1. 会議録本文
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000・会議録情報
平成十一年六月一日(火曜日)
午後一時二分開会
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委員の異動
五月三十一日
辞任 補欠選任
高橋紀世子君 山崎 力君
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出席者は左のとおり。
委員長 吉岡 吉典君
理 事
田浦 直君
溝手 顕正君
川橋 幸子君
笹野 貞子君
委 員
大島 慶久君
斉藤 滋宣君
鈴木 政二君
中島 眞人君
山崎 正昭君
今泉 昭君
小宮山洋子君
谷林 正昭君
山本 保君
市田 忠義君
大脇 雅子君
鶴保 庸介君
事務局側
常任委員会専門
員 山岸 完治君
参考人
日本経営者団体
連盟常務理事 荒川 春君
全国一般東京一
般労働組合組織
担当者 広松 栄香君
社団法人日本人
材派遣協会理事 井上 勇夫君
全日本金属情報
機器労働組合副
中央執行委員長 小林 宏康君
弁護士 古川 景一君
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本日の会議に付した案件
○理事補欠選任の件
○労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労
働者の就業条件の整備等に関する法律等の一部
を改正する法律案(第百四十三回国会内閣提出
、第百四十五回国会衆議院送付)
○職業安定法等の一部を改正する法律案(内閣提
出、衆議院送付)
○労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労
働者の就業条件の整備等に関する法律等の一部
を改正する法律案(吉川春子君外一名発議)
○職業安定法等の一部を改正する法律案(吉川春
子君外一名発議)
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114515285X01119990601/0
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001・吉岡吉典
○委員長(吉岡吉典君) ただいまから労働・社会政策委員会を開会いたします。
理事の補欠選任についてお諮りいたします。
委員の異動に伴い現在理事が一名欠員となっておりますので、その補欠選任を行いたいと存じます。
理事の選任につきましては、先例により、委員長の指名に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114515285X01119990601/1
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002・吉岡吉典
○委員長(吉岡吉典君) 御異議ないと認めます。
それでは、理事に山崎力君を指名いたします。
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114515285X01119990601/2
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003・吉岡吉典
○委員長(吉岡吉典君) 労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律等の一部を改正する法律案(第百四十三回国会閣法第一〇号)、職業安定法等の一部を改正する法律案(閣法第九〇号)(いずれも内閣提出、衆議院送付)並びに労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律等の一部を改正する法律案(参第一八号)及び職業安定法等の一部を改正する法律案(参第一九号)(いずれも吉川春子君外一名発議)、以上四案を一括して議題といたします。
本日は、四案の審査のため、参考人として、日本経営者団体連盟常務理事荒川春君、全国一般東京一般労働組合組織担当者広松栄香君、社団法人日本人材派遣協会理事井上勇夫君、全日本金属情報機器労働組合副中央執行委員長小林宏康君、弁護士古川景一君、以上五名の方々に御出席をいただいております。
この際、参考人の方々に一言ごあいさつを申し上げます。
本日は、御多忙のところ本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。委員会を代表いたしまして厚く御礼申し上げます。参考人の方々から忌憚のない御意見を承りまして、法案審査の参考にいたしたいと存じますので、よろしくお願いいたします。
本日の議事の進め方でございますが、荒川参考人、広松参考人、井上参考人、小林参考人、古川参考人の順にお一人十五分程度ずつ御意見をお述べいただきまして、その後、各委員からの質疑にお答えいただきたいと存じます。
なお、御発言の際は、その都度委員長の許可を得ることになっております。また、各委員の質疑時間が限られておりますので、御答弁は簡潔にお願いしたいと存じます。
なお、参考人からの意見陳述、各委員からの質疑及びこれに対する答弁とも着席のままで結構でございます。
それでは、まず荒川参考人からお願いいたします。荒川参考人。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114515285X01119990601/3
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004・荒川春
○参考人(荒川春君) 私は、日本経営者団体連盟、日経連常務理事の荒川春と申します。
参議院労働・社会政策委員会におきまして審議されております労働者派遣法、職業安定法の改正案につきまして参考人として意見を述べる機会をいただきまして大変ありがとうございます。
結論から申し上げますと、政府上程の労働者派遣法、職業安定法改正法案につきましては、本委員会における審議を十分尽くされまして、ぜひとも今国会におきまして可決、成立いただき、速やかに施行されることを望むものであります。
また、衆議院審議におきまして政府案に対する修正がされましたことにつきましては、それを重く受けとめるものであります。
経営側としましては、同法案にすべて賛成し満足しているというものではありません。問題の諸点も少なからずあると思っております。しかし、中央職業安定審議会を含めまして、関係審議会で議論を尽くしてきたこと、かつ、今一番求められている雇用問題の解決の一方途として、労働力の需給調整システムを多様化し、雇用のミスマッチの解消に資するためにも、法律を含めて環境整備をすることが急務であると思うところからであります。
改正法案に対する経営側の基本的な考え方を述べさせていただきます。
日経連を含めまして、経済団体、経営者側は、第三次行革審の答申にもありますように、社会的規制は基本的に重要なものにつきましてこれを堅持するものである、そして経済的規制は原則自由にするものである、このスタンスを経営側としても持っているものでございます。その観点からいいますれば、労働者派遣あるいは職業紹介につきましては、基本的人権にかかわるようなものは社会的規制が必要と思われます。そこで、許可制については当面認めていく方向であろうかと思います。それ以外につきましては、経済的規制と考えられるものでありまして、原則自由化が必要であろうと思います。
雇用情勢を見ますと、雇用失業情勢は大変厳しいものになっておりますが、短期的には雇用環境を改善するというのはなかなか容易なものではないと考えております。中長期的に見ましても、第一次、第二次産業からサービス産業などへ産業構造は変化しておりまして、それに伴い雇用構造も当然変化せざるを得ないだろうと思っておりますが、その変化に対応すべく、労働力の需要と供給の調整の機能につきましては、さまざまな方法、そしてそれが推進される方向が必要であろうと思います。
労働者派遣法、職業安定法の改正については、基本的には賛成であるわけでございます。労働力需給調整機能の多様化、強化という面でメリットは非常に大きいからであります。
これからの労働市場というのは、柔軟性がなくてはならないと考えます。日本的な長期雇用慣行をベースにした適度な流動化というものが必要であると思います。流動化させるためには、そのチャンネルはたくさんあった方がいいということであります。その意味からも、多様な民間機関を活用することについて考えていただきたいと思います。公共職業安定機関は基本的なセーフティネットとして民間とともに十分活用される仕組みを考えることが必要であろうと思います。
ところで、今回の派遣法の話になりますが、常用雇用代替防止措置というものにつきましてさまざまに議論がされ、改正法案が出されました。労働者派遣期間一年経過後の雇用努力義務というものが設定されているわけですが、当面はやむを得ないと私どもも考えております。しかし、これらにつきましては、これからの派遣法の運用の成果を見つつ、見直しを視野に入れた動きをしていただきたい。最長一年の契約では、派遣労働者自身の生活の安定というものも一方に考えていくということが必要ではないかと思うからであります。
労働者派遣のメリットについて申し上げますと、結論から申しますと、労使双方のニーズに合っているものと思うわけでございます。例えば、新規創業や中小企業の新分野開発は新たな雇用機会を創出するために重要ですが、それが円滑に行われるには必要な人材を迅速に的確に確保することが不可欠になっております。しかし、現実に創業時に新分野へ進出する際に、どうしても企業経営の不安定さというものを考えますと、直接雇用をすることがなかなかできない、必要な人材を集めることは難しい、これが現実でございます。労働者派遣も活用しながら、人材確保が可能ならば新規創業が一層促進される、雇用創出につながるという効果が期待できると思います。
同じように、中高年齢層の雇い入れについてでございます。企業としては、賃金の水準等から直接雇用に慎重になっているのが正直なところでございます。こうした場合にも、労働者派遣が活用できれば結果として就労の場を提供していくことというふうになると思います。現在、働き方が非常に多様化しております。仕事につく時間を調整して仕事と家庭を両立させたいと考える人も多くいます。派遣労働はその希望をかなえられるものでもあります。
労働者派遣に当たっては能力開発が必要になります。派遣事業主は優秀なスタッフをどれだけ抱えられるかということが重要なことになります。能力開発をしっかり行うことによって、雇用のミスマッチ解消に向けてきめ細かい対応ができ得る、そういうシステムであります。人材の育成について新しいチャンネルが育つと御認識いただければと思います。
このようにして新しい労働市場がつくられ、多様な働き方を可能にするもの、これが労働者派遣であろうかと思います。労働者派遣の業務拡大は総量として雇用の拡大につながると考えるものでございます。
最後に、ILO条約の考え方に沿った今回の対応につきまして一言申し上げます。
労働力需給調整は国が独占的に行うという従来の考え方が変わってまいりました。国際的な場面におきましても、一昨年のILO百八十一号条約、民間職業事業所に関する条約として採択されたことがその考え方の変化をあらわしていると思います。この条約は、民間職業紹介機関の役割を積極的に認め、あわせて必要な労働者保護を規定したものであります。今回の改正法案に見られる個人情報保護についてもその考えに沿ったものであります。したがって、労働者の個人情報の保護については、その必要性をしっかりと認めていきたいと思いますが、就業の促進に、特にマッチングに際しましてその情報が不足のようなことにならないものがあればと考えるところでございます。
以上、私の参考人としての意見の陳述を終わらせていただきます。
ありがとうございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114515285X01119990601/4
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005・吉岡吉典
○委員長(吉岡吉典君) ありがとうございました。
次に、広松参考人にお願いいたします。広松参考人。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114515285X01119990601/5
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006・広松栄香
○参考人(広松栄香君) 全国一般東京一般労働組合の広松と申します。
私どもは、一九八一年に電話による労働相談を始めてから、今日まで十八年間この活動を続けてきています。一九九七年からはインターネット上に労働相談のホームページ、「お助けねっと」を開設し、ことしの二月からは派遣法改正問題に取り組んでいます。本日は、私どもに寄せられた派遣労働者の実態から、参考人としての意見を述べさせていただきます。
皆様のお手元にある資料の中に、「「派遣労働者の権利を守ろう」キャンペーン結果報告」というのがございますが、これは二月十日から五月十日まで、三カ月間に三百四十名の派遣労働者から寄せられた意見や実態報告、相談など、生の声をまとめたものです。ぜひごらんいただきたいと思います。
ここにパネルをつくってきましたけれども、資料の一番後ろについているグラフと同じでございます。ここに派遣労働者のトラブルを図にしたものがございます。(図表掲示)
派遣労働者のトラブルの上位というのは、労働条件、契約違反、中途解約、競合面接などによる派遣法違反、それから社会保険という順になっております。
ではこのトラブルの背景にあるのは何なのかと申しますと、派遣という働き方を考えなければいけません。派遣という働き方は派遣元、派遣先、労働者の三者で構成されています。この三者の関係から相談の背景を派遣元と派遣先、派遣元と労働者、派遣先と労働者の三つに分けて集計したのがこちらの図になります。(図表掲示)
派遣元と派遣先の契約関係から発生するトラブルが二五%、派遣元と労働者間で発生するトラブルが三五%、派遣先と労働者間で発生するトラブルが二八%となっております。
この図を見ると、それぞれの関係で平均してトラブルが発生しているように見えます。しかし、実態から申しますと、派遣元と派遣先のトラブルでは圧倒的優位に立つ派遣先の都合で発生するものがほとんどで、派遣元と労働者のトラブル、これにしても派遣先の都合による中途解約や、派遣先の横暴でやめたくてもやめさせてもらえない、あるいは年休がとれない、残業手当がつかないなど、派遣先が認めないために労働者は権利行使できないという派遣先に起因するケースが多いのです。つまり、派遣労働者のトラブルのほとんどは派遣先に原因があると言えると思います。
では、具体的に事例を挙げて専門性が高いと言われている現行二十六業務についての現実をお話しします。
大手企業の系列派遣会社に所属し、親会社に三年を超えて派遣されているA子さん、この方はコンピューターを使った非常に専門性の高い仕事で、派遣先の上司もA子さんなしでは仕事はできないと言っているくらいです。
派遣先である親会社の同じ部署にはほかに男性八人と女性十八人が派遣されています。女性はすべて登録型派遣で、三カ月更新の反復契約、時給は千四百円、長い人は六、七年いますが、時給は一年目の人とほぼ同じです。男性は常用型派遣で、同じ仕事をしてもあるいは女性がチームリーダーであっても、男性は月給制で賃金も高く、社員として身分も保障され、一時金や退職金、社会保険の加入と大きな格差があります。
一方、A子さんはこの春から社会保険に加入することになりました。保険料を払うと生活していけないので時給を上げてほしいと申し出たところ、派遣会社からはやめてもらってもいいと言われ、私どもに相談に来ました。
また、Bさんは英語の翻訳で派遣された会社で、仕事の幅を広げて何でもやってもらえるとあなたを残しやすくなると言われ、どういう仕事をすればいいのかと聞いたところ、外部へのお使いからコピー、すべてと言われたそうです。翻訳といっても、実際やらされていることは電話取りからコピー、OAオペレート、その上今度はすべての雑務をやらされることになるのです。
この背景には短期契約の繰り返しという実態があります。契約外の業務をつけて、言うことを聞けば契約の更新をする、聞かなければ切るという脅迫的言動が行われているのです。
派遣とは何なのか。常用ではなく登録型派遣にすることによって時給を低く抑えられる、スキルに関係なく女であるだけで時給が決まってしまう、こんな理不尽な話が派遣業界ではまかり通っています。だからこそ行政の力、法による規制が必要なのです。
今申し上げた二つの事例の中には、ほかにも短期契約の反復雇用、社会保険未加入、契約外業務の強制など問題はたくさんあります。
派遣労働者から対象業務の自由化についてこんな意見が来ました。派遣の仕事の自由化なんかこの状況でもってのほかだと思います、今でも危ういのに適用対象業務が自由化になると何でも便利屋になりかねませんなど、私どもに寄せられた声の中には適用対象業務の自由化に賛成する派遣労働者は一人もいませんでした。
このように専門性の高い現行二十六業務でも派遣労働者にとっては不安定なものであり、派遣先や派遣元にとってはいつでも使い捨てにできる労働力なのです。今回の改正により業務を自由化すれば、ますます不安定な雇用状況が拡大することは目に見えています。せめて臨時的、一時的派遣における登録型派遣は禁止すべきだと考えます。
次に、偽装派遣の事例を紹介します。
大手船会社系列の国内フェリー航路を運営する二千人ほどの企業A社に派遣されていたB社の労働者五人の話です。
この五人はほぼ同世代で、今から十二年前に二十二、三歳のころフェリー会社A社の東京港の受付関係として仕事をすることになり、B社に採用されました。実際の仕事は東京港にあるA社で、A社の制服を着せられ、A社の名刺を持たされ、お客さんにはA社の社員として仕事をしていました。仕事上の指揮命令もすべてA社の管理職から発せられていました。明らかに実態は派遣労働者です。ところが、今日の不況の中で、大もとの大手船会社からリストラで玉突き的に人が出向、転籍で押し込まれてくる、そして結果としてA社はB社との契約を解除し、この五人は解雇されました。A社とB社の契約は業務請負契約でした。
一九八六年の派遣法制定時に、労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準を定める告示により、請負については明確に定められています。こうした立派な法律があるにもかかわらず、業務請負契約に名をかりた偽装派遣が十二年もの長い期間にわたって野放しのまま続けられていたのです。
さらに、この偽装派遣には大きな問題があります。組合に加入した彼らを救済すべく、労働省に直接派遣法違反ということで相談しました。しかし、違反であると確認しながらも、業務請負契約の解除により違反の事実はなくなった、労働省ができるのは違反の是正だけというのが労働省の回答でした。つまり、違反であったが是正したから取り締まれないと言うのです。そして、この場合、是正イコール契約解除、契約解除イコール解雇ということになります。
この事例でもわかるように、現行の派遣法では、法違反を犯しても是正すればよしということになります。例えば、泥棒をすれば盗んだものを返してよしとはなりません。情状酌量の余地はあったとしても、刑事罰は免れません。また、被害者による告訴、目撃者による告発という手段もあります。ところが、この事例のように、違反した事実はあっても罰則を受けることがないのが現行の派遣法体系なのです。
改正法案では、法違反に対する労働大臣への申告権を定め、申告したことへの不利益取り扱いを禁止しています。しかし、現行の法制度では、派遣法違反を検察庁に送検するのは警察官にしかできません。派遣法を取り締まるのがお巡りさんとは、随分なじまない話だと思います。
労働省には警察官と同じ司法警察権を持った労働基準監督官がいます。派遣法の取り締まりもぜひこの監督官にやっていただだけるようお願いして、私の発言を終わりにします。
ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114515285X01119990601/6
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007・吉岡吉典
○委員長(吉岡吉典君) ありがとうございました。
次に、井上参考人にお願いいたします。井上参考人。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114515285X01119990601/7
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008・井上勇夫
○参考人(井上勇夫君) 社団法人日本人材派遣協会の理事をいたしております井上勇夫でございます。本日は、このような場所にて派遣事業に携わっている者の代表として意見陳述をさせていただく機会を与えていただきましたことに対し、厚く御礼を申し上げます。
それでは、お手元にありますレジュメに記してありますように意見陳述を進めてまいります。
最初に、労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律とのかかわり合いでございますが、以後は長い法律名ですので派遣法と言わせていただくことをお許しください。
私は、名古屋市内所在の株式会社アイテックにて代表取締役社長をいたしております。私どもは、派遣法が施行されました昭和六十一年七月一日に労働大臣から般—二三—〇一—〇〇〇一の許可番号をいただき、一般労働者派遣事業を営んでおります。本日は社団法人日本人材派遣協会の理事として出席いたしておりますので、私どもの会社の派遣事業につきましては、御必要でございましたらこの後の質疑の際にお話をさせていただきます。
次に、社団法人日本人材派遣協会の概要を述べさせていただきます。
私は、ただいま申し上げましたとおり、派遣事業を営んでいるとともに、社団法人日本人材派遣協会の理事と協会の下部組織であります中部地域協議会の会長をいたしております。協会では、理事のほかに能力開発・福祉部会の副部会長をいたしております。
協会についての詳細な説明は時間の関係上できませんので、お手元のリーフレット、「協会ご案内」、「雇用管理アドバイザー 苦情処理アドバイザー ご案内」、「笑顔がひかる 派遣スタッフ 知っておきたい派遣法」の三点を見ていただきたいと思います。この三点でございます。
概要を申し上げますと、現在会員会社は、昨日現在、北海道から沖縄までで三百二社が加入いたしております。この三百二社で労働者派遣事業全体の七〇から七五%のシェアを占めていると推定されています。残りの二五から三〇%は、協会への未加入会社と、他の団体であります情報サービス産業協会、日本添乗サービス協会、全国ビルメンテナンス協会、日本機械設計工業会、全国放送関連派遣事業協会、日本翻訳協会。私どもを含めましてこの七団体が日本国内の派遣の団体でございます。すべて社団法人でございます。話をもとへ戻しまして、二五から三〇%が協会未加入の会社、それからこの団体が占めていると推定されております。
私ども日本人材派遣協会は、労働者派遣事業を代表する派遣元事業主の団体でございます。したがいまして、法の遵守を行動基準の原点といたし、派遣労働者の雇用の安定及び福祉の増進並びに派遣労働者の職業能力の開発等に関して、協会、各地域協議会は会員に対してセミナー、研修会等を実施しておるほかに、協会発行の各冊子、リーフレット等の資料にて常に積極的に取り組みを行っております。また、協会に未加入の企業に対しましても加入促進に努めております。
なお、派遣労働件数、派遣労働者の拡大していく中で、派遣先企業と派遣元企業あるいは派遣労働者との間で派遣契約の履行問題や派遣労働者の就業条件、就業管理等をめぐる種々のトラブルが生じたりする事例が少なくありません。このようなトラブルの発生を未然に防止することを念頭に事業運営に取り組んでおり、協会にても、全国の派遣先件数の約八〇%が東京、大阪、名古屋に集中いたしておりますので、この三カ所に相談窓口を設置し、対応いたしております。
私が会長をいたしております中部地域協議会は、先ほど述べましたように協会の下部組織で、中部地域協議会のほかに、北海道、東北、神奈川、関西、岡山、広島、四国、九州の八カ所に設置されております。各地域の派遣事業所が加入して派遣事業の適正な運営を図っております。
中部地域協議会の会員は四十六社が加入しており、愛知県四十四、三重県一、富山県一、以上の四十六社で運営しております。活動の一部を申し上げますと、私どもの地域協議会では、派遣労働者の健康診断を協議会として実施しておるほか、会員会社の実務担当者を集め、行政に講師をお願いするとともに、苦情処理アドバイザーから苦情処理の実態をお聞きするなどの研修会を実施いたしております。さらには、労働者派遣事業適正運営協力員会議に出席し、協力員との意見交換も行っております。
三番目に、労働者派遣事業の現状等について述べさせていただきます。
昭和六十一年に派遣法が施行された労働者派遣事業は、多様化の進む社会経済にあって、企業における雇用・人事戦略、働く側の就業・キャリア行動等に適合して派遣事業は順調に発展し、我が国の経済社会に貢献し、現在の労働市場においてその実態は今や市民権を獲得するに至りました。その背景にはバブル経済の崩壊を契機にした日本型雇用制度の見直しと働く側の意識の変化があります。終身雇用、年功序列といった日本型雇用制度が部分的に見直され、アウトソーシング、通年採用、能力主義などの合理的な人事政策が広がっています。働く側も、組織に縛られずに自分の能力を生かして働きたいという人が若い世代を中心にふえています。今後もこの傾向はますます強まるでしょう。
各先生方におかれましては御承知おきと存じますが、労働省の集計発表によりますと、平成九年度の派遣実績は、派遣労働者は八十五万五千三百三十人、前年比一八・一%増。派遣先件数は二十七万九千二百八十一件、前年比二五・九%増。売り上げの総額は一兆三千三百三十五億円、前年比一二・八%増であります。
なお、十年度については発表されておりませんが、私ども協会の推定では、経済不況のため、前年度よりそれぞれがやや上回る水準を維持できたと思料いたしております。
労働者派遣事業制度の許可・届け出事業所についても着実に増加を続け、十一年四月一日現在、一般労働者派遣事業所は三千七百九十七事業所、特定派遣事業所は一万二千十六、合計一万五千八百十三事業所と、労働者派遣事業の労働力需給調整に果たす役割はますます大きなものとなっています。
私どもの協会の会員の首都圏の東京、神奈川、千葉、埼玉の二十三社を特定対象といたしまして平成十年十二月に派遣の実績を調査、統計した結果の一部を申し上げますと、派遣先事業所数は三万五千五百十六件、派遣労働者数は七万四千四十八名。現在許可されている対象業務二十六業務のうち派遣労働者の多い上位五業務は、一位は二号の事務用機器操作、二位は八号の取引文書の作成、三位は五号のファイリング、四位は十三号の受付・案内・駐車場管理等、五位は七号の財務処理でございます。また、一番多く派遣している二号の事務用機器操作の業務では、派遣労働者の派遣期間は、三カ月未満の短期は一万五千三百五十四名、三カ月以上の長期は一万八千八百十九名であり、二十六業務全体では、三カ月未満の短期は三万三千九百十七名、三カ月以上の長期は四万百三十一名でありました。
最後に、労働者派遣法の改正について述べさせていただきます。
社会経済情勢の変化への対応、労働者の就業形態や就業意識の多様化が進んでおり、労働力の多様なニーズに対応した需給の迅速かつ的確な結合を促進し、適正な就業の機会の拡大を図ることが必要であるとのことで、臨時的、一時的な労働力の需給調整に関する対策としての趣旨にて派遣法の一部を改正するために御審議をいただいておりますが、経済社会、労働者、派遣事業者のニーズに対応した派遣法の改正であり、まことに喜ばしいことであり、改正につきましては、協会の理事として、また労働者派遣事業主として賛成でございます。
改正には一部制限がございますが、原則自由化により、自由の拡大は責任の拡大を伴うことも事実でございます。この点をかんがみ、先ほどから述べているように、業界そしてまた協会会員として法の遵守を行動基準の原点とし、派遣事業に携わるすべての者が派遣労働者の権利と利益の保護になお一層の努力をしていく所存でございます。
以上をもちまして、私の陳述を終わらせていただきます。
ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114515285X01119990601/8
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009・吉岡吉典
○委員長(吉岡吉典君) ありがとうございました。
次に、小林参考人にお願いいたします。小林参考人。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114515285X01119990601/9
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010・小林宏康
○参考人(小林宏康君) 全日本金属情報機器労働組合、略称をJMIUと言っていますが、鉄鋼、金属製品、電機、自動車、一般機械、精密機械などいわゆる金属機械等、プラスコンピューター関連を組織対象にしている産業別労働組合です。
大体九〇年代の後半ぐらいから製造業の生産工程に労働者派遣が広がってくると、職場で大きな問題になりました。この問題をとらえて、九七年秋から約一年間、労働省に対しても事態の改善を求める要請を行ってきました。
この経験を踏まえて、職業安定法及び労働者派遣法の改定問題について、以下三点にわたって意見を述べたいというふうに思っています。
第一は、製造業の生産工程ラインなどに違法の派遣労働者が導入されて、常用労働者の代替が急速に進行している実態について述べます。
二つ目に、そのような違法状態が放置、容認をされている、拡大を助けているとさえ言わざるを得ないような労働行政の責任について指摘をしたいというように思います。
三つ目に、今審議中の案件に対するJMIUの見解を申し上げます。
まず第一の問題、違法派遣が野放しにされて常用雇用の代替が急速に進んでいる職場の実態についてですが、九八年四月に、私ども、東京を中心に交流会をやりました。短期間の調査でしたけれども、四十七事業所から有効回答がありましたが、八割の三十八事業所に派遣あるいは請負など間接雇用の労働者が入っています。推定ではそのうちの七、八割に違法性が強いというふうに言えます。
私たちが重大視をしているのは、現行法制度でも、また今回の改定でも「当分の間」ということで除かれている製造業の生産工程に大規模な導入が広がっているということです。
典型例は日本IBMの事例です。この藤沢工場、もう一つ滋賀の野洲に事業所がありますが、藤沢工場には主な製造ラインが二つございます。一つはパソコンの組み立てライン、もう一つは小型のハードディスクの製造部門です。この二つの製造現場で働いている労働者は多いときで大体九百数十人、そのうち八百名が違法派遣ないしはアルバイトです。IBMの社員は百数十名。
パソコンの組み立てラインについて申し上げますと、九七年十月には約五百五十人の労働者が働いていました。そのうちIBMの社員は三十名で、アルバイトが二百人、いわゆる違法派遣が三百二十人でしたけれども、翌年の四月からはアルバイトが全部違法派遣に切りかえられました。理由として考えられるのは、一つは賃金が安いということと、生産の変動に合わせて調整しやすいということです。九七、八年は五百五十名いた社員以外が、現在では三百人から生産が落ち込むときは百三十人ぐらいに減っているというのが実態です。
小型のハードディスクの場合には約六百人が働いているわけですが、IBMの正社員は百名で、あと五百人はアルバイトです。
その労働条件ですけれども、パソコンのラインで働いている派遣労働者の場合、出勤日数は二十二日、基本給は十四万円です。健康保険、厚生年金には加入していません。ワンルームマンションを借り上げて寮と称して二人住まわせているわけですけれども、その寮費として三万四千円差し引かれています。こういう実態です。
もう一つ、これは住友重機の田無製造所ですけれども、最高時には百人を超える派遣が現場で働いていました。当時の正社員の数というのは五百名から多く見て六百です。現在、現場作業の派遣労働者は七、八十人おりますけれども、例えば減速器の製造職場について見ると、社員三十四人に対して派遣が三十九人と上回っています。
この労働条件、派遣元には時間当たり二千二百八十円支払われているわけですが、労働者が受け取っているのはほぼ千円強という実態です。千円から千二百円です。鍛造職場では正社員四十四人に対して派遣が十九人です。職場の人に聞くと、大体九〇年ごろからふえ始めたというふうに言っています。
もう一つ、日本電子という企業がございます。これは資本金三十二億円強で電子光学機器、電子顕微鏡、分析機器などを製造している企業ですが、ここでいわゆる図面をコピーする、そして区分けをする出図という作業があります。これはパートが主体でやっていましたけれども、九三年三月のリストラで雇いどめ解雇されました。その後、生産が復活する中で、今度はパートではなくて派遣で行うということになりました。これは対象外の一般事務ですから違法派遣です。また、本社の方の電子顕微鏡の製造ラインを見ると、正社員が二十七人に対して派遣労働者が七、八人。
それからもう一つ、この日本電子から八九年に分社化された日本電子クリエイティブという製造事業所がございますけれども、この組み立て職場では正社員七十二名に対して随時十五名前後の派遣労働者が入っている。
今一例を申し上げましたけれども、このように大体九〇年代の後半ぐらいからあってはならないはずの製造業の生産工程での派遣が急速に広がっているということです。
これは単に法律に違反しているというだけではなくて、職場にさまざまな深刻な問題を引き起こしています。三つ申し上げますが、一つは、雇用情勢、労働条件の劣悪化を促進しているということです。
先ほど挙げた事例に明らかなように、大変な低賃金で、しかも雇用の調整弁に使われていることがありますけれども、これも典型的なのは日本IBM。私どもの組織があるので実態をつかんでいるわけですが、九三年ごろには二万五千人いた労働者が二万人ぐらいに減らされています。さらに私どもの推定では五千人ぐらい減らすと見ているわけですが、その主な手法の一つに、ある部門を形だけ別会社にする、そこに労働者を転籍させて、その転籍させた労働者をもう一回派遣で受け取って働かすというやり方、いわゆる丸ごと派遣が非常に多用されている。驚くべきことに本社の総務、それから経理・財務、人事、こういう部分がこの四月から三つの子会社になりました。そこに労働者が出向、五十五歳以上の場合は派遣という形で出されて、今そこから派遣される形で同じ仕事をしています。仕事をしている場所もデスクも仕事の中身も全く変わりません。変わったのはその看板と労働者の雇用形態、労働条件です。転籍になると賃金は四五%カットされます。
もしこうしたやり方がどんどん広がっていくならば、深刻な事態になる。その意味で今回の原則自由化は既に先取りの形で行われているというのが私どもの見解ですが、容認しがたいというふうに考えています。
二つ目は、これによって職場の人間関係が荒廃をして仕事がやりにくくなる、さまざまな問題が出てきます。
これは交流会をやったときに、当時学校で中学生が先生を刺したということがあったわけですが、非常に低い労働条件の派遣をいわばごく少数の正社員が使っている、ぎすぎすする人間関係があって、冗談に、それこそおれたちも刺されかねないなというようなことが職場で言われているという報告もありました。技術の空洞化が大変深刻な問題になっていますけれども、こうした製造工程への派遣の導入というのは、物づくりの基盤を掘り崩すものだというふうにも考えています。
三つ目は、労働条件の低下をチェックすべき労働組合の活動にかかわる問題です。
IBMの藤沢では、労働者代表の選挙で私どもの組合の候補者がアルバイトに支持をされて労働者代表に当選したことがございます。アルバイトも直接雇用ですから当然投票権を持っているわけですが、派遣ということになると、この場合は請負という形をとっていますが、ありません。これらの問題をチェックする上でも、こうした形態の導入というのが大変大きな問題だというふうに考えています。
第二の問題は、こうした違法状態が放置されているその要因、労働行政の問題点に話を進めたいと思います。
私どもは、九七年の九月からその年の十一月、翌年の二月、四月、五月、十一月と連続してこの問題で要請を行ってきました。率直な感想を申し上げると、対応については腹立たしい限りです。いわば脱法行為を唆しているのではないかという気さえいたします。
御承知のように、八五年の国会で派遣法が制定されたときに、衆議院で八項目、参議院で十一項目の附帯決議がされています。衆参いずれでも、第一項では、対象業務を決める際に常用雇用労働者の代替を促すことにならないよう配慮するということがうたわれ、製造業の直接生産工程については労働者派遣事業の対象としないということが確認されています。参議院の附帯決議では、請負形式により実質的に労働者派遣事業が行われることを防止するために請負の認定基準を可能な限り客観的に明確に作成すること、そしてその厳正な運用に努めること、これは参議院だけの決議ですがされています。この附帯決議が全く生かされていないというのが、実態を見た上での、あるいは労働省に要請を行っての私どもの実感です。
労働省は、こうしたいわゆる請負を装った偽装派遣、違法の派遣労働者が製造業の生産工程にも広がっているということを十分承知をしているはずですけれども、労働者供給を禁じている職業安定法や労働者派遣事業法の立法趣旨に従ってこれを是正する方向での指導を行っているとは到底言えない。むしろ、逆に請負の外形だけ整えれば中身が全く変わっていなくてもそれでよしとする、そのことによって違法状態の蔓延を促進しているというのが私どもの認識です。
時間がないので具体例は今触れられませんけれども、確かに現行法の制度でも、その気になってこうした違法状態を是正しようと思えば幾らでもやることが可能だというふうに私たちは考えています。例えば、請負と労働者派遣事業の区分について、先ほどの決議に基づいて労働大臣告示がありますけれども、これについても、その運用が厳正に運用どころか極めて企業サイド寄りの運用になっているというのが私どもの認識です。
それから、いわゆる専ら派遣の問題、A社が子会社をつくってA社にのみ派遣する、これについても運用に大きな問題があるというふうに考えています。二十六の対象業務についても、本当の意味で専門的な知識や経験が生かされるというような形で対象が定められていなくて、全く一般化してしまっている。例えば、ファイリングであるとか事務機器の操作などはもう一般事務と同じような実態になっているというふうに私たちは見ています。
それからもう一つ、労働省側のといいますか、労働行政の対応で問題だと思いますのは、こうした製造業への請負という形をとった違法派遣、労働省告示の言葉を使えば偽装派遣になるというふうに思っていますが、この実態について全く全体像がつかまれていない。先ほどお話があったように、九七年の数字で派遣労働者が約八十六万人というふうに言われていますけれども、こうした偽装派遣の数というのは人によっては数倍に及ぶのではないかというふうに推定をされている方もあるくらいです。これは統計一つないわけです。
私たちは、こうした深刻な実態を報告しながら、これについて特別の調査をやってまず事実を明らかにすべきだ、そしてどう是正していくかということを労働省は考えるべきではないかという要請をしてきましたけれども、いや、人もお金もないというようなとんでもない発言がやりとりの中では出てくるという実態です。実態が明らかになって、大企業でどんなことが行われているかということが示されれば、世論が喚起されて、こうしたやり方に歯どめをかける大きな力になるというふうに私どもは考えています。
最後に、今回の職業安定法、労働者派遣法の改定問題ですけれども、今指摘してきたように、違法派遣の拡大に歯どめをかけたり是正する実効性を欠いていますし、原則自由化によってこうしたことがさらに拡大されるという点で、私たちは到底賛成できない、廃案にすべきだというふうに考えています。
この問題で日本共産党から対案が出されていますけれども、中身に触れる時間はありませんが、私どもの見解ではかなり現場労働者の実態に即した、要求に沿ったものになっているというふうに考えています。
この国会の審議ですけれども、常用雇用の代替にならないということを提案者側は繰り返し答弁されていますけれども、根拠が十分に示されているとは言えないというふうに思っています。今指摘したこの請負という形式での違法派遣の問題については、ほとんど議論さえされていません。労働者派遣事業の問題を考える場合、この問題は避けて通れないと考えております。
さらに十分な審議をされて参議院がその機能を果たされるよう、心から期待をして意見陳述を終わります。
ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114515285X01119990601/10
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011・吉岡吉典
○委員長(吉岡吉典君) ありがとうございました。
次に、古川参考人にお願いいたします。古川参考人。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114515285X01119990601/11
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012・古川景一
○参考人(古川景一君) 皆さんのお手元に発言要旨と資料をお配りさせていただきました。それをごらんいただきながら聞いていただきたいと思います。
私は、日本労働弁護団の全国常任幹事をしております。今回の労働者派遣法等改正法案及び職安法改正法案の問題点と課題につきましては、日本労働弁護団がまとめました四通の声明や意見書を配付させていただいております。これらをごらんいただきますよう、まずお願いしたいと思います。
その上で、本日は、第一番目の大きな論点として、今回の派遣法等改正法案の問題点と課題につきまして、韓国の労働者派遣法と比較しながら述べさせていただきます。
なぜ韓国の法律と比較するのかといえば、日本の労働法の法案審議の際にはアジアの労働法との関係について留意されるべきだからであります。この点につきましては、参議院のこの委員会における昨年九月十八日の参考人質疑の際に自由党の鶴保庸介議員が強調しておられますし、またそのときに自由党推薦で参考人として出席された工藤氏も同様の意見を開陳しておられます。これに照らしましても、日本の労働法がアジアの労働法に及ぼす影響につきまして、これを重視すべきことは、参議院における党派を超えた共通認識であろうと考えるからです。
御承知のとおり、韓国は未曾有の経済危機に瀕しており、高い失業率に苦しんでおります。この韓国におきましても、経済危機克服、労働市場の柔軟性の確保、失業者の吸収という日本と全く同じスローガンのもとで、労働者派遣事業を解禁する派遣勤労者保護等に関する法律というものが昨年、一九九八年二月二十日に制定されました。この韓国の法律につきまして、資料を配付させていただいております。なお、資料の中の脇田滋教授の論説の中の一部は私の見解と一致していないということをあらかじめお断りしておきます。
最初に結論から申し上げます。連合やさまざまな労働団体、日本労働弁護団、そして派遣労働者の組織が提起しております立法提言や法案修正の提案の大半は、韓国の派遣法で既に実現しております。私どもの立法提言や法案修正の提案は、国際的に見ましても、また経済的苦境にあるアジアの一員という視点で見ましても、極めて常識的な水準のものであり、直ちに実現されるべきです。これが結論です。
具体的に申し上げます。
まず第一に、法律の名前が違います。韓国の派遣法の名称には「派遣勤労者保護」という言葉が明記されています。これに対し、日本の法律は、石油業法や建設業法と同種の業法でありまして、法律の名称に保護という言葉はありません。
第二に、韓国でも臨時的、一時的な労働力不足の場合に対応するために禁止リストにある業務を除いて労働者派遣を解禁いたしました。しかし、韓国では幾つもの重要な歯どめを設けております。派遣を利用できるのは出産、疾病、負傷などで欠員が生じた場合、または一時的、間欠的に労働力を確保する必要がある場合と法律に明記をして限定しております。しかし、日本の改正法案ではこうした限定は皆無であります。
第三に、韓国の法律では、経営上の理由による解雇をした場合、その後原則として二年間派遣労働を利用できません。日本の改正法案にはこのような規制は皆無です。
第四に、派遣期間が長期化した場合のユーザー企業の雇用責任です。韓国法では、派遣期間が二年を過ぎたときにはユーザー企業が派遣労働者を雇用したこととみなすと、このような規定を設けております。除外されるのは、派遣労働者が積極的に反対の意思表示をした場合です。日本の法案では、衆議院での法案一部修正によって労働大臣の指導、勧告や氏名公表が盛り込まれただけであって、民事上の責任は全く触れられておりません。
第五に、派遣労働を利用するユーザー企業が正当な理由なくして派遣契約を中途解約した場合の扱いです。この場合、韓国の法律では、派遣労働を利用するユーザー企業は、労働者への賃金支払いについて派遣元業者と連帯責任を負うと定めております。日本でも、この中途解約の問題はトラブルの事例の中で最も多くの割合を占めている最重要の問題です。しかし、日本の法案では民事上の責任について何も触れていません。衆議院の附帯決議では、労働省の指針とこれに基づく行政指導によって三十日分以上の賃金の支払いが要請されているだけであります。
第六に、均等待遇の問題があります。韓国法では、派遣労働者が派遣先ユーザー企業で同一の業務を遂行する同種の労働者と比較して不当な差別処遇を受けないようにすることを派遣元と派遣先の両方に義務づけています。日本法にはそのような定めはありません。
このように、昨年韓国で成立した法律と今回審議されている日本の法案とを比較したときに、日本の法案の背後にある立法思想には根本的な二つの問題があることが浮かび上がってきます。それは、派遣労働者を保護する思想が欠如していること及び常用雇用を守り不安定雇用の拡大を防止する思想が欠如していることです。
韓国の法律と比較したときに、今回の法案は日本のユーザー企業と派遣事業者にとっては大変都合のよい法律であります。常用労働者を派遣労働者に置きかえ、派遣労働者を安く使い捨てることが容易な構造となっているからです。それなるがゆえに、私ども日本労働弁護団は、今回の派遣法等改正法案につきまして、常用雇用を基盤とする日本の労働市場に破壊的な影響を及ぼすと危惧しているわけであります。また、連合も昨日、不安定雇用の防止策、解決策等の積み残された問題と課題についての取り組みが参議院段階で必要であることを強調しております。そして、きょうも国会前でさまざまな団体が座り込み、要請行動を行っているわけであります。
日本の経営者団体を代表される方々におかれましては、アジア各国との労働条件の切り下げ競争に突入する覚悟を持って、その覚悟のもとで規制緩和を礼賛し労働者派遣の自由化を主張しておられるのか、それともアジア各国との間で労働条件面での公正競争のルールを形成するおつもりがあるのか、ぜひとも見解を明らかにされるべきであります。これは、二十一世紀の日本の国のあり方の根幹をめぐる経営者側の指導理念にかかわる問題であります。
その上で、今回の派遣法の根本的かつ致命的な欠陥について指摘をいたします。それは、常用労働を派遣労働で置きかえることについての歯どめが欠落している問題です。今回の法案につきまして、派遣労働を利用できる業務の範囲を原則自由化するかわりに、臨時的、一時的な派遣に限定するとの説明がなされています。しかるに、この点につきましては、衆議院段階では十分な検討がなされておりません。法案修正などの作業もほとんどなされないまま参議院に法案が送られてきています。
具体的に申します。
改正法案で新たに設けられる第四十条の二では、派遣先は一年間を超えて労働者派遣の役務の提供を受けてはならないと定めています。ただし、この制限を受けるのは、就業の場所、働く場所と業務が同一の場合に限定されております。労働省の説明では、この条文によって一年以内の臨時的、一時的な派遣に限定されるとしております。ところが、この条文にある「同一の業務」という肝心かなめの言葉の意味について労働省は極めて狭く解釈をしております。このため、労働省の見解によりましても、一年ごとに係や班を変えるなどして指揮命令系統を変えるか、さもなくば仕事の内容をほんの少し変えるだけで、また仕事の名称を若干変えるというような小細工をするだけで、同一業務に該当せず、一年を超えて幾らでも派遣労働を利用できます。
その根拠を述べます。
従前の派遣法のもとにおきましても、二十六条二項による派遣期間制限の条項があり、これとの関係で、何をもって同一業務というのかという問題がありました。この点につきまして労働省の従来の行政解釈では、職業分類の細目に照らして相違があれば同一業務ではないと扱うものとされています。
その意味を確認するために、本日資料として配付しました「職業名解説」という本に掲載されている職業分類をごらんいただきたいのです。
その五ページの一番下を例に挙げますと、「弱電技術者」というのがあります。その者が弱電技術者だけでなくてその下にある「電気装置技術者」をも兼ねるならば、同一業務を継続していることにはならないのであります。
別の例を挙げます。
十七ページに「二三二—一〇倉庫係事務員」というのがあります。それがその下の「二三三—一〇受入係員」に転換すれば、同一業務ではないということになります。そして、さらにその下にある「二四一—一〇仕入係事務員」を兼ねるようになれば、これも同一業務ではないということになります。
すなわち、仕事の内容をほんのわずかに変えてやれば同一業務ではなくなり、この場合には一年間に限定されずに労働者派遣を利用し続けることが可能なのであります。その上、さらに、労働省の説明によれば、係や班が違えば派遣就業の場所も違うということになります。これでは、臨時的、一時的な派遣に限定して労働者派遣を解禁、自由化するという政府の説明とは全く異なり、実質的には労働者派遣を無条件全面自由化するに等しいものです。
パート労働法や均等法は直接雇用を前提とした法律であります。このため、直接雇用ではない派遣に対しては無力であります。パート法や均等法を逃れるためにこの派遣になだれ込むという危険も十分考えられるわけであります。
このような重大な問題があるからこそ、連合は、労働者派遣を解禁、自由化するのであれば、登録型派遣を禁止し、常用型派遣に限定することによって常用雇用の破壊を防止すべきであると提案しているわけであります。しかし、衆議院段階では全く考慮されませんでした。そのことも踏まえつつ、私ども日本労働弁護団では、参議院段階で条文の抜本修正が必要であると再度強く主張しております。
具体的には、韓国法と同様に、業務の性質で規制をすべきです。臨時的、一時的な場合に限定する旨を条文上明記することが絶対に必要です。
それと同時に、改正法案の第四十条の二の条文にある「その他派遣就業の場所」という言葉を削除して事業所ごとにし、またこの条文にある「同一の業務」という言葉の意味について、業務の一部が従前の業務と同一の場合には同一の業務とみなすと明記することが必要です。
これに加えて、派遣開始から一年間を経過した場合における派遣先ユーザー企業との間で直接の労働契約関係を発生させることによって、派遣先ユーザー企業の雇用責任を明確にすべきであります。
これらの点の抜本的な是正がなされない場合、常用労働は派遣労働によってどんどん侵食され、雇用不安が拡大することは確実であります。日本の景気が冷え込んでいる大きな理由の一つは、勤労者の雇用不安と買い控えであります。今回の派遣法改正法案がこのまま成立した場合には、雇用破壊を促進し、雇用不安を拡大し、景気回復の足を引っ張る最悪の法律となるだろうと思います。そして、市民社会の基礎にある雇用関係の荒廃は、二十一世紀の日本の国のあり方をも左右すると思います。このことについて、韓国での立法思想と対比しながら強く危惧しております。
以上をもってまとめといたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114515285X01119990601/12
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013・吉岡吉典
○委員長(吉岡吉典君) ありがとうございました。
以上で参考人の意見の陳述は終わりました。
これより参考人に対する質疑に入ります。
質疑のある方は順次御発言願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114515285X01119990601/13
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014・斉藤滋宣
○斉藤滋宣君 本日は五人の参考人の皆様方から大変貴重な御意見を賜りまして、そしてまた調査に基づくアンケート等を報告いただきまして、大変勉強になりました。きょう皆様方からお話しいただきました点、これからの審議の参考にしながらまた議論を深めていきたいと思います。
本来であれば、そういう五人の参考人の皆様方からそれぞれ御意見をお伺いすればいいところでありますけれども、何分にも時間が少ないものですから、私の判断というと大変恐縮でございますけれども、それぞれの立場の違うところをお伺いしながら質問させていただければありがたいと思います。
もう私が言うまでもなく、現下の雇用情勢は大変厳しいものがあります。三月の失業率を見ましても四・八%という過去最高の失業率となっているわけでありますけれども、この失業率のうち、約三%以上が需給のミスマッチによるものと言われているわけであります。
そこで、今回の法改正につきまして、先ほど来五人の参考人の皆様からお話を承っておりますと、一つは、今回のこの法改正が雇用問題の解決の一助になるという荒川参考人の御意見、そしてまた、先ほどお話しいただきました古川参考人からは、逆に雇用破壊を促進して雇用不安を拡大するのではないかという懸念があったわけであります。
それぞれのお立場から、もう少しその辺を詳しくお話を承ればありがたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114515285X01119990601/14
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015・荒川春
○参考人(荒川春君) 今の斉藤先生の御質問でございますが、まず現下の雇用状況につきましてはだれしもが認識しておるところでございますが、その解決のために政府も、あるいは関係者、企業側、それから働く側、社会全体が今大変な努力をしているところでございます。しかし、現実になかなかその方法というのが見つけ得ない、見つかり得ないというのが現状でございます。雇用過剰感を持つ企業が多いことも現実でございます。
そういう中で、新しい雇用を創出する、そういうことが企業社会における経営者の責務のような形で今求められておりまして、そして、その取り組みをする例えばベンチャー企業であるとか、あるいは特定の事業を展開しようとしている中小企業、そういうところでは、やはり必要とする人材が、非常に労働市場が変化しているのはわかるんだけれども、その予測ができにくい、あるいは、さまざまに企業経営のノウハウが高度化しているのにそれに合った人材がとりにくいというのも現実でございます。
この派遣法の改正を契機にいたしまして、即戦力の人材を求める方途の一つとして、派遣労働者を必要なときに必要な部分として入れたいというのは、これは企業経営といたしましては正直なところのものでもあると思います。
そういうところで、今までの二十六業務から発展いたしまして、ネガティブリスト、原則自由化の中で、派遣元事業者のマッチング、いいマッチングというものを契機にしまして人材が確保でき得るということは、相当な雇用、実質的な雇用増が期待されるものと。現に、先ほど派遣事業者の方からの御説もありましたように、派遣労働者がふえるというのは、この現下の状況の中で雇用機会がふえているということでございます。ここをやっぱり現実の問題として見る必要があるのではないかなと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114515285X01119990601/15
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016・古川景一
○参考人(古川景一君) 御指摘のありましたまず失業率の四・八%、私はこれは大変な数字だと思っています。というのは、昭和恐慌のときの失業率が六%台だと言われているんですね。そうすると、それとの関係から見ても、このまま失業がふえるというのは社会不安になりかねないと思っています。
その上で二番目の問題、これによって雇用がふえるのかという問題です。結論から申し上げれば、常用労働を置きかえるだけであって雇用はふえないと考えています。
派遣労働につきましては、実はドイツでは雇用拡大のために派遣の緩和がされたのは事実です。ドイツの場合には失業率が一〇%もありますので、そのうちの三%分を何とか派遣で吸収しようということを試みて派遣法の緩和をしたんですね。しかし、その場合には、常用労働を置きかえることについてはきちんとキャップをはめた、常用労働はきちんと維持しながら、それ以外に別の形の雇用として派遣をふやすということが政策的にちゃんとやられたわけです。
日本のように、そこの常用を守りながら別の職をつくっていくんだということができていない場合には、常用を派遣で置きかえるだけで終わってしまうだろうと考えています。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114515285X01119990601/16
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017・斉藤滋宣
○斉藤滋宣君 今、古川参考人のお話を承りまして、参考人がおっしゃる意味は十二分に承知しているつもりですけれども、あえてお話しさせていただきますと、参考人のお考えの中で、例えばいわゆるベンチャー企業の皆さん方に対する派遣労働だとか、どちらかといいますと既存の企業が今雇用創出能力を大分失ってきているときに、そういう新規産業に進出するところに対する派遣事業というものに対するお考え方を教えていただければありがたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114515285X01119990601/17
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018・古川景一
○参考人(古川景一君) ベンチャー企業や何かが、派遣があれば人を使う、派遣がなければ採用をやめるということはおよそ考えられないと思っています。企業をやる以上、人が必要であれば何らかの形で雇うのは当たり前であって、派遣があれば人をふやすということではないんじゃないでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114515285X01119990601/18
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019・斉藤滋宣
○斉藤滋宣君 余りここにこだわっちゃいけないでしょうけれども、もう一つ参考人の御意見をお聞かせ願いたいと思うんです。
よく言われることでありますけれども、例えば、就職するときに派遣的な仕事で入ることによって、この仕事が本当に自分の能力に合っているものであるかどうか、この会社が自分に、将来かけるかどうかわかりませんけれども、その会社に正式に採用されるという立場で今後働いていくことがいいかどうか、それから一方では経営者サイドからは、そういう労働者を使うときに、ある意味では派遣でおっていただくことによってその方の能力というものをよく評価させていただく、その上で例えば常用に変わっていくとか、そういうメリット面もあろうかと思うんですけれども、その辺に対するお考え方もひとつお聞かせ願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114515285X01119990601/19
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020・古川景一
○参考人(古川景一君) まずそのメリットなんですが、私は派遣労働を頭から否定するつもりはないんです。働き方の一つとしてあっていいと思っています。ただし、先ほどから申し上げているような均等待遇とか雇用の安定とか、そういうようなきちんと歯どめがかかった上であれば私はいいと思っています。
それから次に、派遣を試し使いで用いるというそういうお話なんですが、それは考え方としてはあり得ると思います。現に、ヨーロッパで見ますと派遣のうち三人に一人はいわば試用期間、試し使いでというふうに使われているのではないかという指摘もされています。ただし、それは今回のようなルーズな派遣制度のもとではなくて、さっきから申し上げているようにきちんと歯どめをかけた上での試し使いでありますので、それと一緒にするわけにはいかないのではないかというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114515285X01119990601/20
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021・斉藤滋宣
○斉藤滋宣君 ありがとうございます。
それと、先ほど来小林参考人また広松参考人からもいろいろ現場の実態を御報告いただきまして、そしてその中で、特に小林参考人のお話を聞いておりますと、今回の派遣法改正というものが雇用情勢の悪化と軌を同一にしていることもありまして、常用雇用に代替されるものではないか、企業のリストラをさらに進めるものではないかという懸念がかなりあると思うんです。そのような懸念というものを払拭するというと、この制度が企業サイドだけではなくして、先ほど荒川参考人の意見の中にもあったと思うんですが、労使双方のニーズに合っていなければならないというお言葉があったと思いますけれども、私もそうだと思うんです。やはり労働者サイドからもそのメリットが享受できる、そしてまた労使双方からそういうものが評価されるものでなければならないと私も思うわけであります。
ですから、今回の法改正の焦点の一つに派遣先の規制をどう実効あらしめるかということが問題になっているわけでありますけれども、理想論といわれれば理想論かもしれませんけれども、派遣先が規制とかそういうことによらずとも自主的な取り組みによってルールをしっかり守って的確に遵守していく、そういう姿勢というものが、これは今回の派遣法改正だけではなくしてすべての労働法の中で求められる、いわゆる経営者サイドの良識と言ったら怒られるかもしれませんけれども、立場ではないのかなというふうに思うんです。
ですから、そういう中で日経連さん、そしてまた日本人材派遣協会さんの方では今回のこの派遣法というものを推進する立場で来られているわけでありますけれども、今私が言ったようなところでどういう役割を今後、いわゆる派遣先または派遣元を含めてでも結構でございますけれども、推進する立場からそういうところをどういうように指導といったらいいのか、していくのか、その辺の御意見ありましたらお二人からお聞きしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114515285X01119990601/21
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022・荒川春
○参考人(荒川春君) ただいまの御指摘につきましては、日経連を含めまして経営者団体の役割を試されている御質問だと思いますが、先生がおっしゃるとおり、法をこういう厳正なる国会の場でおつくりいただきまして、そしてそれを施行されたからには遵守するというのが当然なことであります。その当然のことにつきまして、私ども経営者団体、特に日経連の場合でございますと、会員の皆さんに対しましてさまざまな機会を持ちまして制度の周知徹底をこれまでも図ってまいりました。
正直なところ、理解されないところもありますが、そこにおきましては、あえて私どもみずからの陣営にとって厳しい労働関係法も含めた法の遵守につきまして相当力を入れまして、さらなる周知徹底キャンペーン、そこには相当な会員さんへの御指導のような形までもさせていただいているところでございまして、今回の派遣法、職業安定法改正が事業主にとって、特に派遣法の場合でしたら派遣先企業に対するこの法の理解というものにつきましては力を入れてまいりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114515285X01119990601/22
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023・井上勇夫
○参考人(井上勇夫君) いろいろな反対派の意見も私自身ここで聞かせていただき、すべてがそうではないということだとは思っておりますが、そういう意見があるということ、特に工場へ、これは参考人も言われるように確実に違法な派遣でございます。所管庁の方で取り締まりをお願いする立場で、正直者がばかを見ないといいますか、私ども法律を一生懸命で守っておる立場、また協会からすれば各会員会社に守らせておる立場からいいますと、厳しい法律があって、派遣労働者の人権を守っていくんだと。
特に私ども派遣しておる労働者、一部ユニオンさんとか組合に個人的に加入しておる労働者もいますが、ほとんどがそれぞれの会社に所属しております。派遣事業を営んでおる者として、派遣スタッフを守ってやろう、それが一番の考えでございます。悪い言葉で言えば商品でございます。先ほど申し上げたように、派遣会社もかなり数がありますので、選ぶのは派遣スタッフでございます。待遇が悪いとか不利な扱いを受ければ、我々は一時的な事業をやっておるわけじゃございませんので、大事な労働者を守るということは、法律にもあるように、法律がなくても守るのが使用者の責任だと感じております。
また、派遣事業が伸びてきたということも先ほど申し上げたんですが、今まで終身雇用という形で日本経済は進んできたと思います。そのため世界の経済に太刀打ちできるという体制も、諸外国はこういう終身雇用を取り入れておる国は非常に少ないと思います、先進国は。この人材派遣が伸びてきたのもアメリカが十年ほど前から、ですから日本がおくれること十年ぐらい後に法律もできてやり出したということです。
我々派遣しておる側としますと、季節の激しい日本です。夏だけ非常に忙しいところ、冬だけ忙しいところ、これを終身雇用ですとむだなところが今まであった。それから、一つ例を出しますと入学時期、非常な数の入学願書が出たりします。このコンピューター処理、データ入力などは学校行事としますと四月、三月、このあたりが忙しい。その人間を終身雇用でやっておってはということ、これも一つの例でございます。
非常に経営者側の方が考えられまして、企業の効率化ということで人材派遣が伸びてきておるんだと思っております。
以上でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114515285X01119990601/23
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024・斉藤滋宣
○斉藤滋宣君 ありがとうございます。
時間がなくなってきたので最後にしますけれども、決して言葉じりをとらえる気はないんですけれども、先ほど荒川参考人のお話の中で、今回の派遣法改正の中でも一つの大きな課題といいますか、個人情報の保護の問題があると思います。
先ほど参考人からは、個人情報、プライバシーの保護はきちっとしていきたいというお話があったんですけれども、先日、日経連からいただきました書類の中で「労働者派遣法改正法案、職業安定法改正法案に対する意見」というのがあります。その中の五番にこういう文言があるわけです。「労働者の個人情報の保護については、その必要性は十分認めるが、就業の促進に反しないことが必要であると思われる。」とあるわけです。
私の解釈が悪いのかもしれませんけれども、とりようによっては誤解を招くような表現ではないのかなというふうに私これを読んで感じたものですから、先ほど荒川参考人からもわざわざプライバシーの保護ということを言っていただいたものですから、もしこの文言、私の理解が悪いかもしれませんけれども、もう少し詳しく御説明いただければありがたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114515285X01119990601/24
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025・荒川春
○参考人(荒川春君) 言葉足らずであったろうかと思います。
要は、労働派遣事業につきましては、一番の大切なところはマッチングでございます。そのマッチングに要する情報、これは個人情報に当たるわけです。この個人情報についてまで相当制約がされると、逆にそのマッチングなるものがうまくいかなくなる懸念があるので、そういうところを認識してほしい。しかし、プライバシーの保護の問題についての重要性は、重ねてでありますが、非常に大切なことであり、世界的にもこれは私どもとしてきちっと日本国全体として範を垂れなければならない規律になってくると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114515285X01119990601/25
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026・斉藤滋宣
○斉藤滋宣君 言うまでもないことですけれども、このプライバシーの保護につきましてはまた委員会等で議論があろうかと思いますけれども、少なくともこの派遣法を推進していく立場の中で、やはりそういう誤解を受けることがないように、今後ぜひとも気をつけていただきたいと思います。
時間ですので、終わらせていただきます。ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114515285X01119990601/26
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027・小宮山洋子
○小宮山洋子君 参考人の皆様、お忙しい中貴重な御意見をありがとうございました。
私も時間が限られておりますので、広松参考人を中心に、あと古川参考人に私は御意見を伺いたいというふうに思っています。
今回の派遣法改正、多様な働き方を否定するものではございませんけれども、やはり働く側からしますと、常用雇用の代替にならないようにすることと、それから派遣労働者の労働条件など権利がきちんと守られる必要が最低限あると思っています。
そうした観点から、まず広松参考人に、現在の専門の二十六業種に限りましてもさまざまな問題があると思いますので、そのあたりの実態、そして、今回の法案が衆議院で修正はされましたが、それが歯どめとしてそうした実態に十分に働くのかどうか、そういう観点から何点か伺いたいと思います。
先ほど示していただいたトラブルの内容の中にも、割と大きな問題として挙がっていますけれども、中途契約解除あるいは短期契約で更新時にさまざま労働条件が下げられる、そのような実態があるのではないかと思いますが、その点についてまず広松参考人に伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114515285X01119990601/27
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028・広松栄香
○参考人(広松栄香君) まず、中途解約についてなんですけれども、私どもの方に寄せられております中で、ひどいものですと、仕事が決まりましてあと一週間後にはスタートするという、事前打ち合わせまで済ませていざ働き始めようという心構えをしたところで、悪いけれども予算がつかなかったからキャンセルさせてくれというふうに突然キャンセルをさせられてしまう。
あとは、短期で切られることにつきましては、これはきのう入ってきた相談なんですけれども、ことしの一月から五カ月間、一カ月更新でずっと働いてきて、あと一カ月働けば六カ月となって有給も使えるというふうに思っていたんですけれども、突然先週の金曜日、五月二十八日になって、あなたは来週で終わりですということを告げられて大変困ったという相談が入りました。そういう実情が多々あるというところが非常に問題だと思います。
特に、予算編成を問題にしまして、ことしの二月ですと、契約は三月いっぱいまでですのに、二月二十日を過ぎてからあなたは二月いっぱいで終わりですよと言われてしまったり、ほかに、突然キャンセルされるもので、六月に仕事の紹介を受けて七月末から働いてもらいますということだったんですけれども、それが派遣先の都合によって八月末からの勤務にしてくださいということで、ずっと体をあけて待っているわけですね、派遣労働者の方は。それで、生活にも困りますので土日の単発の仕事でつないで生計を立てていたんですけれども、八月中旬になってやはり顔合わせも済んで働き始めようというときになって突然キャンセルされてしまったと。こういう場合でも労働者の方には何の保障もないという現実があります。
こういう点で、何か保護できないものかというのが私どもの心配であり、この辺を強く協議していただきたいというところなんですけれども。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114515285X01119990601/28
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029・小宮山洋子
○小宮山洋子君 それから、これは多くの人に多様な働き方ができるようにということも言われているわけなんですが、実態としては派遣で働くに際して年齢による差別というのがあると聞いていますけれども、そうした実態はどうでしょうか。広松さんに伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114515285X01119990601/29
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030・広松栄香
○参考人(広松栄香君) 年齢による差別につきましては、これはことしの五月十七日に日経新聞に載ったものなんですが、「派遣スタッフの登録に年齢制限を設けている派遣会社は多い。」ということで、「とらばーゆ」という求人雑誌の編集部が自分のところの求人広告について調べた結果が載っています。三十五歳までの年齢制限をつけているものが約四割です。四十歳までが約二割、年齢制限のないのは三割にすぎなかったという調べが出ております。
派遣労働者の方からもよく三十五歳定年制などの発言が出ておりますが、実際私どもに届きました声には、派遣会社に登録に行ったところ、この方は三十六歳です、あなたの年齢で紹介できるお仕事はありませんということで断られた。この方は実際に派遣として実績も実力もある方でした。それで御主人の転勤に伴って転勤先の地域の派遣会社に登録しに行ったらそういうことを言われたと。また、新しい派遣会社に登録に行くたびにまず言われることは、この方は三十歳ですが、あなたの年齢では御紹介できる仕事は少ないですと。派遣労働者の感じていることは、ほとんどの企業が二十代を欲しがって、企業にとって若い方が使いやすいという、そういう目で見られているんだなということがよく言われています。
派遣という働き方は大体、バブルの時期には拘束が少なくて自分の好きなときに自由に働ける働き方だということで花が開いたような働き方だと思うんですけれども、その時代は仕事を選べて何でもよかったんですが、失業率が四・八%を超えた今になりますと、競合で、事前面接で落とされたり、派遣先、クライアントの言いなりにならなければだれも助けてくれない、派遣元に相談しても、あなたが我慢してくれるしかない、我慢できなかったらほかの人にかわってもらえばいいという、そういう発言しかもらえない、そういうつらさがあると思います。
ですから、もっと今回の改正法案でも労働者の保護に視点を置かなければ、失業率がどんどんふえる中で労働者の生活というものを守ってはいけないと思うんです。
以上です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114515285X01119990601/30
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031・小宮山洋子
○小宮山洋子君 それから、派遣というと、ともすると自分の好きな時期に働けるのだから常用の労働者のように育児休業とか介護休業は対象にならないとか、今実態上はなっていないわけですけれども、これはどれぐらいの長さ働いているかという労働省の調査ですけれども、派遣で五年から十年働いているという人が期間の中では一番多いんです。
そうした実態からいきますと、これから職種がほとんどの職種でできるようになる場合に、今いろいろな働き方の中でテーマの一つになっている育児、介護など家族的責任を果たすためにも、育児休業、介護休業というようなこともきちんと法律の上でも整理をして、派遣で働く人にも必要な場合にはそういうことがちゃんと請求できるようにということも必要ではないか、私はずっとそのことをいろいろなところで主張しているんですけれども、広松さんはいろいろな実態をごらんになってこういう点はどういうふうに考えていらっしゃるでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114515285X01119990601/31
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032・広松栄香
○参考人(広松栄香君) 育児休業とか介護休業は、日々雇用される者とか期間を定めて雇用される者には適用されないというふうに今の法律ではなっています。でも、私どもの方に寄せられた相談では、同じ会社で五年働いているとか三年働いているとか、また十年働いているというケースがかなり見られます。
こういう実態の中で、派遣労働者、特に女性の労働者はどういう目に遭っているかと申しますと、まず生理休暇というものが派遣で五年働いていてもとることができない。あることはわかった、とれることもわかったけれども、派遣元に言ったらとってもいい、でも派遣先に申し出たところ、医師の診断書を出せとか派遣元の許可を得なければいけないとか、いろいろの条件を出されてなかなかとりづらい。派遣労働者は、派遣元と派遣先の二つのハードルを乗り越えないと生理休暇さえとることはできません。
それから、ここにあるのは、派遣で働いていて妊娠していることに気がついた、だから体調も悪いしこのまま続けていけないからできれば休みをとりたいということだったんですが、これも法律上では、母性健康管理の義務化ということで妊娠二十三週までは四週間に一回休みをとることができるということが規定されていますけれども、こういう法律は何も適用されませんで、派遣先はとにかく妊娠しようが何しようがあと一年は働いてもらわなければ困る、出てきてくれと。
そういうふうに法の外に置かれていると申しますか、この権利を主張しても守ってくれる立場に立つものが自分以外はだれもいないというところで、とても育児休業、介護休業というところまではなかなかいかないのではないかと思いますが、それを平等にとらせるのが法だと思います。その法規定をどうやって直せば今ふえ続けている短期雇用の労働者たちに平等に与えることができるか、その辺が問題だと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114515285X01119990601/32
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033・小宮山洋子
○小宮山洋子君 もう一点、広松参考人に伺いたいんですが、今回、一年の期間が過ぎた場合には雇うように努めるという規定にはなっているんですけれども、その実効性があるのかどうかということが議論になっているわけです。現在も、二十六の業種について契約更新をして三年たったらその先はきちんと雇うようにということがあるわけですけれども、実態として今その点についてはどうなっているでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114515285X01119990601/33
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034・広松栄香
○参考人(広松栄香君) 実態としまして、私どもの「お助けねっと」に来ているメールを見ましても、五年働いているけれども派遣でずっと働いているとか、十年働いてもずっと派遣であるとか。ですから、企業が人を雇う場合、派遣から正社員へ移行しようという場合に考えることと申しますか、実態から申し上げますと年数で移行されることはないと思います。今まで聞いたことがありません。派遣労働者が専門性にすぐれていて能力を買われて正社員として雇われるという話は聞いたことがありますが、年数がたったので雇うということはないと思います。
先ほども申し上げましたが、企業側は人件費削減というものを名目にいたしまして、六カ月過ぎたら有給をとる、この有給を与えるのも惜しいから五カ月で切ってしまうとか、あとは社会保険に入られては自分の負担がふえてしまうからということで雇用期間二カ月で更新しながらつないでいくというふうに、とにかく何でも負担は避けようというような傾向が見られます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114515285X01119990601/34
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035・小宮山洋子
○小宮山洋子君 次に、古川参考人に伺いたいと思うんですが、先ほどのお話でも、このままだと常用労働が侵食される、不安定な短期雇用がふえるという御指摘がありましたけれども、実際にはどのような状態が短期雇用として心配されるのか、伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114515285X01119990601/35
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036・古川景一
○参考人(古川景一君) 今出ました広松参考人の御指摘とも関連するんですが、パート労働、パート労働法によって均等待遇原則があるわけです、これがまず崩されてくるだろう、制約を受けないわけですから。それから、せっかく男女雇用機会均等法によって、採用差別それから退職年齢の差別、これは縛られたわけです。ところが、これについても全くフリーパスになっちゃう。ですから、企業の側から見れば、パート労働法や均等法、これによる制約を免れるためにもこっちになだれ込んでくるんじゃないかということを強く危惧しています。
それを防ごうとしたら、やはり臨時的、一時的な雇用に限定して、ユーザー企業の雇用責任をはっきりさせて、そして均等待遇原則を明確にする、このあたりをきちんと歯どめをかけない限りはとんでもないことになるんじゃないかというふうに思っています。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114515285X01119990601/36
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037・小宮山洋子
○小宮山洋子君 今、臨時的、一時的雇用に限定というお話がありましたけれども、私は、一つの考え方としては派遣事由をきちんと明記することによってそこに縛りをかけるという方法があるのではないかと思うんですけれども、そこらあたり、フランスやドイツとは実態が違うという話も出てくるわけですが、どのようにお考えになるでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114515285X01119990601/37
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038・古川景一
○参考人(古川景一君) 私は、それも選択肢の一つとしては当然検討されなくちゃならない問題だと思っています。幾つかの選択肢の中から考えればいいことじゃないでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114515285X01119990601/38
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039・小宮山洋子
○小宮山洋子君 今幾つかの選択肢とおっしゃいましたけれども、労働者保護の視点というのが韓国の法律にはちゃんと明記されている、そこの点がないのが問題だとおっしゃって、私も同感なんですが、労働者保護のための幾つかの選択と言われましたけれども、最低限こんなことがここには入っていなきゃいけないということがありましたら教えていただければと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114515285X01119990601/39
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040・古川景一
○参考人(古川景一君) さっき申し上げました韓国の法律は大変よくできていまして、ほぼ基本はこれでカバーできているんじゃないかというふうに思っています。
その上で、選択肢は幾つかあると申し上げましたが、フランス型で理由をきちんと制限するやり方もあれば、ドイツのように一年間でがっちり限定しちゃうやり方もあれば、それから韓国のように二つの事由に限定していくというやり方もあれば、業務の性質でもって臨時的、一時的という歯どめをかけるやり方もあれば、それはさまざまだろうと思います。
ただ、そこの基本にあるのは、常用労働を置きかえない、もう一つは労働者をきちんと保護する、この二つの視点に基づけばやり方はバリエーションとすればいろいろあるだろう、こう思っています。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114515285X01119990601/40
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041・小宮山洋子
○小宮山洋子君 それと、先ほど広松参考人のお話にもありましたけれども、現在の派遣労働者が保護されない、権利があってもそれをうまく行使できないというのは、派遣元と派遣先に責任がいろいろ分かれているという点がありますよね。同じ休みをとるにしても、この部分はこちらに行って、この部分はこちらに行って、そういう中で守られていない部分があると思うんですが、今回広げていくに当たって、その辺はどう整理するというか、どういう形にすると労働者が守られるようになるとお考えでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114515285X01119990601/41
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042・古川景一
○参考人(古川景一君) 根本的には、冒頭に申しましたように、現在ある派遣法そのものが業法なんですね。さっきも言いましたけれども、石油業法や何かと同じ業法であって、ユーザー企業はお客様なんです。それで、お客様を縛るわけにはいかないというのが労働省の説明なんですね。だとしたらば、その法律の枠組みをやはり根本的に変えて、お客様扱いするんじゃなくて、労働力を使用する者としてきちんと責任をとってもらいますというふうに枠組みを変えなくちゃならないんじゃないかというふうに思っています。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114515285X01119990601/42
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043・小宮山洋子
○小宮山洋子君 あと残り少しなんですが、今厳しい方の意見をお二人に伺いましたので、最後に荒川参考人に、今のような実態があるということを踏まえて、そのお立場から御意見を伺いたいと思います。今回広げることに対して、やはり経営する側の責任というのが非常に重要だと思うんですが。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114515285X01119990601/43
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044・荒川春
○参考人(荒川春君) 業法だというお考えの方もいらっしゃいますが、今回の改正は、派遣業者あるいは派遣先企業もさることながら、そこに働くあるいは派遣される方々の保護の問題につきましても広くトータルで新しい拡大をしていこう、保護を強化していこうと、さまざまに配慮をしたものであろうかと思っております。
そういう点から、今回の法改正が成立した暁には、さらにこの法の趣旨をきちっとそれぞれの立場で理解しなければこの派遣労働の市場なりあるいは業態なりが発展することはないであろう。また、これだけ皆さんからの御指摘を受けている、さまざまに受けているということは関係者としても真摯に受けとめなきゃいけない、こういうふうに考えています。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114515285X01119990601/44
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045・小宮山洋子
○小宮山洋子君 ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114515285X01119990601/45
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046・山本保
○山本保君 公明党の山本保です。
きょうは参考人の皆様どうもありがとうございました。私も、全員の方というわけにはまいりませんので、主に井上参考人にお聞きしたいと思っておりますが、実はその前に、きょう五人の方からお話を伺いまして、私ちょっと感想がございます。
それは、現実的には今の派遣業というのは大変会社、派遣先優位であって、働いている側の方の優位ではないという実態がどうもあるようである。ただ、これからもお聞きするわけですけれども、井上さんのお話などを聞きましても、いや、本来、法の意図する派遣業というのはそういうものを言っているのではない、ちょっと違うんじゃないかと。それは、単に自分の技能を持ち、または自由な、自由というのはある程度自分の選択によってその技能について会社に提供をしていく。これまでのように終身的にとか、またそのほかいろいろ感情面などで会社に従属するのではなくしてという形。どうもその二つが乖離しているような気がしております。
そこで私の感想は、今回の改正というのはそのことをいかに法の求める方へ持っていくことに対してどのような効果があるのか、この辺が一つポイントなんだなという気がいたしました。自分自身これは不勉強で今まで余り気がつかなかったところでしたので、この辺を少し勉強してみたいと思っております。
ただその場合、そうしますと、これまで特別な職種だけに限定されている、きょう荒川参考人も最初に、社会的制約ということが出ましたけれども、こういう制約は一見非常にその分野が守られるわけですが、逆にそれは、その分野だけ非常にオープンではなくなって、どうもその実態が隠されていたんじゃないかなという気もするんです。
そうしますと、今回の改正の一つの大きなものは、こういう分野をオープンにすることによって、当然労働者側からも選択の幅が非常に広がる、また社会的な制裁というようなものについても相当踏み込むということで、この辺についても何か競争が動くのかなというのが今私の仮説的な自分の考え方でございます。
そこで、主に井上参考人にお聞きしたいのですが、まず最初に、非常に単純なことなんです。つまり、一般的に言えば、自分で会社と契約したりすればお金が丸々入るはずなのに、派遣会社というところへ通せば、当然そこが何%かのそれを持っていかれるわけだから減るではないか、前よりも条件悪くなるはずだ、こういうふうに考えるわけですね。しかし、これは理屈はそうなるかもしれないが実態はどうなっておるのかということで、余り会社としては言えないことかもしれませんが、もしできるのであれば、例えばどういう料金で、実際に労働者が受け取るのはどれぐらいの賃金であるかということについて例を出して示していただけるでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114515285X01119990601/46
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047・井上勇夫
○参考人(井上勇夫君) 先ほどから私自身の会社のことを発言する機会がなかったのですが、初めて出てきましたのでその件にお答えします。
パートと比べまして、パートという業種は何でもできるわけですが、現在の二十六業種につきましては専門的という制限がついております。そのため、自分でパートその他仕事を探されるよりは、派遣元へ来ていただければそれなりの自分の能力、自分で売るという形です。
一つの例を出しますと、先ほど私が一番多く出ておると言いました二号の事務用機器、この場合ですと、現在、私どもでは最高では、企業の方からは一時間当たり二千二百円、最低で千八百円、これは五月一日のものをここへ来るために調べてきたものです。平均的には、一時間千九百三十円で企業から大体受けております。スタッフの方に払う金額が、最高ですと千六百二十円が一時間当たりの金額です。最低の方は千二百三十円、平均が千三百九十円でございます。もちろん、この開きがあると思いますが、この中に含まれておるもの、一人当たりのものはなかなか算出できませんので決算のときのもので出しております。
社会保険、雇用保険、会社負担分が経費です。それから、スタッフを集めるときの経費、だれが一人当たりと言うことはできませんので年間でデータを出しております。その他、そういうものの経費がここに含まれております。もちろん、派遣先を確保するためには我々の会社の営業マンが飛び込みですぐあるわけじゃありませんので、そういう面。
それから研修、現法律の中でもスタッフには研修をしなさいということがあります。もちろん、私どもの会社で働いてくれる派遣スタッフの収入を上げてやりたいという気持ちもあります。そのためには能力をアップするということで、この経費は派遣スタッフから取っておりません。必要経費ということでその他もここに含まれております。
それから、ほとんど通勤手当を込みで企業の方からの契約料金に入っていますので、この中から通勤手当。それから有給という形でやっております。私どもではすべて有給を六カ月たてば十日与えておりますし、保険についても二年ほど前会計検査院の全国的な調査がありました。それ以後は御指導に従い、現法律に従っておりますので、有資格者については全部入れております。
そのような経費がこの差額の中に含まれております。しかし、私どものこれは名古屋の料金でございます。ですから、東京の方はもう少し高い、地域性があると思います。自分で探されるよりは、我々派遣元が保護しておるという気持ちで私どもは思っておりますし、なるべく条件のいいところへ派遣してあげようと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114515285X01119990601/47
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048・山本保
○山本保君 私も名古屋ですから、今のお話で大体わかるんですが、そうなりますと、今お話の中にもありましたけれども、技術的な優位性というかそういうものがなければそういう高いお金は取れないわけですし、教育訓練とか能力開発という点について何かそちらでやっている特徴的なものがあったら教えていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114515285X01119990601/48
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049・井上勇夫
○参考人(井上勇夫君) 私どもの人材派遣会社、実は親元といいますか出資元がございます。愛知県の方で大学一校、短大二校、専門学校十五校、高校二校、中学一校、これが母体でございます。特に、専門学校を出た方が結婚された後パート等でやっておるということを耳にしておったわけです。せっかく学んだ技術を何とかということで派遣会社を一番初めにつくったわけでございます。現実には、私どもの関連の卒業生ばかり派遣しておるわけではございません。比率でいきますれば三%から四%が全派遣スタッフの中に入っておる程度でございます。
御質問の件なんですが、子育てが終わった後、幼稚園へ行った後十時から三時ごろまで働けるという方が見えた場合、以前はデータ入力、ワープロを扱っておったけれども子育ての間に進歩した、もしくは能力が落ちたという方が見えた場合、私どもの方で一週間許す時間内に来ていただいたり、もしくはノートパソコンなどを自宅へ持ち帰らせて訓練をしています。先ほど、仕事が忙しいときには非常にスタッフを大事にしたと言われていますが、現実には私ども愛知県では派遣する人が非常にまだ足らない状態でございます。専門性のある人しか派遣ができませんので、その人たちばかり待っているわけにはいきませんので、それぞれの派遣会社が研修という形で育てて、少しでも技術を上げるシステムをやっております。
また、自分のところだけで全部できなければ、短期のスクール、そちらへ委託という形でやっております。これについては全額ただではやっておりません。会社の方で半額を持つというような形でやっております。さらには、派遣中のスタッフのさらにレベルを上げたいといった場合には、福利厚生の一つとして授業料の何分かを派遣元が持つというような方法もとっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114515285X01119990601/49
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050・山本保
○山本保君 先ほどほかの参考人からも、例えばいろんなトラブル、中途の解約であるとか残業手当が出ないとか、または母性保護の関係でということが出ました。そういうことについて派遣会社としてはどういうふうに対応するのか、もうこれは全くそういうことは手が出ないのか、それとも法的な、または会社としての努力でどんなことをされているのか、お伺いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114515285X01119990601/50
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051・井上勇夫
○参考人(井上勇夫君) 先ほどからのお話を私はここで聞いておって、そんな派遣会社があるのかなという驚きの方が多く、そんなことならもっと大変なことになるのではないかなと思っておりますが、一部確かにあるのやとも思っております。
私の知っておる範囲では、時間外手当をつけないなんというのは、私どもの周りにおる会社では聞いたことがありません。それについてなんですが、法律でももちろん決まっております。行政の立ち入りも我々のところは受けております。派遣スタッフも非常に勉強しております。二五%アップという計算を時間給でやっております。その関係で、私どももコンピューターで計算しておりますが、時間を入力すればコンピューターの方からもう自動的に出るようにまでしております。
それから、有給を与えないということについても、我々のこの協会にもちろん入っておるところからは聞いたことは余りありません。ですから、どうするんだということよりは、私どもの方としては、その分も企業の方から、派遣先からもういただいております。一番初めの契約するときに、一時間当たり料金設定をした場合に、休日出勤、深夜勤務その他の単価が契約書にうたい込んであります。それと全く同じ形で雇用契約、その前に、明示書というものが現法律では決まっておりますので、明示書の中にも、時間給を提示した場合に、そこに自動的に二五%アップのものを入れております。
したがいまして、これについて守らなければ法律違反でもありますし、先ほどから申し上げているように、派遣スタッフ自身が、数多い派遣会社がありますので、そちらへ移動していくと思います。無理やりやめさせないなんということはこの時代できません。派遣スタッフは口もありますし足もありますので、酷使したり約束を守らなければよその派遣会社へ変わるなりすると思います。また、お役所にも届ける窓口がありますし、先ほど申し上げましたように私ども協会自体も相談窓口をつくっておりますので、そのようなトラブルはございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114515285X01119990601/51
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052・山本保
○山本保君 現実について、もう少しまた次のいろんな質疑の中で労働省には聞いてみたいと思っておるわけです。本当に今までの派遣というのが、どこもパートだとか、それから丸抱えのものも何か偽装的なものだということがきょうありましたけれども、どうもそうであった。それが今回の改正によってどのように変わるのか、ここがひとつ大事かなという気がしておりますので、この辺はまた我々の仕事としてやらせていただきたいのです。
少し時間がございますので、荒川参考人にお聞きしたいのでございますが、ちょっと失礼かもしれませんが、先ほどお話の中に、次の見直しのときに、見直しについては御自分たちにしても非常に重要だと思っていると。その理由の中に、一年間という短期間では働く側にとっても生活が安定しないのではないかと、もちろん会社としても安定しないのかもしれませんが、こういう御説明をされたわけでございますが、私は、今の私の議論といいますか、やりとりからもおわかりだと思いますけれども、一年間というようなところで短期的に設定するというところが非常にみそであって、そういうことを、もともと生活を安定するということであれば、常用で雇うべきではないかなと。申しわけございませんが、本当はこういうところでは反論的に質問するのは失礼であって、お答えはなくても結構でございますけれども、そんな気がしたものですから、もしよろしければその辺についてもう少し詳しくお話しいただけますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114515285X01119990601/52
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053・荒川春
○参考人(荒川春君) 働き方でございますので、さまざまなものがあっていいのではないか、ここに尽きるものであります。そして、それぞれの働く方においても事情がある、その事情に法律がいささかでも縛られるものであってはいけないだろうということをもって発言をした部分でございます。
ですから、当面今回の法律でもって一年設定の派遣について私自身否定をしていこうとするものではございません。ただしこれは、ということは全体としまして、この法律の改正をして我が国が今置かれている雇用問題の解決の一助にしたいということから今回審議会あるいは政府提案のこの法律案としてとられたものについて、そのものを今現在否定していこうという形ではないということでありまして、しかし、じゃ全く賛成しているかというとそうでもないということを少し申し上げたものでございます。
と申しますのは、御案内のとおり、現行二十六業務につきましては最長一年、更新二回までの取り扱いが認められているわけでございます。それとそのほかの業務とはどういうふうに違うのかという話があれば、当然ながら、ほかの業務についても同じような条件があってもそれは悪くはないのではないか、まずそれが一つということでございます。
それから、働く側につきましても、やはり一年をして企業の方に雇われていく、常用で雇われたいと思う方もいらっしゃれば、やはりそうではなくて派遣でもってやりたいなという方もいらっしゃるんじゃないか。そういうような方も含めまして、いろいろな方がいらっしゃる。いろいろな方がいらっしゃることをやっぱり片方思っていただきたい、こういうことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114515285X01119990601/53
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054・山本保
○山本保君 ありがとうございます。
確かに二十六業種とのこの二つの差ができてしまったということについて、大きな課題かなという気もいたします。
ありがとうございました。時間が参りましたので、終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114515285X01119990601/54
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055・市田忠義
○市田忠義君 日本共産党の市田です。きょうは大変にお忙しい中を貴重な御意見をお述べいただきましてありがとうございます。
最初に、小林参考人にお聞きしたいんですが、先ほどの陳述の中でさまざまな違法な派遣の実態を述べられました。違法派遣の是正を労働省に求めた際に事態は何ら改善されなかったということについてお述べになったわけですが、もう少し詳しくその点をお聞きしたいのと、あわせて、違法な派遣が行われているという問題については、一番そのことを知っているのは派遣先の従業員が最もよく知っているわけで、派遣法の適正な運用というのは当該職場の労働者が加入している労働組合などの協力がなければ私はできないというふうに思うんですが、労働組合運動の実践的な経験を踏まえて、その点についてもう少し詳しくお聞かせいただければありがたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114515285X01119990601/55
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056・小林宏康
○参考人(小林宏康君) 違法派遣だということで組合が問題にした、その結果どういうことが起こったかというのを具体的に二つほど事例を初めに申し上げたいと思うんです。
これは先ほど言ったIBMの藤沢工場の場合です。職安に組合から問題を出したわけですけれども、どうなったか。形は変わったんです。例えば、それ以前にはアルバイトと派遣が一緒に混在で仕事をしていて、したがって当然その指揮というのはもちろんIBMの社員が行っていた。服装も特に区別はされていなかった。これは問題じゃないかということで組合が提起をしたのに対して、一応派遣だけ別のラインにした。ユニホームも分けた。そこに形の上での管理者というのがついた。それで、いわゆる請負と派遣に関する区分に外形は合わせたという格好になっているわけです。しかし、そこで実際に働いている労働者に聞いてみますと、派遣元から来ている管理者というのは仕事の中身を十分つかんでいませんから、現実の指揮命令はやはりIBMの社員がやっている、中身が全く変わっていない、形だけというのが実態だと。
それから日本電子の場合ですけれども、先ほど申し上げた図面をコピーして区分けをする出図という作業です。この企業では出図庫というふうに呼んでいるわけですけれども、そこで派遣の社員と日本電子の社員が最初は混在で仕事をしていた。それに対して問題にしたので、そこで働いていた日本電子の社員を一応別の場所へ移して、その出図庫というのに派遣元の企業名の看板をかけた。それで、一応派遣元から人は来ていて、実際はそれは何にも作業の指揮管理はしていなかったんですが、書類上派遣元から来たのが書類に判こをつくという形で管理の外形は整えた。ただ、現実には対応できませんから、何か事あるごとに派遣社員が日本電子の社員に聞いて、その指示を受けて仕事をやっているということになっているわけです。つまり、簡単に言えば、三十七号の労働省告示に挙げている幾つかの要件に形だけつじつま合わせをする、実態は何にも変わらないという状態が続いているということです。
もう一つ、先ほどから幾つか企業の側の何といいましょうかモラルの問題も含めてなんですが、実はこのIBMというのは人事管理マニュアルというのを持っておりまして、施設内業務委託ということに関するルールを社内で定めていた。その中には、本来社員が遂行すべき業務については原則として派遣でやってはいけない、派遣は認められていませんから言葉の上では業務委託ということになるわけですけれども、そういうマニュアルがあって、先ほど挙げた例について組合がこのマニュアルに反しているではないかというふうに交渉の席で指摘をしたのに対して会社は、確かにルールはそうなっている、それはみずから定めたルールですねマニュアルで、それに反しているということはあるけれども、監督署は形さえつくればそれで結構だと言っているというふうに会社が答えていると。
こういったこともあって、大変問題ではないかということで、労働行政のあり方について、これはたしか藤沢職安だと思うんですけれども、どうなのかということを本省交渉の中でただしたわけですが、現実にこれについての回答がないというのが実態なわけですね。
今申し上げたようなことがどういうところで起こっているか。いわゆる請負とそれから派遣の区別がとろけてしまっているというのが僕は一番重大だと思っているわけです。その原因の一つには、委員の皆さん御承知のとおりですけれども、その請負業者が自己の責任と負担で調達する機械、設備もしくは器材、材料もしくは資材により業務を処理すると、こうあるわけですね。ところが、自己の責任で負担、調達というのがこれは確かに関連する職安法の行政解釈例規にもあるんですが、注文主から買ったり借りたでもいいんだというふうになっている。ところが、その注文主から買ったり借りたのはいいということが、実は行政解釈例規にも、別個の双務契約の上に立った正当なものと認められ、かつ、法を免れるために故意に偽装したと認められる根拠がない場合に限って、注文主から借りたり買ったりしてもいいんだというふうになっているんだけれども、実際にはそこに立ち入った検討がされていないんですね。聞いてみても、請負契約の中に借り入れという項目さえあればそれでもうフリーパスになってしまっているというふうなこと。そのほかにもいろいろ申し上げたいことはあるわけですが、現実に請負と派遣との区別、これを厳格に区別しておくということが労働者派遣法の運用にとっても非常に大事なポイントだと思うわけですが、そこがなくなっちゃっている。
これも労働省交渉の中で、故意の偽装ということが言われています。幾つか挙げている基準を一応クリアしていても、それが故意に偽装したものならだめだというのがあって、故意の偽装というのはどういう概念なのか。現実に故意の偽装で指導した事例があるか、指導したとすればどんなことをやったのかというふうに聞いたわけですが、これについても故意の偽装の定義はいわば告示の文章をそのまま読み上げただけでそれ以上立ち入った説明はありませんでしたし、これを使われた事例もほとんどないというのが私どもの認識です。
先ほどお話があった労働組合の協力の問題に話を移しますけれども、これは職安で僕らが交渉する中で話しても明らかなわけですけれども、実際にその現場で違法行為が行われているかどうかというのは、定期の調査やあるいは臨検指導に入っても、その場だけ繕う。先ほどの混在がまずいよという話になると、入ってくるときは一応別に分かれている形をとっているわけですが、実際には混在で作業をしている。幾つもそういう例はあるんです。ここがいわゆる請負のデスクだよというのが置いてあるんだけれども、そこにいたんじゃ仕事にならないので実際はもう混在になっているというのは、そこに働いている当該労働者かそこで一緒に仕事をしている労働者でなければ日常的に違法状態がないかどうかというのはチェックできないわけです。
その意味で言いますと、労働者、労働組合の協力というのは法の適正な運用にとってどうしても欠かせない問題だと。その点、労働者派遣法の問題でも、単に派遣労働者だけではなしにその派遣が行われている派遣先のすべての労働者あるいはそこの労働組合が申告する権利というのが当然ないと、派遣労働者の立場は大変弱いですから、事態が改善できないのではないかというふうに考えています。
この点で、日本電子の場合については、労働組合が先ほど言った一般事務への対象外の派遣適用について問題にして、先ほど申し上げたような形式的な改善はあったんですけれども、私どもが非常に遺憾だと思っているのは、こういう労働組合が申告をしても、それに対してどういう調査が行われたのか、どういう指導がやられたのかということが、職業安定法の五十一条の秘密の厳守ということを理由にして何ら報告されない。
労働基準法なんかですと、労働者が問題じゃないかというふうに告発をすれば、それに対して調査が入って、こういう問題点があったのでこういう是正命令を出した、勧告をしたというのがあるわけですけれども、この五十一条の個人情報を漏らしてはならないということが、いわば僕は逸脱した解釈だというふうにしかどうしても思えないんですけれども、実際にその当該職場の労働組合が事態を改善するために力を発揮するということを大きく制約しているという現実があるわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114515285X01119990601/56
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057・市田忠義
○市田忠義君 古川参考人と小林参考人にお尋ねしたいんですが、私ども日本共産党として、多くの労働者や労働組合のいわば最大公約数的な要求を対案という形でまとめて参議院に出しています。
〔委員長退席、理事笹野貞子君着席〕
きょうはその中身を述べる機会、場所ではありませんのであれこれ言いませんが、その中で、特に我々としては直接雇用の破壊をもたらさないために派遣労働というのはあくまで例外とするべきだと、古川参考人も一時的、臨時的なものに限定すべきだということを先ほどおっしゃいましたが、参議院本会議での質問の中で、例えば過去一年間に人員削減を目的として常用雇用労働者を解雇したり削減した事業所、ここは派遣受け入れを禁止するというふうにすべきじゃないか。これに対して総理の答弁は、その企業を希望する労働者のニーズを抑えてしまうことになるから一律に抑えるべきではない、こういう答弁。派遣労働者が自分で派遣先を選ぶなんてできないことははっきりしているのにこういうことでした。
しかし我々は、リストラの道具としてこれが使われることはやっぱりやめるべきだ、少なくとも解雇したり人員削減をした後一年間は派遣労働者受け入れを禁止するということを明確にすべきだというふうに思います。それから、派遣期間の上限を一年として更新を認めない。一年を超した派遣労働者は本人が希望すれば派遣先に直接雇用を義務づける。単なる努力義務ではだめだと思います。それから、企業が系列子会社の派遣会社に自分のところの労働者を移籍させてそこから派遣労働者として受け入れる、こういうことはやるべきでないし、もしやった場合には派遣先に直接雇用を義務づけるべきだというふうに思うんです。
そういう考え方について、古川参考人や小林参考人の感想なり御意見がありましたらお聞かせ願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114515285X01119990601/57
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058・古川景一
○参考人(古川景一君) それはそれで一つの考え方としてはあり得ると思うんです。ただ、原則として派遣は一切認めないに等しいスタイルだと思うんです。それで、そこまで絞り込むことが果たしていいのか悪いのか、ここはちょっと議論のあるところなんだろうと思うんです。非常にハードルが高くて事実上使えないということをむしろお考えになっているんじゃないか。
それで、そういう選択肢もあるけれども、私としたら、そこまでぎちぎちにいかずとも、せめて韓国並みぐらいはどうか。韓国の法律制度でいえば、日本の派遣のいろんな矛盾を相当やっぱり見て、そうならないようにするためにということもあっておつくりになっているようです。ですから、まず派遣を許すのか許さないのかという制度的な決断をした上でないと、条文の問題にまではなかなか行かないんじゃないでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114515285X01119990601/58
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059・小林宏康
○参考人(小林宏康君) 私ども先ほどちょっと実態を申し上げましたけれども、明らかに派遣という形が人減らし、リストラの手段として行われている。
〔理事笹野貞子君退席、委員長着席〕
つまり、今まで常用直接雇用だった者が解雇されて、それが派遣という形に置きかえられていくという事例が非常に多くあるわけで、これは先ほど古川参考人から紹介された韓国法にもあったと思うわけですが、そういう形で解雇を行った企業が向こう一年間でしたか派遣をとることを抑える、こういった規定というのがリストラの手段として使われることを防ぐ上で非常に重要だというふうに考えています。
それからもう一つは、雇用情勢を悪化させるリストラの手段になっているものの一つにいわゆる専ら派遣というのがある。それぞれ電機各社、例えば私どもの承知しているところで言えば、IBMも自分たちが一〇〇%ないしは何十%か出資した系列の派遣会社をいっぱい持っています。それが実態としては専らIBMに派遣されている。ただ、今労働省の側は、何にもしないんじゃだめだ、一応ほかの企業にも派遣するように宣伝したり営業活動をやって、結果としてIBMに専らだったらこれは問題がないんだというのが解釈になっているわけです。
しかし、これでは全然歯どめにならない。考えてみても、例えばある企業の一〇〇%ないしは系列の子会社の派遣をライバルのメーカーが受け入れるはずがないんです。そういうふうに現場の労働者は言っています。だから、これも一定の歯どめが必要だと。
私が拝見したところでは、日本共産党の対案の中では、現実にその派遣会社が持っているうちのどれぐらいの比率が専らになっているかというところで見よう、結果で見ようというふうになっていて、これは私どもは非常に適切だというふうに考えているところです。
それから、先ほど労働組合、状態の改善との関連で、それぞれ派遣先と派遣元の権利、責任関係が非常にややこしくなっていて、そのことが二重のハードルということが別の参考人からも言われていました。やはりこの問題で解決のポイントになるのは、派遣先がそこで実際に就業に関するいろんな管理をやっているわけですから、これについては団交応諾義務を負うということが明確にならないと、いろいろ法文上の規制があっても事実上空文化してしまっているというのが今の日本の企業社会の実態だというふうに思っています。その点では、それぞれの、とりわけ派遣先企業の団交応諾義務について明確にされるということがないと事態は改善されない。この点も私は多くの労働者、労働組合が一致をして求めている点ではないだろうかというふうに思っています。
また、先ほど申告の問題については申し上げましたけれども、やはり派遣労働者がいろいろな形で一一〇番なんかにもちろん駆け込んだりしています。それは非常にひどい事態の中でごく氷山の一角なわけですね。多くの場合には大変弱い立場ですから物を言えないというふうに追い込まれているということがあるわけで、その点でいわゆる派遣労働者だけではなしに、その当該の労働者全体にこの派遣法の違反事例について申告する権限を盛り込むということは大切だというふうに考えているわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114515285X01119990601/59
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060・市田忠義
○市田忠義君 最後に、広松参考人にお伺いしますが、私どもの対案でも職業安定監督官、司法権限を持ったそういう監督官を設置する必要があるというふうに考えているんですが、先ほどお話の中にそういう監督官の必要性のような話に一言触れられましたが、どういう趣旨のどういうものをお考えなのか、できたらちょっとお聞かせ願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114515285X01119990601/60
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061・広松栄香
○参考人(広松栄香君) 私どもの方では、先ほどもお話ししましたけれども、派遣法を取り締まるのにただでさえ忙しい警察官に頼まなければいけない、そうしなければ取り締まることができない、まず取り締まりがないからこれだけ野放し状態が続いているんだというふうに考えています。であれば、同じ司法警察権を持った労働基準監督官という方がきちんと労働省の中にいらっしゃるんですから、その方に権限を広げていただいて、やっぱり労働のことは労働の中できちんと取り締まっていただきたいということで申し上げました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114515285X01119990601/61
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062・市田忠義
○市田忠義君 どうもありがとうございました。
時間が来ましたので終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114515285X01119990601/62
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063・大脇雅子
○大脇雅子君 社会民主党の大脇です。
古川参考人にお尋ねをいたします。
今回の改正法案により設けられようとしております派遣法四十条の二に関しまして、条文にあります就業の場所及び業務の同一性という言葉の意味について御指摘がありました。この就業の場所及び業務の同一性という言葉は、最初は法第二十六条二項による派遣期間制限の規定に関して労働省が通達で用い始めた言葉だというふうに理解しております。
この法二十六条二項による派遣期間制限の規定は、昭和六十年に政府が派遣法制定を提案したときの原案にもなく、衆議院先議で一部修正の上可決された時点でもなく、その後に参議院で追加修正した二項目の一つであり、参議院で追加後に衆議院に回付した。そんないきさつを見ますと、この参議院の英知で追加された二十六条二項という問題について、労働省はこの期間制限条項が適用される場面を、通達を発しまして、就業の場所と業務が同一でなければ期間制限条項は適用できないという解釈例規を示して実質骨抜きにしようとしてきたという経過があると思いますが、この点についてどのような御意見でしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114515285X01119990601/63
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064・古川景一
○参考人(古川景一君) 御指摘のありました現在ある期間制限の条文、二十六条の二項が参議院で追加された条文であるという経過については御指摘のとおりであります。それで、いわばこの経緯に照らしまして、この期間制限の条文というのは労働省が望まずに参議院でつくられた条文だ、そして労働省はこの条文に関する通達を出して、いわば同一の業務、それから就業の場所の同一性ということで縛りをかけて使い物にならなくしたというのが実情だろうと思います。
それで、今度使い物にならなくした条文の文言、つまり就業の場所と業務の同一性というそれを法律に格上げしようというのが今回の条文の構造だと、こういうふうに理解しております。
以上です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114515285X01119990601/64
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065・大脇雅子
○大脇雅子君 そうしますと、それの行政解釈に起因するということですが、それについて何か具体的な実例を挙げて説明することはできますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114515285X01119990601/65
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066・古川景一
○参考人(古川景一君) 最近の例で中部地方の相談活動の中に注目すべき実例があります。派遣労働者の仕事は一般事務です。それで相談内容は、派遣先から三年を過ぎて雇用し続けることはできないからやめてもらいますと言われた、でも自分としては同じところで働き続けたい、何とかならないかという相談であります。これを受けた労働組合側の担当者の答えは、仕事の中身をほんの少しでも変えたことにすれば派遣を継続できるから、だからそのように業者と派遣先にお願いするようにという回答であります。
この報告というのは大変胸が痛むんですね。というのは、そもそも一般事務は派遣対象ではない。公然と違法な派遣がされている。しかし、違法な派遣でもユーザー企業は雇用の責任を負わない。そうすると、告発しても、労働者が失業して終わっちゃうだけなんですね。それで、さらに三年間という期間の制限が来る。また失業の危機だ。そのときに首を切られないようにするのならば、仕事をちょっとだけ変えるという小手先の細工をして首を守らざるを得ないんです。それで、労働組合の担当者も労働省と同じことを言わざるを得ない。まさに失業回避のためには、就業の場所と業務をちょっと変えるという問題が起きているわけです。そして、雇用責任が明確でないからこそ、さっき偽装派遣の問題も出ましたけれども、小手先で変えていくというやり方が横行せざるを得ないわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114515285X01119990601/66
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067・大脇雅子
○大脇雅子君 今回の派遣法の改正は、臨時的、一時的派遣に制限するということに基本があるわけですが、そうすると、いわゆる就労の場所とか業務の同一性という言葉を一年間の期間制限の条文に取り入れるということは何か非常に奇妙なことに考えられますが、これはどのように考えたらいいんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114515285X01119990601/67
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068・古川景一
○参考人(古川景一君) いわば参議院でつくった条文を骨抜きにした通達を法律に格上げするなんというのはとんでもない話だと私は思っております。
それで、本当に臨時的、一時的な業務に限定するつもりがあるならば、条文の中に臨時的、一時的な業務に限ると入れればいいことです。そして、私どもとしましては、その条文を追加するだけではなくて、一年間という文言についても、業務の同一性ということをもし言うのであれば、一部でも同一であれば全体として同一とみなすというような条文の追加も必要だろうと、こう思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114515285X01119990601/68
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069・大脇雅子
○大脇雅子君 今回衆議院で修正されました点については、とりわけ派遣期間の一年に限定して、派遣先にそれを超えた場合には事業主に対しまして労働大臣が雇い入れ勧告ということができ、その勧告に従わなかった場合には企業名を公表するという新しい制度を導入したわけであります。
そこで、荒川参考人にお尋ねをいたしたいわけですが、労働大臣のかかる雇い入れ勧告がなされた場合に派遣先の事業主は当然に従うべきであるとお考えなのでしょうか、いかがでしょうか。このような改正法が成立して制度が導入された場合には、その旨を全国の企業経営者に指導、周知徹底をなさるつもりがあるのか、お尋ねをしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114515285X01119990601/69
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070・荒川春
○参考人(荒川春君) 常用代替の防止のために今回の修正が行われ、そして御指摘のとおり、一年を超える際に派遣元に対する派遣契約締結の禁止、さらには期間制限の規定に抵触した派遣元に対する罰則適用、そして派遣先に雇い入れるよう労働大臣が指導、助言、勧告ができる、勧告に従わない場合には企業名の公表という措置が修正として入ったわけでございまして、この定めたことにつきましては、正直のところ大変な二重、三重、四重の縛りをいただいたものと、こういうふうに感想として申し上げたいと思います。
しかし、このような形で議会でもって成立されるものであれば、これはこの法の全体の趣旨からしてこの必要性を議会で認めたものでありますので、その趣旨を私どもの組織を挙げまして徹底するということは、今の私の立場として考えてみたいところでございます。さらに、当然ながら派遣元事業主の団体も日経連の加盟団体でございます。そういうところと一緒になりまして、派遣先に対します、ユーザーに対しますいろんな周知徹底というのは独自に行っていきたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114515285X01119990601/70
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071・大脇雅子
○大脇雅子君 この修正に対する経営者の方たちの今御感想をいただいたわけですけれども、実務上といいますか現場の対応として、労働大臣の助言があり、指導があり、雇い入れ勧告があり、会社名の公表ということがあるわけですが、私の代表質問では検討中というお言葉が大臣から多かったわけですけれども、基本的にまず民事的な効力がないと実効性が上がるのかなという疑問があるわけですが、それについて古川参考人はどのようにお考えでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114515285X01119990601/71
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072・古川景一
○参考人(古川景一君) 御指摘のように、民事的効力をはっきりさせない限り実効性はないと思います。
今、荒川参考人も、新たにできた指導、勧告について趣旨を徹底するとおっしゃるんですが、従わせる、それから指導があれば必ず採用しますとは絶対にお約束にならないわけですね。それはできるわけがないわけです。
なぜならば、勧告があっても会社は従わない自由を持っているわけです。いわば指導、勧告の制度では、それをやったとしても採用されずに結局労働者が失業して終わるという、その問題は何ら解決されていないわけです。そういうような危険があるときに、じゃ行政に駆け込むかといったら、それはよっぽど決意を持って覚悟をして、失業してもいいやというぐらいの思いがなければいけないと思います。問題を出したときには直ちに企業の側が採用せざるを得ないというふうに、自動的にそうならざるを得ないシステムにしておく必要があると思います。
それから二番目の問題として、行政の側の事務処理能力の問題があります。
配付されている資料を見ましても、東京都の調査で三年以上の派遣期間というケースが一二・四%あります。上限破りが今でも一割を超えているわけですね。そうすると、これが解禁されれば数十万という規模で期限破りが出てくる。これに対して、現在労働省が配置している労働者派遣事業指導官の数というのは全国で百二十数名にすぎません。職安が四百カ所を超えてあるのに百二十数名しかいないんです。これを一けたふやすのであれば実効性はあるかもしれない。だけれども、行政改革の折にそんなことはできるはずがない。そうすると、やっぱり基本は御指摘のように民事的効力をきちんと持たせることではないかと考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114515285X01119990601/72
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073・大脇雅子
○大脇雅子君 具体的に、民事的効力を持たせるための法文というのはどうあるべきだというふうに古川参考人は思われますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114515285X01119990601/73
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074・古川景一
○参考人(古川景一君) 既に申しましたように、お隣の韓国では直接雇用したものとみなす、こういう制度になっています。私としましては、このようにみなす制度、これが一番簡潔でわかりやすいと思っています。
ただ、別の手法もあると思います。それは例えばドイツの制度でありまして、ドイツではみなすのではなくて推定するというやり方です。
その具体的な手法というのは、派遣期間が一年を過ぎたときには、その一年間は実は派遣ではなくて職業紹介だったのだとみなすんです。その動機が、派遣を利用するんじゃなくて職業紹介だったというふうに推定してみなしてしまう。だから、一年経過したのならば、その当事者の意思としても直接雇用の契約を発生させるんだというふうに推定させていく、こういうシステムです。
法律家の目から見ますと、当事者の雇用に関する意思を推定するというなかなか技巧的でうまいやり方だなとは思うんです。ただ、日本で考えてみると、これはなかなかわかりにくい。そういう意味では、私は韓国のように端的にみなすというふうにいった制度の方がいいと思います。
ただ、ドイツ型でも韓国型でも、それはいろいろなやり方があるわけで、選択肢は幾つもあると思います。問題は、直接雇用の責任をユーザー企業に負わせるというそこの決断をすれば、あとは立法技術上の選択肢は幾つもあると思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114515285X01119990601/74
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075・大脇雅子
○大脇雅子君 民事的な効力を何らかの形で規定しないと実効性が期待できない。雇い入れの勧告制度というものが、雇い入れ勧告があったら、その反射的な解釈としてそこに民事的な効力が推定されるという解釈の余地もなくはないというふうに思われるんですが、ぎりぎり詰めた場合に、雇い入れ勧告に企業の派遣先の方はそれを全く受け入れられるかどうかという点について再度荒川参考人に、今の古川参考人の議論を踏まえまして何かコメントがございましたらお願いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114515285X01119990601/75
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076・荒川春
○参考人(荒川春君) 今回の改正法案につきましては、対象業務の限定を製造業を含めまして大幅に残しながらも、派遣先の業務単位での期間制限とか、あるいは期間経過の場合の派遣先による雇用の努力義務を設けるものでありまして、各国の制度と比べましても大変規制色の強いものであると私は考えているところでございます。
御指摘の点につきましては、そもそも雇用をするかしないかのぎりぎりの話になりますと、これはあくまでも雇用契約の自由というものが、契約の自由というものがぎりぎりのところであるはずでございます。そういうところまで入り込むということにつきましては、なかなか企業としては受け入れがたいというのが実感ではないかなと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114515285X01119990601/76
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077・大脇雅子
○大脇雅子君 そうしますと、いわゆる雇い入れの勧告を遵守するということはどういう意味になるんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114515285X01119990601/77
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078・荒川春
○参考人(荒川春君) この法律の全体の趣旨をとらえまして、その企業でその勧告につきまして判断をするということになろうかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114515285X01119990601/78
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079・大脇雅子
○大脇雅子君 今、古川参考人の方から韓国の派遣労働についてさまざまな特徴を言われたわけです。経済のグローバル化、とりわけアジア経済における我が国の位置と果たすべき役割を考えますと、公正競争ルールに基づく経済競争ということを考えた場合に、我が国の派遣労働というものは、やはり非常にアジア諸国に与える影響と不安は大きいように思いますけれども、その点について荒川参考人、それから井上参考人にお尋ねをいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114515285X01119990601/79
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080・荒川春
○参考人(荒川春君) しっかりとした検証はできかねますけれども、現在の経済のグローバル化によりまして、御案内のとおり、製造業の一定の部分につきましては、働く場をも含めまして日本から出ていることは御案内のとおりでございます。そして、労働に係る競争というものにつきましては、我が国におきましてはアジア諸国と比較しまして大変高いコストを抱えながら競争せざるを得ない状況にあることは御案内だと思います。
そういうところからいたしまして、さまざまな国内におきます産業と雇用を守るという視点からこの労働者派遣法の改正問題があるものでありまして、逆にアジアとの関係におきましても、むしろ我が国の雇用を守るためのものとして、雇用を拡大、維持するためのものとして見ていく必要があるのではないかなと私は思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114515285X01119990601/80
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081・井上勇夫
○参考人(井上勇夫君) 私も、一年という規制でございますが、正社員を希望しておる派遣スタッフももちろんおると思います、一年経過したときに正社員になれるということで。しかし、反対といいますか、正社員を希望しない社員にとっては、この法律のもとにその職場を去るという面も出ることはあるんじゃないかと思っております。何らかの理由で正社員にはなりたくないというスタッフも結構おります。現場でやっておりますと、正社員をやめて派遣スタッフになる方が現実におります。
ですから、今回のものに対して、一年以上たった場合は正社員にするのだという法律については、派遣スタッフ自身が反対しておる者も一部は中におることを御理解願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114515285X01119990601/81
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082・大脇雅子
○大脇雅子君 さまざまな御意見ありがとうございました。
最後に、他の参考人の御意見に対して古川先生のコメントを一分ぐらいでお述べいただいて、私の質問といたします。
ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114515285X01119990601/82
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083・古川景一
○参考人(古川景一君) 先ほど申し上げましたように、今回の条文というのは参議院の英知でつくった条文を崩すためにできた通達なんですね。これを参議院がそのまま通すとしたら、私は参議院の見識が問われると思っております。ぜひともその部分はもう一度検証していただきたいと思っています。
それからもう一つは、雇用責任をはっきりさせないと、入り口と出口のところの問題ですから、出口のところで労働者を失業させておしまいという解決はとれないだろう、こう思います。
以上です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114515285X01119990601/83
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084・鶴保庸介
○鶴保庸介君 参考人の方々の本当に貴重な御意見を拝聴いたしておりまして、いろいろな意見がありまして私も本当に参考になるんですが、古川参考人が言われましたとおり、私も前回の質問のときに言わせていただいたのと全く同じ考えなんです。この法案の問題点というか必要な視点として、派遣労働者を保護する派遣労働者の側の人権と、それからその派遣労働を雇用する側の常用雇用をどうやって守るかというその視点。これが思想が欠如しておるというところまで踏み込まれておられるところについては、まだ私も多少議論の余地はあるのかなというふうには思うわけですが、その中でちょっと今、少々技術的なことなんですが、井上参考人に先にお伺いをしておきたいんです。
派遣先と派遣元との契約、料金といいますか、そういう契約みたいなものというのはどういうふうにして決められていくんでしょうか。例えば派遣元で常用雇用者に対して支払っている給料を算定の額の基準にするであるとか、そういったものがあるのであればちょっとお伺いしておきたいんです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114515285X01119990601/84
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085・井上勇夫
○参考人(井上勇夫君) 派遣先が望んでおる能力、ワープロ打ちにしましても速度があるわけです。それから、先生御存じのように、使うソフトによって、エクセルとかいろんなソフトがございます。もちろん、登録しておるスタッフはどの程度の技術力があるかということと本人の希望する金額を登録時に聞いております、もちろん働く地域。
ですから、能力が余りないのにたくさんくれと言っても、これは派遣する前に派遣先との話し合いがつきませんので、派遣先の要求する能力によって、我々も料金の設定、それから必要経費を引いた金額、これが派遣スタッフの給料というふうに決めております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114515285X01119990601/85
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086・鶴保庸介
○鶴保庸介君 つまり、派遣先で常用雇用者に対して支払っている給料の額はこの場合問題ではないということなんでしょうか。その辺をちょっとお伺いしておきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114515285X01119990601/86
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087・井上勇夫
○参考人(井上勇夫君) 私どもが出した先方からの金額、これによって派遣先、派遣元が一応の商談が成立するわけです。その中から派遣スタッフを選ぶわけですが、その時点では、派遣スタッフに提示した金額が気に入らなければ受けないと思います。気に入った時点で明示書をつくり、能力をあると私どもの方で判断すれば、人物の決定権は派遣先にはございませんので、その能力、事務処理をするためにということですので、それで成立という形で、金額は納得という形で契約書に入るわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114515285X01119990601/87
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088・鶴保庸介
○鶴保庸介君 では、これは知っていればというか、把握をしていれば教えていただきたいんですが、常用雇用者に対する給料の額と派遣労働者に対して支払っている額とを比べてみて、やはり派遣労働者を使う方が企業としては安くつくというような状態が常態化しているのかどうかなんです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114515285X01119990601/88
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089・井上勇夫
○参考人(井上勇夫君) 一時的に見ますと、派遣スタッフの方が正社員より収入的なものは多いと思います。しかし流して見れば、正社員の方が現在の経済状態の中では多いと思います。ただし、派遣スタッフが途切れず続けておれば、能力があれば派遣スタッフの方が非常に多いと思っています。
というのは、時間給、先ほども出しましたが、その金額を足していけば、かなり能力アップしておれば高くなると思うんですが、企業の方は何分短期で行きますので、その時点必要性があるので、正社員より少し高く払っても、丸抱えで抱えてしまうという終身雇用制度よりは、コストのことを考えれば、その期間だけという本来のこの派遣の目的からいえば両方が合致しておると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114515285X01119990601/89
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090・鶴保庸介
○鶴保庸介君 そうしますと、荒川参考人にお伺いをしたいんですが、企業の側としては多少やっぱり派遣労働者を使う方がコストもかかるというあたりなんですよね。そうすると、企業としても派遣労働者を積極的に活用していくことによってそのメリットを享受したいという思いがあろうと思います。その辺、先ほど斉藤議員の方からも御質問がありましたが、紹介目的の派遣といいますか、これから派遣労働の制度を具体的に活用していくに当たって、経営者側の派遣法への積極面といいますか、それへの評価というか、その具体的な要望というあたり、少々抽象的なんですけれども、御意見がありましたらちょっとお伺いをしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114515285X01119990601/90
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091・荒川春
○参考人(荒川春君) 個別具体の問題で申し上げた方がと思いますが、まず一つは、中高年齢者の雇用機会の拡大の問題、今大変深刻な部分も出ておるところでございますが、こういう部分で労働者派遣の仕組みを広げていくということでは大変有意性のある仕組みというふうに考えられます。重要な選択肢ではないかと思います。
それから、パートタイム労働との関係についても、派遣労働者の方たちの意識の中、さまざまありますが、やっぱり専門的な技術、資格を生かしていきたいとか、あるいは自分の能力を生かせる、働きたい仕事内容を選べる、働きたい曜日や時間を選べるというものがあり、そこの中で一般のパートタイム労働者との比較からすれば、今申し上げましたメリットをより派遣労働という場面で生かしやすい、それを事業主、派遣元、派遣先との関係、つまり派遣というシステムの中で生かせるものということではないかなと思います。
それから、御指摘の紹介目的の派遣のことでございますが、今回、法改正につきましては、当然ながら、当然ながらというよりもこの御指摘はされていないところでございますが、やっぱり紹介目的の派遣についても認めていく必要があるのではないかなと思います。派遣労働者自身にとっても、派遣先が自分の職場としてふさわしい職場かという判断をすることができる仕組みであるので、大変よい仕組みであるというふうに考えます。
話は違いますが、私ども日経連といたしましては、学生さんに向けてインターンシップというのを盛んに勧めております。さらには、中高年齢者の方におきましても職場体験というようなこともいろいろな形でお勧めしているところもございます。そういう仕方の一つとして、どうしても派遣という方法が見られてくるのではないか。
そもそも、今回の派遣の全体の改定につきまして、これからの労働力需給の調整機能を格段に拡大していくものとして期待されておりまして、そこの中でルールとして、派遣労働者のプライバシーの保護の問題も含めまして、それぞれが発展するにはそれなりのルールをつくろうではないかということを目指しているわけでございますので、全体として、この動きは私ども経営側としては大切にしていくものではないかな、こんなふうに思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114515285X01119990601/91
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092・鶴保庸介
○鶴保庸介君 たくさんお話をしていただいてありがとうございます。
パートタイム労働に対してでも、より厚い、パートタイム労働に比べれば全然厚いあれじゃないかという御意見なんですが、確かに積極的に今の御議論の中で評価することができる反面、さまざまな問題点もあろうと思います。その中で荒川参考人、広松参考人がおっしゃったんでしょうか、いわゆる脱法行為が多いという状況、このことについてどうこれから指導していく、どういうふうに対処していくということをお考えなのか。これまで、二十六業種の中での対処の仕方みたいなものがもしあれば紹介をしていただいて、それを参考にするべきではないかというふうな気がするんですが、いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114515285X01119990601/92
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093・荒川春
○参考人(荒川春君) 脱法行為の御指摘はさまざまにありました。正直なところ、御指摘の部分も私は一つ一つチェックをしているわけではございませんが、ある場面も相当これだけの広がりの中では認めていかなきゃいけない場面もあるのかもわかりませんが、しかしそれが全体ではないというふうに思っております。
そこで、井上参考人からも御指摘がありましたように、事業主としてあるいは派遣先の企業としても、正直にあるいはきちっと派遣労働者の保護を含めた、権利の擁護も含めた事業行為をし、あるいは業務をしてもらう職場スタッフとしての活躍を期待している者としても、正直者が無視されるような、あるいはスポイルされるようなものはあってはならない。
そこで、繰り返し申し上げますが、今回の法改正につきまして、幅広く参議院、衆議院を含めまして御指摘を受けました点を含めて法律の中で整理をしていただくならば、それを改めまして私どもあくまでも自主的に会員の皆さんにあるいは会員以外のところにも周知をする、あるいはルールについての広報をしていくというようなことを幅広くやっていきたい、こういうふうに思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114515285X01119990601/93
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094・鶴保庸介
○鶴保庸介君 派遣先としての意見だろうと受けとめて、それと同じ質問を派遣元といいますか井上参考人、ちょっとその辺はどうお考えになるでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114515285X01119990601/94
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095・井上勇夫
○参考人(井上勇夫君) 荒川参考人が言われたことと重複することもあると思います。現在、この法律、審議中でございますが、衆議院の審議されたものは我々の方にも参っております。参議院の御審議が終わり、私どもでは成立するということを思っておりますので、直ちに会員会社で勉強会、問題点、その辺を行政の方からも御指導をいただきがてら法律が施行されるまで勉強に入っていきたいと思っています。また、我々は派遣先の方にもお願いすること、こういう法律があるということで資料づくりも協会としては準備していくつもりでおります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114515285X01119990601/95
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096・鶴保庸介
○鶴保庸介君 そのお言葉を信じなければいけないというか、現状のこの法案がもし通ればそのお言葉を信じるということがよすがになってしまうわけですが。
具体例を言いますと、具体例の中で井上参考人にちょっとお伺いをしたいんですが、先ほども言いました派遣労働者に対しての給与といいますか派遣元からの給与、それから派遣会社に対して派遣元が持っているマージンというんですかその営業利益、先ほどどなたかから御紹介がありましたけれども、派遣労働者には千円から千二百円しか支払っていないけれども派遣元は二千円以上もらっておるというような事例もあるなんというような話が今紹介されておりましたけれども、その辺は派遣元、派遣協会としては何か指導のようなもの、それからもしくは一定のルールづくりみたいなもの、そんなものはされておられるんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114515285X01119990601/96
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097・井上勇夫
○参考人(井上勇夫君) あくまでも、私自身も事業主でもありますが、協会としては会員会社の経営権の中までは入り込んでおりません。ただし、常識というものがあります。そのような手数料といいますか、先ほどから申し上げておりますように余りにも賃金が安ければ派遣スタッフは応募してこないと思います。
先生方御存じのように、新聞、「とらばーゆ」、そのあたりを見ていただきますと、各社とも募集するときにもう時間給が載っております。多少の差はあるにしても、ほとんど同じ値段で募集しております。少しの差は福利面、福祉面の違い、その辺があると思いますが、先生御指摘のように受け値と支払いが半分なんということは社会的にも許されるものじゃないと、協会ではそのような指導はしております。
指導がなくても、一番大事なのは、スタッフが来ない、一時的な仕事でなく社会から信用を得てこれまで伸びてきたものです。ですから、差はそれほどないと思っております。一部のスタッフがそのようになっておるのかなということを今回ここで私自身も知りましたが、全スタッフの何%、コンマと思っております。しかし、そういう人をなくするのも協会の仕事だと思っておりますので、私どももそういう話を聞けばそれぞれの対処の仕方をしておりますし、今相談窓口も独自で持っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114515285X01119990601/97
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098・鶴保庸介
○鶴保庸介君 わかりました。
もう時間がありませんから、最後に荒川参考人にお伺いをいたします。
いろいろ問題点が指摘されております。そして、それが実際にトラブルが発生したときにどういう事後的な対処といいますか、それからまた派遣労働者にとってもどこへ物を言いに行っていいか、どういうふうに対処してもらう窓口があるのかということを含めて、非常に危ういものがあると思うんです。
その意味で、実際に今現場で働いている派遣先として、トラブルが発生したときにどうやって迅速、的確にそのトラブルに対処する用意があるのか。自主的とさっきおっしゃいましたが、その自主的な取り組みといったこと、役割といったようなことをお話しいただければと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114515285X01119990601/98
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099・荒川春
○参考人(荒川春君) 御案内のとおり、先回の派遣法の改正に当たりまして、派遣元、派遣先におきます苦情処理の設定につきまして派遣契約の中を含めまして設けられていること、御案内のとおりでございます。それらがもっと、今回の法律がさらに拡大することになりますから、その契約時におけるそれぞれの苦情、問題処理についての扱いを明らかにしていく、もっとはっきりさせていくということがまず派遣元、派遣先の努力として、取り組みとして必要であろうかと思います。
次に、やはり業界、派遣スタッフの方が所属している派遣元企業におきまして苦情を含めました受け答え、受けとめというのがまず必要になり、それからもう一つは、人材派遣協会のような業界団体としまして、アドバイザー、相談室、相談員のようなものを絶えず、いわば四六時中スタッフを置いていただいて相談に応じるといったような自主的な取り組みというのも非常に大切になってくるのではないかなと思います。
いずれにしましても、さまざまな機関を設ける、ルールをさらに精緻なものにしていくということも今回の法律を確たるものにしていくに必要なことではないかなと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114515285X01119990601/99
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100・鶴保庸介
○鶴保庸介君 ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114515285X01119990601/100
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101・吉岡吉典
○委員長(吉岡吉典君) 以上をもちまして参考人に対する質疑は終了いたしました。
参考人の方々に一言御礼のごあいさつを申し上げます。
本日は長時間にわたり、大変貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。
四案に対する本日の審査はこの程度にとどめ、これにて散会いたします。
午後四時十八分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114515285X01119990601/101
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