1. 会議録本文
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000・会議録情報
平成十一年三月五日(金曜日)
午前十時一分開議
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○議事日程 第五号
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平成十一年三月五日
午前十時 本会議
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第一 行政機関の保有する情報の公開に関する
法律案及び行政機関の保有する情報の公開に
関する法律の施行に伴う関係法律の整備等に
関する法律案(趣旨説明)
第二 平成十一年度における公債の発行の特例
に関する法律案、経済社会の変化等に対応し
て早急に講ずべき所得税及び法人税の負担軽
減措置に関する法律案、租税特別措置法及び
阪神・淡路大震災の被災者等に係る国税関係
法律の臨時特例に関する法律の一部を改正す
る法律案、所得税法の一部を改正する法律案
(参第一〇号)及び児童手当法及び所得税法
の一部を改正する法律案(参第一一号)(趣
旨説明)
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○本日の会議に付した案件
議事日程のとおり
─────・─────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114515254X00519990305/0
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001・斎藤十朗
○議長(斎藤十朗君) これより会議を開きます。
日程第一 行政機関の保有する情報の公開に関する法律案及び行政機関の保有する情報の公開に関する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案(趣旨説明)
両案について提出者の趣旨説明を求めます。国務大臣太田総務庁長官。
〔国務大臣太田誠一君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114515254X00519990305/1
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002・太田誠一
○国務大臣(太田誠一君) 行政機関の保有する情報の公開に関する法律案について、その趣旨を御説明申し上げます。
我が国においては、情報公開法制を確立することが国政上の重要課題となっていたところであります。
このため、行政改革委員会において、行政機関の保有する情報を公開するための法律の制定等に関する事項について、二年間にわたり、専門的かつ広範な調査審議を重ねていただき、その結果、平成八年十二月に、内閣総理大臣に対し、情報公開法制の確立に関する意見を提出されたところであります。これを受けて、政府は、同意見に沿って、このたび行政機関の保有する情報の公開に関する法律案を取りまとめ、御提案することとなったものであります。
次に、法律案の内容についてその概要を御説明いたします。
この法律案は、国民主権の理念にのっとり、行政文書の開示を請求することができる権利につき定めること等により、行政機関の保有する情報の一層の公開を図り、もって政府の有するその諸活動を国民に説明する責務が全うされるようにするとともに、国民の的確な理解と批判のもとにある公正で民主的な行政の推進に資することを目的とするものであります。
この法律案の要点は、第一に、何人も、国の行政機関の長に対し、行政文書の開示を請求することができるものとするとともに、開示請求があったときは、行政機関の長は、不開示情報が記録されている場合を除き、行政文書を開示しなければならないこととするものであります。不開示情報については、個人に関する情報、法人等に関する情報、国の安全等に関する情報、公共の安全と秩序の維持に関する情報、審議、検討等に関する情報、行政機関等の事務または事業に関する情報の六つの類型に分けるとともに、各類型ごとに、その範囲を明確かつ合理的に定めております。
第二に、行政機関の長が行った開示決定等について不服申し立てがあった場合に、行政機関の長の諮問に応じ不服申し立てについて調査審議する機関として、総理府に情報公開審査会を置くこととするものであります。これは、行政機関が保有する行政文書を開示するかどうかの判断を当事者である行政機関の長の自己評価のみに任せるのではなく、第三者的立場からの評価を踏まえた判断を加味することによって、より客観的で合理的な解決を図ろうとするものであり、このため、情報公開審査会には、行政文書の提示を求める権限等調査審議のために必要な権限を付与することとしております。
以上が行政機関の保有する情報の公開に関する法律案の趣旨でございます。
引き続きまして、行政機関の保有する情報の公開に関する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案について、その趣旨を御説明申し上げます。
この法律案は、行政機関の保有する情報の公開に関する法律が施行されるのに伴いまして、関係法律二十四件について、必要な規定の整備等を行おうとするものであります。
次に、法律案の内容について、その概要を御説明いたします。
第一に、会計検査院長の諮問に応じ不服申し立てについて調査審議するため、会計検査院に、会計検査院情報公開審査会を置くこととし、その組織、委員等について所要の規定を整備したことであります。
第二に、情報公開法または情報公開条例の規定により行政機関の長または地方公共団体の機関が著作物等を公衆に提供し、または提示する場合におけるその著作者等の権利の取り扱いについて、所要の規定の整備等をしたことであります。
第三に、登記簿、特許原簿、訴訟に関する書類等、謄本もしくは抄本の交付または閲覧について独自の手続が定められているものについて、情報公開法の規定の適用を除外することとしたことであります。
第四に、その他関係規定の所要の整備を行うこととしたことであります。
以上が行政機関の保有する情報の公開に関する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案の趣旨でございます。
なお、行政機関の保有する情報の公開に関する法律案及び行政機関の保有する情報の公開に関する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案は、衆議院において一部修正されておりますが、その概要は次のとおりであります。
まず、行政機関の保有する情報の公開に関する法律案につきましては、第一に、開示請求に係る手数料または開示の実施に係る手数料の額を定めるに当たっては、できる限り利用しやすい額とするよう配慮しなければならないものとすること。第二に、情報公開訴訟の土地管轄について、原告住所地を管轄する高等裁判所の所在地の地方裁判所にも、訴訟を提起することができるものとすること、また、これとあわせて、複数の裁判所に同一または同種もしくは類似の情報公開訴訟が提起された場合には、裁判所の判断で移送することができるようにすること。第三に、政府は、特殊法人の保有する情報の公開に関し、この法律の公布後二年を目途として、法制上の措置を講ずるものとすること。第四に、政府は、この法律の施行後四年を目途として、この法律の施行の状況について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとすることであります。
次に、行政機関の保有する情報の公開に関する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案につきましては、行政機関の保有する情報の公開に関する法律案の修正に伴い必要な規定を整理するものとすることであります。
以上でございます。(拍手)
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114515254X00519990305/2
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003・斎藤十朗
○議長(斎藤十朗君) ただいまの趣旨説明に対し、質疑の通告がございます。発言を許します。江田五月君。
〔江田五月君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114515254X00519990305/3
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004・江田五月
○江田五月君 私は、民主党・新緑風会を代表して、ただいま議題となりました二法案、いわゆる情報公開法案につき、質問します。
国にも法律で情報公開制度をつくろう、これは我が国の長年の課題であり、多くの国民が長い間待ち望んできました。アメリカにおくれること三十年余り、遅きに失したとはいえ、情報公開法がやっと見えてきました。我が国もようやく情報公開の先輩である欧米諸国や韓国の背中が見えるところまで来ました。長くその実現のために心を砕いてきた者の一人として、私も感無量です。
民主主義の制度のもとでは、行政は国民の信頼に基づかないと成り立ちません。情報公開は、官僚の暴走を抑え、行政への信頼を確保するために必須の制度です。まさにアメリカのラルフ・ネーダー氏が喝破したとおり、情報は民主主義の通貨なのです。
我が国で最初に情報公開法案が国会に提出されたのは、今から約二十年前、一九八〇年のことです。以来、合計十二本の情報公開法案が議員立法として提出されましたが、いずれもほとんど審議もされず廃案。営々とした立法努力の積み重ねが続いてまいりました。
しかし、その間、官僚の不祥事は相次ぎ、超エリート官僚まで腐臭を放つようになってきました。もしこれらの議員立法の一つでも成立していたなら、中央省庁の官僚の皆さんといえども、国民の目を無視することはできず、最近の不祥事は起こらなかったのではないでしょうか。
行政の秘密主義によって、時には国民はその生命や健康までも奪われました。薬害エイズは、もっと早く情報が公開されておればあのような悲劇にならなかったことが、今では明らかではありませんか。
情報公開法の制定に一貫して消極的な姿勢をとり続け、これを先送りし続けてきたのはだれですか。現在の深刻な行政不信、官僚不信の最大の責任は歴代自民党政府にこそあると断ぜざるを得ません。小渕総理はいかがお考えですか。
我が国は今、社会のさまざまな分野で深刻な停滞に陥っています。その原因は、成長期に大きな役割を果たした明治以来の中央集権官僚支配システムが、成熟期に入って機能不全に陥ったからです。この状況から抜け出すには、市民や地域がその自主性に基づいてダイナミックに活動できるよう、我が国の構造を根本から変革することが必要です。そのためには、地方分権の推進と情報公開制度の確立が不可欠です。
また、私たちの国は、国民が主権者です。その主権者が政府の活動を知ろうとしたときに、これを権利として保障しないようでは、我が国は真の民主主義国家とは言えません。
私たち民主党は、情報公開制度につき、友党の皆さんとともに議員立法で法案を提出したほか、ただいま議題となっている政府案に対しても、各党とともに衆議院で十二項目の修正案を提出し、全党を挙げ最優先でその実現に取り組んでまいりました。そこで小渕総理、情報公開制度の確立が民主主義と国の将来にとっていかなる意義を持つとお考えか、また、あなたはそのためにどのような努力をされたかについてお答えください。
国の情報公開制度の歩みと比べると、地方の努力には目をみはるものがあります。一九八二年の山形県金山町の文書公開条例を端緒として、今や六百近い自治体において情報公開制度が確立しております。そしてNPOや市民団体がこうした自治体の情報公開制度を活用して、いわゆる官官接待、空出張などの実態を暴き出しています。官官接待がほぼ消滅したとされるのは、これら市民の地方での努力の成果ですね。食糧費や出張旅費も大幅に削減されました。
これらは、行政の内部監査だけでは決して摘発できません。しかし、行政の怠慢や不正がいかに厚い壁に守られていても、一たび市民が情報公開制度を手にすれば、市民みずからの手でこれを正すことができるわけです。また、市民と行政との間に緊張関係が生まれ、不祥事を未然に防止できます。こうしたことを自治体の情報公開制度は見事に証明しています。こうした自治体の実績に対する小渕総理の評価、これをお聞かせください。
私たちは、このように大きな意義を有する情報公開法を今国会で必ず早期に成立させなければならないと思います。確かに、政府案は、衆議院での全会派共同修正により幾らか磨きがかかってきました。敬意を表します。しかし、なお不十分な点が幾つか残っております。最近の報道を見ても、国民の利益を第一に考え、党派を超えて、参議院でより一層磨きをかけることが期待されています。今、参議院の独自性を発揮せず、いつ発揮できるでしょうか。小渕総理、まさかあなたまでが、ここで参議院が衆議院のカーボンコピーを脱しても、参議院無用論にくみされることはないでしょうね。お答えください。
そこで、再修正を検討すべき点について、具体的に質問します。
第一は、本法案に知る権利が明記されていない点です。
表現の自由は、情報を正しく知ることなしには正当に行使できません。ですから、知る権利は、表現の自由の不可欠の前提として、当然これに含まれるものです。また、国民主権のもとでは、行政の保有する情報は国民のものです。これは、そう書かれているかいないかにかかわらず、当然のことです。しかし、情報公開制度の実際の運用に当たっては、これが知る権利を具体化したものであることを明記しておかないと、行政情報は原則公開だということが徹底しないおそれがあります。裁判所が知る権利を明言できないなら、国権の最高機関である国会が、特に良識の府と言われる参議院から率先して明言すればいいじゃないですか。そこで、再修正で知る権利を明記することを検討すべきだと思います。総務庁長官のお考えを伺います。
第二は、本法案が特殊法人を対象機関に含めていない点です。
特殊法人の多くには、政府の出資、すなわち国民の税金が投入されており、また、その業務は行政が行うものを代行し、その幹部は監督官庁からの天下りで占められています。あの動力炉・核燃料開発事業団の事例を見ても、国民は特殊法人の活動内容に無関心ではいられません。韓国を初め諸外国でも、政府が関係する法人を行政機関と同様に取り扱い、情報公開の道を開いています。なぜ特殊法人を行政機関と区別して情報公開の対象から外すのですか、総務庁長官。
第三は、企業などの法人情報に非公開の特例を認めている点です。
政府案では、法人が行政機関に対し、非公開を条件として任意に提供した情報は公開しないことができることとなっています。しかし、もともと法人の正当な利益を害する場合は情報を公開しないことにしているのですから、その上さらに非公開条件の有無を考慮する必要はありません。この条項は、官僚と業界の癒着の温床となりかねません。削除すべきだと思いますが、総務庁長官の御見解はいかがですか。
第四は、手数料の問題です。
政府案では、公開の請求をした段階で手数料を取った上、公開をする時点でさらに手数料を取るという二重取りの制度となっています。その上コピー代も取るのでしょう。おまけに文書の数え方次第で手数料は膨大な金額に膨れ上がります。市民にこれほど重い負担を強いる例は自治体にはありません。公益目的の場合には大幅な手数料の減免を認めるなど、実質的な負担軽減措置も一考に値します。総務庁長官、まさかあなたは乱用防止の名目で、世界で最も利用しにくい情報公開制度を我が国でスタートされるおつもりはないでしょう。どうかこの点を見直し、負担軽減のために一緒に知恵を絞りましょう。これはぜひ参議院でしなければならないことだと思います。前向きの御答弁をお願いします。
第五は、非公開の当否を争う裁判に関する問題です。
政府案では、実質的には東京地方裁判所でしか裁判を起こせませんでした。地方の人は裁判所の判断を得たければ高い交通費を払って東京まで出てこいという傲慢な法律だったのです。そこで、衆議院では、幾ら何でもこれはひどいと、全会派共同修正で全国八カ所の地方裁判所で裁判を起こすことができるよう改められました。しかし、これには高等裁判所本庁所在地という基準はありますが、その基準を採用する理論的根拠はありません。提訴する人の負担軽減のためだというのなら全国すべての地方裁判所に広げるべきです。少なくとも、日本海側やあるいは沖縄県にお住まいの人の負担軽減は考えなければなりません。そのために今必要とされているのはただ一つ、立法府の決断だけです。総務庁長官、あなたは立法府が決断すればそれを支持されますね。お答えください。
第六は、行政文書の管理の問題です。
情報の整理、保管が適切になされていないと、情報公開といっても絵にかいたもちになります。私は、文書管理の方法は法律で定めるべきだと思います。政府案のように政令で定めるのでは、例えば防衛調達で問題となったような不法廃棄を厳しく罰することはできないでしょう。なぜ政令ですか。さらに、施行日までに文書が不当に廃棄されることのないよう、どのような方針で臨まれますか。総務庁長官の御答弁をお願いします。
第七は、本法案の施行日です。公布後二年以内というのですが、法案が提出された昨年の三月から既に一年間が経過しているのですから、その分を差し引きましょうよ。施行期日の一年短縮について総務庁長官に伺います。
最後に、二十年という長期にわたって情報公開法の成立を待ち望んできた国民の皆さんに心から喜んでいただけるよう、本法案の内容をできる限り練り上げ磨き上げた上、今国会の一日も早い時期に成立させなければならないことを同僚議員の皆さんに再度お訴えして、質問を終わります。(拍手)
〔国務大臣小渕恵三君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114515254X00519990305/4
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005・小渕恵三
○国務大臣(小渕恵三君) 江田五月議員にお答え申し上げます。
冒頭、江田議員から、これまでの情報公開法案の経緯などに触れられつつ、歴代の政府の取り組みについてお尋ねがございました。
これまでも、政府は、情報公開法制の調査研究を進めるとともに、運用上の措置として行政情報の提供に努力してきたところであり、これまでのこうした実績を踏まえまして、今般、情報公開法案を提出し、御審議をお願いいたしておるところでございます。
情報公開制度の意義についてであります。
この制度は、国民に開かれた政府を実現するために重要な制度であり、情報公開法案が成立することにより、公正で民主的な行政の推進に資するものと考えております。
私といたしましては、所信表明演説で法案の早期成立をお願いし、また、今国会の施政方針演説でも内閣として法案の早期成立に最大限努力する旨を明らかにし、取り組んでまいったところでございます。
地方自治体の情報公開の実績に対する評価についてお尋ねがございました。
私は、地方公共団体における情報公開条例の実績については高い関心を持って注目してまいりました。政府といたしましては、情報公開法案の立案に当たりましても、諸外国の法制や、今申し上げました地方公共団体の条例をも参考にさせていただいたところでございます。
最後に、参議院における本法案の審議との関連で、参議院の役割についてお尋ねがございました。
従来から、二院制度において参議院が果たす役割やその重要性については十分認識いたしておるところであります。この法案は、衆議院において各党間の熱心な協議の上、全党共同提案の修正を盛り込み全会一致で可決され、参議院に送付されたものでございます。参議院でも御審議の上、早期に成立をお願い申し上げる次第でございます。
残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)
〔国務大臣太田誠一君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114515254X00519990305/5
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006・太田誠一
○国務大臣(太田誠一君) 再修正を検討すべき点について御質問がありましたので、順次お答えいたします。
第一に、知る権利についてのお尋ねがありました。
行政情報の開示請求権という意味での知る権利が憲法上保障されているか否か、権利の性格、内容等についてはなおさまざまな見解があるというのが現状であります。本法律案においては、国民主権の理念にのっとり、行政文書の開示を求めることができる権利といたしておりまして、その内容におきましてほぼ同様のことを明らかにしておるというふうに考えております。このため、情報公開法案においては、知る権利という文言は用いておりません。
なお、知る権利の問題につきましては、衆議院内閣委員会の附帯決議において、そのほかの論点とともに、施行に当たって引き続き検討を行うこととされているところであります。
第二に、特殊法人の情報公開についてのお尋ねがありました。
これにつきましても、行政機関の情報公開と並んで重要な課題であると認識いたしております。しかしながら、特殊法人は、国とは別の法人格を有し、公団、事業団、JR、NTTなどの特殊会社、NHKなど、その法的性格、業務内容、国との関係がさまざまでございます。行政機関を対象とした情報公開法をそのまま適用することがよいのかどうか、特殊法人の実態を踏まえた制度化をなお考える必要があると考えております。
特殊法人の情報公開につきましては、衆議院において、情報公開法の公布後二年を目途として法制上の措置を講ずる旨の修正が全会一致でなされたところでありまして、政府といたしましては、国会での御議論を踏まえまして誠実に対処してまいりたいと思います。
第三に、法人情報の非公開特例についてお尋ねがありました。
法人等から非公開を前提として行政機関に提供される情報の流通の形態や、提供者の非公開扱いに対する期待と信頼は保護に値するものであります。このような規定は必要と考えます。なお、この非公開の約束は、一定の要件のもとで合理的である場合に限るとし、乱用を招かないよう配慮しております。
第四に、手数料についてのお尋ねでありますが、手数料は、特定の者に対して役務を提供する場合に、その費用を回収するために徴収するものであります。このような経費をすべて租税等の一般財源によって賄うことについて、国民の合意が得られるとは考えられません。
手数料の具体的な額などについては政令で定めることとなっておりますが、衆議院において、できる限り利用しやすい額とするように配慮しなければならない旨の修正が行われ、附帯決議も付されております。これらを踏まえ、国民の皆様が利用しやすい額となるようにいたしたいと考えております。
第五に、裁判管轄につきましてお尋ねがございました。
情報公開訴訟は行政事件訴訟法上の抗告訴訟であり、同法では被告行政庁所在地の地方裁判所が管轄権を有するのが原則とされております。他の行政事件訴訟とは別に、情報公開訴訟についてこの原則に対する例外を認め、管轄裁判所を広げることにはさまざまな議論がありましたが、衆議院では、与野党間での協議の結果、訴訟の当事者間の公平、証人等の便宜を考慮し、ぎりぎりの線でまとまり、与野党共同で修正されたのがこの修正案と承知いたしております。
したがって、政府としては、国会での御論議はこれから参議院の御論議が行われるところでございますけれども、これ以上管轄裁判所を拡大するのは適当ではないと考えております。
第六に、行政文書の管理方法についてお尋ねがありました。
情報公開法を適正に運用していくためには、適正な文書管理が前提であります。両者は車の両輪であります。本法案においては、第三十七条において文書管理に関する基本的な骨格を明記しています。すなわち、行政機関の長の行政文書の適正管理の責務を規定するとともに、各行政機関の長に行政文書の管理に関する定めの策定及び公開の義務を課しています。また、その定めに盛り込むべき基本的な事項を政令で定めることいたしております。
このように、文書管理のルールを整備するとともに、これを国民にも明らかにすることにより、行政文書の適正な管理が確保されることから、別途に文書管理に関する法律を制定する必要はないと考えております。
また、各行政機関において、情報公開法施行前であっても、業務上必要な文書を恣意的に廃棄できるものではありません。なお、行政文書を不適正に廃棄した行為については、国家公務員法の懲戒処分の対象となるものであります。
第七に、施行期日についてお尋ねがありました。
情報公開法が施行されるまでの間に、政府及び各行政機関においては施行準備に係る大量の事務作業が見込まれております。政府としては、施行のための政令、施行通達等の策定・施行、制度の周知・広報、全国に置く総合案内所の整備等を行う必要があります。
また、各行政機関においては、行政文書の管理に関する定めを制定し、開示請求に適正かつ円滑に対応するため、この定めに従って保有する大量の行政文書の目録の整備などを行うことが必要となるほか、審査基準の策定、窓口の整備等を行う必要があります。
できるだけ早期に施行したいと考えておりますが、政府及び各行政機関における準備作業を勘案すると、的確かつ円滑に法を執行するためには、おおむね二年程度の期間を要すると考えております。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114515254X00519990305/6
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007・斎藤十朗
○議長(斎藤十朗君) これにて質疑は終了いたしました。
─────・─────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114515254X00519990305/7
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008・斎藤十朗
○議長(斎藤十朗君) 日程第二 平成十一年度における公債の発行の特例に関する法律案、経済社会の変化等に対応して早急に講ずべき所得税及び法人税の負担軽減措置に関する法律案、租税特別措置法及び阪神・淡路大震災の被災者等に係る国税関係法律の臨時特例に関する法律の一部を改正する法律案、所得税法の一部を改正する法律案(参第一〇号)及び児童手当法及び所得税法の一部を改正する法律案(参第一一号)(趣旨説明)
五案について、提出者から順次趣旨説明を求めます。宮澤大蔵大臣。
〔国務大臣宮澤喜一君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114515254X00519990305/8
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009・宮澤喜一
○国務大臣(宮澤喜一君) ただいま議題となりました平成十一年度における公債の発行の特例に関する法律案、経済社会の変化等に対応して早急に講ずべき所得税及び法人税の負担軽減措置に関する法律案及び租税特別措置法及び阪神・淡路大震災の被災者等に係る国税関係法律の臨時特例に関する法律の一部を改正する法律案の趣旨を御説明申し上げます。
まず、平成十一年度における公債の発行の特例に関する法律案につきまして御説明申し上げます。
平成十一年度予算につきましては、平成十年度第三次補正予算と一体的にとらえ、年度末から年度初めにかけて切れ目なく施策を実施すべく、いわゆる十五カ月予算の考え方のもと、当面の景気回復に向け全力を尽くすとの観点から編成したところであります。
この結果、歳出面につきましては、一般歳出の規模を前年度当初予算に対して五・三%増の四十六兆八千八百七十八億円としているほか、歳入面につきましても、所得税及び法人税について恒久的な減税を実施するとともに、住宅建設及び民間設備投資の促進、経済・金融情勢の変化への対応等の観点から適切な措置を講ずることとしております。
その中で、公債につきましては、財政法の規定により発行する公債のほか、二十一兆七千百億円にも上る多額の特例公債を発行せざるを得ない状況にあります。
本法律案は、こうした厳しい財政事情のもと、平成十一年度の財政運営を適切に行うため、同年度における公債の発行の特例に関する措置を定めるものであります。
以下、その大要を申し上げます。
第一に、平成十一年度の一般会計の歳出の財源に充てるため、財政法第四条第一項ただし書きの規定による公債のほか、予算をもって国会の議決を経た金額の範囲内で、公債を発行することができることとしております。
第二に、租税収入等の実績に応じて、特例公債の発行額をできる限り縮減するため、平成十二年六月三十日まで特例公債の発行を行うことができることとし、あわせて、同年四月一日以後発行される特例公債に係る収入は、平成十一年度所属の歳入とすること等といたしております。
次に、経済社会の変化等に対応して早急に講ずべき所得税及び法人税の負担軽減措置に関する法律案につきまして御説明申し上げます。
本法律案は、近年における我が国の経済社会の構造的な変化、国際化の進展等に対応するとともに、現下の著しく停滞した経済活動の回復に資するよう、個人及び法人の所得課税のあり方について、今後の我が国経済の状況等を見きわめつつ将来抜本的な見直しを行うまでの間、早急に実施すべき所得税及び法人税の負担軽減措置を講ずるものであり、いわゆる恒久的な減税の具体的内容を定めるものであります。
以下、その大要を申し上げます。
まず、所得税について、最高税率を五〇%から三七%に引き下げるとともに、平成十一年以後の各年分の所得税額から、二十五万円を限度として、その二〇%相当額を税額控除する定率減税を実施することとしております。また、十六歳未満の扶養親族及び特定扶養親族に係る扶養控除額の加算を行うこととしております。
次に、法人税について、その基本税率を三四・五%から三〇%に引き下げるとともに、中小法人の軽減税率等についても所要の引き下げを行うこととしております。
次に、租税特別措置法及び阪神・淡路大震災の被災者等に係る国税関係法律の臨時特例に関する法律の一部を改正する法律案につきまして御説明申し上げます。
本法律案は、現下の厳しい経済情勢等を踏まえつつ、経済・金融情勢の変化等に対応するため、住宅・土地税制、投資促進税制、金融関係税制等について適切な措置を講ずるものであります。
以下、その大要を申し上げます。
第一に、住宅・土地税制について、控除期間及び控除限度額の拡充等による住宅ローン減税の実施、長期所有土地等の譲渡所得課税の軽減等の措置を講ずることとしております。
第二に、投資促進税制について、情報通信機器の即時償却制度の創設等の措置を講ずることとしております。
第三に、金融関係税制について、非居住者等の受け取る一括登録国債の利子の源泉徴収の免除等の措置を講ずるほか、有価証券取引税等の廃止にあわせ株式等譲渡益課税の適正化措置を講ずることとしております。
その他、小規模宅地等に係る相続税の特例の拡充、特別法人税の課税の停止、たばこ税の税率の引き下げ、利子税等の軽減等の措置を講ずるほか、既存の特別措置の整理合理化等を図り、あわせて適用期限の到来する特別措置の延長等の措置を講ずるとともに、居住用財産の譲渡所得課税の特例に係る阪神・淡路大震災による滅失家屋の敷地の譲渡期間要件の特例の創設等の措置を講ずることとしております。
以上、平成十一年度における公債の発行の特例に関する法律案、経済社会の変化等に対応して早急に講ずべき所得税及び法人税の負担軽減措置に関する法律案及び租税特別措置法及び阪神・淡路大震災の被災者等に係る国税関係法律の臨時特例に関する法律の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明申し上げた次第であります。(拍手)
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114515254X00519990305/9
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010・斎藤十朗
○議長(斎藤十朗君) 峰崎直樹君。
〔峰崎直樹君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114515254X00519990305/10
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011・峰崎直樹
○峰崎直樹君 私は、民主党・新緑風会を代表し、ただいま議題となりました所得税法の一部を改正する法律案並びに児童手当法及び所得税法の一部を改正する法律案について趣旨を御説明申し上げます。
まず、二法案の提案理由を御説明申し上げます。
私たちは、今日我が国が直面しているかつてない長期不況からの脱出のためには、とりわけ低迷している個人消費を思い切って刺激することが必要であり、昨年橋本内閣が行ったような場当たり的な定額減税や、小渕内閣が現在提案しているような最高税率のみの引き下げと定率減税を組み合わせた継ぎはぎの減税ではなく、将来の税制改革の方向をしっかりと見据えた制度減税を前倒しで実現するという観点が必要であると考えております。
昨年十一月に民主党が策定した構造改革につながる景気・雇用対策の中では、その基本的な考え方を次のように整理しております。
すなわち、第一に、経済活力と国民の安心をもたらす抜本的税制改革の方向に沿った減税を行うこと。第二に、総合課税化、課税ベース拡大による不公平是正が不可欠であること。第三に、すべての所得階層を対象とした税率引き下げの制度減税を行うこと。第四に、所得税の五段階の累進税率構造は維持すること。第五に、人的控除は可能な限り社会保障制度上の歳出措置に移し、税制を簡素化すること。そして第六に、所得減税は所得税のみで行い、地方財政破綻を招く地方税減税は行わないということであります。
このような考え方に沿って、今般、民主党・新緑風会は、二つの法案を政府案への対案として提出いたしました。
一つは、所得税法の一部を改正する法律案であります。
この法案は、今後の我が国の経済の活力を高める等のための抜本的な税制改革を実現することが緊要な課題であることにかんがみ、個人所得課税について、納税者番号制度の導入による総合課税の推進、各種人的控除等の見直しによる課税ベースの拡大を図りつつ税率の引き下げを行うという抜本的な税制改革の方向に沿って、その一環として、所得税の負担の軽減を図るため、税率の一律二割引き下げを行おうとするものであります。
他の一つは、児童手当法及び所得税法の一部を改正する法律案であります。
この法案は、現在の所得税における扶養控除等の人的控除が税制を極めて複雑にし、課税最低限を諸外国に比べて著しく引き上げているだけではなく、これが所得控除であるために、高い限界税率が適用される者ほど大きな恩恵を受けるという逆進的性格を有していること、子供などの家族の扶養に要する経済的負担は、本来社会保障制度によって考慮されるべきものであることなどにかんがみ、これらの抜本的な見直しに着手しようとして提案したものであります。
すなわち、本法案は、児童手当制度を拡充し、子育てに係る経済的負担を軽減するために児童を養育している父母等に対し子育て支援手当を支給すること等により、次代の社会を担う児童等のいる家庭における生活の安定に寄与することを目的とする子育て支援手当制度を創設するとともに、個人所得課税における各種の人的控除制度の見直しの一環として、扶養児童等に係る扶養控除の制度を改めようとするものであります。
次に、二法案の内容の概要を御説明申し上げます。
所得税法の一部を改正する法律案では、第一に、税率を現行の一〇%ないし五〇%から一律二割引き下げて八%ないし四〇%とするとともに、最低税率区分の適用される所得金額の上限を現行の三百三十万円から四百万円に引き上げることとしております。
第二に、利子、配当、株式譲渡益等の分離課税を廃止するとともに、納税者番号制度を導入するための法制の整備を平成十四年三月三十一日までに行うものとする規定を附則の中に設けております。
第三に、この法律の施行期日を本年四月一日とし、平成十一年分以後の所得税について適用することとしております。その他、経過措置等の所要の規定の整備を行うこととしております。
児童手当法及び所得税法の一部を改正する法律案では、第一に、児童手当法の題名を子育て支援手当法に改めるとともに、目的規定を制度拡充の趣旨に沿って、子育て家庭における生活の安定に寄与することを目的とすることに改めております。
第二に、児童手当については、従前の児童手当法における児童福祉の理念を継承しつつ、児童手当の支給対象を、現行の三歳未満の児童を監護する父母等から、十八歳未満の児童を監護する父母等に大幅に拡大しております。また、支給額を現行の倍額の第一子・第二子一人月額一万円、第三子以降一人月額二万円に引き上げるとともに、父母等の所得制限を子二人のサラリーマン世帯の場合で給与年収千二百万円程度に引き上げることとしております。
第三に、所得が一定額以下の十八歳から二十三歳未満の子の生計を維持する父母等に対して、児童手当に準じた支給額、所得制限による子育て継続手当を支給することとしております。
第四に、右の児童手当及び子育て継続手当の支給に要する費用の九九%を国が負担することとし、都道府県及び市町村の負担額を従前の負担額の範囲内にとどめることとしております。また、サラリーマン等についての手当支給に要する費用の一般事業主負担を廃止することとしております。
第五に、所得税法の扶養控除の対象を障害者及び年齢七十歳以上の扶養親族に限定することとしております。ただし、二十三歳以上七十歳未満の扶養親族については、当分の間、扶養控除の対象に含めることとしております。
第六に、この法律の児童手当法改正に係る部分についての施行期日を本年十月一日とし、所得税法改正に係る部分についての施行期日を平成十二年一月一日としております。その他、経過措置等の所要の規定の整備を行うこととしております。
以上が民主党・新緑風会の提出した所得税法改正等二法案の提案理由及び概要であります。
何とぞ、御審議の上、御賛同賜りますようお願い申し上げ、私の趣旨説明といたします。(拍手)
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114515254X00519990305/11
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012・斎藤十朗
○議長(斎藤十朗君) ただいまの趣旨説明に対し、質疑の通告がございます。順次発言を許します。浅尾慶一郎君。
〔浅尾慶一郎君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114515254X00519990305/12
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013・浅尾慶一郎
○浅尾慶一郎君 私は、民主党・新緑風会を代表して、ただいまの政府提出に係る平成十一年度特例公債法案、同税二法案について、総理及び関係大臣に質問いたします。
まず初めに、平成十一年度予算案では過去最高の二十一兆七千百億円の特例公債発行を見込んでおります。建設公債と合わせた公債発行額は総額三十一兆五百億円で、三度の補正予算を組んだ今年度予算に匹敵するものです。この予算で景気が自律的な回復軌道に乗っていけば成功と言えるでしょう。しかしながら、私はそのような楽観的な見通しは到底持つことができません。なぜなら、政府が幾ら構造改革という言葉を強調しても、平成十一年度予算案は公共工事中心のばらまきという従来の構造を何ら変えるものではなく、一時的には需給ギャップを埋めて景気が上向くことがあっても、自律的な回復をもたらすものではないからであります。
小渕総理にお尋ねいたしますが、途中でスタミナ切れをした場合、リリーフが登板する、つまり補正予算が組まれるのですか。また、その場合、特例公債発行額はさらに上積みされるのでしょうか。
万が一、特例公債発行額がさらに上積みされた場合、国債の格付はもう一段引き下げられ、長期金利は上昇すると予想されます。したがって、私は特例公債発行額の上積みの余地は断ち切るべきだと考えます。もちろん真に景気が回復する予算に組み替えた上での話でありますけれども、そのように考えております。
ここで一つ例え話をいたしますと、特例公債の発行額が二十一兆七千百億円であり、国債費の中の利子及び割引料が十一兆三千六百八十二億円となっております。これは借金の利息を払うために借金を重ねる、すなわち利息の追い貸しを受けていることを意味いたします。一般的に、銀行から追い貸しを受ければ、その貸し出しは少なくとも不良債権の一つと言われる第Ⅱ分類に分類されます。つまり、平成十一年度予算案は第Ⅱ分類予算というわけであります。
健全な予算にするためには、少なくとも特例公債はなくすことが必要であり、そのためには行政のむだや非効率な部分をなくし、歳出を切り詰めることが必要です。財政構造改革法の凍結により、財政規律は忘れ去られたようでありますけれども、不況の原因の一つが将来に対する不安であることははっきりいたしております。政府は、今こそ財政再建の長期的ビジョンを示すべきであり、公債の発行残高を減少させるための具体的な行政改革等の方策を検討して、必要な措置を講ずるべきであります。小渕総理の御見解をお聞かせ願います。
平成十一年度予算案では、金融機能早期健全化勘定の借入金について、二十五兆円の政府保証限度が定められており、近く七兆四千五百億円の資本注入が実施されるとの報道がなされているところであります。しかし、金融不安が解消できるかどうかは全く疑問です。
ところで、九七年春、大蔵省は、経営破綻寸前にあった日債銀を救済するため、日銀及び民間金融機関に奉加帳を回しました。その際、大蔵省幹部は、一部の金融機関に対し、日債銀の再建を保証するかのごとき確認書なるものを差し入れましたが、思い起こすと、かつて住専に対する融資に関して大蔵省と農水省との間で似たような覚書が交わされ、世間から批判されました。なぜ同じようなことが繰り返されるのか、大蔵大臣の反省の弁を求めます。
私は、昨年三月に行われたいわゆる佐々波委員会での優先株取得の反省に立ち、再三、今後行われる優先株式の取得については、減資が行われる際には経営に責任のある普通株式から減資をすることをあらかじめ優先株引き受けの条件にすべきと指摘をしてまいりました。
これは、議決権のない優先株主は今までの経営に対して責任がないし、また、経営にチェックをかけようがないことにもかんがみ、万一不良債権を償却する際に資本の減資が必要となる場合には、当然普通株式から資本の毀損をすべきであり、また、このことは国民の財産たる公的資金投入の当然の条件であると主張させていただいております。
商法二百二十二条並びに三百四十五条、三百四十六条の規定に従い、事前に定款にてその旨定めるか、あるいは減資の際にその旨の格別の定めをすればよいわけでありまして、その旨も指摘させていただいております。
しかるに、金融再生委員会からは、学説上そのことが許されないとの返答が来ております。商法上明確に可能であると記述されており、専門家並びに解説書においても可能と記載されていることを、学説上不可能と政府が口頭で返答することは不適切と考えますので、この際、かかる行為が不可能と金融再生委員会において解釈した根拠となる説を唱える学者がいるならば、その名前を挙げていただき、その論拠を示していただくことを金融再生委員長に求めます。
さらに、その人の署名入りの答弁書を提出していただきますように、金融再生委員長に重ねて求めます。法律上可能と明確に記載されておることを不可能と主張されるのですから、その論拠を明らかにしていただきたいと思います。
さて、現在、我が国の地方自治体は軒並み財政状況が厳しくなっておりますが、特に東京、大阪、神奈川、愛知等の都市部の自治体が財政上危機的な状況に陥っております。
先般、私は四十七都道府県について住民一人当たりの地方交付税と国庫支出金の額を調査させていただきましたところ、四十七都道府県で交付金額が最も少なかったのは神奈川県の一人当たり四万円、次いで東京都の四万三千円でした。逆に最も多かったのは島根県の四十三万円でございました。四万円対四十三万円、この格差についての小渕総理の御所見並びに地方交付税等の交付金額の少ない自治体が財政危機に陥っていることについての小渕総理の御所見を伺います。
私どもは、現下の地方自治体の財政危機をにらみ、また、自治体ごとの財政上の自主性豊かな運営を考慮し、所得税のうち納税者全員にかかっている最低税率の一〇%分を地方に移譲することを提案させていただいております。そして将来的には、自治体ごとに自由に税率を変更できるようにすることが、豊かで効率的な自治体運営にもつながると考えております。
このように、国から地方への税源の移転は、財政危機から地方自治体を救うのみならず、さまざまな効能があると考えますが、小渕総理並びに自治大臣の御所見を求めます。
かかる所得税の地方自治体への移転を議論するに当たり、当然居住地ごとに一人当たりで幾ら所得税を納めているかのデータが必要となります。税率を移譲した場合にどうなるかのシミュレーションを行うために必須のデータであり、宮澤大蔵大臣もそのようなものが必要であると決算委員会で答弁をされております。
しかるに、現行の源泉徴収制度のもとでは、年収が五百万円以下の方については、源泉徴収義務者から税務署へその名前の報告義務がないため、このデータがいただけないようであります。大変重要なデータであり、かつ年収が五百万円以上と以下とで差別的な対応をするのは私はいかにも問題であると考えますので、ぜひこの際、源泉徴収義務者にすべての納税者の名前及び住所を税務署に提出させて、かかるデータが算出可能とすべきと考えます。小渕総理の御所見を伺います。
次に、政府提出の所得税、法人税負担軽減法案について、総理にお尋ねいたします。
まず、法人税関係ですが、昨年税率を三四・五%に引き下げた時点で、政府・大蔵省は、法人税率は米国以下の水準となるため、これ以下に引き下げる考えはなく、あとは地方法人課税の見直し、特に法人事業税の外形標準化を図ることにより、税率を引き下げ、国、地方合わせた実効税率を四〇%程度にすると表明してきたと承知しております。
これに対し民主党は、昨年一月来、法人課税の実効税率を四〇%程度に引き下げるためには、国の法人税率をもう一段下げて三〇%とすべきであると提案してまいりました。今回の法人税率の引き下げは昨年来の我が党の主張が採用されたものと理解しておりますが、政府は一年前に素直に民主党提案を受け入れて、今回の改正内容を提案すべきであったのではありませんか。このように短期間の間に政府の方針がころころと変わり、結果的に場当たり的な政策の小出しになってきたことが景気浮揚をおくらせてきたと考えますが、いかがでしょうか。小渕総理の御所見を求めます。
次に、所得税関係についてお尋ねいたします。
総理は、これまで本会議等で、定率減税は納税者ごとの税負担のバランスをゆがめないで減税を行うことができるという長所があり、今回のように、景気の現状に配慮して、課税ベースや課税方式を抜本的に見直さず、恒久的な減税を行う方式としては定率減税が適当と考えられると答弁しておられます。この考え方はそのとおりであると私も考えます。
しかし、そうであるならば、まさに政府が定率減税とあわせて提案している課税ベース等の抜本的な改革を伴わない最高税率のみの引き下げは、納税者ごとの税負担のバランスをゆがめるものにほかならず、不適当だと言うべきではありませんか。総理は御自身の説明の矛盾について気づいておられるのですか。
また、総理は、自民党総裁就任後の昨年七月二十五日の新聞のインタビューに答えて、特別減税の恒久化も含めて実質的に増税にならない形での恒久減税の数字をぜひはじき出したいと表明されたそうですが、間違いありませんか。そうであるとすると、今回提案されている内容は、総理の当初の公約に反するものとなってしまったのではありませんか。
さらに、総理は、今回の所得税減税法案について、将来の抜本的な見直しを展望しつつと繰り返し表明し、また、個人所得課税の税率構造、課税ベースや課税方式のあり方については、今後の抜本的な改革の中で腰を据えて検討するとしておりますが、将来のどのような抜本的な見直しを展望してこのようにおっしゃっているのでしょうか。与党と公明党との政策合意の中で、総合課税化や納税者番号制度について導入の方向で検討することを盛り込まれたようですが、総理、これは当然やるという意味と理解してよろしいのですね。よもや、検討はするがやるかどうかわからないという趣旨であるというような無責任な態度ではないのでしょうね。ここで小渕総理御自身の税制についての将来ビジョンをはっきりと表明していただきたいと思います。
次に、民主党が提案している所得税の扶養控除の見直しと児童手当の拡充に関連して、小渕総理及び大蔵大臣にお尋ねいたします。
所得控除は、適用される限界税率が高いほど有利になる不公平な仕組みです。所得税法上の所得概念は、一般的に収入金額から必要経費を差し引いた額として把握されておりますが、納税者本人の給与所得控除や基礎控除はともかく、本人以外の扶養親族の生活経費は収入を得るための必要経費とは言えません。子供などの扶養親族の最低生活経費を賄うための経済的基盤の維持は、社会保障制度の対象としてこそふさわしいのではありませんか。
欧州諸国では、児童手当と所得税の扶養親族控除の両者を調整し、児童手当に一本化していこうという考え方で整理されてきております。米国では、児童手当はありませんが、クリントン政権下の税制改革で児童や学生についての税額控除制度が導入されました。これは日本のような不公平な所得控除ではなく、一律上限額の税額控除です。我が国でも児童手当制度創設当時以来、両者を調整して児童手当を拡充すべきだという考え方が社会保障制度審議会の答申等でも提言されてきたと承知しておりますが、小渕総理はこれらのことをどう認識しているのでしょうか、お尋ねいたします。
また、大蔵大臣は、これら両者の調整について前向きのお考えをお持ちとお聞きしておりますが、この際、民主党案をもとに検討されてはいかがでしょうか。大蔵大臣の御所見をお聞きいたします。
次に、租税特別措置法等の改正案、とりわけ住宅税制のあり方について大蔵大臣にお尋ねいたします。
住宅減税や投資促進税制、環境税制などはいずれも民主党が提案してきたものであり、当然のことと考えます。このうち、かつてなく大幅に拡充された住宅減税は、足元の景気対策としては一定の効果が期待されるものでありますが、その検討過程では、現行のローン残高に応じた一定期間の税額控除ではなく、米国のようなローン全期間を通しての利子控除を導入すべきとの議論も各界から出されており、私もこの方が税制上ニュートラルであると考えます。
また、住宅税制については、今回のような景気対策の観点のみならず、そもそもの政策目的としての持ち家促進なのか、一般的な家計の負担軽減策なのかという議論が横たわっていると思います。今後の我が国の住宅政策とその実施手段としての住宅税制のあり方についてどのようにお考えなのでしょうか、大蔵大臣の御所見をお聞きいたします。
最後に一言、現下の経済状況にかんがみ、今次提出の二法案について所見を申し上げさせていただきます。
我が国は、バブル崩壊後、国家としての指針を見失っておるように思います。今回の税制改正並びに特例公債の増発からは、景気回復を第一との考えはうかがえますが、将来に対しての私の同世代の者が希望を持てるような方向性が見えてまいりません。
今次の法案審議を通じて、少しでも将来への夢や希望が見えるようになること、社会全般に活力があふれてくること、そして敗者復活戦のないトーナメント型社会から、私が理想といたします、だれにでも何度でもチャンスが与えられるリーグ戦型の社会へ移行することを切に希望して、質問を終了させていただきます。(拍手)
〔国務大臣小渕恵三君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114515254X00519990305/13
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014・小渕恵三
○国務大臣(小渕恵三君) 浅尾慶一郎議員にお答え申し上げます。
まず、景気が上向かなかった場合、特例公債を上積みして補正予算を編成するのかとのお尋ねでありました。
十一年度予算は、当面の景気回復に全力を尽くすとの観点から、公共事業や中小企業対策、雇用対策に最大限配慮するとともに、科学技術の振興など将来の発展基盤を確立する施策も十分取り入れております。また、税制面でも、恒久的減税を初め、国、地方合わせ平年度で九兆円を超える減税を実施することといたしております。
以上、私としてはいわば背水の陣をしいての思い切った決断を行っておるところでございまして、このような諸施策と民間の真剣な取り組みと相まちまして、十一年度には我が国経済の実質的成長率は〇・五%程度まで回復するものと確信いたしております。これらの施策が一日も早く執行できますよう、十一年度予算及び関連法案の速やかな成立に御協力をお願いいたします。
財政再建の長期的ビジョンを示し、公債残高を減少させるための具体的方策を検討して、必要な措置をとるべきではないかとお尋ねでありました。
私は、将来世代のことを考えますと、財政構造改革という大変重い課題を背負っていると痛感いたしております。この観点から、平成十一年度予算におきましても、財政構造改革の基本的考え方は維持し、限られた財源の中で経費の一層の合理化、効率化を図っております。
しかしながら、現在のようにマイナスの成長が続き、税収が減少している状態では、これをどうにかしないことには財政再建はなかなか簡単なことではないと考えます。したがって、プラスの成長を実現し、税収の回復を図るべく、まずは景気回復に全力で取り組みたいと考えております。
その上で、財政構造改革につきましては、経済が回復軌道に乗った段階におきまして、財政、税制上の諸課題につき、中長期的視点から幅広くしっかりとした検討を行わなければならないと考えております。
地方交付税及び国庫支出金について御指摘でありますが、地方交付税は地方団体間の財源の均衡を図るとともに各地方団体の計画的な行政運営を保障するために交付されるものであり、一人当たりの交付額について、あくまでもそれぞれの制度の趣旨に沿って交付された結果であると認識いたしております。
また、現在の我が国経済の厳しい状況によりまして、地方財政は税収の伸び悩み、低迷が続いており、特に大都市地域の地方団体の財政が悪化しておりますが、これは景気の変動等を敏感に受ける法人関係税、すなわち法人税割及び法人事業税のウエートが高いことが大きな理由であると考えられます。
いずれにいたしましても、地方財政は極めて厳しい状況にあることから、地方交付税の増額措置、地方特例交付金の創設など、地方財政の運営に支障が生じないよう十分配慮しつつ、緊急経済対策を初めとする諸施策を実施することにより、まずは景気を回復軌道に乗せることが必要であると考えております。
所得税の一〇%部分を地方に移転してはどうかという御提案でありました。
所得税は国税の中でも基幹税であること、諸外国に比べて負担が相当低いものとなっていること等について留意しなければならず、現下の国と地方をめぐる諸状況のもとでは困難な問題ではないかと考えます。
いずれにしても、地方税財源の充実確保は、地方分権を推進する中で極めて重要な課題と考えております。今後、地方分権の進展に伴い、国と地方公共団体との役割分担を踏まえつつ、中長期的に、国と地方の税源配分のあり方についても検討しながら、地方税の充実確保を図るべきものと考えます。
居住地ごとに一人当たりの所得税納税額を網羅的に把握するために、源泉徴収義務者にすべての納税者の名前及び住所を税務署に提出させるべきではないかとのお尋ねでありました。
市町村には、源泉徴収義務者から給与支払い報告書がすべて提出されているところであり、市町村においては、一人当たりの給与収入は把握されているところであります。
所得税法では、適正公平な課税の確保に資するため、種々の支払い調書の提出を義務づけており、源泉徴収票もその一つでありますが、この源泉徴収票は、源泉徴収義務者の事務負担等を勘案いたしまして、支払い金額が一定金額以下である場合には、税務署長への提出を省略することができることとされていることを御理解いただきたいと思います。
法人税率の引き下げについてのお尋ねでありました。
平成十年度税制改正におきまして、経済構造改革の推進にも資するとの観点から、課税ベースを適正化しながら、法人税率を引き下げたところであります。
平成十一年度税制改正におきましては、現下の厳しい経済情勢等を踏まえ、景気に最大限配慮しながら、我が国企業の国際競争力の発揮の観点から、法人課税につきましても、その実効税率を国際水準並みに引き下げるという、従来なし得なかった思い切った措置を講ずることといたしております。
これを実現するために、国税である法人税につきましては、地方財政の円滑な運営にも十分配慮しつつ、その税率を三〇%に引き下げることといたしたものでございます。
次に、所得税制についての将来ビジョンについてのお尋ねでありました。
我が国の個人所得課税の最高税率は、国際的に見ましても高い水準となっておりまして、税制調査会の答申におきましても指摘をされておりますように、我が国の将来を見据え、国民の意欲を引き出す観点から、その引き下げが必要と考えられます。したがいまして、最高税率の引き下げはいわば積み残された課題として、ぜひとも早期に実施することが必要であり、今回の見直しにおいて実現することといたしたものでございます。
個人所得課税のあり方につきましては、今後の経済状況等を見きわめつつ、経済社会の構造的な変化等に対応した抜本的改革へ向けて、幅広い観点から十分検討を行っていく必要があると考えております。
個人所得課税の抜本的見直しにおいては、税率構造や課税ベース、課税方式のあり方等について、全般にわたり一体的に検討する必要があると考えており、広く社会の構成員でそれぞれの経済力に応じて公平に負担し合う基幹税たる個人所得課税のあり方として、所得税、個人住民税の税の性格の違いも踏まえつつ、どういう姿が望ましいかとの見地から、聖域なく幅広い検討を行っていく必要があると考えます。
なお、総合課税化につきましては、今後の納税者番号制度等、所得把握体制の取り組みも含め、理論面、実態面から十分検討を進めていく必要があります。
また、納税者番号制度につきましては、国民の受けとめ方や考え方を十分酌み取りながら、同制度の目的を初め、プライバシーの問題、経済取引への影響、コストと効果等の諸課題について議論を深めていく必要があると考えております。
次に、児童手当と扶養控除の調整についてのお尋ねがありましたが、我が国の扶養控除につきましては、個人所得課税におきましては、基礎的な人的控除を差し引くことによりまして担税力の調整を行いながら、課税所得を確定するというのが基本的な考え方であり、子供のいる納税者については子供の数に応じた扶養控除等を設けているところであります。
いずれにいたしましても、広く社会の構成員でそれぞれの経済力に応じて公平に負担し合う基幹税たる個人所得課税の課税ベースのあり方については、抜本的改革へ向けて腰を据えて検討を行っていく必要があると考えます。
一方、児童手当につきましては、子育て支援サービスの充実を優先すべきであるといった意見などさまざまな意見があり、また、福祉、教育、雇用、住宅などさまざまな施策を総合的に推進していく必要があること、さらに、大幅な拡充のための巨額な財源が必要であること等を考えますと、十分な検討が必要なものであると認識しております。
扶養控除制度と児童手当制度は、単純に代替する制度ではなく、おのおのの制度のあり方を論ずるに当たっては、育児に係る経済的負担の軽減という側面のみならず、以上申し上げたような各制度の趣旨や沿革、あるいはその置かれておる状況等も踏まえ、考えていくべき事柄ではないかと思われます。
以上、お答え申し上げましたが、残余の質問につきましては、関係大臣から答弁いたさせます。(拍手)
〔国務大臣宮澤喜一君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114515254X00519990305/14
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015・宮澤喜一
○国務大臣(宮澤喜一君) 日債銀の問題についてお尋ねがございました。
確認書の件でございましたが、平成九年四月の経営再建策を実施いたしましたときに大蔵大臣が談話を発表されまして、これに最大限の支援を行っていくということを言われました。確認書もこうした方針のもとでの対応の一環であったと承知しております。
当時は現在のようなセーフティーネットがございませんでしたので、大蔵省としては最善の対策を行ったものと考えますが、しかし、結果としては、銀行再建という当初の目的を達成できませんでした。関係者の負担となりましたことはまことに遺憾に存じております。
児童手当の問題につきましては、ただいま総理大臣が非常に詳しく御説明をされました。
いわゆる扶養控除というのは、御承知のように、税の面からは、家族構成によって担税力が違うということに着目して置いておる制度でございますけれども、おっしゃいましたように、諸外国で、例えばアメリカでは児童手当というものはありませんで人的控除をやっておりますし、イギリスでは今度は人的控除はなしに児童手当をやっております。ドイツでは児童手当との選択制になっておるというふうに、まちまちでございます。
したがいまして、今後この問題は、諸外国のやり方等も勘案しながら、将来に向かって抜本的改革をいたしますときに考えてまいらなければならない問題だというふうに考えておりますが、控除そのものにつきまして、税の方からの考え方がそのように我が国ではございますので、両者が選択的になる、二者択一になるというふうにも割り切れない部分がございます。
それから、住宅減税につきまして、御承知のように、今度非常に大きな住宅ローン税額控除制度をいたしました。この平年度の減税は一兆二千億でございますので、非常に大きな減税でございますが、これは持ち家を促進したいという国民の気持ちがございますし、我が国の経済には一番これが景気の足取りにプラスになるだろうという観点からいたしましたので、そういう意味では、一般的な家計負担の軽減を目指したというわけではございません。特定の政策目的を持っていたしたものであります。(拍手)
〔国務大臣柳沢伯夫君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114515254X00519990305/15
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016・柳沢伯夫
○国務大臣(柳沢伯夫君) 優先株に係る格別の定めのあり方、特に普通株との関係におけるそのあり方について御指摘がございました。
議員の御指摘のとおり、商法上は優先株につきまして特別の定めをすること自体は許容されております。しかし、どのような定めであっても許されるかにつきましては、まず定款による場合につきまして、一つ、定款の定めが、ある種類の株主に余りにも大きな不利益を及ぼすようなものである場合には、無効と解される余地があるとの説や、二つ目は、定款で定めた権利調整の方法が著しく不当な場合には、そのような定款の定めは無効と解すべきであるとの説がありまして、定款の定めによって、ある種の株主を有利に扱うこと自体は許容しつつも、一定の場合には定款の定めが無効とされる可能性を指摘されているのでございます。
それでは、具体的にどの程度の定めをした場合にその定めが違法とされるかについてでありますが、これにつきましては、定款によらずに特別の定めをする場合についての論述が参考になるところであります。
それによりますと、技術的困難が全くないのに、客観的に明白に実質的公平に反する格別の定めは、たとえ不利益を受ける種類の株主総会の決議があっても、その瑕疵は治癒されないという説となっております。
以上のような諸見解を踏まえますと、政府といたしましては、法律的により安定した立場、言いかえますと、より慎重な解釈に立脚せざるを得ないことを御理解いただけるかと存ずるわけであります。
いずれにいたしましても、金融再生委員会としては、政府が不利益をこうむることがないよう、優先株等の引き受けを行い、また、その後の投下資本の回収の確保が図られますよう、万全の努力をしてまいりたいと考えておるところであります。
以上であります。(拍手)
〔国務大臣野田毅君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114515254X00519990305/16
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017・野田毅
○国務大臣(野田毅君) 地方税源についてのお尋ねでございました。
地方分権の進展に応じて地方団体がより自主的、自立的な行財政運営を行えるようにするとともに、景気の変動等の影響を受けにくいように、地方団体の財政基盤を充実強化していくことは極めて重要な課題であります。
今後、地方分権推進計画を踏まえ、所得、消費、資産等の間におけるバランスのとれた地方税体系や、税源の偏在性が少なく、かつ税収の安定性を備えた地方税体系の構築などに努め、地方税源の充実確保を図ってまいりたいと存じます。その際には、御指摘の国税から地方税への税源の移譲についても総合的に検討してまいりたいと存じます。(拍手)
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114515254X00519990305/17
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018・斎藤十朗
○議長(斎藤十朗君) 大沢辰美君。
〔大沢辰美君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114515254X00519990305/18
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019・大沢辰美
○大沢辰美君 私は、日本共産党を代表して、ただいま議題となりました法案のうち、政府提案の三法案について、小渕総理に質問いたします。
我が国は今、消費大不況と財政危機が同時に進む深刻な事態にあります。これを打開するために、今、政府がやるべきことは、国民の個人消費の冷え込みを温める思い切った対策をとるとともに、必要のない大型公共事業などの浪費的な支出を削減することであります。
ところが、総理は、財政再建を大きな重い課題だとしながらもこれを先送りし、当面の景気回復に全力を尽くすためにこの法案を提出したと説明しています。しかし、この法案によって、国民が願っている景気回復に効果があるとは到底言えないのであります。
まず、所得税について質問いたします。
最高税率の大幅引き下げと定率減税の組み合わせ、こんなことをやれば減税の恩恵は高額所得者に集中することは明らかであります。しかも、九八年度の特別減税を廃止したため、九九年度は圧倒的多数の国民は減税どころか増税を押しつけられることは政府も認めざるを得ないではありませんか。
大蔵省の試算によっても、夫婦子供二人の四人家族の場合、年収七百九十三万円までは差し引き増税となり、年収五百万円の場合には九万円もの増税となります。国民の七、八割を占める中低所得層にこのように実質増税を強いることがどうして個人消費の拡大に結びつくのですか。
圧倒的多数の中低所得階層の国民は、今でも不況の中で家計のやりくりで大変なんです。その可処分所得を引き下げるこの政策は、景気回復に全く逆行することは明白であります。総理の明確な答弁を求めます。
最高税率を引き下げる今回のやり方は、所得格差を広げ、税制の民主的なあり方をゆがめるもので、かつて日本はアメリカに比べて所得格差が少ないと言われてきました。ところが、経済企画庁の研究所が一昨年に行った報告によると、バブル経済の中で所得格差が拡大したということであります。こういった状況にもかかわらず、所得税を高額所得者優遇の構造に変えることは、まさに庶民いじめの逆立ちした政治であり、やるべきではないと思います。総理いかがですか。
景気対策に全力を尽くすというあなたの言葉が掛け値なしのものであるならば、確実に消費に直結する減税、消費税の減税こそ行うべきであります。
最近、日銀が行った世論調査によっても、消費をふやす最善策は消費税率の引き下げとする人が五七%を占めています。消費税減税を求める声は圧倒的であります。我が党は、当面の景気対策として消費税を三%に引き下げる法案を島袋宗康議員、石井一二議員とともに提出しておりますが、今こそ国民の声にこたえ、消費税減税に踏み切るべきではありませんか。
次に、法人税について質問いたします。
本法案は、九八年度に三七・五%から三四・五%に引き下げた法人税をさらに三〇%まで引き下げるものでありますが、総理、この減税の恩恵を受けるのは大企業の中でもごく限られた層に偏っているのではありませんか。
資本金規模別に減税効果を試算しますと、減税効果の約五五%が資本金十億円以上の大企業にもたらされ、とりわけ全国企業数の〇・一%にも満たない資本金百億円以上の巨大企業に減税の恩恵の四〇%以上、一兆円近くが吸い取られてしまいます。中小企業の受け取る恩恵は四千六百九十億円、中小法人の軽減税率の引き下げ分千三百億円を合わせても五千九百九十億円でしかありません。
長期にわたる深刻な不況の中で、我が国の経済を担う圧倒的多数の中小企業が赤字に追い込まれている現実を見るとき、この中小企業の差し迫った苦難にこたえない、このようなことでどれだけ景気回復に有効な働きをするというのでしょうか。
この法案は、巨大企業の国際競争力をつけるという名目のもとで、巨大企業の内部留保を膨らませるだけで、圧倒的多数の中小企業活動の活性化など望むべくもなく、まして景気の回復になど役立たないではありませんか。総理の答弁を求めます。
次に、特例公債の発行についてであります。
来年度予算は、国債発行額が赤字国債の二十一兆七千百億円を含む三十一兆五百億円、史上最悪の借金財政となっています。国と地方を合わせた累積債務は、九九年度末には六百兆円、対GDPの比率は一二〇%に達するという先進国では飛び抜けて高い状況となっています。
この財政危機の最大の元凶が、むだと浪費のゼネコン向けの公共事業の拡大であることはもう言うまでもありません。この浪費的支出を削減しない限り、かつて財政審議会答申が、いつ破裂するかもしれない時限爆弾を抱えているようなものだと言ったとおり、我が国財政を破綻に追いやるのは時間の問題であります。
ところが、総理、今あなたはその逆の形で、すなわち財政再建の課題は景気回復の後だとして、過去最悪の借金財政を組んで公共事業をふやし、ますます破綻への道を歩んでおります。
不況と財政危機が同時進行する危険な事態を迎えているからこそ、今こそ政治が行うべきは、むだ遣いを徹底的に改め、公共事業を国民生活密着型に切りかえるとともに、教育、社会保障の充実など、本当に景気打開のために必要なところに大胆に投入する方向に転換すべきであります。
さらに、阪神・淡路大震災で今も苦しんでいる多数の被災者の生活と営業、住宅の保障、被災者本位の復興町づくりのために思い切った国の支援をすべきではありませんか。総理の答弁を求めます。
最後に、財政危機打開に関して出てきています消費税増税の動きについて質問をいたします。
今回の所得税、法人税の恒久的減税によって、九九年度の国の税収は四十七兆一千億円しか見込めず、十二年ぶりに五十兆円を割り込みました。まさに金持ち、大企業減税が税収の空洞化を進め、財政の基盤を弱体化させ、財政危機を一層深刻な状況に落とし込もうとしています。
このような税収の落ち込みと財政危機のもとで、総理の諮問機関である経済戦略会議が二月二十六日に行った答申は、消費税増税の意図をあらわにし、「中期的な観点から、直間比率の見直しや高齢化社会の到来を踏まえて消費税率の引き上げも視野に入れざるを得ない。」と述べております。報道によりますと、戦略会議の中心メンバーの一人は、消費税率一〇%は委員の共通認識だとまで明言しております。
答申を受けた総理は、提言をしっかり受けとめると言明されていますが、そうであるなら、将来、消費税の増税で国民にさらなる負担を押しつけるつもりですか。こんなことをやれば国民の生活は一層苦しくなり、さらに不安は一層強まり、不況の泥沼はますます深まることは目に見えているではありませんか。戦略会議は経済再生に向けた三段階の戦略ステップを示していますが、一体そのどの段階で消費税を増税するつもりなのか、この際、総理の明確な答弁を求めます。
我が党は、いかなる消費税増税計画も許さず、消費税引き下げのために引き続き奮闘することを表明して、質問を終わります。(拍手)
〔国務大臣小渕恵三君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114515254X00519990305/19
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020・小渕恵三
○国務大臣(小渕恵三君) 大沢辰美議員にお答え申し上げます。
まず、減税の効果についてのお尋ねでありました。
今回の減税は、四兆円超という大規模な減税を継続して実施するものでございまして、他の施策と相まって可処分所得を下支えし、個人消費の回復に必ず資するものと考えます。
なお、昨年の減税は一年限りで打ち切られる文字どおり特別な減税でありまして、恒久的な効果が継続する減税と単純に比較することは適当でないと考えます。
今回の減税案は高額所得者優遇ではないかとのお尋ねでありましたが、今回の税制改正における最高税率の引き下げは、我が国の将来を見据え、国民の意欲を引き出し、経済社会の活力を高める観点から必要なものと考えます。
また、定率減税には頭打ちを設け控除率をある程度大きくするとともに、扶養控除額の加算等を行うことによりまして、中堅所得層や、子育て、教育等の負担のかさむ世帯に配慮することといたしております。
消費税減税についてお尋ねでありました。
消費税率の引き上げを含む税制改正は、少子高齢化の進展という我が国の構造変化に税制面から対応するものでありまして、我が国の将来にとって極めて重要な改革であったと考えます。消費税に限らず、税は低い方がいいという面はありますが、税財政のあり方を考えましたとき、消費税率の引き下げは困難であり、この点は国民の皆さんにぜひ御理解をいただきたい点でございます。
法人課税につきましてのお尋ねでありましたが、今回の法人課税の見直しは、我が国企業の国際競争力の発揮、企業活動の活性化の観点から、その実効税率を国際水準並みに引き下げるとの趣旨で行うものであります。
法人税及び法人事業税の基本税率の引き下げは、大企業、中小企業といった法人の区分にかかわらず実施するものであり、また、中小軽減税率等も引き下げることから、今回の法人課税の見直しは大企業に偏ったものではなく、中小企業にもその効果が及ぶものであります。
いずれにせよ、今回の二兆円超の法人課税の恒久的減税によりまして、企業の体質が改善強化され、我が国経済の活性化に資する等、中長期的に望ましい効果が期待されるものと考えております。
公共事業について御質問がありました。
公共事業につきましては、情報通信、都市・住宅、環境・教育・福祉など我が国経済の活性化に不可欠な分野、安全な国土の整備といった分野に重点的に投資を行うことといたしております。
また、公共事業の効率化を図る観点から、再評価システムの導入等の徹底的な見直しにも取り組んでおるところでございます。
阪神・淡路大震災についてお尋ねがありました。
政府といたしましては、これまで地元地方公共団体の復興に向けた取り組みを最大限に支援してまいりました。また、被災者の生活再建のための被災者自立支援金に対し、地方財政措置による支援を行っております。今後とも、生活再建の支援や産業の復興支援、安全な町づくりなど、阪神・淡路地域の復興対策に全力で努めてまいりたいと考えております。
最後に、先日の経済戦略会議の答申についてのお尋ねがございました。
経済戦略会議が先日発表した答申におきましては、税制に関しましても種々の御提言が示されておりますが、今後、税制上、実務上の問題も含めまして、政府及び与党の税制調査会等におきまして、専門的かつ幅広い見地から検討が加えられるものと考えております。
いずれにせよ、消費税率の問題を含む将来の税制のあり方につきましては、社会経済構造の変化あるいは財政状況などを踏まえまして、国民的議論によって検討されるべき課題であると考えます。
以上、御答弁申し上げます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114515254X00519990305/20
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021・斎藤十朗
○議長(斎藤十朗君) これにて質疑は終了いたしました。
本日はこれにて散会いたします。
午前十一時四十三分散会
─────・─────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114515254X00519990305/21
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