1. 会議録本文
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000・会議録情報
平成十一年十二月七日(火曜日)
午前九時開会
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委員の異動
十二月二日
辞任 補欠選任
大沢 辰美君 緒方 靖夫君
十二月六日
辞任 補欠選任
北澤 俊美君 小川 敏夫君
十二月七日
辞任 補欠選任
坂野 重信君 中島 啓雄君
小川 敏夫君 海野 徹君
福山 哲郎君 櫻井 充君
高野 博師君 益田 洋介君
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出席者は左のとおり。
委員長 石渡 清元君
理 事
市川 一朗君
田村 公平君
岡崎トミ子君
高野 博師君
緒方 靖夫君
委 員
上野 公成君
太田 豊秋君
末広まきこ君
中島 啓雄君
山下 善彦君
脇 雅史君
海野 徹君
小川 敏夫君
佐藤 雄平君
櫻井 充君
福山 哲郎君
益田 洋介君
森本 晃司君
岩佐 恵美君
大渕 絹子君
泉 信也君
奥村 展三君
島袋 宗康君
衆議院議員
発議者 保岡 興治君
発議者 根本 匠君
発議者 井上 義久君
発議者 中井 洽君
修正案提出者 佐田玄一郎君
修正案提出者 田中 慶秋君
国務大臣
建設大臣
国務大臣
(国土庁長官) 中山 正暉君
政務次官
建設政務次官 加藤 卓二君
国土政務次官 増田 敏男君
事務局側
常任委員会専門
員 杉谷 洸大君
政府参考人
法務大臣官房審
議官 小池 信行君
参考人
法政大学社会学
部教授 福井 秀夫君
東京大学社会科
学研究所教授 原田 純孝君
株式会社タクト
コンサルティン
グ代表取締役
税理士 本郷 尚君
大阪市立大学名
誉教授 甲斐道太郎君
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本日の会議に付した案件
○理事補欠選任の件
○政府参考人の出席要求に関する件
○参考人の出席要求に関する件
〇良質な賃貸住宅等の供給の促進に関する特別措
置法案(衆議院提出)
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/0
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001・石渡清元
○委員長(石渡清元君) ただいまから国土・環境委員会を開会いたします。
委員の異動について御報告いたします。
去る二日、大沢辰美君が委員を辞任され、その補欠として緒方靖夫君が選任されました。
また、昨六日、北澤俊美君が委員を辞任され、その補欠として小川敏夫君が選任されました。
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/1
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002・石渡清元
○委員長(石渡清元君) 理事の補欠選任についてお諮りいたします。
委員の異動に伴い現在理事が一名欠員となっておりますので、その補欠選任を行いたいと存じます。
理事の選任につきましては、先例により、委員長の指名に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/2
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003・石渡清元
○委員長(石渡清元君) 御異議ないと認めます。
それでは、理事に緒方靖夫君を指名いたします。
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/3
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004・石渡清元
○委員長(石渡清元君) 政府参考人の出席要求に関する件についてお諮りいたします。
良質な賃貸住宅等の供給の促進に関する特別措置法案の審査のため、本日の委員会に法務大臣官房審議官小池信行君を政府参考人として出席を求め、その説明を聴取することに御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/4
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005・石渡清元
○委員長(石渡清元君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/5
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006・石渡清元
○委員長(石渡清元君) 参考人の出席要求に関する件についてお諮りいたします。
良質な賃貸住宅等の供給の促進に関する特別措置法案の審査のため、本日の委員会に法政大学社会学部教授福井秀夫君、東京大学社会科学研究所教授原田純孝君、株式会社タクトコンサルティング代表取締役・税理士本郷尚君、大阪市立大学名誉教授甲斐道太郎君を参考人として出席を求め、その意見を聴取することに御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/6
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007・石渡清元
○委員長(石渡清元君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/7
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008・石渡清元
○委員長(石渡清元君) 良質な賃貸住宅等の供給の促進に関する特別措置法案を議題といたします。
まず、参考人から意見を聴取いたします。
この際、参考人の方々に一言ごあいさつを申し上げます。
皆様には、大変御多忙の中を本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。参考人の方々には忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じますので、どうぞよろしくお願いいたします。
本日の会議の進め方について御説明いたします。
まず、お一人十五分程度で順次御意見をお述べいただき、その後、委員の質疑にお答えいただきたいと存じます。
なお、参考人の方々の意見陳述は着席のままで結構でございます。
それでは、まず福井秀夫参考人にお願いをいたします。福井参考人。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/8
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009・福井秀夫
○参考人(福井秀夫君) 本日は、この場で意見を述べる機会を与えていただきましたことを光栄に存じます。
定期借家に関する意見を申し上げます。
大きな一点目、借地借家法のもたらしたものでございます。
第一は、解約制限と家賃規制であります。
正当事由制度は、一九四一年に戦時緊急立法として住宅の絶対的な窮乏に対処するために導入されました。当初と比べて今や極端かつ不透明な解約制限立法として確立してしまっております。また、賃料は契約を継続するごとに市場賃料よりも必ず低く抑えられることが判例法上確立しております。
第二に、その特徴でございます。
第一は、貸し手事情のみならず借り手事情も総合的に考量するということです。
第二は、客観的基準が存在せず、事件ごとの裁判官の心証と世界観によって裁かれるのが実態となっております。
第三に、極端な額の立ち退き料を判例が認めるようになっています。受取賃料の合計額の数倍から数十倍の立ち退き料が判例上一般化しております。二百倍の例すらあります。もらった賃料から必要経費を差し引いた額を超えるかもしれない金額を後で返さないといけないことがわかったならば、最初から貸さなくなるだけのことです。およそ経営を否定する常軌を逸した判例が集積して常態化しました。これは借り手の利用の機会がその分奪われることと等しいわけです。
第四に、日本の借家法は新規の家賃を一切統制しておりません。
したがって、自発的に退去する借家人は、どんなに弱者でも賃料規制や高額な立ち退き料の恩恵とは無縁であります。これに対して、一たん借家権が発生して自発退去しない者は、どのように強者であっても強力な保護を受けることになります。入居保護の必要性や真実の困窮度と借家権の保護とは何の関係もない以上、これは公正から最も遠い制度と言わざるを得ません。
三つ目に、問題点であります。
日本も正当事由制度導入以前は広い借家が多く流通し、夏目漱石も森鴎外も生涯を借家で過ごしました。正当事由制度は、回転率が低く供給コストの高くなる広い借家を市場から奪い去り、借家の狭小化と借家率の極端な低下をもたらしました。
日本の持ち家の平均床面積は、百二十二平米とアメリカを除く先進諸国よりも既に広くなっています。ウサギ小屋と言われましたが、今はそれを脱しています。これに対して借家の平均床面積は、四十五平米とアメリカ、イギリス、ドイツ、フランスの三分の一から二分の一程度にとどまっています。民間借家に占める四十平米未満の住宅も、日本は四八%、約半分ありますが、ドイツは三%、フランスは〇・六%と日本に限って借家の極端な小規模化が進展しています。この主要因を借家法以外に求めることができる旨の学術的論拠は一切ありません。
二点目、定期借家の効果です。
第一に、潜在的借家人の利益が増大します。
まず空き家、遊休持ち家の供給がふえ、次いで郊外を中心に広目の借家の新築が増大します。試算では、東京の通勤一時間圏内で定期借家の導入によって八・七%家賃が低下することを見込んでいます。
第二に、高齢者の住宅が流動化します。
全国の六十五歳以上の夫婦または単身の世帯で、百平米を超える広い住宅に約百五十万世帯が住んでいらっしゃいます。借家法のために貸せず、無理をして不便を我慢している方がたくさんいらっしゃいます。アメリカ、イギリスでは、資産形成をした自分の住宅は定期借家で運用して、高齢になったらその収益でケアつき住宅費用を賄うというのが高齢者の一般的なライフスタイルであります。
第三に、定期借家は持ち家の売買をも活性化させます。
現在は、住宅の売り買いは瞬間風速で行う必要があります。アメリカ、イギリスでは、売りのときに、例えば市況がよくなるまで定期借家で運用し、買いのときも試し入居をすることも多く行われます。日本の借家法は持ち家の取引費用をも高めているのです。
第四に、土地利用のバリエーションが無数にふえます。
賃貸を前提としたあらゆる土地利用が想定できるため、土地の付加価値を競い合い、豊かで活力ある都市像がより身近なものになると考えられます。
第五に、持ち家と借家が相対化いたします。
これまでのように、借家は狭くて建築費も安いという、安普請であるという類型化の必然性は一切なくなります。建築ストックの質は向上して、質の高い賃貸住宅がさまざまな形態で供給されます。いわゆるマンションも分譲から賃貸に大きくシフトすると見込まれます。
三点目ですが、日本の病理現象あるいは定期借家反対論の破綻についてであります。
第一に、守られるのはだれかということです。
たまたま借家権が発生したらどんなに強者でも極端に守られるという今の正当事由制度は正当たり得ないと考えます。定期借家は既得権に手をつけずに新たなメリットを借り手にもたらします。中堅勤労者向け住宅予算に多くが割かれている公共財源を困窮度に応じて弱者に手厚く分配することも可能になります。定期借家はむしろ福祉充実の前提条件だと考えます。
第二は、悪徳家主の報告は諸外国にないということです。
アメリカ、イギリスの定期借家の多くは期間が一年です。しかし、米英とも、日本で取りざたされるように、家主が賃料のつり上げや追い出しを図ることで借家人の地位が不安定になるという報告は存在しません。定期借家が定着しているために家主間の競争が激しく、家賃をきちんと払って丁寧に使う借家人を追い出せば悪評が立って借り手がいなくなる。そんな愚かな家主はいないというのが両国政府の見解です。日本でだけ悪徳家主が頻発するということであれば、日本に限っては家主が格別に愚かであるという仮説が成り立たなければなりません。
第三に、高齢者や母子家庭の入居差別はないということです。
定期借家の定着した米英では、高齢者等は静かで住居を丁寧に使うとしてむしろ歓迎される借家人です。入居差別もありません。日本の正当事由制度こそ、居住期間が長くなり、かつ所得上昇期待が小さいと見込まれる高齢者等が入り口の段階で差別されてしまうという弱者差別の元凶にほかなりません。
第四に、先例を直視すべきであるということです。
定期借家の定着したアメリカ、イギリス、オーストラリア、シンガポール、ニュージーランド等では、反対論の主張するような弊害は一切報告されていません。ほかでうまく動く制度が日本でだけうまく動かないと主張するのであれば、その論拠を示すべきと考えますが、これまでにその試みは成功していないと考えております。
例えば、十二月一日付朝日新聞夕刊「窓」では、足立基浩氏の資料に基づきイギリスのデータを示して定期借家の推進を批判しますが、理由がありません。
一つ目に、物価が一・五倍の上昇であるにもかかわらず定期借家の家賃が三倍にも上昇したとします。しかし、三倍になったのは八九年の定期借家家賃ではなく統制家賃と比較した九六年の定期借家家賃であります。統制家賃はもともと政府の人為的な産物でありまして、それが取り払われたことによってその分市場家賃が回復して家賃が上昇するのは余りにも当然のことであります。イギリスと異なり、日本ではもともと新規家賃は自由であります。選択肢の純増である定期借家の導入によって、家賃が下がることはあっても上がることはあり得ません。定期借家家賃固有の推移は、イギリスでは導入直後の約六十五ポンドから約九十ポンドへの一・四倍の上昇です。これはむしろほぼ消費者物価の伸びに対応しています。イギリスの経験は、定期借家を支える論拠にはなってもその逆ではあり得ません。
二つ目に、同記事は一寝室の小規模な住宅がふえて家族向けは減少しているとしますが、イギリスのワンベッドルームの概念は、通常日本の一LDKを意味する広い住戸の概念です。日本の十五平米程度のワンルーム借家とはおよそかけ離れた住戸であり、これを小規模と決めつけるのは極めてミスリードであります。
三つ目に、イギリスでは家賃補助による財政負担がふえて政府を悩ませているとしますが、イギリスで家賃補助が増大したのは、一つには、公営住宅という直接供給予算を削減しつつ家賃補助への政策転換を進めたためです。二つには、家賃統制の解除に伴って補助額がその分増大したためでありまして、定期借家の導入のためではありません。
四つ目に、家賃が上がって景気にマイナスに働くとしますが、高校の政治経済レベルの経済学を前提にしても、他の条件を一定として供給がふえるならば家賃はそれに応じて低下します。これに反する理論はいまだ解明されたことがありません。
要するに、足立氏も、これをうのみにした朝日新聞論説委員も、一つに、Aが起こってからBが起こった、したがってAはBの原因であると断定しますが、これは因果関係と発生順序とを混同した考え方であります。
二つに、家賃は所得の上昇や流入人口の増大などの需要要因によっても上昇するし、建築費の上昇や土地利用規制などの供給要因によっても上昇します。ある結果について複数の要因が想定されるときに、ある要因についての影響を見るときにはほかの要因についてのコントロールが必要でありますが、そのような社会科学的方法を一切踏んでいません。
三つに、比較対照すべきは同一物でなければならないという初歩的な統計的処理を怠っております。
既に、我々は足立氏の分析について、お配りした「週刊金曜日」四月十六日号、七月九日号において丹念に批判しています。日本のジャーナリズムの良識を代表するはずの朝日新聞が、それ以降何の発展もない見解をそのままうのみにしたのは遺憾であります。反論を知らないで執筆したのであれば余りにも無知であり、知った上でであれば悪質なデマゴーグにほかなりません。
なお、コラム掲載後、改めてイギリス環境交通地域省フォルクナー民間賃貸住宅課長に確認したところ、定期借家の導入は空き家を大量に供給させ、国民にライフスタイルに応じた居住の選択をふやして、さらに国民のモビリティーを高め、労働力の流動性も高めたなど、定期借家の導入が大いに成功した旨、断言しております。家賃上昇についても、家賃規制の撤廃の当然の帰結と見ており問題視していません。財政負担についても、家賃補助は増大したが、公営住宅の建設抑制を図ることができた結果、トータルの財政負担がふえたわけではないとしており、財政負担が政府を悩ませているとの事実は存在しません。一部にサッチャー政権下に強者の論理で導入された旨の誤解もありますが、現在の労働党政権も定期借家の導入に高い評価を与えていると話していたこともあわせて申し添えます。
一方、ドイツでは一九六〇年代の定期借家権導入によって家賃が上昇し、紛争が頻発するなどの混乱が生じたという批判があります。
これも理由がありません。ドイツでは既得権を強制的に剥奪する定期借家権の導入を行いました。これに伴い家賃が上がったり紛争が多発するのは余りにも当然であります。日本の法案はそういう前提をとっておりません。前提の異なるドイツの事情をそのまま日本に適用すること自体失当であります。
なお、この点については、やはりドイツ連邦司法省市民法局借家法課担当官グルンドマン氏に改めて確認しておりますが、既存借家について合意による定期借家権の切りかえが行われたという事実はございません。
第五が、潜在的市民の声を吸い上げるべきということです。
普通の市民の利害は薄く広がっています。政治的にこれを結集するのは至難のわざです。組織化された利益団体、業界団体の要望、活動はいわゆる世論とは多くの場合一致しません。陳情書の数や集会の回数とかかわりなく、普通の市民の声なき声をきちんと思いやる感受性こそ政治や立法に最も望まれることだと考えます。
第六に、建設的な議論を求めたいと思います。
法案については、借家人を追い出すための法としたり、家主に正当な理由がなくても契約が打ち切れる制度といった記載が散見されますが、ミスリードです。建てかえ間近であったり、あるいは自分や家族が入居予定である借家を除いては、家主は市場賃料を払い続けてくれる借家人を確保し続けることこそ最大の関心事です。空室の発生はそのまま日銭の減少を意味します。しかも、借家人にとっては、どちらのタイプであるかは入居時に明らかであって、経営的な借家については諸外国同様、定期借家契約が繰り返されることが通常となります。悪徳家主を想定する議論は詭弁であります。
さらに、定期借家では借家人は契約の更新がないことを完全に了解した上で借家人になっていますので、その大前提を認識する必要があります。
借家人が本当に納得しているのかというおそれについては、契約を書面で行うこととし、さらに修正により、別の書面による説明義務も課されました。また、既存借家は合意解約をしても定期借家契約に転換することは禁じられています。このような前提のもとで借家人がなお不測の事態に置かれることはあり得ないと考えます。
本当の意味での借家人保護のためには、諸外国のどこでも発生していない異常な想定を持ち出して不安をあおり立てるよりは、定期借家がもたらす借家人にとっての福音を十分に周知させるとともに、誤った趣旨で制度が利用されることがないように努力を重ねることではないでしょうか。
あわせて、当事者の完全な納得に基づく合意を居住権の侵害などと決めつけるよりは、真実、住宅に困窮する人々に対する政府や自治体の責務としての住宅福祉の充実を求めていくことこそ正しい福祉国家のパラダイムに合致する方向だと考えます。定期借家に関する建設的で冷静な議論が求められています。
四点目、最後に総括ですが、定期借家権は、民事法の基本に関して超党派で政策論が交わされて議員立法で法案に結実したという日本の法制史上初めての快挙であります。立法府が立法を行うという、余りにも当然ではあるけれども、これまで困難であったプロセスの復権につながる試金石が今回の試みであります。
本法案は現時点で考え得る最良の法案の一つであります。速やかに可決、成立、施行を行うことを潜在的な市民の声を代弁する立場から強くお願いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/9
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010・石渡清元
○委員長(石渡清元君) 次に、原田純孝参考人にお願いをいたします。原田参考人。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/10
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011・原田純孝
○参考人(原田純孝君) 原田でございます。
私の専門は民法ですが、特に借地借家法を含めた住宅・土地問題を西欧諸国との比較も行いつつ研究してまいりました。そういう研究者としての目から見ますと、私は、定期借家制度の導入論には、ただいまの福井教授のお話も含めましてさまざまな重大な問題点があり、今回の法案もまたそれらの問題点を払拭し得ていないと考えております。
以下、私がそう考える理由を述べさせていただきます。
最も基本的な論点から入りたいと思います。
すなわち、定期借家の導入論は、正当事由制度は借家率を引き下げた上、家族向けの広くて良質な借家の供給を阻害し、家賃の無用な上昇をもたらしている、だから定期借家を導入すれば広い借家供給が増大し、家賃も下がり、権利金、礼金等もなくなると主張するわけですが、それにどの程度の正当な根拠があるのかという問題です。
小規模な借家は今現在でも供給されていますから、問題は広くて良質な借家の供給です。そしてその際には、新築借家の供給と既存の持ち家ストックの貸し家化とを分けて考える必要があるのは言うまでもありません。
まず、広い新築借家の供給拡大の可能性ですが、導入論者でも著名な経済学者の方々は、定期借家権が導入された場合に借家の新築がどの程度ふえるかはそのときの景気の局面を初めとしたさまざまな要因に依存するとか、リスクがなくなるから広い借家がふえるはずだが、実際にそれを証明するのはなかなか難しいと書かれています。経済学の厳密な観点からすれば、これが本当なのだろうと私は思います。
実際、日本の都市部の民間借家の現状は、さまざまな要因が複雑に絡み合ったところに生み出されてきたものです。敗戦後の住宅復興のあり方、若年層主体の急速な都市への人口集中、一貫した持ち家促進政策と、それを後押ししてきた税制や住宅ローン制度、不断の地価上昇と異常に高い地価水準、そしてそれを肯定してきた土地、住宅、都市、金融政策、それから土地神話など、実に多くの事柄があります。ですから、例えば大都市部の借家の狭さは分譲マンションの狭さとも連動しています。また、正当事由制度の影響がないはずの公団、公営といった賃貸住宅でも、その広さは昭和四十八年で平均四十平米、平成十年でも五十平米という水準にとどまっています。
要するに、正当事由制度が広い借家の供給を阻害する作用を伴ったとしても、それはあくまでさまざまな要因のうちの一つでしかないのです。したがって、その一つの要因の阻害作用がどの程度であったかを確定できない限り、結局は先ほどのような言い方しかできません。福井教授はこの要因が八割だという数字を挙げられたことがありましたけれども、到底信じがたい数字です。しかも、こうしたことは他の先進諸国の場合を見ても簡単に確認できます。
例えば、法案の参考資料の九十一ページにあるように、ドイツの借家比率は約六〇%です。ドイツは六〇年代の一時期を除けば強い存続保護を行ってきた国ですが、十分な量の借家が供給されているのです。それに対してイギリスやアメリカでは、逆に持ち家率が六六%から七〇%近くになっています。特にアメリカは、定期借家を広く利用してきた国だとされているのに、なぜ借家が伸びなかったのか。
さらに、私の方でお配りした資料の表2を見ますと、イギリスの民間借家の比率は、戦後の過程で日本以上に急減し、かつての九〇%から今の一〇%強にまで減っています。そして、これらのことは、いずれもその国の正当事由制度がどうであったかなどだけで説明できるものではありません。
同様に、他の先進諸国に比べて日本の借家がなぜ狭いのかについても、借家法以外の事情があります。
法案の参考資料の方の九十一ページの下段に今、福井教授の引かれましたグラフがありますので、それを見ていただきたいと思います。
まず、日本の借家が狭いことはたしかです。しかし、例えばドイツでは、戦後の住宅復興期以来、国が個人家主や公益的な住宅企業などに超低利の長期融資を行い、社会賃貸住宅を大量に建設させてきた経緯があります。この社会賃貸住宅は、融資の償還が終わると民間借家の区分に入ります。しかも、社会賃貸住宅の建設には、二人世帯では例えば内のり面積で六十平米、三人世帯では七十五平米といった居住面積基準がありました。ですから、それが借家の全体としての平均面積を押し上げてきたわけです。イギリスの公営住宅の建設も同様の結果をもたらしています。
次にフランスですが、まずこのグラフのパーセントの数字は、今、福井教授も引かれましたが、全く違っております。同じ原資料の数値を使えば、左から順に四・三、二〇・二、三七・二といったドイツと近い数字になります。そして、フランスでもやはり大量の社会賃貸住宅が供給されてきました。
さらに、フランスにはもう一つ興味深い事実があります。すなわち、一九四九年以降に建設された民間借家は一九八二年まで原則的な契約自由にゆだねられておりました。しかし、そのゆえに家族向けの広い民間借家が大量に供給されたという事実はありませんでした。
最後にアメリカですが、その数値は共同住宅を含まない数値です。ですから、日本の数値などとは本来比較のしようがないものです。こうしたずさんなグラフや数値をなぜ推進論者の方が流布させてきたのか、研究者としては理解しかねます。
さて、以上のことはすべて定期借家で広い民間借家の新築供給がふえるという主張が相当に抽象的なレベルでの予想や可能性の指摘でしかないことを示しています。家賃も下がり礼金や権利金もなくなるという主張も、その予想が十分な量で実現されたときの仮定の話にすぎません。ですから、広目の借家が一七%ふえる、家賃が八・七%低下するなどと言われましても、私には余り意味がないように思えます。
しかし、他方で定期借家の借家人の地位はまさに確実に不安定化し、家主に対する立場も交渉力も非常に弱いものになります。契約期間が終了したときそこに住み続けられるかどうかはまさに家主の意向次第となるからです。一年先、二年先がどうなるかわからず、いつも引っ越しのことを考えていなければならない借家を果たして良質な借家と言えるでしょうか。しかも、借家市場は、一定の需要があればその需要に見合った商品、つまり需要との関係で適切な地域にある適切な規模と家賃の借家が当然に供給されるというものではありません。ですから、これは借家世帯全体にとっての大問題です。そして、特に低所得の高齢者や障害者などの住宅弱者にとっては相当にシビアな事態も生じ得るのではないかと恐れています。
なお、定期借家になれば高齢者などはむしろ入居差別を受けないで済むという主張が今もありましたけれども、もしそうなるとしても、それはその高齢者などを家主から見て不都合な状況になったらいつでも追い出せる、一年から二年単位で追い出せる、だから入居の差別は行わないということにほかならないわけです。
私が申すまでもなく、住宅は人々の生活の基本的な基盤であり、安定した住まいを保障するものであることが必要です。今後の高齢社会では、地域における在宅福祉の前提的な基盤としての住宅の意義は一層強まると考えられます。また、少子化傾向に対処するためにも、若い夫婦が安心して子供を産み、その子を地域社会の中で健やかに育てていくための住宅、前提的な基盤がやはり不可欠です。安定性が不可欠です。
こうした居住者側の要請と家主側の収益確保の要請との調整を図ることが借家法本来の目的である、あるいは課題であると私は考えていますが、定期借家制度はその役割を放棄することになるわけです。
なお、小世帯化した高齢者とか転勤者などの既存持ち家の借家供給は今よりは恐らく増加するだろうと思います。しかし、転勤者等の持ち家の貸し借りのためであれば期限付借家の制度があり、それでは不十分だというのであればその制度の見直しを議論すればよいわけです。類似の制度はフランスやドイツにも当然にありますから、参考例にも事欠きません。
次に、大きな二つ目は、欧米諸国では定期借家が一般的だという主張は決して正確ではないということです。
法案の参考資料の百二ページに導入論者の方々が活用してきた制度比較の概要表がありますのでこれを見てください。
第一に、表の一番上の方を見ますと、アメリカやイギリスだけでなく、フランス、ドイツでも定期型の契約が基本と書かれています。それに対して、日本のところだけそうではないとされているわけです。しかし、フランス、ドイツの制度は日本とほぼ同じ構造のものですから、フランスやドイツを定期型と言うのであれば日本の普通借家も定期型の契約です。
第二に、ドイツ欄の最初の①に書いてある定期型というのは、日本で言う期限付借家に相当する例外的な形態です。下の②の不定期型が日本の普通借家と同じ構造のもので、これが一般的な形態なのにわざわざ逆に書いてあるわけです。
また、フランスの普通借家でも、家主が自然人のときは三年以上、法人のときは六年以上という日本より厳しい規制をかけた上でやはり期間満了時に正当事由で制限するという仕組みですが、この表ではそのことが非常にわかりにくくなっております。
第三に、正当事由の規定はドイツ、フランスとも限定列挙の規定ですが、フランスでは、住宅の売却の場合には借家人に先買い権が認められる、また、七十歳以上の低所得の高齢者を立ち退かせるには適切な規模と家賃の代替住宅を提供しなければならないなどの制約がかかっています。ドイツでも、明け渡しが借家人にとって過酷になる場合には家主は法定の正当事由があっても更新拒絶を主張できないという過酷条項があります。
第四に、ドイツ、フランスでは家賃の当初額は当事者が自由に決めますが、継続家賃の引き上げについては明確でかつ詳細な規制がかかっています。基準となるのは近隣の同様の住宅の通常の賃料額で、それを算定し、そしてその算定結果を公表する仕組みが用意されているのです。日本の調停や裁判による継続家賃額は抑制され過ぎているというのであれば、ドイツやフランスのような仕組みを整えるのが最も早道でしょう。
それでは、定期借家の国、特にイギリスでの定期借家の導入はどのような意義を持つものであったか。私の理解は福井教授とは違います。
特徴点だけ申しますと、まず導入当時の民間借家の比率は約一〇%にすぎません。他方で三〇%の公営住宅がありましたから、セーフティーネットの問題はクリアされておりました。他方、予想された家賃上昇に対しては、今もありましたように住宅費給付で対処する方針がとられました。事実、家賃は大幅に上昇し、公営住宅は入りませんが、民間借家向けだけの住宅費給付額は一九八八年から九七年までの間に五倍以上に増大しています。
では、広い借家の供給がふえたか。借家の数は税制上の優遇措置もあって多少は増加しています。しかし、広い借家が大幅にふえたとは到底言えません。他方、居住期間の短期化が確実に進んでいます。これらについては、もし御質問があれば後に詳しくお話しします。
ともあれ、イギリスではこういう状況なのに、なぜ日本では全く違ったすばらしい結果が得られると言えるのか、また特別措置法までつくってなぜ制度の導入を急ぐのか、私には全く納得がいかない次第であります。
最後に、大きな三つ目として、法案の内容に関する純法律的な問題点を駆け足で指摘しておきます。
第一に、法案では、契約を終了させるための通知につき、本来の通知期間を過ぎても家主はいつでも通知できるとしています。しかし、これでは、契約期間の満了後も家主から通知がなく借家人が住み続けているという場合の法律関係が不明確になります。やはり、通知は遅くとも契約期間の満了までにするというように改めた方がいいかと思います。
第二に、契約の終了時に生じ得るさまざまな状況を考えますと、やはりドイツ、フランスのような一定の過酷条項を設けることが必要だろうと思います。
第三に、賃借人からの中途解約は一定面積以下の居住用借家についてしか認められていませんが、営業用借家でも営業の廃止その他のやむを得ない事情は当然に発生いたしますので、営業用についても同様の規定を設けるべきです。もし中途解約は一切認めないとするなら、少なくとも譲渡、転貸の自由を認めなければ制度としてのバランスがとれません。
第四に、居住用の借家契約で定期借家契約への切りかえをめぐって生じ得る社会的・法律的紛争を防止するため特別な配慮が加えられていることはわかります。しかし、同様の紛争は営業用借家でも当然に予想されます。それなのに、なぜ営業用借家を除外するのか理由がわかりません。営業用も居住用の場合と同じ取り扱いにする必要があると考えます。また、この取り扱いは、つまり附則第三条は附則第二条一項の趣旨を徹底させるためのものと解釈できますが、それがなぜ当分の間に限られているのかも問題です。
第五に、賃料改定の特約の自由化と二十年以上の長期契約を可能にする改正は、家族向けの良質な借家の供給拡大という法案の本来の目的とは直接の関連性が乏しいと思われます。仮に不動産の証券化などのために必要なのだということであれば、そうした目的のための特別措置として別途に議論し、立法していくのが本筋かと思われます。
私の意見は以上のとおりであります。ですから、誤った前提の上で立法されることがなきよう、可能な限りの慎重な御審議と御検討をぜひともお願いしたいと存じている次第です。
以上であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/11
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012・石渡清元
○委員長(石渡清元君) 次に、本郷尚参考人にお願いをいたします。本郷参考人。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/12
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013・本郷尚
○参考人(本郷尚君) 私は、定期借家権に賛成する立場で意見を述べさせていただきます。また、実務家の視点でお話しさせていただきます。
定期借家権とは期間を定めた建物賃貸借契約です。建物の貸し借りは本来商行為であり、契約行為です。期間を定め、お互いに契約内容を守るのは当然のことです。定期借家権は欧米では既に広く利用されています。
従来の借家法では、貸し主は期間満了であっても正当な事由がない限り明け渡しを求めることはできません。これは極端に借家人を保護しています。現行の借家法の一度入居したら借家法で守られ一生いられるという終身雇用のような考え方は、本来、商取引あるいは契約行為では行き過ぎであると考えます。戦前戦後の住宅不足時代なら存在意義もあったと思います。しかし、現在では合理性を欠き、賃貸市場の障害になっています。不動産の流動化の妨げにもなっています。
今回の定期借家権の成立に当たっては、既存の借家権は完全に保護されています。旧法から新法への切りかえ及び旧法の合意解除は認められていません。そして、忘れていけないのは、新法成立後も定期借家権と従来の借家権が選択適用になっています。新法施行後にすべてが定期借家権になるわけではございません。貸し主、借り主、市場がこれを選んで決めていきます。
定期借家権は、貸し主が借家人を立ち退かせてしまう法律だとイメージする方が多くいます。果たして、現在の不動産賃貸市場において貸し主は借家人を立ち退かせて何のメリットがあるんでしょうか。立ち退かせて改めて借家人を入れるには、修理をして募集して、コストがかかります。むしろ貸し主は、マナーを守って家賃をきちっと支払い続けてくれる借り主にはずっと借り続けてもらいたいというのが本音です。
期間満了後に家賃を引き上げるという心配をする方もいます。果たして、家賃を引き上げて借家人が出ていってしまい、つり上げた家賃で新しい借家人があらわれるんでしょうか。結局、家賃は市場が決めるものです。家主の独断で決められないのが現実であり、実情です。
さらに、今回の定期借家権は貸し主から借り主への説明義務があります。借り主は定期借家権であることを承知した上で借ります。また、居住用建物については、借り主側の生活事情の変更等による中途解約を認めています。さらに、附帯決議として、高齢者等の住宅困窮者に対しては公共賃貸住宅を充実させ、住宅セーフティーネットの構築に努めることが盛り込まれました。この点は住宅政策と福祉政策を分けて考えたことで評価されます。
さて、我が国の住宅事情は持ち家偏重となっています。賃貸住宅は極めて狭小です。既にお話があったとおり、我が国の持ち家の平均床面積は百二十二平方メートルに達しています。一方、賃貸住宅の床面積が四十五平方メートルです。いわゆる二DK以下の部屋ばかりです。欧米の賃貸住宅は八十平方メートルから百平方メートルとなっています。我が国の賃貸住宅の床面積はウサギ小屋と言われている異常な状況です。賃貸住宅には十分な広さの住宅がありません。ほとんど皆無です。そこで、国民は何とか賃貸住宅から脱出して、無理をしてでもローンを組んで持ち家を所有しようとします。もちろん、この点は政府の持ち家政策と土地神話という価値観が根底にあったことは事実です。こうして、我が国では賃貸から持ち家の一方通行だけとなってしまったんです。
定期借家権が施行されると、まず最初に中高年の持ち家が賃貸住宅として供給される可能性が大となります。子供が仕上がった中高年の広い一戸建て住宅は本人の生活とは合わなくなっています。マイホームを貸して別の場所で暮らす。高齢者向けの設備の整った賃貸住宅へ入居する。あるいは子供の近くに住む、または一緒に住む。反対に、子供が親を介護するために自分の家を貸して親の近くに住む、または一緒に住む。高齢者が郊外の一戸建てから便利のいい駅前の賃貸マンションへ、また都会から地方へ住みかえます。マイホームを貸して、その賃料をもとにしてほかの場所を借りて住む。あるいは、ローンを抱えたサラリーマンが転勤、転職で住居を売ることなく、しばらくは貸して様子を見てから戻るかまたは売るかを考えます。マイホームを貸して借りるという従来できなかったスタイルが定期借家権によってもたらされます。
従来の借家法では、貸したら返ってきません。他人に家を貸した後、自分や子供が使うときに使えません。また、売ることもできなくなります。これでは自宅を貸すことはできません。
こうして定期借家権は、賃貸から持ち家の一方通行から、持ち家を貸して賃貸へ移るという双方通行を可能にさせます。これにより、一戸建てや分譲マンションが賃貸市場に出回ってきます。持ち家の賃貸化現象が起きてきます。借り手にとっては、従来賃貸市場になかった広い住宅を借りることができ、選択肢が広がります。供給がふえることにより賃貸市場は借り手市場になり、家賃が下落します。借り手市場となれば貸し主は、従来の大家がたな子に貸してあげるという発想から、お客様に借りていただくという顧客志向になっていきます。アメリカではこの顧客志向という賃貸市場が完全に成り立っております。管理人とは呼びません、フロント。お客様にサービスをするという発想から賃貸市場が成り立ちます。いずれ、郊外の広大な土地や工場跡地の利用も、今までのような二DKの狭いアパートや単純に分譲だけではなく、環境を整備した魅力ある町づくりをしてファミリー向け賃貸住宅として供給されることでしょう。
一方、商業地は現在地価の下落に歯どめがかかっていません。商業地は、従来の一平方メートル当たりや坪単価幾らという土地の面積によって土地価額が決まることはなくなっています。その土地にどんな建物が建ち、その家賃の収益力によって土地の価額が決まります。商業地の価額は収益還元法によって決まっています。この考え方は欧米では当然のことです。我が国においても、現実的には既に収益還元法が基本となっています。
さて、この収益還元法による収益力の算定には定期借家権は必要不可欠です。貸し主、借り主が期間を定め、収益力を確定させます。期間満了後は、新規に期間と賃料を設定して貸し主、借り主が再契約で決めます。ビジネスでは当然のことなんです。建物の賃貸借契約が明瞭になることによって、投資家は収益力を客観的に見ることができて投資物件の価値を判断します。商業不動産の価額及び取引の明瞭性が高まります。
また、定期借家権は老朽化した建物再生のための大改造、大修繕を計画的に実施することができます。将来の建てかえも計画的にできます。今後、我が国では建物の改築が大きな問題となってきます。定期借家権であれば賃貸人つき物件を売るのも支障はありません。いわゆるオーナーチェンジが容易です。欧米では、オーナーチェンジをした後に建物を再生させて収益力をつけて付加価値をつけて売却します。つまり、経営努力によって不動産の価値を高めます。
また、定期借家権は貸し主、借り主の合意による賃貸借契約を前提としています。そこではさまざまな契約による賃貸借契約が生まれてきます。信じられないかもしれませんが、欧米では百のテナントがいれば百種類の賃貸借契約書があると言われています。まさに貸し主と借り主の交渉による取引があると言われています。借り主が弱者ということは全くありません。交渉は貸し主と借り主は五分と五分であります。
現在、外資による我が国の商業地購入の動きが出てきました。しかし、外国の投資家にとって、我が国の旧法の借家法による賃貸借契約は理解に苦しみます。借家法で守られた借り主の立場があったのでは、収益力の確定も大修理、大改造、建てかえ、売却もほとんどが不透明です。これでは外資が我が国への不動産投資をすることはあり得ません。我が国の商業地が国際化するためにも定期借家権は必要不可欠であります。また、不動産の証券化においても同様です。不動産証券化の大前提に定期借家権は絶対条件になります。
以上述べましたとおり、定期借家権は居住用、事業用を問わず賃貸市場を多様化、活性化させます。不動産の流動化を促進させます。我が国の不動産を国際化させるためにも定期借家権はぜひ成立させるべき法案だと考えます。
以上でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/13
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014・石渡清元
○委員長(石渡清元君) 次に、甲斐道太郎参考人にお願いをいたします。甲斐参考人。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/14
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015・甲斐道太郎
○参考人(甲斐道太郎君) 甲斐でございます。
この問題について発言の機会を与えられましたことにお礼を申し上げます。
私は、民法の勉強を始めましてから五十年を超えるんですけれども、その経験に立ちましてこの法案に反対したいと思います。理由はいろいろございますけれども、時間がありませんので特に主要な四点だけ挙げておきます。
一つは、これまでたびたび言われておりますように、この定期借家権が借家人の居住の安定を著しく脅かすということでありまして、特に、最近老人介護の面で強調されております在宅看護の継続を不可能にするおそれがあるということが第一点であります。
それから第二点は、一九四八年の世界人権宣言以来、一九九六年の国連人間居住会議の宣言に至るまで、国際的な会議では居住の安定、居住の継続をいかに保障すべきであるかということが中心的な問題になっております。今回の法案は、こういう現在の国際的なトレンドに正面から衝突するものであるということであります。
それから第三点目は、原田教授も指摘されましたが、この法案にはいろいろ問題点が含まれているということでありまして、その詳細に立ち入る時間はありませんので、一点だけ申し上げておきます。
この法案の一番最後の条文なんですけれども、新しく改正される三十八条の第五項、家賃の増減額請求権の規定を外すことができるという、そういう内容の規定でございます。これは今まで余り議論の対象になっておりませんけれども、借地借家紛争の解決の上で非常に大きな混乱をもたらすおそれがあります。細かい内容にまで立ち入る時間がありませんので、そのことだけ指摘させていただきます。
それからもう一つは、この法案を推進する、あるいは賛成意見は、現在の借地借家法二十八条に規定されております正当の事由という制度の果たしている機能、現在の日本の住宅政策上持っております非常に重要な機能というものを全く無視しているということでありまして、私は本日はその点に重点を置いてお話しさせていただきたいと思います。
お手元に参考資料が参っているかと思いますけれども、借家法という法律は大正十年に借地法とともに制定されたわけでございますけれども、この借家法には期間の制限がないわけでありまして、いわゆる期間の定めのない借家契約というものが認められているわけです。この期間の定めのない借家契約につきましては、民法の六百十七条で、家主、借家人双方から三カ月の猶予期間を置いて解約の申し入れができるということになっております。
こういうふうに、借家に期間の制限を設けなかったということ、期間の定めのない借家契約が許されるということは、これは借家人の大多数は勤労者でありますから、勤労者は御承知のように移動の自由を持つ必要があります。いつ転勤があるかわからない、あるいはいつ職業が変わるかわかりませんから、借家契約に長期に縛られるということは借家人にとっても決して望ましいことではないわけでして、そういう意味で借地と違いまして借家には期間の定めのない契約が許されているわけです。
これは、今回の法案に関連しまして非常に重要な意味を持っていると思います。この借家法に昭和十六年改正で正当の事由というものが設けられたわけであります。これは、もう今まで随分お話がありましたので繰り返すまでもないことですけれども、もともと戦時下の賃金統制令、価格等統制令、その一環として地代家賃統制令というものが昭和十五年に制定されまして、これは原則として地代家賃の値上げを認めないという規定でございます。しかし、明け渡しを請求することが自由であると家賃の値上げを抑えることが不可能になるというので昭和十六年にこの規定が設けられたわけでありまして、この正当の事由制度というのは地代家賃統制令といわば車の両輪をなすものであるというふうに言われております。
この統制令は、昭和十三年の国家総動員法に基づくところの勅令でありまして、そのことからも明らかなように、戦争遂行のための法令であったわけでございます。しかし、同時に副次的な効果として借家人の居住の安定を保障するという機能を持ったわけでありまして、この後の方の機能、つまり借家人の居住の安定を図るという機能が戦争末期になりまして表面化してまいります。
お手元の資料をごらんいただきますと、判例の変化ということを書いておりますけれども、当初、そこに挙げております大審院の昭和十八年の判決は、この正当の事由の有無を判断する場合に、家主側の事情だけ考えればいい、借家人の事情は考慮する必要がないという判決であったわけです。それが、その次に挙げました昭和十九年の大審院判決では、この正当の事由があるかないかということを判断するためには家主と借家人双方の事情を比較考量して判断しなきゃならないというふうに判例が変わったわけでありまして、非常にこの正当の事由については画期的な変化であります。
この変化をもたらしたのは、言うまでもなく戦争下における住宅難の深化でありまして、空襲や建物疎開と称して道路を広げるために健全な建物をどんどん壊したわけです。さらに、建築資材の不足等によって戦争末期には大都市では非常な住宅難を生じたわけで、そのもとでこの借家人保護という機能が非常に大きな意味を持ってきたわけであります。
戦後になりますと、この住宅難にさらに一層拍車がかかりまして、戦地に出ていた兵士が復員によって帰ってまいりますし、中国等の植民地、中国は植民地ではありませんでしたけれども、旧日本の植民地に居住していた人たちがどんどん引き揚げてくる。それから、田舎に疎開していた人が都会に帰ってくる。そういうことで、敗戦直後の日本の大都市の住宅難というのはとても今日では想像できないような状態であったわけです。
そういう中で、この正当の事由というのはますます大きな機能を発揮するようになりました。何しろ住宅が全くないわけですから、借家人の方も追い出されると全く行き場がない、文字どおり路頭に迷わなければならない状態でありました。家主の方も、自分が住んでいた家が焼かれたりいろんな事情があって、両方とも住宅に困窮しているというふうなケースも随分あったわけですけれども、裁判所はそういうときに、いよいよ窮しますと一部明け渡し判決というものをしたわけです。二階建ての借家であれば、一階だけを家主に明け渡せ、つまり借家人は二階に住んで家主は一階に住めという、そういう判決までしているわけです。しかし、もともとけんか状態にある家主と借家人ですから、同じ屋根の下に住んでうまくいくはずはありませんので、それはまた新しい紛争の種になりまして、こういう判決はその後余り出されなくなりました。
この正当の事由につきましては、そういうわけで、敗戦後の早々のころ、昭和二十年代から二十五年代ぐらいまでにかけましてはほとんど正当の事由が認められる判決は出なかったわけです。先ほど言いましたが、私は昭和二十三年に大学院に入りまして民法の勉強を始めたわけですけれども、そのころの最高裁判所の判決集を見ますと、この正当の事由に関する判決が極めて多数を占めていたわけです。ですから、民法の勉強をするときにはどうしてもそういう判例に触れざるを得ないということで借地借家法にかかわるようになったわけですけれども、初期の判例はほとんど正当の事由を認めておりません。それから今日に至るまで、この正当の事由に関する判例というものは膨大な数に上っております。最近は、クレジット、サラ金とか商工ローンというような金融をめぐる判例が非常にふえておりますけれども、それまでは恐らく民法にかかわる判例の中で最も多い数であったと思われます。
こういう推移をしてきたわけでありますけれども、大体昭和三十年くらいを過渡期といたしまして、いわゆる絶対的な住宅難が解決されるに従って正当の事由を認める判決がふえてまいります。特に、その資料にも挙げました立ち退き料というものが判例上認められるようになりました。
最初の最高裁判所の判決は、そこに挙げておきました昭和三十八年の判決だとされております。下級裁判所の判決にはそれよりも早い時期から立ち退き料というものを認める判決が出ておりますけれども、これが認められるようになりました。立ち退き料だけではなくて、もう一つ代替家屋、借家人に今の家を出てもらうかわりに別な家を提供するからそこに住んでくれという代替家屋の提供の例も随分出てまいりました。家主の方からこういう立ち退き料や代替家屋の申し出をしますと正当の事由が認められやすくなる、認められやすくなるといいますか、むしろそれがなければ、正当の事由が足りないところを立ち退き料によって補完する、補強する。補強的ファクターとしてこの立ち退き料というものが判例上大きな機能を果たすようになりまして、そのころから家主の正当の事由を認める判例がふえてまいります。
それで今日に至っているわけでありますけれども、もともと正当の事由というのは、民法で言います一般条項でありまして、極めて抽象的な規定で内容ははっきりしない。
どういうものが正当の事由か。先ほど福井さんは裁判官の恣意に任せられていると言われましたけれども、判決が出るまでわからないというふうな面が確かにあるわけです。しかし、それはなぜかといいますと、この借家をめぐる家主と借家人の事情は事件ごとに千差万別でありますから、それぞれの事件の細かい事情を丁寧に調べて、そして家主と借家人のどちらにこの建物がより必要であるかということを裁判官は非常に苦労して判断するわけでありまして、そういうためにはこういう漠然とした抽象的な規定がどうしても必要なわけです。
したがいまして、ある一つの事件で裁判所が下した判決の中から他のケースにも当てはまるような統一的な法理論というものを引っ張り出すことは、この正当の事由の場合には不可能であります。しかし、そのままほうっておきますと一体どういうのが正当の事由かわからないということで、まさに推進論者の方が言われますように予測を不可能にするということになります。
そこで、膨大な判例につきまして学者がこれを分析いたしまして、それぞれの判決で家主側のどういう事情が考慮されるか、借家人側のどういう事情が考慮されるか、こういうことを非常に細かく分析して、そしてどの程度の比重が置かれているかということを考慮して判例研究ということをやったわけです。
その結果、大体どういう要素が考慮されるか。お配りしました資料に二つの代表的な研究を引用しておきました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/15
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016・石渡清元
○委員長(石渡清元君) 甲斐参考人、時間が来ておりますのでまとめてください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/16
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017・甲斐道太郎
○参考人(甲斐道太郎君) そういうわけで、この正当の事由というのは非常に具体的な事実に適合的である。申し上げましたように、住宅難が解消されるとそれに合わせたような判断がなされているわけでして、決して借家事情を悪化させるようなものではないということを申し上げたいと思います。
どうも失礼いたしました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/17
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018・石渡清元
○委員長(石渡清元君) ありがとうございました。
以上で参考人の皆様からの意見聴取は終わりました。
それでは、これより参考人に対する質疑に入ります。
質疑のある方は順次御発言願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/18
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019・脇雅史
○脇雅史君 自由民主党の脇雅史でございます。
四人の参考人の皆様方、きょうは朝早くからお越しをいただきまして、本当にありがとうございます。
四方のお話をお伺いしておりまして、それぞれにもっともだなという部分が多いわけでありますが、どうも随分意見が対立されているんだなということを強く感じました。今回の法律の提案の理由といいましょうか、目的が良質な賃貸住宅の供給を促進しようということでありますから、この目的について反対される方はおられないんだろうと思うんですけれども、いわばその手段によって随分判断の仕方が変わってくるんだなという印象でございます。
いずれにいたしましても、借り手と貸し手の権利のバランスと申しましょうか、その辺をうまく調整いたしまして良好な市場を創出していくということが大事なんだろう。そのときに社会的な公正さが担保されることが大事ですし、特に社会的弱者と言われるお年寄りその他に対する十分な担保が要るということだと思うんですが、お話を伺っておりまして、これは二者択一ではないなという印象でございます。どっちがいいんだということではなくて、やはり本郷先生が言われておりましたように、多様なバランスを持った市場を創出する、いわば品ぞろえが多い市場をつくるということが大事なんで、両方とも存在をする、その存在が両方とも担保される、あるいは中間段階のさまざまな契約の仕方が担保されるということが一番いいのかな、しかし、そうはいっても実際にそれを担保する手段というのは随分難しいんだろうなという印象を持ちました。
そこで、私もほんのわずかな、ささやかな経験ではございますが、借り手となったり貸し手となった経験がありまして、そのときに感じました実感からお話をちょっとさせていただきたいわけであります。
昔、家をちょっと貸したことがあるんです。最初貸したときは、私が直接住む家ではなかったものですから期限は構わなかったんですが、よその家を家のローンを払うために貸しておりましたので実は借り手がいなくなると非常に困るといった状態であったわけであります。十一カ月で急に通知がありまして、もう借りませんという話になりまして、そのときはああそうですかということで、まさかその後何カ月間かその方からお金が取れるなんということは実感として思ってもみませんでしたし、大分昔のことでそういった契約条項はなかったようにも思うんですが、余りよく覚えていないんです。いずれにしても、すぐその場で、なくなってしようがないな、また借り手を探さなければいけないなというふうな印象を持ちました。
それから、実は私も持ち家を自分で持った後に転勤で東京からよそへ行かなければいけない、それもまたやはりローンを払わなければいけませんので、よその家に地方で住みながら東京のローンを払うというわけにいきませんので貸したいなという気があったわけでありますが、もし貸して戻ってきたときに出てもらえないと困るなということが先に立ちまして、やはり貸すことは断念をいたしました。
私の友人にやはり同じケースで貸した方がいるんです。それはどうなったかといいますと、出てくれないんですね。転勤して三年ぐらい後に東京へ帰ってきましたら、どうなったと聞きましたら、彼は別のところに借りて住んで、そして自分の家は人様に貸しているという、そういう状態があったわけであります。
まさに多く貸し家を供給するということからすると、期限がついていないということが足かせになるなというふうな、私自身もそう思いましたし、実感であるわけであります。
何とかそういう家を多く市場に出すために、これは新たに貸し家として良好な家をつくるというのは非常に難しいと思うので、先ほど来お話がありました、自分が要らなくなった家、とりあえずは住まなくていいところをお貸しする。そのときの担保のためにはどうしてもやはり期限というのをつけなければいけないのではないかというふうに思うわけでありますが、この点につきまして甲斐参考人の御意見をもう一回お伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/19
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020・甲斐道太郎
○参考人(甲斐道太郎君) お答え申し上げます。
おっしゃることはまことにそのとおりだろうと思うんですけれども、ただ、正当の事由というのは、先ほど申しましたように、家主側の必要と借家人側の必要とを非常に細かく分析して比べて、その上で確かに家主にとって必要だという正当の事由があるという判断を下して初めて明け渡しを認めるわけです。
したがいまして、裁判所が正当の事由を認めないケースというのは、そういう非常に細かい比較をした上でなお借家人にとっての必要性の方が大きいということでありますので、正当の事由なしに明け渡しを認めるということは、つまりより必要性の高い者をそれほど必要性のない者が追い出すという、そういう結果になりますので、私はやはりそういうケースでも正当の事由の判断が必要だろうと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/20
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021・脇雅史
○脇雅史君 何か非常に状況を限定してお考えになっているような印象を受けたんですが、当初から、例えば二年間借りますと、借り手側もそれを重々納得した上で契約をする。ですから、二年たったら自分は出るという用意をしながらその家をなおかつ借りたいという人がいるという前提で申し上げているわけで、嫌な方はお借りにならなくてもいいわけですから、それは追い出すといったような表現にはならないのではないかなという印象を受けました。御意見は結構であります。
そこでもう一つ。私は借りたことがあるんですが、この経験は非常に理不尽だなと思ったわけであります。やはり二年契約で借りまして、そのときに、六カ月前に出るなら出ると言わないと後、契約が解除できませんよという条項があったのは私も知ってはいたんですが、契約の満了の三カ月ぐらい前に、実は私の方の理由でどうしても借りられなくなった。そのときにもう一回よく契約書を見たら、六カ月間払い続けろということになっているわけですね。これは極めて理不尽な印象を受けました。
福井先生の御意見ですと、当初そういう契約で判こを押したんだから当然六カ月義務として払えと。確かに契約の精神としてはそういう契約をしたわけですからわかるわけでありますが、家はさらにして貸し手にお返しをして自分はよそへ行っちゃうわけですから、なおかつ六カ月間家賃を払わなければいけないという、何たる理不尽なことだろうという印象を受けまして、何としても払いたくないなということで私はまた条文をいっぱい読みました。
そうしたら、いい条文が一項ありまして、その条文は、勝手に家賃を払わない、滞納したときはこの契約は無効とする、無効とすることができるではなくて無効とするという条項が一項あったんです、その契約書には。しめた、払わなければ契約が無効だから、契約が無効になった段階で六カ月の条項も当然無効になるんだろうという解釈を勝手にいたしました、相手は有名な不動産会社なんですが。そういうことで、督促が来たときに契約は既に無効になっておりますので払いませんということを申し上げたら、そのときはそれでおさまったんです。
ただ、借り手側の印象としては、六カ月前に言ってそれでなければ払い続けろという条項は極めて理不尽だなと。したがって、二百平米以下でそういうことが担保されるのは当たり前なんですが、どなたかの御意見にもありましたけれども、これは当然貸し手側からすれば困るわけですから、困ることはどこかで担保してあげなければいけないんですが、それをすべて借り手に負わせて六カ月間責任を持たせるというのはちょっと、そこまで貸し手を保護しなければいけないのかな、そうしないと良好な市場ができないのかなというような若干私は疑問を持ったわけでありますが、福井参考人のお話を伺います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/21
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022・福井秀夫
○参考人(福井秀夫君) 私は、むしろ現在の二百平米以下の一定の要件のもとでの一月前の解約も当然認めない方がいいという立場です。ここだけが条文の欠陥であるという立場であります。
なぜならば、現在アメリカやイギリスなどでは非常に超長期の、例えば十五年とか二十年といった長期の一括借り上げ、しかも家賃は総額でディスカウントしてそのかわり途中解約ができないというような、借り手にも貸し手にも双方メリットがある契約が非常に普及しております。このような当事者双方に利益のある契約が万が一、一年や二年で解約されるかもしれないということになりますと、こういう長期の契約で当事者が両方ともメリットがあるのにそういう契約を結ぼうとしても結ぶことが実質的にできなくなるわけであります。これは非常にもったいない話でありまして、本来そういった当事者が望む限り長期の契約をも奨励するということが妥当だと考えます。
なお、今御指摘のあったような半年前の通知というのはむしろ今は一般的ではございませんで、通常、宅建業者や文房具屋さんで売っている居住用の借家契約のひな形では特則で一月前解約ができるということが入っているのが一般的だと思います。
さらに一つだけ付言すれば、現在の正当事由借家ですら特約を入れない限り借り続けなければならない。それをむしろ借り手にかなり有利に抜本的に変えているのが今回の法案だということを申し添えておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/22
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023・脇雅史
○脇雅史君 私は、借りる側の立場からすれば、都合で解除したいときは解除したいなと、契約を。ただし、貸し手側に迷惑をかけますから、一月ないし二月のペナルティーは仕方がないかな、それが国民の皆さんも一般的なことではないかなと。しかしながら、言われるように、長期に借りるということのメリットも当然あるわけでありますから、そういったときの担保もとらなければいけない。
私は、借り手と貸し手の間だけではなくて、例えば貸し主のそういった家賃が入ってこないときのことを担保するには、急に借り手がいなくなったときの保険とか、貸し主があらかじめそういう保険に入っていて、ぱっとたな子が出たときにはそこから何らかのものが来るとか、あるいは言われるように、料金の弾力性で長期は高くするとか安くするとか、両方ともあり得ると思うんですけれども、家賃に反映されるべきではないか。もしそういう条項を入れるのであれば、急にいなくなるかもしれないから若干家賃を高くさせてもらいますよ、十万円のところは十一万円ですよとか、そのかわり六カ月前に言ってくれるんなら九万円にしましょうとか、そういう弾力性があっていいのではないか、それは家賃に反映されていいのではないか。
まさにきょうのお話の中で、本郷先生の言われておりました百契約があれば百種類違うんだと。そういう方が今のように非常に多様化した社会の中では契約が合理的になされるのではないか。お互いに、そういう複雑な契約ではあるけれども、それぞれ契約の中身を理解しながら契約をしていくというのがこれから目指すべき社会ではないかなというふうな気が私はするわけでありますが、あと三分ほどありますので、本郷先生にその辺のお話を伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/23
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024・本郷尚
○参考人(本郷尚君) 本来、この定期借家権の場合、契約主義というか、契約の内容をお互いに守りましょうということですから、当事者間五分と五分でいいと思います。ただ、残念ながら日本の旧法の借家法で賃貸市場が築かれている住居系に関しては、今回二百平方メートル以下の居住用の賃貸住宅に関しては借家人の生活上やむを得ない転勤、療養、介護等の事情が発生した場合には一カ月で解約できると今回特例を、特例と言うんでしょうか、設けたというのはいたし方がないかなと思います。
しかしながら、先ほど言ったように事業系に関しては、あるいはもう少し成熟化してくれば、貸し主、借り主が五分と五分というのはちょっと無理なんでしょうけれども、私は欧米のように、二十五年の契約もあったりマンスリーがあったりウイークリーがあったりさまざまな賃貸借契約がありますけれども、もっと自由になっていいんではないかなとは考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/24
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025・脇雅史
○脇雅史君 ありがとうございました。
終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/25
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026・岡崎トミ子
○岡崎トミ子君 きょうは参考人の皆様方、お忙しい中を参考人質疑においでくださいまして、本当にありがとうございました。感謝申し上げます。
きょうは本当に大勢の皆さんたちが傍聴においでくださいました。私の事務所にもこの法案の質疑が始まるということで連日ファクスが入りまして、その多くが、やはり住宅弱者の人たちがますます弱い立場になってしまうのではないかということを心配して慎重な審議を求めるものでございました。懸念の声が強ければ強いほど、想定されるメリットが本当にその目的を、効果を発揮することがあるのか、あるいは心配されるデメリットの影響に対してだれにどのぐらい影響が及ぶのか、いろいろとあるだろうと思いますので、慎重な検討をするために市民の皆様の心配していらっしゃる点について御意見を伺いたいというふうに思います。
最初に福井秀夫先生にお伺いしたいと思いますが、正当事由制度があるために、家を貸したいというふうに思っても、いつ返してもらえるかわからない、あるいは立ち退き料を支払わなくてはならない、そういうような理由からちゅうちょしてしまうので、結果的には良質な賃貸住宅が供給されないというのが今回の定期借家制度導入の一番大きな理由だというふうに思っております。
それにしては、規模の小さい住宅についても定期借家が導入されることになってしまうために、これは定期借家制度導入の理由と私は矛盾するのではないかなというふうに思うんですが、本当は地上げをしやすくするためにこれを導入したんじゃないか、そういう声も私のところに随分届いておりますので、この点について先生はどういうふうに整理されていらっしゃるのかをお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/26
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027・福井秀夫
○参考人(福井秀夫君) 小規模についてでありますが、小規模について適用するということは全く法案の趣旨と矛盾しないと思います。
なぜならば、小規模の住宅は、今もちろんワンルーム中心に出ている領域はありますが、小規模であるとか大規模である、あるいは何平米以上である以下であるという一点の境目をもって、あるところから供給抑制が働いたり、あるところからは一切供給抑制が働かない、こういう性質のものではございませんで、やはり借家法の効果は、もちろん小規模の方が弱く供給抑制が働いているということはあるにしても連続的な効果がございます。したがって、こういった連続的なゆがみがある場合はそれをまとめて撤廃するのがむしろ弱者保護にもなる、こういうふうに考えております。
ちなみに、ある面積以下について正当事由制度を定期借家の適用除外にするというようなことをいたしますと、その面積以下の物件がかえって市場に出回らなくなって物件が少なくなる、しかも家賃が高どまりいたします。これは小規模な住宅に居住すると見込まれる高齢者や母子家庭等にかえって過酷な仕打ちをもたらすことになる。したがって、そのような規模制限は妥当でないと考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/27
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028・岡崎トミ子
○岡崎トミ子君 次に、原田参考人にお伺いしたいと思います。
先生は、各国の定期借家制度の仕組み、経緯、前提条件、効果といった点について研究をされていらっしゃいますけれども、きょうの御発言の中では十分にそのことについてはお話しいただくことができなかったと思いますので、日本との前提条件の違い、それから優良な賃貸住宅の供給の促進が本当に実現されたのか、また定期借家制度との関係で家賃はどのように推移したのかについてお話しいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/28
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029・原田純孝
○参考人(原田純孝君) お答えいたします。
各国の定期借家制度と申されましたが、本当の意味で今、日本で問題となっているような定期借家を導入しているのは、先進国の中では恐らくアメリカとイギリスだろうと思います。
イギリスの場合には、先ほども申しましたように、全住宅の一〇%の部分に適用され、ごくわずかの量がふえている。これは税制措置によるものがかなり響いておりますが、そういう状況にあります。このことを念のため、本郷参考人も何度も欧米諸国ではと一般的に話されておりましたので、まず確認したいと思います。
それから、イギリスの場合の定期借家の導入の効果あるいは影響につきましては、お配りした資料の三ページ目から五ページ目に若干の図表等があります。五ページ目の一番下の図1―1というのが、これは単位は千でありますけれども、一九八八年の導入時から若干の数が伸びているということを示しております。ただその中には、要するに税制優遇によって新しい事業投資がなされたものがありますし、それから福井教授がおっしゃられたような、まさにこの時期イギリスでも住宅不況の問題がありまして、ローンを払えない人が一時的に、要するにローンを払って借りた、しかしその負担に耐えられない人が一時的に貸しに出す、これがかなり入っていたようです。ですから、規制緩和によってどの程度の影響が出たかはそれほど大きなものではないという学者の見方もあります。
その上の図を見ていただきますと、一番上のグラフ、その次のグラフが一年未満あるいは一年から三年未満での居住期間の割合が増大しているということを示しているわけです。それから四ページ目に戻りまして、表の2―2とか2―3は規模の問題を示しておりますが、広い住宅が決定的にふえたという動きは出ておりません。他方、公営住宅については、イギリスの場合には圧倒的な建設をやっておりましたから、セーフティー、弱者保護の問題はそれほどシビアな問題にはならない。しかも、加えて住宅費の援助制度、家賃補助制度があったというわけです。そういう前提条件が日本とかなり違うところで導入されたものと、日本でこれから導入しようとするものとはかなり違うと思います。
ほかの国の例で申しますと、フランスは前にも話しましたように、一九四九年から八二年まで全く自由化した時期があるわけです。しかし、それではやはりまずいということで八二年に導入しました。しかし、今度は厳し過ぎるということで緩めました。そして、今度はまた新しい問題が起こって、八二年、八六年、八九年と住宅制度が変動しました。これは住宅の借家市場に大きな混乱をもたらしています。
ドイツ、イギリスでも、借家の規制緩和は、お金をかけないで活性化できる手段であるという発想はやはりございます。したがって、戦後の歴史を見ますといろいろなジグザグの道があります。保守党政権になると緩和がある、しかし問題が起こってくると規制が強化されるというようなジグザグの道がありました。
ドイツは、その道を踏まえて、七〇年代の半ばに民法レベルできょう私が述べたような借家制度を確立し、これは民法典の中に入っております。その後はほぼ安定した借家の規制制度を維持しております。現在、これを大幅に変えるというような議論はありません。
イギリスは、定期借家を導入した、しかし割合が少ないのでそれほど大きな影響はないし、それをまた今どうこうする議論もないようになっている、こんな感じで見ております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/29
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030・岡崎トミ子
○岡崎トミ子君 先生は、定期借家の導入によって優良な賃貸住宅の供給が促進されるという主張について否定的な見解を示されましたし、正当事由制度のために優良な賃貸住宅が供給されないのだという議論も認めていらっしゃいませんが、この法案の目的であります優良な賃貸住宅の供給を実現するためにはどのような政策的な手段を用いるべきだというふうにお考えでしょうか。日本のただいまの借家制度の現状についての御見解を含めてお伺いしたいというふうに思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/30
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031・原田純孝
○参考人(原田純孝君) お答えいたします。
正当事由制度が一定のブレーキの役割を果たしていることを私は否定しません。特に、現存の持ち家の供給、持ち家で今使わないものを貸しに出したい、そのときに正当事由にかかると困る、先ほど議員の先生からもあった問題ですが、それは否定いたしません。そこは何とかした方がいいというのであれば、これについては期限付借家という制度がフランスにもドイツにも日本にもあるわけでありまして、その部分の使い方をうまくやっていくという対処の方法が可能です。
それに対して、正当事由を全くなくしますと、先ほど述べたような、イギリス、ドイツ、フランスがかつて経験したような混乱が再び生ずる可能性があります。もう一回、借家法の改正が問題にならざるを得ないということが出てくるようなおそれを感じております。
本当に民間の優良な賃貸住宅を大量に供給しようとすれば、これは住宅政策のあり方を全面的に変える必要があろうかと思います。アメリカは別としまして西欧諸国ではどこの国でも、民間賃貸住宅を建設させるためにはいわば持ち家の取得促進と並ぶような手厚い建設援助措置を行っております。さらに、それに加えて家賃補助制度をやります。住宅建設援助制度だけですと、これは国だけの仕事になってしまいますが、家賃補助制度を組み合わせると、市場による民間企業の良質な賃貸住宅の供給ということも絡んでくるわけです。この歴史は、ヨーロッパではドイツ、フランス等を見ますと、戦後の過程でいろいろな事実があり、かついろいろな問題があったわけです。
そういうことを踏まえると、この日本で、今の状況で、正当事由を外した自由な借家制度にするだけで非常に良質で優良な賃貸住宅がたくさん建設されるとはやっぱりどうしても思えません。ただ、持ち家の転換はある程度はあるでしょうということは私は申しました。しかし、そのために正当事由を外すのは行き過ぎではないか、全面的にない制度をつくるのは行き過ぎではないか、こういうふうに私は思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/31
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032・岡崎トミ子
○岡崎トミ子君 本郷参考人にお伺いしたいと思いますが、紛争の予防が必要だというふうに思いますし、第三者による相談あるいは調整や紛争処理機能というものの充実をしていかなければならないと思いますが、紛争の未然防止、そして処理のあり方について御示唆をお願いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/32
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033・本郷尚
○参考人(本郷尚君) 恐らく現実的には不動産管理業者、仲介業者がこの役割で実務的には対応すると思います。十分な説明義務、それから納得し、押印し、調印するということであり、また解約通知、あるいは契約の再契約等、実務レベルではほとんどが仲介管理人がきちっと行うことになります。従来のように、単純に紹介して紹介料をもらうということではなくて、きちっとした法律行為で契約行為を行い、双方納得の上で合意するということで、未然にというか、知らなかったとかいつの間にかとか、そういうことはこの定期借家権の契約ではあり得ないと思います。
なぜならば、書面によるということがきちっとうたわれています。そして、双方が承諾するということでございますので、契約当事者ではそうした紛争は起こりづらいと思います。まして、今回は新法施行後ということですから、しばらく周知徹底するのに若干の混乱はあろうかと思いますけれども、通常の借家人であればそうしたことはほとんど私は起きづらいと思います。また、アメリカ等でそうした混乱はほとんどないと思います、知らなかったとか。ということでございますので、しばらくPR期間、あるいはそうしたものに努力をしなきゃいけないかとは思いますが、日本で、ほとんど今の賃貸借は当事者間で行われるというよりも管理人が入って行う比率が高まってきますので、そうした問題は少なくなるのではないかなと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/33
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034・岡崎トミ子
○岡崎トミ子君 最後に甲斐参考人に対してですが、仮にこれが通過した場合、四年後の見直しが想定されているわけなんですが、四年後に向けてどういう点に注目して監視をしていくべきとお考えでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/34
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035・甲斐道太郎
○参考人(甲斐道太郎君) 私の予想では、これが施行されましてもなかなか定期借家が法の要件を満たすような形で実現されるのは難しいと思っております。理由はいろいろありますけれども、時間がありませんので申し上げません。
ですから、四年後には、これを廃止するとか、あるいは今も問題になっておりました借家人側からの途中解約とかいろいろ訂正すべき点が続出してくるのではないか。特に、先ほど申し上げました家賃の値上げ、値下げをめぐる紛争は極めて厄介なことになると予想しております。そういう問題につきまして、四年間に私たちの方も十分な資料を蓄積していきたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/35
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036・岡崎トミ子
○岡崎トミ子君 どうもありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/36
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037・高野博師
○高野博師君 参考人の先生方の貴重な御意見、ありがとうございました。
私は住宅、住居に関する基本的な考え方についてちょっとお伺いしたいと思います。
この定期借家権の導入ということについては、経済的な観点あるいは住宅事情の改善、さまざまなメリット、デメリットがあるような御意見でありますが、この特別措置法の第一条では、「国民生活の安定と福祉の増進に寄与することを目的とする。」と、こううたってあるんです。そこで、福祉とか人権という観点からとらえた住宅、居住ということについてまず福井参考人にお伺いしたいんです。
福井参考人はこの定期借家権の導入について最も積極的に推進してきた一人ではないかと私は理解していますが、こういう福祉とか人権という観点から、住宅あるいは居住についてどういうお考えを持っているのか、簡単にお伺いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/37
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038・福井秀夫
○参考人(福井秀夫君) 住宅福祉あるいは人権の保護というのは憲法上の極めて重要な価値でありまして、住宅福祉を含む福祉の充実というのは国政上も最も重きを置かれるべき分野であると理解しております。
ただ、この借家の問題に関してこれをどう当てはめるかということですが、私は基本的に福祉を行うのは国や自治体の責務であるというふうに考えます。現在の借家法は、借家人を入居させた大家さんがたまたまその借家人との関係で居住権を発生させてしまった場合には、国家や自治体がなすべき福祉、公的責務としての福祉を私的家主に肩がわりさせてしまっているという、こういう側面が非常に強く出ていると思います。これをやはり本道に戻す、すなわち国や自治体の責務としての福祉をきちんとやっていくということが福祉国家のパラダイムの基本ではないかと考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/38
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039・高野博師
○高野博師君 そこで、甲斐参考人にお伺いしたいんですが、この定期借家権を導入することによって在宅介護を不可能にするというたしか先ほどの御意見だったと思うんです。これをもうちょっと説明していただけませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/39
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040・甲斐道太郎
○参考人(甲斐道太郎君) 正当事由制度のもとでは、在宅介護の上で、お年寄りがいてそれを介護する家族がいる、そういう状況のところへ家主の方から明け渡しの請求がありますと、そういう在宅介護の必要性ということが非常に借家人側にとって先ほど申し上げました有利な判断材料になるわけです。特に老人につきましては、一定の地域、一定の家に住み続けるということが非常に福祉の上で重要だとされております。特に、いわゆる平生生活しておりますコミュニティーから切り離された老人が非常に惨めな状態に陥るということは、阪神大震災の後の老人が置かれた状況から明らかであります。
〔委員長退席、理事市川一朗君着席〕
ですから、極端なことを言いますと、老人介護ということを特に在宅介護を中心に考えるとするならば、そういう在宅介護を必要とする老人の場合にはその地域から切り離さないということが必要でありまして、したがって、そういうことを必要とする老人がいる限り借家の関係が継続するということが必要だろうと思います。正当事由制度のもとではそれが可能ですけれども、一定の期限ですべて切ってしまうという制度のもとではそれが不可能になる、そういう意味で申し上げたわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/40
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041・高野博師
○高野博師君 ありがとうございました。
居住の権利という点についてなんですが、住居がないという人が世界で一億人いる、そして適切な住居を持たないという人が十億人いる。これは今世界各地でいろんな紛争の問題あるいは貧困の問題等で増加傾向にあると、そう言われているんですが、ハビタットでも居住というのは基本的な人権の一つだという宣言がなされておりまして、その適切な住居の定義の中の一つには、追い立てられる心配がないということが重要な要素として入っております。
先ほどの甲斐先生の福祉という観点から見ても、安心で安全な住宅、そして安定的な住居というのは人間が住む基本的な条件として非常に重要ではないか。安心で安定的に安全に住めるというのは人間の精神的肉体的な健全性を保つ上でも非常に重要だと、そうも言われております。
先ほどお話がありました阪神大震災での被災者が非常に孤独死に至ったとか、あるいはさまざまな問題、病気等が促進したというようなことも指摘されておりますが、安定的に同じ場所に住むというのは、そこでの人間関係あるいはコミュニティーとの関係、これが非常に重要だという指摘がされております。
こういう観点から見て、この定期借家権の導入というのは人権上の問題あるいは福祉の観点からも問題がないということでなくてはならないと思うんです。この特別措置法の第三条には「住宅困窮者のための良質な公共賃貸住宅の供給の促進」というのがうたわれておりまして、これは政府等が大いに努力しなくてはならないことだと思うんですが、現実には、公共住宅の場合だと毎年千件以上も家賃が払えなくて強制退去させられているという事実があるわけです。
定期借家制度の導入によって、先ほども本郷参考人の方からお話がありましたように、住宅の供給がふえる、いろんなオプションがふえるということで借り手市場になるということが言われました。私も定期借家制度を導入している、発展途上国ですが数カ国に住んだことがありまして、確かに借り手市場だと、それから家賃は市場が決める、そういうことも私は体験的に理解しております。
そこで、この制度が導入された場合に、入居差別はないというように先ほど福井先生はおっしゃいましたが、私はそこのところは疑問を持っておりまして、この制度が導入されて借り手市場になっても依然として住宅困窮者というのは存在するのではないか、そういう懸念を持っております。すなわち、現実には高齢者とか障害者、あるいは女性とか在日外国人等々に対しては居住差別というのが起こり得るのではないか、そう思っております。
〔理事市川一朗君退席、委員長着席〕
そこで、この制度を導入した上で居住差別を禁止する法律が必要ではないか。これは欧米の場合にはそういう法律があるわけですが、そういう法的な担保をしないと住宅困窮者等の問題は解決できないのではないかという意見を私は持っておりますが、本郷参考人それから福井参考人にお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/41
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042・本郷尚
○参考人(本郷尚君) 先生のおっしゃる居住差別、入居差別というんでしょうか、あるかないかということですけれども、これは旧借家法と定期借家権とどちらが入居差別がないかという比較をしてみたいと思います。
これは、旧借家法では正当事由がない限り明け渡しを求めることができないというきちっとした法律になっておりますので、当然のことながら正当事由制度がある以上ははっきり申し上げますと入居差別はあります。貸し主は、もう入られたらおしまいというのがあります。
ところが、定期借家は正当事由制度がないわけですから、期間を定めて賃料を払ってくれる入居者さえいれば契約によって決まるわけで、もし不都合な方がいれば契約しないでいいわけですから、定期借家では入り口の段階では非常に少なくなると思います。
アメリカでは定期借家が非常に多いわけです。まさに人種のるつぼですが、そこは入り口の段階で審査はしていると思いますけれども、日本の旧借家法の方がむしろ厳格な差別が行われるのが現実だと思います。権利金だとか保証人の問題であるとか敷金の問題であるとか、ここは旧借家法が残っている以上今高くになっているわけですけれども、これが定期借家になりますとこの入り口のハードルは低くなると思います。
何度も申し上げます。きちっと家賃を払ってくれる入居者に対して貸し主は立ち退きを求めることはほとんどありません。老朽化とか自分が使うとか、あるいは建てかえをするとか大修理をするとか、こういう事情がない限りきちっと家賃を払ってくれる人とは再契約するのが普通の考え方だと思っていただいて結構だと思います。
もう一度申し上げます。入居差別は旧借家法の方がはるかにあると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/42
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043・福井秀夫
○参考人(福井秀夫君) 私も、定期借家権の導入でかなりの程度入り口段階の差別というのは激減すると思われます。
もちろん、今までの慣行が残っておりますので過渡期の混乱等は若干あるかもしれませんが、諸外国でそうであるように、高齢者が最初から差別されるといったような過酷で差別的な仕打ちを受けることはほとんど皆無になるというふうに確信しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/43
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044・高野博師
○高野博師君 それでは、本郷参考人に最後にお伺いしますが、先ほどのお話の中で、収益還元法ということによって土地についての投資、これは定期借家権によって投資等が起こりやすくなる、特に外国からの投資等についてはもっと活発になるんではないかという御意見だと思うんですが、ここの点についてもう少し御説明をお願いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/44
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045・本郷尚
○参考人(本郷尚君) 恐らくこの点は、定期借家権に反対する方も商業地の定期借家権については異論がないことだと思います。ビジネスの世界ですから、貸し借りは当然これは取引でございます。そこへ期間を設けて、期間満了後は再契約をするかしないか、賃料をどう決めるかは、これは当事者間の取引でございますので当然のことだと思います。
現在の日本の借家法では、欧米の投資家から見たら全く理解できないと思います。旧家賃がそのままで移行するとか、あるいは改造してテナントを入れかえてまたさらに収益を生むとか、あるいは建てかえをするとか、そのときに多額な立ち退き料というのはほとんど彼らの概念にはございません。家賃の改定あるいは改造、建てかえあるいは売却等で、そうした日本の借家法というものはほとんど理解できないと思います。
収益が確定しないものに対して投資をする人はほとんどおりません。日本の場合は、それを所有することによって不動産が値上がりするという前提に立って投資というのが今までされてきました。欧米では、収益力を上げる以外に土地の価値を上げることはないわけです。収益力を上げるためには経営努力をしなければなりません。その経営努力は、定期借家権によって賃貸借契約をさまざまな形で変えながら収益を上げ、管理費を下げ、コストを下げ、利益を上げ、そして物件の価値を高めるという行為になります。商業地に関してこの収益還元法がない不動産投資はあり得ないと言っていいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/45
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046・緒方靖夫
○緒方靖夫君 日本共産党の緒方靖夫です。
四先生、きょうは本当にありがとうございます。
まず、福井先生にお尋ねしたいんですけれども、私、たまたま日経新聞に先生が今回の定期借家権の導入について、これは貸し主が長期的な土地の利用計画を立てやすくなり不動産の流動化にもつながる、そういうふうな趣旨を述べられているのを目にいたしました。先ほどのお話には土地の流動化、景気の関連とのかかわり、その点がなかったわけですけれども、その観点について簡潔にお尋ねしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/46
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047・福井秀夫
○参考人(福井秀夫君) 私どもも試算をしておりますが、特に経済企画庁では、年間八千億円、二十年間で二十兆円の経済効果があるという試算をしております。
私は、これはまだ多少過小ぎみというふうに評価しておりますが、いずれにせよ土地の有効利用が安心してできるようになるということに伴って投資が活性化する、それは経済効果を生むという回路は確実に存在すると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/47
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048・緒方靖夫
○緒方靖夫君 甲斐参考人にお尋ねしたいと思います。
法務省が九六年の一月に規制緩和計画の見直し中間公表というのを出したことがあります。これは、経団連から借地借家法の見直し、とりわけ正当事由を取り去れという、そういうことに対して法務省がまとめた見解なんですけれども、そこには、「借地借家法の制定の検討の段階において、正当事由については、十分に論議が尽くされた問題であり、国民の利害を十分に調整した上、国会の大多数の賛成により成立したものであって、その後現在まで、社会的・経済的に特段の事情の変化はない。 したがって、新規に計画に盛り込むべきではない。」、法務省はそう述べているわけですね。これは、法務省なるほどと私は思いました。
そこでお尋ねしたいんですけれども、その後三年間たっておりますけれども、この点について、正当事由の制度、その意義について先生のお考えを改めて伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/48
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049・甲斐道太郎
○参考人(甲斐道太郎君) 先ほどちょっと時間の配分を誤りまして丁寧にお話しできなかったんですけれども、こういう借家という問題は、言うまでもなく居住の基礎であり営業の基礎であるわけでありまして、そういう借家をめぐる争いというものは個別のケースケースについての非常に細かい検討が必要なわけです。そのことが今日までの最高裁判所、各裁判所の裁判例と、それからそれを素材にした学者の研究によってつくり上げられてきているわけであります。
そういうものでありますから、社会事情とか経済事情の変化にこの正当の事由というのはその都度うまく対応していっているわけであります。それは、本当にだれがその建物を必要としているかということをその時代時代の変化に即応しながら実現していくためには、この正当の事由というふうな非常に柔軟な規定が必要でありまして、そのことを先ほど申し上げたかったわけであります。
一般に、個人間の民事の紛争というのは決して条文だけで割り切れるものじゃありませんので、その事件事件の細かな事情に基づいて裁判官は苦労して判断しているわけであります。ですから、この裁判官のしてきた苦労や学者の努力を否定するということは、日本の裁判官や学者に対する侮辱であろうと私は思っております。
法務省にとりましては、先ほど申しましたように昭和十六年以来置かれている規定でありまして、この借地借家法というものは民事基本法の重要な一つであるというふうに法務省の方はとらえております。したがいまして、その一番根幹をなす正当の事由という制度は法務省にとりましても非常に重要な制度でありまして、今御紹介されましたような法務省の見解というのはまことにもっともであると私は考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/49
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050・緒方靖夫
○緒方靖夫君 推進論者の方々は、正当事由制度を外すと優良でそしてまた広い住宅が供給される、そういうことを述べているわけですけれども、私は逆に、この制度が導入されると、甲斐先生が先ほど述べられているように、高齢者また弱者、そういう方々に過酷な事態が予想される、そのことを痛感いたします。
先生は長い間民法を専門として研究されてこられたわけですけれども、特に住宅と人権、その角度から、この法案の導入によって一体どういうことが、またどういう被害が想定されるか、その点についてお尋ねしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/50
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051・甲斐道太郎
○参考人(甲斐道太郎君) 先ほど岡崎先生あるいは高野先生の御質問に対して若干お答えしたところでありますけれども、私が改めて申し上げるまでもなく、住宅問題について一番弱いのは経済的弱者であり老人であり貧困者であるということは言うまでもないわけであります。そういった人たちは経済のごくわずかな変化にも弱いわけでありまして、非常にそういう人たちの立場というのはもろいと言っていいだろうと思います。
このことは、昨今におけるいわゆるホームレスの増加が如実に示しているところでありまして、リストラその他経済的事情の変化によってたちまちホームレスがふえるということはそういうことをよく示しているのではないかと思います。特にそういう影響を強く受けるのは老人で、老人福祉にとりましてはこの規定は非常にゆゆしき問題を含んでいると思っております。
現行の借家契約には適用しない、あるいは現在の借家の契約を解約して定期借家契約を結ぶことは当分の間許さないという規定がございますけれども、この規定ができますと施行以後の借家契約はほとんど定期借家になってしまいます。そういう人たちは、契約したときは若いかもしれませんけれども、あっという間に年をとるわけでありまして、そのときはよかったとしても老齢化したときの生活は全く保障されないわけです。
私たちは住居は人権であるということをかねてから言っているわけでありますけれども、確かにこの借家法というものは全体としての日本の従来の住宅政策が非常に欠けているところを家主に背負わせているという面がないとは言えないわけです。しかし、これを改めるのは、まずセーフティーネットをつくってからでないと非常に危険だと私は考えております。確かに、今回の法案の一条から四条までにはいろいろ努力義務の規定がありますけれども、こういうことが現実に実現された上でもし導入するのであれば、定期借家を導入すべきであるというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/51
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052・緒方靖夫
○緒方靖夫君 原田参考人にお尋ねいたします。
私は先生のお話を伺っていて、私もヨーロッパに長い間住んでおりました。パリでも五年間借家住まいをしておりましたので非常に実感が伴って理解できたわけですけれども、推進論者の方々は、基本的に住宅弱者の保護の責任を持つべきは国や自治体だと主張しております。弱者を救済するのは公の仕事と割り切るのは簡単なんですけれども、しかし実態を見ますと、国も自治体も公営住宅から撤退している、その建設戸数もどんどん減ってきているという、そういう実態があるわけです。
そうすると、まだまだそういった点では借家人の方々の権利を擁護するということが当然非常に重要な課題になっていると思うんですけれども、この定期借家権の導入によって、公共賃貸住宅の建設、これが大きく前進するという見通しが果たしてあるのかどうか、またその保障があるのかどうか、その点について先生のお考えを伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/52
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053・原田純孝
○参考人(原田純孝君) お答えいたします。
法案の第一条から第四条には、この法案の掲げた目的に沿って国や自治体が努力をするということが書かれておりますが、現実に進行している事態は、公営住宅の建設はむしろどんどん少なくなっている。東京都なども、予算の問題があって新規着工はしないという決定をするというような状況になっているわけでございます。ですから、この法案がもしその流れを大きく変えるような意味を持てば、それはこの法案が一定の意味を持つだろうと思います。しかし、それは本当にできるのかというと、私としては大変疑問に思っているところがございます。
各国の場合を見ますと、やはりそれなりの社会住宅の建設をやっている。これは、きょう私がお配りした資料の最初の表にありますが、社会住宅ないし公営住宅の比率が日本ではわずか七%弱にすぎない。それに対して、イギリス、ドイツ、フランスとも、はるかにその数倍に達するような公営住宅あるいは社会賃貸住宅を建設してきているわけです。さらに、その上に重ねて所得が低い者のためには家賃補助の仕組みを用意している。そういう形での弱者保護の仕組みがあって初めて、例えばイギリスでもそう強い反対がなく定期借家制度が導入されたと。一〇%の民間借家はいわば残っている部分ですから、その果たしている社会的な役割は、日本での民間借家が非常に多くの世帯の重要な生活基盤となっているという状態とはやや意味が違っていたということもやはり御理解をしておいていただきたいというふうに思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/53
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054・緒方靖夫
○緒方靖夫君 本郷参考人にお伺いいたしますけれども、先ほど先生は発言の中で、この定期借家権の導入、これが行われると不動産の流動化に寄与すると言われましたけれども、それはどの程度期待されているのか、その点をお伺いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/54
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055・本郷尚
○参考人(本郷尚君) 私はマイホームの賃貸化ということまで相当強く意識しているんですけれども、貸したまま売るということは今、日本の場合はほとんど不可能に近いです。賃貸人がついたまま売るということは、プロならともかく、普通の方が買うことはあり得ないです。したがって、持ち家と賃貸はもう両極端ですね。空き家でなきゃ売れないという状況でございます。
ところが、定期借家権の契約ですと契約内容が明確になりますので、買う方も、例えば五年貸して三年たったところで売ると二年の定期借家権がついていると、これは承知の上で買えるわけですね。自分が使うか、あるいはもう一回建てかえるか、あるいはそのまま売るか、極めて契約が明瞭になっておりますので、借家人つき売買という、持ち家を貸したまままた売ることもできる、あるいは一定期間貸した後に売るとか、極めて選択の幅が広がります。
確かに、住宅弱者の問題というのはこの正当事由の中で非常に重要なんですけれども、そればかりにこだわって、もちろんセーフティーネットをつくらなきゃいけないことはもう議論の余地もありませんが、公共住宅を提供しなきゃいけないことは事実だし、しかし、現在では家主がその部分を負担しているということも事実です。持ち家の賃貸化は全く進みません。
ですから、流動化は、定期借家権が出ますと、持ち家を貸したり、貸したまま売る、こういったことが頻繁に起きることはもう多分ここにいらっしゃる方々の意識の中に出てくるんだと思います。自分がこれから自分の持ち家をどうしようかということですね。ですから、この流動化あるいは活性化が不動産の市場の中には必ず起きてくると思っています。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/55
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056・緒方靖夫
○緒方靖夫君 最後に、甲斐先生にお伺いいたします。
この法律が、良質な賃貸住宅等の供給促進、それを銘打っているわけですけれども、しかしこの法律の中では、はっきりと決まっているのは定期借家権の導入、その点だけで、あとは努力義務になっているわけです。そういう点で、この法律のうたい文句とそれからこの中身について、先生の御専門からどういうお考えかをお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/56
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057・甲斐道太郎
○参考人(甲斐道太郎君) 原田参考人も言われましたように、今回の法案の一条から四条までは努めなければならないという表現になっておりまして、それを努めさせるためにどうするのかという保障は全くこの法案には見当たらないわけであります。
私は、従来からのいろんな法律について、こういう努めなければならないという文句は実は信用しておりませんので、本当にそれが実現されるような法律がもう一つどうしても必要だろうと思います。
私の尊敬しておる借地借家法のまさに大先輩で、今学士院会員をしておられる鈴木禄彌という先生がおられますけれども、その鈴木さんも、定期借家権を実現するのであればまずそっちをやれと、いわゆるセーフティーネットをちゃんと整備しないままで定期借家を導入することには反対だと言っておられるわけです。
聞くところによりますと、この法案は成立しますと三月一日から施行されることになっているようでありますけれども、そうなりますと、まさに努力目標の方は置いたままで専ら定期借家の方が先行することになります。そのことは、先ほど来申し上げておりますように、居住福祉という言葉を早川さんという建築の専門家が使っておられますけれども、日本の居住福祉にとって非常に大きな害を及ぼすのではないかという心配をしておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/57
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058・緒方靖夫
○緒方靖夫君 ありがとうございました。
終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/58
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059・大渕絹子
○大渕絹子君 社会民主党の大渕でございます。
まず、福井参考人にお伺いをいたします。
この定期借家権の導入を福井参考人は急ぐべきであるという御主張、推進論を展開されておるわけでございますけれども、なぜこの時期にこれだけまだ意見が対立している法案を導入しなければならないのか。
その背景に何かあるのかなという思いで私は考えたんですけれども、例えばバブル崩壊以後、金融業界が大変な物件を抱えている。建設業界の負債の中で抵当としてとった住宅であるとかマンション、あるいは売れ残って倒産をしてしまっている建設業界の住宅がそのまま放置をされている。それを債権者である金融業界が押さえているという構図があると思いますけれども、そうしたたくさんの物件が今現在歴然としてあることは私も承知しています。それに対して、定期借家権を導入することによって道を開いていこうとするのかどうかということなんですけれども、この考え方についてはどんなふうにお考えでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/59
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060・福井秀夫
○参考人(福井秀夫君) 定期借家権の導入は、基本的には弱者である潜在的借家人、普通の市民のためであります。
なぜこの時期か。それは遅きに失したと言うべきであります。もっと早く行うべきであったものがここまでずれ込んだ。一刻も早く成立させるべきであるということは当然のことだと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/60
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061・大渕絹子
○大渕絹子君 先ほど同僚委員の脇先生から、自分の住宅を貸したかったけれどもなかなか困難であったというようなお話があったわけですけれども、今の借地借家法の第三十八条には期限付建物賃貸借の項目があり、ここはクリアをできるというふうに思うんです。持ち家を一定期間だけ貸したいと思う人たちはそれを貸すことができるというふうに思います。この条件で貸せれば、期間が来たときに明け渡すのは当然と最初からなっているわけでございます。
ここは本郷参考人にお聞きをしたいわけでございますけれども、本郷参考人は「定期借家権で、暮らし・住まいはこう変わる」という本を御監修でございますけれども、この中にも転勤、病気療養、介護、取り壊しなどの理由で安心して、この期限つきではだめなんだということが書かれておるんですけれども、私は今の法律の立て方というのは、そうではなく、期限付建物賃貸借で十分にそういう家の場合は貸し借りができるようになっていると思うんです。もし、先ほど私が言ったような今厳然として建っている空き家を有効に借家に使っていこうとするならば、この期限付建物貸借の条項をもう少し規制緩和することによって十分補うことができるというふうに思うのですけれども、いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/61
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062・本郷尚
○参考人(本郷尚君) 現在、サラリーマンが転勤等で異動した場合に期限つきで貸すことができるということは現実としてあります。しかし、実際を見ますと個人間ではほとんどされておりません。通常は、大企業が社宅として一たん借り上げてそれを社員に貸すというぐあいに、法人しかも一般的に言えば一流企業を前提としております。いわば紳士協定の中で期限付借家が実行されているという現実がございます。
もし個人が個人の家を借りた場合、期限付借家をやったとしても、自分が転勤で戻ってきたときにほとんどトラブルが起きております。これは当然、先ほど先生方もおっしゃっているように、正当事由制度が出てまいります。確かに文言としてはありますが、現実には法人の信用を媒介として期限付借家というのが成り立っておりまして、それが二年、三年と続き、五年と続きますとほとんどがもう実態は通常の借家法と全く同じになってしまいます。そのことをもうサラリーマンの方々は実感でわかっておりますので、怖くて貸せないという現実があります。
ですから、きっちりとした法律、つまり今回のような定期借家権のような法律をつくらない限り、ああした期限付借家でやったとしてもトラブルが起きるというのが現実でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/62
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063・大渕絹子
○大渕絹子君 住宅の情報誌などでは、期限付借家をやっている情報誌等々もあり、それを利用されている個人もたくさんあると聞いていまして、参考人がおっしゃるようなことばかりではないのではないかなというふうに思っています。
それではもう一つ、ついでに本郷参考人に。
この本の中に、これは多分経営をする方に書かれている本だろうと思いますけれども、家賃について参考人が書いておられまして、家賃五万円で始めて二年間を貸せればいいというようなことでケース一の場合。ケース二の場合は、最初の一年間を家賃四万円で、二年目になったら七万円にすればいいし、そしてそのことで採算がとれなかったら延長を一年やって三年目になったら八万円にすれば家賃を上げることができると、こう書いてあるんです。
もしこの法律が施行されて参考人が奨励するような形になってきたら、本当にこれは安心して借りられない。これはきっとアパートを経営される方に向けて書いておられる本だからなのかもしれませんけれども、これがもし普及してアパート経営とか貸し家経営がされるとすると、これはちょっと困ったなというふうに思うんですけれども、これはいかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/63
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064・本郷尚
○参考人(本郷尚君) 例えとして話したんですけれども、これは現在の賃貸市場で商用ビルなんかでは起きていますが、フリーレント制というのがございます。例えば、五年契約をする際に、最初の三カ月ただでいい、六カ月ただでいい、これがフリーレント。これは、そうした契約が成り立つわけです。三カ月ただでいいですよ、ぜひ入ってください、そのかわり五年契約をしてください、これで収益を確定させます。あるいは、定期借家は契約主義でございますから、本来市場家賃が十五万円であっても、最初の一年目はお試しで結構ですから十万円で入っていただきたい、その後、次以降は通常の家賃の十五万円に直しますと。これもすべて契約主義でございますから、それで双方が納得すればそれでよろしい。
何かいかにもだまされるような気がしますけれども、建物賃貸借契約は本来商取引でございます。もちろん居住権というのはありますが、家賃を幾らであるかとか、そうしたことは幾ら弱者といえども十分理解できるはずです。誘導型フリーレントとか、あるいは家賃を一回下げてその後普通の家賃に戻す、こういったことは通常わかるはずです。それを、だまされたとかとんでもないとか。現に優良賃貸住宅といって政府がやっている賃貸住宅も、毎年五%値上げしていきますよというようなことで、最初の家賃は低家賃にして、その後何年間で引き上げていくというような制度も設けております。ですから、何かそういう話をすると、住宅弱者が後になって困るじゃないかと言うけれども、ここは通常の理解度があれば、それをだましたとかだまされたじゃなくて、商取引として十分あると思います。
今のようにフリーレントとか誘導型で家賃を低目に設定して引っ張り込む、実は今の賃貸市場ははっきり申しまして借り手市場でございますので、貸し手が高額な家賃とか何か吹っかけるというようなことは今ほとんど行われていないんです。むしろ来ていただきたい、入っていただきたい、もうそのことに四苦八苦している今の市場でございます。ですから、先ほど今になってと言いましたけれども、今でこそそうした契約がきちっとできた方が非常に市場は流動化し、活発化するんです。
ということで、その本を読むとびっくりされるかもしれませんけれども、そうした契約も十分あるということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/64
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065・大渕絹子
○大渕絹子君 きょうは参考人でおいでいただきましたので、ここの議論はちょっとやめて、続けたいのですけれども時間がなくて済みません。後でまたじっくり読ませていただきます。
甲斐参考人にお伺いをしたいと思います。
今回のこの改正案で、「民法第六百四条の規定は、建物の賃貸借については、適用しない。」という一項目が入りました。
元来、契約期間の定めのない契約については民法の六百四条を適用するというのが常識になっておりまして、例えば公営住宅や公社住宅は、その賃貸契約について裁判などでやるときには恐らくこの民法の六百四条の規定というのが当てはめられてきたというふうに思うのですけれども、この六百四条の規定をこの条項で削除することについて何か問題がありますでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/65
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066・甲斐道太郎
○参考人(甲斐道太郎君) 民法の六百四条の規定は、賃貸借について最長の期限を二十年と制限した規定なんです。それよりも長い期間を定めても二十年に縮めるということになっております。
今回の法案にこれを適用しないという規定がありますのは、定期借家の契約につきましては二十年以上の期間を定めることを認めるという意味を持っているわけですから、三十年、四十年というような長期の借家契約を認める、そういう趣旨だろうと、私は立法者じゃありませんので、推測しているわけなんです。
そういうことになりますと、先ほど言いましたように、もともと勤労者の借家については、そういう長期間一つの場所に縛られるということは好ましくない面があるわけです。最初の脇先生のお話にもありましたように、転勤なんかのときに空家賃を払わなくちゃいかぬ。そうすると、二十年以上の契約を結びますとその空家賃を払わなきゃならない期間がますます延びるわけですから、そういう意味で、これが外されますと、これは契約の内容いかんによりますけれども、この空家賃を長期間払わされるような危険が増してくるおそれがあるんじゃないかと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/66
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067・大渕絹子
○大渕絹子君 原田参考人にお伺いをいたします。
きょうは、参考人の意見の中でこの定期借家権の推進をすることにさまざまな問題があるということを御指摘いただいて、私たちも考えていかなければならないところをたくさん御指摘いただいたわけでございます。
定期借家権の導入がグローバルスタンダードだという議論が推進側の中に多くあるんですけれども、先ほど来のお話の中で、それぞれイギリスとかアメリカとか導入をしたところにおいては、セーフティーネットといいますか、それをきちんと暴走しないで抑えていく歯どめがかかっているというお話だというふうに思っております。
アメリカでも州によって対応が違っているわけですけれども、ニューヨーク州、これは東京と住宅事情などが大変よく似ていると思いますけれども、ニューヨーク州においてはいまだに正当事由制度が適用されておるという状況の中で、グローバルスタンダードだという議論に対してもう少し反論していただけたらと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/67
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068・原田純孝
○参考人(原田純孝君) お答えいたします。
きょうの私の意見陳述の中でもありましたように、要するに一番広く定期借家を使っているのは恐らくアメリカなんだと思います。イギリスが一九八八年からサッチャー政権下で導入いたしましたけれども、その適用領域は先ほど述べましたように非常に限られている。
そして、先ほど、一方で定期借家こそがグローバルスタンダードという議論がありましたけれども、この議論に関しましては私は幾つかの重要な問題を指摘できるんだろうと思います。
まず第一は、今述べたような、実際にどこの国でどれだけ使われているかという事実の問題です。
第二に、アメリカで使われているからそれがグローバルスタンダードだと言えるのかという問題です。
もちろん、アメリカを起点として世界のさまざまな基準のうちの一定の部分がグローバル的な形で形成されてくるということは当然あり得ます。商取引ベースのルールであればそういうことはしばしばあり得るでしょう。例えば、いろいろな企業の会計基準等もそういうことがあり得るかもしれません。
しかし、土地と住宅というのは基本的に動かないものでありまして、各国の土地市場、住宅市場、土地問題、住宅問題の状況は非常に大きく異なっております。それで、各国ともその異なった状況の中で、長年の歴史を通じて現存の住宅ストックを形成し、その中でどのように住宅弱者のためのセーフティーネットをつくり、またどうするかを組み上げてきているわけです。そこに定期借家をグローバルスタンダードといって突然持ち込む、これは、今言ったこととの関係でも、決してグローバルスタンダード化ということで正当化できることではないだろうと思います。
それから、第三に申しますと、今までの議論を聞いておりましても、あるときは営業用借家に即して定期借家制度のメリットが説かれ、あるときは新規の広い住宅供給に役立つんだということで、家族向けの住宅供給に役立つんだということで定期借家が説かれます。
しかし、実は営業用借家と住宅用借家の場合は、欧米諸国では法制度が、これはもう本当に欧米諸国一般ですが、法制度が異なるのが通常です。ドイツもイギリスもフランスもアメリカも住宅と営業用とは区別して制度をとってきております。ただ、日本の場合には、戦前からいわゆる併用住宅における生業用の借家、住居と営業とが共存しているような借家が多かったために、その借家人の保護もあわせてやるということで、日本の借家法は営業用それから住宅と両方に適用される仕組みになっているわけです。
しばしば立ち退き料の問題が指摘されますけれども、立ち退き料がより頻繁に発生し、かつ高額の立ち退き料の支払いが家主の側から提供されるのは、多くは、それも圧倒的に多くはと言っていいと思いますが、営業用借家の場合です。そして、諸外国の例の中でも、例えばフランス、イギリスなどでは営業用借家については当事者はかなりの契約自由を持ちます。そして、期間満了時に家主は明け渡しを請求することができます。しかし、明け渡しを請求するときには、営業財産を含めた、場合によっては賃借権の価値も含めた営業財産の立ち退き補償を払うということが法律上の義務になっているわけです。こういう国があるということも推進派の方々は指摘をされない。
第四に、営業用の問題で、特に例えば都心部の大きなオフィスビルを賃貸する。これは本郷参考人がおっしゃるように、まさにビジネスの世界である程度回っていっていいし、そういう賃貸用のオフィスビルを建てるためにその不動産を証券化し投資を呼びたい、それも国際からも含めて呼びたい、そしてそのためには一定のこういう長期、二十年を超えるような、しかも賃料の自動改定特約もつけたような大きなレベルでの賃貸借制度が必要なんだと言えば、それはそれでわかります。しかし、同じ仕組みをその他の営業用住宅にも生業用の借家にも、さらにはその他の通常の居住用の住宅一般にもやっぱりグローバルスタンダードであるからやっていくべきだという議論は、私はどうしても納得がいかないわけです。
そして、今回の法律がその点に関してどれだけの自己制約といいますか、そういう配慮をしているかという点に関しますと、私の意見陳述の最後で申しましたように、まだ不十分なところがあるというふうに私は考えている次第です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/68
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069・大渕絹子
○大渕絹子君 ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/69
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070・泉信也
○泉信也君 自由党の泉信也でございます。
まず、福井先生に一つお尋ねを申し上げますが、先生にはこの法案を推進するお立場から御意見をちょうだいしたわけでございますが、実は施行期日について衆議院の方の議論で来年の三月一日からと、こういうふうになったわけでございます。この施行期日の規定について先生の御見解をちょうだいいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/70
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071・福井秀夫
○参考人(福井秀夫君) 私は、来年三月一日の施行というのは極めて妥当だと考えます。
理由は、三月、四月というのは居住用の引っ越し、あるいは事務所でも移転等の年間のピークを迎えるシーズンであります。今公布して三月に施行できるということでありますと、一定の準備期間を経て移転する人々に対してかなり多くの定期借家の福音をもたらすことができる。そういう意味で、法案の中に明記したということは大変意味のあることだと思います。
これについて、一部に周知期間が短過ぎるのではないかという意見があることは承知しておりますが、決してそんなことはないと思います。
なぜならば、定期借家の基本要素は、もう既に議論で明らかになっているとおり二つしかございません。一つは存続期間です。もう一つは家賃です。このような二点の事項について三カ月かかってもまだ理解できないという方がいらっしゃるとは到底想定できませんし、このような事項についての理解さえあるならば、むしろ早ければ早いほどいいというのが適当な考え方だと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/71
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072・泉信也
○泉信也君 ありがとうございました。
次に、原田参考人にお尋ねいたします。
先生は否定的な見解をお述べになりました。私は、この法律が東京、大阪という大都市あるいはその周辺地域と地方ではこの与える影響が若干違うんではないかというふうに思っておる者ですが、賛成反対の立場をちょっと超えていただきまして、地方の借家の状況等を考えられましてこの法律の適用がどういう影響を与えると先生はお考えでいらっしゃいますでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/72
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073・原田純孝
○参考人(原田純孝君) 賛成反対の立場を超えてということなので、それと申しますよりは、むしろやっぱり事実との対応関係の問題だろうと思います。
今までの議論も基本的には大都市の場合を念頭に置いてきたと思います。そして、御承知のように大都市で借家率が高いし、特に大都市の借家が非常に狭いわけです。そういう問題があります。
ただ他方で、大都市の借家の中にもいろいろな部分がありまして、例えば若いサラリーマンの場合には、ワンルームから二DK、そして子供が生まれれば、小さいうちは二DK程度のアパートあるいはマンションの賃貸、借家でも済むけれども、子供が大きくなってくるころになると、もっと広い公共住宅なり持ち家なりへということを考えていくというような行動パターンが多いわけです。ですから、大都市の場合には、要するに少人数世帯が短期間住んで移っていく一定の借家ストックが必要なのはどこの国も同じだと思います。
それで、イギリスの定期借家も、先ほどの図表で見られますように、かなりの部分、半分ぐらい以上はそういう役割を果たしているわけです。その部分については、定期借家制度が導入されたからといってもそれほど大きな混乱は起きないんだろうと思います。
と申しますのは、現実に、私自身も借家住まいを経験したことがありますけれども、そこでずっといるというつもりで契約をしているわけではないわけですね。二年か三年の契約をして、家賃の改定で合意ができればいるし、別の事情が生じれば移っていくことがあり得ると考えておりますし、そういう場合には立ち退き料等を要求することが問題になることは全くありません。貸し手の側でもそういう心配はなしに貸しているわけです。ですから、こういう部分への影響はないだろう。
しかし他方で、大都市でも、特に都心部にはそれこそ戦前は借家が多かったという話をするのは、推進派の人たちの一つの指摘する点であり、かつそのとおりなんですが、そういう時代からずっと続いてきているような借家のような部分もある。戦後になってでき上がったものもありますが、長年住み続けてこられている借家人の方がいるわけです。その方たちには少なくとも今回の法律では直ちに影響は出ないようになっておりますけれども、不動産の流動化だとか投資の活性化だとかをするためには、そういう人たちの既存の契約も定期借家に切りかえて流動化していった方がいいんだという議論をお話しになる方もいらっしゃいます、推進派の中に。そうなれば影響は非常に大きくなると思います。
それに対して地方ですが、地方といってもいろいろ状況がまた違うと思うんです。例えば、地方都市といっても、要するに地方にずっと住み続けている人が借りて住む場合と転勤なんかで行った人が借りて住む場合とは全く違いますね。
後者の場合であれば、現に事実上定期借家型で回っているわけですし、そう大きな影響はないだろう。しかし、そこに住み続けて住むだろうという人、そして地方の場合であればあるほど、大家さんとの距離がある程度近い人にとっては、もし定期借家になると恐らくこれはやはりいろんな形で変化が出るだろうと思います。例えば、人間関係がこじれればそれだけでもうだめよという話になります。
本郷参考人が先ほど指摘された本、恐らく同じ本だと思いますが、私は、本郷参考人がアパート経営とかマンション経営とか、あるいはこれから持っている土地に借家を建てたい、貸し家を建てたいという人たちを対象とした不動産会社と一緒に書かれている本を読んだことがあります。そこで書かれておりますように、定期借家ができれば所有者にとってはすべてが自由自在になるんです。どんな契約の内容でもどんなタイプの利用形態でも、相手が合意さえすればできるんですというのが基本的な発想なわけです。
それは、営業用の場合には、相手との関係がフィフティー・フィフティーであれば、対等であればある程度それでいいわけです。先ほどの都心部のオフィスのような場合、オフィスビルを建てるというような場合にはそれで問題がないと思います。しかし、借家の場合には、今の東京と地方でも違うし、それから東京の中でも地方の中でも違うというように、また甲斐参考人がおっしゃられたように、非常に多様な、千差万別の関係と状況があるわけです。
特に、住宅の場合についてそういうものでお互いの利害が対立する状況が生じたときに、その利害調整の仕組みをあらかじめ用意しておく、これが本来の住宅についての借家法の使命だと思っております。ところが、定期借家ではそれは全くできません。私が定期借家制度はそういう調整のための課題をすべて放棄するんだと言ったのはそういう意味です。だからこそ、ドイツでもフランスでも今言ったような意味での定期借家制度は現在に至るまで採用していないわけです。むしろ構図は日本と同じで、期間があり、正当事由制度があり、そしてそこでの家賃規制がある制度がベースです。期限つきの借家のような例外も設けます。それに対してイギリスだけが一九八八年から新たに導入した、こういう経緯になっているわけでありまして、そういう問題状況といろんな制度の中身、意義、そういうことをしっかり押さえた上でぜひ慎重な御審議をお願いしたいというふうに私は思っております。
ちょっと長くなりましたけれども。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/73
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074・泉信也
○泉信也君 それぞれの国の歴史あるいは土地に対する考え方、そうしたものがこの借家制度にも当然及んでこなければならないというふうに私は思うわけですが、本郷先生、多様化、流動化、国際化、あるいは収益還元という論理で論を展開していただきまして大変参考にさせていただいたと思っております。
そこで、これまた先生の論述の中にはございませんでしたが、四年で見直すという規定がこの中にあるわけです。こういう社会の隅々にまで及ぶようなこの制度をとりあえず四年で一回見直してみようというのは、それはそれで私も意味があると思いますが、この年限的なものについて先生はどういうふうに御判断をしておられますでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/74
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075・本郷尚
○参考人(本郷尚君) 四年が妥当かどうかは私も何とも言えません。ただし、こうした新しい制度が導入されたとしたらば、今回の導入過程に各党の意見が合わせられたというか、入ってきたという経緯があろうかと思います。
したがって、例えば二百平方メートルの居住用の建物については、借家人のやむを得ない事情があった場合には一カ月で解約ができるというようなものが入りました。あるいは合意解除は原則として認めないとか幾つかが入ったと思うんですけれども、そうしたものを含めまして、やはり実際に導入した結果また実情が出てくると思いますので、それに合わせて何らかの手を打つというのもまた必要だと思いますので、四年後の見直しと。
ただし、この見直しの仕方も多分賛否両論があろうかと思います。つまり、我々のような推進派の方はもっと前へ出ていった方がいいと思うし、反対論者の方はもっとこういうふうにした方がいいというのは、これまた議論の余地があっていいと思います。実際に導入されてみますと、こうした議論していたことが問題として出てくるのか、あるいは私のように活性化するのか、ここは見直して改めてそこで議論してもよろしいのではないかと思います。
ただ、基本的には既得権侵すべからずですから、施行された後に既に契約されたものに対して及ぶのはいかがなものかなというふうには思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/75
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076・泉信也
○泉信也君 時間が参りましたので、甲斐参考人には恐縮でございますが、お尋ねを取りやめさせていただきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/76
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077・島袋宗康
○島袋宗康君 二院クラブ・自由連合の島袋宗康でございます。
四方の参考人の皆様方、本当に朝から御苦労さまでございます。
まず、原田参考人にお伺いしたいんです。
一般的な定期借家制度が導入されるというふうなことになると思うんですけれども、先ほど福井先生からもありましたけれども、一般的な定期借家制度というふうなことについて原田先生はどういうように評価されているのですか、お伺いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/77
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078・原田純孝
○参考人(原田純孝君) お答えいたしますが、今おっしゃられました一般的な定期借家制度というのは、今回の法案の場合をおっしゃられているんでしょうか、それとも今回の法案よりさらに広いということなのか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/78
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079・島袋宗康
○島袋宗康君 今回の法案に対しての。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/79
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080・原田純孝
○参考人(原田純孝君) わかりました。
要するに、一般的なというよりもいわば本来的な定期借家制度、つまり言葉の上ではさまざまな形で定期借家制度ということがしばしば使われておりますが、例えばきょう私がお話ししましたように、ドイツやフランスで定期借家があるというのは全くの間違いでありまして、イギリス型のような定期借家制度というのはありません。むしろ日本と同じ形になっているわけです。
それに対して、今回導入しようとするのはイギリスが一九八八年に制度化した定期借家制度と近いものである。そういう制度を導入することについては、きょう私がずっと申してきましたように、そのような仕組みを現在の日本の状況のもとで導入することには反対しております。いろんな問題が予想されるだけでなくて、導入される方が非常に不適正な、必ずしも正確でない議論をしながら導入されているわけです。
先ほども申しましたように、いろんなところでいろんな議論がなされるんですが、それぞれについて問題があるのに、それを全部ひっくるめて、とにかく家主が自由自在になればいい、そして後は契約で合意ができればいい、それですべてが回ればこれはグローバルスタンダードになり、中心的なオフィスビルも細かい住宅も生業的な営業の賃借人もみんなうまくいくんだと、こういう議論をしているんですが、私は到底そうはいかないだろうと。
そういうことをいろいろ考えると、各国の歴史を踏まえても直ちにこういうものを導入するのには反対である、こういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/80
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081・島袋宗康
○島袋宗康君 良質な賃貸住宅を供給するというふうなことがこの法的な根拠をなしているようでありますけれども、その件で甲斐先生にお伺いしたいんです。
本法案に対しては、社会的弱者に対して配慮が足りないんじゃないかというような指摘がなされております。その辺について先生の御見解をもう一度お願いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/81
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082・甲斐道太郎
○参考人(甲斐道太郎君) 先ほど来申し上げておりますように、借家人はいろいろあります。原田参考人の話にありましたように、貸しビルその他、相当大企業も借家人であるケースもあるわけですから借家人全体が弱者であるということは言えませんし、また先ほどお話ししましたような敗戦直後の状況に比べますと、そういう状況が随分改善されてきていることはもう言うまでもないところであります。しかし、なお借家人の多数は零細借家人でありまして、先ほど申し上げましたように、経済のちょっとした変化にも非常に弱い、もろい存在だと言っていいと思われます。
きょう、特に本郷参考人は契約の自由ということを強調されますけれども、御承知のように、今経済企画庁の国民生活審議会で消費者契約法というものの検討が進んでおりまして、この十一月三十日に最終報告案が出ております。
そういう消費者契約法がなぜ必要かといいますと、消費者と事業者との間の契約では、消費者側の情報量であるとか、特に交渉力が非常に弱いということが理由になっているわけです。同じことは現在の借家契約における家主と借家人との関係についても言えることでありまして、この消費者契約法の最終報告では、賃貸借契約にもこの消費者契約法を適用するということをはっきり明示しております。
そういう次第でありまして、契約の自由で借家人が納得したからいいのだということには現在の民法の考え方では到底なりません。この内容いかんによっては権利の内容の問題を生じることもありますし、信義誠実の原則に反するという場合もありますし、あるいは公の秩序、善良の風俗という規定がございますが、それに反するような契約は無効だということになっております。
現在の状況のもとで、当事者の全く自由な契約に任せるということになりますと、そういう条項の適用をめぐって新しい紛争が起こる可能性が非常に大きいんじゃないかということを私は考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/82
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083・島袋宗康
○島袋宗康君 本郷参考人にお伺いします。
良質な賃貸住宅は、この法案の意図するとおりに供給が盛んになるのか。さっき非常に供給が盛んになってよくなるというふうなお話のようでありましたけれども、それをもう少し具体的にお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/83
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084・本郷尚
○参考人(本郷尚君) もちろん、定期借家権が施行されたらすぐにファミリー向けの賃貸住宅が各地区で大量に供給されるということは、これはないと思います。持ち家については、ローン控除とかさまざまな制度や恩典を用いて政府はずっと持ち家誘導型の政策をとってきたと思います。ですから、賃貸の方にいきなりそうしたものが出るとは私は考えておりません。もしやるとすれば、利子補給とか税制の恩典とか、そうしたものをあわせわざで用いなければ到底できるものではないと思います。したがって、この定期借家権だけではできないと思います。
しかし、何といってもやはりファミリー向けの賃貸を供給するということに対しては、企業はもちろんのこと、貸し主側では居座られるという心配が非常に強いわけです。結果的に回転のいい、いわゆる二DK以下のものしかつくらないという現実があるわけですから、やっぱり定期借家権が前提になって計画的に賃貸経営をしたいというのが、これは家主側の論理だと思います。
何度も申し上げますけれども、それよりも何よりも、この高齢化社会の中で持ち家の賃貸化というのはあっという間に出る可能性があります。これが市場を活性化させると思います。これは、持ち家比率が相当高齢者の中で高いわけですね、七〇%近く持っております。これらを賃貸して家賃を受け取って年金化させるという動きが非常に早く出てくると思います。
これは、このことによって賃貸市場がいわば混乱すると言っていいと思います。私は、これは構わないと思っています。この方が一番早く出てくる話ですし、その人がオーナーであって借家人になるわけです。こうした動きは今まで全くないわけです。あり得ないわけです、現在の借家法では。
私は、これが一番早く出てきて、経済の活性化あるいはそれが不動産の売買に、借家人つきで売ることもできるということがこの定期借家権の全く新しい見方ではないかなと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/84
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085・島袋宗康
○島袋宗康君 福井先生にお伺いします。
この法案は借地借家法の法体系を根本的に変えていくのではないかというような指摘がありますけれども、その辺についての御見解をお願いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/85
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086・福井秀夫
○参考人(福井秀夫君) おっしゃるとおり、借地借家法の重要な改正点の一つだと思います。
しかし、想起すべきは、約百年前に民法典が制定されたとき以降、一九四一年の国家総動員体制までは日本でも定期借家権しか存在していなかったという歴史的事実であります。しかも、それ以降、諸外国では緩和、撤廃の動き等があったにもかかわらず、日本はむしろ豊かになるにつれてこれを強化し、極めて極端かつ不透明な運用をしてきたという点が大変重要な点ではないかと思います。
ちなみに、諸外国のお話でかなりミスリードな議論が出ておりましたので若干補足いたしますと、諸外国、特にイギリス、アメリカ、ドイツ、フランスと日本との正当事由制度には大きな相違があります。アメリカやイギリスでも若干の正当事由制度は残っておりますが、ドイツ、フランスも含めて大きな相違点が三点あります。
第一に、諸外国では貸し手事情を考慮するということであります。日本では貸し手と借り手の事情を、甲斐先生もおっしゃったとおり両方てんびんにかけますから帰結がわからない。これに対して諸外国は、原則貸し手事情だけでございます。これは予測可能性に大きな差を与えている。同じ正当事由といっても天と地ほど違うということであります。
第二は、原則として、特に居住用については立ち退き料はイリーガル、非合法であります。日本はこれを判決で命じる。諸外国では立ち退き料を判決で命じるというような合法的なシステムとして認めているということは基本的にございません。ですから、正当事由が備わっている例えば自分が住むとか家族が住む、フランスなどでは第三者に転売するだけで正当事由ですが、これらだけで一銭の補償もなく追い立てられることがあり得るということで、日本の正当事由とはおよそ異質なものでございます。
それから第三点目、家賃についての規制ですが、諸外国ともに、仮に統制家賃でも基本的には市場賃料に連動いたします。日本は必ず市場賃料よりも抑制する。この点も大違いでありまして、借家権価格や立ち退き料の前提となる諸事情が日本と諸外国とでは全然違う。同じ正当事由といっても、限りなく諸外国は定期借家に近いものであるという基本的な問題さえ押さえれば、あとは全部瑣末な問題だと思います。
ちなみに、試算の批判の議論が出ておりましたが、ある試算やモデルが妥当でないと言うためには、データが間違っている、第二に仮説が間違っている、仮説から結論に至るその論証のプロセスが間違っている、このいずれかを批判して具体的に論証しない限り批判たり得ませんが、原田教授を含む慎重論からこのような具体的な批判がなされたことは一度もございません。
最後に、当事者の利益になってかつ納得できる契約をほごにする、国家がほごにせよ、禁圧せよと言うことについては、よほどの覚悟を持っておっしゃっていただきたいと思います。本人が納得している契約をなぜ他人が、おまえはそんな契約をしてはいけないと禁圧する必要があるのかという点は極めて重要な契約についての基本的認識だと考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/86
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087・石渡清元
○委員長(石渡清元君) 以上で参考人に対する質疑は終わりました。
参考人の方々に一言ごあいさつを申し上げます。
本日は、御多用中のところを長時間にわたりまして極めて有益な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表して一言御礼を申し上げる次第であります。ありがとうございました。(拍手)
午後一時に再開することとし、休憩いたします。
午前十一時四十五分休憩
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午後一時開会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/87
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088・石渡清元
○委員長(石渡清元君) ただいまから国土・環境委員会を再開いたします。
良質な賃貸住宅等の供給の促進に関する特別措置法案を議題とし、質疑を行います。
質疑のある方は順次御発言願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/88
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089・小川敏夫
○小川敏夫君 民主党・新緑風会の小川敏夫でございます。
この法案につきまして、私は借家人の立場に対する保護が足らないんではないか、このように認識しております。そういった観点から何点か質問させていただきます。
最初、午前中の参考人質疑の中で脇委員から指摘がございました中途解約の問題でございますが、この法案ですと、新しい三十八条の五項に定められた要件、居住用で二百平方メートル未満で、転勤等でやむを得ない事情がある場合に限って解約申し入れができるということでございますが、逆にそれ以外の場合には中途解約はできない、したがって明け渡した場合でも残存期間の賃料は払わなければならない、こういう解釈でよろしいわけですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/89
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090・保岡興治
○衆議院議員(保岡興治君) そのとおりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/90
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091・小川敏夫
○小川敏夫君 やはり住居を基盤とする生活はさまざまな状況がありますから、契約した後に生活基盤の変更というような状況あるいは商店ですと営業環境の変更ということでやむを得ず中途解約しなければならない事情が出てくると思うんですが、例えば残存期間が一年も二年も、あるいは相当長期にわたるという場合に、なおそこで使用しなくて明け渡した後でも賃料の支払い義務を生ずるというのは余りにも過酷過ぎないかというふうに思うわけです。
例えば、これを半年なら半年、一年なら一年というふうに区切ることの方が合理的だと思うんですが、そういう考えはございませんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/91
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092・保岡興治
○衆議院議員(保岡興治君) 御質問の趣旨がちょっと私わかりかねたんですが、半年、一年、何を限るということですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/92
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093・小川敏夫
○小川敏夫君 賃料の支払い義務でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/93
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094・保岡興治
○衆議院議員(保岡興治君) これについてはやはり賃貸人の賃料を確保するというか、インカムゲインというものを明確にするということの利益というものとの調和というものを考えなきゃならない。そういう点において、確かに借りている方に、先生が言われたような契約した後にその自己の居住としてそこにいることが困難な一定の理由が生じた場合については、その調和を図らなければならないという観点から、一カ月間の猶予期間で解約権を賃借人に与える。
〔委員長退席、理事市川一朗君着席〕
それもいろんな考え方があると思いますが、特に二百平米以下の居住についてはそういう配慮をする、事業用についてはそういった契約後に発生する居住困難な一定の理由を予測する、そういったことが発生するリスクというものをやはり賃借人の方でも判断して、それを契約の内容として取り込むかあるいは特約としてきちっと結ぶことが可能だというそういうことも十分考えて制度をつくっていかなきゃならないというようなこと。また、二百平米を超えるようなところに住居として住む方は高い賃料を払う能力もあるし、そういう方々に、先ほど申し上げたようなリスクを配慮してあらかじめ対応することが可能である。
そういうことも頭に置いて、先ほど申し上げたような賃貸人のインカムゲインに対する期待というものの調和を図るということで、このような制度が一番適切だという観点に立ってこの法案を提出しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/94
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095・小川敏夫
○小川敏夫君 例えば賃借人が何らかの事情で中途退去してしまったと、その場合、法律上の契約はそうすると残っているということですが、しかし賃貸人は空き家となった物件を他に賃貸できるんではないですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/95
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096・保岡興治
○衆議院議員(保岡興治君) 賃借人は、賃料が払えなくなるとかあるいは他に移転せざるを得ないというような一定の理由によってその住居を使っていくことが困難な場合に、それは賃借人としてはやはりそこに居住しないということであれば、賃貸人の方はそれを貸すことは先生がおっしゃるようにあいていれば可能だと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/96
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097・小川敏夫
○小川敏夫君 そうすると、賃貸人は新たな賃借人から賃料を収受できる、一方既に明け渡してしまった賃借人からはやはり残存期間ありということで賃料を収受できる、二重取りができるということですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/97
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098・保岡興治
○衆議院議員(保岡興治君) それは、二重取りができるというふうに考えるか。賃借人においてあらかじめ決められた期間についてその契約の趣旨を守って対応するというのは、契約をするときにみずからそのリスクを負担して契約するということを、先ほど申し上げたように契約の内容や特約においてきちっと対応していなければそのリスクは負担するということになって、貸す方はあいているところを利用するのはこれは経済的に当然な話で、それを二重取りと言うかあるいは契約に沿った対応を法的にきちっとしていると言うかは評価の違いによると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/98
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099・小川敏夫
○小川敏夫君 賃貸人のインカムゲインを確定する必要がある、あるいは保護する必要があるということで賃借人の保護の必要がないというのが先生の御意見だったようですが、賃貸人が新たな賃借人を見つけて賃料収入が確保されているのに、なお賃借人の保護の必要性がないということについて、その正当性についてもう一度説明してください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/99
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100・保岡興治
○衆議院議員(保岡興治君) 先ほど申し上げたように、事業用の建物の賃借人あるいは二百平米以上の居住用家屋を借りている方、これは先ほども申し上げたように事業を営むという点においてある程度将来のいろいろな予測を頭に置いて契約を結ぶということが期待される。
そういった意味で、それは契約の内容にそのリスクを取り込んだり、あるいは特約において適切にそういった将来のリスクを回避する約束をするということがこの制度の求めているところであって、それは先ほど申し上げたように賃貸人の家賃を確実に予測、期待ができるような賃貸人の立場との調和でございまして、事実ほとんどのケースはこの特約においてきちっとそういう場合にはどう対処するか、中途解約権を認めるなり、中途解約権を認めないならどういうふうな契約内容にするかということを当事者であらかじめ話し合った結果契約関係に入るわけでございますから、賃借人は、先ほど申し上げたように、二百平米未満のものの居住以外についてはそういう賃借関係に入るときの契約者の合理的な判断で対応していくということになるんだということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/100
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101・小川敏夫
○小川敏夫君 特約等を当事者間で適宜締結して対処すればいいというお考えですが、特約等を結ぶ必要性があるということをお認めになるのであれば、ある程度の範囲を定めて、やはり法律が借家人の保護ということを考えた立法をすべきではないかというふうに思います。
この問題について、例えば商店の場合も、優良賃貸住宅ということでありますが、この法案の内容そのものは商店でも事務所でも適用されておるわけです。ただ、商店の場合でもやはり従前の正当事由の適用がなくなってしまうわけですが、この商店の場合に果たしてどういう状態になるのか。
商店といいますと、やはり商店の立地場所というものがこれは絶対的に重要なポイントでございます。それから、そこで営業するわけですから当然長期というものを予定するわけで、恐らく商店の賃貸借契約で二年というような期間でそこで商売を始めようという方はいらっしゃらないでしょうし、大体は十年とかそれ以上長い契約期間を当然予定してやる。そうでなければそこで落ちついて事業ができないからだということになります。
仮にそういうことで、十年でも短いけれども、まあ十年でしようがないということで商店を定期借家で契約した際、しかし思惑が外れて一年で事業が失敗してしまった、やむを得ず退去しなければならないというときに、残り九年間の賃料もこれは負担しなければならない、こういう結論になるんですが、そういう結論でよろしいわけですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/101
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102・保岡興治
○衆議院議員(保岡興治君) その点については、現行法も先生のおっしゃるような法制になっておりまして、二百平米未満のものに限って居住用の解約権を認めたのは、むしろ賃借人の立場を一定の要件で保護する新たな今度の制度改正であって、賃借人のために、従前の法制では期間の定めのある場合は賃借人に解約権が認められておりません、これをむしろ現行法で認めた。しかも、その解約権は特約をもってしても排除できない権利として認めているということで、現行法より一歩も二歩も前進した取り扱いであって、現行法も、ではなぜそれがトラブルにならないかというと、特約等できちっと対応しているというケースがほとんどである。また、期間を短目にしてその都度契約の更新をする仕組みにして、賃借人はその期間が来たらそのまま賃貸家屋から退去できる。
しかし、その場合であっても、普通二年ぐらいの契約で更新するような慣行になっているようですが、それが一カ月して仮に出なきゃならない事情が突然発生しても、残る一年十一カ月については少なくとも現行法も残期間の賃料を支払う義務が賃借人にあるわけでございますから、その点は新しい今度の法律と何ら変わるものではないと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/102
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103・小川敏夫
○小川敏夫君 現行法の問題が出ましたが、現行法の条文上確かにそうなっているかもしれませんが、しかし実際の実務では違うんです。事実たる慣習として、契約上に賃貸借契約期間というものが明記されていても、賃借人が相当な期間を置いて解約申し入れをすれば解約できるという事実たる慣習があって、その慣習に従っているというのが実際の今の状況でございます。ですから、残存期間が非常に長期な場合でも、それ相当の事実たる慣習ということの適用によって残存期間の家賃が相当程度免れるというのが実際の今の実情でございます。
しかしながら、今度の法律は、法で明記したことによって、この新しい三十八条五項の反対解釈としてできないということになるわけですね。つまり、事実たる慣習そのものを否定して、特約で明文の規定で設けなければ残存家賃は払わなければならないということになるので、これは明らかな改悪だと思う。先生がいいと言うのは、これはむしろ今の実際上の裁判実務を無視した暴論だと思いますが、その点はいかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/103
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104・保岡興治
○衆議院議員(保岡興治君) その点は、先生が慣行として確立していると言うぐらい一般的に世の中で行われていることであれば、今度の法制化においても適切な賃借人の保護が慣行として、また契約として動いていくということでありますから、先生の御指摘のような賃借人の保護に欠ける結果にはならないと。
慣行というのが慣習法みたいなところまで高められているかどうかについては、私はつまびらかではありませんが、これが今の民法の規定で、期間が定めてある場合は中途解約権が当然法律上生じないということを排除するような解釈は、私はないと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/104
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105・小川敏夫
○小川敏夫君 そうすると、先生の御趣旨は、もし現在賃借人に中途解約を認めるだけの相当性があれば、相当な期間を置けば解約できるという事実たる慣習があるとすれば、それを排除する趣旨ではないというのがこの新しい法案だと、こういうことですね、念を押しますが。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/105
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106・保岡興治
○衆議院議員(保岡興治君) それは慣行をもって、それが当然の法律上の権利になるというのではなくて、契約を締結するときの当事者の将来のリスクに対する適切な判断に結びつく、そういう慣行が現に存在している。したがって、慣行のみならず、現在では標準約款等において適切にそういう特約の点、あるいはそういう特約について重要事項として取引の際にきちっと業者はそういう点の説明義務があるとか、いろいろ手当てがされていて、今度の新しい法律をもってしてもそういった慣行や、契約のときの標準約款等の当事者の契約を円滑に、かつ住みかえその他がきちっと円滑にできるような対応というものが変わってしまうものではないということを私は申し上げているわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/106
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107・小川敏夫
○小川敏夫君 時間がないんですから質問にもっと端的に答えていただきたいんですが。
要するに、先ほどの説明ですと、この新しい法案では賃借人が中途解約すればそれは残存家賃を払わなければいけない、それを防ぐためには特約等を契約段階で決めればいいではないか、こういうふうにお伺いしました。しかし、それでは余りにも過酷ではないかと。そういう議論の中で、先生は、現行法でも同じことになっている、中途解約はできないし、現行法でも残存期間の家賃は払わなければいけない、こういうふうになっているじゃないかという議論がありました。それで、私は、今の実際の裁判例などでは、現行法の法文上は変わらなくても、実際の事実たる慣習として借家人が相当な期間、相当な理由があって中途解約する場合には認められるという扱いになっているというふうに聞いたわけです。
ですから、それでさらに聞いているのは、そうした事実たる慣習、そういった裁判の取り扱いをこの法律は否定するのかしないのかということを聞いておるわけです。その点、答えだけでも結構ですから簡潔にお答えください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/107
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108・保岡興治
○衆議院議員(保岡興治君) 裁判でそういう取り扱いがされているということは、現行の民法の規定を排除するような判断を裁判官がしているというふうな趣旨で先生がおっしゃっているんだとすれば、私はそういう解釈は裁判上行われているとは思えません。
ただ、事情変更の原則とか公序良俗によって契約関係の解除とか見直しをするというそういった仕組みは、これは民法一般の原則としてありますから、そういったものまで排除する趣旨ではないと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/108
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109・小川敏夫
○小川敏夫君 念を押しますが、三十八条五項の趣旨は、では事情変更の原則によって対処するということを排除するものではないと、こういうことでよろしいわけですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/109
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110・保岡興治
○衆議院議員(保岡興治君) なぜ先生がそこを念を押されるかよくわからないんですが、裁判で事情変更の原則をもって、本当に事情変更の原則や公序良俗による無効、解除という民法の一般の原則まで排除する趣旨でないと先ほど申し上げたとおりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/110
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111・小川敏夫
○小川敏夫君 そうすると、新しい三十八条五項の要件にダイレクトに該当しない場合であっても、事情変更の原則によって中途解約が認められる場合があるんだと、こういうことですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/111
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112・保岡興治
○衆議院議員(保岡興治君) 確かに先生のおっしゃるとおりであろうと思いますが、民法の一般の原則まで変更するものではありませんが、ただ公序良俗に反するような、あるいは事情変更を認めなければ正義に反するような極端な場合ということは、この賃貸借契約のインカムゲインというものの確保に対する賃貸人の期待との調和の点において、適切な裁判官の、裁判所の判断があってしかるべきだと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/112
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113・小川敏夫
○小川敏夫君 しつこいようですが、私は、だからこれが、事情変更の原則あるいは事実たる慣習によって賃借人の中途解約権を現行法では保護している例がある、しかしこの新しい三十八条五項がそれを排除する趣旨に読めるんですよ。実際に、先生も先ほど冒頭には、この要件に当たらなければ残存賃料は全部払うんだと、こういうふうにお答えになったわけです。
ですから、私が聞いているのは、そういう事情変更の原則あるいは中途解約を認める事実たる慣習を排除する趣旨ではないから、この要件に当たらない場合であっても、借家人保護のそうした事情があれば中途解約ができるんですね、そういう趣旨で答えられましたね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/113
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114・保岡興治
○衆議院議員(保岡興治君) 先ほど何遍も申し上げているとおり、民法の公序良俗、事情変更による無効、解除というのは、一方で社会の円滑な経済取引に対して予測しがたい重大な結果を契約の反対当事者や関係者に与えるおそれもありますから、そこは厳格に運用される要素もあるということを私は民法の一般原則の解釈として申し上げた。それを排除するものではないと申し上げているわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/114
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115・小川敏夫
○小川敏夫君 答弁はなるべく簡潔にしていただきたいんですが、別の点を聞きます。
期間の点ですが、これは中途解約ではなくて期間満了後の期間延長の点ですが、初め定期賃貸借ということで契約期間を予定して入ったけれども、契約後に生活状況が変わって、どうしても期間満了後ある程度の期間、建物を継続して使用しなければならない、こういった事情があった場合でも、しかし今の定期借家ですと、特に借家人の方からの期間延長の申し出権がないものですから、たとえ契約締結後、どんなに借家人の方で期間経過後も使いたい事情があっても、賃貸人がいいですと言わない限りは出ていかなければならない、こういう仕組みですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/115
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116・保岡興治
○衆議院議員(保岡興治君) その点は、契約した期間が終了すれば確定的に契約は消滅しますから、その場合は賃借人は退去するということになると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/116
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117・小川敏夫
○小川敏夫君 例えば、転勤の戻る期間が当初より半年延びてしまったとか、契約期間が間もないころに家族が療養生活に入ってしまって急には引っ越しできないとか、そういった借家人が契約期間満了時に必ず出なければならないというのは、借家人に酷な事情が生ずる場合があるわけです。
そういった場合に、今の先生のお話ですと全く保護の規定が入ってないんですが、例えば、では借家人にやむを得ない事情が生じた場合、半年とか一年とか例外的にその期間を延長して借家人を保護するという規定を設ける程度のことはできないんでしょうか。そうすることが何かこの定期借家の導入に、その制度の趣旨を没却するような大きなマイナスでもあるんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/117
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118・保岡興治
○衆議院議員(保岡興治君) 今度の定期借家制度を創設した趣旨は、従来強力な解約制限があって、その解約制限のもとに賃貸借市場に優良な賃貸借を供給することを阻害するようないろいろな現象が生まれていること、あるいはこれから優良な賃貸住宅を供給したりその周辺の環境整備を進めていったり、そういったことには投資が必要であって、その投資は間接金融だけではなかなか機能低下していて、昨今お金がそこに間接金融では使うことが難しい環境があるので、千五百兆の国民資産を直接そういった賃貸借の優良な供給に向ける。
そのためには証券化が必要であり、それは小口にリスクを分散し、流動性のある資産として投資商品をつくって国民の資産をそこに利用していく。また、そういうための市場を育成していくという新しい金融の道を開くことも必要であるというような観点から、確定的に賃料が予測できるような賃貸借経営というものが非常に今後重要である。それがこれからの社会の変化の中で、持ち家から賃貸借家屋に国民の居住の意識が変化していることにも対応する道であり、これだけ住宅供給力を持つ日本が消費者のためのいろいろなニーズにこたえた賃貸借住宅を供給する力をそこに求めていくようにしよう、そういう趣旨でございますから、やはり確実な賃料の予測、それは当事者の約束によってきちっと定めていく。
しかも、この場合は、六カ月、一年前から賃貸借を確定的に終了するものであるかどうか、賃貸人の方の意思を賃借人に表明する仕組みを用意してあるわけですから、その間に再交渉して、そこに住み続ける再契約の話をするか、あるいはそれが難しい、あるいはそれは自分が望まないというのであればかわるべき賃貸住宅を探すというようなことを保障してありますので、賃借人の事情というものは、法の仕組みの中ではなくて、公の相談機関で新しい賃貸借の情報を得て、住みかえをいろいろ支援していくような公の、また業界の支援というものが私は必要だと。その点についても、この法案についてはそのことを努力していこうという仕組みになっているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/118
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119・小川敏夫
○小川敏夫君 どうも答弁が余り長くて的を射ていないと思うんです。
私が聞いているのは、どうしても事情が変わって期間満了時には出ていけない、あと半年延ばしたいという人にただでいろと言っているわけじゃないんで、もちろん家賃も当然払うわけです。別に賃貸人の収入を奪うわけじゃない。
とにかく、事情が変わって契約期間よりももう半年でも一年でもいたいという人を、それを認めることによってこの定期賃貸借制度が崩れてしまうんですかと、こういうふうに聞いているわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/119
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120・保岡興治
○衆議院議員(保岡興治君) それは、先ほど先生がおっしゃったように、慣行としてというんですか、そういう賃貸借の取引の一般的な現状として、話し合いによってそこを少し延ばしていただくとか、あるいはいろいろ相談機関に、相談すべきところに相談して新しい賃貸住宅を探すとか、いろいろ事実上円滑な住みかえなどの慣行がありますから、そういった問題として処理するのが適当であって、制度としては、きちっと六カ月前には賃貸借が終了する旨を述べて賃借人の注意を喚起して、今申し上げたような対応を可能にすれば十分であると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/120
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121・小川敏夫
○小川敏夫君 質問に真正面から答えていただきたいんですが。
私は、そのように借家人にやむを得ない事情がある場合に、半年ぐらいあるいは一年ぐらい例外的に延ばす措置を設けることがこの定期賃貸借制度の導入に何かその趣旨を没却するようなことがあるのかと聞いておるわけです。
先生は何か、当事者間が合意すれば、いやそれで合意できればいればいいじゃないかとか、ほかの手だてを講じればいいじゃないかということを答えておられるけれども、私はそんなことは聞いていないんで、例外的にその必要性がある人にそういう借家人の保護の規定を設けることがこの定期借家の制度の導入の趣旨を没却するのかと聞いておるわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/121
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122・保岡興治
○衆議院議員(保岡興治君) それは、先ほどるる申し上げたように、確実なインカムゲインというものを予測することをもって新しい時代の居住スタイルに対応し、国民のニーズにこたえていくためにそれが基本的に必要だということを申し上げているところです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/122
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123・小川敏夫
○小川敏夫君 確実なインカムゲイン、私はただでいさせろと言っているんじゃないんです。契約期間が来てもなおかつ賃料を払って、その必要の範囲の半年なり一年なりを保護期間を設けたらいいかと言っているわけです。賃貸人の確実な収入は保障されているんですよ。別にただでいろと言っているわけじゃないんです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/123
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124・保岡興治
○衆議院議員(保岡興治君) その点は、確実に予測ができるかという契約当初の賃貸人の期待というものが証券化を可能にしたりする絶対条件になりますから、私は先ほどから確実なインカムゲインの予測が可能な経営を目的とするこの法案の一つの趣旨を申し上げて、先生のおっしゃるようなことは事実上相談機関やいろんなところに相談したりして対応していくべき部分ではないかと申し上げているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/124
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125・小川敏夫
○小川敏夫君 確実なインカムゲインということを強調されますが、例えばこの法律ができても、家賃を払わないで夜逃げしちゃう人だっているわけです。そんな場合、別に賃貸人の確実な収入は保障されていませんね。そんな場合もあり得る。
ですから、確実なインカムゲインといったって、常に一〇〇%予測が立つようなシステムなんかはこれはあり得ないわけです。そういうあり得ないものの中で、なぜ借家人が、先ほども言ったように、どうしても必要なんだというやむを得ない事情がある場合の保護も切り捨てるだけの合理性があるのかと聞いておるわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/125
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126・保岡興治
○衆議院議員(保岡興治君) 先ほどから申し上げているように、制度としてはきちっと予測が可能な仕組みということを用意する必要が私はあると思います。
それは、おっしゃるような夜逃げのケースとか、たまたま倒産して払えなくなったりするとか、あるいは失業して払えなくなったりするということは世の中にあるのであって、制度上それがきちっと予測可能な仕組みになっているかどうかということで世の中は回っていくのであって、そういったインカムゲインの不測の事態で入らなくなったケースというのはリスクとして織り込んでいくことができるのも、予測可能な仕組みがあって初めて成立するということだと私は思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/126
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127・小川敏夫
○小川敏夫君 そういうリスクも織り込むのであれば、被害者の人道的な事情によって半年や一年期間を延ばす、そういうリスクも織り込んで定期借家を導入すればいいことで、そういう人道的な被害者を保護する必要性があるものを切り捨ててもいいのかというと、大変冷たい論理に聞こえるんですが、その点を指摘しておきます。
それから、いろいろ衆議院での質疑も見ました。あるいは参考人のいろんな御意見も聞きました。定期借家と言いながら、実は期間が来たら、今実際上借り手市場なんだし、大家さんと良好な人間関係を築いておけば、また再契約をすればいいんだというような議論が何回も出てまいります。
そうすると、私が不思議に思うのは、定期借家といって期間を定めた契約を設ける制度なのに、何かもう法律をつくるときから、定期借家とはいっても、しかしなお再契約を予定している、再契約が当然あり得るんだ、むしろ多いんだということの社会現象を予測してこの法案ができているということが非常に摩訶不思議なんです。
そこで、それは私の意見としまして、再契約の場合ですけれども、一般的に普通の、賃貸人、賃借人が良好な関係にあれば再契約が結ばれるでしょう。しかし、賃貸人の方がおよそ不合理な理由で再契約を断ったような場合、つまり通常であれば再契約はするんだけれども、これは一つの例として、賃貸人はおれは創価学会の人間は嫌いだと、賃借人は別に何も悪いことはないけれども、ただ創価学会の人間だから再契約はしない、こんなような不合理な再契約における取り扱いがなされた場合には、これはどういうふうに対処したらいいんでしょうか。それは対処することがない別の問題だからもうどうでもいいんだ、こういうことなんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/127
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128・保岡興治
○衆議院議員(保岡興治君) それは、今の先生が御指摘のいろんな事情、賃借人と賃貸人の人間関係というものを、これはいいこれは悪いといって契約期間の終了について制限をかけるということは、先ほど申し上げたように、一般的に優良な賃貸住宅の経営の予測を可能にして今ある制度の問題を克服して優良な賃貸住宅の供給を促進するという観点からは、非常に不透明な法律関係にしてしまいますから、私は適当でないと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/128
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129・小川敏夫
○小川敏夫君 私自身、この質問に立つ前に自分自身の経験を振り返りました。そうしたところ、住居を六回、事務所五回、賃貸借契約を、更新は除いて十一回賃借人になったことがありますけれども、そのうち明け渡す期間がはっきり決まっているというのはただ一回だけでした。大阪へ司法修習で行ったときに、帰ってくる日が決まっているから借りる期間が決まっているというだけで、実際に、これは私の例だけではなくて、すべての場合、入るときに出る日が決まっているというのはむしろ社会の現象として非常に少ないと思うんです。
ただ、さっきも言ったように、では長い期間にしておけば安全かと思うと、途中で出るときに残存家賃を払わなくてはいけないという規定がありますから余り長くはできない。しかし、短くしておくと期間満了が来てしまう。そうすると、大家さんの気に入らない、弁護士がうるさいから再契約なんかしないと言われれば、これはもう出ていかなくちゃならないのかと。あるいは再契約をする場合、家賃の値上げをされる、あるいは権利金を払えと言われる。しかし、嫌だと言えば出ていかなくちゃいけない。出ていけば、当然そこで引っ越し費用というものが通常ですと賃料の五、六カ月分ぐらいはかかる。それから電話も変わる、交友関係も変わるで大変な不便をこうむる。
そうすると、やむを得ず普通の新規の賃貸借なら応じないような契約条件も再契約であるがゆえに、そして更新が保障されていないがゆえに無理やりのまされてしまうということが出てくると思うんですが、こういう場合の、賃貸人が相当でないような賃料増額とか、あるいは新たな権利金等の要求等をなされた場合、これは賃借人としては対抗する手段はないんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/129
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130・保岡興治
○衆議院議員(保岡興治君) 先生がおっしゃるような、賃貸人がいろいろな理由をつけて更新を断るというようなことが円滑な賃借人と賃貸人の関係を壊すようなものであれば、しかもそれが一方的に賃貸人の不都合な不合理な言い分によってというケースであれば、これは市場がそれにかわるべき優良な賃貸人を生み出していくと私は思います。そしてまた、賃貸人の関係者も、賃借人との関係において不合理な賃貸人側の事情によって紛争が起こらないように自助努力をして、そういった不都合なことが起こらないように、紛争が起こらないように努力していくことにもなるのだと思います。
そういうことについて反するような賃貸人は市場の中で、国民の経済の中で排除されて、かわるべき賃貸人がどんどんあらわれて、いい供給をするということになると私は思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/130
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131・小川敏夫
○小川敏夫君 まず、市場の問題とこの法律の問題を同一次元の問題として答えられても困るんです。
そうすると、要するにその趣旨としては、本来そういうことはあってはならないことだけれども法律としては全く対処していない、野放しになっている、ただ市場原理で悪い大家さんは放逐されるでしょうと、こういうお話に要約したんですが、そういうことでよろしいですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/131
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132・保岡興治
○衆議院議員(保岡興治君) 先ほど申し上げているように、そういう不都合なケースは、公共の機関とかあるいは先ほど申し上げたように業界のサービスを提供する関係者の自主ルールあるいは相談ということによって未然に防いでいくという手段もありますし、市場の原理が働いてそういう悪徳な賃貸人が排除される流れも生まれていくと思います。
ただ、この基本論を先ほどから先生といろいろしているんですけれども、先生は賃貸人、賃借人の関係、特に賃借人の立場だけを守るための合理性をそこに求められた御意見なんです。しかし我々は、この制度を市場の力によって隅々まで、いろんな国民の多様なニーズにこたえていくという流れを新たにつくる。したがって、賃借人の居住権の安定というそういった権利関係の調整だけではなくて、一方でこれからの賃貸借住宅というものを豊富に豊かにしていこう。そこにお金を投入する証券化の手段も頭に置いてこの制度を組み立てていて、その辺が、先ほどから小川先生の御意見を聞いていると、我々が考えている部分が欠落して、賃借人の立場だけを強調する仕組みを一生懸命論じておられるように思えてならないんです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/132
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133・小川敏夫
○小川敏夫君 端的に質問だけにお答えしていただきたい、私の質問時間は限られておりますので。
私は、賃貸人に犠牲を強いてまで借家人を守れとは言っていない。例えば中途解約の場合でも、賃貸人が、新しい賃借人があって家賃が入るのに、なおかつ前の賃借人からも残存期間の家賃を取るんですかと。私は、賃貸人の犠牲を強いてまで賃借人を保護しろとは言っていないんです。あるいは契約期間が来ても、借家人にやむを得ない事情があって半年や一年それを認めることがどれだけ賃貸人に損害を及ぼすのか。ただで住まわせろと言っているわけじゃないんです。
あるいは再契約でも、別に賃貸人が必ず再契約をしろと言っているんじゃない。ただ、創価学会の人間は嫌だとか弁護士がうるさいから嫌だとか、そんな恣意的な賃貸人まで保護する必要はないから、そういう恣意的な賃貸人の横暴によって借家人が泣かされることがあった場合に、そういう借家人を保護する手だてをこの法律で講じなくていいのかと私は聞いておるわけです。先生は、講じなくていい、ただ後は賃貸人の悪いうわさが立てば自分の首を絞めるだけだという市場原理が解決する、こういうふうに言っておられるわけです。
それから、何かそういう問題に関して公的機関がどうのこうのということですか。そうすると先生は、そういう賃貸人の恣意的な扱いによって借家人が不利益をこうむってはいけないんだ、こういう基本的な認識はおありなんですね。ただ、そういうことにならないよう公的機関とかあるいは不動産業界、宅建業界の指導とかそういったことをするんだ、あるいは市場が悪者を淘汰するんだと、基本的には必要性は認めておられるんですね。ただ、法律でそのことを明文で規定を置いて保護するまでの必要性はないんだと、こういうことですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/133
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134・保岡興治
○衆議院議員(保岡興治君) 我々はあくまでも裁判所で最終的に権利関係を調整するときの法律を論じているのであって、それが社会慣行としてトラブルが起こらないように、円滑な取引ができるようにということについては、市場であったり世の中の慣行であったり、かかわる人たちの自主的な管理であったり、そういうもので社会や経済は支えられているという要素を加味していただかないと議論がかみ合わないんです。
法律上、この仕組みは賃貸人の確実な賃料の予測が立つような仕組みを持って優良な賃貸住宅の供給を促進していこう、そこには従来強力な解約制限が、正当理由制度が存在した中でいろいろなゆがみが出て、申し上げたような趣旨を阻害しているということで、私は大きく国民のニーズに、市場原理の力によって消費者のために多様ないい住宅を供給するという視点を金融の面も含めてこの制度は構築してあるという基本を理解していただかないと、賃借人の立場だけを法律で具体的に対応するということは制度の仕組みとしてはなかなか難しいと判断をいたします。やはりそれは、ある程度具体的な妥当性は市場原理であり、世の中のいろいろな関係者の努力によって円滑に進んでいくんだと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/134
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135・小川敏夫
○小川敏夫君 まず、市場原理が悪い賃貸人を放逐するというのは私は無理だと思います。小さな村社会で賃借人がその賃貸物件の周辺にいる人だけに限られているような世界でしたら賃貸人の評判というものはすぐ賃借人に知れ渡るでしょうけれども、しかし実際には、例えば東京の賃貸借の状況はどうか。地方から来る方が周旋屋さんあるいは物件情報を見て決めていく中で、賃貸人の過去の履歴あるいはどういう扱いをしたのかなんということの情報は一切入らないわけです。市場原理なんか働く状況にないわけです。
そういう中で、市場原理が淘汰すればいいというのは、これはもう借家人の保護なんかどうでもいいので定期借家制度を導入すればいいんだというような暴論、横暴な態度にしか私には見えないんですが、この点は答弁は要りません。
時間がないので、次の質問に行きます。
この定期借家制度を導入すると優良な賃貸住宅の供給が促進されるというんですが、私は非常に率直な疑問があります。
〔理事市川一朗君退席、委員長着席〕
というと、今は優良な賃貸住宅が少ないので、非優良の劣悪な賃貸住宅が多いという御趣旨なんでしょうけれども、優良賃貸住宅の促進であれば、優良なものについてだけ定期賃貸借を認めればいいので、優良でないものにまで定期賃貸借を認めることは、優良なものも優良でないものも同じように供給を促進するんだから、結局は関係ないんじゃないですかと私は思うんですが、どうですか、その点。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/135
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136・保岡興治
○衆議院議員(保岡興治君) 優良か非優良かということの基準ですけれども、安普請の狭隘な賃貸借住宅をいうのであれば、そういった供給を今の強力な解約制限が生み出している一つの現象だと我々は考えていますから、規模が小さいにしろ、あるいは大きいにしろ、どの地域にあれ、また面積が、借りる人の経済状況がどうあれ、とにかく優良な質のいい機能の高い、いわゆる高級な住宅というものがだんだん賃貸借市場に供給される力を生み出すためには今度の定期借家制度というのは大きな力を持つと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/136
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137・小川敏夫
○小川敏夫君 どうも先生の論理ですと、別に定期賃貸借に限らず、一つの市場原理で、いいものを供給すればいい借り手がふえる、悪いものは借り手が減るんだからというのであれば、定期賃貸借の論理とは全く無関係な市場原理で決まることを、何か定期賃貸借の導入の論理に私はすりかえて使っているように思えてならないんです。
重ねて聞きますけれども、それは基準はどうでもいいですよ、優良と優良じゃない基準はどうでも。ただ、優良な賃貸住宅の供給を促進するんだというのだから、先生のお考えの中には当然優良でない賃貸住宅というものがあるんだということでしょう。その優良でない賃貸住宅についてまで定期借家を認めることが、なぜ優良な賃貸住宅の供給の促進になるのか。優良じゃない賃貸住宅にも定期借家を導入すれば、賃貸人はその方が有利なんですから、優良でない賃貸住宅もどんどん供給されるんじゃないですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/137
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138・保岡興治
○衆議院議員(保岡興治君) 先ほども申し上げたように、優良であるか非優良であるかということは、何をもって基準とするかということが非常に難しいわけですから、その基準をもって定期借家の適用要件とすることは難しいと申し上げているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/138
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139・小川敏夫
○小川敏夫君 私は基準なんか聞いていないんですよ。
ただ、優良な賃貸住宅の供給促進とあるんですからね、この法律そのものが。それが定期借家導入の目的だと、こういうわけでしょう。良質という言葉ですけれどもね、同じ趣旨だと思います。
同じように、よく出てくるのは、お年寄りが、もう子育ても終わってお年寄りの生活スタイル以上の持ち家を持っている者がある、建設省のお話ですと百五十万戸あると。ですから、これが定期借家を導入して正当事由による解約制限をなくすればどっと賃貸市場に出てくるんだというふうによくお話を聞くんですが、ただ、百五十万戸、そのようにお年寄りがライフスタイルよりも広い持ち家を持っているというのは事実としても、持ち家を持っている方が全員賃貸希望というわけではないですね。そこら辺のところの数字的な詰めはどうなっていますでしょうか。
つまり、百五十万戸そのように持ち家を持っている年輩の方がいらっしゃる。ただ、これまでの議論は、その百五十万戸がすべて賃貸希望で、すぐに市場に出てくるかのような議論があるんですね。私はそうじゃないので、そのように持ち家を持っている御老人が百五十万人いても、そのうち賃貸を希望しない方も多数いると思うんです。
ですから、百五十万という数字だけですぐそれが、この定期借家が導入されればすぐ賃貸市場に出てくるというのは、これは議論が非常に乱暴ですから、では百五十万人そういう方がいて、この定期借家が導入されたらそのうち実際にどのくらいの割合の方が賃貸市場に持ち家を出してくるのか、そこら辺の数字的な把握はできているんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/139
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140・田中慶秋
○衆議院議員(田中慶秋君) 現実的にはその百五十万戸のうち何万戸が該当するかということについては把握をしておりません。
ただ、言えることは、この法律が施行されることによって安心してお年寄りの人たちが、今まで独居生活もあるでしょうし、いろんな形のものがあるでしょう、そういう形の人たちが、むしろ自分が今まで住んでいた家をよそ様に貸しながら、自分は逆にマンションか何かに入って老後の生活を安全でまた楽しむことができるのではないかという、こういう想定でございますから、御趣旨には若干沿った答弁じゃないかもわかりませんが、百五十万戸のうち何万戸相当はそうであるということを明確にお答えできないのは残念だと思っておりますけれども、お答えできません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/140
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141・小川敏夫
○小川敏夫君 時間の関係もあるので私の意見を言わせていただきますと、持ち家を貸したいという方は、自分が一生かけてつくったマイホーム、これを貸したいという方がそもそもそう多くはないと思うんですよ。それはよほど経済的に収入を上げたいとか何か特別な事情があればでしょうけれども。
ですから、仮に貸したいという方が、貸してもいいなという気持ちがあっても貸さないのは、正当事由だけの問題ではなくて、やはり貸してしまうと、自分の持ち家ならしっかり手入れするんだろうけれども、借家人になると必ずしもそうじゃない使い方をされるとか、あるいは老人の環境というのは家の広さだけじゃないんで、長年住みなれたその町の環境、お知り合いとかそういった町の中、人間関係の中にいるということがこれは大変大事なことでして、それを貸してしまってどこかほかの、どこでもいい、よそへ行けば安くなるという議論だけじゃないと思うんです。
ですから、この百五十万戸が定期賃貸借が出ればどっと出てくるような議論というのは、私は突き詰めて考えればそれほど多くは出ないと。これは、実際にこの法律が私の意思とは無関係にできてしまえば結論が出るわけですから、四年後の見直しがありますから、それまでに実際どのくらい供給が出るのかどうか、後から検証できる問題だからいいとは思うんですが、私は出ないのではないかと思っております。
それからさらに、この百五十万戸というお年寄りの持ち家の件、これは定期借家の導入ではなくて、これまでの借地借家法の期限付借家の要件を緩和する、こういう法改正で対応できたのではないか。ですから、定期借家の導入というのはそれを行き過ぎた法改正ではないかと思うんですが、その点はいかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/141
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142・保岡興治
○衆議院議員(保岡興治君) 期限付賃貸借契約は、これは非常に厳しい一定の条件がついておりまして、実際のところこれが利用されるケースが非常に少ないというのが現状だと認識しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/142
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143・小川敏夫
○小川敏夫君 ですから、それを利用しやすいように法律を改正すればいいんで、それ以上のものを定期借家という十把一からげにすべて適用するような法律は行き過ぎではないかと私は聞いておるわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/143
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144・保岡興治
○衆議院議員(保岡興治君) これは、定期借家制度というものを設けた理由が、先ほどからるる申し上げているように、予測可能な賃貸借契約を可能にして経済の力、市場の力でもっと消費者にサービスを多様に、良質に、廉価にという大きな流れをつくろうという大きな転換を基礎にしているわけです。そういった意味では、やはり期限付賃貸借契約の条件の緩和ということでは我々はその政策目的は達成できないと判断したのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/144
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145・小川敏夫
○小川敏夫君 あと、確認ですのでお答えだけ簡単に。時間もありませんので。
再契約の場合、これまでの従前の普通借家の更新ですと仲介人に仲介報酬を支払う必要はありませんでしたが、今度は再契約ということになるわけですが、この場合ですと仲介人に報酬支払い義務が発生することになりますね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/145
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146・保岡興治
○衆議院議員(保岡興治君) 報酬支払いというのはあくまでも当事者の合意で成立するものであって、法律上当然に生ずるものでないので、それはお答えのしようがないと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/146
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147・小川敏夫
○小川敏夫君 全くの暴論でして、不動産仲介業者は商人ですから、商人の商行為は当然これは報酬請求権は発生するわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/147
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148・保岡興治
○衆議院議員(保岡興治君) したがって、それは賃借人と賃貸人が再契約をする際、その仲介業者と報酬の契約をするかどうかにかかっていると申し上げているわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/148
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149・小川敏夫
○小川敏夫君 借家人にそういう自由があるかどうかは、実際の仲介業界の中で、ないということを、もう少し実際の実情を認識していただきたいと思います。
最後に一点確認しますが、この定期借家は公営賃貸住宅でも当然適用があるんですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/149
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150・保岡興治
○衆議院議員(保岡興治君) 公営住宅は収入によって入居条件を定めていますから、その収入条件というか所得条件にかなうかどうかが入居できるかどうかの資格になっておりますから、所得条件に合わなくなったら出なければならないし、所得条件に合っている間は住み続けることができるんだと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/150
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151・小川敏夫
○小川敏夫君 ちょっと時間が来ましたが、今の質問に関して……発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/151
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152・石渡清元
○委員長(石渡清元君) 時間ですから。ちょっと後がありますから。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/152
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153・小川敏夫
○小川敏夫君 今の質問に関連して一点だけ。
私が聞いているのは、公営住宅についても定期借家を導入することは認められているんですねと聞いているんです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/153
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154・保岡興治
○衆議院議員(保岡興治君) そういった意味では、定期借家を導入する必要はないと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/154
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155・小川敏夫
○小川敏夫君 あるかないかを聞いているんじゃなくて、この法律上、認められているかどうかを聞いているんです。(「時間を守ってくださいよ」と呼ぶ者あり)答えていないんですから。質問に答えないんですから。大事な点ですよ、これは。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/155
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156・保岡興治
○衆議院議員(保岡興治君) その適用するケースを予想しておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/156
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157・小川敏夫
○小川敏夫君 答えになっていないじゃないですか。この法律上、許されるかどうかを聞いているんですよ。時間が来る前から聞いているのに答えないんですよ。それは禁止しているということですか。予想していないというのは禁止しているということですか。予想していないというのは、それは禁止しているということですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/157
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158・田中慶秋
○衆議院議員(田中慶秋君) 先ほど来の質疑で、公営住宅については、この良質な今回の住宅の問題等についてはなじまないということで適用はないと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/158
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159・小川敏夫
○小川敏夫君 終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/159
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160・岩佐恵美
○岩佐恵美君 日本共産党の岩佐恵美でございます。
定期借家権制度は、九一年の借地借家法制定の際にも検討されましたが、賃借人の権利を奪うと大きな問題になって取り入れられませんでした。ところが、九四年に行政改革推進本部の住宅・土地作業部会で、定期借家権とも言うべきものを含め新たな手法、施策について検討すべきであるという本部専門委員の意見が出され、同年七月の規制緩和の閣議決定に盛り込まれて復活をしました。そして、ことし二月二十六日の経済戦略会議の答申「日本経済再生への戦略」では、不動産投資ファンドの創設や事業用資産の買いかえに対する課税の軽減策などと並んで、不動産の流動化、証券化の促進策として借地借家法の見直しが位置づけられています。
定期借家権制度は、まさに規制緩和の一環です。契約は自由、つまり建物の賃貸借を弱肉強食の市場原理にさらそうというものです。議員立法で提出された借家法の改正案、これが法務委員会でなかなか通らなかった。これは借家人の犠牲で土地の流動化を図ろうとするところに重大な問題があるからです。良質賃貸住宅供給促進法と衣をかえて衆議院の建設委員会に場を移して、極めて短時間の審議で多数で押し切りましたけれども、住宅弱者に犠牲を負わせる定期借家制度の根本問題は全く変わっていません。きょう、参考人の皆さんからもるる話がありました。
定期借家契約で期間満了ごとに追い出される、そういう状況になれば、新たな住宅の確保が極めて困難な高齢者などが路頭に迷う、そういう悲惨な事態になりかねないと思います。その点、提案者はどうお考えですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/160
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161・根本匠
○衆議院議員(根本匠君) この良質な賃貸住宅等の供給の促進に関する法律については、まさに「良質な賃貸住宅の供給の促進」と書いてありますように、要は、既存の正当事由つきの借家契約も認めておりますし、期間をもって終了する定期借家という新たな選択肢も設けよう、それを通じて今までの強力な解約制限によって良好な賃貸住宅の供給が阻害されていたのを、この定期借家が導入されることによって良好な賃貸住宅の供給が促進される。
要は、多様な賃貸住宅を促進しようというのがこの法律のねらいでありますから、先生の御指摘のような高齢者等への配慮、これは既存の賃貸借契約には適用しませんし、これを切りかえる場合も、当面の間切りかえないということにもしておりますし、それから定期借家権の導入によって良好な賃貸住宅の供給が促進されることによって、結果的に高齢者等の皆様の住宅の選択の余地も広がると考えております。それから、公共的な住宅の柔軟な対応によって先生の御心配がないような対応も十分にさせていただきたい、こう思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/161
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162・岩佐恵美
○岩佐恵美君 九六年十二月の経済審議会の建議では、「定期借家権導入の結果、居住等の場を失う弱者に対しては、国や地方自治体による家賃補助政策、公営住宅への入居等の対策を充実する。」、こうなっております。建議は、住宅、宅地に全面的な市場原理の導入を図れというもので、内容としては認められませんけれども、定期借家権の導入については明らかに弱者が居住の場を失う、そういうことを想定しているわけです。
提案者は、住宅困窮者のセーフティーネット、これを強化する趣旨を入れた、だから大丈夫だというふうに言っていますけれども、この法律のどこで住宅困窮者のセーフティーネットが保障されるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/162
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163・根本匠
○衆議院議員(根本匠君) この法律は、第二条「良質な賃貸住宅等の供給の促進」、それから第三条「住宅困窮者のための良質な公共賃貸住宅の供給の促進」、それから第四条で「賃貸住宅等に関する情報の提供、相談等の体制の整備」、こういう努力規定を条文に盛り込んでおりまして、この法律が成立した場合には、国及び公共団体は良質な賃貸住宅の供給を促進するために予算の確保やあるいは事業の実施など具体の施策を講ずるように努めることになります。
したがって、今回この法律が成立した場合には、国会あるいは地方議会の場があるわけですから、この場によってこの法律の趣旨に沿った施策が実際に講じられているかどうかをフォローする、こういうことで実効性を担保していきたい、こう思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/163
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164・岩佐恵美
○岩佐恵美君 これまでの住宅政策を並べただけの努力規定にしかすぎないんですね、今話にあった一条から四条というのは。法律上何の具体的な保障もないんです。定期借家で退去させられた低所得者は救済される当てが本当にあるんですか。例えば、きょう参考人が言われました、公共住宅について東京都はもう新規は建てない、こういうふうに言っているんですね。必ず公営住宅に入れます、そういう保障が本当にあるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/164
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165・保岡興治
○衆議院議員(保岡興治君) 公共住宅が住宅困窮者や低所得者に対してきちっと対応できるように国も地方公共団体も努力しておりまして、その点については住宅建設五カ年計画にもその趣旨は明らかでありますし、いろいろな施策あるいはそれに対応する予算というものもできるだけ努力しているところでありますが、そういったことを今後さらに一層この努力規定によってサポートし徹底していくということになるわけで、実効性の確保に有効な法案の内容になっていると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/165
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166・岩佐恵美
○岩佐恵美君 きょう参考人の方が言われました。努力規定、これほど信用できないものはない、それを担保をする、そういうためには法制化が必要なんだ、それなしにこういう借家制度を取り入れるということは問題なんだと。まさに保障がないんです。経済審議会の建議でさえ、定期借家制度の導入に伴う弱者対策として家賃補助制度が必要だ、そう言っているんです。この法律では、そういう家賃補助についてさえ努力規定の中にもないんです。ですから、これでは私は住宅弱者のセーフティーネット、これが保障されているとは到底言えない、そう思います。
定期借家制度は、貸し主の供給意欲を向上させることによって良質な賃貸住宅の供給が促進される、あるいは供給増加、貸し主のリスク軽減で家賃が下がる、そう言っています。ところが、午前中の参考人質疑では、住宅の供給というのは景気に左右されるんだ、定期借家で良質な住宅がふえるはずだというのはこれは抽象論。まさに水かけ論だと思うんです。経済的に不確定な議論なんです。
私は、こういう参考人の不安とか、あるいはきょう傍聴者が来られていますけれども、一体ほうり出されたらどうなるのか、そういうことを真摯に提案者は受けとめるべきだ、そう思いますけれども、どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/166
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167・保岡興治
○衆議院議員(保岡興治君) 先ほど根本提案者からも御説明したとおり、従来の賃貸借契約はそのまま正当理由制度のもとに効力を持続していくことになるわけです。それに、その他先ほど御説明したような賃借に対するいろいろな保護の配慮もこの法案はいたしております。
したがって、この法律ができたからいきなり住宅弱者や住宅困窮者が一気にふえるという性質のものではない。これからの住宅政策というか、良質な賃貸住宅の供給促進あるいは困窮者に対する予算、政策その他の措置というものもこれから両々相まって国民のニーズにこたえていこうという出発点をこの法律は置いているのであって、この法律が施行されたから急に低所得者や住宅困窮者が困って、それに何か具体的な法律をもって対応しなきゃならないという性質のものではない。ただ、将来、この法律の施行と同時に賃貸借住宅の状況がいろいろ変化していくでしょうから、その変化に対応した適切な政策の遂行というものをサポートすることにはこの法律は有効に働くであろうと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/167
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168・岩佐恵美
○岩佐恵美君 きょう午前中、イギリスのことが大分議論になりました。イギリスでは一九八八年に同じような理由で新たな住宅法が制定されて、その結果については日本住宅総合センターの去年十二月の調査研究リポートというのが出されています。それによりますと、民間賃貸住宅の戸数というのが一九八八年から九三年までに四十五万戸ふえたけれども、多くは不動産不況のために持ち家が売れないので一時的に貸し出されたもので、不動産市場の回復状況によっては民間賃貸住宅の増加分の多くは市場から消滅する可能性をはらんでいる、そういう評価です。
そして、家賃についてですが、一九八八年の平均週三十ポンドから、九四年、五年には六十五ポンドと二倍以上になって、結果的に家賃額の上昇は貧困層からの需要を下げることになった。つまり、イギリスの経験でいえば、一言でいえば安定した賃貸住宅の供給増にはならなかった。そして、借家人は家賃の高騰に苦しんで、貧困層は住める住宅がなくなってしまったということだと思います。この点はいろいろ午前中も議論されております。私は、もっとこういう経験をどう評価するかということは十分論議を深めていく必要があると思います。
きょうは時間がありませんので法の仕組みについて伺いますけれども、この法律では、定期借家制度は本則で新規、既存の区別なく規定をされています。既存契約については附則で例外的な適用除外をしているにすぎないわけです。これでは既存の借家人の権利を本当に守れるというふうには思えません。既存の借家人が定期借家制度で追い出される、そういうことがないと保障できるのでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/168
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169・保岡興治
○衆議院議員(保岡興治君) 既存の契約はそのまま有効に正当理由制度のまま存続していくわけですから、従来住んでいる方々が契約の更新を正当理由なしに拒絶されるということはないと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/169
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170・岩佐恵美
○岩佐恵美君 私は本当に実態をよく見る必要があると思うんですけれども、貸し主や不動産会社から、今度は定期借家契約にします、そう言われて、いやそんなのはだめだ、附則でもって適用除外になっているはずだと主張できる借家人がどれだけいるかということなんです。法律上は適用除外されるといっても、定期借家への切りかえに応じてしまうということになると期間満了で退去させられてほうり出されてしまう。もう救済のしようがないんですね、そうなった場合。
知らないでやってしまう、後で取り消す、もとに戻す、そういう救済方法、手段というのは今度の法律にあるのでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/170
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171・保岡興治
○衆議院議員(保岡興治君) この定期借家は、賃借人が誤解したり判断を間違って定期借家の関係に入っていくことがないように、従来の居住用の建物の賃貸借については切りかえも認めないという措置をとっていますし、かつ契約自身も書面できちっとしなければ有効でない。しかも、説明責任も課しておって、説明がきちっとされてなければ定期借家の効力を発せず従来どおりの正当理由制度の契約になるということになっておりますので、先生の御心配されるようなことはないと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/171
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172・岩佐恵美
○岩佐恵美君 それは説明がきちっとされて、了解してちゃんとされた場合です。されない危険の方が大きいんです。だから私はそのことを言っているわけです。
今度の法律というのは、結局そういう人たちもひっくるめて、良好な賃貸住宅の供給促進というのはつけ足しの大義名分で、本当の目的は、既存の賃貸住宅にも定期借家への切りかえを進めて借家人を追い出す、都市開発など新たな投資機会の創出を促進する、そういうものだというふうに言わざるを得ないと思います。いずれ、既存契約には適用しない、そういう附則の条項も削除をする、今のところはあるけれども将来削除してしまう、そして定期借家制度を全面的に適用できる、そういう法律構成をねらったものだと言わざるを得ないんですね。
ドイツでは、一九六五年に借家人保護を廃止しました。明け渡し訴訟と賃料増額紛争、これが急増して、七一年に借家人保護をまた復活しました。その後、八二年に保守政権に交代して定期賃貸借制度、これが導入されました。これは午前中の質疑にあったところです。
しかし、ドイツの場合、六五年の教訓を踏まえて、定期賃貸借制度については、賃貸人やその家族が使用する予定があるかまたは建物の改築等の予定がある場合に限定されていて、契約のときにその計画を書面で示さなければならない、そうなっているんですね。そういう予定もなしに定期借家契約を結んで、期間満了で追い出して、そしてもっと高い家賃で新しい賃貸契約を結ぶ、そういうやり方はドイツでは許されていないんです。
しかし、日本の場合には、結局従来の賃貸人と借家人のそういう正当事由というのは外してしまって、とにかく貸す側に立っていくわけですから、あとはもう追い出すというだけです。
そういう点でいうと、今度の法律というのは、先ほども議論がありましたけれども、国連の人間居住会議では、適切な住宅に住む権利、住まいは人権、追い立てられない、そういうことが確認されている、こういう流れに反していると思うんです。ドイツの例にも反していると思うんです。私は、期間が満了すれば家主の勝手放題となるこういう法律というのは到底認められないというふうに思います。
そこで、特に深刻な問題を抱えることになるのが、商店や町工場などの住宅以外の生業的な借家人です。長年地域に密着して得意先を確保してきた中小零細業者にとって、営業の場を失うことは死活問題です。これまでの判例でも、従来こういう場合には貸し主側の正当事由を極めて厳しく判断をしています。ところが法案では、営業用借家については居住用と違って既存の借家契約を定期借家契約に切りかえてもいい、そういうふうになっています。
借家人が不利益をこうむる危険性は、居住者も大変ですけれども、むしろ生活がかかっている営業用であるだけに被害ははかり知れないと思います。その点、どうお考えでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/172
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173・保岡興治
○衆議院議員(保岡興治君) 事業用の建物のケースは、事業者のそういった将来の契約関係についてどうあるべきかということを、契約の時点で相手当事者ときちっと特約によって心配のないような合意を得ることで対応していただくということで、居住用の場合とは区別する合理的な理由があると存じます。
事実、今でも標準約款その他の中で、そういった方々が困らないようないろいろな特約についての例もあって、そういった契約によって当事者が納得の上リスクを回避するというのが正しい賃貸借契約の出発点だということが我々の法案の提出の前提としてあります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/173
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174・岩佐恵美
○岩佐恵美君 私はこの間、個人商店の皆さんから直接話を伺ったのですけれども、借家で事業を行う場合、改装とかあるいは設備をするというような初期投資が必要です。肉屋さんの場合に、ウインドーの冷凍ケースだけで二百五十万円、そのほか業務用の大型冷蔵庫の設置あるいは店内の改装などで一千万円ぐらい、床屋さんもやっぱり八百万円ぐらいかけて改装したということを言っていました。二年や三年で退去しなければならない定期借家契約では割に合わないと言っているんです。
これでは、個人業者などが新たに借家あるいはテナントを借りて営業を始めるというのが困難になってしまう。対等、平等だと言ったって、とにかく個人商店というのは物すごく大変なわけですから、契約が決まって二年三年で出ていかなきゃいけない、それだけ投資できないということになると借りられなくなっちゃうんじゃないかという心配があるんじゃありませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/174
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175・保岡興治
○衆議院議員(保岡興治君) 私どもが商店街の関係の皆様からお話を、選挙区でもまた党でもいろいろ団体に伺ったときは、商店街が非常に空き家になって虫食いになって大変だ、そういうところに新しく商売をする人が入っていただくには、定期借家があって、きちっと約束どおり期間が来たら出ていただけるという前提があれば、安心してお貸しができてそういう空き家が埋まっていく動きも生まれるというようなお話を伺いました。
先生がおっしゃるような、商売をする際の投資をどうやって回収していくかということについては、まさに商売する人は一番自分が拠点とする商売の場所について関心と重大な意を払って相手と約束して、弱い立場でそのまま契約関係に入るということは私はあり得ないことだと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/175
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176・岩佐恵美
○岩佐恵美君 あり得ないというふうに言われますけれども、あり得るわけです、弱い立場なんですから、個人商店というのは。
それで、短期であれば投資していいかどうかわからない。もし長期に契約した場合には、本当にそこで商売が成り立つんだろうか、ある日突然大型スーパーが出てきて、大型店が出てきて商売がもうやれなくなってしまうというような、今言われたようにシャッター通りというのが全国に今生まれているわけですね。
それで、先ほど議論があった定期借家の店の場合、契約期間の途中で商売をやめる場合も借家人の側からは賃貸契約の中途解約はできないんですね。閉店に追い込まれても、残存期間の家賃、これは何年も払わなければいけないということになるわけです。期間の定めのある借家契約でも、そういう場合には事情変更ということで今までは借り手側からの解約請求、これが認められていた。それさえできなくなるというのは、これはもう大変な事態なんです。
借り手は借家を引き払っても賃料債務から逃れられない。使ってもいないのに債務負担のみ強制される。これは非常に不合理な事態ではないですか。一方、貸し手が解約の申し入れをした場合は六カ月で契約が終了する、そういう二十七条の規定というのは今度の法律でも生きているわけですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/176
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177・保岡興治
○衆議院議員(保岡興治君) 現行の法律では、期間の定めのない契約というのは三カ月の猶予期間をもって解約できる仕組みになっていて、期間の定めのある契約というのはやはり中途解約は法律上当然に与えられていないわけです、先生御案内のとおり。
今度の法律は、特に二百平米未満の居住用の建物については、それを対象とする賃貸借契約については法律上当然に解約権を認め、そしてまたその解約権を排除する特約すら認めないという、賃借人の保護を現行法よりさらに強化した形で入っております。したがって、これは経済の自由というか市場原理を重視してこの法案に期待する立場からは、むしろこれはない方がいい、現行法よりか賃借人の保護に踏み込んでいるではないかという御意見があるぐらいでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/177
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178・岩佐恵美
○岩佐恵美君 居住用についてはそういう配慮がある。しかし、営業用についてはないわけです。貸し手は、例えばその貸し家を自分で使う必要が出てきた場合など、二十八条の正当事由に該当する、そういうことが生じた場合には定期借家契約期間中でも中途解約できる。ところが、借りている人は、どんな事情があっても法律上中途解約の申し入れができない。これでは対等、平等の契約関係とは言えない。
私は、法律的にはこれは欠陥法だと言わなければいけないと思います、まさに借り手にとっては人権侵害なんですから。営業をやっている人にとっては本当にこの法律というのは容認できない、そういうものなんです。貸し手と借り手は対等、平等ではないんです。
こういう法律というのは欠陥法というんじゃないんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/178
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179・保岡興治
○衆議院議員(保岡興治君) 私は先生のおっしゃっている趣旨がよくわかりませんが、事業用の資産であれ住宅用のものであれ、これは現行法でも中途解約はできないんだけれども、それを特約やいろいろな当事者の合意によって無難にいろいろな紛争やリスクを回避しているのが現状じゃないでしょうか。ですから、この法律ができたからといって、紛争、トラブルがふえ、事業用の建物を借りている人がかえって不利な立場に立つということは私はないと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/179
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180・岩佐恵美
○岩佐恵美君 現行の問題と、これから店を出そうという人の場合には新しい法律がかかってくるわけですから、これは大変な、どういうふうに自分の店を出していこうかと慎重にならざるを得ないわけですよね。あるいはもう被害をこうむるということにならざるを得ないわけですから、そこのところはもっともっと詰めて議論をしていかなければいけないところだと私は思います。
私の持ち時間はもう来てしまったのですけれども、三十分しかありませんので、さきに紹介したドイツの定期借家では、期間が満了しても貸し手が当初示した自己使用あるいは改築などをしようとしない場合は借り手は契約の延長を請求できる、それが五年以上になれば無期限の賃貸借契約、これを請求できるというふうになっています。こういうのと比べても、今回の定期借家制度は極めて借り手にとって不利不当なものだというふうに思います。
結局、定期借家制度は期間満了で必ず借家人を退去させることができる、期間満了後の家賃値上げがやりやすくなる、そういうものであるというふうに考えざるを得ないんです。借家人の犠牲で不動産の活用、不動産への投資、これを有利にしようというもの以外の何物でもないというふうに思います。午前中の論議でもそういう不安あるいは危険というのが参考人の方々からるる指摘をされておりますけれども、私はそういう点が払拭されていない限り、国民にきちんとこたえるというものがない限り、こういう大変な法律というのは通してはならないというふうに思います。
そのことを述べて、私の質問を終わりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/180
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181・大渕絹子
○大渕絹子君 発議者にお伺いをいたします。
本来、借地借家法というのは、賃借人及び賃貸人に紛争が生じた場合にその権利調整の目安となるべきものであり、特に賃借人の保護の観点から築き上げられてきた、長い経過を経ながら法律がつくり上げられてきたというふうに思うのですけれども、今回のこの法改正は、定期借家権の導入を図るということで極めて賃貸人側に有利な展開になっているというふうに思いまして、従来の借地借家法の法律の本旨とは違う中身になっている。例えば木に竹を接ぐという言葉がありますけれども、そういう法案にこれから変わっていってしまうのではないかというふうに思いますけれども、そうした法律を今回出されてきた経過というか社会的背景というようなものをちょっと教えてもらいたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/181
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182・保岡興治
○衆議院議員(保岡興治君) これは、まず一つは、一たん貸したら賃借人の立場と賃貸人の立場を比較して賃借人の立場の方が気の毒であれば更新が法律上当然行われる、要するになかなか契約は終了しない、ずっと続いていく。すなわち、賃借人の立場に立てば人生を担保してもらえる強力な仕組みかもしれないけれども、貸し主側からすれば賃借人の人生を貸し主が担保する形で建物の賃貸借契約に入らなきゃならない。これではなかなか賃貸人の方も貸すことを逡巡するようなケースがたくさん出てくるだろうし、何よりもこれから良質な賃貸住宅を供給していく上で、資金をつくってそういう賃貸借市場の活性化というのを生み出していかなきゃならぬ。そのためには証券化も必要であって、証券化の前提としても定期借家は必要であるということでございます。
賃借人の立場を賃貸人が福祉まで背負うのではなくて、基本的にはそれは公的な立場で国や地方公共団体が公共住宅等の供給によって背負うという賃貸借政策の基本を明らかにしている法律だと。ただ、賃借人と賃貸人の円滑な契約関係を確保して賃借人に居住の不安定な要素を与えないための工夫も、先ほどるる申し上げているように、この法律には加えてつくってあるということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/182
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183・大渕絹子
○大渕絹子君 法律の方向性が変わってくるということを私は申し上げたわけでございます。
この法律の「目的」の中に「国民生活の安定と福祉の増進に寄与することを目的とする。」というふうにうたわれていますね。これは定期借家権を導入することがそういうことにつながるということで読ませていただいているんですけれども、間違いないですね、この「目的」のところ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/183
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184・保岡興治
○衆議院議員(保岡興治君) 先ほど申し上げたように、新しい賃貸住宅政策の基本をこの法律は示すものでありますが、決して賃借人の居住の安定に配慮を欠くものではないと存じております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/184
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185・大渕絹子
○大渕絹子君 従来の借地借家法の改正によって今度のこの良質な住宅を普及させ、そして定着をさせていこうとする意図というのは、従来の借地借家法の方向意図とは違うのではないかということなんですけれども、そこはどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/185
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186・保岡興治
○衆議院議員(保岡興治君) ですから、従来の制度というのは戦時立法であるという立法の経緯もありまして、確かに戦後の住宅の供給能力の低い時代にはそれなりの機能をしたが、これだけの経済国家、住宅供給能力を持った日本が、国民の多様な賃貸借居住のニーズにこたえていく、しかもそのニーズはますます今後持ち家から借家の方にシフトしていくだろうという社会の変化が読めるわけでございます。
そういった意味で、市場の力を生かすためには、従来の強力な解約制限である正当理由制度は基本的に改めた上、賃借人の保護を図るという方向を新しい一歩として踏み出そうとしていますが、従来の正当理由制度で保護された賃貸借契約というものも、この法律制定の以前に契約した場合には今まで正当理由制度で守られた賃貸借契約関係の効力はそのまま効力を持つということでありますし、また居住用の賃貸借契約においては切りかえもこれはできないこととして、従来の政策の部分もあわせて選択肢として残しているということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/186
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187・大渕絹子
○大渕絹子君 附則によって当分の間それが守られるということは私も確認をしています。しかし、その当分の間がいつまでなのかということの保証はありません。
先ほど参考人質疑のときにも申し上げたんですけれども、貸す方から、家主さんの方から定期借家権にすれば次の家賃を一年間は前よりも一万円安くしますよというような提案をされたときに、それをずっと下がっていくものだという解釈の中で認めてしまう、そして定期借家権に切りかえてしまうということがあり得るんです。アパート経営のマニュアルの中にそう書いてあるわけですから。それを次の年になったらまたもとに戻せばいい、それでもまだ従前の家賃にペイしなかったら、三年目、延長更新をしてさらに三万円ぐらい上げていけばいいんだ、こういうふうな書き方でこの定期借家権の導入が宣伝をされているとするならば、本当にこれは優良な住宅を供給するためにつくられるということを私たちは理解することがなかなかできないわけです。
もし優良な住宅だけを提供するためにこういう制度が必要だとするならば、なぜ優良な住宅に特定をした定期借家権の設定ということにならなかったのかと思いますけれども、これはいかがですか。面積とか規模制限をなぜつけなかったのかというところに、二番の方に行きますけれども。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/187
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188・井上義久
○衆議院議員(井上義久君) 今の御質問でございますけれども、当分の間、既存の契約についてはこれを定期借家に切りかえることはできないということにしているわけでございまして、同意契約でこれまでの契約を定期借家に切りかえることはできないというのがこの法の趣旨でございますので、そういう心配は基本的にはまずないというのが一つでございます。
それからもう一つは、今お話が後半ありましたように、良質な賃貸住宅の供給促進であればなぜ面積制限あるいは規模の制限をつけなかったのかというお話でございますけれども、確かに正当事由制度による供給制限効果というのは規模の大きな借家ほど大きく働いているというふうに考えられるわけでございますけれども、ただ、この供給制限効果というのは規模の大小は別としてすべての借家に働いているわけで、この定期借家の件が導入されれば小規模なものから大規模なものまで基本的には借家の供給がふえるだろう、それによって家賃及び礼金とかあるいは権利金等の一時金等が低下することが十分期待されるわけでございまして、結果的には借家人が利益を受けることになるというふうに認識をしております。
それと、現在むしろワンルームとか小規模な借家が比較的潤沢に供給をされているという実態もあるわけでございまして、しかもこのような小規模な借家を必要とする例えば単身の高齢者とか非常に多いわけでございますけれども、この定期借家の適用範囲を一定の面積に限ってしまうことになりますと、大規模な供給、借家については相当供給をされて、そこは家賃も下がるだろうし良質な住宅が供給されることになるんですけれども、小規模な住宅を必要とする人たちにとっては定期借家のメリットを享受することができないということになります。
それから、これまでそういう例えば高齢単身者なんかの場合は、正当事由借家の場合は一たん契約すると長期間入居する可能性が高いので契約の段階で入居者が選別されているのが現状だろうと思うわけです。しかし、定期借家であれば、その人が善良な借家人であればそのまま再契約をしてずっと行くことができるわけでございまして、かえって選別が緩和されることが期待されるということで、定期借家を大規模な住宅だけに限定をすると逆にそういう小規模な住宅を必要とする人たちが不利益をこうむってしまう、入居者選別を受けてしまうということになりかねないということで、今回の法律改正に当たっては特に規模とかあるいは広さの制限を設けないというふうにしたわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/188
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189・大渕絹子
○大渕絹子君 それでは、今回の法改正によってどのような住宅が市場に出てくると思いますか。具体例を挙げて答えていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/189
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190・井上義久
○衆議院議員(井上義久君) 私どもがもちろん期待をしておりますのは、多様なニーズに合った借家がかなり供給されるだろうと。特に一番期待しておりますのはファミリー向けの借家ということで、要するに既存のストック、これがなかなか正当事由があって貸せないという、例えばファミリーであったものが高齢者世帯になった、あるいは単身世帯になった、本当はこれを貸して老後の生活に充てたい、だけれども必要なときは、例えば家族が帰ってきたらまた一緒に住めるようにしたいというような住宅が相当数今ストックとしてあるわけでございまして、そういったものが相当供給されることが期待をされるというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/190
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191・大渕絹子
○大渕絹子君 既存のストックというのは、バブルのときにつくり過ぎて売れなくなっているマンションであるとかあるいは建て売り住宅で売れ残っているものであるとか、いわゆる金融業界や不動産業が債権として抱えているような住宅が非常に多いのじゃありませんか。そこがだっと市場に出てくるというふうに私は思っています。その数は私はたくさんあると思いますので、この法律ができればそれが借家として提供される。そうすると、住環境というのは本当に皆さんがおっしゃるようによくなってくると思います。だから、そういうことが悪いというのではありません。
ですから、そういうことが目的であるならば、この期限付借家のところの制限を少し、今は大変厳密ですよね、転勤とか療養とか親族の介護その他やむを得ない事情で家をあける場合に限っては貸してもいいんだということになっていますけれども、ここを取っ払うことによってそういう住宅を期限つき建物として市場に出していくことは十分可能であったわけでございまして、従来の借家にまで及んで定期借家に開いていく必要は何にもなかったのではないかなというふうに思うんですけれども、この件はいかがでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/191
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192・保岡興治
○衆議院議員(保岡興治君) 先生がおっしゃるように、今の期限付賃貸住宅の要件は非常に厳し過ぎる、したがってそれを緩和することによってもいろいろな優良な賃貸住宅の供給の促進になるんじゃないかというお話でございますが、やはり要件をどの程度緩和するかによって、緩和の仕方では、一定の要件ということは一種の制限を自由契約に与えるわけです。その制限が供給にまた新たなひずみを生み出すというのは、これは経済の原則なんで、我々は先ほど申し上げたように、これだけの経済力、経済国家になって住宅供給力もあるような国だから、できるだけそういう制限は一般的な制度としてはこれをないようにして、そして幅のある、切れ目のない住宅供給というものを市場の力によって生み出していこうという基本をとっております。
したがって、当事者の自由な合意を前提とする定期借家の制度の中に今申し上げた期限付賃貸住宅の制度ものみ込むという形をとって制度化しておるのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/192
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193・大渕絹子
○大渕絹子君 ここは一番最初のところに戻るわけですけれども、従来の借地借家法はいわゆる住宅弱者、借りなければ住むことができない、暮らすことができない人たちの権利をどう守っていくかという立て方で立てられているんですよ。その法律に今、保岡さんがおっしゃるように市場の原理や家主側の権利ということを入れていくこと自体、非常にだから難しい法律になってしまう。今までの法律とは違う方向に法律自体が向いていってしまうわけでございます。本当に立場の弱い方の安定や福祉を守るという方向で今までの借地借家法が積み上げられてきたという歴史的な経過を見るときに、定期借家権が導入をされて家主側の権利が一歩出てくることによって随分ここは力関係がまた変わってくる。この法律によってようやく守られてきた家主と借家人のバランスが崩れるということを私は危惧をしているんです。
それではもう一つ、現行の借地借家法第三十二条の借り賃ですか、増減請求権が賃料改定に関して特約がある場合適用されない点なんですけれども、これは賃借人は賃料改定の特約に拘束されて、事情が変更した場合でも賃料の減額を請求できないというふうに変えられてしまっているんですけれども、この点について説明いただけますでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/193
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194・保岡興治
○衆議院議員(保岡興治君) 現行の借地借家法第三十二条の第一項、これは契約の条件にかかわらず借り賃の増減請求権が認められるわけです。制度として保障されている。しかし、これが特約で賃料改定の特約を定めた場合、裁判の例としてこの特約が有効であるというケースもあれば、家賃が相当でない場合は無効であるという裁判例もある。そのように裁判例が分かれて、今度の制度をつくった趣旨は、収益を予測できるということを前提として、基本として新しい賃貸借住宅供給政策を進めていこうという基本に立っていますので、裁判所の判断によって賃料改定の特約が有効になったり無効になったりしたのでは意味をなさない、したがって当事者の合意を優先し、こういった訴訟で裁判所が判断する余地を当事者の特約によって排除できることにしたわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/194
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195・大渕絹子
○大渕絹子君 社会状況というのは刻々変わっておりまして、そのとき当事者間でお互いに納得をして決めたといたしましても、時代の変化によってその家賃が極めて高い状況になる場合もありましょうし、また安過ぎるという状況になる場合もあるでしょう。そういうときにはやっぱり今までのように、裁判所の裁定で調整して適当なところに落ちていくというのが今までの法の立て方なんですよ。それを全面的に適用しないということになるわけですから、紛争はさらにふえてくるんじゃないでしょうかと思うんですけれども、もう時間がなくて済みません、このことはどうでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/195
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196・保岡興治
○衆議院議員(保岡興治君) 正当理由制度も非常に具体的な状況に対応するのにはすぐれた制度かもしれないけれども、裁判所が総合的に判断するということで契約の更新が法律上なされるのかなされないのかということが明解でない。
そしてまた、今おっしゃるような賃料の増減についても、事情の変更を裁判所が包括的に適切に判断するというような仕組みでは、これは先ほど申し上げたインカムゲインというものを確実に予想できるようなことを基本にしながら賃貸借経営というものを活発にしていこう、そして従来の賃貸借市場に与えたひずみというのを改善して、市場の力によって消費者のニーズに的確にこたえ、一方、福祉政策的なことは国あるいは地方公共団体が責任を持つ仕組みに基本的に大きく転換していこうとするものでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/196
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197・大渕絹子
○大渕絹子君 後に続けますので。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/197
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198・奥村展三
○奥村展三君 衣食住、やはり住が一番大事ではないかなというような思いでございますが、日本の美といいますか、木材を最近は使わなくてコンクリートの冷たい感じの住居がたくさんできているわけであります。そうした中に、特に日本の借家におきましては、狭過ぎる、あるいはまた家賃の負担率が低所得者の皆さんほど高くなっておる、そしてだんだんと高齢化社会を迎える中にいろいろとそういう需要も出てきているわけでありますが、朝から皆さんが御議論をなされておるわけですが、私はやはり自分のライフスタイルに合った暮らしやあるいは住居が自由に選べる、そういう社会であってほしいなという思いであります。
保岡先生、根本先生は、百四十二国会のときに、借地借家法の一部を改正する法律案ということで、私も与党におりましたから、自社さ、そして自由党さんを入れた四党で提出をさせていただきましたが、時間切れで廃案になって新たにきょうここに出されたわけでありますが、まずその百四十二のときに御苦労いただいた法律案と、今度三党でまたお出しになった大きな違う点といいますか、それから力点を置かれたところはどこでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/198
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199・保岡興治
○衆議院議員(保岡興治君) 先生方と一緒に昨年の六月に提案した法案というものに加えて、今度の法案は、セーフティーネットを新たな努力規定を置いて政府や地方公共団体が努力することを明確にしたという点と、それから先生方と提案したときも、従来の契約はそのまま正当理由制度の契約関係として効力を持つことにしよう、あるいは選択肢としては正当理由制度の賃貸借契約も結べるようにしようという合意はあったんですが、さらにそれに加えて、居住用の建物の賃貸借契約は定期借家契約に切りかえることを当分の間は見合わせようということを決めました。それが大きな違いだと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/199
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200・奥村展三
○奥村展三君 確かにお借りになる方々の痛み、心もわかりますが、貸す側の立場というのが、私は田舎に住んでおりまして、本当にしみじみときょうまで感じてきました。私は、おじいさんの代から土地を預かり、家を預かってきたわけですが、その家をある方にお貸しをしました。その方が実は又貸しをされまして、それが今もまだ続いておるという、なかなかそれが言い出せない。裁判で訴える、これはやっぱり人間関係ですから、それを言いづらいというのが私の現状なんです。
それを考えますと、固定資産税を払い、いろんなものをやっていながら、実はその又貸しをしている方は、違う方に貸しているわけですからそこから家賃をもらっておられるんです。そして、私は正規の家賃はもらえていないんです。一軒分だけの、私のところと契約しているその方の家賃しかもらえていないんです。そういう実態もあるんです。
そしてまた、一方では、私の周辺なんですが、お貸しになったところが、油を使って自動車の小さな修理工場をなされる。もう家族じゅうが油だらけ、蔓延して生活するのも息苦しいぐらいだ。しかし契約がある以上、どうしてもこれは出てもらえないんだ。そういう実態もあるということを、決して私のことだけの話をするんじゃなくて、やっぱりお借りになる方も当然いろんなことをきちっとやっていただかなきゃならないんですが、貸し手側の方もやはりいろんな問題がありまして、なかなか苦労しているということの一端を述べておきたいと思うんです。
ですから、今回いろいろ、良質な住宅のこれでございますが、第四条におきまして、賃貸住宅等に関する情報の提供、相談等の体制の整備ということで、国及び地方公共団体が努めることとなっております。具体的に、この体制、施策についてお伺いをしておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/200
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201・田中慶秋
○衆議院議員(田中慶秋君) 先生の御指摘の周知徹底をする意味での体制の整備ということでございますが、基本的には政府の広報誌やあるいはマスコミを通じてやるということが一つ。あるいはまた、わかりやすいパンフレットをつくり、地方公共団体及び関連業界を通じて配付をし、周知徹底をさす。あるいはまた、定期借家人契約の標準契約書なども作成をしながら、それらについて、それを業界を含めながら徹底を図ってまいりたい、このように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/201
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202・奥村展三
○奥村展三君 この法案が可決されましたら、来年、十二年の三月一日からスタートするわけであります。こんなわずかな準備期間で行政や業者、あるいは賃貸人、賃借人、皆さん方の現場で混乱が起こらないかなという心配をしているんですが、今御答弁をいただいたわけでございますけれども、やはりもっとしっかりとした周知徹底をおやりになることが大事だと思うんですが、もう一度その点についてお伺いをいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/202
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203・田中慶秋
○衆議院議員(田中慶秋君) 確かにその議論もさせていただきました。しかし、当面する今の状態の中で、三月、四月というのが住宅を求められるニーズといいますか、非常に多いわけでございますので、できるだけそういうことも配慮しながら、今先生の御指摘のような形の問題について業界、各種団体についても徹底をさせる、あるいはまた業界誌、それから地方自治体等々の窓口についても今先生が御心配をされているような問題について周知徹底をさせていきたい、このように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/203
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204・奥村展三
○奥村展三君 冒頭にも申し上げましたように、住宅というのは大変大事な政策の一つであります。どうぞ政官民といいますか、一体となった形で日本の住宅政策がしっかりと推し進められていくことを期待いたしまして、終わります。
ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/204
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205・島袋宗康
○島袋宗康君 法案提出者の皆さんに質問いたします。
今回の法案は、平成十年五月に提出され衆院法務委員会に付託されたわけであります。世論の強い批判のため、一度も審議されることなく廃案となりました借地借家法の一部を改正する法律案と同様の一般的な定期借家制度を導入しようとするものであるにもかかわらず、良質な賃貸住宅等の供給との名目で、法務委員会ではなく衆院建設委員会、参院国土・環境委員会に付託されております。定期借家制度の導入を図る借地借家法の一部改正が、あたかも良質な賃貸住宅の供給につながるような印象を与えております。
このような名称と手法による法案の提出方法には、重大な疑義があるという指摘もあります。そういうこそくな手段を弄した立法は国会の権威にもかかわる問題だというふうに思われます。このような批判に対してどういうような見解を持っておられるか、お尋ねいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/205
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206・保岡興治
○衆議院議員(保岡興治君) 先生のおっしゃる借地借家法の一部を改正する法律案、これは確かに昨年の六月に国会に提出いたしましたが、これはなかなか野党の諸君に審議に応じていただくことができずに、一年以上経過して審議されないままになって、今回さらにこれをリニューアルしてもっとしっかりしたいい法案にしようということで、自由民主党、自由党、公明党三党の実務レベルで賃借人の保護をさらに強化し、賃貸借住宅政策のあり方を全般的に位置づけるという形で提案をいたしました。すなわち、国民のニーズに応じた良質な賃貸住宅等の供給を促進して賃貸住宅市場を活性化させるために、まず定期借家を基本的に導入する一方で、これにあわせて市場において自力で必要なサービスを確保できない者に対してセーフティーネットを充実するという両輪を立てて提案いたしているところでございます。
この法案は、単に定期建物賃貸借という建物の賃貸借契約の一類型を新設するだけじゃなくて、その政策の意図するところを明確にした上、これを踏まえて賃貸借住宅政策全般についてのあり方を規定したわけでございまして、さきに提案した法案とは内容において異なる。したがって、住宅政策の観点から、この国土・環境委員会にこの法案の趣旨に沿って審議が行われているものと存じますので、そのことは適切なことだと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/206
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207・島袋宗康
○島袋宗康君 借地借家法の法制定を根底から崩すというふうな批判もあります。社会的弱者に対する十分な配慮もなされていないという指摘もあるわけです。ある意味では非常に弱者が心配されておる、こういうことに余り配慮されていないんじゃないかという気もするわけであります。
そういった問題については、やはりもっと慎重に衆議院の方でも、あるいはまた我が国土委員会においてもやるべきじゃないかという気持ちでいっぱいであります。衆議院でのそういった議論とか、また問題点が指摘されたのかどうか、本当に国民の弱者をどう救済していくのかというふうなことを真剣に論議されたのかどうか、その辺についてもし議論されていればお聞かせ願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/207
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208・根本匠
○衆議院議員(根本匠君) 先生の御指摘の本当に弱い方への配慮、これは我々がこの法案をまとめるときも随分と議論をし、配慮もしてまいりました。それから、衆議院の前回の議論の中でもこの点はいろいろと議論がなされました。
この法律の本来の目的は、法律の目的にも書いてありますように、良質な賃貸住宅の供給の促進ということでありまして、それから解約制限が非常に強いので賃貸住宅の供給が阻害されている、そういうことにかんがみまして新しく定期借家権という選択肢を設けて良好な賃貸住宅の供給を促進しよう、これがこの法律の一つの大きな目的であります。良好な賃貸住宅が市場に出てくることによって、結果的に高齢者や母子家庭の皆様の選択肢もふえるということにもなります。
それから、どういう点の配慮をしたかということでありますが、一つは既存の住宅、既存の契約は対象としない、それから当分の間切りかえも認めない、こういう配慮もしておりますし、それから切りかえのときにも定期借家の契約のときにもきちんと書面によって明示する、説明も丁寧に行う、こういうこともやっておりますし、それから住宅に本当に困窮する方に対しての良好な公共賃貸住宅の供給の促進や、あるいは相談体制や情報提供体制も、これも十分に万全の体制を期していきましょうということで、実はこれらの内容も今回の法律には具体的な努力規定として盛り込んでおりまして、先生のその点の御懸念、御指摘の問題はこの法律をつくる過程あるいは審議の過程で十分議論もさせていただきました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/208
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209・島袋宗康
○島袋宗康君 特に高齢者や母子家庭、そして交渉力の弱い方々、そういった方々に対して十分配慮されているかどうかというふうな点、そして狭い借家は定期借家制度の適用除外になる等の弱者対策をもっともっと講ずる必要があるというふうに指摘されているわけであります。
〔委員長退席、理事市川一朗君着席〕
その辺についても、やはりまだ法的には十分な仕組みがなされていないんじゃないかというような気がしてならないんですけれども、もし再度何かありましたら御答弁いただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/209
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210・根本匠
○衆議院議員(根本匠君) 先生の御指摘は、この定期借家制度について高齢者や母子家庭の適用除外という御指摘だと思います。
先ほども申し上げましたように、この良好な賃貸住宅等の供給の促進に関する法律によって実はその辺の本当に困窮する弱者への配慮、これも規定として情報提供あるいは相談体制、私が今説明申し上げたような配慮をしておりますし、それから定期借家権の創設によって多様な賃貸住宅が提供されるというメリットもありますので、人的に定期借家権の適用を排除すべきものではないと私は考えております。
むしろ、住宅に困窮する高齢者の居住の安定が図られるような公営住宅の的確な供給ですとか、高齢者向け公共賃貸住宅の供給の促進であるとか、適切な住宅を確保できない高齢者世帯、母子世帯、多子世帯等に配慮したきめ細かな入居措置の実施、老朽木造賃貸住宅居住者の安定的な居住の確保、あるいは相談、情報提供体制の充実、こういうことをやることによって良好な賃貸住宅等の供給の促進に関する法律の魂をきちんと入れていきたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/210
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211・島袋宗康
○島袋宗康君 もう一つ、公営住宅の整備充実に具体性がないということ、この制度のもたらす社会的影響について、実態に照らした十分な検証がなされているかどうかということについても懸念が示されております。
そこで、ここでは建設省に対して、公営住宅の整備の状況そして今後の整備の見通しについてお伺いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/211
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212・加藤卓二
○政務次官(加藤卓二君) 公営住宅の供給についてのお尋ねでありましたが、住宅に困窮する低額所得者に対して低廉な家賃で賃貸する公営住宅については、従来より五年ごとに住宅・土地統計調査等を踏まえて策定される国及び都道府県の住宅建設五カ年計画に基づいて計画的に供給されてまいったわけでございますが、先生のおっしゃられるようになかなか地方の財政も厳しくなっているというので、建設省としてもこの問題に非常に取り組んでいこうと。
そして、特に地方ではこの予算を非常に頼りにして困窮者に対しての配慮をしている。そういう問題は十二分にこれからも、建設省としても財政事情が厳しくもそういうあり方でありたい、そういうことで一生懸命今取り組んでいるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/212
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213・島袋宗康
○島袋宗康君 地方の都市では公営住宅、いわゆる市営住宅あるいは県営住宅といったようなものがほとんど財政状況が厳しいですからつくれない状況があって、せっかく建設省でまとまった県あるいは市営といったようなものがある程度一定の形で幾らつくると計画があっても、地方ではそれを受け入れることができない、そういった非常に財政の厳しい状況にあるわけです。
ですから、土地を買うにしても自己財源といったようなことがあって非常に厳しい状況に置かれているということは御承知だと思うんですけれども、このまま経過するとやはり国民のニーズにこたえるような住宅供給というものは非常に困難になるんじゃないかというふうに思われるわけであります。建設省とされては、地方都市のこれからの公営住宅、そういったものの見直し、地方都市が供給できるような体制を組むためにはどういうふうにすればいいかということを検討なされたことはあるのかどうか、その辺について。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/213
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214・加藤卓二
○政務次官(加藤卓二君) 事業主体であるところの地方公共団体の要望を踏まえて、ぜひ公営住宅の的確な供給を促進できるように建設省としても十二分に努力し、また地方の状況を踏まえてこたえていくように一生懸命やっていきたい、こう思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/214
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215・島袋宗康
○島袋宗康君 私は具体的にどういうお考えがあるのかということをお聞きしているわけでありまして、これから検討すると言われてもどういう内容で検討されるのかというふうなことがはっきりしませんので、その辺のことをちゃんと説明いただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/215
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216・加藤卓二
○政務次官(加藤卓二君) 事業主体が地方公共団体という形なので、どこまで建設省が踏み込んでこれを応援できるかということはまたいろいろな状況の中で難しいことなので、この辺は特に先生のおっしゃっておられることをよくわきまえたといってもあれでしょうが、体してやっていきますということでお話しする以外にないというのは、地方によって全部様子が違うんですね。
公共団体でも、まあまあ予算さえつけてあげればできるところもあるし予算がついてもできないところもあるんだという今の先生のお話に向かっては、ぜひそういう場合にどんなふうな配慮ができるかということをいま一つ踏み込んでやるという形で、話をおしまいにさせてもらうというわけではなくて続けさせていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/216
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217・島袋宗康
○島袋宗康君 地方都市では、非常に公営住宅というものは切り下げているという実態ですから、建設省とされても、せっかく計画を立てながらそれが地方で流れていっているというのが実態ですから、やはりマイナスの繰り返しじゃなくして、基本的な、抜本的な問題をどうするかということをもっと研究していただきまして、安定した公営住宅を供給できるように体制を固めていっていただきたいというふうに要望しておきます。
それでは、法務省にちょっとお尋ねいたします。
一般的な定期借家制度の導入は、借地借家法の体系を根本から変えるものであり、従来、基本法について調査審議してきた法制審議会での審議は尽くされていないというふうに私は認識しております。このような重大な法制度の変更は、建設委員会、国土・環境委員会のみの審議では不十分である、日本弁護士連合会会長声明は去る十一月十九日付でこのように述べております。
したがって、当院では、少なくとも法務委員会との連合審査を行う等、拙速を避けて慎重な審議をすべきであると考えます。残り少ない会期で審議日程が窮屈であるならば継続審議とすべきであると考えますが、この点について法務省はどのような御見解を持っておられるか、お尋ねします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/217
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218・小池信行
○政府参考人(小池信行君) 法務省へお尋ねの件につきましては、法制審議会におきます定期借家の問題についての検討状況に関しまして御説明を申し上げたいと思います。
平成三年に借地借家法を成立させていただいたわけでありますが、この法律におきましては、借地については三つの類型を設けまして定期借地制度というものを導入いたしました。それから、借家につきましても、家主が不在時の契約というものに限りまして期限つきの借家という制度も導入をいたしました。
この借地借家法の制定されました後も、市場に借家の供給を促進する、そういう観点から、もっと一般的な定期借家制度を導入すべきだ、そういう指摘がつとにあったことは私どもも十分認識をしているところでございますし、さらに政府の規制緩和推進計画におきましても、良質な借家を供給するという観点から、定期借家制度の導入を含め検討すべきであるという提言がされたところでございます。
これを受けまして、法務省といたしましては、平成七年六月、民事局内に借地借家等に関する研究会を設置いたしまして、定期借家権の導入の問題を中心に研究を重ねてまいりました。平成九年六月には、この研究会の中間的な検討状況を公表いたしますとともに、関係各界に対しまして意見照会を行い、同じ年の十二月に意見照会の結果を公表したところでございます。その後、平成十年二月に法務大臣の諮問機関でございます法制審議会民法部会に借地借家法小委員会を設置いたしまして、定期借家権の問題を中心とする検討に入ったわけでございますが、折から定期借家権の導入を内容といたします借地借家法の一部改正案が議員立法で行われる、そういう動きが具体化してまいりました。この動きが、きょうここで御審議されている法案につながっているものというふうに認識しております。
そういう動きがございましたので、法務省といたしましては、現在この定期借家をめぐる問題についての検討を休止している、そういう状況にございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/218
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219・島袋宗康
○島袋宗康君 法曹界においても、根本的な法改正であるということで十分な審議を必要とするという提言をされているわけですから、やっぱり法務省とされても根本的な法改正であると言う以上は、もっとその辺の法整備を提言すべきじゃないかというふうに私は考えておりますけれども、その辺についてもう一度御見解を承りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/219
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220・小池信行
○政府参考人(小池信行君) 先ほどの御答弁の中で政府の規制緩和推進計画のお話を申し上げましたが、ことしの三月の閣議決定でございましたか、さらにこの定期借家の問題については踏み込んだ提言がされておりまして、定期借家の導入をむしろ促進するという観点からの意見が出されているところでございます。
そういう政府の方針もございますし、それに沿った法案が国会に提出されて御審議をされているという状況でございますので、私ども法務省といたしましては、この問題の検討を今休止しているという状況でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/220
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221・島袋宗康
○島袋宗康君 時間ですので、終わります。
〔理事市川一朗君退席、委員長着席〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/221
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222・佐藤雄平
○佐藤雄平君 大臣に来ていただきまして、ありがとうございました。
午前中からいろいろこの特別措置法案について聞いておりますが、参考人も含めて聞いている中で、本当にこれはそれぞれの立場の中で違うんだな、貸し手、借り手によってこうも違うものかなと。さらにまた、いろんな法律解釈の中で、多分この議論の中で半分以上が法解釈の話に尽きてしまうのかなと。その辺もなかなかそれぞれに難儀のところがあるのかなと今思っておりました。しかしながら、私はこの法案をこうして議員立法としてお出しになってきたそれぞれの先生方に本当に感謝、敬意を表します。
しかしながら、その中でもいろんな意見があって、それぞれの意見を聞きながらここまで来たにもかかわらず、午前中からの議論の中でこういうふうな話があると、やっぱりこれは運用面でしっかりしないと、せっかくつくった特別措置法についても何だったんだと、そんなことになりはしないかなと。そういう意味から申しますと、建設省の皆さんにもその運用面でさまざまな話があったことを十分熟知していただいて運用していただきたい、そんな思いでもあります。
日本は、民族的また国土的にも非常に狭い。そういう中で土地に対する非常に執着心があり、また私有財産というふうなこともあって、またヨーロッパとかアメリカとも違うところがあるのかなと。
私は、この住宅政策を論ずる前提としては土地政策というのがあるのであろう。バブル時期のように本当に乱高下して、全く土地の値段というのはこれ以上もう際限なく上がっている状況、また土地の流動性についても過剰的な流動であり、そういうふうな中での住宅政策というのは、当然のことながら土地政策が安定している、しっかりしているという前提に立った住宅政策であり、今度の良質な賃貸住宅の提供ということになろうかと思います。そういうふうな中で、今土地は安定というよりむしろ下がっているような状況があると思います。これは、経済対策の中である意味で土地の流動というのは非常に大きなファクターになるのかなと。
そんなことを思いますと、今の土地政策、さらにはまた将来的な意味での土地政策、この辺は今国土庁がどのようにお考えになっているか、御所見をお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/222
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223・増田敏男
○政務次官(増田敏男君) お答えを申し上げます。
お尋ねの趣旨は、日本の土地政策の基本的な考え方と将来におけるあり方はどうかというようなことを御質疑いただきました。同時に、言葉の背景には、国有地や何かの割合はどうなんだというような意味も当然含まれていると理解をいたしました。
そこでお答えをしていきますが、まず基本的な考え方と施策の方向でありますが、我が国の国土のうち、道路あるいは海岸等を除く宅地、農用地、あとは森林、原野について所有主体別の状況を見ますると、平成九年度では国公有地が三七%、国有地が二八%、そして公有地が九%。なお、私有地が六三%となっているところであります。
土地政策につきましては、平成元年に制定された土地基本法を踏まえ総合的な土地対策を推進してきたところでありますが、バブル後の地価の下落、我が国の経済社会や土地をめぐる状況の変化等を背景に、一昨年の二月、新総合土地政策推進要綱を閣議決定いたしまして、土地政策の目標を地価抑制から土地の有効利用による適正な土地利用の推進へと転換をいたしました。これに基づきまして、現在土地の有効利用に向け各種の施策を展開してきているところであります。
また、今後とも土地情報の開示、提供や収益重視の不動産鑑定評価といった土地が円滑に取引されるような市場の条件整備を図るなど、土地の有効利用に向けた施策に一層取り組んでまいる所存であります。
先ほど申し上げました国公有地の関係ですが、細別をしますと、国有地の中で行政財産、この関係が九八・七%であります。そして、普通財産が一・三%であります。特に多いのは国有林野事業の企業用財産でありまして、これが九六%を占めております。
以上でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/223
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224・佐藤雄平
○佐藤雄平君 地価の安定というのが本当に住宅政策の大前提になろうかな、そういうふうな中で国有財産と私有財産の状況、この辺のバランスをしかと受けながら安定した土地政策を希望いたします。
政務次官、本当にありがとうございました。
そういう中で、住宅政策になるわけですけれども、住宅に私自身入っておりますけれども、どうしてもこれも日本人的感覚かなという中で、同じ賃貸のマンションに入っているのなら、どうせなら買ってしまおう、そういうのがやっぱりどうしても人としての根幹にあるかな。そういうふうな中で、今までの住宅政策はある意味では持ち家制度を促進していく、賃貸についてはその次の制度的な面で後事にしているのかな。そういうふうな意味で、持ち家が六〇、さらに賃貸が四〇というふうなことになってくるわけです。
その住宅政策、そういう持ち家を進めていた住宅政策から、今度の品質のいい賃貸住宅を提供していこうという新特別立法について、ある意味では住宅政策の中身が変わらざるを得ないところがあるのかなと思いますけれども、この件について建設省としてはどのようにお考えになるか、お尋ねしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/224
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225・中山正暉
○国務大臣(中山正暉君) いろいろこの議員立法の良質賃貸住宅法に関しまして、御質疑を御熱心にしていただいておりますことを心から敬意を表したいと思います。
今もお話にございましたように、日本は考えてみれば百三十何年前まではみんなこれはお上の土地という形になっておりまして、大名でも先生の福島から急に四国へかえられたりいろんなことがあったわけでございます。しかし、考えてみれば良質の賃貸住宅に、アメリカ人なんかはそういう考え方が多いようでございますが、どんどん住む場所、環境を変えていくというようなことも人間の生活の中では私は大変機能的だと。昔は侍が持っていた沽券地、よく武士のこけんにかかわるという、あの沽券地という処分のできる土地も例外的にあったようでございますが、この近代、いわゆる高齢化とか少子化に、多様化する居住ニーズにこたえるためには、良質な賃貸住宅の流通が盛んになるということは私も本当に結構なことだと思っております。
東京圏にいたしましても、三・九%の国土のところに、関東地区一都三県で日本の人口の二五%が住んでいるということでございますから、大変なことでございます。
その中で、戦後借地借家関係、住んでいる人を保護するということでございましたが、この法律の中では今までにそういう借家人としていらっしゃる方々には特別な配慮をしていただいているということで、大変結構な法律をここに今御審議いただいている、かような認識で新しい良質な住宅を私どもはできるだけ施策の中で進めてまいることに協力、努力、また責任を果たしてまいりたいと、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/225
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226・佐藤雄平
○佐藤雄平君 その中で賃貸住宅の施策が入っていくわけでありますけれども、これについて政府としての例えば税制面での対応とか、そんなことは何か次年度予算の中でお考えでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/226
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227・中山正暉
○国務大臣(中山正暉君) 今、政府税調それから党税調でいろいろ御検討いただいておりますようでございますが、私どもといたしましても、税制とか融資による持ち家取得の推進とか、それからまた逆に公共賃貸住宅の供給をより良質なものにしていかなきゃならない、かような気持ちでおります。
特に大都市圏、先ほど申し上げましたような事情で、賃貸住宅を中心として依然大きく日本の住宅事情というのは立ちおくれております。ウサギ小屋とかなんとか外国からも悪口を言われるわけでございますが、公共賃貸住宅の供給と、また良質な民間賃貸住宅を供給するための定期借家制度を導入していただく、それに対する税制それからまた融資方法、いろいろまた議会の先生方と御相談申し上げながら、この税制改革、税制改正に期待をかけておるところでございます。
まだ中身はこれからのことでございますので、またいろいろ党税調等で先生にも御支援をお願いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/227
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228・佐藤雄平
○佐藤雄平君 この法案については私は二つあるのかなと。一つは純粋に住宅政策である、もう一つは経済政策、景気対策、こんな面もあるのかなと思います。
次に発議者、法案をつくった皆さんにお伺いしたいのですけれども、午前中から、それこそ先ほども触れましたけれども、質疑の中でほとんどが法案審議になっているんです。その法案審議の中で、これはどうして国土・環境委員会に来ているか。
それともう一つは、法律的な解釈のいろいろあるところが相当目についたわけで、そういうふうな中で、法務委員会の方で解釈的なものとして議論すべきだろうと思うのでありますけれども、その点についてお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/228
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229・保岡興治
○衆議院議員(保岡興治君) 法務委員会に提案したものは定期借家の創設を柱にする法律でございましたが、ここに提案した法律は、定期借家が目指す良質な賃貸住宅の供給という政策目的に照らして、賃貸住宅政策全体を法案としてきちっと規定しようという意味でリニューアルしまして、市場原理の恩恵にあずかれない住宅困窮者や低所得者に対するセーフティーネット、あるいは定期借家の導入によって起こり得るトラブルその他を避けるための相談や情報体制の強化などを新たに柱に加え、さらに借家人保護の内容も三党の協議で強化しましてリニューアルして、全体として単なる定期借家の賃貸借の一契約形態を導入するというようなものにとどまらず、それも踏まえた上で、賃貸借政策全体を新たに位置づけるという法案にして提案いたしております。
そういう関係で、本委員会で審議することが適切な法案だと存じております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/229
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230・佐藤雄平
○佐藤雄平君 この法案の名称そのものが、良質な賃貸住宅供給促進ということになっております。その中で、私は都市のサラリーマンは住宅でそれぞれお悩みになっている方がおると思いますけれども、その中でもやっぱりサラリーマンで家族持ちの方、このために住宅を提供するということが相当のウエートになっているのかなと思います。
そういうふうな中で、その都市の皆さん方が家族を持ちながら今まで狭いところに住んでいたのが、今度はある意味では広いところに住める。その大前提として、先ほども幾つか質疑の中でありましたけれども、お年寄り夫婦が広い家に住んで、場合によっては我々夫婦はアパートに住んで、これを貸したいな、そんなことも当然考えられるかなと思いますけれども、そのときに高齢者の皆さんがお出になってみずからの住んでいるところをお貸しになるときに、どうしても高齢者の皆さんというのは不安なところが多いと思うんです。
そんなことに対して、やっぱり行政も、また民間の人もある意味では手ほどきをしてあげなきゃいけない、そんなことは今お考えになっているのかどうか、お尋ねしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/230
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231・中山正暉
○国務大臣(中山正暉君) お尋ねにありましたように、高齢者向けの優良賃貸住宅制度について、本制度は民間の活力を活用いたしまして高齢者が低廉な家賃で入居できる賃貸住宅の供給を図るために、平成十年度の要綱制度として創設したものでございまして、平成十一年度も本格的にこの強化を図りたいと、かように考えております。
高齢者の居住安定を図るため、今後の高齢者向け優良賃貸住宅の供給状況を踏まえつつ、この制度の充実、法制化も含めて検討してまいる所存でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/231
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232・佐藤雄平
○佐藤雄平君 これは質問のところに前もって言っていなかったんですけれども、賃貸料はどこでだれが決めているのか。実は、ちょっと見当がつかないんですけれども、せっかくこのような良質な賃貸住宅を提供しようという法案が審議されているわけですが、本当に一つの標準賃貸料みたいなものが提示されるようなことは一体できないだろうか、そんなことも私は思うんですけれども、その件についてお伺いをしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/232
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233・中山正暉
○国務大臣(中山正暉君) これは契約の自由といいますか、その中身によって地価の問題とかそんなものを反映させて、それぞれお話し合いをしていただきながら運用していただくということになるのではないかと、かように思っております。
地域の情報を、こういう住宅情報なんかを扱っていらっしゃる方、また地域によっては住宅情報センターみたいなものを地方自治体でつくっているところがありますので、そういうところで適正な値段がおのずから定まっていくようなことになればと、かように希望いたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/233
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234・佐藤雄平
○佐藤雄平君 売る前というのは確かに賃料というのは書かれているんですけれども、その後については、なかなか幾らで私ども住んでいるというのも開示されないというふうなこともありますので、この辺はやっぱり一つの標準的なもの、その市場価格で決まるとはいうものの、借りる方からすればそんなものがあれば一つの目安になるのかと、そんな思いでございます。
次に、住宅の性能表示制度についてでありますけれども、これはまた修正案の中で、先ほど読ませていただきまして、衆議院において一つの進歩があったのかと思います。前国会で住宅の品質確保法案が上がりました。これによって大分過失責任等についても、つくる方にしてもまた注文をする方にしても、お互いにその信頼の中で間違いない住宅ができていくのかと。そんなときに、これまた今度はつくったものの、借りる方、これは任意とはいいながらも、もう当然のことながら住宅の一つの品質に対する、機能に対する保証めいたものが必要であろう。この機会にそんなこともまた一つ考案なさったらどうであろうと思うのでありますけれども、この件についてのお考え、発議者とそれからまた建設省からお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/234
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235・佐田玄一郎
○衆議院議員(佐田玄一郎君) 先生の言われるとおりでありまして、なかなか建てたものについて客観的な評価をしていくということは非常に難しい部分があります。そういうことも踏まえて、入居される方々に有利なように前回の法案をつくらせていただいたわけであります。
委員が言われましたように、前国会で成立しました住宅の品質確保の促進等に関する法律に基づく住宅性能表示制度は、住宅性能にかかわる客観的な情報の提供等を通じて住宅の品質の向上を図るものでありまして、必ずしもこれは強制ではないわけであります。
そういう中におきまして、委員が言われましたようにこれが広くやはり流布されるように、今の現状を考えてみますと、どちらかというと賃貸住宅よりも持ち家の方がちょっと水準が高いという部分もありますので、しっかりとそういうところを、住宅の性能表示制度が賃貸住宅においても十分に活用されまして良質な賃貸住宅の供給に資するものになるように、例えば公的機関であるとか住宅関係団体であるとか消費者団体の協力も得つつ、パンフレットの配布であるとか説明会、そしてまた講習会の開催、広報誌や建設省のホームページ、いろいろやり方はありますけれども、こういうものを流布させていきたい、かように思っております。
それと同時に、今回の法案にもございますように、地方公共団体におきましても住宅に困窮する方に対する適切な規模、性能、住居環境等を有する良質な公共賃貸住宅、これの促進を図るべく、住宅建設計画法第四条第一項に規定する住宅建設五カ年計画は要するに優良な住宅を供給するべく策定されなければならないということで、賃貸住宅もまた入居される側に立ってしっかりとこれを流布させてやっていきたい、かように思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/235
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236・中山正暉
○国務大臣(中山正暉君) 今、提案者からも御説明がありましたように、いわゆる前国会で成立いたしました住宅の品質確保の促進等に関する法律に基づく住宅性能表示制度というものがございますが、住宅性能にかかわる客観的な情報の提供等を通じて住宅の品質の向上を図るもので、コストの上乗せになるかもわかりませんが、一定のルールとか、それから省エネの問題とか、それからまた安全とか、そういうものに対する配慮をした良質な住宅というものを提供するために、住宅性能表示制度が賃貸住宅においても十分活用されて良質な賃貸住宅の供給に資するものであるように、公的な機関、それからまた住宅関係団体、それから消費者団体の協力も得たいと思っております。
また、パンフレットの配布とか、それから説明会、講習会の開催、それから広報誌や建設省ホームページの情報掲載等の各種の手段を講じまして、積極的に情報の普及それから拡散、そういうものに努めてまいりたいと思っておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/236
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237・佐藤雄平
○佐藤雄平君 住宅政策の中で、借りる方からすると、やっぱり高齢者の皆さん、先ほども申し述べましたけれども、心配のことがあろうかと思うのであります。
その高齢者向けの優良賃貸住宅制度、これがいわゆる行政措置ということになっているわけでありますけれども、これは厚生省とのある意味では兼ね合いもあるのかと思いますが、その法制化ということについてはお考えとしてありませんでしょうか。これも発議者と建設省にお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/237
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238・中山正暉
○国務大臣(中山正暉君) 今のいわゆる良質な賃貸住宅、高齢者に対する需要に的確にこたえるためには、公共賃貸住宅やそれから民間賃貸住宅に関する情報を的確に提供できる体制が必要と。そういう意味で、厚生省との連携と申しますか、所管官庁としての厚生省にもお願いをしなきゃならないと思っております。
公共賃貸住宅についても、事業主体等から構成される協議会において、募集方法、それから家賃、間取り等に関する情報整備、それから各都道府県に設置されております住まいづくりセンター等の窓口による情報の総合的な提供などを具体的に検討しているところでございまして、先ほども御答弁申し上げましたが、高齢者の低廉な家賃で入居できる賃貸住宅の供給を図るために、先ほどと重なりますが、平成十年度の要綱制度として創設したものでございまして、平成十一年度からも本格的整備を推進しておるところでございます。
法制化も含めて検討してまいりたい、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/238
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239・田中慶秋
○衆議院議員(田中慶秋君) 現況の少子高齢化という形の中で、今、佐藤先生から言われている高齢者の住居対策というのは、当然のごとく、法の整備をしながら、もう一つは独居暮らしとかいろんな問題、それぞれの環境に応じた形で住宅の提供ということをこれからしていかなければいけないんだろうと思っております。
そういう問題を含めながら法の整備化をして、まさしく地方自治体との連携を密にしながらこれらの対応をこれからしていく必要があるだろう、こんなふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/239
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240・佐藤雄平
○佐藤雄平君 ちょっと順番が変わりますけれども、中途解約についてお伺いをさせていただきます。これも発議者の皆さんになるかと思います。
先ほど来、個人の中途解約、それからまた商売をしてきた人の解約等についてそれぞれ話がありました。いわゆる借りている方からする、昨今のこの経済状況の中で、本当に場合によってはあした会社をやめなきゃいけない事情があったり、さまざまな考えられないような事情が出てくる可能性が私はもう十分にあるのかと。そのとき、定期五年間なら五年間契約であったのが、契約して入ってみたら二年間で実はそんな事情で契約を解約しなきゃいけない、そんなことがある。
さらにはまた、商売等でもいろいろあると思うんですけれども、まずその個人の中途解約等について、まさにいわゆるリストラの中でこういうふうなものもやむを得ない事情ということになるのかどうか、この件についてお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/240
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241・保岡興治
○衆議院議員(保岡興治君) 三十八条五項に例示されている転勤あるいは家族の介護、療養、こういったものなどやむを得ないと思えるような事情があれば、これを契約時に的確に予測することが難しい、それを賃借人に期待することも困難で不可能だというようなことであれば、例えば先生がおっしゃるようにリストラなどで失業したりして転居せざるを得ないとかいろんな状況の場合、やむを得ない事情としてそれをしんしゃくしてこの三十八条五項によって中途解約を認めるということもあると存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/241
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242・佐藤雄平
○佐藤雄平君 今度はその逆の立場ですけれども、商売をやっている、今本当に町並みについても何かみんな空洞化になって郊外に行ってしまって、中小零細の床屋さんとかパーマ屋さんとか小売店をやっている人は町で頑張っている。この人たちについても、いろいろ話を聞いている中で、例えば借り主が途中で亡くなってしまった。そんな際に、これは三つあるんですね。
一つは、借り主が死亡した場合の契約関係はどうなるか。一つは、相続人が営業を継続する場合の契約は継承されるか。もう一つが、従業員、相続人じゃなくて亡くなった人の、いわゆる事業者の従業員が営業を継続する場合、その契約は継承されるか。さらにはまた、その相続人が営業を継続しない場合の契約はその段階で終了するか。こんな場合がいろいろ考えられると思うんですけれども、この件についての御所見をお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/242
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243・保岡興治
○衆議院議員(保岡興治君) 定期借家の借り手である事業者が契約期間内に死亡した例を挙げられましたが、その相続人が事業を継続したいときは賃借権は相続の対象となりますので、相続によって賃借権も承継されると思います。
それから、従業員についてでございますけれども、これは遺贈などによって賃借権を承継するケースもあると思いますが、そういう場合にはこの賃借権を承継することができる。
それから、事業形態が会社であったような場合は、代表が死亡しても賃借権の承継の問題は起こらないと思います。会社の法人が続く限り、その法人の賃借権として存続がされるということだと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/243
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244・佐藤雄平
○佐藤雄平君 中小零細になると、必ずしも会社でないというケースも実はあるんですね。それで、その息子がでは継承するかといったら、その息子は別なところで働いている。場合によってはそこの従業員がそのままその店を継ぎたい。これはまた亡くなった人の相続人と従業員との法律的な関係ということにはなると思うんですけれども、往々にしてちっちゃな町の中でそんなケース、会社じゃなくても継がせたいなというようなこともありますので、その辺でのいろんな今後出てくるであろうケースをそれぞれお考えいただきながらこの法案を施行していただきたいと思います。
さらにまた、住居とそれから店舗が一緒になっているケースがあると思うんです。前の方で店をやっていて後ろで生活をしているというケースがあると思うんですが、この場合というのは解約のときにどっちにみなされるのか。一つ屋根の下で店と住居が同居している、この場合に一つ同じ屋根の下でやっているものは個人とみなすのか商売とみなすのか、この件についての見解を。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/244
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245・保岡興治
○衆議院議員(保岡興治君) 三十八条五項の二百平米未満の住宅というのは、一部が事業用であっても、その一部と住宅部分とが合わせて二百平米未満であればこの解約権が与えられる対象になると存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/245
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246・佐藤雄平
○佐藤雄平君 ありがとうございました。
今度は、紛争処理体制の整備についてお伺いしたいと思います。
新しく法案が施行されていく中で、今までにはないような、それぞれ貸しそれから借りの間で起こるケースが考えられると思うんですけれども、これについての体制というのはどのようにお考えになっているか、建設省にお尋ねしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/246
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247・加藤卓二
○政務次官(加藤卓二君) 賃貸住宅の相談事例及び相談体制という形になると思うんですが、都道府県の住宅相談窓口に寄せられる相談のいろんなトラブルを見ると、敷金の返還等の明け渡し時のトラブル、家賃の改定トラブル、建物修繕のトラブル等が主なことでございます。
定期借家制度の創設をする際に、まずトラブルの発生を未然に防止するために定期借家制度の周知徹底を図る等必要なことが認識されておりますが、定期借家権に関するトラブル等の対応については、地方公共団体に対し住宅相談体制の一層の充実を指導していくとともに、建設省においても地方公共団体による相談業務が円滑に行われるよう借家相談マニュアルを作成することとしております。相談機能の充実を図ってまいる所存でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/247
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248・佐藤雄平
○佐藤雄平君 定期借家制度の導入の趣旨はよくわかりますけれども、この導入についての最大のメリット、そしてまたこの導入によって何が起こるであろうか、ある意味ではデメリット、こんなことをいろいろそれぞれ議論になったと思うんですけれども、これについてお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/248
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249・加藤卓二
○政務次官(加藤卓二君) 佐藤先生のおっしゃられることは、地方では空き家がうんとあるんですよと、私たちも地方に育っていますからよくわかっております。
そして、一番のメリットは、今までは私たちは納屋だとか小屋は貸していたんですが、母屋までは貸せなかったんだと。逆に言うと、息子が住んでいた家があいている、そういう場合にそれを貸したいなといっても、いろいろな問題で貸しづらくなっていたが、この制度の中で非常に貸しやすくなるでしょうと。私はセカンドハウスをつくるという先生の持論をよく承知しておりますので、これが行われると、アメリカと同じように日本も豊かに生活をするのは地方でそして一生懸命働くのは都会でと、それでその距離の範囲内に日本の国も全部おさまるようになったわけです。
ですから、ぜひひとつそういう意味で先生のおっしゃられるように、私はメリットを十二分に生かしていけるように努力したいと思っておりますから、よろしくお願いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/249
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250・佐藤雄平
○佐藤雄平君 今、政務次官から次にお尋ねしようかなというところを御答弁いただきまして、本当にありがとうございました。
都市と地方の中で、まさに今、政務次官がおっしゃったように、地方にはもう本当に立派な家がいっぱい実はあいているんです。しかしながら、いずれせがれが帰ってきたときに困っちゃうなというふうなことで空き家になっているという実態がたくさんあるんです。農家を歩いてみると、雄平さん、だれかに貸したいんだけれどもねと、そんな話が時々聞こえるんです。貸したいんだけれども、しかしながらそれに居座られても困るなという気もこれまたありまして、まさにこれが定期的な話というふうなことになれば非常に有効になるのかなと。そうすればこれはもう過疎と過密もある意味では解決するし、地方の文化と都市の文化のまた一つの交流になって、それこそ委員会のとき中山大臣とお話をさせてもらった、本当にバランスのとれた日本ができていくのかなと思います。
これを一つの機会として、いわゆる地方のそういう農家の空き家というか、こんなことも何かひとつ工夫していただければ、いろんな意味で非常に有効に機能してくると思いますけれども、この辺についてのお考えを発議者と建設省からお伺いできればと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/250
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251・加藤卓二
○政務次官(加藤卓二君) 少し話が飛んだようでしたが、委員会をなるべく早く進めろという話だったので気ぜわしく進めました。
先生のおっしゃられるとおり、日本の国を本当に上手に使うとき、私たちが進めてきたことの中で、芸術家を私たちの村へ呼ぼうというので、随分これは成功しました。絵をかく人、彫刻をする人たち、都会ではとても持てないアトリエが持てた。それと同時に焼き物をする人たち。もう私の田舎はちょうど一時間半ぐらいで行ったり来たりできるところになりつつあります、今は二時間かかりますが。そういう意味で、私は会津も非常に風光明媚、本当に水がきれいだし、一番うれしいのは人情がいいので、そういうところに芸術家をぜひみんなでお迎えするような制度ができればと、こう思っております。
これを借金してやるというと貧乏な芸術家はできないんですが、この制度が定着すると借金しないで家賃で自分の思うことができるんだ、こういうことで会津にもちゃんと学校を借りてそこで絵をかいている私の友達がいますが、そういうことを先生はお考えになってのお話だと思いますので、ぜひ私たちも一生懸命、建設省としてもそういうような方向づけでやらせていただきます。よろしくお願いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/251
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252・田中慶秋
○衆議院議員(田中慶秋君) 今、佐藤先生のお話を聞かせていただきながら、ちょうど相反する例が二つほどございました。
一つは、大変私がお世話になっているお医者さん、子供さんがおりませんでした。そういう点で、奥さんに先立たれて、そして御主人、先生がひとり暮らしをしていたわけです。大変広い家だったんですが、この家を貸してしまうとまた後でトラブルが起きてしまう、そんなことから家は貸さないでずっと守っておられたんですが、最近逝去されたんです。そんな事例もございました。
もう一つは、実は私の身内なんですけれども、子供が全部成長されて、そしてその子供が全部家を出ておりますから、御主人に先立たれて、そして今度はおばあちゃんがひとり暮らしをしていたんですけれども、逆に隣近所からおばあちゃんが心配だということもございました。そういう点で、たまたま六人家族のところから家を貸してくれないかというこんな例がございまして、その家を貸して、そしておばあちゃんは子供のところへ行って現在生活をしている、こういう例があるわけであります。
この制度がしっかりとできれば、そのような不安や心配もなく、もう少しユニークな形でもっともっと活力があって、そしてたくさん子供のいる、これからたくさん子供をつくっていただかなきゃいけないわけですから、そういう点では、現在百五十万戸とも言われているような住宅を含めて、この制度が定着をすることによって今のような問題の解決になっていくんではないかな、こんなふうに思っておりますので、これをより推進、徹底させていきたい、こんなふうに思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/252
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253・佐藤雄平
○佐藤雄平君 この法案は、先ほども触れさせていただきましたけれども、景気効果というふうなことも十分お考えになった中での措置法であるのかなと。保岡先生からもその景気の話が前段でお出になりました。
これによって、今ある意味では静まっているようないわゆる土地の静かなるところが流動していって、景気回復の大きな原因になってくる要素があるのか。そしてまた、この波及というのはどれぐらい効果として上がってくるのか。この辺について建設省はどれぐらいの御期待をお持ちになっているか、お考えをお尋ねしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/253
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254・中山正暉
○国務大臣(中山正暉君) 定期借家権が導入されることによりまして、賃貸住宅経営による不確実性がなくなるというのがまず第一のことでございまして、経済合理的な経営が可能となるために賃貸住宅供給に対する意欲が高まる。先ほどからお話がありましたように、空き家で貸すのも不安だという人たちが、この公正証書によって賃貸の契約をちゃんとすればお貸しできるということで、規模の大きい良質な賃貸住宅の着工に結びつくことになるということも考えられるわけでございます。家をつくるということが一番経済効果は大きいわけでございますが、その意味で賃貸住宅市場自体が活性化して内需拡大にも大きな影響を与えていく、貢献をすることになる。
特に、経済合理的な賃貸建物経営に関する見通しが明確になる、つくれば借りる人が出てくるということがはっきりするわけでございますし、不動産の証券化が可能になるという根底にもなると思います。その結果、この分野への投資が促進される。
それから、都心部の低未利用地等も良質な賃貸住宅及び商業ビルの用地として利用されることが見込まれる効果がある。今、随分不良債権なんかの問題で遊休地になっている処分のできない不良債権処理にも私は貢献することを期待いたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/254
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255・佐藤雄平
○佐藤雄平君 最後に、周知期間の問題であります。
これは貸し手側、借り手側、この当事者間が一番やっぱりその問題の起源になるところでありますから、本当にそれぞれよく、三月一日というふうなことであれば、先ほどもありましたけれども周知をするような手続をきちっととっていただきたい。
それと同時に、私は最後に要望しておきますけれども、貸し手側に本当にこの期間の契約というふうなことをはっきり契約するとき、いわゆる相談に来たときに申し上げることが、これがいろんな紛争を起こさない大前提だと思います。そういうふうなことについて期間内の周知と契約するときの貸し手側からのきちっとした説明、この件についてそれぞれお伺いして、質問を終わらせていただきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/255
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256・加藤卓二
○政務次官(加藤卓二君) 定期借家権導入の際の周知徹底の具体的な方法についてのお尋ねでありますが、法律の公布から平成十二年三月一日までの周知期間において、借地借家法の改正内容についての国民の理解を深めるため、建設省としても、一つに、政府広報によるマスコミを通じた積極的な情報提供、二つ目に、わかりやすいパンフレットを作成し、地方公共団体及び関連業界を通じた配布、三つ目に、定期借家契約の標準契約書の作成及びその普及をしたいと思います。四つ目に、住宅相談窓口の相談業務に応じるため、借家相談マニュアルの作成等を通じて制度の周知徹底について万全を期する所存でございます。
定期借家契約に関する賃貸契約管理者、また宅地建物取引業者等に対し周知徹底して、業界団体を通じて説明会の開催、業界誌等の掲載等を進めることにしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/256
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257・田中慶秋
○衆議院議員(田中慶秋君) 今、建設省から答弁があったとおりでありますけれども、さらに私たちはそれぞれ賃貸借の関係で説明書やあるいは文書の公刊等々も含めながら、これをより推進していかなければいけない、こんなふうに感じているわけであります。もしその説明がなかった場合においては旧法を適用するようなものでありますから、そういう一連のことも含めながら、お互いに法律が生かされていくような形をとるために、それぞれの各業界やパンフレットあるいはマスコミ等々を含めながらより徹底させていく、こういうことではないかと思っております。
特に、この賃貸の関係、三月から四月にかけて全体事業の大体半分近くがここに集中しているわけでございますので、そういう点では、そのことを明確に徹底させるという意味でも、今後皆さんの御協力をいただいて速やかにこの法案を成立させていただいてそして周知徹底させていただこう、このように考えておりますので、ぜひ御協力をお願い申し上げたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/257
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258・緒方靖夫
○緒方靖夫君 日本共産党の緒方靖夫です。
午前中の参考人質疑でも、出られた方二人はこの法案を推進する立場でそのメリットについて幾つも述べましたけれども、その一つに不動産の流動化を挙げられました。福井参考人は、経済企画庁は年間八千億と経済効果を見ているけれども自分はそれをはるかに超えると考えている、そう述べました。それからまた、保岡議員は、昨年も不良債権のときに議論いたしましたけれども、そういう問題にずっと取り組まれていることをよく存じ上げております。
そこで、端的に伺いたいんですけれども、この法案は不動産の流動化を進めるという効果があるとごらんになっていると思うんですけれども、それはいかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/258
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259・保岡興治
○衆議院議員(保岡興治君) それは不動産の流動化、不動産証券化市場の育成、活性化に不可欠な要素だと存じております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/259
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260・緒方靖夫
○緒方靖夫君 定期借家推進協議会という組織があると思います。私はちょっと記録を読みましたら、その発会の式には保岡議員も参加されていると伺いました。それは、この法案を推進させ、そしてまた成立した暁にはこれを啓蒙、そして広く進めていくということを目的にしている、趣旨だということも明らかであります。
ここには十七団体が参加しているということなんですけれども、その主な団体名、どこかを挙げていただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/260
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261・保岡興治
○衆議院議員(保岡興治君) 私は団体の名前を細かくは存じていませんが、良質な賃貸借家屋の供給に熱意のある、意欲のある関係諸団体、いろいろあるんですね、それがみんなで円滑に国民のニーズ、多様なライフスタイルにこたえ得るように努力していこう、紛争やトラブルがないように円滑な導入を図っていこうという趣旨で努力をしていると承知しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/261
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262・緒方靖夫
○緒方靖夫君 通告しておきましたけれども、お答えはありませんでした。
私が聞いているのは、団体名なんです。経済同友会、日本不動産協会、日本高層住宅協会、日本ビルヂング協会連合会、不動産協会等々、こういう団体が並んでいるわけです。
こういうことから見ると、そしてまたこれまでいろいろ午前中の議論も伺うと、結局、都市部の大規模開発の際に、地上げをする際にこれまでの借地借家法があると大変だと。時間もかかる、コストも膨大にかかる、これを何とかしないといけない、現行法のもとでは何事も借地借家人と交渉しなければならない、それが大変なんだ、この法律が通ればこれから開発は容易になる、そういう御意見も伺っているわけですけれども、そのことは間違いありませんね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/262
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263・保岡興治
○衆議院議員(保岡興治君) 確かに、従来の賃貸借契約は強力な正当理由制度という解約制限がついているために、一度貸したら返ってこないとみんなに思われてしまうぐらい貸すときには貸し主をちゅうちょさせる法制になっていることがいろいろと賃貸借契約関係のあり方に問題を生じている。老朽家屋の密集地を再開発しようとしたりいろいろ町づくりなどを進めていく上で、やはり今の解約制限の厳しい賃貸借契約制度というものは障害になっていることは事実だと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/263
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264・緒方靖夫
○緒方靖夫君 障害になっているということを認められました。
それで、先ほど非常におもしろい場面がありました。商店街がくしの歯が抜けたようになっていくという話を同僚議員がしたときに、保岡議員は、そうなんだ、今、虫食い状態で大変なんだと言われた。一体だれの話を聞いているのかなと注意深く聞いてみますと、保岡議員はいろんな人の声を聞いていると言われたけれども、ビルのオーナーの話だなと、そしてまた、土地が虫食い状態になっていて整形がされていない、それが大きな問題になっているということを意識しているなということを私は感じました。
問題提起したのはその逆で、そこでも借家人の方々あるいはお店の主人の方々が大変だということを述べたわけですけれども、そういうことは知っていると言ってそのことを述べられたこと自身が非常に端的に意識状況をあらわしているなと、私はそう伺いました。
ですから、そういった点で、私ははっきり言ってこの法案の目的、優良の賃貸住宅を供給する、そういううたい文句になっているけれども、法務委員会に付託されてきたときと本質は変わらないと思う。まさに土地のそして不動産の流動化、それを進める、そしてまた再開発のときに、今障害になっていると保岡議員ははっきり認められたけれども、そういう障害を取り除く、そこに非常に大きなメリットを見ている。すべてとは言いません、そういうことがあるということを私はまず指摘しておきたいと思うんです。
もう一つ、私は法務省の関係、これは非常に重大だと思います。やはりこの法律の一番根幹、それは正当事由制度を根本から見直してしまう、なくしてしまうということです。
法務省の見解を御存じですか。私は法務省に確かめました。午前中もちょっと紹介したんですけれども、法務省は九六年一月、規制緩和推進計画の見直し、中間的公表、これを発表しているわけですけれども、そこでは、「正当事由については、十分に議論が尽くされた問題であり、国民の利害を十分に調整した上、国会の大多数の賛成により成立したものであって、その後現在まで、社会的・経済的に特段の事情の変化はない。」、したがって、見直しには反対である。見直しは必要ない。それがこの当時の見解であり、確かめましたけれども、今もそのとおりに考えているということなんです。
つまり、この議員立法というのは法務省のこの正当事由制度に対する考え方、これを根本から否定する、そういうものにならざるを得ないんです。その自覚はありますか、保岡議員、端的に。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/264
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265・保岡興治
○衆議院議員(保岡興治君) 法務省の民事局は、政府の規制緩和推進計画を受けて研究会を設けて二年ほど検討をしておりました。それは平成七年の六月から平成九年の六月までぐらいのことでございます。
その後、我々議員、自由民主党がいろんな関係者からお話を聞いてこの研究会は法律家あるいは……発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/265
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266・緒方靖夫
○緒方靖夫君 短くやってください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/266
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267・保岡興治
○衆議院議員(保岡興治君) 民法学者、こういった権利関係のことだけを調整する立場の専門家の研究会でございました。しかし一方、建設省とか経済団体は、新しい日本の町づくりあるいは持ち家から借家へ国民のニーズが大きく転換していく社会の変化、こういったものに適切なニーズにこたえる供給を促進する観点、こういったものをあわせて考えて定期借家制度というもの、正当理由制度の改革というものを考えていかなければならない。
特に正当理由制度のみで借家人の立場を保護する、要するに貸し主の負担で借り主の人生を担保する、これではなかなかこれからの新しい経済に対応することは難しいだろうという基本を法務省とよく相談して、議員立法の形で法務省のいろいろな借家人の立場あるいは居住の安定を配慮する観点と、我々の今申し上げた新しい賃貸借供給の政策との調和を図って今度の法案を出してあると申し上げておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/267
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268・緒方靖夫
○緒方靖夫君 答弁は短くしていただきたい。端的に答えていただきたい。
私が言ったのは、法務省は先ほど紹介した見解、これを変えていないと言うんです。これが大事なんです。ですから、この法律で民法のこの根幹的な部分、これを根底から覆してしまう。そこに私は非常に重大な問題があると思います。
今ここに建設大臣がおられますので私は申し上げますけれども、大臣、やはりこういう問題があるということですね。法務省は、この正当事由制度を見直すということは問題だと言っている。そういう中で、議員立法ではありますけれども、しかしこれが成立すれば、建設省として、行政としてさまざまな形で携わらなければならない。そういう中で、やはり私はこうした問題について大臣自身深く認識していただきたい、このことを要望しておきたいと思います。
さて私は、この法律のこの条項に沿って幾つか尋ねたいと思います。
附則第一条は、「平成十二年三月一日から施行する。」、そのように施行日を定めておりますけれども、事業用借家契約の建物はこの施行日をもって定期借家の対象となるのかどうか。その点、法律の解釈としてお伺いしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/268
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269・保岡興治
○衆議院議員(保岡興治君) 別にそのことを法律上具体的に規定してあるわけではありませんが、この賃貸借住宅政策というものを大きく見直していこうということでございますから、その変化を社会がどう受けとめるかという推移をよく見たり、時の経済環境や状況などを総合的に勘案して、この制度に問題がないか、新たに加える知恵や工夫が制度の仕組みとして必要かどうか、そういうすべてをこの中に含んでいると考えられると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/269
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270・緒方靖夫
○緒方靖夫君 その答弁でよろしいんですか。私はいろいろ法制局にも聞きましたけれども、対象になるという解釈でした。私はこの法案を見るとそう読めるんですがね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/270
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271・保岡興治
○衆議院議員(保岡興治君) そのことも含めて、そのときの状況によって検討するということだと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/271
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272・緒方靖夫
○緒方靖夫君 何ですか、その答弁は。そんなあいまいなんですか、この法律は。非常に重大な問題を含んでいるんですよ、これは。
つまり、再開発の問題等々で、今この法律で事業者の建物が全部網をかぶせられたら大変なことになるという危惧がいっぱいある。それに対して、そうじゃないとはっきり言っていただけるならそれでいいですよ。しかし状況による、何ですか、これ。
私は、いろんな話を聞いてまいりました。例えばどういう深刻な問題があるか。これは全国各地で起きているから余り個々のことを言う必要はないんだけれども、例えば東京の町田市の原町田六丁目、そこの市街地の再開発事業が進められております。そこでは、対象の権利者四十八名、うち土地所有者九名なのに対して、七割の三十三名が借家権者なんです。そこは再開発ということでどんどん店を閉じるということが進められていて、そしてその問題で今大変な事態が起こっている。七名の方々、中華料理屋、喫茶店をやっている方々、そういう方が残っているわけです。
この法律が通って、そしてこの法律で全体に、事業建物に網がかけられたときには一体どうなるんだろうという危惧がある。ですから、その点、保岡議員はっきり答えてください。どうなんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/272
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273・保岡興治
○衆議院議員(保岡興治君) 事業用の建物について切りかえができないということを見直す考えは、我々は前提といたしておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/273
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274・緒方靖夫
○緒方靖夫君 そういう事業用建物については見直す考えはない、つまりそれは即適用されるということになるでしょう。ですから、私はもう時間がないからこれ以上言わないけれども、非常に大きな問題があると思います。
そういった点で、先ほど私は言いましたけれども、都市の再開発等々で虫食い状態になっている、そこに残っている方々は、そういう適用を受けて追い出されるとか、あるいは店を閉めなきゃいけないとか、そういうことが起こり得る、そういう問題を含んでいるわけです。ですから、私はこのことを、重大だということを指摘しておきたいと思います。
そしてその次に、第三十八条の四項、これは期間の終了を示しているわけですけれども、期間の終了の一年前から六カ月前までの間に建物の賃借人に対し通知すれば契約が確定的に終了する、そう読めますけれども、これもそのとおりでよろしいですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/274
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275・保岡興治
○衆議院議員(保岡興治君) 六カ月前までに通知することで借家人を保護する、借家人の注意を喚起して再交渉の機会や新しい賃貸住宅、物件を探す余裕を与える趣旨でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/275
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276・緒方靖夫
○緒方靖夫君 その期間がありますけれども、それが終わった後には確定するわけです、契約が。その期間が終わった後には確定するわけですよ。それはそうですね。ここが非常に大きな問題なんです。
きょうの午前中も、参考人の方々からこの法律は非常に過酷である、弱者に対して過酷だという話が出ました。それが私、ここに該当していると思うんです。いいですか、法律上そういう形で契約関係が確定的に終了する、そうなったときに、例えば一家の大黒柱お父さんが病気だったりあるいはお母さんが妊娠していて動きにくい、あるいは生活保護を受けていてにっちもさっちもいかない、高齢でもう動けない、そういう方々に対しても有無を言わさず出ていただく、法律的にはそうなるんですよ。それがきょう午前中、参考人の皆さんが言っていた過酷だという意味なんですね。
ですから、それに対して、ではどういう措置があるのか、借家人に対して。ないですよ。家主にすべての選択権がゆだねられている。また契約を結んで更新する、それも家主次第。そしてその更新の条件として家賃の値上げもやりたい放題、極端に言えばですよ。何も歯どめがないんです。
ですから、こういう点で家主には非常に大きな権限があるけれども、肝心の、肝心のというのは住まいは人権という立場で申し上げますけれども、そういう方々には何も守られる法律的な要素はないんじゃありませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/276
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277・保岡興治
○衆議院議員(保岡興治君) 再三答弁申し上げているように、従前この正当理由制度の借家というものの契約下にある方々はそのまま効力を担保されるんです。それから居住用の建物については、定期借家制度を当分切りかえで認めないということで、この定期借家制度の不知のために、あるいは借家人との話し合いで誤解などして定期借家関係に入っていくこともないように配慮してあるんです。
その上で、新しい従前どおりの正当理由借家契約を結ぶことも制度として認めている上に、新しい選択肢として定期借家契約というものを当事者の自由な意思によって契約して、その賃貸借契約関係に入っていくことになるわけですから、当事者の自由な意思が前提であるということだけはきちっとした上で議論をしていただきたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/277
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278・緒方靖夫
○緒方靖夫君 保岡議員が見落としていることは、大事なことが一つあります。それは、多くの借家人、その方々は法律の素人です。一方で、それを結ぶ家主の側、多くの場合には不動産屋が中に入ると思いますけれども、そちらはそういうことに熟知している。そういう大きな差があるわけです。ですから、そこでどういう特約を結ぶのか、そういうことにも非常に大きな影響があるわけですね。
例えば、先ほどの条文の三十八条の四のその後にただし書きがある。これがどういう意味なのか。「ただし、建物の賃貸人が通知期間の経過後建物の賃借人に対しその旨の通知をした場合においては、その通知の日から六月を経過した後は、この限りでない。」、そう書かれている。
この通知期間についてなんだけれども、この通知期間の経過後の通知はいつすればいいかについては限定がないわけです。ですから、例えば定期借家期間が満了になって、そしてその後も通知しないで、家主がまだいてもいいよ、そういうような話で家賃をずっと払って住んでいた場合、ある時期に家主が通知をすれば借家人は半年後に出ざるを得ない。そういうことが想定されるわけですけれども、そういう場合はどうなるんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/278
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279・保岡興治
○衆議院議員(保岡興治君) それは、約束した契約期間というものを徒過しているという前提があるわけでございますから、貸し主が仮に通知を怠っておったとしても、あるいは意図的に通知を怠ってしなかったとしても、通知をした日から六カ月は、先ほど申し上げたように再契約の交渉、あるいは新たな居住物件を探す期間の猶予というものを与えるという仕組みでございますから、賃借人の保護としては、本則の一年以上の契約期間の賃貸借契約に認められたこの賃貸借終了の貸し主の通知義務というものの制度の延長として合理性があると存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/279
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280・緒方靖夫
○緒方靖夫君 今、要するに保岡議員は、通知した後、半年後には出なきゃいけないということを認められたわけですね。いろいろ言ったけれども、その間に準備してどうこうとか、引っ越しの準備ができると言ったけれども、通知したら六カ月後には出なきゃいけないんですよ。これが過酷なんです。
なぜ過酷か。いいですか、あなたは借家人になったことあるかどうか知りませんけれども、どういう立場でいるか。いつ出されるのか、びくびくしている状態というのは一番不安定なんです、居住の安定にとって。ですから、さらに例えば更新のための話し合いをして、家主と折り合わないで高い家賃を吹っかけられるとか、そういうことだってあるわけですよ。そうしたら、そういう中で通知を受けて六カ月後には出なきゃいけない、これが法の定めです。私は、こういう仕組みにも居住の不安定を生む非常に大きな要因もあるし、また同時にそれは居住者にとって非常に過酷である、このことを申し上げておきたい。
次に、中途解約について。
法案は二百平米以上の住宅と事業用建物の借家人には中途解約を認めていない。二百平米以下のものについては別ですが。そこでお聞きしたいんだけれども、家主の中途解約権、正当事由、これは排除されるんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/280
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281・保岡興治
○衆議院議員(保岡興治君) 家主、この通知の六カ月の間という意味ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/281
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282・緒方靖夫
○緒方靖夫君 いや、別の話です、今度は。中途解約。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/282
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283・保岡興治
○衆議院議員(保岡興治君) もう一度質問してください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/283
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284・緒方靖夫
○緒方靖夫君 大事な問題なんですよ。いいですか。家主の側から、借地借家法二十七条にある中途解約権、そして二十八条の正当事由、これは排除されるのかと聞いているんです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/284
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285・保岡興治
○衆議院議員(保岡興治君) 二十七条は、期間の定めがない建物の賃貸借契約は、解約の申し入れの日から六カ月を経過することによって終了するということですね。
ちょっと待ってください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/285
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286・緒方靖夫
○緒方靖夫君 はっきりしてくださいよ。時間がない。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/286
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287・保岡興治
○衆議院議員(保岡興治君) これは、賃貸人は、やはり正当事由がなければ解約権は行使できないと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/287
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288・緒方靖夫
○緒方靖夫君 家主。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/288
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289・保岡興治
○衆議院議員(保岡興治君) 家主が、賃貸人が……発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/289
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290・緒方靖夫
○緒方靖夫君 されないわけでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/290
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291・保岡興治
○衆議院議員(保岡興治君) はい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/291
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292・緒方靖夫
○緒方靖夫君 要するに、家主にとっては正当事由があれば中途解約がいつもできるという意味ですか。大事なところなので確認します。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/292
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293・保岡興治
○衆議院議員(保岡興治君) ちょっと待ってください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/293
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294・緒方靖夫
○緒方靖夫君 肝心なところじゃないですか、これは。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/294
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295・保岡興治
○衆議院議員(保岡興治君) 特約がなければできません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/295
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296・緒方靖夫
○緒方靖夫君 当たり前です、そんなことは。特約に書いてあるわけですからね。
ですから、私がここで言いたいのは、この法律をきちっと読む限り、家主側にとっては、従来どおりの正当事由があれば中途解約がいつでもできるんですよ。定期と言いながらも、家主側はいつでも借り主を追い出せる、極端に言えばそういうことになるじゃないですか。家主の方には引き続き中途解約権を与える。そしてまた、借家人が中途解約ができない。これは余りにも私は不平等だと思うんですね。ですから、この法案の中にはそういう非常に大きな問題がある。
次に、現行借家契約からの移行の問題。
附則第三条は、居住用の建物は引き続き賃貸借する場合は、当分の間定期借家制度を適用しないとあります。当分の間というのは不確定ですけれども、この間にたとえ両者の合意があっても現行借家契約から定期借家契約に移すということ、これは違法ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/296
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297・保岡興治
○衆議院議員(保岡興治君) 居住用の建物の賃貸借は、従前の正当理由借家から定期借家には切りかえができません。
それから、先ほどの賃貸人の解約権を特約した場合、これは今度の法制化においても正当理由がなければ解約ができません。これは法律上この定期借家の定義を、更新がないこととするという特約を例外として当事者の合意によって認めるという仕組みになっていますので、途中解約権の正当理由制度まで排除する趣旨ではありません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/297
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298・緒方靖夫
○緒方靖夫君 時間がないので、これをぜひ聞いておきたいんですけれども、附則第四条、「四年を目途として、」見直すとあります。何を見直すかという点については、「居住の用に供する建物の賃貸借の在り方について」見直すとなっている。
一体何を想定しているんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/298
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299・保岡興治
○衆議院議員(保岡興治君) 「居住の用に供する建物の賃貸借の在り方について見直しを行うとともに、この法律の施行の状況について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずる」と、ここに……発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/299
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300・緒方靖夫
○緒方靖夫君 それは書いてある。何を見直すか、何を想定しているかということ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/300
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301・保岡興治
○衆議院議員(保岡興治君) これは、定期借家契約の普及徹底によってみんながその定期借家の意味をよく理解するところになれば、居住用の建物についても定期借家へ切りかえるということを認めていっていいのではないかという、そういう見直しを頭に置いております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/301
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302・緒方靖夫
○緒方靖夫君 今の答弁は非常に重大ですよ。だって、二百平米以下の今は除外されているそこにも網をかけるということにもなってくるわけです、居住用なわけですからね。そうすると五十平米の借家の方々もこの定期借家権で適用を受けてくる、全部それが網に入る。そういうことを想定して定期借家権を徹底する。事業用建物はすべて、そして住宅についても二百平米以下、これを除いているけれども、これを入れるということになるわけですね。これはやっぱり非常に重大だと思います。
それからお聞きしたいのは、三十八条の七。「第三十二条の規定は、第一項の規定による建物の賃貸借において、借賃の改定に係る特約がある場合には、適用しない。」、こうあります。これは、二つの意味で非常に重大な意味を持ちます。
一つは、この場合、三十二条の規定というのは賃料の上げ下げの問題です。これまでも、家主からの値上げの請求が出たことだけじゃなくて、借家人からの値下げについても最近は認められる、そういうふうになってきました。借家人からの家賃値下げの請求、これはこの適用によってできるのかどうか、それをお尋ねします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/302
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303・保岡興治
○衆議院議員(保岡興治君) 特約によって賃料の改定契約の内容を定めた場合には、その契約したところに沿って契約関係を律するということで、この条文は適用を排除されるということです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/303
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304・緒方靖夫
○緒方靖夫君 それはこの法律の解釈だけであって、私が聞いているのは、例えば特約で家主の方が一方的に値上げする、仮にそういうことが書かれたとか、あるいはそういう種類のことが書かれたときに大変な事態になるじゃありませんか。不動産の方々は専門ですから、それがやりたい放題になる。そしてまた、借家人の方々は法律に疎いと言って決して失礼にならないと思うんです。そうすると、法律の知識で天と地の差がある方々との契約が、この特約によって、今モデルがいっぱいできていると聞いていますけれども、こういう問題を生むわけです。これが一つ重大な問題。
それからもう一つは、民事調停法に響くわけです、これは。民事調停法は、調停を前置する調停前置主義になっているでしょう。これはやっぱり法務省、それからまた平成三年の改定のときにいろんな苦労があって、あらゆる問題を裁判所に持ち込んだら大変だと。だから調停前置ということが言われた。これを覆すことになるんですよ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/304
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305・石渡清元
○委員長(石渡清元君) 緒方君、時間が来ましたのでまとめてください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/305
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306・緒方靖夫
○緒方靖夫君 ですから、こういう大きな問題、こういうことを含んでいるということをやはり私ははっきりとここで指摘しておきたいと思います。
終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/306
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307・大渕絹子
○大渕絹子君 建設大臣には、参加をいただいてありがとうございます。
まず、この民法の借地借家法の改正を建設大臣が主管となってこの委員会で質疑をすることというのは、大変私はおかしいと思うんですけれども、建設大臣はみずからが主管となってこの法案の審議をしなければならないことに対してどんな感想をお持ちか、通告してありませんが、お答えください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/307
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308・中山正暉
○国務大臣(中山正暉君) ありがとうございます。御心配をいただいておりますようでございますが、やっぱり住宅政策を所管の事務といたしておりますものでございますから、優良な賃貸住宅をどんなふうに提供していくかというのは、これは責務だと思っております。
私なんかの子供のころには、貸し家というのは、その家の前に立って、これ借りようかな、どうかなと思って首をかしげて考えるから、貸し家というのははすに書いてあったような思い出があるのでございます。
中坊さんという非常に立派な弁護士さんがいらっしゃいます。あの方が、中山さん、人生というのは畳一畳あったら寝られるし、棺おけに入るときにはどんな土地でもどんなお金でもみんな置いて裸で入るんだから、思い出をつくることが一番いいことだとおっしゃっていました。
私は、それをあの方の言葉らしいなと思って本当にしみじみとこのごろ考えるんですが、何もこだわってどこか土地の一部を持とうということよりも、日本国土全体のことを考えれば、優良な賃貸住宅をうんと世の中に提供して、それが流通することによって経済が活性化したり、またしばらくあそこで住もうかなとか、また外国に行って生活している人なんかは、外国に行っている間だれか家を借りてくれないかなとか、そんな需要もふえてきて、非常にいい賃貸、昔の貸し家思想みたいなものがよみがえってくる。
やたらに土地にこだわって今度は相続のときに兄弟げんかが始まるなんという、親族同士の争いが始まるというようなことから離れていくような、心温まる、やっぱり人間が主と書くと住まいになって、それから家と庭と書いて家庭ですから、庭つきのところへちょっとでも住んでみたいな、二年でも三年でも住んでみたいなというところへ簡単に考え方を変えて流通していく、そんなことが住宅政策の心の部分になったらいいなと、私はこんな気持ちでここへ来ております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/308
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309・大渕絹子
○大渕絹子君 建設大臣として、大変前向きにこの法案に取り組んでいかれる姿勢だというふうに私は認識をいたしました。
本法は、第一条から第四条まで優良な住宅の提供を図っていくべきことが条文化されているんですけれども、この法案をつくるときに建設省にはそれなりの具体的な御相談があって、建設省も、わかった、この条文で行ってくれ、後は引き受けた、君たちが言うこの条文に沿った住宅政策は建設省がきちんとやるからということで納得をされて出しておられるのでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/309
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310・中山正暉
○国務大臣(中山正暉君) たまたま私はそのとき大臣をしておりませんでして、十月五日から私は就任したのでございますが、もう当然のことながら、かつては議員立法に対してもいろんな制約がありました。私は議員立法というのは、アメリカの国会のように議員が考える法律というものがどんどん出てきて、それを国会が御提供いただいたら、それに対する所管事業としてそれの運営に完全を期すという、そういう司法、行政、立法という三権が民主主義でうまく機能するいい考え方じゃないか。
そういう意味で、これをお考えいただいた国会議員の先生方に私は敬意を表しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/310
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311・大渕絹子
○大渕絹子君 それでは、この法案を受けての具体的な新規の住宅政策を述べてください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/311
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312・中山正暉
○国務大臣(中山正暉君) 今後の住宅政策でございますが、住宅政策の基本というのは、国民の一人一人が適正な負担のもとに多様な選択肢の中から自由に住まいを選んで実現すること、そのために引き続き税制とか融資による良質な持ち家取得の推進を図るほか、定期借家権を導入することにより賃貸住宅市場を活性化させ、良質な賃貸住宅の供給を促進するとともに、低所得世帯に対する受け皿としての公営住宅の積極的な供給とか、高齢化に対応した高齢者向け優良賃貸住宅の供給促進、そういうふうなセーフティーネット対策というものを行政として対応に万全を期したい、かように思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/312
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313・大渕絹子
○大渕絹子君 今、大臣が申したことは、今までの住宅建設計画の中にもきちんと盛り込まれてあることでございまして、何もこの法案ができたから新規にということでは全くないのでございまして、建設大臣としてはそうした住宅弱者向けの住宅状況を少しでも改善していくために努力をされてきています。歴代の大臣が努力されてきていますし、今後も努力をしていかなければならないわけです。
私は、新たにこれだけの条項を設けて、しかも優良住宅の促進というのを前面に出しながら、民法改正をその後ろに置いて出してくる法案ですから、これはまず、この定期借家権導入によって社会に吐き出されるであろう住宅弱者に対する手当てというのは具体的にこういうことがありますよということが示せなければ、この法案というのは施行できないのではないかと思うんです。いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/313
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314・中山正暉
○国務大臣(中山正暉君) 私はそんなふうには考えないのでございます。こんな広い家に住んでいても、子供も結婚したし、もう私たち二人になったからだれかに借りてもらいましょう、そういう高齢者も出てこられる。そういう高齢者の方々のいろんな権利関係でそこを離れがたいという思いを、また返してもらうときがきたら返していただきましょうねなんという話し合いをしながら、そういう所有の観念というのに変化が来されて、暗い面ばかりを見ずに私は明るく、日本は戦争に負けた五十四年前に海外からどんどん人が帰ってきたものですから、その中で借家人を保護しようという歴史的な経過がありました。
今、衣食は足りましたけれども、住という問題が、もっとそれを簡単に流通させる知恵がないものかなと。その知恵の結集が私はこの議員立法だ、こんなふうに思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/314
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315・大渕絹子
○大渕絹子君 国論が二分をされている問題でございまして、早急に結論を出すべきでないというふうに思うところでございます。
それでは、政務次官の方にお聞きをさせていただきたいと思います。公営住宅とか公団住宅というのがございますけれども、その入居をするときにいろいろな入居条件をクリアして入居するわけなんですけれども、入居をする契約状況は一般には建物賃貸借契約と認識してよろしゅうございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/315
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316・加藤卓二
○政務次官(加藤卓二君) 公営の賃貸住宅、公団の賃貸住宅等の御質問なので、これは民法六百四条にかかわる問題を御質問なさっているのじゃないかなというような気がするんですが……発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/316
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317・大渕絹子
○大渕絹子君 いえ、聞いたことだけに答えてください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/317
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318・加藤卓二
○政務次官(加藤卓二君) 一般住宅と同じでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/318
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319・大渕絹子
○大渕絹子君 そうしますと、建物の賃貸借契約というふうに受けとめてよろしいですよね、一般のものと一緒ということですから。
そうしますと、今、政務次官がちょっと触れましたけれども、今回のこの法律で「民法第六百四条の規定は、建物の賃貸借については、適用しない。」という一文が入っています。そうしますと、契約期間の定めのない建物の賃貸契約については従前は民法の規定が使われることになっているんですけれども、この六百四条の規定を外すということによって不都合は起こらないんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/319
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320・加藤卓二
○政務次官(加藤卓二君) 定期借家権の導入の状況についての検討に入ってくると思うんですが、公営住宅はやっぱり住宅に困窮した低額所得者に向けて賃貸住宅としてつくっておりますので、一定の入居条件を設けているところでございます。
どういう条件かといったら、入居者が高額所得者になったときなどの特段の理由がないとき以外は普通のあれと同じだ。ですから……発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/320
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321・大渕絹子
○大渕絹子君 いえ、結構です。そうではなく、私は法文上のことを言っています。ここは大変大事なところです。発議者の方もちょっと聞いていてください。
公営住宅法や公社・公団住宅法の中には契約期間の定めはないのです。契約期間の定めがないものについては民法の六百四条の規定で今までは対応してきました。これで民法の六百四条の規定を外すと、では公営住宅や公団住宅、公社住宅に対しては契約期間というものに何を適用するのかというのが、この法案が施行された途端に全く契約期間という概念がなくなってしまうんですね。ですから、この法案を適用することは私はできないと思っているんですよ。欠陥法案だ、そういうふうに思っているんですけれども、いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/321
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322・加藤卓二
○政務次官(加藤卓二君) 結局、民法六百四条に戻るわけですが、私たちが考えている考え方は間違っていないと思うんですが、六百四条に定めてある契約における契約期限の上限は規定してあります。しかし、公営住宅の入居者の賃貸契約については期間の定めがない契約を前提としているため、民法六百四条の規定が適用されるような事例は今までないわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/322
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323・大渕絹子
○大渕絹子君 事例があるないということではなく、民法上あるいは今までの通例上は、何か起こったときにはそれが適用されるということが民法の総論、これは公営住宅の管理の総論のところで定められているんですね。
ですから、もしこの法律が施行されるとすれば、当然公営住宅法や公社・公団法の改正がなければならないのですけれども、残念ながらこの法律にはそれがついてきておらないんです。ですから、これを施行することは私はできないというふうに思います。もう一度出し直していただく以外にはないというふうに思うのですけれども。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/323
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324・加藤卓二
○政務次官(加藤卓二君) 公団賃貸住宅ではそういうふうな考え方でなく賃貸をしておりますので、ですからこの問題とは関係なく考えていただくべき条項じゃないかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/324
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325・大渕絹子
○大渕絹子君 これは特措法で、あらゆる法律の上を行く法律なんですね。この法律で、「民法第六百四条の規定は、建物の賃貸借については、適用しない。」と切っているんです。そうしますと、今までの通例の中で公団とかあるいは公営住宅についてはこれを適用することになっていて、その期間については、それはもちろん入居条件等々がありますから、その条件にマッチしなくなったときには出ていっていただくのは当たり前のあれですよ。だけれども、さっき私は一番先に確認させていただいたのは、公営住宅の賃貸借も建物の賃貸借と同じですねというのは確認させていただきました。そうでしょう。建物の賃貸借について適用しないということでここで切られるならば、一切の公団とか公営住宅ですか、そういうものについては建物の期間についてそれではどこを適用していくのかというのが、この法が施行された途端に消えてしまうんですね。
ですから、この施行令の中にいろいろな事例が出ているんですけれども、公営住宅法に規定のない場合には借家法及び民法が適用されるものと解されるところである、こうなっていますね。それで、この借家法でもこの公営住宅のことについては何ら触れられていない。そして、この民法だけは切ってしまう。こういう状況であると法律上不備なんですよ。全然その後の押さえるところがないわけですから、これはこのまま施行されたら、法体系上全くのミスがあって施行することはできない。法制局がこんな法律をよく許したというふうに思うんですけれども。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/325
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326・保岡興治
○衆議院議員(保岡興治君) 公営住宅、公団賃貸住宅、これは民法の六百四条の適用関係はどうなっているのかということが一つ大前提としてありますが、それは六百四条というのは二十年を超える賃貸借契約は認められないよ、そういう契約をしても二十年になるよ、こういう規定ですね。これは、公営住宅の入居者との賃貸借契約は、これは期間の定めがない契約を前提としているわけです。だから、当然、期間の定めのある上限のこの六百四条は適用のケースはないんです。ですからまた、公団賃貸住宅については入居者との賃貸借契約の期間を一年として、当事者の申し出がない限り同一条件で契約を一年ごとに更新していることになります。
こういう意味で、また六百四条、二十年以上は契約できませんよという規定は適用する事例はないということで、特別に新たに法を備える必要はないかと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/326
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327・大渕絹子
○大渕絹子君 実際にどうなっているかという問題ではないのですね。法体系上の問題を言っているんです。今まで公営住宅に関しては民法六百四条の適用によって事が起こったときにはその適用があるんですよということで処理をされてきた、公社・公団についても。具体例があったかどうかはわかりませんよ。しかし、運営上は民法のこの最長二十年までというここのところが基準になってきているんです。紛争がないからそれが適用されたかどうかはわかりません。
しかし、ここで、この法文上で、この条項でカットする。民法の規定は一切建物の賃貸借に使わないという条項が起こってくると、それでは公共住宅や公営住宅の契約期間については何を適用するのかということになるわけで、法的な欠陥だと私は思うのです。実用の問題じゃないですよ。法体系上の問題を言っているんです。それはいかがなんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/327
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328・保岡興治
○衆議院議員(保岡興治君) 先ほど御説明したように、公営住宅の場合は、性質上期間の定めのない契約ということでございますから、契約の期間の定めのない契約なんです。期間を定めていない賃貸借契約なんです。
ですから、期間を定めた場合の二十年を超えるものに対する規制法規は当然適用になりませんということなんです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/328
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329・大渕絹子
○大渕絹子君 これは私の解釈じゃないんです。法解釈をしている皆さんが言っているんです。
公営住宅法に規定のない場合は借家法及び民法が適用されるものと解する、こうなっているわけですから、民法を外してしまったら適用するものが何もなくなっちゃうので、これは欠陥ですよ。出し直していただくか、ここを改正してもらう以外に私は通すことはできないというふうに思うのですけれども、いかがでしょうか。ここはもう行ったり来たりで決まりませんけれども。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/329
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330・保岡興治
○衆議院議員(保岡興治君) 公営住宅あるいは公団賃貸住宅にもいろんな場面があって、特例がなければ原則法として民法を適用するということはおっしゃるとおりです。しかし、民法六百四条に限っては、期間の契約をした場合にその上限を画する法ですから、事柄の性質上、民法六百四条は公営住宅あるいは公団賃貸住宅には適用する場面がないから、特例法とか一般法とか論ずる意味がないということなんです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/330
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331・大渕絹子
○大渕絹子君 建物の賃貸借全体について民法の規制を切るということでしょう。そして、建物の賃貸借について、公営住宅や公団住宅は民法の規制を取ると、こうなっている。この法体系の中で、この特措法によって建物の賃貸借に限っては民法六百四条は削除するという一項が入ってしまっては、今までの法体系が崩れてしまうんです、法体系上。それを言っているんです、私は。現実に不都合があるかどうかという問題ではないのです。法体系上の不備があるのではないかと思います。
建設大臣、こういうことなんです。建設省は公営住宅とか公団住宅を管轄していますね。その運用の中で、期間に対しては定めはないけれども、民法の規定を準用するということになっておって、今までそれで来たわけですけれども、今度これで外してしまって、その後の補足の法律が何もない状況の中で、これは不備じゃないか、こう思うので、私はもう時間がないので言いっ放しになるのかどうかわかりませんけれども、建設大臣、この法律を主管して、今この議論をして、建設大臣が、これでよし、おれはこのままでやるとか、どういうことなのかちょっとわかりませんけれども、ここはしっかりとらえていただかないと、現実的に何も問題はないといたしましても法体系上はおかしいということなんです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/331
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332・中山正暉
○国務大臣(中山正暉君) 先生が解釈の上でいろいろ思い違っていらっしゃるんじゃないかと思う点は、保岡先生の御答弁で私はそのとおりでいいと思っているんですが、改めてはっきり申し上げておきますと、公営住宅については期間の定めがない、だから六百四条適用の余地はないということでございますので、その辺の解釈をひとつはっきりしておいていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/332
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333・大渕絹子
○大渕絹子君 時間だからやめます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/333
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334・石渡清元
○委員長(石渡清元君) 他に御発言もないようですから、質疑は終局したものと認めます。
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/334
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335・石渡清元
○委員長(石渡清元君) この際、委員の異動について御報告いたします。
本日、小川敏夫君、高野博師君、坂野重信君及び福山哲郎君が委員を辞任され、その補欠として海野徹君、益田洋介君、中島啓雄君及び櫻井充君が選任されました。
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/335
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336・石渡清元
○委員長(石渡清元君) これより討論に入ります。
御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/336
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337・緒方靖夫
○緒方靖夫君 私は、日本共産党を代表して、良質な賃貸住宅等の供給の促進に関する特別措置法案に反対の討論を行います。
本法案は、良質な賃貸住宅の供給促進を掲げていますが、法案の中心的な内容は定期建物賃貸借契約、いわゆる定期借家制度を創設する借地借家法の改定です。定期借家制度で良質な賃貸住宅が大量に供給される当てがないことは、参考人質疑で指摘されたとおりです。
本当の目的は、不動産の流動化、証券化の促進策としての規制緩和にほかならず、建物の賃貸借を弱肉強食の市場原理にさらすものと言わざるを得ません。借家人から正当事由制度の保護を奪う定期借家制度は、一九九一年の借地借家法制定でも見送られましたが、本法案はその根本問題を改めないまま衣をかえただけのものです。借家人の居住権に重大な影響をもたらす本法案について、法務委員会との連合審査も行わないまま、たった一日の審議で採決することは、到底許すことはできません。
法案に反対する第一の理由は、定期借家制度によって高齢者世帯など住宅弱者の居住の安定が著しく損なわれることです。
住宅政策に関する規定は、従来の住宅施策を並べただけの努力規定であり、何ら実効性が保障されておりません。家賃補助制度は努力規定さえなく、到底セーフティーネットなどと言えるものではありません。
第二の理由は、商店や町工場などの借家による営業が大変困難になることです。
初期投資が必要な営業は短期の定期借家では困難であり、また長期契約の場合は、閉店を余儀なくされた場合も家賃を払い続けなければなりません。貸し手側からは正当事由があれば中途解約の申し入れができるのに、借家人側からはどんな事情でも中途解約ができないという不公平、不平等な仕組みは許されるものではありません。
第三の理由は、既存の借家人の居住の安定をも脅かすおそれが強いことです。
既存の契約には適用されないとしていますが、形式的な合意で定期借家への切りかえが行われる危険があります。適用除外といっても、期間満了で退去させられてしまえば救済のしようがありません。
第二回国連人間居住会議でも、居住は人権、強制退去の規制が宣言されております。こうした国際的な流れに反し、不動産投資に都合のよいように借家制度を改悪する本法案は成立させるべきではないことを強く表明して、反対討論を終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/337
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338・大渕絹子
○大渕絹子君 私は、社会民主党・護憲連合を代表して、良質な賃貸住宅等の供給の促進に関する特別措置法案に対する反対討論を行います。
討論を行うに際し、まず本法案は、借地借家法の改正による定期借家制度導入が主目的であるにもかかわらず、良質な賃貸住宅等の供給の促進という大義名分のもとに、国土・環境委員会の場でその審査を行うことは、極めて問題があるということを指摘するものであります。
次に、反対の具体的理由を申し述べます。
第一に、本法案が借地借家法本来の立法趣旨に反することであります。
借地借家法は、賃借人及び賃貸人に紛争が生じた場合、その権利調整の目安となるべきものであり、特に賃借人の保護の観点から築き上げられてきたものであります。しかしながら、定期借家制度導入を企図する本法案は、賃貸人に極めて有利な内容となっており、これまでの経緯に大きく逆行するものと言わざるを得ません。
第二に、現行の期限つき借家制度の充実改善を行えば十分であることであります。
現行の借地借家法では、転勤その他やむを得ない事情がある場合、一定期間だけ建物を賃貸する期限付借家制度が既に存在しています。現行制度に問題があるのであれば、この期限つき借家の適用要件を多少緩和することで所期の目的は十分達成可能であり、借地借家法第三十八条を全面改正して定期借家制度を新たに導入する必要性は全く皆無であります。
第三に、定期借家制度の導入により、中堅ファミリー層などを対象とした良質で低廉な賃貸住宅の供給がふえる確証はないことであります。
また、本法案に盛り込まれた良質な賃貸住宅等の供給の促進に関する規定も、単なる努力義務にすぎません。
第四に、定期借家制度では賃借人の保護などの対策が不十分であるという重大な問題があります。
具体的な例を挙げれば、まず定期借家となれば期間の満了に伴い、賃借人側にどのような理由があっても明け渡しが請求される点であります。病気入院など賃借人が退去できないやむを得ない事情が発生しても自動的に明け渡しを強制されることになり、明け渡しに際しての配慮が欠けています。
また、定期借家制度がすべての建物賃貸借を対象としている点であります。
本来、ファミリー向け賃貸住宅の供給促進を目指すのが制度導入の趣旨であったことにかんがみれば、その対象は一定規模以上の良好な建物の賃貸借に限定すべきであり、小規模な住宅についてまで対象とすること自体、その趣旨になじまないものであります。加えて、零細業者、小規模住宅入居者などは、契約締結において賃貸人との地位が対等であるとは言い切れず、この点からも小規模建物を対象とするのに問題があります。
その他、床面積二百平米以上の居住用・営業用賃借人は、理由のいかんにかかわらず中途解約権を持たない点も問題であります。
また、現行借地借家法第三十二条の借賃増減請求権が、賃料改定に関して特約がある場合適用されない点であります。賃借人は賃料改定の特約に拘束され、事情が変更した場合にも賃料減額の請求ができない不利な環境となります。
民法第六百四条の規定を建物の賃貸借全般について適用しない点も、賃貸借の最長期間についての制限がなくなることとなり、賃借人に不利益を及ぼすことが懸念され、問題となります。
反対の理由の第五は、今回の法案の内容に関する周知徹底策などがいまだ不十分な点にあります。特に、定期借家制度導入については、その施行期日を当初は公布後一年以内としていたものが修正され、来年三月一日となっておりますが、国及び地方公共団体による周知徹底、民間を含めた制度導入に関する諸準備等の事情をかんがみると、現場の混乱が容易に予想され、それを回避し得る十分な対応策が示されていません。
以上の理由により、社会民主党・護憲連合はこの法案に反対することを明言して、私の討論を終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/338
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339・石渡清元
○委員長(石渡清元君) 他に御発言もないようですから、討論は終局したものと認めます。
これより採決に入ります。
良質な賃貸住宅等の供給の促進に関する特別措置法案に賛成の方の挙手を願います。
〔賛成者挙手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/339
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340・石渡清元
○委員長(石渡清元君) 多数と認めます。よって、本案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
岡崎トミ子君から発言を求められておりますので、これを許します。岡崎トミ子君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/340
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341・岡崎トミ子
○岡崎トミ子君 私は、ただいま可決されました良質な賃貸住宅等の供給の促進に関する特別措置法案に対し、自由民主党、民主党・新緑風会、公明党、自由党、参議院の会及び二院クラブ・自由連合の各派共同提案による附帯決議案を提出いたします。
案文を朗読いたします。
良質な賃貸住宅等の供給の促進に関する特別措置法案に対する附帯決議(案)
政府は、本法の施行に当たり、次の諸点について適切な措置を講じ、その運用に遺憾なきを期すべきである。
一、賃貸住宅、特に民間賃貸住宅の居住水準が、持家の居住水準と較べて低水準にとどまっていることにかんがみ、その水準を向上させるため、国は、財政、税制及び政策金融の分野において、これまで以上に賃貸住宅に配慮した施策を展開すること。
二、本法の趣旨を広く国民に周知させるための広報活動を積極的に行うこと。
特に、定期建物賃貸借については、契約終了時に紛争が生じることのないよう、①既存の建物賃貸借契約の更新には適用されないこと、②賃借人に対する書面の交付・説明義務を果たさなければ更新しない旨の特約は無効であること等、その内容に関してあらゆる方法を通じて十分な周知徹底を早急に実施すること。
三、本法は良質な賃貸住宅等の供給の促進を図ることを目的としたものであり、これによって賃借人の居住の安定が阻害されるようなことは意図したものではないことについて、国、地方公共団体等において賃貸人、宅地建物取引業者及び賃貸住宅管理業者に対する意識喚起のための方策がとられるように努めること。
四、住宅建設五箇年計画の策定に当たっては、公共賃貸住宅や政策的融資に係る賃貸住宅について具体的な居住水準目標等を設定し、その計画的な達成に努めるなど、良質な賃貸住宅の供給の促進に関する実効性が十分確保されるようにすること。
五、住宅性能表示制度の普及を図り、賃貸住宅の性能評価が促進されるよう適切な方策を講ずるとともに、賃借人が賃貸借契約前に当該賃借建物の性能について知ることができるよう、性能表示住宅については、その住宅性能を宅地建物取引業法上説明すべき重要事項として追加することを検討する等、所要の措置を講ずること。
六、賃借人が賃貸住宅の選択に際して的確な判断ができるよう、従前の建物賃貸借か定期建物賃貸借かの種別、家賃、住宅性能に関する情報等の提供や、各種の相談が可能となる体制の総合的整備を図り、その充実に努めること。
そのため、国、地方公共団体、公共賃貸住宅の管理者、宅地建物取引業界等相互間における効果的連携がなされるよう、適切な措置を講ずること。
七、定期建物賃貸借制度の導入に当たっては、紛争の発生を未然に防止するため、国の主導により標準約款等を作成するとともに、賃借人に対する書面の交付・説明義務に関して、その事実を証明する書類を契約書に添付することや宅地建物取引業法上説明すべき重要事項として追加すること等について検討を行うなど、居住用借家や小規模営業用借家の賃借人などが不当な不利益を受けることがないよう、万全の措置を講ずること。
八、建物賃貸借に伴う紛争の早期円満解決に資するため、国民生活センター、地方公共団体の住宅相談窓口、法律相談窓口、消費者センター等における対応を強化するとともに、これらの利用が容易にできるようにし、さらに、受け付けた相談等の内容について整理・分析して、可能な限り公表するよう、適切な指導を行うこと。
また、売買、賃貸借、住宅性能表示、マンション管理などの不動産に係る紛争について、その早期、適切な解決が図られるよう、あっせん、調停、仲裁等を行うための総合的な紛争処理機関の在り方について今後検討すること。
九、低所得高齢者、障害者、病気入院者などが定期建物賃貸借等において不当な差別を受けることがないよう、指導、啓蒙等特段の配慮をするとともに、公共賃貸住宅においては、これらの者の入居がより容易になるような制度運用を図ること。
十、賃貸人が当該賃貸住宅を処分しようとする場合には、賃借人が当該賃貸住宅を取得しその居住の安定化を図る見地から、賃借人に対する優先的な売却情報の提供に関する契約の在り方について検討すること。
十一、法の施行後四年を目途とする建物賃貸借の在り方の見直し等に資するため、国は、本法第二条から第四条の定める国、地方公共団体等の責務に基づいて具体的にとった措置についてとりまとめを行うとともに、関係機関が受け付けた相談・苦情や紛争処理に関する内容の分析結果を収集するなど、居住の用に供する建物賃貸借等の実態について詳細な状況把握に努め、これらに関し定期的に公表すること。
右決議する。
以上でございます。
何とぞ御賛同いただきますようお願い申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/341
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342・石渡清元
○委員長(石渡清元君) ただいま岡崎君から提出されました附帯決議案を議題とし、採決を行います。
本附帯決議案に賛成の方の挙手を願います。
〔賛成者挙手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/342
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343・石渡清元
○委員長(石渡清元君) 多数と認めます。よって、岡崎君提出の附帯決議案は多数をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。
ただいまの決議に対し、中山建設大臣から発言を求められておりますので、この際、これを許します。中山建設大臣。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/343
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344・中山正暉
○国務大臣(中山正暉君) 大変御熱心な御討議、ありがとうございました。
良質な賃貸住宅等の供給の促進に関する特別措置法案に対する附帯決議について提起されました賃貸住宅の居住水準の向上、本法の趣旨の十分な周知徹底、賃貸住宅等に関するきめ細かな情報提供体制の充実及び相談体制の強化等の課題につきましては、政府といたしましても御趣旨を踏まえまして配慮をしてまいりたいと存じておりますので、今後ともよろしくお願いいたします。
ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/344
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345・石渡清元
○委員長(石渡清元君) なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/345
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346・石渡清元
○委員長(石渡清元君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
本日はこれにて散会いたします。
午後五時二十分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114614314X00419991207/346
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