1. 会議録本文
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000・会議録情報
平成十一年五月二十日(木曜日)
午前十時開会
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委員の異動
五月十九日
辞任 補欠選任
足立 良平君 寺崎 昭久君
久保 亘君 郡司 彰君
山下八洲夫君 千葉 景子君
風間 昶君 山本 保君
富樫 練三君 宮本 岳志君
畑野 君枝君 八田ひろ子君
椎名 素夫君 堂本 暁子君
五月二十日
辞任 補欠選任
郡司 彰君 久保 亘君
谷林 正昭君 櫻井 充君
八田ひろ子君 小池 晃君
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出席者は左のとおり。
委員長 井上 吉夫君
理 事
鈴木 正孝君
竹山 裕君
山本 一太君
若林 正俊君
齋藤 勁君
柳田 稔君
日笠 勝之君
笠井 亮君
山本 正和君
委 員
市川 一朗君
亀井 郁夫君
木村 仁君
世耕 弘成君
常田 享詳君
長谷川道郎君
橋本 聖子君
松村 龍二君
森山 裕君
依田 智治君
吉村剛太郎君
伊藤 基隆君
石田 美栄君
木俣 佳丈君
久保 亘君
郡司 彰君
櫻井 充君
谷林 正昭君
千葉 景子君
寺崎 昭久君
前川 忠夫君
魚住裕一郎君
沢 たまき君
山本 保君
小池 晃君
小泉 親司君
八田ひろ子君
宮本 岳志君
照屋 寛徳君
田 英夫君
田村 秀昭君
月原 茂皓君
堂本 暁子君
山崎 力君
島袋 宗康君
国務大臣
外務大臣 高村 正彦君
大蔵大臣 宮澤 喜一君
自治大臣 野田 毅君
国務大臣
(内閣官房長官) 野中 広務君
国務大臣
(防衛庁長官) 野呂田芳成君
政府委員
内閣官房内閣安
全保障・危機管
理室長
兼内閣総理大臣
官房安全保障・
危機管理室長 伊藤 康成君
内閣官房内閣情
報調査室長 杉田 和博君
内閣法制局長官 大森 政輔君
内閣法制局第一
部長 秋山 收君
防衛庁長官官房
長 守屋 武昌君
防衛庁防衛局長 佐藤 謙君
防衛庁運用局長 柳澤 協二君
防衛施設庁長官 大森 敬治君
防衛施設庁施設
部長 宝槻 吉昭君
外務省総合外交
政策局長 加藤 良三君
外務省アジア局
長 阿南 惟茂君
外務省北米局長 竹内 行夫君
外務省欧亜局長 西村 六善君
外務省条約局長 東郷 和彦君
自治大臣官房総
務審議官 香山 充弘君
自治省税務局長 成瀬 宣孝君
事務局側
常任委員会専門
員 櫻川 明巧君
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本日の会議に付した案件
○派遣委員の報告
○日本国の自衛隊とアメリカ合衆国軍隊との間に
おける後方支援、物品又は役務の相互の提供に
関する日本国政府とアメリカ合衆国政府との間
の協定を改正する協定の締結について承認を求
めるの件(第百四十二回国会内閣提出、第百四
十五回国会衆議院送付)
○周辺事態に際して我が国の平和及び安全を確保
するための措置に関する法律案(第百四十二回
国会内閣提出、第百四十五回国会衆議院送付)
○自衛隊法の一部を改正する法律案(第百四十二
回国会内閣提出、第百四十五回国会衆議院送付
)
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/0
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001・井上吉夫
○委員長(井上吉夫君) ただいまから日米防衛協力のための指針に関する特別委員会を開会いたします。
委員の異動について御報告いたします。
昨日、足立良平君、山下八洲夫君、風間昶君、畑野君枝君、富樫練三君、椎名素夫君及び久保亘君が委員を辞任され、その補欠として寺崎昭久君、千葉景子君、山本保君、八田ひろ子君、宮本岳志君、堂本暁子君及び郡司彰君が選任されました。
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/1
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002・井上吉夫
○委員長(井上吉夫君) 日本国の自衛隊とアメリカ合衆国軍隊との間における後方支援、物品又は役務の相互の提供に関する日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の協定を改正する協定の締結について承認を求めるの件、周辺事態に際して我が国の平和及び安全を確保するための措置に関する法律案及び自衛隊法の一部を改正する法律案の三案件を一括して議題といたします。
まず、昨日当委員会が行いました委員派遣につきまして、派遣委員の報告を聴取いたします。若林正俊君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/2
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003・若林正俊
○若林正俊君 委員派遣について御報告申し上げます。
本特別委員会の井上委員長、鈴木理事、山本一太理事、齋藤理事、柳田理事、日笠理事、笠井理事、照屋委員、田村委員、山崎委員、島袋委員及び私、若林の十二名は、周辺事態安全確保法案等三案件の審査に資するため、昨十九日沖縄県に派遣され、那覇市において公聴会を開催し、六名の公述人より意見を聴取いたしました。
まず、公述の要旨を申し上げます。
最初に、沖縄県議会議員の小渡亨公述人からは、SACO合意の確実な実施が基地問題の解決につながる、三案件はアジア太平洋地域の平和と安定の維持に寄与する、周辺事態の鎮静化が重要であり、そのことが県民の生命、財産を守ることにもなる、武器使用は自衛隊員の安全確保のために必要である、有事法制を整備し、本法案の一日も早い成立を希望するとの趣旨の意見が述べられました。
次に、政治アナリストの比嘉良彦公述人からは、沖縄は毎日が有事であり、常に前線であるという県民の感覚を持ち、二十一世紀の我が国の安全保障はいかにあるべきかを議論してほしい、沖縄の過重負担を軽減した上で日米防衛協力のための法整備を行うべきである、周辺事態の定義は周辺よりも事態の概念を厳密にすることが透明性を高める、国会承認は国会の存在意義にかかわる、防衛協力の法整備は法治国家としては必要だが、それは万一の備えであり、それが適用されない平和な状況をつくることが重要であるとの趣旨の意見が述べられました。
次に、全沖縄駐留軍労働組合執行委員長の伊佐真一郎公述人からは、国の務めは国民の生命、財産を守り、平和構築の外交努力を尽くすことである、それが行き詰まったときにどう対処するかのマニュアルがガイドラインであると認識する、台湾から沖縄への投資の話があるが、これは沖縄が世界一の米軍に守られているからである、国は平時に有事対処を考えておくべきであり、法案が一日も早く成立するよう期待したいとの趣旨の意見が述べられました。
次に、弁護士の新垣勉公述人からは、米軍基地を強化し、県民を戦争に巻き込む法案の成立は県民の総意に逆行し到底認められない、周辺事態のとき沖縄は前線補給基地となり、県民は危険の渦中に置かれる、国会は真っ先に沖縄の現実を調査してから法案審査に入るべきであった、沖縄を再び戦場にしかねない法案に反対するとの趣旨の意見が述べられました。
次に、琉球大学法文学部教授の高良鉄美公述人からは、法案では自治体等の協力の具体的内容がわからない、基本計画がどのように具体化されるのかを質疑で引き出すことが立法府の務めである、今後さらにどのような周辺事態関連法が必要となるのかを国民に明らかにすべきである、法案は県民の権利義務に深いかかわりがあることを十分認識し、審査に生かしていただきたいとの趣旨の意見が述べられました。
最後に、沖縄大学法経学部教授の新崎盛暉公述人からは、公聴会の傍聴が制限されたのは残念である、米軍が守っているから沖縄は安全だというのは歴史の事実に反し、沖縄戦は日本軍がいたから起こった、沖縄は米軍基地が仮想敵国としている国から常にターゲットにされている、県民は、沖縄がNATOのユーゴ空爆におけるイタリアの地位のようになるのではないかという恐怖感を抱いている、我が国の敵をつくらないためにも日朝国交正常化交渉を再開すべきである、沖縄地方公聴会を法案の通過儀式でなく論議の出発点にしてほしいとの趣旨の意見が述べられました。
これらの公述人の意見に対し、派遣委員より、安全保障における抑止力の役割、沖縄公聴会開催に対する評価、法案に対する沖縄県議会の反応、船舶検査活動のための国連安保理決議の要否、有事立法の整備、周辺事態が発生した場合の沖縄への影響、自治体等の協力と地方自治の本旨及び基本的人権との関係、日米の信頼関係を醸成する基地の町の役割、日米安保に対する本土の政治情勢の変化、関連法案に対する韓国国内の反応とアジア諸国との対話等について熱心な質疑が行われました。
なお、会議の内容は速記により記録いたしましたので、詳細はこれによって御承知願います。
以上、御報告申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/3
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004・井上吉夫
○委員長(井上吉夫君) 以上で派遣委員の報告は終了いたしました。
なお、地方公聴会速記録につきましては、これを本日の会議録の末尾に掲載することといたします。
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/4
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005・井上吉夫
○委員長(井上吉夫君) 日本国の自衛隊とアメリカ合衆国軍隊との間における後方支援、物品又は役務の相互の提供に関する日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の協定を改正する協定の締結について承認を求めるの件外二案について、質疑を行います。
質疑のある方は順次御発言願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/5
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006・森山裕
○森山裕君 自民党の森山裕でございます。
周辺事態法案に関連して質疑をさせていただきます。
私は、鹿児島県の大隅半島に所在する鹿屋市で幼少期を過ごしました。戦前は特攻隊の基地があったこの地に海上自衛隊鹿屋航空基地が開設をされて、ことしで四十五周年を迎え、今月十六日の日曜日には記念式典が盛大に開催され、私も御案内をいただき出席いたしました。日夜国防の第一線で努力されている隊員の皆さんに敬意を表してまいりました。
〔委員長退席、理事竹山裕君着席〕
平和の礎として我が国の安全保障のため、海上防衛の第一線の基地として日夜その使命を果たしている鹿屋基地が所在している鹿屋市は、鹿児島県第二の人口八万人を擁する都市であり、大隅半島の政治経済の中心の都市でもあります。
ここで紹介をしたいのは、市民と基地とが独特の親近感あふれる関係を築いているということであります。このことを象徴しているのが、平成六年、開隊四十周年を記念してスタートいたしました「エアーメモリアルインかのや」という行事であります。この時期に毎年、鹿屋航空基地を中心に開催されるこのイベントもことしで六年目を迎えました。鹿屋市の三大祭というばかりではなくて、鹿児島県内外にその名を知られる大隅半島のビッグイベントとして、県内外から毎年十数万人の観客を集めるほどとなってまいりました。
ここで特筆すべきことは、四十から成る各種団体によって実行委員会が構成され、このイベントを支えているということであります。まさに、市民、県民、国民と基地との融和と信頼関係を具現する行事でありますし、一方で最近の我が国を取り巻く情勢に対して、国を守ること、防衛に対する国民の関心の高まりを示しているものではないかと私は考えます。
このような基地と住民が良好な関係を維持していくためには自治省所管の基地交付金、調整交付金あるいは防衛施設庁所管の騒音防止事業を初めとする基地関係予算のより一層の充実を図っていく必要があるというふうに考えております。
そこで、まずこれらの予算に対する今後の取り組みについての御所見をお伺いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/6
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007・野田毅
○国務大臣(野田毅君) 委員御案内のとおり、基地交付金及び調整交付金は、米軍や自衛隊の基地に係る国有提供施設等に対して、固定資産税が課税されないことなどを考慮しまして、これらの施設が所在する市町村に対して交付するものであります。
この基地交付金及び調整交付金につきましては、昭和五十六年度から昭和六十三年度までは同額に据え置かれておりましたんですが、固定資産税の評価がえなどを勘案いたしまして、厳しい財政状況のもとではありますけれども、平成元年度、四年度、七年度及び十年度、三年ごとにそれぞれ十億円の増額を図ってきたところであります。平成十一年度の予算につきましては、極めて厳しい財政状況の中ではありますが、施設等所在市町村の置かれております実情などにかんがみまして、前年度と同額の二百九十一億五千万円を確保したところでございます。
今後とも、従来からの予算要求の経緯や固定資産税の代替的な性格及び施設等所在市町村の置かれております実情などを考慮しながら、所要額の確保に努めてまいりたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/7
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008・野呂田芳成
○国務大臣(野呂田芳成君) 防衛庁としましては、これまで防衛施設の設置、運用に伴う障害の防止等のため、障害防止事業、騒音防止事業、民政安定助成事業等について施策の充実を図るなど、積極的に取り組んでまいったところであります。
これらの基地周辺対策事業につきましては、今後とも地元の御要望を踏まえながら必要な予算の確保を含め、その推進に努めてまいりたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/8
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009・森山裕
○森山裕君 それぞれ御答弁をいただきました。
防衛施設というのは、我が国の防衛力と日米安保体制を支える基盤として常に安定して使用できる状態に維持することが最も大事なことだろうというふうに思っております。自治省で所管をしていただいております基地交付金と調整交付金は一般財源でありますから、地方自治体としては大変使いいい交付金であります。
ただ、御承知のとおり、米軍基地の場合と自衛隊基地の場合には対象資産に違いがある等々、地元としてはまだ改善をお願いしなければならない事項が幾つかあります。また、特に騒音防止事業の場合には、騒音基準の見直し等について関係の自治体は長年要望を続けているところであります。このあたりにもどうか十分の御配慮を賜りますように、強く要望を申し上げておきます。
次に、開隊四十五周年の記念式典に参加をさせていただいて、多くの市民の皆さんの御意見を聞かせていただきました。ある先輩は、今度のガイドライン関連法案というのは、消火栓をつくったり、防火水槽をつくったり、化学消防車を買ったり、はしご車を買ったりするようなものだなというふうに話をされます。だんだん国民の皆さんの理解というものが、いい形で理解をされつつあるんだなというふうに実は思うことでございました。
その一方で、周辺事態法第九条の地方自治体の協力については、唐突に要請があるのではないかというような不安にも似た素朴な疑問を初めとして、自治体への協力要請についてさまざまな疑問が投げかけられております。私も二十三年間、地方議会で仕事をしてまいりましたので、地方の気持ちはよくわかるような気がいたします。
そこで、自治体への協力について、何点かお伺いをいたします。
まず初めに、地方の協力が不可欠でありますこの法案でありますが、これまで自治体に対して国として法案についての説明など、どのような対応をしてこられたのかをお聞かせいただきたいというふうに思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/9
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010・伊藤康成
○政府委員(伊藤康成君) 先生御指摘のとおり、この周辺事態安全確保法案につきましては、大変地方公共団体の関心が高いものというふうに私どもも承知しております。
私どもといたしましては、これまでもできるだけ積極的に、法案の第九条に基づきます協力の内容等につきまして具体的な説明を行うようにしてまいってきたところでございます。
例えば、全国基地協議会でございますとか防衛施設周辺整備全国協議会、あるいは渉外関係主要都道府県知事連絡協議会というような会合がございますが、こういった会合の場をおかりいたしまして、この法案を提出いたします直前、昨年の四月二十三日から始めましてつい最近に至るまで、いろいろな機会をつかまえまして御理解をいただくよう御説明をしてまいってきているところでございます。
また、このほかにも、例えば全国知事会あるいは全国町村会等々の場もおかりしておりますし、また個別に電話等でいろいろ御質問もありますので、そういったことにもお答えをしているという次第でございます。
いずれにいたしましても、今後とも、一層の理解をいただくために引き続きいろいろな機会をとらえまして御説明をしてまいるよう心がけてまいりたいと存じております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/10
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011・森山裕
○森山裕君 本案が成立をする前に関係の自治体に対しての説明をしてこられたということは評価のできることでありますけれども、やはり地方自治体に関係のあります要項を含みます法律案でありますから、さらにその努力というものが必要なのではないかなというふうに思うところであります。
次に、政府あてに市町村議会から意見書が寄せられていると思いますけれども、その内容はどのようなものなのか、またそれを踏まえてどのように対応していかれるのか、自治大臣のお考えをお聞かせいただければと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/11
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012・野田毅
○国務大臣(野田毅君) 御指摘のとおり、この周辺事態安全確保法案は地域に大きなかかわりを持つものでございまして、地方自治体の関心も大変高いと承知をいたしております。
そこで、地方団体の議会からもこの法案に関連する意見書をいろいろちょうだいしておりますが、自治省が承知をいたしておりますところでは、法案に反対するものが五十七団体、慎重な取り扱いを求めるものが三十五団体、それから自治体の意見を尊重すべきであるというものが二十四団体となっておるわけでございます。
この内容を見ますと、一部の意見書の中には、法案についてまだ十分な御理解をいただいていないということから発するところの指摘も見られるところでございます。
例えば、あるところでは、この法律のもとで自衛隊が行う米軍への補給、輸送、機雷掃海、臨検などは憲法第九条に違反する参戦行為そのものですと、こうあるんですが、機雷掃海というのは別にこの法律に入っているわけではない、あるいは参戦行為そのものでないわけですがそのように規定するとか、あるいは自治体や民間の協力を義務づけるという言葉が使用されておったり、この法案に対するまだ十分な御理解をいただいていないということを背景として意見書に至っているというものもいろいろございます。
そこで、この法案についての自治体へのさらなる理解を求めるための政府サイドからのいろんな手順等につきましては、今、内閣安全保障・危機管理室長から御答弁を申し上げたわけでございますが、今日までもできるだけ具体的に説明を行ってきておると存じております。自治省におきましても、関係地方団体からの照会などに今日まで答えてはきたところでございます。
しかし、今後なお一層、地方公共団体が適切な対応ができますように、関係省庁との連絡のもとで積極的な説明等できるだけの努力をして御理解を得てまいりたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/12
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013・森山裕
○森山裕君 意見書の状況を伺いますと、自治体において法案に対しまして多少誤解があるのではないだろうか、まだ十分に理解をされていないのではないかという気がいたします。
私どものところにも意見書の参考送付をいただく場合がありますけれども、その内容を見てみますと、米軍の後方支援を義務づけているという表現があったり、この法案は憲法の原則である恒久平和、主権在民、基本的人権、議会制民主主義、地方自治のすべてを踏みにじるものであるという表現があったり、憲法九条に違反する参戦行為そのものであるという表現があったり、あるいは自治体や民間の協力を義務づけようとしているという表現があったりいたします。
〔理事竹山裕君退席、委員長着席〕
基本的な認識の違いというものに基づいて意見書が出されるというのは極めて遺憾なことだなというふうに思いますけれども、やはり国民の皆さんによく理解をしていただく努力というのは、私どもも続けなきゃなりませんし、政府においてもさらに御努力をいただかなきゃいけないのではないかなというふうに思います。
また、報道によりますと、非常におもしろい現象もあるようであります。昨年の九月議会では新ガイドラインに基づく一切の法律を制定しないとの内容の意見書が採択をされた、その同じ議会が三月議会では正反対の、周辺事態法の早期制定を求めた意見書を採択したという報道もあります。
このようなことを考えてみましても、その法律の内容の説明というものがいかに大事なものであるかを知ることができるような気がいたします。
それでは、自治体への協力の求めと協力の依頼についてお伺いをいたします。
この問題はさまざまな観点から多くの質疑がされてきました。これまでの論議では、地方、民間の協力のあり方ばかりが対応措置であるかのような取り上げられ方をしてきた嫌いがあるように私には思えてなりません。
そこで伺いますけれども、周辺事態への対応としては、当然、国による対応がその中心ではないかというふうに思います。政府としてどのように考えておられるのか、地方、民間の協力をどのように位置づけているのかについてお尋ねをいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/13
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014・伊藤康成
○政府委員(伊藤康成君) 我が国の平和及び安全に重要な影響を与えますところの周辺事態に際しましては、当然のことながら、この法案で具体的に明記されております自衛隊によります後方地域支援あるいは後方地域捜索救助活動を初めといたしまして、国としては、政府全体、各省庁挙げまして一体となって必要な措置を実施する、そういうことによりまして我が国の平和及び安全の確保に努めるということになるわけでございます。
ただ、こうした場合におきまして、国による対応措置をとる際にどうしても地方公共団体等、国以外の方の協力が必要となる場合もある、そういうことから、法案の第九条におきまして国以外の方に対しまして協力を求めるあるいは依頼をすることができるという規定をさせていただいているところでございます。
ここで定めておりますのは、あくまで現行の法令の枠内で可能な協力を求めるあるいはまた依頼をするということでございまして、決して現行法令を超える新たな対応を求めるとかそういうものではございませんし、また先ほどちょっとお話がございましたが、協力を強制するとかそういうものでもないことはこれまでも御答弁申し上げたところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/14
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015・森山裕
○森山裕君 ただいま御答弁をいただきましたように、国が中心になって対応するということを、もう少し地方自治体にも国民にもわかりやすいように、その点の誤解がないように説明をしていくということが本当に大事なことだなというふうに私は思います。
次に、この周辺事態法案は、協力を求めるということで強制力は持たないと言っていますが、地方分権推進一括法案により地方分権を推進していこうとする流れに逆行しているのではないかという意見があります。
しかし、今の答弁にありましたように、国がしっかりと防衛の役割を果たしながら、自治体や民間がそれを補完していくということのようであります。しかも、自治体や民間に何か特別なことをさせるといったことではなくて、現行の法令の枠組みの中で、それぞれ本来の役割の範囲内で協力を要請するということでありますから、まさに地方分権の精神に沿ったものであると私は考えますけれども、自治大臣の御所見をお伺いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/15
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016・野田毅
○国務大臣(野田毅君) 今御指摘ございましたように、今国会、先般御提案を申し上げました地方分権一括法案、これは、長年の今日までの中央集権型の行政システムを変革して、国、地方を通じて抜本的な行政システム改革を行う、そして国と地方との関係を従来よりもより対等、協力の関係に持っていこうというものでありまして、具体的には、国、地方の役割分担を明確にして、そして地域における行政は地方公共団体が自主的かつ総合的に行えるようにしようというものであるということは申し上げてきたところでございます。
そこで、今御提案申し上げておりますこの周辺事態法案の第九条第一項において、国から地方公共団体に対し必要な協力を求めることができる旨の定めをいたしておるわけですが、今日まで累次申し上げてきておりますとおり、これは、協力の求めがあった場合、地方公共団体は正当な理由があればこの協力を拒むことができるんですということを申し上げてきたわけでございます。また、拒否をした場合にも、本法案に基づく制裁的な措置がとられるというものではないということも申し上げてきたところでございます。
そういう意味で、国が一方的に協力を押しつけるというものではない。あくまでこのガイドライン法案というのは地方分権に最大限の配慮を行った上で構築をされているということは、重ねてこの機会に申し上げさせていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/16
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017・森山裕
○森山裕君 今、大臣から御答弁をいただきましたとおり、地方分権一括法案の一番大事なポイントというのは、国と地方の関係を、対等、協力の関係をしっかりやろうということでありますから、まさに今回の法案というのは、そういう意味でも地方と国というのは対等な立場に立つわけでありますし、また協力をどうしていくかということが明確になっているわけですから、私は、やはり地方分権の精神に沿ったものであるというふうに思えてなりませんし、またそのことを国民の皆さんにも御理解をいただかなければならないんだろうというふうに思うところであります。
それでは次に、これまでの質疑を伺っておりますと、協力要請をしたときに自治体が拒否するのではないか、あるいは本当に強制力を伴わないものなのか等々の論議がなされてまいりましたが、果たして協力要請というのはそのようなものなのでしょうか。我が国の平和及び安全に重要な事態が発生しているとき、国として自治体と十分に連絡をとり合えば、この国を愛する国民の判断として、決して拒否などということはないと私は基本的に考えます。
協力要請のプロセスというものについて、どのように考えておられるのかをお示しいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/17
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018・伊藤康成
○政府委員(伊藤康成君) いわゆる周辺事態が起こりました際には、まず内閣におきまして基本計画を策定いたしまして、そしてそれに基づいて関係の地方公共団体に対しまして関係の行政機関の長、大臣からお願いをするというのが法律の筋でございます。
ただ、今まさに先生御指摘のとおりで、基本計画をつくるというような段階ですと非常に緊急な場合でございます。したがいまして、そういうことに対しましてはあらかじめその相手方の地方公共団体等との情報交換あるいは調整等を行うことが望ましいわけでございますが、いざという場合になかなかそれが難しい場合もございます。したがいまして、私どもといたしましては、平素から地方公共団体等との間で情報交換とか意見交換を行っていくということが非常に大事だろうというふうに思っている次第でございます。
また、もちろん個々の基本計画を策定する時点におきましてもできる限り個別具体的に事前にその相手方の意向を聞くとか調整を図るということが望ましいわけでございますし、また、先ほど申し上げましたように、関係の所管の大臣からお願いをするわけでございますので、そういった事情についても十分承知をしているわけでございます。地方公共団体の事情等もできる限り考慮してお願いをしてまいりたいと思っている次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/18
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019・森山裕
○森山裕君 今プロセスについて御答弁をいただきました。地方自治体は、ある日突然何かの要請があるのではないかという心配が大変ありますけれども、今の話を聞きますと、個別具体的に事前に調整をされるということでありますし、また地方自治体の意見も聞いてくださるということでありますから、その心配はないということがよく理解をできるところであります。ぜひ地方自治体の方々についてもそういう御理解をいただかなければならないんだろうというふうに思います。
ただ、少し気になりますのは、我が国の平和及び安全に重要な事態が発生をしているときに、発生をする可能性があるときに、一番効率的なやり方でなければなりませんし、一番効率的な地方自治体への要請でなければならないんだろうというふうに思っています。
そうしますと、例えば公の施設を長期的に利用させる場合には、地方自治法の二百四十四条の二の第二項で「普通地方公共団体は、条例で定める重要な公の施設のうち条例で定める特に重要なものについて、これを廃止し、又は条例で定める長期かつ独占的な利用をさせようとするときは、議会において出席議員の三分の二以上の者の同意を得なければならない。」というふうに定めています。
もし、このような法律があることによって、効率的な利用というものを考えるときに別なところを判断しなきゃならないということになるとすれば、これはやはり国の平和と安全を守るということにつながらないのではないのかなという気がしてなりません。
ですから、こういう自治法を含めて、少し関係の法律を整備していく必要というものがあるのではないかというふうに思います。議会を招集して三分の二以上の同意をもらうことは可能かもしれませんけれども、議会を招集するにはやはり手続というものが必要でありますから、当然のこととして時間が必要であります。そのことが、我が国の平和、安全に重要な影響を与えるということであってはならないのではないかというふうに思います。
そこのところについて、自治大臣のお考えがあったらお聞かせをいただければと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/19
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020・野田毅
○国務大臣(野田毅君) 今、森山議員、大変大事な御指摘をされたわけでございまして、この一連の法案の審議に当たりまして、特に周辺事態というのは、日本の平和と安全に全く無関係な事態にいかにも日本の自衛隊から地方公共団体や日本の国民が協力を要求されるというような雰囲気を前提として議論が構築されるというような嫌いが、どうもそういう誤解があったとすれば大変残念なことだ。そうではなくて、これはまさに日本の平和と安全に重要な影響を与える、そういう事態においてどうするかというテーマでありますから、当然のことながら、国はどうすべきであり、では自治体はどういうことができてどういうことができないのか、国民としてどこまで協力をすべきなのか、そこから先はやはり断るべきなのか、そういった議論をもう少ししていただくと大変ありがたい、こう思っています。
そういう中で、地方自治法に基づく独占的、長期的な利用という問題について今御指摘ございましたが、これはもう御案内のとおり、三つの縛りをかけておるわけでございます。条例で定める重要な施設、そして条例で定める特にその中でも重要なもの、それからもう一つ、条例で定める長期かつ独占的な利用、こういう三つの縛りをかけて成っているわけです。
現実に地方自治体でどういうところまで独占的利用に関する条例が定められているかどうか、それぞれ地域によって異なっているとは思いますが、今御指摘のような懸念が存することはそのとおりでございます。
そういう点で、これはいずれぜひ政治的な場の中で、仮に日本有事があった場合にも、では自治体はどこまでこの条例との関係で乗り越えることができるのかなどという議論もあわせてしていかなければならないテーマであるというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/20
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021・森山裕
○森山裕君 この際、政府は、地方六団体とも協議を重ねていただきまして、地方の意見も取り入れていただきながら、想定をされる協力の範囲や、その際の具体的な手続などについて、細かな手続についての作業をぜひ進めていただき、周辺事態を想定した国と地方との新たな協力関係をつくるということが本当に大事なことなんだろうというふうに思いますので、そのことを強く要望いたしまして、あとの残りました時間、木村委員にお願いをしたいと思います。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/21
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022・木村仁
○木村仁君 自由民主党の木村仁でございます。
私は、先日、本法案の修正部分について主として衆議院の修正案発議者の皆様に質問をする機会をいただきました。幸いにしてと言うべきであろうと思いますけれども、本日また再度質問する機会をちょうだいいたしましたので、先日の質問の上に立ちながら私なりの締めくくり総括、まだちょっと早いのかもしれませんが、をさせていただきたいと考えております。
この法律ができると、先ほど来同僚議員からも指摘がありましたように、何だかおどろおどろしいことが起こって、そして日本がアメリカの言いなりにずるずると重要な戦争に引きずり込まれていくのではないかという意見が国民の一部にあることを承知いたしております。
そこで、いま一度、法律案第一条の三党修正後の姿を眺めてみたいのでございますが、この修正の結果できた第一条の規定が周辺事態の定義を全く変更するものではない、こういうことはこれまでの質疑を通じて明らかにされてきたことでございます。
私もそのことを確認する上に立ちながら考えてみたいのでございますが、やはり法律というものは成立してしまいますと審議のいろんな経緯を超えて存在するものでございますし、またイギリス等では、法律の解釈は審議における事情を考慮してやるべきではなく、あくまで法律に則して考えるべきである、こういう法律の格言もあるそうでございます。
そういう面で考えますと、この第一条は、「そのまま放置すれば我が国に対する直接の武力攻撃に至るおそれのある事態等」、「等」というのも同じように重要なことでございましょうし、また「日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約の効果的な運用に寄与」するという、そういう一つの条件をつけながら書かれたということでございまして、このことは結果的に見れば、やはり日本国民に対しても米国に対してもこの法律は周辺事態における米国への協力というものは日本の平和と安全に直接かかわる、しかも非常に重大な事態がある場合に行われるのだ、こういうことを明らかに示したのではないか、こういうふうに私は考えるのでございますが、いかがでございましょうか。
実際の対応措置の実施を最も重要な立場で担われます防衛庁長官の御見解をお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/22
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023・野呂田芳成
○国務大臣(野呂田芳成君) この法案は、周辺事態に対応するために必要な措置を定め、また我が国の平和と安全の確保に資することを目的とするとともに、日米安保体制のより効果的な運用を確保し、我が国に対する武力攻撃の発生等を抑止することに資するものであります。
ある事態が周辺事態に該当するか否か、周辺事態に際していかなる措置を実施するかにつきましては、あくまでも日米両国政府がおのおの主体的に判断するものであることは従来より申し上げているとおりでございます。
御指摘のとおり、周辺事態とは、我が国周辺地域における我が国の平和と安全に重要な影響を与える事態であって、これに対する対応は、対米追従の観点からではなく、我が国の平和と安全の確保という我が国自身の問題として取り組むべきであると考えますという法案の趣旨、目的は、衆議院における修正によってさらに明確になったのではないかと考えているところであります。
なお、今般の法案の修正により第一条に追加されました「そのまま放置すれば我が国に対する直接の武力攻撃に至るおそれのある事態等」とは、我が国の平和と安全に重要な影響を与える事態を例示的に丁寧に説明したものであると承知しており、本修正案により周辺事態の定義自体が変わるわけではないことは御指摘のとおりと考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/23
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024・木村仁
○木村仁君 私の考え方と全く一致するお考えを示していただきまして、大変ありがとうございました。
同じことになるかと思いますけれども、ACSA、物品役務相互提供協定の第四条の第一項、第四項を見ますと、こういった協力関係というものはすべて、例えば同条第四項にありますように、日本国の自衛隊は、周辺事態に対処するための日本国の措置について定めた日本国の関連の法律に従って後方支援、物品または役務を提供する、こういうことになっております。そして、二国間の条約の解釈というものは、それぞれの当事国に解釈権があり、その解釈が合わないときにはその部分は動かない、こういうことじゃなかろうかと私は考えます。
したがいまして、日本が米国の要求のままに戦争に巻き込まれていくのではないかという危惧は私はやっぱり杞憂ではないか、それだけしっかりと日本の主体性を確立しながら対米折衝に当たるべきではないかと。
多分、米国から要請がある場合には、ほとんどの場合に日本国政府はこたえることになると思いますけれども、それは最後の姿であって、その要請に至る事前の段階において日本がお断りするよというような事態も多々ある、多々ということはありませんけれどもあり得る、私はそういうふうに考えます。
そういう意味で、主体的にかつ我が国の国益を第一義に考慮して行動するということを確認したいと思いますので、恐れ入りますが、もう一度防衛庁長官よろしくお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/24
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025・野呂田芳成
○国務大臣(野呂田芳成君) 委員の御見解のとおりだと私も考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/25
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026・木村仁
○木村仁君 次に、国会承認の修正の件でございますが、自衛隊による対応措置の実施に係る国会承認に関連しまして、衆議院解散時における参議院の緊急集会という問題がございます。そして、自衛隊の防衛出動の際には、衆議院解散時においては参議院の緊急集会を開いて承認を受ける、こういう手続が書かれておりますけれども、この法案にはそれが書かれておりません。
この点については、衆議院の発議者の皆様に確認いたしましたところ、緊急集会はこの法律に書かなくとも開くことができるものであるから書かなかったのだという御説明で、私もそれでよろしいと思っておりましたが、先日の参考人招致で参考人のお一人から、自衛隊法の防衛出動には、衆議院解散時の場合をも想定した参議院緊急集会での承認の制度が定められているのに、修正法案には同じような規定がありません。これはいわば法の欠缺ではないのでしょうか。そういう御発言が再度にわたってございましたので、もう一度確認をしておきたいと思います。
緊急集会のことに条文が言及していないからといって緊急集会は開けないことはない、そのことを確認し、かつ、しかしながら、それがないために、あるいは内閣において衆議院解散時であるから、少し緊急度は薄い事態かもしれないけれども緊急事態にしてしまえというような運用がされるとするならば、この承認の手続の規定をないがしろにするものではないかと思いますので、そのあたりについての見解を防衛庁長官にお願いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/26
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027・野呂田芳成
○国務大臣(野呂田芳成君) 国会の事前承認を得ることができないような緊急の必要がある場合と申しますのは、その時点における諸般の状況を総合的に勘案した上で判断するものでありますから、具体的に申し上げることは困難でございますけれども、一般的に申し上げますと、周辺事態への対応措置を実施する必要があると政府が判断したにもかかわらず、国会承認の手続を得ていては我が国の平和と安全の確保が十分に図ることができないと判断されるような時間的余裕がない場合がこれに該当するものと理解しております。
したがって、国会が閉会中または衆議院が解散された状態にある場合には、内閣は国会の召集を決定するかあるいは参議院の緊急集会を求めた上で事前の国会承認を得ることとなると考えます。ただし、これらの手続を得ていては、先ほども申し上げましたとおり、我が国の平和と安全の確保が十分に図ることができないと判断されるような時間的余裕がない場合には緊急の必要がある場合に該当し、事後に速やかに国会の承認を求めることとなると理解しております。
しかしながら、法律は原則はあくまでも事前の承認であり、政府としても可能な限り国会の事前承認を得るよう努力していくことは当然であると考えております。御指摘のような参議院の緊急集会を求めた上で事前の国会承認を得る時間的余裕がある場合においては、緊急の必要がある場合として事後承認することは全く考えていないところであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/27
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028・木村仁
○木村仁君 それから、これは質疑の過程で参考人あるいは公述人の方々から御指摘があったことでございますけれども、この承認について米国の戦争権限法等の事例にかんがみ、日本でも時限と申しますか、期限つきの承認ということがあり得るのか否かということが議論されたことがございます。
私は、この法律はそういうことは想定していないのであって、事態の推移を見ながら国会でも議論がされ、それに対応して政府もしかるべき措置をとっていく、こういうことであろうと思いますが、参考までにお聞きしておきたいと思います。
この国会承認について、提案者側からも可能でありましょうし、国会の方でつけるということもあるいは考えられることかもしれませんが、期限つきの承認を受ける、あるいはあらかじめ計画の中にこの対応はおおむね一年程度、そういうことを書く、そういうようなことはあり得ることでございましょうか。これはあくまで参考までの質問でございますので、よろしければお答えいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/28
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029・佐藤謙
○政府委員(佐藤謙君) 今回、衆議院段階でこの国会承認につきまして修正が行われたわけでございますが、私どもの理解といたしましては、周辺事態におきます対応の迅速性あるいは柔軟性、そういったものと、それから、この二つの自衛隊が新たに実施することになりました行為につきまして国民に十二分の御理解をいただくという観点から、こういった修正が行われたものと私どもは理解しております。
今、先生からアメリカの戦争権限法についての御言及がございましたが、これもせんだっての御説明の中で政府側から申し上げたところでございますが、このアメリカの規定は私どもの考えている周辺事態に対する対応と趣旨等も違うものであるということで、必ずしもそれをこの問題に直に適用すべき考えにはならないのではないか、こういうことを申し上げたところでございます。
私どもといたしましては、周辺事態に対します迅速な対応、またその適切な対応、こういうふうに考えますと、今回修正をいただいたこの考え方に従いまして適切に対応してまいりたい、こういうふうに考えております。また、国会に基本計画の御報告をするわけでございますから、そういったものを踏まえた国会のいろいろな御審議、こういったものも踏まえながら、私どもとしてはこの周辺事態に対する対応について万遺漏なきを期してまいりたい、こういうふうに思っているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/29
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030・木村仁
○木村仁君 私も、個人的にはそのような弾力的な対応がこういった事態にはふさわしいのではないかと考えていることを付言しておきたいと思います。
次に、地方公共団体の長及び国以外の者への協力依頼につきましては私も非常に関心を持っておりますが、この点につきましては、ただいま同僚の森山委員から詳細にわたる御質問がございましたので、私は私なりに理念的なことだけ確かめておきたい、そういう意味で質問をさせていただきたいと思います。
国民の世論の一部に、この法律が成立するならば、この協力要請ということを通じて地方公共団体に事務を強要しあるいは一方的にこれらを戦争に巻き込むということを通じて、地方自治の本旨、憲法によって保障された地方公共団体の権利を侵害するに至るのではないか、こういう主張があることは事実でありまして、また、それに基づいて二百近くの地方議会がこれに対する消極的な議決をしたということも事実であろうかと思います。
しかしながら、私は、本委員会の質疑を通じて、これらの協力要請が地方公共団体及びその長の事務処理を不当に強要するものではなく、地方公共団体等は正当な理由があればこの要請を断ることもできるものであるということが非常に明らかにされたというふうに認識をいたしておりますが、その認識について自治大臣の御所感をお願いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/30
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031・野田毅
○国務大臣(野田毅君) まことに御指摘のとおりでございまして、本法案におきましては、国からの協力の求めがあった場合、地方公共団体は正当な理由があればこれを拒むことができる、そして拒否した場合でもこの第九条に基づく制裁的な措置がとられることはない、したがって地方自治の本旨を侵すものでもない、むしろ地方分権の精神をしっかりと踏まえた上での法案であるということを申し上げたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/31
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032・木村仁
○木村仁君 よくわかりました。
私は、長年地方自治行政に携わってまいりました者としての経験から申しますと、確かに憲法は地方自治を保障いたしております。しかし、我が国はその憲法のもとで成り立っている国家でございまして、地方公共団体に連邦制の州であるとか、あるいはましてやアウタルキーを認めたものではない。
したがって、その憲法の存在自体が危なくされるような国家の緊急の事態のもとにおいて、地方公共団体が国家の政策に協力しないということは私はあり得ないと思いますし、伝統的に日本の地方自治体というのは非常に中央政府の政策に対してはリスポンシブルであった。それがまたよい面でもあり、また非常に大きな害悪を促したゆえんでもありますけれども、私は、こういう緊急の事態においては、適切な配慮が加えられ、合理的な協力要請がなされる限りこれを拒否するというような事態が頻繁に起こるということはない、そういうふうに確信をいたしております。
さりながら、やはり地方公共団体というものは、当該地域における住民あるいはそこに滞在する人々の安全や福祉、あるいは文化的生活や良好な環境、それを守ることを主たる任務として存在する団体でございますし、その長でありますから、緊急の事態における協力要請といえども必要最小限にとどめるように国としても懸命の配慮をするべきではないか、そういうふうに考えておりますけれども、これはどなたにお聞きしたらよろしいのでしょうか、お願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/32
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033・野田毅
○国務大臣(野田毅君) 木村委員の御指摘、まことにそのとおりでございまして、基本的に、平素において住民の生活等に密接に関連したより身近なことは地方自治体がその責任においてやっていただくということが基本であると存じます。そういう意味で、今般別途提出をいたしております地方分権一括法というのはそういう考えにのっとって組み立てられておるわけでございます。
本法案は、それとは別途、そういうある種の緊急事態、日本の平和と安全に重要な影響を与える、そういう事態においてどうするかというテーマでございます。しかし、その場合においても、地方自治の本旨を踏まえ、地方分権の精神をしっかりと踏まえた上でこの法案は構築されているということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/33
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034・木村仁
○木村仁君 問題が残りましたが、時間が参りましたので。ありがとうございました。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/34
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035・寺崎昭久
○寺崎昭久君 民主党の寺崎昭久でございます。
周辺事態法案の質疑に入る前に、その背景にある日米安全保障をめぐる同盟意識が最近変わっているのか変わっていないのか、そういった問題について若干整理をしておきたいと思いますし、政府の認識をお尋ねしたいと思います。
ことし五月三日のキョードーウイークリーという通信社系の週刊誌にこんな記事が載っておりました。
石原慎太郎東京都知事の誕生は、日本国民の一部にあるもやもやした気分の反映ではないかという見方が広がっている。このことは、ポスト冷戦時代から未知の時代へ世界が移行しつつある中で、日米安全保障体制が相対化の過程に入っているという見方ができるのではないかという指摘をしております。そして、対米感情の変化は反米とか嫌米、そういう積極的な意味合いというよりは、怨むという意味の怨米、また厭きるという意味の厭米ではないかと。つまり倦怠感、喪失感、そういったものの反映ではないかというコラムを書かれている人がおります。これは東海大学の榎彰教授という方であります。
私は、これを読んでおりまして、ちょっと私もそんな感じを持っていたものですから、連想しましたのが、例えば恋人同士が喫茶店に入る、本来だったら目を輝かせて将来について語り合うという場面なんでしょうが、どうも昨今はそういうことではないようでして、喫茶店に入ってもお互いにそれぞれ好みの漫画本を読むなんという光景があるようでございまして、ちょっと白けた感じと僕らの方から見ると、私の年代から見ると思えるんですけれども、それとは違った物の感じ方というのがあるのかなという気がしております。
きょうの新聞を見ておりましたら、これも東洋大学の中里という先生が調査された結果だそうですけれども、最近の中高校生の親子関係についてレポートされておりました。例えば、父との心理的な距離が近いと考えるかどうかということについて、近いと考えた人が平成十年の調査では一〇%、これは日本の例であります。母親との心理的距離はどうかということについて、近いと答えたのが二一%ぐらい。
なぜこういう数字を挙げたかといいますと、外国と比べてみますと親子関係が物すごく希薄化しているのではないかという気がしているわけであります。
これは五年前の同様の方法による調査でありますけれども、例えば父との心理的な距離を、各国の例として報告されている状況を御紹介しますと、日本が一三%に対して、アメリカが七八%、中国が七〇%、韓国が四七%、トルコが八五%、キプロスが八六%、ポーランドが六五%ということで、日本の親子関係の希薄化というのは物すごく顕著なわけであります。そうしたことが日米の同盟意識にも影響を与えているんではないかというような気がしているわけであります。
そこで、外務大臣にお尋ねしますけれども、アメリカとの同盟意識というのは、最近になってやはり相対化とか希薄化と言われるような状況があると認識されていらっしゃるのかどうか。もしそういう変化があるとすれば、それはゆゆしきことなのか、まあ自然の流れとしてしようがないなということなのか、御見解を承っておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/35
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036・高村正彦
○国務大臣(高村正彦君) 恋人同士が喫茶店に入ってお互いが漫画本を読んでいるという状況は、非常にお互いが信頼し合っている関係でもあるのかなという気はするわけでございます。
日米安保体制に関し総理府が行っている世論調査では、日米安保条約が日本の平和と安全に役立っていると意識している国民の割合は約三分の二、こういうことで、近年この数字は大きく変動していないわけであります。冷戦終結後も日米安保体制の重要性について国民に広く理解されているというふうに考えております。どの程度明確な意識を持っているかどうかはともかくとして、それなりに広く理解されている、こういうふうに考えております。
政府としては、冷戦終結後も依然として不安定、不確実性が存在している中で、日米安全保障条約に基づく日米安保体制の意義は不変であることを繰り返し述べさせていただいているわけでありますが、今後とも国民の皆様からさらなる理解を得るべく努力をしていきたい、こういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/36
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037・寺崎昭久
○寺崎昭久君 ことし初めに、元米国大統領補佐官をされていたブレジンスキーが著書を著しました。「ブレジンスキーの世界はこう動く」という日本のタイトルがつけられた本であります。その中で、日本はアメリカのプロテクトリト、つまり保護国であるということを述べたということが大変話題になりました。
戦後の日米関係者、エスタブリッシュメントと言われている中では、そのことは言わないという暗黙の了解があったんだろうと思いますけれども、政府の要職を辞したとはいえ、ブレジンスキーのような立場の人があえてこのことに言及したということは、それなりの意味があるのかなという受けとめ方をしなければいけないんだろうと思います。
こういうことについてけしからぬと言うのは大変簡単なことでありますけれども、アメリカだけの見方かと言えば、私は必ずしもそうではないと思います。例えば中国にも朝鮮にもヨーロッパにも、日本はアメリカの保護国扱いをされている、そういう立場に置かれているという見方は全くないわけではありません。
ということになりますと、この問題を、本当にそうなのか、なぜそうなったのか、どうするかという前にそれをまず考えてみる必要があると思いますし、私はこのブレジンスキーの著書の中に書かれていることを見まして、何か吹っ切れたものが日米関係の中にあるのかな、出てきたのかなというようなことを感じたわけですけれども、これは思い過ごしでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/37
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038・高村正彦
○国務大臣(高村正彦君) 多分思い過ごしではないでしょうか。政府の要職にあった方とはいえ、今は一民間人でございます。日米両国とも民主主義国家であり、いろいろな人がさまざまな意見を持ち、かつそれを主張することは当然と考えており、政府として個々人の著作に個別に反応することは必ずしも必要ないんだ、こういうふうに思っております。
先般の総理訪米の際に、小渕総理はクリントン大統領と二十一世紀に向けて日米関係の重要性を確認され、またロス及びシカゴにおいて千人以上の聴衆を相手に日米関係の重要性を指摘する演説をされ高い評価を得たことからも、米国においても日米同盟離れの意識が進んでいるというようなことはないと認識をしております。統計上も、本年二月から三月にかけて行った米国有識者の世論調査において七五%の方が、日本がアジア地域の中で米国の最も重要なパートナーと、こう回答しているわけであります。
日米関係は、政府間の緊密な意見交換はもちろん、両国民の幅広い交流といった強固な基盤に支えられており、政府としては今後とも日米関係の一層の緊密化に向け努めていく考えでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/38
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039・寺崎昭久
○寺崎昭久君 ブレジンスキーがプロテクトリトだと言うのは個人の見解ですから、これに対して政府が公式にけしからぬとか、その見方は間違っていると言う必要も私はないんだと思いますけれども、申し上げたいのは、かつては言わなかったことが表に出てきたという面があるんではないでしょうか。これをもって日米関係が成熟したというように見るのか、ないしは疎外感を持つようになってきた、距離を置くようになってきたと見るのかという問題であるわけであります。
私は、結論から言うと、いずれにしても今は日本というのは、安全保障環境からいうとアメリカとの同盟、安全保障体制を基軸にした安全保障というものを考えるしかないんだろうと思いますから、そういう意味合いで希薄化させてはいけないんではないかという立場で申し上げているわけであります。
ところで、このところ、ガイドライン法案が参議院にかかり始めてから私の自宅等にも連日のようにお便りをちょうだいするようになっております。先日もそのうちの一つが参りました。大変文面が簡潔なんですけれども、「新ガイドラインに反対。アメリカの言いなりに若者を戦場に送り出したくない。七十八歳老女」というはがきが参っております。これはほんの一例です。
これを読んでいての感想ですけれども、自分の息子や若者を戦場に赴かせたくないというのは、これは洋の東西を問わずだれでも持っている感情だと思いますし、この点について言及するつもりはありません。
もう一つ考えさせられたのは、本当にアメリカの言いなりになってきたんだろうか、言いなりになるだけで日本は同盟によって何のメリットもなかったんだろうかと。もし言いなりになってきたというのであれば、例えば八〇年代後半からの包括協議をめぐる日米間のぎくしゃくした関係、あるいは湾岸戦争のときの諸問題は何だったのかということになると思います。
それよりも、アメリカの言いなりになるというポーズをしながら、いつの間にか私たちは自国は自分の手で守るんだという気構えというものを失っていないだろうか。アメリカの政策に対して批判をすることはもちろん必要なことだと思いますけれども、人に何かを言うだけで自分は何も動かないというような姿勢を身につけていないだろうか。言いなりになりたくないと言いながら、みずからの役割を顧みないというようなことをやっていて相手が本当にこれからも日本と一緒にやっていこうという気になるだろうか。
いろいろ来たはがきの中には、例えば、アメリカとの日米安保体制を維持すれば戦争に巻き込まれるとか、アメリカの世界戦略の片棒を担がされるだけだとか、アメリカ一辺倒の追随外交をやめろとか、あるいは周辺事態法は戦争協力法である、戦争への道だとか、憲法違反だというはがきがたくさん舞い込んでおります。
私は、こういう見方はあるいはあるのかもしれませんが、しかし、一面の見方でプラス面というものは全然評価していない、そういうことが日本の安全保障にあっていいのかという気がしているわけでございます。
〔委員長退席、理事竹山裕君着席〕
私は、ゆがんだ安全保障観だと思うんです。しかしながら、こういう安全保障観を植えつけたのは、結局のところ、アメリカが日本を封じ込めるという政策のもと、それを日本が五十数年にわたって遂行してきたという一面があるからではないかと思うわけであります。もっと別の言い方で言うと、日本の安全保障というのが憲法解釈的安全保障論に終始してきたということがゆがんだ安全保障観を植えつけたのではないかというような感想を持つわけであります。
そういった規範的な安全保障論というのは、私はおのずから限界があると思いますし、少し考え直す時期に来ているのではないかというように思うわけであります。そういう意味で、日本の安全保障という問題を考える場合も、胸突き八丁というんでしょうか、そういう時期に到達しているのかなというように思うわけでありますが、外務大臣、いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/39
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040・高村正彦
○国務大臣(高村正彦君) 憲法解釈的安全保障政策というふうな意味のことを委員はおっしゃいましたが、日本の安全保障政策を議論する際に憲法解釈に関するものが非常に多いということを意味するものだと思いますけれども、恐らくその御指摘は正確だろうと私も思います。
古くは終戦直後における個別的自衛権と戦争放棄規定をめぐる議論、一九五四年の自衛隊創設に至る一連の動きと戦力不保持規定をめぐる議論がありました。また、冷戦後の状況におきましては、国連平和維持活動への参加や、まさに現在御審議いただいている法案に基づく日米防衛協力のあり方をめぐり憲法の禁ずる武力の行使との関係につき種々議論をされている、こういうことでございます。
このことは、憲法という国の最高法規のもと、我が国としてその時々の時代状況においていかにして国の平和と安全を守っていくかということにつき、国会を中心として真剣に議論がなされてきたということでもあると考えます。
特に、冷戦終結後は、イデオロギー的な対立からくる観念論が薄れて、冷戦後の新たな時代状況において日米安保体制のあり方や国連への協力といった我が国の安全保障政策の基本問題につき、さまざまな観点からより現実に即した議論ができるようになってきつつある。まだ委員が言ったような点もありますけれども、だんだんよくなりつつある。そして、憲法解釈的安全保障論も、そのときそのときには、やはり日本の最高法規でありますから、それなりに意味がないことはない、あるんだ、こういうことだと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/40
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041・寺崎昭久
○寺崎昭久君 私は何も憲法を軽視しているわけではございません。ただ、戦略論が不足しているんではないかということを申し上げたいわけであります。
この問題については後でまた言及させてもらいますけれども、私の周囲にいる人というのは、五十数年も日米安全保障体制が続いたものですから、この関係というのは親子の関係と同じようで切っても切れない関係になっているんじゃないかと思い込んでいる人が結構おります。条約とか同盟というのは、言うまでもなく契約関係ですから、いつでも破棄されるあるいは破棄することは両方の国にとってできるわけですけれども、どうも日米安全保障の問題について言うと、少なくとも日本側は未来永劫に破棄されないと思い込んでいる節があるんじゃないかというように私は思っております。
そこで、本当に少なくとも当面は破棄される可能性がないのかということについて少し御意見を承りたいんですが、例えば、日本におけるアメリカの戦略的価値というのは最近低下しているという論が散見されるようになりました。例えばドン・オーバードーファー、前フォーリン・ポリシーの編集長をされた方ですが、この人が言うには、かつてアメリカにとっての対日戦略価値というのは、まとめて言うと三つある。一つは沖縄その他の米軍基地の存在、二つ目は、戦争になった場合日本が重要な軍事的後方支援基地となる可能性、期待、三つ目は、日本が米国の非友好的な大国になることへの牽制、つまり軍備を抑止する、この三つを挙げておりますけれども、これに対して最近別の見方が出てきているわけであります。
例えば、日本における基地というのは、横須賀の第七艦隊の基地があれば、あとは例えばハワイとかグアムへ移したって戦術上それほど変わりはないというようなことを言う人がいます。それはこの五十年の間に軍事技術が長足の進歩を遂げたということと、それから世界情勢が変わったという認識によるものだと思います。
日本に米軍を長期間にわたって駐留させるその費用だけを日本に負担させるというやり方は、長期的に見てやはり不健全ではないかという意見、あるいはこの際だから日本に軍事的な増強を求めて米軍にかわる安定勢力に育てた方がいいのではないか、こういう意見もあるわけでございます。
これが大勢を占める意見とは私も申しませんけれども、ただこういう意見があるということは念頭に置いて日米の安全保障問題を考えなければいけないのではないかというわけであります。
例えば、冷戦後におけるアメリカにとっては日本の戦略的価値が下がったという意見について、あるいは変化しているということについて、外務大臣はどのように認識されますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/41
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042・高村正彦
○国務大臣(高村正彦君) 米国にとっての日本の戦略的価値ということについて、必ずしも我が国政府がコメントする立場にはないと思うわけでありますが、冷戦後における日米安保体制の重要性、これは日本から見てもそうでありますが、アメリカから見ても、この重要性ということについて申し上げれば、冷戦後も依然として不安定性、不確実性が存在している中、日米安保条約を基盤とする両国間の安全保障面の関係は、二十一世紀に向けてアジア太平洋地域において安定的で繁栄した情勢を維持するための基礎である、かかる日米安保体制の重要性は一九九六年四月の日米安保共同宣言において再確認されているとおりでございます。
また、先般の日米首脳会談においても、両首脳は、アジア太平洋地域の平和と安定のためにも日米安保体制の信頼性を強化していくことで、改めて認識の一致が見られたところでございます。
さらに、米国側において、昨年十一月公表の東アジア戦略報告を含む各種米側文書において、日米安保体制が引き続き米国のアジアにおける安全保障戦略のかなめである旨、明らかにしているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/42
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043・寺崎昭久
○寺崎昭久君 日本でも知られているアメリカのオピニオンリーダーの中に、例えばチャルマーズ・ジョンソンという人がおります。この人は、アメリカ側は日本の安全のために多大な寄与をしているのに日本は貿易障壁を高くして市場開放しようとしないという不満があると。これは数年前の話ですから今とはちょっと状況が違うと思いますが、基本的にそういう問題がある。それから、日本には戦後五十年以上も経過しているのにいまだに米軍駐留を認めなければいけないのかというような感情がある。だから、この際、双方が抱いているこうした問題に対応できるように安全保障条約を見直しした方がいいんじゃないか、ないしは場合によっては廃棄した方がいいんじゃないかというようなことを言っております。大変過激な発言をする方で知られておりますから、これも特異な意見なのかもしれません。
もう一人御紹介しますと、ロナルド・モースという人ですが、日米安保は改定すべき時期に来ている、このままでは日本が安全保障面で実質的な貢献をしないで二級市民的地位にとどまっていることにアメリカ側が我慢できなくなるんじゃないか、いずれにしても、日本はアメリカの弟分、ジュニアパートナーとしてその地位に甘んずることはいずれできなくなるだろう、また日本が防衛ただ乗りを続ければアメリカの敵意はますます募ることになるだろうと。これは、私がそう申し上げているわけではなくて、たまたまロナルド・モースさんがそういうことを言っているということなのであります。
今申し上げた話というのは、日米安全保障体制を解消しろということじゃなくて、いつまでもこの安全保障体制が自動的に続くんだという前提で物を考えてはいけないのではないかという意味で申し上げているわけでありますけれども、一般論で結構ですが、こういう安全保障条約というのはどういうときに破綻する、解消することになるんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/43
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044・高村正彦
○国務大臣(高村正彦君) それは、ごく一般論で言えば、いずれかの国民が、この同盟関係を維持していくことにメリットよりデメリットの方が大きいと、それは民主主義の国でありますから、両方の国にいろんな意見があるにしても、総体としてどちらかの国民がそういうふうに思うようになれば、それは維持できないということだと思います。日本もアメリカもそれぞれ多様な意見が存在する国でありますから、全体としてどういうことかということを見ていくことが大切だと思います。
それはそれとして、例えば日本の中でもう安保条約なんかやめてしまえという意見があれば、私は安全保障条約というのは非常に日本の国益にかなう条約だと思っておりますから、これはアメリカの言いなりで戦争に巻き込まれる条約だからこんなのはやめてしまえというような意見が強くならないように私たちが説明責任を果たしていかなければいけない、こういうふうに思っております。
アメリカにおける、例えばフリーライダー論というのはかなり前からあるわけでありまして、特に日本の経済が強くなり始めてからは非常にそういうことが強くなってきたわけであります。
私が十年ほど前にアメリカの基地をちょっと視察したときに、案内をしてくれたのは軍人でありました。今アメリカでフリーライダー論が大変強くなってきているけれどもどう思うか、こう言いましたら、その軍人さんは、自分は沖縄にいたことがある、ワシントンの人たちは独立国家の中に基地を置く負担というのがどれだけのものか全くわかっていないでそういうことを言っているんだ、こういうことをおっしゃったので、私は、ああアメリカというのは非常に健全だな、こういうふうに思ったことがあるわけであります。
日本もこの日米安全保障条約、やはりどこの国にも国民感情、民族感情みたいなものがありますから、非常に大きな国と同盟関係を結んでいると何か言いなりになっているのじゃないかというような、そうでなくてもそういうような感情を持ちがちなところもあるわけで、そういう中から一方ではどっちかというと非武装中立的な、そういうのは最近少なくなってきましたけれども、そういうような意見に行きがちだ、一方ではまた完全自主防衛論みたいなところに行きがちだということは、それはあるわけであります。
どっちが得か、私はきっちり国民に考えていただくために、よく説明するということは非常に大切なことだ、こういうふうに思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/44
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045・寺崎昭久
○寺崎昭久君 外務大臣がおっしゃるように、国民に日米関係その他防衛、安全保障環境等も含めて説明するというのは私も大変大事なことだと思います。
その安全保障問題について、先ほども若干憲法解釈に偏っているのではないかということを申し上げましたけれども、東京大学の田中明彦教授はこのような指摘をしております。戦後、日本の安全保障論議は、規範論も戦略論も大方の人から見て極めて不健全なもの、欺瞞的なものとさえ言われかねないものであった、こういう指摘をしております。
ちなみに、安全保障論がどういうふうに推移してきたのか、私がここで講釈する必要もないのかもしれませんが、簡単に粗筋だけ探ってみますと、例えば帝国憲法改正案要綱が国会で審議されたとき、共産党の野坂参三議員が憲法九条に関して、戦争一般の放棄ではなく侵略戦争の放棄を規定するべきだ、こういう主張をされたことが今でも議事録として残っております。
これに対して、当時の吉田首相は、近年の戦争の多くは国家防衛権の名のもとに行われてきた、正当防衛であってもこれを認めることは戦争を誘発するゆえんである、御意見のごときは有害無益であると。すごいことを言うんだなと思いますけれども、有害無益だと、こう断じているわけでございまして、自衛権を完全否定しているわけであります。同情的に見れば政治的な配慮があったんだということは私は理解しているつもりですけれども。
しかし、昭和二十九年になりますと、大村防衛庁長官は予算委員会の中で政府の統一見解として、自衛権は独立国が当然に保有する権利である、自衛のための抗争を憲法は放棄していない、必要相当な範囲の実力部隊を設けることは憲法違反ではないと。
それから、同じ昭和二十九年ですが、防衛二法の審議の中で法制局長官は自衛権発動の三要件というのを示しており、これをもとに、昭和三十一年の五月二十九日に、集団的自衛権を行使することは防衛のための必要最少限度の範囲を超えるものであって憲法上許されないという有名な答弁書が出されているんだと思います。
こういうことから見ましても、やはり憲法解釈はおかしいと言いながらも、私は戦略的な側面をもっと重視するべきだとは申しましたけれども、この憲法解釈をこういうふうに変えるということが安全保障に関する国民の理解をゆがめたものにしてきているんではないかというような気がしているわけです。
〔理事竹山裕君退席、委員長着席〕
ですから、ここで申し上げたいのは、もっと戦略論としての安全保障というものを考える、そして規範性との整合性がどうかということを考えるようなアプローチがなければいけないんではないか。今まで政府は、いろいろ法律を出したりする場合には、この法律をこう変えますということですからしようがないんですけれども、なかなかその背景にある、なぜこの法律が出てきたのかという中で日本の安全保障論をまともに取り上げるということが少なかったんではないか。この後、周辺事態法について申し上げますけれども、これも私は解釈改憲論の延長線でやっているんではないか、一言で言うと無理があるんじゃないかというように思っているわけでございます。これは答弁は結構です。
それでは次に、周辺事態法について具体的に幾つか質問させていただきます。
先日、椎名素夫議員がこの法律は大変わかりにくいものになっているという指摘をされましたけれども、その原因が何かということをせんじ詰めていくと、恐らく集団的自衛権を認めるか認めないかということにかかっているんだろうと思います。
具体的に言いますと、例えば周辺事態法に「後方地域支援」というのがあり、この中の物品役務の提供に関して付表の別表備考欄で、戦闘作戦行動のための発進準備中の航空機に対する給油及び整備は行わないという規定がございます。わざわざこの規定を設けたのはどういう意味でしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/45
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046・野呂田芳成
○国務大臣(野呂田芳成君) 戦闘作戦行動のための発進準備中の航空機に対する給油及び弾薬の搭載に係る我が国の支援につきましては、具体的に米軍からの要望がなく、このような支援を我が国が行うことは想定されていないため除いたのでありまして、このことは累次御答弁申し上げているところでございます。
我が国の行う活動と憲法との関係につきましては、個別の事態に即して慎重に判断する必要があると考えますが、我が国が行うことは想定されず、法案上も明文で支援対象から除かれているものにつきまして、今憲法との関係を仮定の議論に基づいて申し述べることにつきましては差し控えさせていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/46
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047・寺崎昭久
○寺崎昭久君 法制局長官にお尋ねしますが、この給油というのが武力行使と一体化するという疑いはないのかどうか。それから、同様の給油に関して安全保障条約ではどういう扱いになっているのか、お尋ねします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/47
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048・大森政輔
○政府委員(大森政輔君) まず、お尋ねの発進準備中の航空機に対する給油と一体化との関係でございますが、これはただいま防衛庁長官から答弁がありましたように、法案で明確にそれを行わないというふうに除外しているわけでございますから、それについて、もしやるとすれば一体化するのかしないのかということのお答えをするのは差し控えるというのが政府の基本的な態度でございます。
ただ、そうはいいましても、過去二年ほど前のガイドラインそのものについての質疑中におきましては、私から、一体化の問題について慎重な検討を要するという認識を持ち、その後また聞かれまして、今もその認識に変わりはないと答えたことも事実でございまして、なぜそういうことを答え、しかも現在は最終的な判断を述べることは控えているのかということを若干御説明しておきたいと思います。
すなわち、お尋ねの形態の給油及び整備と申しますのは、個々の作戦行動のために必要なものを供給するという態様で行うものでありますから、個々の戦闘行動と密接な関係が生ずるのではないかという観点から慎重な検討を要すると従前考えたわけでございます。そして、いろいろ議論をしているうちに、米軍からもニーズはない、そして法案上もそれを行わないことを明記しようということになったわけでございますから、そういう仮定的な問題についての最終的な結論を述べることは差し控えることにした、実を申せばこういう経過がございます。
それからもう一つ、後段の給油と安保条約との関係というお尋ねでございますけれども、どういう観点からのお尋ねか、ややちょっとまだ理解しかねているわけでございますけれども、御承知のとおり、安保条約の明文上は、こういう給油とか整備を含めた後方支援活動についての明文の規定はないということであろうかと思います。したがいまして、安保条約との直接の関係はないと。
しかしながら、今回の周辺事態対処法案と申しますのは、安保条約の目的達成に寄与する活動を行っている米軍に対する後方地域支援というものを規定しているわけでございまして、その意味で安保条約の枠内の問題であると。それが衆議院における改正におきましてもその旨を明らかにする文言がつけ加えられた、こういう意味において関連はあろうかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/48
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049・寺崎昭久
○寺崎昭久君 アメリカから要請がないのでその旨を明記したとか、武力行使との一体化の問題についてはまだ結論を出されていないというようなお話ですけれども、戦闘準備に入っている飛行機か否かという区別がつかなければ、結局のところ、準備中の飛行機であろうとそうじゃない飛行機であろうと、後方地域支援の対象にしても、問題があるかもしれないけれども、だれも気がつかない、指摘できないということになりまして、この文章があろうとなかろうと同じことになるんじゃないでしょうか。
これまでも国会で、例えば安全保障条約に伴う交換公文の中から事前協議について三項目、日米で交わしておりますけれども、政府の答弁というのは、今まで一度も事前協議について必要が生じなかった、アメリカから申し入れもなかった、だからやったことはありませんというんですが、この航空機の場合も、これは戦闘にまさに飛び立とうとしている飛行機ですということを言わなかったら、どの飛行機だって給油できるということになりませんか。防衛庁長官、どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/49
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050・野呂田芳成
○国務大臣(野呂田芳成君) 戦闘作戦行動のために発進準備中という意味は、部隊が具体的な戦闘作戦行動の実施について命令を受け、当該作戦行動の実施のためエンジンの始動、発進前の諸点検等、具体的な準備に着手している段階を指すものと理解しております。
このような戦闘作戦行動のために発進準備中の航空機に対する給油及び整備については米軍がみずから実施することから、自衛隊がかかる支援を実施するニーズはなく、そのような実態を踏まえてこの法案の別表の備考にその旨が明記されたということを先ほど来申し上げておる次第でございます。
したがって、米軍が御指摘のような航空機に対する支援を自衛隊に求めてくることは、この法律ではそもそも想定していないところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/50
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051・寺崎昭久
○寺崎昭久君 大変わかりづらいんですけれども、例えば飛行機が飛び立った、その後戦地へ赴くんだよと、こういう話になると、もう手離れだからそれは関係ないということになるんでしょうか。
大体、給油する時点において、だれかが何らかの方法で、これからどこへ行くんですか、戦闘に参加するんですかというようなことを確認するんですか、確認できるような方法は担保されているんですか、防衛庁長官。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/51
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052・竹内行夫
○政府委員(竹内行夫君) 委員のただいまの御質問は、事前協議との関係でのものと理解させていただきましてお答え申し上げたいと思いますけれども、先ほど、委員がまさしく指摘されましたとおり、三つの主題につきましては事前協議を行うことが米国の義務になっているわけでございます。
それで、今御指摘の戦闘作戦行動のために日本にございます施設・区域を使用するという場合には、使用する側の米国におきまして、事前に日本に対しましてその応諾と申しますか許諾について協議をしてくるということが条約上、交換公文でございますけれども、義務になっておるわけでございます。
したがいまして、その段階で、日本国といたしましてイエスかノーかということを判断するというのが交換公文上の仕組みということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/52
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053・寺崎昭久
○寺崎昭久君 今の安全保障条約上の取り扱い、事前協議についてはおっしゃられたとおりだと思いますけれども、今、私がお尋ねしているのは周辺事態法に基づいて質問をさせていただいているわけです。
まさに飛び立とうという飛行機があったときに戦闘準備、戦場へ赴く飛行機なのかそうじゃないのかというのは、だれがどういう方法で確認できるんですか。もしそれが担保できなかったらどの飛行機だって給油の対象になるじゃないですか、なりかねないではないですかということを申し上げているんです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/53
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054・佐藤謙
○政府委員(佐藤謙君) まず、その戦闘作戦行動のために発進準備中と申しますのは、先ほど大臣から御答弁しましたように、具体的な命令を受けてその諸作戦行動の実施のためのエンジンの始動だとか、それから諸点検とか、具体的な準備に着手しているということで、これは客観的に明らかになる状況でございます。
一方、私どもが米側のニーズがないと申しておりますのは、これはもう先生御高承のとおりでございますけれども、そもそもこういった戦闘作戦行動に発進するというときに、諸準備につきましては、即応性の問題とか秘密保全の問題あるいは専門性の問題とか、こういうことから通常パイロットと整備員を一つの部隊として平時から運用しております。
そういうことからいいまして、米側がこういう行為を、自分たちの通常パイロットと整備員を一つの部隊として平時から運用している、こういうものを離れて我が方に要請するということは、これはもう想定されないということははっきり申し上げられると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/54
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055・寺崎昭久
○寺崎昭久君 少し話が、議論がすれ違っているように思いますけれども、私は、戦場へ赴く飛行機とそうじゃない飛行機、そうじゃない飛行機というのは給油の対象にできるわけですから、区別する方法はあるんですかとお尋ねしているんです。
区別する方法が担保できなかったら、いやこれはもう通常の運航に供する飛行機だよという話になれば、みんなどの飛行機だってできるんではないでしょうか。というのは、今までの例でいうと、事前協議といいながら、本当にその必要性がなかったのかどうかというのは、私は皆さん方がおっしゃるのを信用するしか確かめようがないわけであります。ベトナムへ行きました、何とかへ行きました、湾岸戦争も発進しましたといいながら、事前協議が一回もないというのは普通信じがたいことであるわけです。同じことが言えるんですか。もう一回答えていただけますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/55
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056・佐藤謙
○政府委員(佐藤謙君) 繰り返しになりまして恐縮でございますけれども、まさにこういった戦闘作戦行動に発進する諸準備というのが、これは先ほど申しましたような専門性であるとかあるいは機密性とか、そういうものを考えますと、これは米軍自体の運用の考え方からして、パイロットと通常一緒にチームを組んでいる整備員がやるものでございます。したがいまして、こういう行為をそもそも米側として日本側に要請するということはそういった軍事上の手順からいっておよそ考えられない、こういうふうに思っております。
それから、実態面からいいましても、先ほど申し上げましたように、戦闘作戦行動に発進する段階というのは、先ほど大臣から御答弁しましたような状況でございますので、これ自身また客観的に明らかな状況だろう、こういうふうに思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/56
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057・寺崎昭久
○寺崎昭久君 話を平行線のまま残すのは残念なんですが、ちょっと角度を変えて質問いたします。
例えば戦闘に赴く飛行機について、飛行場を使わせないということも給油と同じ扱いにしてもいいんじゃないかというように思うんですが、これは米軍が使わせてくれという必要性があるから認めるということなんでしょうか。武力の一体化とは全く無関係の判断で使わせるんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/57
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058・竹内行夫
○政府委員(竹内行夫君) 米軍が我が国の施設・区域を使用いたしますのは、当然のことながら御承知のとおり、日米安保条約の六条に基づいてでございます。
先ほど来、先生が御質問されているポイントと申しますのは、恐らく武力と一体化の問題という日本の憲法の問題との関係ということとあわせてお尋ねになっているのではなかろうかという気が私は先ほど来聞いていてしております。
先ほど事前協議については申しましたけれども、事前協議につきましてはあくまでも戦闘作戦行動という決められた定義の活動につきまして事前協議が求められているということでございまして、その問題と日本の憲法上の問題でございます一体化の議論というのは切り離してお考えいただく必要があろうかというふうに先ほど来感じておるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/58
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059・寺崎昭久
○寺崎昭久君 大変わかりづらいのですね。
法制局長官も、まさに戦場へ赴く飛行機が武力行使と一体化の行為かどうか結論を出されていないというお話でしたけれども、それはそういうことで、滑走路の使用は安全保障条約に基づく基地提供の問題等であるということで、成田空港でも羽田空港でもどこでも使わせますよという話というのはどうも私は納得いかないのです。何か木に竹を接ぐというのでしょうか、理屈はどうもそういうようにしか聞こえないのですけれども、長官、もうちょっと整理してもらえませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/59
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060・大森政輔
○政府委員(大森政輔君) ただいま委員の御質問の中で成田空港でも云々という日本の民間空港使用の話がありましたけれども、周辺事態において米軍の航空機が滑走路を使用するという場合には、安保条約六条に基づいて提供しているいわゆる米軍基地飛行場の使用の場合と臨時的に我が国の民間空港の滑走路の使用を認める場合と両方あろうかと思うわけでございます。いずれにしましても、要するに安保条約及びその関連取り決めに基づいて我が国から行われる米軍の戦闘作戦行動のための基地としての使用について、我が国があらかじめ応諾をしているという結果として米軍機が滑走路を使用するわけでございます。
その場合に、我が国の行為としましては、あくまでそういう施設を使用することを応諾するという消極的な行為にとどまりまして、予定される米軍の武力の行使と一体化するような積極的な行為を我が国がそれ以上にするということはないと考えられますので、いわゆる一体化論との関係では、滑走路を使用することを応諾するということとの関係では憲法上の問題は生じないんではないかというふうに考えているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/60
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061・寺崎昭久
○寺崎昭久君 針のめどから象を通すような話ばかり聞きまして、ますます頭が混乱してくるわけであります。
今の一体化の問題について別の局面、つまり安全保障条約ということの関係で若干申し上げますと、昭和四十七年五月二十三日の参議院外務委員会で福田外務大臣は、地上での給油は同時に戦闘と非常に密接な関係があり、新たに我が国の基地から出撃して爆撃なり戦闘行為を行うというように思えるので、これは事前協議の対象にしますということを答えております。
ということは、事前協議の対象になるということは、戦闘と密接不可分、武力行使と密接不可分だからというわけで、今の言葉で言うと武力の行使と一体的になる行為ということから、地上から戦闘に向かう飛行機には給油をしないということを言ったんじゃないんですか。ちょっとわかりづらいですか、法制局長官。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/61
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062・大森政輔
○政府委員(大森政輔君) ただいま御指摘の答弁、まだ手元に資料がございませんので、どういう意味で述べられたのか、なおよく後ほど読ませていただきたいと思います。
それはともかくとしまして、地上での航空機に対する給油、給油しなければ航空機は飛び立てないわけですから、給油したら飛び立って戦闘行動に赴く、そういう意味では密接な関連性があると言えば言えようと思いますけれども、我々が武力行使と一体化するといういわゆる一体化論で問題とします一体性というのは、そういう単なる因果関係的な関連性があるかどうかを問題にしているわけではございませんので、規範的な説明をいたしますと、我が国自体は戦闘行動に当たる行為をしていなくとも、武力行使をしている米軍との諸般の関係を総合すれば、我が国も戦闘行動をしていると評価できる場合があるじゃないか、そういう場合には、やはりそのこと自体は戦闘行為に当たらなくとも憲法上問題が生ずるんだという憲法上の評価に関する当然の事理を述べたものでございます。
そこで、じゃどういう場合に一体化が生ずるのかということでございますけれども、それは先ほどのような給油しなければ航空機は飛ばない、給油して航空機が飛び戦闘行動で爆弾を落としてくる、例えばの話でございますけれども、そういう関係じゃございませんで、やはり先ほど述べましたような我が国も米軍とともに武力行動をしていると評価できるような密接な行為、関係があって初めて問題が生ずるんだということでございます。
その場合にどういう要素を考慮すべきかということにつきましては、今まで四要素を例示しまして、その他諸般の事情を総合して個々具体的に、しかも慎重に判断すべき問題であるというふうにお答えしてきたところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/62
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063・井上吉夫
○委員長(井上吉夫君) 残余の質疑は午後に譲ることといたします。
午後一時に再開することとし、休憩いたします。
午前十一時五十九分休憩
─────・─────
午後一時一分開会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/63
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064・井上吉夫
○委員長(井上吉夫君) ただいまから日米防衛協力のための指針に関する特別委員会を再開いたします。
この際、委員の異動について御報告いたします。
本日、郡司彰君、谷林正昭君及び八田ひろ子君が委員を辞任され、その補欠として久保亘君、櫻井充君及び小池晃君が選任されました。
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/64
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065・井上吉夫
○委員長(井上吉夫君) 休憩前に引き続き、日本国の自衛隊とアメリカ合衆国軍隊との間における後方支援、物品又は役務の相互の提供に関する日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の協定を改正する協定の締結について承認を求めるの件外二案を一括して議題とし、質疑を行います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/65
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066・寺崎昭久
○寺崎昭久君 午前中の質疑の中で、沖縄の基地にいる米軍の飛行機に対して米軍が給油をする場合にはこれは事前協議の対象になる、もちろんこの飛行機というのは戦闘作戦準備中の飛行機という御答弁があったと思います。そうですよね、ちょっと確認します。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/66
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067・竹内行夫
○政府委員(竹内行夫君) 簡単に御説明させていただきますと、先生が午前中に御指摘されました問題点は、戦闘作戦行動すなわち事前協議に係ります戦闘作戦行動の問題とそれから日本の憲法上の問題でございます武力行使の問題がありました。
先生が御指摘されました当時の福田外務大臣の御答弁といいますのは、まさに安保条約上の交換公文に基づきます事前協議の対象となります戦闘作戦行動と給油の問題についての答弁でございまして、これはいずれも米軍機に対して米軍が給油をする場合、それが戦闘作戦行動の一環として行われるということはあり得るということを当時の福田外務大臣が御答弁されている、こういうことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/67
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068・寺崎昭久
○寺崎昭久君 今の作戦行動中の飛行機に対する給油となると事前協議の対象と考えてよろしいんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/68
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069・竹内行夫
○政府委員(竹内行夫君) 岸・ハーター交換公文におきまして、正確に申しますと、戦闘作戦行動のために施設・区域を米国が使用するに当たっては我が国と事前協議を行わなければならない、こういうことになっているわけでございまして、その場合に戦闘作戦行動と申しますのは、いわゆる直接戦闘に従事することを目的とした軍事行動を指すものと、こうされているわけでございます。
それで、福田外務大臣が当時、先生が先ほど御指摘されましたような答弁をされておりまして、補給活動であるといたしましても、給油が事前協議の対象たる戦闘作戦行動と密接不可分な活動であるということがあり得るということを福田外務大臣が当時答弁されている。すなわち、その場合には事前協議の対象としての戦闘作戦行動と密接不可分な活動であると、こういうことを答弁されているということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/69
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070・寺崎昭久
○寺崎昭久君 米軍が米軍機に補給するというのが今のケースですけれども、今度の周辺事態法のように後方地域支援ということで、もし戦闘に向かおうとする飛行機に対して給油するようなケースがあるとすれば、それはやはり事前協議の対象になり得る、なると考えていいんでしょうか。つまり、戦争に向かうのではなくて周辺事態に対処するために出かける飛行機も、この安全保障条約と同じような解釈になりますかということです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/70
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071・高村正彦
○国務大臣(高村正彦君) 戦闘作戦行動という定義は一貫して決まっておりますので、まさに戦いそのものに赴くことでありますから、一般的に周辺事態で赴く場合に戦闘作戦行動になるということではないと。ただ、周辺事態の中において戦闘作戦行動に赴くことというのは、周辺事態であり、そして戦闘作戦行動になる行為というのはそれはあり得ると思いますが、周辺事態に活動する米軍が動く場合に全部事前協議の対象になるわけではない、こういうことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/71
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072・寺崎昭久
○寺崎昭久君 そうすると、当面は、この周辺事態に対処というのは、戦闘作戦行動に入るというケースはないというように理解していいんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/72
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073・高村正彦
○国務大臣(高村正彦君) 今申し上げましたように、周辺事態における米軍の行動の中には戦闘作戦行動になる場合もあります。ありますが、そう当たらない場合もあります。現実には当たらない場合の方がはるかに多い、こういうふうに思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/73
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074・寺崎昭久
○寺崎昭久君 周辺事態の性質に着目してと、こういう区別になるのかと思いますけれども、それでは空中給油はどうなんでしょうかということについてお尋ねしたいと思います。
今、自衛隊では空中給油機を持っていないと伺っておりますし、例えば米軍機に給油できるのかどうかという技術的な問題はありますけれども、仮定の問題としてお伺いするのはちょっと恐縮なんですけれども、もし日本に空中給油機があったとして、米軍機が戦場に赴くその途上において給油する場合には、それは周辺事態法でやれることなのか、やれないことなのか。どうでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/74
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075・佐藤謙
○政府委員(佐藤謙君) 空中給油機の取り扱いでございますが、先生も今御言及になりましたように、現在の中期防におきましては、「空中給油機の性能、運用構想等空中給油機能に関する検討を行い、結論を得、対処する。」、こういうふうにされている段階でございまして、現在、私どもとして空中給油機の導入を決めておるわけではございません。
したがいまして、今、先生も言われましたように、米軍への支援と周辺事態安全確保法案との関係につきまして、今、我々はそもそもそういう装備を持っておりませんので、そういう上での御議論というのは差し控えさせていただきたい、こういうふうに思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/75
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076・寺崎昭久
○寺崎昭久君 仮定の話が続くので大変恐縮なんですが、今回、給油の問題について言いますと、艦船補給については別表から除外するというようなことはしておりません。
政府の御答弁では、補給が個々の作戦行動に直ちに結びつかないというケースが多いということでしょうか。そういうお答えだったと思いますが、同様な答弁というのは昭和四十七年三月にも行われておりまして、例えば飛行機のケースですが、グアム発のB29がベトナム爆撃の往路に沖縄へ立ち寄って給油したという場合に、そこから改めてベトナム戦争に向かうようなケースになるので、事前協議の対象になりますということをおっしゃっております。
別の言い方をしますと、沖縄で給油をしても、もう一カ所どこか戦闘地域でないところへ寄ると、これは戦場へ向かう飛行機ではないとみなして事前協議から外れるというようにも読み取れるんですが、今回の周辺事態についても同様の考え方が、つまり直接戦場へ向かわないのであれば、それは戦闘作戦行動に従事する飛行機とみなさないのかどうかをお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/76
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077・高村正彦
○国務大臣(高村正彦君) 一般的には直接爆撃に行くような場合が戦闘作戦行動になる、こういうふうに解しているわけでございます。
軍隊というのは必要に応じて必要なところに移動するというのは、これは軍隊の属性でありますから、どこかに移動するような場合に、アメリカ軍がどこかに移動するときに我が国がイエスと言わない限り移動ができない、そういうことはどこの国の安全保障条約であっても合理性を欠くことでありますから、そういうところまでは要求しない。
ただ、まさに我が国が提供した施設・区域を基地として爆撃に赴くというようなときは、それは我が国のイエスという同意を必要とする、こういう仕組みになっているんだということをぜひ御理解いただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/77
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078・寺崎昭久
○寺崎昭久君 武力の行使と一体化するかしないかというのがこの法案でも大変焦点になっているわけでありますけれども、それは結局のところ、集団的自衛権の行使は憲法上許されないという解釈を前提にしているから武力の行使云々という話が焦点になるんだろうと思うんです。
ただ、この集団的自衛権、私は今すぐ認めろとかそういう話をしているわけではありませんが、少し整理しておかないと大変誤解を招いている部分があるのではないかというように感じているわけです。
例えば、先ほども引用しましたけれども、東京大学の田中教授はこんなことをおっしゃっております。
集団的自衛権の行使違憲という解釈は、昭和二十九年に自衛隊を合憲とするために行った、自衛のための必要最小限度の範囲の軍事力であれば憲法は禁じていない、そういう解釈を守り抜くために、あえて集団的自衛権というのと個別的自衛権を峻別したのではないかということを指摘されております。
このことを称して田中教授は知的アクロバットだということをおっしゃっているわけでありますけれども、自衛隊合憲論を守るために編み出された区別だという見方は当たっているのかどうか、法制局長官。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/78
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079・大森政輔
○政府委員(大森政輔君) 事前にただいま引用されました文献に目を通してみたんですが、知的アクロバットというのは当たらないのではなかろうかと思うわけでございます。
要するに、憲法九条は、一見いたしますと、「国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。」、「前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。」と、あたかも一般的な否定の観を呈しているわけですが、こういう憲法九条のもとでも自衛権というものは否定していないんだということが昭和二十九年のあの見解であるわけでございます。
すなわち、日本国は独立主権国として自国の安全を放棄しているわけではない。それは、憲法上も平和的生存権を確認している前文の規定とか、あるいは国民の生命、自由あるいは幸福追求に対する権利を最大限度尊重すべき旨を規定している憲法十三条の規定等を踏まえて憲法九条というものをもう一度見てみますと、これはやはり我が国に対して外国から直接に急迫不正の侵害があった場合に、日本が国家として国民の権利を守るための必要最小限の実力行使までも認めないというものではないはずである。これが自衛権を認める現行憲法下においても自衛権は否定されていないという見解をとる理由であります。
これがひいては、集団的自衛権を否定する理由にもなるわけでございまして、しかしながら集団的自衛権の行使というものは、他国に対する武力攻撃があった場合に、我が国自身が攻撃されていないにもかかわらず、すなわち我が国への侵害がない場合でも我が国が武力をもって他国に加えられた侵害を排除することに参加する、これが集団的自衛権の実質的な内容でございますので、先ほど申しました憲法九条は主権国家固有の自衛権は否定していないはずであるという理由づけからいたしますと、そういう集団的自衛権までも憲法が認めているという結論には至らないはずである。
したがいまして、先ほど御指摘になりました文献がコメントしているようなそういう自衛隊合憲論を守り通すために集団的自衛権を否定しているんだというものではございませんで、自衛隊は合憲である、しかし必然的な結果といいますか、同じ理由によって集団的自衛権は認められないんだということ、そういうふうに考えているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/79
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080・寺崎昭久
○寺崎昭久君 私は、今の解釈の延長線上に海外派兵をすることが集団的自衛権であるというような誤解を国民に植えつけたんではないかというように思います。
というのは、国を守るための自衛力を持つことはいい、それ以上はオーバーで憲法が許さない、こういうことはいいんですが、それでは国を守るためにどれだけの自衛力を持つのがいいのか。それから、集団的自衛権といった場合には、どこの国に対してどこの国と共同して対処するのか。つまり、そういう自衛力なり軍事力なりのレベルを全く示さずに、我が国が攻められていないにもかかわらず云々という権利で答えているわけです。レベルを聞いているのに権利で、必要最小限度の範囲というのはどの程度ですかということに一向に答えていないと思うんです。
改めてお伺いしますが、必要最小限度の軍事力ないしは自衛力というのは、どう考えたらいいんですか。海外へ出せるような権利だなんという、そういう答えはやめてください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/80
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081・野呂田芳成
○国務大臣(野呂田芳成君) 憲法第九条は、我が国が主権国家として有する固有の自衛権を否定しておらず、この自衛権の行使を裏づける自衛のための必要最小限度の実力を保持することは同条第二項によって禁じられてはいないということは、先ほど来、法制局長官とのやりとりで出たところであります。そしてまた、それが政府の伝統的な解釈であります。
また、このような自衛のための必要最小限度の実力、すなわち自衛力の具体的な限度につきましては、その時々の国際情勢とか軍事技術の水準等により変わり得る相対的な面を有しているものだと思います。そういう面を否定し得ないものであろうということも従来から一貫して申し述べてきたところでございます。
自衛力の具体的な限度を数量的に示すことは非常に困難であります。もっとも、性能上専ら他国の国土の壊滅的破壊のためにのみ用いられるような兵器、例えばICBMとか長距離戦略爆撃機等でございますが、そういう性能上専ら他国の国土の壊滅的破壊のために用いられる兵器についてはいかなる場合においてもこれを保持することが許されないのは言うまでもない、こういうふうに私どもは累次御説明申し上げているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/81
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082・大森政輔
○政府委員(大森政輔君) その必要最小限度という数量的な問題は今、防衛庁長官からお話しになりまして、それについては特に申し上げることはないわけでございますが、いわゆるその集団的自衛権の行使を否定するための文言として、我が国を防衛するため必要最小限度のものを超えるからという、そういう説明のどこが重要事項なのかと。これは、必要最小限度という数量を超えるからだというよりも、我が国を防衛するためのというその目的を超えるからなんだというところにウエートがかかる問題ではなかろうかと。実は私は、そういうふうに説明しながらそういうつもりで答えているわけでございます。
すなわち、自国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃を実力で阻止する、しかし我が国に対する攻撃がないのにということでございまして、そういう場合には集団的自衛権の行使というのは、我が国に対する攻撃がないのに他国に対する攻撃を実力で阻止するわけでございますから、これは我が国を防衛するためという目的性において欠けるところがあると。
したがって、あわせて読んでいただきたい、単に数量的に超えるからだという問題ではないんだということを御理解いただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/82
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083・寺崎昭久
○寺崎昭久君 集団的自衛権というのは、一般的に、世界の通説というんでしょうか、日本の憲法じゃないですよ、でいえば攻守同盟ですよね。我が国を守ってもらうためだけの同盟というのももちろんあるでしょう。だけれども、例えばNATO軍だとか、これは二国間同盟ではないことはわかっていますけれども、でも攻守同盟の性格が強いんだろうと思うんです。
そこで、先ほど御紹介の文言でいうと、我が国が攻撃されていないにもかかわらず云々と、こういうことで、他国に対する攻撃を排除するというところがわかりづらいですね。日本のためにというのはわかるんですが、日本のためにほかのところと条約を結ぶ、その際にこちらに何もなしじゃ相手が相手にしてくれないとすれば、こちらとしても一定の実力を持たなくちゃいかぬ、武力を持たなくちゃいかぬということを考えますと、レベルというのもなかなか大事な問題なんじゃないですか。私は、恐らくレベルをイメージできる人はいらっしゃらないんだろうと思います。
先ほど防衛庁長官も、そのときの情勢によって相対的に決まるということをおっしゃいましたが、昭和三十一年当時のことですから、日本がアメリカまで出かけていってアメリカを守るなんということを想定したことは恐らくないと思います。そんなことは考えることもできないような状態だったと思いますが、そういうことで、昭和三十一年当時にレベルの話をどこかでやっておるわけです。
周辺事態法案の問題に戻りまして、先日来、周辺事態というのはどこら辺だという話をすると、これは地理的概念ではない、こういうことをおっしゃるんですが、そうは言っても地球の裏側ではないですよという荒唐無稽なことをおっしゃるわけです。必要最小限の答えとしても、同様に当時はアメリカしか日本の同盟というのはないわけですから、そこを想定してアメリカを助けに行くのかということに、だれもそれはないでしょうと思うような答えをぶつけて必要最小限を説明するというのは私は無理があるんじゃないかと思うんですが、もうちょっとわかりやすくお話しいただけませんか。
例えば、アメリカは同時に地域紛争二つに対処できるだけの軍事力を持ちますよ、こういうことを言っております、どこの国を想定しているのかは私はわかりませんが。何かそういうような説明ができませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/83
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084・大森政輔
○政府委員(大森政輔君) お尋ねの観点と申しますのは、私の立場からお答えするのが適当かどうか疑問に思うわけでもありますが、要するに、思いますに、国の守り方というのは現実の憲法を離れてはいろいろあろうかと思います。
確かに、集団的自衛権の行使まで認めて、委員の言葉をかりますならば攻守同盟を結ぶというのもより徹底した安全性の高い守り方かもしれませんが、やはり日本国憲法は九条において世界にも類を見ない徹底した平和主義をとっているわけでございます。
そのもとでなお自衛のための実力組織を保有するということを理由づけるためには、やはり個別的自衛権までしか理由づけることが困難ではないかというのが私どもの考え方のある背景といいますか、先輩が築き上げてきた考え方の裏にある考え方ではなかろうか、これは私が個人的に思っているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/84
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085・寺崎昭久
○寺崎昭久君 もう一言確認いたします。
海外派遣することが集団的自衛権である、日本的な解釈でそういうふうに定義されますか、しませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/85
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086・大森政輔
○政府委員(大森政輔君) 集団的自衛権の行使の本質的な部分は、国による実力の行使というところが本質的な要素でございますので、海外派遣あるいは海外派兵、そういう場合にいかなる目的で出ていくのかということと関係するわけでございます。
集団的自衛権と申しますのは、要するに、我が国が攻められていない、我が国に対する攻撃がない、しかし密接な関係にある他国に対する攻撃を実力で阻止するために出かけていくというわけでございますが、いわゆる海外派兵はできない、憲法上認めないというのは、そういう他国に対する攻撃を実力で阻止するために出かけていく場合と、そして、端的に申しますと、ある野心のもとに侵略戦争をするために武力の行使の目的を持って実力部隊を派遣する、二つの類型があろうと思います。それは両方ともできませんということでございまして、要するに海外派兵違憲論というのは、集団的自衛権行使違憲論と一面では重なり、一面では重なっていない、こういうことが言えようかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/86
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087・寺崎昭久
○寺崎昭久君 これ以上議論を続けていてもなかなかお互いに意見が一致するようにも思えません、もっと時間があればできるのかもしれませんが。
できるだけこの法律をわかりやすい法律にしなければいけないというつもりで、私は、憲法上許されていないからというような言い方じゃなくて、日本は戦略論としてやりません、やりますと、この周辺事態でもどこまでやりますと、政策としてやるということを言わないと国民にも物すごくわかりづらいと思いますし、ましてカウンターパートのアメリカに対しては、アメリカはもっとわかりづらいんだと思います。
〔委員長退席、理事竹山裕君着席〕
大変極論を申し上げますけれども、例えばアメリカのマスコミの中には、日本は周辺事態なんてそんなことは考えてくれなくてもいい、もしやるとすれば港湾、空港、輸送、この三つを米軍が好きなように使えればあとはお金さえ出してくれれば、日本が公海とかそういうところへ出てきて余りちょろちょろしないでもらいたい、迷惑であると、極論すればそういうことを言う人すらいるわけであります。
したがって、先日も議論がありましたように、ここが後方というところなのか、そうじゃないのか。日本の法律ではここは後方地域ですよ、アメリカの方が何だこれは後方じゃないのかというような受けとめ方をすると、この法律をつくったことがかえって日米間に不信感をもたらす可能性だってないとは言えないんじゃないですかと。そういうことをきちんとクリアしないと、本当の信頼関係だとか同盟関係というのを維持するというのは難しいんじゃないでしょうかと。そんなつもりで言っているわけでございます。
外務大臣、何か御意見ありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/87
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088・高村正彦
○国務大臣(高村正彦君) 日米安保共同宣言から新ガイドライン、そしてそういう中で日米関係、密接な協議をした上で日本の主体的意思としてこういうものをつくっているわけで、アメリカとしてはこれを評価していることは、それは間違いないことだと思います。
アメリカのマスコミの中にこういう意見があったと言いますが、日本のマスコミの中にもいろいろな意見があるわけでありますから、それは民主主義の国の中でいろいろな意見があるということは私は当然のことで、余りそのことを、それは意見として受けとめることは必要でありますが、それだけで全体を見ることは間違いではないか、こういうふうに思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/88
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089・寺崎昭久
○寺崎昭久君 これからの安全保障を考える上でどういう方法をとるかというのは、日米関係はちょっと横へ置きまして考えると、いろいろあると思うんです。
例えば、非武装中立論なんというのもあります。それから、これは九六年でしょうか、防衛問題懇談会が出したいわゆる樋口レポートのように多角的安保協力論というようなことでNATOをイメージ、まあそこまでいっていないんですが、イメージしたような安全保障論もあると思います。それから、日米間の安全保障条約のように二国間のものもあると思うわけであります。
日本の安全保障のあり方について戦略論的に言うとどういうスタンスで、つまりアメリカとどういうスタンスを置くのか、距離を置くのか。あるいは、東南アジアの国々とはどういうおつき合いをするのか。どういう組み合わせがベストなのかということについて、外務大臣の御意見を伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/89
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090・高村正彦
○国務大臣(高村正彦君) 日本の安全保障というのは日本みずからが節度ある防衛力を持つ。それと同時に、日米安全保障体制をきっちりする。そして、日本の安全保障環境をきっちり整えるために外交努力をきちっとやっていく。外交努力の中にはもちろん日米が基軸である。そして、それぞれの近隣諸国等二国間関係をきっちりやっていく。それとともに、ARF等信頼醸成措置といいますか、そういったこともやっていく。
ですから、何かこれだけで守るというわけではなくて、まさに多角的にいろいろな努力をしていかなければいけない。ごく大ざっぱに言わせていただければそういうことだろう、こういうふうに思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/90
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091・寺崎昭久
○寺崎昭久君 先日、三月十二日にNATOに正式加盟したポーランド、チェコ、ハンガリー三カ国の大使にお会いすることがございました。いずれもかつてはワルシャワ条約機構加盟国であり、今回EUとかではなくてNATOの加盟を優先して選択したということは、やはりそれなりの意味があると受けとめなければいけないだろうと思います。
実は五月十一日に、超党派で構成している日米欧議員連盟というのがございまして、ここに三カ国の大使に御出席いただいてお考えを聞くことがございました。チェコのようにユーゴと国境を接している国もありまして、そういう激動している状況の中で、自国の安全とか平和とか生命、財産をどう守るかということに腐心されているというのが大変伝わってきて感動的だったという印象を持ちました。
その折に、ハンガリー共和国のシュディ・ゾルターン駐日大使が次のような所見を述べられております。すなわち、我々が昔から自由と独立に対して持ち続けてきた強い意志、意欲こそハンガリー人を一九五六年の革命のときに立ち上がらせた力だったのです。革命の火は外国軍に残忍に踏みつぶされました。しかし、これがかえって革命のために戦い続けてきた人々を奮起させ、鉄のカーテンを壊す一番最初の国として東ドイツ難民を西側へ逃すことを許し、結果的にベルリンの壁崩壊を推し進めたということになります。
自分たちがNATOを必要としている理由というのは、我が国の継続的な社会経済近代化にとって外国の条件を保障する最善の方法を与えてくれるからですと。つまり自由主義諸国、自由主義経済の国としておつき合いいただけるという意味だろうと思います。いろいろこれからやることもあるけれども、自分たち新加盟国が同盟の力になることを証明して、今ウエーティングサークルにいる国に対してもパートナーシップを持ち続けるように努力しますというようなことをおっしゃっておりました。
このハンガリーの選択というのは、今外務大臣がおっしゃられたように、今後の日本の安全保障を考える上で何がキーになるのかということを示唆する材料でもあるのかなと思っているわけであります。
私の持ち時間がなくなりましたので、最後に、三カ国がなぜEUやWEUではなくてNATOに加盟されたのかと認識されていますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/91
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092・高村正彦
○国務大臣(高村正彦君) NATOにも加盟したいと言っていますし、恐らくEUにもその三カ国は加盟することを希望しているだろう、こういうふうに思いますから、なぜEUではなくてNATOにというのはちょっと答えられませんが、いずれにしても同盟関係を持つためには価値観を共有するということが必要なので、やはり自由、民主主義、市場経済、そういった価値観を共有する国と同盟関係に入りたい、こういうふうに考えられたんだと私は理解をしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/92
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093・伊藤基隆
○伊藤基隆君 民主党・新緑風会の伊藤基隆でございます。
寺崎委員の……(「ちょっと、自民党の席は少な過ぎるんじゃないですか。四名で本当に審議する気があるのかどうか。委員長、ちょっととめてください」と呼ぶ者あり)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/93
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094・竹山裕
○理事(竹山裕君) 速記をとめて。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/94
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095・竹山裕
○理事(竹山裕君) 速記を起こして。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/95
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096・伊藤基隆
○伊藤基隆君 寺崎委員の関連で質問するわけでございますが、前回、十二日に私は、新ガイドラインとこの法案の関係を主にしてシリーズ的に聞くというふうに申し上げておきました。
新ガイドラインに至る中間取りまとめから新指針に大きな変化があることが非常に問題であろうかという認識に基づいてお聞きしてきたわけでございます。引き続きその視点に立ってお伺いします。
まず、新指針の三項三、「日米共同の取組み」の項で、中間取りまとめでは「日米両国の関係機関の関与を得て、両国間の調整メカニズムを平素から構築しておく。」となっていたものが、新指針においては「日米両国政府は、緊急事態において関係機関の関与を得て運用される日米間の調整メカニズムを平素から構築しておく。」と調整メカニズムの役割が変わりました。
〔理事竹山裕君退席、委員長着席〕
さらに、中間報告において「日米両国政府は、日本に対する武力攻撃及び周辺事態に際して効果的な協力が行われるよう、計画についての検討を含む共同作業を進め、日米協力の基礎を構築する。」、この共同作業を検証して「自衛隊及び米軍をはじめとする日米両国の関係機関による円滑かつ効果的な対応を可能とするため、共同演習・訓練を強化する。」とされていたものが、新指針において以下のとおり大幅に書きかえられました。すなわち、新指針は「日米両国政府は、日本に対する武力攻撃に際しての共同作戦計画についての検討及び周辺事態に際しての相互協力計画についての検討を含む共同作業を行う。このような努力は、双方の関係機関の関与を得た包括的なメカニズムにおいて行われ、日米協力の基礎を構築する。」、さらに「日米両国政府は、このような共同作業を検証するとともに、自衛隊及び米軍を始めとする日米両国の公的機関及び民間の機関による円滑かつ効果的な対応を可能とするため、共同演習・訓練を強化する。」ということに変化をしております。
そこで、防衛庁長官に一つ一つ聞きたいわけでありますが、まず一つは共同作戦計画、これは旧指針にもありましたけれども、この共同作戦計画及び相互協力計画が正面から掲げられた理由はなぜか。このことについてお尋ねします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/96
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097・野呂田芳成
○国務大臣(野呂田芳成君) 旧指針の作成後、冷戦が終結したということで国際情勢は大変大きく変化したわけでございますが、アジア太平洋地域においては不安定、不確定な要因が依然として存在しておる。この地域における平和と安定の維持は日本の安全のために一層重要になっているわけであります。
ガイドラインは、日本に対する武力攻撃及び周辺事態における日米おのおのの役割並びに相互の協力、調整のあり方について一般的な大枠ないし方向性を示すものでございますが、緊急事態に際し日米が整合性のとれた行動を円滑かつ効果的に実施するためには、平素から日米間で計画についての検討を実施し、その検討成果を蓄積し、日米おのおのの計画に反映することが有益であると考えられたところであります。
このような観点から、御指摘の日本に対する武力攻撃についての共同作戦計画の検討や、あるいは周辺事態についての相互協力計画の検討を日米が共同で取り組むべき作業として示しているものでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/97
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098・伊藤基隆
○伊藤基隆君 それでは、中間取りまとめ以来、平素から構築しておくものとされる調整メカニズムの構築、すなわち機関はどうなっているのか。関与する関係機関に民間の機関も入るのか、あるいは地方自治体も入るのか、この点についてお聞かせいただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/98
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099・野呂田芳成
○国務大臣(野呂田芳成君) ガイドラインにおきましては、緊急事態に際して日米がおのおの行う活動の間の整合性を図るとともに、適切な日米協力を確保するため、このような事態に際して日米が行う活動の間の調整を行うためのメカニズムとして調整メカニズムを平素から構築しておくこととされているところであります。
日米両国政府は、現在具体的な調整の方法やメンバー等を含め調整メカニズムの構築等につき検討中であります。確定的なことは現段階ではまだ申し上げられないわけでございますが、調整メカニズムは日米両国政府間のメカニズムであり、御指摘のように民間の機関や地方公共団体を関係機関に含めることは念頭に置いていないところでございます。
いずれにしましても、この法案の審議の状況を踏まえつつ、できるだけ早く調整メカニズムを構築できるよう努めてまいりたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/99
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100・伊藤基隆
○伊藤基隆君 今、長官の答弁でまだ検討中ということでありますけれども、この関係機関で、私としては恐らくアメリカ側の関係機関とは国防省、国務省というふうに考えますが、日本側は各省庁初め多数の機関が関与することになるのではないかと考えますが、いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/100
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101・柳澤協二
○政府委員(柳澤協二君) 調整メカニズムそのものの構築は今鋭意検討中でございますが、米側については、先生言われました国防省、国務省、それに恐らく太平洋軍、在日米軍といったメンバーがかかわってくるだろうと思っております。日本側については、当然、防衛庁、外務省を中心といたしまして、その他、現在包括的メカニズムの方では関係省庁の会議をおつくりいただいておりますので、恐らくそういった形で関係の省庁にかかわっていただくようなことになるだろうと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/101
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102・伊藤基隆
○伊藤基隆君 質問を一項目通告しているのを今若干答えられたので、それは飛ばします。
そこで、包括的メカニズムに対する新聞報道がありまして、大分前でありますが、九七年十一月六日、読売新聞夕刊において、この件は読売新聞一紙だけの報道でございましたが、次のような記事が出されました。
日米両国政府は六日まで、というのは九七年十一月六日でしょうが、
新しい日米防衛協力のための指針(ガイドライン)に関連する作戦計画の策定や法整備などを進める実行組織となる「包括的メカニズム」の骨格について、①両政府の外務、防衛閣僚による「日米安全保障協議委員会(SCC、2プラス2)」②防衛庁統合幕僚会議と在日米軍など制服組で作る「共同検討委員会」③日本政府の十七省庁で作る「関係省庁局長等会議」──の三本柱で構成するとする概要を固めた。
これによって両国政府は新ガイドラインを踏まえた日本周辺有事のための「相互協力計画」と、日本有事のための「共同作戦計画」の策定に本格的に着手することになる。
この報道を見ますと、この委員会で、例えば月原先生が質問された件についての政府側の答弁がございましたが、聞いている限りにおいては余り組織的といいましょうかシステム的な答弁になっておりませんでしたが、この報道を読み返してみると包括的メカニズムのイメージが明らかになってきます。これは「日本有事のための「共同作戦計画」」という記事も載っておりますけれども、これが実態としてのイメージを描くのに非常にわかりやすいわけでありますが、新聞報道でございます。この実態はこの内容と比べてどうなのか。この辺について防衛庁長官のお考えをお聞かせいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/102
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103・柳澤協二
○政府委員(柳澤協二君) ただいま先生の包括的メカニズムについての御質問でありますが、これは昨年の一月二十日の2プラス2におきまして、結果的には報道されたところとほぼ近い形ででき上がっております。つまり、2プラス2をヘッドにいたしまして、局長級の防衛協力小委員会、さらに制服といいましょうか自衛隊と在日米軍の間の基礎的な作業を行います共同計画検討委員会、さらに関係省庁の会議体としての局長級の会議といったものが基本的な構成要素というふうにしてでき上がっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/103
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104・伊藤基隆
○伊藤基隆君 イメージがよくわかりました。
さて、外務大臣にお伺いします。新ガイドラインの四項の一、「日本に対する武力攻撃が差し迫っている場合」の項に中間取りまとめにはなかった項目が入りました。一つは、「日本は、米軍の来援基盤を構築し、維持する。」、二つは、「日米両国政府は、事態の拡大を抑制するため、外交上のものを含むあらゆる努力を払う。」、この文言が加えられておりますが、この外交上の努力の必要の確認というのは当然のことというふうに理解すればいいのかもしれませんが、「来援基盤を構築し、維持する。」はかなり重要な意味を持つのではないか。すなわち構築される米軍の来援基盤とは何か。あるいは、これはベルギーなどでの実例がある米軍の武器弾薬の集約基地、いわゆるポンカスを提案しているものか。少なくとも米軍に対する新たな施設・区域の提供、すなわち基地の拡大は必要となるのではないか。そうすれば、関連する法整備はどうなっていくのか。この点について外務大臣の御答弁をお願いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/104
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105・高村正彦
○国務大臣(高村正彦君) 新たな日米防衛協力のための指針における「日本に対する武力攻撃が差し迫っている場合」の項で言及のある米軍の適時の来援を促進するための基盤の構築、維持とは、我が国に対する武力攻撃が発生した場合に、来援する米軍の活動が円滑に実施されることを確保するということを意味するわけでありますが、新たな施設・区域の提供を含め、このために我が国が実施する行為の具体的内容は、事態の推移、来援する米軍の兵力の規模、内容等によって異なるために一概に申し上げることはできないわけでございます。
なお、我が国に対する武力攻撃が発生した場合の米軍の行動にかかわる法制、自衛隊及び米軍の行動に直接にはかかわらないが国民の生命、財産の保護等のための法制については安全保障上の課題であると認識しておりまして、その取り扱いについて今後検討していきたいというのが政府の立場でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/105
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106・伊藤基隆
○伊藤基隆君 今の答弁をお伺いしますと、すなわち来援基盤を構築することについては、私の触れた内容についての可能性があるというふうに理解されます。
法整備は外務大臣の答弁のとおりで進められるのかと思いますが、内容の問題は別でございますけれども、そのように理解いたします。
防衛庁長官にお伺いします。
新ガイドライン四項の二の「日本に対する武力攻撃がなされた場合」の項で、私らが持っている中間取りまとめの資料によりますと、二十二行あったのが八十七行へと内容が大幅に膨らんで、書き加えられております。
中間取りまとめでは概論と項目だけが示されていました。すなわち、「(イ)指揮及び調整 (ロ)調整メカニズム (ハ)通信電子活動 (ニ)情報活動 (ホ)後方支援活動(補給、輸送、整備、施設及び医療を含む。)」。新指針は、「(一)整合のとれた共同対処行動のための基本的な考え方 (二)作戦構想 (三)作戦に係る諸活動及びそれに必要な事項」から構成され、それぞれテーマについて詳細を明らかにしております。これは中間取りまとめの段階からの検討の発展となるというふうに考えますが、新たな疑問点が数多く示されています。
すなわち、先ほど申し上げました新指針の「日本に対する武力攻撃がなされた場合」において、「自衛隊及び米軍が作戦を共同して実施する場合には、双方は、整合性を確保しつつ、適時かつ適切な形で、各々の防衛力を運用する。その際、双方は、各々の陸・海・空部隊の効果的な統合運用を行う。」というふうになっています。中間取りまとめでは、「自衛隊及び米軍の各々の統合運用の重要性に留意する。」となっていたものが、「統合運用を行う。」と断定し、しかも陸海空の統合運用とされました。
統合という用語は三軍のときに使うようでございます。合同の用語は陸海といった三軍でないときに用いられる。なお、国が異なると共同ということになるそうでございますが、陸海空の統合運用とされた、その意味することは何か。この点についてお伺いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/106
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107・野呂田芳成
○国務大臣(野呂田芳成君) かなり長い御質問でございましたので、正確に委員の質問を把握しているかどうかわかりませんがお答え申し上げます。
まず、従来の指針の作戦構想は陸上作戦、海上作戦それから航空作戦に区分され、それぞれについて日米の関係する部隊が共同して実施されることとなっていたわけであります。
他方、これまでの米軍との共同作戦計画についての研究、共同演習等を通じて、統合軍である米軍との共同という観点から、自衛隊の統合運用の重要性が認識され、防衛大綱においても各自衛隊の統合的かつ有機的な運用に特に配慮する旨の考え方を示しております。新たな指針の作戦構想も、作戦等の項目を機能別に整理した上で、各作戦の主体も自衛隊、米軍とし、日米おのおのの統合運用を踏まえ、記述することとしたわけであります。
また、指針の前提にも記述されておりますように、指針及びそのもとで行われる取り組みは、いずれの政府にも立法上、予算上または行政上の措置をとることを義務づけるものではなく、旧指針と比較し統合運用が義務化されているわけでもないわけでございます。
中間取りまとめとの違いが起こっているわけでありますが、中間取りまとめは平成九年六月の時点までの防衛協力小委員会における作業の概要を示したものであります。その後のさらなる作業の結果、修正や追加があり得るとの前提で公表されたものであります。新たに指針の作戦構想は、中間取りまとめの公表以降、新たな作戦の考え方、装備、技術の進展、弾道ミサイルによる攻撃等の新たな要素の脅威等の要素を勘案しつつ、さらに検討を行った成果を踏まえて記述されたものでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/107
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108・伊藤基隆
○伊藤基隆君 今淡々と、統合運用ということが事態の推移から両国の三軍体制が共同して行うことになったのだという答弁がございましたが、私は統合運用というふうにされたこと自体を重要視しているわけでありまして、統合運用とした意味、中間取りまとめ段階では「統合運用の重要性に留意する。」と研究課題のような形で取り扱われたのが「統合運用を行う。」というふうに義務化されたということの持つ軍事的な意味についてお伺いしているわけです。そういうふうになったじゃなくて、これはどういう意味を持っているのかということについて。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/108
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109・柳澤協二
○政府委員(柳澤協二君) その統合という文言は、旧指針では余りイメージされずに実は新指針の作業の過程で出てきておりますが、それは旧指針以来の日米の共同研究ですとかあるいは共同訓練などを通じまして、実際の日本防衛の場面に当たりましては、それぞれの軍種ごとに日米で動くというよりは、自衛隊は自衛隊でやはり陸海空の力をうまく組み合わせて運用していくということが趨勢としても一般的になってまいりました。実際の運用を考えますと、やはり統合ということ抜きには現実の問題として考えられない状態になってきております。
また、大臣からも申し上げましたように、米軍そのものが統合軍という形で動いておりますので、自衛隊の方もそれに合わせて統合というコンセプトを正面から打ち出そうという考え方をとったわけでありまして、先生言われる中間取りまとめ段階といわゆる最終版のガイドラインの表現の差はございますけれども、その認識は、今申し上げたような旧ガイドライン策定以来の日米のいろいろな共同研究等の積み重ねの上に立って、そこの統合の重要性という共通の認識に立って書かれたものでございまして、その意味で基本的に中間取りまとめとその最終的な指針で大きく意味合いが違うということはないだろうというふうに思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/109
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110・伊藤基隆
○伊藤基隆君 中間取りまとめが新ガイドラインになったその変化という認識はあって、それが整理されたというふうに今答弁の中で伺ったわけでございますけれども、少し中身について触れると余計鮮明になるというふうに思うんです。
先ほど防衛庁長官が、旧ガイドラインでは作戦構想が陸上作戦、海上作戦、航空作戦と別建てになっていたと。新指針も作戦構想では「日本に対する航空侵攻に対処するための作戦」、「自衛隊及び米軍は、日本に対する航空侵攻に対処するための作戦を共同して実施する。」、(ロ)として「日本周辺海域の防衛及び海上交通の保護のための作戦」として「自衛隊及び米軍は、日本周辺海域の防衛のための作戦及び海上交通の保護のための作戦を共同して実施する。」、(ハ)として「日本に対する着上陸侵攻に対処するための作戦」として「自衛隊及び米軍は、日本に対する着上陸侵攻に対処するための作戦を共同して実施する。」、これらが陸海空の作戦構想でありますから、米軍と三軍体制の統合ということになろうかと思うんです。
そこで、お伺いしますが、現在、陸上、海上、航空各自衛隊の統合運用の実態が日本であるのかどうか、この点についてお聞かせください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/110
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111・柳澤協二
○政府委員(柳澤協二君) 先ほども申し上げましたように、アメリカと共同訓練をしたり、いろいろアメリカの戦術思想等を吸収する過程で、近代戦におきますところの統合運用の重要性というのは自衛隊においても当然認識されております。自衛隊は、もともと防衛庁長官をヘッドといたします単一の組織でございます。基本的にはそういう形で、大きな意味では統合的な運用ができるその制度的な基盤はあると思っております。
さらにそこのところに加えまして、現実の場面で、先生今触れられましたように、陸上作戦というような切り口ではなくて、対着上陸侵攻のときには、これは陸上自衛隊だけではございませんで、やはり海上自衛隊の艦艇ですとか航空自衛隊の支援戦闘機といったようなものがそれぞれ協力をして対応することになるわけでありますので、現に私どもの毎年の訓練、演習の中でもそういった項目を取り入れてその統合の実が上がるような工夫をしているところであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/111
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112・伊藤基隆
○伊藤基隆君 統合の実が上がるような工夫をしていて戦術的な重要段階での米軍との三軍共同ということになるというと、これはガイドラインにおいては日本に対する武力攻撃がなされた場合、日本有事の米軍と日本の三軍統合なんですね。三軍統合共同作戦、このことは非常に重要だと思うんです。
そこに航空がいて海上がいて陸上がいるわけです。陸上がいるというのは着上陸侵攻という水際のような感じもありますが、陸上自衛隊、アメリカ陸軍がかかわるということは大変な問題じゃないか。それから、航空が共同作戦をやるとなると、これは先制攻撃の可能性もそこに秘められているんじゃないか。防衛だけの航空作戦ということもあり得るかもしれないけれども、先制攻撃からさらに発展する段階で陸上部隊の派遣ということにもなるんじゃないかということで、新ガイドラインを文字どおり見て今質問してお答えいただいたことからすると、大変日本有事に際してそれが拡大展開になるおそれがあるんじゃないかという感じがいたしますが、その点をこれは防衛庁長官にお答えいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/112
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113・柳澤協二
○政府委員(柳澤協二君) まず事実関係を御説明させていただきますけれども、もちろん先生言われておりますように、今の御議論は日本有事の際の日米共同対処のときの問題でありまして、そしてここで申し上げている統合というのは自衛隊、米軍がおのおのの指揮系統で行動する中で、自衛隊として着上陸侵攻を阻止するためには陸海空がそれぞれ力を合わせるということをこの統合で言いあらわしているわけであります。
そして、米軍との共同ということになりますと、これはガイドラインにも表現がございますように、例えば旧ガイドラインでは、いわゆる日本は防勢作戦を行って米軍は攻勢作戦を行うというような役割分担でございますが、これは基本的に新ガイドラインでも踏襲をしておりまして、例えば新ガイドラインでは、「自衛隊は、主として日本の領域及びその周辺海空域において防勢作戦を行い、米軍は、自衛隊の行う作戦を支援する。米軍は、また、自衛隊の能力を補完するための作戦を実施する。」、こういう表現になっておりまして、先生のおっしゃるような意味でアメリカとの協力というのは非常に大切でございますけれども、機能的に米軍の行っているものと全く一緒になるというようなことまでを考えているということではないということであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/113
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114・伊藤基隆
○伊藤基隆君 それではお尋ねしますが、先ほど私は、統合の用語は三軍のときに使うんだ、合同の用語は陸海といった三軍でないときに使われる、国が異なると共同になるということについては、これは正しい理解でございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/114
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115・柳澤協二
○政府委員(柳澤協二君) おおむねおっしゃるような意味で私どもも使いならしております。
ただ、統合というのは、要するに軍種という言葉で言わせていただきますが、異なった軍種間が協力をしていくという非常に幅広い概念でありまして、必ず陸海空三つ全部そろわなければ統合ではないということはないと思っております。
そして、国が違いますと、日米の間ですと共同という言い方をしておりますのは先生の御指摘のとおりであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/115
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116・伊藤基隆
○伊藤基隆君 私は、この項の質問はもっと簡単に行ってしまうのかなと思ったら、少し複雑になってきました。
何で私があえて新ガイドラインの四項の二、「(二)作戦構想」について書かれていることを読み上げたかということであります。すなわち、(イ)(ロ)(ハ)とありまして、先ほど答弁は、日本有事に際して日本の自衛隊の統合的な作戦構想について述べたんだと言いましたが、ガイドラインにおいては、例えば「日本に対する航空侵攻に対処するための作戦」として「自衛隊及び米軍は、日本に対する航空侵攻に対処するための作戦を共同して実施する。」となっている。これは海域の防衛についてもそうだし、着上陸侵攻についても「共同して実施する。」となっています。
ということは、日本有事に対して日米両軍が三軍統合で共同して作戦を実行するということですね。先ほどの答弁とちょっと違うんじゃないですか。自衛隊だけの単独の統合作戦だと言いましたけれども、違うんじゃないですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/116
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117・柳澤協二
○政府委員(柳澤協二君) 先生言われるように、非常に表現が複雑になっておる部分で恐縮でありますが、先生が今挙げられました「日本に対する武力攻撃がなされた場合」の「基本的な考え方」の(ロ)のところで、「その際、双方は、各々の陸・海・空部隊の効果的な統合運用を行う。」ということで、統合という概念から出てまいりますのは、米軍なら米軍、自衛隊なら自衛隊の陸海空の部隊の間での、それぞれの三軍種の間の統合ということであります。
そしてまた、今、先生が言われました作戦構想の中で書かれております航空侵攻その他の作戦を共同して実施するというのは、これはまさに日米が日本有事の際、共同して対処するということで、さらにその際の大まかな役割分担としては、先ほど私が申し上げましたように、自衛隊は主として日本の周辺海空域における防勢作戦を行い、米軍はその自衛隊の能力の及ばないところを補完する、こういう役割分担である、こういう構造になっているわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/117
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118・伊藤基隆
○伊藤基隆君 しつこいようですが、防衛庁長官にお聞きします。
すなわち、周辺事態関連法案で想定している部分と違う内容のものが新ガイドラインにある。すなわち、日本有事に対して日米の共同作戦がとられることがあるということを確認していいわけですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/118
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119・柳澤協二
○政府委員(柳澤協二君) これは、新ガイドラインで改めてと申しますよりは、旧ガイドラインのときからそういうコンセプトで、もともと日米安保条約に基づいて日米が日本有事に共同対処するという考え方が出てきているものであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/119
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120・伊藤基隆
○伊藤基隆君 旧ガイドラインにあるのも承知しておりますけれども、今この周辺事態関連法を審議している段階で着目すべき事案として私は取り上げているわけでありまして、この問題は大変な疑問点としてというか、新たな問題提起になってくるんじゃないかと思います。また後ほど何らかの機会に、外交・防衛委員会とかへ行ってお聞きする場面があるかと思います。
次に、新指針の四項「日本に対する武力攻撃に際しての対処行動等」の二項「(2)作戦構想」、そこの(ニ)に「その他の脅威への対応」があります。これは全く新たに書き加えられたものであります。「その他の脅威への対応」として、「自衛隊は、ゲリラ・コマンドウ攻撃等日本領域に軍事力を潜入させて行う不正規型の攻撃を極力早期に阻止し排除するための作戦を主体的に実施する。その際、関係機関と密接に協力し調整するとともに、事態に応じて米軍の適切な支援を得る。」となっています。
そこで、防衛庁長官にお伺いします。
「ゲリラ・コマンドウ攻撃等」は、その規模、態様など、具体的にどのような事態を想定しているのか。あるいは密接に協力し調整する関係機関を列挙して、その協力、調整の手続を明らかにしていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/120
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121・野呂田芳成
○国務大臣(野呂田芳成君) このガイドラインで示されております「ゲリラ・コマンドウ攻撃等」は、我が国に対する武力攻撃であって我が国の領域に軍事力を潜入させて行う不正規型の攻撃のうち、不正規軍の要員等により破壊や襲撃等の活動を行うもの、あるいは特殊部隊により破壊工作、要人暗殺等の活動を行うものを念頭に置いているわけでございます。これらの攻撃は一般にその規模が比較的大きくはないものと考えられますが、指針において規模を具体的に想定して記述しているわけではございません。
このガイドラインにおいては、ゲリラコマンド攻撃等への対応に際し関係行政機関と密接に協力し調整するとされておりますが、この関係機関は一般的な意味で記述されているものでございまして、例えば警察機関が、これは警察とか海上保安庁でございますが、該当し得るものと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/121
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122・伊藤基隆
○伊藤基隆君 この「その他の脅威への対応」の二項で、「自衛隊及び米軍は、弾道ミサイル攻撃に対応するために密接に協力し調整する。米軍は、日本に対し必要な情報を提供するとともに、必要に応じ、打撃力を有する部隊の使用を考慮する。」。この弾道ミサイル攻撃については、中間取りまとめをさらに一歩進め具体的な記述をしたものでありますが、北朝鮮のノドンを想定しているのでしょうか、あるいはその攻撃能力をどの程度評価しているか、防衛庁長官のお考えをお聞きしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/122
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123・野呂田芳成
○国務大臣(野呂田芳成君) ガイドラインにも明記されているとおり、指針は、我が国有事を含む緊急事態等における日米両国の役割並びに協力及び調整のあり方についての一般的な大枠及び方向性を示すことを目的としたものでありまして、特定の国や地域における事態を念頭に置いて作成されたものではございません。したがって、指針の四の「日本に対する武力攻撃に際しての対処行動等」における弾道ミサイル攻撃への対応に係る記述も、特定の国による攻撃を想定したものではないということをまず御理解いただきたいと思います。
ノドンの攻撃能力をどの程度に評価しているかという御質問でございますが、北朝鮮は八〇年代半ば以降、スカッドBやスカッドCを生産、配備するとともに、引き続きノドンやテポドン一号、二号などの開発を行っており、ミサイルの長射程化を着実に進めているところであります。
御指摘のノドンミサイルにつきましては、種々の情報を総合しますと、北朝鮮がその開発を既に完了しており、その配備を行っている可能性が高いと判断しております。この点は一月に韓国の国防長官と会ったときも認識が同じでございましたし、先般、米国のコーエン国防長官と会談したときも同じ認識である旨の発言があったところであります。
ノドンの射程は、昨年八月の北朝鮮によるミサイル発射など各般の情報を総合した結果、射程距離千三百キロに達すると見られ、我が国のほぼ全域がその射程の中に入る可能性があるものと評価しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/123
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124・伊藤基隆
○伊藤基隆君 大変な脅威でございます。
さて、そこで引き続き防衛庁長官にお聞かせいただきたいんですが、「米軍は、日本に対し必要な情報を提供するとともに、必要に応じ、打撃力を有する部隊の使用を考慮する。」、「打撃力を有する部隊」とあえて書いてあります。部隊というのはほとんど打撃力を保持するんだと思いますけれども、この「打撃力を有する部隊」とは何でしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/124
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125・野呂田芳成
○国務大臣(野呂田芳成君) まず、この弾道ミサイル攻撃に関し米軍と密接に協力し調整するくだりは、ガイドラインにおいては、弾道ミサイル攻撃がされる場合には、「自衛隊及び米軍は、弾道ミサイル攻撃に対応するために密接に協力し調整する。」こととされておりますが、ここでは平素から行われる日米間の関連の情報交換等の協力が想定されます。特に弾道ミサイルの発射に関する情報につきましては、先般の北朝鮮によるミサイル発射の際においても米側より速やかな情報提供が行われたところであります。
お尋ねの打撃力と申しますのは目標を破壊する能力を指すものでありまして、米軍が使用を考慮する「打撃力を有する部隊」とは、あえて具体的に申し上げれば、例えば米軍機による敵の本拠地への攻撃を実施し得る部隊等の意味などが考えられると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/125
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126・伊藤基隆
○伊藤基隆君 爆撃機による先制攻撃、敵の基地に対する攻撃という答弁がございましたが、まさか核攻撃を想定されているわけじゃないでしょうね。その点についてお聞かせいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/126
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127・野呂田芳成
○国務大臣(野呂田芳成君) ガイドラインにおいて、弾道ミサイル攻撃に対応するために密接に協力、調整する旨、先ほど述べたところでありますが、これは大量破壊兵器を運搬し得る弾道ミサイルの世界的な拡散という状況を踏まえまして日米が共同して対応する必要性を一般的な意味で述べたものでございまして、核とかTMDの導入のようなものを全く予断するものじゃございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/127
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128・伊藤基隆
○伊藤基隆君 次の質問で防衛庁長官にお聞きしたいと思いましたそのTMD計画を念頭に置いてこの項が成り立っているんじゃないかということについて、改めてここでお聞かせいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/128
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129・野呂田芳成
○国務大臣(野呂田芳成君) 失礼いたしました。
先ほども申したとおりでございますが、弾道ミサイル攻撃に対応するために密接に協力、調整する旨書かれておりますが、これは大量破壊兵器を運搬し得る弾道ミサイルの世界的な拡散といった状況を踏まえまして、日米が共同して対応する必要性を一般的な意味で述べたものでありまして、TMDの導入を予断するものではございません。
なお、弾道ミサイル防衛につきましては、弾道ミサイルの拡散等の状況を踏まえ、我が国防衛政策上の重要な課題としてさまざまな観点から検討を行っているところであり、今後とも指針とは別個の問題として引き続き検討を進めてまいる所存でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/129
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130・伊藤基隆
○伊藤基隆君 少し質問を飛ばします。
そこで、防衛庁長官に引き続きお尋ねします。
新指針の「日本に対する武力攻撃に際しての対処行動等」に「後方支援活動」がありまして、「日米両国政府は、後方支援の効率性を向上させ、かつ、各々の能力不足を軽減するよう、中央政府及び地方公共団体が有する権限及び能力並びに民間が有する能力を適切に活用しつつ、相互支援活動を実施する。」、このように新指針には中央政府、地方公共団体、民間の相互支援活動について明記されております。
今、周辺事態をめぐって民間役務強制措置などが議論されておりますけれども、この新指針二項の「日本に対する武力攻撃がなされた場合」における後方支援活動でございます。すなわち、日本有事における後方支援活動でありまして、後方支援は周辺事態の課題であるだけでなく、日本有事の際の課題であるというふうに理解されます。このイメージを明らかにしていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/130
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131・柳澤協二
○政府委員(柳澤協二君) 先生言われましたとおり、ガイドラインにおきまして、日本に対する、いわゆる日本有事の場合の後方支援活動に関しましても自衛隊と米軍が効率かつ適切に後方支援活動を実施するということ、あるいは日米両国政府が中央政府及び地方公共団体の権限、能力、民間の能力を適切に活用するといった基本的な考え方が述べられておるわけであります。また、この指針全体といたしましては、さらに特に配慮すべき事柄として補給、輸送、整備、施設、衛生といった各項目について、日米おのおのの役割分担をこの指針の記述を通じて明らかにさせていただいたところであります。
具体的にどういった協力になるか。これは日本有事でございますから、現在御審議いただいております周辺事態法の後方地域支援とは異なる場面の問題でございますけれども、その具体的な内容については、緊急時における、まさに日本有事における日米それぞれの対応ぶりにかかわってまいりますので詳しい御答弁は差し控えさせていただきたいと思いますけれども、いずれにしましてもこういう問題についても今後地方公共団体等の御理解を得られるような努力を私どもとして十分していくつもりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/131
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132・伊藤基隆
○伊藤基隆君 最後の質問になると思います、質問自体が長いものですから。防衛庁長官にお尋ねいたします。ぜひとも防衛庁長官にお答えいただきたい。
一九九九年三月三日の朝日新聞によりますと、一九九四年に朝鮮半島の緊張が高まったときに在日米軍が日本側に求めた支援内容が明らかにされております。これらは千五十九項目に及び、ガイドライン関連法案では明らかにされていない省庁や自治体、民間に求める協力の下敷きとなるものと見られます。
新聞報道でございますけれども、例えば空港では、成田、福岡、長崎、那覇の使用。二十四時間通関態勢。厚木基地への出入国管理官の派遣。新千歳、関西、福岡、宮崎、鹿児島、那覇における施設、通信、労務、宿泊給食、非戦闘員避難に関する支援。
港湾では、松山、大阪、名古屋、水島、福岡、神戸港の使用。苫小牧、八戸、天願、金武湾、那覇港など公共岸壁の使用。水先案内人、タグボート、船舶修理、荷役人などの港湾支援。各港湾での荷役作業や資器材を保管する地域の確保。
その他の施設としては、米海軍横須賀基地、佐世保基地へのミサイル垂直発射装置搭載施設、艦船停泊・修理施設の提供。北海道に重火器の実弾射撃が可能な両用戦訓練場の提供。海上自衛隊の八戸、厚木、岩国、鹿屋、那覇基地を米海軍の哨戒機P3C部隊が使用すること。
輸送としては、川上弾薬庫からの弾薬輸送、十トントラック百四十八台。沖縄の海兵隊キャンプと岩国基地で、トラックとトレーラー計千三百七十台、クレーンとフォークリフト計百十四台。沖縄で八百六十五個、佐世保で二百四十個、岩国で二百二十八個のコンテナと、その輸送。沖縄地区の港湾で十一トントラック九十六台。
補給としては、NEO支援用の簡易寝台や毛布など約三万セット。うち二・五万セットは嘉手納用。
警備としては、警察、海上保安庁、自衛隊、日本人基地従業員による米軍基地・施設などの警備というのが出ております。
これらはそれぞれ意味合いがその記事の中で載せられておるわけでありますけれども、その点については質問の時間がありませんので省きますが、審議している法案の基本計画は第五条において国会の承認を得なければならないことになっています。しかし、問題は実施要項でありまして、実行は実施要項によると。当然にして、平素から新ガイドラインの日米相互協力に基づく幾つかのケースに即した実施要項メモがあらかじめ準備され、これらの組み立てによって実施要項が成立することになります。しかも公開されません。
これらの状況から考えると、周辺事態における後方支援、それにかかわる関係省庁、自治体、民間の協力体制は、それは実態としてはまさに防衛庁主導による有事体制、有事法下の体制と言えるのではないかというふうに思います。
防衛庁長官の認識をお聞かせいただきまして、質問を終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/132
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133・野呂田芳成
○国務大臣(野呂田芳成君) 申すまでもありませんが、日米間においては安保条約体制のもと、平素からいろいろなレベルで安全保障上の情報交換や意見交換を行ってきているところであります。このような意見交換等の中で、緊急事態に際しての米軍に対する我が国の支援についてもいろいろな形で議論が行われてきたことは事実であります。
しかしながら、御指摘の報道にあるように、米側からの支援要求として固まったものを防衛庁として受領したとか、また防衛庁としてこのような日米間の議論を踏まえて米軍に対する具体的な支援内容の検討作業を取りまとめたという事実は全くございません。
衆議院の方でもこの問題についていろいろ議論がありまして、今、委員が一々御指摘あったように、港湾や空港の具体的な名前を挙げて運輸大臣にも質問がありましたが、運輸大臣はそのようなことは一切聞いていない、全く無関係であるという答弁がございました。
それはそのとおりでありまして、今御指摘になったような飛行場や空港を決めるとすれば、私どもとしては政府の見解を統一しなきゃいかぬのですから、運輸省に相談するのは当然でありまして、運輸大臣も知っておるわけでありますが、そのような事実がないわけですから、一切相談していないということであります。
新たな指針は、平成八年四月に発出された日米安保共同宣言において、旧ガイドラインの見直しの改正についても同意されたことを受けまして、常日ごろから行っている議論も踏まえつつ、新たな枠組みのもとで行われた見直し作業の成果として取りまとめたものであります。御指摘のように、平成五年から六年にかけての議論が直接の基礎になっているというものではございません。
また、御指摘の関係行政機関の措置や地方公共団体その他の国以外の者に対する協力につきましては、我が国周辺の地域における我が国の平和及び安全に重要な影響を与える事態に対して、内閣の判断と責任のもとにおいて閣議決定される基本計画に従って行われることでありまして、防衛庁主導で行われるということは当たらないことでありますし、また戦時下の有事体制であるとの御指摘も当たらないものと私どもは考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/133
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134・伊藤基隆
○伊藤基隆君 終わります。ちょっとオーバーして済みませんでした。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/134
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135・沢たまき
○沢たまき君 公明党の沢でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
私は学童疎開の経験者でもありまして、焼夷弾の降る中、母と二人で逃げ惑った経験もあります。戦争ほど悲惨なものはない、戦争ほど残酷なものはないと思う者の一人でございます。そこで、私は、全女性が願っております恒久平和という視点から質問をさせていただきます。
二十世紀を一言で言えば、戦争によって余りにも多くの人が死んでいった世紀であると言明している方もいます。第二次世界大戦だけでも二千二百万人が亡くなり、またスターリンのロシア革命でも一千万人以上が粛清されたのではないかと言われております。今日においてもなお地域紛争が起きております。したがって、私は、防衛と平和という矛盾する論議をしなければならないのが現実であろうと思っております。防衛論と平和論は表裏一体の関係にございますけれども、いずれにしても核兵器全廃、軍縮という恒久平和の方向へ世界が進むためにはどうすればいいか。私たちは全世界の英知を結集して取り組んでいかなければならないと思っております。
これまでも幾多の平和論が展開されております。核の傘論、抑止と対話のバランスによる平和論、国連中心主義による平和論等々、いろいろでございます。
そこで、官房長官にお伺いいたしますが、新しい第三の千年、次の二十一世紀はどのような世紀にしていくべきだとお考えでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/135
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136・野中広務
○国務大臣(野中広務君) 私がお答えするのが適切かどうかわからないのでございますが、外務大臣もいらっしゃるわけでございますので、また外務大臣として補足をいただきたいと思うわけでございますが、せっかくの御指名でございますので私の考え方を申し上げたいと存じます。
委員おっしゃいますように、困難な戦争世代を通じまして大きな犠牲を払いながら、戦後は一貫して国際社会の平和と安定を追求する努力を我々お互いの世代は続けてきたと思うわけでございます。したがいまして、今後ともその努力を怠ってはならないし、二十一世紀はまさしくそういう世紀にしなければならないと思っておる次第でございます。
小渕総理も、さきの通常国会におきます施政方針演説におきまして、我が国の安全と繁栄を確保し、国際社会の中で尊敬され、その地位にふさわしい役割を果たすことによって世界へのかけ橋を築いていくべきであると強い決意を表明されたところでございます。
このような総理の考え方の基本に立ちまして、私どもといたしましても、アジア太平洋諸国及び先進民主主義国の一員といたしまして、各国との二国間関係の強化をさらに努力し、世界経済の安定やさらに開発途上国に対する援助、国連の平和維持活動への一層の協力に取り組んでまいらなければならないと考えておるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/136
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137・沢たまき
○沢たまき君 ありがとうございました。
この悲惨な二十世紀の中でも唯一歴史に残るすばらしいことがありました。それは、四半世紀以上にわたって対立した東西冷戦の終えんです。そして、東西ドイツの壁が無血で取り払われたということであります。このことは、全世界の人々に驚きとまたはかり知れない安心感を与えたまことにすばらしい出来事だったと思いますし、私も、もっと時間がかかるかなと思っていましたが、そのテレビを見ながら感動した一人でございます。
これは、御存じのようにゴルバチョフ・レーガン両大統領の胸襟を開いた首脳会談とゴルバチョフ氏の決断によって開かれたものだと思っております。私は、二十世紀の歴史の中でこれは後世に残って光り輝く出来事だと思っております。大きな教訓として生かすべきだと思っております。
あらゆる形態の戦争、地域紛争が存在した今世紀でありますが、次の二十一世紀の平和のための糧とするためにこれらの研究を行って、例えば二十世紀研究と銘打ってもいいんですが、その事業の創設を国連などに提言をしたらいかがなものでございましょうか。官房長官、いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/137
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138・野中広務
○国務大臣(野中広務君) 委員御指摘のとおりに、ちょうどベルリンの壁がつくられた翌年私はベルリンに伺いました。そしてベルリンの壁が崩壊した翌年またベルリンを訪れることがございました。今お話を聞きながら感慨新たなものがあるわけでございます。おっしゃるように、歴史の転換期におきましては、各国の政治的指導者の果たす役割は非常に大きいものと認識をしており、この教訓をこれからも生かしていかなくてはならないと思っておる次第でございます。
我が国といたしましても、昨年来の金大中大統領、クリントン大統領、さらに江沢民中国国家主席等の訪日並びに小渕総理のロシア、欧州、韓国、米国等の訪問などを通じまして、一連の首脳外交を頂点にいたしまして、国際社会の安定と繁栄を確保するための取り組みを着実に進めてまいったところであります。
二十一世紀をアジアのみならず世界全体にとっての平和と繁栄の世紀といたしますためにも、今後とも首脳同士の個人的信頼関係を過去の歴史に学びながら一層強化し、それを基盤として主体的な外交を行ってまいるべきだと存ずるところでございます。二十一世紀を世界が平和と繁栄を享受しながら個人の尊厳が守られる世紀といたしますためには、二十世紀の歴史的な経験を教訓に役立てていかなくてはならないことは、議員が御指摘になっておるところでございまして、私もその認識を共有するものでございます。
これに関連をいたしまして、明年の国連総会の際には、この開催予定の首脳会議いわゆるミレニアム・サミットは、この半世紀の国連の成果や経験を踏まえながら、二十一世紀に山積みする課題に国連を中心とする国際社会がいかに対応していくべきかにつき、各国首脳が大所高所から意見交換を行う歴史的機会となると言われておるところでございまして、このサミットを実りあるものにするために、我が国としても積極的に取り組んでいかなければならないと考えておるところであります。
そのほかにも、二十世紀の経験を生かし、二十一世紀をよりよい世紀とするべく、議員初め関係皆さん方のお考えも種々伺って、さらに一層検討をしてまいりたいと考えるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/138
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139・沢たまき
○沢たまき君 ありがとうございました。
現在コソボ問題で、NATOの中国大使館誤爆問題において、NATOの諸国と中国の間で調整が行われております。ここで私がすばらしいなと思ったのが、即座にドイツのシュレーダー首相が中国を訪問されたことであります。その結果、江沢民国家主席も電話の会談に応じることになりました。対話外交のこれはもう最たるものだと思っております。
〔委員長退席、理事竹山裕君着席〕
このコソボ問題の中国大使館誤爆について言えることは、たとえNATO側においても、人道に反した場合は決して許されないということの証明ではなかろうかと思います。我が国も、二億ドルの難民支援決定は大変評価をいたしますが、しかしながら、また日本はお金だけかという批判を懸念いたします。今のような官房長官のお話を伺いましたらば、日本としましても、中国側やアメリカに対して友好国である我が国が平和解決に向けて何らかのアプローチは行われたのでしょうか。NATOの問題とはいえ、我が国も人道的立場から積極的にかかわっていくべきではないかと思いますが、外務大臣にお伺いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/139
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140・高村正彦
○国務大臣(高村正彦君) NATOの誤爆によって一般市民や在留外国人が犠牲になっていることは、我が国としても極めて遺憾に思っているわけでございます。このようなことは、当然、アメリカ、イギリス、そしてNATO自体に日本国としても直ちに申し入れをいたしました。
それから、他方、ユーゴにおいては、コソボにおけるユーゴ軍治安部隊による弾圧、非人道的な行為によって多くの犠牲者が発生しており、また周辺諸国に七十万人以上の難民が流出しております。
このような人道上の惨劇に一日も早く終止符を打つためには、コソボ問題の政治解決が不可欠であります。先般のG8外相会合においては、政治解決のための七原則及びこれらを実施するための国連安保理決議の準備につき合意されましたところで、我が国としても国連安保理決議の採択を目指し、G8の一員として積極的に貢献してまいる考えでございます。
G8の中でも、最初からみんな同じ考えじゃないわけでありまして、米英とそれからロシアというのはかなり考えが離れているわけでありますが、そういう中に立ってG8の統一ポジションをつくるために、一般的な原則ではありますが、米英からロシアまで含めてすべてが一致する七つの原則というものを打ち立てることができたわけであります。まだ細部は詰まっていない部分もあるんですが、一応、一般原則というものを打ち立てることができました。
そして、ごく最近の情報によると、G8の七原則というのはユーゴもそれなりの評価をする、こういうことを言っているということでありますので、さらに細部を詰めて平和解決に向かうように努力をしたい、こういうふうに思っているわけでございます。
一つだけ申し上げておきますと、シュレーダー・ドイツ首相が中国を訪問したのは前々から決まっていたことでありまして、G8の首脳として行くということに前々からなっていたということだけは一言申し上げておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/140
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141・沢たまき
○沢たまき君 わかりました。
次に、全世界は今日曲がりなりにも新しい秩序づくりという共通の目標に向かっていると思っております。しかし、武力のみによる秩序づくりは時代おくれと言わなければならないと思っております。ハードパワーから、東西冷戦を無血で終えんさせたというゴルバチョフ、レーガンの知性と勇気と対話で開かれたソフトパワーこそが新しい平和構築のためのキーワードになるのではないかと私は思っております。
我が国としても、新しい秩序づくりに対し、特に人間の安全保障と地域紛争の予防などに主体的に真剣に取り組むべきではないかと思っておりますが、いかがでしょうか。
ここでちょっとお話を変えますが、野中官房長官が、旧日本軍の軍人軍属だった在日韓国人の方々の恩給給付に対して何らかの方法でできないだろうかと検討するように指示をなさいました。今までは解決済みだという一辺倒でございましたけれども、余りにも不合理な扱いをされてきた在日韓国人の方々に、とてもすばらしく、希望を持って道を開こうとなさったことに大変感動しておる一人でございます。日韓の友好関係をさらに深めたいという官房長官の思いを大変感じました。私は、このような外交こそが大切であるし、私はこれこそが人道を重視した外交だと思っております。
関連して伺いますが、恩給検討の件についてある一定の方向が出た段階で、将来、日韓合同の事務局レベルの検討委員会を設置して調整するというお考えはおありでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/141
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142・高村正彦
○国務大臣(高村正彦君) 今の御質問の前半部分だけ私が答えさせていただきたいと思います。
我が国が国際社会における責任ある主要国として冷戦後の新たな国際秩序の形成に主体的に取り組んでいくべきであるのは議員御指摘のとおりでございまして、政府としてこれまでもさまざまな分野で具体的な取り組みを進めてきているところでございます。
人間の安全保障につきましては、人間中心の視点から、難民流出、環境、薬物、国際組織犯罪、貧困、対人地雷等、人間の生存、生活、尊厳を脅かす諸問題につき国際社会による一致協力した取り組みに貢献してきており、小渕総理の提唱により国連に人間の安全保障基金を設立したことはその代表例と言えるわけでございます。
また、冷戦後も後を絶たない紛争の解決及びその予防のためには、紛争に発展するおそれのある事態をいち早く察知して迅速に対応するとの危機管理的な側面から、紛争の根本に存在する経済社会開発問題への取り組みといった長期的な側面に至るまで、包括的なアプローチが必要である、こう考えております。政府としても、このような認識のもと、昨年、紛争予防戦略に関する東京国際会議や第二回アフリカ開発会議、TICADⅡを開催する等しているわけでございます。
政府としては、これら諸分野への取り組みについて、今後とも我が国外交の重要な柱と位置づけて不断の努力を積み重ねていく考えでございます。
それで、野中官房長官の御発言の部分については官房長官が答えられるのが適切であると思いますので、そうさせていただきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/142
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143・野中広務
○国務大臣(野中広務君) 私にお尋ねいただきました旧日本軍の軍人軍属である在日韓国人に対する恩給支給問題についてでございますが、基本的には、従来政府が申し上げておりました現在の恩給法等の範囲を超える問題でございまして、また、韓国の方々にかかわります財産請求権の問題につきましては、昭和四十年の日韓請求権・経済協力協定によりまして、在日韓国人の方々にも、かかるものを含めて法的に完全かつ最終的に解決済みであるという公式な立場の回答で終始してきたわけであります。
しかし、現実にこれらの方々が置かれた状況を考えますときに、何とかして現在の状態を解消する方法はないのかというお尋ねがございまして、私といたしましても、関係省庁の協力も得て、ちょうど二十世紀の最後の時期でございますだけに、過去の幾つかの問題を先送りしてはならないという気持ちもございまして答弁を申し上げたところでございます。ただいま内閣外政審議室に、一つには従来の法制、法理性及び制度の問題点、二番目には戦後処理の枠組みとの関係の問題、三番目には韓国における処理の状況等につきまして調査検討を行わせているところでございます。
なお、新しい検討組織についてのお話がございましたが、現在、既に日韓の間におきまして在日韓国人の法的地位に関する日韓局長級会議というのを随時行っております。先方からも指摘がございますので、この会議を通じましてなお整理し、前向きに対処してまいりたいと考えておるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/143
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144・沢たまき
○沢たまき君 ありがとうございました。
あと二分しかございませんので、ちょっと進めさせていただきます。
簡単に申し上げますと、このガイドラインの法案につきまして、国民のだれでもがこの法案の目的それから性格がわかるようにもっと説明をしていただくのが一番だろうと思うんですが、それにはちょっと時間が。いろんな方がおっしゃいましたけれども、私はもっと、殊に女性に、それから主婦に、わかりやすく日常の言葉で御説明をいただきたい。安心しなさいと言ってくださればどれほどいいかなと。地方公共団体の方々、あるいは民間の施設、これも消火運動のように一回練習をしてくださると、ああ、こういうことなのかと納得がいくのではないかと思っているのでございます。もっともっとわかりやすい日常の言葉で御説明をしていただけるとありがたいと思いますが、いかがでしょうか。そういう広報活動をしていただきたい。戦争協力法だとかそういうことを聞くたびにまた胸が痛くなるわけでございますので、わかりやすく御説明をしていただく積極的な広報活動をしていただきたい、このように思っておりますが、いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/144
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145・野呂田芳成
○国務大臣(野呂田芳成君) 中身の説明が必要でございましょうか、それとも決意を披瀝すればいいのでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/145
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146・沢たまき
○沢たまき君 国民のだれもがこの法案がわかるように日常の言葉で説明していただくような積極的な広報活動に取り組んでいただけないでしょうか。
例えば、今あそこでもここでも聞こえてまいりますが、戦争法だとか協力法だとかと聞きますと一般の主婦は胸が痛くなりますので、本当のところをわかりやすく説明していただければ、そういう広報活動をしていただきたいと申し上げているわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/146
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147・野呂田芳成
○国務大臣(野呂田芳成君) 今、先生から御指摘ありましたように、国民のみんなが理解してもらえるような説明ぶり、広報というものに私ども関係省庁、力を入れてひとつ努めてまいりたいという決意を述べて御答弁にかえさせていただきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/147
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148・山本保
○山本保君 関連ということで質問させていただきます山本保です。どうぞよろしく。
それでは、ちょうど最後に沢委員の方から出ましたので、もう一度ちょっと。
私がお聞きしたいのは、こういう新しいものをつくるというときに、私も実は官僚の経験がございまして、役人は大体何か新しいことをやるときには、これは全然今までどおりなんですよ、またはもう現実に進んでいることの説明にすぎませんよというふうにもう一生懸命説明しまして、そして何でもいいから何しろ通してほしい、何でもいいからもう早く通してください、細工は流々なので後はごろうじろと、こういうふうにやるわけです。
しかし、政治家というのはやはりそれではいけないわけで、あるものをやるときには、いかに国民のためになるのかということを、確かにリスクがあるかもしれない、しかしリスクは一割であって九割はこんなに、全然なければいいんですが、そういうふうに説明すべきだと思うんです。
しかし、今回、この説明を聞いていまして、いや憲法の枠内ですとか、平和憲法のそのままなんですとか、専守防衛は変わらないんですとか、これでは役人の作文を読んでいるだけじゃないかという気がするわけです。私は、政治家というのはこのときにはっきりと、国民の権利を守るために、またはこれがなければこんなことになってしまうからとか、そういう形できちんと説明していただきたいということを先回ちょっと宿題的に申し上げましたけれども、長官、いかがでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/148
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149・野呂田芳成
○国務大臣(野呂田芳成君) それでは、沢先生と山本先生の両方の問いにお答え申し上げたいと思います。
また役人言葉ではないかと言われそうですが、この法案は周辺事態に対応するために必要な措置を定めております。我が国の平和と安全の確保に資することを目的としております。日米安保体制のより効果的な運用を確保し、我が国に対する武力攻撃の発生を抑えることに役立てようとするものであります。
我が国の平和と安全に重要な影響を与える周辺事態において、この事態を拡大することを抑えたり収拾するために国連憲章それから安保条約に従い行動する米軍に対して我が国が後方地域支援という活動を行うことでありますが、これは私どもとしては当然のことであって、国際法上も何ら問題がないと考えております。
また、この法案に基づき自衛隊が実施することを想定している米軍への後方地域支援は、それ自体、武力の行使に該当するものではございません。政府の統一見解で、憲法第九条一項の禁ずる武力の行使というのは、我が国の物的、人的組織体による国際的な武力紛争の一環として行う戦闘行為を指しているわけでありまして、私どもはこの周辺事態で戦闘行為を行うわけではございません。したがって、武力の行使とは一体にならないものであります。
それから、周辺事態において、我が国が後方地域支援活動等の対米協力を行うかどうかということは、またいかなる協力を行うかということにつきましては、日本の国益保護の見地から主体的に我が国が判断するものでありまして、アメリカに追随して行うというものでは決してございません。
したがいまして、先ほど沢先生からお話がありましたが、戦争協力法とか米国追従法とかいった一部の批判が出てくるのは説明がわからないからだという御指摘がありましたが、私どもは、今申し上げたような趣旨として、決して戦争協力法でもないし米国に追従する法律でもない、こういうふうに申し上げたいと思います。
両先生の御指摘を踏まえまして、私どもはこの法律の目的と意義を国民に御理解いただけるように、さらに一層努力をしたいと思っているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/149
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150・山本保
○山本保君 外務大臣、時間もありませんので、もう一つまたお聞きします。
今のお話で、実は先回のときに椎名委員の方から非常にわかりやすい例が出て、満場爆笑となったわけです。火事になると、スプリンクラーをつけていて火事にならなくてよかったなと。調べてみたら水道がついていなかったと。私は、自民党や政府のやることを信用しておられる方には今の例えでまず大丈夫だと思うんです。しかし、そうでない方もおられます。そうなりますと、私がさっき申し上げたように、いや、もっとこのことによって日本の平和は進むのであるということを説明する必要があるだろうということを申し上げておきます。
それから、二つの説明をきちんとしていただきたいということですが、これは、もうこのことは以上にしまして、もう少し細かいことでちょっとお聞きしたいんです。二つほど問題は飛ばしまして、先にこのことを聞きます。
というのは、きのう沖縄で地方公聴会がありました。残念ながら私は行けませんでしたので細かい雰囲気とか内容はわかりませんけれども、しかし、報道等を見まして私なりに考えますのは、やはり沖縄の方が、少なくともこのことで沖縄がより危険になるのではないかとか、またそれよりも何よりもこの沖縄の現状を日本の本土の人は知っているのか、もっとこれを何とかしてくださいよ、こういう気持ちがまず基本に、賛成にしても反対にしても、まずあったんじゃないかなというふうに推察するわけでございます。
そこで、先日も総理には、こういうもし何かあったときの戸締まりのような防衛の努力をしていくということは、それはその限りにおいて、国として国民の生命、生活を守るという観点からこれは当然だとしても、しかし他の国に対して、または国民全体に対しても、私どもの理想である平和な世界をつくっていくということについて、バランスからいってもこちらの方により積極的な一歩を踏み出すべきである、こういうふうに申し上げました。
〔理事竹山裕君退席、委員長着席〕
きょう、もうそういうお答えも出ておりますので、私はこれはここで外務大臣にお聞きするのはやめまして、その中で、そうしますと一つ、コソボの問題とか北朝鮮の問題というのがこれまでも論じられておりましたので、沖縄の基地を何とか目に見える形で削減していくことについてもっと積極的な方法をとるべきではないかということをきょう申し上げたいわけでございます。
そのことでまず一つ、SACO、特別委員会の報告の実施状況についてまずちょっとお聞きしたいんです。その場合、たくさんございますけれども、特に関心を呼んでおりました普天間飛行場、それから面積的には一番、八割を占めるような北部訓練場ですか、こういうものについて具体的に触れていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/150
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151・竹内行夫
○政府委員(竹内行夫君) SACOの最終報告の実施状況でございますが、土地の返還実績について申し上げますと、平成十年十二月におきまして安波訓練場の返還、これは共同使用の解除でございますけれども、土地四百八十ヘクタールばかりでございますが、この返還を実施いたしております。
それから、本年の四月に北部訓練場の返還につきまして日米間で合意をいたしております。さらに、楚辺通信所の返還についても日米間で合意をいたしました。次に、住宅統合の第一段階、これはキャンプ瑞慶覧と桑江でございますけれども、それについての日米間での合意というものが成っております。
普天間飛行場におきましては、御承知のとおり代替ヘリポートの建設の問題等ございます。稲嶺知事等の御意見も拝聴しながら、政府としても今後とも引き続き検討を積極的に続けていきたいということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/151
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152・山本保
○山本保君 これは防衛庁長官にお聞きするんでしょうか。今、いろいろお話があって、まだ進んでいないところもあると。しかし、二年前ですか、大きな計画が立ち、それを進めているというわけですが、私、今回この問題がありましたので、このSACOの報告、中間報告、最終報告を見させていただいたんです。この中には、はっきり言って、沖縄の米軍の活動の効率化であるとか経済的なとか、または日本人に対するものについて余り余分な神経を逆なでするようなことは避けた方がいいというような、こういう観点はあるけれども、しかし、例えば米軍全体が今、特に今回のガイドラインの法案について最初の前提となっているような、世界の二大国からいろいろ状況が変わってきた、世界の安全保障状況が変わってきているので沖縄を動かすという、こういう発想ではないように読めるわけなんですけれども、この辺はいかがでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/152
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153・高村正彦
○国務大臣(高村正彦君) 委員の御質問というのは、冷戦構造が崩壊したんだから在日米軍も少し兵力を削減してもいいのではないか、そういう方向の御質問だと理解した上でお答えさせていただきますが、冷戦終結後も依然として不安定、不確実性が存在する中で、在日米軍はその有する高い機動力、即応性等を通じ、我が国及び極東の平和と安全の維持に寄与していると認識をしているわけでございます。したがって、現時点において在日米軍兵力の削減や在日米軍基地機能の見直しといったことを米側に求めるということは考えていないわけでございます。
ただ、政府といたしましては、九六年四月の日米安保共同宣言で確認されたとおり、国際的な安全保障情勢において起こり得る変化に対応して、両国の必要性を最もよく満たすような防衛政策並びに日本における米軍の兵力構成を含む軍事態勢について、日米安全保障協議委員会等の枠組みを通じて米政府と緊密かつ積極的に協議を継続してまいります。今これだけいるから未来永劫こうだということではない、ただ現時点で直ちに兵力削減するというような状況にはない、こういうのが今の政府の認識でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/153
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154・山本保
○山本保君 確かにアメリカの方はそういう十万人というものの規模を変える気はないということについてその方針が出されていると思いますが、大臣が最後に言われましたように、これについては我が国はやはりきちんと申し入れるべきではないかなという気がするんですね。
例えば、今でもNATOは、コソボの問題、あちらはたしか三分の一ぐらいに兵力を落としたんじゃないでしょうか。アメリカの戦略または状況判断というものもひょっとすると違うんではないか、日本はやはり日本に関係する極東についてはもう少しアメリカに声をかけていいのではないかなという気がしておりますけれども、それも可能であるというお答えだというふうに判断いたします。
それで、確かに全体が縮小されるということがまず第一ですけれども、もしそれがなかなか難しいのであれば、それはやるとして、もう一つ考えられますのが、当然、日本の自衛隊とアメリカ軍との役割の見直しということになるわけです。それが進めば、少なくとも在日米軍の非常に多くが沖縄に駐留するという事態については改善されると思うわけです。
そこで、今回の議論で、私もちょっとどうかなと思っておりましたら、先ほど伊藤委員の方から細かい指摘があって、私もそのとおりだと思っておったんですが、ちょっと伊藤委員とは観点が逆なんですけれども、今回、特に周辺事態について新しく盛り込まれたということからそのことを大きく議論してまいりましたけれども、考えてみますと、アメリカと日本がさまざまな協力、特に軍事協力をする場合に、周辺事態について、例えば今までよりも詳しい、進んだ高度なある共同行動というのが決まったとなりますと、それ以前とか、日本独自の防衛についても当然、構造的にいえば何らか変化が出てくるだろうという気がしておりました。
どういうことかといいますと、新しい指針を読んで、古い指針を読み直してみましたら、私がすぐ気がつきましたのは、日本の自衛隊の主体的な行動という言葉が非常によく出てまいります。旧指針にはそんな言葉は、たしか主体的なというのはないようです。
例えば、先ほども出ていたところの後の部分ですが、武力攻撃などがなされたときに、日本は武力攻撃に対して「主体的に行動し、極力早期にこれを排除する。」ということでありますとか、またもう少し詳しい航空侵攻について、「自衛隊は、防空のための作戦を主体的に実施する。」とか、それからもう少し言えば、先ほどの「共同対処行動のための基本的な考え方」というところは、古い指針では「日本は、原則として、限定的かつ小規模な侵略」に対して対応する、こう書いてあったところが、「限定的かつ小規模な侵略」という言葉が抜けていて、先ほどのように武力攻撃に対して主体的に行動するというのがまず出てき、そして米軍はそれを補完する、こういう構造になっておりますね。
これは、例えば陸上の侵攻に関しても同じように、まずそれに対して対処するための作戦を自衛隊は主体的に実施するというところもあります。先ほどちょっと出ましたゲリラやコマンドに対するその他の場面においても、その阻止・排除作戦を主体的に実施する。自衛隊がこれだけ主体的に行うと。
私は、きょうは議論の時間がありませんからこれがいいとか悪いとかは抜きますが、しかし、事実として主体的に自衛隊がこれだけ活動するのであれば、その分アメリカ軍の参加というか協力体制というのは前よりも減るのが当然じゃないでしょうか、単純に考えまして。ならば、こういうことを論拠として、日本に駐留している米軍の縮小もしくはその機能の見直し、そして配置転換ということについて具体的な交渉ができるのではないかという気がしますけれども、いかがでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/154
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155・野呂田芳成
○国務大臣(野呂田芳成君) 私どもは、平成七年十一月に防衛大綱を決めたわけでありますが、その防衛大綱において、今後の防衛力の役割として、主たる任務である我が国の防衛に加えまして、大規模災害等各種事態への対応及びより安定した安全保障環境の構築への貢献というようなことを挙げているところであります。
特に外部からの侵略に対しては、適切な防衛力の整備を進め、その維持運用を図るとともに、日米安全保障体制を堅持し、運用面における効果的な協力体制の構築に努めるなどにより、その信頼性を向上させてすきのない防衛体制を保持してきているところであります。
このような日米安全保障体制を前提とした防衛構想に基づく自衛隊の機能や役割については、現時点においては見直すことは非常に困難であると考えております。
いずれにしましても、我が国としては、日本国憲法のもと防衛大綱に従い日米安保体制の信頼性の向上に配慮しつつ、防衛力の適切な整備、維持及び運用を図ることにより我が国の防衛を全うするとともに、国際社会の平和と安定に資するよう努めてまいりたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/155
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156・山本保
○山本保君 SACOの見直しについて、外務大臣、一言。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/156
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157・高村正彦
○国務大臣(高村正彦君) 政府は、沖縄県民の方々の御負担を可能な限り軽減するため、日米両政府が最大限努力して取りまとめたSACO最終報告の着実な実施に向けて誠心誠意取り組んできており、これまで同報告書に盛り込まれた措置を着実に実施しているところでございます。
米国政府との間においては、沖縄問題について県側と十分な意見交換を行いつつ、SACO最終報告の実現に向け引き続き日米が緊密に協力していく旨種々の機会において確認してきているわけであります。
また、稲嶺沖縄県知事におかれましても、SACO最終報告を着実に実現させ、段階的に施設・区域の整理、縮小を図ることがより現実的で実現可能な方法であると認識されていると承知をしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/157
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158・山本保
○山本保君 終わります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/158
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159・小池晃
○小池晃君 日本共産党の小池晃です。
昨日、TBSテレビ「NEWS23」で世論調査の結果が発表されております。今審議中のガイドライン法案についてあなたはどう考えるか、こういう質問に対して、賛成するという方が、四月にも同じ調査をやっているんですが、四月は四一・四%に対して三七%と減っているんです。そして、反対という方は、二五・五%から二八・五%にふえている。わからないという方も三三・一%から三四・五%とふえている。
審議が進めば進むほど反対の声もふえている。わからないという人もふえている。皆さんさっきから、わかっていないから反対だなどと非常に失礼なことを言っているが、わかってきているから今反対の声がどんどん広がってきているんじゃないでしょうか。
いまだに法案の根幹部分である周辺事態の定義、これも不明確だ。周辺地域の周辺とはどこなのか、事態とは一体何なのか、明らかになっていないじゃないですか。
そもそも憲法九条で武力による国際紛争の解決を禁じた日本が、何で日本が攻撃をされてもいない周辺事態で戦争への参加ができるのか。新ガイドライン関連法案で日本が行う後方地域支援は、これは憲法違反の武力行使そのものじゃないか。こういうことに答えてないんですよ。きょうはこうした点について質問をしていきたいというふうに思います。
まず最初にお聞きしますが、日本国憲法も国連憲章も、これは二度にわたる悲惨な大戦の教訓を踏まえて、紛争は平和的に解決をする、こういう決意の上につくられております。国連憲章は、紛争の平和的な解決の手段を尽くした後の安保理の決議に基づく軍事的な措置を認めていますが、憲法はこの軍事的な措置への参加は認めておりません。
紛争の平和的な解決に徹するのが憲法の立場だ、これは憲法制定時の衆議院本会議で、当時の吉田茂首相が憲法第九条に触れてこう述べておられる。憲法制定時の衆議院の本会議の議事録ですが、「斯かる思い切った条項は、凡そ従来の各国憲法中稀に類例を見るものでございます。」、「此の高き理想を以て、平和愛好国の先頭に立ち、正義の大道を踏み進んで行こうと云う固き決意を此の国の根本法に明示せんとするものであります。」、こう言われている。
日本は世界各国の先頭に立って紛争の平和的な解決を目指そう、これが憲法の立場です。このこと、この立場は今日でも日本政府は変わらない、そういうふうに言えますね、お答えください。憲法問題ですよ、法制局です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/159
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160・大森政輔
○政府委員(大森政輔君) 昭和二十二年に憲法が制定されまして以来、憲法に盛り込まれました平和主義の理念、これはその後定着し、その後憲法が改正されたわけでもありませんから、依然としてその方針は変わっておらないということはそのとおりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/160
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161・小池晃
○小池晃君 その立場は変わってないんだと。
この観点から、政府はこれまで日本がとれる軍事行動については国連憲章、国際法の基準と比べても制約がある、そういう見解を示してきております。例えば、八一年の角田法制局長官はこう答弁している。「いわゆる個別的自衛権、こういうものをわが国が国際法上も持っている、」、「ところが、個別的自衛権についても、その行使の態様については、」「たとえば海外派兵はできないとか、それからその行使に当たっても必要最小限度というように、一般的に世界で認められているような、ほかの国が認めているような個別的自衛権の行使の態様よりもずっと狭い範囲に限られておるわけです。」、こう言っているわけです。
日本国憲法で認められる行動は、国連憲章で認められるものよりも狭い範囲に限られている、これも確認できますね。どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/161
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162・大森政輔
○政府委員(大森政輔君) お尋ねの日本国憲法と国連憲章等との間の差の問題でございますが、委員が言外に御指摘されているような意味における差があるかどうかはともかくといたしまして、御承知のとおり、日本国憲法は、「国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。」。そして二項におきまして、「前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。」、こういうふうに規定されておりまして、この第九条の解釈といたしましては、我が国を防衛するために必要最小限度の実力組織を保持し、そしてその組織に基づく自衛行動を行うことはともかくとして、それ以外については一切武力の行使に当たる行為等は行わないという方針を採用しているわけでございます。
それに対しまして国連憲章におきましては、まず第七章におきまして集団的安全保障措置に関する規定があり、安保理の決議がありますと陸海空軍の行動もとることを認め、また五十一条におきましては、ある一定の制約のもとで個別的自衛権あるいは集団的自衛権の行使を認めているというように、武力の行使についてある許容の範囲、例外の範囲というのは日本国憲法との間で制度的な差があるということは、そういう意味におきましては御指摘のとおりではなかろうかと思うわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/162
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163・小池晃
○小池晃君 私が言った違いというのはそういうことなんですよ、長々と言われたけれども。もうちょっと素直に答えていただきたいと思うんです。
こういう憲法のもとで、こうした点から見れば、新ガイドライン法案というのは明らかにこうした憲法の制約を踏みにじるものである、そういう疑念を晴らすことができないわけであります。
そこで次に、今国連憲章を触れられましたが、国連憲章についてお伺いしたい。国連憲章では、どういう武力の行使が禁止をされておるのか聞いていきたい。
国連憲章二条四項ではこう言っております。
すべての加盟国は、その国際関係において、武力による威嚇又は武力の行使を、いかなる国の領土保全又は政治的独立に対するものも、また、国際連合の目的と両立しない他のいかなる方法によるものも慎まなければならない。
こうしております。
二条四項で言っている武力の行使とは、軍事力をもって物事を解決することであり、それを禁止する、そういうことでよろしいですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/163
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164・東郷和彦
○政府委員(東郷和彦君) お答え申し上げます。
委員御指摘のように、国連憲章二条四項に、
すべての加盟国は、その国際関係において、武力による威嚇又は武力の行使を、いかなる国の領土保全又は政治的独立に対するものも、また、国際連合の目的と両立しない他のいかなる方法によるものも慎まなければならない。
と規定されております。
ここに規定されておりますところの武力の行使、ユース・オブ・フォース、これにつきましては、起草の経緯などからして政治的、経済的圧力の行使は含まれておらず、専ら実力の行使に係るものと解されております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/164
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165・小池晃
○小池晃君 要するに、この国連憲章二条四項で言う武力の行使というのは、政治的、経済的な圧力は除くと、そういう議論は確かにあります。しかし、それ以外の実力による軍事的な圧力は含まれるんだと。つまり、これは戦闘行為だけではなくて兵たん活動など戦闘行為を支える活動も含まれる、そういうふうに理解してよろしいんですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/165
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166・東郷和彦
○政府委員(東郷和彦君) ただいま申し上げましたように、専ら実力の行使に係るものと解されております。したがいまして、通常理解されておりますところの兵たん活動、こういうものは含まれていないというふうに解すのが一般的であるというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/166
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167・小池晃
○小池晃君 軍事的な実力の中に兵たん活動を含むなんて国際的な軍事的な常識じゃないですか。全くおかしい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/167
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168・東郷和彦
○政府委員(東郷和彦君) お答え申し上げます。
法的な観点から申し上げれば、国連憲章二条四項におきますところの武力の行使、これは実力を指すというのが現下の国際社会の理解と申し上げて間違いないと思います。事実の問題として、兵たん活動を行えばそれは実力の行使と関係がある、ない、こういう議論がございます。しかし、法的な議論といたしましては、武力の行使というのは実力の行使ということで間違いないというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/168
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169・小池晃
○小池晃君 それでは聞きますけれども、この国連憲章二条四項で言う武力の行使、これは戦闘行為だけ、それに限定をすると、そういう決定が今まで国連の場で行われたことはありますか。どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/169
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170・東郷和彦
○政府委員(東郷和彦君) 国際法上、この武力の行使自体の定義について、条約等、そういう成文法上の明示的な規定があるわけではございません。それから、国連におきましてはいろいろな国連総会の決議等というのはございました。しかし、法的な意味でこの武力の行使を定義したというものはございません。
しかし、私が申し上げたのは、このような武力の行使に対する国際的な解釈といたしまして、専ら実力の行使を指すものであるというのが現下の国際社会の理解であるということを申し上げたわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/170
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171・小池晃
○小池晃君 ないということなんですよ。この戦闘行為だけに限定するという決定は今まで国連ではされていないということなんです。武力行使を戦闘行為に限る、こんなことは国連憲章の解釈からは全く出てこないんだ。国連のほかの決定に、今ちょっと決議等にも触れられましたが、その問題で次に議論を進めていきたいというふうに思います。
一九七四年十二月に、国連総会で侵略の定義に関する決議というのが行われております。これは国連が国際関係において何をもって何を侵略というふうにするのか、これは二十四年間かけて議論を重ねてコンセンサス、全会一致で確認をしたものであります。
この国連での審議の過程で日本も含めた六カ国、カナダ、イタリア、イギリス、北アイルランド、アメリカ、ここが共同修正案を出しております。これは一九六九年に提案をされている。これです。(資料を示す)
ここに現物がありますが、これを見ますと、侵略を構成し得る武力行使には以下のものが含まれるというふうにして、目的として五項目、そして行為の内容、態様として八項目を挙げております。
その八項目を見ると、他国の管轄下にある領域に対する爆撃、他国の軍隊、艦船、航空機に対する組織的な攻撃を行うこと、こういった直接のいわゆる戦闘行為。これ以外にも以下のような項目が含まれております。武装部隊もしくは非正規軍、義勇軍を組織、支援、指揮すること。支援というのはサポーティングという言葉を使われている。暴力的な内乱や他国に対するテロ行為を組織、支援、指揮すること。そして、他国の政府転覆を目的とした破壊行動を組織、支援、指揮すること。これは日本が提案しているんですよ、共同修正案。
ここで禁止をされている武力行使は、これは戦闘行為に限定されていないじゃないですか。どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/171
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172・加藤良三
○政府委員(加藤良三君) 一九七四年の侵略の定義に関する総会決議、それから一九六九年の日本を含む六カ国提出の共同修正案についてお尋ねがございましたのでその順序で申し上げますが、最初に七四年の侵略の定義に関する決議、これは武力の行使それ自体に関する定義規定を有しておりません。この決議はあくまでも国連総会が安保理による侵略行為の認定のための指針として基本的な原則を定めようとしたものでございます。それにとどまるものでございます。
この決議は、六条に明記されておりますとおり「憲章の範囲をいかなる意味においても拡大し、又は縮小するものと解してはならない。」のであり、当該決議中の武力の行使とは憲章第二条第四項の武力の行使、先ほど条約局長から説明がありました武力の行使と同義であって、専ら実力の行使にかかわるものと解されます。
次に、六九年の日本を含む六カ国共同修正案を提出して、その内容について委員から御紹介がございました。確かにこの案文は、侵略の認定は国際の平和と安全の維持に主要な責任を有する安保理が行うものであるという観点から、侵略とは安保理が用いる用語であるとした上で、侵略という言葉の定義及び侵略を構成する武力行使の目的及び手段を例示しているということでございますが、基本は七四年の決議について今私が申し述べたとおりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/172
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173・小池晃
○小池晃君 だから、この侵略の定義に書いてあるんですよ。侵略と武力行使というのは全く別じゃないんですよ。最も深刻かつ危険な違法な武力行使なんです、侵略というのは。ですから、侵略に対して定義をしたということは、侵略というのは武力行使の一部分なわけですから、その態様を定義したということは、それは武力行使というのにこういう態様のものが含まれるということじゃないですか。だから、武力行使というのは単に直接の戦闘行為だけではなくて、その戦闘行為を支える数々の支援活動、組織活動、指揮活動、こういったものが武力行使に含まれるということを、これは一九六九年の時点で日本の政府が提案しているんじゃないですか。そのことを言っているんです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/173
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174・加藤良三
○政府委員(加藤良三君) ただいまの御指摘は正確でないと思います。
侵略の定義に関する決議というのは、まさに第三条に「次に掲げる行為は、いずれも宣戦布告の有無にかかわりなく、」「侵略行為とされる。」ということが書いてありますが、その前に「第二条の規定に従うことを条件として、」という縛りがかかっております。
第二条、これが何が書いてあるかと申しますと、国家による憲章違反の武力の先制的行使は、侵略行為の一応の証拠を構成する。ただし、「安全保障理事会は、国際連合憲章に従い、侵略行為が行われたとの決定が他の関連状況に照らして正当化されないとの結論を下すことができる。」。すなわち、安保理は安保理として最終的な決断を下すということはこの七四年の決議において明記されているわけでございます。そしてさらに、前文に「侵略行為が行われたか否かの問題は、個々の事件ごとのあらゆる状況に照らして考慮されなければならない」云々という記述があるわけでございまして、その例示された侵略の行為というものがすぐ武力の行使につながるということではないと考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/174
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175・小池晃
○小池晃君 そんなことを聞いているんじゃないんですよ。これに書いてあるからこれで自動的に武力行使になるんだって、そんなこと一言も聞いていないでしょう。武力行使の形態として挙げているんです、こういうものを例示的に。だから、こういうふうに示しているということは、武力行使というのは戦闘行為に限られないという見解をその当時日本政府は持っていたということなんじゃないですかというふうに聞いているんです。答えてください、そこのところ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/175
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176・加藤良三
○政府委員(加藤良三君) まず、一九七四年の決議、六九年の共同修正案ということの性格なんでございますが、委員がおっしゃっておられるのはむしろ一九三三年ごろの侵略の定義に関する条約というものに近いのかなという感じがいたしまして、こちらの方はそういうものではございません。
確かに、今申されたような一国による例示列挙ということがございますけれども、同時に一国による国連憲章に反する兵力の先制使用は侵略行為の一応の証拠を構成する、これは第二条に書いてあります。そういう推定規定を設けながら、この定義が安全保障理事会による国連憲章三十九条に基づく侵略行為の存在決定に当たっての指針である、これ自体が物を決めているわけではない、決めるのは安保理なのである、安保理がその権限を有しているのである、具体的ケースにおける侵略行為の存在、認定の権限を有する安全保障理事会の裁量権を第二条が確認しているわけでございまして、そのことを私は申し上げたつもりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/176
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177・小池晃
○小池晃君 全然説明になっていないです。安全保障理事会で決定するのは当たり前ですよ。総会決定というのは法的拘束力はないんでしょう。一々の事態について、個々の事態についてそれを安全保障理事会で決定していくわけでしょう。これは当然のことを言っているだけですよ。
その際に、いろんな形態の武力行使が行われるであろう、そのことが武力行使に該当するかどうか、例えばテロ行為に対する支援というのは武力行使なのかどうなのかというときに、これを指針として示したわけじゃないですか、そういうことも含まれると。そして、それを日本政府が提案したわけではないですか。ということは、その時点では日本政府は、武力行使というのは戦闘行為に限られるということではなくて、それを支えるさまざまな行動も武力行使の形態としてあり得るというふうに考えていたということじゃないですか。そのことに正面から答えてください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/177
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178・加藤良三
○政府委員(加藤良三君) ちょっと経緯について説明させていただきますけれども、国際法違反行為として制裁の対象となるべき武力行使としての侵略、これを定義するということについては、定義の可能性と有用性という問題が当時ずっと提起されていたわけでございます。
第一に、いかなる行為がいかなる状況のもとで国際法上違法な武力行使としての侵略であるかを外延と内包を全部確定して一般的に妥当する定義で決定することは不可能に近いという認識が当時国連であったわけであります。
それから第二に、具体的行為が具体的状況のもとで国際法上違法な行為としての侵略であるかをそういった一般的な定義の適用によって設定することは極めて危険であって、したがってそのような定義は仮に可能であったとしても有用ではない、こういう議論が盛んに出されていたわけでございます。
そういう議論の流れを受けて、私が先ほど申し上げましたように、安保理が明確な決定の権限を持つ、そのためのガイドライン、基本原則みたいなものを例示的に示すということでおさまりがついた、こういう流れであったわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/178
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179・小池晃
○小池晃君 私の質問に正面から全く答えていただけない。
特別委員会が最終草案を採択したときに、日本代表は席上でこう発言しております。この侵略の定義が総会二十九会期に採択されると、国際法の歴史に新しい一章が書き込まれ、多くの高名な学者の夢が実現することになるだろう、こういうふうに言っているんです。少なくとも一九六九年のこの修正案を出した時点ではこれは禁止すべき武力行使に支援も含めていた、外務省、日本政府はそういう見解であったということは否定できないはずです。このことはどうですか。このことに答えてください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/179
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180・加藤良三
○政府委員(加藤良三君) 正面からお答えしているつもりなんでございますけれども。
その決議案の作成段階における提案、議論の内容については交渉過程にかかわるということもございますので、その決議が採択された後の時点において逐一コメントすることは私は適当でないと考えまして、一般論として申し上げるわけですが、交渉中に各国がとった立場が最終的立場としてその国を拘束するということはもちろんないわけでございます。
いずれにしても、侵略の定義に関する総会決議は、先ほど来申し上げておりますとおり、国連憲章上、侵略行為の存在を決定する権限は安保理にあるということを前提として、安保理が侵略行為の存在を決定する際の指針として作成されたものであるということでございます。
今議論になっております両文書というのはあくまでも総会決議でございまして、それ自体としては委員が示されたとおり法的な拘束力を有するものではございません。また、両文書ともその中に国連憲章の関連規定の範囲をいささかも変更するものではないということを明記しておるわけでございます。そのようなものとしてこの両方の決議ともコンセンサスで採択されたものでございますし、日本もそのような認識に立ってコンセンサスに参加したということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/180
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181・小池晃
○小池晃君 正面から答えないんです。この時点で認めていたことははっきりしているんですよ。
そしてさらに、個々の事態を安保理で認定する、これは当然のことです。個々の事態がどう認定されたか、そういう問題を議論したい。
国際司法裁判所のニカラグア事件判決、この問題を取り上げたいと思います。
この判決が武力行使の範囲について認定した唯一の国際司法裁判所の判決である、このことは認められますね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/181
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182・東郷和彦
○政府委員(東郷和彦君) お答え申し上げます。
武力行使との関連ということでございますけれども、御指摘のニカラグア事件判決、これは武力行使の問題にICJが正面から取り組んだ主要な事例であるというふうに理解しております。
武力行使に言及したもの、あるいは武力行使にかかわる例としては、例えば一九四八年のコルフ海峡事件あるいは一九八六年のブルキナファソ、マリ間の国境紛争事件、さらには同じく一九八六年の核兵器の違法性に関するICJ勧告などがございますけれども、武力行使というものはどういうものかということに正面から取り組んだ主要な判決はこのニカラグア事件判決というふうに心得ております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/182
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183・小池晃
○小池晃君 これは大変大切な判決なんですよ、武力行使というのを国際法上考えていく上で。
何でこの裁判について取り上げるのかちょっと説明をしたいと思います。
この裁判は一九七九年にニカラグアにサンディニスタ左翼政権が誕生してからの話であります。ニカラグアの隣にエルサルバドルという国がある。アメリカはこのエルサルバドルと友好関係にあった。このエルサルバドルの政権に対して武力闘争をしているゲリラがいたわけです。それに対してニカラグアが援助をした、これがアメリカの言い分だったわけであります。そして、アメリカはこれを理由にしてニカラグアへの経済援助を停止した。ニカラグアの反政府勢力コントラに対する軍事援助を行った。そして機雷封鎖、ニカラグアへの直接の武力行使もやったんです。このことに対してニカラグアは、これは国際法違反だということで国際司法裁判所に提訴をした。そういう話であります。
何でこの裁判を重要視するのか。これは裁判では、ニカラグアのエルサルバドルのゲリラに対する武器供与、兵たん援助、これが問題になったんです。アメリカはこれを武力攻撃だと言ったんです。これは武力攻撃だからこれに対して集団的自衛権を発動する、それを正当化したんです。ニカラグアというのは当時、人口三百万人、小さい国です。軍といったって歩兵部隊ぐらいで、対空兵器もない。そんな小さな国が隣の国に銃を運んだんだと、これは状況証拠しかないんですけれども、それをアメリカは、武力行使じゃないです、武力攻撃だと言ったんです。これに対して判決では、これは武力攻撃とまでは言えないが武力行使とみなし得るというふうにしたのがニカラグア事件判決の最大のポイントじゃないか。大きな意味があるんじゃないかというふうに思うわけです。
五月十日の当委員会で、我が党の筆坂議員の質問に対して外務大臣は、国際社会におけるICJ、国際司法裁判所の判決は厳粛に受けとめておりますという答弁でしたが、これは武器、兵たんその他の支援の供与は武力の行使とみなされるという国際司法裁判所の判決の内容を認める、そういうことですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/183
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184・高村正彦
○国務大臣(高村正彦君) 御指摘のICJ判決は、ある国が他国内のゲリラ等の反政府勢力に対して行う支援等の論点につき法的評価を行ったものであります。政府といたしましては、国際社会における主要な司法機関である国際司法裁判所の判決は厳粛に受けとめておりますが、その判決の具体的内容については、それぞれの論点につき個別の事件の文脈に照らして理解すべきものと考えます。
そうした前提のもとで申し上げれば、ICJの判決においては、一般に外国の反政府勢力に対する武器、兵たん、その他の支援の供与の形でなされる援助がその外国に対する武力の行使や干渉とみなされることもあり得ると述べていることは承知しております。しかしながらこの判決は、同時に、米国によるニカラグアの反政府勢力に対する支援のすべてが武力の行使等に該当するものではないとも述べていると承知をしております。
したがって、一般論として、何が武力の行使とみなされることになるのかについてこの判決で明確にされているとは全く考えておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/184
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185・小池晃
○小池晃君 今ちょっと二つの問題を一緒におっしゃられたと思うんですが、まず最初のニカラグアのエルサルバドルのゲリラに対する支援とアメリカのニカラグアの反政府勢力に対する支援、この裁判では二つ認定されているんです。
ところが、裁判の中心点は、これはニカラグアのエルサルバドルのゲリラに対する支援、これを問うている。そこでそれはどう表現されているかというと、サッチ アシスタンス メイ ビー リガーデッド アズ ア スレット オア ユース オブ フォースと。みなされるですよ。みなされることもあるというふうに今言ったけれども、みなされるというふうにはっきり言っているわけです。
確かに、支援のすべてが武力の行使に該当する、そういう認定をしたわけじゃないです。それはそうです。けれども、少なくともこの判決からこういうことを言えるじゃないですか。一つは、武力行使というのは戦闘行為に限られる、そういうことじゃないんだということが言えると。それから、この全文を読むと、武力行使の範囲から除外されるものについては、一応資金援助というのは排除されているんです。それ以外に、明示的に武力行使の範囲から排除するものはないんです。
すなわち、この判決で認定をしたのは、国際法上の武力の行使というのは戦闘行為だけに限定はされていない、兵たんなどの支援活動も含まれるということは認められるんじゃないですか。これは具体的な事例じゃないです。一般原則としてそういう判決を書いたんですから、その中身はICJの尊重され得る判決の中身として認められるんではないか、そういうふうに聞いているんです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/185
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186・東郷和彦
○政府委員(東郷和彦君) 委員より判決の条文についての御指摘がございましたので、念のために一点申し上げたいのでございますが、委員の御指摘になられた部分は、武器、兵たんその他の支援の供与の形でなされる反政府勢力の援助については、武力による威嚇または武力の行使としてみなされるかもしれない。英文で申し上げれば、サッチ アシスタンス メイ ビー リガーデッドということでございまして、常にみなされるということをこの判決が言っているわけではないというふうに理解しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/186
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187・小池晃
○小池晃君 何を言っているんですか。メイというのは何々し得るというのが最も適切な訳ですよ。
それからフランス語版を見ればさらに明瞭なんです。フランス語版を見ると、オン プ ボワールというのが書いてあるんです。明らかにこれはみなし得るという以外に訳せないんです。かもしれないなんという訳にはならないです、これは。明確です。
この判決が、先ほどもちょっとおっしゃいましたけれども、個々の文脈で理解するんだと、これは当たり前ですよ。裁判というのはそういうものでしょう。当事者間だけ拘束する、それは当然であります。
しかし、国際司法裁判所の判決というのは、これは高野雄一さんという方が「判例研究 国際司法裁判所」に書いておりますが、「それは当事国のみを拘束するものではあるが、争われ問題となっている国際法の規則そのものをあきらかにし確定する。それによって国際法に確実な発展の基礎を与える。」と言っているんです。
ですから、先ほどから議論しているような武力の行使というものに対して、この国際司法裁判所の規定というのは、武力の行使というのは直接の戦闘行為だけではない、さまざまな援助活動、支援活動もそれにみなされる、そういうことを認めたということははっきり言えるんじゃないですか。そのぐらいは認めてくださいよ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/187
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188・東郷和彦
○政府委員(東郷和彦君) メイの訳し方についてはいろいろな見方があるかもしれませんが、ただ委員の御指摘にいたしましても、また私が申し上げたことにつきましても、そういうことがあり得る、すべての場合そうではないけれども、そういうこともあり得るという点では共通の理解があるのではないかと思います。
この判決につきまして、外務大臣よりも申し上げ、私よりもぜひ申し上げたいのは、この判決というのはゲリラ等の反政府勢力に対して行う支援、そのゲリラに対する支援の実態については先ほど委員より御説明がございましたけれども、そういうゲリラに対する支援についての判決であったということでございます。
今委員会の審議との関係で申し上げれば、冒頭、私より、いわゆる兵たん活動、つまり米軍が行動していてそれに対して自衛隊が兵たんとして支援をする、このようなケースとは全く違う、みずからが活動することなくゲリラに対して支援をする、そういう特殊な、特殊という言葉がもし適当でないとすれば、そういう特定の案件に対する判決であったということでございまして、そのような事案に対する判決として拘束力を持っているということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/188
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189・小池晃
○小池晃君 これはゲリラに対する支援ですら武力行使となったというところなんです。正規軍に対する兵たん活動というのは武力行使じゃないと言うんですか。そんなはずがあるわけないじゃないですか。正規軍に対する兵たん活動が武力行使に当たるのは当たり前なんですよ。ゲリラに対する非常に特別な特殊な援助活動ですら武力行使だというふうに認定したというところがみそなんですよ。ゲリラに対する支援が武力行使だったら正規軍に対する兵たん活動なんて明らかに武力行使じゃないですか。全く話になっていない。
もう一度聞きます。
この判決が武力行使というのは戦闘行為だけに限定していないんだということを認めた判決であることは認めますね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/189
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190・東郷和彦
○政府委員(東郷和彦君) 繰り返しになって恐縮でございますけれども、ICJの判決というのはあくまでそれぞれの論点につき、個別の事件の文脈に照らして理解すべきである。そして、本件ニカラグア判決について申し上げれば、これは一般に外国の反政府勢力に対する武器、兵たん、その他の支援の供与の形でなされる援助がその外国に対する武力の行使や干渉とみなされることもあり得るということを述べているということでございます。
以上が私どもがこのニカラグア判決に関して理解していることのすべてというふうに御理解いただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/190
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191・小池晃
○小池晃君 全然だめです。私の質問に全然答えていないです。
武力行使を戦闘行為に限らなかった、そのことを認められるかというふうに言っているんです。イエスかノーかで答えてください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/191
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192・東郷和彦
○政府委員(東郷和彦君) 繰り返しになって恐縮でございますけれども、ICJの判決についての理解というのは、個別の事案について判断し、個別の事案の文脈に照らして理解するということでございます。
この事案は何かと申し上げれば、これは外国の反政府勢力に対する武器、兵たん、その他の支援の供与でなされる援助、これがその外国に対する武力の行使や干渉とみなされることもあり得るということでございます。
以上でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/192
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193・小池晃
○小池晃君 ということは、個別の事案、ニカラグア事件の判決に限って言えば、この判決はこのニカラグアの問題については武力行使を戦闘行為に限らなかった、これは言えますね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/193
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194・東郷和彦
○政府委員(東郷和彦君) ただいま申し上げましたように、この判決においては武力の行使や干渉というふうに、武器、兵たん、その他の支援の供与というものの援助がみなされることもあり得るということでございます。
他方、一般論として、何が武力の行使とみなされることになっているかについて、この判決では全く明確になっていないということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/194
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195・小池晃
○小池晃君 この判決では武力行使というのは戦闘行為に限っていないんですよ。そして、武力行使、戦闘行為以外のいろんな支援活動もみなされるということを認めている、これがこの判決なんです。これははっきりしています。答弁は回避されましたけれども、明確だと思います。
それからもう一つ、この判決について、五月十日に条約局長は答弁の中で、「一方の当事者である米国の参加がないままに判決が行われた」というふうに言いました。しかし、これはおかしいと思うんです。一般原則として、訴訟のどの段階における一方当事国の欠席というのも、これは判決の効力に影響を与えるものではないんです。
さらに、アメリカというのは、この件について国際司法裁判所が管轄権を持つかどうか決める管轄権審理、この段階には参加しているんですよ。そして、ICJは管轄権を持たないと主張したんです。ところが、ICJは、本件に対する管轄権は確定した。管轄権が確定された以上、アメリカはそれ以降ボイコットしたわけですけれども、訴訟の当事者という地位はこれは否定できないんです。
そして、アメリカが管轄権がないというこの主張もひどいんです。アメリカは、一九四六年に管轄権を一般的に受諾する宣言を出した。ところが、ニカラグアが提訴する三日前になって、中米の紛争には適用しない、こういう通告を突然行った。これを理由にして、ほかにも理由はあるんですが、管轄権が適用されないと、こう主張したんです。これは、むしろアメリカというのは本当に身勝手な国だということを物語るエピソードじゃないかなというふうに私は思うんです。
まさか外務省は、こうした経過をもって、このICJの判決の効力に疑問があると、疑問があるというふうに言うんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/195
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196・東郷和彦
○政府委員(東郷和彦君) 外務大臣及び私から累次申し上げておりますように、この判決に関しまして政府として申し上げたい点は二点でございます。第一点は、国際社会における主要な司法機関であるICJの判決は厳粛に受けとめているということでございます。第二点は、この判決の具体的内容、これは繰り返し申し上げておりますが、それぞれの論点につき、個別の事件の文脈に照らして理解すべきものであるということでございます。
先般、当委員会で私が申し上げましたのは、このような政府の判決に関する立場に加えまして、できるだけこの判決に絡まる事実関係について御報告したいと発言した次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/196
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197・小池晃
○小池晃君 全然答えになっていないです。要するに、判決の効力に関係ないですね。アメリカが出なかったということは関係ないですね。それだけ答えてください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/197
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198・東郷和彦
○政府委員(東郷和彦君) 繰り返しになりますが、判決の効力の適否、当否について私はコメントした次第ではございません。この判決はICJの判決として厳粛に受けとめているということに尽きるということでございます。
〔委員長退席、理事竹山裕君着席〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/198
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199・小池晃
○小池晃君 要するに、関係ないということなんですよ。
それからあともう一つ、これはもう聞きませんけれども、五月十日には、「学説上この判決については種々の見解もある」というふうに条約局長は言った。ところが、先ほど私が話したように、見解はいろいろ出ているけれども、アメリカというのは、小さなニカラグアという国のエルサルバドルのゲリラに対するその支援を武力攻撃だと言った、武力行使というふうに認定されたというのが経過なんです。武力行使とみなし得るというのは、アメリカにとっては当然なんですよ。だから、この「武力の行使とみなしうる」という部分に対する、これを真っ向から否定する見解、すなわち武器や兵たんの支援は武力行使ではないというふうにいったような見解は一つもないんですよ。ないんです、これははっきりしていると思うんです。ですから、やはりこの判決、ICJの決定として大変尊重する必要があるんだ、その尊重すべき国際司法裁判所の決定で、武力行使というのは戦闘行動に限られるものじゃない、兵たん支援も含まれ得るという決定をしたところに大きな意義があるのではないかというふうに思うんです。
さらに、友好関係原則宣言、これも国連総会決議で全会一致で一九七〇年に決められています。ここでも、武力不行使宣言、武力不行使原則ということで、行ってはならない武力行使の例として幾つか挙げております。その中には、「傭兵を含む不正規軍又は武装集団を組織し又は組織を奨励すること」、「他の国において内戦行為又はテロ行為を組織し、教唆し、援助し若しくはそれらに参加すること又はこのような行為を行うことを目的とした自国の領域内における組織的活動を黙認すること」、こういうのが武力行使だというふうに言っているんです。禁止されるべき武力の行使として例示をされているわけであります。
ですから、今まで触れてきた国連憲章に基づく国連総会の侵略の定義に関する決議、そして友好関係原則宣言、これはコンセンサスですから、全会一致ですから、単なる決議じゃない、重視されるべき決議なんです。ここでも、武力行使の中には、単に直接戦闘行動じゃなくていろんなものを含むんだという決定をしておるわけです。そして、国際司法裁判所のニカラグア判決も、兵たん支援、武器の援助は武力行使とみなされ得るというふうに認定をしているわけです。国際的には、禁止をする武力行使を戦闘行動などに限定していない、これは当たり前のことだと思うんです。
私は、内閣法制局に武力行使とは何かというふうに聞いたら、資料を送ってくれました。有斐閣の「国際法キーワード」という本であります。これを見ると、「国連体制下での武力行使禁止の範囲」、そういう項にこう書いてあります。「「武力」の態様については、単に正規軍による他国領域への侵入・砲爆撃といった直接的なものに止まらず、不正規軍や武装集団の組織・奨励等を通じての間接的なものまでも含めて広く捉えられる傾向にある。」と。国際的には武力行為の範囲というのは直接的な戦闘行為にとどまらず広がっているんだ、これが国際的傾向であります。
私は改めて聞きますが、国際法では武力の行使を戦闘行為に限定していない、兵たんなども含む概念として使っている、このことがICJのニカラグア判決、国連のさまざまな決議の到達点だというふうに思うんですが、いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/199
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200・加藤良三
○政府委員(加藤良三君) ニカラグアの件については既に御議論が随分ございましたので、私から今御説明することはいたしませんけれども、先ほどの二つの決議にいたしましても、また友好関係原則宣言におきましても、これは法的拘束力を有するものでないということは当然の前提でございますけれども、やはりその中で、冒頭で国連憲章の第二条四項の文言を引用しながら、武力の行使は国際法及び国連憲章に違反するものであってはならないということを述べているわけでございまして、こういったものの中には武力の行使それ自体の定義というものは、繰り返しになりますけれども、ないわけでございます。
決議中にも明記されているということを申しましたが、これらは国連憲章の規定の範囲を拡大したり縮小したりするものではなくて、決議及び宣言の中の武力の行使というのは専ら実力の行使に係るものというふうに考えておるわけでございます。したがいまして、ある国の個々の行為が直ちに今例示になられましたようなカテゴリーのものである、武力の行使や侵略行為に当たるということにはこれはなっていないということは先ほど来申し上げたとおりでございます。
その上であえて申し上げますと、これらの決議のあるいは宣言の中で支援といったものに言及している部分があるといたしましても、例えば友好関係原則宣言における該当部分というのはいわゆる間接侵略について述べたものでございまして、また侵略の定義の該当部分というのは他国の侵略行為を前提とした侵略幇助というべき支援であって、そういうものについての話をしているということは実は明らかだと思いますので、この委員会の流れとの関係で申しますと、我が国の平和と安全に重要な影響を与える事態である周辺事態において、国連憲章及び日米安保条約に従って行動する米軍に対する支援とかいったものとはそもそもの前提を全く異にする話だと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/200
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201・小池晃
○小池晃君 全くのすりかえだと思いますよ。私は、禁止されている武力、その定義を聞いているんです。そして、違法であれ合法であれ、武力行使というのはどういうものか。これははっきりしているじゃないですか。もちろん、禁止される範囲が違法な場合と合法な場合で変わる、これは十分あり得ますよ。でも、武力行使の範囲が何で変わるんですか。違法な戦闘行為に対する支援を行ったらそれは武力行使で、合法な戦闘に対する支援をやったらそれは武力行使ではない、こんな話あるわけないじゃないですか。違法だろうが合法だろうが、それは違法な武力行使か合法な武力行使かの違いであって、武力行使であることに変わりないんですよ。あなた方、完全なすりかえですよ、今のは。全く説明になっていない。
やはりこれはこの間の国連の決定を見れば、それを読めば、明らかに武力行使というのは戦闘行為だけに限るなんて決定はないんだと。兵たん支援、これが武力行使だと認定しているのはいっぱいあるんです。
ところが、武力行使イコール戦闘行為だと認定したものは一つもないんですよ。ゼロです。このことを認めるでしょう。このことを認めてくださいよ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/201
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202・東郷和彦
○政府委員(東郷和彦君) お答え申し上げます。
国連憲章二条四項に言う武力の行使、これは専ら実力の行使であるという国際的な理解というのは、本日の種々の議論にもかかわらず私は絶対に正しいというふうに確信しております。
そして、委員がおっしゃられました武力の行使を超える範囲として種々御指摘になられたものは、ただいま同僚政府委員からも御説明いたしました、いわゆる間接侵略ということに収れんする例のみと申し上げてよろしいと思います。
むしろ、本日委員より御指摘いただきましたニカラグアの判決、それから侵略の定義、それから侵略の定義について日本から提出した修正案、さらには友好関係原則、これらのものはいずれも、本委員会で御審議をいただいている米軍の行動に対する自衛隊の通常の兵たん活動、兵たん支援、こういうものは実力の行使という範疇の中には全く入ってこないということをこれらの文書が示しているのではないかというふうに考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/202
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203・小池晃
○小池晃君 では、お聞きしますが、国連憲章二条四項の武力の行使というのは実力の行使だと。実力の行使と戦闘行為とどう違うんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/203
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204・東郷和彦
○政府委員(東郷和彦君) 先ほど来申し上げましたように、国連憲章二条四項における武力の行使、これを明文上定義しているものはないわけでございます。
したがいまして、武力の行使、実力の行使、戦闘行為、こういうものを国際法上どういうふうに仕分けするのかということは、確たる説明というものは申し上げにくいのでございますが、要するに武力を実際に行使する、これをもって実力の行使と言い、これをもって戦闘活動と言うというふうに概略御理解いただいてよろしいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/204
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205・小池晃
○小池晃君 もう全然だめです。あんなので条約局長なんて大変ですよ。じゃ武力と実力、どう違うんですか。フォースとアームドフォースでしょう。全然違わないんです。同じことでしょう。武力の行使、実力の行使の中に何で兵たん活動が入らないんですか。実力の行使と言ったらばそれは兵たん活動も含む、当然のことじゃないですか。もう話になりませんよ。
国際的には武力の行使というのは、これは戦闘行為に限定などされていないんです。武力の行使、実力の行使というのは言葉のすりかえをやっただけです。何の説明にもなっていません。国際的には武力の行使というのは戦闘行為に限定していない。さまざまな活動が入るんです。もちろん、すべて入るとは言いませんよ。民間企業が業務で協力したらば、その企業が武力行使した、そういうふうには言えないかもしれない。しかし、軍隊がその任務として紛争当事国の合意なしに行う活動、これは国際法の世界では明らかに武力の行使なんですよ。兵たん活動が武力の行使の一部である、こんなことは軍事的な常識です。
その上でお聞きをしたいんですが、日本の政府というのは、日本国憲法九条で禁止をされている武力の行使、これをどう定義されておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/205
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206・大森政輔
○政府委員(大森政輔君) 憲法第九条第一項に規定をしております武力の行使の意味でございますが、これはいろいろなところで御説明いたしておりますが、文書の形で提示いたしたものといたしましては、平成三年九月二十七日のいわゆる衆議院平和協力特別委員会に出しました「武器の使用と武力の行使の関係について」と題する書面の中で、「我が国の物的・人的組織体による国際的な武力紛争の一環としての戦闘行為」というふうに説明しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/206
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207・小池晃
○小池晃君 今までの議論から言えるのは、日本の政府が言う武力の行使の範囲、これはもう明確なんですよ。戦闘行為だというふうにおっしゃっているんです。要するに、人を殺傷したり物を壊したりすることが、これが戦闘行為であり、これが武力の行使である。これが日本政府の統一見解です。
一方、国際的な、国際法の世界での武力の行使というのは決して戦闘行為などに限定されていないわけです。どこまで含むかという定説がない、これは確かだけれども、戦闘行為に限定するなどということはいまだかつて一度も国際社会の場で認定されたことはないわけです。
違うではないですか。日本政府が考える、日本政府の言う武力行使の範囲と世界の言う武力行使の範囲が違うじゃないですか。これはどうなっているんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/207
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208・大森政輔
○政府委員(大森政輔君) 先ほど武力の行使をどのように定義しているかというお尋ねでございましたので「我が国の物的・人的組織体による国際的な武力紛争の一環としての戦闘行為」、このように説明いたしたわけでございますが、ただ、我が政府も、憲法九条の意味する武力の行使は、今述べたような形式的意味における戦闘行為だけに限られるものではないということは述べてきているわけでございます。
それがいわゆる一体化論でございまして、従来から補給、輸送協力等それ自体は直接武力の行使等に該当しない活動を我が国が行うことにつきまして、他国による武力の行使等と一体となるような行動としてこれを行う場合には、やはり憲法九条との関係で許されない行為に該当するというふうに答えてきているわけでございます。
先ほどから委員は、武力の行使は戦闘行為に、行動に限られるものじゃないということ、そして他の諸形態があり得るんだ、特に兵たん支援の一部もこれに含まれるのは国際法上は常識であるということをるる御主張になっているわけでございます。それと全く同感ではございませんが、我が憲法の解釈といたしましても、それ自体は戦闘行為に当たらないものでも、他国の武力の行使と一体化する関係にある行為は我が国も武力の行使をしていると法的に評価されざるを得ない関係上、憲法九条の禁止する武力の行使に当たるとして許されないというふうに解してきているところでございまして、委員の批判は当たらないのではなかろうかと思う次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/208
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209・小池晃
○小池晃君 今の話は、要するに、我が国は武力の行使というのを戦闘行為に限定を言葉の上ではしているけれども、実態としては一体化した部分もあるから同じだというふうにおっしゃるんですか。だとすれば、武力行使という、まず言葉の問題をはっきりさせましょうよ。武力行使という言葉で意味するものは、国際法で規定されているものと日本国憲法、日本政府が認める武力行使と違うんですね。このことは認めるんですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/209
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210・大森政輔
○政府委員(大森政輔君) 武力の行使の定義を具体的な事案に適用して判断した場合に結果が同じになるか異なるかはともかくといたしまして、我が国の憲法第九条に規定している武力の行使という言葉の定義は、先ほど述べたように解しているわけでございます。
これは何も政府が意図的にあるいは狭く解しているというようなことじゃございませんで、憲法解釈に関する学説等を参考にして、その通説的意見に従って述べている見解でございまして、何らの意図はございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/210
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211・小池晃
○小池晃君 全く答えられません。
これは武力行使という言葉が明らかに違うんです。国際的な、国際法の世界での武力行使とそして日本の政府が言っている武力行使と、明らかに違うんです。これはどう見てもそうなんです。
そして、そこに一体化という話が今つけ加わってきているわけですけれども、同じだというような言い方をするけれども、その一体化というのも全然違いますよ。大体、一体化という言葉は、外務大臣おっしゃいましたよね、まさに武力行使と一体というのは我が国憲法の解釈の中で出てきた概念というふうにおっしゃったですね。ということは、これも日本独自のものなんですよ。武力行使の概念も日本独自であれば、それに一体化するかどうかという概念もまた日本独自、日本だけでしか通用しない議論なんです。日本が禁止をしている武力行使も、国際法での武力行使とは言葉の使い方も実際に意味する活動も全然違うんだ。
私が今まで議論をしてまいりまして本当に痛感いたしますのは、一番最初に憲法九条の問題をやりました。日本は憲法九条を持っている。世界で最も厳しく武力行使を禁止したそういう憲法を持っているのが日本であります。その日本が、世界の常識よりも国際法の定義よりもずっと狭い解釈をしているんだ。
世界の趨勢はどうでしょうか。不戦条約では第二次大戦勃発を防止できなかった。国連憲章では武力行使の禁止を決めた。そして、先ほど言ったように国連総会の友好関係原則宣言、侵略の定義、武力行使の範囲というのは広げる方向で、できるだけ武力行使をやらせないために広くとらえる方向で世界は進んできているんです。ニカラグア事件判決というのはその一つの到達点なんですよ。
それなのに、武力行使を厳しく禁じた憲法九条を持つこの日本で、世界の進む方向とは全く逆に、武力行使を狭めることで逆に戦争への道を今広げているんだ、まさに世界の歴史に対する逆行だというふうに私は言わざるを得ない。その点で、この新ガイドライン法案というのは、憲法で明確に禁止した武力行使そのものに道を開く憲法九条廃止法案と言うべきものであるというふうに申し上げたいと思います。
昨日の沖縄での公聴会でも、沖縄の歴史と実情を踏まえ、本法案に対する切実な声が出されております。この声をぜひ審議に生かすとともに、小沢自由党党首の発言と政府の見解の食い違い、これは憲法にかかわる重大問題ですから、現在理事会で協議が続けられておりますが、政府・与党統一見解を出すよう私も強く求めて、そしてこの法案の廃案を強く求めて質問を終わりといたします。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/211
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212・照屋寛徳
○照屋寛徳君 社会民主党・護憲連合の照屋寛徳でございます。
昨日、沖縄で地方公聴会が開催をされました。本日の委員会の冒頭で委員派遣についての報告がありました。同時に、六名の公述人の述べられた意見の要旨についても報告があったとおりであります。
昨日の沖縄地方公聴会で新崎公述人から、基地に苦しむ沖縄での地方公聴会が、法案通過の単なる通過儀礼ではなく、慎重な論議の出発点となることを願うとの意見が述べられました。他の公述人からも徹底審議や慎重審議を求める意見が述べられておったのであります。私も、沖縄での地方公聴会開催がガイドライン関連法の参議院における法案の通過儀礼になるのではとの多くの県民、国民の懸念が現実とならないように強く訴えるものであります。
さて、きょうの委員会に、お忙しいところ大蔵大臣にもおいでをいただきました。大蔵大臣に何点か質問をさせていただきたいと思いますが、質問の前提として、昭和二十九年の六月ごろ、大蔵大臣は当参議院の議員でありましたでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/212
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213・宮澤喜一
○国務大臣(宮澤喜一君) さようでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/213
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214・照屋寛徳
○照屋寛徳君 昭和二十九年の六月二日に、参議院の本会議において「自衛隊の海外出動を為さざることに関する決議」が採択をされております。
大蔵大臣は、当時参議院議員として本会議に出席をされましたか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/214
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215・宮澤喜一
○国務大臣(宮澤喜一君) 昭和二十九年のことで、その本会議に出席したかどうか正直申しますと定かに記憶はいたしておりませんが、記録によりまして、その日に今お話しの決議が参議院に上程されたことは明らかでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/215
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216・照屋寛徳
○照屋寛徳君 私が調査をした官報によりますと、出席をした議員の中に宮澤喜一と書いてありますので、出席をしたことは間違いないだろうと思います。
さて、当日採択された「自衛隊の海外出動を為さざることに関する決議」というのは非常に短い文章でございますので、記憶を喚起する意味で読み上げてみたいと思いますが、
本院は、自衛隊の創設に際し、現行憲法の条章と、わが国民の熾烈なる平和愛好精神に照し、海外出動はこれを行わないことを、茲に更めて確認する。
右決議する。
こういう内容になっておるのであります。
当時、防衛庁設置法案、さらに自衛隊法案が成立をして、いよいよ警察予備隊、保安隊、自衛隊、こういうふうにして経過を経て自衛隊が誕生するわけでありますが、その際に、今読み上げた「自衛隊の海外出動を為さざることに関する決議」をいたしたわけであります。
大蔵大臣は、この本会議決議については賛成されたのでしょうか、反対されたのでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/216
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217・宮澤喜一
○国務大臣(宮澤喜一君) 賛成をいたしたと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/217
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218・照屋寛徳
○照屋寛徳君 当時は、この決議に自由党の滝井治三郎議員一人が反対をしたというふうに記録には残っております。
提案理由、鶴見祐輔議員が行っておりまして、私は非常に感動的な提案理由になっていることを知りました。
この中で、こういうふうに言っております。「自衛隊出発の初めに当り、その内容と使途を慎重に検討して、我々が過去において犯したるごとき過ちを繰返さないようにすることは国民に対し、我々の担う厳粛なる義務であると思うのであります。」、こう述べております。
引き続いて、過去の日本の犯した戦争について触れて、「日本民族の尊き体験として学びとりましたことは、戦争は何ものをも解決しないということであります。」、こういうふうに展開をいたします。
そして、自衛隊の創設に触れまして、「今日創設せられんとする自衛隊は、飽くまでも日本の国内秩序を守るためのものであつて、日本の平和を守ることによつて東洋の平和維持に貢献し、かくしてより高度なる人類的大社会的組織の完成を期待しつつ一つの過渡的役割を果さんとするものであります。それは決して国際戦争に使用さるべき性質のものではありません。」、こういうふうに述べております。
結びに、「我が国の場合には、自衛とは海外に出動しないということでなければなりません。如何なる場合においても、一度この限界を越えると、際限もなく遠い外国に出動することになることは、先般の太平洋戦争の経験で明白であります。」、「海外に出動せずということを、国民の総意として表明しておくことは、日本国民を守り、日本の民主主義を守るゆえんであると思うのであります。」。
こういう提案理由があって、お二人の賛成討論を経て、先ほど申し上げましたように一人だけの反対でこの参議院の決議が行われたわけであります。
私は、四十五年が経過して今この参議院の場に身を置く者として、この決議の意味は非常に重たいな、私たちは新ガイドライン関連法を審議しているさなかでありますけれども、参議院の昭和二十九年六月二日に採択された決議、これを一人一人がしっかり胸に刻んで重く受けとめるべきだな、こういうふうに思うわけであります。
特に、この決議の中で太平洋戦争の経験、太平洋戦争の悲劇についても触れておるわけでありますが、あの唯一の地上戦となった沖縄戦を私たちは経験しました。二十万余のとうとい命が奪われました。正規の軍人よりも民間人の死傷者が大きかった、住民混在の戦場になった、軍隊は住民の命を守らなかった、こういう歴史的な体験に照らしても、私は、この「自衛隊の海外出動を為さざることに関する決議」は、国会議員はもとより、国民一人一人が深く受けとめるべきだ、こういうふうに思うわけであります。
さて、当時、参議院の本会議場でこの決議に賛成をされた宮澤大蔵大臣の当時の所感、そして現在の所感についてお伺いをいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/218
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219・宮澤喜一
○国務大臣(宮澤喜一君) 私の場合、たまたまこの前の年、昭和二十八年の秋にアメリカにおきまして、日本の自衛力のあり方、限度につきまして、後にいわゆる池田・ロバートソン会談として知られる一カ月の会談がございまして、当然アメリカ側は、当時はまだ保安隊であったと思いますが、その三十二万五千というものへの増強の強い要求がありましたし、私どもはそれは適当なことでないということで、一月にわたってかなり激しい議論がありまして、そのときにほぼ今の自衛隊の大きさが決まったことに、回想いたしますとなったわけでありますが、そういう激しい議論の中から、私自身は、自衛隊というものは非常に大事なものである、非常に大事なものであるが、同時にしかし、これは外国で武力行使をするということがあってはならないというのが日本の憲法の趣旨であると考えておりましたから、そういう見地からかなり激しい議論をいたしました。それがちょうどこの決議のある前の年でございます。
〔理事竹山裕君退席、委員長着席〕
でありますから、私自身はこの決議の趣旨とするところは極めて穏当な、順当なことであるというふうに自然に考えておりました。その考えは今でも私は変わっておりません。
ただ、国会全体の御議論に触れますならば、ちょうどその翌年あたりが保守合同というようなことになってまいりますので、いや、鳩山内閣誕生というようなことになってまいりますので、いわゆる日本の自衛権、例えば我が国に対してミサイルならミサイルの、当時ミサイルと言ったかどうかはっきりいたしませんが、飛び道具、我が国に対して砲撃が外から加えられる、外国から加えられるような場合に、我が国が先んじてこの脅威を除くことができるかどうか、そうでなければ自衛というものは全うできないではないかという議論は、御承知のようにかなり強い主張となって議論されておりました。
政府は、今日もそうであると思いますが、仮にそうであっても、現実に我が国に攻撃が加えられたと、そういう事態でなければ、それに先んじてそれを排除するというようなことは、これは許されていないという議論が定着いたしますのにはかなり長い経緯がありましたし、今日でもなおそれについてはいろんな御議論をなさる方がございます。それはしかし、先ほど委員が述べられましたように、あるいは鶴見議員が当時言われましたように、そういう自衛の名のもとに太平洋戦争というものが戦われたではないかという、そういう反省との関連で当時もいろいろに議論されましたし、今日も議論がないわけではございません。
しかし、それはとめどもないことであって、やはりどういう場合であっても外国で我が国が武力行使をしてはならないというふうに私自身は考えてまいりました。したがいまして、この決議に賛成することは極めて自然のことでありましたし、また今日もそのように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/219
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220・照屋寛徳
○照屋寛徳君 古いことで恐縮でございますが、この参議院の決議に対して当時の政府はどういうふうな態度だったんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/220
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221・宮澤喜一
○国務大臣(宮澤喜一君) これにつきましては、政府を代表して木村保安庁長官が発言をしておられまして、前置きが少しございますが、「従いまして、只今の決議の趣旨は、十分これを尊重する所存であります。」と答えておられます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/221
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222・照屋寛徳
○照屋寛徳君 今、大蔵大臣は前置きの部分を省略されましたけれども、木村篤太郎大臣は、「自衛隊は、我が国の平和と独立を守り、国の安全を保つため、直接並びに間接の侵略に対して我が国を防衛することを任務とするものでありまして、海外派遣というような目的は持つていないのであります。」、こう断言しているわけであります。
ところが、今度の周辺事態法を初めとするいわゆるガイドライン関連法では、我が国が直接攻撃をされるような有事の事態ではないにもかかわらず、アメリカの戦闘行為について後方地域支援のために自衛隊が出動する、こういうことになりますね。そうすると、当時、先ほど指摘をしました決議に賛成をされた宮澤大蔵大臣、そしてかつて総理も御経験された宮澤大蔵大臣として、この自衛隊の海外での、武力行使とは言っていないですね、海外に出ていく、出動する、派遣する、このこと自体だめなんだ、こういう決議の趣旨なんですが、今の周辺事態関連法と結びつけていかように大蔵大臣自身は受けとめておられますか。最後にその点だけお聞かせください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/222
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223・宮澤喜一
○国務大臣(宮澤喜一君) 私は、ただいま御審議中の法案につきまして所管大臣でございませんので政府を代表してお答えすることができませんが、私の考え方は、当時も今日もそうでございますが、我が国は外国において武力行使をしてはならないというふうに考えておるわけでございます。
外国と申しますのは、文字どおり外国でございますから、我が国の領土はもちろん、領海あるいは公海において行動するということは、私は武力行使ということでありませんと私の憲法九条の考え方に反するものではないと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/223
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224・照屋寛徳
○照屋寛徳君 どうもお忙しいところありがとうございました。
きょうは御多忙のところ野中官房長官・沖縄開発庁長官にもお越しいただきました。何点か質問をさせていただきたいのであります。
私は、きのうの沖縄公聴会でも、それからこのガイドライン関連法の国会審議が始まって後、沖縄の世論の動向を見ておりますと、やっぱり何といっても五十四年前の夏に日本で唯一地上戦を体験し、しかもその沖縄戦はありったけの地獄を集めたような戦争であったと言われるぐらい悲惨な戦争であった。しかも、それに続く二十七年間のアメリカの軍事的な支配のもとで基本的な人権が踏みにじられてきた。こういう沖縄県民の思いからいたしますと、やはり周辺事態法の成立に不安を覚えるのは私は当然だろう、こういうふうに思うわけであります。
ところで、先日の委員会で私は防衛庁長官に沖縄戦についての考え方、認識を聞いたのでありますが、とても納得できるような満足するような答弁が得られませんでした。それで、官房長官に改めて沖縄戦についての所感、認識をお伺いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/224
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225・野中広務
○国務大臣(野中広務君) 過ぐる大戦におきまして、沖縄は委員が御指摘のように我が国唯一の地上戦を経験され、多数の県民のとうとい命が犠牲になり、あるいは傷つかれ、筆舌に尽くしがたい苦難を経験されたわけでございます。私は、このことを長く心に刻み、そして一人の政治家としても、また沖縄担当の閣僚といたしましても、沖縄問題に取り組んでまいらなくてはならないと肝に銘じておる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/225
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226・照屋寛徳
○照屋寛徳君 ところで、野中長官、沖縄戦がいつ始まっていつ終わったのか、あるいは沖縄戦でどれだけの者が犠牲になったのか、こういう沖縄戦の実相などについて政府としての統一した見解は現在持っておられるのでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/226
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227・野中広務
○国務大臣(野中広務君) 沖縄戦の特徴等につきましての政府の統一見解の有無につきましては、先般の本委員会におきます委員の御質問を受けたこれまでの調査によりますと、御指摘のような政府統一見解は見当たっていないと承知をしておるところでございます。
ただ、あえて申し上げますならば、沖縄戦の開始、終了時期につきましては、沖縄本島におきます戦闘において、防衛庁防衛研修所の著しました戦史叢書に基づきますれば、昭和二十年四月一日に米軍が上陸を開始し、約三カ月足らずの戦闘が続いた後、昭和二十年六月二十二日に同島を守備しておった第三二軍の組織的な抵抗が終了し、翌二十三日に当時の軍司令官でありました牛島中将等も自決をしたものというように著されておることを承知いたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/227
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228・照屋寛徳
○照屋寛徳君 私は、野中長官にお願いをしたいのでありますが、よく歴代の総理を含めて政府の方からは沖縄戦の悲劇について触れられる言葉がこれまでありました。しかし、五十四年たってまだ政府としての沖縄戦の実相に関する統一見解すらない。しかも、私が知り得る限りでは、戦死者を含めて沖縄戦におけるいわゆる被災の実態について、戦後五十四年間この国の政府はまだ一度も調査をしていないのであります。
よく言われますように、例えば沖縄戦で投下された不発弾、これを処理するのにあと五十年も六十年もかかると言われております。私の連れ合いのおやじは、この前も言いましたが、防衛隊に引っ張られて戦死をしたけれども、死んだ場所もわからない、遺骨も戻ってこない、こういう実態であります。
私は、今からでも遅くないので、ぜひ政府として沖縄戦における総合的な被災の実態調査をやるべきだと思いますが、長官、いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/228
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229・野中広務
○国務大臣(野中広務君) 御指摘のように、その沖縄戦のすべての実態について明確に政府がいたしたものは残念ながらないわけでございまして、厚生省等が保有をいたしております資料あるいは沖縄県の資料等それぞれあるわけでございますけれども、私どもとして、戦後二十七年米軍施政下に置かれ、かつ復帰後二十七年を経た今日の節目に委員が御指摘のような問題等について整備する必要を痛感いたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/229
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230・照屋寛徳
○照屋寛徳君 ぜひ長官のもとで実行していただきたいと思います。
防衛庁長官、こっちを向いてくださいよ、何かすねたようで、横を向いて、あなたが防衛の最高の責任者なんだから。
さて、私は新ガイドライン関連法には反対であるという立場をずっと表明いたしておるわけでありますが、今、長官から御答弁ありましたように、あれだけの悲惨な沖縄戦で多くの県民が犠牲になって、戦後五十四年たってまだこの国の政府の総合的な被災の調査が一度もなされない、大変悲しいことであります。
来月の二十三日には沖縄全戦没者慰霊祭が行われますけれども、この慰霊祭に小渕総理の出席は予定されておるんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/230
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231・野中広務
○国務大臣(野中広務君) 沖縄の六月二十三日のいわゆる戦没者慰霊祭に対しまして、小渕総理は何とか日程をやりくりして出席いたしたいと申しております。ただ、国内外の日程等は今予測することができませんので、委員の御意見を踏まえ、慎重に総理のお気持ちをも生かしながら検討してまいりたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/231
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232・照屋寛徳
○照屋寛徳君 最後に、野中長官にあと一点お伺いいたします。
文芸春秋の六月号に、梶山元官房長官が「祖国防衛論」という論文を発表しております。この論文の中で、「現実問題として、周辺事態が発生すれば、米軍の基地があり、これを支援する日本は、直接的な攻撃対象になりうるのである。」、こういうふうに言っております。私はもっともな意見だというふうに思います。
ところが、一方では、世界最強のアメリカ軍が駐留する沖縄の方が一番安全だ、こういう意見を申し述べる人もおるわけであります。
私のように五十四年間、膨大な米軍基地と向き合って生きてきた者の立場からいたしますと、本当に膨大な米軍基地の存在が安全である、駐留することが安全であるというならば、かつて海兵隊にしても関東一帯に駐留しておったんですから、日本の安全のためには、日本の政治経済の中枢である霞が関や永田町へ膨大な米軍基地に移転して守ってもらったらどうかというぐらいに私は思うわけであります。
野中長官は、先ほど指摘した梶山元前官房長官の「祖国防衛論」の中における周辺事態が発生した場合に日本は直接的な攻撃対象になり得る、こういう意見についてはどういうふうな所感を持っておられるんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/232
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233・野中広務
○国務大臣(野中広務君) 梶山元官房長官が、今、委員が御指摘のように「祖国防衛論」と称する論文において、我が国の安全保障及び危機管理に関する持論をお述べになられ、周辺事態安全確保法案のもとにおける米軍に対する後方支援についても言及しておられることは承知をいたしております。
他方、政治家が個人の立場でお述べになりましたことにつきまして、政府といたしましてコメントさせていただくことは御遠慮させていただきたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/233
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234・照屋寛徳
○照屋寛徳君 自治大臣にも大変お忙しいところをおいでいただきました。周辺事態法九条二項の自治体及び民間への協力要請との関係で、これまでも何点かお聞きをいたしましたけれども、きょうもまたお聞かせいただきたい。これは防衛庁長官にもお聞きをいたします。
まず、自治大臣や防衛庁長官の基本的な認識として、すなわち周辺事態法九条二項における地方自治体や民間の協力要請あるいは協力の依頼に対する自治体の側、民間の側の対応として、地方公共団体の長の協力要請に対する拒否はあり得ない、あってはならない、こういうふうな御認識なんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/234
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235・野田毅
○国務大臣(野田毅君) 今、第九条の第二項に限定してのお尋ねであろうかと思いますので、第一項に関連することについてはちょっと横へ置いて申し上げたいと思います。
第九条第二項における地方自治体の立場は、いわば民間の立場と同じでございます。そういう点で第二項に基づく場合、自治体の長の行います事柄はその有しております施設の管理者としてのことでありまして、公権力の行使ということにかかわるものではないということでございます。そういった意味で、今までたびたび御答弁申し上げておりますが、協力の要請があった場合、これは拒むことが可能である、そしてそれに対する何ら制裁的な措置を講じておるということではありませんし、損害なりなんなりの財政的な問題があれば必要な財政的な措置も講ずるということにこれは第三項でなっておるということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/235
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236・照屋寛徳
○照屋寛徳君 防衛庁長官にお伺いをいたします。
野呂田長官は、一月二十九日の衆議院の予算委員会でこういう趣旨の答弁をされております。「地方公共団体の長がこうした求めに応じて」、これは協力要請のことですね、「権限を行使することを法的に期待される立場に置かれることを意味する」と。それから「一般的な協力義務としては、それは協力するのが私は当然だと思います。」と。二月一日の衆議院予算委員会の答弁であります。同じく二月一日の衆議院予算委員会で、地方公共団体の長たちが理由もなしに拒むということは常識としてはあり得ない、こういう趣旨の答弁もしております。
そこで、防衛庁長官は一般的な協力義務ということを言っておるわけでありますが、長官が言う一般的な協力義務と法的な協力義務というのは違うんでしょうか、同じなんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/236
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237・野呂田芳成
○国務大臣(野呂田芳成君) 私は、今、委員が挙げられた答弁におきましては、九条一項に基づく協力があった場合、公共団体の長は、求めのあったことを踏まえてその有する権限を適切に行使することが法的に期待される立場に置かれるものであるが、協力を強制されるものではなくて、権限において定められた個別の法令に照らして正当な理由がある場合にはこの協力を拒むことができる、また拒んだことをもって罰則規定もありませんし、罰せられることもない。
正当な理由があるかどうかの質問についても累次お答えしているところでありますが、個別具体の事例に即し、かかる求めを受けたということを前提としつつ、個別の法令に照らして判断されることとなる、こういうふうにお答えした上で、国が平和と安全に重要な影響を与える事態になっている場合に、公共団体の皆さんとしては協力するのが常識的ではないか、こういうふうにお答えしたわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/237
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238・照屋寛徳
○照屋寛徳君 今、防衛庁長官は正当理由の存否についてお触れになりました。その協力要請、協力の依頼に対して拒否し得る正当理由というのはどういうことなんでしょうか。具体的に明示をしていただきたいと思います。
すなわち、法律の概念として、例えば正当防衛だとか正当行為とかということがございます。その法概念としての正当行為と長官が考えておる拒否し得る正当理由というのは同じことを言っているんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/238
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239・野呂田芳成
○国務大臣(野呂田芳成君) 先ほどちょっと答弁漏れしたように思いますが、一般的な協力義務というのは何かということからまず申し上げたいと思いますが……発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/239
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240・照屋寛徳
○照屋寛徳君 いやいや、正当理由について。もう時間がないから、正当理由について明示してほしいんです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/240
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241・野呂田芳成
○国務大臣(野呂田芳成君) 正当な理由は何かとの御質問でございます。これも累次お答えしているところでありますが、個別の法令に照らして判断されることになります。
正当という言葉は一般的な用語の意味において用いているものでありまして、他の法律における正当と同義かといった質問についてはお答えを差し控えさせていただきたいと思いますが、何が正当な理由であるか否かは、この本法第九条第一項に基づく協力の求めを受けたということを前提としつつ、当該個別の法令、条例に照らして判断されることになります。
正当な理由があるか否かは今申し上げたとおりでありますが、具体的には、正当な理由というのは、例えば私どもが従来から申し上げているのは、港湾法で言えば、港湾がふくそうしていて米軍の船が入れないような場合にはこれを断ることができるとか、あるいは長期に滞在しているのは港湾の適正な管理運営に反するから断るとかというようなことが正当の理由に当たるということを申し上げてきたところであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/241
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242・照屋寛徳
○照屋寛徳君 防衛庁長官、けさの朝日新聞に、「沖縄、「法成立しても抵抗」」という大きな見出しで、「公聴会「むなしい」 「基地ある限り危険」」、基地が所在する市町村長のコメント、調査結果が載っております。
これはどういうことかというと、例えば極東最大の空軍基地がある嘉手納町の宮城町長は自民党の推薦を受けた町長であります。この町長は、せんだっての十一日の当委員会における野呂田長官の発言について、私と全く同じ、「長官は正直な方だ」、こういうふうに言っておる。そして、宮城町長は自民党の町長でありながら、公聴会についても「ガス抜きだ。何を言っても成立は動かないが、もっと早く聴いてほしかった」、こういうことも言っております。
だから、保守、革新という従来の枠組みを超えて、基地所在の市町村長は、みずから地方自治を実践する上で直接住民の生命、身体の安全を第一義的にかつ優先して守らなければならない、そういう立場で、周辺事態を初めとするガイドライン関連法が成立をしても協力要請に「応じない」、あるいは「場合によっては応じない」というのがほとんど全員であります。
そうすると、今正当理由の話になりましたが、ある市町村長が選挙で周辺事態法による協力要請には応じないという公約を掲げて当選をする、その当選をした当該市町村長がみずからの公約に従って協力要請を拒否することは許されますか。防衛庁長官、具体的に聞きましょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/242
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243・野呂田芳成
○国務大臣(野呂田芳成君) これは一般的にどうかというのじゃなくて、個別の法律に違反するかどうかという問題があるということであります。さっき港湾法について申し上げましたが、港湾法でも港湾管理者は港湾の適正な管理運営をやるという立場から、正当な理由があれば拒否できるし、拒否したことによって罰則も何もない、こういうことになるだけの話であります。
私どもは、我が国に対する武力攻撃が及ぶことを未然に防ごうというのがこの法案の趣旨でありますから、そういう趣旨からいってもぜひひとつ根気よく公共団体の皆さんに正しく理解していただいて協力を得るようにしたい、こういうふうに考えておるところであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/243
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244・照屋寛徳
○照屋寛徳君 防衛庁長官、個別的な法令を云々しますけれども、これは拒否の正当理由を裏づけるあくまでも抽象的な理屈ですよ。
では、もっと具体的に。これまでの論議の中で全く出てきておりませんでしたが、当該自治体の議会で協力要請に対する拒否をする、応じないという決議があって、その決議に沿って当該市町村長が協力を拒否することは許されますか、どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/244
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245・野呂田芳成
○国務大臣(野呂田芳成君) 拒否するかしないかはその首長さんの意思によると思いますけれども、もし拒否をした場合に、個別の法令や条例で正当な理由がなければ関係行政機関の長から是正命令が出るとかどうとかという規定があるので、そちらの制約があるということを申し上げているわけであります。個別の法令や条例に何らそういう制約がなければ、これは拒否することは別にだめだと書いておるわけでもありませんし、罰則も書いていないから罰せられることもないということを先ほどから繰り返し申し上げておるところであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/245
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246・照屋寛徳
○照屋寛徳君 私は、防衛庁長官の答弁をとてもとても納得をするわけにはいきません。
一つだけ。ベトナム戦争のときに、基地の中で働いている民間人の労働者が、タグボートに乗ってベトナムへ行かなければ解雇すると、こういう強制でもって戦場への出張命令を強いられたという事実があるんです。幾つも事例がある。残念ながら時間がありませんが、また機会を得てただしていきたい。私たちは、そういう基地の島沖縄で生きた体験に照らしても新ガイドライン関連法を認めるわけにはいかない、こう申し上げておるわけであります。
最後に。私のところに成田空港の軍事利用反対を訴える手紙が届いております。「軍事利用はいや」、成田市民の会からでありますが、成田空港はあくまでも民間空港として設置をされたものであり、軍事利用は困る、この周辺事態法の成立によって成田空港が軍事優先に使われることは困ると。こういう願いがあることを強く申し上げて、質問を終わりたいと思います。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/246
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247・月原茂皓
○月原茂皓君 自由党の月原です。防衛庁長官、外務大臣に御出席いただいて私の質問を行いたいと思います。
まず、新しいガイドラインのもとで行われる日米の計画、検討作業の成果というものが、それぞれの計画各段階の多様な軍事的なもろもろの事態に対してどういうふうに協力を行っていくかということを、詳細に日米関係が規定されていくものと私は思っております。そのような計画をつくった結果、周辺事態や我が国有事に際して行われる日米の情報交換あるいは特に政策協議において、今までと違って米国に対する日本の立場はどのように変化するように思われるかということについて、外務大臣、防衛庁長官、それぞれの立場から御説明願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/247
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248・高村正彦
○国務大臣(高村正彦君) 周辺事態安全確保法案は、日米安保条約の効果的な運用に寄与し、我が国の平和と安全を確保することを目的としており、我が国に対する武力攻撃の発生を抑止することに資するものでございます。
ある事態が周辺事態に該当するか否か、周辺事態に際していかなる措置を実施するかについては、日米両国政府がおのおの国益確保の見地からその時点の状況を総合的に見た上で主体的に判断することになります。その際、日米両国間においては、随時密接に行われる情報交換、政策協議が一層緊密に行われ、このような事態についての共通の認識に到達するための努力が払われることになります。
このように、この法案の成立によって日米安保体制のもとでの日米間の防衛協力関係がより効果的なものとなり、ひいては日米安保体制の信頼性が一層向上することになるものと考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/248
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249・野呂田芳成
○国務大臣(野呂田芳成君) 御指摘のように、ガイドラインにおいても、共同作戦計画につきましての検討それから相互協力計画についての検討は、その結果が日米両国政府のおのおのの計画に適切に反映されることが期待されるという前提のもとで、種々の状況を想定しつつ行われる旨、記述されているところであります。
緊急事態に際しまして、日米間で緊密な情報交換、政策協議が行われることとなるわけですが、我が国の対米支援の枠組みが整備され、日米間の計画検討作業の成果が米国の計画に反映されることとなれば、緊急事態の対応について相互の理解が一層深まり、これらの情報交換や政策協議がより円滑かつ効果的に行われることになると考えております。
いずれにしましても、周辺事態に際していかなる対応措置を実施するかは我が国が主体的に判断するものであり、我が国が戦争に巻き込まれるようなことは考えられません。その際、日米両国間においては、随時密接に行われる情報交換、政策協議が一層緊密に行われ、共通の認識に到達するための努力が払われることになると考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/249
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250・月原茂皓
○月原茂皓君 今、外務大臣及び防衛庁長官のお話を伺いましたが、こういうふうに日米関係が安保体制の中でお互いに汗を流すということで緊密になったとすれば、例えば一つの部隊を動かすについても後方支援として日本が応援をしてくれるという前提で組んだ場合、日本の国益と米国の国益を激しくお互いに議論した上で日本の方はそれには応じられないというふうな立場に立てば米軍そのものも動けなくなる、こういうふうになって、私は日本の国益、日本の考え方、そういうものが大きな要素となって米国の行動を慎重にさせる、足を引っ張るのではなくて多角的に検討していく、今まで以上に日本の主体的な意見を聞いて行動しなければならなくなってくる、私はそのように理解し、またそのようなところにこれの意義があるんだと思います。日本の国そのものもそういう意味では、外交的にいえばより強い立場で米国と連携を持つことができる、こういうふうに思います。
この前、私は新聞を読んでおったら、繊維交渉のときの話が出ておりました。これは政治家クラスでなくて公務員の方のやりとりの話ですが、外務省の安川さんが通産省の両角さんに、終わった後、どうしてやはり繊維問題をここまでやらなければならなかったんだろうかというようなことを聞きにいったと。そうしたら、やっぱり核があるからなと。こういうふうな種類の話は非常に多いわけです。
ですから、我が国としては、アジアにおける平和のために日米安全保障体制というものが非常に大きな役割を果たしておる。そして、我が国の憲法のもとでできる限りの努力をしていくんだということを実際に今度の周辺整備、ガイドライン全般についてそういうことを示す。そのことによって、より日本の立場がアジアにおいても役に立ってくる。そして、日本の国益というものが強く主張することができるようになった。ただ、受け身で戦争に巻き込まれるとか、そういう議論であっては私はならない。これは、むしろ日本の国がアジアに貢献するんだ、アメリカと一緒になって平和と繁栄というものに責任を持つんだというような立場の制度だと、こういうふうに私は理解しているところであります。
そこで、外務大臣にお尋ねいたしますが、米国との政策協議というものが今後ますます重要になってきているわけであります。俗に、これは多くのジャーナリストが言っているところでありますが、九〇年度の湾岸戦争、そして九三年から四年にかけての北朝鮮の核の問題では、どうも米国と政策調整が順調でなかったのではないか、そういうふうなことも言われております。今私が申し上げたように、米国の政策協議が今後ますます重要になってくると思いますが、政策協議が非常に密接に行われるようになったぞ、どんどんそれがそういうふうに進んでおりますよということを最近の事例を挙げて御説明願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/250
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251・高村正彦
○国務大臣(高村正彦君) 例えば、日米首脳会談におきまして、日米の両首脳は、自由、民主主義、基本的人権の尊重という基本的価値を共有する同盟国である日米両国が、二十一世紀に向け、平和で豊かな世界の構築という共通の目標を目指して一層協力していくことを確認し合ったわけでございます。そのためにも、日米両国が国際社会が直面するさまざまな課題について緊密に協議、協力していくことが重要であると考えております。
外務省としては、米国政府との種々の場を通じて情報交換や政策協議を行っておりますが、今後とも緊密な協議を行っていきたいと考えております。
北朝鮮政策に関しましては、三月九日及び十日にペリー北朝鮮政策調整官が訪日し、総理、官房長官、防衛庁長官、そして私とそれぞれ意見交換を行ったほか、四月二十三日から二十五日にかけてホノルルにおいて韓国を交えてペリー調整官らと協議を行っております。このほかにも、日米間で幅広い事項につき、さまざまなレベルで頻繁に協議を行っているところでございます。意思の疎通は相当図られていると思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/251
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252・月原茂皓
○月原茂皓君 今、外務大臣から全般的なお話と、そして北朝鮮に関する問題が今我が国最大のテーマだと、この周辺では。そういうものについて、それだけ密接な動きがあるということを聞いて、日本の立場が強くなってきているんだな、そういうふうに思いました。ペリー長官が、高村外務大臣を通じて日本の意見というものを吸収して、日本の意見も取り上げて、そのレポートにあらわれることを期待しております。
さて、次に、内閣の方にお尋ねしたいんですが、よく日本の安全保障政策の決定プロセスが緩慢だ、時間がかかり過ぎておるのと違うかというようなことがよく言われているわけです。
それで、そういうことを前提にして、今、外務大臣及び防衛庁長官にもお尋ねしたことと関連するんですが、緊急事態に際して行われる日米の協議で、我が国の立場というものは非常に強くなるし、ここの的確な判断をすることが大切になってくる。そういうことで、総理が的確な政策判断を行うために政府が一体となって正確な情報の収集と的確な分析を行う体制を整備する必要があることは、これはもちろんのことでありますが、総理に対する情報提供と政策判断のための補佐体制、そのシステムというものがどのようになっているのか。
そしてその後、危機管理監等も置かれました。危機管理監の所掌という問題もあると思いますが、内閣、安保会議、危機管理監というものの全体、これのみじゃなくて、一連のそういうところの位置づけはどういうふうになっておるんだということですね。
そのことと、ちょっと長くなりますが、的確な情報の収集、分析、配付を行う上で、これから、どうも欠落しておるから整備せぬといかぬなという問題があると思います。国会なんかで議論になった中には、情報収集衛星もその一つだったと思います。そういうものも含めて、これからどういう欠落部分あるいは弱い点、それをどう高めていくかということは、冒頭に私が質問しておるように、我が国の国益に基づいて米国自身にも物が言える、そのためには自信を持って情勢判断ができる、そういう体制が必要だからあえてお尋ねするわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/252
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253・杉田和博
○政府委員(杉田和博君) お答えをいたします。
初めに、今、委員が示されました国の安全にかかわります重要な施策について、その的確な推進を図るためには、やはり情報面におけるところの機能強化を図るべきであるという認識については私どもも同意でありまして、そういう認識に立ちまして、昨年の十月に、内閣官房長官を議長といたします内閣情報会議を設置いたしました。このメンバーは、官房長官のほかに、三人の官房副長官、それに危機管理監、私、それと外務、防衛、警察、公安調査庁、それぞれの組織の長、こういう者をもって構成するわけでありますけれども、この場でそのときの総合的な情勢の分析をいたしまして今後の情報の重点というものを決めることといたしました。
それを受けまして、現在、ずっと数年前から進んでおりますけれども、内閣合同情報会議というのがございますけれども、これは、副長官を長といたしまして、危機管理監、安保室長、それに先ほど申し上げました情報関係の局長クラス、こういうメンバーで、これは定期的に会合を持ちまして、日常的に情報交換、分析評価を行います。その結果を私が随時、官房長官、総理に御報告するという仕組みになっております。
このほか、国の安全にかかわります情報、そういうものを入手した場合には、こういう定期的なものとは別に、緊急に参集をいたしまして、そこで持っておる情報のすり合わせというものを行いまして、そういうインテリジェンスコミュニティーにおけるところの評価というものを直ちに官房長官、総理に御報告して、それに対する対応ということを考えるということでありまして、この場合にあっても、危機管理監と安保室長というのはその会議に参画をいたします。したがいまして、その情報をもとに、場合によっては危機管理監のもとにおいて対策態勢というのをとるかもしれませんし、また直ちに安保会議というものを招集して対応を考える、こういう仕組みにしております。
次に、今後の課題でどういうものがあるかということでありますけれども、私は大きく分けて二つあると思います。
今申し上げたように、いわゆるインテリジェンスコミュニティーの一つの枠というものができました。しかし、これが本当の意味で洗いざらいお互いが情報を出し合って、そこで機動的に判断をする、そういう仕組みについてはまだまだこれから課題が多うございますので、この充実を図る必要があるというふうに思います。
もう一点は、情報の幅と深みと申しますか、いわゆる質、こういうものをいかに上げるかということであります。それに関連をしまして、今、委員が御指摘になったいわゆる情報収集衛星、これを十四年度末を目途に今進めておるわけでありますけれども、情報収集衛星を上げましても、それを受けて情報を分析する体制というものをこれまた強化しなければいけませんし、その他政府が持っておるいろいろな情報を組み合わせて初めて情報が生きるわけでありますから、そういう横断的な情報共有の仕組みというものを強化する必要があるというふうに思います。
いずれにいたしましても、まだまだ課題は多うございますので、委員の御指摘も踏まえながら工夫をしてまいりたい、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/253
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254・月原茂皓
○月原茂皓君 今の話でわかりましたが、ここで一つお尋ねしておきたいのは、ある米国の有力な筋からのお話なんですが、例えば向こうでいえば偵察衛星、日本の場合と違うんですが、偵察衛星の非常にいい情報を日本の方に渡そうと思っても、これは高度にセンシティブなものだから、果たして秘密を守ってもらえるんだろうか、情報が漏えいするおそれがあるんじゃないか、こういう心配があるんだということを言われております。
私は別に今の日本の法体系、法律をどうこうせいという、そこの議論は今はいたしませんけれども、そういうことについては、これからは今の全体の流れからいって、米国とより緊密な、そして総理が判断するための生の情報がどんどん入ってくるわけですから、そういう情報管理という体制については今どういう方法をお考えでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/254
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255・杉田和博
○政府委員(杉田和博君) 特に外国と情報交換を行います場合に一番大事なのは、まさに情報の管理ということであります。
御指摘のような話をたまに聞きますけれども、私どもといたしましては、そうしたいわゆる外国の情報というものを共有する上においての、そういう管理の体制はきちっとした自信のあるものをつくってございます。したがいまして、もとより情報を知り得る人というのは非常に限られるわけでありますけれども、そういう点についても十分配意しながら、お互い信頼関係に立って十分な情報交換ができるようにいたしたいと考えています。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/255
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256・月原茂皓
○月原茂皓君 最後に、防衛庁長官にお尋ねいたします。
ただいま情報関係のことでいろいろ質問したところでありますが、防衛庁長官に課せられた判断というのも大変なことであります。そういう意味で、そういう緊急事態の情報の収集とか、あるいは判断をするためのシステムというものを大臣になられてから幾つかつくられたと新聞でも見ておりますが、皆さんにわかるように、どういうふうなシステムをつくって判断に誤りなきを期するようにしておるんだということをお答え願って、私の質問を終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/256
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257・野呂田芳成
○国務大臣(野呂田芳成君) 専守防衛を旨としております我が国にとりまして、情報収集は極めて重要な問題でございます。
防衛庁としても、その時々の情勢に応じて情報収集体制を強化しているところであります。自衛隊の艦艇とか航空機による警戒監視活動の強化、あるいはもうこれは委員が一番御案内のとおりでありますが、情報本部における情報の収集・分析体制の強化、あるいは同盟国であるアメリカとの情報・意見交換のより一層の緊密化、そういう問題について一段と力を入れているところであります。
また、必要な情報については、防衛庁内はもとより、迅速に政府部内あるいは国民の皆様を含めて共有し得るよう、所要の連絡体制をとることといたしております。
防衛庁における具体的な情報収集活動としては、これはもう委員が一番御案内のとおりでありますが、各自衛隊の陸上部隊、艦艇、航空機による警戒監視活動、商業用地球観測衛星データの解析、あるいは我が国上空に飛来する各種電波の収集、在外公館に派遣されている防衛駐在官による情報の収集活動、あるいは各種公刊資料等の収集、整理、米国国防機関との情報交換などであります。また、部内に重要事態対応会議というものを開きまして、こういうものの分析とか対応に力を入れている次第でございます。
こういうふうに収集された情報につきましては、情報本部等を中心にして多角的視点から総合的に分析を加えるとともに、所要部署に対し適時適切に連絡をすることに努めている次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/257
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258・月原茂皓
○月原茂皓君 終わります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/258
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259・山崎力
○山崎力君 参議院の会の山崎でございます。
本日は、後半、同僚の堂本議員が質問させていただきます。お許し願います。
本日は、まず、これまで結構時間的に長くやってまいりました、そしていろいろな点が指摘されておりますが、私が大づかみにして一番問題じゃないのかなということは、今回のガイドライン関連法の審議を通じて、我が国の有事における、あるいは緊急事態、非常事態でも結構ですが、その整備ができていない。そのことによって、今回出てきたガイドラインの関連法規も、周辺事態から有事に切りかわったとたんにといいますか、事態が変化したとたんにそごを生じる具体例が幾らでもあるということの方が法体系上は一番問題ではないかということを感じております。
そういった意味で、このガイドライン関連法案を提出した以上、そしてこの問題点が論理的に明らかになった以上、少なくともその辺を含めた、有事立法という言葉自体がいいかどうかわかりませんが、緊急事態に対応する日本有事における我が国自身の法体系を整備する必要がかなり判明してきたと思うわけですが、これを早急に整備しなければならぬということに関して、防衛庁長官、まずどのようにお考えでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/259
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260・野呂田芳成
○国務大臣(野呂田芳成君) 御指摘のとおり、自衛隊の任務遂行に必要な法制の骨幹は整備されていると認識しておりますが、これまでに行ってきた有事法制の研究を踏まえますと、現行法制上なお不備な事項が残されていることはもう御指摘のとおりであります。
例えば、防衛出動をしようとして、相手が日本の領土に上陸してきた場合に、簡単な陣地を構築しようと思って海岸法の許可を受けると大体三週間かかります。あるいは指揮所をつくろうと思っても建築基準法の許可が三週間もかかるという状態であります。以下もろもろの法律がそうなっておりますので、これでは本当に防衛出動が潤滑にできるかどうかということを非常に我々も心配しております。
二十二年間、私どもは研究を重ねてきました。しかし、この研究はあくまでも立法じゃないということで制約が加わっております。私どもは、平成六年ごろから歴代の防衛庁長官が、この研究の成果を踏まえてできれば立法化されることが望ましい、こういうふうに国会でその都度御答弁してきた次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/260
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261・山崎力
○山崎力君 今回のことに関してみれば、今の防衛庁長官の立場はわかるわけですが、それをいかに実際の政治スケジュールにのせるか、この点もある程度めどがつかなければ絵にかいたもちということになろうかと思います。
防衛庁長官の前に、今回のことで言えば、対米ということからいけば外務大臣も同じような立場になろうと思うんですけれども、この辺の、いわゆる有事法制といいますか緊急時、非常事態時の法制についてどのような御見解をお持ちでしょうか。外務大臣の方からもお答え願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/261
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262・高村正彦
○国務大臣(高村正彦君) スケジュールにのせてすぐどうするということから離れて、やはりいつかはやらなければいけない問題だ、こういうふうに認識しています。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/262
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263・山崎力
○山崎力君 そういうふうなお答えなんですが、私の方からいけば、スケジュールを離れてという余裕があるのが今回の法案であろうかと思うわけです。
例えば、いわゆる周辺事態時において、私はこれは前にも申し上げましたけれども、洋上において、日本領海外の方がはっきりしていいんでしょう、今回の周辺事態、可決されれば、成立すれば可能となる洋上での燃料補給をしていると。ところが、その時点において日本が有事になった、日本に攻撃が始まったと。そうしたら、日本有事のときに、今回の法案成立で可能になった洋上での燃料補給を今のままでは許可する法体系がない。今まででしたら、それができるかできないかということはほっておける、これはちょっとできる法律がありませんのでアメリカの艦船に自衛艦から燃料補給することはできませんと言うのは、これはいい悪いは別として可能であったわけでしょう。それが今回の法律成立で可能になる。
ところが、可能になったはいいけれども、それよりも日米が協力して事に当たらなければならない日本有事になったときに、日本有事になりましたから許す法律がないので油の補給を中止しますと。こういうばかなことをしなければならない可能性が十分ある事態なわけです。
そういった点を考えますと、これを出した以上、やはりいつになるかということよりも、ある程度のスケジュールは明示していただかなければならないと思うわけでございます。
特に、防衛庁の方は、これは第一分類として今まで随分御苦労なさっているのかもしれませんが、いわゆる他省庁の第二分類、あるいはどこの省庁になるのかはっきりしない、あるいは複数の省庁が重なっていると言われて対処しなければならない第三分類、こういったものがどこまで検討されているのか全然見えてこない。
もちろん、途中経過でしょうから今の状態がこうなっておりますというのはなかなか言えないんですが、それはわかるんですけれども、少なくともある程度のめどをつけて、今回のこういったガイドラインの法案を出した以上、このくらいまでの間に役所の内部、省庁間の調整くらいはめどをつけてもらわなければ、これはまたいつか来た道で、次に何か事が起きない限り出てこない。今回の事のスタートが九四年の北朝鮮の核疑惑からスタートしたというのは、公式にはともかくとして、ここにおられる委員の方々は皆さん前提条件として思っているわけですから、その辺のところはどうなっているのか、現状で結構ですから教えていただけませんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/263
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264・野呂田芳成
○国務大臣(野呂田芳成君) 我が国有事に際して必要な法制としましては、今、委員が御指摘ございましたとおり、自衛隊の行動にかかわる法制、それから米軍の行動にかかわる法制、自衛隊及び米軍の行動に直接にはかかわらないが国民の生命、財産保護などのための法制の三つが考えられるわけであります。
委員の御指摘の主なるものは、このうち米軍の行動にかかわる法制だと思いますが、自衛隊及び米軍の行動に直接はかかわらないが国民の生命、財産保護などの法制については、安全保障の課題であると認識しており、その取り扱いについては今後十分検討しなければならない問題である、こういうふうに考えておりまして、今その研究を最終的に仕上げるための努力を重ねているところであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/264
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265・山崎力
○山崎力君 緊急の課題だという認識は当然お持ちで、一生懸命努力されているんでしょうが、これはある意味では結果がすべてでございまして、努力していたけれども間に合わなかったというのは、これはなかなか言いわけは通じない世界でございます。
次の問題として、私が各諸先生方といいますか各委員の論を聞いていて感じましたのは、六〇年安保のときに真剣に討議され、あるいはそこのところでの価値観の一番の違いであった安保条約、米軍との戦争、日本と直接関係のない戦争に巻き込まれる、この不安感に対する、そこに立脚した議論が随分多かったように思っております。
そういった点で、今回の場合でいえば、先ほど申し上げましたように、例えば日本の自衛艦、補給艦からアメリカに物資、油等を補給する、あるいは後方地域で撃墜されたパイロットを救助する、あるいは別法ですけれども、機雷除去などもやる。こういった活動が、アメリカが事を構えようとしている国、あるいは構えている国にとって、今までと日本に対する見方が変わるかどうか。ここがある意味では、我々のことではないんですが、向こう側がどう我々の行動をとらえるかということが巻き込まれ論の基本的な問題だろうと思うわけです。
簡単に言えば、安保条約の現状においても、今度の法案が可決されない状況においても、そういった状況の中で見る見方と、今度の法案が可決されて成立した後の行動を見る見方と大きな違いがなければ余りこの巻き込まれ論というのは問題にはならないはずです。大きく違えばこれはやはり考えなきゃいかぬ、こういうことになろうかと思うわけですが、その辺についての御見解はいかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/265
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266・高村正彦
○国務大臣(高村正彦君) 大きく違わないと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/266
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267・山崎力
○山崎力君 そういった点であれば、今の政府の考え方というのは、いわゆる六〇年当時の安保危険論、巻き込まれ論というのと余り変化はないと政府側は考えているというふうに理解してよろしいかと思います。
ただ、そこのところで私が一点問題があるかなというのは、これはもちろん途中経過があるわけですけれども、あの当時の政府側の解釈、国民の一般的な理解というのは、我が国は専守防衛であると。先ほど別の委員からの質問に対して宮澤大蔵大臣の方からもその問題についての話がございましたけれども、改めて私からも問わさせていただきたいのは、自衛隊の活動範囲は日本領土、領海内である、これが専守防衛であると。海外派兵の海外が今でも他国の領土、領海内に及ばない公海であるというのが、そういうふうにその当時から思っていたというのが宮澤大蔵大臣の話でしたけれども、国民のイメージとしてやはり自衛隊の行動半径は領土、領海であるということが私は正直に言ってあったと思うんです。
それが今回の法案によって、相手国領土まではもちろん行かないけれども、日本国の周辺、その範囲はともかくとして、公の海上まで活動範囲を広げたんだということは明らかであると思うわけでございます。それが即、憲法違反になると私は言うつもりはございません。そして、かつてのいろいろな論議の中で、公海上のシーレーンの防衛も我が国の自衛権の発動の範囲内に含まれる、そこで攻撃を受ければ護衛に当たっていた自衛艦は自衛権の行使ができるというふうなことも承知しておりますが、やはり国民にとっては政策の変更というふうに受けとめられているんじゃないか。
今回のこの法案が、今まで漠としたものが明確に政策変更、あの当時の、六〇年時代から日本国政府は政策を変更したんじゃないかと思われているのではないかというふうに私は理解しているんですが、その辺の御感想といいますかお考えはいかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/267
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268・高村正彦
○国務大臣(高村正彦君) 周辺事態において新たに自衛隊が後方地域支援と捜索救助活動、二つの活動をやるんですから、それはその限りにおいては政策変更であります。
ただ、自衛隊が海外に派遣されないというのは、先ほど宮澤大蔵大臣も言っておられたように、それは他国に行かないということであって、公海では今までも現実に活動していましたし、そこが政策の変更だとは思いません。
それからもう一つ、宮澤大蔵大臣ははっきりおっしゃらなかったけれども、ある意味でははっきりおっしゃっていたんだけれども、武力の行使、単なる行くということではなくて、出ていって武力を行使すること、その二つを言っておられたんだろう、こう思いながら聞いておりました。だから、ある意味では新たな法律をつくって新たに権限を与えてやるんですから、その限りでは政策の変更です。ただ、大きな意味で、自衛隊の活動範囲はどこまでだとか、あるいは憲法の解釈を拡大するとか、そういう意味での政策変更ではない、こういうことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/268
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269・山崎力
○山崎力君 あとの時間を同僚委員に譲りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/269
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270・堂本暁子
○堂本暁子君 外務大臣はこの特別委員会で、周辺地域に対しては抑止と対話あるいは対話と抑止で対応するんだと何度もおっしゃっておられました。同僚の山崎委員は今抑止の方の領域で質問をさせていただいたわけですが、私どもバランスをとりまして、私は対話の領域できょうは質問をさせていただきたい、そう思っています。
〔委員長退席、理事竹山裕君着席〕
このガイドライン関連法案ですけれども、先日私は中国から北朝鮮に行って戻ってきたところですが、やはり中国そしてアジア諸国は大変敏感に反応しているということを体で感じざるを得ないということでございました。やはり抑止と対話を主張するのであれば、両者のバランスをとることが私は必要不可欠ではないかというふうに思っております。抑止が強化あるいは明確になるとすれば、アジアの諸国は大変そのことに警戒心を強めている。とすれば、やはり軍事に頼らずに紛争を事前に予防する信頼醸成を大変強力に日本としてはこの時期に展開し、そして努力を惜しまないだけの姿勢を示していくことが大事だと思いますが、外務大臣はいかがお考えでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/270
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271・高村正彦
○国務大臣(高村正彦君) アジア太平洋地域の平和と安定の確保のためには、地域の安定要因である米国の存在と関与を確保しつつ、域内各国間の予防外交、信頼醸成の推進のため、二国間の安保対話、防衛交流に加え、多国間の安全保障分野での対話や協力を推進することが重要と考えております。
このような観点から、政府といたしましては、この地域における全域的な多国間の安全保障対話と協力の場であるASEAN地域フォーラム、ARFの進展に努めているところでございます。九四年の発足以来、ARFは信頼醸成の促進に取り組んできており、閣僚レベルから実務レベルまでの各種会合におきまして、地域の安全保障問題に関して率直な意見交換を実施してきております。同時に、具体的信頼醸成措置を検討するため各種の作業グループを設置して精力的に議論を行い、その中から、例えば国防政策ペーパーの自主的提出等、適切と思われる信頼醸成措置を実施してきているわけでございます。これらはいずれも信頼醸成促進の観点から意義があったと考えているわけでございます。
例えば、今の周辺事態安全確保法案、この点につきまして心配している国に対しては、粘り強く御説明を申し上げ透明性を確保していく必要がある、こういうふうに思って現実にそういうふうにしてまいりました。ただ、アジア諸国の中で、例えば韓国ははっきり肯定的に評価をしておりますし、それからASEAN諸国のほとんどもこれについては肯定的に評価していると承知しておりますし、アジア諸国のほとんどが何か心配している、そういうような感じではない。ただ、一部でもそういうことを心配しているところがあるとすれば、透明性をきっちり確保していくことは大切だ、こういうふうに思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/271
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272・堂本暁子
○堂本暁子君 前段のお答えは、衆議院の審議の中でお答えくださったことと一字一句違っていなかったものですから、そこは知っていると申し上げてもよかったかなと思いますが、そこを超えたことを申し上げたい。そして、今おっしゃったアジア地区、韓国あるいは中国を含んでは国交がありますからいいわけなんですが、私がむしろ問題にしたいのは北朝鮮そのものでございます。
ずっと北朝鮮がこの委員会でも大変問題になっていますけれども、一体北朝鮮との間の信頼醸成を日本としてはどうするのかということが私は問題だと思っているわけです。近くて遠い国がますます遠くなっているというのが私の実感でございまして、インターナショナル・アラートという予防外交をしているところのルペシンゲさんという方に、五、六年前ですが、そういったときにはNGOのネットワークとかそれから早期警報が大変大事だということを言われたときには、非常に観念的にそれを受け取りました。
しかし、今度私は参りまして、前回が三党の訪朝団でしたから一年と四カ月前ですけれども、そのときと全然平壌の空気が違う。そういった状態というのを果たしてどれだけの日本人が危機感を持って感じているのかということについて、何かこれでいいのか、国会の中では北朝鮮、北朝鮮と言葉は限りなく出ていますけれども、じゃ、その実態に対して果たしてどれだけの人が認識しているのかということを大変感じます。
ルペシンゲさんがおっしゃっていたように、やはりNGOが大変大事である。IUCNというのは世界自然保護連合というのですが、国がメンバーになっている組織です。NGOもメンバーになっておりますが、恐らく世界で最大の組織だと思いますが、それのたまたま今副会長とそれから北東アジアの理事という二つの仕事をしているものですから、私も今回そのステータスで訪問したんですが、まず北京から飛行機に乗って、聞こえてくる言葉は、フランス語もドイツ語も英語も聞こえてくるんです。日本語は聞こえてきません。ですから、私も関心があるから、あなたはどういう立場で来たんですかと言うと、UNDPの人もいれば、それからいろいろ、IPPFというのはこれも大きい世界的な家族計画をやっているNGOですが、そういうところの人たち。
ところが、日本はそういった形で、国交回復していない、国交樹立していない、正常化していない国とどうやって本当につき合おうかということで、危機的だ危機的だというのはきょうずっとおっしゃっていました、そういった中でどうやって信頼醸成をやろうとしているのかということで、むしろ信頼醸成が大事だという形で申し上げたいというふうに思っています。
二つ端的に申し上げたいことがあります。
一つは、民間の中でそういったNGOに限らず本当に日本が努力しているのか。単に小さいグループのNGOが何かを持っていくとか、そういったことで相手の高官と話すチャンスはありません。私の場合は大変大きい組織でしたから、相手も政府関係者が出てきて、もちろんこちらが参りました目的は自然の回復とそれから食料事情をどうやってこれから的確にやっていくかということに対しての相談でしたから、向こうもそれなりの人が次から次へと出てきて話をすることができた。同時に日本の国会議員というシャッポもかぶっていますから、日本のいろんな問題も言うことができた。だから、単に何か小さいNGOが行くとか、今おっしゃったASEANのようなことで信頼醸成というのはもう物足りない時代に入った。二十一世紀はもっと違った形の信頼醸成の展開が必要だということが一つです。
それからもう一つは、やはり日本政府がどうやって国交正常化に向かっての展開をするか。その場合で言いますと、私、ちょうど九六年から北朝鮮へ行き始めて三回参りまして、今度四回目になりますが、その間に外務省の北東アジア課の課長は四人おかわりになった。いろいろな交渉をするときに、やっぱり相手との本当に人間的な関係も必要になってくるわけです。そういったときに、ちゃんとカンボジアの場合なんかは、お名前は今川さんとおっしゃいましたか、当時大使をなさって、本当に後で日本はカンボジアの中で非常にいい地位がつくれたわけです。
それでは、北朝鮮の場合、そういったことをしているのか。本当に政府としてきちっと相手と話ができるような人脈をつくっているのかということになると、私は疑問があると思う。そういった民間のこととそれから政府の対応について、いささか信頼醸成あるいは北朝鮮との関係のとり方がまずいのではないかというふうに思っておりますが、外務大臣の御答弁、お願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/272
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273・高村正彦
○国務大臣(高村正彦君) 日朝間には仰せのとおり外交関係がありません。その間で十分な対話がなされているとは言えない状況であります。そのような中で、委員御指摘のように多様な形で北朝鮮との対話や交流を進めることは基本的に好ましいことである、こう考えております。特に委員は、何度も北朝鮮に足を運ばれ、日朝間の相互理解のために御尽力されていると承知しておりますが、このような交流を政府としても歓迎しているところでございます。
外務省は、従来から日朝国交正常化のための本会談に出席する我が方政府代表に大体大使を充てているわけでありますが、この同じ者がKEDOを担当してやっているわけでございます。現在、日朝国交正常化交渉は中断されておりますが、KEDOの方は頻繁に理事会が開催されておりまして、多角的な視野から北朝鮮の核開発問題及びKEDOをめぐる日米韓、EUの調整に携わっております。
いずれにしましても、北朝鮮問題に専門的、長期的な視野から取り組むことが重要であるとの委員のお考えは、外務省としても共有をしているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/273
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274・堂本暁子
○堂本暁子君 今、KEDOのことをお話しになりましたけれども、KEDOはこれは多国間の問題でございまして、日朝の問題とはやはり違う性質のことだと。これはもう重々大臣も外務省も御存じのことであって、そうではなくて、本当に隣の国なんです。そこで何か本当に今ここでさんざん議論されているようなことが、有事が発生してからでは遅い、病気の予防と事が違うと私は思っております。病気は予防するにこしたことはない。しかし、一度有事が起こったときにどういうことが日本に起こるかということは、これはもう想像を絶することだと思っています。そのために、今、委員のなさることは歓迎しておりますという程度では、私は日本国は生ぬるいと思います。
ピョンヤンの空気は本当に氷のようでした。反日感情の渦です、今は。一年四カ月前は、もう少し雪解けが実現するのか、正常化が可能なのかというような印象を持って私ども戻ってまいりましたけれども、今はもう全然違います。そういった状況にしておいていいのかということなんです。それは、実際有事というのは九九・九%ないだろうと皆様思いながら議論していらっしゃるのだと思いますが、現実にはやはりきちっとそこのところは危機意識を私たちは持つ必要があると思っております。
ですから、単にKEDOの問題とか、そういう日本がやっていることではなくて、外務省あるいは国を挙げてもっといろんな形の努力をすべきだと。だからフランス語もドイツ語も英語も聞こえてくるんです。それで情報の収集も、それから人間と人間の関係を大事にしていくということも展開する。このことをもう少し国として、形式的な御答弁ではなくて、私はやっぱり大臣にそういうことをもう一歩踏み込んで日本は努力するとおっしゃっていただかないと本当に心配でたまらないということが一つです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/274
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275・高村正彦
○国務大臣(高村正彦君) KEDOをやっているということを申し上げたというよりも、KEDOをやっているその大使を必要なときは日朝交渉の大使として起用するということを申し上げたつもりでございます。
それからもう一つ、日朝関係でお互いが何を考えているかもわからないというような状態は決していいとは思っておりません。ですから、日本政府としても、委員から見ればまだまだ足りないと、私から見ても十分だとは胸を張って言えないぐらいですが、水面下で努力をしていることは努力をしております。
ただ、日本のミサイルが北朝鮮の上を飛び越えていったためにこうなったわけではないわけで、日本人が北朝鮮の人を拉致した結果こうなったわけでもないわけで、そういう中で無原則に今悪いから何でも譲ってでも話し合いをつくる、そういうことは私たちはできないので、やはり対話と抑止という、そして相手方が建設的な対応をしてくれればこちらも幾らでもそういう対応をしますよということを根気よく呼びかけている。今悪いからともかく原則崩してでも無原則にということはできませんので、そういうことは御理解をいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/275
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276・堂本暁子
○堂本暁子君 それは私も同じです。ですからはっきり言いました。あなたたちが日本の上を飛ばしたでしょう、もし日本があなたたちの国の上をそういうものを飛ばしたらあなたたちはどう思うんですかということをはっきり言ってきました。
そして、何も無原則にと言っているわけではございません。ただ、欧米諸国と比較して、そういったもうひとつ、そこのところに対しての信頼醸成という以上に今のこういった危機的状況を解決するための努力をもっと日本はやっていいのではないかと思っています。
そして、担当者がやはり最低四年ぐらいはかわらない人、梅津さんはKEDOの大使ですが今はロンドンにおられますね、そういうように、もう少し私はそういった側もぜひ外務省はやっていただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/276
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277・高村正彦
○国務大臣(高村正彦君) 原則を堅持した上で最大限の努力をしてまいります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/277
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278・堂本暁子
○堂本暁子君 ありがとうございました。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/278
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279・島袋宗康
○島袋宗康君 野中官房長官が別の委員会の出席要求があるようでありますので、官房長官から先にお尋ねしたいと思います。
昨日の地方公聴会に臨んでみて、やはり私は東京と沖縄の温度差を感じてまいりました。一連の報道などから率直な御感想をお伺いしたいと思います。官房長官、よろしくお願いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/279
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280・野中広務
○国務大臣(野中広務君) 沖縄は、さきの大戦におきまして申し上げるまでもなく唯一の地上戦が我が国で行われた地でありまして、戦後長きにわたりまして米軍の施政下にも置かれましたこと、また現在でも全国の七割を超える米軍施設や区域が集中をしていますことに思いをいたしましたときに、私といたしましても沖縄県民の方々がお抱えになっておられる問題を可能な限り速やかに解決をしていくことが小渕内閣の最重要課題の一つであると改めて認識を深めた次第であります。
その意味におきまして、このような沖縄の置かれた現状を考えますれば、我が国の安全保障に対する御関心も一方ならぬものがあると承知をしておるところでございます。その意味において、二〇〇〇年サミットが沖縄で開催が決定されましたことは、日本全体の方々に改めて沖縄の歩んできた歴史と現状を学んでいただく機会にしなければならないと存じておるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/280
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281・島袋宗康
○島袋宗康君 沖縄では、やはり公平に見て、この法案に反対する意見が大多数であります。また、各種の意識調査においてもそういう状況になっていることは確かであります。また、けさの朝日新聞によれば、代表的な自治体の首長の意見もそれを反映しているように思われます。
私は、この法案に国民の理解が深まっていない現段階で結論を出そうというようなことについては非常に慎重に考えていかなければならない、現場での混乱や国民の不信を買い、また地方公聴会の意義を全く否定してしまうような結果になりはしないかというふうな懸念を持っております。
公聴会でくみ上げました沖縄の声、それをどう生かしていくかというふうなことが今この委員会には問われておりますし、また政府の皆さん方にとっても、非常に沖縄のこの問題に対する考え方というものははっきりしておりますので、官房長官、ひとつその辺をどうお考えになっているかお聞かせ願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/281
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282・野中広務
○国務大臣(野中広務君) 先ほど来申し上げましたように、米軍基地の存在と運用が沖縄県民の方々の負担により確保されていることは、私としても身にしみて認識しておるところでございます。沖縄県の基地問題への取り組みは、政府にとりましても沖縄県民にとりましても大きな課題であることは十分認識をしておるところでございます。
このたびの周辺事態安全確保法案の内容や周辺事態への対応に関しましても、沖縄県民の御関心が高いことは十分考えられることでございまして、今般、本特別委員会の与野党の議員各位の御判断によりまして沖縄において地方公聴会が開催されましたことはまことに有意義なものでありますとともに、本院のこの決定に深い敬意を表する次第でございます。
政府といたしましては、今後とも、沖縄を初めとする地方公共団体や地域の住民の方々の御意見に対しましては真摯に耳を傾け、本法案に対する国民の幅広い御支持と御理解を得るため、機会をとらえて御説明を申し上げ、努力をしてまいりたいと考える次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/282
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283・島袋宗康
○島袋宗康君 官房長官、どうもありがとうございました。
それでは、昨日の沖縄の公聴会でありますけれども、それを踏まえて、まず公聴会沖縄開催の意義をどのようにとらえておられるのか、外務大臣と防衛庁長官にお伺いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/283
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284・高村正彦
○国務大臣(高村正彦君) 過ぐる大戦におきまして沖縄は国内唯一の地上戦を経験し、多数の県民の方々のとうとい命が犠牲となり、筆舌に尽くしがたい苦難を経験されたこと、また戦後においても、全国の七割を超える米軍施設・区域が存在しており、米軍施設・区域の存在と運用は沖縄県民の方々の負担により確保されていることは私たちも十分認識しております。
沖縄の基地問題への取り組みは、政府にとっても沖縄県民にとっても大きな課題であり、周辺事態安全確保法案の内容に関しても沖縄県民の御関心が高いと承知しているわけでございます。
今般、与野党の議員各位の御判断により沖縄において地方公聴会が開催されたことは大変有意義なものであると考えております。
なお、今後、外務省といたしましても、関係省庁と協力しつつ、周辺事態安全確保法案等に対する一層の御理解が得られるよう説明に努めてまいる所存でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/284
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285・野呂田芳成
○国務大臣(野呂田芳成君) 政府の考え方は、官房長官も外務大臣も全く同じ趣旨でございまして、重ねて申し上げることになって恐縮ではございますが、過ぐる大戦において沖縄は国内たった一つの地上戦を経験し、多数の県民の方々のとうとい命が犠牲になり、筆舌に尽くしがたい苦難を経験された、また戦後においても全国の七五%の米軍基地が存在しており、米軍基地の存在と運用は沖縄県民の方々の負担によって確保されているということは、私としても身にしみて認識しているところでございます。沖縄県には米軍基地が多く存在し、基地問題への取り組みは、政府にとっても沖縄県民にとっても大きな課題であることは必要かつ十分に認識しておるところでございます。
周辺事態安全確保法案の内容やあるいは周辺事態への対応に関しても、沖縄県民の御関心が高いことは十分に考えられることから、今般、本特別委員会の与野党の議員各位の御判断により沖縄において地方公聴会が開催されたことは大変有意義なものであり、心から敬意を表する次第でございます。
今後、防衛庁としましても、いろいろな機会をとらえて、沖縄を初め各地方公共団体に対し、周辺事態安全確保法案等に対する一層の御理解が得られるように説明に努めてまいりたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/285
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286・島袋宗康
○島袋宗康君 もう時間が余りないので、前に進みます。
この法案はだれに聞いても議論が足りない、深まっていないという答えが返ってきます。私も何度か指摘してきましたけれども、仮定の論議ではやはり問題があると思います。一般論としても何としても答弁がちゃんとしていない、こういうふうな法案の内容であります。
しかし、この法案自体が仮の事態を想定したものですから、やはりここでは仮定の議論でも積極的にしていかなければならない、この理解を得なければならないというふうに思っております。これは防衛庁長官、どういうふうなお考えですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/286
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287・野呂田芳成
○国務大臣(野呂田芳成君) お諮りしておりますこの法案は、御案内のとおり、我が国の平和と安全の確保に資することを目的とするものであり、冷戦終結後も依然として不安定、不確実な要因が存在する中で、我が国の安全保障政策の重要な柱の一つである日米安保体制のより効果的な運用を確保し、我が国に対する武力攻撃の発生等を抑止することに資するものであります。
〔理事竹山裕君退席、委員長着席〕
また、日米安保体制の効果的な運用に寄与する本法案は、我が国のみならず、アジア太平洋の安全保障にも資するものと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/287
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288・島袋宗康
○島袋宗康君 だから、そういう説明では漠然として、やはり国民はこの法案について私は理解していないと思うんです。ですから、どういうふうな理解をさせていくかということが今非常に問われているというふうに思うわけです。もう一遍、その辺をちゃんとして答えていただけませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/288
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289・野呂田芳成
○国務大臣(野呂田芳成君) この法案につきましては、衆議院においても既に九十時間以上にわたる御審議を踏まえまして、同院において修正の上、可決されたところであります。また、参議院におきましても、連日、委員の皆さんが精力的に御審議をいただいているところであります。さらに、これ以外にも、この法案につきましては、昨年の四月二十八日に国会に提出して以来、衆参の予算委員会あるいは衆議院の安保委員会、参議院の外交・防衛委員会等において、いろいろな機会に触れて御議論の対象としていただいたところであります。この法案については、私どもとしてもできる限りの説明をさせていただき、また委員会においても慎重かつ熱心な御審議が行われてきているものと考えております。
私どもの説明が十分でないこともあるかもしれませんけれども、防衛庁としては、今後とも、沖縄を初めとする地方公共団体や地域の住民の方々の御意見に対しては真摯に耳を傾け、この法案に対する国民の幅広い御支持と御理解を得るため、今後とも機会をとらえて懸命に説明に努めたいと考えておるところであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/289
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290・島袋宗康
○島袋宗康君 先ほど照屋寛徳委員からもお話がありましたけれども、どうも、例えば法律が成立した場合の事態を想定して、一体現場はどうなるのか、あるいは地方自治体ではどのようなことが起きるのかというふうなことについて余りしっかりした、目に見えないんですね。
だから、こういったふうなことに、仮に法案が通過して、一体政府は、今の段階でこういった準備、地方自治体あるいは業者の皆さん方に協力を求める、その処罰規定は何もない、しかしこれはひょっとしたら処罰があるんじゃないかというような非常にあいまいさが今あります、正直言いまして。
そういうふうなことについて、やはり全く準備がされていないのかどうか、その辺をもっと詳しく説明してください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/290
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291・野呂田芳成
○国務大臣(野呂田芳成君) 御質問の趣旨は、地方公共団体等の協力についての問題だと思いますけれども、周辺事態に対してどのような協力が必要となるか、それは事態ごとに異なるものでありまして、あらかじめ具体的に確定される性格のものではないため、具体的な協力事項についての検討は、個々の事態に際して国会で基本計画の策定を御論議していただき、御審議をしていただくわけですから、これを踏まえた協力の要請というプロセスの中で行っていくことになると思います。
また、協力内容そのものにつきましても、私どもは議会のこういう真摯な御議論を経て決めていくわけでありますから、そういうものを参考にして、ひとつしっかりしたものをまとめていきたいと思います。
どのような協力内容が想定されるのか、どのようなプロセスで協力要請がなされるのか、こういったことにつきましては、地方公共団体、国以外の方にできる限り明確に示すことが重要と考えておりまして、この点につきましては、これまでも地方公共団体に対してできる限り具体的に説明を行ってきたところでありますが、今後とも一層の理解を得るため、引き続きさまざまな機会をとらえて説明し、わかりやすく御理解をいただけるような方策を講じていきたいということで、委員会でも私どもが答弁しておりますのは、この協力事項の問題は内閣の方で所管しておるものですから、何かわかりやすいマニュアルをつくって、公共団体や国民の皆さんの御理解を得るように努めたい、こういうことを再三御答弁いたしているところであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/291
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292・島袋宗康
○島袋宗康君 内閣の方で検討しているということでありますけれども、やはりこういった法案、成立する前にちゃんとマニュアルというものを公表して、そして地方自治体あるいは業者の皆さん方に、こういうことで協力をお願いするというようなことを公表していかなければ全然わからぬじゃないですか。どういうふうな協力の仕方があるのか、あるいは拒否すればどうなるかということも全く示されていないわけですよ。そういうふうな欠陥法案ですから、私たちはこれを非常に問題にしております。
どうかその辺をもう一遍、公表するのかしないのか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/292
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293・伊藤康成
○政府委員(伊藤康成君) 地方公共団体あるいは民間の方の協力ということで法案第九条の関係でございますが、これまでも幾度か御答弁申し上げておりますし、ただいま防衛庁長官からも御答弁がございましたように、個々具体的な事項というものは、これは基本計画というものができてみないと、その事態によって異なるものでございますので、今ここであらかじめこういうものだと確定的に申し上げることはできないわけでございます。
しかしながら、一般的にこういったものが考えられるということにつきましては、これまでも幾度かこの席で御答弁も申し上げてきたところでございますし、またただいま御指摘の罰則云々ということも、強制するものでないということもまたしばしば御答弁申し上げてきたところでございます。その辺につきましては、この委員会審議の中で明らかにさせていただいたと存じております。
ただいま防衛庁長官からお話がございましたマニュアルというものでございますが、これにつきましても、衆議院あるいは本院の審議の中でもそのようなものをつくって御説明するようにということでございます。これは、私どもも現在作業をしておるところでございますが、やはり国会での御審議の状況、あるいはまた地方公共団体ともよく相談をしながらつくってまいりたいと思います。
したがいまして、今直ちにというわけにはなかなかまいらないものでございますが、少なくともこの法律の施行の前後には間に合わせるようにいたしたいというふうに思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/293
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294・島袋宗康
○島袋宗康君 これは逆じゃないですか。こういったものを説明して、この法案はこうなるから協力をしてくれというふうなことでなけりゃいかぬと思うんですよ。法ができてから処罰云々とかといったものがどういうようなことになるかということは、これは非常に心配ですよ。
そういった面で、じゃ、公表はいつごろやるのか。もし今いわゆる作業中だというふうなことであれば、公表はいつごろなさるんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/294
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295・伊藤康成
○政府委員(伊藤康成君) ただいまも御答弁申し上げましたように、この法案九条に基づきます協力の求め、あるいは協力の依頼につきまして罰則というものはございませんので、どうぞ誤解のないようにお願いいたしたいと存じます。
なお、マニュアルと申しますか解説書と申しますか、こういったものにつきましては現在作業中でございますが、私どもといたしましてはこの法律の施行にはできれば間に合わせたいというふうに思っております。
いずれにいたしましても、私どもが勝手に思い込んでつくってはいけないものでございますので、国会での御議論、またできれば関係の地方公共団体等の方々とも御相談しながら、できるだけわかりやすいものを、つくれる範囲でわかりやすいものをつくってまいりたいというふうに思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/295
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296・島袋宗康
○島袋宗康君 もう時間がありませんけれども、最後に、有事法制の提案云々というものが新聞等でちょいちょい出てきますけれども、やはり有事法制というものは提案されるんですか。また、どういうふうに今政府としてはお考えになっておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/296
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297・野呂田芳成
○国務大臣(野呂田芳成君) 有事法制につきましては、二十二年間勉強してきましたが、法案として提案する意思は全くありません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/297
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298・島袋宗康
○島袋宗康君 終わります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/298
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299・井上吉夫
○委員長(井上吉夫君) 本日の質疑はこの程度にとどめ、これにて散会いたします。
午後六時十八分散会
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〔参照〕
沖縄地方公聴会速記録
期日 平成十一年五月十九日(水曜日)
場所 那覇市 パシフィックホテル沖縄
派遣委員
団長 委員長 井上 吉夫君
理 事 鈴木 正孝君
理 事 山本 一太君
理 事 若林 正俊君
理 事 齋藤 勁君
理 事 柳田 稔君
理 事 日笠 勝之君
理 事 笠井 亮君
照屋 寛徳君
田村 秀昭君
山崎 力君
島袋 宗康君
公述人
沖縄県議会議員 小渡 亨君
政治アナリスト 比嘉 良彦君
全沖縄駐留軍労
働組合執行委員
長 伊佐真一郎君
弁護士 新垣 勉君
琉球大学法文学
部教授 高良 鉄美君
沖縄大学法経学
部教授 新崎 盛暉君
─────────────
〔午後一時開会〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/299
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300・井上吉夫
○団長(井上吉夫君) ただいまから参議院日米防衛協力のための指針に関する特別委員会沖縄地方公聴会を開会いたします。
私は、本日の会議を主宰いたします日米防衛協力のための指針に関する特別委員長の井上吉夫でございます。よろしくお願いいたします。
まず、参加いたしました本委員会の委員を紹介させていただきます。
自由民主党所属の若林正俊理事でございます。
同じく山本一太理事でございます。
同じく鈴木正孝理事でございます。
民主党・新緑風会所属の柳田稔理事でございます。
同じく齋藤勁理事でございます。
公明党所属の日笠勝之理事でございます。
日本共産党所属の笠井亮理事でございます。
社会民主党・護憲連合所属の照屋寛徳委員でございます。
自由党所属の田村秀昭委員でございます。
参議院の会所属の山崎力委員でございます。
二院クラブ・自由連合所属の島袋宗康委員でございます。
以上十二名でございます。
参議院日米防衛協力のための指針に関する特別委員会におきましては、目下、日本国の自衛隊とアメリカ合衆国軍隊との間における後方支援、物品又は役務の相互の提供に関する日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の協定を改正する協定の締結について承認を求めるの件、周辺事態に際して我が国の平和及び安全を確保するための措置に関する法律案及び自衛隊法の一部を改正する法律案について連日審査を行っておりますが、本日は、この三案件について貴重な御意見を承るため、当地において地方公聴会を開会することといたした次第でございます。何とぞ特段の御協力をお願い申し上げます。
次に、公述人の方々を御紹介申し上げます。
沖縄県議会議員小渡亨公述人でございます。
政治アナリスト比嘉良彦公述人でございます。
全沖縄駐留軍労働組合執行委員長伊佐真一郎公述人でございます。
弁護士新垣勉公述人でございます。
琉球大学法文学部教授高良鉄美公述人でございます。
沖縄大学法経学部教授新崎盛暉公述人でございます。
以上六名の方々でございます。
この際、公述人の方々に一言ごあいさつを申し上げます。
皆様方には、御多忙中のところ御出席をいただき、まことにありがとうございます。
三案件につきまして皆様から忌憚のない御意見を拝聴し、委員会審査の参考にいたしたいと存じております。どうぞよろしくお願い申し上げます。
次に、議事の進め方について申し上げます。
まず、公述人の方々からお一人十分以内で順次御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答えいただきたいと存じます。
なお、御発言は着席のままで結構でございます。
それでは、公述人の方々から順次御意見をお述べいただきます。
まず、小渡公述人にお願いいたします。小渡公述人。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/300
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301・小渡亨
○公述人(小渡亨君) 本日、参議院沖縄地方公聴会において公述人として指名をいただきまして、大変ありがとうございます。沖縄県議会議員の小渡亨と申します。
私は、沖縄が日本国へ復帰をした昭和四十七年三月、反基地、反自衛隊感情の激しい最盛期に、米軍人である高等弁務官が発行するパスポートを持って沖縄から本土へ渡りました。そして、防衛大学校に入学しました。沖縄では数少ない防大同窓生の一人であります。昭和五十一年、防大を卒業し、海上自衛隊に昭和五十九年まで八年間勤務をしておりました。職種は対潜哨戒機の操縦士、パイロットであります。三十二歳で自衛官を退職し、沖縄市議会議員二期、そして沖縄県議会議員、現在一期目であります。
さて、沖縄県には米軍基地が数多く存在し、基地の整理、縮小が沖縄県政最大の課題であります。幸いにも、日米両政府の真摯な努力によりSACOが決定され、そのSACOを県民とともに確実に実施していくことが米軍基地の整理、統合、縮小につながり、基地問題の解決にもつながるものと確信しております。
しかし、米軍基地を全部なくしてしまえという考え方は、現在の日本の防衛力整備並びに国際情勢からいたしまして、大変危険であるというふうに考えております。
また、基地があれば沖縄は戦争に巻き込まれてしまうという考え方が県内の一部にはありますが、非現実的であり、国際社会を知らない幼稚な考え方であると私は思います。
今回の日米ガイドラインに基づく三法案については、冷戦後の日米安保体制の重要性を再認識するとともに、アジア太平洋地域での平和と安定の維持に寄与するものと思います。また、現時点までに整備されている陸海空自衛隊の防衛力を増強することなく、そのままの状態でさらにその抑止力を格段と高める効果があり、一日も早い法案の成立を望む一人であります。
県内には、この法案が成立すれば今まで以上に民間の空港や港湾等が米軍に自由に使われてしまうという意見もありますが、周辺事態とは、法案の目的の中にもありますように、そのまま放置をすれば我が国に対する直接の武力攻撃に至る、つまり最悪のシナリオである日本有事になるおそれがある事態等であります。
できるだけ早く事態を鎮静化させるのが先決であり、使用を拒否することは事態をますます悪化させる要因になるものと私は思います。該当する自治体の長は速やかに使用許可を与え、準有事と言われる事態を一日も早く終わらすことが、結果的に県民あるいは日本国民の生命と財産を守ることになると私は思います。
自衛官の武器使用に関しまして、私の防大の同期生も現職自衛官として現在、陸海空自衛隊で勤務をしておりまして、自衛官自身の安全を確保する意味から注意深くこの問題は国会審議を見守ってまいりました。かつてのPKO法案の際に行われた国会審議の過程では、小銃はよいが機関銃はだめだとか、あるいは機関銃一丁はいいけれども二丁はだめだとか、全く意味のない不毛な審議等を前回はやっておりました。しかし、今回のこの法案の審議状況の中にはそのようなことは全くありません。実際に活動に当たる自衛官の安全もかなり向上されたものと思います。しかし、国際的に見るならば、威嚇射撃等はできず、まだ一歩という感じがします。
船舶検査は、後方地域支援、そして捜索救助とともに新たに加えられた自衛隊活動の三本柱であるだけに、今回、政党間の政治的妥協の中で事実上先送りされたことはまことに残念であります。今国会中にも別途立法措置をとるそうでありますが、一日も早い法案提出を望みます。
終わりに、日本の安全保障論議は、この五十年間空白状態であったと言っても過言ではありません。政治家も国民も決して軍事問題には触れようとはしませんでした。そして、今回やっと周辺事態から手をつけようということであります。しかし、一番大切なことは、近隣火災よりも自分の家で火災が発生したらどうするのか、つまり日本有事、有事法制の整備であると私は思います。
有事法制は、集団的自衛権の問題でもあり、憲法の見直し等も考えなければなりません。現憲法には、日本有事あるいは緊急事態等に際してみずから対処する項目はありません。今までの憲法解釈では、これ以上の拡大解釈は不可能であります。有事の際の規定や国連協力などは、だれにでも、あるいは外国人にでもわかる言葉で表現しなければならないと思います。また、アジア諸国の日本に対する懸念は、日本の防衛力の強化ではなく、明確な安全保障政策を定めていないという点に起因していると私は思います。
有事論議は、平時である今こそ徹底的に国民全体がわかるようにオープンで行わなければなりません。政府は、自衛隊あるいは国民に対し、その行動基準を明確に示すべきであると思います。
この論議の中で、一部マスコミ等で超法規的措置という言葉がよく出てきます。連合赤軍ハイジャック事件のときにとられた措置であります。緊急時、短時間で少数の人間の判断だけで下された措置でありました。超法規と言うと耳ざわりのよい言葉に聞こえますが、法治国家である我が国がとる手段では決してありません。超法規には歯どめをする手段がないからであります。
また、今、日本にとって最も大切な条約である日米安全保障条約、これも未来永劫続くものではありません。いつかは終えんするであろうということを国民全体が考えなければならない時期でもあると思います。
ぜひとも、一日も早くガイドライン関連法案がまず成立することを希望いたします。
以上で終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/301
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302・井上吉夫
○団長(井上吉夫君) ありがとうございました。
次に、比嘉公述人にお願いいたします。比嘉公述人。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/302
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303・比嘉良彦
○公述人(比嘉良彦君) 比嘉良彦と申します。読谷村の出身です。現在の住まいも読谷ですので、きょうもそこから来ました。読谷からこの会場まで約三十キロあります。きょうは一時間十五分かかりました。
自宅を出てまず突き当たるのが楚辺通信所、通称象のおりであります。それを横目に車を走らせますと、その道路が読谷補助飛行場です。そこを抜けると、行く手を遮るのがグリーンベレーの駐留するトリイ通信施設です。そのフェンス沿いを一キロほど行くと、また阻まれるのが嘉手納弾薬庫地区のフェンスであります。それに沿って、復帰前で言えば軍用道路一号線、今の国道五十八号線を南下しますと、左の方には嘉手納飛行場、右には陸軍貯油施設、いわゆるガソリンタンク群、そして、やがてキャンプ桑江それからキャンプ瑞慶覧、普天間飛行場、牧港補給基地といった基地のフェンスが道路沿いに延々と続いているわけです。そして、ようやく那覇軍港の近くのこの会場に着くといった、こういうありさまです。わずか三十キロを一時間十五分もかけて、きょうはまだ早い方でした。
三市二町一村を通り抜けますけれども、その間、頭の上には米軍機、目の前には軍用トラック、そういうのを見ながら十一もの米軍基地の中やそばを通らなければなりません。まさに、日米安保による沖縄の過重負担を象徴するような、そういうコースを通ってここに来るわけです。
このような環境で毎日を過ごしておりますと、例えばこの新ガイドライン問題で周辺有事とか後方支援とか自治体や民間の協力といった言葉が飛び交っておりますけれども、沖縄では毎日が有事、それから後方はなくてすべてが前面、前線です。そして、日常的に支援協力を強いられているというのが我々の生活実感であります。
きょうは、ここに来られた参議院の委員の先生方には、ぜひこの感覚を永田町にお持ち帰りになって関連法案の御審議に反映していただきたいということを切にお願いいたします。
さて、この新ガイドライン関連法案、いろいろ紆余曲折はありましたけれども、先月の二十七日に一応衆議院を通過しているわけです。そこで、参議院におきましては、いたずらに衆議院での議論の繰り返し、蒸し返しということではなくて、良識の府と言われる参議院の存在意義を十分に発揮され、衆議院での議論をチェックしていただきたい。そのことによって、この法案に対する国民の疑念といいますか不安といいますか、これを解消していただくことをまずお願い申し上げたいと思います。
それでは、何が従来の議論に欠けていたかということを申しますと、それは、我が国の安全保障はいかにあるべきか、こういう大局的な議論、いわゆる安全保障に対する総論が欠けていたのではないかというふうに思うわけです。
冷戦後の今日、そして二十一世紀も目前に迫ったこの時期に、我が国の安全保障政策という肝心な点で国民の間にコンセンサスがないままに審議が進められている、そういうことなのです。
ですから、現在は、終戦直後に講和条約と抱き合わせで安保条約が締結された時代や六〇年安保の改定時期にも匹敵する重要な時期だというふうに私は認識しています。そういう時代認識が衆議院においては欠けていたのではないかというふうに思うわけです。したがって、参議院ではぜひこの点を補っていただきたいというふうに思うわけです。
そしてなお、日米安保条約に基づく安全保障政策を選択するならば、まず沖縄の過重負担を軽減する策を講じた上で日米防衛協力のための法整備を行うことです。その際には、民主主義と法治主義の立場で徹底した審議を尽くすことが第一の条件だというふうに考えます。
そのことを前提にして、参議院での関連法案の審議では少なくとも四つの点を明確にしてもらいたいというふうに考えております。
その第一点は、周辺事態の問題です。次は、後方地域支援の問題。第三点は、自治体や民間協力の問題。最後には、国会承認の問題。以上、四つの点を少し述べてみたいと思います。
一の周辺事態の問題では、これまでは主に「周辺」が問題とされてきました。しかし、より重要なのは、私は「事態」の方であると思います。「周辺」の概念は既に六〇年安保のころから極東の範囲ということで問題にされてきましたが、安全保障の概念としては、抑止力の問題とか仮想敵国の問題が出てまいります。むしろ、周辺事態の「周辺」は日本有事の日本に対比した概念と受けとめて、「事態」の概念、いわゆる有事の概念を厳密に規定するという方が対外的にも国内的にも理解と安心が得られるというふうに思うわけです。
この点は、防衛協力の法制化で戦争に巻き込まれると危惧する人々と最も見解が異なる点と思いますけれども、冷戦後の今日、地球規模の軍事戦略を持つ唯一の超大国アメリカを安全保障上のパートナーにする以上、地理的概念である「周辺」よりは、状況を意味する「事態」の内容を厳密に規定することが、巻き込まれ論の疑念を払拭するとともに、対外的には仮想敵国をつくることなく周辺事態の予見性を、我が国の安全保障政策の透明性を高めるのに役立つというふうに思います。
次に、後方支援の問題ですが、兵器が飛躍的に発達した今日、戦争には前線も後方もないのが常識だと思います。また、補給能力が即、継戦能力、戦争を続けていく能力というふうに判断される総力戦においては、支援行動が攻撃の対象になるということはNATOのユーゴ空爆で今実証されつつあるわけです。このことは、自治体や民間協力の問題でも同じです。安全や危険の有無で協力の是非が政治的にも現実的にも判断できるものではないということの覚悟が必要だと思います。
最後に、国会承認の問題は、国権の最高機関である国会の存在意義にかかわる問題です。二院制度を設けてチェック機能がより期待される中で、みずからその機能を放棄するなら、国会の自殺行為だということにほかなりません。参議院の名誉にかけても、これだけは死守してといいますか確保してもらいたいというふうに思います。
ただ、沖縄県民の立場で申しますと、たとえ国会の承認が認められても、それだけで万全というわけにはまいりません。遠くは返還前の沖縄国会で、質疑打ち切りとか強行採決で沖縄の声が圧殺されたこともありますし、近くは二年前の米軍特措法の改正で、大政翼賛会と言われるほどの圧倒的な多数で県民意思が拒否された経験もございますので、国会の承認に全幅の信頼を置くわけではありませんが、国会がチェック機能をみずから放棄してはもう話にもなりません。それだけは確保していただきたいと思うわけです。
それでも緊急を口実にカットの動きがありますけれども、周辺事態は何も地震のような自然現象ではありません。あくまでも国際政治の延長であって、人為的な現象です。前兆の把握というのは十分可能だと思います。これも、今各地で行われている軍事紛争で証明済みであります。
このように、ガイドライン関連法案への対応というのは、何が何でも反対という態度ではありません。日米安保条約がある以上、少しでも国民の立場で運用するためには、国内法の整備がないまま超法規的に行われるよりは、法治国家として法整備が必要ということであります。
もちろん安全保障の問題では、防衛協力の法制化は万一の備えであって、重要なのはこういう法律が適用されないような平和な環境、状況をつくることです。そのためには、政府の外交努力や経済の相互依存、自治体の相互交流、民間による友好文化交流等、各層の不断の努力が不可欠です。今回の安保論議にはすべてこれら平和的諸活動が前提にあることを一応申し添えて、私の意見の陳述を終わります。
ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/303
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304・井上吉夫
○団長(井上吉夫君) ありがとうございました。
次に、伊佐公述人にお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/304
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305・伊佐真一郎
○公述人(伊佐真一郎君) 私は、今現在、在沖米軍基地の中に働いておりまして、平成八年八月に沖駐労、全沖縄駐留軍労働組合という組合を結成いたしまして今日に至っております。
既存の全駐労さんとの大きな争点の違いは何かと申しますと、日米安保条約を認めるか認めないかという点に私は集約されている、こういうふうに理解をいたしております。
我が国にとって日米安保がいかに重要な条約であるかということは今さら申すまでもございません。今日の世界情勢を見てみましても、第二次世界大戦以後世界の平和秩序維持というのは、これはもう言うまでもなく集団的自衛権のもとにしか成り立たない。国際連合しかり、NATOしかり、日米安保もそうです。さらに、旧ワルシャワ条約機構にしたってそうです。その枠を逸脱して平和を構築するということは非常に困難な状況だと思います。
また、日米安保条約というものが我が国に与えたいわゆるプラスの面だけが今まで非常に大きかった。いわゆる安保ただ乗り論ですね。この辺でやはり見直しは絶対必要じゃないかという観点も私どもは抱いております。
先ほど小渡公述人からいろいろありました。私も全く同意見であります。観念を一にします。したがいまして、重複を避ける意味から、私はまた別の観点から今回のこのガイドライン関連法案の意見を述べてみたいと思います。
私は、およそ国の務めとは何かと申しますと、これはもう言うまでもなく、国民の生命と財産を守るということですね。もう一つは、平和を構築するために外交努力を積み重ねていくということ、これはもう当然のことです。ところが、その外交努力にもおのずと限度があります。万が一にもそれが行き詰まって、ではどうなるかというと、これは紛争、つまり戦争状態ですよね。そのときにどういうふうにして国民を救済するのか、どういうふうにして危険な状況に対処するか。そのマニュアルがなくして、どういうふうにして国の危急存亡を救うことができますか。何事においてもこれは必要なんですね。今度のガイドライン関連法案も私はそのステップの一つとして意識している、そういうふうに考えております。
今度の関連法案の趣旨説明と、先ほどからいろいろありましたけれども、やっぱり何といっても私は基本的な問題となるのは、集団的自衛権の問題に集約されると思うんです。これは専門用語で非常にわかりにくい内容ですので、私がここでごちゃごちゃ言っても始まらないんですけれども、自衛隊法の百条の八の改定も、私から言わすとまだまだ生ぬるい。政府見解は確かに、固有の権利として集団的自衛権は権利を認めるということなんですね。ところが憲法九条では、これは行使してはいけないということになっております。そうなりますと、権利はあるんだけれどもこれを行使してはいけないとなると、これが果たして権利と言えるかどうかということになっちゃいますね。
武器の使用等につきましては、私に言わせれば正当防衛でいいんじゃないかと思うんですけれども、合理的にこれが正当とみなされるときにおいてのみ使用を許されるとか、いろいろごちゃごちゃ書いてありますけれども、この辺は専門家に任せて、私の見解としては、やはり自然権として人間に与えられた権利というのはやっぱり僕は国にも与えられているんじゃないかというふうに解釈しております。
それともう一つは、今、有事法制とかあるいは今回のガイドラインの問題でも軍事面が非常に前面に出されているような感じなんですけれども、一番大事なことは、これからの二十一世紀に向けてはやはり経済問題が非常に大きなウエートを占めてくるんじゃないかというふうに僕は考えております。
そうしますと、今後、ポスト香港ということで、台湾あたりから今、沖縄県に向けていろんな投資の話が舞い込んでおります。では、どうしてそういう状況があらわれてきたかと申しますと、これは、とりもなおさず、沖縄という地区が世界一強いアメリカに守られている、安全保障が確立されているということにほかならないわけです。事ほどさように、安全保障の問題というのは、あらゆる面において非常に重要な意味をなす、こういうことだと思います。
先ほど来、基地の問題云々について、特に沖縄県における基地の過重の問題等について指摘がございましたけれども、同じく基地に働く一人としてこの問題に一つ言及したいんです。
例えば、一九六四年からいわゆるベトナム戦争が勃発しまして、沖縄県の基地から北爆ということでB52が飛び立ちました。そのときに基地に働いている従業員諸君が、例えば向こうから故障して送られてきた重火器の修理とか車の修理とか戦車の修理とか、そういうものを直してまたベトナムに送る。結局これが戦争に加担しているというふうにとられてもしようがないことだと思いますけれども、しかし今はそのときの状況とは全く違うわけです。けさの新聞等をごらんになったらわかると思いますけれども、基地従業員の中から、戦争に片棒を担ぐような状態になるんじゃないか、あるいは沖縄が、これは日本も含めて、当然在日米軍基地は本土全部にあるわけですから、そうしますと、日本全体として戦争に巻き込まれる法案じゃないかというふうな危惧が当然伝えられてきます。
しかし、私はそういうことがないようにしているのが今回のガイドライン関連法案だというふうに認識しております。つまり、平時のときにこそ危険な状況、有事の状況を想定してそれに対処するというのが、これはもちろん先ほどから僕が指摘しているような国の務めだと。そして、今回のガイドライン関連法案もそれに対処するものだということはこの内容を読めばわかります。二重、三重にチェック機能が働いております。事前協議もありますし、それから事後承認もあります。事後承認でこれはまかりならぬといえば、その時点でオペレーションがストップするということも明記されております。
こういうことを考えますと、もうちょっと国民大衆がこのガイドラインの内容を逐一検討して、どういうものだ、どういうふうに国に貢献するんだ、周辺事態とはどういうものだというふうなことをやはり知る必要があるんじゃないか、こういうふうに考えております。
そういう方面で、私は政治家でもなければ法律の専門家でもございません。一般国民として、沖縄県民の一人として、やはり今国民がどういうことを知りたいかと。衆参両院でなされましたいわゆるガイドライン関連法案の審議の中で、一種禅問答のようなことが繰り返されまして、一体全体何をやっているんだというふうな声が確かにあったと思うんです。そういうことじゃなしに、具体的にこういうときはどうしてくれるんですかと。例えば、在留邦人の救出のときに自衛隊が現地に飛び立って救出活動をする、それを敵側が武力で妨害しようとしたときに、自衛隊は同盟国と一緒になってそれを武力をもって排除することができるか否かということをお聞きしたいわけですね。そういうこともやはりはっきりとした明快なる回答が寄せられれば少しは理解できるんじゃないかというふうに考えております。
いずれにいたしましても、この法案が私は、一日も早く法制化されまして、広く日本の安全保障に大きく貢献することを願っております。
以上でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/305
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306・井上吉夫
○団長(井上吉夫君) ありがとうございました。
次に、新垣公述人にお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/306
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307・新垣勉
○公述人(新垣勉君) 私は、一九八三年に沖縄弁護士会が行った調査の中で強く心を打つ事実に接しました。それは、海兵隊基地キャンプ・ハンセンが所在する金武町で起きた米兵による婦女暴行事件の被害者の発言でした。米軍から示談金として七千五百ドルを提示されたけれども、自分はこれっぽっちのお金で自分の人生を売り渡すことはできないということで見舞金の受け取りを拒否しているという事実でした。九五年に少女暴行事件が起き全国の注目が沖縄に集まったとき、あるマスコミがこの女性にインタビューをしました。そのとき、その女性は既に七十歳近くになっていました。しかし、まだこの女性は米軍の見舞金を受け取っていませんでした。ここには基地被害者の無言の叫び、基地に対する強い抗議の意思が込められていると思います。
私は、このような物言わぬ基地被害者の声を代弁して発言をしたいと思います。
沖縄県民は、九五年のあの不幸な事件を契機にして、今県民総力を挙げて米軍基地の整理縮小、基地被害の根絶、基地に依存しない経済基盤の確立を目指して努力していることは御承知のとおりです。知事はかわりましたけれども、基地返還アクションプログラムの実現は県民の総意であります。
ところが、政府は今、米軍基地を強化し、県民を戦争に巻き込む新ガイドライン関連法案の成立を目指しているわけであります。これは、私たち県民の目から見ますと明らかに県の総意に逆行をするもので、到底認めることができません。大田前知事は、県民の生活を守れない安保というのは一体何であるのかという本質的な問題提起をいたしましたけれども、いまだ政府からはその回答がないと思います。
全国の米軍基地の七五%が集中する沖縄の現実は、安保の実態を如実に示す一番の場所だと思います。米軍が沖縄からベトナムやイラクに直接出撃したことは公知の事実です。米軍は在日米軍基地を自由使用しており、アメリカの世界戦略、軍事戦略に従って好き勝手なように在日米軍基地から出撃をしていることは皆さんもよく御存じのことだと思います。残念ながら、日本政府にはこの米軍の自由勝手な基地使用をチェックする意思も権限もありません。
アメリカの無法な、正義に反する軍事行動のために基地が使用されるということは人間として到底許すことのできない事態だと言えます。八三年のグレナダ侵攻、八九年のパナマ侵略、最近ではユーゴ空爆など、私たちはマスコミを通じて、米軍が国際法を無視して武力行使をしている実例を嫌というほど見せつけられているのが現実です。それだけに、米軍基地を抱えるこの沖縄の悩み、戦争に巻き込まれるのではないかという不安は大きなものがあります。
周辺事態が起こったときに、沖縄は間違いなく米軍の出撃基地となっており、かつ自衛隊及び政府の支援を受けた強大な前線補給基地となっていることは間違いありません。県民は、敵対国から攻撃を受けるのではないか、そういう現実的な危険の渦中に置かれることになるわけです。恐らくそれはパニックと表現した方が適切な事態だと思います。
周辺事態が起きた場合、沖縄にどんな事態が起きるのか。本来であれば国会は真っ先にこの沖縄の現実を調査し、周辺事態が起きたときに、法案が動いたときに、沖縄県民がどれほどの被害を受けるのか調査をして国会で審議をすべきではなかったでしょうか。ところが、衆議院で法案が成立した後になって、しかも野呂田防衛庁長官の本音を吐露した発言が終わった後で公聴会になる、非常に残念なことだと思います。
しかし、あえて私たちは沖縄の現実を皆さんに訴えないわけにはいかないと思います。周辺事態になったときに沖縄の現状がどうなるか。真っ先に基地警備が強化をされるでしょう。法案三条は、「その他の支援措置」の中にこの警備が含まれることを示しております。さらに、米軍基地の強化、基地機能をフルに発揮させるためのさまざまな支援措置が施されることは明らかです。それがこの法案のねらいでありますから。五年前の北朝鮮疑惑の際、米軍が日本に対して千五十九項目という膨大な支援要請を行ったことは既に明らかになっているところです。支援措置の内容は非常に多様であり、県民の生活と具体的にどういうふうに結びついていくのか、いま一つわからないところもあります。
沖縄は、皆さんが那覇飛行場におり立つときに低空で飛行機が接近をします。これも嘉手納ラプコンの例で明らかなように、沖縄の空域を支配する米軍が持っている航空管制圏があるからであります。これも暫定的な約束で米軍に航空管制圏が与えられておりますけれども、これが恒久化、永続化することは明らかであります。
さらに、基地内の軍事施設の整備の強化、基地労働者の労働時間の延長、危険作業への従事、国道、県道の優先的な使用、演習場の新設、土地、建物等の新規強制使用が起きることは明らかだと思います。
米軍の支援を行うために県内の自衛隊は、米軍規模に応じた新たな規模、内容に編成がえされることは必定だと思います。
新ガイドラインは、日米の軍事共同作戦を柱とし、包括的メカニズムと呼ばれる仕組みのもとで、制服組によって組織される日米共同調整所を中心に支援計画が練られることは御承知のとおりです。米軍が集中をする沖縄にその本拠地が置かれることも火を見るより明らかでしょう。国会は、既に米軍用地特措法の改正の審議において、安保条約優先の立場から、収用委員会の判断を経ないで暫定的使用権を取得させる法律を成立させました。このように軍事優先の法制が着々と進められていることは明らかです。
私は、那覇軍港、普天間基地の代替施設としての浦添軍港あるいは普天間代替基地の新設は、新ガイドラインに沿う米軍基地支援強化の一環そのものであり、県内の米軍基地強化をもたらすものだと思います。
時間が来ましたので、ここで発言を締めたいと思いますけれども、最後に、野呂田防衛庁長官の発言は県民には本音を語ったものと受けとめられており、それをすぐに訂正、陳謝するのは不誠実と映っています。唯一の地上戦、米軍施政を体験した沖縄は、命を大切にし、平和を愛する思想をはぐくんできました。この思想は、平和憲法の精神と一致するもので、私たちの原点です。私は、再び沖縄を戦場としないためにも、他国民に対する加害者とならないためにも法案に反対するものです。
終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/307
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308・井上吉夫
○団長(井上吉夫君) ありがとうございました。
次に、高良公述人にお願いいたします。高良公述人。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/308
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309・高良鉄美
○公述人(高良鉄美君) 最初に、帽子の件で寛大に認めていただきましてありがとうございました。
私は、憲法を専攻していますので、憲法の部分のお話、それから沖縄の状況、そういったことから今回のガイドライン関連法案について意見を述べたいと思います。
まず、憲法の大きな原則でありますけれども、国民主権ということですが、先日、私の周りでもガイドラインというのは何ですかという声がありました。これは素直に言って今の国民の声だと思います。恐らくわからないだろうと思います。そのわからないものについて、国会で既に法律の審議がされて、やがて成立しようかという局面まで来ておりますが、日本の憲法の中の大きな原則というのは、国民のわからないこと、国民があずかり知らないこと、あるいは具体的なことが国民に知らされていないこと、そういったことがつくられないということが大きな基本原則です。
そういった面で、やはりガイドラインというのは何ですかという問題。そして旧ガイドライン、新ガイドラインがありますが、新ガイドラインになってどうして法律化をしなきゃならないのかという問題につきましては、少なくとも今回の周辺事態法案の中であるのは、やはり国民の協力あるいは自治体の協力という面だと思います。その点につきましては、実は内容が具体的にはわからない。そして、法案の中身で書かれていますことは、閣議決定による基本計画の中にその種類、内容、そういったものがまず決められていくということです。
そうしますと、国会の中では何がどこでどういうふうに行われていくのかという、この国民ないしは地方自治体の協力の内容、種類、その他重要な事項が理解されているのかということが法律の中での大きな問題だと思います。そうでなければ、それの具体的な協力や内容、種類というのは何であるのか、つまり提案者である内閣の方からその問題を引き出していただくというのが立法府としての国会の役割であろうと思います。
既に衆議院の方ではそういった議論が根本的にあったとは私は思いません。そういった意味でも、議論の慎重という意味で、参議院の方で非常にそこの中身を慎重に議論していただきたいということが一つございます。
それから、実は周辺事態措置法案というのが今回の、ほかにも関連法案がありますけれども、中心だと思います。その点に関しましては、この法案だけで何かが動くということはなかろうと思います。既に船舶検査の面については別の特別立法をつくるという形で当初の案から分離されてまいりました。これから先、このような別の法律がどれだけ必要になってくるのかということにつきましては、恐らく何の予定もなく今の周辺事態法案が提供あるいは提案されているのではなくて、既に多くの法案が後に待ち構えているのではないかというふうに考えられますが、その辺の問題についても、やはり国会の中でどういう関連性のある法案があるいは法改正が今後行われてくるかという問題につきましても、国民に提示をするということが大きな役割であろうと。
日本の憲法の中での権力分立という意味では、立法府の役割というのは、立法府と行政府の協力というよりも、やはり行政府のチェックということだと思います。そういった意味では、中身がどのようなものになるのか、具体的なシミュレーションは何なのかということが特に国民の側に理解のないまま、このまま法案の審議が進み成立ということになると、大きな手続上あるいは過程上の問題があるのではないかと思います。
次に、実際どういう協力があったのかという過去の例でありますけれども、朝鮮戦争のときに、当時の駐日大使のマーフィーという方の言葉がございますけれども、マッカーサーは日本政府が安全で秩序整然たる基地を提供してくれるものと確信していた、そしてそれ以上に日本人は驚くべき速さで彼らの四つの島を一つの巨大な補給倉庫に変えてしまったという言葉があります。
今回、このような形が行われるのかどうかということについては議論の余地があると思いますが、この朝鮮戦争当時というのは、日本国憲法ももちろんあるわけですけれども、対日平和条約は発効しておりません。そういった意味からしますと、現在の日本の中で、独立主権を回復した国の中で同じようなことが行われるということについては大きな問題があろうかと思います。
先ほども、周辺事態の問題についてもいろいろ御意見がございました。周辺事態というのは、実際に言葉の問題ではなくて、私たちの目に見えるシミュレーションであれば一体どういう状況なのかということを国民に示していただいて、それが私たちの目に見えれば、賛成なのか反対なのかという問題はより明確に見えてくるだろうと思います。
そういった意味でも、今後の議論の焦点として、やはり国民に、今私たちが法案の中に関連性を持っている国以外のものの協力あるいは地方公共団体の協力というものが目に見える形で提示される必要がある。それに対しての意見というのは今後もそれぞれ出てくるでしょうし、それでこそ初めて公聴会の意味があるのではないかと思います。
実際に法律の専門家等々の方々については、この法案の内容を逐次チェックしていきますけれども、それによって浮かび上がってくるものが果たしてといいますと、余りにも一義的なものではありません。非常に漠然としたものです。そういった意味でも、そのまま放置すれば我が国に対する直接の武力攻撃に至るおそれのある事態というものを今回修正としてつけ加えるわけですけれども、果たしてそれであってもまだ明確なのかどうかということについては、国民の間では恐らく映らないんではないか、具体的な状況が、事態が。そういったところがあると思います。
私たち、沖縄の方での過去の戦争体験というのもございますけれども、後方支援という言葉がこの法案の中にはたびたび出てまいりますが、沖縄戦における後方支援というのは、実は後方支援部隊を含めて五十万人というような連合軍の構成でありました。その際の後方支援というのは何をしていたかといいますと、沖縄戦が九十日も、要するに慶良間諸島の上陸から含めますと九十日も続くのは、後方支援というものが非常に重要な役割をしていたと。次から次から砲弾の補給があり、物資の補給がありというようなことで戦争が続くということです。その後方支援という言葉が非常に簡単に使われておりますが、中には日常生活と変わらないような仕事あるいは運用をするのかもしれませんけれども、非常に中身としてはピュアなものではないということを私たちは考えておく必要があるのではないでしょうか。
最後に、いろんな問題がございますし、今回のこちらでの公聴会を開く問題についても、内外ともいろんな言葉がありますけれども、ぜひ、沖縄で開いた意義というのは何なのであろうか。
わざわざ先生方こちらの方にいらしています。沖縄で開くというのは、やっぱり沖縄に米軍基地があるという問題であり、その米軍基地が実際に周辺事態のときにどう動いてどう住民に影響を与えるのかという問題、そして自衛隊が後方支援ということですが、自衛隊の役割自体が沖縄の場合と本土の場合とで違うし、それから比率もかなり違います。
そういった側面での沖縄での影響というのは、やはり全国民の中でも同じような影響の問題というのが出てくるでしょうから、その辺をぜひ検討していただきたいと思いますけれども、沖縄における場合の後方支援その他の協力の問題というのは、非常に直接的に米軍にというようなことも起こり得ると思います。そういった上で、法律の中での規定という問題につきましては、国民の権利義務にかかわってくることにつきましては特に慎重に、政治日程や外交日程では決めないという姿勢だけは堅持していただきまして、参議院の特別な公聴会ということですけれども、ぜひ審議に生かしていただきたいと思いますし、憲法の上では参議院の存在意義というものも先ほど何名かの方も述べていらっしゃいました。私もそれを期待したいと思います。
終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/309
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310・井上吉夫
○団長(井上吉夫君) ありがとうございました。
次に、新崎公述人にお願いいたします。新崎公述人。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/310
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311・新崎盛暉
○公述人(新崎盛暉君) 新崎です。
私が公述人になるということは二、三日前から新聞に載りましたけれども、私のところにこの一両日で職場や家庭に随分電話がかかってきました。つまり、この公聴会をどうやったら傍聴できるだろうかということです。職場とかあるいは道で出会う人もそういうふうに聞きました。しかし、その人たちはただの一人もこの公聴会を傍聴する機会を与えられませんでした。抽せんもなかったし先着順でもありませんでした。
きのうの中央公聴会では先着順で、しかも満席ではなかったと聞いています。東京の何倍ももし傍聴希望者が沖縄にいたとすれば、それはこの沖縄という地域のまさに地域的特性であり、多くの人たちがこの問題を真剣に考えている証拠だと思います。
そういうことを、この地域の公聴会というのは、ただここに並んでいる六人が皆さんに意見を述べるということだけではないと思います。もしそうであれば、私たちが上京して意見を述べた方がよっぽど経費的にも時間的にも節約になると思います。ここで公聴会が開かれるということは、やはり皆さんには沖縄社会の雰囲気を感じていただく、そして沖縄社会の者たちにもこの公聴会というものを共有してもらう、そういうことが必要なのではないかと私は本当に痛感したわけです。
冒頭そのことを申し上げて、ぜひ今後の参考にしていただきたい、そう思います。
沖縄では、米軍用地強制使用の公開審議の際に十数回も何百人もの参加者で会議を行った体験があります。ぜひ地域的特性に即した地方公聴会をお願いしたいと思います。
地域的特性という言葉を今使いましたけれども、こういう問題に対する関心が強いとかそういうことは、沖縄というのが言うまでもなく独自の歴史的な体験を持っているからにほかなりません。
この問題と関連して言えば、先ほど来も多少話に出てきていますが、沖縄戦それから半世紀以上にわたってここが軍事拠点になってきたということこそが、まさにこの問題とかかわる沖縄独自の歴史的体験です。
なぜ、例えば沖縄は戦場になったのか。簡単です。ここに基地があったからです。日本軍がいたからです。なぜ広島に原爆が投下されたのか。答えはトルーマンが明確に述べています。そこが軍都であったからだ、基地であったからだと言っています。なぜ日本がパールハーバーを奇襲攻撃したのでしょうか。山本五十六を初め多少クールな判断ができる日本軍の幹部たちは、当時から到底勝てる戦争ではないということがわかっていました。にもかかわらず、経済制裁その他で追い詰められたときに、世界一アメリカが強いということはわかっていながらも、その軍事拠点を奇襲攻撃すれば起死回生の転機をつかめるかもしれない、それがこの奇襲攻撃を生んだわけです。
先ほど、世界一強いアメリカに守ってもらえるから沖縄が安全だというような発言もありましたけれども、これはまさに歴史の事実と反します。沖縄は既にターゲットにされているわけです。どのような強固な基地であっても、どのような場合であっても、そこの基地が仮想敵国としているところはそこをねらうということは明らかであります。
したがって、先日の野呂田防衛庁長官の発言は、事実認識ということにおいて言えば沖縄民衆と共通のものだと思います。ただ、その結論は違います。それでもその危険を冒すのか、それが嫌だと主張するのか、そこの結論のところだけが違っているわけです。
それが、例えば先月の地元紙と共同通信が行った世論調査などの数字の違いにもなってあらわれています。
ちょうどあの不審船騒ぎの直後で感情的な賛成論が高まっていたせいか、共同通信はどちらかと言えば賛成論が多いような世論調査の数字を示していました。地元紙の県内世論の調査は、過半数が否定的な、それでもなお、そういう状況の中でもなお否定的な数字を示していました。それが、沖縄が、沖縄の歴史的体験が、今置かれている状況が沖縄の民衆自身に教えていることです。
今、沖縄の実情だけに即してお話をしましたけれども、実は安保の変質というのは、NATOの変質、視野を広げて考えれば、そういうものと全く軌を一にしているということも見落としてはなりません。
ソ連を仮想敵国とする冷戦の産物であるということ、建前上はソ連等が攻めてくるのを地域、安保で言えば日本を防衛するためというのが建前でした。したがって、当然冷戦終結によって再定義が迫られたわけです。そして、NATOの再定義が周辺事態でした。NATO加盟諸国の周辺においてNATO諸国の平和と安全に重大な影響を及ぼす事態への共同対処をどうするかが再定義されたNATOの課題になったわけです。そして、その実践として今のユーゴの空爆があります。その後追いをしつつあることのそら恐ろしさを私はしみじみと痛感しています。
日本は、ドイツやイタリア、特に後方支援に軍事行動を限定しているというイタリアの地位に立とうとしているような気がしてなりません。爆撃をしているのはアメリカの飛行機、情報収集をしているのはイタリアの飛行機、その間に明確な一線が画されているのか画されていないのかわかりませんけれども、そういう事態が今NATOと安保と軌を一にして動き始めている。
私たちは、アジアであのユーゴにおけると同じような事態が再現することを本当に恐怖感を持って眺めています。しかし、恐怖感を持っているのは私たちだけではありません。実は韓国の民衆もそうです。
韓国は、御承知のとおり、朝鮮戦争を体験し、北朝鮮と軍事的に対抗しており、朝鮮半島の北部半分を反国家団体が占拠しているということを前提とした国家保安法などという法律がなお生きている社会です。その中で、このガイドラインの問題については、従来はそれほど関心が強かったとは見えなかったわけですが、小渕首相が三月中旬に向こうに行くその前ぐらいから、非常に広い広がりでこの新ガイドライン関連法に対する懸念や反対の意思表示が表面化し始めています。
韓国の新聞等にもそれはあらわれています。ただし、なぜか日本ではほとんどそれが報道されていません。国会の論議の中でも、私が新聞等で追っている限りではそういうことは見えてきません。
実は、皆さんのところに事前に三枚の資料をお配りしてあります。この資料は、実は韓国から送られたものです。韓国からどこに送られたかというと、小渕首相や衆議院の日米防衛協力のための指針に関する特別委員会の理事さんたちあてにわざわざ韓国の人たちが日本語にして送ったものです。ただ、ここに、皆さんのところにお渡ししてあるのは、韓国の人たちの使っている日本語、特に漢字は旧字体ですから、それだけを新字体に直してありますけれども、これと同じものをわざわざ日本語にして送られています。それがどれぐらい国会の議論の中で使われたのか、私は報道に関する限りわかりません。ぜひこれを見ていただきたいと思います。
ここに名前を連ねている団体というのは、女性団体、市民団体は特殊な団体ではありません。特殊なイデオロギーとかそういうものに属する団体ではありません。例えば、韓国女性団体連合とか韓国キリスト教教会協議会などという団体は、沖縄で言えば沖縄県婦人連合会であるとか、あるいは日本で言えば日本キリスト教団とか、それほどの一般的な性格を持った団体であります。
その中で、例えば二ページ目の真ん中ぐらいにこういうことが書かれています。これは、ガイドライン関連法案が衆議院での特別委員会で採択された直後の彼らの意思表示です。「このような日本の最近の動向は、日本の周辺地域に住む人々に非常に衝撃的なものである。日本軍国主義と戦争被害の悪夢を生々しく記憶しており、特に戦争の脅威を抱いている朝鮮半島の国民にこれは恐怖のニュースである。」というようなことが書かれています。
もう余り時間がないということですので、これは皆さんにも資料をお配りしてありますのでちょっとお読みいただくことにして、つまり韓国、これは北朝鮮ではありません。朝鮮民主主義人民共和国ではありません。韓国の民衆の間に非常にこういう感情が広がってきているということを私たちは無視してはならないだろうということを指摘しておきたいわけです。
これは何人かの方も言われましたけれども、国会論議を見ておりますと、周辺事態が起こったらどうするかという軍事的対決の論議ばかりがなされています。火が出たらどうするかという発言が先ほどもありましたけれども、火を出さないためにはどうするかという議論がないということです。
周辺事態を引き起こさないようにするためにはどうすればいいのか。私たちは私たち自身の敵をつくらない努力こそすべきではないのか、朝鮮民主主義人民共和国との関係で言えば、一日も早く日朝国交正常化交渉を開始して、その話し合いの中でさまざまな疑惑の解明に努力すべきではないのか、私はこのように感じています。
最後に、この基地の過重負担に苦しむ沖縄での公聴会が、法制定のための通過儀礼としてではなく、慎重な論議の出発点となることを願ってやみません。
終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/311
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312・井上吉夫
○団長(井上吉夫君) ありがとうございました。
以上で公述人の方々の意見の陳述は終わりました。
それでは、これより公述人に対する質疑を行います。
なお、委員の質疑時間が限られておりますので、御答弁は簡潔に願いたいと思います。
また、御発言は私の指名を待ってからお願いいたします。
それでは、質疑のある方は順次御発言願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/312
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313・山本一太
○山本一太君 自由民主党の山本一太でございます。
ただいま六名の公述人の方々から、それぞれこのガイドライン関連法案に賛成または慎重、反対のお立場から貴重な御意見を述べていただきました。ありがとうございます。
私はいわゆる戦争を知らない世代の国会議員ではございますけれども、皆さん方のお話を伺いながら、先ほどもこういう表現がございましたけれども、太平洋戦争で唯一地上戦を経験して多くの犠牲者を出された、しかも基地の問題をずっと抱えてこられた沖縄の方々の痛み、そういう痛みを感じながら生活をされているということを感じました。そのことは真摯に受けとめなければいけないというふうに感じた次第でございます。
沖縄には米軍基地の七五%が集中をしている。特に、重要な基地はこの中部と南部に集中をしているということでございます。
戦後の日本の安全保障を考えてみると、やはり沖縄と沖縄の県民の方々に多くの負担がかかってきた、過度の負担を強いてきたということは、これは紛れもない事実であるというふうに考えております。それだけに、今沖縄が抱えるこの基地の問題、SACOの合意に基づいて政府等も努力をしておりますけれども、こういった問題や、あるいは経済を初めとする地域振興の問題、橋本内閣以来取り組んでいる問題ですが、こういうことについて、やはり今後とも全力を挙げて真摯に取り組んでいかなければいけないということを痛感いたした次第でございます。
公述人の方々がおっしゃったいろいろな歴史の流れを考えてみれば、今審議されているガイドライン関連法案について、これがさらなる負担を沖縄に課すものではないかとか、あるいは沖縄を戦争に巻き込むような法案ではないかという、そういう御心配をされることも十分に理解のできるところだというふうに率直に思いました。
しかしながら、先ほど伊佐公述人の方からもちょっとありましたけれども、ガイドライン関連法案は戦争に巻き込まれるための法案ではなく、むしろそうした紛争を未然に防ぐ法案であるというふうにとらえておりますし、文字どおり、日本全体の平和と安全を守るための措置であるというふうに考えております。
そこで、そういったものを踏まえた上で、きょうは時間がございませんので、六人の皆さん方に次のような質問をさせていただきたいと思います。
先ほども公述人の方からございましたが、安全保障というものを、一国の安全保障、日本の安全保障を担保するために外交を基調にしなければいけないというのはこれはもう申し上げるまでもないことだと思います。平和外交、対話による外交あるいは紛争を未然に防ぐための予防外交、こういったものを基調にしなければいけないことはもちろんでございますけれども、最近の北朝鮮によるミサイル発射事件とかあるいは不審船による領海侵犯の事件とか、こういったことが日本国民の間に不安を与えている。こういう状況の中で、きちっとした外交に加え、専守防衛ということをもちろん基調としたきちっとした抑止力というものがあって初めて私は日本の安全確保というのができるのではないかというふうに考えている次第でございます。
憲法の言う基本的人権とか国民の生命とか財産とか、それを守るための体制はきちっと整えておくのがやはり一国のあり方としては必要だというふうに考えておりますが、そこで皆さん方にお聞きしたいのは、平和外交、憲法の持つ平和主義、国際協調主義というものは大事にしながらも、現実の事態、すなわち危機的な事態に対応できるような体制をつくる、この抑止力というものについての必要性についてどうお考えになっておられるか、六人の方々にそれぞれお聞きできれば幸いです。よろしくお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/313
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314・井上吉夫
○団長(井上吉夫君) 冒頭申し上げましたように時間が制限されておりますので、六人の方々にそろってお答えをいただくということでありますと、大体基準として今の質問に対してはそれぞれ二分以内ぐらいにできるだけまとめてお答えをいただければと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/314
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315・小渡亨
○公述人(小渡亨君) 憲法は確かに平和主義でございます。しかし、憲法前文は国際協調をうたっております。つまり、国連の行動を日本国は支持したいと。そして、国連はどうかといいますと、皆さんも御存じのように集団的自衛権であります。あるいは、事があった場合にはみんなで話し合って集団で事に当たろうということであります。
憲法の前文と九条の関係、私自身若干しっくり来ないなという面がございます。そういった面で日本国がみずからの安全を守るために自衛力を持つ、つまり抑止力を持つというのは大変大事であり、これはぜひとも保持しなきゃならぬ。そして、今回のガイドラインに関連するならば、先ほど言いましたように現在ある能力を高めることなくその抑止力の効果だけを上げるという面からすると、これは大変重要な法案だなと思っております。ぜひとも一日も早い成立を願っておる一人であります。
以上です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/315
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316・比嘉良彦
○公述人(比嘉良彦君) 安全保障の担保というふうなことで抑止力とか危機的な場合といいますけれども、危機に対する対応の仕方とかそれから抑止力といった場合にも必ずしもそれが真っ先に軍事力ということを考えることは別にないんじゃないかと。憲法が国家の基本法であれば、憲法の九条なりあるいは前文なりというものを一番尊重する、憲法を尊重するということが一番大事だと思います。
それで、それに対する対応の順序として、危機的な状況に対してどうするかといえば、私は、先ほどから申し上げましたように平和外交とか、経済力の交流とか相互依存とか、それから民間の外交といったようなものがまず最初に問題になるだろうと思います。
ただ、そういう中で万一危機的な状況にというふうなことがありますけれども、しかしこういうふうな法案をつくって逆に日本の周辺なりなんなりで危機的な状況を招く、それで抑止できるのかといったような問題をもっと時間をかけてきちっとやることの方が僕は大事だというふうに考えます。その前提として沖縄の現状というものを、これだけ米軍の軍事施設を置いている状況というのを十分に検討していただきたいというふうに考えるわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/316
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317・伊佐真一郎
○公述人(伊佐真一郎君) 私は、危機管理というのは、まさかに備えるんじゃなくしてもしもに備えるのが危機管理だと思うんです。まことに残念ながら、今日の社会情勢というのはミリタリーパワーの抑止力の上にしか成り立っていないんですね。ムーミンの世界じゃないわけですね。みんな非武装中立でお互い仲よしというわけにはいかない。これは人類の五千年の歴史を振り返ればもう一目瞭然で、我々が歴史に学ぶというのはまさにそのことだと思うんですね。
では同盟ということはどういうことかというと、これはとりもなおさず価値観を一にする相手としか同盟を結ばないわけです。つまり、今日の日本でいうならば、自由主義、民主主義、市場経済等々の価値観を等しくする相手としか同盟を結ばないわけです。それは文化交流とか人材交流ということは体制が違ってもあり得ると思います。しかしながら、やはり安全保障になると、私が今述べたように、残念ながら価値観を等しくする相手としかこれは結ばない。
では今の日米安保体制にかわり得る代替があるかというと、残念ながらそれは見当たりません。そういう方面においても今度のガイドラインはそれを一歩前進させるという意味からも、私は高く評価したいと思います。
以上でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/317
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318・新垣勉
○公述人(新垣勉君) 私は、武力による抑止力というのはとるべきでないと思います。それが平和憲法の原点であり、私たち県民の貴重な体験でした。五月にハーグで平和市民会議が開かれましたけれども、そこで提起された問題が人間の安全保障という大きな流れであり、基本的な考え方です。私は、この人間の安全保障という考え方こそ非常に大切だと思います。
国会で率直に議論をしていただきたいのは、例えば朝鮮半島で紛争が起きたとき、台湾海峡で紛争が起きたとき、紛争当事者の一方に加担する米軍を支援することがどんなに危険なことであるのか考えていただきたいと私は思います。この場合を想定しますと、むしろ日本は紛争当事者の一方に加担する米軍に加わるのではなくて、非武装、平和の原点に立って中立を堅持することこそが紛争を仲介し紛争を平和的に解決する政治的なイニシアチブを発揮することができると思います。
沖縄では、日本軍が地域住民を守らなかったという体験をいたしました。それから、戦後の米軍施政下のもとでの体験では、米軍が毎年一千件を超す基地被害を生み出してきたという体験を持っております。復帰後も平均しますと毎年八百件から九百件の米軍人等による被害が発生をしているわけです。一体何のための国防なのでしょうか。国民の生命を守る安保といいながら、県民の生命や人権を守れない安保というのは一体何なのか、答えをぜひ聞きたいものだと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/318
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319・高良鉄美
○公述人(高良鉄美君) 先ほどから集団的自衛権の話が出ておりますけれども、その集団的自衛権の行使というのは中身は何なんでしょうかということを私たちが考えると、恐らく武力というのが出てくると思います。そういう意味では安全保障というものは必ずしも武力というものではないという概念ですね。つまり、集団的自衛権と集団的安全保障は違うということを考えていただきたいと思いますし、学問上もこれは区別されております。
集団的自衛権の行使といったときに、ミューチュアル、お互いにということで、同盟あるいはその集団の中にいる同じ方向性を向いている者たちが、どこかが攻撃されれば自国を攻撃したものと同じと考えるということになっていくわけで、そういった問題が今回の周辺事態との問題でいきますと、どれだけリンクしてくるかといいますと、どこから攻撃されてくるのかという問題なんです。
実は、この事態という問題が一体どこから引き起こされてくるかという問題を考えますと、急に攻撃されたというような事態ではなくて、裏づけがあって緊張感が高まって、ほっておくとというような問題が先ほどからありましたので、その辺のほっておくとという問題をほっておかないようにする手段が武力なのか、そのほかのものなのかということだと思います。ほっておかない手段というのは、憲法で言う平和外交であろうと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/319
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320・新崎盛暉
○公述人(新崎盛暉君) 抑止力とか、例えば世界の警察官でもそうですけれども、こういう言葉というのは具体的な事実に即して考えるべきものであって、抽象的な言葉で論議ができるものではないと思っています。
もし、抑止力というのが、物事を解決するのに力を持ってやることが抑止力である、力で押さえつけることが抑止力であるということであれば、私はこういう抑止力という考え方に全面的に反対です。例えば、NATOがユーゴに行っているのも、ミロシェビッチの民族差別をやめさせるための抑止力の行使になっているはずです。
それからもう一つつけ加えますと、平和外交が優先されるべきは当然だけれども、例えば北朝鮮と、こういう話になります。しかし、その場合に、本当に平和外交がこれまで全面的に展開されていただろうか。日本が一生懸命手を差し伸べているのに、北朝鮮がミサイルを撃ったり不審船を派遣してきたのだろうか。一九六五年の日韓条約締結以来、日本は北朝鮮を基本的には敵対国として認識し、そのような対応をしてきたわけです。その間、例えば自民党の金丸さんとか社会党の田邊さんなどが行って幾らかの関係改善の努力をしようとしたこともありますけれども、それはごく一時的なものにとどまっていて、基本的には敵対関係の維持に力が注がれていたのではないでしょうか。例えば、もっと厳しい対立をしているはずの韓国の金大中大統領に太陽政策がとれるのに、なぜ日本がヒステリックな対応をしなければいけないのか、こういうことではないかと思います。
なぜ韓国の民衆はこの法案に反対しているのでしょうか。なぜ金大中はあれだけ厳しい対立の中で太陽政策というものをとろうとしているのでしょうか。私たちが見習うべきはまさにそこであろうと私は思っています。それこそが平和外交であろうと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/320
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321・井上吉夫
○団長(井上吉夫君) 山本一太君、残り時間あと四分で答えまでまとめてください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/321
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322・山本一太
○山本一太君 簡潔にお答えいただきまして、ありがとうございました。
来年の七月には沖縄の名護市でサミットが行われることが決まりました。大変これはすばらしい。沖縄サミットというのは、沖縄にとっても日本にとっても大変意義深いというふうにとらえております。今度のサミットは、沖縄が置かれている立場、歴史、文化、沖縄のすばらしさ、あるいは観光資源等を世界に向けて発信するすばらしい機会だというふうに考えております。また、これが今いろいろとおっしゃった基地の問題やあるいは経済振興の問題の一つの大きなステップになるように党・政府としても一生懸命取り組んでいきたいというふうに思っておるわけでございます。
ほとんど時間がありませんが、最後に一言ずつ沖縄サミットに何を期待されているかということをお答えいただいて、私の質問を終わらせていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/322
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323・小渡亨
○公述人(小渡亨君) 沖縄県が他府県に比べておくれているのが情報のインフラ整備だと思います。ぜひ沖縄にいながら東京の情報が得られるというふうにしてほしいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/323
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324・比嘉良彦
○公述人(比嘉良彦君) サミットに何を期待するかというと、現実、ありのままを見る機会があるかどうかわかりませんけれども、沖縄の現実というものに少しでも触れていただければというだけの話です。それほど大きな期待とかなんとかということは別にしておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/324
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325・伊佐真一郎
○公述人(伊佐真一郎君) 日米安保の関係で、沖縄にこれだけの基地があるということは世界の先進国でも余り知られていないと思うんです。この際、基地問題もさることながら、私としては、日本の最南端に沖縄、こういう島があるんだということを観光面も含めまして大いに紹介すべきだというふうに考えております。
以上でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/325
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326・新垣勉
○公述人(新垣勉君) 県民との意見交流、できればディスカッションの場を設けていただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/326
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327・高良鉄美
○公述人(高良鉄美君) サミットとの関連性がわかりませんが、現在、空爆をしている国の、つまり武力を背景にする国のほとんどがサミットの構成国であるということですが、沖縄の基地を見て、それでも問題があるのかということをできたら確かめていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/327
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328・新崎盛暉
○公述人(新崎盛暉君) 何を期待されているのかと言われてもちょっと困るんですけれども、今、高良さんがおっしゃったように、逆にこの人たちが沖縄の基地はやっぱり重要だと再確認されたら非常に困るという懸念の方が私にとっては大きいです。
ただ、いろいろな平和団体などもこの機会に自分たちの声を伝えようという、いわば平和サミットのようなものを企画していますので、そういう形の声が広がればこれは一つのチャンスであろうというふうに認識しています。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/328
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329・山本一太
○山本一太君 ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/329
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330・齋藤勁
○齋藤勁君 民主党・新緑風会の齋藤勁でございます。きょうは、公述人の皆さん、ありがとうございます。
きょうは十九日ということで、四日前の五月十五日に復帰二十七周年ということで、二十七年間の米軍統治を経まして、それと同期間のそういう意味では歩みをされてきたわけでございます。私ども民主党・新緑風会といたしまして、この間、基地の整理、統合、縮小に向け、それぞれ国会の方でも努力をしてきているつもりでございますが、いずれにしましても、今日、SACOの最終報告で合意した十一施設が返還されても、なおまだ在沖米軍基地の約四〇%が残るということで、過剰な負担を強いられる沖縄の県民の方々に、本当にある意味では私ども国会の役目として、今回の公聴会を含めまして、県民の方々のさまざまな御意見を拝聴したいということで来たつもりでございます。
〔団長退席、若林正俊君着席〕
とりわけ、今回のガイドライン特別委員会で、当初、衆議院では沖縄で地方公聴会をやろうではないかという意見もありましたが、残念ながら実現せず、参議院の方でも民主党としては地方公聴会をやるべし、いややるべきではないという声もあり、さらには沖縄では必要ないではないかということもございましたが、ぜひ沖縄でやるべきだと私どもは強く他の会派の方々と申し入れをさせていただきまして、最終的に今日の運びになりました。大変短期間のうちに御協力いただきましたことに感謝を申し上げたいというふうに思います。
そこで、すべての方々にお尋ねする時間がないかもわかりませんが、可能な限りお尋ねさせていただきたいと思います。
小渡公述人、よろしくお願いいたします。
県議会議員として御活躍ということで、そういった立場でも御発言いただきました。今、私が申し上げましたように、今回衆議院では地方公聴会を沖縄では開催せず、参議院では地方公聴会はこの沖縄のみでございますが、沖縄で地方公聴会を開催したということについての評価が一つ。そして、今の沖縄県議会がガイドライン問題につきまして、短い時間で全部を言い尽くすのはなかなか困難かもわかりませんけれども、沖縄県議会のガイドライン問題につきましての大方の意向等についてお聞かせいただければありがたいというふうに思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/330
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331・小渡亨
○公述人(小渡亨君) まず、この公聴会が沖縄で開催されたと、これは大変意義深いことだと思います。やはり沖縄の空気といいますか、県民感情いろいろございます。マスコミ等が報道している部分もございますし、あるいはそうでないという県民感情もあるわけです。その辺をぜひきょうは、きょう一日ですからなかなかすべてを把握するわけにはいかないと思うんですが、やはり顔と顔を合わせて話をするというのは大事なことだと思います。できればこういった公式な場じゃなくて、もっとリラックスして本音で話し合えるという感じのものを持てば、県民の心といいますか感情というのがよくわかると思います。そういう面で非常にわかると思います。
次に、ガイドライン関連法案に関しての県議会の内容でございますが、これはまさしく日本全体の、国会の政党間のと全く一緒であります。反対するのは反対するし、賛成は賛成ということでありますので、これは皆さん方がよく御存じのことだと思います。
以上です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/331
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332・齋藤勁
○齋藤勁君 ありがとうございます。
私どもは、衆議院から参議院にこの法案が送付をされてきた際、その直前に、御案内のように衆議院ではいわゆる政府原案から修正して参議院の方に送付をしてまいりました。衆議院の民主党の方も幾つか考え方を出しながら修正に加わって協議をした部分もございます。しかし、残念ながら民主党の修正案というのは日の目を見ないで今日に至っているところであります。
私ども民主党としましては、日米安保条約、その前提に立ちまして国民の方々の生命と財産を守っていく、同時に日本の主体性をやはり守っていくということの両方から追求するという、そういう政党として衆参でいろいろ活動しているわけでございます。
とりわけ今、本会議でも私ども指摘させていただきましたけれども、船舶検査が政府原案であったのですが、これが抜けて、衆議院と参議院で違う議論をずっとしているわけですけれども、これは欠陥法案ではないかという指摘もさせていただいています。これは深い議論は別にいたしまして、比嘉公述人さんにお尋ねさせていただきます。
〔団長代理若林正俊君退席、団長着席〕
いろいろお話しいただいた中で、とりわけ後段に国会承認のお話がございました。私どもの方は基本計画の国会による原則事前承認ということを主張しております。これは基本計画そして全体を事前承認するということは、もう自衛隊の活動はもとより、周辺事態の認定とかあるいは方針とか自治体や民間協力にやはりきちんと、仮に政府がもし暴走したときに国会としてのチェックをしていこうということでのコントロールの仕組みが必要だろうということで、このことを指摘をしております。
自衛隊の活動部分については、部分的に自自公の方々により事前承認、原則事前承認ということも出てきたのですが、さらに今参議院の方では、六十日間の継続措置に対するいわゆる国会承認をして、いつまでもということではなくて、やっぱりきちんと国会がある時期を区切って、基本計画の見直しも含めまして、一度承認した後に事態が大きく変わった、あるいは不都合が生じたというときにはチェックする法的仕組みが必要だということで、こういった六十日間の継続に対する国会承認というのを考え、主張しているのです。
大変具体的になって恐縮なんですけれども、先ほどは、国会承認という、全幅の信頼を置いていませんよという厳しい御意見もございましたけれども、今の私どもの考え方について御意見があれば伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/332
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333・比嘉良彦
○公述人(比嘉良彦君) 関連法案自体とか、そのものを国会提出すればこういう議論をするかどうかというふうなものも、これはすべて政治力学の中でやることですので、そういう意味では、安保条約があった方がいいかない方がいいかとか、あるいは関連法案自体があった方が戦争に巻き込まれるのか巻き込まれないのかというふうな議論をしても、今の国会の構成なり、あるいは衆議院、参議院もそういうふうな政治力学の中では、一応安保条約を認めないという勢力の方が少ないとか、あるいは関連法案をつくらないというふうな勢力が少ないという前提の中で今みたいな話になれば、やっぱりその中でも少しでも国民の意思を反映するというふうな形であれば、今言ったような修正案なりなんなり出されて、そして特に国会の承認の問題でそういう努力をされるということは、私は必要だろうと思います。
そして、それが事前承認であるのか事後承認であるのか、あるいは事後で六十日なのかというふうな問題も、その政治力学の中でできるだけ国民の声が反映できるようなやり方であれば、ぜひとも、一歩でも二歩でもそういうふうな努力をされるのは、国会議員の皆様として、特に参議院の今の段階で非常に意義はあるのではないかというふうに考えています。細かい具体的な話になれば、また一つ一つこの場合はこの場合はという事例が出てくるとは思いますけれども、全般的に私の言う国会の承認というふうな意味からは、今皆様の方で努力されているそういう方向というのは、こういう政治状況の中では一つの評価できる方法ではないかというふうには考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/333
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334・齋藤勁
○齋藤勁君 ありがとうございます。
伊佐公述人さん、今、六十日間の継続措置に対する私どもの考え方を申し上げさせていただいたんですが、そのことについての御意見が一つと、冒頭、組合を結成されてまだ短い、平成八年とおっしゃいましたが……発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/334
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335・伊佐真一郎
○公述人(伊佐真一郎君) 八年です。もう八月で満三年ということですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/335
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336・齋藤勁
○齋藤勁君 そうですか。いわゆる全駐労という大きな全国組織がございますが、その駐留軍の沖縄におきます労働組合の構成というんでしょうか、その比率とか何かについて触れていただければありがたいというふうに思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/336
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337・伊佐真一郎
○公述人(伊佐真一郎君) わかりました。
一点目のいわゆる六十日間継続審議の件ですけれども、やっぱり参議院というのは、衆議院で成立された法案を参議院はチェックするという非常に重要な任務を帯びており、そういうことだと私は理解しておりますので、今、民主党さんが出された六十日間継続審議等々についても、私としてはこれはすばらしいと思います。したがいまして、比嘉公述人が指摘されましたように、やっぱりこういうことというのは提案として、提議として継続していくべきじゃないか、どんどん提案すべきだというふうに考えております。
それから、私どもの組織に関することでありますけれども、平成八年八月に、先ほど申しましたように、全日本駐留軍労働組合、つまり全駐労沖縄地本さんですね、向こうと対立するという、ある面イデオロギーの問題になりますけれども、私自身平成八年まではれっきとした全駐労の組合員でありますので、そこから脱退して新しい組合をつくる。今経緯等につきましては省きますけれども、ただいまのその組合員数も三百二名ということですね。平成八年の八月に旗上げしたときは三十五名で旗上げしたわけでございますけれども、なるべくでしたら、基地従業員として共同の問題に対処するには、やはり組織というのはそれは一つになった方が力も発揮できますね、等々につきましても、我々としてもやはり組織討議する必要があるんじゃないか。個々の問題についてケース・バイ・ケースで対処する事項が今後起こるやもしれないというふうに考えております。
以上でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/337
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338・齋藤勁
○齋藤勁君 一生懸命私も早口でしゃべっているつもりなんですが、残り時間が余りなくなってきたので、新崎公述人さん、世界という月刊誌を読まさせていただきました。九七年十月、今から二年前の「沖縄から見たガイドライン改定」というお書きになっている中にも、後段にずっと、この問題はと言うと聞いている方は何の問題かとなると思うんですが、表題が「沖縄から見たガイドライン改定」ということで、まとめとして、
最大の特徴は、日本とアメリカ、日本政府と沖縄の間でなされるべき日米安保再定義に関わる論議が、沖縄社会の内部矛盾に転化させられていることである。論議は、日米同盟の本質に引き戻されなければならない。そのためには、おそらく、アジア太平洋戦争におけるアメリカ側の戦争目的にまでさかのぼらざるをえないだろう。勝者アメリカの戦争目的の延長線上に戦後アメリカの世界戦略があり、その世界戦略の一環に組み込まれて日米安保があるからである。
御記憶ですか、御自身がお書きいただいたと思うんです。私はここで、このアメリカの世界戦略というのを、これまた短い時間でお話ししていると大変恐縮なんですけれども、今回の公聴会でも、参考人でも、私どもの国会の議論もそうなんですが、やはり世界観もそうですし、日本の国益という立場に立ってどうあるべきかということを非常に真剣に議論をしているつもりなんですが、ぜひこのアメリカの世界戦略、新崎公述人は今度のことを思いながらどういうふうに御説明していただけるか、大変恐縮でございますけれども、お尋ねさせていただきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/338
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339・新崎盛暉
○公述人(新崎盛暉君) アメリカの世界戦略をごく短い時間で述べろと言われても非常に困りますけれども、結局アメリカと日本の戦争にしても、ただ、アメリカが善玉で日本が悪玉であったというわけではないのは明らかなことであって、基本的にアメリカと日本とのアジア太平洋地域における経済的な利害の争奪戦であったと私は認識をしています。
その中で、アメリカが勝つという形で世界支配の枠を広げていくわけですから、アメリカとしてはあくまでグローバルな形で経済的な利益を追求し、その経済的な利益を確保するものとして軍事戦略を展開していると私は認識しています。
よく私が引用することですけれども、既に沖縄に上陸したバックナー中将というのが、もうその段階でアメリカの戦後世界戦略上、沖縄は重要だ、保護領その他の名目で確保した方がいいというようなことを言っているわけです。そのときには、アメリカはソ連と一緒にナチスドイツを挟み打ちにしている段階ですが、にもかかわらず、戦後の仮想敵国として既にソ連を想定しているというか、そういう考え方がアメリカの軍部の中にあります。つまり、アメリカの軍部が追求しているのが、やはりはっきり言ってしまえば世界支配というか、世界の秩序を自分たちが取り仕切るというか、そういうことであって、その根幹にはアメリカの利益追求がある、それがアメリカの世界戦略である。
当初は、日本に対する占領政策でいいますと、アメリカと覇を争った、ある意味では日本帝国主義のきばを抜くということで、非軍事化とかそういうことをアメリカは意図しますし、それがいわゆるマッカーサー憲法と言われるものなどにも反映している部分があります。
ただ、この日本国憲法が成立したのは、そういう占領者の意思と日本国民のもう二度とこういうことを繰り返したくないという平和的願望との接点で私は生まれたと思っていますけれども、そのアメリカの世界戦略からいえば日本の力を弱めるということであった。それが明確に四七、八年ぐらいから転換をして、主として中国大陸における国共内戦の影響であると言っていいと思いますけれども、その中で、日本はむしろ目下の同盟者として力を弱めるのではなくて、育成すべき対象として認識されるようになった。そういうところへ朝鮮戦争が始まり、日本としてもアメリカについていた方がいいという認識が生まれて、そこでいわば日本の独立とともに安保というアメリカの世界戦略に日本が補完部分として協力するという体制が生まれた。私はそのように認識しています。そんなことでよろしいですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/339
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340・齋藤勁
○齋藤勁君 高良公述人さん、憲法を中心に琉大の方で御教授されているわけですが、きょうも私どもの席上に御意見の要旨をいただきました。
今回のこの周辺事態法案、いわゆる新ガイドライン関連法案は、明確に今の日本国憲法上もこれは憲法違反だということで高良さんとして御指摘点があるのかどうか、いろいろ疑義とかそういった点については触れられているんですが、もう明確に憲法違反だということがございましたら、御発言いただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/340
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341・高良鉄美
○公述人(高良鉄美君) 明確な憲法違反というのをかつて国会の中で議論されたことがありまして、徴兵制の問題とかいろんなものがありました。その中で、自衛隊の海外派兵という問題がありました。ところが、それはもうPKO協力法ででき上がっています。その当時は本当に明確な憲法違反でした。それは三つの中の一つとして入っていたわけです。
ところが、そういうような状況ができましたけれども、法律の中で今回その形、いわゆる周辺事態というものの概念が非常にはっきりしていない中で、先ほどのような協力というのを国民に求めているという部分、それはまず日本の憲法の中に国民の自衛隊なり米軍に対する協力というものは置かれていないはずであると。つまり、一九七八年の旧ガイドラインの中でさえ大きな憲法違反の問題というのは自衛隊と米軍の緊密な共同軍事行動である、それが旧ガイドラインの中身でした。
しかし、新ガイドラインというのは国民が入ってきています。そういう意味では、あの時点でさえ大きな憲法違反の問題あるいは憲法を変えてしまうんじゃないかということでしたけれども、今回はさらにそれを一歩越えているという問題になれば、それはもう考えてしかるとおり、国民の権利や義務の問題に大きなかかわりを持ってきているということが先にガイドラインで決まっているという問題だと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/341
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342・齋藤勁
○齋藤勁君 新垣公述人さん、沖縄の地については、沖縄の歴史、これはもう一口で言い尽くせないんですが、この地が中国と台湾海峡、そして尖閣列島と近いわけですが、最近の動き等、それから沖縄県民の方々が尖閣諸島と台湾と非常に近いということの中での県民の方々の気持ちと今のガイドライン問題、こういうことについてどうとらえられているのか、お尋ねさせていただきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/342
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343・新垣勉
○公述人(新垣勉君) 本来であれば、抽象的な議論ではなくて台湾海峡で問題が起きたときにどうするのか、具体的に米軍基地がどのように動いて、自衛隊がどういうような支援活動をして、県にどういう要請があるのか、本当はもう少し具体的に率直に国会で議論をしていただきたいんですけれども、今御質問があった点についての議論が国会では余り十分でないように思います。
沖縄県民の場合には、隣接する地域での紛争、こういうふうになりますので、その事態に沖縄の米軍基地あるいは県経済が巻き込まれるということを非常に恐れています。それだけ申し上げておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/343
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344・齋藤勁
○齋藤勁君 ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/344
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345・小渡亨
○公述人(小渡亨君) 団長、先ほど齋藤理事からの質疑の中で、一点だけ答弁が漏れていますので。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/345
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346・井上吉夫
○団長(井上吉夫君) それでは、ちょっと時間があるので。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/346
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347・小渡亨
○公述人(小渡亨君) ガイドライン関連法案に関して、沖縄県議会でこれに反対しようという意見書が出されました。しかし、賛成少数で否決されております。
以上です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/347
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348・齋藤勁
○齋藤勁君 ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/348
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349・日笠勝之
○日笠勝之君 公明党の日笠勝之でございます。
公述人の方々、大変に御苦労さまでございます。
まず、私ども公明党は去る五月十五日、沖縄にとっても大変意義ある日だと思いますが、二十七年間の米軍のいわゆる施政下のもと、それから二十七年間の本土復帰の期間、折り返し地点といいましょうか、その意義ある日に、公明党の全国の県代表協議会を行いました。その際、地元沖縄県会議員の高良代表から執行部に質問がありました。
それは、この周辺事態安全確保法、いわゆる新ガイドライン法について、憲法との関係また日米安全保障条約の関係などから、今党内で学習会を通して理解を深めているところであります、しかし、今沖縄にとって一番大切なのはやはり基地の整理、統合、縮小であります、この整理、統合、縮小へ向けた我が党のプロセスをぜひ明示していただきたいと、こういう要望がありました。執行部の方からは、七月の臨時党大会におきまして、日本のあるべき安全保障、その中でも沖縄の基地問題についてぜひそれを課題として骨太の政策を掲げ議論をさせていただこう、こういうことで、五月十五日、全国の代表協議会がありました。それらを踏まえまして、公述人の方々に、私は大変短い持ち時間でございますから、全員というわけにいかないかもしれませんが、何点かお伺いをしたいと思うわけでございます。
まず、小渡公述人にお伺いしたいと思いますが、先ほどの陳述の中で、船舶検査活動が先送りになったことは非常に残念であるとおっしゃいました。確かに、三会派の修正協議で別途今国会中にも法律で措置しようと、こういうことになって協議をすることとなっております。その中で、この船舶検査活動について、俗に先送りになった理由は、いわゆる国連安保理決議に基づく船舶検査活動にするのかどうか。国連安保理決議ということが大変大きな問題点となったわけでございます。
小渡公述人は、今回のガイドラインの三本柱の一つであったと言われるこの船舶検査活動について、国連安保理決議が必要か、なくてもほかの手だてがあるんじゃないか、どういうふうにお考えかお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/349
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350・小渡亨
○公述人(小渡亨君) 周辺事態法で周辺事態が起きた場合に対処をするわけですが、そこで船舶検査はできないとなると、その周辺事態に対する対処がうまくいかないと思います。
そこで、安保理決議が必要か必要でないかとなると、今の国際情勢を見ますと、常任理事国五大国の意見が一致するというのはなかなか難しい状況であります。特に、我が国の周辺で起きた場合に、常任理事国の全員がオーケーすればいいんですが、そうしなかった場合に、この船舶検査ができないとなると、周辺事態に対して十二分に活動できないということでありますので、私は一般的な国際判例等に従ってやるべきだと思っています。
特に安保理決議は必要ないと思っています。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/350
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351・日笠勝之
○日笠勝之君 次に、小渡公述人と高良公述人と新崎公述人にお伺いしたいと思います。
俗に言う日本有事のときの法整備がないということで、今回のガイドライン特別委員会でもいろんな方、委員の方々が、いろんな観点から有事立法も早期に検討すべきではなかろうかと。今回の周辺事態確保法案は、いわゆる二階建ての家で言えば二階の屋根からつくっているようなものだ、これは土台がないというようなことでございました。また、参考人質疑でも参考人の方からは、平時と周辺事態と有事、これがいわゆる階段で言えば三段階だと、今回初めてその真ん中の周辺事態の法律ができるというふうなことをおっしゃって、非常に意義深く聞いたわけでございます。
そこで、この有事のときの法制でございますが、小渡公述人に、有事立法というものをどう考えておられるか。それから、高良公述人は、いただきましたペーパーの中に「周辺事態措置法案の後に何が(法制度的に)用意されているのか、」と。恐らく有事立法のことも想定されているのではなかろうかと思います。それから、新崎公述人は、韓国の市民団体九団体の方々の小渕総理への要請書がございますが、その中に日本を軍事化する有事立法の企てを中止せよという要望をされていると、こういうことでございます。
お三人の方に、有事法制、有事立法についてどのようにお考えなのか、時間がありませんので、簡単にお一人ずつ御意見をいただければと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/351
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352・小渡亨
○公述人(小渡亨君) 現在、日本の法体系の中で、有事といいますか、緊急時と言ってもいいんですが、そういうものに対応する法律というのは恐らく自衛隊法ぐらいなもので、あとの法律はすべて平時における対応と。
一つ例を挙げるならば、阪神大震災の際に、自衛隊の航空機が行った場合に、それが航空法で何度かの規制を受けた、特に大阪航空局からの指示等がなかなかうまく伝わらないということで、平時の法体系であります。そういう意味で、ぜひとも有事法制はつくらなければならない。
さらに、自衛隊が行動する場合に、例えば道路を走る場合に、現在の道交法では緊急事態においても信号でとまらなきゃならない、あるいは戦車等は国道を走れない、トレーラーで運ばなきゃならないということがありますので、そういった面、有事あるいは緊急時に対応する法律はぜひともつくらなきゃならないと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/352
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353・高良鉄美
○公述人(高良鉄美君) 有事立法の問題ですけれども、今のところ有事立法というふうな形での議論はなされていないと思います。過去に有事立法という言葉は使いませんでしたけれども、七八年のガイドラインの際に、まだ研究段階ですけれども、幾つかの法律の整備は必要であろうというふうな発言は防衛庁の長官からあったと思います。
その際に、いろいろな関連性のある分野といいますと、やはり運輸やら労働あるいは気象庁の問題もあるでしょうし、場合によっては財政的な裏づけあるいは経済企画庁の問題もあると思います。そういった部分から考えますと、有事立法というのが私たちにどれぐらいの影響を与えるかということは、まだ一切知らされておりません。
その辺が、有事立法として今後つくるのかどうかという問題についての議論が、周辺事態措置法案だけで動くとはまず思わないんですけれども、その状態が果たして国民に知らされているのかどうか。つまり、財政的な問題も考えると、例えば優先的に補給物資の生産の方に投資をするというようなことも考えられると思うんですけれども、その辺があって初めて国民の中の議論というのが起こり、それに対しての明確な反対の問題、賛成の問題というのが出てくるんだろうと思います。
そういった意味で、有事立法というのが、大きな問題としては確かに憲法上も非常に大きな議論はあるわけですけれども、そこに持っていくまでの段階で有事立法は見せておかないというようなことではなくて、有事立法そのものの問題以前に、やはり国民に知らせていないということが大きな問題だろうと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/353
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354・新崎盛暉
○公述人(新崎盛暉君) 有事立法という言葉それ自体非常にあいまいな使われ方をなされていると思います。例えば、周辺事態法それ自体を有事立法と言ったりもしますし、これは違うんだというふうに言ったりもします。要するに。戦時体制の中で機能するようなものとして有事立法が想定されていると思いますが、そういう意味でいうと、私などは九七年の米軍用地特措法の改定それ自体が米軍用地特措法に有事立法の性格を持たせてきたものだと思っています。
そして今、地方分権整備一括法案と言われていて国会に提出されている四百七十五の法案を地方分権を推進するためという名称で改定しようとしていますけれども、その中にも米軍用地特措法の再改定が含まれています。これなどはまさに有事立法、米軍用地特措法の有事立法化にほかならないと思っています。
これはなぜかといいますと、米軍用地特措法というのは、そもそも土地収用法が使えないから米軍に土地を提供するための特別の土地収用法として制定されたわけです、安保条約が制定されたときに。したがって、その収用手続については土地収用法に準拠するという形で一応日本国憲法下の収用法体系というのが守られていたと思います。ところが、九七年の改定で例外規定を設けてきた。
そして今度、地方分権整備一括法案の中で行われようとしていることは何かというと、これまで市町村長や知事が行っていた代理署名とか公告縦覧とかは全部総理大臣ができる、県収用委員会がもし却下でもすれば、今は建設大臣に審査請求をするとかいうことになっていますけれども、総理大臣が代行裁決できる、こういうことになろうとしています。つまり、総理大臣が軍用地として必要と感じた土地は、ほかの公共用地とは違って、一切の土地収用法に定められた憲法上のいわば財産権保障手続を全部カットして一方的に財産権が侵害できる、こういうものに今変わろうとしています。
これがまさに私は、財産権というものに限定してですけれども、つまり軍用地として土地をとるということに限定してですけれども、やはり一つの法律が有事立法として動きつつある具体的例証ではないかと思っています。
これが財産権にとどまらず、生存権その他に影響を及ぼしてくるのがやはり有事立法ということであり、それを私たちは非常に危惧しているということだけ申し述べておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/354
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355・日笠勝之
○日笠勝之君 比嘉公述人にお伺いしたいと思います。
公述の中の最後の方の箇所でございましたが、こういういわゆる周辺事態法が適用されないような外交努力を必要とすると、こうおっしゃいましたね。私たちも抑止と対話という概念から、この周辺事態安全確保法などなどは、経済大国一位、二位のアメリカと日本が同盟を結び、パートナーとしてともに相互協力することがいわゆる抑止になるだろう、こういうことは思っておりますが、しかしながらアジア太平洋諸国を見てもまだまだ五十数年前のあの戦争の暗いイメージというものがあるわけであります。
そういう意味で、抑止の方はこれで一つの効果が出るのではなかろうかと思いますが、外交努力という対話の方ですね、日本国政府、また民間も地方自治体も含めて例えばどういう外交努力をすべきであろうとお考えか、お伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/355
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356・比嘉良彦
○公述人(比嘉良彦君) 外交努力の中身というのは、それはそのときそのときいろいろあると思います。来年七月のサミットといったようなものを沖縄で開催して、そこに世界の主要国の首脳をというふうなこともありますし、それからアジアの一員だということを盛んに言っておられるわけですから、そういう意味で、APECみたいなものとかそういったものを全部呼んでここで会議をするとか、沖縄の現状を見てもらうといったようなことも必要でしょう。
また、各政党なり自治体なり、特に自治体の交流というのは非常に必要だと思いますし、政党におかれましても、それなりの国際平和交流といったようなものを沖縄で開催して、現にそういうことを一緒にやってもらえれば、それは沖縄の現実というものをよく知りますし、むしろ沖縄の人々自体に、沖縄県民に、逆に世界の人々がどういうふうに考えているのかといったような問題も相互交流的に考える機会が出てくるだろう。
この公聴会の意義も、先ほどフェース・ツー・フェースでやればそれは意義があるんだと。勝手に決議文や意見書を提出するだけよりは、こうして顔と顔を見合わせながらやるということは意義があるんだというふうな話もありましたけれども、なるべくじかに交流をするということは必要だと思いますし、また経済の相互依存というものが深まっていけば、それはそれなりにまた大きな外交といいますか交流ということが必要になると思います。
ただ、軍事で抑止するということばかりを考えるというふうな方向へだけ行かないで、なるべく平時のときの平和外交というものを中心にしていく。そして、なるべく軍事を招かないような、有事を招かないような努力というものを、要するに先ほど私が挙げました幾つかの点を、もう繰り返しませんけれども、そういう努力をしていただきたいというふうに思うわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/356
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357・日笠勝之
○日笠勝之君 終わります。ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/357
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358・笠井亮
○笠井亮君 日本共産党の笠井亮です。
本日は、六人の公述人の方々、本当に貴重な御意見をありがとうございました。私どもは、この法案については廃案ということを求めておりますが、今回のガイドラインの関連法案の審議に当たっては、少なくとも、やはりいよいよこれから審議を深めなきゃいけないというときに、戦争と基地、そして米軍への協力の痛み、その意味をいわばだれよりも体験で御存じの沖縄の皆さんの見解を伺うことが不可欠だと思って、こちらに伺ったわけでございます。
私も何度も沖縄に来させていただいておりますが、いつも感じることなんですけれども、改めて、きょう御意見を伺いながら、平和を希求する県民の皆さんの思いの強さを本当に痛感して、頑張らなければいけないと思っているところでございます。限られた時間ですので、端的に伺ってまいりたいと思います。
まず、新垣公述人に伺いたいんですけれども、公述人は米軍用地強制使用の裁判で知事側の弁護団の一員として御活躍されたと伺っておりますけれども、沖縄の皆さんがあの沖縄戦、そして半世紀以上にわたる基地の重圧のもとで、二十一世紀には基地のない平和で豊かな沖縄を目指してこられたと。特に、ソ連がなくなった後にやっと沖縄に基地がなくなる時代が来たというふうに思われたときに、なかなかそうはいかない。そして、そういう中で周辺事態法案が出てきたということで、先ほどは公述人が逆に固定化、強化の道だという形でお触れになりました。
改めましてこの時点で、あの裁判でも言われたことだと思うんですけれども、沖縄の心というのがどういうものかと。そして、それとのかかわりで、このガイドライン法案を県民の皆さんがどのように位置づけていらっしゃるかということで御意見を伺いたい。
それから、新垣参考人にもう一点なんですけれども、今もございましたが、SACOによる沖縄基地の再編強化という流れの中で、那覇軍港の浦添移転の問題あるいは普天間移設にかかわるオスプレーの配備などが周辺事態の準備そのものだというお話もあったと思うのです。ガイドライン法案と一体でまさに基地の近代化、強化が進められているということだと伺ったんですが、周辺事態法がこういう実際の動きの中で発動されて、沖縄が出撃基地化された場合どうなっていくかということについて、もう少し具体的、リアルに、ベトナム戦争とか湾岸戦争の御体験もあると思いますので、沖縄の立場から、どうなるだろうかということについてお話をいただけないか。
この二点、まずお願いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/358
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359・新垣勉
○公述人(新垣勉君) 皆さんもよく御承知のように、沖縄県民の間にはあの沖縄戦の体験というのが非常に根強く残っております。
当時、多くの県民が軍隊に協力をさせられまして、毎日、少年まで含めて基地建設のために動員をされて、一生懸命基地建設に従事した。ところが、ある日突然、米軍に使われたら困るからということで、逆に基地の取り壊しを命ぜられた。そういう非常に矛盾した状況を多くの人が体験をしております。そして、いざ戦争になったときに、日本軍が住民を守ると思ってみんな期待して軍隊と一緒に行動をしようとしたら、むしろ軍事行動の足手まといになるということで、日本軍が住民を守らない、こういう体験をしてきたわけです。
こういう体験の中から、軍事支援というのがどれだけ地域住民の生活と直結をしており、そして住民にどれだけ被害を与え、いざ戦争となったときには、軍隊は国家を守るために行動をして地域住民の生活を守らない、こういう体験をいやが応でも味わわされてきたわけです。ですから、こういう原点というのは非常に大切にすべきだと思います。
こういう体験の上にさらに私たちが戦後味わったのは、あのベトナム戦争でした。多くの人が見聞きしている共通の体験ですけれども、那覇軍港にはたくさんの軍需物資が積まれ、そして当時の一号線には軍隊が優先的に通行をする、こういう状況がありました。そして、県内の最大の補給基地である牧港補給基地にはたくさんの物資が積まれ、戦場から壊れた軍用車両が大量に運び込まれて修理をする、弾薬の取り扱いをする、危険な物質の取り扱いをする、こういうことを実際に見聞きしてきたわけです。こういう体験の中から、やはり周辺事態になったときに米軍に協力をさせられるということがどれほど悲惨な結果を生むのかというのを実感として持っているわけです。
先ほど申し上げましたけれども、この周辺事態法が実際に動いたときにどうなるのかという問題については、きちんと科学的な調査をしたデータを私たちはまだ知りません。そういう意味で、本来国会というのは、周辺事態法が仮に成立したときに、沖縄にいる米軍の実態がこうで、自衛隊がどの程度の支援活動をどこでどのようにするのか、そのときに地域住民にどれだけしわ寄せが来るのか、そして日常の生活の中で米軍優先が確保される法案がどのようにしてさらに引き続いて生まれるのか、この辺のことを突き詰めて議論をした上で県民に提示をしていただかないと、新しい事態ですので、非常に不安を覚えているのが実感です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/359
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360・笠井亮
○笠井亮君 ありがとうございました。
次に、新崎公述人に伺いたいんですが、先ほど国会で沖縄がこの法律のもとでどう動くかということをもっと調査すべきだとおっしゃいましたが、それでなくても県民の皆さんは基地があるがゆえに生活、産業の発展が阻害されるということを体験されてきたと思うんですけれども、いわば基地の重圧下で強制的に不自由な生活を強いられているということだと思います。先ほど比嘉公述人も日常的に基地の支援をさせられているという話をなさっていたと思うんですが、そういう中で各自治体が住民生活を守るために一生懸命頑張っていらっしゃるということがあると思います。
今回の法案によって、特に基地が集中するとともに、地理的にいっても離島県であり、多くの離島を抱える沖縄で、那覇空港とか那覇港が県民生活、産業経済のかなめをなしているということが言えると思うんですが、周辺事態で沖縄米軍基地がフル稼動して、自治体、民間が協力をするということになっていくとどのような影響が出ていくと考えていらっしゃるか。そして、実際に今沖縄の自治体でどのような不安や危惧や意見が出ているかということについてお話しいただけないでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/360
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361・新崎盛暉
○公述人(新崎盛暉君) これでどういうことになるかというのが具体的に私たちの場合にうまいぐあいに目に見えているわけではないわけです。ですから、私たちは、どうしてもそれをさまざまな歴史的な事実の中から探っていくほか仕方がないと思います。そのときに私などが、周辺事態法それ自体よりも、いわゆる新ガイドラインの中身を七八年のときのガイドラインと対比させながら読み、そして周辺事態法を読んだときに想定されることは何かといえば、朝鮮戦争のときの日本あるいはベトナム戦争のときの沖縄が再現するんだなという印象です。
朝鮮戦争のときには、御承知のように日本全土が基地にされて、病院には米軍の傷病兵が入っている、海上保安庁の掃海艇は朝鮮半島まで出動させられて戦死者まで出すという事態がありました。なぜそういうことができたかといえば、日本が連合国軍の占領下にあったからなわけです。ベトナム戦争のときには日本全体はそうではなかった、朝鮮戦争のときとは若干違っていた。しかし、沖縄ではそれと同じ事態が起こった。それは沖縄が事実上米軍政下にあったからです。
例えば、一つの例でいえば、タグボートに基地従業員を乗せてベトナムまで行かされる。当時の全軍労という労働組合はそれを拒否した。組合の方針としては、表立っては拒否したけれども、最近の地元紙の報道などで当時の人たちの聞き書きをもう一度集めたようなものを見てみますと、一本釣りで、生活がかかっているわけですから、ひそかに呼び集められて、組合の表向きの方針としては協力できないけれども、実態的には動員されているという事態がたくさんあったわけです。幸いにしてそこで死者が出たとかそういうことはなかったようですけれども、そういう事態が再現されるだろうと。それが、米軍政下とか連合国軍の占領下でなされたことが、今度は日本の法律によって保障されるというのが今回であろうというふうに私たちは思っています。
そして、野呂田防衛庁長官の言葉でも抽象的な表現をされていますけれども、米軍が動けばどうなるかと。ここに七五%あるわけですから、それから、自衛隊基地というのは米軍基地の面積からいえば三十分の一ですから余り目立ちませんけれども、兵員では全体の三%、つまり沖縄は百分の一ぐらい、一%の存在ですから、結構の自衛隊がいて、この自衛隊の任務が米軍基地を防衛するためだということははっきりしているわけですから、この米軍と自衛隊が連動して動き始めれば、そこらじゅうがある意味では基地になる。それを阻止する手段はもうなくなるというのが各自治体のある意味では直感的恐怖ではないでしょうか。
そのことについて、まだ具体的な、例えば自治体がどういう協力をするかという例示などというのはまだごく抽象的な形で政府なども出したばかりですし、そういうことについての懸念がどこまでのものかというのが十分にまだできているとは言えませんけれども、直感的に言えば、日本占領下の朝鮮戦争、そしてアメリカ軍政下の沖縄におけるベトナム戦争の再現である。違っている要素は、それを日本の法律が保障し、自衛隊という強力な軍隊がそこに加わっていく。したがって、ある意味ではもっと抵抗できない形で戦争協力は推し進められていく懸念がある。現実にそうなるかどうかわかりませんけれども、そういうことが懸念されるということだと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/361
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362・笠井亮
○笠井亮君 ありがとうございました。
高良公述人に伺いたいんですけれども、先ほどガイドライン法案の問題は日本全土に及ぶ問題だということのお話がありましたが、私はとりわけ、先ほどもお話がありましたけれども、国内で唯一の地上戦を体験した沖縄という県民の皆さんの思いが、やっぱり戦争の加害者にも被害者にもなりたくないということであり、それはまた日本国民全体の気持ちでもあると思うんです。その気持ちを体現したのが今の憲法だということで位置づけをして、平和的生存権の問題を含めて大いに大事にしなければならないと思っているんです。
先ほど新垣公述人からも紹介がありましたが、先日、国連のアナン事務総長も参加して、NGOで百カ国以上、一万人が集まったハーグの世界市民平和会議というところで、日本の憲法九条に倣って各国の議会が自国政府に戦争をさせないための決議をすべきだという原則が幾つかの原則の中の第一に掲げられたということも報道されております。とりわけ、今、最近のユーゴの事態を踏まえながら、国際的なそういう流れの中で、先ほどやりとりが若干ありましたが、戦争と基地、米軍への協力の意味を、体験している沖縄の立場から、紛争問題への対応の仕方というか、それについての根本的な考え方というか、基本的な考え方を憲法の立場からお話しいただけないでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/362
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363・高良鉄美
○公述人(高良鉄美君) 沖縄では、米軍基地が集中しているからという声もいろいろあります。米軍基地は、全部を米軍がつくったものではありません。旧日本軍がつくったのが嘉手納基地のもとです。読谷補助飛行場も北飛行場と呼んでいました。あの小さな伊江島に三本の滑走路がありますが、伊江島では非常に激戦区でした。アメリカの有名なジャーナリストもそこで亡くなっておりますけれども、それは日本軍がつくった基地なんです。それをいわゆる占領して改築していったわけです。極東最大と言われる嘉手納基地のもとはそうであるということ。つまり、そこになぜそういう攻撃が始まったかということは、軍事基地の存在というのは周辺事態のときにどうなるのかというものも含めて非常に現実的な問題があるはずなんです。
そして、平和的生存権の問題にちょっと話題を移しますけれども、「平和のうちに生存する権利」というのは憲法に書かれておりますけれども、実はこれは日本の憲法だけにいきなり出てきた問題ではないんです。アメリカの当時のルーズベルト大統領は、一九四一年に四つの自由というのを言いまして、言論の自由、それから宗教的自由、信教の自由、それが二つ目です。それから恐怖からの自由、これが三つ目です。四つ目が欠乏からの自由ということです。この「恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利」というのが日本国憲法の中にありますけれども、このもとは、実はルーズベルト大統領のその四つの自由宣言、さらには大西洋憲章という中であって、日本が独自に勝手に理想だけを述べたものではないということ。
そして、平和的生存権の大きな問題というのは、今まさに、先ほどありましたように、ユーゴの問題も含めて、二十一世紀になったときには別の大きな権利の概念ができるはずであると。十九世紀が自由権、二十世紀が社会保障という関係で社会権、生存権、二十一世紀は平和的生存権と言われております。
そして、本当に平和というものが、先ほどの恐怖と欠乏から免れるのであれば、今の状況というのは確かに戦争が最たるそういった恐怖と欠乏を与えるわけですけれども、その問題ばかりじゃなくて、広く二十一世紀の日本が、環境問題にしてもほかの問題にしても、あるいは人間的な関係の中で恐怖を覚えるもの、あるいはいじめ、そういったものがありますし、社会的な差別もそういった不安、いわゆる恐怖の中に入ってくるでしょうし、欠乏という問題も、各国の教育問題あるいは愛情問題というのもあると思いますけれども、そういった問題も含めて、非常に今後期待されるといいますか、各国の国際的な方向性として出てくる平和的生存権の問題だと思うんです。
それをいかようにして運用していくか、あるいは生かしていくかというのがそれこそ日本の大きな責任だろうと思いますし、それを対外的に向けていくためには、この周辺事態法の中で一体それをどうなくしていくのかという方向に行っているんではないかということです。
周辺事態というのはだれが起こすのか、その問題については議論されていません。ある日突然やってくる、これはもしものことかというと、そういうものでもなかろうと思います。
沖縄では、例えばベトナム戦争の数年前に準備がなされました。灯火管制ということで、沖縄の夜が真っ暗になる、全戸の電気が消されるわけです。これは朝鮮戦争時に日本本土であったことですけれども、この全戸の灯火管制の後、ベトナム攻撃が始まる。つまり攻撃される前の訓練、対処。
それから、日本の朝鮮戦争前の警察予備隊というのがありましたけれども、朝鮮戦争勃発後に予備隊令が出たということですが、それも実はその構想はその前の年からナショナル・ポリス・リザーブということで既につくられています。
つまり、勃発する前に何かつくっているということは、この周辺事態は何か起こる前につくるという問題なのか、起こす前につくるというのか、その辺の問題も私たちは非常に懸念をしているというふうに思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/363
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364・笠井亮
○笠井亮君 ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/364
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365・照屋寛徳
○照屋寛徳君 社会民主党・護憲連合の照屋寛徳でございます。
私は、ガイドライン関連法は憲法違反であり、現行日米安保条約の枠組みをも超えるものであって、廃案にすべきだ、こういう立場でございます。
きょうは六名の公述人の方々には貴重な御意見をいただき、ありがとうございました。また、沖縄地方公聴会開催に御努力された井上委員長にも感謝を申し上げたいと思います。ただ、私は、新崎公述人からもお話がありましたように、沖縄地方公聴会が参議院における法案通過のための通過儀礼であってはならない、こういうふうに思っております。
私は、ガイドライン関連法の向こうに第二の沖縄戦の悲劇を見る思いがいたします。また、ガイドライン関連法の向こうに我が国の安全保障の負担と犠牲を強いられ、平和のうちに生きていく権利を侵害されてきた戦後の沖縄の歴史を見る思いがいたします。
冷戦崩壊後の我が国の安全保障は、軍隊による二国間の軍事同盟ではなくて、軍事力によらない多国間の協調的な安全保障、つまり今私たちにとって最も必要なのは、日米間の防衛協力の強化によるガイドラインではなくて平和のガイドラインをつくり出していくことが大切である、こういうふうに考えるものであります。
そこで、公述人の高良さんにお伺いをいたします。
高良公述人は憲法学者としてたくさんの論文を発表しておられるわけでありますが、今度のガイドライン関連法では、単に自衛隊が米軍の戦闘行動を支援するということだけではなくして、周辺事態法の九条では地方自治体や民間の協力がうたわれておるわけであります。私は、これはいわばかつての国家総動員法に匹敵するような、自衛隊の後方支援活動だけじゃなくして自治体、国民も動員をしていく、こういう内容になっているというふうに考えるわけであります。
そこで、周辺事態法、とりわけ九条と憲法の地方自治や基本的人権との関連でお尋ねをいたしますが、この周辺事態法九条による自治体や民間協力の内容についてはこれまでの国会審議の中で必ずしも明らかになっておりません。政府の方も一応十一項目例示をしたわけでありますが、詳細は不明であります。ただ、空港とか港湾とか病院などが使われることはこれはもう間違いないだろうというふうに思うわけであります。
野呂田防衛庁長官は、これまでの審議の中で、この自治体、民間の協力について、正当な理由があれば要請を拒むことはできる、ただ一般的な義務としては協力するのが当然であって常識である、こういうふうなことも言っているわけです。拒否できる正当な理由の基準すら今政府は明らかにしないわけであります。
そこで、高良公述人、この周辺事態法九条と先ほど申し上げました地方自治の本旨、基本的人権との考えでどういうふうに考えておられるか、御意見をお聞かせください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/365
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366・高良鉄美
○公述人(高良鉄美君) 自治体協力あるいは国以外の者の協力ということで、自治体については当然のことながら憲法の地方自治の問題にかかわってまいります。憲法でも地方自治の本旨というものが一応文言が明示されております。その内容というのは、基本的な部分で二つに分かれておりまして、自治体が独自に自分たちの行政ができるということが一つの柱です。それは国とは別の形態をとり得るということです。それから二つ目は、住民が物事を決めていく。これはもちろん地方に関する問題ですけれども、地方に関する問題については住民が決定できるということがもう一つの柱です。住民自治ということです。
この問題につきまして、実はこの法律案の中には中身が、地方自治の本旨との兼ね合いでの議論が全然ありません。自治体協力がどの程度なのかについて、実は先ほど既に述べましたけれども、基本計画の中にあらわれてくる。基本計画というのは閣議決定である。その詳細については国会が決めるわけではありません。基本計画の変更については承認というのがありますけれども、決めるところは国会とは別のところで決める。
国家総動員法のお話もありました。国家総動員法は昭和十三年に出されて、その中身というのは非常に今の周辺事態法と内容というよりは形式がよく似ております。重要なところは勅令決定なんです。重要なところは勅令に委任しているということ、それが国家総動員法の内容でした。それに基づいて多くの動員法といいますか収用法、そういったものができてきたわけです。非常に形態が似ているということ。さらには、その三年後に国家総動員法はさらに改正をされます。今後そういった問題もあるかどうかについては定かではありませんけれども、そういった側面もあるかと思います。
今の自衛隊だけの協力ではなくて、自治体や民間の協力が必要となる事態というのは一体何なのだろうかということを想定すると、旧ガイドラインであれほど自衛隊と米軍の協力ということと、それから現自衛隊法の中での緊急事態というものが対応するようになっている中で、それでも民間や自治体の協力が必要なものという周辺事態は一体どういう想定なんだろうというと、私は、戦争宣言のない、つまり宣戦布告のない戦争状況ではないのか。はっきりそう言った方がわかりやすいのではないか。
そして、それはだれが決めているのかということについては、突然起こるんではなくて、場合によっては、昨今の米軍の戦略の中にある、アメリカが何かの問題で突然これまでの交渉が行き詰まったときにある決定をした場合に、そこで始まった事態が周辺事態になるんではないかということ、私はそういうふうに考えております。
したがって、憲法との問題でいいますと、戦争協力という問題、宣戦布告なき戦争の協力という問題を政府の中でやっていく、政府単位でやっていく、あるいは自衛隊単位でやっていく、自治体単位でやっていく、国民単位でやっていくという問題が大きな根本的なこの周辺事態法の抱える枠といいますか舞台といいますか、そういうものではないかと懸念しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/366
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367・照屋寛徳
○照屋寛徳君 新崎公述人にお伺いをいたします。
先ほど野呂田防衛庁長官の五月十一日の委員会における発言にお触れになりました。周辺事態になったときに米軍基地が集中する沖縄が最も深刻かつ重大な影響を受ける。私はこれは、野呂田長官はむしろ正直に言ってくれたなと、このガイドライン関連法の本質を言い当てた発言だというふうに思っております。
だから、私はその後の質問で、発言を撤回してはいかぬ、簡単に謝るな、舌足らずと言うんだけれども、そういうのは舌足らずと言うんじゃなくして、舌の根も乾かないうちにまた沖縄県民をだますようなものだ、こういうことを言いました。
一方で、今世界最強のアメリカ軍が守っているから、アメリカ軍の基地があるから沖縄が一番安全なんだ、こういうふうに言う人もおります。私はそうではないと。詳細を述べる時間はありませんけれども、私は、沖縄戦のときに日本軍が駐屯をしていた島がことごとく直接攻撃を受けて、駐屯をしていなかった島は攻撃を受けていない、このことを事実かどうか確かめたら、防衛庁はそのとおりだと、こう言ったんですね。
さて、新崎公述人は沖縄の近現代史をずっと研究してこられて、国策や国益と沖縄の関係、それと、具体的には米軍用地収用特措法が再改悪をされようとしております。そこら辺について、公述人はどういうふうに考えておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/367
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368・新崎盛暉
○公述人(新崎盛暉君) 米軍用地特措法の再改定の問題については、既に先ほど有事立法との関係で私は説明してありますけれども、国策と沖縄の利益というのが相反するものであると私は思いません。多分一致するのだろうと思います。
ただ、口実として、例えば住民の利益に反するようなことが国策という名目で行われることがしばしばある、これが問題なんだというふうにしか、私に言わせればそういうことだと思っています。
それで、米軍用地特措法とかそういう問題でいいますと、こういうことです。前回の米軍用地特措法の改定のときによく言われたことは、この米軍用地特措法というのは沖縄だけに適用される法律ではない、全国に適用される法律なんだという説明がありました。それはそのとおりです、法律の性格からいって。かつては、沖縄における公用地等の暫定使用に関する法律などという沖縄だけを名指しした法律がありましたけれども、それとは確かに違います。しかし、この米軍用地特措法によって、継続的に強制使用とする対象土地は沖縄県だけにしかなければ、これは沖縄県に対して向けられた法律だと言わざるを得ないでしょう。
さて、今回の米軍用地特措法の改定ですけれども、これは前回と非常に大きな違いが一点あります。それはどこかというと、前回までは、これまで軍用地として使っていた米軍用地を継続使用する使用の仕方を簡便化するということでした。今回は新規接収もやりやすくなるということです。総理大臣の意思一つで、軍用地であれば、米軍用地であれば極めて短期間に接収できるということです。これはまさに全国に適用される法律でしょう。
しかし、ここでもまた必要とされて具体的に想定されるのは沖縄だけです。普天間代替施設、那覇軍港代替施設、そういうものがどうにかなったときに、大方の人は賛成した、一部に反対する人がいた、こういうときにまず適用されるのがこの法律だと思います。
こういうことで、つまり、形式的には全国平等である、しかし現実的にはそういう構造的な差別を持っている、これが私の認識です。
私は、日米安保体制は構造的沖縄差別であるというふうに繰り返していますけれども、だれも政府は沖縄を差別しようと思って差別していると言っているわけではありません。心情的に沖縄に押しつけようとしているわけでもありません。しかし、そうする方が便利だから、容易だからやろうとしているなどということは、例えば県知事を訴えた職務執行命令訴訟の準備書面などの中にも明確に書かれています。その方が安上がりだ、簡便だ、沖縄の基地を県外に持っていったら維持費以外に新設経費がかかる、沖縄だけだったら多少振興策をつけても安上がりだ、こういうことが既に政府側の準備書面の中にあります。問題はこういうところだと思います。
つまり、国会は、沖縄が日本に返還されるときに、沖縄の基地は過重負担であるということを明確に認めました。削減しなければいけないということを政府の義務にしました。それから二十七年、つまり米軍支配と同じ年月がたつのにまだそれが実施されないで、そして今回SACOで何かをやると言っていますが、SACOがやろうとしていることは面積を二〇%だけ減らすということです。兵隊も減りません。基地・施設も主要なものはすべて新しくなります。ここが問題だということです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/368
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369・照屋寛徳
○照屋寛徳君 小渡公述人にお聞きをいたします。端的にお答えください。
船舶検査の件が修正案ではなくなりました。小渡さんは、船舶検査の際の警告射撃、これは憲法上許されると思っていますか許されないと思っていますか。結論だけ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/369
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370・小渡亨
○公述人(小渡亨君) 現在の憲法九条では許されません。
だから、先ほど言いましたように、憲法改正も視野に入れなければならないと言っているわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/370
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371・照屋寛徳
○照屋寛徳君 終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/371
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372・田村秀昭
○田村秀昭君 自由党の田村秀昭でございます。
私は、本三法案は、周辺事態を起こさないための、抑止のための法律であるというふうに認識しております。
時間が少ないので、今、在日米軍司令官は横田におられ、在日米海軍司令官は横須賀におられます。今度三期目を迎えた横須賀の市長さんが、沢田秀男さんとおっしゃいますが、この方が次のように述べております。
地方自治体が自分の哲学・ポリシーをきちんと持たないと駄目だと思うんです。単に財政的な面だけが自立をしても、勿論それだけでも大変なことですが、本当の意味での地方分権にはならない。自分の足で立ち、自分の頭で考え、自分の心でものを感じるような仕組みを作らなければならないように思います。
横須賀は広大な米軍基地があります。いろいろなマイナスの面もありますが、プラスに変える発想が必要であります。
横須賀は米海軍基地を抱えているということで、一地方都市を超えた重要な役割を果たしているわけです。というのは、日本およびアジア・太平洋地域の平和と安全を確保するのに横須賀の基地が役立っているわけです。だから、このアジア・太平洋地域を守る要として横須賀が機能しているんだという認識を私たちはいつも持っているんです。
そして、ただそういう認識を持ってさえいればいいのではなく、日米安全保障条約は単なる仕組みにすぎない。本当に日本が大変なことになった時に米国が日本を守るかどうか、どの程度守ってくれるかは運用の問題です。つまり、アメリカ側の気持ちの問題なんですね。これが大事なんです。
安保条約があるから日本は大丈夫ということではなくて、いざという時に安保条約をうまく機能させるために絶えず日米間の信頼関係の醸成が必要です。
米軍基地は横須賀にありますから、アメリカの軍人たちは横須賀を通して日本全体の印象を持ちます。だから、彼らに横須賀でいい印象を持ってもらえるよう努力をしています。それが日本全体のいい印象に繋がるわけです。横須賀勤務を通じて、親日家になった人が全米に何十万人もいるということが、草の根で日米関係を支えているんです。いつだったか、ダラス空港で私に話しかけてきた青年がいました。私が横須賀市長だと知って、横須賀勤務の思い出を目を輝かせてしゃべっていたのは忘れられません。
横須賀は単なる「基地の町」ではなく、日米親善の要でもあるのです。横須賀は世界平和に貢献している都市という誇りを私は持っています。
こういうふうに述べておられます。
〔団長退席、若林正俊君着席〕
これは私が言っているのじゃなくて、横須賀の市長さんがおっしゃっている。
それで、比嘉先生と伊佐先生に横須賀市長さんのお考えについてどのようにお考えになっておられるか、お尋ねさせていただきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/372
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373・比嘉良彦
○公述人(比嘉良彦君) それは、横須賀市長さんがそういうお考えをされるということはそれはもう御自由でしょうけれども、ただ私としては、そういう個々の軍人の個人的な感情というのも、それは市長さんの立場からは大変でしょうけれども、そうであれば、逆に米軍人が基地のある町の人々にどういう印象を与えるかという、例えば沖縄なら沖縄の県民に対してどういうふうな感情を与えているかということももっと私は大切だろうというふうに思うんです。
防衛というのは、軍隊だけで守れるわけじゃありませんので、最終的には基地そのものの維持も、やっぱり周囲を取り巻いている県民あるいは国民がそれに対する感情を持たなければ基地の維持そのものがいけなくなりそうだというのは、この間の九五年のあの事件のときに一番よくわかったわけでして、それでSACOもできて、日本政府もアメリカ政府も躍起になったわけですから。
そういうことから考えますと、悪い感情を与えて両方がいがみ合うというふうなことはもちろんそれはいい結果を生みませんけれども、しかし、個々の軍人の一人一人の感情というのも、それはよけりゃいいで結構なんですけれども、軍人たちがそういう感情を持つのも、駐留しているそのところで事件や事故を起こさない、あるいは横須賀なら横須賀市民に対してあの人たちが悪い感情を与えないようなことをやれば、それはそういうふうなこともできるでしょうけれども、例えば沖縄のような形で米軍人がああいうことをやれば、沖縄の人たちが幾ら友好関係を持とうにも、そういうふうな意味での友好関係は持てなくなるというふうなこともありますので、市民、県民の側からと、それから軍人なら軍人たちの、そういう個人のレベルでいえば両方の立場というのは非常に重要だと思います。
〔団長代理若林正俊君退席、団長着席〕
ただしかし、防衛の関係とか外交の関係というのは、そういう個々の軍人の問題ではないような気がします。もっと国家の防衛政策なりなんなりが極めて、もっと大きなウエートを占めるんじゃないかというふうに考えています。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/373
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374・伊佐真一郎
○公述人(伊佐真一郎君) 要するに、沢田市長さんのただいまの考え方に対する私の感想であれば、今、米軍人・軍属、施設はすべてコンピューターがセットされておりまして、毎朝そこに入ってくる、いわゆるインターネットを通じたり、あるいは個々の、LANと言いますけれども、それに入ってくるメッセージは毎日まず朝一来たらそれを見るわけです。
そうすると、最近、前からそういうことはあったと思うんですけれども、特に最近コンピューター化されまして、それをのぞきますと、いわゆる米軍側のボランティアの募集が結構あるわけです。それを詳細に見てみますと、いわゆる沖縄の施設、養老院とか孤児院とか、肢体不自由者の方々のそういった収容施設に対していわゆるボランティアというものを非常に募っている。これはまさにおっしゃるように、日米友好という関係、あるいは彼らがよき隣人でありたいという一つの大きなあらわれだと思うんです。
それを、特に沖縄では不幸な少女暴行事件の後から非常にぎくしゃくしたものがあるということで、なかなかそれが結実していないということは非常に残念に思います。確かにああいった悲惨な事故というのは起こってはならないんです。ただ、あの事件の後、六カ月後に同じような事件、しかしもっとそれよりも悪質な事件が日本人によって引き起こされました。これは同じ北部の方で、暴行殺人でした。その事件と少女暴行事件との取り扱い方の余りの格差に、本当に我々沖縄県民というのは国際人だろうかというふうな疑念を私は抱きました。
事件、事故というのはそれはどこでも起こることなんです。大切なことは、もう今は治外法権の世の中じゃないんですから、起こった事件、事故に対して日本の司法権が及ぶか及ばないかの問題なんです。県民投票でも示されました日米地位協定の見直しというのは、起訴前に米軍人・軍属を拘束できるかできないかの問題で、司法権は全く日本側にあるわけです。切り捨て御免の世の中じゃないわけで、起こった事件に対しては憤りを持って、もちろん私も八万五千の大集会に参加しました、これは怒りを持って抗議すべきであって、ただそれが米軍人だからやる、日本人だからやらないというのでは、国際人を標榜する資格はないと思います。
沢田市長さんの提言はまことに私は賛同します。沖縄側も米軍側からそういうシグナルというのは送られているわけです。いかんせん、沖縄側がそれを本当に真摯に受けとめて、過去は過去、これからはこういう友好親善を築いていこうという姿勢が私はもうちょっと欲しいなと、こういうふうに思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/374
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375・山崎力
○山崎力君 参議院の会の山崎でございます。
きょうは六人の公述人の皆様、本当に御苦労さまでございます。時間の関係もありますので、ちょっとてきぱきとやらせていただきます。御無礼はお許し願います。
私は、今回のこのガイドライン関連法案の審議を通じて個人的な印象をまず申し上げますと、やはり有事あるいは安全保障でもいいし、非常事態でもいいんですが、国内法の整備が実質上全くなされていないということでの法体系上の不備がますます明らかになってきたということが言えると思います。
端的な表現を言えば、日本有事の際に地方自治体が自衛隊に対してどのような協力をすべきかということがはっきりしない以上、なかなか米軍に対して地方自治体がどのような協力をすべきかということが、そこが決まっていればおのずとできてくるところが全然できていないな、こういうところを感じました。
そして、いろいろ私、個人の意見は別として感じていることは、この問題というのはつまるところ日米安保をどう評価するかと。特に六条事態の米軍の我が国の基地使用、しかも対外使用に対してどのような態度をとるのかという、もう約三十年、四十年前の問題が改めて出てきている。
ところが、それに対する国民、皆様方沖縄の方々には心外かもしれませんが、国全体としての結論は政治の場では出ているねというのが私の考え方です。これはそれだけで議論したわけじゃないということはあるかもしれませんが。
そこでお伺いしたいんですが、その政治的結論が出ているというのは、どういうことかといいますと、現時点で国会で大きな勢力を占めている政党のうち、日米安保に明確に反対をなさっているのは共産党一つでございます。それから、非武装中立ということを掲げている政党は、新社会党がこの間の選挙で議席をなくしました。個人は別とすればただいまゼロでございます。
そういった中で、沖縄の皆様方の、特に感じたのですけれども、先ほどの新垣公述人、高良公述人、新崎公述人も入るかと思うんですが、その辺のギャップというものが、冷戦以降といいながらも、まさに冷戦以降、具体的に言えば社民党の村山内閣が誕生して以降大きく変わってしまったということがあるのですが、お三方にその辺の御感想を伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/375
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376・新垣勉
○公述人(新垣勉君) 私は、安保の持っている意味は冷戦終結後大きく変わったと理解をしております。沖縄の現実が示すように、安保というのは今では地域住民の生活を破壊し、権利を侵害する最大の要因となっているというふうに考えます。
先ほど横須賀市長の紹介がありましたけれども、日米間の友好を進めるという上ではそのとおりだと思います。そうであれば、紛争をなくするためには日米間だけではなくて日本と韓国、北朝鮮、中国、こことの間でも日米間と同じような国民の交流をするのが紛争を防止する最大の抑止力だと思います。
そういう意味で、私は弁護士ですので日常的に紛争を解決する仕事に従事をしています。紛争を解決する最大の眼目は、お互いに共有する価値観をどれだけ共通に持ち、共通に広げるかであります。そういう意味では、人間の安全保障という考え方というのは非常に今では重要である、そういう意味では安保はもはや時代おくれだというふうに認識をしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/376
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377・山崎力
○山崎力君 あとのお二人にお伺いしたいんですが、私がお伺いしたのは、今の安保べき論ではなくて、そういった本土での政治情勢の変化といいますか、現状でもいいんですけれども、そういったことにどのような御感想をお持ちか、こういうことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/377
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378・新垣勉
○公述人(新垣勉君) 一言でいいますと、本土の皆さんに、あるいは本土で多数を占める国会議員の皆さんに沖縄の実態、現実をもっとよく見ていただきたいという一語に尽きます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/378
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379・高良鉄美
○公述人(高良鉄美君) 安保が見えるというところが沖縄の一つの言葉になっていますけれども、日米安保というものはこの島で支えられているという問題もあろうかと思いますけれども、政治的に確かにそういう比率あるいは配分といいますか、国会の勢力がそういうふうになっているということは現実でありましょう。しかし、それがどういうふうな形で安保容認なのか、あるいは非武装中立がゼロなのかということにつきましては、それまでのいろんな問題、つまり最初から既成事実として安保があるのかあるいはあったのかという問題と大きなかかわりがあって、六〇年の安保の容認と現在の安保の容認という問題の中にはつながりがどうあるのでしょうかという問題があります。
簡単に言いますと、国民の間の議論の安保ではなかったのではないのかということが、今の政党の中での安保容認というのはありますけれども、無党派というのが今の国民の主流です。その人たちの考え方はいかがなんでしょうかということで、国会の勢力だけでの問題ではなかろうと思いますし、それから安保偏重という問題ももう一つ考えなければならないことではないかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/379
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380・新崎盛暉
○公述人(新崎盛暉君) 私に言わせれば、まさにその状態こそ日米安保体制が構造的沖縄差別であることを表現していると思っています。
例えば、一九五二年に旧安保条約が成立してからいわゆる現在の新安保条約に改定されるまでの間に、日本本土の米軍基地は四分の一に減りました。沖縄の基地は二倍にふえました。なぜかといえば、日本にいる一切の地上戦闘部隊は日本から撤退するという約束のもとに、日本でない沖縄に押しつけられたからです。そして、復帰の前後、日本本土の基地は三分の一に減りました。沖縄の基地はほとんど減りませんでした。それが今の状態を生み出しています。
したがって、先ほど言われましたけれども、安保条約第六条に規定するように、安保というのは米軍基地と共存することだということになっているわけです。しかし、共存させられているのは沖縄だけです。もちろん沖縄だけではありません、三沢もあり横須賀もあり岩国もあり佐世保もありますけれども、非常に点としての存在になってしまいました。そのことがまさにそういう本土と沖縄のギャップというものを強めてきたわけだし、復帰のときの国会決議を無視して沖縄の基地は減らさずに本土の基地を減らしたのも、まさに安保を見えなくするための政策であったと私は認識しています。
それから、国民世論ということでいいますと、国民の大方は世論調査の上などでも安保を支持しているというふうによく言われます。しかし、国民世論というのも大きく変化することがあります。きちんとごらんになればわかりますけれども、例えば九五年秋に沖縄でああいう事件が起こったときに、あの前後に行われた日本経済新聞の世論調査あるいは毎日新聞の世論調査、これを挟んで行われたのはこの二つですけれども、の中では明らかに安保に対する評価は大きく変動しています。
そういうことをこそ私たちはきちんと見なければいけないと私は思っています。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/380
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381・島袋宗康
○島袋宗康君 二院クラブ・自由連合の島袋宗康でございます。
きょうは、六名の方々に沖縄での公聴会、公述人として意見を述べていただきまして、本当にありがとうございました。
ちょうど十日から始まったこのガイドラインの問題でありますけれども、二日目の十一日に私はこういったことを質問いたしました。要するに、戦後、朝鮮戦争あるいはベトナム戦争そして湾岸戦争というような、戦争のたびごとに沖縄の米軍基地が出撃拠点となっている。こういった地理的あるいは米軍が集中している沖縄が、この周辺事態法が成立すると一番大きな影響を受けるんじゃないか、それを野呂田防衛庁長官にお尋ねしたわけです。私の質問に答えて、やや近いような、同様であるといったような感じのことを述べております。これは私も本当にびっくりしたんですけれども、明くる日の地元紙の二紙には一面トップでこのことが報じられております。
したがって、やっぱり沖縄県出身の私としては、どうしてもそういった状況の中では周辺事態法というものが大きく沖縄に影響をするだろうというふうなことを常々考えておりますけれども、公述人の皆さん方、お一人ずつひとつ御意見をお聞かせください。一言でいいです、どうぞ。影響を受けるかどうかです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/381
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382・小渡亨
○公述人(小渡亨君) ちょっと趣旨がよくわからなかったんですが、朝鮮戦争、ベトナム戦争、そして湾岸戦争で沖縄県が出撃地になったということであるんですが、では沖縄県民が具体的にどのようなデメリットをこうむったか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/382
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383・島袋宗康
○島袋宗康君 受けるかどうかということを短目にお願いします、全員ですから。受けるか受けないかを聞いているんです。受けないなら受けないでいいんです。簡潔に。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/383
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384・小渡亨
○公述人(小渡亨君) いや、ちょっと趣旨がよくわからないんですが、何をですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/384
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385・島袋宗康
○島袋宗康君 それでは、次の比嘉公述人。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/385
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386・比嘉良彦
○公述人(比嘉良彦君) 法案が通ると影響を受けるかということですね。
これは、先生がおっしゃるように、湾岸戦争、ベトナム戦争、こういう例があれば、こういうふうな影響があったということであれば、法案が通らなくても、米軍基地がこれだけ集中していれば、私はそれ自体がもう既に沖縄は非常に影響を受けると思います。ただ、法案が通るからそうなるのかというのは、法律ができたら犯罪ができるか、あるいは犯罪が起こりそうだから法律をつくるのかというふうな話にもなって、そこのところは、法案が通ったら必ずすぐ影響を受けるというふうに考えていいのかなというのはちょっと私もよくわかりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/386
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387・伊佐真一郎
○公述人(伊佐真一郎君) この法案があろうがなかろうが、有事というのはやってくるときにはやってくるわけです。ただ、ここで問題なのは、その有事に対処してどうするかということを国会で今審議なされているわけです。だから、島袋先生がおっしゃることは全く逆説的な考え方に私はなると思いますので、そうじゃなくして、その有事があるなし、あるからどう思うかというのではなくして、その有事に対処するにはどうするかということを議論すべきだと私は思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/387
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388・新垣勉
○公述人(新垣勉君) 島袋議員の問題は非常に重要な問題だと思います。この法案の中身をよく理解すれば、その影響があることは歴然としています。
といいますのは、この法案は、自衛隊を初めとして政府機関が総力を挙げて米軍を支援する新たな行為をとるところに大きな特徴があるわけです。それからもう一つは、民間に対して政府の権力や経済力を使って協力を要請するところに最大の特徴があるわけです。ここに法案ができる前と後の大きな差異があります。
ですから、米軍が集中する、最も在日米軍基地で中心的な役割を果たす沖縄が影響を受けるのは、まさに野呂田防衛庁長官がおっしゃるとおり、そのものだと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/388
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389・高良鉄美
○公述人(高良鉄美君) 米軍に対する後方支援という言葉がありますから、米軍に対するという、米軍ですから沖縄に集中しているということであるわけです。私は、大きな影響が出ると思いますし、自治体、民間は、その際にさらに後方支援のお手伝いをするということですから、大きな影響があります。湾岸戦争のときにはそこまでの法律というのはありませんから、それでもここでは大変な騒ぎでした。あるいは恐怖感があったということです。
私は、むしろ逆に、国会議員の先生方が沖縄は影響を一番受けないとはっきり言えるかどうかということを聞きたいと思います、今聞くべきことではありませんが。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/389
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390・新崎盛暉
○公述人(新崎盛暉君) これはもう先ほどから私は答え尽くしていると思いますけれども、この法律ができることによってより受けやすくなることは間違いないわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/390
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391・島袋宗康
○島袋宗康君 新崎公述人にお伺いいたします。
今資料を配られましたけれども、この韓国市民団体の声明といったふうなものを見て、韓国の反応に非常に驚いているんですけれども、我が国は隣でありますけれども、そのことがなかなか伝わってこない。韓国のそういった事情をもう少し詳細に御説明いただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/391
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392・新崎盛暉
○公述人(新崎盛暉君) この文書を読んでいただければ彼らの危機感というのはよくおわかりいただけると思います。
先ほど二ページ目をちょっと読みかけたんですけれども、時間切れで読んでおいてくださいということにしましたが、そこのところをもう一度見てください。
このガイドライン法案の採択が日本の周辺地域に住む人々に非常に衝撃的だということを彼らは強調しています。そして、その理由を、
日本軍国主義と戦争被害の悪夢を生々しく記憶しており、特に戦争の脅威を抱いている朝鮮半島の国民にこれは恐怖のニュースである。
とまで言っています。そして、
特に日本軍「慰安婦」にされた女性たちの苦痛を徹底して無視したまま、戦後処理補償問題も解決していない日本が、再び戦争体制を確立するだけでなく、北朝鮮のロケット発射をきっかけに日米全域ミサイル防衛構想共同研究計画を立て、偵察衛星導入を急ぎ、軍事大国化の道を再構築することは、過去アジアを踏みにじった侵略者である日本の姿を再現するものであり、これは断固として見過ごすことはできない。
と言っています。これは韓国の国民です。そして、次にこういうことを言っています。
日米同盟体制と日本のこのような軍事大国化の企ては、北朝鮮の強行体制を煽り、中国の再武装を刺激し、いつでも朝鮮半島に戦争を引き起こすことができ、東北アジア全般に軍備競争を促すという点から絶対に否定されなければならない。日本の軍事大国化の企ては冷戦時代の緊張が続く朝鮮半島や紛争潜在地域、台湾海峡を取り囲む東北アジア地域と全世界に、新たな戦争の脅威と緊張を及ぼすであろう。これは築かれつつある南北間の和解、協力の気流を塞ぎ止め、朝鮮半島の平和と統一に対する希望を遠のかせてしまうことは明らかだ。
と彼らは指摘しているわけです。
私は、この彼らの、つまり北朝鮮と軍事的に対峙している度合いの極めて強い彼らがこういうことを言っているということをぜひ認識していただきたいというためにこの資料を配っております。
そして、彼らは何を要求しているのか。三ページ目の真ん中のところに要求事項が幾つか書いてありますが、その最後にこう書いてあります。
日本政府は北朝鮮と国交正常化を図り、アメリカは北朝鮮と平和条約を採択し、戦争準備の代わりに朝鮮半島の緊張を緩和し、アジアの平和を定着させる平和政策に転換せよ。
これは、先ほども言いましたけれども、沖縄でいえば沖縄県婦人連合会のような職能団体とか宗教団体とかを含む韓国の普通の市民の全体的な組織が、今、この三月、四月という段階で非常に危機感を抱き、自分たちが日本語にした文章をこういう形で送ってきているということです。そのことを私たちはきちんと理解しなきゃいけない。韓国の民衆が何を考えているかも無視して、朝鮮半島の危機だとか北朝鮮はどうとかと言うことはできないと思います。北朝鮮と向かい合っている一番最前線にいるのは彼らです。私はこのことをぜひ訴えたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/392
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393・島袋宗康
○島袋宗康君 最後に、このガイドラインや有事法制の確立、それはいいんです。アジア諸国との対話、そういったものが非常に今必要ではないかというふうに考えておりますけれども、何か御意見がありましたら、高良公述人。アジアとの対話あるいは平和外交ですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/393
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394・高良鉄美
○公述人(高良鉄美君) アジア諸国という問題につきましては、アジア会議でかつてこういうことが言われました。現在は日米安保偏重という問題がありますし、アメリカの外交政策に関してアジアの国々では強硬過ぎないかといういろんな懸念があります。アメリカ的な政治志向の中でアジアのことが進んでいく問題ということで非常に懸念を示しておりますが、そういったときにかつてこういうことがありました。
私は、本当に平和の外交の問題を真剣に日本政府がとらえていくべきが基本だと思いますけれども、外国の軍隊をその国の領土内に駐留させている国は独立していない、さもなければ、その国の国民の本来の意思でできるはずの法律が別の国の圧力や政治的な意向によって形式的にその国の議会を通って法律ができる国は独立していない、そういうことがありました。
やはり、日本のとるべき姿勢というものをもっとこの平和外交という側面あるいは文化外交、あるいはアジアの中での日本の文化的な共通性の問題、そういった点での対話というのが非常に必要なことだろうと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/394
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395・井上吉夫
○団長(井上吉夫君) 以上で公述人に対する質疑は終了いたしました。
この際、公述人の方々に一言御礼を申し上げます。
皆様には、長時間にわたり有益な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。拝聴いたしました御意見は本委員会の審査に十分反映してまいりたいと存じます。委員会を代表いたしまして、厚く御礼を申し上げます。
以上をもちまして参議院日米防衛協力のための指針に関する特別委員会沖縄地方公聴会を閉会いたします。
〔午後四時十一分閉会〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514963X00919990520/395
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