1. 会議録本文
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000・会議録情報
平成十一年六月十日(木曜日)
午前九時開会
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委員の異動
六月九日
辞任 補欠選任
櫻井 充君 岡崎トミ子君
松崎 俊久君 佐藤 雄平君
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出席者は左のとおり。
委員長 松谷蒼一郎君
理 事
市川 一朗君
太田 豊秋君
小川 勝也君
福本 潤一君
緒方 靖夫君
委 員
上野 公成君
坂野 重信君
田村 公平君
長谷川道郎君
山下 善彦君
脇 雅史君
岡崎トミ子君
佐藤 雄平君
弘友 和夫君
岩佐 恵美君
大渕 絹子君
泉 信也君
奥村 展三君
島袋 宗康君
政府委員
環境庁企画調整
局長 岡田 康彦君
通商産業省基礎
産業局長 河野 博文君
事務局側
常任委員会専門
員 八島 秀雄君
参考人
中央環境審議会
環境保健部会長 井形 昭弘君
高崎経済大学経
済学部講師 水口 剛君
横浜国立大学環
境科学研究セン
ター教授 中西 準子君
横浜国立大学工
学部教授 浦野 紘平君
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本日の会議に付した案件
〇連合審査会に関する件
〇特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管
理の改善の促進に関する法律案(内閣提出、衆
議院送付)
〇化学物質に係る環境リスク対策の促進に関する
法律案(清水澄子君外六名発議)
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514314X02019990610/0
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001・松谷蒼一郎
○委員長(松谷蒼一郎君) ただいまから国土・環境委員会を開会いたします。
委員の異動について御報告いたします。
昨九日、松崎俊久君及び櫻井充君が委員を辞任され、その補欠として佐藤雄平君及び岡崎トミ子君が選任されました。
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514314X02019990610/1
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002・松谷蒼一郎
○委員長(松谷蒼一郎君) 連合審査会に関する件についてお諮りいたします。
特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律案及び化学物質に係る環境リスク対策の促進に関する法律案について、経済・産業委員会からの連合審査会開会の申し入れを受諾することに御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514314X02019990610/2
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003・松谷蒼一郎
○委員長(松谷蒼一郎君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
なお、連合審査会開会の日時につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514314X02019990610/3
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004・松谷蒼一郎
○委員長(松谷蒼一郎君) 御異議ないと認め、さよう取り計らいます。
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514314X02019990610/4
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005・松谷蒼一郎
○委員長(松谷蒼一郎君) 特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律案及び化学物質に係る環境リスク対策の促進に関する法律案の両案を一括して議題といたします。
本日は、両案の審査のため、四名の参考人の方々から御意見を聴取することといたしております。
参考人は、中央環境審議会環境保健部会長井形昭弘君、高崎経済大学経済学部講師水口剛君、横浜国立大学環境科学研究センター教授中西準子君、横浜国立大学工学部教授浦野紘平君でございます。
この際、一言ごあいさつを申し上げます。
皆様には、御多忙中のところ本委員会に御出席をいただき、まことにありがとうございます。参考人の方々には忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じますので、よろしくお願いを申し上げます。
本日の会議の進め方について御説明いたします。
まず、お一人十五分程度で順次御意見をお述べいただき、その後、委員の質疑にお答えいただきたいと存じます。
なお、参考人の方々の意見陳述は着席のままで結構でございます。
それでは、まず井形昭弘参考人にお願いをいたします。井形参考人。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514314X02019990610/5
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006・井形昭弘
○参考人(井形昭弘君) 環境庁の中央環境審議会環境保健部会の部会長を務めております井形でございます。
本日は、PRTR法案の国会審議に際しまして、参考人として意見を申し述べる機会をいただき、非常に光栄に思っております。
私は、長年、鹿児島大学におりまして水俣病に関係しておりまして、私自身は全面解決にかなり努力をしてきたつもりでありますが、そういう関係もございまして現在中央環境審議会の委員等しておりますけれども、環境保健部会と申しますのは環境保健にかかわる重要事項を審議する部会でありまして、化学物質が環境を経由して人体に及ぼす影響あるいは生態系に及ぼす影響などについてどのような環境保健施策を講ずればよいかなどのことを審議しておるところでございます。
環境保健部会は、医学、化学、経済学、法律学の専門家や消費者団体、産業界から三十七名だと思いますが委員となっておりまして、専門的、科学的な知見や経験をもとに幅広い見識に立脚した多様な見方を反映した審議を行う委員会だと考えております。
まず、環境保健部会におけるPRTRに関する審議の様子について申し上げたいと思います。
PRTRは、平成八年、一九九六年二月にOECDの理事会の勧告が行われた直後の三月に開催した環境保健部会におきまして、同勧告について事務局からの報告を受けました。そして、以来、その後経過の報告をいただいておりましたし、私どもが積極的に審議をしてきたわけであります。
例えば、環境庁がPRTRシステムの勉強のために検討会を設けまして、同検討会の提言を受けて地域的なパイロット事業を実施することにしたこと、また、そのために中央環境審議会の会長を務めておられる近藤次郎先生を座長とするPRTR技術検討会を設置して制度設計を行い、PRTRのパイロット事業を実施していることなどをお聞きしておりました。また、その結果を報告いただきました。
このような経過を経て、昨年七月に環境庁長官から「今後の化学物質による環境リスク対策の在り方について」という諮問を受けまして、環境保健部会においてたびたび会合を開いて検討いたしたわけであります。
化学物質による環境リスク対策というテーマは非常に包括的でありますから、さまざまなトピックを論議することが必要であります。
その中で、まずPRTRについて、OECDの勧告により国際的に導入が求められていることを踏まえまして、新たに我が国における化学物質対策の体系に取り入れることについて審議することにいたしました。昨年十一月にPRTRの制度化が急務であるということを取りまとめた中間答申を長官に差し上げたわけであります。
私は、PRTRの導入は、我が国における化学物質対策の取り組み方というもの、大げさに言えばその根本理念を変えるような大きな意味があると考えております。
従来の化学物質に対する環境対策というのは、物質の性状としての有害性が明らかな化学物質について、特定の環境経路を経由して人の健康に悪影響を与えるという因果関係が証明された場合に、その特定の環境経路への排出を規制するという、つまり罰則を中心とした規制をするという手法が主な手法でありました。
つまり、このような規制の世界におきましては、それが国民の権利義務を制約することになるという性格上、規制対象物質が限定的にならざるを得ないという側面がありました。
これに対しまして、PRTRは、物質の性状としての有害性は要件といたしますけれども、環境を経由して悪影響を生ずるか否かの因果関係が必ずしも十分立証されていなくても対象物質に幅広くとらえようとするものであります。
また、規制の世界においては、その排出濃度などの実態は規制基準に照らした合法、非合法の判断に直結するものでありますから、都道府県などの規制実施主体が立入検査や報告の徴収といった強権的な手法で排出実態を把握し、違反者には刑事罰をもって臨むということをされておりました。
一方、PRTRは、その環境への排出量等は事業者がみずから把握して、その届け出を受けることによって行政も排出量等を全体として把握し、その結果を集計して公表してしまうものであります。
このように、事業者がみずから排出量を把握し、その意味するところを考え、自主的に化学物質の管理の改善を行うというものであるとともに、化学物質の環境への排出の全貌を明らかにできるものでありますし、このことがさらにさまざまな取り組みを促進するという、環境保全上の支障を未然に防止する上で柔軟性がある効果的な対策手段と言うことができます。
このような性格から、PRTR制度については、厳格でかつ強権的な手法、すなわち規制を中心に行ってきた今までの対策とは全く変わりまして、PRTRシステムがその本来の機能を発揮することを妨げる行為、すなわち排出量等の全体を把握するために必要な届け出を行わない事業者にはペナルティーを与える程度でありますけれども、事業者の理解と協力とがまず前提であります。いわば、みんなの自覚を促しつつ対策を進める手法であるという点で、まさに画期的な方法であると言えます。
OECDにおきましても、PRTRシステムについては、排出量の自主的把握と届け出を基本にした構えになっております。
このように、PRTRは従来の環境規制とは全く異なる新しい考え方ないし文化を導入するものでありますから、環境保健部会においても我が国におけるPRTR制度の導入について十分に検討ができるだけの資料が必要となりました。幸い、環境庁におきましては既にパイロット事業を行った経験が蓄積されており、産業界においても自主的なPRTR事業を実施しておりました。
また、環境庁のパイロット事業の制度設計を行ったPRTR技術検討会は、中央環境審議会会長である近藤次郎先生が座長を務める親検討会のもとに四つのワーキンググループを置いて、その構成人員は延べ六十人という大規模なものでありました。化学、法律学などの学識経験者、地方自治体の職員、そして業界団体ないし企業の職員、NGOの構成員など、PRTRに関連する各界の識者の意見を総合する組織でありました。
私どもが環境保健部会において検討を進める際には、このPRTR技術検討会が行ったパイロット事業についての検討結果を集大成した報告書を各委員に配付し、絶えず折に触れて参考とし活用させていただきながら審議を進めたわけであります。
また、産業界が実施しました自主的なパイロット事業についても報告書の提出を受けまして、さらに部会に産業界、NGO、公共団体など関連する分野に属する方を参考人としてお呼びいたしましたし、意見をお聞きしました。また、国民に広くこの制度に対する意見を求めて、それも参考にいたしました。
このようにして、多くの方々の御協力、御意見をいただいて審議会の中間答申とさせていただいたものであります。
次に、環境保健部会の審議を振り返って、幾つかの点についての意見を申し述べたいと思います。
PRTRの位置づけ、その意義につきましては、PRTRは、化学物質に関する環境保全施策として従来行われてきた規制的な手法に加えて、環境保全のために新たな手法として位置づけられるものであるとし、またその意義につきましては、一番目、環境保全上の基礎データを蓄積すること、二番目、行政による化学物質対策の優先度の決定に当たっての判断資料とできること、三番目、事業者の化学物質の排出量削減の自主的取り組みの促進に寄与すること、四番目、国民の理解を深め、化学物質対策への協力、環境への負荷削減努力を促進すること、五番目、化学物質に係る環境保全対策の効果、進捗状況を直接効果として把握できるなど、多面的な意義が期待されるものであります。
PRTRが制度化されたならば、毎年PRTRの結果が取りまとめられ集計、公表が行われますので、先ほど申し上げたようなさまざまな活用がなされるものと考えます。その意味でも、ぜひ今国会における制度化を希望させていただきたいと思います。
次に、PRTRの実施方法についてですが、答申においては、事業者からの報告に関して国において統一的なルールを示すこと、地方公共団体においてPRTRを有効に活用しやすくする仕組みとすること、国と地方公共団体が連携してPRTRの普及定着、環境モニタリングの実施充実、知識や技術の普及啓発、これにかかわる人材の育成などを図るべきであることを提案いたしました。
また、法案におきましては、国がその責任のもとで統一的なルールによるPRTRを実施する一方、電子ファイル化されました個別事業所データが都道府県知事に通知され、地域のニーズに応じて活用できる仕組みとされました。三番目、国と地方公共団体がともに事業者に対する技術的助言や広報活動を通じた国民の理解増進の支援を行うべきこと、またこのための人材育成に努めるべきことが定められ、四番目、国の行う環境モニタリング調査等について都道府県が意見を述べることなどができるようになっていることなど、我々の答申の趣旨を実現するものとなっております。
このほか、法案におけるPRTRの骨格について見ますと、一番目、人の健康への影響だけでなく広く生態系への影響も考慮して対象物質を選定することにしていること、二番目、化学物質を製造している工場だけでなく化学物質を使用している事業場等も対象とし、できるだけ広く対象事業場をとらえることとしていること、三番目、いわゆる非点源の排出源からの排出量の推計が盛り込まれていることなど、中間答申において提言した内容を踏まえた法案になっていると考えております。
さらに、法案には諸外国の制度と比較してもすぐれた点があると考えております。例えば、事業者がみずから化学物質の管理の改善を進めやすいように化学物質管理指針が定められていること、二番目、届け出排出量と非点源の排出量の双方を公表することで化学物質の排出量の全貌が把握できるようにしていること、三番目、環境保全効果をより高めるために、国が都道府県の意見を聞きつつPRTRの結果等を勘案した調査等を行うことを定めていることなどであります。
法案の内容については部会に報告していただきましたが、環境保健部会の委員からは法案に対する異論は出ませんでした。この法案の成立を願っておるわけであります。
以上、審議会における審議の経緯、法案に対する私の意見を述べました。
また、もう一つ重要なことは、この審議会が通産省の化学品審議会と共同で審議を行ったことであります。これは今までに余り例がないことで、一つのものに対して各省庁が力を合わせて新しいことを開拓する一つのシンボル的な出来事ではないかと思っております。
中央環境審議会としましては、PRTR制度を我が国に導入することが急務であると認識しまして、政府におきまして早急に法制化するよう昨年の十一月三十日に取りまとめた答申に記述いたしました。その後、政府において迅速に法案を取りまとめて今国会に提出された努力を高く評価したいと思います。
御出席の先生方におかれましては、ぜひ今国会においてPRTRの法制化をしてくださるようにお願い申し上げて、私の意見陳述を終わらせていただきたいと思います。ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514314X02019990610/6
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007・松谷蒼一郎
○委員長(松谷蒼一郎君) ありがとうございました。
次に、水口剛参考人にお願いをいたします。水口参考人。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514314X02019990610/7
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008・水口剛
○参考人(水口剛君) 御指名をいただき、ありがとうございます。水口と申します。
お手元に資料を御用意いたしましたので、この資料に沿いまして意見を述べさせていただきます。
最初に、私はPRTR市民会議という市民のグループのメンバーでございますので、このPRTR市民会議について簡単に御説明申し上げます。
このPRTR市民会議の背景は、バルディーズ研究会と申します環境問題に関する非営利民間の研究組織の中に設けた一つの分科会でありますPRTRラウンドテーブルにございます。
このPRTRラウンドテーブルがPRTRについて二年余り研究をしまして、ことしの一月二十日にPRTR法市民案骨子というものを作成し、ことし二月六日に発表いたしました。この市民案骨子については添付資料1として資料を添付しております。
そして、この二月六日、市民案を発表した際に、これに賛同いただける団体及び個人の方とPRTR市民会議という組織が結成されました。PRTR市民会議の賛同団体は現在十二、個人の賛同者の方は二十名となっております。この点につきましては添付資料2としてつけております。
このPRTR法市民案骨子と、特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律案、以下私の報告では政府案と呼ばせていただきますが、この政府案と、化学物質に係る環境リスク対策の促進に関する法律案、以下私の報告では社民党案と呼ばせていただきますが、この三案の比較表を作成しております。こちらを添付資料3としてつけております。この比較表も踏まえました上で、以下に私の意見を述べます。最初に、基本的な考え方について述べた上で、次に具体的な点について指摘したいと思います。
まず、基本的な考え方については、OECDの理事会勧告の原則について及び制度の目的規定についての二点について申し述べます。
第一に、OECDの理事会勧告には附属文書としてPRTRシステムの構築に関する原則というものが十四項目掲げられておりますが、その中の第十三項では、「目標・目的の必要性を最もよく満足するメカニズムについて、関係・関連団体と合意すべきである。」とされております。また、第十四項では、「PRTRシステムを構築する全過程及びその実施・運営は、透明かつ客観的であるべきである。」とされております。
政府案に関しまして、その構築の過程は必ずしも透明ではない部分があったのではないかというふうに考えております。また、内容につきましては、以下に述べますように、合意できない部分が残っていると考えております。したがって、OECDの理事会勧告の原則に必ずしも沿っていないのではないかというふうに私は考えております。
まず、過程の透明性についてですが、昨年の九月八日に化学品審議会から中間報告が、また昨年十一月三十日には中央環境審議会から中間答申が出されました。しかし、これはいずれも中間報告及び中間答申でございますので、この中間報告ないし中間答申をもとに議論がなされて、その結果、最終答申ないしは最終報告が出て、そこから法律案が策定されるものというふうに当然考えておりました。
しかしながら、中間報告及び中間答申が出た以降は全く情報が外に出てこないままに、ことし三月になりまして、突然政府案という形で法律案が出てきました。したがいまして、中間報告及び中間答申以降、政府案が策定されるまでの過程が非常に不透明であった、このように考えております。
次に、制度の目的規定についてでございます。
政府案の目的では、事業者による化学物質の自主的な管理の改善の促進という点に主眼が置かれており、化学物質の環境への排出量等の情報の提供ということが目的に含まれておりません。これに対して市民案及び社民党案では、市民の知る権利あるいは国民の知る権利ということが目的に含まれております。
そもそも、OECD理事会勧告の背景となりましたアジェンダ21におきましては、市民の知る権利を確保することということが明記されております。この点で、化学物質の排出量等に関する情報の提供を目的規定に含んでいない政府案には問題があるのではないかと考えます。なぜなら、PRTRという制度は情報が広く活用されることによって初めて意味を持つ制度であると考えるからです。
例えば、アメリカにはEDFという非営利組織がありまして、このEDFが、PRTR情報を活用して全米のすべての地点の環境リスクマップを作成し、インターネットを通じてそれを無料で配信しています。これにつきましては添付資料5として資料をつけております。
また、添付資料6に新聞記事を添付いたしましたが、ここにもありますように、エコファンドなどを通じまして環境問題に積極的に努力している企業ほど市場でも高く評価されるという仕組みが現在生まれつつあります。そして、このエコファンドの先進国でありますアメリカでは、PRTRに関する情報がエコファンドを運用する際の非常に重要な情報源の一つとなっています。これらのことは、情報というものがいかに価値を生むかという一つの事例でございます。
政府案につきましても、情報の提供に関して配慮はなされています。しかし、情報提供ということが目的として認識されていないことがさまざまな問題を生んでいると考えられます。その点については以下に具体的に述べたいと思います。
いずれにしても、PRTRという制度が多くの人に活用されて生きた制度になるためには、以下の四点が必要になると思います。第一に制度の柔軟性、第二に制度に対する信頼感、第三に運用の一貫性、そして第四に利用のしやすさということです。そこで、この四点について、以下、それぞれ具体的に述べていきたいと思います。
最初に、制度の柔軟性についてです。
化学物質につきましては、科学的知見が不十分な部分がありますので、今後何が起こるかわからないという側面があります。したがって、PRTR制度においても、対象物質あるいは対象事業者などの点におきまして状況の変化に応じて迅速かつ柔軟に対応できるよう間口を広げておく必要があると考えます。
この点に関しまして政府案では、対象物質に有害性の確定したものだけが含まれるということになっております。しかしこれでは、内分泌攪乱物質のように有害性が必ずしも確定していないがそのおそれのあるものが対象として含まれなくなる可能性があり、迅速、柔軟な対応ができなくなるおそれがあります。そして、そのような物質が後日、有害性があるとして確定し、その段階でPRTRシステムの対象物質としたとしても、過去の排出量の情報については全く蓄積がされていないことから、手おくれになるという可能性が否定できません。このような意味でPRTR制度は、そもそも規制ではないのですから、内分泌攪乱物質など有害性が必ずしも確認されていなくてもそのおそれがあるものは幅広く対象とし得るよう、法律で明示的に規定しておく必要があると思います。
また、環境庁、通産省及び運輸省との間で、平成十一年三月十五日付で覚書が交わされておりますが、その覚書の中に以下のような確認があります。「運送、荷役及び保管業における化学物質の排出は、通常の場合には無視し得るほどに極めて少ないのが実態であるとの運輸省の知見等を踏まえ、運送、荷役及び保管業者を法第五条及び第三章の措置の対象外とすべく所要の措置を講じ当該措置については事前に運輸省に協議することとする。」という確認です。
この覚書の内容は、制度の柔軟性を著しく損なうのみならず、制度に対する信頼感も損なう点で極めて問題であるというふうに認識しております。各省庁間の覚書の中にはほかにも何点か気になるものが見受けられますので、ぜひ国会審議の中で問題点について御確認あるいは是正をしていただきたいというふうに考えております。
次に、制度に対する信頼感についてです。
PRTR制度が社会に活用されるようになるためには、制度そのものに対する信頼感が必要不可欠です。制度に対する信頼性が低ければ、情報を利用しようとするインセンティブが働かなくなり、そもそも制度の存在意義がなくなるからです。
この点に関しまして、政府案では、個別事業所の情報の届け出先が業所管大臣となっており、また営業秘密と認めるか否かの判断も業所管大臣が行うこととなっております。海外では、営業秘密の判断を業所管省庁が行う例はなく、これらの点は制度の信頼性を著しく損なうのではないかと考えます。
なぜならば、業界ないし個別企業の中には化学物質の排出量に関する工場別の情報提供を嫌がるケースも予想されます。そして一方で、業所管省庁は業界育成の立場に立ってきたという経緯があるからです。つまり、業所管省庁が実際には中立的かつ公正に判断し行動しているとしても、第三者の立場からはそのことを信頼しにくいという構造があり、それが制度の信頼性を損なうことにつながれば制度自体を殺してしまうという可能性が否定できないのです。
営業秘密に関しては、市民案や社民党案が主張しますように、独立の審査会を設けて、その審査会に一本化して判断すべきであると考えます。そのことが制度の信頼性を高めると考えるからです。
また、営業秘密を理由に非開示になるケースは、アメリカの一九九五年の場合、約七万三千件の届け出のうち十三件程度であるとの答弁がなされていますが、日本でも同程度の割合とすることが政府の本法律の運用方針として確認されているのでしょうか。また、実際の運用の結果、営業秘密を理由に非開示となる件数の割合がアメリカの例に比べて多かった場合には、環境庁長官が必ず政府案第七条第四項に定める権限を行使し業所管大臣に対して説明を求めることが必要と考えます。この第七条第四項の権限を眠らせることなく、上記の場合には必ず行使するということが確認されるべきだと考えます。
次に、運用の一貫性についてです。
現在の政府案のように、個別事業所の届け出事項が都道府県知事からそれぞれの業所管大臣に提出される場合、都道府県側でも業所管部門ごとに縦割りで届け出を受け付け、処理するという可能性が高くなります。この場合には、業界ごとに指導や支援が異なり、運用の一貫性が保たれないという可能性があります。また、制度運用に対する責任が分散されますので、制度自体が有効に機能するかどうか非常に疑問です。都道府県から国への情報のルートが複数になれば、それだけ運用が混乱するのは明らかです。その結果、情報がおくれるという懸念もあります。
この制度を有効に機能させるためには運用の一貫性を保つことが不可欠です。そのためには、届け出の受け付けを都道府県側では環境部局、国側では環境庁に一本化すべきだと考えます。この点に関しましては、OECDが一九九一年に統合汚染回避管理についての勧告を行っていますので、この点についても申し添えます。この勧告のポイントは、汚染物質はばらばらの行政機関によって管理されてはならないというものです。
そもそも営業秘密の判断を業所管省庁にゆだねて、営業秘密にかかわる届け出事項を業所管大臣に直接届け出るのであれば、それ以外の届け出事項については環境庁に一本化しても何ら問題はないはずです。国側の情報の受け付け先を環境庁に一本化することによって、都道府県側の窓口も環境部局に一本化することができると期待できます。
最後に、制度の利用のしやすさについて述べます。
既に繰り返し述べましたように、PRTR制度は多くの人が多様な観点から情報を活用することによって有効性が増すものですから、できる限り利用しやすい制度とすることが必要です。少なくともインターネットで請求できること、個々の工場名を一々指定しなくても、ある県の工場すべてあるいは全国の工場すべてなどの広域的な地域の指定だけで請求できること、手数料が全国の全工場を対象にしたとしても数千円から数万円程度であることなどが最低限の条件だと考えます。
さらに言えば、そもそも請求に応じて開示されるのであれば、最初から一律に公開しておく方がより望ましいと考えます。なぜならば、行政側の事務処理のコストを考えれば、実費を徴収することがかえって余計なコストを生むと考えられるからです。
最後に、情報の利用のしやすさに関連しまして、非点源情報すなわち届け出られた排出量以外の排出量の算出の集計及び開示方法について述べたいと思います。
先ほども言及いたしました環境庁、通産省及び運輸省との間の覚書の中に、「法第九条第二項の集計結果の公表に当たって、鉄道、自動車、船舶、航空機等の移動体からの排出量については、移動体という一つの区分に包括して行うものとする。」という確認がなされております。
しかし、鉄道、自動車、船舶、航空機等からの排出量を移動体という一つの区分で一括して公表してしまったのでは、情報として利用することがほとんど不可能ですから、情報としての価値が著しく低くなると言わざるを得ません。これでは明らかに提供する情報を限定することによって社会における議論を抑制しようとする意図が見られると考えられます。このような点で、鉄道、自動車、船舶、航空機等の情報を一括してしまうということは極めて問題ではないかというふうに考えます。
以上であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514314X02019990610/8
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009・松谷蒼一郎
○委員長(松谷蒼一郎君) ありがとうございました。
次に、中西準子参考人にお願いをいたします。中西参考人。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514314X02019990610/9
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010・中西準子
○参考人(中西準子君) 中西でございます。
私は、環境庁のPRTR技術検討会の検討委員を務め、なおまた化学品審議会の委員を務めております。今回、このPRTRの法案について意見を述べさせていただきたいと思います。政府の提出しました法案をPRTR法案というふうに呼ばせていただきます。
私は、この政府の出しましたPRTR法案は、一九七三年に制定されました化審法と並ぶ画期的な化学物質管理のための法律だと考えています。化審法は、強い毒性を有する化学物質には禁止も含む強い規制で臨む法律ですが、PRTR法は違います。私たちの生活改善のために使われているたくさんの化学物質と共存しながら、しかし、一方であり得るマイナスの影響を制御しようとする法律です。しかも、企業の排出量情報を明らかにし、企業の自主管理を促すことによって環境対策を進めようとしています。化学物質との共存を前提にし、情報公開と企業の自主的な取り組みを機動力にしたという点で、画期的な内容であると思います。
もちろん、その内容についてはいろいろの意見があると思います。しかし、その議論の多くが、外国に倣えとか、あるいは今回の法律が環境庁と通産省が協力してできたにもかかわらず、省庁の縄張り争いになぞらえて批判をするというようなものが余りにも多いことにがっかりしています。もっと日本の現実を見て、それをどのように改善すべきかという議論があるべきではないでしょうか。
我が国の環境行政の現在の課題は、一口で言えば、公害行政から地球環境保全行政への転換だと思います。我が国では、激甚な公害が多発したために、今でも多くの人が環境問題というと水俣病を例に出し、ある地域で人が死ぬようなことが起きる、そのことを退治しなければならないというようなことを言います。しかし、現実にはそういう状況はありません。私たちが考えなければならない環境問題は地球環境問題であり、それには公害問題とは違った攻め方が必要です。もし公害のような事態があれば、それは公害規制の法律で対処すればいいのです。
新しい攻め方の一つで特に重要なものに、よりきれいな生産とも言うべきクリーナープロダクションの推進があります。
先日送っていただきました、本委員会の調査室がつくられました参考資料の十六ページには、先ほど水口参考人も引用しましたOECDのPRTRシステムの構築に関する原則というものが載っております。その二番目に、PRTRデータはクリーナーテクノロジー導入の促進等に利用されるべきとあります。このOECDのクリーナーテクノロジーというのは私が申し上げるクリーナープロダクションと同じ意味です。これをCPと略させていただきます。これは、一九九二年のアース・サミットで、永続的な発展を具体化する方法の一つとして提唱されたものです。
従来の環境対策は、排水処理や排ガス処理のように、生産ラインの末端での処理技術を意味する、エンド・オブ・パイプ・テクノロジーと私は呼んでいますが、エンド・オブ・パイプ技術が多かったのですが、それでは費用もエネルギー消費も多く、持続可能な技術とは言えない。CP、クリーナープロダクションは、生産工程の変化によって環境中への排出物の毒性や量を減らす方法であり、より根本的な対策と言えるし、CPこそが必要だという認識です。
一九九二年十月二十七日から二十九日までの三日間パリで開かれましたUNEP、国連環境計画主宰のクリーナー・プロダクション・プログラムに関する閣僚会議と専門家セミナーに出席し、私は我が国のCPの経験を発表しました。その意味で、特にこのCPの点から意見を述べたいと思います。
クリーナープロダクションへの転換を推進するには、企業自身が費用対効果の大きい対策を自発的に採用するような仕組みをつくることが効果的です。
実際、化学物質の数が多く、その使われ方も千差万別であることを考慮すると、行政が手とり足とり企業に指導し規制するというこれまでのやり方には限度があります。特に、PRTR対象物質のように人の健康に対する影響のおそれはあるけれどもその因果関係が必ずしもはっきりしない、そういう物質の管理の方法についてまで行政が規制的手法をもって関与することは、クリーナープロダクションへの転換を促進するという目的から見ると不適当であると思われます。
政府のPRTR法案を見ると、その目的として、「事業者による化学物質の自主的な管理の改善を促進し、環境の保全上の支障を未然に防止する」ということが挙げられています。その内容は、企業のクリーナープロダクションへの転換を促進する内容となっていると私は思いますが、今後の運用に当たっても十分その点に配慮していただきたいと考えております。
企業の自主性に期待することに対して甘いとか産業界寄りだなどの意見がありますが、CPは生産工程そのものの改編ですから、企業の自主性でしか実行できないのです。また、企業にとっては非常に重い課題であるはずです。
このような企業の自主的な取り組みを促進するための仕組みの持つべき条件は何か、またそのような仕組みが本法案に組み込まれているかについて検討してみたいと思います。
第一点の条件は、企業の責任と貢献が明らかになることです。この点については政府案は、事業者の責務として化学物質の管理の改善と国民の理解の増進を図ることが規定されております。さらに、個別事業所データが開示されることによって企業の取り組み状況に係る透明性が確保されていることから、条件を備えていると思います。
第二点は、企業が行うべきことについての選択肢が多く用意されていることです。政府案では、化学物質管理指針という形で主要プロセスごとに化学物質の管理を進める上で参考になる情報が示されることになっており、しかしそれはガイドラインにとどまっており、企業が行うべきことについての選択肢は確保されています。
第三点目は、化学物質の排出量によるリスクが科学的に評価できることです。第三点目は極めて不十分で、PRTR法案の実施に当たって緊急の課題です。この点については、また後で述べさせていただきます。
排出量データの届け出先についてはいろいろな議論があると聞いております。私は、届け出先は日本全体に目配りする中央官庁がいいという意見を三カ月ほど前に日本経済新聞に発表しておりますが、PRTRは全国一律の制度であることが重要です。衆議院における審議でも、その点が確認された上で、都道府県の関与を強めるために都道府県経由の届け出とするように法案が修正されたと聞いています。こうした修正は、都道府県が、従来型の公害対策行政から、今後クリーナープロダクション推進のような新しい形の環境行政へ転換していくために必要となる力をつけていくという意味で評価できるのではないかと思っております。
しかし、経由した届け出先が事業所管官庁であることに対して、都道府県の中に縦割り行政が持ち込まれるとか、あるいは都道府県の環境部局が主体的な役割を果たせないというような、さらなる修正を求める意見もあると聞いています。私は、都道府県のどこの部局が担当するかは都道府県が決めればいい問題だと思いますが、大事なことは、我々の目指すべきはエンド・オブ・パイプではなくてCPなので、産業活動と切り離して環境対策を考えることは無理だということです。ですから、産業活動を誘導する立場にある事業所管省庁を積極的に関与させ、その知見を発揮させる仕組みとすることがより効果的です。こうしたことにより、省庁の産業政策の中にクリーナープロダクションの推進策を位置づけさせ、PRTRにより得られたデータを通じて、所管省庁がどれだけクリーナープロダクションの推進に熱心であるか国民が監視することがいいことだと考えております。
私は、リスク評価、リスクマネジメントの研究を専門にしております。その立場から、さきの第三点目の論点、リスク評価のことについて申し上げます。
ある化学物質の排出量の科学的な意味、つまりリスク評価のプロセスと結果を企業、近隣住民、社会で共有できることが重要です。それがないと、ある物質のリスクが大きいという判断はうわさや風評に支配され、本当に削減すべき物質が削減されず、実は大きな影響がない物質がやり玉に上げられて、それが企業の環境対策の中心にならざるを得ないということもあります。こういうことに資金が使われることは、大競争時代と言われる現在の状況では、日本企業の国際競争力を低下させるだけでなく、実は資源のむだ遣いという点で地球環境問題を大きくする要因にもなるのです。
政府案にもこうした点についての配慮が見られることも事実ですが、まだ足りないと思います。産、官、学、NPO挙げて努力しなければならないと身を引き締めて考えているところでございます。
リスク評価手法の研究も不十分という事情もあって、私は、PRTR法のもとで個別事業所のデータを開示することは時期尚早ではないかという考え方を当初の時期には持っておりました。化学品審議会の最初には持っておりました。しかし、何とか前向きにということで、各種工業会や関係省庁の努力でこの世界レベルの法案ができました。しかし、今でもつまらない誤解に基づくパニックがあるのではという心配はやはり全くなくなっているわけではありません。そして、ここでパニックを起こすと他の情報公開もおくらせてしまう心配があります。
実は、行政が所有する環境情報や環境予測に使われているソフト、コンピューターのソフトですが、ソフトの多くはいまだに公開されていません。PRTR法を契機に地方自治体はこういう情報をぜひ公開していただきたいと思います。しかし、このPRTR法が間違って使われてしまうと、むしろ情報公開の機運がしぼんでしまうのではないか、そのことを心配しています。
その意味では、内分泌攪乱物質をとりたててPRTRの対象物質として法律に明記することは、私は実は一番心配しております。今の状態で排出量だけ公表されても、国民の不安が解消するとは思えません。大事なことは、その化学物質が内分泌系へ作用することにより人の健康などを損なうおそれがあるか否かを調べることです。これがないと、むしろPRTR法適用の悪い例になってしまうのではないかと私は心配しているのです。
時間の制限がありますので、自分の専門にごく近いことだけ述べましたが、結論としては、このPRTR法案が早く制定され、その実施の過程ではCPの促進と他の情報公開の牽引力になるような運用をしていただきたいと思います。
以上です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514314X02019990610/10
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011・松谷蒼一郎
○委員長(松谷蒼一郎君) ありがとうございました。
次に、浦野紘平参考人にお願いをいたします。浦野参考人。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514314X02019990610/11
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012・浦野紘平
○参考人(浦野紘平君) それでは、私の意見を述べさせていただきます。
私も、今の中西先生と同じ大学におりまして、化学物質の関係の研究教育を行っております。また、環境庁のPRTRのパイロット事業等にかかわってまいりましたし、また、企業の有害化学物質対策についてかなりのいろいろな企業と協力をして今研究あるいは技術開発をしております。また、市民の方々への正しいリスクの知識の普及、リスクの考え方についての知識の普及などの活動も続けてまいっております。
私、意見がかなり今までのお三方と共通する部分と異なる部分がございます。私は、たまたま今回ここに呼ばれて意見を言わせていただいておりますけれども、特定の党派とか団体とか省庁の代弁をする気は全くございませんので、専門家として責任を果たしたいというふうに思って私の意見を述べさせていただきます。
私は、実は衆議院におきます政府原案及び民主党案の審議の際にも商工委員会に参考人として呼ばれまして、ここに呼ばれるという意識は全くなかったのでございますが、たまたま修正も行われたということで、また意見を述べさせていただくことになりました。
衆議院におきましては、お手元の資料の(1)から(5)まで、地方公共団体の主体的な関与が必要であるということと、個別情報が利用しやすい形で国民に公開される保証が必要である、あるいは中央官庁の権限強化や縦割りの弊害を避ける必要がある、報告対象物質の決定においては国民意見をできるだけ取り入れる制度が必要である、あるいは非点源の排出量の推計に対してさまざまなところの協力義務や移動量の推計等、あるいは取扱量等の報告もできれば望まれるという意見を述べさせていただいております。
その後、衆議院の審議におきまして、PRTRの報告が都道府県知事を経由して提出されることになりましたし、都道府県知事が意見を付して提出できること、対象物質は被害、支障が未然に防止されるように配慮して定めること等の修正が行われ、地方公共団体との連携あるいは対象物質の選定及び情報公開のあり方についての五項目の附帯決議が採択されました。これらは、地方公共団体の主体的関与が可能になったことなど、衆議院での各党の御審議が非常に真剣に行われたものと敬意を表しております。また、政府原案に比べて幾つかの点で非常に重要な改善が行われたと私は思っております。
ここでは、これらの修正や附帯決議の趣旨が十分に生かされて、二十一世紀の日本の発展のためになるよりよい法律が制定されてこのPRTR制度が適切に運用されていくために、以下の諸点について述べさせていただきたいというふうに思っております。
最初は、都道府県知事からの報告先、先ほど中西先生からもございました。また御質問があればその辺の違いもお答えしたいと思いますが、私は環境庁長官が何らかの形でかかわる受け取り方が望ましい、それから都道府県の担当部局は環境部局に統一することが必要であるというふうに考えております。それから、対象物質、対象事業所を広くとって、国民意見の聴取、反映をする制度が必要である。あるいは、非点源の排出量の推計への協力義務、移動量の推計と公表について検討する必要がある。あるいは、情報が無料公開あるいは取扱量が報告されること等が望ましい。この四項目についてお話をさせていただくことにいたします。
最初の第一点目でございますが、衆議院の修正におきまして、都道府県知事がPRTR報告を集めるということで、自治体、少なくとも都道府県レベルはこの新しい環境管理の制度に主体的に参加をして、先ほど来お話がありました規制だけではない化学物質管理を日本全国できちっとした体制で行えるようにするという意味では非常に有効であるというふうに思っております。
〔委員長退席、理事太田豊秋君着席〕
しかし、都道府県知事の報告先が事業所管大臣、これは非常にたくさんの大臣になりまして、この流れが非常に煩雑になってむだが多い状況になっているのではないか、あるいは混乱する恐れがないかということを考えております。
現在ですと、都道府県が提出された報告を業種別に分けまして、この業はここの所管官庁に出す、例えば大学であれば文部省というふうな形で全部仕分けをしてそれを事業所管官庁に出すと、それが環境庁と通産省に回って、また通産省と環境庁が業種別とかあるいは全国集計あるいは地域別集計等を行って、これをまた事業所管官庁と都道府県に戻すと、都道府県が非常に混乱をするあるいは行政がぐるぐる回って非常に効率的でなくなるのではないかということが一点ございます。
先ほど水口さんからもお話がありましたが、営業秘密以外の報告を事業所管官庁に出す必要があるのかどうかということで私は疑問を持っているわけです。少なくとも環境庁長官、あるいは環境庁と通産省に提出すれば、そこで仕分けをして事業所管大臣に出す、都道府県知事には非点源も合わせてもう一度戻すという形が一番すっきりして自然なのではないかというふうに思っているわけでございます。
特に、都道府県は法定受託事務としてこの業務を受けつけるわけですので、その委託主はだれかといいますと環境庁以外の多数の事業所管官庁ということで、環境庁は委託主になっておらないわけでございます。衆議院での附帯決議にもございますが、地方公共団体と国との連携を強化し、また連携のあり方についてさらに検討するようにという附帯決議がついてございますが、この協力を適切にするためには、やはり自治体の方の意見も少し聞いてみたんですが、非常に進んでいるところは従来から環境部局がやっておりますが、そうでないところは非常に戸惑っておるように私は受け取っております。
例えば、病院からの報告は厚生省からの委託であるから衛生部局が担当するというようなことが起こったり、自治体によっては担当部局がばらばらで自治体間での連携も難しくなることが起こり得る。できればそういうことが起こらないようにしてもらいたいということですが、起こり得るということで、これはどこが決めるかは先ほど中西先生のお話にあったように都道府県知事が担当部局を決めるわけですから自由なわけですが、これが余り自由ということでばらばらになってしまうと、実際に環境庁が委託主でもないわけですが、行政の責務と権限が複雑に交錯して自治体の環境部局との交流にも支障が来るのではないか。スムーズなこのPRTR制度の運営をするためには、世界のすべての国が環境行政が担当しているという事実もございますので、これを環境部局中心でさまざまな関連事業所管官庁の協力のもとに運営していくのが一番いいというふうに考えております。
二番目に、対象事業所や対象物質を幅広くして国民意見を聴取、反映する制度が必要であるということでございますが、これは衆議院での修正でも明記されておりますように、このPRTR制度は被害を未然に防止するための制度でございまして規制ではございませんが、幅広い対象事業所や対象物質について情報を収集して共有するという制度でございます。
この報告対象物質の選定の方はかなり議論があるわけですけれども、業種の選定あるいは取扱物質の含有量あるいは取扱量のすそ切りというのも非常に重要な問題でございます。これが余り大きくとられますと、全国の排出・移動量のうちの一部しか把握できなくなるおそれがあります。
環境庁のパイロット事業では、対象物質を一%、我々の環境部門で言うとppmですが、一〇〇〇〇ppm以上含むものを扱っているところだけが報告対象になります。また、有害性の高い物質は純物質換算で百キロ以上取り扱っているところ、毒性の低いものは十トン以上ということになっております。
これらの点についても、含有量については有害性の高いものはさらに低いものまで、あるいは取扱量についても百キロというのが妥当かどうかは議論がありますけれども、余り大きくするということについては非常に問題を生ずる。この辺についても十分注意が必要であるというふうに考えております。
また、衆議院での附帯決議にもありますように、内分泌攪乱物質、これを一律に入れるという必要はございませんが、国民の不安が非常に大きいということはそれなりに配慮して、情報が少ないからといっても信頼できる情報があれば迅速、柔軟に報告対象物質に含めるべきであるというふうに考えております。
また、これは三つの審議会で承認を得ることになっておりまして、一つの審議会でも反対があると入らないというようなことが起こりますと本来の未然防止という趣旨とも合ってこないおそれがありますので、衆議院でも申し上げましたけれども、一つの審議会でも提案があったらそれを入れるというぐらいの考え方にするべきではないかというふうに思っております。また、これらのことについて広く国民の意見を聞いて反映をするという制度を担保していく必要があるというふうに思っております。
また三番目に、非点源の排出量の推計への協力義務と移動量の推計、公表についてでございます。非点源すなわち家庭であるとか商店、事務所あるいは報告対象以下の小さな事業所あるいは先ほども話がありました自動車等の移動発生源について国が推計することになっておりますが、実際にパイロット事業をやってみましても、非常に情報が不足している、入手が難しいという実態がございます。これについて、当然事業所管官庁は協力してくださるものと思われますけれども、関連の業界団体等においても、このPRTRの必要な範囲において情報提供を義務づけることが必要ではないかというふうなことを考えております。
また、現在の政府案あるいはその修正案では、非点源からの廃棄物としての有害物質の移動量は推計しないことになっております。これは社民党案では推計することになっております。これをできればこのスタートの時点からしたいわけですが、もし仮にスタートの時点から非点源の推計ができないとしても、この非点源すなわち普通の廃棄物の中に何が有害物が入っているかということは、国民に身近な商品が廃棄物になるわけですが、その中にどのような有害物質が入っているかがわかる。そういう意味では、今後国民の消費者意識が改善され、より安全性の高い商品の普及、先ほどのクリーナープロダクションということについても貢献するので、また廃棄物そのものの安全性の管理にも貢献するということで、これについては少なくとも今後パイロット事業的なもので環境庁あるいは通産省が関係部局と協力をして推計を続けて、早い時期に導入できるようにすべきだというふうに考えております。
最後に、情報が無料公開あるいは取扱量が報告されることが望まれるということです。
情報については、基本的にPRTRというのは情報の共有からスタートするというふうに私は考えております。この辺、先ほどの中西先生と若干ニュアンスが違いますので、また御質問があればお答えしたいと思います。衆議院での附帯決議にもありますように、だれでもが排出・移動量の情報をインターネット等の利便性が高い形で入手できることが私は必要である。現在、政府はコンピューターへの入出力あるいは維持管理とか改ざん防止等にかかる実費を利用者から徴収するとしておりますけれども、本来その程度の経費は行政の経常的な経費ではないか。それを国民負担に求めなくても利用することができるようになると、例えば地域の中小企業でも、無料で情報を入手する、情報要求を一々国に上げなくてもできる、それに伴って地元での自己の位置づけや他の企業との比較を容易にできることになって、さらに効果的、経済的な化学物質対策を企業が進めるためにも有効であるし、我々科学者にとっても科学者が情報を加工、利用しやすい形で無料で自由に入手できれば社会的な要請が強いこの化学物質の環境安全分野の科学技術の進歩に貢献できるものというふうに期待しております。
次に、取扱量の報告ですが、平成十年度の環境庁のパイロット事業では取扱量の報告を求めております。これについて、最初は事業者からクレームがつくのではないかという心配もしたのですが、実は実際の苦情は全くございませんでした。これによって排出量に極端な間違いがあることがかなりチェックができましたし、それから、今後排出量が減った、ふえたという場合に、本来生産や取扱量がふえて排出量がふえたのか、それが減って排出量が減ったのか、それが全くわからないわけですので、各企業の努力の様子が見える、改善の様子が見えるという意味でも、この取扱量の報告があれば望ましいというふうに思っております。
その他、水口さんが幾つか言っておられましたので細かいことは省略しますが、リスク削減計画をそれぞれがちゃんと考えることが、これは法律に書くかどうかは別としても必要である、あるいは政令指定都市や市町村との連携方法も検討する必要がある、あるいは営業秘密を第三者機関で審査する制度も事業者にとっても私はプラスではないかというふうなことも考えておりますし、情報提供されても、先ほど中西先生もおっしゃいましたけれども、それが余り誤解を受けて混乱しないためにも、しっかりしたNGOを育成するということも必要ではないかというふうに考えております。
このPRTR制度をきっかけに、日本の国が情報を公開、共有して、それぞれが自立してまた協働、協力して環境調和型社会を早期に実現できるきっかけになることを期待しております。
以上、時間が少し過ぎておりますので、ここにもう一度繰り返し述べたことが書いてございますが、これらのことを、参議院の審議におきまして法案が修正されるのか、附帯決議または政府答弁等によって担保すべきものもございますと、例えば政令で指定するものについてはそういうことになろうかと思いますが、皆様方の真に真剣な御議論を期待しております。
以上でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514314X02019990610/12
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013・太田豊秋
○理事(太田豊秋君) ありがとうございました。
以上で参考人の皆様からの意見聴取は終わりました。
それでは、これより参考人に対する質疑に入ります。
質疑のある方は順次御発言願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514314X02019990610/13
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014・脇雅史
○脇雅史君 自由民主党の脇雅史でございます。
本日は、四人の参考人の先生方、大変貴重な御意見を開陳いただきまして本当にありがとうございました。
先生方のお話の中にございましたが、このPRTR法案、非常に我が国にとって画期的なことだと思うわけであります。中西先生は夢のようだというふうに言われましたし、井形先生はこれはもう文化だ、文化を変える話だというふうに言われたわけであります。
私もいろいろ考えてみますと、このPRTR法案に入っている基本的な考え方といいましょうか精神といいましょうか、そういったものはほとんどの国民の方は共感できるもので既にあると思うんです。お話の中で、例えば運輸省に協議しなければいけない。どうも運輸省という役所はその精神を持ち合わせていなくて、何かそれを無視して悪いことをするのではないか、あるいは国民の一部、企業の一部には、やはり利益のためにはいいんだというふうに思っている方がいるんじゃないかと、事実そういう方もおられると思うんです。
私は、一番大事なことは、価値観を国民すべてが共有すること、そういうことの努力が要るんだろう。まさにそれがあって文化が変わった、文化だというふうになるのではないかというふうに感じるわけでありますが、ここにおられる方はほとんどもうそういう精神を共有しておられる方ばかりだと思うんです。最近、この法案が出てくるに当たって少し勉強してみますと、企業サイドも随分一時から変わったように感じましたし、通産省のお方も随分考え方が変わったなというふうに私は実感いたしました。
そこで、井形参考人にお聞きをするわけでありますが、いろんな場面でいろんな国民の階層の方々にお触れになって、特に企業サイド、私はどうもちょっと怪しいなということをずっと感じてしまうんですけれども、最近のレスポンシブルケアですか、そんなことを通じて随分おやりになっているようでありますが、率直なところ企業は相当変わっておりますでしょうか。どういうふうにお感じになっていますでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514314X02019990610/14
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015・井形昭弘
○参考人(井形昭弘君) それはまさに変わったというのが実感であります。
私は、先ほど申し上げたとおり水俣病に関与しておりました。その水俣病の汚染の歴史は我々にとっては非常な教訓になっておるわけで、それが原点になりまして今日の公害対策、そしてどなたかが言われましたクリーナープロダクション、つまり企業も社会に貢献する、もうけて、あるいはつくって売るという時代ではなくて、ともに社会の利益を共有する責任を持っているということで強く変わってきた。でありますから、OECDの勧告が出る前からだろうと思いますけれども、企業が自主的に環境問題を取り上げて自主規制に踏み出した、こういう背景がありましたから今度の法案が少し前進したというふうに思っております。
そういう意味では、これから企業も理念を変えて、社会に貢献する企業という意味では環境問題は避けて通れないどころか最も重要な柱であるということで、PRTRはそういう社会の前進した流れに対して大きな力になるというふうに私は考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514314X02019990610/15
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016・脇雅史
○脇雅史君 ありがとうございました。さらに企業の皆さん方の意識が変わっていくことを望むわけであります。
私は、初めにこの法案が出てくるときに役所の方から御説明を伺ってちょっと不満だったんですが、これはまさに先ほど中西先生が御指摘になりました外国のことばかり見ていないで我が国のことをきっちり見ろと。
環境庁なり通産省なり、行政を預かっていく中で国民の健康を保持していく、安全を保持していくというのは極めて大事なことですから、外国がどうあれ何がどうあれ、仮に企業にやる気がなくても先頭に立って引っ張っていくという強い意識が欲しかったわけでありますが、若干、周辺の事情ができたのでこの法律を出しますといったようなムードが見られまして、私は残念に思ったんです。
きょうの中西先生のお話を聞いて、少し胸がすっとしたような気がするわけであります。まさにパイプの最後をいじるのではなくて、クリーナープロダクションへ向かうべきだ、PRTR法案もそちらへ向かうようにしなければいけない、産業界と切り離してはいけないというふうな非常に貴重な御意見だったと思うわけであります。
いずれにしても、先生も御指摘になりましたパニックを起こすということがあるわけで、パニックを起こさないために必要なことは多分情報公開に尽きるのかなという気がしておりますが、実際に先生がお考えになって、具体的にいろんな知識を国民に共有させていくために何をすれば一番いいのか、その辺のお話を伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514314X02019990610/16
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017・中西準子
○参考人(中西準子君) お答えいたします。
私は、PRTR法案のもとでどういう物質を対象にすべきかということと、それを対象にしたときに一体どういう方法があればみんながリスクというものを感じ取って、あるいは比較することができて、これはやめた方がいいとかあるいは我慢すべきだというようなことが考えられるかという、その二点についてお話をしたいと思うんです。
一つは、例えば危ないという話がありますが、それが人間に何かを起こすということが疑われるときは対象にした方がいいと思います。しかし、今の環境ホルモンと言われる物質は、その中には毒性がはっきりしているものもありますが、俗に言われている多くの環境ホルモンの中にはそういう内分泌系を攪乱する作用が、ポテンシャルと言いますが、そういうものがあることは事実です。それが、例えば哺乳類の動物とかあるいは人間に何かを起こす可能性というのがまだわからない。そういうものを出してみても、その名前でみんなが怖がるだけで、リスク評価はできないんです。
ですから、未然防止とは言っても、ある程度NOELといいますか無作用量がわかる、あるいはそれは生殖作用に問題があるんだとか、がんに問題があるんだとか、内分泌系を通した免疫力の低下に問題があるんだという、そこのところの何が問題かということがある程度わかり、それについてこの程度までなら大丈夫だけれどもこれを超えると危ないという程度の、動物実験の結果でいいと思いますが、そういうものがあるということが必要だと思うんです。それがないと、皆がその結果を共有することができないということです。
そういうものをリスク評価につなげるということのためにはどういうものが必要かというと、一つは、その物質が環境に出たときにどの程度の濃度になるかということを予測したり推定したりすること、そのためのモデルを使ったり実測とかいうようなものがある。そうすると、先ほどの毒性の動物実験か、あるいは危ないというようなデータからある程度人間への影響を予測するための道具があります。これも化学的な道具です。その二つがあります。それともう一つは、その結果を解釈するためには、バックグラウンドがどのくらいかとか、ほかの国の環境ではどのくらいなのか、あるいは過去からずっと我々はそういうリスクの大きさの、どの程度のものを甘受しどの程度のものを排除してきたかという比較の材料というものが必要です。
この三つはどうしても必要なものだと考えています。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514314X02019990610/17
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018・脇雅史
○脇雅史君 ありがとうございました。
私も対象の物質をどう定めていくのかということが極めて大事だと思うわけで、その取り上げ方によってはいたずらに国民の不安を招いてしまう、だけれども取り上げ損なうと後で被害を受けてしまう。そこに非常に化学的に広範な知識が必要だと思うわけであります。
先ほど水口先生も、危ないおそれのあるものを入れた方がいいんじゃないかと。おそれのあるというのをどういう評価をするかという、まさに国民の知識として共有する部分がなければいけないので、化学的にある段階を経ている部分が要るのだろうと思うわけであります。現在この法律を実際にやっていくに当たっての、その辺の物質の危険度の認定の度合いといいましょうか、評価できる度合いというのはどの辺まで来ているのか。水口参考人に、おそれのあるものと危ないもの、そうきっちりと分けられるものかどうか、お伺いしたいんです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514314X02019990610/18
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019・水口剛
○参考人(水口剛君) 物質の選定について私の考えを述べます。
おっしゃられる意味はよくわかりまして、有害性がある、おそれがあるというその基準といいましょうか境界線がどこにあるのかということについて、必ずしも明確ではないかもしれません。しかしながら、それではそのようなリスク評価を一体だれがするのかということが問題になると思います。
だれかがリスク評価をしなければ有害性があるかないかということはわからないわけですが、それでは有害性があるかないかを判断する人材は一体どこにいるのだろうかということをまず考える、そのことによって社会全体として有害性を判断する能力が高まれば御指摘のような問題はおのずと解決するはずなんです。そして、そのような能力を持つ人材は実は社会の隅々に広範に存在しているのではないかというのがPRTRシステムというものの持つ一つの意義であります。
つまり、有害性が確定したものだけを対象にするという形にして情報を極めて限定すれば、それ以外の物質についての情報を社会の人が得ることができません。そして、逆に有害性のおそれのあるものを広く対象にすると社会が混乱するという言い方もございますが、社会の人間が皆素人であって、そして化学的な知見のある人間が例えば政府部内にしかいないという考え方は恐らく違うだろう。
毎年、化学系の大学を卒業する学生さんは数千人数万人いらっしゃる、そして毎年企業の中で化学物質の管理を担当していた方が数千人数万人の単位で退職されていくわけです。しかも、それが五十代六十代、まだまだ働き盛りの方々が出ていくわけです。そういった人材を活用するためには、広く情報を放っておいて、その中から有害性の知見を蓄積していくという、そのような戦略的な思考が求められているのではないかと、このように考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514314X02019990610/19
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020・脇雅史
○脇雅史君 大変貴重な御意見ありがとうございました。
私は、ちょっとおもしろい、おもしろいと言っては失礼なんですが、きょう四方の先生においでいただいて今までのお話を伺って勝手に思うんですが、後で違っていたら言ってください。環境ホルモン、ダイオキシンといったものを今回対象物質とすべきかどうかということについて、恐らく井形先生は時期尚早、水口先生は入れるべきだ、中西先生はまだちょっと待った方がいい、それから浦野先生は入れた方がいいのじゃないかというふうに分かれるのではないかなと感じたわけでありますが、間違っていたら言ってください。
国民のあれだけ関心を呼んだダイオキシンといったような物質についても、専門家の先生で意見が分かれてしまうという実態があるわけです。多分あるんだと思うんです。そこで、この法律の運用に当たってそこをうまく乗り越えていかないと、対立するからこれは問題だというのでだめだ、いいということではなくて、やはり中間もあるのかもしれませんし、時期を見て入れるやり方もあるのかもしれません。どなたか、この法律は柔軟性が極めて大事だということを言っておられましたが、運用面でいろいろな工夫をしていかないと、ただ条文の決め方だけでは済まないのかなといったようなことを感想として持ちました。
ちょっと時間の関係で浦野先生にお聞きするあれがなくて恐縮でございましたが、時間でございますのでこれで終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514314X02019990610/20
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021・岡崎トミ子
○岡崎トミ子君 民主党・新緑風会の岡崎トミ子と申します。よろしくお願いいたします。
きょうは本当にありがとうございました。衆議院で既に審議がなされて、そして修正もなされ、今度は参議院でよりよい法案づくりということで参考人の皆様方の御意見をこれからの審議に大いに役に立てていきたいというふうに思っておりますので、よろしくお願いをしたいと思います。
最初に、井形参考人にお伺いしたいと思いますけれども、法案をつくる作業というのは、どうしても制約がありましたり、あるいは妥協をしなければならなかったりいたしまして、当初思ったよりも十分でないということがあるだろうというふうに思うんですね。そこで、中央環境審議会では、法案には盛り込むことができなかった豊かな議論がたくさんあっただろうというふうに思うんです。参考人のお立場で、今後この制度をよりすぐれたものにするためにはどのような点に注意すべきかということについて、ございましたら挙げていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514314X02019990610/21
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022・井形昭弘
○参考人(井形昭弘君) 審議会と申しますのは、多くの人の意見を集約するのが務めでありますので、私個人の意見で採用できるものでもありませんし、また多くの人たちの共通点を探し出してそれを報告するのが義務でありますので、そういう意味では、今の御質問のことについてはかなりいろんな議論が出まして、皆さんの最大公約数はこれであるということでまとめたつもりであります。
したがって、細かい議論は御質問があればまたお答えいたしたいと思いますけれども、こういうふうなシステムをつくることが最もベストな選択ではないかということの答申をさせていただきました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514314X02019990610/22
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023・岡崎トミ子
○岡崎トミ子君 実は法案の策定に当たって、審議会の議論が反映される要望書というものを出されていたというふうに伺っているのですけれども、その中身が具体的にわかっておりませんので、よろしかったらそのことで結構ですからお教えいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514314X02019990610/23
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024・井形昭弘
○参考人(井形昭弘君) ちょっと済みません。十分理解できません。どういう項目に関してでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514314X02019990610/24
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025・岡崎トミ子
○岡崎トミ子君 策定のときに、議論をした上でこの法案が十分でないということで要望書を何か出されたというふうに伺っておりましたけれども、その具体的な中身について私たちの方ではわからないので、その点が何かフォローになるかなと思って質問させていただいたのですけれども、ないですか。なければ結構です、思い当たらなければ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514314X02019990610/25
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026・太田豊秋
○理事(太田豊秋君) ちょっと速記をとめてください。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514314X02019990610/26
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027・太田豊秋
○理事(太田豊秋君) 速記を起こしてください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514314X02019990610/27
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028・井形昭弘
○参考人(井形昭弘君) どうも申しわけありませんでした。
私はそういう要望書を出したわけではなくて、答申の中に一日も早くこれが法制化されることが強く希望されるということを明記してお出ししたわけです。そのことを先ほど申し上げたわけでございましたけれども、申しわけありません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514314X02019990610/28
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029・岡崎トミ子
○岡崎トミ子君 それでは、水口参考人に伺いたいと思います。
省庁間覚書の問題点について触れられました。環境庁と通産省の間の覚書について、私もこれを見せていただきまして大変深刻な問題だというふうに思っております。この法案にはほかにも多くの省庁がかかわっている、その省庁との間の覚書の問題はあったのか、何点か気になることがあったらぜひ教えていただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514314X02019990610/29
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030・水口剛
○参考人(水口剛君) ありがとうございます。
今、先生からおっしゃっていただきました最初の件は、環境庁と通産省と運輸省との間の覚書でございますが、それ以外にも幾つかの覚書が公表されております。その中でも特に気になったものとしてこのようなものがございますので、御紹介しまして御議論の参考に供したいと思います。
環境庁と通産省と厚生省の間での覚書の中にこのような文言がございます。「法の施行にあたっては、環境庁及び通商産業省は、廃棄物には様々な物質が含まれ、それを取り扱う廃棄物処理事業者がその内容を把握することはきわめて困難であるという廃棄物の特性に配慮すること。」であります。
私はこの文言の意味するところがよく理解できていないものですから、ぜひ国会での審議で取り上げていただきたいと思っておるわけですが、そのよくわからないという意味はこのようなことです。すなわち、廃棄物の中にさまざまな物質が含まれていて、廃棄物処理事業者がその内容を把握することに困難を生じているということは事実であろうと思いますので、その事実については私も理解できます。しかし、それについて配慮をするというのはどういうことなのかがよくわからない。これは、あるいは廃棄物事業者は法の対象事業者としないという意味なのかなとも思うのですが、あるいはそうではないかもしれません。
いずれにしても、廃棄物処理事業者が廃棄物の中の物質について把握することが困難なことは事実であるとしても、しかし、そこの部分を改善しなければこの環境問題は改善しないということもまた事実であるわけです。したがって、現在の時点で廃棄物処理事業者が廃棄物の内容を把握しにくいという現状をそのまま前提にした上で制度の運用をするのではなくて、そのような問題を改善するような施策をとった上で制度を運用していっていただきたいと、このように考える次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514314X02019990610/30
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031・岡崎トミ子
○岡崎トミ子君 続いて水口参考人に伺いたいと思いますが、今度の法案は自治体の果たす役割が大変重要だというふうに思っておりますけれども、修正によって自治体の役割が増したことは評価しております。
今の法案のままでは、自治体が本当はどういうふうに活躍するのかというのが定かじゃないというふうに思うんですね。自治体が条例をつくって自主的に運用できるようにすべきというふうに考えますけれども、PRTRにかかわる業務が法定受託事務に整理されているということにかんがみますと、どれだけ自主性が発揮できるのか、尊重されるのかということについてはちょっと心配なわけなんです。
そこで、修正の意義を十分生かすためにはどういう点に注意するということが重要でしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514314X02019990610/31
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032・水口剛
○参考人(水口剛君) ありがとうございます。
修正の意義を十分生かすためにはどのようなことが重要かという御質問でございますが、先ほども若干申しましたように、やはり修正の意義を生かして自治体が積極的、自主的に問題に関与していくためには、まず各自治体の環境部局が中心となって問題に取り組むという体制を整えることが必要であろうと思います。
すなわち、地域の環境管理を行う地方公共団体の環境部局がその自治事務として、地域内でどのような汚染物質が排出されているのかに関する情報を総合的、網羅的に収集して、統合汚染回避管理、これは先ほど言及いたしましたOECDの勧告にある考え方ですが、この統合汚染回避管理の考え方に立って汚染物質排出の回避及び管理を進めていくことが重要であると考えます。
既に大気汚染防止法、水質汚濁防止法などの規制対象となっている汚染物質については、その情報についても都道府県の環境部局で集めているところでございますので、PRTRの情報についても都道府県の環境部局で一括して取り扱うことが合理的かつ妥当であるというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514314X02019990610/32
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033・岡崎トミ子
○岡崎トミ子君 ありがとうございました。
続いて中西参考人に伺いたいと思います。
先ほど、私も対象物質の選定の明確な基準について伺おうと思って、脇委員が考え方について伺っていらっしゃいますので、私は、届け出対象にならない事業者や家庭、自動車といった非点源からの排出量を正確に把握することが重要だと思いますけれども、とても難しいだろうというふうに思うんです。どういう工夫が必要だとお考えでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514314X02019990610/33
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034・中西準子
○参考人(中西準子君) 実は、私どもの研究室ではそういう非点源も含めた排出量の推定ということをやっております。対象としては川崎市などを対象にいたしましてそういうことをやっております。今回は、一つはもちろん、できるだけそういう生産とか排出とかいう情報について情報をきちっと集めるということですけれども、やはりそれだけでは本当の排出源を押さえることはできないと思います。
私どもが非常に強調しておりますのは、やはり環境測定データから排出源についての我々の集計が十分なものかどうかということを逆に推定するという方法を開発することに努力しております。そうでなければ、本当は排出者もわかっていないような排出源があるものについては幾らねじを締めてもデータは出てこない、知らないわけですから。ですから、やはり環境データからいかに排出源というものを推定するかという、その手法を開発していくということが非常に重要だと思っております。
例えば、私どもは、ダイオキシンとか大気中のベンゼンとかそういうものについて、現実にそういう手法を一生懸命開発してある程度の成果を上げているところです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514314X02019990610/34
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035・岡崎トミ子
○岡崎トミ子君 ありがとうございます。
浦野参考人にお伺いいたします。
既にPRTR制度を始めている諸外国の例を見ましても、環境行政機関を中心に運用しているということだと思うんです。それで、そのPRTRの趣旨も考えますと当然であろうというふうに私自身も思うわけなんですけれども、日本政府は、環境庁と通産省が中心になってさらに事業所管庁が関与するやり方が日本では合ったやり方だというふうに言っております。
諸外国の場合に、環境行政機関中心に決めるときに抵抗はなかったんでしょうか。また、環境行政機関中心のやり方には何か日本政府が心配するような弱点はないんでしょうか。あるとすれば、どういう工夫で克服されるのかということについて伺いたいと思います。
時間がありませんので、もう一つ続けて言ってしまいたいと思うんですけれども、十年後の見直しという規定が七年後に修正されました。これでは十分ではないというふうに思うんです。適宜見直しをするべきだというふうに思うんですが、その点についていかがでしょうか。
それから、今のお話の中で、OECDの原則の求める柔軟性を持つためにはどういう点に注意したらよろしいでしょうか。法案の評価と運用上の注意とあわせてお答えいただきたい。
時間があれば、市民の皆さんがよりよく反映される仕組みについてのアイデアがあればお答えいただきたいと思います。ちょっと言い過ぎかもしれませんけれども、その点でピックアップして先生の表現なさりたいことがありましたら、時間が少ないので短くですけれども、よろしくお願いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514314X02019990610/35
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036・浦野紘平
○参考人(浦野紘平君) たくさんの御質問をいただいてどうお答えするかちょっと迷うんですが、まず最初の環境部局が担当するということについては、アメリカ、カナダもそうですし、ヨーロッパの十三カ国ぐらいが関連したものをやっておりますが、それは全部環境部局です。韓国も台湾もみんな環境部局が担当しております。
ただ、環境といいましても、国によって環境だけを扱っているところもありますし、環境とエネルギーとか環境と健康の問題を扱っているという、それぞれの国によって省庁の分け方が違っておりますから少しずつ違いますが、いずれにしても、私の先ほどの資料にも書いてございますが、もともとPRTRのPはポリュータンツでございます。すなわち環境汚染物質なんですね。ですから、これはもう当然どこの国でも自然に環境部局が中心になって扱っている。それに関連の事業者なり関連の行政機関が協力をするという形になっている。これは、スタートからそういうふうになっているので、特にもめているとかそういうことはない。むしろ、事業所管官庁がばらばらに報告を集めるというような国はどこにもないということでございます。
それから、見直しとか柔軟性とか市民との関係という幾つか問題点がございましたけれども、私は当然、政令で指定するようなことについては非常に柔軟にどんどん、どんどんと言うとおかしいですが、適宜変えていくべきだというふうに思いますが、法律については私はやはり環境庁の位置づけ、これは今度中央官庁の再編もございますし、そういった問題。
それからあと、先ほど廃棄物の問題も出ましたけれども、非点源の要するに廃棄物としての移動量、有害物の移動量については何とか法律の中に組み込めるような努力をして、それを準備して、可能になった時点でそれを取り込むべきだというふうに思っております。
また、これはほかの廃棄物処理法等でも措置できるという部分もございますけれども、やはり地域ごとあるいは物質の状況ごとに情報が公開され、公表されて国民全体で議論をするという意味では、非常にこのPRTR制度に入ることが重要であるのではないかというふうに思っております。
特に、情報公開について心配される方もたくさんございます。これは以前からそうでございましたし、中西先生も一部御心配がおありのようですが、もともとアジェンダ21からスタートして国民全体が情報を共有することでこの管理を進める。ですから、クリーナープロダクションを推進するということと同時に、先ほど井形先生もおっしゃいましたけれども、国民の理解を深める、あるいは行政の効率的なことを進めるといったようないろいろな目的がPRTRにあるわけで、事業者が努力することももちろん重要なことですけれども、国民が理解を深める、情報を共有して。外国でも情報公開されまして一、二年は確かにかなりのトラブルや問題があったようですけれども、三年目ぐらいになりますともうかなり落ちついた議論ができるようになっております。これは国際会議等でも、外国の方々がたくさんそういうことをおっしゃっております。
早く日本も一度そういうものを乗り越えて、国民全体がリスクについての正しい議論ができるような下地をつくっていただきたいというふうに思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514314X02019990610/36
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037・岡崎トミ子
○岡崎トミ子君 ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514314X02019990610/37
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038・福本潤一
○福本潤一君 公明党の福本でございます。
今お答えいただいた浦野先生には、衆議院の参考人もやっていただいて、我が党も含めて重要な修正を五点行わせていただきました。岡崎委員からまたさらにというお話もありましたけれども、またその点は引き続き別の方にお伺いした後、質問させていただこうと思います。
最初に水口参考人に。井形参考人は省庁を越えて通産、環境庁両省の弊害をむしろ乗り越える形で強力にできたと、水口参考人の方は、運輸省の覚書も私も初めて貴重な文献として見せていただきましたけれども、出していただいて、質問の中で、環境庁と通産省との覚書の中で、「廃棄物の特性に配慮する」という、私はこの覚書自体を全部ほかにも聞きたいわけですが、先に、先ほどの質問の中で出ていましたので、この「廃棄物の特性に配慮する」という覚書の、例えばどういうときに配慮するというような何か文章があるのかどうかというのをより詳しく教えていただいて、真意はわかりかねておるということでしたけれども、より詳しくそこの覚書の中身を教えていただければと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514314X02019990610/38
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039・水口剛
○参考人(水口剛君) 先ほどの廃棄物の件に関しての御質問でございますが、覚書の中で書かれてあることは先ほど述べましたとおりでありまして、「法の施行にあたっては、環境庁及び通商産業省は、廃棄物には様々な物質が含まれ、それを取り扱う廃棄物処理事業者がその内容を把握することはきわめて困難であるという廃棄物の特性に配慮すること。」とだけ書いてありまして、その上書きに「環境庁、厚生省及び通商産業省は、特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律案の国会提出にあたり、下記のとおり確認する。」と、こうなっておるわけです。
私は先ほど言い落としましたので、せっかくの機会ですから、これに関連して一言述べたいと思うんです。
廃棄物の特性というのは、これは廃棄物の内容を把握することが困難であるという特性に配慮すること、このような意味であると理解できるわけですが、PRTRというこの制度を使って廃棄物処理事業者を対象事業者に加えることができれば、そのことをもって廃棄物処理事業者が搬入される廃棄物の内容について情報を要求する、あるいは情報を得ていくということが可能になる。そうすることによって、むしろ廃棄物処理事業者が内容を把握することが困難であるという廃棄物の特性自体を変えていくことができる、そのような考え方をとることが重要であろうというふうに考えています。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514314X02019990610/39
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040・福本潤一
○福本潤一君 どうもありがとうございます。
私ども法案を通すところの立場で言うと、各省庁の現場でやはり力関係、予算関係、さまざまな状況が現実には起こっていまして、今回のPRTRの法案に関してもさまざまなそういう力関係というものを我々自身も感じたりしておるわけでございます。
浦野参考人には、かなり衆議院で知恵をいただいて、衆議院の中での修正案に関しても私も関係させていただいたわけでございます。水口参考人は、市民運動団体ともかかわってバルディーズの中で法案までつくられておるということで、参考添付資料の中に、対象物質、把握する情報等も社民党案ともまた違う形で出ておるわけでございます。
今の修正案段階、浦野先生も、重要な変更だけれども不十分な面もないわけではないということですが、OECDの勧告で二十五カ国ほとんどできていて、最後の国になりそうな日本で、この修正案段階で通るのとこのまま法律ができないというのはどちらが望ましいのかという、現状を踏まえた上での認識をお伺いさせていただければと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514314X02019990610/40
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041・水口剛
○参考人(水口剛君) 修正案段階で法案が通るのと、このまま法案が通らずすなわち廃案になるというのを比較してどちらが望ましいかを答えよという御質問でございますが、このような御質問は非常にお答えするのが難しいです。
なぜならば、この法律案は衆議院では修正されておりますが、参議院ではまだ議論が始まったばかりでございます。その段階で私がこれがこのまま通るか廃案になるかどちらが望ましいというお答えをすることは、あたかも参議院では修正がなされないということを前提にお話しすることになりますので、大変皆様に対して失礼なことになってしまいます。
私としましては、幾つか問題点を指摘いたしましたので、そのような点をさらに修正すなわち改善していただいた上で法律として一刻も早く成立させていただくことを切に願う次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514314X02019990610/41
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042・福本潤一
○福本潤一君 政治家の悩みをそちらにぶつけたような形で、申しわけありません。
具体的に、両参考人からは事前のPRTRに関するシンポジウムでも聞かせていただいたことがあるわけでございますが、中西参考人は水の研究を長年されておられ、我々大学院生のときから、先生が排水、水の環境のデータを企業からもとって公害問題の時点から長年の研究でやられているというのを知っております。
先生の言われた中で、リオのサミットでも持続可能な開発ということで、今回はクリーナープロダクションというところに非常に重きを置かれた。こういう環境保全型の一つの技術としてのクリーナープロダクション、またこれが一つの日本の環境行政の限界を突き破って、例えば規制が厳しいときにはそれがエコビジネスに結びついていくんじゃないかと思われるわけです。
リスク評価が御専門ではございますが、こういう形でPRTR等で家計簿的に化学物質のデータ情報を押さえたときに、これが環境ビジネスに日本の社会の中で新たに産業発展していくような方向性というのは、その基礎に結びついていくものかどうかということを中西参考人からお伺いさせていただければと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514314X02019990610/42
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043・中西準子
○参考人(中西準子君) お答えします。
クリーナープロダクションと申しますのは、基本的に費用が安く、エネルギーを割合使わないで環境対策をやるという生産技術です。したがって、こういう技術を獲得していきますと国際競争力もついて非常にビジネスとして強くなると思います。現に、一九七〇年代から日本で行われました環境対策のかなりの部分がこのCPというクリーナープロダクションで行われております。
そして、世界に例がないほどクリーナープロダクションというのは取り入れられました。それは、基本的にはインセンティブの一つは規制でありましたけれども、もう一つのインセンティブは、日本の工場の立地条件が極めて厳しく、すぐ隣に住民が住んでいるという状況の中で多くの苦情にこたえて根本的な環境対策をやらなければならなかったという事情の中で日本の産業界が苦し紛れにつくっていった技術で、それは世界的にも評価されています。
今回、PRTR法案でクリーナープロダクションが推進されることになれば企業としての競争力は非常に大きくなり、そういう意味で本質的なエコビジネスに成功する可能性があるというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514314X02019990610/43
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044・福本潤一
○福本潤一君 どうもありがとうございます。
今回、先ほどの脇委員の質問の中にありましたけれども、環境ホルモン、ダイオキシンを入れると。現実に衆議院の修正では環境ホルモン、二十七項目でしたか入ったわけでございますが、ダイオキシンだけは目的があってつくったものじゃない。ダイオキシン類になるとコプラナPCBが入ってきますから目的があってつくったわけですけれども、枯れ葉剤の中に目的があってダイオキシンをつくったわけじゃない、ある意味では意図的にできたものでない化学物質でございます。
中西先生、一つはダイオキシンはある意味では騒がれ過ぎているというような状況認識もあられたと思いますし、現実に科学者として科学的に正確に把握しないといけない。私は、ダイオキシン以外の内分泌攪乱化学物質に関してはやはりまだわかり切っていないところもあるけれども、同時に未然防止という観点から考えると慎重に対応しないといけないという気持ちもあります。
今回、所沢の件ですとちょっと身近過ぎますけれども、ベルギーでダイオキシンによって豚肉、鶏肉、輸出関係がかなり大きな騒動になっていますので、ダイオキシンの現実のリスク、そういったものとこういう社会現象であらわれたものに対する先生の考え方をお伺いさせていただければと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514314X02019990610/44
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045・中西準子
○参考人(中西準子君) 先ほど私が申しましたことにちょっと注釈を申させていただきます。
先ほど、私が環境ホルモンというものを法律の中に特別に取り上げるということについては心配しているということを申し上げましたが、環境ホルモンの中である程度毒性がはっきりしてきているものを通常の意味の一という項目の中に入れていくということについては賛成でございます。ただ、環境ホルモンとして何かわからないものを全部一括してそういう形で取り上げるということ、法律に書くということに心配をしているだけであって、環境ホルモンの中で例えばダイオキシンだとかPCBだとかDDTとか、そういうものは当然規制、あるいはこういうPRTRの対象になるものと考えております。
私がリスク評価という仕事をしておりますのは、多くの場合に化学物質についての理解がハザードとしての特性が受け取られていてリスクという考え方が非常に少ない、そのことをいつも問題にしているんです。例えば、一グラム当たりのダイオキシンを一グラム当たりのオキシフルのような過酸化水素と比べますと、これは明らかにダイオキシンは大きな毒性があって非常に大きなハザードであるわけです。しかし、実際私どもが摂取しているダイオキシンの量はピコグラムだとかいうような一兆分の一グラム、過酸化水素、オキシフルなどはパーセントオーダーで体につけるわけです。そういう量と毒性を掛け合わせたリスクというものを考えなければいけないにもかかわらず、それを考えないで、ハザードだから大変だ大変だという議論が多過ぎる。もっとリスクというものについてのきちんとした評価をしてほしい。そして、それのプライオリティーを決め、ランキングを決めて、最初にどれを規制していくのか、そういうリスクに基づいた規制なりさまざまな政策をとっていただきたい。
決してハザードに基づいて規制をしないでほしい。そのことを申し上げております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514314X02019990610/45
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046・福本潤一
○福本潤一君 今のでお答えいただいたわけですが、若干このリスクの考え方とハザードの考え方に伴って、ベルギーのああいう現象は今後また日本でも起こりかねないなとは思っていますので、そういう現実に社会現象、所沢では別件でホウレンソウ等々でありましたけれども、そういったものに対するリスク評価の専門の立場から見たときの先生のコメントをいただければと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514314X02019990610/46
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047・中西準子
○参考人(中西準子君) ベルギーの事件が、実は本当はどの汚染のレベルかというのが今まだわからない状態でございます。そういう意味で言うと、ベルギーが本当に汚染で問題なのか、あるいはやはりこれもダイオキシンというハザードの幻影におびえた挙動なのかということは実はよくわかっておりません。
しかし、一応これが非常にリスクがあるということで考えますと、やはりダイオキシンのように不純物として入ってきてしまう、あるいは非意図的に出てきてしまうというものについてのリスク管理というものは非常に難しい。その発生源の管理というものは、やはり徹底的に私たちが発生源はどこかということを見きわめていくということが必要だろうと思います。我が国のダイオキシンの対策では、常に焼却場だけが問題になるということがあります。そうじゃなくて、いろんな排出源があるということを私どもは一生懸命突きとめているわけですが、やはりそういう努力なしにはああいうような事件が起きてしまうと思います。
それから、所沢のホウレンソウの事件は、そのものよりも、やはり誤報といいますか情報が正確に伝わらなかったという、もともと伝える意思があったかどうかもよくわかりませんが、そこが問題なのであって、本質的なリスクの問題とは考えておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514314X02019990610/47
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048・福本潤一
○福本潤一君 どうもありがとうございました。
私どもは広島生まれでして、やはり放射能の影響等に関しても、もう単位とか規模とか考えないままという形で具体的に出てきていますので、今のメリット、ハザード、リスク、ここらの関係というのを科学者として正確に把握した上での対応がこの法案にも求められるのではなかろうかということを述べさせていただいて、参考人の貴重な御意見、ありがとうございました。謝礼を述べて終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514314X02019990610/48
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049・岩佐恵美
○岩佐恵美君 本日は、参考人の皆様には大変お忙しい中御出席をいただき、貴重な御意見をいただきまして本当にありがとうございました。大変興味深く伺わせていただきました。ぜひ今後の審議に反映をさせていきたいというふうに思っています。
まず、井形参考人にお伺いしたいのですけれども、中間答申を読ませていただきました。その中で、「すべての環境媒体を全体的に見た対策が必要であること、数多くの化学物質による環境への負荷を総体として低減する必要があること、有害性を有する化学物質の数が膨大であること等から、今後、化学物質による環境への負荷をより効果的かつ効率的に低減するためには、さらに新しい手法の導入の検討が必要な状況にある。」、ということが述べられていて、そういう中からこういう法律が必要であろうという論議がされたというふうに思います。
その中で、先ほどからも論議がありますが、いずれの国においても環境に関する法制として環境行政機関により実施されているというのが例示として掲げられているわけです。今度の法律案は、化学物質の環境への負荷の低減、これを直接的にはうたわないで、事業所からの排出量等の届け出を重視して、それを業所管大臣にするということから見て、環境行政が本当にこれで中心に座っているのかというふうに思うと、ちょっとそれは思えないというふうに私は思うのですけれども、中間答申をまとめられたお立場から見て、今度の法案についてどうお考えか、伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514314X02019990610/49
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050・井形昭弘
○参考人(井形昭弘君) 私どもはこういう法制化、こういう施策は望ましいということを答申いたしまして、その中にはどこの省庁が分担すべきであるということは書きませんでした。というのは、先ほどから申し上げたとおり、この法案は今までと全く違った理念に基づく新しい施策でありますので、日本政府全体が担当していただきたいという強い希望であります。
それから、届け出にしましても秘密にしましても、先ほどから若干批判がございましたけれども、今の電子情報というふうになりますと、一たんある箇所へ届けられると、それはリアルタイムでもうほかの官庁も全部そのノウハウあるいは項目を共有できるわけです。したがって、私どもはそれはどこの官庁が主導権を持たないと効果が上がらないという意識は全く持っておりません。
ただ、現実の問題として、この問題は環境庁が中核となって話を進めておりますし、今後の施策において環境庁が中核になることは間違いないことであります。したがって、窓口が違うから成果が及ばないだろうということについては、私はそう思っておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514314X02019990610/50
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051・岩佐恵美
○岩佐恵美君 具体的な問題について、さらに伺いたいと思います。
環境への負荷を総体として低減するためには、先ほどから議論になっております非点源からの廃棄物としての移動量を把握する、このことが大事だと思います。
中間報告では、報告対象事業場以外からの排出量の把握は求めているんですけれども、非点源からの廃棄物としての移動量についてはどういう検討が行われたのでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514314X02019990610/51
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052・井形昭弘
○参考人(井形昭弘君) 具体的にどういう項目でどういうふうにしようという議論は行われませんでした。ただし、これが環境全体の負担ということからいえば非点源をどう考えるかということについていろいろ議論がありまして、その流れがこういう形に結実したと思っております。
それで、法案のあれが我々の部会に紹介されましたときも、それに関しては特に異論は出ませんでしたし、私たちもその方が望ましいというふうに思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514314X02019990610/52
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053・岩佐恵美
○岩佐恵美君 先ほど中西参考人から、いわゆる非点源の問題で、環境データからもとに迫っていくということで一生懸命取り組んでいかれたいという話がありましたけれども、私はそれはそれでとても大事なことだと思います。
そこで、ちょっと水口参考人に伺いたいんですけれども、消費者というか国民にとってやっぱり非点源というのが非常に関心の高い問題なのですね。それで、もうちょっと突っ込んで、こういうふうにしてほしいとかああいうふうにしてほしいとか、提言だとか、余り時間がないので、ここだけはこういうふうにおっしゃりたいということがありましたら、お述べいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514314X02019990610/53
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054・水口剛
○参考人(水口剛君) ありがとうございます。
消費者の立場から非点源の情報についてどう望むかという御質問でございますが、やはり化学物質に第一義的に接しているのは消費者でありまして、またそのリスクを負っているのも消費者であります。したがって、消費者の立場からは、自分がどのようなリスクにさらされているのかということを常に知っておきたいというふうに考えるのではないでしょうか。そのためにできるだけ多くの情報がわかりやすく提供されることが必要です。
先ほど来、リスク、ハザードの話が出ておりまして、ハザードとリスクが混同されているのではないかという議論がありました。確かに、ハザードとリスクを混同して間違った判断をすることは問題であります。しかし、リスクの程度が正確に把握されたからといって、それで一律に対応が決まるわけでもないということに注意すべきだと思います。
これは中西先生も御著書の中で書かれておりますように、リスクはリスクとして存在するとしても、それに対して私たちは生活の利便性といったベネフィットを得ている。そして、そのベネフィットとリスクの程度とを勘案してどの辺を選ぶのかということが今求められているわけです。そして、それを選ぶのは、政府であったり行政であったり学者であったりするのではなくて、実際にリスクとベネフィットをそれぞれ得ている個々の消費者であるわけです。したがって、個々の消費者は、自分がどれだけのベネフィットを得ているのかということは生活しておりますからわかりますから、それに対してどの程度のリスクを負っているのかということがわかるような情報が必要であります。
したがいまして、点源情報からの化学物質の情報がリスクを判断する一つのものとすれば、一方で非点源情報についてもできるだけ細かい区分で、例えば先ほどの鉄道、自動車といった区分は別々にするとか、あるいは社民党さんの案の中にありますように、製品に関しても化学物質の情報を加えていくということを今後は真剣に検討していく必要があると思います。国際的な流れとしても、PRTRの点源情報の把握の次は必ず製品ごとの化学物質の含有情報ということになっていくはずです。そこのところをぜひ御理解いただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514314X02019990610/54
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055・岩佐恵美
○岩佐恵美君 PRTRのパイロット事業評価報告書というのを読ませていただきました。本当に大変御苦労されてこういう事業をされた皆さんに改めて敬意を表したいと思います。
そこで、非点源の問題に絞って見てみたんですけれども、非点源からの排出・移動量というのは、パイロット事業では物質数で二八・四%、数量で二四%を占めています。つまり、四分の一ないし三分の一を占めているということで、大変重要だというふうに思っているわけです。
この評価書の中で、移動発生源のうち建設、農業、産業機械は国内の排出源単位算定に必要なデータが不足した、あるいは家庭からの殺虫剤等や水産養殖業や染物業などについては推計に必要なデータを入手できなかった、そういう理由で排出量等の推定を行えなかったということが記載されています。
いろいろ困難があったというふうに思いますけれども、何が一番の障害になったのか、その辺について浦野参考人からお話しいただければと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514314X02019990610/55
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056・浦野紘平
○参考人(浦野紘平君) ただいまの非点源のことでございますが、非点源の問題は大変国民にとって身近であると同時に、ある意味では自分自身が発生源であるわけです。そういう意味で、国民意識の改善、あるいは社会全体の安全を確保するためには非常に重要な部分だというふうに私は認識しております。
御質問のように、パイロット事業では、これを最初にやるときには本当にできるのかというぐらい心配いたしまして、できる範囲でやってみたわけです。例えば、自動車の排気ガス一つとりましても、これは運輸省にも環境庁にも、その他通産省の自動車工業会にもいろいろ問い合わせをいたし、あるいは自治体にも問い合わせをいたしました。しかし、ほとんど情報を提供していただけませんでした。非常にわずかなデータからの推計でございます。そういう意味では、まだまだ精度が十分でない。ましてや、自動車だけではなくて二輪車、いわゆるバイクのようなものですが、こういったものについても非常に負荷が大きいと予測されるんですが、なかなか情報がないということでした。それから殺虫剤についても、九年度、十年度ともに工業会に協力していただくようにお願いをしたんですが、いずれもお答えをいただけませんでした。
そういった状況ですと、非点源というのは非常に推計しにくい。これから各事業所管官庁あるいは通産省、環境庁等に協力していただくことがぜひ必要ですし、そのほかに行政だけではなくて事業団体あるいは各個別の企業も協力をしていただかないとこの問題はうまくできない。しかし、先ほども言いましたように、これが見えることは国民にとっては非常に重要なことだというふうに思っております。これは移動量についても全く同様だというふうに思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514314X02019990610/56
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057・岩佐恵美
○岩佐恵美君 もう一つ伺おうと思ったんですけれども、時間が中途半端になってしまいますので、非点源に絞り込んで、廃棄物の問題等を含めて、浦野参考人がお考えいただいているところがあればお述べいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514314X02019990610/57
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058・浦野紘平
○参考人(浦野紘平君) 今申し上げたことでかなりの部分は入っておるわけですけれども、非点源を推計するためには小さな事業所についても知る必要があります。あるいは、末端の商品についても知る必要がありますし、日常使っております自動車、バイク等についても知る必要があります。
そういう意味では、行政がかなりのデータベースを持っていなければいけない。環境庁あるいは通産省も含めて、国がこういったものについてのデータベースの充実をぜひ図るべきである。民間からもデータを出してもらって集めていくということが非常に重要ですし、また基本的な考え方や基本データはやはり公開すべきであるというふうに思っております。
現在、国の法律ですと統計法というのがございまして、これを使っていろんな推計も行われるわけですけれども、実はそれは今まで国の行政目的以外は公開しないということで、簡単な情報、例えば先ほどもダイオキシンがございましたけれども、産業廃棄物の焼却施設が全国どこにあるのかというのは当然厚生省も環境庁も把握を現在しておるはずですが、これは統計法上の理由で公開されないということになっております。
そういう状況ですと、先ほど中西先生は、環境モニタリングあるいは非点源の発生について一生懸命調べているとおっしゃいました。しかし、我々少人数の研究者が調べることと、それからこういった国の制度である程度基本情報が与えられた上で、我々がそれを有効に使って効率的な研究をしていく、重点的に注意すべきこと、重点的に進めるべきこと、あるいは環境モニタリングとどういうふうに合うのか、予測とどういうふうに合うのか、そういうものをきちっと発展させるためには、我々が全国の状況、発生源を全部調べるわけにいきません。対象物質になってそれが報告されれば、それが多少不正確であったならば、我々がそういうものを検証することをすればいいのだというふうに思っております。
それから、関連してですけれども、この法律がリスク評価のためだということのお考えは、私は正しくないというふうに思っております。それは、リスク評価に使う基本情報を集めるのであって、この法律そのものでリスク評価をするものではありません。したがいまして、ハザードが高いものが環境中にどのぐらい多く出ているのか、あるいは廃棄物としてどのぐらい移動されているのか、要するにリスク評価のための、あるいはそのほかの国民理解、リスクコミュニケーションを含めていろんなものに使う基礎情報を集める制度だ。
ですから、これだけをもってリスク管理ができたり、あるいは規制をしたり、すぐに行くものではなくて、この情報をもとにしてリスク評価あるいはリスクコミュニケーションその他を進めていって、規制すべきものは規制するし、自主的に減らすものは減らす、製造禁止になるものも当然あり得るかもしれません。そういう基本情報を集めるためのものであるという認識がぜひ必要だというふうに思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514314X02019990610/58
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059・岩佐恵美
○岩佐恵美君 ありがとうございました。終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514314X02019990610/59
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060・大渕絹子
○大渕絹子君 社会民主党の大渕絹子でございます。
四人の参考人の皆さんには、きょうは貴重な意見を聞かせていただきまして本当にありがとうございます。御礼を申し上げたいと思います。
そこで、お伺いをさせていただきたいと思います。
まず、井形参考人にお伺いをいたします。
中環審の環境保健部会でしょうか、そこから出していただきました今回のPRTR法にかかわる中間答申を読ませていただきまして、大変中身の濃いものであるというふうに思っております。そして、この中間答申と法案を見比べていったときに、この答申に沿って環境庁が総力を挙げてつくった法律にしては少し法案の方が中間答申に負けてしまっているんじゃないかという思いを強くいたすわけでございます。
中間答申の中には、主管は環境行政機関が実施をすることが望ましいということが明快にうたわれておりますし、情報を提供しリスクコミュニケーションがちゃんと図れるようにすべきであるということもきちんと書かれておりまして、諸外国が行っている事例についても例示をし、あるべき姿というのを的確に答申されているというふうに思うのです。
政府が出してきた法律の中で、先ほどいわゆる事業省庁が主管になることも仕方がないというか弊害がないというふうにおっしゃっておられましたけれども、私は諸外国の例を引くまでもなく、環境行政全般をきちんと見張っていく役割は環境庁そのものが負わなければならない重要な任務だというふうに思います。二〇〇〇年からは環境省になっていくという大事なときです。そして、この法案が出されて、まさに環境省、今後の日本の環境行政が問われる大事な法律だろうというふうに思っております。
いろいろな事業省庁との話し合いの中で、受け入れ先が、事業省庁へまず第一に報告されるというこの法案になったことに対して、この答申をまとめられた井形参考人の気持ちの中に、環境庁はまだ皆さんが出した答申を担えない、日本の環境庁はそれを担うことができないと思っておられますでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514314X02019990610/60
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061・井形昭弘
○参考人(井形昭弘君) 私たちの審議会は環境庁に属しておりますけれども、環境庁の指示を受けてやっているわけではありません。したがって、私どもはやはり未来の環境行政がどうあるべきかという視点から英知を絞って答申を出し議論しておるつもりでありまして、そういう意味では、環境庁にエールを送りこそすれ、とてもこれじゃ頼りにならないという危惧は持っておりません。
また、環境庁は昭和四十六年にできたと思うんですけれども、今まではどちらかというと水俣病みたいな後ろ向きの仕事が多かったように思うんです。しかし、むしろ今度のこの法案こそ、環境庁の面目を発揮した前向きのまことに環境庁らしい対応であった。それで、私たちの答申については一〇〇%我々の意を酌んでいただいて、しかも各省庁との話も十分私たちもしましたし環境庁もしまして、こういう法案にこぎつけたということを私は高く評価したいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514314X02019990610/61
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062・大渕絹子
○大渕絹子君 ありがとうございました。
それでは、環境庁はパイロット事業も実施をし、この法案をつくることを実際にパイロット事業も実施する中で準備を進めてきたと思うんです。私も、参考人も同じように今の環境庁でもしっかりとこの法案の受け皿になり得るというふうに確信をしているところでございます。
そこで、私たちが、この届け出省庁を環境庁にすべきだ、環境庁長官がまずしっかりとリーダーシップを発揮すべきであるということで皆が同意されて法案が修正されたとしても、そのことに対して御異存はございませんね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514314X02019990610/62
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063・井形昭弘
○参考人(井形昭弘君) 先ほど申し上げましたとおり、日本政府が全面的に受けて立つべき新しい法律でありますので、私は、届け出先はどうかということはむしろ電子情報時代には余り意味のないことになるであろうと思っております。
ですから、最後の質問で異議がありませんねと言われましたけれども、それは国会でお決めになることですから、私がとやかく言うべきことではないと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514314X02019990610/63
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064・大渕絹子
○大渕絹子君 ありがとうございました。
それでは、水口参考人にお聞きをいたします。
市民のPRTR法ということで本当に具体的に提案をしていただきまして、私たちのこの法案づくりに協力をしていただいておることに感謝申し上げます。
政府が出してきた、あるいは修正をされたこの法律ですけれども、市町村の関与ということがまことにないのですね、今度の法案の中に。それで、市民案の中には市町村の関与ということが明快に打ち出されておりますけれども、今後のPRTRに対しての市町村の関与について、具体的にお述べいただけたらというふうに思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514314X02019990610/64
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065・水口剛
○参考人(水口剛君) ありがとうございます。
私どもの作成しましたPRTR市民案骨子の中では、市町村こそがこのシステムの中核であるべきだという考え方に立っておりまして、その考え方は今でも変わっておりません。したがいまして、できることならば情報の一次的な提出先は市町村であって、市町村、つまり住民に最も近いところにいて、そして地域の状況に最も精通している市町村に情報が集まり、それが都道府県を経由して国にわたっていくというのが環境行政上最も望ましいというふうに考えております。
現状では、市民案自体が国会の審議の俎上に上っているわけではありませんので、非常に残念でありますが、少しでも市町村が、浦野先生のお話にもありましたけれども、都道府県と連携をして地域の実情に合った活動をできるようにこの法律をつくっていっていただきたいというふうに思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514314X02019990610/65
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066・大渕絹子
○大渕絹子君 ありがとうございました。
出された情報を市町村がマップにしていくというようなことが市町村独自でもできて、それが公開をされていくというようなことができると思いますので、そういう仕組みをぜひつくっていけたらというふうに思います。
中西参考人にお伺いをいたします。
無用な混乱を招くので毒性のはっきりしないものについて、環境ホルモンなどについて、はっきりしないものはまだちょっと時期尚早ではないかということをおっしゃいました。私もその考え方を理解するわけでございますけれども、市民の中にはわからないからこそ情報を出していただきたいという思いもまたあるのではないかと思うのです。
この両方の要望にこたえていくためには、先ほど浦野先生もおっしゃいましたけれども、いろいろな情報を共有することによって、それが本当にハザードを起こしていく物質なのかどうかということを選別するための制度だとするならば、そのおそれのあるもの、いわゆる生殖作用に影響があるかもしれない、しかしまだはっきりしないというものについてもこの対象として選別していくことが必要ではないかというふうに思うのですけれども、情報を待っている人たちの立場にちょっと言及していただけたらと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514314X02019990610/66
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067・中西準子
○参考人(中西準子君) 多くの皆さんが不安に思っていることについて、できるだけ早く情報を出すということは非常に重要なことだと思います。
今多くの皆さんが不安に思っていることは、環境ホルモンというものが生殖作用に影響があるんじゃないか、子供に影響があるんじゃないか、免疫能力に影響があるんじゃないかというようなことであって、決して量ではないと思うんです。PRTRで量が出たからといって、それが全く影響がないかどうかわからないもので、一体何か不安が解消されるのか。私はそのようには思えないんです。
ですから、まず最初にそういう不安のあるものについて一体どういうおそれ、それは確実な情報じゃなくていいと思います。要するに、生殖作用というみんなが心配している事柄について影響がありそうなのかどうか、動物実験でそういうものが出るのかどうか、そういうようなことの情報で十分だと思いますが、そういうものについての情報は欲しい。
しかし、今の環境ホルモンについて疑わしいと言っているのは、例えばあることをやったときに体温がちょっと上がったとか、血圧がちょっと上がったというような生化学的な反応のところで、我々はまだもしかしたらという議論をしているんです。それは、ある場合にはすうっとそれで引っ込んでしまうものかもしれないし、ある場合にはそれがすごい大きなリスクにつながるものかもしれないんです。しかし、まだそういう生殖作用とどうというようなことについてはわかっていないんです。
ただ、先ほど申し上げましたように、ダイオキシンとかPCBとかDDTについてはかなりの程度わかっております。ですから、そういうような毒性のある程度わかっているものについては当然対象にした方がいいと思いますけれども、全くわからないような、ただポテンシャルがあるというだけのものについては、国民が排出量を知ったからといって何かがわかるとは思えませんし、それがデータの共有になるとも私は思えないんです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514314X02019990610/67
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068・大渕絹子
○大渕絹子君 ありがとうございました。
有害性がわからないからこそ、PRTRによってそれを追及していくことがいいのかなというふうに私などは思っているところでございますけれども、御意見ありがとうございました。
浦野参考人にお聞きをいたします。
営業秘密の問題なんですけれども、営業秘密に規定ができる基準みたいなものはあるのでしょうか。浦野先生はどういうふうにお考えでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514314X02019990610/68
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069・浦野紘平
○参考人(浦野紘平君) 御質問の趣旨がどのぐらいのことを期待されているのかちょっとわかりかねるのですが、現在、政府の方々がおっしゃっていることは、事業所内でもかなり秘密として管理されているものと、その他幾つか従来からの営業秘密の審査基準にのっとってやるというふうにお話がありました。
一番ポイントになるとすれば、容易に分析できるものが営業秘密になるかならないか。今、分析技術は実は非常に進んでおりまして、大抵のものは簡単に分析できてしまうわけなんです。ですから、ここをどのぐらい厳密に見るのかというのが重要なポイントになるのかもしれないというふうに思っております。
営業秘密については、先ほど水口参考人からお話がございましたが、多分件数ですとかそういったものも公開するということになっておりますので、国民の監視が、監視という言い方はよくないですが、皆さんがチェックできるものであればいいんですが、それをだれが審査するかというのは、やはり国会での議論があってしかるべきだというふうに思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514314X02019990610/69
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070・大渕絹子
○大渕絹子君 浦野さんにもう一点、情報公開のことでございます。
インターネット等を通じて広く国民にリスクコミニュケーションが図れるような方法にすべきであるというのは、皆共通した認識だというふうに思うところでございますけれども、今の通産省あるいは環境庁が考えておられる情報公開のあり方だと、よくまだ具体的にわかっておらないところがあるわけです。先ほど来からインターネットなどで常に公開をしておく方がより共有できるというふうに思うところでございますけれども、浦野参考人ももちろんそういう考え方だということをわかりながら、今私たちがこの法案審議の中でさらに詰めておくところがあったらお聞きをしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514314X02019990610/70
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071・浦野紘平
○参考人(浦野紘平君) これにつきましても水口参考人からもお話がございました。
もともとこのPRTR制度そのものが情報を共有する前提に立った制度だというふうに私は思っておりますので、どのぐらい手続を経て、幾らぐらいお金を払わなきゃいけないのかという議論をすることが本当は筋からするとおかしいのではないかというふうな感じもあります。ただ、どこかできちっとした集計やチェックが行われることも必要だということがOECDの勧告にも出ておりますので、国がしっかりとしたチェックや集計等をしていただくことは必要だというふうに思います。
これをまさに我々科学者も自由に加工利用して、まさにハザードと排出量からリスクがどの程度、どういう地域にあるのか、あるいはどういう場合に起こり得るのか、あるいはモニタリングをどこを中心にやっていいのか。今、莫大なお金がモニタリングに使われているわけですが、果たして全部が必要か、あるいはもっとほかのところをやるべきではないかというようなことも、こういった情報が使えることによってかなり科学者の方からも提言ができるのではないか。あるいは企業にとっても、環境庁、通産省に申請して公開してもらうという手続をとるのと、実際に自由にぱっとアメリカのように見られるのとでは、自分たちの位置づけあるいは自分たちの努力の跡が見えるという点では、やはり精神的な意味で相当の違いがあるのではないかというふうに私は思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514314X02019990610/71
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072・大渕絹子
○大渕絹子君 ありがとうございました。終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514314X02019990610/72
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073・泉信也
○泉信也君 どうもありがとうございました。
まず、井形参考人にお尋ねをいたしたいと思います。
衆議院でこの届け出先を都道府県経由というふうに修正されたわけであります。しかも、また附帯決議の中で、地方公共団体との連携のあり方についてさらに検討するようにということも衆議院ではつけられたわけですが、先生がこの環境庁での審議会に関与された過程で、地方自治体との関与のあり方について、ちょっと重複することがあるかと思いますが、どんな議論があって、地方自治体が最初の政府原案よりもっと関与の度合いを強めることについてどんなお考えをお持ちか、お尋ね申し上げたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514314X02019990610/73
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074・井形昭弘
○参考人(井形昭弘君) 私どもの審議会でこのことについてはいろいろ議論がありました。いろいろな議論が出ましたけれども、結局、先ほどからたびたび申し上げておりますように、これは地方自治体と国とが一致して、もちろん全国、住民も含めて一致してやるべき新しい法律でありますから、国と言わず地方自治体と言わずそれぞれみんな積極的に関与することが望ましい、これはもう皆さんの一致した意見でありました。
ただ、先ほど申し上げたとおり、いわゆる届け出先をどこにするかということは、私どもにとりましては新しい電子情報時代にはそんなに大きな意味はない。ただ、修正をされたことをお聞きして、それはまことに妥当であったと思います。
そうすることによって、いわゆる府県の関心が高まり、担当者の関与が濃くなるわけでありますから、そういう意味では非常に望ましかったと思います。ただ、この法案では自治体のなすべき仕事がかなりはっきり明示されております。それは自治体がかなり前に出て関与しないとこの法案は成立しませんよということを書いてあるわけです。
でありますから、私は、国がやって自治体が受け身にこれに従うのではなくて、自治体も国も協力して新しいシステムをつくるという体制ができていくことが望ましいというふうに思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514314X02019990610/74
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075・泉信也
○泉信也君 ありがとうございました。
中西参考人にお尋ねをしたいと思います。
クリーナープロダクションのことについて、日本も大変先駆的な役割を果たしておるという御説明をいただいたわけでありますが、CPを促進するという観点からは、どのような事業所のデータ、情報の公開、事業所はどういう対応をやったらいいのか。個別事業所の情報公開に対してどんな対応を事業所がしたらいいのかということについて、もし先生に何かお考えがございましたら、教えていただけませんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514314X02019990610/75
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076・中西準子
○参考人(中西準子君) どういう条件があれば、CPという技術が促進されるのかということについての御質問についてお答えしたいと思います。
それは、やはり企業が行ったことについて多くの人が認めるということがあります。それから、CPは基本的には割合経済的なシステムなので、企業にとっても有利なものであるということが言えます。それからもう一つは、CPというのは、やはり企業がやったことをみんながわかるということ、それからCPの経済性とかそういうことについて非常にみんながわかるということ。
それから三番目に、選択肢が多いということが非常に重要だと思います。といいますのは、何月何日までにあるものをどうしても削減しろというようなことになりますと、企業としてはそれが今自分のところにとっては非常にやりにくいことであってもやらなければならない。そうしますと非常にコストがかかるんです。しかし、たくさんの選択肢があって、例えばリスクを及ぼすようなものが幾つもある、しかし自分のところはこれを今やると、例えばちょうど生産工程の改変の時期に当たっている、そういうようなことがあれば非常に安く効果的にできるわけです。ですから、やはり選択肢をそろえること、余りぎちぎちした規制ではCPが進まないというふうに思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514314X02019990610/76
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077・泉信也
○泉信也君 ありがとうございました。
先ほど、中西先生が企業の選択肢を準備する必要があるというふうにおっしゃったのは、今お答えをいただいたような意味だというふうに理解させていただきたいと思います。
浦野先生にお尋ねをいたします。
御用意いただきましたペーパーの四ページ目で、取扱量の報告がなされることが望ましいということを言っていただいております。私もこれはここにお書きいただいたように、そうだろうなというふうに思うんですが、なぜ現実にこうしたことがなされないのかということは、何か先生お気づきの点がございましたらお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514314X02019990610/77
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078・浦野紘平
○参考人(浦野紘平君) これについては、アメリカ等では取扱量、保有量等をみんな報告するようになっているわけですが、大変言いにくいんですけれども、パイロット事業の時点でやはり業界に遠慮したというのが正直なところではないか。やはり、取扱量を報告するのには業界の抵抗が多いのではないかという予想だったのじゃないか。
ところが、実際にパイロット事業で十年度にやってみたところ、実はそれほど抵抗はない。このぐらいの対象物というのは、二百とか三百とか言われておりますけれども、一事業者に勘定しますと大体二、三の物質とか多くても二十ぐらいの物質なんです、事業所別で見ますと。そうしますと、有害性、ハザードがあるというものについては自分たちもちゃんと管理をしなきゃいけない、できるならば減らしていく努力をすべきだという認識を持っていただいている。そうすると、取扱量も減らしていきたいという希望もありますし、これだけ取扱量も減らしました、排出量も減らしましたというのは、むしろ出してもいいのではないかという雰囲気に今はなっているのではないか。
そういう意味では、やむを得ず増産するということになれば当然取扱量はふえるわけです。取扱量がふえると排出量は当然普通だったらふえていくわけですけれども、それに対してこれだけの努力をしましたということをやはり事業者も理解してもらうためにも、取扱量というのが見えてきた方がいい。あるいは実際にパイロット事業でやってみますと、取扱量より排出量が多いなんという報告が出てきたりして、こんなばかなことはないのではないかということで、かなりの数の問い合わせを実は再度しまして訂正いただいたというふうな事情もございますので、その辺については今後十分検討していただきたいというふうに思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514314X02019990610/78
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079・泉信也
○泉信也君 このペーパーにも書いてありますように、事故時の安全性それから対応の仕方というようなことから考えましても、貯蔵量というか保有量等についてもある程度データがあった方が有益かなというふうに思うんです。
それで、再度、井形先生、申しわけございませんが、この取扱量あるいは貯蔵量に関しての議論というのは先生のところでお進めいただきました審議会では何かあったんでしょうか、それともこれは俎上に上らなかったんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514314X02019990610/79
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080・井形昭弘
○参考人(井形昭弘君) これはやはり目的が環境に対する影響ということでございますので、仮に取扱量が多くても排出をしなければ環境のリスクには入らないわけです、貯蔵とかいうのは。したがって、排出に重点を置きましょうということになったと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514314X02019990610/80
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081・泉信也
○泉信也君 ありがとうございました。終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514314X02019990610/81
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082・奥村展三
○奥村展三君 参考人の皆さん、大変御苦労さまです。ありがとうございます。もうそれぞれ各先生方がお聞きになりましたから、重複はできるだけ避けたいと思うんです。
私は、滋賀県、琵琶湖の排水でわからぬままにいろいろと議論してきたんですけれども、特に今回のこの法案で大事なことですが、環境部局がしっかりしなければこの窓口として、都道府県がやらなければならないんですが、考えてみますと、各事業所の連携がしっかりしてある程度うまくいけばお互いに情報交換しながら、そして今いろいろお話ししておられる、確定したのではなくておそれのあるようなときに、いろいろ意見交換ができてうまくいくようになると、やはり市町村が非常に私は重要になってくるのではないかなと思うんです。
滋賀県は第二次産業が日本でナンバーワンなのでございますが、私の地元に工業団地があるんですが、そこに三水会という毎月第三水曜日に寄って、環境問題からあらゆる地域の問題全部について意見交換をしておられるんです。今回、この法案が出て衆議院を通過したとき、地元でいろんな話をしていたときに、やはりお互いに情報の共有をしなければならない、それが基本だと思う。しかし、どうもきょうまでの国なり県の縦割り行政の流れで、縛りがかかるという言葉はおかしいかもわかりませんが、そういうことばかりがひとり歩きしてしまう。本当に我々現場で一生懸命努力しても、日本全国どの企業、世界じゅうも、企業が成り立っていこうとすればやはり環境なりあらゆる問題をしっかりやっていかなければならない。こういうことを前向きにやっているんだけれども、連携がうまくいくんだろうかというのをこの法案審議の道中で一番思いましたということをこの間聞いたんです。
水口先生に先ほど市町村なりのいろんな連携のお話をしていただいたと思うんですけれども、利用のしやすさだとかいろいろあるんですけれども、その点についてお伺いをいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514314X02019990610/82
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083・水口剛
○参考人(水口剛君) ありがとうございます。
特に、市町村で情報を十分利用していくことが大事だというふうに私も思います。それで、市町村あるいは事業者間で十分連携をとっていくためには情報が共有されることが重要でありますが、このPRTR制度は、浦野先生からもお話がありましたように、情報の共有を進める制度だというふうに私も理解しております。
しかしながら、情報の共有が進むためには、繰り返しになりますが、制度自体の信頼性が非常に重要になると思います。すなわち、ここで出てくる情報が信頼できるものだというふうに地域の方が思えばその情報を利用することになるでしょうし、たとえPRTR制度をつくって実際に情報の開示を始めたとしても、制度に対する信頼感がなければその情報が使われないという可能性があるわけです。そして、それが最も国民にとってむだの多いことなんです。
なぜならば、PRTRという制度はコストがかかるんです。事業者は情報を集めるのにコストがかかる。コストがかかるのに利用者がいなければ全くむだなコストをかけたということになりますから、利用者が多くなる仕組みが必要です。利用者が多くなるためには情報の信頼性、制度の信頼性が必要です。制度の信頼性はだれが決めるかというと、情報を利用する人が決めるんです。つまり、一般の地域の人が信頼するかどうかにかかっているわけです。
そのような観点から、例えば情報の提出先が業所管大臣を経由している、そうすると情報の提供が遅くなったりして混乱を来したり、あるいは営業秘密の判断が業所管大臣である。これは、私が業所管大臣が疑わしいと言っているわけではなくて、一般的にそういうものに対する社会のとらえ方はどうなのであろうかということを考えなければこの制度を有効に構築することはできないのではないか。ですから、何としても制度の信頼性を高めるということを考えていただければというふうに思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514314X02019990610/83
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084・奥村展三
○奥村展三君 ありがとうございました。
やはり信頼性といいますか、そういう問題が大きくなってくると思います。
地元のことばかりであれでございますが、琵琶湖条例を五十六年に滋賀県はつくったわけですが、そのときも工業団地の奥さん連中が工場の排水規制のことを勉強なさって、そしてみずからが行動を起こしていこうということが県内に広まって、あの琵琶湖条例、石けん運動がスタートしたわけであります。
そういうようなことであるわけですが、中西先生は水質の大御所のようでございますが、こういうことについて、やはりあらゆる問題に情報がうまく伝わっていかないと、どうも危機管理というんですか、ひとり歩きをして不安感ばかりが国民の皆さんなりあらゆる地域に根差してしまうと、今いろんな議論をしながら法案をつくったとしてもかえって不安感をあおってしまうようなことになろうと私は思うんですが、そこらの点についてもお考えがありましたらお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514314X02019990610/84
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085・中西準子
○参考人(中西準子君) このPRTR法案が制定されまして実行されていくときに一番私が重要だと思っていることは、先ほども申し上げましたが、一つはいかにCPというクリーナープロダクションを推進するかということであり、第二はやたら情報公開による被害がないような形で、情報公開というのはすばらしいんだよということをみんなが認識されて、そして今たくさん情報公開されない環境情報があるわけですから、そういうものがどんどん情報公開されていく機運をつくり出すということが非常に重要かと思います。
琵琶湖のことについて、ちょっと余計なことかもしれませんが申し上げますと、琵琶湖は燐を含まない洗剤というものを最初に条例でつくりました。これは一つのCPというか根本的な対策、それまでは下水処理場で終わりの方で、お金とエネルギーをかけていかに燐をとるか。それよりも、そもそも燐を含まない洗剤をつくってそれを使わせるんだというところで非常に画期的なことだったと思うんです。
私たちは、できるだけこういうようなことをしていかなければいけないというふうに考えているわけです。この法案で出てきたデータは、何よりもそういうCPの促進というところに使ってほしいし、使われるべきだというふうに思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514314X02019990610/85
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086・奥村展三
○奥村展三君 ありがとうございました。
井形先生、浦野先生、申しわけございませんが、時間も迫っておりますので、終わりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514314X02019990610/86
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087・島袋宗康
○島袋宗康君 先生方、大変御苦労さまでございます。貴重な意見を拝聴いたしまして、感謝申し上げます。
早速でございますけれども、四名の方にそれぞれの立場でお伺いします。このPRTRの現在の政府案に対して、基本的にそれぞれの立場でどのようにお考えなのか、お聞かせいただけますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514314X02019990610/87
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088・井形昭弘
○参考人(井形昭弘君) 基本的にと言われますと、やはり我が国がいろいろ発展をしてきて、それから公害という時代を経て、そして新しくこれからクリーナープロダクションという、企業も公害のない企業としてやっていくことが人類の発展に役立つという皆さんの意識がそろってきたところでこういう法案が成立するということは、私にとっては非常に画期的なことだというふうに理解しております。
それから、もちろん発議のもとはOECDにありましょうけれども、OECDが言ったからそれをまねしたということでは決してありませんで、特に我が国は世界の中でも先進工業国として非常に特異な存在ですから、我が国がどういう選択をするかというのは海外からも非常に注目されておるわけです。そういう意味で、我が国に最もふさわしい制度はこういうものでなかろうかということを我々の審議会で議論しましたし、こういう制度が発展していくことを心から希望しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514314X02019990610/88
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089・水口剛
○参考人(水口剛君) 現在の政府案を基本的にどう考えるかということですが、重要な点として二点あると思います。一つは、先ほど来出てきていますCPの促進に役立つということ、もう一つは、情報を広く共有するとともに混乱を招かない制度であるということです。
まず第一に、CPの促進についてですが、先ほど来クリーナープロダクション、あるいはクリーナーテクノロジーというものの重要性が指摘されております。そのとおりであるわけですが、しかしそのような環境問題をもとから絶つような技術というのは常にコストが安いわけではなくて、場合によっては高いコストがつく、特に当初コストがかかる可能性もあるということを十分に認識すべきだと思います。
それでも企業がそれを進めるのはなぜか。もちろん、自主管理の促進ということは非常に重要でありますが、自主管理だけに任せるということが可能なのでしょうか。コストがかかるにもかかわらず、企業が自主的にそれに取り組むことをただただ期待するというのは、制度としては不備ではないかなと思うわけです。
では、どのようにすれば企業の自主管理が進むのか。先ほど、業所管官庁が一番誘導しやすいというお話もございましたが、しかし企業を誘導するのは二十一世紀には業所管官庁ではなくて市場です。したがって、市場が企業の環境努力を評価して、高いコストであっても環境問題に取り組んでいる企業を積極的に買っていくような、そういう市場を育てることが大切です。そのために、正しい情報を広く提供できるようなシステムをつくること、これが大事であります。
それから、第二点目の混乱を招かない情報の出し方ということですが、先ほど来情報の提供に対してパニックの懸念が表明されておりましたが、どのようなときにパニックが起こるのかと申しますと、隠された情報が出てきたときにこそ市民の不安感は高まるのだということを強調しておきたいと思います。あるいは隠されているのではないかという不安がパニックを拡大するわけです。逆に、あらゆる情報がきちんと提供されているという信頼感が社会に存在していれば、当初の情報提供の衝撃は比較的短い時間でおさまるはずなんです。
そのような意味でも、情報の提供に基づく混乱を避けるためには、あらゆる情報が間違いなく提供されているんだという信頼感を社会に育て上げるような制度設計をするということ、これが大事ではないかと思います。
そのような意味で、政府案の今後の御審議に大変期待をしておりますので、よろしくお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514314X02019990610/89
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090・中西準子
○参考人(中西準子君) 政府案に基本的に賛成します。
しかし、それを施行していくに当たっては、先ほど来申し上げていますように、幾つかの留意点があるかと思います。何よりも私は、やはりリスク評価ができる体制をみんなで構築しなければならないと思います。リスク評価ができなければリスクコミュニケーションはあり得ないわけですから、そういう意味で私どもも含めてそういう体制をつくる、そして国とかNPOの努力でそういうことをやっていかなければならないというふうに考えております。
それから、一つだけちょっとつけ加えさえていただきますが、地方自治体の関与ということです。地方自治体がこういうデータを活用すること、あるいはどうしても地方自治体でできない部分をそういうことで補うということは非常に重要だとは思いますが、地方自治体、殊に市町村がこのデータを受け取って、それの正確さを担保して国全体でまとめていくというシステムは非常に無理だというふうに思っております。
私は、もう二十年ぐらい前になるかと思うんですが、実は特定施設には特定施設届け出書というのがございまして、そこでどのぐらいの重金属を出しているかとか、どのぐらいの有害物を使ってどういう前処理をして出しているかというような届け出書が政令指定都市とそれから都道府県の保健所関係のところに出されているわけです。それをある市について、政令指定都市について全部集計して、河川に流れている有害物の量を推計しようとしたことがあります。それをやろうとしましたが、データが全部まちまちで全く集計にならなかったという経験があります。このために、企業は非常なコストをかけて今でも特定施設の届け出書を出しておりますが、そのデータはほとんどのところで集計されておりません。
そのときに、その政令指定都市の方に申し上げまして、なぜこういうことをチェックしないのですかと言いましたら、そんなに幾つもの生産工程について詳しい人がいるわけがないということを言われて、私もなるほどそういうものかというふうに思いました。そういう意味で、やはりある程度そういう生産工程とかそういうことに詳しい人材をそろえられるということは、非常に重要な要件であるというふうに考えております。
以上です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514314X02019990610/90
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091・浦野紘平
○参考人(浦野紘平君) 私は、どう思っているかということを最初の参考人意見で申し上げたわけですからあれですが、一言で申しますと、やはり最初に井形先生がおっしゃいましたように、PRTR制度そのものの目的がしっかりと国民各層に周知されることが大事だと思います。はっきり申し上げまして、行政の中でもあるいは科学者の中でも企業の中でもまだ非常に多くの誤解があるというふうに思っておりますので、その点をぜひ今後しっかり見ていただきたい。
それについて、具体的に国会での審議ということになりますと、当然、衆議院での修正とか附帯決議、特に附帯決議はかなり重要なものが私は入っているというふうに理解をしております。あるいは今後さらに参議院での修正があり得るのかどうかわかりませんが、そういう点で今後の運用をしっかり担保するような御審議をいただきたいというふうにお願いしておきたいと思っております。
〔理事太田豊秋君退席、委員長着席〕
それからもう一点、このPRTR制度の一番根本は、やはり最初に皆さんがおっしゃいましたように非常に画期的なものでございますので、過去の事例、現状はこうだからあるいは過去がこうだからということからスタートするのではなくて、今後、二十一世紀の企業なり国民なり科学者がどうあるべきなのか、どういうふうにすべきなのか、それをどう誘導するのかということを考えるべきであって、そういう点では、地方自治体も企業も先行しているところは非常に努力をされております。しかし、実態は非常にいろんな点で問題がございます。これを進めるための道具としてというとおかしいですが、制度としてこの制度が有効に生きることがぜひとも必要だ。
そういう意味では、市町村でも人が足りない、都道府県でも人が足りないというのは事実だと思いますので、そうであればそれを充実していただくという方向で議論をすべきであるし、企業もレスポンシブルケア等をやっておられるところも、進んでいるところもありますが、大部分のところは、化学物質そのものの有害性を全く認識していないという状況のところもあるわけでございますので、そういったところをやはりレベルアップしていく。あるいは我々科学者の仲間でも、私は化学を専門としておるわけですけれども、研究者でも有害性を全く理解していなくて、有害物を大量に使って捨てている方がおられるようなのが現状でございます。
そういう中で、この制度がしっかりといくためには、やはり細かいところも、例えばどのぐらいの排出量、一%というと一〇〇〇〇ppmです。これは今、水銀を八〇〇〇ppm含んでいるものを取り扱っていても報告しないでいいということになります。そういうことは私は正しくないのではないか。既に事業者自身からも、こんなものを報告しないでいいんですかという、むしろパイロットのときに逆に質問をされている状況が起こっております。
そういう意味で、細かなことでございますけれども、対象物質の含有量をどこで切るのか、あるいは取扱量、例えば今議論になっているのは、私はパイロットは百キロで有害物はやっているという御紹介をしましたけれども、数トンという話が出ております。そうしますと、一%含んでいるものですと数百トン使っていなければいい、あるいは〇・一%、要するに一〇〇〇ppm含んでいるものですと数千トン使っていなければ報告しないでいいということになります。そういう状態ですと、大学は全く報告しないでいいことになります。そうすると、大学の認識が全く管理をしないでいいという認識になります。
そういったことをやはりきちっとお考えいただいて、それは法律で決めることではございませんが、政令で決めることですけれども、国会審議の中できちっと御議論いただきたいというふうに思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514314X02019990610/91
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092・島袋宗康
○島袋宗康君 私の持ち時間はあと四分少々でありますけれども、あと一点。
諸外国、特に、今のこの法案というのは非常に画期的な法案だとおっしゃっておりますので、欧米等のそういったPRTRの現在施行されている法律と、それから今これから審議されようとしているこの法案とどういうふうな違いがあるのか。もし特徴的なものがおわかりでしたらお聞きしたいんです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514314X02019990610/92
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093・松谷蒼一郎
○委員長(松谷蒼一郎君) どなたに質問されますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514314X02019990610/93
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094・島袋宗康
○島袋宗康君 もし何かありましたら、一言ずつお願いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514314X02019990610/94
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095・井形昭弘
○参考人(井形昭弘君) この法案は、一つは、諸外国からおくれている国もあるし、まだつくっていない国もあるわけです。先発した国に比べましたら後発のメリットが生きておるというふうに思います。
そういう意味では、先進国それぞれいろいろ制度をつくっておるわけですけれども、我が国の制度というのは決してそれに比べて見劣りするものではありません。また、日本の制度を見習って諸外国が法制化するということが十分考えられると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514314X02019990610/95
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096・松谷蒼一郎
○委員長(松谷蒼一郎君) 時間がございませんから、簡単にお述べいただきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514314X02019990610/96
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097・水口剛
○参考人(水口剛君) 諸外国の制度との違いということですが、私は、諸外国の制度の中では、アメリカがこの制度をつくって、それをいかに活用してきたのかということに着眼するべきだと思います。
先ほど中西先生の方から、有害性のよくわからないものについては量の情報は必要ない、むしろハザードの方が必要だというお話もありましたけれども、量の情報は必要ないというふうに決めてしまう方が問題なんだろう。
アメリカの例で、私のレジュメの参考資料5のところですけれども、アメリカの市民団体、EDFというところは、これは全くの市民団体ですけれども、そのPRTRの情報を使って量とハザードを掛け合わせてリスクを自主的に計算するというようなことをして、さらに社会に情報を提供している、このようなことがなされております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514314X02019990610/97
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098・松谷蒼一郎
○委員長(松谷蒼一郎君) 済みませんが、あと一分三十秒しかありませんので、よろしくお願いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514314X02019990610/98
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099・水口剛
○参考人(水口剛君) 済みません、あと一点だけ申し上げます。非常に大きな違いがあります。事業者の自主管理ということが主目的になっている法律は日本だけであろうというふうに思いますので、この点は違います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514314X02019990610/99
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100・中西準子
○参考人(中西準子君) 細かいことはあれですが、ヨーロッパから出発したこのPRTRとアメリカから出発したPRTRは非常に性格が違っております。
アメリカでは知る権利ということで、どちらかというと自分たちの身の安全ということに重きが置かれています。しかし、ヨーロッパでは基本的に地球環境ということで、最初は国単位のデータを出していく、それからだんだん個別のデータというふうになっていったと思います。それぞれの国の事情があるというふうに思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514314X02019990610/100
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101・浦野紘平
○参考人(浦野紘平君) 私は二点申し上げたいと思いますが、日本はいろいろな物質を世界でアメリカに次いで第二番目に取り扱っている国である。ですから、それだけほかのヨーロッパの、変な言い方ですけれども、日本の一つの県ぐらいの人口しかいない国と比べるのではなくて、もっとそういう意味では非常に地球環境にも責任を負うべき立場にある。もちろん地域環境もしっかり管理して、こういう環境政策をしっかりリードする役割があるんだということがまず一点。
それからもう一点は、ヨーロッパでもアメリカでも制度の運営にNGOがかなりかかわっている。日本はそれがなかなかできない、あるいはできるNGOが少ない。これは、やはり社会全体として育てていくことが必要だというふうに私は思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514314X02019990610/101
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102・島袋宗康
○島袋宗康君 ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514314X02019990610/102
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103・松谷蒼一郎
○委員長(松谷蒼一郎君) 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。
参考人の方々に一言ごあいさつ申し上げます。
本日は、御多用中のところ御出席を賜り、長時間にわたり有益な御意見をお述べいただきましてまことにありがとうございました。委員会を代表いたしましてここに厚く御礼申し上げます。(拍手)
本日の審査はこの程度にとどめ、これにて散会いたします。
正午散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514314X02019990610/103
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