての規制の関係でございますが、この規制は再処理事業というものの一環として位置づけられてございますので、これにつきましては先ほどお話がございましたように経済産業省の所管になるもの、このように考えてございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/108
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109・江田五月
○江田五月君 いいですか。これは非常に小さなところなのでちょっと恐縮なんですけれども、しかし重要なことだと思っているんですが、このリサイクル機器試験施設というのは、施設自体は再処理施設の変更の承認ということで、これを所管するのは経済産業省なんです。だけれども、それが核不拡散の関係から安全に管理されているかどうかというものを見るのは、これは文部科学省になっているわけです。そして、ダブルチェックはどうなるか。その施設自体の安全性のダブルチェックは原子力安全委員会です。そして、平和利用の観点からのチェックはどこがやるかというと、これはどこですか、科学技術庁長官。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/109
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110・有馬朗人
○国務大臣(有馬朗人君) これは文部科学省がやることになると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/110
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111・江田五月
○江田五月君 ダブルチェックは。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/111
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112・有馬朗人
○国務大臣(有馬朗人君) ダブルチェックは安全委員会。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/112
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113・江田五月
○江田五月君 安全ということと平和利用ということが混同されているという気がするんですが、平和利用に関してはもちろん文部科学省が見ていくんですけれども、原子力委員会が一番の責任ある委員会になっていくんじゃないんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/113
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114・興直孝
○政府委員(興直孝君) お答え申し上げます。
内閣府におきます担当の委員会は原子力委員会、このようになるかと思ってございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/114
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115・江田五月
○江田五月君 よく聞いておいてくださいね。
今は科学技術庁長官と原子力委員会委員長は同じ人がやっているんです。同じ人がやっていて、そして科学技術庁が平和目的の確保の点もしっかり見るし、それを原子力委員会としてもしっかり見ていく。
ところが今度は、今のリサイクル機器試験施設については所管は経済産業省に移る、平和利用の観点は文部科学省が見る、安全の面のダブルチェックは原子力安全委員会がやる、全体として平和利用の方は原子力委員会がやる。そして、その原子力委員会の委員長と文部科学省の大臣とは別になるんです。原子力委員会の委員長は学識経験者から総理大臣が国会の同意で選ぶ。そして、これは大臣じゃないですから、小渕総理大臣、あなたがそこのところは総責任者になるんです。
こんなにもうあっちやこっちに所管がばらばらになって、一番重要な核兵器級プルトニウムに一番近づいている、あるいはそのものと言ってもいい、そこの部分についての国の行政体制というのがそんなにばらばらになっていいんですか。
これは、私は真剣に考えてもらいたいと思いますが、どなたに伺えばよろしいですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/115
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116・与謝野馨
○国務大臣(与謝野馨君) 江田先生は科学技術庁長官をやられたので、私よりはるかにいろんなことを御存じだと思うんですが、平和利用の話と安全確保の話は別に考えていただいた方が私はいいんではないかと思っております。
平和利用の話は、もともと昭和三十年代の初めに原子力基本法ができましたときに日本学術会議が意見を出しまして、民主、平和、公開という原則を原子力基本法の第一条に書きました。それは国内の法律としては平和ということをうたったわけですが、その間、日米原子力協定にも平和利用ということについての担保を要求されておりますし、日英もそうですし、日加もそうでございます。
一方では、核防条約に参加し、これを批准いたしましたので、核防条約からも平和ということは当然要請されておるわけでございます。そういうものを国際的に明らかにするために、IAEAのいわゆるセーフガード、査察というものも受け入れておりますし、またそれに基づくいわゆるアカウンタビリティーをきちんといつも出しているわけでございます。
そういう意味では、国際的な基準に従ってすべての行政が行われているわけでございまして、平和ということだけに着目すれば外務省も関与いたしますし、科学技術庁も関与いたしますし、通産省も関与すると。そういうことでございまして、ばらばらになったから平和利用が担保されないんだという議論はどこにもないだろうと私は思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/116
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117・江田五月
○江田五月君 そういう、すべて一元的に規制していくばかりが能じゃないとは思うんですよ。いろんなところからいろんな角度で見ていくことが必要な場面はあるだろうと思いますし、ただその場合でも、そうしたもの全体をやはりどこかが一元的に目をちゃんと光らせていなきゃいけないということはあるんだろうと思うんですね。
それがどこになるかというと、やっぱり原子力委員会になるんだろうと、全体の責任としては。そして、それは内閣府にあるから総理大臣が責任を持っている、国民に対しては総理大臣が責任を持っていると。現実にやるところは、文部科学省のそういう保障措置を担当するところで現実に実務はやるんだということになると思うんですが、そのあたりは一体どう整理されているのか。
今度の考え方というのがどうにもきっちり頭に入ってこないので、またゆっくり頭を冷やして考えてみますが、やっぱりこれは新しい体制になって責任を負うのは原子力委員会、原子力委員会の主務大臣は内閣総理大臣ですから、小渕総理、ちょっとそのあたりのことについて覚悟のほどをここで述べておいてください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/117
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118・小渕恵三
○国務大臣(小渕恵三君) いずれにいたしましても、極めて重要なことは、これに尽きるわけではないのでございますので、内閣総理大臣が主務大臣となる内閣府におきまして原子力関係のもろもろの問題につきまして最高の責任を負うということでございますので、担当はそれぞれの役所に分かれるかもしれませんけれども、その上に立って万遺漏なきを期して、いささかのこの問題に対してそごの起こることのないように、覚悟のほどと言われましたが、総理大臣として全責任を負っていくべきものと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/118
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119・江田五月
○江田五月君 きょうのところはそれ以上の言葉を求めても無理なんでしょうが、何とも頼りないと言うと怒られますが、本当にしっかりしていただきたいと思います。
もう一度科学技術庁長官、こうした制度の変更について原子力安全条約あるいは核不拡散条約上、それぞれの国際機関に情報の提供をするとか協議をするとか同意を得るとかなんとか、そういうようなことはありますか、ありませんか。やっておられますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/119
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120・間宮馨
○政府委員(間宮馨君) お答え申し上げます。
日本は原子力安全条約に加盟しておりまして、これに基づきましてIAEAに原子力の安全規制の行政体制を含めて我が国の安全面の取り組みの状況を報告しております。このため、安全規制の行政体制に変更がありました場合は、原子力安全条約の事務局でございますIAEAに連絡することになると考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/120
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121・江田五月
○江田五月君 まだ法が成立していないので、今後報告することになる、そういうことですね。
IAEAの保障措置の完全な実施を前提として、最近ではさらに積極的に核兵器の解体などで軍事目的にとって不要となったプルトニウムと平和利用のプルトニウム、この保有量を各国が毎年公表する、こういう制度ができてまいりました。プルトニウムの国際管理を実現するという政策課題がクローズアップされてきたわけです。
ちょっと手前みそになって申しわけありませんが、これは私が科技庁長官のとき、平成五年九月末のIAEA総会で我が国のイニシアチブとして提案したことで、その後、翌九四年の二月以来九七年九月まで十三回会合を経て、九七年十二月にアメリカ、ロシア、イギリス、フランス、中国、日本、ドイツ、ベルギー、スイスの九カ国の参加と、IAEAとEUがオブザーバー参加してプルトニウムの国際管理についての指針、ガイドラインが決定されました。
私は、日本が唯一の被爆国として核兵器を世界からなくする、とりわけプルトニウム、これはもう平和利用以外に使わせない、そういう国際管理のイニシアチブをとらなきゃならぬと。核兵器を世界からなくするというのは、日本は悲願として追求をしていかなきゃならぬ課題だと思っておりまして、そういう場面で日本が科学技術力を持って国際参加をしていくというのは日本の大変大切な国際貢献の一つであると思っておりますし、今回の行政改革会議の最終報告にも国際的なシステムということに言及して日本の主体的な役割を、この点に絞っての話じゃありませんけれども、そういうことを書いているわけで、小渕総理、核兵器廃絶の願いを込めたプルトニウムの国際管理ということは内閣の重要な政策課題とお考えになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/121
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122・小渕恵三
○国務大臣(小渕恵三君) プルトニウムは核兵器を製造する一つの物質であると理解いたしております。それだけに、その管理につきましては十分な責任を持たなきゃならぬと思っております。日本は、そうした意味での世界的な信頼を得ておるものと思っておりまして、政府の基本的な三原則はもとよりでございますけれども、すべて透明性を持って国際機関に対しましても実態を明らかにいたしておるわけでございます。いささかもそうした長年にわたる信頼を失うことのないように、特にプルトニウム等につきましては十分な管理が徹底できるようなそうした行政をいたしていかなきゃならぬと考えておるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/122
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123・江田五月
○江田五月君 国内だけではなくて国際的にもイニシアチブを発揮してほしいということなんですが、総務庁長官、その国際管理、これは今度の改革法の後にはどこの所掌事務になりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/123
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124・興直孝
○政府委員(興直孝君) お答え申し上げます。
本件につきましては、文部科学省の所管になろうかと思います。
これにつきましては、先ほど来ございますように、平和利用の担保との関係で具体的な国内事務としまして保障措置業務というのがあるわけでございますが、その関係で計量管理の業務を行うわけでございます。この計量管理業務につきまして文部科学省が所管し、同時に、先生御指摘の国際プルトニウム指針に基づきます具体的な問題も文部科学省が所掌していくと。
なお、当然のことながら、原子力委員会が現在、原子力白書におきましてこの具体的な計量管理の実態を記載しているわけでございますが、このような形で、原子力委員会は国全体の流れを掌握するということが当然出てくるものでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/124
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125・江田五月
○江田五月君 文部科学省のことと原子力委員会のことと両方お答えになりましたが、そうすると、例えばIAEAの総会、これはだれが出ることになるんですか。文部科学省の大臣なのか原子力委員会の委員長なのか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/125
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126・興直孝
○政府委員(興直孝君) お答え申し上げます。
本件につきまして、答弁の当事者が私であるのがいいかどうかは別といたしまして、先ほど来、より適切な方がいらっしゃるというふうな意味で申し上げたものでございますが、国の原子力行政につきましては、経済産業省、文部科学省、さらには内閣府において行われますとともに、国際条約の履行等の関係がございますので、当然外務省もあるわけでございます。
そういう状況にありまして、新しくIAEA、国際原子力機関に日本政府代表というふうな形で出られる方が一番適切なのはどなたなのかというふうな、そういう御質問だろうと思いますので、これはその時々の案件事情によってしかるべき代表が選ばれるだろうと思います。
なお、私ども文部科学省というふうな観点から見ますと、原子力の科学技術に関します問題につきましてまずは所掌しており、さらに加えまして、原子力の平和利用というふうな観点から計量管理の問題について所掌をしていると、先ほどこう申し上げましたところ、原子力の平和利用の観点からは文部科学省は一義的にその責務を負う必要があろうと思います。
なお、原子力委員会委員長というケースもあろうかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/126
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127・江田五月
○江田五月君 まことに申しわけないことをしました、本当に。興原子力局長はきのう原子力局長になったばかりで、それはきょう答えろと言ってもなかなか難しいのはよくわかっておりますので、まことに申しわけないことをしました。しかし、事ほどさように、この省庁改革できっちり決まっていないようなところ、抜け穴がひょっとしたらあるんじゃないかというようなところ、これがあると思うんですね、たくさん。これだけの大改革をするのですからそういうこともあるでしょうけれども、やっぱりこれは危なくて仕方がないということを感ずるんですよ。ひとつそこは本当によく心にとめておいていただきたいと思います。
とりわけ原子力行政については、原子力安全行政も原子力委員会のことについても内閣府で、どちらも委員長は大臣じゃないので、所管で国会を通じ国民に責任を負うのは内閣総理大臣となるわけですから、総理大臣、ひとつよろしくお願いいたします。
さて、時間の配分が大分狂ってしまっておるのですが、大急ぎで少し残ったことを聞いておきたいと思います。
六月十五日の本委員会で、我が会派の本岡昭次議員が総括質疑で議論された憲法における国と地方公共団体との行政権の関係について議論を整理しておきたいと思います。
これは、もともと平成八年十二月六日の衆議院予算委員会で、当時は旧民主党だったわけですが、菅直人代表が憲法六十五条の「行政権は、内閣に属する。」というこの行政権の中に自治体の行政権は含まれているのかどうかという質問をした。大森内閣法制局長官は、
要点だけお答えいたしますが、現行日本国憲法は、第八章におきまして地方自治の原則を明文で認めております。そして九十四条は、「地方公共団体は、その財産を管理し、事務を処理し、及び行政を執行する権能を有する、」このように明文で規定しているわけでございますので、地方公共団体の行政執行権は憲法上保障されておる。
したがいまして、ただいま御指摘になりました憲法六十五条
ちょっと全部引用する時間がありません、
逆に言いますと、地方公共団体に属する地方行政執行権を除いた意味における行政の主体は、最高行政機関としては内閣である、それが三権分立の一翼を担うんだという意味に解されております。
という答弁をされました。
自治体における独自の行政権を認めたものとして重要な答弁であると認識をしておるわけですが、本委員会では同じような質問に対して法制局長官は、いろんなことを言われた後に、
答弁の趣旨と申しますのは、地方公共団体は包括的な行政権能を有している、そして現に地方公共団体の執行にゆだねられている事務自体は、国、言いかえれば
ちょっと引用を省きます、
したがいまして、地方公共団体の行政権能がどのように認められるかということにつきましては、その行う事務について地方自治の本旨を十分配慮しながら、どのように国が関与するかということを含めまして、いわゆる立法裁量の問題として国会の判断にゆだねられ、その制定する法律の定めるところによって定まることになるということでございます。
とお述べになりました。
その後もう少し言葉は続くのですが、つまり法制局長官は、地方公共団体の行う事務については、立法裁量の問題として国会の制定する法律によって定まる。途中のいろんな修飾をのけるとそうなってしまうんですが、しかし立法裁量ですべてが法律で定まるんじゃなくて、やっぱり地方自治の本旨というものがありますね。
地方自治の本旨というのは、これはまず短くお答えください、何でしょう、地方自治の本旨。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/127
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128・大森政輔
○政府委員(大森政輔君) 地方自治の本旨というのは何かということでございますが、地方公共団体の運営は原則として住民自身の責任においてみずからの手で行うという住民自治の原則と、もう一つは、国から独立した地方公共団体の存在を認め、これに地方の行政を自主的に処理させるという団体自治の原則をともに実現するという、そういうのが地方自治の原則でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/128
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129・江田五月
○江田五月君 地方自治の本旨というのは、ただ漢字六つと平仮名一つが並んでいるんではなくて、やっぱりそこに住民自治とか団体自治とかという原則というものがあるんだと。これは間違いないですよね。したがって、幾ら立法裁量といえども、幾ら国会は万能といえども、憲法によって決まっていることを国会が法律で覆すことはできないわけですから、その地方自治の本旨に反する立法裁量権を国会は持っていない。これはそれでよろしいでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/129
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130・大森政輔
○政府委員(大森政輔君) その点はおっしゃるとおりでございまして、本岡議員に対する私の答弁中におきましても憲法九十二条を援用しております。
御承知のとおり、憲法九十二条は、地方公共団体の組織及び運営に関する事項は、地方自治の本旨に基づいて法律で定めると。したがいまして、その法律というのは地方自治の本旨に基づくものでなければならないということを申し上げたつもりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/130
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131・江田五月
○江田五月君 そうお話しいただいておれば、あのときにそんなにみんなおっと思わなくて済んだんですが、一月足らずですか、ちょっと心がざわめいて、やっと安心いたしましたが、やっぱり憲法上の制度として地方自治というものはあるんだと。これはしっかり認識しておいていただきたいと思います。
次に、野田大臣に伺いますが、これもまた小さな話で恐縮なんですが、例の行政不服審査法のことで、所掌の大臣と地方の行政庁は上下の関係じゃない、対等だと。そこで、対等の関係にしながら、それでも国全体の法律の執行のこともあるし、主務大臣が関与するという仕組みをつくっておる。ところが、法定受託事務について審査請求の規定は、行政不服審査法だけでは国と地方の間にこういうことになりますと適用できないので、地方自治法に一条を設けて、そして一般的な定めとして地方の行政庁の処分に対して所管の大臣に審査請求ができるようにしたと。それはなぜだということを伺いましたら、野田さんは法律の適正な執行とおっしゃいましたかね。一遍ちょっとそれは帰ってよく考えてみてくれと言いましたら、後で自治省の役人の方が来られて説明をいただきました。
それは、法律の適正な執行というよりも、どちらかというと行政処分の相手方、つまり住民が不服申し立てができるというそのメリットが今回の法改正によってダウンしないようにしておこうということでこれをつくったんだ、そういう説明でしたが、野田さん、ここでもう一度チャンスを差し上げますので、お答えください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/131
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132・野田毅
○国務大臣(野田毅君) 結論からいえば、今、江田委員が仰せになったとおりです。その点で、私人の権利救済といいますか、そっちの方の今御指摘の趣旨の方が強い、こういうことは御指摘のとおりです。
内容について細かく言うことはもう省略したいと思いますが、十分御承知の上でのお話だと思います。大分これを調べましたら、こういう規定を置くことについて相当その辺の議論があった。その中で、そういう意味で、私人の権利救済をするということを優先するということにおいて審査請求を大臣に対して行うという形をとったという理解をした方が、素直にその理解がいただけるんではないかというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/132
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133・江田五月
○江田五月君 さてそこで、もう一歩踏み込んで考えてみたいんですが、中央と地方とを対等の関係にする。そうすると、おのずと地方行政庁が所管をしている地域に住んでいる住民の皆さんは、やっぱりその立場というのも変わってくるんだろうと、中央と地方の行政庁の関係が変わると。
どこかでもう一遍審査をしてもらうという権利といいますか立場といいますか、それは住民にとって大切な利益です。ですから、その利益をそんなに簡単になくしてしまうというわけにはいかないかもしれないけれども、しかしやっぱり地方の行政庁のした処分に対して、中央の所管大臣のところへ常に行ける。しかも、その中央の所管大臣はあたかも上級行政庁であるがごとく地方行政庁の処分を取り消すことができる、その取り消しに地方行政庁は従わなきゃならぬということになっていると、地方の行政庁は常に中央の行政庁、所管の大臣の判断を見ておかなきゃならぬ。いつも上を向いてやっているということになってしまう。
どうもその制度は、個別に見ると、不服申し立て、審査請求をしたいと思う人にはそれはいいかもしれないけれども、制度設計としては、やっぱり地方自治というものを大切にしていく、そして地方の住民の責任で自分たちの運命を自己決定していくという方向には資するものじゃないんじゃないかという気がして仕方がないんです、それはある意味で政策判断の問題ではありますが。
ちょっと意地悪く考えれば、大臣が、何か自分の支持者がおる、どうもうちの知事はだめなんだ、ちょっと大臣何とかしてくれと。よし、わかったと。知事がおまえの申請をノーと言ったらおれのところへ持ってこい、審査請求を上げろ。知事の決定は取り消して、そうするともう知事としてはそれで文句が言えないんだからと。こういうことはよくないですね。
そこで、私は、これはひとつ、きょうは各省大臣皆さんおられるから非常にいい機会だと思うんですが、審査請求があって、そして原処分を取り消そうと考えるような場合には、これはつまり、その地方の行政庁の処分について所管の大臣がこれでは困るなと、それが違法の問題であれ不当の問題であれ、これでは困るなと思っているわけですから、そのときには、すぐに審査請求に対する裁決をするのでなくて、今度の関与の規定を間にかましてはどうか。
関与の規定を間にかまして、そして関与をする地方行政庁は係争処理委員会に申し出る、これが処理をする、そして相当の場合には勧告をする、勧告に従った、即した是正の措置を行う、それが恐らく原処分の取り消しということになるでしょう。そうすると、地方行政庁としては高等裁判所に機関訴訟として取り消しの抗告訴訟ができる。そういう関与という手続を一遍間にかますようにしたらどうか。
これはもう運用でできると思うので、全部の大臣そろっておられますから、そういうふうにしてはどうかと提案をいたしますが、まず自治大臣いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/133
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134・野田毅
○国務大臣(野田毅君) 大変大事なポイントの一つだとは思うんです。
それで、重ねて申し上げますが、従来、機関委任事務については、一般法たる行政不服審査法に基づいて、いわゆる国が上級官庁で自治体が下級官庁である、その下級官庁の行った処分について不服がある場合にその上級官庁たる国に対する審査請求をする、これは機関委任事務という上下関係というものがあったからそういう形をとった。
今回、法定受託事務ということになって上級官庁、下級官庁という概念はなくなりましたが、それにもかかわらずあえて審査請求という形をとったという一つは、これは一般法たる行政不服審査法に基づいてではなくて、地方自治法に基づいて行うという形をとっているということなんです。それは、一般的に審査請求というのは、処分の当事者以外の者が判断をするという方が、異議申し立ては処分をした者に対する異議申し立てですから、その方がより公正に対する信頼度は高いと言われておりますので、私人の立場から見れば、処分庁以外の別の行政庁に対して判断を求めることができるということには一定のメリットがある。こういうことから、私人の権利救済の観点を重視して引き続いて審査請求ということを認めることになったわけでございます。
そこで、この改正に基づきまして、各大臣は改正後は上級官庁ではありませんので、審査請求の裁決においては、原処分の取り消しはできるけれども原処分の変更とか新たな処分はできない。これが従来とは異なる一つのポイント。
〔委員長退席、理事大島慶久君着席〕
それからいま一つは、従来、審査請求前置主義というのがあったわけですけれども、訴訟に行く前に審査請求というものを前置する。しかし、それは今回、直接訴訟に行くか審査請求という形をとるかということは、その選択が自由にできる、こういう形になっている。そういう意味で、全く同じまま、そっくりそのまま引き継いでいるというものではないということはぜひひとつ御理解をいただきたい。
そこで、審査請求に基づいて行う裁決は国の関与ではないわけでありますが、ではそういうような審査請求が来たら、裁決を行う前に何らかの関与をやったらどうだと。そうすると、関与すれば裁決が出る前に国と地方の係争処理の対象になるじゃないか、これを運用でやったらどうかと。大体そういう御趣旨の御指摘ですが、この点は審査請求に対する裁決についてなぜ関与の一類型にしなかったかということについて御理解いただきたい。
それは、何よりも私人の権利利益の救済を重視したという経緯があったからです。国と地方の間の係争処理ということであれば、行政機関相互の紛争が長期化をして、結果として私人の権利利益を簡易迅速に救済しようという行政不服審査制度本来の目的が損なわれるということになりかねないということが背景の考え方にあるわけです。この考え方は分権委員会の第四次勧告に従ったことであります。
そこで、処分の取り消し裁決の前に是正の指示などの関与を行うことについては、係争処理の手続の対象にするということと同じように、私人の権利利益の簡易迅速な救済という観点からは同じ問題がある。だから、関与の対象にするということ自体問題がありますし、逆に裁決前に関与の形をかませるということも同じような問題があるのではないかということです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/134
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135・江田五月
○江田五月君 ああ言えばこう言う。私どももまた反論しなきゃいけないんでしょうが、もう時間の方が来ております。地方自治法で決めて、つまり一般法としての行政不服審査法じゃなくてとおっしゃるんですが、だけれども地方自治法というのも一般的な規定なんですね。だから、上級行政庁、下級行政庁の関係の場合に適用される一般法規をそのまま一般的に適用できるようにしてしまっているのが新設される地方自治法二百五十五条の二ということになるので、私は個別の行政分野で、例えば食物のことについては、港湾のことについては、この何とかについてはというふうにするならまだそれはそういう決め方はあると思うんですが、ああいう決め方では新しくできる制度の趣旨を没却するじゃないか、せっかく新しい制度をつくろうとするんだからということで言っているわけです。
もう時間がありません。最後に締めくくり的にぜひ伺いたいんですが、昨年六月に成立した中央省庁等改革基本法の第一条に、「内閣機能の強化、国の行政機関の再編成並びに国の行政組織並びに事務及び事業の減量、効率化等の改革」、そういうことが書いてある。行政改革会議の最終報告にも、「国の果たすべき役割の見直し」のところで、「国家行政の機能とその責任領域を徹底的に見直すことが前提となる。「官から民へ」、「国から地方へ」という原則がその基本とならねばならない。規制緩和や地方分権、官民の役割分担」などなど、こういうことがずっと書いてあって、行政機能の減量、アウトソーシングというような言葉も出てくる。今度の中央省庁等改革法案を評価するときに、今回の法案が成立してそれが施行されればどれだけ行政が減量化するのか、スリム化するのか、これが重要な判断になると思うんです。
総務庁長官に端的に伺います。今回の法案が成立、施行されれば、国の権限と財源と人間は一体どれほど減りますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/135
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136・太田誠一
○国務大臣(太田誠一君) お答えをいたします。
江田委員もよく御理解のことと思いますけれども、直接スリム化をするということが目的ではないと思っております。スリム化をみずからするような仕組みをビルトインすることがこの中央省庁改革の目的であると考えておりますので、ここで我々が数字を出すことはできないということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/136
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137・江田五月
○江田五月君 きのう、行政改革推進本部の役人の方に聞きますと、どうしても数字でということになればやはりゼロだと答えざるを得ないが、大臣がそう答えられるかどうかはというお話でしたが、そういうことなんですね。これは、そのことをけしからぬと言っているというよりも、むしろ今まさにおっしゃったとおり、ここで行政改革の、これから行っていく減量化、スリム化の手法をビルトインしたんだ、ここから始まるんだと。この中央省庁改革については私どもはこれに反対、これではできていないと思います。しかし、共通の認識をあえて探せば、これでこれから行政改革をやっていくんだということだと思うんです。
今、総務庁長官は、そういう仕組みをビルトインしたんだとおっしゃった。私どもは、最初のときにお見せいたしましたが、総理大臣の機能をしっかりさせて首相府というものをつくり、そして内閣の機能も、単に発議権とかだけじゃなくてもっと、小渕総理はちょっと憲法問題が出てくるかというようなお話もありましたが、我々はそう思っておりませんが、そういうようなものをつくって、そして内閣府の中に行政改革推進室という、ここでこれからの行政改革をちゃんとやっていくという制度を見える形でビルトインしております。
残念ながら、この対案を用意はしましたが、議論する時間がないので提出までは至りませんが、ぜひともこれからスタートラインに立って、本当の意味で国民にちゃんと理解していただける、そういう行政改革をやっていく、その実現の競争を小渕チームと私どもとやっていきたいと思っております。
時間が参りました。関連の朝日委員にバトンタッチいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/137
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138・朝日俊弘
○朝日俊弘君 民主党・新緑風会の朝日でございます。
同僚の江田委員に続いて、関連して、主として再確認しておきたい点に絞って幾つか質問をさせていただきます。
そこで、まず最初に総理にお尋ねしたいんですが、総理はこの委員会、衆参における審議を通じて、今回の地方分権の意義といいますか意味はどこにあるのかという質問に対して、一つは、国、都道府県、市町村という縦の関係を変革して対等、協力の横の関係を構築しようとするものだ、あるいは地方分権は地域における自己決定、自己責任の行政システムを構築するものだ、こんなふうにお答えになっているんですが、そのこと自体は非常に重要なことだし、私も大いに賛成をしたい表現なんです。だったら、では具体的にどこがどうなるのかというと、もう一つ見えにくいというか、受けとめにくいところがあります。
ぜひ、その抽象的な表現に加えて、例えば今回の地方分権の理念というのは、こういうところにこんなふうに実現させようとしているんだというところまで一歩踏み込んでお答えをいただければありがたいと思いますが、まず総理にお答えいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/138
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139・小渕恵三
○国務大臣(小渕恵三君) 今、朝日委員が私の今回の法案提出に伴いましての基本的な考え方を申し上げられましたが、まさにそのとおりでございます。地方分権の推進が、新しい世紀を迎えるに当たりまして、その時代にふさわしい我が国の基本的行政システムを構築しようとするものでありまして、国は本来果たすべき役割を重点的に担い、住民に身近な行政はできる限り地方にゆだねるとともに、地方公共団体の自主性、自立性が十分に発揮されるようにすることが必要であります。
このため、本法案におきましては、国と地方の役割分担のあり方を規定するとともに、これまで我が国の中央集権型行政システムの中核的部分を形成してきたと言われる機関委任事務制度を廃止することといたしました。また、国の関与のあり方を抜本的に見直し、関与の法定主義や公正、透明なルール、係争処理制度等を新たに設けることにいたしました。
この新しいシステムのもとでは、国と地方公共団体の関係が、申されましたように上下の関係から対等、協力の関係へ大きく転換されることとなるものと考えておりまして、今回の改革によりまして、戦後、日本国憲法によって保障された地方自治が古い衣を脱ぎ捨て、二十一世紀を迎えるにふさわしい姿となるべく、力強く第一歩を踏み出すこととなると考えております。
そこで、具体的にとおっしゃられますが、先ほど申し上げましたように、機関委任事務制度の廃止等々も含めまして、今般、この法律の中に盛られたことすべてにわたりましてこれが具体的な方向を指し示しているものと御理解いただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/139
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140・朝日俊弘
○朝日俊弘君 禅問答をしているような話なんですが。
〔理事大島慶久君退席、委員長着席〕
ぜひこれは、お答えは結構ですが、自治大臣にもお願いしたいんですけれども、この間参考人をお呼びしたときにも、どうも今回の地方分権というのが市民、住民の側から見ると何がどうなるのかわからないというか、ぴんとこないと。そういう意味では、具体的に動き始めれば見えてくるのかもしれませんが、ぜひもう少しわかりやすく、市民の皆さん、住民の皆さんに、具体的にここがこうなるんだという表現をできるだけ豊富に使って説明できるような、そんなことをぜひ検討していただきたいな、これは自治大臣だけじゃなくて政府全体としてお願いをしたいと思います。
そこで、その具体的な改正の一つのポイントとして、今回、国と地方公共団体が対等で協力関係になる。そういう関係の中で、できればない方がいいんだけれども、仮に争いが起こった場合に、係争処理委員会というものをつくる、あるいは都道府県と市町村の間の紛争処理については自治紛争処理委員というのを置く、こういうことが新しく制定されたわけであります。これを第三者機関というふうに呼んでいるようですが、実は私はこれは、厳密な意味では第三者機関になっていないように思えてなりません。
つまり、第三者機関であるとすれば、文字どおり国と地方公共団体ともう一つここに位置しなきゃ第三者というふうにならないんじゃないか。そういう意味では、国の行政機関の中に係争処理委員会というのが位置づけられている、これは厳密な意味で第三者機関とは言いがたいのではないかというふうに実は私は思っておるんです。しかしそれにしても、そういう処理委員会や処理委員を設けることになったということは一歩前進であろうと思います。
そこで、いわゆると申しておきます、いわゆる第三者機関について三つの点でお尋ねをしたいと思います。ぜひ自治大臣から、だじゃれは抜きにして正確にお答えいただきたいと思います。
まず第一に、いわゆる第三者機関の運営の中立性といいますか独立性といいますか、をどうやって確保するのか。いやしくも中央政府が第三者機関の勧告とか意見の内容に介入するようなことがあってはならないというふうに思うんですが、その点についてお答えをいただきたいというのが第一点であります。
それから第二点に、処理委員会が設けられる、あるいは紛争処理委員が具体的に任務を遂行するに当たっては、やっぱりいろいろ情報を集めなきゃいけないし、話も聞いてみなきゃいけないし、そういう事務を進めていくためのサポート体制といいますか事務局体制といいますか、必要にして十分な事務局体制を確保することが要るのではないか、これについてぜひ積極的なお答えをいただきたいというのが第二点目であります。
それから第三点目は、都道府県と市町村の紛争処理のために自治紛争処理委員が置かれます。しかし、この紛争処理の解決に当たって、その当該自治体にいろいろな意味で過重な負担をかけるようなことがあってはならない、例えば人的にも財政的にも。具体的に言うと、例えば会合を設定する、それをいつも東京に呼び出して、東京に来い、こういうやり方では、その都度経済的にも時間的にも当該自治体に負担をかけることになるわけで、決してそういうことがないように十分配慮をしていただきたいと思うんですが、いかがでしょうか。
この三点についてお答えいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/140
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141・野田毅
○国務大臣(野田毅君) 三点の事柄について順次申し上げたいと思います。
御指摘のとおり、国地方係争処理委員会は地方公共団体に対する国の関与に関する係争について、それから自治紛争処理委員というのは市町村に対する都道府県の関与に関する係争について、それぞれ公平中立な立場から審査をして、勧告などを行う機関でございます。したがって、このような性質上、具体的な事案の処理に当たって国地方係争処理委員会及び自治紛争処理委員の運営や勧告内容について各大臣が指揮監督その他の関与をすることはできないものであると認識いたしております。その点は、御指摘のとおり関与することはないということを申し上げたいと思います。
それから第二点、この機関の任務遂行に資するため、情報あるいは証拠の収集などの事務処理についての必要十分な事務局体制を確保すべきであるという御指摘でございます。
この点につきまして、地方分権推進委員会の第四次勧告におきましては、国地方係争処理委員会の組織について、第一に、事案の専門性に対応し迅速かつ的確な審査に資するための専門調査員、及び第二点として、国地方係争処理委員会の庶務を処理するための最小限の人数の庶務担当職員の設置が勧告されております。また、市町村に対する都道府県の関与に関する係争の処理についても、国と地方公共団体との間の係争処理手続に準ずべき旨の勧告がなされておるわけでございます。
そこで、この第三者機関の事務処理体制については、このような勧告の趣旨を最大限尊重し、そして今御指摘のございました点をも十分に踏まえて、適切な事務処理体制の確保に努めてまいりたいと考えております。
第三点であります。
自治紛争処理委員について、自治体の負担軽減に配慮するなどのためにその開催場所を都道府県で開催するというようなことなどを配慮すべきである、こういう御指摘でございます。
この点につきましては、自治紛争処理委員が都道府県の関与に関する審査を行う場所につきましては法律上特に規定は設けてはいないわけでございます。また、具体的な事案の処理に関し、自治大臣などが自治紛争処理委員を指揮監督することもあり得ないと考えております。したがって、自治紛争処理委員の合理的な裁量によって、適切な方法によって事案の審査がなされるものと期待をいたしております。
なお、自治紛争処理委員の審査の対象は都道府県と市町村の間の紛争でありますから、当事者の負担をできるだけ軽減する配慮は御指摘のとおり必要であると考えておりまして、証拠調べなどを適切に行うという観点からも審査を現地で行うということは十分に考えられるところであると考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/141
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142・朝日俊弘
○朝日俊弘君 どうもありがとうございました。
ただ、一点、ちょっと第一のところで、運営の中立性あるいは独立性の確保という点に十分配慮してほしいということを特に私は強調したつもりなんですが、その点についてさらにお答えいただければありがたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/142
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143・野田毅
○国務大臣(野田毅君) 御指摘のとおり、十分な配慮をいたすつもりでおります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/143
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144・朝日俊弘
○朝日俊弘君 それでは次に、自治事務に対する国の関与の問題について触れたいと思います。
私は、本来自治事務というふうに定められた事務の中身について国が直接執行という形で関与をするということはちょっと論理的に考えにくいのでありますが、法律の中でそのようなことが一定程度限定した条件のもとですることができるような書き方になっております。百歩譲ってそういうことを法律上書かざるを得ないということを認めたとしても、しかしこれが余り軽々に行われていくようなことがあってはならないと思うわけであります。
自治事務と定められた事務については、相当いろいろな困難、トラブルがあっても自治体で解決することが原則だろうというように私は思います。そのことによって本当の自治の力が蓄積されていくんだろうというふうに思うわけです。
そこで、この自治事務に対する国の関与の一つの形態として、直接執行をするという場合は極めて例外的なものであって、例えば国の利益を保護する緊急の必要がある場合とか、相当程度関与するに当たっての条件が限定されるべきであるというふうに考えるわけですが、この点についてのお考えを改めてお伺いしておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/144
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145・野田毅
○国務大臣(野田毅君) 基本においては今御指摘のとおりでございます。
今回の法案におきましては、国が地方公共団体の事務に関与していく基本原則として、必要最小限度のものとするということがまず基本原則でございます。そして同時に、地方公共団体の自主性、自立性に配慮しなければならないことも規定いたしております。事務区分に応じた関与の基本類型を示し、特にこの自治事務については助言、勧告というような形で法的拘束力を持たないもの及び事後の関与を原則としておるところでもあります。
したがって、自治事務の処理については特に地方公共団体の自主性、自立性が発揮されなければならない分野でありまして、仮に違法な事務処理などが行われた場合であっても、まず基本的には地方公共団体みずからの手によって自主的に是正される、そういう自立的な是正措置がとられるということが基本であると考えております。したがって、先般来御論議をいただいております是正の要求ということも、そのような形での是正が期待できないような例外的な場合にとられる関与の形であると認識しております。
そこでさらに、それより進んだ自治事務に対する直接執行、いわゆる並行権限の行使ということにつきましては、今回の法案におきましては、個別の法律の規定は基本的に国民の利益を保護する緊急の必要がある場合を要件といたしておりまして、あるいはまたこれに準ずる程度の極めて厳格な要件を付したものという形になっておりまして、この点では地方分権推進委員会での議論を踏まえて十分適切に規定されておるものと考えております。
そういう点で、くどいようでありますが、この自治事務に対する特別の関与ということについては、国による権限行使は慎重の上にも慎重に行わなければならないものであるというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/145
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146・朝日俊弘
○朝日俊弘君 今のお答えで基本的な考え方はお述べいただいたわけですが、法律などを見ていると、特に新旧対照表を見ていますと、従来何も書いていなかったところに今度ぽっと書いてあるものだから、是正の指示にしてもすごくぎらついて見えるというか、目立って見えるというか、そういう感じがしてならないんです。
今、大臣がお答えになったようなことを少なくとも文章でどこかで明確に表現していくということは、今後の運用に当たってぜひとも必要なのではないかというふうに思います。これは要望としてお聞きいただければと思いますが、ぜひそういうことも含めて御検討いただければと思います。
それでは次に、むしろこれからのことについてもう一度総理に伺います。
今回の法改正、一括法案は、分権推進委員会の第四次勧告までの分について分権推進計画に基づき法改正したというふうに理解をしているわけです。
では、分権推進委員会が第五次の勧告を出しました。そして、それをこの三月でしたか、第二次の分権推進計画という形で政府の方で策定をされました。この主要な中身について具体的に今後どうやって推進していこうとされているのか、再度確認を含めてお答えいただければと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/146
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147・小渕恵三
○国務大臣(小渕恵三君) 第二次地方分権推進計画は、地方分権推進委員会の第五次勧告を最大限に尊重して作成したものであり、第一に、公共事業のうち直轄事業等について、基準の明確化により範囲の見直しを行い、縮減を図るとともに、統合補助金の創設及び補助金の廃止などを行い、第二に、また公共事業等につきましても、補助金の廃止などの見直しを進めるとともに、第三に、国が策定または関与する各種開発・整備計画について地方公共団体の自主的、主体的な取り組みをさらに促進していくための見直しを行うことをその内容としておるものでございます。
第二次地方分権推進計画の具体化につきましては、個別に措置予定時期等を明記しているところであり、例えば統合補助金は平成十二年度に創設するなど、計画に沿って着実に実施、昨年五月に作成いたしました地方分権推進計画とあわせまして地方分権を総合的かつ計画的に推進してまいりたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/147
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148・朝日俊弘
○朝日俊弘君 念のため確認しておきますが、総理、そうすると、第五次勧告の具体的な推進にかかわっては法律改正は想定していない、予定していないということでありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/148
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149・小渕恵三
○国務大臣(小渕恵三君) 御指摘のとおりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/149
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150・朝日俊弘
○朝日俊弘君 そうすると、私の理解では、主として予算編成作業等を通じて第二次計画の中に盛り込まれた方策を逐次実施していく、こういう理解でよろしゅうございますか。
さて、そういう形で今後の第五次勧告についての具体的な推進が進められていくわけですが、ところで、地方分権推進委員会は、今後、政府のそういう地方分権に向けたさまざまな施策の推進をこれから一年間はきっちり監視していただけると思うんですが、私が心配していますのは、これは時限的な法律の委員会ですから、たしか来年の七月には地方分権推進委員会というのは消えてなくなるというか、役割を果たして終わるというふうに分権推進法に定められています。
さて、一方で中央省庁の再編計画が進んで、自治省は巨大な総務省というところに大ぐくりにされるというのか、吸収されるというのか、ということになって、自治省という名称もなくなるわけです。分権推進委員会は役割を果たして終わる、中央省庁再編の中で自治省という名前は消えて総務省というところに一くくりにされていく、果たして中央政府の中で地方分権の推進をきちんと引っ張っていくというか、プロモートしていくというか、コーディネートしていくという部分が一体どこになるのだろうか。これまで自治省が果たしてきた役割についていろいろ御意見があるわけですが、しかし少なくとも地方分権を推進していこうという立場でそれなりに努力されてきたことは一定評価をしつつ、ではこれからどんなふうに政府の側として動いていくのか、やや私は危惧しているところがあります。
この点について、まず自治大臣の方のお考えをお聞かせください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/150
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151・野田毅
○国務大臣(野田毅君) 今回御提案申し上げております法案の中に総務省設置法案というのもあるわけですが、その中で「任務」として、途中省略しますが、総務省は、地方自治の本旨の実現及び自立的な地域社会の形成、国と地方公共団体及び地方公共団体相互間の連絡協調というような、現在、自治省が行っております任務がそのまま総務省で責任を持って遂行されなければならないという規定が現にございます。
それからいま一つは、来年七月で地方分権推進委員会の任期も来るではないかという御指摘がございました。これはこの後どういう形で仕事をお願いするのか、あるいはそういったことについて、具体的な委員会のテーマあるいはその内容について委員の先生方ともちろん十分御相談申し上げなければならぬと思いますが、少なくとも今回の分権一括法によって地方自治の推進、特に地方分権の推進に関して終わったということではなくて、いわばこれは大きな第一歩である、まだまだ残された仕事もたくさんあるわけであります。そういったことを考えますと、これでそう簡単に仕事が終わったということにはならない。それから、これは衆議院の審議で修正が行われた部分もあるわけですが、特に法定受託事務等についてのいろんなフォローアップもしなければいけない。さまざまな作業が残っております。
先ほど総理から、第五次勧告に関する問題について、当面それに基づく法案化ということは直ちに今は想定いたしてはおりませんが、これからそういった公共事業あるいは非公共事業を含め、あるいは国土審議会における審議の状況、経過等ももちろん見なければなりませんが、必要に応じてそういった見直しということも当然あるわけで、それに伴う法改正ということもあるわけですから、そういった点でまだまだ、これは大きな第一歩であるというふうに考えておりますが、完結したわけではない。そのことを思いますと、総務省という形になりましても、引き続いて地方分権をさらに推進していくための仕事はまだまだ重大な責務を担っているというふうに認識をいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/151
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152・朝日俊弘
○朝日俊弘君 そこで、総理にお尋ねします。
先日、参考人として諸井委員長にもおいでいただいていろいろお尋ねをしまして、ポスト分権推進委員会をどのようにお考えか、何かメッセージがあればというふうにお尋ねしたら、それはまさしく国会と政府とがお考えになることだということで質問をそのまま返されました。それはそのとおりだと思うんです。しかも、認識として、地方分権はようやく扉をあけてこれから具体的に進んでいくんだ、その大きな第一歩を踏み出すんだという認識でも基本的には一致していました。
とすると、やはり一つは、国会レベルでそのフォローアップ機能をどうやって持つのか。例えば、地方行政委員会が定期的に、あるいは小委員会などを設けてフォローアップしていくということもあり得ることだと思います。これは国会で考えていきたいと思いますが、どうも政府の側で、しかも先ほどちょっと申し上げた中央省庁再編成の中で、ともすればこの地方分権の話がどこか無責任になってしまっては、あるいはリーダーシップ、あるいは推進機関のエネルギーが損なわれてしまってはまずいのではないかというふうに思います。
総理として、ポスト分権推進委員会の地方分権推進体制のあり方についてどのようにお考えか、お聞かせいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/152
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153・小渕恵三
○国務大臣(小渕恵三君) 政府といたしましては、地方分権推進法に沿いまして、国民が豊かさとゆとりを実感できる社会を実現するための地方分権に取り組んでまいったところでございます。地方分権推進法は、実効ある地方分権の推進のためには一定の期限を設定して計画的かつ集中的に取り組むことが肝要であることから五年の時限立法とされているものであり、地方分権推進法の期限切れ後の体制につきましては、その時点での状況を踏まえ判断すべきことであろうと考えております。
いずれにいたしましても、同法に規定されている地方分権の推進に関する基本理念や地方分権の推進に関する基本方針の考え方に沿って、今後とも地方分権推進計画を踏まえた国から地方への事務権限の移譲や地方税財源の充実確保など、地方分権の一層の推進に積極的に取り組んでまいりたいと考えております。
私は、公聴会ですか、十分、諸井委員長のお考えを承ったわけでありませんが、今、朝日委員からお話がございました。諸井委員長初め大変御苦労いただきましたことでございます。そのお気持ちというものは十分受けとめながら今後に処していきたいと思っておりますし、また新しい機構が生まれました以降の問題につきましても、先ほど来質疑応答をお聞きいたしておりました。総務省の中に自治省も大くくりで入るということでございますが、その昔はいわば内務省というような形で大きくくくられておった点もございます。戦後、こうした自治庁から自治省になり、そして地方自治に対する理念を全うするようにいたしてきたわけでありまして、今回こうした形で大きな役所の中に入るわけでございますが、設置法は設置法といたしましても、要は上に立つ者の基本的考え方というものが大きく指導性を発揮していかなければならない問題であろうかと思います。
そういった意味で、地方分権という大きな目的を前提に置きながら、中央政府内におきましても、総務省の中における自治に関する責任はそのときにおける大臣が十分な配慮をしながらリーダーシップを発揮して本旨を全うしていく、このことが極めて重要なことだと改めて認識を深くいたしておるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/153
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154・朝日俊弘
○朝日俊弘君 具体的にどうするかということについて、来年の夏の時点でお考えになるということもわからぬではないんですけれども、ややそのときになって考えましょうというふうにも聞こえたので、もう少し積極的なお答えが欲しかったんですが、少なくとも政府の側で、例えば中央省庁の再編とか地方分権推進委員会が来年夏、七月で任務を終えるということで、地方分権の推進に関するポテンシャルが下がるようなことがあってはならないということだけは強く訴えておきたいと思います。
それでは、残された時間で厚生、労働にかかわる地方事務官問題について幾つかお尋ねをしたいと思います。
具体的な問題に入ります前に、厚生大臣に現状認識あるいはどう対応されようとしているのかをちょっとお伺いしておきたいと思うんです。
ついきのうでしたかおとといでしたか、健保連が老人保健拠出金を一時凍結するというようなかなりシビアな戦術を使って、ある意味では医療保険制度の抜本改革についていつまでもたもたしているんだと、こういうことの意思表示なんだろうと思うんです。
ところが、今年度の予算措置で、たしか老人に係る薬剤一部負担が免除されるということがこの七月から始まって、健康保険の財政が非常に厳しい、あるいはますます厳しくなっていきそうだと。これ以上の老人保健拠出金の拠出はごめんだという動きが強まってきている中で、二年前の健康保険法改正のときには、皆さんが大合唱して医療及び医療保険制度の抜本改革をやるんだと、平成十二年までにそれをちゃんとやるんだと。特に薬剤費の問題を含めて医療保険制度の抜本改革は何が何でもやらなきゃいけないということでこの間来ていた。少なくともそういう合意が二年前にされて、その前提で審議会での議論もされてきた。本来なら、この国会に何らかの形でそういう改正案が提出される予定であった。ところが、会期は大幅に延長されたにもかかわらず、いまだに提出されない。
医療保険制度の抜本改革は一体どうなったのか、あるいは今後どうしようとされているのか、本題に入る前にお尋ねをしておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/154
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155・宮下創平
○国務大臣(宮下創平君) 今御指摘のように、医療保険の抜本改革につきましては、当時、平成九年でございますが、自社さきがけ政権のもとでこの改革をすることの確認がなされております。もちろん内容は項目程度でございまして、医療保険の中でも診療報酬の問題でありますとか薬価の問題でありますとか老人医療制度のあり方、それから医療提供体制ということでございます。今、私どもは検討中でございまして、この方針については変更しておりませんけれども、なかなかいろいろの合意形成にまだ至らない点があります。
例えば、薬価制度の問題にいたしましても、その趣旨に沿って薬剤定価・給付基準額制という制度を二年近くかかって検討して提案申し上げたのでありますが、基準価格を超える部分について自己負担を求めるという内容でもございまして、なかなか合意が得られませんでした。
したがって、政党政治でございますから、厚生省だけというわけにまいりませんし、これは与党の自民党との協議の中で、一応改革はやるけれども、この薬剤定価・給付基準額制はとるわけにまいらぬということになった。そのことが大きく報道されておりますので、すべてだめになったようにあるいはお感じになられる点があろうかと思いますが、私どもはやはり薬価差のない医療制度というものを目指しますから、それ以外の方法をいろいろ、詳しくは申し上げませんけれども、今検討中でございまして、これを何とか与党内でまとめていきたいということで、平成十二年度から薬価制度についても基本的な改革の方向を見出したい。
それから、診療報酬、老人保健制度、これが非常にいろいろ問題がございますけれども、これも十二年度中には何とかめどをつけたい。
そして、医療提供体制はこの間審議会の議論をいただきましたが、カルテの開示問題がなかなか法律化できないということで、実際上やろうというようなこととか、事態はかなりいろいろの面で進んではおります。まだ国会に法案を出して御審議申し上げるという段階になっていないのは私どももまことに残念でございますけれども、精力的にこれを進めてまいる所存でございます。
なお、健保連の問題の御指摘がありましたが、これは私のところにたしか健保連の連合会長を初め幹部が参りまして、千八百健保連がありますけれども、そのうちの九〇%以上の連合会が毎月納める老人保健拠出金に到底たえられないと。これはいろいろ原因はあると思いますけれども、景気が悪くて失業者も多くなる、あるいはベースアップも行われないので保険料収入も少ないということのほかに、今御指摘の医療保険の改革が遅々として進まないのではないか、そういう改革を進めてほしいという思いが、あの十日間の拠出金の納付を延期するという戦術に出られたものと私ども受けとめております。
したがって、この健保連の指摘は指摘として、医療改革は今申しましたようにやらなくちゃならない問題でございますから、これから真剣にさらにさらに取り組んでまいる所存であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/155
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156・朝日俊弘
○朝日俊弘君 それでは、もう一つお伺いしておきます。
年金制度改正についてどうなっていますか。ことし財政再計算に伴ってさまざまな制度改革が必要であるはずでした。ところが、今年度予算案の中で国民年金の保険料凍結の部分だけ決まって、あとは何も改正できないという状況が続いています。このままでいけば、日々年金財政はじわじわと悪い方向に進むことは目に見えている。
本来なら、この年金制度改正もこの国会で改正案を提出される予定であったはずであります。どうなっていますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/156
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157・宮下創平
○国務大臣(宮下創平君) 御指摘のように、年金改革は五年に一度の財政再計算期で見直すことが義務づけられております。
少子高齢化が一層進んでおりますから、私どもは、この状況の変化を踏まえまして年金制度を見直し、改革をしようということで、これは二年近く年金問題調査会を中心にして検討してまいりました。そして、率直に申しまして、三月ごろには成案を得たわけでございます。
私どもとしては、年金の長期安定的な方向を指し示すことがいろいろの面で国民に安心感を与える、非常に重要な課題であるということでやってまいりましたけれども、率直に申しまして、基礎年金について全額税でやった方がいいという自由党の主張もございまして、なかなかそこの折り合いがつかない。私どもとしては社会保険制度の建前は堅持して、私どもの案では二〇〇四年までに適正な財源を得て、三分の一の基礎年金の補助金を二分の一までだったら社会保険としてぎりぎり許せる範囲内かなということで御提案をしようとしておるのでありますが、今その点をめぐって、三カ月以上になりますけれども、なお調整ができていないという極めて遺憾な事態になっておるわけで、この点は本当に私ども責任を感ずるわけであります。
何としても、この延長国会、かなりの延長がされておるわけでございますので、自由党との協議を得て、そして合意形成を得て、もう法案としてはできておるわけでございますので、何とか御審議を賜るようにしたい、これは切実な私どもの願望でございます。
しかし、残念ながら提出できないことにつきましては申しわけなく思っておるところであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/157
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158・朝日俊弘
○朝日俊弘君 きょうはその問題を詰める場ではありませんので、その程度にとどめておきます。
私がなぜ医療保険制度あるいは年金保険制度の制度改正はどうなっているのかというふうにお尋ねしたかといいますと、地方事務官問題、特に厚生省の社会保険庁あるいは社会保険事務所の事務のあり方、そしてその職員のあり方は、年金制度あるいは医療保険制度の制度改革の中でどのように考えたら一番いい制度になるのかという、そういう議論の立て方できちんと答えを導き出すことができたらよかった。ところが、今回、これは労働行政の方とも共通するわけですが、まず国と地方公共団体との関係を転換させなきゃいけないので、機関委任事務をとにかく廃止するんだと。さて、そこで廃止した後どういうふうに事務事業を見直していくのか、国の直轄事務にするのか法定受託事務にするのか自治事務にするのかという議論で、この地方事務官問題もそういう切り口で議論がされてきた。
私はこの点が、少なくとも国と地方公共団体との関係を大転換させるんだということについては、機関委任事務を廃止するという切り口は非常に見事な切り口だったと思うんですが、地方事務官問題に限っていえば、この切り口はどうも問題の立て方を誤ったのではないかと思えてならない。むしろ、先ほどから申し上げているように、厚生行政の中で例えば医療保険の抜本改革が必要だ、その中では保険者のあり方についても再検討をする必要が出てくるかもしれない、思い切って政管健保を都道府県単位に編成したらどうだという議論だってあり得る。こういう議論の積み重ねの中で制度のあり方をどうすべきかということを考えるのならまだ理解がしやすかったというか、望ましい方向での結論になっていったのではないかと思えてならない。
だから、今回はこういう形で地方事務官問題が一定のけりをつけられたわけだけれども、恐らく今後少なくとも厚生行政あるいは労働行政それぞれの範囲の中でかなりの抜本的な制度改正あるいは制度改正の幾つかの積み重ねのステップがあるだろう。そういうときには、そのための機構のあり方とか職員の身分問題も改めて再検討する時期が来るのではないかというふうに私は思う。
問題の性質が違うかもしれないけれども、地方事務官問題という点でいえば、厚生省と労働省は同質の問題を今抱えているわけで、ぜひ残された時間で厚生大臣そして労働大臣に私の問題意識あるいは考え方をどのようにお受けとめになるか、今後どんなふうに考えていこうとされているのか、お考えがあればそれぞれにお聞かせをいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/158
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159・宮下創平
○国務大臣(宮下創平君) 地方事務官制度の切り口についてのスタンドポイントと申しますか、そちらの考え方、委員の御指摘はわからぬではございません。
確かに、医療保険、年金制度等の改革によって執行体制のあり方が変わるというのは理論上そのとおりでございます。しかしながら、一方、地方事務官制度というのは地方自治法によって特別に公務員として認められて実態的には国家公務員であるわけで、今さらちょうちょう申し上げませんが、そういう実態にかんがみまして、今回の分権、整理によって国と地方の事務区分を明確に名実ともにしたという点がございますので、その点は重々承知はされておられることと存じます。
一方、今、前者のスタンドポイントによってこれを今後どうするかというお話でございますが、この点につきましては衆議院におきましても議論されました。そして、修正がございまして、医療保険制度、年金制度の改革に伴いまして、社会保険の事務処理の体制あるいはこれに従事する職員のあり方について、被保険者等の利便性の確保の問題、それから事務処理の効率化等の視点に立ちまして検討し、必要があると認めるときはその結果に基づいて所要の措置を講ずるものとするという修正を附則二百五十二条で受けてございますから、私どもはこの修正の趣旨に従って、その趣旨を踏まえまして今後適切にそういった問題にも対応してまいりたい、こう考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/159
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160・甘利明
○国務大臣(甘利明君) 今までの体制、つまり県の組織の中に国家公務員がいるという体制は、雇用対策という面で県と国が連携をとるという一点からすればこれは悪くない仕組みだと正直思います。ただ、国と地方の関係が縦系列から横の対等に協力するという関係に変わるという、縦の系列の象徴的なものとして機関委任事務があり地方事務官制度があるということが前提ですから、それを変えるということになりますと、じゃ、どこがやるんだということになって、これは憲法の要請とかあるいはILO八十八号条約の要請、つまり失業保険の給付と無料職業紹介は一元的にとり行えというこの要請からしますと、国が責任を持たなきゃならないわけであります。
そこで、じゃ、今までの連携はどうするんだというお話だと思いますが、これは一括法の中の雇用対策法の二項目が改正になって、まず国の施策と呼応して地方は雇用対策の施策を組むよう努力せよ、それから国と地方は連携をとりなさいという項目が入っているわけであります。常設の連絡機関も設けることにして、国と地方の今までの関係のよさといいますか、例えば、県が行う企業誘致情報とか生活情報と国の職業情報とをうまくミックスするというのをやっていきたいと思いますし、それから、これから県が県独自の雇用対策についてどうするかというのは、県が県自身の行革の中で人員の適正配置をする中で、じゃ、そこの部分に手厚く人員配置をしていくかと。これは県独自の問題でありますから、その辺のこと等を期待し、連携をとりながら、御指摘のような懸念がないようにしていきたいというふうに思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/160
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161・朝日俊弘
○朝日俊弘君 労働大臣にさらにお尋ねします。
基本的な考え方はお伺いしましたが、特に私が、あるいは私の周りでいろいろ話を聞きますと、この間の失業者の増大の問題あるいは自殺者の急増の問題、大都市部において非常に深刻だと。今、都道府県との関係ということでは、国と都道府県との協力関係というようなことも含めておっしゃいましたけれども、大都市、特に政令指定都市との関係については特に何らかのお考えなり施策を考えておられますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/161
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162・甘利明
○国務大臣(甘利明君) 国と都道府県との関係については申し上げたとおりでありますし、政令市が独自にやっている部分もありますから、これは県は県、政令市は政令市で行っている雇用対策あるいはそれに関する施策もあるでしょうから、そことの連携もしっかりととっていきたいというふうに思っております。
いずれにいたしましても、新しい国と地方の仕組みがスタートをしまして、試行錯誤の部分もあろうかと思いますけれども、その都度連携をとりながら問題の解決に取り組んでいきたいというふうに思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/162
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163・朝日俊弘
○朝日俊弘君 ぜひこれは要望として受けとめていただきたいんですが、国は国の責任のもとで体制の充実拡充を図っていくということと同時に、都道府県あるいは政令指定都市における体制を、それはそれぞれの都道府県なり政令指定都市でさまざまに努力をしていただいて、そして両者の連携協力を積極的に図っていく、こういう立場でぜひとも、制度、仕組みが変わったからといって、こういう情勢でありますから、職業安定事務あるいは雇用対策が一歩でも後退するようなことがないようにくれぐれも十分なきめ細かな配慮をお願いしたいと思います。
その点でいいますと、最後に厚生大臣にもう一度お伺いします。
今回の制度改正、地方事務官の身分移管の問題と関連して、国民年金の事務が今まで以上に滞ったり停滞したりしてはならないと思います。これは既に同僚議員の質問にもお答えになっていることですが、くれぐれもこれ以上国民年金に対する不信感が強まらないように、十分なる対応を求めたいと思いますが、一言お願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/163
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164・宮下創平
○国務大臣(宮下創平君) 国民年金につきましては二千万人の該当者がおるわけですが、その三割、六百万、つまり三百万人くらいが免除者、約半分が免除者で、あとは百五十万程度ずつ未加入、未納者という問題がございます。したがって、これはいろいろな施策を講じまして、この未納、未加入を解消してまいりたいと思っております。
なお、国民年金事務につきましても、今後私どもとしては、例えば勧誘事務その他はこれはお願いせざるを得ませんから、そういう点がまた、しかるべく財源措置も講じながら住民の不便のないようにやっていくことは承知しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/164
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165・朝日俊弘
○朝日俊弘君 ありがとうございました。
終わります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/165
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166・弘友和夫
○弘友和夫君 公明党の弘友でございます。
この中央省庁再編、また地方分権等の審議も衆議院、参議院とずっと長い審議を終えまして、きょう、まだあすもありますけれども、いよいよ締めくくり総括ということで、小渕総理を初め全閣僚の皆様、またお役所の皆様、特にこの委員会に張りついておられた野田自治大臣、太田総務庁長官、本当に御苦労さまでございます。
先ほど来お話がございましたように、これらの法案というのはまさしく二十一世紀へ向けての大改革の第一歩だ、こう思うわけでございますので、これから不断の努力を積み重ねて改革がなされなければならない、このように考えるわけでございます。
それで、総理は二十一世紀の日本のあるべき姿、形、これを富国有徳と、このように言われました。先日の本会議の私の質疑に対しましても、総理の答弁で、「経済的な富に加えまして、品格ある国家、徳のある国家を目指し、いわば物と心のバランスのとれた国、すなわち富国有徳の国家としての世界のモデルになるよう目指したい」、それはまた尊敬に値する国になることであるとも述べられたわけでございますけれども、その尊敬に値する国、有徳の国というのはどういう国なのか。どういうイメージというか必要条件、必須条件いろいろあると思いますけれども、につきましても、本来でございますと全閣僚の皆さんにお伺いしたいところでございますが、時間がございませんので、戦前戦後、日本の政治、行政、社会をずっとつぶさに見てこられました宮澤大蔵大臣と、それからまたヤングの代表でございまして、また女性の閣僚はお一人でございますので、野田郵政大臣に、どういう国が尊敬される国であろうという思いをぜひ語っていただきたいなと思います。よろしくお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/166
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167・宮澤喜一
○国務大臣(宮澤喜一君) 深く考えたことはございませんが、内にあっては人格が尊重され、外に対しては信義を失わない国ではないかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/167
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168・野田聖子
○国務大臣(野田聖子君) この御質問につきましては私なりに真剣に考えました。
私は昭和三十五年に、先生の御地元である北九州市で生まれました。その後、東京で育ち、現在は岐阜で暮らしております。この間、衣食住、不自由したことがございませんし、さらに自分の望む教育を受けることができました。まさに私はこのことが富国ではなかろうかと、そういうふうに思い、戦後いろいろ厳しい中、今御答弁ございました大先輩である宮澤大蔵大臣を初め多くの先輩方の御苦労と努力で今日があるということを心から感謝申し上げ、このことに対して謙虚に受けとめつつも誇りにしてまいりたいと思っているところでございます。
小渕総理がおっしゃる有徳というのは、確かに経済的にはそこそこに幸せにやっているけれども、これからの時代二十一世紀は、市場の原理とか、例えばお金とか物とかで解決できないさまざまな問題、私が思うには高齢者の介護を含めた福祉の問題とか子育てとか教育の問題、さらには男女共同参画といったようなそういう問題については、モラルを持ち、さらに思いやりの気持ちを持って接していくことで、この国に住んでいる人たちが大変住みやすい国なんだとみずからを幸せに感ずることによって、外の人から日本の国がすばらしい国だと理解していただくことがこれからは必要ではないか、そういうふうに受けとめているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/168
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169・弘友和夫
○弘友和夫君 どうもありがとうございました。
これはいろいろな角度から人それぞれの思いというか、論じられると思いますけれども、私どもは、一つの角度からいいますと、平和な国際社会を築くために日本がいかに汗をかいていくかという部分も必要なんじゃないかと思うんです。それも冷戦終結後、貧困、飢餓、民族対立、虐殺、人権侵害、女性差別、環境の変動、食糧不足、いろいろ平和を脅かす問題というのは山積している。そういう中にあって、ただ単に軍事力によるハードパワーじゃなくて、経済、政治、文化、科学技術などを複合させたソフトパワーによって平和を創造していこう、こういう考え方もあるんじゃないかと思います。
よく抑止と対話だと、こういうふうに言われておりますけれども、そういう観点に立って、あした小渕総理は中国、モンゴルを訪問されるわけでございますが、これの外交目的といいますか、たまたま中国から贈っていただいたトキの二世が誕生し、名前も「優優」というふうにつけられたわけでございますが、そのお礼も当然言われると思いますけれども、中国、モンゴルへどういう目的で行かれるのか、お尋ねします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/169
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170・小渕恵三
○国務大臣(小渕恵三君) 今回の中国及びモンゴルへの訪問は、両国との間でそれぞれ築かれてきておりますパートナーシップをさらに促進し、良好な二国間関係及び国際社会における各種の協力を新しい二十一世紀につないでいくいわばかけ橋となるような訪問にいたしたい。すなわち一九九九年から二〇〇〇年にわたっての新しい世紀を目指しての両国関係を築いていきたいと思っております。
中国との関係では、江沢民国家主席が昨年秋訪問されました。そのときに日中共同宣言に示されました共通認識を基礎に、同じく江主席訪日時に発出いたしました三十三項目にわたる協力の成果と展望を議論いたしてまいりたいと思っております。また、二国間の協力に限らず、来世紀における世界の平和と発展のため、国際的な諸課題についても意見を交換いたしたいと考えております。
特に、残念ながら、中国と米国との間が若干厳しいやにも客観的に見えるところがございます。私どもは、米中そして日米そして日中、こうした国々がお互いよりよい関係を目指していくというところにこの世界の平和と安定が存するということでございますので、そういった観点に立ちましてもいろいろと議論できたらと、こう考えております。
また、北東アジアの平和と安定の問題につきましても、最近、北朝鮮をめぐるミサイル発射の問題等もございます。こうした問題につきましても、朝鮮半島の平和と安定ということはひとしくアジアの大きな問題であり、また両国にとっても極めて重要な問題であると思っております。
また同時に、今国会におきましてもガイドライン法案を通過させていただきました。再三申し上げるまでもないことでございますが、これは我が国の平和と安全のためにこの法律をお願いいたしたわけでございますが、いやしくもこれが誤解をされることのないように、こうした点につきましてもお話ができたらと思っております。
明るいニュースといたしましては、今、委員御指摘のように、トキ二世が我が国で誕生いたしました。中国におきましてもトキは二百羽くらい、こう聞いておりますけれども、非常に少ない鳥でありますが、それを我が国にいただいてまいって、新しい二世が誕生いたしました。こういううれしいニュースもぜひ改めてお伝えいたしたいと思っております。
また、モンゴルの訪問につきましては、八年ぶりに我が国総理としては参ることになっておりまして、同国の民主化、市場経済化の基盤強化に協力をいたしますとともに、国際情勢を含む広範な対話を進展させていきたいと考えておりますが、いずれにいたしましても国会の御了承をいただければということでございますので、よろしくお願いいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/170
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171・弘友和夫
○弘友和夫君 二十一世紀、新しい世紀、両国というか、中国もモンゴルもそのかけ橋となる外交、本当に頑張っていただきたいと。
今、「優優」の話がございましたけれども、御承知のように、優というのはにんべんに憂えるというふうに書きますが、人の悲しみ、苦しみ、寂しさ、人の心がわかるのが優しい人であり、また優秀な人である、こういう解釈もございまして、環境庁長官がこの間発表されておりましたけれども、一言そういうこともつけ加えていただければよかったんじゃないかと思いますけれども、そういう人の心のわかる、お互いの国同士で本当に誠意を持って頑張っていただきたいと思います。
この後、優しいということをキーワードにボランティアまたNPO、青年海外協力隊、いろいろな質問を用意しているんですけれども、締めくくり総括ということで、今までずっと論議された詰めを少ししないといけませんので、これは後に回させていただきまして、順次五項目ぐらいやりたいと思います。
まず、環境省の充実強化でございますけれども、これは総理も野中官房長官も太田総務庁長官も平成十三年一月の新省発足時には組織、定員等、体制の充実を図っていきたい、環境省にふさわしい体制を整える、このように答弁をされておるわけでございます。ここで太田総務庁長官も、発足するまでにふさわしい体制をということは総理の強い意思なので総務庁もその方向で努力することになる、このようにも答弁されています。
環境省にふさわしい体制というのは、ふさわしいというのは例えば人数でいえばどれぐらいになるのか、お答えいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/171
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172・太田誠一
○国務大臣(太田誠一君) お答えいたします。
環境省に付与された事務事業を含め、さらにこれを担い得るものとなるように平成十三年一月の新省発足時には組織、定員等、体制の充実強化を図ってまいりたいということでございまして、今直ちに数字を具体的に申し上げる段階には、申しわけありませんが至っておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/172
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173・弘友和夫
○弘友和夫君 平成十三年一月は大分先のようでありますけれども、平成十二年度予算で平成十三年一月から三月までかかるわけです。だから、ことしの夏の七月中に概算要求に上げないといけないんです。遠い先の話じゃないんです。ふさわしい体制として環境庁、予算概算要求を上げてくださいと。それを言われた方は、何人で上げたらいいのかわからないじゃないですか。人数が決まらないと概算要求もできないと思います、それを七月中に上げないといけないんですから。この国会開会中だと思うんですけれども。
そのふさわしいというのは、人数を何人にするのか、そういう指示を与えないと概算要求も上げられないと思いますけれども、いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/173
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174・太田誠一
○国務大臣(太田誠一君) これは平時のことではないわけでありますのでちょっと同じように考えてはいけないとは思いますが、おっしゃるとおり、平成十三年一月一日でございますから、来年度、十二年度の予算要求と同時に行われます定員の要求が環境庁の方から出されてくることになると思います。それをもとにして協議をいたすということになるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/174
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175・弘友和夫
○弘友和夫君 では、環境庁の方から人数を出す、その人数を出した上で協議に入るということですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/175
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176・河野昭
○政府委員(河野昭君) 今回の改革で今の環境庁から環境省へ、環境省設置法案をお諮りしているわけですが、その中で事務がふえるわけでございます。恐らく今、環境庁におきましては、そういう事務がふえることに伴ってどの程度の定員が必要かということを吟味されている。環境庁がいわゆる概算要求を八月の末に出されて、総務庁の方でそれを環境庁と協議しながら審査を進めていく、段取りとしてはそういうことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/176
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177・弘友和夫
○弘友和夫君 環境庁長官、答弁は要りませんけれども、ふさわしいというふうに思ったのを出していただいたらいいと思うんです、それを検討するというんだから。本来であれば、やっぱり政治がこういう人数とかいうのは決断しないと。
では、環境庁長官がそれを決断されて人数を出されるということでございますね。何人ぐらい必要だと思いますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/177
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178・真鍋賢二
○国務大臣(真鍋賢二君) 人数を申し上げたいわけでありますけれども、廃棄物処理の一元化ということで厚生省から人数をどの程度移管しなければならないか、そしてまた共管事項といたしましては、今回通過をいたしましたPRTR法の通産省、そしてまた林野関係の共管事項、そういう中から人数を今抽出いたしておるわけでありまして、積算ができ次第要請をいたそうと思いますので、どうぞ御審議方よろしくお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/178
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179・弘友和夫
○弘友和夫君 だから、環境省にふさわしい人数をぜひしっかり要求していただきたい、このように思いますので、またそれを受けて長官も考えていただきたい。よろしくお願いいたします。
次に、公正取引委員会の設置のあり方でございますけれども、これも論議がいろいろございました。総務省の外局となると。例えば、この間からも論議になっております郵政省の郵便区分機をめぐる談合事件について、昨年十一月十二日、公正取引委員会が排除勧告をしました。
野田郵政大臣は、あくまでも特殊事情である、新聞によれば全く反省がない、こういうふうに書いてありましたけれども、これについてはどうなんですか。今でもその姿勢は変わっておられませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/179
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180・野田聖子
○国務大臣(野田聖子君) 今、先生から御指摘ございました区分機のことにつきましては、まず公正取引委員会からの区分機の入札に係る情報管理等の検討要請については真摯に受けとめているところでございます。
御指摘の私が申し上げたことというのは、区分機をつくるに当たって、その技術上のハードルの高さとか、またそうした技術上の問題から来る参入企業の拡大の困難性、つまりどの企業でもつくれるわけではない、そういうようなことについて、いわゆる区分機にかかわる特徴なり、または経緯なりを申し上げたところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/180
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181・弘友和夫
○弘友和夫君 公取委員長来られていると思いますけれども、二社だけじゃなくて郵政省にも、これは勧告じゃない、何か言われたと思うんですけれども。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/181
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182・根來泰周
○政府委員(根來泰周君) お尋ねの件でございますけれども、区分機を扱っているのはA社とB社ということでございますが、A社、B社が区分機を受注するに際しまして、郵政省の職員から来年の、来年といいますかその次の年の購入計画に係る機種別台数とか配置先郵便局等に関する情報の提示を受けておったということがございました。
そういう情報の提示ということをどう評価するかは別としまして、そういう情報の提示が一つの原因になりましてこういう受注工作が行われたわけでございますので、郵政省の方に対しては、こういう情報管理についてはくれぐれも慎重にお願いしたいという要請をしたところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/182
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183・弘友和夫
○弘友和夫君 そういう事実があります。それが今回、総務省として一緒に入るわけですね。大臣が一緒になるわけですよ。こういうことで、本来の公取の独立性だとか独禁法の理念、そういうものはやはり損なわれるおそれがあると。もともと総務省の外局に入ったというのは、郵政省が後から決まったわけですから、これは問題が大き過ぎる。やはり今からの規制緩和だとかそういう消費者行政、また公取を充実すべきだと。
経済戦略会議でも「「健全で創造的な競争社会」の構築とセーフティ・ネットの整備」云々の中で、「公正取引委員会を抜本的に改組し、飛躍的に質を高めるとともに、その独立性を確保するため必要な人員を増員する。」、こういうふうにあるわけです。それがそうした事業をやっているところに入ると、やっぱり独立性、大丈夫だとこの間は言われておりましたけれども、損なわれると思うんですよ。
ですから、ぜひ内閣府の方に移しかえるべきだというふうに思いますけれども、長官、いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/183
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184・太田誠一
○国務大臣(太田誠一君) お答えをいたします。
これは、一つは内閣府に公正取引委員会を置くのがふさわしいのか、それとも総務省に置くのがふさわしいかという議論がございます。
まず、内閣府の機能は、政府全体を見渡して総合的な企画立案、調整をするわけでございまして、どちらかというと事前の、提案する側の立場でございます。それに対して総務省は、政策評価などに象徴されるように、事後チェック型の役割が非常に大きいわけでございます。そういたしますと、それは総務省に置く方がその比較でいえばふさわしいということになろうと思います。
また、そのようなことで公正取引委員会の独立性が損なわれることがあるのであれば、まさに総務大臣のかなえの軽重を問われるということになろうかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/184
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185・弘友和夫
○弘友和夫君 これに対する反論はまたあります。今、総務省の方がふさわしいというのは、これは本当におかしいと思いますよ、全然趣旨が違っているわけですから。だから、またこれは決定しても後でいろいろとやっていきたいと思いますので、とにかく独立性だけはきちっとやっていただきたい、このように思います。
では次に、地方の厚生局の問題を厚生大臣にお尋ねしますけれども、いい答弁をいただけましたらもう再質問しませんから、きちっとやっていただきたい。
今回、この中央省庁再編でブロック機関である地方厚生局が健康保険組合等の指導監督などの社会保険関係の事務を行うことになっているわけです。この事務の円滑な実施のためには、地方厚生局と地方社会保険事務局の連携が必要となるわけでございますけれども、どのようにそれに対応されるのか、また地方厚生局が社会保険関係の事務の一部を行うことに伴う社会保険関係職員の異動についてはどのように考えられているのか、厚生大臣にお尋ねします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/185
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186・宮下創平
○国務大臣(宮下創平君) 健康保険組合等の指導監督などの社会保険関係事務が新設されます地方厚生局において実施されることに伴いまして、同事務を円滑に実施するためには、保険者事務を実施する地方社会保険事務局との事務実施についての連携が御指摘のように必要であると考えております。
このために、健康保険組合等の指導監督に際しましては、各都道府県ごとに実地に即した指導監督を徹底するために、地方厚生局と地方社会保険事務局の職員が共同して指導監査の実施、指導業務に従事できるように工夫する等、地方厚生局と地方社会保険事務局との業務上の連携の確保に努めてまいりたいと考えております。
また、地方厚生局の事務につきましては厚生事務官が従事することとなるために、これまでは地方事務官であった社会保険関係職員が地方厚生局で仕事をするケースも生じることとなります。しかしながら、社会保険関係の職員につきましてはこれまで都道府県単位で勤務してきた実態等がございますので、これらを考慮いたしますと、地方厚生局の所在地によっては職員の生活に大きな影響を与えるケースが考えられます。
したがって、これまで地方事務官であった社会保険関係職員が地方厚生局へ異動する場合につきましては、職員の希望や意向を十分聴取して職員に不安のないような十分な配慮を行ってまいりたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/186
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187・弘友和夫
○弘友和夫君 どうもありがとうございました。
今の御答弁のようにしっかりやっていただきたいと思います。
次に、国土交通省に考えられている地方整備局の問題についてお尋ねしますけれども、本委員会でもいろいろな参考人また公述人の先生方の多くの方が、私、ある意味で意外だなと思ったのは、行政改革というのはただ公務員の数を減らせばいいということじゃないんだ、ある人なんかは問題設定が間違っている、このような意見があったんですけれども、私は必ずしもそれに同意はしません。やっぱり組織というのは肥大化するので、目標を持って定員削減というのを行うことは当然であるとは思いますけれども、そういう意見もあった。
しかし、ここで必要なことは、形式的な省庁再編の面に議論がずっと集中して、肝心の行政のあり方、そしてまた仕事の進め方をどのように改革するかという、そうした議論がどちらかというとおろそかになりがちじゃないかな、このように思うわけです。
そういうことで、今回、全国八カ所に設置される地方整備局、よく国土交通省、巨大利権官庁が生まれるという論議がいろいろあります。だけれども、先日の公述人の早稲田大学の片岡先生は、中央から地方への分権というのは今論議されている、同時に同じ国の機関であっても中央と地方、この場合は地方整備局に本省の権限、財源を大幅に委任して地方が主体的に仕事ができる、いわゆるエンパワーメント、力を与えるということを大変評価しておられたわけです。
現実に二万四千人弱の建設省の職員の二万人余りは地方建設局、そこに予算と権限が行くのに、体制の論議だけあって、本当にそこで実際に予算がつくわけですから、それをどう運用していくかということが大事じゃないか、その組織をきちっとつくっていくことが本当に生きた税金を使うというか、そういうことになると思うんですけれども、総務庁長官、いかがでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/187
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188・太田誠一
○国務大臣(太田誠一君) お答えいたします。
現行の建設省地方建設局及び運輸省港湾建設局を統合して設置する地方整備局におきましては、中央省庁等改革基本法第二十二条六号に基づきまして、公共事業の実施及び助成のほか、地方計画に関する調査及び調整、施設の管理、災害の予防及び復旧その他の国土の整備及び管理に関する事務を主体的かつ一体的に処理させることといたしております。
また、公共事業の実施に当たりましては、基本法第四十六条第三号に基づきまして、事業の決定及び執行に関する大臣の権限をできる限り地方支分部局長に委任するとともに、地方支分部局ごとに所要の予算額を一括して配分することにより、地方支分部局長が主体的かつ一体的に公共事業に関する事務の処理を行うことができることといたしております。
地方整備局の体制整備に当たりましては、現在、関係省庁との間で具体的に当該機関に担わせる事務及び委任する権限の内容、地方建設局と港湾建設局の統合による新たな管轄区域、組織及び人員の体制などの事項について検討を進めているところでありまして、統合後においても現行の地方建設局及び港湾建設局が担っている機能が十分に確保されるとともに、基本法及び方針の趣旨に沿った機関として設置されるよう留意してまいりたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/188
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189・弘友和夫
○弘友和夫君 充実していくということだと思うんですけれども、私の趣旨は、もうできるわけですから、その組織をきちんとつくらなければ、巨大官庁が生まれるどうのこうのという論議だけで、実際に八つの地方整備局ができる、それをぜひ充実していっていただきたい、このように思います。
最後にもう一つ。今回、中央省庁等改革関連法に基づいて、それは政令にゆだねているわけですね。いろいろ魚住委員の質問にもありました、では政令が一体幾らできるんだと。今のところはよくわからないということですけれども、私は、政令にゆだねてしまうことで行革会議の最終報告あるいは中央省庁等改革基本法の趣旨が後退する、またはゆがみかねないという懸念があるわけです。
だから、政令ができて政令を公布する前に、大もとになっていた中央省庁等改革推進本部顧問会議、これにその政令がいかなるものかということのチェックを受けて、そしてまた国会に報告すべきである、このように思いますけれども、いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/189
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190・太田誠一
○国務大臣(太田誠一君) お答えいたします。
政令に委任された事項につきましては、内閣の責任において当該事項について決定し、政令を制定することとなります。
このような政令事項に関しましては、国会における御議論を十分に踏まえ作業を目下進めているところでありますし、今言っていただきました顧問会議に対しましても必要に応じてお諮りし、国会に対し適宜状況等を御説明してまいりたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/190
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191・弘友和夫
○弘友和夫君 私の持ち時間がなくなりまして、最初にやりたかったボランティア等の質問通告しておりましたのに、大変恐縮でございます。申しわけございませんけれども、これで終わらせていただきます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/191
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192・森本晃司
○森本晃司君 公明党の森本でございます。
弘友委員に続きまして質問をさせていただきます。
総理以下、全閣僚がおそろいでございますし、行財政改革の問題について今日までいろいろと議論を進めていただいてまいりましたが、その行財政改革を進める中で少々私も申し上げたい点がございますので、立たせていただきました。
まさに二十一世紀は人権の時代と言われるところでございますが、これはやはり内閣全体が取り組んでいかなければならない問題だと思っております。
そこで、まず法務省にお尋ねしたいわけでございますが、この七月末にも人権尊重の理念に関する国民相互の理解を深めるための教育及び啓発に関する施策の総合的な推進に関して人権擁護推進審議会の答申がまとまるわけでございますが、その答申案が六月十八日に発表されましたけれども、それを見る限り、一番大事な問題が抜けているのではないだろうか、画竜点睛を欠いているんではないだろうかと思われるところがあるわけでございます。
五月の答申のときには財政措置も入っておりませんでした。いろんな意見を聞いて、ようやく今回、財政措置が必要と思われるとうたわれて、一歩前進している感じに見えますが、結局、その財政措置を裏づける、本格的な財政措置をやろうと思えば法的措置が必要でありますけれども、その法的措置について何ら触れられていない、盛り込まれていないという状況の審議会の答申案でございます。
この審議会が設立された経過、当時の与党三党で審議会を設置しようとした経過、さらにまた、その後、この国会の論議の中で、附帯決議の中でもその必要があるということが書かれている。
ところが、全くそんなことが、人権擁護施策推進法の採決のときに、そのときの附帯決議は、衆議院も参議院も「法的措置を含め必要な措置を講ずる」ということが書かれておるわけでございますけれども、そのことがない。この審議会の本来の目的が達成できないのではないかと思います。
全国の三十六の関係府県と九特定市で組織されている全日本同和対策協議会、あるいは全国の市長会、町村長会等々からも法的措置と財政措置の必要性が訴えられておりますが、法務省としては、審議会に対して寄せられているこうした現場の声をもっともっと尊重して、きちんと取り組むべきではないだろうかというふうに思っておる次第でございます。
審議会でどんな議論がなされて、なぜ法的措置が盛り込まれなかったのか、この点についてお伺いします。
同時に、現在、パブリックコメント制度に基づき、答申案に対する国民からの意見募集が寄せられておりますが、寄せられた意見次第で法的措置、財政措置を盛り込むつもりかどうか、お尋ねしたいと思います。
法務省の答弁、大体わかっておるんです。この審議会の附帯決議のところは、「答申等を踏まえ、法的措置を含め必要な措置を講ずること。」と。これは、答申を踏まえるから今法的措置は講じないという答えを出そうとしているかもわかりませんが、そうでない答えをきちんと出してください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/192
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193・横山匡輝
○政府委員(横山匡輝君) お答えいたします。
人権擁護推進審議会におきましては、諮問事項に即しまして、まず人権教育、啓発を総合的かつ効果的に推進するためにはどのような施策が必要であるかについての検討がなされ、次に、これらの施策を実現するためにはどのような措置が必要であるかについての検討がなされております。
その結果、審議会が提言します諸施策は、いずれも法的措置をとることなく行財政措置で十分対応が可能であるという認識に至り、今回の答申案が取りまとめられたものと承知しております。
現在、人権擁護推進審議会におきましては、委員御指摘のとおり、答申案に対します各方面からの意見を募集しているところでありまして、寄せられた意見につきましては事務局において取りまとめ、次回の審議会、これは七月二十一日の予定でございますが、この審議会に報告することとしております。審議会におきましては、各方面からの意見などを踏まえて審議がなされるものと承知しております。
なお、審議会の答申の中に人権教育、啓発についての法的措置の点も含めましてどのようなことを盛り込むべきかにつきましては、まさに審議会がお決めになることでありまして、この点についての答弁は差し控えさせていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/193
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194・森本晃司
○森本晃司君 審議会がお決めになることですから意見を差し控えさせてもらいたいと。法務省の考え方を審議会に言うことはできないんですか。全国から寄せられた意見を尊重して、もう既に法務省にはいっぱいその意見が寄せられているはずです、それに対して審議会に法務省はただ提出するだけで、法務省としての意図は何も考えないんですか。その意見が寄せられても法務省としては法的措置をとろうとしないんですか。はっきりしてください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/194
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195・横山匡輝
○政府委員(横山匡輝君) これまで各方面から審議会に対して寄せられました意見は、事務局の方で取りまとめてすべて審議会の方に提出しております。
また、審議会に対して法務省の方から注文をつけられないかということでございますけれども、これはやはり人権擁護施策推進法に基づき設置されました審議会でございます。その諮問事項も法律で決められておるところでございます。これは委員御案内のところだと思いますが、そのような中で諮問をしている。これは、ただいま申し上げましたとおり、答申の中にどのようなことを盛り込むべきかにつきましてはやはり審議会の判断を尊重すべきものと、私どもはこのように考えているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/195
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196・森本晃司
○森本晃司君 審議会の判断を尊重しなければならないことはわかりますが、今全国から法務省に寄せられている声の中で一番大きいのは何ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/196
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197・横山匡輝
○政府委員(横山匡輝君) パブリックコメントとして、現在のところ各種団体や個人等、多方面から三百通を超える意見が寄せられている状況にありまして、現在事務局において集計中でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/197
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198・森本晃司
○森本晃司君 集計しているかしていないかを聞いているわけやない。だから、答えにくいならかわって答えてあげる。法的措置をしてもらいたい、財政的措置をしてもらいたいという声が圧倒的に多いわけでございます。残りはこれだけしかないから、やり合っていても時間が過ぎてしまいます。
ところで総理、今こういう状況で、すべて審議会任せということを法務省が言っているわけでございますけれども、二十一世紀は人権の世紀でございます。総理は、人権教育のための国連十年に関する行動計画の実施に当たって人権擁護推進審議会における審議結果を反映するとされておりますが、こんな生ぬるいことで果たしてそのことができるんであろうか。
総理は人権教育のための国連十年の推進本部長であられるわけでございます。また同時に、人権擁護施策推進法が制定されました。ここには「法務省に、人権擁護推進審議会を置く。」とありますが、同時に「審議会は、」「内閣総理大臣、法務大臣、文部大臣、総務庁長官又は関係各大臣に意見を述べることができる。」と、こう書かれています。こういったことに対して意見を述べることができるということは、逆に総理自身もこの審議会に意見を述べることができるというふうに同時に裏返して解釈することができるかと私は思うんです。
国連十年の推進本部長でもある総理のこういった人権問題に取り組む決意をお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/198
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199・小渕恵三
○国務大臣(小渕恵三君) 人権教育の重要性にかんがみまして、我が国では人権教育のための国連十年の趣旨を踏まえ、関係行政機関相互の緊密な連携協力によりまして、人権教育のための国連十年に係る施策を推進するため、平成七年十二月に内閣総理大臣を本部長とする人権教育のための国連十年推進本部を閣議決定により内閣に設置し、平成九年七月に人権教育のための国連十年に関する国内行動計画を決定、公表いたしたところでございます。
政府におきましては、同行動計画に沿って、行政機関相互の緊密な連携を図りつつ、関係省庁において関係施策を推進しているところであり、平成十年七月には国内行動計画の推進状況について取りまとめを行ったところでございます。政府といたしましては、今後とも国内行動計画に掲げられた諸施策の推進のために全力を挙げてまいりたいと思っております。
人権は、すべての人々が社会において幸福な生活を営むため欠かすことのできない権利であります。政府といたしましては、二十一世紀に向けてのすべての人々の人権が尊重される平和で豊かな社会の実現を目指して、今後とも人権擁護行政の一層の充実にも努めてまいりたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/199
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200・森本晃司
○森本晃司君 人権教育のための国連十年推進本部長であります総理、それから副本部長には内閣官房長官ほか法務大臣、外務大臣、文部大臣、総務庁長官、本部員には各省庁の次官の方々がそれぞれついていらっしゃいまして、こういうことが閣議決定されているわけでございます。
どうぞ、総理におかれましては、この人権問題について総理としてのリーダーシップを大いに発揮していただきまして、各省庁を督励いただき、人権を守るということ、二十一世紀に向かって日本全体が取り組んでいくという方向のリーダーシップを発揮していただくことをお願いいたします。
ところで、我が国が国際的にどう見られているのか、国連からこの人権問題についてどう指摘されているのかという点についてお尋ねしたいわけでございます。
この同和問題については、「同和問題など不当な差別は、憲法施行後五十年以上を経過した今日の時点でも解消されていない。」、「結婚問題を中心に、地域により程度の差はあるものの依然として根深く存在している。就職に際しての差別の問題や同和関係者に対する差別発言、差別落書などの問題もある。」と、審議会の答申ではこの状況を深刻な問題として書いているにもかかわらず、先ほど申し上げましたような法的措置がされないわけであります。
現に、各地からいまだにその差別の状況は一向に減っていない、関係者の皆さんのいろんな御努力もあるけれども。昨日も、私のところに我が奈良県における落書きとか、あるいは就職問題における差別があったという事実が数項目にわたって届けられているのを私は拝しました。胸痛む思いであります。
国際的に見ましても、同和問題がいまだ解決されていないことについてたびたび指摘を受けておりまして、昨年十一月の国連規約人権委員会で日本政府の第四回定期報告書の審議の際に、五年前に出されました第三回の報告の際の勧告が大部分履行されていない、遺憾に思う、こういうことを書かれているわけです。それから、二十八項目にわたる勧告が出されて、同和問題について差別が続いている、差別を終結させるための措置をとることを勧告すると指摘されている。
ことしは、日本が国際人権規約を批准して二十周年を迎えますが、国際的な信頼を我が国がかち取るためにも、この際、同和問題について総理みずから陣頭指揮をとって、総理のリーダーシップによって終結させるという強い意識が必要でございますが、この同和問題に対して総理はどのような取り組みをしようとされているのか、御所見をお伺いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/200
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201・小渕恵三
○国務大臣(小渕恵三君) 同和問題は、憲法に保障された基本的人権に係る極めて重要な問題であることは言うまでもないところであります。
このため、これまで三度にわたる特別法の制定等により必要な施策を講じてきたところでありますが、平成八年五月、今後の同和対策の基本的な方向について地域改善対策協議会から意見具申をいただいたところでございます。
この意見具申では、これまでの特別対策により同和地区の生活環境面が大幅に改善されたことにかんがみ、基本的に一般対策に円滑に移行すべきであるとされました。また、改善は見られるものの、なお残る差別意識の解消に関しては、今後すべての人の基本的人権を尊重していくための人権教育、人権啓発として発展的に再構築して、その推進に努めることが肝要であること及びその人権侵害による被害の救済等の対応の充実強化を図ることが示されたところであります。
この意見具申に基づき、現在、地対財特法の改正による経過措置としての地域改善対策特定事業の実施や、人権擁護推進審議会における人権教育、啓発の基本的あり方及び人権侵害による被害の救済のあり方の審議などが進められているところであり、今後ともこれら各般の施策を着実に推進し、人権の確立と同和問題の早期解決に向けて鋭意取り組んでまいりたいと思っております。
私自身も総務庁長官を経験いたしまして、本問題につきましてもそれなりの理解を持ってまいったつもりでございますが、新たにまたこうした高い地位を与えられております。十分心して対処してまいりたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/201
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202・森本晃司
○森本晃司君 済みません、時間が参ったのですが、最後に一問だけ、ぜひこの問題について申し上げておきたいので述べさせていただきたいと思います。
人権啓発、この問題は今法務省になっております。きょう一番言いたいことは法的措置とこの問題でございますが、法務省で果たして全内閣にわたって人権啓発ができるのかという問題があるわけでございます。他省庁にわたる問題ですから、今度の改革の中で人権教育、啓発の問題は、法務省ではなく、その所管を内閣府に置いて、内閣全体の問題として、内閣府は総合調整機関でございますから、ぜひそういう取り組みをしてもらいたいと思っているところでございます。
前中村法務大臣も、私も個人的に聞かれれば、この人権問題というものは一法務省が取り組むより内閣府等々で内閣全体として取り組むべきであるという考え方を御答弁された機会もございます。内閣府全体で取り組むべきである。
法務大臣に聞いておりますとまた時間がございません。総理、一言お答えいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/202
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203・小渕恵三
○国務大臣(小渕恵三君) お尋ねの趣旨はわかるつもりでありますが、しかし、この中央省庁改革基本法で、特に人権擁護につきましては、政府、内閣全体として取り組むべき課題であり、その充実強化については中央省庁改革基本法で特に特記されておるところでございます。
したがいまして、その推進に当たりましては、基本法に基づき人権啓発や人権侵犯事件の被害救済を所掌することとなる法務省を初め関係行政機関が十分協力していくものでありまして、これを一括して内閣の所掌事務とすることにつきましては、残念ながら基本法の趣旨にそぐわないものではないかと考えるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/203
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204・森本晃司
○森本晃司君 終わります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/204
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205・吉川芳男
○委員長(吉川芳男君) 本日の質疑はこの程度にとどめます。
次回は明八日午前九時から開会することとし、本日はこれにて散会いたします。
午後四時五十五分散会
─────・─────
〔参照〕
横浜地方公聴会速記録
期日 平成十一年七月六日(火曜日)
場所 横浜市 新横浜プリンスホテル
派遣委員
団長 委員長 吉川 芳男君
理 事 田村 公平君
理 事 吉村剛太郎君
理 事 富樫 練三君
理 事 日下部禧代子君
清水嘉与子君
川橋 幸子君
藤井 俊男君
松 あきら君
星野 朋市君
奥村 展三君
公述人
神奈川県知事 岡崎 洋君
神奈川大学法学
部教授 後藤 仁君
横浜市立大学商
学部教授 島田 茂君
神奈川県職員労
働組合賃金行財
政対策部長 角田 英昭君
社団法人神奈川
経済同友会副代
表幹事 山上 晃君
慶應義塾大学総
合政策学部教授
構想日本代表 加藤 秀樹君
宇都宮大学名誉
教授 藤原 信君
全日本国立医療
労働組合委員長 遠山 亨君
─────────────
〔午前九時二分開会〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/205
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206・吉川芳男
○団長(吉川芳男君) ただいまから参議院行財政改革・税制等に関する特別委員会横浜地方公聴会を開会いたします。
私は、本日の会議を主宰いたします参議院行財政改革・税制等に関する特別委員会委員長の吉川芳男でございます。よろしくお願いいたします。
まず、私どもの委員を御紹介いたします。
自由民主党所属の吉村剛太郎理事でございます。
同じく自由民主党所属の田村公平理事でございます。
日本共産党所属の富樫練三理事でございます。
社会民主党・護憲連合所属の日下部禧代子理事でございます。
自由民主党所属の清水嘉与子委員でございます。
民主党・新緑風会所属の川橋幸子委員でございます。
同じく民主党・新緑風会所属の藤井俊男委員でございます。
公明党所属の松あきら委員でございます。
自由党所属の星野朋市委員でございます。
参議院の会所属の奥村展三委員でございます。
以上十一名でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
参議院行財政改革・税制等に関する特別委員会におきましては、目下、内閣法の一部を改正する法律案等中央省庁等改革関連十七法案及び地方分権の推進を図るための関係法律の整備等に関する法律案について審査を行っておりますが、本日は、これらの法律案について関心の深い関係各界の皆様方から貴重な御意見を承るため、当地において地方公聴会を開会することにいたした次第でございます。
なお、午前中は、地方分権の推進を図るための関係法律の整備等に関する法律案について、午後は、中央省庁等改革関連十七法案について御意見を承ることといたしております。何とぞ特段の御協力をお願い申し上げます。
次に、公述人の方々を御紹介申し上げます。
神奈川県知事岡崎洋公述人でございます。
神奈川大学法学部教授後藤仁公述人でございます。
横浜市立大学商学部教授島田茂公述人でございます。
神奈川県職員労働組合賃金行財政対策部長角田英昭公述人でございます。
以上の四名の方々でございます。
この際、公述人の方々に一言ごあいさつを申し上げます。
皆様には、御多忙中のところ御出席をいただき、まことにありがとうございます。本日は、皆様から忌憚のない御意見を拝聴し、今後の委員会審査の参考にいたしたいと存じます。どうぞよろしくお願いいたします。
次に、議事の進め方について申し上げます。
まず、公述人の方々からお一人十五分で順次御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答えいただきたいと存じます。
なお、御発言は着席のままで結構でございます。
それでは、これより公述人の方々から順次御意見をお述べ願います。
まず、岡崎公述人にお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/206
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207・岡崎洋
○公述人(岡崎洋君) それでは、着席して発言をさせていただきます。
ただいま御紹介をいただきました神奈川県知事の岡崎でございます。本日は、地方分権の推進を図るための関係法律の整備等に関する法律案、いわゆる地方分権一括法案につきまして意見を述べさせていただく機会をちょうだいいたしまして、まことに光栄に存じます。感謝を申し上げますとともに、皆様方の御来県を心から歓迎いたします。
私ども神奈川県では、かねてから地方分権の推進につきましてはさまざまな提言、要望や調査研究を行ってまいりましたし、また、地域行政は可能な限り住民の方々に身近な市町村が処理することが望ましいとの認識のもと、対等、協力の関係を目指した県、市町村関係の改革にもこれまで独自で取り組んでまいりました。
特に平成八年からは、県と市町村が共同いたしまして県・市町村間行財政システム改革推進協議会という組織を設けまして、県から市町村への権限移譲、職員交流の推進、財政関係の見直し等の幅広い課題につきまして検討を行い、相互の合意が調ったものから順次実施に移してきたところでございます。この結果、例えば県から市町村への権限移譲は、本年四月現在、七十二項目五百九十三事務に上っております。
しかし、こうしたこれまでの取り組みにも、法令あるいは制度の壁がある以上、一定の限界があるのは否めないところでございました。とりわけ、包括的な国の指揮監督権のもと、地方自治体への事細かな関与を通じて、国、県、市町村の関係につきまして上下関係にあるかのような印象を与えてまいりました機関委任事務制度の存在は大変大きなネックとなっていたところでございます。
このような県のこれまでの状況を踏まえて申し上げますと、地方分権一括法案には機関委任事務制度の廃止や国の関与の縮減など、地方自治体の自主性、自立性を向上させるための方策が盛り込まれておりまして、地方分権を実行に移す上で重要な意味を持つものと受けとめております。
機関委任事務制度の廃止に伴いまして、自治体の行う事務につきましてはすべて条例制定権が及ぶことになりますし、国の関与につきましても、法律、政令に根拠を置かなければ関与をすることはできないという法定主義の原則、さらには、関与をめぐる国と地方の係争処理手続が新たに設けられましたことは、大きな前進と認識をいたしているところでございます。
神奈川県はもとより、全国の地方自治体共通の長年の悲願でございました地方分権が、一括法案という形で第一歩を踏み出したことを率直に評価したい、そのように存じているところでございます。
しかし、もとより、この一括法案で望ましい地方分権がすべて実現するというふうには認識をしているわけではございません。残された課題はいろいろとあろうかと存じますが、大きく三点ほどが挙げられるのではないかと思います。
まず第一に、国と地方自治体間の税財源配分の見直しなど、地方財政基盤の充実強化に向けた具体的な方策の検討は、早急に着手すべき課題であると考えております。
今回の改革は総じて地方自治体にそう事務の負担増をもたらすものではないので、当面、税財源の移譲は必要ではない、あるいは税財源の改革の必要性はわかるけれども、それは経済情勢が好転してから考える、こんな見解があることはよく承知をいたしております。
しかし、国と地方自治体の歳出規模、すなわち住民サービスの割合が一対二なのに対しまして、税収の割合が二対一という現状は、地方分権、地方自治のあるべき姿から見まして、最重要課題として取り組まれなければならないものであるというふうに思っております。住民の方々に負担と受益の関係をきちんとお示しして、自治体がより一層の責任を持って行政に取り組んでいけるよう、こうした歳入歳出面での構造的アンバランス、乖離は今すぐにでも縮小されなければならないことであるというふうに思います。
加えまして、神奈川県を初め大都市圏の都府県が押しなべて厳しい財政状況にあることは御承知のとおりでございます。
国、自治体を通じた税源配分のあり方、さらには大都市圏の都府県の歳入構造が景気の変動に左右されやすい法人事業税に大きく依存していることなど、現在の地方財政に内在する構造的な問題がこのたびの危機的状況を招いた大きな要因であることは否定できません。こうした点も踏まえまして、地方税財源の充実強化に向けた抜本的な対策にぜひ責任を持って取り組んでいただきたい、かように考えております。
第二の点は、こうした税財源の面に加えまして、地方自治体の事務権限の面で権限移譲のさらなる推進が大きな課題ではないかと存じます。
一括法案では、地方自治体の中における都道府県から市町村への権限移譲が中心となっておりまして、国から地方自治体への権限移譲は必ずしも十分とは言えないのではないかと存じます。「住民に身近な行政はできる限り地方公共団体にゆだねることを基本」とするという改正地方自治法に設けられました国と地方の役割分担の原則を踏まえまして、より一層権限移譲を推進していただきたいと思います。
さらに第三でございますけれども、このたびの地方分権改革は、明治から数えまして百数十年、現在の地方自治制度に変わってからでも五十年続いてきた制度の改革でございます。一括法案及びこれに関連する法令の運用に当たりましては、今後、国、地方を通じまして中央集権的な行財政システムの改革に向けた意識の転換が強く求められることと存じております。
衆議院での修正、附帯決議にありますように、法定受託事務とされた事務を必要に応じて見直し、自治事務への移行を検討することや、自治事務に対する国の関与は極力限定するなど、地方分権を推進する観点から前向きな取り組みをしていくことがこれからも必要であると考えております。
なお、制度、枠組みは変わったけれども、中央官庁の職員の方々の地方自治体に対しまする従来のような事細かな、あるいは上意下達的な指導監督の姿勢が変わらなければ、仏つくって魂入れずという感もなきにしもあらずということになりかねません。私ども自治体も大いに今までの姿勢を直していかなければいけないというふうに思っておりますけれども、国の行政当局のそれぞれの組織内における地方分権の意義の徹底を図っていただくことも大変大切なことではないか、かように存じているところでございます。
この法案が成立いたしますと、私ども地方自治体の側では、条例、規則等の整備、事務事業の見直しなど、法律が施行される来年四月までの限られた時間の中で大変多くの作業を行っていくことになります。県でも既にその準備に着手をしているところでございますけれども、作業を本格化させていくには、事務や権限の具体的な規定をしております政令や省令等の改正も重要なポイントになります。
また、法律が改正されまして機関委任事務が自治事務になっても、政省令等で地方自治体の裁量が大幅に制約されてしまっては分権も絵にかいたもちになってしまいます。政府におかれましては、政省令等の改正に当たっては、地方自治体の自主性、自立性を高める観点から、適切かつ速やかな対応を図っていただきたいと考えているところでございます。
私ども地方自治体といたしましては、今回の制度改正を前向きに受けとめまして、分権の成果を県民生活、地方自治の充実につなげてまいる所存でございます。
その意味におきましても、皆様方には、鋭意御審議を賜りまして、できる限り早くこの法案を成立させていただきますようお願いを申し上げまして、私の陳述を終わらせていただきます。
御清聴ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/207
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208・吉川芳男
○団長(吉川芳男君) ありがとうございました。
次に、後藤公述人にお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/208
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209・後藤仁
○公述人(後藤仁君) 後藤でございます。委員長のお許しを得ましたので、着席をして発言をさせていただきます。
地方分権推進の地方公聴会を神奈川で開いていただきまして、ありがたく思っております。そして、この場で私が意見を述べられることはまことに光栄でございます。
私は、今、地方の時代の提唱者である故長洲一二前神奈川県知事のことを敬愛の念を込めて思い起こしております。地方分権推進につきましては、法に基づいて長洲前知事も委員の一員であった委員会が設置され、中間報告が出され、さらに五次にわたる委員会勧告が出されまして、計画が閣議決定され、そして今回の一括法案の国会提出、国会での御審議ということになったわけでございます。この期間の関係者の皆さんの御努力にまず敬意をあらわしたいと思います。
さて、私個人の基本的な立場ですが、今回の法案には賛成でございます。分権社会を創造することに向けて第一次の改革だと思いますが、それを始動させるものであると評価しているところでございます。その上で、十分な御審議を要望したいと思います。今後、まだ数次にわたる改革が必要であろうと思います。そのために、この機会に問題点を十分に摘出し、国会において論を尽くしていただければと願っているところでございます。
きょうは大きく二つのことを申し上げたいと思いますが、第一は、法案に対する私の認識と評価でございます。
お手元にまことに見苦しい手書きのメモをお配りしていますが、恐縮でございます。この今回の一括法案が成立いたしますと、法において何が確定するのか、つまり法に与えられた目標は何なのかということでございます。
幾つかあると思いますが、一番大きなものは、やはり一つの制度がここで廃止されるということではないかと思います。その廃止される制度は、機関委任事務制度と言われてきたものでございます。この制度が廃止されて、今までの機関委任事務は自治事務と法定受託事務とに区分されて、自治体の責任が重くなります。これは非常に画期的なことではないかと私は認識している次第です。これによりまして、国と地方の行政当局同士の関係も当然変わってまいります。
しかし、それだけではなくて、恐らく、ほかの法案との関連もございますが、例えば中央省庁等改革関連法案との連携もございますでしょうから、国におきましては、国会、内閣、裁判所と国の行政当局との関係が変わってくると思います。地方におきましても、長、議会、それと地方の行政当局との関係が変わってくる。さらには国と地方の政府間関係も変わってくる。そして地方の自治体間では、都道府県と市区町村との関係も変わってくるというようなことで、日本の社会の中に大きな変化が生まれるきっかけになるに違いないと私は考えている次第です。
そこで、法のこのような目標が達成されたといたしますと、法の目的というものに到達できる、そういう期待が持てるわけですが、それでは法によって実現が目指されているものは何か、法に予定されている目的というのは何であろうかといいますと、これは国と自治体の間の対等な協力関係を築き上げるということではないかと思います。
地方分権推進委員会の中間報告では、従来の上下主従の関係から、対等、協力の関係へというふうに表現されております。その後、法律の文言といたしましてはそのように直截には表現されておりませんが、地方の自立性、自主性を高める、そして市民に身近なことはなるべく自治体においてこれを解決する、そういうような趣旨のことがうたわれておりますので、この法に予定されている目的は、国と自治体の間に新たな対等な協力関係を打ち立てることにあるものと思われます。
それは本当にそうあってほしいと思うわけですが、さらに、この法をきっかけにいたしまして何事かが成就できるのではないか、法に込められた念願のようなものがあると拝察をしております。何といいますか、目的よりもう少し深い、念願といいますか希望が法に込められているように思います。
それは、単に行政間あるいは政府間の関係だけではなくて、行政と市民、そして市民と政府、あるいは市民と政治の間にやはり信頼関係を回復し、維持し、安定できる、そういう仕組みをつくっていかなければいけない。少し難しく申しますと、要するに代表制民主主義の原理というものを復活させて、市民がいわば安心して政治と行政に仕事を信託できる、そういう関係を日本社会の中に築いていかなければいけない、そのためのきっかけが今度の法ではないかということでございます。
そのような認識と評価に基づきまして私はこの法案に賛成の立場をとったわけですが、しかし、改革はまだまだいわば緒についたばかりであって、これから数次にわたっていろんなことを引き続いて構想し、実行していかなければいけないのだと思います。そのためにも、今国会、特にこの参議院におきまして十分な審議をお願いしたい、僣越ですが、そう申し上げたいと思います。
要望は三点ほどございます。
一つは、「行政関与の在り方に関する基準」というものと今度の法案の整合性について十分審議をしていただければと思います。
一九九六年十二月に行政改革委員会の報告が出されまして、その同じ十二月のうちに行政改革プログラムが閣議決定されたわけですが、その中に、このあり方に関する基準を尊重してこれから国の省庁の行政はいろいろ考えていこうということになっていると思います。
国の地方に対する関与というのは、いわば地方を経由して国が民間、市民、企業に対して関与をする、そういうものが多いのだろうと思います。ですから、行政の関与のあり方、行政が関与すべき、かつ関与していい領域、そしてまた行政が関与するやり方、許されるやり方、そういうことにつきましてある基準がもうできているわけでございますので、この基準に照らしてまず官民というものの関係について吟味をしていただいて、それと地方への国の関与がどう関連しているのか、御審議をいただければと思います。
それから二番目は、地方議会の強化に資する方策について御審議をいただければと思います。
機関委任事務の最大の問題点は、私は、地方で市民を代表する議会、地方の議会がこの機関委任事務に基本的に一切口を挟めなかったというところにあるのだろうと思います。今度自治事務になりますと、これは条例というものが非常に重くなります。法定受託事務につきましても議会が議論することはできるのだろうと思います。そうなりますと、地方の議会が強化されませんとこの法案の趣旨が生きてこないと思います。地方の議会のあり方について国の行政当局があれこれ指図するのは私は僣越ではないかと思います。しかし、国会において、いわば国会も代表機関でありますから、代表機関のあり方について議論をしていただく、そして地方議会に対して有益な助言をしていただくということは非常に大事なことだと思います。ぜひ地方議会を強化するという立場でいろいろ知恵を出していただければと思います。
三番目に、ここまで言うと言い過ぎとおしかりを受けるかもしれませんが、国における法律のつくり方、国会で成立させる法律のいわばつくりについて改善をしていただければありがたいと思います。
法定ということで、これから法の意味というのは重くなると思いますが、国において余り細部にわたる細かな法律をつくられますと、これは行政指導とどう違うのかということになってまいります。ですから、法律は骨太でしかし柔軟で、そういうものがこれからの法律のあり方として望ましいのではないかと思います。そして、基本のことをきちっと決めていただけば、地方でいろいろな工夫がそれに加えられる。そういう法体系のあり方というものが求められていると思いますので、そのような点について今度の法律をいわばモデルにするような形で御審議をいただければ幸いでございます。
以上、多少僣越でございましたが、私の意見を申し上げました。
この法律の成立につきましては、これは議を発し、議を論じ、議を決するのはまさに議員の皆様の本業本務でございますので、私としては全くこれは信託をしたいと思います。信頼して委託をしたい、お任せをしたいと思いますので、法の成立についてはかれこれ申し上げません。私としては、結果だけではなくてその経過というものも十分考慮しまして、今後とも分権社会の創造に私なりに微力ではありますが貢献し、協力もしていきたいと考えているところでございます。
どうも御清聴ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/209
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210・吉川芳男
○団長(吉川芳男君) ありがとうございました。
次に、島田公述人にお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/210
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211・島田茂
○公述人(島田茂君) 島田でございます。座って発言させていただきます。
今回、この場で発言の機会を与えていただきまして、非常にありがたく思っております。よろしくお願いいたします。
私は、基本的には地方自治法の改正を中心といたしまして、さらに市町村の行政という観点から若干発言させていただきたいと思います。
地方分権といいますのは、もうここで私が言うまでもなく、やはり基礎的な自治体である市町村といったものが中心となるべきであろうと私は基本的には思っております。ただ、それにつきましてもいろいろ問題があって、市町村といってもいろんな規模がございまして、一括的に市町村におろすということはできない問題があろうかと思いますけれども、ただ、基本的な理念は、市町村中心の地方分権という形がやはり本来の地方分権であろうかというふうに考えております。
そこで、まず、この改正法案、一括法案の特に地方自治法改正についての一般的な評価を若干述べさせていただいた上で、主に、私も横浜市及び他の市町村において条例制定等にかかわった経緯がありまして、その観点から私が感じたことをしゃべらせていただきたいというふうに思います。
まず、改正法案についての一般的な評価でございますけれども、長年の懸案でありました機関委任事務制度が廃止されたということは、これは歓迎すべきことであろうかというふうに私は考えております。それから、今回の地方自治法の改正案の中で国と地方自治体の役割が明確になった。これは法一条の二関係のところで記載されておりますけれども、地方自治体が地域において包括的に権限を持って、地域のことは地域で考える、そういうことが地方自治法の中で明確にされたということは私は大きな前進ではないか、少なくとも現行地方自治法よりも進んだ点ではないかというふうに考えております。
ただしかし、この地方自治法の改正案等を中心といたしました法案を見ますと、問題点といいますか疑問点といいますか、また不安といいますか、そういう点が幾つかありますので、その点をここで述べさせていただきたいと思います。
時間が限られておりますので、このレジュメに書いてあるすべてを述べることはできませんので、順不同になるかわかりませんけれども、その点は御承知のほどをよろしくお願いいたします。
まず、私は、これは反対という意味じゃなくて一つの不安なんですけれども、従来国が地方自治体に関与する場合に、いわゆる許可とか認可とかそういう権力的な関与方式が中心だったわけです、特に機関委任事務に関しましては。それが今度はいわゆる協議制度といったものが非常にふえてきました。例えば、都市計画区域の指定や都市計画決定の際の認可制度、地方債の許可制度は廃止いたしまして、協議制度。
こういうふうな制度改革は、国と地方自治体の対等性の観点からいったら歓迎すべきことであると私は基本的に思っております。やはり一方が他方に命令する、指示するという関係は地方分権の観点からはできるだけ排除すべきだという点で、この協議制度を導入するということは基本的には賛成である。
ただ、私ここで気になりますのは、同意を要する協議ということ、例えば建設大臣の同意を必要とする協議。この点につきまして、そういうことはないにしろ、もし仮に例えば国の方が同意を拒否するといった場合には、最終的に認可制度とどのように違うのか。認可の場合には一方的な行為でありますから、国が上に立っている、協議は対等性を前提にしますから、その点は恐らく内容は違うかと思います。
ただ、私が想像しますに、やはり認可といいましても、恐らく、国と地方自治体が事前に協議いたしまして、その結果最終的に認可というのが普通だと思いますので、認可制度のもとでも事前に協議をやっているわけです。したがって、この協議制度ということも、同意といっても、条件をつけますとやはり国と地方自治体の間で差が出てくるのではないかといった点を私一つ危惧しております。
この点、国民が認可制度と協議制度は違うんだということを納得するような形でぜひ明確にしていただきたいということが第一点でございます。
それから、前の後藤公述人もおっしゃったように、やはり地方議会といったものが地方分権のかなめとなるかと思います。この場合、地方議会の中で特に重要なのは条例制定権だというふうに私は思います。私どもは、地方分権の話を聞いたときにまず頭にぴんときましたのは、地方自治体が自主的に条例を制定できる範囲が広まるという意味で非常に期待しているわけでありまして、その点、機関委任事務制度が廃止されまして、地方自治体の自主条例権、制定される範囲が広がったということは、非常に歓迎すべきことであります。
ただ、その後の経過を見てみますと、やはり法定受託事務が当初の予想に比べて非常にふえてきた、機関委任事務の四五%が法定受託事務に入れられることになった。ただしかしながら、本来法定受託事務につきましては、法律、政令の委任がなければ制定できないというのが勧告レベルにおいては、また推進計画レベルにおいては前提とされていましたけれども、一括法案ではこの点が外されまして、法令に反しない限り法定受託事務についても条例を制定できるといった点は、やはり前進ではないかというふうに評価しています。
ただしかし、実際問題、法定受託事務につきまして地方自治体がどれだけ条例を制定できるかといった点には非常に疑問を持っておりまして、例えば議会の議決事項におきましても、現行地方自治法では十何項目にわたって羅列されているわけです。それ以外に地方自治体の議会が自主的に議決事項を条例でふやすことができると。そして今回の法改正におきましても、地方自治体の議会がみずから議決事項としてできる範囲を広げようという形で改正案が出されている。この点はもちろん歓迎されるべき点です。
ただしかしながら、この法定受託事務については従来のまま、いわゆる法令によって限定された事項のみ条例が制定できるというふうに非常にきつい縛りがありまして、その点を考えますと、勧告、推進計画の段階からどれほど進歩したのかなといった点がちょっと危惧される点であります。
それから、ちょっと3の(2)を飛ばしまして、(3)、(4)の関係に入ります。
私は、横浜市それからその他の自治体において、地域のために何か政策的な条例をつくろうとした場合、必ずネックになりますのが法律の存在であります。
一つ例を挙げれば、河川に放置船舶が泊まっている、それについて何とか撤去したいというふうになるわけです。これは今の段階では数隻でありますけれども、これが十年後、二十年後になりますと十隻、二十隻になってくる。学生なんかも私に、先生もうこれからは車の時代じゃなくてプレジャーボートを持たなければ女の子にもてませんと、そういうことが言われる段階になりまして、またプレジャーボートは非常に安くなっている。そうするとますますプレジャーボートが多くなってくるわけです。
ところが、困りますのは、河川がその場合狭くなっていく。そうすると、今度河川法でこれが対処できるか。最近、河川法が改正されました。その結果、いわゆる放置船舶も河川法の対象となりましたけれども、必ずしも十分ではないということなんです。そうすると、例えば普通河川なんかで、河川法が適用されない領域において放置された船舶は、市町村はどうしたらいいのかということなんです。また、河川法で規制されても、必ずしも国とか県が動いてくれるとは限らない。としますと、やはり地方自治体が自主的に河川法とは別に条例を制定しなければならない。ところが河川法という大きな法律がどんと上におりますと、なかなか地方自治体が条例を制定して自主的に放置船舶対策をやることはできないという状況が現状であります。
したがって、条例をつくりましても、基本的には指導、お願いといったものを基本として、また、例えば命令権をつくりましても強制権をつくりましても、河川法とか行政代執行法という法律に阻まれてなかなか執行できない。もしあえて執行するならば訴訟を起こされる可能性がある。そういう危険性の中で市町村はぴりぴりしながらやっている。だから、そういう法律のあり方といったものが非常に重要な事項になってくる。したがって、機関委任事務が自治事務に変わりましても、この場合に法律の内容自体が変わらなければ地方自治体は本来的に動けないことが続くのではないかというふうな私は気がしております。
したがって、その機関委任事務から自治事務ということも確かに重要ではありますけれども、基本となる河川法なり港湾法なりそれから都市計画法なり、そういう法律が、もっと市町村に権限を多くするような法律改正といいますか、後藤公述人もおっしゃいましたけれども、余り細かいところまで法律が規制しない、政省令で規制しない、できるだけ市町村に任せるというようなことをやっていただきたい。
それからもう一つ、今の放置船舶の場合は規制の問題でありますけれども、これも規制の問題になります。
今、市町村が抱えている問題でリサイクル問題というのがございます。ペットボトルとか瓶とかいうようなものをいかにリサイクルして廃棄物を少なくするかという問題に対しても、市町村が実際にとれる措置といったものは非常に限定されているわけなんです。
例えば、私ここに「課徴金」というのを書きました。十四条三項は刑罰に関する規定であります。直接関係しませんけれども、この十四条三項関係で、普通の刑罰以外に過料というのが設けられましたけれども、しかしこれから重要になるのは、命令、強制ではなくていろんな経済活動に対して経済的なインセンティブを与えていく、例えば補助金を与えていく。また、悪いことをやった人に対しては課徴金といいますか、悪いことをしてお金を多く取ったんだから返せと、そういう措置みたいな、幅広い選択の手段みたいなものがやはり地方自治体に与えられるべきであるというふうに思います。
例えば、いろんな形で、不法投棄なんかは廃棄物処理法で対処できるとしましても、それ以外のちょっとした、地方自治体が全体地域でつくった政策に反するような行いをする業者とか、それに対して例えば課徴金を課すとか、それから、おまえ、多くもうかったんだからちょっと地方自治体に返せ、住民に返せという手段。ところが、これも地方財政法とか地方自治法とか、そういう法律で地方自治体が自主的にいわゆる経済的負担を相手に課すという手段がなかなかとれない状態になっている。これはやっぱり法律があるからそういう形でなかなか対処できない状態が現実には存在するということであります。
したがって、議員の先生方にぜひお願いしたいことは、地方分権といいますのは、国の事務から地方の事務へ変わったということも非常に重要でありますけれども、自治事務になっても、従来の法律がそのままで変わらないというのであれば、基本的には地方自治体が動けないという状態は変わらないんじゃないか。
いろんな問題、都市計画の問題、ごみ問題、これからは地方自治体ができるだけ自由にいろんな政策を立案して、そして、あるときは法的な手段、また財政的な手段を用いて地域を発展させていくということが地方分権の基本的なあり方だというふうに考えておりますので、恐らく特別委員会なんかで議論されることになると思いますけれども、その点は、地方自治体の自主的な判断、意欲をそぐような余り細かい法律の規定はやめようじゃないかという形に、ぜひそういう方向で議論していただきたいというふうに私自身は考えております。
それから、最後にもう一点、地方議会の組織運営に関しましてでありますけれども、この点に関しましても、今回の改正では、議案提出要件とか修正動議の発議要件の緩和がありまして、現行の八分の一の地方議員の先生方から十二分の一に変わる。それから、議員定数も基本的には議会の判断でしようじゃないかという前進の方向で規制緩和が行われていますけれども、しかし、現行の地方自治法を見ますと、例えば常任委員会の制限とか、それから定例会の制限とか、私たちが外から見てもうちょっとこれは外してもいいんじゃないかなという地方自治法の規定もございます。この点も、なかなか私にはわからない難しい問題もあろうかと思いますけれども、これでいいのかということもぜひ議論していただきたいと思います。
最後に、私が先ほど法令の規制を緩やかにして地方自治体の自主的判断を広くする、そういうふうにお願いしたいと言ったことにつきまして、例えば推進委員会の第一次勧告はこういうことを言っているんです。「国は、自治事務について基準等を定める場合には、全国一律の基準が不可欠で条例制定の余地がないという場合を除き、」「直接条例に委任し、又は条例で基準等の付加、緩和、複数の基準からの選択等ができるように配慮」することが求められるというふうに第一次勧告も述べているわけでして、この第一次勧告の趣旨に沿いまして、地方自治体がいろんな地域の行政問題に対処できるようないわゆる緩和ですか、手段をできるだけ認めていただきたい、そういう方向で国会においても議論を進めていただきたいということをお願いいたしまして、私の発言を終わらせていただきます。
どうもありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/211
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212・吉川芳男
○団長(吉川芳男君) ありがとうございました。
次に、角田公述人にお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/212
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213・角田英昭
○公述人(角田英昭君) 神奈川県職員労働組合の角田と申します。着席して発言させてもらいます。
私は、これまで県の保健所や児童相談所、知的障害児施設などで福祉の仕事に二十四年間携わってきました。また、自治体労働組合の役員として、「住民こそ主人公」、「住民の幸せなくして自治体労働者の幸せはない」を基本に、県民要求の実現と県政の民主的な発展に向けて県民とともに運動を進めてきました。きょうはこの立場から、また地方公聴会ということで、少しローカルな話題も交えて地方分権一括法案に対する意見を述べさせてもらいたいと思います。
まず、この法案は、国と自治体を上下関係、主従の関係としてきた機関委任事務を廃止し、かつ国の行政的関与の元凶と言われた通達行政を廃止するなど積極面はございます。しかし、全体として見れば、地方分権推進委員会の勧告からも大幅に後退しており、新たに国の統制を強めるなど、地方分権、住民自治のあり方にかかわる重大な問題点を抱えていると思います。
以下、六点にわたって問題点の指摘と抜本的な見直しの視点、課題を提起させてもらいたいと思います。
まず最初に、私は、通達行政がいかに社会的弱者と言われる人たちの人権をじゅうりんし、非人間的であったかを生活保護行政を例にとって明らかにしていきたいと思います。
昭和五十六年十一月、暴力団の不正受給が続発しているとして、生活保護適正化通知が出されました。これが悪名高い一二三号通知であります。これを契機に、生存権保障の最後のとりでであった生活保護の現場で、まずは疑えとの指示のもとに、どこで何を調べてもらっても構いませんとする包括同意書を提出させ、水際作戦と言われる徹底した締めつけが行われました。
福祉事務所でも画一的な指導、指示が行われ、当時百五十万人もいた被保護世帯がその後の十年間で九十万人に激減しています。ある者は絶望のふちに追いやられ、病魔に苦しめられ、そして死に至った人もおります。相談員の苦悩も深く、展望を失って職場をやめていった人も少なくありません。
そのひどさに日本弁護士連合会は、法的根拠がなく不当に人権を侵害している、通達行政の悪弊のきわみである、撤回すべきだという報告書を出しました。
その後、秋田県での加藤訴訟を初め、人権裁判と言われる訴訟が各地で起き、そのほとんどが原告勝利となっています。しかし、一二三号通知は関係者の再三の要求にもかかわらず、現在も撤回されておりません。
今回の一括法案で通達行政は廃止されますが、法定受託事務について、国は処理基準を定めることができるとされており、これが国の監査や研修などと連動して拘束力を持てば、事実上の関与となります。通達行政の悪弊を一掃することをお願いしたいと思います。
二つ目は、国から地方への税財源の移譲に関する問題であります。
当初、財源問題では、地方分権推進委員会は税財源移譲を含む地方税の充実と言っておりました。しかし、法案では「税財源移譲を含む」が削除され、仕事の量は国四、地方六なのに、財源は国六、地方四の逆転状況が残ったままです。自治体が住民の意思と要求を踏まえて、自主的、主体的に行財政運営をしていくためには、国から地方への権限移譲とあわせて、それを財源的に担保する税源移譲が不可欠であります。
今回の法改正で、例えば福祉分野を見ても、児童扶養手当の認定、身体障害児、知的障害児の補装具、日常生活用具の交付等の事務が市町村に移譲されますが、移譲に伴って市町村に新たな財政負担が課せられます。国から地方への税財源移譲はないが市町村への権限移譲には財政負担をかけるというのでは本末転倒であり、福祉の後退が危惧されます。
法案では、法定外目的税の新設と地方債発行条件の緩和などが盛られておりますが、これでは本質的な解決にはならないと思います。税源移譲とあわせて、所得税の最低税率部分の地方への移譲とか、中小企業に配慮し、総資産に着目した外形標準課税の実施問題、また地方交付税率の引き上げなど、安定的な地方税の確立が先決だと思います。
今、自治体では財政危機を理由に深刻な事態が進行しています。神奈川県でも全職員に対するボーナスの一律カット、賃金改定の九カ月延伸が行われました。それだけではありません。学費が払えず高校を中退する生徒がふえている中で私学助成を三十六億円も削減し、民間社会福祉施設への補助金も十一億円削減しました。重度障害者に対する医療費助成の県負担率も連続して削減、今年度だけでも六億円カットしております。県民の暮らしや福祉、市町村財政に大きな影響が出ています。県補助金の削減中止に対する意見書も県下過半数の市町村議会から上がっており、ぜひ税財源の移譲と地方税の確立を要請したいと思います。
第三は、府県政のあり方の問題と権限移譲にかかわる問題でございます。
これまで住民の暮らしは市町村と県政という二層制の自治の発展の中で守られ、発展してきたと思います。ところが、今回の権限移譲に関しては、県議会の中でも、結果として自治は高まったのかという質問に対して、県は、移譲項目のうち五十八分の四十四が地方内部の移譲であり、国からの分権は不十分だと回答しております。
特に今回の法改正では、国から都道府県への権限移譲がほとんどないだけではなく、中核市要件の規制緩和や特例市制度の新設などで都道府県から市町村への移譲が目立っております。神奈川県では三百三十万人の横浜市、百三十万人の川崎市という二大政令都市に加えて、今回の法改正で中核市への準備をしている横須賀市、また五十七万人の相模原市を筆頭に、人口二十万人以上の特例市対象の市は七つあります。その人口を合わせれば県人口の約八五%になります。このままでは県の役割、機能は空洞化しかねません。暮らし全般にかかわる国の権限を大幅に県に移譲させ、基礎的なサービスにおける市町村格差をなくし、県全体としての水準を引き上げ、暮らしの基盤整備を行うなど、市町村を総合的に支援する県の役割、機能を強化していくことを明確にすべきだと思います。
また、今回の法改正で地方事務官制度が廃止され、例えば職業安定業務など労働行政の多くが国に移管されます。しかし、神奈川県でも首切り、失業、雇用不安は深刻で、県内に大規模事業所を持つ大企業の人員削減計画だけでも約七万人になります。神奈川労連は、県独自にリストラ規制条例を制定し、大企業の横暴なリストラ、合理化を規制し、労働者の雇用と生活を守る県独自の役割を明確にすべきだと提言しており、私もそのように思います。
さて、先日、経済審議会で道州制を検討するとの報告がされていますが、これは地方分権に逆行し、都道府県自治を否定する議論だと思います。同時に、基礎自治体については、行政サービスの効率的な提供だけに着目した合併の推進、また大規模化ではなく、住民自治の担い手としての市民の参加、育成、活動を実質的に担保できる適正規模というものを検討していくことが必要だと思います。
第四は、地方公共団体の役割を具体的に規定した「住民及び滞在者の安全、健康及び福祉を保持する」に始まる事務の例示を廃止することの問題です。
事務の例示は、自治体の事務の中身が具体的に記載され、住民から見ても明らかにされています。また、この例示は、この間の住民運動によって、例えば一九六九年の自治法改正では「消費者の保護」が加わりました。また、四日市公害や水俣病などで住民の健康が破壊され、命まで奪われ、公害裁判が次々に起きた六〇年代の経験を踏まえて、一九七四年の自治法改正では「公害の防止」、「その他の環境の整備保全」が追加されました。その中で具体の施策が拡充され、住民の暮らし、健康、命を守ってきた意義のある規定だと思っております。
今日、自治体リストラが猛威を振るい、自治体、特に県の役割が次々と切り捨てられている中では一層重要になると思っております。本県でも、地方分権の取り組みや行政システム改革との連携に十分留意し、一体的に推進すると言っております。
この間も、県民の暮らしに直結している補助金が次々に削減され、県の社会教育施設や保健所、消費生活センター、福祉施設、芸術・文化・スポーツ施設など、この四年間で五十以上も廃止になっております。このような動きに住民サイドから歯どめをかけるためにも、住民投票条例の制定や議会のチェック機能、また条例制定権の強化などは焦眉の課題だろうと思っております。
第五です。国の関与と知事の下請機関化にかかわる問題であります。
法案では、各大臣はその担任する事務に関して、法定受託事務、自治事務にかかわらず是正の要求ができ、自治体は改善義務を負うこととされています。また、各大臣の都道府県知事に対する指示が条文化されたことで、各大臣が知事を使って市町村を誘導、統制する仕組みができます。
高知県で非核港湾条例制定が問題になり、結果的に継続審査、廃案になりましたが、その過程で、外務省がその担任する事務だとして関与をしております。周辺事態法第九条では、施設の利用その他で自治体に協力を求めるとの規定が設けられ、正当な理由がない限り自治体は拒否できないとされています。自治体とそこで働く労働者を軍事体制に組み込む体制が着々と準備されています。自衛隊法百三条にも、防衛出動に際しては、任務遂行上必要と認められれば、都道府県知事に要請して、病院、診療所など施設の管理や土地、家屋の使用、物資の調達、医療、土木建築、輸送を業とする者への業務命令ができるとされています。
今回の法案では、全体として知事の統制機能が強化され、かつ各大臣の都道府県知事に対する指示が条文化されたことで、知事が国の下請機関化する懸念が持たれております。
神奈川県は沖縄に次ぐ第二の基地県であり、米第七艦隊の母港がある中で、周辺事態が生ずれば即現実の問題となります。神奈川県は十五年前に非核兵器県宣言をしております。住民及び滞在者の安全を守り、平和に貢献することこそ自治体の重要な任務だと思います。少なくとも、自治事務に対する国の関与、是正改善義務、国による代執行は削除すべきだと考えております。
最後です。この法案の徹底審議と国民の合意形成を図る問題です。
何より、この膨大な一括法案の中身を住民、国民の多くがまだ十分に知らないこと。具体的な内容は政令にゆだねられているものも多く、それが利用者、国民にとってどのような意味と性格、影響を持つのか、その解明が十分にされていないこと。県の調査でも、政令等が出ないと条例等の制定、改廃の必要性が判断できず、未定となっているものは百五十八本にもなり、必要とされている数を大幅に上回っています。しかも、法案の施行期日が原則として十二年四月であり、県も、この法案が成立した場合は県の施策に多大な影響を及ぼす、法改正に伴う県の対応も極めて限定した期間に行わざるを得ないと言っております。
このままでは事実上国に白紙委任することにもなりかねません。最も民主主義を貫かなければいけない地方分権、住民自治のあり方を問う法案の審議に逆行することになります。今国会で拙速に成立させるのではなく、十分な審議と解明、合意形成を行ってくださるよう要請し、私の意見陳述を終わらせていただきます。
御清聴どうもありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/213
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214・吉川芳男
○団長(吉川芳男君) ありがとうございました。
以上で公述人の方々の御意見の陳述は終わりました。
それでは、これより公述人に対する質疑を行います。
なお、委員の質疑時間が限られておりますので、御答弁は簡潔に願います。
また、御発言は私の指名を待ってからお願いいたします。
それでは、質疑のある方は順次御発言願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/214
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215・吉村剛太郎
○吉村剛太郎君 自由民主党の吉村でございます。
本日は、公述人の方々、大変お忙しいところ御協力をいただきまして、心から御礼を申し上げます。さらに、大変示唆に富んだ公述をしていただきまして、今後我々の当問題に対する審議の糧にしていきたい、このように思っております。
さて、神奈川県知事でございます岡崎公述人にまず御質問をしたいと思っております。実は私は福岡県選出の参議院議員でございます。御存じのように、福岡県には福岡市と北九州市、二つの政令市がございます。当神奈川県も横浜市と川崎市、二つの政令市がございます。全国の中で県内に二つ政令市があるのは当神奈川県と私どもの福岡県、この二つであるわけでございます。
全国には十二の政令市があるわけでございますが、例えば福岡県の場合を申しますと、福岡市と北九州市の人口を合わせますと福岡県の人口の約四六%になります。当神奈川県は横浜市と川崎市合わせますとこれは半分以上、五五、六%になるのではないか、このように認識をしております。予算面を見ますと、福岡県におきましては、福岡市単独の予算、これは一般会計と特別会計を含めまして約一兆七、八千億になります。一方、福岡県の予算はそれを下回っておりまして一兆五、六千億ではないか、このように思っております。神奈川県のことを概略、私が存じ上げている範囲では、横浜市単独の予算が神奈川県の予算を、これは一般会計、特別会計も含めて上回っておるのではないかと思います。いずれにしましても、政令市二つ合わせますと県の予算を上回っておるであろう、このように思っております。
戦後、昭和二十二年、地方自治法制定の折に、横浜、名古屋、京都、大阪、神戸、この五大都市を特別市、いわゆる東京並みの市にするという話があったわけでございますが、その当時、もろもろの政治状況、またなかんずく当時の県の反対も強かったんでしょう、これが成立をしませんで、その後この政令指定都市という制度になったと思っております。
政令指定都市といいますのは、県並みにもろもろの権限を市が受け継いでおるということでございますが、実態はまだそう完全に県並みということにはなっていない、このように思っておるわけでございます。政令市二つを抱えておられます、神奈川県知事でございます岡崎公述人、実体験といたしまして、この政令指定都市の位置づけといいますものについてどのようなお考えをお持ちか、まずお聞きしたい、このように思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/215
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216・岡崎洋
○公述人(岡崎洋君) 今お話しいただきましたように、横浜、川崎、大変大きな政令市がございまして、人口でも両方足せば半分以上、こういうことです。
端的に申しまして、それが神奈川県の県政にどういう特色ある影響が出ているかということにつきましては、いろいろな角度から申し上げられますけれども、一つは、財源面でやはり両政令市は非常に大きゅうございますので、神奈川県の財政の構造が、県としてどうしても行わなければいけないいわゆる義務的な経費のウエートが非常に高まっておりまして、プラスアルファの県として独自で政策的な仕事をする部分というのが、両政令市にかかる義務的経費が大きなものですから、非常に相対的に比率が小さくなっていて予算構造として柔軟性を欠くという面は否めないところでございます。
ただ、それだけ両政令市で市自体、独自のいろいろな政策的なことを市の判断でやっているじゃないか、こういうことも言えるわけでございますので、あながち全面的に否定をするような話ではないかなと。ただ、それだけ力のある市に育っているわけでございますので、できるだけ自立性を持った形で動かれるということはむしろ期待していいんじゃないか、そんなふうに思っているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/216
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217・吉村剛太郎
○吉村剛太郎君 実は私は福岡県会議員上がりでございまして、政令市でございます福岡市選出の県会議員を経験いたしました。政令市選出の県会議員といいますのは、御存じのようにそういう面では余り仕事がない。いろいろと陳情を受けますが、ほとんどが市に関連することが多うございまして、県会議員でありながら福岡市にしょっちゅう出入りをしておったというような経験をしておりまして、直接は、県会議員としては、警察の交通信号とか県立高校とかそういうことが主だったかなと。ある意味ではそういう悩みも持っておりました。
政令市といいますものを今後地方分権の中でどう位置づけしていくのか。私、個人的には、これはきっぱり特別市並みにした方がすっきりするのではないかという考えも実は持っております。地方分権といいますのは、必然的に受け皿がやっぱりしっかりしていかなければならない。受け皿がしっかりするということであれば、市町村合併といいますものは避けて通れないのではないかなと。
こうなりますと、先ほど角田公述人の中にもありましたように、神奈川県には中核市、特例市ですか、候補がまだ幾つもある、それを全部合わせたら八五%ぐらいになっちゃうというようなこと。そうなると、確かに県の役割というのが空洞化していってしまうということになってくるのではないか。そうなりますと、県の役割といいますものを別の観点から見なければならないのじゃないか。さらにいきますと、これは賛否あろうかと思いますが、道州制というものにまでつながってくるのではないかなという感じがするわけでございます。地方分権というものを将来的に考えますと、そういう点もやはり視野に入れながら、まさにこれはスタートしたばかりでございますが、分権を発展、充実させていくとそういう方向に進んでいくのではないかなと、こんな思いがするわけでございます。
それにつきまして再度岡崎公述人、それと、せっかく述べていただきましたので角田公述人のお考えをお聞きできればと、このように思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/217
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218・岡崎洋
○公述人(岡崎洋君) 今のお話でございますけれども、横浜、川崎という政令市、ちょうどそこは接しているわけでございます。それで、それぞれの地区の県会議員さんは余りすることがないのじゃないか、こういうお話でございます。
実情を見ますと、むしろ私どもは、横浜市だけあるいは川崎市だけで片づく問題よりも、例えばの話ですけれども、今直面しているお話は、京浜臨海部の産業、工業が非常に大転換期にあって再生を図らなきゃいけない、そういうお話は必ず横浜、川崎が共同して取り組むようなお話が中心なわけでございます。さらには、多摩川を越えた東京の西部とも一緒に広域的にやらなきゃいけない。こういうお話になりますと、むしろ広域的な観点から、市域を越えたいろいろな問題がたくさんございますので、そういう観点からは、県会議員さんも含めまして、県も広域的な立場からすべきことが山ほどあるというふうなのが実情でございます。
ほかの市町村のお話でも、例えばごみ処理のお話でございますとか、あるいはその地域の産業発展のお話というのはみんな市域、町域を越えた話が多うございますので、そういうことに対する県のかかわりのぐあいというのは今までよりも強まることを期待されております。そういう意味で、今の状態の中で一足飛びに道州制というようなお話でない形の現実の姿があるんじゃないかなと思っております。
ただ、横浜の場合は政令市の中でも物すごく人口が多いわけでございます。三百三十万ということです。それが区の形で区切られてはおりますけれども、三百三十万の市民の方々のきめ細かな御意見や何かをどういう形でフォローして吸収していくかというのは、市と同時に県としても大きな課題があるかなというふうには見ております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/218
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219・角田英昭
○公述人(角田英昭君) 一つは、私も、県という切り口から見る場合と、もう一つ、やはり基礎自治体の規模がどれぐらいであった方がいいのかという、そういう点の検討が必要でないのかというふうに思っております。
それで、こんなことを言うと横浜市に怒られてしまうかもわかりませんけれども、三百三十万基礎自治体ということが率直に言って住民自治を発展させる上でより適切なのかどうか。東京都のように特別区にして議会を持ち、そして住民の要求がもっと身近なところでいろんなことが議論されるという性格にしていくことが、より分権問題を考えるときに必要なのではないのかと、そのように思っております。
それから、あともう一つは、先ほども申しましたけれども、労働行政等については県がある意味では非常に主体的にやってきた部分があるわけですけれども、今回の機関委任事務の廃止で、国の業務ということで職業安定業務等については移管されるわけですけれども、県内の今の労働者の実態等とか、また地域経済のことを考えると、労働行政等について県がもっといろんな役割を持ってもいいのではないのかな、そのように思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/219
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220・吉村剛太郎
○吉村剛太郎君 岡崎公述人、知事さんという立場でなかなかこの問題は難しい問題があろうかと、このように思っておりますが、大変参考になりました。
後藤公述人にお伺いいたしますが、このメモの一の三、「法をきっかけに成就が期待されているもの―法にこめられた念願 市民と行政との間の信頼関係」、大変高邁な感じがいたしますが、もう少し具体的に御説明をいただければと、このように思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/220
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221・後藤仁
○公述人(後藤仁君) そう高邁なことではなくて、私は、非常に率直に申し上げまして、今、日本の社会の中で市民が政治の言葉と行政の仕事にかなり根深い不信感を持っているのではないかと感じているんです。それで、その不信感があることはやはりいい状態ではないというふうに判断をしているんです。
ですから、これはここのところをほぐさないといろんなことがうまくいかない。幾ら行政が例えばいろんな形でメッセージを出しても、信頼感が欠けていれば心の中には入り込めませんから、届くには届いてもそこで反射されちゃうということになりますので、ともかく市民に信頼してもらえる政治と行政にならなければいけないというテーマがあるのではないかと思っています。
だから、そのためにこの地方分権というのが、その一つの理由が、密室で、何か遠いところで物が決められているという感じがあるわけです。ですから、手近に、身近にするためには分権が必要ですし、密室性を取るためには情報公開みたいなものが必要ですし、そういうようなことでこの分権というのは信頼感回復のきっかけになるんだという理解です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/221
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222・吉村剛太郎
○吉村剛太郎君 分権は基本的に賛成であると。そして身近に、情報公開し、当然政治、行政が清潔でなければならない、こういう解釈でよろしいわけですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/222
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223・後藤仁
○公述人(後藤仁君) はい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/223
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224・吉村剛太郎
○吉村剛太郎君 ありがとうございました。
島田公述人にお伺いします。
分権に伴いまして、機関委任事務、いわゆる国の仕事をなるべく地方に分散していこうということでございます。しかし、一方では関与という形で国が携わって関係を持っていく、維持していくということでございまして、我々の審議の中でもこれは分権の逆行ではないか、こういう意見も多々ございました。しかし、やっぱり国として責任を持たなければならない点といいますのは、これは私は当然あるのではないかと個人的には思っております。
私は、一方では、ちょっと極論かもしれませんが、今回の機関委任事務、四五%が法定受託事務、五五%が自治事務という形になっておりますが、逆にもうほとんどを自治事務にする、そのかわり国が関与をする、そしてこの関与を時間の経過の中でだんだん減らしていくというような形はいかがなものだろうかなという個人的な考えを持っております。むしろ、法定受託事務とか自治事務とか、こちょこちょして関与とかなんとかするものだからかえって誤解を招く。もうばあんとほとんどを渡してしまう、そのかわりしばらくは関与していく。それで、だんだん自治体が成長していくに応じてこれを外していく。時には自治体によってはアンバランスがあるかもわかりません。こういうこともどうだろうかなと、こんな感じを持っておるわけでございます。
先生は大学で教鞭をとっておられますが、実態、実務と離れて、学者として御意見があればお聞かせをいただきたい、このように思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/224
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225・島田茂
○公述人(島田茂君) 機関委任事務といいますのは基本的には私は、国の事務と言っていますけれども、もちろんその中には例えば自衛隊員の募集とか純粋に国の事務もございます。ただしかし、その多くは基本的には地方自治体がやっても構わない事務であって、ただそれを国の仕事とする、これは法的にするというだけであって、その場合の根拠は何かというと、国の仕事にするということが目的じゃなくて、いわゆる関与をやるということが目的なわけです。したがって、機関委任事務は、時々誤解されるんですけれども、これは国の事務なんだというのじゃなくて、本来は関与の仕方が、容易に国はやりますよという、その関与のやり方の問題だと思うんです。
ただ、その場合に、今回の改正で言われますように、今まで機関委任事務のもとでは非常にあいまいであった包括的な指示、その点を法律、政令等で明確にしていこうじゃないかといった点は非常に私は歓迎すべき点だと思うんです。
それから、今議員がおっしゃるように、一般的に自治事務にしておいて、そしていわゆる関与を残すと。
ただしかし、私の考えでは、むしろ関与のあり方の方が重要であって、自治事務として置いていながら関与が非常に厳しい、それにまた本来地方自治体の判断に任すところまで国が関与してくるといったところの方が、建前は自治事務だと言って関与が強いという方が私はちょっと何か危惧するところがあるんです。
それから、ただ、今おっしゃった点で一つ私も賛成のところがあるのは、一度都道府県で終わったのは、やはり都道府県は安定しておるわけです、財政事情も今問題がありますけれども、規模的に安定していますし行政能力も安定している。そして、市町村でも政令市なんかは安定している。しかしながら、小さな地方自治体の中にはいろんな形で県なんかに頼らなければやっていけないところも現実においてあるわけです。
そこに、例えば川崎、横浜と同じような形で国の権限をぼんとおろした場合、一体どうなるのかというふうな危惧もある。ただしかし、本来は分権である以上、一応自治事務だとばっと市町村に与えてみる。それで一回やってみて、こういうことができるかどうかわかりませんけれども、もし問題があればもう一度見直してもう一遍制度を考えると。だから、今おっしゃったように、少しずつやっていくのじゃなくて、やはり分権革命、これは第三の革命であると言う以上は、ひとつ一般的にばっと自治事務にするという考え方については、基本的な発想においては私は非常に賛成するわけであります。
それから、今知事もおられますけれども、一度まず県へおろした場合、いわゆる地方分権推進委員会みたいなものを各都道府県レベルにおいてもう一度つくってみて、やはり各都道府県において状況が違うわけです。そういう状況に応じて県の仕事をいわば公開にして、こういう仕事はこの自治体に任せましょうという、個別的に話し合う場、公の場、こういう場、そういう場合は、神奈川県ですと県がいてそれから関係各市町村がいて、そこで具体的に事情を言いながら、財政状況を言いながら、具体的に各都道府県ごとに地方分権を行っていく。そういう発想も一ついいのではないかと個人的には思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/225
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226・吉村剛太郎
○吉村剛太郎君 もう時間も迫っております。最後の質問でございます。
地方分権という形になれば、地方が主体的に自主性を持って行政をやっていくということになるわけでございます。この受け皿としてやっぱり力がなければそこに格差が出てくるだろう、このように思っております。この地方分権がある意味では宿命的に過密過疎という問題を引きずってくるのではないかなと、これは避けなければならない問題であろう、このような感じがするんです。
後藤公述人、分権は過密過疎というものが伴ってくるのではないかなという気が私はしておりますが、その点についての御意見と、そういうことにならないように当然布石をしていかなければならないと思うんですが、御所見を伺いたい、このように思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/226
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227・後藤仁
○公述人(後藤仁君) おっしゃるとおりだと思います。
やはり分権になれば差が出てくる。それは先進とか後進とかという問題も、あるいは先発とか後発とか、政策を、どこが先にどういうことをやるというふうなことでも競争になるわけですけれども、自治体の置かれた条件に応じて、幾ら頑張っても苦労が報われないところも出てくる可能性があると思います。
ですから、差が出ること自体は否定できないですが、努力してもうまくいかないというところに対しては何かきちんと、日本社会にいればどこでもある水準のところまでは市民の生活はなるんだという、一種の日本社会のミニマム水準みたいなものを設定して、それを守っていくということが必要ではないかと思っています。それは分権と矛盾しない。その上で競争すればいいのではないかというふうに思っています。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/227
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228・吉村剛太郎
○吉村剛太郎君 時間が参りましたので終わります。
ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/228
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229・藤井俊男
○藤井俊男君 公述人の方々、大変御苦労さまでございます。
民主党・新緑風会の藤井俊男でございます。
ただいま貴重な御意見を承って、私は皆さん方の意見を聞く中で、国政の場におきまして反映をしてまいりたいと思っております。ひとつよろしくお願いを申し上げます。
まず、岡崎知事さんにお伺いしたいと思うんです。
地方と対等の立場に立ってこれまで独自に、平成八年から県あるいは市に向けて推進協議会をつくり、そしてまた職員の方々等にも諮って、財政も厳しい状況の中でいろいろ順次実施に向けて取り組んできたということでありますが、お聞きしますと、これまでの移行の実施が七十二項目で五百九十三事務に及んだと。これは大変なことではなかったのかと私は思っておりまして、まずもって敬意を申し上げたいと思っております。
そこで、この地方分権一括法案の推進に当たりまして、地方の受け皿づくりということで知事さんに大変なお骨折りをいただいたんですが、その取り組みについて何か問題点はあったのかないのか、まずそこらをお聞かせ賜ればと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/229
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230・岡崎洋
○公述人(岡崎洋君) 今のお尋ねの趣旨は、一括法案を推進するに際して……発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/230
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231・藤井俊男
○藤井俊男君 際して何か。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/231
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232・岡崎洋
○公述人(岡崎洋君) 御質問の趣旨に真っすぐ答えているかどうかちょっとあれなのでございますけれども、この一括法案は、私どもが従来から進めてまいっております県、市町村間のいろいろな権限の移譲関係等をむしろ大いにプッシュしてくれるものだと、こういうふうな形で位置づけておりまして、これからも県、市町村間の協議会におきまして、この推進法を具体的にどう市町村で受けとめていくかということについては、協議を重ねながらやっていくというのが基本的な姿勢でございます。
まずもって当面のお話としては、県もたくさんこの法律に基づいて条例をつくらなきゃいけませんけれども、市町村もたくさんつくらなきゃいけない、規定を整備しなきゃいけない。そういうことに、規定整備についての御相談とか御協力は私どももまずしなきゃいけない、こういうことがございます。
また、移譲された権限をこなすに際しまして、小さいところではそれに対応する職員が足りないかもしれない、こういう話もございます。そういうところにはお手伝いも、私どもは可能なら職員を出してさしあげましょうとか、そういったかなり具体的なお話の流れの中で、一括法案ができ上がったらそれの受け皿づくりに万全を期していく、こういう構えでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/232
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233・藤井俊男
○藤井俊男君 私は、市町村がよくなれば県も国もよくなると。これは私個人の持論なんですけれども。そういう中で、知事さんも権限移譲の中でこれまで取り組まれてきた。今、一括法案が四百七十五本も出ておりまして、私どもはちょうどきょうで審議が九日目に入っておるという状況でございまして、公聴会の意義は大なるものがあろうと私は思っておる次第でございます。
先ほども政令市の関係等も出ておりましたけれども、特に神奈川県につきましては政令市を抱えておる中で、県と市の権限移譲の問題等について不都合が生ずるようなこと、あるいは懸念を持たれたものがあったかどうか、この辺はちょっとどうなのかと私は感じるんですが、お聞かせを賜りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/233
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234・岡崎洋
○公述人(岡崎洋君) 今度の一括法案に伴うお話としての権限移譲で、政令市を含めまして具体的にこれは県と市町村の間の大きな問題になるなというような受けとめ方の内容のものはございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/234
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235・藤井俊男
○藤井俊男君 それでは、後藤先生の方にお聞かせを賜りたいと思うんです。
地方議会の強化を後藤先生は特に訴えをされておりました。私は、後藤先生が継承そして敬愛している長洲知事さんのお話を賜りまして、いろんな意味で御指導と共感を覚えている一人でございます。
国と自治体の関係が対等の立場に立つという状況の中で、知事さんが隣にいて大変恐縮でございますが、権限が国から地方に、県、市に移行してくるということになってきますと、地方の首長さんの権限が非常に肥大になるのではないかと。この辺、住民あるいは議会でもどうも心配をしているという点を聞いておるところですが、この辺についてちょっとお聞かせを賜れればと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/235
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236・後藤仁
○公述人(後藤仁君) 分権によって全体として強化されるのは地方で、市民から選ばれてきている人たちだと思っています。ですから、知事の立場も相対的に今までよりは強くなると思いますし、同時に地方の議会の立場も強くなる、そういう仕組みになっているのではないかと思います。
それはなぜかといいますと、先ほどもちょっと申し上げましたが、島田公述人もおっしゃっていましたけれども、地方の議会が機関委任事務のときはほとんどその機関委任事務に対して発言権がなかったんです。それが、今度は自治事務に対してもまた法定受託事務のある部分についても地方議会が議論をして価値判断ができるようになってくるわけで、多くのことが地方議会を通過して成立する条例で決められるということになりますので、地方議会の立場は強くなるはずだというふうに考えております。
ただ、実態は、確かに私も二十年ほど前に県に参りましてちょっとびっくりしたのですが、国会議員の皆さんにはちゃんと公設の秘書がおられますけれども、県会議員は、秘書という方はおられますけれども、公設の秘書はいないんです。
そういうふうなことで、地方議会の議員のスタッフを強化するということが今後の課題になってくるのではないかというようなことは感じております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/236
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237・藤井俊男
○藤井俊男君 そこで、首長の多選批判という形でいろいろ議論をされたところでございますけれども、法案等においては一定の規制は盛り込まれておらなかったわけですが、この辺、歯どめの関係等、率直な御意見がありますならば承れればと思っておるんですが、後藤先生、よろしくお願いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/237
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238・後藤仁
○公述人(後藤仁君) 選挙で選ばれる公職の方の任期につきましては、私の考え方は任期に期間の制限があった方がいいというふうに思っています。というのは、代表ですからいろんな方が選挙で選ばれる機会があった方がいいので、やっぱり後進に道を譲っていただくということが大事かなという気がしております。
ただ、例えば地方の長の任期をだれが決めるのか。国で決めるのもおかしいし、議会が決めるのもおかしい。地方は国と違いまして長と議会両方が市民から直接選ばれてきますので、これは議会で決めるわけにもなかなかいかない。本当は主権者、市民が何らかの形で意思表示をして決める機会をつくるべきだと思いますが、議会の議員の任期について知事が提案するのもおかしいですし、その辺、どういう制度をつくるのか、日本ではどうできるのか、私まだ名案が見つかっていないのですが、何らかの形で制限があった方がいいというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/238
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239・藤井俊男
○藤井俊男君 ありがとうございました。
行政をチェック、指摘、監視する機関、地方議会ということで、特に島田先生も地方議会の存在価値も訴えられておりますが、そういった中で、今度の法律では上限が特に定めにはなっておるところなんですけれども、私は、先ほども訴えられておりましたけれども、地方は地方で権限が付与されたのなら、そこで議会の定数も決めるべきではないかと思っておるんです。
市町村あるいは県もそうですが、独自で減数条例をしいて議員さんの数を減らしておる状況をとらえまして、議会の数の関係、これらについてはどのようにとらえておられるか、ちょっと島田先生にお願いしたいと思うんです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/239
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240・島田茂
○公述人(島田茂君) 今回の地方自治法の改正案によりますと、現行の法定定数制度を廃止する、そして人口区分に応じた大くくり化を行うというふうな方針が立てられて、基本的には議員定数は議会の議決を経て条例を地方自治体みずから定めるという立場をとっておる。
ただ、しかし、先ほどおっしゃいましたように、やはり地方自治体の議員の定数削減といった傾向が現在進められておるわけでありまして、これによって、上限を絞ることによって、実質的には市及び特別区を合わせて四十八団体、町村で六十一団体が定員オーバーの上限ということ。
こういう形で考えますと、私の個人的な意見では、やはり地方分権の基本的な理念は、おっしゃいましたように地方自治体のあり方は地方自治で決めるというのであれば、現段階においては地方自治体の各自治体において定数を削減する傾向にあるとはいうものの、しかしそれは一つの傾向でありまして、個々の自治体においては、状況においては現状のままでいきたいという自治体もあろうかと思います。やはり地方分権の理念からするならば、こういう国が一定の傾向を促進するような政策ではなくて、あくまでも定数の上限も地方自治体で定めてもらうというふうな対応が一番私としてはいいんではないかというふうに個人的には思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/240
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241・藤井俊男
○藤井俊男君 大変ありがとうございました。特に島田先生は、条例等の関係で地方で制定すべきと。いろいろお述べになっていただきました。
そこで、環境、ダイオキシン等に触れられておりましたが、私は埼玉県の出身でございますので、特に所沢のダイオキシンの発生がございまして野菜等においても大きな問題になったところでございます。私は国と県のこの条例のはざまで大変な苦労をした一人なんですが、その中で一応今ダイオキシンについては全党合意で法案を出そうということになってまいりました。こういう条例等の問題等について、島田先生は、地方という中での細かな視点に立ちまして触れられておりましたけれども、私たちに求められるものは何か、強調すべき点はございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/241
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242・島田茂
○公述人(島田茂君) これは私の言ったことの繰り返しになるわけですけれども、地方自治体のいわゆる自己決定権の問題について、当初地方分権推進委員会の基本理念は、これは東京大学の塩野宏先生がおっしゃった言葉ですけれども、地方自治体の自己決定権という言葉を盛んにおっしゃっていました。これは、地方自治体のことは地方自治体が自分で決定するんだと。これは憲法第十三条、個人の自己決定権、最近問題になっていますけれども、これに基づきまして個人には自分の生き方を決定する権利があると。それでは地方自治体もみずからの方向を決定する力があるんじゃないか。その場合に、自己決定権の一番のいいあらわし方は何かというと、やっぱり条例なんです。地方議会の議決を経て条例で地方自治体がみずから進む道を決定する。したがって、今までは規則とか、機関委任事務の場合は中央の規則が中心だったんですけれども、そしていわゆる地方公共団体の要綱行政、こういったものが中心になった。そうしますと、これからは機関委任事務が廃止されて自治事務化されますと、その多くがやはり地方議会で条例化されることであると。
それからもう一つは、問題は、今まで開発指導要綱等においてやはり住民の利益を守るためには何かやりたい、しかし法律があるためにできないので要綱でやってきた。ところが、今度は行政手続法なんかの改正におきまして要綱もなかなかつくりづらくなった。そうすると、地方分権化した場合には、要綱をやめてそして条例化へ行けるというのが本当の地方分権化なわけです。ところが、要綱をやめたくてもその条例化の本体の権限が関係法律できちっとしていますから、今までと変わっていませんから、なかなか条例化ができない。
そういう二つの意味において、私はやはり条例化といったものをこの地方分権において非常に重視したい。また、この地方分権がうまくいくかどうかも条例の権限が実質的にどの程度まで広がるかということを一つ着眼点にしたいというふうに個人的には思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/242
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243・藤井俊男
○藤井俊男君 長引く不況が続いておりまして、地方自治体では経営が破綻、あるいは破綻とは言えないと思うんですが、経営が大変厳しい状況になっておりますが、平成十一年度地方財政でも十三兆円の財政不足と。また、地方税収も三兆円が不足だということでこの前発表されておりますが、特に東京、大阪、神奈川は、私どもの埼玉でも特に財政状況が厳しいわけであります。
そこで、権限移譲されても、財源がなくてはどうも困る、自主財源がやっぱり必要だということです。財源について特に角田先生が大分訴えられております。私は、権限、人間、財源、やはり人と物と金だと思います。この関係について、国のひもつき補助金の廃止等も、むだをなくす等も訴えておりますけれども、特に私はこの中で外形標準課税の実施を訴えておる点を感じておるんです。中小企業の方々は大分いろいろお困りということで、自治大臣もなかなか答弁に苦慮した関係がありありとあらわれておるんですけれども、この辺ちょっとお話し賜ればと思うんです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/243
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244・角田英昭
○公述人(角田英昭君) 外形標準課税の問題につきましては、中小企業の方とかいろいろな業者の方からこの導入問題については非常に反対の意見が強いということは私どもも承知しております。
それで、この税の問題については、きょう先ほどもお話しさせてもらいましたけれども、一つは中小企業に対する配慮、そして例えば資本金については一億とか十億とか、一定程度そういうものに配慮して、そういった条件つきで私どもも導入すべきじゃないかということで、やはりそのことがこの税制を導入する場合に重要になってくるのではないかと、そのように思っております。
いずれにしろ、都道府県の安定的な財源確保の問題については検討すべき課題だろうと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/244
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245・藤井俊男
○藤井俊男君 ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/245
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246・松あきら
○松あきら君 公述人の皆様、本日は本当にありがとうございます。
また、私は特にこの地元神奈川県でございまして、神奈川県横浜市で今回のこの会が開かれましたことは、非常にうれしく、喜ばしいことというふうに思っております。
それでは、まず我が岡崎神奈川県知事にお伺いをしたいというふうに思います。
東京の石原知事はバランスシートをつくるというふうにおっしゃっておりますけれども、我が神奈川県はとっくにバランスシートはつくっているわけでございます。神奈川県のほかに、三重県、宮城県、熊本県などがバランスシートをつくっているわけでございますけれども、このバランスシートをつくっている効果についての御所見があれば伺いたいと思います。どのような特徴が読めるんでしょうか。お願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/246
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247・岡崎洋
○公述人(岡崎洋君) バランスシートをつくることによってすべてが解決するという話ではないわけでございますけれども、ただ、県の資産、負債の状況を一時点でしっかりとらえて全貌がわかるということは今までの予算制度の中ではなかったわけです。今までの予算制度は、その年の入ってくるお金とその年出ていくお金の出入りだけが整理されているわけでございますけれども、県としてはたくさんの資産もあるし、また過去の借金もあるわけでございます。そういうものを皆さんにはっきり見ていただける、その結果として、資産と負債の状況の差額が財産としてどのくらいあるだろうか、そういうようなことが一覧性を持って見られるというのは一つの点だろうと思います。
それからもう一つ、今の予算では今申したように現金の動きだけでございますので、実は本当は払わなきゃいけないものだけれども来年以降払うものであるので目につかないといったものもたくさんあるわけでございます。例えば職員の退職金なんというのは当然のこととして考えておかなきゃいけないわけで、企業会計ですと、それは退職給与引当金という形で明示されるわけですけれども、県の会計だとわからない。そういうような発生している債務もはっきりわかる。そういうような形で、いろいろな面でより県の財政、財務の状況が目に見える形になる非常にいい手段の一つであると、こんなふうに思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/247
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248・松あきら
○松あきら君 私は、やはりはっきりそのように県民の皆さんに目に見えた形でわかるということは非常に大事だと思います。
今、この神奈川県だけではないんですけれども、財政規模の大きい我が県も、ほかに東京、大阪、愛知などもそうですが、やはりバブルの崩壊後、非常に厳しい税収の落ち込みでいろいろ悪化しているわけでございますけれども、先ほどのお話の中で税配分、税源移譲などが必要であるというふうにおっしゃっておりました。やはり私は、今回の地方分権の眼目は、何といっても地方財政の改善、これだというふうに思うわけです。
神奈川県の場合、いろんな大変な状況になっておるわけでございますけれども、今回の改正に際して特に財政上、国にこうしてほしい、こういうふうにあってほしいという点がありましたらお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/248
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249・岡崎洋
○公述人(岡崎洋君) 今回の改正そのものについては、私どもも一歩前進と見ておりますけれども、先ほどもお話しいたしましたように、地方の仕事に応じた形での安定的な財源が確保されていなければ口だけの話になってしまう。そういう観点からすると、表裏一体のものとして、地方固有の税財源というのをしっかりと裏づけしていただくということが地方分権の真の姿であろうと思っております。
かねてからそういうことで、先ほどちょっと法人事業税の外形標準課税のお話が出ておりましたけれども、それ以外にも私どもが申しておりますのは、現行の所得税あるいは消費税におきましても、より地方に税財源として豊かな配分が行われるような税制改正をできるだけ早く御検討いただいて実現していただきたいというのが偽らざるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/249
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250・松あきら
○松あきら君 私もまさにそういうふうに思っているわけでございますけれども、先ほどのお話の中で、事務権限について国から地方への権限移譲が十分でないというようなお話があったというふうに思います。具体例で少し説明していただけたらというふうに思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/250
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251・岡崎洋
○公述人(岡崎洋君) 数字で申し上げますと、私どもが神奈川県について調べた数字でございますけれども、国から都道府県への移譲項目が十項目でございます。都道府県から市町村への移譲を神奈川県で取り上げてみますと四十四項目、そんなようなことで、合わせまして五十四項目。神奈川県の適用でないものも若干項目としてございますので、全国ベースで見ますと、多分この五十四項目が五十八項目ぐらいかな、そんなことになっております。
大宗は都道府県と市町村との間の権限の移譲、むしろここら辺の御説明につきましては、分権推進委員会の方々も含めまして、今回の改正のポイントというのが権限移譲というよりも、国の関与の仕方ということを縮小、削減する、それをまず重点に置いてやったからこういう形としてあらわれたんだ、こういう御説明をいただいているわけでございますので、次のステップとしてはまだまだ課題がたくさんあるのではないかということも先ほどちょっと申し添えさせていただいたところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/251
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252・松あきら
○松あきら君 時間の関係で次に参りたいと思います。
島田先生にお伺いをしたいと思います。
私が議員になってから非常にいつも感じていることは、役人の、官庁の裁量権というところでございます。今回のこの地方分権一括法案にしましても、やはり官庁の裁量権をどこまで抑えられるか、ここに非常に大きなポイントがあるのではないかなというふうに思うわけでございます。法律は中央で決めるけれども、政令事項は地方で決めるくらいの規制緩和がないとこれは進まないんじゃないかな、いつまでたっても大きな官庁はなくならない、国の力は減らないぞという私は思いでございます。
各省のあいまいな官僚の裁量権を法律で限定すべきという意見もありますけれども、これについて御意見を伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/252
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253・島田茂
○公述人(島田茂君) 私も御意見に賛成なのでありまして、やはり最終的には国がどこまで関与できるかということを明確に定めるような法律みたいなものが必要ではないかと思います。
それで、重要なのは、機関委任事務といいますのは、先ほど申しましたように包括的な指示・命令権がこれによって根拠づけられていたわけでして、これがなくなったということは私は非常に大きな意味だと思うんです。今までは一々何か文書にされないような指示によっても拘束されていた。それが一定の行政手続法に倣ったように手続を明確にする。どういう指示を国がやったのかということをだれもが見られるようにするということは非常にいいことだと。
ただ、ここで今の話の関係で言いますと、国の法令解釈権といいますか、国が法律の有権的な解釈を行う権限を持って、地方自治体にはそれはないんだというところが一番ネックになってくるわけです。例えば、地方自治体の方でこれは条例を制定できるんだと言っても、いや国の法律ではそういうふうになっておりませんというふうに国から言われますと、はい、そうですかと、それで終わっちゃうというのが一番これからのネックになってこようかと思うんです。
したがって、やはり地方自治に関することは、国の法令は国だけのものじゃない、地方自治体も当事者なんだ、だから地方自治体もその法令解釈に何とか参加できるようなそういう仕組みを考えていただきたいというふうな気がいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/253
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254・松あきら
○松あきら君 先ほど先生のお話の中で、認可制度そしてまた協議制度の違い、本当にどういうふうに違ってくるのか、これを納得するようにしてほしいというようなお話もございましたけれども、これをちょっと具体的にお話ししていただけたらなというふうに思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/254
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255・島田茂
○公述人(島田茂君) 私がちょっと気になりますのは、これはもう一般的な考え方ですけれども、今までは一方的に認可という形になっていたのですが、それが協議しましょうという形で協議を行うわけであります。
しかしながら、都市計画決定なんかにつきましても、やはり国が利害関係がある、全国的な観点から調整する必要があるという場合には、都市計画法の中で同意を必要とする。それがもし同意を得られなかったらどうなるのかということなんです。この場合、私は、同意しない場合がありますよと言ったその段階において、同意権を持っている人間が上になるといったものがやはり出てくると思うんです。市町村の方は同意してもらうために、同意されなかったら非常に大変ですから、いろいろな形で国の意見を聞いてそれに合わせようとする、必然的にそうなってくると思うんです。その段階でいわゆる上下関係が出てくる可能性はあるのではないか。
そうすると、一方的な認可、命令という形式的な権力的な手法はなくなったけれども、実質的には上下関係が残っていくということが、この同意制度によって出てくるのではないかということを私は危惧しておるのです。
それから、例えば地方債の許可につきましても、この許可制度もなくして協議にしているんです。ところが、協議になって、この場合は同意を必要としない、それはいいなと。地方債は協議だけでいくのかといいますと、そうじゃなくて、もし国の方の同意がなければ、これは地方財政計画の中に組み込まれない、また地方交付税交付金の交付も受けないという形で、同意のない場合は地方自治体が勝手に借金しなさいよと。これでは地方自治体はやっぱり国の同意がなかったら地方債はできないということになってこようかと思うんです。そういういろんな点で、私はもっと検討していただきたいなという気がいたすわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/255
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256・松あきら
○松あきら君 先ほど後藤先生は、行政と立法の不信感をほぐさないとよくならないというふうにおっしゃいまして、信頼してもらえる行政と政治が大事である、それには情報公開と地方分権だというお話、本当に私もそのとおりだというふうに思います。
あと、時間が少ないのであれなんですけれども、日本の国の省庁はやはり既得権を手放したくないという思いが強いと思うんです。総論では賛成だけれども、各論では規制撤廃も地方分権もほどほどで済ませたいな、推進法ぐらいでそれ以上は法律をいじらせないぞみたいな気もするわけでございます。そういうことも考えられるわけでございますけれども、しかしながら地方分権はぜひ進めなければいけない、この点、地方分権を進めるアイデアなどがございましたら、短くよろしくお願い申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/256
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257・後藤仁
○公述人(後藤仁君) 直接この一括法案ではないんですが、同時に中央省庁等改革関連法案というのを審議していただいていると思うんですが、その中で、国の省庁の設置法で一般的な権限規定を削るということになっておりまして、そのあたりも併用して、地方分権と遠いように思えますけれども実はかなり密接に関連しているのではないかと思いますので、中央省庁の改革の問題と地方分権の問題をもう少しリンクして議論していただければということです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/257
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258・松あきら
○松あきら君 ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/258
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259・富樫練三
○富樫練三君 日本共産党の富樫でございます。
きょうはお忙しいところをありがとうございます。予定されております私の時間は十五分でございますので、一問一答でやっていますと大変時間がかかりますので、能率的に進めるために、最初に質問をずっとさせていただきますのでよろしくお願いいたします。
最初に、岡崎公述人にお願いしたいと思うんですけれども、三点ございます。
一点は財政問題についてですけれども、今回の地方分権一括法案では税財源の移譲というのはほとんどなしということなんですけれども、これは今後行われるであろうと期待しているわけなんですけれども、例えば起債の問題や補助金の問題や交付税の問題などで当面直ちに改善をしてほしいという点があればぜひ教えていただきたいと思います。
二つ目は権限移譲の推進についてですけれども、これが必要だというふうに先ほどございました。どのような権限というか、たくさんあるんだろうと思うんですけれども、例えばこういうものということで、今回の権限移譲で不十分なところはこういうところではないかという具体例がありましたら教えていただきたいと思うんです。
三つ目でありますけれども、国の関与を極力限定するような運用をと、こういうふうに先ほど述べられました。今度、国の関与という問題は類型化されて、助言、勧告や是正の要求や代執行や、あるいは自治事務に対しても直接執行、代執行があるということになるわけで、私自身は全体として関与が非常に強まっているというふうに率直に感じているものですけれども、特に是正の要求、これは地方自治体は従う義務があると、こういうふうになっているわけですけれども、この点についてどのようにお考えなのか、お聞かせいただきたいと思います。
次に、後藤公述人に伺いますけれども、関与のあり方の問題で、このメモでのお話の中で、法律との整合性について先ほどちょっと触れられたと思うんです。今度の法案との整合性でもしうまく整合性がない、矛盾点があるのではないかというふうに感じている点があれば、それは例えばどういうことなのかという点を教えていただきたいと思います。
二つ目は、「法律のつくり方の改善」というところがありましたけれども、基本点だけ法律で決めて細かいところは地方が条例で決める、柔軟に対応できるようにするという趣旨かと思うんですけれども、具体的な事例でもし思い浮かぶものがあれば教えていただきたいと思います。
次に、島田公述人に伺います。
一つは、法定受託事務についてなんですけれども、処理基準に基づくというふうに、今度新しく処理基準というものが設けられる予定になっております、この法案が通れば。法定受託事務についても法律の範囲内ならば条例制定はできるんだけれども、実際には処理基準というもう一つのハードルが設けられる、こういう仕組みになっているわけなんですね。この処理基準と条例制定権との関係がこれから恐らくかなり議論の対象になるのではないかというふうに思います。
処理基準は、今国の方は準備中で、法案ができればこれを地方に提示することになるだろうというふうに思うんですけれども、これが具体的に提示されるとかなりの矛盾点が出てくる可能性がある。今までは通達などでやっていたものが、今度は処理基準となって一定の拘束力を持つかのような形で出される、こういうふうになるわけなんですね。この処理基準について御意見があればぜひお聞かせいただきたいと思います。
二つ目は、自治事務に対する直接執行の問題であります。
これは、例えば建築基準法に基づく建築確認行為は、今まで機関委任事務であったものが自治事務に今度変わります。自治事務に変わるんだけれども、新たに、国の利害に重大な影響を及ぼす場合には最終的には建設大臣が確認行為を直接行うと、いわゆる国の直接執行であります。これは自治事務に対して行うわけでありますから、地方の自治権との関係でどう考えるか、こういう問題なんですけれども、特に国会での建設大臣の答弁の中では、予測されるそういう対象の建築物というのは防衛施設や原子力発電所、こういうものだというふうに大臣が答弁しているわけであります。神奈川県も大変基地の多いところでありますから、今後そういう意味では重大な問題になる可能性があるというふうに感じておりますけれども、この国の直接執行について、特に自治事務に対してどうか。
機関委任事務については代執行というのがあるわけですけれども、自治事務については、自治大臣の答弁では代執行はない、こういうふうに答弁しているんです。ただ、それにかわるものとして直接執行が設けられた、こういうことかなというふうに感じております。
最後に、角田公述人に伺います。
憲法が定めております地方自治の考え方と今回の地方分権との関係について、特に自治労連が進めております地方自治憲章、この運動との関連で、国の関与についてどういうふうに感じておられるのか、率直な感想をお願いしたいわけであります。
私は、今度の分権論議の最大のポイントは、機関委任事務を廃止した後の国の関与のあり方、ここが今回一番大きな問題であろうというふうに思います。財源の問題、その他の問題たくさんありますけれども、今回の分権論議はここが中心になっているのではないかというふうに思います。この関与の度合いによって地方の自己決定権やあるいは自己責任、この度合いが決まるわけですし、国の統制の度合いも決まるというふうに思っております。
残念ながら、今回、国はこの権限を地方に出すということについては極めて歯切れが悪いというふうに感じております。どうも根本には地方自治体をしんから信用できないというか、そういう感じすらすることもあります。住民を信用できないというところに、やはり権限を十分移譲できない、機関委任事務はやめたけれども法定受託事務として残す、こういうところがあるというふうに思います。本当に対等、協力、横の関係になるのかどうか、ここがかかっている大事な問題であるというふうに感じております。
それぞれ手短に、大変短い時間で恐縮ですけれども、よろしくお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/259
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260・岡崎洋
○公述人(岡崎洋君) 三点ありました。
一つは財政面で、特に当面というお話でございました。当面ということであれば、私ども一番念頭にございますのは、現在の交付税交付金の制度をより現況に即した適切な運用をしていただきたいというのが第一点目でございます。
二点目の国から県への権限移譲のお話でございますが、例えばの話、河川の管理につきましては、一級河川、二級河川、非常に事細かくなっておりますけれども、もっと大きなくくりで考えていただいてもいいんじゃないかなと、そんなことが例としてはございます。
三番目の、今回の改正のポイントである国の関与、それの限定の仕方等々でございますけれども、率直に申しまして、もう少しおおらかに考えてもいいんじゃないかなという気はいたしますけれども、やって見なきゃわからないと言われればそれまででございます。気持ちを込めた形で運用していく、そしてその運用の実績が、人が見てこれが適切だ、適正だというような形でわかるような、それはまた全体的な国、地方を通じての行政の仕事にかかわる情報公開のお話とかなりかかわりがあって、人様がその関与はひどいんじゃないかとか、それは妥当だろうとか、そういう客観的な評価が出てくる形の中でこの法律の規定が現実に合ったものになっていくことを期待しています。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/260
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261・後藤仁
○公述人(後藤仁君) 二点お答えいたします。
まず、行政の関与のあり方の基準と今度の法との関係ですが、具体的にこの点が不整合だということを私自身が現に発見しているわけではございません。
今度の法の特色の一つは、これから国と地方が意見が違ったら争えるということを保障しているわけですので、私は大いに争うべきだと思うんですが、その争うに当たって、地方の側が根拠とするものにこの基準があるんではないかということでちょっと話題に提供したわけです。それは、具体的な根拠としては行政改革プログラム、閣議決定において地方分権といわば平仄を合わせる形で閣議決定されていますので、整合性があって当然なわけですから、その辺を争うときにはよく地方の側で研究しておいたらどうだろうかということでございます。
それから次は、法律のつくり方ですが、具体的に私の頭にあったのは、今度の情報公開法のつくりなんですが、これは国の行政機関の行政文書を対象としておりますので当然といえば当然なんですが、地方の自治体は対象機関から外れているわけであります。もちろん一条項が起きておりますから、地方としても情報公開制度をつくることは努力しなければいけないわけですが、しかし、地方における情報公開の条例のつくり方は地方に基本的には任されていると思うんです。このような法律のつくり方というのは、これからいろんな分野に及んでいけばいいなと考えております。
それに比べて、環境アセスメントも同じように地方が先につくったんですが、環境アセスメントについてはちょっとどうかなという気がしております。ただし、これは私まだ精密に地方の条例と国の法律とを比較しておりませんので確たることは申し上げられませんが、情報公開と環境アセスと比べて、ちょっと環境アセスの方は何か私自身はひっかかる点を感じているということです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/261
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262・島田茂
○公述人(島田茂君) 二点ありますけれども、この二点は関連性を有しておりまして、二点目にあります、地方自治体の自治事務に対して国が直接執行をやるというふうな観点が認められるのであれば、例えば法定受託事務というのはこれは国の利害にかかわる事務でありますけれども、これに対しても地方自治体が発言できるようなシステムを、ギブ・アンド・テークじゃありませんけれども、お互いに設けるべきじゃないですか。
それで、法定受託事務といいましても、一たん法定受託事務となればこれはすべて国の事務であるというふうな考え方はやっぱり問題でありまして、これは機関委任事務がすべて国の事務ではないということと同じことであります。したがって、そういう事務に関する処理基準のあり方であっても、地方自治体に関係することであれば何らかの意味で地方自治体の意見を取り入れた処理基準といったものを認めるべきじゃないか。そして、その中で地方自治体の条例との整合性も初めて図られるんではないか。処理基準は国がつくっておいて、地方自治体はその範囲内で条例を制定するんじゃなくて、条例の制定の権限も考慮した上で処理基準をつくっていただくというので初めて法定受託事務についていわゆる法律、政令に根拠を置かなくてもいいといったことの意味が出てくるのではないかと私は個人的には思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/262
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263・角田英昭
○公述人(角田英昭君) 私たちは、地方自治憲章では、自治権の拡充の問題につきましては、住民自治の原則に深く根差し、そして日本の民主主義の発展にとって極めて重要な意義を持っていると規定した上で、一つは、事務とか権限の民主的な配分の問題、国の関与を縮減する問題、そしてそのことを実質的に裏づける財源的な保障の問題、こういったことを基礎的に保障しながら、その中で住民自身が自分たちのいろんな問題を情報公開を受けながら、そして実際そこに参加して自己決定をできる、そういう条件整備をすることが基本的に重要だと思っております。
その意味で、私は、今回の措置の中で法定受託事務を基本的に少なくし、そして自治事務を拡大し、あわせて、先ほども言いましたように、今回の中では少なくとも自治事務に対する国の関与とかそれから是正改善の義務、それから国による代執行、こういったものについては基本的にこれは削除すべきだ、そのように思っております。
以上です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/263
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264・富樫練三
○富樫練三君 ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/264
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265・日下部禧代子
○日下部禧代子君 社会民主党・護憲連合の日下部禧代子でございます。
きょうは四人の公述人の方々、本当に貴重な御意見をいただき、ありがとうございます。日ごろからそれぞれのお立場で地方分権、地方自治にかかわっていらっしゃることに関しまして、改めて敬意を表させていただきたいと存じます。
さて、初めに、前知事長洲さんが二十二年前に地方の時代を提唱なさいましたこの神奈川県におきまして、地方分権改革一括法案に関する地方公聴会が開かれるということは、私は、神奈川県民の一人といたしまして、そしてまた総合計画審議会などの委員として長洲県政に長らくかかわっていた者の一人として実に感慨深いものがございます。
ところで、岡崎知事にお伺いさせていただきたいのでございますが、今回の一括法案では国から都道府県への新たな関与ということが今までの質疑でも問題になっておりますけれども、今度は、都道府県から市町村への関与のあり方についてどう考えていらっしゃるのか、これが第一点でございます。
第二点は、先ほどの知事のお話でございますと、神奈川県としては市町村に広く権限、財源を移譲するということをもう既に行っていらっしゃる、これからもなさろうというお話をいただいたわけでございますが、市町村が県政にどう参加し、意見を反映していくということがこれから非常に重要だと思いますが、いわゆる市町村の県政への参加手続の整備、そういったことについてどのように考えていらっしゃるのか、これが二点目でございます。
それから三点目には、この一括法案が成立した後に、政省令の改正というものを受けて条例制定作業などの大変な作業が待ち受けているというふうに思うわけでございますが、昨日の中央公聴会におきましては、辻山中央大学教授は自治体の受け入れ作業が大変であろうと思われる、施行時期を一年ぐらいおくらせてもいいのではないかというふうなお話もございました。こういう御発言も含めまして、何か国に対して御要望がございましたらということで、三点をお伺いさせていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/265
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266・岡崎洋
○公述人(岡崎洋君) 一点目の県と市町村との間の関与と申しますか、かかわり合いでございます。これも従来から進めてきておりますけれども、これは本当にお互いに対等の関係で話し合いをしながら仕事を進めてきておりますので、それがベースになろうと思います。
ただ、市町村さんの方からの御要望は、基本的にはもっと市町村の自主性を認めてくれ、例えば都市計画でも何でも余り細か過ぎるじゃないか、こういうお話があることは確かなんです。今回の改正によりまして、県から国に何かお伺いを立てなきゃいけないとか、そういうことがより少なくなれば、より県と市町村との間もスムーズになっていくのではないか、そんなふうな思いをいたしております。
それから、市町村の県政への参加の手続というお話でございますが、先ほど申しましたように、権限の移譲等については協議会をつくってやっておりますし、市長会あるいは町村会というのもございますから、そういう場を今までも定期的に活用してやってまいっておりますし、さらに、神奈川県の中でも地域別にブロックをつくりまして、そこの自治体の首長との間の意見交換会というのも定期的にやっている、いろいろな複数の形での意思疎通が図られております。したがいまして、何かきちっと規定で新たな意思疎通あるいは県政参加のやり方を新しくこしらえるというようなことは今時点ではちょっと考えておりません。
それから、三番目のこれからの作業でございますけれども、確かにお話しいただきましたように、県、市町村は大変な作業をこれからしなければいけないわけです。私どももいろいろ準備をしておりますけれども、例えば条例の制定、改廃ということを数え出してみますると、現在の段階では新規の条例が約七十本、改正が約四十本、こんな程度が必要かなということになっております。国にお願いしたいのは、法律ができましたら、できるだけ早く政省令をきちっとしたものにしていただかないと、私どもの条例をつくる足場、基盤ができないことになりますので、それを強くお願いしたいということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/266
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267・日下部禧代子
○日下部禧代子君 ありがとうございました。
次に、後藤公述人にお伺いしたいのでございますが、地方分権ということになりますと、地方分権改革に伴って自治体の課題は幾つかふえていくということにもなると思うんです、相対的に。その大きな課題の一つとして、自治体の力量というものがこれから問われるのではないかというふうにも思うわけでございます。中央に依存していない、つまり今までのような、ちょっと言い過ぎかもわかりませんが、中央に陳情する、あるいは物取りというような行政から脱皮する、事実上自立するということでございます。ということは、いわゆる政策主体としての自治体の政策責任が問われるということになるのではないかというふうに思うんです。
そこで、お伺いしたいのでございますが、自治体の政策責任というもの、この概念整理、定義といってもよろしいと思いますが、それはどういうものであると考えていらっしゃるのか、これが一点でございます。たしか、後藤先生は四つぐらいの概念整理をしていらっしゃったというふうに私記憶しておりますが。
それから、その政策責任を遂行するというのには一体どのような手法が必要とされるのか。
この二点について、まずお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/267
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268・後藤仁
○公述人(後藤仁君) 政策責任というのは、今自治体の職員たちが中心となってつくっている学会があるんですが、そこで議論をされています。そのときに、私のオリジナルのものじゃないんですが紹介した概念が引用されているようですが、私自身は責任というものを四つに分けて考えているということです。
一番内面的な、しかし大事な責任は、使命を引き受けるといいますか、そういう使命感みたいな責任を感じるというレベルの責任。これがまず第一に大事で、その次が任務責任というふうに呼んでおります。言葉は熟しませんけれども。
二番目は、それから少し外形的になるんですが、要求に応答する、こたえる、対応責任、いわゆる英語で言うとまさにレスポンシビリティーになるわけですけれども、これはもう責任を感じるだけじゃなくて、責任をとるとか引き受けましょうとか、そういう責任にこたえるというふうなときの責任があると思います。
さらに、もっとちゃんと法的にはっきりさせなければいけないのは、今度の情報公開法でそのことが目的に入ったわけですが、説明責任という概念があると思います。これはちゃんと責任ある説明をする、自分の業務について証拠を持って責任ある説明をするということだと思います。
最後が、説明責任の場合は弁明でよろしいんですが、もし他人に損害を与えてしまったら、それは補償しなければいけません。弁明にとどまらず、弁済をしなければいけないので、補償をする責任、補償を負担する負担責任というものが出てくるというふうに考えています。
その四つの責任が果たせるように、市民から信託を受けて仕事をしているところはそういう責任を四つとも果たしていかなければいけないというのが私の考えで、例えば企業の精神には製造物責任、プロダクトライアビリティーという責任があるわけですが、当然行政にもそれと同じ損害賠償の責任があるわけです。そのほかにも、今言ったような四つのいわばレベルで自分が打ち出した政策について責任をとっていくということが大事なのではないか。
それを具体的にどうするかというと、基本的には、やっぱり市民に身近なところで政策を出して、市民のチェックをちゃんと受けて直していけるような仕組み、行政の政策の効果もちゃんと測定できるものは測定していくし、明示できるものは明示していく。そのようなことで、政策責任は政策評価ということとも結びつくと考えております。
この辺については最近いろいろ議論をされているので、私自身もこれから具体的に考えていきたいと思っているところであります。ちょっとまだ抽象的な段階で申しわけございませんが、そのようなことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/268
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269・日下部禧代子
○日下部禧代子君 その場合、情報公開条例、あるいはまた行政手続条例、情報公開条例というのは、この重要性はだれでもおっしゃるわけでございますが、やはり私は行政手続条例の制定というのは非常に重要なのではないかというふうに思うわけでございますが、その点に関して、後藤公述人、いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/269
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270・後藤仁
○公述人(後藤仁君) 神奈川県も既に行政手続条例をつくっていると思いますが、非常に大事だと思います。
本来、順番からいえば行政手続条例があって情報公開条例があるというのが、論理的には順番としてはそうなんだと思うんですが、先ほど申しましたように、市民と行政との信頼関係の問題がありましたので情報公開の方から先にやったんですけれども、情報公開という一般的な開示請求権ではなくて、実際に行政の行為によって何らかの影響を受ける当事者が行政の行為に参加していける、また必要な情報をその過程で得られる適正な手続の仕組みというのはこれからもっと充実させていくべきだと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/270
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271・日下部禧代子
○日下部禧代子君 次に、島田公述人にお伺いしたいのですが、今、後藤公述人の方から市民の参加という言葉が出たわけでございますが、これから自治体の政策の策定、あるいは実施、評価、それぞれのレベルにおいて住民の参加ということがこの地方分権が行われた場合には非常に不可欠な前提条件だろうというふうに思うわけでございます。
そこで、いわゆる参加のシステムをどのように構築していくのかということは、これは地方分権を成功させるか否かということの非常に大きなかぎになるというふうに思うわけでございますが、この参加のシステムについての先生のお考えをお聞かせいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/271
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272・島田茂
○公述人(島田茂君) 地方分権の一つのメリットは何かというと、行政が住民に近いところで行われるということは、結局、おっしゃられるとおりに、住民が見やすく参加しやすいというところに地方分権の意味があると。ただしかし、やはり権限をおろしますと、別の人から言わせればいろんな形で問題が出てくるんじゃないかと。すなわち権限を乱用して問題になる。その点は、今おっしゃられたように情報公開条例でと。
それから、一つは行政手続条例なんですけれども、やはり今の行政手続条例はいわゆる処分の相手方を中心として規定している。したがって、住民参加は規定されていないんです。だから、今行政手続法ができましたけれども、これで終わりじゃなくて、今度は、基本的に処分の相手方じゃない人たちが参加できるような、そういうシステムづくりを第二段階で、行政手続法の延長としてやっていただきたいと私は個人的に思っております。行政手続法で終わりじゃなくて、それ以外の住民参加の手法、やっぱりこれが重要になってくるんじゃないかというふうに思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/272
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273・日下部禧代子
○日下部禧代子君 ありがとうございました。
それでは、角田公述人にお伺いしたいと思います。
地方分権によって変わらなければならないもの、それは、今自治体のことを申し上げましたけれども、やはり自治体の職員の自己改革ということもこれは当然必要になってくるだろうというふうに思うわけでございますが、その点についてのお考え。
それからもう一つ、福祉の方の御専門でいらっしゃる、御担当でずっといらしたということを今承ったわけでございますが、今度、来年の四月から介護保険制度が実施されるわけでございますが、市町村が実施主体になるわけでございますけれども、さまざまな課題を持っている制度ではございます。
そこで、今自治体では、たしか介護プランというものの策定が、もう終わるのでしょうか、進んでいると思いますが、この点についてどのくらい住民参加ということが行われたのか。かつて、新ゴールドプランでは市町村に老人保健福祉計画の策定を義務づけました。その際には、どうもこれは市民参加ということは形だけはあったけれども、なかなか実際には難しかったということも聞いております。その点も含めまして、ちょっと二点、短い時間で失礼でございますがよろしくお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/273
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274・角田英昭
○公述人(角田英昭君) まず一つは、やはり自治体の職員は日常的に行政サービスを受ける市民と接しているわけですから、今住民がどういうような実態に置かれ、どんな要求を持っているかというのが一番直接に把握できる、そういうような立場にいると思っております。
そういう意味で、そこのところを実際に政策化する力、能力、ここのところと、あくまでもそういった見地から専門的にそこをフォローしていく、そういった役割が一番問われているんじゃないか、そのように思っております。また、そのことがやはり自治体職員としての自覚につながって、その要求を具体的に政策的に実現させていく、そういうものとつながっていくのではないかと思っております。
それから、介護保険の関係でございます。
介護保険のところは、一つは、介護保険制度の仕組みそのものが住民の中に十分にまだ周知されていない部分がございます。そういう意味で、まず、参加の前提の問題として、やはりこの辺の仕組みの問題がどうかということを利用者の立場に立ってきちっと周知することが非常に必要かなと思っております。
その意味で、今のこの計画策定において、要綱上も基本的にそういう市民の参加を前提にしてそういうように組まれていますけれども、各市町村における計画策定における参加状況というのは必ずしも、ちょっと組合の方で把握していないんですけれども、実際に問題を持っている人たちがそこに参加して、そこに反映させる仕組みでは不十分ということは聞いておりますけれども、ちょっと実態的にどんな状況になっているかについてはまだ把握はできておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/274
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275・日下部禧代子
○日下部禧代子君 ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/275
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276・星野朋市
○星野朋市君 自由党の星野でございます。
本日は、公述人の皆様大変御苦労さまでございます。
私は、時間の関係で一問だけ質問をいたしますので、公述人の皆様方、順次お答えをいただきたいと思っております。
自由党は、かねてから自治体の数を今の三千二百余から最終的に三百にしようと、こういう目標を掲げております。いきなり三百というのは難しいので、一たん千ぐらいにして、それからさらに三百に持っていこうと。そのために、今地方分権がこういう形で施行されようとしている、さらに国から地方自治体へのさらなる権限移譲というのが必要だろう、また、きょう午後から審議される中央省庁の改編の問題については、さらに中央省庁をスリム化して財源も地方に移していこうと、こういう考えでございます。
ただ、そういっても、地方自治体の合併というのには非常な問題がございます。自治大臣は、やはりそうするために何らかのインセンティブを与えるべきではないかということも言っております。
この一連の中で、いわゆる自治体の適正規模、それから合併促進、こういうことについて公述人の皆様方、どういう御意見をお持ちか、順次御意見を聞かせていただきたいと思います。
よろしくお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/276
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277・岡崎洋
○公述人(岡崎洋君) 合併と申しますか、自治体のスケールを大きくするという方向はそれなりに理解ができます。
ただ、今規模がどうかとかそういうお話になりますと、例えば神奈川県を念頭に置いて考えますると、比較的小さくて交通の便もよろしいわけでございますので、どうしても合併をしなければメリットが上がらないかどうか、それについて住民がどれほど積極的に意義を求めているかということについては、いろいろな広域的な連携の中の動きで無理ではないか、そういう気持ちを持つ人もかなりあるわけでございますので、全国一律に一定のメルクマール、一定の尺度で事を律するのは現実に合わないのかな、こんなふうに思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/277
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278・後藤仁
○公述人(後藤仁君) 私も一定の適正規模というものを計算することは、難しいというより不可能ではないかと思います。一騎当千と言うぐらいですから、ある自治体の一人は他の自治体の何人分かもしれないんですね。そういうようなことがありますので、一律にはならないと思います。
それから、広いことが必ずしも有利ではないので、広くなれば端の方というのも出てくるわけですから、そこのところは少し今までに比べてうまくいかないということもあると思います。
ただ、今のいろんな行政の境界を越えて市民のために協力をし合う、そういうことは大事なことですので、とりあえずこれを進めていただいて、そしてその中で必要が確認されれば合併をする、こういうのがよろしいのではないかというのが私の考え方です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/278
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279・島田茂
○公述人(島田茂君) 当初、地方分権が話題になったころ、一番ネックだったのは、受け皿論というのがありまして、これで地方分権できるのか、受け皿はあるのかという議論があったんです。だから、いわゆる分権改革は一応受け皿論を棚上げにしよう、それで話を進めようと。したがって、いずれ受け皿論がまた問題になってくるわけです。そうすると、当然市町村合併も問題になってこようと思います。
ただ、この場合も、やはり私も慎重にやった方がいいんじゃないかと。すなわち、いろんな行政手法、広域連合とか一部事務組合とかありますので、そういう広域的な行政活動で対応できないんだ、また政治的に合併した方がいいんだという形で住民が思えばそれはやるべきであって、ただ上の方から一方的にこれを指導していくのは問題があるのではないかなというふうに私は個人的には思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/279
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280・角田英昭
○公述人(角田英昭君) これまでの歴史と条件があろうかと思っておりますし、全国一律ということは私も望ましくないと思っております。
また同時に、地方自治を担う主体としての住民の参加の保障とか帰属意識等、そういったことが担保されるということで、自治体の規模はやはり余り大規模にしない方がいい、そのように思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/280
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281・奥村展三
○奥村展三君 御苦労さまでございます。参議院の会の奥村でございます。
まず、岡崎公述人にお伺いをいたしたいと思います。
知事さんとして大変御苦労いただいておるわけでございますが、どうも今回の地方分権といいますと、私は国がきょうまでやってきたことを地方にある意味では押しつけていくような雰囲気もなきにしもあらずということで、神奈川県におかれましては平成八年から協議会をおつくりになっていろいろ市町村と連携をおとりになっているということもお聞かせをいただきました。
考えますと、私は、地方分権ではなくて、次のステップというのは、やはり受け入れていただく側といいますか、地方主権の時代が来なければいけないというように思っております。今こういう一つの大きな節目のときではありますが、いよいよこれから地方主権の時代を迎えていただくために、特に、先ほどいろいろお話しいただいた中に、意識改革ということをおっしゃいました。私もこのことが一番大事であるということをきょうまでずっと委員会等で申し上げてきたわけでございますが、これを徹底させていただくというのは大変至難なことかもわかりませんが、何かいい方法があるか、まず第一点お伺いをいたしたいと思います。
それと、大変失礼なことになるかもわかりませんが、よく今回の地方分権で聞く中に、知事さんだとか市町村長さん、首長さんの権限が非常に増大をして、地方議会といたしましてもこれは知事や市町村長さん、首長さんの権限ばかりが強化される、増大だというような意見を聞くわけでございます。本当に御苦労いただいているんですが、そういうようなところはどのように思っておられるか。この二点をまずお伺いいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/281
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282・岡崎洋
○公述人(岡崎洋君) 意識改革のお話につきましては、先ほど中央の職員の皆様も考えてほしい、こう申しましたけれども、むしろ私の立場としてはそれはお願いで、今度は受けとめる側、私どもの職員の意識がやはり変わらないといけない。地方分権というのは自分たちの自己責任、これが問われる話なんだと。今までですと、これは機関委任事務だから、国から言われたからもう直らないよというので、それで終わりになっちゃうんですけれども、今度はそうはいかないぞというところから職員の意識改革を始めていかなきゃいけない。そんなことで、そういうことも含めまして、かねがね職員には語りかけているところでございます。
それから、首長の権限ばかりふえてというのは、実は余りそういう意識はございませんでした。むしろ、やるべきこと、しなきゃいけないことがよりふえる話でございますので、これもまた責任の重さの方が重く感じられるわけで、何か権限がふえてというような意識でこの地方分権の動きを受けとめていたという気持ちではありませんでした。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/282
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283・奥村展三
○奥村展三君 ありがとうございました。
次に、後藤公述人と島田公述人にお伺いをいたしたいんですが、お二人とも地方議会の強化あるいは組織運営等についてお触れいただいたわけでありますが、やはり現況の地方議会、私も地方議員の経験を町会も県会もやってきたんですが、どうも議長の権限というのは余りないわけなんですね。招集権もなければいろいろなこともない。
考えてみますと、今から六年ぐらい前だったでしょうか、常任委員会と同じレベルで議会運営委員会を設置しなさいというような国からの強いお達しで、法制化されて地方議会に来たわけですね。しかし、やはりこれからの地方分権、地方主権の時代になっていけば、独自性といいますか、それぞれの議会の中でそれぞれの地域に合った、大なりあるいは小の市町村もあるわけですから、そういう流れの中でいきますと、もっと独自性を出していくような地方議会、そしてある意味では議長の権限を強化といいますか、首長さんと対等ぐらいの形でうまく、両輪のごとくと言われますが、そういうような形になった方が住民の方々との信頼関係が構築されるんではないかなという思いを私はしているんですが、両先生の御意見をお伺いいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/283
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284・後藤仁
○公述人(後藤仁君) そのとおりだと思います。御意見に賛成でございます。地方議会、多様な議会があっていいのではないか。また、全体として首長と両輪になるように力が強くなった方がいいというふうに考えています。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/284
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285・島田茂
○公述人(島田茂君) 議長の権限を強化すべきか、これは私は実態によって、わからないもので、ちょっとお答えできないわけなんですけれども。
ただ、もう一点の方、議会が独自性を持つというのは私は賛成なんでありまして、そういう意味でも、現在の地方自治法のいわゆる規制をより緩めて、各地方自治体が独自のやり方を模索するというような、例えば地方分権推進委員会の勧告なんかでは夜間議会とか、これはもう議員さんは大変だというふうに言われていましたけれども、そういうのをやってみるのもいいのではないかというような気がしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/285
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286・奥村展三
○奥村展三君 ありがとうございました。
確かに、夜間議会といいますと、最近は地方の議員さんになり手がないというようなことで、大変なことも起きているところもあるんですが、ぜひ今言っていただいたことも参考にさせていただきたいと思います。
最後に、角田公述人にお伺いをいたしたいと思います。
道州制だとかそういうものは反対だ、行政サービスの効率的な提供だけに着目した合併を推進とかおっしゃっておったと思います。大規模でなく適正規模というようにおっしゃっているんですが、適正規模というのは、どのぐらいのものが適正規模だとお思いでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/286
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287・角田英昭
○公述人(角田英昭君) 率直に言いまして、今適正規模は何十万とかというようなことはお話しできないわけですけれども、基本的に私たちは二つの点、今先生が言われたような行政サービスを提供する上での効率性の問題と、やはりもう一つの重要な柱が、先ほど言いましたように、地方自治の担い手の住民の参加ができて、そして実質的にそういうことの役割がとれる、また帰属意識が持てる、そういうような規模といいますと、やっぱり数万規模だろうと思うわけです。基本的に、先ほど言った、前段の行政サービスの提供を受ける効率性といいますと、若干その規模ではできないかなというふうに思っておりまして、きょうの中身では、むしろ適正規模の問題も少し基本的に議論をしてもらえないかと、そのように申し上げさせてもらったわけです。
以上です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/287
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288・奥村展三
○奥村展三君 どうもありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/288
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289・吉川芳男
○団長(吉川芳男君) 以上で午前中の公述人に対する質疑は終了いたしました。
この際、公述人の方々に一言御礼を申し上げます。
皆様には、長時間にわたり有益な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。拝聴いたしました御意見は本委員会の審査に十分反映してまいりたいと存じます。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。(拍手)
午後一時に再開することとし、休憩いたします。
〔午前十一時四十九分休憩〕
─────────────
〔午後一時一分再開〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/289
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290・吉川芳男
○団長(吉川芳男君) ただいまから参議院行財政改革・税制等に関する特別委員会横浜地方公聴会を再開いたします。
私は、本日の会議を主宰いたします参議院行財政改革・税制等に関する特別委員会委員長の吉川芳男でございます。よろしくお願いいたします。
まず、私どもの委員を御紹介いたします。
自由民主党所属の吉村剛太郎理事でございます。
同じく自由民主党所属の田村公平理事でございます。
日本共産党所属の富樫練三理事でございます。
社会民主党・護憲連合所属の日下部禧代子理事でございます。
自由民主党所属の清水嘉与子委員でございます。
民主党・新緑風会所属の川橋幸子委員でございます。
同じく民主党・新緑風会所属の藤井俊男委員でございます。
公明党所属の松あきら委員でございます。
自由党所属の星野朋市委員でございます。
以上の十名でございますが、どうぞよろしくお願いいたします。
参議院行財政改革・税制等に関する特別委員会におきましては、目下、内閣法の一部を改正する法律案等中央省庁等改革関連十七法案及び地方分権の推進を図るための関係法律の整備等に関する法律案について審査を行っておりますが、本日は、これらの法律案について関心の深い関係各界の皆様方から貴重な御意見を承るため、当地において地方公聴会を開会することにいたした次第でございます。
なお、午後は、中央省庁等改革関連十七法案について御意見を承ることといたしております。何とぞ特段の御協力をお願い申し上げます。
次に、公述人の方々を御紹介申し上げます。
社団法人神奈川経済同友会副代表幹事山上晃公述人でございます。
慶應義塾大学総合政策学部教授、構想日本代表加藤秀樹公述人でございます。
宇都宮大学名誉教授藤原信公述人でございます。
全日本国立医療労働組合委員長遠山亨公述人でございます。
以上の四名の方々でございます。
この際、公述人の方々に一言ごあいさつを申し上げます。
皆様には、御多忙中のところ御出席をいただき、まことにありがとうございます。本日は、皆様から忌憚のない御意見を拝聴し、今後の委員会審査の参考にいたしたいと存じます。どうぞよろしくお願いいたします。
次に、議事の進め方について申し上げます。
まず、公述人の方々からお一人十五分で順次御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答えいただきたいと存じます。
なお、御発言は着席のままで結構でございます。
それでは、これより公述人の方々から順次御意見をお述べ願います。
まず、山上公述人にお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/290
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291・山上晃
○公述人(山上晃君) お手元に資料をお配りしてございますので、それをごらんいただきたいと思いますが、十五分ということで時間が限られておる関係がございまして私の話す内容をほぼそのとおり活字に落としてまいりましたので、ごらんいただきたいと思います。
本日は、中央省庁等改革関連法律案に対し意見を陳述する機会をお与えいただきまして、大変光栄に存じております。私は、当地で経済活動に携わっている者でございますが、行政の専門家ではありませんが、民間人、一国民の立場から中央省庁等改革に対しまして意見を述べさせていただきたいと存じます。
御高承のとおり、現在、我が国は、各方面にわたり歴史的な変革期にあります。二十一世紀を目前に控え、我が国を魅力ある国とするためには、経済社会全般にわたるシステムの再構築が不可欠であると考えます。そして、このためには経済社会システムと密接に関係する行政システムについて抜本的に見直す必要があるものと考えております。
行政改革につきましては、従来より政府が幾度となく取り組まれ、それなりの成果を上げてこられたものと承知しております。しかしながら、これまでの改革は、どちらかといいますと局部的な修正にとどまってきた感があります。
今般の改革の内容を拝見しますと、長年手をつけることができなかった省庁の再編成を行うと同時に、総理及び内閣のリーダーシップの強化や、行政のスリム化、透明性の向上など、行政の改善のため広範にわたる措置がとられています。まさに中央省庁システム全体を見直すものであり、明治維新や戦後の改革に匹敵する大改革であると見受けられます。本改革の実現に大いに期待するものであります。
以下、分野ごとに意見を述べます。
まず、今回の中央省庁等改革の柱の一つに掲げられています内閣の機能強化について申し上げたいと思います。
現在、我が国は、構造的要因もありまして、景気の長期低迷により、失業率は統計を始めた一九五三年以来最悪という状況にあります。そして、二十一世紀を目前にして、非常に不安を感じているところであります。このような状況を打開するためには、民間の努力のみならず、まさに国が強力なリーダーシップを持ってさまざまな政策を適時適切に推進していくことが必要であると考えております。そして、国が強力なリーダーシップを発揮するためには、各省が自省のことのみを考えるいわゆる縦割りの状態に陥ることなく、内閣及び内閣総理大臣の強力な指導のもと、各省が一体となって協力しつつ、必要な政策をスピーディーに推進していくことが非常に重要であると考えます。
このような観点から、今回の中央省庁等改革の法案を眺めますと、内閣機能の強化というものが柱の一つとなっており、まさに時節を得たものであると考えております。
この内閣機能強化を実現するための具体的方策として、今般の中央省庁等改革関連法案においては、内閣総理大臣の発議権の明確化、内閣の機関として新たに内閣府の設置、特命担当大臣の設置、内閣官房における総理の補佐体制の整備などが挙げられています。これらの措置により、内閣の首長たる内閣総理大臣が国政運営において指導性を十分に発揮することが可能になり、ひいては行政全体の戦略性、総合性の確保、機動的で迅速な意思決定が可能となると考えております。したがって、私は、今回の内閣機能の強化については非常に期待するところが大きいわけであります。
しかし、このような立派な体制を整えたといたしましても、それがうまく機能しなければ画餅に帰することになるわけでございます。この体制が期待されるような効果を上げるためには人を得ることが極めて重要であると思います。この体制の中核となる組織であります内閣官房や内閣府については、行政組織の内外から、幅広い分野にわたり、高度な専門的知識を有する人材などすぐれた人材の登用を図っていくことに特段の配慮が必要であろうかと考えます。
次に、中央省庁の再編について申し上げます。
今後の行政には、日本の抱えるさまざまな課題に政府一体となって積極的に取り組んでもらいたいと思います。このためには、中央省庁を時代のニーズに的確に対応した行政が行える体制に再編成することが重要であると考えます。また、先ほども申し上げましたが、従来弊害が指摘されてきた縦割り行政に陥ることなく、関係省庁が十分に連携協力して行政を行う仕組みをつくることが不可欠だと考えます。
今回の改革案では、行政の目的である任務を基軸として中央省庁が一府十二省庁に大くくりに再編成されていますが、さまざまに配慮した省庁再編であると評価しております。
例えば、今般の再編では、行政に共通性のある厚生省と労働省を統合して厚生労働省が設置されることとされております。少子高齢社会への対応は二十一世紀における最重点課題であります。例えば、現在労働省で行っている定年延長問題と厚生省で行っている年金や高齢者の生きがい対策の問題は、一体的に取り組みを行っていくことで相乗的な効果が上げられるものと考えています。また、国土交通省が設置されることとされておりますが、自然災害が多く、また地形が険しい我が国において、限られた国土を効果的、効率的に整備していくことは最も基礎的で重要な国家的課題の一つであり、こうした課題に総合的かつ体系的に取り組む体制が構築されたことはまことに適切なものであると考えます。
そもそも、省庁が任務を中心として大くくりに編成されることにより、一つの省がその任務を達成するため広範な事務を行うこととなるとともに、任務達成を目指し各省庁があらゆる課題に対し積極的に取り組むことが促され、高い視点と広い視野から質の高い行政を提供することが可能になるものと考えています。また同時に、このことは、無用な役所間の縄張り争いや重複的な行政といった問題の解決につながり、行政の大いなる変革を実現するものと期待しております。
また、省庁間の連携協力については、行政組織の基準を定める国家行政組織法が改正され、各省がそれぞれ関係行政機関と調整を図らなければならないことが行政の基本原則として明確に位置づけられるとともに、資料請求や政策提言といった政策協議の手続も明らかにされています。縦割り行政の克服に向けて新たな行政の枠組みが法的にも確立されたものと高く評価しています。
なお、財政と金融行政の分離の問題については、政党間協議でさまざまな議論がなされ、今回の法案の姿となったと聞いております。法案では、金融庁が金融をつかさどる機関であることをその任務規定の中で明らかにしながら、金融システムの安定については、財政等と深い関連を有していることから、金融破綻処理制度及び金融危機管理に関する企画立案について、財政等の観点から財務省も限定的にこれを所管することとしており、財務大臣も金融システムの安定に関与する体制となっています。これは、今後政府として安定した金融行政を担っていただく上で適切な体制であると考えます。
以上により、二十一世紀に向けた新たな省庁体制は十分整備されるものと考えますが、役所の数の単なる数合わせとの批判を招かぬよう、後ほど述べます行政のスリム化を着実に進める必要がありますほか、お役所仕事と言われないような仕事のやり方、あるいは業務の抜本的な見直し、実際に働く公務員の意識改革などが不可欠であることを申し添えておきたいと思います。
続きまして、今回の省庁改革に当たり新たに導入することとされた政策評価制度について申し上げます。
民間企業におきましては、その業績は市場で評価を受けるわけであります。したがって、商品が顧客のニーズに合ったものであるか否かを絶えず見直し、品質の向上や競争力のアップに努めているところであります。また、外部の公認会計士から経営について厳しいチェックを受けております。このような評価や外部チェックの機能につきましては、民間企業の経営と同様に政府の経営、マネジメントにおいても重要ではないかと思います。
政府における政策評価の効果として、私は次の二点があるのではないかと考えております。
まず第一には、政策の企画立案段階、さらにその開始後においても、常により適切な政策のあり方を考えることとなり、より質の高い政策の選択が可能となることが期待されます。もちろん、評価結果が意思決定に反映されることは大前提であり、評価を行うこと自体が単に自己目的化してしまうようなことは避けることが必要であります。
第二には、政策評価の結果やその政策への反映状況を公表することにより、政策が国民のニーズに合っているかどうかを常に論理的に説明する責任を果たすことができると思います。また、その結果、さまざまな角度からの論争にも耐えられるような政策の企画立案能力の向上の機会にもつながるものと考えます。
この政府による政策評価が有効に機能するためには、評価の公平性、妥当性、公正性などをどう担保するかが重要と考えますが、そのためには、政策を評価するに当たり、その物差しと言うべき尺度、指標をどのように作成していくのか、また、お手盛りの評価とならないように第三者によるチェック機能をどう導入していくのか等の課題について十分検討され、実施に当たって万全を期されるよう強く希望いたします。
いずれにいたしましても、中央省庁における政策評価制度の導入は画期的なことであると考えており、今回の省庁改革の一つの目玉として、さらに一層具体化に向けての取り組みを進めていただくよう期待いたします。
続きまして、スリム化について申し述べます。
国の行政組織などのスリム化については、中央省庁等改革関連法案にあわせて決定された中央省庁等改革の推進に関する方針において、事務事業の廃止、民営化、独立行政法人化、行政組織の整理合理化、十年間で二五%の定員削減などが進められることとされております。「官から民へ」、「国から地方へ」が今回の中央省庁等改革の基本理念であり、民間企業が大胆なリストラを断行している中、行政においてもスリム化を進めていくことは極めて重要な課題であると考えます。
この中には八十九に及ぶ事務事業の独立行政法人化が盛り込まれております。中には国立病院や研究所、国立青年の家など国民生活や社会経済活動において極めて重要な機関も含まれております。独立行政法人は業務の効率性を高めることを目的とするものであり、行政の効率化を図る上で重要な制度であると考えますが、一方で、独立行政法人化によって経済効率性を優先する余り国民生活上重要な業務の遂行に支障が生じないよう、制度の構築と運用においては十分御配慮いただきたいと考えます。
また、今回の方針の中には審議会の整理合理化も盛り込まれております。審議会の整理合理化は、縦割り行政の是正と行政責任の明確化を目的とするものであり、今回の中央省庁等改革の柱の一つであると考えますが、他方において、審議会は国民各層の意見を幅広く聞き、行政運営に反映させるという利点もあるのではないかと思います。このため、審議会の整理合理化に当たっては、単にこれを整理するだけではなく、広く国民の意見を聞くための手続をあわせて整備し、地方の実情も含め国民各層の意見を行政運営に反映させる方法を整備していただきたいと考えております。
今回の省庁改革のポイントの一つは政治主導の徹底であると受けとめております。情報公開とあわせ、行政の意思決定の透明化とその中での政治の役割の明確化にお努めいただきたいと考えております。
先ほど「官から民へ」、「国から地方へ」と申し上げました。今回の中央省庁等改革と地方分権はまさに車の両輪であり、両方とも並行してしっかりと進めるべきものと考えております。今回、地方分権については四百七十五本に及ぶ法改正が行われると伺っておりますが、これにとどまることなく、さらなる地方分権の推進、そしてこれを踏まえた中央省庁のスリム化にしっかり取り組んでいただきたいと思います。
地方分権の推進に当たっては、単に権限を国から地方へ移すだけでは十分ではありません。あわせて、分権の受け皿となる地方公共団体の行政能力の向上が必要であります。そのための人材の育成、財源強化などを進めることが必要であると考えますので、この点もよろしくお取り組みいただきたいと思います。
以上、いろいろ申し上げてまいりました。
最後になりますが、今回の改革は二〇〇一年一月から実施する予定と聞いております。新しい世紀の始まりという節目であり、新しい行政システムをスタートさせるには絶好のタイミングではないかと思います。これほどの大改革であるため、膨大な諸準備が必要でしょうが、スムーズなスタートが切れるよう、二〇〇一年に向けて着実に準備を進められるよう期待するとともに、今回の改革を成功させるべく委員各位の一層の御尽力をお願いいたしまして、私の発言を終わらせていただきます。
どうもありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/291
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292・吉川芳男
○団長(吉川芳男君) ありがとうございました。
次に、加藤公述人にお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/292
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293・加藤秀樹
○公述人(加藤秀樹君) 加藤でございます。
簡単な「行政改革について」というレジュメのようなものを用意いたしました。
それから、後ろにつけてあります三枚の紙は、私は、行政改革というのはやはり内閣あるいは国会の機能の強化、さらに言えば政治家がどれだけきちっと行政を仕切るか、突き詰めるとそういうことだと考えております。そういう意味で、行革、今回の省庁再編そのものではないですけれども、つけさせていただきました。
レジュメに沿って話をいたしたいと思います。
今回のこれは省庁の再編成ですけれども、私は、行革というのは、言うまでもありませんけれども、本来は行政の仕事の中身をどうするか、むだなものは切り、ばらばらなものはまとめていく、そういうことだと思っております。ですから、今回のは主に組織あるいは制度変更ですから、本当はこれからがスタート、これから中身をどうするかということに尽きると考えております。
そういう意味では、今回の制度変更、組織の変更というのは、それではしようがないではないかと言う方もいらっしゃると思いますけれども、私は、それをどううまく使うかということが大事なんだと思います。
外国人によく聞かれるんですが、何で日本は役所の再編だけにこんなに何年も時間がかかるのか、こんなのは内閣がこれだと言えば済む話ではないかと。これも私が申し上げるまでもない話ですけれども、確かに議院内閣制では、役所というのは、それをどう仕切るかは内閣の話ですから、外国人から不思議に思われても、それは長過ぎると思われても不思議ではないのかもわかりません。
本来は恐らく、内閣がまずできる。総理が決まり、閣僚が決まり、それでこの内閣で何をやろうということが決まる。そうすると、例えばAという大臣はあそこにある一番という役所を使っておれは仕事をしよう、Bという大臣は二番目の役所を使って仕事をしよう、Cという大臣は三番目と四番目を使って仕事をしよう、そうやってずっと大臣の仕事の割り振りを役所ごとに決めていくと、仮に今まで十五あった役所が十三で済む、二つ余る。となると、じゃ、その二つの役所は要らないではないかと。恐らく、内閣が決まればそういうふうに決まっていく。彼らの、特にヨーロッパの人たちから見ると、それだけではないかということなんだと思います。私は、これがやはり基本だと思います。
しかし、日本ではむしろ逆に、これは各省の設置法という組織に定めた非常にきっちりとかたい法律があるわけです。その法律に基づいて、その設置法の中に仕事の役割が全部書かれてあって、今まではその中に役所に権限すら与えられていた。その設置法に基づいて役所があって、そこに大臣がその上に乗っかって、さらに総理はその上に乗っかっているというのが日本の政治と行政の関係の現状、実情ではないかと考えております。ですから、矢印が実は逆なわけですね。そういう意味で、今回の内閣機能の強化というのは、内閣が仕切る仕組みにしていこうということで非常に重要な一歩だと思います。
ただ、しつこいようですけれども、せっかくのこういう機会ですから申し上げますと、政治家のリーダーシップというのは、法律の規定の中にあるのではなくて、当たり前ですけれども、政治家の行動でもって出てくるものだと思います。そういう意味では、ぜひ内閣機能が法的にも強化されたことを一つのきっかけにして、大いに内閣そして官庁の仕事というものを仕切っていっていただきたい、こんなふうに思っております。
恐らく、そこできちっと仕切っていけば、大臣の間、それから今度は副大臣制度もできるわけですから、その間できちっと議論をしていけば、縦割り行政あるいはむだな行政というものもかなり省けると思います。
それからもう一つは、設置法の話であります。
本来、役所の権限というのは、あらかじめその役所に与えられているものではないわけですね。法治国家であれば、これも当然の話であります。
例えば、大蔵省であれば財政、金融についてはあらかじめ包括的に権限が与えられている、あるいは教育であればあらかじめ文部省に権限が与えられている、そういうことではなくて、権限というのはあくまでも個々の法律の中にある。これも当たり前の話であります。
ところが、今までは設置法の中に権限規定というのがあって、あたかももうあらかじめ各省にその担当の仕事については全部やっていいよというふうに権限が与えられていた。そこが今回、権限規定がなくなったわけですから、私は、これは明治以来の百数十年間の行政の中で革命的な出来事だと思います。
ただ、これについても、大事なことは、それがきちっと実行されるように我々国民一人一人がそのつもりで行政と接しないといけないということだと思います。かなりの部分は私は意識改革の中にその重要性があると考えております。
その意識改革といいますのは、例えば、我々国民の一人として、何かあったら、これは一体どこの役所の責任なんだとつい思ってしまうわけですね。しかし、それはそうではなくて、何かあった場合に、それが個々の法律の中に書かれていることであれば、それは役所の責任なり役所がすべきことを問わないといけないですけれども、そうでなければ、それは自分の責任でやるんだと。私は、これがいわゆる自己責任の原則ということであって、これが今回をもってきちっと実行されるように我々自身が心構えていかないといけないんだと思っております。
もしそういうときに、やっぱりこれは法律でちゃんと役所がその責任をとる、あるいは仕切るような仕組みが必要ではないかということになれば、それは改めて、行政にそのままゆだねるのではなくて、国会の中で議論した上で、じゃこういう仕組みをつくっていこうと、それが本来の姿だと考えております。
それから、少し戻りますけれども、内閣機能の強化ということで、内閣府、内閣官房、それから経済及び財政について全体の方向性を決めるということで経済財政諮問会議という制度が新たにできました。私は、この点に関しては、内閣機能を強化する枠組みができたものだと思いますけれども、同時に、屋上屋となるといいましょうか、やはり組織というのは、何かできると、その組織を運営するための手間暇というのがどうしてもかかってしまうんだと思います。ですから、ここはむだが出ないように、これをどうやってうまく運用するかというのが非常に大事であると思います。
それからもう一点、先ほどの山上公述人のお話の中にもありましたけれども、評価というのは非常に大事であると思います。評価というのは、残念ながら、自分で自分の評価をするというのは難しいものだと思います。これは行政においても全く同じだと思います。
したがって、これは外部に評価を行う機関を独立してつくることが不可欠であると私は考えております。またそのためにも、評価についてきちっと定めた法律を決めることが必要ではないかと思います。
また、評価を外で行うとなれば、やはり情報公開をしていかないといけない。評価と情報公開というのは車の両輪であります。ですから、例えば財政、予算の使い方、決算、こういうものであれば、国の例えばバランスシートをつくってそれを公開していく、そんなことも必要になってくると考えております。この機会にぜひそういうものが実現されるようにお願いしたいと思います。
それから、最後になりましたけれども、最初に申し上げましたように、行政改革というのはどこまで行ってもやはり政治の世界と切り離せないというんでしょうか、政治家と官僚の役割分担で、政治家が何をして官僚が何をするか、そこがはっきりしないと行政改革というのは私は進まないと考えております。
そういう意味で、今回の省庁再編とは別のところではありますけれども、副大臣制度、政府委員の廃止などが決まりました。これも内閣機能強化という意味では非常に大きいステップであると思います。
こういうことによって、従来は、本来政治家がやるべきだったけれども官僚にゆだねてきたこと、例えば法律を提出する際の事前の調整、これはよく根回しと呼ばれておりますけれども、あるいは国会での議論の準備、これには質問取りから大臣の答弁の用意まで含まれていると思います。その質問をとったりあるいは大臣の答弁を準備したりするということに関して役所がそれを行うということは、これは全く不思議ではなくて、それは大いにやればいいと思いますけれども、ただ、そこで大臣がきちっと議論に加わって、自分の判断で最終的には答弁する内容を決め答弁するということが大事なんだと思います。
そういう意味では、今回の省庁再編で行政改革をしていこうということと、副大臣制度、政府委員を廃止して内閣機能を強化していこうということは私は全く同一線上にあるものと思っております。そういうことによって健全な政治家と官僚の役割分担が行われて、行革と同時に内閣機能の強化と国会機能の強化ということが一体になって進んでいく、ぜひそうなるように国会議員の方にお願いしたいと思いますし、また、とりあえずは省庁再編が先行している、決まったわけですから、これが二〇〇一年から実行される、それまでの間に、国会を含めて政治家の側での対応というものがどんどん進んでいくようにぜひお願いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/293
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294・吉川芳男
○団長(吉川芳男君) ありがとうございました。
次に、藤原公述人にお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/294
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295・藤原信
○公述人(藤原信君) 私、藤原といいます。
私は二年前まで、宇都宮大学農学部森林科学科というところで森林計画学それから森林環境保護学というものを担当し、教育研究に当たってまいりました。また、三十年近く自然保護運動、環境保護運動というものに取り組んでまいりました。きょうの機会に、日本の環境行政と森林のかかわりについて意見を述べようと思っております。
二十一世紀は環境の時代と言われております。国民の環境への関心も高いし、また、環境行政を担当する環境庁への期待も大きいものがあります。今回の行政改革によりまして環境庁が環境省に昇格するということは、環境行政を重視する政府の姿勢のあらわれと評価をいたしております。しかし、これが単なる庁というのを省に言いかえただけで組織の拡充整備を伴わないのであれば、国民の期待を裏切ることになると思います。
我が国の国土面積の三分の二に当たる二千五百万ヘクタールは森林です。ですから、我が国の環境行政に占める森林の役割というのは大変大きいものがあります。
総理府が平成五年の一月に、国民の意識調査として「森林とみどりに関する世論調査」を行いました。これは、十一の選択肢のうちから三つまでの複数回答により選択をするという項目になっておりますけれども、このうちの上位五位を見てみますと、「山崩れや洪水などの災害を防止する働き」を挙げたのが六四・五%、これが一番多いわけです。「水資源をたくわえる働き」、これが五九・〇%。「貴重な野生動植物の生息の場としての働き」、これが四五・四%。「大気を浄化したり、騒音をやわらげたりする働き」、これが三七・九%です。私は林学をやっておりまして、実は木材生産というものが中心だというふうにこれまで考えておりましたけれども、このアンケートで五番目になりまして「木材を生産する働き」、これが二七・二%という数字になっております。
このほかにも、二十歳代では「レクリエーションの場を提供する働き」というのが二二・一%を占め、森林に対するレクリエーション利用への期待が大きいことがわかります。
このように、国民の森林に対する期待というのは、国土保全、水資源涵養、生物多様性、環境擁護というものに関する自然環境、生活環境の保全というのが上位を占めております。そして、経済的機能と言われる木材生産は五位にとどまっております。
すべての森林は、今挙げましたような機能、働きを兼ね備えていると言われておりますけれども、個々の森林におきましては各機能の位置づけというものには軽重の差があります。公益的機能を最重点に置かなくてはいけない森林もあれば、経済的機能を発揮させることが適切な森林もあります。
私は、森林の有する経済的機能としての木材生産機能の重要性は十分認識しております。そして、この木材生産についての国民の認識というものをもっと深めていただきたいとは思っております。現在の我が国の木材の自給率は二〇%を切っております。外材が八〇%以上というような状況ですけれども、一九九二年に行われました地球サミットでは森林原則声明というものが認められまして、これからは外材を今までのように容易に輸入することができなくなるという事態も考えられますので、国内林業の整備というものの必要性は十分認識をいたしております。
しかし、林野庁がこれまで森林の経済的機能というのを優先させて森林の持っている公益的機能というのをなおざりにしてきたために、森林破壊、自然破壊、環境破壊というようなものが社会問題となっていることも事実です。公益性の高いブナの天然林の大量伐採、また、必要はないと思われているような大規模林道事業などで森林を荒廃させているという事実があります。
国有林は、急峻な脊梁地帯、重要な水源地域、非常に原生的な天然林も多い野生動植物の生息地として重要な位置を占めているところに森林をたくさん保有しております。森林の持っている公益的機能というものについて定量化することはできませんけれども、しかし国民の自然環境、生活環境を守るという上では森林の存在は大変大きいものだと思いますし、奥地国有林の自然環境を保全すること、これは多くの国民の希望するところだろうと思います。
今回の行政改革に当たりまして、平成九年九月三日に行政改革会議から発表された中間報告によれば、森林行政については原生林等に係る行政を環境安全省に統合するというふうになっております。
新聞報道によりますと、環境庁が、自然保護を優先すべき森林は環境安全省に統合すべきであるという基本的な考え方に立って、林野庁が管理する国有林の半数を超える五三%を今度新しく新設される環境安全省に移管するという方針を決めたという報道がありました。この根拠となるのは、環境庁が自然環境基礎調査で行っております、植物の自然が残っている度合いを十段階に分けて調査をしておりますけれども、このうちの上位の二地域、自然草原、自然林という人の手のほとんど入っていないところに分類される中に国有林の全体の五三%が含まれているということで、これを林野庁の国有林から環境庁に移管の対象としたいということでした。国有林は今七百五十万ヘクタールありますので、それの五三%といいますと四百万ヘクタールに相当します。
平成九年十月十七日には、日本自然保護協会も行政改革に関する意見書、自然環境保全の視点からということで行政改革会議に意見書を提出しておりますけれども、この中で、保護地域の一元管理を進めるという観点から、保護地域内の国有林、河川等は環境行政機関に移管すべきであるという提言をいたしております。しかし、平成九年十二月三日の最終報告では、環境庁は環境省に格上げはされたものの、林野庁については現行の林野庁を継続するということになり、原生林等の移管というものは御破算になってこれまでどおり林野庁に残ることになりました。
さらに懸念されるのが、昨年十月に成立した国有林野事業の改革のための特別措置法です。この特別措置法に基づきまして、ことしの三月から再発足した国有林は、新たな森林整備の方向として公益林の充実ということを挙げております。そして、水土保全林が三百九十万ヘクタール、森林と人との共生林が二百万ヘクタール、資源の循環利用林が百六十万ヘクタールというふうに区分しております。このように、公益林として区分されている水土保全林、森林と人との共生林は国有林全体の八割を占めるということで、木材生産の場としての資源循環利用林は二割の百六十万ヘクタールという区分をしております。
しかし一方で、現在二百二十九の営林署を統合して九十八の森林管理署にする、さらに、平成八年度一万五千人の職員がおりましたけれども、この職員数の適正化ということで、職員を現行の三分の一程度に削減するということになっております。一方で公益林の充実といっても、営林署の数を減らし、職員数を三分の一に削減した林野庁というものが本当に公益林の保全に十全の対応ができるかということについて懸念を持っておりますし、昨年の改革法によりまして、林野庁には一兆円の長期借入金の返済が残っております。このための奥地林の乱伐というものも心配されるわけです。
現在、我が国の自然公園法に言う自然公園というものの中で国有林が占める面積というのは二百四十一万九千五百二十九ヘクタール、その内訳を見てみますと、国立公園が百二十六万三千八百十四ヘクタール、国定公園が六十二万六千八百六十四ヘクタール、都道府県立自然公園が五十二万九千九百二十五ヘクタール、ほかに自然環境保全法の対象面積となっているのが二万七千二百二十四ヘクタールです。このほか、自然公園等には指定されていなくても地域の自然環境の保全に必要と思われる森林、これを加えると約四百万ヘクタールが日本の環境行政の対象となる国有林であると言えると思います。先ごろ、林野庁が出したパンフレットによりますと、公益林は約六百万ヘクタールとなっております。日本の環境行政の中心とも言える森林政策を充実するためにも、公益林と言われる林野庁所管の国有林は環境省に移管すべきだと思います。
今の環境庁の組織では、日本の環境行政の充実にはほど遠いと思います。我が国には二十八の国立公園がありますが、国立公園・野生生物事務所のいわゆるレンジャーの定員、これはわずか百七十二人です。国立公園の面積は二百五万ヘクタールですから、一人当たりの管理面積は約一万一千九百ヘクタールになります。これでは十分な自然保護行政などできません。
諸外国の例を見ますと、日本と同じ地域制国立公園制度をとっている英国では、一人当たりの管理面積は二千ヘクタールと日本の六分の一になっています。今回の省庁改編で十万人に近い国土交通省が出現すると言われておりますけれども、省に昇格したとしても定員わずか千二十人の環境省というのは、我が国の環境行政の貧困を物語るものであると思います。人口が日本の二倍強のアメリカで、環境保護庁の職員数は約一万八千人です。人口に対する環境行政機関の職員数の比率は、日本を一とするとアメリカは八・五になります。
先ほども申し上げました林野庁の問題、そして環境行政の問題から考えますと、林野庁から相当数の林業技術者を環境庁に受け入れることにより、一万人体制の環境省を実現すべきだと思います。日本の環境行政が真に国民の立場に立って行われるためには、環境省の質、量ともなった拡充整備が不可欠であろうと思います。
以上、意見を終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/295
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296・吉川芳男
○団長(吉川芳男君) ありがとうございました。
次に、遠山公述人にお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/296
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297・遠山亨
○公述人(遠山亨君) 意見陳述の場を与えていただいて、ありがとうございます。
私は、厚生省の管轄であります国立病院・療養所の職員で組織をしております労働組合、全日本国立医療労働組合、略称全医労と言いますけれども、委員長をしております遠山と申します。
全医労は、終戦直後から今日まで五十一年間、国民の医療と働く人々の生活を守る運動を進めてまいっております。こうした点から、私は、国立病院・療養所の独立行政法人化が持つ問題にかかわって、大きくは三点にわたって意見を述べさせていただきたいというふうに思います。参考資料も同封しておりますので、ごらんをいただきたいと思います。
一つは、国民の医療及び社会保障がかつてなく高まっているときに、国の責任といいますか、その果たすべき役割は大きく、積極的に果たすべきというふうに思いますけれども、後退の方向に向かっているのではないかということで、大きく危惧しているところであります。
医療の提供体制でいえば、国の施設として国民への医療提供をより狭めていく、縮小していく方針から今度の国立病院・療養所の独立行政法人化計画が進められている、こういうふうに思うわけであります。この独立行政法人化では、医療の公共性というものが非常に失われていくのではないかという点であります。この機会に、もっともっと国の医療はどうあるべきかという議論を大いに国民的規模で広げる必要があろうかというふうに思っております。
今度の独立行政法人化では、企業の会計という原則が持ち込まれておりますし、採算優先の病院運営、こういうものが強いられるという状況であります。こうなりますと、国立医療がこれまで維持している不採算部門の医療の後退といいますか、撤退が進んでいくのではないか、このことについて心配をしているものであります。
それは、差額ベッドの拡大による患者負担増大の問題、現在の結核医療であるとか、難病や重心、筋ジス、感染症、こうした長期にわたる入院を余儀なくしている医療の切り捨てが浮かび上がってくるというふうに思います。こうしたことは、国立病院・療養所と同じように、国や自治体から財政補助を受けて運営をしている他の公的医療機関にも波及をしていくのではないかというふうに思っているところであります。こうしたさまざまな点から見ると、国民の医療に及ぼす影響は極めて大きいものがあるというふうに思います。
今、日本の社会は高齢化により、医療、看護、介護にかかわる施策の充実は国として緊急にやってほしい課題にもなっております。
また、今日結核が、学校での集団発生、院内での感染等の発生が新聞等で報道されておりますように、患者数が増加の傾向を示しております。これは、多くの民間病院が結核病床のベッドをなくしてしまっている中で、国立病院・療養所が結核入院患者のシェアの四八%を超えているように、結核医療の中心的な役割を担っているというふうに思います。
また同時に、財政基盤の非常に弱い山間、僻地、離島など公的医療に恵まれない地域で積極的な役割を発揮しているということの問題をとりましても、このまま継続をしてほしいという国民の願いはかつてない願いとなってきております。独立行政法人がそれに正しくこたえているだろうか、このことについて多くの疑問を持つものであります。
御存じのように、国立病院・療養所は北海道から沖縄に至るまで地域医療の基盤を据えながらネットワークをされている日本最大の医療組織であります。この国立病院・療養所が果たしている全国ネットワークをこれからも駆使して、より一層の充実強化が今ほど図られる必要が迫られているときはないのではないかというふうに考えているからであります。
今、この国立として今後残るという状況を見た場合、国立がんセンターなどの高度専門医療センターが六施設八病院、ハンセン病の療養所が十三園、これのみであって、がんや循環器、ハンセンということが国立存続の範囲というふうに限定するのではなくて、国立医療の機関をもっと存続させて、不採算医療であるとか政策医療に対する全国ネットワークの機能を大いに発揮すべきというふうに考えております。
国立病院・療養所は、民間で対応の困難な領域分野を国民の医療の要請を受けてその役割を今日果たしております。今後さらに近隣の医療機関や福祉施設との信頼と協力の関係をより一層強めて、長所を伸ばし、短所をカバーする全国ネットワークを敷いた国の医療施設がどうしても必要だということを申し上げておきたいと思います。
第二は、そこで働く職員の身分にかかわる問題であります。
この国立病院・療養所が独立行政法人化されれば、国家公務員型というふうに今言われておりますけれども、これは人事院制度からも外され、首切りや強制配転、労働強化に直接つながっていくのではないかという不安であります。
本来、医療現場は人の命を救って健康を守るという極めて公共性の高い業務であります。それにふさわしい人員を確保して、身分や処遇の保障が必要だというふうに思います。しかし、独立行政法人化することによって、定員が削減をされて、身分の不安定な労働条件に下げられる。これが医療を守る上で危惧の念を持つものであります。
具体的な職員の身分や処遇の問題は、今後個別の法律、この審議に多くの内容をゆだねていくというふうにしておりますけれども、本来こうした事項は交渉によって取り決められるというふうに思いますけれども、私たちはスト権がありません。こうした私たちの生存権にかかわる重大な事項が政府の手で一方的に行われることがあっていいのか、この点での危惧を申し上げたいところであります。
第三は、国立病院・療養所を存続させて、さらに拡充してほしいという国民の期待が強いということであります。この点で全国的な特徴点を申し上げさせていただきます。
今度の中央省庁等関連法案では、内閣機能の強化で権限集中を図るということが言われております。その一方で、住民の暮らしや医療と直結する事務事業の八十九の機関を選んで独立行政法人化を図ろうとするというふうにされております。その対象人員は七万三千人で、そのうち四万六千人が国立病院・療養所で、最大の規模の数になっております。
さらに重大なことは、二〇〇四年度から独立行政法人へ移行するというふうに言われておりますが、その間に、現在、国立病院・療養所の切り捨て、再編成計画の中の六十カ所を廃止するということが計画の中で示されております。この神奈川県では、国立小児病院二宮分院と神奈川病院が統合されて小児病院がなくなる、横浜病院と横浜東病院の統合、さらに横須賀病院の移譲という三つのケースが含まれております。
提出をしております資料一の週刊文春の記事も掲載をしておりますけれども、静岡病院の廃止によって行き先がわからないという神経系疾患の患者さんが泣き叫ぶような不安の声を上げております。こうした住民の命や健康を国が本来守っていくということを患者さんは求めておりますし、そのことを強調している七月八日号の週刊文春の記事ではないかというふうに、資料として提出をさせていただいております。
国立病院・療養所が戦後五十数年にわたり国民の医療と健康を守るために果たし続けてきた業績は何人も否定し得ないところであります。国立医療は国民共有の財産であり、これを再編成したり独立行政法人化することは、地域住民とともに長い歴史の中で医療要求にこたえてきた地域医療を崩していく、この道に通じるからだというふうに思います。
今日、独立行政法人化に反対する地方議会の反対決議が既に八百九十四議会に及んでいることも、短期間でありましたけれども、私たちの百六十万を超える国会請願署名も提出されております。これも先生方を含めて御存じのところであります。
ちなみに、宮崎県では県議会を含む一〇〇%の議会が反対決議を上げているように、全党の一致した決議というふうになっております。
ここ神奈川県でも、五月三十日に第十回よこはま健康まつりを私どもの主催でやりましたけれども、過去最高の五千人の住民の参加がありまして、国立病院を守ろう、独立行政法人化ノーという声を上げてまいりました。
三月十八日に拡大見直しとしてリストアップされました大阪の千石荘病院では、住民のアンケートをとったところ、九八・七%の人が国立として存続を望むと、廃止計画反対の声が寄せられております。まさに国民はこのように国立病院・療養所の発展をこぞって期待しております。
資料二にありますように、北海道新聞の社説では、公共事業や官公庁のあり方を見直すと同じように地域住民の要求に結びついている医療機関を同一のレベルでこういうふうに実施していいのか疑問が残る、こういう社説を載せております。
資料四にお示しをしておりますように、元国立病院の院長先生でありました秋元波留夫先生は、半世紀にわたる国民の膨大な税金と多数の関係者の創意と努力で築き上げたこうした医療機関を独立行政法人化によって捨て去ってはならない、このことを強調されております。
国立病院の使命は、単に現在の七万人に及ぶ入院患者さんあるいは外来患者さんだけの医療の問題じゃなくて、国民の期待にこたえる国の機関として一層充実、発展させなければならないというふうに考えるものであります。
そして、少子高齢化社会、こうした医療、福祉、介護の充実、広範な国民の声が上がっております。進んだ医療、医学を貧富や地域の差なく広く提供していく、そういう立場から一般医療を基盤とした高度専門医療の機能の強化、長期にわたっての難病など長期慢性疾患の治療や研究体制、エイズであるとかエボラ出血熱の感染症に対する研究、治療体制、さらには地震等の災害医療の強化など、しっかりした私たちは展望を見据えながら、日本の憲法に基づく医療機関として国立病院・療養所がますます拡充、発展することを申し上げて、私の陳述とさせていただきます。
御清聴に感謝します。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/297
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298・吉川芳男
○団長(吉川芳男君) ありがとうございました。
以上で公述人の方々の御意見の陳述は終わりました。
それでは、これより公述人に対する質疑を行います。
なお、委員の質疑時間が限られておりますので、御答弁は簡潔に願います。
また、御発言は私の指名を待ってからにお願いいたします。
それでは、質疑のある方は順次御発言願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/298
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299・清水嘉与子
○清水嘉与子君 自由民主党の清水嘉与子と申します。
きょうは、四人の公述人の皆様方、本当にお忙しいところ私どものためにお出ましいただきまして、ありがとうございました。
大変参考になる御意見を、またそれぞれ違った立場からお話をちょうだいいたしまして、大変参考になったところでございます。これからの審議に先立ちまして皆様方からいろいろ御意見をちょうだいして、また参考にしたいと思っております。
そこで、何点か御質問を申し上げたいんですけれども、まず山上公述人からお願いしたいと思います。
今回の改正案に対しまして非常に前向きの御意見をちょうだいいたしまして、大きな期待がよく通ずるわけでございますけれども、一般の国民から見て、何となく省庁の改編だけではないかというような印象にどうもとられている感じがする今度の改革でございます。
そこで、実はこれによって、例えば今まで公務がやっておりました仕事を政策立案の部門と実行の部門に分けて、それで実施の部門については必要でないものを廃止するなり、あるいは民営化するなり、あるいは独立行政法人化するなりというようなことでかなりスリム化していくということがあるわけでございまして、また規制緩和等を行いまして、民間の活力を相当喚起するという意味では経済効果も相当あるのではないかという期待があるのでございますけれども、経済界にいらっしゃるお立場から考えられて、どんな感じでございましょうか、お伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/299
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300・山上晃
○公述人(山上晃君) 今、清水委員から御質問の件ですが、私ども経済界でも今回の行政改革、私、先ほど申し上げましたように、大変期待をしておりますし、全体の絵といいますか、改革の考え方というのは非常にいろんな面で配慮されたいいものではないかなと。もちろん、個々にはこれからなお詰めていかなきゃいけない問題はいろいろあろうかと思いますが、基本的には行政をスリム化すると。要するに、市場原理、世の中の流れ全体がそういう方向に流れている中で、従来と同じような行政システムでいいのかということについては多くの国民がそれぞれに疑問を持っておりますし、私ども財界でもそれぞれの企業が今個別にこの世の中の変化に対応すべくさまざまなリストラクチャーをやっているところでございますので、そういう意味では行政システムがスリム化されて市場原理に沿って規制緩和が行われていく。
それから、先ほど一部御指摘がございましたけれども、独立行政法人のような形で行政機関の中でやっていたものを一つの法人組織としてそこに一つの効率性を求めていくというのは、私は当然だろうというふうに思うんですが、もちろん心配されるのは、それによって行政サービスの低下がされるというような事態というのはやはり避けなきゃいけない問題だろうというふうに思いますので、そこに十分配慮しながら、全体としては、やはり今の世の中の全体のルールに沿って行政のシステムが変わっていくという方向性については、私は大変期待をしているところであるわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/300
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301・清水嘉与子
○清水嘉与子君 それから、何度も指摘されているところが、いわゆる縦割り行政の弊害を何とかなくさなきゃいけないんじゃないかという御指摘でございます。
これは、確かに例えば厚生省と労働省が一緒になれば、厚生省と労働省で今までなかなか進まなかった、例えば障害者の問題なんかまさにそうですよね。いろんな意味でやりやすくなる点もあろうかと思いますけれども、固まれば固まるでまたほかの省庁との縦割りというようなこともあるわけでして、これ本当にどこが一番決め手なのか、どのようにお思いでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/301
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302・山上晃
○公述人(山上晃君) 私も一企業のかつて経営を担っておった一員でございまして、同じような悩みといいますか、やはり本部には各部があって、部がそれぞれ業務の企画立案をしているわけですけれども、今おっしゃったように、部ごとの垣根というのがやはりありまして、言ってみれば縦割り行政的な動きになっていく。
一方、それじゃあわせればいいのかといいますと、管理スパンの限界を超えた大きな組織になってしまってそれ自体がまた問題、うまく機能しなくなるといいますか、そういう悩みがあって、私は、組織問題というのは理想的な絵というのはあり得ない、それぞれあわせればあわせたなりにデメリットがありますし、分ければ分けたなりのデメリット・メリットがあるわけなんで、要は、よりメリットの大きい方向に組織は変えていく、そういうことだろうというふうに思うんです。
ですから、今回の行政システムのスリム化というのは、先ほど加藤公述人がおっしゃっていましたけれども、本来、仕事の中身について徹底的な見直しをした上で、その結果として一府十二省庁というものが出てくるべきなんでしょうが、同時並行的に恐らく今作業が進んでいるんだろうというふうに私は理解しておりますけれども、あくまでも仕事をどうスリム化するか。
それは、一つは政府に権限を持たせて、内閣の機能を強化することによって官庁が持っていたものをそっちへ移していく、一つは地方に移していく、もう一つは民間あるいは規制緩和で市場原理の中にそこをゆだねていく、そういう流れの中で組み立てられたものだろうというふうに思いますので、縦割り行政の基本は、私はその中にいる人間の意識、要するに各公務員の意識次第ではないか、あわせて政治家の意識ではないかというふうに思いますが、要するに運用次第で、これはかなり形がよくなりましたので、大きく改善されてくるのではないかというふうに期待しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/302
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303・清水嘉与子
○清水嘉与子君 もう一点お伺いしたいんですけれども、今回の改正の中で政策評価の関係でございます。
これは新たに、今までなかったのもおかしな話なんですけれども、ほとんど十分な評価がされていないで行われてきたことについて、今回きちんとというか、こういう政策評価の制度をつくったということについては大変評価をしておられるわけでございますが、民間においては既にこのことはどんどんそれをやらなければ前に進まないということだったと思うんですけれども、今回こういった制度をつくった。
しかし、実際いろいろ話を聞きますと、今までも一応の形としてはないことはなかったわけですけれども、なかなかいろんな制約の中で十分でなかった。今度は、自分たち自身がまず政策の評価をし、そしてさらにその上に総務省が評価をし、そしてさらに第三者のところで評価するというような形がついているわけでございます。ただ、アメリカのGAOのような形にはとてもとても、組織の数から何からいってもとてもできないようなことで、この人たち自身も定削がかかっているということで、今の人たちの中でやらなきゃいけないというような苦しい点があるわけですけれども。
そういったものが行われるようになったことは私は確かに効果があるのかなと思いますが、しかし、先ほど加藤先生もおっしゃいましたが、これはもう法制化しないでまあとにかくやってみようという話の中で、本当に実効が上がるんだろうか、中だけの査定でできるんだろうかというような問題が議論されているわけなんです。
そういう点について、本当に実効性が上がる評価の仕方というのはどこをもう少し工夫したらいいのかというようなことが、もし御意見ございましたらお願いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/303
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304・山上晃
○公述人(山上晃君) 私も、先ほど申し上げましたように、まず制度自体、政策評価という制度がこういう形で進んでいくということに私は非常に意味があるだろうと。
私どもは市場の中で厳しい評価を受け、それぞれ廃止をしたり、新しいことをやったりしているわけですが、行政の中ではなかなかそういうコントロールがうまく機能しないわけで、みずから評価をしていく、それから第三者機関が公平に評価をするというようなことというのは非常に大事な意味のあることだろうというふうに思っておるんですが、どういうはかり方をするのか、そこに妥当性のある評価をどうつくっていくのかということは、それぞれの置かれているその省庁の役割というか、任務が違うわけでございますので、第三者がまたこれを公平、公正に評価する、物差しの当て方というのは非常に難しいなと、私もその細かい部分では実は悩んでおるわけですけれども。
そもそも何のために評価をするのかということに立ち返ってみますと、一つは企画立案されたものが国民のニーズに合っているのかどうかということをみずからチェックする、次の政策に反映させるというところに大きな意味があるわけですので、私はやはりこれはやりながら考えるという以外にないだろうというふうに思うんです。
ですから、基本的には何のために評価、要するに、評価するのが目的になってしまうということが非常に心配なので、評価した結果についてはそれを国民に公表し、そしてまたそれを次の政策に反映させていくという基本をきっちりと持つということと、もう一つは、非常に難しいことではありますけれども、妥当、公平、公正な指標というか尺度の方法を議論を重ねてつくっていくということで、あとはその運用をしながら修正を加えていくということでいくしかないのではないかというふうに思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/304
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305・清水嘉与子
○清水嘉与子君 ありがとうございます。
次に、加藤先生にぜひお願いしたいと思います。
先生がおっしゃいましたように、組織を変え、行政組織を再編してもそれだけではだめなんだ、実際にはその仕事の中身をどうするかが問題なんだというようなことが大変重く響きました。具体的にそれをするために、恐らく先生のおっしゃりたい働く人の意識の改革ということが大きな問題になるんじゃないかというふうに思いますけれども、特に今、この数年、数年といいましょうか、高級官僚のいろんな不祥事の問題なんかが起きまして、国民からも非常に不信感がある。そういう面での問題として、公務員の制度、今のままでいいんだろうかという問題があると思うんです。いわゆる組織を変え、そして中身を本当に変えていくという中で、今の公務員制度の問題といいましょうか、その辺については先生はどんなふうにお考えでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/305
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306・加藤秀樹
○公述人(加藤秀樹君) これも私は、制度というのはこれが満点だというのはなかなか、当然ですけれども、ないわけですね。しかも、制度というのは、世の中の状況が変われば、その制度は三年もつか十年もつか、また変えないといけないということはあると思います。したがって、私は公務員制度についても、いろんな問題はあると思いますけれども、これについても、むしろ大事なのはそれをどう使うか、中身かなというのが実感です。
一つ、私はこれは前々から考えていることなんですが、申し上げますと、先ほどの政策評価と同じで、公務員の評価基準がどう変わるかでかなり大きく変わるのではないかなと。
今、公務員試験は、私はごく最近はよく知りませんが、例えば法律職とか経済職とか行政職とかいろいろあると思います。これは文化系で、あと技術系いろいろあると思いますけれども、じゃ、例えば法律職で公務員になった者が法律の専門家なのか、経済職で受かった者が経済の専門家、エコノミストとしてきちっとその道の専門家として活躍しているかというと、私はこれは必ずしもそうではないのではないのかなと。
じゃ、通称キャリアという言葉が使われております。通称キャリアと言われる人たちは一体何の専門家だというと、これは何なのか、根回しの専門家じゃないか、これが私の実感なんです。私もつい最近まで役人をやっておりましたけれども、根回しの専門家と言うとちょっと言い過ぎかもわかりません。かなりいろいろ企画から実際の法律を書く作業までやっておりますけれども、ただ、広く言えば、非常に粗っぽく言えば、政策を決める、あるいは法律をつくる、それで経済的な分析をしたり、法律的なことをやるよりも、それをどうやって法案が通るように例えば政治家に説明をするか、あるいは関係団体、業界に納得してもらうか、そういうことに割くエネルギーというのは私ははるかに大きいのではないのかなと。
私は、これはそれを官僚にゆだねている政治家がまずよくないと思っております。ですから、先ほど私が行政改革というのはどこまで行っても最後は政治の問題だと言ったのはそういう意味であります。と同時に、役人の側もそういうことを、調整作業というのは一番しんどい作業ですから、しんどいしんどいと言いながら、しかしこの調整を行うということは、そこにいわば権力の源泉もあるわけですから、しんどいと思いながらも、なかなかやり出すと手放せないというところがある。これが事実だと思います。
ですから、今最初に評価と申し上げました、例えば法律職で入った者は法律家として、法律の専門家として評価する、あるいは経済職で入った者はエコノミストとしてきちっとやる、それを評価する。もちろん調整とか、より広いいわゆるゼネラリスト的な要素も必要ですから、その部分もあってもいいんだと思います。しかし、その評価基準を幾つか分けてやると、必ずしも全員が調整を中心とした仕事の中でピラミッド的になるよりも、もうちょっとピラミッドが台形になるというんでしょうか、法律職として、ローヤーとして活躍するあるいはエコノミストとして活躍する、あるいはもっと広く調整も含めて、マネジメントも含めてその分野で活躍する。それぞれがもう少し長く役所の中で活躍できて、それにどういう名前をつけるかは、それはどういうポストを与えるかというのはどうにでもなる話だと私は思っています。
そうやれば、こんなところで何かと思いますけれども、いろいろスキャンダルを起こして処分を受けたような役人というのは私は押しなべて非常に能力の高い人たちであったと思います。恐らく、潜在的には今申し上げたローヤーとかエコノミストとしても能力は高かったんでしょうけれども、しかしそういう人たちがなぜそんなに接待を受けたかというと、やはり調整が上手であったから接待を受けたという面があったんだと思います。ですから、調整の上手な人が接待を多く受け、それが評価されるというのが残念ながら今の役所の大きい評価基準になっているわけですから、そこを今申し上げたように分けていくことによって恐らくかなりの程度の問題は解決できるのではないかと、そんなふうに思っていますが、しつこいようですけれども、それはやはり政治家がその調整の部分を、政治家といいますと大臣あるいは副大臣、内閣に入ってくる政治家がそこを多く受け持つことがその前提にどうしてもなってしまう、そういうことだと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/306
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307・清水嘉与子
○清水嘉与子君 ありがとうございます。
まだいろいろとお伺いしたいんですけれども、時間もなくなりまして、済みません、藤原先生にお願いしたいと思います。
藤原公述人のおっしゃいました環境省の問題、そして森林の関係が環境省に入らなかったことについてのいろいろ問題を御指摘いただきました。御指摘はまことに専門家の立場からの御指摘で、私も本当によく理解できるところでございます。そしてまた、環境省の期待に対して、今のままですと千何十人の数の、一番小さな省の数が、その役割に対して余りにも少な過ぎるんじゃないかという御指摘、これは何度も国会の議論の中でも出ておりまして、そのたびに真鍋環境庁長官もその仕事に見合った組織をちゃんとつくるからということをお約束していらっしゃいます。確かに大変かもしれませんけれども、ぜひそれはそういった組織にしなきゃいけないなというふうに思っているところでございます。
ただ、環境省の問題、いつも真鍋大臣も苦しんでいらっしゃるのは、環境の保全、これは非常に大きなことだし、だれもが関心があるから環境省にもなるわけですけれども、そこと日本の今の経済活動の問題、この調和というのをしつつ環境保全をしなきゃならないというところがあるわけでございますけれども、その点について何かもし御示唆があったら教えていただきたい。
それから、唐突なんですけれども、COP3の後ずっと、日本がエネルギー消費を下げなきゃいけないということでいろいろ苦労しているわけでございまして、今、参議院の中で超党派でサマータイム法案をやったらどうかという意見がございます。これについてちょっとコメントをいただけたらありがたいんですが、よろしくお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/307
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308・藤原信
○公述人(藤原信君) 最初に、間違っていましたところを訂正させてもらいます。発言要旨のところに「二十八の国有林」と書いてありますが、これは二十八の国立公園なので、訂正させていただきます。
まず、環境問題と経済との調和ということなんですけれども、今までもそういうような調和という、何か非常に耳ざわりのいい言葉でもって言われていたんですけれども、どうも調和ということで今まで経済の方に重点が置かれてきたのではないだろうか。特に、森林の問題は、先ほど申し上げましたように、山を壊すということは言わないにしても、やはり木材生産というものを重視するために自然環境、森林環境が破壊されたという事実はあるわけです。ですから、そういう意味で、これからの森林の問題ということを考えたときには、むしろ環境を経済に優先させるというような気持ちでもいいのではないか。
昭和四十九年に自然保護憲章というのをつくったんです。これは民間でつくったんですけれども、これにははっきりとそのことが書いてあります。要するに、開発よりも環境が優先するんだということが書いてありますので、それが国民の意識の中にあるものだというふうに思っております。ですから、よく経済と環境との調和ということで非常にいろんなことを言われるんですけれども、今の時点でこれからの二十一世紀というものを考えたときには、むしろ環境を優先させるということで、そのためにはある程度経済も抑制されてもやむを得ない部分があるというふうに思っております。
サマータイムのことについては、私は子供のころ経験をしておりますけれども、これははっきりわかりませんけれども、経験からいうと、どうも余りいい印象は残っておりません。どうも申しわけありませんが。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/308
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309・清水嘉与子
○清水嘉与子君 ありがとうございます。
遠山公述人に最後に、本当に短い時間になってしまいました。
私も前に厚生省におりまして、看護行政をやっていた関係でこの問題に一番関心があるんですけれども、国会でも取り上げて、独立行政法人化になったときに、本当に働いている方々が意欲を持って働けるような仕組みにしてほしいということを申し上げたところなんですけれども、現実問題として、国立病院・療養所がどういう状況になっているのか。かつては本当に国立病院・療養所が日本の国のレベルをずっと引き上げていったという事実があるわけですけれども、今のままで、定員が一体何人来るのかどうか、何年に一人しか来ないような状況の中で、定員外の職員がいっぱいいるような状況で本当に改善できるんだろうかという心配があるわけです。
そこで、独立行政法人になったときの、もちろん否定的なことはあるんでしょうけれども、なったときにどうなってほしいということをぜひ御意見をちょうだいしたいと思うんです。どういうことを注意したらいいかということをぜひお聞かせいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/309
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310・遠山亨
○公述人(遠山亨君) 清水先生言われましたように、ひとつ意欲を持って日常業務ができるように先生の御奮闘をよろしくお願いしたいと思います。
今までの現状を見た場合、確かにこれが国立と言えるだろうかという体制があります。これは働く者の側に原因があるのではなくて、まさに国が国立医療の政策をこういう内容でもってニーズにこたえていく、この政策や方針が、具体的に年度ごとの予算に伴う実行計画が非常にしわ寄せされてきている、そういう問題について私たちは残念でならないわけであります。今後ともその点について、より一層看護婦さんの定員についてもお願いをしたいと思います。
何を望むかといいますと、独立行政法人化という問題について、これだけ大議論をしなきゃならないときに、まだまだ不足をしておると思うんです。私たちは、今の国立の存続を図りながら、もう一方でこういう形態の病院を考えていくんだということならわかるんですけれども、今の経営形態をそっくりなくしてしまうということに、営々と築いてきた国立医療がここで消えてはならないという次元の問題として議論をしているので、だからそのことがこちらに変わるという効率化路線が私としては賛成できない中身だということを申し上げておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/310
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311・清水嘉与子
○清水嘉与子君 ありがとうございました。終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/311
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312・川橋幸子
○川橋幸子君 民主党・新緑風会の川橋幸子でございます。
本日は、公述人の皆様、貴重な御意見を大変ありがとうございます。
四人の方々の御意見を伺っていましたら、最初に山上公述人が非常にオールラウンドにコメントをしていただきまして、その後、加藤先生、藤原先生、遠山先生と少しずつ特化されたテーマでお話しいただいておりまして、さてどのように質問をさせていただこうやら少々迷うところがございます。
私は、きょう午前中、地方分権の方の公述をお伺いして、今度午後は中央省庁の再編の話で伺っているわけでございます。地方分権のところでも、明治百年以上たった今日、第三の改革と言われるほどの非常に大きな改革を志す必要があるというようなそんなお話、それから今回の行政改革、省庁再編につきましても、官から民へ大きな日本の意思決定システムを変えていこうという、スリム化の話もあるかもわかりませんけれども、私は、日本の行政ないしは政治の意思決定のやり方を機動的に二十一世紀の日本に合うような形でやっていけるようにという、その大きな夢の中でこの二つの問題が論じられていると思うのでございます。
抽象的な言葉で伺いますと、大変夢があるというんでしょうか、私も心に意気燃やして取り組みたいような気がするんですけれども、特別委員会の一委員として考え、議論しているうちに、果たしてこれでいいのだろうか、果たしてこれがそのような大きな夢を抱かせるものなんだろうか。小渕総理がおっしゃるように、偉大なる、大いなる楽観主義に立ったとしても、これでいいのだろうかという不安を国民に対する責任という意味から私は感じている一人でございます。
さて、前置きはこの程度にさせていただきまして、最初に山上晃さんにお伺いさせていただきたいと思います。
いいコメントをありがとうございました。最後のまとめのところで、そうは言っても、今度のポイントの一つ、政治主導の徹底である、政治の役割の明確化に努めてほしいという、こういう御注文がありますが、具体的にはどんなことを考えていらっしゃいますでしょうか。忌憚のないところをお聞かせください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/312
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313・山上晃
○公述人(山上晃君) 率直なお話で、官僚組織に大きく依存した形でこれまで日本の政治というのは流れてきた、こういうふうに認識をしているわけです。その結果が、必要以上に官僚に権限が集中し、運用の中でそういうふうにされてきたわけですけれども、そこでそれを政治主導に取り戻す、こういうようなことが今回の行政改革の大きな柱であるというふうな認識をした上で、その中で内閣総理大臣のリーダーシップとか内閣府の中に相当な人材を集めて、そこが全体で戦略的でしかも総合性の高い政治を行っていく、そういう意味で私はそこに大きなリーダーシップとしての期待を実は持っておるわけです。
もう一つは、政治家の皆さん方に、生意気なことを申し上げて恐縮なんですが、もっと専門性の高いといいますか、学者とか経済界とか各分野で活躍している人が政治家として活躍できるような、そういうような日本になってほしいなと。そのことが私は大きく政治が主導して国が動いていく、そういうシステムにつながっていくのではないかと。やや抽象的なお話ですけれども、そういう感じがいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/313
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314・川橋幸子
○川橋幸子君 一つは、システムというんでしょうか、制度、機構の問題であり、一つは政治家の資質、能力の問題ということかなというふうに伺っておりましたけれども、後の方の、日本の経済界にもさまざまな分野の中に優秀な方がおられるのになぜ政治にチャレンジしようとなさってくださらないのか、この点はいかがでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/314
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315・山上晃
○公述人(山上晃君) これは、私は国民の政治意識にも大きく原因しているのではないかというふうに思っておりますけれども、要するに、選挙制度その他も含めまして、国民がどういう政治家に投票し、政治家になってもらうことを期待して投票行動を行っていくのかということを考えますと、残念ながら今の日本の状況からしますとまだまだ国民の政治意識というのは必ずしも高くないと。これはもう一般的によく言われていることでもあるわけですが、そのことが日本の政治全体を高めていくことになかなかつながってこない、そしてまた、財界その他各分野で活躍している人がなかなか政治の場に出る、それぞれもそういう意欲にやや欠けておりますし、国民もまたそういう人たちを政治の世界に送っていこうという意識に欠けている、双方にそれぞれいろんなことが重なり合ってそういう結果になっているのではないかと。
私の個人的な意見を申し上げますと、例えば私が政治家になるという気持ちにどうしてならないのかというふうに聞かれれば、今の私の知名度その他からして政治家に、資質としては別にして、多分今の選挙制度の中ではなかなかそういう機会が与えられるチャンスはないだろうというふうに最初からあきらめている部分が実はありまして、そういう人が少なくないだろうというふうに思うんです。それは国民側の理由でもあり、また選挙のシステムの問題でもありますし、それから政治全体に対する魅力の問題等々、いろんなものが絡み合っているような気がしますが、この辺は多分加藤先生の方がお詳しいんじゃないかというふうに思いますが。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/315
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316・川橋幸子
○川橋幸子君 山上先生からもう加藤先生に質問が振られてしまったようでございますので、それでは私も加藤先生の方にお尋ねさせていただきたいと思います。
先日、参考人の意見聴取のときに、北海道大学の山口二郎さんがお見えくださいまして、そこでも内閣機能の強化、あるいは官僚主導から政治主導へという、こういう変革を実際のものにするには政党がもっとしっかりしなければいけないというような、そんなことをおっしゃったのでございますけれども、それ以上詳しくはおっしゃらなかったのですが、こんなコメントを逆に加藤先生にお伝えさせていただいた場合には、加藤先生はどんなふうにお考えになられますでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/316
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317・加藤秀樹
○公述人(加藤秀樹君) 山口先生のその御趣旨はちょっとわかりませんが、日本の政党というのは、例えば自民党であれば自民党会館というのが永田町に立派なのがあるわけです。余りああいうものを持っている政党というのはほかの国を探してもないんですね。
私は、一般的に言えば日本の政党というのは非常に強大な力を持っていると思っております。ただ、政党が持っている力が内閣の中にはまり込んでいない、はめられていないというんでしょうか、のが問題ではないのかなと。ですから、これも私が今さら申し上げることではないんですが、議院内閣制というのは最大党が、例えばその党の中でその党を動かしていく、日本風に言えば党の実力者と言われる人たちが例えばベストトゥエンティーを選んで、そのベストトゥエンティーが内閣を構成するということだと思います。
ところが、今の日本では残念ながらそうなっていないんだと思います。今の内閣でも、自民党の実力者と呼ばれる方は、かなり多くが内閣の外にいるんですね。ですから、新聞なんかでも党の幹部とか実力者という言葉が使われていまして、中にいる方は実力がない方と私は申し上げませんが、年数で大臣になっている、順番になっているというのが実態ではないかと。
ですから、そのベストトゥエンティーであれば、その党の意思というのはベストトゥエンティーがその中に入っておれば当然生かされるわけですし、今度その与党のそれ以外の、閣僚以外の人が、おれたちは内閣の行動に反対だと言った場合に、それはその内閣に入っている人たちが抑えられる、要するにコントロールがきく仕組みになっているわけですね。
ですから、大抵の場合、例えば同じような仕組みをとっているイギリスでは、党の幹事長とか、日本風に言えば政調会長と言われる人たちは閣僚を兼務しているわけですね。私は、そうでないところに、内閣というもの、政党自体は強いけれども、その強さというものが内閣の外で発揮されているから内閣がコントロールできない。これは法律の問題ではなくて、先ほどから何回も申し上げておりますけれども、そこが政治家の行動によるものだと。だからこそ、役人の方も自分の大臣に相談する前に党の幹部のところに行って相談してしまうといったようなことになっていると考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/317
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318・川橋幸子
○川橋幸子君 制度面で内閣機能の強化をさまざま工夫したにしろ、実質的にそういう面が担保されない、いわば制度の下に来る政治インフラが熟さないとうまくいかないと、こういう状況のような気がいたしますけれども、それを変えるにはどうしたらいいという何か妙案があるのかないのか、いずれも卵か鶏かの話で、まず制度を整えて、その器に合うようにやっていくしかないということなのか、重ねてお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/318
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319・加藤秀樹
○公述人(加藤秀樹君) それは今の政治と行政との関係ということ……発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/319
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320・川橋幸子
○川橋幸子君 いえ、その政治主導の機能を内閣機能の強化として今度制度面で整備しても、政党がそのように実力者を送り込んでいかなければこれは発揮されないという、こういうお話でしたものですから。こういう質問です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/320
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321・加藤秀樹
○公述人(加藤秀樹君) これも私は評価にこだわるわけではないんですけれども、やはり評価というのが一つのキーワードだと思います。今の政治家の世界での評価というのが、政策をきちんと議論して、それを実現していくために努力をするということについて、それを重んじる人が必ずしも評価されていないんではないかと。むしろ党派間のやりとりのところで評価されたり、あるいは選挙に受かってきた回数の多さで評価されたりということで、大臣職というものがそういうものに応じて与えられているものですから、それでむしろ、こんな言い方をしちゃ失礼かもわからないですけれども、政策議論にうつつを抜かしているとすぐ選挙に落ちてしまうという、こんなことになっている。ですから、これもやや抽象的に言えば、政治家の評価基準というものを大分ずらさないといけないんじゃないかと考えております。
一つ例を申し上げますと、たびたびイギリスの例ばかりで恐縮ですけれども、日本はそのとおりにはいかないにしても、イギリスでは、例えばサッチャーさんという若い人が出てきた、大変有能であるということになると、その政党の幹部がサッチャーさんを呼んで、あなたは非常に有能であるからロンドンでちゃんと政策に関する仕事をしなさい、そうすれば次の選挙は選挙運動をしなくたって受かるような易しい選挙区から出してあげる、こういうふうになるわけです。選挙区をその党の中でかえていく。余り政策に関してはそれほど能力のない人は、大いに選挙運動をやってちゃんと帰っていらっしゃい、だから余りロンドンにいなくてもいいと、極端に言えば。
そういうことになれば、みんなやっぱり閣僚にもなりたい、大いに国の中心でやっていきたいと思うわけですから、政策に関してもっと勉強しようというふうにインセンティブが働く。例えばこんな仕組みは非常に大事なんだと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/321
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322・川橋幸子
○川橋幸子君 法律論じゃないところばかりに時間を費やしてしまいましたけれども。
それでは今度は今回の法律論の話で、先ほど、経済財政諮問会議というのが屋上屋になってむだが出るようなことになるのではないかという、こんな懸念を加藤先生はおっしゃったと思います。それから、昨日の中央公聴会の方では、総合科学技術会議、これは今度の目玉商品なんだけれども、逆に言えば文部省との関係で屋上屋になってしまう、有効に動くかどうかは非常にまだ疑わしい面があるというような、こういう御意見をおっしゃった先生もいらっしゃるわけでございますが、今度内閣府に置かれますこの四つの合議体というのはどのようにやったら実効性が担保できるようになるのか、あるいはもうちょっとこの会議の構成等々に工夫すべきところがあったのかどうか、いかがお考えでしょうか。重ねて加藤先生にお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/322
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323・加藤秀樹
○公述人(加藤秀樹君) これも全くその運用次第ということだと思います。経済財政諮問会議について言えば、閣僚がメンバーになっているわけですから、その閣僚がこれをどう仕切るか、閣僚の能力と意思が非常に大きいと思います。
もう一つは、閣僚以外の専門家が恐らくここに入ることになるんだと思いますが、例えばアメリカにCEAという機関があります。恐らくこれなんかも念頭に置いて今回のこの諮問会議は考えられたのだと思いますが、このCEAというのは、そのメンバーというのは学者であったりしますが、みんなフルタイムなんです。やはりそこに入ってきちっと仕事をしようとするのであれば、今アカデミックの世界にいる人たちも含めて、例えば一年間はフルタイムでそのことに専念する、そういった仕組みをつくることが大事だと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/323
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324・川橋幸子
○川橋幸子君 それでは、時間があと三分ぐらいになりましたので、最後に遠山公述人と藤原公述人に一問ずつお伺いさせていただきたいと思います。
国立病院の問題、再編をしなければいけない時期に来ている、そういう問題と今度のエージェンシー化がぶつかってさまざま危惧を持たれていることは私どもよくわかるわけでございますが、独立行政法人にした場合に公共性が失われるというのは少し短絡ではないかと私なんかは思うのでございますけれども、公共性を確保しつつスリム化して効率化したいという、こういうことかと思うのですけれども、遠山公述人は、やはり公共性は失われる、こちらの危惧が大きいということでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/324
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325・遠山亨
○公述人(遠山亨君) 先ほども清水先生から質問がありましたけれども、ちょっと時間がなくて十分発言できなかったんですけれども、私は四点ほどあろうかと思うんです。
一つは、やっぱり人権上の問題として、憲法に規定する基本的な中身が医療の分野でも本当にひとしく尊重されてほしい。そのことが、これは二つ目にかかわるんですけれども、やはり利潤追求の問題と効率性の問題、これがいつでもだれでも本当に受けられるような状況がこの先あるのだろうか。その辺を見ると、三年から四年ごとに見直しを図るという、経営の見直しの問題を含めてうたわれております。そういう点で、組織の改廃問題も含めた議論がされるという点では、やっぱり同質なサービスが継続できないんじゃないかと。
三点目は、不採算部分の治療とか研究の分野には税金の投入を国として行っていく、この保障がどうしても必要だと思います。独立行政法人になった場合の運営の問題については、交付金は出るけれども受益者負担という制度の問題、さらには民間からの企業の導入という問題もありますけれども、そういう点、国の交付の金額の度合いという問題は非常に運営の問題ではやっぱり削減をされる。
そして、もう一つ最後には、そこに働く職員の雇用の安定という問題について、国の現在の公務員法に基づく制度の問題から見ると、この責任の方向がかなり低下をするという点から、この独立行政法人の問題について今の法案の内容から見ても危惧を持つという点を再度強調させていただきたいと思います。
以上です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/325
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326・川橋幸子
○川橋幸子君 時間が来てしまいまして、藤原先生にもお尋ねしたかったのですけれども、申しわけございません。以上で終わります。
ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/326
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327・松あきら
○松あきら君 公明党の松あきらでございます。
本日は、公述人の皆様方、本当にありがとうございます。どうぞよろしくお願いをいたします。
私の地元でもございますこの神奈川県で公聴会が開かれているということは、まことにうれしく喜ばしいことだというふうに思っております。
まず、山上公述人にお伺いしたいと思います。
今まさにこの地は、例えば東京本社に対しまして横浜支社であり、あるいは大阪本社に対して神奈川支店とか、こういう地域経済という、それだけではないんですけれども、地域経済というふうになっていると思うんです。それで、この景気回復に今回の法改正がどのように効果を発揮すると思われるか、あるいはもし問題点があるならばどの点であるか、まずそれをお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/327
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328・山上晃
○公述人(山上晃君) 先ほどもちょっと触れましたが、経済にどういうふうな効果、特に地域経済というお話でしたけれども、私は今回の行政のスリム化の関連で、規制緩和が相当な規模で進んでいく、このことが民間活力を引き出す大きな引き金になるのではないかというふうに思っておりますので、そういう点で大変期待をしているところでございます。
それがまた地域経済にどう影響するかということになりますと、一つは地方分権がかなり進んでいくということも、これも地域経済にとっては多分プラスに働いてくる。その場合に、私は地方行政への財源をどういうふうに確保していくのかということとバランスをとっていかなきゃいけない問題だというふうに思いますけれども、いずれにしても規制緩和と地方分権、これは経済全体に大きな活力を及ぼすことになるのではないかというふうに思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/328
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329・松あきら
○松あきら君 今非常に雇用の関係で厳しいリストラ等の問題が出ているわけで、先日も新聞に出ておりましたけれども、小渕総理が生涯職業能力開発促進センターを訪れられたということでございます。
私は、今いろいろなあらしが吹き荒れ、そして一番肝心な景気ということを考えますと、個人消費が伸びていない。これはなぜかといいますと、やっぱり将来に不安があるから、国民はお金が全然ないわけじゃなくてもなかなか個人消費に結びつかないという点が挙げられているというふうに思うんです。
そこで、今回の省庁再編等が安心社会あるいは信頼社会をつくれるかどうか、国民の中にそういう心が芽生えるかどうか、この辺に対しまして山上さん、いかがでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/329
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330・山上晃
○公述人(山上晃君) ちょっと難しい質問で、何と答えていいか迷っておりますけれども、確かに個人消費、御承知のように大変今財布のひもがかたいとよく言われておりますが、千二百兆の個人の資産がなぜ動かないのか。先生がおっしゃるように、確かに将来に対する不安というのは一つあるわけですけれども、それももちろんなんですが、それよりも、何か日本全体が自信をなくしている。それは企業人もそうですし、ある意味では政治にかかわる方々、先生方もそうではないかというふうに思うんですが。日本というのはもっと魅力のある国である、基本的にはそういう認識のもとに、それぞれがもっと自信を持って、小渕総理じゃありませんが、もっと楽観的に前に向かってそれぞれが動いていく。景気がよくなるのを自分が待っているのではなくて、自分がとにかく前に一歩進むことによって景気をよくする一つの責任というか、役割を果たしていくという、それぞれがそういう思いが少し少なくなっているなという感じが基本的にしているわけです。
心理的に非常に冷え込んでいるのは、自信をなくしているのは、おっしゃるようにリストラその他が、相当構造変化が大きく動いておりますので、これから日本の社会というのは一体どうなっていくのだろうかということに対する展望がもう一つ見えてこない。これは単に雇用の問題その他だけではなくて、全体に対する不安を持っている。
そういう意味で、今回の行政改革で大きく政治が主導になり、そして、総理がリーダーシップを発揮して、弾力的な、かつスピードのある政策を適時適切にやっていけば、それを国民が見て、日本も変わっていくぞと、将来に対する明るいものを見出してくるのではないか、そのことが私は非常に意味があることではないかというふうに思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/330
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331・松あきら
○松あきら君 済みません、時間の関係で次に行かせていただきたいと思います。
加藤先生にお伺いをしたいと思います。
こちらを先ほどから読ませていただきましても、まさに私も一々そのとおりだというふうに思うわけでございます。私が国会に来てからつくづく感じますことは、やっぱり官あるいは役人の裁量権というものも非常に大きいという、これも私がううんというふうに思う一点なんでございます。
先生は、あいまいな行政指導をなくせ、省庁設置法から権限規定を削除せよ、いろいろおっしゃっているわけでございますけれども、官の裁量権限、これを小さくすればやはり私は小さな政府が実現できるんじゃないかなというふうに思うわけです。しかし、長い歴史を持つ裁量権限を、一遍に規制緩和といいましてもいろいろ難しい点があるかなと思いますけれども、しかしこれはやらなければいけない。どのような段階を追って緩和をすべきとお考えになっていらっしゃるか、お聞かせいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/331
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332・加藤秀樹
○公述人(加藤秀樹君) これは、基本的には裁量というのは法律をどう運用するかですから、どこまで行っても法律というのはやっぱり抽象的なものですから裁量というのは残ると思います。しかしこれを減らしていく、それで役所がかかわる分を減らしていくというのは、一つにはいわゆる規制緩和、法律をどうしていくか、法律を見直す、そういうことだと思います。
ただ、私がここで設置法の権限規定ということをずっと言ってきましたのは、包括的に設置法の中で権限規定、権限が与えられるというのはやっぱりおかしいのではないか。それ以前の問題として、まず普通の国のレベルまで行こうではないかという趣旨です。それが一つ。
もう一つは、先ほどから、私は少しこれは気になるんですが、景気対策との関係、経済効果というのが何回か御質問の中にもありましたけれども、行政改革というのは基本的には、結果的に経済的な効果が期待できるとしても、それは余り期待すべきではないのではないか。私はむしろ、やや概念的に言うと、我々の生活には公共的な部分と私的な部分があって、それで、これは英語で言えばパブリックとプライベートなところになるんだと思います。それで、私的な部分はビジネスで、公共的な部分は役所が担当している、こうなっている。
今までの日本というのは、私的なところまで官、いわゆるガバメントが手を伸ばしていたから、それをなくしていくというのが規制緩和であり、民営化であり、それから、ある意味では今回の独立行政法人なんかもその一環だと思いますけれども、私は、行革の本当に大事なことは、パブリックなことからももっと行政が手を引くということだと考えています。
ですから、官と民というものと公と私というのは別に考えないといけないんで、今まではパブリックなことはおろか、プライベートなところまでガバメントがやってきた。それをパブリックなことからもガバメントが一部手を引くということが本来の行革ではないのかなと。ですから、そこを、民間がパブリックなことをやる仕組みを考えていく必要がある。そういう意味で私は最近のいろんなNPOといったものに注目をすべきだと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/332
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333・松あきら
○松あきら君 ありがとうございました。
次に、藤原先生にお伺いをしたいと思います。
環境省は職員が千二十人程度と本当に少ない。一万人程度の規模が適当と思うと先ほど先生がおっしゃっておられましたけれども、まさに私の同僚議員も国会で強くこれを申し上げているわけでございます。
先進国は、廃棄物、上下水道、化学物質審査、製造規制、放射能汚染防止などを所管事項としておりますけれども、日本の場合これらを所管しないことになっているんですね。今回、中央省庁を改革するわけでございますから、当然これらの事項を所管すべきというふうに思うんですけれども、いかがでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/333
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334・藤原信
○公述人(藤原信君) 環境庁ができるときに、厚生省の国立公園部から分かれて環境庁ができているわけですね。本来、今先生がおっしゃったような部分については厚生省に残って、一部は環境庁に移りましたけれども、今度の改編のときにはそれがそのままに残ってしまっているということだと思います。
ただ、今先生がおっしゃったようなことを今度新しくできる環境省にするということになりますと、当然この人員ではできない。だから、今の千二十人体制で自然保護そのものも難しいという状態で、そういうようなものがもし環境省の所管事項に入ったとすれば、これはやはりもっと大きな環境省にしなくてはできないだろう。ただ、そういう環境問題の一元化ということを考えれば、当然、先生のおっしゃったようなことを環境省が所管すべきであるというふうには思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/334
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335・松あきら
○松あきら君 まさに私は一元化しなければいけないと思うんです。それは厚生省よ、こちらはこちら、あちらはあちらよという縦割りがまさに弊害でございまして、特に私は環境問題というのはこれから大事、今も大事ですけれども、さらに大事になるというふうに思っているわけでございます。
大臣もこの点に関しまして、この人数ではもういかんともしがたいということで、ふやしていくというようなことをおっしゃっておられましたけれども、先ほど委員からの質問の中で、環境と新しい産業の調和というような御質問があったと思うんですけれども、私は環境の分野でも新しい産業があるはずであるというふうに思うんです。例えばこのペットボトルでも土に溶けるペットボトルができているということでございまして、お金がかかるから全部はそういうことはできない今の状況だと思うんですけれども、そういった新しいエコ産業もあるということで、自然保護そのものが環境という観点もありますけれども、そういう新しい分野での環境ということもあるのではないかと思うんですけれども、その点いかがでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/335
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336・藤原信
○公述人(藤原信君) 今、先生がおっしゃったように、環境ビジネスというのはこれから相当いろんなところで出てくるのではないだろうかという感じがしております。その分野については今は通産とか厚生とかそういうところがやっているわけですけれども、これも先ほど申し上げましたように、一元化ということで環境省がやってもいいのではないだろうか。特にアメリカの環境保護庁なんかを見ますと、やはりそういうものについてはもっと新しく環境省が取り組んでいくということも必要なのではないだろうかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/336
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337・松あきら
○松あきら君 環境教育というのは、将来の世代に非常に環境に優しい社会をつくり上げる上で私は大事だというふうに思うんです。環境教育に関しまして、これから環境省はどういう役割を果たすべきか、また、それは文部科学省とどのように役割を分担すべきかどうか、その辺についてもお伺いしたいというふうに思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/337
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338・藤原信
○公述人(藤原信君) 今環境庁の方も、こどもエコクラブをつくって、これが全国に三千ぐらいあるというふうに聞いております。また、文部省も各小学校、中学校に環境教育主事というのを置いていまして、環境教育主事の集まりで私も自然環境の問題なんかを講演したこともあります。そういう意味で、環境庁もそれから文部省も環境教育というものには取り組んでいますけれども、なかなかまだ思うようにいってはいないというふうに思っています。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/338
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339・松あきら
○松あきら君 林業の将来についての展望をお聞かせいただきたいと思います。
先生は、三百五十万ヘクタールの国有林は経済林であるというふうにおっしゃっておりますけれども、適切に経営されれば黒字も可能ということでございましょうか。また、あるいはその可能性を妨げているものがあるとしたら、それはどういうことなのでございましょうか、お聞かせいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/339
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340・藤原信
○公述人(藤原信君) 私は、皆さん方にお配りしました資料の中に、経済林として国有林の七百五十万のうちの三百五十万ヘクタールは国有林が林業生産に従事すべきであるというふうに書いておきましたけれども、私はそういうふうに考えております。
というのは、一つは、先ほど申し上げましたように、日本での自給の状況を見ますと、自給率が二〇%ということで外材が八〇%ですけれども、将来はこのようなことはなくなるであろう。とすると、やはり日本における林業というものをきちんと維持していかなくてはいけない。そういう意味では、国有林に三百五十万ヘクタールの経済林を残すとして、林業技術者がそこにおいて経済活動をするということも大変重要なことであると思いますし、七百五十万ヘクタールの国有林のうちの三百五十万ヘクタールは十分経済林として採算のとれる林業を継続していくことができるだろうというふうに思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/340
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341・松あきら
○松あきら君 申しわけありません。遠山公述人にお伺いしたかったんですけれども、終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/341
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342・富樫練三
○富樫練三君 日本共産党の富樫練三でございます。きょうは、お忙しい中、本当にありがとうございます。
今、国会の方で問題になっておりますこの省庁再編問題ですけれども、何しろ二十一世紀の国の形を決めようではないかという大変大きな課題に挑戦をしている、こういうことだと思います。重要問題がたくさんありまして、新しく内閣府をつくるという問題であるとか、あるいは省庁の再編統合を行う、大臣の数を減らそうとか、あるいは先ほどお話がありました独立行政法人の問題、こういう問題もあります。
法案は全部で十七本ということになっているわけですけれども、中身は大変たくさんあります。限られた時間ですから、全部聞くわけにはいきませんので、独立行政法人の問題に絞らせていただいてお話を伺いたいと思います。
それは、日本での独立行政法人というのは全く新しい制度でありまして、イギリスであるとかニュージーランドであるとか、先進というか先例はあるわけですけれども、日本では初めての制度、特に先ほどお話がありました医療関係にこれが適用された場合に、将来の日本の医療のあり方に大変大きな影響を与えるのではないかというふうに、一面で大変な危惧をしている一人であります。
この独立行政法人ですけれども、最初に山上公述人に教えていただきたいと思うんですけれども、先ほどのレポートの中でこの独立行政法人について、国民生活上重要な業務の遂行に支障が生じないよう、制度の構築と運用においては十分御配慮いただきたいと考えますと、こういうふうに御発言がございました。
私も全くそのとおりだというふうに思いますけれども、これからやる制度ですからまだわからない部分というのがあるんですけれども、どういう点が国民の暮らしに影響が出てくることが予測されるのか、感じられる点がありましたら、できれば具体的に、例えばということでもしありましたら教えていただきたいんですが。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/342
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343・山上晃
○公述人(山上晃君) 私も十分まだ勉強しておりませんので、なかなかその具体的なところまで申し上げることができないかもしれませんけれども、ともかくなぜ独立行政法人制度をここで入れていくのかという基本に帰りますと、これはもう先生もよく御承知のように、今の行政を、肥大化したこの行政のシステムをとにかくスリム化しなきゃいけない、でなければ今の日本の行政システムでは世の中の大きな変化に対応できていけない、こういうような背景があっての話であるわけです。
独立行政法人にすることによって、自立性だとか主体性といいますか、そういうものが担保されてきて、それ自体非常にいい方向に流れていくという一面はもちろんありますし、行政のスリム化にも多分相当効果が出るだろうという一面はあるんですが、私が意見陳述で申し上げましたように、しかし今考えられている仕事の中には、かなり経済合理性からすると難しいといいますか、低採算であり非効率な分野であるがゆえに国がそこを担って公平なサービスが受けられるように手当てをしている、こういう側面というのが当然あるわけでして、そこを仮に独立行政法人の中にその仕事を追い込んでいったときに一体公平なサービスが担保されるんだろうかという不安、それから経済合理性あるいは経済効率性というものを余りに追求するためにサービスが劣化をしていくということになりはしないだろうかという側面というのはどうしても否定できない部分だろうというふうに思うんです。
そういう点で、実際に運用する過程できめ細かい手当てが必要ではないか、それから、中には独立法人にすることが好ましくない、そういうものも含まれてはしないかということを十分吟味しながらこの問題というのは進めていく必要があるだろうということで、やや抽象的ですが申し上げたつもりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/343
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344・富樫練三
○富樫練三君 ありがとうございます。
そこで、先ほど御報告ありました遠山公述人にちょっと立ち入って伺いたいと思うんです。
たしか一九八六年に厚生省が国立病院の再編計画を出しましてそれを進めてきたと思うんですけれども、その大筋、ポイント、それから今年の三月でしたでしょうか、その再編計画の見直しということがやられたようでありますけれども、これと今度の独立行政法人化というのはリンクされているものなのかどうか、そこのところはどういうふうになっているんでしょうか。もしわかりましたらお願いしたいんですが。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/344
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345・遠山亨
○公述人(遠山亨君) これは大変リンクしていまして、二〇〇四年度開始までに残る統廃合計画、六十カ所ありますけれども、これを移譲もしくは統廃合という形をつくって、残余を、がんセンターとかハンセンの病院、療養所を除いて全部を独立行政法人化するということでありますので、十三年前計画案が出されたこの統廃合が進まない、移譲が進まない内容も、強引な方針を持ちながら進めていくということが言われておりますので、これは独立行政法人化という裏に隠れた廃止計画が猛烈な勢いでスピードを上げていくと、これはもう大変な事態として見なきゃならない側面だというふうに思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/345
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346・富樫練三
○富樫練三君 ちょっと全体像がまだ見えていないんですけれども、国立病院というのは全体で幾つあって、そのうち残るのは、先ほどありましたセンター病院になる部分でしょうか、これは高度専門医療センター六施設八病院とハンセン病療養所十三園、これは残る。それ以外に今六十カ所を統廃合または独立行政法人化という話がありましたけれども、そうすると、そのうち幾つが残って、幾つが廃止あるいは統合されて、幾つは独立行政法人化になる、そういう大まかな数字というのはわかりますでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/346
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347・遠山亨
○公述人(遠山亨君) 八六年で七十四カ所を廃止するという計画が出されました。今進行しているのは二十六施設なんです。現在、追加発表されました十二ケース、これは三月十八日に発表されたんですけれども、だから七十四から二十六引いた数と三月十八日発表の十二ケース、この合計が六十カ所になります。ハ病棟、ナショナルセンター、これを引いた除く数が百四十七カ所。百四十七カ所を独立行政法人化とするという数になります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/347
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348・富樫練三
○富樫練三君 そうしますと、大半が独立行政法人化でかなりの部分が廃止をされる、あとは若干残るというか国立でそのまま経営が残る、こういう形になるわけなんですね。
そこでちょっと伺いたいんですけれども、先ほど結核医療のお話とそれから山間僻地、離島の問題がありました。こういうところについては独立行政法人化なのかそれとも廃止という方向なのかということが一つ。
それから、神奈川県の県内の状況がありましたけれども、廃止された場合にそこの地域の医療というのは何かかわりの施設が責任が負えるという体制は別途つくられるという手当てが何かされているものなのかどうか。廃止された後そこが医療の空白になったりして住民が困る、こういうことになっては大変なので、何か対策がとられているものなのかどうか。
それから、横須賀病院の移譲というのがありました、先ほどの報告の中に。移譲というのはどこに移譲する、経営の主体はどこになるのか、その辺をちょっと教えていただけますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/348
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349・遠山亨
○公述人(遠山亨君) 結核医療について報告がありますように、撲滅をしたという状況を言われておりましたけれども、逆に三十八年ぶりに前年度を罹患者が上回るという状況が示されてきております。厚生省は空きベッドの結核の病床をことごとく閉鎖してまいりました。この閉鎖の病棟のベッド数はもう五千を超える数になっております。そういう閉鎖とともに今度の再編計画を含めて統廃合もしくは移譲ということで、国としての医療運営を切り離すという計画案も進められております。そういう点で、建物がなくなるだけではなくて、今まではぐくんできた医療の実績や症例の研究、こうした貴重な国立としての蓄積した医療分野での大切な分野が消えてきているということが社会的に大きな問題として私たちは指摘をしているわけなんです。こういう状況として、結核問題が削減もしくは統廃合や移譲によってなくなろうとしている。
神奈川県の例が出されましたけれども、この二宮小児の患者さんのぜんそくの療養をやっている病院なんですけれども、ここでも、湘南海岸が、非常に環境のすばらしい医療環境に恵まれておりますけれども、ここを廃止する。十三年前に廃止計画が発表されたんですけれども、この前お母さんがお見えになって、私の息子は小児のこの二宮分院で大学の受験をするようになりました、十三年前にこの病院がなくなっておったらどんなことになったかということを嘆かれておりました。
みんなが、計画が出たけれども存続をしてほしいという地域ぐるみの運動によって現在も灯を消すことなく今日の医療機関が運営をされている。こういう状況が、今度の統廃合により二宮については更地になる計画案であります。横須賀については、国として医療の計画はする必要がないけれども、この地域には医療としては後医療を行う必要がある、だから経営を国と違う方策でバトンタッチする、こういうことで、横須賀の跡地には何らかの医療機関を残す、こういう方策でありますし、これが自治体なのか、医師会なのか、あるいは幾つかの法人になるかという点についてはまだ決まっていないという状況の進行です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/349
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350・富樫練三
○富樫練三君 そうしますと、例えば横須賀の場合は、そこには医療施設は必要だということは認めているんですね。ただ、国はやる必要がないから自治体なりあるいは民間なりどこかがやればいいではないか、こういうことなんですね。
そこで、ちょっと伺うんですけれども、言い分として、病院というのはたくさん世の中にあって、医療に責任を負っているのは国立病院だけではないんだ、民間の病院、私立の病院もたくさんあって、それはそれなりに経営を全部やっているではないか、したがって国がわざわざ、民間ができる分野、そういう分野で国が病院をつくって経営をしていかなくちゃいけない、こういう部分はもう民間に任せればいいではないか、こういう議論が一方ではやはり一定部分あるわけなんです。
こういうことに対して、国が医療に責任を負うということについて、改めてその必要性というか、この辺はそういう議論との関係ではどういうふうにお考えでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/350
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351・遠山亨
○公述人(遠山亨君) 国立病院・療養所の発足当時はこの病院の占める率が三〇%です。今はもう六%という状況になってきています。これはいつの時代においても国立病院の統廃合や切り捨て計画、これが政府の閣議にのったり、そういう運命の歴史をたどってきているんです。したがって、国立病院を拡充強化しようということについてはほとんどされてこないという状況がありまして、それがだんだん県立とか地方自治体立であるとか民間の病院がふえてきている、そういうシェアを全体的に占めるように低下をしてきた。
国立の医療機関をこれ以上減らしていくことについて私たちは問題視しているわけなんですけれども、もっともっと地方自治体の財源の困難性、民間ではもっと医療ができない不採算な医療、こうした点については、診療報酬上問題があるにせよ、私たちとしては、そういう採算ベースに合わない医療については国が責任を持つ、そういうあり方というのは今日の社会においてもやっぱり求められていくんじゃないか。その弊害を財政困難という中において国立の方に犠牲を向けることがあってはならないということで、今日の自治体決議なり住民からの要望や守る会運動がやっぱり進められてきているのではないかというふうに思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/351
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352・富樫練三
○富樫練三君 時間が参りましたので、藤原公述人そして加藤公述人には、質問したかったんですけれども、ちょっと時間をオーバーしちゃいますもので、大変失礼をいたしました。
終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/352
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353・日下部禧代子
○日下部禧代子君 社会民主党・護憲連合の日下部禧代子でございます。
きょうは、四人の公述人の方々から大変興味深い、そして示唆に富む御意見をいただきまして本当に勉強になりました。ありがとうございました。
それでは、まず最初に山上公述人にお伺いしたいのでございますが、お話の中で、内閣官房や内閣府については、行政組織の内外から、幅広い分野にわたり、高度な専門的知識を有する人材などすぐれた人材の登用を図っていくことを配慮すべきだというふうにおっしゃっております。これは私も本当にそのとおりだというふうに思います。こうおっしゃるということは、今そのような人材の登用を図っていないという現実への御批判だろうというふうに思うのでございますけれども、なぜこのようないわゆるすぐれた、さまざまな高度な専門知識を有する人材が登用されなかったのか、それはどういうことが原因しているというふうにお考えでいらっしゃいましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/353
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354・山上晃
○公述人(山上晃君) 日本の官僚というのは大変優秀だということは承知していますので、その中にもそれにふさわしい人材がたくさんいるだろうというふうには思っております。しかし、今までの官僚の大きな組織の中で、やはりいろんな伝統の中で十分まだ磨かれていない、そういうところもあるのではないかというふうに私は思って、資質的には非常に日本の官僚は優秀であるということは承知した上での話なんですが、そうは言いましても、例えば実務的にいろんな、財界で活躍している人材、あるいは大学等でその分野について専門的に研究している人材とか、これからの内閣府を強化する上では、それぞれより高度な専門的な知識が要求されるのではないか。それから、よりその現場の実態に近いところで働いているそういう人材も必要になってくるのではないか。そういう意味で、広い分野から幅広い人材を集めて、内閣府がより強固な形で機能することを期待して申し上げたわけでございまして、抽象的かもしれませんが、そういう考え方を持っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/354
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355・日下部禧代子
○日下部禧代子君 何がそれを阻んでいるかということなんですけれども。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/355
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356・山上晃
○公述人(山上晃君) それは、一つは加藤先生がおっしゃったことに関連するんですが、公務員の試験制度にも原因があるでしょうし、それから学閥その他、これは長年のそういうような中で一つの風土みたいなものが、公務員の社会の中にそういうものができ上がってきて、十分その能力が発揮できるような、あるいはその人間が十分育っていくような環境というのが官僚のシステムの中に十分ないような、これは私はその中にいた人間ではございませんので、それはもしかしたら誤解かもしれませんけれども、しかし私が外側から見ている限り、そこが阻んでいるのではないかというふうに思っておりますけれども。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/356
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357・日下部禧代子
○日下部禧代子君 幅広い分野の人材が必要とされている、そしてその人材の流動性というものが必要とされているのは、私は、今おっしゃった部分だけではなくあらゆる分野において今それが望まれている、日本の社会において望まれているのだというふうに思うわけでございますが、例えばそれを阻んでいる理由としては、一つは日本の終身雇用システムというようなものもあるのかもわからないと思うのです。
今、平均寿命が長くなって、大学というのは十八歳で入学するだけではない。次第に大学の中でも、一定の年齢だけではない、そしてまた高校から大学に行く人だけではない、いろんな職業を持っている人が途中から入ってもいいし、またお仕事が終わった定年を迎えた方が入ってもいいという、そういう大学のあり方が、今そのような方向に向かわなければならない時代がやってきているわけです。しかしながら、なかなか日本でそれができないのは、例えばお勤めをしている方が、自分が本当に専門としてこの部分を大学でもう少し学ぼうというときに、また職場に戻れないというふうな、そういう企業のあり方ということも現実としてあると思うんです。
そういうことを含めまして、このようにある人物がある一定の場所に固定化されてしまわないように、それはどんどん渡り歩くということではございませんけれども、いい意味での人材の流動性を高めるためには、今私は一つの終身雇用制の問題を提示いたしましたけれども、どのような意識改革、どのようなシステム改革が必要だとお考えでいらっしゃいましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/357
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358・山上晃
○公述人(山上晃君) なかなか一言で決め手になるような施策はないと思うのですが、日下部先生が今おっしゃったように、日本の雇用制度といいますか雇用慣行というのがそれを阻んでいることはもう私も全くそのとおりだというふうに思いますし、年功的な雇用関係といいますか終身雇用関係というのがベースになって、給与体系から人事制度すべてがそれを基本にして組み立てられているというのがこれまでの日本の産業界の実態だろうというふうに思います。
しかしながら、ここのところ十年ぐらいの間にかなり個々の企業でその辺については新しい工夫がなされ、いわゆる能力を中心にした、あるいは成果を中心にした、しかも終身雇用ではないような形に変わりつつあるというふうに思っておりますし、そういう意味ではそれぞれが、かなり若い人たちが新しい自分にふさわしい職場を求めて流動化は従来に比べますとかなり進んできている。しかし、今の労働基準法その他日本の労使慣行の中では、その辺がなかなか、自由に動けるような環境が整備されているというふうには思われませんので、その辺の法的な整備も私は必要なのではないかというふうに思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/358
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359・日下部禧代子
○日下部禧代子君 それでは、加藤公述人にお伺いいたします。
行政のスリム化ということが今回の省庁行革の非常に大きな一つの目標になっておりますけれども、では、なぜそのように肥大化したのかということになりますと、これは中央集権というその体制の中、行政システムの中で既得権の問題、さまざまな肥大化をする要因があったと思うのですが、一つの視点というのが、行政の窓口がどんどん広がって肥大化していった大きな一つの問題というのは、サービス提供側の立場に立った今までシステムであった。そうすると、もうどんどん窓口は広がっていくばかりであります。これを、やはりサービスを利用する側にとっての発想、そこでその視点を変えてとらえ直す、そういう意味でのスリム化ということが今必要とされているのではないかなというふうに思うわけでございますが、こういう視点からの行政のスリム化ということについてどうお考えでいらっしゃいましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/359
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360・加藤秀樹
○公述人(加藤秀樹君) 今、委員のおっしゃったとおりだと思います。ですから、それをどうするかというのは本当に抽象論では簡単ですけれども、あとはもう実際に個々に、このサービスは本当に我々国民にとって必要なのかどうなのかということを考えていくということに尽きると思います。
それと同時に、先ほどもちょっと申し上げましたけれども、パブリックなことはガバメントがすべて仕切るんだ、提供するんだという考え方が役所の中にもあると同時に、国民にもあるということは、私は、そこが大きい問題だと思います。パブリックというのは公共というふうにも訳せますし大衆でもありますし、パブリックはパブリックが行うんだというのが私は原則だと思います。ですから、繰り返ししつこいようですけれども、行革の効果というのはそれを民にという、その民というのはビジネスでは必ずしもなくて、それも一部あるとしても、市場にゆだねることではなくて、パブリックなことをパブリック自身が、我々自身がやるんだということだと思います。
ちょっと簡単な例を申し上げますと、私なんかも小さいころは自分のうちの前は自分たちで掃いていました。しかし、それは今は市の清掃車が来て、我々は税金を払って市の清掃車がやる。それは行政の一つの肥大化、パブリックなことをガバメントがやるようになったわけです。これをやめようと。では、それを本当にマーケットにゆだねるとすれば、お金を払えば、目の前を清掃屋に掃除してもらうようにするかどうかという話であって、私はそうではなくて、もう一度、税金を払うのをやめて安くして、そのかわり自分たちでやろうやという、そこを考えないといけないと。これは福祉についても環境についても教育についてもすべて同じではないのか。我々は、ある意味では自分たちがやることを官に対して外注し過ぎた、それをもとに戻すプロセスだと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/360
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361・日下部禧代子
○日下部禧代子君 次の質問は同じく加藤先生にお伺いしたいのでございますが、今盛んに政治家のリーダーシップの問題が問われております。今回の行政改革、内閣府の問題、あるいはまた総理に権限の強化ということがございますけれども、果たしてそういう今回の改革でいわゆる官僚主導から政治家主導への政治ということが達成されるのかなという疑問も私は抱いているわけでございます。
イギリス型ということを今回の改革にはかなりイメージされているように私は思います。私もイギリスで生活してきたことがあるわけでございますが、やはりどうしても日本の国会あるいは行政を見ていても、非常に形式あるいはセレモニー化しているような部分が、その辺に非常にエネルギーを費やしているような気がするわけです。イギリスも形式、伝統を重んじますけれども、かなり柔軟性があるわけであります。
だから、その点を考えてみますと、果たしてイギリスのようないわゆる政治と行政のあり方というものにここからスタートしていけるのかな、これはスタートさせなければならない。これは人ごとではないわけでございますけれども、先生のお考えでは、あるべき政治と行政の姿というものも含めてお話をいただきたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/361
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362・加藤秀樹
○公述人(加藤秀樹君) 今、委員のおっしゃったとおりでありまして、私は全くそこに関しては一〇〇%賛成ですが、ただ、よく財政・金融分離のときに、大蔵省が案をつくったって、そんなものはまないたのコイに包丁を持たせるようなものだという話がありましたが、私は国会の話、内閣の話というのは政治家の方がみずから包丁でどうさばくかという話に最後は尽きると考えております。
そういった意味で、内閣機能については法制度は今度強化されるわけですし、あるいは役所の側の最大の問題であった設置法のところは曲がりなりにも形が整うわけですから、あとはそれの実行ということだと思います。あわせて、先ほども申し上げましたように、副大臣とか政府委員の廃止といったような、これも形はかなり整ってきたわけですから、あとはそれをどう政治家が実行していくか。
それだけではなくて、先ほどの資料の中に少し書いておきました。やはり国会できちっと議論がされるような仕組み、これは各委員会になぜ大臣がいないといけないのか、予算委員会だと全閣僚をなぜそこで足どめしないと、足どめという言葉を使っていいかどうかわかりませんが、いないといけないのかとか、あるいはなぜ質問に対する答弁だけなのか、あるいは答弁、何で全部言質をとる必要があるのか、もっと自由なところがあっていいではないかという、そういうものが全部セットだと思うんです。
そういうことで初めて国会機能が強化されて、国会機能の強化と内閣機能の強化というのはこれはセットですし、内閣機能の強化と官庁が自分の役割をきちっと果たしていくことがセットになっているということで、結局全部つながってくると。そういう意味で、形が整っただけに政治家の役割というのはますます大きいし、私はそういうときにこそ、まさに参議院からそういう議論を大いにやっていただきたいなと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/362
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363・日下部禧代子
○日下部禧代子君 藤原公述人、それから遠山公述人、大変に私の時間配分が悪くて御質問できませんで、申しわけございませんでした。
ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/363
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364・星野朋市
○星野朋市君 自由党の星野でございます。本日は御苦労さまでございます。
私は、専ら加藤先生に御意見をいただきたいと思っております。
今度の中央省庁の再編問題、行革問題、昨年の基本法案のときから議論されておりましたけれども、どうしても多分に数合わせの分と、こういうところがぬぐい切れないんです。
政府のやるべき本来の姿、要するにゼロからの出発もしくは日本を新たに建国したとしたらどういう省庁が必要だったのだろうかという観点から見たら、もう少し違う形になっていたと思うんです。そこで、これは今までと変わって新しい形のものでスタートするわけですから一歩前進と。だけれども、行革本来の姿から見たら、もう少しさらにスリムな形になるべきだと私は思っております。
そのときに、この中央省庁の再編ということが、明治維新それから終戦直後、それに次ぐ三番目の日本の改革だということが大いにうたわれているんですけれども、先ほど先生が述べられた副大臣制度の創設、政府委員の廃止という問題は、これは明治以来のまた大きな問題だ、こういうふうにとらえなくてはならないと思っております。それで、この副大臣制度、政府委員の廃止から新たな省庁再編という問題が起こる可能性があると私は思っておるわけです。
先生が、ここに内閣機能それから国会機能の強化というパンフレットがございますけれども、間もなく自民党、自由党、民主党それから公明党の議員提案によって、副大臣制度の創設それから政府委員の廃止という法案が提出されます。もうほとんどでき上がっておりますので出てまいりますが、さらにこの上にクエスチョンタイムという形で党首間のディベートが四十分間行われるということがございます。それから、政府委員は廃止されますけれども、政府参考人という制度が設けられて、これは大臣を呼ばない細かいデータなんかのことに関してのやりとりはまた別の委員会の場で論議される、こういうような仕組みになってくるわけです。
そうすると、これは恐らく先生の提案された約半分以上のものがここで実現すると思うんです。こういう実績が今国会中にできると思いますが、そういうことを踏まえて、改めて先生の御意見をいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/364
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365・加藤秀樹
○公述人(加藤秀樹君) 今度、副大臣制それから政府委員の廃止と党首間討議、これは私は非常に大きい大事なステップだと思います。と同時に、そこに書いてありますように、欲を言えばもう少しあわせていろんなことをやっていただけるとなと。
最初に申し上げました省庁の再編については二〇〇一年の初めから実行されることになっているわけですから、私は、国会の機能、内閣機能、それから行政改革すべてが一体だとすれば、あと一年半ほどあるわけですから、この一年半の間にあわせてそういうことをどんどん進めていっていただきたいなと、こんなふうに考えております。
そのうちの国会、内閣ともかかわるわけですけれども、その部分がそこに書きましたようなことですけれども、例えば政府委員を廃止した、しかしそれでもやっぱり国会での発言はすべて拘束性を有してしまうということであれば、ひょっとしたらますます役人は精密な答弁をつくって、大臣はますますそれを正確に読むということになってしまうのではないか。そこで自由討議の時間をつくって、あるいは大臣がその任期にいる間は拘束性を持つんだとかいった、そういうルールづくりをやって初めて大臣がもう少し自由に答えられるのではないか。
あるいは、私は役人が答弁をつくること自体はそれはそれでおかしいことではないんだと思いますけれども、そこで大臣も含めて役所の中で議論をした上で答弁がつくれるように、何日間かもっと余裕を持って、それで大臣もよくそれを自分の中でこなして答弁できるように余裕を持って時間をつくるとか、そういうこととやっぱりセットでやっていただきたいな。それと同時に、日本は大臣が余りにも目まぐるしく、最近は大臣の任期は一年未満、〇・七年とか八年とか圧倒的に世界最短ですから、イタリーのようにしょっちゅう内閣がかわっているような国でも三年以上、実は党首がかわっても大臣はずっと継続してやっているわけです。
ですから、そういう状況があって初めて大臣が仕切れる、内閣がリーダーシップをとれる。それに対して役人がきちっと政策を提示できるという仕組みが整うのではないか。ですから、そういう意味で、大臣にやっぱり適格な人をある程度一定の期間継続してやってもらうというのも大事だと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/365
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366・星野朋市
○星野朋市君 今度の制度がとられたら、恐らく大臣が国会に縛りつけられる時間は今までの半分以下になるだろうと思われるんです。
それからもう一つ、いろいろな面で役人がなかなか協力しなかったり、そういう形でうまくいくはずはないというやゆ的な言葉がございますけれども、これは副大臣が最初の政策の立案から携わるようになる、そうすると、もう既に政策新人類という言葉が生まれているように競争が始まるわけです。そうすると、それに引きずられて役所、役人、先生もお役人をなさっていたということだからよくおわかりだと思いますけれども、役所、役人というのはうまくいき始めたらそれにいち早く乗るという傾向があります。そういう形で、私はこの制度がうまくいったら本当にさらに行革が進むと、こう思っているんですが、いかがでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/366
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367・加藤秀樹
○公述人(加藤秀樹君) 確かに、今おっしゃられたように、うまく回り始めるとというのは私はそれはまさにそのとおりであると思います。ですから、うまく回すように、最初のそういう意味ではスタートが大事だなと考えております。それで、そのためにも、本当は大臣がいて副大臣がいて、さらにそれをサポートする大臣室あるいは副大臣室に、そこに専用のスタッフというんでしょうか、これがもう少し充実すると私はいいのではないかなと考えております。
それともう一つは、先ほど公務員制度についての御質問がありましたけれども、公務員の定年という話もありますけれども、定年の話とあわせて、やはり元公務員を、今は少なくとも割と早目に退職する人が多いわけですから、そういう人をどれだけうまく使っていくのか、もとの役所の利益代表じゃない形で、しかし行政的な能力というのをもっと使っていく。それを国会の中で、委員会の中で使うとか、あるいは内閣の中で使うとか、あるいは大臣のスタッフとして使うということをもう少し考えてもいいのではないかなと。もとの役所と切り離した形であればもっともっと大いに力を発揮してもらえるのではないか。これは必ずしも、例えば厚生省のOBであっても文部省に行って全然違うかというと、私は、感覚としては似たようなところはあるわけですから十分力を発揮できるのではないか、いろんな工夫がそこにできるのではないかなと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/367
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368・星野朋市
○星野朋市君 ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/368
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369・吉川芳男
○団長(吉川芳男君) 以上で公述人に対する質疑は終了いたしました。
この際、公述人の方々に一言御礼を申し上げます。
皆様には、長時間にわたり有益な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。拝聴いたしました御意見は本委員会の審査に十分反映してまいりたいと存じます。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。
以上をもちまして参議院行財政改革・税制等に関する特別委員会横浜地方公聴会を閉会いたします。
〔午後三時四十四分閉会〕
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大阪地方公聴会速記録
期日 平成十一年七月六日(火曜日)
場所 大阪市 リーガロイヤルホテル
派遣委員
団長 理 事 石渡 清元君
理 事 大島 慶久君
海老原義彦君
狩野 安君
高嶋 良充君
福山 哲郎君
山下 栄一君
八田ひろ子君
大脇 雅子君
入澤 肇君
菅川 健二君
公述人
大阪市長 磯村 隆文君
神戸大学法学部
教授 阿部 泰隆君
大阪自治体労働
組合総連合執行
委員長 徳畑 勇君
社団法人関西経
済連合会行政制
度委員長 井上 義國君
大阪市立大学法
学部教授 真渕 勝君
岡山大学経済学
部教授 山本 清君
国家公務員労働
組合大阪地区連
合会執行委員長 滝口 敬介君
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〔午前九時開会〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/369
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370・石渡清元
○団長(石渡清元君) ただいまから参議院行財政改革・税制等に関する特別委員会大阪地方公聴会を開会いたします。
私は、本日の会議を主宰いたします参議院行財政改革・税制等に関する特別委員会理事の石渡清元でございます。よろしくお願いいたします。
まず、私どもの委員を御紹介申し上げます。
自由民主党所属の大島慶久理事でございます。
同じく自由民主党所属の狩野安委員でございます。
同じく自由民主党所属の海老原義彦委員でございます。
民主党・新緑風会所属の高嶋良充委員でございます。
同じく民主党・新緑風会所属の福山哲郎委員でございます。
公明党所属の山下栄一委員でございます。
日本共産党所属の八田ひろ子委員でございます。
社会民主党・護憲連合所属の大脇雅子委員でございます。
自由党所属の入澤肇委員でございます。
参議院の会所属の菅川健二委員でございます。
以上の十一名でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
参議院行財政改革・税制等に関する特別委員会におきましては、目下、内閣法の一部を改正する法律案等中央省庁等改革関連十七法案及び地方分権の推進を図るための関係法律の整備等に関する法律案について審査を行っておりますが、本日は、これらの法律案について関心の深い関係各界の皆様方から貴重な御意見を承るため、当地において地方公聴会を開会することにいたした次第でございます。
なお、午前中は地方分権の推進を図るための関係法律の整備等に関する法律案について、午後は中央省庁等改革関連十七法案について御意見を承ることといたしております。何とぞ特段の御協力をお願い申し上げます。
次に、公述人の方々を御紹介申し上げます。
大阪市長磯村隆文公述人でございます。
神戸大学法学部教授阿部泰隆公述人でございます。
大阪自治体労働組合総連合執行委員長徳畑勇公述人でございます。
以上の三名の方々でございます。
この際、公述人の方々に一言ごあいさつを申し上げます。
皆様には、大変御多忙中のところ御出席をいただき、まことにありがとうございます。
本日は、皆様から忌憚のない御意見を拝聴し、今後の委員会審査の参考にいたしたいと存じております。どうぞよろしくお願いをいたします。
次に、議事の進め方について申し上げます。
まず、公述人の方々からお一人十五分で順次御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答えをいただきたいと存じます。
なお、御発言は着席のままで結構でございます。
それでは、これより公述人の方々から順次御意見をお述べ願います。
まず、磯村公述人にお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/370
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371・磯村隆文
○公述人(磯村隆文君) 本日は、参議院の先生方がわざわざ大阪までおいでいただいて、このような公聴会を開いていただきまして、まことにありがとうございます。
地方分権の推進ということは非常に重要な問題でございますので、私どもの日ごろ感じていることをお話をさせていただけたらと思います。
まず、お話がございました地方分権一括法案のことでございます。
このことがいろんな経過を経まして今日のように案としてまとまってまいりましたことは、非常に意味のあることだというふうに思っております。
と申しますのは、例えば機関委任事務制度というものが廃止またはその他のさまざまな改革がなされるというようなことでございますが、これは実は現実の問題といたしましては、自治事務を国の事務ということにしておりまして、国が指揮監督権を持つということは、自治体がみずからで条例の制定をするということを不可能にいたしておりますから、自治体の行政運営への大きな制約になってきているわけでございます。むしろ、こういうことが廃止されまして、自治事務としてやらせていただければ自治体の行政責任が一層明確になるわけでございます。
それから、加えて、国と地方自治体の対等な協力関係を認めるということでございますので、しかもそのことについて、公正、中立的な機関であります国地方係争処理委員会による審査手続というものをつくっていただいたということは、その意味では地方自治というものを制度的に保障していただくことにもなるのかなという意味で大変ありがたく思っております。
ただ、我々現場の考え方といたしまして、地方分権というものがこうあってほしいということを二、三申し上げさせていただきます。
一つは、我々、もう既に現実に市民のニーズと国家の将来を考えた積極的な都市行政を展開してまいっておりますし、その意味では、もう既に地方分権ということを念頭に置いて我々地方自治体としての仕事を続けることを絶えず職員に言ってきているわけでございますが、現実にはさまざまな法的な制約があるわけでございます。
では、その地方分権のあるべき姿というのを我々の立場で申し上げますとどういうことになるかということを、少し触れたいと思うわけであります。
一つは、まず地方分権にとって一番大事なことは、住民の選択権と責任のもとで地方行政が展開できるという意味で、住民に密着している市町村の仕事をまずやりやすくすることではないのか。地方分権の主眼は市町村にあるのではないのか。この市町村間の連絡調整という意味、さらには市町村だけではできない補完的な役割をするのが府県の立場ではないのか。
これももう少し詳しく言いますと、府県の間にも連絡調整の問題が出てまいると思いますので、広域調整のために、例えば国の地方機関というものが存在をしていても不思議ではない。いろいろ論議に上っております道州制という問題もこういう流れで出てくるのかなと思っております。
国防、それから外交、治安、経済政策といった国家としての政策執行のために中央政府が存在しているというのも、これも当然でございますが、ただいま申しましたように、地方分権の主眼というのは市町村にあるのではないかということをまず申し上げておきたいわけでございます。
ただ、市町村というのが、それぞれの条件なり能力なりの問題で、地方分権という形で簡単に言うとほうり出されてしまいますと、どこまで仕事ができるのかという問題も出てまいりますので、そういう極端な議論をするつもりはございません。やはりそれぞれの力の差というものがあるのではないかと思います。
今のやり方といいますのは、地方分権というものを中央政府の管制のもとで横並び一斉に実施しようというふうに進んでおるわけでございます。これは確かに、先ほど言いましたように、地方分権で十分自立してやっていけるような自治体と、それは少し無理というような自治体という格差があることは現実でございますから、とりあえずはまず府県レベルで一斉にやっていこうという方法をとられるということは十分わかるわけでございます。
しかし、市町村と申しましても、きちっと地方分権がやれる市町村があると思います。例えば大阪市の場合を言わせていただきますと、大阪府と大阪市は、大阪市が既に歴史的に自治的な統治体制を続けてきたということもありまして、現実には府と市はイコールパートナー的な立場でいろんな仕事をやってまいりました。政令指定都市という制度ができ上がってからでもありますが、しかしもう既に戦前から、大阪市と大阪府というのは、いわば市内の大都市行政は大阪市、市街の、郊外の行政は大阪府という形で、いろんなことをイコールパートナーとしてやってきたという実績があるわけでございます。
例えば、歴史的に見て、現在、昔からの政令指定都市、これは政令指定都市もいろいろございますので一概には申せませんが、古くからの政令指定都市でそういう立場をとってきたところには府県並みに地方分権をストレートに続けていかないと、現実の問題としては二重行政的な様相になって、結果的にはむだになっているということが幾通りにも考えられるというふうに思うわけでございます。
その次は、地方分権で権限を与えていただくのはいいのでございますが、仕事だけが来て財源配分がないというのでは困ります。そういう状態で地方分権が進みますと、恐らくほとんどの地方自治体が破産状態になって、私は口が悪いのでストレートに申し上げますが、亡国の地方分権ということになると思います。財源配分が何よりも大事ではないのか。
具体的には、一つは、費用を負担するのが当然であるとすれば、事務実施主体にその負担分の財源を与えるべきである。それから、国庫補助金は整理統合して、地方自治体の裁量権を働かせるような一括支給の方向を考えていただきたい。それから、地方の一般財源の充実確保のために、地方税を基本とした税源の移譲をしていただきたいというふうにも思います。
大都市制度というものを特に注目していただきたいわけでございます。大都市というのは、同じ地方自治体といいましても、抱えている問題が全く異なります。例えば今、日本の大都市で一番問題になりますのは、定住夜間人口以外に昼間人口の流入が厳しい、非常に大きいという事態であります。
例えば、大阪市の例を挙げますと、人口は二百六十万でございますが、毎日百五十万前後の人たちが大阪市内に昼間人口として流入してまいります。この方々は、所得税、住民税を市内で払っておられるわけではございません。しかし、都市基盤というものは、そういう方々も十分利用されるわけですから、大阪市としてはそういう昼間流入人口に対しても、都市基盤整備ということ、あるいは日常的な、都市を維持する、都市機能を維持するための業務を果たさねばなりません。
それから、大阪市の場合は、今言ったように、たくさんの人が来ると申し上げましたが、こういう方々は、例えば遠くは大津、三重県の名張、奈良、和歌山はもちろんのことでございますが、極めて広域の場所から大阪へ通ってこられまして、そういう方々が、大阪市内で得られた所得をそれぞれの地域で、税金としてもお払いになりますし、買い物もされるわけでございますから、大阪市の経済活動というものが沈滞いたしますと大阪市以外の広域にわたって経済の悪影響を及ぼすというのが、大阪市が置かれている現状でございます。ただ、都市というだけではなしに、そういう広域的な波及効果を持ち、しかもまた、みずからが広域的な費用を負担しなければならないという大都市には、特別の行政的な配慮をしていただく必要があるのではないか。
その意味で、実は、本当の意味の大都市行政で困っているのは東京都と大阪市ということにならないか。もちろん、名古屋も福岡も同じ問題を抱えていますが、規模の点においては東京都と大阪市でございます。東京都の場合は、大都市問題というのは旧二十三区、東京市のエリアの問題であろうと思いますし、それを東京都全体でおやりになっているわけでございます。といいますのは、東京都の場合は特別区でございますから、小さな自治体の集合体で、直接大都市政策は東京都がやるということになっておりますので、これはこれで非常に特別な条件があるだろうと思います。
大阪市の場合は、もう明らかに大阪市という独立した地方自治体が、しかもそれなりで、そういう広域の効果を、あるいは費用を考えながらやらねばならないという側面がございますので、我々というのは非常に大きな意味で大都市問題に直面しているというふうに申し上げたいと思います。
横浜さんの場合は、ベッドタウンという役割が半分以上ありますから、人口は多いわけでございます。また、横浜さんなり神戸さんなりにも独特の大都市問題があると思いますが、昼間人口流入という意味ではもう圧倒的に大阪市と旧東京区部というのが問題なのではないかと申し上げておきたいわけでございます。
そういう状況ですから、例えば大阪市は、財政規模の点で申し上げますと、一般会計は一兆八千億程度でございますが、特別会計、これはいろいろな事業会計を含めてのことでございますが、これが二兆四千億ぐらいで、予算総額としては四兆四千億から五千億ぐらいを一年間に組んでおります。これは、全国の地方自治体の中で東京都が一番大きな財政を組むわけですが、二番目が大阪市でございます。
その大阪市が何とか財政的に破綻しないでやってきているわけは、先ほど申し上げました特別会計に大きな予算を組むというような、これまでの歴史で長い間積み重ねられたいろいろな事業をやってきたということの結果でございます。これの財政的な負担の問題はもちろん大きゅうございますが、何とかやりくりして今日やってきたというのが現実でございます。
大阪市域内で一年間に納められる税額が、国税もすべてひっくるめますと五兆五千億ぐらいの金額になるわけでございますが、この中で大阪市が直接徴税できる金額はせいぜい八千億ぐらいでございます。大阪府にも入りますし国にも入るわけでございますが、補助金その他で大阪市に還流してまいる金額をすべてひっくるめましても、大阪市が使っているお金というのは、年度によって違いますが、せいぜい二四%前後ということになって、四分の三を他地域で使っていただいているということになるわけでございます。
これは、全国の政令指定都市の中でも大阪市が一番還付率が低いわけでございますので、その抱えている課題から見ても、我々自身がもっと財源を必要としているということを御理解いただきたいわけでありまして、地方分権を進めていって、我々としては、こういう申し方は失礼でございますが、これまでの経験その他によりまして我々なりに地方分権のいい例をつくり上げることはできるというふうに確信をいたしておりますが、それに加えて財源配分の方をよろしくお願いしたいと思うわけでございます。
この地方分権をスタートするに当たりまして、横並び一斉実施というのは、何か中央集権下で分権を一斉に命令するような感じがいたしまして、私はこれは矛盾していると思うわけであります。できるところからやるのが本来の地方分権の進め方ではないのかなというふうに思っております。
一言で言いますと、地方分権にしろ、これからの日本の経済体制のあり方にせよ、大都市制度というものをしっかりと見詰めていただいて、大都市にある程度力を発揮させないと、これまでのような横並び型では結果的にはお互いに足を引っ張っていることになってしまうのではないだろうか。
これからの日本のあり方を考えますと、地方分権、そして税制改革、財源配分、加えて、必要な規制は残すといたしましても、さまざまな経済活動、行政のあり方について規制緩和をするという方向で、力のあるところが推進力になる形で群れを引っ張るというやり方をやらないと、二十一世紀の日本経済というのは、横並び一斉方式ばかりでやっていると結果的には力のある人の足を引っ張って、あるいは力のある部分の足を引っ張って、日本の国全体としての将来の展望が開けていけないのではないだろうか。
これはまた極めて個人的な私の意見でございますが、そういった感慨も含めて皆さん方に訴えて、私の陳述を終わります。
ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/371
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372・石渡清元
○団長(石渡清元君) ありがとうございました。
次に、阿部公述人にお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/372
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373・阿部泰隆
○公述人(阿部泰隆君) 本日は、わざわざ大阪まで委員の諸先生にお越しいただき、私どもの意見をお聞きいただける光栄に感謝いたします。
お手元に私の資料を配付しておりますが、最初二ページ物、これを読み上げさせていただくつもりでおりますが、その後で七ページの、もう少し詳しいものを置いております。適宜御参照いただければありがたいと思います。
今回の地方分権関連法の改革は、基本的には非常によい方向だと思います。国と地方の関係が、いわゆる法律による行政の原理により、対等な関係として法的にきちんとルール化されることになりますし、それから地方の方も、自主性を与えられ、よい意味での競争によって活力ある社会を築くことができるということで、高く評価されるべきものであります。
ただ、私は、そのような観点に立ってもう少し法制的な観点から検討してみますと、一つは、後でもめないように明確な法律になっているかどうか、それから二番目に、国の地方公共団体に対する関与を最小限にするという立法趣旨に合った仕組みか、一貫しているかという二つの点から検討してみたいと思います。
この点で見ますと、この法案は、失礼な言い方をすれば百点満点ではなくて八十点ぐらいで、なお二十点ぐらい足りない。この足りないところを議論しているといつまでも立法ができないからとりあえずやれなんという意見もあるようですが、いや、今ここでさっと直せるんですよというのが私の言い分です。
そして今、政省令でさえパブリックコメントといいまして国民の意見を踏まえて実際に修正しております。法律案についても代案を出しますので、採用できるところはよろしくお願いしますということです。
第一に、立法の基本原則としての法の明確性の要請ですが、どうも霞が関では法律を明確に国民にわかるようにつくるという発想を持っている人はいないということを書いていた方がおられますが、それはまるっきり逆であるべきで、せっかく立法する以上、平均人が読み違えないように明確に書くべきであります。
それから、国会で大臣が答弁したらもうこれで済んだと思っておられる向きもありますが、大臣の答弁は裁判所を拘束しませんから、裁判所はまた違う判断をすることがあります。後日そのような問題が起きないように、政府の答弁に納得したら、政府もそのように条文を修正すべきであります。
ちょっと飛ばしまして、事務概念の混乱というところですが、まず改正法案の第二条第二項を見ますと、「地方公共団体は、地域における事務」のほかに、「地域における事務」ではないが、「法律又はこれに基づく政令により処理することとされる」事務を処理することになっています。
この「地域における事務」とは何かということですが、どうも読みにくいのです。これは自治事務のほかに法定受託事務を含むというのが政府の解釈ですが、今まで普通に考えますと法定受託事務は国政選挙など国家の事務ですから、地域の事務だと理解するのはこれは大変です。
そして条文上も、この地域の事務の次に法令で委任されたものとありますが、そうしますと、地域の事務というのは、法令から委任されていない自治体の純粋な自治事務じゃないかという読み方もされるわけです。実際にそういうふうに読んでいる人もいます。
そこで、そのような読み違いがないようにするためには、ここに書きましたように、括弧書きででも、地域の事務の次に、第八項に定める自治事務のほか、第九項に定める法定受託事務を含むといったような定義でもすればよいのではないかと思います。
それから、法令により処理させるという言葉は、この二つの条文で用いられていますが、政府はこれを別の意味に解釈しています。そして、法令により処理するというのは、二条二項では地方公共団体の事務ではなく、九項では地方公共団体の事務だというのです。これではどうもわからなくなります。
そこで、二条二項の「その他の事務で法律又はこれに基づく政令により処理することとされるもの」は法定受託事務に統合すべきであります。したがって、二条二項は、単純に、普通地方公共団体は、地域における事務、第八項に定める自治事務のほか、第九項に定める法定受託事務を含む、を自己の事務として処理すると規定するだけにとどめればよいのです。
それから、法定受託事務も、地方公共団体の事務だという位置づけをするんなら、そこに「国が本来果たすべき役割に係るものであつて、国においてその適正な処理を特に確保する必要があるもの」といった定義を持ち込むことはすべきではありません。この定義を見ますと、どう見てもこれは国家の事務だという感じがするからであります。それで、地方公共団体が法令により処理する事務のうち、法定受託事務として指定された事務という形式的な規定を置くだけにとどめればよいと思います。
次に、法定受託事務と条例制定権ですが、もともと法定受託事務に関して法令の授権なき条例制定権があるかどうかが争われていまして、地方分権推進計画ではこれを否定していましたのに、国会では自治大臣はこれを肯定する解釈を示したと報道されています。また、これは後日問題になりますので、この自治大臣の解釈を確定させるための明確な法律が必要で、そこで今申し上げたように、法定受託事務を地域の事務とわかるようにした方がよいと思います。
それで、議会の議決事項を追加できることができる根拠である地方自治法の九十六条二項の改正案では、議決事項から法定受託事務にかかわるものは除かれています。これでは法定受託事務について条例制定権がないと解釈されかねませんから、この除外規定も削除するか、合理的な修正が必要だと思います。
それから、四で、法定受託事務に関して法令所管大臣が定める処理基準は法令ではありません。地方自治法十四条では、条例は法令に違反してはならないとありますが、処理基準に違反してはならないと読めるかどうか。しかし、処理基準に違反してはいけないということだと思いますので、法令というのの次に括弧して、二百四十五条の九に定める処理基準を含むと明示すればよいのではないかという気がします。
次に、不服審査ですが、法定受託事務に関する都道府県知事などの処分または不作為については、当該法令を所管する大臣に審査請求することができるということになっていますが、この制度は廃止すべきであると思います。このレジュメの二ページです。
この審査請求に対する裁決に不服がある場合、処分を受けた者は当然訴訟を提起することができますが、都道府県知事または市町村長など地方公共団体執行機関は、恐らくはこの裁決に従わなければならないと解釈されます。審査請求においては、審査庁は原処分庁、今の都道府県知事または市町村長の上級行政庁として扱われるからであります。
しかしながら、法定受託事務を地方公共団体の事務だと政府が位置づけているわけですから、中央官庁を上級官庁とする機関委任事務並みのこの扱い、このような国家の強力な関与は余分なことでありまして、この法律の国と地方の役割分担の原則にも反するのではないかと思います。
さらに、自治事務に関してはもちろんですが、法定受託事務に関しても、国の関与があるときは、地方公共団体の方から国と地方の係争処理委員会に審査の申し出をすることができる。さらに、訴訟を提起することもできます。処分を受けた者が中央官庁に審査請求した場合だけ地方公共団体の執行機関が中央官庁の裁決を争えないというような、これとも一貫しないと思います。
次に、自治事務に関する自治大臣、都道府県知事への審決の申請制度も同じような理由で廃止すべきだと思います。
次に、国家賠償ですが、法定受託事務はもともと国の事務だということでしたので、それにミスがあれば国が責任を負うということだったと思いました。もともとの勧告でもそのように書いてありましたが、今回、これを地方公共団体の事務だと解釈しますと、それにミスがあった場合、国は賠償責任を負わないことになります。現場の職員にミスがあれば国は関係ないと言えるかもしれませんが、国の方の法令あるいは処理基準にミスがあるということもあるわけであります。そして、「国が本来果たすべき役割に係るものであつて、国においてその適正な処理を特に確保する必要があるもの」として、法令のほか処理基準で地方公共団体を拘束し、各種の強力な国家関与の制度を置きながら、地方公共団体が処理するというだけで国の責任が消えてしまうのは、私には理解できません。
そこで、被害者の方が地方公共団体を被告に訴えを起こした場合、そのミスが国家にある、中央官庁処理基準や法令にあるなどということになった場合、そうしたら原告はもう一度国を相手に訴えを起こさなきゃいけないというのは大変な負担です。場合によっては時効になります。そこで、この訴訟の中で中央官庁の処理基準や法令にミスがあった場合、改めて訴訟を提起することなく、中央官庁をその訴訟に参加させて判断して、その判決の効力を国に及ぼすという制度にすべきであります。条文案はこの詳しい方のレジュメに書いておきました。
七番目、国家関与法定主義の原則。これは大変結構でありますが、関与が法律のほか政令でもできるというのはやり過ぎだと思います。一般的に、単なる勧告でも法律でルールを決めているのに、代執行まで場合によっては政令でもできるというのは、それはやり過ぎではないかというわけであります。
それから、届け出制の規定がありませんが、恐らく届け出という勧告の手法というのは使われるのではないかと思いますので、それならばいっそそれを正面から書いておく。そのかわりに、「一定の行政目的を実現するため普通地方公共団体に対して具体的かつ個別的に関わる行為」という不明確で包括的な規定は削除すべきか、それとも、これの言わんとすることは何かをよく確かめて具体的に規定すべきではないかと思います。
それから、自治事務に対する是正の要求に対しては服従義務がある、そうして初めて自治体の方から訴訟を起こせるんだというような制度にしていますが、是正の要求というのは本来権力の行使ではなかったと思うのに、権力の行使扱いにする、服従義務があるなんという議論をするのはおかしい。しかし、じゃ訴訟を起こせないではないかと言われますが、服従義務がなくても訴訟は起こせるという理論を立てればよいのです。服従義務はないけれども、非常に強力な影響力を持つ行為に対しては、その違法確認訴訟を提起することができるというふうにすれば、理論的にも一貫するのであります。
その次に、この是正の要求の発動要件が、「法令の規定に違反していると認めるとき、又は著しく適正を欠き、かつ、明らかに公益を害していると認めるとき」とありますが、この後半の方は裁量の問題ですので、国がわざわざ出ていくほどのことかどうかということになりますし、前半の法令の違反だけでも、単に法令に違背するというだけで中央官庁が出ていくほどかどうか。それはもう自治体限りで考えればよいことで、国家にとって大きな利害関係がある場合だけ中央官庁が口を出すというのでよいはずで、自治大臣も新聞によりますと非常の場合に限り使うんだというような答弁をしているはずですから、それならばそのように条文を変えればよいのです。条文を変えないで国会答弁だけ厳しいことを言っても、後の裁判所がそのように解釈してくれるわけではありません。自治大臣がこのように答弁している以上、そのように条文を改正するというのが筋で、このような答弁をしながら条文は変えられませんともし言うとしたら、それはなぜですかと私は聞きたいと思います。
それで、この場合は国法上違法であって、かつその違法を看過することが国家的な利益を著しく損なう場合に限るという趣旨の文章にすればよいのです。
次に代執行ですが、従前の職務執行命令訴訟を修正したものであります。しかし、ここの条文に各大臣の処分に違反するという言葉があります。この意味がわかりません。
従来の職務執行命令訴訟のもとでは各大臣が指揮監督することができましたから、それは各大臣の処分だということが言えるのですが、今度の法定受託事務では、大臣はこのような処分をすることができません。それなのになぜこのような言葉が残っているのかわかりにくいところでありまして、各大臣の是正の指示または各大臣の定めた処理基準に違反するといったように文章を変えるべきではないかと思います。
それから、係争処理委員会の中立性という点について、衆議院の公聴会で議論されていましたので一言申し上げますと、これは総理府に設置されるものですから、地方公共団体から見ると中立的かという疑問が出されると思います。その観点に立てば、地方六団体にも委員の候補者の推薦権を認めて、もちろんそのとおり採用するわけじゃありませんが、それを考慮して決めるというようなのが一つの案ではないかと思います。
以上、私の話はこれで終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/373
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374・石渡清元
○団長(石渡清元君) ありがとうございました。
次に、徳畑公述人にお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/374
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375・徳畑勇
○公述人(徳畑勇君) 大阪自治労連の委員長をやっております徳畑でございます。
私は、大阪衛星都市の自治体職員として四十年近く自治体労働組合の立場から地方自治に密接にかかわってきた者として、今国会で提案され審議中の地方分権一括法案に対する意見を申し上げたいと思います。
本法律案は、既に今国会審議で明らかになっているように、地方自治の拡充とは逆行し、国の関与、統制がこれまで以上に強められるものであることを痛感しているところであります。
私は、この一括法案が機関委任事務の廃止後の法定受託事務及び自治事務の双方への国の関与、統制を広く残し、むしろ従前より拡大強化していること、また、地方自治体と住民が望んでいる地方への権限と税財源の移譲には見るべき前進がなく、住民の望んでいない自治体リストラ路線の推進、上からの市町村合併の推進、また地方議員定数削減の押しつけなど、地方自治拡充とは相入れない重大な改悪が盛り込まれ、加えて、米軍用地特別措置法の改悪や建築基準法、水道法など、地方自治体と住民をアメリカの起こす戦争に協力、動員する仕掛けを巧妙に織りまぜ推進しようとしていることに強い危惧を抱いており、この一括法案に反対する立場であることを最初に表明いたします。
この立場から、大阪における地方自治体の現状に触れながら、二、三のことについて意見を申し上げたいと思います。
一つは、機関委任事務の廃止に伴って、国と地方自治体との関係、都道府県と市町村の新たな関係がつくられようとしている点です。結論から先に申し上げますと、都道府県は国の出先機関のような役割を担わされ、市町村は国と都道府県の双方から関与、統制を強く受けることになるのではないか。
同法案二百五十二条十七の三第二項には、「国の行政機関が市町村に対して行うものとなる助言等、資料の提出の要求等又は是正の要求等は、都道府県知事を通じて行うことができるものとする。」と、市町村への関与を明記しております。
現在、大阪府は、地方分権推進の名のもとで府の行政改革を推進するとともに、全国最悪の大阪府財政危機を理由にして、府財政再建プログラムを策定し、その具体化を図りつつあります。この財政再建プログラムに基づいて、老人医療費助成制度の廃止を初め、障害者、母子家庭の医療費の助成、社会福祉施設公私間格差是正など、福祉、医療にかかわる府独自の施策の廃止、削減、また私学助成金の削減、府立高校入学金や授業料の大幅引き上げ、府立高校二十校の統廃合と教職員四千八百人を含む府職員七千人の削減、市民病院への助成など市町村への助成金削減など、府民犠牲の大なたが振るわれつつあります。
他方では、関西国際空港建設とその関連事業、茨木、箕面での北部丘陵開発など巨大プロジェクトがバブル崩壊で大きく破綻をし、抜本的な見直しが求められているにもかかわらず、むだと浪費の大型公共事業を継続し、四兆円近くに及ぶ負債を抱え、府財政危機を一層深刻化させております。
分権推進の先取りを進める大阪府が、国の景気対策やリストラ方針に追従し、大企業、大銀行の支援する大型公共事業を温存、助長しながら、福祉、医療、教育など府民の暮らしを犠牲にする行財政運営は、府民の暮らし、福祉、教育を守るべき大阪府の役割の放棄であると思います。同時に、市町村への財源抜きの仕事の押しつけや財政援助の切り捨ては、地方自治の拡充に全く逆行するものであります。
府下市町村の首長や自治体関係者も、大阪府のこの身勝手な財政再建プログラムの押しつけに対して、各方面から批判の声が高まっております。マスコミも、「一連の分権策は都道府県の機能強化が中心で、身近な市町村の自治権強化は不十分に終わった。分権の主役である住民参加の拡大も置き去りになるなど、「地域のことは地域で決める」分権社会実現には多くの課題を積み残した格好」と、これは日経の三月二十六日付の夕刊でありますが、このように指摘しております。
大阪府が国と一緒になって市町村の監督機関の役割を担い、府民犠牲の自治体リストラの推進や、暮らし、福祉切り捨てにこの一括法がお墨つきを与えることになりかねないことを強く危惧するものであります。
第二の問題は、市町村においては地方自治の拡充とは全く逆行する事態が既に進行しており、一括法の成立はこの事態に拍車をかけることが予想されます。市町村の首長や自治体関係者がこの一括法案で最も失望しているのは、国から自治体への税財源の移譲に見るべき中身がないことであります。
今、府下市町村も例外なく深刻な財政危機のもとで、自治省の自治体リストラ指針に基づく自治体リストラ計画の実行が住民の福祉、暮らし、経営に多大な犠牲をもたらしつつあります。八尾市や堺市で進められている学校給食の民間委託化、堺市の全公立保育所の民間委託方針を初めとして、自治体の責任で行うべき福祉、医療、教育などの業務が自治体リストラの名で民営化、市場化されようとしております。
また、市町村においても、大きな課題である来年四月実施の介護保険事業についてもいまだに各市町村で事業の全容が市民に発表できない状況にあり、保険料は幾らになるのか、実際に介護は受けられるのか、基盤整備はどこまで進んでいるのかなど、住民の不安を募らせております。一括法は、こうした市町村の置かれている現状の打開の道を全く示していないどころか、地方自治に逆行する住民犠牲の自治体リストラを一層促進するものであります。
市町村の長が分権にどのような考えを持っているかを知るために、一昨年、九七年の三月、社団法人大阪自治体問題研究所が行った地方分権に関する近畿二府四県市町村長アンケート調査の結果の報告書があります。きょう資料として皆さん方にお渡しをしております。
この中で、二枚目の裏側のところ、重森教授の分析の初めのところにありますように、これはちょうど中間報告が終わって、地方分権推進委員会の第一次勧告と第二次勧告のはざまの時期でありますけれども、この時期にこの調査を行いました。
近畿二府四県の市町村長三百二十六名に対して、回収率が六四・一%、二百九名の市町村長から回答をいただきました。非常に詳細にわたってアンケートをいたしておりますので、非常に参考になる意見が寄せられているというふうに考えておるところです。
この調査で、市町村長は、地方分権の受け皿づくりとして、第一に財源の確保を挙げ、七九%、次いで自治体職員の企画・政策能力の向上、六六%、そして自治体職員の定数の削減などはわずか一%でした。地方分権に必要な自治体のマンパワーや財源拡充などを後回しにした権限や事務の移譲に大きな不安や不満を持っていることを示しております。
もう少し立ち至ってこのアンケートの中身はお話ししたいと思うんですが、時間がありませんので後ほどに回したいと思います。
第三には、本法律案による地方分権はまさに上からの分権の押しつけであり、地方分権を担う基礎自治体である市町村と住民の意見がほとんど反映されていないことであります。
国による自治体の締めつけ、統制の大きな手段となってきた通達行政も温存されたままであります。また、地方交付税、国庫補助金などによる財政面での統制の仕組みも何ら手がつけられておりません。法定受託事務の処理基準を国がつくることになっています。自治体は法定受託事務の条例をつくることができることになっていますが、処理基準との食い違いがあらわれた場合どうするのか。自治事務にも国の関与が入れば、市町村の自主性は大きく損なわれることになると考えられます。
また、地方分権、地方自治を真に前進させる力となる住民参加の制度として注目されている住民投票制度などについて何ら触れられず、住民自治拡充の点からも重要な欠陥を持つものであると考えます。
この法案が強行されれば、大阪府民や中小商工業者にも重大な打撃を与えます。全国一深刻な不況と失業・雇用問題を解決するには、消費税減税や自治体リストラをやめさせるなど、国の施策を抜本的に見直すとともに、今こそ地方自治体が府民の暮らしを守るための本来の役割が発揮されなければなりません。
以上、私の述べた意見は、この一括法案が持つ重要な問題点や疑問点の一部であります。多くの方が述べられているように、四百七十五本の法律案の改正を束ねて審議するやり方は、民主主義に反し、国会審議の空洞化に通ずるものであります。憲法と地方自治の根幹にかかわる重要法案をわずかな審議時間で、しかも数を頼んで強行することは、国会の自殺行為でもあります。
私は、この地方分権一括法はさらに自治体関係者、議会、専門家や国民、住民の十分な意見反映と討論を保障し、十分な時間をかけた国会審議を重ねることを切に要望して、意見陳述を終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/375
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376・石渡清元
○団長(石渡清元君) ありがとうございました。
以上で公述人の方々の御意見の陳述は終わりました。
それでは、これより公述人に対する質疑を行います。
なお、委員の質疑時間が限られておりますので、御答弁は簡潔にお願いいたします。
また、御発言は私の指名を待ってからお願いいたします。
それでは、質疑のある方は順次御発言願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/376
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377・狩野安
○狩野安君 自由民主党の狩野安でございます。
きょうは、公聴会にお忙しい中をおいでいただきまして、そして大変貴重な御意見をお聞かせいただきまして、本当に心から感謝申し上げます。
私も二、三質問させていただきます。
近年、二十一世紀は地方の時代だということをどこへ行っても聞かされております。もし、この法案が通りましたら、名実ともに地方の時代が到来するのではないかというふうに私は心から期待をしておりますけれども、まず大阪市長さん、磯村公述人にお伺いをいたします。
先ほどもいろいろとお話を聞かせていただきましたけれども、政令指定都市として大阪市は伝統のある政令都市でございますし、政令都市としてのいろいろなお悩みも聞かせていただきましたけれども、この地方分権一括法というのは、基本的には都道府県と市町村の二層制を前提に改革するということであります。大阪市としての、中間的そしてまた半独立的な自治体としての大阪市でありますので、分権のメリット、デメリットというものについてお伺いしたいと思います。よろしくお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/377
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378・磯村隆文
○公述人(磯村隆文君) 先ほどちょっと申し上げましたように、歴史的に見まして、大阪市が非常に古い時代から大都市としてのいろんな仕事をやってまいりまして、それが明治維新以降の近代的な行政体制になりましてからも、実は名前としては大阪府という名前を名乗った時期もあるんですが、結果的には大阪市制というものを確立いたしまして本年で百十年目になります。戦前はもう圧倒的に大阪市が今以上に地方分権的なやり方をやってきたわけでございますが、これが戦後の改革で、要するにアメリカ式で言いますと府県を州並みの考えでとらえて、その下に市町村を置いたわけですから、それですんなりとうまくいったところもありますが、大阪府・市の関係は非常にぎくしゃくいたしました。
大阪市内の相当大きな税源が府に行ってしまいましたし、仕事は、もちろん府には行ったんですが、それでは実は大阪府・市のこれまでの伝統、現実から見てなかなか合いませんので、大変ぎくしゃくしましたあげく、最初大阪市は東京都と同じように、要するに市が中心になって市の行政ができるようにという意味で特別市制というので大分運動したんですが、これは成りませんで、結果的には政令指定都市という形になりました。
この政令指定都市という制度は不徹底な制度でございまして、我々の立場からいいますと、府のいろんな権限を、つまり国の権限を府が引き受けてそれを市に伝えてくるという体制を根幹的には守ってきたようなやり方で、ただ、大都市特有の仕事だけはあなたたちでやってごらんという感じの姿であったわけです。
それが今回は地方分権ということでございますから、昔の大阪市にはなれないまでも、せめてもう少し大阪市に対して直接的な自由度があればというふうに思っていたんですが、やっぱり府が権限を持っていて、つまり、地方自治で最初に府へまず権限を移転して、府が大阪市をある意味では監督するという立場が残っている分野が幾つも出てくるわけでございます。
我々としては、具体的に、例えば都市計画というようなものについては、計画をつくっているのは大阪市でございますが、それが大阪府知事の認可をもらわないとだめだというようなことになるのでしたら、二重行政もいいところなわけでございます。つまり、都市計画そのものは大阪市がやるので、大阪市がノウハウも持っていますし経験も積んでいるわけですから、直接もし広域的な調整が必要ならば調整をすればいいわけで、あくまでも府知事の認可とか何かというようなことがないようにした方がいいんじゃないかという思いは我々には十分あるわけでございまして、それに似たようなことが幾通りかあるわけでございます。
今度の地方分権のおかげで国から府県に仕事が譲られたという面では、我々はそれなりの評価をするんですが、府と市の間で、特に大阪府と市の関係では、これはもう府じゃなくて市がストレートにやった方がいいと思えることが幾つもありますので、その意味で、また二重行政的なことが残るのがどうなのだろうかという思いはあります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/378
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379・狩野安
○狩野安君 ありがとうございました。
次に、地方自治体の自主性、独自性が期待されておりますけれども、自治体の首長の権限ばかりが強くなっては議会とのゆがみが生じかねないために、地方議会の活性化が重要だと思います。また、地方行政を適切に判断し見直しをするためには情報公開も大変重要ですが、行政に対する評価システムなどについてのお考えを阿部公述人、ちょっとお聞かせいただけますでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/379
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380・阿部泰隆
○公述人(阿部泰隆君) 私の公述した内容ではなく別のことを急に聞かれているので、議会でも普通、発言通告というのがありますから、それがなくて急に答えるのは非常に難しいのですが、とりあえず。
今回、首長の権限が強化されると言うのですが、むしろ議会の権限が強化される。機関委任事務について、従来、条例制定権がなくて首長だけの権限であったのが、今度は自治事務と法定受託事務になって、法定受託事務についても条例を制定することができて、しかもそれは法令の授権がなくても法令に違反しない限りは条例を制定できると解釈されましたので、むしろ議会の権限が強化されたわけですね。それで、議会はそれを大いに活用していただくと。そうすれば、自治体間で施策の競争が起きて、先頭馬が先を突っ走って後がついてくるということになれば日本全体が非常によくなるということですね。
それで、条例制定権の範囲については単に「法令に違反しない限り」としか書いてありませんが、この二条の十二、十三項で地方公共団体にかなりの特殊性それから自主性を認めるような書き方になっていますので、これを基準にして条例制定権の範囲を解釈すれば、従来よりもずっと広く条例は制定できる。国の法令と似たようなものをつくっても、それぞれ自主的理由があれば国の法令を無視して別の基準をつくれるというような解釈は十分できると思いますので、これは議会を大いに活性化すると。それで、そういう施策を各地で行えば、それを住民が評価するというので、議会あるいは条例の評価システムができると思います。
ただ、議会の活性化についてもう一つ僕が申し上げたいのは、議会の議員さんの出身母体をもっと広く、勤労者も選挙に出られるようにしてほしい。公務員はもちろん今出られませんが、公務員が議会に出ても構わないと。ドイツやアメリカはみんなそうなっています。そして、議員さんの歳費とか選挙区は住民投票で決める、自分のことは自分で決められませんから。そうすると、住民が議員さんの歳費を高くしてもいいし安くしてもいいと。ハンブルクでも、たった月二十万円でみんな勤めながら夜あるいは土、日に議会で頑張っています。その方が多くの住民が議会に出られて活性化するのではないかと私は思っています。今回は一遍にそこまで改正できませんでしたが、次の課題としてぜひお考えいただきたい。
そして、今回の改正は、従来は官によるコントロールだったのが今度は民によるコントロールになるはずだと。官によるコントロールはかなり排除しましたが、民によるコントロールの方はまだ不十分なのでそれを強化すると。
そういう意味で、今申し上げたような住民投票による議会制度とか、あるいは議会自身のいろいろなルール改正で住民の意見をもっと反映するようにすればよいのではないかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/380
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381・狩野安
○狩野安君 ありがとうございました。
では、磯村公述人と徳畑公述人、お二人にお聞きしたいんですけれども、地方分権というのは、国の関与を制限するということに伴ってみずから企画立案して運営していくことになるわけですけれども、地方公共団体の職員には高い法務、行政などの専門的能力が要求されることになると思います。これについてのお考えをお聞かせいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/381
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382・磯村隆文
○公述人(磯村隆文君) 先ほど申し上げましたように、大阪市の場合は、おかげさまで長い伝統と経験を積んできておりますので、これまでの我々の仕事のあり方を振り返ってみまして、我々が独自でやって困ることは何もございません。それだけは明言しておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/382
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383・徳畑勇
○公述人(徳畑勇君) 今、御指摘のように、市町村にこの権限が強化されるということになった場合に、この近畿二府四県首長アンケートの中でもあらわれておりますけれども、いわゆる自治体職員の企画政策能力の向上ということが強い要求になっているというふうに示されております。やはりそういう点で、特に自治体の規模によって、町村などの場合はなかなかそこに到達し得ないというふうなことで非常に不安があるということがあらわれているんではないかというふうに思います。それともう一つは、やっぱりそういうことを保障する市町村の財源保障、このことが裏づけになければなかなかこの実行ができないと。この二つの面で非常に強い不安を持っているということを私ども感じておりまして、その点がこの一括法案の中ではもう一つすっきりとしていないというふうに思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/383
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384・狩野安
○狩野安君 ありがとうございました。
では、市町村の合併についてお聞きしたいんですけれども、阿部公述人には前もって言っていませんけれども、三人の方からお聞きしたいと思います。
地方分権の受け皿問題というのはどうしても出てくる問題で、それは、行財政能力を高めるために市町村の合併を推進する方策として、住民発議の効果を拡大し、知事が合併協議会設置を勧告できるようにし、合併特例債を新設するなどの側面からの支援策を講じようとしておりますけれども、大阪の場合には特に人口が密集した大都市地域でありますので、府内のみならず他県にも市街地が連檐しております。政令市、中核市、堺市などがありまして特に複雑な問題を抱えているように思われますが、地域の目で市町村合併をどうとらえておられるか、また問題点があればお伺いしたいと思います。
また、従来から関西圏は大阪、奈良、和歌山などの府県統合の論議があるということで、阪奈和合併論ですか、それが盛んな地域であるというふうにも聞いております。府県の合併問題も分権推進委員会の勧告に出ておりますけれども、どのようにお考えになっているか、それぞれの方にお聞きしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/384
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385・磯村隆文
○公述人(磯村隆文君) これは、大阪市がどう考えるかということではなくて、一般論として私の考えを申し上げますと、経済学的な意味ですべての事業体というのは適正規模というのがございます。小さ過ぎると不経済、大きくなり過ぎても不経済、だから適正規模という考え方がございます。
その適正規模というのを市町村のような自治体で考えてみますと、人口の規模も一つの物差しにはなりますが、問題は、例えばそこの人間が暮らしていく上でどの程度まで広がればそこの住民にとって最適の条件が与えられるかということを考えねばなりません。それは、交通ネットワークがどうなっているのか、あるいは仕事のチャンスがどうなっているのか、あとプラス、福祉の制度がどうなっていくのか、効率性がどうなっていくのか、いろいろありますが、ある程度は時間がたてば補充していけますから、十年たてばどうというふうに考えていけばいいんです。しかし、少なくともそういう考え方に基づいて、同時にお互いにある程度利害関係で折り合いがつけばという前提のもとでございますが、適正規模を下回るところは当然合併を進めていくべきではないかというふうに思います。
ただ、例えば大阪市の場合はどうなのかと言われますと、大阪市の場合は区制をとっておりまして、区として適正規模のグループをつくっていき、その下に、昔で言います町内会、中学校区、小学校区というような形で適正規模のコミュニティーをずっとつくっていくというネットワーク化はやっておりますので、今の規模で別に過大でも何でもないというふうに思っております。
先ほどおっしゃった府県統合の問題でございますが、これも私は先ほど触れましたが、大阪市の場合は、大阪府下だけでなしに、遠いところは三重県の一部から、奈良県はもちろんのこと、それから滋賀県の一部からというふうに経済圏が非常に広がっておりますので、府県という段階で昔のような行政をやっていたのでは追いつかないという面があると思います。例えば、交通ネットワークを広げていくについても、あるいは琵琶湖の水の使い方についても保存の仕方についても、これはやっぱり相当広域的な考えでやらねばならないのではないかというふうには私は思っております。
それを今、先ほども触れましたが、国の地方機関という形でそれぞれの省ごとに縦割りでやっているわけですが、それは効率的な面もありますが実は非常に弊害がある面もございますので、そういうものを統合する形で道州制のようなものがあれば今の府県の持っている欠陥をカバーできるのではないか。無論、屋上屋をつくるというようなことはやめた方がいいんですが、そういう意味で、遠い将来には府県制というものがもう一度検討の対象になる時期が来るというふうに私は思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/385
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386・阿部泰隆
○公述人(阿部泰隆君) 市町村合併につきましては、大阪府において設置されました地方自治研究会というところでこの前原稿を書いたばかりで、ちょうどこのパソコンに入っているんですが、何分にも十ページほどの原稿を今ぱっと要約するのは難しくて、しかも書いたことはすべて忘れておりますので、今出して考えているところであります。
それで、まず都道府県合併につきまして、阪奈和合併ということを言われましたが、もともとあの当時の議論は、一つには大阪府が紀ノ川の水を欲しいということであったかと思います。そのような事情は既になくなっておりまして、今合併せにゃ困るというようなのは非常に少ないし、また、そのような超広域的な関係から合併したところで逆に地域の自治が失われるという問題もありますから、仮に水が欲しいということであれば、それはそれとしての今やっておりますような協定を結ぶとか、そのようなことで対応するのが一つはよいのではないかと今は思っております。
それから、市町村合併ですが、今合併が必要だと言われているのは、介護保険その他、大きな行政課題に対して対応できない小さな市町村をどうするかということで、規模の経済ということが言われるわけであります。それについて、もっともではありますが、代替案もいろいろあるわけでありまして、市町村がそれぞれ自分でできなければ広域連合をつくるとか、あるいはむしろ逆に市町村から都道府県に委託してしまうとかいうのもありますし、そのような選択肢の中でどれが相対的にましかということです。
それから、経済効果ということを言われますが、僕は、小さな市町村が集まったら経済効果が上がるというのはなかなか理解できませんで、地方交付税がしばらくふえるとかいう人為的なものは別にしまして、自然に経済が活性化するということは多分ないんじゃなかろうかという気がします。
合併するかどうかについては、まず実証的な分析が必要で、みんな一緒になったら規模の経済でサービスが同じ金でよくなるというようなことが言えるかどうか、その辺の話がまず第一だと。どこか合併したところで実証的な研究があればいいんだけれども、何かはっきりしないという気がします。
ただ、それにしても、余り小さい市町村をほうっておくわけにいかないので誘導措置を講じて合併させるんでしょうが、合併したら損をするところをどうするかという問題になります。それで、しばらくあめをやるかというんだけれども、十年たったらあめが切れるというのはモルヒネが切れるのと同じようなことになりますので、十年たったら今度は自立できる、規模の経済で損をしないというようなことが言えるかどうか、そういう話になると思います。
あと、合併のことを議論するとき、大変失礼ながら、首長さんと議員さんは不適切である。というのは、合併したら首が飛ぶ立場ですから、大変失礼な言葉を使えば、泥棒に刑法をつくらせるというのと同じようなことになります。自分のことを自分でできないのです。失礼なことを言いますけれども、大学改革を大学にやらせてはだめですし、司法改革を司法官僚にやらせてはだめなんです。それと同じです。
先ほど住民投票の話が出ましたが、こういう問題こそ住民投票が一番ふさわしい。そして、情報を徹底的に公開して、議論して、住民が自己責任で合併する。しかし、今、一回合併すると絶対別れられないんですね。離婚のできない結婚というのはする気がしません。よほどの場合はまたもとに戻れるというのがあってもいいんじゃないかと思いますけれども、今はそれを許していないので余計合併しにくいという気がするわけであります。
とりあえず、以上ということにいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/386
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387・徳畑勇
○公述人(徳畑勇君) 市町村合併の問題は分権の受け皿づくりということに位置づけられていると思うんですが、一つは、上からの合併の押しつけということになるのではないかというふうに思います。これは、多くの市町村長の考えとして二府四県のアンケートの中でも示されているんですが、やはり合併ということについては非常に反対の意見が多いということであります。
合併と広域行政というのは区別して考えるべきであって、それぞれの市町村の歴史がそれぞれの地域であるわけですから、上から合併を押しつけるということはやっぱりやるべきではないというふうに思っております。同時に、この合併論というのは、全国を、今三千三百ございますけれども、それを三百ぐらいにするという政治的意図が非常に強く働いている、ここからも私たちはこういう合併論については同意できないというふうに思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/387
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388・狩野安
○狩野安君 ありがとうございました。
まだあれですけれども、これで一応質問を終わらせていただきます。御協力ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/388
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389・高嶋良充
○高嶋良充君 民主党・新緑風会の高嶋良充でございます。
きょうは、三人の公述人の方に大変お忙しいのにお越しをいただいて、私ども貴重な御意見を拝聴させていただきました。これから質問をさせていただくわけですけれども、ぜひ審議の参考にもしたいというふうに思いますので、御助言をひとつよろしくお願いしておきたいと思います。
最初に、磯村公述人にお伺いをいたしますが、磯村公述人は、分権にとって税財源が移転されなければ亡国の地方分権だという言葉を使われました。私も実はそういうふうに考えておりまして、意を強くしているところなんです。
いずれにしても、分権にとっては、仕事の分権とお金の分権というか、権限と財源を移転するということがまさに車の両輪でなければならないというふうに思っているわけです。そうでなければ、地方自治体に自主性、自立性を持たせるといって仕事だけ、権限だけ持たされても自立できるということにはならないわけですから、そういう観点では、本当の対等、平等の関係を国がつくり上げるというのなら財源も同時に移転すべきだ、そういう考え方に立っているわけです。
さて、そこで、財源移転はまだ現状では非常に難しいという状況がございますので、まず大阪市の実情等をお聞かせいただきたいというふうに思うんです。
九八年六月二十三日の日経新聞に地方分権特集が組まれまして、ちょうど磯村公述人が大阪市長という立場で記事を出されておりますけれども、ここで一割自治という言葉を使われているわけですね。僕は、この一割自治というのは、ほかの地方では三割自治という言葉を使うんですが、わざわざ一割自治を使われたというのは、大都市の大阪は税収の一割しか使えないというか、できないんだと、そういうことを訴えられようとしたんだろうというふうに思いますけれども、その一割自治の現状。
それと、もしこの一割自治から税財源の配分をしていくということになると、今の段階では国と地方の税財源の分捕り合戦というか財政戦争と、こういうふうに言われていますけれども、この一割台ということを強調することによって地方自治体同士の財源戦争的な部分になりはしないか。というのは、同じパイの中で大都市の取り分をふやすと当然地方の取り分が少なくなる、こういうことですから、それらのことについての解消方法というか、六団体の内部でもまだなかなか意見の一致が見えないというような状況を若干知事会なり市長会の事務局などからも聞いておりますけれども、その辺の実情も含めてちょっとお話をいただければと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/389
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390・磯村隆文
○公述人(磯村隆文君) 先ほどちょっと触れましたが、大阪市内で納められる税金が一年間に約五兆五千億、その中で大阪市税として直接大阪市が徴収しておりますのは一四・二%の八千億だけでございます。あとは府、市からの支出金、地方交付税、譲与税、交付金等々で還元していただくわけですが、結果的にはそれを含んでやっと大阪市内の納税額の二三・三%というので、これは全国にもまれな低率でございます。
おっしゃるとおり、日本の経済というのは大都市の税収を地方に配分するという方式を続けてきて高度成長が成り立ってきたわけですから、そのことについて、我々は決して今までのことについて不満を申し上げているわけではないわけでございますけれども、これから新たに地方分権で大都市が持っている特有の仕事をやらせていただいていくということになりますと、やっぱり何らかの財源が必要なのではないか。
今の制度のままでということになりますと、幾分お金のとり合い的なことになるかもわかりませんが、しかし、例えば時期的に考えまして、ある特定の時期についての公共事業の配分を、こんなことを言うと失礼に当たりますが、必要度ということを考えれば、大都市圏でまだやらねばならない仕事が山ほどありますし、公共事業そのものの経済的波及効果、つまり乗数効果は地方より大都市圏の方が高いわけですから、経済効果ということを考えても、まず一つは公共事業の配分を少し、それも永久にではなくて、ある時期は大都市に少し偏らせてもいいんじゃないか。我々の立場からいうと、高度成長のときに地方の方への配分が多過ぎたと思うんですよ。だから、これを固定しないで、時期に応じて、時には大都市圏にも戻しましょう、それが全体のためになることですからやりましょうという考え方で一つは考えていただいたらいいのではないか。
〔団長退席、大島慶久君着席〕
それから、大都市特有の、例えば昼間人口がこんなに流れ込んでくる場所ですから、その昼間人口から何らかの形で大都市のコストを負担していただけるようなやり方はないのだろうか。
そういうことをるる考えておりまして、とにかくうちは税金をぎょうさん払うているから何が何でも戻せと単純には考えておりませんので、その点はいろいろと工夫しながら我々の考えていることをこれからも訴えていきたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/390
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391・高嶋良充
○高嶋良充君 ありがとうございました。
再度、磯村公述人にお伺いしますけれども、今、都市投資を充実してほしい、そういう意向であると。これは東京都の石原知事なんかも言っておられますけれども、公共投資の中の都市投資を今後やっぱり充実していくということが必要なのかなというふうにお聞かせをいただきました。
そこで、では税財源を現状が無理ならいつ移転させていくのかということで国会の中でもかなり論戦になっているんですが、政府の方というか、総理も大蔵大臣も自治大臣も、基本的には税財源の移譲の必要性というのは認めておられるわけですね。しかし、その時期ということになると、なかなか限定できない。そこで言われているのが、景気回復がされた段階。宮澤大蔵大臣はその景気回復の中でも具体的に二%成長と、二%というのを挙げられましたけれども、ただ、これも不況の状況の中で、ではいつになるか、地方自治体にとってもまだわからない、こういう状況ですから。
そういう観点からいって、税財源の移転の場合に、税制改革でやらなければならない部分と、もう一つは、先ほどから出ています補助金等のまさに今の財源の構造改革でやるべき部分。というのは、税制改革の場合はかなり景気に変動があるかなというふうに思うんですが、現在の補助金等の構造改革という部分では、国と地方のパイの分け方だけですから、これは景気に変動がなくてもできるのではないかなというふうに思うんです。その点の政府の税財源移譲に対する景気とのかかわりの問題についてと、私が今申し上げました構造改革であればすぐできるのではないかという、その辺のことについて磯村公述人としてのお考えを伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/391
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392・磯村隆文
○公述人(磯村隆文君) いろいろな面で具体的な例を申し上げたいんですが、それをやっていると時間がありませんので、例えば、今話題になっております補正予算関係で雇用対策をやりたいという議論をしておられる件について、具体的な例を申し上げたいと思います。
労働省関係が有効求人倍率という数字を発表します。それは、仕事を探している人と本当に人を探している企業との割合なんです、求人。ですから、十人の人が仕事を求めているのに仕事が四つしかなければ求人倍率は〇・四という数字になる、こういう仕掛けなんです。これが先日の発表によりますと、全国水準が平均なんですが〇・四九でございます。大阪府下はというと〇・三六だったわけでございます。つまり、一以上職が足りないということになっておりまして、非常に率直な言い方ですが、そのままの数字をマスコミは挙げて議論するわけですね、大阪圏は物すごく景気が悪いと。実は、そういう読み方をしてはいけないんです。
実際、調べてみますと、地方の都市の人たちは仕事をふやそうにも職を探そうにも、ないものですから、そういう地域の人が大阪へ求職に来るわけです。登録するわけです。大阪は、それなりに求人がふえているんですが、流入が多いものですから求人倍率が下がってしまう。地方は、求職者が出ますから平均だけとったら〇・四九になるんですが、大阪は、今言いましたように人が流れ込んでくるわけですから〇・三六になっているというのが現状でございます。かてて加えて、ホームレスの方々がふえているということも我々は頭が痛いわけです。
〔団長代理大島慶久君退席、団長着席〕
そういう現状を考えますと、補正予算で雇用対策をやるんなら、全国一律にやるんじゃなくて、まさにそういう段階で求人数をふやすための有効な配分をやるべきではないか。これを府県別に人口配分か何かで分けてしまうというようなこれまでのような単純なことをやったんでは、もう死に金を使うことになるわけです、我々大阪流に言いますと。だから、そういう現実を見定めてきっちりと配分していただいたら、当然、雇用対策というのは大都市に集中すべきではないかという議論になるだろうと思います。
そういうことが多々ございます。中央官庁では、ある程度の係数は掛けますが、何でもかんでも横並びというのがまず前提にありますので、結果的にはそういう配分になってしまっております。ですから、そういう見方で、とりあえず緊急の予算配分については必要な場所へ必要な額を出すということを考えていただくこと。
そして、それを考えていただけるなら、例えば構造的な問題で、これまで大都市が何とか今までのやり方でいったけれども、これからはいかなくなったというような問題がございます。例えば建設産業なんというのは、もう機械化がどんどん進みますから、建設産業従事者にとっては全然仕事がなくなっていくわけです。こういう人たちに新たな職業訓練を施してどうするかというような問題とか、あるいは新しい産業を起こしていくためにはやっぱりその力がある大都市部分でやった方が力が入るというようなことを考えていただいたら、当然予算の組み方も今までどおりのやり方とちょっと変わってくるんじゃないか。そういうことをお願いしたいと思っているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/392
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393・高嶋良充
○高嶋良充君 ありがとうございました。一律規制が実情に合わないという状況も含めてお話をいただいて、参考になりました。
次に、時間の関係もあるんですが、阿部公述人にお尋ねしたいと思います。
先ほど自治事務への是正の要求の関係について、服従義務等の関係も含めてお話をいただきましたし、レポートもいただいたところなんですが、国の関与の中で、今言われています自治事務に対する是正の要求に是正改善義務というのが付されました。これは法的義務がある、こういう大臣答弁になっておるわけですけれども、ただ、服従義務がないというか、ほうっておけば、言うことを聞かなければそれまでと、こういうことでもあるようですけれども、それらの問題。それから、今回の改正で是正の要求が、今までは総理一人だったんですけれども、各大臣からされるということによってこの是正要求が乱発されるんではないかと危惧している部分があるんですが、それらの御見解についてお願いいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/393
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394・阿部泰隆
○公述人(阿部泰隆君) 今のお話はもう既にお話ししたことで、自治事務への改善あるいは是正要求は法的拘束力はないのかというと、非常にはっきりしない、灰色のような感じでありまして、法律的には嫌だと言えばそれまでなんですけれども、ここで従うべきだというような規定があると、実際上自治体としては、従わなかったら世論の厳しい批判の矢を浴びる、あらしを浴びるので、しようがないから争うかと。それで、自治体の方から争わなきゃいけないというので不利になる。しかもここで、公権力の行使だ、従わなきゃいけないなんという解説もある。これはおかしいじゃないかということで、しかし国から言われたときにほうっておいたらやっぱりまずいんじゃないかというのであれば、国の強い要求についてはそれが違法かどうか確認する訴訟を起こせるという規定を置けばいいので、服従義務という規定は要らないと。
それから、総理大臣のかわりに各大臣が要求できるということになればもちろん要求しやすくなるであろうと思いますので、私は、歯どめとして、国政に著しく大きな影響を与えるときといったような、そういう条文を入れればよいのではないかと。それは自治大臣の答弁にもあるはずだということであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/394
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395・高嶋良充
○高嶋良充君 ありがとうございました。
じゃ、最後に徳畑公述人にお尋ねいたします。
今の関係もあるんですけれども、国の関与、統制がこの法律改正でより強まってくるんではないか、こういうお話が先ほどございました。とりわけ大阪というのは、以前は革新自治体が高揚したと。こういうことで、機関委任事務の統治から、革新自治体が中心になって住民福祉の向上にかかわるもの、とりわけ老人医療費の無料化とか、そういう部分を上積みや横出しという創意工夫を政策的に凝らしてきたわけです。それに対して、政府の方からは法令的にも財政的にも関与が非常に厳しかったというのは私も承知しているわけです。
今回の分権で自治体の裁量がかなり増すんではないかという評価面が一面あるというふうに思うんですが、ただ、それに対して、先ほど阿部公述人が言っておりますように自治事務にも国の是正要求が加わってくる、こういうことですから、そこの部分のこともありますけれども、やりようによっては、創意工夫をすればかなり住民福祉の向上できる部分が自主的にやれるんではないかなという評価面もあるかと思うんですが、それらについて若干の考え方をお願いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/395
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396・徳畑勇
○公述人(徳畑勇君) 今、高嶋委員が言われましたように、一面では、自治の拡大という側面は私どもも決して否定はしていないんです。しかし、もう一方の面で、法定受託事務にかかわる関与、これは都道府県と国とが一緒に関与していくという形、それから自治事務に対しても国が関与する、これはやっぱり大きな問題を残しているというふうに考えています。
大阪の場合は、都市部におけるさまざまな生活の問題で大阪府や市町村が国を上回る水準の行政をやる、このことはこれまでの歴史的な経過の中でも成果としてやられてきたんですが、最近はどうも財政危機を理由にしてそういうものをどんどん削っていく、こういう傾向がいわゆる自治体リストラということで進められているわけです。例えば地方債の許可の問題でも、給与条項を使ってそれで削っていくというふうなやり方なども含めて、非常に国の統制が、これまでもやられてきましたし、より一層今の行革、リストラの流れの中でその点が強まっている。自治省のリストラ指針というふうなものを示しながら、いかにも自治体が自主的にやっているんだというふうに言いながら、実際は財政的に締めつけたりしてそういうものを促進しているというふうに考えております。
そういう点では、我々のこの自治の力が強まっていくことによって改善できるという面もあるんですが、今はやっぱり国の権限とかそういうものが非常に強いですから、そういう点で大きな危惧を持っているということであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/396
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397・高嶋良充
○高嶋良充君 ありがとうございました。時間ですので、終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/397
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398・山下栄一
○山下栄一君 公明党の山下でございます。どうぞよろしくお願いいたします。限られた時間ですので、簡潔に質問させていただきたいと思います。
まず最初に、磯村市長にお聞きしたいんですけれども、二十一世紀を目前にして、日本の経済、そして教育、政治そのものもそうですけれども、とにかくもう閉塞状況で全く先が見えてこない。先送り型政治、前例踏襲型の行政、完全に行き詰まっている。この構造改革のためにかぎを握るのは、私は、この地方分権の推進、もう一つは情報公開の徹底というふうに今感じているわけです。
今回の地方分権一括法案、地方分権推進委員会、またその前は地方制度調査会と行政改革会議、さまざまなところで議論を積み重ねた上で、今回五百近い法改正を伴う一括法案の提示、こうなっているわけですけれども、中身が結局どれだけ改革の方に進んだのかという観点から見ると、非常に厳しい評価をせざるを得ないという状況にあるのではないかと思います。国と地方は対等の、また協力の関係と言い、また明治以来の機関委任事務を廃止されるということを考えますと、非常に大胆な思い切った地方分権かな、このように感じるわけですけれども、まさに竜頭蛇尾そのものではないかと思うわけです。
磯村市長の一括法案の評価は、第一歩を踏み出したというふうに評価をされているわけですけれども、明治以来の国家目標、例えば富国強兵とか、戦後であるならば貿易立国というふうな国家目標がまず前提にあった時期はなかなか地方分権は難しい状況にあった。もう一つは、実際、自治権を地方にゆだねても力不足である、人もおらないという状況であったかもわからないけれども、時代は完全に変わっている。かえって国の介入で、先ほど市長もおっしゃっているように、地方の独自性を失うどころか国全体そのものの発展、成長をとめているという現実があるのではないかというふうに思うわけです。
そういう観点から、今回の地方分権一括法案を、日本の明治以来の国と地方の関係を総括してお考えをお聞きできたらというふうに思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/398
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399・磯村隆文
○公述人(磯村隆文君) 私は、今回の地方分権一括法案について評価はいたしておるわけでございますし、この方向をもっとうまく進めていただきたいというのが本音でございまして、そのためには、財源配分と規制緩和というものが三点セットにならないと亡国の地方分権になりますよと申し上げたわけでございます。
なぜ今地方分権が大事なのかという根本的な議論でございますが、よく言われているのは、日本の経済が異質なので外国と同じようなことをやれ、特にアメリカ型のグローバルスタンダードというんですが、私は経済の専門家ですからいろんな事例を考えて、例え話で恐縮なんですが言わせていただきましたら、例えば、鳥が自分のテリトリーを持っていまして、そこでえさをとっていて、そこで生存競争をやってふえていく鳥もありますし、渡り鳥になりまして群れになってえさ場を移動していくという鳥の群れがありまして、これは長い進化の過程でそうすることが自分たちに一番適していると思ってやってきたことなのであります。
この渡り鳥の集団というのを考えてみますと、渡りをするときには、先頭が一番風を受けますから先頭に一番強い鳥が立つんです。それで、疲れると交代しているそうです。弱い鳥には周りがそばへ行って風を起こして楽に飛べるようにしながら集団で飛ぶという、言ってみれば護送船団方式ですが、日本は大体この方式をやって高度成長をやったわけです。つまり、えさ場えさ場へうまく移動していったわけです。
ところが、今回の不況は、とにかくあるえさ場に座ったんですが、座ったところが余りよくなかったわけです。昔のとおりに来たんですけれども、余りよくなかった。だから、みんなが全部困っちゃっているという状態なんです。こういうときには、渡り鳥の群れというのは強力な鳥が何羽かが飛び立って後を引きずるんです、ある程度は全体が体力がつかないとだめですけれども。何羽かが飛び立って、とにかく強いやつが引っ張るんです。疲れてきたらまたかわっていくというやり方で群れを維持するんですが、私は今の日本経済というのはそういう状況ではないだろうかと思っています。
地方分権と言っていますのは、まず全体の羽を休めて、とにかく不況が終わるまで頑張りましょう、しかしその中で、次のいい場所へ、次の新しい状況に適合するためには適合力の強いものを先に飛ばさないと後の群れは立ち上がりません、そのまま沈没するだけですから。そういう意味で、地方分権というのは、とにかく群れをいかに新しい局面に連れていくかというために避けられない状態で起こっているわけですから、ただ、地方分権ですよ、皆さんこういう法律をつくりました、どうぞと言ったのでは、今言っていますように沈滞している渡り鳥の群れを奮い起こすことにならないわけなので、だから、地方分権の本来のあるべき姿というのはそうではありませんかということを先ほどからるる申し上げて、私どもの事情を申し上げたわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/399
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400・山下栄一
○山下栄一君 大都市制度という新たな考え方で思い切った裁量権を与える仕組みをつくることができればというふうなお話がたしかあったというふうに思うわけです。私も、先ほどの昼と夜の人口のお話をお伺いしながら、欧米では直轄市といいますか、そういう考え方があって非常に自由な裁量権を与えている、そういう仕組みがあるように思うんですけれども、大阪市を初めとして大きな人口を抱えている大都市には、新しい地方分権、思い切った裁量権を与える、場合によっては独自の地方税源、もっと言えば、お金の発行権まで行くのは難しいかもわからぬけれども、そういうふうな仕組みが必要ではないかなということをお聞きしながら感じたわけです。
特に磯村市長の方から、新たな特別市構想といいますか、そういう観点から、このような中身の裁量権が欲しいというふうな具体的なことがございましたら、お伺いできればというふうに思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/400
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401・磯村隆文
○公述人(磯村隆文君) 今回の指定都市への権限移譲項目というのがずっとありまして、それは本当に意味のあることだというふうに私も思っておるのでございます。しかし、先ほどから申しておりますように、大都市圏にある程度のエネルギーを与えて群れをリードさせようと思うのだったら、大都市圏にもう少し独自の企画力と実行力を持たせた方がいいんじゃないかと思います。
例えば、大阪市を例にとりますと、我々は国際集客都市構想というのでこの十数年来いろいろな施設をつくって、乏しい財政なんですがいろいろやりくりをしたり第三セクターをつくったりしながらやってきて、おかげさまで、集客力が我々の関連する施設だけをとってみましても、平成五年から九年までに三倍にふえたというようなデータがあるぐらいでして、とにかくある一定の目標を持って、その町の特色を生かして、そしてそれを積極的に実行するという体制が整えば、これは経済学では比較優位と言うんですが、比較優位を持っている分野に進んでいけば、大都市それぞれが、これは中都市もいけると思いますが、自分の力でいろんなことがやれると思うんです。
要するに、一部先進的な都市のアイデアを国が参考にされて、それを一律に法案化して全部やりなさいと言っていたのでは意味がありませんので、それぞれの都市に、例えば都市計画なんというものは、手続的には先ほど言いましたように府県の認可とかなんとか残っておりますし、国の認可も残っているんですが、そういうようなものはもう少し思い切って大都市に独自にやらせて届け出制にするとか、こういうことをやりますのでよろしくということで済むとかということの方が、だから、手続の問題で認可にするか届け出にするかということよりも、もっと大都市の自主性を認めた思い切った自由度を与えた方がよくはないのですかというのが私の本意であります。法律のつくり方はいろいろあると思いますけれども、具体的には、特別市にすればいいのか、あるいは今のままでもいいからもっと自由度を与えるように規制緩和をやればいいのか、その辺のことはまたいろいろ専門家の御意見を伺いたいと思いますが、要は、もっと自由度を与えていただきたいということに尽きます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/401
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402・山下栄一
○山下栄一君 今の話に関連して、地方への権限移譲の中身なんですけれども、企画立案、調整、実施、一貫した権限移譲というのが、非常にたくさん法律はあるけれどもほとんどないというのが今回の地方分権一括法案ではないかなというふうに思っておるわけです。今おっしゃったこの企画立案を含めた一括した権限移譲というあり方をこれからやはり具体的に立法府としても提案していかにゃいかぬなと、今お話を聞きながら感じました。
阿部教授にお伺いしますけれども、先ほどお話の中で事務概念の混乱というお話がございました。法案では、地方自治法第二条第二項の改正の話ですけれども、地域における事務、これは非常に私はあいまいな表現であろうというふうに思っておるわけです。
自治事務というのは地域固有の事務なのかというと、法定受託事務以外の事務なんだという非常にあいまいなことになってしまった。私は、昭和二十三年の地方自治法改正の精神というのは、国の事務はこれこれですよ、そして残りは基本的に自己決定権のある地方自治体の仕事なんですよと、こういうことを指向していたのではないかというふうに感じておるわけです。この昭和二十三年の自治法改正の中で国の事務というのが具体的に書いてあったわけですけれども、今回の法改正でそれが削除されてしまったんです。
これも質問通告しておりませんのでちょっとあれかもわかりませんけれども、こういう国の事務を具体的に書いてあった規定を削除してしまったということは非常に私は問題ではないかなと感じているんですけれども、この点についての御所見をお伺いしたいというふうに思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/402
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403・阿部泰隆
○公述人(阿部泰隆君) 国の事務の概念はなくなりましたが、もともとも、国と地方それぞれ事務の概念はあったけれども、あれじゃ足りない、解釈で追加するなんと言っていたんですね、多分、通貨というのはそうでしたし。それで、今は国と地方の役割分担というのでここは一応規定してあると考えればよいのではないかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/403
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404・山下栄一
○山下栄一君 市長、もう一度最後にお願いしたいんです。
私は、国会議員にさせていただいて七年、東京に開会中は単身赴任しておるわけですけれども、東京へ行ってまさに一極集中という言葉はそのとおりだなということを感じまして、大阪の新聞に一般紙も含めて書いてあることと、東京で見る新聞の内容が一面から全然違う。まさに大阪というのは田舎の一つなんだという、そういうとらえ方が東京ではされているということを非常に感じました。
先ほどちょっと触れられました国際集客都市構想というのは、非常に私は重要な構想ではないかなというふうに思っておりまして、この地方公聴会が大阪市内、おひざ元で行われていることを機会に、大阪市のオリンピックの二〇〇八年のこともございますし、きょうお見えの全国選出の国会議員の前で、大阪の国際集客都市構想を初めとしての宣伝をちょっとしていただいたらどうかなというふうに思いまして、最後、済みません、よろしくお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/404
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405・磯村隆文
○公述人(磯村隆文君) 貴重な時間をいただいてPRしろというお話でございますが、簡単に申し上げますと、実は大阪という町は、第一次世界大戦までは日本資本主義を引っ張っていた鳥なんです。第二次世界大戦で統制経済になった段階で権限が全部東京へ移ります。それまでは、東京は政治の町、大阪が経済の町、ワシントンとニューヨークのような関係だったんですが、戦争で統制経済になって権限が東京へ移ります。
戦後は、管理貿易時代ですから、戦前よりもある意味では厳しい形で、もっと自由度があったところまで東京へ移っていきます。結局、総合商社が移り、銀行が移り、証券が移りというわけで、大阪が持っていた中枢管理機能がほとんど東京へ移ってしまうということになります。
大阪は戦後の高度成長期に何をやったかといいますと、主に海岸を埋めてコンビナートをつくりました。これは素材産業でございます。重厚長大産業をつくったわけです。ところが、昭和四十八年のオイルショックで重厚長大産業が立ち行かなくなりました。ですから、戦争中から戦後にかけて大阪の町が一変して重化学工業に頼るようになり、その重化学工業がオイルショックでだめになって、昭和五十年代のころはもうお先真っ暗でございました。もう大阪という町が完全に沈滞するのではないかと思ったわけでございます。
そのときに、まだ私、そのころは大学にいたんですが、何人かが集まって必死になって議論して、だんだんその輪が広がっていきまして、産業構造転換というのを積極的にやろう、国の今の制度のもとでどこまでやれるかわからないけれどもとにかくやってみようということで、我々が思いついたのは、とにかく昔のように大阪に人が集まるようにしよう、人が集まってきて初めていろんなことがビジネスチャンスとして生まれてくるはずだと。もう重厚長大産業を大都市でやっている時代ではないし、工場等制限法でそういうことはもうできなくなったわけですから、逃げ道はただ一つというので、実はそのときはそういう言葉ではありませんが、要するに花博をやろうとか、あるいは海遊館のように、ほかにないものをつくって人が集まってくれるようにしようとか、アジア太平洋トレードセンター、ワールドトレードセンターのような、国際経済機能を持っているものだけれども、できるだけ人が集まってくれるようなものをつくろうということでベイエリアの開発をやりました。
それが今やっと緒につきまして、先ほども申し上げましたように、そういう関連の施設の集客力が、平成五年のころには一年間に、我々の関係するところだけで民間は別なんですが、ほぼ一千万人の人が集まっていたんですが、この不況の最中の平成九年でも三千万人の人が集まるようになりました。
だから、そういうことが成功しているわけで、例えばユニバーサル・スタジオも間もなくできることになりますが、そういう集客都市が完全にできますと、大阪にいろんな人が集まってくる。そうしたら、大阪はいろんな資材を日本全土から買わねばならない。日本全土にまた人が行かねばならない。そして、外国からもたくさん人が来るでしょうから、いろんな形で、近畿圏はもちろんですが、経済に対してプラスの影響を与えるだろうという積極的な意味で国際集客都市構想と言っておりまして、その延長線上で、二〇〇八年ならオリンピックを呼んでも不都合ではないな、もしオリンピックを大阪でやることができれば日本に対してもう一度新しい注目を集めることになるし、東南アジアの人がどっと日本へ来てくれるだろう、大阪はその先駆けになるためにもオリンピックを呼びたい、こういう姿勢でやっております。
ありがとうございました、PRさせていただきまして。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/405
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406・山下栄一
○山下栄一君 時間が超過しまして、済みません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/406
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407・八田ひろ子
○八田ひろ子君 日本共産党の八田ひろ子でございます。
きょうは、三人の公述人の皆様に本当に貴重な御意見を承ることができて、大変勉強になっております。私、限られた時間内ではございますが、順次お伺いをしていきたいというふうに思います。
先ほどの意見陳述の中でも皆さんおっしゃいましたが、地方自治、地方分権ということ、私どもも、憲法の重要な柱として地方自治というのが位置づけられておりますし、その地域のことはその地域住民が決定して実行し、そして地方自治法第二条に明記されております住民の安全、健康及び福祉を保持するという地方自治体本来の仕事がより前進できるという意味で、地方分権というのを皆さんと一緒に進めなければならないという立場でおります。
ところが、実際に、今審議しておりますこの法案そのものも膨大な中身がございますし、その中身をとっても、先ほど来御意見が出ているようにいろいろな問題が出ております。
皆さんが異口同音におっしゃっております地方分権というのは、憲法と地方自治法の精神に立って本当に地方自治権を拡充する、地方が元気になるというお話もあったんですが、この住民自治に基づいて地方自治体が住民の利益を守る仕事に全力で取り組めるようにすることであると思っておりますし、そのためにこそ、今までの国による官僚統制というんですか、そういうものをなくして、権限と財源を地方自治体に大幅に移譲することを目的としていると思います。
まず最初に、徳畑公述人に伺いますが、先ほど御説明をいただきまして、大変細かい資料、アンケートもいただいたんですが、今見てすぐよくわからない部分もあるんですが、とりわけ住民の暮らしを守るという立場でこの分権を、これは最終報告が出る前のアンケートだということだそうですが、このアンケート結果をもう少しそういう点から詳しく御説明をいただけたらというふうに思うんです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/407
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408・徳畑勇
○公述人(徳畑勇君) このアンケートは、中間報告の後、第一次勧告があった直後ということで、かなり中間報告に対する評価がされていた、そういう時期でもあったというふうに思います。しかし同時に、国の財政構造改革というものが出されてきまして、一方で財政が大変だということで国も自治体もぐっと財政を抑えていく、支出を抑えていくということで、特に地方自治体に対して行革、自治体リストラ、こういうものを促進する動きがこの時期強まってきたということが大きな特徴ではなかったかというふうに思います。
そういう点で、やはり今、各自治体、特に市町村の関係者が一番悩んでいるのは、財政が非常に逼迫している。これは大阪府もそうなんですが、大阪で言えば、大阪府下の市町村も例外なく財政が大変な危機になっている。こういう中で自治省の自治体リストラ指針というものが出されまして、そして地方自治体がそれをもとにして行革、リストラの計画を立てる、こういう流れになってきたわけです。その中で自治省は、特に職員の人員削減や給与の適正化、こういうものについては数値目標を出してやれと、それから民間委託も促進するということで、これは具体的な業務も例示しながら促進させると。こういうことで、やっぱり市町村は財政が大変なのでどうしてもそういうところにしわ寄せしていくという流れがこの間強まってきたというふうに思います。
大阪府も、先ほど申し上げましたように特に税収の落ち込みが大変だということで、大阪府の財政再建プログラムというものが立てられました。その中では、これまで大阪府は老人医療費の助成制度を初めとして府民のためにかなり水準を上回った施策をしてきたんですが、それも同時に市町村が一緒になって、市町村が主体の事業というものが結構ありまして、そういうことでやってきたものを削っていく、こういう流れ。そしてまた、市町村に対する振興補助金を初めとした援助も打ち切っていく。今計画されています市民病院などへの助成、これを打ち切るというふうに言っていますけれども、今の自治体の、特にこの市民病院などは大阪府の援助を打ち切られるともう回っていかない。考えられているのはもうそれこそ民間委託というふうなことがまじめに考えられているというふうなことで、大阪府の医師会などもそういう点では公的病院の役割は一体どうなるんだというふうな意見も随分と今起こってきているわけです。
そういう点で私どもは、こういう今の流れが、地方分権と言いながら、実際にやっていくことは住民の福祉や医療や教育、こういうものを切り捨てる流れになっていると。分権が決してそういうものを逆転するんではなしに、そういう流れを一層促進する、こういうことになっていることに大変危惧を持っております。
それで、やっぱり今大事なことは、国も地方自治体もそういう点で巨大開発などに莫大な公共投資をしていくというふうなやり方を改めて、国民の、住民の福祉や医療や暮らし、こういうものに重点を置いた税の使い方をしていく、こういうふうに転換しないと、幾ら地方分権といってもそれは絵にかいたもちになって住民にとっては決してプラスにならない、こういうふうに考えています。それは大体どこの市町村も悩みは共通しているのではないかなというふうに思っています。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/408
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409・八田ひろ子
○八田ひろ子君 このアンケートの最初のところにも、地方自治体の皆さん方の六割近くが財源移譲、税源移譲ですか、これを期待している、この分権でそれがあるということなんですが、今のお話ですと、大変多くの自治体がかつてない深刻な財政危機に今直面をしているわけなんですが、そういう面ではどうなんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/409
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410・徳畑勇
○公述人(徳畑勇君) おっしゃるとおりで、各市町村はやはり権限の移譲とあわせて財源移譲もしてほしいということを強く求めておりまして、この点では全体的にも六割の税源移譲を求める声が寄せられているというふうに思います。
ただ、近畿の二府四県の場合でも、規模の大きい市と町村とでは少し税源の拡充の中身が違うということがこの中でもあらわれております。町村の場合になりますと、いわゆる税源を地域に求めるということは非常に難しい、そういう状況がありまして、やはり地方交付税の改革を求めるだとか、いずれにしても補助金ですね、補助金をもっと上げてほしい、こういう傾向の要求が強い。都市部の市町村になりますと、やはり独自財源、こういうものを地方に回してほしい、こういう強い意見があります。この辺は調整をしながらやる必要があるというふうに思うんですけれども、いずれにしましても市町村はそういうことを強く求めているということが言えるのではないかというふうに思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/410
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411・八田ひろ子
○八田ひろ子君 ありがとうございました。
時間がもう余りないんですが、最後に徳畑公述人、それから阿部公述人にお伺いします。
先ほど来のお話の中でも、分権というなら住民参加が非常に重要だというお話がありました。市町村合併に関しても、私、きょう全国の町村会の決議を持ってまいりましたが、先ほど磯村公述人もおっしゃいましたが、一律に人口規模や財政規模によって合併を議論することは極めて不適切で、地域住民の意思を十分に尊重し、合併を強制することのないように留意することというのを私も緊急要望というのでいただいているんですが、今回のこの分権にあらわれている全体の中身として、住民参加の面ではどんなふうにお考えになっているのか。
特に阿部公述人に、時間がなくて詳しく伺えなかったんですが、条例制定権、法令の上乗せ、横出しで今までもいろいろとなさってきたんですが、今回の法定受託事務に変わった中でどのようにお考えか。また、住民参加をそこにどういうふうに反映できるとお考えなのか。
ちょっと漠とした質問で申しわけございませんが、お二方に最後にお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/411
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412・阿部泰隆
○公述人(阿部泰隆君) 最初に発言を封じるようなことを申し上げたのでそちらの質問がしにくくなったのかと思いますが、いろいろしゃべりたいことがあります。
今、住民参加と言われると、先ほど一回お答えしましたが、住民投票の拡充というのでただすべて住民投票を認めるのじゃなくて、とりあえず僕は、議員さんの選挙区とか歳費とか定数とかというのは一つやってもいいし、あるいは市町村合併なども同じように議員さんの利害にかかわることなのでむしろ議員さんから離れて考えた方がいいと。そのときは徹底した情報公開をやって、住民たちが自主的に決断できるようにすべきだというふうに考えます。
住民自治参加という話のほか、今言われた条例制定権の話ですと、例えば今まで宝塚市が、我が町ではパチンコ店はたくさん来られちゃ困るというので、風俗営業法ではパチンコ店を許しているところを禁止しましたら、大阪高裁でも違法だと、法令に反するというふうな判決が出ています。
しかし、そうなんでしょうか。パチンコ店が来てほしいというところと来てほしくないというところがあってよいのではないかと。法令で縛るんじゃなくて、地域の自主的な判断にゆだねて、あとそこから先、しかしパチンコ店営業を過度に侵害すれば憲法違反ということはあるけれども、風営法施行令とか都道府県条例で縛ることはない。そして、今回のこの法律を見ますと、特に自治事務の場合は自主性を大いに尊重するようになっていますからそのような解釈がなされるべきだと思いますし、それは国会できちんと確認していただければありがたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/412
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413・徳畑勇
○公述人(徳畑勇君) 住民参加の問題につきましては、二府四県のアンケートの中では自治体の長としては余り積極的でないという面が出ております。ただ、一般論としては、住民参加を促進すべきであるということは大体共通はしているというふうに思うんですが、理解があるということなども含めまして。中身として見ると、市民との懇談会だとか行財政情報の公開だとか公報・公聴活動の充実、総合計画策定への住民参加等々、こういうところにかなりウエートが置かれている。
しかし、今やっぱり重要な問題で、例えば神戸空港の建設問題で神戸市でああいう住民投票の運動が起こりました。それから、徳島の吉野川の河口堰の問題でも、やっぱり大きな問題だということで住民投票の運動が起こりました。今、地域住民にとって本当に大切なことが議会では十分に住民の声が反映されないということで、そういう直接住民投票で住民の意思を反映したい、こういう流れが一方で随分と起こってきているわけで、やっぱりその点はこの地方分権を進める際には避けて通れない問題だというふうに思っております。
そういう点が全く触れられていないという点で私は非常に遺憾といいますか不十分だなというふうに思っておりまして、もっと積極的に住民参加を分権の中で位置づける必要がある、同時に情報公開がそういう点で非常に大切だというふうに考えています。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/413
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414・八田ひろ子
○八田ひろ子君 どうもありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/414
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415・大脇雅子
○大脇雅子君 社会民主党の大脇でございます。
磯村公述人にお尋ねをいたしたいのですが、確かに、この分権法案が地方に密着した御意見を反映することなく規定せられたというそういう御批判は、私たちはやはり心して法案審議に反映させていかなければならないというふうに御意見を伺って思いました。とりわけ、大都市に自由度を与えてほしいという御意見には私も共鳴いたしまして、画一性のあるものから脱却して、やはり創造的な町づくりが各地で行われることこそ日本の活性化につながるんだと思います。
とりわけ、これからは条例制定権の行使といいますか、そういったことが国の立法機関と同じように地方自治体の大きな課題になると思いますが、そうした職員の企画立案能力、そしてそういう条例制定に向けてのシステムというものをどういうふうに構築していったらいいのか。大阪市のような大きなところでは大変な経験をお持ちだと思うんですけれども、各市町村などにはそれが一番これから大きな課題になっていくと思いますので、その点について御意見を伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/415
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416・磯村隆文
○公述人(磯村隆文君) 大阪市の場合でも、専門的な職員がいてどんな条例でも自由自在につくれるというほどうぬぼれてはおらないわけでございます。やっぱりそれぞれ専門の方々の御意見も伺いながらということで、本当に実質的な発言権あるいは実質的な調整権を持っているような審議会をつくって、いろんな専門家の方々の御意見も伺いながら作業を続けるということが多うございますが、今までの私どものやり方から考えて、そういうやり方で大きな失敗をしたことはありません。
小さい市町村の場合は一体どうなのかということになりますが、市町村といいましても、本当に大都市圏から離れた遠隔地の過疎地帯になっているようなところもあるでしょうし、あるいは大都市周辺で非常に小さいながら力を持っておられる、また専門家もたくさんおられるというようなところもあると思いますので、一概には言えないと思いますが、先ほどから話題になっております本当の意味の市民参加、パフォーマンスで市民が集まって騒ぐというやつじゃなくて、本当にそれぞれの市民の立場の経験と知識を生かせるような参画の仕方で、そしてほかの市町村がやられたことを参考にしながらというのであれば、小さい市町村でもそれなりのことがおできになるのではないか。
ただし、私は国が一切関与するなというようなことは全然考えておりませんので、全国的な基準といいますか、統一的な処理のために最低限国が関与しなければならないということは当然かというふうに思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/416
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417・大脇雅子
○大脇雅子君 ありがとうございました。
では、阿部公述人にお尋ねをいたします。
さまざまな法的な問題点を御教示いただきまして、ありがとうございました。なかなかに審議の中でも法的な問題点については詰めが、衆議院の審議でも行われずに参議院に回ってまいりましたし、参議院でもなおかつ不十分だというふうに思われます。とりわけ、私が考えております、そして先生が御指摘なさいましたいわゆる自治事務への是正要求についてお尋ねをしたいと思います。
これまでは内閣総理大臣の措置要求という非権力的な関与であったわけですが、今回、自治大臣の答弁によりますと、自治事務だけではなくていわゆる法定受託事務にも条例制定権はあるという答弁をしておられまして、それに対して是正命令というのはどうやってかかっていくのか。自治事務に対するものと法定受託事務に対するものと、条例が制定された場合にこの国の是正命令というものがどうかかり、それが違うのかどうかということに実は大きな疑問が私はありまして、また是正命令の拘束力についてもさまざまな意見があります。これについてもう少し詳しく御教示いただけたらと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/417
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418・阿部泰隆
○公述人(阿部泰隆君) 国会は立法機関でありまして、諸先生方はローメーカー、法律をつくる職責でおられるので、国会では関連する政策課題を議論するだけではなくて、政策目的を達成するためにこのような条文でよいのかということについてきちんとした審議があるべきであります。
そして、今そのような観点から御質問があったわけでありますが、法定受託事務に関する是正の指示は、改正法案の二百四十五条の七、「各大臣は、その所管する法律又はこれに基づく政令に係る都道府県の法定受託事務の処理が法令の規定に違反していると認めるとき、又は著しく適正を欠き、かつ、明らかに公益を害していると認めるときは、」「必要な指示をすることができる。」とありまして、こちらの方は「必要な指示」とありまして、これは命令と同じというつもりで立法されているんだと思います。
そして、これに従わないということになるとどうするかというと、またあと、最後の方には代執行というような制度もあります。ただ、実際上代執行できるかということになりますと、恐らく組織的にも人員的にもできないんじゃないかという場合が多いとは思いますが、とにかくこれで自治体のやっていることは違法だということを言われかねませんので、自治体の方から争うということで、法治国家のルールにのっとり裁判所で判断していただくということであります。
そして、法定受託事務というのは自治体の事務だということにされているようですけれども、しかし、それは法律のルールにのっとって自治体が処理するということですから、法律のルールに乗っているかどうかを裁判所で争うというのは大変結構なことであります。ただ、自治事務の方はあくまで自治体の事務ですから、それが法令に違反したからといって、国会が乗り出すのはともかく、中央官庁が一々乗り出すほどかどうかというので、先ほど申し上げたように、単に法令に違背する場合とか不適切だというだけではなくて、国家的利害に大きくかかわる場合、初めて中央官庁が乗り出せばよいのではないか。むしろこの場合は、自治体の住民の方のコントロールというので、議会の活性化を図るというのが筋である。
ただ、先ほど住民投票を一般的にやるかという問題がありましたが、僕は、住民投票をすべて一般的にやるとすれば、むしろ議会を飛ばしてしまうということになるし、議会は信用ならないというのであれば、そういう議員を選んだ住民たちはどうなっているんだということになりますし、本来はやはり議会を活性化するということですから、先ほどいろいろ述べましたが議会をまず活性化するのが筋で、ただ議会自身に決められないことについては住民投票はいかがですかという申し上げ方をしたわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/418
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419・大脇雅子
○大脇雅子君 確かに発動要件は、先生の御指摘のとおり非常に裁量的なものまで含んで、法令の規定に反していると認めるときだけではなく、または著しく適正を欠き明らかに公益を害しているというのは、私も非常に広過ぎるという点についてはそのように思います。先生の改正案を見てみますと、国法上違法であって国家的な利益を著しく損なう場合に限るという御示唆については、本当にありがとうございました。
そして、今おっしゃいました、確かに住民の直接請求制度とか首長のリコール制度とかあるいは住民監査請求とか、そしてもう一度住民投票というようなものが活性化して地方議会や首長をコントロールしていくという点をやはり心して、法の原則に立ち戻らなければいけないというふうに教えていただきましたこと、御礼申し上げます。
さらに、それでは徳畑公述人にお尋ねをいたします。
国の法定受託事務というものは、しかし実は自治体における事務の執行ということとリンクしているわけであります。とりわけ職安行政など、それから厚生のいわゆる年金に関する社会保険事務などはまさにこの法定の受託事務とされたわけですけれども、実際は自治体のさまざまな職員の方たちとの連携の中でずっと進められてきたわけです。したがって、職安行政が国の法定受託事務となりますけれども、各地方自治体のいわゆる労働部との連携の中で地域に密着した雇用の開発やあるいは雇用不安の解消がなされてきたわけだと思います。
また、さらに国民年金の空洞化が言われておりますけれども、ただいまいわゆる地をはうようにして徴収事務をしていただいております、そういう人たちは皆地方自治体の方の職員でありまして、それが法定受託事務ということとの連携が絶たれますと、大変国民年金の空洞化を招くのではないか。
この点について住民サービスの全体としての低下につながるということがいろいろ議論されておりますけれども、その点について御意見を承りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/419
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420・徳畑勇
○公述人(徳畑勇君) 国の仕事と自治体の仕事の振り分けといいますか、そういう点で随分といろいろ議論がされたようでありますけれども、いわゆる職安行政だとか社会保険の仕事について自治体のレベルでこれまで長年やってきたということについては、我々もそれは現場が地方にあるということで評価するわけですけれども、しかしその仕事そのものが国の仕事だというところについては、これはだれもが否定できないところだというふうに思います。
そういう点で、今回のいわゆる社会保険事務や職安事務、こういうものが国の仕事ということで明確にされたことについては、我々はそのことについて依存はないという考え方でありまして、そういう点で今後仕事をどういうふうにしていくのかということが大きな課題になるんじゃないかなというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/420
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421・大脇雅子
○大脇雅子君 財政が対応しないまま事務量がふえ、その中で職員のリストラが進行していくという警鐘に対して、私たちも心して対応してまいりたいと思っております。
御意見、ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/421
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422・入澤肇
○入澤肇君 最初に、磯村公述人にお聞きしたいと思います。
大阪市の位置づけにつきまして大変明快な御説明がありまして、参考になりました。今度の地方分権の問題は、受け皿としての地方自治体の強化の問題があわせて議論されなくてはいけないと。これにつきましては、先ほどから合併の議論あるいは財源の付与の問題、あるいは人材の養成の問題、こういうことが議論されておりますけれども、とりわけ財源の付与、これもいろんな問題がございますので、独自の今度新しい地方税を創設することも認められることになりますので、それについてのお考えがあるかどうかをまず第一にお聞きしたい。
二つ目は、人材の確保、養成の中で、関係市町村との人材交流、これが北関東とかなんかではかなり定着しつつあるんですけれども、そういうふうなことをお考えになられているかどうか。
それから、中央省庁からの出向人事についてのお考え。
この三つをまず第一にお聞きしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/422
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423・磯村隆文
○公述人(磯村隆文君) 独自の地方税の問題でございますが、国の場合もそうでございますけれども、新しい税金をつくるというのは大変現実の問題として難しいわけでございます。ただ、関係の方々に納得をしていただけるようなやり方があるとすれば、我々としてはそういうこともやってみたいというふうに考えております。
それから、人材交流でございますが、地方の郊外の市町村の方々と特にということはございませんが、府市間では人材交流をやりまして、お互いにお互いの立場がわかるようにということでもう相当長い間続けておりまして、これはうまくいっております。ただ、現場の例えば消防ですとかそういうことについては、大阪市が中心になりまして広域的な人材交流あるいはお互いに訓練を補助するというようなことを積極的にやっておりますし、我々としてもいろいろな市町村の方々と交流することについては何もためらってはおりません。姉妹都市である上海からもメルボルンからも人が来て、市役所にいて仕事をしてくれて帰るわけですから、これは大いにやらせていただきたいと思います。
それから、国からの出向ということでございますが、大阪市は伝統としてやっておりません。自分たちで人を育てられるというそういう自信があったからでございますが、今までのところ、国から来ていただく方には出向というのではなくて、やめていただいて本市職員になっていただくのならそれはどなたでも来ていただきたいんですが、ちょっと何省から私の方のポストというふうなことはやっておりません。今後も余りその必要を感じておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/423
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424・入澤肇
○入澤肇君 もう一つお聞きしたいんですけれども、今度は国の試験研究機関、これが独立行政法人になるということになっているんですけれども、大阪市で大阪市独自の研究所だとか、あるいは博物館だとか美術館、こういうものを同じように独立行政法人的なものにする考え方はございませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/424
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425・磯村隆文
○公述人(磯村隆文君) 私どもは、まず国が独立法人になさるというときのやり方を拝見したいと思っております。もしそれでうまくいくのでしたら、ぜひそういうやり方も考えてみたいと思います。
大阪市の場合も、外郭団体という方式でいろいろな事業をやっておりますので、例えば美術館にしても大学にしても外郭団体の一つとみなすということはあっても別に不思議でも何でもないわけでございます。ただ、そういうやり方をして本当の意味で大学なり美術館なりがうまくやっていけるかどうかという点を見定めませんと、今はやりだからとかといってやってしまったのではそれこそ後戻りができませんので、我々としては慎重に考えているというふうにお答え申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/425
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426・入澤肇
○入澤肇君 次に、阿部公述人にちょっとお聞きしたいんですけれども、私は先生の考え方に極めて賛成でございまして、法律が極めてわかりにくい。ことしの予算委員会におきましても、法制局長官に、もう少しわかりやすく書いたらどうか、法律が正確に書くためにわかりやすく書けないのであれば、少なくとも法律案要綱ぐらいは解説的に書いたらどうかということを申し上げたんです。
先生の今の文章を読んでみますと、かなり細部にわたりまして独自の考え方で書かれていますけれども、法律の書き方につきまして何か先生独自の方法論みたいなことでお書きになった論文はございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/426
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427・阿部泰隆
○公述人(阿部泰隆君) 私は、昔から、法律をつくるときあるいは読むときにお上の立場に立ってはいけない、そうではなくて、それを適用される国民の方から読んでみるべきだということを唱えてきています。
法の明確性の要請あるいは行政救済ルール明確性の要請と言ってかねがね主張していることですが、例えば大阪空港訴訟で最初に民事訴訟を提起したら、一審、二審と民事訴訟でよいと言われたのでやっていたら、最高裁の最後になって民事訴訟は許されないという判決が出ました。こんなことは一審、二審の裁判官にもわからなかったことなんです。それなのに、最高裁まで行ったら、おまえらは訴えの仕方を間違えたから助けてやらぬと言われたわけです。これは、法律も不明確だから同時に国会も責任を負わなきゃいけないんです。裁判所も責任を負わなきゃいけない話で、こういうことのツケを国民に回してはいけないというふうに考えたわけです。
行政救済だけではなくて、法律自体が非常に不明確で、役所に行って解説を聞かないと何だかわからない、担当者もかわると実は自分も解釈がわからないんだというようなことになっています。これでもわかったことにして行政を執行しているというのは、およそ法治国家ではないわけです。
だから、私が伺いたいのは、先生方がこの法律を読んで、地域の事務というのをちゃんと読めますか、説明を聞くと法定受託事務が入るんだと言われるからそのつもりになってしまいますが、国政事務もあるいは国政選挙も外国人登録も地域の事務だというふうに最初から素直に読めたんですか。
先生方が説明を聞く前に素直に読んで正しく読めるのならいいですけれども、そうでなければだれでも素直に読めるような条文にする、それで法律の解釈肢はなるべくなくす、どうしても要るでしょうけれども、できるだけ解釈肢はなくす。国民がだれでも法律を読めばわかるようにできるだけしていくというのが国会の立法精神であるべきだし、それで私の本ではいつもそのようなことを書いておりますが、そのようなことをきちんと書いた人は多分今のところいないのじゃないかと思いますが、ただ一つ「法の平易化」という本が出ました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/427
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428・入澤肇
○入澤肇君 ありがとうございました。
最後に徳畑公述人に。
先ほどから地方分権は押しつけであるという議論が展開されております。ただ、国の分権推進委員会、これは五百回に及ぶ議論をし、また国会でも衆参両院でかなりの議論をされております。徳畑公述人が理想とする地方分権のあり方、デュー・プロセス・オブ・ロー、それから国の関与、この二点からひとつお考えをお聞かせ願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/428
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429・徳畑勇
○公述人(徳畑勇君) この間の中間報告以来の地方分権にかかわる議論というのは確かにやられてまいりましたけれども、私が言いたいのは、それが地方自治体のそれぞれの市町村の長や、また議会の関係者の方や、そういう人たちに本当に議論の素材を与えて議論されてきたかというと、決してそうではない。それから、まして住民の側になりますと、これはもう全く知らないと言った方がいいのではないかというふうに思います。
もちろん、第一次勧告から第五次勧告までやられましたけれども、そういう中で随分と中身は変わってきています。そういう点で、今回の法律案が出されて初めて一定のレベルで議論ができる、そういうことになっているのではないか。恐らく国会議員の先生方の中でも、全貌について十分理解をして、よし、これでいこうということにはなっていないのではないか。だから私は、そういう点では押しつけでないものにするために徹底した議論、こういうものが今こそ必要ではないかということであります。
そういう意味で、どういうものが理想かというのは、それこそ住民の立場も含めて議論した上で決めていく。基本的には、自治を拡大するために機関委任事務を廃止して地方に仕事も財源も移していこうと、この流れは私どもも決して否定はしていないということであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/429
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430・菅川健二
○菅川健二君 私は、長い間地方自治に関与しておりまして、大阪につきましても、実は大学を出てから間もなく大阪府庁に三年余り勤めさせていただきましたので、非常に懐かしく思うわけでございます。
その当時、大阪府・市というのは、これから高度成長という時期で、お互いに緊張関係を持ちながら機能分担をしていく、マルク債も日本で初めて共同発行するというようなこともございますし、また、大阪市の都心の外延的機能の拡大に対して大阪府が果たしてきた役割もそれなりの役割があったのではないかと思うわけでございます。
ただ、今、市長さんが御指摘のように、これから安定成長期になってまいりますと、都市も外延的拡大というよりもむしろ都心部の再開発なり都心部の機能を強化していくということからしますと、大都市により力を与えよという御主張も私はうなずけるわけでございますが、そこで具体的に税財源の移譲、確保ということについてもし提案がございましたら、おっしゃっていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/430
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431・磯村隆文
○公述人(磯村隆文君) これはよく議論されていることでございますので簡単に触れさせていただきますが、例えば国庫補助負担金の整理統合というようなことがよく言われますが、これは確かに進めていただきたいと思いますし、それからわざわざ国庫補助金にするまでもなく、できれば税源配分という形で最初から我々にもう少し税金を使わせていただけないだろうか。私たちは、一言で言えば、せめて世間並みの三割自治にさせていただけませんかと申し上げたいわけでございます。
そのためのやり方としては、ただいま申しましたように、例えば税源移譲の問題もありますし、それから地方財源の問題についていいますと、これはいろいろ変えてはいただいておるのでございますが、国、地方の税源配分を、パーセントの問題でございますが、変えていただくというような抜本的なことができないのだろうか。
それから、特に、細かい点で申して恐縮ですが、法人住民税というのは実は市町村への配分割合が八・二%という極めて低い水準でございますし、それから消費流通課税、これも都市的な税目でございますが、これが市町村への配分割合が三・三%でございます。こういったものを特に拡充していただいて、さらに、例えば大都市では国とか都道府県の管理その他、事務配分ということを都道府県にかわってやらねばならないわけでございますから、そういう点についての税制上の特例措置というものを認めていただけないのであろうか。
もちろん、課税自主権の尊重という点も、先ほどちょっと質問にお答えいたしましたが、法定外普通税というようなものをできれば一番いいのでございますが、これは政治的な立場でいいますとそう簡単にまいるものでもございませんので、差し当たっては今の補助金制度の整理統合、それから国と地方との税源の、大都市に向けてはせめてもう一度税源配分を見直していただけないものであろうか。
交付金制度そのものについて私どもは反対ではございません。どうしても財源のないところに交付金をお配りになるのは当然だと思うんですが、先ほどの大都市制度の確立あるいは大都市にある程度重点的な施策をという意味で大都市に税制上の特例措置などを認めていただいて、それも永久でなくて結構なんです。先ほど成長率が二%になったらとおっしゃっていたのですが、成長率が二%を超えてくれるのだったら大都市も何とかやっていけるようになるだろうと思うんですが、この時期ですから、早く何か、お互いに乏しきを分け合うのですけれども、それを将来のために今ここで我慢して、大都市に一回飛んでみろというようなやり方をお考えいただけたら、大都市としても頑張れるというふうに思います。
以上でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/431
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432・菅川健二
○菅川健二君 今、国庫補助金の話があったのですが、この点につきましては、私は、財源の問題とあわせて、国の関与の問題としていわゆる事務に対する関与と補助金の関与と。補助金の関与によるものについては今回ほとんど野放しになっているのですね。阿部先生、公述はされませんでしたけれども、何か七ページの方にそういった指摘があるようでございますけれども、この点につきまして先生の御主張をおっしゃっていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/432
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433・阿部泰隆
○公述人(阿部泰隆君) どうも大変よくお気づきいただきまして感謝申し上げます、時間の関係と思って省いたんですが。
先ほどから今回の地方分権では財源移譲が足りないのではないかということを盛んに議論されていますが、ただ、今回やっているのは機関委任事務を法定受託事務と自治事務という形に法治国家流に衣がえするということで、どうせ地域でやっているものについてはやらせる、法的性質を変える、国の関与の仕方を変えるということですから、お金の点では直ちに自治体で大金が必要になるということではないんですね。だから、財源の再配分は必要でしょうけれども、それは本来とりあえず別の話だと私は理解しています。
それで、ついでですが、自治体の方に財源を再配分するときに、地方交付税は既に補助金化しているわけですね、地域総合整備債などを一割か何か出せば十割の仕事ができるというような。それで、こういうものの見直しを自治省の下にある委員会でやらせるというのはどだい無理な話で、やはりこれは別の委員会、自治省から離れたところでやるというふうに国会が決めていただかなきゃいけないのですね。
それであと、今御質問があった補助金の話ですが、これから国の関与というのが法律のルールに乗るといっても、補助金の方では全然乗らない。補助金の査定は今までどおり非常に不透明なところで行われるといったのでは、余り変わりない。今までだって機関委任事務で自治体をコントロールしていたんじゃなくて、実は補助金でコントロールしていたんだとよく言われているわけですから、今回の改正で実質はそんなに変わらないだろうと見ている人も結構いるわけですね。そうしますと、補助金の方を透明なルールにするということがぜひ必要です。
それで今、補助金を出すときに官官接待とか陳情とか、名刺をいっぱいいただいたとか、そんなことをやっちゃいけなくて、補助金を出すかどうかというときは、こういう会議を開いてそこで補助金申請者が公述して、補助金を出す官庁はそれで採点して、それ以外の接触は一切禁止する、それ以外接触したらもう汚職に近いというルールをつくって決めるべきだと。それで、その判断過程はすべて透明にするというふうにすればよいのではないか。
そういうことをやればあの道路公団の汚職などもなかったはずだし、自治体の方が陳情でお百度参りすることもないし、それこそが本当の法治国家だというふうに思いますので、ぜひともそちらの改正も次の機会にお願いしたいと思っています。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/433
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434・菅川健二
○菅川健二君 補助金の中でも、私、公共事業の補助金について、やはりそれぞれがひもつき、箇所づけというのが地域における一つの思い切った投資を集中的にやるのを妨げておるのではないかと思うわけでございまして、この点について一括交付金化をできるだけ早くやるべきだということを主張しておるのでございますけれども、市長さん、再びいかがでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/434
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435・磯村隆文
○公述人(磯村隆文君) おっしゃるとおりでございまして、一括化することによって国庫補助金の総額を減らすという方向はちょっと避けたいと思いますが、できるだけ使いやすい形にしていただければお金が生きると思います。
本当に正直なことを申し上げまして、今のようなこんな補助金ならもらいたくないと思うほどなんですよ、我々の立場で言うと。ここまで手間暇かけて、陳情まで行っていただいて、これだけかというのがありますのでね。ですから、そういうふうなのはもうできるだけまとめて大くくりでぽんといただければいいんですが、最近、物によりますと役所の中の課ごとに握っているのがありまして、そういうようなのはできるだけ一括していただきたいというふうに思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/435
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436・菅川健二
○菅川健二君 徳畑公述人さんにはまことに失礼ですけれども、ちょっと時間がなくなりましたので。
どうも皆さん、きょうはありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/436
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437・石渡清元
○団長(石渡清元君) 以上で午前中の公述人に対する質疑は終了いたしました。
この際、公述人の方々に一言御礼を申し上げます。
皆様には、長時間にわたり有益な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。拝聴いたしました御意見は本委員会の審査に十分反映してまいりたいと存じます。委員会を代表いたしまして、厚く御礼を申し上げる次第でございます。(拍手)
午後一時に再開することとし、休憩いたします。
〔午前十一時三十八分休憩〕
─────────────
〔午後一時再開〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/437
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438・石渡清元
○団長(石渡清元君) ただいまから参議院行財政改革・税制等に関する特別委員会大阪地方公聴会を再開いたします。
私は、本日の会議を主宰いたします参議院行財政改革・税制等に関する特別委員会理事の石渡清元でございます。よろしくお願いいたします。
まず、私どもの委員を御紹介いたします。
自由民主党所属の大島慶久理事でございます。
同じく自由民主党所属の狩野安委員でございます。
同じく自由民主党所属の海老原義彦委員でございます。
民主党・新緑風会所属の高嶋良充委員でございます。
同じく民主党・新緑風会所属の福山哲郎委員でございます。
公明党所属の山下栄一委員でございます。
日本共産党所属の八田ひろ子委員でございます。
社会民主党・護憲連合所属の大脇雅子委員でございます。
自由党所属の入澤肇委員でございます。
参議院の会所属の菅川健二委員でございます。
以上の十一名でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
参議院行財政改革・税制等に関する特別委員会におきましては、目下、内閣法の一部を改正する法律案等中央省庁等改革関連十七法案及び地方分権の推進を図るための関係法律の整備等に関する法律案について審査を行っておりますが、本日は、これらの法律案について関心の深い関係各界の皆様方から貴重な御意見を承るため、当地において地方公聴会を開会することにいたした次第でございます。
なお、午後は、中央省庁等改革関連十七法案について御意見を承ることといたしております。何とぞ特段の御協力をお願い申し上げます。
次に、公述人の方々を御紹介申し上げます。
社団法人関西経済連合会行政制度委員長井上義國公述人でございます。
大阪市立大学法学部教授真渕勝公述人でございます。
岡山大学経済学部教授山本清公述人でございます。
国家公務員労働組合大阪地区連合会執行委員長滝口敬介公述人でございます。
以上の四名の方々でございます。
この際、公述人の方々に一言ごあいさつを申し上げます。
皆様には、御多忙中のところ御出席をいただき、まことにありがとうございます。
本日は、皆様から忌憚のない御意見を拝聴し、今後の委員会審査の参考にいたしたいと存じます。どうぞよろしくお願いをいたします。
次に、議事の進め方について申し上げます。
まず、公述人の方々からお一人十五分で順次御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答えいただきたいと存じます。
なお、御発言は着席のままで結構でございます。
それでは、これより公述人の方々から順次御意見をお述べ願います。
まず、井上公述人にお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/438
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439・井上義國
○公述人(井上義國君) 関西経済連合会の行政制度委員長を務めておりますダイキン工業の井上と申します。
本日は、中央省庁等改革関連十七法案につき、私どもの意見を述べさせていただく場を設けていただき、ありがとうございます。
また、御出席の石渡団長を初め、参議院行財政改革・税制等に関する特別委員会の皆様におかれましては、地方分権推進一括法案なども含めまして二十一世紀に向けた日本の枠組みの再構築という難題に精力的に取り組まれておりまして、心から敬意を表します。
今回の中央省庁等の改革は、日本経済の再生にとりましても欠くことのできないものと考えております。
御承知のとおり、我が国は今、経済不況の中にあえいでおります。政府は底どまりというふうないろいろなデータを出しておりますが、実際にはまだまだ先行き不透明で、予断を許さない状況であると考えております。
今回の経済危機によりまして、日本の税制、金融システム、労働市場、年金制度など、日本のあらゆるシステムの問題点が浮き彫りにされました。日本がこういった閉塞状況から抜け出すためには、目先の景気対策も重要でございますが、従来の構造、これは政治にかかわらず、経済、社会ともに基本的な構造を変えなければ再び活力を取り戻すことはできないのではないかと考えております。
日本が求められておりますさまざまな構造改革の中の根底にありますものは、一つはスピーディーな意思決定ができるシステムに改革すること、二つ目が、努力すれば報われる自己責任社会に改革することであると考えております。このような観点から、現在御審議中の中央省庁等改革関連法案は、戦後五十年余り手つかずとなっていた組織の抜本的再編に着手するものでありまして、その方向に沿う改革として賛成であります。
今回の改革は、スピーディーな政策決定と実施に向けて内閣総理大臣が強力なリーダーシップを発揮できるシステムになることを高く評価します。さらに、行政コストの削減に向けて競争原理や採算性を評価するシステムの導入というものも入っておりまして、この点も多いに評価すべきであろうと考えております。
具体的には、現行の行政システムの中核をなす内閣法、国家行政組織法、各行政機関の設置法の改廃や新たな法律の制定などによりまして、内閣総理大臣が重要政策に関する基本的な方針の発議権を有することの明文化、内閣機能の強化、一府二十二省庁から一府十二省庁への再編、省庁間の政策調整義務の明文化、透明な政府の実現、行政のスリム化・効率化に向けた独立行政法人制度の創設、審議会等の整理合理化、行政機関の部局数と国家公務員の定員の削減などが図られることになり、よりスピーディーな実施が可能になるでしょうし、縦割りによる非効率な行政コストの改善も実現できるものと期待しております。
各省庁の名称でありますとか統合のくくり方でありますとか権限配分などをめぐって、いろいろの議論があることは承知しておりますけれども、今一番優先すべきことは、官主導ではなくて政治主導の行政運営を実現することであると考えております。そのために、今回、閣議における内閣総理大臣の発議権の明文化や内閣機能の強化によりまして内閣総理大臣の強いリーダーシップが発揮できるようになれば、いろいろな問題も速やかに解決できるのではないかと期待しております。
今後改革すべき点は、細かい点がいろいろ残っておりますが、今回の法案は、中央省庁等の改革推進へ大きな一歩を踏み出したものとして評価すべきでありますし、早期に成立させることを期待いたしております。
しかし、本法案の目的であります小さい政府の実現という立場から見ますと、単に一府二十二省庁を一府十二省庁に統合しただけで達成されるものではないと考えております。
とりわけ、地方分権と規制緩和の推進と連動することが重要であろうと思います。これらの進展に伴いまして、当然のことでありますが、中央省庁の役割、組織を見直す必要が出てまいります。小さい政府の実現のために、中でも重要なことは、国の役割を国として果たすべき重要なもののみに限定することであろうと思います。そのためには、現在の中央省庁が持っている権限、財源を地方公共団体へ移譲し、不要な規制を撤廃することが必要でありまして、それによって初めて国の事務が減ることになると考えております。
ヨーロッパ諸国の地方行政制度の根底には、補完性の原理という考え方が透徹しております。それは、市民個人でできることは個人でやる、市民個人でできないことは住民協力でカバーする、住民協力でできないことを地方自治体が担当する、地方自治体ができないことを国が担当するという考え方であります。この考え方を透徹しますと、市民の受益と負担の関係についての意識が高まりまして、これまでのような、何でも国頼み、何でも官に依存しようという甘えた国民意識の改革につながりまして、自己責任社会が生まれるものと考えております。
このように、中央省庁の改革推進と地方分権・規制緩和の推進というのは密接不可分、表裏一体の関係にあると思いますが、この地方分権の推進、規制緩和の推進、この二つはまだ改革途上にあるのではないかと思います。
特に地方分権については、今回の地方分権一括法案では、地方への税財源の移譲が不十分であります。地方分権推進委員会でも諸井虔委員長が言われておりますように、今回の一括法案は、明治以来の我が国の中央集権型行政システムを根本から変革するという地方分権推進委員会の究極の課題から見れば、いまだその出発点に立ったにすぎないという認識であります。規制緩和にしてもまだまだ進める必要があると考えております。
その意味で、これらとリンクしております中央省庁等の改革もまさにスタートラインに立ったばかりではないか、今後も引き続き改革が必要であると考えております。
いずれにしましても、行政改革の本質は、官主導の中央集権体制の打破にあります。二十一世紀の日本を真に豊かで暮らしやすい国とするには、各地域、各界がそれぞれ知恵を出し、その英知を結集して、知恵を出せば報われる、努力すれば報われるという自己責任社会に改革することがこれからの世界的大競争時代に勝ち残るために必要だと考えております。
今後も地方分権、規制緩和、中央省庁等の改革を一体として取り扱い、引き続き国から地方へ、官から民へ積極的に改革を推進されることを期待いたしますとともに、中央省庁等改革関連法案はあくまで改革の第一ステップとして位置づけて、今後必要に応じてフレキシブルに改正できるような仕組みを準備していただくことをお願いいたしまして、私の意見陳述といたします。
ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/439
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440・石渡清元
○団長(石渡清元君) ありがとうございました。
次に、真渕公述人にお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/440
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441・真渕勝
○公述人(真渕勝君) 大阪市立大学の真渕でございます。
本日はお招きにあずかりまして、どうもありがとうございます。早速始めさせていただきます。
行政改革と一口に申しましても、民営化や民間委託あるいは独立行政法人化のような問題と、省庁再編のような問題とは、根本的な違いがあると思います。
前者の問題の場合には、因果関係に関する一応の見通しがあります。すなわち、市場メカニズムを導入すれば効率的にサービスが提供できるという主張が一定の理論的根拠を持ってなされます。そのために、そこでの議論は、理論的な前提、根拠を持って進められるということになります。
これに対しまして、後者の機構改革の場合には必ずしもそうではありません。例えば、建設省と運輸省を統合すれば何が起きるのか、あるいは庁を省に昇格すれば何が起きるのかというふうなことについて、どのような帰結が生じるのかということにつきまして因果関係に関する見通しを我々はほとんど持っておりません。
その結果何が起こるかといいますと、機構改革をめぐる議論は多くの場合、印象論に流れやすく、結論はいわばツルの一声で決まるというところがあるようでございます。こういう言い方をしますときっとおしかりを受けるかと思うんですが、このように改革すればこのような帰結になるであろうという因果関係についての見通しがない場合には、権威がある、あるいは権限があるという方の意見が確たる根拠もなく通ってしまうことが多いようであります。
要するに、機構改革の場合、決定の場の雰囲気や政治力学など、改革が及ぼすであろうインパクトに関する客観的な議論とは別のロジックが結論を大きく左右するのではないかと思っております。
北欧のある学者はこういうふうに言っております。改革は学習によってではなく忘却によって促進されると指摘しております。このように改革すればこのような帰結になるであろうという知識の積み重ねがここで言う学習でありますが、改革はそうした学習がなされないままに行われる傾向があるのだと言っております。とりわけ、この学習不足というのは、機構改革についてよく当てはまるのではないかと思っております。
前置きが非常に長くなってしまいましたが、私が申し上げようとしているのは、機構改革についての我々の知識は非常に限られているのだということであります。
私自身が私自身の無知を含めてこのことに気がついたのは比較的最近のことであります。知識の不足について補うために、過去の機構の改革と変化について調査することにいたしました。まだ着手したばかりではありますし、また非常に熱い議論が展開されている中では迂遠な話に聞こえるかもしれませんが、その一部を紹介させていただきます。
まず、お配りしてある二ページ以降にデータがついておりますが、これについて簡単に紹介します。
私が調査しましたのは、六二年から九七年までの三十六年間についての十二省の内部組織、特に課レベルの変化であります。
変化を追跡するために、変化のタイプを表1に示したように類型化しております。「新設」、「廃止」に始まり、「分割増置」など、九つのタイプに分けてあります。また、参考のために、表2には「変化の性質」を変化の方向と深さという観点から整理しております。数え方のルールは表3に例示しておるとおりであります。注意していただきたいのは、表3にある「誕生」と「消滅」という言葉であります。一番上にある「分割増置」の例で申しますと、分割増置が一回起こりますと、一つの課が消滅し二つの課が誕生するというふうに読みます。特に注意していただきたいのは、「新設」と「誕生」は異なるということでございます。
このような約束事のもとで三十六年間の内部組織の変化をたどり、幾つかの角度から分析いたしました。その中の三つだけ、結論を申し上げます。
二の「変化なき改革―改革なき変化」であります。
まず、図1をごらんください。そこには二つの円が描かれております。左側の「行政変化」の円は、実際に起こった行政機構の変化を示しています。そして、右側の「行政改革」の円は、行政の外から行政機構を変える試みがなされたことを示しております。二つの円の重なる部分は、行政改革の試みがなされ現実に変化が起こった状況を指しています。この部分を「改革による変化」と呼ぶことができます。
そして、左の円と重ならない右側の円は、行政機構を変えるべしという提案がなされた、つまり行政改革が試みられたが実際には変えられなかった場合、すなわち「変化なき改革」を示しております。反対に、右側の円と重ならない左側の円は、行政機構を変えるべしという提案がなされなかったにもかかわらずいわば行政が自主的に機構を変えた場合、すなわち「改革なき変化」を示しております。
図1は、私が機構の変化と改革を考える場合につくった見取り図でございます。
次に、図2は実際の変化をたどったものであります。実線はその年々に課がどのぐらい変化したかを示しています。その上に五カ所、三角やバツ印がついておりますが、それらはその年に十二省の内部組織の改革の提案が具体的になされたことを示しております。
ここから読み取れることは、次の二つであります。
第一は、行政改革の提案がなされていないときにも課の変化は相当数起きている、したがって局の変化も起きているということであります。先ほどの言葉遣いを用いれば、「改革なき変化」が大きな比重を占めているのだということでございます。
第二は、改革提言の行われた直後には課の変化は相対的に数多く起きておりますから、そこから「改革による変化」の比重は大きいように見えますが、詳細に検討しますと、必ずしもそうではないということです。
福田行革、大平行革のあったころは、最も行政機構の数の変化が少なかった時期であります。次に、一省一局削減のなされたときも課の変化は起きておりますが、表4につけてありますように、六〇%近くは「移動」という表面的な浅い変化であります。最後に、第二臨調ですが、データは掲げておりませんが、次のように言えます。提言の半分は実施されました、したがって「改革による変化」は大きな比重を占めております。しかし、実際に変化したことの二五%は提言に書かれておりません。つまり、最もインパクトのあった第二臨調ですら「改革なき変化」の比重は大きかったということであります。
以上の分析から、図1は図3のように書き直されました。
次に、三の「組織の新設」に移ります。
先ほど課の変化を九パターンに分けました。「新設」と「廃止」以外にも幾つかのパターンがあるということですが、その意味は、課が変化するといっても、全く新しい課がつくられるというよりも既にある課が手直しされることが多いということであります。一見新しい組織が誕生しても、それは新設というよりも以前からある組織を何らかの形で引き継いでいることが多いということであります。
一般に、組織の新設は時代が進むにつれて減少していくと考えられています。行政機能が拡大するにつれて、行政がコミットしていない領域、つまり政策のフロンティアは少なくなっていくと考えられるからであります。その結果、新しい組織をつくる余地はなくなるだろう、こう考えるわけであります。私はこれをフロンティアの消滅仮説と呼んでおります。
さて、現実はどうなのかというのを検証しようとしたのが図4でございます。
フロンティア消滅仮説は、ある年に前の年にはなかった課ができたとしても、それは新設というよりも名称変更であったり分割増置によってできたものであるということでありますから、検証は、誕生した課に占める新設の課の数の比率を確かめる、できたもののうち本当に新しいものはどの程度あるのかということを確かめることによって行えます。その比率を新設率と呼んでおきます。図4には数本の線が引かれておりますが、一番濃い線で印字されたジグザグ線、これが組織の新設率を示す線でございます。
フロンティア消滅仮説はだんだんと新設の余地がなくなるという内容ですから、新設率は右肩下がりの線になることを予想します。しかし、実際にはごらんのとおりそのようにはなっておりません。したがって、フロンティア消滅という考え方は適切ではない、間違っているというふうに言えます。
問題は、このジグザグ線、現実の線をどのように説明するかということです。試みに引いてみましたのが、やや薄く印字されている四本の線であります。例えば六三年から七〇年までに引かれている線は、この間の傾向を示す線であります。
この四本の傾向線から引き出せそうな結論は、次の二つであります。
第一に、四本の線のうち最初の三本は右肩下がりになっております。この三本の線に注目しますと、これまで政策フロンティアが、新しい仕事が発見され、開拓され、ついには消滅するというサイクルが過去三回あったように見えてきます。
六〇年代の初めに何か新しい政策領域が発見され、省庁はそれを開拓するように新しい課をつくっていった。そして、次第に開拓の余地が失われていく。しかし、古いフロンティアが開拓し尽くされたころ、図で言えば七〇年代の初めごろに新しいフロンティアが発見され開拓されていった。こういうフロンティアの発見、開拓、消滅のサイクルが過去三度あったのではないだろうかというのが私の解釈であります。
第二は、傾向線が右肩下がりでなくなった一九八七年以降の解釈であります。いろいろな解釈ができそうですが、ここでは傾向線が右肩下がりではないということだけに注目し、ここでは申し上げませんが、その他の観察を加味することで、あえてその意味を強引に引き出そうとしますと、次のようになるだろうと思います。
それは、かつてはあったフロンティアの発見と開拓のサイクルが消えたということではないかということです。そして、それは官僚たちの活力が何らかの理由で低下したのではないかということを示唆しているのではないかというふうに読んでおります。
最後に、四の「スクラップアンドビルドのインパクト」に移ります。
図5は、それぞれの年に誕生した課と消滅した課の数を示していますが、スクラップ・アンド・ビルドの原則が立てられた六〇年代末以降、二つの線は非常に緊密に連動しております。スクラップ・アンド・ビルドの原則はかなり厳格に適用されたと読むことができます。ただし、あくまでもかなりという限定つきでございます。
次の図6は、十二省について省ごとに見たものであります。課の数が前の年と同じである省の数、前の年よりもふえた省の数、前の年よりも減った省の数を積み重ねて示しております。
この図から、前年に比べて課の数が純増している省もあれば、純減している省もあることがわかります。先ほどの図5から得られた知見をあわせて見ますと、スクラップ・アンド・ビルドの原則は必ずしも省を単位として行われているのではなく、中央省庁全体として行われていること、したがって各省に課の数を一定に保つことを保障しているわけではないのではないかという結論が引き出せそうであります。
結びに入らせていただきます。
第一は、図3から読み取れることですが、一方において頻繁に指摘されていますように、機構改革に限って言えば、行政改革は現実的なインパクトをこれまで余り持たなかったということが言えます。が、他方において、これはほとんど指摘されておりませんが、機構の変化はかなりの程度改革の試みとは無関係に、それとは独立して起こっているということであります。これは元気のなくなる結論ではありますが、いたし方ございません。
第二は、しかし、なぜ行政機構が改革の試みと無関係に生じているかといえば、そこには日常的な行政管理の場面で採用されているスクラップ・アンド・ビルドという手法が作用しているように見えるということであります。
実務家の方にお話を伺いますと、スクラップ・アンド・ビルドは基本的には省庁単位で行われており、中央省庁全体ではなかなか実行できないということですが、実感としてはそうであったとしましても、実際には必ずしもそうではなく、新たな政策フロンティアを発見した省庁が有利な扱いを受け、そうでない省庁が不利な扱いを受けるというメカニズムがあり、それを通じて省庁間の競争が行われ、その結果、行政はある程度自律的に組織を変えているように見えるということでございます。
第三は、新設率が八〇年代以降、右肩下がりではなくなっているということをどう解釈するかであります。
先ほど、官僚の活力が何らかの理由で低下しているかもしれないというふうに申し上げました。その理由の一つとして考えられるのは、新たな政策フロンティアを発見するには既存の省庁の壁が障害になっている可能性があるということです。新設率曲線のパターンの変化は、いわゆる制度疲労が生じていることを示す経験的なデータであるというふうに言えるかもしれません。その意味では、中央省庁再編は、既存の省庁の壁を見直すことによって行政にフロンティアの発見を促すよいきっかけになるかもしれません。
しかしながら、どのように中央省庁を再編すればよいかについて、経験的なデータに基づいて提案する用意は私にはございません。ただ、強いて申し上げるとすれば、組織的な活力の失われたものを調べ上げ、それを改革の対象にするというのは一つの方法ではないだろうかと思っております。
貴重な時間をいただきながら、大したことは申し上げられませんでしたが、私の申し上げられるのは以上でございます。
ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/441
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442・石渡清元
○団長(石渡清元君) ありがとうございました。
次に、山本公述人にお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/442
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443・山本清
○公述人(山本清君) 岡山大学の山本でございます。
本日は、私のようなものに対しまして意見を申し上げる機会をいただきまして、ありがとうございます。
まず、私の基本的なスタンスでございますが、私は、今回の中央省庁等改革関連法案につきまして、単純な賛成論を展開するつもりもありませんし、また単純な否定論を展開するものでもありません。
と申しますのは、私の専門は政策評価論並びにパブリックセクターの財務管理論が主とした研究領域でございますが、今回の関連法案をかなり詳細に検討いたしますと、評価できる点もあるわけでございますが、かなり問題点も内蔵しているように思われるわけでございます。
したがいまして、私は、むしろ評価すべき点、あるいは問題点がどこにあるのかという点を述べさせていただきまして、しかる後に、かなり現実に即しました、現行関連法案に対し今後必要と思われる改正点、あるいは今後国会等においてさらに慎重な御審議をお願いしたい点を申し上げたいというふうに思います。
まず、私が感じました今回の行革関連法案の全体的な印象でございますが、素直に申し上げまして、先ほど真渕公述人の方からもお話がございましたとおり、今回の改革は機構改革、むしろ具体的に申し上げますと組織構造の改革が中心であったということになっております。したがいまして、余りにも機構改革、構造改革というのが中心になっておるものでございますから、具体的に改革後の組織構造をどうやって運営して所期の目的である効率であるとか、あるいは効果を高めるような行政、あるいは国民にかなり近い行政をどうやって推進していくか、そういった政策デザインに関する検討がかなり欠けているような印象を私は受けました。
したがいまして、今回の関連法案の中で、主として管理運営並びに財務会計システムのデザインにつきまして、若干の問題点の指摘と改善策を申し上げたいというふうに思うわけでございます。
そうは申しましても、全体的な中で評価すべき点も多々ございます。それは二点ばかりあろうかと思います。
第一点目は、従来の行政というのは非常に計画予算偏重型であったわけでございますが、それをかなり実績重視の方に移行しようというそういう姿勢が見られる。これが第一点、評価すべき点でございます。
第二点は、従来、かなりいろいろな手続法、あるいは非常に不透明な行政指導等によります投入とか手続中心型の行政を、今度は、どういうものを達成したかであるとかどういった効果をもたらしたか、そういった成果指向の行政に移行しよう、こういった姿勢が見られるという点につきましては、少なくとも意欲としては高く評価できるのではないかというふうに思われます。
しかし、評価論、財務管理論から見ますとかなり問題点が指摘されるわけでございます。
それで、以下、レジュメに従いまして若干私の意見を申し上げたいと思います。
まず第一に認識すべき点でございますが、現在日本国政府を取り巻く環境というのはどういうものがあるのか、あるいは国民が政府に対してどういうものを望んでおるかということを考えますには、大体このレジュメに書きましたような三点ばかりの大きなトレンドなりうねりがあるというふうに私は思います。
第一点は、アカウンタビリティーと透明性の向上という点でございます。これは、非常に残念なことでございますが、政治家並びに行政マン両方におきます権威を失墜するような行為、信頼を失墜するような行為があった、それをやはり国民に対して、納税者に対しましてアカウンタビリティーを高めていく、あるいは行政の透明性を高めていく、こういう必要性がまずあろうと思います。
第二点は、非常に現下の財政事情が厳しゅうございますから、こういった財政状況下におきまして、業績の改善あるいは効率の向上というのが求められているということでございます。
第三点は、後ほど申し上げますような、まさしく独立行政法人化構想にあらわれておりますような国際的な潮流の波をやはり我が国においても受けておるということは無視できないわけでございます。これは非常に賛否両論あるわけでございますが、かなりグローバルスタンダード的な要素が残念ながらパブリックセクターの方にもあらわれてきておりまして、こういった新しい流れがニュー・パブリック・マネジメントといったような理論的な背景になっておるわけでございます。
さて、こういった関係を認識いたしますと、我が国の中央省庁改革においてどういった政策対応が求められるかという点は、ここに掲げております五点ばかりあろうと思います。
ところが、この五点のうち、現在政府の方でお考えになっておられる、あるいは政策的な対応が何とかなっておるというのは、透明性の向上と分権化、この二点についてはかなり今回の関連法案で整備されたわけでございますが、あと残りの三点でございます。
行政の質の向上、すなわち、量的な整備から暮らしやすさであるとかあるいは行政の効果を重視するような向上策を本当にどうやって達成していくかという視点がまだまだ足りないという点でございます。
第二点は、財政再建は非常にしきりに大蔵省当局等において叫ばれるのでございますが、ではそれをどうやって再建していくのか、あるいは行政の効率化をどうやって高めていくのかというツールにつきましては、どうもはっきり見えてこないという点がございます。
第三点は、非常に大きな問題でございますが、いわゆる公務員制文化の改革でございます。これは必ずしも公務員の方々がサボっているということではなくて、新しい行政対応にどうやって対応していくかということと、国民に向けた行政をどうやって進めていくかということの取り組みが、これも公務員制度調査会でいろいろ御審議されたようでございますが、もう一つ明確に見えてこないという点があろうかと思います。
そうしますと、この五点のいずれの問題につきましても、現状把握あるいは結果把握という点におきまして、評価システムというのは非常に重要な手段を担うわけでございます。
ところが、評価システムという議論におきまして、非常に危険な議論だと思うのでございますが、評価の目的とか機能を非常に局限するような議論が間々見受けられるということでございます。
評価の目的とか機能というのは、お手持ちのレジュメの図1というのを同時にあわせてごらんいただきますとおわかりいただけますように、大きく五つばかりの目的、機能を有しておるわけでございます。
残念ながら、今回の行革関連法案あるいは現下の各省庁におきます政策評価の取り組み状況を見ておりますと、第一点のアカウンタビリティーの確保、すなわちどういった業績を達成したかという現状をとりあえず認識して監視していく、こういった第一点。それと第五点目の、この公共事業はとりあえずやるだけの価値はある、すなわちコストに見合うベネフィットはあるんだという、最近はやりのいわゆる費用便益分析でございます。すなわち、費用便益比が一を超えているということでもって、この事業は非常に価値がある、したがってこれは予算づけが可能であって財源を確保できると、こういった正当性を担保するための一番と五番という目的に非常に終始しておるという現状が非常に嘆かわしいわけでございます。
ところが、先ほど真渕公述人もお話がありましたとおり、新しい施策であるとか未知の施策という場合におきましては、行政の効果がどうやって発現していくのであろうかとか、あるいはどういった政策手法がいいのかということ自身が未知な状況であるわけでございますから、これは政策を実施する過程において、いろいろな組織学習といったことの概念におきましていろいろ新たな知識を蓄積して、それでもって次の展開につなげていく、こういったポリシーが重要であるわけでございます。
ところが、こういった学習であるとかあるいは修正行動、あるいは最近いろいろ問題になっておりますような産廃問題等におきます合意形成の支援、こういった機能につきましてはほとんど顧みられていない状態であるわけでございます。こういったことをもう少し大きく政策評価の土俵で議論する必要があるのではないかというふうに思われます。
そういたしますと、レジュメの一枚目の右の欄の評価のタイプということでございますが、現在の評価のタイプというのは、ほとんどは、タイプの三段目でございますが、モニタリング評価というのが非常に多うございます。
これはどういうことかというと、とりあえずこういった業績指標、例えば混雑状況がどうであるとかそういう目標を設定しておきまして、現実に事業をやる、あるいはプロジェクトをやった後に、では現在の混雑度がどうであるかということをただ単純に実績値と目標値を比較して、それでよかったかどうかを判断していく、こういったことは今、各自治体の政策評価であるとかあるいは事務事業評価においてもこれが非常に多うございます。
ところが、モニタリング評価というのは、実はアメリカの行政改革のGPRAという法律がございます。これはレジュメの二ページ目のところにも少し書かせていただきましたが、このGPRA、日本語で訳しますと政府業績成果法ということでございます。これは、今申し上げましたような政策の効果というのを一種の業績指標で追跡して、それの監視でもって予算を修正していこうとか、そういったことをやるわけでございます。
これの一番の問題点と申しますのは、あくまでも実績がどうであるかということであって、行政活動がよかったのか、あるいは政策のデザインがよかったからこういった混雑度の低下につながっているのかどうかという因果関係の解明を全くやらないものでございます。すなわち、これは一種のアラーム、ひょっとしたら火事かもしれないということでございます。私のように古ぼけた校舎におりますと、火災報知機が鳴りましても実際の火事であるということは余りないということと全く同じでございます。
こういったモニタリング評価というのは、そういうアラーム的には非常に効果があるわけでございますが、本来の因果関係の解明ができない。となると、どういう問題点が生じてくるかといいますと、本来の政策責任者のアカウンタビリティーを追うことはできないという大きな制約がございます。
もう一点は、真渕公述人もお話をされましたとおり、いわゆるどこを直せばいいのか、あるいはどういったことを新たに知見として学習できたのかといったことが見えてこないということが大きな制約条件になるわけでございます。
したがいまして、中央省庁等改革関連法案についての問題点というところに移らせていただきますが、全体的な問題点といたしますと、今申し上げましたことを整理いたしますと、目的が余りにもアカウンタビリティー指向である、そして評価の単位が、政策評価とか施策評価とか格好いいことを言っているような印象を受けるわけですが、ほとんどのものは公共事業のいわゆる箇所づけ、あるいは個々のプロジェクト、あるいは個々のいろいろな補助金事業等におけるプロジェクト単位の施策単位である、そしてタイプもほとんどは費用便益分析による妥当性の立証をするか、あるいはモニタリングというのに焦点が当てられているということの大きな制約がございます。
実は、この印象は今回の新たな改革関連法案においてもそのまま尾を引いておりまして、いわゆる学習であるとかあるいは合意形成についてどうやって使っていくのかというのが非常に見えてこないわけでございます。特に、政策評価ということを因果関係の解明を含めてやるといった視点によりますと、これはプログラム評価ということを同時に補完していきませんと、とても本来の政策の改善でありますとかあるいは政策効果の検証といったことはできないわけでございます。
実は、有名なGPRAをよくマスコミ等が引用されるわけでございますが、GPRA法案の審議過程をよく勉強する、あるいはアメリカの会計検査院、ゼネラル・アカウンティング・オフィスのレポート等をよく読みますと、実はこういったモニタリング評価だけではだめであって、同時にプログラム評価をやりなさいといったことが勧告として必ず載っておるわけでございます。したがって、これをぜひともやっていただきたいということでございます。
そうしますと、政策評価を機能させるためには何が必要かというのは、こういった関連法案におきまして義務づけをするということだけでは実は政策評価は身につかないんだということでございます。重要なのは、同時に、誘因と評価を尊重する文化といったものを構築する必要があるわけでございます。馬に水を飲ますために川に引っ張っていくことはできるわけでございますが、馬が実際水を飲むかどうかというためにはそれなりの動機づけが必要である、あるいは水を飲ますための工夫が必要であるということが重要になってくるわけでございます。
そういったことを考えますと、特にこの中央省庁等改革関連法案には直接関係ないわけでございますが、立法府として立法府独自の民主的な統制を図る上で独自の評価機能をやはり持った方がいいのではないかというのが私の第一点目の大きな主張でございます。
ただ、それはすべての政策について評価をやれということではなくて、まさしく政策評価条項に従った各省庁のモニタリング評価でもいいと思うのでございますが、そういったアラーム的な、ひょっとすると非常にまずいかもしれないそういった政策について、そこを重点的に立法府の方としてさらに詳細な政策評価をされて、それで民主的統制の確保を図っていかれたらどうかという点が私の主たる主張でございます。
そして第二点の独立行政法人の問題でございます。
実はこの論議も、行政法学者の方が非常に力を入れられたという背景もあると思うのでございますが、どうやったら独立行政法人の本来の趣旨が生かせるかどうかという、そういった運営原理の議論が非常に不足しているように思われます。実は、独立行政法人に対して、自律性を保証することによって効率と質の向上を図るという大きな目標が当然あるわけでございますが、それは同時に、アカウンタビリティーの強化ということとセットで当然導入になるわけでございます。
ところが、現在構想されておられますような財源措置のうちの運営費交付金の具体的な支給方法を私が見るところによりますと、本来、経常的経費であるわけでございますが、いわゆる施設等の整備費は別区分になっております。ところが、既存設備の維持更新というのは、これはまさしく経常的な活動を行うために不可欠な経費でございますから、本来、財源的な自律性を与えるということからすれば、これは運営費交付金の要素といたしましていわゆる施設の減価償却費見合いを当然含めないと、財源的な意味の独立性が確保できないという大きな意味合いがございます。単純な組織形態としての法的な独立性だけでは本来の独立行政法人制度のメリットを生かせないからでございます。これが独立行政法人についての私の意見でございます。
そして次に、実施庁制度でございますが、これも制度デザイナーの藤田先生の御意見によりますと、むしろ実施庁構想が日本版エージェンシーである、いわゆる英国のエージェンシー制度というのはどちらかというと独立行政法人ではなくて実施庁に非常にふさわしいというようなことをおっしゃっておられる。であればなおのこと、いわゆる実施庁についてもっと自律性があるような実施庁に関する規定を盛り込むべきではなかったかということでございます。
それと同時に、非常に混乱があるわけでございますが、こういった半自律的な組織を運営する場合に重視する内容が、自律性を保証するのかあるいは悪いことをしないための契約的な条項で非常に縛るのか、いわゆる任せるのかさせるのかといったことをもう少し具体的なサービス内容によって切り分ける必要があるのではないかというふうに思います。
最後に、予算・会計システムの改革でございます。
実は、非常に大きな問題であるわけでございますが、政策評価をする場合におけるもう一つの大きな要素といたしましては、当然、効果と合わせてコストを比較しないと物事の評価はできないわけでございます。ところが、現在の政策評価論というのは、効果とか成果とか結果をどうやって測定するのかというのに余りにも力を入れておられますが、肝心のコスト算定というのがほとんど無視されておられます。これは政策評価を進める上でも非常にまずいわけでございます。
さらに、大きな問題といたしましては、そういった政策評価のコスト算定を正確にするということだけでは非常にこれは労力がむだでございますから、予算とか会計システムにおきましても、本来の発生主義会計における正しいコスト算定というのをやるべきではないかというのが私の意見でございます。
時間が参りましたので、あとは質疑応答で対応させていただきます。
ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/443
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444・石渡清元
○団長(石渡清元君) ありがとうございました。
次に、滝口公述人にお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/444
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445・滝口敬介
○公述人(滝口敬介君) ただいま紹介いただきました、大阪で国家公務員の労働組合の委員長をしています滝口と申します。
本日の公述の機会を与えていただきまして、大変ありがとうございます。
私は、国家公務員の労働組合の役員であるとともに、二十五年間運輸省で働いている国家公務員でもあります。そして、家に帰れば三人の息子を抱えて、教育費、医療費、こういった部分で生活を何とか改善していきたいという立場にもあります。そういった意味では、本日の公聴会では、労働組合の活動を通じて感じている点を中心に、今進められている省庁再編関連法案に反対の立場で意見を述べさせていただきたいと思います。
私たちの労働組合は、国の各機関等で働く者で構成されています。等と申しますのは、国家公務員だけでなく、具体的に言えば、私たちの共済組合連合会本部の職員であるとか、そういった方も含んでいますので、少し民間の方もおるということになっています。多くは国家公務員です。
私たちの組合というのは、国家公務員という立場でありますから、憲法を遵守、国民全体に奉仕する、そういった特別な職務を行う労働者です。したがって、公務員労働組合は、一つには公務員労働者とその家族の生活、そして労働条件の維持向上はもちろんのこと、平和と民主主義を擁護する、そういった労働組合の共通の責任を持っています。二つ目には、行政に携わる労働者として、その専門知識、そしてまた能力、条件を生かして、本当に国民の皆さんに奉仕する行政を実現するために国民の皆さんと連帯して闘う、こういった二つの任務、責任を持っています。
具体的に今回の法案について、国家公務員はもちろんのこと、国民の皆様に大きな影響があるというふうに私ども考えています。
本日は、私どもの中央組織である国公労連の方で昨年十月につくりました冊子を皆さんにお配りしていますので、少し参考に見ていただきたいというふうに思います。
私たちは、こういった冊子をつくりながら、この間、いろんな方々に私たちの考えを訴えてきました。皆様、国会で働いている議員さんにも私たち、署名用紙等を持ってお願いに行った次第であります。地方においても、各地方の自治体や議会などにも同様の課題を持って、生活を守るために今回の行政改革の内容をぜひ考えていただきたい、こういったことを言ってまいりました。
パンフレットの一ページに「政府の考える「改革」のスケジュール」というふうに書いていますけれども、基本的にはきょうのお題であります中央省庁再編の関連法案、これだけではなしに、私どもは地方分権、規制緩和、この三つをくくって行政改革と称してこの間取り組みを進めてきました。
国公労連のこの課題についての基本的な見解ですけれども、一つは国民の皆さんが行政に頼っていることは何であるか、ここを基本的に私ども考えてきました。具体的な内容で言えば、社会保障、教育、労働者保護、そして農業者保護、中小企業保護、消費者保護、こういった国民生活と密接にかかわる分野。戦後の行政というのは、憲法をよりどころに国民的な運動の中で世論もつくっていき、そしてまた施策が講じられてきたというふうに思っています。今でもまだまだ不十分だなというふうに思っていますので、ぜひ今回の行政改革に当たってはこの問題をどういうふうに考えていくのかというのを、私たち基本的な考えを持って運動していきたいというふうに思っていますし、これまでも運動を進めてきました。
今回、行政のスリム化ということで、小さな政府づくりが行革の目的というふうにされていますけれども、このことについては後ほど述べますが、私ども賛成できることとは思っていません。具体的な施策でも、この間、銀行支援の六十兆円の問題であるとか公共事業重視の体質であるとか、こういった部分についても私たち意見を述べてきましたので、今回の行政改革ではぜひその点についてメスを入れる、こういったものを具体的に要望したいというふうに思っています。
続きまして、今回の中央省庁の再編の中では、十年間で二五%の公務員を削減していく、こういった課題が入っています。
私は運輸省に勤めていますけれども、この間、運輸行政というのは随分規制緩和されてきました。具体的に言えば、平成二年に貨物関連で需給調整が撤廃されて規制緩和を目的とした法律ができました。その後も参入規制が緩和される中で、処理件数、申請件数がすごくふえています。検査の関係でも、前検査、後整備という形で緩和されてから、一般のユーザーの方がどんどん私どもの国の車検場に来るという状況も迎えていますから、業務量と、そしてまた今回の具体的な計画がなされています国家公務員の二五%の削減というのは、職場の状況からすると到底考えられない内容になっています。
具体的には、こういったことがただ私たちの職場の状況ではなく、空も陸も安全が脅かされているという実態があります。具体的に、時間の関係で説明は差し控えますけれども、十二ページ、十三ページにその状況を数字をもって書いていますので、ぜひ後で見ていただきたいというふうに思います。
今回の二五%削減の中身には、独立行政法人を含むというふうにされています。今のところ、対象職場は、厚生省の国立病院・療養所、そして各研究所、検査機関、こういったところが対象になっています。
そのうち、今回特に私たち注目しているのが国立病院・療養所の問題であります。今のところ当初予定の半分、約七万人の方がいらっしゃる職場が対象になっていますけれども、そのうちの四万六千、全体の約七割をこの職場が占めています。これまで地方自治体、民間ではできない部門、地域医療を積極的に担ってきた、こういった国立病院・療養所がこの対象になっています。
特に、関西の地では、阪神・淡路大震災の際に、兵庫県の明石市にある国立明石病院は、近隣の病院との連携をとりながら、各自治体では神戸市の中、そしてまた明石市の中というようなことで、行政同士の意見もある中でなかなか機敏な対応ができないということで少し新聞でも書かれていましたけれども、この際に明石病院では、北海道南西沖地震、そういった教訓も生かしてシミュレーションを重ねていたため既に大規模の災害に対する詳細な対策ができていたということで、すぐの対応ができたということが神戸新聞でも報道されました。国としての特性を生かして、近隣からのスタッフの派遣であるとか、そういった受け入れができたというふうに評価もされていました。
本当に今、この地震国である日本でどこで災害が起こるかもしれない、そういった状況の中で、国の病院としての責任、国が役割を果たす病院が今求められているんではないかなというふうに思っています。そういった意味では、今回の対象がこのようなところを含んでいる、私たち本当に遺憾に思っています。
いずれにしましても、医療機関というのはその地にはなくてはならない病院になっているのが今の現状であります。こういったところから国が責任を持たなくなる、本当に患者や地域の住民はどうなるのか、私たちは不安を抱えています。
厚生省は、各省に先駆けて十三年前からこの問題については組織のリストラをやってきました。具体的に大阪で言っても、国立泉北病院が近畿大学に移譲になっていますし、ことしの三月十八日には新たに貝塚市にある千石荘病院が大阪市にある大阪病院と統合する、そういった案も出されてきました。
いずれにしても、国立病院が統廃合なり、なくなるというようなことに対しての反対の声が多く上がっています。具体的に、私たち貝塚の千石荘についての廃止に伴うアンケート調査を住民にとりましたけれども、ここにも多くの声が寄せられていました。アンケートが返ってきた九八・七%は廃止計画に反対である、こういった意見になっています。具体的には、結核療養所として昔から結核専門の病院であって、その結核が激減してきているということではない、最近は急増しているさなか、こういった廃止はわからない、こういったことも寄せられていますし、高齢化社会に向けて医療機関の充実こそ国のやるべきこと、廃止とは時代錯誤も甚だしい、こういった声が私どものアンケートにも寄せられています。
各研究機関についても同様のことが言えると思います。多くの国の研究機関は、基礎研究を行っています。基礎研究は、将来にわたって新しい産業をつくり出す、同時に、地球環境の問題や食糧問題など今人類が直面している困難な諸問題の解決を図る上で、未来への不可欠な投資と言えるものです。これまで日本は、この基礎研究の成果を導入して、経済的にも大きな国に発展してきたというふうに考えております。したがって、これまで以上に基礎研究への投資が国として求められているのではないでしょうか。
最後になりますが、私は二十五年間公務の職場で働いてまいりました。運輸行政を通じて国民の皆さんと接してきました。今、国民の皆さんは、毎月、完全失業率が最悪の数字を更新し、そういった現状にあらわれているように、不況の中であえいでいます。大企業のリストラの受け皿が中小企業となっている、こういったおかしな現象も職業安定所の仲間から訴えられています。今こそ国が先頭に立ってこうした対策を行うことが求められているのではないでしょうか。
今回の省庁再編がこうしたことにこたえるものになっているでしょうか。私は決してそうはなっていないというふうに思っています。
国民の皆さんが安心して生活ができ、労働者が元気に働き続けられる、そういった環境づくりのために国が責任を果たす、省庁再編、行政改革を追求する立場をとってもらいたいというふうに思っています。
本委員会が私どもの意見にも御理解いただき、審議を尽くされますよう切望して、発言を終わりたいというふうに思います。
ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/445
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446・石渡清元
○団長(石渡清元君) ありがとうございました。
以上で公述人の方々の御意見の陳述は終わりました。
それでは、これより公述人に対する質疑を行います。
なお、委員の質疑時間が限られておりますので、御答弁は簡潔に願います。
また、御発言は私の指名を待ってからお願いいたします。
それでは、質疑のある方は順次御発言願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/446
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447・海老原義彦
○海老原義彦君 本日は、公述人の皆様、お忙しい中をお越しいただきまして、本当にいいお話をいろいろ伺わせていただきまして、ありがとうございました。
さて、私の質問時間二十五分、皆様それぞれニュアンスの違う話をなさっておられるので、なかなか共通の議題がないかなという感じもするんですが、独立行政法人というのを二、三の方からお話がございましたので、独立行政法人というのはどういうふうに皆さんおとりになっているのか。
まず、滝口公述人からお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/447
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448・滝口敬介
○公述人(滝口敬介君) 私ども、独立行政法人というのは民間へのワンステップではないかというふうに危惧をしています。今のところ具体的な対象職場といいますか、対象とした機関がどうなるかということは明らかになっていませんけれども、採算について五年をめどに考え直すであるとか、そういった具体的なものも今出されてきています。
そういった意味では、私たち、究極は民間、そしてまた、先ほど具体的に言いましたけれども、国立病院なり療養所というのは、病院は今民間のところでも経営が大変になっています。そしてまた、自治体でも総合的な病院は黒字になるということはあり得ないわけです。そういった意味では、国としてこれが採算で成り立っていくのかという物差しになれば大変な問題になるというふうに考えていますので、そのことをとってみても、独立行政法人というのは今回ざくっとそういうふうな言葉でうたわれていますけれども、省庁ごとの具体的な対象の職場によって少し違うんではないかなというふうに思いますから、私どもの説明としては、この具体的な例をとって独立行政法人というのはそういった形で向かうんではないかというふうに危惧しているということを意見として述べさせてもらいます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/448
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449・海老原義彦
○海老原義彦君 独立行政法人というのは民営化への第一歩だ、そういう危惧をお持ちなわけでございますね、今の法案では別にそういうことは書いていないので、国がやらなければならない、民間に任せられないので云々と書いてあるんですけれども。
さて、そこで山本公述人に伺いますけれども、独立行政法人についてまだまだお話し足りないところがたくさんあるだろうと思うんですが、いろいろとお話しいただいた中で、アカウンタビリティーの問題、独立行政法人のアカウンタビリティーをどういうふうに考えていくんだろうかなというのは大変難しい問題だと思うんです。
御存じのとおり、今、独立行政法人へ移行を予定しているのは、滝口さんのお話の病院もございますけれども、研究所などというもの、これはやはり研究目標を定めて、その目標に沿っているかどうかという成果を評価するのかいなと、大変難しい話でありますねという気がしてならないんですが、この辺は山本公述人、どのように御説明いただけますでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/449
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450・山本清
○公述人(山本清君) まさしく独立行政法人のアカウンタビリティーをどうやって果たしていくか、あるいはそれの本来の意図した行政サービスの質の向上を図っていくかというのは、これは非常に大きなテーマでございまして、一応本来の日本の独立行政法人は英国のエージェンシーとは少し形態が違うということでございますが、イギリスのエージェンシーの実態をまず御説明申し上げたいと思います。
まさしくイギリスにおきましてもいろいろ、我が国において少し誤解があるわけでございますが、イギリスのエージェンシーの中にも実は研究機関がたくさんございます。実は、研究所の中ではもう既に一部は完全な民営化になったエージェンシーもございます。これをまず押さえておかなきゃいけないという点でございます。
ただ、現実のアカウンタビリティーと業績評価を研究機関はどうやっているかということを現実的なレポート類で見ますと、これは残念ながら、今委員がおっしゃられましたような完全な業績評価はやっておりません。
ほとんどの業績指標というのはどういうものかと具体的に申し上げますと、当初、中期計画で定めましたような研究計画がございます。
例えば、何年度までにこの部分までを解明したいとかあるいは何年度までにこのプロジェクトのこの機器の整備を終えたいと、こういった進捗度の管理、これがどれぐらい達成したかというのが第一点でございます。
第二点は、いわゆる研究コストでございます。これは運営コストもございます。この運営コストをどれぐらい節減したかという点が第二点でございます。
第三点は、これは私の持論でございますが、実は独立行政法人の今の通則法を見ましても、別に附帯業務はやっていいわけでございますから、イギリスのエージェンシーは、研究機関も含めまして実はかなり附帯事業、いわゆる商業サービスをやっておるわけでございます。例えば、気象庁のようなところはかなり商業サービスをやっております。したがって、もう一つの業績指標はどういうのをとっておるかといいますと、いわゆる民間からの受託収入のウエートをどれぐらい目標値として設定してそれに近づけていこうかという、こういった大きな三点をやっております。
あとは、いわゆる研究のクライアントであります政府省庁であったり、あるいは特定の者であったりするものに対して満足度調査というのをやっておりまして、それのいわゆる顧客満足度調査、こういったことが主たるものございまして、肝心の具体的なノーベル賞級の研究開発を達成したかとか、あるいは産業への効果はどれぐらいあったかとか、そういう産業連鎖へのファクターというのはやっておりません。
これはある意味では当然のことでございまして、エージェンシーあるいは独立行政法人というのは、大きく言えば政策の執行機関でございます。したがいまして、エージェンシーあるいは独立行政法人の長が本来負うべきアカウンタビリティーというのは、私が今申し上げましたような最終的な研究成果でありますとか、そういったものについては本来アカウンタビリティーは負う必要はないわけでございます。そういう意味においては、イギリスのエージェンシーがやっておりますような進捗度管理というのも全くこれはおかしいというわけではないわけです。
実は、もっと大きく言えば、独立行政法人はどれぐらいのアウトプットを出したか、あるいはどれぐらい顧客を満足させたかということに終始しておればいいのであって、最終的な政策効果の責任はいわゆる省の大臣が本来負うべき責任でございます。
これは明確に切り分けないと、イギリス等でいろいろ問題になっておりますような、せっかくエージェンシーになっても、悪い結果は全部エージェンシーの方に追いやって、肝心の省庁の官僚が責任をとらないだとか、そういったことが現実に生じておりますので、そういったことはぜひとも避けていただきたい。
そういったことからいえば、日本の独立行政法人も、やはりその政策効果と政策のせいぜい質のレベルでございますね、いわゆる行政サービスの質のレベルぐらいまでは独立行政法人の長はアカウンタブルであるんですが、それ以上のアカウンタビリティーは負うべきではない。そして、それについて注文をつけるべきではない。しかし、最終的な責任はこれは省でありますし、しかももっと大きな問題は、アカウンタビリティーを負わせるというのは、当然それなりの裁量性を与えないと、責任だけとらせて権限を与えないとこれは意味がないわけですね。
そういったことで、先ほど私が少し申し上げた中において非常に大きな問題は、法的な存在、いわゆる団体としての、法人としての独立性をいかに付与しても、いわゆるお金、財源としての独立性がない限りにおいては、経済的独立性がない限りにおいては、独立行政法人というのはやはりなかなか機能しにくいのではないかということで、ぜひともそこら辺のことを今後個別法案において御検討いただきたいという点が私の意見でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/450
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451・海老原義彦
○海老原義彦君 一口にアカウンタビリティーといってもいろいろあるんだろうと思う。私は、要は国民に説明できて、国民がなるほどよくやっておると言ってくれればいいんだと、こういうことになるのかなという気もしないでもないですね。
それから、この際、山本公述人にお伺いしたいんですが、独立行政法人というのは、財政的な裏づけももちろん必要でございましょうけれども、行政上の権限を持たないとやれないという場合もあるいはあるかと思うんですが、英国あたりでは、独立行政法人がある行政機関の権限のうちのごく一部分のものを持っておるとか、そういうことはあり得るんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/451
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452・山本清
○公述人(山本清君) まさしく冒頭申し上げましたとおり、日本の独立行政法人というのはイギリス型のエージェンシーではなくて、いわゆる国家行政組織から独立しているところのみに意義があるんだというのが、これは藤田先生のジュリスト上の解説でございまして、私は、それでは本来行政改革会議で意図されたような独立行政法人は機能しないのではないかというふうに思います。
ただ、具体的にイギリスのエージェンシーは、日本においては公権力の行使を伴うので独立行政法人化にならなかったものにつきましてもいわゆるエージェンシーとして行動しておりますし、あるいは日本の国税庁に相当するようなものもすべてエージェンシーと同じような流れに従って管理運営がなされております。
したがいまして、公権力の行使を伴うかどうかとか、余りにもそういったメルクマールでもって管理運営を区分するというのはいかがなものかというふうに私は考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/452
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453・海老原義彦
○海老原義彦君 例えば、国立公文書館というのをエージェンシーに移すことになっておるわけでございます。そういう公文書館では歴史的な文書の保管というのをやらなきゃならぬわけで、そうすると、各省に対して折衝して、廃棄文書の中から歴史的文書はこちらへよこせということを言うだけの権限がないとできないわけですよね。私が権限と言っているのは、そういう意味での業務に深くかかわる権限という意味でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/453
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454・山本清
○公述人(山本清君) それはイギリスのエージェンシーにおいても付与されておりますし、あるいはイギリスの具体的な例で申し上げますとヘリテージ、いわゆる歴史的な遺産を管理するようなエージェンシーもございます。その場合におきましては、今委員が申し上げられましたような権限は当然セットとして付与されております。
ただ、その場合におきまして、事前にいわゆる所管大臣との大きな概念フレームワークにおきましてどこまでの権限を移譲するか、与えるかということについては、当然、かなり契約に近い格好におきまして合意がなされておるという現状でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/454
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455・海老原義彦
○海老原義彦君 次に、真渕公述人に伺いますが、真渕公述人のお話、大変おもしろく伺っておりました。確かに、機構改革というのがうまくいくか悪くいくかというのは、やはり勘でいくしかないので、ツルの一声で決まるんだというお話、これはおもしろいなと思ったんです。
いずれにしましても、今回の行革がこうやって一府十二省庁という形で発足しようとしておる。このことはやはり日本のこれからの行政に非常に大きな影響を及ぼすだろうと思うのですが、そこら辺の御見解をいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/455
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456・真渕勝
○公述人(真渕勝君) 率直に言ってしまえば、やってみないとわからないということになるんですが、全体の理解としましては、現在の一府十二省体制というのができましたのは一九六〇年ですか、それ以降、府、省のレベルでは全く変化がなかったわけですけれども、かといっていろんな新たに生じる問題とか課題について組織的な対応をしなかったかというと、そうではないですね。
要するに、大臣庁をつくっていくというのが非常に組織的な対応であったと。科学技術庁をつくるとか環境庁をつくるとか、そういうことですが、そういう組織的な対応を、言葉が適切かどうかわかりませんが、いわばパッチワーク的につくってきたところがあるだろうと。
今回は、省庁の数を減らすということで、本体の省の部分が変わる部分ももちろんあるわけですが、多くの場合は、一部昇格もありますが、庁の吸収であるということで、そういう整理、統廃合ということでは、長らく動かなかったものが動いた、動かしてみてもよかったんではないだろうかという印象は持っております。これが一つです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/456
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457・海老原義彦
○海老原義彦君 長らく動かなかったものが動いた。ただ、動く前においても、確かにおっしゃるようにスクラップ・アンド・ビルドは絶えず行われてきた。それで、これがなぜスクラップ・アンド・ビルドになったかというのは、私も行政の内部に長くいた人間でございますので大体わかるんです。
要するに、この課を廃止すると言わないと行管では新しい課を認めてくれないんですよ。スクラップ・アンド・ビルドの原則というのを行政管理庁で立てまして、その後総務庁ですね、総務庁でもう厳密にそれはさせておった。だから、課の数はふえないけれども、スクラップ・アンド・ビルドはどんどん行われていった。ニーズのあるところへ新設もそれは認める、それからニーズの減ったところはなるべく削ろうとするということで、おっしゃるような流れがはっきり出てきたわけでございます。
これからはどうなるんだろうか。例えば局の数にしても、百二十ある局を九十六にするとか、こういうことで、課も削減するんだという話でございますけれども、課を削減して統括官というものをふやすんだったら、実質的にはやる業務は同じことなのかなと。そういうスタッフシステムということに着目して、スタッフシステムの方が流動性はつくと思うんですね、固定的な課よりも。スタッフシステムということにこれから流れていくのかなという気が私はするんですが、そのあたりはいかがでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/457
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458・真渕勝
○公述人(真渕勝君) 分掌とか総括の審議官とか、そういう官の職が重要になっていくのではないかと、そういうことですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/458
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459・海老原義彦
○海老原義彦君 そういうことです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/459
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460・真渕勝
○公述人(真渕勝君) そういう点は私もまだ十分よくわかっておらないんですが、重要なのは、局の数が減ったとしましても、これまでの経験からいうと課の移動が起きるだけというのが半分ぐらいはある。
一省一局削減を思い出していただくといいんですが、あの場合、非常に大きな課の変動が起きたんですが、お配りしたデータにもございますように半分は移動なんですね。課が移動するだけです。局が部に格下げになっていくとか、あるいは局と局がひっついて課が引っ越しするというだけのことでありまして、実質的な仕事の単位である課については、強制的な局の減少場面では余り起こらなかったという観察を持っております。
今回も、局を減らす、課も減らすということもあるんでしょうけれども、それがどの程度、私の言葉で言う深い変化につながるだろうかということが重要なんであろうというふうに思っています。その辺をこれからウオッチしていかなければいけないんであろうかというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/460
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461・海老原義彦
○海老原義彦君 スタッフシステムに徐々に移行していくということは、公務員の人事管理体制とも結びつくことでございまして、いわばずんどう型の人事管理体制になっていく、ピラミッド型からずんどう型になっていくということなのかなと思うんですよね。
そこら辺のことについて、これは国公の滝口公述人に、これからの人事管理体制は、そういった人事管理システムは、課長がぐっと何人かの係長を押さえてこうなってと、こういうのではなくて、だんだん年をとると上の職になっていく、それでずんどう型で上がっていくんだと、そういうふうになるんじゃないかなと私は見ているんですが、組合ではどうお考えでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/461
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462・滝口敬介
○公述人(滝口敬介君) 労働組合の立場からしてみると、高校卒であれば十八で入って、定年までいけば六十ですよね。そういった形で、いわば四十年近く勤めるわけですけれども、長くフルに仕えれば。その入るときの人数によって変わってくるんですよ。
だから、先生方、皆御承知だと思うんですけれども、各省庁、機関ごとにもう既に、団塊の世代といいますか、戦後のベビーブームのときに生まれたお子さんであるとか、その影響によって少し違うんです。それと、新しい法案ができたことによって新規業務ができて採用したということによって違いますので、省庁によって既にもうピラミッドになっていないところもあるんです。
それは省庁の、本省の人事管理している方々が大変苦労されていろんなシステム、上がっていくシステムをつくっている。それがうまいこといかないと、同世代でかなり差が出てくるというようなのが現在の姿だと思うんです。
今の各省庁でいえば、私はほかの省庁のことは余りわかりませんけれども、運輸省でそういったことを言えば新しいスタッフ制というのは少し考えているようです。それ以上は、私、公務という立場がありますので言えない部分がありますけれども、そういった形で今は推移しているというふうに思っています。これからも、多分スタッフ制というのは考えているんじゃないかなと思っています。
労働組合としては、当局、政府が採用したときには、やっぱり一生、いわば卒業するといいますか退職するまでの間、どれだけ職員を守っていくのかといったらおかしいですけれども、雇用する責任があるんですから、採用された年によって差が出たりするのはおかしいというふうに考えているという、その考えだけ意見として述べさせてもらいました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/462
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463・海老原義彦
○海老原義彦君 確かに、団塊の世代がある、そこがこぶになってくると。このこぶをどうするかというのはどこの省庁でも大変な問題だったろうと思います、今だんだんその問題が薄くなってきて、割合いい姿になりつつあるのかなという感じがするんですが。
そこで、井上公述人に伺いますけれども、こういった組織管理の問題として、ピラミッド型の構成である局、課、係、こういうところから、だんだん官としては、スタッフをふやしてずんどう型になりつつあるかなと私は読んでいるんですが、民間ではこれはいかがでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/463
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464・井上義國
○公述人(井上義國君) 職場によって当然違うわけですけれども、生産現場なんというのはピラミッド型にならざるを得ませんけれども、物を考える本社機能でありますとか、そういうところは当然ピラミッド型ではもたないわけであります。
今度の中央省庁等改革法案のねらいが、国として物を考える機能を強化していこう、しかも、それもスピーディーに意思決定していこうということにねらいがあると考えておりますので、ピラミッド型なんというのは到底考えられない。だから、物を考える機能、政策を立案し実施につなげる機能というものを強めるとすれば、ピラミッド型というのはあり得ない、そう考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/464
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465・海老原義彦
○海老原義彦君 もう一度井上公述人に伺いますが、また別の話でございますけれども、包括的に見て、今度の一府十二省庁という機構のつくり方、これについて、いろいろ問題点の指摘は国会内でもあるわけでございます。
例えば、防衛庁はなぜ防衛省にしないで庁なのかとか、あるいは林野庁はなぜ環境庁にくっつけないで農林省なのかとか、あるいは公正取引委員会は郵政業務と一緒の総務省にあるのはおかしいではないかと、そういう細かい問題はあるわけでございます。
そういう細かい問題でも結構でございますが、基本的にこういった大くくりで十二にしたということについての、否定的なり肯定的なりの御見解を伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/465
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466・井上義國
○公述人(井上義國君) 減らすということは基本的にいいことだと思います。これまではひたすらふえるばかりだったわけでありまして、それを減らしていこうということは一つの方向だと思います。
ただ、先ほど申し上げましたように、中身がこれから問題になってくるだろうと思います。
国土交通省が巨大官庁であるというふうな批判もありますけれども、あれも財源を地方に移していけば、補助金もそうたくさん持つ省にはならないとすれば将来は巨大でない官庁に変わっていくと思いますし、防衛庁、国防省という問題につきましては、これはいろいろ御配慮があってそうなったんだろうと思いますけれども、私個人としては、国防省にしてしかるべきではなかろうかと。今こそ自分の国は自分で守るという意識を植えつけようと片方ではオピニオンリーダーが努力しておる反面で国防省にしないというのは、余り勇気がないのではないかなという考え方でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/466
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467・海老原義彦
○海老原義彦君 もう余り時間がございませんので、真渕公述人、山本公述人、滝口公述人、一言ずつ、今回の一府十二省庁構成についてほんの三十秒ずつ御見解をいただけませんか。要するに、大変いいとか悪いとか、それだけでも結構でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/467
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468・真渕勝
○公述人(真渕勝君) 先ほど申し上げたように、どうすればどうなるかというのは、私は知識を全く持っておりませんので、何とも言えません。
ただ、これまでの経緯を見る限り、ややばたばたしたなと、もう少し一つ一つのオプションについてじっくり考えてもよかったんじゃないかなという印象は持っておりますが、変わらなかったことを変えてやってみるというのは私はいいことだと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/468
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469・山本清
○公述人(山本清君) 私が一番残念に思いますのは、財務省と総務省との切り分けの関係で、人事管理でありますとか予算統制あるいは評価機能といったところにおきまして、十分これでは連携が保たれないのではないかというところが残念でございます。
数については、別に幾つが最適かという意見は持ち合わせておりません。
以上でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/469
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470・滝口敬介
○公述人(滝口敬介君) 憲法をもとに各省庁という枠組みがあるとすれば、やっぱり主人公である国民の皆さんが、そしてまた労働者の皆さんが深くかかわる省庁、ここにやはり頭出しが欲しかったなというふうに思っています。
残念ながら今回、統合というふうになっていますけれども、そのことが今の政府の奥深くあるそういったところだというふうに残念でなりません。したがって、そういった意味での頭出しが欲しかったなというふうに思っています。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/470
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471・海老原義彦
○海老原義彦君 公述人の皆様、どうもありがとうございました。
私の時間が尽きましたので、これで終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/471
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472・福山哲郎
○福山哲郎君 民主党・新緑風会の福山でございます。
公述人の方々には、御多用のところを貴重な御意見を賜りましてありがとうございました。少ない時間でございますが、よろしくお願い申し上げます。
私は、少し公述人の皆様のお話を伺っていた印象をお話しさせていただきますと、今、海老原委員の方から省庁の大くくりの再編についての印象を公述人に聞かれたとき、ほとんど評価がなかった、先ほどの公述人の意見にもなかったということがまさに象徴的だなというふうに思っておりまして、行政改革会議がもともと言った、肥大化し硬直化した政府組織を改め、重要な国家機能を有効に遂行するにふさわしく、簡素、効率的、透明な政府を実現するという目的とはちょっとイメージが皆さん違うのではないかなという感じで、歯切れが徐々に悪くなっているのではないかというふうな気が率直にいたしました。
まずは井上公述人にお伺いをしたいんですが、井上公述人は賛成というお立場だと。しかし、一府二十二省庁を一府十二省庁に変えたからといって終わるわけではない、もっと地方分権なり規制緩和をしなければいけないんだということを言われました。それはもうまさにこの省庁再編の効果がまだ手探りだということの意見の裏返しだというふうに思いますし、今、この経済不況の中、本当に戦っておられる経営者のお一人として、まさにこれがどう日本の経済再生へつながるのかということに対してのお気持ちをあらわされているというふうに私は受け取らせていただきました。
そういった中で、井上公述人が言われました、具体的なもう一歩の規制緩和の推進、もしくはスピーディーな意思決定に対して、具体的にどういったことを政府なりに求められるのかというのをもう少し御説明いただければと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/472
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473・井上義國
○公述人(井上義國君) スピーディーな意思決定、世の中がどんどん変化していくわけですから、それに対して対応できなかったというところに今の日本の不振の原因があるわけですね。そういった意味で、何も国の政策だけによって経済が動くわけではありませんけれども、それでも企業としてもっと動きやすい、もっと対応しやすい体制というものが必要なわけでありまして、そういう意味で、今回の行政改革、中央省庁改革が内閣機能を強化してというふうなことで、そこで非常にスピーディーな意思決定ができるということを大いに期待しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/473
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474・福山哲郎
○福山哲郎君 規制緩和の何か項目とかがもし具体的な像としてあれば、お教えをいただければと思うんです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/474
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475・井上義國
○公述人(井上義國君) 規制緩和の項目は、関経連でも、関西経済同友会でも、あるいは経団連でも、非常に多くの問題について要望を出しております。それもまだ、実際に改革されたのは半分ぐらいではないかと思います。
〔団長退席、大島慶久君着席〕
そういった意味で、そういった問題をスピーディーにやることはやれということでありまして、極端に言えば、経済分野に関して言えば一遍白紙に戻してもいいんじゃないかと。白紙に戻して、本当に必要な規制を改めてもう一遍やり直すというぐらいの、それぐらいの覚悟が要るのではないかということを常々申し上げておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/475
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476・福山哲郎
○福山哲郎君 ありがとうございます。
次に、真渕公述人にお伺いをしたいと思います。
真渕公述人のお話は大変私、興味深く伺いました。改革という外からの圧力ではないところで、自律的な変化が実は行政の中では行われるんだというお話がありました。そして、それが発見、開拓、消滅というサイクルの中で行われてきたというふうにおっしゃられたんですが、改革という外からの圧力ではなくて、行政側が自律的に変化をするためのこれまでの大きな要件、要因というのは、どういうインセンティブが働くと行政というのはそういったことに乗り出していったんだろうかということについて、その要件についてお教えいただけますでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/476
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477・真渕勝
○公述人(真渕勝君) 私は、調査した上でこれが恐らく一つのメカニズムであろうと思っているのは、今のところスクラップ・アンド・ビルドの原則だけでございます。
つまり、先ほど申しましたように、実務家の方の感覚とは少し違うようではありますが、ぼんやりしていると危ないという、要するに省の数、組織の規模を保障してくれているわけではなさそうであると。スクラップ・アンド・ビルドであれば、新しいものさえつくらなければ何もつぶさなくてもよいというニュアンスを我々は受け取っておったんですけれども、必ずしもそうではないではないか。少なくとも長期的に見れば必ずしもそうではなくて、恐らくぼんやりとしていれば不利な状況になろうということがあって、そういうメカニズムを、スクラップ・アンド・ビルドというのが擬似的な市場メカニズムとして競争を強いたのではないだろうかというのが今のところの私の観察でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/477
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478・福山哲郎
○福山哲郎君 そうすると、先生の言われた、八〇年代以降エネルギーがどんどん落ちつつあるのではないかということの要因なんですが、私は、お伺いをしていて感じたのは、一つはやっぱり財政的な制約というのがあるのではないかなと。
これまでと違いまして、日本もどんどん財政赤字がふえてきて、その財政的な要因の中で、例えば一律にシーリングがかけられるとかという状況の中で、新たな政策フロンティアというよりも、そういうことがやれる環境が徐々に徐々に悪くなっていくことによって、行政の中のそういったシステムが衰えてくるというようなことがあるのではないかなと感じたんですが、そこはいかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/478
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479・真渕勝
○公述人(真渕勝君) 可能性としましては、今おっしゃったことに加えて、例えば、規制緩和とか小さな政府ということが一般的に言われるようになりますと、役人の方々が何か元気を出して新しい仕事を見つけようということがやりにくくなるというのは一つあるだろうと思いますし、もう一つは財政的な問題があると思うんですが、やはりスクラップ・アンド・ビルドでありますからつぶせばつくれる。一定の予算が使わなくてよくなれば新しい予算が使えるということになりますから、果たして財政的制約というのは大きいのかな、そこはちょっと必ずしもそうではない理屈も考えられるなというふうに思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/479
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480・福山哲郎
○福山哲郎君 そうすると、今回はかなり大きな、真渕公述人のお話を前提に考えると大きな外部からの力が働きました。特に、省庁再編についてはまさにツルの一声というか、ある権威の中で省庁の枠組みまでが決められた上で行政組織が変化があったと。
これに対して、行政内には、例えばどういう別の化学反応というか、これまでそのエネルギーはどんどん落ちていっていたわけですね。ところが、突然こういう、突然ではないですが、大きな力学が働いて行政組織が変化をせざるを得なかった。これは、先ほど先生が言われた疑似マーケットが働いたわけではなくて、大きな力が働いてきたわけですね。そこに対して、将来のことですからわかりませんが、どういったそういう別の化学反応が起こるような予想というか見通しがもしおありならばお教えをいただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/480
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481・真渕勝
○公述人(真渕勝君) まず、過去の例を少し申し上げますと、運輸省の方いらっしゃいますが、過去の機構改革として非常に大きい、しかもこれは行政改革の成果であると言われたものとして、一九八四年の運輸省の改革があろうかと思うんですね。
つまり、乗り物別であったというものが地域交通局あるいは貨物流通局というんですか、いわば横割りの組織ができたと。これはすごいというふうに受けとめたことを私は覚えておるんですが、私が知っている限りでは、一九九〇年にほぼもとに戻ったという感じ、全部じゃありません、全部じゃありませんが相当程度戻ったと、半分は戻ったというふうに言っていいと思うんですね。
これはつまり、行政改革があるときになぜ変化をしようとしないのかというと、やっぱりある種の抵抗感が役人の方々にあるわけですね。つまり、自分たちでやらせてくれるんならどんどん変えていくよと。外から言われると余りおもしろくないと。でも、風が強ければ、ニーズもあるでしょうから一応歩調は合わせると。
今の場合の八四年というのも多分ニーズはあったと思うんですが、内的にも、ニーズ、そういうことを要求する方々もいらっしゃったと思うんですが、そうじゃない方々も多かった。ただ、非常に外圧というか外からの圧力が強ければ、やっぱり合わせていくだろうと。しかし、あらしが過ぎれば戻るということがかつてあったように思うんですね、ほかにも、大きな例はこれかなと思うんですが。
そういうことを考えますと、今回についても、課レベルでどのぐらい、切って離れないぐらいの、単にひっつけるだけじゃなくて、要するに再編ですね。二つのものを全然違う線引きを行うことによって新たな課をつくるというようなことをしない限り、そのまま大くくりの中で昔からの課が残れば、パフォーマンスといいますか意図されたことは必ずしも実現されないことになるのではないだろうかというふうに思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/481
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482・福山哲郎
○福山哲郎君 ありがとうございます。
真渕公述人にもう一つだけお伺いしたいんですが、真渕先生は大蔵省のここ数年来の動きをずっと関心事として見てこられて、現実に財政赤字がこれだけ膨れて、そして金融関係も、銀行行政、金融行政の問題も含めて今ここまで来ている状況の中で、いわゆる財金分離論があって、そして今の新たな財務省の設置という状況がある中で、現状の省庁再編における財務省の問題等についてどのような評価をされているのか、簡単にお聞かせをいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/482
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483・真渕勝
○公述人(真渕勝君) 私は、官民の役割分担の見直しという話を別にしまして、霞が関の中での機構改革は、政策パフォーマンスにはそれほど大きなインパクトはないであろうという予測を持っておるんです。ですが、やや例外なのが大蔵省であるというふうに私は考えてきておりました。そのために、今、福山委員から言及いただきました本を昔書いたことがございます。財政と金融の分離がなかったために財政赤字は巨大になったんだと、だから、これは大蔵省の目標を大蔵省の組織が裏切っているのだという議論をしたことがございます。この点では、組織と政策というのはかなりリンクしているなというふうに考えております。
〔団長代理大島慶久君退席、団長着席〕
今回の財金分離につきましては、もちろんパーフェクトなものではございませんが、やはり一定の成果であるというふうに私は肯定的に評価し、そのようにまた別の本を出したことがございます。そしてまた、今よく心配されておる金融監督庁につきましても、非常にモラールは高いと、いろんな事情があるというふうに伺っておりますが、非常にモラールは高いなと思っておりますので、現状においてはよくぞここまで来たものだというふうに評価しております。
ただ、今後のことにつきましては、これもまたやってみなければわからないということは確かなんですが、一つだけやや気になっておりますのは、大蔵省が財務省という、中身も変わりますが名称変更がされると。ただ、英語名は変わるや変わらないやということで、英語名は変わらないというふうに聞いたことがあります。この点をちょっと大蔵省の役人さんとも話をして変わらないんだというふうに聞きましたが、「タイム」にはミニストリー・オブ・トレジャリーというふうに書いてありまして、どっちが本当なんだと思ったんですが、大蔵省の役人は変わらないというふうに言っておりました。これは非常に私はアナウンスメント効果の大きい問題であろうと思いますので、やるならやった方がいいんじゃないかというような感触は持っております。
そのぐらいです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/483
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484・福山哲郎
○福山哲郎君 ありがとうございます。
山本公述人にお伺いします。
政策評価について大変興味深いお話をいただきました。今回、実は政策評価というのは一つの争点だと思うんですが、いわゆる国土交通省の問題、巨大な官庁ができ上がる、財政規模でいうと約十兆円、人数でいっても五万人ぐらいと。先ほど先生が、議会としての評価機能も別建てで必要だとおっしゃいましたが、これは国会だけではありません。国土交通省の地方整備局という大変巨大な、北海道開発庁から農林関係を引いたような、そういった地方整備局が全国のブロック単位でできてくるわけです。ここに対しては地方議会のチェックもない。そして、国会のチェックもある意味でいうと予算の審議だけという状況の中で、先ほど先生が言われたモニタリングの調査に対しても大変不安な状況の中で、いわんやプログラム評価等についてはまだまだ全然整備ができてないということに対して、私は実は大変不安に思っています。
まして、新しくできる総務省が政策評価をしますが、これは横並び官庁で、あくまでも勧告のみということで、一体どれぐらい実質的に一つ一つの事業についてのチェックができるのかということに対して今回懸念をしておりまして、この辺について、先ほどの地方に対して巨大な地方整備局ができることに対するチェックのあり方、それから今申し上げました総務省自身の政策評価についてのあり方等について、もし何か御意見があればお聞かせをいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/484
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485・山本清
○公述人(山本清君) いわゆる国土交通省の巨大化した場合におきます政策評価のあり方につきましては、かねてから私は持論がありまして、ある雑誌等にも意見を開陳したわけでございますが、まずどういうことをやったらいいかといいますと、まさしくたくさんのプロジェクトを抱えておる、それについてひょっとすると恣意的な評価がされたり、あるいは箇所づけがされるおそれもあるということですから、あくまでもこれはたくさん予算を獲得したい、あるいはそれを執行したい、そういう利害と、それをチェックする機能というのは相反するわけでございますね。したがって、こういう相反する機能を同一の省内において完結するというのは、これはもう組織管理上非常にまずいわけでございますから、まさしくこの場合こそいわゆる審査庁というのを、八条かあるいは何条かは別にしまして、かなり独立的な審査庁を国土交通省あるいはその外局あるいは内閣府等においてつくると。この機関の審査庁というのは、基本的にはまさしく英国のエージェンシーに似たような自立的な組織であるべきであるわけです。
したがって、少なくともこの場合の審査庁の役割と申しますのは、いわゆるエージェンシーには二つの役割があるわけです。
エージェンシーの第一の役割というのは、なるべく自立性を与えて効率性を上げましょう、国民に対するサービスの質を上げましょうということです。余り余計な制約はしない方がいいという目的でエージェンシーになる場合が一つあります。
もう一つは、余り日本では議論がされないんですが、いわゆる下克上といいますか、下の巨大組織が上を牛耳ってしまうということですね。部下が上司を乗っ取ってしまう。これはキャプチャリングということをよく言うんですが、組織論的には。そのキャプチャリングという現象がまさしく起こりかねないわけです。みずからの予算拡大行動がとられるおそれがある。
したがって、それを避ける、あるいはそういうことをしていませんよということを堂々と巨大省がむしろアカウンタビリティーを果たす。そういう意味においても、いわゆる乗っ取りを回避するために権限を分離するということですね。それがやはり必要であろうというのは、これは私のかねてからの持論であるんですが、余り明確に書かないからよく世間に知れ渡っていないかもしれません。そういう新たな独立行政法人組織をつくるべきであるというのが、私の巨大官庁に対する恣意的な裁量を防止するための一つの提案でございます。
それと総務省でございますが、総務省は今度行政監察局がいわゆる行政評価局となることなんですが、これは少しある意味においては役人がうまいことしたなという印象を素朴に思います。総務省の方に対して、別に私は特に利害関係ないんですけれども、総務省が行う政策評価というのは、多分いわゆる政策評価と独立行政法人評価委員会、これは合併の第三者的な委員会ができるそうなんですが、ああいった学識経験者を集めたようないわゆるパートタイマー的な組織をつくっても、これは機能しないと思うんですね。ですから、私は、その総務省の政策評価には期待はするんですが、どうも実効性に欠けるんじゃないかということを思います。
そうすると、これは政策評価に当たっては国会でぜひとも、例えばいわゆる補助金の資格要件、適格要件、あるいは公共事業の場合の採択要件、あるいは社会福祉等におきますと介護保険等が今度導入されますが、そういった場合のいわゆる目標集団というのは本来どうあるべきかというそういった本来的な議論を、価値判断にかかわる議論を含めた議論をやはりしていただいて、国会の方で政策の枠組みをビルトインしていただきたいということをぜひともお願いしたいというのが私の意見でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/485
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486・福山哲郎
○福山哲郎君 滝口公述人にお伺いしたいことがあったんですが、時間になりましたので大変失礼いたしました。これで終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514269X01019990707/486
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487・山下栄一
○山下栄一君 初めに、独立行政法人の問題でお聞きしたいと思うんです。
今、最後の方で山本先生がおっしゃったことにもかかわってくるかもわかりませんけれども、独立行政法人は何のためにこういう制度を導入するのかという、この辺がイギリスの場合と日本の場合、動機のところでちょっと違うと。これが独立行政法人という制度を導入してどれだけ期待できるかという、非常に暗いなということにつながってくるのではないかなと思うわけです。
やはり、官、行政の存在意義といいますか、国民の側に立って行政というのは何をなし得るのかという観点から行政の存在意義が問われておるわけ