1. 会議録本文
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000・会議録情報
平成十一年四月十二日(月曜日)
午後一時一分開議
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○議事日程 第十二号
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平成十一年四月十二日
午後一時 本会議
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第一 男女共同参画社会基本法案(趣旨説明)
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○本日の会議に付した案件
議事日程のとおり
─────・─────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114515254X01219990412/0
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001・斎藤十朗
○議長(斎藤十朗君) これより会議を開きます。
日程第一 男女共同参画社会基本法案(趣旨説明)
本案について提出者の趣旨説明を求めます。国務大臣野中内閣官房長官。
〔国務大臣野中広務君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114515254X01219990412/1
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002・野中広務
○国務大臣(野中広務君) 男女共同参画社会基本法案について、その趣旨を御説明申し上げます。
我が国においては、日本国憲法に個人の尊重、法のもとの平等がうたわれており、男女平等の実現に向けてさまざまな取り組みが、国際連合など国際社会における取り組みとも連動しつつ、着実に進められてきたところであります。その間には、女子差別撤廃条約も批准されました。しかしながら、現実の社会においては、男女間の不平等を感じる人も多く、男女平等の実現に向けて、なお一層、努力していかなければなりません。
また、少子高齢化など社会経済情勢の急速な変化に対応していく上でも、女性と男性が互いにその人権を尊重し、喜びも責任も分かち合いつつ、性別にとらわれることなく、その個性と能力を十分に発揮することができる男女共同参画社会の実現は、一層緊急の課題とされているところであります。
このような状況において、男女共同参画社会の実現は、政府の最重要課題であると考えております。そのためには、さまざまな分野において男女共同参画社会の形成を促進するための施策を推進することが重要であります。また、人々の意識の中に形成された性別による固定的役割分担意識等が男女共同参画社会の実現を妨げていることを考えますと、国民一人一人にこの問題について理解を求め、各自の取り組みを促していかなければなりません。
男女共同参画社会基本法案は、男女共同参画社会の形成に関する基本的理念とこれに基づく基本的な施策の枠組みを国民的合意のもとに定めることにより、社会のあらゆる分野において国、地方公共団体及び国民の取り組みが総合的に推進されることを目的としています。この法律案は、男女の人権が尊重され、豊かで活力ある社会を実現し、女性も男性もみずからの個性を発揮しながら、生き生きと充実した生活を送ることができることを目指すものであり、二十一世紀の日本社会を決定する大きなかぎとなる意義を持つものと考えています。
次に、本法案の内容の概要を御説明申し上げます。
第一に、男女共同参画社会の形成に関する基本理念として、男女が性別による差別的取り扱いを受けないこと等の男女の人権の尊重、社会における制度または慣行についての配慮、政策等の立案及び決定への共同参画、家庭生活における活動と他の活動との両立、国際的協調という五つの理念を定めるとともに、国、地方公共団体及び国民の男女共同参画社会の形成に係る責務を明らかにしております。
第二に、男女共同参画社会の形成の促進に関する施策に関し、政府等は基本的な計画を定めて施策の大綱を国民の前に示すこととするとともに、施策の策定等に当たっての配慮、国民の理解を深めるための措置、苦情の処理等、調査研究、国際的協調のための措置、地方公共団体及び民間の団体に対する支援など基本的な施策について規定しております。
第三に、現在、男女共同参画審議会設置法に基づいて設置されている男女共同参画審議会について、この基本法にその設置根拠を移すことにより、男女共同参画社会の実現に向けた推進体制として明確に位置づけております。
以上が、この法律案の趣旨であります。
何とぞ、慎重に御審議の上、速やかに御可決あらんことをお願い申し上げます。(拍手)
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114515254X01219990412/2
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003・斎藤十朗
○議長(斎藤十朗君) ただいまの趣旨説明に対し、質疑の通告がございます。順次発言を許します。狩野安君。
〔狩野安君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114515254X01219990412/3
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004・狩野安
○狩野安君 私は、自由民主党並びに自由党を代表いたしまして、ただいま議題となりました男女共同参画社会基本法案に対して、小渕総理大臣及び野中官房長官に質問いたします。
「元始、女性は太陽であった、真正の人であった。今、女性は月である。」、女性運動家であった平塚らいてう氏がそう例えてうたった宇宙に、昨年秋、日本女性である向井千秋さんが二度目の宇宙旅行を実現しました。向井千秋さんが男性飛行士と肩を並べて仕事に励む姿に、時代の変化を感じ、来るべき二十一世紀の男女共同参画社会の姿を思い描いたのは私だけではないでしょう。
本法案は、政府の男女共同参画審議会で各界各層の意見を聞き、法案となったもので、関係各位の努力に敬意を表したいと思います。
「男女共同参画社会」という言葉は、新しい言葉です。昨年十月、総理府は学識者、マスコミ関係者など約二千四百人を対象にした有識者アンケート調査を公表していますが、男女共同参画社会への政府の取り組みについて、言葉を聞いただけの人も含め、七割もの人が知っていると答えています。しかし、地方自治体の首長や行政官など公務員は、九割以上が知っていたと答えているものの、企業経営者や女性有識者は四割前後が知らなかったと答えています。これでは、民間での認知度はまだまだ十分ではないと考えます。
この男女共同参画社会の理念は、国連が女性の地位向上のために定めた昭和五十年の国際婦人年に端を発し、平成六年に首相を本部長とする男女共同参画推進本部が設置されるなど、時間をかけて議論をされてきたものです。法律の名前にもなっている「男女共同参画社会」という言葉は、まさに私たちがこれから育て上げ、実践していく理念であります。
そこで、総理にお尋ねいたします。
男女共同参画社会の理念、意義をどのようにお考えでしょうか。また、法案成立への決意をお伺いいたします。
法案には、基本理念として、男女共同参画社会の形成は、男女の個人としての尊厳が重んぜられること、男女が性別による差別的取り扱いを受けないことなど、男女の人権が尊重されることを旨とすると、男女の人権の尊重が書かれています。
言うまでもなく、男女の平等は憲法で保障されており、十四条には法のもとでの平等が、二十四条には家族生活における個人の尊厳と両性の平等が明記され、四月からは改正男女雇用機会均等法が施行されました。そのため、なぜ今基本法が必要なのかとの意見も耳にします。
しかしながら、本法案は、女性への差別をなくすことに加えて、男性と女性がお互いを個人として尊重し、能力を認め合い、暮らしやすい社会を私たち自身がつくっていく大きな役割があると考えます。厳しい少子高齢化社会の到来の中で、男女が助け合う共同参画社会を形成していかなければ、二十一世紀の我が国に発展はなく、真の成熟した民主主義社会が実現されません。このような基本的視点に立てば、「男女共同参画社会基本法」という名称はその趣旨からいっても最もふさわしいと思います。
ともすると、男女共同参画社会基本法というと女性のための法律のように受けとめられがちですが、私はこの法律は男性にとっても大切であると考えています。官房長官はどのように受けとめておられるのか、お尋ねいたします。
男女共同参画推進本部では、平成八年に国の審議会における女性委員の登用促進が決定されていますが、審議会は各省庁にまたがっており、この例一つとってもその実現のためには各省庁が連携して取り組んでいく必要があります。
また、地方分権が課題となっている今、この法案の理念を実現していくためには、国だけでなく地方の自主性も尊重しながら地方自治体における施策の実施を進めていく必要があります。官房長官は地方での経験もお持ちで、長い間女性に関する施策に御尽力されてきており、本当にこの法案の成立を熱望されていると伺っています。
そこで、この法案に基づき、地方も含めてどのような施策を講じ、男女共同参画社会の実現を図っていくのか、男女共同参画担当大臣である官房長官にその基本的な方針をお伺いいたします。
また、法案には基本理念として、家庭生活における活動と他の活動との両立が掲げられております。現在、少子高齢化社会への対応が大きな課題になっていますが、子供を産み育てることは女性にとっては大変な仕事であるのが現実です。社会的にその大変な仕事を軽減する措置を講ずることは、女性の社会参加を促進し、同時に少子化に対処することにもなり得ます。
総理は、今通常国会の施政方針演説において、少子化への対応を考える有識者会議から、家庭や子育てに夢を持てる環境整備は社会全体で取り組む課題であるとの提言を受け、適切に対応すべく国民会議を設け、国民的広がりのある取り組みを全力で進めていく決意を表明されました。男女共同参画社会基本法案はその取り組みの大きな推進力になると確信するとも言われておりましたが、私も同様に確信しております。
また、男女共同参画社会については、国内的視点からだけでなく国際的視点からも取り組んでいかなければならないと考えています。法案の第七条においても基本理念として国際的協調がうたわれています。これまで女子差別撤廃条約の批准、平成七年の北京における第四回世界女性会議など、その取り組みが進んできました。
そして、西暦二〇〇〇年の節目に当たる来年六月には、ニューヨークの国連で女性二〇〇〇年会議が予定されております。そこで、現在、会議に向けた国内の取り組み体制はどのようになっているのか、官房長官にお尋ねいたします。
この基本法を真に実効あるものにしていくためには、それを動かしていく体制づくりが重要です。今後、中央省庁等の改革において男女共同参画会議の設置、また、総理御自身の決断により担当局を設置することが決まっていますが、実際どのように体制強化を図っていかれるのか、最後に総理のお考えを伺います。
この基本法案が二十一世紀の指針となることによって、すばらしい世界が築かれていくことを確信しております。私自身も男女共同参画社会の実現に向けて研さんし努力していくことをお誓い申し上げ、質問を終わらせていただきます。
ありがとうございました。(拍手)
〔国務大臣小渕恵三君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114515254X01219990412/4
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005・小渕恵三
○国務大臣(小渕恵三君) 狩野安議員にお答え申し上げます。
お尋ねの男女共同参画社会の理念、意義についてでございますが、女性と男性が対等なパートナーとしてさまざまな分野に参画し、喜びも責任も分かち合える社会であると考えております。
なお、このたびの道府県議会議員選挙では、女性の当選者が前回の七十九名から百三十六名に大幅にふえまして、また、従来女性議員のいなかったすべての県で新たに女性議員が誕生いたしたところであり、二十一世紀に向けて、社会のあらゆる分野に女性の参画を促し、豊かで活力ある社会を築くためにも、本法案の成立は極めて重要であると考えます。
体制強化に関するお尋ねでありますが、中央省庁等改革基本法におきまして、現在の審議会に新たな任務を付与し、その機能を強化した合議制の機関として内閣府に男女共同参画会議を置くことといたしております。また、男女共同参画の重要性にかんがみ、新たにその担当局を設けることを私みずから決断したところであり、現在、局にふさわしい強力な推進体制を整えるべく、鋭意検討いたしておるところでございます。
残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)
〔国務大臣野中広務君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114515254X01219990412/5
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006・野中広務
○国務大臣(野中広務君) 狩野議員の私に対する質問についてお答えをいたします。
本法案が男性にとっても大切な法案であるという議員の御意見は、全くそのとおりであると私も思っております。男女を問わず、個人がその能力と個性を十分に発揮できる男女共同参画社会づくりを通じて、自分らしく生きることの大切さや豊かな人生とは何かということが改めて認識されることになるものと考えております。
男女共同参画社会の実現についてのお尋ねでございますが、本法案では、基本理念を定め、国の責務及び地方の自主性を尊重した地方公共団体の責務を明らかにしますとともに、国及び地方公共団体の基本的な計画の策定等、施策の基本となる事項を定めることにより、我が国全体として男女共同参画社会の形成を総合的かつ計画的に推進することといたしております。
次に、女性二〇〇〇年会議に関するお尋ねでございますが、その準備の過程において広く民間団体等との連携を図るため、女性二〇〇〇年会議日本国内委員会の開催について昨年十二月に決定をいたしまして、既に第一回会議を開催したところであります。
今後も、関連する国際会議についての情報提供など、民間団体等との連携を図りながら着実に準備を進めてまいる所存であります。(拍手)
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114515254X01219990412/6
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007・斎藤十朗
○議長(斎藤十朗君) 笹野貞子君。
〔笹野貞子君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114515254X01219990412/7
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008・笹野貞子
○笹野貞子君 私は、民主党・新緑風会を代表して、ただいま議題となりました男女共同参画社会基本法について、小渕総理並びに野中官房長官、陣内法務大臣に質問いたします。
日本国憲法第十三条は、すべて国民は、個人として尊重される。また、その十四条では、すべて国民は、法のもとに平等であると高らかに宣言されていることは既に周知のことであります。ゆえに各種の法律や制度は、この憲法の理念を具体的に推進し、実現することは当然のことと言わなければなりません。
今回提出されましたこの男女共同参画社会基本法も、ただのスローガンや精神論では憲法に対して屋上屋を重ねることになりかねません。真に実効性あるものにするためには具体性が必要であります。
さて、ことしは一九七五年の国連婦人年より二十四年目、来年は二〇〇〇年、世界女性会議が開かれますが、我が国は男女平等についての社会的努力と現実の法整備との間に数々の矛盾を抱えつつ今日に至っていると言えるのではないでしょうか。この法案がそれらの矛盾を解決できるものであることに期待いたします。
我が党でも、昨年来、この基本法に対する取り組みを続け、この法律が男女共同参画の実現を促進するために総合的、効率的に推進することができる中身のある基本法となるように研究してまいりました。この基本法がよりよいものとして成立することを党を挙げて切望するものであります。
それでは、法案の中身について順次質問いたします。
まず、基本法第四条の「社会における制度又は慣行についての配慮」の項について質問いたします。
一九九〇年一月、当時の内閣官房長官であった森山眞弓議員が、その年の初場所の千秋楽の土俵に優勝力士に内閣総理大臣杯を授与するために上がりたいという希望を日本相撲協会に申し入れたところ、相撲は国技であり、伝統、文化は守っていかなければならないという理由で拒絶された事実がありました。
ここで、総理にお伺いいたします。
相撲は国技なのでしょうか。もし国技であるなら、なおさら女性が参加できないのはおかしいのではないでしょうか。裸で回しを締めた女性を土俵にのせろと言っているのではなく、単に優勝杯を力士に授与するために官房長官が土俵に上がるということを拒否されたということは、官房長官という職責が拒否の理由なのでしょうか、それとも森山官房長官が女性であったからということが拒否の理由なのでしょうか。
重ねて総理大臣にお伺いいたします。
今後、女性大臣も多く誕生するのではないかということを考えたとき、この法案が成立することによりこのような慣習も改められていきますか、お答えください。
かつては女人禁制であった酒づくり部門への女性の進出や、船には女性を乗せてはいけないという慣行を超えて海上部門の仕事への女性の進出があります。伝統には、継承していくもの、廃止していくもの、そして創造していくものがあります。差別的あしき慣習がこの法律制定によりなくなるべきであることを私は強く希望いたします。
次に、制度の問題について質問いたします。
例えば、現行の民法における第七百三十三条の再婚禁止期間と、第七百七十二条の嫡出性の推定に関する条文の問題があります。七百三十三条では、女性の再婚禁止期間は六カ月になっております。一方、七百七十二条では、婚姻の成立から二百日後または婚姻の解消もしくは取り消しの日から三百日以内に生まれた子は婚姻中に懐胎したものと推定することになっております。前の結婚、後の結婚、それぞれの間で嫡出推定の重複を避けるためには、再婚禁止期間としては百日を置くことにすれば足りるはずです。同じことが法制審議会の答申にも出ております。女性だけ六カ月も再婚を禁止するという待婚制度とはどのような理由からでしょうか。
こういった制度の矛盾や、さきに述べました慣行の矛盾がこの基本法制定により是正されていくことと確信いたしますが、いかがでしょうか。また、言いかえるならば、このような矛盾が解消されなければ、この基本法は形骸化した意味のないものになってしまうのではないでしょうか。
民法の部分は法務大臣に、また基本法制定により慣行、制度矛盾は解消されるのかどうか、総理にお伺いいたします。
次に、人権の確立という点についてお伺いいたします。
第三条では、男女共同参画の促進は、男女の個人としての尊厳が重んじられること、性別による差別的取り扱いを受けないこととなっております。その差別的取り扱いについては、直接的には性別による差別的取り扱いをするものではないが、結果として男女のいずれか一方に対し差別的効果をもたらすこととなる取り扱いを含むという、いわゆる間接差別の規定が盛り込まれておりませんが、間接差別の存在をどのように考えていらっしゃいますか。この基本法にこそそのような問題を盛り込むべきだと思いますが、官房長官にお伺いいたします。
また、マスコミ等にも取り上げられている女性と暴力の問題についてです。
「ドメスティック・バイオレンス」という言葉が最近よく聞かれる言葉かと思います。本院でも共生社会調査会で、年間テーマを「暴力」として所属議員が調査研究を続けておりますが、家庭に限らず、職場においても、社会全体においても暴力の問題が注目されています。この暴力の問題は、人権の問題の中でも非常に重要な問題だと思います。この基本法の中に暴力の根絶を提唱すべきものだと思いますが、この点、総理の御見解をお伺いします。
次に、十三条の基本計画についてお伺いいたします。
この基本法から基本計画についての具体的姿が何も見えません。総合的かつ長期的に講ずべき施策の大綱とは具体的に何かお考えがあるのでしょうか。官房長官、お答えください。
第十七条の苦情の処理等に関する項目ですが、被害者の救済を図るための必要な措置とはどのような措置でしょうか。この際、必要な措置を講ずるためには法制上の措置等が当然必要なことだと思いますが、この点、今後の見込みも含めて、官房長官、お答えください。
これらすべての問題に対し具体的解答はすべて審議会に丸投げという従来の政府のやり方では、国会軽視、立法府の弱体化という疑義を抱かざるを得ません。この基本法作成に至っての各方面の御努力には敬意を表しますが、いまだ不十分な部分が多く見られます。その点は国会において十分な審議を尽くすべきでありましょう。
この基本法が画竜点睛を欠いたものにならないように、中身のある、しかも現実の世界に根づいた法律として生み出さなければなりません。まさにそのことは立法府の威信をかけて行うべきであります。
最後にそのことを申し上げ、私の質問を終わります。(拍手)
〔国務大臣小渕恵三君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114515254X01219990412/8
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009・小渕恵三
○国務大臣(小渕恵三君) 笹野貞子議員にお答え申し上げます。
まず、相撲は国技かというお尋ねでありましたが、我が国におきましては、国技が何を指しているかにつきましては公的に定めたものはございません。相撲につきましては、その歴史や広く国民に親しまれているといったことから、一般的には相撲が国技として認識されているものと考えております。また、このことと女性への対応については必ずしも直接に関係するものと思っておりません。
かつて森山官房長官が国技館の土俵に上がれなかった理由についてでありますが、このことにつきましては、日本相撲協会が大相撲の伝統、慣例により自主的に判断を行ったものと承知いたしております。
慣行や制度についてお尋ねでありましたが、本基本法の制定によりまして、男女共同参画社会の形成という観点から、さまざまな制度、慣行について国民の間で広く御議論され、必要な検討がなされていくものと考えております。
女性に対する暴力の根絶についてお尋ねでありました。
本基本法は、男女共同参画社会の形成を総合的かつ計画的に推進することを目的としておりまして、個別具体的な施策については規定いたしておりません。しかしながら、本法の基本理念として、男女の個人としての尊厳等、人権の尊重をうたっているところであり、その基本理念に照らし、女性に対する暴力は許されるべきものではないと考えております。
残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)
〔国務大臣野中広務君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114515254X01219990412/9
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010・野中広務
○国務大臣(野中広務君) 笹野議員の御質問にお答えいたします。
いわゆる間接差別についてのお尋ねでありますが、何をもって間接差別というのか社会的合意が得られておらないわけでございまして、本法案におきましては、差別的取り扱いについて、直接差別、間接差別という切り口からは規定をいたしておりませんが、性別による差別的取り扱いの問題につきまして、法第三条におきまして、男女の人権の尊重の基本理念にのっとり、適切に対処してまいりたいと考えておるところでございます。
次に、総合的かつ長期的に講ずべき施策の大綱についてのお尋ねでございますが、これは、職域、学校、地域、家庭などにおきます男女共同参画社会の形成の促進に関する施策の基本的方向を定めるものでございます。
なお、基本計画に盛り込む事項につきましては、男女共同参画審議会の答申を踏まえまして、時代の変化等に柔軟に対応するため、このようにいたした次第であります。
次に、第十七条に関連をいたしまして苦情の処理等についてのお尋ねでございますが、この法案におきましては、苦情の処理等が重要でありますことから、国は、政府の施策についての苦情の処理や人権侵害の救済のために必要な措置等を講じなければならない旨を規定いたしておるところでございます。
具体的な措置につきましては、まず、例えば行政相談委員、人権擁護委員等の既存の制度の活用を図ることを考えておりますが、今後さらに幅広い御意見を承りながら検討をしてまいりたいと考えております。(拍手)
〔国務大臣陣内孝雄君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114515254X01219990412/10
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011・陣内孝雄
○国務大臣(陣内孝雄君) 私に対する御質問にお答え申し上げます。
女性の再婚禁止期間を定めた民法第七百三十三条についてのお尋ねでございますが、同条の趣旨は、民法第七百七十二条が定める子の嫡出性の推定が前婚と後婚とで重複することを避けること等により、子の福祉を図るというものであり、嫡出性推定の重複を避けるという意味では女性の再婚禁止期間は百日とすることで足りますので、かかる観点から法制審議会は再婚禁止期間を現行の六カ月から百日に短縮する旨の答申を出しております。
ただ、民法第七百三十三条には、女性が懐胎していることを知らずに婚姻する可能性のある後婚の夫を保護しようとする趣旨もございまして、前婚の子が後婚成立後に出生する可能性を排除するため、再婚禁止期間を六カ月と定めて余裕を持たせたものと思われます。
この問題につきましては、今後、国民各界各層や関係方面で御議論が深まることを期待したいと考えております。(拍手)
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114515254X01219990412/11
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012・斎藤十朗
○議長(斎藤十朗君) 但馬久美君。
〔但馬久美君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114515254X01219990412/12
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013・但馬久美
○但馬久美君 私は、公明党を代表いたしまして、ただいま議題となりました男女共同参画社会基本法案につきまして、総理並びに関係大臣に質問いたします。
個人の尊厳、男女平等の理念が高らかにうたわれた日本国憲法が施行されて既に五十年余り経過いたしました。この間、憲法の理念にのっとった我が国独自の婦人参政権などの法的取り組み等に加えて、女子差別撤廃条約の批准、国際婦人年や第四回世界女性会議等の国際的な動きと連動した結果、我が国における女性の活躍が著しく発展を遂げたことは否定することはできません。
しかしながら、我が国に根強く残る性別役割分担意識や社会通念、慣行等による男性優位、男性主導の社会経済構造は、二十一世紀を目前に控えた今日においても依然根本的に改善される気配は見えてまいりません。また、男女平等を目指す法的整備や制度改革による表面的な男女平等社会形成への取り組みとは裏腹に、女性に対する実質的な差別が根強く存在するとともに、最近では、女子大生の就職難を初め間接差別の動きも際立って多くなってきております。
ここで注意すべきは、世紀の転換期を迎えるに当たって顕著となってきた我が国の社会経済環境の変化であります。すなわち、少子高齢化の急速な進展、国内経済活動の成熟化、国際化の一層の進行、情報通信の高度化、家族形態の多様化、地域社会とのかかわり方の変化等であります。女性も男性も生き生きと自己実現し、育児や介護も両立させ、職場や家庭、地域で輝くことのできる生活者重視の社会を実現するには、男女共同参画社会の実現が不可欠であると思います。
こうした我が国の女性が置かれた現状や我が国の社会経済環境の変化を直視するとき、本基本法案第一条「目的」に、「男女の人権が尊重され、かつ、社会経済情勢の変化に対応できる豊かで活力ある社会を実現することの緊要性にかんがみ、」云々と明記していることは積極的に評価できると考えますが、小渕総理は、この基本法案の意義をどのように考えておられるか、御所見をお伺いいたします。
ところで、「男女共同参画社会基本法案」という題名についてでありますが、この基本法案が定める目的や男女共同参画社会の形成についての定義などに見られるように、その理想ないし理念は、それ自体はまことにすばらしいと考えますが、そもそも本基本法案の出発点は、人々の意識の中に形成された固定的な役割分担意識等からくる事実上の男女の格差、特に国際水準から見てもおくれている政策・方針決定過程の現状など、さまざまな課題を解決すべきであったはずです。
このことを強調し、かつ実効性を期するためには、「男女平等促進確保法案」というような選択もあったのではないかと思われますが、「男女共同参画社会基本法案」とした理由並びに本基本法案が形成することを目指している男女共同参画社会の具体的イメージについて、野中官房長官、それぞれ御説明願います。
さて、政策等の立案や決定過程への女性の参画の状況は、女性が社会の対等な構成員としてどれだけ活躍しているかを示す指標にあらわれると言われています。しかしながら、この点、我が国は極めておくれた状況であり、一九九〇年に国際連合の経済社会理事会で定めた、意思決定レベルの地位における女性の比率を一九九五年までに三〇%にするという目標からはほど遠い状況にあります。政府は、平成八年五月に、国の審議会等における女性委員の登用を、当面の目標値として平成十二年度末のできるだけ早い時期に二〇%にすると明言しました。二〇%という数字は低過ぎるとの感はぬぐい切れません。
先述の国連経済社会理事会で定めた三〇%の目標はいつまでに達成されるおつもりか、官房長官にお伺いいたします。
また、国連開発計画が開発したHDI、人間開発指数、GDI、ジェンダー開発指数、及びGEM、ジェンダーエンパワーメント測定によって我が国の状況を見ますと、一九九八年の発表ではHDIが百七十四カ国中八位、GDIが百六十三カ国中十三位であるのに対して、GEMは百二カ国中三十八位と大きく落ち込んでおります。
この三つの数字が示すのは、我が国は女性の能力の開発においては国際的にすぐれてはいるものの、政治、経済、社会的生活の分野において女性の意思決定への参加では大きく立ちおくれているということであります。
これは、本基本法案が定める「積極的改善措置」、いわゆるポジティブアクションの効果を示したものですが、国は女性の登用などを積極的に改善し、男女共同参画社会の形成を促進する責務を有しております。
そこで、積極的改善措置の適用分野と内容について、官房長官から具体例を挙げて御説明いただくとともに、この積極的改善措置が逆差別に相当しないことを明記すべきであると思いますが、官房長官の御所見をお伺いいたします。
次に、この基本法案が成立すれば、民法の婚姻適齢が男性と女性で違ったり、夫婦に同じ姓を強いる現行の民法のあり方、あるいは税制や年金制度について、かねて問題視されてきた事項の見直しが早急に迫られることは必定と言わなければなりません。これらの課題について、いつまでに、どのように見直しされるのか、それぞれ法務、大蔵、厚生諸大臣並びに官房長官の御所見をお伺いいたします。
ところで、男女共同参画社会の形成を促進するとともに、その実効性を期するためには、男女共同参画社会の形成に係る施策に関しての苦情処理及び性別による差別的な取り扱い、あるいは家庭内暴力等、人権が侵害された場合における被害者救済のための制度の整備は不可欠であります。
本基本法案においては、苦情処理の措置や被害者救済措置を講ずべきであると規定はしているものの、その具体的な内容は必ずしも明確ではありません。
また、男女共同参画審議会の答申では、オンブズパーソン機能の活用は重要であるとしながらも、我が国においては、類似機能として、国政調査や行政相談員、そして人権擁護委員、あるいは行政監察等で対応する考えが濃厚であり、必要に応じて個別法で対応するとしていますが、その個別法は具体的に何を意味しているか定かではありません。
私は、苦情処理及び被害者救済の実効性を確保するとともに、国民各層の、本基本法案の掲げる基本理念や男女共同参画社会の形成に向けての理解を深めるためには、この際、オンブズパーソン制度の導入を図ることがぜひとも望ましいと考えますが、官房長官の御所見をお伺いいたします。
次に、男女共同参画社会の形成に向けて、政府の推進体制づくりも重要な課題であります。
二〇〇一年一月一日の中央省庁の再編に当たっては、内閣府に男女共同参画会議が設置されます。事務局体制として、内閣府に、男女共同参画に関する企画立案及び総合調整を主な所掌事務として男女共同参画局が設置されることが予定されておりますが、現行推進体制と比較して具体的にどのように強化されるのか、官房長官から御説明願います。
さて、今二十世紀は、一言で言うならば、男性優位、男性主導の社会であり、人間より国家、心より物が大切にされた時代と言っても過言ではありません。その結果、戦争や暴力が荒れ狂った世紀でありました。これからの政治には、女性の特質である生活に根差した現実主義や平和志向が生かされることが大切だと思います。男女共同参画社会基本法は、二十一世紀を人権の世紀、生命の世紀へ変革しようという壮大な意義を有する法であると考えます。
最後に、小渕総理の二十一世紀に対する展望と御決意をお伺いいたしまして、私の質問とさせていただきます。
以上です。(拍手)
〔国務大臣小渕恵三君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114515254X01219990412/13
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014・小渕恵三
○国務大臣(小渕恵三君) 但馬久美議員にお答え申し上げます。
本法案の意義について、まずお尋ねがありました。
議員御指摘のとおり、本法案は、少子高齢化など社会経済情勢が急速に変化する中にありまして、男女の人権が尊重され、かつ、社会経済情勢の変化に対応のできる豊かで活力ある社会を実現することを目的とするものであり、二十一世紀を決定する大きなかぎとなる意義を持つものと考えます。
二十一世紀に対する展望についてお尋ねがありましたが、その前に、議員の御意見につきましては私としても真剣に拝聴いたしたところであります。
なお、男女共同参画社会という視点から考えますと、女性と男性が、みずからの個性を発揮し、生き生きと充実した生活を送ることができる社会を実現していくことは、二十一世紀への重要なかけ橋の一つであり、今後さらにそうした社会の形成に向けて力を尽くしてまいる所存でございます。
残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)
〔国務大臣野中広務君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114515254X01219990412/14
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015・野中広務
○国務大臣(野中広務君) 但馬議員の私に対する質問にお答えをいたします。
まず、法案の名称等についてのお尋ねでございますが、昨年の男女共同参画審議会の答申におきまして、一つには、男女共同参画社会は、男女平等を当然の前提とした上で、さらに男女が各人の個性に基づいて能力を十分に発揮できる機会を保障することをも重要な基本理念としておりますこと、二つには、男女があらゆる分野における意思決定過程への参加、すなわち参画が極めて重要であり、この点を強調する必要があること等から、名称を「男女共同参画社会基本法」とすることが適当であるとされたところでございます。
政府といたしましては、以上申し上げたことを踏まえまして、法案の名称を「男女共同参画社会基本法案」といたしたところであります。
男女共同参画社会につきましては、男女が対等なパートナーとしてさまざまな分野に参画し、喜びも責任も分かち合える社会のイメージを持っております。
次に、政策・方針決定過程への男女共同参画についてのお尋ねでありますが、我が国におきましては、先ほど但馬議員より御指摘がございましたように、平成八年五月に男女共同参画推進本部におきまして、国の審議会等委員の女性委員の割合について、国際的な目標である三〇%をおよそ十年程度の間に達成するよう引き続き努力を傾注することと決定をいたしておりまして、現在、この目標の達成に向けまして鋭意努めておるところでございます。
次に、積極的改善措置についてのお尋ねでございますが、さまざまな分野において男女間の格差を改善いたしますために、必要な範囲内におきまして男女のいずれか一方に対して活動に参画する機会を積極的に提供するものであると考えております。例えば、国におきましては、国の審議会等委員への女性の登用のための目標値の設定及び調査等が実施されております。
この積極的改善措置が逆差別に当たらないかというお尋ねでありますが、第八条におきまして「積極的改善措置」が国の責務として明確に規定されておるという本法律案の構造から明らかであると考えておるところでございます。
次に、民法、税制、年金等の制度についてのお尋ねでありますが、本基本法の制定により、男女共同参画社会の形成という観点からさまざまな制度について国民の間で広く御議論され、検討に生かされていくことを期待いたしておるところでございます。
次に、苦情の処理等についてのお尋ねでありますが、本法案は基本法でありますことから、具体的な措置については規定をいたしておりませんが、男女共同参画社会の形成を促進いたしますためには重要な課題であることから、国は、政府の施策についての苦情の処理や人権侵害の救済のために必要な措置等を講じなければならない旨を規定いたしておるところでございます。
次に、中央省庁等改革に関するお尋ねでありますが、中央省庁等改革基本法におきましては、現在の審議会に新たな任務を付与いたしまして、その機能を格段に強化した合議制の機関として、内閣府に男女共同参画会議を置くことといたしておるところであります。
また、小渕総理の決断によりまして、新たに男女共同参画を担当する局を設けることといたしておりまして、現在、局にふさわしい強力な推進体制とするべく検討をいたしておるところでございます。(拍手)
〔国務大臣陣内孝雄君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114515254X01219990412/15
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016・陣内孝雄
○国務大臣(陣内孝雄君) 但馬久美議員の御質問にお答え申し上げます。
婚姻適齢及び夫婦別姓についてのお尋ねでありますが、選択的夫婦別氏制度導入等に関する民法改正につきましては、政府の行動計画である男女共同参画二〇〇〇年プランにおいて検討を進めることとされております。
民法は基本法であり、特に選択的夫婦別姓制度のように社会や家族のあり方など国民生活に重大な影響を及ぼす事柄につきましては、大方の国民の理解を得ることができるような状況で法改正を行うのが相当であると考えられますので、世論調査の結果等を見ますと、国民の意見はなお大きく分かれていることがうかがわれるわけでございます。
したがいまして、この問題につきましては、本法案の趣旨も踏まえて、国民各界各層や関係方面で御議論が深まることを期待したいと考えております。(拍手)
〔国務大臣宮澤喜一君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114515254X01219990412/16
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017・宮澤喜一
○国務大臣(宮澤喜一君) 税金等の問題についてお尋ねがございまして、御承知のように、かつて本院でも何度か御議論になりました、家庭の主婦がパートタイムをして稼がれる所得がある水準を超えますと、それ自身が課税の対象になるのみならず、主婦として御主人の扶養家族であった資格を失うという問題がございますために、あるところを超えますと、御主人と合算した税抜き所得というものがかえって減るという問題があったわけでございます。
このことは結局何度か御立法がありまして、いわゆる百三万円と言われる問題ですが、逆転をするということは今なくなったわけでございます。そういう問題は、この問題に関する限り解消をいたしました。
しかし、将来の問題としていろいろ考えますと、今、所得税は御承知のように個人ベースで課税されておりますから、主婦のパートタイムぐらいでございますと百万円とかいうことで大したことはございませんが、だんだんフルタイムの所得になってくる、そういうふうな社会になると考えなければなりません。
その場合、現在、個人ベースでやっておりますが、大きな世帯ではたくさんの家族を養わなければならないということから扶養控除という制度を置いておりますために、個人課税でありながら、現実に我が国の社会が大変にそうでございましたので、世帯における主たる所得者の負担を軽減するために扶養控除というものをずっとやってまいりました。その部分が個人課税に徹し切れていない部分でございますが、もし将来、いわゆるツー・インカム・ファミリーのようになってまいりましたときには、ここらのところを一遍考え直さなければならないのではないかという問題が今、急ではございませんけれども、検討しておかなければならない問題としてあるかもしれないということは感じております。(拍手)
〔国務大臣宮下創平君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114515254X01219990412/17
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018・宮下創平
○国務大臣(宮下創平君) 但馬議員にお答え申し上げます。
女性の年金制度についてのお尋ねでございますが、女性の社会進出あるいは家族・就労形態の多様化を踏まえまして、女性の年金につきまして制度全体にわたる検討が必要となっていることは十分認識しております。
しかしながら、具体的な検討を行う際には、就労状況、賃金水準といった実際に女性が置かれている社会実態を踏まえつつ、民事法制、税制、その他社会保障制度等との整合性に留意する必要があると考えております。
このように、女性の年金の問題につきましては、年金制度に限らず幅広い分野にわたる課題がございますので、今後、民事法制、今、大蔵大臣の説明にありましたように税制問題、社会保障、年金数理などの専門家から成る新たな検討の場を設けまして、早急に検討してまいりたいと考えております。
以上でございます。(拍手)
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114515254X01219990412/18
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019・斎藤十朗
○議長(斎藤十朗君) 阿部幸代君。
〔阿部幸代君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114515254X01219990412/19
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020・阿部幸代
○阿部幸代君 私は、日本共産党を代表して、男女共同参画社会基本法案について質問をいたします。
一九四六年四月十日、千三百七十七万人の女性有権者が初めて投票に参加した総選挙が実施され、半世紀がたちました。このとき当選した三十九人の女性議員も加わって審議、制定された日本国憲法は、その第十三条、第十四条及び第二十四条において、個人の人権の最大の尊重や法のもとの平等と差別の禁止、婚姻や家族等に関する本質的平等を定め、男女平等と女性の地位向上を推進するよりどころとなってきました。
また、国連を中心とした人権尊重の取り組みの中で採択され、一九八五年、日本政府も批准した女性差別撤廃条約は、締約国にすべての経済的、社会的、文化的、市民的及び政治的権利について男女の平等な権利を確保することを義務づけています。
今日、女性への暴力の根絶など人権概念や女性の人権意識は豊かに発展しており、新たな基本法の制定が期待されるところです。しかし、それは男女の実質的な平等を目指す法律であってこそ真に歓迎されるものであります。
そこで、質問いたします。
法案では、第二条一項で「自らの意思によって社会のあらゆる分野における活動に参画する機会が確保され、」とあり、第三条で「男女が個人として能力を発揮する機会が確保され」、第五条で「政策」「方針の立案及び決定に共同して参画する機会が確保され」とあるように、専ら機会の確保が主眼となっています。「男女平等」という文言が全くありません。法案に期待を寄せる多くの女性と国民がここにこの法案の不十分性を見てとるのは避けがたいことです。憲法と女性差別撤廃条約の男女平等と人権尊重の理念が大原則として必要ではないでしょうか。そうでなければ、機会の確保さえ十分保障されないのではありませんか。
また、この法案が、その第一条「目的」で、「この法律は、男女の人権が尊重され、かつ、社会経済情勢の変化に対応できる豊かで活力ある社会を実現することの緊要性にかんがみ、」としているのは問題です。そもそも、男女の人権尊重と平等の実現というのは、社会経済情勢の変化にかかわりなく、その時々の政策によって左右されてはならない普遍的な原則ではありませんか。
次に、日本における女性の地位について質問いたします。
女性の就業率は男性の七六%に対して五〇%であり、いわゆるM字型カーブに見られるような、結婚や出産を契機とした退職や介護等での退職も多く、労働省自身、女性の多くは働く希望を持ちつつも、現実には就業する環境が厳しいため就業を控えていると認めざるを得ない状況です。
職場における昇進・昇格差別も大きな問題です。女性労働者の三分の一がパートであることもあって、女性の平均賃金は男性の五〇%にすぎません。自営業者の妻は自家労賃が認められず、農林漁業者の妻も同様にその経済的地位は極めて低いものです。日本におけるこうした男女間格差は、国際的に見ても大き過ぎるのではありませんか。格差是正のために、本法案にとどまらず、具体的な法的整備が必要ではありませんか。
また、女性国会議員は衆議院二十四人、四・八%で、百八十カ国中百二十八位、参議院四十三人、一七・〇六%で、六十六カ国中二十位、両院のデータが存在する六十六カ国中四十五位です。
女性の地方議会議員はこれまで四・六%にすぎず、昨日開票の道府県会議員選挙で、女性当選者が我が党の五十六人を初め、過去最多になったことに注目が寄せられたのは当然でした。
女性管理職も中央省庁でわずか一%程度、都道府県でも三・一%です。企業における女性管理職の割合は、課長相当職で二%にすぎません。
こうした例に典型的に見られるように、政策・方針決定過程への女性の参加が低いのはなぜなのか、その阻害要因を明らかにし、必要な条件整備をするのが政府の責任ではありませんか。
次に、男女平等と女性の人権に欠かせない母性保護についてです。
少子化が日本社会の将来に対する不安を増幅し、国民的関心事になっています。安心して子供を産み育てられる社会の形成は国民的課題ではないでしょうか。そのためにも、男女両性の生涯にわたる健康と性的自己決定権の尊重、あわせて、産む性である母性の保護が図られなければなりません。
新日本婦人の会の一九九七年の働く女性の健康アンケートによると、最近五年間に妊娠した方たちの三五・一%が順調でなかったと答え、切迫流産が三八・九%にも上っていました。
母性は社会的機能であり、その日常的な保護は人間社会の存続にとって欠かすことのできない基本的条件であり、権利です。このことは女性差別撤廃条約にも明記されています。法案に母性保護の規定を入れるべきではありませんか。
こうした男女の格差を是正することといい、母性保護を進めることといい、企業の果たす役割と責任を無視するわけにはまいりません。
例えば、男女の賃金格差、女性の低賃金は、育児休業や介護休業を結局女性が取得することを促し、男女共同参画とは矛盾する性別役割分業の固定化をもたらします。また、男女ともにの長時間労働や深夜労働は、子供を産むことも家族的責任を果たすことも困難にします。格差是正と母性の保護を初め、企業、事業主の責任は大きいのではありませんか。
ところが、法案では、国の責務、地方公共団体の責務、国民の責務と三つを並べただけです。企業、事業主の責務を明記するべきではありませんか。そうでないと、政府は財界寄りと批判されても仕方がないのではありませんか。
家庭生活における活動とほかの活動の両立についても問題があります。法案は、子の養育や家族の介護などを、家族を構成する男女が相互の協力と社会の支援のもとに行うとしていますが、社会の支援とは何なのかが極めて不明確です。家族的責任を果たすためには、相互の協力や地域の連帯とあわせて、行政の責任、すなわち国や自治体の支援を明確にすることが不可欠ではありませんか。
最後に、法案を実効あるものにするために、男女共同参画基本計画について質問をいたします。
少なくとも、雇用の分野における男女平等や農山村の女性と業者婦人の地位向上、政策・方針決定過程への参画など、基本的な事項を法案に盛り込むべきではないでしょうか。そのようにして、法律を身近で使いこなしやすいものにしてこそ男女共同参画が、単に上から与えられるのではなく、男女国民の自主的な参加によって形成されていくものになるのではないでしょうか。
以上は、いわば法案に魂を入れる作業であり、責任あるものにする作業でもあります。男女共同参画推進本部長である総理大臣の決意ある答弁を求めて、私の質問を終わります。(拍手)
〔国務大臣小渕恵三君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114515254X01219990412/20
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021・小渕恵三
○国務大臣(小渕恵三君) 阿部幸代議員にお答え申し上げます。
男女平等と人権尊重の理念に関するお尋ねでございますが、本法案は、男女共同参画社会が、男女が社会の対等な構成員として活動に参画する機会が確保される社会である旨を規定するとともに、基本理念であります男女が性別による差別的取り扱いを受けないこと等の男女の人権の尊重を掲げており、御懸念は当たらないものと考えます。
男女の人権尊重と平等の実現についてお尋ねがございますが、議員も述べられたとおり、男女平等など人権の尊重は、いかなる経済社会環境のもとにあってもその達成に向けてたゆまぬ努力が求められるものであります。このため、本法案では、男女の人権の尊重を基本理念として掲げているところであります。
男女間格差の是正についてお尋ねですが、本法案は、男女が社会の対等な構成員として活動に参画する機会が確保され、男女が均等に利益を享受することができ、かつ、ともに責任を担うべき男女共同参画社会の形成を目的とするものであり、このため、基本計画の策定等を行い、必要な各般の措置を講じてまいりたいと考えております。
政策・方針決定過程への女性の参画についてお尋ねでありますが、世論調査によりますれば、男性優位の組織運営、性別役割分担意識等が主な阻害要因であるとされております。政策・方針決定過程への男女共同参画は重要課題であるとの認識から、本法案の基本理念に掲げているところであり、今後とも努力してまいりたいと考えております。
母性保護についてお尋ねですが、本法案は、基本理念等を定めることによりまして、男女共同参画社会の形成を総合的かつ計画的に推進することを目的とするものであることから、母性保護等個別具体的な事項については規定しておりませんが、基本理念として男女の人権の尊重を盛り込んでおり、その基本理念に照らして母性保護の問題も重要であると認識しております。
企業、事業主の責務についてお尋ねですが、男女共同参画社会の形成に当たっては、単に職場だけでなく、あらゆる分野において取り組みを行うことが求められており、事業主の責務を特記するのではなく、国民の責務として、職域、学校、地域、家庭等あらゆる分野において男女共同参画社会の形成に寄与するよう努めなければならない旨規定することといたしました。
家族的責任を果たすための支援についてのお尋ねでありますが、本法案におきましては、基本理念として、家族を構成する男女が、相互の協力と社会の支援のもとに、家庭生活における活動と他の活動の両立ができるようにすることを掲げるとともに、基本理念にのっとった国及び地方公共団体の責務を規定しており、適切に対処してまいりたいと考えております。
最後に、基本計画についてお尋ねでありましたが、男女共同参画審議会の答申では、基本計画に盛り込む事項については、世界の情勢、時代の変化に柔軟に対応するため主要事項にとどめることが適当であるとされており、本法案では、同答申を踏まえ、基本計画の規定を定めたところであり、審議会の意見を聞いてその案を作成することといたしております。
以上、お答えといたします。(拍手)
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114515254X01219990412/21
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022・斎藤十朗
○議長(斎藤十朗君) 清水澄子君。
〔清水澄子君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114515254X01219990412/22
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023・清水澄子
○清水澄子君 私は、社会民主党・護憲連合を代表して、男女共同参画社会基本法案について小渕総理大臣並びに関係大臣に質問をいたします。
女性に対する差別は人間の尊厳に対する侵犯である、一九六七年、国連で採択された女性差別撤廃宣言は高々と男女平等の明かりを掲げました。さらに、一九七五年に開催された第一回世界女性会議は、男は仕事、女は家庭という性別役割分業の撤廃と女性の政策決定への参加を宣言する画期的な出来事となりました。
我が国においても、一九七五年、今は亡き市川房枝、田中寿美子両議員らの尽力により、「国際婦人年にあたり、婦人の社会的地位の向上をはかる決議」が衆参両院において全会一致で行われたのであります。
さらに、国連は、一九七九年、女性差別撤廃条約を採択し、女性に対するあらゆる形態の差別を撤廃するために必要な措置をとることを条約として表明いたしました。この女性差別撤廃条約こそ男女平等推進のための世界女性の憲法ともいうべき存在であります。また、一九九三年には、世界人権会議のウィーン宣言で女性の権利は人権であると明確に示されると同時に、国連総会で女性に対する暴力撤廃宣言が全会一致で採択され、人権の再定義が行われました。
国連の提唱のもと、政府、女性・NGOがつくってきたこの世界的潮流は二十一世紀へと続くものであります。
そこで、まず総理にお伺いいたします。
この女性差別撤廃条約を初めとする国際合意を女性の人権に関する国際基準と認識し、我が国においてもこの完全実施に向けて諸施策を断行する意思はおありでしょうか、その基本的認識と決意をお伺いいたします。
また、今回提出された法案の名称がなぜ「男女平等基本法」ではなく「男女共同参画社会基本法」なのか、その理論的、政策的根拠をお聞かせください。
また、本年三月には、国連女性の地位委員会において、個人への人権侵害を国際機関によって救済するための個人通報制度を規定した女性差別撤廃条約の選択議定書草案が承認されました。私は、日本政府がこれに賛成したことを評価しておりますが、国連総会での一日も早い成立、さらには早期批准のために全力を尽くすべきと考えます。総理の御見解を承りたいと存じます。
さて、我が社会民主党は、社会党時代から、政府に先駆けて雇用平等法案、育児休業法案を提出し、連立与党時代には女性基本法の制定を三党合意に盛り込むなど、常に先頭に立って男女平等の実現を追求してまいりました。こうした経緯から、今回政府が初めて包括的な基本法案を提出したことについては、男女平等社会への第一歩として評価し、歓迎するものであります。
しかしながら、我が国においては、女性の平均賃金は男性の五〇・二%と下がり、平均年金受給額は男性の半分で、年間百二十万円以下の女性が五割以上を占めております。母子家庭の平均年収は父子家庭の半分の二百十五万円にとどまり、女性の経済的自立は諸外国に比べ大きく立ちおくれております。
さらに、女性の国会議員に占める比率は九・一%、地方議会議員は四・六%にすぎず、総理が指名された女性閣僚はただ一人です。国連開発計画、UNDPは女性の経済や政治への参加の度合いを指標化しておりますが、一九九五年の日本の順位は百十六カ国中二十七位、昨年は百二カ国中三十八位と下がっています。
このような現状に対し、国際的にも疑問や批判の声が上がり、民法改正などの具体的指摘も相次いでおります。総理はこうした我が国の現状をどう認識し、どう改善していくおつもりか、法改正やその手順を含め明確な答弁を求めます。
さらに、真の男女平等を実現するためには、社会制度や慣行の見直しと国民の意識の変革が必要であり、教育やマスメディアの果たす役割は重要であります。総理は国民、なかんずく大臣を初め政策決定過程にかかわる各省庁職員に対し、男女平等のための教育、啓発をどう進めていくおつもりか。また、これに貢献するメディアのあり方及びその実現方策について、野田郵政大臣の御所見を伺います。
以下、男女平等の実効を図る観点から、法案の内容について野中官房長官にお伺いいたします。
第一に、かなめとなる雇用の場における差別撤廃、男女平等の促進についてであります。
この担保のため、基本法においては事業主の責務を盛り込むとともに、家族的責任に関するILO百五十六号条約の考え方にのっとり、家庭生活と職業生活の両立を明文化すべきと考えますが、見解を伺います。
また、我が国においては女性のパート労働化が進み、とりわけ既婚女性が再就職する際にはパート以外の職を得ることは難しく、結果として低賃金、低労働条件のもとに置かれるなどの間接差別の現実があります。こうした間接差別は女性差別撤廃条約でも禁止しているものであり、基本法でも明確に位置づけるべきと思いますが、官房長官の御答弁を求めます。
第二に、ポジティブアクションについてであります。
政府は、これを具体的にどう実行するお考えでしょうか。さらに、「積極的改善措置」との用語は、本来、女性差別撤廃条約で規定されているとおり「積極的平等促進措置」とすべきであり、これが逆差別に当たらないことを明文化すべきと考えますが、御所見を伺います。
第三に、基本法が個別具体的課題を明らかにしていないことは、その実効を図る観点から大いに疑問があると言わざるを得ません。やはり、個別の法律、制度の見直しや施策の方向性を明らかにし、その促進を図るために、雇用の平等、男女平等教育、税制、社会保障制度における女性差別の解消、社会経済活動における性差別の撤廃、女性に対する暴力の根絶、リプロダクティブヘルス・ライツの保障などを基本計画に定めるべき事項として明記する必要があります。この点についての見解を求めます。
第四は、苦情処理、被害救済のための第三者機関の設置についてであります。例えば、英国の機会平等委員会は、監視機構として年間二万五千もの案件を取り扱い、政府に対し勧告も行っております。このように、行政から独立し、強力な権限を持つ第三者機関が不可欠と考えますが、実現する意思はおありかどうかをお伺いいたします。
さらに、男女平等に向けた推進体制の整備強化は喫緊の課題であります。この点、百名規模の女性の地位庁が設置され、大臣と専任の副大臣が置かれているカナダあるいはフィリピンと比べるまでもなく、我が国の体制は余りにも脆弱であります。官房長官が男女共同参画担当大臣となり、ここまで施策を進めてきたことは評価いたしますが、より一層強力に推進するためには、男女共同参画室や行革で設置が決まった男女共同参画会議の人員・予算両面にわたる抜本的拡充はもとより、各省庁の施策を点検、評価、監視、勧告できる権能の付与や専任の担当大臣の設置がぜひとも必要です。総理並びにただ一人の女性閣僚でもある野田郵政大臣に国務大臣としての見解を伺います。
最後に、私どもは、個人の尊重と男女平等をうたう日本国憲法とこの基本法が両輪となって日本における男女平等を実現するとともに、国際的な人権の確立と平和に貢献することを強く望んでおります。
男女平等は決して女性だけの問題ではありません。それは、男性にとってもまた、性別役割分業から解放され、人間性豊かでゆとりある生活を実現するものであり、真の民主主義を達成するために不可欠の条件であります。
私は、二十一世紀の早い時期に男女平等社会を実現すべきと考えておりますが、小渕総理の男女平等社会実現に向けての決意をお伺いして、私の質問を終わります。(拍手)
〔国務大臣小渕恵三君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114515254X01219990412/23
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024・小渕恵三
○国務大臣(小渕恵三君) 清水澄子議員にお答え申し上げます。
女子差別撤廃条約等に関するお尋ねでありましたが、女子差別撤廃条約は、女子に対する差別の撤廃を目的とした女性の人権に関する国際規範であると認識し、条約の遵守に努めてまいりました。世界人権会議におけるウィーン宣言や国連総会での女性に対する暴力撤廃宣言など、国際的な動きも踏まえつつ、女性の人権に関し、今後も適切に対処してまいりたいと考えております。
基本法の名称についてお尋ねでありましたが、男女共同参画審議会答申におきまして、男女共同参画社会は、男女平等を当然の前提とした上で、さらに、男女が各人の個性に基づいて能力を十分に発揮できる機会を保障することも重要な基本理念としていること、男女があらゆる分野における女性の意思決定過程への参加、すなわち参画が極めて重要であり、この点を強調する必要があることから、名称を「男女共同参画社会基本法」とすることが適当であると提言されております。政府といたしましては、同答申を踏まえ、名称を「男女共同参画社会基本法案」としたところであります。
女子差別撤廃条約選択議定書についてお尋ねですが、同選択議定書は、本年、国連総会において採択される見込みであります。同選択議定書は個人通報制度を定めたものでありますが、個人通報制度は、司法権の独立を含め我が国司法制度との関連で問題点があるとの指摘もあり、制度の運用状況などを見つつ、その締結につき慎重に検討してまいりたいと考えております。
現状の認識及びその改善についてお尋ねでありますが、さまざまな分野においていまだ男女間格差が見られているところであります。本基本法の制定によりまして、男女共同参画社会の形成の基本理念に関する国民の理解を深めていくとともに、基本計画の策定等を通じて、総合的、計画的に各種の措置を講じていきたいと考えております。
啓発や教育についてお尋ねでありますが、男女共同参画社会の実現のためには、国民の理解を深めるよう適切な措置をとることが重要であります。例えば、行政に携わる職員に対する研修や、学校教育及び社会教育における取り組み、多様な通信媒体を通じた広報活動等を通じて国民の理解を深めていくよう努めてまいります。
推進体制についてお尋ねですが、中央省庁等改革基本法におきまして、内閣府に調査及び監視機能を持つ男女共同参画会議を置くことといたしております。また、私みずからの決断によりまして新たな男女共同参画を担当する局を設けることといたしておりまして、現在、局にふさわしい強力な推進体制を整えるべく検討いたしておるところであります。
なお、担当大臣につきましては、この問題が内閣として取り組むべき国政上の重要課題であることにかんがみ、現在、内閣のかなめである官房長官を担当大臣に指名しております。今後とも、担当大臣である官房長官のもと、男女共同参画社会の実現を強力に推進してまいります。
男女平等は女性だけの問題ではないという議員の御意見は、そのとおりであると私も思っております。男女の人権の尊重などを基本的な理念といたしまして、男女が社会の対等な構成員として、能力と個性を発揮しながら、生き生きと充実した生活を送ることができる男女共同参画社会の形成に尽力してまいりたいと思います。
残余の質問につきましては、関係大臣から答弁いたさせます。(拍手)
〔国務大臣野中広務君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114515254X01219990412/24
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025・野中広務
○国務大臣(野中広務君) 清水澄子議員の私に対する質問にお答えをいたします。
家庭生活と職業生活の両立及び事業主の責務についてのお尋ねでございますが、男女共同参画社会の形成のためには、家庭生活における活動と他の活動との両立が重要であることから、その旨を基本理念といたしまして明記したところでありますが、他の活動には職業生活も含まれるものと存じておるところでございます。
男女共同参画社会の形成に当たりましては、単に職場だけでなく、あらゆる分野において取り組むことが求められておりまして、事業主の責務を特記するのではなく、国民の責務といたしまして、職域、学校、地域、家庭等、あらゆる分野において男女共同参画社会の形成に寄与するよう努めなければならない旨を規定することといたしたところでございます。
次に、いわゆる間接差別についてのお尋ねでございますが、先ほどもお答えをいたしたところでございますが、何をもって間接差別というのか社会的合意が得られておらないところでございまして、本法案におきましては、直接差別、間接差別という切り口からは規定をしておりませんが、性別による差別的取り扱いの問題につきましては、男女の人権の尊重の基本理念に規定したところでありまして、適切に対処してまいりたいと考えておるところであります。
次に、ポジティブアクションについてでございますが、さまざまな分野において活動に参画する機会の男女間の格差を改善するために、必要な範囲内において男女のいずれか一方に対して活動に参画する機会を積極的に提供するものであり、個々の状況に応じて実施していきたいと考えております。
ポジティブアクションはいろいろな訳され方がございますが、本法におきましては、男女共同参画審議会の答申も参考に「積極的改善措置」としたところでございます。この積極的改善措置が逆差別に当たらないことは、第八条におきまして、積極的改善措置が国の責務として明確に規定されるという本法律案の構造から明らかであると考えております。
次に、基本計画についてのお尋ねでございますが、男女共同参画審議会の答申では、基本計画に盛り込む事項については、世界の情勢、時代の変化に柔軟に対応するため、主要事項にとどめることが適当であるとされておるところでございまして、本法案ではこの答申を踏まえまして基本計画の規定を定めたところであり、審議会の御意見を聞いてこの案を策定することといたしたところでございます。
次に、苦情の処理等についてのお尋ねでございますが、本法案におきましては、苦情の処理等が重要でありますことから、国は、政府の施策についての苦情の処理や人権侵害の救済のために必要な措置等を講じなければならない旨を規定しておるところでございまして、具体的な措置につきましては、まず既存の制度の活用を図ることを考えておりますが、今後、御意見等を踏まえ幅広く検討してまいりたいと考えております。(拍手)
〔国務大臣野田聖子君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114515254X01219990412/25
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026・野田聖子
○国務大臣(野田聖子君) 男女平等に貢献するマスメディアのあり方及びその実現方策についてのお尋ねですが、法案第十条の男女共同参画社会の形成への寄与に関する国民の努力義務については、放送事業者も当然に認識されるものと考えております。
放送は、法の理念を申し上げるまでもなく、表現の自由の確保と公共の福祉の適合を原則としております。放送事業者は、我が国社会の重要な一翼をなすものであり、自律の原則により放送番組の編集が行われるものですが、実際に社会が男女平等になることにより放送番組にも反映されていくという相互作用の中で、男女共同参画社会の形成に貢献するものと考えております。
次に、国務大臣としての見解についてのお尋ねですが、ただいま総理がお答えしましたとおり、省庁再編後の内閣府に男女共同参画会議や男女共同参画を担当する局を設置するなど、推進体制を一層強化し、政府一体となって取り組むこととしております。
私としては、依然として性による区別がある種の差別として構造化しやすいという我が国社会の欠点は、今日では女性だけではなく男性に対しても生きづらい世の中を強いているように思えてなりません。
そのため、人が人としてお互いの権利、個性、尊厳を尊重し、みずからとともに他者の成長を願い、実現できる世の中へシフトしていくよう男性、女性がともに協力し合い、これからの社会、国づくりに具体的な責任を果たしていく枠組みとなる本基本法が一刻も早く成立することを願います。(拍手)
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114515254X01219990412/26
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027・斎藤十朗
○議長(斎藤十朗君) 堂本暁子君。
〔堂本暁子君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114515254X01219990412/27
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028・堂本暁子
○堂本暁子君 参議院の会の堂本暁子です。きょうは参議院の会を代表して質問をさせていただきます。
「平等、開発、平和」をテーマにしたメキシコでの国際婦人年世界会議が一九七五年に開かれてから四半世紀、そして北京で世界女性会議が開かれてから四年、日本のすべての女性はきょうの日を待ちに待っておりました。
今日、小渕内閣が男女共同参画社会基本法案を国会に提出されたことに、まずは敬意を表したいと思っております。今後、国会における審議を深め、今国会での成立を目指したいと願っております。
最初に、男女共同参画社会基本法案を実効あるものとするための方策について、官房長官に伺います。
基本法は、社会的、文化的に形成された性別に縛られず、各人の個性に基づいて共同参画する社会を目指しています。これは、一九九四年にカイロで開かれた国際人口・開発会議において合意し、さらに一年後の北京世界女性会議において国際的な潮流として確かなものとなったジェンダーの概念に基づいています。したがって、基本法を成立させることによって、日本は国際社会に真に名誉ある地位を得ることにもなります。
先月、国連の女性の地位委員会において、日本政府を代表し、目黒依子さんが基本法案の国会への提出について既に報告されました。
この基本法案が国際的にも評価されるのは、国内本部機構いわゆるナショナルマシーナリーの存立を担保し、行政改革においてもそれをきちんと位置づけているということです。また、基本法の策定過程において、広く国民の意見を募り、審議会答申、さらに法文に反映させている点も評価できます。
この基本法を実効あるものとするためには、今後、国レベルから地方自治体レベルまでの基本計画の策定や個別法の制定や見直しが求められています。官房長官の御所見を伺います。
次に、あるべき男女共同参画社会と基本法の意義について総理に伺います。
第二次世界大戦後の日本は、世界に類を見ない高度経済成長をなし遂げました。しかし、その過程で、男性は企業戦士、エコノミックアニマルと言われるほど仕事に徹し、女性は家庭にという性別役割分担の図式が進み、固定化しました。
会社主義、つまり男性正社員に対する企業の強い統制力は、下請や系列関係を通じて中小企業の従業員へ、そして合理化や民営化を通じて公共部門にも浸透したと言われております。ところが、このような会社主義が限界に突き当たり、経済界からすらも変革の必要性が指摘されていましたが、この変革が進まない間に日本経済は戦後最悪の不況に陥ってしまいました。
男女共同参画社会の形成こそが日本の変革と創造の大きなかぎであり、大きな柱だと思います。
これは、橋本前総理がしばしば強調されていたところですが、日本経済の再生を最優先しておられる小渕内閣では一層緊急かつ不可欠な課題でありましょう。
そうした観点から、今日、総理は、不退転の決意でこの男女共同参画社会基本法案を提出されたことと存じます。総理の御所見と、それから意義について伺いたいと存じます。
次に、文部大臣に伺います。
基本法は、真の男女平等の実現を目指して、女性も男性も、みずからの価値を高めることによって、二十世紀型の均質で画一的な大量消費型社会から脱皮し、一人一人が自分らしく、生きる自由と責任を持つ社会を形成しようとしています。こうした基本法の理念こそが、次の世紀に向けて、硬直化した社会を打ち破り、具体的には少子化、高齢社会、環境破壊などの問題を解決し、新しい産業の創造をも可能にする起爆剤としての機能を果たすのではないでしょうか。
しかし、そのためには、何より男女共同参画に関する教育、つまりジェンダー教育が不可欠です。幼少期から、男女平等、さらに男女が、また、さまざまな人がお互いに尊重し合うことの重要性を教育する必要があります。
ノルウェーでは、すべての教科書について男女平等の視点から検討が行われていると聞いています。さらにヨーロッパやアメリカでは、二十年ぐらい前から、学部から修士、博士に至るまで、一貫してジェンダー研究を専攻できる大学がつくられ、今では数多くの大学で盛んに研究調査が展開されています。こうした教育や研究の成果として各国で的確な男女共同参画政策が実現しているのです。
一方、我が国においては、一、二の大学でジェンダー研究を専攻することが可能なだけで、規模が小さく、数も少なく、大変立ちおくれております。
この基本法を機会に、文部省としては、男女共同参画、つまりジェンダー研究をぜひとも強化していただきたいと思います。文部大臣に御決意のほどを伺いたいと存じます。
続いて厚生大臣に伺いますが、カイロの国際人口・開発会議において、女性の生涯にわたる健康、つまりリプロダクティブヘルス・ライツの概念と政策の具体化が国際的に合意されました。基本法案の第三条でいう「男女が性別による差別的取扱いを受けない」という法文は、この内容を担保しているとのことです。
厚生省が、この基本法をきっかけに、総合的に女性の健康を保障する視点から、より包括的な女性の生涯にわたる健康政策を実現してくださるよう求めます。厚生大臣の明確な御答弁を伺いたいと存じます。
総理大臣、女性が社会に参画するために、仕事につくことだけが必要だとは考えておりません。家庭、学校、地域などで、また、どのような立場にあっても、社会における重要な意思決定の場に女性が参加できることが真の男女共同参画なのです。
例えば、野菜を売るお店のおじさんと子育て中のお母さんが身近なごみや学校の問題について話し合い、その意見が地方自治体や国政に届く、そういった風通しのよさが必要です。
今は、男だから、女だからというような理由で家庭や会社に縛られ、社会全体が閉塞状況に陥っています。それだけではありません。無力感、将来への不安が社会全体を覆っていると言っても過言ではありません。これは男女ともに実感しているところでございます。
カイロ文書には、「男性の責任と参加」という項を設け、「男女双方の知識、態度、及び行動の変化は、男女の調和のとれたパートナーシップを達成するための必要条件である。」と述べています。今や国際的な流れの中で、男女共同参画における男性の責任と参加が問われています。
女性と男性が、男性と女性が、ともに変わり、地域や職域、学校や家庭など、あらゆる場で活力のある状況を創造していくことが求められています。これこそが男女共同参画の意義であり、価値なのでありましょう。国際的潮流に追いつき、日本が二十一世紀を乗り切るためには、女性が変わると同時に男性も変わっていく必要があるのではないでしょうか。
総理、この法律が成立した暁には、あなたも一人の男性としてどうお変わりになるでしょうか。きょうはあえて伺いたいと思います。
一九九六年一月に、自民党、社民党、新党さきがけの三党連立政権は、北京における世界女性会議の行動綱領に基づく総合的な施策の推進を合意し、さらに同年十月、第二次橋本内閣の発足に当たって、男女共同参画社会を実現するため、基本法を制定することを合意しました。
小渕内閣がこれを引き継ぎ、二年半後の今日、国会に男女共同参画社会基本法案が提出されたことに感謝の意を表したいと存じます。このプロセスに深くかかわってきた者として感無量のものがございます。
メキシコ会議から二十五年の間に、世界の先進工業国も発展途上国も、ともに男女平等と男女共同参画についての認識を深め、政策を推進してきました。
しかし、我が国は、高度経済成長によるGDP、GNPの高さは世界の一、二を競うほどのレベルにありながら、男女共同参画についての現状は低く、その大きな落差が国際的にも指摘されているところです。
今日、提出された男女共同参画社会基本法によってこの落差が解消されることを期待し、私の質問を終わります。(拍手)
〔国務大臣小渕恵三君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114515254X01219990412/28
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029・小渕恵三
○国務大臣(小渕恵三君) 堂本暁子議員にお答え申し上げます。
男女共同参画社会と本法案の意義についてのお尋ねでありますが、この法律案は、男女の人権が尊重され、豊かで活力のある社会を実現し、女性も男性もみずからの個性を発揮しながら、生き生きと充実した生活を送ることができることを目指すものでありまして、こうした男女共同参画社会の形成こそが日本の変革と創造の大きなかぎであるとの議員の御意見には私としても深く共鳴するところでございます。
私が一人の男性としてどう変わるかというお尋ねでございましたが、私は最近、歌手の安室奈美恵さんの御主人が赤ん坊を抱えているポスターを見まして、男性の育児への参画についても改めて認識を深くいたしたところであります。
私といたしましては、このポスターに象徴されるように、男であるとか女であるとかという性別にかかわらず、男女がお互いの個性や長所を認めつつ、かけがえのないパートナーとして喜びも責任も分かち合っていく社会の形成に向けまして、私なりに日常生活における日ごろからの努力を大切にいたしてまいりたいと考えております。
残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)
〔国務大臣野中広務君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114515254X01219990412/29
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030・野中広務
○国務大臣(野中広務君) 堂本議員の私に対する御質問にお答えをいたします。
この基本法案の成立によりまして、我が国が国際社会に真に名誉ある地位を得ることができるためには、その実効性の確保が必要であるとの御趣旨のお尋ねでございますが、男女共同参画社会の形成を総合的かつ計画的に推し進めますためには、国及び地方公共団体の基本計画の策定を進めますとともに、必要な法制上または財政上の措置その他の措置を講じ、国、地方公共団体、国民が一体となって取り組みを進めてまいります。
また、そのため、省庁再編に合わせまして、先ほど来小渕総理からもお答えをいたしておりますとおり、男女共同参画に係る体制の強化を図ってまいりたいと存じております。(拍手)
〔国務大臣有馬朗人君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114515254X01219990412/30
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031・有馬朗人
○国務大臣(有馬朗人君) 堂本暁子議員にお答え申し上げます。
ジェンダー研究の強化についてのお尋ねでございましたが、文部省におきましては、男女共同参画二〇〇〇年プランに基づき、学校教育、社会教育を通じ、男女共同参画を推進し多様な選択を可能にする教育・学習機会の充実等を進めてきております。
このうち、特にジェンダーに関する教育研究に関しましては、例えば女性学・ジェンダーに関する授業科目を開設している大学数は平成九年度において百六十九大学に上るほか、平成八年度には、お茶の水女子大学の学内共同教育研究施設、女性文化研究センターをジェンダー研究センターとして発展的に改組する等、女性学・ジェンダーに関する教育研究体制の整備充実に努めているところでございます。
今後とも、本基本法案の趣旨を踏まえ、大学における女性学・ジェンダーに関する教育研究の充実に一層配慮してまいりたいと考えております。(拍手)
〔国務大臣宮下創平君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114515254X01219990412/31
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032・宮下創平
○国務大臣(宮下創平君) 堂本議員にお答え申し上げます。
リプロダクティブヘルス・ライツ等に関するお尋ねでございますが、総合的に女性の健康を保障する観点から、女性の生涯にわたる健康づくりを推進していくことは、御指摘のとおり極めて重要な課題であると認識いたしております。
このため、平成八年度におきましては、生涯を通じた女性の健康支援事業を創設するなど、各般の施策の充実に努めてきたところでございます。
今後とも、リプロダクティブヘルス・ライツの考え方を踏まえ、各種施策の充実に努め、女性の生涯にわたる総合的な健康支援を推進してまいる所存でございます。
以上でございます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114515254X01219990412/32
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033・斎藤十朗
○議長(斎藤十朗君) これにて質疑は終了いたしました。
本日はこれにて散会いたします。
午後二時五十九分散会
─────・─────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114515254X01219990412/33
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