1. 会議録本文
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000・会議録情報
平成十二年三月十四日(火曜日)
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議事日程 第九号
平成十二年三月十四日
午後一時開議
第一 介護労働者の雇用管理の改善等に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)
第二 港湾法の一部を改正する法律案(内閣提出)
第三 国立学校設置法の一部を改正する法律案(内閣提出)
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○本日の会議に付した案件
日程第一 介護労働者の雇用管理の改善等に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)
日程第二 港湾法の一部を改正する法律案(内閣提出)
日程第三 国立学校設置法の一部を改正する法律案(内閣提出)
消費者契約法案(内閣提出)の趣旨説明及び質疑
午後一時二分開議発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114705254X01120000314/0
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001・伊藤宗一郎
○議長(伊藤宗一郎君) これより会議を開きます。
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002・伊藤宗一郎
○議長(伊藤宗一郎君) 御報告することがあります。
永年在職議員として表彰された元議員佐々木良作君は、去る九日逝去されました。まことに哀悼痛惜の至りにたえません。
佐々木良作君に対する弔詞は、議長において昨十三日既に贈呈いたしております。これを朗読いたします。
〔総員起立〕
元民社党中央執行委員長前衆議院議員正三位勲一等佐々木良作君は 多年憲政のために尽力し 特に院議をもってその功労を表彰されました 君は終始政党政治の推進に力をいたし議会制民主政治の発展に貢献されました その功績はまことに偉大であります
衆議院は 君の長逝を哀悼し つつしんで弔詞をささげます
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日程第一 介護労働者の雇用管理の改善等に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114705254X01120000314/2
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003・伊藤宗一郎
○議長(伊藤宗一郎君) 日程第一、介護労働者の雇用管理の改善等に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。
委員長の報告を求めます。労働委員長赤松広隆君。
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介護労働者の雇用管理の改善等に関する法律の一部を改正する法律案及び同報告書
〔本号末尾に掲載〕
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〔赤松広隆君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114705254X01120000314/3
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004・赤松広隆
○赤松広隆君 ただいま議題となりました介護労働者の雇用管理の改善等に関する法律の一部を改正する法律案について、労働委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。
本案は、介護事業における雇用機会の確保の重要性にかんがみ、介護労働者の雇用管理の改善に関する措置を促進するため、当該措置を実施する事業主に対し、雇用保険法の雇用安定事業等として助成及び援助を行おうとするものであります。
その主な内容は、
第一に、身体上または精神上の障害があることにより日常生活を営むのに支障がある者に対する入浴、排せつ、食事等の介護、機能訓練、看護及び療養上の管理等の福祉サービスまたは保健医療サービスを介護関係業務と定義し、専らこれらの介護関係業務に従事する労働者を介護労働者と総称するものとすること、
第二に、政府は、介護関係業務に係る新たなサービスの提供または介護事業の開始に伴って実施する雇用管理の改善に関する措置についての計画の認定を受けた事業主が、当該計画に基づきその雇用する介護労働者の福祉の増進を図るために必要な措置を講ずる場合に、雇用保険法の雇用安定事業等による必要な助成及び援助を行うものとすること、
第三に、職業安定機関と職業紹介事業者その他の関係者は、介護関係業務に係る労働力需給の適正かつ円滑な調整を図るため、雇用情報の充実等に関し、相互に協力するように努めなければならないものとすること、
第四に、労働大臣は、介護労働安定センターに、雇用保険法の雇用安定事業等の業務並びに介護労働者及び介護労働者になろうとする者に対する教育訓練の業務を行わせるものとすること
などであります。
本案は、去る二月二十三日労働委員会に付託され、翌二十四日牧野労働大臣から提案理由の説明を聴取し、三月十日に質疑を終了し、採決の結果、全会一致をもって原案のとおり可決すべきものと議決した次第であります。
以上、御報告申し上げます。(拍手)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114705254X01120000314/4
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005・伊藤宗一郎
○議長(伊藤宗一郎君) 採決いたします。
本案は委員長報告のとおり決するに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114705254X01120000314/5
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006・伊藤宗一郎
○議長(伊藤宗一郎君) 御異議なしと認めます。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。
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日程第二 港湾法の一部を改正する法律案(内閣提出)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114705254X01120000314/6
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007・伊藤宗一郎
○議長(伊藤宗一郎君) 日程第二、港湾法の一部を改正する法律案を議題といたします。
委員長の報告を求めます。運輸委員長仲村正治君。
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港湾法の一部を改正する法律案及び同報告書
〔本号末尾に掲載〕
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〔仲村正治君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114705254X01120000314/7
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008・仲村正治
○仲村正治君 ただいま議題となりました港湾法の一部を改正する法律案について、運輸委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。
本案は、近年における港湾整備の効率化及び港湾をめぐる環境の保全の要請に適切に対応するため、重要港湾等の定義の明確化及び港湾工事の費用に対する国の負担割合の見直しを行うとともに、環境の保全への配慮に関する事項を基本方針の記載事項に追加すること及び放置艇対策を推進することなど所要の措置を講ずるものであります。
本案は、二月八日本院に提出され、三月六日本委員会に付託されました。本委員会においては、三月七日二階運輸大臣から提案理由の説明を聴取し、去る十日質疑を行い、同日質疑を終了いたしました。次いで、討論を行い、採決の結果、本案は賛成多数をもって原案のとおり可決すべきものと議決した次第であります。
以上、御報告申し上げます。(拍手)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114705254X01120000314/8
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009・伊藤宗一郎
○議長(伊藤宗一郎君) 採決いたします。
本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114705254X01120000314/9
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010・伊藤宗一郎
○議長(伊藤宗一郎君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。
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日程第三 国立学校設置法の一部を改正する法律案(内閣提出)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114705254X01120000314/10
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011・伊藤宗一郎
○議長(伊藤宗一郎君) 日程第三、国立学校設置法の一部を改正する法律案を議題といたします。
委員長の報告を求めます。文教委員長鈴木恒夫君。
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国立学校設置法の一部を改正する法律案及び同報告書
〔本号末尾に掲載〕
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〔鈴木恒夫君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114705254X01120000314/11
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012・鈴木恒夫
○鈴木恒夫君 ただいま議題となりました法律案につきまして、文教委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。
本案は、国立の大学における教育研究体制の整備及び大学等の教育研究水準の向上に資する等のため、所要の改正を行おうとするもので、その主な内容は、
第一に、政令で定める国立大学の大学院に、研究科にかわる教育研究上の基本となる組織として、教育部及び研究部を置くものとすること、
第二に、弘前大学、岐阜大学及び山口大学に併設されている医療技術短期大学部を廃止して、それぞれの大学の医学部に統合すること、
第三に、学位授与機構を改組して大学評価・学位授与機構とし、大学の教育研究活動等の状況についての評価及びその結果の提供等の業務を追加すること、
第四に、昭和四十八年度以降に設置された国立医科大学等に係る平成十二年度の職員の定員を定めること
などであります。
本案は、三月三日本委員会に付託され、同月七日中曽根文部大臣から提案理由の説明を聴取し、翌八日質疑に入り、参考人の意見聴取を含めた審査を行い、去る十日質疑を終了し、討論、採決の結果、賛成多数をもって原案のとおり可決すべきものと決しました。
なお、本案に対し附帯決議が付されたことを申し添えます。
以上、御報告申し上げます。(拍手)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114705254X01120000314/12
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013・伊藤宗一郎
○議長(伊藤宗一郎君) 採決いたします。
本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114705254X01120000314/13
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014・伊藤宗一郎
○議長(伊藤宗一郎君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。
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消費者契約法案(内閣提出)の趣旨説明発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114705254X01120000314/14
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015・伊藤宗一郎
○議長(伊藤宗一郎君) この際、内閣提出、消費者契約法案について、趣旨の説明を求めます。国務大臣堺屋太一君。
〔国務大臣堺屋太一君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114705254X01120000314/15
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016・堺屋太一
○国務大臣(堺屋太一君) 消費者契約法案につきまして、その趣旨を御説明申し上げます。
現在、我が国では、国民の自由な選択を基礎とした公正で自由な競争が行われる市場メカニズム重視の社会の実現を目指し、構造改革が推進されています。こうした中、政策の基本原則を、行政による事前規制から市場参加者が遵守すべき市場ルールの整備へと転換することが求められており、消費者のための新たなシステムづくりが大きな課題になっています。
その一方で、構造改革の進展に伴う商品、サービスの多様化の一層の進展による消費者の選択の自由が拡大する反面、消費者と事業者との間にある情報、交渉力の格差を背景に、消費者が事業者との間で締結する契約、いわゆる消費者契約に係るトラブルが増加しております。
こうした認識のもと、政府といたしましては、これまで国民生活審議会及び幅広い関係各方面との議論を重ねてまいりましたが、昨年末の国民生活審議会の報告の趣旨に沿い、公正で予見可能性の高い新たな民事ルールを整うべきことと結論が得られましたので、本法案を提出することといたした次第であります。
この法律の制定により、消費者利益が擁護されるとともに、消費者と事業者双方の契約当事者としての自己責任に基づいた行動が促されることによって、消費者と事業者との信頼関係が増し、新たな経済活動や業態の創造が容易となり、活発化するものと確信しております。
次に、この法案の趣旨を御説明申し上げます。
この法律は、消費者が事業者との間で締結する契約に係る紛争を公正かつ円滑に解決するため、次の二点について定めることとしております。
第一は、消費者契約の締結について、勧誘をする際に重要事項について事実と異なることを告げたり、事業者に対し消費者がその住居等から退去すべき旨の意思を表示したにもかかわらず退去しないなど、事業者の一定の行為により消費者が誤認し、または困惑した場合について、契約の申し込み、またはその承諾の意思表示を取り消すことができることとしております。
第二に、事業者の損害賠償の責任を免除する条項、消費者が支払う損害賠償の額の予定、または違約金が一定の限度を超えることとなる条項のほか、消費者の利益を一方的に害する条項について、その全部または一部を無効とすることとしております。
その他、法の目的、消費者契約の範囲、事業者及び消費者の努力規定、取り消し権の行使期間等所要の規定を置くこととしております。
以上、消費者契約法案につきまして、その趣旨を御説明申し上げた次第でございます。(拍手)
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消費者契約法案(内閣提出)の趣旨説明に対する質疑発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114705254X01120000314/16
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017・伊藤宗一郎
○議長(伊藤宗一郎君) ただいまの趣旨の説明に対して質疑の通告があります。順次これを許します。枝野幸男君。
〔枝野幸男君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114705254X01120000314/17
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018・枝野幸男
○枝野幸男君 私は、民主党を代表し、ただいま議題となりました消費者契約法案について質問をいたします。
対等な力関係にある個人間の取引を前提とした明治民法が施行されて既に百年が過ぎ、私たちを取り巻く環境は大きく変化しています。個人とは比較のしようのない大規模な企業が商品やサービス提供の中心となりました。商品流通の過程が複雑化するとともに、商品やサービスそのものの性質も著しく複雑化しています。
もはや、商品やサービスについての情報を独占し、流通過程にアクセスすることのできる事業者と、一個人としての消費者とでは、取引の場面に立った時点で情報力や交渉力において大きな格差があることは否定できません。対等な個人間の取引を前提とした明治民法では、実質的な不公正、不公平が生じる事態となっております。
そこで、まず、所管大臣である堺屋大臣と臼井法務大臣にこうした認識に対する御見解をお尋ねいたします。私は、こうした認識が今回消費者契約法をつくることになった最大の背景であると考えますが、いかがでしょうか。
さて、私たち民主党は、こうした基本認識に基づき、既に昨年十二月十日、政府案に先立って衆参両院に独自の消費者契約法案を提出しています。以下、この民主党案を御紹介しながら、政府案との違いを中心に質問をいたします。
まず、法律の目的についてお尋ねいたします。
政府案は、消費者と事業者との間に情報の質及び量並びに交渉力の格差があることを認めながら、本法律案の目的として格差の解消そのものを明確には掲げておりません。民主党案は、端的に、消費者と事業者が対等な立場において契約を締結することができるようにすることというのを目的として掲げております。
政府においても、格差を認めておられる以上、その格差を是正、解消し、実質的な対等性を確保することに本法案の目的があることは否定しないものと推測いたしますが、所管大臣の見解をお尋ねいたします。
次に、消費者契約の定義についてお尋ねします。
消費者契約に該当するか否かの基準として、事業性の有無を掲げていることでは両案に差異はありません。しかし、民主党案が「主として」という文言を置いているのに対し、政府案にはこうした文言が入っておりません。
例えば、個人事業者が主に趣味に利用する目的でパソコンを購入し、部分的に経理処理に利用したり、チラシの作成に利用したりすること、こうしたケースは少なからずあると思います。こうしたケースが部分的にでも事業に用いられているからといって消費者契約に該当しないとすることは、実質的に不合理であると考えますが、政府案ではどうなるのか、所管大臣の御見解をお伺いいたします。
また、従来から、利殖や投資などの資産形成取引が消費者契約に含まれ得るのか、論点の一つとされてまいりました。政府案ではこの点が明確ではありません。個人が住宅資金の形成や老後の生活資金などのために利殖や投資を行うケースも消費者契約法が適用されるべきと考えますが、本法案ではどうなるのか、所管大臣にお尋ねいたします。
次に、政府案第三条第二項に規定する消費者の努力義務についてお尋ねします。
この規定はいわゆる努力義務ですから、法的トラブルが生じた場合の裁判規範としては意味がないものと考えます。しかし、消費者団体の皆さんなどから、この規定が乱用されることを憂慮する声が上がっています。
そこで、所管大臣及び法務大臣にお尋ねいたします。この規定はあくまでも努力規定、訓示規定であり、この規定を根拠に消費者が新たな法的義務を負うものではないと考えますが、いかがでしょうか。特に、裁判における紛争処理の過程において、この条項により消費者の保護が狭まることがあってはならないと考えますが、両大臣の認識をお伺いいたします。
一方、第三条第一項は、事業者による情報提供についても「努めなければならない」という規定にとどめています。
そもそも、消費者契約法制定の背景にある情報力の格差という問題を踏まえれば、事業者の情報提供義務は本法案に法的義務として明記するのが当然であると考えますが、所管大臣の御見解はいかがでしょうか。
ちなみに、民主党案は、情報提供義務という規定の仕方こそしていませんが、情報提供義務違反の行為があった場合に契約を取り消せるものとして、事業者に義務を課しております。
少なくとも、本条項が規定されたことによって、これまで証券被害判例などで積み上げられてきた事業者の説明義務に関する法理が否定されるものであったり、後退するものであったりしてはならないと考えます。所管大臣と法務大臣の見解をお尋ねします。
次に、政府案第四条の重要事項についてお尋ねします。
まず、法務大臣と所管大臣の双方にお尋ねします。
民法第九十五条に規定する錯誤の要件である法律行為の要素と、本法律案第四条第四項の重要事項とではどこがどう異なるのでしょうか。明確にお答えください。
また、経済企画庁長官にお尋ねします。
第四条第二項は「当該重要事項に関連する事項」という規定の仕方をしていますが、これは何を意味するのでしょうか。具体的にお答えください。この規定では余りにも抽象的過ぎて、いかようにも解釈が可能にならないでしょうか。
政府案では、非常に限定された重要事項に該当しない場合、重要事項に関連する事項としてこの第四条第二項の問題となり、事実と異なることを告げても故意でなければ容認されることになります。しかし、消費者が事業者の故意を立証することは著しく困難であります。
そこで、同項の故意の立証は消費者と事業者のいずれにあるのか。もし、消費者にあるとのお答えならば、その立証は本当に可能であるとお考えなのか、所管大臣の答弁を求めます。
最近の消費者被害の具体例として、現在使用中の商品に関連して虚偽の事実を告げることで買いかえに追い込むといういわゆる点検商法や、代金を福祉の目的で役立てるなどという虚偽の事実を告げる福祉商法、あるいは、法令などについて虚偽の事実を告げ契約を獲得するケースなどが報告されています。
民主党案では、こうしたケースを含めて保護することとしています。これら三つのケースも保護すべき場合が多いのではないかと考えますが、所管大臣はいかがでしょうか。そして、本法案でこうしたケースが保護可能であるのかもお尋ねをいたします。
次に、第四条第三項に関連してお尋ねします。
まず、同項に規定する不退去等は、刑法の不退去罪や監禁罪にそれぞれ該当する行為にほかならないと考えますが、要件においてどこか違いがあるのでしょうか。所管大臣と法務大臣の見解をお尋ねします。
また、民法第九十六条第一項に規定する強迫の要件は、畏怖することと言われています。そして、一方で、完全に意思の自由を失った場合は、そもそも民法第九十六条第一項の強迫ではなく、当然無効とされておりますので、ここでの畏怖は、意思の自由を完全に失うほど強いものではないというのが最高裁の確定判例です。
とすると、ここで言う畏怖と本法案に規定する困惑との違いはどこにあるのでしょうか。ほとんどの場合、畏怖しているからこそ強く退去を求めることができずに困惑をするというのが実態ではないでしょうか。所管大臣と法務大臣の見解をお尋ねいたします。
結局、本条項に該当するケースのほとんどはこれまでの法令でも対応可能なケースであり、新たに救済可能になる消費者被害は少ないのではないでしょうか。電話で威圧的に契約を求めるケースや、運勢が悪いなどと不安を募って契約させるケースなど、最近の消費者被害の実例を経済企画庁長官は御存じでしょうか。御存じだとすると、どのように保護すべきとお考えでしょうか。本条項の適用がどのようなケースまで及ぶのかという問題とあわせてお答えください。
さらに、政府案では、退去すべき旨の意思を示したか否かという形式的な基準が重視され、消費者のみならず、事業者にとっても使い勝手が悪いものとなっています。これについての所管大臣の見解もお尋ねいたします。
次に、取り消し権の行使期間についてお尋ねします。
民主党案が時効期間を三年としているのに対し、政府案に規定する取り消し権の行使期間はわずか六カ月です。
トラブルが発生しても、六カ月ぐらいの期間はあっという間に経過してしまいます。もし、法的知識に乏しく経験もない消費者を相手に、六カ月間交渉を引き延ばしていればよいということになってしまったのでは、より悪質な事業者ほど救われることになり、公平、公正とは言えません。
政府案で言う六月という期間はどのような意味の期間であるのか。六月以内に何をしなければならないのか。所管大臣の見解をお尋ねいたします。
次に、いわゆる不当条項についてお尋ねします。
政府案第十条がいわゆる包括的規定を置いたことは率直に高く評価したいと思います。しかし、第八条と第九条が非常に具体的であるのに対して、第十条は大変抽象的で、その中間的な基準が示されていません。民主党案は、いわゆる不当条項一般を抽象的に無効とした上で、その具体的基準を民主党案第九条第二項に規定しています。
民主党案の第九条第二項の各号に規定するケースが政府案第十条に含まれ得るのか、所管大臣にお尋ねいたします。
今回の法制定過程では、まじめな大部分の事業者には特に新たな義務を課すものではないにもかかわらず、事業者からの過剰反応が存在し、残念ながら十分な内容となっていません。したがって、今回の法制定をゴールとするのではなく、その運用を見ながら、時代の要請に応じた見直しが必要であると考えます。民主党案では、施行後三年を目途とした見直し規定を設けましたが、政府案にはありません。政府においても見直し規定を設けるべきと考えますが、所管大臣の御見解をお伺いいたします。
また、見直しを要する項目の中で、特に団体訴権や差しとめ訴訟についてお伺いします。
消費者契約の適正化に実効性を持たせるためには、消費者団体などに差しとめ訴訟の団体訴権を認める必要があります。民主党も、消費者契約法案にこうした規定を設けるべく検討しましたが、民事訴訟法体系全体にかかわる大論点であるため、今回は断念をしております。
私たちとしても、速やかに検討作業を始める所存ですが、政府においても、消費者契約法制定後、直ちにこの団体訴権、差しとめ訴訟について検討を開始すべきと考えます。法務大臣及び所管大臣の見解をお伺いいたします。
最後に、実効性確保の措置についてお尋ねします。
本法案に実効性確保のための行政的措置についての規定がないことは、本法案の本質が裁判規範であることを考慮すれば理由のないことではありません。しかし、消費者契約法が十分に効果を発揮するためには、裁判に至らない段階で多くの消費者被害が救済される必要がありますし、そもそも、いわゆる悪徳商法を事前に阻止することが必要であります。
こうした観点から、自治体の消費者センターなどが財政難などを理由として縮小傾向にあると言われていることは残念なことであります。政府として拡充に向けた手当てが必要だと考えますが、いかがでしょうか。経済企画庁長官の御見解をお伺いします。
また、被害が生じた場合の相談や仲裁の役割を担う公益的機関としての弁護士会の役割も重要であります。弁護士自治の見地から、政府として介入することは避けるべきと思いますが、要望、希望を表明することは問題ありません。消費者契約法の実効性を高める上で弁護士会に期待することがあれば、所管大臣の御見解を承ります。
民主党としては、みずからの案をベストであるとの硬直的な姿勢をとることなく、的確な指摘には率直に従って修正をする用意があります。政府・与党においても、数の力を頼んだ硬直的な対応でなく、民主党案に劣るところがあるならば、きちんと論戦を通じてよりよいものを求める努力を怠るべきではありません。この点に対する政府としての姿勢を所管大臣にお尋ねをして、質問を終わります。
ありがとうございました。(拍手)
〔国務大臣臼井日出男君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114705254X01120000314/18
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019・臼井日出男
○国務大臣(臼井日出男君) 枝野議員にお答えをいたします。
まず、消費者契約法案の背景についてお尋ねがございましたが、御指摘のとおり、今日、消費者と事業者の間には情報の量と質、交渉力等に関し格差が存在いたしておりまして、消費者と事業者との間の契約をめぐって、さまざまな紛争が生じることも少なくないものと認識をいたしております。
民事に関する基本法でございます民法は、契約一般について合理的な規律をしていると考えられておりますが、いわゆる消費者契約については、民法のみでは十分な対応をすることはできないことも否定できないところでございまして、このことが、今回、消費者契約法案が提出された理由の一つであると認識をいたしております。
次に、第三条第二項の消費者の努力義務についてのお尋ねがございましたが、この規定は、消費者に対し、条文に規定された内容の努力をすることを求めるという趣旨の努力規定であると承知をいたしております。したがいまして、この規定は、特段の私法上の効果はなく、これにより消費者が新たに法的義務を負ったり、消費者の保護の範囲が狭くなるということはないと考えております。
次に、第三条第一項の事業者の情報提供に関する規定についてのお尋ねがございましたが、この規定は、事業者に対し、条文に規定された内容の努力をすることを求めるという趣旨の規定であると承知をいたしております。したがいまして、これまでの裁判例に見られる事業者の説明義務に関する考え方等に影響を及ぼすものではないと考えております。
次に、民法第九十五条の錯誤における法律行為の要素と、本法案第四条第四項の重要事項との関係についてお尋ねがございましたが、民法第九十五条の法律行為の要素とは、一般的に言いまして、意思表示の内容をなし、表意者がその内容に従って法律行為上の効果を発生させようと欲した事実であって、客観的に観察し、その事実に錯誤がなかったならば意思表示をしなかったであろうと認めることが合理的であるものをいうとされております。これに対して、本法案の重要事項につきましては、法律行為の内容になっていないものもこれに当たる場合があり得るものと考えられております。
次に、刑法上の不退去罪、監禁罪と本法案第四条第三項の不退去等との関係についてのお尋ねがございましたが、本法案第四条第三項に規定する事業者の行為は、刑法の不退去罪や監禁罪に該当することも多いと考えられますが、例えば、刑法の監禁罪の対象とする行為は、人を一定の区域、場所から脱出できないようにして、その自由を拘束するものとされておりますから、本法案が対象とする行為とは異なる場合があり得るものと考えられます。
次に、民法第九十六条第一項の強迫における畏怖と第四条第三項の困惑との関係についてお尋ねがございましたが、強迫における畏怖とは、害悪の告知によって意思の自由が制約される状況をいうものでありますが、第四条第三項の困惑は、害悪の告知によらずに、困り、戸惑うなど、広く自由な判断が阻害をされる状況をもいうものと考えております。
次に、差しとめ訴訟の団体訴権についてお尋ねがございましたが、この点につきましては、仮に認めるといたしましても、どのような要件のもとで、どのような団体に対してこれを認めるのか、また、判決の効力がどのように及ぶのか等、さまざまな問題点がございまして、これらの問題点を慎重に検討する必要があるものと考えております。
以上でございます。(拍手)
〔国務大臣堺屋太一君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114705254X01120000314/19
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020・堺屋太一
○国務大臣(堺屋太一君) 枝野議員にお答えいたします。
本法立法の背景につきましては、消費者と事業者との間に存在する取引に関する構造的な情報の質及び量並びに交渉力の格差に着目したものであり、その意味では、まさに議員の御指摘のとおりと認識しております。
本法の目的につきましては、消費者と事業者との間に存在する取引に関する構造的な情報の質及び量並びに交渉力の格差に着目し、消費者に自己責任を求めることが適切でない場合のうち、消費者が契約の全部または一部の効力を否定することができるようにする場合を新たに法律で定めることにより、消費者利益の擁護を図るものであります。
消費者契約の定義に関して、個人事業者が、主に趣味に利用する目的でパソコンを購入したが、実際には事業用にも使用している場合につきましては、主に趣味に利用する目的で購入したものであるために、消費者契約に該当するものと考えております。個人が住宅資金の形成や老後の生活資金のためなどに行う利殖、投資などの資産形成取引につきましても、消費者契約となり得るものと考えております。
消費者の努力義務につきましては、第三条は努力規定、訓示規定でございまして、この規定を根拠に消費者が新たな法的義務を負うことはありません。事業者の情報提供義務につきましては、単なる重要事項の不提供だけでは取り消し等の私法的な効果を付するのは適当ではなく、法的義務として規定することには慎重に考える必要があると考えておりますが、第三条第一項の規定は、これによって事業者の説明義務に関するこれまでの法理を否定したり、後退させたりするものではございません。
民法の錯誤の要件である法律行為の要素と本法律案の重要事項との関係については、法律行為の内容となっていない事項が本法律案の重要事項に該当することもあり得ると考えております。
当該重要事項に関連する事項とは、基本的には、ある重要事項にかかわり、つながる事項を広く意味するものであります。しかしながら、不利益事実の不告知の対象が限定されているため、実際上、当該重要事項に関連する事項は、一般平均的な消費者が不利益事実が存在しないと誤認する程度に、ある重要事項に密接にかかわり、つながっているものとなります。
故意の立証責任は、消費者にあります。しかしながら、この故意は、民法の詐欺における相手方を欺こうとする意思よりも程度の弱いものであるため、消費者にとって、これを立証することは著しく困難ではないと考えております。
点検商法、福祉商法、法令等について虚偽の事実を告知する商法については、消費者は必ずしも本法律案の規定により救済されることにはなりませんが、このような悪質な商法については、民法の詐欺の規定などにより救済される場合も多いと考えられます。
本法律案の不退去、監禁と刑法の不退去罪、監禁罪との関係については、本法律案の不退去、監禁は、刑法の不退去罪、監禁罪に該当することも多いと考えられます。しかしながら、刑法の不退去罪、監禁罪に該当したとしても、法律行為自体が直ちに無効となるわけではないので、本法律案において不退去、監禁を規定する意義があるものと考えております。
民法の強迫の要件である畏怖と本法律案の困惑との相違点については、困惑とは、困り、戸惑い、どうしてよいかわからなくなるような、精神的に自由な判断ができない状態をいいます。これは、畏怖をも含む広い概念であると整理することができます。
困惑の類型については、これまでの法令では必ずしも対応できないものであり、消費者トラブルの実態、消費者の要保護性、取引の安全の確保等にかんがみ、不退去、監禁について契約取り消しを認めることとしたものであります。御指摘のケースについては、民法の強迫や訪問販売等に関する法律のクーリングオフの規定などにより救済される場合もあると考えます。
消費者の退去すべき旨の意思については、これが事業者に対して明確に示された場合について契約取り消しを認めることが、取引の安全の確保にかんがみ適当であると考えております。
取り消し権の行使につきましては、民法九十六条の取り消し権と同様、消費者は必ずしも裁判に訴える必要はなく、追認することができるときから六カ月以内に相手方に取り消す旨の意思を伝えればよいというのが民法の考え方でありますが、これをそのまま採用しております。
民主党案の第九条第二項の各号に規定するケースは政府案第十条に含まれているのかという点につきましては、各号いずれにつきましても、民法、商法、その他の法律の任意規定に反し、信義則に反する程度に消費者の利益を一方的に害する場合には、政府案第十条によって無効となり得るものと考えております。
見直し規定につきましては、経済社会の変化に応じて法律の見直しを行うのは当然であります。あえて見直し規定を置く必要はないものと考えております。
差しとめ訴訟の団体訴権につきましては、我が国の司法制度改革の流れを踏まえた上で十分な検討を行う必要があると考えております。
消費生活センターについてのお尋ねがありました。
消費者契約法の実効性確保のために、消費者への各種の情報提供や苦情相談の処理等を適切に行えるよう各地の消費生活センター等の体制整備を図っていくことが重要な課題と考えております。経済企画庁としても、国民生活センターを通じた情報提供や、消費生活相談員に対する研修等、各地の消費生活センターの機能充実のため支援を行っていきたいと思っております。
弁護士会に対しましては、少額事件訴訟に係る法律相談の充実のほか、消費者契約に係る紛争についての裁判外紛争処理機関として弁護士会仲裁センターに対し高い期待のあることに対応し、できる限り広範な地域の消費者にとってその利用が可能となるよう御努力いただくことを期待したいと思っております。
政府としての姿勢につきましては、本法案は六年間にわたって幅広く関係者に御参加いただき、国民生活審議会において御議論の上得られたコンセンサスを条文化したものでありますが、立法府においても十分な御審議をお願いしたいと考えております。(拍手)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114705254X01120000314/20
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021・伊藤宗一郎
○議長(伊藤宗一郎君) 吉井英勝君。
〔吉井英勝君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114705254X01120000314/21
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022・吉井英勝
○吉井英勝君 私は、日本共産党を代表して、内閣提出の消費者契約法案について、経済企画庁長官並びに外務大臣に質問いたします。
法案に先立って、まず堺屋長官のディジタルアーカイブズ社問題について質問いたします。
堺屋長官の私設秘書と言われている伊東明子さんが代表取締役を務め、堺屋長官の所有するビルにオフィスを構えるディジタルアーカイブズ社が、経企庁が著作権を持つ経済白書のDVD化を請け負い、さらに、経企庁長官提唱による政府のインターネット博覧会の有識者懇談会技術部会にも同社の古瀬取締役が入っています。
大臣がみずから責任を持つ経済白書や博覧会に、公募や競争入札でない形で請負や参画をさせることは、極めて不明朗な行政の私物化とマスコミに指摘されても言いわけのできない問題ではありませんか。堺屋長官の明確な答弁を求めます。
日本共産党は、消費者契約法を制定するからには、その目的は、物品等を販売する事業者とそれを購入する消費者との間の情報や知識や交渉力の歴然とした格差があることを踏まえて、消費者契約における契約の過程や契約の内容を適正なものにさせることにより、消費者の利益を守り、国民の消費生活の安定や向上に役立つものとなるようにするべきだと考えております。その立場から質問をいたします。
まず第一に、契約に当たっての情報提供についてです。
その一つは、消費者が内容をよく理解してから契約するためには、社会通念上一々書面の交付をするには及ばないというものを除いて、事業者が消費者に対して、契約の締結前に、原則として、その内容をきちんと示して、それを書面で交付することが当然のこととして必要であると考えます。この書面を交付することを義務として法律に明記するべきではありませんか。長官の答弁を求めます。
二つ目に、契約内容に関して、事業者は、消費者契約を結ぶ前に、消費者が契約内容についてよく理解できるように、親切に、必要で十分な情報を提供するべきであります。
堺屋長官は、昨年十一月五日の商工委員会で、事業者と消費者との間には情報や交渉力などの構造的な格差が存在する、このことを考慮して消費者のための新しいシステムづくりに取り組むことが重要であると述べました。
そうであるなら、情報格差を埋めるために、契約についての情報を提供するように事業者に義務づけるべきでありますが、逆に政府案では、消費者に契約内容について「理解するよう努める」ことを求めています。これでは、事業者の情報提供に対する責任をあいまいなものにしてしまうのではありませんか。
政府案にある、消費者に理解することを求める努力義務規定は削除して、事業者の情報提供義務こそ明記するべきであります。答弁を求めます。
ここで、外務大臣に質問します。
アメリカでは、判例法を条文の形で整理した第二次契約法リステートメントにおいて、業者が消費者に情報提供をしないことは、不実表示、つまり事実と違うことを示したのと同じ誤りと見なされます。
ヨーロッパにおいては、フランスの消費者法典は、財の販売者またはサービスの提供者である職業人は、契約締結以前に、消費者に対して財またはサービスに関する基本的な特性について知らしめなければならないと規定しています。
またドイツでは、契約締結上の過失の法理に基づいて、業者には、重要事項の開示や説明、通知などの付随義務があるとされています。
そしてイギリスでは、慣習法の中で、最高信義の契約として、優越した地位にある場合、情報提供の義務に違反することは、相手側に契約の取り消し権を生じさせるとされています。
このように、欧米諸国では、情報の提供の確保やその義務は、判例で明示されたり、立法化されているのではありませんか。答弁を求めます。
国民生活審議会消費者部会長の落合誠一東大教授は、経済企画庁の雑誌の中で、欧米諸国の消費者は我が国の消費者よりもより厚く保護されているのであり、したがって、グローバルスタンダードから見ても我が国の現状は問題であると述べています。真に具体的かつ包括的な民事ルールの必要性を強調するならば、欧米諸国では当たり前となっている情報提供の義務づけを明確にするべきであります。重ねて経企庁長官の答弁を求めます。(拍手)
第二に、消費者が契約を取り消す場合の問題です。
その一つは、政府案が、事業者の不当勧誘行為を脅迫に近い不退去や監禁などに狭く限定していることについてです。
しかし、実際によく発生しているのは、羽毛布団の勧誘をめぐる催眠商法での威迫や、職場へしつこく電話をかけての通信教材つき資格商法での執拗な勧誘などの困惑行為です。これら被害の実態に即して、威迫や困惑など消費者の判断を誤らせるものを広く不当勧誘行為として、このような場合、消費者がその契約を取り消すことができるようにするべきであります。答弁を求めます。
二つ目に、政府案で消費者に告げなければならない重要事項としているのは、商品、サービス、権利などの内容や取引条件に限定しているために、モニター商法や霊感商法などのような悪質商法を規制できません。
我が党は、契約する商品、サービス、権利などの性質、品質、内容、取引の仕組み、消費者負担の内容、支払い手段などはもとより、その取引全体を重要事項として網羅できるようにするべきだと考えます。重要事項というのを、取引全体を把握するために必要な事項として、あらゆる悪質な商法に契約の取り消しができるようにするべきではありませんか。
さらに、政府案は、消費者に不利益になることを告げなかった場合に取り消すことができるとしていますが、そのことで問題になるのは、故意に告げなかった場合に限定しています。しかし、それが故意であったと消費者が立証することは極めて困難なことであり、故意ということは外すべきであります。答弁を求めます。
第三に、無効となる契約条項についてであります。
政府案では、無効とするのは限られた条項ですが、日弁連は、そもそも無効とすべき条項を列挙してブラックリストとし、また、事業者が不当でないことを立証しない限り無効とする条項を列挙してグレーリストとして整理しています。消費者トラブルの実態を踏まえたこのような提案は、率直に受けとめて、法律として明記するべきでありますが、なぜ採用しないのか、明確に答えられたいと思います。
第四に、消費者団体による差しとめ請求権についてです。
三月九日に横浜地裁では、ココ山岡ダイヤ買い戻し商法に対して、破産を予期しつつ販売し、多くの顧客から多額の代金をだまし取った責任は重いとして、被告全員に実刑判決が言い渡されましたが、裁判は長期間を要し、被害者の皆さんはいまだに救済されていません。また、豊田商事事件、オレンジ共済事件などを見ても、こうした消費者被害の特徴は、同種かつ大量に発生しています。
このような事件を未然に食いとめるためには、消費者被害の救済や被害の防止に消費者団体として当たれるように、その差しとめ請求権を法律に明記するべきであります。答弁を求めます。
第五に、契約取り消しの時効の問題です。
日弁連の調査によりますと、内容に不審を持った相談が圧倒的に多い時期は、契約直後よりも、契約締結時から経過時間が一年以上が多いというのが実態です。
したがって、日本共産党は、取り消し期間は十年とし、さらに、消費者にわかる方法で情報提供をしなかったり、事実に該当しないことを言って消費者の判断力の不足につけ込んだり、不当勧誘などの行為があった場合は、その行為があったことを知ったときから三年間取り消し権を行使しない場合に時効になるよう改めるべきだと考えます。また、威迫や困惑に当たる行為の場合には、その行為がやんだときから三年間とするべきであります。答弁を求めます。
さて、消費者トラブルをめぐる状況は、苦情、相談件数で、単なる問い合わせを除いたものは、一九九八年に約四十五万件ですが、これは、一九八五年の約十八万件から十三年間に二・五倍、二十七万件増加したことになります。その相談内容の八〇%が契約に関するトラブルです。しかし、実際に消費生活センターなどの相談窓口に来る割合は二・一%ですから、圧倒的多数の方は泣き寝入りしてしまっているのが実情です。
こうしたもとで、悪徳商法と取り組んでいる弁護士や国民生活センターなどの相談員の皆さんは、現行法を駆使し、判例の積み重ねや相談活動で、消費者の利益を守る実績を積み上げてきています。そうした教訓も生かして、私が今具体的に提起したことも盛り込んだ実効性ある消費者契約法とすれば、裁判所における紛争処理、また裁判外の紛争や相談などの処理の規範になり得るものと考えるものであります。
日本共産党は、消費者契約法が、消費者の皆さんの期待にこたえて実効性のある積極的な法律になるように、各会派の皆さんと共同して取り組んでいくことを表明して、私の質問を終わります。(拍手)
〔国務大臣堺屋太一君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114705254X01120000314/22
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023・堺屋太一
○国務大臣(堺屋太一君) 吉井英勝議員にお答えいたします。
まず、お尋ねのDVDの件でございますが、これは、東芝、電通、ディジタルアーカイブズ社が制作委員会を設けて自主的に製作したものでございまして、経済企画庁から一円のお金も出ておりません。
また、経済白書は、発表後、著作権法第三十二条によりましてだれでも自由に無料で引用利用できるものでございます。現に印刷では、複数の経済誌が全文を含んだ臨時増刊号を出しております。これらについて、経済企画庁が承認するとか認可するとかいうものではございません。また、平成九年まではCD—ROMも製作、販売されておりました。
以上のごとく、本件に関して私が関与する余地はございませんし、また、固有名詞を挙げて私の私的秘書などと呼ばれるのは、私にとりましても本人にとりましても、全く事実に反しておりまして、極めて遺憾でございます。
次に、古瀬幸広氏が新千年紀記念行事懇話会の技術部会に参加しておりますが、同氏は立教大学助教授でございまして、インターネットに関する著書もたくさんございます。その道の専門家であり、技術部会のメンバーとしてふさわしい専門知識の持ち主であるとの懇話会メンバー等の評価を踏まえて行ったものであります。
以上のように、本件に関して行政の私物化云々という指摘は全く当たりません。
さて、事業者の書面交付義務につきましては、本法が幅広い業種を対象にしていることにかんがみると、事業者に対して一律に書面交付義務を規定することは適当でないと考えております。
事業者による情報提供につきましては、単なる重要事項の不提供だけでは取り消し等の私法的な効果を付するのは適当ではなく、法律上の義務とすることには慎重に考える必要があると思っております。
消費者の努力規定につきましては、消費者契約を締結するに際し、消費者も契約の当事者としての責任を自覚し、その責任を果たすことが期待されることから、消費者に期待される最低限の役割を規定したものであります。事業者の努力義務については、別途明確に規定されており、この責任をあいまいにしかねないとの御指摘は当たらないと考えております。
不当勧誘の範囲につきましては、消費者トラブルの実態、消費者の要保護性、取引の安全の確保等にかんがみ、威迫し困惑させること一般ではなく、不退去、監禁によって消費者が困惑した場合について契約取り消しを認めることとしたものであります。
契約の取り消しができる不実告知の対象については、詐欺による救済可能性にも留意しながら、法的安定性、予見可能性を高め、また取り消しという強い効果とのバランスをとるという観点から、適切な範囲に限定したものであります。
第四条第二項の故意については、民法の詐欺における相手方を欺こうとする意思よりも程度の弱いものであるため、消費者にとってこれを立証することは著しく困難ではないと考えております。
消費者に不当に不利な契約条項につきましては、本法案における無効とすべき契約条項は、トラブルの実態を踏まえ、国民生活審議会で検討を行って得られたコンセンサスに基づいて規定されたものであります。
また、第十条の規定により、任意規定に反し、信義則に反する程度に消費者の利益を一方的に害する条項は広く無効になるため、無効とすべき契約条項は本法第八条から第十条までに定めた規定で十分であると考えております。
消費者団体による差しとめの請求権につきましては、今後、我が国の司法制度改革の流れを踏まえた上で十分に検討を行う必要があると考えております。
取り消し権の行使期間につきましては、契約締結から六カ月と規定するものではなくして、追認することができるときから六カ月、当該消費者契約の締結のときから五年間としております。また、この期間内に相手方に取り消す旨の意思を伝えればよいというのが民法の考え方でありますが、それをそのまま採用しております。したがって、行使期間として適当であるものと考えております。
なお、消費生活センター、弁護士会その他が、この法案、消費者保護の観点でさらに御活躍いただくことを我々も大いに応援していきたい、あらゆる点で進めていきたいと考えております。
以上でございます。(拍手)
〔国務大臣河野洋平君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114705254X01120000314/23
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024・河野洋平
○国務大臣(河野洋平君) 欧米における規定についてのお尋ねでございます。
フランスでは、消費法典第L百十一の一条におきまして、財の販売者またはサービスの提供者であるすべての職業人は、契約締結前に消費者に対して財またはサービスに関する基本的な特性について知らしめなければならないと規定をしております。
ドイツにおきましては、契約を締結する者に過失があれば賠償義務があるとされる法理に基づいて、判例上、重要事項の開示、説明などの付随義務が認められております。
イギリスにおきましては、一般的に消費者に対する情報提供義務を課す法律はありませんが、コモンローが認める最高信義の契約により、契約の重要事実を知ることにつき優越的地位にある事業者が情報提供義務違反を行った場合、相手方に契約の取り消し権が生ずるとされています。
米国におきましては、契約法に関する判例法を整理した契約法リステートメント第二版の第百六十一項に、みずからが知る事実の不開示は、その事実が存在しないとの言明と同じとみなされる事例が挙げられております。
以上のように、情報提供についての法律上の規定は、それぞれの国情、法体系に応じてなされているものと承知をいたしております。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114705254X01120000314/24
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025・伊藤宗一郎
○議長(伊藤宗一郎君) これにて質疑は終了いたしました。
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026・伊藤宗一郎
○議長(伊藤宗一郎君) 本日は、これにて散会いたします。
午後二時十一分散会
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出席国務大臣
法務大臣 臼井日出男君
外務大臣 河野 洋平君
文部大臣 中曽根弘文君
運輸大臣 二階 俊博君
労働大臣 牧野 隆守君
建設大臣 中山 正暉君
国務大臣 堺屋 太一君発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114705254X01120000314/26
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